The Grimoire of Kirby (ぽよい)
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小説の世界観、設定について

投稿が大分アレですけど、必要かなって思いまして

 

作風

 シリアスながらたまーに天然ボケ(主にカービィキャラ)が入る作品となっています。原作に沿い、キャラ崩壊が無いようにしていますが、原作設定が曖昧なため、貴方のイメージと多少異なるかもしれません。

 

 1話ごとにカービィや東方に関するちょっとした?豆知識などを載せてます。ストーリーとは関係ないものもあれば、前の話とちょっと関係のあるものもあります。豆知識は読まなくても本編はしっかり楽しめます。

 

 基本的には登場人物の誰かの視点で描かれます。霧雨魔理沙視点のことが多いです。一般的な第三者目線から描く小説とは違い、そのキャラの日記とか記録とか実況とか、そんなのに近い感じかな。チャット型小説にも近いかも。一話の中でも視点が別のキャラになることもあります。その関係上、ほとんどの場合話し言葉ではなく書き言葉なので、セリフとそれ以外の部分で口調が違ったりします。

 

 

世界観、設定

 

ポップスターと地球との関係

 

 ポップスターと地球は距離的に、あるいは時間的に、あるいはどちらでもない何か的にとても離れた場所にあります。

 何故、曖昧な表現をするのかというと、カービィシリーズには地球にそっくりな星があり、その様々な考察のなかにはそれが未来の地球なのでは?という考えもあります。

 また、星のカービィも東方Projectも曖昧な設定にすることで、想像力を刺激するような作品となっています。要は捉え方次第だということであり、それと同時に原作のイメージを崩さないようにするために曖昧にしています。

 というか、正直ポップスターと地球との位置関係を決めろなんて言われても、ボクが困るだけなので…(汗)

 なお、この作品ではポップスターは地球と比べて時間の流れる速度が約7倍になっています。何かしらの不思議な力があるんでしょうね。ポップスターはパッと見恒星のように見えますが、実は公式で惑星であることが明かされているため、相対性理論で考えたとしても可能性は十分あると思います。ま、時間の流れに差が無い方がおかしいなと思ってたので追加した設定ですが約7倍って数字はテキトーです。(この星、惑星の癖して恒星みたいに光りやがるし、太陽が衛星になってやがる!一体軸となる恒星はどこにあるんだ!)

 

 

プププランドとカービィとその仲間達、そして絵画の世界

 

 大体は原作通りのイメージで良いと思います。

 原作との相違点や原作では不明な部分の明確化としては、デデデ大王がドロシアが描いた偽者ではなくドロシアに騙されて待たされていた本物である点、メタナイトがカービィをストーキングしていたという点、ドロシアに似た赤い魔女がより強い力を持っており、ドロシアに協力している点です。(赤い魔女についてはネタバレになるので名前は伏せますが、3DS作品とかプレイしてると察しついてる人もいるかもしれませんね)

 タッチ!カービィDSを知らない人のために説明すると、ドロシアがプププランドを絵画に作り変え、その後絵画の世界へ帰っていきます。カービィはプププランドを元に戻すために魔女を追いかけて絵画の世界に入りますが、魔法によってボールの姿に変えられてしまいます。ドロシアが落とした魔法の絵筆はカービィではなく、「あなた」のもとにやってきます。「あなた」は魔法の絵筆の力でカービィを導き、カービィと共に戦います。

 あと、アニメ版星のカービィの要素を地味に、かつ大胆に含む内容になってます。詳しくはネタバレになるので、気になった方は調べてみてください。なんなら、WiiUでVC版が購入できるので本体持ってる方は是非。

 キャラ設定も出しときます。

 

カービィ:ボールの姿に変えられ、自分の意思では移動できない。正義感と自分の欲(主に食欲)のために行動するため、後先を考えなかったり、敵に対しては冷酷だったりする。騙されやすく、友達を傷付けるヤツは許せないお人好し。食べ過ぎると膨らむのはグッズや別のカービィゲームのまんぷくカービィってヤツから。言葉を話せないが、特に仲のいい仲間とは以心伝心でやり取りできる。ボール姿のため、使えるコピー能力に制限がある。宇宙の人間、つまり宇宙人。

 

メタナイト:時にカービィを助け、時にカービィに試練を与える謎の仮面の剣士。心配性で、何かあるごとにカービィの後をつけている。因みに、別のカービィゲームでもストーキングしているような描写があったりする。性格は真面目だが、ナルシストな面もあり、ネタ役でもある。タッチ!カービィではオマケ程度で直接ストーリーには出てこない。宇宙の人間、つまり宇宙人。

 

デデデ大王:威張ってばかりで我儘そうにしているが、実はいいヤツ。カービィをライバル視しており、仲が悪そうにしか見えないが誰よりもカービィを大切に思っている。変なところで頭が冴える。努力は人前で見せないタイプ。ぞい口調。(ぞい口調はアニメだけでなく、カービィゲームでは番外編でよくみられる。)宇宙の人間、つまり宇宙人。

 

ドロシア:絵画の魔女。放置されている間に力を持ち、現実世界を怨み、全てを絵画にして復讐を企む。幻想郷でいう、絵画の付喪神であり、妖怪の方の魔法使い。

 

赤い魔女:ドロシアにそっくりな絵画の魔女(?)。ドロシアより強力な力を持っているようだが…?

 

幻想郷とその住民

 

 原作通りのイメージで良いと思います。詳しく書けって言われても流石に全部書くと長くなりすぎるので、よく登場するキャラの設定(主に公式では曖昧な部分を明確化した箇所や、追加設定)を少し説明しますね。キャラ説明は追記するかも。公式設定が曖昧なので、多少貴方のイメージと違う描写があるかもしれません。公式設定を知らないよって人は気になったら調べてくれ。

 

博麗霊夢:異変解決に乗り気な時は余り多くない。今回の異変にも興味がなさそうだが…?空を飛ぶ程度の能力とは、あらゆる力の干渉から空を飛べる能力。つまりその力を応用すれば無敵になれる。因みに茨木華扇に弱いらしい。

 

霧雨魔理沙:本作品の主人公。あくまでもカービィではなく、魔法の絵筆を手にした魔理沙が主人公。裏では努力しており、人前では努力を見せない。星にこだわるのは森近霖之助の影響で、意味深。

 

射命丸文:人間には人気の新聞記者。天狗からの評判はよくない。カービィに興味を持ち、カービィに関するネタをいち早く新聞に取り入れたが…?番外編では彼女の新聞記事を読むことができる。

 

八雲紫:幻想郷を作った賢者の1人。境界を弄れるため、大体なんでもできる。稗田阿求は彼女の能力を防ぐ手段がないと評価しているためよく勘違いされるが、防ぐ手段は無いわけではない。ぶっちゃけ幻想郷の人物の中で一番(チート能力的な意味で)強いが、そんな彼女がお手上げということは、それだけの力、あるいは対策があるということ。過保護で、やり過ぎることもある。

 

摩多羅隠岐奈:幻想郷を作った賢者の1人。幻想郷を愛しているが、幻想郷に対しては冷酷で、ギリギリまで自分は干渉しない。しかし、今回の件は紫が異変に気が付く前から対策を取ろうとしている。それだけヤバいということ。因みに背中の扉は移動手段であり、パワーバランスの管理はその移動を利用して円滑にしているらしい。この行為は破壊と創造に限りなく近く、新たな妖怪も簡単に作れる。

 

森近霖之助:人間と妖怪の間に生まれた人妖。ああ見えて実力はそこそこで、弾幕撃つかもと神主様が言ってた。モノの記憶を読み取る(ことで使い方は分からないが名前と用途が分かる)ことができる能力を持ち、そのためか知識人で皆の知恵袋。能力と知識を生かして今回の異変についても考察しているかもしれない。

 

月の民:地上の穢れを嫌い、月で暮らす人々。技術も能力も幻想郷とは桁違いである。今回の幻想郷での異変の影響をなぜか徐々に受けてしまい、月の技術だけでは全く解決できないようだ。因みにだが、紫の能力を防ぐ手段を持っている。



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序章
ピンクの紅い踊る陰陽玉


タッチ!カービィ:かつて話題を呼んだゲーム。独特な絵画の世界観、形容しがたい唯一無二の特徴を持った音源、全く新しいゲームシステム、大胆なアレンジ曲の数々、かつて無い程の重たいストーリー、トラウマになりそうなほどの恐怖体験。主人公はカービィではなく魔法の絵筆を手にした“あなた”。多くの主人公たちは、それらを忘れてしまったのだろうか…


--やっと見つけたぞデデデ大王。こんなところで何をしている?

 

--なんだメタナイトか。ワシはここにやってくるっていうカービィを待っているところだ。このトロッコで勝負をするつもりぞい。お前こそこんなところに何の用ぞい?

 

--実は今、プププランドが大変なことになっているんだ。いや、そんなことはどうでもいい。カービィの手助けができないかと思って後を追っていたんだが…カービィが突然消えたんだ。彼はもう、この世界にいない。

 

--プププランドがピンチだと!?しかし、ならばワシらで戦えばよいぞい。何を焦る必要があるぞい?

 

--黒幕を倒すのに必要な武器までカービィと一緒に消えたんだ。せめてその武器があれば、私たちだけでもなんとか事件は解決できるのだが…

 

--そうか…せめて武器だけでも、取り返せるように何とかしなければならないのか…何か手掛かりは無いのかぞい?

 

--残念ながら…何も見つかってない。

 

 

 

私は霧雨魔理沙。いつも通り博麗神社に来たんだがいつも通りじゃないことが1つある。来る途中で魔力を持った絵筆を拾ったことだ。いや、拾ったというか、絵筆の方から私の手にやってきたって言った方が正しいかな。

 

「おい霊夢。そのピンクのボールは一体なんだ?どう見ても普通のボールじゃないだろ?」

 

「賽銭箱の前で落ちてたの。プニプニしてて気持ちいいのよ。霖之助さんに売ったらどのぐらいのお金になるかしらね。」

 

あのボールから強い魔力的なモノを感じるぜ。あれはマジックアイテムに違いない、何とかして売られる前に霊夢から取り上げたいんだが…

 

「ソイツは売れないぜ。どう見ても普通のボールだ。」

 

「さっきは普通じゃないって言ってたくせに何言ってんの?」

 

やっぱり聞かれていたか。

 

「確かにそのボールは売れないわ。だってそのボール、見た目はアレだけど人間だからね。」

 

「ちょ、紫いつの間に!?というかこのボールが人間ってどう言うこと!?」

 

霊夢が疑問に思うのも仕方がないぜ。いくらなんでも球体の人間なんているとは思えない。妖怪なら理解できるんだが。

 

「人間っていってもこの星の人間じゃないわ。どこの星から来たか知らないけど、外の世界の人間も知らないような星から来たのは確実ね。」

 

「ちょっと待て、何で人間だって言えるんだ?地球外生命なのは事実だとしても、人間以外の動物かもしれないぜ?」

 

「簡単よ、人間特有の力を持っているからね。魔を感じ、幻を打ち破る人間の力よ。」

 

なるほど、それなら納得できる。

 

「ふーん、人間なら要らないわ。他人を養えるほど裕福じゃないのよ。」

 

霊夢は私に向かってボールを投げてきた。絵筆といい宇宙人といい、どう扱えばいいのかわからない。香霖にでも相談するか。



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七色の道しるべ

香霖堂:幻想郷に入ってきた道具の一部が行き着く古道具屋。そのほとんどが無縁塚に落ちていた道具であるが、外の世界の少女が使わなくなった道具を持ってきてくれることもある。骨董品として価値の高いものから、全く使い方がわからないものまで様々。一部の道具はここで命を吹き返すのだ。店主の森近霖之助は道具の名前と用途を知ることができる能力を持つが、使い方がわからないことが多い。使い方がわかるものは非売品にすることが多いという。


私はボールと絵筆を観察しながら香霖のところへ向かった。

よく見たらこのボールには顔がある。しょんぼりした様子だ。もしかしたら、元の星に帰りたいのかも知れない。ここから見える星の多くは既に滅んだものだ。きっとどこかに、まだ光が届いていない、宇宙人がたくさんいる星があるんだろう。

 

色々考えているうちに目的の場所に着いた。

私はいつも通り、堂々と扉を開いた。

 

 

 

店の扉が開く音が聞こえた。

僕はいらっしゃいと言おうとして、やめた。

 

「なんだ魔理沙か…」

 

「何だとは何だ!今日は香霖に鑑定を依頼したくて来たんだが。」

 

どうせろくな物ではないだろう。

 

「まぁ、見るだけ見てやるよ。」

 

「これなんだが」

 

別の意味でろくでもない物が出てきた。奇抜なデザインの絵筆とピンク色のボールだ。僕の能力によると、絵筆の方は魔法の絵筆というらしい。それよりもおかしいのは用途の方だ。道具自らの意志で用途が変えられた形跡がある。変わる前の用途は不明だが、現在の用途はカービィを導くと出ている。そしてボールの方だが、宇宙人と出ている。それも妖怪ではなく人間だ。名前はカービィというらしい。手足がないのは呪いの類いのように見える。よく見ると酷く落ち込んだ様子である。いくつか質問してみたが弱々しくポヨとしか言わない。喋れないらしく、こちらの言葉が伝わっているのかもわからない。

 

「魔法の絵筆とカービィだな。魔法の絵筆はカービィを導くための道具だ。カービィは宇宙の人間らしい。」

 

「そのボールが人間って紫と同じこと言うんだな、カービィって名前は初めて知ったが。しかし、お前の能力も鈍ったんじゃないか?確かに普通の絵筆じゃないが、こんなものでどうやって導くって言うんだ?」

 

僕の能力は鈍ってなどいない。

 

「さぁ?そこまでは僕もわからない。絵筆だし、試しに何か描いてみたらどうだい?」

 

すると彼女はお気に入りの壺に絵筆を向け、振り回した。落書きは止めてくれと言おうとしたが、なんと壺にではなく空中に虹色の線がグルグルと描かれたのだ。

 

「コイツは驚いたぜ。」

 

これはもしかしたら…

 

「魔理沙、カービィをさっき描いた線に乗せてみてくれ。」

 

「ん?わかったぜ。」

 

すると予想通りカービィは彼女が描いた線を彼女が描いた方向に転がっていった。が、ループとなっている部分はまるで天井に張り付くかのように転がっていき、勢いが増していく。カービィはそのまま店の窓硝子を突き破って店の外へ出ていってしまった。これは思ったより危険な物かもしれない。そう忠告しようと思ったが、すでに彼女はいなかった。カービィを追いかけたのだろう。虹色の線はいつの間にか消えていた。



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なんでも屋

魔法の絵筆:絵画の魔女が落としていった奇抜なデザインの絵筆。その魔女は複数同じような絵筆を所持しているようで、そのうちの一本が主の暴走を止めることを願い、自らの意志で新たな主を選んだ。虹のラインを空間に描くことができ、そのラインはカービィを運ぶだけでなく防御や攻撃にも使える。ラインを描くには絵筆の魔力(インク)を消費し、カービィが地面にいる時などは素早く回復する。魔力切れでも少しならラインを描ける。また、直接絵筆で攻撃したり、罠を解除したり、カービィを突き飛ばして攻撃させたりもできる。


私は例の人間を追いかけていった。あのボールはカービィというらしい。名前からして男の子なのか?

窓を突き破ったことについては香霖の指示に従っただけの私たちに責任はない。むしろカービィが硝子で怪我してしまったら香霖の責任だ。

 

…そんな心配は必要なかったようだ。彼に傷ついた様子はない。むしろ希望の眼差しをこちらに向けている。この絵筆の用途はあながち間違ってないらしい。香霖、疑ってごめんな。

そろそろ夕暮れだ。私は茸を採りながら家へと向かう。晩飯はカレーにしようか、シチューにしようか。

 

「なあカービィ。晩飯はカレーがいいか?」

 

「ポーヨ!!!」

 

「それともシチューか?」

 

「ポーヨ!」

 

どちらも喜んでいるようだが、カレーの方がいいらしい。言葉が通じているかわからんがな。

 

「じゃあカレーな。」

 

家に付くと、カービィが転がらないように適当なクッションを机に置いて、その上にカービィを乗せた。

採ってきた茸と適当な肉野菜を煮込みカレーを作る。採ってきた茸にはいくつか毒キノコもあるが多少なら食べても大丈夫だ。切ってブチ込んで煮るだけだから楽だぜ。

カービィは私の料理を楽しみに待っているようだ。この様子だと彼の星にもこういった料理の文化があるらしい。

待てよ?じゃあ何で彼に手足がないんだ?手足のない種族が文化を形成するなどあり得ないことだ。手足が生まれつき無いという病気もあるらしいが…何かしらの理由で手足がもげたと考えた方が可能性は高そうだ。この絵筆のことも考えると、彼の手足を戻すために私のところに来たのかもしれないな。しかしこれはあくまでも予想に過ぎない。彼の過去の真実を知るには、少々居心地が悪いが、アイツに頼るしかないな。

色々考えながら煮込んでいたら、煮込みすぎて煮崩れを起こしてしまったらしい。人参の角は取れ、ジャガイモは跡形もなく溶けてしまっている。

まぁ、これはこれで美味しいので気にしないぜ。あ、ご飯炊くの忘れてた…今晩はカレーライスじゃなく、カレーになっちまったな。私は和食派だからパンのストックは無いんだぜ。カレーが和食なのかは疑問だが、香霖曰く和食と化した洋食らしい。本物のカレーは全くの別物ということだ。

出来上がったカレーをカービィの前に置くと、驚くことに彼は大きな口を開けてお皿ごと頬張ってしまった。わざわざ私が食べさせてやろうとスプーンを用意したというのに。今さらだが、カービィの分のカレーを私にとっての一人前にしてしまっていた。あの直径20cmほどの球体のどこにあれだけの量のカレーが入るんだか検討も付かない。にしても美味しそうに食べるなあと思いながら私もカレーを頬張る。

 

ご丁寧にお皿はちゃんと吐き出してくれた。

 

私はカービィと一緒にお風呂に入った。プカプカと気持ち良さそうに浮いている。

カービィを抱き枕のようにして寝た。プニプニしてて気持ちいいぜ。



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第一章 手掛かりを求めて
洞窟大作戦


霧雨魔法店:魔理沙が経営するなんでも屋兼自宅。店内は魔理沙が趣味で拾ってきた骨董品や鉄屑、マジックアイテムなどが山を形成しており、小さな魔法の森とも例えられている。価値の高いものが結構埋もれてたりする。なんかしますという看板が建てられているが、場所が迷いやすい魔法の森なのでここに来る客はほとんどいない。大抵博麗神社で妖怪退治や異変解決の仕事を引き受けることが多いが、頼めば配管工もやってくれるらしい。このお店に住んでいるツチノコは、妖精の家を荒らしていたもので、退治を頼まれたものである。可愛いからペットにされ、問題も解決された。成功払いのため、失敗したときはお金を請求してこない。


新しい朝が来た。朝食を済ませ、まだ寝ているカービィと絵筆を持ってダンジョンへ…カービィの朝ごはんを持ってくるのを忘れたぜ。

まぁ、あっちでなんか食べさせて貰えばいいか。

 

地下へと進んでいく。ここは前に土蜘蛛(ヤマメ)と戦った辺りかな。正直、荷物で手が一杯なので争いたくはない。

…いつの間にかカービィがいない!?

 

「あら?人間?急に止まってどうしたの?地底に行くんじゃないの?って貴方前に私をボコボコにした魔法使い!」

 

目の前に土蜘蛛が現れる。もちろん戦ってる暇などない。まぁ、相手も戦う理由は再戦したいぐらいだろうから、多分大丈夫。

 

「カービィがいなくなったんだ!ピンク色のボールなんだが、お前なんか知らないか?」

 

「キスメが首を持ってたわ。それがカービィかどうかは知らないけどピンク色だった気がする。」

 

まさか文字通りの首無しの首を持っていくとは…

 

「で、キスメはどこにいるんだ?」

 

「あっちに行った筈…あれ?」

 

土蜘蛛が指差す方向から凄い勢いで釣瓶落としがやってくる。

よく見るとカービィが頭に噛みついているというか、丸呑みしようとしているというか。何があったんだ…

 

「ん、んぐっ、んんん~、んん…むぅ……むむ………(お、お前が…落とした…悪魔は…これ…かい…)」

 

召天しかかっている。まぁ、この程度で死ぬような妖怪ではないと思うが、本当に何があったんだ…

 

ぐぅぅ~

 

カービィの腹の虫だ…

 

「おいおいカービィ、釣瓶落としなんか食べたら体に悪いぜ。この先のお店でご飯買ってやるから吐き出せ。」

 

妖怪を喰う人間、初めて見たぜ。逆なら何度もあるがな。

そろそろ地下666階だ。ダンジョンのボス(パルスィ)がいる筈だぜ。今日は仕掛けるつもりは無いがな。

 

「食べさせて貰えるとか妬ましいわ~。」

 

いつになくボスのやる気がない。まぁ、旧都を荒らしに来た訳じゃないのは相手もわかってる筈だし、あの時と違って戦う理由など無いのだろう。私も両手が塞がってるから戦いたくないし。

 

旧都に着いた。相変わらず賑わっているぜ。ただ、運が悪いことに雨が降っている。地下なのに何で雨が降っているんだ?

細かいことを気にしていても仕方がない。駆け足で適当に入ったお店でうどん(大盛り)を頼み、カービィに食べさせた。当然一口である。うどんを出した瞬間にカービィにお椀ごと食べられてしまった訳だから混乱するのは仕方ないだろう。が、この店員の妖怪は蛇に睨み付けられたみたいに固まってしまっている。お前それでも妖怪かよ。カービィにお椀を吐き出させ、そのまま地霊殿に向かって走る。今回は本当のラストダンジョンに堂々と侵入し、家捜しを始める。

 

ようやく、カービィの全てを知ることができる。絵筆に選ばれた私にどんな使命が課せられているのかもはっきりする筈だ。

 

 



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人気者な嫌われ者

旧地獄:地獄の経営が難しくなり、切り離された地下空間。そのまま廃墟になる予定だったが、理不尽に追いやられた鬼をはじめとする様々な妖怪が住み着き、独自の社会を築いて繁栄している。怨霊などは鬼が押さえ付けているため地上にはなかなかやってこないが、間欠泉からできた温泉にはまだ怨霊が残っている。元々地上と地下は不可侵条約が結ばれていたが、間欠泉の異変以来、地上と地下とのやり取りも盛んになってきている。


人間の来客だなんて、珍しい。

 

(さとりさん、今、貴方のサードアイに直接話しかけてます。私、貴方に頼みたいことがあるのです。)

 

私の能力で遊ぶな。

 

(この子の心を読んでほしいのです。過去に何があったのか、今何をすべきなのか。全て読み取ってほしいのです。)

 

「逆にやりにくい!普通に話せ!」

 

イライラして感情的になってしまった。

 

「おお、怖い怖い。(なんか迫力無くて怖くないんだよなぁ。)」

 

全然怖がってないから余計に腹が立つ。

ここに来た目的はあのピンクのボールの過去を知るためらしい。ピンクのボールは紫曰く、何処から来たのかわからない宇宙人で、霖之助曰くカービィという名前らしい。

 

「まぁ、とりあえず事情はわかったわ。」

 

魔法使いからピンクのボールを受け取った。

コイツ、食べ物のことしか考えてねぇ!?なんか調子狂う。

言葉が通じるといいんだけど…

 

「貴方は過去に何があったの?」

 

「ポヨ?(何言ってるのかさっぱりわからねぇ何処の星の言葉だよ初めて聞くわ。)」

 

どうやら日本語は通じてないらしい。でも考えてることからして、多言語を理解できるのかしらね。

とりあえず、過去の記憶を読むにはそれを考えさせる必要がある。言葉が通じないとなると…

 

想起「テリブルスーヴニール」

 

あ、コイツ自らの意志で動けないのか…弾幕当たる前に消さなきゃ。

 

「大体はわかったわ。」

 

「ポヨ!?(ビックリした)」

 

「で、何がわかったんだ?」

 

「私が見た恐怖の記憶(トラウマ)は大体こんな感じね。魔女を追いかけたら魔法で手足を奪われて途方にくれてたようね。魔女が落とした不思議な絵筆を仲間が拾って、それを使って魔女のところまで行く途中で幻想郷に来てしまったらしいわ。魔女の容姿は大体こんな感じよ」

 

読み取った恐怖の記憶を元に、紫色の衣服に身を包んだ丸々と太ったような、顔が影で隠れて目が光っているような、魔女のイラストを見せる。

 

「やっぱりあの手足は誰かにやられたものだったか。ところで私は何をすればいい?どうすれば手足をもどせる?もとの星に帰せる?」

 

「正直わからないわ。例の魔女を倒せば手足が戻るかもしれない。それに、コイツがいた星から誰かが幻想郷に来るかもしれないし、コイツを幻想郷に連れてきた犯人がいるかもしれない。」

 

「紫をボコればいいんだな?」

 

この手の事件は確かに紫が主犯のことが多いけど、なんとなく、彼に関しては紫が連れてきたとは思えないし。

 

「紫は多分犯人じゃないと思うけど。」

 

「そうかもな、ありがとう。(とりあえず紫あたってみるか。)」

 

紫が疑われるのは仕方がない、自業自得だ。もう私は知らん。



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芸達者な鬼モドキ

ドロシア:元々はなも無き絵画に描かれた魔女だった。誰にも省みられず放置され、怨霊と化し、現実世界への復讐を誓った絵画の魔女。フルネームはドロシア ソーサレス。元々名も無き絵画だったことを考えれば、某古道具屋の店主と同様にその名は自分で付けた可能性がある。プププランドを絵画の世界に変えてしまい、カービィの手足を奪ってしまった程の魔力の持ち主で、強力で多彩な魔法を使える。その性質は魔法使いと付喪神を合わせたものである。謎が多い。


ようやく地上だ。カービィのことで頭が一杯で忘れてたが今夜は神社で宴会だ。旧都で偶然出逢った勇儀が教えてくれなかったらすっかり忘れてたぜ。カービィについて説明するのは面倒だったが…だけど宴会ってことは紫も来る筈だから探す手間が省けるし、他にも何か情報が手に入るかもしれない。

 

神社に着くと既に宴会の準備は始まっていた。カービィが宴会料理に目をキラキラさせている。宴会といえば酒だが、カービィはお酒大丈夫なのだろうか?萃香の酒でも呑ませてみるか。

萃香に酒を注いでもらい、カービィの前に置くと、案の定盃ごと頬張ってしまった(ちゃんと盃は吐き出した)。飲み物までコレかよ…しかし酔っぱらう様子がない。お酒が大丈夫というより、根本的にアルコールが効かないようだ。美味しかったもっと寄越せと言わんばかりの目線を萃香に送る。私もお酒は呑みたいが、今回ばかりは宴会で酔っぱらってる暇はない。私に注がれた酒は全部カービィに押し付けよう。

 

「この子お酒強いんだねぇ~ もう10杯は呑んでるのに全然酔っぱらう様子がないよ~」

 

「そこら辺の鬼より呑めるんじゃないか?」

 

「んにゃわけないでしょ~」

 

いや、んにゃわけあるんだよ。

 

「あら、子どもにお酒はダメなんじゃなくて?」

 

紫だ。丁度言い。

 

「なあ紫、コイツについて何か知ってることはないか?」

 

「なに?私を疑っているの?」

 

「そりゃこの手の事件は大抵お前が犯人だからな。仮にお前が犯人じゃなかったとしても、何かわかることはある筈だ。」

 

「要するに、私の特許を侵害したヤツがいるってことね。」

 

トッキョってなんだ?というかどう解釈したらトッキョ侵害になるんだか…

 

「ま、そんなところだ。で、そのトッキョの詳細がわかれば、真犯人を見つけ易くなるだろ?」

 

「なるほどね。そうなると、真犯人は偶然この場所に繋げたか、この場所の存在を知っていたかのどちらかになるわ。それと、後者の場合、相手の星からはこの星(地球)が見えてるというのも必須条件ね。」

 

「え?でも星の光が届くのって…」

 

「そういうこと。地球には知的生命体が存在する星の光はまだ届いてないのよ。そんな星の座標を割り出して見る技術なんて私にはないわ。それに、そんな遠くに繋げるのは宇宙空間に放り出される可能性があるから偶然を狙うなんてバカなことはしないわ。」

 

だとすると、紫と似たようなことができる誰かがカービィの星にいて、しかもソイツは謎の技術でこの場所を知っていたか、偶然ここに繋がったかのどちらかということか。ソイツがこの世界に来てくれれば解決するかもしれないが、もし来なかったら何もできないじゃないか。

 

それから、文屋やら物好きやらに話を聞いてみたが不審な人物を見たという情報は手に入らなかった。

 

「おお~いい食いっぷり呑みっぷりだね~」

 

「まだ食べれるの?コイツの体どうなってるんだ!?」

 

「すっげぇ!ドンドン大きくなってくよ!」

 

「こんな化け物と呑み比べなんていくら鬼でもかないっこないなぁ…」

 

「幽々子様みたいによく食べますね」

 

「ちょっとぉ~流石に私でもそこまで食べないわよぉ~」

 

カービィを萃香のところに放置して聞き込みをしていたのが仇となった。というかカービィに私のお酒を押し付けようと思っていたのをすっかり忘れて放置していた。お酒はうまいこと回避できた。まぁ、二~三杯呑んでしまったが、酔いは完全に覚めてしまった。どうやら面白がってドンドン食べさせて呑ませたらしい。1mを越える大きさ、ギシギシと音を立てる神社の床。そこには20cmのピンク玉の面影は一切なかった…

 

「ポヨっ!!!」

 

私にはもっと寄越せと言っているように聞こえた…

ところでこの量の食べ物、いったい何処から出ているのだろうか?

 

「あの子の頭の中は食べ物のことで一杯だわ。」

 

何故かスキマから赤い液体の入った緑色の瓶やら黒い斑点のある青色のアイスやらコーラの缶バージョンやらお寿司やら真っ赤に熟れた不思議な模様のトマトやらを取り出す紫…

 

「主犯は貴様かぁ~!!!」

 

「まぁまぁ、これでも食べて落ち着きなさい。」

 

「なにこのトマトめっちゃウマい…じゃなくて、これどうすればいいんだよ。責任取れ!」



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番外編1
文々。新聞 カービィ特集号外1


文々。新聞 その1:天狗の新聞のなかでは人間に特に人気な新聞。天狗の間では仲間が購読してくれる程度で、評判は良くない。発行は月に約5回。


謎の球形人間!?

 

一見妖怪にしか見えないが…?

 

2020年6月6日に突如現れたピンク色のボール。大きさは直径20cmほどとみられる。後ろから見るとただのボールにしか見えないが、正面には表情豊かな顔がある。香霖堂店主の鑑定によると名前はカービィというようだ。手足がないため自らの意志で動くことはできないようだが、「ポヨ」と鳴き、食事もしっかり取っている様子が確認できる。霧雨魔理沙と共に行動しており、性格は食欲旺盛で人懐っこい。博麗神社で行われた宴会ではイッキ呑みと大食いの芸を見せ、注目を浴びた。

 

(霊夢がカービィを抱き抱えている写真)

「博麗神社で発見されたカービィ」

(宴会で食べすぎて巨大化してしまったカービィの写真)

「大食いを披露し、巨大化したカービィ」

 

しかし、驚くべきことはカービィの正体だ。一見妖怪にしか見えないが、その正体は別の星の人間、つまり本物の宇宙人である。カービィが宇宙人だと見破った八雲紫にインタビューを行ったところ、人間特有の「魔を感じ、幻を打ち破る人間」の力を持っているとのこと。なお、何処の星から来たかは不明で、その星はまだ見つかっていない場所にある模様。また、釣瓶落としに襲われた際にはその力を以て返り討ちにしている。目撃者のY氏によると、「妖怪目線で見ると滅茶苦茶怖い。命に関わるレベルで遠慮がない。巫女に退治される方がマシ。」とのこと。カービィを余所者として襲うのは妖怪どころか人間も止めといた方が良さそうである。

 

(キスメの頭に噛みつくカービィの写真)

「カービィの妖怪退治の様子」

 

手足がない理由については不明だが、これらのカービィの様子から後天的に手足を失ったと思われる。共に行動している霧雨魔理沙によると、「カービィが元々いたと思われる星の魔女に手足を奪われてしまったんだ。私はカービィの手足を戻し、元の星に帰すためにカービィに協力している。」と述べている。

また、カービィが手足のない状態で幻想郷にやってきたことや、カービィの星の魔女の話を聞く限り、幻想郷には新たな異変が起きている可能性が高いと推測される。そのため、霧雨魔理沙は不審な人物がいないか情報提供を求めている。カービィの心のイメージを元に描かれた似顔絵には、紫色をベースにした衣装に魔女らしいとんがり帽子を被り、マスクのようなもので顔を隠している。その隙間からは黄色い目が光っている。

 

(ドロシアに似たような魔女のイラスト)

「カービィのイメージを元に作成された似顔絵」

 

 

やってやれ幻想郷 あら○とし○ら

 

紫「カービィの夢の中って食べ物ばかりね むしろ食べ物しかないわ」

 

藍「食べ物の夢なんか覗いて何になるんですか?」

 

紫「私の能力で食べ物が取り出せるわ」

 

藍「なるほど!食費が浮く! 流石紫様」



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第二章 赤い魔女と絵画の魔女、絵画の幻想郷
Silent Shrine(サイレントシュライン)


博麗神社:幻想郷の東の東、外の世界との間に立っている神社。因みに博麗神社は2度も破壊されたため、現在の博麗神社は新築。神社の敷地内や付近には妖怪たちがたくさん住んでおり、オマケに花見などを目的に妖怪がよく集まる。それほど危険な場所ではないが、人里から離れており、妖怪が集まるという理由で参拝客はほとんどいない。そして温泉も湧いている。また、外の世界と繋がっている場所のため外の世界の人や生き物が迷い込んだり、外の世界の道具が落ちてたりする。外の世界からはボロボロの神社にしか見えないらしいが、お供え物があったり、人間で賑わってるなんて噂もある。


カービィがいなくなってから10日…何をすればいいのか全くわからないまま私たちは目の前の魔女と戦っている。戦っているというより、まるで弄ばれてるようだ。

彼女はカービィを襲った魔女に似ているが、それよりも赤い色をしている。彼女はカービィを襲った魔女の味方に違いない。

 

「しまった!」

 

私の攻撃はかすれ、魔女の攻撃で体勢を崩してしまった。そのままデデデ大王にぶつかる。

すると魔女は魔力をため…

そして空間を引き裂いてしまった。その穴にどんどん吸い寄せられてしまう。

 

「お前も道連れにしてやる!」

 

デデデ大王の渾身の吸い込みによって、赤い魔女も空間の裂け目の前に来てしまう。そして私たちと一緒にその裂け目に吸い込まれてしまった。

 

 

「$€="÷·〒○♡☆&@!?!?」

 

ここが何処なのか検討がつかない。何か悲鳴のようなものが聞こえたが、きっと気のせいだろう。私の下に白黒の服を着た人などいるわけがない。

辺りを見渡すと、酒で酔いつぶれて寝ている人たちが多い。

それよりも魔女だ。魔女は混乱した様子を見せたあと、私たちの後ろを見てから不適に笑いだした。魔女が見ていた方を見てみると、さっきはただの大きな何かだと思っていたが、アレは食べすぎたカービィのようだ。暢気に寝ている。そんな格好で寝て、風邪引いても知らんぞ。

 

「待てぇ~、逃さんぞぉ~!」

 

体勢を立て直したデデデ大王が魔女に向かって攻撃を仕掛けるが、魔女は遠くへと逃げてしまった。

 

「くそぉ~今度こそボコボコのギッタンギタンにしてやるからな!覚悟するぞい!」

 

「㎡‰%㏄●▲@&〇〓№㏍-<≠Μαπ℃¥??」

 

謎の言語だ。聞いたことがない。おそらく遠くの星へ飛ばされてしまったのだろう。

 

「ねぇ…言葉、通じるようにしてあげようか?」

 

ぞっとするような気配を感じる。YESと言うべきかNOと言うべきか、一歩間違えれば殺されてしまいそうだ。慎重に選ばねば…

 

「そんなことができるのか!ぜひそうしてもらうぞい!」

 

「お、おいデデデ大王…そう簡単に信じていいのか!?」

 

「へぇ、大王様なんだ。物分かりのいい大王様だこと。もう普通に言葉が通じる筈よ。」

 

風で飛ばされてきた新聞紙を拾う。謎の言語で書かれているのにも関わらず読めてしまう。一体私たちに何をしたのだろうか…

 

「貴方達には何もしてないわよ。ただ、言葉の境界をすこーし弄っただけ。」

 

「そんなことができるならカービィの言葉も理解できるようにしてくれよ。」

 

「流石にそれは無理よ。カービィが喋っているのは特に意味のない物だもの。思ってることを覗くぐらいしかカービィとの言葉のやり取りは不可能よ。」

 

デデデ大王が私の拾った新聞を見て顔をしかめる。

 

「なぁ、カービィが消えたのって10日前だよな?」

 

「え?カービィは昨日の昼間に発見されたんだぜ?」

 

「何?それが本当なら、ここでの1日が私たちの星の約1週間になるぞ」

 

「それってマズくないか?嫌な予感がするぞい。」

 

「そうだな、ここに長居すればするほどプププランドの被害は大きくなる。」

 

「ちょっと待ってくれよ。何がなんだかさっぱりだぜ。」

 

「要するに彼らの星と私たちの星では時間の流れが違って、ここで1日を過ごして彼らの星に戻ると既に一週間経ってるってことよ。その間に彼らの星の魔女が暴れまわったらってのを心配しているの。」

 

「そんなことがありえるのか?」

 

「場所によって時間の流れが違うのは事実よ。この星だって地底と山の頂上では全く同じ時計を置いても針の動きに差が出るもの。だから地底用の時計は地上で使うと僅かに狂うように作られてるの。」

 

「よくわかんないがわかったぜ。」

 

まずはあの魔女を見つけ出さねば。しかし、空間を切り裂いて移動できる以上、逃げられてしまえばどうしようも無いのだが…




番外編の文々。新聞には、発行日時を小説内に書いていませんが、実はカービィが発見された翌日の25時頃を想定してます。デデデ大王はここを見て、時間の流れに大きな差があることに気が付いたんですね。


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絶望という名の希望

コピー能力:カービィが持つ能力。何かしらの方法で能力などを体内に取り込むことで、取り込んだ見た目や能力を自分のものにできてしまう。大抵はオリジナルより強力かつ、オリジナルより使いこなしてしまうため、コピー能力一つで戦況が大きく変わることもある。何にでもなれる反面、対象となるモノがなければ意味を成さない。


「うう、呑みすぎたかも。頭痛い…」

 

「お前は呑気に寝てて幸せ者だなぁ、私は酷い目にあったんだぜ。夜中に上からコイツらが落ちてきて、死ぬかと思ったぜ。」

 

「あらあら、病院に行った方が良いんじゃ…首の辺りとか血で汚れてるわよ。うっ…」

 

手鏡で自分の首元を見てみると、全く気が付かなかったが確かに血で汚れている。血の汚れは口元から襟まで続いており、吐血したと思われる。通りで腹が痛いわけだ。昨夜は多分、余りの痛さに感覚が麻痺していたのだろう。霊夢が二日酔いでリバースしているのを横目に、永遠亭に向かった。

 

 

 

「おいメタナイト、このカービィはどうすればよいぞい?」

 

「二~三日経てば戻るだろう。」

 

「ここでの三日はあっちでの21日ぞい!!!」

 

「カービィはほっといて、私たちで魔女をなんとかすればいいだろう。」

 

すると突然、辺りの風景がおかしくなってしまった。まるで、絵画の世界にいるような…

 

「どういうこと?何が起こっているの?」

 

例の恐ろしい少女が恐怖に戦く表情を見せる。これってヤバいのでは?

 

「滅茶苦茶ヤバいってこれは!」

 

取り乱した様子の黒とオレンジの衣装を纏った女性が突如カービィの背後からあらわれる。

 

「ポヨ?(はえ?)」

 

カービィも目が覚めたご様子。

 

「ポヨ!ポヨポヨポヨ!ポヨ!?(デデデ!メタナイト!どうしてここに?)」

 

「どうしてって、ワシらは魔女にやられたんだ。お前を襲った魔女にそっくりだけど別のヤツにな。」

 

「それよりカービィ、元の星に戻る方法がわかったぞ!その魔女を倒し、その力で元の世界に帰るんだ!」

 

「貴方達、彼の言葉がわかるの?」

 

その表情には諦めが見られる。

 

「言葉がわかるっていうか、長い付き合いだからなんとなくそう思ってるんじゃないかなって。」

 

「ちょっと紫!そんなこと気にしてる暇じゃないでしょ!?」

 

そうだ。あの魔女を倒すためには居場所を探らなければならない。何より正面から当たっても勝ち目はなさそうだ。

 

「ねぇ、カービィの力を引き出すことはできないの?」

 

「カービィってこの大きなボールのことよね?実は異変をいち早く察して、この子の潜在能力が役立たないかって既に頑張ったのよ。貴女達が呑気に寝ている間に部下に踊ってもらってたんだから。だけどこの子にかけられた強い呪いのせいで効果はなかったわ。幻想郷には対抗手段がもう無いから焦っているのよ。」

 

「やっぱりねー知ってたわーもう御仕舞いだわー。」

完全に諦めモードだ。私たちにはアレがあるというのに。

 

「なぁメタナイト。聞きそびれたんだが、なんで魔女がまだここにおるってわかったんだぞい?」

 

「なに、簡単さ。絵画の世界にして帰っても魔女にはメリットがない。魔女がここを絵画の世界にしたってことは魔女の力を高めるためだ。絵画の世界の住民である以上、絵画の世界でなければ真の力は出せないからな。欲に走ってここも支配するつもりなのか、単純にカービィの武器が狙いなのかは知らんが、目的を達成するまでは確実にここに居座るだろう。」

 

そういえばカービィに聞かなければならない。アレがあればあの魔女に対抗できる筈。

 

「なぁカービィ。あの絵筆は今どこにあるんだ?」

 

「ポヨッ!ポヨポヨポヨ!(白黒が持ってる!あの人は絵筆の使い方わかってるから任せて大丈夫!)」

 

「そうか、なら安心だ…な…」

 

嫌な予感がする。

 

「マズいぞデデデ大王!」

 

「ワシは任せておいて大丈夫だと思うぞい?」

 

「あの白黒は重症を追って病院に向かってる最中だぞ!絵筆を誰かに預けた様子もない!おそらく今もあの白黒の手の中だ!」

 

「はえ?…そ、それはマズいぞい!誰かアイツが行った病院まで大急ぎで案内するぞい!」



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幸運の兎

プププランド:呆れ返るほど平和な国。平和を乱すものが現れても、秒で始末されることが多い。自然が豊かだか、発展していないわけでもない。周辺の星からは宇宙規模で様々なことを高く評価されており、宇宙一と呼ばれるものも多数存在する。


「頼む!早く白黒のところへ連れていってくれ!」

 

「はいはい、わかりましたよ。」

 

 

 

そろそろ限界だぜ…

迷いの竹林か…あとちょっとで着くのに…

もうこれ以上体を動かせない。こんなことなら回復魔法覚えとくんだったな…

誰かが近くにいるようだ。物色されている気がする。

 

 

 

「よし、絵筆は回収できた。これでひと安心だな。」

 

「しかし、ひどく弱っているぞい。こんな竹林に病院なんてあるのか?」

 

「さぁ、でも何となくあっちに連れていけばいい気がする。」

 

「珍しくお前と意見があったな。」

 

デデデ大王は白黒を担ぎ、竹林の奥へ向かった。私も後をつける。すると驚くことに、大きな建物が見えてきたのだ。

しかし、後ろから赤い魔女が現れる。

 

「デデデ大王!ここは私に任せて、お前はあの建物へ向かえ!」

 

「メタナイト!お前こそ、ちゃんと足止めするぞい!」

 

魔女は魔法弾をデデデ大王に向かって放つ。私は絵筆を使ってラインを描き、その弾を反射した。魔女は反された弾を避け、私に爆弾を降らせる。

 

「その程度の攻撃など、当たるわけ無いだろ!」

 

ディメンションマントで背後に回り込み、剣で攻撃する。しかし、剣の攻撃は弾かれてしまった。絵筆で追撃を試みるが、やはり攻撃は効いてないようだ。このままやりあっても勝ち目はない。デデデ大王はそろそろ目的地に着いただろうか。

 

 

 

私は気が付くと永遠亭にいた。

 

「暫く安静にしてなさい。貴女、生きてるのが不思議なぐらい重症だったんだから。」

 

「ワシにはそんな風には見えんがな。」

 

「それよりお前!なんか物色しただろ!」

 

「お前の持ってる絵筆を狙うヤツがいてな、それを預かっただけぞい。お前魔女に襲われそうになったんだからな?」

 

そうか、じゃああのペンギンみたいなのが私を守ってここまで連れてきたってことか…

いや待て、なんでアイツがここ知ってるんだ?

 

「お前、ここまでどうやってきたんだ?」

 

「お前が倒れてた場所までは紫っていう人に連れていって貰ったぞい。その後は、何となく?」

 

「てゐでも見たんじゃないかしら?」

 

「てゐ?なんぞいそれは?」

 

「あそこにいる兎さんよ。」

 

「あの兎?うーん、似たようなのを見たような見ていないような気がするぞい。」

 

なるほど、てゐを見たのなら偶然たどり着くというのも納得がいく。

仮面を着けた球体が現れる。

 

「メタナイト。魔女はどうなったぞい?」

 

「竹林で迷子になっている。」

 

「魔女が迷子って、それは傑作ぞい。ということは、魔女は絵筆の場所がわかんないってわけか。」

 

「そういうことになるな。白黒を襲った理由はたまたま絵筆を持っているのを見かけたからだろう。」

 

おいおい、私は白黒って名前じゃないぜ。

 

「そういえば自己紹介が未だだったな。私は霧雨魔理沙だ。」

 

「ワシはデデデ大王ぞい。」

 

「私はメタナイトだ。よろしくな。」

 

その後、兎達の判断によって竹林は封鎖され、その様子を見た隠岐奈によって私たちは神社に回収された。



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出た!ピンクのお節介さん

夢の泉:スターロッドの力をエネルギー源として稼働する虹色の泉。みんなに夢を届け、安らかな夜の眠りへと誘う。様々な星に設置されており、星の力を結び、大彗星を呼び出すためにも使われる。プププランドにある夢の泉はカービィ達にとっては楽しい遊び場の1つでもある。かつて夢の泉の機能が失われたのは、夢の泉に突如出現したナイトメアをデデデ大王が夢の泉に封印し、復活できないようスターロッドを分割して部下に守らせた為である。デデデ大王をみんなして悪者扱いするが、デデデ大王はそれでもプププランドの住民を悪夢から守りたかったのだ。カービィに負け、ナイトメアの封印が解かれた際は、とっさの判断で慌てるカービィをスターロッドと一緒にナイトメアに向かって吹っ飛ばし、カービィの力を見込んで勝利を願った。現在の夢の泉は正常に機能している。


げっ…めんどくさいの(茨木華扇)が来た。

 

「ちょっと霊夢!異変が起きてるのになにサボって…あの大きなのはなんなの?」

 

「(カキカキ)これでよし。」

 

「カービィめ!食べ過ぎたツケが回ってきたな!暫くダイエット生活だぞい!デュハハハハ!」

 

「何々?エサを与えないでください?こんなもの神社に置いといてどうするのよ!」

 

「ポヨォ…グスン」

 

さっき書いてたのは看板か。エサってどういう扱いだよ。あんたら友達じゃないのか?

 

「まあそんなカリカリしないで。異変解決に役に立つかもしれないし、そのためにも痩せるのを待っているのよ。床が壊れそうだけど…」

 

 

「はぁ~どうやっても呪いが解けないわ。やっぱり異変解決なんて無理よ…」

 

「でもこの子の力があれば解決できるかもしれないの。諦めないで!」

 

賢者が音を上げてる反面、どこの星から来たかわからないヤツらは余裕そうである。

 

「…なんか色々集まってるけど、なんなのこれ?」

 

「ピンクのがカービィ、青いのがメタナイト、ペンギンがデデデ大王って言うらしいわ。別の星の人間だそうよ。」

 

「ワシはペンギンじゃないぞい!(確かに似てるけど…ボソボソ)」

 

「賢者も諦めてる様子だし、カービィ達はなんか一周回って余裕そうにしてるし。もういいわ、私が行く!」

 

すると、意外なことにメタナイトが華扇を止めに入る。どうなっても私は知らんぞ。

 

「待て、ヤツを倒すには準備がいる。ヤツに有効な攻撃手段が無い以上、下手に突っ込んでも状況が悪化するだけだ。どうしても行くというなら、せめて私かデデデ大王を倒してからにしろ。」

 

「勝手にワシを巻き込むなぞい!」

 

「…わかったわ。じゃあ、強い方を相手にする。」

 

どっちも強気だねぇ。でもまぁ、華扇が圧勝しそう。

 

「ところで、私とデデデ大王どっちが強いんだ?」

 

いや知らんのかい!

 

「ワシらが本気でやりあったことなんて無いからわからんぞい。…そうだ!カービィ!ワシとメタナイト、どっちが強いぞい?」

 

「ポヨッ!ポヨヨ!ポヨポヨ!」

 

「だそうだ。」

 

メタナイト、それは誰が見てもふざけてるようにしか見えないって。

 

「いや分からんって!」

 

「戦い方は違えど互角、スピード勝負のメタナイトと強引でタフなワシが本気でやりあったら相討ちになりそうだって言ってるぞい。」

 

話を聞く限りではデデデ大王と戦う方が有利になりそうね。

 

「メタナイトと戦うことにするわ!」

 

「いいだろう、お前の力では魔女には敵うわけが無いことをこの剣で証明してやる!」

 

「ホントにいいの?アイツは本当に強いわよ?」

 

「まぁ見てるぞい。あのカービィと互角にやりあうアイツを負かせるなんて簡単なことじゃないからな。」

 

「あのカービィって…あんなの見せられても弱そうにしか見えないんだけど…」

 

「まぁ、確かにそうかもしれんが…ああ見えてでっかい城の一個や二個一瞬で破壊する力を持ってるんだぞ?今はそこまでの力は出せんだろうけどな。」

 

「えぇ…(困惑)」

 

「おいおいなんだ?敵襲か?こっちは未だ古傷が痛むっていうのに。」

 

それは最近できた傷でしょ。

 

「ただの見世物の格闘大会よ。」

 

「なら私も参加したいぜ。」

 

「あんた、その傷で華扇とやるつもり?」

 

「まぁ、見てなって。おいメタナイト!先に私にやらせてくれ!あと、例の絵筆を返してくれよ!」

 

「別に構わんが、その怪我で戦うってどういうつもりだ?」

 

「お前も霊夢と同じこと言うか。」

 

魔理沙が絵筆をとる。

 

「怪我人だったのね。」

 

「手加減は要らないぜ。な、カービィ」

 

「ポヨ!!!」

 

「先手は譲るぜ。」

 

華扇が魔理沙に向かって突っ込む。すると魔理沙は絵筆をカービィをすくうように、そして円を描くように振るった。虹色のラインが現れ、それは魔理沙に続いている。上をカービィが勢いよく転がる。さらに絵筆を振るい、ラインで華扇の攻撃を防ぐと、カービィが華扇に激突した。すっげぇ吹っ飛んでる。痛そう。

 

「へー、新しいラインを描くと前のはすぐ消えるんだ。攻撃を受けてもすぐ消えるし、案外脆いんだな。もうちょっと残ってるもんだと思ったぜ。」

 

「ちょっと、そんな攻撃聞いてないわよ!」

 

「そのぐらい受け止めるか避けるぐらいできないとあの魔女には絶対勝てんぞ。」

 

「…」

 

その魔女を見たことがないが、彼らがそういうのならそうなんだろう。あの妖怪達が諦めてるぐらいだし。私はまぁ、アイツらに任せといても解決する気がする。私の勘がそう言ってる。

 

「まぁまぁ、強い敵を相手にするときはそれ相応の準備がいるのは当然よ。今回はそれに物凄い時間がかかるだけ、ちゃんと解決するから。」



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永夜の異常気象

東方永夜抄 ~ Imperishable Night.:永遠に終わらない夜の異変を体験できる作品。その異変の詳細を知る物は限られている。異常な満月の力に曝された妖怪達は、人間と共に永夜の術を使い、夜が明ける前に(永夜の術が解ける前に)月を元に戻すべく戦うのだが、記録上では長い間終わらない夜の異変で詳細は不明とされている。


華扇がやけに焦って異変解決に乗り出そうとした理由を聞くと、妖怪の山は現在真冬の夜に固定されてしまってるらしい。しかも満月の。そのため、妖怪は山を逃げ出し、華扇のペットは冬眠したかのようになってしまったらしい。一応暖炉を灯しているらしいが、日光を浴びれないのは大きなストレスだろう。

 

「ところでいま何時だ?」

 

華扇の話が本当なら、ここは夏の朝に固定されてるはず。てっきりまだ朝だと思い込んでいるが、とっくに昼過ぎかもしれない。

 

「私は時計なんて持ってないわよ。魔理沙は持ってないの?」

 

「あ、持ってたの忘れてたぜ。」

 

私は時計を取り出して見てみると、今は1時を示している。おそらく昼だ。

 

「なんだか昔起きた異変を二つ混ぜたような感じね。」

 

「ずっと明るいのも困りもんだぜ。そう言えば私のペットは大丈夫かな?」

 

魔法の森の方を見ると、まるで秋の夕焼けのような絵画に見える。キノコめっちゃ生えてるんじゃないかと期待してしまったぜ。

 

「ところで、その赤い魔女ってヤツどうやったら倒せるんだ?」

 

「目には目を、歯には歯ぞい!」

 

「どういうことだ?」

 

「要するに、魔女の魔法を利用するんだ。我々にあの魔女のバリアを破壊できる攻撃はできないからな。」

 

なるほど、だから私より絵筆を優先して守ったのか。

 

「ねぇ、カービィってめちゃくちゃ強いのよね?カービィの攻撃じゃ無理なの?」

 

「強い呪いのせいで力を引き出せないのよ。」

 

「ちょっと、あんた達には聞いて…」

 

「彼女らの言う通りだ。今のカービィじゃ周囲を軽く焼け野原にするのが限界だ。それに、力を一点に集めるなんて器用なことはできない。」

 

「何それ見てみたい。」

 

「やるのはいいけどここではやらないでね。ところでカービィをどうやって動かすの?誰も突っ込まないけど地面にうもれてるわよ。あと石畳直してよね?」

 

しまった。カービィを武器にしたのはいいが、その後のこと考えてなかったぜ。

で、肝心のカービィは…

 

「Zzz…」

 

顔が地面に埋もれてるのに寝てるよ。いやマジで寝てるよ。アレ…

 

「気のせいかもしれないけど、カービィだいぶ小さくなってないか?」

 

「言われてみればそうね、一回りぐらい小さくなったんじゃない?」

 

これ、絵筆で動かせば痩せるんじゃ…

 

「因みにその絵筆、ラインを描くだけでなく直接絵筆で攻撃したりカービィを飛ばしたりできるぞい。」

 

絵筆でカービィをつついてみると、めっちゃ土とか石とか飛ばしながら回転する。

 

「ブラ゛エ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

 

カービィが悲鳴を上げながら小さくなっていく。正直ちょっとおもしろい。

 

「カービィって太るのも早いけど…」

 

「痩せるのも早いぞい、うらやましいぞい!」



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第三章 冒険の始まり Reddy Lake ~ Attrange Saigyou編
Reddy Lake (レッディレイク)


スターロッド:夢を見せる力を持つ魔法の杖で、夢の泉の力の源。これを自在に操ることができれば大体なんでもできる。カービィはこの力でナイトメアを撃ち取り、デデデ大王はカービィにリベンジする際にこの力でカービィを追い詰めた。


「おいおいカービィ。痩せれてよかったじゃないか。機嫌直してくれよ。謝るからさぁ。」

 

「プイッ!」

 

「頼む、ホントに許して欲しいんだ。ほら、夏蜜柑あげるから、ね?ね?」

 

「ポヨ!?ポヨー!!!」

 

よかった。なんとか機嫌直してくれたぜ。

 

「何で夏蜜柑なんか持ち歩いてるんだよ?」

 

「この時期と言えば夏蜜柑だろ?」

 

 

「さて、問題なのは魔女の攻撃をどうやって魔女に当てるかだ。」

 

「絵筆で跳ね返したところで避けられるし、威力を下げてバリアを壊せないようにされたら跳ね返しても意味がないぞい。」

 

なるほど、だから未だに準備が終わらないのか。

 

「紫、なんとかできないのかー?」

 

「無理よ、私の能力の干渉を何故か一切受け付けないもの。そんなヤツの魔力で作られた弾を自由に操れる訳がないじゃない。」

 

どうやって戦うべきか悩んでいると、突然赤い霧が出て、温泉が暴走し、神霊やら桜やら付喪神やらオカルトボールやら…異変のバーゲンセールかよ!

 

「一体何が起こってるぞい!」

 

「何となく元凶はわかっているぜ。順番にブッ飛ばしていこう。」

 

「ポヨイ!」

 

私はカービィを連れて紅魔館へ向かう。メタナイトが後を付ける。

 

 

「おい魔理沙!あたいと勝負しろ!最近妖精がいなくて暇な…」

 

「悪いが遊んでいる暇はない。」

 

そっか、メタナイトはスペルカードルールを知らないのか。まぁ、今回は問題ないだろう。どうせ日焼けしたチルノだし。アレ?なんでアイツ焼けてんだ?氷の刃とメタナイトの剣が滅茶苦茶にぶつかり合ってほぼ互角だな。気になることはあるが…

 

「置いてくか。」

 

「ポーヨ。」

 

 

 

「デデデ、あんたは行かないの?」

 

「ワシはあんな速く飛べんぞい。」

 

「そう、私は冥界に行くけど付いてくる?アイツらと違ってそんな速くは飛べないし、場所は案内するわよ。」

 

「何か手掛かりがあるかもしれん、付いていくぞい。ところで冥界って何ぞい?」

 

「死者の魂が行くところよ。生きてても入れるけどね。」

 

 

 

「あの子達大丈夫かしら?」

 

「どう考えても例の魔女の仕業よね。危なくなったら力を使うわ。」

 

 

~紅魔館にて~

 

「なんか嫌な予感がするわ。」

 

「お嬢様、もう既に嫌なことが起きてるんですが。この辺は異変の影響で土用の新月に固定され、妖精メイドは全滅。どういうわけかチルノだけは湖で元気にしているらしいですが…」

 

「それとは違う何かがあるのよ。何て言うかこう、デジャブっていうか…」

 

紅い煙がどこからか出ている。

 

「ねぇ咲夜?何か焼いてるの?」

 

「何も焼いてませんけど。この煙は一体どこから?」



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Mad Mansion(マッドマンション)

東方紅魔郷 〜 the Embodiment of Scarlet Devil.:赤い霧が幻想郷を覆ったという異変を体験できる作品。東方シリーズの原点にして原点ではない作品で、東方なのに西洋という出落ち。異変の元凶であるレミリアは幻想郷から弱点の太陽を奪うことで幻想郷の頂点に立とうとした。紅魔館も紅魔館の住民も幻想郷で雇われたメイド以外は外の世界出身。


「ようやく着いたぜ。」

 

「あら、霊夢じゃないのね。」

 

レミリアがなんでもう出てくるんだ?ボスはもっと後に出てくるものだろ?

 

「ま、霊夢でも魔理沙でもなんでもいいわ。さっさと霧の原因探して止めてちょうだい。」

 

「なぁ、その言い方、まるでお前が犯人じゃ無いみたいな…あ…」

 

レミリアって分身できたっけ?

 

「そうよ」

「そうよ」

 

「へ?何で私が二人?」

 

「あんた偽物でしょ!」

 

「ボカボカボカボカ」

「ボカボカボカボカ」

 

要するに、どちらかが異変の犯人って訳か。にしてもさっきからアイツらずっと子供みたいなケンカしてるんだが。

 

「ポヨ!ポヨポヨ?ポヨポヨポヨポヨ!(ねぇ、違和感感じない?あっちの子は何ていうか塗り残しがあるみたいな感じするよ!)」

 

「言われてみればそうだな。」

 

いつの間にか私にもカービィの考えてることが何となくわかるようになってきていた。

 

「やっと追い付いた。」

 

「メタナイト、お前仮面以外ボロボロじゃないか。」

 

「派手に負けてしまってな。私もまだまだだな。」

 

「まぁ、アイツは妖精のなかで一番強いのは事実だからな。」

 

「ギェー!!!!」

 

うわっ…なんの躊躇もなく、というかいつの間にか剣を突き刺したぞアイツ…

あの金色の剣、素材はなんだ?吸血鬼によく効く金属なのか?

 

「で、何が起きている?何となくコイツ魔女が作った偽者っぽく見えるんだが。」

 

刺してから言うな。

 

「そういうことらしいな。で、どうして魔女はこんなことをしたんだ?」

 

「考えられることは、我々を消耗させるとか、炙り出して絵筆を奪うとか…てか魔女が作った偽物がいるってことは竹林から抜け出したってことになるぞ。」

 

そうか、また魔女が襲ってきたら大変だな。

にしてもあっさりだったな。本物と偽者がケンカしてる間に不意打ちで終わるって、いろんな意味で良くない気がする。私の出番用意しろ!

 

「アレ?偽者倒した筈なのに何で霧が晴れないんだ?」

 

「あの偽者はフェイクだったってことじゃない?」

 

「そうだな。あんなノコノコやってきて秒殺されるなんてこと、普通するわけがない。」

 

「じゃあ、とりあえず紅魔館の奥へ行こうぜ。こういうのは大抵奥にあるからな。」

 

「何を根拠に言っている?」

 

「経験かな?」

 

「ポヨ!!」

 

とりあえず地下室に行ってみたが特に何もなかった。

 

「酷い散らかり様だな。争いでもあったのか?」

 

「元々そういう部屋だぜここは。」

 

「アレ?こんなところに不自然に綺麗な絵画があるわ。」

 

明らかに美化され過ぎたレミリアの絵画だ。

 

「お姉様?お客さんたち連れて私の部屋に何か用?」

 

「フラン、あの絵画って?」

 

フランがプリンを食べながら部屋に戻ってくる。

 

「いつの間にか飾ってあったの。何かムカつく絵だから壊そうとしたんだけど全く傷付かなくて…」

 

あったじゃん。怪しいもの。てかよく見るとモロあの絵画から赤い霧出てるし。

とりあえず絵筆でつついてみる。手応えありだ。何度かつついたら絵画は壁から落ち、そこからレミリアの偽者(さっきの偽者とは違って明らかヤバい雰囲気の)が出てきた。が、相変わらず弱点はそのままらしく、メタナイトの剣で動きが止まってしまった。カービィをつついて飛ばし、トドメを刺した。

 

「結局あっさり終わったな。これゴニョゴニョ的に良いのか?」

 

「なんか悔しいんだけど。そもそも今まであんな風に弱点突かれたこと無いし。」

 

「まぁまぁ、偽者でよかったじゃないか。な、カービィ!」

 

「ポヨイ!」

 

「そういうことじゃない…」

 

「その気持ち、私もよくわかる…」



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Attrange Saigyou(アトランジサイギョウ)

西行妖:妖力を得た植物は多い。特に桜は人を誘うことで妖力を得て、より魅力的な妖怪へと進化を遂げる。西行妖は幻想郷で最も力を持つ妖怪とも言われる墨染桜。人を死へと誘い込む能力を持ち、かつて有名な詩人がこの力に誘われ命を絶ったという伝説もある。この下に眠る死体によってその力は封印され開花せず、その死体から出た亡霊は生前の記憶を失っている。そのため、亡霊は死体の正体とその意図は覚えておらず、死体を生き返らせようと西行妖を満開にしようとしたらしい。


桜のアイテム、確実にあの異変と同じだわ。でもなんでこんな夏の時期に?春なんて集まるわけないのに…

 

「なんぞい?大きな扉のような物が見えるぞい。」

 

「あれが冥界への入り口よ。」

 

「ここは絶対に通しません!」

 

見馴れない服装ね、寝巻きかしら。でもなんで異変の元凶(妖夢)がそんなすぐ出てくるわけ?もしかして、過去の異変を誰かが真似してるとか?

 

「悪いけど、私もやらなきゃ行けないことがあるの!」

 

お祓い棒片手に突っ込んで攻撃をしたが、どうも手応えがおかしい。

 

「何?手加減してるの?絶対に通さないんじゃなかったの?」

 

「くっ…手加減している訳では…」

 

「待て、なんかおかしいぞい?お前らが何で喧嘩しているかは知らんが、そこのパジャマのヤツ、なんか弱ってないか?」

 

よく見るとお腹の辺りに血が滲み出てきている。さっきので傷口が開いたのか?

 

「その傷、どうしたの?冥界に何があったの?」

 

「実は…西行妖の封印が完全に解けてしまって…」

 

「今は夏でしょ?どうしてそんなことが?」

 

「それが分からないのです。ただ、1つだけ言えることは、絶対にあの桜を見てはいけません。私は幽々子様のお陰で一命は取り留めましたが…」

 

「桜だのあやかしだのよく分からんぞい。それより早いところ治療した方がいいんじゃ?」

 

「どうせ応急処置しかしてないんでしょ、さっさと病院へ行きなさい。」

 

「でも、もし冥界に入ろうとする人が来たら…」

 

「そんなの気にしてどうするの?どちらにしろ異変解決には冥界に行くことになるんだから。」

 

「ま、そういうことだ。さっさと行くぞい。」

 

さっきの話ちゃんとわかってないな?あのペンギンもう冥界の方に行っちゃってるじゃない。

 

「大丈夫、誰かが遊びに来る前に解決してみせるから。」

 

大丈夫、私の能力なら桜の誘惑にも勝てる!

 

 

 

 

「おいパチュリー、この呪いなんとかならないか?」

 

「なんとかなるわけ無いでしょ!あの紫がどうしようもできないんだから!」

 

「いやー、魔法には魔法が効くんじゃないかなーって、ね?」

 

せっかく紅魔館にきたから、カービィの手足をなんとかできないか相談してみたんだが…

 

「なぁ、手足を後付けすることはできないのか?」

 

「は!その手があったわ!魔術用の粘土で手足をボールに付けて魔力を流せば…」

 

こうして、カービィは手足を手に入れた!と喜びたいところだが、パチュリーとカービィの様子がおかしい。

 

「これ、滅茶苦茶魔力持っていかれるわ…はぁはぁ…呪いのせいかしら…はぁはぁ…」

 

「ウイイイィッ…(手足が鉛のように重い…)」

 

「諦めた方が良さそうだな…」

 

「そうみたいだぜ…」

 

そういえば、見てみたいものがあるんだった。

 

「カービィってこの姿でも自分の回りをを焼け野原にできるんだよな?見てみたいんだが。」

 

「ここではやらないでね。」

 

「流石にここではやらないぜ。」

 

「強力な爆弾を食べさせるか、自爆するヤツに体当たりさせればその力を使えるようになる。コピー能力っていって、クラッシュ能力なら焼け野原を作るのは朝飯前だ。クラッシュは1回キリだがな。」

 

「その言い方だと他の能力も使えるのか?」

 

「もちろん使える。」

 

色々試してみる価値はありそうだな。

私は紅魔館を出て、近くの湖でディープエコロジカルボムをカービィに食わせてみたところ、黒いリングと2つのオレンジ色の星をカービィが纏った。

 

「今の状態のカービィは自らの意思でコピー能力を使えない。絵筆でタッチしてみろ。」

 

「え、ああ…」

 

言われた通りにすると、カービィが飛び散って大爆発。辺りは炎の海となってしまった。

 

「マジかよ…」

 

「プエ?」



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魔法使い泥棒の魔法使い

メタナイトの仮面:メタナイトが顔を隠すのに使っている仮面。謎が多いが、壊れた時のためにスペアが沢山用意されているようだ。この仮面と同じデザインの戦艦ハルバードが存在する。


「なぁ、コピー能力って能力ならなんでもコピーできるのか?」

 

「一応できるんだが、今の姿じゃ使えない能力も多いだろう。」

 

「手足がないからか?」

 

「それもある。例えばビームは手がないから狙った方向に出せない。その代わり自分の回りを一週するビームを撃つんだが、回転しながら使ってると壁なんかにぶつかったときビームの回転が逆になるから、狭いところで使わせるとずっと同じ方向にビームを撃ち続ける。だがそれだけでなく、自分の意思で能力を使えないというのもある。その場合、手足を必要としない能力でもうまく扱えないだろう。例えばホイールは本来であれば自由に爆走できるんだが、今の状態だと能力を発動したら自分で向きを変えられない。絵筆で手助けしてやらないと変なところに突っ込んでしまう。」

 

「なるほどな。よくわかったぜ。」

 

つまり、手足を使う能力は基本的にダメだ。格闘系の能力は一切使い物にならない。気を操る程度の能力はどうだ?自分の意思で気を感じ練らなきゃいけないから使えないだろう。アリスみたいな操る能力もダメだな。死なない能力を使わせても特に意味ないだろうし…魔法は使えるのか?特に詠唱の必要がない低級魔法ならカービィでも簡単に扱える筈だ!

 

「なぁ、カービィが能力のために食べたものってどうなるんだ?」

 

「さっきみたいな一度キリの能力の場合は食べたものは消費されるが、そうでないものは少し消耗された状態で出てくる。」

 

「生き物の場合は?」

 

「多少疲労を訴える程度だ。吸い込まれた直後の記憶は無ないと言う者が多い。」

 

「なるほどありがとな!」

 

「ちょ、何処へ行く気だ!まさか…」

 

「そのまさかだ!人を借りてくるだけだぜ!」

 

再び紅魔館の図書館へと向かう。

 

「ようパチュリー、久しぶりだな!」

 

「ちょっと前に会ったばかりじゃない!ちょっと何しに来たの!?」

 

「お前を借りに来たんだ。」

 

「はぁ?え!?はぁぁ!?何それどういうこと?それってまさか…」

 

「そのまさかだ!カービィ!美味しい紫モヤシだぞ喰え!」

 

「えっ…」

 

「パチュリー様~騒がしいんですけど泥棒ですか~。大丈夫ですか~。」

 

「いいか小悪魔、ここにパチュリーはいなかった。じゃあな。」

 

「へ?は、はぁ…?」

 

パチュリーを食べたカービィは紫色のリングに黄色の星2つを纏った。あとは能力をちゃんと使えるかどうかだが、騒ぎになる前に紅魔館を脱出しなければならない。私はいつも通りちゃちゃっと出ていった。

 

「一体誰を盗ってきたんだ?」

 

「借りただけだぜ。魔法使いをな。それより逃げるぞ。ここにいたら確実に捕まる。」

 

「やることが信じられん…」

 

「プププニョプ~」

 

急いで博麗神社へ向かった。博麗に着いたが、そこに霊夢の姿はなかった。

 

「霊夢なら冥界に行ったわ。」

 

「おいおい、マジかよ早とちりしやがって。」

 

「どういうこと?」

 

「紅い霧を晴らすのに絵筆の力が必要だった。つまりだ、絵筆を持ってない霊夢がいつも通り異変を解決できる訳がないんだ。」

 

フランが一切破壊できなかった絵画を絵筆は簡単に破壊した。逆に言えば絵筆なしでの解決はいくら霊夢でも不可能だ。

 

「冥界へ急ぐぞ!霊夢が危ない!」

 

 



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Cherry Cherries(チェリーチェリーズ)

幽霊:気質が具現化したもので、死んでいるが生きているように振る舞う。しかし、必ずしも死者の魂とは限らない。体は気質でできているため、触れると冷たく、物をすり抜けるのが得意である。肝試しで涼しく感じるのは幽霊の仕業である。また、幽霊は気質そのものといっても過言ではなく、人格を変えてしまうこともある。陽気な幽霊が集まるところは陽気になり、陰気な幽霊が集まるところは陰気になる。陽気な性格になりたければ、陽気な幽霊が集まるところへ行けばいいのである。気質から生まれるため、人間から生まれることが多い。一つの人間の死体から複数の幽霊が発生した例もある。


「冥界は春の昼間なんだな…桜が咲き乱れている。敵ながら美しい物だな。」

 

「そろそろ目的地だぜ。起きろカービィ。」

 

「ウイィ…」

 

霊夢がこちらにやってくる。流石にそんなすぐやられるようなヤツじゃないか…心配して損したぜ。

 

「やっと来たわね、遅いわよ!」

 

「なに、無事で何よりだぜ。」

 

「無事もなにも、私は何もされてないわよ。この異変の元凶は偽物の桜だったわ。ただ、あの桜を見た妖夢が自殺を図ったわ。」

 

「それってどういうことだ?」

 

「簡単に説明すると、桜を見るとその下で永遠に眠りたいって思うようになるの。あの桜はそう思わせる力が強い。だから妖夢はその手段として自殺を選んだってわけ。大体の人が自殺しようとするわ。デデデもあそこで寝てるわ。意味が違うけどね…」

 

そういう意味で寝るヤツもいるのか。自殺という発想が無いのか?まあでもそれならカービィを起こしてからもずっと眠そうにしているのも納得できるぜ。桜だらけだしな。

 

「しかし参ったな。空を飛べる霊夢は兎も角、私はあの桜に近づけないじゃないか。見ちまったらあの世だもんな。」

 

「ここは冥界なんじゃないのか?」

 

「メタナイト、そういうツッコミは要らないわよ。で、魔理沙、あの棒を貸してくれない?これは私の勘なんだけど、あれがあれば解決できる気がするの。」

 

「その勘は合ってるぜ。受け取りな!」

 

私は絵筆とカービィを霊夢に投げ渡す。

 

「じゃ、行ってくるわ。」

 

「おう、がんばれ。さて、私たちはこれから暇になるんだが、どうするメタナイト?」

 

「なぁ、あの魔女はどうしてこんな異変を起こしたんだと思う?」 

 

そうだ、何故なんだろう。絵筆を奪うのが目的?カービィを倒すのが目的?どちらにせよ魔女が直接的襲えばいいだろう。攻撃が効かないらしいしな。

 

「もしかして、幻想郷を支配しようとしてるんじゃないか?力を示すにはそれぐらいやると思うぜ。神様が目立とうとして異変を起こしたことも合ったしな。」

 

「じゃあもし、支配が目的だとして、そのメリットはなんだ?」

 

メリットか…支配するってことは、幻想郷を手にいれるも同然…それってつまり…

 

「仲間を無理やり増やす的な?あ、でもアイツは自分で仲間を作れるんじゃないか?あの絵画の時みたいに。」

 

「いや、可能性としてはあり得る。敵対者を減らせるからな。」

 

「言われてみればそうだな…」

 

 

 

 

偽物の桜。まるで和紙に墨で描いたような白黒の桜。

さて、必要なものは揃ったけど、これどうすればいいの?棒でカービィを弾けばいいのかしら?

とりあえずやってみるしかないわね。

 

 

「アレ?あの時みたいなラインと違うわ。状況に応じて勝手に変わるのかしら?それによく見たらカービィもいつもと見た目が違うような…」

 

棒状のものが現れ、カービィを強く弾いた。カービィが偽物の桜に当たると、花びらが外れ、中の枝が姿を表す。あの花びらの下に本体があるんだわ。しかし、カービィも不思議ね。私じゃ何もできなかったのに棒状の物に弾かれたカービィは意図も簡単にダメージを与えてるじゃない。なんか悔しい。

 

~それから暫くして~

 

ようやく全ての花びらを壊したわ。あの真ん中辺りが弱点かしら?

 

「アレ?なんでワシはこんなところで眠っているぞい?」

 

「あの木の仕業よ。見た目はただの木だけどとんでもない悪者。」

 

「そうか、じゃあ盛大にお仕置きしてやるぞい!どりぁあ!」

 

デデデは高くジャンプし、上からハンマーを振って木の幹の天辺を攻撃した。墨色の木はバラバラに崩れ落ち、中から一般的な桜の木の革の色の木が出てきた。

 

「なんだ、花びらがなければ簡単に壊せるのね…さて、次の場所に行くわよ。」

 

「なんぞい、もうこれで良いのかぞい?」



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番外編2
文々。新聞 カービィ特集号外2


文々。新聞その2:射命丸文は裏の取れたことしか新聞に書かない。例えそれが真実であったとしても自分の目で確認するまでは新聞には書かないし、逆に言えば虚偽のものであっても自分がそれを見れば新聞に書くのである。


カービィ、異変解決に貢献するも、危険な存在か?

 

人喰い妖怪ならず、妖怪喰い人間か?

 

現在、幻想郷ではあちこちで様々な異変が起きており、大混乱が発生している。そんななかカービィは紅い霧が発生する異変の原因を突き止め、見事解決して見せた。紅い霧の原因はレミリア・スカーレットにそっくりな絵画だったという。しかしその直後、霧の湖で大爆発が発生。原因はどうやら爆弾を食べたカービィだと思われる。どうやらカービィは食べたものの性質や能力を真似することができると思われ、これに面白がった霧雨魔理沙は他のものでも試すためか、パチュリー・ノーレッジをカービィに食べさせて逃走した。

 

(湖付近で炎と煙が上がっている写真)

「霧の湖で大爆発 原因はカービィ」

 

(カービィがパチュリーを呑み込もうとする写真)

「パチュリーを喰うカービィの様子」

 

なお、この件について霧雨魔理沙にインタビューを行ったところ、「大爆発の件はカービィが原因だぜ。カービィは食べたものの能力を真似できるんだ。パチュリーを食べたカービィがどんな技を使うのかはまだ確認してないけど、少なくともパチュリーは死んでないと思うぜ。生きたまま吐き出せるらしい。」と述べている。現在カービィがパチュリーの力を使う様子はなく、吐き出す様子もない。今後のカービィの行動次第ではカービィを危険人物として扱わなければならない。今後もカービィの様子を慎重に観察していくつもりだ。

 

カービィは紅い霧の異変だけでなく、異常な妖力を持つ白黒の桜も退治し活躍を見せた。今回の連続異変の解決にはカービィの力が必要かもしれないが、カービィを危険視する声も上がっている。カービィの妖怪退治の様子を目の前で見ていた幽々子さんにインタビューをしたところ、「あの子からは無限の力を感じるわ。今はその力を出せてないみたいだけど、それでも私じゃ相手にならないかも。」と述べている。

 

(桜に攻撃するカービィの写真)

「桜の妖怪に容赦ない攻撃を行うカービィ」

 

我々はカービィについてもっと詳しく知り、異変解決に協力しなければならない。場合によってはカービィの長期滞在を避けるために、早期の異変解決が求められる。

 

 

紅魔館 臨時バイト大募集!

採用条件

料理や洗濯、掃除などの家事ができる者又は血の気が強い者。年齢性別問わず。

給料、待遇

日払い、給料完全出来高制

住み込み、三食昼寝おやつ付き

仕事内容

廊下、トイレ等の掃除

洗濯や物品の手入れ

食事の準備など

採用期間

未定

 

お気軽に紅魔館へご連絡ください。



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第四章 冒険の始まり Ieras Subterranean(イエラスサブタレイニアン)編
直撃!隣の昼ご飯


デデデハンマー:デデデが普段使いしているハンマー。見た目はただの木製ハンマーだが実は機械仕掛けで見た目以上の重量がある。その重さは普通の人が持てば肩が外れるほどで、地面を叩けば大地にヒビが入る。デデデ大王はこのハンマーを片手で軽々と扱い、意外と素早い動きと持ち前のタフさでカービィとほぼ互角の戦いを繰り広げた。また、このハンマーでカービィを助け、世界を何度も救ったという。ニューデデデハンマーはさらに機能性と重量が増した金属製ハンマーだが、重すぎて持ち運びが不便なので普段使いはしていない。


霊夢が戻ってきた。

 

「よう、けっこうかかったじゃねぇか?」

 

「仕方ないでしょ、こんな戦い方慣れないんだもん。それより次は何処へ行くつもり?」

 

今のところ目に見えてる異変は間欠泉、神霊、オカルトボールの3つだ。神霊とオカルトボールは戦闘で利用できるから後回しだな。というかオカルトボールの方は異変の元凶がどこにあるか想像つかないし…嫌だなぁ地底

 

「地底1択だろ、イヤだけどな。」

 

「ぐぅぅ~」

 

誰かの腹の虫だ。そういえばあれから飯食ってなかったな。太陽も月も星も動かないんじゃ時間が経ってるのを忘れてしまうぜ。

 

「よし、その前に飯だな。」

 

「ポヨッ!?ポヨッ!!!ポヨッ!!!」

 

「ちょ、何?さっきまでコイツ寝てた癖に飯にだけは反応良いわね…」

 

「だろ?」

 

「あんたが自慢することじゃ無いでしょ…」

 

霊夢からカービィと絵筆を返してもらい、そんな速く飛べないと言うデデデを箒に掴まらせ、自宅へ直行する。

 

さて、何を作るか…

 

「ポヨ!(ボクに任せて!)」

 

「え、ああ、わかったぜ。」

 

カービィの言う通りに順番に薬草や果物、キノコなどを混ぜて煮込んでいく。薬膳料理でもできるのかと思ったが、よく判らない虹色に輝く甘酸っぱい香りの魔法薬ができてしまった。これが飯だというのか?というかなんでコイツが魔法薬のレシピを…あ、パチュリー喰わせてたの忘れてたぜ。

 

「ん、この匂い、この見た目は…万能のしずくじゃないか?正確にはそれと同じ効果を持つ魔法薬なんだろが…」

 

「万能のしずくってなんぞい?」

 

「ワールドツリーに実る光輝く果物、きせきの実からごく少量だけ抽出される奇跡の調味料だ。調味料って言ってもスイーツ作りに必要な材料の代わりに使える万能な食材。材料が足りないときなんかにその材料の代わりに使うものなんだが、極論を言ってしまえば量さえあればこの液体だけでクッキーでもプリンでも何でも思うように甘いお菓子が作れてしまう。」

 

「それじゃ飯にならねぇじゃねぇか。でもまあ、けっこう少ないけど、食後のデザートを作る分ぐらいはあるかな?」

 

「いや、この量ならお菓子だけで3食の生活をしても2ヶ月分…いや、3ヶ月分のお菓子が作れるぞ…」

 

「こんな少量からそれだけの物が作れるのかぞい?それは最高ぞい!」

 

しかし、もしパチュリーの知識を元にこのレシピを思い付いたのであれば能力の知識的な面はボール状態でも問題なく使えるって訳か。思想的な面には制限はないらしいな。

 

「お菓子作りは私に任せろ。魔理沙はスパゲッティか何か作ってくれ。」

 

「麺類は焼きそばぐらいしか作れないぜ。」

 

メタナイトがチョコレートパフェやらチョコレートケーキやらホットドリンクやらを作ってるのを横目にキノコと野菜、豚肉を手早く炒め、麺を投入する。ソースをしっかり絡めて魔理沙特製キノコ入り焼きそばの完成だぜ。

 

「この焼きそば、ほとんどキノコぞい。」

 

「仕方ないだろ、麺が一人前しか無かったんだ。それで我慢しろ。」

 

「しっかし、メタナイトがスイーツ作りこんなに上手いなんて知らなかったぞい。意外な一面だぞい。」

 

「あ、いや…これは…」

 

「ポヨポヨッ(メタナイト甘いもの好きだもんねー)」

 

へぇ、それは意外だな…

 

「う、うるさいぞカービィ!と、とにかく食べるぞ!」

 

 

「いただきます!」

 

 

「なんぞいこのキノコは!めちゃくちゃウマいぞい!こりゃたまらん!」

 

「さぁ、それがなんのキノコかわからん。色も形もぐちゃぐちゃで判別できん。」

 

デデデもカービィ並に美味しそうによく食べる。それよりも味が気になるのはスイーツの方だ。あの液体だけで作ったと言うのに人里の高級店が並ぶエリアのあの香り、チョコレートの香りがちゃんとしている。幻想郷でチョコレートは超高級品で食べるのは初めてだ。

 

「あ、これ美味しい…」

 

チョコレートケーキの中から熱々のチョコレートソースが溢れてくる。めちゃくちゃウマい。

おいメタナイト仮面付けたままどうやって食ってるんだ?



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Frozen Fairy(フローズンフェアリー)

妖精:自然現象が具現化したもの。頭が弱い妖精が多いため、大抵バカと呼ばれている。幽霊が死の象徴であれば、妖精は生命力の象徴である。それぞれの妖精にあった現象が強まるほど個体の強さと群れる数が増え、自然現象が弱まる土用はすべての妖精が静かになる。そのため、季節の変わり目は死の季節とも言われる。自然現象さえあれば何度でも復活できるため、生命力の象徴でありながら死を怖れない性格の妖精が多い。妖精曰く、死は一回休みである。


「ところでずっと気になってたんだが、何故地底を露骨に嫌がっているんだ?」

 

「目的地はマントルだからな、暑いというか、熱いんだよ。焼け死ぬぜ。」

 

そんなところに行くのか?というかそんなところにあの魔女が何かしたというのか?

 

「マントルってなんぞい?」

 

「簡単に言えばホットビートより暑い場所だ。となると、対策が必要だな。」

 

「そんなに暑いのかぞい?干からびてしまうぞい!」

 

まぁ、ポップスターのマントルとここのが同じ環境とは限らんが、多分同じだろう。多分…というか干からびるだけで済まんだろ普通…

 

「私が初めて言ったときは対策無しだったぜ。」

 

「今回は相手が相手だ。前回みたいに上手く行くとは限らんぞ。」

 

「そんなこと言われてもなぁ…」

 

普通はそうなるよな…あの熱さを対策する術なんて私も知らない…

ん…そういえば…

 

「なあ、あの時私が戦った氷の少女は使えないか?」

 

「なるほど!その手があった!さっそく借りに行くぞ!」

 

「盗りに行くんじゃなくて?」

 

私たちは食事を終わらせ、例の池へ向かう。

 

「おいバカまりさ、そんな速く飛ばすな落ちるぞいぎえぇー!」

 

「私の家に帰る時だって何とか耐えてたじゃないか。大丈夫大丈夫。」

 

「ポヨッ!」

 

やれやれ…

 

 

 

チルノを使うとは、大胆な発想だぜ。何故あのチルノが暴走状態なのかは知らないが、地獄を凍らせるには都合がいい。

 

「ようチルノ、久しぶりだな。今日はお前に頼みたいことがあってな。」

 

「あたいがそう簡単にお前らの言うことなんか聞かないさ!」

 

「サイキョーのお前にしか頼めないことなんだ。」

 

「ポォーヨォー!」

 

「…なに、言ってみろ。」

 

「とある場所を凍らせてほしいんだ。場所は案内するからさ、付いてきてくれよ。」

 

「わかった。」

 

「プヨイ!」

 

妖精(バカ)は単純で助かるぜ。ちょろいちょろい。

 

「ところでチルノ、なんでお前日焼けしてんだ?」

 

「何でって言われても、空が灰色になってからだから…うーん…」

 

つまり、今回の異変と何か関係があるってことだな。

 

「そういえば前にも似たようなことがあったような…ドヨウがどうのこうの言われた記憶はあるんだけどな。」

 

なるほど、その時引き出されていた力を覚えていて、土用にさらされたから本人も気がつかないうちに自分で自分の力を引き出してるって訳か。推測に過ぎんがな。

 

「ところで凍らせてほしい場所って一体どこ?」

 

「結構遠い場所だぜ。この穴の奥の奥にある屋敷の中庭だ。」

 

「この下かぞい?ならしばらく自由落下で良さそうぞい。」

 

デデデ大王が箒から手を離し地底へと続く洞窟へいち早く落下していった。

 

「飛び降りるのは構わんが落石に注意しろよー!」

 

私たちも後を追って飛び込んだ。



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Cruel Crystal(クルーエルクリスタル)

烏:黒は無(終わり)を意味する色である。真っ黒で不吉な鳥として知られるが、自然界などの掃除屋でもあり、非常に大切な存在である。漢字では、部首が鳥ではなく火(烈火)であり、炎に耐えられる身体を持つ。中には太陽の炎さえ耐える烏もいる。地獄では罪人の肉や怨霊を喰らう掃除屋、地獄烏という妖怪として扱われている。地獄烏は人の肉や魂を喰らうことでより強い地獄烏へと進化する。旧地獄の灼熱地獄跡地にはその烏たちの一部が取り残され、その多くはさとりのペットになっている。太陽の神である八咫烏は三本足の強い力を持つ烏である。太陽の力、つまり核融合を扱える存在であり、現在は霊烏路空という地獄烏と一体となっている。


地下は青く美しいクリスタルだらけの洞窟に変えられてしまっている。冷たく光るクリスタルのお陰なのか真冬のように寒い。

 

「おいまりさ!ほんとにこの奥は死ぬほど暑いのかぞい!」

 

「あたいを騙してるのか?」

 

「おいおい、私が嘘言ってどうするんだ?」

 

…うわっ、釣瓶落としだ。

 

「あれはなんぞい?」

 

「敵だ。倒しちゃっていいぜ。」

 

「そうか…」

 

デデデ大王は釣瓶落としに近づき、ハンマーを振り落として釣瓶落としの頭を思い切り殴った。釣瓶落としはその紐が切れる程の勢いで下へ落下していった。自由落下状態でハンマーをあんな風に扱えるとは、中々の手練れのようだ。

 

「デデデ危ない!」

 

メタナイトが連続で剣を振り、そこから出た衝撃波のようなもので岩を粉々に砕く。デデデ大王が釣瓶落としを倒して油断しているところに落石が発生したのだ。

 

「メタナイト、助かったぞい」

 

デデデ大王とメタナイトのそれを見たせいか、他に待ち伏せしていた雑魚妖怪や妖精たちはすぐに逃げていってしまう。私の時はそんなこと無かったのに…もしかしたら私の弾幕より遥かに強いのかもしれない。スペルカードルール無しだと私じゃ彼らに勝てないかもな。あるいはオーラとか覇気みたいなのが凄いとか?

 

あれこれ考えているうちに地面が見えてきた。この先を歩けば旧都だ。デデデ大王はどうやってか体を膨らまし、ゆっくりと地面に着地した。

 

「お、なんだ?地下なのに明るい町があるぞい!」

 

「驚いた。こんな地下深くに町があるとは。」

 

水晶洞窟の中に作られた町と化した旧都は大パニックだ。地霊殿が燃えている。

 

「見ろ!屋敷が燃えとるぞい!」

 

「あの屋敷の中庭にもっと深いところへ通じる穴があるんだ。チルノにはその穴の中を凍らせて欲しいんだ。滅茶苦茶熱くて広いぜ?できるか?」

 

「大丈夫だ、問題ない!あたいに任せろ!」

 

「おう、いい返事だ。ついでに屋敷の消火も頼むぜ。」

 

デデデ大王を箒に掴まらせ、猛スピードで地霊殿へ向かう。

 

「もうちょっとゆっくり行けんのかぞ~い!」

 

 

 

「よし、着いたぞ。」

 

「死ぬかと思ったぞい…ワープスターに引っ張られる方が幾分かマシぞい…」

 

「もう3回目だろ?いい加減慣れろ。」

 

屋敷に着いた。屋敷の外にはさとりがいる。

 

「思ったより遅かったわね。お空を止めに来たんでしょ?」

 

「仕方ないだろ?あちこち走り回らなきゃいかないんだから。それと、お空の仕業じゃ無いぜ。」

 

「お空の偽者がいると?なるほどなるほど、そういうことね。完全に理解したわ。大変そうね。」

 

「話す手間が省けたぜ。じゃ、地獄を凍らせるとするか。頼んだぜチルノ!」

 

「任せろ!」

 

チルノは冷気で屋敷の炎を消した。ボロボロの炭屋敷に向かってレーザーを放ち、中庭までの道を作る。ここからでもはっきりわかるぐらい、物凄い勢いで中庭の穴から熱気が漂ってくる。チルノがいなければ確実にまた屋敷が燃えだすレベルだ。なんでこんなに熱くなっているのか不思議でたまらない。初めてこの奥に行った時は今のココに比べればかなり涼しかった。

 

「ところで、話す手間が省けたってどういうことぞい?」

 

「アイツはさとりっていう妖怪で、心を読むことができるんだ。だからアイツは私が考えていることを全部読み取って、私が話す前に異変の内容を理解したんだ。」

 

「なるほど。そりゃ便利な能力ぞい!」

 

 



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火侮水

怨霊:幽霊の一種であり、その気質は怨みそのもの。悪人から生まれた幽霊を放置すると怨霊になるため、旧地獄や地獄に多くいる。怨霊の影響を受けた人間はこの世を怨むようになり、人間同士での争いを招く。外の世界では人間同士での争いにより、人間は妖怪よりも人間を恐れ、妖怪の存在意義が無くなってしまったが、怨霊はそれと同じことを引き起こすきっかけを作る可能性がある。また、怨霊の影響を受けた妖怪や神は、彼らにとって本体となる精神を怨霊に乗っ取られて戻れなくなってしまうため、元の妖怪や神は死に新たな妖怪に生まれ変わってしまう(人間と同じ性質を持つ妖獣や人妖、現人神などを除く)。そのため多くの妖怪や神は怨霊を恐れる。怨霊を食べて育った動物や一部の妖怪はより強い妖怪へと進化を遂げる。


「うひゃー、地面が熔けてる。よし、もっと冷やすぞー!」

 

「ガタガタガタガタ…一気に寒くなったぞい…」

 

「よし、このまま地獄だかなんだか知らないけど全部まとめて凍らせてやる!」

 

旧灼熱地獄へと繋がる穴は完全に凍ってしまい、涼しく、明るく光っている。

 

「じゃ、進むぞー!………あっつ!」

 

「おい、どうしたチルノ!」

 

おかしい、どう見ても凍っている穴に飛び込んだチルノの服が燃えている…

穴から飛び出たチルノはケツに炎を着けて走り回っている。

 

「そうか、あの光は放射熱か…」

 

「放射熱ってなんだ?熱なら冷やせるんじゃ?」

 

「でも現にベーコンを穴に近づけると焼けるぞい。お、トマトも良い具合に焼けとるぞ。これをパンに挟めば…あーっ!?地面に落としてしまったぞい!熱々のサンドイッチがカチカチに凍ってしまったぞい!」

 

「ぽよ!(勿体無い!)」

 

何でサンドウィッチの材料なんか持ってきてるんだか…

 

「でもどういうことぞい?なんで冷えてるのに焼けるぞい?」

 

「放射熱は言い換えればレーザーの一種だ。放射熱はそれその物が熱い訳じゃなくて、それが別の物体に触れることで初めて熱を発する。」

 

「あー、なるほど。日の光みたいなもんか。それじゃ直接放射熱の源を冷やさなきゃ…でもどう考えてもアイツは絵筆がないと…」

 

「白い氷を盾にすればいいわ。」

 

カービィの方から声が聞こえる。

 

「カービィって喋れたっけ?」

 

「喋れない筈だが…」

 

「もしかして、カービィに人でも食わせたかぞい?」

 

あ…そういえば…

 

「パチュリーか、生きてたんだな。」

 

「勝手に殺さないで。食べ物も飲み物もあるし、ボールに手足が生えた可愛い生き物が居るし、中はとっても快適よ。ここ数日の記憶が無いけどね。あーこのパンケーキめっちゃ美味しいわ。」

 

嫌味かよ…ん?ちょっとまて、まさか…

 

「ぽよ!(それボクが食べようと思ってたヤツ!)」

 

やっぱりな…ホント、コイツの腹のなかどうなってんだよ…

 

「でもなんで白い氷なんだ?透明じゃダメなのか?」

 

「透明だと光を通しちゃうでしょ?白い氷なら氷を溶かすのに放射熱が使われるから溶けないようバカに何とかしてもらえばいいわ。

話は逸れるけど、カービィをダッシュさせると魔法を纏いながら突進できるわ。タッチの回数に応じて月、火、水、木、金、土、日の順に属性が変化するから上手く使いなさい。」

 

「なんでそんな詳しいんだよ…」

 

「魔法でカービィの中身を覗いてみたからね。かなり特殊な能力を持ってるみたいだけど詳細を話すと長くなりそうだからまた今度ね。」

 

チルノに白い氷で穴に蓋を作らせ、私のレーザーで切り抜いてそのまま落下した。しばらく落下を続けると、氷の一部が溶け、異常な熱気を放つお空の偽物が現れた。

 

「うわあっつ!!」

 

思わずカービィをぶん投げて絵筆を振り回してしまった。

カービィは月の光の刃を纏いながらあらぬ方向へ飛んでいった。

 

「デデデ大王、行くぞ!」

 

「メタナイト、確か三回目だったな。」

 

メタナイトとデデデ大王は私が描いためちゃくちゃで消えかかったラインを足場に投げ飛ばしたカービィを打ち返し、水と冷気を纏ったカービィはお空の偽物に激突した。冷えきった偽物のヤツは再び熱を出そうとしている。が、私はすぐに体制を立て直し、絵筆で突き飛ばして、さらにカービィを飛ばして追い討ちをかけた。偽物は熱を帯びていなければ木属性の攻撃でもよく通るようだ。

 

「熱い割には呆気なかったな…」

 

「元がバカだから偽物はもっとバカで熱だけで何とかなるとでも思ったんじゃない?」

 

「絵だから脳無しってか?そりゃ傑作ぞい!」



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仲間たちの休息

五行:火、金、木、土、水の5つの属性と火剋金、金剋木、木剋土、土剋水、水剋火(5つまとめて相剋)、火生土、金生水、木生火、土生金、水生木(5つまとめて相生)の10の関係からなる、この世の成り立ちを表すもの。正確には10の関係以外にも特定の条件下で発生する比和や相侮などの特殊な関係もある。五行の全ては龍が作り出したものと言われ、その根拠として3つのあま(天、海、雨)とそれからなる7色の虹(龍の軌跡)が挙げられる。また、春と木、夏と火、秋と金、冬と水、土用と土はそれぞれ深い関わりがある。人々や妖怪には大抵五行のいずれかの属性を宿していると言われている。霖之助曰く、霖之助や魔理沙や水、霊夢は木を宿しているらしい。弾幕勝負で魔理沙が霊夢にいつも一方的に負けてしまう理由の一つは属性相性的に霊夢の方が有利だからであると霖之助は推測している。


「なんか引っ掛かるんだよね、今回の異変…なんであの魔女が過去の異変を模倣しているんだか…」

 

何故異変の主犯が過去の異変を知っているのか…元々ここ(幻想郷)の住民でもないのに…

ずっとその事で引っ掛かっている。確実に何かがおかしい。

 

「さっきから嫌な予感しかしないわ。」

 

「もう、やめてよ。霊夢が言うと本当にそうなりそうだから。そういえば冥界に行ってきたのよね?どうだった?」

 

「西行妖が満開だったわ。偽物だったけどね。」

 

「その異変って、本家の方は幽々子と妖夢が春を集めてたから起きたものだったのよね?それも満開まではいかなかった。」

 

「そうね、ん?」

 

そうか、そういうことだったのか!これで全てつながったわ!

 

「紫、良いニュースと悪いニュースがあるわ。」

 

「何々?悪い方から聴こうかしら?」

 

「これ真面目な話なんですよね?」

 

「華扇は黙ってて。そうね、悪いニュースから言うと、私の偽物が作られた可能性が高いわ。」

 

「わぁお、それは洒落にならないわね。ルールが無ければ貴女に勝てる者はいないものね。例え貴女でも貴女には勝てないわね。」

 

「負けることもないけどね。で、良いニュースは、例の魔女が何故過去の異変と同じような異変を起こしたか分かったってことよ。簡単に言えば単純に強い力を摸倣して描いたのよ。過去の異変と同じことが起きたのは偶然。だから西行妖は満開なのに妖夢たちの偽物はいなかったんだわ。」

 

「アレ?これって西行妖が作るアイテム…」

 

「え?なんで残ってるの?」

 

 

 

私たちは今、温泉に来ている…筈なんだが…

 

「湯煙が酷すぎてなんも見えんぞい!温泉は沸騰しとるし、これじゃ温泉卵じゃなくて茹で卵ぞい!」

 

なんで生卵持ち歩いているんだよ…

 

「魔理沙ー暑いんだけど?冷やしていーいー?」

 

「死ぬからやめろ。」

 

湯気が立ち込めているということは水が空気中に限界を超えて浮いているということだ。分かりやすく言えば霧雨みたいなものだ。その状態で冷やしてみろ。

 

 

「例のトリアタマの偽物は倒した筈なんだよな?」

 

「いや、私の勘だがもう一体別の場所に隠れている筈なんだ。」

 

「そういうことは先に言うぞい!ん…?」

 

「どうしたデデデ大王?」

 

「湯気でよく見えないんだが、温泉に紙が浮いとるぞい。」

 

絵筆で掬おうとすると、そこから破れ、温泉に溶けてしまった。なんだこれ?

 

「結局温泉にはなんもいなかったな。でも間欠泉の異常は治ってないし…」

 

「湯気のせいで服がびしょ濡れぞい!」

 

「帰りに服でも借りるか。

チルノ、もう帰っていいぜ。また呼ぶかも知れんがな。」

 

 

 

 

何故桜のアイテムが残っているのか、疑問なんだけど…

 

「あ…消えちゃった…」

 

「時間差で消えるものなのかしら?」

 

神社の近くにある『背中の扉』から隠岐奈が出てきた。

 

「そうじゃないみたいよ。」



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第五章 絵画の結界 Nil Geneo編
Nil Geneo(ニルジェネオ)


蝶:平和の象徴であると同時に黄泉からの使者でもある。夢を繋ぐ力を持ち、それは楽しい夢だけでなく、死後の世界との繋がりをも示す。幽々子が蝶を弾幕に使うのはこのためであり、死を象徴した美しいスペルカードばかりである。西行妖をモチーフにした弾幕も蝶が使われており、桜とも関係が深いと思われる。
毎回のごとくプププランドに平和を知らせる蝶の正体は歴史の闇に葬られ、生きる前に黄泉へと落ち極楽の夢見鳥となった戦士であり、いつの日かカービィ達に審判を下すであろう。


「そうじゃないってどういうことだぜ?」

 

「勝手に扉を使ったのね。」

 

「覗いている変態を見ちまったからな。」

 

「ちょ、魔理沙!服びしょ濡れじゃない!」

 

「隠岐奈にやられた、服を貸してくれ。ついでに寝間着も貸してくれるとありがたい。」

 

「冗談は止してちょうだいね?」

 

私は霊夢の替えの巫女服を着た。デデデ大王には白い和服の寝間着を着せたが、割りと似合うんだな。これでいつものマントがあれば完璧…アレ?私のイメージではなんか抜けている気がする。

 

「で、話を戻すぜ。」

 

「簡単に言えば魔理沙の勘が当たっていたのよ。さっき魔理沙が絵筆でつついたのは2体目の西行妖の偽物。」

 

「2体目?そんなのいたっけ?」

 

「どうせあの世繋がりで流れ着いたんだろ?でもなんであんな弱かったんだ?」

 

「倒せなくてもダメージは通るってことじゃないかしら?」

 

色々と異変について話し合っていると、突如玉兎が現れた。

 

「あの、緊急事態なんです!」

 

 

 

「はぁ!?私と紫が月の都に攻めに来たぁ!?なんでそんな程度のことでこっち(地上)に助けを求めるのさ?自分達でなんとかなるでしょ?ああ?」

 

「ちょっと霊夢、攻めたのは私たちの偽物でしょ?」

 

「そんなことどうでもいいわ!悔しいけど月の都の奴らに私たちが敵うわけないじゃない!どうして負けてんのよ!」

 

話を要約するとこうだ。偽物達がいきなり攻めてきて、前回と同じように豊姫の力で牢に閉じ込めた。しかし偽物達は牢の僅かな隙間から脱獄し、一方的に攻撃してるんだとか。応戦するものの霊夢の偽物には一切攻撃が効かず、紫の偽物は多少怯むものの倒れる気配が無いらしい。

 

「でもその話だと偽物は各1体ずつなんだよな?なら地上に残ってる方を探した方が効率的だぜ。それに紫は兎も角霊夢を倒す方法が無い。行っても無駄だな。」

 

「なあ?なんで霊夢を倒せないって決めつけるぞい?」

 

「そうだぞ。目の前の本物だって倒せないようなヤツには見えない。」

 

「簡単に言えば霊夢は完全に無敵になる能力があるんだよ。能力を使えば例え宇宙が崩壊しても死なないぜ。普段は『ルール』に従ってこの能力をあまり使ってないってだけだ。」

 

正確にはちょっと違うがこの認識で十分だろう。

 

「じゃ、先ずは紫の偽物2号を倒しに行くか。マヨヒガで見つからなかったら紫の家まで案内して貰うからな。」

 

紫のスキマでマヨヒガへ連れていって貰う。本来なら自力で行った方が道中で何かしら情報が手にはいる可能性があるが、マヨヒガは狙って入れる場所じゃないからな。

 

「ここが『マヨイガ』かぞい?」

 

「おいデデデ大王。字が間違ってるぞ。『マヨヒガ』って書いて『マヨイガ』って読むんだ。」

 

「なんだかややこしいぞいメタナイト。」

 

「メタナイトってそういう意味だったのか…納得だぜ…」




※違います(多分)

因みに魔理沙のイメージのデデデ大王に足りないものは腹巻きです。
スマブラのデデデ大王をイメージすればわかりやすいかも。


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博麗のぽよ

カービィのおなか:カービィは食べることが大好きである。カービィ自身は好き嫌いが激しいと思い込んでいるが、ピーマン等の子供から嫌われる食べ物を含めほとんどの食べ物が好物である。因みに大好物はトマト。体重は食事の前後で大きく変わる。満腹感を感じるのは一瞬だけですぐにまだ食べられると感じてしまうため、食べ過ぎて巨大化しても目の前に美味しいものがあれば食べ続けてしまう。大食い大会では合計300人分を1つの大会で完食して圧勝したという記録がとある書物に残っているらしい。体内の仕組みはわかっていないが、どうやら強靭な胃袋で効率良く食べ物をエネルギーとして取り入れているようである。体内にはカービィと同じ姿をした何かが存在し、この中に消化器官がある可能性が高い。また、この存在はいざというときに体内に保管された物を体外へ吐き出させる役目を担っているようだ。


私はパチュリー。気が付いたらカービィの体内にいた。

カービィの体内は宇宙のような空間で食べ物が沢山ある。何よりカービィの体内に手足の生えた可愛らしい生き物(本来の姿のカービィ)がいるのだ。魔法を使えばこのカービィを通じて外のカービィが見聞きしている世界を覗くことが可能。

で、今何が起きているかというと、カービィは博麗神社に置いてきぼりにされたようだ。

 

「ところで今何時~?」

 

「そんなのこんな状況でわかる訳ないでしょ。」

 

「とりあえずお腹空いたんだけど!」

 

 

 

マヨヒガにはあまりにも複雑で形容しがたい目に悪い滅茶苦茶な色彩が広がっていた。

 

「やっべぇ!カービィ忘れた!」

 

「よりによって一番大切なものを忘れおったか…」

 

「ま、まぁ落ち着け。ええええええ絵筆があればなんんんんんとかなるだろヴ。」

 

「メタナイト、お前が一番落ち着いていないぞい!」

 

「にしても目がチカチカするぜ。なんなんだこの絵画は。マヨヒガって妖怪の山にあるんじゃないのか?」

 

マヨヒガは山にあるということだけは知っている。山と言えば妖怪の山だが。もしかしたら違う山、外の世界とか異空間とかの、に移動しているのか、はたまたマヨヒガだけ別の絵画にされているのか…兎に角、妖怪の山は満月の冬の夜になっていると聞いた。そことは違う性質なのだろう。

 

 

 

台所から味噌汁の匂いが漂ってくる。華扇が台所でご飯を作っているようだ。朝食なのか昼食なのか晩御飯なのか知らないけど。

 

「で、どうやって私の偽物を倒す?」

 

「さぁ?カービィに聞いてみたら?」

 

「封印とかどうかしら?干渉を受けないだけなら自ら別の空間に入って貰えばいいのよ。」

 

「カービィって喋れたっけ?」

 

「喋れないはずだけど?」

 

「私よパチュリー。カービィの中にいるの。」

 

「カービィ、お前ついに…妖怪喰いになったのか…」

 

「やぁだぁ~。私も食べられちゃうのかしらぁ~?」

 

「ぽよ?」

 

あ、カービィが渋い顔になった。

 

「しょぼん。」

 

ん?霊夢、カービィに何やってるんだろう?

 

「よし、これでOK!」

 

「霊夢そっくりね。」

 

ああ、なるほど。遊ぶな。

 

「しかし、カービィを置いていって魔理沙たちは大丈夫なのかしら…」

 

「ねえ霊夢、台所に霊夢の絵画があるんだけど。」

 

「え?マジで?ちょっとそれ持ってきて!」

 

「あれ?持った感じ、普通の絵画じゃない…?うわっ、御札が飛んできた!」

 

その絵画からは霊夢が空を飛んでいる時の気配をそのまま強くしたものを感じる。その弾幕は意識せずとも此方をある程度ホーミングしてくるようだ。

カービィ…御札は食べ物じゃないわ。私が危ないから食べないで頂戴。

 

「この力、どう見ても霊夢の偽物だわ。あいたっ!」

 

「魔理沙の後を付けてた感じから行くと偽物の片方は絵画のままで実体化せず力を放ってるみたい。」

 

「この感じ、完全に空を飛んでいるわね…よし、とりあえず封印。紫、適当な虚無空間にブチ込んどいて。」

 

「はーい。」

 

こうして、かなり雑に封印された。しかし放っておけばここらは蜂の巣だっただろう。



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Malicious Mayohiga(マリショウスマヨイガ)

マヨヒガ:マヨイガと読む。漢字では迷ヒ(い)家または迷ヒ(い)処。どこかの山に存在する家で、幻想郷にあるかどうかも不明。山奥で道に迷ったすえにたどり着く場所と言われている。幻想郷の異変解決者達も過去に迷い込んだことがあるためか、マヨヒガは妖怪の山にあり、外の世界の人間は山奥で神隠しに逢うことでそこに辿り着くのではないかと幻想郷では囁かれているらしい。人は住んでいないが、あちこち手入れが行き届いていたり、囲炉裏に火が付いていたりするなど、まるで人が住んでいるかのように振る舞う。その家に置かれている物を持ち帰ると、ささやかな、そして一生続く幸福が訪れるといわれている。欲のない人が何も持たずに帰った際にはその人の元へ椀が届けられ、それ以来米が減らなくなったという。人間がマヨヒガへ偶然辿り着くことはあっても、自らの意思で入ることはほぼ不可能であり、一度訪れたことがある者が他人を連れて同じ場所に来た際にはマヨヒガはなかったという。
最近は橙が猫を連れ込みマヨヒガへ出入りしている。そのため猫の里が出来上がっている。


ワシらはマヨイガ(表記あってるか?)にきておる。外も酷い有り様だったが、中は中でなかなかに酷いぞい。

 

「背景もなかなか酷かったが…中に上がっても酷い有り様だな。ふにゃふにゃ動いているように見える。」

 

「多分紫の偽物が境界を弄っているせいだ…うっ…」

 

「何もかもぐちゃぐちゃぞい!常に形も間取りも変わってるぞい!」

 

「もう…私…吐きそう…」

 

「おいまりさ、この程度で吐きそうとは…」

 

「悪いデデデ大王…実は私も…酔ってきてしま…て…」

 

「お前もか!そんなんでハルバード大丈夫なのかぞい!」

 

「デデ…おま…平気なのか…」

 

「デデデ大王は…健気だから…な…」

 

「そんなの関係あるかー!」

 

ワシはまりさから魔法の絵筆を取り上げ、二人を玄関(ワシの知ってる玄関とは違うが…)に置いて奥へ進む。まりさの話だとゆかりの能力がどうこう…つまり奥に確実に目的の絵画があるということだぞい。

間取りが変わるせいで思ったように奥に行けないぞい…

仕方がない…

 

「うおぉどりゃあああ!」

 

炎を纏ったハンマーを振るう。ワシの得意技の一つ、鬼殺しデデデハンマーぞい。

デュハハハハハ!壁が消炭となったぞい!これで奥へ進めるぞい!

 

「お、あったあった。多分これぞい。」

 

ワシは絵画を持ち上げ、帰ろうとした。

するといきなりマヨイガの様子が急変した。空間かさっきよりふにゃふにゃになり、物が飛び交い、柱があちこちから勢いよく飛び出る。

 

「ま、不味いことになった…おいゆかり!どうせ迎えの時のためにワシらとやり取りできるようにしてるんだろ!さっさと答えるぞい!」

 

「それが、どういうわけかマヨヒガの中をスキマで繋ぐことができないの!外にスキマ出すから何とか脱出して頂戴!」

 

ワシはともかく、酔って動けなくなっている二人が危ないぞい。

 

「チッ…こんなことになるなら最初から一人で乗り込めば良かったぞい。この役立たず共め!」

 

ワシは玄関に向かって走った。間に合わないかもしれない。それでも、少しでも可能性があるなら…

すると突如トロッコが現れた…魔法の絵筆が輝いておる

 

「なるほど、そういうことかぞい!」

 

多分これは、もともとカービィがワシと戦うために魔法の絵筆が用意していた物だろう。ワシにはちょっと小さい。

ワシは小さいトロッコに乗り、可能な限り障害物がトロッコに当たらないよう線路を描いていく。どうしても避けられない物や立ちはだかる壁はハンマーで砕いていく。

 

玄関が見えてきたぞい。二人がよろけながら玄関を開けようとしているが、カギがかけられているのか開かないらしい。

 

「お前ら伏せろ!」

 

ワシは思い切りハンマーをぶん投げ、扉を破壊した。その後トロッコから飛び降り、その勢いを利用してホバリングしながら伏せた二人を回収して脱出、そのままスキマ(?)に入った。

 

「助かったぜ、ありがとな。」

 

「例を言うぞ、デデデ大王。」

 

「全くいい迷惑ぞい!」

 

ワシはひとまず安心したぞい。

 

「はい、ハンマー。」

 

「お、ありがと…なんでゆかりがハンマー持ってるぞい?」

 

「スキマから凄い勢いで飛んできたのよ?大怪我しちゃうとこだったじゃない。」

 

「何可愛い子ぶってんのさ?あんた片手で受け止めたじゃない?」

 

「へぇ~あのハンマーを…そんな強いのかぞい?こりゃカービィといい勝負かもしれんな…」

 

魔法の絵筆よ、ワシは心からお前に感謝するぞい。ワシの大切な仲間も、ここの人々にとって大切な仲間もお前のおかげで守ることができた。

 

「あ、そうそう、これが例の絵画ぞい。さっさと始末せんとここもすぐに大変なことになるぞい。」

 

「良くできた絵画ね…嫉妬しちゃうわ。」

 

「冗談言ってないでさっさと始末するぜ。絵筆を返してくれ。あれ?カービィがいない?というか霊夢なんでそんな小さくなってるんだぜ?」

 

「魔理沙、それがカービィよ。」

 

ワシは絵筆をまりさに返した。絵画は絵筆につつかれ、何かが割れる音とともに実体化した。実体化した絵画は実体化する前より力が弱まっている感じがするぞい。するとすぐさまメタナイトが剣を突き刺す。ワシもそれに続く。

 

「一気に畳み掛けるぞ!」

 

「畳み掛けてから言うなぞい!」



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番外編3
文々。新聞 書きかけ


文々。新聞 その3:人間向けに検閲された文々。新聞は鈴奈庵で購入できる。看板娘も楽しみにしているその内容は、真実かどうかは別にして、文の意見がしっかり書かれており、おもしろくて勉強になる。検閲担当は博麗霊夢。号外は無料でばら蒔かれ、発行も多いため、検閲されていない。


白黒魔法使いと氷の妖精、最強タッグ結成か?

灼熱の旧地獄から出る熱線をチルノが見事氷の盾で防ぎ、その隙に霧雨魔理沙が旧地獄に現れた異常な熱源の暴走を止めて見せた。

 

 

 

これは私が出す予定だった新聞の原稿だ。いや、これではほぼ白紙、その僅かな文も新聞にするにはおかしな点ばかりだ、とても原稿とは言えない。

 

私はカービィに関する記事を号外でばら蒔いた。そして、普通の新聞ではより内容の濃いカービィ特集を組む予定で取材を続けた。

里の人間たちはカービィに強い興味を抱いているようだ。カービィをピンクの悪魔と称して里は賑わっている。

 

 

そしてなぜか…

 

 

カービィに関する噂が広まるほどに…

 

 

大切な何かを喪った気がして…

 

 

やる気が出ないのだ…

 

 

そういうわけで、スランプである。書くべきことはわかっているのに、何も書けない、そんなもどかしさと脱力感に襲われ、その絶望の恐ろしさに戦いている。

 

 

そういえば幻想郷は妖怪のために作られたという話を聞いたことがある。ではなぜ、人間が幻想郷に居るのか、なぜ幻想郷の結界を人間が守っているのか…

なぜ妖怪が人里ではわざわざ人間のふりをして人間に危害を加えないようにしなきゃいけないのか…

なぜこういうときにこんなことを思い出し、考えてしまうのか…

そういえばカービィって一応人間だったな…

 

 

 

なぜ妖怪が怨霊という雑魚に怯えるのか…それは人間同士の争いの火種となるかららしい…

それも一時の争いではなく、何かを怨み、それを次の世代に引き継ぐ形で延々と続くのだとか…

 

 

 

外の世界には妖怪はほとんどいないらしい…

その原因の1つが人間同士の争いなんだとか…

次第に妖怪の起こしたことを人間のせいにするようになり、妖怪はどんどん力を失い、忘れ去られてしまった…

 

 

 

だから幻想郷ができた…

 

 

 

ああ、そうか…私はとんだ間違いを犯してしまったのか…

人間は妖怪よりカービィを恐れているんだ…

きっと、人間がカービィの記事を求めているのは恐いもの見たさだろう…

 

 

 

もしカービィが人里で暴れたら、食糧難はもちろん、里の人も里に遊びに来ている妖怪も喰われ、周囲は焼け野原になることは、容易に想像がつく…

 

 

 

せめてそうならないように注意を払おう。そして、この異変が解決したら、妖怪への恐怖を取り戻せるよう努力しよう。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば最近妖怪が静かね。」

 

「言われてみればそうかもしれないな。」

 

「そうね、どっかの誰かさんが暴れ回ったせいかしら?だいぶ妖怪への恐怖が減ってきているわ。」

 

「それは対策取らないといけないわね、か・ぁ・び・ぃ・ちゃ・ん?」

 

「私はパチュリーよ…」

 

「ぽよ?」

 

「おいちょっと待て、私たちは里に行った覚えはないぞ!それじゃその情報を流したのは誰なんだぜ?」

 

「文の号外よ。」

 

「なんだ自業自得じゃねーかよ…」

 

 

「おいメタナイト、アイツらは何を話しとるぞい?」

 

「さぁ?私にもよくわからんが、この星の妖怪って呼ばれている種族の様子がおかしいってことじゃないか?」



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第五章 絵画の結界 Buel Hills編
Buel Hills(ブエルヒルズ)


人間と妖怪の関係:人間は恐怖を産み出す。妖怪は恐怖の対象を妖怪にする。人間が栄えることで妖怪への恐怖が多くなり、妖怪も栄える。一部の妖怪は人間を栄えさせるためにテコ入れをする。一部の人間は人間に恐怖を与えない、もしくは利益を与えない妖怪を退治し、復活できないようにする。このようにして、幻想郷の人間と妖怪は共存共栄の関係を築いている。里の人間が妖怪になることは、人間同士や人間と妖怪との関係性を悪化させ、共存共栄の妨げとなる可能性がある。そのため、里の人間が妖怪になったものに関しては、例え人間や妖怪に好意的であったとしても問答無用で退治されてしまう。しかし、そのことを知っている者は少ない。


無縁塚、そこは人間どころか妖怪にとっても危険な場所で何が起こるかわからない。本来交わる筈の無い結界が交じり合うため、普通じゃあり得ないことが起こりえるのだ。僕はよく無縁塚に来るのだが、その際は万全の準備をしてから来る。異変は未だ解決していないが、無縁塚を探索する分には問題ないだろう。そう甘い考えでいた。

だが、無縁塚が真っ青に燃えるなんて誰が予想できただろう?これはただ燃えてるだけじゃない。無縁塚の異常性が原因の発火でもない。それだけは確かだ。今回の異変と関係があるのかもしれない。危険なのは分かっていたが僕は好奇心に駆られ、無縁塚を進もうとした。しかし一歩踏み出したところで本能的に後退った。あまりに熱すぎる。それもただ熱いだけじゃない。何か恐ろしいものがそこにいる。さっきまでの好奇心より恐怖が勝っているのが何よりの証拠だ。新種の妖怪だろうか…?それとも…

僕はこの事を伝えに博麗神社へ向かった。

 

 

 

 

「よう、香霖。お前の方からこっちに来るなんて珍しいな。明日は嵐か?」

 

そんなことで嵐になるわけがないが、僕はあえてその事は無視した。

 

「実は無縁塚が燃えているんだ。」

 

「はぁ?なんでそんなところが燃えているんだよ?」

 

「僕もよくわからない。あまりにも熱くて耐えられなかったんだ。それに何かの気配を感じたんだ。今回の異変と関係あるかどうかは知らないけど、あのままでは困るからね。それとどういうわけか炎が青いんだ。」

 

炎が青くなる原因は様々だ。温度が高いと青くなりやすいが、燃えている物によっても青くなることがある。また、妖怪が出す炎も青いことが多い。

 

「なるほどわかったぜ。青い炎ってのも見てみたいし、とりあえずチルノ連れて行ってみるしかないか。」

 

「気を付けた方がいい。何があるかわからないからな。」

 

そう警告をしたが、魔理沙はカービィたちを連れて凄まじい速度でどこかへ向かってしまった。

大丈夫だろうか?

 

「無縁塚が青く燃えている、ねぇ…無縁塚周辺の結界が絵画になる前の物と混ざってるみたいだわ。炎の色は結界の矛盾による偶然みたいよ。でも何か危ないものがそこに居るのは事実ね。」

 

なるほど、そういうことだったのか。

 

「ところで、魔理沙は大丈夫だろうか…」

 

「さぁ?私じゃ何をしてもどうにもできないことを彼女がやるんだからどうなるかわからないわ。」

 

だからこの少女は苦手だ。妙に自信のある笑顔である。しかし僕も今は魔理沙の無事を祈ることしかできない。

 

「あれ?霊夢は行かないのかい?異変解決は君の仕事じゃないのか?」

 

「行きたくても足手まといになるだけだわ。絵筆は1本しかないもの。今回の異変はあれがないとまともに戦えないからね。それに魔理沙には強力なサポートが2人もついてるし、これ以上増えても逆に戦い難くなるだけだわ。」

 

僕はあの異変と関係があるとは断言してないんだが…恐らくそこは彼女の勘だろう。

しかしあの絵筆はカービィを導くための道具だ。それをまるで武器みたいに…いや、カービィの道を遮る邪魔者を排除することもその用途の内って訳なのか?ますます謎が多い絵筆だ。



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チルノとチルノ、そしてチルノ

無縁塚:その名の通り、親族などがいない人が埋められているお墓。幻想郷に迷い込んで死んだ外の世界の人間が多いため、その死体の力によって結界が綻び、外内冥界の3つの結界がおかしなことになってしまっている。そのため、本来交わることの無い結界が交わり、何が起こるかわからない危険な状態である。姿を保つことが難しいため、妖怪にとっても危険な場所である。外の世界との結界も弱くなっているため外の世界の道具がよく落ちており、よくマニアが拾いに来るらしい。特に秋には霖之助がよく通っているらしい。


湖に来てみたが、どうやらチルノは家の中に居るようだ。

 

「何気に初めて見るな、チルノの家。」

 

「クリスタルでできているのか?」

 

「氷だぜ。」

 

「ぽよっ!」

 

カービィが何故かメタナイトに視線を送っている…

 

「おい待てカービィ…流石に人の家を食うのはやめろ。」

 

とか言いながら例の液体出してんじゃねーか。というか剣で削る気満々じゃねーか。お前も抑えきれてないぞ。

 

「なんだなんだ?騒がしいなぁ?」

 

「何しに来たんだ?」

 

え?チルノが二人?片方は日焼けしてない?

 

「ど、どういうことぞい?白いチルノのそっくりさんがいるぞい!」

 

「あたい“も”チルノだ!」

 

 

 

私たちはチルノたちに聞こえないようにこっそり現状について話した。

 

「な、なあ。あれってもしかして?」

 

「あの時は気が付かなかったが日焼けした方はなんか描かれたような見た目だが?」

 

「でも敵対してるわけじゃないみたいぞい。どういうことぞい?」

 

「良く分からんが、しばらくは放っておいて大丈夫だろう。」

 

 

 

「何話してるんだ?」

 

「あ、いや…チルノが二人も居るなんて思わなくてな…びっくりしただけだ、あはははは。

ま、それは置いておいて、またチルノに頼みたいことがあるんだ。チルノじゃないとできないからな。」

 

「ああ、また凍らせて欲しいのか?」

 

「ま、そんなところだ。無縁塚が燃えてしまってな、それを凍らせて欲しいんだ。」

 

「凍らせるのはやり過ぎな気もするんだが…」

 

「どうせ魔女の描いた偽物がおるんだろ?凍らせてしまえば処理は楽になるぞい。」

 

「ま、そういうわけだ。」

 

「わかった。そっちはついてくるか?」

 

「あたいはパスだ。今は乗り気じゃない。」

 

白い方のチルノはそう言って家の中に入っていった。なんとなくさっきから家の入り口から強い冷気が漂っている気がするんだが…

 

「なあ、チルノ、お前は一体いつから二人なんだ?」

 

「あたいも良く分かんない。気が付いたらあたいがいて、あたいにそっくりで名前も同じ子が居て、一緒にあそんで…でも急に疲れたからってそれで家に案内されて、それでしばらくお話してたんだけど、やっぱ暴れたりなくて遊び相手をさがしてたんだ。アイツから聞いた人はあんた以外見つからなかったけどな。」

 

「家の中になんか変わったものはあったか?」

 

「うーん?そういえば冷たい風がでる絵が飾ってあったな。」

 

やっぱりな。

そうこうしていたら目的地がだいぶ近くなってきた。

 

「こっからは気を付けろよ。何が起こるか分からないらしいからな。って言っても心配なのはカービィだけなんだが…」

 

「そんなに危ないとこなのかぞい?そうは見えんがまぁ、備えあれば嬉しいなっていうぞい。」

 

それを言うなら備えあれば憂い無しだろ…

 

「そうだな、取り敢えずカービィを守れるようにしておこう。」

 

カービィは自分の身を自分で守れない。おまけに不安定な状態である。無縁塚の危険性について聞いたことがあるが一番危ないのはカービィだ。まぁ、私が以前無縁塚に来たときは説教がうるさいヤツに出会ってしまったこと以外は危険なことは無かったがな…



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最強ルール「スペルカード」

カービィの属性:実は星のカービィシリーズでは属性設定がなされている作品がある。カービィシリーズでは主に無、斬ゲキ(刃)、炎、氷、水、電気、打ゲキ(押しつぶし)属性がある。また、作品は限定されるが、はかい、風、絵の具属性もある。それぞれに対応するギミックが存在し、敵には属性に対して耐性や弱点を持つものもいる。
無属性は基本的になにもない。
斬ゲキはヒモや草を斬る。
炎は氷や金属を溶かし、草や導火線を燃やす。
氷は水を凍らせ炎を消す。
水は炎を消し電気を漏電させる。
電気は水や金属に通電し、機械系の敵にも強い。
打ゲキはクイを打ち込む。


私たちは無縁塚に向かっている最中だ。というかもうほぼ目の前、本当に青い炎が広がっている。

 

「異変の犯人、見つけました!」

 

突如目の前に早苗が現れる。御祓棒で私を指して敵意を剥き出しにしているあたり、私を犯人だと思っているようだ。そういえば早苗って何気に初登場だな。出落ちフラグが見えるぜ。さっさとへし折ることになるだろうから、へし折る必要はないな。

 

「おいおいなんだ?例の魔女でも見つけたのか?」

 

「犯人は貴方です!その絵筆が何よりの証拠!さっさと幻想郷を元に戻してください!あっちは寒いんですよ!困っているんです!」

 

やはりへし折ることになりそうだ。というか一瞬可哀想な早苗のをへし折ることも検討したがそもそもこの場合のへし折り方なんて思い付かないぜ。

 

「どうするぞいアイツ?ブッ飛ばすか?」

 

「流石にそれはマズい。今までとは違ってこっちのヤツと戦うんだから。ルールは守らないとな。」

 

そう、ここにはスペルカードルールが存在する。霊夢が戦いで無敵にならないのもスペルカードルールで異変を解決しているからである。もしこれがなければ霊夢が夢想で無双しかねないからな。

 

「なんか寒いぞい。」

 

「わりぃ、寒いことばかり考えてた。」

 

カクカクシカジカ

 

スペルカードルールについてひと通り説明した。偽物のチルノとカービィ以外は内容を理解した様子である。

 

「はへ?あたい全然わかんない。」

 

「ぽよっ!」

 

「大体内容は分かったが、実際に見てみんとなぁ…」

 

「そうだな、美しい弾幕を撃ち合って戦うってものがイメージがつかない。」

 

「ちょっと!私を置いてかないでください!」

 

「私は犯人じゃないんだがな、丁度いいしサンドバッグになって貰うぜ。」

 

私が早苗に負けることはない。新しいスペルカードがあるからな。使ったこと無いけど。ぶっちゃけどうなるか知らんけど。

 

「喰らえ!星符『星のカービィ』」

 

対戦前にささっと書いたスペルカードを提示する。

 

「初っ端からスペルカード!?」

 

星符『星のカービィ』はカービィと絵筆を用いて相手をカービィでボコボコに千本ノックする弾幕だ。わりと相手を直接狙い続けても絵筆がきらびやかに飾ってくれる。しかも描いたラインは相手の進路を妨害する。端から見ればマスタースパークより厄介で芸術的なのかもしれない。カービィは軽いのにぶつけるだけで結構な威力になるから“カービィ弾”をまともに何度も喰らえばどうなるかはわかんない今さっき思い付いた“新しいスペルカード”だ。ま、死にはしないだろう。

私のコントロールが良かったのか、“カービィ弾”は何度も命中、早苗は満身創痍だ。一応お互い5枚のスペルカードで戦うことにしたのだが、まさか相手に1枚も使わせずに終わるとは…

 

「弾幕はパワーっつっても、本気出しすぎてしまったぜ…」

 

「なるほど相手が弱すぎて参考にならんぞい。」

 

「ま、まぁ、弾幕は派手で良かったんじゃないか…?一方的過ぎだが…」

 

「ポヨッポヨッ」

 

いや、早苗が弱すぎたんじゃなくてカービィが一方的に強すぎるだけだ。確かにコントロールは私だが、早苗がマスタースパークをまともに喰らってもこんなすぐ満身創痍にはならない。こりゃ自重しなきゃいけないスペルカードかもしれないな。カービィは楽しそうにしていたが…



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Noisy Necro (ノイジーネクロ)

スペルカードルール:スペルカードと呼ばれる技名が書かれた契約書を用いた決闘のこと。スペルカードの技は相手の体力を削るだけでなく、美しさや派手さも求められる。また、回避が不可能な技(壁弾幕で逃げ場を無くして押し潰す等)は使用できないが、相手がそのような技を回避する移動手段やイカサマをこの決闘で使用している場合はその限りではない。
スペルカードルールでは、技の宣言回数を予め定め、全ての技を攻略されるか戦闘不能になったら負けである。
元々妖怪が弱っていたタイミングで訪れた吸血鬼が幻想郷を制圧し、他の妖怪を支配してしまった異変がきっかけで導入された。このルールの導入によって、妖怪同士や人間との格差が減り、吸血鬼でも他の妖怪の支配が難しくなった。それだけでなく、妖怪が気軽に異変を起こしやすくなり、退治されやすくなったことで人間と妖怪の共存共栄の関係が改善した。


はぁ、伸びたコイツを放置しとく訳には…いかないよな。でも運ぶのはダルいし…あ、ちょうどいい(胃)袋があるじゃないか!

 

「おいまりさ、念のため言っとくが、やるなら先に吐かせるぞい。」

 

何かを察したデデデ大王が後退りながら忠告した。

 

「そうか、わかった。カービィ、パチュリーを吐け。」

 

「ポヨっ!」

 

パチュリーがよくわからないところから飛び出てきた。口から出すんじゃないのかよ!リバースしろよそこは!

 

「で、コイツを喰え。多分ウマいぞ。奇跡の味がする。」

 

奇跡の味がなんなのかわからないが、伸びた早苗を袋に入れておくことはできた。後ろで三人(デデデ大王、メタナイト、偽物のチルノ)がドン引きしているが…

案の定緑色のリングと2つの青い星がカービィの周りをグルグルと回っている。

 

「ちょっとカービィを貸して。」

 

パチュリーがカービィを鷲掴み、何かの魔法を使用した。おそらく能力について調べてくれているのだろう。

 

「残念だけどスカね。この能力はボール状態じゃ使えないわ。カービィにとって奇跡は魔法と違って詠唱無しで使えるものは無いみたい。」

 

「ちょっと待て、早苗には風や妖力を使った攻撃ができるじゃないか!」

 

「早苗の攻撃がどういう仕組みかはよく知らないけど、奇跡を利用しているんじゃないかしら。」

 

「そうか、なら仕方ないな。しかし、カービィの能力ってホント不思議だな。それで、もうパチュリーの技は使えないのか?」

 

「使えないわ。カービィの能力は多種多様な力を使えるようにするけど、その代わり能力は基本的に1つで他の能力を使うには前の能力を捨てなきゃいけない。強い能力ほど制約も大きいことが多いわ。カービィの場合、便利さの代償に不便さが付いてくるといったところかしらね。」

 

「基本的にっていうのは、例外もあるってことか?」

 

「相性のいい能力は混ぜれるみたいよ。刃と電気とか。今の姿じゃできないけどね。」

 

パチュリーと話してみてわかったことは、早苗は体に悪いってことだ。早いとこ吐き出させなきゃな。

 

「さて、油を売るのもおしまいだ。チルノ、あの炎を消せ!」

 

「消すだけでいいのか?」

 

「いや、もっとやれ、全部凍らせろ!」

 

「そうこなくっちゃな!」

 

チルノが無縁塚を凍らせると、凍り付いた烏が見つかった。

 

「これ、八咫烏の偽物だ。描かれたみたいな見た目だし、足が3本ある。つまりお空の絵画だったってことか?」

 

無縁塚は何が起きてもおかしくない。おそらく結界の歪みのせいで絵画のバリアみたいなものが絵筆無しで破られ瀕死の重症を負ったまま燃えていたのだろう。無縁塚を荒らしているヤツが何かと思ったがとんだ拍子抜けである。どれどれと覗くデデデ大王とメタナイトは3本足の烏に違和感を覚えたようだが、しばらく興味深そうに観察し、その後ハンマーで粉々に砕いた。その瞬間、絵画と本物が入り交じったような空間から絵画の部分だけどんどん崩れ落ちていく。おそらくあの偽物がこの不安定な空間を何とか絵画に保っていたのだろう。半分保ててなかったけどな。

 

「何か変な感じがするわ!早くここから逃げましょ!」

 

「言われなくても!デデデ大王、箒にしっかり掴まれよ!」

 

私はカービィをしっかり抱き留め、パチュリーを引っ張り猛スピードでこの場を離れた。デデデ大王は泣きながら何とか箒に掴まっている。メタナイトがチルノを引っ張って私に続く。

 

 

 

無縁塚を抜けたが再思の道でも絵画の崩れは止まらない。絵画が崩れた場所は本物へと変わっていく。無縁塚ほどではないが再思の道も安定していなかったためか、連鎖的に崩れたのだろう。魔法の森に戻ったときには、再思の道があった場所には何もなかった。こちらから見る限りでは。

 



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第六章 真のやすらぎ
Magica Mushroom(マギカマッシュルーム)


サッカー:幻想郷で大流行したことがある外の世界の試合。一定の人数で2つのチームに分かれ、ボールを運びながら相手の陣地に攻め要り、ゴールと呼ばれるエリアにボールを入れれば得点が入る。ただし、ボールを手で触れてはいけないため、足で蹴ったり、頭で突き飛ばしながら仲間と協力してボールを運ぶことになる。また、相手を直接突き飛ばしたり引き寄せたりすることなどはルール違反である。ゴールを守る手段として、各チームで予め決められた1人のみ、ゴール前の一部の陣地のみ手でボールに触れることが許される。


魔法の森は相変わらず秋の夕方の景色だ。再思の道はよくわかんなかったな。血(赤黒い絵の具かなにか)で汚れた暗い背景に不気味なぐらい目立つ彼岸花、そして死体の山と気持ち悪くて仕方がなかった。

 

「あの、この辺に再思の道ってありませんでした?」

 

屋台を引いた男性がいきなり私に話しかけてくる。

 

「あったぜ。さっきまでな。」

 

「さっきまで、というと?」

 

「消えたんだ。異変のせいでな。」

 

「そうですか…あそこに住んでいる妖怪達は無事ですかね?」

 

「多分無事だぜ。一時的に別世界に閉じ込められただけだ。異変が解決すればもとに戻る。」

 

あそこは絵画の世界ではなくなってしまった。言い換えればあそこだけ異変が解決しているということだ。つまり幻想郷全体の異変が解決すれば、道が繋がるということだ。

 

「それで、お前は誰だ。ここで何やってるんだ?」

 

「僕ですか。僕は名もない妖怪(ただの雑魚妖怪)ですよ。巫女さんが覚えているかは知らないけど一度コテンパンにされてます。今は人妖向けに屋台を出して歩き回っててね。」

 

デデデ大王が割り込んで入る。

 

「屋台っていうとラーメンでもあるのかぞい?」

 

「ありますよ。外の世界の人間に教えて貰ったとっておきのラーメンがね。」

 

「おおそうか、一番デカいのをたのむぞい!」

 

「おいちょっと待てデデデ大王!私はそこまでお金持ってないぞ!」

 

「いいですよツケで。貴方達異変解決の旅をしているんでしょ?解決してくれればそれでチャラにします。あそこには常連さんもいますし。5人前でいいですかね?」

 

「そういうことなら、6人前で。」

 

「はい、少々お待ち。」

 

そういうと彼はラーメンを作りながら語りだした。

 

「このラーメンはね、二年半ほど前の、再思の道で見つけた人間に教えて貰ってね。大抵再思の道に来た外の世界の人間はそこに住む妖怪の餌になるんだけど。まあ、僕も最初は彼を食べようとしたんだけど、何か食べさせてくれって言われて、ちょうど屋台を引いてたからラーメンを食べさせてあげたんだ。でもヤケに不満そうにしててね、話を聞いてみたら彼は元ラーメン屋だったらしいんだ。で、僕は彼の元で修行を続けたわけ。そういってもあれから2年ほどで寿命を迎えてね、今はあのお墓で安らかに眠っているよ。で、その自慢のラーメンがこれだ!」

 

目の前に置かれた丼には大量の野菜と肉が山になっていた。チルノは出されて早々目をキラキラさせながらむさぼり始めるが、デデデ大王とメタナイトの目が死んでる。これは自分の知っているラーメンじゃないと語っているようだった。というか前々から気になっていたが彼らの星の食文化って似てる?ちょっと気になるな。因みにだが、カービィは一口で終わってしまった。パチュリーは一口だけ食べて、カービィに押し付けてしまった。むきゅっ!

 

「な、なぁ。お前らの星のラーメンってどんなのだ?」

 

「え、えっと、だな、黄色い麺がスープに入ってて、メンマとかチャーシューが乗っていることもあるな。」

 

どうやら食文化に関しては似ているようだ。

 

「お前らの星のラーメンはこんなんなのかぞい?」

 

「いや、まぁ、実を言うと私も想像してた物と違うが…外の世界の文化っていうなら納得だな。」

 

「それでいいのかぞい?というか外の世界って…」

 

そういえば話していなかったな。私は目の前のラーメンにがっつきながら軽く説明した。このラーメン、まだ麺にたどり着けていないがなかなかウマい。野菜だけでもいける。

 

「簡単に言えばここは結界の内側で、その外とは違う文化があるんだ。何かしらの理由で外の世界から人や物が来ることもあるし、外の世界で失われたものはここで保護されることもあるんだ。」

 

カービィが物欲しそうにこちらを見ているが、もう少し食べたいので無視だ。ようやく麺にありつけたところだし。

 

「そうか。しかしこのラーメン、なかなかウマイぞい。ラーメンとは思えんがな…」

 

「うむ、これなら何杯でもいけそうだ。」

 

おいメタナイト、お前のどこにその量が入るんだよ。もう完食してんじゃねーか。

 

「いやー、美味しく食べていただけて、僕も師匠の元で頑張った甲斐があったよ。でもまぁ、いきなり一番デカいのを食べる客は初めてだけどね、いい食いっぷりだ。一応普通のもあるんだけどね。」

 

なんで私の分はそうしてくれなかったと言いたかったが、美味しかったのでいつの間にか完食してスープすら無くなっていた。あの量、よく私の腹に収まったな…食べ残しを期待してたカービィが半ベソだ…

 

「あ、あの…もう一杯用意しましょうか?」

 

カービィの存在に気が付いた彼はそういってまた麺を取り出した。ちゃんとカービィは一杯…いや二杯食べたぞ!と言ってやりたいが、このままではカービィが泣き出しそうなのでお言葉に甘えることにした。申し訳ない。

チルノは熱いラーメンに苦戦してフーフーしている。猫舌なのか…



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ピンクの悪魔は跳ねている

魔法の森:人間の里の近くにある幻想郷唯一の原生林。森と言えば普通はここを指す。昼間でもジメジメして暗く不気味な雰囲気。茸がよく育つ。様々な茸が生えており、見た目は兎も角食用となる茸もある。しかし圧倒的に幻覚毒の茸が多い。化け物茸の胞子が年中漂っており、普通の人間や一般的な妖怪は息を吸えばすぐに体を壊してしまう。逆に化け物茸の瘴気に耐えられるのであれば最高の隠れ家にもなる。また、毒茸の中には近づくだけで幻覚を見せるものもある。その幻覚は魔法使いの魔力を高める効果があり、一部の魔法使いはそれが目的でここで生活している。魔法の森と呼ばれるのもそのためである。
因みにだが、幻覚毒の茸の一部は少量食べる程度なら健康にいいらしい。


ラーメンを食べ終えた私達はチルノと別れ、神社へと向かった。お腹が膨れているせいで空を高速で移動できないので、仕方なく歩いている。いつも通り飛んだら絶対吐くからな。

因みにだが、パチュリーに逃げられないように手を縛り付けて歩かせている。まだまだコピーの元として働いてもらうからな。

 

「あのラーメン、ウマかったなぁ…ワシらの星でも再現できんかぞい?」

 

「材料はなんとかなるだろうが、味付けがわからないからな、難しいかもしれない。とりあえず一流の料理人に相談してみるしかないだろう。」

 

「ところでまりさ、お前は何を悩んでいるぞい?」

 

「あ、いや。さっきのラーメン屋の妖怪、なんか変なんだよな。少なくともあそこで人間喰ってるってなると、名無しかどうかは別にして、自ら雑魚呼ばわりする程弱いわけがないんだよ。しかも訊いてもないのにわざわざ一度退治されてることまで言って。」

 

「なぁ、さっきから気になってたんだが、人間と妖怪ってどういう関係なんぞい?」

 

「そうか、お前らにはそっから説明しないとわかんないよな。簡単に言えば妖怪は人間の恐怖を喰らい、人間は妖怪を退治するんだ。この関係によって人間の数をあまり減らさず、妖怪はより多くの恐怖を得て強くなるんだ。人間が大幅に減ったり、恐怖が別の対象に集中したりすると弱くなるからな。幻想郷は妖怪のための場所だからこのバランスが重要なんだ。因みに私は人間な。」

 

「なるほどな。喧嘩したくなかったってことか?いやでも恐怖を与えなきゃいけないんだよな…」

 

「そうなんだよ。だからなぜ自虐してまで確実に喧嘩を避けたかったのかってことだ。相手は下手したら私でも敵わないような人喰い妖怪なんだぜ?私に名前を訊かれたぐらいで怯えるわけがないはずなんだ。」

 

「…」

 

ここで私と宇宙人達との会話は沈黙を迎えた。それから暫く歩き続け、長い階段を上り、ようやく神社についた。

 

「ちょ、魔理沙!?そのお腹どうしたの?妊娠したの!?」

 

「いや、ただの食べ過ぎだ。というか妊娠って誰の子だよ?」

 

「ええっと?霖之助さん?」

 

「勝手に僕の子を孕まないでくれ。で、無縁塚はどうなったんだい?」

 

「それがさぁ、聞いてくれよ~。」

 

私は無縁塚の炎を見て帰ってくるまでのことを事細かに話した。すると紫が最後のラーメン屋の妖怪の話に突っ込みを入れる。

 

「色々突っ込みたいところはあるけど、ちょっと前にカービィが妖怪にとって危うい存在だって話はしなかったっけ?」

 

「ああ、そういえば。じゃあアイツはカービィの噂のせいであそこまで弱っているってことか。」

 

「紫がそこまで変化してないから感覚が麻痺してたけどそれってかなり危ないんじゃない?でも今追いやる訳にはいかないし。」

 

「まぁ、私は他の妖怪より強いからね。」

 

「僕も半分人間だから問題ないけど、この異変が解決しても妖怪が弱体化する異変はカービィがここから居なくなっても解決しないな。何とかして人々からカービィの記憶を消せれば元に戻るかもしれないけど。」

 

「そうね霖之助さん、異変が解決したらこの件についてもじっくり話し合いましょ。」

 

 

「なぁメタナイト…」

 

「ああ、どうやら私たちは妖怪にとって毒らしいな。しかしなぜ…?」

 



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絶対許早苗(逆)

ギャラクティック・ノヴァ:銀河の果てにある人工の大彗星で、ミルキーロードの7つの星の力を結ぶことで呼び出すことができる。さまざまな道具がくっついた顔のような振子時計の見た目をしている。ノヴァを呼び出すとどんな願いでも1つだけ叶えてくれる。星の力を結ぶには夢の泉を用いる。ノヴァは一度破壊されており、現在は呼び出す際には壊れたパーツが集まるように復活することで正常に機能している。しかし、破壊される前と比べると見た目はボロボロである。
因みに毛糸の世界ではノヴァの伝説が遺跡に刻まれている。その壁画を見ると、ポップスターがミルキーロードの7つの星にとって重要なものであると推測できる。


「妖怪は恐怖がないとうまく生きていけないのは前も話したよな?」

 

「ちょっと前までカービィに関する新聞がたくさん出回ったんだ。天狗っていう種族の妖怪が書いているヤツね。それが途中でプツンとなくなったんだけどね。」

 

「まぁ、簡単に要約すると、カービィが人間の間で噂になって妖怪の分の恐怖を集めちゃってるのよ。バカな天狗どものせいでな。」

 

「なるほど、それで妖怪が弱っているのか。カービィが毒になってるのも納得。天狗に責任をとらせるためにしばいてやりたいところだ。な、デデデ大王。」

 

「ワシはそんなのどうでもいいがな。カービィが悪者なら清々するぞい。」

 

私たちは一通り妖怪が弱っている理由をメタナイトとデデデ大王に話した。

 

「ぽぉよぉ…ぽぉよぉ…」

 

カービィが突然泣き出した。何故だ?

 

「このラーメン、何杯でもいけちゃいますね!なぶり殺された先がこんな天国だなんて、生きてて良かった!あれ?死んでるんだっけ?」

 

早苗の声がカービィのお腹から聞こえてくる。そういうことね…

 

「あんた、早苗に何したのよ?どうしたら殺されたって勘違いするわけ?」

 

「ルールの範囲内で一方的にボコボコにしてやっただけだぜ。」

 

私はカービィに早苗を吐き(?)出させた。ラーメン丼を抱え、お腹をあり得ないほど膨らませた早苗が出てくる。あの山盛りラーメンと同じ匂いがする丼にはもうほとんど具も麺もスープも残っていなかった。

 

「ポヨ!ポヨポヨ!ぽよー!!!むきぃー!!!(アイツがボクのチャーシューダブルメンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシラーメンを全部食ったんだ!絶対許さない!)」

 

え?全部…?カービィってアレ3杯食ったよな?てかアレってそういう名前のラーメンだったのか。あ、そういえばメニュー表に書いてあった気が…で、あのラーメンを?早苗が?3杯も?マジで?てか丼は吐き出させたよな?

あり得ない!あの亡霊なら兎も角、早苗は原さk…ゲフンゲフン私が見てきた限り大食いなんてしたことないぞ!

 

「どういうことなの魔理沙?早苗は霖之助さんの子を孕んだとでも言うの?」

 

「私が聞きたいぜ…いや、カービィの体内は美味しいもので溢れているらしいが…この状況は私でも理解できん…」

 

「僕は早苗って人とは一切面識が無いんだけどね。どうやったら僕の子が生まれるんだい?」

 

うわぁ、香霖の顔が怖い…私なら…その…

 

「この小説はラブコメじゃないんだぞ。そろそろそのネタ使い回すな霊夢。」

 

遂にやりおったメタナイトお前ぇ~!!!やっぱメタナイトってそういう意味だったかぁ~!!!

 

「あながち間違ってはない。メタナイトのメタは超越したという意味で、メタ発言の語源でもある。フッ、私は超越した騎士なのだよ。」

 

「…メタナイトの言ってることが理解できないんですけど…まぁ、霖之助さんをこれ以上いじめるのも可愛そうだし…」

 

悪意はあったのか。これには香霖もプンプンである。茶番劇のお陰ですっかり忘れてたが、早苗とカービィがめちゃくちゃ怖い。

早苗はこの状況を理解できず、おまけにカービィの恐ろしい視線を向けられ、怯えるモルモットのようにフリーズしている。

 

「早苗、せっかく生き返ったのに、また殺されちまうかもな…すまない…」

 

カービィはあの時の戦いで学んだのか、静かにスペルカードを宣言した。いや、お前一人では戦えんだろ!



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予兆

境界:さまざまな境目。架空も現実も含め全てには境目があり、これがないと例え実在しないものであってもその存在が無くなる。境界を操ることができれば、それに対抗する手段はほとんど無いため、全てを手に入れることができると言っても過言ではない。しかし、境界を操ることができる紫が手加減無しでその能力を駆使しても月の技術を奪うことはできなかった。


「おいおいカービィ、お前一人では戦えんだろ?」

 

そう言ったが、私は無意識に絵筆を握っていた。恐らく反射的にだろう。カービィと長いこと一緒に居たからな。そしてカービィはいつの間にか眠ってしまっていた。まぁ、色々あったし、怒り狂って疲れたんだろうな。仕方がない。それよりも早苗の顔色がヤバい。今にも吐きそうである。

 

「私、てっきり死んでいると思って、調子乗って食べ過ぎ…オロロロロ…」

 

「ちょっと!吐くならあっちでしなさい!」

 

アホだ。そしてそのアホに霊夢がガチで怒っている。いくらなんでもあのアホは常識が無さすぎる。三途の川を知らないのか?ま、元々外の世界の人間だしな。こっちの常識をまだ理解しきっていないのであれば、死んだと勘違いしてもおかしくは無いかもしれない。

 

「色々ごちゃごちゃしたが、お前らも油売ってる暇は無いだろ?そろそろ次行くぜ。」

 

神霊を伴う異変、そして今までの経験から恐らく片方は夢殿辺りに居るだろう。もう片方は神子のところかもしれないが、もしそうなら気付いて此方に来る可能性が高い。アイツらのことだしな。いや、もし私のあの時の推測が正しければ…未だ神霊が残っているなんておかしい!何故神霊は仙界に向かわないんだ!なんで気が付かなかったんだ!利用価値があるからって後回しにしていたが、アイツらが危ない!

 

「くっそ!なんで今頃気付くんだ!」

 

「何の事ぞい?」

 

「説明している暇は無い!急ぐぞ!」

 

私は眠っているカービィの口に半ば無理矢理パチュリーを押し込んだ。しっかりあの時と同じリングと星を纏っているので眠っていてもコピーは得られるようだ。そしてデデデ大王を引っ張り、カービィを抱えたまま高速で空を飛んだ。メタナイトは何故かだいぶ遅れてから飛び立ったが、もちろん私の本気のスピード程度ならメタナイトは余裕で付いてくる。やっべぇまだ消化しきってねぇ吐きそう。

 

「さっきの件でカービィもお腹を空かせているだろうからな、おにぎり貰ってきたぞ。」

 

「でかしたメタナイト!次の戦いはもっとカービィに頑張って貰わないといけないかもしれないからな。」

 

神霊が現れ、今も残っている理由は恐らく三択だ。

A.本物の神子が受け入れられない数の神霊を偽物が出した。

B.本物の神子が何かしらの理由で無力化された。

C.偽物が神霊を操っている。

D.キノコは素晴らしい。

なお、どれも偽物が神霊を受け入れなかった前提だ。私の勘だとAの可能性が一番高いが、BやCの可能性もあるし、もしかしたら全て当てはまるかもしれない。Dは誰もが知っているな。

どちらにせよ先ずは仙界を見に行かないことには始まらない。兎に角間に合ってくれよ!



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第七章 染められる天体 Ocltmarine Zone編
Ocltmarine Zone(オカルタマリンゾーン)


仙界:仙人が作った空間。仙人の哲学で拓くため、独自のコントロールができる。アクセスは容易ではなく、入り口を開けて貰うか、その仙界へ入る術を持っている者(主に作った本人)に連れていって貰う以外の方法で入ることは不可能に近い。茨木華扇の仙界へのアクセスは妖怪の山に用意された入り口からパスワード通りのルートを通ることで入ることができ、天候なども調節されている。神子の仙界は仙界と外を繋ぐ術さえあれば幻想郷の何処にでもアクセスでき、一時期誰でも自由に出入りできるようにされていたこともあった。


あれ?ちょっと待て。神子の仙界ってどうやって入るんだっけ?あの時は解放されていたけど…

そもそも仙界には異変の影響があるんだっけ?あ、それは華扇の件からしてあるのか。

大事なことを忘れて飛ばしていたが、何故か太陽が描かれた方向に額縁が見えてきた。気になったのでそのまま突っ込むことに…

気が付いたら仙界にいた。目の前には神霊廟があるのだが…背景はめちゃくちゃだ。絵画にされてからあちこちを見て回ってきたが、それらの絵画を寄せ集めて切り貼りし、新しい絵を描いたような、そんな見た目である。私の回りには多くの弟子達が集まっており、やたら空気が重い気がする。後ろにはあの時と同じ額縁がある。

 

「やっと来おったか。待ちくたびれたぞ。」

 

「待ちくたびれたってどういうことだ?」

 

「奥に行けば分かる。急ぐのじゃ。」

 

言われるがままに奥へ進むと、道場で神子とその偽物が取っ組み合っていた。偽物の方が圧しているっぽい。

 

私はカービィを叩き起こし、絵筆を構えたところで気を喪ってしまった。

 

 

 

「あれ…ここは?何があったんだっけ?ていうか何で私はこんなところで寝ているんだ?」

 

目を覚ますと広い和室に敷かれたふかふかのお布団の上にいた。隣でカービィが眠っている。

やっと目覚めたかとばかりにデデデ大王とメタナイトが近寄って話し掛けてくる。

 

「なんぞい覚えとらんのか?すごい勢いで例の偽物をボコボコにしてたじゃないか。まるで死際の底力みたいな感じだったぞい。」

 

「神子から聞いた話だが、霊界トランス状態に入ってたとかなんとか。」

 

全く状況が理解できない。しかしこっそり集めていた神霊の力は抜けていたので事実だと思われる。

 

「気分はどうかしら?」

 

ちょうど部屋に神子が入ってきた。

 

「もう大丈夫だぜ。それよりなんだ?何があったんだ?」

 

「そうね、カービィの噂って知ってる?」

 

「詳しいことは知らんが、話題になってはいるな。」

 

「そう、カービィはね、天狗達の新聞で様々なデマが出回ったせいで妖怪化と神格化が同時に起きてるの。」

 

「妖怪として恐怖する人間と、神のように崇める人間が出てきたって訳か。」

 

「どこぞやの大天狗の新聞によると、妖怪を喰らう神的存在だとか、他人をまるで自分のように操るだとか書かれているようね。コピー能力ってのが、まるで他人をそのまま操るようにって大袈裟に尾ひれやらなんやらが付いた結果みたいよ。」

 

「まったく、はったりも良いところだぜ。」

 

「ま、まぁ、確かにそうぞい…」

 

「何でも喰らうし、能力次第では他人も操れなくはないが…まぁ、はったりで良いだろう…」

 

デデデ大王とメタナイトがトラウマを思い返したかのような表情をしているが無視でいいだろう。

 

「で、カービィはどんな能力を押し付けられたんだ?危険なのか?」

 

「そうね、簡単に言えば他人を操れる能力よ。まだ完全ではないからどうなるかわかんないけど。まあ、騒動が終われば元に戻るでしょうし、放置でいいんじゃないかしら。それよりもう片方の偽物にも気を付けてね。私と弟子達で小神霊が偽物に集まらないよう術を掛けているけどもう長くは持たないわ。」

 

なるほど、最後のアドバイスで本物の神子が偽物に負けそうになっていた理由がわかった。偽物が神霊を産み出すだけでなく、奪っていたのだ。少々最初の予想とは大分違ったが、間に合ってよかった。次は間に合うかわからないが…

 

 

 

 



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Celestial Cave(セレスティアルケーヴ)

幻の海:幻想郷には海は存在しないが、龍が生まれるには海が必要である。幻想郷でも龍が生まれる可能性があるのは、幻想郷に見立ての海が存在するためである。これは後に龍になる予定の名を持たぬ石が成長するために創ったものである。海が近くに無いのに海の貝殻などが発掘された場合、その近くにほぼ確実に後に龍になるであろう巨大な動物の骨のような石が埋まっているだろう。雨の日になれば、運が良ければその“海”の近くで龍の誕生を見ることができるかもしれない。外の世界にも海が近くにない土地に見立ての海があるが、ほとんどの石に名前が付けられてしまったため化石となり、“海”の存在する意味が薄れてしまっている。


 神霊は僅かに命蓮寺の方角へと流れている。そして何となくだがその速度は加速しているように感じる。しかし、偽物と絵画を別々で作って物によっては大分遠くに設置されてるのは何故なんだ?もしかしたらモノによっては偽物の方が有効で、モノによっては絵画の方が有効なのか?それを見定めるために二つ作ったとかか?

 命蓮寺の方角へ流れているのであれば夢殿大祀廟へと向かえば良い筈だ。今は廃墟となっており、妖怪の巣窟となっているが、異変の影響で妖怪共が邪魔してくることはないだろう。というかあっても優秀なボディガードがいるから大丈夫だ。

 

「デデデ大王、狭いところ通るからな。今まで以上に箒にしっかり掴まっていないと頭ぶつけるぜ。」

 

「ワシはもう寄る年波には勝てんぞい!」

 

「うるせぇ!大王様に拒否権はないんだぜ↑」

 

という感じで飛ばしてきたのだが、洞窟が何故か水で満たされていた。

 

「何て言うか、子どもが黒っぽい紙に色鉛筆で描いた落書きっぽい背景だな。」

 

「でもあれは魚っぽいし、岩とかもあるぞい。水もしょっぱい、これは海底洞窟っぽいぞい。」

 

「幻想郷に海はないんだがな…」

 

「そこはあの魔女の趣味だろう。目的地はこの奥だろ?急ぐぞ。」

 

そういってメタナイトとデデデ大王は恐らく泳ぐときに使うであろう保護眼鏡を装着した。保護眼鏡には息継ぎ用と見られる管がセットになっていた。

 

「ほれ、予備の水中メガネがあるから貸してやるぞい。どうせ水中もその箒で飛ばす気だろ?しっかり装着しないと目を傷めるぞい。」

 

なんでコイツらは何かと準備が良いのか…とりあえず借りた水中メガネのベルトを頭に合わせて調節し、装着してみた。眼鏡の縁が吸盤の外側のような感じになっており、顔としっかり密着する。さらにベルトの圧により簡単に外れることもない。まさに水中専用の保護眼鏡だ。幻想郷にも湖ならあるし、夏場に売れば儲かるかもしれない。

 

「デデデ大王、頼みがある。この洞窟の奥にある変わった模様の壁に近付いてきたらお前を投げ飛ばす。そのハンマーで壁を壊してくれ。」

 

「分かったぞい。お前こそ息が切れる前に、頼んだぞい。」

 

私とデデデ大王は箒に背を低くして掴まり、水中を勢い良く突き進む。水中は空よりも抵抗が大きい、スピードを出すには抵抗が少ないポーズを取る必要がある。しかしこれで霊夢に怒られるのが確定したな。私もデデデ大王も霊夢の服を借りてからずっと返してないし、塩水で確実に服が傷む。

それから夢殿大祀廟へと繋がる扉が見えてきた。水中では上手く力も魔法も使えないので私の力では開けられない。だが、自由落下時にハンマーであの威力を叩き出しているデデデ大王なら余裕で開けられるだろう。というかデデデ大王を何度も箒に掴まらせて飛ばしてきたから気付いたのだが、あのハンマーの重さは異常だ、恐らくデデデ大王より重い。あんな重いハンマーを軽々と振るうのも中々のものだ。ブレーキを掛けて箒を縦に回転させ、箒に掴まっていたデデデ大王を扉の方へと飛ばす。デデデ大王はハンマーを振るい、扉を破壊した。

扉をくぐってみると、意外なことにちゃんと空気があった。無かったら怖かったのだが…というか水が謎の力で塞き止められている。扉を壊したのにも関わらず一切水が流れてこないのだ。

 

「どうしたぞい?」

 

「いや、なんで水が流れてこないのか不思議に思っただけだ。」

 

「ワシらの星では当たり前のように起きてた現象だからな…深く考えたことがないぞい。」

 

遅れてメタナイトが扉をくぐってきた。

 

「思ったより広いな。想像以上の高さの建物がある。もしかして目的地はあの建物の上か?」

 

「その通りだ、中から上るぜ。」

 

私達はずぶ濡れのまま旧神霊廟へと足を踏み入れた。そこはまるで宇宙のような、美しい背景だ。以前来たときも同じような景色だったが、今回のこれが絵画なのかあの時と同じなのかはわからない。

それからしばらく上り、例の絵画を見つけた。と、そのタイミングで背中から聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「それを始末するのは待ちなさい。」

 

「隠岐奈、いきなりどうしたんだ?」

 

「カービィについて色々調べているうちに呪いを解く方法をさっき丁度見つけたのよ。死ねば呪いは一時的に解ける、但し生き返ると呪いは復活してしまう…それと神霊は偽物のお陰で出てきている。」

 

「なるほどな、お前の考えていることは良く分かったぜ。手早く封印していつでもコピーできるようにしておいてくれ。」

 

実は神霊はカービィ達も無意識のうちに回収している。デデデ大王やメタナイトは使い方を教えれば霊界トランスに入れるかもしれないがカービィは無理だ。そこで隠岐奈が考えた手段が、神子の能力をコピーした状態でダッシュさせれば霊界トランスに入れるかもしれないということだ。霊界トランスになれば一時的に死んだのと同じ状態になれる。その僅かな時間であればカービィは元の姿で戦えるというわけだ。



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追蹂(ついじゅう)

妖怪化・神格化:動植物や人と妖怪と神との境界ははっきりしているようで曖昧なものである。自分は妖怪であると信じたり、大勢の人々から恐怖され妖怪のように扱われてしまえばそれはもう妖怪になってしまっているということである。信仰が集まれば誰であろうが何であろうが簡単に神になり、信仰を失えば元の姿に戻ってしまう。


「戻ったぜ。」

 

背中の扉を(また勝手に)使い、博麗神社へと戻る。すっかり拠点になっちまってるなここは。

 

「ちょ、びしょ濡れじゃない!あんた達の服もう乾いてるからさっさと着替えなさい!」

 

言っていることが完全にオカンだ。とりあえずいつもの服装になって、借りていた服を返した。霊夢はその服に触れてさらに機嫌が悪くなってしまった。

 

「ちょっとなにこれ、なんかベタつくし嗅いだことの無い変な臭いがするんですけど。なんでこうなるのよ?」

 

「海水だぜ。厳密には異変の元凶が海水を再現して作ったものと言うべきだろうがな。」

 

くだらない会話をしてるところにメタナイトが割り込むように喋り出す。

 

「そんなことより気になっていることがあるんだが、死んだら呪いが一時的に解けるってどういうことだ?死んでいたらそもそも戦えないのでは?」

 

知らないとそういう反応になるよな。ま、知っていても簡単にできることではないが…

 

「今までの旅で丸い何て言うか、変わった玉みたいなの何度か見てきただろ。」

 

「ああ、触れたりするとすぐ消えてしまうアレのことだな?」

 

「そう、そいつが神霊だ。」

 

「正しくは小神霊ね。」

 

隠岐奈が訂正を加えてきたが気にせず説明を続けるぜ。

 

「で、その力がある程度集まっているときに死ぬと少しの間だけ強くなって戦える霊界トランス状態になれる、とはいえ時間切れになるころには三途の川の向こう側だ。だが、さらに多くの神霊を集めていれば任意のタイミングで同じ状態になれる、この場合は時間切れになったとき何事もなかったかのように生き返るぜ。」

 

「なるほどな、しかし今のカービィに神霊を扱えるのか?今のカービィは自分の意思でできることはほとんど無いんだぞ。」

 

「そこでコピー能力を使うんだ。神霊は人の欲の塊、それを聞き入れることができればそれでいい。で、都合のいいことにそれに特化した能力を持っているモノがあるんだ。上手く行くかは知らないがな…」

 

「なるほど、それで無理矢理その状態にしてしまうというわけか。」

 

 

 

「さて、次は何処へ行くべきだろうか。オカルトボールはどうすればいいのか。」

 

「オカルトボールに関しては私の勘が正しければオカルトボールそのものが描かれた偽物だわ。あの異変の主犯はそこまで強い能力を持ってないしね。」

 

「そうか。なら心配要らないな。あと、チルノもどういうわけか悪さはしていない。そうなると残ってるのは月かな。紫は兎も角、どうやってあの無敵の霊夢を倒すべきなのかわからないが。」

 

「封印しか方法はないわね。あくまでも干渉を受け付けないだけだから何も干渉するものがない場所に入って貰うしかないわ。」

 

あの時からずっと神社の隅で縮こまっている玉兎が、少し希望を持ったかのような表情を浮かべている。月へと連れていってくれるそうだ。

だが、心配なことがいくつかある。まだ見つかっていない偽物がいるかもしれない。強力な能力を持つ紅魔館のメイドや妹も候補に上がるだろうし、旧血の池地獄の管理人、はたまた龍の偽物すらあり得る。また、霊夢の偽物を封印できるのかというのも正直かなり心配だ。博麗神社にあった絵画は雑に封印されたらしいが、今回のは月の民が藁にも縋る思いで地上へ助けを求めるレベルだ、本物よりかなり強いのも確定している。あの時のように簡単に行くわけがないだろう。そもそも今まで戦ってきた偽物だって、基本的には本物より強かった。ルール無用で襲ってきているからというのもあるかもしれないが。あの時言ったように本当に月に行くのは無駄かもしれない。だが、この現状他に行くところも無いので月へ行くしかない。

 



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Leaden Lunatic(レーデンルナティック)

4月27日:カービィの誕生日。「死にな」という語呂合わせになるため、この日を誕生日にするキャラクター(特に比較的最近のもの)は比較的少ない。当時はそこまで気にしていなかったのか、初代星のカービィの発売日は4月27日になり、後にゲーム雑誌に載せられたカービィのプロフィールには桜井さん(キャラクターの細かいプロフィールが必要だとは思っていなかったらしい)が半ば適当に作ったプロフィールがそのまま載せられ、誕生日の欄は発売日だからということで決めたこの日になっていた。
この日は悪妻の日、ロープデー、婦人警官記念日、世界生命の日でもある。


月に連れていって貰うことになったのだが…

 

「おいおい、月の羽衣は満月じゃないと行けないんじゃないのか?そもそも夜空も見えないのに。てか今は夜なのか?」

 

異変の影響でそもそも本物の空が見えないのだ。時計を見る限りでは深夜2時のようだが、なんでこの時計は24時間表記じゃないんだよ畜生!

 

「その点なら大丈夫です。技術も進歩してますし、本物と偽物を繋いでいるので、あの山にある偽物の月を使えばこの羽衣でも月の都へ帰ることができます。というか異変のせいで幻想郷に新たな結界ができたせいで地上に降りる為に羽衣を改造するの大変だったんですからね。」

 

ん?新しい結界?元々幻想郷と月の都の行き来が比較的簡単なのは幻想郷と月の都が似た結界に囲まれているからだ。絵画を結界と言うならば、月も同じ状況ならば同じ結界に囲まれていることになる。つまり行き来するのに障害にはならないはずなのだ。

 

暫くして月に着くと、月人や玉兎がボロボロになって転がっていることを除けば普通の月の都の風景だった、絵画ではなく普通の背景だった。

 

「ああ、私が月を出た時よりも更に酷くなっている、どうしてこんなことに…」

 

デデデ大王とメタナイトは真っ先に近場に倒れていた依姫らしきボロボロの月人に触れ、辺りを見渡した。

 

「酷いなこれは、まるでついさっきまで戦争してたみたいな。」

 

「この辺で倒れてるヤツは全員生きとるぞい。こんなボロボロで生きている方が不自然だが…」

 

「そりゃ月人はそう簡単には死なないからな、不老不死ではないがそれに限りなく近い。とりあえず状況を把握すべきだぜ、目的の敵も見えないしな。」

 

するとどういうわけかデデデ大王が訳のわからないことを言い出す。

 

「調理ができるものとかないかぞい?小さいのでも構わん、火が使えればいいぞい。」

 

「耐熱の瓶とミニ八卦炉なら使えると思うが、なんで急にまた…」

 

「メタナイト、万能のしずくでマキシムトマトのゼリーを作るぞい。」

 

「なるほど、そういうことか。」

 

「ポヨ?ポヨ!!!!ポヨポヨ!!!!(え?トマト!!!!ボクも欲しい!!!)」

 

食いつきいいなぁこのピンクボールは、さっきまで寝てた癖に…で、マキシムトマトってなんだ?

 

「貴女も食べたじゃない、カービィの頭の中から出てきた不思議な模様のトマト。」

 

「どぅあ!びっくりしたぁ、変な声出ちゃったじゃないか唐突に思考を覗くなよ封印要員がよぉ…というかカービィの頭の中から出せるなら今ここで料理する意味なくないか?」

 

「そう思ったんだけどもう完成してるみたいね。あのトマトが回復薬になるなんて思ってもいなかったけど。」

 

「で、月人にあんな穢れたもの食べさせていいのか?」

 

「緊急事態だし仕方ないですよ…この様子だと月の都の医療も崩壊してますし…」

 

月人に崩したゼリーを飲ませると、その月人は目を覚まし、立ち上がった。驚くことに傷もほとんど治っている。

 

「ハッ!?アイツはどうなった?皆無事か?」

 

「見事に全壊だぜ、アイツがどうなったか知らんがな。」

 

ボロボロの月人はやはり依姫であった。依姫は警戒しながら辺りを見渡し、冷静に状況を判断した様子であった。

 

「…どうやらそのようですね。アイツはおそらく都の中心部を襲っていると思われます。最前線の戦いで気絶した我々を死んだとみなして奥へ進んだのでしょう。見る限りではこの辺りは全壊、アイツも見当たらないので。で、どうやってアイツを倒すつもりですか?正直アレだと勝ち目がないように見えますが。」

 

「まず最初にやることは紫の偽物を完全に倒すことだ。そのためにもカービィには頑張ってもらうぜ、特殊なバリアを纏っててカービィとこの絵筆にしか壊せないからな。その後に霊夢の偽物を封印する。」

 

「はぁ、封印は何度も試しているのですが…というか紫は倒せても霊夢は倒せないんですか?」

 

「正直どうなるかは知らん!一番可能性高いのがそれってだけだぜ。今まで封印できなかったのは紫の偽物が封印を解除してるからだろうしな。とはいえ紫にトドメを刺そうにも邪魔が入ったらどうしようもない。霊夢の偽物を引き付ける囮が必要だ。ヤラレチャッタ奴らをなんとか回復して叩き起こしてほしい。」

 

「そんなこともあろうと、さっきのゼリー量産しといたわよ!(カービィの頭の中はこういう時便利ね。)」

 

「ぽよっ!!!」

 

「カービィ、お前にはあとからたっぷり食べさせてやるから、少し我慢してくれ…」

 

私達は手分けして、回復薬代わりの不思議なトマトゼリーを使い月の兵士を叩き起こしていった。



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第八章 染められる天体 Worthless Lulatic編
Worthless Lulatic(ワースレスルラティック)


月の結界:月の結界は大気が少なく近付き難いという効果の物理的な結界と、特定の条件下でのみ出入りが可能な特殊な結界の二つの結界が存在する。この二つの結界に守られているのが月の都である。これは地球における幻と実体の境界と博麗大結界の二つの結界に守られた幻想郷と非常に似ている。


「一回ぐらいあの子目線でストーリーを見てみたいよね?今回は特別に、あの子の考えていることを映し出してあげるわ。」

 

「メタ発言はこっちサイドの特権じゃないのかぞい?というかカービィってまともに状況判断しているのかぞい?割りとその辺はテキトーで冷酷だと思うんじゃが…」

 

「いいのよ私は、境界を操れるんだからメタの領域に入るなんて容易いことよ。それにかつて説明書を任されていたってだけあってカービィはわりと心の中ではお喋りなのよ。でも言葉はあまり上手くないみたいだし、誤字脱字とかがあってもあの子の御愛嬌ということで、この話だけはそういうのあっても基本修正しないわ。」

 

 

 

さっきまで寝てたから状況がよくわかってないんだけど、とりあえずさっきデデデたちが作っていたものと同じビン詰めゼリーが目の前にたくさんあるよ。黒いビンの中にやわらかく崩れたマキシムトマトのゼリーがたっぷり入っていて、一口食べればみんな元気いっぱい!そのへんに倒れている食欲のないウサギさんもすぐに回復しちゃうんだ。でもボクの分は後回しなんだってさ。ズルいよみんな、ボクもはやく食べたいよ!

それにしてもさっきからずっとボクの頭の中から何か抜かれているような気がするんだよね。そういえば神殿?の広間で開かれたパーティーの時も頭から何かを抜かれていた気がするな。そんな感じのするときに限ってミョーな雰囲気の女の子が近くにいるんだよね、怪しいよね、あのコ。いつもならデデデを疑うけど、これはさすがにデデデにはできないからね。

 

「ほら、カービィ、お前の分だぜ。」

 

「やったね!いただきまーす!」

(↑カービィはそう言っているつもりだが、実際はポヨとしか言えていない)

 

ようやくボクの番が回ってきた!やっぱマキシムトマトは格別だね!

リーダーらしき耳のないウサギさんがウサギさんたちに指示を出してるみたいだ。ここからは何を話しているのかよくわからないけど、ボクの知っている星の言葉ではないのだけはよくわかる。不思議なことにいつの間にかこの知らない言葉を理解できるようになっているんだよね。いつもなら言葉を理解できるようになるのにものすっごく時間がかかるのに、不思議だよね。

と、急に白黒がスピードを出す。

 

「そんな急にスピード出すなぞぉおおおい!」

 

デデデは相変わらずだなあ。このスピード感がたまらないのに。

これこの街の奥に向かっているんだよね。こういうのは大抵奥に進めばいいからね。目的地は街の多分中心部にあるお城かな?大きな中華風のお城はかなりボロボロ、これ古くなってボロボロになっているわけじゃなくて、誰かが荒らしたせいでああなっている感じだね。傷の少ない場所は多少木片とか砂で汚れているけど劣化した様子はなくてスゴく綺麗な状態だもん。

ここもいろんな人が倒れているね。さっきと違ってウサギさんじゃないっぽい。特に目立っているのはあの片翼の天使さん。この辺の人大丈夫なのかな?

 

「この感じ、ほんの数分前までヤツらがいたっぽいな。」

 

「これは、何て酷い…異常な程穢れている…サグメ様も、もう元には戻れないほど穢れてしまっている…」

 

「そういやお前らは何で穢れて無いんだ?穢れの籠った弾幕を喰らったんじゃ無いのか?」

 

「正直私もその辺りはよくわかっていません。」

 

「その穢れって何だ?汚れのことじゃないよなこの話だと。」

 

「ああ、お前らは知らないか。超簡単に説明すると殆どの生き物が持つエネルギーのことだぜ。月に住む奴らはこれが弱点なんだ。」

 

「じゃああの魔女が作った偽物も所詮はただの絵画だし、穢れなんて持ってないのが普通なんじゃないのかぞい?そもそもあの魔女だって生き物かどうか怪しいぞい。」

 

「確かにそうだぜ。じゃ何でここの奴らは穢れちまったんだ?」

 

んー、なるほど、毒みたいなの盛られた感じなのね(←わかっていない)。この倒れている人、なんか不自然にヨダレ垂らしてるよ。泡吹いて倒れてもここまではならないと思う。なにか関係あるのかなぁ?きっと飲み物とかにそのケガレっていう毒を混ぜられたんだよ。

 

「そのひとの口元確認してみて!」

(↑以下略)

 

「口元確認して見ろだってさ。」

 

「口元ですか?…これは、蓬莱の薬か?でもここにいる人達をここまで穢れさせる量を一体どうやって?もしかしてアイツらが作った?」

 

「こりゃ本格的に月を潰しにきてるな。ここまでやるってことは月を拠点にして幻想郷に追い撃ちをかけるつもりだったのか?ま、もう取り返しは付かないし、諦めて手分けしてヤツを探すぞ。見つけたらすぐに連絡するんだ。」

 

というわけで、ボクも回りに注意するようにはしておこう。いつでも戦闘できるようにね。



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Fatal Fogeater(フェータルフォグイーター)

東方儚月抄 〜 Silent Sinner in Blue.:東方永夜抄 〜 Imperishable Night.のあとの出来事が漫画形式で記された書物。八雲紫が第二次月面戦争を起こし、勝利するまでが描かれている。


あれは神殿(?)に住んでいる赤白の人の偽物だね。これから戦うことになるのかなあ?変わった見た目のタマがいっぱい飛んでくるよ。この攻撃をよけながら戦うのは難しそうだなあ。

 

「げ、先に霊夢の偽物見つけちまったぜ。デデデ大王、メタナイト、増援を呼ぶから時間を稼いでくれ。アイツに攻撃は一切効かない、回避に専念しつつアイツからの注目を集めるんだ。」

 

「了解。」

「まかせるぞい!」

 

「紫、霊夢の偽物を発見した、囮の増援を寄越せ。」

 

「OK!ちょうど依姫から紫の偽物が見つかったって連絡あったからついでに送っちゃうね。」

 

え?せっかく見つけたのに逃げちゃうの?

異空間を抜けた先には今度はあの怪しい少女の偽物が、すでに耳の無いウサギさんが不思議な力をまとった剣で何度も攻撃しようとしているけど、押されちゃってる…

あの少女の偽物は、剣を強く弾かれて体勢を崩したウサギさんを強く踏みつけ、異空間を開いて何か取りだそうしている。何やってるんだろう、トドメのチャンスなのに。敵とは言え何やってるのか本当にわからないなあ。

 

「今がチャンスだ、行くぞカービィ!」

 

「ぽよ!!!!」

 

ボクはボールのように飛ばされ、攻撃体勢になった。というか今のボクは呪いのせいでボールで、勢いが付いてるときは勝手に攻撃体勢になっちゃうんだけどね。コピー能力のおかげで月の力をまとった状態になっている。この能力は一度捨ててまたコピーしてるから、回数がリセットされて月からスタートなんだ。あの少女の偽物の手前まで来たんだけど、異空間から取り出されたツボにぶつかっちゃった。その反動で互いに後ろに弾かれた。あのツボ、なんか変な液体が入っていたみたいで全身ベチョベチョだよぉ…飲んじゃったし…毒じゃないよねこれ?

 

「あちゃ、なんか軌道が変だな。というかこれ蓬莱の薬じゃねえか?」

 

「そうですね、どうやってかは知りませんが蓬莱の薬を無限に作り出せるみたいですね、また取り出そうとしてますし。」

 

ホウライの薬?もしかしてあのケガレっていう毒が入ってる液体?これ吐き出した方がいいよね、かかっただけなら平気なヤツだよね?

 

「(あのカービィが吐いてる…器用に薬だけ吐いててスゲェ…)なぁ、蓬莱の薬ってそんな不味いのか?」

 

「飲んだこと無いから知りませんよ!それより戦いに集中しろ!」

 

「はいはい…」

 

白黒が描いたラインに乗り、さらに攻撃を続けることになった。でも不思議、近付けないんだよね。確かにラインはあの少女の偽物を目指しているはずなのに、景色が目の前で止まっているんだ。バリアがあるみたい。

 

「そうか、結界を越えなきゃ行けないんだ。月の技術でなんとかなるか…?それか気絶して…そういやお前の姉、豊姫はいないのか?」

 

「そういえば襲撃に遭うちょっと前から見てませんね…」

 

ん?気絶していればバリアを越えられるの?ならやってみる価値はあるね。こっちに来てからいつの間にか使えるようになっていた他人を操る能力。何で呪いの影響をこの能力だけ受けてないのかはわからないけど。

 

「どうぁ!体が勝手に!」

 

ボクは白黒に絵筆を構えさせて走らせ、ある程度近付いてきたタイミングで白黒の意識が飛ぶほどの負担をかけた。あの時は気絶させるつもりはなかったんだけど、あの時と同じぐらい負担がかかるように操れば気絶するはず。白黒は気絶した状態でも絵筆を構えて走り、絵筆の直接攻撃を当てることに成功した。その怯みからかバリアが消え、さっきまで謎に届かないまま少女の偽物に向かって転がり続けていたボクもようやく攻撃することができた。

 

「隙あり!」

 

耳のないウサギさんがこのチャンスを逃すまいと炎を全身にまとい、剣を振るった。そして少女の偽物は灰すら残らず燃え尽きた。カッコいいなあ、あの剣も、あのウサギさんも!にしても異常な程疲れちゃったや…おやすみ…Zzz…



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宇宙(そら)を飛ぶ色褪せた巫女

口に出すと事態を逆転させる程度の能力:サグメの能力。ある物事について、その関係者にそれについて話すことで事態が逆転する能力。つまりは未来の可能性を反転させるということに繋がる。過去の出来事や逆転の余地がない0%、50%、100%の事態(=可能性の未来)では能力の効果がない。意図の有無に関わらず勝手に発動するという厄介な性質を持つ。あくまでも可能性が反転するだけなので結果が変わるとは限らない。一度発動すると制御できないため、この能力による逆転の逆転は不可能。


--……起きろ、起きろ!起きないと殺されるぞ!起きろ!

 

何処からか声が聞こえる。私は回らない頭と滑舌で口を開く。

 

「ん?なんだ?私は死んだのか?」

 

「何寝ぼけているんですか…まあ、貴方達のお陰で紫の偽物はなんとか倒せましたが…」

 

疲労で体が重い。何がどうなっているんだ?とりあえず疲労を何とかするために予備のトマトゼリーを開けた。一口食べただけで本当に身体中に元気が沸いてくる。このトマトは魔力もない癖にまるでマジックアイテムのようだ。このトマトの一番スゴいところは必要以上に元気にならないということ。麻薬や強精剤なんかみたいにハイになって誤魔化しているという訳ではなく、正真正銘の全回復ってヤツだ。全快なら食べても効果がない。だからあの時はただただ美味しいだけのトマトだと思ってしまったのだ。

体力を取り戻した私は立ち上がり、辺りを見渡した。大量の壺が置かれている。

 

「あの壺はなんだ?」

 

「全部蓬莱の薬です。紫の偽物が大量生産して結界内に隠し持ってたらしく、止めを刺したら大量に…しかしこの量は、いくら月の技術を奪っても不可能です。」

 

壺を見てみると不自然なぐらい全く同じだ。蓋に使われている木材の木目すら完璧に同じなのだ。トマトゼリーの耐熱瓶をいくつか見比べてみると、一部の傷が不自然に一致している。一致していない傷は運ぶ際に付いたものだと考えればだが、思考から量産された物は全く同じ状態で出されるという証拠になる。つまり…

 

「これは誰かの思考を覗き込んで取り出したものだな。実際このトマトゼリーだってカービィの頭の中から量産されたものだ。本物ができることは偽物もできたって不思議じゃないぜ。」

 

「ですが、そんな都合よく蓬莱の薬のことを考えている人なんて居るんですかね?」

 

「拷問、あるいは誘導をかければ…そう言えば豊姫って行方不明なんだよな?」

 

私の予想が正しければ、量産の道具に使われたのはアイツだろう。

 

「いえ、封印が何度も試されたということは、少なくとも月の何処かに居るは…ず…」

 

依姫の顔が真っ青に染まる。

 

「やっぱりな。恐らく牢獄送りにしたときにレジストされて逆に閉じ込められたんじゃないか?アイツら偽物の癖に本物より強いしな。豊姫は多分勝てないのは分かってて、封印は時間稼ぎ…

おっと、もうこっちに来ちまったか。まだ囮と遊んでても良かったんだぜ?」

 

唐突にお札が横から飛んできたので絵筆でラインを描いて防いでやった。霊夢の偽物がこっちに来たのだ。

 

「あの…囮は全壊したって連絡があって慌てて起こしたんですが…」

 

「え?あ、そうなの?しかし惜しかったな、あと1分早く来てたらお前ら偽物の勝利だったのによ。囮は無視すれば良かったのにわざわざ全壊させるとか、脳味噌あるのかお前?あ、絵画に脳味噌もクソもないか(笑)。」

 

「(なに煽っているんですか?戦う気あるんですか?)」

 

「(正面から行っても勝ち目ないし、正直コイツをどうやって封印するかも考え付いて無いんだ。適当に時間稼いでその間に封印空間に誘導する方法を考えなきゃ。)」

 

「(えぇ…(困惑))」

 

とはいえ、私の中には既に希望は見えていた。無敵のアイツを止めるには、もしかしたらあの二人のタッグが強いかもしれない。穢れていたって月の都が維持できなくなるだけで、月の民が弱くなる訳じゃないからな。



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無敵はGOODBYE!

無敵キャンディー:食べると一定期間敵や一部のギミックからのダメージを無効化し、更に攻撃力の増加と触れた敵を吹っ飛ばす効果が発動する星飾りの付いたペロペロキャンディー。文字通りの敵無しになれる。カービィの世界ではキャンディーと言うと無敵キャンディーのことを指す。他の飴菓子と呼び分けるために無敵キャンディー以外の飴はアメやロリポップと呼ばれている。


「言われた通り牢獄に来てみたけど…看守役の玉兎がボロボロになってるわね。あ、居た居た、一番奥の牢に。無理矢理夢でも見せられているのかしら?」

 

「やっぱりな。叩き起こしてやれ。」

 

「了解!」

 

紫には作戦を伝えてある。作戦実行には豊姫の協力が必須だ。作戦内容は霊夢の偽者の周囲、結構な広範囲をえぐり取るようにして虚無空間に送り付けるという単純なものだ。しかし流石の紫でも一人では無理だ、偽物が虚無空間の入り口から離れてしまう前に閉じ込める必要があるからだ。偽物が干渉を受け付けない以上こちらから押し込むことは出来ない、だから偽物ではなくその周りに干渉し、逃げられる前に閉じ込める。大事なことだぞ、作戦成功のためにもよく覚えておくんだ、この作戦は豊姫と紫がタッグを組めば不可能から不可能に近いというレベルまで可能性が上昇するということをな。

偽物の攻撃を絵筆で防ぎながらトマトゼリーの瓶を依姫に向かって投げる。これが予備の最後の一本だ。頑張っても持てる数に限りがあるからな。本当はもっと欲しいところだが、仕方がない。いや、頼りすぎたら依存症になりそうだな…

 

「それをサグメに食わせろ。それで豊姫と合流するように伝えてくれ。」

 

「なるほど、そういうことですか。」

 

サグメは蓬莱の薬で穢れを負ったから回復は必要無さそうに思えるかもしれないが、とある蓬莱人曰く不老不死でも痛いもんは痛い、消耗するもんは消耗するらしい。あくまでも不老不死というだけ、限界を迎えても死ねないだけでダメージは蓄積されるということだ。しかしなぜこんな遠回しな侵略をしたんだ?あんな圧倒的な力を持っているなら殺せば良いじゃないか。月には唯一の対抗手段である魔法の絵筆が無いんだしさ。なのに蓬莱の薬で穢れをばら蒔くなんて…奴隷にでもするつもりだったのか?

絵筆と御払い棒が火花を散らす。勝てないのは解っているが、それでもくたばるわけにはいかない。そもそも私はルール有りの戦いで本物の霊夢に勝ったことすらないのだ。属性的に相性が悪い。それなのにルール無用で本物より強い偽物相手にこうして剣(?)を交えているのだ。ここまで死と隣り合わせになるのは初めてだ、不思議と身体が熱くなる。嫌いじゃないぜ、こういうのは。

 

「逆境こそ燃えるもんなんだぜ!…うわぁ!?」

 

突然手応えがなくなり、転んでしまった。起き上がるとそこは牢獄だった。こんなことをするのはアイツぐらいだ。

 

「おいおい紫、こんなことしたら霊夢の偽物がこっちに来ちまうぜ?」

 

「その心配はないわ。あの空を見てごらん。」

 

空を見上げるとどう見ても絵画になっていた。形容しがたい(←読者に伝わる表現をするのであれば、コンピュータで描いたような)きらびやかな星空は冬の幻想郷から見える本物の星空に忠実であった。でもこのセンス、何処かで見たことがあるような…

 

「どういうことだ?月は絵画になってなかったんじゃ?」

 

「私が真似たのよ。霊夢を幻想郷に置いてきちゃったからね。」

 

「おい、まさか…」

 

何処かで見たセンスというのはそういうことだったらしい。そしてこのタイミングで霊夢の話をするということは、霊夢をあそこに送って私を回収したということだ。

 

「ピンポーン!そゆことよ!」

 

そんなドヤ顔されてもなあ…

 

「で?そんなことしてまで私達をここに連れてきた理由は?」

 

「絵筆を借りたかっただけよ。でも貴女は余裕がなかったみたいだから。これを見て、豊姫が絵画に閉じ込められてて…アイツ、偽物の癖にご丁寧にあのバリアまで再現してこの絵画に封印しているのよ。ま、私も同じ境界(バリア)は真似て作れるわ、壊せないだけよ。」

 

「理由はよく分かったが…それじゃ月を絵画にしたら戻せないんじゃ?」

 

「あ…てへぺろ☆」

 

こんなノリの作品(異変)だったっけなあ…まあいいや。とりあえず豊姫の封印を絵筆で解いた。やはり眠っているな、蓬莱の薬に関わる夢を見ているようだ、寝言でそう言っている。豊姫を叩き起こして状況と作戦を説明すると、丁度良いタイミングでサグメがやってきた。

 

「月の都はもうお仕舞いですが…せめて仇だけは。これをこのまま受け入れるだけでは悔しいですし。この作戦は非常に可能性が低い、だが、運命は逆さに動き始めた。きっと成し遂げてくれるでしょう。」

 

さよなら、偽物とはいえ、お前とのルール無用の殺し合いは意外と楽しかったぜ。



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第九章 The World of Paintra ~ RAINBOW
The Earth in the Painting(ジアースインザペインティング)


石油:地球の血液と呼ばれる液体の一種。旧血の池地獄の液体も石油である。栄養豊富で一部の妖怪にとってはこれが好物らしい。その正体は太古の二酸化炭素が当時の生物によって有機物と酸素に変えられ、その有機物が長い年月をかけて液体になったものである。現在酸素が豊富にあるのは、石油があるからと言っても過言ではない。石油は膨大なエネルギーを持つが、これを利用するものに様々な災いをもたらすという。


帰りは意外と楽だった。同じ三つ目の結界が月にも作られ、幻想郷と月の都の結界が釣り合ったからだ。それより大変だったのは偽物の封印に巻き込まれた本物の霊夢の救出の方だったがな。

見つけた偽物はほとんど倒したが、この後どうするべきなのか…神社の居間でトマトジュースとお菓子をつまみながら考えているのだが…

 

「洋菓子とジュースって組み合わせもたまにはいいわね、甘いお菓子がさっぱりしたトマトジュースのお陰で…食べ過ぎちゃうわ…」

 

「お菓子は全部メタナイトの特製だぜ。この冷たいのはメタナイトが起きがけにいきなり食べてるアフォガードって言うらしい。あっちの温かいのはメタナイトがマントからこっそり取りだすフォンダンショコラだ。その緑のはメタナイトが大事にとっておいた抹茶ムースだぜ、洋菓子なのか和菓子なのか分からんがな。頼めばメタナイトが夜な夜なこっそり食べてるパフェも作ってくれるぜ。」

 

「お菓子の名前の前に付いてるメタナイトが〜ってなんなのよ?」

 

「さっき私が適当に考えたんだぜ。いいセンスだろ?」

 

「ぽよい!」

 

「お菓子の話は今はいいだろ、悪意しか感じん。それよりヤツだ。ヤツを倒す方法は見つかったが、ヤツが見つからないな。最初は直接手を下した癖にこういう時は…まあ、お決まりのパターンだな。」

 

真面目そうに言っているが、メタナイトが誰よりも沢山この甘いお菓子を食べている。

 

「こうなりゃしらみ潰しに片っ端から行くしかないのかぞい?」

 

「こりゃどうすればいいのか検討がつかないぜ…そもそも幻想郷にいるのか?冥界や地底も絵画にされて、ヤツの駒は月まで侵略しちまったんだぜ?外の世界まで手を出してたりしてな。」

 

「外の世界も侵略され始めてるみたいよ。ほら、外の世界の新聞、今回だけ特別よ?」

 

「ポヨー!」

 

変わった紙質の新聞には某メイド長の偽物の写真が乗せられていた。日付を見る限りはわりと最近の物の筈なのになぜこんなにも古い紙の匂いがするのだろうか?外の世界では古い紙を再利用して新聞紙にしているのだろうか?「ナイフ投げの殺人メイド各地に出没、不要不急の外出は厳禁」と書かれた見出しに発見された死体は身元が判明していない人を含め495人という文字が見える。この事件と関連性の有りそうな行方不明者は13人、怪我人も確認されただけで666人、医療崩壊も起きているそうだ。さらに金髪のコスプレ少女が似たような事件を様々な国で起こしているらしく、この事件との関係性を調べているのだとか。しかも紫曰く、金髪少女が事件を起こした国はどれも吸血鬼の存在が広く信じられている国らしい。外の世界をここまで巻き込む異変も何気に初めてだな、どうやって外に出たのかは知らないが、紅魔館に住むヤツらはちょっと前まで外の世界に住んでいたのだ。相性がいいのかもしれない。

新聞を読みながらお茶(?)をしていると、隠岐奈(おきな)の格好をした翁(おきな)を連れた隠岐奈(おきな)が現れた。ややこしいな…

 

「おい、その翁(おきな)は誰だ?新しい宴会芸か?」

 

「私の絵画、想像以上に弱かったから縛って連れてきたのよ。」

 

なるほどな、神様の偽物は信仰の関係上弱いのだろう。妖怪は偽物でも恐れられるが神様の偽物はむしろ罵倒されるからな。私達が戦ってきた相手で神様にあたるのは妖怪でもあるお空だけだしな。そういう意味ではカービィが信仰も恐怖も奪っているので、初期こそ妖怪の偽物は厄介だったが、今となって厄介なのは人間に性質が近いヤツの偽物か「カービィの影響を受けても強い大妖怪」の偽物ぐらいだ。

 

「それより帰ってきたばかりで悪いけど貴方たちを旧血の池地獄に送るわ、そこに主犯が現れたのよ。」

 

「ラストダンジョンがそんなところなのかよ…」

 

背中の扉を抜けると、後ろにはボロボロになって倒れている饕餮尤魔がいた。まあ、フランに破壊される程度の実力じゃヤツは倒せないもんな。都合の悪いことに飲みかけのトマトジュースが入ったコップを神社に置いてくるのを忘れてしまったので饕餮の頭の上に棄ててやった。もしかしたら使えるかもしれないし、使えなくてもそこに倒れてたら邪魔でしかないからな。



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食べちゃえば平気?

何でも吸収する程度の能力:実体から概念まで何もかも呑み込むことができ、呑み込んだものの性質を理解して自分のものにするという饕餮尤魔の能力。一見するとコピー能力の上位互換に思えるかもしれないが、力を理解して自分のものにするという効果は自分の意思に反して行われる部分があることと、欠点となる性質まで取り込んでしまうことから、コピー能力と違い都合の悪い部分を排除できない。石油騒ぎの時に狂暴になっていたのは石油の力が原因である。


「たくよぉ、わざわざこんなことしなくても自然と治るっていうのに…」

 

「誰だお前!」

 

饕餮だと思っていたヤツはそっくりなただの畜生界のヒツジさんだった。いや、よく見ると塗り残しがあるような…

 

「饕餮尤魔だ。忘れたのか?」

 

黙って手鏡を押し付けた。饕餮尤魔と名乗るヒツジさんは鏡を見て驚愕した様子だった。どうやら本当に饕餮尤魔らしい。

 

「何があったんだ?アイツは逃げたのか?というかお前どうしたらそんな変わるんだよ。」

 

「アイツはまだ近くに居る、気配を感じる。何かを探しているようだ。多分またこっちに来るぞ。それで、実は畜生界や地獄界も人間界と同じように絵画でできた偽物に襲われてな、各派閥が強力して立ち向かったが歯が立たなかったらしい。それで呼ばれた私は、仕方なく喰ったんだ。絵画を。お陰で色々面倒なんだ、吸収しきれてない感じがする、破壊されなくなったがそれ以上に傷の治りも遅い、その上一歩間違えばアイツに支配されかねない。おまけにあんな可愛いヒツジさんになっているなんて…」

 

見た目の変化にショック受けすぎだろ…というか饕餮が絵画を喰えるなら今までの私達の苦労は何だったんだ。霊夢の偽物の封印すら意味ないじゃないか。饕餮をカービィにコピーさせれば全部ワンパンってことになるし、おまけに能力の解除とコピーを繰り返せば簡単にリセットできるから饕餮の能力のデメリットも実質無い筈だしな。

 

「ちょっと我慢してくれよ。」

 

絵筆で何度か饕餮をつついてやると、絵画の力はボロボロと剥がれ落ち、かつての姿を取り戻していく。

 

「一応効くんだなこれ。にしてもお前、性格が丸くなったな。」

 

「そうか?だとしたらさっきのトマトジュースのせいだ。」

 

お喋りして誤魔化しているところにちょうどよくアイツが現れた。よく見るとアイツの足(?)は色が抜けているような気がする。アイツは足を筆代わりに何処からか取り出したキャンバスに絵を描くと、アイツの足はついに真っ白になってしまった。そして饕餮の偽物が現れる。

 

「おいおい、今度は私の偽物か?流石に此方が喰われてしまうぞ!」

 

「いや、そうでもないぜ。カービィ、パチュリーを吐き出せ、そして饕餮を喰え!」

 

「は?」

 

「いいか、よく聞けよ。食べ物はカービィと仲良く食べるんだ。独り占めしよう者なら二度と復活できないと思え。」

 

あの賢い饕餮が「ナニイッテンダコイツ」みたいな顔をしている。思考がフリーズしてしまったようだがまあ饕餮なら大丈夫だろう。饕餮をコピーしたカービィは、水色のリングに血の色の星2つを纏った。カービィを絵筆でつっついて飛ばすと、周囲のモノを吸収し、力を増強しながら転がっていく。その凄まじいカービィの食欲が勝ったのは言うまでもない。

 

 

「生まれて初めてだ、こんな美味い食い物。」

 

「ポーぅヨ!ポヨポヨ!(ね!美味しいでしょそのチョコレートパフェ!)」

 

「お前復活早いな、パチュリーでも喰われてから意識の回復に2時間以上はかかったぞ、多分。しかしアイツに逃げられちまったぜ。」

 

今回一切出番のなかったデデデ大王とメタナイトだが、あの二人は何か良からぬことを考えているような顔になっていた。



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Information Paradox(インフォメーションパラドクス)

ビッグバンすいこみ:カービィの力を引き出すことで可能になる技。物体だけでなく、波長や概念までも吸い込むことができる。力を引き出すのにきせきの実という何とも言えない味のフルーツを用いる。因みにデデデ大王はきせきの実無しでビッグバンすいこみができちゃったりする。


「まてよ…いいことを思いついた。ふふ。」

 

「この勝負、ワシらがもろたで!」

 

「ちょとデデデ大王なんでオオサカ弁になっちゃってんのそれって?」

 

そっちはそっちで全く訳の分からない会話が聞こえてくる。コイツら血の池の瘴気にやられたか?

 

「お前ら何嘲っているんだ?」

 

「いや、さっきの戦いを見てだな…」

 

「ワシらの勝ちが確定したと言っても過言じゃないと思っただけぞい。もっと早くにこの戦略に気が付いていたら、もっと早く帰れたかもな。(ほんと、無駄か多いんだよめんどくさいぞい。)」

 

それはメタなのか文句なのか分からんが()で漏れてるぞ~

 

「それよりコピー能力を解除させた方がいいんじゃないか?」

 

ああ、そうだった。カービィに饕餮を吐き(?)出させると、饕餮はメタナイトが夜な夜なこっそり食べてるパフェを持っていた。饕餮は何を思ったのか、少し歪んだ表情で口を開いた。

 

「これをそこの仮面が夜中に毎日食べてるってなるとめっちゃ妬ましいな。石油なんかよりもよっぽどいいぞコイツはよお。」

 

「なっ、毎日食べてるわけではないぞ!!」

 

「(これはマジで毎日食べてるな)」

 

「(ぼよぽよ)(夜な夜なこっそりね)」

 

「(よくそんなんで肥らんぞい、妬ましくなってきた)」

 

「で、結局どうやってアイツを倒すつもりだぜ?」

 

「簡単な話さ。あの時もデデデ大王のビックバン吸い込みは有効だったし(口に入る直前でカウンター食らってたけど…)、それにあのトウテツをコピーしたカービィから発想を得たんだがな、カクカクシカジカで…」

 

作戦を簡潔に説明するとこうだ。例の方法で霊界トランスに入ったカービィに万能のしずくを過剰投与する。そしてそのまま例の魔女をごっくんするだけだ。万能のしずくは本来きせきの実から採れる液体なので、ここまで精密な紛い物ならきせきの実の効果があるだろうとのこと。因みにきせきの実は潜在能力をある程度引き出す効果があるらしい。そしてその効果が発動するのに十分な力を、呪いの解けたカービィなら持っているのだとか。もしこの作戦が有効であれば、霊界トランスときせきの実の相乗効果でエグいことになる。この相乗効果についてはどうやらメタナイトたちは考えていない様子だ。ゲシュタルト崩壊待った無しだなこれは。

 

「それよりアイツはどこ行ったんだぞい?」

 

「そういえばそうだな、こんな油まみれの所で油売ってていいわけないよな。」

 

と、ここで地上の紫達から連絡が入る。

 

「インクを失って逃げちゃったみたいだったからアイツが逃げそうな場所に絞って探してみたんだけど、見つけたわよ。妖怪の山の、例の噂になっているところで。」

 

「なに?そいつは助かるぜ!神子の絵画使うからついでに取り出して置いてくれ、よろしく頼むぜ。」

 

そして私達は紫のスキマに飛び込むと、そこはとっても明るい洞窟だった。洞窟の外は相変わらず絵画でできた真冬の満月の夜だが、中はまるで本物の太陽の光を浴びているような感覚だ。人間にとっては心地のよい環境とはいえ、満月の光が横から差しているからか妖怪は一匹も見当たらない。食べかけで逃げ出したのか、乾燥した酒のつまみとアルコールの抜けた日本酒が転がっている。酒のつまみの中には図鑑でしか見たことがないイカやタコなんかの海洋生物でできたものもある。そんななか無人で働く工場、その向こうに今にも外の世界に逃げようとするアイツが。本当に結界に穴が開けられているんだな。

 

「よっしゃカービィ行くぞ!」

 

神子の絵画を食べさせると、黄金に輝くリングに2つの紫の星を纏った。神子をコピーしたカービィをつっつくと、霊界トランスを発動した。初めて見る本来の姿は想像通りの可愛らしい生き物であった。

 

「カービィ!吸い込みよー!」

 

デデデ大王が声を裏返して叫ぶと、メタナイトが万能のしずくをあるだけ全部カービィに向かって投げた。カービィは凄まじい勢いでそれを吸い込み、なんと虹色に輝きだしたのだ!

 

「やった!あれぞビッグバンカービィ…!」

 

「いっけー!やっちゃうぞい!」

 

落ちていた酒もつまみも、それどころか無人の工場も、この洞窟の光も、結界の穴も、そしてあの魔女すらもどんどんカービィに吸い込まれていく。まるでブラックホールをホワイトホール側から見ているような気分だ。カービィが全てを飲み込むと、洞窟は真っ暗になり、出入口は炎の色で染まっていた。ボールに戻って眠ってしまったカービィを抱き抱えて洞窟を出ると、絵画の背景はジリジリと燃え、その後ろからは朝日が上る寸前の、本来の背景が顔を見せていた。

目の前には初めて見る筈なのに、ずっと昔から知っているような気がする絵画が落ちてい…



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終章 幻の47話
ピンクの黒いスターダストレヴァリエ


魔法:科学と対をなす概念。その性質は科学と似て非なるものである。高度に発展した科学は魔法でしかできないと思われていたことを可能にするように、高度に発展した魔法は科学でしかできないと思われていたことを可能にする。いつしか魔法と科学の区別はなくなってしまうのかもしれない。だから魔法を魔法として書物に残すのかもしれない。


「寝ちゃったな…疲れがたまっていたんだろうか。」

 

「仕方がない、担いで戻るぞい。」

 

「その必要は無いわ。スキマで家に送り届けるから。」

 

 

「この絵画を調べる限り、貴方達を宇宙の彼方に飛ばすつもりだったみたいね。偶然ここに繋がって、予定を変更したみたい。逆探知で貴方達の星は見つけたわ。さ、このスキマを潜り抜ければ帰れるわよ。未だやることが残っているんでしょ?急ぎなさい。」

 

「ああ、世話になったな。

 

--さよならぞい。

 

 

--さてと、みんな準備はいい?幻想郷の歴史改変に取りかかるわ。大掛かりになるけど、この爪痕(カービィが意図せず奪った恐怖と信仰)を残しておくわけにはいかないからね。今回の異変の主犯は私、妖怪達と共に様々な異変を同時に起こし、いつも通り霊夢が解決したことにするわ。サービスで月の都も復活させましょう。外の世界に起きた影響は同時多発テロってことで解決しているからそこは放置で……………………………………………………

 

 

いつも通りの朝、いつも通りの道。今日は暇なので香霖のところに遊びに行くつもりだ。今回の異変解決の勝負は完敗だった。でも、いつも通りじゃないことが一つだけある。昨日の夜、ずっと長い夢を見ていた気がする。まるで現実と見間違えるような、だが所詮夢は夢だ、内容など覚えちゃいない。それに今回の異変、どうも変な感じがする。違和感の正体は香霖なら分かるだろうか?

いつも通り香霖堂の扉を開ける。しかし香霖からはいつも通りじゃない反応が返ってきた。

 

「いらっしゃい。待っていたよ。」

 

「今日は客じゃないぜ。ただの暇人だ。」

 

「そんな君宛に奇妙なプレゼントが届いているんだ。どういうわけか店の裏に落ちていてね。」

 

そう言って香霖はいかにもプレゼントボックスという感じの、赤いリボンで蓋が留められた箱を取り出した。リボンにつけられた荷札には意味ありげな見たことのない記号配列が書かれていた。

 

「この記号は何だ?」

 

「プププ文字っていう文字さ。一体どこで使われている文字かは不明だが、これを解読すると『シンアイ ナル マリサ ト ソノ オトモダチ ヘ アリガトウ カービィ ヨリ』と書かれているんだ。間違いなく君宛のプレゼントだよ。」

 

私は荷札の内容を聞いたこの瞬間、違和感の正体に気が付いた。同時に酷く寂しく感じた。

リボンをほどいて箱を開けると、中には帽子用の白いリボンが一つと星形の黒い小さな塊が沢山詰められた小袋が大量に入っていた。帽子用のリボンには見る角度によって色が変わる、星形で虹色の宝石が飾られている。

 

「この黒い塊は何だ?」

 

「どれどれ?…これはメテオチョコという名前のチョコレートだ。そのまま食べても美味しいが、お菓子作りのチョコレートをこれに代えるだけで味がうんと良くなるらしい。ホットミルクに溶かして飲むのも良いだろうね。」

 

「そうか、この小袋は香霖にもあげるぜ。こんなに沢山は食べきれないし、差出人も一人で食べることを想定してないからな。」

 

香霖に小袋を2つ渡すと、新しいリボンをいつもの帽子のリボンと取り替えて香霖堂を飛び出し、メテオチョコを配りに行った。これは私一人に宛てられた物ではない。みんなで仲良く食べろという意味だ。そうだろ?カービィ!




ペインシア:ドロシアと生き別れた筈だった妹。ドロシアそっくりの姿だが、ドロシアが紫なのに対し、ペインシアは赤い。その生い立ち、性質はドロシアと同じ。


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