オーバーロードRTA 王国救済の裏技 (星デルタ)
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キャラクリの裏技


みんなマジェスティ御大の偉大なる作品を読みましょう。テストに出ますからね。



 

 モモンガ様に嫌われたら終わり! 乙女ゲーも真っ青なメンヘラホモ攻略RTA、はーじまーるよー!

 

 

 今回はとんでもない自由度と鬼のような難易度を誇ることで大人気のタイトル『オーバーロード~42人目の超越者~』をプレイしていきます。

 

 このゲームの自由度は今更語るまでもありませんね。原作に存在しなかった大量のタレント、プレイヤー、現地人、はたまた大陸外のモンスターに生まれてそこで自分の国を造ることも出来る圧倒的な作り込み……。制作者は悪魔に魂を売ったに違いないと評判のこのゲームには、原作通りのナザリックルートの他にも様々なルートが存在します。

 

 今回はその中でも簡単な部類の、王国を存続させることで得られる称号【救国の英雄】獲得ルートを走っていきたいと思います。

 王国と言うクソザコ国家くんは原作では国民を大量虐殺されて王族も殺されて身内は裏切っててとどこもかしこもオワオワリ、亡国待ったなしの詰み国家でしたが、なんと主人公の行動次第では生存でき、それどころか原作で言う帝国の様に同盟国としてナザリック魔導国と同盟を結ぶことも出来るんですね。

 まあだからって被害を全く被らないかと言ったら話は別ですが、一応将来的にはナザリックと共栄共生の関係を結ぶことが出来るかもしれないというだけで十分でしょう。鶏口より牛後の方が良いってはっきり分かんだね。

 

 さて、詳しい解説は後で行うとしてさっそくキャラクリに入りましょう。先ほども言った通り、王国生存ルートはそこまで難しいものではありません。

 カルネ村にエンリちゃんとネムちゃんがいましたね? 常にパーフェクトコミュニケーションをたたき出す怪物姉妹です。彼女たちはその純粋さとバケモノじみた幸運でナザリック勢にそこそこ気に入られていました。だからこそカルネ村はあそこまで発展できたわけですが、あれと同じことを王国で行えばいいだけです。アインズ様にこびへつらいナザリックすげーすげーと言っておけば、屈指のチョロインであるアインズ様はホモの手のひらの上で転がされてくれます。楽勝ですね! この戦い、我々の勝利だ!

 

 ……と言うとでも思ったか?

 

 残念ながら王国全体を生存させるにはそれだけでは足りません。原作のアインズ様はNPCに勘違いされて世界征服への道を歩んでいます。そのため多少主人公が好感度を稼いだところで、『それはそれ、これはこれ』と言わんばかりに王国くんは犠牲になってしまいます。アインズ様もちょっと人の心が分からないところがあるので(婉曲表現)、ナザリックの為になるなら躊躇ったりしません。

 

 なので主人公君は最低でもゲヘナ作戦の前に王国を超優良国にし、ナザリック勢に『王国は生かしておいた方が利益になる』と思わせなければいけません。マゾゲーにも程がありますね。こんなんでもまだ他のトロフィーよりは簡単という所から、制作陣のつくり込みと簡悔精神が垣間見えます。どこの三叉路で悪魔に出会ったんでしょうか。

 

 ということで主人公の出生は現地人、それも王国の貴族で行きます。ナザリックプレイヤーにするとユグドラシルをプレイする時間が余計にかかり、さらに王国は原作通りのカス国家のままであるためアインズ様やNPCの説得も難しいです。だから現地人の貴族にする必要があったんですね。

 

 主人公君の名前はホールド・モルデラ・デイル・イズエルク。親しみを込めてホモ君と呼んであげましょう(伝統美)。

 種族は当然人間で原作開始時に18歳となるように設定。これは後々説明します。

 イズエルクは原作でも登場した名前で、王派閥の中堅ですね。大貴族として生まれると最初から政治闘争に組み込まれてしまうので、ちょうどいいポジションです。容姿を非常に優れたものにして、ステータスは知識と魅力に全振りします。職業は当然貴族です。

 君出る作品違くない? と言いたくなるような耽美系美少年が完成しましたね。

 このゲーム、キャラクリの自由度が非常に高いです。一部では自分を模した少年キャラを作って疑似おねショタを楽しむど変態もいるとかいないとか…。おねショタの主導権をショタに握らせるな!(冨岡義勇)。金言ですね。この言葉を胸に刻んで生きていきましょう。

 

 さて、ここからはリセマラの時間です。王国は長年の積み重ねにより腐敗しきっており、貴族人を超えたスーパー貴族人で無ければこのカス王国は変えられません。そのため、タレント『叡智の人(アポローン)』と『カリスマ〇』以上の二つは必須条件です。『叡智の人』はこのゲーム中最上級の頭脳系タレントで、ノーブルなどの知識系職業の経験値と頭脳を用いた行動に莫大な補正がかかるようになります。カリスマはまあ言わずもがなカリスマです。これが無いと周りの人が言うこと聞いてくれませんからね。

 

 両者とも非常にレア度が高いタレントなので一発で出るとは思っていません。ですがこれがあるのと無いのじゃ効率は段違いです。何度でもリセマラしましょう。

 

 

 イクゾー!

 

 デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 >「おお、生まれたぞ! 見ろ、元気な男の子だ!」

   両親の喜ぶ声が聞こえる……。あなたは無事この世に生を受けることが出来たようだ。

 

 オープニングムービーが入りましたね。さっさと操作できるところまでスキップしてタレントを確認しましょう。

 タレント:『心優しい』『平泳ぎ〇』

 はいリセ。このゲーム、そもそもタレントが二つあるだけで大変レアなのですが今回はクソの役にも立たないので残念ながらリセです。次のホモ君はきっとうまくやってくれるでしょう。

 

 タレント:『剣の才能△』

 リセ。

 

 タレント:『女たらし』

 はいリセ。

 

 タレント:『炎魔術◎』

 はいはリセットリセット。

 

 タレント:『天性のコメディアン』

 リセット……ってこれ初めて見るタレントですね。制作陣どれだけ準備してあるんでしょうか、ちょっと恐ろしいですね。

 

 リセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセセリナズナゴギョウハコベラホトケノザリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセ…。

 

 なんてことだ、君のリセは止まらない、加速する…!

 

 タレント:『叡智の人(アポローン)』『魔性の貌』

 

 はいはいリセリセ……おっと!? 出ました!目的のタレント、しかもめったに出ない最上級が二つも! 驚いてちょっとスクショしちゃいました。こんな事あるんですね……。やはり走者としての私の力量が運を引き寄せてしまったのでしょうか(隙あらばイキリ)。『魔性の貌』は正確には魅了系タレントの最上位なのですが、カリスマの効果も併せ持っているので問題ないでしょう! ここまでにかかった時間はなんとたったの23分弱。すでに走者はやり切ったような達成感に包まれていますが、ここからが本番です。

 

 次は王国一の天才にして世界一歪んだ性癖を持つ女、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ。彼女とのコミュを築かなければいけません。では、自由行動が可能になるまでスキップで駆け抜けていきましょう。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 



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第二話の裏技

 

 

 幼女に声掛け事案(意味深)していくRTA、はーじまーるよー。

 前回は走者の類まれなる豪運で最高級ホモくんを手に入れたところまででした。今回は幼少期にできる限り知力を伸ばし、5歳時点でラナー王女と出会う事を目的として走っていきます。

 

>「流石でございます坊っちゃん。貴族の教育係として長年勤めてきましたが、まさか半年足らずでお役御免になってしまうとは……。初めての経験でございます」

初老の男性があなたに向かってうやうやしく頭を下げる。その眼には自分への尊敬と、少しの畏怖が混じっていた。

 

 はい、操作できるようになってすぐイベントが入りましたね。主人公くんの才能は人類史上最高峰なので、初期に付けられた教育役ではレベルが低くすぐ教えられることが無くなってしまいます。さっさとクビにしてもらってもっと高度な教育を受けさせてもらいましょう。

 

>「なんと、今の教育係ではレベルが低いというのか。うーむ、仕方がない。王都からもっといい者を連れてこよう」

あなたの父親がひげを撫でながらつぶやく。隣にいるあなたの母親と共に、息子の才能にとても喜んでいるようだ。

 

>「しかし、替えを呼ぶのには時間がかかる。その間、何かしたいことはないのか?」

 

 よし、自由行動イベントが来ましたね。三歳まではろくなイベントが無いのでスキップしていたのですが、その途中の主人公の行動によってはホモ君はとんでもないクソガキとなり、周りからの好感度も下がりに下がってこのイベントが発生しなくなることがあります。今回はテキストから察する限り家族仲も良好なようですね。『魔性の貌』で好感度補正も入っているのでしょうか。

 

>あなたは王宮に行ってみたいと答えた。

 

>「それはお前にはまだ早いだろう。考えておくから、他の事にしなさい」

 どうやら断られてしまったようだ……。

 

 なんで(憤怒)?ダメだって言っても行くんだよ王宮に……と言いたいところですが、これは断られる前提で言いました。他にも剣の修行がしたいとかガゼフ・ストローノフに会いたいとか言ってもステータスや名誉値諸々が足りていないので断られます。ですがここで王宮に興味がありますアピールをしておくことで、次回父親が王宮に行くときに好感度が足りていれば連れて行ってもらえるようになります。

 

>あなたは領地を見て回りたいと答えた。

 

>「ふむ、領地を見て回りたいのか。いいだろう、護衛の騎士を付けるから、気を付けて行ってきなさい」

 

 はい、ここで領地の状態を確認することが出来ます。先に言っておきますと、領地は100%荒れ果てています。このゲームでは原作通り、エ・ランテル領以外にまともな領地は存在しません。クソみたいな領地で可愛いね♡王国の未来を憂うわ。

 ですがクズにも十人十色と言うように、荒れた原因もそれぞれ違います。帝国と繋がってるとか、土地が貧しいとかですね。その中でも『八本指によって汚職が進んでいる』だと一番ありがたいのですが……。

 

>あなたは護衛を連れてイズエルク領を見て回った。道ゆく人の顔は暗くこけており、民が飢えていることが一目で分かった。

 

>『叡智の人(アポローン)』があなたの眼に知恵を授ける…!

 

>あなたはスラム街が町の規模に比べて大きい事と、そこに出入りする地方荘官に気づいた!

 

 よっしゃあ! このテキストが出たということは八本指が領地に蔓延っている事確定です! 余計なことしかしない害虫にたかられたイズエルク領くん可哀想…今助けてあげるからね♡

 

>あなたがスラム街を見ていることに気づいた護衛騎士は悲しい顔をしながら帰還を提案してきた。

>従うしかないようだ…。

 

 これで『領地に蔓延る八本指の存在に気づく』というフラグを得ました。帰ると父親から『明日から別の教育係が来る』と伝えられます。超スピード!? と言いたくなりますが、まあゲームなので仕方ないですね。テンポの犠牲になったのだ……犠牲の犠牲にな……。

 ちなみに次来る奴も全体から見ればせいぜい下の上くらいなので、どうせまた半年程度でいなくなることになります。ここからしばらくは教育係が来ては去っていく繰り返しで画面が単調なので、倍速でお送りします。

 

 甥の木村、加速します(倍速中)……

 

 この倍速処理中にルートに関して説明しておきましょうか。今回のルートにおけるキーパーソンは3人います。

 一人目はメンヘラ骨太郎ことアインズ・ウール・ゴウン。これはもう言うまでもありませんね。いくら王国が強国に成長してようが、ナザリックにとってはアリがちょっとでかくなったようなもんです。全く違いがありません。いかに早くナザリック勢と友好的に接触し、アインズ様の好感度を稼げるかが肝になります。

 二人目は法国の執政官たち。残念ながら王国に自浄作用なんざ期待するだけ無駄です。どこかで腐敗した貴族たちを切り落とす大粛清を行わなければいけません。そのための武力調達先として最も有用なのが法国くんです。もともと法国くんは王国に豊かになってほしかった立場なので、ちょっと主人公が有能さを発揮すれば精鋭部隊を派遣してくれます。なんや法国くんチョロインやんけ! いっぱいちゅき♡

 三人目にして最も攻略手段に難儀するキャラが、我らがヤンデレ腹黒王女様、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフです。原作ではナザリックにいち早く接触して売国かました行動力ありまくりのヤンデレです。その暗黒の頭脳はナザリックの最上位勢にも匹敵するとかいう、まさに生きるバグみたいな存在です。ですが幼少期は自分と周りの人との乖離に悩むかわいらしい一面もあり、まさにそこが攻略の鍵になってきます。

 

 このルートでは彼らを最大限活用しまくって王国の軟着陸を狙いましょう。

 まずは幼少期に教育係を変えまくって天才エピソードを存分に貯めていきます。こうしているといずれ『イズエルクの一人息子は大変な天才であるらしい』との噂がどんどん広まっていくので、名声値の上昇も見込めます。

 噂が十分に広まったと判断したら、父親と共に王宮へ向かい、ラナー王女と接触します。彼女は当時『訳の分からないことを言う不気味なガキ』と避けられているので、その心の隙間に付け込んで(ゲス)、何とか『王国にはいい人間もいる』と思ってもらいましょう。将来の売国を避けることができ、曲がりなりにも王族の権力を借りることで領地の運営や他陣営との交渉がうまくいきやすくなります。どこに地雷があるか分からない彼女はほぼ猛獣みたいなもんなので、丁重に扱いましょう。暴れるなよ…暴れるなよ…。

 

>あなたが五歳の誕生日を迎えてからしばらくたった。すでに王国内で最高の教育係がつけられているが、彼もまた半年持たずに変わってしまいそうだ。

>ある日、父親が王宮に登庁するということで、あなたも一緒に連れて行ってもらえることになった。

>「いいか、王宮は二枚舌ばかりの伏魔殿だ。お前なら心配ないと思って連れていくが、何か困ったことがあればすぐに私に言うんだぞ」

>真剣な表情をする父に、あなたは笑顔で頷いた。夢にまで見たキラキラの王宮! どんなものがあるのか、今からあなたは楽しみで仕方がなかった。

 

 か゛わ゛い゛い゛な゛ぁ゛ホモ君……。選択肢でカルマを上げまくったホモ君は超有能な善良ショタです。蒼の薔薇のショタコンが見たら黙ってないでしょう。こうでもしないとナザリックに寝返っちゃうからね、仕方ないね……。それでは王宮に着いたらラナー王女に会うために中庭、図書室、庭園裏の順番で見て回りましょう。

 

>あなたは庭園裏に足を運んだ。手入れの行き届いた薔薇園から少し離れたここは、雑草と虫で荒れ果てている。今の王国を象徴するようなこの場を見て、あなたは少し嫌な気分になった……。

> ! あなたは一人の少女が一人でうずくまっているのを発見した。

 

 お、ラナーちゃん発見しましたね。途中二回からぶったのはガバですが、まあ誤差だよ誤差。早速話しかけましょう。

>「あなたは……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 私、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフにとって、王宮というのは実に息の詰まる場所だった。

 無能。無能。無能。私の周りにいる人たちはどいつもこいつも脳を胎内に置き忘れたんじゃないかと思うくらいの能無しばかりだった。

 誰も私の言うことを理解してくれない。それどころか、自分の無能さを棚に上げて『あいつは意味の分からないことしか言わない』と蔑んでくる。

 どうして? 私はただ理解してほしいだけ。もっと効率のいい手段、もっと手際のいい解決策。もっと皆が幸せになれる方法を教えてあげたいだけなのに。

 精神の異形種。私はきっとそう呼ばれるべき存在だった。彼らが私を理解しないのと同様、私も彼らの事が理解できないのだから。

 

 世界で一人しかいないような疎外感。周りから疎まれることへのストレスはまだ幼い私を蝕み、私は徐々に衰弱していった。

 この先、自分には二つの道しかなかったと思う。つまり、誰にも理解されないことを悲しんでゆるやかな自死にむかうか、余計なモノ全てを振り切って完成されたバケモノになるか。

 

 どっちにしろそれはもうヒトではない。幼い私、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフはここで死ぬ運命にあった。

 

 だから。

 だから、私が()の事をどう思っているかなんて、今更言うまでもないだろう。

 

 唯一私を理解してくれた人。唯一私に()()()()()くれた人。彼といる時だけ、私は普通の少女の様にはしゃぎ、思いっきり息をすることが出来た。

 今は彼こそが私にとって唯一の同種。

 この凡愚しかいない世界で、ただ一人しかいない私の大切な人。

 彼はまだ王国のカスどもを救うことに奔走しているみたいだが、いつかきっと気づくだろう。彼にとって、私以外のすべてが取るに足らないこと。そして私が彼に並びたてる唯一の同類だということに。その時、知性が劣る虫けらのような存在を今まで丁重に扱っていたことをきっと恥ずかしく思うはずだ。

 まあ、それまでは許してあげよう。何の価値もないガラクタを大切にしているのも見逃してあげよう。

「夫のコレクションを許してあげるのも、妻の度量というものですものね」

 世の中にはそれで離婚するものもいるというのだから度し難いものだ。私はそうならないように気を付けておこう。スポンジのような脳を持った下等生物も、彼が愛しているのだから大事にしてあげよう。

 

「……何かおっしゃいましたか、ラナー王女?」

「ふふふっ。何でもありませんよ、私のホールド」

 

 ただ、いつまでも私より大事にしているようだったら……その時は、私が捨ててあげるわね?

 

 




うーん、ガバは無いな(盲目)!


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第三話の裏技

沢山のお気に入り登録&評価ありがとナス! こんな妄想の書き殴りを読んでいただけて感謝が止まりませんね。


 何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ! なRTA、はーじまーるよー。

 前回は天才児の評判が高まってラナー王女とコンタクトできたところまででした。今回はラナー王女のコミュと領地の八本指対策を進めていきます。

 

>「あなたは……?」 

あなたの声掛けに反応し顔を上げたのは、この国の第三王女であるラナー王女だった。

絹のような金髪がキラキラと煌めき、大きく青い目はまるで宝石のようだ。聞きしに勝る美貌に、あなたは驚いた。

 

→見なかったことにして立ち去る

 周りを見たいのでどこかに行ってもらう

 

>磨かれた観察眼で、あなたは彼女が深く落ち込んでいることに気づいた!

 

→見なかったことにして立ち去る

 周りを見たいのでどこかに行ってもらう

 彼女と話をする

 

 はい、選択肢が出ましたね。今の選択肢、知性が一定以上でなければ最初の2択だけだったんですよ。かの超人気RPGペルソナシリーズのごとく、ステータスが高くなければ選べない選択肢がこのゲームにはよく登場します。ちなみにカルマ値が超低かったら「今のうちに弱みを握ろうとする」になります。人間の屑がこのやろう……。

 

>あなたは落ち込んでいる彼女に、一緒に遊ぼうと誘った。

 

 うーんこの良い子ムーブ。リセマラですさんだ心に沁みますね。同人誌に出てくるような超純真系ショタであるホモ君は彼女の事を見過ごしたりしません。

 走者としてはマジでこいつに何度リセットさせられたか分からないので爆弾解除の気分になってますがね。

 

>「わ、わたしとですか……?」

 彼女は戸惑った表情を浮かべながら、こくりと頷いた。

 「それでは、庭園でおままごとでもしましょうか? それとも追いかけっこのほうがよろしいですか?」

 

 お、ラナーちゃんから遊びの提案をしてくるのは珍しいですね。好感度補正が入っているのでしょうか?

 とはいえ、ここでいかにも子供チックな遊びをしてはいけません。

 今、彼女の視点では『ちょっとかわいい動物がじゃれついている』程度の認識でしかないのです。知的遊戯に持ち込んで、目の前にいる相手が自分と同格の知性の持ち主であることに気づいてもらわないといけません。

 

>あなたは彼女に軍棋で遊ぼうと言った。庭園にはくつろぐためのテーブルがあり、手慰みにいくつかのボードゲームも用意されている。

 

 当然!「軍棋」だッ!

 祖先から受け継ぐ「軍棋」ッ! それが流儀ィィッ!!

 と言うことでラナーちゃんと軍棋で遊びましょう。チンパンとボードゲームなんかやりたくないラナーちゃんは渋りますが、純粋さと勢いで押し切ります。ちなみに軍棋というのは王国の上流階級が良くやる遊びで、まあチェスと将棋の間みたいなもんです。ラナーちゃんの知能はすでにこの王宮の誰よりも高いですが、積み重ねた教育の分ホモ君の方が上です。コテンパンにしてやりましょう(リセ地獄の恨み)。

 

>強い……! 当然手加減してあげるつもりだったあなただが、すでにそんな余裕はどこにも無くなっていた。今はまだ自分がアドバンテージを保っているが、一瞬でも気を抜けば陣地を喰い破られるのが分かる。ここまで自分と互角に戦える人は今まで居なかった。あなたの胸に同格の者としのぎを削り合うことの楽しさが満ちる。

 

>「ふふっ、あはは……っ!」

 

>目の前の相手もそう思っているのだろう、瞳孔を開いて笑う彼女の顔には純粋な喜びがあふれていた。

>「ああ、とても楽しいですね……! もう少し、盤面を増やしませんか?」

 熱中したあなたたちは二面指し、三面指しと盤面の数を増やしていき、ついに目隠しでの十面指しへと突入した。

 

 うわっラナーちゃんの目こわっ! 生まれてからずっと続いていた孤独から解放されたラナー王女は大変楽しそうですね。怪物が本性を解放しているようにしか見えず、なぜか寄生獣の頭が割れるシーンが思い浮かんでいますが、きっと気のせいでしょう(植えつけられたトラウマ)。

 

 怪物二人の異次元コミュニケーションが行われている間、ラナー王女に気に入られてこれからどうするかの話をしましょうか。

 今回のルートを走るにあたって、大きな障害になるのがラナー王女です。彼女は美しい見た目の裏にどす黒い人間性を抱えており、原作ではナザリックと接触して、自分の望みを叶えるために王国を滅亡させようとします。

 当然阻止したいわけですが、現地人ルートではどうやっても彼女の人間性を矯正することはできません。原作でも『精神的異形種』と言われた彼女は根本から歪みを抱えており、それ専用のジョブを持ったユグドラシルプレイヤーでもなければ彼女を常人に戻すのは不可能と言えます。

 なので稀代の天才である主人公と早めに接触させ、『なんだ、人間にもちょっとは同類がいるじゃん』と思ってもらう必要があります。そうすると彼女の中で人間が『種族から違う劣等生物』から『そこそこ見どころもある低能共』となって、歪みを最小限に抑えることができます。

 そうなった彼女はよっぽどのことではナザリックに靡いたりしません(靡かないとは言ってない)。気分は荒ぶるタタリ神を必死に鎮めようとするアシタカのようですが、チャートのために彼女とはしっかりコミュニケーションを取って、万一にも王国を売らないよう監視していきましょう。

 

 あとはクライム君の存在が必要不可欠ですね。原作よりマイルドになった彼女にかの忠犬を与えると非常におとなしくなり、同格である主人公の言うこともある程度聞いてくれるようになります。彼女の頭脳は非常に有用なので、王国救済の大きな助けとなってくれます。主人公の力が弱い序盤に、王女の権力で無理を押し通すなんてことも出来るようになるわけです。

 おっと、そろそろ親の用事が終わるころですね。すでにラナーにホモ君を印象付けることには成功したので、さっさと帰りましょう。

 

>互いに駒の動きを言い合ううちに時間が過ぎ、気づけばそろそろ親の元に戻らなければいけない時間となっていた。

 

>「もう帰ってしまうのですか……?」

 

>悲しそうな顔をするラナーをあなたは慰め、父との待ち合わせ場所へと急いだ。

 待ち合わせに遅れたことを除けばとても楽しい時間だった。また王宮に行けば会えるのだろうか?

 

 (会え)ないです。名誉値稼ぎのために、ここからホモ君には様々な領地改革に手を出してもらう必要があります。ラナー王女に会うのは本格的に八本指対策に乗り出すあたりからですね。

 

>王都に一泊してからあなたたちはイズエルク領へと戻った。

 ラナー王女と出会い、あなたはやる気に満ち溢れていた。丁度王都で最高と言われる教育係の教えも物足りなくなっていたところだ。今の自分なら、領地をもっと良くするアイディアが出せそうだ……!

 

 はい、ここからは用水路の整備や輪作の提案など、領地をより良くするための行動を取っていきます。ここで好感度が足りない場合、生意気なことを言う息子だとして父親に断られてしまいますが、きちんと好感度調整をしておいたので問題なく受け入れてもらえます。

 

>「なに、領地改革について自分に考えがあるだと……? うーむ、まあいいだろう、言ってみなさい」

 自分の進言を父親はちゃんと受け止めてくれたようだ。普段の関係が良かったことと、今までの教育係を見て優秀さを理解してもらえたのだろう。

 あなたは笑顔で父親にお礼を言い、早速自分の考えを述べ始めた。

 

 認められてウキウキのホモ君は可愛いですね(ボンドルド感)。ステータスも十分の為、打つ政策すべてが面白いように当たります。ラナー王女は人間の心が理解できていないので何度も失敗していましたが、この私とホモ君に手抜かりはありません。既得権益を侵さないように十分な根回しをし、足りない部分は人間的魅力でゴリ押ししていきます。この時のためにカリスマを取っておく必要があったんですね。

 

(内政チート倍速中……)

 

>あなたの幼さゆえに侮られることもあったが、綿密な交渉と説得の結果、多くの改革を行うことが出来た。あなたの名はすでに領内に知れ渡っており、イズエルク領はとても豊かになった。

 

>だが、途中で何度も何者かに計画を妨害されたことがあった。あなたの頭に以前スラム街に出入りする者が多かったことがよぎる。何らかの闇組織がここにはいるのかもしれない……。

 

 これも全部八本指の仕業なんだ……! おのれ八本指! なので表社会が豊かになった次は裏社会へと踏み込んでいきましょう。次回は八本指の手がかりを得るために世界最大の暗殺組織、イジャニーヤと接触していきます。

 ということで今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第四話の裏技

やる気がみなぎる……投稿するなら今のうち……。


 駆逐してやる…一匹残らず…! なRTA、はーじまーるよー。

 

>『あなたの活躍、王都にまで届いていますよ』

>『周りに振り回されて疲れていませんか? また王宮に遊びに来てください』

>『お返事お待ちしてます』

>『第三王女の側近という立場に興味はないですか?』

>『どうして返事してくれないんですか?』

>『私が拗ねちゃったら大変ですよ』

>『早く返事してください』

>『ねえ』

>『早く』

>『早く』

>『早く』

 

 

>『覚えておいてくださいね』

 

 ヒエッ…。突然のホラー描写、大変失礼しました。メンヘラ彼女からのラインじゃないですよ、ラナー王女からの手紙です。どうしてこんなに小分けにして送ってくるんでしょうか? 人の心が分からない彼女が、恐怖を与える手法にだけは詳しくなっていて嬉しい限りですね(震え声)。

 しかしおかしいですね……。ホモ君は年月が経ちすでに7歳になりました。二歳下であるラナー王女はもう5歳、そろそろクライム君を見つけておかしくない年齢です。彼を制御弁として扱えるかどうかでラナーちゃんの御しやすさは天と地ほどに違ってくるのですが……。まあ今は良いでしょう。あんまり好感度を稼ぎすぎるとガバに繋がるのですが、今回の対八本指ではラナー王女の王族としての力が必要になります。手紙を出さざるを得ません。ついでに一緒に孤児院巡りツアーでも行ったらどうです? 今ならクライム君がついて大変お得!(カス)

 

>あなたはラナーに近況報告の手紙を書いた。領地改革にやり甲斐を感じていること、改革の際に起こった様々な出来事、その中で自分を認めてくれた大人たちのこと…。それらを綴るあなたの手がふと止まった。

>八本指について、ラナーに相談してみてはどうだろうか? もちろん自分の力で何とかする気ではいたが、彼女の頭脳なら何か思いつくかもしれない。あなたは領地の八本指対策について悩んでいることをしたため、手紙を書き終えた。

 

 手紙の書き方にも一々気を遣うのが怖いですね……。このままでは走者の胃がストレスでやられてしまいそうです。クライムーッ! 早く来てくれーッ!

 

 ところで八本指について知らない方もいると思いますので、説明しておこうと思います。

 八本指というのは原作に登場する超巨大な闇組織のことです。王国全体に勢力を伸ばし、貴族と癒着して利権を得ています。原作ではアインズ様にゴミ掃除の様に気軽に片付けられて忠誠を誓っており、正直カマセ犬のイメージが強い彼らですが、それはプレイヤーという神の視点から見たらそうなるだけ。六腕という超級の武力も抱える八本指という組織は、現地人視点では逆らう気も起きないような大勢力です。

 

 今回ホモ君が属するイズエルク領も彼らの手に落ちており、スラムには怪しげな売人がのさばり、代官は汚職に手を染めて税をちょろまかしています。ホモ君によって少し豊かになったイズエルク領ですが、その分彼らに良い獲物として狙われてしまったようです。そのせいで民の暮らしは全く豊かになっていません。なんてひどい……許せませんね(建前)、名誉値早く下さい(本音)。

 

 こちらも彼らのことは名を上げるための獲物としか見ていない訳ですが、八本指と繋がっている下っ端役人をいくらしょっ引いた所で何の意味もありません。代わりが来てすぐにまた汚職に手を染めるようになるだけです。

 八本指勢力を領地から完全に根絶するためには、親玉、つまり汚職の根本を潰す必要があります。一番太いパイプを失えば八本指はもう入ってこれなくなるので、あとは残党狩りをすればいいだけとなります。

 

 そしてその汚職の根本が誰かと言うと……なんとびっくり、ホモ君の父親です。

 

 イズエルクの当主が八本指とズブズブなんて最悪ですね。何回目の汚職だよ行き過ぎにも限度あり しかしその欲望誉れ高い(tntn亭)。

 しかしこれはありがたい事で、父親を排除すると自動的に一人息子のホモ君がイズエルク領の当主となります。名誉値も爆上がりですし、ゲーム的には悪徳領主を成敗したのでなんとカルマも上がります。いやー、なんて美味しいイベントでしょうか。色々な領地衰退イベントの中でも、八本指を引けたのは幸運でしたね! 他の原因だとイズエルクの権力を握るのにもう少し手間がかかってしまいます。

 

 さて、走者はメタ知識で父親の汚職に気づいていますが、曲がりなりにもここは法治国家。すぐに殺すことはできません。ホモ君の超優秀な頭脳だととっくに気づいていてもおかしくないんですが、身内の情が判断を鈍らせていますね。当主の粛清には大義名分も必要ですし、どちらにしろ決定的な証拠が必要になります。

 

 ということでまずはイジャニーヤに接触しに行きましょう。このような情報収集の際、よその貴族は冒険者を使っています。ですが今回の相手は八本指。潜入に向いていない冒険者ではどうしても見つかってしまい、普通に殺されるだけで全く意味がありません。蛇の道は蛇、闇組織である八本指の情報を効率よく集めるには、どうしても同格の闇組織の力が必要になります。

 

>ラナーにもしもの時の助力を求める手紙を書き終え、あなたは改めて決意を固めた。何の罪もない人々を苦しめる八本指を、これ以上許すわけにはいかない。リスクを承知で、自分も虎穴に入る時が来たようだ。

 

>あなた一人で王国に長年寄生してきた巨大組織を完全に滅ぼせるはずはない。このイズエルク領の癒着の大本を突き止め、そちら側を潰すべきだろう。そのためには諜報に長けたものを雇わなくてはいけない。八本指の情報を得られるほどの手練れで、なおかつ王国最大の組織である八本指の息がかかっていないもの達。そんな都合のいい存在が果たしているだろうか……。

>『叡智の人』があなたの思考を研ぎ澄ます…!

>あなたは帝国を中心に活動するイジャニーヤと呼ばれる組織を思い出した。彼らと何とか接触を取れないだろうか。

>ふと頭をよぎった『自分の父は何も八本指対策をしていないのだろうか』という疑問を振り払い、あなたは足早に部屋を出て行った……。

 

 因みにイジャニーヤの情報は最高レベルの教育係じゃないと教えてくれません。この世界、踏んだら一発で死ぬ地雷が大量にあるのにそれを知るのにすら苦労するっていうのが本当に嫌ですね…。ちなみにホモ君は帝国や法国についても一定の知識はあります。誇り高い王国貴族として当たり前だよなぁ!? 他の貴族が無能すぎるだけってそれ一番言われてるから。もっと勉強して♡

 いやー、しかしホモ君の思考は7歳児のものとは思えませんね。王国最高峰の教育に世界一の才能が合わさっているので当然とも言えますが、一人で暗殺組織に接触しようなんて思える度胸も大したものです。私のチャート構築能力の賜物ですね(隙あらばイキリ)。

 

>イジャニーヤの情報について集めること数日。独立した犯罪組織である八本指と違い、彼らは依頼を受けて動く暗殺集団である。そのためだろうか、あなたは驚くほど簡単に情報を集めることが出来た。

>狙われたら誰も逃れられないと言われる凄腕の暗殺者たち。しかし、向こうから指定された場所へ向かうあなたの足に恐れは無かった。自分は正しい道を進んでいるという思いが、あなたに力を与えているのだ。

 

 傷ついた体でも勇気が湧いてくる…「正しいことの白」の中におれはいるッ!(ポルナレフ感)。

 ちなみにこの会談でティア・ティナネキと接触することはできません。彼女たちはイジャニーヤの中でもトップの腕前を持つので、こんな木っ端依頼では動いてくれません。残念です…。

 

>会談場所は薄暗い酒場だった。わずかな照明の中、テーブルで黒い外套を纏った人物が一人佇んでいるのが見える…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分は帝国の貧民層に生まれ落ちた。帝国は王国に比べれば豊かな国だが、どこの国にだって弱者は存在する。自分はそんな掃いて捨てられる弱者の一人だったというだけだ。だからだろうか。イジャニーヤに流れ着いた今では薄まったが、貴族階級に対する苦手意識は未だに存在する。

(余計な事は考えなくていい…。自分は一つの道具、思考は足枷になるだけ)

 内心でそんなことを思いながら、依頼を受けた女暗殺者は約束の酒場へと出向いた。薄暗い酒場で待機し、依頼主の事を想像する。わずか7歳で暗殺組織に依頼するような少年。よっぽど悪意に満ちた人生を送ってきたのだろう。そう同情していると、テーブルの前に一人の少年がやってくるのが見えた。

 

「こんにちは。今日はいい天気ですね?」

 

 太陽が落ちてきたのだと思った。

 ホールド・モルデラ・デイル・イズエルク。イズエルク領の鬼才。情報はすでに聞いていたが、どうやら漏れがあったらしい。こんなにも明るく、人を引き込む魔力に満ちた存在だったとは聞いていなかった。

 

「……いいえ、今は寒いです」

「ああ、そうでしたか。では奥でシチューでもいかがです?」

 

 取り決めておいた符牒を交わし、マスターに目配せをして奥の部屋へと案内してもらう。人払いと盗聴対策がなされた特別な部屋だ。

「改めまして、依頼主のホールドです。今回の依頼について説明しますね」

 そう言って少年は話を進めていく。事前に首領からある程度の話は聞いていたが、求める情報の種類や現地の事など、細かい部分を詰めていく。淀みなく話す様子はまるで熟練の交渉人のようで、見た目の幼さとは不釣り合いだった。

「なので、彼らの親玉を抑えるためにも、隠密性を重視してもらえると助かります」

 彼は危険を感じていないのだろうか? 依頼主とはいえ、暗殺組織と接触するのだ。最近のイズエルク領の改革は全て彼主導のものだと聞いている。何がそこまで彼を突き動かすのだろうか?

 ……気に入らない、と思ってしまった。何も苦労を知らない、世の中の醜い部分を見たことがないような顔が癇に障る。刺々しい思いが自分の中を満たした。

 

「……一つ、質問したい」

「何ですか?」

 

 気づけば、自分は口を開いていた。唐突な質問にも関わらず、相手は全てを見透かすような優しい顔をしている。

 

「あなたは、領民のためにしなくてもいい苦労をしている。そう思ったことは無い?」

 今、自分は依頼に関係のない話をしている。暗殺者は機械に徹するべき。この話は即刻切り上げなければならない。そう思っても、勝手に動く自分の口は止まる気配を見せなかった。

 

「あなたは間違っている。貴族ならもっと自分の欲望のままに動くべき」

 例えば、民に重税を課した故郷の貴族たちの様に。

 

「あなたに助けられた人は、あなたが思っているほど感謝してくれないかもしれない。助ける価値のある人間じゃないかもしれない。そんな奴らを相手にするのは愚か」

 例えば、裏切って自分を売ったスラムの大人の様に。世の中には救いようのないクズがいるのだ。それは、そう―――例えば、環境に耐えかねて人を殺した、自分の様に。

 

 悪意に満ちた自分の言葉を聞いて、ホールドは驚いたようだった。彼はしばらく悩むそぶりを見せた後、悲しそうに微笑んでこう言った。

 

「何か、辛いことがあったんですか?」

 

 思わず固まる自分を見つめながら、少年は続ける。

 

「僕は、自分のことを大した人間とは思っていません。自分の欲望に従って動いていますよ。人は周囲の環境によって善にも悪にもなります。助ける価値のない人間なんていませんよ。人は皆幸福になる力を持っている。それをちょっと手助けするのが、僕の幸せなんです」

 

 だから、あなたもその手助けをしてくれませんか?

 そう言ってにっこりと笑った。人々を照らす、太陽のような明るい笑顔だった。

 なんて純粋で、穢れが無く、美しいのだろう。

 現実を知らない理想論だ。そう言うことは簡単だったが、既にその気も失せた。

 暗殺者に意思はいらない。ただ動く機械に徹するべき。ちょっと会話をしたぐらいで依頼人に絆されるなんてもっての他である。だがしかし、善人に好感を抱くことは当然のことだ。だから、自分の顔が赤くなっているのもしょうがない事なのだ。

 誰に言い訳するでもなくそう考えながら、ふと今ならティナの趣味も分かる気がすると、そう思った。

 

 




ラナー(ビキビキ)
日刊ランキング入りありがとナス! 自分の文章が読みやすく書けてるか気になるのでアンケート作りました。どうぞよろしくお願いします。


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第五話の裏技


日間ランキング一位とかマジ?


 生みの親にアゾット剣をキメていくRTA、はーじまーるよー。前回はイジャニーヤとうまく接触できたところまででしたね。今回はイズエルク領の八本指を一掃し、来るべき王国大粛清のための下準備を行っていきます。

 

>イジャニーヤとの接触が済んでから2か月が経過した。あなたとラナーは手紙で密に連絡を取り合い、あなたの独断による行動が王宮で問題となった時に後ろ盾となってくれる約束を交わしている。彼女とはその他にも沢山の雑談をしたが、自分と同じ知的レベルの相手との会話はとてもいい刺激となってくれる。

 

 こえー…。八本指対策のついでとして手紙で『人を思いやろう』『好きな人には優しくしよう』などと精一杯の情操教育を施していますが、実際に会わないと成果が不明で恐ろしいですね。樽一杯のワインに泥水を入れたらそれは泥水だと言いますが、逆に泥水をワインにするにはどれだけワインを注ぎ込めばいいんですかね……?

 

>「……報告は以上。詳しい事はここに書いてある」

 そう言って渡された資料をあなたは詳しく読み込んでいく。イジャニーヤは想像以上の働きをしてくれた。あなた一人ではどこかで八本指に気付かれてしまっていただろう。

 

 倍速中に八本指に関する情報がほぼ集め終わりましたね。今回のイジャニーヤは有能なようで良かったです。ホモ君の職業であるノーブルは人を使うと相手のステータスに補正が入るので、それのおかげかもしれません。

 さて、集めてもらった情報はイズエルク領の八本指と貴族の取引に関わるものですね。これだけでも十分な証拠ですが、ホモ君の明晰な頭脳であれば金や情報の流れから八本指と繋がっている他の貴族も炙り出すことができます。これは貴重な情報なので後々使いましょう。

 そして尊敬していた父親が汚職クソ野郎だったことが分かったホモ君はショックでいっぱいですね。無意識に見ないふりをしてきたのも限界なようです。ほんとは最初から分かってたんだルルォ!? しゅーくせい! しゅーくせい! さっさと粛清!しばくぞ!(騒音走者)

 

>イジャニーヤに集めてもらった情報をあなたは何度も精査したが、結論は同じだった。あなたの父親、レイモンド・モルデラ・デイル・イズエルクがこのイズエルクに蔓延る汚職の中心だと、調査した全ての証拠がそう示している。

 

>尊敬していた父親。いつも厳しくも優しかった父親。周りから隔絶された頭脳を持つあなたが健やかに成長できたのは、ひとえに家族の温かい愛情があったからだ。そんな彼が、裏では八本指と手を組んでいた? あなたにとって目標でもあった父親の不祥事に、あなたは精神の平衡を失った。

 

 ああ^~ホモ君の曇り顔かわいいんじゃぁ^~。必死に何かの間違いだと証明しようとしても無駄で可愛いね♡ お前も覚悟決めろ?

 

>八本指がつけていた裏帳簿、イズエルク家と八本指の取引が記された証文、父親の部屋から見つかった大量の汚職の記録…。証拠は十分に集まっている。これらを集めて王都へ告発すれば、確実にあなたの父親は捕まるだろう。そしてそれは、イズエルク領に蔓延る八本指を一掃することにもつながる。

 

>しかし、そこであなたの思考が止まる。王国法に照らし合わせて、父の行為は国への背信行為にあたる重罪だ。イズエルク家の権力では彼を守ることが出来ない。他の貴族たちへの見せしめの意味でも、父は確実に火刑に処され、殺されてしまうだろう。

 

>汚職に手を染めながら、それでもあなたに全幅の愛情を注いでくれた父。父のような貴族になりたいと思い、あなたは今まで努力してきたのだ。そんな彼を、自分の手で処刑台に送る。それは正しい事だろうか? そんな訳がない。しかし父を見逃せば、八本指によって苦しめられる全ての領民を見捨てることとなるのだ。

 

>決断を下すことが恐ろしい。正しさを信仰していたあなたは今、その正しさによってこれ以上なく苦しめられていた。

 

>あなたの手が、震えながら着火の魔道具へとのびる。あなたは――。

 

→全ての証拠を焼き払った

→父を告発することを決めた

 

 はい、選択肢が入りましたね。ここは滅茶苦茶重要な分岐点です。

 ここで下を選びホモ君の父親をぶちぶちにぶち殺すことで、ホモ君はブレーキが壊れてラナーと同じ精神的な異形種の境地に至ることが出来ます。ラナーがクライムのために全てを裏切ったように、ホモ君は正しさの為に全てを犠牲にするスーパーマシーンホモ君として完成するわけですね。王国救済がまともな精神で出来るわけないだろ! さっさとお前も正義の化身になるんだよ!

 

>あなたは魔道具を掴み、部屋の隅へ投げ捨てようとする――

 

 

 

 ――急に、あなたの手を誰かが掴んだ。

 

 ファッ!?

 

>「お返事がないので、勝手に失礼しました。許してくださいね?」

そう言って、あなたの友人であるラナー王女は宝石のような笑顔をうかべた。

 

>なぜ、彼女がここにいるのだろう。うまく回らない頭でそう尋ねると、彼女は再び嬉しそうに笑ってこう言った。

「私だったらこのくらいの期間で証拠を集め終わると思いまして。それに、あなたに教えてもらったことを実践したいと思ったんです」

自分が教えたこと…? そう疑問に思っている自分を嬉しそうに眺めて彼女はこう続けた。

「うふふっ……。初めて会った時は自信満々でしたけど、そのような顔もなさるのですね? 酷い顔をしてらっしゃいますよ。 私で良ければ、話してみてくださいませんか?」

 

 ファファファのファ!? 止めろ、知らないイベントを起こすのはヤメロー! ふざけるな!ふざけるなぁっ!馬鹿野郎!!(切嗣感)

 

>彼女の笑顔に誘導され、まるで懺悔するようにあなたはラナーに全てを話した。

尊敬していた父親が、裏では民を苦しめていたこと。自分は父と正義のどちらを選ぶか迷い、最後には正しさを選ぼうとしていたこと。

そんなあなたの話を聞き終えたラナーは、にっこりと笑ってこう言った。

「苦渋の決断をしたのですね。…さぞかし辛かったことでしょう。私で良ければ、あなたに第三の選択肢を与えてあげられますよ?」

第三の選択肢? ラナーが発した意外な言葉に、あなたの頭脳が慌ただしく回転し始める。

「私の屋敷で、あなたの父親をかくまってあげます。汚職の責任を取らせて、あなたが独断で放逐したということにしましょう。もちろん他の貴族は血眼で探すでしょうが、まさか王族の居住に踏み込むなんてことが出来るわけありません」

 

>確かに、それは名案の様に思えた。父親を殺すこともなく、八本指を退けることもできる。まさに一挙両得の提案だ。

>しかし、それで得をするのは自分だけだ。彼女は罪を犯した貴族をかくまうという、特大の爆弾を抱えることとなる。彼女にはそんなことをする理由がまったく無い。

「ふふっ。そんなの当然じゃないですか。……私、あなたと会うまでずっと王宮で一人ぼっちだったんです。訳の分からないことを言う不気味な子だって周りから嫌われてて。それでもあなたと出会って、あなたに認めてもらって、見える景色が変わったんです。今私が幸せでいるのは、全部あなたのおかげなんですよ? 最初に理由もなく助けてきたのはあなたの方じゃないですか。ちょっとは私にも、あなたを助けさせてください。」

そう言って彼女は微笑んだ。

 

 ヤメロー! ヤメロー! ホモ君はここで正義マシーンとして完成するんだ! 父親を助けたら中途半端になっちゃうだろうが! こんな!こんなもの! うう…壊れちゃった…私の手作りチャート…。

 

>ラナーの提案に乗り、あなたはそのままラナーとその護衛達を連れて父のもとへ向かった。

 

>父は最初は八本指との繋がりを否定していたが、自分が集めた証拠を見せ、その上でラナー王女に保護してもらう予定であることを伝えると、大人しく汚職を認めた。

 

>家督の相続を慌ただしくすませ、父は母を連れてイズエルクを去った。監視も兼ねて、ラナーも自分の屋敷へ戻るようだ。

>馬車を見送り、自分ひとりとなった屋敷へと戻る。本当にこれで良かったのだろうか…。手紙は書くとはいえ、家族との別れにあなたの心は深く沈んでいた。

>しかし貴方の胸には、父親が最後に言った『お前は自慢の息子だよ』という言葉が温かく根付いていた……。

 

 …………(呆然)。

 あっ、名誉値が入ってきてホモ君の肩書が『イズエルク家当主』に変わりました……。何だったんでしょうか今のイベントは。悪い夢かな?

 ……とりあえず自分の主義として完走はします。全く未知のイベントだったので、これがどういう条件で発生してどんな影響があるのか確かめないと次回のチャートに活かせませんからね(PDCAサイクルを回す社畜の鑑)。

 それにこれがガバだとはまだ決まっていません! 走者の豪運によって引いたレアイベントで、タイムを縮めてくれる可能性だってあります! なあに、歴戦の走者である私の腕を信じてくださいよ! 不測の事態があってもオリチャーなんてお手の物ですって!(空元気)

 ふう……。それではキリがいいので今回はここまでにしておきましょうか。ついでに確実に助からないであろうホモ君の父親の冥福でも祈っておきましょう。それではさようなら、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、うふふふふ……っ」

「ああ、すいません。そう怯えないでください。人に対して怒りを抱くのは初めてなので、上手くできないんです。ふふふふっ、怒っているのに笑いが出るなんておかしいですね?」

「汚職? 別にそんなことどうでもいいんですよ。私はね、あなたが彼の視線をずーーーーっと独占していることが最初っから気に入らなかったんです」

「彼の黄金のような金髪も、サファイアのような眼も、私を暖めてくれる太陽のような笑顔も。全部私のものなんです。わかりますか? あなたのものじゃないんですよ?」

「ふふっ、でも……。私、彼に色々なことを教えてもらったんです。『好きな人には優しくすること』はもうやりましたから、今度は『人を思いやること』をしないとですね!」

「レイモンドさん? あなたに余命を一か月差し上げます」

「あなたは不幸な事にも、一か月後に警備を潜り抜けた八本指によって粛清されてしまいます」

「ですからそれまでに、彼に沢山手紙を書いてあげてください。あなたの筆跡や文章をコピーして、あなたが死んだあとは私が書いてあげます」

「うふふっ、彼との文通が倍になったわ…! きっと悲しむだろう彼を思いやるっていう言い訳もついてきて、なんてお得なんでしょう!」

「本当にありがとうございます、レイモンドさん。せめて死ぬときは苦しまないようにしてあげますね?」

「返事はどうしましたか? もっと爪を剥がされないとお返事できませんか」

「……はい、いいお返事です! ああ、そうそう。手紙は検閲するので、余計なことは考えないようにしてくださいね?」

「はいっ、お利口! うふふっ。一か月間、精一杯おもてなししますね!」

「それでは、さようなら」

 





ラナーちゃん大勝利! 希望の未来へレディ・ゴー!!


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閑話


他の人から見たホモ君編。



【イズエルク領の代官かく語りき】

 

 最初に見たときは、『なんか知らんが変なガキが来た』程度の認識だった。

 

 この国で幸せに暮らすためには、なにはなくともまず馬鹿じゃなきゃいけない。ちょっとでもマトモな頭を持ってりゃあ、自分がいかに詰んでるかってのを理解して生きていけなくなるからだ。

 幸いにして俺はそれなりにバカでそれなりに優秀だったから、貧民出身でも要領よく商業ギルドの下っ端として適当に過ごすことが出来た。

 凝り固まった権力は腐敗を生む。このギルドのトップは何代も前からの世襲制で、どんなボンクラだってハンコを押せさえすればギルド長になれる。んで、そんな無能がトップに立ってまともな事をする訳がないし、そんな奴の下にまともな奴が集まるわけもない。

 俺が入った時のギルドはまあ酷いもんだった。親のコネだけで生きてるようなやつが若い女子職員にセクハラして、その下で俺みたいなチンピラあがりがヘラヘラ昼間っから酒を飲んでんのさ。誰も口に出さなかったけど、八本指らしき奴が普通にギルド長の部屋にいるのも見たぜ。

 だけど、別に俺は何も思わなかった。良い事したら良い事が返ってくるなんて、きょうびガキでも思ってねえ。何十年後かにはこの国は滅びて帝国に飲み込まれてるだろうが、だからって俺には何の影響もない。年寄りになっても同じように、ヘラヘラ笑って酒を飲むだけだ。

 

 そんな風に諦観を貼り付けて生きてきたから、『領主の息子が視察に来る』なんて聞いた時も、床に転がった酒瓶を片付けようとすら思わなかったね。注意されても「あんたも一杯どうだい?」なんてかましてやるつもりだった。

 だから、まさかあんな怪物が来るなんて予想もしてなかったんだ。

 

 

「父の名代で来ました。ホールド・モルデラ・デイル・イズエルクです。ここの案内をしてもらえますか?」

 

 

 思わず背筋が伸びたね。そいつがギルドに現れた瞬間から、そこはもうギルドじゃなくて奴のための劇場だった。

 普段威張り腐ってるコネ野郎も間抜け面晒して、「あぁ」だの「うぅ」だの呻くだけになってしまったし、女子職員は地上の太陽みてえなそいつの顔から一ミリも目線を動かさなくなっちまった。

 まあ、俺が言えた口じゃないんだけどな。床に散らばった酒瓶を慌てて掻き集めたし、よれた制服のシワを取らなかったことを死ぬほど後悔した。

 今やうめき声しか出せなくなったコネ野郎が元々の案内役だったんだろう、そいつはちょっと困惑したように眉を寄せて俺にこう言った。

 

「困りましたね。そこのあなた、代わりに案内をお願いしていいですか?」

 

 勘弁してくれって思ったね。ここまで見た瞬間に『ああ、格が違う』なんて思わされたのは初めての経験だったからだ。貴族ってのはみんなこんな感じなのか? 正直もう帰って寝てすべて忘れたかったし、二度とこいつに会いたくないとすら思った。

 

「畏まりました。わたくし、イズエルク領商業ギルド職員のトロントと申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします」

 

 まあ、拒否できるわけもないんだが。ペラペラ回る口を持ってて本当に良かったぜ。

 しかしこんなガキに何を案内すりゃあいいんだ、こりゃあガキのお使いのお手伝いかな? なんて俺は困ったんだが、数十分後には全く逆の理由でもっと困ることになる。

 視察なんて、普通ちょっとお偉いさんと挨拶して飲みに行って終わりだ。だというのに、そいつはギルドのありとあらゆる所に首を突っ込み、少しでも非効率なところがあれば積極的に改善しようとした。勘弁してほしかったぜ。そんなもん皆気付いてて、でもどうしようもねえから諦めてんだよ。そう言えればどれほど楽だったろうか。

 

「ありがとうございました。また明日もよろしくお願いしますね」

 

 聞き間違いだよな? 明日も来るって言ったか? いやいやまさか、この年の貴族はクズな遊びに手を染めるばかりのはずだ、(娼館選びを)よろしくおねがいしますの聞き違いだろう。

 

「こんにちは、トロントさん。今日もよろしくお願いしますね?」

 

 間違いじゃなかった。クソが。しかもこいつはそれから毎日来た。毎日だ。今までぬるま湯だった職場に、貴族のガキが毎日来て、毎日俺に質問してきやがる。

 しかも、こいつはこれ以上ないってほどに有能だった。初日の頃は誰にでも言えるようなことしか言わなかったくせに、来るごとに指摘が冴えていき、誰も思いつかなかった改善案を出してくる。

 居心地が悪かった。ここはクズの俺にふさわしい掃きだめで、誰も彼も死んだ目をしていたはずだったんだ。

 それがあのガキが来てからどうだ? ゴミと酒瓶でいっぱいだった床はホコリ一つないほど綺麗になり、上司からのセクハラに耐えるだけだった女子職員はいつあのガキが来てもいいようにと嬉しそうに着飾ってる。前は審査に何時間もかかっていた書類は即ハンコ付きで返されるようになり、死んだ目仲間だった同僚達はいまや働くことが楽しくって仕方がないって感じだ。はっきり言って、奴は侵略者だった。ゆるやかな閉塞感に包まれていた安息の揺り篭を壊す、俺の敵だった。

 

 敵は、倒さなければいけない。

 

 鬱屈した感情が爆発したのは、案内の途中の休憩時間だった。

 一度言ってしまえば口も滑らかになるものだ。立場の違いも忘れ、俺は奴に悪態の限りを尽くした。

 

「悪いがもう俺に関わらないでくれ。俺はもうギルドを辞める。あんたのことが嫌いだからだ」

「街であんたのこと皆が何て言ってるか知ってるかい? 太陽の御子だってよ。恥ずかしくないのか? 俺なら恥ずかしい。とてもじゃないが外を出歩けないね」

「どうせそのお綺麗なツラの裏ではどいつもこいつも見下してるんだろう? 自分は特別で、周りとはちがうんだーっつってなぁ」

「周りがいかに褒めそやそうが、あんたを心の底から嫌っている奴がここに一人いることをよーく覚えとけよ。迷惑なんだよ。せっかく居心地のいい職場だったのに、あんたが来てから皆熱に浮かされたようだ」

「どうせあんたを慕っている奴も、あんたを不気味に思っていつかいなくなる。住む世界が違うんだ、太陽に近づきすぎた凡人は焼かれて死ぬだけなんだよ。その時に『ああ僕は下賤の民と近づくべきじゃなかった』ってせいぜい後悔しろ」

 

 こんな感じの事を、思いつくままに言った。支離滅裂だっていい、とにかくこいつを傷つけたかった。傷つけて距離を取りたかった。これ以上こいつの近くにいて、自分に期待してしまうのが嫌だった。良い生活ができるんじゃないか、幸せになれるんじゃないかって期待するのが苦しかったんだ。

 

 奴は大の大人にすごまれてるってのにも関わらず、ずっと笑顔だった。それが死ぬほど癪に障って、気づいた時には俺は奴の胸倉をつかみ上げていた。

 

「耳わりぃのか!? 何黙ってやがる、なんか言ってみたらどうなんだ! そんなに俺をバカにしてぇのか!?」

 

「げふ……っ。いえ、すみません。嬉しかったんです。あなたが初めて心から話してくれましたから」

 

 は? って感じだよな。罵声を浴びせられて嬉しいだと? 思わず力が抜けて胸倉から離した俺の手を、奴は掴んでこう言った。

 

「ほら、こんなに近づいても焼けたりしませんよ。周りは色々と持ち上げてくれますが、僕なんて大したことありません。さっき言ったことは間違いです。僕は太陽なんかじゃないし、あなただって凡人なんかじゃない」

「は……はぁ!?」

「初めて僕がここに来た時のことを覚えていますか? あの時、ギルドの中であなたが一番僕の話を真面目に聞いてくれた。貴族で、調子に乗ってて、大嫌いな僕の話を、だけどあなたは一度だって馬鹿にしなかった。知ってますよ? あなたが陰日向から女性職員を守ろうとしていたこと。僕を疎んで、馬鹿にしていた上司を説得してくれたこと。あなたは優秀で、優しくて、気高い人間です。だから、自分のことをそう嫌いにならないでください」

 僕が悲しいです。そう言って奴はにっこりと笑った。街の異名がすとんと腑に落ちる、太陽のような笑顔だった。

 本当に、あの時来るのがこんな怪物だと知っていたら一も二もなくサボっていたのに。こいつに出会ったのは人生最悪の間違いだった。限界だ。この引力から、もう逃げられない。

「それと、そんなに汚い言葉遣いはいけません。お嫁の貰い手がありませんよ? ……ふふっ、さんざん悪口を言われましたから、ちょっと仕返しです」

 そう言って、するりと手を放して奴は廊下を去っていった。俺はただ茫然としてその背中を見送っていた。

 

 それから、奴は二度とギルドに来なかった。その代わり、どこそこの地主に輪作かなんかの交渉をしに行ったとか、人足を募って下水道の整備をしたとか、そういう噂がどんどん聞こえるようになった。

 俺は、まずきちんとした貴族の作法を勉強した。ぼさぼさの長髪を梳かし、いつも睨め付けているように見えるこの目つきも眼鏡で隠した。よれたボロ服ではなく、きちんとした礼服を初めて買った。

 スラム上がりの荒れた女はいなくなって、代官採用試験に挑む勤勉な女学生が生まれた。

 

「それでは、面接試験を始めます。呼ばれた方から別室へお入りください」

 

 聞いた話では、どうもホールド家にも色々あったらしい。あいつの父親はいなくなって、今はあいつがホールド家の当主だそうだ。その余波で役人の数が足りなくなり、俺にチャンスが生まれたのだから嬉しい限りだ。

 

「よう天才。凡人を焼くことにそろそろ罪悪感を覚えてきたか?」

 

 久しぶりにみるあいつは、昔よりもはるかに成長していつつも、どこかあの時より柔らかい雰囲気を纏うようになっていた。太陽の輝きのような美貌がまずは困惑を浮かべ、そして次第に笑顔に変わっていく。

 本人が何と言おうと、ホールド・モルデラ・デイル・イズエルクは地上の太陽だ。近づいた凡人は皆、焼かれると知っていても離れられない運命にある。

「失礼な受験生ですね。ふふっ、失格にしますよ?」

 ――だったら、せめて誰よりも近くに。

 そう思いながら、俺はにやりと笑った。

「よう、俺だ。覚えてるか? 嫁の貰い手に困ってな。ここで拾ってもらえるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

【イジャニーヤの暗殺者かく語りき】

 

 暗殺者に思考はいらない。ただ命令を実行する機械であればいい。

 私はそう教えられてきた。まったくもってその通りだと思う。迷いは遅れにつながり、恐れは敗北につながる。暗殺者はそれらすべてを超越し、ただ相手に恐怖を与えるだけの存在にならなくてはならない。

 うむ、かっこよくて良い教えだ。自分はそれを完璧に守っていると自負している。

 ただ、それはそれとして。

 依頼主の望みに応えるために、暗殺者は全力を尽くすべきだ。口に出さない種々の望みを叶えてこそ一流の証である。そのためには多少上記の教えを破っても、まあ仕方ないと言える。

 

「あのー……。圧がすごいんですけど」

 

 部屋の隅でずっと依頼主を眺めていても、それもまた一流の証なのである。そういうことなのだ。

 

「暗殺者に思考は必要ない。私はただ護衛を務めて居るだけ。圧はホールド様の気のせい」

 

 八本指の捜査を終えても、自分はこの少年に雇われていた。あの時の自分はのりにのっていたため、あっという間に仕事を完了させることが出来た。その辣腕に感服したのだろう、少年が自分の護衛兼子飼いの諜報員として雇いたいと交渉してきたのだ。正確に言えば自分から交渉を持ちかけた気もするが、それは彼の熱い目線がそうしてくれと訴えかけていたからだ。暗殺者に思考は必要ない。

 

「たしか八本指がまた入り込んでいないかの調査をお願いしていましたよね。もう終わったんですか?」

「当然。すでに担当者に報告書も上げてある」

 

 不思議な話だが、この少年のもとで様々な依頼をこなす内に技のキレが上がってきた気がする。これもまた一流の証……? まあとにかく、自分は仕事に手抜かりするような性格ではない。綿密な報連相は当たり前のことだ。

 

「うーん……優秀は優秀なんだよなぁ……これで他の領の偵察にも行ってくれたら文句なしなんですけどね?」

「それは無理。あなたの周りの警備ができなくなる」

「寝る時まで一緒にいる必要はないと思いますけどね……!」

 

 そう言って雇い主がかぶりを振る。彼は優秀だが、自分の進言を時々聞き入れてくれないのが玉に瑕だ。寝る時こそ生物が最も危険な時間帯ではないか。だからこそ自分も同じベッドに入って警護するべきなのだが、断固として断られてしまった。何とか寝室に待機することは呑ませたが、それもどうやら不満なようらしい。

 やれやれ。しかしわがままを言う依頼主の要望に応えるのもまた一流の暗殺者の証。今のところは我慢しておこう。

 

「僕、あなたの言う『暗殺者に思考はいらない』ほど薄っぺらな言葉を聞いたことありませんよ」

「心外。私に意思はない。ただ依頼人の命令に従う機械になんてことを言う」

 

 自分は依頼人の深層心理に寄り添っているだけだというのに。

 

「私はあなたのメンタルケアを行う必要性を感じている。父親の悪事を告発するのは大きな負担だったはず」

 

 空気が少し張り詰めたのが分かった。

 自分が上げた報告を読んだホールド様はしばらく酷く苦しんでいた。まだ幼かった彼にとって、父親が汚職に手を染めているというだけでショックだったはずだ。そしてそれを自分が裁かなければいけないとなればなおさら。

 自分はその場にいなかったため詳しいことは知らないが、王都の協力者のおかげで命だけは助けられたのはきっと幸運だったのだろう。

 

「……心配してくれているんですね」

「別に、そんなことは無い。私に意思はない」

 

 自分に言い聞かせるようにそう言い、さらに続ける。

 

「ただ。護衛とは、物理的なものだけではない。傷ついた主の心を癒すのも、一流の暗殺者の務めだと思っただけ」

「ふふっ…! なんですか、それ。前から思ってましたけど、一流って言いたいだけじゃないですか?」

 

 笑顔を見せてくれた。可愛い。ちなみに今の可愛いというのは恋愛感情ではなく慈しみの心から来るものなので誤解しないように。早口になんてなってない。

 

「確かに、最初は辛かったですよ? 父さんのことは大好きでしたから。一瞬、自分が揉み消せばなんて考えたりもしました」

「……無理もない」

「きっと、あれは何かの分岐点だったのだと思います。正義を捨てるか、正義に全てを捧げるか。きっとどちらの道を選んでも、僕は二度と自分のことを好きになれなかったと思います」

「今は、違うの?」

「ええ。少し考えを変えたんです。今まで、正しく生きれば幸せになれると思っていました。僕たちの頭上には絶対的な正義が太陽のように浮かんでいて、それに従って生きるのが正しいことだって思ってたんです。でも違うんですよね。何が正しいかなんて、みんなで話し合わなきゃ決められないんです。僕はこれから、一生かけて『皆が幸せになれる正義』を探していくんですよ」

 

 そう語る彼の顔は、まだ幼い少年のものとは思えないほど成熟していて、思わず私は言葉を失ってしまった。

 ――きっとホールド様は、将来とんでもない人物になる。それを一番近くで支える事こそ、自分の役目な様に思えた。そう、きっとそれが一流の暗殺者の証というやつだ。

 

「……よし、仕事も終わったしご飯にしましょうか」

「了解した。毒見なら任せてほしい」

「嫌ですよあなた7割もってくんですから……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イズエルク領元領主かく語りき】

 

 どこから間違えたのかと言えば、きっと最初からとしか言いようがない。

 青き血をもつ者としての責務。ノブレス・オブリージュ。そういったものに熱意を燃やしていた頃が遠い昔のようだった。

 厳しい教育と悪い遊びの誘惑に耐え、王国法の判例を詰め込んだあの日。煩雑なマナーが何度やっても覚えられず、手に鞭を受けて泣きながら奮闘したあの日。尊敬する父から家督を受け継ぎ、イズエルク領をさらに発展させていこうと意気込んだあの日。その全てが無駄だった。私は周囲からの期待も、親からの愛情も裏切ってしまった。全く貴族としての資質を持たない落ちこぼれだったのだ。

 

 的外れな施策を行い、そのたびに失望のまなざしを向けられる日々。こんなはずじゃなかったという思いは日々膨らんでいき、いつしか私には諦念がこびりついていた。

 そんな時、ある商人が取引を持ち掛けてきた。自分にかかれば、領地をもっと発展させる有能な人材を紹介できると持ち掛けてきたのだ。疲れ切っていた私はその話に乗り、紹介された人材を役人として迎え入れた。

 

 この時に死んでいればよかった。この時に自殺していれば、その後の身を焦がすような苦しみを味わわなくて済んだというのに。

 

 紹介された人材はみな優秀なものばかりで、優れた政策を次々と打ち出していった。領地の中での私の評判はみるみる回復し、私は有頂天になった。

 みたか! これが私の力だ! 貴族に必要なのは頭脳ではない、優秀な人材を見つけて任せる力なのだ! そう驕る私のなんと滑稽な事か。

 彼らが皆八本指の下部組織であり、政策はすべて自作自演という事に気付いたのは、全てが手遅れになってからだった。

 すでに彼らはこの街に根を張っており、そして自分は逆らう気力も起こらないほど徹底的に懐柔されていた。

 一度自分はとことん失敗しているのだ。無能な貴族である私が、王国最大の闇組織である彼らを追い出す? いったいどうやって。 それに追い出した後、どうやって統治していくつもりなのだ。それが出来なかったから八本指に付け込まれたというのに。夢を見るのは寝る時だけにしておけ。彼らを放っておけばほら、こんなにも旨い蜜を吸わせてくれる……。

 死にながら、苦しみながら生きているようだった。

 家族といる時間だけ、自分の罪深さを忘れられた。私の最愛の家族。遠縁の親戚からとった気立てのいい妻に、初めてできた聡明な息子。息子のホールドの頭の良さはすさまじく、私が長年かけて身につけたことをたったの半年でものにしていった。

 全く嫉妬しない自分に、逆に驚いた。息子がどんどん成長していくのが素直に嬉しかった。彼ならきっと、私のように八本指につけ込まれるようなこともない。安心して自分の後を任せられる、素晴らしい息子だと思った。不器用な自分なりに、全力で愛情を注いだ。

 

 ああ、自分は最初から間違えていた愚か者だった。

 家督を継ぐべきではなかった。商人の甘言に乗せられるべきではなかった。真に息子のことを考えるなら、八本指に気づいた時点で何らかの対策を考えるべきだった。家族の思い出をもっと作っておくべきだった。あの子と、父親らしくキャッチボールでもしてあげればよかったのだ。

 自分は裁かれる。それは構わない。与えられる苦痛のすべてが、我々への罰に過ぎない。ただホールドよ、わが最愛の、今は遠くにいる息子よ。

 願わくばもう一度、君にパパと呼んでほしかったよ。

 

 

「あーあ、早くホールドも王宮に来ないでしょうか? ずっと領地にいたらつまんないです! あ、そうだ! 今度の手紙はそういう内容にしてくださいね? もし来てくれたら……そうですね、一週間延ばしてあげましょう!」

 

 





ラナーちゃん良い空気吸ってるなあ


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第六話の裏技

 強くなれる理由を知って進むRTA、はーじまーるよー。

 嫌な事件だったね…。ガバが見つかったんだろう?(富竹) いやー、前回は驚きの連続でしたね。『魔性の貌』の効果を甘く見ていました。推測する限り、きっとラナーちゃんの好感度を稼ぎすぎてしまったのでしょう。原作ではクライム君に向けられていた彼女の一途な愛情(婉曲表現)がホモ君に向けられてしまっています。非常に、非常に残念ですがもうこの先クライム君が登場することは無いと考えるべきでしょう。やばいですね。

 クライム君という外付け制御装置を失った彼女は生きる核地雷みたいなもんです。一応最高級ホモ君のおかげで歪みは抑えられているでしょうが、それも怪しいもんです。これもうパンジャンドラムだろ……。そんな彼女をどこまで制御できるかが私の腕の見せ所さんと言えるでしょうね。この後にメンヘラ骨も控えてるってマジ? 辞めたくなりますよ部活~~(意味不明)。

 

>イズエルク領の新たな当主となったあなたは、大規模な人材の入れ替えを行った。八本指と繋がっていた者たちを降格させ、民間試験から役人を自ら選んで穴埋めとした。幼い自分が主導した急激な改革だが、領民たちの反発は意外にも少なかった。今までの活動が実を結んだのだろうか。

 

>父のことを思い出す。彼は悪人ではない、ただ弱いだけだった。心の弱さを八本指に付け込まれたのだ。八本指と繋がっていた役人たちをあなたは集め、もう一度自分の下で働いてほしいと頭を下げた。一部の者は自ら辞めていったが、多くの人は再び熱意を取り戻して働いているようだ。

 

 ケッ……。正義マシーンとして完成したホモ君なら、汚職した奴を全員処刑して財産没収できたんですけどね。今のホモ君ではその選択肢が出て来ませんでした。ペッ、甘ちゃんがよ。カルマ値が高いと人々に信頼されやすくなりますが、このようにあくどい行動が取れなくなります。父親を殺して下がったカルマでちょうど0、完全な中立になるように調整していたんですが無駄になりましたね。

 

>今までは父がやっていた他の貴族との折衝も、これからは自分ひとりでやっていかねばならない。あなたはイズエルク領当主としての自覚を新たにした。

>『外交』コマンドが解放された!

>『接触する』コマンドで出会える人物が増加した!

 

>あなたの名声は多くの人々の興味をよぶ……

>『接触する』コマンドで出会える人物がさらに増加した!

 

 イズエルク領を手にしたことでコマンドが解放されましたね。これによって他領と交易したり、一定の立場が無いと会えない派閥の長と出会うことが出来るようになります。パーティー? 参加しませんよあんなもん。八本指に目を付けられるリスクはある上に大して名誉値も稼げないカスイベです。パリピと親しくなってもいい事なんてありません。まだ幼いホモ君はいいカモに見えるので大量にパーティーの誘いが届いていますが、全部燃やしておきましょう。

 

 それではこれからの行動を説明していきましょう。イズエルク領内で色々するのはもう終わり、今回からは王国を改革するために様々な陣営に接触していきましょう。

 イズエルク領を掌握して地盤は確立されました。次は今まで稼いだ名誉値をじゃんじゃん利用して王国を復活させる準備をしていきます。名誉値が一定以上ないと権力者には会えませんからね。仕方ないね。

 

 まず王国の現状を説明しましょうか。実は王国ってポテンシャルだけなら諸外国一なんですよね。土地は豊かで侵攻してくる亜人たちもいないという素晴らしい立地に、膨大な徴兵を可能にする国民の数。本当なら隣の帝国にジワジワ追い詰められてるのがおかしいレベルなんですよね。

 じゃあなんでこんなにカスなのかと言われれば、それはやはり上層部が無能ぞろいだからとしか言いようがありません。全員選民意識に脳が凝り固まった頭スポンジどもです。彼らが重税を課して八本指にジャンジャカ資金をつぎ込んでいるため、王国は貧しく人材もろくに育たない訳ですね。眠れる獅子なんて良いもんじゃありません、もう内臓全部ぶちまけちゃってる獅子って感じです。

 

 そんな王国をどうやって救うのか? 今にも死にそうなこの国家を救うには並大抵のことでは無理です。彼らは無能の中でもさらに質の悪い、歴史ある無能ですからね。革命によって新王朝を打ち立てられればそれが一番いいのですが、今回の目的『救国の英雄』の称号はそれでは得られません。抜け道が無い事はないんですが、『救国の英雄』を得るにはエンディング時に王国が現在の形を保っている必要があります。ではどうするのか。

 ここは偉大なる骨、アインズ様の手法を真似しましょう。つまり――

 

 

>父のように苦しんでいる人を助けたい。あなたは王国を救うため、今まで考えていた計画を実行に移すことにした。

>最初に連絡を取る人物はもう決めている。エリアス・ブラント・デイル・レエブン侯。今や一大派閥の長となった王国簒奪を目論む彼こそ、最初の交渉相手にふさわしい。

 

 ――王国も法国も全部巻き込んだ超巨大マッチポンプです。

 

 

 

 

>「君の名前は良く知っているよ、ホールド卿。わずか7歳で父親の不正を暴き、イズエルク領の当主となった若き神童。君から手紙をくれて嬉しかったね、君とはゆっくり話したいと思っていたんだ」

 優雅に椅子に腰かけながらそう語る姿は、自分の能力に裏打ちされた絶対的な自信に満ちていた。レエブン侯。おそらく王国で最も優秀な貴族の一人だ。

 

 レエブン侯! まだ息子が産まれてないから野心バリバリなレエブン侯じゃないか!

 彼は王国内No.1の貴族、レエブン侯です。王国簒奪の野望に燃えているため大変手を組みやすく、またあと8年後には息子が産まれて超安定志向の子煩悩になってくれると大変扱いやすいキャラです。骨の髄までしゃぶらせてもらいましょう。

 

>ラナーほどではないが、彼との会話もまた打てば響く楽しいものだった。お互いに核心の縁を撫でるような会話を続けたあと、ついに彼が切り込んできた。

>「イズエルク領は今や周辺貴族からただのカモとしか思われていない。幼い領主に、よく肥えた領地。格好の獲物だ。君もそれが分かっているね? 私のもとに来た選択は正しいよ。―――私の派閥に入りなさい。私は君の能力を買っている。厚遇を約束しようじゃないか」

 

 うーんこの褒め殺しムーブ……。口ではなんだかんだ言っても、確実に下に見られてますね。これはいけません。今のホモ君は王国を救うために燃えているのです。派閥闘争に身を投じている場合じゃありません。

 

>あなたは持ち込んだ鞄から一束の書類を取り出して、彼に見せた。エ・レエブルで行われた様々な犯罪行為の記録がそこには記されている。イジャニーヤの彼女に他領への偵察をさせるのは非常に骨が折れた。

 

 ここは彼の犯罪すれすれの取引記録を見せてやりましょう。交渉の場で一発かますのは基本って古事記にも書いてありますからね。オラッくらえっ!

 

>「ほう、私の部下がこんな汚職に手を染めていたとはね……。残念だよ。良い事を教えてくれてありがとう。お返しに私も何か情報を差し上げようか。そうだね、君の父親がどこに逃亡したのか知りたくはないかい?」

 

 うげーっ、『お前も父親かくまってるやろ知っとんぞオラ』とカウンター食らいました。だから殺しとけって言ったろうが! あんなやつ身内の恥ですよ恥! ま、まあいいでしょう。これで百戦錬磨のレエブン侯にマウント取れるなんてはなから思ってません。これはただの有能アピールです。向こうにも自分の意図は伝わっているでしょう。

 

>張り詰めた空気を溶かすように、レエブン侯はふっと笑って言った。

「なんてね、冗談さ。王族に楯突くのは私だって怖い。侮っていたつもりは無かったが、君は随分優秀な諜報員を雇っているらしいね。……それで? わざわざ私の情報を集めて、どんな話をしたかったのかな」

>少しは自分のことを認めてもらえたのだろうか。不敵に笑うレエブン侯はどこか楽しそうだった。

あなたは意を決して、彼に『ラナーの派閥に入ってほしい』と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前の相手を見据えながら、私は獰猛な笑いを抑えきれなかった。ホールド卿との会話は実にストレスが掛からない楽しいもので、彼の知性が噂通りのものだという事がよく分かった。私の弱みを堂々と握ろうとする胆力も良い。さらに父親という致命的な弱点を抱えているとなれば部下として申し分なしだ。

 

「ほう、ラナー様の派閥? しかし言っては悪いが、彼女はスペアのスペア、派閥と言えるものは無かったはずだが?」

「ええ、その通りです。だから僕と貴方で新しくつくるんですよ」

 

 彼からの提案を受けて考え込む。ラナー王女? あの美しいだけのお飾りにつくメリットが全くないように思える。……話の筋が見えないな。会話の主導権は渡さないようにしなければ。

 

「私にそんな沈む船に乗れと? 貴族閥に属する人間に対しての言動とは思えないな」

 

 彼女に惚れでもしたか。欲望を制御できない人間はどんなに能力が高くても二流だ。彼もまたその一人だという事だろうか。そう残念に思っていた私の頭は、次の瞬間凍り付いた。

 

「あなたの目的にも関わる話です。王座を狙っているのでしょう?」

 

 私の秘めたる野望。もっとも優れた貴族である私が、玉座を奪うという大それた欲望。それは派閥の誰にも言っていなかったはずだ。ましてや、つい半年前に当主になったようなガキに。……これは、話次第では生かしてはおけないな。妖しい魅力を放つ少年は私の後ろをちらと見てこう続けた。

 

「ここから先は、二人じゃないと恥ずかしくて話せません。彼には席を外してもらえますか?」

「……ああ、もちろんだとも」

 

 隠し部屋に潜ませていた子飼いの元冒険者に『隙を見て殺せ』と指示を出そうとして、何の反応も返ってこないことに気づく。優秀なレンジャーだったはずの彼はすでに部屋のどこにもいなくなっていた。ホールドによって排除された、と考えるべきだろう。今のはそれを教えるためにわざと言ったのか。随分優秀な人材が手元にいるようだ。白々しくお礼を言う彼の顔を睨みつける。

 

「優秀な配下だね。大事にするといい」

「はは……時々言うことを聞かなくて困ってるんですけどね」

「それで? 話の続きだ。ラナー王女の派閥に入ったらなにか良い事があるのかい? ホールド家の特産品がついてくるのかな?」

 

 つくづく、こんな時に自分の本性と言うものを実感する。楽しくて仕方がない。目の前にいるのは怪物だ。彼をどんな風に打ち倒すか、もしくは利用するかを考えるだけで笑みがこぼれてくる。どうも私は乗り越える壁が高ければ高いほど快感を得る人種らしい。

 

「僕が彼女を推す理由は単純に、彼女が今の王族の中で最も王の資質があるからです。今は信じられないかもしれませんが、きっとすぐに分かってもらえると思います」

「いつか利益がでるから、今投資しておけと? 詐欺師の論法だな」

「ふふっ、だとしたら随分優しい詐欺師ですね。手付金としてこんなものまで差し上げるんですから」

 

 そう言って彼はドサドサと大量の紙束を置いた。

 

「あなたの敵対派閥の後ろ暗い犯罪行為の記録です。読んでいいですよ? まずは僕のことを信じて欲しいですから」

 

 そう言われるままに渡された資料をめくる。当然情報の裏取りは必要だが、どれも告発されれば処罰は免れないものばかりが証拠付きで載っている。しかし、こんなものをどうやって? いくら優秀な諜報員がいたって不可能だ。

 

「先にアタリをつけておけばいいんです。僕が流した情報の伝達速度、不自然な金の流れ……。そういったものを考えれば、自然とこの貴族はこんな悪事に手を染めているな、じゃあきっと証拠はこのあたりに保管しているだろうなっていうのが分かるんです。ラナーならもっとこういうのは上手いんですけどね、僕はいまいちです」

 

 そういって照れるように少年は笑う。あまりに信じがたいが、真偽は後からでも確認できる。裏付けの算段を頭の中で整えながら、喜びを抑えて口を開く。

 

「……君が産まれたことは、私にとってきっと一番の幸運だ。もちろんいいさ。これらの情報がもし本当であれば、私は六大貴族の一員にだってなれる。そうしたら君に協力すると約束しようじゃないか。ラナー王女を王にしたいのだろう? 私と君が組めば敵などいない。私達だけになった王国で、どちらが王になるかの潰し合いをしようじゃないか」

 

 ああ、楽しみだ。心躍る敵がいることのなんと嬉しいことか。全身に覇気がみなぎる。それを笑顔でいなしながら、目の前の怪物は笑って言った。

 

「潰したりなんてしませんよ。僕としては、あなたには宰相あたりになって欲しいんですから」

 

 お優しく、なんとも傲慢なことを言う。彼もまた高揚しているのだろう、私に合わせてくれているのが分かる。ホールド・モルデラ・デイル・イズエルク。民衆いわく、太陽の御子。組むに値しないと判断すればさっさと殺してしまおう。そう考えながら、私と彼は心からの笑顔で握手を交わした。

 

 

 




レエブン候、きっと若い時はイケイケであってほしいという願いは…きっと、間違いなんかじゃないんだから……!


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第七話の裏技

 お前と俺でダブルライダーだ…なRTA、はーじまーるよー。前回はレエブン侯とのファーストコミュニケーションの模様をお届けしました。野心家のレエブン侯は見てて面白いですね。あと数年後には赤ちゃん言葉で喋りだすのを知ってると余計面白いです。

 

>レエブン侯を味方につけることに成功し、あなたはラナーの屋敷でラナーとレエブン侯と会議を行っていた。

「ホールド君、確かに君の言ったとおりだ。ラナー王女と君が組んだこの派閥が、今王国内で最高の智を持つ派閥だろう。一枚噛ませてもらえて感謝するよ」

幼い頃のラナーの言葉をどこかで気にしていたレエブン侯は、少しの会話で彼女の持つ尋常ならざる智慧に気付いたようだ。しかし彼女の本当の姿に気付いてもなお「いつか打ち負かしてやろう」という覇気を全身に纏う彼の精神もまた普通ではない。仲間に誘えて本当に良かったとあなたは思った。

「さて、ではこれからの作戦会議を始めるとしようか」

そういってレエブン侯はテーブルに羊皮紙を広げた―――。

 

 レエブン侯はさあ……敵が強いと嬉しくなる少年漫画の人? 原作ではもう二度と見れない彼の輝いている姿を見て目頭が熱くなりますよ……。

 レエブン侯がペラペラしゃべってる間に、私の華麗なる王国救済計画を説明していきましょうか。法国も巻き込んだマッチポンプとは言いましたが、具体的にどうするかは解説していませんでしたからね。その前に今の王国の現状を説明する必要がある。少し長くなるぞ……(侍8感)。

 

 王国には六大貴族と呼ばれる有力貴族たちがおり、彼らが王派閥と貴族派閥に分かれて飽きもせずギスギスしたやり取りを繰り広げています。みんな喧嘩はやめよう! ラブアンドピース!(閉廷おじさん)

 じゃあ貴族派閥を倒せば良いのか? と思われるかもしれませんが、王派閥もなかなかの屑ぞろい。なんと王派閥の一人であるブルムラシュー侯は王国を裏切って帝国に情報を売り飛ばしています。あーもうめちゃくちゃだよ。

 さらに次期王の有力候補には第一王子のバルブロと第二王子のザナックがおり、誰が誰を支持しているかとかも結構めんどくさいのですが……。まあ大体貴族派閥がバルブロを、王派閥がザナックを支持していると思っていただけたら大丈夫です。

 

 では以上のことを踏まえてどうするか。簡単です。ゴミ掃除をしたいなら、まずは一か所にまとめてから。これからホモ君には貴族派閥、ラナー王女には第二王子のザナック派閥にそれぞれ取り入ってもらいましょう。レエブン侯には原作通り蝙蝠として表向きは貴族派閥、裏では王派閥といった両派閥のバランサーになってもらいます。

 全員の能力は折り紙つきですから、こうすると数年後には王国中の全てのトップを独占することが出来るわけですね。そうなれば後は簡単。ホモ君が貴族派閥を主導してクーデターを起こしましょう。ついでに王派閥の屑貴族も何人か誘っておけば安心です。そうしてホモ君により引き起こされたクーデターを、ラナー王女率いる王派閥が打ち倒すわけです。ここで法国の力も借りて劇的勝利をおさめればなお良しですね。

 そうするとどうなるか? クーデターを起こして負けたとなれば、負けた側が無事で済むわけがありません。晴れて貴族派閥は解体され、やっと王国が一つの勢力の下でまとまることが出来るようになるわけです。ちゃんと負け犬の貴族派閥は直前で裏切っときましょう(人間の屑)。

 王国全てを巻き込んだ盛大なマッチポンプですが、ここまでしてやっと国としてはスタートラインに立ったようなもんですからね。王と貴族の力が5:5とかお前精神状態おかしいよ……。

 あとはナザリックが来るまでの時間でひたすら富国強兵に努めましょう。この際に法国の力も借りとくといい感じです。

 

 ではそのような事を二人に話しましょうか。ただホモ君視点ではまだ法国のことなんて知る由もないので、今の時点では『とりあえず全員が派閥のトップになって、王国の動きを自由に制御できるようになろう』といった感じです。字面にするとすげえ事言ってますねこれ……。

 

>あなたはラナー王女とレエブン侯に自分の考えを話した。武力に乏しいあなた達が、自ら派閥を立ち上げるのは難しい。ならば、既に今ある派閥を利用することはできないだろうか?

「クククッ、無茶をいうものだ。我々だけで王国を操り人形にしてしまおうと言うのか? 若者の戯言、白痴の夢……と言いたいところだが、確かに私や君たちなら出来るだろう」

「むぅ……私は不満ですよ、ホールド。貴族派閥はレエブン侯に任せて、私達二人で王派閥ではいけませんか?」

ラナーが可愛らしく頬を膨らます。残念ながら貴族と王派閥のバランスを保つ役は必要不可欠で、それは長年政治に親しんできたレエブン侯が最も適任だろう。王族の一員であり、すでに実質的な王派閥の一員とみなされているラナーが貴族派閥に入るのも難しい。これが最も適切な役割分担であった。

「それに君たち二人が王派閥になれば、王国統一後の王は決まったようなものではないか。その様な条件を私が飲むと思ったかね?」

レエブン侯が憮然とした表情でそう語り、三人で笑い合う。彼の中ではあなたとラナーは仲間であると同時に将来的な敵なのだ。あなたも出来ればラナーに王になって欲しいと思っているので、その認識は間違っていないが。

 

 なんでしょうね、このギスギスしてるのかほのぼのしてるのか分からない感じ……。だめだ…こんなことしてたら頭おかしくなる……!(コベニちゃん感) みんなも世紀の怪作チェンソーマンを読もう!

 それではここからは少数精鋭のラナー派閥は解散し、それぞれが単独行動に移ります。特大の爆弾であるラナーが爆発しないようちょくちょく集まって会議したり手紙を出し合ったりはしますが、あまり大っぴらに会うことは出来ないですね。それぞれが派閥のトップになるまでしばしの別れです。二年後に!!! シャボンディ諸島で!!!!

 

>そしてあなたは貴族派閥に取り入り、成り上がっていくための工作を始めた。複雑怪奇な政治の世界に、ついに本格的に分け入っていくのだ。

 

>今のあなたの名誉値なら、たいていの相手には出会うことができそうだ……!

 

>最もあなたの目的に適している者は誰か。それを考え、あなたは貴族派閥の筆頭貴族、ボウロロープ侯へ面会を求める手紙を書くことにした……。

 

 貴族派閥へ殴り込みをかけに行きますよ~行く行く。基本的に彼らは脳が死んでるので、いわゆるキャバ嬢のさしすせそを言っておけば仲良くなれる(都合の)いい生き物です。さっさと取り入って、貴族派閥のトップであるボウロロープ侯とコミュを築いていきましょう。本命はこの後、名誉値を一定以上稼ぐことで発生する『法国からの引き抜き工作』です。名誉値は領地を改善することでも得られますが、貴族界で名を上げると大量の名誉値が手に入ります。目標の値まで一気に上げていきましょう。

 きり良く終わったので今回はここまで。次回は法国が早く来てくれることを祈りながらのホモ君の華麗なる政治界模様をお届けしましょう。ご視聴ありがとうございました。

 

 




自動投稿に失敗してるやんけ!


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第八話の裏技


遅れてすみません。
課題に追われていたので初投稿です。



 生き残るのはこの世の『真実』だけだ…なRTA、はーじまーるよー。

 前回は我らがラナー派閥の決起集会の模様をお届けしました。今回は貴族派閥に取り入ってどんどん名を売りつつ、法国が早く接触してくれるようにアピールしていきましょう。

 

>あなたはレエブン侯の口利きで、ボウロロープ侯が主催するパーティーに参加していた。

豪奢な会場の中、着飾った貴族たちが自分にチラチラと目線を向けているのが見える。あなたは当主となったばかりであり、こういったパーティーに参加するのは初めてだ。周りの貴族に値踏みされるのを感じる。

 

>あなたは既に領地を見事に治めた実績を持っている……!

 

>周りの目線はあなたを称賛するもの、何とかして自派閥に取り込もうとするもので一杯だ!

 

 貴族界のパーティーは闇。これだけははっきりと真実を伝えたかった。

 ここまで稼いできた実績のおかげで、いきなり子供がパーティーに参加しても誰もホモ君を侮ったりなんかしません。様々な貴族が自分の派閥に入らないかとモーションをかけてきますね。何だお前!?

 まあホモ君の魅力と頭脳ならどうとでもなります。適当に周りをさばいて、本命の到着を待ちましょう。

 

>「やあ、ホールド君。パーティーは楽しんでくれているかね?」

周囲との歓談が一区切りついた頃、厳めしい顔をした大柄な男性があなたに声をかけてきた。

前線を退き身体は衰えたが、それでも今なお鋭い眼差しや声の張りに戦士の名残が窺える。彼こそ貴族派閥のトップであるボウロロープ侯であり、あなたが最終的に取り入るべき相手だ。

 

 来ましたねこのガチムチのホモが…(風評被害)。

 彼こそがこのゲーム屈指のイケオジ枠、ボウロロープ侯です。原作ではアインズ様が召喚した黒山羊でペッチャンコにされてしまった事しか見せ場がない、大変可愛そうなキャラですね。

 

 彼に気に入られる為にはどうすればいいか解説しましょう。

 貴族派閥とか言う無能共のトップである彼ですが、実際の所指揮官としてみればそこそこ有能なんですよね。仮に彼が王国最強の戦士、ガゼフ・ストロノーフと同じ部隊を指揮したとして、恐らくボウロロープ侯の方が勝つでしょう。それくらい指揮官としての腕前は卓越してます。

 ですが長所は短所と紙一重。

 軍事に傾倒しすぎるあまり、それ以外を軽視しがちなのが彼の最大の無能ポイントです。軍部至上主義の老害と言えばわかりやすいでしょうか。彼に気に入られる為には、いくら内政で成果を上げても意味がありません。彼の好きな軍事方面から攻めていきましょう。

 

>あなたはボウロロープ侯と戦術に関する談義で盛り上がった。

ボウロロープ侯は魔術師より戦士に重きをおいた考えのようだ。野戦において、詠唱が必要な魔術師は精々一発しか魔法を放つことが出来ない。それならば騎兵がそれを耐えられるよう教練し、しかるのちに必殺の突撃(チャージ)をぶちかませばよい、という彼の熱い語りをあなたは辛抱強く聞いた。

 

 まるでキャバ嬢相手にいい気になって熱演するジジイのようだあ……(直喩)。

 彼の思想の根本には魔法への無理解と、今までそれで戦果を上げてきた過去への執着がこびりついています。一朝一夕にどうにかなるものではありません。ここは適当にうなずいておいて、たまに鋭い一言を放って喜ばせておきましょう。あっという間にホモ君を気に入ってくれます。

 

>「はっはっは! 王国きっての才児と聞いてはいたが、全くもって予想以上だ! 君は実に見込みがある!」

そう言ってボウロロープ侯は豪快に笑ってみせた。第一印象は悪くないようだ……。

 

 良し(ベネ)。ファーストコミュニケーションは完璧ですね。戦術に明るいとの印象も与えられたのでなお良しです。

 これからはボウロロープ侯率いる貴族派閥に入り、彼らと外交を重ねて仲を深めていくことになります。特にボウロロープ侯は軍事に関しては明るいので、有能さを見せつけてやれば帝国との戦争で彼の部隊の指揮を任されることだってあります。ぜひそこまで信頼されたいものですね。

 

>初めてのパーティーは非常に満足のいく結果となった。あなたはこれからどうやって彼らの中枢へ取り入っていくか考えながら、パーティー会場を後にした……。

 

 欲望渦巻く貴族社会に順応していくことで、ホモ君のカルマも少し下がってきましたね。ガバのリカバリーが順調で嬉しい限りです。さっさとカルマを0にして善にも悪にもよらない完成された人間になるんだよ、おうあくしろよ。本当はもっと早くにこうなってくれる予定だったんですが……まま、いいでしょう。この世界、善良でいて得することなんか数えるほどしかありません。やっとホモ君も清濁併せ呑む覚悟が育ってきているようで嬉しいですね(親目線)。

 

 さて、その持ち前の魅力で貴族派閥に食い込んだホモ君ですが、しかしボウロロープ侯はいわば前哨戦。真に大変なのはここからです。

 なんとここからは屈指のリセポイント、秘密主義極まる近隣最強国家法国の特殊部隊が接触してくれるのを待つお祈りタイムが発生します。ふざけるな!(衛宮切嗣)

 

 原作未読兄貴たちの為にご説明いたしますと、法国と言うのは周辺国家最強の戦力を擁する覇権国家であり、実は最弱である人類種の守護者として日々身を擦り減らしている超有能国家です。しかし人類種を守るためには手段を選ばない所があり、腐敗しきった王国は人類の足枷にしかならないと判断して帝国に滅ぼさせようとしています。お慈悲^~。

 

 ですが彼らの人類種を守りたいという信念だけは本物であり、そこにホモ君が付け込む隙があります。基本法国出身でもない限りほぼ接触の機会が無い法国ですが、名声値を一定以上稼ぐと法国勢が『味方に取り込む価値あり』として交渉してくるイベントが発生します。そこで彼らを説得し、王国を滅ぼすよりも良い案を提示することが出来れば彼らは普通に賛同してくれます。法国も別に好き好んで王国を滅ぼしたいわけじゃありませんからね。

 いかに上手く法国の譲歩を引き出すか、その説得フェイズがある意味私の腕の見せ所さんな訳ですが……このイベント、発生時期がランダムなんですよね。名声値の高さと発生確率はある程度比例しますが、あくまである程度。なんやこのクソイベ!? ここは私の祈祷力も試されると言ってよいでしょう。

 

>領地に戻った後も、あなたのやる事は変わらない。今まで通り領地を改善していき、すっかり自分のそばが定位置となったイジャニーヤを使って不穏分子を炙り出していく。そういえば彼女の名前は何というのだろうか……?

 

>ただ今までと少し変わったのは、他の貴族たちとの交渉が新たな仕事として加わったことだ。あなたの改革によって豊かになり、八本指の排除も成したあなたの領地と違い、他の領地は未だ貧しく、貧困と賄賂が蔓延している。きっと自分の父は、この様にして少しずつ汚職に手を染めていったのだろう。

 

 ホモ君が(今は亡き)父親を思い出してしんみりしてますね。八本指を排除したと言っても、あくまでそれはイズエルク領のみの話。他の貴族領ではブイブイ言わせていますし、こっちも対策を取らなければまた前に逆戻りです。ですがピンチはチャンス、名誉値が服着て歩いてるような彼らをもう一度ぶちのめしてやりましょう。

 

>『お前は自慢の息子だ』という父の言葉が、あなたの胸の中で暖かく残っている。あの時の父は、罪を暴かれているというのにどこかホッとしたような表情をしていた。卑怯な手段で一時豊かになったとしても、それは他の何かを犠牲にしているだけだ。もう二度と、あのような事を繰り返させはしない。

>あなたは他の貴族の領地経営に懇切丁寧にアドバイスを送り、彼らの領地を豊かにさせるとともに八本指の影響力を少しずつ削いでいった。

 

 ああ^~名誉値の音^~。前にも言いましたが、悪党をぶちのめすというのは名誉値稼ぎの上で非常にうま(テイスト)です。こんなもん(名誉値)なんぼあっても困りませんからね。このまま周辺貴族への影響力を強めつつ法国からの接触を待ちましょう。それでは法国の使者が来るまで倍速です。

 

>(走者倍速中……)

 

>(走者倍速中……)

 

>(走者倍速中……)

 

 すいませ~ん、木下ですけどぉ! ま~だ時間かかりそうですかねぇ~!

 

>昼下がり。あなたはいつも通り、執務室で書類を捌いていた。

「……っ! ホールド、今すぐ下がって」

傍にいたイジャニーヤが、突然あなたの襟首を掴んで自らの背後へと引っ張った。

……! いつのまにか、部屋の中央にあるテーブルに誰かが座っている! 突如現れた金髪の軽薄そうな男は、こちらを一瞥するとへらりと微笑んでこう言った。

「ええー、もう見つかったんですかぁ? すげーな、噂には聞いていましたけどマジで良い護衛雇ってるんすね~」

そこからの数瞬は、あなたの目ではとても捉えきれなかった。イジャニーヤが暗器を抜いて飛び掛かり、室内を暴風が吹き荒れたと思った次の瞬間には、彼はイジャニーヤを床に組み伏せていた。

「おおっと、ちょっと待ってくださいって! 突然来たのは謝りますから、ちょっとは話聞いてくださいよ」

そのヘラヘラとした顔を全く崩さない彼を見て、あなたの脳内を一瞬で様々な考えがよぎる。自分の身を守るため、この部屋には隠し通路といくつかの武装がある。しかし、あなたの知る限り最高の暗殺者である彼女をこうも容易く制圧した相手に対し、はたしてそれが通用するだろうか? それに相手の目的も人数も不明。そして、彼はこちらに対し確かに敵意がないように見える……。

結論を出したあなたは、落ち着いた表情で『まずは紅茶でも入れましょうか』と笑ってみせた。

「おっと、話が早いのは僕的にポイント高いですよ。どうもこんにちは、スレイン法国から来た風花聖典の者です。……って、他国の人にはこう言っても伝わらないっすよね!」

 

 来ました! 法国の接触、しかも六色聖典です! ちょっとタイムが遅れたときは焦りましたが、ただの下っ端ではなく六色聖典が出てきたのでお釣りが出ますよ。

 幸先が良くなった所で今回はここまで。次回はやっと来た法国とのファーストコミュニケーションと、恐らくホモ君を裏切るであろうラナー王女対策の模様をお届けしましょう。それでは、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 



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