体は剣で出来ている(ガチ (枝豆%)
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投影できないって…それマ?

 異世界転生という言葉を聞いたことはあるだろうか? 

 俺がその言葉を聞いたのは当時『なろう』小説が流行していた時のこと、全く手をつけたことの無いジャンルであるラノベが無料で読めるサイトという言葉に背中を押されて読み始めたのが始まりだ。

 なんでも『なろう』の中にはアニメ化された作品や、実際本屋で売られているような作品もあると聞く。

 無料という日本人ならこの言葉を巧みに使えば押し付けることが出来る魔法の言葉で俺はライトノベルの門を叩くことに成功した。

 

 初めは無難にランキング一位の作品から読むことにした。

 なにせ総合ランキング一位なら安心して読めるだろうという、これまた日本人らしい理由で読み進めたのだ。

 

 当時の一位は某童貞ヒキニート無職がトラックに轢かれて剣と魔法の世界に飛ばされるという内容だった。初めて読むタイプの幼少期からの成長が分かる小説。俺は興奮した。

 なにせトラックに轢かれるという始まり方は、昔好きだった某探偵の指から弾を飛ばすやつと一緒だったからだ。そちらは今では完結しているが、同時連載していた某狩人漫画は今も休載しており、完結するか正直不安だ。

 まぁいい、その話は一旦置いておいて。

 

 その一位の作品に俺は釘付けとなったのだ。

 少年誌では絶対にお目にかかれないような表現、ブリッジ────(自主規制)など見たことがない、そして何より俺が一番惹かれたポイントというのは主人公が人間しているところだった。

 

 少年誌の主人公なら「仲間が攫われた」→「全員で助けに行くぞ」→「仲間全員で助けに行く」

 という、お前ら正気か? ともいえる行動をしている。

 それも特に仲良くない奴とかでも、同じ学校だったら大体助けに行ったりもしている。

 

 お前ら正気か? (大事なことなので2度言った)

 

 カレカノや夫婦とかでも少しは躊躇うようなやばい組織に、そんな訳の分からん薄い繋がりで命かけるとか頭沸いてんじゃねぇの? 

 と、割とガチで思っている。

 

 だが、なろうならどうだろう。

 

 確かに助けることもあるが、それには必ず理由がある(良作に限る)意味もわからんタイミングで女の子とイチャイチャしないし(良作に限る)意味も分からずヒロインが2桁とかにならない(良作に限る)

 

 いや、まぁ少し闇が出たな。

 まぁ確かにやべぇのもいる。いや、マジで5年後とかに自分で読んだら死にたくなるような駄文もマジである。

 テンプレ詰め込みすぎて、記憶の片隅にも残らない小説も確かにある。

 

 でもタダだ。

 

 話がまた脱線した。

 主人公がいい意味で人間してるから俺はなろうが好きだった。

 

 時代は変わって「主人公最強」とか「チーレム」という文化に押し流され、今は変わってしまったらしいが。

 聞けば最近のなろうではロリがなければ生きていけないと聞く(偏見)

 

 確かにロリはいい(失言)

 だが、いぇすろりーたのーたっち(迷言)の精神を忘れてはいけない。

 

 と、色々あり俺はなろうを卒業した。

 どうにもラノベという新しいジャンルを開拓したことによって、書店でラノベを買う勇気が芽生えたのだ。

 

 因みにだが「なろう」のランキングはだいたい漁った。

 最初に言ってた一位の作品はクソおもろかった。いや、マジで。子供産まれた時とか泣きそうになったし、番外編の娘の旅立ちとかクソ童帝の癖に父親の気持ちになった。あれは神だった。

 

 とまぁ、ライトノベルへの偏見が消えたことによって俺は書店で買うようになったのだ。

 それはもう漁ったね、学園ラブコメからギャグ、バトルに冒険。

 

 色々漁って分かった。

 

 ロリはいい(断言)

 

 いや、将棋とか面白すぎたし。ロリ抜きにしても面白いってどういうことだよマジで。3年くらい応援してた姉弟子がゴールインした時には、もうニヤニヤが止まらんかったね。

 いや、やばいって(語彙力)

 

 冗談は置いといて主人公最強よりも成長系が面白いという真実に俺はたどり着いた。

 そう、言わば俺は「出会っちゃった」。もう間違ってないね、出会っちゃったんだよ俺は。

 一年近く新刊でてないけど。

 

 そして俺はもう1つの真実にたどり着いた。

 

 GAはヤバい。

 

 良作の宝庫やんけ、と崇拝に近い何かを捧げたい。

 と、まぁ色々とラノベを一年ぐらい読み漁った訳なんだが……。

 

 一周まわって少年誌に戻ってきたんだよね。

 

 いや、マジで。

 なんていうか俺だけじゃないと思うんだよ、一周まわってジャンプにどっぷり浸かる読者って。

 ラノベ漁り期間を経てジャンプはかなり変化してたね。正直不作不作と見下してマガジンの方にいってたわ。

 

 今話題になってた鬼斬の奴とか、下弦が消えた時に「打ち切りか〜」とか思ってたし。

 アニメって強いよな、特にufotableはヤバイわ。作画とかもそうだけど、何より効果音が好きなんだよね。ランサーの槍の『コンっ!』って音が好きな同士いる? 

 

 まぁそんな1周まわって少年誌に帰ってきたんだけど、それにも限界があるんだよね。

 そんときに見つけたのが二次創作。

 

 手短に言えば「HACHIMAN」だ。

 

 もう二次創作に関しては、これだけでいいだろ? 

 え? 足りない?? 

 

 オリ主だよオリ主。

 

 と、まぁこれだけ長い前振りになってしまったわけなんだが。

 

 俺氏、トラックに跳ねられて転生するの巻。

 原作知識は消された模様。←(凄い重要)

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 何やら俺も例に漏れずに転生してしまったらしいが、チートも授けられた。

 神様には会わなかったけど、なんとか能力は貰ったよ。

 

 くじ引きだったけど、あれは当たりだね。大当たりだね。

 テンプレの代名詞とも呼ばれるFateの無限の剣製だったよ。表示は「体は剣で出来ている」だったわ。

 そのフレーズとか無限の剣製以外思い浮かばないし間違いない。

 

 これは勝ち組かな〜。チーレム嫌いだったけど現実ならウェルカムだしな〜やっぱキリトかな〜。

 

 まぁ格の違いというやつですか(ガッハッハッ!)

 

 さてさて、初めは台所の包丁とかで試してみましょうかね。

 

 

 ……あれ? 

 ………

 ……

 …

 

 あれ? 

 

 出来ないんだけど(汗)

 

 幼少期から魔術使わないと総量増えないって泥沼も言ってたから、早く訓練しときたいんだけど。

 異世界だから本気出さないといけないんだけど。

 

 

 3日粘ったけど投影は出来ませんでした。

 

 ーーーーー

 

 まじクソゲーだわ。

 リアルとかクソ喰らえってんだよ。

 

 何が個性だよ。

 4歳位から芽生えるようになる? 

 

 幼少期に鍛えないと意味ないんですけど? 

 分かってんの? 

 こんなんじゃ固有結界使えないよ? 

 

 しかもなんだよこの世界、ヒーローって。

 これ俺が嫌いな少年誌主人公の訳分からんポイント総ナメした世界観じゃん。オールマイト? 普通に怖いわ。

 火の中突っ込んで笑顔で助けるとか、ガチドン引き何だけど。

 

 まぁ出会った瞬間に詰むような世界じゃなくて良かったけどさ。

 これもこれでどうかと思うよ。

 

 せっかく異能力使えるのに、その許可証がないと無闇に使えないとかクソゲーだわ。こんなしっかり世界観作んなよな、登場人物が過労で死ぬわ。世紀末みたいな設定でいいんだよ。

 

 てか使えないんだけど。

 

 幼稚園の周りの皆が使いだしてるのに、俺くらいじゃね? 

 使えてないの俺だけじゃね? 

 

 近所の2歳上の女の子とか、家の中飛んでるよ? 

 

 え? ちょっ、俺も飛びたいんだけど。

 

 個性でねっかなーー。

 

 体は剣で出来ている。

 とか言ったら出るかな……

 

 あ、出たわ。

 てか……なんか想像してたのの斜め上なんだけど。

 

 腕が剣になったんだけど。

 体が剣でできてるんだけど…

 

 え? 

 ガチ? 

 

 固有結界は? 

 詠唱は? 

 

 厨二ゼリフは? 

 

 嘘だろ。

 この能力って……。

 

 スパスパの実じゃん……orz。

 

 ーーーーー

 

 俺氏丸2日発狂するも、現実を受け止めて立ち上がる。

 

 OK、確かにスパスパの実は地味だ。

 格下相手にマウント取ってたら一太刀浴びせられて負けるような、言っちゃ悪いがゴミゴミだ。

 だがそれはワンピースの中で2年前だったからだ、2年後は化けていると信じてる。ほら、覇気とか覚醒の設定とか後付けで出来たし。

 

 ワンチャン化ける。

 

 …………と、思ってる時期もありました。

 覇気は無理ですね。

 普通に無理でしょ、そんなのできるならヒーローがやってるわって話な訳だし。

 ルフィもゴムゴム覚醒してなかったし、現実的に考えて今の俺じゃ無理。え? 詰んだ? 俺の人生詰んだ? 

 

 何だよこんなことありかよ。

 無限の剣製なら詠唱とか大声で言えたのにさ。やめろよな詠唱という免罪符がないと俺は厨二ゼリフを大声で叫べないシャイな男の子なんだよ。

 

 なんなら前世と合わせれば20歳超えてるよ? 

 成人過ぎたやつが大声で厨二ゼリフ叫んでたら職質案件だろ? 

 

 うーわ、キッツ。

 

 かなり楽しみだったのに。

 

 キッついわ〜(ガチ凹み)

 

 よし、切り替えていこ。落ち込んでても仕方ないしね。

 俺、ポジティブな男だから。

 まずはこれからどうするか。

 なりたくないけど、この世界のヒーローってやつになっておきたいな。個性を自由に使えるようになっておきたいし、そのために必要な個性許可証とかチョー欲しい。そしてあわよくばモテたい(切実)

 

 いや、なんか知らんけどヒーローってチョーモテる。

 クソ童帝な俺からすれば、モテるモテないは死活問題になってくるわけであるんだよマジで。

 なんなら最近女体に対する恐怖心すら芽生えてきたね。

 家が近所で親同士の仲のいい女の子、いわゆる幼馴染がいるんだけど風呂に一緒に放り込まれるの避けてるからね。ノータッチの精神で臨まなければならない。

 まぁ前世の俺なら幼馴染と幼少という単語の組み合わせだけで一升は食えたわ。

 というかここまで来るとちょっと童帝捨てるの怖いとか思ってきたし、初体験を迎えるであろう平均的年齢に達する頃には俺魔法使いになってると思うし。

 

 色々言ったけど、とにかく俺はモテたい(必死)

 

 それなら勉強を〜とか思ったけど、ヒーローの年収ってヤバいらしいよ。

 人気出れば政治家より貰えるらしいよ。

 なんのコネもない一般家庭の出からすれば、そりゃ夢アリアリだよ。のし上がりだよ、言ってしまえば「成り上がり」だよ。やべ、盾買っとくかな。御利益ありそうだし。

 

 と、色々言ったが。

 俺はモテる為にヒーローを目指そうと思う。

 

 オールマイトとかに聞かれたらぶん殴られそうだな。

 

 よし、これから聞かれたら。

 情けは人の為ならずの精神だよ、(みんなを笑顔にできるような)さっさと俺に幸福回せカス(ヒーローになるため)

 と答えることにしよう。

 

 既に感情の裏表のある4歳児、どうだ? チャーミングだろ? 

 虹の呪いはかかってないぜ。

 

 幼馴染の個性によって浮かされた状態で色々と考える。

 なんかこれ、無重力みたいだしなんかアイデアとか降って湧いてきそう。

 

 まずは単純に武力だよな。

 カリスマとか知略とかあるだろうけど、1番大事なのはやっぱり武力だよな。クソ弱い主人公とかほとんど居なかったし、いたとしても相棒最強とかだろ? ヒーローとして一本立ちするなら、そりゃ無理だよな。

 どうしたもんかな。

 スパスパの実ってできること地味なんだよな、超人系ならグラグラとかドクドクとかが良かったな。派手だしかっこいい。

 多分ヴィランサイドに堕ちそうだけど。

 

 スパスパねぇー。

 どっかで体術とか教わるとこないかな? 

 ここは無難に空手とか柔道? テコンドーとかも強いって聞いたな。合気道とか極めれば巨体相手でも吹っ飛ばせるって聞いたぞ? 

 やっぱ刃牙読んでてよかったわー。ゴキブリダッシュとか超強そうじゃね? 実質俺の腕剣になれるから無明三段突きできるじゃん

 

 金的、鳩尾、顔面。

 

 いや、死ぬな。

 

 うん、死ぬわ。(確信)

 

 え? じゃあ剣でやることなくね? 

 普通に全部即死案件なんだけど。

 

 え? 俺氏素手でヒーロー目指さないといけない系ですか? 

 

 HQ〜!!!!! 

 

 詰んだ…(もう何回目か分からない)

 

 ーーーーー

 

 

 ははッ! 

 今日も古武術やってくよ〜。

 

 個性社会になって、武術とかあるようでないようなものになったからネットでかなり深くまで調べないと出てこなかったよ。

 あ、深いってそういう意味じゃないよ。俺氏も不用意にそんな危ないとこ行きませんって。

 

 古いデータでは古武術オジサンが技を披露しているところでした。

 多分強いかもしれないけど、なんか派手さが足りないよね。

 個性で既に負けてるんだから、戦い方くらい派手になりたいよな。ぶっちゃけエフェクトとか欲しい。刀振ったら水とか火とか蟲とか出るようになりたい。

 同じ刀型に腕をするからエフェクトでないかな? 

 

 呼吸かな? 呼吸じゃないよ、時空だよ。(五七五)

 

 ぶっちゃけココもアニメ時空ならそれくらいできるようにしとけよな。

 制作会社が違うのか? 大人の事情ここに持ってくんじゃねぇよ。

 

 身体ひとつでエフェクトも付いてくる武術とかないかな? 

 

 あ、あるじゃん。

 

 流水岩砕拳。

 某こことは違うヒーローアニメのS級老人が極めてた、チョーモテそうな流派。

 そうと決まればやってみるか。

 あの技どちらかと言えば防御寄りだし、武術ってカウンターが決まった時の方がヤバそう(小並感)

 

 よし、やるぞ! 

 

 ……

 ……

 …

 …

 

 あれ? エフェクトでないんだけど。

 

 流水岩砕拳を俺仕様に流水岩砕剣とか考えてたのに。

 え? エフェクト出てこないんだけど。

 

 鬼滅みたいに浮世絵みたいな水ほど欲張ってなかったけど、なんか『流水』みたいな感じの青色のエフェクトくらい貰えないんですかね。

 

 やばいな、早くも折れちゃいそう何だけど。

 

 ………あ! 

 色だけなら剣の色変えたらいけるんじゃね! 

 

 そうだよ、剣の色変えるくらいお茶のこさいさいさいさいさい! 

 

 ここは黒とか赤とかにすると正統派主人公が闇堕ちしたみたいになっちゃうから、ここは最初の目的通りに青にしよ。

 剣の残像みたいな通り道みたいな感じにすれば、高速で動かせばエフェクトができる。

 

 青じゃ、空に食われそうだったので濡羽色にしといた。

 なんか名前がカッコイイから!! 

 

 ーーーーー

 

 

 流水岩砕剣を始めて分かったことがひとつ。

 これバングがやるから強いわけであって、俺らパンピーがやってもそんなに強くないわ。

 元々防御寄りの流派だし、殴り合いのタイマンじゃないと強くなくね? 

 

 幼馴染みたいに遠距離系の個性なら無理じゃね? 

 いや、無理だよ。

 攻撃受け流すしかできないし、なんならそれ以外なんもできないじゃん。一生サンドバック状態じゃんか。

 

 射程距離短すぎワロタ。

 

 このご時世接近するのも難しいような個性じゃヒーローは務まらないってか? 

 

 スパスパさんと同じように足を剣にして地面を滑ってみようと思ったけど、切れ味良すぎて刺さったわ。なんならブレーキになってるわ。

 しかも砂場に移動したら砂の摩擦が強すぎて滑れなかったし、さすがワンピース時空だな、このヒーロー時空じゃ氷の上とか鉄の上を滑るのが関の山ですよ。

 

 あー、なんか身体強化系の個性が芽生えたらいいのにな〜。

 

 ないわー。

 

 ん? 

 んんん??? 

 

 近づけないなら近づかなくてよくね? (錯乱)

 

 そうじゃん、近づかなくても俺が伸びればいいんじゃん。

 

 正直この個性芽生えた時に思ったんだよね。

 いや、後藤か! って。

 

 後藤は某寄生する獣のラスボスなんだけど、体を変形させて鞭みたいに刃物をしならせるんだよ。

 正直みんな思ったよね。

 

 いや、鬼舞辻無惨か! って。

 主人公を捕食する時とか、最初のパラサイトの捕食シーンと一緒じゃんって。絶対あれパ……オマ……影響受けてるよね〜。

 

 俺はあんな感じで、誰も近づけない空間を作ってみせる。

 決めゼリフはこうだな「悪いな、ここは通行止めだ(シュシュシュシュ)」

 

 っべ〜わ、まじキリトだわ〜。

 よく彼女がアスナに似てるっていわれるし〜(俺の嫁)

 やっぱキリトかな〜〜〜〜〜。

 

 

 リーチの長い流水岩砕剣ならエフェクトとも光ると思うし、まじ完璧じゃね? 

 

 これでかつる。

 

 ーーーーー

 

 

 幼馴染ちゃんと公園で個性使ってバトってみました。

 剣は危なかったので逆刃刀にした……逆刃刀にしたでござる。(大事なので言い直した)

 

 いやいや、盲点だったでござるな。

 殺さずの誓、まさに今の拙者に当てはまるものであります故。

 

 拙者の個性『我身剣也』の流水岩砕剣の触手ゾーンをつかって、幼馴染殿と対決してみたでござる。

 

 ボッコボコにされました…。

 

 あんなん反則やん、あんな訳分からんビームみたいなん受け流せへんやん普通。そんなんできるならゆーといてな。

 もー、またまたまたまた負け犬やん。

 

 幼馴染半端ないって〜。

 

 いや、まじ半端ないって。

 ござるキャラ潰れたわ。

 

 流水岩砕剣とかいって個性攻撃流したと思ったら、変な軌道でこっちにきて流しても流しきれずに触手剣(技名)ごと持っていかれた。

 

 はー…へーー……え………(戦意喪失)

 ってなってたし。まじ有り得ないんだけど、生まれ持った才能でこんなん無理じゃん。個性ガチャミスったら終わりじゃん。

 

 ここはもっかい転生してグラグラかゾオン系引くまで生きれまテンやるしかないんじゃない? 

 

 あ、幼馴染可愛いからやめよ。

 今も吹っ飛ばしたくそ雑魚の俺を気遣ってくれてるし、まじいい子。もう俺ロリコンでいいや。

 

 …元からロリコンだったわ(知ってた)

 

 とりま武器ガチャ失敗したけどユニットには恵まれたみたいな感じで草。

 

 

 ーーーーー

 

 泥沼も言ってたけど、幼少期ってなんでこんなに眠いんだろうな。

 高校時代の夜更かしとか、この体でしたらマジで死ねる自信あるわ。徹夜なんかしたら発狂もん。

 

 流水岩砕剣も頑張ってるんだけど、なんかあと一歩足りない。

 そんな感じだな〜。

 やっぱ触手ゾーンも大事だけど、遠距離攻撃とか覚えないといけないかな〜。

 

 でも俺の個性って遠距離無理なんだよね。

 アニメ時空だから飛ぶ斬撃くらいいけると思ったんだけど、普通に無理だったし。触手の遠心力とかそういう運動エネルギー全部使ったけど斬撃飛ばなかったし。強いて言うなら真空にまで到達できて空間歪めたけど出来なかったし。

 斬撃飛ばせないとかマジなんなん? っ感じだわ。

 

 これじゃ月牙天衝ッ!! って叫べないし。

 最後は全身剣になって「俺自身が剣になることだ」とかできない。

 

 ほんともうなんなん!? って感じだよ。

 この世界はネタも通じないのかね!? 

 

 今時斬撃が飛ばないアニメとか流行らんよ! セイバーはみんなビームが出るところからスタートなんだから。

 

 近距離と中距離しか無理とかマジ卍。

 遠距離持ちは他のヒーローに任せることにしよ、正直無理だわ。

 

 凹んでたら幼馴染から一緒の事務所になったらいいんじゃない? 

 と声をかけられた。

 

 ほんまええ子や。

 

 幼馴染は遠距離系で近距離の戦闘が苦手と言っている。

 そうだね、こんな可愛い子と近接なんて俺なら問答無用でパイタッチしちゃうよ。おばさんの成長幅から考えてもHは硬そうだし。

 ほんと将来有望過ぎる。

 

 でも優しさが辛い(血涙)

 

 こんな6歳児に約20歳児が本気で心配されるとか。

 冗談でも泣ける。

 

 丁重にお断りしました。

 

 やっぱ自分のヒーロー事務所つくって、可愛いサイドキック雇うのが目標だからね。リアハー作ってみたい(切実)

 だからトップが二人だといざこざあるんだよ、ほらだって幼馴染ちゃんイケメン雇っちゃうでしょ? 俺モテないじゃん。

 

 まぁ今は4歳児だし、近距離と中距離極めとけばいっかな。

 

 眠いし寝よ。

 

 ーーーーー

 

 突然だが、私の幼馴染は変わっている。

 家が近いことからお母さんに「お姉さんだから面倒見てあげなさい」って言われて一緒に遊んでるのに何だか心ここに在らず? って感じ。

 

「ねぇねぇ剣心くん! 何考えてるの?」

「…ふ! 世界平和…かな! ☆」

 

「へぇーそうなんだー、それで何考えてるの?」

「華麗なスルー、流石は『ねじれちゃん』俺の扱いが分かってやがる」

 

「ねぇねぇ何考えてたのー?」

「だからその世界平和について」

「ねぇねぇー!」

「いや、だからその」

「ねぇねぇ」

 

「……」

 

「ねぇってばねぇー!」

「なんでもないです」

 

「それじゃつまんないよー」

 

 何だかよく分からないことをよく言うけど、こうやって何度か聞いたら顔を恥ずかしそうにして何もないって言う剣心くん。

 不思議だなー。

 

「あ! そう言えばオバサンから聞いたよー、剣心くん個性出たんだって? ねぇねぇどんなの? 気になるー」

「ふふふ、聞いて驚け。俺の個性は『アンリミテッドブレイドワークス』! だ!!」

 

「お医者さんにそう言われたの?」

「………剣身…」

「へぇーそうなんだー! なんで嘘ついたの!? ねぇねぇ剣心くん! あんりみてっど…なんだっけ? なんでそんなこと言ったの?」

 

「う…うるせぇやい!」

 

「あ、剣心くんなんで怒ってるの? 気になるー」

 

「勘弁してください…」

 

 私の幼馴染はすごく恥ずかしがり屋だ。

 変なことを言って私がそれをつつくと決まって恥ずかしそうな顔をして顔を背ける。年下の男の子はこんな感じなのかな? 

 

 今日は剣心くんが個性の特訓をしているそうだからお邪魔してみた。

 剣心くんは体を剣みたいに変える個性らしくて、ねっと? でぶじゅつ? っていうのを勉強してるってオバサンから聞いた。

 ヒーローに成りたいのかな? 私と同じなのかな? 

 

 そう思って個性を使って勝負することになった。

 

「ふ、年上とはいえ女に刃を向けるなど俺にはできない。やめておくんだな」

「あ、剣心くんごめん、冷蔵庫のプリン食べちゃった」

 

「ぶっ殺してやるこの女ぁぁああああ!!」

 

 カッコつけてたのにプリンを食べられたと分かって豹変する剣心くん。ビックリしたので個性を使ってビームを出すと…。

 

「ふ、丸見えだ! ……でござる!!」

 

 剣心くんは腕を鞭みたいにしならせて私の個性を切ろうとしたけど。

 ビームって切れるのかな? 

 

 予想通りビームに剣心くんの攻撃は当たったんだけど、ビームだからすり抜け? みたいな感じになって全弾剣心くんに命中して、死にかけの虫みたいにピクピクしてた。

 

「剣心くんだいじょーぶ?」

「全然大丈夫じゃない、ゆーといてーな、そんなんできるんやったら」

「えっと…ごめんなさい?」

 

「またまたまたまた飛ばされるやん、こんな変な軌道の攻撃避けられへんやん普通。どんな感じになるんかゆーといてーな」

 

「…えっと、ごめんね剣心くん。プリン買ってあげるから」

「……」

 

「あ! 私そういやハーゲンダッツ買ってもらってたんだった、それ半分あげるから元気だして!」

「……」

 

「ほら帰ろ、ドロドロだし」

「ボロ雑巾にしたのはねじれちゃんでしょ」

 

「あはは! 気にしなーい」

「しろよそこは!」

 

 大抵何しても許してくれる剣心くんは優しい。

 明るいし優しいし、ちょっぴりアホだけど頼りになる。

 

 こういう人がヒーローになるのかな? 

 

 ーーーーー

 

「ねぇー剣心くん、剣心くんはヒーローになりたいの?」

「…あー…うん、ヒーローになってモ……なりたい」

 

「?? そっかー、そうだよねー」

「どしたの?」

 

「私たち将来ヒーローになって事務所でも作っちゃう?」

「……やだよ、一人がいい」

 

「えーなんでー絶対楽しいよ!」

「大変な未来しか見えないんだけど」

 

「剣心くんも私が守ってあげるよ、危なっかしくて見てられない。だって私はお姉ちゃんだから」

「いや、違うよお姉ちゃんじゃないよ、近所の子だよ」

 

「私ヒーローになって剣心くん守ってあげる」

「嫌だね! 俺は金持ちで巨乳でポンコツでしっかり者の美人さんに養ってもらうんだ!」

 

「え? 剣心くんヒーローになりたかったんじゃなかったの?」

「…う、う」

 

「??」

 

「うるせぇ〜ばーか! ねじれちゃんなんて! バナナの皮でも踏んじゃえ!」

 

 ちょっとお馬鹿で、変な事言うし、時々凄くエッチな顔をしてるけど、それでも私は剣心くんのお姉ちゃんだから。

 それだから……守ってあげなきゃ。

 

「待って剣心くん、足早くなったなー」

 

 幼稚園の走りと、今年から小学生になった私とでは決着はすぐに着いた。肩で息をしながら剣心くんはこっちを向いて「チートや! そんなんチーターや、このビーターめ!」とかまた訳の分からないことを言っているけど……うん、気にしなーい。

 

 凄く恥ずかしそうにしてたけど手を繋いだまま家に着いて一緒にアイスを食べた。

 そして食べながら私は剣心くんに質問をされた。

 

「なんでねじれちゃんはヒーローになりたいの?」

「んーとね、かっこいいから」

 

「意外とアグレッシブだな」

「男の子も女の子も、ヒーローには憧れるものだよ」

 

 それから何度も一緒に独立して事務所作ろうって誘ったんだけど、剣心くんが「群れるなど愚の骨頂」だとか言ってたけど「じゃあサイドキック雇わないの?」って聞いたら「雇うにきまってるだろ!」って食い気味に言われた。

 

 ヒーローはダメでサイドキックはいいんだ? 

 群れるってなんだったっけ? 

 

「まぁいいや! そう言えば剣心くん、必殺技は考えたの?」

「そりゃモロちん! もちろんさ!」

 

「? そーなんだ、どんな技なの?」

「これは偉大なる穴熊鬼とパラサイトいっぱい入れるマンから取り入れたんだが」

 

「へーそうなんだー」

「聞いてて興味なしかい…」

 

「私はね「ねじれちゃんビーム」って考えたんだよ」

「へーそりゃどんなので?」

 

「んっとね! 私が最大威力の個性をね剣心くんにぶつけるの」

「俺専用かよ、やめてよねじれちゃんの攻撃切れないんだから」

 

「大丈夫だよ! 剣心くんなら切れるのって信じてるから! だから一緒にヒーローになろうね」

 

「はは、りょーかい」

 

 

 嫌そうな顔をしながら、でもどこか嬉しそうな顔をして剣心くんはアイスを食べる。

 うん、やっぱり私の幼馴染は変で謎で、とても不思議だ。




あかん
ふざけ過ぎたかも、でも二次創作なんだから自由にいこうぜ!(大爆笑



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転校生がサイコパスって…それマ?

 小学生になった事だししっかりフィジカル鍛えてくよ! 

 今のところ個性で色々するのに振ってきたから面倒臭いけどフィジカル鍛えます。

 心情は東京喰種reの赫子の使い方抜群のあの人ですね、やべ引きこもりてぇ。でも俺にはモテたいという欲求が有ります故止まってなどいられやせん。

 取り敢えずは走り込みですかね! 

 

 ………

 ……

 …

 …

 

 いや待って死ぬ。

 走るのってこんなにきついもんだっけ? 

 小一の体力ってゴミカス過ぎ? それとも俺がゴミカスなの? ねぇ違うよね? 

 何度か足を弾力性のある刃に変えてグニャングニャンにしならせて走ろうと思ったけど、趣旨が違うので泣く泣く断念。

 

 いや待って? ホントにキツイんだけど(滝の汗)

 武術で型の練習とか、1日1万回の感謝の正拳突きとかやってみたけどやっぱり走るのが一番しんどい。

 

 42.195キロはまだ無理そうだぜ! 

 

 ともあれ体力強化が1番大事だよな。それとシックスパックを作っておきたい(切実

 ほらアレだよ、合法的に女の子に触らせたい(欲望

 

 それじゃあ一回吐いたとこだし! 

 もういっちょ走りますか!! 

 

 

 ーーーーー

 

 いやー、第二次成長だっけ? 

 あれのおかげでかなり鍛えられたよ! 

 やっぱり泥沼さんの言ってることは大事だ! 子供の頃から個性とか使ってないと伸びないよ! (知らんけど)

 俺の『我身剣也』は体の一部を剣に変えることのできる個性であって、生やしたりすることは出来ない。

 例えば指を剣にすることは出来ても、指から剣を生やすことはできないけど。

 細くしたりして長く使って触手剣とかはできるけど、そこは体の体積に依存してます。

 だから俺は考えたわけですよ。

 これの最大限の活かし方ってやつを。

 鞭の先の最高速度はマッハを超えると言われてますし、それで最強じゃね? って思うよね? 

 でもね、鞭を振り回すだけじゃハンターハンターの天空競技場みたいに噛ませになっちゃうわけですよ。だから俺は考えました。どうすれば噛ませにならないかを。

 

 速度、威力、刀。

 もうここまで言えば分かるよね? 

 そう、居合だよ居合。

 

 天翔る龍のアレだよ。

 正直アレと瞬天殺の掛け合い好きすぎてセリフ覚えちゃったまであるからな。抜刀術に関しては知識だけは凄いぜ(ドヤ)

 でも抜刀術って鞘を滑らす事にロマンがあって、剥き出しの刃でそれをやっても凄い早い一閃なんだよ。

 だからね、俺は考えつきましたよ。

 

 体と体を結合させて鞘代わりにすればいいと……ね! 

 え? 意味わからない? なら教えてあげようじゃないか!! 

 

 まず手を合わせます左手はパー、右手はグーで親指の方をパーの手に合わせます。

 それで右手の親指ら辺と左手の平を剣に変えて結合させます。体の一部ですし、結合することはちょっと難しかったけど今ではおちゃのこさいさいです! 

 えー、これで擬似的とはいえ鞘に収まっている状態に出来ました。

 

 え? できてないって? 

 うるせー黙れ(唐突)

 

 筋力が上がれば本当に音速くらいいきそうなんですけど、やはりまだ子供ってことだね。肉体の最高潮の20代後半らへんで覚醒するって信じてるから! 

 

 それでもって感謝の正拳突きもちゃんやってるよ! 居合を初めてからは1万回から5000回に減らしたけど。

 え? ちゃんとやれって? 

 時間がたんねぇんだよ、仕方ねぇだろ! 

 中学生はなんか知らんけど死ぬほど眠いんだよ! 分かるだろ? 夜も寝てんのに授業中がやたらと眠いんだよ。分かるだろ? 

 

 ……あ、色々ありまして中学生1年生になりました。

 え? 端折りすぎだって? 誰が小学生の特訓なんて知りたいんだよ、普通に考えて要らねぇだろが。

 小学生なんでゴミだよゴミ、大事なのはカレカノの存在できるようになった中学からだ! 

 

 JSよりJCだ(真理)

 まぁ最高はJKだけど…。

 

 それでこの居合やってて思ったんだけどさ、これってデッドマン・ワンダーランドの罪の枝みたいに使えるんじゃね? 

 キヨマサのクロウクロウっていう技があるんだけど…まぁ、マイナー作品だから知らんよな(遠い目)

 あれができたら、鞭攻撃も血に変えると範囲広がりそうだし…! 

 

 よし! それじゃあ行くぜ! 

 

 クロウクロウ……………ぅぇ? 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 俺氏、貧血で救急車に運ばれるの巻。

 確かにデッドマン・ワンダーランドで血を使い過ぎたら貧血になる描写あったけど、1発でこれはキツくね? 

 まぁ、人間ってペットボトル1つくらい血を出したら危ないらしいし。

 まぁ、血剣は使わない方向にしよう。

 もう少し体が大きくなるのと、個性のコントロールが上手くなってからじゃないと、救急車で通院することになる。

 それは避けたい。

 

「ねぇねぇー剣心くん、なんで入院なんてしてるの?」

「なんでって貧血だからだけど」

 

 こいつ何言ってんの? 

 てか小学生…いや幼稚園から中身そのまんまで成長しやがって。

 体は大人、心は子供って逆のなんかよ。

 これで頭いいからタチが悪い。

 知ってるか? この人、雄英高校B判定貰ってるんだぜ。

 

 いやBかよってなるけど、あそこ人が山ほどいるから普通に難関校のAはあるぞ。さすが最高峰。

 

「あ、机借りるねー」

「いやいいけど、ここでするなら帰ってやれば?」

 

「ねぇねぇ知ってるー、剣心くんがベッドで個性使ってるのオバサン知ってるんだよー。だから監視なの」

「へ、へぇ…ま、まぁ知ってましたけど」

 

「そうなんだー」

 

 マジかよ母ちゃん! 息子のこと信頼し無さすぎはどうかと思うぞ。

 まぁ確かに指先を刃に変えて遊んでるけど、検査入院だから暇なんだよ…。

 

「波動パイセンは実技はいけるの?」

「ねじれちゃんだよ?」

「ははは、で波動パイセンは実技大丈夫なの?」

「ねじれちゃんだよ?」

「ははは、それで──」

「ねじれちゃんだよ?」

 

「バグったNPCかよ、それでどうなの?」

「んっとねー、多分大丈夫じゃないかな? だってほら私強いし!」

 

 なんじゃそら。

 とか言いつつも、この人の力なら余裕かもしれないな。

 この人実質空飛べるし、それで遠距離無双だし。未だにビーム切れないし。いや、この人ドチートじゃね? 主人公してね? 

 実はこの人が作品の主人公なの? でもジャンプ系って女の人が主人公なのはあんまり見ないな…。

 

 役者……うぅ……頭が…(激痛)

 

「それで勉強って、流石パイセンやりやすね」

「うん! だから剣心くんも落ちちゃダメだよ! 一緒の高校に通おうね!」

「いや、俺が入っても1年しか合わんよ」

 

「それでもだよ! 中学も私受験でいっぱいいっぱいだったし、ゆっくり出来なかったからさ」

「そうだねー、そんなことない気もするんだけど…そうだねー」

 

 それから少ししてパイセンは帰っていった。

 本当に勉強して帰っていった…。

 いや、幼馴染ならリンゴくらい剥いて食べさせろや! ヒロイン力足りませんか!! 

 

 

 ーーーーー

 

 

 退院して学校に帰ってきた時、少し変化があった。

 なんかすげぇ美人が転校してきたらしい。

 しかも隣の席。なんか常にうずうずしてるけど…発情期かな? 

 美少女転校生系JCが隣の席とか……それヤバたん。やばたにえんよそれ。

 

 彼女にするならこんな感じの子だよね! 

 人生初ジョカノをゲットするために! いざ参る!! 

 

「…え…っと…転校生だよ、ね?」

 

 やっべ緊張しすぎて声が上手く出なかった。

 しっかりしろよ、俺今年で13だゾ! ……いや周りも13じゃん! ダメだ!! 精神年齢とか正直意味ないって! だって体が正直なんだから。

 

「…え…っと……はい、そうです」

 

 なんかうんこでも踏ん張ってんじゃねぇか? ってくらい我慢した顔してる。何それ可愛い。つかエロい。やばいわこの子、どストライクなんだけど。

 目指せ初彼女!! 

 

「あ…あの…さ! …仲…よく、しよ…か」

「…は……はい」

 

 やばいわ、俺ってこんなにコミュ障だったっけ? 

 とんでもなくコミュニケーションに難ありなんだけど。でも仲良くしてくれるってお世辞でも言ってくれたんだし。これはアレだろ? 

 仲良くなる=お付き合い。的なあれだろ? 

 

 べぇわ、こんな清楚系なら同じ空間にいるだけで幸せ。

 

「…あ、あの。なんで、入院してたんですか?」

 意外とあっちから声かけてくれた! 

 やばいこれはフォーリンラブですわ。

 

「あ、ちょっと個性で実験しててさ。()が出過ぎちゃって貧血で倒れたんだよね」

 

 個性って素晴らしい。女子との会話の種になってくれた。

 一生大事にするわ! ありがとう個性! ありがとう個性社会!! 

 

「──!! 血…ですか。ちょっと見てみたいかもです」

 

 やっぱり個性の話になったら好印象だ! 

 心做しか笑ってる気もする!! 

 

 ははは! これはもう2人で個性の見せ合いよ! 

 とんでもないね! 彼女の個性がちょっとエロめだったらどうしよっかな!! そのまんま的な!! 

 中一で卒業させて頂きやす!! まだ入学したてなんだけどね!! 

 

「あ、そう言えば名前聞いてなかったな。俺は『鞘無 剣心』よろしく」

「私は────」

 

 

 

 

 

 

「──渡我被身子です」

 

 ーーーーー

 

 

 

 個性使ってるのは見られると困るから体育館裏に行くことになった。

 べぇーわ! 俺告られるかも知らん、ヤバみ。

 ありよりのありでしょったらもう! 

 

「俺の個性は体を刃物に変えることのできる個性なんだけど、血でもできるかなって思って…」

「そうなんですか! 早く見てみたいです」

 

 …あ、あれ? なんかすごくいい笑顔になってるんだけど、なんか怖いぞ。あれかな? 美しいものほど恐ろしく見える的な。

 ま…まあ、いいや、まずは見せてやろう。

 

「じゃ人差し指から」

 

 人差し指をぶっとい刃物から細長い刃物、はたまたしなる弾性の強いナイフから触手剣まで見せた。

 

 どうだ! トガちゃん!! 

 

「ケンくん凄いです!」

 

 …け、ケンくん。

 いい響きだ! こんな可愛い子に下の名前で呼んでもらえるなんて初めてだ!! 

 え? パイセン? あれは大人の皮を被った幼児だろ? 

 

「血を、血も見てみたいですッ!」

「血? あ、ああ。でもあれ失敗しちゃってて」

「見てみたいです! 血ー! 血!!」

 

「…よっしゃ任せなさいよ!」

 

 ナイフに変えた人差し指を逆の腕に当てて傷を作る。

 前回は引き抜く感じで引き抜きすぎたのがダメだったんだよ。だから俺がしないといけなかったのは浅めの傷を上手く扱うこと。

 

「よし『極薄血剣』できた!」

 どうだトガちゃん! 完璧だろ! 見てくれこれが俺のDNAだぞ! 

 

「はぁ…はぁ…カアィイ! 可愛いよケンくん?」

 

 ………………ぬ? 

 可愛い? 凄い独自な考え方だな? まぁでもペティナイフを可愛いとか言う人もいるし、そういうものかな? 

 

「ケンくん、触ってもいいよね、触るね、触るよ!」

「ちょっ! 危ないからゆっくり」

 

「血が! 硬い!! 楽しいなァ…嬉しいなァ!!」

「ちょ…トガちゃん?」

 

 するとトガちゃんは触るだけでなく歯で俺の極薄血剣を噛んできた。

 一応個性で剣にしてるから硬いけど、極薄だから横方向の衝撃には弱い。というか、今回は脆性だし仕方なくね? 

 

「カリカリ…美味しぃなァ、いいなァ。いいなァ」

「トガちゃん、危ないからそろそろ」

 

 何だか顔が怖いぞトガちゃん。

 これって凶悪犯罪者みたいな顔してね? 犯罪係数オーバーしてね? 

 大丈夫なの? 俺殺されない? 弥生時代の占い師みたいな名前して、とんだジャックザリッパーなんじゃないの? 

 

 切り裂きヒミコ。

 やばい、語呂は抜群だ。

 

 ──バキッ! 

 あ、トガちゃんが噛み砕いた…。

 口に入って切れちゃったらダメだから個性は解除しよ。

 

「…血だ…。甘いなァ、美味しいなァ」

「あ、あのトガちゃん…さん?」

 

「………? …あ、ごめんなさい、ケンくん。私の個性も見せようと思って」

「…あ、そうだよね…はは! 俺もしかして! って俺!?」

 

 目の前にいたのは女子用の制服を着た俺だった。

 え? 俺? 

 マジで? 

 

「私は人の血を摂取することで、その人に少しの間だけなれるんです!」

 

 そういうとトガちゃんは俺の腕の傷を愛おしそうに眺めてから、飛びついた。

 いやなんで!? 

 

「ちゅーちゅー。あぁ、いいなァ。美味しいなァ」

 トガちゃんは俺の腕に唇を当ててる。

 

 消毒でもしてくれてるのかな? 

 それとも個性上、血への抵抗が少ないのかな? 

 

 何はともあれ。

 

「トガちゃん」

「…なんですか?」

「せめて変身といて、絵面がやばい」

「はい! …ちゅーちゅー」

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 ありのまま、今起こってることを言うぜ。

 隣の席のトガちゃんがサイコパスだった。

 

 あの時の消毒はラノベとかでよくあるアレじゃなくて、グロ漫画とかでよく見るあれだった。

 ラノベの切り口を口に入れて消毒、みたいなラブコメじゃなくて。次の日からトガちゃんは吸血鬼になった。

 手とか首とか足とかも噛まれたあとがやばい。

 

 リトル剣心でも出してやろうか! と思ったけど、噛み砕かれそうでやめた。つかなんか怖いぞトガちゃん。

 親の転勤とかありきたりな理由かと思ったら、前の学校で俺と同じようなことして転校してきただけらしい。

 前の学校の噛みつかれて血を吸われた子……ドンマイ。

 

 でも女子と接触のなかった俺からすればご褒美みたいなものだ。

 唇は柔らかいし、血を吸ってる時は頭とか撫でても全然反応しないし、なんなら密着されてるから体とか当たってきてやばいし。

 なんならリトル剣心が反応してるし。

 

 いいことずくめじゃねぇか! 

 

 

 

 

 

 

 

 っと思ってた数日前の俺。

 今すぐトガちゃんから逃げなさい! 

 

「ぁあ! ケンくん、今日もちゅーちゅーしたいんですけど……今日はいっぱいしたくて……だから……もっと傷ついて…ケンくん!!!」

 

 トガちゃんがナイフを持ってきた。

 ナイフと言っても果物ナイフだけど…。

 

 流石にこれはやばい! 

 PTAに報告しなきゃダメなレベルでやばい。

 なんで? 噛み付くだけじゃダメなの? あれも結構痛いのよ! 

 それなのにナイフで突き刺されるとか……。

 この子絶対俺の事殺そうとしてるじゃん。

 

「無理無理無理無理!! 死ぬ死ぬ死ぬからやめてトガちゃん!」

「大丈夫なのです、今日は一刺しで満足できると思うので」

 

「待ってトガちゃん、常人に一刺しは致命傷だよ! ほんとに待ってトガちゃん!! トガさん!! ヒミコ様ァァァァァァァ!!!」

「それ可愛くないからヤです」

 

「俺も痛いのヤだからァァァ」

 

 その日から俺の生存競争は始まった。

 攻撃NG、防御アリ、回避アリ、転校NG。

 

 これなんてクソゲ? 

 最終的にはナイフを個性で折ったんだけど、なんでヒーローじゃないのにサイコパスの無力化してんの? 

 俺はヴィジランテにでもなっちゃってたの? いつの間にか? 

 え、ほんとに怖いんだけど。

 

 最終的に血剣をトガちゃんにカジカジさせるので妥協した。

 もう首とか指とか歯型がありすぎて、クラスメイトから「薬やってんじゃね?」って思われてそうで怖いんだけど。

 薬必要なのはトガちゃんなんだけどなぁ。鎮静剤的な…。

 

 

 

 

 家に帰宅すると何故か波動家と合同でパイセンの雄英合格パーティが始まってた。こっちの気も知らんでからに、お前サイコパスに一日中追いかけ回されてパーティやれって、どんなスイッチの切り替えしないといけないんだよ。

 

 自分ちでやれ!! 

 

 

 

 

 

 




評価黄色って(笑
このペースだと緑待ったなしかよ!

赤になろうぜ!頑張れよ!

まぁ感想の方が欲しいんだけどさ(強がり)


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置き去りって……それマ?

トガちゃんの年齢が変わってますが仕様です。


 鞘無 剣心。

 齢14歳。

 

 己の個性に限界を感じ、悩みに悩み抜いた時彼が辿り着いたのは…。

 感謝であった。

 

 自分を強くしてくれた武術と個性への限りない感謝。

 その恩を返すために祈りを捧げた…。

 祈り…構えて…居合。

 

 始めた当初、齢5歳の時は10回したら飽きていたが今となっては身体に覚え込まされており無意識下でも行える。

 淀みなく洗礼された動きは流麗の如く。

 修める武である流水岩砕拳を己が個性と昇華し流水岩砕剣とし、一見我流とも思われるそれは限りなく獣に近い武術であるともいえる。

 

 そんな修行を始め、早速大きな壁へとぶつかった。

 それは個性である。

 

 ビームとは? 

 そもそも切れるのか? 

 

 そんな不可能とも言える挑戦に剣心は挑み続け。

 

 

 2年が過ぎた頃、異変に気付く。

 

 ………ビーム=光。

 ビームって実体なくね? 

 

 圧倒的な熱量を持っていたとしても、本質は光と同質。

 刃物で光を反射することはできたとしても、斬ることは不可能である…。

 

 翌日、幼馴染のビームの威力が唐突に上がり始めて、そろそろ何とかしないと死ぬレベルまで到達してきた。

 

 

 

 ……更に2年が過ぎた頃、異変に気付く。

 体で剣を振るよりも、形成による伸縮スピードを乗せる方が速いことに気付き、その居合は空間を歪めた。

 

 

 …2年が過ぎた。

 未だにビームは切れない。

 幼馴染も成長期に入り、個性が大幅に強化されていた。全身を強く打ち付けられて半殺しにされる。急いで斬らねば殺される…。

 前回も言ったが、今回はガチよりのガチである。

 

 ……2年が過ぎた。

 この時剣心は幼馴染ではなく、サイコパスに殺されかけ日常的に死を体感する恐怖と、幼馴染による死の淵に蹴り落とされる瞬間の恐怖の板挟みにされ日常が本当の意味で非日常と化し、体感速度が何度も訪れた走馬灯を想起させられる様になる。

 

 

 ………1年が過ぎた時。

 祈る時間を増やした…。神への祈り、それは正しく救済を求める信者だった。嗚呼、神よこの地獄から蜘蛛の糸を…。

 日々ぶつけられるビームと刃物。

 片方は斬ること出来ずに吹き飛ばされ、片方は最終的には噛みつかれる。

 

 当初の感謝など欠片程も残ってはいなかった。

 

 幼馴染は「ねぇねぇ知ってる? 発動系って放出し続ければ許容範囲と威力が格段に強くなるんだよぉ? ねぇ! だから私の成果見せてあげる。だって剣心くん私が大変な時に同級生の女の子と追いかけっこしてたんでしょ? ねぇ剣心くん、ねぇねぇ! 私がいない間に変な匂いが着いちゃったんだね、でも大丈夫だよ剣心くんの匂いは全部覚えてるから。だからね、他の人の匂いはいらないんだぁ〜。ねぇねぇ分かるよね? ねぇねぇ!! 剣心くん!! だからね、これからするのは消毒だよ、大丈夫。

 大怪我しても私が休学して面倒見るから、だから剣心くん…壊れて

 

 幼馴染は壊れた。

 元々変な奴だったが、ネジが外れて壊れてしまった。

 思わず逃げだしたが、幼馴染はいつもの2倍近くの威力で攻撃してきた。

 

 そしてサイコパスは「アアぁ! ケンくん!! かぁいいなぁ! 血もドロドロでかっこいいなぁッ! だからねケンくん。私はケンくんになりたい! ナイフでズブズブさして血をダラダラ流してるケンくんを食べて、私がケンくんになる……だからねケンくん! ……死んでッ! 

 

 サイコパスはサイコパスだった。

 …あ、当然だったわ。

 

 

 ………そして私の至った極地は。

 悟りである。

 

 何事にも動揺しない心と体。

 鍛え抜かれた鋼とそれを扱う精神力。

 ヤンデレとメンヘラを同時に相手しても動じないその立ち振る舞い…。

 

 会話する一言一言に走馬灯を感じ、彼女らとの接触が凝縮された刹那的瞬間を迎えた時、

 

 

 

 

音を置き去りにした(逃亡)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 腹が減ったので家出は辞めました。

 パイセンも合宿の疲れでどうにかしてたと謝ってくれたので両家の関係は何とか良好です。

 え? サイコパス? 転校していきました(歓喜(フロイデ)

 失礼、脳内に第九が流れてしまいました。

 メンヘラサイコパスが夜の街でおじさん達を串刺しにしてた(加害者)時に警察がどうたらかんたらでメンヘラサイコパスはお縄についたとか何とか。真偽は定かではないが学校からは籍を抜いたため、もう怖がることなど何も無い。

 

 しかし未成年犯罪故にすぐに出てきそうだ。

 それまでにヒーロー免許を取らねば殺される…。

 ヒーローにならなければいけない理由が更にできた。

 

 部屋に入って寝巻きに着替えているとパイセンが入ってきた。

 

「剣心くん…私ヒーローネーム考えたんだ」

「…そっすか」

 

「剣心くん昔みたいにねじれちゃんって呼んでくれなくなったでしょ。だからね、私のヒーローネームは『ねじれちゃん』なの」

「……………………………………………………そっすか」

 

「ねぇねぇ呼んでみてよ、剣心くん躊躇っちゃうならヒーロースーツも借りてきたから着てあげるよ? そしたら呼んでくれる? ねぇねぇ剣心くん、早くしてくれない?」

「……っす」

 

「大丈夫だよ剣心くん、お母さんもオバサンも今日は飲み会に行ってるから帰ってくるのは遅いよ。思春期でも異性の事をチャン付けするのは恥ずかしいよね、知ってるよ。でもね剣心くんはヒーローになりたいんでしょ? だったら先輩ヒーローの私のことをヒーロー名で言うのは普通のことなんだよ、恥ずかしいことじゃないんだよ、だから剣心くん! 早く呼んで」

「……」

 

「あ、やっぱりスーツ着ないと雰囲気でないよね。私それ知ってる現場の空気感ってやつでしょ! 私も職場体験で学んだんだァ、来年には仮免も取れるからインターンにも行って現場の空気を馴染ませるの! だから分かるよ! 剣心くんも現場に慣れたいんだよね。仕方ないよね、持ち出しは本来ダメなんだからね、今回だけだよ」

 

「……」

 

「見て見て剣心くん! このスーツも剣心くんがベットの下に隠してたエッチな本から連想して作ってもらったんだよ、みてよこのパツパツスーツ、これ着てると凄く変な目で見られるんだよ! でもね剣心くんが好きだからこれにしたんだ。ねぇねぇどう? 似合ってるでしょ! それとこれ中にお守り入れるところあるんだ、ここにね剣心くんの写真入れてるんだよ! ほらこうすれば密着できるでしょ? 凄い? ねぇねぇ私凄い!?」

 

 ………………エグい。

 エグいエグいエグいエグいエグいって! まじでなんでなん!? (唐突な関西)エグすぎやろこれ。

 ただひたすらに怖いんだけど、え? なに幼児だったやつがガチのヤンデレみたいになってんだけど。狂気とか半端なくて怖い。

 

 しかもアレから変わってコレだぞ? 

 こいつ成り代わりでもされてんの? 

 怖すぎるんだけど、幽波紋使いで引かれあっちゃったの? 

 

 雄英はいってからか? 

 メンヘラサイコパスと絡み始めてからか? 

 それとも遺伝? 

 

 え、ちょっと待って怖すぎて笑えない。

 草生えない。

 

 いつからヒステリックラブコメディーホラーになっちゃってたの? 

 シンプルなバトルじゃなかったの? 

 こんなバトル環境整えられて恋愛系ってどこの異世界恋愛漫画だよ。

 

「あ、逃げないでよ剣心くん!!!」

 

 隙を見て逃げようと思ってけど、無理だったので正面突破したらパイセンが最大速度のビームを放ってきた。

 独特な軌道に防御不可のビーム。

 

 目前に迫る死を前に覚醒シーンがあると思ってけど、走馬灯の覚醒はもうしてたわ。

 本当なら相当な速さで迫っているはずのビームだが、何度も死ぬ思いをして一秒の重さを理解した俺は走馬灯の様に体感時間を遅らせる術を手に入れた…。

 手に入れた経緯を考えると全然欲しくなかった。

 平穏の方が欲しかった。

 

 その血のにじむような弛まぬ鍛錬のおかげでビームを目視できる。

 いつもの反復動作で祈り……は邪魔なのでカット。普通に考えて拝む時間は勿体ない。

 右手で刀を持つように左腰の近くに手を持っていき、左手も刀があると思わせるように左の腰の近くで右手を受け止める。

 

 5歳の頃より開始された感謝の拳兼居合。

 物理エンジンによれば音を置き去りにするパンチは推定360tあるといわれており、拳ではその領域に達していないが居合に限ればギリギリ超えてると思う。集中してて音が聞こえないから定かではないが、普通の拳よりは居合の方が早い。

 

 筋肉を使って結合を解除するように刃に働きかけ、ストッパーを最大限まで消耗させて解除。

 それと同時に身体の筋肉を刃に変えて変換されたエネルギーを全て速さに特化。

 腕を振るよりも早く解除と変換をほぼ同時に行い居合を行う。

 

 いつもはビームを切れなかったが、今回は切らないと殺される。

 パイセンのヤンデレ化、ビームのいつも以上の殺気。

 

 俺の頭は普通に許容範囲を超えて、一瞬真っ白になり。

 目の前の個性による攻撃にだけ、全神経を費やして対処すると脳が身体に司令を出す。

 

 全細胞をもってビームを切り裂く。

 ただその事にだけ着目し、それだけのために体を使う。

 

 

「──ッ!」

 

 集中状態の最高位に位置するゾーンへと入り込み、考えていた技名すら叫ぶ余裕もなくビームを切り捨てる。

 

 そして数秒たってから自分が念願のビームを切ったことに気付き「はっ!」とする。

 

「や…やったよ剣心くん!!!」

 

 ヤンデレと化していた筈のパイセンが抱きついてきた。

 狂気と言うよりは、達成という気持ちが1番強く、その些事に一切の悪意は感じられなかった。

 

 あれ? ビーム切れた次いでにぶっ壊れパイセンも切れちゃったの? 

 邪念消えた? 何が起きたの? 

 

「先生がね! 追い込めば追い込むほど若い子は成長するって言ってたからやってみたんだ! それにしても凄いね剣心くん! 一日追い込んだだけでもうビーム切っちゃうなんて…………ほんとガッカリだよ」

 

 なんか最後の方やばいの聞こえたけど気にしない。

「えっなんだって?」って常備する俺は難聴系主人公なんだよ! 全部演技だよね! そうだよね!! そうに決まってる! つまりパイセンは天使、それとも羅刹女? ま、どっちでもいいわ。

 演技でよかった! これで俺の平穏な暮らしが……。

 

「ねぇ凄いねぇ〜、教える側に回ることで分かることもあるんだね〜。そら、新しいビームだよ!」

 

 そんなアンパンマンの新しい顔みたいにされても……。

 よし! でも俺には関係ない! 

 

 

 悪! 即! 斬! 

 つまりは目の前のやべぇのを切れってことだろ? 

 やってやらァ! 俺は刹那的時間の体現者じゃけぇのぉ! 

 

 行くぜ! 

 天翔る龍の───ヘブシッ!!!! 

 

 ーーーーー

 

 

 

 俺氏、再び入院する。

 刹那的時間の中でビームを切れたかと思ったら、2度目はダメでした。

 集中力が究極にまで迫ってたからできたのか? 

 それとも一日一発の奥の手とかだったりとか? 

 いや、自分でも知らない奥の手ってなんだよ。音を置き去りにした居合(多分)ができるようになってから何か体が変なんだよな。

 

 これは羽化しちゃったかな? 

 覚醒的な羽化的な。

 背後に千手観音が現れて剣持ってるみたいな……。

 GANTZかよ、ただただトラウマだぜ。

 

 結構真面目に考察するとアレって限界突破的な感じじゃないかな? 

 いやほんと違くて。それか新しい特性とか。

 正直体を剣に変えるだけって…いや、まぁ凄いことなんだけどさ。それだけ? ってならなかった? 

 俺は思ったよ、悪魔の力とか体に汚染しないかな〜とか、アンチ個性とか。

 

 物は余裕で切れるんだよ。

 そりゃ刃物なんだからそうでしょって? 

 いや、分かるよでも考えてくれよ。それにしても切れ味良すぎないか? 

 

 切りにくいトマトとか綺麗に切れるんだったら「すごい切れ味だ! 業物だね!」ってなるよな? ……なるよな? (脅迫)

 でも試しに壺とか切ったとするだろ? そしたらさすごい綺麗な断面で切れてるんだよ……。

 

 分かった? 

 おーけー説明しよう。

 壺ってのは基本的に脆性材料でできてる。固くて丈夫だが、衝撃に対してめっぽう弱い。つまり刀なんかで壺を斬れば切れるよりも前に潰れるんだ。ハンマーで砕いたみたいに。

 そりゃ世界を探せばできる人もいるかもしれないよ? 俺だって感謝の居合……じゃなかった悟りの居合で刀という特殊な武器のそれまた抜刀術というマイナーな武術。

 もしかすれば今日本でやってるのは俺くらいかもしれないから実質世界一かもしれない。

 

 その世界一が言ってやる。

 

 ──無理です。

 覇気とかチャクラとか念とか纏わない限り絶対に無理です。

 他にも鉄を切ったりとか普通に考えてコミックみたいなこと出来ないから。

 

 でもできた。

 これは絶対に技ではなく、個性によるもの。

 

 ならば俺の個性とは『何でも斬れる剣を体から出すことが出来る』か『指定したものを斬ることのできる剣を出すことが出来る』の2択に迫られるということ。

 え、俺の個性って最強の矛なの? 

 

 と思ったがビーム切れない時点で最強ではない。

 なら指定したものを? と思うも2回目のビームを切れなかったし、実質切れたのは1度だけ。

 

 

 …………謎深まってね? 

 

 俺は考えることを辞め……たらダメだよね。

 ここはしっかりしておかないと。

 極度の集中状態と悟りの居合でのみ個性を切れる? 

 恐らくだがこれは違う、仮説を証明するために俺は家にある物を色々と持ってくることにした。

 

 1つはステーキ

 1つは魚。

 1つは砥石。

 1つは包丁。

 

 簡単に前2つは切れるもの。

 後ろ2つが切れないもの。

 

 まず最初に何も考えずに包丁を指先の極小ナイフで切ってみる。

 切れたと言うよりも割れたに近い形となった、断面もどちらかと言えば破折を思わせる。

 次にステーキ、こちらも極小ナイフで切ってみる。

 ふむ、焼き加減はレアだった模様。普通に切れて食べた……美味い。

 

 このことから凄く切れ味のいい刃という以外に感想は出てこないだろう。

 

 それでは行きます! 

 悟り(白い目)

 

 ………はい、石が切れました。

 それはもうざっくりと切れました。鋼鉄の呼吸を知った時くらい切れましたね。つまり俺は三刀流だった(名推理)

 

 それではそのまま魚ですね、これは言うまでもなく綺麗に切れました。

 このままでは集中することによって、切れ味がメルク包丁並になるということになります。

 ですがあの時、ビームを切った時に無意識下で俺はパイセンも切った気がするのです。いや、パイセンは生きてるよ。

 でもあの時勢い余って斬った感覚があったんだけど、パイセンは切れてなかった…。

 つまり………………どういうことだってばよ。

 

 

 次に石の上に魚を置いた。

 悟り(白い目)

 

 

 

 ……………はい! 予想してた通りです。

 石を斬ることだけに集中してて魚と石を切ろうとした時、俺の剣は魚をすり抜けて切れることなく石を切りました。

 

 …………マジかよ。

 つまりこの剣は指定したものを切れるということになります。

 自分は剣で戦っている。という感覚がこの個性の真の特性を気付かさせなかったということか……おのれディオ! 

 新手の印象操作だなッ!! 

 

 悟りモードの時は基本斬ることに集中してて何も考えられないのが難点である。というか実戦では無理じゃね? 

 100%斬る対象の事しか考えないといけないんだろ?? 

 

 

 無理じゃん。

 余程の隙がないと成功しないし…。

 

 ……うぇーこれが奥の手? 

 これなら一撃必殺の毒とか、自分で殺した相手をゾンビ兵にできたりとかの方が何倍も良かったぞ。

 これ基本的に使えないじゃん! 

 悟りモードって習得してまもないから難しいんだぞ! ルーティンでも無いと難しいぞ! 

 

 

 ………よし、作るか。(唐突な真顔)

 どう考えてもこの個性ってヴィラン向きじゃない? 

 はっきり言って殺傷能力高杉くんだし、ヒーローになるなら逆刃刀は必須でしょ? 

 その時点で悟りのモードの斬るもの指定居合って、逆刃刀辞めないと行けないし……。

 

 ま、まぁ! いつか使う日が来ると思うし(来ません)

 てかルーティンあった方がカッコイイ! 

 悟りのモードは逆刃刀の時でも使えると思うし!! 

 

 何よりルーティンがあった方がオサレだ! 

 

 祈る動作って、強キャラになるんだけど最終的には負けるキャラってイメージ強いんだよね。

 ネテロしかり岩柱しかり。

 

 ハガレンも最後の方は弱かったし。

 まぁあれは賢者の石が強すぎるってものあるんだと思うんだけどさ。

 

 やっぱり斬るってなると日本だと剣豪とかになるよな。

 でもルーティンって外国語だし、外国のオサレなの身につけたい(切実)

 敵前に英語喋り出すとか最高にかっこよくない? 

 ブラック・ラグーンとか今でも俺の中にときめいてるよ! 

 

 サンタマリアの名に誓い! とかオサレ値高過ぎる。

 でもパクリはダメだよね! 

 もし俺みたいな転生擬きしてる人に見つかれば、指さされて笑われそう。

 

 ………難いな。

 やっぱり外国系で刃物のイメージが強いのって、ジャックザリッパーとかだよね。いや、今風に言うとヴィランだけどさ。

 そういえばホワイトチャペルは知ってるけど、どこの国なの? 

 イタリア? イギリス? 

 まぁ多分イギリスだよね! ロンドン橋って言ってたし…。

 

 これからは悟りモードの時は笑いながら『ロンドン橋』を歌おうかな。

 そしたらシリアルキラー感も増して、かっこよくなれる。

 

 え? それもパクリじゃないかって? 

 うるせぇよカス(真顔)

 

 ……ってヒーローじゃないから無理じゃん。

 まぁ自分でも真っ当なヒーローになれるとは微塵も思ってないんだけどさ、ダークヒーローで押していこかな。

 オールマイトみたいに笑うこと出来ないしさ! 

 

 あの人なんでいっつも笑ってんだろ? 

 川で水をお酢に変える個性の人の救助の時、助けるより前に笑ってポージング取ってたの知ってるからな。

 あいつもあいつでサイコパスだろ。

 

 

 こんな感じで俺の厨二……じゃなかった。中2生活は終わり、雄英受験を控える3年生。

 つまり受験生となるわけだ。

 

 非常に厨二は……中2は濃い1年だった。

 メンヘラサイコパスが転校してきたり、転校していったり。

 パイセンがヤンデレの演技してたり……演技だよね、そうだよね!! 合宿から帰ってきた時「はは、個性って無理したら伸びるんだねー、不思議ー」と死んだ魚の目で言ったりしたり。

 

 正直気が気じゃなかったです。

 俺もなんか変になったりしてないよね? 

 

 

 

 

 …………よし、それじゃあ!! 

 

 

 

 

 

受験勉強すっか(クソデカ溜息)




やったとは自覚してる!
でも面白そうだからやった!(ワイ愉悦


真面目な話、ねじれちゃんってヤンデレの素質あると思うんだよね。
興味津々だけど、こう知りたい欲が爆発とかしたらもう……(震え声


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ナンパって……それマ?

やめてくれ。
ランキングで黄色バーは目立つんだ。
やるならせめてオレンジとか赤にしてから持ち上げてくれ……。
新手の苛めかな?羞恥で悶え苦しんだわ!


 強くてニューゲーム。

 そんな言葉が普及されてから数年、ウェブ小説ではそういったものが流行るようになった。

 

 だが考えて欲しい、だいたい高校生か大学生が神の手違いで死ぬ。知識チートで優等生(まだ分かる)、神様チートで魔法使える(神様だしね…まぁ何とかわかる)、それで喧嘩最強で武術とか使えるようになってる。

 

 

 

 おいちょっと待てよ! (ブーメラン)

 

 確かに知識はまだ分かる、小学生の問題なら余裕でわかる自信もあり今から「うんこどりる」をやってもできる気はする。

 魔法とかスキルとか使えるのも……まぁ神様だしってことで分かる。

 でも喧嘩が強くなるのは意味わからん! (ブーメラン)確かに家が武術家系とかなら分かるよ! でもそれって武術を修めてるだけで強いってわけじゃないでしょ! そもそも武術家系なら喧嘩とか絶対止められるし。

 それで1番納得いかないのが武術家系でもないのに喧嘩チートする奴だ(ブーメラン)巫山戯るのも大概にしろよ。現実そんなに甘くねぇんだよ! 日常的に殺されかけても覚醒するまで何年もかかるんだよ。それを鍛えたこともなさそうな奴らが不良とかヤーさんに勝てるってマジで思ってんの? 

 

 舐めてんの? (ブーメラン)

 

 ……はぁ、まぁいいや。

 そういう才能も神様から貰ったんでしょ! はいはいアーメンアーメン。神頼みってマジで卑怯すぎるわ、主人公補正でもそこまで卑怯なことしないぞ。

 いや、実質神様補正と主人公補正があるのか……。

 なにそれどうやって勝つの? 

 

 

 まぁそれもいいや、つまり俺が言いたいことはただ一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 神様! わたくしめに知識チートを下さい(手のひら返し)

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 小学生、それは足し算に引き算に掛け算に割り算。

 そこら辺の式を当てはめて「ヤッター100点だ〜」と笑っている平和な世界。知識が高校まで入ってた俺からすればイージーモードだったね。それは間違いない。

 普通に生きてく上で漢字とか読んでたから覚える以前に使えたし、国語力も文章から分かりやすく出されてて答えやすい。算数も生活する上では普通に使うし、暗算も人並みにはできる。

 社会や理科もろもろ小学生の知識くらいなら凌駕できる。

 

 周りには「天才じゃん!」とか「神童」とか「剣心くん勉強教えてー」と年上に教える側に回っていた。

 

 

 

 …………しかし、俺は中学で現実を思い知らされる。

 

 連立方程式………あー、あったなそんな名前…で? なんだっけそれ? 

 小学生から中学生の勉強はいきなりハードルが上がる。

「次のテストは100点とる!」と意気込んでいた小学生も中学生になれば「まぁ平均点取れたらいいじゃん」とか「やべ! テスト1桁だったわ!」とかチラホラ聞こえ出す。

 

 そう、とてつもない現実を叩きのめされるのだ。

 難易度でいえばFGOのキャメロットくらい難易度が上がる。

 

 しっかりと勉強していた組はその壁を危なげなく乗り越えるだろう。

 だがしなかったものはどうだ? 普通に考えて落ちていく。

 何せ積み上げてきたものが少ない人だ、奈落に落ちるのは猛スピードであることは違いない。

 

 そしてどうだろう? 

 勉強をしなくても小学生時代は100点を当たり前のように取り、大してテスト勉強もテスト対策もしてこなかった人生2周目のイージーモードに浸っていたナマケモノが今更スイッチが入れられるか? 

 

 

 

 ──答えは否である。

 

 

「………あ、俺無理かも」

 

 2年終了時の成績表を見て俺は泡を吹きそうになる。

 体育と技術と保健と音楽。見事に基本五教科から外れる科目は5か4という成績を残しているが、受験に1番大事と言われる基本五教科が1しか表示されていない。

 

 雄英高校はバカは入れない。

 いかに実技も実施されているとはいえ、学生である以上は座学をみられる。更にヒーロー免許は国家資格であり、それは国家試験をクリアしなければならない。

 

 つまりは座学も必要である。

 

 

 ……目の前に置かれるテストの答案。

 総じて20点より下。小学生の時天才やら神童と崇めたてられた原型は既に留めていない。

 

 両親からも最初は「なんで成績おとしたの!」とヒステリック気味に怒られたが、今では「へぇー18点! あ、今日パスタだけど明太子かケチャップどっちがいい?」ともう聞いてすらいない。優先度で言うと俺の成績は夕食に負ける。

 今までの生活を考えて欲しい、起きてる時間は武術おじさんの動画を見て技を盗み、自作の流水岩砕剣の練度を高めて、感謝の居合に正拳突き。普通に過労死である。これが学生生活を送りながらなのだが、まだこれで終わりではない。

 パイセンにビームを放たれて、つい最近までクラスメイトから殺人未遂を毎日受けていた。

 

 そんなブラック社畜も顔面蒼白なスケジュールをこなしているのが俺である。逆に聞きたい、これでどうやって成績を上げろと? 

 テスト勉強? 無理だ時間が無いし、なによりやり方がわからん。

 

 これはもう最終手段を頼るしかない。

 パイセンに頼る……は、手段ではなく自殺だ絶対に取れない。なんか最近あの人狂気が半端ないんだよ。死ぬほど怖いし、なんか目が……もう(震え声)

 おかしいな、ヒーロー候補生からなんで俺あんな目で見られてんだろ。

 

 というわけで俺は最終手段を最初から切らせてもらう。

 秘技他人頼り。

 

 

 

「頼む! 勉強を教えてくれ玉田くん!」

「オイラは峰田だぁ!!」

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 それでは紹介しよう! マイベストフレンド峰田くんだ。

 声をかければ峰田はすぐに返事をしてくれる。

「オイラに話しかけてくるんじゃねぇ!」

 

 ほーら峰田は俺に普通の対応をしてくれる。

 最近はヤンデレとメンヘラしか周りにいなかったから新鮮だよ! これが普通のコミュニケーションと言うやつだね! つまり峰田は良い奴ってことか! (錯乱)まぁサイコパスよりは断然ありだよね! 

 

「悪かったよ種田くん。あ、昨日借りてたエロ本は返すよ」

「み! ね! た! お前わざとやってんだろ! あとオイラはオープンエロだが教室のど真ん中でそれを渡すお前の度胸はヤベぇ」

 

「でもこの本のせいで知り合いの子に悪影響与えちゃったんだよね! ねぇ峰田くん、これは借りだよね? 借りだよね? ……返せよオイ」

「お前情緒不安定過ぎんだろうがよぉぉ! 怖ぇよ! それと名前間違えろよ、こういう時だけ卑怯だぞ」

 

「はは! 何を言うんだい峰田くん、僕と君の仲じゃないか」

「まだ会ってから一日しか経ってねぇだろ! まだ2日目だぞ3年になって」

 

「そんなの関係ないって! ほら時間よりも大事なものあるだろ! それに俺が貸したエロ本も中々だろ?」

「いや、お前のエロ本ってなんで幼馴染お姉さん系しかないんだよ、それはそれでは満足したが、同じジャンルは飽きるだろ?」

 

「はっはー峰田くんは面白いなー、気がつくと枕元にそれが置かれてるんだよ! クリスマスでもないのにねー不思議ーー」

「なんでそんな遠い目してんだよ! おい! 帰ってこい鞘無!」

 

 クラス替えの翌日からここまで仲良くなる理由なんて1つしかない。

 そう! エロである。

 ヒーローが英語表記でHEROつまりHとEROを糧にしている。つまりエロは世界を救う(第3部[完])

 

 そんな訳で何故かカバンの中に入っていたエロ本と隣の席に座っていた峰田のエロ本と交換して仲良くなった。

 恐らく俺のは入れられていた線が濃厚だが、峰田くんは本当になんで持ち歩いてたんだろ? 

 まぁええわ(投げやり)

 

 それをパイセンに見られて一悶着あったが、俺は関係ない。峰田が悪い。

 それで賢者モード中に進路とか色々考えた時に「勉強ヤベェな」となり峰田君に成績を聞いてみた所、まさかの成績上位者。

 これはもう教わるしかない。

 

「という訳で教えてクレメンソ」

「なんだよクレメンソって、オイラに勉強教わりたきゃ可愛い女の子の連絡先でも教えやがれ」

 

「そんなの俺が持ってたら、お前に聞く前にそっちいってるだろ普通。考えれば分かるだろ頭大仏野郎」

「ねぇー! オイラそんなに悪いことしたかぁ!」

 

「あぁ、ごめん。連絡先だっけ…一日中ビーム撃ってきて俺をボロ雑巾みたいにする奴か、一日中刃物持って襲いかかってくる頭のネジがぶっ飛んじまった人物を2人ほど知ってるが……いるか!」

「要らんわッ! オイラは普通に可愛い女の子とお近付きになりたいんだよォ!! しかも、刃物ってアイツだろ? 去年ケーサツの厄介になって転校した…あれウチの学年ではタブーだぜ、なんかそいつと仲良くしてたやつがヤク中みたいな噂があってだな、鞘無も気を付けろよ」

 

「ごめんそれ俺だわ、ヤク中じゃないけどね」

「ってお前かよ!! なんか身体中に注射の跡と包帯があるって」

 

「ああ、注射とか切り傷はサイコパスに傷つけられた、包帯は……まぁあれだ若気の至りでは無いとだけ言っとく」

「お前闇深過ぎだろ……まぁいい、顔はパッとしねぇが体鍛えてそうだしな、次の休日にナンパ手伝ってくれるってんなら勉強見てやるぜ」

 

「峰田くん、意外に冷たいなぁ。面と向かって顔にダメ出しされたの初めてかも」

 

 心は硝子だぞ。

 まぁこの程度で壊れるメンタルなら生きていけないけど……。どうしてだろ、俺の威張れるポイントが頭のネジぶっ飛んだヤツらに鍛えられてるのが本当に釈然としない。でも、可愛い女の子を引っ掛けられる…。

 素晴らしい提案じゃないか。

 

「君は神か! 峰タマタマ!」

「やめろぉぉ!!」

 

 

 ーーーーー

 

 休み時間や放課後にマックを奢るのとナンパを契約に峰田くんをおとした。かなりの痛手であるが、もし雄英に入学できなかった時のことを考えるとコレは必要経費である。

 考えてみろ、パイセンは半狂乱になってビームを撃ってくるし。お勤めを果たしたサイコパスは何時襲ってくるか分からない。

 

 控えめに言って地獄である。

 あの日常が戻ってくるなど、死ねと言われているのと同義である。

 ならばこの投資はこれから大事なもの。

 欲を言えば雄英でなく1年から仮免の取れる士傑高校もありだと思ったが……パイセンのことを考えるとそんなことをすると俺に明日が来なさそう。

 

「それじゃあタマタマくん、よろしく!」

「峰田だよ! …まぁいい、シェイク奢ってもらったし。…で? 何処がわかんないの?」

 

「逆に何が出来ないか分からないであります!」

「………じゃ教科書出せよ、基礎からやってこうぜ」

 

 なんて良い奴なんだ。

 この睾丸を頭に張りつけたようなやつだと思ってたら、その頭のやつはモヤッとボールだったのか……いや、それだとダメじゃん。

 ともあれ放課後かなりの時間峰田くんに教えてもらったのだが……。

 

「……嘘だろ鞘無、お前……」

「やめてくれ、心は硝子だ」

 

 見れば見るほど分かる馬鹿さ加減に峰田は頭を抱えた。

 いや、分かるよ。テストの答案が選択問題以外全部外れてるやつのテストなんて成績上位者からすれば物珍しいものだろ。

 

 分かるとも。

 だからそんな目で見ないでくれ。

 

「…お前働くのか?」

「いや進学……です」

 

「へぇーどこの狙ってんの?」

「……雄英で……あります」

 

 すると峰田くんは俺の肩をそっと掴んで菩薩の如き笑顔で俺に言い放った。

 

 

「受験料の無駄だ、辞めとけ」

 

 俺もそう思う。

 だが俺も命がかかってるんだわ、引けられない。

 

 俺は峰田の肩を割と強めに掴んだ。

 

「俺も命かかってるんですたい」

「痛い痛いッ! やめ! やめろ〜ッ! オイラには荷が重い!!」

 

 マックシェイクとナンパだけでは割に合わないと悟った峰田が逃亡しようとしているのを手でガッチリ掴む。

 逃がしませんよ、マジで君が最後の砦だよ。

 

「…はぁ、てかなんで雄英なんだよ? ヒーロー科なら他にもあるだろ?」

「いや、近所に雄英に通ってるパイセンがいてね。その人から来るよね〜(意訳)って脅されてるんだよ」

 

「お前の周り変人率高くねぇか? ビーム撃ってくるやつに、殺人鬼って」

「…ん? ああ、そのビーム撃ってくる人だよ」

「大丈夫か雄英ヒーロー科ッ!!」

 

 ホントそれな。

 懐かしのゲッツを峰田くんにしてしまった。

 わかる、分かるよその気持ちは物凄くわかる。普通に考えてヴィランだし…つまりパイセンはしょっぴけば捕まえられる。

 つまり俺の勝ち? (錯乱)

 

「峰田くん、結構真面目な話をしよう。俺は雄英に入らなかったらヒーロー候補生にビームを撃たれて普通に死ぬ。なんなら免許取ってたらヒーローだ、ヒーローが一般市民を殺して逮捕。そんな見出しの新聞を見たくはないだろ」

「やめろ! オイラを巻き込むな!」

 

「いいや言うね、峰田くん。君はもう関わってしまった、俺が死んだら君の枕元に毎日現れて皿を数える」

「オイラは関係ねぇだろっ!!」

 

「いーやあるね、俺と隣の席になったんだ。数百分の一の確率を怨みなさい」

「巫山戯んなぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 それから約束の休日まで峰田くんは俺に勉強を見てくれた。

 何かと面倒の良い奴である。二、三日したら拒絶されると思ったが、存外彼も流される性格らしい。

 どうにかしてサイコパスだけでも峰田くんに擦り付けられないだろうか? パイセンは雄英のヒーロー科の人にお持ち帰りしてもらいたい。

 性格に難さえなければ即日結婚してるのに……あれだな音楽の方向性みたいな高校生バンドの解散理由みたいな理由だ。

 

「よっしゃ! じゃあ行くぜ鞘無!」

「わー、睾丸くん俺と勉強している時には見たことない活き活きした顔だ」

「ったり前だぜ!! ……今なんて言った?」

 

 知らぬ存ぜぬで口笛を吹く。

 しかし上手く吹けない…何故だ? 俺はテンプレに縛られない男なのに。

 

「よしじゃあ行ってこい! 骨は拾ってやる!」

「なんでオイラなんだよ! 先にお前が行けよ! 何のために連れてきたと思ってるんだ!」

 

 ……えー、面倒くさ。

 はっきり言ってナンパって気乗りしないんだよね。やばい人の女に手を出したらやばい店に連れてかれて小銭持ってるかジャンプさせられるだろ? 

 そんなもん無理じゃん。

 

「よし、じゃあ行ってくるわ。凄いの連れて帰ってくるから待ってろよ」

「オイラ…初めてお前と友達でよかったと思ったぜ鞘無」

「はっはー! これはもう大船に乗った気でいたまえ! すんごい人捕まえてくるから」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「あら〜ちょっといいかしら?」

 

 とても誘い受けしそうな言葉で肩を掴まれた。

 硬い。

 

「あ、はいどうしました?」

「いーえ、用って訳じゃないんだけど。ちょっとお茶でもどお? って誘いたくて」

 

 幸先よし。これなら峰田くんもビックリするに違いない。

 てか太いな。

 

「連れがいるんでそいつ込みでいいですか?」

「もちろんよ〜、お姉さんが奢ってあ げ る!」

 

「わーい、お姉さんいい人〜」

「あらノリ良いわね、そこのスタバでいいかしら?」

「もちのロンです、じゃあスグそこなんで一緒に行きましょうか」

「分かったわ〜」

 

 グラサン似合うなこの人。

 

 

 

「って鞘無! 早すぎだろ! まだ三分も経ってねぇぞ」

「はっはー、俺の手にかかればこんなもんだよ。はい自己紹介っていうのもあれだけど俺は鞘無っていいます」

 

 俺が後ろを振り返りながら自己紹介をして峰田目線でその女? の姿は峰田の目に焼き付けられた。

 そこそこデカい俺の体をおおってしまう程の大きさ、しかして内股で歩くその立ち振る舞い。

 

 そしてこの人。

 

「名前は恥ずかしいからぁ〜、マグ姉って呼んで」

 

 男? である。

 まぁおかまは良い奴って海賊漫画に書いてたし大丈夫だろう。

 

「よろしくマグ姉」

「………鞘無、集合」

 

 峰田の目が死んだ。

 恐らく俺の横にいた美人さんと思って歓喜していたのだろう。しかしそれは俺が峰田をからかうためのフェイク。

 わざと歩幅を合わせてそう見せ、キャラデザ的に峰田の目線から死角になるマグ姉の登場。

 非常に嬉しそうにしてた顔から一変、彼に血流は通っていない。

 

 石のように固まり、菩薩のような顔で俺に集合をかけた。

 

「やっぱりいい体してるわねぇ、鞘無ちゃんだっけ?」

「鍛えてますからね」

「へぇヒーローとか目指してるの?」

「あー実は「こっちこいや鞘無! ぶっ殺すぞ!!」ちょっと情緒不安定な友人から招集かかったんで行ってきます」

 

 デパートの階段に連れ込まれて壁ドン…にはキャラデザ的に無理だったので峰田は股ドンをしてきた。

 やべ、いま股間がヒュッとなった。

 

「オイラはナンパって言ったよな?」

「ああ、逆ナンされた」

「断れよ! あれ完全にカマだろ!? お前掘られたいのかよ!」

 

「いやいや、カマは基本修羅場潜ってる人達だから話し相手には頼りになるんだよ。しかもいい人そうだったし、なんならスタバ奢ってくれるって。実は俺スタバって初めてなんだよね」

「いいのかお前! お前の人生初スタバが知らないカマとで! 可愛い彼女ととかで取っておいたんだろ!」

 

 確かにそんな感じでもあるのだが、一番の理由は長い注文名が嫌いだからだ。あの「〜〜〜〜〜フラペチーノ」ってなにあれ? DAI語にしてからやり直してくんない? 

 

「まぁいいじゃん、いい人そうだったし」

「……今回だけだぞ」

 

 さすが峰田くん。

 流されるの純度が高すぎて俺もドン引くレベルだ。

 普通は断ったり帰ったりするところなのに、なんて素晴らしい考えを持つ人なんだ。

 

 なんやかんやあってマグ姉に本当にスタバを奢ってもらった。

 何度かマグ姉はスプーンを落として拾う動作の時にケツがヒュッとなったのは峰田の股ドンが効いているからだと信じたい。

 

 20分くらいしたらマグ姉は満足して帰っていった。

 

 

「ほらいい人だっただろ?」

「………まぁ、面白い話だったが。これを美少女…いや、女でなかったのが本当にいただけない」

 

「えぇ〜、後半峰田くんも楽しそうに話してたじゃん」

「……」

 

 すると峰田はうずうずとし始めた。なんだ? トイレか? 

 

「これからオイラがすげぇ美人引っ掛けてくるからお前も女の良さを知れ!!」

 そんなに大声出さなくても……と思ったが。

 いや、俺女の良さ知ってるよ。いい匂いするし柔らかいし。

 本性知らなければ女なんてだいたいOKだ。こんな言い方をしたらクズ男認定されるかもしれないが、反論するなら俺の人生を一度味わってから言ってもらいたい。それでも言えるなら……戦争だ。

 

 それから数分。

 長ぇーなー。だなんて思いながら待っていると峰田くんが帰ってきた。

 どうやら日本でも有名な制服の人を連れて……。

 

 峰田くん笑顔。

 連れてきたお姉さん驚愕。

 俺…ガクブル。

 

 あの睾丸野郎、なんてもん連れてきやがったんだ。

 

「あ〜剣心くんだぁ!」

 

 ヴィランなんて目じゃない悪役を連れてきやがった。

 逃げねば! 

 

 足が何かに引っ付いて離れない。これはモヤッとボール? 

 や、やめろーーー!! 

 

「おい鞘無、これが美女って事だよ。やべぇだろ? オイラのイケメン具合に困るぜ」

「あれ〜剣心くんなんでここにいるの? 私が誘っても1度も来てくれたことないのに…オカシイナァ」

 

 峰田、君とは絶交だ。

 

「あれ? お姉さんコイツと知り合いですか?」

「そうだよー、家がねぇ近所なんだぁー。君の頭のボールも気になるんだけど……ねぇ剣心くん、なんでここにいるのかなぁ?」

 

 やっぱり峰田、助けて。

 

「ちょっーーーっと…キニナルなァ」

 

 俺氏、二度とナンパなんて俗物なことしません。

 だからビームは! 

 ビームはやめてくれぇぇえ!!!!! 

 

 

 ーーーーー

 

 日曜日の悪夢を乗り切った俺は、月曜日に学校で峰田と出会った瞬間に感謝の正拳突きをした。

 

「──ッナンデ!?」

 後悔も反省もない。

 ただただ虚しい。




急に伸び始めて怖いです。
評価もブックマークも嬉しいです!
ですが何より感想が一番嬉しいです!なのでクレメンソ


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誕プレって……それマ?

なんか評価されすぎて怖い。
ねじれちゃんが可愛いから、全部ねじれちゃんが悪い

……と思ったけど、峰田回から盛り上がったから。
…………読者はみんなホモ?(迷推理


 算数……じゃなくて数学か。

 はっきり言って、公式は1度覚えていたので峰田の説明を耳にタコができるほど聞いたことにより再理解で割と早めに覚えられた。

 国語も古典も、1度はやった事のある科目。それならば「あー、こんなのあったなー」なんて思いながら再認識することで理解はできる。

 

 そう、理解はできるのだ。

 

 社会というヒーローやらヴィランが蔓延る別世界の社会は殆ど知らない。

 まず普通の、というか前世の学校では縄文から戦国までを重点的にやって、本当に学ばなければいけない昭和や平成を何故か詰め込み作業とばかりに最後の最後でちょっとしかやらない。

 いや、まぁ正直なんで? って思ったけど…いまでもなんで? て思うわ。

 普通ありえないでしょ。いくら戦国のドンパチ好きって言っても、本当に大事なのって戦争とかよりも平成の情勢とかじゃん? それを1ヶ月もかけずに詰め込むって……舐めてんの? 

 

 と、前世の俺は思ってました。

 でもね、それはそれで良かったかもって思ってます。

 だって……。

 

 社会の科目だけ、殆どヒーローで埋まってるんですが…。

 縄文やって、戦国やって、そんで情勢やらずにヒーローの登場と経済効果について。オールマイト、オールマイト、オールマイト……。

 何この教科書、オールマイトしか載ってないの? 

 坂上田村麻呂くらい出てきたぞ。

 

 …あれ? 誰だっけこの人。峰田くん。

 ……。

 

 はい、そういうことでね。

 毎日死ぬほど勉強させられました、何やらパイセンの話を聞いてから峰田くんも雄英を目指すらしい。

 どうやら体育祭に結果が良かった人は、他校からファンクラブ的なものが出来て交際も夢ではない…みたいなことがあったらしく、峰田くんはそれに食いついた。「体育祭ーーー!!」っといいながら、俺に勉強を教える交換条件で訓練に付き合う…ということで落ち着き、峰田くん魔改造計画は着々と進んでいる。

 

 因みにだが、パイセンの体育祭の活躍で付き合ったというカップルは雄英のあまりにもハードなスケジュールによって破局したというのだが、峰田の耳には入っていなかった。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

「峰田の『もぎもぎ』ってさ、くっつける以外は使えないの? 爆発するとか巨大化するとか」

「…ない」

 

 峰田くんは清々しい顔でいいきった。まさに小便を出したあとくらいの清々しさ。

 

「なんて言うかあれだよね、殺傷能力がないから俺には分からん」

「あー、お前の殺傷能力しか無いからな。なんでヒーロー目指してんの?」

 

 自分の事を言われて苛立ったのか峰田くんはかなり強めの言葉で俺を責め立てる。なかなか強いチクチク言葉だったぞ峰田くん。

 

「いや羨ましいなって、それって人に向けても死なないだろ? 俺のはもちろん、パイセンとかのはガチでやれば人なんて余裕だからさ。全力で活用して殺さないって、それってすげぇことなんじゃない? この個性社会にとって」

「無い物ねだりになっちまうがよ、オイラはお前の剣の個性の方が良かったぜ。普通にかっこいいしよ。オイラみたいに使い過ぎたら血が出るってデメリットとかないだろ?」

 

「んーや、あるぞ。個性は所詮身体機能の一つだからな、俺の体を剣に変える個性はいわば変身みたいもんだ。でも手が剣に形を変えるだけで剣とか刀とかが生えてるわけじゃない。難しいこと言ったけど、俺が剣に変えられるのは手とか足とか、薄皮1枚とか臓器やら体の重要じゃないとこだな。変えてる間は輪ゴムで血を止めたみたいになるから長時間使用はできないんだ、だから臓器とかはヤバいだろ? それにほら俺の戦闘は剣の形状でいる時間って極力抑えてるだろ?」

「そう言われてみれば…なら血液を変えるのはどうなんだ?」

 

「それは止まらないけど、強度がクソ逆刃刀とか鈍器だったら1発で割れる」

 

「なるほどな、意外とデメリットも存在してんだな。オイラはてっきりノーリスクだと思ってたぜ」

 

「俺も色々と考えてんだよ、なんか最近分かったことも色々あるし」

「…お前、馬鹿なのに無い頭使って……。オイラに言えよ水くせぇ!」

 

「なんでだろう、とてもいい雰囲気な気がするのに釈然としない」

「…てかあれだ、剣にするので最大時間はどんくらいなんだ?」

「大体20秒くらいかな、それ以上は剣から腕に戻した時に痺れてて動かせなくなるし…まぁ痺れてるだけで使えないわけじゃないんだけど、痺れすぎるとコントロールが上手く効かなくなるからウッカリ……こうスパッ! と……ね」

 

 試した訳では無いけど、正直「あ、やっちゃった」みたいな未来が見えて辛い。だからこそミネたまたまの個性は全力でやっても殺さないから羨ましい。

 

「でもオイラの個性はよォ……なんか使い道ねぇもんかな…」

「相手には引っ付けられて、自分には引っ付かないんだろ? トランポリンみたいな高速移動は?」

 

「もうやってる」

「…なら敵の攻撃にもぎもぎぶつけて威力緩和とか?」

 

「……ないけど、それできるなら避けた方が良くね?」

「…まぁそうかもだけど、できるか知ってるだけでもありじゃね?」

 

「それもそうだな、よし! 鞘無オイラを──ブヘッ!」

 

 峰田を突如と襲う正拳突き。

 ここ半年で見慣れた攻撃であるが…。

 

「………ふふふ。あめぇ、甘々だぜあまちゃんだぜ、じぇじぇじぇだぜ鞘無。お前に殴られ始めて半年、オイラの動体視力はお前を超えたッ!!」

 

 俺の拳には峰田のもぎもぎが付いており、殴った俺の拳と峰田の殴られた場所を挟む様にあったと言える。

 

「殴った衝撃を緩和出来ても、吹っ飛ぶのかよ」

 

 寧ろもぎもぎのせいでいつもの数倍は飛び跳ねた峰田は、制服をボロボロにしながら叫んでいるが、みるからに格好がボロボロである。

 

「それなら背中とかにもぎもぎを隠して入れとけばいいんじゃない? 後ろに飛ばされてもクッションみたいに…ほらボクシングのリングみたいな感じで」

「おお! ならオイラは縦横無尽に飛び回れるってことだな!」

「それはプロレスっぽいな、でもウザ強そう」

 

「でもそれってオイラが受けに回らないといけないんだよな、ほら波動パイセンもそうだけどさ、遠距離には負けちまう」

「だよな、リーチは卑怯だわ。俺は触手剣とかで何とかしたけど、いや峰田なら投げればいいじゃん」

 

「オイラの全力じゃ、100キロいくかいかないかだよ」

「いや違くて、峰田くんのもぎもぎは自分には反発するんだろ? こう牛の乳を絞る感じというか、圧力で小さな隙間から噴出するみたいに」

 

 ………あれ? 峰田くんが固まった。

 なんだこいつ? もぎもぎがボキボキになったのか? 

 

「鞘無、おまえ発想だけは天才級だったのか」

「いや、逆になんで気づかな──ブヘッ!」

 

 峰田くんがもぎもぎを握って俺が言った通りにやってもぎもぎを飛ばしてきた。それもいつもの山なり軌道ではなく、メジャーリーガーのレーザービームを彷彿とさせる軌道と速さ。

 

「何しやがる性欲の化身!」

「うるせぇ! これでオイラは最強だ!!」

 

 山なりの軌道に直線の軌道。

 どちらか一つだけなら対処は簡単だったのに、いやにいやらしくなってしまった峰田。

 全身にもぎもぎを引っ付けられるところだったが、峰田くんの頭皮が先に死んだおかげでなんとかなった。

 

 いや、急に化けたな峰田またま。

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

「おかしいなー、さっきそこ説明したばっかりなのに〜。なんでもう忘れちゃってるの? 私の話聞いてなかったのかなー」

「……はい、面目ないです。すいません」

 

「それに「絶対教わるかよ! そんなんするなら───してやる」って言ってたのにねー不思議ーー」

「いや、本当にすいません」

 

「あー、私もインターンで疲れてるのに。あ、肩凝ったな〜」

「は、はい! 揉ませていただきます」

 

「喉もかわいちゃったし…あ! 剣心くん、確かスーパーカップ買ってたよね! あれ食べたいな〜」

「はは! 仰せのままに」

 

 何故こんなにも下手に出ているかって? 

 そんなもの決まってる、模試がD判定だったからだ。

 

 Eでなかっただけ両手で万歳して峰田くんの家の前でも発狂してもいいのだが、どうにもそういう訳にはかず。せめてCまでには押し上げたいとの事。最悪実技でぶっちぎれば……という考えもあるのだが、ペーパーで足を引っ張ってしまえば終わり。

 色々と考えて、最後の手段……とも呼べなくない藁にも縋る思いでパイセンを頼ることにした。

 

 しかし思っていたよりも普通で、どちらかと言うとダメ出しが多く違う意味で安心と恐怖を感じて忙しない。

 

「ふぅー、美味しかった。それで? テストみせてよ」

「……っス」

 

 学校のテストや前回の模試を渡す。

 死ぬほど勉強してようやく平均60点である。半年間死ぬ気で勉強したが、それでも届くのはここまでだった。

 峰田またまは俺から戦闘技術を盗んでいって、成績も申し分無しで実技も問題ないというボーダーラインを超えて行った。

 己大仏野郎、俺のことを踏み台にしていきやがった。

 

「…ここ、ケアレスミスだね。それとここの問題は基礎ができてないのにどうして応用の方はできたの?」

「……なんででしょうね」

 

「中途半端に覚えてるからだよ、まずは解き方を覚えるのが大事だね。それと……社会は暗記が物をいうから自分で頑張って!」

「覚え方とかは……」

 

「ないよ! 全部覚えるの!」

 清々しい顔で死刑宣告をしてくるパイセン。マジパネェっす。

 パイセンもインターンで疲れているのだが、家庭教師のようなことをしてもらい肩身の狭い思いをしたがジャン負けでジュース勝ってくるとパイセンが言い出し、俺が勝ってしまった。

 

 もうむくれることなくパイセンは自販機へいって、俺はペンを休める。

 

 

 

「…………いや、どこのラブコメだよ!!」

 

 あまりの病まなささに、どこのご近所美人お姉さんだよ! と本気で思い枕に叫び声を出した。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 10月。

 山場の夏休みを超えて、冬を目の前にした季節。

 受験の山場は夏休みと冬休みと言われており、その休み期間に何をするかで志望校が〜〜っと意識高めの担任教師が言っていた。

 峰田に「あれが学歴コンプレックスを招くんだぜ」って言ってやったら、その担任教師は名簿を取り出し何かを書いていたが……うん、気にしない。

 

「なぁジンジャエールくんよ」

「…もう原型留めてねぇじゃねぇーか」

 

 峰田くんからブドウくん、ブドウくんからファンタグレープ、ファンタグレープから炭酸水、炭酸水からジンジャエール。

 随分と回り道をしたが、まだ出会って半年。もし同じ高校になったなら呼び方の原型からどれだけ乖離しているのかも楽しみになる。

 

「これは友達の話なんだが」

「んだよそれ、オイラの話かよ」

 

「いや、違うよ。友達の話だよ」

「お前オイラ以外に友達居んのかよ」

 

「………」

 

 

 

 

 

「ところで峰田くん、これはネッ友の話なんだけど」

「…お前ゲーム持ってねぇだろ? 波動パイセンに没収されたって言ってなかったか?」

 

 なるほど、峰田くんは会話にすら入らせてくれないようだ。

 さすがチン毛の形ももぎもぎくんだ、性根が腐ってやがる。

 

「これは俺の話なんだが」

「だろーな、それで?」

 

 なんだろう、このドヤ顔。凄く殴ってやりたい。

 キャラデザ的にローキックしか当たらないから面倒臭い。初期の激闘忍者対戦の赤丸に攻撃できるのは蹴り技を使うシカマルだけの時くらい面倒くさい。

 

「パイセンの誕生日が近いです」

「……へー、で?」

 

「家庭教師として勉強を見てもらってる訳ですよ」

「…知ってる」

 

「のでやはり何か誕プレ的なものを渡すのが義理だと思うんですよ」

「…一理ある」

 

「何がいいと思う?」

「…………鞘無さぁ、それをオイラに聞いてどうすんだよ? なに? 嫌味? 女へのプレゼントとか渡す機会すら恵まれなかったオイラへの当て付けなの?」

 

「いや、これは…頼るのが………お前しかいないんだよ」

「なんでそんな残念そうにこっち見て言うんだよ、オイラだって残念だよ。………帰る」

 

「ちょちょちょ! 待ちなさいや峰田くん。これは君のためでもあるんだぞ」

「……聞くだけ聞こう」

 

「ヒーローになった後のモテモテ峰田くんの為の予習だ、いきなり本番はキツイだろ! 初めての彼女でチョメチョメするより、一旦風俗で練習を挟む的な!」

「例えが生々しいんだよ! お前ホントに中3か!!」

 

 周りからの「風俗!」みたいな目線のせいで峰田くんはマジで帰っていった。おのれ峰田、最近必殺「逃げる」を覚えやがって。

 これじゃあ本当にどうすることも出来ねぇじゃねぇか。

 

 

 

 

 いや、もう考える必要なくね? 

 最近お淑やかな感じになって、ちょっとキュンキュンしない訳じゃないが、所詮化けの皮を剥がせば病み気味のやべぇ奴。

 そうそう、ここはうまい棒詰め合わせくらいを渡すのが無難。

 

 …………とはいかんよな。

 ぶっちゃけかーちゃんに知られれば、マジで詰む。

「お前、勉強も教えて貰ってるのに誕プレがうまい棒? なにそれ舐めてんの?」みたいなことになる未来が見える。

 

 無難に服? アクセサリー? 

 やばい? 重い? こういうのマジで訳分からんのだけど。これが峰田くんならゴム1箱で済んだのに。

 というかゴムは既に買っている。

 まさかパイセンの誕生日の2日後だったとは……。

 

 

 ………アクセサリーは…重いよな。それはやめよう。

 なら服…とかか? 帽子とか…。

 あれ? 帽子って頭のサイズとかいるのか? てか服ならサイズって必要だよな…。

 

 いや、知らん。

 靴もサイズいるじゃん。

 

 いや、知らん!! 

 

 ……こういうのって買ってから駄目だった時の気まずさは異常だよな。

 ここは聞いて…。

 

 ほら、あれだ。

 聞くはいっときの恥、とかいうやつだ。

 

 ……そうだよな? 俺の勘違いとかじゃないのよな? 

 ………いや! なんか恥ずいわ!! 

 

 いやなんで俺こんなに悩まんといかんの!? 普通に目に付いたの買って渡せばいいじゃん! 

 ……そう! そろそろ冬だし防寒具的なのを渡せばいいじゃん! 

 手袋…はサイズあるか。ジャストフィットするのの方がいいよな。最近ならスマホとか触れるやつの方が好まれるし。

 なら───。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

「「最初はグー」」

「「じゃんけんホイ!」」

 

「あれ? また負けた。なんで勝てないんだろー、不思議ー」

「ほらあれだよ! 日頃の行い的な」

 

「それなら教えてあげてるから私の方が積んでるのになー」

「…グッ!」

 

 敵の急所をいとも容易く打ち込むその手腕。

 さすが雄英生! そこに痺れる憧れる!! 

 

「でも不思議だよね、どうしてジャンケン勝てないんだろ?」

「ほら、俺ジャンケン最強だし」

「へー、そんなこともあるんだねー」

 

 最近始まった家庭教師のパイセンさんの休憩で、毎度恒例じゃんけん自販機である。近くの自販機にベプシを買いに行くという物だ。

 もちろん割り勘で、ジャンケンで決めているのはどっちが買いに行くかということだけ。

 今のところ22戦22勝という、チートのような数字を出しているが不正は一切ない。ハンターハンターのじゃんけんスキルなど俺にはない。

 

 そんな訳でパイセンに買いに行かせている間に、押し入れから買っておいたマフラーを取り出します。

 なんかソワソワするけど、そんな雰囲気になるからダメであって意識しては行けません。なぜならパイセンだからです。

 幼稚園児をそのままおっきくした、どこのご都合だとでも言える設定です。屈してはいけません。

 

 それから帰ってきたパイセンに無事渡すことが出来ました? 

 え? 甘々空間が欲しかったって? 

 峰田くんのゴムが発見されるのはフラグじゃなかったのかって? 

 

 残念! そんなヘマはもうしません! 

 この半年間でおツムも良くなったんです! それくらいの事はできるようになりました!! 

 

 

 その後、ネットニュースでパイセンを目にした時、何故かヒーロースーツの上からマフラーを巻いてる姿を見てしまったのですが。

 パツパツスーツにマフラーって、どこに需要があんの? コートにしとけば良かった? と本気で悩まされました。

 

 あ、峰田くんへの誕生日プレゼントについてですが朝一番から峰田くんの教室の机の上に置いておき、生徒指導室へ連行されたとだけ記載しておきます。

 




ちゃんとした伏線回にしようと思ったら、なんかギャグ締めしてしまった。………呪いか?


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試験って……それマ?

感想がほとんど来ない……

モチベが………で、で、


 ……オワタ。

 ……………完全にオワタ…。

 

 だから無理だったんだよ、峰田くんの言った通りで受験料が無駄になった。絶対落ちた…。

 なんでかって? 

 

 

 

 ………ヤマ勘外れた。orz

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 燃え尽きました。

 1年間死ぬ気でやってきましたが、どうやら最後の最後でダメだったみたいです。対策やら傾向やら万全にしていき、最後の年を越した辺りで時間的に詰め込むのが不可能となった大きな2つの問題のどちらを覚えるか? そんな境地に立たされ、直感に従ってソレを選んだのですが…。

 

 外しました。

 完全に外れました。

 大問を大きく1つ外しました……。

 そもそもアレだよ、模試の時ですら記述だったのに雄英は受験数が多いからってマークシートなんてアウトローな攻め方をするから悪いんだよ。あれが解けていれば7割後半から8割に届くところだったのに、よりにもよって配点の高い問題なんて聞いてない。

 

 ………あぁ、オワタ。

 分からない問題をパイセンから合格祈願で貰った『合格鉛筆』という六角柱のスタンダードな鉛筆から離れ、五角柱の合格と掛けた鉛筆を渡してくれた鉛筆で俺はマークシートをいいことにこれで突破した。

 試験官っぽいプロヒーロー? 教師? の先生から「何こいつ舐めてんの?」と圧のすごい視線を貰ったが、どうすることも出来ないので仕方ない。個性を使ってカンニングしてる訳じゃないので許して欲しい。

 周りの人はコロコロ音煩くてゴメンね。

 雄英の座学は最低でも8割とらないと実技での挽回は厳しいってパイセンが言ってたのに…。

 実技もロボ壊しだったから、何点とったかなんて覚えてねぇよ。

 

 峰田は自己採点では合格って言ってたし。

 これでベストフレンドとのコミュも終わりか。楽しかったぜ峰田まん子。

 

 ………ぁぁ、どうしよう。

 パイセンのこともそうだし、何より命が1番危ないサイコパス…。

 今からでもヒーロー科受験やってる学校ってないのかな? 雄英の取り漏らしを士傑がかっさらってる! みたいな事のために日程ズレてたりしないのかな? いや無理だよな、士傑もかなりの倍率だし。

 なら高望みせずにヒーロー科の定員割れを狙って………。

 

 

 ピロン! 

 

 峰田からメールだ。

 なんだと思い見てみると雄英からの合格通知を片手に、自室でパーティーメガネにクラッカー、所々に見えるお菓子やジュースで宴を始めていた光景を画像で見せられる。

 

 どうやら峰田は雄英に合格したらしい。

 受験疲れから解放されて、それはもうはっちゃけている。

 

 俺はおめでとうのメールを峰田に返すことにする。

 

 

 ーーー

 お前1人とか虚しすぎだろ、しかもその

 メガネだせぇわ。てか郵便早くないか? 

 電子メールでの合否はやってないもの

 と思ってたんだけど。そんな違法行為で

 受かって嬉しいの? 

 ーーー

 

 よし、送信っと。

 峰田の合否が来たってことは、そろそろウチにも届いたって事だよね。

 ……さて、合格でも不合格でも見ないことには始まらんし。

 もし不合格でもパイセン許してくれるよね、癇癪はもう仕方ないにしても…介錯はされないよね? 

 いや本当に死活問題だから大事なんだけど………。

 

 

 やばい、やっぱり見たくないんだけど…。

 

 ……

 …

 

 よし、弱音退散。

 峰田からの追撃のスタ連もケータイ触ってないから、実質ノーダメージですから。

 さて、逝きますか!! 

 

 ………のまえに、峰田くんに返信しとこう。

 スタ連ばっかだけど……やっぱり最後は文字で占めてた。なになに? 

 

 

 ーーー

 合否求む!! 

 ちなみにオイラ、入試8位らしい! 

 ーーー

 

 

 まだ見てないけど……まぁいいか。

 今のところ確率の高い未来を伝えとこう

 

 

 ーーー

 不合格でござる

 ーーー

 

 そっこーで返信が返ってきた。

 

 

 ーーー

 草

 ーーー

 

 だから生えねぇよ。

 人の不幸を笑うヒーローでいいのかよ候補生。いや、俺も俺が受かって峰田が落ちたら一生指さして笑うけど。

 

 ーーー

 うそ、今から見てくる

 ーーー

 

 

 さて、引けんくなったし、みるか!! 

 

 

 

 ………

 ……

 …

 

 と言ったが、やはり決心がつかん。

 いや普通に早く見に行けよってことだと思うよ、それはもう普通に考えて考えてもどちみち見ることになるんだからはよ見ろやって。

 分かる、そんなこと分かってるさ。でも落ちてると考えると見に行く足がくすむ。

 逆説的に不合格をみるまでは、俺は雄英受験生。

 ………やばい、入学式まで見ないってのもありだな。

 

 

 ………はい、なしですよね。今度こそ行ってきます。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

「もしもしー」

『おう! 鞘無か! 合否どうだったよ! オイラはなー! あの雄英で──』

 

「受かってた、しかも次席」

『………』

 

「俺も祝いたい気分だから飛び入り行っておっけー?」

『おー! まー! えー!!』

 

 

 いやー! やっぱり俺って天才なのかな! 

 入試…何位だったっけ? 

 あれ? 俺より頭良くて、俺よりロボなんてお誂え向けな敵だったのに? 1つでもボールぶつけて倒せば終わる簡単な作業だったのに!? 

 それで俺に負けちゃったのかなぁ!!?? 

 

 

 峰田の部屋で煽りに煽り煽り散らして煽った。

 目の前に買ったであろうポテチとファンタ…は口に合わないのでべプシは持参。それ以外の物を暴飲暴食することにより、峰田の部屋を荒し回り、俺の心もそろぼち覚めてきたので帰ることにする。

 腹いっぱい菓子くって、ベプシで流し込むって…やべぇな!! 

 

 ポテチとキノコのアマジョッパコラボが半端なくベプシを進ませる。

 それに酢だこにキャラメルも中々……いや、あれは不味かったな。

 

「では峰田くん! 学校で!」

「おうとも! オイラ達の残り少ない中学校生活が待ってるぜ!!」

 

 もちろんそんな清らかな理由でこんなことを言っているわけじゃない。

 雄英合格! それも同じ中学から2人も出た。

 

 ヒーロー

 人気

 カリスマ

 高収入

 

 

 神の四拍子とも言えるソレが俺たち性欲持て余し気味の中坊が手に入れてしまった。

 これはもうアレだ。

 

(自主規制)

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

『よーい! スタァァァァァァトォォォォオオオ!!!』

 

 プレゼントマイクの声がだだっ広い試験会場によく通る。

 毎年のこと、スタートの言葉に反応できる生徒は少ない。いや、ビクついて反応している生徒は多いが、一歩踏み出す。その動作をする生徒は毎年いるかいないか。

 なのだが……どうやらこの声に反応できる受験生は、1人の教師が確認できるだけで2名存在した。

 

 1人は去年ヘドロ事件で一躍有名になった、折寺中学の爆豪勝己。

 確か相当強い個性で、ヴィランから単身で抗がったとか。

 そしてもう1人は如何にも平々凡々と呼べなくもない受験生。資料にある個性では何故か枠1杯になる程の修正テープがつけられており、その上から申し訳なさそうに判子と個性名『体剣』と書かれている。

 何があった? と思わなくもないが、毎年蟻のように湧いてくる受験生の合否を目を凝らして見なければいけないのに、わざわざ訂正されている書類に文句をつける暇があるほど雄英高校の教師は暇ではない。

 

「今年は2人も動けたなんて凄いじゃないか、ひょっとしたら豊作かもね」

 

 この場で1番権力のある根津の発言に教師陣は頷いて返す。

 片や掌から爆発系の個性を使って試験場を縦横無尽しているが、もう一人は……。

 

「彼の個性は発動系の体の変身系じゃないの?」

「……ええ、その筈です」

 

 ミッドナイトの言葉に頷くイレイザーヘッド。

 画面には既に電子媒体に読み込まれた受験生の願書がインストールされており、気になった生徒のものを直ぐに見られることが出来る。

 そこには何故かヘラヘラした顔で撮られた証明写真と、その男が書いたのかとさえ疑わしい達筆な文字。そして一同の目線が集まったのは個性。そして詳細の場所。そこには簡潔にこう書かれていた。

 

『体は剣で出来ている』

 

 一同の頭に? が浮かんだことは言うまでもないだろう。

 現に先程のもう一人反応できた爆豪勝己ならば、個性『爆破』に詳細で『手の平から爆発を起こすことが出来る』と簡潔に書かれている。

 何がどのようにしてそうなったかのサイクルなどは不明だが、もし教師陣の想定する個性だった場合『体剣』の個性ならば詳細には『体を剣に変える事が出来る』と書くだろう。

 それなのに……。

 

(何故に報告?)

 

 数人は不気味さを感じ取ったが、約1名…イレイザーヘッドは考え方が違った。

 

 

(やっぱりコイツあほだ)

 

 

 

 

 時は遡り筆記試験。

 数百人の一斉受験の為にプロヒーローである教師陣でさえ試験官として駆り出されていた。

 そしてそこの担当となったイレイザーヘッドこと相澤は一人の受験生に視線を奪われることになる。

 …というよりも、数名の怪訝そうな雰囲気をだす生徒をみれば言わんとしたいことが分かる。

 

 ──コロコロコロコロ

 

 何故か雄英の受験で鉛筆を転がしている受験生が一人いるのだ。

 確かに雄英には記念受験というお遊びで受験する人が一定数いる。それを廃止することも出来ないのでどうすることも出来ないのだが。

 

(流石にこれは度が過ぎる)

 注意すべき、もしくは即刻退出させるべき。そう思った矢先、一つの可能性が頭をよぎる。

 

 もしかすれば、この男の個性は『運』を調節する個性なのではないだろうか? 

 有り得なくはない話だ。個性なんて千差万別、そんなものあるわけが無いと思わせる個性を嫌という程見てきた。

 実際自分の周りにはやたらと声のデカい同僚と、思い出したくない笑わせにくる事務所の近いヒーローに覚えがある。

 

 それならば…。

 そう思い相澤はコロコロと鉛筆を転がす生徒に向かって個性を使う。

 自分の個性ならば、万が一にも個性による不正は一切通さない。つまり相澤の個性に引っかかったなら、即刻退出。

 

 しかし、それの効果は無かった。

 

(不発…となれば)

 

 この受験生は本当に、なんの意味もなく本気で鉛筆を転がし出た目でマークシートを埋めていることになる。

 

 注意を………と思ったが、教師の勝手な判断による気付かぬ内での個性無断使用。一応試験官としてここにいるので権限がない訳では無いのだが、冤罪をかけて周りから疎まれる可能性も考え相澤はその少年に注意することをやめた。

 

 こんなバカに時間を使うだけ無駄だ。

 記念受験なら実技で振るい落とされる、それにもし実技で好成績を残しても鉛筆の出た目でマークシートを埋めるなど、それこそジャンケンで何十連勝(・・・・・・・・・・)するようなもの。メンタリストでない限り、そんな豪運ありえないだろう。それこそ個性……は今確認したのか。

 

 

 

 そんな一幕があったことを思い出す。

 

(やはり運操作系の個性じゃなかったか…腕っ節はあるみたいだが。増強系でもないのに、何だこの異様な移動速度は?)

 

 この疑問を持った教師はイレイザーヘッドだけでは無い。

 戦闘向きではない13号ですら違和感を覚えている、増強系でないのに彼は何故ここまで早く動けるのか。

 増強系ならば分かる、例えが大きくなるがオールマイトならば音を置き去りにするほどの速さで移動することも容易だろう。

 

 だが彼は増強系ではない。

 体を剣にする以外はいたって無個性と言えるのだ。

 

 それなのにまだまだ現役である戦闘には超絶的な切り札とならない個性を持つイレイザーヘッドや、オールマイトのサイドキックを昔務めていたサー・ナイトアイという代表的なヒーローよりも…いや、それを凌駕する速さ。

 

「彼は個性の使い方がとても巧みだな」

 

 教師陣の疑問を解消したのは新任であるオールマイトだった。

 彼の目には他の人と違って、彼は個性を使って移動しているように見えるのだろう。

 

「見たところ走る時に足を弾力のある剣を代用するかのように使い走っている。それもかなりしならせた剣なんじゃないかな?」

 

 その言葉になるほどとなったのは根津を始めとした一部の教師だけで、リカバリーガールのような戦闘から全く程遠いヒーローからは理解は得られなかったので、根津はそこには付け加えるように説明を続ける。

 

「昔行われていたオリンピックと似た存在であるパラリンピックで聞いたことのある話だね。確か走幅跳の選手は自分の足よりも義足の方を踏み込みに使う方がいいとされていたと聞いたことがあるのさ。それも体の剣と認識できる金属なら弾性を弄れるとしたら、この速さも頷ける。弾性に全振りして着地などのコントロールを考えなかったらね。現に彼は靴をまだ履けている。よく見ればその剣の適応が自在とするなら太腿からくるぶし、膝からくるぶし、範囲は分からないが服の下だからこそ見分けずらい。確かにオールマイトのいう通り個性の使い方がとても巧みだ」

 

 2人の読みは正しいが、それに一つ付け加えられるなら剣心がおこなったのは、その剣に変える作業を一瞬でやり伸縮や生成すら速度に加えたということ。

 服の上からでは見づらいが、彼の足はとてつもない速さで剣になったり普通の足になったりと大忙しなのは言うまでもないだろう。

 

 更にいえば、その作業を全て頭で理解してやっている訳では無い。

 いわゆる身体に染み付いた。そう言える代物だと言うことを覚えてもらいたい。

 そしてこの速度で移動しなければ逃げられない悪夢達を……。

 

 

 しかし、その次が本当の鬼門であることを知らない。

 

 

 

 

「爆破の子はとても派手だな、爆発音やら体の動かし方まで派手でヒーローらしい」

 

 しかし……。

 

「…逆にこの子は」

 

 恐ろしい程静かで淡々としている。

 手を剣に変えて、走りながらすれ違うようにロボの急所を切り落としている。

 爆豪勝己が剛とするならば鞘無剣心は流。

 余りに派手さを感じさせない、ただロボを上手く殺している。如何にもヒーロー向きの個性といえど、使う人がこうなだけで。日本の古き良き侍やら忍者と後世に派手に伝えられてきた文化が、どうにも現代の静かな暗殺者に見えてしまう。

 

 そして何よりも着目すべきはその速さ。

 初見はオールマイトしか見破れなかったほどの早業。恐らく、彼をヴィランと設定したならば出会い頭にこの場にいるプロヒーローは何人殺されていて、何人が応戦できただろうか。

 

 速さとはそれだけで脅威である。

 それを知らしめて上へと上り詰めたホークスがいるので、なにか突出した技能とはそれだけで素晴らしい力となる。

 

 他の受験生も贔屓目なしに見るのだが、やはりと言うべきか目を引かれるのはこの二人。

 そしてその対となる関係に目を離せない。

 

 方やヒーローらしい戦い方。

 派手で民衆を引きつけるであろうスタイル。

 

 対するはただとても静かで的確に。

 ただ、目の前の敵を上手くコロスことだけを求めた淡々としたスタイル。

 

 

 そして真価は試される。

 

 

 

 ーーーーー

 

 爆豪勝己が選んだ選択は逃げだった。

 目の前の巨大な敵よりも、ポイントのある敵を取りに行くという姿勢。それは試験というこの場ならば最適解と呼べるだろう。実際この試験の真価を問われても、同じ行動をとる可能性は極めて高い。

 しかし、しかしだ。

 

 目の前の排除すべき敵に背中を向けた。

 如何にプレゼントマイクから「おじゃま虫」「相手するだけ無駄」「0ポイント」と言われたとしても、退いていい理由にはならない。

 

 だから教師陣は少し期待を孕んだ目でもう一人の……。

 鞘無へ向いた。

 

 

 だが見た光景は今日起こった全てが霞んでしまうような。

 それほどまでに途方もないものを見せつけられた…。

 

 今回ばかりは認めざるを得ない。

 この試験で誰が一番視線を集めるかを、そして見られているなんてこれっぽっちも感じてなさそうな。

 

 大衆へ見せられないような。

 

 狂気を孕んだその笑みが、巨大なロボの影にたっている。

 

 

 

「────♪」

 

 なにかを口ずさんでいる。

 少年、鞘無剣心は目の前の敵に臆することなく、それどころか笑顔すらうかべて立ちはだかる。

 

 あまりの恐怖に足が、膝が笑ってしまうようなこの場面で。

 彼は歪なほど頬を緩ませて──嗤う。

 

 そしてその笑みを絶やすことなく振りまき、そのいっそ不気味にも思える少年は体をではなく、体からいつからか出ていた血を使って剣を作り出した。

 

 

 

 

「『London Bridge is falling down, (ロンドン橋、落ちた)

 Falling down, Falling down. (落ちた、落ちた)♪』」

 

 いきなり歌い出す童歌。

 誰しも1度は聞いたことのあるようなメロディーを口ずさむ彼、しかしそれは知っている歌のようで全身の毛が逆立つほどに不気味に感じられる。

 我々の知っている歌なのかと。

 

「『London Bridge is broken down,

 Falling down, broken down. 』」

 

 ニヤリ、そんな笑顔がとても怖い。

 そして0ポイントロボの陰に隠れていたと思ったら、ほんの一瞬の間に剣心は移動して剣を全て戻す。

 

 現れた瞬間に切り伏せられたかのように見える。

 現れても動かないおじゃま虫に向かって「これっておじゃま虫ってかオブジェじゃね?」「本当にスペース取るだけのおじゃま虫かよ」などの声が上がる。

 それこそ学校側の不備で操作不良でも起こしたのかと思う受験生も何人かいたが、こうというならば構う必要もない。

 

 本来なら動き、理不尽な暴力を叩きつけられるはずだった試験会場は、0ポイントロボへ対する邪魔だという感情以外は何も感じなかった。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 ガタリ! 

 椅子が床に倒れる音と、更にこの場で1番この少年『鞘無』に正当な評価を下していたオールマイトが急に立ち上がる。

 

(速すぎる、私ですらその速さを手に入れたのは全盛期になってから。しかも誰も見えていないだろうが、0ポイントへと与えた斬撃は私が見えただけでも5つ。それ以上は私の視力では捉えることは出来ずに正確な数は分からない。あの圧倒的な技量を持って恐ろしく速い斬撃。この場のヒーローもまだ第一線で戦うもの達、しかしこの斬撃を見切る人は一人もいなかった。異質さに気付いた、いや垣間見えたのは自分がナンバーワンたる直感か?)

 

 

 

 …………否である。

 断じて否。

 これはナンバーワンなどという吹けば飛ぶような称号とは違い、腹に風穴を開けられた苦痛と共に思い出す。

 

 

 

 あの速さ──

 あの強さ──

 

 

 

 そしてあの笑み──

 

 

 それはまるでかつて対峙した巨悪──そのものではないか…と。

 

 

 自然と拳に力が入る。

 既に残り火とはいえ、彼の胸の中にある聖火は神々しく燃え続ける。

 その炎が寿命という薪を燃やしていたとしても。

 彼は依然オールマイトなのだから。

 

「どうしたんだいオールマイト?」

 

 そんな焦燥を感じ取った根津はオールマイトへ話しかける。

 その言葉にオールマイトも気を取り直し、なんでもないと言うと違和感を覚える。

 

(そういえば爆発音が聞こえてこないな)

 

 あれだけの速度で切られたとしても機械は機械。電路などの環境から急に切断されバッテリーも切られたとしたら、爆発してもおかしくない。いや、爆発しない方がおかしいまである。

 

 なのに──。

 

 切ったということすら認識できなかったと言うのか? 

 いや、それはまた話が違うだろう。

 その認識という過程には、動物の脳が関係しておりロボには一欠片も関係はない。

 

 ………ならば、戦闘不能にするコードだけを切ったというのか? 

 それはある意味、あのロボを真っ2つにするより難しいぞ。

 

 ……わからない。

 

 

 

「オールマイト?」

「は! いや、失礼。あまりにも将来有望そうな者がいたもので。しかし彼は凄い、個性への理解と応用ならばベストジーニストと肩を並べるやも」

 

「そうだね、あの技術。既に完成されていると言ってもいい」

「ええ、鞘無少年に爆豪少年。これは正に黄金の世代とでも言えるのではないでしょうか?」

 

「雄英に来る子なら毎年そうさ! でも彼はあまりに完成されすぎている、彼がここに入ったとしても──」

 

 

「お言葉ですが校長、その心配は無いですよ」

 

 オールマイトと根津の会話に入ってきたのは相澤ことイレイザーヘッドだった。

 

「何せこいつ、筆記試験を鉛筆占いで乗り越えようとしてましたから」

 

 

「『…………』」

 

 恐らく教師陣の頭にはこの文字が流れただろう。

 

(ああ、脳筋タイプか)

 

「……まぁ、彼も全て鉛筆占いって訳じゃないだろう? 最後の問題を運任せにしたい気持ち、僕は知らないけど分からないこともないさ」

 

 などと人間よりも知能が高いハイスペックは何か言っているが、この場では嫌味にしか聞こえない。

 

「いえ、最初の方は自重してましたけど。国語は殆ど鉛筆転がしてましたよ、マークシートなので1問に5個当てはめる枠がありますが、単純計算で20点。いくら実技が凄くても、馬鹿じゃヒーローにはなれない。それに大1番という所で自分の力で乗り越えず運任せ、ヒーローとして破綻している」

 

 

「………………………HAHA!!」

 

 根津は笑うしかできなかった。

 

 

 

 

 しかし、この時はまだ知らない。

 普通に解いていた最初の方よりも、鉛筆転がしで回答した後半の方が正答率が高いということを。

 そして個性でもないとイレイザーヘッドから相互確認を行い。

 

 恐らく雄英始まって以来初の、鉛筆転がしで筆記をパスした男として教師陣に騒がれることになる。

 

 そして何より、なまじ実技1位とまさかまさかの筆記で好成績を残し。教師陣からの反対をハイスペックの発現した根津から「運も実力のうち」と最後の切り札を切らせたほどの逸材(笑)

 

 本来ならば首席であったが、大人の事情により次席に落とされた唯一無二の残念な人。

 

 これが鞘無剣心のこれから知られることの無い(大嘘)雄英高校の受験記録であった。

 




出ないことも無い!!(ひーーーっはーーーー!!!



気付かなかった貴方へ
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戦闘訓練って……それマ?

長いことお待たせしました
言い訳をするなら、本誌でかっちゃんが……
はい、以上です。

てか、最近ヒロアカ盛り上がり過ぎて困るんだけど。

因みにですが一応この作品は死穢八斎會編か文化祭編で終わるつもりです。エタらなければですが……、うん、頑張る。


 中学生活最後の時期。

 俺と峰田は女子達に囲まれて、キャッキャウフフな展開が………。

 

 

 来なかった。

 いや、消えていったのが正しい。

 最初の内は雄英合格でお近付きになろうとしてきた人が多かった。だがしかし、元々陰キャラっぽく授業中も比較的に真面目に取り組み、体育祭やら文化祭やらと目立たずに過ごしてきた俺たち2人。

 

 雄英に受かるためと色々と頑張って来たから故の弊害。

 一言で言えば俺たちは『イケてない』部類の人間だ。

 

 そんな陰キャがリア充達のウェイウェイノリについていけるか? 

 答えは否だ。しかし、それだけならばまだ良かった。本当に悪かったのは元凶である雄英合格という肩書きだった。

 

 数日前までクラスの空気と同化していた陰キャが雄英を合格し、天狗のように鼻を伸ばしている。それを女子はチヤホヤしてノリも独特で面白くない万人受けしない。

 ここまでいえば分かるだろうか? 

 

 俺たち二人のキャッキャウフフな時間は泡沫の如く消えていった。

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 暗黒の中学時代を経て今日から高校生となる。

 と言っても新鮮味はかなり少ない。それもこれもパイセンという近くで雄英の制服を着ている人がいるからであって、ある意味近所の高校? のような感覚がある。

 といっても雄英まで電車を乗らなければいけないので近いとは言えないが…。

 

 雄英指定のブレザーを着て家を出る。

 そうすれば目の前にいたのはあら不思議、峰田くんではなくパイセンだった。それも春にはいってそろそろ防寒具を手放す温度になってきているというのに、マフラーを巻いたパイセンがだ。

 

「……なんで居んの?」

「私が先輩だからだよー、やっぱり初めは迷っちゃうと思うし」

 

「ここにいた蓮コラは?」

「なんかねー、先行っちゃったよ! なんだか凄い顔してたけど走っていっちゃった!」

 

 ここにはいない峰田にそっと手を合し合掌する。

 ビームによる恐怖ゆえに逃げ出したか、邪魔と足蹴りにされたか、俺とパイセンと登校するのが嫌で逃げたか。

 

 ……全部だよなー。

 雄英入学初日からそんなことになるなんて、なんとも不憫な峰田だ。

 

 こうすると中学に入った時のことを思い出す。

 その時もこうやってパイセンに手を引かれた記憶があり、どこかその事と今目の前にある映像がやけにダブる。

 知らぬ内にパイセンは少しだけ背も伸びて、大人の雰囲気を身に纏うようになったんだと実感させられる。

 

「楽しい一年になるといいな」

「…? どうしたの剣心くん、らしくないよ?」

 

「いや……まぁ、そうだな。浮かれてるんだろうな」

「…変なのー」

 

 何処か言い表せのない言葉が喉元まで出てきたのだが、それを言葉にすることはできなかった。本当にでかかった言葉を呼吸をすることで留めて、パイセンの方へと向き直る。

 

 もうパイセンと過ごせる高校生活は1年もない。

 嫌だ嫌だと駄々をこねて、理由を探して、そして喚いて。

 そんなことをしてまで色んなことをしたが、結局俺はパイセンの隣にいる。

 

 解を出そうとしたこともある。

 その言葉をだして楽になろうとしたこともある。

 

 ……でも、結局それをすることは無かった。

 それをしてしまえば手に入るということもわかる、それがとても素晴らしいことだということも。

 

 喉元にあった違和感は前よりも大きくなり、少し飲み込むのに手間取った。

 

 

「ああ、大丈夫。華のハイスクールライフだ」

 

 空元気でも、少しは役に立つものだとしみじみ思う。

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 華の………なんだっけか? 

 入学式も、ガイダンスも全部すっ飛ばして個性把握テスト。

 それはもうビビった、爆破でボールをぶっ飛ばしたりする奴はうるさかったし、足からバイクの排気管みたいなのがついてるやつはメガネだったし、学校で原付乗り回す巨乳も巨乳だったし、反復横跳びで残像つくるキモイのもいたし、指折ってまでボール投げするキチガイもいたし。

 

 ハイスクールライフとは? (検索

 ともあれ高校生活とは義務教育では無いということを実感させられた。まさか高校入学初日で退学とか……マジで洒落にならん。

 わざわざエリート校に行ったのに、これじゃあ中卒って頑張った意味…。

 

「峰田良かったな、除籍じゃなくて」

「…うるせー、お前もそんなに順位高くなかっただろ!」

 

 帰り道、俺たち二人はマックシェイクを飲みながら帰っている。

 今までマックシェイクを飲むのは勉強中か夏場の暑い時期だったことから、こうやって外で歩きながら飲むのは意外と少ない。

 初日だから当たり前といえば当たり前だが、高校では初である。

 

「オイラが16位、んで鞘無が13位。オイラ達って井の中の蛙だったんだな」

「違うよ、人間だよ」

「そんなボケ求めてねーよ」

 

 今日実施された個性把握テストはそんなにいい結果にはならなかった。

 峰田の個性は拘束向きのものであり、大記録を打ち立てられたのは1つのみ。それ以外は基礎スペックの高い身体能力で乗り切りドンケツを避けられたが、半分よりも下。

 同様に俺も基本的な体の動かしに個性をつかって瞬間的に向上させることはできるが、個性把握テストの項目がどうも合わなかったので短距離走でしか輝けなかった。ボール投げはカタパルトみたいな感じで投げたが、爆破くんや指折りくんにはかなう訳もなく。無限に叩きのめされた。

 

 全体的に応用の効く、学年首席様の爆破の個性はやばく。1番やばかったのは推薦入学のなんでも作りだすやつ。

 

「トップはやばかったな」

「ああ、あれはやばかった」

 

 どこがとは言わない。

 そんなこと言わずとも、理解し合える関係こそベストフレンド。持久走は揺れる八百万の後ろを走って後ろから見える規格外のブツを見納めようとしていたのだが。まさか原付を取り出した時は目を点にしたのは言うまでもないだろう。

 あれは素晴らしいものだった。パイセンのものよりも重量が凄い。

 あと威圧も凄かった。

 

「オイラ決めた、絶対ヤオヨロッパイを揉む」

「……そか、なら俺はヤオヨロッパイをズムズムイヤーンする」

 

「なんだそれ?」

 

 わかんないよなー。

 でもアイツの個性ならビームっぽいの出せそうだし。

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 あっという間とはこのことだろう。

 気付けば高校生というのは早々と経過していき、引いてしまうほどの時間の流れを感じてしまう。というか感じる前に過ぎている。

 やばいな、俺じゃなきゃとか言ってる暇ねぇわ。

 

 それでもって早いことに戦闘訓練らしい。

 

 …………………え? 

 ついこの間に入学式じゃなかったのかって? 

 個性把握テストもほとんど話してないだろって? 

 

 ………時の流れは残酷なのです。

 時の流れは残酷なのです(大事なことなので2度言った)

 

 いや、割とマジで高校生ってあっという間だわ。

 気づいたらもうヒーロー基礎学で戦闘訓練とか、いや早すぎん? 

 

 変に意識するよりはいいかもしれませんけど、流石に早すぎると思うんですが。

 え? それを確認するために戦闘訓練? 

 さすが雄英! 隙がない! (便乗

 

 残念ながら腐れ縁続かず峰田ではなく。

 

 

「…えーと、よろしくね! 鞘無!!」

 見るからに目に悪い色彩を放つ元気系少女が目の前にいた。

 

 いや、ホントにチカチカするんで近距離をウロウロしないでください。

 

「よろしく…えっと、足ツボさん」

「あ! し! ど!」

 

 ……やばい、峰田で遊びすぎて名前をシンプルに間違う癖が着いてしまった。確かに名前で呼ぶのは峰田と………。

 

 ………いや、居ないな。

 …………………うん、居ないわ。

 峰田以外に俺が名前で呼ぶやつ居ないわ。

 

 パイセンはあだ名みたいだし、メンヘラサイコパスはメンヘラサイコパスだし。

 あ、あとは佐藤と田中と山田と坂上田村麻呂くらいか。

 

「あはは、ごめんねラシド」

「そんなハーモニー奏でないで! 芦戸だって!」

 

「よし、真面目な話で作戦どうする!」

「人選ミスだーー!!」

 

 

 

 

 ーー

 

 初戦からキチガイが腕折ってキチガイ増してた。

 草生えないわ……えぐい、指きて腕きて、なに? つぎは上半身いっちゃう? 腰? やっばやべぇわ、さすがにドン引き。

 

 

 ーー

 

 ………。

 

 峰田凍ってる、ざまぁwwww!! 

 

 

 イケメン死すべしとか言ってたけど、瞬殺されてやがる。

 アホ丸出しすぎて草。

 

 

 

 ーー

 

 ……なんか初戦と轟んたまんこんどーむ、の戦いがインパクト強すぎて目立たなくて可哀想。

 

 ともあれ呼ばれてとび出ておいでませ。

 

「ドロドロ粘液ぶっかけて!!」

「スパッとパパっとヤルミナティ(棒」

 

「「チーム! ドロすぱ参上!! (棒」」

 

 …………はい、俺です。

 弁明させてください。

 名前呼ぶのは無理と判断した芦戸がヒーロー名で呼び合おう! と提案してきた。しかし2人とも決まってるわけはなく、通称「ドロ」通称「スパ」で呼び合うことになった。

 

「ちょっとスパ! ヤルミナティって何!? 打ち合わせと違うんだけど!」

「ごめん、俺結構メンタル弱いからふざけないと心がつらたん」

「ぶーぶー!」

 

 ぶーぶーって言葉に出して駄々こねてる人初めて見た。

 なにこれ可愛い。

 

 自分たちの出来ることをザックり説明したところ、「ドロドロの溶解液みたいなの出せる! 強度は自由!」「大抵の物は切れる、でも人はヒーロー的にNGだから鈍器で頭かち割りが限度」

 

 何だこの殺傷能力を固めたチームは。

 下手すりゃ死ぬぞ。

 フレンドリーファイア的な意味で。

 

 あ、ちなみにヴィランチームで対戦相手は障子と八百万です。

 

 

「あ、始まったみたいだけど。スパどうする?」

「待ちだろ、障子はパワータイプでもあるけど耳とか作って感知もできるから居場所はバレる。八百万も個性把握テストんとき見た感じだと何でも作れるからはっきり言ってチート。どの道バレるんだから単騎でやり合うより、連携の隙を狙った方が楽」

 

「え! 意外と知能犯なの!? てか名前呼べてるじゃん!!」

「………てへぺろ」

 

「…うわ」

 

 会って間もないのにすんごい目で見られた。

 帰ったら日記に記載しておこう。

 

「ドロ、お前の個性って溶かすができるなら滑らすとかも出来んの?」

「できるよ! こう滑らせて波乗り! みたいな感じにできる」

 

「へぇ、ならさ──」

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 私と障子さんは障子さんの索敵の元2人で行動しています。

 障子さんの索敵によれば核は最上階に配置されているのだと。

 このビルは12階建てのビルで、エレベーターは潜入のために使えません。なので私たちは階段で昇っているのですが。

 

「すみません、障子さん」

 

 運動を疎かにしているわけではありませんが。

 私の個性故に個性把握テストでも激しい運動では創造に頼ってしまうことが多いです。それ故に体1つで動き回る障子さんとは違って12階立てのビルを一気に駆け上がることは出来ませんでした。

 

「いや、時間はまだある。万全になったら言ってくれ」

「すいません」

 

 幸いにも障子さんが感知系だったことが幸いで、もし場所が分かってなければ隅から隅まで探し回らなければ行けませんでした。

 

「もう大丈夫ですわ! お待たせしました」

「ああ、気にする──」

 

 体力が回復したことを知らせようとすると、突如爆裂したような音が近くでしました。

 これは……クラッカー? 

 またはそれに近い音がしましたが、それほど気にする程のことでは…。

 

 音? 

 

「障子さ──」

 障子さんは腕から生やした耳を一斉に仕舞って、目による探知に切り替えていました。私程度の聴覚ならば少し驚く程度の音でしたが、周りに気を配っていた障子さんはその数倍の音量を受けたのでしょう。

 

 手で静止するように大丈夫だ、というサインをしたと同時に辺りが真っ白になって目を開くことが出来ませんでした。

 

 これは閃光弾? 

 耳を塞ぎ、目を閉じ。

 何も見えないし耳がまだキーンと言っていてよく聞こえない。

 しかし次に私を襲ったのはヌメっとした粘液のようなもの、敵の攻撃? 

 

 そう思いやっとの思いで目を開くと。

 

 

「嘘─! 障子さん!!」

 

 目を覚ませば、階段から落下して気絶している障子さん。そして蹴破られたであろう窓の破片が飛び散っているだけという光景だった。

 

『障子少年気絶によりリタイアだ』

 

 私は数秒何が起こったのか分からずその場で立ち尽くした。

 

 

 ーーーーー

 

 

 

「……すご! 何やったのスパ!」

「足音殺して近付きリレーのピストルがあったから近くで発砲、そんでサポートアイテムで閃光玉があるから投げた。そんであし……ドロに出してもらった体液を2人にバケツでぶっかけて、見るからにタイマンしたら勝てなさそうな障子を階段から突き落とし、階段からジャンプして障子の鳩尾に新体操選手並の技で着地。八百万にバレないウチに窓を破って帰ってきた」

 

 壁を登る時は完全に立体機動みたいになってた。

 アフレコでエレンが超大型巨人と「よう! 久しぶりー」って言った時みたいな感じだった。テンション上がるわ。

 

「スゴすぎ!! てか何で閃光玉をサポートアイテムにしてんの?」

「は? ペイント玉と閃光玉と音爆弾は必須アイテムだぞ?」

「それゲームの話!!」

 

「お、分かるのか」

 

 まさかのモンハン談義についてこれるとは。

 エリート校だからサブカルの1つも通じんと思っていたが、これは嬉しい誤算。

 じゃなかった、いま訓練中だった。

 

「因みにシリーズで最高だと思うのは?」

「えっと、4?」

 

「君とは友達になれません、さようなら」

 

 せめて3rdだろ。

 それで最高傑作は2ndG。異論は認めない。

 4? 操虫棍とかまじ意味不。

 3dsの時点で察しだし、難易度低すぎて最終ボスまで1週間で到達したわ! 

 それに比べて……………(ド偏見

 

「それより今は訓練だよスパ!」

「うるせぇブス」

「酷い! 女の敵!!」

 

 何がスパだよモンハンのシリーズ論議を初めて食い違ったら戦争ってのが相場なんだよ。

 

 は? 2nd? 

 アカムの弓が強すぎてゲームバランスぶっ壊れたやつだろ? ワロスワロス。

 

 ドロと言い合ってたら巨乳……じゃなかった、ゆさゆさ過ぎて目がいってしまった。失敬。

 爆乳がやってきた………。

 

 ……あれ? まあいいわ。

 

「障子さんの仇!」

 いや、それ死んだ時に言うやつ。

 

 八百万が鉄パイプみたいなのを作り出して殴りかかってきた。

 まさか、その構えは天然理心流!? 

 

 ではなく、普通にチンピラ剣術でした。

 ……ていうか、その下半身に不安定な体勢で突っ込んできたら…。

 

 

「──ッぶっ!」

 

 ドロのツルツル床のせいで転けちゃった。

 かなり痛そう。鉄パイプを両手で持って、普通に顔面から転けた。

 手で防ぐとか出来なくて普通に顔面から。

 

「だ、大丈夫か八百万。歯とか折れてない? お、おい芦戸、お前が滑りやすくするから」

「え! 私! でもコケるほどじゃないと思うんだけど」

「ばっかお前、八百万さんに聞こえちゃうだろ。ここはコケるはずのない床とかいうなよ、コケてる相手にダメージ食らわすとか、鬼畜かお前!」

 

 実の所、障子が脱落するきっかけとなったドロドロの粘液をかけられた時のが八百万の靴にも着いてあり、その粘液と床のサラサラの粘液が上手い具合に絡み合ってコケたのだが、そんなこと思いつく訳もなく鞘無は芦戸に責任を丸投げした。

 

「あーあ、学校始まってから女子に恥かかせた! お前あれだぞ! 女子って閉鎖空間で頑張んないといけないんだぞ! お前八百万が女王になったら召使い決定だな!」

「ちょっ! 訓練なんだから仕方ないじゃない!」

 

「だからだろ! 訓練なのに普通の床と変わらないようなとこで転けちゃった八百万さんだぞ!」

 

 二人の会話は八百万の耳にはちゃんと入っており、立ち上がるか本気で悩んだ。八百万は人生で初めて辱めを受けている。

 幸いなことにクラスメイトにはただ転けただけとは思われてなく、何かしらの罠があったと思っているようだが、唯一そこだけが救いである。

 

 そう、クラスメイトから見れば私はヒーロー。

 ここで泣き叫んではヒーロー候補生の名折れ。

 

 八百万、立ち上がる。

 

「うわ、立ち上がった。メンタル図太過ぎだろ」

 

 八百万、ちょっと涙目になる。

 

「ちょっと! スパ、そんな言い方ないでしょ!」

「うるせぇブス」

「酷い!」

 

 八百万は2人に向かって鉄パイプを振りかぶり、特に鞘無に向かって強めに振る。

 

 と見せ掛け、閃光玉をすれ違いざまに落とす。

 

「うわ、それは芸がないわ」

 

 落ちそうになった閃光玉を鞘無はサッカーのように蹴って、八百万の頭に当てる。

 

「汚ぇ花火だ」

 

 八百万の頭が光った。

 

 

 

 

 

 光が止むと八百万は倒れていた。

 

「おい、芦戸」

「ちょっと、こんな時だけ名前呼ばないでよ」

 

「いや、それは……なぁ」

 

「……ぐすっ………ぐ……っす、……ぐッ」

 

 八百万がガチ泣きしている。

 演技とかでは無い、ガチのガチだ。

 

 モニター越しなのに、クラスメイトが俺の事を睨んでいるのがわかる。カメラ壊そうかな。

 最初は何も無いところに転けて立ち上がろうとした所を言葉という鞭で滅多打ち、半泣きになった。

 そこから立ち上がり核の確保の作戦をするが、見事に見破られて閃光弾を後頭部にぶつけられ再び転倒。

 

 

 ………うん、ごめん。

 

「……あ、あの八百万さん…大丈夫で…しょうかでございますか?」

 

 最大限の敬語のつもりだが八百万は泣き止まない。

 未だかつて居ただろうか? 出会ってまもない級友に個性を使ってないと言えど訓練で泣かせた生徒など。

 

「いや、ホントに悪いと思ってるんだけど…ほら、俺ら今はヴィランだし……ほら、ね?」

「わがって…いまず、わがっでいますが、ぐやしくで」

 

 ボロ泣きのギャン泣きである。

 本当にごめん。

 女の子相手にやり…………。

 

 いや、変な奴らが脳裏に過ぎったけど。

 うん、普通の女の子相手にはやりすぎた! 

 

『タイムアップ』

 

 オールマイト先生からのタイムアップは些か早かった気もするが。

 いや、本当にもうごめんね。



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USJって……それマ?

 人生何があるかわかったものじゃない。

 転生なんて摩訶不思議なこともあるんだ、何かしらの作用があーしたりこーしたりして俺は一躍人気者。

 

 に、なれるはずもなかった。

 あの戦闘訓練から新しいクラスメイトから一歩引かれて俺は常にぼっち飯。1人で食堂なんてキツすぎて……。母ちゃんには食堂で飯食うからお小遣いとか言ってるけど、実は夜な夜な米洗って炊いておにぎり作ってる。

 

 ………くそ、惨めだ。

 最近丸型のおにぎりしかできなかったが、何故か三角超えて四角ができるようになった。三角までの道のりは長そうだ。

 いや、たどり着きたく無いなここまで来たら。

 

 …………が、弁当を忘れるなんてベタなことをしてしまい…。

 ぼっちで食堂デビューを飾ってしまった。

 なんとここの食堂はプロヒーローの……なんだったっけ。ランチクラッシュ? ってのが作ってるらしい。

 

 まぁ、あれだな。お約束の言葉を言うか。

 

 

「This is Japanese lunch time rush!! 」

 

 いや、混みすぎだから。

 なんでこんな長蛇の列作ってんの? しかも席取り要員とかもいるから実質この並んでる2倍の人は利用してるんだよね。

 

 高校のキャパ超えてない? 

 しかもこれ1人で回してるんでしょ? 

 給料足りてる? 絶対もっと取れるよ。少なくとも10人分は働いてるからそれ相応は校長に進言すべきだ。

 

 と、色々言ったがあまり飯を食いすぎると午後の授業で爆睡かましそうだから程々にしておこう。

 見たところ定番メニューは全部揃ってるな、しかし目を引かれる項目が1つ。

 

『カレーライス(UAオリジナル)』

 そう、カレーライスである。しかもただのカレーではない、あのUAオリジナルだと言うのだ。

 ここで市販のカレールーを使っていれば殴り込みに行きたくなるが、まさかそんなこすいことはしないと思い思い切って頼むことにする。

 

 このカレーが一定層しか狙っていないカレーなのか、それとも全員から愛されるような優しい味わいなのか。

 非常に気になる。

 辛さの設定をできない以上、そこまで攻めては来ないと思うが。

 よし、カレーにはおじさんうるさいぞ。

 

 食券を買って長蛇の列に並ぶと、わずか1分も立たずにカレーライスが出てきた。

 いや、早ッ。

 

 俺でも見逃しちゃったよ。

 それなのに雑になってないご飯にはみ出したりしてないルー。

 なるほど、なかなかできるなここのおばちゃん(知らんけど

 

 食堂は割と混んでおり座る場所が少ない。

 学生というワイワイ楽しませる空間だからかカウンターなどの1人席がないのは本当に許せない。

 惨めにこんなハリーポッターにでも出てきそうな長机に1人で食えってか? 目立つわボケ。

 

 ………お、俺以外にもぼっち飯発見。

 1人で食うと腫れ物を扱うようにされるが、2人になれば「あれ、あそこって……連れ?」みたいなことにできる。

 よし、この作戦で行こう。

 

 ぼっち飯君とは1つ席を開けて座る。

 さすがに隣はレベルが高いですって。

 

 さて、それではカレーライスを実食させていただきますか。

 辛さは少し辛い程度で米がよく進む。

 

 しかもこれはこの食堂自らのオリジナルではないか! 

 どうせ安定してうまいパーモンドとかなんだろうなー、と思っていたら間違いない、これは……。

 

 

「スターアニス、クエン、ターメリック、シナモン、タイム、ジンジャー、更にミカンの皮を使っているが肝心なのは、それをオールスパイスで調和させているというところ! 素晴らしい!! 素晴らしいうまさだ!!」

 

(注意)彼はぼっち飯です。

 

 あまりの感激に脱帽してしまいそうだ。

 ふむ、なかなかいい味出してるじゃないか! なぁ! ぼっち飯君よ! 

 

「お、環ー! 待たせちゃって悪かったね」

 

 くっそ、裏切りかよゴミクズ陰キャ。俺はそのなんちゃって陰キャが1番嫌いな人種なんだよ。陽キャと絡むなら最初からそうしろカス。

 

「っと、1年生かな隣失礼するよ。もしかして席取ってたりするかい?」

 その俺を傷つけることを目的とした事実確認はやめてくれ。上手いカレーライスが不味くなる。

 

「どぞ」

「悪いね」

 

 金髪のクリクリお目目先輩は申し訳なさそうに席に座る。

 やめれ、そこは元々空席なんだよ。カレーもゆっくり食えんとかどんなにこの学校はぼっちに優しくないんだよ。

 さっきの時間の委員長決めも1票も入らなかったし。いや、別にやりたくはないんだけどさ、こうなんて言うか…任命された上で断りたかったんだよ。分かるかなぁ、この気持ち。

 

「そういえば君は1人なのかい?」

 

 こいつひでぇな。ぼっち飯相手にその事実確認はキツすぎるんだけど。察しろよ先輩だろ? クラスの目立たな……くはないかも知れないけど。浮いてるやつなんだよ伝われ。

 峰田はなんか八百万に「あいつの友人として謝罪──」みたいな感じの理由をつけて昼飯いったらしいし。

 くそ、絶対峰田は締める。

 

「まぁ、そんな感じです…はい」

 

 くそ、惨めだ。

 なんでうちのクラス、ていうかヒーロー科は周りと溶け込むのが早いんだよ。知らない間にグループ出来てて入りずらいじゃん。

 しかもなんであの自傷癖キチガイにはいい感じに仲間みたいなのできてんだ? 俺と同じで1歩引かれる側だろ。

 

「まだ学校始まったばかりだから大丈夫だよ! 元気だしな!」

 くっそ、こいつ嫌いだ。

 

「そうですね…ははは(死ね)」

 

 内心では内なる剣くんはファックポーズをとっていることだろう。表に出さないだけありがたく思え。

 

「昼飯は美味しく食べたいからね! 良かったら俺たちと一緒に食べようよ!」

「あはは、うす」

 

 こいつ、いつかボコッやる。

 2歳上っていっても、こっちは常に2歳上のサイコパスを相手に生き残ってきたんだぞ。お前らごときが俺様に勝てるわけねぇだろ! ぶん殴ってやる。

 

「そういえば紹介がまだだったね、俺は3年の通形ミリオ。一応ヒーロー科だよ! それでこっちが天喰環、同じくヒーロー科」

「……(コク」

 

 話さずに此方に会釈だけしてカツ丼定食についてる浅利の味噌汁を飲んでる。あ、すごいいい匂い、美味そう。カレーに味噌汁……うん、却下。

 

「1年の鞘無です、一応ヒーロー科にいます」

「おお! やっぱりヒーロー科なんだね! 分かってたよ! 俺はね初めて見た時からビビっとね!」

 

「ミリオ…」

 

 まじかコイツみたいな目でクリクリお目目を見つめる陰キャくん。じゃなかった陰キャ先輩。多分こいつの反応的に口からでまかせなんだろうなー。と感じながらも特に気にしないようにする。

 見た目でヒーロー科って分かるのウチで言うと、それこそデカい障子くらいだろ。

 

「じゃあ好きなヒーローは?」

「ミリオ、それは自己紹介に必要な項目じゃない」

 

 はぁー、多分これはあれだ。俺が冷えた肉まんの次くらいに嫌いな『身内ネタ』だ。

 これってやる側は楽しくても何も知らない側からすれば全然面白くないんだよな。分かってんの? 

 

「特に居ないですかね」

「へぇー珍しいね! 大抵の人はオールマイト! って答えるのに」

 

「あんまりテレビとか見ないですから」

 

 これは本当だ。

 幼少から武術おじさんの動画を見たりして、今では随分と使っておらず八卦封印でもしてしまったかというほど使っていない『流水岩砕剣』。それにも色んな剣術やらを統合した俺の我流剣術。そんなロマンを叶えるためにテレビを見る暇なく個性の操作に明け暮れていた。

 感謝の正拳突き? あれはもう、俺の中では素振りと同義です。

 

 実際あの訓練で分かったけど、俺って地味に俺TUEEEEだからな。

 いや客観的に見ても俺くらい個性に真摯に向き合ってる同年代居ないだろ。はっきり言って個性でできることやり尽くしたぞ。

 と、まぁ高校に入ってから二、三年と努力しましたー。とか言ってる連中には負けられない。

 だってそうだろ? 物心ついた頃から面白おかしくとはいえ、結構厳しい修行してきたのに主人公補正に負けるのは普通に嫌だ。

 

 そういう特別な血筋とか特別な個性とか異能力とか。

 俺そういうの嫌いなんですわ。

 

「へぇ! ならなんでヒーローに! …あ! 俺はね、昔ヒーローに助けて貰って──「ミリオ、今は後輩くんのターンだ」おっと失礼」

「…まぁ、そんな劇的な理由はないですよ。ヒーローに助けてもらったとか、親がヴィランに殺されたとか、崇高な動機とかないです。ただ、俺には腕っ節の強さがあったので、これを仕事にしようかと」

 

 う そ で あ る

 

 この男。金持ちでモテたいと言うだけの理由なのを初対面の相手にそのまま伝えていいものかと悩んだ挙句にそれ相応の理由を作ったのである。つるむ友達が居れば間違いなく言っていたが、もしこの先輩達が今回のことを広めたらボッチ生活に決定打を打たれてしまう。

 それは避けねば…。

 

 その一心である。

 

「へぇ! なら凄い個性なんだね!」

「…いえ……。まぁ、扱いづらいですけど」

 

 何気ない言葉に2人の目が少し開いた様に見える。

 何? 俺またなんかやっちゃいましたかぁ〜〜〜。

 

 …いや今回は冤罪なんだけど。

 流石に今回は悪くないだろ? ……え、そうだよね、問題ないよね。

 

「そっか…それは大変だね!」

 

 ハッハッハー! とでも今すぐに笑いそうな御芽眼栗栗さん、通称陽キャ先輩は……いや、笑ったわ。むっちゃ爆笑、全然面白くねぇし。

 

「シンプルに強い個性よりも、難点を克服した個性の方が強い…と、俺は考えてる。だから君は強いよ」

 

 陰キャ先輩がなんか悟ったふうな顔をしながら声をかけてくる。

 なんだこいつ。

 

 なんだかよく分からん先輩だったが……。

 うん、カレーはうまかった。次も食べに来よう。

 

 

 

 

 

 なんか悪寒がしたので食堂でゆっくりすることなく帰りました。

 まさかあの二人、パイセンと何か繋がりが!? ……と思ってたらマスコミが敷地内に入ってきただけらしい。

 焦らすなよな……。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 現在バスに揺られて何か凄いとこに行くらしい。

 災害救助訓練がどうのこうのって言ってた、細かいことは知らん。

 理由? 教えてくれる友達がいないからだよ悟って。

 

 峰田は何やら本性隠して八百万と接点を保ってるらしい。

 いつか絶対八百万にバラしてやる。それでもって峰田の恋を終わらして「峰田さん、サイテーですわ」って言わせてみせる。

 近いうちに叶えてみせます。

 

「緑谷ちゃん、個性がオールマイトに似てるわね」

「梅雨ちゃん、あれは似て非なるものだぜ」

 

 前の方からそんな会話が聞こえる。

 俺も座ってる席的にはクラスのリーダーが座る1番後ろの真ん中なのに、バスの座席が横に座る系だから一種の誕生日席みたいになってて惨めだ。俺の強運どこいった? 入試で使い果たした?? 

 

「でもキレてばっかで爆豪ちゃんは人気でなさそう。あと鞘無ちゃんも」

 

「るせだすわッカス!」

 

 異議あり。

 あれと俺って同列なの? 流石に傷つくんだけど。あの姿勢貞子め、死にかけてても絶対助けてやんねー。救助訓練とか知らんわ。

 

 てかなんで俺アレと同列なの? マジで意味不なんだけど。

 なんかしたか……いや、まぁ八百万泣かせたけどさ。それもこれも訓練じゃん! 仕方ないじゃん! 悪いのオールマイトじゃん(責任転嫁

 

 まじいつか覚えとけよ、あの筋肉ダルマ。

 胃袋に穴開けてプロテインを消化できない体にしてやる。

 

「みろよ、この付き合いの浅さでクソを下水で煮込んだような性格だって認識されてやがる。ある意味すげぇ」

 

 あっちの事だよな。

 そうだよな? 俺のことじゃないよな!? 

 なぁ金髪チャラ男、眉毛全部剃ってやるぞ!! 

 

 理不尽先生からお叱りを受けて全員黙る。

 目的地まではもう距離はないみたいだ。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

「すっげぇーUSJかよ!!」

 

 なんか凄いとこに来たなぁ、としみじみ思う。

 流石はヒーロー校の中でも一、二を争う学校! と思うが、金かけることに惜しまなさすぎじゃない? こんだけ金あるなら食堂にカウンター席も作ってよ。ラーメン一蘭を見習って欲しい。

 あそこはぼっちに優しすぎる。

 

 愛してるよ、とんこつラーメン。………とんこつラーメンだよね? 塩じゃなかったよね? 

 

 まぁいいや。

 なんか色々話してたら宇宙服を着たヒーローがやってきた。

 なにこれ怖い、UMAが目の前にいるんだけど。

 これはあれかな? 個性社会にならなかったら今頃宇宙旅行を楽しんでるって言われてる説に対する皮肉なのかな? 

 その全身で社会に喧嘩売るスタイル、嫌いじゃない。漢の中の漢だぜ! 14号!! 

 

 ……あれ、この人って女じゃなかったっけ? 

 うちの理不尽先生の後輩で一応教師だってことは……。

 

 んだよババアかよ、期待さすなよ。

 

「──しかし、簡単に人を殺せる力です」

 

 明確に殺気を飛ばされたと思うんだけど。

 気の所為ですか? 気の所為ですよね!? なんで俺はこう先生から目をつけられてるんだろうか。ババア呼びしたことバレた? 

 あの宇宙服の下で俺のこと睨んでないよね!? 

 

「君たちの力は人を傷つける為の力じゃない、人を助ける為の力であることを忘れないでください」

 

 せんせー、全身刃物にしかならないんですけど。

 そういう人はどうすればいいですかー、握手求めてきたファンの指切り落としちゃいそうなんですけど〜。

 

 はい、絶対言いませんよ。

 そんなことしたら塵にされる。

 いや、比喩抜きで。

 

「以上、ご清聴ありがとうございました」

 

 えっと、じゅう……じゅう………あ、12号からの演説も終わり、訓練始めよう! っと行ったところで異変が起きた。

 

 

 それは霧のようなものだった。

 それは黒だった。

 底の見えない底なし沼、覗けばその黒さに飲み込まれてしまうような。

 

 そしてその黒からは人が出てくる。

 明らかに物理法則を無視したそれに、緊張感が高まる。

 あれは十中八九個性によるもの。そして誰のものか…。

 

 その解によって何もかもが変わる。

 ゾワッとする感覚。人間の本能が危険だと訴えかける この説明しがたい感覚。

 

 俺がそれを見た時に昔何処かに書かれていた言葉を思い出す。

 

 

 ── “Beware that, when fighting monsters, you yourself do not become a monster… for when you gaze long into the abyss. The abyss gazes also into you.”

 怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。

 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。

 

 

 ヒーローとヴィランの境界線を引くように、俺は指先を剣に変えた。




切りよかったのでここできることにしました。
訓練の講評はUSJ中か後に誰かの回想ですことにしました。今回組み込めずに申し訳ない。

それとコスチュームですがすっかり忘れてました。申し訳ない。

真っ黒のスーツに真っ赤なワイシャツに黒のネクタイ。いまブームの鬼滅の刃みたいに黒の隊服に赤の羽織にしようと思いましたが……なんか鬼滅の刃キッズと思われるのが癪で却下。いや鬼滅の刃の二次書いたことあるけどさ……。

まぁスーツの方がジャックザリッパー感出るかなーと思いしました。そういうことにします。反論は認めません。(バーリア

ジャックザリッパー感をということでベレー帽をつけることにします。杖はつけません。杖なんて持たせたら「オルガノン」って言わせたくなるからね。

えー、なんで赤のワイシャツなのか…と思われると思いますが。
『血のショックを和らげる』為です。はい、この主人公にはジャックザリッパーをとことん言ってもらいます。ですがヴィラン堕ちは……多分しません(早口

髪の毛は黒だけど、色んな人から追い回されたストレスでちょっと白も目立つので、イメージ的には東京喰種reの琲世のプリン頭みたいな感じで。髪質は毛先やや天パ。
顔は普通くらい。イケメンでは決してない(私怨ではない
体型は身長は普通くらいで筋肉は結構ついてる。でもゴリマッチョではなく細マッチョ。
靴のサイズは27.5センチ

いま思いつくのこれくらいですが、話数を重ねたてごちゃごちゃになる前に設定話を作ることにします。

はい、なんか読者さんのイメージと違ってたらメッセージとかで教えて貰えると嬉しい。てかくれ、そんでもってイラストとか下さい(欲望の塊

それではまた次回


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脳無って……それマ?

なんか評価が右肩下がり……何故だ…。

匿名解除しました。
イラストくれたんだ、そりゃするさ!!
本当に嬉しかったんだよ、初めての経験だったから。

だからちょっと泣いちゃった。

この場を借りて【炭酸ジュース】様、この度は本当にありがとうございます。
宝にします。


いや、炭酸ジュースって、なんかシュールで締まらんな。
それもそれでいいや




 霧に飲み込まれました。

 

 ………以上です。

 いや、なんか戦闘強そうな2人が黒モヤに向かっていったんだけど、俺も巻き込まれた。完全に被害者だよね俺。

 しかもなんか周りにむっちゃチンピラいるし……。

 

 え、カツアゲ? しかもなんで俺? 

 流石に理解が追いつかないんだけど。

 

「くそ、俺らのとこは1人かよ。しかも男…ついてねぇ」

 360度見渡してチンピラしかいない、なにこれ何処の不良マンガ? 抗争に巻き込まれちゃった系? 

 ……うん、違うね。完全に対俺図だねコレ。

 

 え、嘘やん。初の実践が無双ゲーム並の人数差あるの? 

 こんなん聞いてないんだが……。

 

「………あ、お疲れ様です」

 

 なるべく自然にフェードアウトしよう。

 うん、こいつら脳みそまで筋肉だから何とか誤魔化せるだろ…。

 

「おい俺らがそんなもんで惑わせると思ってんのかよ!」

 やべぇ、なんか動物の鳴き声みたいな耳障りな声だな。死んでやり直せカス。

 

「いや、ワープの人に配置に送り直して貰ったんだよ」

「……お、そうか。なんか悪いな。そうだよなスーツ着てるヒーローなんて目立たねぇもんな。確かお前就職浪人でここに流れたんだっけ?」

 

 何その細かい設定。てか騙されちゃうのかよ。

 マジで脳みそまで筋肉でできてんじゃね? 

 

「お、おう(便乗しとこ」

 

「そうかー、大変だったな……って騙されるわけねぇだろボケェ!!」

 

 ですよね! 

 ちょっと行けるかもって思ったけども…。現に周り囲ってる何人か「え、嘘?」みたいな反応してるよ。

 

「よし、閃光玉! 君に決めた!」

 

 サポートアイテムをベルト付近のポーチから取り出して、ポケモントレーナーの様に勢いよく投げる。俺の最速は130キロ前半だァ!! 

 

 ピカっと光った、よし逃げよう。

 

「くそ、なんだこの光」

「目が! 目が痛てぇ!!」

「なんも見えねぇ!」

「お、お前良いケツしてんじゃ…」

「ちくわ大明神」

 

 おい、誰だ最後。

 

 それじゃあパパッと逃げましょうかね。

 ヒーローなのに敵前逃亡? 光ってて誰も見てないからいいんだよ。普通にやったら勝てるんじゃないのかって? 

 お前数の暴力舐めてるだろ。オールマイトでも1000人くらい相手にしたら………いや、勝つな。あいつ範囲攻撃持ってるから余裕で勝てるわ。

 なら俺は? 範囲攻撃なんてしてしまったら、完全にサイレントワルツになっちゃうから無理。

 なら鈍器でやればって? 俺ってスピードに全振りしてるからパワーはそんなになんだよね。綱手じゃなくて雷影みたいな感じ。

 

 だから俺は対一しか出来ないので、はい普通に数の暴力に負けます。

 閃光玉とか音爆弾とか完全に逃亡用だからな、あと飛んでる敵にたいして落とす感じ。

 

 よし、全力ホップダッシュ!! 

 緊急離脱みたいになるけど、うん俺しーらない。他の範囲攻撃持ってる個性のやつに頼もう。

 

 いや焦りすぎて飛びすぎた。

 てか広いなUSJ。マジで敷地そんくらいあるんじゃない!? さすが雄英! さすゆう!! 

 とりあえず生徒の方待ってるところに行った方がいいよな。

 あ、頭大仏野郎見つけた。まぁアイツも結構できるし行かなくても大丈夫だろう。

 姿勢貞子が居たから行かないわけじゃない、ないったらない。

 

 

 ………なに!? 

 あそこの金髪チャラ男が襲われてる状況なのにハーレム作ってやがる。男女女だと!? ……女だよなあれ。絶壁だからよくわからんし、なんか金髪チャラ男とペアルックみたいじゃないか? 

 

 爆ぜろリア充。

 ここは俺が颯爽と現れて! 爽やかスマイルで好感度アップ! そしてNTRルート突入!! 峰田から八百万を! 金髪チャラ男からはペアルック系少女を!! 

 

 べぇーわ、いくぜ!! 

 時代はNTRって、それ一番言われてるから! 童貞の無痛病って比喩笑って……うん、悲しくなった。

 

 くそ、いいんだよそんなことは! 

 いくぜ!! 

 

「『ばばばばぁばぁばば!!』」

 

 途端全身にとてつもない電流が流れました。

 うん、第3部~完~

 

 

 ーーーーー

 

 やばい電気ビリビリってギャグだから許されるわけであって、現実だと全然笑えない。金髪チャラ男が死なない程度に調節してくれたからか死んでないけど、これ普通に死ねるわ。

 普通に瀕死だし、体のあちこちが痺れてて動かそうものなら激痛みたいなので動けない。

 少し意識飛んでたし……普通にやばい。

 

 全身に軽い火傷っぽくなってるし、腕の一部が水膨れみたいなのできてる。雷って現実では最強じゃね? 

 個性ガチャでリセマラ終了はゴロゴロの実だったのか。

 

 くっそ痛てぇ。

 絶対あのチャラ男殴る。

 

 ………あれ? なんかピンチじゃね? 

 チャラ男が人質みたいになってるけど、あれ? なんで個性使わないの? ゼロ距離だから1番効くでしょ? 

 

 ……え、まさかキャパオーバー? 

 もーキャパオーバー!? 

 

 これ隠れて倒れてるフリすればチャラ男の救出の為に女子生徒2人の無慈悲な指示によるストリップショーが見れるんじゃないの? 

 そっち系だった場合は邪魔せずみとこかな……。

 

 

 いや、バレた時のこと考えるときついから助けに行くか。

 八百万には……まぁ、あれだ。負い目が……。

 

 

 では行きます! 聞いてください! 

 タイトル「フライングヤクザキック」!!! 

 

 あ、ヴィランの下敷きにチャラ男がなったから嬉しさ二倍。

 これには俺っちもニッコリ。

 

 さ! 合流しに行こうぜ! お嬢さん方!! 

 

 

 ーーーーー

 

 

 合流したら理不尽先生が理不尽されてた。

 何あの巨体、無理だ無理無理カタツムリ。絶対勝てないって、体格だけでもやべぇし人間じゃねぇ。

 

 あ、腕折り君こんにちは。

 おい、峰田。何女子の胸触ってんだ、そこ変われ。

 

 なんか全身手マンに俺らを移動させた黒モヤが近づいてなんか話してる。聞こえる峰田? 

 

「マジかよ、オイラたち助かる」

「帰ってくれんの?」

「ああ! あのヴィランが──」

 

 峰田がそう言った瞬間、目の前まで全身手マンが一瞬で距離を詰めてきた。

 こういうの見ると思うんだけど、わざわざ目の前で一回止まって溜め作るよりもすれ違いざまにした方がいいよね。いや、個性のなんかあるんか知らんけど。

 

 とりあえず手が触れたら何かしら発動する個性だと思うから触れる前に、腹にヤクザキック。

 

「──ッグ!」

 

 これを剣状態でやるとトリコのレッグナイフみたいになって即死案件。

 やっぱ殺傷能力高杉くん。

 

「っ痛ぇ──脳無!」

 

 いやあの巨体でこんな早く動けんの? それはせこくないかい!? 

 むっちゃ早いし絶対重い。打ち勝つとか絶対無理!! 

 

 ……だから逸らそう。

 初めて実践で使える! 絶対言うんだ! いくぜ!! 

 

「流水岩砕剣」

 

 正直バングが見せた時よりも弟子の方のガトリング全部逸らす時の方がカッコよかった。そのイメージが強すぎて俺の流水岩砕剣は完全に防御寄りなんだよな。防御からのカウンター。いや、武術に限らずカウンターって奥義っぽいけどね。

 

 こう死にかける攻撃が来ても、なんて言うかビームの方が怖いしどうにも出来ないっていう感じの理不尽さがあるから対応出来る。

 

 

「は?」

 

 黒巨人の重そうなラッシュを全部どうにかして、首トンしよう。

 因みに首トンは手刀じゃなくて、逆刃刀でいきます。気絶とかそんな生易しいのじゃなくて、首ゴキですかね。

 悪いけどこんなヤバいやつ殺さないだけありがたく思って欲しい。つか怖い。

 首の骨折って動けない体になってもらおう。

 

 

 ………だってコイツらヴィランだろ? 

 

 気分は調査兵団の巨人討伐。

 ラッシュを切り抜けて、うなじに向かって……。

 

 ──ゴギィ! 

 

 あ、結構やばめの音が鳴った。

 よしまぁいいや、俺気にしなーい。

 全身手マンがすごい形相で見てるけど、うんとりあえず君も首トンの刑──。

 

 途端、俺の横っ腹を軽トラに引かれたくらいの感覚が走った。

 

「──ッ!! ………あ、やばい俺死ぬ」

 

 ぶっ飛ばされたけど、手と足を剣に変えてブレーキに使う。

 口に異様なまでの鉄分を感じて……うん、内臓のどっかいったわ。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 いってぇ。痛すぎる。痛すぎてなんか笑えるわ……。

 人生で言ってみたいセリフとかまだ全部言えてないのに……。

 

 え、俺これで終わりですか? 

 またまた童貞のまま死ぬんですか? 

 2回目になると童帝になれますか? 

 

 あははは、おもしろーい。

 

 おもしろいなぁ、なんで俺ってこんな目に遭うんだろう。

 変な奴に付きまとわれるわ、ボロ雑巾にされるわ。

 

 別に俺ヒーローになりたいわけじゃないんだよ。普通に怖いし、オールマイト初めて見た時安心より心配の方が勝ってたし。

 

 基本的に小心者なんだよ俺。

 それなのに、ちょっと力つけて調子乗っちゃったのかな? 超能力バトルしてたから胸踊っちゃったかな? 頭では分かってたさ、幼少の……前世の憧れを拗らせてたってこと…。

 

 それで強くなった気になって、理不尽な奴にボロ雑巾にされる運命なのかな? 

 

 あははははははははは。

 

 あぁ、そうだ。

 前世も、今世も……。

 超能力があっても、無くても…。

 

 世の中甘くないんだ、言葉を借りるなら【世界は残酷なんだ】

 美しさなんてほんの一欠片で、理不尽で溢れてる。

 指折りくんとか個性使えてなかったけど、指折るだけであのパワーだぞ? ちょっと使えるようになったら普通に俺とか抜かれるし。あの黒巨人とか普通にやって勝てるわけないし…。

 

 理不尽だよなぁ……。

 理不尽は嫌だよな……。

 

 指折り君の声が聞こえる。

 個性複数持ち? 改造人間? 

 

 なんだよそんなの二次元の中だけにしとけよ。

 

 ああ痛いな…。

 痛いから…。

 

 俺もヴィラン(そっち側)に行こうかなァ──。

 

 最初に超えるべきでないと引いた線を。

 逆刃刀で無くすということで……。

 

 

「……ふふふ、よしブチ殺そう」

 

 片足入ることにした。

 俺は今日、初めて命を摘む──。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

【嗤う声が聞こえる】

 

 

 

 相澤消太ことイレイザーヘッドがグチャグチャに倒されて、先程飛び出した鞘無くんが吹き飛ばされた…。

 目の前で見ていた僕、緑谷出久は1歩も動くことが出来ないでいた。

 

 クラスメイトが吹き飛ばされたのに。

 飯田くんは僕達クラスメイトの為に走ってくれているのに。

 

 なにより、僕の力は皆を救う為にあるのに…。

 僕は1歩も……

 

 

【嗤う声が聞こえる】

 

「バカ緑谷! 足止めたら殺されるぞ!」

 峰田くんが状況を理解して逃げることを進めるが、峰田くんと蛙吹さんに目掛けて鞘無くんを殺──……吹き飛ばした脳無と呼ばれる改造人間が拳を振り上げて…。

 

「ダメだ峰田くん!!」

 

 峰田くんはモギモギに噛み付いて風船を膨らませるようにして、モギモギが巨大化する。

 そしてそれを脳無と峰田くんの間に置き。

 

「──蛙吹! オイラに捕まれ! モギモギには触れるな!!」

「け、ケロぉ」

 

 蛙吹さんは峰田くんに舌を使わずに手を使って張り付く様にする。

 その間にも脳無の拳は2人に迫り、その拳はモギモギと衝突した。

 

 しかし、モギモギに壁の様な役割がある訳ではなく。

 

「け! ケロぉぉぉ!!!」

 脳無の拳の力による推進力で、ロケットの発射のように峰田くんと蛙吹さんは飛んで行った。

 

「えぇ!!」

 あまりの速さにビックリして僕も声を上げてしまう。

 目で追い切れない脳無の拳をトランポリンのように使って、その速さのまま…いや、それ以上の速さで飛んで行ったのだ。

 

 あまりの吹き飛び、いや離脱といっても良いほどの…。

 どうなったかなんて今は考えている余裕が無い、この場にいるのは僕一人…。

 だから次に狙われるのは──。

 

「超高速ッ!!!」

 

 何処から声が聞こえた…。

 それはさっきまで聞いていた声、どこかに飛ばされたはずの…。つい数秒前までここにいた……。

 

「グレープインパクト!!」

 

 峰田くんが目にも止まらない速さで脳無に向かって蹴りを放った。

 それはまさに電光石火、脳無に放った蹴りはそのまま吹き飛ばずに峰田の蹴りは脳無から離れずに脳無の頭をブレーキ代わりに使っている。

 個性で飛び跳ね、いや普段から遊んでいないとこんなこと出来ない。

 

 僕とは正反対だ。

 

 未熟な僕とでは。

 

「緑谷! 今のうちだ逃げちまえ!」

「そんな! なら峰田くんは!!」

 

「オイラも早く逃げてぇよ! さっきもそうだけどオイラは怖くてチビりそうなんだよー!!」

「それなら尚更!」

 

「オイラよりも弱いのに何言ってんだ! 先生達プロヒーローがやられたんだぞ!! 逃げ一択だろうがァ!」

 

 峰田くんの言葉は最もだ。

 それが正しいことで、戦うのが馬鹿なことだってわかってる…。

 でも、

 

 

「僕の力は……皆を守るためにあるんだ──だから」

「自惚れんな緑谷ぁ! さっさと逃げ──」

 

 そう言った峰田くんは足を脳無に掴まれて地面に叩きつけられた。

 あの巨大なモギモギでクッションを作ることも出来ずに、地面に叩きつけられてクッションもないのにバウンドする。

 

「──かぁっ!」

 

 あまりの衝撃に峰田くんの目が一瞬飛びそうになる。

 

「み、峰田くん!!」

 僕のせいだ。僕が話しかけなければ峰田くんはまんまと掴まれること無かった、峰田くん一人だけならもっと楽に逃げられた…。僕が、僕が不甲斐ないから……。

 

【嗤う声が聞こえる】

【嗤う声が聞こえる】

【嗤う声が聞こえる】

 

 大きい。

 ずっと大きくなった、どこかネジが外れて狂ってしまったような嗤い声。それに僕は背筋を凍らされる。

 いや、そんなものじゃない。引き抜かれて、それでも無理やり頭を持たれて立たされる。そんな立っているのが自分でも分からない恐怖がその声にはあった。

 

 怖い。

 初めて怖いと思った。

 

 かっちゃんも、1年前のヘドロも、怒ってきたプロヒーローも。そんなもの全て霞んでしまうような。

 

 僕は本物を目にする。

 だがそれは断じてヒーローでは無いだろう。

 

 この時、個性という名の暴力で訴えるヴィランとヒーロー。

 その境界線を引かなければいけないと僕は思い、嗤う彼を見てとある一節を思い出した。

 

 

 

 

 

 “Beware that, when fighting monsters, you yourself do not become a monster… for when you gaze long into the abyss. The abyss gazes also into you.”

 怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。

 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。

 

 僕はヒーローではない彼を……。

 ヴィランに上回る大きな悪を目撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 脳無は倒れている峰田くんにトドメを刺そうと大きな拳を振りかぶり。

 そして──

 

 

 ──ボト…。

 次に聞こえた音は、先程から何度も聞こえていた轟音ではなく筆を置いたようなゆったりとした音。

 

「993…986………979」

 

 飛ばされて…死んだと思った鞘無くんが頭から血を垂らして…。

 血が……。

 血が、剣のようになっている。

 出血の全てがあの剣になっているなら、あれは血を流し過ぎだ。すぐにでも止めない──。

 

 止めてどうするか? 

 それに彼は今…。

 

 脳無の腕を切り落としたのに。

 

「972……ハハッ! あははははははははは!!」

 

 頭のネジが外れてしまったように。

 今までで見たことないくらい口を大きく開けて、彼は嗤う。

 それに僕は吐きそうになる。だって彼はいま人の手を切り落としたのに。落とした筈なのに……なんでそんなに嬉しそうな顔をして笑っているんだ? 

 

「くっそヒーローにもサイコがいんのかよ、やれ脳無」

 この脳無はオールマイト用にカスタムされたもの。肉弾戦に強く、素手を前提に作られた改造人間。

 

 だが……。

 

「切っても切っても生えてくる……いい! っごいい〜!」

 

 生えては切り落とし、生えては切り落とし。

 鞘──彼は脳無から溢れ出す血潮を被るが気にもとめずに切り刻む。

 

「はは! ……って…おい、頑張れよ。もっと行けんだろ! 頑張れ!! 頑張れ!! 頑張れ!!」

 

 何故か脳無を応援しながら切り刻むその姿。

 異常だ……。異常なまでに………強い。

 

「鞘無、すまねぇ」

「ああ、大丈夫。全部あとは任せて。コイツは絶対殺すから」

 

 峰田くんとの会話を隙とみて脳無は一瞬止んだ攻撃を糧に鞘無くんに殴りかかろうとする。でも……。

 

「────」

 鞘無くんが何か言った後には、縦真っ二つに脳無は切られていた。

 

「は? 脳無だぞ……オールマイトを殺す兵器だぞ? それがこんなガキに? サイコ野郎に? 巫山戯んなアイツ、俺に嘘言ってたのかよ!」

 

 嗤う声が聞こえる。

 それは落胆を知ってしまった時の残響を耳に残す。知らぬが仏と言うけれども、彼のその嗤いにはその先を知りたかったような。

 そんなまだ──斬り足りない。

 斬りたくてうずうずしてしまう。そんな音を孕んでいる。

 

「黒いのは楽しめたけど、お前はどうなの? 手がいっぱいあるって事はさ……お前の手は斬ってもいいって事だよね? そうだよね? ああっ! それってとっても」

 

 

 ──かぁイイなぁ!! 

 

 彼の無邪気な笑みが、僕の心を座喚かせる。

 知らぬ内に僕達の中に、一人だけ──。

 ヒーローの卵だと思っていたクラスメイトの中に一人だけ──。

 

 腕を狩り取ろうとした時、前と似たような展開になった。

 真っ二つにした脳無が横から鞘無くんに体当たり…。だが、前回とは違う。

 

「ねぇ、手の人。この刃の形どう思う?」

 すると彼は何時も使っている青色の剣ではなく、真っ黒な濡れ羽色の鋼を使い。

 死神の持つ鎌の様な形の剣を作り出した。

 

「は、刃? 知らねえよ死ねガキ」

 

 迫る脳無にその刃を合わせて、首を刈り取り。剥き出しになっている脳を刻む。早すぎてほとんど見えない。

 相澤先生を倒して、峰田くんを戦闘不能にした人造人間。

 それが今、なんも呆気ない幕引きで命を──。

 

「命を刈り()る形をしてるだろ」

 

 それを口にした時の鞘無くんの笑みは、より一層まして不気味で恐怖を掻き立てられた。

 

「でも大丈夫、あれは俺を殺そうとしたんだ。だから俺が殺しても仕方ない。だからあれを動かしてた手の人を俺が殺しても問題ない。大丈夫、痛いのは一瞬だ。考え事をしてたらすぐ終わるよ。……そうだな、ならこんなのはどうだい? 『1000-7=』は?」

 

 絶対に逃さない、その意思が──。

 

「──待ってください鞘無さん!」

 

 鞘無くんの覇気に押し負けずに声をかけたのは八百万さんだった。

 夢中になってたけど、よく見たるクラスの殆どの人が集まっている。なら、この惨劇を彼らも見てたってこと? 

 そんなことになれば鞘無くんは……。

 

「私たちはヒーローです! 殺人は絶対にしてはいけません!!」

「違うよ、俺たちは卵だよ」

 

「いいえ違います! 私たちはヒーローです! 訓練の時にオールマイト先生も言っていました! 『自覚しろ! 私たちは今日からヒーローなんだと!』」

「……それでヒーローだとして? このまま見逃すの? 先生達を半殺しにしたのに? 生徒を殺そうとしたのに? …それでなんもなしは、そりゃ都合のいい話じゃないの? ねぇ、手の人」

 

 癇癪を起こしているが、それでどうかなるなんて1人も思っていない。

 

「訓練の時もそうでした! 貴方はヒーローになりたいのですか!!? 胸を張ってヒーローになりたいと言えるのですか!?」

「あはは、じゃあ俺はヒーローに向いてないかもね。でもね八百万、お前こいつを取り逃したせいで人が死んだら、お前責任取れんの?」

「それには及びません! その人を今ここで殺さずに拘束すれば彼はタルタロスに搬送されます! そうすれば二度と出てくることはありません」

 

「……ふーん。そう、ならそうすれば?」

 

 

 

 ………

 ……

 …

 

 空気が凍った。

 この男は鞘無くんは今なんて言ったんだ? 

 

「あれ、やらないの?」

「や、やりますわ!」

 

「そ、頑張ってね」

 

 なんだこれ? 

 違和感というか、異質というか。

 僕は何を見させられているんだ? 

 

 殺人ショー? ドラマのワンシーン? 

 なんだこれは? 

 

 例えが見つからない。

 彼は………。

 ああ、そうか……。

 

 鞘無くんの中で、命の価値はとっても低いんだ。だから──

 

「1年A組飯田天哉───!!!」

 

 その時、飯田くんが先生達を連れてUSJに入ってきた。

 これで無事に……そう誰もが思った瞬間に。

 

「あ、そうそう八百万。多分まだ脳無ってのがいると思うから気を付けてね」

 

 そう八百万さんに聞こえるように言った鞘無くんは、僕に視認できるスピードの脳無に何もすることなく八百万へ攻撃するのをただ黙って見ていた。

 

 拘束しようと手錠やらロープやらを巻いていた八百万さんに新しい脳無は体当たりして大型トラックに引かれた時のように八百万さんは宙を舞った。

 

 その時の鞘無くんの表情を僕は覚えていない。

 ただ、そこには笑みでもなく悲しみでもなく。

 ただただ無表情でその光景を見届けていた。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 本当に怖かった。

 人生で1番怖かったかもしれない。

 初めて命を脅かされた。

 

 パイセンもサイコパスもどこか自分よりも弱いから勝てるっていう心の余裕があったんだと思う。

 でも、今回は違った。

 普通に格上、個性の相性が良くなかったら終わってた。

 

 それに初めて人を斬った。

 俺の個性は体を剣にすること、だから斬った時の感覚をより鮮明に感じられる。包丁で切っただけでもそれ相応の感触があるのに。

 自分が刃になると感触だけでなく体温、それに血流。

 

 吐いた。

 

 気持ち悪い。

 気持ち悪くて、気持ち悪くて。

 

 仮面を被らないと発狂してしまいそうだった。

 いや、だいぶおかしかったと思う。

 気持ち悪くて気持ち悪くて、本当に変な感じで。

 まるで自分が自分じゃないみたいに。代わりの自分がやってくれたみたいに……。

 

 ……いや、違うってことは分かってる。

 心を傷つけないためのに作った人格、そんなものないのも分かってる。

 

 でもそうでもしないと、気持ち悪くて……。

 

 吐いた。

 人生で初めて人を殺した。

 

 手に感覚が残ってる。

 

 殺した。

 もう人じゃない? 既に死体のようなもの? 

 違う、あの体温は、あの温もりは、あの血流は……。

 生きた化け物だったんだ。

 

 トイレの水に映る自分を見る。

 

「どっちがバケモンだよ」

 

 

 

 幸い今日は臨時で休み。あんなことがあったからだろう。

 結局手の男と黒モヤは逃がしてしまい、主犯格を捉えることは出来なかった。

 

 人生で言ってみたいセリフ。

 そんなことを考えて言っていた自分が気持ち悪い。

 でも、そうでもしない限り? 正気を保てなかった。

 

 普段のようにおちゃらけて居ないと……。多分あの時に俺は完全に壊れてた。

 斬るのは初めてじゃない。肉とか魚とか切ったことがあるった。

 でも、人を……生きたものを斬るのは……。

 

 多分もう出来ない……。

 

 一日中トイレにしがみついてた。

 吐くものなんて何も無いのに、無理やり胃が何かを戻そうとして…。

 

「剣心くん」

 

 手を引かれた。

 誰かなんてわかってる…。

 顔を確認して、みっともなく泣いた。

 

「ねじれちゃん……」

 

 みっともなく縋った。

 手を彼女に回して抱きついた。

 

 気持ち悪い、気持ち悪くて、気持ち悪くて。

 

 ──手の感覚が。

 ──視界に入る血液が。

 ──先生の死にそうな姿が。

 

 そして──ヴィランを見るような目でクラスメイトに見られる光景が。

 

 頭から離れない。

 

「怖……かったんだ」

「うん」

 

 自然と涙が出てきた。

 

「俺、目の前で血を見て」

「うん」

 

 抱きしめる力が強まる。

 

「助けなきゃって、でも足がさ言う事聞かなくてさ」

「うん」

 

 泣き声はでない、ただ瞳から涙がこぼれるだけ。

 

「普通にしてたら発狂しそうでさ、いつもみたいにバカみたいな感じにしてさ」

「うん」

 

「俺、皆を守ろうとしてさ。でも怖くてさ」

「うん」

 

「終わったと思って足に力入らなくてさ、それで目の前で助けることも出来なくてさ」

「うん」

 

「初めて人を殺そうとしたんだ…いや、殺したんだよ」

「うん」

 

「俺、背負えないよ」

「うん」

 

「ごめんねじれちゃん、俺ヒーロー……雄英やめたい」

「……」

 

 馬鹿しないと前に進めない。

 道化みたいにしないと、もう……。

 でも現実を…リアルを知った。

 

 ヒーローなんて輝かしいように見えたおぞましいもの。

 

「ごめん………ごめん、いっぱい手伝ってもらったのに。でも……ごめん、怖いんだ。多分このまま行けば俺、人を殺すのになんの躊躇いも後悔もなくなると思う。それが一番……」

「ごめんね」

 

 

 

 

「ごめんね、剣心くん。剣心くんは多分最初からヒーローになりたくなかったよね。理由もお金持ちーとかモテたいーって言ってたけど。多分本気じゃないよね。私に合わせてくれてただけだよね」

「ち、違う」

「違わないよ、私もインターンで人の死を何回か見てきたから分かるよ。理想と現実のギャップ」

 

 俺を包む手が強くなる。

 

「私もねヒーロー辞めたいって何回か思った。ごめんね無理させちゃって。だから分かるんだー、その怖いって気持ち。剣心くんは良くない噂が流れてるから多分私のその時以上だよね」

 

 ──とある1年A組の生徒は嬉嬉としてヴィランを殺した。

 

 そんな噂が既に雄英では流れてる。

 出処も不明だけど…多分1年Aの生徒だろう。

 

 これから鞘無は後ろ指を指されて……。

 

「ぅヴェ」

 

 吐いた。

 

「大丈夫…大丈夫」

 

 ねじれちゃんが背中をさすってくれる。

 服が汚くなったのに、そんなの気にせずに……。

 

「俺さ峰田が殺されかけてさ、どうにかしなきゃって思ったんだ。俺峰田のこと友達だと思ってるし友達なら助けなきゃって…そしたらさ目の前が真っ白になってさ。気付いたら殺す気でヴィランと戦ってた。怖いんだ、今は自己防衛でって分かるけど、本当に別人格ができてさ。それが本当に殺しを楽しみ出すとさ……だからさ…もう」

 

 ヒーローはできない。

 

「剣心くん、私はね何時も取り繕ってる剣心くんが好き」

 

 …。

「いつも無理しておちゃらけて、なんでもない風にしてる剣心くんが好き」

 

「本当は寂しがり屋なのに人と距離を置いちゃうとこ。友達になろうとして近づくのに好意を持たれたら離れていっちゃうようなトコは良くないけどそれも剣心くんだなーって思えて私は好き」

 

「知ってるんだよー。ちゃんと見てるの」

 

「だって幼馴染だもん! ちっちゃい頃から知ってるんだよー。馬鹿やってるのも剣心くんだけど、ちょっとしたことに前に行けないのが剣心くんの本質でしょ」

 

「辞めたいなら私は止めないよ。誘ったのは私だけど、本当に嫌なら私は止めない。でも私はヒーローになるよ…剣心くんはどうする?」

 

 なんだか頭がグチャグチャになって。

 もうなんだか訳が分からなくなった。

 

「ねじれちゃん」

「なーに?」

 

「ごめん、それと大好き」

「うん、知ってるよー」

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 少しだけ楽な気持ちになった。

 だから俺は携帯をとって、数少ない連絡帳にかける。

 

 

「みね……た。元気か?」

『おう! お前よりは元気だぜ!!』

 

 声が震えてた。

 俺への恐怖か、それとも昨日襲われたことへの恐怖か。

 

「なぁ……いや…あの」

『分かってる』

「え」

 

『お前は馬鹿で何しでかすか分からんし人間の屑だ』

「おい」

『でも鞘無はオイラの友達だ、だから分かってる』

「………おう。………おう」

 

 峰田に泣かされる日が来るなんて思って無かった。

 昼飯の時、ぼっち飯させてたことについては言及しないことにしよう。

 うん、おれ雰囲気、わかってる。

 

「なんか元気出てきたわ」

『おうそりゃ良かったぜ。悪かったな、オイラがあんな感じにならなかったらお前がこうならなかったのに』

「いや……まぁ…あれだ。友達が殺されかけてキレれ無かったら友達じゃないだろ」

『草』

「はいはい、草草」

 

 

 

 

 

 

『──辞めんのか?』

「………うん。ごめん」

 

『だよな、死にかけたし…そんでもって怖ぇし』

「うん」

 

『鞘無、弱りすぎだ……ってのは言わなくても分かるよな』

「うん」

 

『オイラは続けるけどよ、体育祭くらいは応援来てくれよな』

「……分かった」

 

『もちろんパイセンの後でいいからよ! それにミスコン今年出るんだろパイセン。楽しいこともまだまだあるしよ』

「うん」

『だからさ、だからさ! 鞘無。人生棒に振るんじゃねぇぞ!』

「……」

 

『死ぬなよ! 今どん底でも、それでもこれから楽しいこととか絶対あるからよォ! 絶対にはやまんじゃねぇぞ!』

「ありがとう…峰田」

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 臨時休校の次の日。

 

「峰田さん、鞘無さんは…」

 被害者…と言うにはいささか自業自得感のある八百万が峰田に声をかける。

 何時もならもう学校に来てるはずの人物の机が埋まっていない。

 

「ああ辞めるって言ってた」

 

 峰田の言葉にクラスがざわめく。

 安心、安堵、心配。

 そんなどちらかと言えば辞めたと聞いてホッとしている人の方が多いことに苛立ちと……仕方ないという気持ちが出てしまう。

 

 鞘無はやり過ぎた。

 ヴィラン以上に生徒へ恐怖を与えた。

 

「そう……ですか。謝りたかったのですが」

「謝るって、何を謝るのさ。ヤオモモなんも悪いことしてないじゃん」

 

 そこに声を上げたのは耳郎響香だった。

 USJで同じ場所に飛ばされて一緒に行動したからこその発言。

 

「いいえ、私が弱かったから鞘無さんに言われのない誹謗中傷が増えてしまいました。殺そうとした鞘無さんを止めたことに私後悔はありません。ですが私が重傷を負った故に鞘無さんが目の前で助けなかった…などと言われています。だから、その謝罪を」

 

「なんで!? あの脳無ってやつ圧倒してたんでしょ!? ならそれが襲ってきても助けられたはずじゃん! それを助けなかったのは鞘無なんでしょ! なんでヤオモモが!」

 

「いいえ耳郎さん、ヒーローが助けてくれなかったなんて口が裂けても言えません。確かに鞘無さんなら私を助けられたのかも知れません。ですが──」

 

 

「──チャイムが鳴ったら席につけ」

 

 八百万の言葉の途中に相澤先生が入ってきた。

 寝袋に包帯。

 完全に現代のミイラ。

 

 皆の心がひとつになっただろう。

 

 相澤先生復帰はやッ!! 

 

 

「あのさ……先生。鞘無は…」

 それを発したのは意外にも食ってかかってた耳郎だった。

 ヤオモモの味方ではあるのだが、だからといって鞘無を心配していない訳じゃない。

 

「ああ、あいつは」

 

 

 

 

 

 

「──電車の遅延だ、そろそろ来る」

 

 

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 沈黙が教室を支配した。

 

「は…え!? ちょっ、峰田!?」

「…………」

 

 しみじみとした雰囲気だったのに、まさかの遅延。

 そして一番……。

 

 

 

「…おはようございまーす。あ、先生これ遅延証明書です」

「ああ、受け取った」

 

 何も無かったかのように張本人が教室に入ってくる。

 凍りついてる教室であると理解して、それでも尚踏み込んで入ってきた。

 

「おっす峰田、なんかシケた面してんな。うんこでも漏らしたか? 俺なんて昨日から下痢っぽいのが上から下からって大変で喉潰れちまったよ」

 

 嘘は何一つ言ってない。

 一日中トイレに篭って吐いて、ねじ……パイセンにも迷惑かけて。

 それで峰田に電話して。

 

 

 

 それで相澤先生に電話して……。

 校長と話して。

 

「峰田、俺はヒーローになるよ。何言われてももう曲がらん、悪かったな心配かけて」

 

 峰田は正気に戻って目元を擦り。

 

「死ねぇぇぇぇええええ!!!!」

 

 全力で殴りかかってきた。

 うん、仕方ない………受けと…。

 

 

 

「グゲフェァォ!!?」

 

 うん、受け止めない。

 顔面殴ろうとしてきた拳をキャッチしてハンマー投げの容量で後ろの黒板にダイブ。

 

「よし!」

 

『(よし! じゃねぇ!)』

 

「なんか大変そうだけど、みんなこれからもよろしくクレメンス」

 

 馬鹿やってる時の俺も──

 コミュ障の時の俺も──

 武術にひたむきの時の俺も──

 人斬って怖がってた時の俺も──

 人斬って楽しかった時の俺も──

 

 全部俺だ。

 何一つ偽物なんてない。

 

 そう思うだけで、なんだかとても楽になれた。

 




いや長っ!
よく書いたな

峰田(必殺技)モギモギ風船ーー自分を弾くクッション、攻撃力ゼロのバランスボール(反発強め)引っ付くのは1回だけ。萎んでひっつく力は直ぐに無くなる。イメージはコナンのサッカーボール


えー、この作品は7割のギャグ、2割のバトル(恋愛含む)1割のシリアスで作ろうと考えていました。
しかもシリアスはエリちゃんまで使わない予定でした。
しかし、どシリアスになってしまい誠に申し訳ない。

笑うために読んでた読者はかなり焦ったと思います。
以前リボーンのRTAで作者の暴走により大バッシングを食らったこともあるのですが。それでも作者の好きなように書いたので後悔はないです。
ただ、低評価つけられすぎたら落ち込みます。泣きます、非公開にします。

……えー、真面目な話で。
好き嫌いで別れるのは仕方ないと考えます。作者的には最高の〆だと思っていても、「は?何それおもんな」みたいになるのは仕方ないものです。
なので、ただの「おもんな」だけでなく「〜〜だからおもんない」としてくれると嬉しいです。おもんなだけなら低評価付けてメッセージでディスってブラウザバックでおなしゃす。感想にはなしでよろしく。

……はい。
色々いいましたが、何が言いたいかと言うと。

低評価は心が痛い……。
それと、今回の話結構面白いと思うんだけど……変か?いやまぁ変なんだけどさ。

トガちゃんと初めて会った時の陰キャムーブとかここの為。
ジャックザリッパーのルーティンも投影の為。

結構伏線……というか壊してもいい理由付けはあったはず。

なんか最終回みたいになったけど……。

やるぞ、雄英体育祭!!


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体育祭って……それマ?

えー、評価が怖いです。
いや、本当におったまげました。

いや本当にビビりました。
なんと言えばいいのか……その。

感謝感激です。

そしてシリアスは死穢八斎會からとか言ってましたが。
すいません、体育祭でもシリアスになると思います。

特に今回は酷いと思います。
それに本戦で緑谷と轟にも何かしらするつもりです。

でも大丈夫、体育祭が終わった頃には彼に友達ができる!!………はず。(変わらなければ

まぁあれです。
どシリアスです。せっかく赤になりましたがオレンジになるかもしれません。
評価してくれた人、ごめんなさい


 臨時休みの日の夕方、相澤へと電話した鞘無が嘔吐しそうな顔をしながら体を引き摺って着いたのは校長室だった。

 

「随分と辛そうだね鞘無くん、お茶でも飲むかい?」

 

 初めて見たけど、これが校長か…。そんなことを呟き、校長はそれを聞き取る。

 

「そうだね! まだ自己紹介してなかった。僕もこれにはウッカリさ!」

 だなんていいながら、何度か聞かされたことのある決め文句をいいながら……結局毛並みのことしか話してねぇじゃねぇか。

 そうとしか言えない自己紹介が終わり。

 

「それで相澤くんから聞いてるよ……君、退学したいんだってね」

「……はい、正直…無理だと思います」

 

 

 

 

 

 

「結論から先に言うと、それは許可できない」

「……え?」

 

「君は今回の襲撃で目立ち過ぎた、ヴィランは君のことを絶対に忘れないだろう。それにあのヴィラン達は必ずもう一度やってくる。その時、なんの後ろ盾もなくなった君はどうなるか……言わなくても分かるよね?」

「……なら、俺にヒーローに……雄英に通えって言うんですか? 校長も知ってるでしょ? 俺がヴィランを楽しんで殺したって。そいつがどんな目で見られるか、そいつのこれからの生活がどうなるかなんて……人間より聡明なあんただ、集団生活でどうなるかなんて考えるまでもない」

 

「ああ、分かってる。それでも敢えてもう一度いう、退学の許可はできない」

 

「ふ……巫山戯んなよ。俺だって好きで人を殺したわけじゃない! 笑ってたのだって、そうでもしないと動けなかったからだ。馬鹿みたいに無神経に笑って…それで!」

 

「……すまない。僕は君のことをもっと強い子だと思っていた」

「強くなんかないんだよ…。昨日から一晩中吐いて、それで思い出すんだよ。切った時の感覚をよ」

 

 

 

「最初は気持ち悪かったんだ。脳無って奴の腕を切り落とした時、確かにまだ(・・)気持ち悪かったんだよ。でもさ、作り笑いが何処からか作ってたか分からなくなった時……──斬るのが楽しくて仕方なくなったんだ」

 

「多分俺は……ヒーローに向いてないと思う。俺はヒーローになるべきではないと思う」

 

 

「僕は恐らく教育者として、ヒーローを育成する学校の長として今から最低なことを言う。『ヴィランなんて殺した方がいい』」

 

 鞘無は勢いよく椅子から立ち上がって、本気で根津を殴ろうとした。

 当たれば首から引きちぎれる、そう分かっていても……頭のネジが外れた今ならできると確信して……それで今本気で殺そうとした。

 

 しかし、その拳は受け止められる。

 個性を発動しようとしたと疑われ、横から相澤先生の抹消。それと拳を受け止めたのはB組の担任のブラドキング。

 

「……ぅ、ぅヴェェァ…」

 

 いま自分がしようとしたことを確認して。

 もう出るはずのないのに、胃が悲鳴を上げて嘔吐する。もう何時間もこんなことをしていて、絞り出すかのように胃液ではなく……血が机に落ちる。

 

「……1度ヴィランに堕ちた者は出所しても直ぐに監獄に戻る。そしてその確率は八割近い。そんなもの1度世に放つ必要性も、監獄で衣食住を提供する税金も……はっきり言って無駄なのさ。ハイスペックという個性を持つ僕が言ってあげよう。ヴィランは」

「黙れよ……くそ野郎」

 

 

 

「ハイスペックだか知らねぇけど……人を殺すことを。正しいとか間違ってるとかで語んじゃねぇよ。畜生が」

 

「……そうだね。だから人間はそこから進歩しない。でもね、僕はそんな人間が大好きなのさ。確かに命の価値を正しさだけで語るのは危うい。そう、それだよ──」

 

 

「──僕はね、君にヒーローになってもらいたい。命の価値を慮れる、そんな君に僕はヒーローになって欲しいのさ」

 

 根津が何を言っているのか。

 そんなことが分からなくなってきた頭で……。

 

「俺が……俺は……もうヒーローになるべきじゃないんだよ。怖いんだ、自分の命が脅かされるのが。目の前で救えたはずの命を取りこぼすのが。この手で命を摘み取るのが……。こんなことが日常で仕事なんて。そんなの耐えられる訳が無い。──なぁ、あんたら先生はヒーローなんだろ? 目の前で救えなかった命があるはずだ、摘んだ命があるはずだ、なんで救えなかったんだって罵倒を受けたことがあるはずだ。それなのになんでヒーローやってられるんだよ」

 

 その投げかけられた問に答えたのは鞘無の担任である【イレイザーヘッド】だった。

 

「ああ ある、目の前で仲間が死んだことも、救えなかった虚無感も、遺族から浴びせられる罵声も。全部知ってる……だがな鞘無、ヒーローってのはそれだけじゃない」

 

「被害者から感謝されることも、助け出せた時の達成感と安堵も。お前はヒーローの悪い所を見過ぎた…もしかしたらお前はずっとこんな生活が続くんだとか思ってるのかもしれない。でもな鞘無、ヒーローも捨てたもんじゃないんだ。お前に言うのは酷かもしれないが、もっと見聞を広めろ。お前が思ってる以上に世の中は汚いが、それ以上にお前たちの未来は明るい」

 

 ………そんなのわかんねぇよ。

 力なく呟いた声。

 その声が誰から発せられたかなんて、そんなの答えるまでもない。

 もう随分と泣いたと思わせる目元を見せ、鞘無は泣く。

 

「鞘無くん、せめてヴィラン連合と名乗る組織が拘束されるまで。それまで雄英でヒーローを目指してくれないか? 僕からのお願いだ」

 

 根津がふざけずに真面目に頭を下げる。

 

「……はい」

 

 その言葉に覇気も意思も無かった。

 ただそこにあったのは、疲れと……そして──。

 

 

 

 

 力なく呟いた鞘無を見送り、校門の前で青髪の女生徒と帰る姿を見て根津は拳を握る。

 

「すまない鞘無くん……それでも君を……ヴィランにする訳にはいかないんだ」

 

 根津の机には鞘無の履歴書と個人情報の乗った紙が1枚。

 そこには家族構成…。母と剣心の二人。母子家庭であること……。

 そして、父の欄に【死亡(失踪宣告)】と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 家に帰ると相澤先生がリビングにいた……。

 へ? なんで? 

 

 母さんと話してる。

 雄英に連れてってくれて帰るのも手伝ってくれたパイセンもなんで? って顔してる。

 

「……た、だいま」

 母ちゃんは何も言わずに俺の肩に手を置き、それでリビングを空けた。

 

「えっと…状況が理解できないんですけど」

 プロヒーロー イレイザーヘッドでは無い、いつもなら有り得ないスーツを着込んだ教師 相澤消太がそこにいた。

 

「まさか波動と繋がりがあったのか」

 変化の少ない相澤先生もまさかの出来事に驚いている。まさか雄英ヒーロー科の現トップ3の1人と繋がりがあることに。

 

 しかし、パイセンの顔色は優れない。

 辞めれなかった……その判断を俺から聞いたことにより、雄英へと向けようのないものが嫌でも顔に現れてるのが分かる。

 

「先生」

 パイセンの冷たい声がリビングを通る。

 

「悪い波動、お前は退室してくれ。これからは大事な話になる」

「……わか「いえ、いてもらって大丈夫です」」

 なんだかとても心細くなって、そんなことを言ってしまった。今日は随分と甘えているような気がする。

 

「……そうか、ならいい。座ってくれ」

 そう言われて俺とパイセンは椅子に座る。

 俺はいつも使われていない方の席に……。

 

「まずは済まなかった」

 

 相澤先生の謝罪に俺が驚愕する。

 そして横を見るとパイセンはそれ以上に驚愕していた。

 自分よりも慌てる人をみると落ち着くの法則は、うんまぁ一理あるかもしれん。

 

「除籍除籍と言っていたが…蓋を開ければ。済まなかった」

「いえ、もういいです。良く考えれば分かることですし」

 

 パイセンから現二年生の1つのクラスは1度全員除籍処分を食らったと聞いている。今はヒーロー科に戻ったが、そういうことをする先生だとしても。今回のこれは……言ってしまえば仕方の無いことだ。

 

「…それで、要件は…?」

 少し高圧的になってしまった。先程の根津の一件があるからか、どうしても教育者という存在に今ばかりは嫌悪を抱いてしまう。

 

「……ああ、転校を勧めに来た。もちろんヒーロー科だが」

「──先生!」

 

 ヒーローを辞めたい、雄英を辞めたい。

 そう涙ながらに語った俺の姿をパイセンは知っている。だからだろうパイセンは声を荒らげた。多分こんなに怒っているのを見たのは初めてかもしれない。

 

「分かってる。ヒーローになりたくないことも…だがお前はまだ守られる立場だ。雄英に通いたくないのは…まぁ見てればわかる。だが、ヴィラン連合のワープ使い。そいつが拘束されない限り、正直どれだけセキュリティを厳重にしようが意味が無い。そしてそれの対処が唯一ヒーロー科の教師、プロヒーローが保護することでしか守ることが出来ない」

 

「だからお前の2つの望み、ヒーローを辞めたいこと、雄英を辞めたいこと。叶えられるのは後者だけだ、後者だけだが……お前はどうする? その提案をしに来た。母親からはお前に任せると言われた」

 

 

 

 

「先生…それっていつまで続きますか?」

 なんだよそれ。

「ヴィラン連合っていつになれば捕まりますか?」

 なんだよそれ。

「逃げた先でまた同じことになったらどうするんですか?」

 それじゃまるで、面倒な奴を追い出すみたいじゃないかよ。

 

「………先生。俺はヒーローの手は借りません」

 信じられるのは……もう

「助けてとも、これからは呼びません」

 隣の彼女に被害が及ばないように…

「希望とかにも縋りません」

 何かに縋るのは、もう辞める…

「──だから俺が一人で何とかします」

 ……気持ち悪い。

 

 

 ──俺が欲しかった言葉は……それじゃないんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

「体育祭が迫ってる」

「『クソ学校っぽいのきたーー!!!』」

 

 さっきまでの喧騒を全部なかったかのようにする盛り上がり。

 うん、俺って空気なのかな? わりと大根だったと思うんだけどさ、いやまぁいいんだけどね。

 

 それから四限の現国が始まり、いつも以上に頭に入ってこなかった。

 体育祭。

 確かにプロヒーローから注目される一番の機会。

 

 ……ここで──。

 いや、もうスタートを早く切ればいい。体育祭でアピールだなんて言う前に…。

 雄英で絡める上級生。

 そんなの、3人しか知らない。

 

 飯を食うために態々人混みの多い食堂を利用する。

 俺が食堂に入った瞬間に、空間が固まった。

 

「……まぁ、そうなるわな」

 

 噂を知っている。

 みんなが知っている。

 そんなのは知ってた。だから俺もそんなのは気にしない。周りの評価? 恐怖? 畏怖? 哀れみ? 蔑み? 

 そんな便所の汚れ程度のよりも、俺にはどうしても叶えないといけないものがある。

 

 その為に。

 

「通形先輩、天喰先輩……インターンについて聞かせてもらってもいいですか?」

 

 ──俺はヒーローになる。

 今度は嘘じゃない。

 

 動機は…………ヒーローになりたくないから。

 

 多分今の俺はしっかりと嗤えている。

 だってほら、こんなにも──。

 

 

 ーーーーー

 

 

 

「な、何事だぁ!!??」

 

 気がついたらクラスの周りに人が押し寄せていた。

 帰りの待ち合わせ…には多過ぎるな。

 

「意味ねぇからどけモブ共」

 

 敵情視察、雄英体育祭。

 周りからそんな声が聞こえてきて、ああそういう事かと納得する。

 ……それと同時になんだ、そんなことの為にこんなとこ(・・・・・)に来たのか…。

 

「どんなもんかと見に来たが、随分と偉そうだな。ヒーロー科に在籍するのは皆こうなのか? こういうの見ると幻滅するなぁ、普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、結構いるんだ。知ってた? 体育祭のリザルトの結果によっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだってさ。その逆もまた然りらしいよ。

 ……敵情視察? 少なくとも俺は、調子にのってっと足元全部すくっちゃうぞって宣戦布告しに来たつもり」

 

 

「なぁ、通っていいか?」

 

 普通科の生徒の長々とした話に声をかける。

 

「……邪魔なんだけど」

「……──! お前」

 

 気持ちよく語ってたのに話しかれられたことに、若干のいらだちを持っていたが。その声をかけてきた人物をみて生徒、心操は固まった。

 

 その生徒は今雄英1年で時の人。

 憧れのヒーロー科にいる……汚点。

 

「お前が、鞘無。ヴィラン殺して笑ってたってやつだろ?」

 初対面でなんで煽られてるのか考えたけど……そうだった、学校という閉鎖空間では良くあることだった。

 

「はぁ、だから? 退いてくれって言ってんだけど」

 肯定したことによって、クラスを囲ってた生徒が騒ぎ出した。

 

 

「やっべ、あいつが」

「普通に考えて退学だろ」

「よくいられるよな」

 

 うるせぇよ、好き勝手言いやがって。

 できるなら俺もしてぇよ。

 

「いいよなヴィランと戦えて、それで勝って。恵まれた個性ってだけなのに望む場所にいけてさ」

 

 なんで俺、こんな奴に言いたい放題言われてんの? 

 俺がお前になんかしたのかよ…。

 

「どうせすげぇ個性なんだろ? 羨ましいよ」

 

 ああ、だから嫌だったんだよ。学校来るのが。

 

「しかしすげぇよ、人殺しのくせ(・・・・・・)にまだ学校通ってる図太さ。見習いたいよ」

 

 的確に神経逆撫でしてきやがる。

 ………キツい。

 

 殴……。

 

「………はぁ、で? もういい?」

 

「強者の余裕ってか? 普通に考えて」

 

「なぁ」

 

「あ? ──ぁぁぁあ!!」

 

 …………こいつは人じゃない。

 ゴミを固めて作った人形だ。

 

「ヤバいって!」

「人殺し!!」

「えぐいえぐい!!」

 

 

「ちょっ! 鞘無くん!」

 肩を掴まれる。

 視線を移すと、頭がもじゃもじゃの……えっと…。

 そうだ、緑谷がいた。

 

「なに?」

「いくらなんでもやり過ぎだよ!!」

「何が?」

「何って、いまそこの生徒を攻撃したでしょ!?」

「俺が?」

「そう! 君が!」

 

 

 

 

 

 

「お前、俺が何かしたか見えたのかよ?」

 

 

 

 そうだ、心操人使が倒れた。

 それは分かる。目立った傷跡もない、それなのに腹を抑えて蹲っている。でもこれ程の数に囲まれても。

 それでも誰一人何が起こったか見えていない。

 

「それは…分からないけど! でも君がやったんだろ! だから──」

「だから……なに?」

「君は本当にヒーローにな──」

 

 次は全員が何をしたか目にした。

 見えないとかじゃない、もうこれは見たくない。

 そう思わせる程に。

 

「ぐっ……く…! …ッ!!」

 

 鞘無が緑谷の首を掴んでしめている所を。

 

「いいよなぁ、お前はあの場にいて突っ立ってるだけだったもんな」

 

「楽だろ? 安全圏から高みの見物はさ」

 

「それでお前が無茶しても大好きな先生が助けてくれるもんな」

 

「……良かったじゃん」

 

 しめる手を離して緑谷を立たせる。

 ゴホゴホとしまっていた首を確かめるように手を当てて、そして咳き込む緑谷。

 

「うん、悪者に立ち向かう。お前はいいヒーローになれるよ」

 

 落とした鞄を拾って汚れを落とすようにパンパンと叩く。

 すぐ近くでは、まだ心操が倒れている。

 

「良かったね、ヒーローに助けて貰えて」

 

 宣戦布告をしに来た相手に対してこの上ない皮肉を口にする。

 纏う雰囲気がUSJに行く前と全然違う……いや、USJのあの時よりも酷い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人と触れ合うのが怖いと思っていた。

 人を傷つけるのが怖いと思っていた。

 

「〜〜」

 

 人を殺した時の感触がフラッシュバックするんじゃないかって。

 でも、そうじゃなかった。

 

 緑谷の首を絞めても。

 しまって藻掻く感触が伝わってきても……。

 

 心操の腹を殴っても。

 殴った感触が拳に伝わってきても……。

 

「〜〜」

 

 なんにも感じない。

 昨日はあれだけ怖かったのに、あれだけ恐れていたのに。

 

 今日躊躇なく攻撃できた。

 俺という器には、もう修復が出来ないほどの綻びが生まれたのかもしれない。

 

 自然と嗤いが顔に張り付いていた。

 それと今回は……何も考えずに自然と口ずさんでいた。

 

 

「My fair lady〜〜♪」

 

 笑顔だと言うのに、頬に冷たい感触が滑った。




うん、どシリアス。
こっから立て直そうってんだぜ。どんなどんでん返しだよ。

1話1話重ねる毎に病んでいって……もう辛い。



心操人使って初期はやばかったよなー。とおもう。
なにせ物間との会話でね……
まぁ悪い噂が流れればこれくらいするかな?いやまぁしないかな?悪い噂に憧れのヒーロー科……うん。やれるだろ(と思いました。


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障害物競走って……それマ?

最近あったこと。
イラスト貰えて、あらすじのとこに貼ってるんですけど。結構僕見てるんですよ。一応保存もしてるんですけど、なんかここで見るのと違うじゃないですか?それで結構な頻度見てたんですよ。
そしたらiPhoneのSafariのよく閲覧するサイトに載ってた……いや、見すぎやろ。



みんな鬼滅の刃見に行きました?一応本誌読んでたんで内容は知ってるんですけど……ここは流行に乗った方が良いべきなのか?




 いつものように目を覚ます。

 パンを食べて、少しだけ母ちゃんと話す。学校に行くまでのちょっとした雑談だ。

 よく見てる、大丈夫か? とか辛いことがあったら言えとかは言わない。そうやって相談して欲しい人もいれば、話したくない人だっている。

 俺は後者だった。

 だからその優しさは嬉しかった、今日は弁当を作ってくれたらしい。

 弁当箱を渡された。

 

 ……なんでもない日常。

 こんな代わり映えのしないような日々。

 

 これが退屈で。それでいてその退屈が幸せの一端だったってのは……。

 

 壊れてから気付くもんだと常々思う。

 

 ──行ってきますと言葉を出した。

 ──行ってらっしゃいと返ってきた。

 

 優しい世界は。

 俺にとって安らぎの空間は。

 

 家の敷居を跨いだ瞬間に吹き飛んだ。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 雄英体育祭。

 それは現代のオリンピックと呼べる日本が誇る一大イベント。おそらくそれに伴う位の経済効果があるらしいし、本場アメリカからチアリーダーを休憩と余興の為に連れて居てるらしい。

 日本は思わぬ所でバブル並の経済水準をたもててるらしい。

 毎年オリンピックをしていれば、それ相応の額は稼げるだろう。それに施設は新しく作らずとも管理さえしていればいいのだし。言ってみれば一年に一回の大収入である。

 それは雄英にとってもであり、近くで出す出店であったりと、近辺の宿泊施設であったり、観光施設であったり。

 人が集まれば金も集まる。

 そういう意味ではヴィラン如きのせいで中止していい代物ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ですよねー。

 まさか通形先輩にインターンを教えて貰って、この体育祭でアピールしてからドラフトで選べる職場体験先に立候補したけど。

 なんか社長さんから「体育祭を見て判断する」みたいなこと言われたらしい。少しは見てくれるかもしれないけど、どうにも裏口とかそういうのが嫌いだからだとか。そしてオールマイトの生粋のファン。

 そりゃそうだね、正義の申し子だからね。わかるとも。

 

 選手控え室でワイワイしてる1Aの面々。

 かと言って俺に居場所がある訳もなく、端っこで椅子引いて座ってます。峰田も来んなオーラを出してるから来ません。うん、分かり合えるっていいよね。

 コスチュームが良かったねーとか話したりしてる声が聞こえる。

 いや、なんか俺就職浪人らしいから嫌だわ。全国放送でスーツ着るって、なんか今年こそは! が全面にですぎてて……まぁあれだ恥ずい。

 

 

「──鞘無」

 そうぼっちムーブしてたらイケメンくんが話しかけてきた。何それ惚れそう。

 

「俺はお前より強い」

「……は、はぁ」

 

 なんか凄い自慢されたんだけど。どした? 

 

「それを証明する為に、今日俺はお前に勝つ」

「……うん、頑張れ」

 

 なんかよく分からないけど、いいとこの坊ちゃんみたいな感じだし。親から勝ってこい! みたいなこと言われたんじゃない? それである意味話題沸騰な俺に知名度で負けたから怒られた…………いや、ないな。もう分かんね、知らんけど取り敢えず応援しとこ。

 

 轟の肩に手を置く。

 よし、頑張れ。

 

「…ちっ」

 

 すげぇ嫌そうな顔されて振り払われたんだけど。

 え、なんか俺悪いことした? さすがに身に覚えがないんだけど…。緑谷とは別に仲良くなかったから、心操と仲良しだったのか? なら納得かも。てか今日きてんのかな? 

 

 てかほっといてくれよ。

 この来んなオーラ見えてないの? 完全に近付かないでくださいって看板かけてるくらいのもんだろ? 

 

 というか控え室の空気が死んでるんだけど。

 なにこれ? また俺が悪いの? 

 この空気をどうにかしてあげよう、そう俺は先生とか嫌いだけど。生徒は正直いってそんなに嫌いじゃないんだよね。

 ほらだって仮にもヒーロー科だからさ、俺への陰口とかを視線で制止してるんだよね。なんだよお前ら良い奴かよ。

 仕方ない、ここは俺が引き受けよう。

 

「えー、布団が吹っ飛んだ」

 

 …………シーンって言葉ってこういう為にあるんだね。

 流石にこれは無いって分かってたけどさ、どうしてもいかなければいけない時ってあると思うんだよ。うん、だから面白いとか面白くないとかじゃないんだ。

 そう、だから……うん、悔しくなんてないぞ。

 よし一足先に会場にいこうかな、この空気は俺のせいじゃない。

 

「………プッ」

 

 どっかから吹き出した声が聞こえた。

 足を止めて、その方をゆっくり見ると耳郎と麗日が肩を震わせている。

 ……あれ? 意外と好印象だったり? 

 結構この雰囲気ならベストな選択だったり? 

 

「面白──」

 面白かったよな! と実は高校に入って、授業中以外には初めて女子に声をかけようとしたら。

 

「どけ、滑ってんだよクソが」

 

 ちゃんと教えてくれるとか、なんだよこいつ親切かよ。良い奴じゃん、同列に扱われた時は嫌だったけど…どうだ? 今なら俺と同列に扱ってあげてもいいぞ。とことん足引っ張ってやるけど。

 

 なんだ、意外といいヤツらじゃん。

 ……いい奴らだ。

 

 でも俺はヒーローになる為に、こいつらを全員踏み台にする。

 その覚悟をそっと胸に秘めた。

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

「俺が一位になる」

「せいぜいハネのいい踏み台になってくれ」

 

 笑った。

 

「あははは!!」

 

 笑った。

 心の底から。

 それと同時に安堵した。

 

 みんなそのつもりでここに立ってるんだ。

 

「馬鹿だ! 馬鹿がいる!!」

「んだと殺すぞプリン野郎!」

 

 俺だけが全員蹴落としてでも這い上がろうとしてる訳じゃない。

 少なくとも、今のに感化される以前からその心構えだったやつが居るのは目を見れば分かる。

 Aには俺除いて二人、Bに一人、それで普通科の心操。

 

 なんだよ、俺だけじゃないのかよ。

 いつもなら不貞腐れながら言ってそうな言葉を、こんなにも清々しい気持ちで心に落ちてくるとは思ってもみなかった。

 

 

 それからすぐしてミッドナイトから第1種目が障害物競走であると聞かされ、所定の位置につく。

 前の方は直ぐに取られてしまったので、全体で言うと真ん中からやや後ろの位置と言ったところ。

 

 

 

 

 

 

 

 夢に向かっての第一歩。

 それを踏み締める様にして地面を蹴る。

 

 

 ──始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………凍った。

 

 足が全く動かないんだけど……。

 え、冷たい。嘘でしょ!? 俺の夢への第一歩、地面を踏みしめる前に氷で固まったんだけど。

 流石に予選落ちじゃ、通形先輩のとこ誘って貰えないよね? 

 

 足裏痛くなるけど……。

 仕方ない、俺の個性って長時間使うと痛いし痺れるんだけど……うん、ここで終わるくらいならやった方がいいよね。

 

 よし、それでは行きます。

 ワールドトリガーで木虎がやってた、足スコーピオンです。

 

 お気に入りの運動靴を破いて足をブレードに変えます。

 氷も外からの攻撃には強いですが、中からの攻撃には弱いみたいです。こんなの常識だよな! 

 

 はい、問題です。

 轟が割と広範囲で地面を凍らしました、俺は靴を履いていません。どうなるでしょうか? 

 はい、ブレードを解除したら足の皮膚がくっついて取れなくなる。

 

 それでは続いて新しい問題です。

 俺の個性の最高発動時間は幾らでしょう? 

 痛くなったり痺れたりするので大体20秒くらいです。

 

 

 はい、つまり何が言いたいかと言うと。

 つべこべ言わず走れってことですね。

 走ろうと思ったら地面が滑って顔面から落ちました、轟絶対許さん。それと八百万、ごめん。

 

 やったことないけどスピードスケートみたいにやろう。

 まさか初のスケートが実質オリンピックって、どんだけ選手に恵まれなかった国の代表だよ。アンビリーバボーで紹介して貰えるレベルだぞ。

 

 あ、刃が地面に刺さらない。

 これがスパスパの実の正しい使い方だなーー。

 

 結構出遅れた。

 轟の氷のせいだけど、滑って楽できたから恨まないでやる(仕返ししないとは言ってない

 

 さて、なんか争ったあと感のあるロボットゾーン。

 なんか焼け野原を一人で歩いてるみたい、なんかやな気持ちになるな。心細いんだけど……。

 

 ──ブ、ブッコロス

 ──コロス

 ──コロ、ココココロス! 

 ──ニンゲン、ハイキ

 ──ゼッタイ、ユルサナイ

 

 

 

 ………あれ? なんかロボットいるくね? 

 もしかしてみんな拘束とかぶっ壊す系じゃなくて、もしかしてスルーで突破しましたか? 

 ……それって狙う人が多かったからできるのであって、この場に俺しかいなかったら。

 

 

 ──ニガサナイ

 ──コロス

 ──ゼッタイ

 ──ショス

 

 

 ………………オワタ。

 

 

 ……ってそうか、人じゃなくてロボなんだから。

 範囲攻撃していいんだ──。

 

 最近逆刃刀使ってないなー、と思いつつも触手剣で俺ゾーンを作り走っていきます。

 うん、よく斬れる。油とか錆とか大変らしいけど新品を作り続ける個性の使い方をして触手剣使えば。言ってしまえば無双ゲームの技みたいに出来る。

 

 なんか遅れたことによってアピール出来てる気がする。

 解説の2人のセリフ的に俺っていい感じなんじゃない!!?? 

 

 さすが轟くん! やるじゃないか! (でもやり返す

 これからは「さすトド」って訳そう。うん、さすトド。

 俺のアピールの場を作ってくれるとか、普通に良い奴じゃん。爆豪に轟にギップ狙うのあざとくね? 普通に親切にしてくれよな。頼むぜ、今の俺には染みやがる。

 

 

 よし、なんかでかいのも小さいのも大体壊したし、うん次行こう。

 なんか解説でレースのこと忘れてね? みたいなこと言われたけど、全然忘れてませんとも。最初のとこでリタイアした人を除いて、いま競技に参加している人の中でダントツでビリだったとしても。

 うん、頑張ろうぜ!! 

 

 ……あ、綱渡りは手を輪っかにして勢いつけて渡りました。

 大っきい公園の遊具であるよな、ロープを滑るみたいな。意外とできてビビったわ。

 ……いや、全然人いないんだけど…。

 流石に怖い。

 

 え、もう終わっちゃってる? 

 でもゴールしたらそれっぽいアウンスくるよな? けど来てないってことはまだ行けるってことだよな? 

 なんかすごいネガティブ退散したい! ここ数日分飛んで欲しいけど、多分瞬着か何かで付いてて剥がれそうに無さそう。

 

 ロボら辺で辞めたけど足ブレードを長時間使用したからか、めっちゃ痛い。走れてるから骨折とかはないと思うんだけど……。ヒビくらい入ってる? いや、それって骨折と同じじゃん。

 金属疲労的な原理か? やったこと無さすぎて分からない……。

 

 多分血剣は長時間いけて、体剣は長時間は無理? そんな感じかな? 

 ここら辺ってしっかりやり切ったことないから、どうしても憶測でしかはかれないんだよね。

 失敗して腕壊れました、はシャレにならんからね。

 自分の体は大事にしよう!! 

 

 

 

 第二関門おわって、最後の第三。

 よし、やっと合流できた。

 しかも先頭だった轟とか爆豪が見えるんだけど…なに? これどんだけ難しい関門──

 

 

 ──BOOM!! 

 

 ………うぇ? 

 爆発? 

 

 これはやり過ぎなんじゃない雄英? 

 至る所で爆発してるんだけど………。

 嘘でしょ、こんな地雷原を雄英は所有してんの? ……ってさすがに威力抑えてるか。

 地雷ってあえて即死しないように作られてるって聞いたことあるな。たしか治療とかさせる為に瀕死に追い込む……みたいな感じだったよな。

 

 何人か食らってる跡あるけど、確かに動けてるな。

 痛そうだけど………。

 

 

 

 

 ………………てか緑谷なにしてんの? 

 

「え! …あ、鞘無くん」

 あ、意外と普通に喋ってくれるんだ。首締められた相手にそんな感じに対応できるって凄いな。もしかして虐められてた経験とかあったりして。

 雄英合格するくらいだし、無いか…。

 

「なんで地雷集めてんの?」

「あ! …えっと……それは……」

 

「まぁいいや、これ…そうだな、5個貰っていい?」

「え! 地雷を!? …別にいいけど、多分足りないよ?」

 

 足りない? 何が?? 

 まさか殺すには足りないってことか? 意外と闇深いなコイツ。

 

「いや、多分足りると思うんだけど…貰っていいか?」

「あ、え……うん。いいよ」

 

「そか、ありがと」

 

 前に一悶着あったけど、意外と会話もできるし何か身構えてたのが馬鹿らしいな。ヒーローはあれだけど、ヒーロー科にいる奴らは……いい奴だ。

 

 そうだな、できれば正しく歪まないヒーローになって欲しいな。

 

「─────」

 

 貰って地雷原に走り出した時、緑谷の声が聞こえた。

 正直どこのことを言ってるか分からなかったけど……。

 

 

 ──ごめん

 

「いいよ、これでチャラだ」

 

 根本的にヒーローに向いてないんだろうな俺は。

 誰も俺がヒーローとして戦ったことに───。

 相澤の言っていた、いい所は多分訪れないんじゃないかって……ああ、そうだった。

 

 期待するのは辞めてたんだ。

 

 

 

 

 緑谷から貰った地雷を血の剣紐で縛ります。もちろん切らないように逆刃刀コーティングです。地雷を5個も重ねると炊飯ジャーくらいになりました。これって5個にしたら人殺せるとかないよね? ……ま、いいや。

 

 それではジャンピングシューズっぽく作って飛びます!! 

 

 

 足を酷使したからかいつもより飛べませんでしたが、大丈夫です! 問題ありません。

 狙うのは一つだけです。

 

 空中で腕を剣にして伸ばします。

 その先には炊飯ジャーみたいな感じになってる地雷。

 

 個性把握テストのソフトボール投げと同じです。

 腕をカタパルトのように使って! 

 

 轟へ仕返しします。

 

 

 

 

 

「エクスプロージョン」

 

 上空からの突然の爆撃。

 その衝撃に連鎖するように発動する地雷。

 

 轟と爆豪が近かったのもあって………あ、なんかごめん首位にたった。

 ……ちょっとゴールまで飛ばすわ。

 

 ジャンピングダッシュで一位取りました。

 なんとも言えない雰囲気……ではなく、最下位からのどんでん返し。そのおかげもあって歓声が俺を包んでくれた。

 

 まぁ騒げる理由があれば騒ぐよな。

 

 よし、1位とったけどどうですかね、サー・ナイトアイさん。

 職場体験先としてどうすか? 

 

 




シリアス続きでギャグ挟もうとしたんだけど……。
以前のようキレがないのが自分で分かる。エクスプロージョンはだいぶ前からキメてたのに………。


無理やり取り繕ってギャグして頑張ってる主人公……いいなぁ!


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騎馬戦って……それマ?

「一緒にやりましょう! 1位の人!!」

 

 唐突に声をかけられた。

 まさかの1000万ポイントという、いつの世代のクイズ番組だよ。と思っていたら、なんかタンクトップに声をかけられた。

 あ、間違えた。タンクトップ着た人に声をかけられた……まさかこいつS級か!? 

 

「えっと……いいのか? 俺狙われまくるぞ?」

「はい! 望むところです! その方が私のベイビーが輝くので!!」

「べ、ベイビー? 個性のこと?」

 

 子供作る個性って……すごくエッチだ。

 

「いいえ! 私はサポート科ですので!」

「ああなるほど、だからベイビーか」

 

 作ったやつなら……産みの母的な意味でベイビーか。まぁ発明者って基本的に変人の巣窟だし、変態じゃないと画期的な物って作れなさそう(小並感

 

「いいのか? 俺の噂とか…」

「噂? 知りませんし興味ありません!!」

 

 なんだよこいつ、男前かよ。惚れちまいそうだったぞ。やばい泣けそう、姉御って呼んでいい? 

 後ろからはみ出し乳見ていい? 

 

「あと二人か……知り合いっている?」

「いません! 私雄英に入ってから生徒と話したことありませんから!!」

 

 まじかよ、こいつもボッチかよ。

 なんでボッチなんだよ…。類は友を呼ぶって事か……。

 

 

 いや、なんかこのパターンどっかで見たことあるぞ。

 見た目良くて中身が変、何故か仲良くなって個性見せ合う。最終的には…………。

 

 大丈夫だよな? 

 てかそれ以外に選択肢ないから断ることできないけど……大丈夫だよな!? 

 

「え、えーー! 皆さん」

 

 こうなったら最終手段だ。

 誰でもいいから頭数揃えないと……。

 

 

「本戦に進みたい人、この指とまれ」

 

 幼稚な行動と言われようが、パッと見で分かる方がよっぽどいい。

 何人かこっちを見るが、近寄ってくる様子はない。

 やはりこういうのは自分から誘わないとダメか? 

 

 峰田…と行きたいところだけど、本気で勝ちに行くなら俺が上になるのは絶対条件。下に峰田はキャラデザ出来に無理がある。

 それにモギモギは上手くすればゲットできるから気負う必要はない。

 問題は頭数……。

 

 ちゃんと勝つ意思のあるやつ。

 他人を蹴落としてでも勝とうとする野心。

 

 

 

「なぁ、お前……ってなんだこいつら」

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

「洗脳系か、おい起きろ尻尾」

「おい!」

 

 野心のある奴、それを探しているとチームを作っていた。それを全部捨ててまで選ばそうとしたのだが、尾白の様子がおかしい。

 なんて言うか心ここに在らずって感じで、まるで洗脳されてるみたいだ。たったまま寝てる。

 

 軽く衝撃を与えたら尾白は「───…は!?」となって起きた。それをしている時に心操には怒鳴られたが……上手く使えば。

 

 他にも二人、青山とB組の奴を叩き起こす。

 さぁ、これでもう……。

 

 

「──心操、俺と組もう」

「巫山戯んな! お前俺の! 俺の──!」

 

 範囲や視覚系じゃない? でもある程度の痛みを与えれば解けるってことは。

 

「そうやってお前みたいな奴らが俺たちを押さえつけて登っていく! そんなことして楽しいかよ!」

「いや、そ─────返答がトリガーか」

 

「──な!?」

 なんでだ!? 

 

 と心操が言うが、原理としては簡単だ。

 衝撃で解けるなら、痛みでも解ける。それに目立たない人ならまだしも、1位突破。催眠したままにすれば催眠系の個性を持つ心操が疑われることになる。

 時間ギリギリで解かれても、最悪発目の作った鉄クズを山にすればいい。

 

 話しかける前から予め指を剣にして腕に刺していた。

 元々の激痛、一瞬洗脳で飛んだが痛みで直ぐに自我を取り戻した。

 

「さて、お前の売りは初見殺し。断るなら情報をばら撒くが……どうだ? 俺と組まないか?」

 

 全員を蹴り落とす。

 それは何もチームメイトは含まれない、なんて曖昧なものじゃない。

 

 

 

 ──全員だ。

 俺以外全員が───敵。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

「発目」

「フフフ」

 

「心操」

「……ち」

 

「芦戸」

「よっしゃ!」

 

 

「──勝つぞ」

 

 発目の押し売り、心操の脅迫、芦戸のダメ押し。

 何とか頭数は揃えられたが、まぁ悪くないチーム編成なんじゃないか? 

 遠距離には発目のベイビーを投げればいいし、芦戸のローション床で敵の騎馬は早くは動けないし、ここ一番って所では心操の強制催眠がある。

 それに──

 

 

『「実質1000万の奪い合いだぁ!!」』

 

「おいどうすんだ鞘無! 迫ってきてるぞ!!」

「は? 奪うに決まってんだろ」

 

 遠距離というほどの力がある訳じゃない。

 でも、この会場の…それまた騎馬戦という足が不安定な状況で中距離を自由に動かせる俺の触手剣は……。

 

「なんだこれ!? 糸!?」

「ぎゃ! ぎゃー! なんか絡まった!」

 

 奪いに来ていたB組の鉄っぽい人と、上半身マッパの葉隠。

 あ、やばい糸の感触的にフォルムが………(鼻血

 

「お、おい大丈夫かよ!?」

「問題ない、いいパンチ貰ったがな」

「大丈夫かよ!?」

 

 意外とこいつ明るいな。

 心操といい緑谷といい、切り替えが早い。心操の場合は何がなんでもアピールしないといけないというのもあると思うが。裏切りはしない……と思いたい。

 こういうのが渦中にいる方がいい、常にイェスマンがいるよりはこういう存在の方が大事な時もある。

 

「血渦網羅」

 

 心操の催眠を解くために傷つけた切り傷から血を極薄で糸状にして操作する。あまり多すぎたら貧血で倒れてしまうが、今回使う血量はせいぜいコップ一杯分あるかないか。衛生上良くないと言われてしまうが、この量なら戻しても捨てても問題ないと思う。

 いや、検査とかしたことないから知らんけどさ。

 

 自身から約10mくらいのサークルを作って、血の糸を自由に動かす。突っ込んできた鉄と真っ裸を糸でバランスを崩させて、ハチマキを刺して取る。

 長時間の維持はキツいが、これを一番最初に見せるということで、これが奥の手じゃないということを植え付ける。

 

 実際はこれが騎馬戦じゃ1番使えるけど。

 爆豪、青山、上鳴、轟には効果ないだろうな。効くかは賭けだったけど、何とかなって良かった。

 

 自分の所持ポイントに鉄と真っ裸の分が上乗せされる。

 二人ともリーチで勝てないと踏んで、距離を開ける。

 よし、これなら……

 

 

 

 戦える。

 そう思った時──

 

 

「待たせたなぁ! 鞘無ぃい!!!」

 

 後ろからモギモギボールが投げられて、頭に当たった。

 

「ってねぇな、何しやがる」

「今日こそはお前を負かしてビービー泣かしてやる! 前の電話の時みたいに!」

 

「バカお前やめろ!」

 

 そんな軽口を言ってボールが来た後ろを振り向くと……。

 

「おい障子、それは反則だろ」

「何も問題は無い、先生から許可は貰った」

 

「流石に身軽すぎる!! 芦戸、後ろに撒き散らせ!!」

「了解!」

「1位の人! 私のベイビーは!?」

「今はまだ待て、普通の騎馬ならまだしも、障子単体なら絶対よけられる。企業アピールで欠点つかれるのは良くないだろ!」

「なるほど、分かりました!!」

 

「とりあえず逃げるぞ、モギモギぶつけ続けられりゃ負けるのは俺らだ」

 

 糸でモギモギを絡めとるのもありなのだが、こんな序盤で血の糸を捨てるのは早すぎる。せめて中盤くらいまではもっててもらいたい。

 

「逃がさないわよ」

 

 すると障子の腕の中から長い舌がこちらに向かってきた。

 

「っぶね」

 

 反射で斬りそうになったが、何とか堪えて。

 しかしそのせいで回避が遅れて、なんともギリギリの所で避けることになった。

 

「鞘無ちゃん、貰うわね」

 舌をこれでもかと動かして、俺の首に巻かれてある1000万を取ろうとするが。

 

 ──逆刃刀

 

 ココ最近使っておらず、敢えて1度普通のを作ってから逆刃刀に変身させた。

 それを蛙吹の舌にぶっ当てて、軌道を逸らす。

 

「障子! ホントに反則じゃないのかそれ!?」

「…………ああ」

 

 なんだその間は…。

 自分でも反則ギリギリって分かってるのか。

 にしてもその方法があったなら、俺もそっちに……って、今は敵だそういう考えは辞めだ。

 

「発目! ジェットブーツで移動! 芦戸移動先にローション!」

「ローションじゃなくて溶解液!!」

「あいあいさー!」

 

 本来なら飛ぶために使うジョットブーツを移動に使う。

 しかし、それでは3人も運ぶことは出来ず芦戸のローションを使って摩擦を減らす。

 

 前に心操、後ろに残り2人。

 心操は最後まで取っておくとして、ここ2人はかなり有能だ。

 

「調子乗ってんじゃねぇぞ! プリン野郎!!!」

 

 逃げたと思ったが、一人勝利へ貪欲なやつが上からやってきた。

 

「マジかよ!? そんなのあり!?」

「ありだ死ねェェエエ工!!」

 

 爆破の瞬間に剣から普通の手に一気に戻す。

 この個性で1番の強みは耐久やら攻撃性だが、それに負けずとも劣らないのが形成スピード。地味で一見目立たないが、これは殆ど目に追えるものじゃない。

 

 当てる対象を失い爆破が空振るが、爆破の余波だけで騎馬が崩れそうになる。

 あれがテクニカルでありなら──。

 

 

『おおっと!? 爆豪に倣って、鞘無も騎馬から飛んだァァ!!』

 

 でも俺の個性は爆豪みたいに空は飛べない。

 

 心操の頭を踏んで爆豪の腕を握る。

 落下する前に何かしら爪痕を残しておこう。

 

 爆豪は自分が攻撃されていると悟ると直ぐに応戦。

 しかし、空中でバランスを崩され上手く爆破を発動できない。仮に上向きに発動してしまえば地面へ急直下。1人ならまだしも、掴まれてる状態なら賭けの要素がちと厳しい。

 

 なので爆破を使わずに爆豪は俺のハチマキを取ろうとする───が。

 

 

「あぁん!?」

 

 上手く掴めずにとることが出来ない。

 しかも奪おうとした時、その時が1番隙を晒すことがある。

 

 そこを……。

 

「とったどー! ……じゃあな爆豪、あでゅー」

 

 ハチマキを取り、爆豪に向かって発目から渡された捕縛銃を発砲。

 動きが俊敏とか、反射速度が獣とかゼロ距離ならば関係ない。

 

「っそが!? 後でぶっ殺す!!」

 

 地面スレスレ。

 爆豪は落ちることを何より危惧し、捕縛網で固まった手を下に向けて爆破。それで何とか落ちることなく上空に再度上昇。1発の爆破で捕縛網はほとんど焼け落ちた。

 

 

 だが問題は飛行能力のない鞘無。

 と思われたが、使った捕縛銃を地面に投げて足と地面の踏み台にする。そこから大きくジャンプして騎馬に戻る。

 

「ああ! 私のベイビー!!」

「耐久力が課題だな」

 

 踏みつけた張本人とは言えないセリフに、発目は後にこう語った。「あの人クレイジーです!!」と。

 

「頭が……お前いつか殴る」

「はは……」

 

 頭を踏まれた心操は鞘無のことを恨めしそうに、芦戸は急展開に着いていけずに笑っている。

 

 

「おいおい、マジで休ましてくんないの?」

 

 目の前には爆豪と同じく、クラスで勝利に貪欲な目をしていた一人。轟がたっていた。

 でも……。

 

「お前、個性的に上じゃなくて下だろ。血迷ったの?」

「関係ねぇ」

 

 轟は八百万から創造された棒を手にして。

 

「こうすりゃ関係ねぇ」

 

 轟の氷が前から勢いよく飛んできた。

 

「芦戸! お前あれ対抗できるか!?」

「絶対無理!!」

「なら地面に強めの溶解液!」

「だからローション! ……じゃなかった間違えた!」

 

 お前ら余裕か! と心操からお叱りを受け真面目にする。

 芦戸が下に溶解液の膜を張れたのを確認して、逆刃刀のまま攻撃に対抗する。

 

「いくぞ、【必殺・秘剣シリーズ】」

 

 流水岩砕剣ではなく、数多の流派を見てきて俺が作った所謂俺だけの為の……俺による、俺のための、俺だけの流派。

 人は我流と言うけど、なんかかっこいい方がいい! 

 

「【壱の太刀《一閃》】」

 

 轟の氷を真っ二つに砕く。

 発信源まで砕くように切り込んだので、轟の棒まで砕く。

 

 地面に触れさえしなければ、驚異にはならない。

 

「やっぱ防がれたか……だが、お前らは」

「凍ってて動けないだろ? 悪いけどそう簡単には行かさせんよ」

 

 再度心操の頭を蹴って、空中に飛び立つ。

 どっかからか「死ねカス」と聞こえてきたが、恐らく爆豪だろう。うん、間違いない。

 

 砕いた轟の氷を足場にして進む。

 上手く空中で足場っぽくなっているので、非常に助かる。

 

 轟の方に向かっている間に、帰りのために何個かは更に上へと上げて使わない分は轟へ牽制として打って狙う。

 しかし、これに八百万が反応。

 

 ご飯の杓文字みたいなのを前に出して防ぐ。

 

 

 ──悪手だ。

 自分より早い相手に、視界を塞いだら。

 

「馬鹿! 八百万!!」

 自分の視界から消えた事で轟が声を上げる。

 やってから八百万もしまったという顔をしており、杓文字の上に到達。

 

 

 轟は俺を確認して掴んで直接凍らそうとするが…。

 接近戦はそこまで強くないのか? 

 

 手に触れないように避けてから、顎に向かってアッパーカット。

 気絶はしないと思うが、数分は頭がグワングワン揺れて最悪の気分になるはず。

 

 次に首に巻いてるハチマキを取ってメガネを踏んで離脱。

 八百万に杓文字を投げられて攻撃されたが、ちょうど足場になってラッキー。

 

「轟さん! 取り返しましょう!!」

 八百万は張り切って詰めようとするが……。

 

「まて八百万くん、轟くん大丈夫か」

「…クソ、悪ぃ。視界がまだ安定しねぇ」

 

「あいつやべぇって! 1人だけサーカスみたいになってる!」

 

 上鳴がそういい、飯田もそうだなと思う。

 身のこなし、近接戦において恐らくクラス最強。

 

 分かっていても、今まで本気を出してなかった。

 いや今でも本気ではないのかもしれない。

 飯田は笑みをこぼす。

 

「超えがいのある壁ばかりじゃないか……!」

 

 緑谷、鞘無、轟、爆豪。

 飯田の中で静かに闘志が燃え上がる。

 

 

 ーーーーー

 

 

「2位3位からポイント奪って、随分と調子に乗ってるみたいじゃないかA組──」

 

「発目、ジェットパック起動」

「やっと出番ですね! これ私の一番の力作なんですよ!」

 

 発目が背負っているジェットパックからかなりの熱量が出てくる。

 それを──

 

「わり、借りるわ」

 

 発目の肩のジェットパックを背負う部位を切って、起動しているジェットパックを声のした金髪の方へと投げる。

 

「……べ、……ベイビぃぃいいいいい!!!!」

 

 血の剣を作って、熱量の高い場所へと投げナイフのように刺す。

 

 

 途端──。

 

 

 ──BOOM!!! 

 

『あいつヒデェな、仲間も敵も同時に攻撃したぞ。てかなんで物間攻撃されたんだよ』

『知るか、本能だろ』

 

 

 あれはB組の勝利を見据える目をしていた奴。

 どんな個性が知らないけど、心操みたいに声をかけて来たってことは…。多分絡め手系の個性。

 早めに潰すに限る。

 

 ──しかし。

 

 

「危ないじゃないか!? A組は声をかけられただけで危険物を投げるのかい!?」

「危険物じゃありません! 私の可愛いベイビーです!」

「お前自爆機能の精度もっと上げとけよ、断空で防がれたじゃねぇか」

「無慈悲!?」

 

 空気の壁みたいなものに爆発を防がれて倒すことは出来なかった。

 恐らく下のやつの個性、上の金髪の個性じゃない。

 

「同じ剣の個性同士斬り合おうじゃないか!」

 

 金髪は腕から剣のようなものを出して。

 

「くっそ。完全に質量保存の法則無視してる!」

 特大のブレードを出して攻撃してくる。

 大きさだけでいえば、完全にこっちが負けている。

 

「没個性お疲れ様、身体能力で誤魔化してるみたいだけど。どう考えても君じゃ僕に勝てない」

 

 次に振り下ろされた時。

 逃げるでも立ち向かうでもなく、俺は──。

 

「【弐の太刀《流》】」

 

 攻撃を完全に逸らした。

 剣先で軌道を掌握して、騎馬に負荷のかからないよう地面に落とさせる。

 

「刺さった、抜けない!」

「お前この個性あんまり使ってないだろ、せっかく強い個性なんだから──」

「ああごめん、これじゃないんだ」

 

 すると物間は息を吐く。

 なんだ? と思うも、その答えは直ぐに返ってきた。

 

 ──ガン! 

 逆刃刀が空中で止まる。

 

「……は?」

 

 個性複数持ち………? 

 

 

 

 

 ──やばい、変なもの思い出す。

 やばいせっかく集中してたのに…。

 

 やばいやばいやばい。

 

 ──逃げ……逃げないと……。

 

 真下から剣が生えるように攻撃される

 

「こいつぁ! 俺の個性だ!!」

 

 下からの攻撃に為す術なく食らう。

 痛てぇ。

 

 そうだ、ハチマキ…。

 

 横から思いっきり殴られる。

 

「はは! エリートってのは案外壊れやすいって本当だったんだね!!」

 

 頭にすげぇ衝撃が走る。

 上鳴にUSJで受けたくらいの衝撃だ……。

 

「ファイア」

 

 殴られた場所に再度衝撃が走る。

 しかもさっきのより断然強い……くそ、釘パンチみたいなもんか。

 

「じゃあ貰ってくよ、えっと……誰だっけまぁいいや」

 ──ツル。

 ハチマキを取ろうとしたが、掴もうとすればサラサラとしたものが邪魔して掴むことが出来ない。

 

「ん? 取りづらいな、なんだか粘ついて──グッ!?」

 

 頭に3回目の振動。

 ビビって損した、多分こいつのは個性複数じゃない。

 

 2回目の衝撃で理解して、3回目の衝撃で頭がサーと冷えていく。

 

「頭突き…くそ、野蛮だなA組は」

「痛てぇのはこっちだよ、このチートが。コピーとかせこ過ぎだろ」

 

「せこいはコッチのセリフだ! お前ハチマキになんかつけてるじゃないか!!」

 

 爆豪の時も、今回も。

 完全に取られている場面はあった、だが取れてない。取られていない。

 それを1番油断していた時に触った物間は確信して詰め寄る。

 

「はぁ? ハチマキに個性で攻撃したらダメだなんて言われてませんけどぉ? なぁ芦戸!」

「そ、そうだねー」

 

 芦戸は口笛を吹いて視線をどこかへと持っていく。私しーらないとでも言いそうな反応に物間は怒る。

 

「それだけじゃない! ハチマキの止めるところに何か付いてるだろ!」

 その物間の答えに「あちゃ、バレたか」と頭をかくが、全然焦ってなどいない。

 

 

「峰田の攻撃がたまたまハチマキの留め具の所に当たって、たまたま固定しただけだろ? 何がイカサマだよ、文句があるなら現在進行形でモギモギ投げまくってるアイツに言え」

「小癪な…流石A組なだけある…しかも君は筆頭だろ? 鉄哲から聞いたけど、その騎馬の生徒を殴って脅したらしいじゃないか? それに………ヴィランを殺して笑ってたなんて──そんなヒーローらしからぬ所、まさにヴィランじゃないか!」

 

 物間の声はやけに響いた。

 それもそうだ、わざと大きな声で言っている。

 しかもその時たまたま爆豪の攻撃は止んでおり、観客席にまで聞こえたはずだ。

 

 ──プロヒーローの元にまで。

 

(さっきから癇に障るとこばっかりついてきやがる)

 

「おい心操、なんか言い返してやれ。口でお前に勝てるやつなんて居ねぇよ」

「黙れカス」

「ひでぇ」

 

(本当に……ひでぇな。これじゃあ俺の体育祭が………ダイナシダ!)

 

 真剣、逆刃刀──。

 

 

取捨選択(チョイス)

 

 100%の集中状態。

 悟りの領域。

 

 何も考えない、考えたくない。

 目の前の害悪を──斬る。

 

 指定は服。

 

 

「───」

 

 ………

 

 

 

「よし、逃げるぞ。なんか言われる前に」

「……お、お前今度は何したんだよ! 流石に退場させられるぞ!」

「早く行け、あの場にいたら視線が痛いぞ! 経験者からのアドバイスだ」

「だからお前、何したんだよ!」

 

 心操の髪の毛を引っ張って移動させる。

 色々と言わせたけど、今回は気にしないことにする。

 うん、やり返したし……今回はチャラ。

 なんならやりすぎたかも、ごめんね。

 

 

「逃がすな、泡瀬追え!」

「了か──ってえぇ!!!」

 

「うるさいな! 早く追ってくれ泡瀬」

「お、お前服!」

 

「服?」

 

 物間の服は途端に細切れになり、ジャージ、下着そしてハチマキ諸共粉々になった。

 

 

「な!?」

 

『やべ! カメラ止めろ! 全国放送だぞ!?』

『あいつ…』

 

 全国放送だが一瞬ブツが写ってしまった。

 そしてテレビで雄英体育祭を見ていた人達はこう口を揃えた。

 

 

「戻った時は、もう騎馬戦終わってた」……と。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 結果

 1位、鞘無チーム

 

 鞘無

 心操

 発目

 芦戸

 

 2位、爆豪チーム

 

 爆豪

 瀬呂

 切島

 砂藤

 

 3位、轟チーム

 

 轟

 八百万

 上鳴

 飯田

 

 4位、緑谷チーム

 

 緑谷

 麗日

 常闇

 尾白




カメラを止めるな!ってことですね。このあとの轟と爆豪と鞘無の三すくみのバトルは熱かったんですが、テレビ勢の皆さんは見れません。(無慈悲

え、いくつか疑問が残ると思われるので答えていきます。

まず主人公の我流に名前あったの?ですね。
結論からいえばあります。数多の剣から作った【八千流】か迷いましたが、【秘剣】にしました。
呼吸にしようとしましたが、呼吸関係ないやんと思い断念。
言ってもやったことは攻撃をずらすのと、めいっぱいの攻撃だけなので秘剣にする必要ない?と思われますが、かっこいいからつけます

次に轟のところであったやつですね。
メインの氷塊を主人公が叩き割りましたが、地面を凍らす技も轟君は使ってました。
しかし芦戸の強めの溶解液で凍りにくくさせました。
溶ける溶解液だから、それくらいできるくない?と思いしました。完全にオリ設定ですが、問題ないかな?

あとはまーあれですよ。
空中を氷塊を足場にしましたけど、あれって現実じゃ無理だよ?(煽り
ってなりますけど、残念ながらヒロアカ時空です。できます

これくらいですかね。
次くらいで一旦設定を載っけたいです


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設定って……それマ?



【炭酸ジュース】様よりいただきました。


【挿絵表示】


【挿絵表示】



鞘無(さやなし)剣心(けんしん)

ヒーロー名【】(決まってます

 

 

 

個性名【体剣】

 

体を剣に変えることができる。体を変えた時は名刀と呼ばれるくらい切れ味と耐久力があるぞ!筋肉や骨や血液や細胞までもが剣になり、破壊することはほぼ不可能。しかし、極薄にしたり血液だけで作った場合はそれほど耐久力はない。

 

個性使用時は血が止まった状態の様になり、長時間使用は制御が不安定になるぞ。20秒までは問題なく使えるが、30秒を超えた辺りからは切れ味が落ちる、または逆刃刀の時に間違って切れてしまう可能性が高くなる。

それ以上は激痛が伴い、解除しないとやばい。

 

五分以上で後遺症が残るぞ。(血をとめた時になる症状)

 

しかし、血の剣の場合は何分でも変えてられるが、体の中に戻すことが出来なくなるぞ(空気に触れさせて血液が固まるため)

地面に血液を流してそれを剣にすることは……できる。しかし、これも血液が固まる前のみ。それ以上は変えることが出来ない。

 

剣同士の結合ができる。

例えば指を切り落としたとして、指を剣に、付け根を剣に変えて結合させて指に戻すと一応戻る(すごい機能

 

伸縮スピードは「今の500倍や」程早くはありませんが、結構早いです。

 

剣に変えることはどこでもできますが、臓器や脳などの重要な部位を変えたことはなく。ビビってやってません、これからもしないと思います。

 

取捨選択ですが、これは100%斬る対象を集中して見なければなりません。なので見えないものは斬れません。

そして斬れるものは指定した一つだけ。

 

例「服を来た人」指定【服】体は斬れることなく、着ている服を斬り刻む事になります。インナーも見えてはいませんが、服の指定の中に入っているので斬れます。

 

 

 

形状変化

 

【体剣】最も耐久力のある形。基本的に壊れない。オールマイトやオールフォーワンの奥の手レベルでは壊れるかも……。色を変えられる。濡れ羽色を青と勘違いしているが、未だに誰からも指摘されていないので青と思っている。切れた時は黒になるが、心の色?とか曖昧な理由、狙ってやっているわけじゃなく勝手になった。切った感触がモロに伝わってきて熱い、冷たい、ヌメヌメするなど分かる。火で焼かれると熱さはモロに伝わるが火傷跡は残らない。

 

【逆刃刀】斬れない、ただの鈍器。一応裏面切れるようなってるけど、斬る気があれば逆刃刀解除する。

 

【触手剣】剣の伸縮形成行い、生きているかのように動かす剣。鞭のように使っているが、全部自分の体なので鞭のような攻撃でなく物理法則を無視した攻撃もできる。

 

【血剣】血液のみで構成された剣。長時間使用できるが、耐久力が脆い

 

【剣靴】ジャンピングシューズみたいな剣。走ると言うよりも跳ねるを目的とした剣。しかし長時間使用すると足が痺れるという欠点があり、飛び跳ねている時は普通の足に戻っている。長距離には向かない。アイススケートみたいな形のを体育祭で使用。

スパスパの実の正しい使い方できて満足、恐らくもう出番なし

 

 

 

 

 

【秘剣シリーズ】

 

壱の太刀《一閃》

全力で切りかかる攻撃、普通の剣の場合は「何でも斬れる」逆刃刀の場合は「力を一点に溜めて大ダメージを与える」同時連撃攻撃が真骨頂。

 

弐の太刀《流》

全ての攻撃を受け流す。しかし一撃しか流せない

オールマイトのデトロイトスマッシュは流せるが、ラッシュは流せない。(無職転生【水神流(流)】)

 

参の太刀《瞬翔》

居合。速さ、威力、共に最高クラスだが。タメが長い(デッドマン・ワンダーランド(クロウクロウ インビジブル・ブラック))

 

死の太刀《》

 

 

流派

 

【流水岩砕拳】某ヒーローのむっちゃ強い流派

 

【流水岩砕剣】剣にアレンジした、一撃必殺の攻撃だけど真剣ではあまり使わない。

 

 

 

 

スキルのようなもの

 

 

【走馬灯】色々と死にかけて体感時間をいじれるようになった。これのせいで近接は得意。しかし見えすぎてしまう故にフェイントに弱い

 

 

 

 

 

 

 

キャラクター

 

黒髪だが、ストレスにより白髪に根元が変わり染めるのミスしたプリンみたいになっている。

顔はイケメンではなくブスではない。「あー、クラスによく居そうな顔だよねー」って言われそうな評価。

目は疲れ目気味で、眠そうな感じ。

身長は高過ぎず低すぎない。平均よりやや高いくらい。

 

USJ以降は時折目のハイライトが消えがちになる。

 

服装はパーカーを愛用しているが、ねじれからオシャレな服を貰って「着るよねー(意訳」で着せ替えさせられているので残念私服では無い。

たまにブレザーの下にパーカーを着ることもある。夏はしない(当たり前

 

コスチュームは黒のスーツに赤のワイシャツに黒のネクタイに黒のベレー帽を被っている。ブレザーを脱ぐと馬の形の高そうなネクタイピンをしているのが分かる。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

転生者であるが、ヒロアカの記憶だけ消されたオタク。前世の記憶はサブカル以外は殆どない。何歳だったかも不明。

個性という超能力が使えると分かる、幼い時から鍛え続けることが出来るので、一応怠け者ではない。しかし自分より強いもの勝てないと思うものには逃亡する傾向が多い(ねじれビーム、トガちゃんストーキング)

基本内心で罵っていたり突っ込んだりしてて、闇は深そう(小並感

 

一言で表すなら「実力のある陰キャ」

 

そして以外に脆く、脳無を殺した時には雄英を辞めたいと涙ながらに語るほどメンタルが弱くなりやすい。超能力ファンタジーが生々しいことに再確認して、自分が生きているのは現実でありゲームじゃないと確信する。

 

コロッと惚れ癖のようなものがあるが、実は──。

 

 

 

 

 

好きな食べ物は紅しょうがの天ぷら、カレー、りんご。

好きな飲み物はコーラ(ペブシに限る、牛乳

 

趣味、武術

 

長所、武術はだいたい1回見ればできる

短所、空気読めないところ、スイッチが入らないと本気で攻撃できないところ

 

 

 

 

 

家族構成は母と2人暮し。

 

ご近所付き合いで波動家とは仲良しで、母同士が旅行に行ったりするくらい仲良し。波動父からも評価はいい。

 

 

電話帳に登録されてるメンバー(現時点

鞘無(母

波動ねじれ

波動(母

峰田実

 

 

 

 

 

 

 

 




【※】
血剣の設定弄りました


【設定に関して、これ載っけてくれっていうのはメッセージでお願いします】


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第1回戦って……それマ?

掲示板初めてやってみたしたけど、難しいですね。
ていうか手間が……。

体育祭まではつけると思います。
それ以降は……良ければしたいですかね


 体育祭も大詰め。

 まさかの本戦にB組が残らないという結果になったけど、それはもう時の運もあるから仕方ない。色々と比較されてるB組としては不満が上がるかもしれないけど。

 やっぱり物間を誘った方が良かったな、誘えば先生からお叱りを受けることは無かった。

 

 喧嘩両成敗……みたいな感じで怒られたけど、流石に全国放送でスッポンポンは応えたのか絶望した顔をしていた。

「まぁたまにある事だが」と相澤が遠い目をしていた…まさかこんなことが偶にとはいえ起きていいのか? 

 女か? それなら速攻で見にいくんだけど。DVDを帰りに借りようかな。

 

 お叱りを受けていたので、体育祭の余興の方には参加出来ずミッドナイトからの招集を受けてグラウンドに降りる。

 結構集まっており、俺と物間の入場に歓声が湧いた。

 

 下賎だ、完全に「女子生徒」であの技待ってるよ〜って言われてる。

 残念だったな! あれば相澤から禁術指定食らったから使えませーん! 

 

「それじゃあ1位の生徒、鞘無くんから引いてってね」

 箱を渡されて中の紙を引く。

 

 それをミッドナイトに手渡しトーナメントへと書かれる。

 いやまだ誰も引いてないから白紙だね。

 ポツンと鞘無と書かれている。

 

 え、なにこれ辛い。

 と、悪ふざけは置いておいてどんどんと埋まっていく。

 

 あ、心操はこっちの山。

 あ、爆豪向こうの山だ。

 あ、轟こっちの山。

 

 ……そんで第1回戦が…。

 

 

「おう! 1回戦お前とだな! よろしくな鞘無!!」

 

 熱い。

 なんだこいつ、熱いし苦しいし暑苦しい。

 絶対こいつドッヂボールしたらズボン脱げるタイプの男だぜ。間違いなくCVは……。

 

 

 

 

 ーーーーー

 Aブロック

 

 緑谷ー心操

 切島ー鞘無

 

 瀬呂ー轟

 飯田ー発目

 

 

 

 Bブロック

 

 常闇ー八百万

 上鳴ー芦戸

 

 尾白ー砂藤

 爆豪ー麗日

 

 ーーーーー

 

 いい感じにばらけたなぁ。

 多分尾白が心操についてはもう話してると思うけど……。騎馬戦では個性使ってないから目立ててない。

 どうやって煽って緑谷を嵌めるかだな、心操も催眠が俺には効かないって理解してるから緑谷で出し切らないといけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心操、負け。

 緑谷が十八番って言ってもいい指折りで洗脳から脱出。そのまま拙い背負い投げで心操を場外に。

 

 でも心操の個性を見せることと、周りの応援を勝ち取ること。

 そして──

 

 

「よう、お疲れ」

「…鞘無か。俺はお前らよりも絶対に立派な──」

 

「──見とけ」

 

 ただ簡潔に。

 心操の今足りないもの、そして身につけられる技術を……。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

『次はこいつらだぁぁああ!!』

『障害物最下位からのどんでん返し!! その勢いは留まること知らず騎馬戦でも1位を死守!! お前このまま優勝行けんじゃね!!? ヒーロー科鞘無 剣心』

 

(バーサス)!! 折れない! 曲がらない! 砕けない! これぞ漢!! 見せてくれよジャイアントキリング!! ヒーロー科! 切島鋭児郎!!』

 

 

「へへ、完全に劣勢だな俺」

「まぁ成績的にしょうがないだろ」

 

「だよな! だがな勝つのは俺だ!」

「……ああ、負けれんよな」

 

『それじゃ行くぜ! 第2試合! スタート!!!』

 

「先手必勝!! いくぞ鞘無ぃぃいい!!」

 

 硬化した腕で殴りかかってくる切島。

 それに向かって腕を剣に変えることなく、真っ直ぐ進んで行く…。

 

「舐めんじゃねぇぇぇえええ!!」

 

 強烈なパンチが眼前に迫り。

 その硬い拳を掌で受け止めてから引き、エネルギーを霧散させてからもう1つのでで肘を掴む。

 

 そのままこちら側に引きつつ、足を掛けて転ばせる。

 

 

「………は?」

「硬化つっても結局は防御寄りだ、個性頼りの殴り合いしかしないから進歩がねぇ」

 

 そのまますかさず持っている拳と肘を対極に捻る。

 しかし、流石の硬化の個性。

 捻っただけでは壊れない。

 

「クソ…離せ!」

 硬化を全身に変えてから切島の蹴りがこちらに襲いかかろうとしたところを、後方に回避する。

 

「殴る蹴るが戦いじゃない、武術はもっと奥が深い」

「そうかもしれねぇな! だがな! 俺はこれで勝ってみせる!!」

 

 同様に大振りのストレート。

 それを躱し……本命の蹴りにこちらは足裏を合わせて、蹴る動作の途中で辞めさせる。

 

「初速が遅い」

 タメを作った故に、見切られやすい。

 それを見破って蹴りを阻止し、殴ってもそれほど痛くない足裏で切島の腹を蹴る。

 

「やっぱ強ぇな鞘無! でも俺にも攻撃が効かねぇ! どっちが先に倒れるか勝負!!」

 

 ヤクザキックが全然効かなかったことに焦りはない。むしろそこまでは想定内。あっちも攻撃が効かないと分かった上で、捨て身の特攻をしてくる。

 本当に効かないなら、確かにそれが一番効果的だ。

 

 だが。

 

 切島の硬い攻撃を全て僅差で逸らして懐に潜り込む。

 

 手を握りしめて、切島の胸の前にソっと置く。

 

「そんな弱パンチじゃ──」

「──寸勁」

 

 突然の衝撃に切島は後方へと飛ばされた。

 殴られたわけじゃない、何か派手な攻撃をされたわけじゃない。

 ただ、目の前の同級生に押された。

 

 それだけで自動車に轢かれた時のように吹っ飛んでしまった。

 

「──っガ!!? …はぁ! …はぁ! 何だ!? 痛てぇ!!?」

 突然の出来事に、腹を抱える。

 このままならば、完全に吐いてしまいそうな。それほどに体の内部に攻撃が走った。

 

「お前の鎧は硬そうだからな、中を攻撃した」

「なか…?」

「ああ、顔面殴られた時に勢い余って歯とか飛んでく時あるだろ? 腹殴られた時に背骨までジンジンする時あるだろ? それの究極版だ、力のエネルギーを一点に集めて放出。騎馬戦の時の釘パンチ、あれを参考にした。一撃よりも上回る二撃」

 

 原理は違うが、似通った部分があって再現した。

 断じて個性による攻撃では無いので、相澤でも止めることは出来ない。

 

「でも後ろに吹っ飛ぶってことは、横だけじゃなくて縦のエネルギーは霧散してたってことになるな。壁と挟んで」

 

『その攻撃は危険だ。鞘無、次それ使ったら失格だ』

 

 沈んだ。空気が静まった。

 会場に木霊したのは相澤の声…。

 

 ………………は? 

 個性使ってる訳じゃないんだぞ? 

 いくら内部破壊が危険だからって、そんなこと言ったら……。

 

「いいよな、お前らはさ」

「…はぁ、はぁ…なにが?」

「ホントに羨ましいよ、先生に助けて貰えてさ……ホントに」

 

「だからなんの話してんだよ」

 

「巫山戯んなよ! 道徳倫理捨ておけ!? 俺はお前らと同じように個性が危険だからって武術を取り入れたんだよ! それが危険だからって使うな!? お前らそこまでして俺に負けさせたいのかよ!!」

「…ち、違う…俺は!」

 

「相澤が言ってたぞ! 「お前の個性は危険だから直接攻撃は禁止だって」なんだよそれ、そんなことしたら単純な増強系が勝つに決まってんだろ! んな見えすいたことして何が体育祭だよ! 何がプロにアピールするチャンスだよ! 結局は自分のお気に入りを勝たせたいだけじゃねぇか!!」

 

「羨ましいよなぁ! 妬ましいよなぁ! お前らの個性だって人を殺す可能性あるのによぉ! 殺しに襲撃してきたヴィランを殺したら、もうヴィラン予備軍みたいに扱いやがってよ!」

 

 

 

 

 

 

「──ならお前らが戦えよ! 先生なんだろ!? ヒーローなんだろ!? ボロ雑巾にされてへばってたのはお前らプロヒーローじゃねぇか!!」

 

「挙句の果てに退学届け持っていったら受け取れない? 転校しろ? ……巫山戯んなぁ!!」

 

 なんにも知らない。

 何も知らない。

 なにも知ろうとしなかった。

 

 

 助けるべき人は。

 ヒーローにもいるって当たり前のことを。

 

 ………ぽっかりと抜け落ちてた。

 

「ああ、巫山戯やがってよ。クソが」

「お、おい鞘──」

 

 ──殴! 

 

 顔面に寸勁もへったくれもない。

 渾身の攻撃を叩き込む。

 

 顎に、腹に、膝に、腹に、顔面に。

 全て硬化されており、ダメージを受けるのは、殴る拳だけ。

 

「お、おいやめろ! 拳がぶっ潰れるぞ!」

「うるせぇよ! お前には分かんねぇんだよ!」

 

 

 

 

 

 

「──もう俺はなぁなぁでヒーロー目指してるわけじゃねぇんだ!」

「拳が壊れる! 潰れる! だからどうした!」

 

 ラッシュは速度を増す。

 切島の体に当たるたびに、骨の軋むような嫌な音が会場に響く。

 

 手も指も、腕さえもぐちゃぐちゃだ。

 

「劣勢でもよ! ヒーローに助けて貰って! 有利になったら敵の心配かよ! おら強度下がってんぞ!」

 

 ──バキ! 

 

 骨が砕ける。

 ──痛い。

 

 拳がやけるように痛い。

 もう拳を握るのも……それすら痛い。

 

 なんでこんなことになってんだ。

 さっさと背負い投げとかしてリングアウト誘えば、さっきの寸勁の後にリングアウトさせておけば。

 

 こんなことにはならなかったのに。

 

 痛い。

 痛い。

 ──イタイッ!!! 

 

 怖い。

 嫌だ。

 逃げたい。

 

 

 

 

 

 

 ──タノシイ!!! 

 

 

 血の気が引く。

 血はこぼれてるけど…。

 

 

 ──アハハハハハハハハハハ!! 

 痛い、痛い! 

 でもこれが………

 

 

 ──最っ高! 

 

 

「流水岩砕拳」

 

 ボロボロの手を切島の脇腹に入れる。

 ──バキ

 

 指の折れた指から更に音が聞こえる。

 

 ──バキ

 肘から拳にかけて、真っ直ぐに動かなくなる。

 

 ──バキ

 切島の硬化に綻びが出来た! 

 

 

「ま、待てって! マジでとりかえし──」

「相手の拳を壊す度胸も覚悟もねぇなら! ハナから硬化なんてすんじゃねぇ!」

 

 これは個性の限界じゃない。

 心の隙だ。

 追い込まれていない状況だから、相手に気を使う。

 優勢だから相手のことを考える。

 

「俺を倒すためだけに頭を回せ!」

「手が…お、お前」

 

「お前は何でここに立ってる! 心配する為か!? 違うだろ! 拳を握れ! 敵を打ち砕け! お前がする事は戦うことだ! それ以外に無いんだ!」

 

 戦えよ。

 戦ってくれよ。

 

 そうでもしねぇと…。

 

 

 ──また、俺だけが悪いみたいじゃねぇかよ。

 気の緩み、何をしたらいいのか分からない。

 

 そんな顔をした切島の個性の解かれた状態の顔面に、俺は拳を叩き込んだ。

 会場を支配したのは静寂だった。

 立ってたのは俺、切島は場外へ殴り飛ばした……。

 

 なのに……。

 

「──くそ」

 なんでいっつもこうなんだよ。

 不利な状況で、変な枷かけられて、そんで勝ったのに……。

 

 

 なんでお前らは、そんな目で俺を見るんだよ。

 派手な個性じゃないとダメなのかよ、輝かしい道筋は歩いちゃいけないのかよ。

 なんで頑張った俺をそんな目で見るんだよ。

 

 だから嫌なんだよ。

 こんなとこが──

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 雄英体育祭【1年の部】

 

 1 名無し

 このスレは、雄英高校体育祭一年生の部の雑談スレになっています。

 生徒への誹謗中傷は避けてください。

 

 2: 名無し

 三年の部でルミリオンまた巨根出したってマ? 

 

 3: 名無し

 2>早速別学年の話題で草、今年もビビミはやばかった

 

 5: 名無し

 3>それな過ぎて草、まさかリレーで装甲車出すのは予想GUYすぎる。そこにシビれる憧れ……はしないな。見てる分は楽しい! いいぞもっとやれ!! 

 

 6: 名無し

 てか、今年の1年どうなん? 金玉入ってきた? 

 

 11: 名無し

 6>金の卵なww金玉は草ww

 

 15: 名無し

 11>草に草生やすな(定期

 

 18: 名無し

 実際ヴィラン襲撃切り抜けてるんだし、期待は出来んじゃね? 

 

 20: 名無し

 ゆーてプロヒーローが助けてくれたんだろ? 助けが来るなら俺だって切り抜けれるわ

 

 23: 名無し

 20>死亡フラグしかない。絶対映画とかで死ぬタイプ

 

 26: 名無し

 でも付き添いのヒーローのされたって話だぞ、だから生徒がプロヒーローの応援来るまで耐えたらしい

 

 28: 名無し

 26>それソースどこよ!? kwsk

 

 31: 名無し

 一応雄英の学生なんだけどさ、話は漏れないようにしてるけど。生徒の間じゃ知らん人おらんよ。有名な話

 

 33: 名無し

 31>いや、雄英生かい! まじならすげぇな、あそこ倍率半端ないだろ

 

 35: 名無し

 33>いや、ヒーロー科落ちて経営科だから、素直に自慢できねぇorz

 

 37: 名無し

 てか、それマジなん? マジだとしたらプロヒーロー来るまでプロヒーロー倒したヴィランと戦って凌いだんだろ!? 全員金玉じゃん! 

 

 38: 名無し

 金玉いうな(定期

 

 43: 名無し

 なら結構期待出来んじゃね!? ルミリオンの逸物はみたし、今年こそは触手のサンイーターによるねじれちゃん凌辱プレイ期待してたけど…やばいどっち見るか悩む!! 

 

 44: 通報の人

 通報しました

 

 46: 名無し

 44>お疲れ様です

 

 47: 名無し

 44>乙

 

 49: 名無し

 実際見所は何処は誰なん? 将来有望そうなのとかいる? 

 

 51: ヒーローマニア

 49>今年は当たり年ぞ! エンデヴァーの息子に一年前のヘドロで抵抗した爆発の子、それにヴィラン襲撃で一人ヴィランと対峙してぶち殺した子

 

 53: 名無し

 51>エンデヴァーの息子かぁー、すげぇサラブレッドそうだなー、それにヘドロかぁー、居たなーなついわー…………え! っちょ! 殺し!? 殺しとは!? えええ!! 

 

 57: 名無し

 殺して……マジかよww

 

 59: 名無し

 57>いや、草生えないから

 

 61: 名無し

 え、ならなんで退学してへんのや? 普通に退学やろ

 

 63: 名無し

 61>暴論で草、殺しに来てんだから殺してもいいやろ。やっていいやつは(ry

 

 65: 名無し

 63>いや、それこそ暴論だろ。殺しは不味いだろ! 

 

 66: 名無し

 結構真面目な話、そこら辺って曖昧だよな。でも殺しに来る相手に殺さず無力化しろって、それは酷な話だよな

 

 67: 名無し

 66>そんなん関係ない! 殺した生徒は退学させて死刑! そんな普通に殺すやつとか生きてるだけで脅威! 即死系

 

 69: 名無し

 67>なんかヤバいやつおる

 

 70: 名無し

 いや、分かるけどさ。でも……あぁー。って感じ、グレー過ぎるよな

 

 76: 名無し

 お前ら忘れてるかもしれへんけど、ヴィランはプロヒーローを倒した相手で殺しに来てる状況ってこと忘れてね? 殺されんかっただけでも凄いことじゃね? 

 

 78: 名無し

 76>結果論厨現る

 

 79: 名無し

 でもなんかやるせないな、悪いことなんだろうけどさ、黙って殺られとけってなるし。てかこの話題持ってきたやつ凄いな、同じ雄英? 

 

 86: 名無しの雄英生(経営科

 >79どっちもワイやよ、経営科は体育祭自由参加やから暇なんよ

 

 89: 名無し

 >86ワイら毎日日曜日やで(暇とはいってない

 

 92: 名無し

 86>てかヒーロー科落ちて経営科なら体育祭出た方がいいんじゃないの? そのために滑り止め受けたんじゃないの? 

 

 93: 名無しの雄英生(経営科

 92>まぁそうなんやけどさ、なんつーかヒーローは無理かなーってなったわ。その殺した子見てたら、これくらいやらなヒーローなれへん……そう思ったんよ

 

 94: 名無し

 なんか凄そうやなその子、むちゃくちゃストイックな感じ? サイドチェスト似合う系?? 

 

 96: 名無しの雄英生(経営科

 94>いや、なんて言うか……ちょっと怖い系? なんかな、正直よく分からん

 

 100: 名無し

 まぁ、そこ含めて楽しみにしとこや、そろそろ入場やし

 

 138: 名無し

 おおー! 入場してきた、なんか面構えが違うなヴィラン乗り越えたってだけはあるわ

 

 139: 名無し

 138>今来たのはB組です、ヴィランの襲撃受けたのはA組です

 

 142: 名無し

 138>うわ、はず

 

 145: 名無し

 138>ねぇ! 今どんな気持ち!? 

 

 151: 名無し

 ひでぇ、やめてやれ(言わんで良かったー

 

 159: 名無し

 流石マイク、実況が上がる

 

 165: 名無し

 それな、でも期待の超新星感出しすぎてBが可哀想

 

 166: 名無し

 わかりみが深い

 

 169: 名無し

 ぶっちゃけ体育祭はヒーロー科以外はそんなもんだろ。今回はヒーロー科でもAが主役ってだけで

 

 172: 名無し

 169>ビビミ(定期

 

 175: 名無し

 172>やめんさい、あれは異次元だ

 

 176: 名無し

 172>ちょくちょくヒーロー科より目立ってるのホント草

 

 179: 名無し

 派手が売りだしな。お、種目発表だって! なんだろか

 

 198: 名無し

 パン食い競走だろ? 

 

 200: 名無し

 一発目からハードで草

 

 225: 名無し

 障害物競走か……あれ? これ去年もそうじゃね? 

 

 230: 名無し

 とりまスタートまでにマック買ってくるわ

 

 233: 名無し

 遅れるフラグがビンビンで草

 

 

 




相澤、選択間違えるの巻。
切島のことを気遣って、主人公君に注意。
こうなるとは思わんかったやろなー、まぁ止めるべきやし仕方ない。

あー主人公くんは不憫だなー。


オレンジ待ったナシで草


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2回戦って……それマ?


気付いたことがあるーー!

ココ最近愉悦部増えてきたやろ?


 ぐちゃぐちゃになった手に力が入らず、指先の方からぽたぽたと血液が垂れる。真っ赤な血でこうなっているが、少し青みがかっていて見るだけでも痛々しい。

 

「……見てたぞ」

 

 会場から去り、ゲート付近に戻ると心操がこちらを真剣な眼差しで見据えて話しかけてきた。

 

「悪いな、お前には個性以外の戦い方を見せたかったんだけど……今のを見て改めて聞くけど……お前はヒーローになりたいか?」

 

 少しだけ溜があったが、心操は目をそらすことなく口を開く。

 

「ああ、それでも俺はお前らよりも立派なヒーローになる」

「………そっか」

 

 自然と拳に力が入る。

 たかが一つの真実を知ったところで、世の汚点をひとつ知っただけで。

 それでも輝きは止められない。

 曇りがあると言え、それでも惹かれるのは当たり前のこと。

 

「ヒーロー科も、プロヒーローも、先生も、それでお前も! 俺は全部吸収して、踏み台にして…! 俺は……!!」

「ああ、そりゃ最高だな」

 

 俺ですら踏み台。

 そういう気概がなけりゃヒーローなんて職業で食っていけない。

 そうだった、こいつはそういう目をしてたから騎馬戦で誘ったんだった。

 

「じゃあ見とけよ、なんの血筋もないやつがサラブレッドに勝つから」

「ああ、そりゃ楽しみだ。それよかお前、その手でいけんのかよ? あ、リカバリーガールか」

 

「いんや? このままいくけど?」

「そのままってお前」

 

「俺はなヒーローには頼らないんだよ。だから、これでいいんだ」

 

 あの日の決意。

 それを口に出す。

 なんにも頼らない、期待しない。

 

 だって今回ではっきりわかった。

 期待するだけ無駄だって、ヒーローを敵だと思え、教師は害だと思え。

 俺以外はだいたい敵。

 

 リカバリーガールとかいうのも信用しない。

 鎮痛剤とか催眠系。

 最悪ミッドナイトの眠りを使われるかもしれない。

 

 それじゃダメだ。

 止めさせるな、これ以上邪魔されるな。

 

 

 

 

 ──これ以上、好き勝手にやらせるな。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 客席にも戻らず、控え室にも戻らない。

 先生に会わないようにして、そとの出店を彷徨く。

 傷ついた腕はジャージで隠して、ポケットに引っ込める。

 

「お、おじちゃんたこ焼きちょーだい」

 

 ポケットから500円のワンコインを渡す。すこし血が付いたけどおじさんは気にすることなく受け取る。

 

「お! 雄英生かい! おっちゃんここで屋台やってるから見れてねぇけど頑張れよ! 未来やヒーロー! ほれ、おまけだ」

 

「お、いい人だねー。また来るよ」

「おう友達も連れてこいよ!」

 

 萌え袖みたいにして、指を細長い剣に変えてたこ焼きを刺す。

 いや、熱い。ホクホクじゃん。

 

 パクリと口に入れて、ゆっくりと出店を回ってグルっと一周してから会場に帰る。

 だいたい第1回戦が終わったくらいだ。

 

「おい、鞘無」

 会場に戻ろうとした時、轟から声をかけられた。後ろには緑谷もいる。

 

「なにごと?」

「ちょっと来てくれ、無理にとは言わねぇが」

 

 射殺すような目で睨まれ、その後ろに緑谷が気まずそうな顔をしている。いや、本当になにごと? 

 

「いいけど、なに? カツアゲ?」

「ちげぇ」

 

「あ、はい」

 

 そのまま何も言わずに連れていかれる、隣の緑谷とは次の対戦相手だけど……。

 はっきり言って負ける気がしない。

 そういうのもあって、別に気まずさとかがない。

 

 話しかけようとしたけど……やめた。

 黙ってついて行くこと数分。

 誰もいない所へと連れていかれて、轟が立ち止まる。

 

「…まず緑谷、お前オールマイトにめぇかけられてるよな? それに詮索する気もねぇし、興味もねぇ。だがお前がNo.1の何かを掻き立てる存在なのは…騎馬戦の時に分かった」

 

「それで鞘無、俺はお前の今の心境がどうとか、なんでリカバリーガールのとこ行って治さねぇとかは聞かねぇ。みんなそういうもんの一つは抱えてる…と思う」

 

 何か要領の得ない物言いに「?」となってしまう。

 隣の緑谷は「治してもらってないの!?」と驚いているが、多分まだ轟は言いたい事がある。そう思って黙ってる。

 

「──どっちが上がってきても、俺は勝つ」

 その言葉に俺は…………

 

 

 

「何を今更」

「ああ、それでも言わねぇとって思った」

 

 

「ちょっ! ちょっと待ってよ! 鞘無くん! なんでリカバリーガールのとこ行ってないの!? それに轟くんも気付いてたら!」

「なぁ緑谷? お前俺がリカバリーガールのとこに行ったらどうなると思う?」

「どうって、そりゃ治療してくれるんじゃ」

 

「そうだな、その後はどうなる? 試合に出すか? 何言われる? そこまで考えて俺は行ってねぇ」

 

「そんな! アピールがとか怒られるのが嫌って! 君の将来に比べたら!」

 

 少しため息を零す。

 それはお気に入り(・・・・・)の思考だ。嫌われ者なら考え方が変わる。

 

「俺に次があるのか? 確かお前、みんな本気でやってる…みたいなこと入場前に言ってたな。そうだ、俺は本気だ。本気でヒーローになるために、命を賭けてこの体育祭をやっている。腕がイカれる? 後遺症? それで? 俺はな……俺にはな…次なんて無いんだよ。今だ、今しかないんだよ」

「そんな! でも!」

 

「そんなに言うなら……賭けだ」

 

 右手を剣に変えて、ぐちゃぐちゃの左腕を切り刻んだ。

 溢れる血。

 流石の轟もこの光景には目を見開いた。

 

 余りの勢いに、緑谷の顔に少しだけ血が吹き飛ぶ。

 

 

「…え、……うわぁぁぁああああ!!」

「───ッ!?」

 

 駆け寄ろうとする2人に手で制止して集中させる。

 今から悟りと同じくらい集中しないといけないのに、邪魔されたら絶対に成功しない。

 

 力を入れて止血はせずに。

 傷口を剣に変えて、出血を防ぐ。

 

 こういう出血への対策はサイコパスのおかげで、これで血が止まることは知っている。

 でも今からしようとしているもう一つのことは、全くの無知だ。

 どうなるかなんて分からない、これがどういう結果を齎すかなんて全く分からない。

 

 もしかすれば……なんてこと。

 

 

 ──考えるのをやめよう。

 

 

 狂え、狂え、狂え。

 笑え、笑え、嗤え。

 

 俺は今、命を賭けている。

 賭ける必要なんてないこのタイミングで。

 

 適当に緑谷をはぐらかせば、こんなことしなくてよかったはずだ。

 それでもやった。

 

 後先なんて関係ない。

 快楽のまま、己が思うまま……。

 

 

 嗤えよ! なぁ! おい!! 

 俺は今から!! 

 

 

 切り落とした腕を切り刻み、骨やら何やらが地面に落ちて。血で作られた水溜まりを作る。

 そしてそれに手を翳して、握るようにそれを上にゆっくりと上げる。

 

 それは手が……体が剣になるのではなく。

 ただの肉塊が刀の形に変わる光景……。

 

 異常、偽証、空想、妄想、非現実。

 どんな言葉だって当てはまらないだろう。

 

 だって目の前にあるのは……紛れもない現実という事実だから。

 

 

 その刀は黒だった。

 黒に血のような血管のような……そんなものが張り巡らされているだけの……まるで生きている。そう思わせる刀だった。

 それを握るのは……ぐちゃぐちゃになった血塗れの腕。

 

 こう見れば、どちらも繋がっているのではないかと。

 どこからが刀なのかと……。

 

 そう、思えてしまう程にその刀は生きていた。

 

 その現実に緑谷と轟は息を呑む。

 

 そして鞘無はその刀を、切り口となって今は小さな剣でできている場所に刀を結合させる。

 すると刀は傷口から生えているようになり………。

 

 

 刀は腕へと戻った。

 

 だが元通りでは無い。

 その切り落とされたはずの左腕は……。

 

 人肌のものではなく、血でできているような。真っ赤な腕に、爪の部分だけ刀と同じように黒い。余りにも人間的なものではなく、それこそヴィラン……いや役不足かもしれない…………悪魔。とてもその言葉が腑に落ちる。

 

 そして一連の作業が終わって2人の方を見ると。

 どちらもヒーローの顔をしていた。

 

 

 ──いいなぁ

 ──俺もそっち側に居たはずなのに…

 ──…………

 

「賭けには(・・)勝ったみたいだな」

 痛みがなく、形や見た目以外は正常な左手をグーパーしながらそう呟く。

 

 それ以外の全てに負けたのだと、俺は理解させられた。

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

『第2回戦!! 初戦は目立たなかったけど今度は魅せてくれよ!! ヒーロー科! 緑谷!!』

『そんでお前その手どーした!? バイオレンスでクレイジー!! 試合終わったらバァさんとこ行け!! ヒーロー科! 鞘無』

 

 解説と実況の2人はマイクから少し遠ざかり、決してマイクが拾わないところで小さな声を出す。

『………おい、イレイザー。あれヤバいんじゃ』

『知るか…もう勝手にやらせろ』

 

 雄英教師陣。

 実況のマイク、レフリーのセメントス、審判のミッドナイト。

 その必要最低限の人員以外は、全員で鞘無を探したが……結果は見つからなかった。

 本気で隠れているから……何処にいるのか足がかりさえ掴めずに試合時間になってまるでソコに元から居たかのように現れた。

 

 本来なら殴ってでも止める所だが……今は全国放送。

 先の鞘無の発言もあって、教師陣が大きくは出られない。

 それがカメラの前ならば尚更……。

 

 そのことを鞘無は理解している。

 理解してやっている………。

 

 それならもう…相澤から言うことは何も無い。

 好き勝手にやるなら、好き勝手にやれ。

 

 境遇も、今の精神状況も……同情できないわけじゃない。

 それでも……。

 

 ──ヒーローは救いの手を伸ばさない人間には助けに来ない。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

『2回戦! スタートーー!!』

 

 

「先に言っとく、さっさと棄権しろ。お前じゃ何があっても俺には勝てねぇよ」

「そんなの──」

「お前の見よう見まねの拙い柔術、使えない個性攻撃。残弾が指の本数だろ? やめとけ、怪我するだけ無駄だ」

 

「でも君は……右手が使えない。それなら──!」

 

 緑谷は迷うことなく突っ込んで距離を縮める。

 遠距離が無いんだし、そりゃそうする。

 

 でも……。

 

 ポケットに突っ込んでる右手を緑谷の前に出す。

 

 それに緑谷はギョッとして、拳を握りそこ以外を攻撃しようと…。

 した所を蹴りで頭をサッカーボールのように蹴る。

 

「お前今ビビったろ」

 脳震盪は無かったのか、すぐに立ち上がってこちらを見据える。

 

「お前、自損覚悟はある癖に他人には気を使うって……優しいじゃん」

 

「──でもさ、お前舐めてんの?」

「お前は勝つためなら痛いとこつかないといけないんじゃないの?」

 

 緑谷の方に向かって殴り、躱された所を左手で掴み地面に柔術を使って転ばす。

 そして、心操の時に折った指を足で踏んだ。

 

「──ぁぁあ!!?」

 

 激痛が緑谷を襲い。

 デコピンの構えをした瞬間に、右の腕を剣に変えて空気砲を斬る。

 斬ると言ったけれども、風の方向を二方向に変えて自分に当たらないようにしただけ…。

 

「こんなに腕がぐちゃぐちゃになったことないから知らなかったけど…俺の個性は骨とかなら剣に一旦変えて戻すとくっつくみたいだぜ。流石に出血はダメだけどさ。これなら切り刻む必要なかったな」

 

 そんな大事なことを、何も無かったかのように笑って言う。

 面白いだろ? だなんて問いかけるが、緑谷は答えない。

 彼の脳内では、現状からどうやって切り抜けるかしか考えられて……。

 

「ぶっちゃけ、無理だろ。実力差は分かっただろ? だから棄権してくれない? はっきり言って弱いものイジメって楽しいけどさ、全国放送で見せるのはヤバいし」

 

「──だからさ、早く諦めてくんない?」

 緑谷は踏んずけている足を狙って殴ろうとするが──

 

 その拳ごと踏み付ける。

 今自損のデコピンで指が砕けたはずなので、痛さは相当なものだろう……。

 

「分かるよ、今は距離あけたいんだろ? でもそうすればお前に考える余裕ができる。だからどかない」

 

 とは言いつつも、両足とも拳を踏み付けると体勢が悪くなるわけで緑谷が耐え勝った。

 飛び仰け反ると、すぐにデコピンの攻撃が飛んできた。

 これで二回目……。

 

 左手の方の腕を剣に変え──。

 

「──っ!?」

 左手は反応することなく、そのデコピンの攻撃はモロに受けることになった…。

 

 空中でデコピンの攻撃。

 何もしなければ場外になる…!? 

 しかし、左がダメなら……右を使えばいい。

 

 右の腕を糸状にして地面に刺してブレーキをかける……。

 

「…こりゃ、不味ったか?」

 変わらない左腕をグーパーしながら確かめる…。

 

 力は湧いてくるのに、剣に変えることができない。

 何故だ? 

 感覚的に個性は使える……という確信めいたものはあるのだが…。

 どうにも感覚頼りなのでどうにも言えない…。

 

 左手で地面を殴ると。

 

 ──バキッ!! 

 

 地面が割れたわけじゃない。

 それでもいつもの右手より強いのが放つことが出来たが……問題はそこじゃない…。

 

「……感覚が……ない?」

 グーパーした時はしっかりとあった、だが強過ぎる衝撃に対して……。というか感覚がかなり鈍感になっている? 

 確かに握った時の感触って……こんな感じだったか? 

 

 

 

 その自身の変化への隙。

 それを緑谷は見逃さなかった……。

 

 折れた指など構わずに、緑谷は全力で鞘無に向かって拳を──。

 

「Detroit SMASH!!」

 

 緑谷の身体強化された拳が鞘無の左手に吸い込まれる。

 

「衝撃の吸収? それともこの腕の中でエネルギーが霧散してんのか?」

 ベタ踏みとはいえ、緑谷の個性の攻撃をなんの苦もなく受け止めた。

 

「刀や剣にそんな機能はないはず……ならこの腕自体が一つの剣の形? 変化しないのは、これが最適だから?」

 

「わっかんね……」

 

 そう考えたり、思考を漏らしながらも緑谷の攻撃を全て左手で受け止めて。その性能を試そうとする……。

 

「お前はどう思う?」

「はぁ……はぁ……真面目に…はぁ…」

 

 かなり動いたのか、緑谷は息を荒らげてこちらに悪態を吐こうとするが。それすらもままならないほどに消耗している…。

 

「いや、この腕が最適な瞬間に剣になるかどうかって。例えば──攻撃する時に、最適なタイミングで剣になったりさ!」

 

 緑谷の腹に赤い腕がめり込んだ。

 その腕は突き抜けることなく………。

 

「剣にはならん感じか……良かったな緑谷、生きてたぞ」

「ふざけ……るな。君が……どんな思いで、ここ……に立ってるか……知らないけど。……今君がしてることは、僕達雄英への侮辱だ」

 

 緑谷がまるで鞘無を──ヴィランに向けるような目で睨む。

 

(皆が必死で頑張ってるのに、なんで君は! 才能なんて僕とは比べ物にならないくらい持ってる君が!!)

 

「絶対に僕が勝つ!」

 

 緑谷の全身に淡い緑色の電流が流れる。

 それはエネルギーを可視化したかのような、そんな猛々しいもので…。

 

(今の僕じゃ、これだけしか使えないけど。これでやっと君と……君達と戦える)

 

「ワンフォーオール・フルカウル5%」

 

 緑谷のジャージがヒラヒラと動く。

 風なんて吹いていないのに、エネルギーの余波だけで大気に振動を与える……。

 

「いくぞ! 鞘──」

 

 踏み込もうとした瞬間。

 

 ──ドン! という目を背けたくなるような音が響いた。

 

 緑谷の顔面に鞘無の強烈なパンチがめり込み、その勢いのまま地面と拳の間に顔がくるように押し潰される。

 

 

「なに勝手に覚醒した気になってんだよ」

 

 

 

 

「おまえ、絶対自分のこと主人公だって。選ばれた人間だって思ってるだろ?」

 

 

 

「ねぇよ、こんな短時間で覚醒とか。なんか起点で圧倒的な強者に勝てるとか」

 

 

 

「そんな夢物語は、特撮と漫画でしか有り得ねぇんだよ。出直してこい夢見がちの雑魚が」

 

 気絶して、何も聞こえていない緑谷にそれを吐き捨ててリングを後にした。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 退場口から少し歩くと、相澤とネズミが立っていた。

 

「どけ、邪魔だ」

 

「鞘無、これ以上は流石に見過ごせない」

 

 声を出したのは相澤。

 その目は見たことがあった…。確か抹消を使っていた時にする……。ネズミと話してた時に…いや、それより前の…。

 

 

 そうだ! USJでヴィランに向けていた目だ! 

 

「知るかどけ」

 少し前まで、その庇護下にあったのに…。

 

 今じゃもう蚊帳の外。

 それどころか、庇護下の者から守る……そんな意志を伝えさせられる。

 

「お前、これ以上すると戻れなくなるぞ!」

 相澤は叫ぶ。

 珍しいこともあるんだなー。

 

「あっそ、でお前は? なんか用なの?」

「……すまない。……退学だって受理する、だから──」

 

「いらねーよ」

 

「立派だと思うよ、相澤も30前だろ? 若いのによくやってるよ。それに人間でもないのに人にもの教えようとか、俺じゃそんなことすら思いつかんよ」

 

「………今更手のひら返してどうしたよ?」

 

「結果だしゃいいんだろ? ヒーロー科に通わせないといけないんだろ? ヴィランから守るために退学できないんだろ?」

 

「お前らが言ったんだろうが、ヒーローになれって。それでお気に入りが2人も落とされてアピールチャンスが減るから今度はやめろって?」

 

「そりゃ次はエンデヴァーの息子の轟焦凍様だしなぁ! これからのヒーロー社会にとってちゃ宝だもんなぁ! 困るよなぁ! 俺みたいなのが邪魔したら!!」

 

「いいよなヒーローは! 被害者ヅラすれば悪いのは全部ヴィランだもんなぁ!」

 

「合理的だよなぁ! 大勢の為に少数は見せしめにするってなぁ! わざわざ前例のないヒーロー科編入でチラつかせてヒーロー科以外を焚き付けて! 結局勝てねぇからな! 見せしめには丁度いいよな!」

 

「俺はお前らの駒じゃねぇんだよ! 俺は自分の意思でここにいるんだよ邪魔すんな!!」

 

 ──君は……君はそんな子供じゃなかった筈だ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺じゃない、俺じゃないんだよ。お前らだ……お前らが」

 

 

 

 

 

「──俺をこうさせたんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 258:名無し

 始まった! 

 

 261:名無し

 お! エンデヴァーの息子? つえーー

 

 265:名無し

 このイケメンくんがそうなの!? 強固性にイケメンで金持ちって、人生イージーモード過ぎる

 

 268:名無し

 265>でも……お高いんでしょ? 

 

 271:名無し

 >268お高いって何がだよww

 

 275:名無し

 物件としてか? そんな一等地買えんわ

 

 281:名無し

 中古で安くなってから狙うわ

 

 285:名無し

 281>中古厨乙

 

 289:名無し

 いや中古厨ってなに!? 

 

 294:名無し

 処女厨の逆みたいなもんだろ? 

 

 296:名無し

 え、なら女なの!? それなら養って欲しい

 

 300:名無し

 296>養ってもらうの前提なのホント草、てか男な

 

 305:名無し

 男でも処女だろ? 

 

 306:名無し

 は? 

 

 307:名無し

 は? 

 

 308:名無し

 は? 

 

 309:通報の人

 305>通報しました

 

 310:名無し

 ないすぅー

 

 312:名無し

 ナイス

 

 315:名無し

 てかどうよ、エンデヴァーの息子とヘドロと殺人鬼

 

 318:名無し

 殺人鬼は……誹謗中傷に入るか? 

 

 320:名無し

 いや、事実だし良くね? 

 

 325:名無し

 普通だダメだろ、デブにデブって言っちゃダメだろ? それと同じ

 

 331:名無し

 325>急にスケールちっちゃ! でも分かりやすい

 

 335:名無し

 1と2はエンデヴァーの息子とヘドロが僅差って感じ…あとは正直パッとしない

 

 338:名無し

 そんで噂の殺人鬼は? 

 

 339:名無し

 だから殺人鬼はダメって言ってんだろ? …なんかいいのない? 

 

 342:名無し

 ジャックでいいんじゃね? 切り裂き魔っぽいし

 

 345:名無し

 えー、なんかカッコよさそうだから嫌だ

 

 346:名無し

 345>絶対厨二病だわ(経験済

 

 350:名無し

 なら何する? 最後に(笑)つければ大体緩むぞ

 

 352:名無し

 天才かよ

 

 359:名無し

 ……てか、殺人鬼見えなくね? 

 

 362:現場の人

 俺会場いるんだけど、その子固まってるよ。氷で

 

 368:名無し

 氷で固まってるってことより、現地なのにパソコン弄ってるお前に驚いたわ

 

 371:名無し

 行動派ニートで草

 

 378:名無し

 いや、それはニートなのか? 

 

 381:現場の人

 いや、パソコンじゃなくて個性…詳しくは。この時代だし詳しくはやめとくわ、特定されそう

 

 385:名無し

 それな、お前らなら余裕だろ? 

 

 387:名無し

 はっきり言って個性って名前くらい今は機密情報だからな

 

 391:名無し

 納得だわ、そこら辺はしっかり護ってこう

 

 398:名無し

 うぇい! 

 

 401:名無し

 ざふぉーるって、どんだけ高いの? 下見えねぇんだけど

 

 406:名無し

 とりま死なないんじゃね? 

 

 409:名無し

 あたまえ

 

 411:名無し

 ロボ無双については何もなしなの? 

 

 422:名無し

 はっきり言って雄英名物かー、以外出てこん。ビビミが轢いた時が1番盛り上がった

 

 432:名無し

 神回かよ

 

 441:名無し

 上級生クラッシュな

 

 444:名無し

 垢BANされるから辞めろ

 

 451:名無し

 ? 上級生がどしたの? 

 

 441:通報の人

 441>通報……しません

 

 459:名無し

 ヤバそうだから話題戻そうぜ、ってそろそろ最終関門ってとこでスタート付近が……え? 

 

 462:名無し

 なんかロボに囲まれてね? 

 

 672:現場の人

 あれが切々ちゃん(笑)だよ

 

 681:名無し

 切々ちゃん(笑)ってなんだよ、せめて君だろ

 

 683:名無し

 切々ちゃん(笑)一人だけ固まってたの? 弱すぎる

 

 692:名無し

 脳筋タイプだろ? 絡め手に弱いのはテンプレ

 

 701:名無し

 は? なんか一人だけ競技違くね? 無限組手してね? 

 

 706:名無し

 なるほど、こういうアピールの仕方もあるのか……

 

 711:名無し

 一人演舞発表会なってる

 

 715:名無し

 注意、かれはドンケツです

 

 721:名無し

 冷静にそうだからなー

 

 731:名無し

 あ、全滅した。意外と早かったな

 

 740:名無し

 いや普通に考えて全滅とか有り得んから、え? これ学生? 最近の子ヤバすぎん? 

 

 748:名無し

 あれと一緒にしないで欲しい

 

 766:名無し

 うぉぉぉおおおお!!! すげぇぇええええ!!! 

 

 772:名無し

 あ、飛んだ? 

 

 775:名無し

 え? 飛田新地んだの? 

 

 777:名無し

 775>お前の予測変換でどういうやつか分かったわ

 

 781:名無し

 てかとんだ? 個性2つ持ち!? 

 

 790:名無し

 いや刃物っぽいの腕から出てたし、それで飛ぶなら昆虫系じゃね? カマキリとか

 

 798:名無し

 なーる

 

 802:名無し

 いや金属変化系じゃね? 飛んでんじゃなくて、跳んだんだよバネみたいにして

 

 809:名無し

 いや、バネのできる範囲跳んでる

 

 811:名無し

 バネならできる! 

 

 819:名無し

 いやバネに期待しすぎ

 

 830:名無し

 てかマジですごいな、もう追いつきそうだぞ

 

 833:名無し

 てか追いついた

 

 841:名無し

 てかこれならいけるんじゃない? どんでん返し

 

 847:名無し

 いやエンデヴァーの息子もいるし、ヘドロもいるし

 

 851:名無し

 エンデヴァーの息子って長いわ、Jrな

 

 863:名無し

 いやここに(笑)をつけることによって

 

 872:名無し

 それ飽きたわ

 

 881:名無し

 あ、なんか掘ってるこからパクってった

 

 889:名無し

 あれって地雷? 何で掘ってんの? てか渡すの? 

 

 902:名無し

 まさか人に……いやヒーロー志望やし全国放送…やらん……よな? 

 

 905:名無し

 ちょっと録画しとく

 

 907:名無し

 これは……期待してもええんか? 

 

 909:名無し

 ええよ! これはぁぁぁああああああああ!! 

 

 921:名無し

 やった! やりよった!! 

 

 1086:名無し

 一瞬落ちたか思たわ、皆騒ぎすぎ

 

 1125:名無し

 いや、凄いなこいつ。流石にやらんやろ普通

 

 1207:名無し

 てかそのまま1番なった

 

 1302:名無し

 ゴールテープ切った、てか1位とっても騒がれへんな

 

 1350:名無し

 ワイら爆発に歓喜で疲れとんねんよ

 

 1395:名無し

 自由か

 

 1411:名無し

 てか普通にポテンシャル高いよな、戦闘力申し分無し(ロボ無双)機動力も(ケツから1位)盛り上げ方分かってる

 

 1455:名無し

 おれこの子のファンになるわ(1号

 

 1621:名無し

 なら次は応援スレ立てるか、こっちも騒がしなってきたし

 

 1637:名無し

 爆発物投げるとか〜〜みたいなアンチ湧いてきたしな、それ言うなら雄英がもうダメだろ

 

 

 





あぁー、こんな感じにするつもりはなかったんです。
ほんとに相澤先生とは仲良くして師弟っぽい感じ間にして、心操に一緒に指導とかもありって考えてたんです

そういうルートもあったってだけ伝えたい(作るとは言ってない


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準決勝って……それマ?

勘違いするように書いたけど、左手の効果は殺した相手の個性の強奪ではありません。



 左手の調子を確かめる。

 握ったり開いたりと繰り返し、感覚が少し落ちたことを再確認する。

 次は右手で落ちている石を握る。

 ……たいして変化なし。

 

 左手に移動させて握る。

 …粉砕。

 

 左手がパワーアップした?

 でも剣に変える事ができない?

 この姿自体が剣?

 

 分からないことは考えても分からない。

 今分かっていることは。

 

 左手が凄いパワーアップした。

 思いっきり殴っても痛くない。

 殴られても殆どエネルギーを伝わらずに受け止められる。

 剣に変えることはできない(感覚的にはいけそう)

 

 これくらいか?

 1番有力な説として、これが剣という状態。

 感覚的に行けるってのは既にやってるから、一つの鈍器として脳が勝手に変えた。殴られた衝撃もバネっぽく腕の中で勝手にエネルギーが霧散した……。

 

 ところどころ変な所もあるが、この解釈が1番近いか?

 悟りの……超集中状態で作った刀を腕にくっつけたんだ。何かしらの不備があると思ってたが……こんな厨二ちっくで剣に変えられないとまでは思ってもみなかった。

 左は殴るので使って、右をメインで戦おう。

 いきなり手に入った武器を頼り過ぎるのは、機能しなかった時に何も出来なくなる。

 

 

 

 ────ー

 

 

『第3回戦、この体育祭全ての成績でトップ!その腕どうした!?ヒーロー科鞘無!!』

『対するは、こちらもトップレベルの成績!!今んとこ瞬殺王!!そろそろ接戦見られるか!?ヒーロー科轟!!』

 

「………」

「………」

 

 別に何か話す程仲が言い訳じゃない。

 腕がどういう経緯でこうなったか、知っている轟としては…鞘無の異常性をAでは人一倍理解しているつもりだ。

 だから、最初の攻撃は決まっていた……。

 

 

 ──開幕直後の個性ブッパ!!

 

 鞘無の目前に圧倒的物量と冷気を乗せた大氷壁が自身を包みこもうとする。その異常な感覚に恐るでもなく平然と……まるでこうなる…とでも思っていたかのように対応する。

 

「壱の太刀──『一閃』」

 

 大氷壁を轟の近くまで右手を剣に変えて切り裂く。

 まるでプリンのように切れ込みが入る。

 

「冷てぇな」

 斬った剣からモロに感覚が伝わり、氷水の中に手を突っ込んだ様な感覚が全身に襲い体の芯まで伝わってくる。

 

 斬った氷を道……にはせずに上を伝って轟との距離を縮める。

 もし落ちている氷も操れるならば、鞘無は全方位気にしなければいけない一本道よりも下のみ警戒しておけばいい方が気にせず進める。

 足を剣に……は変えずに、便所から借りパクしてきたWCと書いている便所下駄を履いて移動している。

 

 氷の上をコンコンコン、と便所下駄が子気味のいい音をだすが、本人たちは至って真面目。

 試しに左手で鞘無は下の氷を攻撃してみる……。

 

 

 ──バキッ!!

 

 意外にも氷は割れやすく、音をたてて割れた。

 これが左手だからできたのか、それとも氷は元々割れやすいのか。

 その答えは知らないが、左の殴りも充分脅威になれると悟り満足する。

 

 続けて鞘無に新しい氷が襲う。

 下からの新しい氷……。

 

 

 つまり轟は一度操作を止めた氷は再度動かすことは出来ない。

 氷の操作ではなく、あくまで氷の生成………。

 

 最初の氷を避けてこちらに向かってくるので、攻撃速度がかなり遅い。

 あくまで見切れるし…避け切れる範囲内だ。

 冷たいのに突っ込むのは嫌なので今回は避けることを選択する鞘無。

 

 空中で煩雑な動きは出来ないと思われていたが、鞘無には糸のように体を変える術がある。

 難しい空中の行動も、ワイヤーアクションのようにして着々と間を詰める。

 

「くっそ!」

 

 轟が悪態を漏らして、再度最大火力と思われる氷をぶつけてくる。

 今度はそれを切るではなく、高速移動による回避で──。

 

「そう来ると思ってた」

 

 轟は態と逃げ道を作っていて、鞘無はそれにかかった。

 

「緑谷に言われた、お前を助けて欲しいって……だが悪いな、そんな余裕ねぇ!」

 

 氷の攻撃を避けられないタイミングで再度ぶつける。

 しかし、ここ一番と言うところで些か火力不足が目立つ。

 攻撃を斬り続けて、そこに影が落ちた……。

 

 

『おっと!大氷壁が鞘無に落ちてくる!!しかし鞘無!轟からの攻撃で離脱できない』

 

「助けて……か。アイツは本当に、良い奴だな」

 

 しかし、鞘無はその追い込まれた状況に。

 

 

 

 笑を浮かべた。

 

 左手を地面に置き…。

 

「インパクト」

 

 寸勁を行い地面を破壊する。

 エネルギーを無駄に使うことなく、そして人間の出せる限界を超えた左腕の寸勁。

 それに会場が耐えきれるはずもなく、ヒビが走り轟が一瞬ぐらつく。

 

 その一瞬の隙を逃さずに右を剣に変えて攻撃を待つ形で集中する。

 あえて先に上の氷塊を処理しなかったことに轟は疑問を持つが、今やるべきことは同時攻撃でどちらかの攻撃を当てることと判断して氷塊と全く同じタイミングに到達するように攻撃を追加する。

 

 

「秘剣シリーズ 壱の太刀」

 

 

 

 

「──『二閃』」

 

 轟の同時攻撃を、鞘無はコンマのズレもない同時攻撃で対応する。

 

「んなのアリかよ!?」

 

 動揺した轟に向かって足を剣に変えて、一歩で間合いを詰めてクロスレンジに入れる。

 

 右腕を逆刃刀に変えず……そのまま手刀で轟の左脇腹に──。

 

 ──バキッ!!

 

 骨が折れた………。

 

 音ではない、地面から生えた氷が手刀の進行を妨害する。

 手刀にしたこと、人間用に威力を調節したこと……その隙があって地面から生えた氷柱に攻撃を止められた。

 

 ──やばい。

 左を決定打に持っていくのは何があるか分からないから一瞬戸惑い反応が遅れる。それに対して轟は氷の個性と1度も見た事はないが炎の個性も持っていると聞く。

 なら次襲われるのは──熱………。

 

「こない…?」

「……っち!」

 

 何故かもう一度地面から氷柱を生やして攻撃してくる。

 氷に止められた手を勢いよく引っこ抜き、せっかく詰めた距離をもう一度空ける……。

 

「個性の不調か?」

「ちげぇ、俺は右だけでトップになる」

 

「……よく分からんけど、俺も右しか攻撃しないようにしようか?」

「──!?舐めんな!!」

 

「いや、それをお前がやってんじゃん」

 

 さっきまでの精密な、緻密な攻撃とは違う。

 規模こそ大きかったが、次の手を常に用意されてた先程とは別人のように轟は無闇矢鱈と氷を飛ばしてくる。

 

 一応左は使わずに、右だけで捌き切る。

 

「なんかよく知らんけどさ……氷は出し尽くしたろ?それにお前体が震えてる。霜が降りて体温下がってんだろ?火使えよ温まるぞ」

「何も知らない癖に!」

 

「知らんよ、俺もお前も……クラスのことよく知ってるやつとかいる訳ないだろ?俺らあってまだ数ヶ月だぞ?知ってたら逆に驚きだわ」

「…ちっ!」

 

 煽っている…そう轟は解釈して更に氷の攻撃をする。

 接近戦では勝てない…そう騎馬戦で焼き付けられた故に、残されたのは実質一つ。

 氷による攻撃である……。

 

『焦凍ぉぉぉぉおおおおお!!!左側を使えぇぇぇえええ!!』

 

 大声援が耳に入る。

 それに鞘無は笑って、轟は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「随分息子想いなパピィじゃん」

「あれはそういうのじゃねぇ」

 

 

「──個性婚。聞いた事くらいあるだろ?」

 轟からかなり小さめの、それでも聞き取れる声の大きさで語られた…。

 

「お前の左側が醜い」

 その語られた内容に戦慄させられる。

 いつもの変な雰囲気ではなく、鞘無も珍しくしっかりとした面持ちで聞く。

 

『おぉ!?なんか止まったぞ!?』

『牽制しあってんだろ』

 

「記憶の中の母はいつも泣いていた…」

 知らなかった個性社会の闇。

 そして自分の弱みをさらけ出してくれた轟……。

 それに鞘無は──。

 

「だから俺は半分の力で勝って、アイツを完全否定する!だから炎は使わねぇ」

 

「………俺もだよ」

 感化されたのか……鞘無は轟に返す。

 

「俺もだ、USJで皆を守るために戦ったら……殺人犯みたいに扱われた。周りの目が、殺す行為が…俺は耐えきれなくて退学届を出した。でも受理されずに…『ああ、誰も助けてくれないんだ』って気付いて、俺は───………」

 

「──鞘無…」

 

 

 

 

「嘘だよ」

 

 最速で轟の顔面に左手の拳を入れる。

 緑谷と違ってモロには入らなかったが、それでもかなりのダメージは重ねられた。

 ギリギリ手を挟まれたが、それでも轟は勢いそのまま後ろに飛ぶ…。

 氷でリングアウトは避けるが、何が起きたのか……そんな顔をしてコチラを凝視する。

 

 

 

「──不幸自慢がしたいなら他所でやれ」

 

「過去のトラウマ?決意?そんなもんこんな場所に持ってくんな……ここじゃ俺が勝つか!?お前が勝つか!?それだけだろうが」

 

「炎は使わない?結構!俺はその状態のお前を倒して上に登る!」

 

「お前みたいに壮絶な過去もなければ、見返す相手がいるわけじゃねぇ!復讐?勝手にやっとけ巻き込むな!」

 

 右手を小さな剣にかえて、左の赤い手で摘む。

 結合が出来なくなったからと言って、抜刀術が出来なくなったわけじゃない。

 こういう場面も考えて、こういう土壇場も考えて……。

 

「お前には分かんねぇよ!」

「分かるかンなもん!」

 

「俺が!炎を!」

「全部お前だろ!!」

 

 

 

「決意を否定する気もねぇし、お前の家庭には同情する。炎を使わない理由も…まぁ分からんでもない。でもいつかガタがくる、ていうか今がそれだ……今まで培った経験も感情も、全部お前のモンだろ!なら使えよ!その技術を、その血肉を……お前が…お前自身が否定してやるなよ」

 

「──それ全部ひっくるめて、轟焦凍だろ!?」

 

 言いたいことは全部言った。

 そう言ってしまいそうな鞘無の姿をみて、轟の何かが溢れ出した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場を埋め尽くす程の───熱。

 ありえないほどの気温の変化……。

 

 それを真っ向から受けて、鞘無は表情一つ変えることなく構えから微動だにしない。

 いや、動いてはいる。

 

 右の剣を摘んでいる左手。

 両方の腕が筋肉の限界に到達しているのか、血管が浮き上がるほどに力を込めている。

 

「別にお前に感化されたわけじゃねぇ」

 

 轟は呟くが、返っては来ない。

 それは分かっていたのか、それでも轟は言葉を続ける。

 

「……ただ、お前には負けたくねぇ。そう思っただけだ」

 

「なりたいもんが抜け落ちてた」

 

「俺は……──勝つぞ!」

 

 大氷壁。

 それがリングを覆い尽くして、鞘無を襲う。

 その攻撃に対して、また気温の変化がおきた観客は震えるが、今からおこるものを見逃さないようにとリングからは目を離さない。

 

 ──ドン!!

 

 地面を割り、その勢いのまま鞘無は轟へ一直線に進む。

 その速さは雷の様に早く、目で追えるのは極限の集中に達していた轟と何人かのプロヒーローのみ。

 右腕から轟の持つ圧倒的熱量が前に構えられて……それを──。

 

 

「──ありがとな」

 

 感謝の言葉を呟き、轟は漸くスタートをきる。

 その小さな呟きに、鞘無は少し笑った…。

 

 それが何に対してなのかは分からない。

 それでも……誰かからそう言って貰えたことが。

 

 ヒーローとして初めてできた行いではないか…と。

 偽りのない自分を出した、思っていることを吐き出した。

 嘘は………恐らく一つもない。

 

 偽りのない自分の言葉に、轟を救えたという安堵。

 そこから出た笑みなのかは……。

 

 

「『秘剣シリーズ 参の太刀──』」

 

 

「【瞬翔】」

 

 向かってくる熱を。

 剣圧のみで振り払い、冷気、熱気……。

 会場を支配していた空間を……全て一振で奪い取った。

 

 鞘無の一閃により、会場に有り得ないほどの突風が吹き荒れる。

 これだけ離れた場所でも風が来る、つまりそれは……あの剣の通った道は限りなく──。

 

 

 ──しかし、轟も鞘無もリングアウトはしていない。

 どこかで縛られた、個性での直接攻撃を禁止された故にだ……。

 その枷がなければ、今の攻撃で轟はいくら逆刃刀といえタダではすまなかっただろう。

 

 今の破壊。

 それが生身の人間、または会場に当たっただけでどれだけの被害がでるか考えもつかない。

 ただ一言だけ言えるとすれば、今の一撃はオールマイトの一撃に勝るとも劣らない……。

 

 轟は再度炎を使おうとするが……。

 

 

「──くそっ!動けねぇ!」

 あまりの風圧に体が踏ん張ること以外の言う事を聞かない。

 いま足が離れれば、リングアウトになると頭では理解している。

 だが動かなければ……格好の的…。

 

 吹き荒れる風の中。

 視界に一瞬だけ鞘無が映り、その顔は……何故か少しだけ安らかだった。

 

 

「俺の方こそ」

 

 ──ありがとう。

 そんなこと言われるだなんて夢にも思わなかった轟は、驚愕するが……。何となく理解した。

 

 USJの時……。

 

 ──あの時、俺たちがかける言葉は……。非難でも畏怖でもない。

 

 ──ありがとうって……感謝だったんだな。

 

 轟の顔の右側を。

 今まで偏った考えしか出来なかった、その氷側を。

 

 鞘無の拳は打ち砕いた──。

 

 

 

 

『轟くん場外!鞘無くん決勝進出!!』

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 ヴィラン〇した切々ちゃん(笑)を応援するスレ

 

 

 1:名無し

 スレ立ててる間に騎馬戦始まってた…わり

 

 2:名無し

 乙

 

 4:名無し

 しゃーない、乙

 

 5:名無し

 乙ー

 

 9:名無し

 てか切々ちゃん(笑)仲間組めたんだ、敬遠されると思ってたわ

 

 11:名無し

 好きな人と組みなさい(トラウマ

 

 14:名無し

 11>やめなさい、古傷が…

 

 16:現場の人

 でも「この指とまれー」ってしてたからなー

 

 18:名無し

 16>あ、現場の人ちっす

 

 21:名無し

 有能ニキだわ〜

 

 23:名無し

 てかそれ何?

 

 26:現場の人

 23>まず騎馬戦ってポイント制なんだけどさ、1位だけとんでもないポイントなのよ。実質それあれば1位は確定みたいな感じでさ。ずっと持つより終盤に奪う方がスタミナ的にも戦略的にもいいじゃん?それもブーストして仲間が集まらなかったから「俺と来たら本戦行けるよー」って言いながら指立てた……みたいな感じ。長文すまぬ

 

 29:名無し

 有能過ぎて惚れそう

 

 31:名無し

 ホモは帰ってどうぞ

 

 35:名無し

 それで集まったってことは……なんかそれはそれで評価下がりそうだな、この三人

 

 38:現場の人

 35>いや、それが集まらなかったんよ

 

 41:名無し

 38>え、きつ

 

 43:名無し

 全国放送で断られたってこと?

 

 46:現場の人

 いや、テレビ見てるわけじゃないから知らん

 

 51:名無し

 そのシーンは無かったよ、多分CMだった。一応雄英体育祭ってスポンサー付くからCM多くてウザイ

 

 53:名無し

 51>そういうなよ、そのスポンサーのおかげで見れてるんだからさ

 

 56:名無し

 まぁ、そうなんだけどさ。競技以外全部CMだと、流石にな……

 

 68:名無し

 それくらいは仕方ないよ。ならこの3人はどっから来たの?

 

 72:現場の人

 一人はヒーロー科だけど、ほか2人は他学科。しかも残ってる他学科はこの2人だけ

 

 76:名無し

 本戦出場確約したから着いてくるわな

 

 79:名無し

 それにポイント制で1番目立つからな、他学科からすれば変に負けるより目立って負けた方がいいって考えたんじゃね?

 

 81:名無し

 なーる

 

 83:名無し

 今どきの学生はよく考えてるなー

 

 86:名無し

 てか華麗に2人からハチマキとったけど、あれなに!?

 

 90:現場の人

 解説が切々ちゃん(笑)は体を剣に変える個性だから、糸状の剣に変えて包囲網を作ったり奪ったりしたって言ってる

 

 92:名無し

 まぁ実況はテレビでも聞こえるから分かるけど、そんなんできるもんなん?

 

 95:名無し

 いや無理、個性が糸系ならできるかもやけど。糸くらいの緻密な操作って半端なく難しいんよ。確かベストジーニーストも取材で話してた。糸系の個性でも難しいのに……多分めっちゃ努力したんじゃない?

 

 98:名無し

 てか体を剣に変える個性って結構ハズレ枠じゃない?よく受かったな雄英

 

 100:名無し

 ドンピシャな試験だったか、切々ちゃん(笑)が頑張ったか……まぁ見た感じ後者だけど

 

 102:名無し

 なんか強個性じゃないってだけで、ワイら没個性の希望よな

 

 109:名無し

 俺無個性なんだけど……

 

 113:名無し

 ……かける言葉が見つからねぇ

 

 119:名無し

 この時代個性無くても生きてけるし、強く生きろ

 

 123:名無し

 てか!なんか攻撃当たってなかった!?頭になんか引っ付いたぞ!?

 

 131:名無し

 多分スティッキーボムだろ?

 

 135:名無し

 131>【悲報】切々ちゃん(笑)終了のお知らせ

 

 141:名無し

 いや、くっつくだけって解説のイレイザーがゆーてる

 

 146:名無し

 焦った、またスマホ構えてた

 

 148:名無し

 146>期待してて草

 

 151:名無し

 てか騎馬?なのか相手の

 

 152:現場の人

 せんせーから許可もらってるって

 

 154:名無し

 流石有能ニキ

 

 159:名無し

 惚れる通り越して濡れた

 

 165:名無し

 キモ

 

 169:名無し

 てか切々ちゃん(笑)楽しそうだな、初めて笑ってるとこ見たかも

 

 176:名無し

 中学からの友達だよこいつら

 

 181:名無し

 176>マジで!?ソースどこ?

 

 185:名無し

 181>ソースってか、同中だった

 

 189:名無し

 同じ学校から雄英2人も出るって、すげぇな

 

 191:名無し

 189>いや、そうでも無いぞ。今年はそういうの多い。確かもう2組いる

 

 195:名無し

 何その魔境

 

 200:名無し

 てかjrと我らが切々ちゃん(笑)が戦ってるんだが

 

 202:名無し

 って威力おかしいだろ!?jr半端ない!!

 

 205:名無し

 いや、それ切って防ぐって…なにそれ怖い

 

 206:名無し

 やっぱヒーローはやべぇのの塊

 

 208:名無し

 ビビミ(定期

 

 210:名無し

 208>あれもヒーローいけるだろ

 

 215:名無し

 てか切々ちゃん(笑)以外パッとしないなー。ヒーロー科のこはローションだとして、ほか2人は何よ?

 

 222:名無し

 全く分からん、サポート科だから個性よりもそっち気になるわ、普通科は多分荷物

 

 225:名無し

 222>荷物は草

 

 228:名無し

 あ、踏み台にした

 

 229:名無し

 散々過ぎる…流石に可哀想

 

 235:名無し

 踏まれるだけで本戦いけるならいいだろ

 

 239:名無し

 役目が踏み台って……ホントに可哀想

 

 241:名無し

 てか切々ちゃん(笑)パルクールか!?忍者だ!?

 

 245:名無し

 落ち着けよ、多分個性かなんかだろ?さすがに人間やめてる

 

 251:名無し

 いや、あれ身体能力らしいぞ。解説が話してる、てかなんか肩入れしてないか解説?

 

 258:名無し

 1位だしな……それに経歴だけ見ればヴィラン予備軍だし、イメージアップ狙ってんだろ?

 

 261:名無し

 露骨だけど、なんか先生してんなー

 

 265:名無し

 イレイザー実はいい先生説

 

 269:名無し

 現2年を1回全員除籍したらしいけどな

 

 274:名無し

 マジで!?

 

 284:名無し

 さっきまで2年生の板に居たけど、そんな感じの話題が上がった。でもそれをバネにして成長したって

 

 289:名無し

 なにそれ、素敵。いい先生やん

 

 291:名無し

 いや、今は担任が『13号』だから、褒めるのは13号だろ

 

 301:名無し

 上司の失敗は部下の責任、部下の功績は上司のおかげ。はっきりわかんだね

 

 308:名無し

 301>世の中の上下関係ってホント糞だわ

 

 311:名無し

 てか次はヘドロ飛んできた!?

 

 315:名無し

 飛ぶってお前……マジかよ

 

 319:名無し

 ありなのか?反則では!?

 

 322:名無し

 ありらしいよ。ちょっと騎馬戦ってなにか調べてくるわ

 

 329:名無し

 322>答えの見つからん奴やん、帰ってこい

 

 333:名無し

 てかすげぇ!空中でこんなに人間って動けるんだ

 

 335:名無し

 ヘドロは個性だけど、切々ちゃん(笑)は身体能力だって。実は切々ちゃん(笑)増強系もあるんじゃない?

 

 337:名無し

 有り得なくはないけど、人の努力を何でもかんでも個性に決めつけるんは…なんかちゃうやろ

 

 340:名無し

 なんか、無個性でもここまで行けるって思えると。なんか元気出てきたわ

 

 345:名無し

 頑張れ少年!

 

 348:名無し

 頑張れ少女!(願望

 

 351:名無し

 頑張れ魔法少女(物理

 

 360:名無し

 てか、捕縛銃いいな!糸を燃やす系じゃなかったら、ヘドロそのまま地面落ちてた

 

 365:名無し

 360>落ちてるのに冷静に対応してたからな、見た目あれだけど、結構クレバーなのでは?

 

 371:名無し

 見た目あれって……まぁ言いたいことは分かるけど

 

 376:名無し

 てかハチマキ取れんかったの?握られてたと思ったけど

 

 379:名無し

 373>なんか滑ってたな

 

 381:名無し

 確かヘドロの個性って汗を爆発の元にする感じじゃなかったっけ?

 

 385:名無し

 381>ってことは……手汗?

 

 387:名無し

 多分……そういうことよな

 

 389:名無し

 え、なにそれ

 

 390:名無し

 なんか可愛く見えてきたぞ

 

 392:名無し

 ヘドロじゃなくて、これからはヘドロんって呼ぼうかな俺

 

 400:名無し

 なにそれ和む

 

 402:名無し

 ヘドロん、いい響きだ

 

 409:名無し

 てか、金髪のイケ面がきた!

 

 411:名無し

 我らが切々ちゃん(笑)モテモテやなぁ〜

 

 413:名無し

 411>全員男だから嫉妬わかん

 

 414:名無し

 最初の方にハチマキ奪った透明の子、性別は女らしいよ

 

 416:名無し

 見えんモンにたたんわ

 

 419:名無し

 416>清々しいクズで草

 

 420:名無し

 419>いや見えないってモノまた一興

 

 423:名無し

 猛者現る

 

 425:名無し

 てか、個性ダダかぶりかよ!

 

 428:名無し

 しかも金髪の下のやつの個性が盾っぽい、圧倒的不利

 

 429:名無し

 いや我らが忍者切々ちゃん(笑)なら…!

 

 431:名無し

 いや、金髪の剣大っきいな。切々ちゃん(笑)大丈夫か!?

 

 433:名無し

 下位互換はキツイな……特に精神的に上ってキツすぎる

 

 441:名無し

 お!なんか逸らした!すげぇ!

 

 444:名無し

 上位互換に勝てるか!?てか勝っただろ!

 

 451:名無し

 ………は?壁?

 

 458:名無し

 いや、あいつの個性が多分……

 

 461:現場の人

 解説入った、金髪の個性がコピー。だから騎馬3人の個性と戦ってるみたいな感じ

 

 465:名無し

 なにそれチートやん

 

 467:名無し

 いや、騎馬戦がうってつけやったんやろ。つねに触れてられる個性持ちの仲間、うってつけ過ぎる

 

 471:名無し

 切々ちゃん(笑)呆然としてる……てか固まった?

 

 478:名無し

 初めて止まってるとこ見た

 

 480:名無し

 なんか殴られて煽られてる?

 

 481:名無し

 有能ニキお願いします…

 

 490:現場の人

 詳しくは伏せるけど、まえ襲撃してきたヴィラン(殺したやつ)が個性複数持ちの改造人間だったらしいんよ、多分個性複数もちってとこにトラウマスイッチ入ったんじゃないかな?それで金髪はAの目立ってBがぞんざいに扱われてるのに不満とか言ってる。

 

 492:名無し

 490>いや、めっちゃ詳しくて臭

 

 495:現場の人

 いや、金髪の発言が……結構アウトローなんよ。観客もちょっと引いてる。それも金髪にじゃなくて、切々ちゃん(笑)に対して

 

 496:名無し

 だからめっちゃ詳しくて草アウトローってどんなもんなん?

 

 500:現場の人

 ヴィラン殺したのに退学せずによく居るよな〜みたいな事。スレの人は殺ししたって知ってるけど、観客はなんも知らんから衝撃受けとる

 

 502:名無し

 ……うわぁ。

 

 506:名無し

 まぁそういう人は居るよな、そういう意見もわからんでは無い

 

 508:名無し

 だって怖ぇもん

 

 510:名無し

 てか最初のジェット投げ爆破については触れん感じ?

 

 511:名無し

 510>爆発ネタはもうやった

 

 514:名無し

 あ、はい

 

 518:名無し

 てか改造人間って、お前どこの人間だよ。それ絶対機密だろ

 

 520:名無し

 ……警察?……ヒーロー?

 

 522:現場の人

 520>ちょっと言えないとこかな

 

 529:名無し

 あれ?切々ちゃん(笑)の様子が……

 

 531:名無し

 やばい、キレてない?

 

 532:名無し

 ちょっとスマホ準備しとく!!

 

 535:名無し

 ちょっ!?ヤバいんじゃない!!

 

 541:名無し

 ……ってあれ?逃げてく感じ?

 

 543:名無し

 いや、攻撃はしてたよ。すげぇ早かったけど見逃さなかった

 

 547:名無し

 いや凄!?有能ニキ現る

 

 549:名無し

 ごめん目の個性だわ

 

 550:名無し

 どっちにしろ優秀

 

 552:名無し

 てか攻撃したなあああああああああああ!

 

 555:名無し

 おおおおおおおお!!!!!

 

 559:名無し

 ルミリオン以来の超新星だぁぁああ!

 

 563:名無し

 ルミリオンには勝てへんな(サイズ

 

 568:名無し

 あ、テレビ止まった

 

 571:名無し

 マジかよ……俺のスマホに野郎のナニが保存されたんだけど

 

 573:名無し

 571>自重しろ

 

 574:名無し

 てか男の裸で盛り上がんなよ、ホモ

 

 579:名無し

 ってことは次回から切々ちゃん(笑)には期待していいってことか!?

 

 581:名無し

 クソかよ

 

 583:名無し

 ちょっと今からでも録画してくるわ

 

 587:名無し

 俺も

 

 590:名無し

 俺も

 

 592:名無し

 ワイも

 

 600:名無し

 クソかよ

 

 

 




相澤先生も緑谷もどっちも「ありがとう」って言ってなかったよなーっていう伏線やね。(言ってないよね?)
先生のヒーローのいい所。感謝されるところを知ってれば、こんな感じにはならんかったってことやね。
緑谷も「ごめん」じゃなくて「ありがとう」って言ってれば……ってことやね。
峰田ですら「ありがとう」が無かった。

多分「ありがとう」って命張った後に言われると主人公も救われたんだろうな〜って思いました。


それと前話の「ヒーローは救われ〜〜」の所ですが、皆さんここはヒロアカの【職業ヒーロー】ですよ。夢と希望が詰まった特撮じゃないんです。
バクゴーの時の有利な個性が来ないと譲るよ〜っていうのがよくある風のヒロアカ時空。えりちゃんも然り。死柄木弔然り。
助けてって手を伸ばしてるのも100%助けられないのに、手を差し伸べてこない相手に助けが来るって……それは無理なんじゃないですかね?
と作者は愚考します。


【1部修正しました】


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決勝って……それマ?

相澤先生はもう少し後に持っていきたかったけど……。
出すことにしました。
書いてて思ったけど、視点やら見方によって正義って脆いんだなぁ〜っと。どっかのセリフで見たことあると思い出しました。


 俺の判断は間違っていたのだろうか? 

 

 脳無にやられて保健室に居る夢をよく見るようになった。

 

 そこには俺と鞘無だけ残り、俺は鞘無に何度もこう言う夢を見る。

 

 ──教育者として、俺はお前を叱らなければいけない……ただ、一ヒーローに助けられた救助者として。鞘無…お前というヒーローに感謝もしている。だから……鞘無、俺を助けてくれて……ありがとう。

 

 勿論これは夢でありこんなことは言っていない。

 ただあの時、俺は鞘無に間違いなく恐怖を抱いた…。

 あの時俺は感謝も叱咤も何一つ言えなかった……。

 

 つい最近まで中学生だった子供が、自分よりも強い相手を圧倒していたのだ。あの時に俺は鞘無をオールマイトの様な自分ではどうしようもない相手……………だとは思わず、自分では絶対に勝てない悪だと植え付けられた。

 気絶する直前の光景。

 あの脳無に鞘無は笑って切り刻んでいた…。

 殺すことに躊躇もなく……。

 

 多分あの時から俺は生徒という枠組みから鞘無を外してしまったんだろう。

 だから翌日、雄英を辞めたいと言った時は予想外だった。

 いつもクラスでおちゃらけている様な生徒だった鞘無が、あの脳無を圧倒して斬って殺して笑っていた巨悪とも言えた鞘無が…。

 

 あそこまで弱っているのに、俺には何か違和感があった。

 それこそ、何か辞めなければいけない理由があるかのように。

 

 ここ二、三日で人間が変わりすぎている。

 明るかった生徒が何かの拍子で暗くなったことは数年に1度見たことがあるが、多分それとはまた別種のもの。

 理解できないという感情しか出てこなかった、鞘無の叫びも、怒りも、ぶつけられても……俺は捕まる前のヴィランの癇癪の様にしか聞こえなかった。

 

 一度悪と認めてしまえば、固まった考えが離れなくなる。

 一つ一つのすれ違いや、何かが噛み合わず狂わせることになったのだ。

 小さな歯車に少しづつヒビを入れて……。

 

 ヴィランを乗り越えた雄英一年。

 世間じゃそうやって持て囃しているが、凄いと言うよりも俺の中では誰も死ななかった安堵しかない。

 あの脳無、あれに勝てるのは教師陣でも少ないだろう。

 

 あれに勝てる存在は、武道を極め、個性を巧みに使い、心に芯を持つ。『心·技·体』を持つもののみ。

 それが今回は鞘無だった……飛び抜けた戦闘センス、個性を活かす技、そして………未成熟だった心。

 あの日、俺が鞘無をヴィランとして見ていなければ……ばぁさんにメンタルケアの申請くらいは出していたのかもしれない。

 

 

 正直…雄英を辞めたいと言われた時に俺は安堵した。

 厄介な生徒が……俺の許容を超えた生徒を見なくてもいいと教師として最低と思えてしまうことを思いつつ。そして校長が止めた。

 母子家庭の鞘無には他のヒーロー科のある学校への編入は少し厳しい…。ということだった。

 それを聞かされてなんとも言えない気持ちになる。

 

 だから俺は途中からでも奨学金の貰える仕組みのある、ヒーロー科の学校を探して……ちょうど昔事務所が近かった時の知り合いのヒーローが教鞭を奮っている学校があると知り手を回した。

 雄英と比べれば施設などのグレードは下がるが、それでもいい学校だと言えるだろう。

 だから、俺はそれを直ぐにまとめて校長に話さずに鞘無の家に行った。

 

 面倒事を押し付ける……その自覚はある。

 ただ、それでも俺は……。

 

 鞘無の家にスーツで赴き、鞘無の母親と面談をする。

 昨日から鞘無が1日吐いたりしてもう見ていられない……と、何故鞘無が殺人者扱いされないといけないのか……と。言われ何も言えなかった。

 

 1日吐いた? 

 精神が病む? 

 

 耳を疑った、あれを未だに演技だと疑っていた故にだろう。

 マスコミがヴィラン殺害を嗅ぎつけて、ポストに変なものが入っていたり電話線を抜かないと本当に大変だと……。

 ……ああ、俺もマスコミが嫌いだよ。

 

 信じてやれない、俺は言おうとして辞めた。

 その時に鞘無の母親は「息子の好きにさせる」とだけ言って帰ってきた鞘無と交代で部屋に入ってきた。

 隣には3年の波動がいた事には驚いたが、それよりも鞘無本人を見てギョッとした。

 校長室では正面から見られなかったからか……それとも俺が見ようとしていなかったからか…。

 明らかに鞘無はやせ細っている、顔色も悪くゲッソリとしている。

 

 一日中吐いていた…というのは嘘ではない。

 そして多分雄英を辞めたいということに…恐らく裏はない。

 

 この時…俺は何をしているのか。

 そう思ってしまった。

 

 弱っている生徒に向かって、俺は何をしている? 

 退学できない生徒に追い討ちの様に転校を勧める? 

 

 これがもし自分にされたらどう思う? 

 俺は教師として胸を張って言えるか? 

 

 途端転校を勧めるのに気が引いた…。

 なぜなら、もし今の鞘無に言うのは……。

 まるで─────…………。

 

 多分これが決定打だったと思う。

 鞘無から出た言葉は拒絶だった。

 ヒーローに頼らない……それをヒーローの卵に言わせた俺の罪は重い。

 

 遅すぎる認識だったと自分でも思う。

 いくら化け物のように強く、敵を殺せる冷淡さを持っていても……。

 まだガキだ……。一回りも小さいガキ……。

 

 一つ一つの判断は間違っていなかったと思う。

 教師という立場から脳無殺害に対して感謝を言わなかったこと。

 要注意人物を卵達から離すために転校を勧めたこと。

 

 教師という立場でなかった場合。

 先生であり、そしてヒーローであったなら……。

 違う言葉が出てきたのではないだろうか? 

 

 そう思わずにはいられない。

 

 夢を見る。

 あの日の選択を間違えなかった夢を。

 

 そこには笑顔な鞘無がいて、A組の面々がそれを囲って…体育祭やら文化祭やら楽しんでいる光景。

 

 そして夢は醒める。

 

 腫れ物を扱うかのようなA組の面々は、怖がって鞘無に話しかけにいかない。それは1部の教師にも言えることだ。

 俺がこんなことを言う資格がないのは分かっている……ただ、悪夢ならば覚めて欲しい。

 

 そう願わずにはいられない。

 

 

 そうしてやってきた体育祭。

 ロボ無双から始まり騎馬戦まではルールの範囲で活躍していた…。

 解説として呼ばれた事を最初こそ恨んだが、悪いイメージを払拭できるチャンスじゃないかと考え、俺は観客から見ても分かる位に肩入れした…と思う。そこまで強い個性では無いこと、そこら辺も伝えて一位をもぎ取ったということを…。

 

 しかし、本戦から話が変わった。

 切島との戦い、それから雲行きが怪しくなった…。

 切島への内部破壊。初めて見る技だった。今時武術を納めている人は珍しい…なぜなら個性を使う戦いが1番強いからだ。

 今年は珍しく武術を使う生徒が二人いたが、こんなことは稀だ。

 

 個性頼りのパンチやキック。

 柔術を見おう見まねでやる生徒は一定数いるが、それは付け焼き刃故に脆い。故に俺の捕縛術も殆ど独学。

 その知らない……という恐怖を思い出す。

 

 そして鞘無の発言が聞こえた。

 ──今作って使ってみた…と。

 騎馬戦でうけた個性をインスピレーションとして作ったと。

 

 内部破壊。

 それを考えた時に俺は動いていた。

 

 ──それを使えば失格だ…と。

 この時の判断は今でも間違いだとは思っていない、他の人よりも頑丈な切島はその内部破壊とやらを受けても倒れずに向かうだろう。

 ……それが問題だ。

 もし、試合が終わった時に切島の内臓が爆発でもして吐血でもすれば……。

 

 しかし、ふと思う。

 これを使ったのが同じ武術を嗜む尾白だった場合、俺は止めただろうか……? 

 恐らく止めないだろう、脳無を殺したイメージが湧きすぎている。

 

 故に個性による直接攻撃も封じた。

 全国放送で部位欠損だなんて、ヒーローとしても相当やばい。

 

 個性の一部使用不可

 武術による攻撃無し

 

 言ってから気付く、ならどうやって勝て…と。

 勝ち目なんて無い……無いはずだった。

 しかしそれは直ぐに覆させられた。

 試合中に妙なちゃちゃを入れて切島にも悪いことをした…。

 

 

 2回戦、緑谷との戦いは圧倒的だった。

 教師陣から見ても緑谷はオールマイトに気に入られている…。それが教師陣から距離を置かれている鞘無には我慢ならなかったのかもしれない。試合時間はそれほど長くなく、それでも深く考えさせられる試合だった。

 終わり次第に席を開けて鞘無の元へと走る。

 

 多分手遅れなのかもしれない、でも止めなければいけない。

 気持ちが先行した…。

 もっと信じてやれれば、もっと教師として鞘無を見てやれば、もっと───。

 

 もっと違う道もあったのかもしれない。

 

 ──どけ、邪魔だ。

 

 その言葉が嫌に響いた。

 あの時の言葉、ヒーローに頼らない……その言葉がリバイバルする。

 

 戻れなくなる。ヒーローを目指す卵として…。

 落ちれば……その先は……。

 

 ちゃんと拒絶された。

 今回はもう決定打とか分岐点とか……そんなちゃちなものじゃない。

 引き戻せたかもしれない道を…。

 もう確定して助けてやれないと……手は届かないと。

 

 今まで手を伸ばしていた事に今更気付く。

 そしてその手を叩き落としていた事にも…。

 

 よく耳にする言葉が頭に流れてきた。

 ──職業ヒーロー。

 

 ヒーローとは何だったのか? 

 心の弱い生徒を寄ってたかって虐めるものの名称だったか……。

 

 なんともまぁ……滑稽なものだ。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 左手の調子を確かめる。

 リングを割れる程の力が出せるとは思っていなかった。

 感覚に鈍感になったが、逆にそれは脳の抑制から逃げられたということなのではないだろうか? そうでなければ寸勁……インパクト如きでリングを割れるわけが無い。

 いくら力を一点に集めたとしても、限りなく不可能に近い。

 

 もしかすればこの腕は既に俺の体ではないのではないだろうか? 

 トカゲの尻尾切りのように切り離せるのではないだろうか? 

 

 右手で左手首を掴み引っこ抜こうとする。

 

「──悪い、今いいか?」

 その時後ろから声をかけられた……。

 

「轟か…どした?」

「大丈夫か?」

 

 ……………。

 一瞬だけ何を言われたのか分からなかった…。

 大丈夫か? それは何を指して言われた言葉なのか…。

 

「何のこと?」

「…いや何でもねぇ。俺がここに来たのは──」

 

 そう言って轟が語ったのは一つの悲劇。

 母親のこと、父親のこと、兄のこと、姉のこと。

 それは轟の家の事…。

 どこにでもあるような、どこにでもないような話。

 要するにはDV気味の父親が家庭をめちゃくちゃにした…みたいな事。

 

「そうか、それで何でそれを俺に?」

「お前に切っ掛けを貰ったからだ」

 

「切っ掛け?」

「ああ、俺は親父を否定することにしか興味がなかった。でもそうじゃなかった、俺はヒーローになりたかった……それを目覚めさせてくれたお前への……礼っつうか…なんて言うか。まぁそんな感じだ」

 

「ああ、結構痛いの入れたもんな」

 

 そう言って俺は自分の左頬を触って轟を見る。

 轟の左頬にはガーゼが貼っており、結構腫れるだろう。

 

「ああまだジンジンする」

 

 轟は自分の頬を撫でて恨めしそうに……という感情はなく、もっと清々しい顔をしている。

 乗り越えた……その言葉が俺を置き去りにする。

 乗り越えられた轟と…乗り越えたフリをしている俺。

 

 似たようで似ていない。

 だから……。

 

「おめでとう」

「…? 俺はお前に負けたんだぞ?」

「ああ、でも……おめでとう」

 

「……おう?」

 

 だから此奴らが……俺は狂ってしまいそうに成程に羨ましい。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

『体育祭もいよいよ大詰め!! 泣いても笑ってもこれが最後だ!! それと注目しろよプロヒーロー共!! 超新星はここにいるぜ!!』

 

『紹介不要!! 知りたきゃ自分で確かめな!! 早く始めろや! スターートーー!!!』

 

「おい、プリン野郎」

「なんだ、爆発三太郎?」

「るっせ! 誰から聞いたそれ!? …んなこたぁどうでもいいんだよ」

 

「──使えよ、直接攻撃にテメェの個性を」

 眼力で殺しそうな程に圧が高まっている爆豪がコチラに向けてそう言い放つ。

 

「俺は優勝したい…失格になること自分からするわけねぇだろ」

「知るか、つかこれで最後だお前が失格になろうが関係ねぇ」

 

「関係ないって、お前…あ、もし俺が勝って失格になってもメダルくれる的な?」

「違ぇ、それ使ったお前に俺が完膚なきまでに叩き潰して俺が勝つからだ!!」

 

「そりゃ、穏やかじゃないな」

 

 空気を変える。

 纏う空気を変える。

 心に鎧を纏い、そして狂気を………笑みを顔面に貼りつけろ。

 

 ──そうすれば………。

 

「主審! それでいいの!?」

 

 確認のために俺が聞く。

 こんな体育祭という全国放送の場所で、そんな下がることはしたくないだろう。ここで敢えて相澤に聞かなかったのは、場など関係なく合理的判断をするからだ。それに俺への却下のラインが随分と低い。

 

「えっと……許可し…………ます!」

 随分と葛藤していたみたいだが、最終的にミッドナイトから許可を貰えた。

 

「じゃあ爆豪、全部使うから」

「たりめぇだブッ殺すぞ」

 

「──死ぬなよ」

「ぶっ殺す」

 

 大きな爆発音が開始のゴングとなった。

 チカチカと爆豪の手のひらで爆発がおきる……そしてその爆風、爆音全てが体で感じられて……。

 

「死ねカス!!」

 爆豪の手のひらをコチラに向けた右手の下から上に勢いよく……。

 爆発が目の前を通る。

 

 爆音や爆風に惑わされがちになるが、元々爆豪の身体能力はずば抜けている。それこそクラスで2番目に体を扱うことが上手い。

 恐らく武術を覚えさそうとすれば、一月でそこそこには仕上がるだろう…。

 

「くそ、かすった」

「避けんじゃねぇぞ!!」

 

 爆発が更に大きくなり、普通に体に当たる。

 威力は調節されていたのか、体が吹っ飛ぶほどではない。

 後ろに少し下がり、当たった場所に手を持っていく。

 

 折れてはいないが、打撲跡が残ることは確定した。それよりも今置かれている状況はソコソコ不味い。なにより近接で間合いが測れないということが1番厄介である。

 爆発は自由自在で威力も規模も変えられる。

 見抜こうにも…………。

 

「そういえば爆豪、お前爆発前にパチパチしてるそれなんだよ」

「教えるわけねぇだろ!! しね!」

 

 爆発がおきる前に、爆豪の手のひらが光る。

 もしかすれば、この光と直後に起きる爆発は何か関係があるんじゃないか? 

 

 速攻で刈り取りにいこうにも、爆豪なら一発食らっても爆発を当てて反撃してきそうだ。

 だから爆発に関する事を一つくらい解き明かしておきたい。

 

 自損覚悟! 何てもの付けたくはなかったけど、そうも言っていられない。全力には全力を……敵意には敵意を返そう。

 

 右手を触手剣に変えて爆豪に攻撃する。

 個性攻撃が許可されたと言っても、勿論逆刃刀でやる。

 

 爆豪に牽制のつもりで……。

 

 ──ドガ! 

 

 右手にぶつかった感覚が走る。

 避けられたはずの攻撃だ、それを爆豪は……。

 

「やっと止まりやがったなカスしね!!」

 

 当たったことに驚く俺は、爆発で近くまで来た爆豪に為す術なく攻撃をモロに受ける。

 爆発の攻撃腹にくらい、後ろへ仰け反る。

 当たる直前に体を後ろに引いてダメージを減らしたが、爆破は爆破。人間が耐えられるキャパを超えている。

 

「ってぇ」

 

 焦げてきたジャージを脱いで後ろに投げる。

 

「テメェ、個性で攻撃にトラウマ持っただろ」

「……は?」

「人に当てる瞬間、テメェは振り切らずに一度引く。考えてんのかしてねぇのかは知らねぇがな」

 

 爆豪の言い分に納得させられた。

 確かに…俺は攻撃をビビっている……と思う。

 おれの件は感覚も伝わる、当たった瞬間に脳がブレーキをかけているのでは無いだろうか。

 少し前の脳無、そしてその楽しさ。

 切るのは楽しい……そう思ってしまい、その沼に落ちるのが怖いと思っている。

 

「ふふ」

 

 だから笑おう。

 こいつを殺す……だなんて思わなくていい。

 

 笑えばいい。

 狂気を貼り付けなくても、嗤わなくても。

 

 ただ、爆豪とのバトルを笑えばいい。

 

「爆豪」

 

 右手を逆刃刀から拳に戻す。

 

「ぶん殴る」

「寝言は寝て死ね」

 

 流水岩砕拳

 

 今できることは拳を握ること、そして相手をぶちのめすこと。

 それ以外にない。

 腹を襲う爆破、右拳から伝わる筋肉の感触。

 

 耳に響く爆音、吠える声。

 

 切島と違って拳がもう壊れることはない。

 純粋に殴るのみ。

 

 腹にどれだけ衝撃が来ようとも。

 顔面にどれだけ爆破の爆風が来ようとも。

 

 崩れることなかれ…。

 拳を握れ。

 

「秘剣シリーズ」

 

 握る拳を広げて、指先にまで力を込める。

 これは握った拳よりも強く、それでいて殺気を飛ばせられる。

 

「壱の太刀【三閃】」

 

 両脇腹に右肩を手刀で同時に抉る。

(素手でもできんのかよ!?)

 

 爆豪がなんとも言えない表情でこちらを睨むが、その顔面に拳を握って叩き込む。

 

 途中横からの爆破で拳の進路を妨害されて拳は爆豪の頬を掠めるだけ。

 その進路を妨害した手のひらをあちら側に向けて、爆発。

 とんでもない速さの肘打ちが俺の眉間にぶち当たる。

 

 

 ………ただの泥試合だ。

 殴って殴られて、爆破して爆破されて。

 

 俺の轟戦で見せたような華麗さはない。

 爆豪が常闇戦で見せた頭脳的な計算はない。

 

 あるのはただお互いをサンドバックが何かと勘違いした男二人の攻撃のみ。

 

 肘打ちで折れた鼻を正常な位置に戻す。

 折れた時以上の痛みに襲われて涙袋が刺激され、涙が出てくる。

 

「くっそ、痛てぇ」

 

 爆豪は肩に入れた三閃の内一閃で外れた肩を戻すように爆破をおこして無理やり入れ直す。

(そんなこともできんのかよ)

 

 自分のことを棚に上げるが、爆豪も相当クレイジーだ。

 

 両者体はボロボロ。

 会場も盛り上がる派閥と引く派閥が出てきた…。

 そんななか、俺たちは気にしないとばかりに限界を超える。

 

「しぃぃいねえぇぇぇ!!」

 

 爆豪の全力の爆破が前に打ち出された。

 以前の訓練で外すや掠める……といった優しいものじゃない、明確に当てに来て…そしてそれは殺す。

 本気でそう受け取れる程に。

 

 これにはさすがに右手を剣に変えて──。

 

「【流】」

 攻撃を受け流す。

 攻撃と言うよりも爆風であったが、それを取捨選択(チョイス)することにより剣で捌いた。

 

「だろうと思ったぜ!!」

 

 流した故の硬直。

【流】は攻撃を1度だけ捌く型であるが、連発は出来ない。全身を使って逸らすのだ、使ったあとは少しの間だけ身動きが取れない。

 これを見せたのは殆どないのに、それをつくことが出来る戦闘センスに直感。

 

 ──恐れ入る。

 

 爆豪の爆破の手がこちらを向いた時に。

 動けないなら……無理やり動かせ。

 

 頭突きで爆豪の鼻っ柱を折る。

 

「──ッ!! ソが!!」

 

 頭突きを受けて仰け反る瞬間に痛み分け、とでも言うように爆豪は爆破を放って俺に直撃する。

 こんなんばっかだ……。

 

 顔面も凸凹になって。

 

「鼻っ柱折れて随分とイケメンになったじゃねぇか爆豪くんよぉ」

「黙れカス」

 

 軽口にも死ねカス黙れの三拍子で返される。

 勝利に貪欲なやつ、爆豪は全体とは違い気絶しないと諦めない……そういう類の男だ。

 

「ぶっ殺す」

 爆豪は手のひらにチカチカと爆破を始める。

 

 そしてそのまま上に飛び、上から高速で回りながら落ちてくる。

 

「ちょ! それはヤバい」

 

 事態の深刻さに気が付き、さすがに焦る。

 自分の回転エネルギーを爆破に乗せての特攻。

 そんなの受けきれるか? 

 流じゃできない、あれはあくまで直接攻撃してきた場合だ。爆豪のあれは近くで爆破して勢いそのままで…という範囲攻撃。

 

 流するだけ無駄で終わる。

 

 ならば──

 

 技が完成する前に倒すしかない。

 

 轟の最後と同じように。参の太刀の構えを行う。

 目に爆豪の爆破の前兆が入り、目を細める。

 

 爆豪は限界まで近づいて攻撃をぶつけたいはず。

 俺はその完成の少し先を攻撃する。

 攻撃しようとした瞬間、それが武術では1番つかれやすい。

 

 攻撃と防御は同時に行えないからだろうと勝手に解釈する。

 

 近づく爆豪。

 

 爆破を上手く使って回転する。

 

 狭まる距離。

 

 爆豪は笑みを崩さずに此方へ殺気を飛ばす。

 

 爆豪がクロスレンジに入った、ここから爆豪が使うまで。

 

 近づく。

 

 近づく。

 

 近づ──いや、近づき過ぎだ!! 

 

「かかったなカス! しねぇ!!」

 

 大回転からの爆破……。

 そう来ると誰もが思っただろう、それにあの前兆なら限界を超えた爆破が来ると察してしまう。

 しかし、それは来なかった。

 

 それはつまり、あのパチパチは前兆でも何でもなく。

 爆豪が俺に使ったブラフ。

 それを信じきってしまった俺。

 

 故に爆破ギリギリまで詰めることを許してしまった。

 しかし今は完全に爆豪の手中。

 

 どちらも手を伸ばせば届いてしまうような距離。

 

 ──命運を分けたのは………体感時間の調節だった。

 

 

 爆豪の罠にハマった瞬間。

 俺は走馬灯を作り出した。

 

 体感時間を極限まで遅める。

 世界が止まるように遅くなり、ヤケにスローな世界になる。

 

 大爆発が狙いではなく、右の大振り。

 それが狙いと確信する。

 

 今回は走馬灯を解かずに最後まで油断せずに行く。

 

 右の大ぶりに左手を持っていき、衝撃を吸収。そしてそのまま左手を外に勢いよく払い爆豪のバランスを崩させる。

 感覚が鈍いのか、熱さなどは感じない。

 

 止められると思っていなかった爆豪の顔。その顔に右手を握って打ち込む。

 

 しかしこの絶体絶命のピンチで爆豪の戦闘センスは光る。

 その確実に入ると思われた右手ストレートに爆豪は頭突きを合わせて相殺。

 やや爆豪にダメージがはいるが、それでもこの攻撃は失敗と言えるだろう。

 

 

 ──払った左腕を爆豪の胸に構える。

 手はグーではなく、広げてパーに。

 

 威力などいらない。

 内部破壊もする必要が無い。

 

 ただ、相手を押し出すために。

 全てのエネルギーを相手をぶっ飛ばすために……。

 

「──インパクト」

 

 左手の掌底が爆豪の腹に刺さり。

 爆豪は──………。

 

 

「ま! だだ!!」

 

 飛ばされた空中で……。

 爆豪はリングOUTしないように、手のひらの爆破を使って阻止する。

 

「けて! たまるがぁぁぁあああ!!!」

 

 ありえない程の執念。

 しかし──

 

 

「いいや、これで負けてもらう……──取捨選択(チョイス)

 

 目に見え……指定するものは……。

『爆破』

 

 個性には切れるものと切れないものがあった。

 パイセンのビームから始まり、あれは切れた。

 サイコパスの変身は摂取中も使用中も試したがダメだった。

 

 この違いは何か? 

 

 それは目に見える個性かどうか。

 だからビームは切れた……。

 

 この仮定に間違いが無ければ…爆破に切れぬ道理はない。

 

 右手を二又の触手剣にして……。

 

 爆豪の両腕を切り裂く。

 

 途端に爆豪の爆破の個性は発動しなくなった。

 

「──なっ!?」

 

 空中で突然の個性使用不能。

 そんなもの焦るなと言う方が無理だ。

 

 空で自由に動けてた今までと違い、爆豪はただひたすらに落下するだけ。

 

 空中で藻掻くが……効果はなく。

 

「………っくそおぉぉぉぉおおおおお!!!!」

 

 爆豪は場外の地面を思いっきり殴った。

 そしてそれが表すことは───……。

 

 

 

『決着ぅぅうう!!! 一年優勝はぁぁぁああああ!!! ヒーロー科一年A組!! 鞘無 剣心だぁぁあああああ!!!!』

 

 出てきたのは喜びでも、歓喜でもない……。

 

 ただただ安堵が体を支配して………リングに崩れ落ちる。

 

 体が全部ボロボロだ。

 あ、そっか俺右腕ボロボロだったんだっけ……。

 骨を繋いだだけで、ボロボロなのは変わってないんだった。

 しかも爆豪遠慮なく爆破してきやがって……。

 

 

「はぁー、疲れた」

 

 リングの上で仰向けになり……。

 俺は成し遂げられた安堵から……極浅い眠りについた…。




えー、大変申し訳ないのですが……。
今週の金曜までテストあるんで、次話は少し空きます。

ごゆるりと


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掲示板って……それマ?

最新話読みました?やばいねぇ〜やばいよ。
あのメンツで殺されてよさそうなの、マキアとねじれだけなんよな……まさか……ね?


 602:名無し

 てかなんで服だけ切れたん? jrの氷も切ってなかった? 

 

 603:名無し

 602>多分だけど指定したもの切れるとかじゃないか? 瞬間的な1部透過とか

 

 605:名無し

 これって何気に強いよな、スッポンポンじゃヴィランも迂闊に動けないし

 

 609:名無し

 ぶっちゃけ女性特攻ついてるよコレ

 

 611:名無し

 行動の阻害と社会的地位を同時に攻撃する切々ちゃん(笑)マジパネェ

 

 613:名無し

 てかレクつまんないな〜

 

 615:名無し

 馬鹿野郎! リアルチアだぞ! 興奮するだろ!? 

 

 619:名無し

 615>普通にキモイんだが…

 

 620:名無し

 やっぱレクは3年に限るわ、ビビミがなんやかんや1番おもろい

 

 622:名無し

 それな、多分みんな3年の板いってる

 

 625:名無し

 じゃあちょっと本線まで休憩しよか………

 

 

 

 ………

 ……

 …

 

 

 

 833:名無し

 まさかサンイーターの触手プレイがビビミとだなんて…

 

 835:名無し

 833>ビビミのロボな、勘違いさせるんやめ

 

 842:名無し

 おっと、また移動するとこだった

 

 845:名無し

 てか初戦終わってるやん、普通科とヒーロー科だから…まぁヒーロー科でしょどうせ? 

 

 846:現場の人

 そうだけど、なかなかの接戦だった。普通科のこの個性が催眠? 洗脳? 系の個性でリングアウトギリギリまでいったけど、何とか脱出して場外に投げ飛ばした

 

 848:名無し

 846>つくづく有能、サンクス

 

 851:名無し

 きたぞ! 我らが切々ちゃん(笑)の試合だ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 901:名無し

 いや、なんて言うか……あの

 

 905:名無し

 何言ってるか全然分からんかったけど、なんかシビアな雰囲気だったな

 

 908:名無し

 てか手がボロボロだけど大丈夫なのか? 

 

 909:名無し

 多分素振りとか正拳突きとかしてきたんだと思うけど、拳が殆ど潰れてなかった。元から訓練で殴るってことはあんまりしてないんじゃ無いんかな? 慣れてないのに初めから岩を殴ればそうなるよ

 

 911:名無し

 909>いや、そういうことじゃないんだが。てか岩殴れば大抵の人は拳潰れると思うよ

 

 915:名無し

 911>いやそうでも無いよ、振り切って壊せれたら意外とダメージ少ない。痛くないっていえば嘘っぽく聞こえるけど、砕ければそこまでなんよ実は

 

 918:名無し

 なんか武術家っぽい人多くて怖いんだけど…なに? 二重の極みなの? 

 

 921:名無し

 918>古っ! いまは最終選別って言うんやで

 

 922:名無し

 お前らなんの話ししてんの? 

 

 933:名無し

 てかそこんとこどうなん現場の人? 何言ってるか分からんし、イレイザーヘッドが解説のくせに禁止事項増やしたり……視聴者置いてけぼりなんだけど

 

 936:現場の人

 んー、なんて言うかヴィラン殺しちゃったことが意外と精神に来ててノイローゼ気味で学校やめてーって所を無理やり言いくるめられて頑張って通ってやってんのにーー! みたいな感じかな。あと個性が危ないから直接攻撃は禁止されてるっぽくて仕方なく個性なしの武術で戦ったけど、今作った新技で対人への被害が未知数だから禁止。禁止禁止ってなってブチ切れてヤケになって拳壊れるまで殴る……みたいな? 傍から見ればガキの癇癪って感じかな。腕っ節は強いけどガキって感じ

 

 938:名無し

 優秀過ぎる…でも最後辛辣

 

 939:名無し

 個性禁止で武術禁止ってじゃあどうすんねんってなるよな…いや勝ったみたいだけど

 

 941:名無し

 圧倒的やな、同列に扱ったはそりゃ優勝こいつってなるか

 

 950:名無し

 いや、なんでお前らそんな考えなん? 普通に色々頑張って周りより強くなったのに、それを否定(禁止)されて戦えって。それこそ不平等やろ

 

 952:名無し

 圧倒的なんは見ててつまらん

 

 955:名無し

 いやいやなんで頑張って上に上り詰めてんのに、頑張ってもない下の奴らのためにレベル落としたらなアカンねん

 

 958:名無し

 頑張っても上に行けんやつもおんねんカス

 

 961:名無し

 958>なら同じ舞台上がってくんなやカス

 

 965:名無し

 アンチは別スレな

 

 968:名無し

 てか退学って、切々ちゃん(笑)意外とダメージ食らってたんやな

 

 969:名無し

 ゆーて15か16のガキやろ? 現場の人はガキの癇癪って言ってたけど、色々と精神的に不安定な時に否定されまくったらああなるだろ、グレてないだけまし

 

 972:名無し

 いや、若干グレてる気がしないでもないぞ

 

 975:名無し

 騎馬戦の笑顔が懐かしい……

 

 977:名無し

 ちゃんと笑ってくれるって俺信じてる

 

 979:名無し

 アホくさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 1002:名無し

 どんまーい

 

 1003:名無し

 どんまーい

 

 1004:名無し

 どんまーい

 

 1005:名無し

 どんまーい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1015:名無し

 やってきたな第2戦

 

 1018:名無し

 いやjrが強すぎてコレ勝っても絶望なんだが…

 

 1019:名無し

 多分これ勝てるけど、次が(涙

 

 1021:名無し

 まぁjrの時は流石に色々と解放してくれるだろ? それじゃないと不平等

 

 1025:現場の人

 1021>それは無いよ、個性の殺傷能力が高いから禁止されてる訳じゃなくて、殺す可能性があるからだから

 

 1028:名無し

 ……どういうことだってばよ? 

 

 1029:名無し

 1028>個性の危険じゃなくて、個人に危険があるって事だろ? ……え? 何それ理不尽

 

 1032:現場の人

 理不尽っぽいけど、学校側も気を使うでしょ。何せ生放送だから何かあってからじゃ遅い。それも生徒間での戦いなら保護者だってみてる。自分の息子や娘が狂人に斬られたら……ってそういうのじゃない? 

 

 1035:名無し

 なんて言うか仕方ないことかもしれんけど、その全部が切々ちゃん(笑)に損しかないって。なに? 干されてんの? 

 

 1038:名無し

 てか個人で危険ならヘドロんもダメだろ

 

 1039:現場の人

 1038>いや、あれは妙にみみっちいから間違いはせん。でも切々ちゃん(笑)は1回外れて多分今の精神的に外れやすくなってる

 

 1042:名無し

 真面目にどういう立場なのか問いただしたい

 

 1045:名無し

 おっ! 入場やええええええれへとのなほたやたふた! なたやらと? らお? となたらほおゆまるさおるめねたり)あふさ(

 

 1047:名無し

 落ち着け! おちつくんほたへたはふそむふつふたはまはたよんたふさまよた、ふとほらあはたさほとさむるとそむすまそた? たそやとしまへりむよるまほるはまなたれとふまほはとるまほは

 

 1048:名無し

 う! 腕がぁぁぁあああ!! 厨二チックにーらとせつます)むれやぶそるもせむるむへるてそたりなとむふむほたるまへ

 

 1051:名無し

 もうガキとかもうどうでもいいくらいにカッコイイありがとうございますほんと

 

 1052:名無し

 あの腕はなんや? カッコイイって言ってる人と興奮してる人は厨二病患者って分かったけど、よくよく見ればグロいぞ結構

 

 1054:名無し

 ガチ考察になるけど、皮膚を改造したとか? 一応筋肉がさらけ出されてるわけじゃないけど。パッと見は筋肉剥き出しになってるし、皮膚が変な感じに変形? これも剣? ってのは流石に汎用性高杉くんなんだけど

 

 1056:名無し

 てかリカバリーガールは? 手当してんじゃないの? 切々ちゃん(笑)の対戦相手のミドリくんは手当してもらってるけど? ……もしかしてこれが雄英の闇

 

 1058:名無し

 治して貰えなかった……ってまじかよそんなことあんの? 

 

 1061:現場の人

 いや切々ちゃん(笑)が逃げ回ってた。教師陣が探し回ってたけど見つからなかった模様

 

 1065:名無し

 マジで何者なんだよ……。てか教師陣から逃げるってすごくね? あれプロヒーローなんだよ

 

 1067:名無し

 ヴィランでも食ってけそうだな

 

 1069:名無し

 おいバカやめろ、マジでなったらどうすんじゃい

 

 1074:名無し

 彼には花京院の魂が入ってるから問題ない

 

 1076:名無し

 ちょいちょい知らんネタ入れてくるんなんなん? 

 

 1081:名無し

 てか試合が……

 

 1083:名無し

 瞬殺やったね、圧倒的やったし

 

 1085:名無し

 弱いものいじめって感じやった

 

 1087:名無し

 1085>またイレイザーに怒られるぞぉお! 

 

 1089:名無し

 1087>切々ちゃん(笑)見捨てられてるから多分大丈夫

 

 1091:名無し

 ひでぇww

 

 1093:名無し

 あれ? これって応援スレだよな? 

 

 1094:名無し

 それ、てか弱いものいじめって。勝つか負けるかの戦いで戦力差あるんだからそうなるんもじゃーないやろ。てかそうそうに諦めんかったミドリくんの方が嫌いやわ

 

 1096:名無し

 1094>それな、雑魚がしゃしゃんなって感じ

 

 1099:名無し

 お前ら両方ともリスペクトし合うこともできんのかよ

 

 1101:名無し

 でもミドリくんのおかげで切々ちゃん(笑)のイメージダウンはできた! ミドリくん将来の商売敵のアンチ増やすとか計算高いな

 

 1108:名無し

 なんかアレやな、強くなる前の正義感強い主人公みたい。首突っ込むけど主人公補正で何とかなる。しかし主人公補正がなかった模様

 

 1111:名無し

 負けたもんねー

 

 1115:名無し

 てか冷静にあの腕どうしたんだ? 

 

 1117:名無し

 解説でも言われてなかったし、完全に未知のもんだろ? 

 

 1118:名無し

 あれが都市伝説界隈の特異点ってやつなんじゃないん? 

 

 1120:名無し

 自分の腕に特異点……お前絶対厨二病やろ

 

 1122:名無し

 特異点って何? 

 

 1123:名無し

 1122>なんか凄いやつのこと

 

 1125:名無し

 解説する気なくて草

 

 

 

 

 

 

 

 

 1221:名無し

 さ、どんまいコール待機しとこか

 

 1222:名無し

 個性攻撃禁止、武術禁止、相手は個性ブッパ常習犯。はい負け確

 

 1224:名無し

 てか会場の人らは知ってんの? 切々ちゃん(笑)が制限あるって

 

 1226:現場の人

 いや知らんよ、てか知ってる人の方が少ない

 

 1229:名無し

 だからお前マジで何もんだよ

 

 1232:名無し

 てかそれなら切々ちゃん(笑)ってすげぇ印象悪いんじゃね? 

 

 1235:名無し

 1回戦は試合中ブチ切れて喚く、2回戦はボロカスに罵る? で顔面パンチ。予選では沸いたとはいえ割とクソなこと多め………あれ? 

 

 1238:名無し

 まぁ真っ当なヒーローでは無いわな

 

 1241:名無し

 ど……どんまーい

 

 1243:名無し

 焦った、もう試合始まってるんかおもた

 

 1245:名無し

 てか始まった

 

 1248:名無し

 どんまー……って個性使うんかい! ありなんですけど現場の人!? 

 

 1252:現場の人

 直接攻撃が禁止であって、防御とか逸らすのはいいんじゃない? 

 

 1258:名無し

 屁理屈やん……

 

 1262:名無し

 それならもう個性禁止で殴り合いの方が良さそう

 

 1265:名無し

 明らかに不平等

 

 1266:名無し

 てか凄いな、氷って切れるんや

 

 1268:名無し

 バーテンやってみたら? アイスカット技術上がるよ

 

 1271:名無し

 つまり切々ちゃん(笑)はバーテンなのか。なるほど

 

 1273:現場の人

 コスがスーツやしね

 

 1275:名無し

 …………なんでコス知ってんの? 

 

 1277:名無し

 1275>おいもうやめろ、どうせ謎が深まるだけなんだから

 

 1278:名無し

 おおーー! なんか盛り上がってる! 早すぎてあんま分からんけど! 

 

 1281:名無し

 てか同時攻撃って……うせやろ? 

 

 1285:名無し

 いや、テレビの画質だろ? 

 

 1288:名無し

 うちけっこういいテレビだけど……同時ってかほぼ見えなかったんだが

 

 1290:現場の人

 生でもそうだったぞ

 

 1292:名無し

 目の個性ですけど、全く同時でした

 

 1293:名無し

 全く同時って…日本語も訳分からんくなってきてる

 

 1296:名無し

 ……は? こいつの個性って剣だよな? 

 

 1299:名無し

 素振りの圧で身動き取れん位の風圧になるって…もう訳分からんやろ

 

 1302:名無し

 個性なくてもここまでいけるんか

 

 1303:名無し

 1302>んなわけ無いやろ、個性を利用してんねん。どうやってやってるか分からんっていうのはそれだけレベルが高いって証拠や

 

 1305:名無し

 1303>分からんのが証拠になるん? 

 

 1306:名無し

 1305>分からんやつは黙っとけ

 

 1309:名無し

 あ、はい

 

 1311:名無し

 てか切々ちゃん(笑)個性の扱いうますぎんか? もう汎用性高いとかいうレベル超えてるやろ? 絶対頭いい

 

 1614:名無し

 頭いいっていうか、頭柔らかいんとちゃう? 固定概念がないっていうことで。いやいいんかもしれんけど

 

 1616:名無し

 あ、笑った

 

 1618:名無し

 流石に切々ちゃん(笑)倒す瞬間に笑ってたのか! クレイジーだ! 

 

 1622:名無し

 1618>いやそんな感じじゃなくて…なんて言うか。安心? みたいな? 

 

 1624:現場の人

 微かにだけど「ありがとう」って言ってたぞ

 

 1628:名無し

 1624>お前電子系の個性じゃないのかよ、聴覚もいいの? 

 

 1631:名無し

 切々ちゃん(笑)と同じくらい俺はあんたが気になるよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1811:名無し

 いやー長かったな〜。これで最後か

 

 1814:名無し

 長かった…

 

 1816:名無し

 ルミリオンポロリから始まり、スッポンポン二世が誕生して……

 

 1818:名無し

 それ以外なんかあったっけ? 

 

 1828:名無し

 洗脳済みで草

 

 1830:名無し

 あっただろ、サンイーターの凌辱プレイ

 

 1831:名無し

 ロボやろ、それもう飽きた

 

 1833:名無し

 あ、はい

 

 1835:名無し

 雄英体育祭やのに、悪人面がラストて

 

 1837:名無し

 方やイレイザーから喝を入れてもらえた悪人面と、イレイザーから守ってもらった悪人面。大丈夫か未来のヒーロー

 

 1840:名無し

 俺は切々ちゃん(笑)がヴィランになる未来がみえるんだが

 

 1842:名無し

 ぶっちゃけ嫌われてるん切々ちゃん(笑)って、(先生から)治癒もなし(生徒から)声援もなし。さすがに同情してまうんやが

 

 1843:名無し

 まぁどっちが勝ってもアレやけどヘドロんの方がちょっとだけマシになるな

 

 1845:現場の人

 いや会場的にはヘドロん応援で溢れてるな。プロヒーロー(笑)達がガキンチョ(切々ちゃん(笑))に向かって野次飛ばしてるんはウケる

 

 1847:名無し

 さすが職業ヒーロー、はっきり言ってチョウジョウレイメイキの負の遺産

 

 1850:名無し

 ヒーローっていう形が認知されるようになってからおかしくなったんやろ

 

 1852:名無し

 なにせ給料いいからな

 

 1854:名無し

 一応歩合制やけど、廃業してるヒーローってあんまみやんもんな

 

 1857:名無し

 そりゃ、ヒーローが金払ってヴィラン演じてもらってるからやん

 

 1859:名無し

 1857>マジで!? 

 

 1861:名無し

 いや逆にせん理由が無いやろ。1万払ったら10万帰ってくんねんで。ホームレスとか金で釣れば3食飯付きの寝床(豚箱)も着いてくんねんで。やらん理由がない

 

 1864:名無し

 でたホラ吹き、こういう奴が荒しよる。ニュースとか新聞とか見てないやろ、ネットの情報鵜呑みにするからそんな情報に踊らされる

 

 1867:名無し

 1864>ニュースとか新聞で言えるわけないやろ、ちょっとは考えろや。あと新聞とニュースって、あそこグルやねんから反日多いし……おっと誰か来たようだ……

 

 

 1877:名無し

 また脱線してるよ〜、てかまた試合始まってるし

 

 1881:名無し

 切々ちゃん(笑)が個性使って直接攻撃してるんだが…

 

 1883:現場の人

 個性禁止の解禁した、エチエチから許可取って。そんで許可とった事に会場唖然(新情報だから)でも応援はヘドロん多めかな〜。生徒たちは静観

 

 1885:名無し

 なに? 虐められてんの? 

 

 1887:名無し

 関わりたくないんだろ、切々ちゃん(笑)って見てる分は楽しいけど関わりたくないんだろ? 

 

 1889:名無し

 危険すぎるからな

 

 1891:名無し

 てかなんか……楽しそう? 

 

 1893:名無し

 正面から向かってきてくる相手が初めてやったんやろ

 

 1895:名無し

 ミドリくん……

 

 1897:名無し

 1895>実力的にお呼びじゃない

 

 1905:名無し

 てか戦闘楽しそうって…戦闘狂かよ。やっちゃえ! ばーさーかー

 

 1908:名無し

 2人ともボロボロやん、鼻が…

 

 1911:名無し

 なんやイケメンなったやん

 

 1918:名無し

 なんか活き活きしてんな

 

 1921:名無し

 あれ? 個性解いて殴り? 何故? 

 

 1931:現場の人

 ヘドロんがトラウマ抱えてんか!? って言ってた図星だった模様、直接剣で攻撃するんは怖いから拳で思いっきり

 

 1935:名無し

 個性解禁した意味

 

 1937:名無し

 あ、回り出した

 

 1941:名無し

 トリプルアクセル……なんちゃらトーループや!! 

 

 1945:名無し

 ニワカ晒しすぎ

 

 1948:名無し

 吹っ飛ばした!? 武術も禁止なんじゃないの!? 

 

 1953:名無し

 いや別種なんじゃない? ぶっ飛ばすのに全振りっぽいし

 

 1957:名無し

 てか飛行能力あるやつにそれは……そりゃ悪手だろ蟻んこ

 

 1961:名無し

 …と、思うじゃん? 

 

 1963:名無し

 あれ? 切ったのに切ってない? 

 

 1969:名無し

 何怒ったんや?? 見えんぞ!? 

 

 1971:現場の人

 超高速のブレード攻撃がヘドロんの手に当たった……当たったはずだけど切れてない、でも個性が使えない?? すまん、流石によく分からん

 

 1973:名無し

 個性無効の剣があるのか!? そんなラノベ主人公みたいなこと…

 

 1975:名無し

 創造と強奪と無効はテンプレ

 

 1977:名無し

 1年に創造居るぞ

 

 1981:名無し

 1977>なんで優勝ちゃうねん…

 

 1992:名無し

 勝ったのに会場盛り下がってんな〜〜〜

 

 1995:現場の人

 プロヒーロー(笑)が苦い顔しててメシウマ

 

 2000:名無し

 デビュー前なのに嫌われてるって、まじどんだけだよ

 

 2011:名無し

 あとはメダル授与だけか…乙

 

 2012:名無し

 乙

 

 2013:名無し

 乙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2141:名無し

 1位が切々ちゃん(笑)2位がヘドロん3位がjr……まぁらしいっちゃらしいな

 

 2151:名無し

 この3人が残るんは始まる前から知ってた

 

 2154:名無し

 2151>マジかよwwすげぇwwww

 

 2157:名無し

 2151>はいはい、おじいちゃんはおねんねしましょうねー

 

 2158:名無し

 メダル授与って……ひえまそるかむはつけつ!? 

 

 2161:名無し

 落ち着け……ゆたはてけまふけさこたるたさ!? 

 

 2164:名無し

 切々ちゃん(笑)……あんた……

 

 2168:名無し

 ヘドロんが……1位? 

 

 2171:名無し

 どゆこと!? 

 

 2174:現場の人

 主審曰く、決勝で禁止してきた武術を使用した為失格。繰り下げで2位! だってさ、ひでぇ……あ、1位と2位がメダル交換した。んで捨てたwwww

 

 2175:名無し

 武術って、あの押し出したやつ? 押し出すのって武術なん? 

 

 2179:名無し

 武術は奥が深いなぁ〜(すっとぼけ

 

 2182:名無し

 なんか運営が切々ちゃん(笑)にどうして優勝して欲しくなさそうなんが見えるぞ

 

 2186:名無し

 まぁヒーローって人気商売だし、それの育成校でトップの雄英の優勝がヴィランっぽいやつ。ってのはテレビ受けが悪いんじゃない? いや勝手な憶測やけどさ

 

 2191:名無し

 明らかな不平等に理不尽、こんなんヴィランなっても文句言えんやろ

 

 2195:現場の人

 それは全部知ってる人(ここの板)だけで言えることやよ。なんも知らん、又は断片的にしか知らん奴(会場のプロヒーローや観客)は寧ろ喜んでる。騒いでるだけかもしれんけど

 

 2205:名無し

 不憫でならんわ、てか勝たす気ないなら出さずなや

 

 2209:名無し

 日本は良くも悪くも平等に見せようとするとこあるからな、チャンスは公平に配ってるって主張したいんやろ

 

 2211:名無し

 やってもやらんでもクレームの電話来るって……切々ちゃん(笑)まじ迷惑な生徒やな

 

 2215:名無し

 2211>は? 

 

 2217:名無し

 てかお前らプロヒーローとか教師に何そんなに期待してんの? 

 

 2219:名無し

 偽物が多すぎる

 

 2221:名無し

 2219>今流行りのステインやろ? 毒され過ぎ

 

 2222:名無し

 どんまいやけど、まぁ2位やし指名は来るやろ! 頑張れヴィラン! 

 

 2224:名無し

 2222>ヒーローな………………間違いやんな? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




掲示板だけになると手抜きっぽくなるけど言わせて欲しい、これ作るんクソしんどい、もうやらん……とは言いきれん


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コードネームって……それマ?

オリなるものが出てきます


 体育祭の結果は2位。

 本来なら優勝!といきたいところだったけど、寸勁擬きが禁止指定食らってたのを忘れて失格。

 というか別種なんだけど、まぁ傍から見ればどっちも一緒か…。

 やってて殆ど同じだと自分でも思うし……。

 

 通形先輩の所には「体育祭を見て──」と言われていたので「必ず優勝します!」といった手前、これはもう望み薄…。天喰先輩の所は…まぁ多分ダメだろ。パイセンの所はパイセンは良くてもヒーローの方が大変になるのは違いない…。

 凄くナイーブな気持ちだ…。

 道が閉ざされた……そう考えるのは早計だろう。それくらい分かってる、でもそれでもふとした時に考えてしまう。

 

 俺が──。

 

「お、いたいた。君が鞘無くんだよね、雄英体育祭準優勝の」

「…ええ、まぁ」

 

 目の前に現れたのは胡散臭そうなオッサン。いやお兄さん?

 なんというか、二重スパイとかしてそうな…そんな軽薄そうな感じのヘラヘラ顔の男。青エクのピンク髪みたいな奴だ。

 だから少し警戒して会話する。

 

「そんな警戒しなさんな、俺がヴィランとかと話す時にする時の姿勢じゃん。もっと落ち着いて」

「……いやすいませんね、どうも最近敵が多いもんでして。特に俺の周りに」

 

「なるほどね〜、君も相当大変そうだね。体育祭でも明らかな不公平なジャッジ、噂に尾ひれが着いて今は相当なものだろう」

 

 警戒レベルを一気にあげる。

 こいつ、俺の事どこまで知ってんだ?

 

 右手をコイントスする様に構えて、何時でも攻撃できるようにポケットの中でする。

 

「お前、何者?」

「え?」

 

 俺の問いに訳が分からない…そんな顔でこちらを見てくる。

 そんな顔をされても困る、誰だこいつ。

 

「え、俺の事知らない?」

「知らないんですけど、通報しますよ」

「……うわー、恥ずかし。結構顔広いと思ってたんだけど。そりゃいきなりこんな距離詰められて知らない人から話しかけられたら警戒するよな〜」

 

 なんというか、自分の黒歴史が軽くバレた…時の反応をしている感じでお兄さんは羞恥に悶えている。

 

「ごめんね鞘無くん、俺の名前はホークス。現ヒーローランキング第3位のプロヒーローだよ」

「………マジで」

「マジマジ大マジ、流石にヒーローの卵だから知ってるかと思ったんだけど。俺もまだまだって事かな……」

「いや、あの、そのですね……俺ってテレビとかあんまり見ないじゃないですか」

 

「いや、知らんよ」

 

 なんだか軽いノリになった。

 警戒してたのが馬鹿らしい、というか今の不敬でヒーローとして何らかの……みたいな事ないよな…。

 

「まぁその話は置いといて、俺は君にとある提案をしに来たんだよ鞘無剣心くん」

「提案…ですか」

 

「そう、君 公安直属のヒーローになる気ない?」

 

 

 

 

 

 

 

「………………は?」

 

 公安直属のヒーロー…?なんだそれ?

 そんなの初めて聞いたんだけど……。

 

「君はオカルトとか信じるたちの人?」

「……まぁ、それなりに」

 

 自分の起源がオカルトとは切っても切れないような物故に、一定の理解と信じる感情はある。

 

「この世の中が…というか個性が発現するようになってからヒーローができてそれで平和を維持出来る……だなんて本気では思ってないだろ?今の君なら尚更」

「分からなくは……無いですね」

 

「そう、中には死なない個性っていうのもいる。そういうのに個性を使って殺す、又はそれに近いことをするヒーローが居るんだ」

「それってSFとかじゃないんですか」

 

「まさか、一 二世紀前の人から見れば現代社会はSFそのものだよ」

 

「……そういう人達がいる…というのは信じたくは無いですけど、いることはわかりました。……で、そこに俺が入れと?」

「そそ!直属って言っても常に上からの命令を聞く訳じゃない、例えば公安からの依頼を成る可く優先させるとかそんなものだよ、あとは個性の有効。君たちで言うリカバリーガール。彼女は珍しい治癒系だから色んな場所から依頼が来てる。それの公安版とでも思ってくれたらいいよ」

 

「………臭いな。すげぇ臭い、俺に何を求めてるんですか?」

 

 明らかにこの話は何かヤバい。

 聞く聞かない以前に、これを知ることがもう既にやばい。

 

「警戒心強いなぁ……まぁざっくり言うと、君の個性無効。あれを借りたい」

「個性無効……あぁ」

 

 合点がいった。確かにあれは特殊な力だ。

 個性の一時的な無効。むしろあれを全国放送で晒すのはやばかったと、冷静になった今なら考えられる程に。

 

「……というか、それならウチの学校のイレイザーヘッドを頼ればいいんじゃないですか?あれもヒーローでしょ?」

「もうして貰ったけど、彼の個性は個性の発動を阻害するもので既に発動した物はどうすることも出来ない。例えばNo.2ヒーローのエンデヴァーさんの炎、出す前なら抹消でどうにかできるけど、例えば松明とかに付けた炎を抹消で消すことは出来ない。でも君のはいけるでしょ?」

 

「……やったことは無いですけど、まぁ恐らく」

 

「だと思ったビンゴ!」

 

 指をパチッと鳴らしてヘラヘラとこちらを向く。

 結局のところなんなんだ?

 

「なんでそんなことに俺を?みたいな顔だね。今巷で騒がれている事件が2つある、一つはステイン。プロヒーローを意図的に狙って襲う凶悪なヴィラン。……そしてもう一つがグール、民間人が個性によってゾンビ化、そして人に仇なす。今はステインに隠れているけど、かなりやばい山になってる。ステインは言わずもがな、グールの方は」

 

「パンデミック」

 

 前世の知識。

 ゾンビウイルスの感染によって世界規模の事件になるのが。

 まさかここって、そういう世界だったのか?

 

「意外と頭はいいんだね、そう感染拡大…って言いたいところだけど操られたゾンビが民間人を攻撃しても民間人がゾンビになることは無い。分かってるのはそれくらいだよ……だから今のところは個性不明、人物像も不明なんだよねー」

「相澤じゃ消せなかったから、次は俺?」

 

「そう、今ゾンビ…というか操られている人、それも確保出来たのは4人。最大人数はどうなのか?それすらわかってないけど、変に希望を持つよりは無限に増えると思った方がいい。だから君にはそれの解除ができるか、それを調べたい」

「……それってヒーローでもない俺がやってもいいんですか?」

 

「ううん、バレたらかなり不味い」

「ですよね」

 

「でも事が事だ、日本という国そのものを脅かす程の危険。なりふり構っては居られない……と言いたいところだけど、君、ちょうど職場体験あるでしょ?」

「………うせやろ?」

 

「俺が君のこと指名するからさ、俺のとこに来てくれない?」

「………マジすか」

 

 ひょんな事から、俺氏職場体験先から指名頂きました…。

 

「あの…ほ、ほ……ホームズさん」

「ホークスだよ」

「……ホークスさん、実は俺違うヒーローに売り込みをしててですね…もしかしたらその人から指名が来た場合とかは…」

 

「断って。公安のことは絶対に言っちゃダメだからね」

「………うせやろ?」

 

 

 

 ーーーーー

 

 

「ねーねー!剣心くん!体育祭何位だった!何位だったの!!?」

 

 帰り道、峰田とコンビニで買ったアイスを食っていると後ろから笑顔のパイセンが現れた。

 数分前に峰田は「アイス当たった!!」と半狂乱になりながら替えに行ったのだが……何故か帰ってこずにパイセンが来た。

 ………何故だ?

 

 峰田を池に落とせばパイセンに変わるのか?

 何それ素敵。地球に優しそう……。

 

「えっと……まぁほら、あれだよ。結果が全てじゃないっていうか!過程が大事って言うか!そういうのだよ!結果だけ追い求めてもいいことないって!」

「へぇ、私は1位だったんだけど剣心くんは〜?」

 

 こいつ、絶対知ってて言ってるだろ。

 というか、この人1位とったの?マジパネェわ。

 

「まぁ、あの2位で……ございます」

「あれ〜?おかしいな〜、剣心くん。『俺に勝てるのは俺だけだ』って言ってなかった〜?」

 

 きゅうしょへのだいだめーじ。

 こうかはばつぐんだ。

 けんしんはひんしになった。

 

「ちょ…ちょっと、あれだ弁明させてください。本当は1位なの、1位だったの?」

「へー、ならメダルは?」

 

「……ぶった切りました、銀は爆発三太郎が爆発しました。今頃ゴミ箱へシュートしてます」

「へーじゃあ、2位だったかも証明できないんだねー」

 

「ちょっと?ぼく、うそ、つかない、ほんと」

「そうなんだねー、でも峰田くんも居ないし。証明する人がねー」

 

 …………もしやこやつ、その為だけに峰田を……。

 帰ってこないと思ったら、まさか……。

 

「……あ!あのパイセン……マイベストフレンド峰田は?いずこ?」

「んー、とね。雄英に体操服忘れちゃった!っと思って探してたら峰田くんが取りに行ってくれるって言ったから任せたの」

 

「………パイセンさん、あなたのスクールバッグからはみ出てるのはUAクソダサジャージじゃありませんの?」

「……わー!ほんとだー!ここにあったんだねー!探した時はなかったのに!ふっしぎー!」

 

「……………うせやろ」

 

 なんか今日「うせやろ」率が高いのは気のせいか?

 というかこのパイセン、最低過ぎんか?峰田このこと絶対知らないだろ?しかもこの調子なら伝えてない可能性が微レ存……というかその逆というか…。

 

「はい、これお祝い」

「…べブシ……」

 

「これ好きだよねー、さっき買ったの準優勝おめでとう」

「…………うす」

 

「あれーどうしたの剣心くん」

「……いや、なんて言うか。やってよかったなって」

 

「ふふ、よかったよかった。えらーいえらーい」

 

 頭を撫でてくるので払う。

 やめろい、恥ずかしいじゃろ。

 

「むー…」

 むくれてもダメですよ、というかあなた年上でしょ…。

 

 さて、峰田に電話するか。

 流石に定期あるっていっても面倒だろ…。

 

 ──あーしもしも?みね………ジャック・バウアーか!?お前!ルパンだなーー!!逮捕だ逮捕!!ばっかモーン、そいつがルパンだ!!!

『……ちくしょう、そうだったのかよ……』

 

 なんでこれで分かるのかは知らないけど、多分伝わったからいいだろう。うん、しーらない。

 

 というか、電話中になでなでするのやめて貰えないですかね。

 

「パイセン…さん?」

「なーに?」

 

「今日は凄い撫でますけど……どうしたんですか?」

「んーとね、なんとなく!」

「さいで」

 

「でも、一人じゃないんだよー…って分かってて貰いたかったり」

「………」

「なんてね、どうドキっとした?」

 

「そりゃもうバックんバッくんですよ」

「ふふっ、じゃあ一緒だね」

 

「そういうのサラッと言えてるから卑怯ですよ、卑劣様」

「はいはい照れてるんだねー、すぐ茶化さない」

 

「やめて、なんかすごい恥ずかしい…」

 

 食べかけのアイスを一気に食べて頭がキーンってなった。

 おかしい、俺はテンプレに呑まれない男だったはずなのに……。

 

「そういえばその腕どうしたの?凄くダサいよ、包帯巻く?」

「やめろお前!?分かってて言ってんだろ!?」

 

 

 

 

 家に帰ると、何故か波動家と合同でパーティをすることになった。

 弾幕の様な物に『祝優勝』とパイセンのものには書かれており、俺のものには『祝v()優勝』と書かれており、なんだか非常に悲しくなった……か、悲しくなんてないやい!というか結構グロいクソなことしたけど、受け入れてくれてて……まぁ凄い染みたわ。

 帰る場所は大事ー……坂東は──………。

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 ……………なんか、視線が痛い。

 周りからの視線が……。

 別にそんなに見られても痴漢とかはしないから大丈夫ですよ、とりあえず片手はつり革に、片手はスマホに。

 

 ……ホークスが言ってた通り、ステインが大々的に報道されてる。

 大量殺人鬼……どの時代でもどの世界でもこういうのはいるんだねー。

 

「して峰田よ」

「なんだ鞘無」

 

「痴漢するなら離れてやってくんない、俺も同じ類と思われたくないからさ」

「オイラじゃねぇよ!お前だよ!」

 

「静かにしたまえ、発情期の玉」

「無表情で何言ってんだこいつ」

 

「悟りをひらくのじゃ、さすれば女体への関心は………まぁなんとかなるだろ」

「最後までキャラ崩すなよ!」

「静かに……どんとすもーきんぐ」

 

「それはタバコ、speakingだ!」

「ふむ……」

 

 

「それで峰田よ」

「戻んのかよ、何だよ?」

 

「やばい、むっちゃムラムラする」

「お前ほんとぶっ飛ばすぞ」

 

 

 こんな男子高校生の訳の分からない日常の一コマを電車でしていたのだが………。なんでこんなに遠目で見られているのだろうか……。

 

 その視線は学校に着くまでずっと付き纏い……。

 

「ということがあったんだが、どう思う?爆発三太郎?」

「てめぶっ殺したろか!アァ!?」

 

「爆発三太郎は……ごめん、お前はずっと遠目から見られてるよね、人選ミスった」

「売ってんだよな喧嘩!1度勝ったからって調子乗ってんじゃねぇぞプリン野郎!!」

 

「え〜、本戦しか入れてないの〜?障害物も、ついでに騎馬戦も俺一位だったのに〜〜、もしかして直接負かしてないとカウントしない系ですか〜〜?」

「ぶっ殺す!!」

 

「ははは!優勝者が怒った〜ー!!wwwww」

 

「待てテメ!死ねカスオラァ!!」

 

 

 ーーーーー

 

 

「おはよう………鞘無、お前どうした」

「バクゴーくんに暴力を振るわれました」

 

 顔が腫れてる俺氏、バクゴー早すぎてすぐ掴まってボコられた。

 なんだよあの早業、絶対ガキん時に虐めてた類の人間だぞあれ、固定してからのマウントが早すぎる。

 

 

「何した」

「いや、あの……視線が〜って話して」

 

「爆豪」

「……ちっ」

 

 すると相澤はため息をついて出席をとる。

 触らぬ〜〜ってやつだろう、俺も今日のバクゴーには絡まんとこ…。

 

「んな事よりも今日の情報学、ちょっと特殊だぞ」

 

 んな事に片付けられてしまった。

 俺の顔の腫れはんな事か?ん?

 

 そりゃ酷いんじゃないですかねぇ!?

 

「なんだ鞘無?」

「なんでもないです!」

「そうか」

 

 ガン飛ばしたらしれっと流された。

 

「コードネーム、ヒーロー名の考案だ」

 

『「胸膨らむやつきたーーー!!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 爆豪3155

 鞘無366

 轟4251

 

 

 ーーーーー

 

 

 

「いや、俺だけ桁違くね!?」

 

 シーン。

 

 ………あ、ミスった。俺この教室だと友達ほとんど居ないわ。

 というか「何をお前、当たり前だろ」みたいな目で見られてるのが辛いんだけど。

 

「勝ったぁ!!ざまぁみろプリン野郎」

 

 まじかよ爆豪、このシーンとした雰囲気で俺に話しかけてくるとか。

 煽ってるのか良い奴なのかハッキリしてくれよ、いやもう俺の脳内では良い奴にすることにした。

 故の菩薩スマイル。

 

「……(ニコォ」

「ちっ!」

 

 煽り耐性があるのか…とか思われてると思うけど……。違うぜ!爆豪!お前の心意気に感謝をしているんだぜ!

 

「まぁ頑張ろうぜ、轟に負けたもの同士」

「うっせ一緒にすんなカス!」

 

「……あれぇ、爆豪君は1位なのにぃ〜?」

「テメぶっ殺すぞマジで」

 

「せんせー!爆豪が便秘だそうでーす」

「やったらボケカスjebdisj#j!!!」

 

 ………尚、この最中教室は笑い声が響く訳ではなく。と言っても全く声が聞こえないというわけでもなく。

 切島、上鳴、耳郎、瀬呂等の陽キャ集団は笑いを堪えていた。

 

 寧ろ反応しなかったのは緑谷と飯田と轟と青山等の真面目なメンツ。

 こういうのは飯田が直ぐに止めに来ると思ったんだけど……そのせいで爆豪に腫れてない方の頬を殴られて両方とも腫れた。

 許さんぞ委員長、君が止めるまで計算してやったのに……。

 

 

「──爆殺王」

 

「んー、10点!面白いからOK!」

「ダメよ鞘無くん、センスの欠けらも無いわ考え直しなさい」

 

 爆豪が同士を見つけたような顔をするが、ごめんだけど俺は厨二病はもう終わったんだ。ごめんね……。

 

 爆豪のをボロカスに笑ったから周りの「お前はどんなんだよ」って視線が痛いな。

 大丈夫、俺だって温めてきたんだ。

 ここ数日だけど。

 

 

「俺のヒーロー名は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──【スカー】です」

 

「あと爆豪のヒーロー名は【爆発三太郎】です」

「んだとぶっ殺すぞ!」

 

「爆殺王よりは……爆豪くんさえ良ければそれでいいわよ」

「いい訳ねぇだろババアぶっ殺すぞ!!」

 

「誰がババアだクソガキ!!」

 

 修羅場と化した……。というか原因は………うん、爆豪だろ。

 

 

 

………ていうか、オレってこんなキャラで合ってたッケ??




思春期男子ってね、チョロいの。
美人幼馴染に頭撫でてもらえるだけで元気100倍なの……
でもね……──


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