ジョジョの奇妙な冒険~アメジストのif物語~ (Tarako@如月銘酪)
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プロローグ

こんにちは、Tarakoです!
pixivでも活動をしております!
初めての作品なので至らぬ点などがございましたら、ご意見ご感想ご評価、どしどしお願いします!


 天国に行く方法があるかもしれない

 

と、とある男が言った。

 

それとは全く別の世界

『願いを叶える方法がひとつだけある』

 

と言う神がいた。

 

 

2つの特異点が交わった時

 

一つの、例外が生まれた…………

 

『if』と呼ばれるそれらは

何か別の力を持っていた。

黄金に輝く意思だろうか…………?

それとも何かを得る覚悟か?

それとも最期まで戦う意思か?

黄金の精神を受け継ぐ1つの星があった。

 

悪夢の夢の続きを奏でた者よ

新しくこの世界にたどり着いた者よ

己が運命を知り、尚も走る勇敢なる戦士達よ

我らの光に包まれて

真実を奏でよ

どのような結末にたどり着くのか…………?

 

一人の囚人が鉄格子の窓からそとを眺めたとさ。

一人は星を見た。

一人は泥を見た

『…………ぐ、ぅ…………』

ドサリと倒れた男性は

この真実を

これからの運命をまるで知らないようだった。

 

herp us!

 

 

fin.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P,S

シルクハットから這い上がる為には1つになるしか方法はないのよ、シレグラ。

だから、シルクハットの中のウサギみたいにぬくぬく暖まっていた方が気が楽よ。

わたしだってそうだったもの。

ひとつになるのは大変なことよ。今の彼らでは到底出来ないでしょうね。いい?シレグラ、過去とは未来よ。あなたは世界を見透すことが出来るのだから、胸をはってね。シレグラ、この世界に1つでも多くの幸せを与えてあげてね、それが、わたしと貴女の使命だもの。シレグラ、この世界で死ぬことがあっても私は待っているからね、ずっと、ずっとよ

そう言えばシレグラ、この世界が何者かに作られた物だとして、運命を決めているのはわたしとその物、どちらだと思う?私は勿論私自身が決めていると思うわ。だってほら、コーヒーの匂いだってわかるもの。あら?溢しちゃったの気づいちゃったかしら?ごめんなさいね、でも、あまり書かないだろうから心配しないで。最近の生活はどう?あなたからとてもよい返事が来ることをとてもとても期待しています。あら、誰かきたわ、書き上げている間に時は過ぎていくものなのね。ここら辺でおわりにしたいと思います。

 

Bon Voyageと走り書きされている。

 

*レターセットはそれの血で真っ赤に染まっている

 

*チャイムがなった。お客さんだ、誰だろう…………?

 

『こんにちは、パッショーネの者ですが』

 

へえ、珍しいこともあるのね…………

 

『シレグラ…………いいえ、始暗さん』

 

私の名前を知っているのね?

『えぇ、お迎えに上がりました』

 

あら、もうそんな時間なのかしら、ごめんなさい、最期に弟に電話していい?あんなかわいい弟を一人にさせるのだもの、少しぐらいは待っててくださるわよね?

 

『えぇ、勿論です。』

 

ごめんね、終光…………




みじけぇなオォイ!!!!と思ったそこのあなた。
プロローグだもの(((((
今度からもっとしっかり作っていく予定です…………!


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一章ファントムブラッドの赤
一話 ファントムブラッドの赤


20xx年、転生したジョースター家とブランドー家は手をとり、まさに平和な生活を送っていた。
(「奇妙な冒険」を相変わらずしているのは置いておいて。)
だが、また、新たに見覚えの無い「黄金の精神を受け継いだ」者が現れた。


前作を読んでいないかたは始めまして、
前作から読んでいただいている方はこんにちは!
Tarakoです。
この二次創作は1~6章ずつの公開となっております。
今回は第一章の幕開け、「ファントムブラッドの赤」となります。(この作品は不定期更新となります。ご了承ください)

プロローグ→https://syosetu.org/novel/237782/1.html

こちらの小説では、以下の要素が含まれております、一度確認していただき、責任をもってご閲覧ください

*******注意事項
○稚拙な文章です
○転生要素が含まれております
 ·それにより、原作より多少性格がちがいます
 ·また、現代パロディに近いです
 ·全ての人物は生存しています。
 (全ての主人公が奇妙な冒険を終えた数年後になりま す)
 ○オリキャラが多数出てきます、また、スタンド捏造も含まれています
○「恥知らずのパープル・ヘイズ」のネタバレも含みます。


では、アリーデヴェルチ。
******************
人物紹介
☆ジョースター家
父親共に母親が自殺、異母家族となっている。
○ジョナサン・ジョースター(25歳)
最年長の長男。不動産王であり、家事も育児もこなすスパダリの最骨頂みたいな人。
○ジョセフ・ジョースター(22歳)
次男、現在は大学にかよっており、波紋について学ぶ。勿論親友はシーザーである。
○空条承太郎(18歳)
高校生。三男でありジョースター家のなかでクールで落ち着きのある性格の持ち主。花京院と学校に登校する、またはSPW財団の手伝いをすることもある。
○東方仗助(16歳)
高校生。四男。朝はジョセフに食べられている(?)また、億泰や康一君とじゃれあう姿をよく目撃する。ツッコミ役
○ジョルノ・ジョバァーナ(15歳)
五男。末っ子一人だけイタリアと日本を行き来する人。パッショーネの現ボスであり、中学生。そのため、ジョースター家ではお兄ちゃんに溺愛される。ディオの息子だが縁を切っており、養子に当たる
パッショーネの暗殺チームはジョルノに慕っている訳ではないのだが、条件や金額が相当なものに付いていこうと決めているらしい
○空条徐倫(16歳)
空条承太郎と同じははのもとに生まれる。長女。落ち着いていて回りをよく見ることが出来る。

◇ブランドー家(荒木荘)
○ディオ・ブランドー
ジョナサンの下で働いている。夜行性だが吸血鬼ではない。
○ディアボロ・ブランドー
パッショーネの敵対する組織「コールド」のボス。二重人格の持ち主であり、偽名でもある「ドッピオ」が存在する。また、なぜかディオの弟
○吉良吉影
普通の会社員なわけもなく既に一度ドラドラ済み。今では謎の宗教にはまっている。
○エンリコプッチ
神父。ディオの良き理解者だと思っている。ホワイトスネイクが存在しない。(スタンドがない)運命について考えるお年頃(?)


 

【挿絵表示】

 

 ドタドタと、二階の方から足音が聞こえる。

20xx年、夏。

「ご、めんっ…………っ」

ジョースター家長男、ジョナサン・ジョースターがリビングのドアを勢いよく開いたそのさきに、彼の弟たちは居た。

「…………おはよう、ジョナサン」

「承太郎!朝ごはん!ありがとうっっ!」

「もう少しであなたの親友が来ちゃいますよ?」

そう言うのは今日たまたま日本に帰ってきたジョルノ。僕の親友の子供なんだけど…………彼ってあーいう性格だからね。仕方無いや。

「ジョセフ、今日は四限からで合ってる?」

「むにゃ、う、ん…………」

「よーっし、承太郎、あとはもう大丈夫、花京院君待たせないで早くいっておいで。」

ジョナサンが笑ってそう返すと、「やれやれだぜ」と承太郎は言い残して玄関から出ていく

それにつづいてジョルノも、イタリアに戻る支度をする。

「また、おいでよ、いつでも待ってる」

「…………僕は子供じゃ無いんですけどね」

ジョナサンが笑ってごめん、と返した。それに、彼も微笑む。

「俺は先行くぜぇ~!」

そういったのは、()()()な髪型の仗助と言う青年だった。

ジョースター家(その名字は二人だけだが)は、とても平和な生活を送っていた。天国にいくだとか、そんな問題を何一つ知らず。また、そんな問題が起こることなどあり得ない話だった。

…………今までは

 

イタリア某所

 

「やはりイタリアの風も気持ちいいですね」

「…………なんだって良いけどよォォ、虎穴に入らずんば虎子を得ずってよォォ…………」

颯爽と歩く金髪の青年に着いているボディーガードの一人…………?の青年の名前はギアッチョと言う。

彼自身の正確として、「矛盾」と言うものが大嫌いなのであるため、「根掘り葉掘り」などの、よくよく考えるとあれ?となるような話を聞いては一人勝手に怒ってしまうタイプなのだった

「ギアッチョ、この前の任務、どうでしたか?」

「あ"?特に何もねぇよ。俺たちは生粋のアサッシーノだ。あんな奴ら殺すのに手間取ってたら今頃死んでるぜ。」

「ふふ、確かにそうですね。」

 

青年の仕草は15歳とは思えない動作であり、一瞬の隙もないソレは、まさにボスと慕われる存在だといえる。

「ジョルノ様、護衛報告に参りました。」

「うん、どうぞ。」

「失礼いたします…………」

シーラEという少女は酔狂的なジョルノのファン…………であり、彼の前で一度もミスをおかしたことがない。

「…………と、なっており、今後も引き続き護衛が必要と考えます。」

長い報告を終え、シーラEが一息付いた時、和気あいあいとする空気を共にしたナランチャとフーゴが、"何か"を引きずりながらやってきた。

「良いですかナランチャッ!あなたはいつも自分勝手過ぎる!少しはシーラEを見習ったらどうですか!」

「なんだよっ!フーゴだっておれたちのことめっちゃ心配してたの知ってるんだぞ!」

クシャリ、と紙を握るシーラEがフーゴ達のほうへ振り返る。

「…………ジョルノ様の前ですよ…………?」

「あー…………ジョジョ、ごめん」

礼儀正しく謝るフーゴを退けて、ナランチャがその"何か"をジョルノに突きつけた。…………人だった。

「おーい、こいつ、お前の家族だろ?」

彼の発言に、全員が唖然とした表情を浮かべた。

「あなた、なにいってるの…………?」

シーラEが、訳もわからないナランチャの発言に苦しむのを見たフーゴはつくづくじぶんに似ているが似ていないと考えていた。

ナランチャの突きつけた人物は黒髪であり、肩に確かに星形のあざがついていた。

「…………本当に、ジョースター家の人物だ…………」

ジョルノが目から鱗が飛び出るような驚きを隠せない表情をする。

「も、もしかして、ジョルノ様…………の隠し子…………ですk」

「なわけあるか!…………シーラE、少しは自重しろ。…………ジョースター家の血筋がわかるっていうのは本当だったんですね、ジョジョ。」

「まぁ、運命共同体みたいなものなので。…………わかりました、一応彼を引き取りましょう。本当にジョースター家の血筋だとしたら大変なことですから。」

 

 

 

ジョルノ・ジョバァーナの私室

「何が大変なんだよ、そんなにさ」

と、言ってきたのはパッショーネNo.3、グイードミスタ。

「…………僕たちジョースター家の血筋は、全てのものが「奇妙な冒険」をしてきました。…………それが、もし彼も同じ血筋だとしたら…………」

ミスタが、急かすようにしたら?と問い返す

「…………奇妙な冒険をしなくてはいけないということです。彼に関わる全ての人間が。」

その重大さをあまり理解できてないミスタは首を傾げたが、その重大さに一刻も早く気づいてしまったジョルノは厳しげな趣で何かを考えている。

「ミスタ、日本に帰る予定を空けておいてください。少なくとも一年間…………」

「わかったぜぇボス~勿論俺たちもついていって良いよな?」

 

「えぇ、勿論ですよ。」

(もしも、もしもだが…………運命に分岐点があるとするならば、それは特異点だ…………条件がある。()()だ。…………それが、もしそれが揃っているのなら…………僕らは、もう…………)

雨が降りだしていた。ぽつぽつと。

静かに眠る黒髪の青年は、少しずつ、夢から覚めつつあったのだった。

 

「おーい、ジョルノ、見つけたぜ、身分証明出来る奴。こいつの名前は…………《ジョラル・ジョリオ》だ。」

「やはり…………ジョースターの血筋でしたか…………」

 

 

怪しげな洋館その一室

 

「…………あなたが俺の父親なんて笑えるな…………俺は勝手に生きていく。…………俺には、『使命』があるからな…………」

「フン、勝手にしろ。」

金髪の青年とその父親は、背を向け歩きだしていた。

【挿絵表示】

 




ご閲覧いただきありがとうございました!
次回作もお楽しみください!(感想や評価、お待ちしています!)
Bon Voyage!


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二話 ガーネットの粒

初めての方ははじめまして、
前作から読んでくださっている方はこんにちは!
Tarakoです!
今回は第一章ファントムブラッドの赤の第二話、「ガーネットの粒」です!
前作をお読みになっていない方は、ぜひぜひお読みください!
プロローグhttps://syosetu.org/novel/237782/1.html
一章https://syosetu.org/novel/237782/2.html

***登場人物
ジョナサン・ジョースター
ジョースター家の長男。

ジョルノ・ジョバァーナ
ジョースター家の末っ子。スタンドは「ゴールドエクスペリエンス」

*スタンドについて*
ジョースター家では、生まれつきのスタンド使い(ジョルノ、仗助)以外はスタンド能力を持っていません。

■■オリジナルキャラクター■■

ジョラルジョリオ
年齢 21歳
性別 男
誕生日 五月二十三日
血液型 AB型
好きな色 輝くように美しい金色
好きなもの ブラックコーヒー、貴金属、装飾
好きなこと アクセサリーをつくること(特にピアス)
好きな曲 アイネ・クライネ・ナハトムジーク
嫌いなもの 甘いもの(砂糖菓子)悪夢
好きな偉人 ソクラテス
性格 ·場の空気に馴染めないことが多い
   ·少し謙虚(?)な姿勢を見せる
   ·心を開いた人には感情の突起が激しい自分を見せる。
   ·すぐに調子に乗る。
(そのせいで奇妙な事に巻き込まれやすい)
   ·情に熱くなる時がある。(黄金の精神を持つ)自分の意思を貫き通す覚悟がある。
癖 腕を掻く
ジョラル君だけはイラストの全体像があります!三話では累君の全体像になります!ぜひ見てください!

ジョラルの姿
↳https://www.pixiv.net/artworks/84802161

累乗内瑠
年齢 20歳
性別 男
誕生日 7月25日
血液型 O型
好きないろ 濁ったいろ
好きなこと 宝石デザイン、ブラックコーヒー
好きな曲 威風堂々
嫌いなもの 星、ごちゃごちゃしたもの
性格 芸術的なものに見とれる。神様を信じるタイプ。生まれつきスタンドを持っていて疎外感を感じている。自分が強いと思ってる。 
癖 辺りをキョロキョロ見渡す。

~あらすじ~

転生したジョースター家は、平和な生活を送っていた。が、「ジョラル」との出会いにより、様々な奇妙な冒険に足を踏み入れてしまったのだった……


 

【挿絵表示】

 

 

 …話し声と、雨の心地よい音が聞こえる。

ちかっちかっと、輝くのは金髪の青年の耳についた、ピアスだった。

プレナイト、という宝石だろう。

『物事の本質を見抜く力』という意味が込められている、ということを夢うつつな青年は知っていた。

 

 「……悪趣味だな」

金髪の、カールのかかった髪をもった青年が、驚くように振り返る。

ふわりと髪が風に舞う。

この日差しの暖かさは知っている。「日本」という国だったか。昔留学した時、細かい細工に見とれていた。

「プレナイト…か」

まっすぐにアメジストの瞳が、金髪の青年______ジョルノ・ジョバァーナの目をいぬく。

「これじゃあ美しくならない。もっと綺麗な造形美があるだろうに…あんた、見たところお偉いさんだろう?これはもっと…輝くべきだ」

早口でそう言う彼の言葉はもう呪文の様な言葉に聞こえる。

「……G,E」

吸い込むように深いエメラルドの瞳がそう呟くと、不確かなソレは、拳を繰り出した。

「……ッ」

避けた末にによろけた青年は、汗を垂らす。

 

 「え、えぇっと、ジョルノ、止めよう……?」

 青い髪をもつ彼の名前はジョナサン・ジョースター、ジョースター家の長男であり、真の「紳士」を目指す男性だ。かれが牽制すると、流石にやり過ぎたか、と思ったようで手を止める。

「すみません…悪い癖ですね」

静かに微笑む青年はまさに絵になる程の美しさをもっている。

「ここ、は、どこだ……?」

 やっと現状を理解したのか、ジョラルジョリオ……ジョラルは二人をじっくりと見つめる。彼らに敵意が無いことを確認した上での発言だった。

「僕はジョナサン・ジョースター、君はジョラルジョリオ…であってるかな?」

物腰柔らかく聞いてくるその姿勢は、まさに紳士だと万人が称するであろう風だった。

 

「あぁ。」とジョラルが答える。

 「あぁ、良かったよ。ジョルノが紐で縛ってつれてくるから、誘拐したのかと…でも、君に合えて良かった。とりあえず席にすわりなよ。」

ジョナサンが椅子に座るようにすすめ、ジョルノはコーヒーを三人ぶん淹れて持ってきた。

多分長い話になるのだろう、

 「あぁ。…コーヒーありがとう。」とジョラルが言うと、ジョルノが続けるように、いや、先程の質問に答えるように。

 

「いいえ、おもてなしですから。……なぜここに居るのか知りたいんですよね?…僕らはあなたの家族です。」

といった。 家族、というワードに、驚きを隠せないジョラルは、信じられない、というような眼差しを向ける。

「君のお父さんは、僕らのお父さんなんだよ。…今はもう居ないけれど。」

ジョナサンがジョルノの発言に付け加えることで、ジョラルはやっと理解したようだった。

そういえば自分の父親も亡くなっている。母と共に。

「……話せば長い話になる。……聞いてくれるかい?」

__________________

______________________________

__________________________________________

 

*◇*

 

「つまり…纏めると、あんたらは異母家族で、俺はあんたらの家族で、あんたらは全員「奇妙な冒険」をしてきている…そして俺もその家族ってことは、不特定多数の人々に被害を及ぼす可能性があるからあんたらが保護したって事か……?」

随分壮大な話だなぁ、と、他人事のように考える。

「纏めるとそうなるかなー?」

小首を傾げる仕草は紳士と言うよりかは少年のような雰囲気だった。

「わかった……これからよろしく。」

にこ、と笑うジョラルは、まるで子供のようだった。

 

 「バカみたいな話だが、家族に憧れていたんだ。」

 深いアメジストの瞳が、物憂げに語る。

「ずっと、一人で生きてきた。」

ずっと、ひとりぼっちだった。

誰にも理解されず、いつの間にか理解されなくて良いや、なんて事を考えていたのだった。

そのせいで出来た溝はさらに深くなっていった。

それでも、何処かで、自分の『居場所』を求めていた。

「だから、嬉しい。」

静かに微笑む彼は、その心の内に、確かに黄金の精神が目覚め始めていた。

そして、この大切な幸せを守ろうという『覚悟』も。

 

 「ところで、あなた大学卒業生ですよね?どこ通っていたんですか?」

「宝飾造形大学短期大学部。」

「……。」

聞いたことの無い単語に頭にクエスチョンマークを浮かべている。

「宝石や貴金属の装飾、デザインなどをまばぶことができる所だ。俺はそこの短期大学部そつぎょー。」

「へぇ、そんなところがあるんだね。」

「……正式に卒業した訳では無さそうですね」

ジョナサンはきょとんとしているが、ジョラルは思いあたる節が有るらしく、目を泳がせる。

「うん。色々あって。」

「もしかしてだけど、中途退学って奴かい?」

ジョルノが、ジョナサンの淹れたコーヒーを飲む。思わず「美味しい」と溢す。

「あぁ、ひどい話だが、とある事件の濡れ衣を着せられてな。そのせいで退学になってしまった。…今じゃ戻りたいとも思わないが。」

それをいう彼の表情には、少し後悔の感情が現れていた。

 

「だ、だめだよ!学生は学べる時に学んでおくべきだ!」

と、立ち上がり、声を荒げ、(白熱の演技で)そう言うジョナサンを見たジョラルとジョルノは、少し、若干引いた様子を見せた。その二人を見たお陰で、落ち着いたジョナサンは、恥ずかしそうに静かに座った。

 

「まぁ、ジョナサンさんもこんなに薦めているのですし、こちらから、復帰できる様に準備させておきますね。」

場の空気を整えるようにジョルノが言うと、とんでもない、と言うような顔をしたジョラルが

「そんなこと、別に…」と言いかけた時、被せるように

「それに、あなたも戻りたかったらしいですし。」

と、反論させる隙を与えなかった。

その間ジョナサンはずっと赤面していた。

 

 

テレビ

『さて!今回の"ウワサの心霊"は、満月の晩、水面に立っているといつの間にか死んでしまう!という物です!』

『怖いですね~、何されるか分からないですもんね~』

『そうですよね~、既に老若男女問わず20人程が犠牲を受けているそうです。夜道には気をつけてくださいね!』

『では、次のコーナーです!』

 

 

 

宝飾造形大学 デザイン科

 

 

「聞いた?転校生の噂。」

 

風の噂。でも本当らしい。

 

「きいたきいた、累乗内 瑠(るいじょうと りゅう)ってやつだろ?」

 

転校してきた人はなんでも美青年で美しい宝石のデザインを考える人らしく。

 

「なんでも、ディオ・ブランドーの息子らしいよ」

 

しかも、ディオ・ブランドー、まばゆい程のカリスマを持ったあの男の息子だというのだから、全員が驚いた。

 

「あんな大手企業に勤めてるあの!?」

 

彼の才能、地位、名誉。バカみたいな話だが、誰もが口から手が出る程ほしいものばかり持っていた。

 

「なんてったってこんな大学にいるんだ……?」

 

誰もが考えた。どうして有名大学の法学部とかにいかなかったのか。そんな学力も資格も持っていて。羨み、憎み、感嘆し、一躍有名人となってしまった。

 

雑音が聞こえる。

まるで自分しか居ないような、そんな世界。

誰もが欲しがる才能や地位?

 

お前達は何一つ分かっていない!

 

いつの間にか孤立していた。

一人だけだった。

「……

そう呟いたガーネットの瞳は、駆け出す。

自分から全てを奪った存在。

忌々しく輝く星。

許せなかった。

赦すことはできなかった。

 

ジョースター家

 

「しかし、特異点が分からないと……」

 

「お、おいッ!」

ジョセフの声がする……

扉を開けたジョセフは……紫の蔦が腕を伝っている。

「なんだよこれぇ…ッ!」

それは、生まれつきもっている人間から見たら、嫌という程見たであろう精神のヴィジョン。まさに

「……スタンド……ッ!」

と呼ばれる存在だった。

「スタンドぉ~?」

「まさかッ……これが()()()!?僕らとジョラルが出会うことが…ッそれこそが特異点だったのかッ」

背後から、確かに気配がある…ッ

それは、予感にも似た気配!

長年にわたり続く因縁!

 

『セレーネッ』

白と黒に塗りつぶされた、牡牛のスタンドが窓ガラスを蹴散らして侵入する。

「ッ…これはっ!」

窓ガラスが四方八方に飛び散る。雨が、嵐のように吹き荒れ、侵入者にあたる。

身を守るように腕でカバーするも、端々から血が滴っている。じんわりとした痛みをジョルノやジョラルに襲う。

金髪にガーネットの瞳をもつ青年が立つ。雨に濡れた髪をかきあげてジョースター家の面々を見つめる。

「ッチ……本当に忌々しいな…"星"っていうのは……」

 彼は優雅に、そしてまっすぐにジョラルを見つめる。

その様はまるで昔話に出てくる王子様のような、顔立ちをしている。

瞳は本当にガーネットの宝石のようで、思わず目が離せない。

 

「おまえは…転校生の、瑠、か?」

彼は突然の状況に不安と恐怖を感じていた。

「俺の願いを叶えるために死んでくれ。ジョラルジョリオ。」

「……ガーネット、情熱、生命力を表す宝石か。」

「おう。安物さん?」

「どういうつもりなんだ。」

ジョラルはいたって平然を装って聞いてくる。

「あんたらは疑うかもしれないが、俺には神様の声が聞こえるんだ。…とても優しい声だった。幸せにしてくれるって、初めての信頼出来る人だったんだ。だから、だからさ、幸せになるには、『害』は必要ないって神様が言ってた。だから俺は、お前らを殺す。殺して、俺だって幸せになる!誰だってある権利だ……言いに決まってる。合法的だ。俺は『星』を消して、俺が幸せになる。……俺のために!」

 

to be continued…………

 

 

【挿絵表示】

 




今回もご閲覧いただきありがとうございました!
評価、感想、どしどし送ってください!お待ちしています!

次回予告!
「トパーズの輝きはどこにあるのか」
ジョルノと瑠の戦闘シーンからのジョラルとの展開は瞬きなんて出来ません!ぜひお楽しみに!次回もご覧くださいね?
Bon Voyage~!(よい人生を!)


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三話 トパーズの輝きはどこにあるのか

前作を見ていない方ははじめまして!
前作から読んでくださっている方はこんにちは!
Tarakoです!
今回は一章三話、「トパーズの輝きはどこにあるのか」になります!前作を読んでいない方は、ぜひぜひ読んでからご閲覧ください~!
プロローグhttps://syosetu.org/novel/237782/1.html
一章一話https://syosetu.org/novel/237782/2.html
二話https://syosetu.org/novel/237782/3.html

スタンド
ジョラルが来たことにより、ジョースター家の生まれつきスタンドをもっている者(仗助、ジョルノ)以外のスタンド能力を目覚めさせた。

あらすじ
彼らの前に現れた瑠。絶体絶命のピンチ!どうするジョルノ!


雨、月。

 

【挿絵表示】

 

『俺の願いの為に死んでもらう!ジョラルジョリオ!全ては"神"の為に!』

 

「いくぜ!セレーネ!」

白黒の牡牛のヴィジョンをもつスタンドが現れる。

水溜まりに満月が反射する…その瞬間、落ちる様に倒れた、と思ったらまた立っていた、という奇妙な感覚が背筋を伝う。

「こッこれはッ!()()()()()()()()()ッ!世界が……まるで鏡の様に…!」

右腕についたはずの傷は、左腕に変わっていた。あの不思議な感覚は間違いでは無かったのだった!

ジョラルは飛び散ったガラスの痛みに耐えられず気絶してしまっている。

ガーネットの瞳は赤く燃える

「俺の能力はマイ・ザ・ワールド……だぜ。能力は月が満月、なおかつ水面があり、その水面に写った人物をこの世界におびき寄せる、という能力だ、驚いただろう。」

 

 金髪の青年が髪を揺らす。ガーネットをいぬくように光る瞳。"覚悟"した瞳だった。

______己の直感が告げている。()()()の様にしてはいけないと______

「ゴールドエクスペリエンス!生まれろ生命(いのち)よ!」

ジョルノのスタンドが繰り出した拳が地面を叩くと木が生えてくる。ジョルノはそれに乗るようにして上へ上昇していく。それでも敵意を向けたままだった。

「ハ、敵前逃亡って奴かよ…かっこわりーなぁ!セレーネッ!奴を殺せッ!」

セレーネと呼ばれたスタンドが雄叫びをあげると、空からレイピアンの尖った先が、ジョルノに向けられて落とされていく。

「っなに!?」

真っ直ぐ、まるでこれからの未来を暗示するような、先の見えない深いガーネットは話す。

「いいかぁ…この世界は俺の世界だ…だからこの世界じゃあ俺がルールだ。」

 「じょ、ジョルノッ!」

ジョナサンは、紙一重に避け、ジョルノに駆け寄る。

「何が起こっているんだい!?」

「…奴はスタンド使いです。そして僕達もジョラルに会うことを特異点としてスタンドが発現しています。その証拠がジョセフさんです。」

「ジョセフ…あの紫のトゲトゲの事?」

「えぇ。」

 

 コツ、コツ、と近寄る瑠の影。

「僕らは彼を倒さなくてはいけない…彼は"殺す"といった。それにはそれ相応の覚悟が必要なんです。彼にはその覚悟がある…!だから倒さなくてはいけない。倒さないで見逃したら、次は逃げられない。今度こそ殺されてしまう!。…それほどの"スゴ味"が彼には感じられるッ!」

たった2人居たところで状況が変わるとは思えない。(ジョナサンのスタンドも正体不明、賭けに出るようなことは、余りしたくない。)能力自体は昔戦った"マイ・インザ・ミラー"とあまり変わらないだろうが、あの時はフーゴのパープル・ヘイズがいた。それに、見たところセレーネは、遠距離でも多少は攻撃が出来る様だ。近距離で攻めて攻撃を食らったらなんの意味も無い。

 

 「おいおい、まさかその程度で終わりじゃあねぇよなぁ…?」

昔、神話について少し調べていた時、"セレーネ"というキーワードを見たことがあった。その記憶を掘り起こしてみる

「…セレーネ、と言う言葉は聞いた事があります。確か月の神様、だったような気がします。」

「なかなかなまっちょろいなァ!()()()()()つゥのはァ!」

一気に跳躍し、瞬時に間合いを詰められる。

「G,E!無駄無駄………無駄ァ!」

彼のスタンドで応戦するも、拳と剣…歩がありすぎる。少しずつ傷ついていくジョルノ…………

 

(くッ…何か方法は無いのか?このままでは死んでしまう…ジョルノも僕も!セレーネ…月の神…)

「ぐぅあ"ぁ"あ"!!!!」

精一杯に応戦するも、勝敗は目に見えていた。

 

 

…………ブルーの宝石

 

…………ガーネットの宝石…

 

何れもが全て、大切な宝物。

全て、失うわけにはいかない。

その輝きは、きっと、別の美しさが有るのだから。守りたい。自分の居場所も、自分の心も。

 

ぼんやりとした気色に、プレナイトの宝石が写る。

あぁ、そんなんじゃダメなんだ……もっと綺麗に、美しく光るべきだ…

青く、生命力に燃える瞳……その瞳のように…。

 

 

 

「全員が全員、平等なわけじゃない。俺達は生まれた時から格差があった。圧倒的な、だ。人々が作り上げた、格差だ!…俺はそれを壊す。そして、俺だって…人並みの、幸せを…。」

眠るジョラルは、徐々に目を覚ましつつあった。腕や身体の節々に残る痛みと、確かに感じる黄金の意思に導かれて。

 

真っ暗な暗闇に、穴が空くようにポッカリとあいたその満月が、嗤う様に水面で揺れた。まるで、別の何者かが見張っているかのように。

 

綺麗な景色で、水滴が滴る。

 

マイ・ザ・ワールドの中

無尽蔵に投げられるレイピアンは、その刃で、ジョナサンやジョルノの身体を傷つけていく

(最悪だ…もう立ってるだけでも限界だ…だが、ここで意識を失ったら、スタンドが消えてしまう…ここは耐えなくては、なんとしてでも!)

 ジョルノには、思う節があった。もし、特異点でジョセフにスタンドが目覚めたのなら、ジョラル自身も目覚めているのでは無いか、と言う考え。もし、それが合っていれば、もしかして勝てるかも知れないという事も。どちらにしても残されていない、この先の未来なら、少しでも良い未来にしたい、と、きっと、誰もが思う。自分だって思うのだ。ここまで何とかやって来た。後は、自分とジョラルに未来がかかっている。他力本願、と怒られてしまうかもしれないが、それでも、自分か、または誰かが一緒に戦わなくてはいけない。

 死ぬ気で戦うしかない。覚悟が必要だ。本気でやるのなら、それ相応の覚悟で、奴をぶちのめすことが出きるほど、爆発的で鋭い力で、戦うしかないのだ。

 

 うっすらと、現実の景色が色づいていく。

遠くに、ジョナサンさんとジョルノさんがいる、ということは理解した。

 

「…瑠、何を、して、い、る…?」

雨に打ち付けられて吸いとられた体温を取り戻していく。

心のそこから、炎が燃えた。

「、何をしているか、と聞いたんだ…答えたらどうなんだ」と、とぎれとぎれにでも自身の意思を使えていく。

アメジストは透き通る様な紫だった。自分だって、きっと、同じだ。姿が見えないようにずっと隠してきたんだ。

ゆっくりと立ち上がっていく。ポタタ、と血が滴り、地面の色が濁っていく。

 

 

to be continued…




さて、今回のアメジストのif物語、どうでしたでしょうか!次回は引き続き戦闘と、瑠の回想シーンに入ります!次回もお楽しみに!
アリーデヴェルチ!


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四話「トパーズの輝きはどこにあるのか②」

こんにちは!Tarakoです、
はじめましての方は始めまして!
最初から読んでもらっている方にはこんにちは!
瑠、ジョラルと、オリキャラが沢山(二人)登場してきて、ジョジョに騒がしくなってきましたね!(ジョジョだけに)また、まだまだ序章、それも始めの章、これからどんな人々が、彼らを「奇妙な冒険」に巻き込んでいくのか!
もちろん、既存のキャラクターもどんどん登場していきますよぉ~!

とりあえずは、まだ、プロローグ、1~三話まで読んでいない方は、是非是非読んでください!こちらを読んでいただけると、内容が分かりやすいと思います!

プロローグ
↳https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一話
↳https://syosetu.org/novel/237782/2.html
二話
↳https://syosetu.org/novel/237782/3.html
三話
↳https://syosetu.org/novel/237782/4.html

になります!



*あらすじ*
乗り込んできた瑠という男性、ジョラル、ジョルノ、ジョナサンを巻き込み、戦闘は佳境へ突入する。
彼は何を考え、そして何をして、こうしなくてはいかなくなってしまったのか。


トパーズ…意味 希望

【挿絵表示】

 

 

 ポタタ、と滴る赤いソレをみた瑠は、一瞬動かなくなってしまう。

「俺、の、居場所を作ってくれた二人に、何をしてるんだ。」

瑠の思考は、完全に赤いソレに集中していた。いつもどおり、自分なら出来るはずだ、だって、こうするために、自分はこれまで、罪を犯してきたのだから。と、自身を奮い立たせても、なんの役にもたたず、水面に写る、赤く染まってしまった月を見て、ようやく意識を自分の場所に戻した。

 

「…何がだよ。」

深いガーネットは、アメジストを砕くように、深く、低くそう言う。

「二人が傷ついていることについてだよ。俺の知ってる瑠、という男はそんな男ではなかった筈だ。」

そう言うや否や、

「ハン、口を開けばそう言うことしかお前達は言わないよな。だけどさ、俺が思うに、お前らの主観だけで俺の全てが見えるわけじゃあねぇだろうが。あんたらほんと頭悪いよね。」

ニヤ、と瑠が口の端をつりあげる。

「じゃあ、お前は良いこちゃんを演じ続けてたって事かよ」

挑発するようにジョラルが言う。

「あぁ、そうだぜ。だってよ、関係ねぇだろ、俺とお前、あんたらと俺。口出せる問題じゃあねぇんだよ」

何かイラついているのか、少し口調を荒げて、言った。

「つまりてめぇに、()()()()()っう事だな?そう言うことだと俺は、受け取ったぜ。」

ジョラルが、まるで悪戯をしたら子供の様な顔でそう言った(これじゃあ、どっちが敵か解らないなぁ)と、ジョルノが呑気に考えていたその時、

「何だと!?てめぇ、俺を侮辱しやがったな!」

と、声を荒げ、腕を振り、レイピアンの雨を瑠が穿つ。それを見たジョラルは、たちむか…

「何すんだよ!アブねーだろーが!当たったら即死だぜ!?」

おいまて、とジョルノは頭のなかでツッコミをいれつつ、自前のとっても痛い傷の治し方で、三分の二ほど回復していた。

 

「クソッ…今日は運が悪かったな…良いか、今度はなぶり殺しにしてやる」

瑠は、何か、とても暗い影を落とし、風のように消えていった。

「ったく、なんなんだったんだ…?」全員がポカンとしていた。彼が何故逃げたのか、煽ったジョラル含め、全員分からなかったからだ。所詮人の感情と言うのは、当の本人でしか分からない。

 

 

______満月の晩、独りでいると、一つの星が輝き出した。燦々と、爛々と光る星は、少年の大切な物を奪った。

少年は呪われていた。きっと、星に心を狂わされたのも、呪われていたせいだろう。

 

ネオンの蛍光灯をくぐり抜け、人気の無い路地裏に行く。入り組み、複雑怪奇、余所者に対し、"礼儀"で接する様なその空気は、まさに瑠の性格を表したかのような雰囲気を纏う。

螺旋階段を登ったその先、壁の剥がれた、ただ壁があるだけの家が瑠の家だった。

 

*◆*

 

父、と呼ばれる男を瑠はあまり知らない。

その時、瑠はまだ、幼かった。自分の善悪も分からず、世界の怖さなど一ミリも知らず。ただ覚えていたのは、母が悲鳴のように怒鳴り、対照的にとても冷静な父が、背中を向け、艶めく金の髪をなびかせた光景だけであった。オリオン座流星群が来る、と瑠がはしゃぎ、望遠鏡片手に母に飛び付き、花のように笑顔を咲かせていた、その矢先の出来事だった。

 人から聞いた話、父は偉大な人だと、良く言われた。カリスマに溢れ、声を聞くだけで心地よい、と、摩訶不思議な事ばかり聞いていたが、瑠は何故か納得していた。

そんな父が、自分の全てを奪った。肩に星のアザがついていて、星の降る夜の事だった。母は何も喋らなかった。口を開いてはいけない、と、瑠は直感的に理解し、自分の部屋に、籠った。みないフリをしていた。だけど、星が沢山降る夜、なせが心細くて、ベッドにくるまり、一筋の星を、瑠は溢した。

翌日、目が覚め、何時ものように気だるげに階段を降りていった。父の姿は当然のようになかった。母は、まるで何事もなかったかのように瑠に話しかけてきた。瑠は、地獄に落ちたように、身体の底から、すべての体重がなくなって、身体の感覚が消えていった。目の底から光が消えていった。心細くなってしまった。本当の本当に、独りになってしまったみたいだった。

「…………星…」

すべての憎しみを、追い払う為に、そうするしか、方法は思い浮かばなかった。これが、まだ小学生や、中学生、高校生なら、まだ、まだマシだった。だが、狂い始めた歯車は止まることを知らない。理不尽だ、と瑠は思った。ずっと思っていた。大学に転校した時も、寝る時も、片時だってその怖さを忘れた事はなかった。

 

 

ジョースター家リビング

 

「一体何なんだったんだろーなー」

そう口を開いたのは、スタンド"ハーミッド・パープル"に目覚めたジョセフジョースターだった。

「僕が一番理解できませんよ…ジョラルの行動が。」

あきれた顔でジョルノが睨む。

「だれだって、即死になりそうになったらびびるだろうが!」

弁明するも、無力だった。ジョセフは、相変わらず自分のスタンドで遊んでいる。不意に、ジョラルのコーヒーが入ったマグカップをスタンドでつかみ、一口盗みのみした。

「あんたがあの時変な事言わなきゃ、瑠はその場で倒せましたよ!?」

「あぁ、俺のマグカップが…ってあんたらなぁ…俺は、一般人なんだぜ?誰でもあんな状況…」

 

和気あいあいとした空気は、夜の底に透けていく。

これから襲ってくる敵を知らず。

自身の葛藤に見向きもせず。

 

 

***

 

 

朝が来た。心地の良い朝だ。青がずぅっとすみわたり、鳥が歌を歌う。

ジョラルは、自然な手付きで窓を明け、外の空気を吸った。自分がこれまでとは違う、何て事は既に感じ取っていた。こんな素晴らしい世界に、自分がいていいのだろうか、と一瞬考えたが、そんなことはお構い無しに、

ここにいることが幸せだ、と、ジョラルは考えた。

ぎこちない足取りで階段を降りる。新しい生活が、ここから始まろうとしていたのだ。

胸の高鳴りを押さえ、木材の独特の香りがする扉を開けた。

「…おはよう…」

アメジストの瞳が、太陽の光を浴びて、綺麗に輝いた。

「おはよう、ジョラル。」

ジョナサンが、朝食のお皿をテーブルに並べている。美味しい食べ物の匂いがした。

目玉焼きも、ウィンナーも、瑞々しいレタス達も、彼の目には全てが輝いていた。様々な、朝の匂いがする。

ふと、ジョルノが、暖かいコーヒーを渡してきた。

少々独特な髪型の、"仗助"と名乗った青年が、

「わーー!今日から夏休みだぜぇ!」

と、叫びながら、リビングに突入してきた。

「やれやれだぜ…」と、承太郎が後ろから入ってくる。ジョラルは、笑顔で「おはよう」と言った。

 

八月一日…それは、運命の日だった。




さて!どうだったでしょうか!日常の隙間に入り込んだその悪意を、ジョラル、ジョナサン、ジョルノ、ジョースター家の人々、そして運命に導かれた者達は、どうやって立ち向かうのでしょうか!

次回「ファイブロライトは静かに時を告げる」

お楽しみに!アリーデ・ヴェルチ!


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五話「ファイブロライトは静かに時を告げる」

前回からご覧いただいている方はこんにちは!
初めての方ははじめまして!
こちら、ジョジョの二次創作、「アメジストのif物語(アメif)」を投稿しています!Tarako@如月銘酪です!Tarakoでも、めいらくでも、どちらでも!お気軽に呼んでください~!
プロローグ、1~4話まで読んでいない方は、ぜひプロローグからお読みください!
プロローグ
↳https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一話
↳https://syosetu.org/novel/237782/2.html
二話
↳https://syosetu.org/novel/237782/3.html
三話
↳https://syosetu.org/novel/237782/4.html
四話
↳https://syosetu.org/novel/237782/5.html

となっております!
ここでかるーく登場人物の紹介をします!

ディオ・ブランドー
レッドタイガーアイのような、冷徹な瞳を持つ男。ジョナサンとは友達。
ジョラル・ジョリオ
アメジスト色の瞳を持つ男。 精神年齢は低め。いざとなったら頭は回る
ジョナサン・ジョースター
ターコイズ色の瞳を持つ男。不動産王で、お金持ち。
エリナ・ペンドルトン
ブルーアパタイトの瞳を持つ女性。ジョナサンと、十年間恋人をしている。

あらすじ

瑠が逃げ、ジョラルはジョースター家に馴染めるように生活を彼らと共にしていく。
そんな中、ジョナサンはディオとエリナ、そしてジョラルを交えてとある話をしていた。


 

【挿絵表示】

 

 

ファイブロライト…石言葉は『警告』

 

ジョースター家

 

その日は、奇妙にも天気雨の日だった。

 

窓から、ジョラルが晴れているのに降っている雨を見て、仗助に尋ねてきた。

「晴れなのに雨だ…?」

「あぁ、俗に言う天気雨ネ。狐の嫁入り、とも言うらしいぜ。」

子供のようにまっすぐな瞳で、チョクに疑問を伝えてこようとしている

「あー、晴れなのに雨が降ってると狐の嫁入りっていう伝説…?見たいなものかな…」

小首をかしげつつ、コーヒーを一口含む。口の中に苦味が広がった。

「そーいえば、承太郎さんは、どこにいったんすか?」

仗助が質問した相手はジョナサンだった。

「あぁ、スピードワゴンの所で資料を見に行っているよ。」

高校生なのに高校生らしくない冷静沈着な性格で、少し近づきがたい、承太郎さん。

「…俺、少しは馴染めてるかな?」

一週間もここにいるけれど、本当にここに居ていいのか。それは、ずっと消えない悩みだった。

「馴染めてると、俺は思うぜ。」

仗助は、笑いながらそう言った。

台所で洗い物をしていたジョナサンは、全て洗い終わったのか、タオルで手を拭きながらジョラルに言った。

「あ、ジョラル君、今日は少し僕と遊びに行かない?」

大学生(仮)に対し、小学生に質問するような物腰や態度は、本当の紳士らしい、とジョラルは思った。その後、自分が質問された相手だと言うことに気づき、あわてて

「あー、もちろんだ。」

と言った。

 

「所で、どこに行く予定なんだ?」

天気雨なので、傘を持ち、道を歩いていた。ジョナサンは思い出した、と言う風に「あ、」と溢した。

「君は会うの初めてかぁ…これから会うのは、僕の恋人、エリナペンドルトン、そして、ディオ・ブランドーという人さ。エリナは、とっても優しくて、僕が全身打撲になった時も手厚く看病してくれた優しいひとなんだ。ディオはちょっと鼻につくしゃべり方をするけど、中身はとってもイイヤツで、義理の弟なんだ。」

その後話してもらった内容によると、瑠…この前襲ってきた奴の父親…に、当たるらしい。

果たして、本当にいい人なのかいよいよ怪しくなってきたぞ、と思いながら、とあるカフェについた。

「ここで待ち合わせをしているんだ。さ、入ろう」

 

ジョナサンがリードする形で中に入る。静かな店内だった。オーナーは、中でグラスを磨いている。

窓際の席に、二人の男女がいた。ソレ以外には誰もいなかった。一人は長い金髪をなびかせ、もう一人は真っ白な肌に、金髪の男。目は真っ赤であり、強いて言うならレッドタイガーアイ。そしてただ者ではない…という雰囲気を漂わせている。

その真っ赤な瞳が、ジョナサンをとらえる。

「やあ、ジョナサン。」

手を、ヒラヒラ、と降り、ジョナサンに話しかけた。

「あぁ、ディオ!君と会うのが待ち遠しかったよ!…それにエリナ!君と会えるなんて今日は最高の日さ!」

まるで乙女のように話しかけてくるものだから、ディオと名乗る男は「チッ」と舌打ちを鳴らした。エリナと言われたブルーアパタイトのように深く、そして透明な瞳を持つ女性は、ジョナサンと同じように

「えぇ、私もよ、ジョナサン!」とはしゃいだ。その雰囲気に飽き飽きしていたのか、ディオがまた、「チッ」と鳴らした。

「えぇ、っと、ジョナサンさん…」

ジョラルがはなしかけた事で来た目的を思い出したジョナサンは、明らかに恥ずかしい、と顔を赤くした。

「ごめん…さて、えっと、ディオ、君と僕で話し合わなきゃいけない事があるんだ。手紙に書いた通りね。」

コーヒーを飲んでいたディオの手が止まり、ジョナサンを見つめ、そして目を閉じた。

「わかった。席を別に移そう」

ジョナサンは、にこにこと笑いながら、ジョラルにこう言った。

「エリナと、お話をしていてよ!きっと面白い話が聞けるはずさ!」

 

 

全く、酷いわよね、とエリナは溢した。

天気雨といってもまだ夏の真っ盛り、アイスコーヒーを頼み、二人してやることも聞くこともする事も見つからず、痺れを切らしたエリナが、開口一番に言った言葉だった。

「え?」

付き合っていて、そんな言葉がでるなんて!と、拍子抜けしたかのようにジョラルは聞いた

「…だって、私はジョナサンとは、デート出来ると思って、おめかししてきたのよ。なのに、ディオと話に行っちゃって…」

よく見れば、服装はもちろんデート用、というに華やかな服装だった。

「すみません、俺が来たばっかりに。」

少しうつむきそう言うジョラルをみて、エリナは慌てて

「そ、そんなことないわ!あなたにも、事情があるのでしょう?仕方がない事だわ。それに、私はジョナサンをずっと、支えたいと思っているの。それに、私、意外と強いのよ!」

たくましい女性は、天使に微笑むようにそう言った。

「あなたは、つよい、んですね…」

絞り出したみたいな声でジョラルは言った。

「…?」

きゅ、と自分の右手を握りしめ、圧し殺した声で。

確かに、ジョナサンさんが言った通り、とても優しかった。心地よい雰囲気に飲まれて、溢してしまったその言葉は、止まることを知らない。

「俺は、ほんとは怖かったんです…守れなかった。覚悟や、勇気、なんて言っておいて、自分じゃなにも出来なくて。強く、なりたいんです。どうしようもなく、誰よりも、強くなって、助けたい。本当に、助けたいんです。…誰かはわからない。でも、俺は、そうしたい。今より強くて、自分の道を切り開ける様に…用は、嫉妬してるんです。弱い弱いって、逃げて。…だから俺は、強くなりたい。」

こらえている様に、震えた声で、少しずつ話したジョラルは今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「…なんで、そんなことを心配するの?」

エリナは、昔の誰かの姿とジョラルを重ねていた。

「あなた、強くなりたいなら、言うことよりも先に、行動しなくちゃいけないんじゃないの?」

まっすぐ、アメジストの、透明で、不安定な、その瞳を見つめる。

「言ってるだけで、行動しない人が、本当に弱い人なのよ。勇気や覚悟っていうのは、行動して表されるんじゃないの?」

ジョラルは気づいた様に目を見開いた。

「出来ない、出来ないって言ってて出来るの?夢物語だけで終わらせるの?その程度なのね?」

 

ブルーアパタイト。真実を告げる伝達者の石。

 

まっすぐで、曇りの無い、宝石の瞳。

「…そう、でした。…そっか、俺、行動してない…」

ジョラルとエリナは、アイスコーヒーを飲んだ。ほろ苦い味が、口いっぱいに広がった。

 

ジョナサン、ディオ

 

「さて、ディオ僕が言いたいこと、分かるよね?」

ターコイズの瞳は、明らかに憤怒を表している。

「俺が、見ず知らずの男の父親って、話だろう?」

ホットコーヒーから湯気がたつ。

「なぁ、ジョジョ。俺がなにしたって関係ないだろ…?俺は、あの時そう言う行動をしなくっちゃいけなかったんだ。」

ディオは、悪びれもせず、堂々と座っている。

「…僕はね、ディオ、確かに悪いと思っているさ。それに、君がなにしようが関係ない、と言う意見にも賛成するよ。どうせ血は繋がってないんだ。」

ディオは、あれ、と思った。明らかに雰囲気が違う。本気で怒っている。

「でもね…ソレが、僕らに関係している、と言うことが重要なんだよ。」

天気雨は、止もうとしていた。

 

To be continued…




さて、いかがでしたでしょうか!

次回予告
第六話「警告は無視された。」

です!次回も引き続き、ご覧ください!
毎週土曜、18時投稿です!


Tarako、豆知識~!
ターコイズの意味は成功、繁栄、健康。
レッドタイガーアイの石言葉は、洞察力、判断力
です!


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六話「警告は無視された」

初めましての方は初めまして!
これまで読んでいただいている方はこんにちは!
Tarakoです!今回で六話目となりました!稚拙な文章も多少はマシになったんじゃないかなぁ、とひそかに考えております!
《前回までのリンク》
プロローグ
↳https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一話
↳https://syosetu.org/novel/237782/2.html
二話
↳https://syosetu.org/novel/237782/3.html
三話
↳https://syosetu.org/novel/237782/4.html
四話
↳https://syosetu.org/novel/237782/5.html
五話
↳https://syosetu.org/novel/237782/6.html

登場人物紹介
ジョナサン・ジョースター
ターコイズ色の瞳を持つ。兄として果たすべき使命のためにディオと話す
ディオ・ブランドー
レッドタイガーアイの瞳を持つ。帝王と呼ばれる。
エリナペンドルトン
優しい女性。いざとなったら強い。
ジョラル・ジョリオ
アメジストの瞳を持ってる。怖いもの苦手。いざとなったら覚悟決めるタイプ。

人結 契(ひとゆいちぎり)
深緑のおっきなポニーテール、黒いセーラー服を着た高校生。神様の為。


 

【挿絵表示】

 

 

黙示録のラッパ

 

「……どうなんだい、ディオ。君は、…君は、君自身が、どうしてそんな行動を取ったのか。僕に教えてくれよ。」

 ターコイズ色の瞳で見つめる彼______ジョナサンは、相変わらず、ディオに対して、…期待、と言うのか。期待の眼差しと、まさか、そんなことはしていないだろう、と言うような苦しい表情でディオを見つめる。

いつもなら鯨飲馬食のジョナサンも、この時ばかりは難しそうな顔をしている。

「…はぁ…貴様が、俺を許すと言うなら良いだろう。」

 ホットコーヒーを口元に持っていく、その動作一つ一つ、優雅で上品、隙の無い動きである。レッドタイガーアイの瞳が静かにジョナサンをとらえる。

縫い付けられたかのようなピリピリとした緊張感。ジョナサンはごくり、と唾を飲み込んでから、「うん。約束するさ」と、言った。

澄んだ瞳は天気雨の憂鬱で杞憂な空と対比して爛々と輝いている。

「じゃあ教えてやろう。…そうだな、あの女と交際を始めたきっかけからやるか」

 

 といっても、なんか特別なきっかけとかがあった訳じゃあない、俺自身、なんで付き合ったか分からない。て言うか襲われたのは俺の方だ。起きたら事後だった。時既に遅しっていう感じだった。確かに、ディオ・ブランドーという男はとても価値がある。欲しがるのは無理もない(ソレを自分で言うのか)

 だが、なんでベットの上でまたがなきゃいけない?そもそもハルノの件でそういうことには飽き飽きしていた。なにをしているんだって思ったさ、女がかけよってきて脅したんだ。俺も従うしかなかった。…だから、仕方なく付き合うことにした。子供が生まれた。興味深いものだ。ハルノは全く違う性格の奴だった。…忌まわしい、真っ赤な瞳で俺を睨んでいた。

 

 

「そんな、ディオが…?」

(全く、おめでたい頭だな。そう言う奴こそ狙われやすいというのをこいつは理解した方が良いんじゃあ無いか?)と、ディオはあきれながら考えた。上記の話は真っ赤な嘘であり、ディオの知られたくない真実を隠す為の偽の情報であった。

 弟、ディアボロの様子がおかしいと言うことに気づいたのはここ最近の話。なにか焦った、というよりは、何かから逃げなくてはいけなくなった、という表現が正しいか。普段と相変わらず生意気な野郎だが、そう言う時の…威勢、みたいな物が無く、心なしかやつれて見えた。兄の責務を果たすため、何度か問いただしてみたものの、一向に教える雰囲気ではなく、こちらとしても、どう対処していけばいいか、手に余る、という状態だったのだ。

 なので、ディオは上手くディアボロを騙し、聞き出す手口を考えていた。…勿論、ジョナサンが、騙している、ということを露知らず。どっちもどっちという感じだ。

 

()の星がキラキラ輝く。怪しげな雰囲気が辺りを満たす

 

 

 

「ところでジョジョ、貴様、感じるか」

ジョナサンの幼い顔立ちをみてから間をおいて、大袈裟に目線を流して、辺りを見渡した。

 

「あ、やっぱり?これ、間違いじゃなかったんだぁ」

呆気にとられた。まさか、ここまでバカだったとは!感嘆に値する程頭に花畑が咲き誇っているみたいだな。

「いやぁ、ディオのオーラが強すぎて…」

まぁ、確かに昔2m前後から、ジョジョ突き落とした俺のオーラが強くないわけないか。(それがジョジョの言う全身打撲事件である)

 

しかもこの異変に気付いたのは俺と、ジョジョ二人だけの模様。そもそもその他にはジョジョのつれてきた犬(ジョラル)とエリナしかいない店内は、しぃん、としている……え?

ディオは違和感を覚えて2度店内を見渡した。うん、俺含め四人しかいないな。…え?

同じ結果が出ることはおかしいのだ。背中の、星形のアザが警告しているようだった。危ない、危ない、と。

 

「ディオ~どうしたの?そういや、マスターが居ないね、どこかに買い物に行っているのかな?」

 

その一瞬で、ディオは自分のおかれている状況を理解した。全身から汗が吹き出た。どこで間違えた!?どこで消えた!?と、頭のなかで考えを張り巡らせる

 

 

ぽちゃん、と水の跳ねる音がする。

 

 

驚いて飛び上がってしまった。……水道から一滴だけがたれていた。それはシンクを伝って、消えて行く。なんだ、何か別の音だと思った、とディオがほっとしていると、

 

 

ガタガタガタ、と椅子を動かす音がする。エリナペンドルトンが、そこにはいたのだった。声を掛けようとしたが、なんだか気がひけた。その内、彼女が自らこちらに振り向いた。ゆっくりゆっくりこちらを向く。B級ホラー映画でもみている気分だ…顔がない?

間近でみると、肉が中側からえぐれて悲惨なことになっている。思わず上から込み上げてくるそれを必死に飲み込むと、酸の味がする。ジョラルとか言う奴が怯えた顔でこちらに助けを求めている。「いやだ、いやだ」と、これではB級ホラー映画のヒロインみたいだ、とディオは思った。ディオは、初めてみる光景なのに関わらず、何故か酷く落ち着いていた。…込み上げてきたのは、生理的現象だ。

 

そもそも夜なのがおかしい……真っ昼間から話していたはずなのに、そんなに急に夜になるか…?そんなに話していられるたちだろうか、自分は。そもそも、会話の内容だって、長くても一時間程度、エリナペンドルトンがそんなに待ってくれる性格にも思えない。

しかも、ここには店主がいない、音もなく消えていた。そんなことが、現実で出きるはずもない。それに店主はスタンド使いではなかった。明らかな事実だ。何故なら、スタンド使いだった場合、ディオや他のスタンド使いが気付かない訳が無い。彼らは一味違う。それでこのエリナの顔だ。ディオの中で、すべての物事がひとつの線になって繋がった。

 

 

ディオ・ブランドーは、その存在に気付いたかのように、まるでスローモーションのような動きでふりかえる。王者の風格と言わんばかりの迫力、その存在感!まさに帝王とまで言われたディオ・ブランドーを表している。金髪の髪が揺らめく。

「俺の目が誤魔化せるとでも?」

コツン、と、店内にもう一人、入ってきたのが感じ取れる。

キィィ、キィィと、刃物を床で引っ掻く音が、その不協和音がこの店に響く。

深緑の髪をひとまとめにして揺らし、ハサミの片割れを手に、そしてセーラー服をきた少女はディオへユラリ、ユラリと近づいてきた。

「ら、ら、ら、ららら、ら、」

歪な聖歌のメロディを奏でる。明らかに正気では無いだろうというように遠い目をした少女。

「あなたが…ディオ・ブランドー…?」

虚ろな目はディオをうつす

「フン、貴様、何者だ」

おじけもせずに、そして微動だにせずにそこに経つディオ。

(しかし、倒すのは難しそうだ)

そう思うのも無理はない。その少女のスタンド能力が案外厄介なものかもしれないという可能性が出てきた。

「そう、なのね……フフフ、あなたを殺せば、神様に認めてもらえる…!」

虚言であった。ディオは疑う。神という存在など、この世界にあるはず無いと思ってきた。絶対にない。それでも、目の前の少女は、神を信仰し、しかも己を殺すことで、上の地位を手に入れるなんて虚言、彼が信じられるわけもなかった。この店は彼女のスタンドの影響を受けていると言うことに気付く。

なぜなら、辺りが暗い…否、黒いということに。スタンドで包み込んでいるのか?それともエメラルドスプラッシュの上位互換のようなものか?

なぜか、平衡感覚が崩れていく。歩くのもままならず、たっているのでやっとだ。ディオは頭を抑える。なんとか、己のスタンド「ザ・ワールド」を呼び出す。

「あなたを……!殺せば……!」

 

To be continued…




カルマが背筋を追う。

さて、如何だったでしょうか!
新作情報は活動報告でご覧ください!
次回「アクアマリン」
となります!次回もお楽しみに!


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七話「アクアマリン」

初めましての方は初めまして!
これまで読んでいただいている方はこんにちは!
Tarakoです!
七転び八起きの七話です!頑張りましょ!
《前回までのリンク》
プロローグ
↳https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一話
↳https://syosetu.org/novel/237782/2.html
二話
↳https://syosetu.org/novel/237782/3.html
三話
↳https://syosetu.org/novel/237782/4.html
四話
↳https://syosetu.org/novel/237782/5.html
五話
↳https://syosetu.org/novel/237782/6.html

登場人物紹介
ジョナサン・ジョースター
ターコイズ色の瞳を持つ。兄として果たすべき使命のためにディオと話す
ディオ・ブランドー
レッドタイガーアイの瞳を持つ。帝王と呼ばれる。

ジョラル・ジョリオ
アメジストの瞳で、へよへよ主人公

人結 契(ひとゆいちぎり)
深緑のおっきなポニーテール、黒いセーラー服を着た高校生。神父愛してる

ジョナサン
みんなのお兄ちゃん

スピードワゴン
ジョナサンの戦友。

~あらすじ~
人結 契という少女が、ディオとジョラルの命を刈り取ろうと襲ってきた…!二人はどうする!?


 

【挿絵表示】

 

 

「はぁ、俺が何をしたって言うんだ!」

いつの間にかジョナサンの姿も無くなり、ジョラル、ディオ、そして目の前の敵のみとなった。

「『ザ・ワールド』時よ止まれ…!」

時は止まり、ディオの世界には静寂だけが流れて行く。

ディオは敵に詰め寄り、圧倒的なパワーでその少女の腹部に風穴を開けた。「フン、」と振り返りながら、タイムリミットが訪れたのだろう、時が動き出す。……と、少女の倒れる姿が…無かった。あったのは、無傷な少女と状況を理解していないジョラルのみであった。

「何______?」

思わず背後に振り返る。…そこには誰もいなかった。背後からやな予感がする。

その時、ジョラルが大声で叫んだ

「ディオさん、後ろ!」

背後から、大きな鋏の片割れを手に少女はディオを斬り倒そうとする。

「貴様ァッ」

彼の身体能力と、自身が襲われた時のための護身術が役に立ち、何とか切り抜ける。そして、なんといっても、彼の中に秘める、力のお陰と言えるだろう。

「んもぉ、なんで避けるのよ?あなた達殺さないと神父様に怒られちゃうの!」

意味不明な言葉をつらつらと言い終えた少女は、ふと、我に返ったかのように話し出した

「あ!私、自己紹介してなかったわ!私の名前は人結契。変な名前って言われるけど、神父様がつけてくれたのだから宝物なのよ。」

 

「貴様の自己紹介など必要ない」そう重ねて言ったのはディオ・ブランドーだった。なぜだかとても怒っているように思えた。

「なぜなら……貴様は今、ここで!死ぬからだ!」

「あら、そんなに怒っていいの?」

少女は至って冷静に述べる

ぐるん、と、視界が回る。それと同じく、ディオの身体も回転する。

「ぐぅっ」

タイガーアイの瞳は、それでさえも契の姿をうつし続ける。

 何かあるはずだ、とディオは思っていた。彼女は、何か隠していて、その隠した能力さえ分かれば、あるいは、何か思い付くかもしれない、と。辺りは真っ暗で、店内の証明だけが怪しく光る。彼女の持つ鋏の片割れがスタンドだとしたら、彼女は、一体どのような能力を持っているのか。それが攻略の鍵になるのだ。

「…まさか、だが…」

ディオは、何かを気づいたかのように、目を見開き、契を凝視する。

 

 

 回転する空間と身体に吐き気さえ覚え、身体の自由が奪われていくのを意識しながら、ジョラルは目の前の光景に釘付けになっていた。

 何かを呟きながら倒れているディオという男、焦点さえあわずゆらり、ゆらりとディオに近づく少女。何か、何かがおかしいのである。確かな証拠は無いが、ひび割れた鏡のように、2つの景色が重なっている様に見えた。

 ひとつの世界は、ディオが倒れ、少女が虚ろな目でディオを殺そうとしている世界。

 もうひとつは…ディオが逃げ続け、少女が襲いかかっている、『幻覚』______鋏の片割れが、キラリ、とジョラルの前で輝いた。瞬間、真っ赤な世界が、辺り一面に流れて行く。血肉が飛び散り、無惨にも惨殺されるような…スローモーションの様に再生させられる絶望の光景に、ジョラルの目はその瞬間だけ光を失い、言葉すら失った。ディオが、真っ赤な世界で、深紅の瞳で、ジョラルをみつめた。そして、彼の口元が、微かに震え、ジョラルには、こう聞こえたのだ

 

『望んだ、幸せ』

 

 自分にも、何が起きて、どうしてこういうことをしようと思ったかさえ解らない。震えた唇と、揺れる自分のアメジストの瞳が揺れ、そして、気付いた時には大声で、「やめろ」と、叫んでいた。

 

 真実ってなんだ?

 悪ってなんだ?

 正義ってなに?

 

『アナタはワタシ、ワタシは、アナタのココロを写す虚像』

その言葉で、はっきりと頭の思考はすみわたった。彼女の能力は、きっと、たぶんだが『彼女の望む最善の幸せ』を、幻覚でで見せることだということ。ディオ側の視点ではディオは起きているが、ジョラル側の視点では起きていないのがはっきりな証拠だ。彼女は、『二人を仕留める』ことを最善の幸せだと考えているのだろう、だから、二人以外には誰もいなくなっているのが動かぬ証拠だ。でも、彼女の能力を封じ込めるやり方を、ジョラルは、知らない

人のような形の、所謂…"スタンド"と、呼ばれる存在が、目の前に現れそして、少女の鋏を食い止めていた。そのスタンドは、ジョラルのことを守っている様だった。そして、ジョラルにこう言ったのだ。

『ワタシの名前は、へーリオス…』

 ジョラルは、訳が解らないままだった。自分の心に、スタンドが現れると思っていなかったからだ。それでも、ここで動かなかったら、訪れる結末は酷いことになるのではないか。そう思った時、ジョラルは、この疑問よりも先に、この絶望的な状況をどうにかする、という方向に頭が回ったのだった!

 

人の本能というものは恐ろしいものだ。『守る』よりも先に、『倒す』ということを優先する。

 

少女の胸に、鋭く、鋭く。そして深く、鮮やかな、艶やかなあやういソレが、ぶわぁっと、飛び散る。一瞬の出来事だった。ジョラルが危ないと感じ、『殺意』を抱いたまでの事。至極単純明快な話であった。

ジョラルはその出来事のせいで、一度深い眠りにつくのであった

 

 

「認証されました。要注意人物の人結契です。」

 

白衣をキチッと着た、SPW財団職員が、その最高責任者「スピード・ワゴン」に報告する

 

「わかった。後片付けは○○に~」

と、てきぱき指示するスピードワゴンのそばに、ジョナサンはディオの致命傷の傷に応急手当だけをした、身体がぐるぐるまきの彼の姿を、ぼーっと眺めていた

「ジョースターさん、大丈夫ですかい?」

その言葉で、我に返ったジョナサンは、「あぁ、うん」と、間延びした声で答えた。

スピードワゴンは、一度ディオに目線を向けてから、暗い趣で、ジョナサンに目線を移した

 

「ジョースターさん、俺は、少し怖いですよ」

まさかそんな言葉が、あのスピードワゴンから飛び出るとは思ってもみなかったジョナサンは、思わず「え?」と聞き返してしまった。

「ジョースターさんは、せっかく掴んだ幸せを、また、離してしまうんじゃないかって、考えてしまうんですよ。」

"ジョースター家の男児は代々不幸である"

その呪いが本当なのだと気づいたのは、ジョルノさえ不幸な出来事に出会ったからだろうか。それとも、自分自身が、身の毛もよだつ恐ろしい体験をしたからだろうか。

 誰も死なずにすんだ戦いでも、一手間違えれば死んでしまうかも知しれなかったのだ。そう考えれば、スピードワゴンが、そうやって案ずるのも無理はない。実際、ディオは意識不明の重体のまま、運ばれていったのだから。あんな悲惨な姿をみれば、誰だって、この呪いが刻まれた自分を心配するだろう。

でも。

「僕の家族が困ったり苦しんでいたりするのなら、それを無視するわけにはいかないと思うんだ。僕は、そんな酷い人間にはなりたくない。」

それは、黄金の精神、という奴なのだろう。正義でも何でもない、彼自身の勇気の形だった。

「でも、それでジョースターさんが…死んでしまったら、その、家族全員が悲しむんじゃないんですかい!?ジョースターさんは、そうしてでも守りたいんですか!?」

彼は自分と同じ死闘を切り抜けた戦友だ。自分が死に損なう、なんて場面は、きっと、たくさんみてきただろう

「おらぁ、そこまでして、身体を削ってまで、もう、戦ってほしくないんですよ…」

項垂れたスピードワゴンを見ながら、ジョナサンは、それでも勇気の眩い瞳でスピードワゴンを見つめる

「スピードワゴン、僕はね、誰かを失いたくないんだ。目の前に救える人がいるのに、君はほおっておくのかい?そして、僕がほおっておくと思うかい?君を助けたみたいに、他の誰かを救いたいんだ。家族も守りたいしね!」

ニコ、と笑うジョナサンに、明るい未来が見えたのか、はたまた任せられると理解したのか、スピードワゴンも笑い返した。

「ちがいねぇ、俺が間違ってたぜ!ジョースターさんが誰かを見捨てるなんて出来る筈がねぇ!」

ジョナサンは、微笑んで、小さく、こう言った様にスピードワゴンは聞こえた

「…………君のお陰でもあるよ、諦めなかったのはね」

 

 

「…通信が途切れましたね、契は死にましたか」

黒い影が、ほの暗い部屋に揺れる

「はぁ、てんで使えない奴だったなぁ。」

と、水色の髪が揺れる

「だったら、あなたが次に行ってきたら?」

黒い影が、水色の髪に問い掛ける

「良いよ、絶対に仕留めてあげるよ」

すぅ、と明かりが消えた




さて、いかがだったでしょうか!
次は、
八話「ジェットの記憶」です!
次回もお楽しみに~!
(感想評価、バンバン欲しいです!((((((()


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八話「ジェットの記憶」

こんにちは!Tarako@如月銘酪れす!!
アメif末広がりの八話となります!…あと二話で十話か、すごいぞわたし…!

これまでの話のリンク

https://syosetu.org/novel/237782/1.html
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凄いぞ!!(^ー^)

登場人物紹介

ジョラル
人結契を殺してしまいました。アメジストの瞳。凡人

ジョナサン
勘がよくて困る。気付かないで。

ジョルノ
もう知ってるかもしれない。情報網が幅広い。

少年。
休む暇は無い。

~あらすじ~
あえなく契を殺したジョラル。病院で目覚めると…


 

【挿絵表示】

 

 

深い深い眠りについていたジョラルは、昔の思い出に心を馳せる。

「わぁ…!」

目を瞑りたくなる程、眩い宝石を見つめるジョラルは、まだ幼い、十歳前後の年齢にも関わらず、身長は同年代より低く、それよりも体重が少なかった。ジョラルのいた、又は生まれた____家庭は、ジョラルを育てる事を放棄し、それよりも週末に、まるで着替えるように別の男と寝て、快楽を求め、さらには麻薬にも手を出した。ジョラルのいた地域は治安が悪く、暴動、騒動、ヤミ金や裏の取引、裏世界の市場で溢れていた。

 それでも、上層の方は華やかな町が広がり、スラムに住む人々は、一ドルも稼げない様な仕事を日々続け、まさに死屍累々としていたのだった。

 その、スラムの地域なかでも、ジョラルの家は裕福な方で、何故と聞かれればジョラルの母親が絶世の美人であり、彼女が高値で彼女の身体を売っていたからと言えるだろう。

 しかしジョラルの生活の為に身体を売っていた訳ではなく、そのほとんどが彼女が彼女の美貌を保つためだったのだ。

 

その惨状がコレである。

 

宝石を見つめる度、最後には母に「お前みたいなのが触るんじゃないよ」と、咎められ続けたが、それでも、いつか自分の指先で、その美しさに触れたいと思っていた。

 

母が消えるまでは。

 

何故消えたのか解らない。ただ、学歴を持たない母が、どこで知ったのか知らないが、つたない文字で

「宝石を全てあなたにあげる」

と書き、朝早い内に出ていったのだ、ということを直感で理解していた。

______ジョラル・ジョリオ、十五の夏の出来事である。

もう誰の咎めもなく自由に母の宝石を手に触れることがジョラルには許されたが、甘ったるい香水の匂いと、タバコの匂い、汗の匂いと相まって、なんだが濁った、つめたい色に見えてしまっていた。

 

それでも、自分の憧れていた夢を諦めきれず、大学に首席合格するために猛勉強し、ついには「首席」の座を手に入れ、大学に入ることが出来たのだ。

しかし現実は甘くない。それで順調な学校生活が送れていれば申し分無いのだが。ジョラルの出身がスラムな事もあり、クラスメートとジョラルとの心には、壁が出来上がり、それは、「近寄らない」という行動でも表されるようになった。

そのうちジョラルも身を潜め、自身と関係ないことだと一切の声や耳障りな情報をシャットダウンして生きてきた。

これでも努力した方だ、といいたい。装飾作りはまだまだ初心者ではあるものの、ここまで追い付いてこれたのだから。

 

______シスター、今回の仕事、もしかしてだけどさぁ

 

だが、自分は人を殺した。重罪だ。彼女の意識が薄くなる場面を思い出す度、吐き気がする

 

______ヤダァ、そんなことしたら俺死んじゃうよん!なーなー、半分ぐらいならさぁ

 

ずっとこのまま、眠り続けたい。

 

______ジョラル、起きて。ねぇ、

 

視界に、うっすらと青い空が見えてきたのを境目に、ジョラルはアメジストの瞳で窓枠に腰掛ける少年を見つめる。

「あぁ、やっと起きたんだね?ジョラル、ずっと会いたかったよ。」

吸い込まれそうな程真っ黒な瞳は、それでも輝きを持っている。まるで、ヴィクトリア女王の愛用した、ジェット(黒玉)の様に。

「ジェット…………」

「え?何それ、宝石?」

「よく解ったな、そうだ。宝石。」

少年は興味深そうにジョラルを見つめる。「あのさ、」と、少年がいいかけたとき、

「俺は、人殺し、に、なったのか」

と、ジョラルがこぼした。少年は「人殺し」というワードに反応したらしく、「え?」と聞き返した。

「人を、まもるためなら、殺していいのか?そんなこと、許されないんじゃないのか?」

苦しくなって、喉もつまりそうになった。少年は、挙動不審のまま、

「あのさ、なんのこと?君は、人殺しなの?」

と、ジョラルに問い掛けた。ジョラルは生気が無いような瞳で「ああ、」と呟いた。

「大切な、人を、守りたくて…でも、殺すなんて、間違ってる…まるで、自分の親がしたことと、そっくりそのままじゃないか」

胸が押し潰されて、苦しいはずなのに、なぜか涙はこぼれない。止めどなく溢れるはずで、そうしてしまえば、後は忘れてしまえるはずなのに。

「えっとぉ、飴、食べる?」

 

少年がいいづらそうにジョラルに申し出る。

「飴?」

ジョラルはきょとんとした目で少年を見た。

「うん。飴。スッゴク美味しくて、すぐに元気になれるはずだよ!」

少年がおもむろにポケットのなかに手を突っ込み、なにかをガサガサ探した末、飴玉を取り出し、ジョラルに渡す。

ジョラルは、口のなかに、黄色の飴玉をいれた。蜂蜜の味がする。

「…おいひい」

口にはいっている飴のせいで、「美味しい」とは言えなかったが、しかしながらコレはとてつもなく美味しい、とジョラルは思った。

「喜んでくれて良かった!やっぱり目の前の人が笑顔だと心地いいよね!」

そうだ、とジョラルは気づいたようだった。そう、自分が苦しいかおをしていたら、回りをかなしませてしまう。どれだけ悲しくても、今だけは笑顔でいなくてはいけないんだ。と。

「ありがと、君の、名前を、良ければ教えてくれるかい」

今度は、笑顔で問い掛ける

「僕の名前?えっとぉ、黒賀谷 水城。変な名前ってよく言われる。」

少年は、にやっと口の橋をつり上げて笑った。

「これから何日でも来るよ!君が悲しいかおをしないようにね!」

少年は、銀色の窓枠の外側にいってしまった。姿が見えなくなったあと、ジョラルは清々しい気持ちになぜかなっていた。

 

タイミングよく、ジョルノが部屋にはいってくる。

「誰と話していたんだい?」

ジョルノが、手を振りながら聞いてきた

「あぁ、えっと、とっても優しいしょうねんにあった。名前は…水城、だったような…?」

「そっか、良かった。皆心配してたよ、ジョラルがずっと魘されてて、一週間起きなかったんだから。」

ジョルノが、ははは、と笑いながら説明した。

「え!?もうそんなに経ってるのか!?」

自分でも、まさかそんな経ってるとは思ってもなく、あからさまに驚いているのがばれるぐらいには大きな声を出してしまった。

「うん。ちなみにディオはもう回復して退院したから、そろそろ来ると思う。」

ディオって、あの、殺されそうになってて満身創痍の…?とジョラルは半信半疑でジョルノに「回復するのが早すぎないか?」と聞く。

ジョルノは、別段変わった様子もなく、さらりといいのけた

「あぁ、ディオはとても回復力が高いですから、仕方無いことですよ」

ジョラルは、いくらなんでも一週間いないに退院は人じゃない!化け物だよ!と心のなかで思ったが、こころにとめておくことにした。少なくともジョナサンや当の本人にばれたら生きてこれるか危うい。

 

そのとき、ドアが壊れるんじゃないかと思うほどの強さでドアを開けた人物がいた。

ディオ・ブランドーとジョナサン・ジョースター。

「ハン、貴様私より傷が無かったくせに私より起きるのが遅いのか、呆れるな」

ディオの台詞に対しジョナサンがディオに蹴りをいれつつ

「ちょ、ディオそんなひどいこといわないでよ!君のこと信用してここにつれてきたんだからさ!」

と言った。

ジョラルとしては、本当にすぐ回復したんだ、と有る意味不気味、と感じていた。

「元気そうで良かった。すぐ退院できそうだね!」

ジョナサンは心底安心した顔で聞いてきた。

「え、もう退院ッスか」

ジョラルは、あの少年のことを思いだし、なんだか申し訳ない気持ちになった。

「いや、あと一週間位は縛り付けかな、ごめんね、ジョラル。」

あと一週間もここにいられれば、少年と長く過ごせるだろう、良かった、と胸を撫で下ろした。

「えと、本当に、大丈夫…?」

ジョナサンは心配した様子で聞いてくる。「え、何が…?」とジョラルが聞き返すと

「たわけ、貴様は人殺しだぞ」

と、タイガーアイの恐ろしいほど冷たい瞳で、ジョナサンが遠回しに聞いてきたことを理解する。

「あぁ、ほんと、全然大丈夫です。俺、なんだか変でした?」

清々しい位にさっぱり答えるジョラルに、ジョナサンは心のなかで小さな違和感をひしひしと感じていた。しかし、家族に違和感を覚えるなんてこと、無いだろう、と心のなかで納得させた。

「ううん、元気ならいいんだ。」

それに付け足して、「あ、何か飲み物買ってくるよ、何がいい?」と聞く。この場から少しだけ遠ざかりたかった。

「僕はコーヒーで。」

ジョルノが一番始めにいう。

「俺は紅茶で。」

それに続いてディオも、冷めた目でジョナサンを見つつ、要望を出す

「えと、じゃあおれもコーヒーで。」

ジョラルは、少し迷ったあと、ジョルノと同じ物を要求した。

「わかったあ!」

ジョナサンは笑顔で答え、その場を後にした。

 

 




どうでしたでしょうか!
さて、絡み合うディスティニー!ジョラルはどうやってこの残酷な未来を過ごしていくのでしょうか。
次回9話、お楽しみに!


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9話「秘密の蜜を舐めて」

こんにちは!Tarako@如月銘酪れす!!
あだ名がほちい。

これまでの話を一挙公開!
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
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https://syosetu.org/novel/237782/9.html

すげぇ、このりょうはすげぇぞー!

人物紹介

ジョラル
おまえ主人公なんか?みたいなやつ

ジョナサン
邪ナサンだよ

ディオ
帝王というよりいじめっこ感強い

四之宮理亜(しのみやりあ)
おま、おまえ…敵みてぇなことすんなよ

水城
飴が大好き

シスター・クラウス

神父


~あらすじ~
ジョナサンがジュース買いに来たよ!あれ…?なんか陰謀


 

【挿絵表示】

 

 

病院の付属のコンビニでドリンクを吟味していると、ディオがやってくる

「何、ディオ。」

彼と目もあわせず、目の前の「100%濃厚ミルクのカフェオーレ!」という、良くありそうなパッケージを見て答えた。

「不思議だな。」

彼もそのとなりのアイスコーナーの、「あずきバー『エクスカリバー』」という商品を手に取りながら、何ら関連性の無さそうなワードを話す。僕は、「100%濃厚ミルクのカフェオーレ!」を手にとって、やっとディオの顔を見た。

「何が?」

ディオは相変わらず僕と目を合わせない。どうやらアイスを自分の分だけ買うつもりらしい。どうせ僕に払わせるだろう。

「貴様が、あいつを見て、何も感じない事だ。」

ディオの目をごまかせるわけ無かった。彼はきっと、僕が感じた違和感の話をしているのだろう。

「どうだろう、なにも感じなかったよ。」

こんなやつに自分が考えていること全て見透かされていると思うと、隠し通したくなる。かごに商品を突っ込んで、ディオの目線から逃れる。

「嘘だろ、笑えるな。」

口調がしっとりした喋り方だ。彼かこんな喋り方する時は、大体探りを入れてる時だろう。

彼はきっと、僕がジョラルを疑いたくないという考え方をしてるのを知ってる。______僕自身が、そう思ってこのコンビニに逃げてきたからだ。

「なんかいったらどうなんだ?」

ディオの目線からはどうやら逃げきれてなかったみたいだ。彼の横を通ろうとすると、あずきバーをかごに入れられた。

「アイスぐらい自分の金で買ったら?」

「お前こそ相手に払わせれば良かったじゃないか?」

ディオは、僕の手に持ってるかごの中の2つのコーヒーを見たあと僕に対しそう言った。

 

喧嘩を売ってる。

 

挑発する時の鋭い目線に耐えきれそうになくなる。なんだ、その目線は。

「なんだ?その顔は。まるで駄々をこねるガキみたいな顔だな?ん?」

口の端をつり上げて、面白そうに言ってくる。挑発だ、乗るもんじゃない、と頭のなかで理解してるのに、許せる気が起きない。ディオが組んだ手が、急かすように腕を叩く。トントントン、って、あぁ、五月蝿い。かごを持ってる手をさらに握りしめこう言った。

「今すぐする話じゃない。後でじっくりはなそう。」

ディオが不気味なぐらい笑顔で「わかった」と言って、コンビニから出てった。

 

 

ジョルノが、ジョラルに他愛もない話を聞かせる。

たまに「あはは、」と笑っては、ふと暗い表情をして、また笑顔で話す。

「…ジョラル、には、…いや、何でもない。」

苦しい笑顔で誤魔化す。

「?ジョルノ、言ってくれよ」

ジョルノは手をブンブンふって言う

「あ、いや、本当に、大丈夫だよ!」

完全燃焼は出来ないけどもまぁ、という風にジョラルは

「そ、か」

と言った。それと丁度同じ時にドアを開けた、ジョナサン、ディオ、…そして、背後にもう一人、ボーイッシュに髪をばっさりと切った白衣を着た女性が入ってくる。ジョナサンが始めに

「ジュース!買ってきたよぉ」

それに対し、背後からディオが

「うるさい。」

と静かに怒鳴り付ける。女性が、ジョナサンに聞いてくる。

「あの、えっと」

ジョナサンが「あ、どうぞ~!」と言う辺り、多分だがジョナサンは存在に気付いてかったのだろう。

女性がジョナサンより一歩前に出る。

 

「こんにちは。SPW財団より、ジョラル・ジョリオ様のサポートを担当させていただきます。四之宮理亜(しのみやりあ)と言います。宜しくお願いします。」

まっすぐとした姿勢と目線に、ジョラルは目を泳がせながら

「あ、はい、よろしくおねがいします…?」

ジョナサンが、なぜSPW財団が来たのかを説明する

「僕らも、というか承太郎が、SPW財団から派遣されたスタンド使いに助けられた…?らしくてね、良かれと思ってだったんだけど、ほら、これからも過酷な戦いが続くわけで、僕らも、サポートしたい、と思ってね。」

ジョラルが、「はぁ」ととぼけた返事をする。

「あ、もうそろそろ行かなくちゃ、またね、ジョラル!」

ジョナサンが大きく手を振る。

ジョラルが「はい、また」と手を振って答えた。

ドアが締め切ったのを待って、締め切ると、理亜が立ち上がる。

「こんにちは。素で話していいわよね?あんた、別段ジョースター家と同じような綺麗な顔立ちしてないのね、驚きだわ」

理亜がジョラルの鼻をつっつく

「それに、あり得ないって感じ。あんたみたいな人が黄金の精神を受け継いでるなんてね。」

理亜が足を組みながら、先程のサポートするやらを言っていた美人とほど遠い人格を、ジョラルは目を白黒させながら見ていた。

「えっとぉ…」

ジョラルが路頭に迷う。なんなんだこの女!少しは距離感を感じ取れないのか!?

「ていうか、あなた、家族に敬語使ってるの!?あり得ないわぁ~!」

あっはっはぁっと、甲高い声で笑う姿は、ジョルノの真逆。(嘘だろこいつ、良く人前で出きるよなぁ)有る意味尊敬を抱きつつある。

 

「てか、あんたスタンド持ってるんでしょ?見せてよ!」

手をつき、前のめりの姿勢で聞いてくる。

「いや、あの、あれはとっさに出ただけで、今は…出ないんだ。」

ジョラルの言葉に、理亜は「は?」と言う

「なにそれ、意味解んない、貴方の精神よ??貴方自身が扱えないとかもうそれ、手綱がないと動かないものに手綱をつけられないからって放置してるのと一緒よ?向き合わないと、自分と!」

ジョラルが顔を伏せる。

「…ッ!!!るっせーー!大体なんだよお前俺なんも頼んでないんだけども???」

これじゃあまるで卓袱台返しする親父みたいだなと内心思いながらも理亜に指を突きつけて話す

「ていうか全部全部こけにしやがって!!お前凡人の俺が急にあーたらこーたら言われてどんな気持ちか考えやがれ!ただでさえ課題が終わらんっていうのに人殺しになって入院だぞコノヤロウ!頭どうにかなりそーだわボォケ!」

「いや後半の課題の話関係ないでしょ」

俺はものすごい形相で怒っていると言うのに理亜は笑いながら突っ込む。たしかに後半は関係ないかも。

 

理亜はふと、名刺を取り出してにこやかに笑いながら言った。

「宜しくね、ジョラルセーンパイ!」

…は?…………は??先輩…?せ・ん・ぱ・い?だって、SPW財団で働いてるんじゃ…?

「宝飾造形大学のとなり、『都立手鞠美術大学』学生でぇす!」

 

 

そう、『手鞠町』

 

 

彼女が自分の隣の大学なのはよしとして、説明しなくてはならない。『手鞠町』

ジョースター家全員の住む家が、手鞠町に存在する。東京都に有ることもあって、空気は澄んでいる。しかしまあ、住みたい町ランキングでは杜王町に負けてる。二位。まぁ、その『手鞠町』という町は、美術、いや、芸術が沢山並んでいる。そのおかげで、そーゆー系の大学が多いわけで。

ぶっちゃけ『手鞠町』の存在はあんまり気にしなくて良いと思う。

さて。

 

「うそぉぉ!!!じゃあ、俺はお前の先輩ってことかよ!?ひでぇ冗談だぜ!」

鳩に豆鉄砲。

「あっはははっ!そうよ、貴方は私の大先輩!」

きゃはははっと、まるで少女のように笑う。

(コレだから女性は、苦手なんだよなぁ。マジで無理。)

肩をすくめるジョラルをばしばしと理亜が叩く。

「いってぇ…」

 

 

 

 

コツコツ、と足音がする。

ステンドグラスが神々しく輝く教会の中心に、女性がいる。

「やぁ、シスター・クラウス。元気にしてた?」

「えぇ、神のご加護を持つ子供よ。」

「そう言うのやめてよ、もう」

手元にあるファイルから書類を取り出して読み上げる

「"神のご意志を妨げる者"は、精神的苦痛から病院にて治療中。一週間後にははれて退院だってさ。」

「そうですか…神父様にもご連絡しておきます。」

最期に、首にかけてある十字架のペンダントを握り、祈りのポーズをしながらシスター・クラウスは言った。

「神のご加護があらんことを。」

「ん。」

 

シスター・クラウスは、振り返り、誰もいない空間に語りかけた。

「これなら、『ラスト・リゾート』を行使してしまえばすぐ消滅させられるでしょう。…あなたが要です。なにかあれば私の『聖書』が。」

 

なにもない空間にも関わらず、低い美声が響く。

「わかった…」

 

 

 

 

 

所で、だが。

「なんの美術…?をやってるんだ?」

ジョラルが理亜に聞く

「えっとねぇ、油絵ってやつ。今は静止画の花を描いてるわ。」

「へぇ、面白そうだな、今度見せてくれよ。」

「良いわ、あんたがすぐ退院すればね。」

うん。とジョラルがいった。理亜は立ち上がって

「またね。ジョラル先輩」

と、口の端をつり上げて去っていった。やっぱり女は怖い。

「やっほぉ、ジョラル」

窓の外から水城という少年が手を振る

「あ!水城」

「またまた参上でーす」

窓枠に飛び乗った水城が、また飴を取り出す。

「食べる?」

「あ、あのうまいやつ?たべるたべる!」

手を伸ばして口のなかで飴を遊ばせる

「なんか前より美味い…うまうま」

「それなら良かった!」

ありがとうなぁ、とジョラルが話す。水城は「良いよ、全然!あ、もう時間だ、バイバイ」といってまた消えていった。

 

(うーん、皆いい人だよなぁ、でも、理亜だけはちょっとムカつく感じか…容易に仲良くはなれないなぁ)




いかがでしょうか!
次回!祝10話!おたのしみに!

少し遅れましたが、人結契の立ち絵が出来ました。良ければご覧ください!
↳https://www.pixiv.net/artworks/85965457

人結契のスタンド「ガブリエル」
ハサミの片割れとリボンのスタンド。
リボンでくるんだ範囲は、契がみせたい「最善の幸福」をみせられる。

スピード:C
破壊力:B
射程距離:A
持続力:B
精密機動性:A

裏話『契は双子で妹がいるらしいよ。』


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祝10話「在りもしない真実と聖書」

最近は、予定よりも不定期に更新することになってしまい申し訳ありません…!そのぶんクリスマス回と正月回はうんと豪華にいたしますので…!!

年明けがアメifと共にとか奇妙すぎる!

こんにちは、!Tarakoです!どんな名前でお呼びしていただいても問題ありません!


これまでの小説一覧はこちら!
プロローグ
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一話
https://syosetu.org/novel/237782/2.html
二話
https://syosetu.org/novel/237782/3.html
三話
https://syosetu.org/novel/237782/4.html
四話
https://syosetu.org/novel/237782/5.html
五話
https://syosetu.org/novel/237782/6.html
六話
https://syosetu.org/novel/237782/7.html
七話
https://syosetu.org/novel/237782/8.html
八話
https://syosetu.org/novel/237782/9.html
九話
https://syosetu.org/novel/237782/10.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキリトリ線

また、10話を記念して、プロローグ、1~5,6~10話を一挙公開シリーズを投稿いたします!
是非ご覧ください!

~登場人物~

水城
飴が大好きで、すっかりジョラルのお友達!

ジョルノ
15歳とは。結構心配してくれてる。

ジョラル
現在精神的苦痛のため入院中。もう退院するよって。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あらすじ
ジョラルが入院している時、水城と出会い、その水面下で動く、「シスター・クラウス」と、「神父」の影。
様々な思惑と思想、やり方で結び付く、絡み合った"因果"______果たしてジョラルは何を思い、何を決断するのか。


 

 

【挿絵表示】

 

 

水城とジョラルは近しい仲になっていき、最近ではすっかりジョラルの容態は安定してきた。

「そういえば、水城のご両親とかって?」

ジョラルが水城の隣でアイスを突っつきながら聞く。

「居ないよぉ?」

その横で、棒つきキャンディーを舐めてる水城が平然と答えた。

「い、居ないのか!?」

しまった、まずいことを聞いた。とでも言うようにジョラルは声を荒げた。

「別になんともないよぉ?」

ジョラルが慌てながら

「いや、そんなこと関係ないよ!」

と言う。

「孤児でも…皆やさしかったからね。」

遠く、まるで誰かを偲ぶように。

「他にも友達が居るのか?会わせてくれよ!」

水城は立ち上がり、くるりと回って答えた。

「またいつか、ね!」

「お、おう」とジョラルが答えた時には、水城は居なくなっていた。

「ジョラル、また誰かと話していたんですか?」ジョルノが、片手に本をもって入ってくる。

「おう。…ジョルノだって忙しいだろう、仕事は良いのか?」

 

意外と、いや、結構な確率でお見舞いにくるジョルノは、例え15歳と言えど、ギャングのボス。その二つを両立させることは非常に難しく、ジョルノは休んでる暇があるなら仕事をする方だ。しかし毎日来られてしまっては進むはずの仕事も進まないのでは…とジョラルは少し前から心配していた。

「あっははは!そんなこと気にしているんですか?無駄ですよ、僕は仕事を早く終わらせることで有名ですから。」

にこにこしながら、「マキャベリの君主論」を読む辺り、本当に中学生か怪しくなる。

「それに加えてお前は受験生だろ!?」

ジョルノは思い出したようにあー、(このノリも軽すぎる)と言い、

「言ってませんでしたっけ。中学卒業後、フーゴに教えられながらギャングの仕事に専念するって。受験よりも大切な麻薬エトセトラが残っているので」

「そうかぁ、きいつけろよつっても、俺が言ってもいみねぇかも」

コーヒーを飲みつつ、その後は下らない話を小一時間していた。

と、ジョルノが立ち上がり「それじゃ」といって消えていった。

 

 

 

 

***大聖堂***

 

 

 

「…神父、あの少女の件は…とても、お辛かったでしょう…」

シスターが、部屋をノックもせずに、聖書片手に話し出す。

「あぁ、契の事か…」

神父は日記を書く手を止め、後ろに振り返る。

「彼女は…その、とても、良い、人柄でした。」

「ははは、なんだ急に。柄でもない事を言うねぇ」

笑いながら神父がドアを開ける。

「いえ、あなたは彼女の事を、非常に好んでいた様だったので…」

神父が、シスターが片手に持つ聖書をみて、成る程、と思った。

「…()()()()()()に、しようとしているんだね?…私には必要ないよ。」

彼の瞳は誰よりも純粋で真っ黒だ。考えが全て見透かされている様な恐怖心と、それでいて見るたび魅了される。

「ええ、そうでしょうね…普通はそう考えるはずですよね、これをみたら。…ですが、私の考えている事は、それではないんですよ。神父」

だが、自分だって、神父のように、考えることがある。

 

「人結契」という人物を一言で表すとするなら…呪われている。と、私は思う。

神父、という立場上、彼女は神のおわす場所に逝けたのだから、とてもそれは感動すべき事だろう。

 

しかしながら。

 

人結契の人生は呪われてるようにやはり思う。

産まれ育ちはとても良く、なに不自由無く生涯を全う出来ると、誰もがそうおもうような、本当になんの悩みもなく生きてきた。

…六歳の時を節目に、全てが変わってしまったが。

良くある煽り運転、だと全員が思って疑わなかった。煽り運転の上、不慮の事故で…しかし、契の人生はもっと複雑に暗転する。その日の後日、人結契という少女は七歳になった。それと同時に、監禁された。理由は…ごく単純、「そういう類いの人物」だった、ということしか。

 

兎も角契はその時初めて己の人格が成り立った。ある意味での「大人」になったのである。

それと同時に、精神の具現化、「スタンド」が現れたのである。

彼女のスタンド能力は最善の幸せを作ること…だから誘拐犯を殺した。何ら悩みもなく、平然と。

しかし、齢七になったばかりの幼女が人殺しをしていることに、世間も世界も許さない。法的に裁けぬのなら、「少年院」に投げ込む。

これすらも、人結契と言う人格には苦痛である。

そこに、シスター・クラウスが現れた。彼女は元々、別の人間に興味があったらしいが、スタンド使いとスタンド使いは引かれ合う。それも神が定めた運命なのだろう…

初めて契をみた時、彼女は物怖じもせず、真っ直ぐ私を見つめていた。だからだろう、あの少女は私の友人であったと……今はそう思える。

 

そして今。神父は、これまでのことを振り返りつつ、予想とは違う言葉に「え!?」といった。

 

沈黙が流れる

 

「そろそろ、拠点が欲しいですよね!」

「ふ、フククク……その、そろそろ新築のお家建てたいねって相談する夫婦の切り出しかた…」

まあ一応そんなことを考えていた時期もあったが。

つまり彼女がいいたいであろう言葉をオブラートに包まず答える

「つまり聖書で上書きすると。」

シスターは首を傾げながら答えた。

「ええ。我々も動くべきです…合理的な彼を仲間にしたいのなら。」

「そうか、うん、わかった。至急手配してくれ。」

立ち上がり、もう話は切り上げろ、という風に話す。これで伝わるだろう。

「ええ、勿論。では良い夜を。」

シスターがドアに手を掛け、何かを思い出したようにくるり、と向き

「そろそろ、本気だしてみては?」

と、挑発ぎみに出ていった。

彼女の足音が聞こえなくなったのを見計らって、

「そういうところが性格悪いと言われる理由だよ、君。」

愚痴を呟いた。

 

*明日/又は今日

 

「水城も懲りなくくるよなぁ…」

ジョラルは、夏だから、と水城に塩分補給のアメをプレゼントした。

「だって、君の友達だもん。」

そのアメをなめながら、水城が答えた。

「…今度、僕の友達に会わせてあげる。じゃあね!」

 

ジョラルは、今更ながら不思議に思っていた。

自分は明日退院する。水城とはもう会わなくなるだろう。

…だが、己と彼は必ず出会う…そんな予感が。

 

"俺の考えだが…スタンド使いとスタンド使いは引かれ合う、と思う。気を付けろ"

 

承太郎が、仗助と昔の事を語りながら、ぽろりといった言葉。それが、頭のなかで反復する。ジョラルは首をふり、いや、そんなことはない、と考えた。いや…考えざるをおえなかった。

 ガラガラガラ、とドアが開く。振り返ると理亜が居た。

「明日退院するんでしょ?早めの退院祝い。」

何やら大きなものを抱えていると思ったら、キャンバスだったようだ。綺麗な百合の絵が描かれている。しかし、綺麗なだけじゃなく、まるで瑞々しく、しかしおとす影は大胆に。裏と表を表したようなその油彩画に、みとれる。

「どお?あんた、みたいつってたじゃん?」

彼女もどうやら鼻が高いらしい。

「うん、素晴らしいよ。初めてだ。心が奪われたみたいに。」

それはきっと嘘よ、と理亜が口を挟む

「え?」

「だって、私よりも素晴らしい絵画はたくさんあるわ。今度美術館につれていってあげる!」

まるで貶しているように言っていることに気付いた彼女がなぜか声をあげてわらった。(しかし彼女が。決して笑えない。)

 

な、なんだよ!?別に良いじゃないか!!俺は…!!

喉元まで出そうになった言葉をごくん、と飲み込んだ。この女に構っていたら日が暮れて俺が先に死ぬ。

「あら…やっと私の扱い方を学んだのね?…まってるからねー!」

そう、退院して夏が終わったら大学が始まる。…しかし現在8月。会えるのはもう少し先だ。コイツは朝起きたら1ヶ月吹っ飛ぶ事が良くあるのだろうか。

「はぁぁぁ…うん、じゃあな」

うんざり…悩んでいた事も全部意味わからなくなってきた。なんだこれ。それにアイツは憎んでもなんか憎めない雰囲気があるんだよなぁ…それにしても今日は訪問者がたくさん来た。大学が始まればもっとたくさんの人々がいるだろう。…が、しかし、いつも通り生きていれば存在感は消えて誰も近寄らないはずだ。…多分。

それを今更ながら信じている辺り、今年もオトモダチは出来そうにない。そっちの方がいい。そんなことを考えていると、…ふと、「瑠」の事を思い出した。

彼はこの世界のどこかで、また何かをしているのだろうか。俺を魅了した、あのデザインを。…そうだ、デザイン科にいるのだったか…?やっと彼と自分の世界が繋がった気がした。手が空いて、やることもなく、適当にテレビをつける。

 

そこで、「瑠のスタンドが殺ったであろう事件の一部」が、放送されてるなんて(詳しくは二話にて)、夢にも思っていなかった。

物凄く嫌悪感がある。吐き気を催す。いてもたってもいられなくなり、慌ててテレビを消した。

 

少なくとも、俺が見逃したから、瑠はまだ、殺人をしているんだ。俺が、あの時…?でも、人を殺すことはいけないことだろうが。でも、そしたら、瑠を一体どうやったら止められるのか…?俺に、なにか出来るのか?…この、解らないスタンド…で?

「…止めよう、考え出したら思考がまとまらなくなる。俺は…別にどうなろうが…」

逃げるように毛布にくるまった。それは、ただ、本当に現実から逃げたくてやっていることだ。考えると、水城のことが脳裏に浮かぶ。彼とまた、たくさん話したい、と思った。そうしたら…考え出したこの因果を…消せる気がしたから。寝るとき、俺はジョナサンさんに、かけられた、とある言葉を脳内で再生していた。

 

"因果は誰にも変えられない。受け止め、時には戦わなくちゃいけない。"

 

 

*何処か

 

 

「ふふふ…簡単に捕まってくれて良かった…これなら明日…仕掛けられる。無理心中みたいな感じだけど…でも、これが、産まれた理由なら、どうであろうが全うしてやろう…」

きゅ、と袖を握って、続けて呟いた。

「でも…本当は…」

 

■■はいつまでも、失った人を思い続けている。

 

仕方無い事だろう。だが…仕方無いなんて言葉で片付けられる程、簡単で単純な未来ではない。





さて、いかがだったでしょうか!
感想、評価をつけていただくと、作者の今後の活動の励みとなります!
次回11話!因果の果てに何を見るのでしょうか…?

お楽しみに!


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十一話「アメジストの瞳で」

こんにちは!Tarakoです!
やっと基本投稿だぉぁぉぉ

**これまでの話のリンク**
プロローグ
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一話
https://syosetu.org/novel/237782/2.html
二話
https://syosetu.org/novel/237782/3.html
三話
https://syosetu.org/novel/237782/4.html
四話
https://syosetu.org/novel/237782/5.html
五話
https://syosetu.org/novel/237782/6.html
六話
https://syosetu.org/novel/237782/7.html
七話
https://syosetu.org/novel/237782/8.html
八話
https://syosetu.org/novel/237782/9.html
9話
https://syosetu.org/novel/237782/10.html
10話
https://syosetu.org/novel/237782/11.html


登場人物

水城
黒玉の瞳の持ち主。別名ジェット、石言葉は「忘却」

ジョラル
アメジストの瞳の持ち主。石言葉は「決断」

ジョルノ
十五歳のギャングスター。

アバッキオ
ジョルノの護衛として今回ついてきた。…別にこいつが居ないと物語が進まないとかそんなこと無いもん。

シスター・クラウス
女。クズの中のクズ

あらすじ

今日が退院日…!っと、水城はジョラルにようが有るみたいで?


 

【挿絵表示】

 

 

「貴方が、私を、『殺した』」

真っ暗闇の中、目の前の…殺した相手、人結契が睨む。

「貴方が…」

ガリ、と胸倉を捕まれる。

「ち、ちが、」

足がふらつく。_______________どれだけ人に励まされても、『犯罪者』という現実は、変わらないのだ。

「やだ、やめてくれよ…俺は、もう、なんなんだ…」

ジョラルが、がっくりと項垂れると、背後から気配がする。振り返ると…

アメジストの瞳の「自分」が、立っていた。

その瞬間に、辺りは光にまみれて、目を開けることもやっとになった。ジョラルは、ぐっと目を瞑り、次にその白い視界を開けた時は、病室の天井だった。

冷や汗をかいた肌を拭ってはぁ、とため息をついた。

今日、ジョラルは退院する。

「…嘆いたって…変わらない、のか…?」

水城が、窓枠に突然現れる。

「ジョラル、今日は元気がないけど、どうしたの?なんかいじめでもあった?それとも、嫌なことがあったの?」

心配してくれているようだ。水城はあめ玉を口の中で、ころころ転がす。

 

「…退院おめでとう。良いところ連れてってあげるよ。」

おいで、と水城が言って病院のそとを出た。ジョラルは、靴を履いて窓枠から外に出た。

「良いところ、って?」

水城についていく内、心は軽やかになり、先程の苦悩をすぐに忘れてしまった。

十分程度、森の中をさ迷う内、町の外れ辺りにある、教会についた。

「ここ。」

水城は手慣れた手付きで、教会のドアをおもいっきりあけた。埃が立つ。

「けほっけほ…ここ、教会…廃墟か?」

ジョラルは、人差し指で埃をかぶったステンドグラスをなぞる。

「うん、僕が育った所。廃墟じゃないケドね。」

水城はとてもうっとりした顔で教壇の上に手を置く。

「僕の友達ね、もう死んだんだ。」

おもむろに彼は手帳を取り出した。日記のようだった。

「死んだのは最近。…家は貧乏だし、その子は孤児だし…死体もどこかに消えて、葬式なんてしなかった。」

ジョラルは水城の話を聴きながら、彼の後ろに有る、少女が手をさしのべるステンドグラスをぼうっと見ていた。

 

 

「おかしな話、僕も死んだあのこも、神様の声が聞こえたんだ。…神様は僕らのことを、悔やんでくれたの。そんな悲しい過去を、って。」

水城も己の背後のステンドグラスを見つめる。

「…僕は、使命があるんだよ」

それまでは全くもって震えていなかった声が震える。水城は、少しだまって、やっと決心がついたように、そのの黒玉の瞳を揺らがせて

「ジョラル、僕と一緒に死んでくれ。」

といいはなった。黒玉の瞳は一つの光も通さない。

「…え?」

ジョラルは本気で迷っているようだった。

「僕は、俗語を使えば『スタンド使い』という存在だ。」

彼は瓶を取り出した。色取り取りの飴玉が入っている。

「待ってくれよ…なんで、そんなことを…?ていうか、『スタンド使い』って、そんな馬鹿な」

ジョラルは、今日見た悪夢のように手が震え、唇がわなわなと震える。

「僕のスタンド能力は【ジェット・スター】、飴玉を食べた人間から、特定の記憶を取り出し、別の飴玉に閉じ込めることが出きる。」

ジョラルの身体から、重力がすっぽりと抜けてしまったようで、瞳の奥から全てが真っ黒に染まる。

「水城は…俺を裏切ったのか…?そんな、ば、かな、俺とお前は友達、だって」

「この能力で君の嫌いな記憶…僕の友達、いや、家族か…その『人結契を殺した記憶』を無くした。」

水城は「信じられない?かなぁ?」と、笑いながら聞いてきた。

「僕も正直信じられないよぉ、君を、殺すなんてさ。」

水城は、涙を一粒流しながら話す。ジョラルは今だ状況が理解できぬまま、袖を握る

「この瓶の中には、患者さん全員の幸せな記憶が入っている。…ぼくを殺すことは出来ない。君は、親切で臆病な奴だろう?だから、君は、僕を殺すことが出来ないんだ。」

水城は、何か塞き止めていた物が一気に崩壊したようにぼろぼろを涙をこぼし始めた。

ジョラルは全てが無くなった感覚の中で、水城の、悲しみや恐怖、負の感情だけが理解できた。

水城は嗚咽を溢しながら言った

「ごめん、なさ、い、僕は、ほんと、は、」

ジョラルは走馬灯のように、これらの、たった二週間に起こった沢山の出来事を思い出していた。

 

腹が減って気絶したこと

ジョルノに拾われたこと

初めてジョナサンにあったこと

瑠に会ったこと

エリナさんに言われたこと、

契を殺したこと。

何もかも嫌になったこと

水城に会ったこと

彼に救われたこと

今______裏切られたこと。

 

「僕ね、きみの、きみの、ともだちに、なりたかったんだよ…契を殺されたこと、凄く許せないんだよ…!でも、でも、なよなよしくて、ぜんぜん、つよくないのに優しく、笑ってくれたり、聞いてくれたりするのが、されるのが!嬉しくって…でも、ぼくは、君を、殺さなくちゃいけないんだよ…嫌だよぉ、僕、楽しくって…」

嗚咽と共に、水城は思いの丈をぶちまけた。ごめんね、ごめんね、と、何度も何度も同じことを繰り返す。

 

 

嗚呼、自分は何をしているのか。こんな、子供に、なぜ涙などをながさせているのか?なぜ、人結契という少女を殺した己が、人結契の家族の、友達、という存在なのか?

「泣かないで、くれないか」

こんな少年が己に殺意も友情も抱き、しかしながら神という存在に、その存在意義を奪わされ、通常に生きることすら許されず、得たくもない力で他人に暴力を振るっている。

「俺は、お前の家族を、殺したんだぞ」

己がとてつもなく許せない。何を、させているのか。自分が死んでしまえればよかったんだよな…

「ねぇちゃんは覚悟してたから、お互い様。…でも、僕だけは、覚悟してないんだよ。」

ぐっ、と手を握る水城が、一瞬だけ穏やかな笑顔を見せた。

「ジョラル、この大聖堂の地下に行って。地下438号室、だ。忘れてくれるなよ…?」

一歩一歩、水城が近寄ってくる。まるで、愛しい人を見るように。

「僕も、あのこも、契だって、普通の人生だったら、こんなことを、しなくて良かったのかなぁ。」

水城が、ジョラルの頬に手を伸ばした。

 

自分のくすんだ瞳を隠すように目蓋を重ね、口の端をあげた。子供のように、年相応の笑顔だった。

 

瞬間

 

血飛沫が舞う。水城の身体から。

「水城!?おい、水城!?」

ジョラルは、今まで止まっていた時間の全てを取り戻すように、この一二時間の間に起こったすべての感情を一瞬に感じ、その後、ジョラルははじめて言葉を発した。

「水城を、なぜ殺した。何故、この子どもが…!」

ひゅぅっ、と掠れた声がする。水城はかろうじて声を出すことが出来ていた。

「ジョラル。僕のスタンド、は、解除しておいた。…君には、立ち向かって欲しい、契を殺したことを忘れるな。…でも、そのぶん、『奴ら』に好き勝手させるな」

ぎり、とジョラルの肩を、子供とは思えない力の強さで握ってくる。

 

「水城…なんで、お前は…」

アメジストの瞳は揺らぎ、ざらざらとした感情の平行線で、ジョラルは大粒の涙をながし続けた。

「嫌だよぉ、怖いんだ、何回もいろんな感情や世界が混ざる、俺には良くわからないんだよ…この先何をすればいいかも、恐怖にまみれて何も出来ない。」

精一杯感情を冷静にさせようと目の前を見た。

ステンドグラスの女神が、そのダイヤモンドのような瞳をこちらに向け、まるで嘲笑っているようだった。

 

______地下室428号室だ。忘れてくれるなよ…?______

 

 

「428号室。」

ジョラルはぎゅう、と、もう何の力もない、意思もないそんな少年の身体を傍にゆっくり置き

「ありがとう、水城。俺は絶対に、お前を助けるから。」

 

 

 

≪病院・ジョラルの病室≫

 

アバッキオは、その整然とした部屋を見て一言感想を言った。

「もぬけの殻だな。」

ジョナサンはそれこそまるで豆鉄砲を食らった鳩の用な顔で、がらんとした病室を見つめる。

「ジョラル…!?」

ジョルノは、まるで一つ一つのピース全てを当てはめたときのような表情をし、

「アバッキオ、ムーディー・ブルースを!」

アバッキオは「もうやってる!」と怒り気味に話す。

ジョルノは、そうか…と言葉を溢した。

 

 

 

はぁはぁ、はぁ、と、地下室に向かって階段を降りている。手を広げ、暗闇の中に、真実を探して。

「よんにーはち…っ!」

片手で身体をささえ、鉄のプレートに「428」と彫られた看板のついた部屋を見つける。

「すぅ…はぁ…ん。」

深呼吸して、まっすぐ透明なアメジストでその扉を開ける。

 

「ようこそ…ジョラル・ジョリオ…神のご意志を妨げる者よ…」

シスター姿の女性が両腕を広げジョラルを迎える

「随分御大層なお出迎えだな…」

「アメシスト…『決断』…ふぅ、私の名前を教えて差し上げましょう、不公平ですからね。私の名前はシスター・クラウス。この大聖堂のシスター。」

礼儀正しいお辞儀さえもに鬱陶しさを覚える。

「そうかそうか、シスター・クラウス、こんな地下で一体何を?」

ジョラルは、獲物をとらえたような瞳でシスター・クラウスを睨んだ。

「何…?聖書を読んでいました。」

彼女の瞳に写る光は何故だか奇妙だ。強いて言うならビスマス鉱石のように虹色の彩光に彩られている。

「…あの少年もろとも俺を…殺そうとしたんだな?」

ジョラルの心はざわついていた。何かがおかしい。事実はあっているはずだ。

(だが、俺のいる世界の一部がかけて、いらない部分が付け足された様な感覚がある。)

「えぇ、水城は優秀でした。…失くすには惜しい人材でしたね。…しかしながら貴方のような堕落者の肩代わりをするなど言語道断、そんなことはしてはならない事だったのに関わらず…あぁ残念です。」

クラウスは裾をあげ袖で涙を拭った。

「…どうやって俺を殺そうとしたんだ…?」

ジョラルは後頭部を鈍器で殴られたような衝撃をうけた。

「…水城のスタンドの唯一の弱点…それは、その飴に入ったすべての感情を受け持たなくてはならないこと。」

 

考えろ。

…ステンドグラスのそとから、ライフルの様な、遠距離がたの銃で、水城は脇腹を撃たれた。

…いったいどうやって俺があの位置に居るとわかったんだ?ステンドグラスのせいで中の様子は伺えないはずだろう?

「そういえば、あのマンションでマシンガンをもった男性を逮捕したようですよ、大変でしたねぇ、怖いですねぇ。」

マンション…?そこから狙撃したのか?

「さらには、一般人を狙ったテロリストだったようですよぉ」

 

ジョラルは、パズルの全てを解いたような感覚を掴んだ。

「…………アンタ…"スタンド使い"だよな?」




いかがでしたでしょうか!
次回の十二話もお楽しみに…!

アリーデ・ヴェルチ!


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十二話「あきらめて、また、けついして。」

こんにちは!Tarakoです!
締め切りに追われる漫画家の気持ちがわかる今日この頃

これまでのお話

一挙公開!
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
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https://syosetu.org/novel/237782/12.html

です!良くかいた俺!!!

⚠️今回は持論注意です~!

登場人物紹介…!!!

シスター・クラウス
虹色の瞳。うまれつき指が四本しかない。が、こんなきれいに四本にわかれるのは初めてだ。

ジョラル
スタンドが操れない。一応このお話の主人公立ち位置

ジョルノ
精神年齢年下の兄に囲まれた精神年齢20歳。ディオみたいにおちゃめ(?)

アバッキオ
空気になりそこねてるので十四話めっちゃ喋らせよ

理亜
ジョラルの仲間らしいけどジョラルに認められない。頭良い

ジョナサン
聖母じゃね?

神父
大体コイツ

あらすじ
水城が射殺された憎しみを堪えながら、ジョラルは地下へ向かった。…扉の先には「シスター・クラウス」なる人物がいた。
彼女はなにか裏がありそうで…?



 

【挿絵表示】

 

「…なんのこと、でしょうか。」

「まず、俺はどうやって殺されそうになったか、それが疑問だ。」

ジョラルは得意気に人差し指をたて、持論を展開する

「俺は銃で射殺されそうになった。…だが、どうやって俺が中に、この位置に、居るとわかったんだ?」

シスターは、片手でよろけた拍子に聖書に手を置く。

「俺があの位置に居ることは、水城ぐらいしか居ないはずなんだ。…辺りはホコリまみれ、ステンドグラスでなかの景色もわからねぇ。だから、あの時俺に命中し損ねたことは、全くもって不自然な事なんだよ。」

シスターは、声を荒げることもなく、さも平然のようにこう述べる

「ですが、銃を撃った人物が、間違えて貴方を射殺しようとしたかもしれないじゃないですか?」

シスターは片手で聖書を持ち上げ、ページをペラペラめくる。

「…そして、その聖書が問題なんだ。」

ジョラルは聖書を指差して、確定的な証拠を言った。

「その聖書は、他の人間には見えない!それに、スタンドの負荷になるから、こまめに出し入れをしてるんだろう、さっき『聖書を読んでいた』と言ったのにも関わらず俺にはそのテーブルに聖書が見えなかったぜ…?」

 

『ずっと聖書を読んでいました。』

彼女はそういったが、コンクリートで打たれたこの部屋のどこを探しても、聖書は見当たらず、彼女がよろけた時にやっとデスクに聖書が置かれている所をジョラルは見た。

元々生命エネルギーや、精神の具現化を長時間出しておくと、精密さが下がったり、パワーが無くなったり、ある程度のバフがかかる。その為、クラウス含め大抵のスタンド使いは、こまめに出し入れをする。しかも、自分がスタンド使いだとバレたら戦闘に発展する、等の事が嫌いな人間なら尚更だ。自分の全てをさらけ出しているのと同じだからだ。(だしっぱなしのスタンド使いもいるはいる。)

 

「貴方には見えなかったんでしょうね」

シスター・クラウスは、まだ平然としている。

 

長い沈黙が流れた。

 

その沈黙を早くも破ったのは、ジョルノ、アバッキオだった。足でドアを蹴破り、中に侵入してきたのだ。

「ジョラル!先程少年の遺体が有りましたが、あれは…」

「チッ、ブチャラティが付いてなくて良かった。」

2人ともはじめはジョラルを見ていたが、すぐにシスター・クラウスの存在に気づく

「あなた…」

まずはじめにジョルノが、シスター・クラウスの持つ聖書の存在に気づき、次にアバッキオが気づいた。

「お前があの少年を殺したのか!」

 

『…残念です』

クラウスが、先程よりも低い声をだす。

『…水城なら貴方もろとも始末できそうだったのですが』

シスターは、冷めた瞳で空を見つめる

『ですが、結局は人の心に惑わされ死んでしまいました。』

あからさま、というようにがっくりと肩を下ろした。

『二人ともバカな人間でしたね。』

 

ジョラルは、クラウスの纏う雰囲気に、恐怖に、圧をおされていた。

煮えたぎるような、一歩間違えれば爆発してしまいそうな、強すぎる意思はこの宇宙さえも包む。

 

『ですが、私はそうならない自信がありますよ』

誰かに話しかけるように、クラウスは話す

『どうぞご安心を。神のご加護のままに。』

クラウスは聖書のページをペラペラめくっていた手を止め、

 

「『聖書』!また世界を書き換えましょう!」

ジョラルは、足が崩れ落ち、まるで宙を浮いているような感覚になった。

「…っ!やっぱりスタンド使いだったのか!」

ジョルノも同様に膝をつく。

「書き換える…!?なんて能力なんだ…!」

 

ぶわっ、と風が吹き、ジョラルは、全てが抜け落ちた。…「シスター・クラウス」の全てをだ。水城の事すらも忘れてしまったのは、クラウス自身が水城の事をどうでも良いとおもっている現れだろう。

 

 

ジョラルが目を覚ました。酷く汗をかいていて、なんだか気でも狂った様だった…見たこともない地下室だった。自分はどこで何をしていたっけ、と記憶を掘り起こそうとするも、霞がかって何もわからない。

地下室の上にいって、地上に出た時、ジョラルは一人の少年の遺体を見つけた。

涙が何度も溢れた。

「ぁあ、ぅ…」

言葉にならない悲鳴だった。

自分はこの少年を知らないはずだ。この、顔も名前もわからない、この少年の顔を、それでもにわかに覚えているのだ。知ろうとしても全てが抜け落ちてしまうけれど、この幼気な少年の事を自分はなぜか知っているのだった。

「ジョ、ラル?」

ジョルノはどこかを打ったらしく、脇をさすってジョラルに駆け寄り、ジョラル同様少年の遺体を見た。

「…?何処かで…?」

ジョラル同様ジョルノも訳がわからなかった。記憶がなかった。

 

 

「…思ったよりも私達は表に出すぎてしまったね」

ジョルノもジョラルも振り返った。髪の長い、ぼんやりとした瞳の、いかにも神父だというような格好をした男だった。

「貴方は…神父ですか?」

ジョルノは、なんだか不気味なその男に不安を抱いた。

「あぁ、私はこの世界に住む全ての人を救うのが使命なんだよ」

神父は聡い人間であった。と、2人は思った。ジョルノもジョラルも、一瞬のうちにその奇妙な違和感を無くし、うんうんとききいった。

「君達も可哀想に…運命に阻まれて何もできなくなってしまったんだね」

ジョルノの頭を愛おしそうに撫でる。

「…私は、君達を助けるために来たんだよ」

神父はふと手をとめ、その手をそのまま広げ

「さぁ、早く逃げなさい。」

にこり、と笑いながらそういった。

ジョルノもジョラルも、後から来たアバッキオを掴んで、こくこくと頷きながら大聖堂を後にした。

それを見つめる影が一つ。

 

「…厄介なスタンド。」

くるり、と舞う女性。 彼女は理亜、元々はジョナサンに、『ジョラルへの警戒』を依頼されていた。その為、ジョラルが水城とつるんでいたのも知っていたし、大聖堂の情報を真っ先に掴んだのも彼女である。

なぜそこまでの情報を手に入れられたかというと、彼女の狡猾なスタンドの巧みに練り上げられた技と言える。

彼女のスタンドは、「ロキ」、北欧神話に出てくる神の名前で、狡猾な、そして別名トリックスターなんて呼び方をされたりもする。

彼女のスタンド能力は多岐にわたる能力で、

 

自身の雰囲気を固定する

物、存在、人物を隠す能力

人物や物を隠す能力は、火を纏わせ幻影を見せていて、それで炎を操ることもできる。

 

と、様々な能力があるが、もう一つ言えば器用貧乏になりやすいスタンドではある。

なぜならこれほどまでの能力を詰め込んだスタンドなら、どの能力をどれだけ伸ばすかが重要だからである。

そのなかでも彼女は、「自身の雰囲気を固定する能力」を伸ばし、ジョラルには「否めない」というような、絶対にマイナスにさせない雰囲気にさせた。それで違和感、距離感を感じさせず、自分を隠す能力で隠しながら、彼の後をつけ、彼らの一部始終を覗いていた、というわけである。

勿論の事だがクラウスのスタンド能力にはかかっておらず、クラウスがどのように姿を眩ましたか、も知ってはいるが、なんにせよ範囲が大きすぎて、ジョラル、ジョルノに行っても伝わらないだろうということが明確だった。

 

本来なら彼女はジョラルについていくべきだったのだが、それをしない理由として「ジョラルの価値観を変える」為には、シスター・クラウスと真っ正面からぶつかって、戦うべきだという彼女の考えが含まれている。(実際は戦闘向きのスタンドでは無いからだろう。)

そして、もう一つの思惑があった。

当然の事ながらジョラルを監視する事になったのだから、彼の行動は知るべきなのである。だから、彼が見た昨日のテレビの内容まで彼女は知ってる…のであった。

 

 

「ただいま!」

ジョラルはにこやかな笑顔で退院した。

ジョルノとアバッキオの連れ添いをつれて。

となりには理亜を連れていた。

理亜は、「ジョナサンさん、」とジョナサンを呼んだ。

「んー?どうしたの?」

ジョナサンは、簡単な話だとおもっているらしく、 ふんわりした声で聞いてきた。理亜は、廊下に連れていき、誰にも聞かれないところまで来てからやっと話し始めた。

「ジョナサンさん…詳しくは言えませんが、ジョラルは、何かの影響を今受けています。ジョルノとアバッキオも同様です。私は、ジョラルの受けた影響について詳しく調べておりますが、この一件だけで何か大きな物事に発展する可能性があります。」

ジョナサンは、その可能性を理解し、深刻な趣で

「わかった。その時は僕も協力しよう。」

理亜は、わかりました、と頷き、ジョラルの元に戻っていった。

「ジョラル、退院したばっかでしょら大丈夫?」

バシバシと理亜が背中を叩く。

「おま、それ俺を心配してないだろ!」

ジョラルが背中をさすりながら叱る。

「ごめんってえ、だって、別に、嫌そうな様子もないしー?良いかなってぇ!」

ニコニコしながらジョラルを見る。特に変わった様子は無い。

ジョナサンが、両手をあわせ、はい!と言った。

「ジョセフ、承太郎、料理作るの手伝って!仗助、お風呂洗ってくれる?ジョルノ、理亜を部屋に案内して」

てきぱきと指示するジョナサン、流石長男、と理亜が感心していると、ジョルノが、こちらへ、と案内してくれる。

「今日はジョラルの退院祝いに豪華にしよう!」

とうきうきでジョナサンはキッチンに向かった。

 

ジョラルは、散々だったなぁ、と、今日の一部始終をベッドに横たわりながら思い出していた。

ジョルノとアバッキオに…と思い出そうとした。

「…助けられた」

思わず自分が言った言葉は、信じられなかった。

なんで、こんなときに、自分は、「助けられた」と言った…?

「俺…、いや、今日の退院日は本当に最悪だった。」

ごろん、とベッドに転がって、スマホを弄った。

地方ニュースの欄に、銃を所持した人間が逮捕された、というニュースで持ちきりだった。

「うげぇ、怖いニュースばっか。」

横目でニュースを流していく。

「…疲れたな…全部」

ぽ何かを忘れている。でも何も思い出せないまま、今日が終わる。このままだったら、全部忘れたい。何か、一つ、心のなかにあったはずなのに…?

 

何かしこりを残した

 

まま、また眠りについた。




次回!十四話!ジョラルは果たしてどうなっちゃうのか(?)お楽しみに!!!


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13話「切り開くべき道」

2020年も残り僅かとなりましたね!
2020年を締めくくる小説として!
一話
https://syosetu.org/novel/237782/1.html

五話
https://syosetu.org/novel/237782/5.html

前回
https://syosetu.org/novel/237782/13.html

**
ジョラル
勇気も決断もクソもない主人公

理亜
いつも何かに追われるタイプ

ジョナサン
紳士…?おーい紳士ー?


何かに捕らわれている

あらすじ
理亜ちゃんは仕事に追われつつ、ジョラルは怪奇現象に巻き込まれつつ…



 

 

【挿絵表示】

 

 

「あー、仕事が終わらない…」

あ、皆さんどうもこんにちわ。理亜です。

今現在私は目の前にある山積みの…尚且つ私の視界を遮る書類と対決しております。

現在の時計の針はよい子も寝る12時前。

これが深夜の美しい夜景を彩るひとつだと思うと誇らしい気持ちもありますが、逆にのうのうと明かりを消して寝ている上司にダイナマイトを投げつけてやりたいと思っています。

「ダメだダメ。エナドリ買お…」

遡ること数週間前、ジョラルの担当になる前に押し付けられた書類達。先輩は

『護衛ほど簡単な仕事もねえっしょ、ダイジョブ!』

といって通常の一ヶ月の仕事分×3の仕事量です。はは。

ドアを開けた先に、ジョラルがつったっていた。

「あらジョラル。あんたこんなところでなにやっているのかしら?」

なにやらコンビニ袋をさげている。

「んいや、ジョギング帰りにお前のアパート寄ったら電気付いてたから…」

私のアパートは決してジョースター家に近いわけではない。大体30分位かかってしまうのだ。

「なんで深夜12時に折り返し含めて小一時間もジョギングするのよ、新手のストーカー?」

まあもっとマシな嘘を付いてほしいものだ。…本当にストーカーなら。

「いや、石を何個か研いで宝飾を作ってたんだけど…いつの間にか寝ちゃって、真夜中でさ、足が悲鳴あげてたしジョギングしようかなと。それよりもコレ。」

ガサガサ、と音を立てるコンビニ袋の中には、エナジードリンクと、栄養ゼリーがはいっていた。

「おお!徹夜と残業の救世主!」

「何一つ救われて無いけどな。」

ジョラルは肩をあげて訳のわからない、といった、冷めた目で理亜を見つめた。

その言葉に理亜は内心驚きつつ、

「まぁね。あんたも手伝う?」と冗談混じりに誘った。

「生憎、まだ社会人になりかけてるだけで使えないんだ。すまないな」

とかわされた。(どうせ嘘だろう。)

(ッチ、せっかく五時まで寝ずにやらせようと思ってたのに)

と内心がっかりしながら

「そお?用がないなら回れ右なのだけれど」

と半分強制的にアパートからジョラルを追い出そうとする。

「おう。また明日な。」

パタン、とドアを閉めた理亜は、ジョラルの「また明日」という言葉に心底呆れていた。

「…あんた、友達が死んだのも忘れてるのね。…バカな奴。」

 

…何かを忘れている気がする。明確にはなにもわからないのだが。だが、胸の中のしこりは、当然のごとくこびりついて剥がせない。

何より、理亜が、あんなに悲しく辛い顔をしていたのだ。何かあったに違いないのだろうが…

「…わからない。」

わからないからグダグダと時間を潰しているのだろう。

また、自分は何も出来ないのだろうか…?

(初めから何も出来てやしないんだ、何も出来ないに決まってる。)

ごろん、と寝頃がって、見ないフリをした。

 

『君は因果を信じるか』

 

ふと、低い男の声が響く。

「誰だ…?何をしようっていうんだ…?」

 

『私は信じている。』

 

こほ、こほ、と咳き込んでいるようだ。

「あんた…病気か?大丈夫か?なぁ、因果って、何なんだ?」

 

『運命』

 

気配がまるで無くなったようだった。

何かがあるのだろう。

真夜中は薄暗い。心細くなっていきカラス達はまるで不幸を呼ぶようだった。しばらくじっとしていると、まるで、それ以上詮索することはやめてくれ、というようにそれこそ、先程の男が言うように、ジョラルは眠りについた。

 

 

『夢、程自我をさらけ出し、そして不安定な物は無い。夢という物を誰一人として事実だと理解することはないが、夢…無限の可能性を秘めるそれ、は一つの運命の集束点へと導く目印を与える。クラウスは多少短絡的な様な気もするね。あぁやって逃げれば逃げるほど、策を労するほど、人は逃げ道を失うものだ。クラウスも知らず知らずのうち、ジョラルに向かうように記されている。…『運命の集束点』、因果に引き寄せられる。ジョラル君は感が良い。元の場所を辿っていっている。彼自身が、己の力に気づいていない事は痛手だが、…まぁ、この際そんな事はどうでもよい。いつかこの世界の始めの特異点に出会い、そして運命は巡り、新しい運命の軌道は、始まりを祝福してくれるだろう。私もそろそろ身を引くべきかもしれないが、その前に少しだけ、そうだなぁ、例えるならバニラエッセンスを一滴だけ加えよう。つまらないと飽きられてしまうからね。』

 

男は、笑いながら、己の精神の具現化たるそれに手を差し伸べ、まるで呆れるようにこういい加えた。

『神にこれ程まで近しい存在が私と彼しかいない、等、この世界は終わっているなぁ。』

男は、にやりと笑いながら、既に存在しなくなった廃墟…いや、教会から去った。

 

ジョラルは、うっすらと目蓋を開けて、天井を見て、その後に、何か思い立ったかのように立ち上がり、すたすたと廊下を歩き、そしてリビングに出た。

「おはよう…」

そこにはジョナサンが座っていた。まるで雰囲気が違った。静かな怒りをジョラルは感じた。

「ジョナサンさん…どうしたんですか?」

ジョラルは、この先がどんなに恐ろしいかを想像し、それでもジョナサンに説明を求めた。

ジョナサンの携帯が、ジョナサンの手でバキ、と折れる。

「…ディオが殺されかけた」

ジョラルは、突拍子も無い言葉に、「え?」と聞き返す。

「廃ビルの屋上から何者かに突き落とされた…重傷だそうだ。…助かる可能性も…」

少ないだろう…という言葉をジョナサンは飲み干した。その言葉を言ってしまえば諦めざるおえないからだ。

「ディオの様子が変だったことも僕は理解していた…!だけど彼なら何とか出来ると思ってた…ッ!僕は、僕は、見過ごした…!盲点だったッ!」

わなわなと身体が震える。心が震え、燃え尽きるほど身体は暑くなる。

「ジョナサンさん!」

はっと、意識が覚めるようにジョナサンが振り返る

「許さないでください。その人の事。…でも、道を踏み外してほしくないです。…お願いです、やめてください。」

 

紫の瞳は、青みがかった紫色になっていた。

 

「ジョラル君…ごめん…僕は…」

 

日が、夏を告げる。

開いた窓から、綺麗な風がぶわぁっと吹くと、ジョナサンとジョラルの髪が揺れる。

「…僕は、情けないな…」

ふと、ジョナサンは、思い出したかのようにジョラルに問いかける

「瑠君は…?彼はまだ、君との因果に決着をつけてない。…もしかしてだけど」

 

 

瑠が…実の父、ディオ・ブランドーを、突き落とした…?

 

「信じたくは無いな…だが、無いとも言いきれない。」

ギリ、と唇を噛む。

(何したって何も…本当に、変わらないのか…?)

眠る前、少し前に聴いた男の言葉を頭のなかで繰り返し思い出す。

 

『君は因果を信じるか』

 

「ジョナサンさん!どうしたんですか!?」

理亜がリビングに入る。とても焦ったようすだ。

「うん、理亜さん、…ディオが今死にかけている。…僕は今、実は身動きがとれないんだ。」

ジョラルは、またもや驚いた顔をする。

「実は、…なんでもない。とりあえず僕は今身動きがとれない。どうにか君らに、ディオを死にかけにした犯人を、突き止めて欲しいんだ。僕が君たちにこんなことを頼むことはきっと間違っているよね…でも、お願いだ。…ごめん。」

ジョナサンは何かを覚悟している様な瞳で二人を見つめる。

「そんな、ジョナサンさん、やめてくださいよ。あなたが謝ることなんて無い。そもそも私はあなた方をお守りするために派遣されました。頼まれなくともやりますよ。やります。」

理亜は、既に決心を決めていたようだった。

 

運命はすぐに傾く。急展開するこの運命にジョラルはまだ覚悟を決めていなかった。

「……っ」

命を懸けることなんて、ほんとはしたくない。危ないことは、自分から避けて通るべきだということを自分は知っている。

 

なら、見ないフリをして、現実から目を遠ざけるのか?

 

気づいていたはずだ。『星の血統』の持ち主である、ということに。わかっていたはずだ。避けては通れない道だということに。

 

「俺もやります。…しっかり出来るかわかりませんが、それでも止めません。俺が奴を止めるべきなんです。…よね?」

頭をあげ、ジョナサンを見つめる。

「…ありがとう。二人とも。」

ジョナサンが、ぎゅうっと、二人を抱き締める。

 

 

 

*****************

 

 

 

 

勇気ある者

月に惑わされず

星に照らされ

真実を掴むであろう。

 

 

 

「また…星が一つ」

 

*****************

 

「んでジョラル~、あんた、どうすんのよ?」

理亜がジョラルの口にポテトを突っ込む。

「んぐっどうするって…?」

「スタンド操れないのあたし知ってるよ?」

にこやかな笑顔でジョラルの背後のスタンドを指差す。

「ぐぅ…俺にはよくわからないんだよなぁ、こいつの、能力?とか。」

理亜が呆れたように言った

「自分を知ればいいのよ。ま、良いわ。あ、SPW財団から連絡来たから席外れるね。」




はい、今回は500文字減でお送りいたしました。
ほんともう休みが欲しい…

14話は、新年!
皆様、アメifをここまで読んで頂いてありがとうございます。
来年も精進して参りますので、何卒よろしくお願い致します。
皆様に少しでも多くの感動を与えられます様に。


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14話「サファイア」

始めましての方は始めまして!
あとこんにちは!(こんばんわ!おはようございます!)
Tarakoです!
残り一話で十五話です!ボリューミーな小説になってきましたね!

~これまでのリンク~
プロローグ
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一章一話
https://syosetu.org/novel/237782/2.html
一章五話
https://syosetu.org/novel/237782/6.html
一章十話
https://syosetu.org/novel/237782/11.html

千UAも越えてそろそろ死ぬんじゃあないかなぁ、とおもっている今日この頃です!


人物紹介
○ジョラル
主人公っぽくない。なよなよしてる。でも元気がある時はやる。

○四之宮理亜
SPW財団職員。しょっぱなから少し怒ってるっぽい。口は固くない。

○ジョセフ
珍しくあまりちょっかい出さない。なにやら友人は入院中

○瑠
星が大嫌い。夢を叶えるためにシスターの夢を叶える。

○シスター
またやらかした()こいつがいると事件しかおきない。

○神父
頭いいけど、そこまで洞察力は良くない。人を困惑させるのが好き


*あらすじ*
ジョラルは自分のスタンドも制御できず、そのまま戦いを挑むことに不安を覚える。理亜も同じような心境らしく…?


 

【挿絵表示】

 

 

「誇れるほどの話でもないんだが、『サファイア』にも産地によって価値が違うんだ。サファイアの、色の濃淡が違うからなんだよ。」

磨かれたサファイアを、ささくれだらけの男らしい手が、すぅっと撫でる。

「じゃあ、このサファイアの産地全部わかるの?」

黒い長い髪が揺れ、それを束ねる髪飾りの宝石は太陽の光を反射し、チカ、チカ、と光る。

「うぅーん、まぁ、わかるかなぁ」

男は手にとって、一つずつ産地をあてていく。

「すげえ、ほんとにわかるんだ」

紫の瞳は、キラキラとその男を写した。

 

「ん"ご!!!!」

ぱちくりと目を白黒させ、ジョラルはやっと意識を自分に戻した。

「はぁ、はぁ、はあ…」

なかなか昔の事を見て、頭が混乱しているようだった。

「おはよークソガキ」

理亜は黒い艶のある髪をさらりと揺らしコーヒーを飲む。

「瑠があんたを襲うのは満月の日らしいわ。」

ジョラルは、理亜から受け取った緑茶を飲みながら、「え?」と聞き返した。

「んーとね、瑠の出現条件をまとめてみたの。全部に共通する点が、満月、夜、あと…雨が降った前日、または直後の水溜まりが沢山出来る時なのよね。」

ジョラルが、「つまり?」と先を急かす

「つまり、この事から、今週の金曜日、五時…雨が降る時刻に合わせて、廃ビルに行くわ。」

「まてよ、理亜、もしかしてだけど、ディオさんが落とされた所じゃ無いだろうな」

「ねぇ、あなたをバカとは言いたくないのだけれど、もしかしなくてもディオさんが落とされた廃ビルよ。バカなの?あ、ごめん。言うつもり無かったわ」

理亜が呆れ顔で話す。

「おいおい、無謀でバカなのはお前の方だろう、廃ビルはダメだ。瑠が住み着いてるんだったら、瑠の方が地形的に有利になってしまうだろ。」

理亜の中で何かが切れたらしく、即座に彼の襟首を掴み怒鳴った。

「うっさいわねぇ、友達を死なせておいて記憶の無い馬鹿には言われたくないんだけどさぁ、アンタねぇ、この中で一番スタンドの戦いになれていて知識が多いのはどっち?私よね?なんか勘違いしてるみたいだから教えてあげる。アンタなんてクソの役にもたたないわ!アンタのせいで押し付けられた仕事だって少なくはないんだからね!余計なことゴチャゴチャ言ってないで私にしたがってれば良いの!わかる?」

ジョラルはその剣幕に押され、驚いた顔で理亜を見つめている。

理亜は疲れたのか、はぁ、と一息ついてから、席に座った。

 

先程より険悪な空気が流れている。

ジョラルはさっきから、気になっていた言葉を、思いきって言ってみた。

「あのさ…『記憶がない』…って何?まるで俺が何かしていたみたいじゃん。記憶あるけど?」

理亜は、チッ…と舌打ちしてからボソッと付け加えた

「歴史が改編されたの。アンタはその被害者だから記憶がないの。」

(物凄い怒ってるなぁ…あんまり聞き返すのはやめとこう…)

理亜はとうとう限界が来たらしく、バン!と扉を閉めた。

ジョラルは伸ばし損ねた手をもとの場所に戻す。

「俺、分からないんだ。思い出せないんだ。誰かの思い出。すごく叫んでるのに、わからないんだよ…」

ジョラルは、むしゃくしゃしたからなのか、理亜と同じく、バン!とドアを閉め、自分の部屋のベッドにダイブする。

 

 

リビング

 

「ジョラルも困りもんだよなァ~」

ジョセフが、コーヒーを飲みながら、理亜に話を振る

「…困ったとかそういう次元じゃないですよほんと迷惑です。っていうか、ジョセフさん、ご友人の容態は。」

理亜が、自分の会話に突っ込んでほしくないらしく、話題を変える。

「おおっと理亜ちゃーん?その顔は「自分の話に突っ込んでほしくないから話題をそらした」顔だぜぇ?」

ジョセフがニヤニヤしながら理亜を指差す。

「は、ハァ!?そんな______」

「アンタは次に、『そんな憶測だけで簡単に言わないでください…!』と言う!」

「そんな憶測だけで簡単に言わないでください…!…っは!」

ジョセフはハーミッド・パープルを腕に伝わせながら、

「ははぁん、オレってばやっぱり天才?」

とコーヒーを飲む。

理亜はムスットした顔をして、礼儀正しく礼をしてから家を出た。

「…むずかしーんだろーなぁ、皆。」

ジョセフの友人がくれた花は、日の光を浴びて、さんさんと輝いていた。

 

 

「…夜、か。」

ジョラルがむくりとベットから起きる。

机の上に置かれたアメジストが、怪しく光る。

手を差し出すと、もうひとつの自分の 精神の具体化が、その上に手を置く。体温もなにもなく、ただ、その不思議な見た目の自分は、胸のうちに問い掛けてくる

「怖いのか。」

ジョラルは、手をぎゅ、と握る。

もう独りの自分の瞳はアメジストの深い瞳だった。

ズキン、と頭がいたくなる。

「目を背けるのは、怖いからなのか?」

ジョラルの握る強さが強くなる。

きっと見たことある、赤い光景。視界いっぱいに広がる、朱色の景色。

「い、やだ、目を背けたくない…!もう、いや、なんだ」

自分の具体化が、笑ったように見えた。

「なら、思い出せ」

 

黒玉の瞳が、なんの景色も写さなくなってしまった、あの、景色を。

 

「逃げない。逃げたく、無い。」

 

もうなにもない空間に、拳を握る。たしかに託された、誰かの希望のために。

 

 

*翌日

 

 

「ジョラル…あのさ」

理亜が、申し訳なさそうにジョラルを見る。

「理亜、ごめんな。思い出したんだ。」

ジョラルが、理亜の瞳を見ながら言う。

「…!本当、なの!?よかった…」

ジョラルが、顔を隠すように、理亜の手を握る。

「ごめん。俺、もう諦めないからさ。」

ポタ、ポタタ、とジョラルの瞳から涙が溢れる。

「…バァカ、ちょっと汚いからその手離しなさいよ。」

「俺、もう逃げないからさぁ、ほんと、ほんとに、ごめんなぁ、お願いだよ、手伝ってくれないか、きっと俺だけじゃ出来ないんだ。」

理亜が、シッシ、と手を払う。その後、ニヤニヤしながらこう言った。

「なにいってんのよ、私はSPW財団職員よ?手伝うために来たんだから、あんたも頑張りなさい。」

 

「あぁ、ありがとう…」

理亜は、くるりと背を向け

「ご飯できたってよ、いくわよ」

といって先に出発した。

テーブル越しに二人ですわる。

「んで、瑠仕留めたら、流れ的にシスターとも戦わなくちゃいけないわ。…奴の弱点がわからないから、私たちには痛手ね…」

理亜が、はぁあぁ、とため息を吐く。

「でも、とりあえず戦わないとダメだろ。それに瑠のスタンドなら俺は攻撃を見たことがある。一度受けた攻撃に二度食らうなんて羽目ははずさねーって」

理亜が、二度目の深いため息をつく。

「いい?そもそもスタンドに、強い、弱い、こーしたらすぐに再起不能になる、ってのは少ないのよ。そもそもたつ土俵が違うしね。一つ一つ別の能力があるから、それによって攻略方法を変えなきゃいけない。意外とめんどくさいのよ、スタンド同士の戦いは。」

ジョラルが目を見開く。

「まてよ、それって、どのスタンドも、「最強」になれるってことかよ!?」

「まぁ、そうなるわねぇ」と理亜があまり不思議ではない、というような言い方をする。

「でも、大切なのはそのつぎよ。スタンドが現れるって言うことは、表裏がはっきりするタイプ、性格が固定された状態。それになると、スタンドが生まれたり、またはスタンドが強化されるわ。そして等しくスタンドには弱点がある。それを見つけてその弱点をついて戦うのが正しい戦い方ね。」

理亜からもっと詳しくはなしをきくと、どうやらスタンドは生まれる条件も特殊だったり、自分自身がスタンド使いということに気付かない、ということもあるそうだ。

「なかなかおくが深い話だなぁ」

自分のスタンドが発現したのは、契との戦いの時だ。あの時、自分は何を思っていたのか、今では自分自身も良くわからない。ただ、自分がスタンド使いになることは無い、と思っていたから、とてつもなく驚いた、ということぐらいしかあまり記憶に残っていない。

「…でも、そうね。あなたが瑠の技を一度でも受けたことがあるなら好都合だわ。もしかしたらすぐに弱点が見つかるかもしれないわ。」

 

 

 

 

 

*廃ビル・屋上

 

「…んで、俺は何をすればいいんだ?」

ガーネットの瞳は、もはやなにも見えない。それは、彼自身が自分が回りを見ることを拒み続けた結果なのだろう。

「あなたは彼と戦ってくれればいいわ。私はその間に全てを終わらせる。うまく行けばすぐに塗り替えられるわ。」

ぶわ、とブロンドの髪が揺れる。

廃ビルのしたには、沢山の自動車、そしてビルが並ぶ。瑠の背中は照らされ、逆光のせいで顔はうまく見えない。

「…本当に、やってくれるんだな?…お前のことを信じているわけではない。」

「"ただの保険だ"…そう言いたいのでしょう?…安心してください。私の精神は尚も強くなりつつある。あなたの願い程度ならすぐにでもかなえられます。」

瑠がギロリとシスターの顔を睨む。

「じゃあなぜかなえない?貴様が先に夢を叶えれば、貴様の夢も確固たるものになるだろう。」

シスターは、どこか焦っている、と瑠の表情から汲み取った。

「なぜか、と?必然ですよ、あなたの夢を今ここでかなえたら、あなたは私の欲望を叶えてくれない。あなたはすぐに私のことを裏切るでしょう?」

不思議な虹色をする瞳が、瑠を睨む。虹色は濁った色をしていた。シスターが一歩、瑠の前に足を踏み出すと、瑠はぴくりと体を震わせた。

「それに、あなたは今とても焦っているように見える。」

瑠の手を握り、シスターは微笑んだ。

「我々は神の声を聴くことが出来ます。何も動揺することはない。救われたいのでしょう?」

その手に力が込められていく。きっと、「もう離してやらない。あなたと私は一心同体」と、言っているのだろう。瑠は、ポタリと頬から汗を流しながら言った。

「…ッチわかってる。俺は貴様を裏切らない。」

シスターは手をぱっ、と離し、「では、検討を祈っていますよ。」といって宵闇の中に溶け込んだ。瑠は、体の脱力感を覚え、ゆっくり座ると、固いコンクリートの上に身を委ねた。

 

 

 

「…君は、これから僕のすることを許してはくれないだろうね」

ジョナサンは、電話の向こう側の相手に、そうしてくれ、と願うように言った。

「あぁ、俺は許しませんよ。何もジョースターさんがやることじゃあない。…俺が代わりにやることだって」

受話器の向こう側の相手は、ジョナサンを諭すように言ってくる。行って欲しくないようだ。

「ただ、僕はこうでもしないと、自分の無力さを紛らわせないんだよ。残念なことに僕は、君のようにお人好しじゃない。」

決意を決めたようだった。受話器の向こう側の相手は、わなわなと唇を震わせている。

「だからといってもし自分が失敗した時の代わりなんて、作る必要がないじゃないですか!俺は言ったはずですよね、アンタが幸せを無くしちまうんじゃないかって!今まさに、そんなことをしようとしてるんですよ!俺はアンタに行って欲しくない…!」

ジョナサンは苦し紛れに笑った。…と相手は感じた。

「大丈夫。僕は負けない。負けたとしても、彼らが遣ってくれるから。…じゃあ、そろそろ切るね。」

受話器の相手は、まだなにか言いたそうに叫ぶ。ただ、ぷつんときれてしまったその時、彼はもうその家にはいなかった。受話器の相手は、何も出来ないのかと崩れ落ちた。

 




いかがでしたか?
評価コメントおまちしております!
次回十五話!お楽しみに!
アリーデヴェルチ!


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15話「リビングデッドの箱庭」

みなさんこんにちは!万年筆のインクを入れ換えてたら見事にインクをこぼしました!Tarakoです!
15話って区切りが良いですよね!良いと思います!

これまでのリンク
プロローグ
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一章一話
https://syosetu.org/novel/237782/2.html
十話
https://syosetu.org/novel/237782/11.html
前回
https://syosetu.org/novel/237782/15.html

人物紹介
○瑠
羨ましい人

○ジョナサン
勇気とは怖さを知ることだと教えてくれる人

○エリナ
受け継ぐもうひとり

○男
ふきんしん

○シスター
自分のては汚さない


 

【挿絵表示】

 

 

藍色の絵の具をそのままキャンパスに垂らしたような深い夜。弾け飛ぶように光る星達は、今はなりを潜めている。今夜の主役は「月」というように。やはり月は豪華にかたどられたクレーターに魅せられその完璧なまでに美しい球体を背に二人の男は向かい合っていた。

下にはクラクションと喧騒が響く。まるで働きアリのように動く人々は、もう夜だと言うのに冷めやらぬ熱を抑えきれないようだった。

一人の男はひょろりと細く、肌の白いのは父親譲りのようだ。

ガーネットのくすんだ瞳は、貪欲な瞳であった。

もう一人の男は筋肉質な体つきであった。真っ青な瞳はターコイズのようで、青く燃え盛る意思のような物を感じる。

「………瑠君、僕は君を許さないよ」

ターコイズの瞳…ジョナサンは、拳を握りしめる。

「どういう意味だ」

瑠と呼ばれたガーネットの瞳はすぅ、とジョナサンを見つめる。

ぽつぽつと雨が降り始める。

「まさか、本当にわからないのか?君は僕の弟を突き落としたんだ!!!」

ジョナサンの剣幕におされ、瑠が一歩のけぞる。

「あれは仕方がなかった!ああしなければ、奴は死んでいた!奴の意識がないだけマシだ!お前こそ、こんな無駄なことはやめた方がいい。これは『勧告』だ。いいか、もう無駄なことはやめろ。」

瑠が人差し指でジョナサンを指差す。瑠は何かを焦っているようで、手首の腕時計をチラチラと確認する。降りだした雨が、二人のからだから容赦なく体温を奪う。

「君にそんなに余裕があるとは思わないな。それに、『仕方がない』だけの理由でディオを突き落としていい理由にはならない。」

ジョナサンは怒り心頭のようで、走り、オーバードライブで拳を繰り出す。瑠が上手く避けるも、隙をつかれたからか、紙一重、という感じだ。

「まずい!奴が来る!」

ジョナサンの繰り出した拳を、一本の指で抑えた男がいた。

「…ッ!!誰だ!?」

ジョナサンが顔を上げる。…が、雨と夜のせいか、あまり顔が見えない。

「今日はね~シスターに呼ばれてきたんだよ。君を排除するためだって!」

幼い顔立ちの男は、洋風のマントをヒラリと翻し、ジョナサンの瞳を覗く。

不意に、ジョナサンのスマホが、落ちた。と、同時に「エリナ」から電話がかかる。

男は、電話をとる。ジョナサンは、男の放つオーラに圧倒され、一瞬の身動きさえ出来なかった。

「はぁーい、もしもーし、エリナちゃーん?」

『…あなた、誰ですか』

エリナが震え声で話す。

(くそっ!上手く波紋が練れない…あの男、僕に細工したのか…!?肺が押し潰されたみたいに痛い…)

「ジョナサンのお友達だよ~」

男がニタニタとエリナに話しかける

『あなたみたいなお友達聞いたことありません。』

エリナに震え声が消え、しっかり芯の通った声で否定する。

『ジョナサン・ジョースターに私は電話をかけたのよ。私の愛する人を傷つける人は何人たりとも許しません!』

男が、「へぇ、そぉーなのぉ?」といい、廃ビルに続くドアを見る。

バン、とドアを開いたのは、エリナだった。

「私はその人と一生を添い遂げることを決めたのよ。あなたみたいな男に倒されるような人ではないと信頼してる。」

エリナの澄んだ瞳が、雨のなかでもくっきりと見えた。

ジョナサンの体に、不思議とエネルギーが流れてくる。それは、何かの恩恵でもあった。

ジョナサンに送り込まれてくるそのエネルギーは、温かく残酷な、生命のエネルギー。

「…ッ、はぁ、」

ジョナサンのからだが震える。

「お、おおおおおおお、おおおおおお………!!!!」

男は、低い声で「ちぇ、」と舌打ちすると、どこかに消えてしまった。…その代わり、とある女性、いや、シスター・クラウスがそこにいた。

「全く、彼も貴方も使えないわね」

シスターが瑠を指差すと、瑠はかひゅ、と掠れた声を出して崩れ落ちる。

「そしてジョナサン・ジョースター、貴方のことはお呼びじゃないわ。さっさと始末されなさい。貴方がいるせいで、奴が殺せないじゃないの!完全なミスよ!許せないわ…!」

男が消えたおかげで自由に身動きがとれるようになったジョナサンが波紋を練る

「コォォォォォォ…」

山吹色のオーラがジョナサンを包む。

「今、やっと瑠くんの言っていることがわかった。やったのは君だ。君は、とある人をおびき寄せる為にディオを突き落とした。僕や、僕の家族をたいせつだと思う…「ジョラル」君をね。」

完全に読みが当たっているのか、ッ、とシスターが一歩下がる。

「大体、僕の動きを止めたのも、僕がジョラル君にこの件について頼むと見越していたからだろう。大事な案件と、スタンド使いにこうも襲われてちゃ、僕だって身動きがとれないからね。」

ジョナサンが、一歩、また一歩と歩き出す。

「君がどうしてディオを襲い、そしてジョラルを狙ってるのかわからないけれど、でも見たところ、君はジョラルに何か用があったようだよね?…僕のことを『始末』するなんて言うんだもの、きっとそうだろうけど…」

ジョナサンがシスターの前で静止する。

「きっと、僕の家族を襲うつもりだろう。生易しい用じゃあないよね?僕は、大切な人を守り、君のその邪悪な意思を絶ってやる!」

ジョナサンがシスターの動きを止めようと思った、その時、シスターの聖書が開かれた。

「貴方は私を殺せない!貴方は殺されるのよ!この『運命』に!」

瑠のスタンド、セレーネが矢の雨を降らす

「ッあぁ!?なんでだ、やめろ、殺すなッ!!違う!!これは俺の『意思』じゃあない!!!」

ジョナサンに数十本の矢が突き刺さる。ぽたぽたと血がこぼれ落ちる。

「殺るのは私じゃあないわ。貴方は計画には必要ないの。わかるかしら。」

シスターがジョナサンをおしだし、くるりと背を向く。

「ぐ、ぅう……エリナ…逃げるんだ…」

エリナがジョナサンに駆け寄る

「ダメよ、ジョナサン、あなた、私はそんな酷いこと出来ません!」

エリナがスカートの裾を千切り、ジョナサンの傷だらけの腕に巻き付ける。

ターコイズの瞳が、その苦しさを訴える

「ダメなんだ、僕じゃダメだ、エリナ、君にしか出来ない、二人に伝えて、くれないか…」

ジョナサンが、掠れた声で伝える

「そんな、残酷な!あなたをおいて生きることは出来ない!」

 

 

(…俺は、本当に星が怖いのか?)

瑠はぼんやりと、ジョナサンに付いた星形の痣を見ていた。

(あの時、あの親父の肩に見えた星が、まるで怖くて、星が嫌いだった。あの父親の、あの瞳が浮かんでくる気がして…)

ジョラルを初めて見た時、星形の痣が見えたとき

(何だか…羨ましかった)

雨の音が遠くに聞こえる。

(俺にはない星形の痣が、そして、その絆が…繋がっているのが、羨ましかったんだ)

あの父親が父らしい顔をしたことを見たことがなかった。合理的で、消去的で…

(でも、ジョナサンと居るときは違った。)

多少打ち解けた、俺じゃあ入れないあの絆

(星があるからなのか?俺じゃああの輪には入れないという、そんな、)

残酷なことがあるのか…?俺はなんにせよ、一応はディオの息子だ。

(そんなはずなのに、オレは、奴と会話したことがない。思い返せば、いつ奴が俺の行事に来ただろうか…?)

水泳競技で一位をとった時も

主席合格したときも

俺が何度あの父親のために、あの父親を振り向かせるために…!

(なのに、奴は振り向きもしなかった!奴はおれをおいてあの家から出ていった!そして、俺は)

父親を止めることが出来なかった。

 

彼が何かをしようとしていたことは前々から気付いていた。ろくなことじゃないと思ったんだ。…だが、奴は最もろくなことじゃないことをした。あのまま真実を知ったら、あの男は、それこそ俺の届かない世界に行ってしまうんじゃないかと…

 

宝石は好きだ。きらびやかだし、見ていると不思議と力がわく。自分よりも何百年も上の先輩を見ているようだ。宝石がアクセサリーになった時、それを着こなした時、その人はきっと人生で一番美しいひとになる。いつだって怨んでいた俺とは違う。宝石は俺の心を許す存在なんだ。

 

(目の前の男と同じように。)

もし自分が、ジョナサン・ジョースターを救う術を持ち、ディオ・ブランドーに謝罪できる人間だったらそうしてる。…でも、俺じゃあ役不足だ。シスターに操られて何も出来ないちっぽけな人間だ。…ただ、あの女に一撃を加えられたら、どれだけ嬉しいだろうか。

(こんな俺が正義の真似事をしちゃいけない)

シスターに作り上げられた殺人鬼の仮面は一生剥がれない。弁解は出来ない。

(でも、少しだけなら…、たった、少しなら…)

 

 

思ったら先に身体が動いていた。飛びかかり、シスターの顔面を殴った。悔いはなかった。俺は世界中から悪役だと決められてて、それを覆すなんて出来っこないから、だったら、悪役のまま死んだって悔いはない。

 

「りゅう、くん…?」

ジョナサンの声に身体が震えた。まだ俺は怖かった。正義のもとにたつ、本物のヒーローの前だったから

「………うたがって…ごめ、ん」

 

その一言だけで、全てが許されたようなきがした。

シスターが俺の胸倉をつかんだ。どす黒い瞳をしていた。このまま死ぬかもしれないと思った。俺のスタンドはもう制御出来なくなっていた。

「最、期だ、一回だけ、言ってやる」

シスターが俺の首を絞める。だんだん酸素が身体を巡らなくなる。どこかの本で呼んだ、窒息死は身体中から体液という体液が出るらしい。それは嫌だ。死ぬんだったら、カッコつけてやりたい。

「俺は、もう、テメェを、信頼、しねぇから、なぁ…ジョラルはもうすぐ来る。俺には星の存在が感知できる。」

せめてもの抵抗にシスターの首を俺も絞める。意識が薄くなって、もう力が出ないだろうが。

「ほーう?最期の抵抗ですかねぇ?残念ですねぇ、貴方の力なんて、貧弱なものですよ。」

シスターがニタニタと笑う。気味が悪かった。

 

「かはっ」

俺の目と耳がいらない情報を与える。

よくわからないが騒がしい。…それに、何か物音が酷い。誰かがしすたーに掴みかかって…あぁうるせぇ、俺が死ぬんだ静かにしてくれ…

 




さて、いかがでしたか!?
次回は十六話!ようやく主人公出てきます!
ではまたらいしゅう!


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第16話「トパーズは今ここに」

どうも!定期更新してたら不定期更新怖くて出来なくなったTarakoです!
三十分遅れました()

これまでのリンク
プロローグ
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一章一話
https://syosetu.org/novel/237782/2.html
五話
https://syosetu.org/novel/237782/6.html
十話
https://syosetu.org/novel/237782/11.html
十五話
https://syosetu.org/novel/237782/16.html

人物紹介

◆シスター・クラウス
いつだって自分が正しいと信じてやまなかった。

●ジョラル・ジョリオ
いつだって手遅れのまま

●理亜
隙アリ


 

【挿絵表示】

 

 

「シスターァァァッ!!!貴様ァァァッ!!!!」

 シスターのほほをジョラルのスタンド、「へーリオス」の槍をかする。

 背後から理亜が走って追い付く。

「………」

 黒いかみがふわりと流れる

「お前…ッ!ジョナサンさんを、瑠を、お前は…っ!」

アメジストの瞳が吸い込むようなその瞳がシスターを睨む。

「赦さない。許すことは、出来ない。…お前はここまで何人の人間を犠牲にしてきた?何かが起こるたびにお前の回りで犠牲が生まれる。」

ぎり、と歯ぎしりする。

 

「さぁ?貴方は今まで食べたパンの枚数を覚えているの?」

シスターがにこりと微笑む。ビスマスのように複雑な瞳はまるで邪魔物を嫌うような瞳だった。

「覚えてないさ。…それとこれとは話が別だろ?俺が言ってるのはな………」

ジョラルが深呼吸をする。深い、深い息だった。

「お前を許さないって話さ。これ以上、犠牲を出すことはしたくない。」

一歩踏み出す。様子をうかがっている様だった。

「それ、貴方が勝手に決めたことじゃあ無いですか。」

シスターは少し焦っている様だった。

「あぁ。だが、死人を出した貴様は、絶対に許さない。人の「生」を、奪うことは、誰もしてはいけないからだ。貴様は人の生を奪った。お前を俺は許さない。貴様は今、この世界の理を破ったのだから。」

へーリオスが槍をまた取り出す。へーリオスのアメジストの瞳は、その女の事を見つめた。すっ、と槍をかざす。

『貴様は…この運命の理が見えるのか』

シスターの視界には、沢山の運命の束がへーリオス、いやジョラルに、集束している様に見えた。

 

「ばか、な………貴方、貴方が「抑止力」…?そんな、馬鹿な…!」

『運命が見れるとは残酷だな。…貴様はあの偶像に成り下がろうとしたのだろう。だが遅いな。』

シスターが、ぶつぶつと言葉を繰り返す

『我は太陽の化身、その神、「へーリオス」だ。』

「信じるものは救われる…」「赦される…」シスターがそんな言葉を繰り返す。

『ふ、目測を見誤ったな』

シスターは己のスタンド「聖書」を取り出す。

じゃらり、何処からか本のなかから鎖が取り出される

『ほう!己の大罪を形にしたものか!』

ジョラルが雨にぬられ、アメジストのこうこうとした瞳だけが浮かんで見える

「…やっと戦う気になったか」

理亜が動いたことにシスターはやっと気付いた。理亜のスタンド能力で気配を消していたのだろう。瑠とジョナサンを、エリナと一緒に担いでいる。

「任せたぞ、理亜」

ジョラルが腰を低くする。

「あんたこそ死ぬんじゃないわよ」

理亜が笑って言い返す

「…ははっ、あははっ!おっかしぃい!!」

シスターがケラケラと笑い始めた。

「あ?」

ジョラルがシスターを睨む。

 

 「だってだってだってだってだって!まるで私が悪みたいないいかたするじゃない?それって酷いよねぇ?ひどいひどい!!!皆わかってないのよ、神様が、あの人がどれだけ尊い存在なのか!」

雨のせいで彼女の顔がうまく見えない。

「わかるわぁ、きっと分かってくれるわぁ」

鎖はモーニングスターに繋がっていた。

モーニングスターの中心部に瞳が現れる。

「許さない??何で???ゆるすのは神様ただ一人。貴方にゆるす権利はない。他人を不幸にするだけなのに。ねぇ?どうしてかしらね?」

ズズ、と引きずる。

「ちがう、ちがう。俺は人を不幸になんかしない。俺は、俺は………」

 

 

*****

 

 

「この子が、聖女?本当ですか、神父様!」

母が妙な宗教にはまってて、だから私もその神父様に会わなきゃいけなかった。

『信じるものは救われる?』

『神が全てをゆるしてくれる?』

信じても信じても私の地獄絵図は変わらなくて、ゆるされる運命でも人でもなかったらしくて。

「…神父様」

私はいつの間にか神父のもとに立っていた。

「なんだい?」

母みたいに跪こうとも、ましてや礼儀知らずのまま

「本当に神様の声が聞こえるの?」

何を見てれば良いのかよく分からない。とりあえず神父の顔をぼんやりと眺める

「あぁ、聞こえるさ。」

 神父は自信満々で言ってきた。私は疑問を不思議と口にしていた

「じゃあなんで私には聞こえないの?私は信じてるのに、救われないの?ゆるしてくれないの?」

神父のてが私の頭を撫でる。暖かった。

「それはね、君のゆるす、きみのすくわれる、とはちょっとちがうんだ。神様は運命の一部に一人でいるんだよ」

神父の話をうんうん、と聞いていた

「その運命のなかで、僕たちは生きてるんだけどね、難しい事なんだよ、そこから神様を見つけるのは。ただ、僕達が一生懸命生きてしっかり人のために頑張ってれば、神様は自分から姿を表してくれるんだよ、そうしたら神様とお話が出来るんだ。そのまま頑張って生きてれば、神様と同じところにいけるんだよ。」

神父は私の欲しかった言葉をすべていってくれた。心は安らぎ、神の存在を私は確かに信じた。

 

 しんじた。

 

 蹴られても怒鳴られてもナイフを向けられても足をさわられても殴られても叫ばれても脅されても埋められても閉じ込められても縛られても放置されてもずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと頑張ってきたのに、ずっとずっと信じてきたのに。一生懸命生きて、頑張ったのに、神様は私のところにきません。

 

 ある時なんでもよくなってどうでもよくなって、家を燃やそうと思った。木造建築の私たちの家は無惨に燃える。真っ赤に燃えて、二人の人間は苦しんで私に助けを求めてた。馬鹿みたい。私があんたらを、助けるわけがないじゃん。そんな、「大罪」まみれの人間を私が触るとでも?汚らしい。母って呼んでたあんたは良かったわね。私の存在を教えてくれたから。私が聖女でここにいるべきじゃ無いってこと、教えてくれたもの。

 

 蹴られても怒鳴られてもナイフを向けられても足をさわられても殴られても叫ばれても脅されても埋められても閉じ込められても縛られても放置されても、私が耐えてきたのは、私が特別な存在で、あんたらなんか足元にも及ばないから!

 背後から足音がする。きっと神父が迎えに来たのね。

「…やぁ、『シスター・クラウス』、………行こうか。迷えるもの達を救うために。」

神父は私の肩にコートをぶわりと羽織らせる。振り向かず進んだ。必要ないもの、振り向くことなんて。

少女に会った。悲しいかこをもつこで、救って上げなくちゃ、と思った。少年に会った。誰も信じられないこで、私がしっかりしなきゃと、思った。

いつの間にか、私は人々を救うシスターになってた。誰かを救ってあげるって幸せ。神様はいるのよ。私を、あぁやって、苦しい運命から救ってくださった!

(だから、いまもまけられないのあんな、汚ならしい大罪を背負うひとなんか。)

 

 「負けられ無いのは俺も同じだ。」

ジョラルがシスターの目の前に立つ

「俺はよく分からない。もしかしたら俺が悪の元凶かもしれない。皆を不幸におとしめてるかもしれない。」

ピタリと雨がやんだ。ゆっくりと辺りが明るくなってきた。

「でも、やっぱりあんたがゆるせないよ、シスター」

ぎゅ、と槍を握る

「後悔はない。水城の事も、契のことも。」

ジョラルがシスターの肩に手をゆっくりと置く。

「諦めないし、もう目をそらさないことに決めたんだ」

私はきゅ、と目を閉じた

「私も譲れません。」

だん、と間合いをとる。ブゥン、とモーニングスターを振り回す。ジョラルは出方をうかがっている。

片足に力をいれて一気に間合いを詰める。正面ではなく、背後に回り、モーニングスターを背中に当てようとする。

何ヵ所かの傷はついたが、まだ致命傷とはならず、シスターは静かにジョラルを見つめる

ジョラルが振り向き、シスターと槍を交える。

モーニングスターの360度対戦可能な武器とではすこし押されてしまう。

だからこそ、ジョラルは自分が槍を持ってるのだ。

シスターが背後の存在に気付きあわてて避けるも、脇腹を槍がかすった。

スタンドも槍を手にしていた。ジョラルはすぅ、と姿勢を整えると

「…行くぞ…」

二人とも一気に踏み出す。カキィン、と火花が散り、二人の視線が重なる

「オラァァァァッ!」

モーニングスターでは短すぎる、正面の間合いに詰め込む。シスターがどさりと崩れ落ちながらも避ける。

シスターは何処から取り出したのかナイフをジョラルに投げながら走り回る。

「ッたぁ、いてぇ…」

ジョラルがじょじょにダメージを受け、からだの重心は自然と怪我していない右足にかかる。

「そこだッ!」

その右足に向かってモーニングスターを放つ。ほぼ不可能なその攻撃に、ジョラルは気を取られ、ざっくりと右足に傷が付く。

「ウッッ!!はぁーっ、はぁーっ…!」

ぼたぼたと血が垂れる。

「とどめよ。あわれに死んでちょうだい。」

上からモーニングスターが振りかぶる…!

煙幕が立つ。姿や景色は見えないが、何かされた、というのは既にわかっていた。

「今のはちょっぴり…死ぬかと思ったぜ…」

スタンドが槍でモーニングスターをかわしたのだ。

「あー、血なんて久々に見た………うん、痛いわ。」

ジョラルの髪が風によってなびき、肩の星形の痣がチラリと見えた。アメジストの瞳はその深い紫の瞳はシスターをとらえる。

「でも、痛きゃネェーよこんな傷…!ちょっぴり痛い位だわ!水城に比べたらな…!」

シスターがジョラルの痣に気を取られているうちにジョラルが間合いを完全に詰める。

「さようなら、『シスター・クラウス』」

シスターが泣き叫ぶ。背後からスタンドが槍で貫く。

「わたし、わた、私は…っ!」

ボロボロと涙を流す。

「私の名前はシスター・クラウスじゃないわ!」

既に瀕死になっているシスターは、体が崩れ落ちたにも関わらず、かすれた声で背中を向けるジョラルに叫ぶ。

「私の名前は…!『カプティヴ・クラウス』…!覚えておきなさい!いつか貴方に、あったら、今度こそ、失敗はしない…!」

ジョラルは歩いていた足を止めて、くるりと向いた

「わかったよ。『カプティヴ・クラウス』…忘れない。だからこそ、お前の罪も忘れない。覚えておけ。」

今度こそ、くるりと背中を向け、神父へと向かうために歩き出した。クラウスがどさりとたおれる音がする。理亜が階段から顔を出す。

「あはっ、またないてんのー?弱虫め!」

ジョラルがむす、とほほを膨らまして

「ないてないもんね!」

と言った。

 

 

「………待てよ」

廃ビルの、屋上にいないはずの男がそこにはいた。

「…俺は貴様と話がしたい。」

ガーネットの瞳が光る。

「…瑠。」




さて、今回もいかがだったでしょうか!次回は17話!お楽しみに!
アリーデヴェルチ!


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第17話「秩序、矛盾、そして信仰」

十七話ぁぁぁっ!!!!!!!
推しがいたたまれない今日この頃。吉良さんお誕生日おめでとうございます()

これまでのお話
プロローグ
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
一章一話
https://syosetu.org/novel/237782/2.html
五話
https://syosetu.org/novel/237782/6.html
十話
https://syosetu.org/novel/237782/11.html
15話
https://syosetu.org/novel/237782/16.html
前回
https://syosetu.org/novel/237782/17.html

キャラクター紹介
○ジョラル
たんせいこめて おはなししました。()
○理亜
空気になってまった
○瑠
認められたいんです。

◆神父
男、(36)
両親がキリスト教のため信仰してきた。
何時の日か、全て疑わしくなった。
もう一人の自分に会った。
本当の神様に会った。
『わたしの全てはあのお方のためにある』

・なかなか潔癖症というよりかは、事細かに説明する癖がある。
・~こともある、というのが口癖。

あらすじ
瑠はジョラルに思いの丈をぶちまける。


 

【挿絵表示】

 

 

可笑しいと思わないか。

 いつまでも劣等感を抱いていた俺。

 そんなことを一ミリも考えていなさそうな、軽い頭のジョラル。なんで違うんだ?

 例えば、世界は二つに出来ていたとして、そしたら俺は悪いほうの世界に属しているのか? そんなのおかしいよな? 俺は、そんなはずはないんだ。何時だってあの父親の誇りでありたかった。…無駄だと、俺は思われてるのか?

「………俺が、この俺が」

 拳を握りしめる。

「ただ父親の為だけに、あの親父の為だけに、人を恨み憎んできたと思うか。」

きっとそれは、今までの劣等感全部を圧縮したみたいな言葉で。

「…違う。お前は頑張ってるんだ、ディオさんに認めて欲しさで。」

ちゃぷん、と水溜まりが音を立てる。ブーツに水が滴り、朝が近い太陽を反射する。

「馬鹿なことを言うんじゃあ無い! お前は何時だってそうだった! まるで他人事みたいに冷めた目で俺達を見下して来た癖に! 」

体が二つに裂けるような言葉だった。

 一人は卑屈で、

 もう一人はまるで純粋な青年。

 そんな、二つが。

「皆、皆俺を誉めてきた! すごいと、素晴らしいと、感嘆し、てを叩き、口を揃えてお前は凄いと、そう称賛した!ただ二人、お前とあの父親だけが、俺を見向きもしなかった!」

体がそれに引かれるように、一歩、また一歩と下がる。

「違う、そんなんじゃない!俺はお前を認めていた、お前が羨ましかった!なぁ、瑠、こんな言い争いはやめよう、俺は神父を倒さなきゃいけない。奴に罪を償わせなきゃいけない。」

ジョラルがまっすぐ瑠を見つめてくる。

「俺だってこんなことが言いたい訳じゃない!」

一歩、下がる。下には家屋と道が広がっている。

「………認められ、たかったんだ。」

手を自分の顔におき、ジョラルに見せないようにする。

怖いからだ。…多分。

「身近な人間に誉められたいだろ?何気ない会話が、なんて幸せなんだ、とはたまにしか感じないはずだろ?親は何かしたら何かしら言ってくれるはずだろ?」

抑えきれないまま涙が零れる。声は段々と震える

「愛してるの一言も言ってくれなかった。…俺はあいつが落ちる様子をただただ眺めていた。自惚れた男の顔だった。」

ズリ、と半歩下がる。がくり、と体が揺れ、バランスが取れなくなる。

「俺だって同じだ、いや、俺のほうが悪質かも知れないな…これまでずっと見て見ぬふりをして過ごしてきた。あの女と共犯だ。悪人の血が流れてる」

瑠は気付いていないのか、あと一歩、下がってしまえば自分の体がバラバラに砕け散ってしまう事に。

「瑠、やめろ、死ぬぞ。あんたが死ぬ必要は無いだろう、これからだって償えばいい。あんたはそれが出来るんだ。反省できることが一番凄いことなんだ。」

瑠は、なにかが吹っ切れたのか急に笑いだした。ジョラルは気でも触れたのかと思ってしまった。

「アハ、あはははははっ!あんた、その発言、なんか自殺する女の子を止めるみたいな発言で…っ!あはははっ!おっかしーっ!」

ジョラルがおもむろに手を伸ばした。瑠の体はぐらん、と傾き、まっ逆さまに落ちていく。

 

(馬鹿みたいだ。こんな死にかたで死ぬなんて。…でも悪人ならこれぐらいが丁度良いか。)

ぎゅうと目蓋を閉じる。

…5秒…6秒…おかしい。いくら時間が経っても地面に届かない。心なしか手首が折れそうなほどいたい。

意を決してうっすらと目を開ける。

目の前には不細工な男の顔がある。俺はこの顔をよくみたことがある。

「ッだからぁーっ!いった、じゃん…ッ!」

ジョラルが目の前にいる。とんだ悪夢だ。

「何をしてるんだ。お前。」

満を持してやっと一言発する。

「死んで欲しくないんだよぉ…」

さらに汚い。涙を流さないでくれ。

「お前は強いし、きっと俺よりも優しくていいやつだ。ぶっちゃけ俺より強いし、頭いいし、ちゃんと理解して話が出来る。俺みたいに我慢できない奴じゃないし。」

「おいまて。自分をそんなに卑下すんなって。お前だって凄いじゃん。そうやって立ち向かおうとすることは凄いことだよ。それに前向きに生きていられるし、家族だっているし…な?」

ぶわ、とジョラルから涙が溢れる。

「そう言ってくれるのはお前だけだ…おれ自身はそんなことを一ミリも考えてなかったぁ」

なんだか、ちょっとだけムカついてきた。こいつはいったいなんなんだ。大体首席合格したのに一人でずっと過ごしてるし。チートみたいな感じじゃねーのかよ俺だって(表面上)友達は居たのに?

「て言うかさっさとこの手放せよ。俺もお前もいい関係だろ?悪役は死ぬし。」

「やだ」…とジョラルが言った。

「は?」

ジョラルはまだ涙を流しながら、いい続ける

「嫌なんだぁ~………お前を仲間にしたいって言ったら怒る?」

「怒るよ」イライラが溜まってきている。俺って短気なんだなぁ、と感じる。

「仲間にしたい。御願いします。」

ふざけてんのかこいつぅ………

 

「だって関係なくね?『勝てれば官軍負ければ賊軍』なんて言葉があるぐらいなんだ。俺もお前も自分の信じた道を進めばいい。」

ジョラルの腕に力がこもる。

ぐい、と俺を引っ張り上げる。

「ただ、俺はお前と一緒に、『友達に』なりたい。馬鹿げてると思うが、まるで引力みたいに俺達はであった。これが俗に言う「運命」だったら、俺たち程相対的な関係はないんだ…ッ!」

 

こいつの言葉は何時だって生き生きとしている。俺の事を蘇生するような言葉だ。

「俺が、お前の仲間になったら、何か得があるのか?」

「無いよ、多分。ただ、多分だけど心は成長する。沢山の事を経験できる………と思う。」

ぐい、とジョラルに引っ張られ、持ち上げられ、ようやく屋上の床が見えてきた。確かに今までの行動が馬鹿馬鹿しいなと反省しつつ、こいつの友達になる、なんて言葉にのせられたことに若干後悔した。

「疲れた…」

とジョラルが話す。

「この程度でかよ…んで、神父のとこに行くわけ?」

ジョラルと理亜に確認する。

 

 

『その必要はないよ。』

 

 

低い声が屋上に響く。俺たちの後ろに、一人の男が立っていた。

「実は待ちくたびれてしまったんだ…君たち、なかなか私のところまで来ないから、シスターの手で殺されてしまったんじゃないかと…でもよかった、殺されていないようで。彼女の力で殺されてしまうとどうしても因果が性質上崩壊してしまうんだ。ただ、まだ二人目の魂は手に入れられていないけれどね。その問題はいいんだ。我々は君という鍵を探していたからねぇ、結局のところ巡り会えたわけだ。これまでに何人かの犠牲はあったがそれも付き物であろう。基準軸まで戻ってないからね、良いんだよ、そこは。」

彼がつらつらと言葉を並べる。そこには異様な雰囲気が流れる。

「ただ、君って私の事を勘違いしているようだからいっておこう、私は別に悪い人間じゃない。えーっと…例えばエーミールみたいな人間じゃないがそのー、うーん全ての厄災、とかっていう表現も間違っているんだよ。人には一つ一つ人を愛することが出来る愛情とか、または慰めたり、元気付けることが出来たり、正しい行い、ってやつを自分で理解して行うことが出来るだろう?つまり私は偽善者でありながら、または極悪人でもあるわけなんだ。これについては沢山の考えが必要になってくるけれども、君はこの長い期間の間、沢山の考えを張り巡らしてきただろう?だから多分理解してくれるとは思うんだ…」

男の話し方は何だか気持ち悪くなる話し方だ。自分という存在が彼によって抉られていく様な感覚だった。それは、感じていると立つことすらままならなくなるような不安定な感じに襲われる。

 

ただ穏やかだ

 

まるで夢のように体のなかで言葉が所々に広がっていく。

 

「神父を続けて気付いた事があるんだ。人が願いを叶えようとする時、ついつい人に頼るだろう?それと同じで、宗教にすがろうと言う人もいるわけだ。これには二つの力が関係していてね、一つは怠惰、もう一つは承認欲求によるものだ。…コホン、私の知人に、一人彼女がいる人がいたのだが、借金の連帯保証人になって欲しいと言われたらしい。こういう願いをいう時、人には必ず先程の二つの感情が産まれるわけだ。これらの事象を見ているうちに、人は行動するとき必ず二つの感情、または、それ以上の、兎も角は複雑な感情から行動する。大まかにいえば、一つは本能的な直線的な感情であり、それに言い訳のように付け加える感情が二つ目の理性的な感情であるのだよ。私は君に恐れと希望を、または敬意と落胆を抱いている。これはまさに理解しがたい感情だよ。」神父は一通り喋り終えたらしく、ふぅ、ともっともらしく深いためいきをついた。

 

「つまり、私がこれから行動する全ての行動に、先程の感情を抱いていることになる。それは君の一手一投足すべてに繋がってくるんだ。私がこれからする行動について直線的な、あるいは本能的な言い方をするなれば、私は君を殺したいと思っているのかもしれない。」

男の表情、口調、何もかもが男の伝えたいことを遮断してくる。

(マズイ…完全にあっちのペースになってきてる。…ジョラルは全然気付いてないみたいだな…)

「ただ一つ、私が神に近くそして神に触れることが出来るからこその例外がある。それは神の天恵を頂いた時である。うーん、したがっていたほうが楽、という言葉があるだろ、そんな感じだよ。私はあるお方の言葉を耳にしているだけで私の存在意義が肯定され、または私という生を身近に感じることが出来る。それは君たちでいうなら傷ついた時に痛みを感じるのと同じような事柄なのだが、こんなスピリチュアル的な話では君たちじゃあ実感がわかなそうだけれども。そこはいいのだよ。つまり私がここにいて私がこれからする行動は神からのお告げであるといえる。ここまで身を投げる覚悟をしたことはこれまで一度もないからね。私という存在がこの時点であのお方とゆうごうしているともいえる。私の言葉の一言一言は、全てあのお方による計算的な行動であるともいえる。だからこそ私はいまここで身を投げ出すことを躊躇わないで出来る。」

 

「あんたなぁ…一体なにをいってるんだ?頭がイカれたんじゃねぇのか?」

瑠が話を切り出す。

「クク、いやべつにイカれてなどはいないさ。ただ君たちとこれから死闘を繰り広げるに当たって感覚を共有したい、ただそれまでのこと。」

瑠の手首がぴく、と動く

「んじゃあ手っ取り早いな。俺達とお前が肉体言語で語り合えばいい。それほどまでに合理的で直線的な伝え方もあるまい?」

神父は表情一つ変えずに言った。

「はは、確かにその通りだ。確かに君は効率を優先するタイプのようだね。」

神父の目線がやっと俺達と照らし会わされた様に光った。ブラックオパールの異様なまでの、毒々しく美しい瞳だった。

「じゃあ始めようか。私はこれで終わらせたい。」

ジョラルがはっとしたようにスタンドを発現させる。

「先手だ「セレーネ」ッ!「マイ・ザ・ワールド」俺だけの世界だ…」

まるでからだが重力を無くしたようにひっくり返り、水のなかに溺れ、そして起き上がる…そこには完全に逆になった世界が浮かんでいた。

「フム、結界の能力か…契と同じような感じなのかな?そういえば水城も先程の話と合致するなぁ、自分から変えようともせずまたは願おうともせず他者にすがり、あのようなみっともない姿なになったのだ。因果応報というやつだね。」

「五月蝿いッ!」

ガーネットの瞳が突き刺すように光る。

「貴様!何度人の命を侮辱したら気が済むのか?先程から口先だけじゃあないか。貴様も人と同じように恥だけ持ってるみたいだなぁ!」

ジョラルがけん制する。

「ちょちょ、落ち着け、焦ってちゃあなにも出来ない。時間は解決に導かないが、俺たちの行動次第で解決に向かっていくんだ!」

「…そうだな…」

ジョラルがすぅ、と神父一点を見つめる。

「俺達はお前を許さない。お前のしてきた行動全てを、俺達は許さない。」

 




次回もお楽しみにしてください()
人生がエブリデイ。
アリーデヴェルチ!


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18話「決別」

皆さんこんにちは!きさらぎな銘酪です!

前回までのリンク(プロローグ、一話、十話、15話)
https://syosetu.org/novel/237782/1.html
https://syosetu.org/novel/237782/2.html
https://syosetu.org/novel/237782/6.html
https://syosetu.org/novel/237782/11.html
https://syosetu.org/novel/237782/16.html

そろそろ一章の最終話も近づいて来ましたね~!

人物紹介
○ジョラル
誰にだって譲れないものがあるだろう
○瑠
最初からクライマックス。ガチ怒
◆神父
実はリア友からいただいたキャラ。
なぜ人は神を信仰するのか

ーーーーーーーーーあらすじーーーーーーーー✂️キリトリ線

神父のもとにたどり着いたジョラル、そして瑠。譲れない信念のもと、死の戦いが始まろうとしていた…!


 

【挿絵表示】

 

 

 

「許さない…?そんなことわかりきっている事だろう。」

神父がクイ、と顎を動かす。白い髪が揺れ、ブラックオパールの瞳が二人を睨む。

ジョラルが初めの一撃を繰り出す直前に瑠のスタンドが技を繰り出す。

「………ッおまえ、何して」

瑠のガーネットの瞳は赤く燃え上がる。

「黙れ。」

瑠が走り、一気に間合いを詰める。

「『ラスト・リゾート』」

スタンドが瑠を直視する。………目があった

「かはっ………!?」

瑠が膝から崩れ落ち、あきらかに過呼吸になっている。

「私のスタンド『ラスト・リゾート』は…『夢遊病』の特性を持っている。…何が?と聞かれると具体的には、私のスタンドと目を合わせる、または私のスタンドに触れる、はたまた私と出会ったことのある人物に対し、『悪夢』を見せることに特化している。しかしながら近年には悪夢を知らないものが多く私のスタンドは廃れつつあったのだが…君達に会って少々成長したように見える。君達の長年の過去、因縁、もっといえばトラウマを精神世界に呼び起こしその世界に一時的に閉じ込める事が出来る。彼程度の精神力なら………そうだなあと三十分すれば自分の喉を掻き切るか、あまりにも強すぎる悪夢のせいで自我が崩壊し植物人間になるだろうね。けれども君には夢に干渉したり夢を破壊するなんていうファンタジーやメルヘン的な能力は一ミリも持っていない。もっというなら君は立ち向かう相手を間違えたのだよ。これは自慢になってしまうが、私がスタンド使い相手に勝負を挑んだ際、1度も敗北はしていないんだ。君の精神と自我は弱すぎる。故に私が君に負けるという世界は存在しない。…これが全てだ。君には納得をして欲しい。そちらのほうが仕事が楽になるのだよ。…職業柄、この様に駄々をこねる子供は幾ばくか見てきた。君も無駄に抗おうというのだ。まるで闇のなかに見えない道を探そうとしている。そんな無茶はやめた方がいい!暖かい布団にくるまって夢見心地のままなにも知らず幸せに生きた方が幸せだろう?私はそう感じるのだけれどどうだろう………」

 

(あと三十分…?あと三十分で瑠が死ぬのか?そんなこと…さっき仲間になったばかりじゃないか…!)

「………言ってることが、よく判らない。」

ぱくぱくと動かしていた口をようやく喋らせる。

神父が驚いた様に口に手を当てる。

「まさかとは言わないが、君、スタンド使い尚且つ抑止力なのになにも理解していないのかい?この世界の巡り、輪廻、因縁、運命………全てが君という抑止力にかかっているのにかい?」

やはりジョラルは理解してないようで目から鱗というようにこちらを凝視する。

「判らない……俺はなにもしてない。なにもだ!…何か罪を犯したわけでもない。だのになんで今さっき仲間になったばかりの人間が死に、家族が瀕死にならなくちゃいけない?俺にはよく判らない。そんなの酷いじゃないか。」

 

「通常、人の世というのはそう言うものだろう?それとも君は何かしたいのか?何か成し遂げられる人物なのか…?そんなわけあるまい。分をわきまえたらどうだ?所詮人は運命の絶対的な力からは逃れられない。それは君自身も理解しているとばかり………」

ぎゅう、と拳を握る力が強まる。

「そんなのだめだろ………人を殺したり、むやみやたらに命を奪うなんて…そんな非道なこと、しちゃだめだろ…」

神父はブラックオパールの瞳をこちらに向ける。虹がおかしいみたいにゆらゆらと神父の瞳にうつる。

「非道って、なにが普通かわからないのに?そうやって型にはまっているほうが窮屈ではないのか?君は一体どうやって生きてきたんだ?君は何時でもあいつとは違う、あいつは普通じゃないって考えて生きてきたのかい?そんな無意味で救われない生き方、今すぐやめた方がいい。君は君らしくあるべきだ。私は君自身がそうやってすぐに身を滅ぼそうとする行為にあまり称賛はしないなぁ。君が君らしくあるために君は持っている幸せを丁寧に扱うべきだ。………そうだろう?誰だって堅苦しい生き方をしている。他者を否定し己の中途半端な生き方に満足するんだ。…だがそんなことしたって何も良いことはない。ただ孤立していくだけなんだよ。自分という狭く重苦しい監獄の中に閉じ込められるんだ。そして何時か死んでしまう。そして自分のあるべき姿を認めずにそのつぼみを閉ざしてしまうんだ。だから駄目なんだ………君の常識と理想に囚われた生き方じゃあ、何時か全てを失うよ。」

ジョラルの肩が震える。

「神父…アンタはなんで…神父になったんだ?」

「人が幸せになるためにだよ。人が、自分が生まれた時から持っている幸せを剥奪しないために。」

ジョラルが顔を上げる。倒れて今なお苦しむ瑠を見てから、神父を見た。

「…神父。アンタの言い方、間違ってない。俺はきっとこれから沢山の幸せを、仲間を、選択を、運命を切り捨てていくんだろう。…けど。」

アメジストのまるで深いその瞳が神父を睨む。

「俺の生き方を否定しないでくれ!アンタのいう重苦しい監獄に、俺は「憧れ」を抱いていた!何時か俺は誰かを救えるんじゃないかと!誰かを感動させ、誰かの記憶に残るような、そんな人間になりたかった!それはそこの瑠だっておんなじことなんだ!俺もあいつも、誰かに認められたかった!例えそれが困難な道のりだということに気がついていても!俺は全てを否定しない!アンタの考えは正しいよ神父…俺は過去の決別が出来ない。体にまとわりつくんだ。血の生暖かい温度が、なにもしない俺の友人の姿が、俺が彼女の心臓を貫いた時の感触が!スタンドを通して鮮明に伝わってくる………目を背けて俺だけ幸せになればいいのか…?」

神父が首を傾ける。

「教えてくれ神父。アンタのいう「幸せ」ってなんだ?とある人間は自分の幸せは愛する人と共にあると考えた。ある人間は当たり前の日常こそが幸せだと思い、またある人間は自分らしくいきることに幸せを感じ、そしてある人間は傷ついた人を癒し、守り続けることを幸せの前に誓った。そしてある人間は夢を追い続け探求することに幸せを感じ、またある人間にとってはその幸せのために自分の命を賭して戦った。………この中にアンタのいう幸せってふくまれてんのかな…?幸せの形って沢山あるよな」

 

私の背筋を駆け巡る悪寒。彼と彼の精神が分離しスタンドがかたどられる。

 

「だったらアンタが決める訳じゃねぇ。俺が決めるべきでもねぇ。………けど、命を奪われ、思考を奪われ、そして何時か誰かに捕まる様な人生を誰一人として幸福って言わねぇよ!」

圧倒的なスピードで一気に私の間合いに詰め寄る。スタンドの持つ毒々しい槍を紙一重の処で避ける。

「『ラスト・リゾート』ッ!今すぐ奴に悪夢を見せろ!」

ジョラルの身体がピタリと止まる

「ッう!」

これまでの全ての罪がジョラルの瞳に移る。

 

 

 

 

 

「………………はっ、はっ………」

ジョラルは虚空を見つめ続ける。

身が引き裂かれそうな苦痛を感じる。

瞳が暗闇の中に浮かぶ

『運命との決別などしようとは思わないさ。』

一気に空が青く澄みわたる。

『ふふっジョラル変な顔してる~!』

ジョナサンさんが………いる。

俺の手をぐい、と引っ張ってくる。

『どうしたの?変な顔をしてるけど…僕の顔に何かついてるかな!?』

彼の手が俺のほほに差し伸べられ、ジョナサンの暖かい体温がほほを通して伝わってくる。

「ほ、ほんとうにジョナサンさんなんですか?」

ジョナサンさんは俺の震えた手に自分の手を添える

『そうに決まってるだろう?あははっ!』

ジョナサンは少年のような笑みを浮かべる。

ジョナサンさんは俺の首筋に手を添えようとする。

何かの弾みでジョナサンさんは「痛っ…」と声をこぼす。

ジョナサンさんの背後には瑠がいた。

「退いてくれませんか。ソイツはやるべき事があるんです。」

瑠が俺に目を合わせる。

ジョナサンさんはいまいち理解していないようだ。

「何で?」

「そいつは亡くなった友人から意思を受け継いでいる。」

しかし、ジョナサンにはまだ理解しない。

「アンタは…アンタはさ、命を賭けても守りたいものってなんだ?」

瑠は穏やかな目をしている。

「家族が大切だ。彼らが皆幸せになって欲しいな。」

瑠は思い切りジョナサンを叩く。

「ふざけないでくださいよ。アンタのせいでアンタ

の家族がいま、自分を理解できないままなんだ。」

瑠はまっすぐジョナサンを見つめている。

「俺がいます。彼は一人でも生きていけます。御願いします。邪魔しないでください。」

「…僕はね…いや、ジョナサンは家族のために戦った。」

瑠は先を急かすように「わかっています。」といった。

「じゃあジョラルはどうだろう?」

俺は俺自身を見続けている…?

「悪夢か………これが。」

俺は拳を握った。

「やります。頑張ります。」

 

 

 

目が覚めた。

神父が俺の顔を覗き込んでいた。

「やはり君は特別なのかもね」

「アンタやっぱり正しいよ。俺は弱い。………けど仲間がいる。失った家族と他の生きた家族がいるんだ。」

俺は笑って起き上がった。

「諦めないぜ。」

スタンドが槍を繰り出すのと同時に間合いをとる。神父もこのままでは死ねないらしい。スタンドが繰り出される。

槍の一撃一つ一つを素手で受け止めていく。

そのまま間合いを少しずつ詰めていく。神父が劣勢のようで所々傷も見受けられる。

「私もここで負けるつもりは無い!私には使命がある!」

神父の瞳が生命をおびて爛々と輝く。

 

 

「ねぇ、どうして僕たちは神様を信じるの?」

「それは………………………」

 

 

「それはっ!!!エゴだ!!!エゴだけの願いだ!!!そんなもの私は信じない!人は………!人は他者のために願うべきだ!」

神父が一歩目で跳躍し、ジョラルを蹴飛ばす。

「我々は高潔で正しく有るべきだ!だからこそ、私は人を救うのだ…!」

ジョラルが下に避け神父の背後に回り込む。

「間違ってない。………だが合ってもないんだ。」

ジョラルは槍を神父の横を横切りながら刺した。

「………俺には…どっちが正しいのかわかんねーよ…」

 




いかがでしたか?
来週もお楽しみに!


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19話 「それ程の命でもない」

こんにちはTarakoですTarako!
あと一話で一章も終わりかぁ、短いですね(((((((((
前回のリンクゥ!
https://syosetu.org/novel/237782/18.html

キャラ紹介

ジョラル
ラスボス撃破!なよなよ系主人公!
理亜
普通に強いよ。

カッとなって行動するのおとんに似た?
ジョセフ
二代目不動産王

あらすじ
前話で神父を倒したジョラル!だがしかし………


 

【挿絵表示】

 

 

ぼたた…た…と血が滴り落ちる。

槍に突き刺さる肉の厚みと血の暖かさが体に直に伝わってくる。

「…君は…囚われて…いるんだ…」

神父が、苦しそうに話す

「やめてくれ。これ以上…これ以上話さないでくれ…」

「…君は神を信じるかい?」

顔を背けるジョラル。

「んなこと…信じねぇよ。」

槍に手を当て、少し楽な体制を取ろうとする

「神は居るよ…我々のすぐそばに。」

神父がおもいっきり顔を上げる

「君は君の大切な仲間、家族、世界に不幸をもたらすだろう…すべてのものが君を滅さんとする。それは神のご意志だからだ。しかし、神の呪縛を解いたものは、君の仲間になるだろう。

同時に、君の家族は元の世界にもどろうとする。その時君はそうするのに必要なエネルギーになるのさかならず神と君は引かれあう…どのような世界にせよ、この世界のルールがそう定めているのだから。…双極の魂は、まだ揃っていないがその魂さえ揃えば、我々の望む扉が開かれる…君が悩んでいられるのも、今のうちだと思った方がいい。この世界は時に残酷であり時に手助けをする。時はある場合によっては早く進み、ある場合によっては遅く進むのだから。………」

ジョラルの紫の瞳が神父を見つめる

「………あんたが一番強かった。」

ざぁっと風が吹くと、ジョラルの髪の毛は揺れた。

「…あんたが、死ぬことに、安堵してる自分が…怖い。」

(誰かが死ぬのに…なんで安心できるんだ…?向こうだって、痛い筈なのに…)

「ははっ、面白いことを言うんだね、君は。…これから私よりも強く、邪悪な者が現れるかもしれない。君はもしかしたら、命を落とすかもしれない。」

ブラックオパールの瞳が虹色に輝き幻想的な色を見せる。

「けじめをつけなさい。祝福するよ、『神に近い』者として。」

彼の足元が輝き始める。彼は何故か穏やかな顔をしていた。

「ッ!?」

ジョラルが一歩のけぞる

「どうやら迎えが来たようだね。そう簡単に死ぬと思ったのかい?…フフッまた会えると良いね。」

いっそう光が強くなって、思わず目を閉じてしまった。光が収まってから、目を開けると…神父は居なかった。

 

 

「…ッチ…何なんだったんだ…アイツは…」

倒れていた筈の瑠が目を覚まし、ジョラルが神父を突き刺していた槍を見つめる。

血が滴り、下には池が出来る。

左足に自分の腕をのせてため息をつくと、「もう帰ろうぜ」と言って瑠が立ち上がった。

「お、おう」

階段を下っていくと、下には理亜が居た。

「あっ!!ジョラル!生きてたの!?大丈夫だった!?ってか瑠!逃げんじゃないわよ!」

ジョラルがポカンとしていると、理亜が瑠に近寄って何かのバンドを付ける。

「えーっと、指定スタンド使い確保。1052番、瑠。」

瑠が戸惑っている。俺も戸惑っている。

 

「ごめんなさいね。あんたがどれだけ改心してもこれが仕事だから。ジョラルもそこから動かないで。SPW財団を派遣するわ。30分位でつくはずよ。」

ジョラルの口がわなわなと震える。

「な、なんで…なんで、そんな…瑠はなんの罪も犯してない!クラウスが仕向けただけなんだッ!」

理亜がギロリと睨む。

「…『関係ない』…?馬鹿じゃないの?関係なくてもそれが認められるまではブタ箱行きよ。お偉いさんに逆らえないの。分かってくれるわよね?」

理亜の瞳がランランと光る。

「…ご、めん…」

 

その後、SPW財団に連行された俺は、ジョセフさんに迎えに来てもらった。

ジョセフさんが今回の件についての事を報告しなくちゃいけないらしく、簡易的な事情聴取だけ行われた。その後、帰り道にはジョセフさんにコテンパンに怒られてしまった。

 

真っ青な空。さっきまで戦っていたのに、ここには爽やかな風が流れる。

「…なぁ、腹減ってない?」

ジョセフさんにつれられてファミレスに足をいれた。

「…あの…その、本当にごめんなさい…」

ジョセフさんはそとを眺めながらコーヒーを飲み、「んー?」と聞いてきた。

「俺ッ、が、もっと、しっかりしてれば…ジョナサンさんも、ディオさんも…あんなことにならなかった…ですよね」

涙がこぼれそうになって必死に止めた。

「…んー、なんかさぁ、俺たちの家系はやっぱりそう言う面倒事に関わっちゃうことがあってさァ、でも、ほらこういう性格じゃん?承太郎も、ジョナサンもさァ…だからあんたが突っ走った気持ち良く分かるよ。…俺だって一歩遅れてたら…アイツが岩の下敷きになってたらって考えると…怖くなる。」

コーヒーを握る手の力が強くなる。

「怖いぜ…ジョナサンが一家の大黒柱で…なんでもやってこれたけど…俺はそうじゃないんだ…そんなこと出来る自信がねぇ…やるしかねぇっつー事は解ってるのに…」

ジョセフさんの肩が震える。

「俺は失わずにいられるかな……頑張ることが苦手なんだ…ッ!」

俺も自信がない。こんな力をもっていて、それでも頑張ることができるのか。

「…きっとジョセフさんなら大丈夫です。俺より強いし、かっこいいし…!安心してください。皆で一緒に頑張りましょう…それに、ジョナサンさんがいつか目を覚ますかもしれないじゃないですか!」

ジョセフさんが、コクりと頷いた。

 

 

「…僕にお兄さんがいるんですか?」

ジョルノのくるくるの金色の髪の毛がふわ、と揺れる。

「…居ます。瑠って言う人が。」

いぶかしい目で俺を見詰めるな。

「…あの…ディオの…?」

ここまで言ってしまったし全てばらしてしまおうとひといきつく。

「はい。ディオが父親の息子がもう一人。」

ジョルノの眼が輝く。

「え………会いたい………」

(だろうとおもいました。思いましたよ。珍しいもんね、うん。)

 

だが………誰が予想しただろうか。

その息子が………………今ブタ箱に居るということに。

 

「………どんな人なんですか?」

「…今SPW財団に囚われてます。」

ジョルノがにこやかな笑顔で言いはなった。

「じゃあ会いに行けますね☆たしか申請すれば面会できる筈です。」

立ち上がってしまった。

(…止められるきがしない。諦めよ。)

「じゃあ、行きましょうか!」

…いや、やっぱりだめだろ…!!!

「や、やめろっ!瑠ってプライド高いんだッ!バレたら殺される気がするッ!」

必死で止めた甲斐があり、何とか最悪の事態は免れた。

「でもいつか、会いに行きます!」

頭を抱えたい衝動を抑えて「うん…」と何とか返した。

「じゃあちょっと削ってくる。」

部屋に籠り、石を削る。

鏡のように反射するように比例して傷が減っていく。

「綺麗だ。」

苦し紛れにそう言って自分が寂しいのを紛らわしている事は重々承知なんだ。

…それでも。

 

神父との戦いは強烈だった。目蓋を閉じるとすぐに思い出せる。

…神、か。

ギリシャ神話なら何とか思い出せる。

しかし、たぶんだがあの神父が言っていた神とは関係ないのだろう。

手を止めてベッドにダイブする。音を立ててからだが沈む。

ジョセフさんや承太郎さん、仗助さんや他の皆…彼らに迷惑をかけてしまうかもしれないこの力。

ジョナサンさんは運命だって言っていたけれど…

それに、あの人が倒れるところを見て思うんだ。

"懐かしい、あるべき姿"だって…こんなことを考えちゃ行けないのに、あの人が成長したことが誇らしく思えてしまう。あの人がとても幸せな顔で死んでしまったことを嬉しく思ってしまうんだ。

きっと俺の考えは普通の人とはちがうんだろうな…

でも、あの人の死が、ひとつのピースが、ぴったりと合ったような…そんな感じがしてしまうんだ。

 

「…結局、良く解んないけど。」

 

 




来週もテストの関係で休んじゃいます…!
次回はエピローグ!あしたもよろしくねっ!


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{一章最終話}20話「未来への遺産」

この場をお借りして。
リア友にたんおめとお送りたいと思います。

さて一章最終話!しめしめっといきましょう!


☆ジョラル
色々と考えることがあったそうで。
☆ジョセフ
ジョースター不動産の社長になりました。
☆ジョルノ
仕事はまってくれません。
○瑠
人殺しの罪でSPW財団に囚われている。
○理亜
一つ得るには一つを失うもの。


 

【挿絵表示】

 

 

あの奇妙な感覚が忘れられないまま、俺は日々を過ごしていた。

あのあと、ジョセフさんは毎日仕事に追われていた。ひどい時だと、三日何も寝ずに仕事していたこともあった。

 

理亜からは連絡が取れなかった。どうやら今回の事件の一連のことについて、報告書やら仕事に追われているらしい。

 

瑠は………アイツの事は良く解らない。理亜はこの通り連絡が取れないままで、アイツが今何をしてるのか俺は何一つしらない。

 

 

 

 

思ったのは、俺は強くないことをしった。自分が特別な力を手に入れられたからといって、さしてつよくない。

人を殺した感触が忘れられぬまま眠れぬ夜を過ごす。

目の前には大学への書類が何枚かあった。

俺はあの場所に戻って、幸せな生活がまた送れられることができるだろうか。もう覚えていない校長の顔をネットで見つけてから、その顔を忘れないようにはしてる。

 

明日は、ジョセフさんのお友達の所にお見舞いにいくらしい。どうやらここ一年はずっと入院生活を送っていたらしく、ジョセフさんがたまに病院にいくのも、お見舞い目的らしかった。

「明日早いしもう寝るかぁ」

タイマーをセットして眠りにつく。

夜には月が浮かんでいた。

 

 

 

「やっほー、元気にしてるぅ?」

仕事を片付ける手を止めないまま、受話器の向こうの相手に話しかける。

「うんうん、ふーん、へぇー」

ソイツはペラペラと今狙っている女の話をする。

「流石スケコマシーザー、そんな体でもナンパしてるわけー?」

からかい半分に冗談を言う。

「うん、うん、わかってるって、明日連れてくれば良いんだろう?俺だって忙しくねーんだゼー?」

ギシ、と椅子が音を立てる。身体を椅子に預けてソイツの顔を思い浮かべる。

「ん、じゃーな、また明日。」

電話を切ると、次には静かな部屋だけが残る。

「………『ジョナサン・ジョースターの人生は忘却の彼方へ消えるのか………』ねぇ…悪趣味なタイトル~」

エリナさんのお腹には新しい子が出来た。今は入院しているそうだ。

『こんなところでくじけるわけにはいきませんもの、頑張るわ。…ジョセフ君も気をつけてね。スージーQがいるんだから。』

と心配されてしまった。

「安心しろよ、アンタの人生は無駄にさせない。アンタの残した"遺産"で俺たちは前を向いて進んでいくからな。」

 

不思議と、ジョースター家が泣くことはなかった。まだ死んでいないから。彼がいなくなっても、彼が残した物が彼らを後押しするだろう。

 

「ジョナサンのペルソナは偉大であった。…?」

ある新聞の紙面が興味深いものであった。

『______ジョナサンという男はとても勇敢な戦士のようであった。彼の人格(ペルソナ)を一言で言い表すなら優秀な戦士であり、優しさは聖母の様であった。』

言い得て妙な表現であった。

『その優しさの原因は彼の家族間の問題であろう。』

その一文からこの紙面がどれほど危険なのかわかる。

 

『彼の父親は父親としては威厳がなく、品性もなく、人とは形容しがたい物であったと言えるだろう。』

ジョセフの顔が怒りに歪み、紙を破り捨てようとすることを辛うじて止める。

『更には母親が複数人いることがわかり、彼らを兄弟とも、家族とも言うのはおかしな話である。』

まるでひどい話だと思う。

『そのように他人しかいない環境で彼らを家族と括ったジョナサンの器は計り知れないだろう。』

その言葉が引き金となりジョセフは紙を破り捨てた。

「…なんっだと……こんな…こんな…ッ!」

そして、その紙面の関係各所についての欄を見て驚く。

『四之宮理亜』、…そしてジョラルが入学する大学の校長『長谷挙田(はせあぐた)』その人物の名前が確りと記されていた。

「こりゃあ…スクープ物だぜ。」

 

 

*SPW財団

 

 

両手が拘束された状態で、瑠は椅子に座っていた。机と板を挟んで理亜と向かい合っていた。

「はぁ…認める気はサラサラねーよ」

既に疲れきっている瑠は、顔を机に乗せてグッタリと腕をぶら下げている。

「認めてくれないと困るわ。書類に書けないのよね。」

理亜は何時ものように平然とソレをいいのける。

 

______あの一連の事件は全てシスターと神父が引き起こしたことだ。瑠は単なる被害者である。

しかしながら、理亜が事実を改編しようとするのには理由があった。

 

「この事件が解決できたら、私は昇格も考えているつもりだ。理亜君。君の活躍を期待しているよ。」

理亜は一つの経歴のせいで、下っ端という立場から這い上がれないでいた。彼女はソレに焦りを感じていたのだろう………。

 

「なぁ、何でこんなことをする?丸二日水しか飲めていないのだが。」

金髪がさらりと机の上に広がる。

「…良い立場になりたいから…かしら。」

頬に手を当てて、彼女は言い放つ。

「誰だってお金持ちになりたいでしょう?私だってなりたいわ。…ソレと一緒。私は優位な立場に立ちたいの。こんな私でも上に立てるって証明したい…!」

ピンクと緑の色が入り交じる瞳が瑠をみつめる。

「そのためならどんな手段でも厭わない。ここに法律は無いわ。国家の犬でも何でもない、私がルールになる。」

瑠は肩をすくめて言った。

「んな下らねぇ理由かよ…わかった。一度だけ言ってやるから耳の穴かっぽじって良く聞けよ。」

瑠の顔がようやく上がり、今度は理亜を睨み付ける。理亜は用意周到にボイスレコーダーを使い録音する。

「"この一連の事件の犯人は俺です。共犯です。"」

理亜は録音し終わった直ぐ後に部屋から出ていった。

 

「あーーー言っちゃた…もう大学には戻れないだろうな…シスターめ、あんなに殺さなくたって良いだろうに…。」

逃げ出さぬように徹底された部屋からは夜空など一欠片も見えない。

「…なぁ、ダメだと思うぜ。その事実だけを求めるのは…やり方が違えばわかり会えたのに…」

彼の夜は続いていく。

 

 

イタリア______パッショーネ日本支部

「んぐぅ…」と腕を伸ばし、コーヒーをすする。

「おっボス、まだやってんのか?」

ミスタが窓から入ってくる。ここ三階ですよ?

「まだ時間があるので。…日本はどうですか?」

イタリアとさして気候は変わらない。四季がもう少し鮮やかなところぐらいだろうか。

「なぁーんか、いいこになっちゃいそー。」

ミスタは窓に腰掛ける。

「確かに、日本は律儀なところありますからね。」

花を労り、一ミリの違いも許さず。

「所で、その書類は?」

ミスタが片手に持ってた書類を指差す。

「あーこれ?おまえに頼まれてた瑠の出生と過去調べた奴。」

ペラ、と書類を渡される。

「随分早いですね。もう少しかかると思ったのですが。」

ミスタが頭をかく。

「それが…最近は平和らしくてなぁ~、この程度ならって直ぐに終わらせてくれたんだ。」

彼の出生についてのページを読む。

 

「…ほう、これは興味深いですね。」

ジョルノが背もたれに背中を預けて金髪がパラパラと揺れる。

「んぁ?何がー?」

ミスタが駆け寄って覗き見る。

「…瑠は元々星形のアザの持ち主です。詳しく説明すると、ジョラルと瑠の母親は同一人物で、つまり二人は兄弟になるわけです。父親は違いますが。そもそも星の居場所がわかるのは、彼が星が嫌いなわけではなく、彼自身に刻まれた星型のアザが由来になっています。」

ミスタが不思議な顔をする。

「でもよぉ、聞いた話によると、肩にそんなアザついて無かったって…」

ジョルノが、人差し指を立てる。探偵気取りらしい。

「そこです。実は彼は幼少期に肩にひどい火傷を負った事があるんですよ!彼が成長するうちに記憶が薄れてしまったのでしょうね。だから彼は自分には星形のアザがない、と『予測』してたんですよ。」

ミスタは顎に手を当てて感心したようにジョルノを見る。

「ほぉ~、お前頭良いんだなぁジョルノ。まぁ知ってたけどよォすげぇ発見だぜェ。」

ジョルノの肩が震える。笑っているようだ。

「これで彼に会う口実が出来ましたね。」

 

 

____________

 

 

ジョセフは、ジョナサンの書斎にはいり、理亜についての書類を探していた。雑多におかれた紙を血ナマコになって理亜の文字を探す。

ふと、右手に取った紙が理亜のものだと気づく。経歴についての欄を見ると、高校の後、不自然に間が空いている。

______二年も。

留年したわけでもないのに、理亜は高校からの経歴が止まっていたのだ。

「つまり、実際は高卒までしか経歴が無かったわけね…」

他の書類を確認してみると、理亜の仕事振りなどが事細かに記されていた。

「まさか…スピードワゴンのおじさんに溺愛されてたってわけ…?後ろだてがSPW財団だからすんなり大学に入れた訳だ。こいつは裏がありそうだな。」

 

 

 

____________これにて、冒険の忌憚、初めの一章を終わりにいたします____________

 

____________これから続きます旅をどうぞごゆるりとお楽しみください。____________

 

 

 

では、第二章『友情の代償』、また開幕致します……。

 

向日葵、夏、砕けた大地と汗ばむ肌、虹、通り雨、宝石のように集めたあの日の思い出。

 

血の滲む拳、崩れる瓦礫、降り注ぐ太陽の光と、反射するシャボン玉、マフラー、乱反射する水面と、そよ風、真っ白なシーツ、溺れるように集中したあの日の午後、決闘、夜、手綱を握る手、ごうごうと燃え盛る炎………

 

 

メス、ライト、惚れ惚れとした顔、包帯、血が滲む手袋、転がる身体、無機質な笑い、白い白衣、汚した手、偽善者の笑顔、青いライト、見ないフリ。

 

 

まだはじまったばかり。

 

 

 

 

 

 

                .end




第一章『ファントムブラッドの赤』これにて、終了!

いかがでしたでしょうか!多少は語彙力やら文章力が身に付いたかなと感じております。まだまだ物語ははじまったばかりではありますが、ファンの皆さま方と共に、これからもいきるかぎり歩み続けていきたいなと考えております!
目指せ!☆10!

では、不定期更新は相変わらずになってしまうと思いますが!また会う日まで、お楽しみください~!

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二章 友情の代償
二章「友情の代償」


こんにちは!エイプリルフールにフレンチトーストのために牛乳に命を懸けてました!Tarakoです!
自分の年齢がことしもまた一つ老けるのか………
二章なんで前置き(((((((前書きも豪華にしましょう!

※注意!※
・作者は腐女子です。その気が無くてももしかしたら距離近いかもしれません申し訳ない
・作者が小説が書きやすいように少し過去を改編していたり、原作と違う、ということがあるかもしれません、申し訳ない
・初見さんへこれは二章になりますので、一章からお読みすることをおすすめいたします。
・作者はバカです。たまに誤字脱字することがあるので、優しく指摘してください。
・作者に文章作成能力はありません。技術を教えても構わないよという優しい心の持ち主の紳士がいたら作者に教えてあげてください。
・その他、誹謗中傷に関する感想は受け付けておりませんので、無視してしまうかもしれません、申し訳ない。
・三次創作大歓迎です!お手数お掛けしますが三次創作を投稿するときはタグなどでアメジストのif物語公式略称の「アメif」というタグをつけてくださると嬉しいです。作者が興奮しながら感謝のコメントを送るかもしれませんので、ちょっと………な人はその前に作者出入り厳禁と書いてくださると嬉しいです。
・ぽつぽつ投稿しています。気長に待っててください。
・オリキャラスタンド使い万年募集中です。設定と立ち絵(合った方が表紙書きやすいです())をお書きの上、感想、またはメッセージボックスで言ってください。
・この場をお借りして。友人、オリキャラスタンド使いくれてありがとう。

■キャラクター説明■

○ジョラル
アメジストの紫色の瞳の成人男性。一応この物語の主人公だよ!あまり目立ちたくないようだ。ジョースター家にしては普通の顔立ちだよ。あと本当は宝石専門の大学(短期大学)で勉強してたけど濡れ衣を着せられて退学したよ!イタリアに戻ったら倒れてジョルノに助けられたよ☆またおんなじ宝石専門大学に行くらしいよ!一応イタリア育ちらしいよ。

○瑠
作中を通してのジョラルの相棒?ライバル?みたいな存在だよ!現在は色々あってSPW財団(スピードワゴン財団)に捕らわれているよ!どうにでもなれ成分が多めでガーネットの赤い瞳をしているよ!ここだけの話、ディオの息子だよ!イギリスで十四年間過ごしてから日本に来たよ!バリバリの外国人!

○四之宮理亜
SPW財団の職員だよ!仕事のおにみたいな所があるよ!お酒は嗜む程度らしいよ!美術大学で油絵やってるよ!理亜だけ純日本人だよ!家庭は事情があるよ!

○ジョセフ・ジョースター
私の推し(((((((
私情すぎるね(((((((
フライドチキンが好きなイギリス人だよ!英語ペラペラ過ぎて理亜が一瞬戸惑ったらしいよ!(裏話)コーラがあれば百人力な波紋とスタンド使いの不動産王だよ!

○シーザー・アントニオ・ツェペリ
最推し(((((((またもや私情だね!
色々あって病院に入院中だよ!別名スケコマシーザーだよ!向日葵が好きとかかわいいかよ(((((((尊いね!

○白神崎ルヴィ
超天才な外科医だよ!天才すぎるね!うん!()
先生は水を飲む勢いで紅茶をごくごく飲むよ!だから先生の診察室にはティ○ァールが置いてあるよ!愛用しすぎて三代目らしいね(裏話)

*あらすじィ!*
ジョースター家の家族になったジョラル!なんかヤバイ輩に絡まれたり、友達になった奴が死んでしまったり………そんなことをしてる内に彼と彼の回りの人々は、奇妙な出来事に巻き込まれていく!


 

【挿絵表示】

 

テーブルの上でジョセフさんが倒れている。

「ナニモシタクナイ…アツイ…」

先程からこの言葉しか繰り返していない。生きてるのか…?

「ジョセフさん、アイス食べます?」

かくいう俺も、暑すぎて自転車でアイスを買いに行ったのだが。

「おおぉ………食べる…感謝………」

まるで水を求める瀕死の動物みたいな動きをしながらアイスを食べる。

「そういや、仕事終わりました?」

片手で冷たいバニラアイスを頬張りながら、片手でスマホゲームをする。ボスが難しいんだよな、このステージ。

「いいかいジョラル君、社会人に休みは無いのだよ…。」

アイスのお陰で少しずつ涼しくなってきた。ジョセフさんがエアコンも付ける。

「へぇ、まだ仕事有るんですか…あっ!!死んだ!!」

味方キャラの一人が罠にハマって死んだ。こいつがいないと苦労するのに…「最悪ぅ…」と口をこぼしてから、ゲーム画面を閉じた。

「ジョラルぅ、郵便受け見てきてぇ…おねがーい」

ジョセフさんが死んだセミみたいなポーズをして倒れる。

「え"っ!嫌ですよ!30度近くの気温なのに!?地獄絵図ですよ!?無茶言わないでくださいよっ!弟が焼け死んでも良いんですか!?」

ジョセフさんが両手を机の上に置いて立ち上がる。

「じゃあこれは仁義無きじゃんけんで決めようぜ…」

俺もアイスの最後の一口を食べきり、立ち上がる。

「いいですよ…!」

ジョセフさんが必死の形相で

「俺は努力とガンバルがだいっきらいなんだーッッ!!」

といって拳を繰り出してきた。

 

結果。

 

「ま…負けた…」

ジョセフさんが膝から崩れ落ちる。

「なぜだ…完全にお前はグーを出す顔をしてたのに…」

ジョラルがどや顔でジョセフを見ている。

「直前でやな予感がしてチョキに変えました☆」

賭けでジョセフに勝つことが出来てとても喜んでいるようだ。ジョセフは項垂れながら、郵便受けをかくにんしにいった。

 

ポストの中を確認すると、

「えーっと…チラシ、あとスーパーの広告…あアイス売ってる。あとはジョルノへの書類と…何だ、これ?」

茶色の封筒の中に分厚い何かが入っている。差出人の所にhollyとかきなぐってある。…ジョラルあてのようだ。

暑い日差しから逃れる為、家に入りながらジョラルを呼ぶ。

「コレ、ジョラルあての荷物…?なんだけど。」

ジョラルが受け取り、差出人の名前を見る。

「holly…?よくわかんねぇな、この名前の友達も居ねぇし。」

茶色の封筒を開ける。その中には…

「ディスク…?何でこんなものが?」

薄い円盤状の…ソレはケースに入っていた。

「変なものには違いネェよ、あんまり気にしない方が良いかも知れねぇ。俺が預かっておこうか?」

ジョセフは気味悪さを感じているらしい。

「いや、良いですよ。俺が持ってます。害は無さそうだし。」

ジョセフがジト目で俺を見る。

「大丈夫ですって!」

ムスッとしたかおで「良くねぇよ…何かのスタンド攻撃かも知れないだろ!仗助が戦ったスタンド使いは爆弾に変える能力を持ってたらしいし…心配だぜ、俺は。」

ジョラルがため息をつく。

「はぁ、大丈夫ですよジョセフさん、なにもしませんし。」

ジョセフが怪訝な目で見つめてくる。

「あーもー!スーパー行きましょ、アイスと晩御飯の材料買わないと。」

「あ、」ジョセフが思い出したように言う。

「シーザーちゃんに会いに行くだろ?そろそろ行かないと。」

ジョラルもそうだった、と思い出したようで支度を始めた。

 

 

バタン、と助手席のドアを閉めると、二人はシートベルトをつけ、ジョセフは車を発進させる。

「シーザーさんって何で入院してるんでしたっけ。」

ジョラルは肘をつきながら窓の景色を眺めている。

「…俺等が柱の男たちと戦うことになったとき、…俺とシーザーは、些細な…いや、あいつにとっては重要だったのかも知れない…喧嘩をしたんだ。あいつは一人でワムウを倒しに行こうとした。」

どうやら、前のほうにある車が衝突事故を起こしたらしく、車を隣の車線に移動させたものの、渋滞に巻き込まれたらしい。バックミラーにうつるジョセフの顔が、少し不機嫌そうになる。

「…あいつは神砂嵐を受けた。あいつの声が聞こえる所まで走っていったら、あいつは、今まさに瓦礫にひかれそうになっていたんだ。」

はしって助けた…が、しかし波紋の使いすぎと神砂嵐の影響でずっと入院中らしい。

「なかなか凄まじい戦いだったんだな」

少しずつ渋滞が緩和されていくと、奥の方に大きな病院が見えてくる。

「あれからずっとあいつは病院で過ごしてるんだ。」

で、ジョセフさんは負い目を感じている、と。

目的地につき、車から降りると、暑さがどっとくる。病院はエアコンが効いていて凄い涼しかった。メールで、仗助さんから買ってきて欲しい材料と、プリンをジョルノが食べたがっているという旨の文章が送られてきた。

「すみません、シーザーの病室ってどこかわかりますか?」

手鞠総合病院には、とても有名な外科の先生が居ることで病院自体が有名である。

そうでなくとも、真摯に受け答えしてくれるこの病院は結構評判が良いのだ。

「たーのもー!」

ジョセフさんがガラリと病室のドアを開けた。個室らしく奥にシーザーさんがいる。

「よう!スケコマシーザー!」

金髪の髪が揺れ、翡翠のような瞳がこちらを向く。

「おう、スカタン」

(悪口の質はどっちもどっちだな…)

シーザーがこちらを向き

「そっちの人は?」

と俺に問いかける

「ジョラル・ジョリオです。あなたにあえて光栄です!」

彼の近くに行き、彼と握手を交わす。

「シーザー・アントニオ・ツェペリだ。君に会うのを心待ちにしていたよ。よろしく。」

ジョセフが「お前…他人によって態度を変えるんじゃねーっ!!」

と怒りをあらわにする。

(ジョセフさんがいっていたイタリア人っていうの、なんだか良くわかるな…典型的なイタリア人っていうか…うーん、不思議な人だ。良くジョセフさんとうまが合ったなぁ。)

 

それからというもの、俺はシーザーさんと柱の男についての話、シーザーさんから見たジョセフさんの話など、身の濃い話を聞いた。

「アイツはちゃんとやることはやる奴だよ。ふざける時もあるけどな。」

彼がそう話していると、コンコン、とドアがノックされる。

「入ってくれ。」

入ってきたのは片目を眼帯でとめた青い瞳の男性だった。

「こんにちは。お二人は初めてですね。シーザーさんの主治医をしています、白神崎ルヴィといいます。父が日本人で、母がアメリカで医者をしています。お見知りおきを。」

主治医だからか、ジョセフさんもキリッと挨拶をする。

「こんにちは。ジョースター不動産の現社長、ジョセフ・ジョースターです。俺の友人がお世話になっています」

名刺を渡し合い、ジョセフさんが名刺を確認すると…ぎょっとした目をする。

「も、もしかして、白神崎さんって、()()…」

あ、とでも言うような顔をしてから、頭に手を当てて

「お恥ずかしいですが、一応有名…な医者らしいですね、私。」

ジョセフさんが感激したように、ありがとうございます…!と言っている。

「あのぅ…」

一言も発していない俺がやっとくちを開いたので、全員が俺を見ている。

視線がいたい。

「えと、あのってどの…ですか?」

場違いで的外れすぎる。この世に生まれたことを憎むぞ神。

「超天才の外科医白神崎先生だよ。この病院が一目置かれている理由の一つ!」

俺も理解した。

「あぁ!その人なんですね!」

クイズの答えがわかったみたいでちょっと興奮する。

「そ、そんな褒めないでください…っ慣れてないんですよ、そういうの…」

恥ずかしいのか顔を隠してしまった。

「で、先生、検査の時間ですか?」

シーザーがチラッと白神崎先生の方を見る。

「そうです、検査の時間で呼びに来たんですよぉ、丁度お見舞いの人も来ているそうなので、私が呼びに行こうと思いまして。迷惑だったらすみません、」

ジョセフと俺はばばばばばと手を振る。

「いやいや、そんなこと無いですよっ!」

こちらとしては嬉しい限りだ。

「ははは、そうでしたか、良かったです!では、私はシーザーさんと一緒に退室させていただきますねまた日程が合う日がありましたら、来てくださいね~」

シーザーさんも一緒に病室から出ていった。

 

「凄かったな~」

ジョセフは隣でバナナジュースを飲んでいる。

「す、凄かったですね…」

それから、俺たちはスーパーにいって無事帰宅をしたのだった。

 

 

 

 

「風邪…かもしれない。」

瑠が理亜に話しかける。

「え?風邪?マジ?とりま衛生部の方に言ってみるけど…大丈夫?」

高速でスマホに文字を打ち込んでいる理亜はスマホから一回も目を離さず見ている。

「いや極悪非道過ぎる。まーいいや、そろそろ報告が終わってジョラルに会いに行けるんだろ?」

瑠が理亜の事を見ながら話す。

「そぉよ。」

「手紙でも書こっかなぁ………」

頭の後ろで手を組み、のびーっとした姿勢を取る。

「渡してやっても構わないわよ。」

チラリと瑠を見る。

「良いよ、めんどくさい。もう寝る。」

てをぶらぶらと振り、帰ってしまった。

「はぁぁぁあぁぁ~」

ぐだ、と机の上に頭を突っ伏す。

「訳がわからん。なんなんだあいつ………」

頭をかき、理亜の後ろのドアから出ていった。

 

 

 

ソファに体を預けると、ずし、と沈んでいく。

「もぉぉ、つかれちゃったっすよ~」

缶ビールの蓋を開けると、プシュっと涼しいおとがする。

「これで良かったんかね~オレは不思議に感じること無かったけど、なんつーか………」

ごきゅごきゅと缶ビールを飲む。

「ぷは、まー何でも良いか。」

片手でビールを飲みつつ、パソコンを立ち上げる。

「えっとぉ………パスワード何だっけ………、あ思い出した。」

"彼女"がオレに託したパソコン。最期にこの世界を想って新しいパスワードを設定した。

「Beetle_Go around@14っと………よし、入った。」

壁紙がなにも設定されてないパソコンの画面。

「コレコレェ!ほんっと味気のない画面だよねー!」

ファイルからとある画面を開こうとすると、またパスワード画面になる。

「えっと、よし。」

パスワードが当てはまると一つのファイルが開かれる。

「ふむふむはるほろー、オレはコレをやれば良いわけね~オケオケ、さっすが姐さん仕事早い!」

パソコンを閉じ、眠くなってきたので床に無惨に広がっている毛布を引きずり、ソファで眠り始める。

「おやすみぃ………」

 

 




どうだったでしょうか!
二章も頑張って参りますので…!
あとファンアート普通にみたいです!
三次小説も大好物です(((((((
また次回あいましょーーー!


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一話「二回目のはじめまして」

がんばる。

*お詫び*
前回の前書きでジョラルの経歴が間違っていたことをお詫びします。
✕イタリアで宝飾大学に通っていた。
○日本で宝飾大学に通っていた。
前回の方は直しておきました。申し訳ないです。

◆キャラ紹介◆
○ジョラル
今日は空気
○理亜
満足できない
○瑠
風邪気味
○ジョセフ
世渡り上手
○仗助
正義が強い。
○ジョルノ
プリン愛が強い
○鈴木リョウ
前回の話のパソコンいじってた人がコイツです

■あらすじィ!■
前話と関係なく今回は理亜の過去回想シーンからです


 

【挿絵表示】

 

 

何時だって私は、最底辺だ。

こんなのが正しくないのは私だって理解してるのに。

 

産まれた時から父と母が離婚していた。父だけに育てられてきた。

男とは思えない程、弱々しく優しかった父。母はそれに嫌気がさし離婚したらしい。

父は稼げない仕事をしていた。たまに、良い仕事が回ってきたとき、私に仕事の話をしてくれていたけれど、そういう仕事の時は、父が帰ってくるのが極端に遅かった。

家事はなんだってやってきた。掃除もご飯も洗濯も何もかも、父がいなければこの家には私一人しかいないのだ。

中学を卒業してしまえば、義務教育が終わってしまう。皆の陰口を聞かなくて良くなるのに、いじられることもなくなるのに、私は気づけば心細くなってしまった。そんなことを知ってか、父は自分の古いパソコンで何時もみんなが高校でやる教育をしてもらっていた。授業の様子の動画を何本もみて、体育だってなんだって、社会事情や科学だって見た。それでも心のなかには疎外感を感じていた。大人になったらこんな家からは出ていくんだと決めていた。勉強をした。父から試験の事を学んだ。その時、私は経歴という大きな壁があることを、知った。それでも高校受験をしたんだ。皆は高校にすんなり合格出来たけど、私は受かったということがどれだけ嬉しかったか。

高校に行けない馬鹿とは違う。アイツらよりも頭が良い、「一般人」でいられること!

 

だから、高校で失敗すると思ってなかった。

 

陰口、悪口、暴力。高校に行くのは当たり前。だから、差になるのは「生活」。中学校からいじめてたやつが私の事を言いふらしたんだって。みないふりをして、しらないふりをして、そして、私はそんな生活をしながら、高校を終えた。

父には勿論大学に行きたいと伝えた。父は無理だ、と答えた。そんなことあるのかな。

皆行けるのに、皆頑張ってるのに、私だけなの?ふざけてる。許さない。初めて父の事を恨んだ瞬間だった。

 

「…とても、いやなゆめをみた。」

目の前の少女はぼーっとしている。

「なんだいきなり。」

俺はというとスタンドの頭を撫でていた。もふもふしていて気持ちいい。

「昔のゆめ」

話が通じていない。70%くらい。

「…はぁ」

最近、異常なくらい眠たい。いや、その正体はわかるんだが。

「…理亜、薬、ありがとうな。」

明らかな配分ミス。初めてみた時動揺した。

え?なんで薬に詳しいのかって?………あれだよ、あれ。昔医者になろっかなーとか思いながら少し勉強してたんだよ。

「て言うかめんどくさいんだが、何度も面会室行くの。」

面会室。スタンド使いが逃げられないように特殊な金属や石で出来た部屋で、ガラスを隔てて理亜とは対面している。

「ごめん、でも報告書書かないといけないからさぁ…」

そうか、おれがあの発言したので、報告書(もとい観察ノート)をまとめなきゃいけないのか。

「俺に凶暴性があったら一発なんだけど、生憎母親の腹のなかに置いてきちゃったからな…シスターがいれば良かったんだけど殺しちゃったし。」

今考えるとシスターもなかなかサイコパス…げふんげふん、やばかったよな。強すぎたし。

「あたし、あの女嫌いだからやめてくれ。絞め殺しそうになる。」

もふもふのスタンドに顔を埋めて、そうか、と返事する。ふとした瞬間、強烈な睡魔に襲われて…

 

 

「ジョラル~!もう着替えた~?」

ジョセフさんが一階から俺の部屋の二階まで届くくらいの大声で急かしてくる。

「待ってくださーいっ!すぐに終わるので!あ、ちょ」

物凄い勢いでタンスに足の小指ぶつけた。

「っっうぅ…ったぁ…やばい足折れたかも…」

とてもいたい。…と、仗助が部屋に入ってきた。

「大丈夫ッスかジョラルさん…ってうお、小指ぶつけたんですね…」

仗助が屈んで治してくれる。痛みが和らいでいく。

「小指怪我したなら僕呼んでくれれば良かったのに。」

ジョルノがにこにこしながらこっちに来た。

「うえっ!?ジョルノのは痛いじゃんか…っ」

小指がなおると他の支度を手短に終わらせて二人と一緒にしたに降りる。

「そういえばジョラルさん、その髪飾りは取らないんですか?」

髪飾りというより髪留め…?俺の長い髪を束ねた髪留めは、ある事情があって…

「大切なものだから何時も身に付けていようと思って…取る?」

そろそろ髪の毛少し切りたいと思ってたんだよなぁ

「えー?とってみれば良いジャーン!なんか変わるかもよ!雰囲気とか!」

「そうですよ!きっと大人っぽい雰囲気に!」

「その髪の毛切ったら陰キャじゃなくなるかもしれませんッスよ!!」

「…俺は別にどっちでも良いが」

「女の子みたいに伸ばしてるわよね」

五人の圧におされ、髪留めをはずすことにした。

宝石が嵌め込まれている場所をぐっと押すとパカッと開く。それと同時に髪の毛がフワッと降りる。

「俺こんなに伸ばしてたのか…」

髪の癖なのか、したの方がくるっとなっている。一瞬、もしかしたら髪切ったら印象変わってともだちできるのかな、とか、男らしい雰囲気?になるのかな、とか沢山考えた。…けど。

「やっぱり、髪留めしておきます。」

長い部分だけ髪留めをする。

皆もなんだか心なしかそっちの方がいいねみたいな雰囲気になっている。

「じゃ、行こっか、ジョナサンとディオのお見舞いに!」

ジョセフさんがそう言うと、皆車に乗り始めた。

 

 

◆SPW財団特別治療室

「SPW財団特別治療室ったって、今はジョナサンとディオだけの質素な病室なんだよなぁ。」

命を繋ぐためだけの治療。

「………ジョセフさん、俺、治したいッス。」

仗助がキリッとした顔で、というよりはなんだか苦しそうな表情でジョセフに頼み出る。

二人の、寝たきりの男達はまるで死んでいるようなかおをしている。心臓は動いているのに。

 

 

「………それ効かないよ。」

 

 

 

後ろから男の声がする。振り返ると…

金髪に染め上げ、緑のメッシュがかかった髪、明らかに性格の悪そうな瞳を持つ男が、ドアの枠に寄りかかって俺達を見つめていた。

「その二人にはどんな奇跡も魔法も科学もスタンドも効かねぇ。魂の状態が特殊過ぎるんだよ。」

仗助が駆け足でその男に近寄っていく。

胸ぐらを掴み、眉をつり上げ、大声で抗議する

「ッテメェ、急に話しかけてなんだよッ!大体、それは別のスタンド使いの話だろう!?俺の能力でどうなるかわかってないじゃね~かよッ!!!」

その男は仗助の言う言葉がまるで子供の駄々だとでも言うように、煽るように口角を上げた。

「じゃあ、試してみればぁ~?俺はここで見てるよ~」

ギリ、と仗助の歯ぎしりする音が響く。廊下にも病室にも、俺達とあの男以外誰もいない。

俺の心がなぜだかざわつく。

仗助はその男を突き放し、ジョナサンさんの元へ歩く。

「クレイジー・ダイヤモンドッッ!」

 

声は、ただ響く。

虚しく、響く。

その後は、ただただ静寂だけが流れる。

「そんなっ…馬鹿なっ」

俺はずっと男の方を見ていた。俺に気づいた男が手を振る。

「言っただろう?クレイジー・ダイヤモンドでも救えないんだよ、東方仗助君。」

男はそれを表情一つ変えず見ていた。

「ぼ、僕もやります。」

ジョルノがジョナサンの手を繋ぐ。

「ゴールドエクスペリエンス…ッ!」

…なにも起こらない。

「ッ、なん、なんだッ!」

ジョセフさんがとても狼狽えていることが見て取れる。

「二人の魂は、身体の中にとどまっているんだけどさ~」

男が話し始めたので全員が後ろをまた振り返る。

「ただ、世界がそれを許さない。」

コツ、コツ、と歩き、ジョナサンとディオに近づく。

「………"元に戻そうとしている"…二人の魂が別れる前、二人の魂が原点に還る所まで世界が戻らせようとしている。二人からすれば長い夢から覚めたようなものだよ。」

男は訳のわからない言葉を並べる。

 

俺はこのしゃべり方を、話し方をしってる。…というより、この胸のざわつき方は、神父とシスターに、あったときのような感じがするのだ。まるで、まるでそれは、核心をついているようでもあったし、それは全く意味のなさない言葉かもしれない。

男は、俺の手をおもむろに掴む。

「久しぶり―――いや、はじめまして、かな、ジョラル君、オレの名前は鈴木リョウ。よろしくね~」

男は、いやリョウと名乗る男は、其を良い終えると皆に背を向け、病室から出ていく。

「ばいなら~」

手をふらふらと振り、出ていった。

 

「なんっなんすかアイツ………」

仗助がアイスを食べながら窓の景色を眺める。

結局俺達は、普通にお見舞いをしたあと、スピードワゴンさんに挨拶をして帰った。

『あぁ、鈴木リョウですか?アイツはぁ、中卒なんだけども、情報収集と体術が優れてて財団にひきいれたんですよ、もしひどいことを言ってしまっていたらすいません、ちゃんと言いつけておきます。』

とスピードワゴンさんが言っていた。まぁ、言い付けてくれる?らしいから一応は安心かな、とは思っているのだが。

「まーまー、そんなこともあるよん、気にすんなって」

皆帰りにコンビニで買ったアイスを食べている。

「そういえばジョルノ、お前は瑠に会いに行かなくて良かったのか?」

ジョルノはまるごとプリンアイスを食べる手を止めてこちらを向く。

「え?会いに行きましたよ?ただ、長居はしたくなかったようなので少しだけ話をして帰りました。」

目から鱗過ぎる。いつの間にそんなことをしていたんだ。

「言ってくれれば俺も行ったのに………何で教えてくれなかったんだよぉ」

ジョルノはまるごとプリンアイスをまた食べ始めながら

「だって、聞かなかったじゃないですか。」

と、さらっと言った。………強いな

 

 

 

 

 

『僕も調べてみます。瑠さんは引き続き内部の情報をください。』

少し前からジョルノとは連絡を取り合っていた。

初めは驚いたが、ディオとは似てなくて、まるでジョナサンさんのようだなぁ、とも思っていた。

『初めまして、あなたが僕のお兄さんの瑠さんですね、僕は弟のジョルノです。おどろくとは思いますが、今はそんなことを気にしている場合じゃなくて―――』

 

「何やら、めんどくさいことが始まったみたいだな。」




有名になりたい
毎週土曜日ヒロアカたのひい(脳死)


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二話「ペルソナな彼女」

どうやったって過去は変わらないのに人は後悔ばかりしてる

◆人物紹介◆

ジョラル
陰キャの極み

ジョセフ
例外ばかりなのだよな

理亜
バイカラートルマリンすごい好きです(私が)
めちゃ元気

鈴木
なぜ書いたのか私も不明。不明瞭

後書きにお知らせあるから忘れず最後までスクロールしてあげてくださWRY。

◆あらすじ◆
鈴木に気分を害される仗助とかまるごとプリンアイスとか、瑠くんとか()前話みた方が早い。マジで。




 

【挿絵表示】

 

 

あのさ

と声をかけられジョラルは振り返る。

「お前は、どうして戦ってんの?」

ジョセフさんは仕事が一段落がついたらしく、気になっていたらしい事を質問してきた。

俺は少し考えてから、コーヒーを飲んで、ぽつぽつと話し始めた。

「水城が死んだことが今でも実は、信じられずにいる。彼の笑顔が、俺は好きだった。アイツが騙してたことが信じられなかったけど、だけどやっぱり俺は水城を友達だと思ってた。アイツがまた帰ってくることを、もしかしたらまだ夢にみてるのかもしれない。」

ジョセフさんはコーヒーに口をつける。俺はジョセフさんと目が会わせられず、手元にある書類の文字を見続けている。

「だけど、アイツは死んでいる。おれのせいで。」

目の前で血が飛び散る風景を、俺は知っている。そのせいで彼は命を落とした。

「だから、もう間違えないように…もう、無意味に命が落とされないように」

ぎゅっ、と手を握ると汗がにじむ。

「だから、シスターも神父も俺は許さない。許すことは出来ない。俺が、そう決めたから。」

そういってからコーヒーを飲むと口のなかには苦味とほのかな甘みが残った。

「…そ」

ずずず、と飲みながらジョセフさんは俺を見つめる。

(…理亜と校長がジョースター家のことを言っていたのはまだ秘密にしておこう…)

どうしてそう思ったのかわからないが、俺にはそれが正解な気がした。

ピンポーン、という間の抜けた音が家に響く。

ジョセフさんはさっき座ったばかりなのに立ち上がり、玄関にいく。

ガチャガチャ、というドアの音の後に、こんにちわぁ、という女性の声がする。…なんかやな予感がして、俺も玄関に行く。

ジョセフさんがおれに気づいて振り返る。

「なんだジョラル、リビングにいれば良かったのに。」

そこにいたのは…

「…地獄からの使者か?」

理亜がにこやかな笑顔で玄関前に立っている。

「ちがうちがう!あんたの後輩の理亜ちゃんだよ~!」

後ろで結んだ大きな三つ編みが揺れる。

俺は頭に手を当ててため息をついてから、二人をリビングにいれる。

「で、どぉーして来たんだッ!」

机に手をついて理亜を指差す。

「別に来たって良いじゃなぁい」

理亜は勝手に人の冷蔵庫を漁り、余りのアイスを食べ始める。

「嫌だッ!おれの心が保たない!」

もう今すぐ理亜を追い出したい。

「嫌よォ、今日はあんたにコレの説明しなきゃなんないからさぁ」

理亜が取り出したのは一目みただけで二十枚ほどあるパンフレットだ。

「なにこれ。」

理亜が出したパンフレットは三冊あって、ジョセフさんと俺が受けとる。

「手鞠大学集大祭よ!通称美祭って皆呼んでるんだけどね。」

大きく表紙に写っているのは…テーマ…パーク…?

「文化祭と勝手がおんなじだけど、違うのは、ひとつの大学だけでやらないこと。この手鞠町にある大学全部が参加するのよ!」

理亜はバーンと手を広げ解説する。

「主催はあんたがこれから通う手鞠宝飾大学。参加する大学は、うちんとこの美大と、もうひとつの、高校と大学が一貫制の手鞠大学よ。手鞠町にある一番でかい大学が主催なんだけどもね。この大学を三日間借りて、ショッピングモールみたいに改造しちゃうの!めっちゃ楽しいわよ!お金はすぐ減るけどね~なんでも自腹になっちゃうから、この頃はもうバイト生で溢れてるわ。あとは…そうね、賞があって、それに受賞すると賞金が送られたりするのよ。」

パンフレットのなかには、去年受賞した人の顔が写っており、その奥に、チームの人だろうか、何人かの人が写っている。大体の人が紙を染めていて、赤い髪や白い髪の人が写っている。

「なぁ、美大の人ってこういう人多いのか?」

髪を染めている人を指差す。

「そぉねぇ、多いわね、カラフルよ。それも、外人の人とかハーフの人でもカラフルな髪の毛の人多いからすごいことになってるわ」

理亜は基本的に明るい茶色に染めてはいるが、これ程じゃないから驚いた。

「えと、俺も参加する…のか?」

余りピンとこない。というかおれ絶対のけ者にされるんじゃ…

「うん。後期の始めの方は全部これだから、あんたが参加しないわけにはいかないのよねぇ。」

と理亜は手を当てて答える。回避不可能の強制イベントなのか、コレは…ッ!

「まぁまぁ、ジョラルの本気を見せれる場所だしちょーど良いんじゃなぁい?」

ジョセフは妙にいそいそしいというか、なんかにこにこしてる。

「ジョセフさん…っ」

ここにおれの味方はいない。ジョナサンさん、目覚まさないかな…

 

 

*鈴木家(マンション)

 

 

「あー、なんでこうも夏場は人類に厳しい環境になるんだか…」

コンビニの袋のなかには、お弁当とお茶が入ってる。

「ま、俺は自炊をしない主義だからな。」

良いわけをしながら弁当の蓋を開ける。

「あーっ!身体に悪い匂い~」

割り箸を割ると、ちょっと失敗した。この非対称な箸は非常に使いづらい。嫌いだ。

「いっただきまーす」

ちゅるちゅるとそうめんをすすりながら、この前の事を思い出す。

そー言えばあのジョラル君っていう子、Tシャツダサかったな…外国人が好きな漢字Tシャツみたいなヤツだった。

そんなことを考えてるうちに食べ終わってしまった。ちょっと速すぎじゃない?でもなんかよくあるよね、給食食べるときと同じ調子で食べちゃってめっちゃ速く食べ終わるヤツ。最近そんな感じだった…あ、漢字だけに…

「ごっちそーさまぁ」

割り箸一膳を元の袋にいれて半分にバキッと折る。

「さて、本業に入りますかぁ」




すみません時間がなくて適当な作品になってしまいました………


へーリオスとセレーネーって兄妹らしいよ


さて、本題の!
『一章祝!アメifオリキャラ投票大会!』
やって参りましたぁ~!ここまで登場したアメifオリキャラの人気を競って参りたいと思います!
この大会で一位をとったキャラには、皆さんのご要望を全て!!!全て!!!叶えてもらおうと思います()
ご要望は、感想からでも、メッセージボックスでも構いません!お願いします!(無かったらリア友からしぼりとります)


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三話「極彩色の真ん中で」

お久しぶりです!如月な銘酪と言います!
はじめましてのかたは一章一話から見始めた方がいいかも…!と思うのでリンク張ります!
https://syosetu.org/novel/237782/2.html

本当に送れてしまいすみませんでした!

☆人物紹介☆
○ジョラル
アメジストの瞳を持つ主人公。大学を退学にされたのには、ただならぬ理由があるみたい…?
○累城内 瑠
ガーネットの瞳を持つ男☆のらりくらりとかわしてきたつけが回ってきたみたい。
○四之宮 理亜
バイカラートルマリンのスイカ色の瞳の女の子☆のらりくらりとかわしてきたつけが回ってきたみたい。嘘つくのはなれてたけど、本音を言うのはちょっと怖い
○ジョセフ
疲れすぎて疲労困憊って感じ。ただでさえ親友が入院してるんだ。
○鈴木 リョウ
友達から頂いたキャラ。(コミックス☆worldの小説版リンクはこちら→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15118930)クソダサムカつく男こそ正義。

あらすじ☆☆☆
ジョラルの退学理由がバレる。


 

【挿絵表示】

 

 

………子供の頃の夏の事。

思い出そうとする度に霧がかって思い出せない。

ひとっけのない湖沿いの遊歩道、曲がりくねったカーブの先にも誰もいなくてセミの声が耳障りでなぜか道が遠く感じた。

向かいのレストランがいつの間にかつぶれていたと、母の世間話を聞き耳立てて聞いていた。

 

「おーはよっ!ジョラルちゃん!」

ジョセフさんの声で目が覚めて、時計をみた。十二時を過ぎていて、もう日が高くなっていた。

「おはよう、というよりこんにちわ………かな」

頭がガンガン痛くなって、頭に手を押さえながら言う。

「こまけーこたぁ気にすんなって!」

ドアの近くにいたジョセフさんが、ドアから手を離しリビングへ降りていった。

俺も追いかけるようにリビングへ降りていく。

 

仗助さんや承太郎さんたちは、夏休みの終わりが近づくにつれて、SPW財団や、………夏休みの宿題に熱を注いでいた。(承太郎さんは宿題終わらせてたけど…)

ジョルノも、一度イタリアに帰っていったし、徐倫も友達と遊びに行ってしまった。

(つまりここには、俺とジョセフさんしかいないわけで)

ただでさえ年長者のジョナサンさんと話が続かない俺が、ジョセフさんとも話す事があんまりない。

「そーいやさぁ、…ちょーっと小耳に挟んだんだけどォ、」

妙に白々しくジョセフさんが俺に聞いてくる。

「………ジョラルちゃんが退学した理由って…コレ?」

そういってジョセフさんはスマホのネットニュースを俺に見せる。

「なんすか、コレ」

 

パンドラの箱

 

ネットニュースには、しっかりと文字が書かれていた

『美大で女子学生転落し入院』

 

冷たく人を見る視線

「………違いますよ、犯人は俺じゃない」

「じゃあなんで電光掲示板でこんなにお前が叩かれてんだよ。おかしいだろうが。」

体が重くなるのを感じる。ジョセフさんの言葉が耳に入らない。立ってることすらわからなくなる。

「なんか言えよオイ!」

ジョセフさんが勢い良く俺の肩を掴む。勢いで顔を上げると、

彼は静かに怒っていた。唇を噛み締め、殴ろうとするも、それに力が入らず、ただただ拳を握り締めていた。

「………シーザーの見舞い行ってくる。」

彼がこの部屋から出ていくまでの静寂が、ジョラルに対し「許さない」と、語っている様だった。

(仕方ねぇだろうが………)

彼と論争していたこの部屋から逃げるようにジョラルは自分の部屋に行った。

 

 

◇理亜

デスクワークをしていると、上司から呼び出された。

「理亜君、良くがんばっているね、特にあのスタンド使いを捕まえたことは、上も高く評価している。」

肩にそっと手を置き私に話してくる。上司を見ないよう注意しつつ、感謝を述べる

「理亜君、昔昇進したいと言っていたよね」

背中の方に手が伸びる。鳥肌がたってしまい、それを押さえるために腕をにぎる。

「どうだ、私が上にかけあっておこうか」

まるで気持ち悪い。ネトネトした言い方が、無様なそれに見えて、吐き気がして立ち上がる。流石にコレはヤバイ。

すかさず上司が私の首をしめた。

「はぁ!?ふざけんじゃないわよっ………こんな、」

こんなこと!

瑠の裏切られたみたいな顔も

同僚からの噂話も冷たい目も

上に上がるために耐えて耐えて耐えたのに。

自分を騙して生きてきた。

でもそれが一番正しいとおもって生きてきた。

自分が幸せになるためには努力しなければいけなかった。

 

それなのに

 

誰も私の苦しみを知らない。

皆自分のほしい真実だけを求めてる。

自分だけに都合の良い話だけを信じて。

 

ついちゃいけない嘘とか、ついていい嘘とか

 

 

もう、どうでも良いわ。

 

 

「………………ろ"…き…ッ!!」

心のうちにある熱が外に放出される。まるで私を焼くように。

「ッ!?熱!!!」

上司がおもいっきり私から手を離す。

「お、お前!上司に逆らったな!?地位がほしいとか言うからいけないんだよ俺を抜かそうとしても無駄だぞ!!」

上司が何かを言っている。聞こえない。熱くて死にそうだった。良く体が焼けないままだなっておもっていた。

「ロキ…そういえば炎の精霊だったわね…耳が良く、皆に真実を言うと罰を受けた神…」

自分のスタンドに触る…と、喉が焼け死ぬ程に熱い炎が私を包んだ。既に脱水症状だった私は、気絶して倒れた。

 

 

◇瑠

もう、予定の時刻を過ぎている。

何時間たっても理亜が来ない。

そろそろ帰ってしまおうか。そんな事を考えていると、一人の男が理亜の代わりだとでも言うように椅子に座る。

「ハジメマシテ、鈴木と言います。今日は理亜さんの代わりに来ました。」

名刺を渡される。

彼はコーヒーを飲みながらスマホゲームをしている。クソ、出ねぇななどと独り言を言っている。

変な奴だなと思っていたが、理亜とジョラルの次にコレでもあんまり驚かなくなってしまった。

「なんで罪を被ったんだ」

鈴木、といった男がこちらに目を向けず話してくる。

「………なんの話だよ」

俺もこいつをなんだか好きにはなれず時計の秒針を見ている。

「あんたは本来知らない罪を、自分がやったって言ったけど、どーしてなんだ?」

思うようにゲームがクリアできず少し苛立っているようにも見える。

「なンの罪だよだから」

真っ黒の瞳がチラリと俺を見つめる。

「んだよ…」

「アンタ、人殺したこと無いんだろ。」

ヤツはニヤリと口角をあげた。

「そーだけど、何。」

見透かされているようでちょっと気持ち悪い。

「だぁからぁ、好きでもない女庇うの楽しい?って話だよ~自分が殺されっかもしれないのに、自分を裏切った女のケツ拭うのたのしーの?暇な男なんだなぁ、お前ってさぁ」

たぶんこいつのやりたいこと…は、俺を怒らせることだろうな。こうすることで俺が理亜と繋がりがなくって無実だって言わせようとしてるんだ。…たぶん。

「で?」

ギロリ、とヤツを睨む。

「で??」

そいつは笑っていた。

「守り方間違えてんじゃあねぇのか?正しいのか?」

ヤツのてはガラス越しに俺を指差した。

「付加価値だけで俺は語らねぇからテメェもマジでやれよ!!」

金髪と緑のメッシュの髪が揺れる。

「正しくねぇんだったら言うのがお前の役目だろ!!その肩も過去も見ないふりすんなって…」

肩、の、それ…?

鈴木はスマホを見ている。

「肩のそれって何だよ…?」

「お前は肩に熱湯を注がれたせいででかいやけどの跡がある。」

んなことまで調べるとかSPW財団は暇人ばっかかよ、なんて考える。

「が、それよりもっと前からお前には特殊なアザがある。」

やつは何か検索しているようだ。っていうか特殊って何だよ………

 

「コレ。探すの苦労したんだぞ」

スマホには何かの写真が写っていて、そこには子供の頃の俺が写っている。肩の方に丸のような………三角のような………

「ん?見づらい?」

何か修正された、もうの一枚の同じ写真を見る。

 

肩には星形のアザがついていた。

 

「んだよコレッ!嘘だろ!?こんなのあるわけ無い!!忌々しい、こんな、俺を不幸にした、あいつと同じ、形の………」

平衡感覚狂う感じがする。

「あるんだよ、コレ!」

鈴木がなんかキラキラした目で見てくる。

「あ、あるわけねぇぇぇぇえっ!!!」

瑠が頭を抱えてうずくまる。

「あんたどれだけ嫌いなんだよ………」

瑠が涙をためながら話す。

「すごく嫌い。」

ここまで来るとなんかかわいそうになってくる。

「裏切り者の父親と同じ形のアザだぞ!?位置だって一緒で………最悪…窓あったら飛び降りてたレベルで最悪だわ…。」

(案外こいつしぶとそうな性格してるんだよなぁ)

「で!」

鈴木がにこにこしながら言う

「俺はお使い頼まれてただけだからね!」

小さく折りたたまれた紙をガラスのしきりの下の方にあるちいさな穴から差し込んだ。

瑠は怪訝な目をしつつもそれを受けとる。

「じゃ、面会時間終了だし、またねぇ!」

そのクソダサムカつく男は帰っていった。瑠は紙を開き中身を確認する………

「………コレ…明らかに…」

 

 

 

羽田空港

 

スニーカーが日本に着いた。

長時間空の上にいたせいでふわふわした感覚がまだ残っている。

染めてまもない髪を掻き分けて、もうスターでも無いのに堂々と歩く。

もう日本に帰ることは無いと思っていたのに、俺の人生は意外とあっけなく終わってしまったように思えた。

海外とは違って、なんだか静かな風が流れる。

「帰ってきたって感じがするな。」

トランクと旅行バックを抱えて、空港から出る準備を済ませ。

行く時とは違って、一人だけの帰り道。

あのときの熱気がまだ収まっていないようで、それがなんだか怖くなって俺は、空港から出た。

人々が行き来していく、その間を目立たぬように進む。がん、と誰かの肩とぶつかってしまったようだ。俺が見上げてぶつかった人に謝ろうとする。

男の人だった。なぜだかあまり良い雰囲気はしていなかった。

「…すみません」

そういって俺が頭を下げると、相手は大丈夫ですよ、と言った様に聞こえた。

さて、大学祭には間に合うだろうか。

もう皆自分の名前と顔を覚えていないと良いが。なんて思いつつも、バスに乗る。

座席に乗ると、やっぱり昔の雰囲気がフラッシュバックして、ちょっといやな気持ちになる。

それにしても、ジョナサンジョースターが意識不明となったニュースには大きな衝撃を受けた。彼が意識不明となるような事態を想像できなかったことも理由だが、あれほどなまでに偉大な人でも、人は人なのだと言う理由を教えられた気がする。

それを例えれば、俺も同じ部類に入るのだろうか。数年前、ありもしない事件のせいで世間から消された存在の俺は。

 

                   end.




来週もがんばります………ぷしゅう


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四話「産まれない幸せ」

あらすじッッ!!!!!!!!!!
色々あった!!!鈴木がイイ奴
前話↓↓
https://syosetu.org/novel/237782/25.html

一章一話↓↓
https://syosetu.org/novel/237782/2.html
キャラ紹介
○理亜
よくも悪くも苦労人。バイカラートルマリンウォーターメロン色の瞳。
○ジョラル
昨日の今日で凄い変わり様。
○瑠
色々けじめがついた。
○仗助
苦労人。かわいそう。こんど旅行行きな…


 

【挿絵表示】

 

 

 全然この人生が嫌いな訳じゃない。

ていうか、この落胆しきってる人生に対して、なんか求めようとする方がおかしいじゃん。

ジョラルみたいに凄い血筋な訳じゃない。

瑠みたいになんか才能がビビって来る訳でもない。

でもこうやって、惨めにしがみついてたら、神様がなんかボーナスくれるんじゃないの?

「おはよぉ、瑠」

重い目蓋をむりやりこじあけて、目の前の椅子に座る。前を見るとこれまた眠そうな瑠の顔が見れる。

「ねむそぉだなぁ…………」

そりゃあたしもあんたも同じでしょ、って言おうと思ったけど、そもそも喋る気力がないから撃沈。

「あんたこんなところにいて楽しいわけ~?」

近くのコンビニで買った甘めのコーヒーのキャップを開ける。二、三度てが滑る。今度は、ともおもって親指に力を込めて開ける。キリリ、とおとがしてキャップが開く音がする。

「ここに閉じ込めたのはてめぇだろうが…………」

「んん、そうだけどさぁ、嫌なら警備員とかにチクればいいじゃん、私が悪いことしたって。」

コーヒーを口に含む。すこし視界が晴れた気がする。

「だって、お前が決めたんだろ、俺を使うって。」

そうだけどさ、今更なんだけど、なんか罪悪感って言うか、そこにあんたの意思無いの!?って、思っちゃうって言うかさ…

「ちゃんとあるよ。」

瑠がボソっと呟く。

「え?」

あんまり聞こえなかった。もう一度言って、と促す。

「だから、ちゃんとあるよ。守りたいりゆうも、助けたいって思う事も、ジョラルの事も理亜の事も見捨てない。仲間だろ。」

急にそういうと、瑠はニコッと笑った。

瑠が立ち上がり面会室から出ていこうとする。

「まって!?どういう事?ねぇ瑠まって、仲間って…そりゃそうだけどさ、唐突すぎるよ…」

私が彼を止めるために大声でそういうと、瑠はこちらを振り返る。

「おれも頑張るってこと。理亜はジョラルを助けてやってくれよ。」

瑠は手をヒラヒラとふりながら面会室から出ていった。

「……ジョラルの所に行けってコトぉ…?そりゃ今日は予定無いけどさぁ、そんなフワッとした言葉で通じる奴少ないんだからさぁ、まったく考えてほしいよぉ…」

 

てゆーかあいつ、まるで私が思ってたこと全部わかってたみたいな感じだったんだけど。怖~。

 

 

 でもほんとやること無いのよね。

だから来ちゃうんだけど。

チャイムを押す。私この音嫌いなのよねぇ、だってさ、なんかイラつくというか、癪にさわるというか、マジムカつく。

応答なし。居留守かよ

「ジョラル~?来てやったんだから返事くらいしなさいよぉ、もー!!!」

二回目のチャイム。これ私変に見えてないかなぁ、変質者じゃないのよ。言っとくけど。

『はぁーい』

やっと出たわね。声からして仗助君っぽいわね。

ガチャ、と鍵を開ける音がした後ドアが開く。

「理亜さん!」

「やっほ、元気にしてたかぁい?」

軽く挨拶をして中にいれて貰う。

「あんたまた身長伸びたんじゃないの~?ジョラルと違ってよく伸びるわねぇ、身長分けて貰いたいぐらいよ。あ、これお土産~さすがに手ぶらで来ちゃ悪いし。ほんとごめんね、せっかくの夏休みなのに。」

仗助に紙袋を渡す。

「え!?全然そんなことないッスよ!確かに初めてジョラル…さんが来た時は、外国人だし不思議な人だし、ぶっちゃけ言うと取っつきにくい人だなぁって思ってたんですけど……でもやっぱ優しい人って言うか、本当は凄い話す人で…だから全然迷惑じゃないです。むしろ感謝したいぐらいですよ。」

にか、と仗助が笑う。

(ずっと思ってたけど、ジョセフさんみたいな笑い方するのよねぇ。まるで親子みたい。全員血は繋がってる筈なのにまるで個性があるって言うか、不思議な感じ…)

「理亜さんお茶飲みます?」

仗助がコップ片手に聞いてくる。

「そうね、ご馳走になろうかしら。」

ぼーっとリビングを見渡す。

家族写真が壁に掛けられている。ジョナサンが優しそうな笑みを浮かべている。そのとなりにはエリナもうつっている。

 

「どうぞ。」

仗助から渡されたお茶を飲む。

「はぁ、ありがとう。最近立て続けにいろんな事があったせいでほんと疲れちゃってさぁ…これぐらいゆったり出来る時間が欲しかったのよねぇ…。」

一息ついてすこし眠くなる。

あ、そういえば

「ジョラル居る?あいつにちょっと用があってさ」

仗助があー、と言葉を濁す。

「実は…今はちこーっと用事があって…あ、ジョルノなら居ますよ!夏休みぐらいは居るって言ってたので…」

椅子から立ち上がり仗助に近寄る。

「仗助君って、ジョセフさんに似てるのに、嘘をつくのは下手なのね。どう考えても"ちょっとの用事"の時の慌て具合じゃないわ。」

理亜が不敵に微笑む。

 

「…ぐうの音も出ないです…あのぉ、ほんとすみません…でも出掛けてるのは本当ですよ。ジョセフさんと出掛けてるんです。ニューヨークに行くとか言ってましたけど…」

理亜が明らかに怪訝な顔をしている。

「ほほほ、本当なんですってぇ…!ニューヨークで少し羽を伸ばさねぇとなー!って言いながら昨日急に…」

理亜がはぁ、とため息をつく。

「マジで言ってる!?何日で戻ってくるのよ」

仗助もジョセフの突拍子の無さすぎる行動に呆れているようだ。

「確か…4日後に戻るって…シーザーさんも一緒でした。あーあ、俺も行きたかった…」

…やっぱ訂正するわ。仗助とジョセフは死ぬほど似てるし呆れてなんかいない。憧れてるわ。

「だって聞いてくださいよぉ、『俺がナンパのなんたるかを手取り足取り教えてやるよ!』とか言ってたんですよ!?しかもカジノ行くって言ってて…はぁ、良いなぁ…………」

私の拳が悲鳴をあげそうなほど握りしめる。

 

「なによそれ!?私痴漢(上司)に絡まれたり大変だったんだからね!?なのになんなのよあいつだけ!!わけわっかんない!!」

すると仗助もお茶を飲みながら答える

「そうっすよね…この前まで一触即発だったんですよ…!?ほんともう、カンカンにジョセフさん怒ってたんですから!でもそしたら急に海外行くとか言い出して…もうなんなんですかね…凡人には理解しがたいですよジョセフさん…」

ん…?一触即発の状態だったのに急に心変わり…?なぁんか裏がある気がする。私もニューヨークに行った方が良いかと思ったけど、やめといた方が良いわね。

(多分、ジョセフさんとジョラルでなんかのケリをつけに行くんでしょうね…)

え?それが何かって?それが分かれば苦労しないわよ。それこそ、"常人にはわからない天才の思考"なんでしょ。知らんけど。

 

 バックのポケットから着信音がする。誰かと思ってスマホ画面を確認すると…

「…もしもーし」

人混みの音が凄い。車のクラクションも鳴っている。

『理亜…ごめん…なにも言わずに…』

いきる気力を失ったような声のジョラルの声がする。

「…気にしてないわぁ。…あんたもしかして二日酔い~?はぁ、本当にニューヨークにいるのね。」

いっけなぁい、ホントに血管がプッツン切れちゃいそうだわぁ

『うん、なんか夜ジョセフさんにつれられてものすごい量の様々な酒を少量ずつ飲むとかいう地獄が…………』

こいつ、勝手に行ったくせになんか勝手に疲れきってるんですけど。

「あっそ、お疲れ。で?用件は?無いなら切るわよ。ちょっと今あんたの声聞いてると殺意沸くから。」

ジョラルがため息をつく。

「ごめんって!!!ほんっとにごめん!!!でさ、そっちにデータを送りたいんだ。それを瑠に渡して欲しくて」

「え?なんで?」

「実は鈴木さんに頼まれててさ、んでそのデータもニューヨークじゃないと手に入れられない代物でさぁ、ほんとごめん!ヤバい奴じゃないから!」

少し悩む。ま、でもジョラルに頼まれたんじゃ仕方ないか。

「解ったわ。あとで送ってちょうだい。用件はこれだけ?そしたら切るわ。あ、そうだ。私からも渡したい資料あるから今度送るわ。」

ジョラルが「了解」と返事をする。

「じゃ、またね。」

通話を終了させる。仗助の方を向いてから

「ごめんなさい、ちょっと用事出来たから帰るわ。あ、ジョルノ君いるんだっけ?じゃあこの資料渡しといてくれるかしら?」

大きめの茶封筒を仗助に渡す。

「わかりました。気を付けて!」

理亜がパタパタと走ってジョースター家を出ていった。

 

 




行事がありすぎて暇がなーーーい!!
でもがんばる!!
次回!ジョラルニューヨークでやらかすの回
皆みてね!!


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