曜とルビィの事件簿 (la55)
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曜とルビィの事件簿 プロローグ

曜とルビィの事件簿 プロローグ

 

 コラボ、2つの異なった物語が交わるときに生まれる全く別の物語。だが、コラボと聞いただけで嫌がる人もいるかもしれない。その人がコラボを嫌がる理由、それは、コラボをしたことによりもとからあった物語の世界観・雰囲気などががらりと崩れてしまう、そのことを恐れている、からかもしれない。しかし、それは別に恐れる必要はないかもしれない。なぜなら、コラボとは、祭り、である、宴、である、そして、全く異なったもの同士を掛け合わせることにより起きる芸術的爆発、なのである。コラボは全く異なったものを掛け合わせることで全く別のなにか、いや、超新星爆発的なものを生み出すことができるのである。

 さて、これからお送りするのはラブライブ!とRailWars!の推理ものを書いております新庄雄太郎さんとラブライブ!のスクールアイドル青春ものを書いているla55との奇跡のコラボである。ぜひともこの奇跡のコラボを、祭りを、宴を、十分に楽しんでもらいたい。

 

さあ、始めよう、祭りを、宴を、奇跡の物語を!!

 

「ごめん、曜ちゃん、ルビィちゃん、ごめんけど、大分九重の豊後森機関庫の下見に行って!!」

突然、月は曜とルビィにこんなお願いをした。月曰く、

「今度、Aqoursオリジンとしてリリースされる曲、「Happy Party Trian」のPVを撮りたいんだけど、その曲のロケ地として、私、大分九重の豊後森機関庫を考えているんだ。だから、曜ちゃんとルビィちゃんにはそのロケ地の下見に行ってほしいんだ!!」

 この月の言葉に、曜、

「わ、私たち2人で行くの!!」

と、びっくりしてしまった。ときは9月。とある理由で全国的に有名になった新生Aqours、その人気ぶりはあのμ's以上のものだった。Aqoursのシンデレラストーリーを記した本は爆発的に売れ、全国的に新生Aqoursを含めてAqoursのことを知らない人なんていない、そんな状況に陥っていた。そして、この人気ぶりのためか、それならばと、2代目Aqours、つまり、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ、果南、ダイヤ、鞠莉、元浦の星スクールアイドルとしてのAqoursとして曲をリリースしてくれないかと東京の音楽会社からオファーが月のもとに来ていてのである。こうして、千歌たち新生Aqoursはそのオファーを受けるべく、もうすでにスクールアイドルを卒業していた、果南、ダイヤ、鞠莉、の3人を呼び戻し、Aqoursオリジンとして果南センターの「Happy Party Train」の曲をリリースすることを決めていたのである。で、この曲はSLと機関庫が舞台となる曲になるため、月はこの曲のPVを撮るのに理想的なロケ地を探していたところ、月の理想にぴったり合うロケ地が見つかった。それが大分九重の豊後森機関庫だったのである。それで、月、その機関庫でその曲のPVを撮ることを決めたのである。が、PVのロケ地になる豊後森機関庫に月は行ったことがない。そのため、月は曜とルビィに対してロケ地の下見に行くようにお願いしていたのである。

 で、この月のお願いに、曜、

「でも、下見だったら千歌ちゃんがまず手をあげそうだけど・・・」

と言うも、月、千歌についてはこう言ってしまった。

「曜ちゃん、実はね、千歌ちゃん、「この「ハピトレ」のために旅に出かけてくるね!!」と言ってどっかに行っちゃったんだよね。だから、千歌ちゃんには頼めないの・・・」

これには、曜、

「ハハハ、千歌ちゃんらしいね・・・」

と、苦笑いするしかなかった。

 

 一方、曜の旅の相方となるルビィはというと・・・、

「曜ちゃんと旅行なんて、ルビィ、なんか心配だよ・・・」

と、春のイタリア旅行以降なんに対しても強気でトライしてきたルビィから一転、昔みたいな弱弱しいルビィに戻った、そんな感じがしていた。

 そんなルビィに対し、

「ルビィちゃんならきっと大丈夫だよ!!」(あげは)

「もしなんかあったら隣にいるシーナが超電磁砲(レールガン)でぶっ飛ばしてあげるからね!!」(東子)

「おい、東子、私、超電磁砲(レールガン)なんて打てないよ!!ふざけないで!!」(シーナ)

と、なにが言いたいのかわからないもの、結局のところ、ルビィを励まそうとしている、そんな(ルビィの大親友でヨハネの前世(中学時代)を知る者である)あげはたちの姿がった。であるが、それでも、

「でも、初めての二人旅、本当に心配だよ・・・」

と、ルビィの心配症は治らなかった。

 と、そんな会話をルビィとあげはたちがしているなかで、

「たしか、これからルビィが行くところって九州でしょ」(ヨハネ)

「うん、そうずら」(花丸)

と、ヨハネと花丸がルビィがこれから行く場所を確認していると、すぐに、

「なら、私たちにとって大親友の南さんが今いる場所じゃないかしら」

と、ヨハネが言えば、花丸も、

「もしかすると、ルビィちゃんたちと南さんたちと出会うことがあるかもしれないずら。それくらい世間とは狭いものずら」

と、変なことを言っていた。

 そんなヨハネと花丸であったが、かなり落ち込んでいるルビィを励まそうとしているのか、

「ルビィちゃん、元気をだすずら!!」

と、花丸がルビィを元気づかせようとするとともに、

「もし、南という男に出会ったら南によろしく言っておくように!!」

と、ヨハネ、なんか変なお願いをルビィにしてしまった。これには、ルビィ、

「南さん?」

と、ヨハネに聞き直すと、ヨハネ、

「もし南という男に出会ったらヨハネの代わりに挨拶をしてね、ということなの!!」

と、少し怒り気味にルビィに言い返してしまった。

 

 そして、翌日、

「切符、持った?飛行機のチケット、持った?」(曜)

「うん、大丈夫!!じゃ、出発だね!!」(ルビィ)

と、2人の掛け声とともに曜とルビィの2人だけの九州旅行は始まった。

 ただ、その陰で、花丸とヨハネ、

「ルビィを曜と2人だけで旅に行かせて大丈夫かしら」(ヨハネ)

「それは大丈夫だと思うずら。だって、「ルビィちゃんのこと、宜しく頼むずら!!」と、千歌ちゃんに電話で伝えたからずら!!」(花丸)

と、これまたは変な会話をしていた。だが、この2人の会話なんか曜とルビィには聞こえていない、いや、まったく知らなかった。そのためか、

「本当に大丈夫かな・・・」(ルビィ)

「ルビィちゃん、私に任せて!!私といればきっと楽しい旅になるはずだから」(曜)

と、二人旅に対して心配症のルビィとそのルビィを元気づける曜、そんな姿をしながら旅を続けようとしていた。

 だが、この2人、曜とルビィはこの後、いろんな事件に巻き込まれていく。そこで2人は奇跡の出会いをすることになる。果たして2人の旅はどうなっていくのだろうか。それについてはこのあとのお楽しみである。



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曜とルビィの事件簿~復活のA~ 前編

※この作品はRailWarsとラブライブ!サンシャイン!!のクロスオーバーした二次創作小説であり、新庄雄太郎さんとのコラボ作品でもあります。この作品は前編後編の2回にわたって投稿します。


曜とルビィの事件簿~復活のA~

 

「曜ちゃん、ルビィちゃん、ごめんけど、(「Happy Party Train」のPVの舞台となる)大分九重の豊後森機関庫の下見に行って!!」

突然の(曜のいとこで静真高校生徒会の生徒会長である)月のお願いで九州に行くことになった曜とルビィ。新生Aqours・・・というか、今起きているAqours人気に押されてか、Aqoursとしての新曲「Happy Party Train」(略称ハピトレ)、そのPVのロケ地になる大分玖珠(くす)の豊後森機関庫の下見に行ってほしいと月にお願いされての旅だった。

 で、せっかくの九州旅行ということで、

「ねぇ、曜ちゃん、なんかとても安い切符があるんだけど、これで九州を旅行しようよ」(ルビィ)

ということで、期間限定で九州北部の國鉄乗り放題(2日間)で5000円の「みんな九州きっぷ」を使ってルビィと曜は北部九州の列車の旅を満喫することになった。

 のだが・・・、

「曜ちゃん、ごめんなさい・・・」

と、ルビィ、なんか曜に謝っていた。で、ルビィは続けてこう言った。

「「ゆふいんの森」号に乗って豊後森で大きなSLに驚いちゃったんだよね・・・」

そう、まずは、曜とルビィ、博多から「ゆふいんの森」号に乗って豊後森に到着するとその近くにある(新曲「ハピトレ」のPVのロケ地)豊後森機関庫で大きなSLを見てびっくりしつつもちゃんと下見をして多くの写真を撮ってきた・・・のだが・・・、

「それで意気揚々と別府まで来て、「あそぼーい」に乗っちゃったところまではよかったのに・・・」

と、ルビィ、突然言葉を濁してしまう。特急「あそぼーい」、九州の中央部を東西に貫く鉄道路線、豊肥本線の別府~熊本間を走る観光特急である。列車デザインで有名な水戸海デザインの列車であり、3号車にはファミリー向けで親子が座れる「くろちゃんシート」や子供が遊べる木のプール、そして、ミニビュッフェが併設されている個性的な観光特急でもある。國鉄九州総局はこれ以外にも、「ゆふいんの森」号、「海幸山幸」号をはじめとする各種観光特急を走らせており、それらを称して「D&S特急」といっている。「あそぼーい」はその「D&S特急」の代表格ともいわれている特急だ。そして、「あそぼーい」にはもう一つ特色がある。それが・・・、

「せっかく、(見晴らしのいい)パロラマシートを取ることができたのに・・・」(ルビィ)

そう、列車の両端がパロラマシートになっているのだ。「あそぼーい」のパロラマシート、それに似ている列車と言えば小田急のロマンスカーである。そのロマンスカー並みのパロラマシートがこの「あそぼーい」にも設置されているのだ。そのパロラマシートに座れば阿蘇の雄大な自然を目の前で感じることができる・・・のだが・・・、

「でも、ルビィ、間違えて後端のパロラマシート、予約しちゃった・・・」(ルビィ)

そう、ルビィ、なんと間違えて後端のパロラマシートを予約してしまったのだ。両端にパロラマシートがあるのだから先端もあれば後端もある。阿蘇の雄大な自然を目の前で感じることができるのだが、後端だと流れていく阿蘇の自然を見ていくことになる。人としては爽快に走っている感じがする先端を好む傾向があるため、どうしても先端のパロラマシートに人気が集中してしまう。なので、先端のパロラマシートはすぐに予約が埋まってしまうものなのである。で、ルビィ、先端のパロラマシートを予約できた、と思っていたのだが、実際に乗ってみれば、先端のパロラマシート、ではなく、後端のパロラマシート、を予約していたことに気づいてしまった・・・ということである。そのため、せっかく先端のパロラマシートに座って阿蘇の雄大な自然のなかを颯爽と走っていく、そんな感動体験を楽しみにしていた曜にルビィは自分のミスでそれができなくなってしまったことに謝っていたのである。これには、曜、

「いや、別にそれはいいよ。後端は後端で楽しみ方が絶対にあるはずだから・・・」

と、ルビィを慰める。たしかに曜と言う通り後端は後端で別の楽しみ方があるのだが、それでも、ルビィからしてみたら自分のミスによって曜に迷惑をかけた、そんな気持ちでこのときはいっぱいであった。

 だが、悪いことは続くものである。さらに、ルビィ、曜に謝ってしまう。

「それに・・・、まさか大雨で立ち往生しちゃうなんて・・・。本当に、曜ちゃん、ごめん!!」

そんなとき、「あそぼーい」の車内では車掌からのこんなアナウンスが聞こえてきた。

「お客様にご連絡いたします。阿蘇地方大雨のため、ただいま、当列車は立野駅で・・・」

なんと、阿蘇地方突然の大雨のため、スイッチバックで有名な立野駅で「あそぼーい」は立ち往生していたのだ。どうやら近くの雨量計が規定以上の雨量を観測したため、「あそぼーい」、立野駅で運行を一時休止しているようだ。

 で、これによって曜とルビィに大変なことが起きていた。それは・・・、

「それに・・・、まさか、大雨で列車が止まるなんて・・・。あぁ、曜ちゃんがせっかく楽しみにしていた特別なSLを見に行けなかったよ・・・」(ルビィ)

そう、なんと、ルビィと曜はこのあと特別なSLが熊本駅に到着する様子を見に行く予定だったのだ。その特別なSLとは・・・、それは・・・、

「でも、ルビィちゃん、それは仕方がないよ。それに、ここでワンセグで見ればいいだけのことだしね」(曜)

と、曜はそう言うと自分のスマホでワンセグのアプリを起動させるとそのスマホの画面には前面に「∞」のプレートをはめた大きなSLが映っていた。その映像に合わせてなのか、スマホから、

「ここ熊本駅にはSLを見に多くのお客さんが来ております。あの大人気漫画「オルグ・ソード」、その映画公開に合わせて、博多から熊本まで走ってきたSL「無限大」号がついに熊本駅に到着しました!!なんていう迫力なんでしょうか!!」

と、地元テレビ局の女子アナの声が聞こえてきた。SL「無限大」号、あの週刊少年シャンプに掲載されていた大人気漫画「オルグ・ソード」、そのなかで1番人気があったストーリー「無限大列車編」、それが今度映画化されたのにあわせて國鉄九州総局が企画した特別なSLだった。通常は熊本~人吉間を走るSL人吉号をこの映画に合わせて博多→熊本の片道だけ走らせたのだが、あまりの大人気漫画、そこに出てくるSLが走る、ということもあり、発売1秒で全席売り切れになるくらいとても人気のある特別なSLだった。そして、kのお漫画に出てくる「無限大」号みたいにSLの先端には無限大を表す「∞」のプレートがつけれられていた。それを曜は熊本駅で見たかったのである。

 で、本来なら「あそぼーい」が熊本駅に到着してからSL「無限大」号が到着するため、曜とルビィは余裕でSLを見ることができたもの、突然の立ち往生によりSL「無限大」号を見ることができなかったのである。これには、ルビィ、

「曜ちゃん、本当にごめんね」

と、曜にもう一度謝るも、曜、

「別に大丈夫だから、ルビィちゃん、心配しないでね」

と、謝るルビィをなだめていた。

 そんな曜であったが、突然、

「あっ、でも、もしここに千歌ちゃんがいたらがっかりするよね」

と言うとルビィも、

「うん、たしかにそうかもね・・・」

と、曜の言葉にうなずいてします。実は本当は千歌も曜とルビィと一緒に旅する予定だったのだ。月は、

「ねぇ、曜ちゃん、ルビィちゃん、千歌ちゃん、ちょっとお願いがあるのだけど・・・」

と、最初、この3人に九州での下見の旅をお願いしようとしていたのだが、なんと、千歌から、

「あっ、月ちゃん、ごめんね。実は今度の(「ハピトレ」の)PVのためにちょっと行く場所があるの・・・」

と、突然断りの言葉が出てきたのだ。これには、月、おどろいたものの、千歌の言うことだから、ということで曜とルビィだけで下見に行ってもらうことになったのだ。そのためか、曜、このとき、こう考えてしまう。

(千歌ちゃん、今頃何しているのかな?今度のPVのためって言うけど、何をしに行くのか、私に言ってもらえたらよかったのに・・・)

そう、千歌はあの一番仲がいい曜ですらなにをしに行くのか教えてくれなかったのである。これには曜も、

(千歌ちゃん、大丈夫かな?)

と、千歌のことを心配そうに思っていた。

 とはいえ、千歌の心配・・・より今の状況の方が心配、ということで、ルビィ、

「でも、いつになったらこの列車は動くのかな?」

と、心配そうに言うと、曜も、

「雨が止むまで、じゃないかな・・・。でも、早く動いてくれたらいいね」

と、運行再開を切に願っていた。

 そのときだった。ルビィと曜の後ろに座っていた男女が突然こんなことを言いだしてきた。

「南、このままだとこの列車で一晩を過ごすことになります!!なんとかできないのでしょうか」

と、若い女性が言うと、南と呼ばれた若い男性は、

「梶山、こればかりは俺にもどうすることができない。雨が止むまれ待つしかないな」

と、諦めの表情。どうやらこの男女、一緒に旅行にきているみたいだtった。そのためか、曜、

(ありゃ、このペアカップル、なんか大変そうだね・・・)

と、2人のことがちょっと心配になる、というか・・・、

(でも、このペアカップルって仲がいいのか、仲が悪いのか、わからないや)

と、そのカップルのことがちょっと気になるみたい。だって、ルビィと曜が別府からこのパノラマシートに座っているのだが、このペアカップル、そのときから曜とルビィの後ろに座っていたものの2人のあいだでは会話をしているかと思えばあんまり盛り上がっていなかったし、どちらかというとずっと黙っている、そんな感じだった。

 そんな2人に対し、曜、ついに動いてしまう!!、

(あっ、でも、友達になれたらなんか楽しい気がする・・・)

と、いつも前向き思考の曜らしくそう考えると、なんと、この2人に声をかけることに!!

「このままじゃ任務に支障が・・・」

と、時間を気にしている梶山という女性に対し、

「あっ、なんか困っている様子だね!!」

と、曜、突然声をかけてしまう。すると、梶山という女性は、

「あっ、これは、これは、恥ずかしいところをお見せしてすいません」

と、曜に対しつい謝ってしまう。これには、曜、

「いやいや、大丈夫ですよ!!」

と、易しく答えた。

 このあと、南という男性とルビィを交えて4人で自己紹介!!

「私の名前は渡辺曜!!全速前進、ヨ~ソロ~!!」

と、曜が自己紹介するとルビィも、

「ルビィは黒澤ルビィと言います。よ、宜しくお願いいたします!!」

と、少しビビりながら言うと、南という男性も、

「あっ、ルビィちゃんと言うのか」

と言うと、ぼそっと、

「ということは、ルビィちゃんってあの・・・」

と言ってしまう。これには、ルビィ、

「え~と、たしか南さんとは初対面じゃ・・・」

と、つい指摘してしまうと、南という男性はすぐに、

「あっ、ただの独り言です!!」

と、なにかをごまかそうとするも、

「そうかな・・・」

と、ルビィ、南という男性を怪しむ。

 だが、そんなとき、隣にいた梶山という女性から、

「さてと、今度は私たちが自己紹介するね!!」

と、さっさと話題を変えると、

「私の名前は梶山真由美といいます。よろしくね!!」

と、梶山こと梶山真由美が自己紹介すると、

「ほら、南も自己紹介しなさい!!」

と、南のわきのところを突っつくと南という男性も、

「俺の名は南達仁といいます。以後お見知りおきを」

と、ぶっきらぼうに言うと、ルビィ、

「あれっ、南ってどこかで聞いたような気が・・・」

と言うも、南という男性こと南達仁はいきなり、

「それはそうだな・・・、あっ、音ノ木坂の理事長の名とそっくりだろ!!」

と、言い訳?じみたことを言うと、ルビィ、

「あっ、たしかにそうかも!!」

と、μ'sの出身校である音ノ木坂の理事長の名前が南であることに気づきつい納得してしまう。これには、南、

「ほっ」

と、なんとかごまかせた?、そんな感じで息をついた。

 だが、南と梶山の2人を見てか、曜、

「あっ、もしかして、2人とも、カップルで旅行中?」

と、2人の関係性を尋ねると、2人そろって、

「「それはないです!!」」

と、完全否定してしまった。

 

 その後、歳も近い?ということもあり4人は楽しそうに会話を楽しんでいた。そんなときだった。突然、後ろの方から、

「ぜひともあれを復活させてください!!」

という中年の男の声と、

「それはできない!!」

というひげを生やした男の声、そして、

「あなた、県議さんの言う通りだからもうやめましょう」

という女性の声が聞こえてきた。これには、南、

「はて、誰かな?」

と、ちょっと気になる様子。

 だが、その3人組はそのままパロラマシートのある部屋に入るなりそのまま南と梶山が座っている座性の後ろの座席に座ってしまった。ただ、座った後でも、

「ぜひともあれを復活させてくれたら・・・」

と、中年の男のほうが言うとひげを生やした男は、

「それはほうできない」

と、中年の男のいうことを完全否定していた。

 そんななか、梶山、2人の男に付き添っている女性に対し、

「あの~、ちょっと静かにしてほしいのですが・・・」

と、お願いをすると、その女性は、

「あっ、ごめんなさい」

と、梶山に謝ると、請願している中年の男性に対し、

「あなた、ここでは控えてください!!」

と、注意すると、南たちのことを気にしているのか、

「あっ、すまない・・・」

と、中年の男性、黙ってしまった。

 だが、これによって、

(あ・・・、なんか気まずい雰囲気になってしまった・・・)

と、曜が思ってしまうくらい場の空気が白けてしまった。むろん、ルビィも、

(こんな空気嫌だよ!!早くなんとかしないと・・・)

と、思ったものの、

(でも、ルビィじゃ、この空気、変えることができないよ・・・)

と、半場諦めモードになってしまう。

 そんなときだった。

「ちょっとお聞きしたいのですが・・・」

と、南、大人3人組に対して言うと、

「お名前を聞かせてくれませんか?」

と、なんと名前を尋ねてしまったのだ。

 だが、これにはひげを生やした男性から、

「たしかにここで出会ったのも何かの縁、ここは自分の名を名乗らないといけないな!!」

と、まずはひげを生やした男性から名前を名乗ることとなった。

「私はここ熊本で県議をしている千里と言います」

ひげを生やした男こと県議の千里はこう言うと、名刺を南と梶山、曜とルビィに渡した。その名刺には「熊本県議 千里」と書かれていた。これには、南、

「ほほ、熊本県議でしたか・・・」

と、千里の風貌を見て納得の表情。いかにも県議みたいな風貌だった。

 そして、女性も自分の名前を名乗った。

「私の名前は本渡かえでといいます。で、こちらが私の夫で本渡武といいます」

と、中年の男性こと武に連れ添っていた女性ことかえではそう言うと、そのかえでの隣にいた武は、

「ふんっ、あんな男(千里)と仲良しごっこするために一緒に来たんじゃないわい!!」

と、少し怒りっぽい表情に。これには、かえで、

「あなた、今はほかの方もいらっしゃいますよ・・・」

と武に注意すると、武、

「ふんっ!!」

と、ちょっとすねてしまった・・・といいつつもこのままだとまた場が白ける、ということで、武、すぐに、

「おいっ、おまえ、あれを用意しろ、あとで2人で食べる予定だったクッキーをな!!」

と、かえでに言いつけるとかえでも、

「はい、はい、わかりました・・・」

と、席をはずしては自分たちの座席に戻っていった。どうやら2人で食べるはずのクッキーを用意しているみたいのようだ。

 

 かえでがクッキーを準備しに後ろに下がっているあいだ、南は武に対しこんなことを尋ねてみた。

「ところで、武さんとかえでさんはご夫婦なんでしょうか?」

これには、武、

「たしかにその通りだ。この30年ちかくあいつと一緒に暮らしてきた。で、今日、たまたまこの「あそぼーい」の席が取れたから2人で乗ったってことだ!!」

と、元気よく答えると、その横から千里が、

「私は「あそぼーい」がどんな様子か知りたくてな、まぁ、これまで豊肥線は熊本地震の影響でここ2年ばかり不通だったのだが、ようやく復旧したからな、ちょっと様子を見に来たまでよ!!」

と、威張りながら答えた。でも、千里の言うことももっともである。豊肥線はこれまで熊本地震の影響でこの2年間不通が続いていた。が、今年ようやく復旧できたのである。それにあわせてこれまで熊本~宮地間で運用していた「あそぼーい」が別府まで延伸することとなった。この2つがあってか、「あそぼーい」、豊肥線復旧のシンボルとして全日満席になるくらい人気になっていたのである。

 なのだが、ここにきて、武、千里にくってかかる。

「だからこそ、あれを復活させろ!!」

ただ、それに対し、曜、こんなことを武に尋ねる。

「ちょっと気になったのだけど、あれってなんなのですか?」

これには、武、それについて話そうとする。

「それはなっ、昔、ここを壮大にな・・・」

 が、そんなときだった。

「あなた、用意ができましたわ」

と、かえでが戻ってきた。その手には市販のクッキーの筒を持っていた。

 ところが、その筒を見て、千里、突然こんなことを言いだしてきた。

「おいっ、それだけはやめてくれ!!お、俺は市販のクッキーは食べれないんだぞ!!」

これには南から、

「えっ、千里さん、どうしたのですか?」

と、千里になにがあったのか千里に尋ねてみる。すると、千里、

「じ、実は、俺、重度の小麦アレルギーなんだ!!」

と、なにかにおびえるように答える。そう、千里、重度の小麦アレルギー持ちであった。そのためか、千里、

「俺はうどんやパンなどが食べれないんだ!!もちろんクッキーもだ!!」

これには、南、

「そ、それじゃ、あのおいしそうなクッキーを食べられないなんて・・・」

と、ちょっと哀れみながら言う。とはいえ、確かに小麦アレルギー持ちなら仕方がなかった。小麦アレルギー持ちなら小麦で作られたパンやうどんはおろか小麦で作られたクッキーすら食べることなんてできない。小麦で作ったものを食べると最悪の場合死にいたるケースもあるから・・・。

 だが、かえでから意外な言葉が飛び出してきた。

「あら、それなら大丈夫ですよ。だって、このクッキー、米粉でできていますから」

かえでがそう言うとまるであらかじめ用意していた大皿にどこかのCMのお手本みたいに筒から順番通りにクッキーを並べた。で、曜、そのクッキーを食べてみると、

「うわ~、おいしい!!これ、米粉でできているって信じられないよ!!」

と、目をキラキラさせながら言うと、かえで、

「私もね重度の小麦アレルギー持ちなのです。だから、小麦については十分注意しているつもりですよ」

と、米粉で作ったクッキーを食べながら言うと武も、

「俺もこいつが小麦アレルギー持ちだからその点はとても注意しているだぜ!!」

と、笑いながら答えていた。

 そんななか、ルビィがクッキーを見てあることに気づいたのかこんなことを言いだしてきた。

「でも、なんか普通の(市販の)クッキーに似ているみたい・・・」

そう、かえでが作った米粉のクッキーであるがなんか市販されている小麦由来のクッキーとそっくりなのだ。で、それについて、かえで、こんなことを言った。

「それはね、武さんが市販されているクッキーに似せたら、と言われたからです」

どうやらかえでが作った米粉由来のクッキーが市販されている小麦由来のクッキーに似ている理由は、夫である武の指示である、ということみたいだった。まぁ、小麦由来のクッキーと似せて作ったら誰もが米粉由来のクッキーと知らずに食べるだろう・・・なのかもしれない。

 とはいえ、その米粉のクッキーであるが、ルビィ、あることに気づく。

「それにしても・・・、かえでさん、たくさんありすぎる気が・・・」

そう、当初、「夫と2人で食べるつもりで持ってきた」にも関わらず米粉のクッキーがなんと30枚以上あったのだ。これには、かえで、

「た、たしかにそうですね。まぁ、もとから親しくなった人たちと食べることも想定していましたからね」

と、言うとともに、

「でも、私、こんなに作ったかしら・・・」

と、首をかしげる仕草すらした。これには、南、

「・・・」

と、なにか気になっている様子だった。

 そんななか、突然武がクッキーの入った皿を掴むと県議である千里に対し、

「まぁ、この場はかわいい客人もいるし、一時休戦、という意味でこの米粉クッキーを食べて心を落ち着かせましょう」

と、クッキーを進めると千里も、

「たしかにそうだな」

と、千里の目の前にあったクッキーを手に取って食べることにした。そして、そんなこともあってか、ルビィも、

「ルビィも、クッキー、食べる!!」

と、武が手に取ったクッキーの横にあったクッキーを手に取った。

 そのときだった。南、千里とルビィが手に取ったクッキーを見てあることに気づく。

(あれっ、なんでクッキーに赤い点がついているんだ?)

そう、2人が手に取ったクッキーの下に赤い点が一つだけついていた。で、自分が手に持っているクッキーの下を見ると、なんと、

(このクッキーには赤い点がない・・・)

ということに気づいてしまう。南、そのことから、

(なんで千里さんとルビィちゃんが持っているクッキーには赤い点があるのに俺が持っているクッキーには赤い点がないんだ・・・)

と、ふと気になってしまった。いや、それだけじゃない。南、

(それに「たくさん作りすぎたかしら」というかえでさんの言葉。なにか裏がありそうだ・・・)

と、いろんなものに対してうたがり深くなる性格の南からしたら、これはきっと裏がある、そう思えてくるみたいだった。

 とはいえ、楽しくクッキーを食べようとしている千里とルビィを見て、むげに食べるのをやめさせようとしたらしのびない、ということで、南、

(これについては触れないでおこう)

と、それについては心の底にしまうことした。

 

 だが、ここでなにか起きてしまった。手に取ったクッキーを千里が、

「あ~ん」

と食べて、

「う~ん、おいしいなぁ」

と、クッキーの感想を言うとルビィも、

「うん、おいしい!!」

と、元気そうに感想を述べた。それに気をよくしたのか、武、

「さぁさぁ、千里さんも、クッキー、たくさんありますからどんどん食べてください」

と、クッキーをさらに進めると千里も、

「それじゃもらおうか」

と、そのクッキーをさらに食べることに。千里、またもや千里の目の前にあったクッキーを取ってみる。

 だが、千里が手に取ったクッキーにはまたもや赤い点があった。これには、南、

(なんでまた赤い点がついたクッキーがあるのかな?)

と、クッキーについた赤い点がまたもや気になる様子。むろん、ルビィが次にとったクッキーにも赤い点がついていた。ただ、ルビィはたまたま?千里が取ったクッキーの横にあるクッキーを取ったにすぎないのに・・・。

 とはいえ、こんなにおいしいクッキーを食べる機会なんてあまりない、と思ったのか、南、

(まぁ、そんなことをいちいち気にしていてもしょうがない。ここはおいしいクッキーを食べることにしますかね・・・)

と、思ったのか、もう一つクッキーを手に取ろうとしていた。

 が、そのときだった。突然、武から、

「このクッキーですが、今現在立ち往生しておりますし、いつこの雨が止むのかわかりません。ここはひとつあとのお楽しみとしてとっておきましょう」

という言葉が出てくると、梶山、

「え~、もっとクッキーが食べたいよう~」

と、クレームを武にいれる。しかし、そんなクレームに対し、武、

「もしかするとここで一晩ってこともありますからね。そのためにとっておくのです」

と、もっともな意見を言ってしまう。今現在、南たちがいる「あそぼーい」は大雨のために立野駅で立ち往生している。今のところ、ここから脱出する手段なんてあまりない。この大雨を過ぎるのを待つしかないのだ。ただ、この大雨がいつ止むのかわからない。一晩をこすことだって考えられる。なので、今食べているクッキー、そのための非常食として考えると小麦アレルギーを持つ2人がいる限りうってつけのものだった。そんなわけで、かえで、

「武さんの言うことだからね・・・」

と、クッキーを筒のなかになおしてしまった。

 

 その後、南、梶山、曜、ルビィ一行は千里、楓、かえでを含んで楽しい会話を繰り広げていた。曜、ルビィのスクールアイドル活動についてや南、梶山の身の上話など。

 しかし、クッキーを筒になおしてから数分後、千里に異変が起きる。突然、千里、

「うぅ、唇がひりひりすう・・・」

という声とともに体中に発疹みたいなものが出てきてしまった。しまいには、

「うぅ、く、苦しい・・・」

という言葉とともに体をうずくませてしまった。そのときの千里の呼吸状況だが、なぜか「ぜーぜー」「ヒューヒュー」という風切り音みたいなものになっていた。これには、かえで、

「キャー」

と、突然その場でうずくまった千里を見て悲鳴をあげると、ルビィも、

「お、おじちゃん、おじちゃん、大丈夫!!」

と、びっくりしつつも千里のことを気にかけることに。突然の千里の異変にパロラマシートの部屋のなかはパニック状態になる。もちろん、曜も、

「こ、これは大変!!救急車、呼ばないと!!」

と、あわてしまう。

 だが、パニック状態になる部屋のなかで冷静になる者が2人いた。それは、

「みなさん、落ち着いてください!!」

と、まわりを一喝する南、さらには、

「千里さん、大丈夫ですか?」

と、うずくまった千里に近づき千里の容態を確認する梶山。すると、梶山、

「これは・・・、南、あれですね・・・」

と、南に対して言うと、南も、

「あぁ、たしかにそうかもな」

と、梶山の言葉に激しく同意する。どうやら2人とも千里の身に起きた異変の原因を知っているみたいのようだ。これには、曜、

「南さん、千里さんがおかしくなった原因、わかったのですか?」

と、南に尋ねる。これには、南、

「あぁ、この症状からだいたいのことがわかった」

と応えると、すぐに、

「でも、まずは(千里さんに対する)応急処置が必要だ!!」

と言っては次に真剣な表情をしながらある謎めいた言葉を発した。

「おいっ、だれか「エビペン」をもってきてくれ!!」

「エビペン」?まったく聞いたことがないフレーズに、ルビィ、

「「エビペン」?」

と、頭のなかでハテナマークを浮かべてしまう。むろん曜もである。

 だが、「エビペン」というフレーズに反応したのか、かえで、すぐに、

「「エビペン」ですね!!それだったら私がもっています!!」

と言うと、自分のカバンを自分の席から持ってきては、

「このなかに「エビペン」があります!!」

と言って自分のかばんの中に手を入れて「エビペン」を取り出そうとする。これには、千里、

「うぅ、あ・・・と・・・もう・・・少し・・・で・・・助か・・・る・・・」

と、淡い期待を抱くように言った。

 だが、この期待は無残にも打ち砕かれた。かえで、何度も自分のカバンに手を突っ込んでは「エビペン」を探そうとするも見つからず、しまいにはカバンに入っているものlすべてを取り出すも見つからず。これには、かえで、

「あれっ?どうして「エビペン」がないの?私、いつでも使えるように携帯していたはずなのに・・・」

と、パニックになってしまう。これには、千里、

「うぅ・・・、く、苦しい・・・」

と、さらに呼吸困難に陥ってしまう。

 だが、そんなときだった。

「千里さん、秘書を連れてきましたよ!!」

なんと、梶山、千里の秘書を連れてきたのだった。梶山は千里を横に寝かせると、もしもの場合に備えて千里の秘書を探して連れてきたのだ。その秘書だが、横になって苦しんでいる千里を見てはこう叫んでしまう。

「せ、千里先生、大丈夫ですか?「エビペン」を持ってきましたよ!!」

そう、秘書の手には「エビペン」と呼ばれる太い筒状の物を持っていた。これを見て、ルビィ、

「な、なんかものすごく太い注射器みたいだよ・・・」

と、「エビペン」を見てびっくりしてしまう。なぜなら、その筒の端から太い針が見えていたからだった。

 だが、秘書は千里のズボンを下すとふとももに「エビペン」の針のあるほうを千里のふとももにあてては「エビペン」の上部分を押そうとする・・・のだが、秘書、なにかにおびえているのか、

秘書、なにかあわてたのか、

「う・・・うぅ・・・」

と、うなるだけで押そうとしなかった。どうやら、秘書、突然の千里の一大事ということで知らないうちに秘書自身もパニック状態に陥っているようだった。

 そんな秘書を見てか、南、すぐに、

「梶山、すまないが医者がこの列車にいないかすぐに探してきてくれ!!ここは俺がなんとかするから!!」

と、梶山に命令すると、梶山、

「はい、南、わかったわ!!」

と言っては後ろのほうへと言ってしまった。

 そして、南はというと、

「秘書さん、その「エビペン」を、はやく」

と、秘書に言うと秘書も、

「はい、わかりました。絶対に千里先生を助けてください・・・」

と、南に「エビペン」を渡した。

 南、その「エビペン」を構えるとすぐにその千里のふとももにそれをあてる。これをみて、ルビィ、

「南さん、そんな大きな注射器、使えるの?失敗したら千里さんが大変なことに・・・」と、南のことを心配そうに言うと、南、

「ルビィちゃん、俺はな、こんな緊急事態に対する対応なんて何度も経験してきているんだよ。だからね、ルビィちゃん、心配しないでくれ」

と、ルビィに言い聞かせると曜も、

「ルビィちゃん、南さんのこと、信じよう」

と、南のことを信じようとルビィに言うとルビィも南と曜の言葉に、

「うん、わかった!!」

と、力強くうなずいていた。

 そして、南、

(俺はなんどもこんな事態にあってきた。この俺なら絶対に千里さんを守ることができる!!)

と、自分に言い聞かせるように心のなかでつぶやくと、「エビペン」を千里の太ももにもう一度押し当てると「エビペン」を、

「えいっ!!」

とふともも押し付けた。その瞬間、「エビペン」の中にある針は千里の太ももに突き刺すとともに、千里、

「こ、これで、たす、助かった・・・」

と言っては意識が遠のいてしまった。

 

 数十分後・・・、

「ふ~、これでなんとかなるでしょう」

と、偶然「あそぼーい」に乗り合わせた医者を梶山が連れてきては千里に応急処置を施してくれた。そして、医者から、

「あともう少しで「エビペン」を使うのが遅れていたら千里さんの命すら危うかったでしょう。そんな意味でも、南さん、すぐに(千里に)対処していただき本当にありがとうございます」

と、南に対しお礼を言われた。これには、南、

「い、いや~、恐縮です・・・」

と、ちょっと照れてしまった。

 だが、医者からこんな不吉なことを言われてしまう。

「とはいえ、私が行ったのはたんなる応急処置でしかありません。できる限りはやく大きな病院に連れて行っては入院しないと、最悪の場合、後遺症が残るかもしれませんね」

これには、曜、

「たしかにそうしたいのだけど・・・、でも、雨がやまないからな・・・」

と、前面のガラスを見る。このときもまだ雨が止まない感じだった。これには、ルビィ、

「いつになったら、この雨、止むの・・・」

と、泣きそうな声をあげていた。

 そんなときだった。この状況を打破したい、そう思ったのか、かえで、

「でも、ここって立野駅でしょ。だったら車とかバスを用意すれば・・・」

と、車やバスでこの地を離れることを提案するも、梶山から、

「それはできないとのことです。車掌によるとこの大雨でこの立野駅のまわりの道は通行止め、すべてふさがっているとのことです」

と、絶望的なことを言ってしまった。そう、豊肥線などは復旧したもののそのまわりの道は地震の影響でいまだに復旧工事中だった。そのため、少しでも雨が降るとがけ崩れが起きる可能性もあるためにすぐに通行止めになってしまうのだ。さらに、今年、熊本県内は球磨川が氾濫するくらいの大雨が何度も降っていたため、このあたりの地盤が緩くなっていた。それも現在の通行止めの一因でもあった。

 車もだめ、ということで、曜、すぐにこんなことを言いだしてきた。

「なら、救援列車をよんでもらったらどうかな?少し無理してでも来てもらったらいいんじゃないかな?」

救援列車、この曜の提案に、梶山、

「うん、それはいいかもね!!」

と、曜の提案に同意。すぐに、

「そうんとなったら車掌をよんでくるね!!」

と、梶山、そう言っては車掌をよびにいってしまった。

 

 5分後、車掌を連れてきた梶山、すぐに、

「車掌さん、こんな状態で申し訳ないのですが、少し無理してでも救援列車をよぶことはできないのですか?」

と、車掌に尋ねてみた。

 だが、車掌の答えは意外なものだった。

「この「あそぼーい」は満席でして、この列車のすべてのお客さまを1度に運ぶだけの列車がないのです・・・。大変申し訳ございません」

そう、この「あそぼーい」、この便もすでに満席だった。なので、この列車だけで百人以上の人がいることになる。その人たちを一度に運ぶだけのかわりの列車を用意するのはとても難しかった。また、このとき、熊本を含めて動ける列車はすべて運転基地から出払っており、すぐに「あそぼーい」の救援に来れる列車がなかったのである。この事実を知るなり、梶山、

「うそでしょう・・・。どうすればいいの・・・」

と、その場でへたれこんでしまった。むろん、ルビィも曜も、

「うぅ、万事休すだよ・・・」(曜)

「もうダメ・・・」(ルビィ)

と、諦めの表情。

 そんなときだった。南、ある人の表情を見る。諦めの表情が多い中、1人の男だけ逆に、

「ふんっ、これであいつにも天罰が下るのだ・・・」

と、小言でにやりと笑っていた。これには、南、

(ふ~ん、あいつが犯人なんだ・・・)

と、ふと思うと、すぐに、

「まだ諦めないでください!!あなにかいい案があるはずですよ!」

と、暗くなっているみんなを励ますとすぐに、

「まずは情報収集です。たしか、今は夜の6時だから、ニュース番組が・・・」

と、南、こう言っては自分のスマホを取り出しTVアプリを起動させるとニュース番組をやっているチャンネルにあわせた。このとき、南のスマホに映っていたのは・・・、

「今日、熊本駅に博多から来たSL「無限大」号が・・・」

そう、今日のSL「無限大」号のニュースだった。

 で、これを見た南、

「あっ、いいこと、思いついた!!」

と言ってはほかの乗客のこともあることだからということでうしのろ客席に戻っていた車掌を追いかけてパロラマシートのある部屋から出て行ってしまった。

 これには、曜、

「なんかいいアイデアでも見つかったのかな?」

と、梶山に言うと、梶山、

「えぇ。もしかすると大変なことを思いついたのかもしれませんね」

と、南に考えがあることに気づいたらしくにやにやしながら言った。ただ、これには、曜、ルビィ、ともに、

「?」

と、頭に?マークを浮かべては首をかしげてしまった。

 

 南はすぐに車掌を見つけるとすぐに、

「車掌、お願いがあるのですが、あの列車を救援に呼ぶことができませんでしょうか?」

と、ある列車を指定してここまで救援に来てもらうことができないかお願いをするも、車掌、

「それだと上の者が・・・」

と、難色を見せていた。

 だが、このとき、南にはある秘密兵器があった。南、その秘密兵器を車掌に見せると、車掌、いきなり、

「これは失礼いたしました!!ある任務のために使うのですね!!ちょっと上と掛け合います!!」

と言ってはすぐに車両基地に連絡すると、すぐに、車掌、

「たしかにこのままだとこれからの「あそぼーい」の運用にかかわることになるかもしれません。それに、今、この列車に乗っているお客さま全員を一度に救援できる列車はその列車しかありませんね。なので、すぐにその列車をこの「あそぼーい」の救援に向かえるよう手配しました!!」

と、南が指定した列車をこの「あそぼーい」の救援に向かわせたという報告を南にした。

 だが、次の瞬間、車掌は驚いてしまう。それは南のある一言だった。

「それはそうでしょうね。だった、今、「あそぼーい」、車両不具合を起こしているみたいですしね・・・」

これには、車掌、

「えっ、なんでそれを・・・」

と、南に誰にも話していないことを言われて驚いてしまった。事実、今、「あそぼーい」、この大雨で車両に不具合が起きていたのだ。それを南は見抜いていた。なぜなら、

「なぜわかったのか。それはですね、列車のなかで急病人が出た状態のなかで外からここ立野駅への道がすべてふさがれているのにもかかわらず「あそぼーい」を走らせない、大雨規制ではあるがいまは緊急事態、それならこの列車を動かすべき、それなのに動かない、これってこの列車に不具合が起きている、それしか考えられないのですが・・・」

これには、車掌、

「南さんには参りました。たしかにその通りです」

と、南から指摘されたことを認めてしまった。車掌、続けて、

「どうやら車両の一部に不具合が起きているみたいです。その不具合に対して私たちではどうすることもできないのです。専門のスタッフじゃないと対処できません。そのため、この列車を動かせることができないのです」

と、南に正直に話した。

 だが、それを見越してのことか、南、こんなことを言いだしてきた。

「なら、今から来る救援列車にそのスタッフを乗せてきたらどうですか?」

南からの突然の提案。これには、車掌、

「あっ、たしかにそうですね!!なら、今からすぐに手配しましょう」

と、すぐに車両基地に連絡、今から来る救援列車にそのスタッフを乗せてもらうよう手配してもらった。

 その後、南と車掌はこれからのことについて話し合った。その場で、南、

「救援列車が来るのはいつごろになりますか?」

と、車掌に尋ねると、車掌、

「救援列車はこの線区(豊肥線)を過去に走ったことがありますがとてもひさしぶりのことなのでいつここ(立野駅)に到着するかはわかりません。それに、その列車は扱うのがとても難しく、果たして肥後大津~立野間の山道を登り切れるか不安です・・・」

と答えるも、南、

「まぁ、それはなんとかなるでしょう。その列車の性能に期待しましょう。それに、その列車の後ろにはディーゼル機関車も連結しているわけですしそのディーゼルと協調運転できれば大丈夫だと思いますよ」

と答えた。これには、車掌、

「南さんの言うことならなんとかなるでしょう」

と、安心してしまう。

 だが、ここで、南、車掌にある註文をした。

「あと、その列車、あのプレートは外してくださいね。じゃないと、ある男の夢が叶いませんから」

これには、車掌、

「あのプレート、あぁ、あのプレートですね、・・・がつけていた・・・」

と、南の言葉に理解したのか納得の様子。

 そして、車掌はすぐに基地に連絡すると南の要望を受諾してくれた。これを見た南、なんと、

「そう、あの男の・・・夢、ここで叶えてあげましょうか・・・、あの男ね・・・」

と、不敵な笑いを浮かべていた。

 

 それから5分後、「あそぼーい」の車内にこんな車掌のアナウンスが流れてきた。

「現在、大雨により当列車は立野駅に停車しております。また、当列車は車両不具合により走行できない状況です」

これには車内から、

「おい、そしたらどうなるんだ!!」「もしかして、ここで一晩過ごすの・・・」

というパニックに近い声が聞こえてきた。

 だが、次の車掌のアナウンスで状況が一変した。

「そのため、只今、救援列車を手配しております。救援列車の到着予想時刻は今から1時間後を予定しております」

この車掌のアナウンスにより列車内からは、

「これでようやくなんとかなるぞ!!」「これで助かるわ!!」

という嬉しい声が響き渡っていた。

 そして、パロラマシートでも・・・、

「千里先生、これで助かりますよ・・・」

と、眠っている千里に対して秘書が涙を流しながら答えていた。

 一方、これに対してちょっと不機嫌な人も・・・。

「ふんっ、この時間になってようやう救援列車とは・・・、本当に遅すぎなんだぞ!!」

と、武が怒りながら言う。それに対し、かえで、

「それでも助かるんでしょ。少しは喜んでみたら・・・」

と、武の怒りをなだめようとしていた。

 だが、その一方で、かえで、

「でも、私の「エビペン」、どこにいったのでしょうか・・・。私、なにかあったらいけないと思っていつも私のバッグのなかに入れて持ち歩いているのに・・・」

と、自分がいつも持ち歩いている自分の「エビペン」がなくなっていることを心配していた。

 そして、曜とルビィも、

「ふ~、これでなんとか感ず目状態からおさらばだね!!」(曜)

「ちょっと心配していたら、おなか、すいちゃった・・・」(ルビィ)

と、これまでの緊張がほぐれた、そんな感じをしていた。

 で、曜、あることをふと考えてみる。それは・・・、

「でも、救援列車ってなにが来るのかな?もしかして、「あそぼーい」と同じ観光列車?」(曜)

そう、曜、どんな救援列車が来るのか少し気になるみたいだった。で、そんな曜を見てか、梶山、

「ふふ、意外なものかもしれませんね」

と、なにやら不敵な笑いを浮かべて答えた。梶山、実は車掌のところに行った南がパロラマシートに戻ってくるとき、少し南と2人で話し合っていたのだ。そこでどんな救援列車が来るのか南から聞いていたみたいだった。ただ、それについては秘密にしてほしいと南から言われていたため、詳しいことはみんなに伝えることなく、ただ、不敵な笑いを浮かべることしかしなかった・・・。



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曜とルビィの事件簿~復活のA~ 後編

※この作品はRailWarsとラブライブ!サンシャイン!!のクロスオーバーした二次創作小説であり、新庄雄太郎さんとのコラボ作品でもあります。この作品は前編後編の2回にわたって投稿します。


 それから1時間後、雨はまだ止むことはなかった。が、それでもあともう少しで救援列車が来る、それだけで乗客たちは安心していた。そして、曜とルビィも、

(あともう少しで救援列車が来るんだ!!もう安心だね!!)(ルビィ)

(どんな列車が来るのかわくわくするよ!!)(曜)

と、救援列車が来るのをいまかいまかと待ちわびえていた。

 そのときだった。

シュポー シュポー

という大きな音があたり一面に響き渡った。これには、ルビィ、

「ピギィーーーー!!」

と、悲鳴に近い声をあげてしまった。それに対し曜は、

「あっ、ついに救援列車が来た!!」

と、逆に騒ぎだしてしまう。いや、それどころか、曜、

「って、この音、まさか、まさか」

と言っては雨降りしきる外のホームに降りてしまった。

 だが、曜みたいな人がもう一人いた。それは・・・、

「おい、まさか、まさか、こんな形で復活するのかよ・・・」

と言いつつ顔の表情はどこか喜びの表情いっぱいの・・・、

「あ、あなた・・・、武さん、いったいどうしたのですか?」(かえで)

そう、武だった。武、長年の夢が叶った、そんな感じをしていた。むろん、武も武で童心に帰ったみたいにわくわくしながら雨降りしきるホームに降り立った。いや、武だけじゃない。突然あたり一面に響き割った音でびっくりした乗客たちはその音の正体を知るべく乗客の多くがホームへと降り立ったのである。

 そして、その音を鳴らしたものは、

シュポーシュポー

と、音、いや、汽笛を流しながら立野駅のホームへと近づいてくる。これには、曜、

「まさか、これって、もしかして・・・」

と、わくわくしあんがらそれが来るのを待ち望んでいた。

 その後、ようやく曜たちの視界にそれは見えてきた。それを見て、曜、

「えっ、SLだ!!」

と、曜たちのもとに近づいてきたものがSLであるとわかってびっくりしてしまう。そう、立野駅に近づいてきたものは・・・SLだった。なんと、車掌、いや、南が動かない「あそぼーい」の救援に来るようにお願いしたのはSLだったのである。いや、これはただのSLにあらず。なんと、このSL・・・、

「あっ、もしかして、あの、今日、博多から熊本まで走った、SL「無限大」号だ!!」(曜)

そう、曜が本当に見たくてしかたがなかった、あの大人気マンガとのコラボSL列車「無限大」号・・・、

「いや、違うぞ!!ま、まさか、ついに復活したんだ・・・、SL「あそBOY」!!」(武)

そう、SL「あそBOY」・・・、「あそBOY」!!この武の言葉に、曜、武にかみつく。

「なに言ってるの、おじさん!!あれは、今日、博多から熊本まで走ったSL「無限大」号だよ!!」

と、武に反論する曜。だが、武は、

「いや、あれは紛れもなくSL「あそBOY」だ!!」

と、こちらも反論。これには2人ともいがみ合っていた。

 が、それも、

「曜ちゃん、武さん、どっちが正解か、SLの正面のプレートをみればわかるよ」

と、2人の仲裁に入った南によってなんとか収まりそうだった。

 そんな南の言葉通り、ホームに近づくSL、そのプレートをじっとこらえて見ると、そこには・・・、

「プレートが「∞」になっていない・・・、「58654」だ・・・」(曜)

そう、「無限大」号のプレートは「∞」であった。だが、今、立野駅に向かっているSLの正面のプレートは「58654」・・・、これには、武、

「これこそ「あそBOY」である証拠!!」

と、曜が勝ち誇ったような表情をしながら言うと、曜、

「でも、今日、たしかにSL「無限大」号が走ったはずじゃ・・・、でも、今着ているのはSL「あそBOY」で・・・。いったいどういうことなの!!」

と、なにがなんだかわからず困惑した表情をみせてしまう。

 そうしていくうちに、

シュシュシュシュシュー

という軽快なブレーキ音とともにSLは立野駅のホームに滑り込んだ。そして、SLの運転室から、

「あいてつ様、お疲れ様です」

と、小さいながらも黒い髪をなびかせている女性機関士と、

「ゴーヤよ、ありがとうな」

と、長身でなおかつ男前の男性機関士が立野駅のホームに降りてきた。その男性機関士は南に近づくなり、

「南さん、ご無沙汰しております」

と、南に挨拶すると南も、

「あいてつさん、まさかSLを動かす機関士になるなんてこちれもびっくりですよ!!」

と、男性機関士のことを褒めていた。

 その一方で、曜、「ゴーヤ」と男性機関士に呼ばれた女性機関士に近づいては、

「ところで、このSLって「無限大」号じゃないの?」

と、尋ねてみる。どうやら、曜、これがSL「あそBOY」であると今でも確信が持てていないようだった。

 だが、ゴーヤはそんな曜の疑問にこう答えてしまう。

「たしかに、これはSl「あそBOY」であって「無限大」号でもあります」

このゴーヤの答えに、曜、

「えっ、「あそBOY」であって「無限大」号でもあるの!?」

と、びっくりしてしまう。いや、それどころか、曜、

「なにがなんだかわからないよ~!!」

と、さらに困惑してしまった。これには、ゴーヤ、

「それはあとで南さんから聞いたほうがいいですよ、このSLの歴史をね・・・」

と、かわいく言ってしまう。これには、曜、

「このSLの歴史・・・、うん、わかった!!あとで南さんに聞いてみるよ!!」

と、元気よく答えた。

 だが、曜がびっくりすることはまだあった。それは南との会話を終えた男性機関士のあいてつの言葉だった。

「さてと、千歌助手、今から「あそぼーい」の乗客を乗せて阿蘇駅に向かう。準備はいいかな?」

このあいてつの言葉に、曜、そして、曜に続けてホームに降りてきたルビィ、ともに、

「え~、千歌助手!?」

と、まさかの名前にびっくりしてしまう。

 そして、SLの運転室からひょっこり現れたのは、

「はい、わかりました、あいてつ機関士」

と、なんと、誰もが知っているAqoursのリーダー、高海千歌、だった。これには、曜、ルビィ、ともに、

「「千歌ちゃん!!」」

と、まさかの本人登場にびっくり。むろん、千歌も、

「あれっ、曜ちゃんにルビィちゃん、どうしたの?」

と、曜とルビィに対しなにがあったのか尋ねてしまう。これには、ルビィ、

「た、たしか、千歌ちゃん、今度の(「ハピトレ」の)PVのためにちょっと用事があるって言っていなかったけ?」

と、千歌に尋ねると、千歌、

「うん、今度のPVってSLが主人公でしょ。だから、SLを運転すればなにかがわかる、って思ったから、今、SLの機関助手として働いているんだよ!!」

と、あっけらかんに答えてしまった。これには、曜、

「た、たしかにSLを運転すれば今度のPVの参考になるけど、それだと参考としては規模が大きすぎるんじゃ・・・」

と、千歌の答えに唖然となってしまった。

 だが、ここで、ルビィ、もっとなツッコミを千歌にしてしまう。

「それよりも、千歌ちゃん、高校生でしょ!!それなのに、なんで、SL、運転できるの?」

そう、千歌はまだ高校生である。その千歌がSLをなんで運転できるのか。SLを動かすだけでも大変である。

 だが、それは千歌の次の答えで明らかになった。

「だって、私、SLに運転するのに必要な資格、全部、持っているもん!!」

これには、ルビィ、

「SLを運転するのに必要な資格を全部・・・」

と、これまた唖然となってしまった。そんなルビィに対し、千歌、こんなことまで言ってしまう。

「それに、私、将来のために、資格、何百も持っているもん!!資格、ゲットだぜ、みたいな・・・」

これには、曜、

「ポ〇モンマスター、ならぬ、資格マスター・・・、ハハハ」

と、呆れかえてしまうほどだった。

 

「それじゃ、ゴーヤと千歌助手、後ろのディーゼル(機関車)と協調運転するからそれに合わせて石炭を入れてくれ」

SLの運転室ではあいてつの指示のもとゴーヤと千歌が石炭を火室に入れていくともに、

ゴーーーー

という大きな音をまわりに響かせたSLは「あそぼーい」の乗客を乗せて立野駅恒例のスイッチバックへと進もうとしていた。なお、「あそぼーい」はSLに乗ってきた専門スタッフによって不具合の場所を修理したあと、熊本まで回送されることのなっていた。これには、ルビィ、

(「あそぼーい」さん、元気になってね)

と、「あそぼーい」のことを心配しながら「あそぼーい」にさよならをしていた。

 その一方で、曜はというと・・・、

「うわ~、SLってなんか力強いイメージがするけど、まさか、それを、今、私、感じているよ!!」

と、SLによるスイッチバックを楽しんでいた。

 

 そして、スイッチバックが終わると、すぐに、曜とルビィ、南と梶山、武とかえで、そして、千里の秘書が一か所に集まり、このSLについて南から解説を受けようとしていた。

 まず、南は1枚の写真をテーブルの上に出す。そこには、

「うわ~、とても古い写真だね。え~と、これって、今さっきの立野駅だよね。それに、そこに映っているのってこのSLかな?」(曜)

そう、それは立野駅の(旧)ホームに止まっているSLの写真だった。これについて、南、こう説明した。

「まさしく曜ちゃんの言う通りだね。立野駅のホームに止まっているこのSLの写真なんだ。で、この写真、実は1990年代に撮られた写真なんだ」

これには、ルビィ、

「えっ、このとき(1990年代)からこのSLは走っていたの?」

と、びっくりしてしまう。南、それを含めて、このSLの歴史を語りだした。

「このSLはね・・・」

このSLの歴史、それは近代國鉄九州総局のSLの歴史だった。1970年代まで八代~人吉間の肥薩線を中心に走っていたこのSLは引退後、人吉の山のなかにあるSL館にてD51とともに休んでいた。だが、1990年代、当時の北九州市長と國鉄九州総局との話し合いによりこのSLは復活を果たすことになる。といってもそのままでは走れないため、ボイラーなどを新調するなどいろんな補修を受けて走れるようになったのである。そして・・・、

「このSLはSL「あそBOY」として運転されるようになったんだ」(南)

そう、このSLは復活を果たすと豊肥線の熊本~宮地間を走るSL「あそBOY」として運転するようになったのである。で、これについて、ルビィ、

「でも、ルビィたちがこれまで乗っていた列車も「あそぼーい」じゃなかったけ?」

と、南に質問。たしかに今までルビィたちが乗ってきた列車も「あそぼーい」と名乗っていた。

 これについては、南、こう説明した。

「まぁ、たしかに今まで俺たちが乗ってきた列車も「あそぼーい」と名乗っていたね。でも、どちらかというと、その列車は、2代目、って言ったほうがいいかな。で、今乗っているこのSLが、初代、ってことかな」

これについて、曜、

「Aqoursでいうなら、ダイヤちゃんたちのことかな?ダイヤちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんが1年生のときに組んでいたのが初代Aqoursで、私たちが2代目Aqoursかな?」

と、ルビィに補足説明をすると、ルビィ、

「お姉ちゃんたちには失礼だけど、お姉ちゃんたちみたいな存在なんだね、このSLは・・・」

と、妙に納得していた。

 で、南はちゃんと名前の違いについても説明した。

「それに、このSLの名前は「あそBOY」でボーイのところが英語表記だったのに対し、今走っている、というか、今まで俺たちが乗ってきた「あそぼーい」のボーイのところがひらがな表記なんだ」

これには、曜、ルビィ、ともに、

「「納得!!」」

といった表情をみせた。そんな違いもあるため、2つの名前、初代なのか2代目なのかを区別するためにそう名付けられたのかもしれない。

 とはいえ、南の説明は続く。

「SL「あそBOY」は約15年くらいこの阿蘇の雄大な自然をバックに爽快に走っていたんだけど、老朽化のため、2005年に「あそBOY」としての運用が終了したんだ。ちなみに、俺たちがこれまで乗っていた「あそぼーい」は2011年に運行を開始したんだ」

これには、武、

「あぁ、SL「あそBOY」の運行が終了することを知ったときは俺もがっかりしたよ。もっとSLが阿蘇を走ってくれたら、と思うと今でもとても悔しい気持ちになるよ」

と、SL「あそBOY」の引退について今も持つ気持ちをかみしめて言ってしまう。

 だが、南はこのSLのさらなる歴史を語り始めた。

「ところが、このSLは不死鳥のごとくよみがえったんだ。たとえ老朽化しても國鉄九州総局は諦めていなかったんだ。このSLは國鉄九州総局みんなのおかげで新調に近いくらいの修復を受けたんだ。ボイラーだけでなく台枠すら修繕するくらいにね。こうして、不死鳥のごとくよみがえったこのSLは2009年から熊本~人吉間を走るSL人吉として運転されることになったんだ」

そう、このSLは不死鳥のごとくよみがえった。「あそBOY」としての運用が終了してから3~4年ものあいだ、このSLは新調に近いくらいの修繕を受け、もともと走っていた肥薩線にSL人吉として運転されるようになったのだ。それは國鉄九州総局の絶え間ない努力によるものだった。それを南は熱弁していたのだった。

 そして、最後に南はこのSLの運用についても説明した。

「そして、このSLはときどき臨時列車として運用されることがあるんだ。で、今回は大人気マンガ「オルグ・ソード」とのコラボということでそのマンガに出てくるSL「無限大」号として臨時運転していた、という形なんだ」

この南の説明に、曜、

「あっ、なるほどね。だから、南さん、あのとき、「「SL「あそBOY」であってSL「無限大」号でもある」って言っていたんだね」

と、南が曜と武がいがみ合っているときに言った言葉の意味をようやく理解した。そう、このSLは、昔、SL「あそBOY」として運用していたし、今はSL人吉として、そして、今日は臨時列車SL「無限大」号として運行されていたのだ。

 そして、南は武の方を向くと武に向かってこう言った。

「で、武さん、「あそBOY」がこんな形で復活したことにどう思いますか?」

これには、武、こう答えた。

「「あそBOY」の復活、それは私にとって宿願でした。このSLの感覚、雄大な阿蘇の自然をバックに爽快に走るSL。あぁ、本当に久しぶりだ!!これが、今、叶っただけでも満足です!!」

そう、武は、SL「あそBOY」の復活、という夢を抱いていた。武曰く、

「私は雄大な自然をバックに阿蘇の大地をひた走るSLの姿にいつも感動していました。力強い走行音、雄たけびをあげる汽笛に雄大な自然にマッチした力強さを物語るような黒煙、どれもこれもとってみれば素晴らしいものばかり。そんなSLの雄姿、私、好きでした。けれど、突然、老朽化などが原因でSL「あそBOY」は運転を休止することを聞いたとき、もう2度とそんな光景が見られなくなってしまう、もう2度とあの感覚を味わうことができない、そう思ってしまい、相当ショックを受けました。そして、それ以降、私はもう1度SL「あそBOY」を復活させようと動き回っていたのです」

とのこと。武にとってSL「あそBOY」は自分のすべてをかけるくらいものすごく好きだったのかもしれない。けれど、武、そのSL「あそBOY」が運用休止になったことで相当ショックを受けてしまい、もう1度、阿蘇の大地にSLを走らせよう、と動いていたみたいである。

 そして、南はそんな武に対してあることを言ってします。

「ただ、それについては自分1人の行動でしかなかった。自分だけが動いていても個人の要望としかみんなはみてくれない。だから、あなたは熊本でも有力な県議であった千里さんに何度も働きかけをしていたのではありませんか」

これには、武、

「たしかにその通りです。私は何度も何度も千里に対しSL「あそBOY」を復活させるよう働きかけてきました。けれど、いつも門前払いされてしまう。これではだめだと・・・」

と言うと、南、その続きの言葉を言った。

「今日、千里さんが「あそぼーい」に試乗するという情報を知ったため、今回、「あそぼーい」に夫婦そろって乗った・・・というわけですね」

これにも、武、

「はい、たしかにそうです」

と、答えた。そう、武は有力県議である千里に対しSL「あそBOY」復活の働きかけを何度もしていたのである。が、これまでそんな働きかけをいくらしても秘書らのおかげで門前払いを受けていたのである。が、今回、千里が「あそぼーい」に試乗するという情報を手に入れた武は直接千里に訴えるために「あそぼーい」に夫婦そろって乗車した、ということなのである。

 で、ルビィはそれを聞いてあることを思い出すと、

「あっ、もしかして、武さんと千里さんがパロラマシートの部屋に入ってくるなり口論していたのってそのことについてなんだね!!」

そう、「あそぼーい」のパロラマシートのある部屋に武たちが入ってくるとき、ルビィたちが聞いた2人の口論の内容、それはSL「あそBOY」の復活についてであった。あおのtlき、パロラマシートのある部屋に武たちが入ってくるとき、

「ぜひともあれ(SL「あそBOY」)を復活させてください!!」

と、武が千里に対して直談判していたにもかかわらず千里はいろんな理由から、

「それはできない!!」

と、断っていたのだ。これが2人が口論になった理由だった。

 そして、南は武の方をもう一度向くと、今度は武に指をさしてこう言った。

「そして、あなた、本渡武さんはその夢を叶えることができない、それならばとばかりに千里さんを殺そうとしたのかもしれない、あるものを使ってね・・・」

この南の言葉を聞いて、武、すぐに、

「えっ、なんですって!!南さん、それはなにかの間違いじゃないのですか?」

と、完全否定をするも、南、ある事実をみんなに伝える。

「まぁ、それはあとで話すとして、なんで千里さんは死にそうになったのか、それはね、千里さんが「アナフィラキシーショック」を起こしたからですよ!!」

これには、みんな、

「アナフィラキシーショック!?」

と、びっくりしてしまう・・・も、ルビィ、ここで、

「「アナフィラキシーショック」ってなに?」

と、南にそれがなんなのか言い返してしまう。そりゃそうだ。「アナフィラキシーショック」なんてある人たち以外にはあまり聞いたことがない言葉だからだ。

 そんなルビィの質問に対し、梶山が簡単にそれについて説明した。

「「アナフィラキシーショック」とはね、アレルギーを持っている人がそのアレルギーの原因となるアレルゲンによって全身にアレルギー反応が起きてしまい自分の体が悪化することを言うんだよ」

 この梶山の言葉のあと、南はこう言い続けた。

「千里さんの場合、「アナフィラキシーショック」による症状が体中に起きていた。まずは全身にわたる発疹、それに、唇がはれあがったこと、さらに、呼吸困難、とかね・・・」

これを聞いた曜、

「あっ、たしかに全部千里さんの症状とぴったりあっている・・・」

と、びっくりすると、さらに、

「たしか・・・千里さんのアレルギーって・・・」

と、なにかを思い出そうとする。

 南、それを待っていたかのように、

「それじゃ、ちょっと実験をしてみよう。かえでさん、みんなに出したクッキー、まだあります?」

と、かえでに尋ねると、

「あっ、はい、ありますよ」

と言ってはクッキーの入った筒を取り出しクッキーをまた大皿の上に並べようとした。すると、武、

「おいっ、それは・・・」

と、ばつが悪いのかかえでの行動を制しようとするもそれを梶山が、

「武さん、なんでかえでさんがクッキーを広げちゃダメなんですか?」

と、逆に武を制するように言うとさすがの武も、

「・・・」

と無言になってしまった。

 そんなわけで、かえで、クッキーを大皿の上に並べると、南、クッキーの下の方を見て赤い点をついているのを確認すると、

「それじゃ、ルビィちゃん、これを食べてみて」

と、ルビィに対し武の指定したクッキーを食べるようにお願いする。だが、これにも、武、

「おいっ、もしかしてこれに毒があるのかもしれないんだぞ!!」

と、南に文句を言うも、南、

「ああ、たしかに毒があるかもしれませんね」

と、武に対して確かにそうであるかのように言うと武も、

「ほら、そんなもの、未来のある若者に・・・」

と、自信満々に答えようとする。が、武がそう言っているそのとき、南、武に対して、

「でもね、その毒はね、かえでさんや千里さんにしか効かないのですよ!!だから、ルビィちゃんは大丈夫なわけ!!」

と威嚇するように言うと、ルビィからも、

「南さんのいうことなら、ルビィ、信じる!!じゃ、食べてみるね」

と、なんと、ルビィ、かわいい子ウサギみたいに南が指定したクッキーを食べてみた。

 すると、

「どう、ルビィちゃん、クッキー食べてみてどうかな?」

と、ルビィに尋ねると、ルビィ、

「う~ん、今さっき食べたものと同じだよ・・・」

と言ってしまう。これには、曜、

「じゃ、このクッキーにはなにもないんじゃ・・・」

と、そのクッキーには事件性がないようなことを言ってしまう。

 だが、南はそのことを気にせずに今度は別のクッキーを手に取ると今度は赤い点がついていないことを確認、それをルビィに渡しては、

「じゃ、ルビィちゃん、これも食べてみて」

と言うと、ルビィ、

「うん、わかった・・・」

と、今度も子ウサギみたいにそのクッキーを食べてみた。

 すると、ルビィ、

「うん、あれっ、このクッキー、今さっき食べたクッキーより軽く感じる・・・」

と、今さっき食べたクッキーとなにかが違うことを感じた、そんな感想を述べた。これには、曜、

「えっ、本当?私も食べてみる!!」

と、南に言うと、南、ルビィのときと同じように赤い点のあるなしを確認して、赤い点がついているもの、ついていないものを曜にそれぞれ食べさせてあげた。すると、曜も、

「あっ、本当だ!!1つは重く感じるけどもう1つは軽く感じる!!」

と、ルビィと同じ感想を言ってしまう。どうやらふたりとも2つのクッキーにある違和感を感じたようだった。

 と、ここで、南、ここぞとばかりにルビィと曜が感じた違和感の正体を種明かししてみた。

「2人とも感じた違和感、それはね、そのクッキーのなかにグルテンが入っているかどうかなんだ」

これには、ルビィ、曜、ともに、

「グルテン?」

と南に聞き返すと、南、これについて説明する。

「グルテンとはね、小麦粉に含まれているたんぱく質のひとつなんだ」

さらに、南、それを含めて目の前の大皿に広げてあるクッキーについても説明する。

「そして、このクッキーたちなんだけど、実は2種類のクッキーが混じっているんだ。1つはかえでさんが作ったグルテンの入っていない米粉のクッキー、もう1つはグルテンの入っている市販の小麦粉で作ったクッキー」

これを聞いたかえで、

「えっ、私の作ったクッキーのなかに市販の(小麦粉で作った)クッキーがあったわけ・・・)

と、愕然となってしまう。

 そして、南はルビィと曜がクッキーを食べて違和感を感じたのか、その理由を述べた。

「で、ルビィが最初に食べたのが市販の小麦粉で作られたクッキー、この中にグルテンが入っているから重く感じたわけ。で、ルビィちゃんがあとで食べたのがかえでさんが作った米粉のクッキー。これにはグルテンが入っていないから軽く感じたわけ」

これには、曜、

「なるほど!!グルテンが入っているかどうかで感じ方が変わったんだ・・・」

と、納得の表情。

 だが、曜、あることに気づく。

「って、あれっ、たしか、今さっき、南さん、「小麦粉で作られた・・・」って言ってなかったけ?もしかして、千里さんは・・・」

 これには、南、すぐに反応。ついに千里が苦しんだ理由を話した。

「そう、曜ちゃんの予想通り、千里さんは小麦のクッキーを食べたために苦しんだんだ。小麦粉で作られたクッキーは小麦アレルギーの原因、アレルゲンであるグルテンを含むたんぱく質が含まれている。そして、千里さんは重度の小麦アレルギー持ち。そんな千里さんが小麦で作られたクッキーとは知らずに食べてしまった。それより、千里さん、小麦アレルギーを発症してしまいアナフィラキシーショックを起こしてしまったから苦しんでしまったわけ」

 そして、南は武の方を指さしこう言った。

「そして、武さん、あなたは小麦で作られた市販のクッキーをかえでさんが作った米粉のクッキーのなかにまぜて小麦のクッキーを千里さんにわざと食べさせた。そうすることで千里さんをアナフィラキシーショックで殺そうとしたのかもしれないのですよ!!」

 これには、南、

「そ、それはないでしょう、南さん」

と、激しく動揺するもこちらも否定する。さらに、武、

「それに、こんなに無造作にクッキーが置かれていたら誰でもどのクッキーを食べてもおかしくないでしょ!!」

と、南の推理の穴を指摘する。たしかに無造作にクッキーが置かれていたら誰でもどのクッキーを食べてもおかしくない。

 だが、南はそれを論破してみせた。

「でもね、武さんならど無造作にクッキーを置かれていてもどちらのクッキーなのかわかるんですよ。だって、小麦で作られたクッキーには赤い点がついているからね!!」

これには、みんな、

「えーーー!!」

と驚いてしまう。そして、曜はすぐにクッキーのひとつをとって裏返してみる。すると、

「た、たしかに、このクッキー、裏に赤い点がある!!」

と、またまた驚いてしまう。これには、南、

「うぅ・・・」

と、うなだれるしかなかった。

 だが、曜は南にある疑問を投げ返た。

「でも、たとえそれで区別できたとしても確実に千里さんが食べるとは限らないよ」

これには、南、こう答えた。

「たしかにね。でも、クッキーを食べ続けるといつかは小麦のクッキーに当たるかもしれないよ。それに、実は、このクッキー、千里さんが食べたときは別に無造作に置かれていたわけじゃないんだよ」

これには、ルビィ、

「でも、この大皿に並べたのってかえでさんじゃ・・・」

と反論すると、南、これについてこう切り返した。

「それはそうなんだけど、実はかえでさんも知らないうちに小麦のクッキーを米粉のクッキーを別々に並べてしまったんだ」

これには、みんな、

「!」

と、びっくりしてしまうと、南、それについての説明を始めた。

「実はね、クッキーを最初入れいていた容器に秘密があるんだ。かえでさん、クッキーを入れていた容器を見せてください」

これには、かえで、

「あっ、はい、南さん、これです」

と、クッキーを入れていた容器を南に渡すと、曜、

「あっ、円筒状だ・・・」

とはっとした感じで言うと、南、

「この円筒状の容器に秘密があるんだ」

と言っては大皿に広げていたクッキーを赤い点がついた小麦のクッキーとそうでない米粉のクッキーをわけていれていくと、もう一度大皿にクッキーを並べなおしてみせてはこう言った。

「人というか日本人というのはとても律義な性格をしててね、円筒状の筒みたいなものの場合、まるで写真に載っているお手本みたいに円筒状に入っている順番通りに並べてしまう傾向が強いんだ」

そして、南は自分が並べたクッキーを裏返して見せると、みんな

「えっ、本当だ・・・」

と、唖然となってしまった。だって、赤い点がついたものとそうでないものとできっちりとまとまって置かれていたからだった。これには、かえで、

「うそ・・・」

と、愕然となってしまった。

 さらに南は武に対してあることを指摘した。

「それにね、武さん、千里さんが食べるとき、わざと赤い点、つまり、小麦のクッキーが置いてるほうを前にだして千里さんにわざと小麦のクッキーを食べさせようとしましたね」

これには、南、

「そ、それは・・・」

と、おどおどしてしまう。これを見た南、さらに武を追求する。

「人というのは食べるものが入った皿を突き出すようにされてから食べようとするとき、つい自分の目の前にあるものから食べてしまう傾向があったりします。千里さんもそれによって、武さんから小麦のクッキーが置かれている方を前にして突き出されてしまったから、つい小麦のクッキーと知らずに食べてしまったのです。むろん、千里さんの隣にいたルビィちゃんもね」

これには、ルビィ、

「た、たしかにそうかも。ルビィ、目の前の赤い点がついたクッキーを目の前に突き出されたからそれを食べたかも・・・」

 だが、武はそんな推理をみせる南に対し反論する。

「でもね、南さん、その市販されている小麦のクッキーを混ぜた事実もないし、小麦のクッキーも米粉のクッキーじゃ見た目も・・・」

 これには、南、すぐに反論する。

「見た目についてはこのクッキーをみれば一目瞭然です。色、形、どれも一緒です!!」

さらに、南はかえでに対して、

「かえでさん、米粉のクッキーを市販のクッキーと似せて作るように言われたのって誰ですか?」

と尋ねると、かえで、

「たしか武さんからだと。市販のクッキーに似せたほうが米粉のクッキーを嫌がる人でも食べてくれるって・・・」

これには、武、

「そ、それは・・・」

とおどおどしてしまった。

 そんなときだった。南のポケットから着信音が鳴ると、南、

「はい、南ですが・・・」

と、ポケットから自分のスマホを取り出し電話にでる。すると、

「菅原です。南さんの言う通り、阿蘇駅前のコンビニで本渡武さんに似た人物が円筒状の容器に入ったクッキーを買っていたことが確認できました。防犯カメラ、店員、ともに裏が取れております!!」

と、菅原と名乗る人物が武がコンビニで円筒状に入った市販のクッキーを買っていたことを南に伝えた。

 と、ここで、ルビィ、

「あの~、菅原さんって・・・」

と南に尋ねると、南、

「ああ、俺の同僚でして・・・」

と、軽く答える。その南の姿を見て、曜、

「南さんっていったい・・・」

と、南の正体が気になる様子。

 と、ここで、南、

「ルビィちゃんと曜ちゃんの疑問はさておき・・・」

と前置きしつつ、南はかえでに対してあることを尋ねた。

「ところで、かえでさん、そのクッキーを入れていた容器を準備したのって誰ですか?」

これには、かえで、こう答えた。

「たしか、武さん、でした。私が米粉のクッキーを作った後、武さんから、「あとは自分でやるから出かける準備をするように」って言われて、それで武さんに米粉のクッキーを渡しました。そのあと、武さん、阿蘇駅に到着するとき、「ちょっと用事があるから」って私と別れて、それで、阿蘇駅で「あそぼーい」に乗る前にこのクッキーの容器を渡されました」

これには、南、さらにかえでに尋ねた。

「かえでさん、そのコンビニに武さんが行った時間、わかりますか?」

これには、かえで、

「たしか「あそぼーい」が出発する30分前、〇〇時〇〇分でした」

と言うと、南、すぐに菅原にスマホで連絡をとると、

「菅原、防犯カメラにクッキーを買った人物が映っている時間を調べてくれ!!」

と命令。菅原、すぐに確認すると、

「はい、クッキーを買った人物は映っている時間ですが、○○時○○分、「あそぼーい」が阿蘇駅に到着する30分前です!!」

という答えが返ってきた。武が阿蘇駅前のコンビニに行った時間と防犯カメラにクッキーを買う武らしき人物が映っている時間が一緒だったのだ。これには、南、

「武さん、かえでさんが持つそのクッキーの容器こそ武さんが千里さんを殺そうとした、かもしれない証拠かもしれませんね。武さん、あなたはコンビニで円筒状の容器に入ったクッキーを買った後、その容器に入っていたクッキーを取りだしてはあらかじめ入っていた小麦のクッキーに赤い点をつけたあと、かえでさんに市販のクッキーに似せて作らせた米粉のクッキーと小麦のクッキーを別々にその容器に入れてからそれをかえでさんに渡した。そして、それをかえでさんは知らないうちに大皿に並べ武さんは千里さんに赤い点がついている小麦のクッキーがまとまっているほうを前に突き出して千里さんにわざと小麦のクッキーを食べさせた。これが事件の全貌・・・」

 だが、ここで、武、南に対し反撃にでる。

「たしかに、南さんの言う通り、小麦のクッキーを私が買ったとしましょう。でも、それで千里さんを殺す証拠にはならないのです!!だって、それを買ったとしても千里さんを確実に殺せるとは限らないのですから・・・」

 が、南、それをわかっているのか、すぐにこう反撃した。

「たしかに、武さんの言う通り、私のこの推理ではまだ弱すぎですね。でもね、誰が「武さんが千里さんを殺そうとした」と断定したのですかね、俺は「~かもしれない」って言っただけですがね・・・」

これには、南、

「むむむ・・・」

とむきになるも反撃できず。 

 そして、南はみんなに向かって衝撃的なことを言った。

「実はね、武さん、当初、千里さんではなく別の人をターゲットにして殺そうとしていたのです」

これには、みんな、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。

 それをみてか、南、武から殺されそうになった人物のほうを指さしこう言った。

「武さんが当初殺そうとしていた人物、それは、かえでさん、あなたですよ!!」

これには、かえで、

「えっ、本当なの、武さん・・・」

と、武に言うと、武、

「そ、そんなわけないだろう!!」

と、動揺するも否定する。

 が、南、梶山に対しある命令を出した。

「梶山、武さんのバッグのなかをだしてあるものを探して!!」

これには、武、

「そ、それは横暴じゃ・・・」

と、すぐに自分のバッグを抱きしめるも、梶山、ついにある秘密兵器を取り出し武に突き出すと武、ほそぼそとした声を出してこう言ってしまう。

「ま、まさか・・・、國鉄鉄道公安隊・・・公安特捜班・・・」

國鉄鉄道公安隊東京公安室公安特捜班・・・日本の鉄道を守る鉄道公安隊、そのなかで精鋭が集まる部署、それが公安特捜班である。これには、ルビィ、

「ま、まさか・・・あなたが・・・」

とびっくりするも、南、

「ルビィちゃん、それはあとでね!!」

とルビィに対しウィンクすると、武が持っているバッグを職権で奪いなかを探る梶山の方を見る。すると、梶山、

「あっ、ありました、例のものが!!」

と、南が探していたものを撮りだしては南の目の前に置いた。それは・・・、

「えっ、なんで、私の「エビペン」がここにあるの!?」(かえで)

そう、なぜか武のバックからかえでの「エビペン」、そして、

「あっ、食紅の瓶と筆だ・・・」(曜)

クッキーにつけたであろう食紅が入った瓶とそれを使ったであろう筆が入っていた。これには、武、

「ううう・・・」

とうなってしまう。

 そして、南はかえでにあることを尋ねた。

「ところで、かえでさん、「エビペン」をあらかじめ武さんに渡すってことはありますか?」

これには、かえで、

「いいえ、私はいつも自分のバッグに「エビペン」を入れて持ち歩いています。それに、「エビペン」は注射器みたいなものですから武さんに渡すことなんて絶対にないです。だって、武さん、「エビペン」の使い方、知りません、というか、自ら知ろうとしないのですから・・・」

と答える。これには、南、

「と、なると、武さんのバックのなかにかえでさんの「エビペン」が入っているのはおかしいですね・・・」

と武のほうを見て言うと、武、

「・・・」

と無言になってしまった。

 と、ここで曜から質問」

「ところで、南さん、「エビペン」ってなんなのですか?それが最初から疑問だったんだよね」

これには、梶山、南に代わり曜の質問に答える。

「曜ちゃん、「エビペン」はね、アレルギーを持つ人にとってとても大切なものなの。「エビペン」自体は大きな注射器なんだけど、もし重度のアレルギー反応でアナフィラキシーショックが起きた時、これを刺すことでアナフィラキシーショックを幾分か和らげる効果があるの」

「エビペン」・・・それは重度のアレルギー持ちの人にとってとても大切なものだったりする。アレルゲン(アレルギーの原因)により重度のアレルギー反応によりアナフィラキシーショックが起きた時、「エビペン」をふとももの部分に刺すことにより「エビペン」のなかに入った溶液によってそのショックを幾分か和らげてくれるものである。いわば重度のアレルギー持ちの人にとってもしものときの救急装置ともいえた。とはいえ、「エビペン」の処置は応急処置みたいなものであるため、「エビペン」を打ったらできる限りはやく病院を受診することを進める。

 とはいえ、まさか、武がかえでの「エビペン」を持っている・・・、それに加えて小麦のクッキーにつけた赤い点、それをつけるために用意していた食紅の瓶と筆、これを踏まえて、南、武に対しこう断言した。

「武さん、もう言い逃れできませんよ。身内にすら渡さないかえでさんの「エビペン」が武さんのバックにある、それってあなたが千里さんと同じく重度の小麦アレルギー持ちであるかえでさんを殺そうとした、それが事実です。武さん、あなたは、最初、阿蘇駅前のコンビニで買った円筒状の容器に入った小麦のクッキーを取りだすとそれに食紅の赤い点をつけてから何枚か元に戻しそこにかえでさんが作った米粉のクッキーをその容器に詰めた。その後、残った小麦のクッキーをコンビニの袋ごと阿蘇駅のごみ箱に廃棄した。そして、かえでさんの「エビペン」を誰もみえないところで盗むとそれを自分のバッグのなかに隠したあと、武さんはなにくわぬ顔をしてかえでさんに小麦のクッキーを食べさせようとしたんだ」

これには、武、

「むむむ・・・」

と、怒りの表情。

 と、ここで曜がまたしてても質問。

「でも、なんで武さんが殺す相手がかえでさんから千里さんに変わったわけ?」

これんは、南、さらに答える。

「それはね、曜ちゃん、私たちとでクッキーを食べるまえ、千里さんがかえでさんと同じく重度の小麦アレルギー持ちであることを聞いたからなんだ。武さんがそのことを知ったことで殺す相手をかえでさんから千里さんに変えたんだ、このSL「あそBOY」復活をかたくなに拒んでいた千里さんに対する恨みを晴らすためにね・・・」

 そして、南は武のほうを見つめるとこう言いだしてきた。

「だけど、ここで誤算が生じた。1つは千里さんという存在だ。本来ならかえでさんの「エビペン」を隠すことで確実にかえでさんを殺しただろう。でも、千里さんというもう一人の小麦アレルギー持ちがいたことが災いした。千里さんもまたもしものために秘書に「エビペン」を持たせていた。これにより確実に、かえでさん、もしくは、千里さん、を殺すことができなくなった。そして、俺たち、公安特捜班の存在だ!!俺たちがいるため、証拠であるクッキーやかえでさんの「エビペン」を処分することができなくなった。それどころか、武さんの悪事を晴らすことにもつながった。あとは・・・、まあこの雨のせいで外に出れらなくなった、いわゆる一種の密室状態・・・であったことも誤算の一つだろうね」

これには、武、

「むむむ・・・」

とうなるだけだった。

 そのときだった。かえで、武に対し、

「武さん、うそでしょ、私を殺そうとするなんて・・・」

と泣くように武にそう言うと、武、ついに化けの皮が剥がれた。

「あぁ、もうやめだ、やめだ!!俺はな、お前の小麦アレルギーのせいで日頃からストレスが溜っているんだよ!!」

 そして、武はかえでに対しいろいろと文句を言っていった。

「俺はな、うどんやパンといった小麦でできたものをいつも食べたいと思っていたんだ。でもな、お前の小麦アレルギーのせいでそれすら我慢しないといけない。そう考えただけでもイライラしてくるんだよ!!このイライラ、どこで発散すべきか。それこそ今だったわけ!!かえでを殺せば思う存分うどんやパンを食べれるんだからよ!!」

さらに近くに寝ていた千里に向かってこうも言った。

「そして、それと同じくしてSL「あそBOY」復活の件でもイライラしていた。千里のやつ、俺の長年の夢であるSL「あそBOY」の復活をいつも妨げてきた。それならばと千里も殺せば一石二鳥だと思って千里に小麦のクッキーをわざと食べさせようとしたんだ。そのあと、かえでにも小麦のクッキーを食べさせようとしたけど、このままだと一晩あの列車(「あそぼーい」)のなかにいないといけない、そのことが頭のなかでよぎってしまったから、俺はクッキーを直してしまった。それが私の唯一の汚点だったかもしれないな。けれど、そのうち千里が苦しみだしたのを見て、私、千里だけは討ち果たすことができる、そう思えたんだ。でも、この雨という存在がなければ、お前たち、公安特捜班がいなければきっとすべてうまくいく、千里を確実に殺すことができる、はずだったのによ・・・」

 この武の言葉に南はついにきれた。

「武さん、それはアレルギーを持つものに対しての冒とく以外のものでもありません!!あなたはアレルギー持ちの人たちすべてを敵に回したんですよ!!人々のなかにはいろんなアレルギー持ちの人がいます。水、太陽、青色、などなど。珍しいアレルギー持ちの人たちもいます。そのアレルギー持ちの人たちはそれを食べることも使うことも、いや、それに触れたり浴びることすらできない、それほどの苦しみを持っているのです!!そんな人たちのために私たちはその人たちが楽しく十分に暮らしていけるように配慮しないといけないのです!!それをあなたは冒とくしたのですよ!!」

 だが、これには、武、

「そんなの関係ない!!そんなの、俺の苦しみと比べてみては雲泥の差だ!!我慢したい人は我慢すればいい!!私は私で我が道を突き進むのみなんだ!!」

と、南のいうことを聞き入れてくれなかった。それどころか、

「それにな、ただ小麦のクッキーを小麦アレルギー持ちの人に食わしただけでは殺人罪にはあたらないんだよ!!」

とも暴言を吐いてしまう。

 そんなときだった。突然、

キッキー

という列車が止まる音が聞こえてくると、車内には、

「みなさん、お疲れさまでした。阿蘇駅に到着しました」

という阿蘇駅に到着したアナウンスが流れてくる。

 と、同時に、

ガタンッ

という車両のドアが開く音が聞こえてきたと一緒に、

「警察だ!!本渡武、妻かえで、および、千里県議、殺人未遂の現行犯で逮捕する!!」

という刑事の声が聞こえてきた。そして、刑事は南と武のところにくると、そのまま、

ガチャン

と、武に手錠がかけられてしまった。これには、武、

「な、なんでだよ・・・。私は小麦のクッキーを千里に食べさせただけだよ。かえでに小麦のクッキーを食べさせようだけだよ。それなのに逮捕されるなんてうそだろ!!」

と叫んでしまう。

 だが、南は武に対しある事実を伝えた。

「武さん、それは違った認識だ。たとえ小麦のクッキーを人に食べさせたとしてもその人が重度の小麦アレルギー持ちであることを知りながら小麦のクッキーをわざと食べさせようとしたこと自体、その人を殺す意図があればそれは立派な犯罪になるこだってあるんだよ!!それにね、阿蘇駅のごみ箱にコンビニの袋に入ったクッキーが見つかりました。その袋にあなたの指紋がびっしりとついていたとのことです。もう観念してください」

 しかし、それでも、武は捕まってもまだ反抗していた。

「いや、なにか間違っている!!私は、私は・・・」

だが、その瞬間、

パチッ

という平手打ちの音がまわりに響き渡る。これには、ルビィ、こう言ってしまう。

「か、かえでさん・・・」

そう、かえでだった。かえで、なんと、自分の夫である武に平手打ちをくらわしたのである。これには、武、

「かえで・・・」

と唖然になるも、かえで、武の前に立ちこう断罪した。

「武さん、私はこれまで自分の小麦アレルギー持ちのことで武さんに迷惑をかけてきた、そう思って武さんにはこれまで尽くしてまいりました。けれど、それが、こんな事態を引き起こしてしまった、と思うと、私、武さんのこと、本当に情けないと思えてきます!!南さんの言う通り、殺人目的でその人のアレルゲンを食べさせ、アナフィラキシーショックを起こすことでその人を殺そうとすること自体犯罪だと言われても仕方がありません!!それをこの私に、いや、千里さんにもしようとしたあなたの行為、それ自体、私に対する裏切り行為だと思えてきます!!武さん、掘りのなかで、それに対する償い、してくださいね!!」

これには、武、

「お、お前・・・」

と言うとガクンッと肩を落としてしまった。

 こうして、かえでと千里を殺そうとした犯人、武は逮捕され、かえでも調書のために警察署に行くことになった。また、千里は阿蘇駅前に待機していた救急車に乗って近くの大型病院に搬送された。こうして事件の幕はついに降りることとなった。

 

 その後、阿蘇駅で多くの乗客を降ろしたあと、SL「あそBOY」は転車台のある宮地駅まで進むこととなった。ちなみに阿蘇駅に降りた多くの乗客たちは阿蘇駅前に待機していた代行バスにより熊本市内に行くこととなっていた。

 そして、SL「あそBOY」の車内では・・・、

「うわ~、ルビィたち、SL、独り占めだね!!」(ルビィ)

「うん、そうだね!!でも、気持ちいいよ!!SLの旅がこんなに気持ちいいなんて、とても感動したよ!!」(曜)

と、ルビィと曜、そして、

「南もよくあんなかわいい少女たちとなかよくなれますね」(松本)

「俺も南さんみたいになりたいよ」(菅原)

「お前たち、少しは任務のことを考えろ!!」(高杉班長)

と、公安特捜班の面々が乗っていた。

 そんななか、ルビィが南のところに行くと、

「ところで、南さん、もしかして、あの公安特捜班の南達仁さん、ですか・・・」

と南に尋ねると、南、

「うん、たしかにそうだが、なにか・・・」

と、南達仁は自分であると認めた。すると、ルビィ、

「ル、ルビィ、南さんのこと、善子ちゃんと花丸ちゃんから聞いています!!まさか、ここで南さんに出会えるなんて、ルビィ、本当にびっくりしています!!」

と、南にあこがれの目をキラキラさせながら言ってしまう。これを受けて、南、

「あっ、もしかして、善子ちゃんと花丸ちゃんとの話によく出てくるルビィちゃん!?」

ち、こちらもびっくり!!これには、ルビィ、

「はい、そうです。でも、たしか、南さんって、善子ちゃんや花丸ちゃんがよく巻き込まれる多くの事件を解決してきたんでしょ。そんな有名な人として、善子ちゃんと花丸ちゃんの大事な親友に出会えるなんて、ルビィ、本当にうれしいです!!」

と、これもまた目をキラキラさせながら言うと、南も、

「ははは、有名人かどうかは別にして、俺も善子ちゃんと花丸ちゃんの大親友であるルビィちゃんに出会えるなんて本当にうれしいよ!!」

と、これまた自分の親友の親友に出会えたことに喜びを感じていた。

 

(なお、善子と花丸の事件簿、詳しいことに関してはコラボ先である新庄さんの作品をご覧ください)

https://syosetu.org/?mode=user&uid=184317

(コピペして移動してください。ご苦労おかけして申し訳ございません)

 

 なのだが、2人にとってちょっと気になることが2つだけあった。それは・・・。

「それにしても、ルビィちゃん、あの2人(善子と花丸)みたいに事件に巻き込まれやすい体質がルビィちゃんにも伝播したんじゃないかな」

と、南がルビィに指摘するとルビィも、

「あっ、それはたしかにそうかも・・・。え~ん、善子ちゃんに花丸ちゃん、ルビィ、そんな体質、いらないよ~!!」

と、泣いてしまった。そう、ルビィも、善子と花丸、2人と同じく不幸体質になった、のかもしれない。そして、もう一つは・・・、

「って、俺たち、善子ちゃん、善子ちゃん、って言っているけど、なんかどこかで、あの言葉、聞こえてくる気が・・・」(南)

「うん、そうかも・・・」(ルビィ)

「よ・し・こ、じゃなくて、ヨハネ!!堕天使、ヨ・ハ・ネ!!」

ハハハ・・・。

 

 と、そんなほほえましい時間もついに終わりを迎える。突然、

「みんな~、あともう少しで宮地駅に到着だよ!!」

と、千歌、曜たちがいる客車のドアを開けてもうすぐ終点の宮地駅に到着することを教えてくれた。これには、

「あぁ、楽しい時間もあともう少しで終わりだね!!」(曜)

「それもそうだね。でも、こんな楽しい時間があったからこそいい思い出になるんだよね!!」(梶山)

と、楽しい時間が終わる、それに対しての名残惜しさを感じていた。

 

 そして、SL「あそBOY」はついに、

「宮地~、宮地~」

というアナウンスとともに終点宮地駅に到着した。

 その後、宮地駅前に降り立った公安特捜班の面々と、千歌、曜、ルビィ。そんなとき、特捜班の一員である菅原が曜たち3人を見て、

「あっ、もしかして!?」

と、びっくりした表情をみせると、続けて、

「もしかして、千歌ちゃん、曜ちゃん、ルビィちゃん、って、あの、今をときめく、スクールアイドルのAqoursじゃないの!!」

と、驚きの声をあげてしまう。これには、千歌、

「うん、そうだよ!!私たちスクールアイドル、Aqours、だよ!!」

と言うと、菅原、これには、

「実は、僕、Aqoursの大ファンなんです!!サイン、ください!!」

と、どこかに隠していた色紙を千歌たちの前に差し出した。いや、それどころか、

「あと、いつものコール&デスポンスもお願いします!!」

と、千歌たちにお願いする始末。これには、千歌たちも、

「うん、いいよ」

と言うと、3人合わせて、いつものやつ、をかました。

「千歌です!!」「曜です!!」「ルビィです!!」

「3人合わせて、We are CYaRon!!」「よろしくね!!」

これを見ていた菅原、

「か・い・か・ん!!」

とついに菅原は天に召される・・・それくらい有頂天になっていた。

 とはいえ、これは菅原だけではなかった。あの梶山すら、

「こんな有名人に知り合えたなんて、私、本当にうれしい限りです!!千歌ちゃん、曜ちゃん、ルビィちゃん、ずっと友達でいましょうね!!」

と、言ってしまう。梶山にとって、有名人が友達、なんてすごく嬉しいことなのかもしれない。ただ、とうの3人からしたら・・・、

「うん、そうだね!!しゃろとも、だね!!」(千歌)

と、普段道理に梶山を友達認定したみたいのようだ。ただ、この千歌の言葉に、梶山、

「しゃろとも?」

と、しゃろともの意味がなんだかわからないのか、千歌たちに聞き直してしまう。これには、ルビィ、梶山に説明する。

「CYaRon!の友達、略して、しゃろとも!!だからね、梶山さん、ルビィたちとは友達なんだよ!!」

これには、梶山、

「うん、そうだね!!私たち、しゃろとも、だね!!」

と、嬉しそうに言った。

 そして、ついにいつものあれも行わエることに・・・。

「We are CYaRon!!」(千歌・曜・ルビィ)

「We are しゃろとも!!」(梶山・松本・菅原)

 だが、これに参加しなかったのが1人・・・、そう、南であった。これには、梶山、

「南、一緒にやりますよ!!」

と言うも、南、

「そ、それ、やらなくてもいいじゃないか!!俺はしたくないんだよ!!」

と拒否するも梶山の強引さに負けてしまった。こうして、南も、

「We are しゃろとも・・・」

と、ぶっきらぼうに言うも、それがいつもの南とギャップがあったのか、みんなから、

ハハハ

と笑い声が聞こえてきた。これには、南、

「だから俺はやりたくなかったんだよ!!」

と、やらされたことを後悔していた。

 

 そして、ついに別れの時が来た。曜とルビィは熊本駅へと戻るSL「あそBOY」に乗って千歌たちとともに熊本に行くことに。そして、南たち特捜班は・・・ある任務のために仕事に戻ることとなっていた。

 その宮地駅のホームでは・・・、

「南さん、梶山さん、また会えるの、楽しみにしているからね!!だからね、また会おうね!!」(曜)

「南さん、梶山さん、またね!!ルビィたちとまた会おうね!!」(ルビィ)

「ああ、いつかまた会おう!!」(南)

「じゃ、またね!!」(梶山)

客車の窓を開けて別れの挨拶をする4人。そんなとき、

「千歌助手、汽笛をあげてくれ!!」(あいてつ)

「はいっ!!」(千歌)

という声とともに、

ポポー

というSLの汽笛の音が鳴ると、

ゴトン ゴトン

という音と一緒にSL「あそBOY」は走り始めた。それでも、曜、ルビィ、ともに、

「またね」「また会おうね!!」

という声を出しながら南たちとの別れを惜しんでいた。

 そして、走り始めたSL「あそBOY」はそのまま加速を続け、ついには南たちの視線から見えなくなってしまった。それでも南たちは、

「曜ちゃん、ルビィちゃん、さようなら・・・」

という声を出していた。

 だが、時は待ってはくれない。南、SL「あそBOY」が完全に見えなくなると、気持ちを切り替えては、

「さてと、俺たちは仕事に、任務に戻る!!おい、みんな、俺たちに任された任務、こなしていくぞ!!」

という南の掛け声とともに特捜班のみんなから、

「はいっ!!」

という声があがっていた。その後、特捜班は任務へと戻っていた。

 

 こうして、曜とルビィの事件簿は幕を下ろした。しかし、これが始まり・・・なのかもしれない、善子、花丸と同様に南たち特捜班とCYaRon!の関係も・・・。

 でも、これで南たち特捜班とCYaRon!のキズナは深まったのかもしれない。もし、同じことが起きたとしてもきっと南たち特捜班とCYaRon!が解決に導いてくれるだろう、そう願いつつ筆をおくことにしよう。  (了)




あとがき

 みなさん、お久しぶりです、la55と申します。ここまで読んでくれてありがとうございました。この作品は新庄雄太郎さんとのコラボによって実現したものです。とはいっても新庄さんみたいに推理ものが得意・・・ではなく、自分にとって苦手なジャンル、だったりします。それでもなんとか推理ものとしてなんとか成立させようと思って四苦八苦しながら作りあげました。とはいえ、初めての推理もの、ということでどうしてもちぐはぐなところもあります。いろいろとツッコミ要素満載の作品となっております。それについては多めに見てあげてください。
 このコラボ作品ですが、新庄さんからのお誘いを受けて自分で執筆したものになります。新庄さんの作品に出てくる公安特捜班を使って自分なりにアレンジしたのがこの作品です。とはいえ、新庄さんの作品を読んでリスペクトしつつ自分なりにアレンジしているので本当のところ新庄さんの作品に出てくる公安特捜班とは違った公安特捜班になっているかもしれません。なので、新庄さんとの作品とはパラレルな関係、と思ってもらったほうがいいかもしれません。とはいえ、新庄さんの作品は本当に素晴らしいものばかりです。なのでもしよろしければ新庄さんの作品をぜひ読んでみてください。RailWars好きのかたもラブライブ!好きのかたも楽しめる作品になっていると思います。
 そして、今回登場した列車は、「あそぼーい」およびSL「あそBOY」でした!!さらに、今月に熊本→博多を走破したSL「無限」号も出てきております。この「無限」号ですが、ご存じのかたも多いと思います、大人気漫画「鬼滅〇刃」とJR九州のコラボ列車です。この列車の乗車券は通常予約のみでしか取り扱いされず、それでも1秒で瞬殺されるほどの大人気でありました。そして、博多駅をはじめ、沿線では人々の多さ・・・、それくらいインパクトが大きい列車でもあります。でも、実際はSL人吉、昔のSL「あそBOY」のプレートを「無限」に入れ替えて、プラス、後ろにディーゼルで押していく、そんなスタイルをとっておりました。それを今回は使わせてもらいました。SL「あそBOY」が初代なら、いまの「あそぼーい」は2代目、といえるかもしれません。えっ、「あそ1962」は・・・。それは察してくださいよ・・・。
 とはいえ、もし、この作品を最後まで楽しんでもらえたら幸いです。もしよろしければ私の作品だけでなく新庄さんの作品も読んでみてください。とても読みやすくとてもうならせるくらいのいい作品ばかりですから。
 そして、ここでお知らせ。この作品以外にもう一つ投稿する作品があります。その作品はかなりこに続く百合シリーズ第2弾となります。その作品は、今投稿している「MoonCradle」をすべて投稿したあと、時期的には12月月末を予定しております。理由としては・・・秘密です。なので楽しみにしてください。
 とはいえ、今回も長くなってしまったあとがき、本当に長くなって申し訳ございません。ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。それでは、今なお(2020年11月現在)投稿している「Moon Cradle」もついに佳境を迎えようとしております。そちらも読んでもらえたら幸いです。それでは、また会う日まで、さよなら、さよなら、さよなら。

※最後に、この物語に出てくるトリック?は立派な犯罪になります!!なので絶対に真似しないでください!!絶対にお願いします!!


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曜とルビィの事件簿~消えた○○~ 前編

曜とルビィの事件簿2~消えた○○~

 

「う~、よく寝た!!」

と、ホテルから出てくるなりルビィはその第一声をあげた。ここは熊本のホテル。ハピトレのPVの下見のための旅をしていたルビィと曜は昨日の夜、熊本のホテルで一泊していた。ルビィ、昨日の夜はよく眠れたようだ。一方、ルビィの旅の相方である曜はというと・・・、

「私、興奮して眠れなかったよ!!だって、あのSL「無限大」・・・、ごほん、SL「あそBOY」に乗れたんだもん!!人生初めての経験だよ!!SL、力強くて素敵だな・・・」

と、かなり興奮気味の様子。実は、昨日、曜とルビィはある事件に巻き込まれていた。観光特急「あそぼーい」が大雨の影響などで立ち往生するなか、曜とルビィはある県議の殺人未遂事件に遭遇した。しかし、偶然?居合わせた國鉄公安隊公安特捜班の南たちのおかげでその事件は無事に解決したのだ。さらに、大人気漫画のコラボ列車として走っていたSL「無限大」号、いや、SL人吉、いや、SL「あそBOY」が動けない「あそぼーい」の救援に駆け付けてくれたのである。曜にとって人生で初めてのSL、それも、伝説のSL、SL「あそBOY」に乗れたのである。曜、これによって興奮してしまい、昨日の夜、興奮のあまりあまり眠れなかったようだ。だが、その興奮は一夜たっても消えず、逆にその眠気すら吹き飛ばしてしまうものだった。(詳しくは前作「復活のA」をお読みください)

 そんな興奮状態の曜と元気いっぱいのルビィ、一泊した熊本のホテルからそのまま熊本駅に行くと、

「さてと、今日は福岡を敢行するよ!!大宰府で天神様にお祈りして、それから、博多ラーメン何杯替え玉できるかチャレンジしてみよう!!」

と、曜は昨日からの興奮状態から一転、今日の予定である福岡観光を楽しみにしながら九州新幹線に乗った。もちろん、ルビィも、

「福岡と言ったらアイドルの激戦地!!どんなスクールアイドルに出会えるかな?」

と、福岡のスクールアイドルに出会えるのを楽しみにしていた。

 熊本から博多までは新幹線で33分ぐらいで到着する。SL「無限大」号はこの区間を約3時間半ぐらいかけて走破した。それが新幹線だとたった33分。その差こそまさに列車の技術の進歩は凄いものを感じるものになるかもしれない。そんな33分の旅であったが、福岡観光を楽しみにしている曜とルビィにとって福岡観光への気持ちを高ぶらせるには十分な時間だった

 が、それも車内中に響き渡ったある音によって曜とルビィの事態は急変する。

「福岡ってどんな街なのかな?」

と、曜がわくわくしながら言うと、突然、

「ワンッ!!」

という犬の鳴き声が車内中に響き渡る。これには、ルビィ、

「ピギィ!!」

と、一瞬びくっとしてしまうもすぐに、

「あっ、犬の鳴き声だ・・・。どこから聞こえてきたの?」

と、ルビィ、その犬の鳴き声にちょっと気になってしまう。ルビィにとって犬は身近な存在だったりする。ルビィが所属しているAqoursにおいて千歌のしいたけファミリーや梨子のプレリュードなどなど。さらにAqoursメンバーがよく集まる喫茶店にもマスコット犬がいたりする。それくらいルビィにとって犬は身近な存在であった。そのためか、ルビィ、突然車内に響き渡った犬の鳴き声に少し興味がわいたみたいのようである。

 そして、ルビィはその犬をすぐに見つける。ルビィはまず少し大きめのゲージを見つけた。そして、ゲージの窓をルビィがのぞくとそこにはふさふさした毛におおわれた子犬が入っていた。で、その近くにはこの犬の飼い主であろう40~50歳代くらいのご夫婦が座っていた。これには、ルビィ、

(犬のことが気になるよ・・・。ちょっと声をかけてみよう)

と思ったのか、そのご夫婦に対し、ルビィ、

「あの~、今さっき鳴いたのってその犬ですか?」

と尋ねてみた。

 すると、そのご夫婦はルビィに対し、

「あら、ごめんなさい。ちょっと驚かしたみたいだね」

と、ご夫婦の女性の方がルビィに謝ってしまう。これには、ルビィ、

「いや~、それくらい大丈夫です、大丈夫です・・・」

と、そのご夫婦に対し遠慮してしまった。

 そんなときだった。ルビィの声に反応したのか、曜、

「あれっ、なにかあったの?」

と言ってはルビィのもとに駆け付けてきてしまう。その曜であるが、ゲージを見つけるとそのゲージの窓からなかにいる子犬をのぞくとすぐに、

「あっ、なんかかわいい犬ですね!!」

と、元気よく言ってしまう。ルビィにとって身近な存在である犬、もちろん、曜にとってみても犬は身近な存在である。千歌と梨子と同じ学年ということもあり2人とはよく遊んでいたりする。そのためか、しいたけファミリーやプレリュードと会う機会が多かったりする。それくらい、曜にとってみれば犬がいること自体当たり前ともいえた。そんなわけで、曜、なんと、ルビィ以上にその犬に興味津々でもあった。

 そんな曜とルビィに対しそのご夫婦の女性の方がこう言った。

「あら、2人ともこの犬になんか興味があるみたいだね・・・」

この女性の言葉に、曜、

「うんっ、とても興味があります!!」

と、元気よく答えると、男性の方からも、

「ほ~、それは私としても興味深いよ・・・」

と意味ありげなことを言ってしまう。どうやら、このご夫婦もゲージに入っている犬に興味津々の曜とルビィに対して興味を持った様子・・・。

 そんなわけで、曜とルビィ、ゲージに入っている犬の飼い主であるご夫婦は席を向かい合わせにしてはその犬の入ったゲージを囲む形で座った。そして、すぐに自己紹介が始まる。

「渡辺曜です!!全速前進、ヨ~ソロ~!!」

「黒澤・・・ルビィ・・・です・・・」

と、まずは曜とルビィから自己紹介をすると次にご夫婦も、

「私の名前は森、湯布院森と言います。そして、こちらは妻の温子です」

「温子です。2人ともよろしくね」

と、自己紹介を行った。その2人の名前を聞いた途端、曜、

「森さんと温子さんって言うんだね!!2人ともよろしくね!!」

と、元気よく言うと、ルビィ、2人の名字についてあることに気付く。

「あの~、森さんたちの名前って湯布院って言うんだね。でも、それってどこかの有名な温泉地の名前と一緒じゃ・・・」

と、ここで、曜、

ピピー

と、ホイッスルみたいなもので音を鳴らしてルビィの言葉を遮ると、ルビィに向かって、

「ルビィちゃん、イエローカードだよ!!ルビィちゃんが言っていること、それってメタ情報だよ!!大人の事情ってものがあるのだから、これ以上言っては、メッ、だよ!!」

と叱ってしまう。あの~、これってメタ情報じゃ・・・。とはいえ、曜の突然のツッコミに、ルビィ、

「曜ちゃん、ごめんね」

となぜか曜に謝ってしまった。

 まぁ、そんなことはさておき、4人で話していくうちにゲージの中に入っている犬について話題が弾んでいった。温子曰く、

「この犬はね、キースホンドというヨーロッパのある国が原産の犬なんだよ!!」

キースホンド、あまり聞きなれない犬種なのだが、夫の森曰く、

「この犬は私と妻にとって想い出のある場所にゆかりのある国が原産の犬ということで飼っているのです。とてもかわいくてね、私のこと、家族としてとてもなついているんですよ」

と。キースホンド、全身をダフルコートの豊かな毛で覆われている中型犬である。家族と認めた者には大好きな仕草をし、とても忠実であり愛情深い面もみられる・・・のだが、それ以外の者だととても警戒してしまいかなり吠えられてしまう・・・のですが・・・、

「あれっ、タロちゃん、曜ちゃんとルビィちゃんのこと、家族として認めてくれたみたいだね!!」

と、なんと、曜とルビィ、ゲージに入っている犬(タロ)から家族認定されたみたいのようだ。そのためか、タロ、曜とルビィに対し「私をかわいがって」というオーラを出していた。そんなタロの姿をゲージの窓越しに感じてい曜とルビィ、おもわず、

「あの~、ルビィたち、森さんの家にお邪魔してもいいですか?なんか、このワンちゃん(タロ)、ルビィたちともっと遊びたい、そんなこと、言っている・・・みたい・・・」(ルビィ)

と、つい言ってしまう。むろん、そんな犬のオーラなんて飼い主である森夫妻にもわかっていたらしく、

「あら、こりゃ、ルビィちゃん、このタロちゃんのオーラに負けちゃったんだね。それも仕方がないことかも。だって、このタロちゃん、甘え上手、だもんね・・・」(温子)

と、ルビィが根気負けするくらいのタロのルビィに対する愛情の熱さに感心してしまう。それくらいタロのルビィに対する愛情の凄さが強かったのかもしれない・・・。

 

 そんなわけで、曜とルビィは福岡観光から森夫妻のお宅訪問へと予定が代わってしまった。そんな森夫妻のお宅に行く途中、森夫妻の車のなかでは・・・、

「うわ~、タロちゃん、あまり甘えないでよ~!!」

とルビィが言うくらいタロはルビィに相当なついているようだった。これには、温子、

「ルビィちゃんには甘えているタロちゃん、実はまだ子犬なんですよ」

と言うと、曜、

「えっ、これでまだ子犬なの!!」

と、驚いてしまう。どうやら、曜、この犬はもう大人の犬であると思っていたみたいのようだ。

 だが、曜とルビィはこのあとさらに驚くことになる。それは次の森の言葉からだった。

「実は、この子(タロ)を含めて、家には5匹飼っているのですよ、キースホンドがね!!」

これには、ルビィ、

「この子(タロ)が5匹!!このままだと、ルビィ、犬に囲まれて窒息死しちゃうよ・・・」

と、タロと同じモフモフの犬たちに囲まれて窒息死してしまう、そんな自分を想像してぞっとしてしまった。ルビィ、涙目になる・・・。ただ、そんな怖がっているルビィの姿を見て、温子、

「そこは大丈夫ですよ!!だって、お父さん犬のハズちゃん、お母さん犬のワイちゃん、そして、長男のタロちゃんに次男のジロちゃん、三男のサブちゃん、子犬が3匹の計5匹ですけど、お父さん犬のハズちゃんととお母さん犬のワイちゃんは長男のタロちゃんみたいな甘えん坊じゃないから」

と、ルビィをあやすように言うと、ルビィ、

「よ、よかった・・・」

と、一安心する。

 しかし、曜、すぐに、

「でも、ルビィちゃん、(タロちゃんを除いた)残り2匹の子犬に攻められることには変わらないんじゃないの?」

と、これまた不吉なことを言ってしまった。これには、ルビィ、

「曜ちゃん、それ、言わないで!!」

と、とんでもないこと?を言った曜のことを叱ってしまった。

 

 そして、ついに森夫妻のお宅に到着・・・なのだが・・・、

「ルビィ、覚悟を決めたよ・・・、犬にもふもふされて窒息死する覚悟、決めたよ・・・」

と、ルビィ、まるで今から死地に行く、そんな覚悟を決めた様子。だが、これに、温子、

「ルビィちゃん、それ、ちょっと大げさすぎだよ・・・」

と、ルビィに対してそこまで身構えないように諭した。

 そして、ついに森夫妻宅の玄関の扉が開けられた。その瞬間、

「ただいま、ハズちゃん、ワイちゃん、ジロちゃん、サブちゃん!!」

と、温子の犬を呼ぶ声とともに犬たちが3匹温子にめがけて突進してくる。これには、ルビィ、

「つ、ついにくる・・・」

と、犬たちがルビィに向かって飛び込んでくることを予想して警戒する。

 しかし、そのうちの2匹は温子のちょうど目の前まで近づくも、

「ハズちゃん、ワイちゃん、待て!!」

という温子の命令を聞いた2匹の犬は温子の目の前でそのままお座りしてしまった。これには、温子、

「ハズちゃん、ワイちゃん、よしよし、よくできましたね~」

と、2匹の犬に対してなでなでする。これを見て、ルビィ、

「ふ~、よかったよ・・・」

と、一安心してしまう。

 だが、このあと、ルビィに悲劇が起きる。そう、温子やルビィに向かって突進してきた犬は3匹、うち2匹、温子がいう、ハズ、ワイ、は温子の指示で温子の前でお座りしてくれた。だが、3-2=1、そう、あと1匹は・・・。それは・・・、

「ピギャ!!」(ルビィ)

そう、もう1匹はルビィに向かって突進してきたのだ。とはいえ、サイズ的にはタロとほぼ同じ大きさ・・・なのだが、それでもそこまで小さくない、ということで、ルビィ、その1匹の襲撃を受ける!!その1匹はそのままルビィのところに飛び込むと、そのままルビィに対してもふもふアタック!!これには、ルビィ、叫び声をあげながらその場に座りこんでしまった。これには、温子、

「ルビィちゃん、サブちゃんが跳びかかってしまい本当にごめんなさい!!」

と、ルビィに平謝りしていた。

 

「う~、死ぬかと思ったよ・・・」

1分後、突然の子犬のサブの猛烈ラブアタックにより失神したルビィが息を吹き返した。これには、曜、

「ふ~、「ルビィちゃん、子犬の猛烈アタックで死す」なんてニュースにならなくてよかったよ・・・」

と、大事なことにならなくてよかった、そのことで一安心する。

 が、そのとき、大問題がすでに起きていたのである。それは森の突然の言葉からだった。

「おい、1匹いないぞ!!」

そう、勘のいい方ならもう気づいただろう。森は玄関をあげて犬を呼ぶ際、

「ハズちゃん、ワイちゃん、ジロちゃん、サブちゃん」

と、4匹を呼んだのだ。でも、森たちのところに駆け寄ってきたのは3匹だけ。あと1匹は森たちのところに飛び込んでこなかったのだ。これには、曜、

「えっ、たしか森さんは5匹の犬を飼っていて、うち1匹は連れ出していた。残り4匹、うち3匹は森さんに飛び込んできた。そして、あと1匹は・・・、あと1匹はどこにいるの?」

と、あと1匹足りないことを確認するとともにどこにいるのか心配になる。

 そんなわけで、森、どの犬がいないのかもう1度確認する。

「え~と、まず、お父さん犬のハズちゃんとお母さん犬のワイちゃんは温子さんの目の前でお座りしている」(森)

そう、森夫妻の目の前にはお父さん犬のハズとお母さん犬のワイがいる。さらには・・・、

「あと、ルビィちゃんに飛び込んできたのは三男のサブちゃん・・・」

と、サブを確認。南が呼んだ4匹は「ハズちゃん、ワイちゃん、ジロちゃん、サブちゃん」、うち、ハズ、ワイ、サブの3匹はここにいる、というわけで、

「「あっ、次男のジロちゃんがいない!!」」(森・温子)

そう、ここにはジロがいなかったのだ。ちなみに、モル夫妻が飼っている犬は計5匹である。そのうち、タロはまだゲージの中にいる。そして、ハズ、ワイ、サブ、この3匹も見つかった。なので、森夫妻が飼っている5匹の犬のうち次男のジロだけが行方不明、ということになるのだ。

 そんなわけで、森夫妻、ジロを探しに家中を探しまくるも見つからず。これには、温子、

「ジロちゃんが行方不明だなんてどうして?」

と、今にも泣きだしそうになるも、森、

「温子さん、ジロは大丈夫なはずです!!絶対に見つかるはずです!!」

と、温子のことを元気づけようとしていた。

 そんな2人を察してか、曜、

「でも、ジロちゃん、どこかこの家の外に逃げ出した、なんてないことは起きていないのかな?」

と、温子に尋ねてみる。たしかに犬がどこかに逃げしまうことはよくある。

 だが、飼い主である森はというと、

「それはないと思います」

と、曜の考えを否定した。なぜなら・・・、

「だって、(森夫妻が飼っている)キースホンドは飼い主に忠実ですから。それに、私は出かける前、ハズちゃんたちに「家の外に行かないように」って命令していましたから」

そう、キースホンドは自分が認めた飼い主には忠実だったりする。なので、森が出かける前にハズたちに対し家の外に行かないように注意しているなら犬たちがどこかに行くことは少し考えにくい。さらに、

「それに、私はハズちゃんたちが外に出られないよう、家中の鍵を閉めてきましたから!!」

と森は言っている。こうなってくると、ジロ自ら家の外に出てどっかに行くことなんて考えにくい、とも言えてくるのである。

 そんなわけで、いろんなところを一生懸命探した森夫妻、なのだが、どこを探しても見つからないことに、温子、

「ジロちゃ~ん~、ジロちゃ~ン~」

と今にも泣きだしそうな予感。本当にジロがどこにいるのか誰も知らない、そんな状況に陥っていた。

 そんなときだった。突然、森のポケットから、

トゥトゥトゥ トゥトゥトゥ

という呼び出し音が聞こえてきた。この音を聞いて、森、

「うぅ、こんなときに誰からだろう・・・」

と言いながら自分のポケットからスマホを取り出す。すると、誰からかのメールが届いていた。森、そのメールを普通に広げてみると、

「う、うそだろ・・・」

と愕然としてしまった。この森の表情に気づいた曜、、

「えっ、森さん、どうしたの?」

と、森になにがあったか尋ねてみる。すると、森、

「こ、これを見てください・・・」

と、曜、ルビィ、温子に届いたばかりのメールを見せた。

 すると、曜、こんな声をあげてしまった。

「えっ、これ、誘拐したというメールじゃ・・・」

そのメールにはこう書かれていた。

「犬(ジロ)は預かった。返してほしければ俺を探しだせ」

そう、そのメールこそここにいない子犬、ジロを誘拐した、それを指し示すものだった。

 で、このメールを見て森夫妻はともに、

「私たちの大事なジロが・・・、ジロが・・・」(森)

「あ、あなた、落ち着きましょう。でも、でも、私たちにとってジロは・・・、ジロは・・・」(温子)

と、完全に塞ぎこんでいた。

 そんな森夫妻の姿を見てか、ルビィ、

「曜ちゃん、ルビィ、悲しんでいる森さんたちの役に立ちたいよ・・・。どうすればいいの・・・」

と、泣きそうになりながら曜に相談すると、曜、

「う~ん、どうしようか・・・」

と、少し考え込む。

 すると、曜、

「あっ、そうだ!!」

と、あることを思いだしたのかのような表情をするとルビィにある提案をした。

「ねぇ、ルビィちゃん、あの人たちだったらきっとジロを探し出してくれると思うんだけど」

この曜の言葉に、ルビィ、

「あの人たち?」

と、曜にその人が誰なのか尋ねてみると、曜、元気よくこう言った。

「あの人たちだよ!!あの人たちならきっとジロを探し出してくれるはずだよ!!だって、昨日、あんな事件を解決してくれたんだから!!」

この曜の言葉にルビィもそれが誰なのかわかったみたいで、

「あっ、昨日、ルビィたちと一緒にいた南さんたちか!!」

と驚きながらその人の名前を叫んだ。そう、曜が頼ろうとしている人物、それは南たち、公安特捜班の面々であった。昨日の「あそぼーい」で起きた県議殺人未遂事件を解決するくらいの力があればきっとジロも見つけてくれるはず、そう曜はにらんでいたのである。これにはルビィも、

「曜ちゃんの言う通り、南さんたちならきっとジロを見つけてくれるはずだね!!」

と、曜の提案に同意した。

 そんなわけで、曜、すぐに南に連絡を取る。実は南たちと曜、ルビィは、昨日、別れ際にお互いの連絡先を交換していたのである。そして、今、その南の連絡先に曜は連絡をかけようとしているのだ。

 そして、電話をかけてから数十秒後、曜のスマホに南の姿が映る。その南であるが、

「はい、南ですが、曜ちゃん、なにかあったのですか?」

と、曜に尋ねると、曜、ルビィ、ともにうるうるとした表情で南に頼み込んでしまう。

「お願いなんだけど、犬が誘拐されたの。助けて!!」

 しかし、これまでいろんな事件を解決してきた南からすると・・・、

「えっ、犬の捜索!?それならほかを当たってくれ!!ただの犬だろ!!俺の出る幕じゃ・・・」

と南は断る気まんまんだった。

 だが、ルビィ、そんな南に食い下がった。

「南さん、この犬たちの子犬が誘拐されたの!!南さん、助けてください!!」

そして、ルビィはハズら森夫妻の犬たちのほうにスマホのカメラを向けると、画面いっぱいにハズら森夫妻の犬たちの姿が映っていた。その犬たちはまるで「私たちの大事な仲間であるジロをみつけてください」といわんばかりに目をウルウルさせていた。ハズら犬たちのウルウル攻撃、南に対して炸裂していた。

 だが、南からすればそんなあまり効かないようで、

「はい、ただの犬の戯言だろ!!俺には関係ない・・・」

と、完全に断ろうとすると、突然、

「あ~、もふもふとした犬がいっぱい!!かわいい!!」

と、南の電話に梶山が乱入してきた!!その勢いのままに、梶山、

「私、犬、大好き!!こんな犬、飼いたいよ!!」

と、南のスマホに映る犬たちに誘惑されていた。

 と、ここで、曜、ここぞとばかりにルビィにあることをお願いした。

「ルビィちゃん、あれ、やって!!」

これにはルビィも、

「うん、わかった!!」

と、曜の願いを承諾すると犬たちといっしょに曜のスマホのカメラに向かって目をウルウルしながらこう言った。

「南さん、梶山さん、子犬を探して!!」

究極のコンボ、森夫妻の犬たち&ルビィのうるうるお願い攻撃、これほどすごいものなんてないだろう。いや、これに勝てる人なんていないだろう。まぁ、そんなわけで、梶山、

ドキュン

と、犬たちとルビィの攻撃に自分のハートが撃ち抜かれてしまった・・・わけでして、梶山、南に対して、

「南、子犬を探すわよ!!」

と、南に行方不明になった子犬を探すように命令してしまう。でも、南はというと・・・、

「なんで俺が子犬を・・・」

と、現時点でも子犬捜索にあんまり乗り気ではなかったのだが、梶山から、

「やるわよね!!」

と強気で言われてしまう。そんな梶山の強気に根気負けをしてしまったのか、南、

「は、はい・・・」

とうなずくしかなかった。

 

 こうして、南と梶山はリモートでジロの捜索に加担することとなった。まずは、南、

「それでは、まず、その「誘拐した」というメールをよく見せてください」

と言うと、曜、すぐにそのメールを南に転送した。そのメールを確認する南と梶山。そのメールにはこんなことが書かれていた。

「犬(ジロ)は預かった。返してほしければ俺を探しだせ。俺のいる場所に来い!!次のURLから俺のいる場所を探し出せ!!

https;・・・・

このURLにとんでそのブログを読み続けたら俺がいる場所がわかるはずだ!!特に温子という女にはな・・・」

これには、温子、

「えっ、どういうこと・・・」

と、なにがなんだかわからない様子、いや、突然そのことを言われて困惑していた、今の温子だと・・・。

 そんな困惑している温子をしり目に、南、

「そのURLに今接続しましたけど、特にマルウェアみたいなものはありませんでした。ただのブログのようだ。曜ちゃん、ルビィちゃん、すまないがまずはそのURLにとんでブログを開いてくれ」

と、曜とルビィに指示をだす。

 そして、曜とルビィは南の指示通りメールに添付されているURLをクリック。すると、ある人のブログがひらいた。これを見て、ルビィ、そのブログの名前を言ってしまう。

「え~と、「ニノタビ」?これってあのジャニタレのA〇ASHIのニノのブログじゃ・・・」

AR〇SHIのニノ・・・、あの国民的アイドルグループのメンバーの1人のブログ・・・だと思ってしまったのか、ルビィ、びっくりしてしまうも、すぐに梶山から、

「う~ん、それはないかも。だって、この人のブログ、どちらかというと自分の旅行記みたいなものなんだもん・・・」

と言われてしまう。その梶山の言葉を聞いてか、曜、そのブログをざっと見ては、

「たしかにあの大人気アイドルのニノのものじゃないね。たしかにある旅行記みたいなものだもん、このブログって・・・」

と言ってしまう。これには、ルビィ、

「ちょっとがっかり・・・」

と、愕然としてしまった。

 

「それではこのブログを詳しくみていくことにしましょう」

と、南の言葉とともにみんな一緒にこのブログを読むこととなった。まずは最初の投稿にはこう書かれていた。

「今からこの子犬と一緒に九州のいろんなところに行きたいと思います」

そして、子犬を連れて博多駅から旅立とうとしている、そんな写真が掲載されていた。これをみて森夫妻はともに、

「あれ、間違いなくジロちゃんだよ!!」(温子)

「おい、博多駅に行くぞ!!」(森)

と、掲載されている写真に写っている犬が自分たちが大事にしてきたジロだとわかると博多駅に直行しそうな感じになってしまった。

 だが、それは南のあることで2人は思いとどまることに。

「森夫妻、ちょっと待ってください!!まだブログには続きがあります!!」

この南の言葉を聞いてか、

「ああ、そうだった、そうだった」(森)

「あら、これは失礼いたしました!!」(温子)

と、なんとか落ち着くことに。これには、南、

「おい、本当に大丈夫なのか、森夫妻・・・」

と、逆に2人のことを心配してしまう・・・。

 

 そして、曜たちはプロ具の続きを読むことにした。ブログの次のページにとぶとそこには、

「わ~、大きな風車がある!!」(ルビィ)

そう、そこには木々に囲まれている風車をはじめとする外国?の風景が映っていた。これをみて、曜、

「この風景、まるでオランダみたい!!」

と喜んでいた。

 と、いうわけで、ルビィ、それを踏まえてこう発言する。

「もしかして、ジロちゃん、外国に行っちゃったの・・・」

 だが、南はそのルビィの発言を否定した。

「う~ん、それは違うと思うよ、ルビィちゃん。博多駅からオランダまで行くだけでも1日以上かかるから、昨日今日で行ける場所ではないね、オランダという国はね」

たしかに南の言うことはもっともだ。博多からオランダまでは成田などどこかの空港を経由しないといけないし、オランダのあるヨーロッパは博多からだと1日以上かけないと行けなかったりする。

 そんな南の言葉を受けてか、曜、あることを思い出すとこう言った。

「あっ、たしか九州にはオランダみたいなところがあった!!たしか、ハウステンボス、だったっけ!?オランダみたいな外国の建物がいっぱいあることが特徴で夜のイルミネーションがとてもきれいだったりするんだよ!!私、そこ、行ってみたいよ~!!」

そう、九州にはオランダの街並みを模したところがある。それがハウステンボスである。ハウステンボスはオランダの街並みを再現したテーマパークであり、夜のイルミネーションはあるサイトのイルミネーションランキングで全国1位になるくらい有名でありとてもきれいである。なので、曜、写真に写っているところがハウステンボスではないかと推測していたのである。

 が、それも、南、

「いや、ハウステンボスじゃないな」

と、曜の推測を否定してしまう。これには、曜、

「え~、なんで・・・」

と、南に問い直すと、南、こう答えた。

「実はハウステンボスの風車ってチューリップ畑のなかにあるんだ。でも、この風車は木々に囲まれている。だからハウステンボスじゃないと言い切れるんだ」

これを聞いて、曜、

「じゃ、この場所ってどこなの?」

と困惑してしまう。

 そんな曜を見てか、南、曜とルビィに対してこう言った。

「でもね、九州にはハウステンボスとは別にもう一か所オランダの街並みを再現した場所があるんだ!!」

これを聞いて、曜、ルビィ、ともに、

「「?」」

と、頭にハテナマークを浮かべてしまった。しかし、南夫妻はというと、

「なんかこの写真を見て懐かしく思えてくるよ」(森)

「そうだね」(温子)

と、その写真に映る場所がどこなのかわかった様子。これには、曜、

「お二人(森夫妻)にとって想い出のある地なのですか、この写真に映っている場所が?」

と、森夫妻に尋ねると、

「はい、昔、そこに2人で行くことが多かったんですよ。今でいうところの、デート、かもしれませんね」

と、温子が優しく答えてくれた。

 そんな森夫妻の様子をネット越しで見ているのか、写真に写っているところがどこなのかいまだにわからない曜とルビィに対し南はその場所がどこなのか教えてあげた。

「曜ちゃん、ルビィちゃん、この写真に写っている場所はね、ハウステンボスから南西にある西海市の入り江にある廃墟あんだ。昔、そこに日本でとても有名なテーマパークがあってそこが発展してハウステンボスができたんだ」

これには、ルビィ、

「えっ、この写真に写っている場所って元テーマパークだったわけ!!」

とびっくりしてしまうと曜も、

「ハウステンボス以外にもオランダの街並みを再現した場所があったんだ!!」

とこちらもびっくりしてしまった。そりゃそうだろう。オランダの街並みを再現した場所なんて日本でもそんなに多くはない。そのなかでもハウステンボスは有名だがそのルーツが西海市の入り江のところにあるなんて曜とルビィにとって初耳であった。

 だが、そんな2人をしり目に、森夫妻、また動き出す。

「よしっ、温子さん、その場所に行きましょう!!」(森)

「はい、森さん!!」(温子)

と、その場所に行こうとしてしまう。

 しかし、南はそんな森夫妻をまた止める。

「森夫妻、ちょっと待ってください。ブログにはまだ続きがあります!!」

これを聞いて、森夫妻、

「あっ、そうだった!!すまない、すまない」(森)

と、南に対して謝ってしまう。

 そんなわけで、森夫妻、ブログの次のページへととぼうとする。が、そんなとき、曜、あるブログの文章に目がいってしまう。

「え~と、「昔、俺の父母がここでよくデートをしていました」・・・」

この文章を読んで、曜、ついこんなことを考えてしまう。

(ふ~ん、森夫妻みたいなカップルがほかにもいたんだ・・・)

 が、その横からルビィが、

「曜ちゃん、はやく次のページにとんで!!」

と催促されると曜も、

(あっ、そうだったね!!)

と、その文章のことは忘れて次のページへととんでしまった。

 

 そして、続きのブログには「この列車は自分にとって想い出のある列車です」という文言とともにある列車の大きな窓が特徴的なミニロビーとミニビュッフェが写っていた。これを見て、ルビィ、その列車がなんなのかすぐに答えた。

「あっ、これって、「ゆふいんの森」号、だね!!昨日、ルビィ、それに乗ったもん!!」

そう、ルビィの言う通り、それは「ゆふいんの森」号だった。で、なんでこの写真を見てすぐにルビィが「ゆふいんの森」号だとわかったかというと、実は昨日、ハピトレのPVの下見のために豊後森機関庫に行くときに「ゆふいんの森」号を使ったからである。昨日、曜とルビィは「ゆふいんの森」1号で豊後森まで行くとその足で豊後森機関庫まで行き見学、そのまま「ゆふいんの森」3号で「あそぼーい」の待つ別府まで移動していたのだ。なので、ルビィは「ゆふいんの森」号の存在を知っていたのである。

 そして、この写真を見て、南、あることに気付く。

「この列車って「ゆふいんの森」Ⅲ世だね!!」

これには、曜、

「えっ、Ⅲ世なの!?」

と、びっくりしてしまう。「ゆふいんの森」Ⅲ世があるなんて初めて聞いたからだった。これには、南、それについて詳しく説明する。

「実は「ゆふいんの森」号にはⅠ世とⅢ世の2つがあるんだ。最初のころから走っているⅠ世、新しく作られたⅢ世のふたつ。そして、この写真に写っているのが新しいほうの三世なんだ!!」

 これを聞いて、ルビィ、あることを思い出す。

「あっ、たしかにそうかも!!だって、昨日乗った「ゆふいんの森」号、1号と3号で列車が違ったよ!!」

そう、昨日曜とルビィが乗った1号と3号では列車の形も内装も少し違うところがあったのだ。ルビィ曰く、

「たしか、1号の方は列車前方が少し角ばっていたけど、3号の方は列車前方が丸みを帯びた滑らかな曲線だったよ!!」

とのこと。これについても南は曜とルビィに説明する。

「現在、「ゆふいんの森」1・2・5・6号は博多~由布院間をⅢ世が、3・4号は博多~(久大本線経由)~別府間を1世が走っているんだ。で、、ルビィちゃんは2つの列車に乗ったからその列車の違いに気づいたんだね」

 そんな南の言葉に、ルビィ、

「あっ、だからルビィは2つの「ゆふいんの森」号に乗ってその違いに気づいたんだね!!」

と、納得の表情をみせる。

 だが、ここで曜はあることに気付く。

(Ⅰ世とⅢ世、って、あれっ、なにか抜けている・・・。あっ、もしかして!?)

そこで、曜、南に対してあることを尋ねた。

「南さん、「ゆふいんの森」号ってⅠ世とⅢ世があるでしょ。でも、あともう一つ、Ⅱ世は?」

これには、南、こう答えた。

「あぁ、Ⅱ世だね。Ⅱ世は昔あったんだけど、今はⅡ世としては運用していないんだ」

これには、曜、

「えっ、Ⅱ世としては運用していない・・・」

と、その事実に愕然となるも、すぐに、

「それじゃ、そのⅡ世って今は・・・」

と、もう一度南に尋ねる。すると、南、

「実はそのⅡ世はね、今・・・」

と何かいおうとしていた。

 だが、そのときだった。

「よしっ、「ゆふいんの森」号はたしか別府か湯布院に行くのだろ!!なら、そこに行くぞ!!」(南)

「はい、森さん!!」(温子)

と、森夫妻、別府、もしくは湯布院に行く様子をみせてしまう。森夫妻、どうやら、考えるより即行動、そんな人たちみたいのようだ。

 だが、それを見てか、ネットの向こう側にいる南から、森夫妻、止められる。南、すぐに、

「森夫妻、まだブログには続きがあります!!」

と言っては2人を止める。それに対して、森、

「た、たしかにそうだな!!すまない、すまない」

と、立ち止まっては南に謝ってしまう。

 が、そんなときだった。温子はこのブログの記事を見てあることに気づいたのか、下を向いては、

「まさか、まさかね・・・」

となにかをつぶやいていていた。これには、曜、

(あれっ、温子さん、なにかつぶやいていたような気が・・・)

と、ふと思ってしまうも、すぐに、

(ちょっと気になるけど、それはそれとして・・・、ブログの続きを読まないと・・・)

と思ってはブログの次のページへととんでしまった。

 だが、このとき、南はふとこんなことを考えていた。

(でも、なんで「ゆふいんの森」号のことをこのブログで取り扱ったのだろうか?いや、そうじゃない。この「ゆふいんの森」号を取り扱うことで犯人は何かを言いたいのかもしれない。もしかすると、それ自体、大切ななにか、大切な存在、それを犯人は言いたいのかもしれない・・・)

(お詫び:この作品が投稿された2020年12月現在、久大本線豊後森~庄内間は夏の大雨のために不通になっております。今のところ、博多~豊後森間をⅢ世で2往復しております。ですが、この物語では大雨前のダイヤをもとに物語を作っております。その点はご了承ください。なお、Ⅰ世のほうはただいまある駅で閉じ込められております。理由はその駅の両側の路線で線路流出などがあって動けないからです。自分としてもⅠ世が久大本線で元気に走る姿が見れるように久大本線全線復旧を切に願っております)

 

 ブログの次のページには「ここの風景は自分にとって想い出のある場所です」という文言と共に夕日が沈むある海岸の写真が写っていた。その写真であるが夕日のところに大きな鳥みたいなものが写っていた。これには、曜、

「うわ~、きれいな夕日!!でも、その夕日のところに写っている大きな鳥みたいなもの、なんなの?」

と、南に尋ねると南はこう言い返した。

「それって鳥じゃないと思うよ。でも、鳥みたいに空を飛んでいるものであるのはたしかだね」

 これを聞いて、森、

「鳥みたいに空を飛ぶもの・・・、飛ぶもの・・・、って、もしかして!!」

とあることに気付いたみたい。

 そして、森は夕日に写るものが何であるか答えた。

「もしかして、それって、飛行機、ではないですかね」

これには、南、こう答えた。

「ずばり、正解!!」

そう、夕日に写る鳥みたいなものは飛行機であった。そして、それについて、南、こう付け加えた。

「その飛行機ですが、沈む夕日をバックに写っているのですからどこかに着陸しようとしているのではありませんか?」

 この南の一言でルビィはあることを言いだす。

「南さんの言うことなら、この海岸近くに空港があるってことだよね。じゃないと、飛行機、このままだと海に不時着しちゃうもん・・・」

 このルビィの言葉を聞いたのか、南、

「ルビィちゃん、するどいね!!」

と、ルビィのことをほめると続けて、

「たしかにこの近くに空港がある。でも、夕日の見える海岸の先は海だけ。さて、そんな都合のいい空港って九州内にあるのかな?」

と、曜たちに問いかけてくる。これには、曜、

「もしかして、そんな空港って九州内にあるの?」

と考えては九州の地図を持ってきてみんなでその空港を探す。福岡空港、北九州空港、熊本空港などなど。

 そんななか、曜、ある空港に目を引くとこう言いだしてきた。

「あった・・・、そんな都合のいい空港があった!!」

そして、その空港の名を曜は口にした。

「長崎空港・・・」

 その曜の言葉に対して南はこう言いだした。

「そう、この写真が撮られた場所、そこは長崎大村湾の大村側の海岸のちかくだね。飛行機が長崎空港に着陸しようとしているところを夕日と重ねて撮ったのだろうね」

長崎空港、本格的な空港としては世界初の海上空港である。今は、関空、セントレア、北九州、神戸と海上空港は日本中で見られるようになったが、ここ長崎空港こそ本格的な海上空港第1号であった。大村湾にある小島に空港施設を作り開場したのが長崎空港である。そんな長崎空港のシンボルは丘陵部分のところに花文字で作られた「NAGASAKI」である。

 そんなとても美しい写真・・・なのだが、とうの森夫妻はというと・・・、

「とてもきれいなところだな。なら、そこにジロちゃんが・・・」(森)

「たしかにそこにジロちゃんが・・・」(温子)

と、こちらはこちらで移動する気満々。それを見てか、南、

「ちょっと待ってください!!動くのは時期早々です!!まだブログには続きがあります!!」

と言って2人を止める。これには、森夫妻、ともに、

「た、たしかにそうだね・・・」(森)

「ご、ごめんなさい・・・」(温子)

と、ついつい謝ってしまう。

 だが、このときの温子はというと・・・、

「も、もしかして・・・」

と、なにかに気づいた様子。これには、ルビィ、

(あれっ、また温子さん、つぶやいている・・・。なにか隠しているのかな・・・)

と、温子のことを疑いはじめるようになる。

 一方、南、これまでのブログに記事をみてあることに気付く。

(これってもしかして、森夫妻にあてた犯人からのメッセージ、じゃ・・・)

 

 そして、ブログの次のページへと進むと、そこには「自分はこの子犬と同じように忘れ去られるのかもしれない・・・」という文言とともにグリーン車?みたいな座席の写真と今にも動きそうなSLとそのバックに写るある機関庫が写る写真が掲載されていた。

 すると、ルビィ、その機関庫の写真を見てその機関庫の場所がどこかすぐにわかった。

「あっ、ここって、昨日、ルビィたちが行った豊後森の機関庫だ!!」

そう、機関庫の写真、実は豊後森機関庫であった。つい最近、豊後森機関庫は町の有志によって観光施設として整備されることとなった。さらに、國鉄の炭鉱があった福岡志免の鉄道公園に静態保存されていたSLを移設して豊後森機関庫で静態保存するなど町をあげて力を入れている、そんな観光施設としての機関庫であった。で、その機関庫のことを高校を卒業したものの今度千歌たちと一緒にAqoursオリジンとしてリリースされる曲「ハピトレ」のセンターとして抜擢された果南がそれを知り、その機関庫の写真を見て、「この場所で「ハピトレ」のPVを撮りたい!!」と言いだしてきたのだ。そして、この果南の進言は「ハピトレ」のPVのロケ地を探していた月にしても朗報だったらしく、月、この豊後森機関庫を「ハピトレ」のPVのロケ地に決めてしまったのだ。で、月が曜とルビィに対して「PVのロケ地の下見に行ってほしい」とお願いされたのが曜とルビィの旅のきっかけとなるのだが、それは置いといて、曜、こんなことを言いだす。

「ってことは、この機関庫に関係する列車にこのグリーン車?みたいな座席があるの?」

これには、森、

「なら、この機関庫の近くを走る路線、久大線に関係ある列車が・・・」

と言うと、曜、すぐにその答えを言いだす。

「もしかして、「ゆふいんの森」号?」

 だが、これには、ルビィ、曜の答えに対し、

「でも、こんな座席、昨日、見ていないよ!!」

と否定する。今ある「ゆふいんの森」号の2列車すべてに昨日乗っているルビィからするとその写真の座席は2列車とも違うものだった。このルビィの意見に、曜、

「た、たしかに、ふたつの「ゆふいんの森」号にはこの(写真の)座席なんてなかったね・・・」

と、ルビィと同じくふたつの「ゆふいんの森」号に乗車していた曜、そのことを悟ると、

「じゃ、いったい、なんの列車なの~!!」

と、困惑してしまう。

 そんな曜を見てか、ネットの向こう側で曜の様子を見ていた梶山はすぐに、

「南、曜ちゃんにからかうんじゃないの!!」

と、南にツッコミを入れると、南、

「別にからかっていないよ・・・」

と、だだをこねるもこのままだと曜とルビィをさらに困惑させると思ったのか写真に写るグリーン車?みたいな座席のある列車の正体を教えた。

「実はこの列車の正体は「ゆふいんの森」号と同じ路線久大線を走る特急「ゆふ」号なんだ」

そう、グリーン車?みたいな座席のある列車の名は「ゆふいんの森」号と同じ路線久大線を走る特急「ゆふ」号だった。

 だが、ここで森が「ゆふ」号にまつわるある事実を話す。

「でも、「ゆふ」号ってたしか全席自由車じゃ・・・」

そう、「ゆふ」号は普通車自由席・指定席はあるもののグリーン車どころかグリーン室・グリーン席なんて設けていないのだ。だが、

「でも、この座席ってグリーン車並みじゃ・・・」

と、曜、さらに困惑してしまう。

 そんな曜を見てか、「これではまずい!!また梶山から怒られる」と思ってしまい、南、この座席の正体をみんなに教えた。

「実はこのグリーン車みたいな座席なんだけど、今は普通車指定席?として使っているけど、昔はグリーン車の座席として使っていたわけ。だって、「ゆふ」号に使っているキハ185系はもともと國鉄四国総局の列車んだから!!」

そう、國鉄九州総局が「ゆふ」号と(豊肥線熊本~大分間を走る)「九州横断特急」んい使用されているキハ185系はもともと四国総局が使っていた列車であった。1980年代に登場したキハ185系は最初のころは四国総局の特急においてフラッグシップ的存在であったが、四国での高速道路網の発達によりキハ185系より高性能な2000系が登場、それにより主力路線から退いていった。そして、それによって余ったキハ185系であるが、当時老朽化した急行型の置き換えを検討していた九州総局がそれを買い取ったのだ。その列車こそ現在「ゆふ」などで使われているキハ185系なのだ。

 そんな説明を曜とルビィにする南、続けて、

「キハ185系を買い取った九州総局なんだけど、運用する際、すべて普通車として使うことにした。そして、そのキハ185系で四国総局時代にグリーン室として使っていた座席もモケット(座席の座面・背もたれ部分に張られている布)を変えただけでグリーン車並みの座席のままで普通車指定席?として使うことにしたんだ。こうして、今でも「ゆふ」号に使われているキハ185系にはときどきグリーン車並みの座席がある列車が来ることがあるんだ」

 この事実に九州に住み続けていた森夫妻すら、

「あぁ、なるほど・・・」

と、納得してしまった。

 と、そんなわけで、森、

「それならば、今はジロは豊後森にいるのでは!!」(森)

と、豊後森に行こうとするも、これには、南、

「行ってもいいですけど、ジロはおろか犯人すらすでに豊後森にはいないと思いますよ」

と、言って森をけん制すると、森、

「うむ、それはたしかに・・・」

と、顔を少しゆがませながら答えるとそのままもとの場所へと戻った。

 しかし、そんな森に対し、温子、

「もしかして・・・、もしかして・・・」

と、なにか不安そうな顔になってしまう。これには、ルビィ、

(あっ、また、温子さん、苦しんでいる・・・。またなにかあったのかな?)

と、温子のことを心配そうに思ってしまった。

 だが、この温子の少しの変化に気づいた者がもう一人いた。

(これは温子さん、なにかを隠しているのでは・・・)(南)

そう、南である。カメラ越しとはいえ、南が温子の微妙な変化に気づいたのはすごいの一言であった。いや、それどころか、南、

(もしかすると、温子さんとジロを連れ出した犯人になんか接点があるのではないかな?)

と、そんなところまで疑うところまできていた。

 

 そして、曜たちはブログの次のページに飛ぶ。すると、そこには、ただ・・・、

「この子犬と列車とともに私の消えたものを追い求める旅は続く」

この文言だけ残してこの「ニノタビ」という名のブログは終わりを迎えてしまった。

 このブログの終わり方に、森、

「このブログからなにがわかるのかさっぱりわからない!!いったい犯人は何を言いたいんだ!!」

と、困惑してしまうと、すぐに、

「なぁ、温子さん!!」

と、温子に対して自分の意見に同意を求めようとするも、温子、

「う、うん、そうだね・・・」

と、歯切れ悪いような言い方ながらも森の意見に同意してしまう。

 で、曜とルビィにいたっては、

「このブログってただの旅行記じゃないのかな?」(曜)

「それよりも、ルビィ、ジロちゃんのことが気になるよ・・・」(ルビィ)

と、こちらも犯人の意図がわからず、さらにどこかにいったジロのことが気になるほど困惑の度合いを深めていた。

 だが、南はそんな4人とは違ってあることを考えていた。

(このブログ自体犯人のメッセージなんだ!!これまで、「長崎西海市の入り江にあるオランダみたいな街並みの写真→「ゆふいんの森」号の写真→大村湾の夕日が沈む海岸を写した写真→「ゆふ」号の写真」といった順番でブログは進んでいた。そして、「列車とともに消えたものを追い求める旅は続く」でこのブログは締められている。これって犯人がなにか俺たちになにかのメッセージを残してくれていたのでは・・・)

 そして、ついに、南、

(あっ、もしかして、これって犯人が今いる場所を示しているのでは!!)

と、ある答えにたどり着いた。それは・・・、

(あっ、これってあの列車のことをいっているのでは!!犯人はその列車の中にいる!!いや、それだけじゃない!!その列車にはいろんなものが詰まっている!!そう、あの消えてしまったものまでもが・・・)

と、犯人の居場所・・・どころか犯人がなにを言いたいのはわかってしまった様子。さらには・・・、

(それに、あの「ゆふいんの森」号のページで感じたもの、大切な存在、いや、消えてしまった「ゆふいんの森」号、消えた子犬のジロ、それに、犯人、それにはある共通項で結ばれている、そう思えてしまう。いや、もしかすると、それはあの温子さんと関係しているのでは。いや、温子さんだけじゃない!!森さんとも関係している!!)

と、犯人が、森、温子にも関係性があるのではと疑問を持つようになる。

 だが、そんな疑問を持ちつつも南は、曜、ルビィ、森、温子に対しこう言いだしてきた。

「曜ちゃん、ルビィちゃん、そして、森夫妻、犯人の居場所がどこなのかわかりました!!」

これには、ルビィ、

「えっ、南さん、あのブログを読んだだけで犯人の居場所がわかっちゃったの!?」

と、びっくりしてしまうも、南、そんなことはスルーして曜たちにこう命令した。

「4人とも今すぐ指定する場所に来てください!!今なら間に合うと思います!!」

これには、4人とも、

「「「「えっ!!」」」」

と、驚いてしまうも、南、つかさずこう言いだしてきた。

「そうです!!あなたたちが指定する場所に到着するころには犯人もその場所に到着するはずです、その場所、

 

熊本

 

にね!!」

 

 こうして、曜たち4人は南に指示されるまま博多駅まで行くと九州新幹線で熊本まで行くことに。その車中において、

「森さん、あなたには子どもは何人いるのですか?」

と、南がタブレットを通じて森に質問してきた。これには、森、

「私の子どもは3人いますが・・・」

と答えるとすぐに温子が、

「実は、私たち、お互いバツイチなんです。バツイチ同士で再婚している仲です」

と森の言うことに付け加えて言った。これには、曜、

「えっ、再婚しているわけ!!」

とびっくりするも森はそれについて説明した。

「実は、私たち、昔、付き合っていたのですが、私たちの親からの猛反対があって別れてしまったのです。そして、お互い親が決めた別々の人と結婚することになったのです。けれど、お互いともよりが合わなかったのか離婚してしまいお互いバツイチになりました。けれど、つい最近温子さんと会う機会がありまして話をしていくうちに「結婚しようか」という話になって温子さんと結婚した、というわけです」

 これには、ルビィ、

「昔付き合っていたのに別れてしまった2人が再会して結ばれるなんてなんかすごいよ!!」

と、目をキラキラさせながら言うも、森、

「でも、そんなに美しいものではありませんよ」

と言うと、続けて、

「で、私たちには子どもが3人いるのですが、長男と三男が私の連れ子、次男は温子さんの連れ子なんです」

と、自分の子どもについて説明する。

 が、突然、温子が、

「でも・・・、でも・・・」

と泣き出すと続けてこんなことを言いだしてきた。

「でも、森さんの連れ子である長男の太郎さんと三男の三郎さんは私の結婚に賛成なのですが、私の連れ子である次男の次郎だけが私たちの結婚に反対しているのです」

これには、曜、

「たしかに人それぞれにいろんな意見があるけど、まさか自分の子どもに結婚を反対されているのはなんか温子さんにとって悲しいことだね」

と、温子に同情するも、南、

「でも、それは俺たちが解決することじゃない。森夫妻が解決することだ」

と、断言してしまう。そう、これは森夫婦と次男である次郎との問題である。他人の曜がツッコむような案件ではなかった。そのためか、曜、

「たしかに南さんの言う通りだね・・・」

と、南の言葉に納得せざるを得なかった。

 だが、この森から森夫妻の子どもたちの話を聞いて、南、ついにある結論に達する。

(森夫妻の子どもたちか。子どもたち・・・、あっ、そうだったんだ!!これですべてがつながった!!消えてしまった「ゆふいんの森」号、森夫妻の前から消えてしまった(ハズちゃんとワイちゃんの)次男であるジロ、犯人、その共通項が見つかった!!犯人はあの人で間違いない!!)

 そして、南は森に対しあるお願いをしていた。

「ところで、森さん、2人で少し話したいことがあるので、この(南が映っている)タブレットを持って席を外してくれませんでしょうか」

これには、森、

「ああ、いいが」

と言うと、泣いている温子を曜たちに任せ1人で列車のデッキに移ると、南、

「ところで、あなたの名字の湯布院なのですが、もしかして、つい最近改名しませんでしたか?」

と、森に対して質問をした。この南の突然の質問に、森、少しはっとしたのか、

「た、たしかについ最近改名しました・・・」

と、南に正直に話した。

 この森の言葉を聞いて、南、こう言った。

「もしかして・・・」

 このあと、南は森から改名したことについていろいろと聞いていくうちにある結論へとたどり着く。そして、南、

「森さん、もしかすると、これであなた方の問題も解決するかもしれませんね」

そう言うとともに、

「今、私の関係者が1人犯人らしき人物と同じ列車に乗っております。その関係者の話とあなた方の話を聞いてわかりました。いや、温子さんが心配していることなどあなた方抱えている問題すべて解決できるかもしれません!!」

と、元気よく言うと、森、

「それは本当ですか!!」

と、南に尋ねると、南、

「そのためにもはやく熊本駅に来てください!!」

と答えた。これには、森、

「南さん、ありがとうございます!!」

と、南にお礼を言った。

 その後、南も任務の拠点にしているところから動くことにした。そのとき、南に同行す梶山からこんなことを尋ねられた。

「南が言っていた関係者なんだけど、その関係者からの「なんか犯人らしき人物、いろんなことを言っているよ!!「俺の名字が消えてしまう!!名家と呼ばれる名字が・・・」「俺の名字が消えてしまうなんて嫌だ!!」ってね」という情報を受けて、南、すべてわかったのですか?」

これには、南、

「あぁ、すべてわかったとも!!今森夫妻に起きている問題はその犯人と森夫妻とのとある誤解、いや、大切な情報の欠如が招いたものだ!!そして、その3人にとってある意味悲劇になろうとしている!!いや、その悲劇を俺が感動ものに変えてやる!!」

と言うと梶山に対してこう言った。

「さて、いくぞ、梶山!!俺たちも熊本駅に向かうぞ!!」

これには、梶山、

「はいはい、南、行きますよ・・・」

と、たんたんと答えていた。



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曜とルビィの事件簿~消えた○○~ 後編

 そして、博多駅を出発してから33分後、曜、ルビィ、森夫妻は熊本駅に到着した。その到着する際、

「2度目の熊本、到着!!あぁ、太平麺、食べたいよ~」

と、ルビィ、どうやら熊本名物の太平麺を食べたい様子。

 しかし、そのとき、

「おお、ルビィちゃん、食いしん坊なんだから!!」

と、南が突然現れてはルビィに対してちょっかいを出すと、ルビィ、

「あっ、南さん、梶山さん、こんにちは、って、ルビィ、花丸ちゃんや善子ちゃんみたいに食いしん坊じゃないもん!!」

と、南からのツッコミを軽くあしらえつつも南と梶山に挨拶すると、梶山、

「さて、みなさん、犯人とジロという子犬ですが、今のところ、熊本駅にある列車に乗って向かっているとのことです。あともう少しで熊本駅に到着する、とのことです。その列車が到着するホームに向かいましょう」

と言うと、曜たち4人をそのホームへと案内してくれた。

 

 そして、犯人が乗った列車が到着するであろうホームに曜や南たちが到着すると同時にその列車もそのホームに入線してきた。で、その列車を見て、ルビィ、目を開けてびっくりする。

「えっ、この列車って、ルビィたちが昨日乗った「あそぼーい」だよ!!」

そう、このホームに入線してきたのは「あそぼーい」だったのだ。しかし、実は昨日、阿蘇地方大雨のために立野駅で立ち往生していた「あそぼーい」であったが、そのときに車両不具合も見つかったため、SL人吉、いや、SL「無限大」号、いや、SL「あそBOY」の救援を受けていたのである(詳しくは前作「復活のA」をご覧ください)。

 しかし、昨日、車両不具合が見つかったのに今日も走っていることに、曜、

「でも、昨日走れなかった「あそぼーい」が今日も走っているのはなんで?」

と、疑問に思うも、梶山、これについてこう説明した。

「たしかに、昨日、私たち(梶山たち)が乗っていた「あそぼーい」に車両不具合が見つかりました。しかし、車両基地に戻ってからよくよく調べてみると、ただ、外から飛んできた小石によって車両の側面に少し小さな傷ができていただけだと分かったため、運用に特に支障がない、ということでして、今日も運転しているとのことでした」

どうやら、昨日の車両不具合は車掌が慌てて上に報告したことが物事を大きくしてしまったのが原因だったようだ。そんなわけで、今日も元気よく運行している「あそぼーい」でした・・・。

 

 と、それは別にして、「あそぼーい」が熊本駅の到着ホームに到着すると乗客たちはどんどん列車から降りてくる。でも、どの人も南たちが待っている人ではなかった。これには、曜、

「待ち人、まだ来ないのかな?」

と、つばを飲み込みながらその人を待つ。

 そして、ついにそのときはきた。「あそぼーい」から子犬を入れたゲージを持っている1人の男性が列車から降りてきた。それを見て、曜、

「あっ、犯人だ!!」

と、大きな声で叫ぶも、すぐにそれが意外な人物であるとわかったの、森夫妻はびっくりするような声をあげた。

「「えっ、なんで次郎が犯人なの!!」」(森・温子)

そう、子犬の入ったゲージを持って「あそぼーい」を降りてきた男性いや、犯人はなんと森夫妻の次男、次郎、であった。あまりに意外な人物、これには、曜、ルビィ、ともに、

「なんで森夫妻の子どもが犯人だったの?」(曜)

「え~、そんなの、うそ、だよね。ルビィ、幻を見ているだけだよね・・・」(ルビィ)

と、困惑している様子。いや、曜とルビィ以上に、

「次郎、うそでしょ!!うそ、つかないで!!」(森)

と、森は困惑していた。さらに、温子にいたっては、

「やっぱり・・・、やっぱり・・・、次郎が犯人だったんだね・・・」

と、なんか納得している様子。これには、南、

「やっぱり温子さんにはわかっていたのですね、犯人が自分の息子である次郎であると・・・」

と、温子に尋ねると、温子は南に対し、

「と、いうことは、南さんも私のあのとき(ブログを見ているとき)の動揺のことを知っていたのですね」

と言うと南はこう答えた。

「はい、あなたがブログを見ていて動揺していることはわかっていました。だって、ブログを読み進めるうちに明らかに動揺しているあなたの姿を見続けていましたから。さらに、それから犯人である次郎さんと温子さんのあいだになにかあると思いました。そして、このブログを読み続けるうちにあることに気付きました、

 

ブログ自体、次郎さんがあなた、ひろ子さん、そして、森さんに向けて送ったメッセージ

 

だと、さらに、

 

この「あそぼーい」こそ森さんと温子さん、そして、温子さんと次郎さんの想い出を、次郎さんの想いを詰め込んだ列車である

 

と・・・」

これには、温子、

「それ、本当なの、次郎?」

と、次郎に尋ねると次郎も、

「うん、そうだよ、母ちゃん」

と、南の言うことを認めてしまった。

 そして、南はある列車の歴史を語り始めた、それは・・・、

「次郎さんの想い、それはこの列車「あそぼーい」の数奇な運命の歴史と同じかもしれません。それでは、この「あそぼーい」の数奇なる運命の歴史を語ることにしましょう・・・」

 

 そして、南はタブレットを持ってある写真を表示した。それは「あそぼーい」であるキハ183系の車体に三つの色、赤、白、青と横に塗られたものだった。これを見て、森、

「あっ、これこれ!!昔、温子さんとデートに行ったときによく乗っていた列車だ!!」

と喜びを見せていた。で、その列車の写真を見て、曜、

「なんか今のカラーリングと違う・・・」

と、驚いてしまった。

 そんな曜の姿を見てか、南、タブレットに写る列車の説明をした。

「これは今の「あそぼーい」であるキハ183系の最初の形態、「オランダ村特急」なんだ!!」

その「オランダ村特急」の言葉に、ルビィ、

「えっ、「オランダ村特急」?聞いたことがない名前だ!!」

と、驚いてしまうも、南、それについて説明する。

「「オランダ村特急」、文字通り、長崎にあったテーマパーク「長崎オランダ村」にアクセスするために作られた特急なんだ。その特急は門司港~佐世保間を結んでいた。そのオランダ村なんだけど、ブログの2ページ目に載っていたテーマパーク跡地、それが長崎オランダ村なんだ!!」

 これには、ルビィ、

「えっ、たしか、ハステンボスのルーツって言っていたテーマパークって長崎オランダ村だったんだ!!」

と、なんと納得の表情。南はオランダ村と「オランダ村特急」について軽く説明する。

「長崎オランダ村。1980年代にオープンしたんだけど、党委はとても人気もあってそことアクセスする特急として運用されたのがこの「オランダ村特急」だったわけ。そして、そこを発展的に作ったのが今のハウステンボス。で、長崎オランダ村はハウステンボス開場後、そのハウステンボスのサテライト的な役割をもっていたのだけど、そのためにお客さんがオランダ村に来なくなりついに閉園になったんだ。けれど、最近になって地元が中心になって残った建物を使って役場をそこに移設したりなどして再び観光名所として頑張ろうとしているんだ!!」

 この南の言葉を受けてか森はそのときの想い出話をしてきた。

「私と温子さんは、昔、長崎オランダ村でよくデートをしていました。そのときによく使っていたのだこの「オランダ村特急」なんです。この列車の写真を見るだけでもそのときのことを思い出します」

そして、温子も、

「そうですね、森さん!!私もこの列車には森さんとの想い出ばかり思いだします」

と、当時のことを思い出しながら答えた。

 だが、南の説明は続く。

「しかし、ハウステンボス開場後、「オランダ村特急」は特急「ハウステンボス」号にその役割を引き継いでしまった。こうして、「オランダ村特急」という名前は消えてしまったんだ。だが、どこでも使える気動車として作られたのが幸いした。このキハ183系は次の職場へと移動する。それが・・・」

と、タブレットの画像を切り替えると、そこには、緑色、いや、「ゆふいんの森」号のカラーと同じ色になったキハ183系の姿があった。これには、ルビィ、

「あっ、「ゆふいんの森」号だ!!」

と、びっくりしてしまう。

 そんなルビィの対応に呼応してか、南の説明に磨きがかかる。

「そう、ルビィちゃんの言う通り、キハ183系は「ゆふいんの森」号として生まれ変わった!!キハ183系は今度は「ゆふいんの森」号として博多~(久大線経由)~別府間を走ることになるんだ!!」

 この言葉を聞いてか、曜、あることに気付く。

「あっ、もしかして、これが(今ある)「ゆふいんの森」Ⅰ世とⅢ世のあいだで消えてしまったⅡ世じゃ・・・」

と、ここでその言葉を待っていたかのごとく南はこう答えた。

「曜ちゃん、ずばり、その通り!!これこそあの消えた「ゆふいんの森」Ⅱ世なんだ!!「ゆふいんの森」号には3つ列車があった。一番最初から走っていたⅠ世、「ゆふいんの森」号のなかでは一番新しいⅢ世、そして、このキハ183系こそ消えた「ゆふいんの森」Ⅱ世なんだ!!」

 この南の言葉を聞いてか、次郎、ついに声をあげた。

「俺にとってその「ゆふいんの森」Ⅱ世は母ちゃん(温子)と一緒に乗ったときの記憶がとても強く残っているんだ!!大分の本家に行くとき、この列車をよく使っていたんだ!!」

これには、曜、

「ってことは、この「ゆふいんの森」Ⅱ世に次郎さんは愛着を持っているの?」

と、次郎に尋ねると次郎も、

「うん、そうなんだ」

と認めてしまった。

 だが、これに対して森はというと、

「ただ、私にとってその「ゆふいんの森」Ⅱ世との想い出はないんだ。だって「オランダ村特急」が廃止になってすぐに親たちによって温子さんと別れさせられたのですから・・・」

と、当時のことを思い出すと温子も、

「森さんと別れてすぐに親によって結婚させられて次郎を生んだのですが、次郎がその「ゆふいんの森」Ⅱ世が好きだったから大分の本家に戻る際にはこのⅡ世をよく使っていました」

としみじみに答えた。

 だが、話は急展開する。南は真剣なまなざしでこう言った。

「けれど、新しい「ゆふいんの森」Ⅲ世が登場したため、Ⅱ世であるキハ185系は「ゆふいんの森」Ⅱ世としての役割を終えることになる。こうして、Ⅱ世の名は「オランダ村特急」と同様に消えてしまった・・・」

これには、ルビィ、

「また名前が消えてしまった・・・」

と、嘆いてしまうもすぐに、南、こんなことを言いだす。

「けれど、キハ185系には別の仕事場があった。それは長崎~佐世保間での運用だった。こうしてキハ185系はその路線で特急「シーボルト」として運用を始めたんだ」 

 これには、温子、ある想い出話をした。

「小さいころの次郎から「「ゆふいんの森」Ⅱ世はどこに行ったの?」って言われたことがあるんだ。このときにはその列車は「ゆふいんの森」Ⅱ世としての運用が終わっていたの。だから、私、当時はやっていたネットを使って「ゆふいんの森」Ⅱ世に使われていた列車がどこを走っているのか調べて、その列車が特急「シーボルト」として運用されていることを知ったの。そして、その列車に乗りたい次郎を連れて特急「シーボルト」に乗ったんだ」

この温子の想い出話に、次郎、

「うん、俺、Ⅱ世がとても好きでもう1度Ⅱ世に乗りたい、と思っていたんだ。だから、母ちゃんに「もう一度Ⅱ世に乗せて!!」とわがままを言ったんだけど、母ちゃん、そのわがままを聞いてくれてわざわざ長崎まで特急「シーボルト」に乗せてくれたんだ・・・」

と、当時のことをしみじみと思いだしていた。

 が、またここで話は急転する。南、さらに畳みかけるように言う。

「しかし、そこまで需要があったわけでもないため、特急「シーボルト」は廃止されてしまう。またもや名前がなくなってしまったんだ」

これには、ルビィ、

「まただ。また名前がなくなってしまった・・・」

と、泣きそうに言った。

 だが、南の話は続く。

「でも、キハ185系はまたもや別の場所へと移動した。次の職場、それは「ゆふいんの森」号と同じ路線である久大線。しかし、「ゆふいんの森」号ではなく、特急「ゆふ」のDX版、「ゆふDX」として運用されるようになるんだ」

これには、曜、

「「ゆふDX」なんてなんかかっこいい響き・・・」

と感動するとルビィも、

「たしかにすごそうな名前だね・・・」

とものすごいものを想像していた。

 そして、次郎も、

「俺にとって「ゆふDX」登場当時、「ゆふDX」は「ゆふいんの森」Ⅱ世の再来かと思ったよ。「ゆふいんの森」号のときの設備なんてないけど、それでもパロラマシートがある、それだけでも嬉しかった!!だから、俺はこの列車を乗るように母ちゃんに頼んでいたんだ!!」

と、感慨深く言うと温子も、

「たしかにその通りだったね。よく次郎から「「ゆふDX」に乗せて!!」ってせがまれたから大分の本家に戻るとき、よく「ゆふDX」を使っていたものです」

と、こちらも感慨深く言った。

 だが、ここで話がまたもや急展開する。南曰く、

「しかし、「ゆふDX」として活躍していたキハ185系も次の仕事場所が見つかってしまう。今度は豊肥線でSL「あそBOY」「あそ1964」の後釜として特急「あそぼーい」として運用されうことが決まったんだ。こうして、キハ185系は「ゆふDX」から「あそぼーい」として改造を受け豊肥線を走ることになり今に至るんだ。ただ、これによって「ゆふDX」の名前は消えてしまったけどね・・・」

これには、ルビィ、

「またも名前がなくなってしまった・・・。一体、どれくらい名前がなくなればいいの・・・

と、泣きそうになってしまう。

 だが、曜、これまでの南の話を聞いてあることに気づいた。

「あっ、もしかして、私たちが読んでいた「ニノタビ」というブログの話の流れってこの列車(キハ185系)の歴史そのものなんじゃないかな」

さらに、曜、そう思った理由を述べた。

「たしか、キハ185系の最初の形骸「オランダ村特急」は昔のオランダ村の跡地の写真がそれを物語っているし、2ページ目の「ゆふいんの森」号はこの列車が消えたⅡ世であることを示している。さらに、3ページ目の大村湾の風景はこのそばを通っている線路(大村線)をかつて走っていた特急「シーボルト」を示していた。そして、最後の記事の「ゆふ」号と豊後森機関庫はこの列車が「ゆふDX」として走っていたことを示していた。それってこの列車の歴史そのものだと思うの!!」

 この曜の推理に、南、

「曜ちゃんの言う通り、あのブログはキハ185系の歴史を物語っていたんだ」

と答えると南がその考えにたどり着いた理由を述べた。

「俺はこのブログを読んでいくうちに、「オランダ村跡地→「ゆふいんの森」号→大村湾の風景→「ゆふ」号と豊後森機関庫の写真」という話の流れからこれが犯人である次郎さんがこれに関連するものを示したい、そう思えてきたのです。そして、最後のページに書かれていた文言、「列車とともに」という言葉でその関連したものが「ある列車」であると思いました。これらをもとに考えた結果、「オランダ村特急」→「ゆふいんの森」号→「シーボルト」→「ゆふDX」→「あそぼーい」という遍歴を持つキハ185系が関係しているのでは、と思い、私の関係者にお願いして列車のなかでのあなたの動向を調べてもらいました。そして、この「あそぼーい」に、次郎さん、あなたがジロを抱えて乗っている、そのことを聞いて俺の推理は間違いなかった、そう思った次第です」

 そんな南だったが話はまだ終わっていなかった。南、次郎の方を向いてはこんなことまで言いだしてきた。

「そして、あのブログには次郎さんのある想いをこの列車のある事実と重ね合わせて示したいたんだ!!」

これには、温子、

「えっ、次郎の想い・・・」

と、唖然となるも、次郎、ついに自分のある想いを爆発させてしまう。

「母ちゃん、なんで由緒ある「湯平」って名前を捨てるの!!」(次郎)

これには、曜、

「えっ、「湯平」!?」

と驚くとルビィも、

「温子さんの旧名って「湯平」って言うの?」

と温子に尋ねた。すると、温子、

「はい、私の旧名は「湯平」なんです。そして、この名前は(大分において)名家ともいえる名字なんです」

と正直に答えた。

 その温子の答えに火がついたのか、次郎は温子に対し自分の想いを暴露した。

「「オランダ村特急」みたいに、「ゆふいんの森」Ⅱ世みたいに、「シーボルト」みたいに、「ゆふDX」みたいに、母ちゃんは「湯平」という名前を捨てようと、消そうとしているの?俺にとって「湯平」って名前は名家であることを示す名字で俺にとってステータスシンボルなんだ!!それをこれらの列車の名前と同様に捨てるつもりなの!!俺にとってみればそれは先祖に対する冒とくなんだよ!!」

 この次郎の本音を聞いたか、南、こんなことを言いだしてきた。

「俺はこのブログを読んでいくなかで「ゆふいんの森」号についてあることを考えた、なんでブログに「ゆふいんの森」号のことを扱ったのか、と。そして、盗まれた子犬が2番目の子犬だったのか、それが気になっていた。そして、ブログを読み続けて、さらに、森さんから森夫妻の子どもたちのことを聞いてある結論に達しました。それは犯人が森夫妻にとって2番目の子、つまり、次郎さんではないかと。なぜなら、「ゆふいんの森」Ⅰ世とⅢ世を森夫妻の子どもに例えると長男の太郎さんと三男の三郎さん、それに対し今はもういないⅡ世は次男の次郎さんと例えることができる。さらに、森夫妻が飼っている犬の子どもも2番目が盗まれた。それらを考えた場合、「「(消えてしまった)「ゆふいんの森」Ⅱ世、森夫妻の次男である次郎さんと犬のハズちゃんとワイちゃんの次男であるジロが消えていなくなった」=犯人である次郎さんがある目的で同じ次男であるジロちゃんと一緒に自ら消えてしまった」ではないかと推測できたんだ。そして、森夫妻について菅原たちに調べてもらった。さらに、俺は森さんから森夫妻の名字について聞いてすべてがわかりました。次郎さんはキハ185系の過去の名前みたいに自分の名字「湯平」が消えてしまう、そのことがいやだからこんなことをしてしまったのです。さらに、その想いをあの「ニノタビ」というブログを通じて森夫妻にメッセージを送ってました、「キハ185系の過去の名前と同じように自分の名前「湯平」が消えてしまうのがいやだ」と。そして、俺の結論は正しかったことがわかりました、このブログを通じて次郎さんがこの「あそぼーい」、つまり、キハ185系に乗っていることで次郎さんの森夫妻にあてたメッセージは完結する、俺はそう思っておりました。そして、実際に次郎さんはこの列車に乗って自分からのメッセージを完結させようとしました。まさにその通りでしたね」

これには、次郎、

「ふっ、まさか南さんたちに俺のすべてを知られているなんてびっくりです」

と、白旗をあげるとともに南にこう言った。

「そして、俺のある想いも南さんは気づいているのではないのですか?」

と南に確認を取ると南はその次郎の想いを口にした。

「そして、次郎さんはこう思っております、「ゆふいんの森」Ⅱ世みたいに「湯平」の名前を簡単に捨てて森さんのところに行った温子さんに自分は捨てられるのではないかと。名家と呼ばれる「湯平」みたいに自分の存在も2番目の子(=Ⅱ世)みたいに、「ゆふいんの森」Ⅱ世と同じように消されるのではないかと・・・」

これには、温子、

「そ、それは・・・」

と、言葉を濁してしまう。

 そんな温子に対し次郎はつらい言葉を投げつけてくる。

「俺は「ゆふいんの森」Ⅱ世みたいに、「湯平」という名前と同じように、2人から完全に消されてしまう、忘れ去られた存在になるかもしれない、そう思っていたんだ。そして、このジロという子犬も同様に俺と同じ運命をたどるかもしれない、そうも思っていた。だから、俺は森さんと母ちゃんによって完全に消された存在、忘れ去れた存在になるかもしれない、そんなのいやだ、そう思ってあの家を飛び出したんだ、ジロを連れて、俺のその想いを2人にわからせるために!!」

これには、森、

「次郎さん、それは・・・」

と口にするも、次郎、

「黙れ!!俺を消そうとしている人が言うな!!」

と、完全に拒否される。こrにえは、曜、ルビィ、ともに、

「次郎さん、落ち着いて・・・」(曜)

「うわ~、修羅場だよ・・・」(ルビィ)

と、2人とも困惑していた。

 だが、このとき、南は冷静に次郎の方を向くとこの修羅場の雰囲気の中でこんなことを言いだしてきた。

「でも、次郎さん、実はなにか誤解しているのではありませんか?」

これには、次郎、

「えっ、俺が誤解しているって?」

と、南に言うと南はある事実を次郎に伝えた。

「森さんは別に「湯平」の名前を捨てたわけじゃないのです!!逆に「湯平」の名字を残そうとしているのです、あなたの存在と同様に!!」

これには、次郎、

「えっ、それって本当なのですか?」

と森に尋ねると、森、

「あぁ、本当だ!!」

と力強く言うと次郎も知らない事実を次郎に伝えた。

「実は、私の本当の名前は「湯布院」ではなく「由布院」なんだ!!」

これにはさすがの次郎も、

「う、うそだろ・・・、「由布院」って「湯平」と同じく大分では名家と言われているのでは・・・。森、それって、お前も名家の名字である「由布院」の名を捨てたってことか・・・」

と絶句する。なんと、森も大分では名家と誉れ高い「由布院」の名を捨ててしまったのか、そう次郎は考えてしまった。

 だが、そんな絶句する次郎に対し、南、反論する!!

「いや、森さんは名家と誉れ高い「由布院」の名字も由緒ある「湯平」の名字も捨ててなんてない!!むしろ、その名前を、森さん自身、受け継いでいこうとしているんだ!!」

これには、次郎、

「えっ、名家と誉れ高い名字を受け継いだだと・・・」

と、これまた絶句する。

 そんな絶句×2の次郎に対し南は森の名字に対するある想い、真意を伝えた。

「森夫妻が今名乗っている名字、「湯布院」、これはな、「湯平」の「湯」の字と「由布院」の「布院」の文字をくっつけた、いや、「湯平」と「由布院」の両方の名字を残すために「由布院」の「由」の字を「湯平」の「湯」にした、そんな森さんの想いがこもった名字なんだ!!」

この南の言葉に、次郎、

「う、うそだろ・・・」

とこれまた絶句する。まさか「湯平」の名字を簡単に消してしまったとこれまでそう思っていた次郎、それがまさか、その逆、誉れ高い「由布院」の名字、由緒ある「湯平」の名字、それを両方残すために自分の名字を改名した、そのことに驚いたからだった。

 そして、この南からの言葉を森は自分の口で真実を述べた。

「あぁ、南さんの言う通りだ!!私のもともとの名字、「由布院」と温子さんの名字、「湯平」、それを残すために私と温子さんは「湯布院」の名字を名乗るようにしたんだ!!私は「由布院」の名字を捨てたくない、と同様に、温子さんも「湯平」の名字を捨てたくない、ならばどうすればいいか、温子さんと2人で相当考えたんだ!!でも、日本において夫婦別姓は認められない、ならばどうすればいいか考えて考えて考えた結果、2つの名字を受け継いだ名字に改名することを決めたんだ!!私にとって「由布院」も「湯平」も大切な名字!!それを受け継ぐためにも、私は、いや、私たちは「湯布院」という名字を名乗ることにしたんだ!!」

この森の言葉に、次郎、

「うそだろ・・・。うそと言ってくれ・・・」

と、唖然としてしまうも、南、真実を言った森への援護射撃を行った。

「次郎さん、これが森さんの真意だよ。そしてね、普通、名字というのはとても大切なものだからよっぽどのことがない限り改名できないんだ。しかし、森さんと温子さん、それを承知の上でお互いの本家、そして、役所に必死にお願いしてようやく改名できたんだよ。それだけ森さんと温子さんの名字に対する想いはとても熱いものだったんだ」

 この南の言葉、とともに温子が次郎に対しこんなことを言う。

「次郎、森さんの名字に対する想いと同じように次郎に対する私たち(森夫妻)の想いも本物なんです」

これには、次郎、

「どうしてそんなことが言えるんだ!!」

と、自分の母親である温子をにらむように言うと、温子、自分たちの次郎に対する想いを語った。

「次郎、なんで私たちがキースホンドという犬を飼っているかわかる?実は私にとって「あそぼーい」であるキハ185系という列車は私たちにとって特別な列車なんだよ。この列車がまだ「オランダ村特急」だったとき、私たち2人はこの列車で出会ったんだよ。私が仕事のために特急電車の485系「有明」に、森さんは友達との旅のために気動車である「オランダ村特急」にそれぞれ乗っていたとき、鳥栖駅で出会ったんだ!!」

この温子の言葉に、曜、あることに気付く。

「え~と、たしか温子さんは電車に乗ってて森さんは気動車に乗っていた、それなのに鳥栖駅で出会った、って、これって偶然?」

そう、2人は「有明」という電車と「オランダ村特急」という気動車という別々の列車に乗っていたのだ。が、それでも二人は鳥栖駅で出会ったのだ。それって偶然では、と思うのも無理ではなかった。

 だが、それについて、南、すごいことを言いだす。

「いや、ぐうぜんではないね!!これは必然かもね!!」

これには、曜、ルビィ、ともに、

「必然!?それってありなの?」(曜)

「必然だったら凄いね!!」(ルビィ)

と、半信半疑の様子。

 というわけで、南、必然だといえる理由、というか、キハ185系のある真実の説明をした。

「実はキハ185系は「オランダ村特急」時代、(九州新幹線未開通であり、博多~熊本間において過密ダイヤだったこともあり)多くの電車が行き交う鹿児島本線を走るために当時485系電車での運用をしていた(門司港~博多~熊本~西鹿児島(現鹿児島中央駅)間を走っていた)「有明」との協調運転を門司港~鳥栖間で行っていたんだ!!そして、その連結や切り離し作業が鳥栖駅で行われていたんだ!!」

そう、キハ185系は、昔、485系電車と協調運転をしていた。今でもあまり聞いたことがない電車と気動車の協調運転、それをキハ185系「オランダ村特急」と485系電車特急「有明」はやっていたのだ。これは世界でも初めてのことだった。それをキハ185系はやっていたのである。そして、その連結や切り離しの作業を鹿児島本線と長崎本線の結節点である鳥栖駅で行っていたのである。

 そして、森は南の説明を受けて温子とのなれそめや自分の想いを口にした。

「私と温子さんはちょうど別の用事でそれぞれ「オランダ村特急」と「有明」に乗っていた。そして、「オランダ村特急」と「有明」の連結作業が鳥栖駅で行われる、ということでその様子を見に私と温子さんはそれぞれ2つの列車が連結しようとしているところに見に行ったんだけどそのときに私たちは出会ったんだ。そして、その連結作業を見ていくなかで私と温子さんは意気投合してしまい付き合うことになったんだ。その後、長崎オランダ村にデートをしによく「オランダ村特急」に乗っていくなかで私たちは愛をはぐくむことになった。けれど、お互いの家が名家ということで「オランダ村特急」が廃止になった直後にお互いの両親によって別れさせられ、お互い共に親によって決められた相手と結婚することになったんだ。そんななか、「オランダ村特急」だったキハ185系は名前を変えながら「あそぼーい」になった。その「あそぼーい」で私と温子さんは再び出会った。このときはお互い親によって決められた相手とは離婚しておりお互いバツイチの状態だった。そんな2人であったけどキハ185系で出会い愛をはぐくんだ2人が再びキハ185系の車内で出会った、「これって運命なんでは」とお互いにそう思った。ならばと、私たち2人はもう一度結ばれることを切に願ったんだ。けれど、私たちは結ばれたいものの「由布院」という誉れ高い名字と「湯平」という由緒ある名字の存在、さらにお互いの家が名家であることがネックになったんだ。2つの名家の名字を残さないといけない、そのために私は2つの名字を受け継ぐことができる「湯布院」という名字に改名したんだ!!こうすることで確実に2つの名字を残していける、そう私は思っている!!それと同様に温子さんとの「オランダ村特急」の想い出を、この数奇な名前の歴史を持つこの列車、キハ185系のように、私たちがこれまで経験したこと、私たちの子どもたちを含めたこれまで私たちが出会ってきたすべての人たちのこと、そのすべてを大事にしよう、そう思って、「オランダ村特急」つながりでオランダが原産のキースホンドを飼うことにしたんだよ、初心を忘れずに、ってね!!」

 この森の想いを受けてか、南、この列車、キハ185系に関する自分の想いを語った。

「このキハ185系「あそぼーい」は「オランダ村特急」「ゆふいんの森Ⅱ世」「シーボルト」「ゆふDX」と何度も改名していった。けれど、これらの名前は決して消えたわけじゃない。キハ185系の歴史の積み重ねのなかでそれらはこの列車の宝物として、そして、次郎さんを含めたこれまでキハ185系に乗車してくれた人たちのなかで大切な想い出として残っているんだ。だからこそ、キハ185系はただの列車にあらず!!この30年間、いろんな人たちの想い出、そして、想い、それらを詰め込んで今でも走っている!!と、同様に、森さんも温子さんも「由布院」と「湯平」の名字を受け継ぎつつも、これまでのこと、これまで出会ってきた人たち、そして、次郎さんを含めた子どもたち、それらを大切にしていきたい、その志のもと、これからも次郎さんを含めた家族5人で生きていこう、そう思っているんだ!!」

 この南の言葉を受けてか、曜、

「森さんと南さんの話を聞いて、私、ちょっと感動しちゃった!!だって、次郎さんは森さんと温子さんから消されたと思っていたけど、本当はその逆だった。これほど家族思いの人っていないと思うよ。私だって船長であるパパに憧れているもん!!そんなパパは私のことをいつも大事に思っている!!そして、私、将来はパパみたいな船長になりたいもん!!それくらいパパの存在は私のなかで大きいと思うし、これからもパパと一緒に生きていきたい、そう思うよ」

と、自分の想いを口にすれば、ルビィも、

「ルビィも森さんや曜ちゃんの意見に賛成だよ。だって、お父さんもお母さんもお姉ちゃん(ダイヤ)もルビィにとって大事な存在だもん!!それに、ルビィの家、黒澤家は網元の家として代々受け継がれてきたけどその名前がなくなるのはいやだよ!!だからこそ、その名前を必死に受け継ごうとしている、それに加えて家族の想い出や想い、キズナを大事にすること、それはとても大事だと思うよ。ルビィだってずっとそうしたい、お姉ちゃんとはこれからも一緒に頑張っていこう、そう思うもん!!」

と、自分の想いを口にした。

 そんな、曜とルビィ、2人の想いが通じたのか、次郎、

「森さんと南さん、それに、少女2人(曜とルビィ)にそんなことを言われてなんかわかった気がする。俺、なんか勘違いしていたのかもしれないね・・・」

と、涙を流しながら言うと、自分の過ちについて、

「俺、「湯平」という俺が大切にしていきたい、そんな名字を、いや、俺自身も森さんから捨てられる、そう思っていた。けれど、それは違っていた。森さんは、母ちゃんは、「湯平」という名字、「由布院」という名字、そして、俺たち子どもの分まで大事にしようとしていたんだね・・・」

と悔いると、森に向かってこう叫んだ。

「森さん、こんな俺だけど、「お父さん」って言ってもいいですか?」

これには、森、

「次郎さん、いや、次郎、私のこと、「お父さん」って呼んでもいいよ」

と言うと、次郎、ジロの入ったゲージを持ったまま、森と温子に抱きしめては、

「お母ちゃん、お父さん、ごめんなさい!!」

と、泣いて謝ってきた。これには、森、

「よしよし、泣かない、泣かない」

と、次郎に対してなだめようとすると、続けて、

「それにな、キースホンドのハズちゃんとワイちゃんは子犬を私たちの子どもたち3人と同じ数、3匹生んだんだ。それを私たちの子どもたちが独立する際に1匹ずつ渡そうと思っていたんだ、私や温子さんの想いを子どもたちにも受け継いでもらいたいからね」

と、自分のこれからの想いも言うと、これにはさすがの次郎も、

「お父さん、その想い、本当に嬉しいよ!!」

と、泣きながら自分の今の想いを口にした。

 そんなつつましい光景が展開されるなか、

「あの~、南さん、ちょっといい?」

と、1人の「あそぼーい」の女性のパーサー(客室乗務員)が南に近づいてはこう言うと、南、

「あっ、ちょうどよかった、高海千歌チーフパーサー!!」

と、南が高海千歌と呼ぶ女性のパーサーに言う。

 だが、この様子を見て、曜、その女性のパーサーに対しこんなことを言いだしてきた。

「えっ、千歌ちゃん、なんでここにいるの!?」

そう、みなさん、もうお気づきだろう。南が千歌と呼ぶチーフパーサー、なんと、みなさんご存じ、高海千歌、千歌ちゃん、ご本人であった。で、これには、曜、

「千歌ちゃん、たしか、昨日はSL「あそBOY」の機関助手、だったよね。で、今日はなんで「あそぼーい」のパーサーなの?」

と、びっくりしつうも千歌に尋ねる。たしかに、昨日(前作「復活のA」)では「あそぼーい」の救援にきたSL「あそBOY」の機関助手をしていた千歌、それが今日は「あそぼーい」のパーサーをしているのだ。

 ただ、これに関して、千歌、こんなことを言いだしてきた。

「あぁ、今日はSLの運転がないの。その代わりに今日は「あそぼーい」のパーサーをしているの!!でも、普通のパーサーじゃないよ、「チーフ」パーサーだよ!!パーサーのなかで一番偉いんだよ!!」

この千歌の言葉に、ルビィ、

「えっ、なんで「チーフ」パーサーなんかできるの?」

と、千歌に尋ねると、千歌、あっさりこんなことを言ってしまった。

「だって、私、接客に関する資格、たくさんあるもん!!ポケ〇ンマスターならぬ資格マスターである千歌にとってそんなの造作のないことだよ!!」

と、なぜかどや顔で言う千歌。これには、曜、

「千歌ちゃん、おそるべし・・・」

と、千歌の底知れぬものを感じていた。

 で、どや顔の千歌に対し、南、

「で、千歌チーフ、頼んでいたもの、森さんたちに渡して」

と命令すると、千歌、

「はい、わかりました!!」

と言っては1枚のポストカードを森たちに渡した。

 で、これに対し、るbぃ、南にある質問をした。

「南さん、今、千歌ちゃんが渡したものってなに?」

これには、南、すぐに答える。

「あれはね、乗車証明書だよ」

乗車証明書、九州総局の観光特急「D&S]特急には列車それぞれにその特急のポストカード大の乗車証明書が配られている。そのポストカード大の乗車証明書はその列車に乗った人なら誰でももらえるものであり、そのカードに記念スタンプを押すのが通例になっている。その証明書についてだが、ルビィ、

「あっ、ルビィも昨日もらった!!「ゆふいんの森」号に「あそぼーい」!!」

と、目をキラキラさせながら答えていた。そう、なにを隠そう、ルビィもちゃっかりその乗車証明書をもらっていたのである。って、ルビィ、知らずにもらっていたんかい!!

 と、ルビィにツッコミを入れるのはこれぐらいにして、ルビィ、

「あっ、森さんたちがもらった証明書がちょっと気になるよ~!!ちょっとのぞいてみよう!」

と、ちらっと千歌が森たちに渡した乗車証明書が見えたのでそれをのぞいてみると、ルビィ、いきなりこんなことを言いだしてきた。

「あれっ、これってルビィたちがもらった乗車証明書とは違う!!」

このルビィの叫び声に、曜、

「えっ、それ、本当!!」

と驚いてはすぐに森たちがもらった証明書を森たちから見せてもらう。すると、曜、

「あっ、本当だ!!」

とまたもや驚いてしまう。

 そんなわけで、ルビィ、自分がもらった「あそぼーい」の乗車証明書を取り出すと森たちが千歌からもらった乗車証明書を見比べてはこんな声をあげた。

「たしかに違う!!ルビィがもらった証明書は「あそぼーい」の正面のデザイン画が載っているのにこれ(森さんが千歌からもらった証明書はいろんな列車が載っている!!」

そう、普通の乗車証明書にはその列車の正面のデザイン画が載っている。だが、森たちが千歌からもらった乗車証明書には5つの列車のデザイン画が載っていたのである。

 で、森に渡した乗車証明書について千歌が説明する。

「実はね、この証明書は千歌特製の証明書なんだよ。表にはこの列車、キハ185系の歴史、つまり、「オランダ村特急」「ゆふいんの森Ⅱ世」「シーボルト」「ゆふDX」、そして、「あそぼーい」のデザイン画が載っているんだ。それに、その裏には千歌たちからのメッセージ入りだよ!!」

 その千歌の言葉を聞いて森たちはもらった証明書を裏返して見てみる。すると、直筆でこんなメッセージが書かれていた。

「これかも「あそぼーい」ことキハ185系みたいにずっとみんなと一緒に幸せに暮らしてください!!」

そして、このメッセージについて千歌は説明してくれた。

「「あそぼーい」ことキハ185系はこれまでキハ185系に乗車してくれた方々のいろんな想いが詰め込まれているんだよ。そして、これからもその想いとともに、いや、これから乗車してくれる方々の想いをもらって未来へと走っていくんだ。それと同じように森さんたちもこれまでの想い出、想い、キズナ、それをもってこれからの幸せな人生をみんな一緒に楽しみながら、そして、その想いを築きながら前に進んでいってほしいな」

 この千歌からの言葉を聞いて、森、

「本当にありがとうございます、千歌チーフパーサー、そして、「あそぼーい」のパーサーのみなさん!!」

と、千歌やほかの「あそぼーい」のパーサーたちにお礼を言うと、

「温子さん、そして、次郎、この「あそぼーい」、いや、キハ185系に関係した皆さんの想いに応えるためにも、そして、この乗車証明書のメッセージの言葉通り、ずっと幸せに暮らしていこう!!そして、これまでの想いと同様にこれから先もこれから生まれる私たちの想いを大事にしていこう!!」

と森は温子と次郎にそう言うと、

「うん、そうだね!!」(温子)

「俺もそう思うよ、父ちゃん!!」(次郎)

と、森の言葉に同意してくれた。

 そんな3人の姿を見てか、曜、ルビィ、ともに、

「うわぁ、こんな美しい終わり方があるなんて本当にびっくりだよ!!」(曜)

「でも、この姿を見て、ルビィ、森さんたちなら絶対に幸せに暮らしていけると思ってしまうよ!!」(ルビィ)

と、なぜか感動的な終わり方を感じていた。

 一方、南たちはというと、梶山から、

「一応聞いておく。感動的に終わろうとしているけど、これは「次郎さんが子犬を盗んだ」という立派な犯罪案件になるのだけど、南、それはどうするつもり?」

と、冷静に南に尋ねると南はあっさりと答えた。

「これは家族内の揉め事だ。俺たちの出る幕なんてない。俺たちは民事不介入だ。それにこの事件はすでに解決した。これ以上俺たちが関わることではないだろう」

これには、梶山、

「それもそうだね!!それに、あんな幸せな幕引きを見せられちゃ、もし逮捕でもしたら、私たち、曜ちゃんたちに嫌われるもんね・・・」

と、南の意見に追随することにした。

 

 こうして、曜とルビィの事件簿、2つ目の事件は美しい幕引きともに終わった。しかし、この物語である疑問が生じた。それは南が言っていた南の関係者のことである。その関係者は子犬を連れ歩いた犯人の次郎が乗った「あそぼーい」に乗ってはずっと次郎のことを監視していた。そして、それが事件解決の糸口の一つとなった。そして、南や梶山の同僚である菅原と松本であるが、次郎が「あそぼーい」に乗車しているときも森や温子のことを調べていたのである。では、この2人以外に南には関係者がいるのだろうか。さらに、その関係者とは誰のことなのだろうか。

 そんな謎を持ちつつ、曜とルビィの旅は続く。だが、翌日、曜とルビィの旅、最終日、またもやとある事件に2人は巻き込まれてしまう。果たしてその事件とはいったい?それは次の物語、「曜とルビィの事件簿完結編」にて語ることにしよう。しばし待たれよ!!

 

曜とルビィの事件簿2~消えた○○~ 完

 

And

 

To be Continue to

 

「曜とルビィの事件簿 完結編」

 

 




あとがき

 皆さん、こんにちは。la55です。
 さて、「曜とルビィの事件簿」も第2弾となりました。今回も新庄さんとのコラボによりお送りしております。前回の「復活のA」がかなりよかったらしくコラボの第2弾として遅れることは本当にうれしい限りです。ただ、自分はミステリーが苦手ということもあり、今回はちょっと趣向を変えて「子犬の捜索」という事件を通じての家族内で起きたミステリーとして書いてみました。皆さん、どうでしたか。ただ、この物語の流れですが、かなり四苦八苦しておりました。どうすればブログから犯人の意図やだれが犯人なのか皆さんにお伝えできるのかどうかなどなど。なので、かなりの難産でした。それでも完成できたことには本当によかったと思っております。でもそのせいかちょっと読みにくい感じになったかもしれません。それについては本当に申し訳ございません。だって、ミステリー、本当に苦手だもん・・・。
 さて、今回の副題「消えた○○」、なんですが、この○○に入る文字ってわかりますか。実はこの○○には複数の文字が入る形でこんな副題にしました。その文字とはなにか。それは、まずは子犬のジロが行方不明になったので「消えた子犬」、続けて、「ゆふいんの森」Ⅱ世という「消えた列車」、キハ185系が名乗ってきた「オランダ村特急」などの「消えた名前」、そして、犯人の次郎こと「消えた次男」などなど。あなたはこの物語を読んでどんな○○を想像したでしょうか。ですが、果たしてこれらは本当に消えたのでしょうか。この物語で伝えたかったこと、それは、これらは消えたのではなく、私たちのなかで生き続けていること、です。列車の名前などはダイヤ改正などで消えていくことが多いです。ですが、その名前自体は現実には消えてもそのものを通じて得ることができた想い出、想いなどはずっと私たちの胸の中で生き続けていきます。なので、決して、
「消える」=「なにもかもなくなる」
というわけではないのです。むしろ、たとえ名前などが消えたとしても私たちがそのものへの想い出、想いをなくさない限り私たちのなかで生き続けるのです。そのため、副題に「消えた○○」とつけさせていただいた次第です。でも、これって「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!」でも言っていなかったけ?まぁ、それについては横に置いときましょう(おいおい!!)
 そんなわけで、物語の最後にも書いておりましたが、なんと、次回、この事件簿の完結編を投稿する予定です。実はこの物語はコラボ第2弾として投稿したのですが、第2弾の物語は今回だけではありません。次回の物語とセットでコラボ第2弾とする予定です。次回ですがあるものに対するなにかを題材にする予定です。これはRailWars!とのクロスオーバー作品ということで日本の鉄道において避けては通れないものかもしれません。これについては次週末には投稿できればと考えております。ですが、まだ鋭意制作中・・・(-_-;)なので本当に投稿できるのか不安です。それでもできれば投稿できればと考えております。なので、それまでお待ちください。それでは、また、さよなら、さよなら、さよなら。


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曜とルビィの事件簿~つばめの謎~ 前編

曜とルビィの事件簿 完結編 ~つばめのなぞ~

 

「ねぇ、ルビィちゃん、イルカ、すごかったね!!」(曜)

「うん、そうだね!!」(ルビィ)

曜とルビィはそう言うと今日の福岡観光を振り返ろうとしていた。

 曜とルビィ、今度リリース予定の「Hppy Party Train」(通称「ハピトレ」)のPVロケ地下見のために3泊4日の日程でここ九州を旅してきた。しかし、そんな曜とルビィにこの旅中にいろんなことが起きてしまった。2日目、「ハピトレ」のPVロケ地になる豊後森機関庫の下見を終えた曜とルビィは豊肥線を走る観光特急「あそぼーい」にて大雨で立ち往生を食らう。その車内で殺人未遂事件に巻き込まれてしまった(詳しくは前々作「復活のA」をご覧ください)。そして、3日目は九州新幹線内で出会った夫婦の子犬誘拐事件に巻き込まれてしまった(詳しくは前作「消えた○○」をご覧下さい)。

 そんなわけで、これまで十分観光を楽しむことができなかった曜とルビィ、最終日となる今日、午前中から福岡を思いっきり観光していた。たとえば・・・、

「太宰府天満宮って学問の神様を祭っているところでしょ。なら、私だけじゃなく千歌ちゃんや梨子ちゃん、月ちゃんの分まで、お守り、買わなくちゃ!!だって、来年は受験だもん、私たち」(曜)

「る、ルビィたちの分もお願いします!!」(ルビィ)

と、太宰府天満宮では曜とルビィは参拝がてら学問成就のお守りを買ったり、

「うわぁ、大きなみこし!!」(ルビィ)

「でも、これって「飾り山」って言うんだって!!」(曜)

と、櫛田神社では博多山笠の「飾り山」をみたり(櫛田神社では奉納された博多山笠の「飾り山」が1年中展示されております)、

「うわぁ、イルカが高く飛んでいったよ!!」(曜)

「これってあわしまマリンパークと同じくらいすごいかも・・・」(ルビィ)

と、マリンワールド海の中道でイルカのショーを楽しんでいたりとこれまで観光ができなかった分まで2人は福岡観光を満喫していた。

 だが、この旅において2人には常に事件が付きまとわれているのかもしれない。それは最終日とて例外ではなかった。それは夕食として博多ラーメンを食べたあとに起きた。博多ラーメンを食べて店を出たあと、博多駅に向かっている曜とルビィ、だったが、突然、

ウウ~ ウウ~ ウウ~

という音が周り一面に響き渡っていた。これには、曜、

「あれっ、なんかパトカーのサイレン音が鳴っているね!!」

と、その音がパトカーのサイレン音であることに気付く。そして、ルビィも、

「曜ちゃん、あれ、見て!!パトカーが博多駅に集まっているよ!!」

と、曜に話しかける。そう、なんとパトカーが博多駅に集結しているようだ。これには、曜、

「と、いうことはなにか事件が起きたのかな?」

と、まるで迷探偵?みたいなことを言いだすも、ルビィ、

「ルビィ、善子ちゃんみたいにいろんな事件に巻き込まれたくないよ~」

と言ってしまう。一昨日、昨日と事件に巻き込まれて事件慣れしてしまった曜に対しルビィはもう事件はこりごりの様子。

(「それよりも、私、そんなに事件に巻き込まれていないから!!それに、善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」byヨハネ。って、詳しくはコラボしている新庄さんの小説をお読みください)

 しかし、そんな曜であったが1つ気がかりがあった。それは・・・、

「ってことは、今、私たちと待ち合わせをしている南さんと梶山さん、もう事件に巻き込まれちゃったんや・・・」

そう、曜、南と梶山のことを心配していたのだった。日本が誇る鉄道、それを管理している國鉄には警察組織がある。國鉄鉄道公安隊。そのなかで選りすぐりの精鋭たちが集まった部署がある。東京公安室公安特捜班。彼らこそヨハネたちが巻き込まれた事件を含む数多くの事件を解決に導いた者たちである。そのなかで主任である南とその相棒である梶山は名コンビとして有名だった。そんな南と梶山であるが、曜とルビィに出会ってまだ3日目だというのに曜とルビィとの間ではすでに旧知の仲みたいな感じを醸し出していた。曜とルビィとの最初の出会いは大雨のために立ち往生していた「あそぼーい」のなかでばったり出会ったのだ。このとき、殺人未遂事件が起きたのだが南の活躍により無事解決。その翌日に起きた子犬誘拐事件では前日に曜たちと連絡先を交換していたため、曜からの要請で南と梶山はリモートとはいえこの事件に駆り出された(というか、梶山が強引に南を誘ったのだが・・・)。それも南の活躍で無事に解決、というか、家族間の問題すら解決してみせたのだった、南が・・・。そして、今日、曜とルビィの九州旅行最終日、ということもあり、曜とルビィは昨日のお礼を兼ねて博多駅で南と梶山と待ち合わせをしていたのである。だが、ここにきてパトカーが南たちとの待ち合わせ場所である博多駅に集まってきている。これはまさに事件である。

 そんなわけで、曜とルビィは博多駅へと駆け込む。そして、博多駅に曜とルビィが到着するとあることに2人は気付く。なんとパトカーが多く集まっているのは在来線側入り口である博多口ではなく新幹線側入り口の筑紫口のほうだった。これには、曜、

「こ、これは、もしかして、新幹線の方で事件が起きたのでは?」

と、コ〇ン風に推理するも、ルビィ、

「曜ちゃん、それ、当たり前だよ!!だって、おまわりさんたち、新幹線ホームに向かっているもん!!」

と曜にツッコむ。そりゃそうだ。だって、警官たち、筑紫口の改札からどんどん新幹線ホームへと上がっているから!!これには、曜、

「少しは探偵気分を味合わせてよ~」

と、嘆きの声をあげる。

 とはいえ、曜とルビィは南と梶山との待ち合わせをしている、ということもあり、曜とルビィは事件が起きているであろう新幹線ホームへと警官たちのあとを追ってのぼっていく。対して、警官たち、自分たちを追いかけてきている曜とルビィのことなんて気にとめていなかった。というかできなかった。なzなら、あまりに突然の事件だったため、野次馬の数が尋常ではなかったのだ。それを警官たちは新幹線ホームにのぼりがてらその対処をしなきゃいけなかったのである。

 そんなわけでやすやすと新幹線ホームにたどり着いた曜とルビィ。そこには熊本発博多行きの800系つばめが到着していた。そんな曜とルビィはある人を探す。すると、すぐに見つかった。その人に曜は元気よく挨拶する。

「あっ、南さんに梶山さん、こんにちは!!」

そう、曜とルビィが探していたのは2人が博多駅で待ち合わせをしていた南と梶山だった。そんな曜の挨拶に、南、

「おう、曜ちゃんじゃないか!!って、ここは事件現場だぞ!!静かにしろ!!」

と、曜に注意すると、曜、

「あっ、ごめんなさい・・・」

と、南に謝ってしまうも、梶山、

「でも、私、待っていたんだよ!!」

と、曜と抱き合って喜ぶ・・・も、ルビィ、まとものことを言う。それは・・・。

「あの・・・、ルビィたち、こんな事件現場の近くに来ちゃってよかったのかな・・・」

って、それはそうだ!!ルビィ、ここに来て自分たちが今していることの重大さを知る。だって、ここ、今、南、梶山、曜、ルビィがいるところ、実は事件現場の近くなのだ。それなのに、そこで気軽に待ち合わせするなんてなんとも言えないものである・・・。

 まぁ、それはそれとして、南、気を取り直して、曜とルビィに対しこんなことを言いだす。

「おい、曜ちゃんとルビィちゃん、ここは事件現場だ!!素人の出る幕じゃない。ここから立ち去ったほうがいい!!」

これには、曜、

「でも、乗りかかった船だし、私たちも手伝わせて!!」

と、南に言うも、南、

「この事件はまえの2件の事件(「あそぼーい」での殺人未遂事件と子犬誘拐事件)とは比べ物にならないぞ!!」

と、脅しをかけるも、ルビィ・・・、

「そ、それは大丈夫、でしゅ!!」

(あっ、噛んだ・・・)(南・梶山)

(ルビィちゃん、肝心なところで噛んだっちゃたよ・・・)(曜)

と、途中で噛んでしまったルビィ・・・であったが、ルビィ、もう一回言い直して、

「南さん、それは大丈夫です!!」

と、今度はちゃんと言えた様子。これには、梶山、

「南、ルビィちゃんもこう言っていることだし、私たちの最後の事件ということでいいんじゃないの」

と、さっぱりと曜とルビィの同行を許してしまった。でも、南、

「しかし、この先には遺体が・・・」

と言うも、梶山、南の方をにらみつけては、

「別にいいでしょ!!」

と言うとこれにはさすがの南も、

「あっ、はい・・・」

と、言い返すことができなかった。こうして、曜とルビィの同行を南は認めざるをえなかった・・・。

 

「いいか、これまでの事件とはかなり違うぞ!!もしかするとあまりの残酷さに気分が悪くなるかもしれないぞ!!」

と、南に注意を受ける曜とルビィ。そんなとき、

「おい、ここは普通の人が入るところじゃないんだぞ!!」

と、曜とルビィに対し新幹線つばめの入口付近にいた警官から呼び止められるも、南、

「すまない。この者たちは私たちの班の研修生だ。研修のためにすまないがそこを通してくれ」

と、その警官に言うとその警官は曜とルビィの腕のところを見る。すると、「研修中」と書かれた腕章をしていた。これは南がこうなるのではと予想?していたのか梶山にお願いして事前に準備していたものだった。で、この腕章の効果は絶大で、その警官、すぐに、

「これは失礼いたしました!!それではお通りください!!」

と、南と梶山、曜とルビィを新幹線つばめの入口を通してくれた。

 その南たち4人であるが、その後、その事件現場の近くまで進むと多くの警官や刑事たちが集まっていた。そして、南は近くにいた刑事に、

「人が殺されたということですが、そのことを詳しく教えてください」

と、事件のあらましを尋ねた。すると、その刑事は今回の事件の概要について話してくれた。

「先ほど、この列車のトイレにて男性の遺体が見つかりました。名前は伊藤悪田、45歳、男性。首のところに絞められたあとがあったので、これは絞殺による殺人だと思われます。死亡推定時刻ですが、遺体発見の30~1時間前だと思われております」

この警官の言葉を聞いて、南、

「教えてくれてありがとう」

と、刑事にお礼を言うと、続けて、

「ところで、被害者についてもう少し教えてもらいたいのだけど」

と、その刑事にお願いをすると、刑事、

「はい、わかりました」

と言っては被害者について簡単に教えてくれた。

「被害者である伊藤悪田ですが、自称鉄道コレクターだったそうです。被害者は日夜日本中の鉄道グッズなどを集めているみたいでした」

 だが、このあと、刑事は被害者に関する悪い情報を教えてくれた。

「しかし、被害者、鉄道コレクターと自称しておりますが、その集め方が本当に悪徳めいたものが多かったようです。どんな手段をとってでも自分が欲しいものは必ず得ようとする、平気で人の弱みを握ってはそれをもって相手に揺さぶりをかけその人のものを奪う、平気で人をだます、それくらいひどいものです。私からしても、被害者、本当に悪徳めいたものを感じてしまいます」

これには、南、

「なら、被害者に対する恨みを持つ者は多い、ってことですね」

と言うと刑事も、

「はい、そうだと思います。しかし、これだと容疑者を絞り込むことは難しいかもしれませんね・・・」

と、つい弱音を吐いてしまった。

 

 南たちはその後、遺体が見つかったトイレのそばに行く。すると、そこには洋式トイレに座った状態の男性の遺体がまだあった。これには、ルビィ、

「うげっ!!」

と、ちょっと吐きそうになる。むろん、いつも陽気な曜もこのときばかりは、

「うわ~、なんかあとで夢に出てきそう・・・」

と、つい弱気になってしまう。しかし、この現場に慣れている南と梶山はというと、

「おい、なんか証拠になるものはないか?」(南)

「はい、今、探しています」(梶山)

と、手慣れたものだった。これには、曜、

(やっぱり2人はすごいや。私たちが遺体を見て怯えているのに2人は遺体のことなんて気にせずに仕事をしている。やっぱりプロだわ、2人とも・・・)

と、南と梶山のことに感心していた。

 そんな梶山であるがついにあるものを見つけた。梶山、それを見て南に報告。

「南、大きなキャリーケースがあります。人一人分ぐらいは入れそうな大きさです」

そう、遺体の横には大人一人分が入りそうなキャリーケースがあった。さらには、

「あと、被害者、なにかを握っている感じですね」

と梶山が言うと、南、

「たしかにそうだな・・・」

と、言っては遺体の手の部分を見る。すると、右手はまるでなにかを握っているようなぐーの形をしていて、左手には犯人と争ったのであろう、まるでなにかをひっかくような仕草を残していた。南、すぐに近いにいた鑑識に対し、

「おい、被害者の爪を採取してくれ。もしかすると犯人に結び付く証拠になるかもぞ!!」

と指示を出しては被害者の遺体の爪の部分を採取させた。

 そして、南は被害者の遺体の右手を見てなにかを握りしめていないかを確認する。すると、右手からポロリとなにかが落ちてきた。これには、南、

「はて、これは・・・」

と、手袋をした手でもってそれを拾い上げるとすぐに南は言った。

「こ、これは、金のつばめのタイピン・・・」

なんと、被害者が握りしめていたのは金色のつばめのタイピンだったのだ。これには、南、それがなんなのかすぐにわかった。それは・・・。

「これって國鉄職員なら必ずもらうタイピンだ・・・」

そう、このタイピン、國鉄職員なら誰でももらえるタイピンだった。國鉄では入社した職員に対して記念にと送られるものだった。むろん、娘案特捜班とはいえ國鉄の一職員である南と梶山も持っているものなのだが・・・、

「でも、俺たちが持っているタイピンはシルバーのものだよな・・・」(南)

そう、南たち一般職員が持っているタイピンは普通の金属めいたシルバーメッキのつばめのタイピンだった。このことを踏まえて、南、こう推測した。

「これってなにかで表彰されるときにもらえる金のタイピンでは・・・」

この南の言葉を聞いて近くにいた車掌が答えてくれた。

「南さん、その通りですこの金のタイピンは國鉄の全職員の憧れ、金のタイピンなのです。國鉄職員のなかで功績があった者に対して贈られるものです!!」

これには、南、

「あぁ、なるほど!!」

と、妙に納得するも、この南の対応に、梶山、

「って、南、そんなことまで知らなかったわけ!!」

と呆れた表情を見せる。どうやら國鉄職員としては常識だったようだ。しかし、事件の謎を解くことに生きがいを感じている南にとってみればそんなことは知らなかったのも無理ではない・・・のかな・・・?

 とはいえ、この金色のつばめのタイピンの発見によって事件は多く進展する。この金色のつばめのタイピンを持つ被害者の姿を見て、南、、

「これってもしかして、ダイイングメッセージでは・・・」

と言うとすぐに鑑識に対し、

「これは被害者のダイイングメッセージに間違いない!!そうじゃなくても重要な証拠だ!!大事にしてくれ!!」

と、そのタイピンを拾って鑑識に渡そうとする。

 だが、こんなとき、どこからともなく、

「私は~名探偵めんこい刑事~♪」

と、あまりに音程が外れた歌声が聞こえてくるとかっこよく着たざった男が登場、そのまま南と鑑識のあいだに割って入りその金色のつばめのタイピンを南から奪うと、

「なんてすばらしいタイピンじゃないか!!」

と言ってはもの欲しそうにそのタイピンを眺めていた。

 そんな失礼すぎる男に、南、

「あなたは一体誰ですか?ちょっと失礼すぎますよ!!それにここは事件現場ですぞ!!」

と、怒りながら言うと、その男、南に対して、

「はて、そんなこと、言えるのでしょうか?美少女3人を連れてハーレムとは、あなたもすみにおけませんね!!」

と南のことをからかった。どうやら、その男、少女3人(梶山、曜、ルビィ)を連れてきている南をどこぞのハーレム男だと断定しているようだった。これには、南、

「彼女たちは俺の立派な同僚たちだ!!馬鹿にしないでくれ!!」

と、怒りの表情。どうやら、南、突然の男の乱入で事件の謎を解くという楽しみを損なってしまった、ということで男に対して怒っているようだ。

 しかし、このままだと先に進めない、ということで、梶山、その男に対し、

「ところで、あなたは何者なんでしょうか?」

と男の正体を尋ねるとここぞとばかりにその男は派手に自己紹介した。

「聞いてくれましたね!!なにを隠そう、私こそ(自称)九州一の名探偵、めんこい刑事、です!!クリアした事件は数知れず、県警からの表彰状はすでに10枚以上!!(自称)九州一の名探偵めんこい刑事を以後お見知りおきを!!」

これには南たち4人とも、

ポカ~ン

と、口をあけて唖然となった。

 そんな南たち4人に対しその男ことめんこい刑事の隣にいた刑事がこのめんこい刑事について話した。

「南さん、唖然とさせてごめんなさい。このめんこい刑事は自分のことを九州一の名探偵と自称している福岡県警の刑事なんですよ。本当はただのヒラの刑事です・・・」

だが、その刑事の言葉にめんこい刑事は反論する。

「自称とはなんだ、自称とは!!これでも私は名探偵なんだぞ!!いくつもの事件をクリア(解決)してきたんだぞ!!それは間違いないぞ!!」

ただ、これには、ルビィ、

 

「本当かな・・・」

と、めんこい刑事に対して疑いの目をみせるも、これについてはめんこい刑事の説明をした刑事から補足説明があった。

「でも、たしかに県警から事件を解決したという表彰状をいくつももらっているのはたしかです。というか、悪運が強いからなのか、たまたま犯人とばったり鉢合わせすることが多く、その場で犯人を取り押さえたり、証拠を犯人がもみ消そうとする現場に出くわしてその場で逮捕、なんてことが多いのです。いやはや、悪運だけで事件を解決するなんて、なんというか、ラッキーボーイっているんですね・・・」

これには、南、

「悪運だけで事件を解決するとは、ある意味すごいとしか言えない・・・」

と、めんこい刑事を見てはただただ感心するしかなかった。むろん、南、心のなかでは、

(ということは、このめんこい刑事、そのこと(悪運だけで事件を解決してきたこと)を鼻にかけてとんでもないことを言いだすのでは・・・)

と、めんこい刑事がへんなことをしないか心配してしまう。

 だが、その不安はすぐに的中した。なんと、めんこい刑事、金色のつばめのタイピンを見て一言。

「ほう、これで事件は解決、と言っても過言じゃないね!!」

これには、曜、

「えっ、このタイピンを見ただけで犯人が誰なのかわかったの!?」

と、びっくりしてしまう。一方、南はというと、

(あちゃ~、これだと事件解決まで遠回りになっちゃうよ・・・)

と頭を抱えてしまう。どうやら、南、このあとの展開が読めてきたようだ。

 そんな南の心配をよそにめんこい刑事は自分の名(迷)推理を展開し始める。

「このタイピン、実は、被害者のダイイングメッセージなのだ!!」

このめんこい刑事の言葉に、南、

(あっ、そこはあっているんだ・・・)

と、妙に感心するも、めんこい刑事、次の瞬間、へんなことを言い始める。

「このダイイングメッセージだが、これはこの新幹線つばめのことを言っているのだ!!」

これには、曜、ルビィ、含めて、

「えっ!!」

と、みんなの驚きの声があたり一面に響き渡った。

 そして、めんこい刑事はその真意を語った。

「被害者はこのつばめで殺された、もしくはこの列車の関係者から殺された、それを指し示すために被害者はこのダイイングメッセージを残したんだ!!」

これにはルビィから、

「でも、そうだとは限らないんじゃないの!!」

と言われるもめんこい刑事はそんなルビィに反撃した。

「言っておくが死亡推定時刻は遺体が発見された30分~1時間前となっている。このつばめの熊本~博多間の運行時間は約50分!!そう考えるとこのつばめのなかで殺されたといっても過言ではないぞ!!」

自分の推理を自信満々で言うめんこい刑事。であったが、これには、曜、

「なんか都合よくできていない?」

と、めんこい刑事にツッコむとめんこい刑事、

「名探偵の俺から言うのだから間違いない!!」

と、持論を曲げない。それどころか、

「犯人はこのつばめの関係者だ!!全スタッフを集めてくれ!!」

と、命令されてしまう。これには、南、

(あぁ、あんなのがいるからこっちは苦労するんだよな・・・)

と、半場諦めの表情・・・。

 

 そして、めんこい刑事の指示通りこの新幹線つばめの全スタッフ全員を集めた・・・のだが、

「なに!!だれもこの男(被害者)のことを知らないだと!!」(めんこい刑事)

なんと被害者のことをこのつばめのスタッフ全員が知らないと言っているのだ。それどころか、

「それにだれも金のつばめのタイピンを持っていないだと・・・」(めんこい刑事)

そう、この新幹線つばめのスタッフ全員金のつばめのタイピンをもらっていない、というか、それを実際に見たことがないのだ。たしかにそうかもしれない。金のつばめのタイピンは國鉄から表彰を受けたものしかもらえない。なので、金のつばめのタイピンを所持している、見たことがある、ということがなかったりするのだ。

 ぞんなわけでした、めんこい刑事、ついにはこんなことを言いだす。

「それなら、この列車に防犯カメラはついていていないのか?」

めんこい刑事、どうやら列車内の防犯カメラで被害者の行動を確認しようとしたのだが・・・、車掌から、

「すいません。この車内には防犯カメラは設置しておりません」

と言われる。つい最近になって新幹線の車内にも防犯カメラの設置が進んでいるのだが、まだ普及したばかりということもあり、この新幹線つばめにはまだ防犯カメラは設置されていなかったのだ。

 しかし、めんこい刑事、めげない!!今度は、めんこい刑事、

「なら、熊本駅に設置している防犯カメラで被害者を見つけろ!!」

とほかの刑事たちに命令する。すると、すぐに刑事たちは熊本県警に連絡、すぐに熊本駅とその周辺の防犯カメラの映像チェックを行うこととなった。すると・・・、数分後、

「めんこい刑事・・・、新幹線ホームの防犯カメラには被害者らしき姿はありませんでした!!」

という嘆きの声が聞こえてきた。これには、めんこい刑事、

「なんだって!!」

と愕然となるもすぐにあることを思い出す。そう、被害者の遺体の横にあった大きなキャリーケースである。それを思い出しためんこい刑事、ある推理を言いだした。

「そうだ!!犯人は熊本駅の近くで被害者を殺しこのキャリーケースでもってこの車内のトイレに遺体を置いたんだ!!」

これにはまわりから、

「おぉ!!」

という驚きの声が聞こえてきた。

 そして、それを指し示すような情報がめんこい刑事のもとにもたらされた。それはめんこい刑事の隣にいた刑事からのものだった。その刑事はめんこい刑事に対し、

「めんこい刑事、熊本県警からです!被害者は熊本駅近くのホテルに宿泊していたという証拠がとれました!!」

なんと被害者が昨日熊本駅近くのホテルに宿泊していた、という証拠がみつかった、というのだ。その証拠とは、被害者が宿泊していたホテルの従業員の証言、そして、そのホテルの宿泊者台帳、だった。その宿泊者台帳には被害者の直筆で被害者の住所などが明記されていた。

 そんなわけで、めんこい刑事、すぐにまわりの刑事たちに対し、

「この殺人事件の犯人はこのキャリーケースの持ち主でありこの新幹線つばめの乗客のなかにいる!!徹底的に調べよ!!」

と命令すると刑事たちはこの新幹線つばめに乗車されたと思われる人たちに聞き込みをしてまわることに・・・。

 だが、このめんこい刑事の名(迷)推理にルビィ、

「あぁ、あくびが出るほどつまらないよ・・・」

と、悪ルビィ・・・みたいな毒舌で言ってしまう。そんなルビィだったが、いまだにそのままにしている被害者の遺体を見ては、

「でも、なんかこの仏さん、寒がっているように見えるね・・・」

と、ついそんなことを言いだしてしまう。これには、梶山、

「えっ、寒そうにしているって!!」

と、ルビィの発言に驚きの表情を見せるとルビィはさらにこんなことを言った。

「なんかね、この仏さん、濡れているようにみえるの!!」

 このルビィの言葉を聞いて、南、

(えっ、なんだって!!)

と驚くと、そのルビィの言うことが正しいのかその被害者の遺体を見ると、

「た、たしかになにか濡れているように感じるな・・・」

と、驚きの表情をみせる。そう、なんと被害者の遺体はなにかによって濡れてしまったようなあとが残っていたのである。いや、遺体だけはない。被害者の服も少し濡れていたのである。

 と、ここで、曜、ルビィに続けとばかりにこんなことを言いだす。

「ルビィちゃんが「仏さんが濡れている」って言うんだったらもしかするとこのキャリーケースも濡れているんじゃないの?あの刑事(めんこい刑事)の言うことは気に障るけと、トイレに大きなキャリーケースってちょっとおかしい気がする!!」

この曜の言葉に、南、

(たしかにこんなトイレに大きなキャリーケースだなんておかしすぎる!!これは調べてみないと・・・)

と思ってはすぐに福岡県警の刑事の了解をえてその大きなキャリーケースを開けてみる。すると・・・、

「た、たしかにこのキャリーケースの中は濡れているな・・・」

なんと、キャリーケースのなかも濡れていた!!いや、濡れていた、というよりも、その濡れていた部分を触ると少しひんやりする、そんな感じであった。これには、南、

(こ、これはもしかするとなにか冷たいものを運んだのかもしれない・・・)

という考えをもつようになった。

 こうして、「つばめ」「大きなキャリーケース」「濡れた感じ」、この3つのヒントをもとに南はこの殺人事件の推理を始めた。まずは・・・、

(「つばめ」、これは被害者のダイイングメッセージに間違いない。それに、このキャリーケース、ほかの場所で殺した被害者を詰めて持ってきたことには間違いないだろう。その意味でもあのめんこい刑事と同じことを言っている・・・)

と、めんこい刑事の推理もあながち間違いではないことを認めつつも南はその先の推理を始める。

(でも、金のつばめのタイピン、それを指し示すのはこの新幹線つばめじゃない。もっとほかのものを指し示すのではないか。たとえば、國鉄バスとか・・・)

と、つばめと関係あるものをあげていくとそれらはすぐに外されてしまう。事件とはまったく関係ないものだからだ。あげたらすぐに消えていく、それを繰り返す南。

 そんなときだった。突然、南のスマホが、

トゥルトゥルトゥル

の鳴り出すと、南、

「はい、南ですが・・・」

と、かかってきた電話に出る。すると、そのスマホから、

「南さん、南さん、私だよ!!梶山さんから聞いたよ!!「つばめ」で困っているってね!!それならとっておきのものが在来線に止まっているよ!!私、今日はこのビュッフェのチーフパーサーとして働いているんだよ、って、これ、南さんからの指令だもんね・・・。でもね、今日に限って乗客のみんさんに料理を提供することができなかったんだよ。だって・・・」

という声が聞こえてくる。南、それをメモするとすぐに電話を切った。

 そして、南はあることに気付いた。

(そうか!!つばめはつばめでもあのつばめのことをあいつは言っていたのか!!なら、犯人はある理由で被害者の遺体をあれで運んだんだな!!だって、あれにはビュッフェがついているからな!!たしかあれにビュッフェが設置されたのは数十年ぶりって言っていたしな!!)

この考えのもと、南は梶山と曜、ルビィに対しこう言った。

「梶山、曜ちゃん、ルビィちゃん、俺たちは今から別の場所に行く、もう一つの「つばめ」にな!!」

この南の言葉を聞いて、ルビィ、

「南さん、もしかして、ダイイングメッセージの意味、わかったの?」

と、南に尋ねると、南、自信満々に答えた。

「あぁ、その答えは在来線ホームにある!!」

 

 そして、南たちは在来線ホームに行くとそこにはいろんな列車とともにグレーの特区う列車が止まっていた。けれど、普通の特急列車とはちがいまるで真新しいグレーの塗装とともにまるで豪華列車であるかのような雰囲気を醸し出していた。これには、ルビィ、南にこの列車のことについて尋ねた。

「南さん、この列車ってなに?」

 すると、南はこの列車についてこう答えた。

「この列車はね、この秋デビューしたばかりの観光特急787系「36+3」だよ!!」

「36+3」、國鉄九州総局は究極の列車として豪華列車「ななつ星in九州」を九州内に走らせては九州の観光の起爆剤として活用していた。だが、2~4日かけて九州内をまわるのとあまりの豪華さもあってか1番安い部屋でも何十万もの運賃がかかる、そして、それでも乗車希望者が多く、乗るための倍率もかなり高い、そんなことが起こっていた。そういうこともあり、二十数年にわたり九州内で特急として使用されていた787系を改造、「ななつ星」みたいな宿泊設備はないものの内装などは豪華にし、九州内を1週間かけて走破する列車「36+3」を九州総局は作り上げたのである。この列車、内装は豪華であり、さらに787系がデビューしたころに設置されていたあるものを復活させたのである。それでも1日あたり1万円台で乗車できる、という「ななつ星」と比べてリーズナブルな豪華列車であった。

 そんな787系「36+3」であるが、今日は博多→長崎→博多という経路を走破しここ博多駅で乗客をおろしたあと、今から車庫に帰るところであった。そんなこともあり、南、すぐに「36+3」のところまで急いで行った、という次第である。

 そんなわけで、南、すぐに「36+3」のスタッフ全員に聞き込みをする。すると、ある場所のチーフパーサーらしき50代くらい?の女性が出てきてはこんなことを言いだしてきた。

「わたしはこの「36+3」のビュッフェでチーフパーサーをしております・・・」

この女性チーフパーサーの言葉に、曜、びっくりする。

「えっ、ビュッフェって食堂車みたいなものだよね!!それがこの列車についているの!?」

そう、なんと「36+3」にはビュッフェが設置されているのだ!!といっても「あそぼーい」や「ゆふいんの森」号に設置されているミニビュッフェではない、本格的なビュッフェである。これについて、南、証言する。

「実は787系は、昔、ビュッフェを設置していたんだ。787系が走り始めたころ、博多~西鹿児島(現鹿児島中央)間を4時間以上というロングランだったこともあり、この787系にはビュッフェが設置されていたんだ。ただ、その後、九州新幹線がもうすぐ開通するということもあって787系のビュッフェの営業は終わってしまいブッフェだった車両は普通の座席車として改造されることとなった。しかし、改造するにあたって荷物を置く荷棚を設置することができなかったため、ビュッフェ車から改造した座席車の座席のシートの間隔ははほかの車両と比べて広めに作られたんだ。そのためか、ビュッフェ車から改造された座席車の座席はグリーン車なみのシート間隔になってしまったんだ」

ちょっとしたうんちくを披露した南、であったが、すぐに、

「そして、この「36+3」に改造されるにあたり、787系の特徴の1つだったビュッフェを復活させたわけ」

とどや顔で言ってしまう。

 この南の熱い説明に、曜、ルビィ、ともに、

「な、なるほど・・・」(ルビィ)

「787系ってそれくらいすごい列車なんだね!!」(曜)

と、感心してしまうも、とうの女性チーフパーサーはというと、曜とルビィのその姿を見ては、

「これくらいで感心していては、私の正体、知ったときには腰を抜かしちゃうよ、曜ちゃん、ルビィちゃん・・・」

と、ぼっそと言ってしまう。ただ、この声が聞こえたのか、曜、

「あれっ、だれかに呼ばれた気がする・・・」

と、周りを見渡すと、そのパーサー、一瞬、

ぎくっ

となってしまう。しかし、曜はだれが自分のことを呼んだ人を見つけることができず、ただ、

「もしかすると他人のそらにかな・・・」

と言って南のいる方を向いてしまう。これには、女性チーフパーサー、

ほ~

と、胸をなでおろしていた。

 そんな女性チーフパーサーであったが、南に対しこんなツッコミを炸裂させる。

「そんな説明は抜きにして、刑事さん、なにか聞きたいことがあるのではありませんか?」

これには、南、

「あっ、すまない、すまない。あなた方に聞きたいことがありました」

と言うと、女性チーフパーサーのそばに集まった「36+3」のスタッフたちに対しこんなことを聞いてきた。

「ところで、「36+3」の運行中、なにか変わったことはありませんでしたか?」

これにはその女性チーフパーサーが答えてくれた。

「2点ぐらいありました。まずは、今日、長崎から博多までの運行する前、ビュッフェの冷凍庫がいきなり壊れたとの連絡がありました。そのため、乗客のみなさんに料理の一部が提供できない状況が起きました」

これには、南、

「その冷凍庫ですがすでに修理は頼んでいるのですか?」

と、その女性チーフパーサーに尋ねると、その女性チーフパーサーはこう答えた。

「このあと、車両基地に戻ってからもう一度確認するつもりです」

 そして、女性チーフパーサーから2点目の説明をした。

「あと、これはスタッフ内の話ですが・・・」

と、前置きをしつう、続けて、

「金井さんというビュッフェの調理スタッフ、少し高齢ですがそれでも「36+3」のビュッフェの冷蔵庫・冷凍庫を管理しているすごい方なのですが、その方が大切にしていたタイピンをどこかでなくしたと騒いでいました。そのため、私たちはビュッフェ内をくまなく探したのですが見つからず、今回の冷凍庫の故障、そして、なぜか腕をケガしたということで今は休んでもらっております」

というと南はそのスタッフについて詳しくその女性チーフパーサーに尋ねた。

「その調理スタッフですが、どんなタイピンをなくされたと言っているのですか?」

これには、女性チーフパーサー、そのことについて答えた。

「そのスタッフの方は、昔、國鉄に務めていた、とのことです。その後、定年退職をしてしばらくは隠居生活をしていたみたいですが、この度、「36+3」のスタッフとして再び働き始めた、と聞いております。また、なくされたタイピンについては、昔、國鉄に務めていたときにもらったものだと聞いております」

 この女性チーフパーサーの言葉を聞いて、南、あることを決断する。

「あの~、すいませんが、女性チーフパーサーさん、ビュッフェの中をちょっと見せてくれませんでしょうか?」

と、南、その女性チーフパーサーさんに頼むと、その女性チーフパーサーはすぐに上に連絡、すると、

「上のものからの許可が下りましたので今からご案内いたします」

と、女性チーフパーサー自ら南たちを「36+3」のビュッフェへと案内してくれた。

 

「うわ~、すごく豪華だね~」

木がふんだんに使われたビュッフェを見て曜はびっくりしていた。だって、こんな豪華なビュッフェがついた列車なんて見たことがないからだ。それはルビィにもあてはまった。

「こんなところで食事したらおいしそう・・・」

と、よだれが今にもでそうなルビィ。そんな2人をしり目に南は梶山を連れてビュッフェの中に入った。

 そして、冷凍庫の前に立つと南と梶山は手袋をして、

「それじゃ中をみさせてもらいますか」

と言っては冷凍庫の中を確認する。すると、なにかわかったのか、女性チーフパーサーに対してこんな質問をした。

「この冷凍庫が先ほど話してくれた壊れた冷凍庫ですか?」

これには、女性チーフパーサー、

「はい、たしかに今さっきまで壊れていた、と聞いております」

と答えてくれた。

 だが、南、、なにかおかしなことを言いだしてきた。

「え~と、「壊れていた、と聞いております」って誰が言っていたのですか?」

これには、女性チーフパーサー、

「はい、この冷凍庫を管理している金井さんからです。報告では、長崎を出発する前に冷凍庫が壊れてしまったとのことです。むろん、金井さんが提出した(冷凍庫の)食材も解けかけていました」

と南に答えてくれた。

 この女性チーフパーサーの話を聞いて、南、もう一度冷凍庫の中を確認するとこんなことを言いだしてきた。

「うむ、壊れていた、という割にはちゃんと動いていた形跡がある・・・」

これを聞いてか南たちのあとにビュッフェのなかに入ってきた曜から、

「それって別に壊れていたわけじゃないんだね!!」

と言われると、南、その曜の言葉にあることを付け加えた。

「いや、壊れていなかった、というよりも、完全にフルパワーの状態で動いていた、と言うのが正解かもな」

 そして、冷凍庫の中を曜とルビィにみせるとルビィはこんな声をあげた。

「うわ~、霜がいっぱい!!」

そう、冷凍庫のなかは霜でいっぱいだったのである。

 そして、南はみんなに対してこう言った。

「先ほど、女性チーフパーサーは「食材が解けかけていた」と言っていあ。これだと冷凍庫が本当に壊れた、と思っても仕方がない。けれど、今、冷凍庫の中を確認してみると霜が多い。これだと「壊れた」というよりも「フルパワーで動いていた」と言わざるを得ないね」

 さらに梶山は冷凍庫の中を見てあるものを見つける。それは、

「南、なにか冷凍庫の中、その下部分に赤いものを見つけたよ!!」

この梶山の言葉に、南、

「よしっ、梶山、その赤いものを鑑識にまわしてくれ!!」

と指示、すぐに鑑識が入り赤いものを採取していた。

 そして、南はすぐに熊本にいる菅原たちに連絡をとると、

「菅原に松本、すぐにある場所に行ってくれ!!場所は熊本城近くにある桜町だ!!」

と言っては菅原たちを熊本の桜町へと向かわせた。

 そして、10分後、その菅原たちから連絡があり、

「南、裏がとれました!!被害者、思った通り、それで動いていました!!」

という報告を受けた。

 そして、南は梶山に対しある指示を出した。

「梶山、これですべてが分かったぞ!!みんなを集めてくれ!!新幹線つばめのスタッフも「36+3」のスタッフもすべてな!!」

 

 と、南がこんなことを言っていたとき、めんこい刑事はというと・・・、

「おい、被害者の熊本の足取りはいまだにわからぬのか!!」

と、めんこい刑事が焦ったかのように言うとほかの刑事から、

「今日のホテルを出るまではわかったのですがそのあとの足取りについては不明です!!」

という答えが返ってきた。被害者がホテルを出るまでの足取りはわかっていた。だが、そのあとの足取りについては不明だった。そこで、めんこい刑事、熊本県警に熊本駅付近に設置されている防犯カメラの映像の解析を急がしていた。けれど、熊本駅付近だけでも防犯カメラの数はけた違いに多く、そのすべてを解析するのは至難の業だった。それでもめんこい刑事は自分の推理に自信があるのかそんなことまで強要してきたのだ。

 だが、それは次の刑事からの報告により終わりを迎えようとした。いきなり別の刑事からこんな報告が舞い降りてきた。

「めんこい刑事、大変です!!上から、福岡県警のこの事件に関わる者すべてこのホームから引き揚げよ、という指令が届きました!!いや、それどころか、めんこい刑事を含む主要メンバーは今すぐ在来線ホームに直行するよう、との指令を受けております!!どうやらほかの者がこの事件の真相を解いたとのことです!!」

これには、めんこい刑事、

「な~に~!!」

と歌舞伎口調で答えるとすぐに、

「ま、まさか、この私のほかにもこの事件の推理をした者がいるのか!?」

と、びっくりするように言った。まさか自分以外にこの事件の真相を暴こうとしている者がいるとは。

 しかし、めんこい刑事、めげてなかった。

(いや、単なるはったりだろう。この私こそ真の探偵なんだから!!)

そう思いつつも指令ということもありすぐに在来線ホームに行くことにした。



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曜とルビィの事件簿~つばめの謎~ 後編

 そして、南に呼ばれた者全員が「36+3」が停車しているホームに集まった。そんななか、南は集まった人たちに対し、

「みなさん、集まってきてくれてありがとうございます」

とお礼を言うとすぐにこう言った。

「さて、今日の新幹線つばめでの殺人事件、その犯人がわかりました。それでは順に説明していきましょう」

 そして、南、この事件について話し始めた。

「さて、まずは被害者の伊藤さんですが、殺された場所、それは熊本でも新幹線つばめのなかでもありませんでした」

これには集まった人たちから、

「たしか、殺された場所って熊本か新幹線つばめの中では?」

「うそでしょ!?」

という言葉が聞こえてくると南は殺された本当の場所を答えた。

「実は、長崎、だったのです!!」

これにはまわりから、

「え~!!」

という声が聞こえてきた。

 しかし、ここで上からの指示で在来線ホームに来ていためんこい刑事が反論する。

「だが、死亡推定時刻は遺体が見つかるまえの30分~1時間だったんだぞ!!」

 だが、それについては、南、言い返した。

「たしかに死亡推定時刻は30分~1時間前でした。けれど、本当の死亡推定時刻を偽装していたとしたらどうですか?」

これには、めんこい刑事、

「うぅ」

とうなるだけで反論できず。

 そして、南、犯人が死亡推定時刻を偽装した方法を言った。

「実は犯人ですが、死亡推定時刻を偽装するためにある方法をとりました。それはフルパワーの冷凍庫に遺体をいれておくことです。遺体をフルパワーの冷凍庫にいれておくことで死後硬直を遅らせることができるのです!!」

 しかし、これにも、めんこい刑事、食い下がる。

「しかし、たとえそうだとしてもそんないい話ってないだろ!!長崎で殺されて冷凍庫を借りてここ博多駅まで来たっていうのか!!それだと逆に目立ってしまうじゃないか!!」

 しかし、これも、南、逆に言い返してしまう。

「あぁ、そんな都合のいい話なんてないって!!でも、実はそれがあるのですのよね~」

そして、南はある方向を指してこう言った。

「被害者の遺体を運んだもの、それは、この「36+3」なんです!!」

これにはみんなから、

「え~!!」

というどよめきの声が聞こえてきた。

 だが、ルビィ、南の真意に気づいたのか、あることを思い出してこう言った。

「あ~、壊れていたと思われていた冷凍庫!!」

これには、南、すぐに反応。

「そう、ルビィちゃん、その通り!!」

 そして、ある真実を南は話し始めた。

「この「36+3」にはビュッフェが設置されているのですが、今日、この「36+3」の冷凍庫が壊れてしまったという報告を受けてビュッフェの一部の料理が出せない状況だったそうです。いや、提供することができなかった、というのが正しい言い方でしょう。だって食材のかわりに被害者の遺体を冷凍庫にいれていたのですから。さらに少しでも死亡推定時刻を偽るために完全フルパワーで冷凍庫を動かしていた。こうなると被害者の死亡推定時刻を偽りやすくなります」

 そして、南、その証拠となる冷凍庫のなかを写した写真をみんなの前に突きつけた。

「その証拠ですが、「36+3」の冷凍庫は壊れていた」という報告をビュッフェのチーフパーサーが受けた際、食材が解けかけていた、という報告もありました。しかし、この博多駅で「36+3」の冷凍庫のなかを確認したとき、写真の通り、霜がたくさん発生しておりました。これは、壊れていた、のではなく、完全フルパワーで動いていた、その証拠なのです!!」

これには、みんな、

「たしかに言われてみれば・・・」

と、納得の表情。

 しかし、ここでも、めんこい刑事、食い下がる。

「しかし、たとえそうだとしても「36+3」と被害者の関係はどう説明するのかね」

 だが、これにも南はたんたんと答えた。

「たしかにその関係性について疑問だと思いますが、それについても説明ができます、あの被害者が残してくれたダイイングメッセージでね!!」

 そして、南は被害者が残してくれたダイイングメッセージの真意を教えてくれた。

「実はあの金のつばめのダイイングメッセージですが、そのつばめが指し示すものとは、あの遺体が見つかった新幹線つばめではなく、この787系「36+3」のことを言っていたのですよ!!」

これには、一瞬、

「え~!!」

というどよめきが起きるも、南、この787系について語り始めた。

「この787系なのですが、昔、「つばめ」という名称で特急として走っていたのです!!」

そう、787系、実はレビュー当初、「つばめ」として博多~西鹿児島間を走っていたのである。特急「つばめ」、当初は鹿児島本線を走る特急「有明」として運用していたものをその「有明」の運用のうち博多~西鹿児島間の運用を独立させたものが特急「つばめ」である。その「つばめ」型車両として開発された列車、それが787系である。この787系、博多~西鹿児島間を4時間以上かけて走破するため、特急としては珍しくビュッフェ車両が設置されたり専用のグリーン個室があるなど「つばめ」に恥じないくらいの豪華な設備を誇っていた。そんなこともあり、787系は一躍國鉄九州総局の顔として認知されることとなった。また、787系はのちに「つばめ」型車両といわれるようにもなった。さらに、博多~熊本間を走ることとなった特急「有明」にも787系が使われることも多くなった。しかし、九州新幹線の開業などにより、ビュッフェの廃止、特急「つばめ」としての運用がなくなるなどして787系は鹿児島本線単独での運用がなくなるとそれ以外の路線での運用が多くなった。たとえば、博多~長崎間の「かもめ」、博多~佐世保間の「みどり」などなど。そのため、昔みたいに「つばめ」型車両といわれなくなったものの今でも九州総局の特急の主力として活躍を見せている。

 と、そんな説明を南がしたあと、南、続けて、

「そして、そんな787系を昔以上の豪華列車として改装したのがこの787系「36+3」なのです!!」

と言うと、「36+3」のスタッフ全員から突然の拍手が送られてしまった。

 だが、その説明を受けたとしても、めんこい刑事、しつこく食い下がる。

「しかし、たとえそうだとしてもそれがこの列車を指し示すものとは限らないだろうが!!」

 しかし、これにも、南、反論する。

「まだ納得していないみたいですね、めんこい刑事さん。でもね、これはただのつばめのタイピンじゃないのです。金メッキが施されているつばめのタイピンなんですよ。この「36+3」も「つばめ」型車両の上をいく列車なのです!!そのことを含めてのダイイングメッセージなんです!!」

これにはさすがのめんこい刑事も、

「うぅ」

と、うなるしかなかった。

 だが、それでもめげないのがめんこい刑事である。ダイイングメッセージについては諦めたのか、

「たとえそうであったとしても被害者は前日熊本にいたんだぞ!!それが今日になって被害者が長崎にいるなんて、それっておかしくないか!!被害者はどうやって長崎に行ったんだ!!」

と、南に反抗する。

しかし、その反抗すら予想していたのか、南、すぐにこんなことを言いだしてきた。

「あぁ、被害者である伊藤さんですが熊本から長崎までちゃんと移動しましたよ!!」

これには、めんこい刑事、反論。

「おい、それは無理だろ!!だって熊本から長崎まで列車に乗ったという形跡がないんだぞ!!被害者、熊本駅から列車に乗った様子などなかったんだぞ!!」

たしかにそうである。被害者は熊本駅から列車に乗ったとみられる防犯カメラの映像なんてなかったのである。

 しかし、これについて、南、ちゃんとした証拠を持っていた。それは・・・。

「あぁ、めんこい刑事、移動手段が列車だけだと思っているのですか?ほかにもあるんですよ、熊本から長崎まで行く交通手段が・・・」

これには、めんこい刑事、

「それはなんなんだね?」

と、南に言い返すと、南、余裕をもってこう言い切った。

「それはですね、「りんどう」号ですよ!!」

これには、めんこい刑事、

「「りんどう」」号?そんな列車なんてないぞ!!」

と起こりながら言うと、南、その「りんどう」号について話した。

「あぁ、たしかに「りんどう」号なんていう列車はありません。でもね、ちゃんとした名称なんですよね、高速バスのね!!」

これには、みんな、唖然となるも、南、そのまま答えた。

「「りんどう」号、熊本~長崎間を結ぶ高速バスです。でね、私の同僚(菅原と松本)にお願いして熊本の桜町にあるバスターミナルで高速バス予約センターの場所を聞き出し、(上の許可を得て)予約センターで被害者である伊藤さんがその「りんどう」号に予約していないか確認をとりました。結果、ビンゴ!!伊藤さん、本名でこの「りんどう」号に予約しており長崎まで移動していたみたいです」

これには、めんこい刑事、

「うぅぅ」

と、うなるしかなかった。

 さらに、南、こんなことまで言ったりした。

「そしてね、実は被害者の着ていた服に濡れたあとが見つかりました。そして、その被害者の遺体の隣にあったおおきなキャリーケースのなかも濡れた形跡が見つかりました。これって「「36+3」の冷凍庫で運んだ被害者の遺体をあの大きなキャリーケースに入れて新幹線つばめまで運び、その新幹線つばめのトイレにそこで殺された風に置いた」ってことにはなりませんかね」

 そして、これを証明するかのように鑑識の結果が南のところにもたらされた。で、

「で、鑑識の結果が今届きましたが、それによると、被害者の服から濡れたあとが見つかった、とのことです。それもなにかによって凍らされた感じだったそうです」

と、南、鑑識の結果を言うと、続けて、

「そして、「36+3」の冷凍庫のなかには赤いもの、いや、血、が付着していたのですが、それも鑑識にまわしたところ、その血は被害者のものではありませんでした」

と言うと意外なことを言いだしてしまう。

「その血ですが、この「36+3」のあるスタッフ、というか、あの冷凍庫を管理しているスタッフの金井さんというものとわかりました」

これには、「36+3」のスタッフ全員から、

「えっ!!」

という声があがってきてしまう。

 そして、ついに南はこの事件の真犯人の名を言った。

「そう、この事件の真犯人、それは、「36+3」のビュッフェにて冷凍庫を管理している金井さん、だったのです!!」

もちろん、これには「36+3」のスタッフ全員から、

「うそでしょ・・・」

「なんで・・・」

という声が聞こえてくるとともに、

「おい、俺が犯人だなんて勝手に決めるな!!」

と、年配のスタッフが突然南の前に現れた。これには、南、

「ほう、あなたが金井さんですか」

と言うと金井の姿をまじまいと見る。すると、金井、腕の部分をケガしているのか腕を包帯でぐるぐる巻きにしていた。そんな金井の姿に、南、

「金井さん、なんで腕をケガしているのですか?」

と、金井に尋ねると、金井、

「これはちょっと金網に腕をひっかけてしまってな、それで・・・」

と答えてくれたが、そのとき、南、突然、金井の腕をとり、

「ほう、その割にはちょっと大げさに包帯を巻いていますね・・・」

と、金井の腕にしていた包帯をとってしまった。その南だが、金井の腕をまじまじで見るとそこには、

「これ、どうみても金網にひっかけたとはいえないですね」

と、南がいうくらいまるで誰かに引っ掛かれたような傷の線が4本できていた。

 そして、南は決定的な証拠を金井に突きつけた。

「金井さん、被害者である伊藤さんの爪からあなたの皮膚と血が検出されました。もう言い逃れはできませんよ!!」

そう、金井の腕の傷跡、それは被害者である伊藤が金井に対して自分の爪でひっかいた後だった。南、実は被害者である伊藤の遺体を見たとき、伊藤の手の爪になにか付着していたことに気付いたのだ。そのため、その爪に残っていたものを鑑識に出していたのである。それが金井のDNAと一致したのである。これには、金井、

「うぅぅ」

とうなるだけ。金井、もう言い逃れすることができなくなった。

 そんな金井に対し、南、被害者である伊藤を殺した動機について語り始めた。

「金井さん、あなたにとって大切にしていた金のつばめのタイピン、それを伊藤から狙われたことがとてもいやだった。だけど執拗に伊藤に狙われたため、それがいやで伊藤を殺したんですよね」

 この南の発言を聞いてか、金井、重い口を開いた。

「あぁ、そうだとも。俺の持っていた金のつばめのタイピンを高値で買ってあげる、って伊藤に言われたことがことの始まりだった。

 そして、金井、伊藤に狙われたことの顛末を話してくれた。

「俺が持っている金のつばめのタイピンは俺が國鉄に所属していたときに表彰を受けてもらったものだ。それを伊藤から狙われていたんだ。この「36+3」のスタッフとして採用される前、伊藤から突然連絡があった、この金のつばめのタイピンを高値で買ってあげる、って。でも、俺にとってみればそのタイピンは命の次に大切なものだった。だから、伊藤からのお願いをすぐに断った。だが、あの男(伊藤)は執念深い男だった。ことあるごとに「売ってくれないか」「高値で買うよ」と言ってきた。俺はそれに対して幾度も断っていたがその男はめげずに何度も言ってきた。しまいには、あの伊藤、脅しに近いものまで言うようになってきた。それをするくらいのあの男の執念深さには俺としても精神的に参ったよ。だから、俺はあの男を長崎に呼び出し「36+3」の車内で殺したんだよ」

あまりにショッキング的な内容にまわりは静まり返る。

 だが、それを打ち破ったのはあの「36+3」のビュッフェの女性チーフパーサーだった。その女性チーフパーサーは金井に対してこんなことを言った。

「でも、金井さん、たしか大切なものをなくした、って言ってなかったですか?」

みなさんは「36+3」のビュッフェで南たちが調べていたとき、女性チーフパーサーが言った言葉を思い出してほしい。このとき、女性チーフパーサーは「ビュッフェの調理スタッフ(金井)は大切なタイピンをなくした」と言っている。そう、金井はこのとき大切にしていた金のつばめのタイピンをなくしていたのだ。そして、その女性チーフパーサーの言葉に、金井、

「あぁ、俺が伊藤を殺したあと、俺のタイピンがないことに気付いたんだ!!いったどこにあるんだ、俺のタイピンは!!」

と嘆いてしまった。

 そんな金井を見たのか、南、金井が被害者である伊藤を殺したあとの流れを語った。

「金井さんは伊藤さんを殺したあと、「36+3」のビュッフェの冷凍庫に殺した伊藤さんの遺体をいれてフルパワーにすることで伊藤さんの死後硬直を遅らせて死亡推定時刻を欺くとともに博多駅までその遺体を運んだんだ。その後、あらかじめ用意していてキャリーケースに伊藤さんの遺体を入れて新幹線の清掃員として新幹線つばめに潜入、その車内のトイレに伊藤さんの遺体を放置した、まるで新幹線つばめのトイレで殺されたようにしてね!!」

 だが、この事件の流れよりも、金井、

「ところで、俺が大切にしてきたタイピン、どこにいったんだよ~!!」

と嘆いていると、南、こんなことを言いだしてきた。

「そのタイピンだが、伊藤さんがずっと持っていたよ、そのタイピンをまるで死んでも離さない、そんな感じでね・・・」

これには、金井、

「くそ~、あの伊藤が持っていたのか!!あの伊藤だけには渡したくなかった、あのタイピンは・・・」

と、とても悔しそうな顔を見せると、南、

「金井さん、一体どうしたんですか?」

と金井の突然の表情変化に逆に困惑してしまった。

 そして、金井はまるでダムが決壊したかのような論調で伊藤に対する思いを暴露した。

「伊藤、いや、あの悪魔はわが国が誇るつばめを侮辱したのです!!」

これには、南、

「つばめを侮辱した!?」

と、金井に聞き直すと、金井、それについてまくしたてるかのようにこう言った。

「あの男(伊藤)は國鉄が誇るつばめの歴史にケチをつけようとしたんだ!!」

 で、この金井の言葉を聞いて、南、

「あぁ、なるほどね!!」

と、1人納得の表情をみせる。そんな南の姿を見て、ルビィ、その南にあることを尋ねる。

「あの~、南さん、國鉄とつばめってどんな関係があるの?」

これには、南、こんな風に答えた。

「国鉄とつばめ、それは切っても切れない関係なんだ」

 そして、南は國鉄とつばめの関係について語り始めた。

「つばめ、戦前、國鉄はある列車に「つばめ」という名称を付けたときから切っても切れない関係になったんだ。戦前、日本を代表する超特急が誕生した。それは東京~神戸間をこれまでの特急とは比べ物にないくらい早い時間で走破した。そんな特急の名称を一般公募したのだけど、その結果、その超特急の名称は「つばめ」に決定した。そして、超特急「つばめ」の名はのちに國鉄のシンボルになるくらいインパクトを残すものとなったんだ。また、戦後になってからも東海道・山陽線を走る特急の名前に受け継がれていくことになったんだ」

 そして、南、ある球団の話をした。

「曜ちゃんなら知っているでしょ、東京にはスワローズというプロ野球球団があることを」

これには、曜、

「うん、知っているよ!!たしか、ヤ〇ルトスワローズ、だよね!!」

と言うと南は意外なことを言った。

「でもね、昔は國鉄スワローズって言っていたんだ」

これには、曜、

「え~、スワローズって昔は國鉄が持っていたの?」

と驚いてしまうと、南、

「実は國鉄単体が持っていたわけじゃないんだけど、昔はスワローズは國鉄スワローズって言っていたんだ。でね、そのスワローズだけど、その名称、実は超特急「つばめ」からきているんだ!!」

と、スワローズの名称について語ると、曜、

「へぇ~、そうなんだ」

と妙に納得していた。

 そして、國鉄とつばめのことについて南の話は戻る。南、そのまま、

「でね、國鉄はつばめを國鉄のシンボルマークにするくらいつばめという名前を大事にしてきた。いや、つばめそのものを大切にしてきたんだ。その証拠に俺たちが國鉄に入社したときにもらったつばめのタイピン、それは國鉄がつばめのことを大事にしている証拠、だったんだ」

だが、これについては、梶山、

「それ、南、忘れていたでしょ!!私が今さっき教えたんだからね!!」

と、ちょっとネタ晴らしをしてしまうと、南、

「それは言わないでよ!!」

と、梶山に注意。すると、梶山、

「はいはい」

と、ほっておくことにした。

 そして、南、気を取り直して今度は九州総局とつばめについて話し始めた。

「しかし、超特急つばめは新幹線の開業とともに西へ西へと追いやられてしまい、しまいには山陽新幹線博多開業と同時に消滅することになったんだ。そして、そのつばめが復活したのは1990年代に入ってからだった。九州総局が(博多~熊本~西鹿児島間を走っていた)特急「有明」のうち、博多~西鹿児島間の運用を独立させ特急「つばめ」として走らせることになったんだ。だけど、このとき、つばめという名称の列車は消滅していたとはいえ日本を代表する列車に付けられていた名称だったこともあり、九州総局は全国各地の國鉄総局に対してつばめの名称を新しい特急につける許諾を得ていったんだ。こうして実現したのが、787系つばめ、だったんだ。こうして復活を果たした特急つばめは、その後、九州新幹線開業時に新幹線つばめとして名称は受け継がれることとなり今も元気に走っているわけ。さらに、九州総局はつばめという名前を大事にしたこともあり、今では九州総局のシンボルマークにもつばめが描かれるようになったんだ」

 この南の言葉に、ルビィ、

「へぇ~、それくらい、國鉄、そして、九州総局はつばめを大事にしてきたんだね」

と感心していた。

 だが、この南の話を受けてか、金井はこう叫んでしまった。

「俺たちにとってつばめはつばめはとても大切な存在なんだ!!けれど、伊藤はそんなつばめすら自分の欲望を満たすものでしかなかったんだ!!伊藤、こんなことを言っていたんだ、「つばめ、そんなの、私には関係ない!!お前(金井)が持っている金のつばめのタイピンなんて私に言わせリャ私の大事なコレクションの1つでしかない。私にとって私のコレクションは1つのステータスなんだよ!!お前のタイピンをもらえば私のステータスが上がるってもんだよ!!だって、お前のタイピン、全国でも國鉄に表彰された人しかもらえない、それくらい貴重なものなんだよ!!持っていればそれだけで、私のステータス、私のコレクションの価値もあがるってもんだよ!!」ってね。これを聞いて、俺、こう思ったよ、「この男はつばめのことを馬鹿にしている、鉄道を好きな人はつばめを大事にする、そんな心なんかこの男にはない」、ってね!!」

これを聞いて、南、金井に対しなにか言おうとした。

「たしかに金井さんはそう思ってしまうかもしれないけど・・・」

 だが、そんな南の発言を遮るかの如く大きな声がしてきた。

「金井さん、あなたは間違っているよ!!」

それは「36+3」のビュッフェの女性チーフパーサーからのものだった。だが、次の瞬間、ルビィ、驚いてしまう。

「えっ、顔って簡単に剥がれるものなの!?」

そう、その女性チーフパーサーは顔の下の部分を掴むとそのまま、

バリバリ~

と、顔の表面を剥いでしまった。いや、変装を解いた、と言っていいだろう。その女性チーフパーサーは顔に特殊メイクを施していた。それはあのハリウッドも真っ青と思えるくらいのものだった。実際には、女性チーフパーサー、自分の顔に特殊メイク、いや、特殊マスクを施し歳をとったチーフパーサーにみせていたのだ。

 そして、特殊マスクを剥いだ、そのとき、曜はびっくりしてこう叫んでしまった。

「えっ、なんで、ここに千歌ちゃんがいるの!?」

そう、歳をとった女性チーフパーサーに変装していたのは、千歌、だった!!だが、千歌、びっくりする曜に対し、

「曜ちゃん、それについてはあとで話すね」

と言うと、千歌、金井に対し怒るようにこう言った。

「金井さん、あなたこそ、國鉄のつばめを冒とくしているんだよ!!」

これには、金井、

「お前みたいな若造に、そんなこと、言われたくないわ!!」

と反論するも、千歌、それを見越したのごとく金井に対し剣幕を立てて怒った。

「金井さん、あなたはこれからの787系を指し示す「36+3」で自分が殺した伊藤さんの遺体を運ばせたんだよ!!この787系はねぇ、昔、「つばめ」型車両と言われていたけど、今でもその想いはこの787系やほかの九州総局の列車たちに受け継がれているんだよ!!そして、この「36+3」こそ、これからの787系、「つばめ」型車両たちの想いを受け継いだ新しい「つばめ」型車両、なんだよ!!それなのに、自分の考えだけで自分が殺した伊藤さんの遺体を運ばせるなんて、この787系、いや、すべての「つばめ」型車両、いや、九州総局のすべての列車を冒とくしたことにつながるんだよ!!だからね、金井さん、あなたに「つばめ」のことについて語る資格なんてないんだよ!!」

この千歌の言葉により金井は完全に論破されてしまった。そのためか、金井、

「う、うそだろう・・・」

と、肩を落としてしまった。若造と思われた千歌からのきついお言葉はあの金井すら自身が喪失するくらい力がこもったものだった。その後、自信喪失により抜け殻のようになった金井は福岡県警に逮捕されそのままパトカーで近くの署まで連行されていった。

 そして、それとは別に自信喪失になった者がもう1人・・・。

「うぅ、なんで、私の名推理が・・・」

そう、あのめんこい刑事である。まさか自分が事件を解決するはずがあの若造(南)に事件を解決されるとは・・・、刑事としての、(自称)九州一の名探偵としての面目丸つぶれである。

 そんなめんこい刑事に対し南はその刑事に近づくとこう言った。

「めんこい刑事、あなたは自分の悪運だけで事件をいくつも解決してきたから今回も自分が解決するとそう思っていただろう。けれど、ほんとの事件というのはそんな悪運だけでは解決することはできないんだよ!!ちゃんとした推理、ちゃんとした調査、ちゃんとした証拠が必要なんだ!!それを肝に銘じておくことだな」

これには、めんこい刑事、

「うぅ・・・」

とうなっては肩を落としてしまった。

 こうして、めんこい刑事によって引っ掻き回されたこの事件も終わりを迎えようとしていた。

 

 その後、

「千歌ちゃん、変装、すごかったね~!!ルビィ、千歌ちゃん、出てきたときはびっくりしたよ!!」

と、ルビィ、変装していた千歌に対して感嘆の言葉をあげていた。一方、曜は、

「千歌ちゃん、たしか、一昨日はSLの機関助手で昨日は「あそぼーい」のパーサー、で、今日は「36+3」のパーサーしていたけど、なんで今日は「36+3」のパーサーをしていたの、それに変装してまで?」

と、千歌に尋ねると、千歌、

「いや~、「36+3」のスタッフが足りないからって連絡があったから、千歌、「36+3」のパーサーもやるはめになったんだよね~。だって、今日、SLも「あそぼーい」も運転していないし・・・」

そう、「あそぼーい」」は週末限定の運行である。そのため、千歌のスケジュールに余裕があったのだ。そして、変装については、

「ただ、今日やる仕事がさぁ、ビュッフェのチーフパーサーでしょ。「36+3」って精鋭のパーサーさんやスタッフさんが多いでしょ!!だから、私、ほかのスタッフさんになめられないように変装したの!!」

と、言い訳じみた答え・・・。これには、曜、

「それ、本当~?」

と、千歌を疑うも、千歌、疑う曜に対して、弁解を・・・、

「それに、千歌、資格マスターだし、ここで変装の資格を活かそうと思ってね・・・」

と、こちらも言い訳みたいなものになってしまった。これには、曜、

「千歌ちゃん、嘘つかないでよ!!」

と、千歌に対して怒ってしまった。これには、千歌、

「ご、ごめんなさ~い!!」

と、曜に謝ってしまった。

 そんな千歌に対し、ルビィ、

「ねぇねぇ、変装の仕方、教えてよ~」

と、千歌に変装、いや、特殊メイクの仕方の教えを請おうとしていた。

 

 一方、梶山と南と言うと・・・、

「南、あの事件、腑に落ちないのだけど・・・」

と、梶山、そう前置きをしつう、今回の事件について南を問い詰めた。

「あの事件って金のつばめのタイピンの持ち主と被害者である伊藤の交友関係を調べれば済む話じゃない。なんで回りくどいことをしたの?」

そう、今回の事件、別に被害者である伊藤のダイイングメッセージなんて気にせずに伊藤が持っていた金のつばめのタイピンを鑑識に出してそれに付着していた指紋でその持ち主を探したたり被害者である伊藤の交友関係を調べたりするだけで金井が犯人であることがわかるはずだった。それなのに伊藤のダイイングメッセージだなんていう話が出てしまったためか、本当に回りくどい解決となってしまったのだ、この事件は。

 ただ、それについては、南、あっさりとこんなことを言ってしまう。

「まぁ、今回の場合、あのめんこい刑事という狂言者のせいでなにもかもがめちゃくちゃになってしまったんだ。だから、俺はあの狂言者の戯言にただ乗っただけさ」

これには、梶山、

「推理・鉄道バカの南がそんなことを言うなんてね・・・」

と、南にしては意外な言葉が出てきたことに驚きの表情をみせる・・・が、一瞬、梶山、南の方をにらむと真実を口にした。

「でも、本当は、南、あんたが最初、金のつばめのタイピンを見つけて、「これは被害者のダイイングメッセージだ」と言ったことがことの始まりのような気がするのですがね・・・」

これには、南、

「さぁて、それはどうだったかな・・・」

と、知らんぷりを貫くと、梶山、南に対して、

「南、お前こそ狂言者だ~~~!!」

と、怒ってしまった。

 そんなわけで相棒である梶山を怒らせた南、梶山からコブラツイストを決められてしまい、

「痛い、痛い」

と言いつつもかっこよくこんな言い訳を言ってしまった。

「ふっ、物語というのは時には狂言じみたものが必要なのさ。単純なものも時には必要、複雑なものも必要。喜劇も悲劇も必要。物語には正解なんてものはないのさ。むしろ、すべてが必要なのさ。いろんなものがあるから物語というのは面白いのさ!!」

って、南、かっこいいこと、言っているけど、作者でもなんでもないだろ、と、作者からツッコミを入れられてそうな南であったが、これに、梶山、カチンときたみたいで、

「南、反省しなさい!!」

と、よりきつめに技を決めてしまった。むろん、これには、南、

「ギブ、ギブ」

と梶山にSOSを出すも、梶山、技を緩めず、しまいには、南、

チーン

とギブアップしてしまった・・・。南、お気の毒に・・・。

 

 と、言いつつもついにこのときが来てしまう。

「って、曜ちゃん、ルビィちゃん、飛行機の時間が迫っているよ!!」(梶山)

そう、今日は曜とルビィの九州旅行の最終日、なので、曜とルビィが乗る飛行機の時間が迫っていたのである。これには、曜、ルビィ、ともに、

「あっ、そうだった!!その飛行機に乗らないと、明日、学校に遅れちゃうよ!!」(曜)

「それっ、ルビィ、いやだよ~!!」(ルビィ)

と、帰りの飛行機の時間をつい気にしてしまう。

 そんな曜とルビィに対し、ようやく我に返った南、

「それなら大丈夫だと思うよ。博多駅から福岡空港まで地下鉄で5分で行けるから」

と2人を安心させる言葉を言う。そう、博多駅から福岡空港までは地下鉄で5分と案外近かったりするのだ。

 だが、ここで大変なことが起きてしまった。もうお忘れの方に言っておくが、今のAqoursはあることが原因で日本で一番名の知れたスクールアイドルになったのである。全国区の人気が今のAqoursにはある。そして、曜とルビィはAqoursの一員である。(「って、千歌もでしょ!!私、Aqoursのリーダーだよ!!忘れないでよ!!」by千歌)そんなわけで、曜とルビィの名前を聞いたまわりの人が、

「えっ、Aqoursの曜ちゃんとルビィちゃんがいるの!?」

「おいっ、曜ちゃんとルビィちゃんだけじゃないぞ!!千歌ちゃんもいるぞ!!」

と言いだしては、曜、ルビィ、そして千歌のまわりに人が集まってきてしまった。そして、3人に近づいた人たちからは、

「曜ちゃん、あのセリフ、言って!!」

「ルビィちゃん、サイン、ちょうだい!!」

「千歌ちゃ~ん、手を振って!!」

という声が聞こえてくるとともに大騒ぎになってしまった。これでは曜とルビィはその場から動くことができなくなってしまう。いや、帰りの飛行機に乗り遅れてしまう、そんな状況に陥ってしまった。これには、曜、ルビィ、ともに、

「みんな、落ち着いて!!」(曜)

「うぅ、飛行機、乗り遅れちゃうよ・・・」(ルビィ)

と、困惑してしまっていた。

 だが、このとき、曜とルビィに助け舟が来る。

「おい、鉄道公安隊だ!!そこを開けなさい!!」

なんと、曜、ルビィ、千歌、南、梶山のところに鉄道公安隊が来たのだ。これには、梶山、

「高杉班長、グッジョブです!!」

と、いきなり登場の南たち公安特捜班の班長であり南たちのところに鉄道公安隊を引き連れてきてくれた高杉にお礼を言うと、高杉、

「俺たちがエスコートしてやるから俺についてこい!!」

と、曜、ルビィ、南、梶山、そして、なぜか千歌までもが高杉と高杉が連れてきてくれた鉄道公安隊にエスコートされ博多駅地下にあるタクシー乗り場から博多駅を脱出することができた。

「って、私、まだ仕事中、なんですけど!!」(千歌)

 

 そして、ついに曜とルビィ、南と梶山、別れのときが来た。曜、南と梶山に対し、

「南さん、梶山さん、本当にお世話になりました。沼津に帰っても2人のことは忘れません」

とお礼を言うとルビィも、

「この3日間はルビィにとって想い出に残る3日間になったよ。ありがとうね!!」

と、南と梶山にお礼を言った。

 それに対し、梶山も、

「私も2人のことは忘れないよ!!私にとって想い出に残る3日間になったよ!!」

と曜とルビィにお礼を言った。

 また、曜、千歌に対しても、

「千歌ちゃん、帰ってこないの?みんな寂しそうにしているよ!!」

と声をかけるも、千歌、

「ごめん!!まだSLの運行が続くから沼津に帰るのが遅れちゃう!!みんなによろしくって伝えてね!!」

と、こちらに残ることを曜に詫びた。

 そして、高杉が持っているタブレットからは、

「曜ちゃんとルビィちゃんに会えて本当にうれしかったです!!」(菅原)

「遠くから2人のことを見守っているからね!!」(松本)

と、南と梶山の同僚である菅原と松本が別れの挨拶をしていた。2人ともまだ熊本にいるため、タブレットを通じて曜とルビィとの別れを悲しんでいたのだ。

 そして、南は曜とルビィに対し、

「曜ちゃん、ルビィちゃん、俺にとってこの3日間は本当に想い出に残るものとなった。もう2度と会うことはないだろう。向こうにいる善子ちゃんと花丸ちゃんにもよく言っておいてくれ。さらばだ!!」

と、意味深なことを言いつつも別れを告げた。

 こうして、曜とるルビィは南と梶山と別れ・・・る前に梶山がとんでもない提案をしてきた。それは・・・。

「ねぇ、曜ちゃんにルビィちゃん、最後に、千歌ちゃんもいることだし、あれ、もう1度やってみて!!」

これには、南、

「えっ、まさか、まだやるのか・・・」

と、口をあんぐりさせるも、曜とルビィ、そして、千歌も梶山の意図を察したのか、

「うん、あれね」(曜)「うん、あれだよ!!」(ルビィ)

「やるしかないでしょ!!」(千歌)

と言っては南たちの前であれをやってしまった。

「千歌です!!」「曜です!!」「ルビィです!!」

「「「We are CYaRon!、よろしくね!!!」」」

CYaRon!の決めゼリフ!!で、このあとは・・・、もう読者の方ならわかるだろう。いつものあれです!!

千歌・曜・ルビィ「We are CYaRon!」

梶山・菅原・松本・高杉「We are シャロとも!!」

だが、これには、南、

「誰があんな恥ずかしいこと、するもんか!!それに、高杉、きしょいわ!!」

と、逆に引いてしまった。が、これを梶山が見逃すわけがない。梶山、すぐに、

「南、やりなさい!!やりなさいと言ったらやりなさい!!」

と南に命令。これには、南、

(うぅ、これ、やらなかったらこのあと梶山からめちゃくちゃ怒られるからなぁ、やるしかないか・・・)

と、観念したのか、ついやってしまう。

「うぃ~ あ~ しゃるとも・・・」

あまりにやる気のない言葉。だが、これがいつもの南とは違ったのか、南以外のみんなから、

ハハハ ハハハ

という笑いの声がしてきた。これには、南、

「だからやりたくなかったんだよ!!」

と、恥ずかしそうに怒っていた。

 

 こうして曜とルビィは機上の人となった・・・のだが、ここに一人だけ残っている人が・・・。

「ところで、千歌ちゃん、なんでここに残っているの?」(南)

そう、千歌である。なぜか千歌だけが残っていた。なぜなら・・・。

「あのう、南さん、忘れていると思いますが、私、南さんたちのために残っているのですよ!!だって、私、千歌、公安特捜班、秘密工作員、ですから!!」

え~、千歌が秘密工作員!?かなりすごいカミングアウト!!で、これには、南、

「たしかにそうでしたね、千歌隊員!!」

と言うと続けて、

「たしかに善子ちゃんと花丸ちゃんから頼まれたときにはびっくりしました、まさかSLを運転させるために千歌隊員を使ってほしいと頼まれたときはね・・・」

と意外な事実が出てきてしまった。

 と、ここで千歌が南たち公安特捜班の秘密工作員になったことの顛末を話そう。「ハピトレ」のリリースが決定したとき、千歌はこんなことを考えていた。

「「ハピトレ」の主役はSLでしょ!!なら、SLの運転手になれば曲のイメージが湧くかも!!」

そんなわけでの、千歌、SLの運転手になろうとする・・・も千歌には鉄道関係の友人なんていない。というわけで、千歌、鉄道公安隊の南と交友関係があるヨハネと花丸に頼み込み、南を通じてSLの運転手になろうとしていたのだ。一方、南たちはというと、とある任務のために九州に行くことになったものの、特捜班全員の顔が割れていたため、その任務の際に内部関係者、つまり、秘密工作員になる人物を探していた。そのときにヨハネと花丸から千歌、いや、資格マスター千歌という秘密工作員としてはうってつけの人物を紹介されたのだ。こうして、千歌と南たち、お互いの思惑が一致したため、千歌は九州総局のSLの機関助手兼パーサーとして九州総局内に秘密工作員の身分を隠したまま暗躍、南たちはその千歌から内部情報をもらい任務を遂行していったのである。そんななか、曜とルビィが「ハピトレ」のPVの下見のために九州に来る、ということをヨハネと花丸経由で知った南、それならばと2人と面識がある千歌を使って曜とルビィの旅のサポートをしていた?のである。

 で、千歌、南にこんなことを言ってしまう。

「最初の日の「あそぼーい」、SL「無限大」号の運転が終わってすぐに南さんから「曜ちゃんとルビィちゃんが乗った列車が動かなくなった!!すぐに救援に来て!!」と言われたから、私、率先して救援に行ったよ。けどね、2日目の「あそぼーい」はね、あれ、南さんの指示で「あそぼーい」のチーフパーサーとして着任しちゃった、はずなんだよ・・・」

これには、南、

「あれは「あそぼーい」のチーフパーサーが仕事を休んだのが原因であって・・・」

と言い訳をする。そう、2日目の「あそぼーい」については南によって千歌は「あそぼーい」のチーフパーサーをやることになっただ。それどころか、千歌、あることすら言う。

「それに、南さん、突然、「湯布院次郎さんを見張れ!!」「特別製の乗車証明書を作れ!!」って言われたとき、千歌、「この千歌使いが荒い人が・・・」って怒っていたんだよ!!」

これには、南、

「あれはあの家族のためと思ってしたことだぞ!!」

と弁解する。そう、2日目の子犬誘拐事件、そのときに犯人である次郎を見張っていた者、それは、千歌、だった。さらに、あの特別製の乗車証明書を作ったのも千歌だった。で、その陰に南の存在があった。それはすべて南が千歌に指示したことだった。あっ、ちなみに、南が次郎の家族のためにそれらを指示したことは本当です。

 さらに、千歌、今日のことについても、

「それに、今日は今日で休みだったからのんびりと長崎に行っていたのに、突然、「大至急、任務のため、年配の女性に変装して「36+3」のチーフパーサーとして「36+3」に潜入してくれ!!」って言われたとき、私、「千歌の休みを返して!!」って、南さんのこと、恨んだもん!!」

と、怒りながら言った。そう、今日の「36+3」についても千歌は本当は休みだったのだが、南によっていきなり「36+3」のチーフパーサーとして召集されていたのだ。ただ、「36+3」のスタッフはかなり優秀だったためか、もしくは任務のためか、千歌は年配の女性に変装することになったのだ。これも南からの指示だった。ただ、その「36+3」が博多駅に到着したときに曜とルビィも関わった今日の殺人事件に巻き込まれた、それも自分が担当していたビュッフェが大きくかかわっていた、という意味では、千歌、とんだ災難だったのかもしれない。

 そんなわけで、千歌使いが荒い南に対し、千歌、一言。

「曜ちゃんもルビィちゃんも帰ったことだし、千歌、もう用なし、じゃないかな?」

だが、南、これだけは言ってしまう。

「千歌隊員、任務はまだ続いているんだよ。用なしじゃないよ」

この南の言葉を聞いて、千歌、こう答えた。

「はいはい、わかりましたよ、南さん。千歌、これからも秘密工作員として頑張るからね!!任せてね!!」

 

(余談)

「で、ところで、SLの運転の方はどうなっているのかな?」(南)

「実はね、SL「無限大」号、人気、ありすぎて、追加の運転が決まったんだよ!!」(千歌)

「それはよかったじゃない」(梶山)

「でもね、千歌、これから「ハピトレ」の練習をしないといけないのに、(SL「無限大」号の機関士である)あいてつさんからSLの運転技術が認められてね、追加運転の仕事まで入れられてしまったの!!」(千歌)

「あらら・・・」(梶山)

「こうなるんだったら期間限定の機関助手になればよかったよ!!」(千歌)

 ちなみに、このあと、千歌、南たちの任務も終わり、秘密工作員としての仕事は終わったものの、ある責任感からか、平日は沼津で「ハピトレ」の練習を、休みの日は九州でSLの機関助手という二足の草鞋を履くこととなった。俗にいう、史上初めてのSLの運転ができるスクールアイドルの誕生である。

「え~ん、そんなこと、考えていなかったよ~~~!!」(by 千歌)



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曜とルビィの事件簿 エピローグ

 コラボとは祭りである、宴である。だが、祭りや宴は永遠に続くわけではない。終わりというものがあったりする。そして、この祭り、宴も終わりを迎えようとしていた。

 

 曜とルビィの九州旅行から1か月半後、無事、Aqoursオリジンの新曲、「Hppy Party Train」、通称「ハピトレ」はリリースされた。九州旅行のあと、久しぶりに集まったAqoursメンバーは曜とルビィの下見のもと、豊後森機関庫にて「ハピトレ」のPVを撮影、月の手で編集された「ハピトレ」のPVはあの黒澤ダイヤすら褒めるくらいものすごい出来に仕上がっており、Aqoursメンバーからも絶賛されていた。むろん、このPVのために下見まで行った曜とルビィもこのPVを見てすごく気に入ってくれた。

 このPVは「ハピトレ」がリリースされた直後に動画サイトに投稿されると瞬く間に「このPV,ものすごくいい!!」」というコメントが多く寄せられるようになり、今のAqours人気にあってか、視聴回数が初日だけで1000万回を超えるくらいすごいものとなった。そして、このPVのおかげもあり、「ハピトレ」はミリオンセラーを記録するくらいの売り上げをみせるものとなった。むろん、千歌がこの曲のためにSLの運転手になったことは「ハピトレ」においても十分役に立ったし、このことはちょっとした話題にもなった。

 

 そして、この「ハピトレ」のリリースとその後のAqoursの活躍を見て、北の大地ではとある少女がAqoursのことをこんな風に話していた。

「ルビィたちはさらなる高みへと昇っていった!!私ももっと頑張らないと!!」

その少女はそんなことを言ったそのそばで十字架を首にぶら下げたショートカットの少女がその少女に対し、

「理亜さん、頑張るもいいですけど、そんなに固くならないでください!!スクールアイドルというの楽しむことが大事なんでしょ!!」

と言うと、ちょっとお姉さん風な少女からも、

「そうですよ、理亜さん。私たちは私たちのペースでいきましょう!!」

と、声をかけてきた。これには、その少女、

「たしかにそうかも。でも、ルビィたち、Aqoursのみんな、待っていなさい!!私たちも頑張るからね!!」

と言っては遠くの空を見上げていた。その少女こと鹿角理亜、そして、のちに浦の星女学院幻の101人目の入学生と呼ばれる少女、それと、Saint Snow第3のメンバーと言われていた少女、は、このとき、Aqoursみたいな立派なグループ、いや、ユニットになるという志を改めて持つことができたようだ。

 

 そして、曜とルビィにも今回の九州旅行で掴んだものはあったようだ。「ハピトレ」リリース後、曜とルビィが通う高校、そのスクールアイドル陪(千歌命名)では、

「ルビィちゃん、すごいですね!!私たちも先輩たちを見習わないと!!」

「たしかにそうかも。私たちだって先輩たちに追いつけるように頑張らないとだね!!」

と、後輩たちがお互いのことを励ましあっているなか、まるで高飛車な後輩は、

「でもでも、まだ私の足元には届いていないみたいだね。もっと精進しなさいよ!!」

と、これまた高飛車なことを言いつつも、

「でも、そんな先輩たち、褒めてあげる、このスクールアイドル部を盛り上げてくれてありがとう、ってね!!」

と、なぜかいきなりデレとなってルビィたちのことを褒めていた。

 一方、ルビィはというと・・・、

「善子ちゃん、花丸ちゃん、南さんたちに会わせてくれてありがとう。ルビィ、ちょっと成長したかも」

と、ルビィ、ヨハネと花丸にお礼を言うも、ヨハネ、なぜか変なことを言う。

「南さん、さて、それって誰のことなの?あと、善子じゃなくて、ヨハネ!!」

これには、ルビィ、

「えっ、南さんのことを知らないの!?國鉄鉄道公安隊東京公安室公安特捜班主任の南さんだよ!!」

と言うと、花丸も意外なことを言ってしまう。

「國鉄!!とてもいい響きずら!!でも、今は國鉄じゃないずら!!今はJRずら!!それに、おらたちの知人に南さんという人はいないずら!!」

 このヨハネと花丸の言葉を聞いて、ルビィ、

「えっ、うそ!!善子ちゃんに花丸ちゃん、南さんたちのことを忘れている・・・」

と、びっくりしつつも唖然となってしまう。

 

 その後、ルビィは曜にこのことを伝えると、曜も、

「たしかにルビィちゃんの言うことも一理あるかも。私もあのあと南さんたちのことを調べたんだけど、公安特捜班どころか國鉄の存在すらなかったよ!!これってどういうこと?」

と、困惑そうにルビィに話すとルビィも、

「でも、南さんたちはたしかにいたよ!!それに、あのとき、南さんたち、國鉄、って言っていたよ!!これってどういうことなの!?」

と、困惑の度合いを深めてしまった。

 

 そう、コラボとは祭りである、宴である。コラボというのは2つ以上の物語の世界が一時期重なり合ってお互いが共有されるもの。それにより、その物語の登場人物たちがまるで最初からあったかのようにコラボ先の世界の記憶などが付与される。だが、その祭り、宴が終われば重なり合っていた世界は再び離れていく。その際、今後のためにとコラボに関する記憶は徐々に消えていく。それが今のヨハネと花丸には起きていたのである。が、今回のコラボの主人公である曜とルビィはこのコラボの影響をかなり受けていたこともあり、このコラボの記憶が鮮明に残っているのである。そのことで、ヨハネと花丸、曜とルビィのあいだで記憶の行き違いが起きていたのである。そんな意味でも曜とルビィが困惑するのも無理ではなかった。

 

 だが、曜とルビィみたいなコラボでの記憶が鮮明な人がもう1人いた。

「ルビィたち、なんかおかしくなったのかな?」(ルビィ)

「ルビィちゃん、落ち着こう。なんかの間違いだから!!」(曜)

困惑するルビィと曜。そんな2人を遠くから見ていたのか、千歌、突然、こんなことを言いだしてしまう。

「さてと、このコラボ、最後の大仕事、しちゃいますかな!!國鉄鉄道公安隊東京公安室公安特捜班特別工作員、高海千歌、最後の大仕事、やっちゃいます!!」

コラボでの記憶が鮮明なもう一人の登場人物、千歌、そう言うと自分のスマホを取り出し、

「ぽちっとな!!」

と言っては曜とルビィの2人になにかを送っていた。

 

 そして、ちょうどそのとき、曜とルビィのスマホから、

ルルル ルルル

という呼び出し音がなった。これには、曜、ルビィ、ともに、

「えっ、誰からかメールが届いたよ!!」(曜)

「ルビィもだ!!」(ルビィ)

と言うと、自分のスマホを取り出し届いたメールを開く。すると、

「あっ、南さんからだ!!」(曜)

「本当だ!!」(ルビィ)

と、2人は南たちからメールが届いたことに喜んでいた。

 さっそくメールを読む2人。そのメールにはこんなことが書かれいた。

「曜ちゃん、ルビィちゃんへ

2人ともお久しぶり、そして、お疲れ様。2人はもう気づいていると思うけど、俺たちはこの世界の住人ではない。けれど、俺たちとの経験は本物だ。俺たちも2人と一緒にいろんなことを経験出来て本当によかったと思っている。そして、その経験がお互いのためになったと思っている。もう俺たちはその世界にはいない、けれど、これだけは言える、たとえ生きる世界が違ってもこの経験がある限り、俺たちのことは忘れない、いや、俺たちの経験が将来役に立つことになる、俺はそう思っている。2人とも一生懸命頑張ってくれ。そして、これからもスクールアイドルとして頑張ってくれ。遠くから2人のことを見守っている。 國鉄鉄道公安隊東京公安室公安特捜班 南・梶山・菅原・松本・高杉より」

 そして、南たちからの最後のメールを読んだ2人は、

「これって南さんからのメッセージだ!!」(ルビィ)

「やっぱり私たちの旅は本物だったんだ!!南さんたちとの旅、そして、このメッセージ、私、感動したよ!!」(曜)

と、自分たちが南たちとやってきたことがすべて本物であると実感すると、曜とルビィ、2人は空を見上げてこう言った。

「南さんたち、ルビィたちのこと、見ていてね!!ルビィ、これからも頑張っていくからね」(ルビィ)

「南さんたち、私たち、これからも、全力前進、ヨ~ソロ~!!のつもりで頑張っていくからね!!だから、私たちのこと、忘れないでね!!そして、私たちのこと、見守ってね!!」(曜)

 時は11月、空は秋空から冬空へと変わるころ、曜とルビィはそんな空を見上げては遠くの世界にいる南たちに向かってこれからの頑張りを誓っていた。 

 

曜とルビィの事件簿 グランドエンディング

「僕たちのDrerm Liner]

 

真っ暗なところに    一筋の光が伸びてく

それが僕たちの     進む光の線路

その線路の先に     僕たちの明日がある

ひかりかがやく     明日への線路

 

たとえ大変な事件(こと)も 

危険な事件(こと)も

僕たちなら必ず     乗り越えてやるのさ

だから僕たちは     この列車に乗り込む

未来へと続く      Dream Liner

 

進め僕たちの      Dream Liner

すべての夢を      つめて進んでいく

熱きたましいの     Dream Liner

僕たちの熱き想い    動力にして進んでいく

 

明るい明日へ      続く線路は

先の先まで       永遠(とわ)に続く

それを僕たちは走る   Dream Liner

夢に向かってみんなと  ともに走り続ける

 

Go to Dream Go to Future

Go to Dream Go to Future

 

ふっくらなドリーム   集まって心が騒ぐさ

それが僕たちの     先の未来の姿

その未来の先に     僕たちの夢がある

未来輝く        僕らの線路

 

たとえ難しい事件(こと)も

無謀な事件(こと)も

僕たちなら必ず     乗り越えてやるさ

だから飛び込もう    その光の先ある

永遠に続く       Dream Liner

 

進め僕たちの      Dream Liner

すべての心       つめて進んでいく

未来輝きの       Dream Liner

僕たちの熱き心     輝きにして照らしていく

 

輝く明日へ       続く線路は

はるか先まで      輝いている

それを僕たちは走る   Dream Liner

明日に向かってみんなと ともに走り続ける

 

Go to Dream Go to Future

Go to Dream Go to Future

 

北か南に行こうか 東か西に行こうか

僕たちは僕たちでかじをとるけど

1つだけは絶対にいえる

それは神様も菅原(天神)様も

待つだけじゃなく進む

僕たちと一緒に

 

進め僕たちの      Dream Liner

すべての夢を      つめて進んでいく

熱きたましいの     Dream Liner

僕たちの熱き想い    動力にして進んでいく

 

明るい明日へ      続く線路は

先の先まで       永遠(とわ)に続く

それを僕たちは走る   Dream Liner

夢に向かってみんなと  ともに走り続ける

 

僕たちの夢を乗せ 未来へと進む

僕たちのDream Liner 走り続ける

 

 さて、ついにコラボも終焉のときがきた。la55と新庄雄太郎さんとのコラボ小説、いかがだっただろうか。これから先は、la55、新庄雄太郎さん、それぞれの作品を楽しんでもらいたい。これまで本当に読んでいただきありがとうございます。

 

 であるが、これでこのコラボも完結・・・というわけではない。コラボとは祭りである、宴である。たった1回だけの祭り、宴、なんて寂しいものである。祭り、宴とは人が本当の自分をさらけ出すことができる場である。江戸時代、祭りなどは人々が本当の自分を出すことができる唯一の場であった。だからこそ、祭り、宴はこれまで何度も何度も行われてきたのである。もう一度言う、コラボとは祭りである、宴である。もしこれを読んでいる方々がもう1度読みたい、楽しみたい、そう思えてくれたらこのコラボは復活するかもしれない。コラボとは祭りである、宴である。だからこそ復活してもらいたい、そう思えてくれたら嬉しい限りである。コラボとはそういうものなのだから。

 




あとがき

 みなさん、こんにちは。la55です。今回で新庄さんのコラボ、ラブライブ!サンシャインとRailWars!の二次創作クロスオーバー小説「曜とルビィの事件簿」も3作品目となりました。今回は「事件簿」の完結編として「つばめの謎」とエピローグを投稿しました。みなさん、どうでしたか?今回はダイイングメッセージをめぐるめんこい刑事と南の戦いとなりました。話としては簡単な流れでしたが楽しめたでしょうか。
 さて、今回取り上げた「つばめ」ですが、國鉄を含めて「つばめ」という存在は日本の鉄道においてとても大切な存在でした。戦前、いろんな工夫をしてこれまでの特急よりも早く東海道線(東京~神戸間)を走破した特急ということで「超特急」と言われるようになり、一般公募から「燕」という愛称がつけられました。そして、戦後も東海道線の超特急として「つばめ」という愛称が再び付けられ、その速さからくるインパクトなどにより國鉄のシンボルマークとなりました。むろん、それはプロ野球球団「ヤクルトスワローズ」の前身「國鉄スワローズ」にもつけられるようになり名実ともに「つばめ」は國鉄と切っても切れない存在となりました。その後、超特急「つばめ」は東海道・山陽新幹線が西へ西へと開業していくなかで山陽線を中心とした特急へと代わっていきますが、山陽新幹線博多開業とともに特急「つばめ」としての歴史にピリオドを打つことになります。ですが、JR九州が鹿児島本線博多~西鹿児島(現鹿児島中央)間の特急として特急「つばめ」を復活、水戸岡デザインの列車としてグリーン個室やビュッフェもあるという豪華列車787系が開発されました。そして、10年以上にわたり787系は「つばめ」型車両として運行されました。その後、九州新幹線開業後、「つばめ」という愛称は九州新幹線を走る800系に引き継がれることとなり787系はほかの路線に転用されることとなりました。そして、今でも九州内を走る特急、「かもめ」「みどり」「きりしま」など、に使われる、いや、今でもJR九州の主力として活躍しております。そんな787系ですが、今年秋、豪華列車「36+3」として運用されるようになりました。全席グリーン車でビュッフェもあるという豪華さ、それでいて豪華列車「ななつ星」よりもリーズナブルな価格、ということもあり、今注目の列車となっております。まさに、新生「つばめ」型車両、といえるのかもしれません。その「つばめ」ですが、現在はJR九州のシンボルマークにも「つばめ」が描かれているほどJR九州と「つばめ」との関係はより強いものになっております。また、國鉄自体は現代日本においては消えてしまいましたが意外なかたちで残っております。それはJRバス。JRバスのシンボルマークとして「つばめ」が描かれています。日本の鉄道と「つばめ」、今なおその関係は強く存在しております。
 そんなわけで、國鉄、787系、「つばめ」、これをもとに今回の小説を書いた次第です。自分としては鉄道系ミステリーを書くなら「つばめ」という存在は無視できない、ということでそれならと787系、そして、新しい「つばめ」である800系を舞台に展開することに。とはいえ、ミステリー自体苦手である自分にとってこのレベルしか書くことができない、というのはとても恥ずかしいことです。やっぱり、新庄さんの書くミステリー物には敵わない、そう痛感されております。それに加えてコンスタントに新しいミステリーを発表できるすごさはものすごいものを感じます。なので、もしよろしければ新庄さんの作品も読んでみてください。作品数もかなりのものです。それに比べて、私の作品は・・・(-_-;)
 そんなわけで、今回でこのコラボ作品「曜とルビィの事件簿」は完結編を迎えた次第なのですがもしかすると復活することがあるかもしれません。それについては現時点においてはわかりませんが、今いえることは「もう自分が持っているネタがないよ・・・」なんですよね。もし新しいネタがあればできるかもしれませんが今は「Moon Cradle」に続く新作を・・・なんて思っていたりします。そのための伏線はすでに書いたのですがね・・・。
 あっ、最後の新曲ですが、自分の作品としては最初のころは作詞をしていたため、今回は久しぶりに作詞をしてみました。夢へと進む少女たちを想像して書いております。夢へと進む若者たち、今、とても暗い世の中になっております。だからこそ、夢を大事にしてもらいたい、絶対に諦めないで夢へと突き進んでもらいたい、その想いで作詞しました。本当なら作曲もしたいのですが自分にはその能力がないため、今回も作詞のみ・・・(-_-;)ごめんなさい。ところで、この曲、誰が歌っているのでしょうかね。曜とルビィ?それとも千歌も入ってCYaRon!?できればCYaRon!に歌ってもらいたいですね・・・(-_-;)(単なる作者の願望です・・・(-_-;))
 なお、只今開催している「la55集中投稿月間」ですが、できれば冬休みに入る24日から月末にかけて毎日投稿できればと考えております。そのための作品も一部完成しております。なので、できれば毎日投稿できたらいいなぁ、と考えている次第です。まずいえるのは、24日に「MoonCradle」の最終回、25日にその+αの作品を、と考えております。なので、どうぞお楽しみにお待ちください。それでは、また、さよならさよならさよなら。


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曜とルビィの事件簿Ⅱ プロローグ

※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


 コラボ、それはお祭りである。コラボ、それは一種の化学反応である。2つの異なった物語が交わるとき、これまでとは違ったものが見えてくる。いや、超新星爆発的なものを生み出すのである。それくらいコラボとは超規模的な宴、祭りである。

 さて、今回お送りするのはラブライブ!とReilWars!の推理ものでおなじみの新庄雄太郎さん、それに、ラブライブ!のスクールアイドル青春ものを書いているla55の奇跡のコラボ、その第2章である。そして、この物語は、SNOW CRYSTAL、Aqoursの最後の奇跡の物語である。果たしてどのような物語になるのだろうか。そして、変わりゆく九州をあなたはどうみるのだろうか。それはあなた次第である。

 

さぁ、はじめよう、変わりゆく九州のなかでルビィや曜のような輝く少女たちの奇跡のストーリーを!!

 

「なんでルビィと陽ちゃんだけが行くことになったの?」

九州に行く新幹線のなか、ルビィは隣に座っていた曜に話しかけた。すると、曜はこんなことを話してくれた。

「仕方がないよ。だって、花丸ちゃん、善子ちゃん、梨子ちゃんはなにか用事がある、って言うし、千歌ちゃんに至ってはこの卒業旅行の話を聞いただけで「あっ、なんかよんでいる!!」って言ってどっかに行ってしまったんだもん!!」

 この曜の言葉に、ルビィ、ため息をつく。

「あぁ、せっかくの卒業旅行なのに、陽ちゃんとルビィ、2人だけって寂しすぎるよ!!」

 卒業旅行?実はラブライブ!冬季大会終了後に静真を卒業する、千歌、曜、梨子のためにAqoursは月と静真の生徒たちから卒業旅行をプレゼントされたのである。これには、ルビィ、

「(理亜ちゃんと花樹ちゃん、あつこさんのいる)SNOW CRYSTALに負けたけど、ラブライブ!、とっても楽しかった!!!それに、ラブライブ!で頑張ったから(月ちゃんをはじめとする)静真のみんなから卒業旅行をプレゼントされるなんて、とてもうれしい!!」

と笑顔で答えていた。

 ところが、せっかくの卒業旅行に水を差す事態が起きてしまった。まずは1年生の、桜花、梅歌、松華、であるが、

「今回は2・3年生だけで行ってください。私たちは来年に向けての計画を練りますから。あと、花樹さんたちと会う約束がありますから・・・」(桜花)

といきなりのパスを発動してしまった。さらに、花丸、ヨハネ(善子)、梨子も、

「私たちはちょっと用事があるからパスずら!!」(花丸)

とこれまたのパスを発動!!でもって千歌は千歌で、

「あっ、誰かによばれている!!」

と言ってはどこかに消えてしまったのである。なので、今、卒業旅行にきているのは曜とルビィしかいなかったのである・・・。

 そのためか、ルビィ、こんなことを言ってしまう。

「みんなと一緒に行きたかったよ~」

これには、曜、ルビィを慰める。

「でも、みんな用事があるんだし、私がいるんだから大丈夫だよ。よしよし」

こうしてルビィは曜に慰められてたのだが、そんなルビィからこんな言葉が出てきてしまった。

「でも、善子ちゃん、最後にこう言っていたよ、「南さんたちによろしく」って!!」

このルビィの言葉に、曜、はっとする。。

「南さん!!もしかして、あの南さん!!」

そう、ここにきて、曜、あることを思い出していた。それは去年の9月ごろ、Aqoursがラブライブ!夏季大会決勝での騒動によって全国的に大人気になったことにより、卒業生のダイヤ、鞠莉、果南、を含めた2代目Aqours、Aqoursオリジン9人でCDをだすことになったとき、曜とルビィは、その曲、「Happy Party Train」のPVのロケ地の下見のために九州を訪れたときに出会った人であった。南達仁、彼は國鉄鉄道公安隊東京公安室公安特捜班公安主任の役職を持つ人であり、いくつもの難事件を解決に導いてくれたスペシャリストである。だが、彼は曜とルビィのいる世界の住人ではない。新庄さんの描く世界、公安特捜班のいる世界の住人である。ではなぜ、その人と存在を曜とルビィが知っているのか。それは、曜とルビィ、南たちと出会ったそのとき、去年の9月ごろ、ちょうど、曜とルビィたちがいる世界、la55の世界と新庄さんの世界がコラボ(融合)していたから。そのため、そのコラボの主要人物である曜とルビィは南たちのことをいまだに覚えていたのである。

 そんな曜の言葉にルビィも、

「あの南さんに出会えるのかな?」

と曜に尋ねると曜も、

「それはわからないけれどきっと出会えるんじゃないかな?」

と喜びながらそう答えてくれた。

 そして、2人は月から渡された切符を見る。そこにはこう書かれていた、「みんな九州きっぷ」。それは、2日間、九州内のJ・・・、國鉄乗り放題の切符である。で、今回は4日間使う予定であるため、それを曜とルビィはそれぞれ2枚所持していたのである。その切符を見て曜はルビィにこう尋ねた。

「ルビィちゃん、まず、どの列車に乗りたい?」

 すると、ルビィはこう答えた。

「まずはね、大人向けの列車に乗りたい!!その列車ってバーがあってお酒が飲めるんだって!!」

これには、曜、

「私たちはお酒が飲めないよ。けど、大人の雰囲気を楽しめる列車があるんだね。楽しみ!!」

と楽しみを感じていた。

 そして、曜とルビィはその列車の出発地熊本へと向かうのであった。

 

こうして始まる曜とルビィの事件簿Ⅱ~変わりゆく九州~。このあと、曜とルビィにはいろんなところで起きる数々の事件が待ち受けていた。果たして曜とルビィは一体どうなるのだろうか。それはあとのお楽しみである・・・。

 



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~殺人列車で行こう?~ 前編

※この物語は2020年3月現在の時刻表を参考に作っております。
※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


♪~

ここは熊本駅の三角線ホーム。そこでは軽快なジャズの音、「A列車で行こう」の音楽が流れていた。これには、曜、

「なんか旅情を感じられるジャズの音だね!!」

と言うとルビィも、

「うん、そうだね!!」

と返事を返していた。

 そんな曜とルビィであったが、ちょうどそのとき、黒と金のボディをした観光特急がホームに入線してきた。その観光特急の名は「A列車で行こう」。國鉄九州総局が誇るD&S特急の1つである。D&S、九州総局では「特別なデザイン(D)、運行する地域に基ずくストーリー(S)」の列車のことを「D&S特急」と名付けていた。その1つが「A列車で行こう」である。

 この「A列車で行こう」であるが、その特徴はなんといってもカウンター形式のバー、「A-TRAIN BAR」が設けられていることであり、そのバーではビールにハイボール、この列車オリジナルのカクテルが飲めるようになっていた。

 そんな「A列車で行こう」であるが、曜とルビィがこの列車に乗る目的、それは、ズバリ、

「これで大人の雰囲気が楽しめるね!!」(曜)

「うんっ!!」(ルビィ)

そう、いち早く大人の雰囲気を味わいたい、ためだった。

 そんなことを言っている間に熊本駅のホームに「A列車で行こう」が到着、曜とルビィが乗り込もうとしている、そのときだった。突然、

「あれっ、陽ちゃんとルビィちゃんではないですか?」

と2人を呼ぶ声が聞こえてきた。これには、ルビィ、

「あれっ、誰か、ルビィたちのこと、呼んでいる!!」

と後ろを振り返る。すると、そこにいたのは・・・、

「南さん!!」(ルビィ)

そう、そこにいたのはこの世界にはいないはずの南だったのだ。これには、曜、

「あっ、南さん!?たしか、あっちの世界に戻ったのではなかったのですか?」

とびっくりしてしまう。これについては、前作、「曜とルビィの事件簿」のエピローグを呼んでもらいたいのだが、前回のコラボの際、la55の世界と新庄さんの世界が離れたときに南たちがお別れのメールを送ってきたのだが、それによって曜とルビィは南たちがこの世界の住人ではないこと、そして、南たちがもとの世界に戻ったことを知ったのである。そのため、もう南たちとは会わないと曜とルビィは思っていたのだが、ここにきてまさかの再会を果たすとはさすがの曜もびっくりだったのである。

 そんな曜に対し南の隣にいた青年がこう言ってきた。

「あっ、この人たちが南さんが言っていたこの世界での協力者なのですね」

この千年の言葉に、ルビィ、はっとする。

「えっ、この人、誰?梶山さんじゃないの?」

ちなみに梶山とは南の元相棒であり、前作にも出演していた公安官である。今は班長として活躍しているのだが、それは置いといて、これには、南、

「まぁ、職業柄、異動というものがあるのだけどね」

と前置きしつつ隣にいる青年の紹介をした。

「俺の今の相棒である高山だ。俺と同じく鉄オタでもある」

 すると、その青年こと高山は自己紹介と始めた。

「始めまして、僕の名は高山直人、列車をこよなく愛する鉄オタであり、公安特捜班の一人です」

これには、曜、

「それを聞いているだけで「類は友を呼ぶ」って感じがするよ・・・」

と言うと、南、

「まぁ、たしかに俺は鉄オタであることを認めるが「類が~」はちょっと言い過ぎではないか・・・」

と言ってしまっていた・・・。

 

 そんな4人であったが「A列車で行こう」は「A列車で行こう」のBGMとともに熊本駅を12:23に出発した。そのとき、ルビィ、あることに気づく。

「あれっ、この列車ってある列車に似ているような気がする!?」

そう、なんか、列車の形式がある列車に似ている、というのだ。これには、南、

「まぁ、たしかに、ルビィちゃんの言っていることもたしかだな」

と言うと、ルビィ、

「?」

と頭の上にハテナマークを浮かべてしまった。これには、南、

「あっ、ルビィちゃん、ごめんごめん」

と謝ると高山が嬉しそうになりながらも、

「まさか、ルビィちゃんも鉄オタですかな?」

と言ってしまう。これには、曜、

「えっ、ルビィちゃんって鉄オタなの?」

と言うも、ルビィ、それを、

「全然違うよ!!なんかある列車に似ていると思ったの」

と完全否定しつつも別の列車と同じものを感じていた。

 そんなとき、高山がルビィが感じたものの正体を明かしてくれた。

「ルビィちゃんが感じたもの、それはね、特急ゆふ号、じゃないかな。この列車はね、ゆふ号や九州横断特急で使っていたキハ185系を改造したものなんだよ」

そして、高山はこの列車について詳しく語った。この「A列車で行こう」を含めたキハ185系であるが、昔、四国総局の方で活躍していた特急列車であったが後継の列車が登場してくると余剰が生まれるようになった。そのため、このとき、古い列車の後釜を探していた九州総局の利害の一致のため、キハ185系数十両が四国から九州へと渡ったのである。その後、キハ185刑は「ゆふ」「九州横断特急」として今でも活躍しているのであるが、その一部がある列車を経て「A列車で行こう」に改造されたのである。

 で、この高山の説明を聞いてルビィは目をキラキラさせながら、

「ということは、この列車って、昔、四国で活躍していたのが今では九州で活躍しているだね!!」

ただ、これには、曜、

「たしか、以前に一度、この説明を南さんがやっていたような気が・・・」

曜、たしかにそうだが、ここはぐっとこらえよう。ただ、その説明に満足しているせいか、高山、

「どやっ!!」

とどや顔になっていた。まぁ、以前、同じような説明をしていた南からすれば高山のどや顔にはただただ、

「ははは・・・」

と苦笑いするしかなかった・・・。

 

 とはいえ、実はこの「A列車で行こう」、熊本~宇土~三角と短い距離を走るため、乗車時間は40分とかなり短かった。そのため、曜とルビィはある目的を果たす。それは・・・、

「う~、うまい!!もう一杯!!」(ルビィ)

「これぞ大人って気分だね!!」(曜)

そう、その目的とは・・・、「A-TRAIN BAR」で飲んで大人の雰囲気を味わうことだった。でも、2人はまだ未成年じゃ・・・、ってご心配なく。だって・・・、

「まだお酒は飲めないけど、デコポンジュース、とてもおいしいね!!」(曜)

「うんっ!!」(ルビィ)

「A-TRAIN BAR」といえばハイボール・・・なのだが、2人は未成年、ということでデコポンストレートというジュースを飲むことで大人の雰囲気をいち早く味わっていたのだ。

 そんなときだった。突然、2人の目の前に聞きなれた声が聞こえてきた。

「こちら、デコポンストレートをサイダーで割った(ノンアル)カクテルだよ!!」

すると、曜とルビィ、2人ともカウンターの上に出されたデコポンサイダー割りを飲むと、

「うまい!!」(曜)

「とてもおいしいね!!」(ルビィ)

と喜んでしまった・・・のだが、ふと、曜、

「こんな(ノンアル)カクテル、よく考えたね・・・」

と言っては前を向く。すると、突然、曜、

「って、千歌ちゃん!!」

と千歌の名前が出てしまった。これには、デコポンサイダー割りを出したバーテンダーこと、

「そうです!!私、千歌です!!」

と、なんと、千歌がいるではないか!!これには、ルビィ、

「千歌ちゃん、なんでここにいるの?」

と千歌に言うと、千歌、なんかすごいことを言い出してしまった!!

「だって、千歌、この列車のバーテンダーにあこがれていたもん!!でも、まだ未成年だから、私、未成年の人にも楽しめるように未成年専用のバーテンダーとして働いているんだよ!!」

これには、曜、褒めてしまう?

「う~、千歌ちゃんって神出鬼没だよね・・・。去年の9月なんて、SLの補助機関士だったり、かとおもえば「あそぼーい」や「36+3」のクルーの一人になっているんだよ。私からすればすごいと思うよ・・・」

まぁ、これについては前作を読んでもらえたら幸いなのだが、そんな曜の言葉を真に受けてか、千歌、

「陽ちゃん、もっと褒めて、褒めて」

と声をあげていた。

 そんななか、南と高山はBARで飲んでいる人を見た。すると、

「なんか怪しいですね」(高山)

「たしかにそうだな」(南)

と2人はその怪しい雰囲気を醸し出しているその人を見る。というのも、その人はまるで体育会系な体格をした、全身黒ずくめ、黒い帽子に黒いコート、黒いズボンとまるで某有名な探偵漫画に出てくるような服装をしていたのだ。その人は千歌の隣にいたバーテンダーにこんな注文を繰り返していた。

「Aサイダーを1つ・・・」

Aサイダー、それは「A列車で行こう」で売られているオリジナルサイダーであった。ちなみに、千歌が曜とルビィのために出したデコポンサイダー割りはデコポンストレートにこのAサイダーで割ったものだった。そのAサイダーだけを飲んでいた黒ずくめの人に対しそのバーテンダーはこんなことを言ってしまった。

「お客さん、Aサイダーだけ飲んでいますね。少しはハイボールを・・・」

だが、これには、黒ずくめの人、すぐに、

「俺はお酒が飲めないんだ・・・。あまりそのことを言うな・・・」

と断りをいれてきた。そんなあまりに怪しすぎるのか、南は職業柄、自分のスマホに黒ずくめの人を写真に撮った。これには、高山、

「サイダーばかりを飲む人なんて、なんか怪しいですね」

と言うと南も、

「うん、そうだな・・・」

と自分のスマホをなおすとともにうなずいていた。

 

 と、そうこうしているうちに「A列車で行こう」は一面一千(+側線)の終点三角駅に13:03に到着)、曜とルビィ、南と高山は「A列車で行こう」を降りた(なお、この列車は13:50に「A列車で行こう」熊本行きとして運行)。そのあと、4人は世界遺産である三角西港へと車で移動、4人で観光した・・・かにみえたが、13:20ごろ、南のもとにある電話がはいる。

「はい、南ですが・・・」

と電話にでる南。すると、南、こんなことを言ってしまう。

「なんだって!!熊本駅のトイレで人が殺されたって!!」

そう、なんと、熊本駅のトイレで男性の殺人遺体が見つかったのである。死因はナイフでひと刺し。南はすぐに後方に待機させてある、桜井、岩泉、小梅そ熊本駅に直行させるとともに元相棒の梶山にもすぐに連絡すると、

「至急、熊本駅の防犯カメラの映像を見てくれ」

と梶山にお願いした。すると、すぐに、梶山、それを察知したのか、

「それならもうすでに確認は済んでいます」

という連絡が南のもとにもたらされた。これには、南、

「梶山、でかした!!すぐに教えてくれ」

と言うと梶山はすぐに南に報告した。梶山の報告は以下の通りである。被疑者が殺されたトイレの入口を捉えていた防犯カメラの映像から被疑者が殺されたのは12:24ごろ、その30秒前に被疑者と一緒にトイレに入っていく人がいた、というものだった。

 そして、梶山は重大なことを南に報告した。

「そして、被疑者と一緒に入っていった人の服装はあまりに特徴的でした。全身黒ずくめでした。それはまるで「自分が犯人です」といっているものでした」

これには、南、はっとする。

「たしか、俺たちが乗っていた列車にもそんな人がいたぞ」

 しかし、そのとき、梶山はあることを南に伝えた。

「でも、それだと矛盾していませんか。南と高山が乗った列車、「A列車で行こう」、は熊本を12:23発ですよね。でも、被疑者が殺されたのは12:24ごろです。なので、「A列車で行こう」に乗っていた人が熊本駅で被疑者を殺すことは不可能です」

そう、「A列車で行こう」に乗っている人がその被疑者を殺すことなんて不可能だったのだ。南たちが乗っていた「A列車で行こう」は熊本駅を12:23に発車している。対して、被疑者が殺されたのは12:24ごろ、1分のタイムラグが生じている。なので、「A列車で行こう」に乗っていた全身黒ずくめの人が熊本駅で被疑者を殺すことは現時点の情報では不可能だったのだ。

 そんな南たちであったがことの重大さを鑑みて、曜とルビィを連れて三角駅へと戻っていった。これには、ルビィ、

「まさか、事件!?」

と南に言うと、南、

「ああ、そうだ」

と答えていた。これには、曜、

「なんか南さんと一緒にいるだけで事件が起こりやすいよ」

とただただそう言うしかなかった・・・。

 

 そして、南たちが13:28ごろに三角駅に到着、すると、そこには体育会的な体格をしている黒ずくめの男とその男と体格が似ている付き添いの男がいた。これには、南、

「なんか怪しそうだな」

と言ってはその男たちのところに行くとその男たちに声をかけた。

「大変申し訳ないがちょっと聞きたいことがあるのだがね・・・」

 すると、黒ずくめの男の付き添いの男がこんなことを言い出してきた。

「あの~、私たちにどのようなご用件でしょうか」

これには、黒ずくめの男の付き添いの男、

「あっ、鉄道公安隊の人でしたか」

と驚いては自己紹介を始めた。

「私の名前は牛沼南斗と言います。隣にいる黒ずくめの男は私の双子の兄の牛沼北斗といいます」

どうやら黒ずくめの恰好をしている男が双子の兄の牛沼北斗、付き添いの人が双子の弟の牛沼南斗というのだという。

 すると、北斗の方が南に対していちゃもんをつけてきた。

「う~、お前は誰だ!!俺に近づくんじゃない!!」

これには、ルビィ、北斗の息がかかったのか、こんなことを言い出してしまう。

「うわ~、お酒くさいよ!!」

そう、北斗は酔っぱらっていた。いや、かなり酒浸りになっていたのだ。これには、高山、

「なんでこんなに酒浸りになっているのですか?」

と北斗に尋ねるも北斗はただ、

「酒を飲みたいから飲んでいただけだ!!」

とただ答えるのみであった。

 そんな北斗をみてか、南斗、こんなことを言い出した。

「北斗は酒癖が悪いのです。お酒があればどんどん飲んでしまうのです。私はお酒を飲まないのとは対照的ですね」

そんな南斗の言葉を南は耳を傾けて聞いていた。

 そんななか、南の近くにいた刑事は黒ずくめの服を着ていた北斗を見てはあることをつぶやく。

「もしかして、熊本駅で人を殺したのは北斗さんではないでしょうか・・・」

どうやら、刑事、北斗を熊本駅での殺人の犯人ではないかと睨んだのである。

 だが、曜は意外なことを言った。

「あの~、もしかして、「A列車で行こう」に乗っていませんでしたか、北斗さん・・・」

これには、北斗、こう答えた。

「あぁ、たしかに、俺は「A列車で行こう」に乗っていた。そこのBARで俺は飲んでいただ」

これには、ルビィ、列車のなかでのことを思い出しては、

「たしかに黒ずくめの人は乗ってBARで飲んでいた・・・」

と驚いてしまった。

 そんな曜とルビィの言葉に刑事ははっとした。

「これでは熊本駅での殺人の辻褄が合わなくなるではないか・・・」

そう、北斗を犯人とみた場合、辻褄が合わなくなる・・・、そう刑事は思ってしまったのである。だって・・・、

「たしか、全身黒ずくめの犯人は12:24に(熊本駅のトイレで)被疑者を殺したはず。でも、目の前にいる黒ずくめの人(北斗)は(熊本駅を)12:23に発車した「A列車で行こう」に乗っていた。これじゃアリバイがあるじゃないか・・・」

たしかに北斗にはアリバイがあった。また同じことを言うが、全身黒ずくめの人が熊本駅のトイレで被疑者を殺したのは12:24ごろ、でも、全身黒ずくめの人が熊本12:23発の「A列車で行こう」に乗っていた。なので、もし、黒づくめの人が北斗でああるなら、北斗のアリバイは実証されたことになるのである。

 と、ここで別の刑事があることに気づいた。

「でも、そうだったら、「A列車で行こう」に乗っていた黒ずくめの人が別人だったら北斗さんが犯人だと説明できるのではないでしょうか」

たしかにその通りである。被疑者を殺した黒ずくめの人と「A列車で行こう」に乗っていた黒ずくめの人が別人だったら北斗のアリバイは崩れるのである。

 だが、ここで南斗がその刑事の意見を崩した。

「でも、それだったらここに北斗はいないはずです。だって、12:24に被疑者を殺してここに来るまでの交通手段がありませんから・・・」

たしかにその通りであった。12:24ごろに被疑者は殺された。それなのに、その約1時間後には北斗がここにいる、それに間に合うための交通手段がないというのだ。たとえば、ここまで車で来ることもできるが、北斗は酔っぱらっている、これだと飲酒運転になってしまうのである。また、熊本駅から三角駅付近までは特急バス「あまくさ号」が走っているのだが、それに間に合うためのバスがなかったのである。いわば、北斗がここに来る交通手段なんてなかったのだ。

 こうなると警察もお手上げなのか、

「「A列車で行こう」の乗客に聞きにいけ!!」

とばかりに三角駅に残っていた「A列車で行こう」の乗客に聞き込みを行うもよっぽろ目立っていたのか、黒ずくめの人が列車のBARで飲んでいたことを次々と証言していった。さらには、黒ずくめの人は「A列車で行こう」が到着した13:03から13:24ごろまでずっと三角駅近くにいたこと、そのあと、黒ずくめの人は三角駅構内に入っては付き添いの人である南斗を連れて13:26ごろに三角駅から出てきた、とのことだった。これでは北斗の証言が証明されてしまう。そのためか、警察、

「う~、これでは事件が振り出しに戻ってしまった・・・」

と悔し涙を流していた。

 

 一方、曜とルビィは三角駅構内を巡っていた。事件のことは南たちに任せ、自分たちは三角駅構内を巡ることにしたのだ。そのとき、ルビィはあるものを見つける。

「えっ、なんで、普通列車がここにいるわけ?」

そう、なんと駅のホームには13:31発の普通列車が止まっていたのである。これには、曜、慌てふためく。

「でも、たしか、この三角駅って1つのホームしかないよね!!それなのに次の「A列車で行こう」の出発は13:50!!今は13:29!!「A列車で行こう」がどこにもいないよ!!「A列車で行こう」ってどこにいったの?」

そう、今まで曜たちが乗っていたはずの「A列車で行こう」がどこにもいなかったのである。三角駅は1つのホームと1つの側線を持つ。なので、普通ならホームもしくは側線に「A列車で行こう」が止まっているはずである。だが、そのホームには13:31発の普通列車が止まっているのみだった。むろん、側線にもいなかった。でも、「A列車で行こう」は、今度、13:50に三角駅を出発することになっている。それなのに「A列車で行こう」は三角駅のホームにももう1つの側線にもいなかったのだ。そのため、曜とルビィは慌てふためいたのである、こう言いながら。

「千歌ちゃんはどこにいったの?」(曜)

「千歌ちゃん!!」(ルビィ)

そう、千歌は、今、「A列車で行こう」のBARでバーテンダーをしている。それなのにその「A列車で行こう」が行方不明、なので、とうの千歌も行方不明、となっていたのである。

 そんなときだった。突然、曜とルビィのところにある声が聞こえてきた。

「あぁ、その列車なら西の引き込み線にあるはずだ!!」

その声で曜とルビィは西の方を見る。すると、そこにはたしかに引き込み線があり、「A列車で行こう」がそこに鎮座していたのである。これには、曜、

「あぁ、びっくりした」

と言うとともにルビィも、

「もう、心配したんだから・・・」

と声を上げると近くを見た。すると、

「あっ、南さん・・・」

と南の名を言った。そう、曜とルビィに西の引き込み線のところに「A列車で行こう」があることを伝えたのは南だった。南は高山と一緒に事件の証拠になるものを探していた最中だった。

 そんな南は普通列車と「A列車で行こう」の両方を見る。すると、南、あることをひらめいたのか、

「待てよ。もしかすると・・・」

と時刻表を出してはなにかを確かめるとにやっと笑ってはこんなことを言い出してきた。

「これであいつのアリバイも崩れたのかもしれないな」

と言っては高山に対しある命令を出した。

「すぐに普通列車の乗務員にこんな乗客はいなかったか確認してくれ」

これには、高山、

「わかりました。この普通列車の出発時刻は13:31!!すぐに聞いてきます!!」

そう言うと高山はすぐに三角駅に止まっていた普通列車の乗務員に話を聞くとすぐに南のところに戻っては、

「たしかに南さんの言う通りでした」

と南が思っていることを察知したのか南にそう報告した。

 すると、南はすぐに、北斗・南斗兄弟のいるところに行ってはその兄弟に対してこう切り出した。

「あなたたちのアリバイ、すべて崩れたぜ!!」



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~殺人列車で行こう?~ 後編

※この物語は2020年3月現在の時刻表を参考に作っております。
※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「あなたたちのアリバイ、すべて崩れたぜ!!」

この南の言葉に北斗は反論する。

「なんだって!!俺は「A列車で行こう」に乗っていた!!ずっと黒ずくめの服を着ていたんだ!!それが証拠だ!!」

 だが、これに対して南は静かに、

「いくらそんなことを言ったところでアリバイが崩れたことに間違いはないのさ」

と告げるとこう断言した。

「熊本駅のトイレで被疑者を殺したのは牛沼北斗さん、あなたですね!!」

これには、曜、ルビィ、ともにびっくりする。

「えっ、でも、黒ずくめの服を着ているから北斗さんが「A列車で行こう」に乗っていたことにならないの?」(曜)

「それってどういうこと?」(ルビィ)

むろん、南斗からも文句が出る。

「北斗は「A列車で行こう」に乗っていた!!それはまぎれのない事実だ!!」

 ところが、それに対して南はこんなことを言ってきた。

「その「A列車で行こう」に乗っていた黒ずくめの人が北斗さんじゃないとしたらどうでしょうか」

これには、北斗、

「なんでそんなことが言えるんだ!!俺だとしたら俺だ!!」

と文句を言うと南斗も、

「たしかにそうですよ。北斗は「A列車で行こう」に乗っていたのはたしかなんです」

と反論していた。

 だが、ここで南は南斗にあることを尋ねた。

「では、聞きますが、南斗さんは13:26までどこにいたのですか?」

これには、南斗、

「ずっと三角にいたのですがね・・・」

と言うも高山はそれを、

「いや、南斗さんはずっと三角にはいなかったみたいですね」

と否定すると続けてこんなことを言い始めた。

「駅員の人や観光客の人たちに聞いてみましたが黒ずくめの人を含めて南斗さんや北斗さんを見かけたのは「A列車で行こう」の到着する13:03以降なのですよね・・・」

そう、高山は南の依頼を受け、普通列車の乗務員や乗客、そして、三角駅の駅員や観光客に聞いてまわっていたのである。そのなかで黒ずくめの人を含めて南斗や北斗を見かけたのは「A列車で行こう」の到着時刻である13:03以降であることがわかったのである。これには、南斗、

「くくく・・・」

と悔し顔をするもすぐに反論する。

「それじゃ、私はどうやってここに来たのですか?」

そう、南斗は13:03以降に着ていたのであれば南斗はどうやってここまで来たのか謎だったのだ。

 だが、これには、南、すぐにこう答えた。

 

「そんなの簡単です。南斗さんが黒ずくめの服を着て北斗さんの身代わりとして「A列車で行こう」に乗っていたのですからね!!」

 

なんと、南斗が北斗の身代わりとして「A列車で行こう」に乗っていた、というのである。むろん、これには、南斗、

「なんでそんなことが言えるんだ!!そんなことなんてしていない!!」

と反論すると南はこう反論返しをした。

「では、聞きますが、ここにどうやってきたのですか?」

これには、南斗、

「そ、それは・・・」

と言葉に窮してしまった・・・と思ったがすぐに反論する。

「でも、「A列車で行こう」に乗っていた黒ずくめの人が私である証拠はあるのですかね?」

そう、たとえ三角への交通手段を答えられなくても南斗が北斗の身代わりとして「A列車で行こう」に乗っていた証拠があるのか疑問だったのだ。

 だが、それに対して、南、

「その証拠はこれです」

と言っては自分のスマホを取り出しある写真をみんなに見せた。そこには・・・、

「えっ、これって千歌ちゃんがデコポンストレートを割ったときに使っていたAサイダー・・・」(曜)

そう、そこに映っていたのは「A列車で行こう」のBARで飲んでいる黒づくめの人の姿だった。そして、その人が飲んでいたもの、それは、Aサイダー、だった。

 さらに、ここにきて南に援軍があらわる。

「私、見たもん、この黒ずくめの人、Aサイダーばかり飲んでいたもん!!」

これには、ルビィ、

「えっ、千歌ちゃん!!」

と驚く。そう、この証言をしたのは「A列車で行こう」で(未成年専用)バーテンダーとしてずっとこの列車のBARにいた千歌であった。黒ずくめの人はずっとAサイダーばかり飲んでいたのである。

 さらに、南、南斗に詰め寄る。

「それに、黒づくめの人の体格が北斗さんに似ているかつ北斗さんは、今、酔っぱらっている(=「A列車で行こう」に乗っている黒ずくめの人ではない)かつ「Aサイダーばかり飲んでいる」(=お酒が飲めない)のであれば南斗さんしか該当しないのですがね」

たしかに南の言う通りであった。南斗は先ほどの会話で「自分はお酒が飲めない」と発言していた。さらに、「A列車で行こう」に黒ずくめの人と体格が似ている、となれば(酔っぱらっている)北斗ではなく南斗しかいない、というのである。

 さらに、ここにきて南が・・・、ではなく、なぜか千歌がこんなことを言ってしまう。

「それに、それに、南斗さんが飲んだAサイダーの瓶、まだ「A列車で行こう」のゴミ箱のなかにあるもん!!その瓶に残っている指紋を調べれば南斗さんの指紋がでてくるかもしれないよ!!」

この千歌の言葉に、南斗、

「う~」

と悔し顔をみせるも、南、千歌に対し一言。

「それ、俺のセリフ!!」

あらら、千歌、南のセリフを勝手に言ってしまったようである。これには、千歌、

「えへへ」

と笑ってごまかすも、これには、曜、ルビィから、

「うわ~、主人公殺し・・・」(ルビィ)

「千歌ちゃん、ちょっとやりすぎ・・・」(曜)

とジロリ目で千歌の方を見ていた。

 こうして北斗のアリバイが崩れたかにみえた・・・のだが、ここにきて、北斗、南に言い返す。

「それじゃ、聞くが、俺はどうやって人を殺してここまできたのだ?」

たしかにそうである。12:24ごろに熊本駅で被疑者は殺されたのである。被疑者を殺した犯人が北斗なら約1時間でここ三角駅に来ることなんて不可能に見られたのである。

 だが、南は不敵な笑いを浮かべると北斗に向かってこう断言した。

「それならもうわかっています」

これには、北斗、

「なにが言いたいんだ!!」

と文句を言うと南斗も、

「不可能なことではないのですかね」

と反論してくる。むろん、刑事からも、

「たしか、12:24ごろに熊本駅のトイレで殺されて約1時間でここ三角にくる手段ってあるのですか?」

と南に尋ねる。

 すると、南は三角駅を今から発車しようとしていた普通列車を指さしてはこう言った。

「そんなの簡単ですよ

 

だって、あの普通列車に乗って三角に来たのですから!!」

 

 これには、ルビィ、

「えっ、それってどういうこと?」

と南に聞くと南がそれについて話してくれた。

「実はね、13:26ごろまでに普通列車で三角まで来ることができるのですよ。だって・・・、

 

その普通列車は12:28に熊本駅を出発し13:26に三角駅に到着する列車なのですから」

 

これには、北斗、

「そ、それがどんな証拠になるのですかね?」

と青ざめるとともにそう言うと南はさらにこんなことまで言い出してきた。

「犯人、いや、北斗さんは黒ずくめの服を着て12:24ごろに熊本駅のトイレで被疑者を殺すとその服を駅のゴミ箱に捨て、取り急ぎ、12:28熊本駅発の三角行き普通列車に乗りました。その列車のなかでお酒を飲んで三角駅に13:26に到着、すぐに南斗さんが着ていた黒ずくめの服を着て「A列車で行こう」に乗っていたかのようにみせたのです」

 これには、北斗、すぐに反論。

「そんなことを言うんだったら証拠をだせ、証拠を!!」

 と、ここで高山がその証拠を出してきた。

「それだったらもう裏がとれてます。まず、普通列車の乗務員から、「大きな酒の瓶をもって酒盛りをしていた男がいた、。その男は酒を浴びるように飲んでいた」という証言をもらっています。むろん、その普通列車の乗客のみなさんからも同様の証言を得ています。そして、そのときに北斗さんが飲んでいたと思われる酒の瓶も三角駅のゴミ箱からすでに回収、今、指紋鑑定に出しています。それを比べれば北斗さんの指紋が出てくると思います」

この高山の言葉に北斗はただ、

「ぐぐぐ・・・」

とまたもや悔し顔をしていた。

 

 と、ここで南はまとめに入った。

「北斗さんは、12:24ごろ、熊本駅のトイレで被疑者を殺すとその黒ずくめの服を捨て、12:28熊本発三角行きの普通列車に乗り三角へと向かった。その途中、お酒を飲んだ。対して、南斗さんは12:23熊本発の「A列車で行こう」に黒ずくめの服を着て乗り込み、その列車のBARで飲むことで北斗さんがこの列車に乗っているかのように偽装していた。その後、13:03に南斗さんが到着すると黒ずくめの服を着て三角駅で待ち北斗さんが13:26に三角に到着すると南斗さんが着ていた黒ずくめの服を北斗さんが着ることで北斗さんのアリバイを実証したかのように装った。これが事件の全貌です」

これには、北斗、

「くそっ!!」

と言うとともにすべてを自供した。

「あぁ、たしかに、俺が熊本駅のトイレで人を殺めた。でも、本当なら南斗と協力してそれをごまかすことができたはずなのに、なんで、ここにきて鉄道公安隊が現れるんだ!!くそっ!!」

 ただ、ここにきて、南は南斗にあることを聞いた。

「でも、なんで北斗さんは人を殺めたんだ?なんか事情でもあるのか?」

すると、南斗に代わり北斗がそれに答えてくれた。

「あいつ(被疑者)は「A列車で行こう」を馬鹿にしてきたんだ!!だから、俺たちは許せなかったんだ!!」

これには、南、さらに北斗に尋ねてみる。

「「A列車で行こう」を馬鹿にした?いったいどうして?」

すると、北斗がこう答えてくれた。

「あいつ(被疑者)、キハ185系の改造列車は四国のほうが上、だって言ってきたんだ!!言っておくが、キハ185系の改造は九州の「A列車で行こう」の方が上なんだ!!それをあいつ(被疑者)は馬鹿にしてきたんだ!!」

これには、曜とルビィ、はっとする。

「キハ185系の改造は四国が上?それってどういうこと?」(曜)

「なんのことなの?」(ルビィ)

 すると、南・・・ではなく高山がそれについて説明してくれた。

「実は、キハ185系、四国総局の方でも観光特急として改造して運用しているんだ」

そして、高山はそれについて詳しく解説してくれた。実は、キハ185系、四国の方でも観光特急として改造を受けては運用をしている。その名も「四国まんなか千年ものがたり」、そして、これは未来の話であるが、四国の観光特急、といえばこの列車、「伊予灘ものがたり」(2代目)。そのため、キハ185系を使った観光特急への改造は九州と四国、2か所にて行われていたのだ。これには、北斗、こう言ってしまう。

「四国の観光特急よりも九州の観光特急の方が優れているんだ!!」

と、ここで、南斗も参戦してしまう。

「それにな、「A列車で行こう」は改造を受ける前にラッピングトレインとして阿蘇を走っていたんだ!!それくらい由緒ある列車なんだ!!」

これには、曜とルビィ、びっくりする。

「えっ、改造を受ける前からラッピングトレインとして走っていたの?」(曜)

「それってどういうものなの?」(ルビィ)

と、ここで南が・・・、

「それはな・・・」

と言う前に高山が、

「それはですね・・・」

と南の言葉を遮るようにそれについての説明を始めた。

「実は、「A列車で行こう」、改造前に阿蘇地方でラッピングトレイン「阿蘇ゆるっと博号」として運用したことがあるんだ」

たしかにその通りであった。実は、「A列車で行こう」、改造前にラッピングトレイン「阿蘇ゆるっと博号」として期間限定で運用したことがあった。というのも、実は、阿蘇地方、観光特急がずっと走っていたのである。まずは、皆さんご存じのSLあそBOY、それに、その後継となるキハ58系を改造した列車「あそ1962」、である。だが、2010年に「あそ1962」の運用が終了、九州新幹線全通に伴う新観光特急として「あそぼーい」が新設されることになったのだが、その列車は、当時、「ゆふDX」として運用していたため、その改造に伴った期間のつなぎとしてラッピングトレイン「阿蘇ゆるっと博号」が運用されていたのである。その後、改造を終えた「あそぼーい」が運用を開始するとともに「阿蘇ゆるっと博号」はその運用をはずれ、今度は自分が改造を受けて「A列車で行こう」、になったのである。これには、曜、ルビィからも、

「それくらいすごい列車なんだね!!」(曜)

「けっこうな働き者なんだね!!」(ルビィ)

と「A列車で行こう」を絶賛していた。ただ、セリフをとられた南からは、

「高山、あとでお仕置きだ!!」

と言われてしまったのか、高山、

「み、南さん、ごめんなさい・・・」

と謝るしかなかった・・・。高山、これでも鉄オタである・・・。

 とはいえ、北斗は威張るようにこう言ってしまう。

「だからこそ、九州の方が改造列車の質が1番なんだ!!それをあいつ(被疑者)はそれすら否定した。四国のほうが上、って言ったんだ!!それに、俺、イラついて、熊本駅にあいつを呼んで殺したんだ、俺が殺したとはわからないように南斗とともに偽装しながらな!!」

 だが、そんなとき、北斗のほほを、

バシンッ

と平手打ちをされた音が聞こえてきた。これには、北斗、

「なんで叩かれなきゃいけないんだ!!俺、親にもぶたれたことがないのに!!」

となぜか泣いていた。

 ただ、これにはあまりにも突然のことだったため、南は北斗を平手打ちした人物の方を見る。するとその人は・・・、

「えっ、千歌ちゃん、なんで北斗さんを叩いたの?」(曜)

「えっ、なんで!?:」(ルビィ)

そう、北斗を平手打ちしたのは千歌だった。

 その千歌は北斗に対し言葉を捲し上げた。

「言っておくけどね、改造列車に上も下もないんだよ!!お互いに優れたところがあるんだよ!!それを上とか下とかで見るなんて人がなっていないよ!!人もね上も下もないんだよ!!そう見えているなら、北斗さん、人間失格だよ!!」

そう、千歌は怒っていた。人も改造列車も上とか下とか関係ない、優れた部分がきっとある、それを認めずに上だの下だの決めつけるなんて許せなかったのである。これにはさすがの北斗も、

ガクシッ

と肩を落としてしまった。まさか一少女にそんなことを言われるなんて思ってもいなかったのである。

 その後、桜井たちによって熊本駅で北斗が捨てた黒ずくめの服が見つかり指紋鑑定をした結果、北斗の指紋が見つかった。そのため、北斗・南斗兄弟は殺人の罪で逮捕されていった。これには、南、こう振り返る。

「あまりにもくだらない理由で人を殺すなんて、どうして、人ってくだらないことで言い争うものなんだろうか。まぁ、それでも事件を解決するのが俺の務めなんだけどね・・・」

あまりにもくだらない理由で起きた事件、その意味でもこの事件は人間の愚かさを痛感した事件だったのかもしれない。

 一方、あまりもすごいことを言った千歌はというと・・・、

「やっぱり千歌ちゃんだよ!!すごいことを言うなんて素晴らしいよ!!」(曜)

「うん、千歌ちゃんはやっぱりすごい!!」(ルビィ)

と2人で千歌のことを褒めていた・・・のだが、とうの千歌はというと・・・、

「ふりゃ~、もうエネルギー切れだよ・・・」

と腑抜けになっていた・・・。

 

 その後、千歌は「A列車で行こう」のバーテンダーとして仕事をするため、帰りの「A列車で行こう」に乗って三角を去ってしまった。これには、曜、

「なんか、千歌ちゃん、本当に神出鬼没だね・・・」

と言うとルビィも、

「うん、そうだね・・・」

と同意してしまった。

 とはいえ、2人の度はまだ始まったばかりであった。だが、このとき、2人は知らなかった、このあと、いくつもの事件が2人の目の前で繰り広げられようとしていることを、そして、そのたびごとに南たちとであることになることも・・・。果たして、次の事件はなんだろうか。それについてはあとのお楽しみである。

 

 

殺人列車で行こう? 完 & To be contuned



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~日本一の殺人風景~ 前編

※この物語は2020年3月現在の時刻表を参考に作っております。
 また、この物語は肥薩線がまだ運行していたものとして扱っております。
※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


 三角駅での事件の翌日、

「うわ~、すごい眺め!!川の流れがすごい!!」

とルビィは列車の窓から見える景色に感動していた。これには、曜、

「うん、流れがはやくて見ごたえがある!!」

と同意していた。今、曜とルビィはある列車に乗っていた。その列車とは、球磨川沿いを走る肥薩線の環境特急「かわせみやませみ3号」(熊本11:24→人吉13:05)であった。「かわせみやませみ」は球磨川沿いの風光明媚な景色を車窓に見せながら曜とルビィを人吉へと運んでいた。いや、感動の連続でで曜とルビィは大変喜んでいた。

 そんななか、感嘆な声をあげる曜とルビィに対し、

「よっ、陽ちゃんにルビィちゃん、また会ったな!!」

と声をかける人がいた。これには、曜、

「あっ、南さんに高山さん!!」

と声をかけた人こと南とその隣にいた高山が声をあげる。そう、そこにいたのは前日と同じく鉄道保安隊公安特捜班に所属している南と高山だった。南と高山はなぜかこの「かわせみやませみ3号」に乗っていたのである。そのためか、ルビィ、

「でも、なんで、南さんと高山さんがここにいるの?」

となぜ2人がここにいるのか尋ねてみた。すると、南、

「実はな・・・」

と言おうとしたとき、高山が南の声を遮るとうきうきしながらこう言った。

「だって、この先の矢岳駅にあるSL記念館のD51を撮りにいくんだもん!!」

実は、高山、乗り鉄でもあり撮り鉄でもあった。そのため、人吉駅の先にある矢岳駅のSL記念館に鎮座するD51を撮りに行きたがっていたのである。ちなみに、矢岳駅にあるSL記念館には全国で活躍したD51があり、肥薩線の人気スポットになっていた。なお、過去にはSLあそBOYやSL人吉に使われているSL8620形もその記念館に鎮座していた。それを國鉄九州総局が改修、SLあそBOYやSL人吉として運用しているのである。

 そんなまるで少年のような姿になっていた高山に対し、南、

「ちょっと落ち着け、高山!!」

と注意するも高山はそんなことなんて気にせずに、ただ、

「あともう少しでSLD51と会える!!」

と喜んでいた。そのためか、それにつられてか、ルビィまでもが、

「とても大きなSLが見れる!!ルビィ、うれしい!!」

とうきうきさせながら喜んでいた。

 

 そして・・・、

「ひとよし~、ひとよし~」

と「かわせみやませみ3号」は13:05に終点の人吉に到着。曜とルビィ、南と高山は向かい側に止まっている赤い列車に乗ろうとした、そのときだった。突然、4人の前に大きなワゴンを持った少女が立ちはだかると4人に対し、

「駅弁~、駅弁はいかがかな?」

と言ってきたのである。これには、ルビィ、

「えっ、駅弁売り?」

と驚くも南はそんなルビィに対し説明をした。

「ルビィちゃん、これは人吉名物の駅弁の立ち売りなんだ」

そう、人吉駅には全国的にも珍しくなった駅弁の立ち売りが行われていた。特急や観光列車停車時のみなのだが、列車が到着しては駅弁の立ち売りで駅弁を買っていくお客さんがあとをたたないらしい。ちなみに、人吉駅以外で駅弁の立ち売りをしているところといえば鹿児島本線の折尾駅があり、そこのかしわめしはとてもおいしいで有名である。

 そんなことを聞いたのか、それとも、お昼ごろ、なのだろうか、ルビィ、いきなり、

グ~

とおなかの虫が鳴ってしまったようだ。これには、ルビィ、

「う~、恥ずかしいよ~」

と恥ずかしそうになるもお昼というわけでして、

「でも、お姉さん、栗飯、1つ、頂戴!!」

と駅弁を買おうとした、そのときだった。突然、駅弁売りの少女がこんなことを言ってきた。

「駅弁、1つ、ルビィちゃん!!」

この声に、曜、はっとする。

「えっ、なんでルビィちゃんの名前を知っているの?」

そう、なぜか、駅弁売りの少女、ルビィの名前を知っていたのだ。そのためか、ルビィ、

「なんでルビィの名前を知っているの・・・」

と怯えてしまった。

 だが、駅弁売りの少女は怯えるルビィに対して、

「ルビィちゃん、怯えないで!!私だよ、私、千歌だよ!!」

と自分の名を言うと、ルビィ、その少女を見てびっくり!!

「えっ、千歌ちゃん!!」(ルビィ)

そう、駅弁の立ち売りをしていた少女は千歌だった。これには、ルビィ、

「なんで千歌ちゃんがここにいるわけ?」

と千歌にここにいる理由を問うた。だって、昨日は「A列車で行こう」のバーテンダーをしていたのだから。

 すると、千歌はここにいる理由を言った。

「だって、私、ここで駅弁売りのバイトをしているの、あとで駅弁が食べれるから!!」

あまりにも千歌らしい理由・・・。これには、曜、

「千歌ちゃん・・・」

とただ言うことしかできなかった・・・。

 

 とはいえ、千歌から駅弁を買った曜とルビィ、南と高山は取り急ぎ「いさぶろう・しんぺい3号」(人吉13:14→矢岳14:05→吉松14:33)の列車に乗り込む。「いさぶろう・しんぺい」、この列車は人吉と鹿児島の吉松を結ぶ観光列車である。この区間は矢岳のSL記念館以外にも大畑のスイッチバック+ループ線、真幸のスイッチバックと鉄道ファンからみたらお宝ものの経験ができる大人気路線である。その路線のために作られたのが「いさぶろう・しんぺい」である。ちなみに、「いさぶろう」とはこの区間が建設されたときの当時の逓信大臣だった山縣伊三郎、「しんぺい」とは当時の鉄道院総裁だった後藤新平のことであり、この区間にあるトンネルの両端に可掛けられている扁額(へんがく)にちなんでつけられたのがこの「いさぶろう・しんぺい」なのである。

そんでもって、曜とルビィ、南と高山は千歌から買った駅弁を食べながら大畑のスイッチバック+ループ線を、

「うわ~、すごい、すごいよ、このスイッチバック!!」(ルビィ)

「結構大回りなんですね、南さん」(高山)

「たしかにそうだな」(南)

と楽しんでいた。

 だが、この路線の魅力はそれだけではなかった。大畑のループ線を超えると南はルビィと曜に対してこんなことを言ってきた。

「陽ちゃんにルビィちゃん、このあと、すごい景色が見れるよ。なんだって國鉄が選定した日本三大車窓の1つがあるのだから!!」

日本三大車窓、それは、昔、國鉄が選定した日本が誇る三大車窓のことである。1つは今はもうないが旧根室本線の狩勝峠越え、2つ目は篠ノ井線の姨捨駅、そして、もう1つがここにある、という。これには、曜、ルビィ、ともに、

「えっ、日本三大車窓!!なんかすごい!!」(曜)

「はやく見たい、見たい!!」(ルビィ)

とかなりの乗り気。それをみてか、高山、フライングしてしまう・・・。

「そう、これこそ日本一の車窓、矢岳越え!!」

そう、日本三大車窓の1つ、そして、日本一の車窓といわれている場所、それが「矢岳越え」である。霧島連山とえびの高原を望む絶景でありかなりの名所である。なお、これは余談だが、鹿児島本線は海線(今のおれんじ鉄道)ができるまでは肥薩線が本線であった。そのため、この景色はこの線ができた明治時代から見られたものであり、それだけ多くの人を魅了してきたといっても過言ではなかった。

 こうしている間に「いさぶろう・しんぺい3号」は矢岳越えへと突入した。といってもこの絶景を堪能するために列車は数分間絶景スポットに停車することになっていた。そのため、曜とルビィは今か今かと列車が止まるのを待っていた。

 そして、ついに列車は止まった。矢岳越えの絶景ポイントに到着したのだ。そのため、すぐに、曜、

「はやく、絶景、見ようよ!!」

とその車窓がみえる左側の窓へと移る・・・そのときだった。突然、乗客の一人が声をあげた。

「キャー、死体がつらされている!!」

この声に南と高山が反応、すぐに声をあげた乗客のところに行くとその乗客はその場所を指さした。すると・・・、

「たしかに死体がつらされているな・・・」(南)

そう、絶景ポイントすぐの林の木に死体がつらされていたのである。

 だが、ルビィ、それ以外にもあるものを見つけた。

「えっ、なんで、善子ちゃん、花丸ちゃん、梨子ちゃんがいるわけ?」

なんと、死体がつらされた木の近くにここにいないはずのヨハネ、花丸、梨子がいたのである。これには、ルビィ、

「3人とも動いていないよ。もしかして、死んじゃったの・・・」

と愕然となってしまった。むろん、ヨハネ、花丸とも親友である南でさえも、

「うそだろ!!なんでそこにいるんだ!?」

と驚きを隠せずにいた。

 その後、事態を重くみた九州総局は「いさぶろう・しんぺい3号」を急いで矢岳へと移動させると南と高山は曜とルビィを連れて死体が見つかったところまで南が手配してくれたパトカーで移動することになった。

 そして、死体がつらされている木のところまで行くと、そこには・・・、

「く~、とても残虐なことをするもんだ・・・」

と南が言うくらい悲惨なものだった。だが、その人(被疑者)はまるで自殺したかのようにみせたいのかつるされてできた縄のあととは別に首に絞められたあとが残っていた。それは、つまり、被疑者は殺された、殺人であることがわかった。

 一方、ヨハネ、花丸、梨子はというと・・・、

「善子ちゃん、花丸ちゃん、梨子ちゃん、起きて!!」(ルビィ)

「う~、ふわ~、あれっ?ルビィ、どうしたの?」(ヨハネ)

と次々と起きるヨハネたち3人。どうやらヨハネたちはだれかに眠らされていたようである。これには、曜、

「ふ~、よかった・・・」

と胸をなでおろした。

 と、ここで、ルビィ、花丸にあることを尋ねる。

「花丸ちゃん、なんでここに来たの?」

 すると、花丸はこう答えてくれた。

「陽ちゃんとルビィちゃんにサプライズのつもりで人吉に来たずら」

花丸が言うにこの通りであった。曜とルビィが九州に旅立ったあと、花丸たち3人は曜とルビィにバレないように飛行機で熊本入りしていたのである。その理由は曜とルビィと一緒に卒業旅行を楽しみたかったから。でも、曜とルビィにサプライズを仕掛けたい、ということで2人には内緒で「かわせみやませみ1号」(熊本7:38→人吉9:12)に乗って人吉まで来たのだという。

 その花丸だったが、突然、ヨハネがこんなことを言い出してきた。

「そのあと、人吉市内を観光していたのだけど、私たち、とあるところで人が誘拐されるところを見たの。で、その人を助けようとしたのだけど今度は私たちが襲われて眠らされてしまったわけ・・・」

なんと、ヨハネたち3人は誰かに襲われたのだという。ヨハネ曰く、人吉を観光中に誘拐現場に遭遇、そのとき、誰かによって眠らされたあと、この場所まで運ばれてきた、のだという。これには、南、

「善子ちゃんたちはその現場を見たから襲われた、ということだね」

と冷静に分析していた。

 そんなとき、ルビィはあることに気づく。

「そういえば、善子ちゃん、いつもしているヘアゴムは?」

これには、ヨハネ、

「あっ、たしかになくなっている・・・」

と自分の髪を触ってとめていたヘアゴムがなくなっていることに気づく。ヨハネといえば頭の上に1つ大きなシニヨン(善子玉)をしているのだが特徴的である。だが、今のヨハネはそれをしていなく普通のロングヘアーになっていた。それは、つまり、善子玉を作っていたヘアゴムがなくなっていることを意味していた。そのため、ヨハネ、すぐにまわりを探すも見つからず、

「もしかしてここに来るときになくしたのかも・・・」

とがっかりしてしまった・・・。

 そんなヨハネであったが、ここで警察が登場、ヨハネたち3人に対しこんなことを言ってきてしまう。

「ちょっとすまないが、あなたたち3人に殺人の容疑がかかっている。警察署まで来てほしい」

なんと、ヨハネたち3人に対し殺人容疑がかかっているようだ。これには、ルビィ、

「それはなにかの間違いだよ!!」

と反論するも南から、

「彼女たちはここで眠らされていただけだ!!なにかの間違いだ!!」

と反論。

 だが、警察はただ、

「とはいっても被疑者と一緒にここにいたのでありますからして・・・」

とあくまでもヨハネたちを殺人犯とみている感じ。そのため、ルビィはこんなことを言ってしまう。

「だったら、ルビィたちがこの事件を解決してみせる!!」

なんと、自分たちでこの事件を解決しようというのだ。これには曜も、

「うん、善子ちゃんたちに無実の罪をきせるなんて許せない!!絶対私たちの手で善子ちゃんたちを解放してみせるね!!」

とやる気に満ち溢れていた。

 そんななか、南はあることを考えていた。

(ルビィちゃんたちの言う通り、この事件には別の犯人がいる。善子ちゃんたち3人はその犯人の手によって殺人犯に仕立てるつもりで善子ちゃんたちを誘拐、眠らされてここに連れてこらえたんだ。そうに間違いない!!)

そう、犯人はたまたま被疑者の誘拐現場を目撃したヨハネたち3人を誘拐、殺人犯として仕立てるつもりでこの場所まで眠らされて連れてこさせた、というわけである。これにはさすがの南も許せなかった。そのため、南、

(それならルビィちゃんたちのサポートをしっかりやらないとな!!)

とこの事件を解決するために躍起になっている曜とルビィのサポートをしっかりすることを心に誓うのであった。

 

 そんなルビィたち4人のもとに桜井たちから通信が入った。これには、南、

「こちら、南だが、桜井、どうした?」

と尋ねると同僚の桜井からこんな報告が入った。

「南さん、今、私たちは人吉にきているのですが怪しい4人組を見つけました。すぐに人吉にまで来てください」

これには、ルビィ、

「もしかして、犯人?」

と言うと南はこう答えた。

「それはわからない。だけど、その可能性は高いと思う」

この言葉にルビィはあるお願いをした。

「それならルビィたちを一緒に連れてって!!」

なんと一緒に連れていってほしいとお願いされたのだ。これには、南、こう答えた。

「わかった。一緒に行こう!!」

ルビィたちはこの事件を自分の手で解決しようと決めていたのである。それに南も手を貸すことを決めていたため一緒に行くことにした。

 

 その後、ルビィと曜、南と高山はすぐに人吉へと向かった。その際、ヨハネたちには、ルビィ、

「善子ちゃんたち、ルビィ、無実の罪を晴らしてくるからね!!」

と元気よく答えていた。

 そして、人吉につくなり警察と言い争っている4人組を見つけた。そこではリーダーらしき男が警察に対し、

「俺たちは関係ない!!そこをどけ!!」

と文句を言っていた。これには、南、

「ここは俺がでよう」

と言うと警察と対立している4人組のリーダー格の人と警察のあいだに入ってはこう言った。

「私は鉄道公安隊の南だが話を聞かせてくれ」

この南の言葉にそのリーダー格の男がこんなことを言った。

「俺は渡と言うものだが、俺たちはここを観光するためにきていたんだ!!それなのにどうして怪しまれないといけないんだ!!」

どうやら、渡たち4人組は人吉・えびののあたりを観光するたえにここに来たというのだ。ただ、それを証明するものがなかったため、南、近くの警察の人を呼んでは、

「今わかっていることを話してくれ」

と言っては今わかっている情報を教えてもらうようにお願いした。

 すると、警察はすぐに今わかっている情報を南に教えてくれた。

「実はですね・・・」

教えてもらったことは以下の通り。まず、Nシステムで渡たち4人組の足取りを追うと、まず、14:00ごろの人吉ICを降りる渡たち4人組が乗ったワゴン車が記録されていた。これには、渡たち、

「これが俺たちがここを観光している証拠だ!!」

と言い張ってきた。

 だが、警察はすぐにこれについてある情報を南に見せた。

「ですが、実は、Nシステムにはそれとは別に11:00ごろに人吉ICを上って11:30ごろに(吉松駅近くの)えびのICを降りるワゴン車が記録されていまして、(人吉IC~えびのICの区間にある)山江SAやえびのPAでは「(渡たちが乗っていた)ワゴン車にはたった一人しか乗っていなかった」という目撃証言もあります。さらに、そのあと、11:50~12:20にも渡たちのワゴン車がえびのICから上って人吉ICに降りていたこともわかっております」

まとめるとこうである。

 

11:00人吉IC

→山江SA・えびのPA(たった一人しか目撃されていなかった)

→11:30えびのIC→11:50えびのIC

→12:20えびのIC

 

さらに、南はそれ以外の証言を警察から聞いた。

「あと、渡たちが乗るワゴン車ですがどうやら人吉あたりを早朝から走っていたみたいです。それに、4人のうちの3人は朝の8:00ごろに熊本市内にいたことも確認されております」

なんと、渡たち4人組のワゴン車は今日の早朝からこの時間まで人吉とえびのの地域で走っている姿を目撃されているみたいのようだ。また、4人のうちの3人は朝の8:00ごろ、熊本市内で目撃されていたのである。これには、南、

「なにか怪しい」

と公安官の勘を感じてか渡たち4人組を怪しんでいた。なので、南はルビィと曜に対して、

「やっぱりあの渡たちが怪しい。なにかあるのかもしれない・・・」

と言うとこれまでわかっている情報を共有しつつもこう告げた。

 すると、ルビィは渡たちに対してあることを尋ねた。

「ところで、渡さんたち、今日、どうやってここ(人吉)まで来たの?」

そう、今日、ここ人吉にどうやって来たのかである。これには、渡たち、こう答えた。

「今日来たのではなくて昨日来たわけ。だって、今日1日じゃ人吉あたりをまわることができないじゃない」

だが、ここにきて1つの疑問が生じた。ルビィはこう考えていた。

(えっ、昨日から人吉に来ているの?なら、朝の8:00ごろに熊本市内にいた、という証言と食い違うじゃないかな・・・)

たしかにその通りであった。4人のうち3人が今日の朝8:00ごろに熊本市内にいたのである。それなのに昨日から来ているのならその辻褄が合わなくなる。これにはルビィどころか南もその違和感を感じていた。

 そんなときだった。突然、高山はこんなことを言い出してきたのだ。

「ところで、渡さんたち、「矢岳越え」、とてもすばらしい景色でしたよね。曜ちゃんはどう思いましたか?」

あまりに唐突的な質問、だが、そこには高山の勘があった。高山はこのときこう考えていた。

(たしかに矛盾している。けど、このままだと渡たちはそれを認めない、熊本市内にいたことを認めてくれないだろう。なら、遺体遺棄現場となった矢立越えの場所をどうやって見つけたのか、それを調べてやる!!)

高山はこのあとの展開を知っていた。ルビィと南が感じた違和感を、朝8:00ごろに熊本市内にいたのに昨日から人吉にいたと言っている渡たちの矛盾をつくことを。でも、渡たちはそれを否定してくるのは目にみえていた。なら、ほかの切口で、どうやって遺体遺棄現場を見つけたのか、それを聞き出そうとしていたのだ。その高山の意図を感じたのか、曜も、

「うん、とてもすばらしい眺めだったよ!!」

と答えてはすぐに渡たちに対しある質問をぶつけてみた。

「ところで、渡さんたち、「矢立越え」って知っている?」

ただ、それに関しては、渡、

「いや、知らない」

の一点張り。すると、ルビィ、

「矢立越えって・・・」

と矢立越えの説明を始めるも渡たち4人とも、

「へ~」

というだけだった・・・かのようにみえたのだが、一人だけ、ぼそっと、

「あそこのことか・・・。とてもすばらしいかったような気がする・・・」

と言ってしまった。これには、南、

(あっ、なにか知っているのでは・・・)

と感じてしまった。

 その後、南は渡たちの了解を得て渡たちが乗っているワゴン車を見て回った。真っ白なワゴン車だったのだが、ところどころそのワゴン車にはひっかき傷があった。これには、南、

(なんか木でひっかかれた傷があった。もしかして・・・)

とその傷を写真に撮っていた。

 とはいえ、今のままでは証拠不十分になってしまう、そう思った南は、ルビィ、曜、高山を集めてはあることを話し合っていた。

「俺からみるにあの渡たち4人組がとても怪しいと思っている。でも、今のままでは証拠不十分だ。どうしたらいいと思う?)

 すると、ルビィはこんな提案をしてきた。

「それだったらどうやってこの人吉に来たのか探してみるのも手だと思うの。だって、その部分があやふやなんだもん」

たしかにルビィの言う通りであった。今の渡たちにとってあやふやになっているのが人吉にどうやって来たのか、という部分であった。その部分を突きつければほこりがでるかもしれないのだ。また、高山もある提案をした。

「それに、被疑者の遺体遺棄現場をどう見つけたのかも気になります。あの場所に遺体を遺棄した+善子ちゃんたちをそこに放棄したこと、それは誰かに見つけてくれ、と思ってのことだと思います」

たしかにその通りであった。普通ならバレないように林のどこかに遺体を放棄すべきである。だが、「いさぶろう・しんぺい」で見つけてやすくなるように被疑者の遺体を木につるした+ヨハネたちをその近くに放棄した、となれば、誰かにみつけてくれ、犯人はヨハネたちである、そう誘導しようとしているのは目にみえていた。なので、その遺体遺棄現場をどうやって見つけたのか、それが高山には気になっていたのである。

 こうして、南たちの今後の方針が決まった。まずは渡たち4人のうちの3人がどうやって人吉に来たのか、被疑者の遺体遺棄現場をどうやってみつけたのか、それを調べることにしたのである。

 

 その後、ルビィと曜、南と高山は人吉警察署に行く。そこには留置されていたヨハネ、花丸、梨子がいた。その3人に対しルビィはあることを聞いた。

「善子ちゃんたち、ここにどうやって来たのかもう1度教えて?」

すると梨子がそれについてもう1度説明した。

「たしか、私たち、ルビィちゃんたちを驚かせるためにはやめに列車に乗っていたの。たしか、「かわせみやませ1号」だったはず・・・」

「かわせみやませ1号」は熊本を7:38に発車、9:12に人吉に到着する列車である。ヨハネたち3人はその列車に乗ってきたのであるが、ここで南がある写真を見せてはこう尋ねてきた。

「ところで、その列車にこの4人組のうちの3人をみていないか?」

どうやら南の出した写真は渡たち4人組の写真のようだ。

 だが、これには、ヨハネ、花丸、ともに、

「う~ん、その人たちは列車のなかではみなかったね」(ヨハネ)

「おらもわからないずら・・・」(花丸)

どうやら「かわせみやませ1号」には渡たち4人組は乗っていなかったようだ。

 そんなとき、梨子があることを思い出したのか、

「あっ、もしかして・・・」

と言ってはとても重要なことを言い出した。

「たしか、私たちが気を失う前に見た人(被疑者)が誘拐されるところにいたかも!!」

その梨子はその写真を指さしては、

「この人とこの人」

と梨子がそのとき見た人を教えてくれた。これには、曜、

「それって大事な証言じゃないかな」

と喜ぶも高山はそれに水差すようなことを言ってしまう。

「でも、彼女たちはまだ殺人容疑が晴れていません。それはでっちあげと言われても仕方がないかもです」

たしかにその通りであった。南たちは渡たち4人組が怪しいとみている。だが、今、現時点で1番疑われているのは遺体遺棄現場にいたヨハネたちである。そのため、梨子の証言がでっちあげの可能性があると判断されてしまうのである。だから、梨子の証言も今の段階では信ぴょう性がないともいえた。

 そんなとき、曜は南にこんなことを言ってみた。

「このままだったら梨子ちゃんたちが逮捕されちゃう。それよりも4人組の足取りを調べてみてはどうかな?」

たしかにその通りである。まずは渡たち4人組のこれまでの足取りを調べることが先決なのかもしれなかった。

 ただ、このとき、花丸がこんなことを言ってきた。

「あっ、おらの大事にしている本がないずら!!」

それを聞いた南は花丸に対しこう言った。

「花丸ちゃんの本?それってどこで落としたのかしらないか?」

すると、花丸はこんなことを言ってきた。

「たしか、誘拐される前まではちゃんと持っていたずら!!」

これには、南、なにかピンときたのか、どこかに電話をしてはこんなことを言っていた。

「松井、松本、梶山、お願いがある。至急、誘拐現場に行ってくれ」

 そして、南はルビィたちにこう言った。

「今、あることを調べている。それよりも渡たちの行動を調べることにしよう」

 こうして、ルビィたちはヨハネたちに「迎えにくる」と言っては警察に渡たち4人組の足取りを追ってもらうことにした。すると、あることがわかった。それは・・・、

「車やバスでは来ていたにのか・・・」(南)

そう、渡たち4人のうち3人は、車、もしくはバスでは人吉には来ていない、というのだ。バスなら熊本から人吉まで高速バスで来ることができるのだが、バスの運営会社に問い合わせたところ、その3人に該当するお客さんがいなかった、とのこと。また、車に関してもその3人を目撃した人はいなく、逆にえびのICを上った11:50までは運転していたと思われる人が一人で運転していた、という証言が多発していた。これには、ルビィ、

「車やバスで来ていないとなるとあとは列車のみだね・・・」

と反応する。人吉に来るには車やバス以外に列車しかない。ということは、列車を調べればいい、というわけである。

 そこでルビィと曜はすぐに人吉駅に向かっては聞き込みを開始した。すると・・・、

「う~ん、早朝には見かけなかったな・・・」

「う~ん、みかけない人だね・・・」

といろんな証言がとれた。これには、曜、

「だったら、私と南さんで証言をまとめてみる!!」

と証言とこれまでわかっていることをまとめてみた。すると、次のことがわかった。

「かわせみやませ1号」(熊本7:35発)より肥薩線八代発人吉行きの普通列車(5:15発と6:58発)には渡たち4人組は乗っていなかったし、8:00ごろは渡たち4人のうちの3人が熊本市内にいた」

「SL人吉(熊本9:45→人吉12:09)には渡たち4人組は乗っていなかったし、その時間帯(11:50ごろ)には渡たちはえびのICを上っていた」

この結果、ルビィと曜は、

「う~ん、これだと(渡たち4人組のうちの3人が)どの列車に乗ってきたのかわからないよ・・・」(ルビィ)

「私もわからなくなったよ・・・」(曜)

とお手上げ状態であった。ただ、南と高山は時刻表をみるなり、

「なるほどな・・・」(南)

となにかがわかったようだ。

 そんなとき、ルビィと曜にある人物から差し入れが入ったのか、

「曜ちゃんにルビィちゃん、まずはお茶を飲んで落ち着こう」

と言ってはあったかいお茶(駅弁と一緒に売られているポリ茶瓶)をだしてきた。これには、ルビィ、

「あっ、千歌ちゃん、差し入れ、ありがとう」

とそのお茶を渡してくれた人こと千歌にお礼を言った、そんなときだった。突然、ルビィが持っている渡たち4人組の写真を見ては、千歌、はっとなったのか、こんなことを言い出してきた。

「あっ、この人たち、知っている!!たしか、10:05ごろに駅弁を買ったお客さんだ!!」

これには、ルビィ、

「えっ、千歌ちゃん、なにか知っているの?」

と驚くと千歌に迫っては尋ねてみると千歌はそのときの状況を教えてくれた。

「実はね、10:04ごろに赤い列車が熊本側から人吉駅のホームに入ってきたね止まったの。そして、その列車のなかからそのお客さんが出てきてね駅弁を買っていったの。そのあと、そのお客さんは赤い列車に戻っていったの。たしか、その列車は10:09ごろに吉松に向けて走っていったよ」

この千歌の言葉に曜ははっとした。

「えっ、その赤い列車って、まさか、「いさぶろう・しんぺい」!!」

そう、まさしく千歌のいう赤い列車というのは「いさぶろう・しんぺい」だったのである。これには、曜、びっくり・・・したどころか、ルビィも驚くとこんなことを言い出してきた。

「えっ、「いさぶろう・しんぺい」って人吉の列車ではないの?」

これには曜も、

「私もそう思っていた!!」

と言うと南はルビィと曜にあることを尋ねた。

「それって「いさぶろう・しんぺい」が人吉の車両基地の列車ってこれまで思っていたわけ?」

 すると、ルビィが代弁してこんなことを言ってきた。

「だって、「いさぶろう・しんぺい」って人吉~吉松間の観光列車でしょ!!なら、人吉の車両基地に所属する列車ってなるわけじゃないのかな?」

ようはこういう意味である。「いさぶろう・しんぺい」は人吉~吉松間の観光列車である。なので、「いさぶろう・しんぺい」はその区間の列車が所属している人吉の車両基地のものであるとルビィと曜はそう思っていたのである。

 だが、それについて南が説明する。

「実は、「いさぶろう・しんぺい」は人吉ではなくて熊本の車両基地の所属なんだ」

たしかにその通りであった。「いさぶろう・しんぺい」は人吉の車両基地の所属ではなくて熊本の車両基地の所属だったのだ。これには、曜、

「へぇ~、そうなんだ・・・」

と驚きの表情をみせた。

 すると、ルビィは、

「あっ、もしかして、「いさぶろう・しんぺい」は・・・」

と言うと自分の推理を曜、南と高山に聞かせた。すると、南、

「それは言えているかもな」

と言っては渡たち4人組を呼び出すことにした。場所は人吉駅。突然の呼び出しに、

「なんだよ・・・。せっかくいいところだったのによ!!」

と不機嫌そうになるもルビィはその4人組に対してこんなことを言い出してきた。

「この事件、あなたたちが犯人だと思うの!!」



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~日本一の殺人風景~ 後編

※この物語は2020年3月現在の時刻表を参考に作っております。
 また、この物語は肥薩線がまだ運行していたものとして扱っております。
※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「この事件、あなたたちが犯人だと思うの!!」

このルビィの言葉に渡たち4人組はすぐに、

「へぇ~、それがどうしたというわけ?」

と白を切る様子。そんな渡たち4人組に対してルビィはあることを言った。

「その焼香はね、4人組のうちの3人が「いさぶろう・しんぺい」に乗って熊本から人吉、そして、吉松へと行ったことなの!!」

これには、渡、

「へ、へぇ~」

と少し動揺するもすぐに、

「でも、それに乗った証拠ってあるわけ?」

とこれまた否定した。

 そんな渡たち4人組に対し曜はある人を呼んだ。それは・・・、

「なら、この人に証言してもらうよ、「いさぶろう・しんぺい」のクルーに!!」

そう、「いさぶろう・しんぺい」のクルーだった。そのクルーは曜の前にくるなりこう証言した。

「たしかにこの4人のうち3人を見ました。たしか、熊本から人吉、そして、吉松へ、駅弁を食べながら車窓を楽しんでいました」

たしかな証言、でも、渡はすぐに反論した。

「へぇ~、でもね、「いさぶろう・しんぺい」は人吉~吉松の観光列車!!熊本駅から人吉駅まで俺たちを乗せてきてくれるとは思えないな」

この渡も「いさぶろう・しんぺい」が人吉~吉松間の観光列車であると思っているようだった。

 だが、それをルビィは論破してみせた。

「それは間違いだよ!!だって、「いさぶろう・しんぺい」はね、熊本から人吉まで特急として運行しているんだもん!!」

そう、実は「いさぶろう・しんぺい」は熊本~人吉は特急(熊本8:31→人吉10:09→吉松11:30)として運転していたのだ。というのも、「いさぶろう・しんぺい」は熊本の車両基地の所属、そのため、熊本から人吉まで回送ではなく特急として旅客輸送をしていたのである。で、渡たち4人のうち3人はその列車に乗って熊本から人吉、そして、吉松まで向かったのである。

 ただ、これには、渡、すぐに反論。

「言っておくが、そんなの他人の空似だろ!!嘘をつくな!!」

 だが、これには、南、さらに反論する。

「それだったらこの証言があるのですがね・・・」

すると、南、ICレコーダーを持ちながらそれを再生した。すると・・・、

「あそこのことか・・・、とてもすばらしかったような気が・・・」

という4人のうちの1人の声が聞こえてきた。これには、4人組の1人、

「えっ、その声って僕のじゃ・・・」

と唖然となってしまう。これには、南、

「すいませんね。俺、聞き込みする際、録音することにしているのでこんな証言がとれるのですのよね」

と笑いながら答えていた。そう、南はあとでなにかの証言になるからと聞き込みの際、ICレコーダーで録音しているのである。そして、渡たち4人組の聞き込みのときも南はICレコーダーで録音しておりこの証言がとれたのである。

 それでも南はさらに続ける。

「これは「いさぶろう・しんぺい」で「矢立越え」のことを俺たちで話していたときにあなたちの1人が言っていたものです。あなたたちは「いさぶろう・しんぺい」に乗っていないと言っていたが、この「矢立越え」の証言があるのであればあなたたちは「矢立越え」をみてそこを遺体遺棄の場所として選定したのかもしれませんね」

そう、この渡たち4人のうちの3人は「いさぶろう・しんぺい」に熊本から人吉、そして、吉松まで乗っていたのである。そして、「矢立越え」を見てそこを遺体遺棄の場所と決めたのである。

 そして、ルビィはまとめにはいる。

「渡さんたち4人のうち3人は「いさぶろう・しんぺい1号」に乗って熊本から人吉まで来たの。さらに、その列車に乗って吉松に行く途中、「矢立越え」を見てそこを遺体遺棄の場所にすることを決めたの。そして、先に来ていた仲間と一緒に吉松から人吉まで車で行って被疑者を誘拐、その現場を偶然見ていた善子ちゃんたちすらも誘拐したんだ!!そのあと 被疑者を殺して「矢立越え」の場所で遺体を木につるした上に善子ちゃんたちを犯人に仕立てるために遺体と近くに放棄したんだ!!」

 だが、それでも渡たちは否定した。

「ふんっ、たとえそうであってもそれを着実にいえる証拠がないんじゃないかな?善子っていう子なんて知らないし、その子を俺たちのワゴン車に乗せた、という証拠なんてないんだぞ!!」

たしかにその通りであった。渡たち4人のうち3人が「いさぶろう・しんぺい」に乗ってきたこと、ただそれだけでは相手の犯行といえる証拠としては弱かった。

 だが、ここで南は動いた。南、渡たち、4人をにらむとこんなことを言ってきた。

「実はですね、善子ちゃんたちが誘拐されたところからこんなものが見つかったのですよ」

これには、渡たち、

「へぇ~、なんでしょうか?」

と尋ねると1つの証拠を南は取り出し4人の前に見せてはこう告げた。

「これは誘拐された善子ちゃんたちの一人、花丸ちゃんの本です」

 

 そう、南は人吉に捜査のために来ていた同僚の桜井、松本、梶山にお願いしてもう一度誘拐現場を捜査していたのである。そのとき、桜井はあるものを見つけると南に連絡したのである。

「南さん、なにか本が見つかりました」

すると、南はすぐにその本について桜井に聞いてみた。

「その本の持ち主は誰なのかわかるか?」

と、ここで、なぜかこの少女が登場しては南と桜井の電話に乱入してきた。

「あっ、これって花丸ちゃんの本だよ!!」

これには、南、びっくりしてはその少女の名を叫んだ。

「って、なぜ、ここに千歌がいるんだ?」

そう、2人の電話に乱入してきたのは人吉駅の駅弁売りのバイトをしていた千歌だっただのだ。

 でも、そんなことなんてお構いなし、なのか、千歌、すぐにこんなことを言ってきた。

「この本にブックカバーがあるでしょ。でね、そのブックカバーの下部分に名前があるんだよ。そこにはちゃんと「花丸」って書いてあったの」

これには、桜井、少し気になることを千歌に聞く。

「って、花丸ちゃんのことを知っているの?」

これには、千歌、こう答える。

「そりゃそうだよ。だって、花丸ちゃんは一緒に誘拐された善子ちゃんの友達であって、千歌たち、Aqoursの大事な一員なんだもん!!」

この千歌の言葉を聞いて桜井ははっとした。

「ということは、善子ちゃんと花丸ちゃん、あと、梨子ちゃんは、偶然、被疑者が誘拐されたところを居合わせたために一緒に誘拐された、ということですね」

その桜井の言葉を聞いてか、南、すぐに、桜井、松本、梶山にこう命令した。

「桜井、松本、梶山、すまないがすぐに熊本県警と熊本鉄道公安とともに誘拐現場の近くにある防犯カメラの映像を探し出せ!!その防犯カメラの映像に被疑者と善子ちゃんたちを誘拐した車などの映像が見つかるはずだ!!」

 こうして桜井たちは熊本県警と熊本鉄道公安の力を借りて誘拐現場近くの防犯カメラの映像を探し出し、その誘拐現場に近づく黒服とサングラスの男とキャップ帽をしている男の姿、そして、渡たちが乗るワゴン車に似た車の映像を見つけたのである。

 

 そして、南はその本とともにそのときの映像を見せると渡たちにこう言った。

「これがあなたたちが被疑者と善子ちゃんたちを誘拐した証拠になるのです!!」

その南の言葉に渡は、

「うぐぐ」

とうなるしかなかった。

 と、ここで、南、怒涛のごとく、次の証拠を提示しては渡たちを追い詰める。

「それに、その誘拐に使ったあなたたちのワゴン車の傷、遺体遺棄現場の木々をひっかけた傷ですよね」

すると、渡たち、激しく動揺する。

「うぅ、そ、それは・・・」

そう、ワゴン車にはひっかき傷が残っていた。それは遺体遺棄現場にあった木をひっかけた傷であった。これには、南、

「言っておきますが、そのひっかき傷の原因となった木からこのワゴン車の表面に塗ってある塗料の成分が見つかりました」

さらに、ルビィはそのワゴン車の後ろのバックドアを、

「る、ルビィも証拠をみつけるもん!!」

と勝手にあけるとその車の後方トランクの場所から、

「あっ、これって善子ちゃんのヘアゴム!!」

となくしたと思っていたヨハネのヘアゴムが見つかった。これには、南、

「あの~、どうしてあなたたちのワゴン車に乗ったことがないはずの善子ちゃんのヘアゴムが見つかったのですかね。これって善子ちゃんを誘拐して遺体遺棄現場に連れて行った絶対的な証拠ですよね・・・」

と渡たちに迫るとついに観念したのか、渡たち4人組のうちの1人がついに白状した。

「う~、仕方がなかったんだもん!!あいつ(被疑者)のせいで僕たちの人生は真っ暗になったんだもん!!」

そう、被疑者を殺したのは渡たち4人組だった。これには、渡、

「ふんっ、ばれたから仕方ないな。あぁ、そうさ、あいつ(被疑者)を殺したのは俺たちだ。もう自供したんだ!!俺たちの勝手にさせてくれ!!」

 すると、高山が渡たちにある質問をした。

「でも、どうして被疑者を殺したんだ?」

これには、渡がこんなことを自供した。

「俺たちがあいつ(被疑者)のことをSNS上で貶したんだ。ただそれだけなのにあいつは俺たちのことを訴えてきた。それが許せなかったんだ!!」

詳しくいうと次の通りであった。渡たち4人は被疑者に対してSNS上で誹謗中傷を繰り返していたのだが、被疑者はそれを裁判所に訴えたのである。その後、渡たちは敗訴、被疑者に対して多額の慰謝料を払うことになったのである。だが、それをよしとしなかった渡たちは被疑者を殺してそれをなしにしようとしていたのである。

 だが、これには、南、キレてしまう、いや、断罪した。

「そんなのただの逆恨みだ!!本来はしてはいけないことをお前たちはやったんだ!!それ自体問題であるのに、それを人のせいにして人を殺すなんて人の風上にもおけないことだぞ!!」

たしかにその通りである。SNS上に限らず人のことを誹謗中傷すること自体問題といえる。だが、それを相手から訴えられた、その結果、敗訴して多額の慰謝料を払うことになった、としてもそれを逆恨みしてその人を殺すこと自体絶対にやってはいけないことなのである。それを平気でやること自体許せない行為といえた。そのため、南は渡たち4人に対して断罪したのである。これにはさすがの渡ですら、

「・・・」

と無言になるしかなかった・・・。

 その後、意気消沈した渡たち4人組は警察によって逮捕された。自分たちの自供だけではなくヨハネたちの渡たち誘拐現場での証言もありそれが決めてとなった。こうして、曜とルビィの初めての事件の解決を試みた事件は幕を下ろすこととなった・・・。

 

 そして、

「ルビィたち、ありがとう!!」(ヨハネ)

とようやく警察から解放された、善子、花丸、梨子の3人は警察署の前にいたルビィと曜に抱きついてはお礼を言った。それに対してルビィと曜は、

「いやいや、そんなことないよ・・・」(ルビィ)

「でも、ようやく解放されてよかったね!!」(曜)

と喜んでいた・・・のだが、その一方で、ルビィ、

「でも、ルビィたちだけで事件を解決できなかったね・・・」

とがっかりしながら言うと曜も、

「うん、そうだね・・・」

とこちらもがっかりの様子。たしかに曜とルビィからすれば渡たち4人組が熊本から人吉までどうやってきたのかを南たちの手を借りて解決しただけだった。それは渡たち4人組を逮捕できるくらいの力はなかった、と2人は思っていたからだった。

 だが、これに対して南はこうフォローした。

「でも、今日は陽ちゃんとルビィちゃんの力によるものが大きかったんじゃないかな」

 ところが、ルビィ、あることに気づいていた。それは・・・、

「でも、南さんに高山さん、ルビィたちが推理しているあいだ、なにかわかっていたような気がしたんだよね・・・」

すると、南がこんなことを言ってきた。

「まぁね。だって時刻表を見ればすべてがわかるんだからな」

そうである。ルビィと曜は時刻表を見ずに南と高山の助言を得て渡たち4人組の熊本から人吉までの行程を推理してみせたのである。だが、南と高山はこのときにはすでに時刻表をみただけでその行程がわかったのである。これには、曜とルビィ、ともに、

「今度から時刻表をみることにする・・・」

と反省していたのである。だが、このときの反省がのちに曜とルビィに大きな手柄が舞い込むことになるとはこのときの2人には知る由もなかった・・・。

 と、ここで、なぜかこの少女が登場した。

「陽ちゃんにルビィちゃん、そんなにがっかりしないで!!この駅弁でも食べて元気を出して!!」

これには、曜、

「あっ、千歌ちゃん、ありがとう!!」

と駅弁を渡してくれた少女こと千歌にお礼を言うとともにルビィも、

「うん、千歌ちゃんを見ていたら元気が出てきた!!」

とガンバルビィのポーズをしては元気がでたことをアピールしていた。これには、千歌、

「うん、よかった、よかった!!」

と大きくうなずくのであった。

 

 そして、人吉駅前のロータリーで駅弁を食べる、千歌、曜、ルビィ、ヨハネ、花丸、梨子の6人。その光景を見て南はこう思った。

(この6人だからこそAqoursは輝けるのかもしれないな!!)

むろん、6人とも同じ想いであった。

(やっぱり6人で食べる駅弁は最高だよ!!)(千歌)

(この6人の想いはずっと残っていく、そう思えるよ!!)(曜)

(くくく、リトルデーモンたちよ、この私とともに輝けよ!!)(ヨハネ)

(おら、今の時間が最高ずら!!)(花丸)

(これを音楽で表現できないかな。それくらい、今の時間が最高!!)(梨子)

(ルビィたち6人は、今、最高の瞬間を迎えている!!だから、ルビィ、これからも頑張るからね!!)(ルビィ)

その想いを胸に6人は明日へと向かうのであった・・・。

 

日本一の殺人風景~完~&To bi conntuned

 



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~かもめは「白い」?~ 前編

※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「う~、今度は阿蘇に行くんだ・・・」

とルビィがそう言うと曜も、

「なんか阿蘇って何度行ってもすばらしいところだもんね!!」

と喜んでいた。ここは熊本駅。曜とルビィは途中から合流したヨハネ、花丸、梨子の3人を連れて次の目的地の阿蘇へと行こうとしていた。といっても曜とルビィにとって阿蘇は3回目である。1回目は「あそぼーい」の事件、2回目はその「あそぼーい」の列車のなかの出来事だった(詳しくは前作「曜とルビィの事件簿」をお読みください)。なので、阿蘇地方については2人にとって馴染みのある地であった。

 そんなとき、2人の隣にはみなさんご存じの公安特捜班の南と高山がいた。南は曜とルビィに対し、

「まぁ、俺たちにとって阿蘇は馴染みのある地だからな。本当に懐かしい感じがするな」

としみじみと感じていた。南にとってみても曜とルビィと初めて会ったのが阿蘇地方、ということもあり、本当に3人にとって馴染みのある地なのである。

 そんななか、南に声をかける人がいた。

「あっ、南、久しぶりだな!!」

その声に南は声がする方を見る。すると、

「あっ、三輪さんに速水さん、こんばんわ」

と2人の公安官、三輪と速水に挨拶をした。むろん、高山も、

「三輪先輩に速水先輩、こんばんわ」

とかしこまるように挨拶すると、曜、それを不思議に思ったのか、

「あの高山さんがかしこまっている?どうして?」

と不思議そうに見ていた。これには、高山、すぐに説明しながら三輪と速水のことを紹介してくれた。

「あっ、曜ちゃんにるルビィちゃん、紹介します。男性の方が三輪先輩で女性の方が速水先輩。2人は公安特捜班が誇るベテランの公安官なんです!!」

そう、三輪と速水は南以上の職歴をもつベテラン公安官であった。これには、三輪、

「まぁ、ただの長いだけの公安官ですよ」

とやさしくそう言うとルビィと曜に対して、

「2人ともよろしくお願いします

と深くお辞儀をした。むろん、これには、ルビィ、

「こちらこそよろしくお願いします」

とこちらも深くお辞儀をした。

 

 その後、三輪と南は、

「あの事件はですね・・・」(南)

「う~ん、そうだったのか」(三輪)

と昔の事件の話をしては花を咲かせていたのだが、曜とルビィはそんな2人を見てか、

「なんかいつもの南さんじゃない!!」(曜)

「でも、なんか楽しそうに話していてルビィもうれしくなっちゃう!!」(ルビィ)

と2人の姿に微笑んでいた。

 そんななか、南は曜とルビィの方を見てはこんなことを言い出してきた。

「あっ、曜ちゃんとルビィちゃん、ほっといてしまってごめん」

南、どうやら曜とルビィのことをほっといてしまったことを気にしてか謝るも曜とルビィは、

「そんなの関係ないよ!!」(曜)

「ルビィも昔話に花を咲かしている2人を見てうれしくなっちゃうんだもん!!」(ルビィ)

とうれしそうに答えてくれた。

 そんなとき、三輪があることを南に話した。

「それだったらあの話をしたらどうかな?」

すると、南の方もそれを受けてか、

「あぁ、あの伝説の公安官の話ですね」

とうれしそうに言った。これには、曜、

「えっ、伝説の公安官の話!?聞きたい!!」

と目をうるうるしながらそう答えると南はその話を話始めた。

「昔、伝説の公安官がいたんだ・・・」

 

 2010年4月、その公安官は長崎駅前にいた。その公安官の今日の目的は東京から福岡を経て特急かもめで長崎にやってくる鉄道評論家の護衛のために来ていたのだ。というのも、この評論家に脅迫状が届いたからだった。そのため、この評論家の護衛にその公安官がすることになっていたのである。

 ところが、783系かもめ、別名ハイパーかもめ、にて事件が発生した。なんと、長崎に到着してまもなく車内のトイレにて男の他殺体が見つかったというのだ。これには近くにいた、という理由でその公安官もその現場へと向かった。すると、その公安官はこんなことを言った。

「これはなんてむごいんだ・・・」

その他殺体・・・、被疑者はナイフで一刺しのようでいて実は首に絞められたあとがみつかったのだ。そのため、ナイフで一刺しか首を絞めたことによる他殺であると思われた。だが、それ以上のことはわからなかった。目撃証言もなくどうすることもできなかったのである。そのため、その公安官は本来の仕事に、評論家の護衛の仕事に戻ることにした。

 その数十分後、護衛対象の鉄道評論家が885系かもめに乗って長崎駅に到着した。名前を時津という。その時津はかもめを降りるなりその公安官に対して、

「俺の護衛、ご苦労」

と言うとそのまま長崎駅を出ようとしていた。その時津を見るなり公安官ははっとした。時津の首元には誰かにひっかかれた傷があったのだ。これには、公安官、

「大変申し訳ごぜいませんが首元にひっかけ傷がありますがなにかあったのでしょうか」

と時津に問いかけるも時津はただ、

「あぁ、ちょっとかゆかったんだ・・・」

と答えるのみだった。

 

 その時津はその公安官を連れてテレビ局へと向かっていた。今日の時津の仕事はテレビ局での討論番組での出演だった。その討論内容というのが長崎新幹線についてであった。長崎新幹線、それは鳥栖から佐賀を経て長崎へと向かう新幹線のことだった。その討論番組に評論家として出演する予定だったのである。

 そんなとき、その公安官に連絡が入る。被疑者の詳細がわかったというのだ。被疑者の正体は影の鉄道評論家といわれていた人だった。その評論家は表舞台に立ったことがなく、ネットのみでの活動をしていたのである。そのため、誰も彼の顔を見たことがなかったのだが、今回はたまたま被疑者の持ち物からノートPCが見つかり、そのノートPCのなかにあった情報からその人の正体がわかったのである。

 そして、その被疑者はダイニングメッセージを残していた。それは、

「かもめは「白い」のか?」

というものだった。これには、公安官、ただ、

「「かもめは「白い」のか?」か。とても興味がある」

と関心を向けていたものであった。

 さらに、被疑者の指の爪から誰かの皮膚の断片が検出された、との情報が入ってきた。これにも、その公安官、

「なんていう偶然なんだ・・・」

とあることを思い出してはにやりとわらっていた。

 そんななか、とある人から公安官に情報が入った。それはテレビ局のプロデューサーからのものだった。そのプロデューサーは時津が長崎駅に到着する2時間前に電話連絡したのだが、このとき、

「あぁ、わかった」

という時津の声とともにこんな音声が聞こえてきたという。その音声とは・・・、

「肥前山口~、肥前山口~。ここで「みどり」「ハウステンボス」を・・・」

それはまるでなにかを知らせるような音声だった。

 そんな情報を聞いてその公安官はこんなことを言い出した。

「ふふふ、これですべてがわかった!!犯人はあいつだな・・・」

どうやら、この公安官はすべてを悟ったようだった。

 

 その後、この公安官は時津を呼び出した。これには、時津、

「なんだね。私は忙しいんだ・・・」

と文句を言いながら言うとその公安官は時津に対しこんなことを言ってきた。

「かもめは「白い」のか?」



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~かもめは「白い」?~ 後編

※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「かもめは「白い」のか?」

そう公安官が時津に尋ねると時津は怒ったようにこう言ってきた。

「かもめは「白い」って当たり前だろうが!!」

この時津の答えにその公安官は、

「ハハハ」

と笑うと時津はさらに怒るようにこう言ってきた。

「俺のことを馬鹿にしただろうが!!」

時津にとってその公安官の笑いは自分のことを馬鹿にしているようにみえたのだろう。

 だが、それでも公安官はその時津に対しさらに尋ねてきた。

「ところで、そのかもめってなんのかもめのことを言っているのかな?」

この言葉に時津はさらに馬鹿にされているのだと思ったのか、こんなことを公安官に言ってしまう。

「鳥のことに決まっているだろうが!!」

この時津の言葉にその公安官はさらに、

「ハハハ」

と笑うしかなかった。むろん、時津は言わせたら、

「なんで俺のことをさらに馬鹿にしたんだ!!いいかげんにしろ!!」

と完全にキレたかのように公安官のことを叱りつけた。

 だが、それこそ、公安官のねらい目だった。その公安官は笑いをこらえるとともに、

「言っておくが、私の言っている「かもめ」はな、「かもめ」は「かもめ」でも、885系かもめのことを言っているんだよ!!」

この言葉に、時津、

「はっ!!」

とあっけにとられるもすぐに反論した。

「言っておくが、885系だとしてもそれは関係ないんだろうが!!」

むろん、その公安官も鳥のかもめなのか、885系かもめなのか、そんなことは言っていなかった。

 だが、しかし、公安官はその時津に対しこんなことを言ってきた。

「でもね、私は鉄道公安官、あなたは鉄道評論家、なら、鉄道の話がまず出てくるのが職業病じゃないのかな?」

まぁ、これについては人それぞれなのだが、たとえそうだとしてもある意味当たっているのかもしれない、たぶん・・・。そのためか、時津、

「うぅ・・・」

とうなるしかなかった。

 そして、公安官はその時津に対しこんな説明をした。

「885系の車体は白い、だから、「白い」かもめと言われているんだ、885系はな!!」

たしかに公安官の言っていることは当たっていた。885系かもめ、別名を「白い」かもめと呼ばれていた。これは國鉄(JR)も認めた正式名称であり、九州に住む人は885系かもめを「白い」かもめ、と普通に呼んでいた。ちなみに、885系のまえに走っていた485系は赤い車体だったため、「赤い」かもめ、787系かもめのことを「黒い」かもめ、と呼ぶこと、783系ハイパーサルーンで運行していたかもめのことをハイパーかもめと呼んでいたこともあった。なお、「白い」かもめという名称が出てきたころ、時津のように鳥のかもめのことを連想してか、「白い」かもめのことを言っているのにも関わらず、「かもめが白いのは当たり前だ!!」と言う人が続出していたものである。

 とはいえ、「白い」かもめについてまったく違ったことを言ってしまった時津を見て公安官はこう断言した。

「時津さん、あなたは偽物の評論家ですね。そして、783系で殺された人こそあなたの真の主人であり、時津さん、あなたがその人を殺したんです!!」

これには、時津、

「そ、そんなのは関係ないだろうが!!俺はちゃんとした評論家だ!!それに、人なんて殺していない!!」

と動揺しつつも怒りをにじませていた。

 だが、公安官の話は続く。

「時津さん、あなたはあなたが長崎に行くときに乗っていた885系かもめの1本前の783系かもめに乗って被疑者を殺した後、肥前鹿島駅で885系の白いかもめに乗り換えたんだ!!」

この公安官の言葉に、時津、さらに動揺したのか、

「そ、そんなの、関係ないだろ!!俺はちゃんとその白いかもめに乗って来たんだ!!」

と反論してみせた。

 ところが、その時津に対し公安官はこう言った。

「時津さん、あなたの犯行を裏付ける証拠ならあります!!」

すると、時津、

「そんな証拠なんてないはず!!」

と言うとその公安官はその証拠を突きつけた。

「証拠は2つあります。1つはテレビ局のプロデューサーからの証言。あなたとの電話連絡のとき、「

肥前山口~、肥前山口~、ここで「みどり」「ハウステンボス」を・・・」

という音声が聞こえた、と答えてくれました。これはあなたが783系かもめに乗っていたことを裏付けるものなのです!!」

その証言に時津は噛みつく。

「そのどこに証拠があるんだ!!」

 すると、その公安官はすぐにその証拠を提示した。

「それは簡単です。783系は「3階建ての列車」だからです!!」

ただ、これには、時津、びっくりする。

「おいおい、あの「サンライズ」みたいな2階建て車両じゃないんだぞ!!それどころか、あの(上中下段の寝台のある583系のような)寝台電車でもないんだぞ!!」

だが、そんな時津の言葉に公安官は屈せずにあることを言った。

「そんな2階建ての列車のことではありません。多層建て列車のことですよ」

多層建て列車、それはある列車が始発駅から終着駅まで運転する区間に異なる始発駅の列車や異なる終着駅の列車と相互に分割併合しながら運転する列車のことを差している。ちなみに2つの列車に分割するものを「2階建て」という。そして・・・、

「そして、ここ九州では「かもめ・みどり・ハウステンボス」の「3階建ての列車」がみれるのです」

そう、ここ九州では1992年から2011年まで、長崎に行く「かもめ」、佐世保へ行く「みどり」、ハウステンボスに行く「ハウステンボス」、この3つの列車の分割併合した「3階建ての列車」が運転していたのである(今はもうないが、「みどり・ハウステンボス」の2階建て列車はまだ存在する)。

 さらに、公安官はこんなことを言ってきた。

「その「3階建ての列車」を運転しているのが783系なのだ!!」

そう、この「3階建ての車両」に充当されているのが783系だったのである。「3階建ての列車」導入当初は485系が充当されていたのだが、2001年以降、その列車には783系が充当されるようになったのである。まぁ、そのために783系の中間車を切妻貫通型の先頭車に改造したのですがね・・・。

 この公安官の言葉に時津はすぐに、

「ぐぐぐ・・・」

と悔しい顔をみせるも公安官は、

「それこそあなたが783系かもめに乗っていた証拠です!!」

と自信たっぷりに答えていた。

 さらにさらに、公安官のターンは続く。続く2つ目の証拠を公安官はみせる。

「そして、被疑者の手の指の爪からあなたの皮膚の断片がみつかりました」

そう、被疑者の手の指の爪から見つかった皮膚みたいなもの、それはこの時津の首の皮膚の断片だったのだ。これには、時津、

「でもどうやってそれがわかったんだ!!」

と言うと公安官はこう言ってきた。

「実は被疑者の正体がわかったあと、すぐに被疑者の家を捜索したのです。そして、出てきたのです、あなたの髪の毛がね。だから、それをDNA鑑定した結果、あなたのDNAと被疑者の爪に残っていた皮膚の断片のDNAが一致したのです」

この公安官の言葉に、時津、ついに白旗をあげた。

「う~、ここまで調べられるとは・・・。もう言い逃れできない・・・」

 

 その後、公安官は時津に対してあることを尋ねた。

「でも、どうして被疑者を殺したんだ?」

 すると、時津はその理由を話してくれた。

「俺はあいつ(被疑者)の影武者だったんだ。俺はあいつの指示を通じて鉄道評論家としてこれまでやってきたんだ。ただし、いつもは俺が仕掛けたマイクでもって音をひろい、あいつがそれを俺に指示をだして指示通りに答えていたんだ。でも、それでも給与は低かった。だから、俺はあいつに対して給与を上げてほしいとお願いしたのだがそれを断られてしまったんだ。だから、あいつと一緒に783系のかもめに乗って長崎に行く途中、あいつを列車のトイレで殺し、肥前鹿島駅で885系かもめに乗り換えたんだ・・・」

 ただ、これには、その公安官、時津に対してきびしく断罪した。

「たとえそうだとしても人を殺すことはいけないことなんだ!!それがたとえ自分のためであってもな!!」

この公安官の言葉に時津はただ、

「・・・」

と無言になるしかなかった・・・。

 

「・・・ということなんだ」

と南はその伝説の公安官の話を終えるとルビィは、

「ところで、その伝説の公安官って誰のことなの?」

と尋ねてみる。たしかにそれについては誰なのかちょっと気になるところなのだが、とうの南はというと・・・、

「さて、それは誰なのかわからないんだ」

と言うも、三輪はただ、

にこっ

と笑っていたのであった。

 と、ここで、曜は南にある質問をした。

「ところで、なんで今になってそのことを話したわけなの、南さん」

そう、なんで今になって長崎のかもめの話をしてきたのか。それについて南はこう理由付けた。

「あっ、それはなぜかって?それはね、ここ数年で長崎を含めたに九州の鉄道網が大幅に変わってしまうからなんだよ」

これには、ルビィ、

「ぇつ、大幅に変わってしまうの?」

と言うと高山も、

「あぁ、たしかに変わるんだ、大幅にね」

のそのことを認めていた。そのためか、曜、ルビィ、ともに、

「えっ、一体どうなるわけ・・・」(曜)

「ルビィ、それを想像できない・・・」(ルビィ)

と唖然となってしまった。

 そんな2人に対し三輪はやさしくそれについて話始めた。

「まぁ、その理由は長崎の新幹線、西九州新幹線が関連することなんだよ」

そう、ついに2022年9月23日、西九州新幹線が開通するのである。

 

 と、ここから現実の話をしよう。2022年9月23日、に西九州新幹線が開通するのと同時に西九州における鉄道網は大幅な変更が行われるのである。まず、今のかもめは廃止となり、西九州新幹線のかもめ(+リレーかもめ)が運行を開始することになった。ただ、それだとこれまで肥前鹿島まで来ていた特急がなくなる、ということで博多~肥前鹿島間などで特急「かささぎ」が運行するようになる。また、佐世保線を走っている特急「みどり」の一部が885系に置き換わるのと同時に武雄温泉~佐世保~長崎~佐賀に観光特急「ふたつ星7074」がレビューする。ただし、この列車はある観光特急をリニューアルしたものなのになるのだがその話はあとにするとして、新幹線開通にあわせて、長崎本線肥前浜~諫早~長崎間は非電化となる。そのため、長崎地方は一部を除いて気動車大国になってしまうのである。また、それにあわせて肥前山口駅の名前が江北駅へと変わってしまう。それくらい西九州の鉄道網は9月23日を境に大きく変わってしまうのである。

 ただ、このとき(2019年)の段階ではそのことはわからないため、どんなに変わるのかわからないものの、曜とルビィにとってみれば、

「新幹線が開通するんだね!!なんかすごそう!!」(曜)

「なんかかっこいい感じがする!!」(ルビィ)

と目をきらきらさせていた。

 だが、南はそんな2人に対してこんなことを言った。

「でもね、西九州新幹線開通によって人々の生活も変わってしまう、いや、生活そのものが大きく変わってしまう、そのことは必ず気にしないといけないんだぞ」

そう、今回、西球種新幹線は開通するのは武雄温泉~長崎間のみであり、残る新鳥栖~武雄温泉間は地元佐賀での反対もあり進んでいなかった。それくらい新幹線開通というのは人々の生活そのものを、いや、地域経済そのものが変わってしまう、それくらいのものなのである。そのことを忘れないでほしい。

 とはいえ、新しい新幹線開通によって変わる未来、それを想像しては、曜、ルビィ、ともに、

「なんかときめいてしまう・・・」(曜)

「うん、ルビィ、長崎でときめきたい!!」(ルビィ)

とこれからの長崎にときめきを求めようとしていた。

 

 その後、曜とルビィは南と高山、ヨハネたちと一緒に阿蘇地方へと旅立っていった、そのベテラン公安官の三輪と速水に別れを言いながら・・・。

「さようなら、三輪さん、速水さん・・・」(曜)

「さようなら、2人とも・・・」(ルビィ)

そんな曜とルビィを見ながら三輪と速水はこう思っていた。

(あれが新しい日本を築いてくれる少女たちなんだね。頑張れや、曜ちゃん、ルビィちゃん!!)(三輪)

(これからも新しい日本を背負ってくれよ、曜ちゃん、ルビィちゃん)(速水)

その2人から見える景色は曜とルビィの新しい未来への祝福だったのかもしれない・・・。

 

~かもめは「白い」?~ 完 & To be contuned



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~自然の脅威~ 前編

※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


パンパン

(これからも善子ちゃんたちと一緒にスクールアイドルができますように)(ルビィ)

(千歌ちゃんと梨子ちゃんと一緒にやっていけますように)(曜)

ここは阿蘇神社、阿蘇を代表する神社である。曜とルビィは南と高山、ヨハネたちを連れてお参りに来ていた。2人は共にこれからのことをお祈りしていたのである。

 そんなとき、曜はある人たちを見つけた。それは・・・、

「あれっ、なんで小さな骨壺を持って参拝しているのかなぁ、あの親子・・・」

そう、曜・ルビィたち一行の隣では小さな骨壺を持った親子が参拝していたのだ。むろん、ルビィも不思議に思ったのか、

「あの~、失礼なのですが・・・」

とその親子にルビィは声をかけてみた。すると、その親子のうち、父親の方がルビィに声をかけてきた。

「はい、どうしたのですか?」

これには、ルビィ、あることを聞いてみた。

「ところでなんで小さな骨壺を持っているの?」

 すると、父親のほうがその理由を答えてくれた。

「この骨壺は私の妻が入っているのです。私は妻のある夢を叶えるためにここに来たのです」

これを聞いたルビィはすぐに、

「あっ、失礼なことを言ってごめんなさい」

と謝るも父親は逆に、

「いやいや、いいんですよ。声をかけてきてくれてありがとうございます」

と逆にお礼を言うと南が父親にあることを尋ねた。

「ところで、あなたの妻の夢というのは?」

 すると、父親はこう話始めた、妻の夢のことについて・・・。

「実は、もう一度、妻の想い出の列車に乗りたいと思いましてここに来たのです。その列車は「たった2年で運行できなくなった悲劇の列車」とだけ聞いております。ただそれだけの情報を頼りにこちらに来たのです」

どうやら父親の妻の乗りたがっていた列車はたった2年で運行できなくなった悲劇の列車、ということだった。ただ、それだけを聞いて南は、

「う~ん、それだけではなんの列車なのかわからないな・・・」

とお手上げ状態・・・。

 そんななか、曜とルビィは南にあるお願いをした。

「ねぇ、南さん、その列車を私たちも探してみたい!!」(曜)

「ルビィも探したい!!」(ルビィ)

むろん、南とてこのままでは鉄オタとしての威厳に関わってしまう、ということなので、

「うん、わかった!!その列車について一緒に探すことにしよう」

と2人のお願いを聞き入れることにした。

 

 とはいえ、父親の情報だけではわからない、ということで、梶山を呼んで考えてみることに。ですが・・・、

「う~ん、どんな列車なのかわからないよ・・・」

と悩んでしまう曜。そう、いくら考えてもそれだけの情報だけではなんの列車なのかわからなかったのである。

 と、ここで、父親があるものを取り出してはこんなことを言った。

「そういえば、妻の遺書のなかにこんなものがありました」

それは1枚の紙だった。その紙を南が見るとこんなことを言ってしまう。

「あっ、これは旅の行程表だ!!」

そう、それは旅の行程表だった。その父親曰く、

「これは妻の遺書のなかにあったのです。私はこれを見てここまで来たのです」

とのこと。その行程表には旅をするための行程が書かれていた。

 ただ、それだけではどんな列車なのかわからない、ということで、曜、あることを決めた。

「それだったらこの行程表通りに旅をすればわかるんじゃないかな。だったら、私たちもこの行程表通りに旅をしよう!!」

そう、この親子と一緒に行程表通りに旅をする、というのだ。

 だが、ここで一つ問題が・・・。それは・・・、

「でも、こんな大所帯でどうやって旅をするの?ルビィたちだけで9人いるんだよ!!」(ルビィ)

たしかにその通りだった。親子連れはおろか今のルビィたちは、ルビィ、曜、ヨハネ、梨子、花丸、南、高山、梶山、総勢10人以上いる。そのなかでどうやって集団行動をすればいいのか、それが問題だったのだ。大勢で動けばどこかで困ることが起きる、といろんな問題が起きてしまうものなのである。

 と、そこに1台のマイクロバスが止まるとそこから意外な人物が降りてきた。

「その旅行、Aqours旅行社の千歌にお任せ!!」

その言葉とともになぜか千歌が現れた。これには、曜、

「なんで千歌ちゃんがここにいるの?」

と唖然となるも千歌はそれすら気にせずにこんなことを言ってきた。

「その旅行の行程表通りに旅ができるように手配したからね!!心配ナッシングだよ!!」

千歌、あまりにも仕事が早い!!なんと、曜たちが親子と一緒に行動できるように旅の手配をすでにしてしまったようである。これには、ルビィ、

「行動力がすごいよ、千歌ちゃん・・・」

とびっくりしてしまった・・・。

 だが、ここで1つ問題が、親子の度に曜たちが一緒に行ってよかったのか、ということだった。そのため、ルビィ父親に対しあるお願いをした。

「お父さん、お願いです、お父さんたちの旅に連れてってもらえませんか」 

 すると、これには、父親、うれしそうにこう答えた。

「わかりました。私たちの旅に一緒についてきてください」

これには、ルビィ、

「わかりました、お父さん!!」

とうれしそうに言うも、その父親からこんなお願いがされた。

「あと、お父さん、というのはやめてください。私の名前、宮地守、息子のことを攻とよんでください」

この守のお願いに曜はすぐにこう答えた。

「わかりました。宮地さん!!よろしくお願いします!!」

 

 

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 そして、親子こと宮地守・攻親子と一緒に曜とルビィたち一行は一緒に旅をすることとなった。まず訪れたのは・・・、

「なんかかわいい小屋みたい!!」(曜)

阿蘇神社の社を模した宮地駅だった。そのなかにはある資料館があるのだが、その資料館にてルビィはある写真を見つけた。それは・・・、

「レールがぐるぐる巻きになっている!!なんで、なんで!?」

 

 

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そう、レールがぐるぐる巻きになっている写真だった。これにはさすがの千歌も、

「たしかにそうかも!?なんでこうなったの?」

と南に話かけてみる。

 すると、南はこう答えた。

「これはね、自然の芸術なんだ・・・」

ただ、その写真にはこう書かれていた。「201件の災害」「これまで経験したことがない大雨」と・・・。

 

 

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 そんななか、実際にぐるぐる巻きになったレールの一部が展示されていた。これには、曜、

「ほ、本当に曲がっている!!これが自然の芸術なんだ・・・」

と唖然となってしまった。いや、これが自然の力なのかと曜は感じていたのかもしれない。

 むろん、宮地親子もこのレールを見て驚いては、

「これがレールなの?すごく曲がっているね」

と息子の攻がそう言うと父の守も、

「あぁ、これが自然の力なんだね」

と曜と同様に感じていた。これには、高山、

(こんな資料館ができるくらいここも復興が大変だったのですね・・・)

と、この資料館の意義を感じていた。

 

 

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 そして、曜・ルビィ一行は「九州横断特急」で立野まで行くことになった。その列車についてルビィはこう言った。

「この列車って「A列車で行こう」と同じキハ185系なんだよね!!」

そう、この列車はキハ185系であり、「A列車で行こう」と同じ列車だったのだ。これには、高山、

「ルビィちゃんも少しは列車のことが詳しくなったんだね」

と喜びながら言うとルビィも、

「うん!!」

と大きく返事をしていた。

 そんなときだった。突然、千歌がこんなことを言い出してきた。

「車窓左側をご覧ください」

 

 

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すると、そこには橋が崩落しようとしていた。これには、ヨハネ、

「くくく、なにごとぞ。なにが起きたんだ!?」

と中二病になりつつも驚きながら見ていた。そんな今にも崩れそうにしている橋の一部を見て曜はあることに気づく。

「もしかして、昔、ここに大きな橋があったんじゃないかな」

そう、昔、ここには大きな橋があったのである。その説明を高山が始める。

「たしかにここには大きな橋がありした。ですが、ある原因でその橋は崩落してしまったのです」

これには、ルビィ、高山にすぐにその原因を尋ねる。

「でも、どうして大きな橋が崩落してしまったの?」

すると、高山はこんなことを言ってしまう。

「それはね・・・、あとのお楽しみに!!」

これには、ルビィ、

「早く教えてよ!!」

と高山に言ったものの高山はおろか南も梶山も教えてくれなかった・・・。

 ただ、宮地親子からすると、

「橋が崩れている・・・」(攻)

「なんかすごいものを見ているような気がするよ・・・」(守)

とあまりのすごさに愕然となっていた・・・。

 

 その後、立野駅で降りた曜とルビィ一行は立野駅の現在の状況に唖然となった。

「國鉄の方はちゃんと整備していますね」(守)

と國鉄の方はちゃんとホームが整備されていたものの上部にあった別のホームには、

「草がぼうぼうとなっている・・・。まるで廃墟ずら!!」(花丸)

 

 

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そう、ホーム自体が草でぼうぼうと生えているのである。そのためか、ルビィ、

「もしかして、ここって廃線のあと?」

と疑問に感じてしまった。

 そんなとき、梶山がこんな説明をした。

「昔、この駅を起点に鉄道が走っていたのです。ですが、ある原因でもとでこの場所まで列車を走らせることができなくなったのです」

この言葉を聞いて、曜、さらにびっくりする。

「えっ、もしかして、その鉄道って廃止になったの?」

 すると、梶山はこんな説明をした。

「いや、今でもその鉄道は走っています。だけど、今は一部の区間のみの運転しかしていないのです」

今でも走っている、ということで、曜、

「なんだ、よかった・・・」

と言いつつもすぐに、

「でも、なんで一部区間しか運転していないの?」

とその理由を梶山に尋ねた。

 だが、これについては梶山は、

「それについてもあとのお楽しみです」

と言っては教えてくれなかった。そのため、曜とルビィは、

「う~ん、なんでだろう」(曜)

「ルビィもわからないよ・・・」(ルビィ)

と考えてもわからなかった。ただ、これについては、南、すぐにフォローに入る。

「曜ちゃんとルビィちゃんならわかると思うよ。だって、「あそぼーい」のときに知っていたはずだから・・・」

ただ、それを聞いたとしても曜とルビィはわからずにいた・・・。

 

 その後、マイクロバスに乗り換えた曜・ルビィ一行は高森へと向かった。ここではトンネルから水が悠々と流れていた。これには、曜、

「あわっ、なんでトンネルから水が悠々と流れているのかな?」

と南に聞くと南はこう説明した。

「ここは「高森湧水トンネル公園」といってこのトンネルの奥から水が湧き出ているんだ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

そう、ここは「高森湧水トンネル」であり、トンネルのなかは一定の温度と湿度で保たれており、夏は涼しく、冬は暖かい、といった性質を持っていた。

 そして、曜とルビィたちはトンネルのなかを進んでいくことに。すると、そこでは、

「うわ~、幻想的!!とても美しいよ!!」(梨子)

「えっ、なんで水玉が浮かび上がっているわけ?魔法?」(ヨハネ)

とトンネルのなかの様子が幻想的だったりフラッシュで水玉を浮かび上がらせるウォーターパーラーの機械などに驚いていた。

 

 

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 そんななか、先端部分に到着した曜とルビィ、そこでは滝のように流れている水の姿に、

「み、水が滝のように流れているわけ!?」(ルビィ)

「うわ~、大迫力だね!!」(曜)

と驚きを隠せずにいた。

 そんな2人に対し南はこう説明した。

「でも、これ、はりぼてだからね!!」

これには、曜、

「えっ、これ、はりぼてなの?うそでしょ!?」

と、さらに驚きを隠せずにいたものの南は補足説明をした。

「たしかにこれははりぼてだけど、この先には本当に水が噴き出しているんだ。それはこの水源だけでここ高森町の水をまかなうことができるくらいなんだよ」

この南の説明に、ルビィ、

「うわ~、すごいの一言だよ!!まさかここだけでこの町の水をまかなえるなんて!!」

と驚くとともにある疑問が出てくる。それは・・・、

「でも、なんでここに大きなトンネルがあるわけ?水を組みだすならこんな大きなトンネルは必要ないんじゃないかな?」(ルビィ)

そう、なんで水を組みだすだめにこんな大きなトンネルを掘る必要があったのか、それが疑問だったのだ。水を組みだすだけならこんな大きな、まるで1つの大規模な列車が通るくらいのトンネルと掘る必要なんてないのに、それがルビィにとって疑問だったのだ。

 だが、それについては南は教えてくれなかった。なぜなら、

「それについてはルビィちゃんと曜ちゃんで考えてみて」

との一言だけ。そのため、いろいろと考えても、

「わかんないよ・・・」(曜)

「ルビィ、もうダメ・・・」(ルビィ)

と白旗を上げていた。

 一方、宮地親子はというと、

「とてもすごいよ、この滝!!」(攻)

「うん、そうだね!!」(守)

とトンネル先端の滝の大きさに驚いていていた。

 

 その後、ルビィ・曜一行は山を越えて高千穂へと向かった。その途中、

「うわ~、ここもあったかいね!!」(梨子)

と樽が多く置いてある「トンネルの駅」に近寄っていた。そこでは数多くの焼酎がトンネルのなかで寝かされていた。これには、ルビィ、

「樽がいっぱいある!!すごい!!」

と数多く並んだ焼酎の樽を見て驚いていた。

 これに対して、曜・・・ではなく引率の千歌がこんな説明をした。

「実はトンネルのなかは1年中温度と湿度が一定なわけ。だから、高森の湧水トンネルはあったかいし、ここではお酒を寝かせるのにもってこいなの!!」

この千歌の説明に、曜、

「すごい、千歌ちゃん、物知り!!」

と喜んで千歌のことを褒めたたえたものの、ルビィ、ここでもある疑問が浮かんだ。

「でも、なんでここにも大きなトンネルがあるわけ?」

そう、ここでも大きなトンネルが掘られていた。だけど、焼酎を寝かせるには大きすぎるトンネルだった。これにはさすがの曜も、

「う~ん、わからない!!」

とここでも頭を抱えていた。

 

 その後、ルビィ・曜一行は本日のメインイベント、高千穂駅へ。そこでは高千穂あまてらす鉄道が運行するグランドスーパーカートに乗って絶景を見に行くこととなった。

 そのカートに乗って進む曜・ルビィたち。そこから見える街の景色を見て、梨子たちからは、

「とてもキレイ!!ここが神話の里なのね!!」(梨子)

「くくく、とてもすばらしい光景だ!!褒めて遣わすぞ!!」(ヨハネ)

「うわ~、、絶景ずら、絶景ずら!!」(花丸)

とかなり喜んでいた。

 そんななか、カートはついにある場所に到着した。風速計を見るなりOKがでたのでついにあるの場所へ突入!!すると、そこでは、

「うわ~、怖いよう~!!高い、高いよ~」(攻)

「攻、私がいるから大丈夫だよ!!でも、たしかに高いなぁ」(守)

「でも、とても絶景だよ!!こんなの、見たことがないよ!!」(曜)

「うん!!千歌も、こんなところ、見たことがないくらい絶景だよ!!」(千歌)

「うん!!でも、ルビィ、ちょっと高すぎて怖いよ~」(ルビィ)

とみんな言うくらいの高さ105mものある高千穂鉄橋の絶景だった。四方八方、山に囲まれたものの、そこから見える景色は日本一の高さから見える絶景ともいえた。

 だが、カートはその鉄橋から少し進んだところで止まった。そこから先は行き止まりになっていた。それには、ルビィ、

「う~、先に進みたかったよ~」

とちょっと残念そうに言うと南に対してこう尋ねた。

「でも、なんでこの先に進めないの?」

すると、南はこう答えた。

「実はその先にはある原因で線路がないんだ」

これには、曜、

「その理由は?」

と南に問うも南は教えてくれなかった・・・。

 

 その後、今夜の宿となるTR列車の宿に泊ることとなった曜・ルビィ一行。そこにあったのは2両の列車だった。これには、曜、

「うっ、列車のなかで泊るの?」

と戸惑いを感じていたものの列車のなかを見たら、一転、

「うわ~、すごくいい!!」(曜)

となかが立派だったためか驚いていた。

 とはいえ、列車のなかで泊れるという初めての経験、ということもあり、ルビィも、

「とても広い!!」

と喜ぶものの、一番喜んでいたのは宮地親子の息子、攻だった。だって・・・、

「うわ~、列車を運転できる!!ヤッター!!」(攻)

運転席に座ることができるのだから・・・。そんな攻の姿を見て千歌も、

「私もやってみたい!!やってみたい!!」

と子どもみたいになっていた・・・。

 

 こうして1日は過ぎていった・・・と思ったのだが、ここで曜とルビィはあることを思っていた。それは・・・、

「でも、なんでここは列車があるわけ?」(曜)

「たしかにそうかも?なんで列車は動いていないの?」(ルビィ)

そう、なんでここに列車があって動いていないのか、と。

 なので、曜とルビィは南に問うた。

「なんでここに列車があって動いていないのか?」

と。

 すると、南はあることを言い出してきた。

「たしかに不思議かもしれない、ここに列車があって動いていないのか、と。それは簡単だ。だって、ここは高千穂鉄道という鉄道が走っていたんだ。だけど、ある原因でその鉄道が廃止になったんだ。そのため、その観光資源として使わなくなった列車を使って宿を作った、というわけ」

 と、ここでルビィはあることを言った。

「でも、その原因ってなんなの?」

 すると、南はあることを言い出した。

「それはこれまで回ってきたところと共通することなんだよ!!」

 この南の言葉に曜とルビィは考えた。

(宮地駅の資料館、崩れた橋の残骸、荒廃した立野駅・・・)(曜)

(高森の湧水トンネルに焼酎のトンネル貯蔵庫、高千穂あまてらす鉄道・・・)(ルビィ)

((あっ!!))(曜・ルビィ)

2人とも共通するものがわかったようである。

 そして、2人はその共通するものを口にした。

 

「「もしかして、「自然の脅威」・・・」」(曜・ルビィ)

 

その言葉に南はこう告げた。

「その通り!!どれもこれも自然の脅威によって影響を受けたものなんだ!!」



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~自然の脅威~ 中編

※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「その通り!!どれもこれも自然の脅威によって影響を受けたものなんだ!!」

南の言葉に曜はびっくりした、

「どれもこれも自然の脅威によって影響を受けたものなんだ・・・」

と言いながら。

 そして、南は一つずつ説明をしていくことにした。

 

 

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「まず、宮地駅の資料館にあったぐるぐる巻きのレールだけど、あれは平成24年7月の豪雨のとき、坂になっていたトンネルに大量の水が流入、その坂のせいで勢いが増した大量の雨水によってレールがぐるぐる巻きになった、というわけ」

これには、ルビィ、

「た、たしかに坂になると水の勢いは増すけど、そんな力があるんだ・・・」

とびっくりしていた。たしかに大量の水が坂の上から流れるとレールが曲がるくらいの力が発生してしまう。その例として水力発電がある。水力発電も坂の上から大量の水を流すことで重たいタービンを回しているのである。それくらいの勢いはばかにはならないのである。

 

 

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 次に橋の崩落について南が説明する。

「そして、「九州横断特急」の車窓から見えた橋の崩落現場だけど、曜ちゃん、あれってなんの災害で起きたと思う?」

これには、曜、少し考えてこう答えた。

「もしかして、熊本地震・・・」

すると、南、喜びながらこう答えた。

「正解!!あれは熊本地震のときに起きたんだ。あそこに架かっていたのは旧阿蘇大橋。熊本市内と阿蘇地方を結ぶ重要な橋だったんだけど、熊本地震のときに崩落したんだ。だが、そのとき、大学生が車で運転していたんだけど、橋の崩落に巻き込まれしまい犠牲になったんだ。それくらい、地震というのは恐ろしいものなんだ」

この話を聞いた曜は思わず、

「それくらい地震というのは恐ろしいものなんだね」

と少し怯えるように答えていた。

 

 

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 さらに、立野駅についても南によって説明に入る。

「その地震の影響は南阿蘇鉄道にも及んだんだ。南阿蘇鉄道は立野~高森間の鉄道のことをいうんだけど、地震の影響でその路線の一部であったトンネルと鉄橋などで損害が出たんだ。そのため、今でも一部区間で不通になっているんだ。だから、立野駅が荒廃しているのはそのためなんだよ」

 ただ、これには、ルビィ、不安になる。

「それじゃ、もう不通区間はもとに戻らないの?」

すると、南はこう答えた。

「それは大丈夫!!近い将来に開通できるように頑張っているからね!!」

この南の答えにルビィは、

「うん、ルビィ、応援している!!」

と元気よく答えてくれた。

 

 

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 そして、高森の湧水トンネルについて南は説明に入る。

「そして、高森の湧水トンネルなんだけど、もともとそこに鉄道トンネルと作る計画があったんだ」

これには、曜、

「えっ、そうなの?」

と驚くと南はこう言い出した。

「昔、立野~高森~高千穂~延岡の間に鉄道を通そうという計画があったんだ。なおトンネルはそのために掘られたものなんだ」

これには、ルビィ、

「へぇ~、だからあんな大きなトンネルだったんだ」

と納得の表情。

 だが、話はがらりと変わる。南、そのトンネルについて話し出す。

「ところが、そのトンネルは貫通なんてしなかった。なぜだと思う?」

これには、曜、

「う~ん、う~ん」

と考えた末にある答えを導いた。

「それって、もしかして、水?」

その曜の答えに南はこう答えた。

「そう、正解!!水が原因なんだ」

この答えのあと、南はトンネルが貫通しなかった理由を話した。

「トンネルを掘っている最中、水脈にぶつかったんだ。そのため、トンネルからは大量の水が噴出したんだ。ただ、それだけでなく、そのトンネルの上にあった集落の簡易水道も枯れてしまったんだけどね。國鉄はその水対策をしようにもそれを上回る水が湧き出てしまったため、結局、その鉄道建設計画は中止になったんだ」

 それと同時に高千穂のトンネル貯蔵庫についても南は説明した。

「そして、高千穂側からも、その鉄道建設計画のもと、トンネルを掘り進めていたのだけど、高森の件のために中止となったんだ。そのため、今ではトンネルを貯蔵庫として活用しているわけ」

 と、ここまで聞いた上で曜とルビィは自然の脅威に、

「それだけ自然って脅威なんだね!!」(曜)

「ルビィ、それを聞いただけでも自然って恐ろしいと思えるの」(ルビィ)

と唖然となってしまう。それくらい、自然というのは脅威なのかを実感したのかもしれない。

 そんななか、ついに南は本題に入る。

「そして、自然の脅威のせいで廃止になった悲劇の鉄道があるんだ」

その言葉に、曜、

「悲劇の鉄道・・・」

と言葉を詰まらせると南はその鉄道について語り始めた。

「その鉄道は今さっき言った、立野~高森~高千穂~延岡を結ぶ鉄道の1つとして開通したんだ。その名も高千穂線。のちに第3セクター化して高千穂鉄道として開業したんだけど、観光列車などの導入などで第3セクターとしては成功しようとしていたんだ」

これには、ルビィ、

「それだけ頑張っていたんだね!!」

と喜んだのも束の間、南、突然、暗い顔をして話の続きを、悲劇を語り始めた。

「でも、そんな高千穂鉄道に悲劇が起きたんだ。2005年の台風14号によって高千穂鉄道の線路や鉄橋が流出したんだ。そのため、なんとか復活しようと動いたんだけど、高額の復旧費用がかかるということがわかって断念、廃止に追い込まれたんだ」

この言葉に、曜、ルビィ、ともに、

「えっ、廃止・・・」(曜)

「やっと成功しようとしていたのに、むごい・・・」(ルビィ)

と涙を浮かべさせながら言うと南はそのあとのことを話した。

「その後、その鉄道の一部は今でも高千穂あまてらす鉄道の観光路線として活用しているし、TR列車の宿として使っていた列車を再利用しているんだ」

そのことを聞いて曜ははっとした。

「だから、あまてらす鉄道の路線が途中で行き止まりになっているのはそのためだったんだね」

と納得した。そう、あまてらす鉄道で高千穂鉄橋の先が行き止まりになっているのはその先が廃止になっているからであった。なお、ルビィに至っては、

「でも、今でもその高千穂鉄道が残した遺産(レガシー)をちゃんと活用しているんだね!!すごいことだよ!!」

と、今なお、高千穂鉄道が残してくれた遺産(レガシー)を活用していることに感服していた。

 そして、南はある列車のことを語った。

「で、これはこの旅をしていくうちに俺自身思い出したものだけど、この高千穂鉄道には悲劇の列車があるんだ」

これには、曜、

「悲劇の列車?」

と言うと、南、その列車、悲劇の列車について語り始めた。

「高千穂鉄道には地域振興などを目的に、2003年、トロッコ風列車を導入することにしたんだ。その列車の名は「手力男(たぢからお)」と「天細女(あまのうすめ)」。この列車を導入してから高千穂鉄道は収入が激増したんだ。というのも、導入当初、高千穂の名所を巡りながらトロッコ風列車に乗るという絶景コースが大人気になって大手旅行会社の団体ツアー客が集中するくらいにまでになったんだ」

これを聞いて、ルビィ、

「それはとてもいいことだね!!」

と喜ぶも、南、すぐに暗い表情になってこう言い続けた。

「でも、事態は急変する。先ほど言った台風14号のせいで高千穂鉄道は廃線、この列車たちも風前の灯火になったんだ」

この南の言葉を聞いて、

「それってもうなくなったんじゃ・・・」(曜)

「う~」(ルビィ)

と愕然となる・・・といったところに、突然、

「それって妻の想い出の列車に乗れないということなのでしょうか」

と男の人の声が聞こえてきた。これには、曜、

「あっ、宮地さん・・・」

と子の攻を連れた、男の人こと宮地守、に対し声をかけると、守、すぐに、

「私もその列車こそ妻の想い出の列車だと思います」

と悲しそうに言った。これには、南、

「たしかに、「たった2年で運行できなくなった悲劇の列車」という条件に合いますものんね」

と言った。たしかにそのトロッコ風列車ならその条件に合う。これなら乗れる・・・わけでもなく、

「でも、その列車が今どこにあるのかわかりませんよね・・・」

と守も諦めるしかない、そう思ったのである。そんな守に対して息子の攻も、

「もうお母さんの想い出の列車に乗れないの。わーん!!」

と泣き出してしまう。これには、ルビィ、

「きっと大丈夫だからね。泣かないでね」

と姉のように攻をあやす。

 そんなときだった。突然、

「いや、諦めないで!!」

という声が聞こえてきた。これには、曜、

「えっ、千歌ちゃん!!」

とその声の主こと千歌の名を叫ぶと千歌はこんなことを言い出してきた。

「その列車なら今でも活躍しているよ!!」

その言葉に、攻、うれしそうに、

「それじゃ、お母さんの想い出の列車に乗れるんだね!!」

とうれしそうに言うと千歌も、

「うん、そうだよ!!」

と元気よく返事した。

 そんな千歌に対し、曜、ルビィ、ともに、

「そんな安請け合いしても大丈夫?」(曜)

「ちょっと心配だよ・・・」(ルビィ)

と心配そうになるも千歌は、

「それなら大丈夫!!」

と声をあげると南からも、

「ここは千歌ちゃんの言う通りにしよう」

とにこにこ顔でそう言った。これにはさすがの曜も、

「それならいいんだけど・・・」

とちょっと心配になった。ただ、とうの千歌はこんなことを言い出した。

「それじゃ、明日、その列車に乗ることにしよう!!」

その声に攻は、

「うん!!僕、楽しみ!!」

とにこにこしながらそう答えていた。

 

そして、運命の日を迎えた・・・。



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~自然の脅威~ 後編

※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「宮崎駅に到着!!」

 翌日、千歌に言われるなりマイクロバスで高千穂から宮崎駅まで移動してきた曜・ルビィ一行。そこでは南があることを言い出した。

「やっぱりあの列車のことだったんだな:

どうやら、南、ある程度の目星はつけていたようだ。

 

 

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 そして、ホームにあがるなり、曜とルビィはびっくりする。

「あっ、白と木目調のかっこういい列車!!」(曜)

「うん、とてもかっこいいね!!」(ルビィ)

そう、その列車は白と木目調のかっこういい列車だった。

 すると、千歌がこう言った。

「こうこそ、悲劇の列車の生まれ変わり、「海幸山幸」だよ!!」

そう、宮地親子が探していた妻の想い出の列車とは「手力男」と「天細女」の生まれ変わり、「海幸山幸」であった。

 で、その列車について南が話す。

「この列車の名は「海幸山幸」。「手力男」と「天細女」は高千穂鉄道廃止後、國鉄九州総局(JR九州)に売却されたんだ。その後、改造され、2009年に「海幸山幸」としてレビュー、日南線の観光特急として今でも走っているんだ」

そう、「海幸山幸」は悲劇の列車を改造してできた観光特急であった。高千穂鉄道廃止後、風前の灯火となった2つのトロッコ風列車は國鉄九州総局(JR九州)に売却されて改造、今では九州が誇るD&S特急の1つとして活躍していたのである。

 そして、曜・ルビィたち一行は「海幸山幸」に乗り込むなり、日南線の海岸の景色を楽しんでいた。

「うわ~、キレイずら!!」(花丸)

「荒々しい海だ!!まるでヨハネのようだ!!」(ヨハネ)

「本当に美しい景色が続くなんてロマンチック!!」(梨子)

そんななか、宮地親子も「海幸山幸」の旅を楽しんでいた。

「お父さん、この列車、とてもいいね!!かっこいいし、僕、好きになっちゃった!!」(攻)

「うん、そうだね」(守)

このときの守はそんな攻の無邪気さにこう思っていた。

(こんな攻の姿を見るなんて、私としてはうれしいよ。これが妻が、想い出、いや、乗りたかった理由かもしれないね)

妻の想い出の列車、それは攻にとっても想い出の列車になった、そう思えた守なのかもしれない。

 むろん、そんな宮地親子を見ていた曜とルビィも、

(これが親子なんだね!!私、感動したよ・・・)(曜)

(こんな麗しい光景だよ!!お姉ちゃん(ダイヤ)、この光景を焼き付けるからね!!)(ルビィ)

と感動に酔いしれていた。

 

 そんなみんなとは別に南は日南線から見える海岸線を見ながらこう思った。

(この荒々しい海と同じように俺たちは自然の脅威に常にさらされている。それはどうしようもない刹那なのかもしれないな・・・)

そう、南がそう思えるのも無理ではなかった。ここからは、今、現実に起きていることを話そう。日本だけでなく世界中において、自然の脅威が続いている、それこそ自然の摂理なのかもしれない。そして、それは、人類において自然の脅威になすすべなんてないのかもしれない。それはJR九州でも同じようなことが言えるだろう。熊本~阿蘇~大分を結ぶ豊肥本線は熊本地震などの影響で不通になったことが何度もあった。また、久留米~日田~湯布院~大分を結ぶ久大本線も何度かの豪雨により鉄橋や線路が流出しては何度も存亡の危機を迎えようとしていた。

 そして、今、現在、JR九州管内においては2017年の豪雨で日田彦山線が、2020年の豪雨で肥薩線の八代~人吉~吉松間が不通になっている。いや、それどころか、線路や鉄橋の流出により2つの路線は存亡の危機に瀕している。そのため、そこを走る観光列車にも影響が出ている。「かわせみ・やませみ」「いさぶろう・しんぺい」「SL人吉」は別々の路線で臨時列車として運行しているし、「はやとの風」は運行を終了し、「いさぶろう・しんぺい」の一部とともに西九州を走る予定の「ふたつ星4047」として運行するためにリニューアル中である。それくらいJR九州が誇るD&S特急も再編の波が押し寄せていた。

 さらに、日田彦山線では新たなる動きがでている。実は、この前の豪雨の際、久大本線の鉄橋の一部が流出したものの、不通になっている日田彦山線の鉄橋を再利用(どうやら鉄橋の長さが同じだったようだ)する形で早急に復旧したのだが、これにより鉄路での復旧が絶望的になったばかりか、逆に一部区間をBRTでの運行に舵をとったのである。 

 こうしてみてみると、自然の脅威は、自分たちだけでなくJR九州、いや、國鉄九州総局も、いや、世界中に影響を与えていることがわかるかもしれない。それと同時に自分たちも自然によって活かされていることを認識すべきなのかもしれない、そう南は考えているのかもしれない・・・。

 

 そして、夕日が沈む日南の海岸にて・・・、

「さようなら、私の愛した妻よ・・・」(守)

と、骨壺に入った遺灰をまく守の姿があった。守からすればそれは妻への、奥さんへの最後の別れ、だったのかもしれない。むろん、息子の攻も、

「お母さん、さようなら・・・」

と母親との別れを感じていたのかもしれない・・・。

 そんあ2人を見てか、曜とルビィは南に対してこう言っていた。

「私たちって自然によって活かされている、そんな感じがしたよ」(曜)

「うん。ルビィもこの2日間は自然がどれだけ脅威なのかわかったもん・・・」(ルビィ)

そんな曜とルビィに対し南はこう励ました。

「でも、そのなかでも人は精一杯頑張って生きていくだ。そのことを忘れなければきっと明るい未来へと向かうことができると思うよ」

 その言葉とともに曜とルビィは自分の想いを口にした。

「そんな自然のなかで生きている九州の人たちってすごいと思うよ」(曜)

「うん!!たとえどんなことがあっても「海幸山幸」のように復活できると思うんだ」(ルビィ)

曜とルビィ、この旅を通じて自然の脅威のなかで精一杯頑張っている九州の人たちのことを知ることができた。曜とルビィにとってこの数日間は、いや、秋に経験したことなどを含めて自然のなかで生きている九州の人たちに心打たれるものがあったのかもしれない、それくらい2人からしたら成長できたのかもしれない・・・。

 そんな曜とルビィに対し、

バシッ

と背中を叩く者がいた。これに対し、曜、

「千歌ちゃん、なんで背中を叩いたの?」

と背中を叩いた者こと千歌に対しそう言うと、千歌、こう言った。

「そんな暗い表情なんてせずに、今を、未来を、楽しもう!!」

そう、千歌はいつも前向きに考えていた。たとえどんなことがあっても前向きに考えることができる、それが千歌なのである。そのため、ルビィ、

「たしかにそうかもね!!ルビィたちはいつも前向きに考えないといけないんだもんね!!」

と千歌の前向きさに犯されたのか前向きに考えることにした。

 そして、千歌はこんなことを言いだしてきた。

「でも、私が前向きに考えることができるのはみんなのおかげだと思うんだ。これまでの旅のなかで私たちっていろんなみんなから勇気や元気をもらってきたじゃん。それどころか、いろんなことをするときでもみんなの協力があったから成功できたと思うんだ。だからね、みんなへのお礼を兼ねて、月末に、あの場所で、私たちの再出発の地、沼津駅前で、私たち卒業生さよならライブ、を行おうと思うんだ!!」

そう、千歌が考えたこと、それは、これまでお世話になったみんなに対するお礼のライブ、さよならライブを行うことだった。自分たちはこれまでみんなのおかげでAqoursとして活動することができた、それなら、それに対するお礼を兼ねてのライブ、さよならライブを行うことでみんなに恩送りをしよう、というのだ。むろん、これには、曜、ルビィ、ともに、

「うん、それはいい考え!!」(曜)

「ルビィも賛成!!」(ルビィ)

と賛成の意を示した。いや、それどころか、

「ヨハネも賛成!!」(ヨハネ)

「おらも賛成ずら!!恩送りずら!!」(花丸)

「私も賛成!!う~、私も頑張らないとね!!」(梨子)

というヨハネたちからの賛成はおろか、

「私としても賛成!!梨子、負けないからね!!」(桜花)

「先輩たちの考えに賛成!!やるよ、松華!!」(梅歌)

「まぁ、私としても梅歌と一緒ならどこにでもいくよ!!」(松華)

とテレビ電話で桜花たち1年生も賛成の意を示していた。

 こうして、ついにさよならライブの開催を決めた千歌たち、そんな千歌たちは日向灘の夕日に照らされながらこう叫んだ。

「さよならライブ、必ず成功させるからね!!だから、応援してね!!」

それはこれからお日さまの、虹の先へと進もうとしている9人をお日さま自ら応援しているようにもみえたのであった・・・。

 

ED 浪漫鉄道(JR九州社歌)

※申し訳ございません。YouTubeにて検索の上、脳内で鳴らしてもらえたら幸いです・・・。

 ごめんなさい・・・m(__)m

 

~自然の脅威~完 & To be contuned

 

 



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~終章・宗太郎越え~ 前編

※この物語は2020年3月現在の時刻表を参考に作っております。
※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「うわ~、これが血の池地獄なんだ!!すごく赤い!!」(曜)

「うぎゃ~!!お湯が飛び出してきた!!」

「海幸山幸」の一件が起きた翌日、曜とルビィ、花丸、ヨハネ、梨子、そして、南と高山は宮崎から特急「にちりん」に乗って大分・別府へ、そこで(主に別府地獄を)観光していた。これまでは事件に次ぐ事件だったので曜とルビィとしてはこの旅で初めての旅らしい旅みたいなことをしていた。ということで、曜とルビィは別府地獄でめいいっぱい楽しんでいた。そんな曜とルビィに対して南は、

「これ自体自然現象なんだけどこれほどすばらしいとはなかなかなものだな!!」

と地獄自体自然現象なのだがそれはそれでとてもすばらしいと太鼓判を押していた。それくらい別府地獄はすばらしいところなのかもしれない。

 そして、夜の7時ごろとなり、

「う~ん、とり天、おいしいずら!!」(花丸)

「うわっ、私のとり天!!」(ヨハネ)

「うまいずら、うまいずら」(花丸)

となぜか花丸に自分のとり天をとられるヨハネの姿が・・・、いやいや、曜・ルビィ一行は大分駅近くのレストランで大分名物のとり天を食べていた。そんななか、南に対しルビィはあることを尋ねてみた。

「ところで、南さん、これからどうするの?」

そう、これから先のことをルビィは南に尋ねたのである。実は曜とルビィの卒業旅行の予定はゆうに過ぎていたのである。1日目に「A列車で行こう」、2日目に「かわせみやませみ」「いさぶろう・しんぺい」、3・4日目に「海幸山幸」と予定の4日間はすでに過ぎていた。それでもって今日は5日目、曜とルビィたちは今日か明日にでも沼津に戻る必要があったのだ。だが、南たちはまだ一緒にいる。なので、南たちはこれからどうするのかルビィは確認しようとしていたのだ。ただ、南は、

「う~ん、そうだなぁ~」

となにか悩む恰好をみせるも、

「まだ決めていない」

と言葉を濁した。実は、このとき、南はあることを悩んでいた。それは・・・、

(う~ん、これをしゃべっていいのだろうか。あともう少しで・・・)

となにかを隠していたような感じだった。

 そんななか、突然、南の携帯に、

ピピピ

という音が聞こえてきた。そのため、南はすぐに電話にでる。

「南だがどうしたんだ?」

 すると、電話をかけてきた桜井からある連絡がはいった。

「大変です、南さん。宮崎で他殺体が発見されました!!」

これには、南、こう指示した。

「すぐに被疑者(他殺体の人)の関係を調べてくれ!!」

むろん、これには桜井とその近くにいた岩泉から、

「わかりました!!」

という声が聞こえてきた。

 そんなやりとりをみていた曜はすぐに南に尋ねる。

「まさか、事件!?」

すると、南、

「あぁ、事件だ!!」

ということ曜に対してこう言った。

「もしかするとここでさよならかもな!!」

これには、曜、

「えっ、それって本当?」

と南に言うも、南、すぐに、

「まぁ、それは桜井と岩泉の捜査次第さ」

とたんに答えていた。

 

 そんなやりとりから5分後、

「南さん、怪しい人物が浮上しました!!」

と桜井から通信がはいった。南はすぐに、

「その情報をくれ!!」

と言うと岩泉はすぐに怪しい人物の名をあげた。

「その怪しい人物とは被疑者である日出(ひじ)と一緒に旅行をしていた三重という人物です。実は被疑者である日出はナイフで一刺しだったらしく、そのナイフから三重の指紋がみつかりました」

どうやら三重という人物が犯人である、という情報がはいってきた。そのナイフから三重の指紋が見つかった、というのだ。そのため、見栄を重要参考人として探すこととなった。

 だが、ここにきて話は急展開をみせる。桜井からの連絡から3分後、

「南さん、三重がみつかりました!!」

という小海からの連絡がはいったのだ。これには、南、

「いったいどこでみつかったんだ?」

というと小海はそれを詳しく話した。

「三重ですが大分駅にいるところを発見しました。今、確保しました」

ただ、小海の声とは別に男の声で、

「俺はやっていない!!俺はやっていない!!」

と聞こえてきた。

 すると南は小海に対しこう命じた。

「小海、三重をそのまま拘束してくれ。俺が行く!!」

その南の声に曜ははっとした。

「南さん、もしかして、犯人がみつかったの?」

これには、南、

「あぁ、でも、俺が行かないと自供してくれないと思うからな」

と行くことに曜に告げると曜は南に対し、

「なら、私たちも連れてって!!」

とお願いした。これには、南、

「行っておくが犯人がなにをするかわからないぞ!!」

と脅しをかけるも、これには、曜・・・ではなく、なぜか近くにいた、

「なら、私が彼女たちを守ってあげる!!」

と梶山が言うと高山も続けて、

「それに彼女たちの力が必要になると思います」

と梶山の援護射撃をしたのが効いたのか、南、

「わかった。曜ちゃんとルビィちゃんの同伴を許可する」

と曜とルビィの同伴を許可・・・したのがいいのだが、ここで、今なお、旅の添乗員をしていた千歌からも、

「ち、千歌も一緒に行く!!」

と言ってきた。その千歌の顔を見た南はぼそっと、

「う~ん、特別工作員の千歌を連れていくのはなぁ~」

と言うも、

「うん、仕方がない!!千歌も連れていく!!」

と声をあげてしまった。どうやら、南、千歌の押しに負けたようだ。

 そんなわけで、南と高山はヨハネたちをその場に残し、曜、ルビィ、千歌を連れて小海のもとへと向かうのであった。

 

「俺はやっていない!!俺はやっていない!!」

南たちは駅の事務室に行くなり、三重が小海たちに抗議していた。それに対し小海は、

「でも、あなたの指紋がみつかったでしょうが!!」

と言い争いをしていた。

 そんなとき、南が小海と三重のあいだにはいるなりこう言った。

「あなたが三重さんですね。あなたにはなにかアリバイがあるのですか?」

すると三重がこんなことを言ってきた。

「俺は青春18きっぷを使って大分県内を旅していたんだ。それが証拠だ!!」

すると、三重は青春18きっぷをみせてきた。するとちゃんと今日の日付が印字されていた。

 そんなときだった。ここで桜井と岩永が来て南にあることを告げた。

「南さん、宮崎県警から連絡があり、被疑者が殺されたのが朝の8時ごろということです」

これを聞いた瞬間、南、少し暗い顔になってしまう。というのも、

「そうなると三重が犯人というのが難しくなる・・・」

どうやら南が犯人であるということが難しくなったようである。ただ、それに対し、ルビィ、南に、

「でも、なんで三重さんが犯人といえなくなるの?」

と尋ねると高山がその理由について話した。

「青春18きっぷを使う人にとって延岡~佐伯間の「宗太郎越え」がネックになるんだ」

だが、ただそれだと意味がわからないのか、ルビィ、南に尋ねる。

「どうして「宗太郎越え」がネックになるの?」

 すると、それについて三重が説明始めた。

「そりゃそうだ!!だって、延岡→佐伯の便は朝の6:10発と夜の19:33発の2本しかないんだからな!!」

そう、そこが青春18きっぷを使う人にとって日本一難しい区間、「宗太郎越え」たる所以だった。実は延岡~佐伯間は下りが朝の1本だけ、登りは朝夜の2本のみという日本でも1番の便の少なさだったのだ。なので、青春18きっぷを使う人にとって、この便の少なさ、いわゆる、「宗太郎越え」というのが難所中の難所、いや、日本一の難所、といえたのである。

 そして、そこに南が三重が犯人と決めつけられない所以だった。というのも、

「朝8時ごろに被疑者を殺して今の時間(夜7時ごろ)に(青春18きっぷが使える)普通に乗って大分の来るのが不可能に近いんだ・・・」

そう、宮崎→大分を青春18きっぷで朝8時から夜の7時までに直接行こうとしても「宗太郎越え」があるから不可能に近い、というのだ。

 ただ、それに対して曜がある疑問を南に伝えた。

「でも、そうだったら特急「にちりん」に乗ればいいのでは?」

そう、大分と宮崎を結ぶ特急「にちりん」を使えば宮崎→大分間はすぐに移動できるのである。これは曜やルビィ一行が宮崎から大分まで来るときに使った手段であった。

 だが、これには、高山、

「それも不可能なんです」

と言っては不可能である理由を曜とルビィに教えてあげた。

「実は青春18きっぷは特急には使えないんだ」

そう、青春18きっぷは全国の國鉄(JR)の普通・快速には乗れるのだが、一部の区間を除いて特急券を買ったとしても特急に乗ることができないのだ。なので、三重が特急「にちりん」を使って宮崎→大分に来ることは不可能だったのだ。まぁ、その理由以外にも、

「実は、特急「にちりん」に三重みたいな客がいなかったか確認をしたのだけどいなかったんだ」

という情報も南のもとに入ってきたため、曜の示した特急「にちりん」を使っての大分入りはなかった、ということになったのだ。

 そのため、南、

「う~ん、どうやってたった1日で青春18きっぷを使って宮崎から大分まで来たんだ・・・」

と頭を悩ましていた。

 そんなとき、曜とルビィがこんなことを言い出してきた。

「南さん、このアリバイ、私たちが崩したいと思うんだけど・・・」(曜)

「ルビィもね、このアリバイを崩したいとと思っているの。南さん、お願い」(ルビィ)

どうやら、曜とルビィ、この三重のアリバイを崩したい、そう思っているようだ。ただ、これには、南、

「でもなぁ、この俺さえも難しいことを曜ちゃんとルビィちゃんに任せてもなぁ」

と及び腰に・・・。

 そんな南に対してついにあの人がガンッと言った。

「この千歌がいるから大丈夫!!私たち、CYaRon!にお任せ!!」

そう、千歌だった。やっぱりAqoursのリーダー!!やるときはやる(つもり)なのだ。これには、

「そこまでやる気があるならやってもらった方がいいと思います」(高山)

「困ったときはときは第三者の目も必要です。やってもらった方がいいと思います」(小海)

という部下たちからの意見もあり、南、それならばと、

「わかった。でも、もし無理そうだったら俺に言えよな!!」

と、千歌、曜、ルビィに三重のアリバイ崩しをお願いすることになった。

 

 まず、千歌と曜、ルビィ、は「宗太郎越え」について考えてみた。

「「宗太郎越え」だと朝夜の2本のみ(上りの場合)。そうなるとやっぱり宮崎から大分まで来ることができないよ」(曜)

「でも、日豊本線で直接来るのであればそれが最短ルートだよ!!」(ルビィ)

「でも、それが不可能だったらこのルートは外すしかないよ」(千歌)

そう、前述の通り、「宗太郎越え」を直接するのは不可能、ということとなった。

 そんなわけで次に青春18きっぷについておさらいをする。

「青春18きっぷは全国の國鉄(JR)の普通・快速列車に乗れるんだよね」(曜)

「でも、特急や新幹線には乗れない(一部を除く)んだよね!!」(ルビィ)

「そう考えると鹿児島中央から新幹線を乗り継いで大分に来るのは無理だね・・・」(千歌)

千歌が考えたルート、それは宮崎から鹿児島中央を抜け、新幹線を乗り継いで大分まで行くルートだった。これだったら小倉まで行って小倉から大分まで大回りで行くことができるのだが、青春18きっぷを使って新幹線に乗ることができない以上、このルートで大分に行くのはできなかった。

 ただ、この千歌の考えを聞いて、曜、あることを考えた。

「そうだ!!宗太郎越えをせずに大回りすればアリバイは崩れるかも!!」

そう、わざわざ「宗太郎越え」をしなくてもいいのである。大回りすればいいだけの話である。

 そんなわけで、千歌はその大回りのルートを考えてみた。

「まず、青春18きっぷを最大限活かせるルートだけど、吉松、人吉を抜けるルートがあるよ!!」(千歌)

千歌が考えたルート、それは、

 

宮崎→都城→(吉都線)→吉松→(肥薩線)→人吉→熊本

 

のルートだった。これならJRの普通を乗り継いで大分まで抜けることができる、そう千歌は考えたのである。

 そういうことで時刻表を片手に千歌たちは時間を比べてみる。すると、

「宮崎8:48発、都城9:56着・・・、って、都城で3時間待ちじゃない!!」(千歌)

そう、このルートだと(ローカル線ではありがちなのだが)長時間待つことになるのだ。そんなわけで、いろいろと調べたものの、

 

宮崎  都城

8:48→9:56   吉松

    13:03→14:31  人吉

        15:15→16:34

 

といったところで大分まで行くことができないことが発覚した。これには、曜、ルビィ、ともに、

「えっ、まさか人吉で終わるなんて・・・」(曜)

「ルビィ、うまくいく、と思っていたのに・・・」(ルビィ)

と唖然になってしまう。まぁ、吉都線、肥薩線、ともにローカル線、ということもあり、便数が少ないのがネックだったようだ。これにはさすがの千歌も、

「まぁ、そういうことだってあるでしょ!!」

と開き直るしかなかったのだ・・・。

 と、ここで、曜、意外なことを言う。

「青春18きっぷっていうくくりだけで考えているからできないんだよ!!なら、ほかの鉄道を使うのってどうなの?」

そう、九州にはいろんな鉄道がある。平成筑豊鉄道、くま川鉄道、などなど。それを使えばいいのでは、と曜は考えたのである。

 そこで千歌は國鉄(JR)の路線図を見る。すると・・・、

「おれんじ鉄道・・・」

そう、おれんじ鉄道、昔の鹿児島本線である。それを使えば大回りでも大分に行ける、そう思ったのか、ルビィ、

「犯人はきっとおれんじ鉄道を使ったんだよ!!」

と勢いづいていた。

 そんなわけで、千歌、曜、ルビィ、ともに、

「あっ、どんどんつながる!!」(千歌)

「これは幸先いいね!!」(曜)

「うんっ!!」(ルビィ)

といろいろと調べてはどんどんつながっていった。

 だが・・・、

「う~、時間が足りない・・・」(千歌)

「あともう少しだったのに・・・」(曜)

「ぐすんっ!!」(ルビィ)

と突然行き詰まってしまった。というのも・・・、

 

宮崎 都城

8:48→9:56  鹿児島中央

    10:24→11:55  川内

        12:29→13:18  八代

            13:22→15:57  鳥栖

                16:04→18:45

 

と、あまりにも大回りだったため、鳥栖で時間切れを起こしたのだ。

 そんなわけで、鉄道を使ったら宮崎から大分までいけないことがわかった千歌たち。そのため、

「う~、ほかに方法がないのかな・・・」(曜)

と、もうお手上げ状態だった、そんなときだった。ルビィ、あることを思い出した。

「あっ、そうだ!!高速バスっていう手はないの?」

そう、高速バスを使う方法が残っていたのだ。というのも、ルビィ、秋に南たちと旅をしたとき、「36+3」の事件にて犯人が高速バスを使って移動していたことを思い出したのだ(詳しくは前作「つばめの謎」をご覧ください)。

 そこでルビィは南を呼んでこうお願いした。

「ねぇ、南さん、宮崎から大分まで行く高速バスに犯人が移動していないか調べてくれませんか?」

 すると、南もそう思ったのか、

「わかった。調べてみる」

と言ってはすぐに調べてくれた。すると、南、ルビィにこう告げた。

「たしかに宮崎と大分にはパシフィックライナーという高速バスが走っている」

これには、ルビィ、

「なら、犯人はパシフィックライナーを使ったんだ!!」

と元気よくいった・・・ものの、南の答えは意外なものだった。

「でも、犯人らしい人物は乗っていない、ということだ」

そう、南はこの高速バスの存在を調べるとともにそのバスに犯人が乗っていなかったのか調べたのである。だが、運行会社によるとそのような人はいなかった、ということである。(なお、パシフィックライナーは現在廃止されています)

 と、それにあわせて南が新たなる情報をもってきてくれた。

「それと、三重だが、16:45ごろに由布院→大分の普通列車に乗っていた、という目撃証言がみつかった」

そう、三重は16:45ごろに由布院→大分の普通列車に乗っていた、というのだ。これには、千歌、

「それってすごい情報だよ!!」

と驚くもそれとつながる案がみつからずいた。

 そんなときだった。ルビィ、あることを思い出した。それは、

(あっ、たしか、南さん、こう言っていたよ、「時刻表をみればわかる!!」って!!)

そう、南が「いさぶろう・しんぺい」の事件のときに言っていた言葉、「時刻表をみればわかる」、それを思い出したのである。そのため、ルビィ、

「もしかすると・・・」

と九州総局の時刻表を最初から読み返した。すると・・・、

「もしかして・・・、犯人・・・、あのルートを使っちゃんじゃ・・・」

と、ルビィ、なにかわかったのか、千歌と曜にこんな言葉を言った。

「千歌ちゃん、曜ちゃん、今すぐあの情報をもとに調べてみよう!!」

 そして、ルビィはあの情報、つまり、16:45ごろに由布院→大分の普通列車に乗っていたこと、それをもとに時刻表を使って逆引きでダイヤを調べてみる。すると、

「でも、ここまでどうやって来るの?」(千歌)

ある駅で千歌と曜はその先へと進めなくなったようだ。

 ただ、これに対してルビィはこう言った。

「それなら、この交通手段を使えばいいんだ!!」

すると、あら不思議、これまで困難と思っていた1つの線がつながったではありませんか!!これには、千歌、曜、ともに、

「うわ~、ルビィちゃん、天才!!」(千歌)

「これなら大丈夫だね!!」(曜)

とルビィのことを褒めるとルビィは南にこう言った。

「このルートなら少しの時間で宮崎から大分まで来ることができるよ!!」

 すると、南はそのルートに見ては三重に対しこう告げた。

「三重さん、あなたのアリバイ、すべて崩れました」



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~終章・宗太郎越え~ 後編

※この物語は2020年3月現在の時刻表を参考に作っております。
※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「三重さん、あなたのアリバイはすべて崩れました」

この南の言葉に三重は怒りながら、

「どうしてそんなことがいえるんだ!!青春18きっぷを使ったら宮崎から大分まで来ることができないはずだろ!!」

と言うもルビィがそんな三重に対し大きな声で、

「あなたはたしかに青春18きっぷを使って大分まで来たんだ!!」

とそう言うとその真実をこう答えた、ルビィは・・・。

「でも、それは最後まで!!あなたは「B&Sみやざき」を使って新八代まで来てそれから久大本線経由で大分まで来たんだ!!」

B&Sみやざき、それは宮崎から新八代を結ぶ高速バスである。このバスは宮崎まで新幹線と高速バスに乗り継いでくるお客さん目的に開設された高速バスであり、(飛行機を除いた)宮崎までの最短ルートであった。なお、新幹線乗り継ぎのお客さん目的のため、時刻表でも新幹線のページにて掲示されている。

 そんなルビィの言葉に三重はこう叫んだ。

「そ、それがどうしたんだというんだ!!ただのはったりだろ!!」

だが、その声自体動揺しているのがみえみえだった。

 だが、そんな三重に対し曜と千歌がこう言い出した。

「三重さんはまず8:09発の「B&Sみやざき」に乗って新八代まで行ったんだ!!」(千歌)

「そして、そのあとは久大本線経由で普通に乗って大分まで来たわけ!!」(曜)

そして、曜、千歌、ルビィは三重が大分まで来たであろうルートを書き始めた。それが次の通りである。

 

宮崎            新八代

8:09→(B&Sみやざき)→10:34. 久留米

              11:09→13:06  日田

                  13:07→14:12

                      14:17→

 由布院

→15:21  大分

 16:05→17:01

※B&Sみやざきは別払い

 

これには、南、

「ちょっと久留米の方が怪しいけど、これなら青春18きっぷを使って大分まで来ることができるな!!」

と太鼓判を押していた。これには、三重、

「ぐぐぐ」

という声をあげるもここぞにきて三重はあることを言い出してきた。

「言っておくが俺は日出を殺していない!!俺はある人から脅迫を受けていたんだ!!」

その言葉に、曜、びっくりする。

「えっ、ある人から脅迫を受けていたわけ?」

すると、三重、こんなことを言った。

「そう、俺を脅迫しようとした人こそ犯人だ!!」

むろん、これには、千歌、

「三重さん、本当に脅迫されていたんなら千歌たちのアリバイ崩しはいったい・・・」

と自信をなくそうとしていた。むろん、これには、三重、

「そう、俺はその犯人に仕組まれて罠にはめられたんだ。まるでトレンディドラマのように復讐しようとしてな・・・」

だが、ここにきて、ルビィ、自信を喪失する千歌と曜に向かってこう叫んだ。

「千歌ちゃん、曜ちゃん、大丈夫だよ!!ルビィたちの推理はきっと当たっているよ!!」

 そのルビィの言葉に触発されたのか、南、ルビィ、曜、千歌に対しこんなことを言ってきた。どうやら、ちょうど、宮崎県警からある連絡が入ったようだ。

「「B&Sみやざき」の運行会社から三重らしき人物を乗せたという証言がとれたぜ!!また、「B&Sみやざき」8:09発の便の座席から三重の指紋がみつかったとよ!!それにな、三重、お前と日出が言い争っているの見たという証言もとれた。もう言い逃れできないぜ、三重!!」

これには、三重、

「ぐぐぐ、もう言い逃れができない・・・」

とついに白旗をあげてしまった。これには、南、

「でも、いったいどうして日出を殺したんだ?」

と三重に尋ねると三重はこう答えた。

「あいつはな、俺に対してこう言ったんだ!!「「宗太郎越え」なんて無理だろ」ってな!!だから、頭に血が上って殺してしまったんだ。でも、俺はたった11時間で宮崎から大分まで来ることができた。あいつにぎゃふんと言わせることができたんだ!!」

 だが、この三重の言葉に南は一喝した。

「ただ、それだけの理由で殺したなんて片腹痛いわ!!あなたがしたことは立派な犯罪だ!!しっかりと罪を償ってくれ!!」

その南の言葉とともに三重はうなだれてしまった・・・。

 

 こうして青春18きっぷを使った事件は無事に解決を迎えた。この功労者こと、千歌、曜、ルビィは、

「南さん、やりました!!ルビィ、うれしい!!」(ルビィ)

「これでもう南さんたちの仲間入りだね!!」(曜)

「千歌たちの活躍、みたか!!」(千歌)

と喜びの声を出していた。

 その後、千歌、曜、ルビィはヨハネたちと再会、大分駅にある温泉施設に来ていた。これには、千歌、

「うわ~、一苦労のあとのお風呂は気持ちいい!!」

と親父みたいなことをいうも、ルビィ、曜、すら、

「うん、気持ちいい!!」(ルビィ)

「千歌ちゃんの気持ち、わかる~」(曜)

と声が聞こえてきた。

 だが、ここで梶山からあることを聞かされる。

「あなたたちとまた一緒になれてうれしかった。でも、この時間はあともう少しで終わってしまうの」

これには、ルビィ、

「えっ、それって・・・、もうお別れ・・・」

と言うと桜井と小海がこう答えた。

「私も千歌ちゃんたちと離れるのは悲しいよ。でも、もうコラボの時間が終わってしまうの」(桜井)

「でも、これが運命の定めなんだ。ごめんなさい」(小海)

 だが、その言葉に曜とルビィはこう答えた。

「でも、私たちは南さんを介して本当に成長したんだと思えるんだ!!」(曜)

「うんっ!!ルビィたちは南さんたちのおかげで楽しい時間を過ごすことができたんだよ!!それはとてもうれしいことだよ!!」(ルビィ)

曜とルビィからしたら南たちとの邂逅はとてもすばらしいものだったに違いないだろう。

 

 そして、ついにお別れの時間がやってきた。南は曜とルビィに対しこんなことを告げた。

「曜ちゃんにルビィちゃん、俺は2人に会えて本当にうれしかった。これからは善子ちゃんたちと一緒にスクールアイドルを頑張ってほしい」

これにあわせて高山も曜とルビィにこう告げた。

「私はこの5日間しか一緒にいられなかったけど、2人とはとてもいい想い出ができたと思っているんだ。だから、2人とも、この経験をバネに頑張ってほしい」

この言葉のあと、南と高山、そして、桜井、岩泉、小海、さらに、梶山のまえにある電車が止まった。それは・・・、

「えっ、かもめ!?」(曜)

そう、今度、2022年9月23日にレビューする予定の新幹線「かもめ」だった。

 その「かもめ」のドアが開くなり公安特捜班の班長の高杉が南たちに対してこう告げた。

「南たち、もうお別れの準備は済みましたか?」

すると、ルビィと曜は南たちに対してこう告げた。

「南さん、高山さん、そして、みんな、これまで本当に付き合ってくれてありがとう。南さんたちも元気に頑張ってね!!」(曜)

「ルビィ、南さんたちと一緒に事件を解決できたこと、本当にうれしかった。南さんたち、これからも頑張ってください!!」(ルビィ)

その言葉とともに「かもめ」は「ピー」という汽笛を鳴らすと南たちはついに「かもめ」に乗車していった。そんななか、曜はあることに気づいた。

(あれっ、千歌ちゃんがいない!?いったいどうしたのかな?)

ただ、それとは別に「かもめ」はついに大分の地を離れようとしていた。これには、曜、ルビィ、ともに南たちにこうエールを送った。

「南さんたち、これまでありがとう。あちらの世界でも頑張ってね」(曜)

「南さんたち、ルビィ、これまでの時間がとても大切に思えたよ。だから、南さんたち、あちらの世界でも、ガンバルビィ、してね!!ルビィ、応援しているね!!」(ルビィ)

 そんな言葉ともに南も小さくみえる曜とルビィに対してこうエールを送った。

「曜ちゃんにルビィちゃん、これからは2人の時代が繰り広げられるはずだ。だからこそ、2人とも頑張ってくれ!!」

3つの想いはやがて1つの想いとして昇華しようとしていた。それくらい、曜、ルビィ、南の想いは大きかったのかもしれない。

 

 こうして、2回目のコラボは無事に終わった。みなさんはいかがだっただろうか、九州を舞台に2つの物語がコラボする究極の物語を。でも、けしてこれは物語ではない、奇跡ともいえる現実なのかもしれない。それくらい、このコラボは奇跡に次ぐ奇跡ともいえると思えるのだ。だからこそ、忘れないでほしい、この奇跡のコラボはこれからも語り継がれるのだ。だからこそ、南たちと曜とルビィ、そして、千歌の活躍を忘れないでほしい。

 

曜とルビィの事件簿Ⅱ FIN & true ending・・・



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曜とルビィの事件簿Ⅱ~真・終章 未知への遭遇~

※この物語は毎週月・水・金に投稿しております。


「う~、ここはどこだ・・・。どこか前にいた場所に似ている気がする・・・」

その男は目を覚ますと周りを見渡した。すると、その男はあることに気づく。

「ほ~、この国の鉄道は國鉄ではないんだ・・・。JRだと・・・。ほう、けったいな名前だな・・・」

そう、この男はあることに気づいた、鉄道会社の名が國鉄ではなくJRであると。その男は、このとき、こう考えていた。

(どうやら、私自身、別の次元に飛ぶことができたようだな。私のいた次元は濃くって國鉄が鉄道を運営していた。だが、この次元ではJRと名前を変えてある。どうやら、次元間の移動に成功したようだな」

そう、この男は別の次元、日本の鉄道が國鉄といわれている、そんな次元から飛んできたのである。そして、その男は自分の名札を見る。すると、そこにはこう書かれていた。

 

國鉄鉄道公安隊東京公安室公安特捜班工作員 矢立・アラン・スミシー

 

さらに、その男は自分の携帯を見る。すると、そこには、「2019年7月〇日沼津郊外」と書かれていた。どうやら、その男、アランの持つ携帯には今いる日時、場所が正確に示されているようだ。これには、アラン、こう考えてしまう。

(どうやら、目的の次元に飛ぶことができようだな。あともう少しすれば、私のいた次元と今いる次元が融合(コラボ)してしまう。そうなったときに上司たちがうまく立ち回れるようにするのが私の目的。そのための準備をしないと・・・)

どうやら、アランがこの次元に来た目的、それは、自分のいた、國鉄という鉄道会社がある次元と今いる次元が融合(コラボ)したときに上司たちが動きやすくする、その準備をするためのようだった。

 

 そのアランであるが、降り立った地の近くを、御殿場線沿いを歩いていくと、

「ほう、ここに病院とはな・・・」

とある病院を見つけてはその病院の前に立った。

 すると、アランはこの言葉を発した。

「へぇ、この病院、木松悪斗記念病院って名前なんだ。でも、なんか事件の香りがする・・・」

なんと、この病院から事件の香りがしていたようだ。アラン、これでも刑事のはしくれである。鉄道公安隊、アランのいた次元において、日本の鉄道などの治安を守る組織である。と、同時に、國鉄内で起きた事件を捜査する権限を有していた。その工作員であるアランも、実は、昔、公安隊の一員として活躍していたのである。今は引退して工作員になっているが、それでも昔の血が騒いだのかもしれない。

 こうして、病院のなかに入っていくアラン、少し歩いていくとある病室で眠っている婦人を見つけるなり、

「ほう、この婦人、ある男によって眠りについているようだな」

と言ってしまう。これも昔の刑事の感なのだろう、その婦人が誰かによって眠らされておる、そう感じ取ったのかもしれない。

 そして、アランはあることを決めた。

「なら、この私がなんとかしないと・・・」

どうやら、この婦人を起こすことを決めたようである。

 そのアランであるが、

「あぁでもない、こうでもない」

といろいろとやってみたものの、この婦人を起こすことができなかった。そのためか、アラン、こんなことを考えてしまう。

(う~ん、あれを除いてやってみたが起きなかった。なら、この婦人を起こすためにもこの婦人の裏で起きたことを調べる必要があるな」

どうやらアランはこの婦人に興味がわいたようだった。

 こうして、アランはこの婦人のことを調べることにした。すると、いろいろとわかってきた。この婦人の名は木松、木松悪斗の妻であること、その木松悪斗は投資グループを率いていること、さらには・・・、

「ほ~、木松悪斗という男、インサイダー取引をしていたのか」

なんと、その木松悪斗がインサイダー取引をしていたことすらわかったのである。ただ、今のアランは一個人でしかない。というわけで、アラン、

「警察ですか。私、あなたたちと協力したいと思っております」

と、警察の木松悪斗関連の捜査に協力することになった。

 こうして、アランは警察の一協力者として木松悪斗関連を調べ上げていく、いや、金田〇少年や名探偵コ〇ンみたいな優秀な探偵ともいえた。そのためか、木松悪斗にまつわる証拠などが次々とみつかったのである。それもこれもアランのおかげともいえた。

 それから1か月後、木松悪斗のインサイダー取引に容疑が固まった。だが、それでも婦人は、木松悪斗の妻は目を覚ましてくれない。これには、アラン、

「もっとこの婦人のことをよく調べないと・・・」

ともっとこの婦人のことを調べていく。すると、アラン、

「ふ~ん、桜花という娘さんがいるんだね・・・」

と桜花の存在に気づいたのかもっと調べていくうりに次のことがわかった、桜花は、今、静真にてスクールアイドルをしていること、その桜花が苦しんでいることを。そのため、アラン、こう推測した。

(その桜花という方はきっとこの婦人、いや、お母さまを必要としている。ならば、その桜花という方につなげないと・・・)

アランは桜花のことが気になった。そのため、今の母親の状況を伝えないといけないと思うようになっていたのだ。

 その後、アランはその婦人、木松悪斗の妻かつ桜花の母の病室のなかであるものを探してみた。すると、あるものをみつける。

「タブレットか・・・」

そのタブレットは木松悪斗が静真との連絡用においていたものだった。そのタブレットにアランは触れてはあるところにつなげようとする。それは・・・、

「このアドレスならAqoursにつながるはず・・・」

なんと、アラン、自分が知っているアドレスに、國鉄のある世界のあるアドレスにつなげようとしていた。そのアドレスは上司たちが、あちらの世界にいるよく知る人物に、あちらの世界のAqoursのメンバーにつながるアドレスだった。だが、それがこちらの世界でもつながるはず・・・、

「・・・、ツツー」

つながった・・・。まさかつながるとは驚きである。とはいえ、つながった・・・ためか、

「あれっ、どちらさまなの?」

と1人の少女がタブレット画面に現れた。

 

 ちょうど、そのころ、東京ではラブライブ!夏季大会決勝が行われていた。だが、このとき、桜花は逃げ出そうとしていた。ライバルである理亜・花樹組の圧倒的なパフォーマンス、自分のことを「役立たず」「ごくつぶし」と卑下している、そのこともあり、桜花は自分が嫌になりこの場から逃げ出そうとしていたのである。そんな桜花を奮い立たせようと一生懸命になるAqoursメンバーたち。

 そんななか、近くにあったタブレットが光った。これには、千歌、

「あれっ、タブレットが光っている・・・」

とそのタブレットを見つけては覗き込んでしまった。すると、そこには、

(あれっ、おじさんがいる!!)

と、千歌、そのおじさんの存在が気になったのか、千歌はそのおじさんに声をかけた。

「あれっ、どちらさまなの?」

これには、そのおじさんはこう答えた。

「私の名は矢立・アラン・スミシー。アランと呼んでくれ」

そう、そのおじさんこそ、今、桜花の母がいる病室にいたアランだった。

 

 千歌が持つタブレットに映るアランはすぐにこう命令した。

「少女よ、なにか立て込んでいるようだな。その様子をみせてくれ」

すると、千歌、

「うん、わかった!!」

と言ってはタブレットのカメラを桜花の方に向ける。すると、アランはあることに気づいた。

「もしかして、あの少女が桜花というものかね」

 すると、千歌はこう答えた。

「うん、そうだよ。今ね、桜花ちゃんのことで大変なことになっているの」

これには、アラン、

(あの少女がこの婦人の子、桜花というものなのか。なら、できるだけはやくこの婦人を起こさないと・・・)

どうやら、アラン、この婦人をできるだけはやく起こさないと、と考えたようである。そうでないとあの桜花がどうあんるかわからないからだった。だが、どんな方法を使ってもこの婦人は起きなかった、あと1つの手段を除いては・・・。

 だが、このままいけば桜花の身がもたない、そう考えたアランはついに残された手段を使うことにした。それは、

(今、私が持っている気付け薬を使うことにしよう。だが、これは私の世界の薬。まったく次元が違う人に使ってどんな副作用があるかわからない。でも、使わないと後悔する!!)

その方法とは、アランがもといた世界、國鉄が存在する世界の気付け薬を使うことだった。だが、リスクもある。まったく次元の違う世界の住人にそれを使ってもいいのか、である。もしかすると重篤な症状がでるかもしれない。そんなリスクだった。だが、ここで使わないと自分が後悔する、そのために使うことをアランは決めたのだ。

 こうして、アランはこの婦人に、桜花の母親に気付け薬と使った。すると、

「うぅ、ここは・・・」

と、なんと、桜花の母親が目を覚ましたのだ。これには、アラン、

「うぅ、よかった・・・」

と喜びあふれていた。

 そして、アランはすぐに桜花の母親に対し、

「実はあなたの娘の桜花さんが・・・」

と今の桜花の状況を伝えるとその母親はすぐに、

「ちょっときついですが私の娘のためです。一肌脱ぎましょう」

と助け舟をだすことを決めた。これにはタブレットを通じて病室の様子を見ていた千歌も、

「よしっ!!これで桜花ちゃんを救うことができる!!」

と声をあげた。むろん、アランもすぐにその準備を始めた。千歌に対し、

「千歌、こちらはいつでもOKだ!!」

と声をあげていた。

 すると、ルビィがこれに反応、千歌が持っているタブレットの画面を見てこう考えてしまう。

(あれっ、千歌ちゃんが持っているタブレット、誰かに似ている!?)

なので、ルビィ、すぐにその人が誰なのかわかったのか、千歌たちに対してこう言ってしまった。

「千歌ちゃん、この(タブレットに映っている)ご婦人っても、もしかして・・・」

どうやら、ルビィ、その人が桜花の母親であることがわかったようである。そんなことをわかっているのか、千歌はこう反応した。

「そうだよ。このご婦人こそ、桜花ちゃん復活の切り札、だよ!!」

 

 そのころ、桜花は大道具部屋に逃げては仲間である梅歌と松華から励ましを受けていた。だが、自分に対して卑屈に考えている桜花はさらに卑屈になっていた、そんなときだった。千歌が3人のあいだに入ってはこんなことを言ってきた。

「桜花ちゃん、自分を責めないで!!それはこのご婦人の願いでもあるの!!」

 そして、千歌は桜花に対し自分の持っているタブレットを桜花にみせた。すると、そこ映っている婦人を見て、桜花、はっとした。

「お、お母さま・・・」

そう、タブレットに映っていたのは桜花がもっとも会いたかった、自分を唯一認めてくれた自分の母親だった・・・。

 

 その後、桜花は自分の母親からとても大切なこと、「たとえ、自分の父と姉に見捨てられたとしても、まわりのみんな、Aqoursのみんなから認めてもらっていること」、そのことを伝えられたことで桜花は復活、桜花を含めた、Aqours Sun Galxy!!は立派にステージを舞い、ラブライブ!優勝、二連覇を果たしたのである。と、同時に、アランが提供した情報により、木松悪斗はインサイダー取引の疑いで逮捕されることとなった・・・。

 

 こうして、事件も桜花の件もすべて解決・・・するはずだったが、アランはあることを気にしていた。それは・・・、

(私のいた世界とこのラブライブ!の世界、いや、la55の世界が融合(コラボ)してしまう。先を急がないと・・・)

そう、ついにアランのいた世界とla55の世界が融合(コラボ)しようとしていたのである。そのため、アランはある少女を呼び出した。あのタブレットを使って・・・。

「え~、千歌、聞こえているか?」

これには、千歌、すぐに気づいたのか、こう答えた。

「あ~、アランさん、お久しぶりだね!!」

そのとき、アランは千歌にあるお願いをした。

「千歌よ、お願いがある。公安特捜班のエージェントして活動してほしいのだ」

なんと、千歌に公安特捜班のエージェントとして活動してもらいたい、というのだ。これには、千歌、

「なんで?」

と聞き返す。だって、公安特捜班という聞きなれない言葉が出てきたのだから。

 すると、アランはその千歌に対し、

「実はな・・・」

とその理由を答えてくれた。自分のいた世界、國鉄公安特捜班のある世界とla55の世界が融合(コラボ)しようとしていること、そして・・・、

「実はこの融合(コラボ)において九州にて事件が起きようとしている。そのため、千歌の仲間である曜とルビィ、そして、私の上司である南たち公安特捜班が力を合わせてその事件を解決してこの危機を乗り越えてもらいたいのだ」

そう、迫りくる事件を曜とルビィ、そして、アランの上司である南たち公安特捜班の力でもってっその事件を解決してほしい、というのだ。ただ、これには、千歌、

「え~と、え~と、なんだっけ?」

と難しい話なのかあまり理解していないもののすぐに、

「でも、面白そう!!私、やってみる!!」

となぜか乗り気でアランの申し出を受けてしまった・・・。

 

 その数日後、國鉄鉄道公安隊のいる世界(つまり、アランのもといた世界)とla55の世界は融合を、コラボを果たした。そのことを知った千歌はついにアランにお願いされたことの準備を始めた。まず、今度、Aqoursオリジンとして発売予定のCDシングル「Happy Party Train」、通称「ハピトレ」のミュージックビデオ(MV)の撮影場所を九州と決めた。というのも、木松悪斗の騒動によってAqoursは日本において大ブレイクを果たしたのである。そのため、東京の音楽会社からCDシングルのオファーを受けていたのである。ただし、今のAqoursではなく、卒業生のダイヤ、鞠莉、果南、3年生の千歌、曜、梨子、2年生のルビィ、花丸、ヨハネ、この9人による2代目Aqours、Aqoursオリジンとして・・・。これには、桜花たちからブーイングがくるもせっかくのオファーだから、と音楽会社の意向を受けることにした。そこで、千歌はリーダー特権として九州にてMVを撮るようにと月にお願いしてていたのである。その月であるが後輩のあげはにAqoursのマネージャー業を渡したとはいえ、Aqoursのプロヂューサー的存在としてAqoursに関わっていた。そのため、月にAqoursのすべての権限が委ねられていた。ただ、それでもリーダーである千歌の言うことを聞かない、というわけではないので、月も千歌の意向を受けとることにした。まぁ、「ハピトレ」のMVの場所をどこにするか月も悩んでいたため、千歌がその方向性を示してくれたことにより、月のMVの候補はかなり絞られたらしく、「ハピトレ」はSLと機関庫が舞台、ということで、九重高原の豊後森機関庫がMVの舞台として選ばれた。

 そして、千歌は月にさらなるお願いをした。そのMVの下見を曜とルビィにお願いするようにしたのである。まぁ、月もMVのロケ地の選定に千歌が関わってくれた、ということでその願いを承諾、曜とルビィはなにも知らないまま、いや、融合(コラボ)したことで國鉄鉄道公安隊のいる世界での記憶を継承していたヨハネから南さんという知らない人のことを聞かされていた曜とルビィはその人の名を胸に九州へと旅立っていった。

 そして、対する千歌は主人公特権なのか、千の資格を持つ女として、ときにはSL旗艦助手として、ときには「あそぼーい」のパーサーとして、ときには変装して「36+3」の女性チーフパーサーとして、曜とルビィ、そして、南たち公安特捜班のサポートにまわっていた。それは獅子奮迅の如しであった。そのためか、千歌、南たちから「陰の功労者」とも言われていた。

 

 一方、アランは南たちをルビィと曜に会わせるべく陰で動いていた。そして、南たちが曜とルビィに出会うと今度は南たちの捜査のサポートなどを行った。このため、南たちは九州という地にて大活躍をみせたのである。

 

 こうして、南たち公安特捜班と曜、ルビィは九州で起きた3つの事件を解決、融合、いや、コラボを大成功へと導いてくれた。

 その後、その世界とla55の世界の融合(コラボ)は終わりを告げ、無事に「ハピトレ」を販売、ミリオンセラーを記録するほどの販売実績を残した。また、花丸、ヨハネたちが融合(コラボ)の際に継承した記憶をなくすなか、曜とルビィの南たち公安特捜班の記憶は千歌のおかげで残り、その想い出を胸に秘め頑張ろうとしていた。むろん、千歌もその記憶を残すとともに次に備えて頑張ろうとしていた。

 一方、アランもla55の世界に残り、警察と共に、木松悪斗の元側近、猪波悪鬼の捜査に着手していた。その結果、いろんな証拠、特に、猪波悪鬼の母親殺害に関する証拠をアランは見つけてはそれを猪波悪鬼に対して、

「猪波、お雨、人を殺したな、毒をもって・・・」

と函館のデパート棒一屋の花樹たちのステージにてその証拠を突きつけたのである。その証拠をもとで、花樹の父親、猪波悪鬼は逮捕されたのである。また、これに加担した病院の医師の逮捕などにも貢献、警察からは感謝状が送られていた。ただ、これには、アラン、

(少しは目立ち過ぎたかもな・・・)

とエージェントであることを思い出しては少し反省していた・・・。

 

 こうしてSNOW CRYSTALの世界もようやく終わりを告げようとしたとき、またあれが起きようとしていた。それは鉄道公安隊のいる世界とla55の世界の融合、コラボ、である。一度あることは二度ある、宴、再び、である。コラボ、とてもいい響きである。コラボ、それはすばらしいことである。そのなかで事件が起きようとしていた。

 

 そんななか、千歌のタブレットにある指令が届く。

「指令 千歌を國鉄鉄道公安隊東京公安室公安特捜班特別工作員に任命する」

これには、千歌、こう答えた。

「またまたやりますか。待ってて、曜ちゃん、ルビィちゃん。千歌がしっかりとサポートしてあげるからね!!」

 一方、アランの方も準備を行っていた。すぐに南たちに連絡する。

「え~、こちら、エージェント、アラン。すぐに九州に来られたし。新たなる事件が起きる恐れあり!!至急来れり!!」

 

 その後、千歌は曜とルビィの先回りをしては2人の旅のサポートをしていた。「A列車で行こう」では(未成年専用の)バーテンダーとして、さらに、人吉駅の駅弁売りの少女として2人のサポートにまわるどころか事件解決への足がかりをつかんでくれた。

 そして・・・、

「えっ、旅行プランが変わるかも!?それは大変だね!!」

と思った千歌はすぐにAqours旅行社という架空の旅行会社を立ち上げ、そこの添乗員として、曜、ルビィ、だけでなく、南たち特捜班、宮地親子のサポートまでしてしまった。また、この旅では千歌の上司のアランも参加、マイクロバスの運転手として南たちの旅のサポートをした。こうして、千歌とアランは曜とルビィの旅のサポートを、いや、南たちを含めたすべての旅のサポートに徹することにより、この旅を完遂することができた。

 

 だが、それにより、当初の目的が完遂されたことでついに別れのときがきた。曜とルビィとともに三重のアリバイを崩したあと、

(曜ちゃん、ルビィちゃん、ちょっと離れるね)

と千歌は2人のもとを離れると大分駅のはずれへと来ていた。そこには南たちを迎えきていた新幹線「かもめ」とそれに乗り込もうとしているアランの姿があった。千歌はそんなアランに対しお礼を言った。

「アランさん、これまでありがとうございました。千歌、アランさんがいたから曜ちゃんとルビィちゃんの旅をサポートできたと思うの。だから、アランさん、いや、師匠、これまでありがとうございました」

それは千歌からの心のこもったお礼であった。

 すると、アラン、千歌に対し、

「千歌、私の方こそこれまで千歌に助けられてきたと思う。だから、千歌、あなたはもう私たちの仲間、エージェントの一員である」

と言うと自分が大切にしていた公安特捜班工作員のバッジを千歌に渡した。これには、千歌、

「ありがとうございます、アランさん・・・」

とお礼を言った。

 その後、「ピー」という汽笛のなるなか、アランは千歌に対し最後の言葉を投げかけた。

「千歌、あなたはとても優秀なエージェントだった。それをこれから昇華していってくれ!!」

 その後、アランは「かもめ」に乗って自分たちの世界へと旅立っていった。千歌はそんな「かもめ」を見て、

(アランさん、この経験、千歌、忘れないよ。千歌、きっと、これからもこの経験をバネに頑張っていくよ)

と心のなかで誓うのであった・・・。

 

真・終章 未知との遭遇 FIN



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~プロローグ・Welcome to Worldから

この作品は新庄さんとのコラボとなっております。


 2022年9月22日夜、曜とルビィは長崎駅の新幹線ホームにいた。曜曰く、

「たしかここに来る予定だよね」

そう、曜とルビィはあの人たちを待っていた。3年半前、曜たちが高校を卒業するということで卒業旅行をしていた曜と1年後輩のルビィはある人たちとともに國鉄九州総局(JR九州)で起こったいくつもの事件は解決していったのである。その後、その人たちと別れた曜とルビィであったが、ちょうど一か月半前、曜とルビィのスマホにあるメールが届いたのである。そのメールにはこう書かれていた。

「2022年9月23日、長崎駅にて再会しよう 南達仁」

このメールを見て、曜とルビィはすぐに連絡を取り合っていた。

(曜)「ルビィちゃん、南さんたち、またこっちに来るみたいだよ!!」

(ルビィ)「うん、そうだね!!ルビィ、とても楽しみ!!」

こうして、曜とルビィは互いに連絡を取り合ってはこの日を待ちわびたのである。

 そして、この日が、2022年9月23日がやってきたのである。午前0時、曜とルビィは長崎駅から続くレールの先を見ていた。すると、遠くから光り輝く列車が、新幹線かもめが来たのである。これには、曜、

「あっ、南さんたちだ!!」

と叫ぶとその光り輝く列車はそのまま長崎駅の新幹線ホームへと入っていった。

 そして、その列車が到着するなりドアが開くとそこからは、

「曜ちゃんにルビィちゃん、お久しぶり!!」

と、とある青年が現れたのである。これには、曜とルビィ、

「南さん、お久しぶり!!」(曜)

「南さん、お久しぶりです!!」(ルビィ)

と南に対して挨拶をしていた。そう、曜とルビィが待っていたのは國鉄鉄道公安隊のいる世界の住人、國鉄鉄道公安隊東京公安室公安特捜班主任の南達仁であった。

 と、その横から、

「曜ちゃんにルビィちゃん、久しぶりだね!!」

と南の同僚である高山が曜とルビィに声をかけると、曜とルビィ、2人とも、

「高山さん、お久しぶりですね!!」(曜)

「また会えてうれしい!!」(ルビィ)

と声を高々にあげていた。

 

 一方、そのころ、

「千歌よ、お久しぶりだね。元気にしていたか」

と公安特捜班工作員のアランが自分の目の前にいる少女、千歌にそう言うと、千歌、

「アランさんが来ているということは・・・、また起こるんだね、事件が・・・」

という声をあげていた。そう、南たちが来た、ということはまたもや事件が起きることを意味していた。

 そんな千歌に対しアランはある命令を下した。

「千歌よ、いいか、曜とルビィの旅を無事に完徹できるように陰から支えよ」

このアランの命令に対し千歌はこう答えた。

「うん、わかったよ!!」

 

 こうして始まる、曜とルビィ、そして、千歌、の旅。この先、いろんな事件が3人の前に待ち構えようとしていた。果たして、曜とルビィはその事件たちに対してどう対応していくのだろうか。そして、南たちはその事件を無事に解決していけるのだろうか。

 

 さあ、始めよう、三度の物語、新庄さんとla55との奇跡のコラボを!!

 



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~運転開始日の殺人~  前編

この作品は新庄さんとのコラボでお送りいたします。
また、劇中のダイヤですが令和4年9月23日時のダイヤを利用しております。


 2022年9月23日、この日は西九州新幹線の開業日であった。盛大な開業式のあと、1地番列車が長崎駅の新幹線ホームから出発していった。そして、この日はそれ以外に運行開始するものがあった。それが・・・、

「こ、これが「ふたつ星4047」なんだね!!」(曜)

「うん、そうだね!!」(ルビィ)

そう、九州総局(JR九州)が全力を挙げてリニューアルした新型観光特急、いや、D&S特急「ふたつ星4047」が運転開始する日であった。

 そんなふたつ星に乗り込む曜とルビィ、実は、曜とルビィ、この日のためにふたつ星の午後の便(長崎~諫早~新大村~早岐~武雄温泉)の一番列車の予約をしていたのである。これには、曜、

「とても綺麗だね、この列車!!」

とかなり喜ぶとルビィも、

「やっぱり一番列車はいいね!!」

とこちらも大きく喜んでいた。むろん、曜とルビィと合わせて、

「俺がこの一番列車に乗ることができるなんてうれしいぜ!!」

と曜とルビィと一緒に乗り込む南もうれしい言葉を発するもその横にいた高山からは、

「でも、よくこの一番列車のきっぷが取れましたね」

とびっくりしていた。というのも、一番列車ということもあり、ふたつ星の切符は発売開始後たった4分で売り切れになるくらいプレミアムチケット化していたのである。これには、曜、

「だって、この日のために頑張ったんだもん」

と鼻高々にしていた。ちなみに、新幹線かもめの一番列車はたった10秒で売り切れたのだという・・・。

 

 そして、曜とルビィ、南と高山を乗せたふたつ星4047は長崎駅を14:53に発車した。その後、ふたつ星が誇るラウンジ40にて、

「うわ~、大村湾がとても綺麗に見えるよ!!」(曜)

「うん!!」(ルビィ)

と、長与・時津からの大村湾の車窓に曜とルビィは喜んでいた。むろん、南と高山も、

「こんな景色が見れるとはうれしいな」(南)

「たしかにそうですね。私の撮り鉄としての血が騒ぎ立ちます」(高山)

とうれしそうに言っていた。

 そんななか、ある女性クルーが、

「曜ちゃんとルビィちゃん、これ、千歌からのプレゼント!!」

と二段重の弁当と柑橘ジュースが曜とルビィの目の前に置いていった。これには、曜、

「ありがとう!!」

とその女性クルーにお礼を言うと、ルビィ、その渡した女性クルーを見て驚きつつもこう言ってしまう。

「って、なんで千歌ちゃんがここにいるわけ?」

そう、弁当とジュースを2人の目の前に置いてのはなぜかふたつ星のクルーをしていた千歌だった。これには、曜、

「なんか、千歌ちゃん、神出鬼没だね・・・」

と唖然となるだえkであった・・・。。

 そんな唖然となる曜とルビィに対し千歌はこう言った。

「2人とも、久しぶりの再会なんだし、そんなに驚かないでよ!!」

まぁ、3人とも別々の大学に進学していたため、3人が会うのは久しぶりだったのだ。

 とはいえ、千歌は唖然となったままの曜とルビィに対しこう言い続けた。

「それよりも、この弁当を食べてみて!!ふたつ星特製の「特製ふたつ星弁当」だよ!!」

そう、曜とルビィの目の前に置かれたのは(普通は予約が必要だが)ふたつ星4047が誇る弁当、「特製ふたつ星弁当」であった。この弁当はふたつ星のオリジナル弁当であり、有明海の海苔と佐賀牛がふんだんに使用した贅沢な二段重の弁当であった。そんな弁当を目の前にして曜とルビィはさっそくその弁当を食べてみる。すると、

 

「う~ん、とてもおいしい!!」(曜)

「とても歯ごたえがある!!」(ルビィ)

とおいしそうに食べていた。この2人の言葉に、千歌、

「千歌も食べたいけど仕事があるからまたね!!」

と言っては2人の場から離れてしまった。これには、曜、

「千歌ちゃん、本当に神出鬼没だね・・・」

と言うとルビィも、

「うん、そうだね・・・」

と曜に同意していた。

 ただ、そうしているうちにふたつ星は、次の停車駅、諫早駅に15:30に到着していた。ただ、ここでは約15分もの停車時間があるため、曜は南にあることを尋ねてみた。

「南さん、特急なのにどうしてこんなに待ち時間があるのかな?」

 すると、南はこう答えた。

「なにか列車の待ち合わせかもしれないな」

その南の答えに会わせるかのように高山がある列車を指さしてこう言った。

「もしかするとあの列車の待ち合わせなのかもしれませんね」

高山が指さす方、隣のホームにある列車が飛び込んできた。すると、ルビィ、

「あっ、とてもかわいい!!」

とその列車の先頭を見ては目をキラキラさせていた。

 と、ここで、南、その列車について解説を始めた。

「あの列車は大村線を走るYC1系なんだ。これでもハイブリットで動く列車なんだ」

そう、この列車、YC1系は最新鋭の気道車であった。この列車はディーゼルエンジンで発電機を駆動させて電気を発生、その電気でモーターを回す+蓄電池も搭載したハイブリット車両であった。従来の気道車よりも環境にやさしい気道車でもあった。

 そんな列車を見てはルビィはこんなことを言った。

「長崎っていろんな列車が走っていておもしろいね!!」

これには、南、

「たしかにそうなのかもしれないな。だって、長崎は今日から気道車大国になったんだからね」

と答えていた。

 ただ、このとき、曜たちは知らなかった。この気道車は特急であるふたつ星を抜いて先に出発していったことを・・・。

 

 そして、15:45にふたつ星はハウステンボスに向けて諫早駅を出発していった。さらに、ふたつ星は新大村駅を16:05に出発した。だが、このとき、南と高山のもとにある情報が舞い込んできた。それは・・・、

ピピピ

という南のスマホからの音に南が気づいたことから始まった。南はすぐに、

「ちょっと電話に出てくる」

と言ってはデッキに出ては電話を受けるとすぐに高山のもとに行ってはこそこそ話を始めた。これには、曜、

「あれっ、いったいどうしたのですか?」

と南に言うと南はこう答えたのだ。

「今さっき、長崎駅近くのビルで女性の殺死体が見つかったんだ」

だが、南たちは列車のなか、ということもあり、南、

「今は列車のなかに乗っているからな、その現場に行くことができない。でも、長崎には桜井と岩泉がいる。ここはあの2人に任せることにしよう」

と言ったは自分のスマホをもう一度見た。すると、長崎で見つかった殺死体の状況がメールにて届いていた。メールの送り主は長崎にいた桜井と岩泉であった。殺された女性の名は長里であり、その女性は刺されたあとがあったため、ナイフで一刺しだったことがわかった。これには、高山、

「なんて惨い殺し方なんだ・・・」

と絶句していた。

 

 そんななか、ふたつ星は次の停車駅、千綿に16:20に到着した。ここでは10分間停車しては大村湾の景色を時間たっぷり見ることになっていた。そんなとき、ルビィはこの時間をつかって列車内のトイレに行くことにした。

 だが、ここで事件が起きた。トイレのドアをルビィが開けたとたん、ルビィ、

「キャーーー!!」

という叫び声をあげた。これには、ルビィの近くにいた曜がルビィに近づいてトイレを見てはこう声を上げた。

「ひ、人が死んでいる!!」

そう、トイレに男性の死体が見つかったのである。これには、南、

「いったいどうしたんだ!!人が殺されていたのか!?」

とすぐに仕事モードに切り替えてはルビィの近くに近づいては現場の様子を写真を数枚撮るととすぐに高山に対し、

「高山、すぐにこの被疑者の身元をあたってくれ!!」

とこの男性の近くに落ちていた財布を高山に渡しては身元を調べるようにお願いした。すると、高山、

「はい、わかりました!!」

と殺された男性の身元を調べ始めた。

 そして、南は男性の遺体の方を見てはこうつぶやいた。

「どうやらナイフで一刺しのようだな・・・」

そう、この男性はナイフで一刺しで殺されたのである。

 すると、高山は殺された男性の身元がわかったらしく南にある情報を語った。

「南さん、この男性の身元が判明しました。殺された男性の名は湯江、長崎にあるあるIT企業の社員とのことです」

さらに、この男性に関する情報が長崎で捜査している桜井と岩泉からももたらされた。それはというと・・・、

「南さん、どうやら、長崎で殺された長里とふたつ星で殺された湯江は恋人同士だったそうです」

これで2つの殺人は1つの線で結ばれた。南、これに気づいたのか、桜井と岩泉に対しこうお願いした。

「桜井、岩泉、すぐにこの2人のまわりになにか起こっていなかったのか調べてくれ!!今すぐにな!!」

 

 それから10分後、岩泉、桜井からこの2人に関する情報がもたらされた。岩泉曰く、

「どうやら、2人が務めているIT会社の社長とのあいだになにかいざこざがあったようです」

とのこと。詳しく言うと次の通りであった。長里と湯江、そして2人の上司にあたる社長の現川は会社の方針に対して対立を深めていた。そのため、現川は2人を殺したがっていた、というのだ。これには、南、ある人に連絡してはこうお願いした。

「あっ、高杉班長、お願いがあります。小海と一緒に現川の居場所を探して欲しいのです」

そう、南は自分の上司である班長の高杉にお願いをして現川の居場所を探してもらうようにお願いしたのである。あっ、ちなみに、高杉と小海は西九州新幹線の警備のため、西九州新幹線の出発地、武雄温泉駅にいた。この南の頼みにより、高杉と小海は現川を探すことにしたのだ。

 そんななか、またやもや岩泉と桜井からまた連絡がはいった。それは・・・、

「南さん、どうやら長里が殺されたのは15:00ごろとのことです」

どうやら、長里が殺されたのは15:00とのこと。このことには、高山、こう答えた。

「15:00ですか・・・。もし同じ犯人によって殺されたのであれば長里を殺してからふたつ星に長崎から乗車、ふたつ星の車両で湯江を殺すなんて難しいことですね・・・」

そう、ふたつ星の長崎発車時刻は14:53である。で、長里が殺されたのは15:00ごろである。長崎からふたつ星に乗って2人を殺すなんて無理があった。これには、南、

「たしかにそうだな・・・」

と考え込むしかなかった。

 そんななか、高杉から連絡が入る。

「南、現川が見つかった!!武雄温泉駅の近くのカフェでお茶をしていたぞ!!」

どうやら現川が見つかったようだ。これには、南の近くにいた曜から、

「これで事件も解決だね!!」

と安心しきっていた。

 だが、待っていたのは意外なものだった。現川は高杉に会うなりこんなことを言い出してきたのだ。

「すまないが私にはアリバイがある。私は諫早にずっといたんだ。そして、諫早15:51発のかもめ40号に乗って武雄まで来たんだ」

その証拠なのか、現川は1枚の乗車券を見せてきた。その乗車券を見る限り、現川の言っていることは正しかった。この乗車券には、「諫早15:51発、武雄温泉16:13着、かもめ40号」と書かれていたのだ。むろん、「乗車済み」という印鑑も押されていた。この情報を受けてルビィはこう言い出してきた。

「でも、「諫早にずっといた」という証明なんてできないじゃないかな」

そう、現川がずっと諫早にいた、という証明はできていなかったのだ。これには、南、

「たしかにそうだな。でも、(長里が殺された)長崎から諫早まで来る方法がな・・・」

と現川が長崎から諫早まで来る方法を考えていた。

 そんななか、高山からある情報が入ってきた。それは・・・、

「南さん、どうやら湯江が殺されたのは諫早より以遠とのことです」

そう、湯江が殺されたのは諫早より以遠というのだ。というのも、ふたつ星の乗客からの聞き込みでふたつ星が諫早に到着する直前にトイレを使った乗客がいたらしく、それ以降、トイレを使った乗客などはいなかったのである。

 これにより南はある仮説を立てた。

「犯人は15:00ごろに長崎で長里を殺したあと、なにかの手段を使って諫早まで来てふたつ星に乗車、湯江を殺した、のかもしれないな・・・」

 すると、高杉からこんな情報が入ってきた。

「現川に事情聴取をしているのだが、長里と湯江の話をするとかなりの恨みを持っているのか、2人に対する恨み節を爆発させていたぞ。これだったら現川が2人を殺した犯人といえるのだがな」

どうやら高杉も高杉で現川が長里と湯江を殺した犯人だと思っているようだった。それは、南の上司、というくらい、長年の現場での感というものが働いた、なのかもしれない。これには、南、

「たしかに俺もそう思います」

と高杉に同意していた。

 だが、高杉はそんな南に対し意外なことを語りだした。

「でもな、現川は口を割ろうとしない。私が現川に問うたのだ、「ふたつ星に乗っていなかったのか」と。すると、現川、こう言ったんだ、「ふたつ星には乗っていない」ってな。それに、長里が殺された15:00ごろ、どこにいたのか現川に尋ねたらな、「ずっと諫早にいた」という一点張りなんだよ・・・」

どうやら、現川、口を割らないつもりである。現川は犯人であることはたしかである。だが、現川が15:00に長崎にて長里を殺してふたつ星を追って諫早に来る手段がわからなかったのである。

 そんななか、ルビィはあることを南に伝えた。

「それだったら、新幹線を使って長崎から諫早まで来ることってできないのかな?」

たしかにその方法があった。この日はちょうど臨時の新幹線かもめ86号(長崎15:14発諫早15:23着)の便があった。それに現川が乗っていたのでは、というのだ。南はそれを聞いてすぐに、

「それならすぐに新幹線に設置してある防犯カメラの映像を確認してくれ!!」

と長崎にいる岩泉と桜井に指示した。

 だが、結果は意外なものだった。南からの指示から数分後、岩泉と桜井からこんな連絡が入った。

「南さん、すみません。どうやらかもめ86号には現川らしき人は乗っていないもようです・・・」

どうやら空振りだったようだ。現川は(長崎~諫早間は)新幹線かもめには乗っていなかったようだ。この情報を受けて、曜とルビィは、

「えっ、それ、本当なの・・・」(曜)

「う~、どうすればいいの・・・」(ルビィ)

と八方ふさがりの状態にがっかりしていた。

 だが、ここで奇跡が起きた。南のもとにある少女が近づいてはこう言った。

「南さん、千歌、見たのです・・・」

その少女を見て、曜とルビィ、驚いてしまった。

「えっ、千歌ちゃん!?」(曜)

「千歌ちゃん、どうしたの?」(ルビィ)

そう、南に近づいてきたのはふたつ星でクルーを務めている千歌だったのである。というのも、ふたつ星は今回の殺人事件捜査のために千綿にて運転を打ち切っていたのである。

 その千歌は南に対しこんな言葉を伝えた。

「南さん、現川さんって人、諫早駅でふたつ星に乗車しているのを見てました」

これには、南、

「たしかにそうなのか、千歌・・・」

これはまさに決定的とも言える証言だった。ふたつ星に乗っていないという現川の証言を打ち消すものだったからである。

 だが、ここで1つの疑問が湧きあがった。それは・・・、

「でもな、現川は諫早から武雄まで新幹線を使ったという証拠がある。ふたつ星に乗ること自体難しいのでは・・・」

そう、たしかに南のいう通りであった。湯江が殺されたのは諫早より以遠、長里を15:00に長崎で殺して新幹線を使わずに諫早まで来て湯江を殺してから諫早から武雄まで来ることは現時点では不可能だったのである。まさしく、八方ふさがり、であった。

 そんなとき、南たちのいる千綿にてある列車が止まった。それを見て南はふたつ星の乗務員にこんなことを聞いてみた。

「あれってYC1系だよな・・・」

すると、ふたつ星の乗務員、こう答えた。

「えぇ、たしかにあれはYC1系、快速シーサイドライナーですよ」

 すると、南、こう考えてしまった。

(YC1系、快速シーサイドライナー・・・、快速・・・、快速・・・)

 と、ここで、南に対し、またもや千歌がこんなことを言ってきた。

「南さん、ふたつ星は諫早で15:30から15:45まで、15分間、停車していますよ。そのとき、ある列車がふたつ星を抜きましたよ」

この言葉を聞いて、南、さらに考えてしまう。

(諫早で長時間停車・・・、停車・・・、停車・・・、抜かれる・・・)

 そして、ついに南はある事実にたどり着いた。

(快速・・・、快速・・・、新線・・・、ふたつ星長時間停車・・・、はっ、わかった!!)

 すると、南はすぐに高杉に対しあるお願いをした。

「高杉班長、現川のアリバイ、崩すことができました!!すぐに現川を高杉班長のところへ連れてきてください!!」

これには、高杉、南に呼応したのか、

「わかった!!現川をここに連れてくる!!」

と現川を高杉と小海のいるところに連れてきては、南、リモートで現川に対しこう言った。

「現川さん、あなたのアリバイ、崩すことができたぜ!!現川さん、あなたが犯人だ!!」



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~運転開始日の殺人~  後編

この作品は新庄さんとのコラボでお送りいたします。
また、劇中のダイヤですが令和4年9月23日時のダイヤを利用しております。


「現川さん、あなたのアリバイ、崩すことができたぜ!!現川さん、あなたが犯人だ!!」

この南の言葉に現川は、

「それは濡れ衣だ!!」

と高杉の近くにいた小海に突っかかってきた。これには、高杉、

「現川、やめないか!!」

と小海を守るように現川を制すると現川はそんな高杉に向かって、

「私は本当に犯人ではない!!」

と訴えたのである。

 だが、南はそんな現川に対しこう告げた。

「現川さん、あなたは長里さんと湯江さんを続けて殺したのです。ある列車を使ってね・・・」

これには、現川、

「へぇ~、どうやって殺したのですかね」

と南にくってかかろうとしていた、モニター越しに・・・。むろん、これには、曜、

「でも、長里さんが15:00に長崎にて殺されて湯江さんは(諫早に到着する)15:30以降にふたつ星で頃たんだよ。新幹線を使わずにどうやって長崎から諫早まで来ることができるの?それに加えて現川さんはふたつ星に乗っていないんだよ。それもどう説明するの?」

と南に問いかけた。たしかにその通りであった。現川が犯人なら長崎で長里を15:00ごろに殺したのであればどうやって15:30~16:20の間でふたつ星のトイレで湯江を殺したのか、それも新幹線を使わずに、である。これにはさすがの高山ですら、

「南さん・・・」

と心配そうにみていた。

 だが、南は違っていた。自信満々の現川に対しこんなことを南は言ってきた。

「それが可能なんですよ、快速を使ってね!!」

快速を使った!!これには、ルビィ、

「えっ、特急に快速が追いつくの!?特急って快速より速いんだよ!!」

とびっくりしてしまう。たしかにルビィがびっくりするのも納得であった。だって、特急といえば新幹線を除けば最速の部類に入るものである。それなのに快速に追いつかれる特急なんてルビィからしたら聞いたことがないのである。

 だが、それでも南は言った。

「でも、たしかに快速に追いつかれる特急があるんですよ。いや、快速に追い抜かれる特急があるといったほうがいいかな」

これには、ルビィ、

「えっ、快速に追い抜かれる特急ってあるの?」

とまたもやびっくりしてしまった。

 そんなルビィを尻目に南はこう告げた、ふたつ星の真意を・・・。

「実はその特急こそふたつ星なんだ。長崎を14:53に出発したふたつ星は長崎本線の旧線(長与軽油)を時間をかけて諫早に行き、15:30に諫早に到着する。一方、快速シーサイドライナーは15:08に長崎を出発、新線(市布経由)をさっそうと走って15:35に諫早に到着、15:36にふたつ星を残して諫早を出発するんだ。現川さんはそれを使って諫早まで来たんだ」

そう、ふたつ星はたしかに快速に追い抜かれる特急で会った。先に長崎を出発したふたつ星は時間をかけて15:30に諫早に到着、15:45までの15分間、諫早に停車している。一方、15:08に長崎を出発した快速シーサイドライナーは颯爽と走り、15:35に諫早に到着、15:36にふたつ星を残して諫早を出発するのである。これには、曜、あることを思い出した。

「あっ、それって諫早駅で見たYC1系だよね!!」

そう、曜はそのときのことを思い出したのである、諫早駅で見たYC1系のことを。それに対して南はこう解説した。

「たしかに曜ちゃんの言う通り!!諫早駅で曜ちゃんたちが見ていたYC1系こそ大村線でふたつ星より先に出発する快速シーサイドライナーなんだ!!」

YC1系、今のところ長崎地区において主力となる気道車であった。そのなかで特に、長崎~諫早~大村~早岐~佐世保の快速シーサイドライナーはYC1系にとっては花形ともいえる存在であった。現川はその快速を使って諫早駅まで来たのである。

 と、ここで、ルビィ、南にある質問をした。

「ところで、南さん、旧線と新線ってなに?」

そう、南が言っていた旧線と新線についてである。ふたつ星は旧線を使って長崎から諫早まで来たのに対し快速シーサイドライナーは新線を使って長崎から諫早まで来たのである。これには、南、こう答えた。

「ルビィちゃん、それはね、長崎本線長崎~諫早間は旧線と新線の2つの路線があるんだ。ふたつ星はは旧線(長与経由)を使い、快速シーサイドライナーは新線(市布経由)を使って諫早まで来たんだ」

南の言う通りであった。長崎本線長崎~諫早間には2つの路線がある。1つは長与経由の旧線、もう1つは市布経由の新線である。長崎本線はもともと長与経由の大回りの旧線が先に作られたのである。だが、かなりの大回りであったため、それだとかなり時間がかかってしまう、また、輸送量増加、ということで、戦後、長崎と諫早のあいだにある山々をくりぬいて市布経由の新線を作ったのである。この新線を使うことで特急かもめや快速シーサイドライナーといった列車はかなりのスピードアップを図ることができたのである。そんな説明をした南はルビィに対しこれを付け加えた。

「でも、旧線は風光明媚なところが多い、ということでふたつ星は旧線を経由して時間をかけて諫早までくることになったんだ」

これには、ルビィ、

「たしかに、長与・時津から見えた大村湾ってかなり綺麗だったよ!!」

と目をキラキラさせながらそう答えた。

 そして、南はもう1度、(モニター越しに)現川を見てはこう告げた。

「そして、快速シーサイドライナーを使ってふたつ星に追いついた現川さんはふたつ星の諫早での停車時間のあいだにふたつ星に乗り、湯江さんを呼び出してはトイレで殺してふたつ星を降りたんだ」

これには、現川、

「ぐぐぐ」

と苦虫を潰されたような表情になるもすぐに南に反論する。

「でも、諫早停車中に私がふたつ星に乗って人を殺してから降りるなてそれを見ていた人なんていないだろうが!!」

 と、ここで、南、ある少女を出す。

「それについてはもうすでに承認を見つけたんだよ。千歌、お願い!!」

すると、南のそばに千歌が登場、千歌はこう証言した。

「千歌、見たもん!!あなたみたいなおじさんがYC1系から降りてふたつ星に乗り込み、数分してからふたつ星を降りてきたところを!!お祭り騒ぎで賑わっていた諫早駅で、おじさんの姿、見たもん!!」

これには、現川、

「ううう・・・」

とさらに険しい表情をしてしまった。

 と、ここで、曜、あることを南に問うた。

「でも、なんで特急ふたつ星をが快速に追い抜かれているわけ?」

 すると、南はその真意を曜に対して説明した。

「実は、ふたつ星は特急は特急でも、観光特急、つまり、D&S特急の一つなんだ。だから普通の特急みたいに速達性を求めているわけでもなく、観光目的だからゆっくりでもいいわけ」

そう、ふたつ星をはじめとするD&S特急は観光特急の部類にはいる。そのため、普通の特急みたいに速達性を求めているのではなく、観光目的に乗ることを前提にしているのである。また、D&S特急は乗ることそのものが忘れないイベントとなるように作られている。なので、普通の特急みたいにスピードをそんなに追い求めていないのである。これには、曜、

「へぇ~、ふたつ星といったD&S特急ってそうなんだ」

と納得の表情をみせていた。

 そして、南は現川に対しこう告げたのである。

「現川さん、あなたは15:00ごろに長崎で長里さんを殺したあと、快速シーサイドライナーで長崎を15:08に出発、15:35に諫早に到着後、先に到着していたふたつ星に乗車し湯江さんを殺害、ふたつ星を降りては諫早15:51発の新幹線かもめ40号に乗り込み武雄まで来た、というわけです」

これには、現川、

「ぐぐぐ・・・」

と苦しい表情をみせると高杉は現川に対しあるお願いをした。

「すいませんがあなたのかばんの中身をみせてくれませんか」

これには、現川、もう諦めたのか、

「は・・・、はい・・・」

と高杉にかばんの中身を見せるとそこには・・・、

「むむ、血のついたナイフに返り血を浴びたハンカチ・・・。これを調べたら2人の血液が検出されるでしょう」(高杉)

そう、2人の血がついたナイフと2人の返り血を浴びたハンカチが出てきたのである。これには、現川、

「おう言い逃れできない・・・」

と肩を落とすしかできなかった・・・。

 

 こうして、現川は長里と湯江を殺害した罪で逮捕された。これはのちにわかったことだが現川は長里と湯江の存在が疎ましかった。現川自身がすることにいつも長里と湯江がけちをつける、というか反対したのである。そのため、自分の思う通りに動くことができなかったのである。そこで、2人を殺害することで邪魔者を排除しようとしたのである。だが、南の活躍により現川は逮捕されることになった。南がふたつ星に乗車していなければ最後までこのことはわからなかったのかもしれない。けれど、罪というのはいつの日かはばれるものである。そのことを実感した出来事だったのかもしれない。

 そんな陰に隠れようとしていた事件を解決した南の姿に曜とルビィは、

「ルビィちゃん、南さん、やっぱりかっこよかったね!!」(曜)

「うん、そうだね!!」(ルビィ)

と活躍した南に対し感激の目をキラキラさせながらも言った。それと同時に、

「ところで、千歌ちゃん、本当に神出鬼没だね・・・」(曜)

「うん、そうだね・・・」(ルビィ)

といつ出てくるかわからない千歌の姿に2人の頭の上に「・・・」がつくような感じがするしかなかった・・・。

 

 と、まぁ、こんな具合にこの旅第1の事件の幕は降りた。今日も南の活躍により無事に事件は解決したのだが、このときの南たちは知る由もなかった、もうすぐ第2の事件が起きることを・・・。そして、あのとんでもない刑事が出てくることも・・・。

 

運転開始日の殺人 END & to be contuned



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~シーサイド殺人事件~ 前編

この作品は新庄さんとのコラボでお送りいたします。
また、劇中のダイヤですが令和4年9月23日時のダイヤを利用しております。


「とてもおいしいね!!」(ルビィ)

「うん!!」(曜)

ふたつ星での事件後、曜とルビィは長崎まで戻り、長崎駅近くの料理店で卓袱料理を食べていた。卓袱料理、それは長崎を代表する料理であった。和・洋・中、すべての要素が融合したこの料理を曜とルビィは堪能していたのである。

 そんな曜とルビィに対し、2人と一緒に行動している南からは、

「曜ちゃんにルビィちゃん、明日は鹿児島に移動するから腹八分目でお願いする」

と注意を受けるもその横では、

「そんなこと言っていたら、おいしい料理、なくなりますよ。南さんも食べましょうよ!!」

と高山が料理をおいしく食べながら言うと、南、

「高山、少しは遠慮を覚えろ!!」

と高山に注意していた。これには、高山、

「それはないですよ!!」

と言うと曜とルビィからは

ハハハ

という笑い声が聞こえてきた。

 そんななか、突然、南と高山のもとにある連絡が入った。突然、南のスマホから、

プルルプルル

という音が聞こえてきた。これには、南、

「ちょっと電話に出てくる」

と言っては席を立ち電話に出ると大きな声でこう叫んだ。

「なに、佐世保で殺人だって!!」

これには、高山、

「なんてことだ!!まさか連続で殺人が起きるなんて・・・」

と不機嫌そうに言うと曜とルビィは南に対し、

「まさか、殺人事件・・・」

と心配そうに南を見つめた。すると、南、

「あぁ」

と同意するもすぐに、

「でも、場所が佐世保だけに自分たちの場所から遠すぎる。まずは佐世保の近くにいる高杉班長と小海にお願いして事件現場に行ってもらうことにしよう」

と言っては高杉のところに連絡をとると高杉はそのことを了承しては事件現場へと向かってもらうこととなった。

 と、同時に南たちは食事を切り上げてはちかくの鉄道公安隊の公安室まで行くことにした。このとき、南は自分の時計で時間を確認すると、

「今は20:40か」

と声を上げた、そのときだった。突然、ドカッという音とともに、

「うわっ!!」

という南の声が聞こえてきた。これには、曜、

「南さん、いったいどうしたの?」

と言うと南は曜とルビィに対し今起こったことを話した。

「今、俺が外に出た途端に走ってきた男性にぶつかってきたんだ。俺はそれに驚いたのだが、その男性は血相を変えて走っていったんだ、まるでなにかに急いでいるかのようにな・・・」

この南の言葉に、ルビィ、

「でも、ケガがなくてよかったね」

と言うも、南、なにかを感じていたのか、突然、高山に対しこう命令した。

「高山、すまないが俺にぶつかった相手を追いかけてくれ!!なにか事件の香りがする!!」

これには、高山、

「はい、わかりました!!」

と言っては南にぶつかってきた男を追いかけていった。

 そして、南は男性が来た方向を向くと曜とルビィに対しあるお願いをした。

「もしかするとこれは事件かもしれない。だから、曜ちゃんとルビィちゃんは先にホテルに・・・」

 だが、これには、曜、はっきりと断る。

「南さん、心配しないで。私たちだって南さんと仲間です。一緒に行きます!!」

むろん、これには、ルビィ、

「曜ちゃんと同じくルビィも行く!!」

と言っては南と一緒に行くことを希望した。これには、南、

「うん、わかった。なら、一緒に行こう」

と2人のことを承諾しては曜とルビィと一緒に行くことにした。

 

 そして、男性とぶつかってから数分後、南はある路地裏であるものを見つけた。それは・・・、

「ま、まさか、ここで殺死体とご対面するとはな・・・」

なんと、そこにはナイフが刺さったままの男性の殺死体が見つかったではないか。これには、曜、

「なんて惨い・・・」

と言うくらいナイフで何か所も刺されているようなあとが残っていた。

 だが、それでも南は仕事を始める。すぐに現場の写真を撮るとともにすぐに警察と長崎にいる同僚の岩泉と桜井にも連絡を入れる。

 それから10分後、南たちのいる現場にはまさかの珍客が現れた、こう歌いながら・・・。

「俺はめんこい、めんこい刑事・・・」

これには、ルビィ、数年前のことを思い出してはその珍客の名を呼んだ。

「あっ、もしかして、南さんにコテンパンにやられた刑事!!」

これには、珍客、「どてっ」と一昔風のズッコケをかますとルビィに対してこう言い出した。

「俺はそれではない!!俺の名はめんこい刑事!!世界一の刑事だ!!」

さて、みなさん、ご存じだろうか。珍客、いや、彼の名はめんこい刑事、自称、世界一の刑事・・・なのですが、「曜とルビィの事件簿」、第3の事件、「36+3」で起こった殺人事件で登場したものの、南によってこてんぱんにやられた刑事である。そんためか、南、

「ところで、役立たずの刑事がなぜここにいるのわけ?」

と言うとめんこい刑事はすぐにこんなことを南に対し言ってきたのである。

「俺はな、「36+3」での事件でお前にコテンパンにやられたあと、恥をかいたんだ!!」

これには、曜、

「それって自業自得じゃ・・・」

と言うも、めんこい刑事、そんなことを気にせずに南にこう言ってはつかかってきた。

「ただ、それだけじゃなく、警察に泥を塗った、ということで長崎県警に出向させられたんだよ!!」

ただ、これにも、ルビィ、

「それはお気の毒に・・・」

とまるで他人事がごとく言うも、めんこい刑事、これには、

「そこ、ちゃんと聞くように!!」

と注文をつけていた。

 そんなめんこい刑事であるが、どうやら南に恨みがあるらしく、南に対して恨むようにこう言った。

「俺はお前のせいで人生を狂わせられたんだ!!今回、ここで、この恨み、晴らしてやる!!」

ただ、これには、南、

「はいはい」

と軽くあしらっていた。

 まぁ、そんなめんこい刑事なのか、南に対し、めんこい刑事、こんなことを言ってしまう。

「まずはおれが所属しているところの力を見せつけてやる!!この男なのだが・・・」

その言葉のあと、男性の殺死体の身元を調べるめんこい刑事、すると、

「この男だがな・・・」

と言い出すも、そこに、南、あっさりこう答えてしまう。

「この男の名は大浦、ある企業に務めている会社員だな・・・」

これには、めんこい刑事、

「うぬぬ、なんで俺より先に・・・」

と起こりながら言うも逆に、

「なら、今さっき起きた佐世保の殺人はな・・・」

と威張るように言うも、これにも、南、すぐに、

「そして、佐世保の殺人だが、こちらも身元がわかった。佐世保の殺死体の名前は七浦、この人もある企業に務めている会社員だ・・・」

と先に言うと、めんこい刑事、

「うぐぐぐ、なんでこうあっさりと・・・」

と悔しそうに言った。これには、曜、こんなことを言ってしまう。

「そりゃそうでしょ。だって、南さんたちはあの國鉄鉄道公安隊の一員なんだから!!」

國鉄鉄道公安隊、鉄道に関する警察組織である。なので・・・ということはあとにして、めんこい刑事がいる警察と同等の力も持つ組織に属している南からすればこの情報なんてすぐにわかる?ものなのである。

 だが、ここで、南、ある重要なことを話す。

「それと、この2人にはある結びつきがあった。2人とも同じ会社の同僚で仲が良かったんだ・・・」

その南の言葉を聞いて、めんこい刑事、すぐにある推理を言ってしまう。

「ということは、この事件は同じ犯人によって殺されたんだ!!」

これには、ルビィ、こう突っ込む。

「えっ、まだ事件が起きたばかりだよ!!それなのにそんなことがわかるの?」

そりゃそうだろう。だって、ルビィの言う通り、事件が起きたばかりなのだ。それなのにそう決めつけるとは・・・。

 だが、めんこい刑事は南も知らない情報を出してきた。

「実はな、その佐世保で殺された七浦だが、殺された時間がわかった。殺された時間は18:40ごろ、だったんだ。それもナイフでなんども刺されたんだ」

これには、南、

「う~ん、めんこい刑事、侮れないな・・・」

とめんこい刑事の底力には驚いていた。

 そんな南の言葉がもとになったのか、めんこい刑事、さらにこんなことも言ってしまった。

「それにな、佐世保で殺された七浦もナイフが刺さったままだったんだ。そのナイフに残っていた指紋とこの現場に残されていたナイフの指紋が一致した。これが俺が言う犯人同一説の根拠なんだ!!」

このめんこい刑事の言葉に、南、はっとする。

「それは本当なのか・・・」

これには、めんこい刑事、威張るようにこう叫んだ。

「そうだとも!!」

 そして、めんこい刑事はこんな推理を披露した、時刻表を見ながら・・・。

「そして、犯人は快速シーサイドライナー佐世保18:49発に乗って長崎に来たんだ!!」

これには、南、ふと考えるとこんなことを言い出した。

「でも、それだと長崎の到着時間が・・・」

それでもめんこい刑事ははっきりとこんなことを言った。

「私に負けた負け惜しみだろうが!!」

これには、南、

「う~ん」

と首をひねるしかなかった・・・。

 

 そんな南とめんこい刑事とのやり取りから20分後の21:10ごろ、高山が同僚の桜井と岩泉を連れて1人の男性を拘束しながら連れて帰ってきた、こう言いながら・・・。

「南さん、桜井と岩泉も使って犯人を連れて帰ってきました。この犯人、すべての犯行を自供しています!!」

これには、南、

「高山、でかしたぞ!!」

とうれしそうに言うと桜井はこの男の身元を明かした。

「犯人の名は東園、殺された大浦と七浦と同じ会社で働く会社員です」

さらに、岩泉はこれも話してくれた。

「それと、2人の殺人現場にあったナイフに残っていた指紋、この東園の指の指紋と一致しました!!」

これには、めんこい刑事、

「そりゃそうだろう!!俺の推理は正しかったんだ!!」

と声を上げて喜んでいた。

 と、ここで、犯人である東園がこんなことを自供した。

「たしかに大浦と七浦を殺したのは私です。私は18:40に七浦を殺し、快速シーサイドライナー佐世保18:49発に乗って長崎まで来ました。間違いないです」

これを聞いためんこい刑事は南に対し、

「ふふふ、これで俺は南に勝つことができたんだ!!すべて俺の推理通りだ!!」

と勝ち誇っていた。

 ただ、それでも南は納得していなかった。というのも・・・、

「でもなぁ、佐世保18:49分発の快速シーサイドライナーに乗ってもなぁ・・・」

とどうやらシーサイドライナーのここについて気になっていたのである。

 だが、そんな南に対しめんこい刑事はこんなことを言ってきた。

「でもね、佐世保から長崎まで来るのにシーサイドライナー以外に速く来る方法なんてないんじゃないかな?」

たしかにその通りかもしれなかった。佐世保から長崎まで行く方法としてはシーサイドライナー以外には高速バスを使うしかなかった。だが、佐世保駅の近くにある佐世保バスセンター18:30発(長崎駅20:05着)以外だと佐世保バスセンター19:30発(長崎駅21:05着)になるため、東園のアリバイの証明にはならないのである。そう考えるとめんこい刑事の言うことも一理あった。ただし、それは・・・。

 

 とはいえ、そんなこともあり、めんこい刑事は南に対し、

「どうや、どうや」

と威張っていた。これにはさすがの曜とルビィも、

「南さん・・・」(曜)

「南さん、大丈夫かな・・・」(ルビィ)

と心配そうに南の方を見ていた。

 だが、ここで状況が一変する。威張っているめんこい刑事に対し、

「刑事さん、その推理、間違ったいるよ!!」

と1人の少女が大声で声をかけてきたのだ。これには、めんこい刑事、

「だ、誰だ、俺の推理にケチをつけるのは!?」

と大声をだすとそこに現れた少女とは・・・、

「「千歌ちゃん!?」」(曜・ルビィ)

そう、なぜか千歌が現れたのである。

 その千歌は激高するめんこい刑事に対して大声でこう言った。

「刑事さん、千歌、この犯人、見ていないよ!!千歌ね、佐世保18:49発の快速シーサイドライナーに乗っていたのだけど、この犯人、見ていないんだもの!!」

これには、めんこい刑事、千歌に反論する。

「それはただこの犯人を見ていないだけであって・・・」

 ところが、そのめんこい刑事の反論も千歌のある言葉によって封されることになった。それは・・・、

「それにね、そのシーサイドライナーが長崎に到着したのは20:41.なんだもん!!」

この千歌の言葉に、南、はっとした。

「むむむ、これだ、俺が感じていた違和感は!!」

これには、曜、

「それってどういうこと?」

と南に尋ねると南はすぐに自分が感じた違和感を曜とルビィに伝えた。

「もし、めんこい刑事の推理や犯人である東園の推理通りなら大浦と七浦を東園が殺すなんて不可能なんだ。だって、(長崎にて)大浦を殺した東園が逃げている最中、俺に東園がぶつかってきたのが20:40ごろ、快速シーサイドライナーが長崎駅に到着したのが20:41。たった1分差で東園のアリバイが崩れてしまう」

そう、もし、東園が2人を殺した犯人なら、大浦を殺したあと、東園は南とぶつかっている。そのぶつかった時間が20:40ごろである。だが、快速シーサイドライナーが長崎駅に到着するのが20:41、これだと東園のアリバイが崩れてしまうのである。

 さらに、高山はこんな情報をもたらしてくれた。

「大浦の殺人現場付近の防犯カメラから東園が大浦を殺した時間が確定しました。東園が大浦を殺したのが20:35ごろ。さらに、防犯カメラの映像から東園が犯人であることには間違いない、とのことでした」

 この高山の言葉にめんこい刑事ははっとする。

「犯人は快速シーサイドライナーに乗っていない・・・。いや、乗ること自体不可能・・・。これだと東園のアリバイが証明できない・・・。ならば、犯人は別にいるのか・・・」

 だが、それは高山が否定した。

「それは違うと思います。まず、七浦に刺さっていたナイフの指紋、それと、大浦に刺さっていたナイフの指紋、それは東園のものと間違いありません。それに、大浦にいたっては防犯カメラの映像も東園と一致しております。そう考えると東園がこれらの殺人事件の犯人であるで間違いないと思います」

 だが、ここでルビィがあることを指摘した。

「でも、それだったら、東園さんはどうやって佐世保から長崎まで(七浦が殺された)18:40から(大浦が殺された)20:35まえのあいだにどうやって来ることができるの?」

そう、快速シーサイドライナー、高速バス、ともに使わずにどうやって佐世保から長崎まで来ることができたのだろうか、という疑問が出てきてしまったのである。これには、南、

「そ、それはな・・・」

とさすがの南も言葉に窮してしまった・・・。

 そんなとき、千歌が南に対しこんな話をした。

「そういえば、新幹線かもめの連絡特急なのに名前がちょっと違う特急があったはず・・・」

これを聞いた南はその千歌の言葉に、

「えっ、そ、それって・・・」

と言うと千歌は南に対して、

「それじゃ、南さん、あとはよろしく!!」

と言ってはその場を離れてしまった。これには、曜、ルビィ、ともに、

「千歌ちゃんって本当に神出鬼没だね・・・」(曜)

「うん、そうだね・・・」(ルビィ)

と去っていく千歌を見てはそう感じていた。

 だが、南は千歌の言葉よりあることを考え始める。

(連絡特急・・・、かもめ・・・、リレーかもめ・・・)

すると、南はついにあることを思い出した。

(あっ、そうか、今日から使えるものがあった!!)

そう、どうやら、南、すべてがわかったようである。

 一方、犯人である東園はというと・・・、

(私のアリバイは崩れたままだ。佐世保と長崎の移動手段がわからなければ俺を逮捕してもどうすることもできない・・・)

と高をくくっていた。

 ところが、突然、南はこんなことを言い出してきた。

「東園さん、あなたのアリバイ、はっきりとわかりました!!東園さん、やっぱり、あなたが犯人なのはたしかです!!」

この南の言葉に、東園、

「えっ、私は快速シーサイドライナーに乗って佐世保から長崎まで来ましたよ!!それが佐世保から長崎までのメインルートなんですから!!」

と南に対し反抗的な態度をとるとめんこい刑事も、

「そうだぞ!!それなのにそれ以外の方法で佐世保から長崎まで来ることができるのか?」

と南に問いかけた。

 すると、南はこんなことを言い出してきた。

「それができるのですよ、今日から使えるようになったあの方法でね!!」



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~シーサイド殺人事件~ 後編

この作品は新庄さんとのコラボでお送りいたします。
また、劇中のダイヤですが令和4年9月23日時のダイヤを利用しております。


「それができるのですよ、今日から使えるようになったあの方法でね!!」

これには、東園、

「それってどうやって・・・」

と言うと南は東園を指さししてこう言った。

「よく考えたら簡単なことでした。東園、あなた、新幹線を使いましたね!!これなら佐世保から長崎まで速く行くことができます」

 だが、、この南の言葉にめんこい刑事は反論した。

「ちょっと待ってまでください。佐世保から長崎まで新幹線を使うには佐世保からいったん武雄温泉まで行かないといけないでしょうが!!」

そう、佐世保から長崎まで新幹線を利用して行くには、一度、武雄温泉まで行く必要があるのだ。さらに、列車の接続に関しても武雄温泉にてある程度待つ必要があるのだ。

 ところが、それでも南は東園とめんこい刑事に対してこんなことを言ってしまったのである。

「それでも列車の接続はできます、みどり(リレーかもめ)を使ってね!!」

この南の言葉に東園はついに、

「・・・」

と無言になってしまった。南はそんな東園を見て自信満々にこう答えた。

「東園さん、あなたは18:40ごろに七浦さんを殺したあと、佐世保19:09初のみどり(リレーかもめ)54号を使って武雄温泉(19:51着)に到着したあと、20:02初の新幹線かもめ53号に乗って長崎に20:26に到着した!!そのあと、20:35ごろに大浦を殺したんだ!!」

これには、曜とルビィ、すぐに時刻表で確認する。すると、曜とルビィ、

「た、たしかに、この方法だと時間内に佐世保から長崎まで移動できる!!」(曜)

「ぴぎっ!!す、すごいよ、南さん・・・」(ルビィ)

と南の言う通りの方法なら東園が2人を殺すことができる、そのことがわかり、南の言葉に間違いがない、そのことに驚きを隠せずにいた。

 すると、南は桜井と岩泉に対しこう指令をだした。

「すぐにかもめ53号の防犯カメラの映像を確認してくれ。そのなかに東園が映っているはずだ!!」

 この南の言葉により東園は肩をがくしと落としてはこう言った。

「もう言い逃れでいない・・・」

その東園の言葉に南はこう言った。

「ということは、俺の言った通りに、東園、お前が2人を殺したんだな・・・」

その東園は気力がなくしたままこう言った。

「あぁ、私はあんたの言う通り、みどり(リレーかもめ)54号を使って武雄温泉まで行き新幹線かもめ53号で長崎まで来たんだ・・・」

 この東園の言葉に高山はこう告げた。

「東園、お前を緊急逮捕する・・・」

この高山の言葉に東園は、

「はい・・・」

と告げたのであった。

 そんな東園に対し南はあることを聞き出した。

「ところで、なぜ、お前は大浦と七裏を殺したんだ?同じ会社の同僚だろうが・・・」

この南の言葉に東園はぼっそりこう答えた。

「そんなもの、簡単だ・・・。私は(自分の勤めている)会社の極秘情報をライバル企業に売り渡していたんだ。それを大浦と七裏に知られてな、もしやめないとこのことをばらすと脅かされていたんだ。だから、私はあの2人を殺したんだ。そうでもしないと、私のやってきたことが世間にばれてしまい、お金どころの騒ぎじゃなくなるからな・・・」

これにはさすがの曜とルビィからも、

「それって最低のことじゃ・・・」(曜)

「2人がとてもかわいそうだよ・・・」(ルビィ)

と非難の言葉が出てきた。

 だが、それに対して怒っていた人がいた。

「2人の邪魔だから殺した!?それってただのひがみじゃないですか!!言っておきますが、東園、お前がやったことは最低なことだ!!いや、最低なことを最低で塗り固めたにすぎないんだ!!東園、お前のやったことは本当はやってはいけないことなんだ!!そのことを塀のなかで自覚していろ!!」

その人の言葉に、南、

「高山、お前・・・」

と東園を糾弾した人、こそ、高山にそう言うと高山はこんなことを言った。

「南さん、すみません。東園を見ていると一生懸命頑張って生きている自分たちのことを貶されていると思ってしまい言ってしまいました。申し訳ございません」

この高山の謝罪に、南、こう答えた。

「いや、俺が言いたいことを代わりに言ってくれてありがとうな。お前の思い、感じたからな」

と高山の肩を叩きながら言うと東園の方を見た。すると、南、

「どうやら、高山、お前の力説がかなり効いているようだな」

と言うくらい、東園は、

「ううう・・・」

と言っては地面に倒れこむと地面を叩いていた。それくらい、高山の言葉は東園を再起不能にするくらい強いものだったのかもしれない・・・。

 

 こうして、東園は、大浦・七浦の殺害の容疑で警察に連行、南の推理通り、かもめ53号の防犯カメラの映像には東園は映っており、それが決め手となって東園は極秘情報の垂れ流しなどを含めてすべてを自供することとなった・・・。一方、南によって自分の推理を崩されためんこい刑事は南に対し、

「うぅ、なんで、今回も、南、お前に敗れたんだ・・・」

とうなだれるように言うと南はそんなめんこい刑事に対し、

「まぁ、めんこい刑事の推理がいつも、ザル、だからじゃないかな?」

と言うと、これには曜とルビィから、

「南さん、それ、文句になっているよ・・・」(曜)

「南さん、いつも容赦のないことを言っているような気がするよ・・・」(ルビィ)

とめんこい刑事に同情してしまう。南、これでもかなりの正直者である。だからこそ、なにもオブラートに言うことができないのかもしれない。

 まぁ、そんな南の言葉ではさすがのめんこい刑事も、

「うぅ・・・」

と自分のプライドがズタズタとされてしまったのか泣いてしまった。しまいには・・・、

「い、言っておくが、この侮辱はどこかで晴らしてやる!!」

と捨て台詞をはいてその場から離れてしまった。そんなめんこい刑事を見ては、高山、こう思ってしまった。

(こりゃ、近いうちに仕返しに来そうだな、めんこい刑事・・・)

だが、これが近いうちに起きてしまうことになろうとは高山はおろか、南や曜、ルビィも知る由もなかった・・・。

 

シーサイド殺人事件 END & to be conntued



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~南九州悲恋列車~ 前編

この作品は新庄さんとのコラボでお送りいたします。
また、劇中のダイヤですが令和4年9月23日時のダイヤを利用しております。


「うわ~、煙が吹いているよ!!」(曜)

「うん、そうだね!!」(ルビィ)

と曜とルビィは乗降口にあるミスト装置から出ているミストに驚いていた。ここは指宿駅。曜とルビィ、そして、2人に同行している南と高山は今から「指宿のたまて箱2号」(指宿10:56発鹿児島中央11:48着)に乗ろうとしていた。指宿のたまて箱、それは九州新幹線全線開通と合わせて運転を開始したD&S特急の1つである。指宿枕崎線の鹿児島中央~指宿間を走っており、薩摩半島の最南端にある長崎鼻に伝わる浦島太郎伝説(竜宮伝説)のたまて箱にちなんで命名されものである。ちなみに、長崎鼻は別名竜宮岬といわれており、その岬から浦島太郎が竜宮に旅立った、とされている。また、長崎鼻には龍宮神社があり、その神社には乙姫様がまつられている。なお、この特急の特徴である乗降口のミスト装置は浦島太郎が持ち帰ったとされるたまて箱の煙に見立てているという念のいれようである。

 そんな指宿のたまて箱に乗るために曜とルビィは23日の夜は長崎に泊り、24日に長崎から鹿児島まで新幹線(+リレーかもめ)に乗ってきたのだが、これには、曜とルビィ、

「新幹線、速いよ速いよ!!」(曜)

「とても楽ちんだよ!!」(ルビィ)

と新幹線で速くいけることに喜びを感じていた。むろん、はやく鹿児島に到着したものだから、曜とルビィ、

「鹿児島っておいしいものがいっぱいあるんだね!!」(曜)

「ラーメンに黒豚などなど食べたいね!!」(ルビィ)

と鹿児島のおいしいものを食べたい、その一心だった。

 ということで、曜とルビィ、さっそくラーメンを・・・、

「ラーメンよりウナギを食べよう!!」(曜)

「そうしよう!!」(ルビィ)

となぜか鹿児島に来てウナギを食べることに。というのも、鹿児島はウナギの養殖量日本一であり、鹿児島の中心地にはウナギを格安で食べることができるウナギ屋さんがあるのだ。

 そんなわけで、そのウナギ屋さんで曜とルビィはうな重を食べている最中、そのウナギ屋さんに設置していたテレビからこんなニュースが流れてきた。

「今日、鹿児島のホテル王平川海彦の長男平川山彦さんが結婚することになりました。お相手は東京の旧皇族の娘さんとのことです」

 このニュースを見て曜はこんなことを話し出した。

「これって私たちからすれば遠い話だね」

これには、ルビィ、

「でも、ルビィ、網元の娘だからこれを聞いたらルビィのことだと思っちゃうよ」

と言うと、曜、

「ルビィちゃんからしたらそうかもね」

とルビィの言葉に同意していた。

 そして、翌日の25日、

「やっぱり2つ続けて事件の報告書を書くのはきついな」

と南が言うと高山も、

「たしかにそうですね・・・」

と同意していた。2人は、昨日、長崎で起きた2つの事件の報告書作成に追われていた。2人はこうみえても鉄道公安隊の公安官である。そのため、1つの事件があってもその事件に関する報告書を作成しないといけなかった。それが2つも続くとなればその報告書だけでも疲れるばかりだった。

 だが、今日は、心機一転、指宿のたまて箱に曜とルビィと一緒に乗ることを楽しみにしていた。というのも、

「指宿のたまて箱から見える桜時の景色はとても美しいからね、写真を撮りまくるぞ!!」

と言うくらい高山が燃えていたから・・・。まぁ、それ以外にも、

「この特急は日本で一番南を走る特急だからな」

とのり鉄の南にとってみても楽しみの1つだったそうだ。

 そういうことで最初に戻るのだが、ミストに驚く曜とルビィに対して南と高山は、

「なんかわくわくしますね」(高山)

「たしかにそうだな」(南)

とこのときばかりは仕事のことを忘れ指宿のたまて箱を楽しもうとしていた。

 

 そして・・・、

「桜島が美しく見える!!写真の撮りがいがある!!」(高山)

「こんな美しい景色が見えるとはな・・・」(南)

と車内から見える桜島の風景に喜ぶ者、

「曜ちゃん、いぶたまスイーツに指宿温泉サイダー、おいしいね!!」(ルビィ)

「この景色が見れるからおいしいんだよ!!」(曜)

と車内販売で買ったいぶたまスイーツとサイダーの片手に桜島の景色を楽しむなど三者三様であった。

 

 だが、そんな時間は長くは続かなかった。指宿を出発してから50分後、

「まもなく終点、鹿児島中央に到着します」

というもうすぐ終点の鹿児島中央に到着するアナウンスが流れてきた、そんなときだった。突然、ルビィが席を立つと、

「ちょっとお花摘みに行ってくる!!」

と言ってはトイレへと駆け込もうとしていた。どうやら、ルビィ、サイダーの飲み過ぎでトイレに行きたくなったようだ。

 ただ、もうすぐ終点ということもあり、

「それじゃ降りる準備をしよう」

と南が言うと高山と曜は降りる準備を始めた。

 そんなとき、曜は向こう側に座っていた男性に気づいたのか、

「あれっ、眠っているのかな?」

と不思議そうにその男性を見ていた。その男性はまるで安らかに眠っている、そんな感じだった。ただ、もうすぐ終点、ということで、曜、おせっかいとばかりに、曜、

「お兄さん、起きてください。もうすぐ終点だよ!!」

とその男性をゆすると、

バタンッ

とその男性は崩れるように床に伏してしまった。

 これを見ていた曜、すぐに、

「キャー!!」

という叫び声をあげると、南、

「なんかあったのか?」

と曜の近くに行く。すると、曜、すぐに南に対して、

「しん、死んでいる!!お兄ちゃん、死んでいる!!」

と床に伏した男性を見てそう叫びだした。

 これには、南、すぐにその男性に近づき息などを確認するとクルーに対してこんなことを言い出した。

「駅に到着したらすぐに救急車を用意してくれ!!」

さらに高山にも南はこう指示を出した。

「高山、すぐに警察と鉄道公安隊に連絡だ!!」

これには、高山、

「はい、わかりました」

と言ってはすぐに各方面に連絡をしていた。

 そんな見ないのやり取りを見てか少し落ち着いた曜は倒れこんだ男性を見てこう叫んだ。

「この人、昨日のニュースで見たことがあるよ!!たしか、鹿児島のホテル王、平川海彦さんの長男、平川山彦さんだよ!!」

この曜の言葉に南は高山に対しもう1つ指令を出した。

「あと、高山、平川家にも連絡してくれ。この男性の身元を菅君するんだ!!」

 

 一方、トイレに向かっていたルビィであったが、突然、ドンっと人にぶつかったのか、

「ぴぎっ!!」

という声とともに床に倒れてしまったもののすぐに起き上がるルビィ。

 そして、ルビィは前を向くとそこには、

「ごめんなさい、ごめんなさい」

となにか小声で言っている女性の姿があった。これには、ルビィ、

「あっ、ぶつかってごめんね」

とその女性に謝るも、その女性はただ、

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」

と小声で言うだけだった。

 ただ、その瞬間、

「鹿児島中央、鹿児島中央、終点です」

というアナウンスが流れるとともにその女性はなにか急いでいたのか、乗降口のドアがあいた瞬間に外に出ていった。ただ、このとき、その女性はこう言っていた、小声で・・・。

「ごめんなさい、山彦さん・・・」

 この小声、ルビィ、ふと気になったのか、この言葉の意味を考えてしまった。

(山彦さん?いったい誰のことかな?)

と、同時にルビィは足元にあるものを見つけた。そのあるものを拾ったルビィ、それを見てさらにこう思った。

(って、これってなにかのカプセル剤だよね!!それもルビィにぶつかった女性のものだよね・・・)

そう、ルビィが拾ったもの、それはあの女性がルビィにぶつかったときに落としてしまったカプセル剤であった・・・。

 

 それから数分後、南のところにルビィが帰ってくると曜とルビィに対して南はこう言った。

「曜ちゃんにルビィちゃん、これは事件だ!!倒れこんだ男性を見たところ、毒を盛られたような感じがしていた」

これには、曜、こんなことを言い出した。

「ということは・・・、毒を用いた殺人事件、ということ?」

そう、これは毒を用いた事件であった。むろん、この曜の言葉に、ルビィ、

「なんか怖いよ・・・」

と今にも泣き出しそうになっていた。まさか、自分の乗っていた車内で殺されそうになっているなんてルビィからしたら思いもしないからだった。

 さらに、南は曜とルビィに対しこう言った。

「あと、身元を確認したところ、あの男性は曜ちゃんの言う通り、(鹿児島のホテル王)平川海彦の長男の平川山彦で間違いないとのことだった」

これには、曜、

「でも、昨日、結婚の発表があった人なのになにかあったのかな?」

と倒れこんだ男性こと山彦について疑問を感じていた。

 だが、それ以上に山彦のことで疑問を感じていた人がいた。

(たしかに曜ちゃんの言うことはもっともだ。でも、それ以上に俺はあることに疑問を感じている。それは、殺されそうになっていたのに被害者である山彦は安らかに眠るような表情をしていた。なぜなんだ・・・)(南)

そう、南であった。南は思うところがあった。人が殺されそうになるとき、安らかな表情にはならず、逆に抵抗するような表情に、苦しむような表情になるはずである。だが、山彦はまるでそれを受け入れるような、安らかに眠るような表情をしていた。それを南は不審に思っていたのである。そのため、南、

(もしかすると、この事件はなにか裏があるのかもしれないな・・・)

と思ったのか、鹿児島に来ていた岩泉と桜井に対し、

「すまないが、平川海彦と山彦について調べてもらえないか」

と指示を出しては2人の背後関係を調べてもらうことにした。

 

 数分後、指宿のたまて箱の車内に警察と鉄道公安隊の人たちが到着、現場検証が始まった。そんなとき、こんな声が聞こえてきた。

「俺はめんこい、めんこい刑事!!」

これには、南、頭を抱えるとその声の主にこう告げた。

「誰だ、めんこい刑事を連れてきたのは!?」

そう、今回2回目の登場、めんこい刑事だった。そのめんこい刑事は南を見るなりこう言ってきた。

「あっ、なんでお前がいるんだ?」

このめんこい刑事の言葉に南は突っかかる。

「この俺が第一発見者だからだ!!」

これには、めんこい刑事、

「ふ~ん、ただの冷やかしか・・・」

と文句を言うと、南、つかさず言い返した。

「ところで、どうしてここにめんこい刑事がいるわけ?」

 すると、めんこい刑事、こんな理由を告げてきたのである。

「そんなの、簡単だ!!この前の仕返しを、俺が有能であることを証明するために来たんだ!!」

どうやら、めんこい刑事、この前、つまり、一昨日のシーサイド殺人事件の件で南にコテンパンにやられたことが気に入らず、いや、無能であることをばらされたことが嫌だったため、今度こそ自分が有能である、それを証明するために、南にギャフンと言わせるためにここに来たみたいである。

 そんなめんこい刑事であるが、ここに来るなり、すぐに警察の各所に連絡をしてはこんな指示を出していった。

「おいっ、今すぐ被害者の背後関係を調べてくれ。ぜったいに恨みの線が強いはずだ!!」

どうやら、めんこい刑事、山彦への恨みの線で犯人を探し出そうとしていたのである。

 だが、それから数分後、意外な答えにめんこい刑事は驚いていた。

「なんだって!?該当する相手が多すぎて絞れないだと・・・」

そう、鹿児島のホテル王の息子というもんだから、山彦を殺そうと思っている者が多かったのである。むろん、それは山彦への恨みのせいじゃない、ホテル王の息子、というために山彦を狙う者が多かったのである。これには、めんこい刑事、

「くぅ~、どうすればいいんだ・・・」

と悔しむしかなかった・・・。

 ただ、それは南にも言えたことで、

(う~ん、めんこい刑事の言う通り、犯人の目星がつかない・・・。この列車の状局のなかに怪しい人物はいなかった。俺も八方ふさがりだ・・・)

と犯人の目星がつかなかったのだ。一応、南は乗客全員の聞き込みをしたものの、怪しいところが一つもなかったのだ。そのため、南も南で八方ふさがり状態だったのだ。

 そんなとき、ルビィが南にあることを伝えた。

「南さん、実は、ルビィ、花摘みに言っているとき、ルビィにぶつかっては急いで列車から降りたお客さんがいたの」

これには、南、

「なんだって!!どういうことなの、ルビィちゃん!?」

とルビィに聞き返すとルビィはあのときのことを伝えた。

「あのとき、ルビィにぶつかってきたのは女の人だったの。そのとき、「山彦さん、ごめんなさい・・・」って言っていたわけ」

このルビィの証言に、南、ハッとなるとこう言った。

「その女性がそう言っていたのか。ということは、もしかして・・・」

 さらにルビィはあるものを南にみせてこう告げた。

「それにね、ぶつかってきた女の人が落としたものだと思うのだけど、こんなカプセル剤を見つけたの」

これには、南、ルビィに対し、

「ルビィ、でかしたぞ!!これで事件は進展する!!」

と言うとルビィは、

「えへへ」

と笑いながらそう答えた。

 すると、南、すぐに高山を呼び出してはこう指示をだした。

「高山、すまないがこれを大学病院に持って行って分析にかけてくれ。すぐに解毒剤を作るためにな!!」

これには、高山、

「はい、わかりました、南さん」

と言ってはすぐに大学病院にそのカプセル剤を届けるようにした。

 さらに、南、海彦と山彦のことで調べている桜井と岩泉にもこう指令を出した。

「桜井に岩泉、すまないが山彦の恋愛関係について重点的に調べてくれないか、早くな!!」

 

 そんななか、14:05ごろ、ついに事件が動いた。というのも、宮崎の日南線を走っているD&S特急「海幸山幸」にてあることが起こったのである。それは・・・、

「めんこい刑事、南さん、大変です。先ほど、宮崎を走る特急海幸山幸3号(宮崎13:55発)のなかで女性が倒れた、ということです。その女性は毒殺を計られたみたいです」(警察関係者)

この関係者の言葉にめんこい刑事はこんなことを言い出してきた。

「すぐにその女性の身元をあらってくれ!!もしかすると、この事件と関係があるかもしれない!!」

そう、めんこい刑事は指宿のたまて箱で起こった事件と海幸山幸で起こった事件は関係があると思ったのである。

 その数分後、この女性の身元がわかった。それは・・・、

「海幸山幸にて倒れていた女性の名は山川乙姫。どうやら、(指宿のたまて箱で倒れていた)山彦の愛人です」

めんこい刑事はただの無能ではなかった。どうやらめんこい刑事の思った通りだったようだ。これには、めんこい刑事、

「どやっ!!」

とドヤ顔になっていた。

 さらにその警察関係者はこんなことも言ってきた。

「それに、その女性は平川家に伝わる黄金の釣り針も持っていたようです」

これには、めんこい刑事、はっとなるとこう言った。

「黄金の釣り針?それってなんだね?」

すると警察関係者はこう証言した。

「黄金の釣り針は平川家に伝わる家宝です。昨日、山彦が持ち出したことが確認されております」

このことを聞いためんこい刑事は少ない脳細胞をフル回転させながらこう答えた。

「ふ~ん、この事件ん、もう犯人はわかったかもな。この2件の事件は2人以上の犯人が仕組んだものだ!!」

これには、南、

「どうしてそう思うんだ?」

とめんこい刑事に尋ねるとめんこい刑事はこう告げた。

「それは殺された時間だ。山彦は11:48ごろに倒れているところを見つかった。それに対して乙姫は14:00ごろに見つかった。これだと鹿児島と宮崎をたった2時間強で移動しないといけない。そんなことができるわけないだろうが!!」

 この綿恋刑事の意見、これにはさすがの南も、

「そ、それはそうだが・・・」

となにか腑に落ちない感じになってしまった。

 そんなとき、めんこい刑事に意義を唱える者がいた。それは・・・。

「いや、これはね、乙姫さんが起こした事件だと思うの!!」

この言葉に南ははっとしてはそれを言った少女の方を見るとこう叫んだ。

「る、ルビィちゃん・・・」

そう、めんこい刑事に異議を唱えたのはルビィだった。ルビィは続けてこう言った

「ルビィねこう思うんだ、これはきっと恋人同士での悲しい事件だと。乙姫さんは山彦さんにとって愛人じゃなくて恋人だと思うんだ。だけど、どうすることもできなくて、乙姫さん、山彦さんを殺したと思うんだ。そして、乙姫さん、海幸山幸で自殺したと思うんだ」

 このルビィの言葉にめんこい刑事はこう反論した。

「でもね、たった2時間で鹿児島から宮崎まで行くことなんて、いや、指宿のたまて箱2号鹿児島中央11:48着から海幸山幸(宮崎13:55.発)の便に乗り換えるなんて不可能でしょうに・・・」

このめんこい刑事の意見にルビィはただ、

「た、たしかに・・・」

と黙るしかなかった・・・。

 ところが、ここに来てルビィの意見に有利になる情報がもたらされた。というのも、

「めんこい刑事、今、乙姫さんのことを調べたのですが、どうやら、乙姫さん、山彦さんと旧皇族の娘さんとの結婚に反対していたらしく、その線で「乙姫さんが山彦さんを殺したのではないか」という意見が出てきております」

そう、乙姫は山彦と旧皇族の娘との結婚に反対の立場だったのだ。それにより音冷えは山彦を殺した、というのだ。

 すると、めんこい刑事はこんなことを言い出してきた。

「それならばその線を認めてやろう。実は乙姫は山彦を旧皇族の娘との結婚に反対だった。そのため、山彦を殺すために依頼殺人を実行した。そして、山彦が死んだことを確認して乙姫は自殺した、ということになるな」

なんと、めんこい刑事、自分の推理を変えてきやがった。それは乙姫が山彦を殺すために依頼殺人をしたというのだ。さらにそれを実行したことがわかったため、音暇は海幸山幸で自殺したことも付け加えた。

 だが、ここでルビィがめんこい刑事にこう反論した。

「そらじゃ、黄金の釣り針はどう説明するわけ?平川家の家宝である黄金の釣り針は乙姫さんが持っているんだよ!!でも、それって山彦さんが昨日家から持ち出したんだよ!!それはどう説明するの?」

たしかにその通りであった。昨日、山彦が持ち出した黄金の釣り針をどうして(山彦の愛人?である)乙姫が持っているのか、それが疑問だったのである。普通の依頼殺人なら山彦が乙姫に会う時間があったのか疑問に思えたからだった。

むろん、それには、めんこい刑事、言葉に窮してしまう。

「そ、それは・・・」

 だが、それでもめんこい刑事はこう言い出してきた、ルビィに向かって・・・。

「でも、それならたった2時間で鹿児島中央から宮崎までどう移動したのというのだ?それを教えてくれ!!」

そう、たった2時間で鹿児島中央の指宿のたまて箱2号から宮崎の海幸山幸3号に乗り継ぐ方法があるのか、というのだ。これには、ルビィ、

「う、う~ん・・・」

と少し考えるも答えが出ず・・・。

 そんなルビィに対し、

「それなら、ルビィちゃん、私も力になってあげる!!」

と曜が助け船を出すとルビィは、

「うんっ!!」

と言っては時刻表でたった2時間で指宿のたまて箱と海幸山幸を接続できる列車がないか確認してみる。まぁ、これを表にすると次の通りである。

          指宿  鹿児島中央

指宿のたまて箱2号 10:56→11:48

 

         宮崎  南宮崎  南郷

海幸山幸3号    13:55→14:01→16:23

 

これに接続できる列車があるのか・・・、それを調べる曜とルビィ、すると、1つの列車が現れたのか、曜とルビィ、こう告げたのである。

「それだったら簡単だったよ!!この列車を使えばきっと2つの列車をうまく接続できると思うよ!!」



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~南九州悲恋列車~ 後編

この作品は新庄さんとのコラボでお送りいたします。
また、劇中のダイヤですが令和4年9月23日時のダイヤを利用しております。


「それだったら簡単だったよ!!この列車を使えばきっと2つの列車をうまく接続できると思うよ!!」

 すると、めんこい刑事はこう言い出してきた。

「指宿のたまて箱2号から海幸山幸3号にどうやって接続できるというんだね?」

これには、曜とルビィ、時刻表を広げてはある列車を指さしてこう言った。

「この列車を使えばうまく接続できるよ!!」

その列車とは・・・、

「えっ、きりしま10号!?](めんこい刑事)

そう、きりしま10号だった。曜はすぐにこう説明した。

「鹿児島中央を11:48着の指宿のたまて箱2号を降りると速足できりしま10号鹿児島中央11:50発に乗り込み、南宮崎に12:59に到着、そのあと、南宮崎14:01.発の海幸山幸3号に乗り込めばいいんだよ!!」

図にするとこんな感じになる。

      

       指宿  鹿児島中央

たまて箱2号 10:56→11:48  南宮崎

   きりしま10号  11:50→13:59 南郷

        海幸山幸3号  14:01→16:23

 

 この曜とルビィの言葉に南は、

「そ、それだったらルビィちゃんのあの証言も納得がいくな」

と言うとめんこい刑事はこんなことを言い出してきた。

「なに、その証言とはなんのことだ?」

そう、ルビィのあの証言である。それを南が説明する。

「実はな、ルビィちゃんからこんな証言が取れたんだ、「鹿児島中央に到着の直前、トイレに言っていたルビィちゃんにある女性がぶつかってきたんだ。その女性はこう言っていたんだ、「ごめんね、山彦さん」って。そして、そのあと、その女性はあるカプセル剤を落としては急いで乗降口へと降りていった」ってね。そのルビィちゃんにぶつかった女性こそ乙姫さんなら辻褄があう」

そう、鹿児島中央到着前、列車内のトイレに向かっていたルビィにぶつかった女性こそ乙姫だったのである。これには、めんこい刑事、

「うむむ・・・」

とうなるしかなかったが、次の瞬間、こう言い出してきた。

「でもね、その証拠がないじゃないか。その証拠を出せ!!」

 すると、ある少女がめんこい刑事のところに行き、こう言い出してきた。

「その証拠ならあるよ!!この動画、見てね!!」

この少女に曜とルビィはびっくりしながらこう言った。

「えっ、千歌ちゃん、どうしてここに?」

そう、めんこい刑事の前に現れたのは千歌だった。どうやら、千歌、今回は鹿児島中央の駅員として登場したようである。

 まぁ、それはおいといて、千歌はその動画、というか、鹿児島中央駅の防犯カメラの映像を再生すると南はこう言い出してきた。

「うむ、たしかに乙姫さんが指宿のたまて箱2号からきりしま10号に急いで乗り換える姿が確認できるね」

そう、この動画には乙姫が指宿のたまて箱2号から急いできりしま10号に乗り換える姿がみられたのである。ちなみに、南と曜とルビィ、めんこい刑事は乙姫が映る写真をすでに見ていた、というのも、乙姫が海幸山幸にて倒れた、という情報がきたときに列車内にて倒れこんだ乙姫の写真を見たのである。なので、南と曜とルビィ、めんこい刑事は指宿のたまて箱2号から急いできりしま10号に乗り換えた人が乙姫であるとすぐにわかったのである。

 そして、曜とルビィはこの事件の真相をこう推理した。

「もしかすると、山彦さんと乙姫さん、2人は本当に愛し合っていたのかも、愛人ではなく恋人として・・・」(曜)

「でも、昨日、突然、山彦さんと旧皇族の娘さんとの結婚が発表されてから2人はどうすることもできなくなって2人は死の道を選んだと思うの」(ルビィ)

「まず、指宿のたまて箱2号で山彦さんが乙姫さんに黄金の釣り針を渡したあと、乙姫さんは山彦さんに毒入りのカプセル剤を飲ませて山彦さんを殺害、そのあと、乙姫さんはなぜかきりしま10号で南宮崎に行き、海幸山幸3号に乗り換えて自殺したの」(曜)

「これは2人の愛の逃避行から起きたものだったかもしれないの。それに、黄金の釣り針は2人の愛の証だと思うの!!」(ルビィ)

 すると、南、

「あっ、だから山彦さんは倒れこんだとき、あの表情だったのか!!」

と言うとめんこい刑事は南に対しこう尋ねた。

「それっていったいどういうことかね?」

 すると、南はこう告げたのである。

「それは山彦さんが倒れこんでいるのを見つけたとき、山彦さんは安らかに眠るような表情をしていたんだ、まるで自分の死を受け入れるようにな」

そう、山彦は自分の死を受け入れていたのである。だからこそ、山彦がみつかったとき、山彦が安らかに眠るような表情だったのである。

 と、ここで桜井と岩泉から連絡が入った。これに南はすぐに連絡をとると桜井と岩泉はこう話始めた。

「どうやら、山彦と乙姫は相思相愛の関係だったようです。ただ、乙姫の家は貧乏だったらしく、山彦の父の海彦がそのことを気に入らなかったため、海彦が勝手に旧皇族の娘さんと山彦との結婚を決めたということなのです。そのため、山彦と乙姫の2人は海彦にそれを抗議したのですが海彦から聞き入れてもらえなかった、それにより、2人は死ぬことを決めたというのです、あの世で結ばれるために・・・。そして、あの世で会うための道しるべとして平川家の家宝である黄金の釣り針を持ち出したのです」

 この話に曜とルビィは涙を流してしまう。

「そんなの悲しすぎるよ・・・」(曜)

「うん、そうだよ・・・」(ルビィ)

それは2人にとって悲しすぎる話であった。

 だが、南はそう思っていなかった。

(山彦さんと乙姫さんはそうすることであの世で、あの竜宮の伝説と同じようになるようにしたいと思って死のうとしていたのではないか。そんなの、絶対いそうさせてたまるか!!)

どうやら、南、最後まで諦めていなかったようだ、2人が死ぬことを・・・。

 そのときだった。南のもとにある情報が舞い込んできた。

「み、南さん、山彦さんが目を覚ましました!!」(高山)

これには、南、こう答える。

「えっ、それは本当か!?」

この南の言葉に、高山、すぐに答える。

「南さんから渡されたカプセル剤、あれから山彦さんと乙姫さんから検出された毒物と同じものが検出されました。それをもとにすぐに解毒剤を作り山彦さんに使ったところ、少ししてから山彦さんが目を覚ました、とのことです!!」

どうやら、ルビィが拾ったカプセル剤、それは山彦と乙姫が服用した毒物と同じものだったようだ。それをもとに解毒剤をを作って山彦に乗ましたところ、山彦は目を覚ましたというのだ。つまり、山彦は死んでおらず、助かったというのだ。

 すると、南は宮崎にいる高杉と小海にあるお願いをした。

「高杉班長に小海、すみませんが乙姫さんにすぐこの解毒剤を飲ましてください。そうすれば乙姫さんは目を覚ますでしょう」

 これには、高杉、すぐに解毒剤を作りそれを乙姫に飲ませた。するとすぐに、

「南さん、乙姫さん、目を覚ましました!!」(小海)

どうやら乙姫も解毒剤のおかげで助かったようである。

 

 翌日・・・、

「山彦さん、なぜ、乙姫さんはあなたを殺そうとしたのですか?」

とめんこい刑事が山彦を問い詰めるも山彦はただ、

「・・・」

と無言になるだけだった。ここは山彦の病室。ここでめんこい刑事は山彦に追い詰めようとしていた。だが、これには、山彦、口を割らなかった。これには同席している南はこう思ってしまった、スマホを扱いながら。

(山彦さんとしては恋人である乙姫さんをかばおうとしている。だって、これは恋が招いた悲劇だから・・・)

そう、山彦は乙姫をかばっていたのである。表面上からみれば、山彦を殺して自分も死のうとしていた、とみえてしまう。ということは、乙姫は山彦を殺そうとした犯人、ともいえてしまうのだ。だが、実際はお互いに死のうとしていたのである、現実的には結ばれないのだから・・・。ところが、それでも表面上のことが真実であると思われている以上、乙姫を殺人未遂の犯人として逮捕せざるをえないのである。

 一方、めんこい刑事もそのことはわかっていた。だが、このとき、めんこい刑事にもある重圧がかかっていた。それは・・・、

「いいか、乙姫を犯人として立件しろ!!」(めんこい刑事の上司)

という上からの重圧。これには、山彦の父の海彦が強く関わっていた。海彦は鹿児島のホテル王で山彦と乙姫の恋愛を許していなかった。いや、破談にしようとしていた。そのため、乙姫を山彦殺害未遂の容疑で逮捕するように警察に重圧をかけていたのである。そのためか、めんこい刑事、この取り調べについて、

(くそっ、俺だってこんな取り調べなんていやなんだ!!なんとかしてくれ!!)

といやいやになってしまっていた。

 そんななか、突然の来訪者が来た。それは、

「山彦、山彦はいるか?お前の父である海彦であるぞ!!」

なんと、山彦の父、海彦であった。なぜ、ここに海彦が・・・。それには理由があった。それは・・・、

「山彦よ、はやく乙姫に殺されそうになったと言え!!いいから言え!!」

そう、海彦はしびれを切らしたのである。山彦は乙姫を助けるために黙秘を決めていたのである。だが、それに海彦はしびれを切らしたのである。そのため、脅迫してでも山彦の口からそう言うように仕向けようとしていたのである。これには、めんこい刑事、

「海彦さん、それは自白の強要になります。それだけはおやめください!!」

と言うも海彦はそんなめんこい刑事に対して怒りをぶつける。

「もとはといえば、お前たち、警察が山彦の口を割らないのが原因だろうが!!お前たちがそう仕向けないのならこのわしがそうさせるべきなんだ!!この税金泥棒が!!」

これにはさすがのめんこい刑事も、

「むっ!!」

と海彦の方をにらむもこれでも自分の上司たちに重圧をかけることができる人物ということもあり、

「・・・」

と無言になるしかなかった・・・。

 

 一方、そのころ、曜とルビィはこの病室でのやり取りを廊下越しに見ていた。そのため、

「海彦っていう父親、本当に憎たらしいよ!!乙姫さんを悪者にしようとしているなんて許せない!!」(曜)

「本当にそうだよ!!2人は愛し合っているのにそれを壊すなんて!!2人はそのために死のうとしていたんだよ!!」(ルビィ)

と怒り心頭だった。とはいえ、2人だけではどうすることもできない、そんなもどかしさが 2人にはあった。

 そんなとき、曜のスマホからある電話が入る。これには、曜、

「あれっ、千歌ちゃんからだ!!」

と、電話の主こと千歌から連絡が入るとスピーカーモードにしてルビィと一緒に聞くと、

「うんうん、わかったよ!!」

と言うとルビィに対しこんなことを言った。

「ルビィちゃん、聞いていた?私たちの手で山彦さんと乙姫さんを助けちゃおう!!」

なんか千歌からの提案でなにかあることをしようとしているようだった。むろん、これには、ルビィ、

「うん、わかった!!」

と了解したのである。

 

 それから1時間後、

「はやく認めないか!!はやく乙姫から殺されそうになったことを認めろ!!」

と海彦の強要は続いていた、そのときだった。突然、

バリバリバリ

というヘリコプターの音が聞こえてきた。これには、南、

(ふ~、やっと来られたか、お姫様・・・)

と思うと山彦に対しこう告げた。

「山彦さん、もう父親を恐れる必要なんてなくなりましたよ。だって、あなたのお姫様が来られたのですから」

これには、山彦、

「えっ、私のお姫様が・・・」

と言うと、突然、山彦の病室にある女性が車椅子で突入してきてはその女性がこう言ってきた。

「山彦さん!!」

これには、山彦、こう答える。

「乙姫!!」

そう、病室に突入してきた車椅子の女性は乙姫であった。

 だが、これには、海彦、こう迫ってくる。

「ふんっ、この殺人犯が!!さっさと消えろ!!」

海彦にとって乙姫の存在は害でしかなかった。乙姫がいなければ自分の息子である山彦を自分の思い通りにすることができる、そう思っていたのだから。いや、それどころか、海彦はめんこい刑事に対してこう命令した。

「いや、警察よ、あいつを、乙姫を逮捕しろ!!あの殺人犯を逮捕しろ!!」

そのため、乙姫に迫ろうとしている警察。めんこい刑事も上からの命令ということでいやいやながら乙姫に迫ろうとしている。

 それでも乙姫は山彦のもとに行き、持っていた黄金の釣り針を持って山彦の手を握りながら、

「私はいつまでも山彦さんと一緒にいます、この黄金の釣り針に誓って!!」

これには山彦も、

「乙姫、私もずっと乙姫といたい、この黄金の釣り針に誓って・・・」

と乙姫の手を握ってそう言った。

 と、そんなときだった。突然、黄金の釣り針が、

ピカッ

と光りだす。これには警察はおろか、めんこい刑事、海彦も、

「ま、まぶしい!!」

という声をあげると、曜とルビィ、千歌が乙姫と山彦の前に立って海彦を遮るようにするとこう言い出してきた、千歌が・・・。

「海彦さん、もうあなたの思い通りにはいかないよ、浦の星TVの千歌が来たからにはね!!」

この千歌の言葉に海彦は怒る。

「この青二才が!!お前たちなんてどっかにいけ!!」

 ところが、ここにきて千歌の隣にいた曜とルビィがこんなことを言ってきた。

「ねぇ、海彦さん、あんたはここにいる山彦さんと乙姫さんの結婚を認めないの?」(曜)

「もしかして、別の人(旧皇族の娘)との政略結婚をさせたいわけ?」(ルビィ)

この曜とルビィの言葉に、海彦、さらに怒る。

「ただお前たちがそう言いたいだけだろうが!!お前らなんてどっかにいけ!!」

そして、千歌、曜、ルビィに迫ろうとする海彦。海彦からすればこれは茶番でありそれをやめさせるために迫るものだった。

 だが、ここで南が立ち上がっては海彦に対しこんなことを言ってきた。

「海彦さん、すみませんが、これ以上、千歌たちに迫らないでくれませんかね。じゃないと・・・」

すると、海彦、南に対しこう言い放つ。

「お前はただの鉄道公安官だろうが!!少しは黙っていろ!!」

 ところが、ここで南は自分のスマホを取り出してはあるアプリを起動させると海彦に対しこう言い放った。

「私は忠告しましたよ。これを聞いたら、あなた、おしまいです・・・」

すると、病室内にある男の声が流れ出した。

「山彦よ、はやく乙姫に殺されそうになったと言え!!いいから言え!!」

そう、海彦が山彦の病室に入ってくるなり言った言葉であった。実は、南、そうなることを見越して音声録音アプリでこの病室での会話を全部録音していたのである。そのため、海彦の脅迫もしっかり録音されていたのである。これには、海彦

「お前、はやくその音声を消せ!!はやく消せ!!」

と言うも、ここで、千歌、こんなことを言ってきた。

「あの~、海彦さん、ごめんけど、このやり取り、すでに全世界に発信中だよ!!」

そう、千歌はなにも考えずに山彦の病室に突入してきたわけではなかった。千歌は南の行動を予測して?この病室での今のやり取りを全世界に向けて生配信していたのである。そのため、その配信している動画サイトのコメント欄には、

「この親、ひどい!!お前こそはやくどっかにいけ!!」

「毒親たら毒親だね、あの海彦って親!!」

と海彦に対する非難が集中していた。これを、千歌、

「このコメント欄を見てどう思うかな?」

と言うと海彦は肩をがくと落としてはこう言ってしまう。

「うぅ、もうおしまいだ・・・。なにもかも失った・・・」

つまり、こういうことである。海彦が息子の山彦に対して、「恋人である乙姫によって山彦が殺されそうになった、」そう言うように強要してきたことが千歌たちの生配信によって世間中にばれたことで海彦の信用が地に落ちた、そのことを海彦は自覚したのである。

 そして、それは山彦と乙姫の結婚の障害がなくなったことを意味していた。山彦は乙姫に対し、

「乙姫、私と結婚してください」

と言うと、乙姫、山彦に対しこう告げたのである。

「でも、私、山彦さんに対して悪いことをしたけど、それでもいいの?」

だが、山彦、乙姫に対しこう答えた。

「でも、それは私たちが決めたこと。私にもその罪を償わせてください」

この山彦の言葉に、乙姫、

「山彦さん、ありがとう」

と言っては山彦を抱きしめたのである。これには、千歌、

「うんうん、これでうまくいった!!めでたしめでたし!!」

と喜びながら言うと曜とルビィからも、

「まぁ、千歌ちゃんがそう言うならそうじゃないかな」(曜)

「うんっ!!」(ルビィ)

とうれしそうにうなずいていた。

 一方、南はめんこい刑事に対しこう告げていた。

「めんこい刑事、今回は嫌な役回りをさせてしまい申し訳ない」

どうやら、南にしてもめんこい刑事に山彦を責めるといういやな役回りをさせてしまったと悪い思いがしてしまったのだろう。ただ、めんこい刑事からは、

「まぁ、それが俺たちの役回りだからな。そんなの苦じゃないよ」

と言うと南に対しこう付け加えて言った。

「また今度会うとき、そのときこそ、お前との決着のとき、だからな」

これには、南、こう言った。

「わかったよ、めんこい刑事。またな」

 そして、山彦と乙姫はこう誓うのであった。

「乙姫、私と結婚してください」(山彦)

「はい、山彦さん!!」(乙姫)

その2人の手のなかには黄金の釣り針が光り輝いていた・・・。

 

 こうして悲運で終わるはずの物語は大団円で終わりを終わりを迎えたのだが、この物語にはまだ続きがあった。翌日・・・、

「結婚おめでとう!!」

「「ありがとう!!」」(山彦・乙姫)

山彦と乙姫の2人は長崎鼻にある龍宮神社で結婚式を行っていた。昨日、海彦の悪事がばれたことで社会的信用を失った海彦は会社のすべての権限を山彦に譲渡し、山彦が新しき鹿児島のホテル王として輝かしい一歩を踏み始めた。そのけじめとして山彦は乙姫との結婚を決めたのである。とはいえ、突然の結婚式ということで2人の結婚式に参加していたのは2人の知人の数人と千歌・曜・ルビィと南たち公安特捜班の人たちだけ、というこじんまりとした式になったがふ2人は金の釣り針の入ったたまて箱に永遠の愛を誓うだけでなく古酒・・・ではなく甘酒の入った大甕(おおかめ)をみんなにふるう舞うなど笑顔あふれる式となった。

そんな結婚式をみては、南、こう思っていた。

(まさか、あの竜宮伝説の通りになるとは・・・)

そう、「指宿のたまて箱」の名の由来となった長崎鼻の浦島太郎伝説、いや、全国に残る浦島太郎伝説、それはある話がもとになっていたのである。その話とは、この長崎鼻に残る竜宮伝説であった。そう、この長崎鼻こそ竜宮伝説発祥の地、といわれていた。その竜宮伝説とは・・・、

 

昔、山幸彦(浦島太郎)は竜宮城で豊玉姫(乙姫)と出会い結ばれ、3年間竜宮城で過ごしたあと、山幸彦は豊玉姫を連れてたまて箱と千年古酒をいれた2つの大甕を乗せて帰ってきた

 

というものだった。そう、形は違えど、日本書紀や古事記にある海幸山幸の話が全国に残る浦島太郎伝説のもとになったのである。そのことを南は知っていたのか、

(でも、それでも、2人が結ばれたんだ。普通の浦島太郎伝説じゃない、長崎鼻の竜宮伝説の通りになったんだ。これこそうれしい限りだぜ)

とうれしそうに山彦と乙姫を見ていた。

 ただ、そのことは、千歌、曜、ルビィ、ともにしらないのかもしれない。ただ、それでも、3人は山彦と乙姫に対しこう言っては2人を祝福していた。

「2人ともおめでとう!!幸せになってね!!」(千歌)

「2人ともお幸せにね!!」(曜)

「ルビィね、こう思うの、2人とも幸せそうだって、これからもずっと続くはずだよ!!」(ルビィ)

3人ともそれは幸せに満ちるものだった。

 とはいえ、これだけは言わせてもらおう、2人とも幸あらんことを!!

 

おまけ

 

曜とルビィは山彦と乙姫の計らいもあり、指宿のホテルに食事などをすることになった。そこでは・・・、

「ルビィちゃん、この黒豚のしゃぶしゃぶ、おいしいね!」(曜)

「たしかにそうかも!!でも、このきびなごという小魚の刺身もとてもおいしいよ!!」(ルビィ)

と黒豚のしゃぶしゃぶときびなごという小魚の刺身を堪能していた。

 そして、食後・・・、

「ふ~、なんか体中がポカポカしてくるよ・・・」(曜)

「うん、そうだね・・・」(ルビィ)

と砂風呂を経験していた。そう、指宿といえば砂風呂、いうくらい砂風呂は指宿にとってメジャーであったのだ。

 そんな二人であったが砂風呂のなかでこんな話をしていた。

「でも、本当に、この旅、いろんなことがあって本当に楽しいね!!」(ルビィ)

「たしかにそうかも。南さんたちには感謝だよ」(曜)

「そう考えると、明日、なにが起きるのかわくわくするね」(ルビィ)

「本当にそうかも!!」(曜)

2人にとって南たちとの旅はいろんなことが起きるため、本当に楽しみにしている、そう感じさせるものになっているのかもしれない。

 こうして、曜とルビィはいろんなことを話し合いながらこれまでの旅の疲れをいやすのであった。とはいえ、明日はついに旅行の最終日を迎えようとしていた。曜とルビィはその最終日に南があることをしようとしていたのである。果たしてそれとはなんなのだろうか。そのことも知らずに曜とルビィはこの指宿で心と体を休めるのであった。



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~最長かつ最安の切符~ 前編

この作品は新庄さんとのコラボでお送りいたします。
また、劇中のダイヤですが令和4年9月23日時のダイヤを利用しております。


 9月28日10:00、曜とルビィは博多駅に来ていた。

「でも、ここで待ち合わせなんて、南さん、どうしたのかな?」(曜)

「うん、不思議・・・」(ルビィ)

と曜とルビィはなぜここで南と待ち合わせしたのか知らなかったのだ。というのも、南、昨日の夜に曜とルビィに対しこう言っていたのである。

「曜ちゃんにルビィちゃん、明日、ちょっと出かけるところがあるから10:00に博多駅に集合ね」

これには、曜とルビィ、頭の上にハテナマークを浮かべるくらいなんのことだかわからなかったのである。なので、曜とルビィ、

「これってどういうこと?」(曜)

「わからない・・・」(ルビィ)

と困惑してしまっていたのである。

 そして、今日、約束通りに博多駅に来た曜とルビィであったが、その2人のもとに2人を困惑させる原因を作った南と付き添いの高山がようやくやってきた。その南に対し、突然、曜が、

「南さん、今日、なにをするつもりなの?」

と尋ねると、南、

「この切符を使ってあることをするんだよ」

と言っては曜とルビィにある切符を渡した。これには、曜、

「えっ、170円の切符!?」

と驚いてしまう。そう、南が曜とルビィに渡したのは九州総局(JR九州)の最低運賃である170円の切符だったのだ。

 そんな170円の切符を見て、ルビィ、こんなことを尋ねてしまう。

「もしかして、竹下で降りて生ビール工場見学や(ららぽ〇と福岡にある)ガ〇ダムパークで遊ぶつもりなの?」

まぁ、ルビィがそう想像するのは仕方がなかった。というのも、博多駅の次の駅である竹下の近くにはビール工場やららぽ〇と福岡内にあるガ〇ダムパークがあったりするのである。

 だが、南はそれを否定した。

「いや、竹下に行くつもりじゃないよ。吉塚に行くつもりなんだよ」

これには、曜、

「えっ、それってどういうこと?竹下じゃなくて吉塚なの?」

と驚いてしまう。竹下ではなくてもう1つの隣の駅である吉塚に行くというのだ。ただ、吉塚といえば福岡県庁があるくらいでそこまで目立ったものはなかった。そのため、吉塚になにしに行くのか曜は不思議に思ってしまったのだ。

 そんな曜とルビィを見て南はこう言った。

「それじゃ、列車に乗ろうか。俺たちにとってとても面白い旅になるだろうからな!!」

ただ、南が言った言葉は曜とルビィにとって、

「えっ、それってどういうこと?」(曜)

「ルビィ、わからないよ~」(ルビィ)

とさらに困惑させるものだった。

 

 こうして、まずは列車に乗ることになった南と高山、曜とルビィの4人は吉塚に行く鹿児島本線上りホーム・・・、

「えっ、ここって下りホームだよね!!」(曜)

なんと、竹下方面に行く鹿児島本線下りホームに来てしまった。これには、ルビィ、

「もしかして、南さん、吉塚じゃなくて、本当は竹下に行くつもりなのかもね・・・」

と思ったものの、南と高山はまずこの列車に乗ることにした。その列車とは・・・、

「「えっ、区間快速!?」」(曜・ルビィ)

そう、区間快速久留米行き(10:25発)だった。これには、曜、

「でも、これって竹下には止まらないよね・・・」

と驚きを隠せずにいた。たしかに曜の言う通りだった。この区間快速久留米行きは博多を出発すると(普通の停車駅である)竹下と笹原を飛ばし南福岡まで行ってしまう快速であった。なので、竹下に降りることができないのである。あっ、ちなみに、南福岡は170円区間外である。

 ただ、それでも南と高山は平気な表情でこの区間快速に乗り込んでしまった、こう言いながら。

「大丈夫、大丈夫!!」(南)

「たしかにそうですね!!」(高山)

そんな2人を見てか、ルビィ、こう言ってしまう。

「いや、大丈夫じゃないよ、これ!!」

 と、ここで、曜とルビィ、こう考えてしまう。

「ルビィちゃん、もしかして、この快速、今日は竹下に臨時停車するかもね」(曜)

「曜ちゃん、たしかにその通りかも・・・」(ルビィ)

そう、この列車は今日に限って竹下に臨時停車する、そう曜とルビィは考えたのである。そう考えると曜とルビィは少し安心したのか、南と高山が待つ区間快速列車に乗り込むことにした。

 

 ところが、竹下に近づくなり変なことが起きてしまった。それは曜とルビィがあることを始めたのである。

「さぁ、もうすぐ竹下だよ!!降りる準備をするよ!!」(曜)

「うん、そうだね!!」(ルビィ)

と曜とルビィがなんと降りる準備を始めたのである。

 だが、それを南が止める。

「あの~、ここ(竹下)で降りる予定もないし、ただ、この列車は竹下を通過するだけだよ。快速だから・・・」

これには、曜とルビィ、

「えっ、それってどういうこと?」(曜)

「竹下で降りないわけ?」

と、あっけらかんになるもすぐに、

「えっ、竹下駅で降りれないの!?」(曜)

「このまま南に行っちゃうの?」(ルビィ)

とパニックになってしまう。だって・・・、

「このまま行けば、私たち、キセル乗車になっちゃうよ!!」(曜)

「ルビィたち、犯罪者になってしまうの!?」(ルビィ)

だって、このまま竹下を乗りこせば(下車駅で乗りこした運賃の超過分を支払ない限り)キセル乗車になってしまうから。なので、曜とルビィからすれば自ら犯罪(キセル乗車)を犯したくない、そんな一心でパニックになったのである。

 だが、それに対して南は曜とルビィにこう告げた。

「それだったら鉄道公安官である俺ですら犯罪者になってしまうよ」

さらに高山がこう付け加えた。

「それに、これから先、私たちの指示通りにいけばキセル乗車にならないから大丈夫だよ!!」

この2人の鉄道公安官の2人からの助言に、曜とルビィ、

「それだったら、心配、ないよね?」(曜)

「南さんと高山さんのこと、信じているからね・・・」(ルビィ)

と2人を信頼してか心を落ち着かせようとした。

 とはいえ、曜とルビィの心のなかにはある思いでいっぱいだった。それは・・・、

(でも、本当に大丈夫なのかな・・・、たった170円の切符で・・・)(曜)

(170円の切符の範囲外なのに、本当に、本当に、大丈夫なの?)(ルビィ)

そう、170円の切符で本当に大丈夫なのか、である。もし、南たちが嘘をついていたらキセル乗車になってしまう、そのことを今でも心配していたのである・・・。

 

 その後、10:52、4人はある駅で降りた。それは・・・、

「えっ、原田駅?ここになにかあるの?」(曜)

そう、鹿児島本線の原田駅であった。そこのホームに降りた4人は、

「今から0番ホームに乗り換えるからね」

と南に言われるまま、原田駅の0番ホームに行くことに。そこには・・・、

「わっ、レトロチックな列車だ!!」(ルビィ)

そう、そこには白に青色のラインが入ったキハ40があった。

 そんならトロチックな列車を見て、曜、南にあることを尋ねた。

「でも、南さん、この列車に乗ってどこに行くの?」

すると、南がこう説明した。

「今から原田線に乗って桂川というところに行くんだよ」

 だが、ここで、ルビィ、あることに気づく。

「でも、原田線って聞いたことなによ。どういうこと?」

そう、原田線とはあまり知られていない路線名だった。そのため、曜が知らないのも無理ではなかった。なので、ここは高山が原田線について説明した。

「原田線というのは筑豊本線(若松~原田)の一部の路線のことを言うんだ。原田線は原田~桂川間の路線の愛称でね1日に数往復列車が走るんだ」

これには、ルビィ、

「原田線、なにかかわいい名前だね!!」

と喜んでいた。

 

 その後、原田11:00に出発したキハ40は山の中を軽快に走ると11:29に桂川に到着、そこで11:54発の直方行きに乗り換えることにした。その列車を待っている最中、曜とルビィはあることを尋ねる。

「南さん、高山さん、原田~桂川間が原田線なら、桂川から先も別の愛称がつけられているの?」(曜)

「教えて、教えて!!」(ルビィ)

 すると、南がそれについて説明した。

「たしかにあるよ。たとえば、桂川~折尾間を含む、博多~(鹿児島本線)~吉塚~(篠栗線)~桂川~(筑豊本線)~折尾~黒崎間を福北ゆたか線、折尾~若松間を若松線って言うんだ」

これには、曜、

「たしかに、その篠栗線?、ここでは福北ゆたか線だけど、途中の南蔵院駅って巨大な涅槃仏像で有名なんだよね!!」

と知っていることを言うと、高山、それについて話す。

「たしかに、ブロンズ製の涅槃仏像では世界一なんだ。外国人にも人気があるんだ!!」

そう、南蔵院の涅槃仏像は全長41メートルとブロンズ製の涅槃仏像としては世界一だったりする。むろん、それによるものかはわからないが外国人の人たちからも人気があったりする。

 そんな豆知識であったが、ルビィ、この福北ゆたか線の名称について南にあることを尋ねてみた。

「ところで、どうして「福北ゆたか線」っていうの?」

これには、南、こう答えた。

「それはね、2001年にこの路線が電化したときにね、福岡市、北九州市、筑豊を結ぶことからそう名付けられたんだ」

そう、福北ゆたか線はこの路線が電化したときに、福岡市の福、北九州市の北、筑豊の豊(ゆたか)をつなげあわせる形で命名されたものであった。なので、これには、ルビィ、

「3つの地区を結ぶ路線の名称なんてすごいよ!!」

と喜んでいた。

 そうしていくうちに11:54発の直方行きはホームに入ってきた。その列車を見て曜はびっくりした。

「えっ、なんか近未来的な列車だね!!」

そう、ホームに入ってきた列車は813系だった。これには、南、 

「あぁ、これこそ九州総局(JR九州)が誇る普通列車813系だ!!」

と言うとルビィはこんなことを言ってきた。

「キハ40みたいにレトロチックな列車もあるし813系みたいな近未来的な列車もある、それに加えて「ふたつ星4047」や「指宿のたまて箱」みたいなD&S特急もある。本当に九州の列車たちってすごいんだね!!」

これには、南、こう答えた。

「そうでしょう、そうでしょう。俺はこう思うぜ、九州総局(JR九州)にはいろんな列車たちがいる。それは見飽きることなんてない、それくらいすごいものなんだ!!」

そう、九州総局(JR九州)にはいろんな列車があるのだ。その列車たちを楽しむのも鉄道の醍醐味なのかもしれない・・・。

 

 こうして、桂川11:54発の直方行きに乗った南たち4人は新飯塚駅に12:03に到着、そこでホームに降りてしまった。ただ、ここである問題が発生した。それは曜のある言葉からだった。

「ところで、南さん、このあと、どの列車に乗るの?」

と曜が南にそう尋ねると南はこう告げてしまった。

「曜ちゃん、ごめんけど、次の後藤寺線田川後藤寺息が12:46発だから40分くらい待つかな」

これには、ルビィ、

「えっ、40分も!!」

とびっくりすると、曜、とんでもないことを言ってしまった。

「なら、駅の外に出てお昼ご飯を食べよう!!」

そう、曜、どうやら駅の外に出てお昼ご飯を食べようと言ってきたのだ。

 だが、これには、高山、制してしまう。

「いや、それはダメだよ!!」

これには、ルビィ、

「え~」

とがっかりすると南がその理由を答えてくれた。

「曜ちゃん、ルビィちゃん、駅の外、というか、改札の外、に出ちゃうとダメなんだ、この旅としてはね・・・」

これには、曜、

「う~、悲しすぎるよ・・・」

と泣きそうになるも、高山、すぐにフォローに入る。

「そのために、私、駅弁を準備してきましたから。それを食べようね」

これには、ルビィ、

「うん、食べる!!」

と言っては高山が持ってきた駅弁をルビィは食べ・・・、

「いや、ルビィ、次の列車のなかで食べる!!」

ということで、高山の持ってきた駅弁はあとのお預けとなってしまった・・・。

 

 そして、12:46発の後藤寺線田川後藤寺行きのキハ40に乗り込む南たち4人、ここでは、ルビィ、

「この列車のなかで食べる駅弁っておいしいね!!」

とうれしそうに駅弁を食べていた。

 そんなとき、南があることについて話始める。

「曜ちゃんとルビィちゃんにはここ筑豊の鉄道話をしたいと思うんだ」

これには、曜とルビィ、

「えっ、筑豊の鉄道話?」(曜)

「聞きたい、聞きたい!!」(ルビィ)

と興味津々。そのため、南はここ筑豊での鉄道の話を始めた。

「ここ筑豊ではね、昔、石炭が多く産出されていたんだ」

これには、曜、

「たしか、筑豊炭田、だよね」

と言うと南は、

「その通り」

と言った。そう、ここ筑豊では、昔、石炭が多く採掘されていた。そのため、ここは、昔、筑豊炭田と呼ばれていた。

 と、ここで高山がその続きを話す。

「その石炭を運ぶため、ここ筑豊では鉄道網が発達していたんだ。上山田線、宮田線、糸田線、などなど。その鉄道網を使って石炭を輸送、若松まで運んでいたんだ」

そう、ここ筑豊では石炭を運ぶために鉄道網が発達していたのだ。その手有働網を使って石炭を若松まで輸送していたのだ。これには、ルビィ、

「うわ~、昔の鉄道、働き者だったんだね!!」

と喜んでいた。

 だが、ここで南の表情が暗くなりこう告げらてしまう。

「でも、その炭鉱も次々と閉山していき、ついには筑豊炭田の火は消えた。それにより多くの鉄道路線は次々と廃止にしていったんだ」

そう、エネルギー革命などにより石炭の需要が縮小、それにより筑豊にあった炭鉱は次々と閉山、それにより、筑豊にあった多くの鉄道路線も廃止されていったのである。これには、曜とルビィ、

「うそ・・・、それって本当なの・・・」(曜)

「なんか悲しいよ・・・」(ルビィ)

と悲しそうにふけっていた。

 そんな曜とルビィを見ては、南、こう話始めた。

「でも、この後藤寺線をはじめ、3つの路線が第3セクター化した平成筑豊鉄道など、残った路線をこれからも大切にしていきたいと思うんだ」

この南の意見に曜とルビィは、

「うん、そうだね!!」(曜)

「ルビィも大切にしていきたい!!」(ルビィ)

と元気よく話していた。

 

 こうして始まった南たち4人の奇妙な旅、たった170円の切符で大回りに旅を続ける4人であったが、果たしてそれはどういう意味をもつのだろうか。そして、これはキセル乗車にならないのか。それは、次回、最終回の話となる。それまで待っていてほしい。



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~最長かつ最安の切符~ 後編

この作品は新庄さんとのコラボでお送りいたします。
また、劇中のダイヤですが令和4年9月23日時のダイヤを利用しております。


13:07、ついに南たち4人は田川後藤寺に到着した。このとき、曜とルビィ、

「なんかすごい話を聞いたかも!!」(曜)

「駅弁もおいしかったしね!!」(ルビィ)

と後藤寺線の列車の車内で駅弁を食べながら筑豊炭田と鉄道の話にうれしさを感じていた。

 そして、南たち4人は続けて13:11発の日田彦山線小倉行きに乗り換えるとその車内の中で南は曜とルビィに対し、

「ここでもあるお話をしてみよう」

と言うと曜とルビィも、

「なんか楽しみだな」(曜)

「うん、わかった」(ルビィ)

とかなり乗り気の様子。

 すると、南はあるお話をし始める。

「今、俺たちがいる日田彦山線なんだけど、今、激変しようとしているんだ」

これには、曜、

「それってどういうこと?」

と南に尋ねると南はそれについて説明した。

「実は数年前の豪雨により途中の線路が流出したんだ。そのため、一部区間において今でも不通になっているんだ」

これには、ルビィ、

「えっ、それって大丈夫なの?」

と心配そうに言うと高山はこう言い出してきた。

「いや、大丈夫じゃないよ。日田彦山線はもともと赤字路線だから鉄路での復活は難しくなっているんだ。それに、久大本線が豪雨によって鉄橋が流されたときに日田彦山線の鉄橋を使って復活させたため、鉄路での復活は事実上不可能なんだ」

これには、曜、

「それじゃ、日田彦山線はもうだめになってしまうの?」

とさらに心配してしまう。

 ところが、ここで南があることを言い出した。

「たしかに鉄路での復活は見込めない。でも、そのかわり、それに代わるものがあるんだ」

これには、ルビィ、

「それってなに?」

と南に尋ねると南はこう説明した。

「それはね、BRT、列車の代わりにバスによる交通輸送をするようになるんだ。この方法のいいところはバスは専用道などを使って走ることではやく定時に走ることなんだ。日田彦山線はこのBRTを使うことですばやく復興を成し遂げようとしているんだ」

 この南の言葉に、曜とルビィ、

「列車の代わりにバスが走るのか・・・」(曜)

「でも、それって寂しいものだよね・・・」(ルビィ)

とちょっと悲しそうに言うも高山はそれについてこう答えた。

「でも、赤字路線を復活させることはかなり難しいんだ。そのためにBRTもその復活のための1つの施策ともいえるんだ。私も鉄路がなくなるのは寂しいよ。でも、これからの時代、新しい形の鉄道網の発展、維持は必要になってくるんだ」

そう、全国には数多くの赤字路線がある。その維持管理だけでも多額のお金がかかっているのである。でも、その理由でもってすぐに廃止、ということはその沿線に済む地元の人たちの生活に悪影響を与えてしまう。そのため、BRTなどの新しいかたちでの交通網の整備を含めて十分に考える必要があるのかもしれない。

 そんな思いもあってか、曜とルビィ、

「そう考えると新しいかたちを受け入れることも大事なのかな」(曜)

「それにね、ルビィ、こう思うの。そこに住む人たちのことも考えないといけないかも・・・」(ルビィ)

とこの問題について十分考えさせられるものとなった。

 

 そして、列車は西小倉に14:01に到着した。と、ここで、南、曜とルビィに対してこう言い出した。

「え~とね、ここでも約40分くらい待つかたちになるんだ。ごめんね」

これには、曜、びっくりする。

「えっ、ここでも40分待つの~。これで2度目だよ・・・」

 だが、ここでルビィがこんなことを言い出してきた。

「でも、小倉駅のホーム上にとてもうまいうどん屋さんがあったはず!!そこに行こうよ!!」

そう、小倉駅のホーム上にはとてもうまいうどん屋があるのだ。ルビィはそこに行きたいと言っているんだ。

 ところが、ここで、高山、こんなことを言い出す。

「ルビィちゃん、ごめん。小倉駅には行けないんだ」

そう、この旅の性質上、小倉駅に行くことができないのである。これには、曜、

「それってどういうわけ?」

と南に尋ねると南はこう言った。

「小倉駅に行くとこの旅自体がだめになるんだ」

これには、ルビィ、

「う~、そうなの・・・」

とがっかりしてしまった。

 と、ここで、高山、かばんにいれていたお菓子を出してはこう言い出した。

「でも、待っているあいだ、このお菓子を食べてね」

すると、ルビィ、

「うん、わかった」

と元気を取り戻した。

 そんな曜とルビィに対して南はこう言い出した。

「この旅で重要なことは一筆で書けることなんだ」

これには、曜とルビィ、

「一筆で書く?」(曜)

「それってなんのことかな?」(ルビィ)

と南に尋ねると南はこう言った。

「それは吉塚についてのお楽しみに!!」

そんな南の言葉に曜とルビィは、

「「?」」

と頭の上にハテナマークを浮かべるしかなかった。

 

 こうして、西小倉駅で約40分くらい待っていた南たち4人は14:47発の区間快速二日市行きに乗り一路吉塚へ。その後、吉塚に16:01に到着すると曜とルビィはあのことを思い出してしまう。

「あっ、そうだ。私たち、170円の切符しか持っていなかったんだ・・・」(曜)

「これってやっぱりキセル乗車だよね・・・」(ルビィ)

そう、曜たちは今170円の切符しかなかったのだ。博多から大回りして吉塚まで来たのだから相当な金額になっているはずだ。それなのに170円の切符しか持っていない、なので、その不足分の運賃を払わない限りキセル乗車になってしまう、そう曜とルビィは危惧していたのだ。

 だが、南たちはかなりの余裕だった。だって、

「曜ちゃんとルビィちゃん、大丈夫だって!!」(南)

「南さんの言う通りですよ!!」(高山)

と安心しきっている様子。これには、曜とルビィ、

「本当に大丈夫なの・・・」(曜)

「とても心配・・・」(ルビィ)

とさらに心配を増長させていた。

 そして、ついに吉塚の改札口に到着した南たち4人。そこで曜とルビィは恐る恐る友人改札口のところに行くとそこには・・・、

「あれっ、千歌ちゃん!!!なんでここにいるの?」(曜)

「えっ、千歌ちゃんだ!!」(ルビィ)

そう、そこには千歌がいたのである。その千歌はこう言った。

「千歌ね、吉塚駅の駅員になっちゃったの!!」

これには、曜、

「千歌ちゃんらしいといえばらしいね・・・」

と唖然となるとルビィも、

「千歌ちゃん、すごいね・・・。これでも百以上の資格を持つ女だもんね・・・」

と言っては唖然となっていた。ただ、その千歌も、

「でも、駅員としての責務は全うするからね!!」

と自信満々に言うと、曜とルビィ、

「本当に大丈夫かな・・・」(曜)

「ルビィもわからない・・・」(ルビィ)

とさらに心配になってしまった。

 とはいえ、まずは改札の外に出ないといけない、ということで、曜、

「それじゃ、はい、切符・・・」

と自分が持っていた170円の切符を千歌に渡すとルビィも、

「ルビィも切符・・・」

と曜と同じく170円の切符を千歌に渡した。

 すると、千歌、突然、なぜか、

「ドロロロロ」

とドラム音を鳴り響かせると、曜とルビィ、

「やっぱりダメだったのかな・・・」(曜)

「そうだと思うよ・・・」(ルビィ)

と涙を流しそうになってしまった。

 そして、次の瞬間、千歌、

「ドン!!」

という声とともに曜とルビィに対しこう言い出してきた。

「曜ちゃん、ルビィちゃん、(改札を)通ってもいいよ!!」

これには、曜とルビィ、

「えぅ、いいの!!」(曜)

「よ、よかった・・・」(ルビィ)

と胸をなでおろしては安心すると、

「ふ~、なんか疲れたよ・・・」(曜)

「ルビィも・・・」(ルビィ)

と緊張の糸が切れたのかその場にへたれこんでしまった。

 そんな曜とルビィを見てか、南、改札の外からこう言った。

「曜ちゃんとルビィちゃん、そんなに心配しなくてもよかったのに・・・」

そう、南と高山はすでに無人改札から外に出ていたのである。これには、曜、

「えっ、なんで2人とも簡単に外に出ているの?」

と南に尋ねると、南、こう言った。

「だってルールにのっとって乗ってきたのだから」

この南の発言に、ルビィ、

「えっ、それってどういうこと?」

と逆に南に尋ねると南はこう言った。

「そりゃ簡単だよ。俺たちはあのルールにのっとって大回りしてきたのだから。まさしく最長かつ最安の方法でね」

 すると、曜とルビィ、南に対しこう尋ねた。

「そのルールってなに?」(曜)

「最長かつ最安の方法ってなんなの?」(ルビィ)

 すると、南が、

「それはね・・・」

と曜とルビィに説明しようとするとその横から千歌が、

「それはね・・・」

と横取りしたような形で乱入してきたはそのルールについてこう言ってしまう。

「それはね、この福岡が大都市近郊区間に指定されているからだよ!!」

これには、曜とルビィ、大声で、

「「大都市近郊区間!!」」

と言うと南は、

「千歌、どきなさい!!」

と千歌をどかしては大都市近郊区間について説明を始めた。

「大都市近郊区間、それは國鉄(JR)旅客営業規則に規定する区間のことで乗客経路がたくさんある地区において旅客の利便性向上と改札業務の簡素化を目的にしているんだよ」

 すると、曜が、

「それと今日の旅がどう関係するわけ?」

と尋ねてくると南が・・・、

「それはね・・・」

と言おうとしたところ、またもや、千歌が、

「そんなの簡単だよ!!」

と横取りしてはきっぱりと言ってしまった。

「この区間内で乗車した場合、実際に乗車した経路に関わらず最も安くなる経路で計算した運賃で乗車できるわけ!!」

これには、ルビィ、

「それってお得だよね!!」

とうれしくなってしまった。

 と、ここで、南、復活!!千歌をどかしながらこう言う。

「まぁ、福岡以外にも、仙台、東京、新潟、大阪にもこの区間は設定されているんだけどね」

 だが、ここで、曜、あることに気づくとこう言った。

「でも、それって、もし、途中下車したり同じ路線を何度も使ったりしたら大変なことにならないかな?」

たしかに途中下車したり同じ路線を何度も使ったりしたらそれこそこのルールが破綻してしまう可能性が出てしまう。

 と、ここで、南・・・ではなく高山がこれについてこう説明した。

「それは大丈夫だよ。この区間制度にはちょっとしたルールがあるんだ。まず、途中下車はできないことになているんだ。そのため、途中下車した場合は実際に乗った経路の運賃を不足分を払うことになっているんだ。また、重複した区間に乗ることもできないんだ」

すると、ルビィ、あることを思い出してはこう言った。

「あっ、だから新飯塚駅で外に出ることができなかったし、西小倉駅で小倉に行くことができなかったんだね!!」

これには、高山、

「うん、ルビィちゃんの言う通りだね」

とうなずいた。たしかにルビィと高山の言う通りだった。ルビィは新飯塚駅で改札の外に出ようとしたができなかったのは途中下車不可によるものであったし、西小倉駅から小倉駅まで行けなかったのも西小倉駅から小倉駅に行って戻ってくる場合は重複する区間に該当するため、ルール違反になるためだった。

 そして、南はこんなことを曜とルビィに尋ねてきた。

「それで、今日の旅を通じてなにかわかったこと、ないかな」

 すると、曜とルビィは次々と答えてくれた。

「福岡にはたくさんの鉄道路線があったけど、時代とともになくなっていったんだ。それって悲しいことだよね」(曜)

「それに日田彦山線も新しい形に生まれ変わろうとしていることかな」(ルビィ)

 これには、南、2人にむかってこう語り始めた。

「たしかに曜ちゃんとルビィちゃんの言う通り、この旅にはある意図があったんだ」

それには、曜、

「それって私たちが言ったこと?」

と言うと南はこう語った。

「あぁ、そうとも。この旅の意図・・・、それは・・・、

 

福岡と鉄道のこれからについて

 

なんだ・・・」

 この言葉を発した南に対しルビィはこんなことを聞く。

「もしかして、路線がなくなることとBRT化?」

すると、南は、

「ルビィちゃん、その通り」

と答えるとこう語りだした。

「昔、福岡にはたくさんの鉄道路線があった。だけど、炭田の閉山にともなってその路線のほとんどが廃線、もしくは第3セクター化した。これと同じことが日本中で起きているんだ。その理由も赤字路線だから、などなど。これにより日本中から鉄路が少なくなってきているんだ。でも、廃止ありきで物事を決めてほしくない。地元の人たちの意見も聞いてほしんだ」

そう、現在、地方ローカル線などを中心にその路線の廃止などを論議されることが多くなった。その理由が赤字であることが大きいのだが廃止ありきで物事を決めてほしくはないものである。それよりも地元の人たちなどの意見などをちゃんと聞いて論議すべきではないだろうかと思ってしまう。

 と、同時に南はあることを話してくれた。

「でも、赤字である以上、その路線を存続していくには難しいこともある。だからこそ、BRT化などの考えを含めたうえで路線を守っていかないといけないのかもしれない。その例が日田彦山線のBRT化だと思うんだ」

そう、赤字である以上、その路線を守ることは難しかったりする。それに、日田彦山線のように自然災害などにより線路が流出するなどして復活が難しくなってしまう。そう考えるといろんな方法でその路線を守っていく必要があるのかもしれない。例えば、三陸の気仙沼線あんどのBRT化や富山港線のLRT化などがその例だろう。そして、今、日田彦山線の一部がBRT化を果たすことになる。それは鉄道の新しいかたち、地域の足を守る新しいかたちになるのかもしれない(とはいえ、鉄路がなくなるのは少し寂しいものなのだが・・・)

 その南の言葉を聞いて曜とルビィはこう述べた。

「鉄路を守るって本当に大変なことなんだね。でも、その地域の人たちにとって大事なものだから大切にしないとね!!」(曜)

「BRT化やLRT化といった新しいかたちで地域の足を守ることも大切なんだね!!」(ルビィ)

それは地域の足としてとても重要視されている路線を守るためには大切な思いなのかもしれない。

 そして、最後に南は・・・、

「だからこそ・・・」

と言おうとしたものの、

「千歌、復活!!」

と千歌が言ってはこう言い出してきた。

「だからこそ、千歌たちは鉄道のこれからを応援していく必要があるってことだよ!!」

これには、曜とルビィ、

「うん、千歌ちゃんの言う通りだね!!」(曜)

「ルビィ、鉄道のこと、これからも応援していくね!!」(ルビィ)

と自分の思いを口にしていた。これには、千歌に飛ばされた南も、

「その言葉、とても大事な思い、それを大切にしていてくれよ」

と千歌たち3人を見てそう思ったのである・・・。

 



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曜とルビィの事件簿Ⅲ~エピローグ・Welcome to NEW STORY~

 そして、夢のような1週間が終わった。ここは長崎駅。曜とルビィは自分たちの世界に戻る南たちに向かってこうお礼をした。

「南さんに高山さん、今回も一緒に旅ができてうれしかったよ」(曜)

「もうお別れだけど、南さんたちのこと、忘れないからね」(ルビィ)

 すると、南たちからもこんな言葉が出てきた。

「私たちもとても充実した1週間だったよ」(桜井)

「僕たちもいろんなところにいけたしね」(岩泉)

「私、宮崎の地鶏がとても好きになりました」(小海)

「俺たちの班がお世話になった。2人ともありがとう」(高杉)

 そして、高山が口にする。

「私は今回の旅で新しい列車に乗れたし、これまで乗ったことがないD&S特急に乗れたからとてもうれしかったし、今回の事件の解決もできたからとてもよかったよ。だから、2人とも、これから頑張ってね」

 最後に南が曜とルビィに対しこう告げた。

「これからは君たちの時代だ!!鉄道のために、そして、みんなのために頑張ってほしい」

その南の言葉に曜とルビィは、

「うん、わかった!!」(曜)

「ルビィたち、頑張るね!!」(ルビィ)

とこれからのことを誓いあっていた。

 一方、千歌も自分の上司であるアランにお礼を言っていた。

「アランさん、今回も助けてくれてありがとう。千歌、アランさんのおかげで曜ちゃんとルビィちゃんの旅のサポートができたと思うの」

今回も千歌は特別工作員として曜とルビィの旅のサポートをしていた。でも、今回は全開と少し違った。新しい路線、新しい特急、ということでいつもとは違って戸惑いをみせていた南たちをサポートするという大役をやってみせたのである。それもこれも千歌のバックアップをしていたアランのおかげなのかもしれなかった。そんな千歌に対しアランはこう告げた。

「いや、それもこれも千歌の行動力のなせる業である。千歌よ、お前はよくやった。

このアランの言葉に、千歌、

「ありがとう、アランさん」

とお礼を言った。

 

 こうしてそれぞれ言葉を告げた、曜とルビィ、千歌は南あっちに対しお別れを言った。

「南さん、またね。また会おうね」(曜)

「南さん、さようなら。またね」(ルビィ)

「アランさん、これからも頑張ってね。またね」(千歌)

この言葉とともに南たちとアランは新幹線かもめ未来行きの列車に乗った。そして、南は曜とルビィを窓越しにみてこう思った。

(また会えるかわからない。だけど、1つだけ言える。曜ちゃんとルビィちゃんがもし俺を必要とするならまた会うことができる。だから、それまでさらばだ)

その目には曜とルビィをこれから応援していく、そんな思いで南はいっぱいだった・・・。

 

 こうして3度目のコラボも無事に終わった・・・のだが、曜とルビィはある人物のことを口にした。

「そういえば、桜花ちゃん、今、日本橋女子大学に入学して先生になる勉強をしているんだって!!」(曜)

「たしかに、この前、桜花ちゃんにあったよ!!先生にあんる勉強が楽しいって言っていた!!」(ルビィ)

桜花、SNOW CRYSTALでは静真側の主人公として頑張っていたメンバーである。その桜花の話で盛り上がる曜とルビィ。そう、桜花は日本橋女子大学の2年生として先生になる勉強をしていた。そこではこれまで経験したことがないようなことが多く大変だがそれでも頑張っている姿をみせていた。

 そんな曜とルビィだったが桜花の話に続いてこの少女の話もした。

「そういえば、桜花ちゃんと一緒に花樹ちゃんも同じ大学で先生の勉強をしているんだって!!」(曜)

「えっ、そうなの!?」(ルビィ)

花樹、ご存じ、SNOW CRYSTALの主人公である。花樹も桜花と一緒に先生になるための勉強をしていたのである。これには、曜とルビィ、

「2人とも切磋琢磨して頑張っているみたいだよ」(曜)

「2人ともライバルだから相当頑張っているのかも!!」(ルビィ)

2人はライバルである。と、同時に同志でもあった。そのため、2人とも切磋琢磨しながら先生になろうとしていたのである。

 そんな2人を考えては曜とルビィは、

「2人ともスクールアイドルを育てるために頑張っているんだから応援していかないとね」(曜)

「ルビィ、花樹ちゃんも桜花ちゃんも立派なスクールアイドルを育ててくれると思っているよ。だから、ルビィたちもこれからも頑張っていこうね!!」(ルビィ)

と花樹と桜花のことを思いつつ自分たちも頑張ろうと誓うのであった。

 そんな2人に対し、

「そんなの決まっているじゃない!!千歌を含めてCYaRon!だよ!!千歌たちも頑張ればきっと新しい世界、新しい物語が生まれるはずだよ!!」

と言っては2人に抱きつく千歌。これには、曜とルビィ、

「うん、そうだね、千歌ちゃん!!」(曜)

「ルビィも3人で頑張っていこうと思うの!!」(ルビィ)

と千歌のことを抱きしめながらそう言った。

 そして、3人はこう誓うのであった。

「私、千歌ちゃんとルビィちゃんと一緒に頑張る!!だから、みんな、諦めずに頑張ってね!!」(曜)

「ルビィたちは先に進むの。だから、みんな、これからもルビィたちと一緒に前に進んでね」(ルビィ)

「千歌、みんなにこう言いたいよ、千歌たちが開く新しい世界、新しい物語、一緒についてきてね。お願いだからね!!」(千歌)

 

 こうして始まる新しい世界、新しい物語、それはこれからの自分たちにとってとても希望にあふれるものになるのかもしれない。それはみんなにとって大事なものなのだから。だから、一緒に言おう、

 

新しい世界、新しい物語、一緒に紡いでいこう

   だって、この物語は「みんなと叶える物語」、なのだから・・・

 

曜とルビィの事件簿Ⅲ END

 

 

NEW STORY

 

LOVE LIVE! STAR PEACE!!

 



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曜とルビィの事件簿最終章 Last Conect ~最後の邂逅~

曜とルビィの事件簿 最終章

 

Last Conect ~最後の邂逅~

 

 最後、とても寂しい響きかもしれない。最後と聞くと「これが最後である」ということで寂しく感じるからだ。だが、最後としても「これが最後だからこれから楽しくなる」そんな捉え方もできる。最後という言葉は人によっていろんな捉え方ができるのかもしれない。

 とはいえ、最後という言葉はある物事において、「最後」「終わり」、そう意味している。ということはこの物語も「最終章」という言葉がつくくらい今から記するこの物語はこれまで長く続いていたこの物語群の最後を飾るものかもしれない。だが、これが本当に最後になるのか、それとも、この最後でもってさらなる物語へとつながるのか、それはこの物語を呼んでいる者たちにお任せすることにしよう・・・。

 

 さて、ここから物語を始めようとしよう、曜とルビィ、最後の物語を・・・。

 

 2023年11月、用は駿河湾を航行するフェリーの船長を目指して船員をしていた。そんなとき、ふと、曜のスマホにあるメールが届く。それは・・・、

「あれっ、これってあの人からのメールだ!!懐かしい・・・」(曜)

そう、誰からなのか、いや、とても懐かしい人からのメールだった。そんなメールを読むと曜はあることを言って立ち上がった・・・。

「私、九州に行かないと・・・」

 そして、そのメールはルビィにも届いていた。ルビィはこのとき姉であるダイヤの補佐をしていた。そのルビィはこのメールを受け取るとともに、

「ルビィ、ルビィも九州に行かなくちゃ!!」

という言葉とともに立ち上がった。

 むろん、この少女のもとにも・・・。

「あっ、アランさんからだ!!ということは、私、千歌の仕事だね!!」(?)

その言葉とともに陰へと潜った・・・。

 

 そして、2023年12月、仕事納めしてまもなく曜とルビィは長崎駅の新幹線ホームに来ていた。ここはある人と別れた場所。曜とルビィはその別れたホームに来てはこう言っていた。

「曜ちゃん、ついにあの人に出会えるんだね!!」(ルビィ)

「うん、楽しみ!!」(曜)

その陰にはもちろんあの少女も・・・。

(「私もだよ、曜ちゃん、ルビィちゃん!!」)(?)

 そして、ついにはるか彼方から光る列車が降りてきた。それは西九州新幹線かもめ、それも曜とルビィと別れたときの列車と同じものだった。

 その列車がついにホームに到着した。それと同時に列車のドアが開くとある男の人がこう言った。

「曜ちゃん、ルビィちゃん、お久しぶり!!」

 その声とともに曜とルビィはこう言った。

「南さん、お久しぶりです!!」(曜)

「ルビィ、南さんに会いたかったよ!!」(ルビィ)

そう、曜とルビィの目の前に現れたのは新庄雄太郎さんの小説に登場する、おなじみ、南達仁であった。

 その南であるが曜とルビィに対しこう言ってきた。

「ようやく出会うことができたな」

これには、曜とルビィ、2人とも、

「うん、出会えるの、とても楽しみにしていたんだ」(曜)

「そうそう、ルビィ、とても楽しみにしていたよ!!」(ルビィ)

 こうして2人の少女と1人の少年はついに邂逅した。だが、これが最後の邂逅になるのか、それはこの時点ではわからない・・・。

 

 とはいえ、これから始まる物語、奇跡のコラボ、その最終章、とても楽しんでもらいたい・・・。

 

(おまけ・・・)

「アランさん、ついに会うことができました。とても寂しかった・・・」

「千歌、あぁ、私もだ。お前がいなかったらこれまで活動することはできなかったからな・・・」

「ところで、今日も裏で動くの?」

「あぁ、南の手助けを裏でするつもりだ」

「わかりました!!この千歌、頑張ります!!」

「あと、最後の最後でとても重要なミッションがある。それを運転したことがあるお前ならできるはずだ!!」

「わかりました!!今回もどんどん頑張っていくよ!!」



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曜とルビィの事件簿最終章 SL人吉よ 永遠に…~公安特捜班主任南、最後の事件~ 前編

 さて、まずは最初の話だが・・・、まずは、南、この時空における本当に最後の事件を、いや、ある物事について話すことにしよう。その物事とはある子どものわがままから起きたものである。だが、南にとってこの物事がこの時空における本当の最後の事件となってしまった。その子どものわがままとは・・・。

 

 3月22日、曜は朝早く起きては朝日を見てこう言った。

「まさか、またSLに乗れるなんて!!それも今日と明日の2日にわたって乗れるなんて嬉しいよ!!」

そう、曜とルビィは久しぶりに、SLに、SL人吉に乗ることができるのである。それにより嬉しがる曜に対し、

「でも、前回は救援的だったから通常で乗れるなんて嬉しい!!」

とルビィが曜の横からこれまた嬉しそうに言った。前回(「復活のA」)ではあそぼーいが動かなくなってしまったために急遽SLあそBOYとして駆けつけてくれたのだが、今回は本当に普通にSL人吉に乗ることができるので曜とルビィにとって本当に嬉しい限りだった。

 そんな2人を見てか、遠くから南がこんなことをつぶやいていた。

「SL人吉に乗れること自体本当に楽しみなんだな、2人とも・・・」

そんな南のつぶやきに南のパートナーである高山がこんなことを言ってきた。

「でも、2人のために、南さん、頑張っていましたからね」

むろん、これには、南、拾う。

「これほどまでに人気があるとは思っていなかったからな・・・」

もちろん、これを高山がトス!!

「でも、仕方がないじゃないですか、SL人吉のあれのためですから・・・」

そして、最後に南が決める!!

「とはいえ、俺はあの2人の喜ぶ姿がみれて嬉しい限りだ・・・」

そんな、曜とルビィ、2人の喜ぶ姿を見て南と高山も嬉しい限りであった。

 とはいえ、SL人吉のあれとはなんなのだろうか。それについてはあとで話すことにしよう。

 

SL人吉よ 永遠に…~公安特捜班主任南、最後の事件~

 

 そんなわけで、SL人吉に乗るために熊本へ移動、今回は九州新幹線で移動・・・、ではなく・・・、

「でも、なんで在来線で移動?」(曜)

そう、なぜか在来線で移動することに。これには曜も少し疑問であった。というのも、鹿児島本線の博多~熊本間は博多~久留米間を除いてすべて普通か快速での運行だったからだある。九州新幹線を使えば博多から熊本までたったの最速33分で到着するのに在来線では普通と快速を乗り継いで2時間半以上かかるのである。なのに、なんでわざわざ在来線で熊本まで行くのか不思議だったのだ。

 そんな曜を見てか、南、こんなことを言う。

「それは鳥栖駅に着いてからのお楽しみ!!」

むろん、これには、曜、

「?」

と首をかしげるしかなかった。

 

 そして、曜とルビィ、南たちが鳥栖駅に到着するとすぐにホーム上にあるうどん屋さんに行く。このうどん屋さんは全国でも有名なうどん屋さんであり、どのうどん屋さんよりもおいしいと評判であった。

 そんなうどん屋さんの台の上にはいろんな駅弁が置いてあった。その駅弁の1つを南は見つめてはこう言った。

「おばちゃん、この駅弁をください!!」

すると、そのうどん屋のおばちゃんは南が買った駅弁を袋にいれて南に渡すと南は曜に対しその駅弁をみせた、こう言いながら・・・。

「実はこの駅弁を買うために在来線で来たんだ」

 その駅弁を見て、ルビィ、こう言ってしまう。

 

【挿絵表示】

 

「鳥栖SL弁当?」

そう、その駅弁には「鳥栖SL弁当」と書かれていたのである。

 すると、その駅弁について高山が説明をした。

「このSL弁当はSL人吉の鳥栖から熊本までの便とこの鳥栖駅などでしか買えない幻の駅弁なんだ。SL人吉のなかでは予約が必要だから普通に買うには鳥栖駅などで買うしかないんだ」

そう、この「鳥栖SL弁当」は鳥栖~熊本間を往復するSL人吉の鳥栖から熊本までの帰りの便と鳥栖駅などでしか販売されていない幻の駅弁であった。ただし、SL人吉での発売については予約が必要のため、普通に買うには鳥栖駅などの駅で買うしかないのである。なお、このSL弁当を販売している駅弁屋はそれ以外でもかしわ弁当やしゅうまい弁当といったいろんな人気駅弁を販売していることでも有名であった・・・。

 そんな高山の説明のあと、曜とルビィはホーム上のベンチに座りSL弁当を・・・、

 

【挿絵表示】

 

「う~ん、おいしい!!」

「しゅうまいに唐揚げ入りの手巻き寿司がとてもいいハーモニーを奏でているよ!!」(ルビィ)

とおいしく食べていた。そんな様子に、南、高山、ともに、

「とても喜んでくれて光栄だ」(南)

「そうですね」(高山)

と喜んでは一緒にSL弁当を食べていた・・・。

 

 そして、2時間半にわたる列車の旅の終わったあと、熊本駅に無事に到着した。だが、そこからは・・・、

「さあ、D&S列車ショーの開幕だ!!」

と南が喜ぶくらいのD&S列車ショーの始まりとなった・・・。

 まずは・・・、

 

【挿絵表示】

 

「あっ、これっ、乗ったことがある!!」(ルビィ)

「うわ~、変わっていない!!」(曜)

そこに停まっていたのはD&S特急の1つ、あそぼーいであった。これには、曜、あることを思い出してはこう言った。

「たしか、南さんと初めて会ったのもこの列車だったよ!!」

そう、曜とルビィが南と会ったのがこのあそぼーいであった(「復活のA」参照)。それを思い出したのか、ルビィ、こんなことを言ってしまう。

「あれでアレルギーの恐ろしさを知ったんだよね!!あれは本当に怖かったよ!!」

そう、そのあそぼーいのなかで殺人事件が起きようとしたのである、それもアレルギーを使った・・・。これには、南、

「でも、それでアレルギーの恐ろしさを知ったと思う。だからこそアレルギーには気を付けないとね」

と言うと曜とルビィも、

「うん!!」

とうなずいていた。

 続いてきたのは・・・、

 

【挿絵表示】

 

「かわせみやませみだ!!」

「うんうん!!」

そう、かわせみやませみであった。

 ただ、今回はちょっと様子がおかしかった。というのも・・・、

「でも、なんで豊肥本線のホームからなの?」(ルビィ)

そう、やませみかわせみは本来肥薩線の列車である。なのに、なぜか豊肥本線のホームにいたのである。

 だが、これにはちゃんとした理由があった。それを高山は説明する。

「実は(曜とルビィが乗車したあとに起きた)水害で肥薩線がやられてしまったんだよ。だから、今は豊肥本線で走っているわけ」

たしかにその通りであった。曜とルビィが乗車したあとに起きた水害によって肥薩線の線路はおろか端までも流されてしまったのである。そのため、かわせみやませみは現在豊肥本線を走っているのである。

 その高山の言葉を続けるかのように南がこう告げた。

「それにこの水害はいろんな影響を及ぼした。同じく肥薩線を走っていたい「いさぶろう・しんぺい」と「はやとの風」の運行そのものがなくなってしまい別のD&S特急に改造されてしまったんだ」

そう、この水害の影響により「いさぶろう・しんぺい」と「はやとの風」は運行そのものがなくなり「ふたつ星4049」と(今度久大本線を走る)「かんぱち・いそろく」に再改造されてしまったのである。それくらいこの水害が及ぼした影響は計り知れなかったのである。それには、曜、

「本当に悲しいことだよね・・・」

と悲しそうな表情をしていた。

 ところが、そんな曜に対し南は希望に満ち溢れた表情でこうこたえた。

「でも、肥薩線は復活を果たそうとしている。これからも期待できると思う」

そう、肥薩線は復活を果たそうとしていた。先日、肥薩線復活にむけた合意が最終調整にはいったというニュースが流れた。まだ復活できるとは限らないがそれでも復活に期待したいものであった。

 むろん、そんな南の言葉に、曜とルビィ、2人とも、

「「うん、そうだね!!」」

と喜びに満ちた表情で言った。

 

 そして、最後は、

 

【挿絵表示】

 

「うわ~、なにか音楽が流れてきた!!」(ルビィ)

「ジャズの音だ!!」(曜)

そう、ホームではジャズの音色が流れてきたのだ。これには、南、

「この音楽とは・・・、とても通だな」

と逆に喜んでいた。

 そして、ホームに入ってきたのは・・・、

「あっ、「A列車で行こう!」だ!!」(ルビィ)

そう、「A列車で行こう!」であった。すると、曜、あることに気づく。

「あっ、そうか。だから、ジャズの音色が、「A列車で行こう!」があのときも今日も流れていたんだね!!」

そう、「A列車で行こう!」がホームに入ってくるとき、ホームではジャズの名曲「A列車で行こう」が流れているのである。そうすることでこの列車に乗るお客様の旅の情緒を最高潮に達することができるのである。だからこそ南からすれば通と言えたのである。

 そんな「A列車で行こう!」を見て曜がこんなことを思い出してはこう言った。

「でも、南さんと再び会ったときにまさかの時間差トリックを南さんが打ち破るとは驚いたよ、あのころは・・・」

これには、南、

「俺もまさかこんなトリックがあるなんて驚いていたよ」

と言った。それは曜とルビィが再び南と出会ったときのことだった。そこでは特急列車である「A列車で行こう!」が三角駅で休んでいるあいだ、普通列車が追いついてしまうという時間差トリックが起きたのである。それを南が時刻表を見て気づいたのである(「殺人列車で行こう」参照)

 そんな南の姿を見てルビィがこんなことを言った。

「またこの列車に乗ってみたいね!!」

これには、曜、

「うん、そうだね!!」

と喜んでいた。ただ、南からは、

「・・・」

と黙るしかなかった・・・。

 そんななか、「A列車で行こう!」の前で騒ぐグループがいた。

「What!!ジャズが流れるなんて!!」(ニューヨーカー風の少女)

「この列車、ランジェにお似合い!!」(中国人みたいな少女)

「2人とも騒がないでください!!」(真面目そうな少女)

この言葉を聞いて、曜、びっくりする。

「あっ、R3BIRTHの3人だ!!」

この曜の言葉にR3BIRTHの3人が気づく。

「あっ、Aqoursの曜にルビィ!!」(ミア)

「まさか、ここで会えるなんて、ミラクル!!」(ランジェ)

「あっ、陽さんにルビィさん、こんにちは」(栞子)

これには、ルビィ、答える。

「ミアちゃん、ランジェちゃん、栞子ちゃん、こんにちは」

 でも、どうしてR3BIRTHの3人が熊本駅に?それについて、曜、3人にこう尋ねる。

「まさか、3人ともSL人吉に乗るわけ?」

これには、ランジェ、こう答える。

「たしかにその通り!!ランジェはSLに乗りにきたわけ!!」

どうやら、3人とも、SL人吉に乗るために来たようである。

 と、言っているうちに、

ボー

という音が聞こえてきた。どうやら、今回の主役のSL人吉の登場である。これには、ミア、

「うお~!!これがジャパンのSteamTrainなんだね!!」

とはしゃぐように答えていた。ミアもまだまだ子どもである・・・。

 

 

【挿絵表示】

 

 その後、SL人吉に乗り込んだ、曜とルビィ、南たち、そして、R3BIRTHの3人は車内を見てさらに驚く。

「うわ~、展望室がある!!凄い!!」

 

【挿絵表示】

 

そう、SL人吉には展望室があるのである。なので、景色もよかったりする。

 ただ、ルビィはあるものを見つける。

 

【挿絵表示】

 

「あれっ、なんでSLなのでディーゼル車が連結されているわけ?」

そう、SL人吉の後方にはディーゼル車であるDE10が連結されていたのである。これには、南、

「それはちょっと・・・」

と言葉を濁した。

 とはいえ、車掌が外で、

バンバンバン

という銅鑼の音が聞こえてくると出発の合図である。すぐに席に戻る曜とルビィ。すると、10時45分ごろ、

ボー

という音とともにSL人吉は静かに熊本駅から出発したのである。その音に、ルビィ、ミア、ともに、

「ついに出発だね!!ワクワクするね!!」(ルビィ)

「ボク、なんかドキドキしている!!」(ミア)

と出発のSL人吉の汽笛にワクワクドキドキしていたのである。

 

 そんなわけでSL人吉は高速・・・ではなく普通の列車と比べてゆっくりと動いていく。そのため、景色もゆっくりと動いていく。これには、栞子、

「ゆっくりと景色が見れるなんて情緒あふれるものですね」

とその景色を絶賛していた。

 そんななか、南がまたお弁当を持ってきてくれた。これには、曜、

 

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「えっ、86弁当!!」

と驚く。86とはSL人吉である8620形の愛称である。昔から8620形のことをみんなからはハチロクと呼んでいたのである。それくらい8620形はみんなから愛されていたのである。

 

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 そんな愛称がつけられているSL86弁当であるがなかにはおにぎりやオムライス風にぎり、ハンバーグなどが入っていた。これには、ランジュ、

「うわ~、とてもうまい!!」

と絶賛していた。

 

 そして、玉名に11時36分に到着すると9分間停車することになっていた。そのあいだ、SL人吉の8620形の前では煙をもくもくするべく機関士が石炭をボイラーに投げ込む姿がみれた。

 すると、曜、あることに気づく。

「あれっ、千歌ちゃん、どうして機関士に?」

そう、そこにはなぜか千歌の姿があった。その千歌は曜とルビィに対し、

「あれっ、曜ちゃんとルビィちゃんもこのSLに乗っていたんだね。奇遇だね!!」

と言ってしまう。むろん、ルビィも、

「なんでここにいるの、千歌ちゃん?」

と聞き返す。

 すると、千歌、こう答えたのである。

「だって、私、SLの機関士の資格、あるもん!!だから、ここにいるまいてつさんとゴーヤちゃんと一緒に運転しているわけ」

そう、千歌、なにをかくそう、100もの資格を持つ人だった。むろん、そのなかにはなぜかSLの機関士の資格もあった。なので、千歌はSLを運転しているのである。これには、ミア、驚いてしまう。

「まさか千歌にそんな能力があるなんて、サプライズ、だね!!」

 すると、千歌、調子にのってか、

「それじゃ、私が石炭をボイラーにいれるところ、みせるね!!」

と石炭をボイラーに投げ入れるところをみせてくれた。これには、ランジュ、

「ダイナミック!!」

と目をパチクリしながら驚いていた。

 そんななか、1人の子どもが曜に近づいてくると、

「あれっ、どうしたの?」

と曜がその子になにか聞いてみた。

 すると、その子どもはこんなことを言ってきた。

「いいないいな、最後の最後に本物のSLに乗れるなんて・・・」

この子どもの言葉に、曜、

「たしかに私たちはこのSL人吉に乗っているけど・・・」

とちょっと戸惑うと、その子、いきなりこんなことを言ってきた。

「僕なんて本物のSLに乗れないのに!!」

これには、曜、

「えっ、それってどういうこと?」

とその子に尋ねるとその子はあることを言ってしまった。

「僕だって、今日、玉名から熊本までSL人吉に乗るけど、それって本物のSL人吉じゃあいもん!!」

その子どもの言葉に、曜、

「えっ、SL人吉に乗れるのに本物のSLじゃない?」

とさらに戸惑いをみせつつもその子に再び問い直すとその子はある事実を曜に告げた。

「だって、鳥栖駅にはSLに必要なものがないもん!!」

これには、ルビィ、

「えっ、それってどういうことなの?」

とその子に言い返すもその子はただ、

「最後に本物のSLに乗りたかったよ!!」

という言葉を残して去ってしまった。

 と、ここで栞子が南にこう尋ねた。

「あの子がいう最後ってどういうことなのですか?」

そう、その子の「最後に」と言うって去っていったのである。これには、南、こう答える。

「実は明後日の運転をもってこのSL人吉は引退するんだ」

そう、実は、SL人吉、明後日の3月24日をもって引退が決まっていたのである。その理由について高山は話してくれた。

「一番の原因は100歳の高齢ていえるくらいの老朽化なんだ」

たしかにその通りであった。SL人吉に使われている8620形は100年以上前のSLである。このSL人吉も今年で100歳を迎えるくらいの高齢である。それくらい老朽化は目に見張るものだった。また、SL人吉の部品や技術者の調達も難しいこともありSL人吉は引退が決まったのである。

 そして、南はその日程について答えてくれた。

「今日3月22日をもって通常の運行は終了、3月23日は特別運行、3月24日は引退運行なんだ。一般のお客様をのせての運行は3月23日の特別運行で最後、だからあの子は「最後の」と言っていたんだ」

これには、曜、

「その最後のSLの津城運行に乗れるのだったあの子も喜んでいるはずなのになんで悲しんでいるのかな?」

と首をかしげてしまう。たしかにあの子もこのあとの玉名から熊本までの帰りのSL運行に乗れるのであれば喜んでいてもおかしくないのになんで悲しんでいるのか不思議でならなかったのである。

 そんな曜をみてか、南、

「たしかに、あの子、玉名から熊本のSL人吉に乗るって言っていたよな」

と言うと少し考えてみた。すると、南、

「なるほど。だからあの子は「本物のSLじゃない」って言ったのか」

となにかわかったのか曜に対しこんなことを言った。

「あの子の気持ち、わかった気がする」

といってはデッキの方までいってしまった。これには、ミア、

「南って人、一体どうしたいわけ?」

となにか怪しんでいた。

 そして、5分後、

「ようやくまとまった。これならあの子も喜ぶはずだ!!」

と1人だけ納得の表情。これには、ランジュ、

「なんかアイデアがあるみたいだね」

と言うと南も、

「もちろん!!」

と喜んでいた。

 だが、その一方で曜とルビィはあの子が言った「本物のSLじゃない」という言葉の意味を知りたくて南に対し、

「ところであの子が言ったあおの言葉の意味ってなんなの?」(曜)

「教えて!!」(ルビィ)

とお願いすると南はこんなことを言った。

「それは鳥栖駅に到着すればわかるはずだよ!!」

と言ってしまった。

 果たしてあの子がいった「本物のSLじゃない」の意味とは何なのだろうか?



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曜とルビィの事件簿最終章 SL人吉よ 永遠に…~公安特捜班主任南、最後の事件~ 後編

 そして、ついにSL人吉は鳥栖駅に到着した。到着しても千歌をはじめとする機関士たちはお客様のために石炭をボイラーに投げ入れては煙をもくもくあげていた。

 一方、あの子の言葉の真意をしるために曜たちは鳥栖駅構内にあるものを探していた。それは・・・、

「SLに必要なもの・・・、SLに必要なもの・・・」(曜)

そう、SLに必要なものだった。それが「鳥栖駅にはない」その一言が気になって仕方がなかったのだ。

 であるが・・・、

「What!!それ、どこにあるんだよ~」(ミア)

とそれがなにかわからないものだった。

 そこで、南がそれについてあるヒントをだす。

「普通の列車ならどの方向でも動かすことができるのだけど、SLにはちゃんと前と後ろがある。じゃ、どうやって前と後ろを転換させる?」

その言葉に栞子はあることを思い出したのかこう答えた。

「あっ、もしかして、SLの前後を転換させる施設・・・、例えば、転車台・・・、じゃないでしょうか?」

これには、高山、こう答えた。

「栞子ちゃん、正解!!この鳥栖駅には転車台がないんだ」

そう、鳥栖駅にはSLを転換させるための施設、転車台がなかったのだ。SLはバックすることもできる。だけど、テンダー、石炭をいれるための車両が後ろに連結しているため、バック走行は危険なのである。そのため、SLの前後を転換させるための施設、転車台を必要とする。その転車台が鳥栖駅にはなかったのだ。

 と、ここで1つの疑問が生じる。それは・・・、

「でも、どうやって熊本駅までSL人吉は行くの?」

そう、どうやって熊本まで戻るのか、である。これについて、南、

「それは帰りの便のときにわかるよ」

と答えを教えてくれなかった。

 

 そして、帰りのSL人吉に乗ることに。すると・・・、

「あれっ、なんかSLの音が聞こえてこないね」(ルビィ)

そう、SLの音が聞こえてこなくなったのである。普通ならSLの走行音が聞こえてくるのだがそれが全然なかったのである。これには、みんなびっくり。そんなみんなに対し高山があるヒントを出す。

「よく思い出してくれ。このSL人吉にはもう一台ある車両を連結しているでしょ。それってなにかな?」

これには、曜、思い出したかのようにこう答えた。

「あっ、ディーゼル車が連結されていた!!」

そう、SL人吉には後方にディーゼル車であるDE10を連結していたのである。その言葉を聞いて、ルビィ、ある答えを導き出した。それは・・・、

「あっ、もしかして、今の、帰りはそのディーゼル車に引っ張ってもらっていくんだ!!」

このルビィの答えに南はすぐに反応する。

「ルビィちゃん、正解!!実は鳥栖駅に転車台がないためにわざわざディーゼル車を使って引っ張ってもらいながら帰るんだ」

そう、SL人吉は、帰り、ディーゼル車DE10を使って熊本まで戻るのである。

 ただ、これについてランジュが文句を言う。

「それってSLじゃない!!」

この言葉に高山はこう発言する。

「たしかにある人からみたらこれはSLの旅じゃなくてディーゼル車の旅とみられてもしかたない。そう考えるとあの子がそう言ったといってもおかしくはない」

そう、あの子が「SLじゃない」と言った理由はそこにあった。普通の人ならSLに乗れるのでそれはSLの旅だといえるかもしれなかった。だた、SL人吉の帰りの運行は直接SLを使った運行ではなくディーゼル車を使っての運行であるとみればそれを「SLの旅じゃない」

と言う人もいるかもしれない。その子はその考えがゆえに「SLじゃない」と言ったのである。

 そして、案の定、その通りになった・・・。ディーゼル車での運行のために行きのときみたいに9分間などといった長い停車時間なんてなく塔ちゃうしたらすぐに出発といったことが起きていただけでなく、玉名から乗ってきたその子も、終始、

「こんなの楽しめない!!」

とだだをこねるような仕草や言動が大きくなった。

 その後、熊本駅に到着したとたん、その子、

「もうこれだけなの・・・。なんか嬉しくない・・・」

と暗い表情をしていた。

 そんなときだった。突然、南がその子に駈け寄るとある切符をその子に渡した。その切符とは・・・、

「はい、明日の帰りの切符!!」

そう、それは南がその子のために用意した明日のSL人吉の帰りの切符だった。これにはその子の両親も、

「あっ、ありがとうございます!!」

とお礼を言うもその子はただ、

「それって今日と同じだよ!!だから、ヤダ!!」

とまただだをこねては泣き出してしまった。

 だが、南はあることをその子に言った。

「大丈夫!!!明日は今日と同じじゃないから!!」

それを聞いたのか、その子、すぐに泣き止むとすぐに南に対し、

「それ、本当なの?」

と尋ねると南は、

「本当!!」

と答えてくれたのである。そんな南の姿に、曜、

「それって大丈夫なの?」

と問うと、南、

「大丈夫!!」

と元気よく答えたのである。

 

 翌日の3月23日、その日は熊本駅の出発が7時40分だったため、新幹線で熊本に行った曜とルビィ、南たち、そして、なぜかR3BIRTHの3人。だが、今日は昨日とは状況が変わっていた。というのも・・・、

「あれっ、SLの向きが昨日と逆じゃない!!」(ランジュ)

そう、普通なら鳥栖にSLが連結されているのに今日はその逆、八代側にSLが連結されていたのである。

 そんなわけで・・・、

「今日は行きがディーゼル車での運行なんだなんだ・・・」(曜)

そう、今日の運行、特別運行は通常の逆、行きがディーゼル車での運行、帰りはSLでの運行となっていたのである。というのも、これがSL人吉での通常運行最後ということもあり、運行区間も博多~熊本間に延ばしただけではなく、博多駅では記念出発式典を行う力のいれようだったのである。

 そんなわけで、行きはディーゼル車での運行を楽しんだあと、帰りは・・・、

「うわ~、人、人、人、だらけです」

と栞子が驚くぐらい博多駅のホームでは人でいっぱいであった。みんなSL人吉にお別れを言いに来ていたのである。

 

 そして、出発式典のあと、SL人吉は・・・、最後の通常運行に向けて出発した。これには、ルビィ、

「なんか最後って本当に悲しくなるね!!」

と涙を流していた。

 その後、曜たちを感動させたのは、昨日とは違う風景、車窓から見えるSL人吉に向けたみんなからのラストメッセージであった。どの盤面においてもSL人吉に向けてお別れのために手を振る人々、そして、

「SL人吉、長い間ありがとう」

「さよなら SL人吉」

といった横断幕であった。これには、ミア、

「す、すごい!!みんな、SL人吉LOVEなんだね!!」

と感動するくらいであった。それこそSL人吉がみんなから愛されている証拠なのかもしれない・・・。

 

 

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 そして、玉名に到着した。ここではあの子が親を連れてやってきていた。その子の両親は南に対し、

「あとはお願いします」

と言ってその子をSL人吉に乗せるとともに、

「もしかして、僕、このSL人吉に乗れるってことなの?」

と言うと南も、

「ああ、そうだよ」

と元気よく答えたのである。

 その後、その子は元気よくこう答えてくれた。

「うわ~、これがSLの旅なんだね!!SLって力強いんだね。大きんだね!!」

とはしゃいでいた。ここは1号車の展望室。ここからSL人吉である8620形が見えていた。今現在、千歌たち機関士たちは前の方で一生懸命石炭をボイラーに向けて投げ入れていた。それによりこのSL人吉は最後の旅の終着駅に向けて一生懸命走っていた。ただそれだけかもしれない。だけど、SL人吉は1人の子の夢を、SLという夢を大きくなるくらい前に向けて・・・、

「僕、絶対にSLの運転手になってみせる、絶対に!!」

というその子の夢を大きくさせるかのように前へと進んでいた・・・。

 

 こうして、

「熊本~、熊本~」

というホームからの声とともにSL人吉の通常運行が終わった。ただ、それでもその子は、

「僕、将来、SLの運転手になるんだ~」

という自分の夢を大きくしていた。これには、曜、ルビィともに、

「君なら絶対になれると思うよ」(曜)

「ルビィもそう思う!!」(ルビィ)

とその子の夢の後押しをしていた。また、R3BIRTHの3人も、

「将来、君の運転するSLに乗りたいわ~」(ランジュ)

「このときは絶対に呼んでよ!!」(ミア)

「千歌さんがなれるのですから絶対に大丈夫です」(栞子)

とその子の夢の後押しを続けていた。

 そして、最後にSL人吉を運転していた千歌がその子に近づき、

「君なら絶対になれる!!千歌がそのお墨付きだよ!!」

と言うとその子は元気よく、

「ありがとう。僕、絶対にSLの運転手になる!!」

と自分の夢を確信へと昇華させようとしていた・・・。

 そんなみんなの風景をみていたのか、南、少し涙ぐんでいた。それを、高山、南に対して、

「南さん、なんで感慨ふけっているのですか?」

と尋ねると南はこう答えた。

「これこそが日本の明るい未来だと思わないかね」

これには、高山、

「たしかにそうですね」

と南の言葉に同意していた。

 

 こうして、曜とルビィはSL人吉での最後の・・・、いや、南たちとの最後の旅は終わった・・・。それは曜とルビィにとって人として大きく成長させるものだったかもしれない。ただ、それでもついに長かった旅ももうじき終わる、そのことを2人が自覚するのは、このあとの、南たちとの最後のとき、だったのかもしれない・・・。

 

 



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曜とルビィの事件簿最終章 さよなら・・・

 翌日、3月24日、SL人吉は最後の運行を、地元の人を乗せての熊本~八代間の運行を終え、100年以上に渡る自分の旅を締めくくったのである。

 

 その日の夜、八代駅には、曜、ルビィ、だけでなくヨハネやずら丸といったAqoursの面々、そして、南たちの最後の旅に付き合ってくれたニジガクの面々がずらり並んでいた。

 そして、その人たちを代表して南たちと旅のほとんどを付き添っていた曜とルビィが南たちに対してこんなことをを言った。

「南さん、これまで本当にありがとう。これで最後になるなんて本当に悲しいよ」(曜)

「うん、本当に寂しい・・・。ずっといたかったよ・・・」(ルビィ)

曜とルビィはわかっていた、これが本当に最後のお別れだと。ずっと会うことなんてできない、そうみえたのだから。この物語はこれまでの物語とは違う。本当の最終章、Lastである。もうこの次なんてない、そう2人は感じたのかもしれない。

 ただ、南は曜とルビィに対しこう告げた。

「たとえこれが最後の別れといっても心のなかではずっとつながっているものだ。だからこそ、まだ諦めずに頑張ってほしい」

これは南なりの2人に向けた精一杯の別れに挨拶であった。南もこの2人と別れたくないかもしれない。だが、物語にだって最初があれば最後もある、そのことを意識したのかもしれない。

 そんな南に対し高山がこう言った。

「南さん、もうじき最終列車が到着します」

この言葉に南は、

「ああ、そうだな・・・」

と元気よく答えたのである。

 そして、南は千歌に対し、

「千歌よ、最後まで裏方として頑張ってくれた。本当にありがとう」

と言うと千歌も、

「もうアランさんたちとは会えないけどこれまで一生懸命頑張ってきたからね。これからも頑張っていくからね!!」

と元気よく答えてくれた。千歌はこの物語群における最大の功労者かもしれない。裏方とはいえこの物語群のために一生懸命頑張ってくれたといえる。その意味でもこの物語群最大の功労者である。

 そんな千歌に対しアランはあることを言った。

「千歌よ、これはもしものときがあったら千歌が力になるための封印だ」

といって千歌の頭に指を突きさして気を送った。ただ、これには、千歌、

「?」

とハテナになるだけであった。

 

 そんななか、ついに新庄さんの物語への最終列車が到着した。ただ、この列車を見て曜は驚いた。

「えっ、SL人吉!?」

そう、そこにいたのはSL人吉であった。今さっきまで最終運行していたはずのSL人吉がそこにいたのである。ただ、これについては南がこう説明した。

「たしかにSL人吉だけど私たちをもとの世界に戻るための列車でもあったんだ」

そう、SL人吉は人の物語と物語をつなぐ架け橋的な存在だった。実は南たちが初めてここに来たのもSl人吉を使ってのことだった。そのため、「復活のA」のときにSL人吉が動かなくなったあそぼーいの救援にすぐにこれたのである。とはいえ、最初がSL人吉であれば最後もSL人吉であるというのは何かの縁、いや、SL人吉が物語と物語をつなぐ架け橋である証拠、なのかもしれない。

 とはいえ、そのことを考えるふける余裕はなくSL人吉に乗り込む南たち、そして、窓から手を振る南たちをまえに曜たちはただ、

「さよなら、さよなら」

というお別れという悲しみに満ちた声をあげて「さよなら」を言っていた。むろん、南たちも、

「さよなら」「さよなら」

とこちらもお別れを言っていた。

 そして、南たちを乗せたSL人吉は動き始めた。各人ともSL人吉を走って見送る。その後、ホームの端に曜たちが到着したとき、SL人吉は銀河鉄道999と同じように上空へと駆け上り、そして、見えなくなった。これには、曜、ルビィ、ともに、

(これまで本当にありがとう、南さん、そして、みんな・・・)(曜)

(ルビィ、このことは絶対に忘れないよ!!)(ルビィ)

と心の底からそう思ったのである。

 

 そして、なにも見えなくなったあと、

「あれっ、なにか落ちている?」

と曜はなにかを見つけた。それはただの鍵であった。それを見て曜はこう思った。

(なにかとても重要かもしれないもの・・・。でもそれがなにかはわからない・・・。大事にしておこう)

その鍵はなにかわからない、だけど、なにか大事なものだと曜はわかっていたのかもしれない。

 とはいえ、すべてが終わった、そう思った曜とルビィはこんなことを話していた。

「でも、最後の旅って本当に楽しかったね!!」(曜)

「たしかにそうかも!!思い出すだけで本当に楽しい気分になる!!」(ルビィ)

その思いとともに2人は、最後の、南たちとの、旅の思い出を、3つの事件のことを思い出していた・・・。h

 



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曜とルビィの事件簿最終章 謎の列車 前編

なぞの列車

 

♪~(ゴスペルの歌声)

あたり一面に鳴り響くゴスペルの声、これには、曜、ルビィ、ともに、

(う~ん、これがゴスペルなんだね!!ココロがワクワクするよ!!)(曜)

(とても凄いよ、この迫力!!ルビィ、こんなの、体験したこと、ないよ!!)(ルビィ)

ととても感動していた。

 ここはハウステンボス。曜とルビィ、そして、南をはじめとする公安特捜班の面々はアムステルダム広場の教会前で行われているゴスペルショーに驚きを感じていた。ハウステンボス、そこは異世界の入口、1年を通して憧れの異世界をみんなに提供してくれる場所である。そして、今回は年末年始の休みを使ってハウステンボスに遊びに来ている曜とルビィ、南たちに異世界の素晴らしさを提供しようとしていたのである。

 そんななか、曜たちのそばではしゃいでいる3人がいた。

「これがゴスペルなのですね!!とてもいい音色です!!」(スクールアイドル風の少女)

「本当にそうだね!!私、このゴスペルを取り入れたほうがいいと思うの」(なんか優しそうにみえる少女)

「たしかにそれはありかもしれません」(大和撫子のような少女)

と騒いでいた。これには、曜、

「なんか聞いたことがあるような声だね」

とちょっと気になったのかその少女たちを見る。すると、はっとしながら曜はこう言った。

「あっ、ニジガクのAZUNAの3人だ!!」

そう、そこにいた3人組とはニジガクのAZUNAの3人であったのだ。この曜の言葉にAZUNAの3人が声を上げる、次々と・・・。

「あれっ、曜さんじゃありあせんか」(スクールアイドル風の少女ことせつ菜)

「あっ、お久しぶりです!!」(優しそうな少女こと歩夢)

「ここで会えるとは本当に奇跡です!!」(大和撫子のような少女ことしずく)

 すると、ルビィもAZUNAの3人を見てこう告げた。

「AZUNAのみんな、去年のラブライブ!9周年記念ライブのとき以来だね!!本当に会いたかった!!」

えっ、曜とルビィ、AZUNAの3人は出会ったことがあるの!?そう、実はAZUNAの3人は曜とルビィとすでに出会ったことがあるのでる。というのも昨年に行われたラブライブ!(大会の)9周年記念ライブのときに特別ゲストとしてAZUNAを含めたニジガクのメンバーが参加していたのである。むろん、レジェンドスクールアイドルである(曜とルビィを含めた)Aqoursもこのライブに参加していたため、そこで、曜とルビィ、そして、ニジガクの接点ができていたのである(詳しくは「SNOW CRYSTAL」の「NEXT SPARKLING!!」第5話を参照してください)。

 そんなAZUNAの3人に対して曜はこんなことを言う。

「このゴスペルショーってすごいね!!」

するとせつ菜がこんなことを言ってきた。

「本当です!!このあとはたしか・・・」

その瞬間、ゴスペルショーは佳境を迎えたのか、

♪~!!

というゴスペルの歌声が終わると同時に、

ドド~ン!!

という教会の後ろから花火が討ちあがったのである。これには、ルビィ、

「うわ~、凄い、凄い!!」

と喜んでいた。むろん歩夢、しずくも、

「とても綺麗~」(歩夢)

「とても感動的です」(しずく)

と歓喜の声をあげていた。

 そんな2人を見てか、せつ菜、あることを言い出してきた。

「なるほど、こんな演出もありといったらありですね~」

あまりに謎めいた声に、曜、ちょっと気になったのかせつ菜に対し、

「せつ菜ちゃん、なにを言っているの?」

と尋ねてみた。

 すると、せつ菜、こんなことを言ってきた。

「今度のお祭りの参考にしようとしているのです。この演出をすればお祭りはさらに盛り上がります!!」

実は、AZUNA、今度ニジガクのあるお台場のお祭りの参考にしようとハウステンボスに来ていたのである。お台場に根付いたお祭りにするべくAZUNAの3人は少しでも日本一のテーマパークであるはハウステンボスのイベントを楽しんではそのノウハウを吸収しようとしていたのである。

 そんなAZUNAの3人を見て、曜、こんなことを言った。

「やっぱりAZUNAのみんなは凄いよ、お台場のために頑張れるなんて!!」

これには、せつ菜、

「そんなことはないです。どんなときでも好きなものを追い求めるのはとてもいいことですから!!」

と謙遜しつつも自分のやるべきことを言うと、ルビィ、

「それこそAZUNAのいいところだよ!!」

とAZUNAの3人のことを褒めていた。

 

 こうして曜とルビィはAZUNAとの再会ののち、

「南さん、私たち、AZUNAのみんなとイルミネーションを見てくるね!!」(曜)

と言っては南たちと別れたあと、AZUNAのみんなと一緒にハウステンボスのイルミネーションを見て回ることにした。ちなみに、ハウステンボスのイルミネーションは日本一ということもあり、

「とてもイルミネーションが綺麗だね!!まるで光の王国だよ!!」(ルビィ)

「ルビィさん、このイルミネーションそのものが光の王国というそうです」(しずく)

「でも、それくらいこのイルミネーションが綺麗ということだよね!!!」(歩夢)

と日本一のイルミネーションを楽しんでいた。

 一方、南たちはというと・・・、

「南さんがこんな白い観覧車に乗るなんて意外ですね」

と高山に言われると、南、

「べ、別におかしくなんかないだろうが!!」

と顔が赤くなりながらも怒っていた。そう、特捜班の南と高山は男二人で白い観覧車に乗っていたのである。むろん、南のイメージから白い観覧車に乗ること自体意外と思ってしまうのだが、意外にも、南、

(この日本一のイルミネーションを高いところから見るのも乙なものだ・・・)

とロマンティストだったりする。それくらい、南もこのハウステンボスを楽しんでいたのである・・・。

 

 その後、曜とルビィ、南たち特捜班は、この日、ハウステンボスを楽しんでいた。だが、その翌日、まさかの大事件に巻き込まれるなんて今は知る由もなかった・・・。

 

 そして、ついに大事件が起きるその日を迎えてしまった。この日もハウステンボスで南たちと一緒に遊ぼうとする曜とルビィ、この日はアトラクションタウンでVRのジェットコースターに乗ろうとしていた。

 だが、ついに運命のときを迎えてしまった。10時半ごろ、VRのジェットコースターの列に並んでいた南のスマホに、

プルルプルル

という着信音が聞こえてきた。これには、南、

「おっ、誰かからか連絡が来た。すまない」

と電話に出る。すると、南は隣にいた高山に対しこう言った。

「高山、事件だ!!すぐに現場に向かうぞ!!」

これには、曜、

「まさか、事件・・・」

と南に言うと南もそれに対して、

「あぁ、佐世保駅前で人が刺されたということだ・・・」

と答えるとルビィも、

「それじゃ・・・」

と前年そうにいる。そう、南たちは今から仕事に入るのである。むろん、これは仕事であり、そんなこともあってか残念そうに見るルビィに対して、南、

「これも仕事のうちだ。それじゃ行くことにする」

とたんたんと答えてくれた。

 だが、そんなルビィだからこそ南に対しこう言ったのである。

「それじゃ、ルビィたちも行く!!」

このルビィの言葉に、南、

「おいおい、これまでみたいに事件に巻き込まれたわけじゃないんだぞ!!それなのに自分から事件に巻き込まれるなんて・・・」

と心配そうに言う。たしかにこれまでの事件は曜とルビィが事件に巻き込まれるパターンがほとんどだった。だが、今回は曜とルビィは自ら事件に巻き込まれようとしている、それを南は心配になったのである。

 だが、ルビィと曜の決意は固かった。ルビィは南に対し、

「それでもいいもん!!南さんとルビィたちは一心同体だもん!!」

と自分の決意を言うと曜も、

「ルビィちゃんの言う通りだよ!!私も南さんたちと行く!!」

と自分の決意を語った。これには、南、

「うん、わかった。2人とも連れていく!!」

と言うとともに、

「でも、俺の言う通りにしてくれ!!」

と2人に注文をつけたのである。これには2人とも、

「「うん!!」」

とうなずいた。

 こうして、南たちと曜、ルビィはついに事件に立ち向かうことにしたのである。

 

 というわけで事件現場へ・・・、といいたいところだが、

「でも、なんで列車で移動なの?」

そう、なぜか列車で移動していたのである。これには、南、こう答える。

「もしかするとこのルートで犯人が移動している可能性もあるじゃないか」

 ただ、南はこうも思っていた。

(たしかにこのルートを犯人が使うことがあるが、YC1系乗ってみたかったのもあるんだけどな・・・)

YC1系、九州総局(JR九州)が誇るハイブリットエンジンを積んだ気動車である。また、そのYC1系は長崎~佐世保間しか運行していないため、南が乗りたいのもわかる気がする・・・。とはいえ、講師てハウステンボス~佐世保間を列車で移動することになった曜とルビィ、南たちはハウステンボス10時39分発のシーサイドライナー早岐行きに乗る。シーサイドライナー、これは長崎~佐世保間をつなぐ(YC1系を使った)快速列車である。ただ、南たちが乗るこのシーサイドライナーであるが通常なら佐世保が終点なのだが早岐で終点というのもこの列車のみであった。ある意味レアな運行であった。でも、佐世保に行きたいのに・・・、という心配が残るがそれも心配する必要はない。だって・・・。

 そうこうしているうちに南たちが乗るシーサイドライナーは早岐に10時44分に到着、このシーサイドライナーはここで終点であるため、このあとの佐世保までの移動が・・・、とそこには、

「あっ、別の列車が止まっている!!」

そう、隣には佐世保行きの列車が止まっていたのだ。この列車は長崎を8時18分に出発、ハウステンボスを10時05分に出発、早岐に10時10分に到着する佐世保行き普通列車であるがその早岐で40分以上停車して10時55分に早岐を出発、大塔、日宇に停車して11時06分に佐世保に到着するのである。この列車に乗り込む曜とルビィ、南たち、そんなおとき、

「あっ、陽さん、こんにちは!!」

と声がした。これには、曜、

「あっ、歩夢ちゃんたちだ!!こんにちは!!」

と挨拶を返す。そう、どうやら歩夢たちAZUNAの3人もこの列車に乗り込むみたいだ。これには、ルビィ、

「なんかとても偶然!!」

と偶然なことに驚いていた。そんなルビィを見てか、せつ菜、

「これこそ、奇跡、です!!」

と喜んでいた。

 こうして佐世保行きの列車に乗り換えた曜とルビィ、南たちと歩夢たちは10時53分定刻に早岐を発車、順調に佐世保に向けて運転していた。そんななか、日宇を出発したときにしずくがせつ菜に対してこう言ってきた。

「ちょっとお花摘みに・・・」

どうやら、しずく、お花摘みに・・・、いや、トイレに行きたいみたいである。これには、せつ菜、

「わかりました!!」

と言っては、しずく、トイレのある車両へと移動することにした。

 そして、しずくはトイレの近くまで行くとあることにびっくりしてしまう。

「トイレが広い・・・」

そう、YC1系のトイレはとても広いのである。通常の列車のトイレは畳1畳分の広さしかないのだがYC1系のトレイは2畳以上の広さを有していた。というのも、YC1系のトイレは車椅子の方でも使いやすいように通常より広くしているのである。そのかわり、トイレの逆サイドでは椅子なんて設置していないのであるが・・・。

 そんなことを気にしつつしずくはトイレをすましてはトイレの外に出た。そんなとき、

(えっ、なんか筋者みたいな人がいるのだけど・・・。ちょっと怖すぎです・・・)

としずくはある恐怖を感じていた。なんと、一目で筋者であることがわかる、そんな男をみかけたのである。これにしずくは恐怖を感じたのだが、しずく、

(ここは早く戻らないと・・・)

と思ってはすぐに南たちのもとに戻ると南に対し、しずく、こう告げた。

「南さん、今さっき、筋者みたいな男の人をみかけました・・・」

これには、南、

「わかった。ちょっと気にしておこう」

と言うと高山に対して、

「高山、すまないがその男を見張っておいてくれ」

と言ってはその男を見張ることにした。

 

 その後、佐世保に11時06分に到着した曜とルビィ、歩夢たちはみんな一緒になって別の特捜班のメンバーに守られながら改札口へ。南と高山はその男を見張るような形でその男のあとを追った。そして、その男が改札を出ると、

「肥(ひ)、県議刺傷事件の容疑の疑いで任意同行を求める!!」

と4名以上の警察官がその男を囲んでしまった。これには、その男、

「なにもしてない俺様が警察官に囲まれるとはな・・・」

と不満そうな表情で言った。

 そこで、南、この状況に陥った原因を確認すべく近くにいた刑事に対し、

「私は東京公安室公安特捜班の南です。今の状況はいったいなんなのですか?」

と尋ねるとその刑事はこう答えてくれた。

「実は先ほど佐世保駅付近で起きた県議刺傷事件の重要参考人として肥に任意同行を求めたのです」

どうやら、その男こと肥に先ほど佐世保駅で起きた県議刺傷事件の重要参考人として任意同行を求めたようである。

 さらにその刑事はその肥について詳しく南に教える。

「この肥なのですが全国有数のやくざに属しているとても有名なヒットマンなのです。その肥が近々(今日ターゲットになった)有名県議を刺す、という情報が入りまして、そして、今日、その県議が刺された、そんなこともあり、この肥を探して見つけた次第なのです・・・」

どうやら、この肥、とても有名なヒットマンであり、今日県議が刺された、ということもありこの肥を重要参考人として見つけては任意同行を求めていた、というわけである。

 ところが、その肥はこんなことを言い出してきた、大声で・・・。

「俺様はなにもやっていない!!やっていないからやっていない!!」

どうやら、肥、容疑を完全否定しているようだ。そんな肥に対し警察官の1人がこう言った。

「いや、県議を刺したのはお前だろうが!!」

 だが、その肥はこんなことを言い返す。

「俺様は10時くらいまでハウステンボスにいたんだ!!調べればわかることだ!!」

どうやら、肥、10時くらいまでハウステンボスにいたようだ。そんな肥の証言が本当なのか刑事はすぐにハウステンボスに連絡をとった。すると・・・、

「え~、たしかにそのお客様なら10時前までハウステンボスにいました」

とのこと。どうやら国内の防犯カメラに肥が10時前まで映っていたようである。

 そして、その証拠をもとに肥はこんなことを言った。

「俺様はハウステンボス10時05分発の佐世保行き普通列車でここまで来たんだ!!その列車は早岐で40分以上停車する。だからこそ、その県議が刺された時間にはその事件現場に行くこと自体不可能なんだ!!」

むろん、その焼香を確認、その列車というのが・・・、そう、南たちが乗ってきた列車っであった。すると、その列車の運転手がハウステンボス駅で乗車する肥を目撃していた、という証言も出てきてしまった。

 そういうことなので、南、すぐに時刻表を確認する。たしかに肥が乗っていたという普通列車はハウステンボスを10時05分に出発したその普通列車は確かに佐世保行きではあるが早岐で40分以上止まっていることが確認できた。このため、肥が言う通り、この普通列車にずっと乗っているのであれば県議が刺された10時半ごろにその現場に行くのは不可能であった。また、南はこう考えていた。

(あと、しずくさんが見た男も肥だったはず・・・)

そう、しずくが見かけた筋者の男は肥であった。というのも、しずくが肥を見かけてからずっと高山がその肥を見張っていたのだから・・・。その普通列車の運転手としずくの証言から肥がこの列車に乗っていたことは明白であり、そのため、肥のアリバイは成立しようとしていた。

 だが、南はあることに気づいた。時刻表を見ながら肥を囲んだ警察官に、

「ちょっとこの男に聞きたいのだが」

と手帳を提示してその警察官の了解を得ると肥に対してこんなことを言った。

「肥、あなたは特急を使いませんでしたか?」

そう、南はあることに気づいた。実はハウステンボスを10時05分に出発するその普通列車は早岐に10時10分に到着してからすぐにみどり13号が10時13分に早岐を出発、10時24分に佐世保に到着するのである。これなら犯行時間に間に合う・・・のだが、肥は南に対しこう言い返した。

「俺様は特急を使っていない。その小kに俺様は特急券を持っていない。それはどう説明する?」

この肥の証言をもとに警察官は佐世保駅の駅員に対し肥の特急券を、早岐~佐世保間の特急券を探すようにお願いをするも佐世保駅の駅員はすぐに、

「肥さんの特急券なんてありません」

と答えてきた。これには、南、困惑する。

(特急券がなければ特急に乗ることなんてできない・・・)

たしかに普通なら特急に乗るのに乗車券意外に特急券が必要となる。なのでその特急券がなければ特急にのることなんて普通ならできないのである、普通なら・・・。

 そんなわけで南は仕方なく肥に対し、

「たしかに肥の特急券なんてなかった・・・」と白旗を上げざる終えなかった。ただ、南はあることを考えていた。

(でも、駅員のすぐの対応、なにかひっかかる・・・)

そう、駅員は肥の特急券がないか尋ねたのに対しすぐの対応で「ない」と答えたのである。これには、南、ひっかかるところがあった。また、慣れていないとはいえ、肥が本当にハウステンボスを10時05分に出発し早岐に40分停車している普通列車にずっと乗っているのか疑問だった。だって、早岐で40分以上も停車しているのずっと待っていると考えると肥のアリバイは少しへんだと思ってしまう、だって、本当なら40分以上ずっと早岐に待っていることなんて考えずに別のルートで早く行く方法を考えるのが妥当だからだ。そのことを考えると南は肥のアリバイは少しへんであると考えてしまったのである。とはいえ、今のところ、肥のアリバイは成立している、そんなこともあり、肥は保釈されることになった。 

 だが、南は今なお残る疑問を解決すべくある者を呼んだ。

「アランに千歌、ちょっとお願いがある」

その者とは、南の陰となって動いている潜入捜査員、ご存じアランとこの物語世界の捜査員ことこちらもご存じ千歌であった。千歌はすぐに、

「もしかして、曜ちゃんとルビィちゃんになにかが・・・」

と心配そうに言うと、南、こう答えた。

「いや、ちょっとした事件に首を突っ込んだだけだ・・・」

と答えると、千歌、

「ならば、千歌、頑張っちゃうもんね!!」

と言っては南に対し、

「今日は何を・・・」

と尋ねてきた。すると、南、アランと千歌に対しこう告げた。

「アランに千歌、すまないが肥のアリバイについてもう少し調べてくれ」

これには、アラン、千歌、智に、

「「わかりました!!」」

と言っては隠れるようにあとにした・・・。

 

 翌日・・・、

「南さん、今日は博多で遊ぼう!!」

8時29分ごろ、ルビィはみんなと一緒に博多で遊ぼうと南を誘った。博多駅付近にはデパートや巨大な雑貨屋さんなどがあつまったところがありその周辺にはキャナルシティなどといった遊ぶところが多いだけでなく寺社といった歴史あるものなども数多く存在した。そんな博多をルビィはみんなと一緒に遊ぼうとしたのである。

 そんなとき、突然、南のスマホから

ルルル ルルル ルールル

といった某歴史ある番組の音のような着信音が入った。それに、南、

「ルビィちゃん、ちょっと待ってね」

とルビィに断りを入れてから電話にでる。すると、南、

「えっ、なんだって!!」

という声を上げるとすぐに、

「ルビィちゃん、すまない、また事件だ!!」

という声を再びあげてはすぐに事件現場に向かうことにした。むろん、ルビィとその隣にいた曜もすぐに、

「ルビィたちも行く!!」(ルビィ)

と南のあとを追うことにした。

 

 事件現場になったのは吉塚駅の構内であった。事件現場に入った南は到着するなりこう言った。

「なんだこりゃ~」

そこにはおびただしい血が散らばっていた。ただ、先に到着していた高山からこう報告された。

「今日は昨日と同じく刺傷事件です。被疑者は福岡県選出の国会議員です。とはいえ、刺されたショックで気絶はしていますが命に別状はありません。まわりの目撃者の話には黒づくめの男が改札を出るなり街頭演説をしていた国会議員を刺した、ということです」

これには、南、

「昨日の佐世保の事件となにか関わりがありそうだな・・・」

というとともに怪しい人がいないか吉塚駅付近を捜索してもらうことにした。

 そして、10分後・・・、

「怪しい人を見つけてきました!!」

と高山が1人の男性を連れて帰ってきた。高山が言うには、

「(吉塚駅付近にある)東公園で歩いていたところを見つけて連行してきました」

とのこと。

 そんな高山が連行してきた男を見て事件現場の規制線そばにいた曜がこんなことを言ってきた。

「あっ、昨日の怪しい人!!」

そう、高山が連行してきた人は・・・、

「肥!!」(ルビィ)

そう、昨日、佐世保の事件で怪しい雰囲気を出していたヒットマンの肥だった。

 だが、肥亜はこう言って騒いでいた。

「俺様はただ東公園を散歩していたのだ!!全然怪しくない!!」

この言葉のあと、肥、続けてこう言ってきた。

「それに、俺様は8時31分の博多発吉塚終点(8時34分着)の普通列車に乗ってここまで来たんだ!!それなら吉塚駅で回収される切符を探してくれ!!」

この肥の言葉に近くにいた福岡県警の刑事が南に対しこう付け加えた。

「事件が起きたのは8時30分ごろ。肥のアリバイが正しければ犯行を行えません」

 そんなわけで急遽吉塚駅で回収された切符を探すことに・・・。すると、

「たしかに肥の指紋のついた切符は見つかりました。(普通列車しか乗れない)普通のきっぷのみでした・・・」

という報告があがった。

 ところが、別のところから意外な報告が入った。それは・・・、

「博多駅の防犯カメラの映像から肥が8時24分ごろに博多駅の改札に入るところがみつかりました!!」

なんと、肥、8時24分ごろに博多駅の改札を通る姿が見つかったのである。

 その報告をもとに福岡県警の刑事は肥に詰め寄るとこう言った。

「肥、もしかして、博多駅8時26分発吉塚8時29分着の列車に乗ってこなかったか?」

そう、実は(肥が言っている)8時31分博多発の列車の前にも博多8時26発の列車があるのだ。

 だが、肥は平然とこんなことを言った。

「でも、その列車って特急列車ですよね、かささぎ104号の・・・」

そう、実は博多8時26分発の列車は特急のかささぎ104号吉塚行きであった。肥はさらにこう付け加えた。

「それに、その列車に乗るには普通の切符のほかに特急券が必要ですよね」

肥が言うには特急列車なので普通の切符のほかに特急券が必要というのだ。なので、そんなことを肥に指摘されるとさすがの刑事も、

「うぅ・・・」

とうなるしかなかった。肥の指紋がついた切符は普通のきっぷしかないのだから・・・。

 そんなわけで今回も肥は無罪放免となってしまった・・・。

 

 そして、肥が去ってから1分後・・・、

「今回も解決できませんでしたね、南さん・・・」

と高山は悔しい表情をしながら南に言うと南も、

「あぁ、そうだな・・・」

とこちらも苦虫を潰されたような表情をしていた。

 そんなときだった。突然、

「あぁ、やっぱり特急列車は楽ちんですね、短い時間でしたが・・・」

と言った言葉が聞こえてきた。これには、曜、

「あっ、しずくちゃん!!それにAZUNAのみんな!!」

という声をあげた。そう、事件現場の近くを通ろうとしていたのAZUNAのみんなだった。

 そのしずくの言葉に、南、

「特急列車!!」

と大きな声をあげると歩夢に対しこんなことを言った。

「特急列車に乗ってきたのか、歩夢たち?」

 すると、歩夢はこうい言ってきた。

「たしかに、私たち、特急列車に乗ってきました」

これには、南、こんなことを言う、

「たしか、この時間帯に吉塚に停車する特急列車はなかったはず、1つを除いては・・・」

そう、この時間帯、8時台には吉塚に停車する特急列車はかささぎ104号以外なかったのである。

 そのことに基づいて南は歩夢たちにこう尋ねた。

「それってもちろん特急券を買ってだよな・・・」

すると、せつ菜、こんなことを言い出してきた。

「いいえ、普通の切符だけで乗ってきたのです。とてもリーズナブルでした、短い区間でしたが・・・」

この言葉に、南、こうぶつぶつと言い出す。

「特急列車、普通の切符・・・」

さらにしずくからこんな言葉が飛び出してきた。

「それに昨日見た筋者の男の人をトイレに入るのを見かけました」

これには、南、飛びつく。

「これは重要な証言だ!!ありがとう、しずくちゃん!!」

これには、しずく、

「いえいえ」

と謙遜ふうに喜んでいた。

 そんなときだった。突然、

「南さん!!」

という少女の声がした。これには、南、

「あっ、千秋か!!」

と言うと誰もいなかったはずの南の隣に千歌がいた。これには、曜、

「あっ、千歌ちゃん!!今日はなんなの?忍者?」

と言ってしまう。なんと、千歌、なぜか忍者の姿をしていたのだ。これには、千歌、

「なおアプリゲームの真似をしてみたんだ!!」

とごまかしてしまう。まぁ、あのアプリゲーム、スクスタの千歌の忍者衣装・・・と言いたかったのだろう・・・。

 とはいえ、千歌はこんなことを南に報告した。

「実は早岐~佐世保間は・・・でした。なので、駅員もすぐに返答したのです」

さらに、千歌の隣にいたアランがこんなことを言ってきた。

「そして、肥を雇った組を調べていくうちに次のターゲットがわかりました。次のターゲットは・・・」

このことを聞いて南は時刻表を確認する。すると・・・、

「なんと俺たちはある文言を見落としていたのか・・・」

と悔しい顔をするとともに、

「これで肥のアリバイは崩れた!!」

という声をあげた。

 そして、南はこう言った、声高々に・・・。

「明日が、大みそかが、勝負だ!!行くぞ、次の目的地、宮崎へ!!」



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曜とルビィの事件簿最終章 謎の列車 後編

プルル ルルーン

12月31日、大みそか、9時22分、宮崎駅ホームでは発車ベルが流れていた。そのとき、1人の男がその列車に乗った、こう言いながら・・・。

「今回もさっさと人を刺していきますか!!」

ただ、その直後、後方の車両には、

ゴトゴト

というある数人の男女グループが列車に乗り込む姿も見られた。

 その後、その列車に乗った1人の男はこう言いながらお茶を飲んでいた。

「今回の稼業は楽でいい。だって、こんなリクライニングできる特急列車にただの切符だけで行けてさらに人を刺しにいけるんだからな。やっぱ特急列車様様だな!!」

そう、この男は、この3日間、特急列車に乗りながら移動していたのである、それも普通の切符のみである。これは一体どういうことだろうか。

 だが、このとき、その1人の男の近くである女性の声が一瞬聞こえてきた。

「ふ~、これで証拠がそろった!!忍者千歌、ここにてごめん!!」

ただ、その女性の声はその一人の男には聞こえていなかった・・・。

 そして、9時27分、宮崎空港駅に到着するとその1人の男の人は改札を出るなりすぐに空港へと向かった・・・、と同時に後方の車両に乗っていた男女数人のグループもその男のあとを追った、こう言いながら・・・。

「高山、先に来ていた桃井たちと連携してやつを止めろ!!」

その言葉のあと、高山と呼ばれた男の人は走るようにその場を去った。

 そんなことなんてつゆ知らず、1人の男の人は空港に入るなりある男の人を、大臣を勤めているその男の人に向かって、

「すまないが、大臣、お前は死んでくれ!!」

と小言を言いながらナイフを握りしめながら走っていった。ただ、大臣はおろかSPすらこの1人の男の存在を認識していなかった。

 そして、ついにその1人の男は大臣を刺し・・・、

「肥、そこまでだ!!」

とこの1人の男こと肥に向かってある男がとび膝蹴りをくらわせると、

「ぐへっ!!」

という肥の苦しむ姿とともに、

コトンッ

というナイフが床に落ちる音が聞こえてきた、のと同時に、

「肥、9時30分、大臣への殺人未遂、いや、この3日間における連続刺傷事件の容疑者として緊急逮捕する」

の声がすると

ガチャン

という肥に手錠をかける音が聞こえてきた。これには、肥、

「くそっ!!誰だ、お前は!!」

と自分のことを逮捕した男の方を見上げる。

 すると、肥を逮捕した男はこう言った。

「俺の名は鉄道警察隊東京公安室公安特捜班南達仁だ!!」

そんな緊急逮捕劇を近くで見ていた少女2人はこんなことを言ってきた。

「これってなんかすごいところだよね、ルビィちゃん」(曜)

「うん、そうだよ、曜ちゃん」(ルビィ)

そう、この少女2人は曜とルビィだった。実は、2人、南たちとともに宮崎入りしていたのである。そして、この1人の男こと肥のあとを追って8時36分宮崎発の列車に乗ってきたのである。そういうともうわかっただろう。肥のあとを追って宮崎9時16分発の列車に乗ってきた男女数人のグループの正体は、南と高山、曜とルビィ、だったのである。

 だが、肥はなにか言おうとしていた。

「あれっ?俺様はたまたまここにいるだけだぞ!!それなのに逮捕されるなんておかしいだろが!!」

これには、南、こう答える。

「お前がここに来るのはすでにわかっていた、乗ってきた列車もな!!」

 だが、肥はこう言い出してきた。

「言っておくけど、俺様は南宮崎9時01分発の普通列車に乗ってここまで来たんだ!!それも普通の切符だけ使ってな!!」

 ところが、南、こんなことを言い出してきた。

「いや、お前が使ったのは宮崎9時22分発の特急ひゅうが8号だろうが!!」

これには、肥、一瞬びくっとするもすぐに、

「へぇ~、天下の鉄道警察も地に落ちたもんだな!!言っておくが俺様は特急券なんて買っていない!!ただの普通の切符を買って普通列車に乗ってきたんだ!!お前が言った列車は特急列車だろうが!!特急券もなしに特急に乗れるなんておかしいだろうが!!」

そう、肥はあくまで普通の切符のみでここまで来たのである。なので、普通なら南が言っている特急に乗れるわけがないのである。

 だが、南はそんな肥に対してこう言い返してきた。

「いや、あんたは特急に乗ったんだ!!それも、この3日間、合法的に普通の切符を使ってな!!」

これには、肥、

「うぐっ・・・」

と図星を突かれている表情をみせた。

 と、ここで、曜、南に対してこう尋ねてきた。

「えっ、普通の切符のみで特急に乗れるわけ?」

そう、普通なら前述の通り、特急に乗るには普通の切符(乗車券)以外にも特急券が必要である(一部を除く)。それなのに普通の切符のみで特急に乗れるなんておかしな話である。

 ところが、南、そんな曜の疑問をこう答えてくれた。

「実は「特急料金等不要の特例」があるからなんだ」

これを聞いてルビィはこう答えた。

「もしかして、北海道総局(JR北海道)の石勝線みたいなものだね!!」

これには、高山、

「それだよ、それ!!」

と大きくうなずいた。「特急料金不要の特例」とはその特例区間のみ普通のきっぷのみで乗れる特例である。その特例にはちゃんとした理由があったりする。石勝線の場合、普通列車の運行がなく特急のみしか駅に止まらないため、この特例が適用されていたのである。では、九州では?

 それを踏まえたうえで南は肥に対してこう言った。

「肥が、この3日間、移動した区間は一部を除いてその事例が適用されていたんだ」

これには、肥、

「それはどういうことですかね?」

と南にわざとらしく尋ねると南は肥のアリバイの種明かしをした。

「まずは1日目のハウステンボス~佐世保間だけど、早岐~佐世保間がその特例区間になっているんだ」

そう、実は九州には2つの特例区間がある。その1つが早岐~佐世保間である。この区間は特急列車であっても普通の切符のみで乗れるのである。ちなみにその理由が「過去のダイヤ改正でこの区間の普通列車が大幅減便になったことによる救済処置のため」であった。

 その上で南は肥に対しこう告げた。

「肥、お前は実はハウステンボス10時05分初の普通列車に乗り早岐10時10分に到着後、すぐに10時13分初のみどり11号に乗り込んだ。そして、10時24分に佐世保駅に到着するなり県議を刺したんだ」

 だが、ここに肥はさらに反論した。

「でも、俺様はずっとハウステンボス10時05分発の普通列車に乗ったままだったんだぞ!!そのアリバイはどう崩す?」

むろん、これには、曜、こう答えた。

「たしかにしずくちゃんもそう言っていたよ」

そう、しずくは日宇駅発車後に肥を目撃していたのである。

 だが、それにも南はこう告げた。

「そんなの簡単だよ。早岐で長時間停車していることをうまく利用したんだ」

そして、このアリバイを南はこう崩した。

「肥は県議を刺した後、佐世保駅前10時33分発の路線バスで日宇駅に向かった。そして、日宇駅で降りた後、日宇11時01分発のハウステンボス~早岐間に乗った同じ列車に乗りこんで佐世保に戻ってきたんだ」

そう、10時05分にハウステンボスを発車した普通列車は10時10分に早岐に到着するなりそこで40分以上停車しているのである。その普通列車のお客様であるが10時13分発のみどり11号で佐世保に行くことができるのだが、それを利用して肥は佐世保に移動しては県議を刺したのである。その後、今度は最初に乗った普通列車が早岐で40分以上停車してから早岐を発車することを見越して路線バスで日宇に戻ると同時にその列車に再び乗車して佐世保に戻ったのである。そのとき、しずくが肥をみかけたのである。これには、肥、

「ううう・・・」

とうなるしかなった。

 そんなとき、ルビィが南に対しこんな質問をした。

「もしかして、佐世保駅の駅員さんが肥さんの特急券を探さずにすぐに「肥さんの特急券はありません」と言って探すのを拒否されたのもこの特例が原因?」

そう、肥の特急券がないか佐世保の駅員に南が尋ねるとすぐに「肥の特急券なんてない」と言って探すのを拒否されたのがあったのだが、南はこう答えた。

「そう、佐世保駅の駅員が探すのを拒否したのはこの特例が原因なんだ。この特例がある以上、早岐~佐世保の特急券なんて存在しないのだからね!!」

たしかにその通りである。この特例がある以上、早岐~佐世保間の特急券なんてないのだから・・・。

 ただ、肥、こんなことを言ってきた。

「でも、この俺様が路線バスに乗ったという証拠なんてないだろうが!!」

 ところが、南、こんなことを言ってきた、肥に向かって・・・。

「実はね、肥、お前を映したドラレコの映像が見つかったんだ!!」

なんと、肥が乗ったとされる路線バスにはドレレコが搭載されていたのだ。今は防犯やいろんな事故防止のために各車両にドラレコが設置される時代である。そう考えるとバスの内側にドラレコがあってもおかしくはなかった。まぁ、そんなことを言われたことで、肥、

「くぅ~」

と苦虫を逆に砕いてしまった・・・。

 だあ、肥は諦めなった。肥は禁じ手を出してきたのである。

「でもな、二日目の博多~吉塚間はその特例がなかったはず!!そこはどうなんだ?」

そう、実は博多~吉塚間はその特例の適用がなかった。そのため、特急には普通の乗車券のほかに特急券が必要だったりする。

 ところが、それすら南は覆してしまった。。

「別に特例じゃなくても普通の切符だけで特急に乗れる方法はある。その例が肥が乗ったとされるかささぎ10号だ」

 すると、曜がこう尋ねてきた。

「もしかして、特急が普通列車になる?」

これには、南、喜びながらこう言った。

「曜ちゃん、大正解!!」

これには、曜、

「いやいや、そんなに褒められても・・・」

とにやにやしながら答えるとともに、南、それについて詳しく説明した。

「実はかささぎ104号吉塚駅は博多駅で普通列車に変わり、そのまま吉塚に行くんだ。なので、博多~吉塚間はこの特急列車のみ普通のきっぷのみで移動できるんだ。肥はそれを使った。8時26分、かささぎ104号から変わった普通列車にのり8時29分に吉塚終点で降り、そのまま国会議員を刺したんだ。その後、東公園へと逃げては服装を変えて散歩と称して東公園を歩いていたんだ」

むろん、これにも、肥、

「でも、これにも証拠がないはず!!」

 すると、ここでも南は肥に対しある写真を見せた。それは・・・。

「あまりにも浅はかでしたね。駅の近くのゴミ箱から国会議員を刺したときにあなたが来ていた服が見つかりました。血痕も残っているしお前の指紋も残っているはずです」

さらに、南、ダメ押しを言ってしまう。

「それに、同じ列車に乗っていた乗客があなたがトイレに入ろうとしていたところも見た、という証言も残っております」

そう、しずくの証言である。しずくは肥の姿を知っておりそれがこの証言へとつながったのである。これには、肥、

「くっ、まさか警察の捜査の展開が早かったからさっさと捨てたのに・・・。それに、乗られているところを見られていたとは・・・不覚・・・」

と悔しい表情をみせていた。

 そして、南は今日のことも話した。

「そして、肥、昨日の時点でいろいろと調べていくうちに今日の宮崎の件を知るところとなりまして、ここに来た・・・というよりもお前をつけてきたのです。 だって、宮崎~宮崎空港間は今さっき言った特例区間に指定されているのですから・・・」

そう、宮崎~宮崎空港間は今さっきいった「特急料金不要の特例」が適用されていた。というのもこの区間は「遠方とを結ぶターミナル駅と市の中心部のアクセスを考慮されてのもの」といった理由で指定を受けていた。そのため、宮崎~宮崎空港間は普通の切符のみで乗車できたのである。

 と、ここで、肥、あることを南に尋ねた。

「でも、なんでこれに、「特急料金不要の特例」に気づいたんだ・・・」

すると、南はこう答えた。

「それは簡単だ!!時刻表にその文言が書いてあるからだ!!」

そう、時刻表にはその特例が提要される場合、時刻表のご案内の部分に「○○区間の特急は普通乗車券のみでご乗車できます」という文言が書かれるのである。それを南は千歌の報告で知った南はそれを時刻表で確認したことでこの肥のアリバイを崩したのである。

 こうして、肥のアリバイは完全に崩れた。これには、肥、

「くそ~、なんで俺様の完璧なアリバイがこんな若造に崩されるなんて・・・」

ととても悔しがる表情をしながら言ってしまった・・・。

 

 こうして、佐世保・吉塚・宮崎における連続刺傷事件は幕をおろした。肥はこの南の推理とそれを裏付ける録音データ、いや、宮崎のひゅうが8号での肥の言葉、でもって厳密に罰せられることになるであろう。なお、この録音データは千歌が録音したものだった。千歌はOLに扮して肥の近くに行き肥の言葉を録音したのである。千歌、恐るべしである。

 ちなみに、肥が、県議、国会議員、大臣を襲ったの理由はお金の問題であった。ヒットマンである肥が3人を襲うことによって肥を雇ったやくざの力をみせつけ、それをもとに政治団体や政党からお金をせしめようとしたものだった。だが、それも南の活躍によりご破算になったようである。なお肥を雇ったやくざもなぜか壊滅させられたのは別の話である・・・。

 

 そして・・・、

「南さん、今日は宮崎でいっぱい遊ぼうよ!!」

と曜は南にそういうと南も、

「あぁ、そうだな」

と元気よく答えていた。 

 ただ、このとき、南の後ろにはあの2人が立っていた。

「南さん、これで千歌たちの仕事は終わったよ」

と若き少女が言うと南も、

「千歌、ありがとう・・・」

と言った。そう、南の後ろにいたのは今まで陰で動いていたアランと千歌だった。

 ところが、南、あることを2人に釘を刺す。

「しかし、なんで肥を雇ったやくざすら壊滅させるなんて、陰であってもやりすぎでは・・・」

これには、アラン、

「別に私たちはなにもしておりません。私たちはただ邪魔なものを排除しただけです・・・」

とたんたんに述べていた。そんな2人に、南、

「わかった、わかった・・・」

と言っては続けて、

「それじゃ、アラン、事件の後始末をお願いする」

とアランに対しこうお願いすると、アラン、

「はい、わかりました」

と言ってはその場から去ってしまった。

 一方、千歌は、

「それじゃ、私は、私は」

と南にだだをこねると、南、それを察してか、

「この事件ではよく働いてくれたから、ご褒美。大みそかと正月三が日は曜ちゃんとルビィちゃんたちと一緒に楽しんできなさい」

と言うと、千歌、忍者装束を脱ぎ捨てては、

「わかりました!!」

と言っては曜とルビィに対して、

「曜ちゃん、ルビィちゃん、お待たせ!!」

と2人の前に現れたのである。これには、曜、ルビィ、ともに、

「ぴぎぃ、千歌ちゃんがなぜかここにいる!!」(ルビィ)

「あっ、千歌ちゃんだ!!いったいどうして?」(曜)

と驚くも、すぐに、千歌、

「2人と遊びたいから来ちゃった!!2人とも遊ぼう!!」

と言っては、

「「うん、千歌ちゃん、一緒に遊ぼう!!」(曜・ルビィ)

となにごともなかったのように3人であそぶことにした。

 

 そんなわけで、曜とルビィ、そして、南たちは大みそかと正月は一緒に遊んだのであった。だが、このあと、ある事件が起こるとはつゆしらずに・・・。



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曜とルビィの事件簿 最終章 ソニックを追え!!~ある切符の憂鬱~ 前編

 1月4日13時37分、とある列車の4号車、ここにはある少女たちが楽しそうにしゃべっていた。

「彼方先輩、起きてくださいよ~。もうすぐ小倉ですよ!!席を回転させないと・・・」

「ふわ~、よく寝た。あっ、かすみちゃん、その必要はないんだよ~」

「なんでですか?小倉に着いたら席を回転させないといけないんですよ~」

「だって~、彼方ちゃんたち、向かい合わせで座っているから~」

「あっ、そうでした・・・」

彼方という少女とかすみという少女がそんなやり取りをしているなか、入口付近を見ている処女がいた。そんな少女に対し隣にいたスイスから来た外国人の少女がこう尋ねてきた。

「あれっ、りなちゃん、なにかあるの?」

これにはりなと呼ばれた少女がこう言った。

「なにか、怪しい人・・・。ちょっと気になる・・・」

 そして、りなと呼ばれた子はかばんから顔の前面にいろんな表情が表示できる、通称、りなちゃんボード、をつけると、

「・・・オン」

と言っては、

ジーーーー

ジーーーー

とその怪しい人、というか、怪しい男の人、を見つめていた・・・。

 

ソニックを追え(ある切符の憂鬱)

 

 正月三が日、

「南さん、あのジェットコースターに乗ろうよ!!」(曜)

「お、俺は・・・」(南)

「ル、ルビィ、あのジェットコースター、のり・・・」(ルビィ)

「ルビィちゃんもはやく!!」(高山)

「ピ、ピギィ!!」(ルビィ)

と(熊本県荒尾市にある)グリーンランドなどに行ってはめいいっぱい楽しんでいた。

 その翌日である1月4日・・・、

「ルビィ、もうジェットコースターに乗らないもん!!」(ルビィ)

「ルビィちゃん、ジェットコースター、嫌いになっちゃだめだよ!!」(曜)

「それでも嫌だもん!!」(ルビィ)

とルビィはすねていた。

 そんなルビィに対し曜はこう言い出す。

「ルビィちゃん、今はそんな気持ち忘れて温泉にはいろうよ!!」

これには、ルビィ、

「う~ん、わかった。今は温泉にはいろう!!」

と気持ちを切り替えて温泉にはいることに・・・。

 そんなわけで曜とルビィの2人は・・・、

「でも、2人で温泉はいるの初めてだよね?」(ルビィ)

「うん、そうだね。南さんたちはいろいろあるからって一緒に来れなかったけど2人旅も楽しいものだよね!!」(曜)

警察の年始行事のために忙しい南たちと別れて2人は旅を・・・、

「でも、温泉っていったら由布院か別府でしょ!!」(ルビィ)

「うんうん、そうだね。だから、別府に・・・」(曜)

曜とルビィの2人は別府に旅行しに・・・、

「でも、まさか、大分市、それも、大分駅、なんてどうして?」(ルビィ)

「私もわからないや・・・」(曜)

別府ではなく、大分市、それも、大分駅、に来ていた。でも、なんで大分駅なんかに・・・、。

 でも、それにはちゃんとした理由があった。

「でも、まさか、大分駅の上に温泉があるなんてびっくりだよ!!」(ルビィ)

「たしかにそうかも。でも、南さんたら南さんらしいね~」(曜)

実は、大分駅、駅の上に温泉施設があるのである。そこから見える大分市内の風景はとても綺麗なものであった。そんな温泉の優待券を鉄道つながりで南が持っていたため、2人は南からその優待券をもらい大分駅に来たのである。

 そんなわけで2人は大分駅の上にある温泉へ。時計は11時半前になろうとしていたそのとき、その温泉の入口に入ろうとしていた曜とルビィ・・・、であったが、突然、

「うわっ!!」(曜)

と入口から出てくるほかのお客様にぶつかりそうになってしまった。そのため、

「ごめんなさい」

と、曜、謝ろうとするもそのお客様というか美しい女性はただ、

「こちらこそごめんなさい」

とこちらも謝ると、その美しい女性の綺麗な長い髪を見てか、ルビィ、

「と、とても綺麗・・・。まるでお姉ちゃんみたい・・・」

と見とれていた。

 ただ、その美しい女性は曜とルビィにふたたび謝るとそのままどっかに消えてしまった・・・。そんな美しい女性を見て2人ともこんなことを言い出してはみとれていた・・・。

「とても美しかったね。まるでダイヤさんみたい・・・」(曜)

「うん、お姉ちゃんみたいだった・・・」(ルビィ)

 だが、これがこれから起きる事件の序章にすぎなかったのはこの時の2人は知らなかった・・・。

 

 そして、そこから2時間後、事件がついに起こった。それは南のスマホに緊急のメールが舞い込んだことで起こった。南はそのとき福岡県警の祝賀式典に参加していた。その最後のところ、偉い人の祝辞のときだった。そのとき、南のスマホに緊急のメールがはいった。これには、南、

(なにか事件化・・・)

とすぐに事件が起きたことを察知、すぐに自分のスマホの画面を見た。するとそこにはこう書かれていた。

「大分駅付近の通りの裏で若い女性の遺体がみつかった。至急応援されたし」

これには、南、すぐに特捜班のメンバーを集め警察と連携しながら証拠を集めようとしていた。

 そのかいもあってすぐにその被害者の身元がわかった。その被害者の女性の名前は立石であり、最近、大金持ちの男性と離婚したことで話題となっていた。その立石の生前の写真を見て南はこう思った。

(黒い長い髪が印象的だ。まるでお雛様の感じがする・・・)

と、そこに、南のスマホから、

プルル

というスマホの着信音がなる。これには、南、

(もしかすると曜ちゃんとルビィちゃんだ!!)

と察知したらしくすぐに電話に出る。すると、

「南さん、そちらはどうですか?」

という元気な曜の声が聞こえてきた。これには、南、

「あぁ、ちょっと立て込んでいるが大丈夫だ!!」

と答えてくれたあと、続けて、

「ところで、今、どこにいるんだ?」

と尋ねてきた。これには、ルビィ、元気よく、

「別府の竹瓦温泉だよ!!あともう少しで砂風呂にはいるんだよ!!」

と答えていた。曜とルビィは大分駅の上にある温泉にはいったあと、別府八湯巡りと称して別府の温泉をまわろうとしていた。なお、竹瓦温泉は別府を代表する市営の共同温泉であり地元のひともよく来る温泉でもあった。また、竹瓦温泉には砂風呂がありそれも有名であった。

 そんな曜とルビィであるがあることを口にしたことで2人も事件に巻き込まれてしまう。それは次の曜の言葉によるものだった。ちょっとした雑談のあと、曜は突然こんなことを言ってしまう。

「そういえば、南さん、なんかダイヤさんらしい長い黒髪のの女性をみかけたんだよ。とても美しかったよ」

この曜の言葉に南ははっとする。

(長い黒髪の女性・・・、まさかっ!!)

この瞬間、南は曜とルビィに対しこんなことを尋ねた。

「曜ちゃん、ルビィちゃん、すまないが、今、ある事件を追っている。2人が会った黒髪の女性ってこの人かな?」

 この言葉のあと、南は被害者である立石の生前の写真を2人にみせた。すると、ルビィ、突然こう言ってしまう。

「あっ、この人!!この人に間違いないよ!!たしか2時間前に大分駅の上にある温泉施設で会った女性の人だよ!!」

 その瞬間、見安海はあることに気づく。

(立石は2時間前には生きていた。ということは立石が殺されたのはこの1~2時間のあいだってことか!!)

そう、被害者である立石が殺されたのはほんの1から2時間だったのである。その話を聞いて南はすぐに曜とルビィに対しお礼を言った。

「曜ちゃんにルビィちゃん、貴重な情報をありがとう。それじゃ切るからな」

 ところが、曜とルビィ、南の予想の斜め上をいく発言をしてしまう、ここで・・・。

「それじゃ、南さん、今から、私たち、帰ってくるからあとで合流しよ!!」(曜)

「うん、それがいい!!」(ルビィ)

なんと、曜とルビィ、この事件に突っ込んでしまったのである。これには、南、

「2人とも事件に自ら突っ込むなんてよくないぞ!!ここは2人で旅の続きを・・・」

 だが、2人とも聞く耳持たず・・・。

「私たちも南さんたちのと同じグループだよ!!ここは一緒に事件を解決しよう!!」((曜)

「ルビィもそう思う!!」(ルビィ)

こうなってしまうと南の手に負えなくなってしまう、そう考えた南、ついに白旗を上げた・・・。

「わかった、わかった。2人ともあとで迎えに行く。乗る列車が決まったら教えてくれ」

どうやら、南、2人の事件への参加を認めるとともにあとで2人を迎えにいくことになった。これには、曜とルビィ、

「わ~い、福岡に戻ろう!!」(曜)

「うんうん」(ルビィ)

と嬉しそうな表情をしていた。

 

 そんなわけで曜とルビィは列車の切符をとることに。まずはみどりの窓口で・・・、

と思ったら曜とルビィ、さすがに現代っ子、スマホのアプリから列車の予約を取ることにした。使うアプリは國鉄九州総局アプリ(JR九州アプリ)!!國鉄九州総局が作ったアプリである。

 まずは大分別府~博多では直通のソニックを選ぶ曜。

「たしか、次に福岡に戻れるものは・・・、14時52分発のソニック38号だね!!」

曜はどうやらソニック28号を選んだようである。

 そして、グリーン車と指定席、自由席で選べることに。そこでルビィはびっくりする。

「えっ、自由席と指定席の料金が同じなの?同じ3250円・・・」

そう、実はネットで買う場合、指定席と自由席が同じ3250円だったりするのだ。(九州ネット切符の場合)。さらに、場合によっては早得3で2550円で普通席より安く指定席を取れたりする。

 そんなわけで曜は指定席をとることに。そこで指定席の座席を指定する場面においてルビィはあることに気づく。

「1号車と2号車のなかから選ぶんだね!!」

アプリの場合、指定席である1・2・3号車のうち1・2号車のなかから選ぶことができたのである。ただ、この日は1号車が満席ということで2号車を選ぶことに。その後、個人情報とクレジット情報を確認して支払いをすませうと予約は完了!!これで切符がとれた・・・、といいたいところだが、九州総局(JR九州)は2024年1月現在、スマホやICカードを切符代わりに使って乗ることができない(在来線の場合)ため、一度専用の券売機で予約した切符を発券する必要があるため、博多駅ではその乗車券を受け取るためだけの列ができたりするのである(長くて1時間くらい)。ただ、曜とルビィは別府駅で発券ということもあり並ばずに切符を受け取ることができたようである。

 そんなわけで曜とルビィの2人はさっそくソニック38号に乗って福岡に戻ったのである。

 

 その後、ソニック38号が小倉に到着するなり意外なことが起こった。なんと乗客のみんなが座席を回転させていたのである。これには、曜、

「えっ、なんで席を回転させるわけ?」

と驚くもすぐにその理由がわかった。なんと、進行方向が逆になったのである。これはソニックが小倉でスイッチバックのような形で進行方向が逆になっているからである。そのため、お客さんは自らの手で席を回転させていたのである。むろん、この影響はほかにも起きている。ソニックは小倉経由で海沿いを走るために大回りでの走行になっている。これにより130キロ走行であっても博多から大分まで2時間以上かかってしまっている。一方、山のほうを突っ切る大分道を走る高速バスは博多から大分まで2時間半ぐらいで結んでいる。そのため、昔からソニックと高速バスはいわば競争関係となっていた。

 とはいえ、曜とルビィは座席を回転させて座るようにした。だが、このとき、車内アナウンスはこう言っていた、「3号車は小倉より○○・・・」と・・・。

 

 そして、ソニック38号は博多に16時49分に到着したのだが曜とルビィはがっかりしていた。というのも、南からこんなメールが届いていたからだった。

「ちょっと立て込んでいて迎えに行けない。ごめん・・・」

これには、曜とルビィ、

「仕事だから仕方がないことだけどちょっとがっがりだよ・・・」(曜)

「ルビィも・・・」(ルビィ)

と本当にがっかりしていた。

 そんなときだった。突然、

「曜ちゃん、ルビィちゃん!!」

と曜とルビィを呼ぶ声がした。これに、曜とルビィ、声がするほうに振り向くとそこには・・・、

「あっ、QU4RTZのみんな!!」(曜)

なんと、ニジガクのQU4RTZの4人がいたのである。これには、ルビィ、

「あっ、お久しぶりだね!!」

と喜んでいた。

 ここでQU4RTZのメンバーである彼方とかすみが声をあげる。

「曜ちゃん、ルビィちゃん、おひさ~」(彼方)

「曜先輩、ルビィ先輩、今日はどうしたのですか?」(かすみ)

これには、曜、

「実は九州鉄道旅行をしているんだ」

とこたえるとこれには、彼方、

「へぇ~、楽しそうだね~」

とふんわか答えてくれた。

 むろん、曜も同じような質問を彼方にする。

「QU4RTZのみんなもなにをしているの?」

すると、彼方・・・ではなくかすみが答えてしまう。

「それは、ずばり、陰の・・・」

これには、彼方、すぐに言い換える。

「仮縫いの勉強のために九州にきているの!!」

これには、裁縫の得意なルビィから、

「仮縫い?」

と不思議になるも、曜、ルビィ、ともに、

(まぁ、あんまり気にしないでおこう)

と思ってか、

「あっ、九州に遊びにきたわけね」(曜)

と言い返すと、彼方、

「そうそう」

と珍しく慌ててうなずいたのである。

(このあと、かすみが彼方から怒られたのは言うまでもない・・・)

 そんななか、QU4RTZのメンバーであるりながある方向を見ていた。これには、ルビィ、

「りなちゃん、どうしたの?」

と尋ねるとエマもりなの様子が気になったのか、

「私も気になるよ~。りなちゃん、どうしたの?」

とりなに尋ねた。

 すると、里奈、ある方向を指さしてこんなことを言ってきた。

「あれっ、怪しい人・・・」

これは、エマ、こんなことも言ってきた。

「あっ、たしかに私たちが乗ってきた列車に見かけた人だ~」

 そんな2人を見て気になったのか2人が見る方を見たルビィはびっくりした。だって・・・、

「あれ、南さんたちもいるよ!!」(ルビィ)

なんと怪しい男の人とともに南もいたのである。これには、曜、

「ちょっと行ってみよう、ルビィちゃん」

と言うとルビィも、

「うん、行く!!」

と言ってはりなたちに対して、

「それじゃ、またね!!」

と曜が言うとりなも、

「うん、またね」

と言って別れたのである・・・。

 

 そして、曜とルビィが南のいる場所にたどり着くと近くにいた高山に対し、曜、

「一体どうしたの?」

と尋ねると高山がこう答えたのである。

「殺された立石に一番関係ある人物に対して任意同行をお願いしているとこなんだよ」

これには、ルビィ、

「えっ、それっていったい誰なの?」

と高山に尋ねると、高山、その怪しい男の人のことを話しくれた。

「彼の名は深谷三股。かなりのお金持ちなんだ。そして、殺された立石の元夫なんだ。

これには、曜、その深谷を見て一言。

「なんか、お金にがめつい、そうみえる・・・」

そんな曜の言葉に反応してか、深谷、

「俺は金にがめつい・・・のかもしれないな!!」

って、なぜか、深谷、認めてしまった・・・。たしかに深谷はお金にがめつい・・・だけでなく、

「俺はネットが嫌いだ!!だから、ネットのことは部会にやらせる!!」

これまたくクセが強いキャラみたいのようである。

 とはいえ、南はそんな深谷に対してこんなことを言った。

「深谷、お前に元奥さんの殺人容疑がかかっている。任意同行を求める」

だが、深谷はこんなことを言ってしまう。

「俺があいつを殺したという証拠なんてないだろうが!!」

これには、南、こう答える。

「お前の足取りはもう掴んでいる。お前は元奥さんを殺した後、12時10分大分発のソニック24号で大分から博多まで来たんだ!!」

そう、南の言う通り、深谷はソニック24号で大分から博多まで来ていたのである。

 だが、深谷は余裕があった。それは・・・、

「たしかにソニック24号に乗っていた。それは認める」

とはっきりと自供。これで事件は解決・・・、

「でもな、俺は部下に頼んでアプリで3号車指定席のネット切符を買って乗ってきたんだ!!」

これには、南、びっくりする。というのも・・・、

「ネットで指定席だって!!」

そう、それを指し示すものとは・・・、そう、個人情報がアプリ経由でネット切符とリンクしているということである。そして、ソニック24号の3号車は指定席である。そのことを踏まえると元奥さんである立石を殺したあと、深谷はソニック24号に乗って福岡に来たことが簡単に証明されてしまうのである。これには、南、だけでなくまわりの警察でさえもこう考えてしまう、「あまりに軽率だと・・・」。

 さらに南は特捜班メンバーを利用してソニック24号の車掌に3号車に深谷がいたか確認したところ、

「たしかにこの人(深谷)は座っていました、3号車に・・・」

という答えがかえってきてしまった。これで、深谷のアリバイ、というかあまりに軽率すぎる深谷の行動が成立してしまったのでこれにはさすがの南も、

「これはどうすればいいのか・・・」

と頭を抱えることになった。だって、あまりに軽率な行動を深谷がすることは自分が犯人であると言っているのも同義でありそんなことをしてまで深谷にどんなメリットがあるのか、いや、そんな軽率な行動をしてまで深谷は逮捕されたいのか、と考えてしまい、深谷の行動に裏があるのではと、誰か違う犯人がいるのでは、とうらのうらまで考えてしまったのだから・・・。

 そんなわけで、深谷、勝手に、

「それじゃ俺は行くからな!!」

と言ってはどっかにいってしまった。これにはさすがの曜とルビィも、

「これってありなのかな・・・」(曜)

「ルビィ、わからない・・・」(ルビィ)

と口をあんぐりするしかなかった。

 だが、南はちょっと気になることがあったのか、1時間後、陰であるアランと千歌をよんでこんなことを命令した。

「アランに千歌、すまないがソニック24号の車掌に詳しい話を聞いてくれないか?」

これには、千歌、すぐに、

「わかりました!!」

と言うとともにこんなことを言っては消えてしまった。

「それに、私、今回のために臨時に用意した陰の者たちにも深谷の行動を見張るようにしておきます!!それでは!!」

 

 だが、事件はこれでは終わらなかった。翌日の1月5日、今度も大分・・・ではなく別府で事件が・・・、殺人が起きてしまった。その情報が入ってきたのは23時ごろを回ろうとしていたときだった。ちょうどそのとき、南は曜とルビィとともにホテルで休もうとしていたときだった。突然、南のスマホに殺人事件が起きたことを知らせるメールが届いたのである。殺人が起きたのは別府の中心地の裏路地に入ったところだった。そのため、発見が遅れたという。また、遺体の硬直状態から殺人推定時刻は21時ごろとわかった。

 だが、それ以上に南たちを驚かせたことがあった。それは・・・、

「うそ・・・、まさか深谷の今の妻とは・・・」

そう、殺されたのが深谷の今の妻だったのである。これにはさすがの南も絶句してしまう。なぜなら、犯人は昨日の深谷の元奥さんだけでなく今の奥さんすらも殺したのだから・・・。いや、南だけじゃない。

「元奥さんと今の奥さんが殺されるなんてちょっとおかしいよ!!」(曜)

「うんうん」(ルビィ)

曜とルビィもだった。曜もルビィもあまりにもおかしすぎる事件と認識していたのである。

 そんなわけで殺された2人に関係ある深谷を23時45分ごろに任意同行させるとともに福岡県警の刑事は深谷に対してこう詰め寄った。

「深谷、2人を殺しただろうが!!」

なぜ、警察はこんな詰問を深谷にしているのか。それは、今の奥さんが殺されたというのに深谷本人はのほほんとしているからだった。深谷曰く、

「俺の妻が殺された~。なにか悪いことをしたんでしょうね」

とのこと。本当なら自分の妻が殺されたらとても悲しくなるはずなのだが深谷本人はのほほんとしているだけであった。現に深谷に任意同行を求めたとき、深谷は中州で酒を飲もうとしていたのだから・・・。

 ところが、別の縁から深谷が2人を殺した動機につながるものがみつかった。なんと、殺された2人から多額の慰謝料を求められていたのである。実は、深谷、元奥さんである立石や今の奥さんとは完全に別居状態だったのである。いや、深谷の女遊びが激しかったこともあり元奥さんである立石と今の奥さんから多額の慰謝料を深谷は求められていたのである。

 そんなこともあり、その点についても深谷に対し厳しく言及するも、深谷、

「2人と最近会うことなんてなかった・・・」

と2人と最近会っていたことすら否定していた。

 だが、警察はそれでも深谷に厳しく言うも、深谷、ここぞとばかりにある切符を2枚出してきた。それは・・・、

「この切符を見ればわかりますよね!!俺はね、この列車で、今日、福岡に来たのですよ!!」

で、深谷が出した2枚の切符を見て刑事たちは絶句した。そこには「無効」印が押された切符があった。それも・・・、「大分20時12分、別府20時20分→博多22時27分着」のソニック58号の乗車券と指定席特急券であった。で、深谷の今の奥さんが殺されたのが21時ごろ、これだと深谷のアリバイが成立してしまうのである。

 でも、2つの切符合わせて2550円・・・、ちょっと安すぎである・・・ということで刑事はこれについて、

「どうしてこんなに安いんだ?」

と深谷に問うと、深谷、こう答えた。

「これも部下がアプリで買ったんだ!!だから安いんだ!!」

そう、2550円とはアプリ・ネット限定の早得3の大分・別府~博多間の料金である。3日前までにその切符を予約購入すれば席数限定にはなるがこの値段になるのである。これには、深谷、かなり納得しているのか、

「昨日も3250円、今日は2550円、あわせて5800円!!とても安くついた!!」

とかなりご満悦の様子。

 こんなやり取りを取調室の隣の部屋で見ていた南たちは、

「これだと深谷のアリバイは成立してしまいます。だって・・・」

そう、このままだと深谷のアリバイが成立してしまうのは明らかだったからである。それを詳しくいうと、ソニック58号が博多駅に到着するのが22時27分、そのあとのソニック60号が博多に到着するのが23時58分なのである。そのため、大分別府から博多に直通する列車はこの2本が最後なのである。これだと深谷の今の奥さんが殺された21時に別府にいること、及び、深谷に対して任意同行を求めたいた23時45分ごろに福岡にいること、それ自体できないのである。そのため、深谷のアリバイが成立してしまうのである。まぁ、実は小倉から博多まではかささぎ201号を使えばそのあいだの23時21分に到着できるのであるがこれだと大分別府から来ることなんてできないのでは・・・、となってしまうのである。なので、福岡県警の刑事たちは、

「このままだと深谷の言う通りになってしまう・・・」

と焦りを感じていた。これには、曜、ルビィともに、

「このまま迷宮入りなのかな・・・」(曜)

「たしかにそうかも・・・」(ルビィ)

と心配そうになっていた。

 そんなときだった。突然、曜のスマホから、

ツツツ ツーツツー

というAqoursの歌の着信音が鳴った。これには、曜、

「いったい誰からかな?」

と不思議そうに自分のスマホの画面を見る。すると、曜、驚いてしまった。というのも・・・、

「あっ、ニジガクのりなちゃんからだ!!」

そう、ニジガクのりなからのメールだったのである。というのも、ニジガクのQU4RTZの4人は、今、小倉で宿泊しているのである。

 そして、そのメールには動画が添付されていた。その動画を再生したところ、こんな音が聞こえてきた。

「本日はにちりん・・・をご利用していただきありがとう・・・」

この音を聞いた南は曜のもとに駈け寄ると動画を見てこんなことを言ってきた。

「これって深谷じゃ・・・」

そう、そこには深谷が映っていたのである。

 しかし、腑に落ちない点が一つ・・・。

「でも、にちりんって、普通、大分~宮崎間の特急ですよね・・・」

たしかに特急にちりんは大分~宮崎間の特急である。別に「にちりんシーガイア」といって博多~宮崎間の特急もあるのだが、それはさておき、深谷がにちりんに乗っているはずがないのである。だって、深谷は大分別府から福岡に来ているのだから。大分~宮崎間は福岡とは反対方向になってしまうのである。

 そんなこともありこの動画はただのガセネタか・・・、と思われていた。だが、動画を繰り返し見ていくうちにある言葉がその動画から聞こえてきた。

「本日はにちりん・・号にご乗車・・・。まもなく小倉に・・・」

 さらに、このとき、南のスマホから、

「南さん、ようやく証拠が見つかりました」

という千歌の声とともに南のもとにある動画が添付された情報とあと一つの情報が届く。それは陰で動く千歌からのものだった。その情報の動画を見た南はこう言った。

「なるほど。深谷はここで動いたのか。そして、ソニック24号の車掌の詳しい話も聞けた・・・。なるほど、なるほど・・・」

その瞬間、南の灰色の脳細胞が活性化した・・・

「ネット嫌い・・・、にりちん・・・、ソニック・・・、そうかわかったぞ!!」

これと同時に南は深谷のいる取調室に言っては深谷に対してこう言ったのである。

「深谷、お前のアリバイはすべて崩れたぞ!!」



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曜とルビィの事件簿 最終章 ソニックを追え!~ある切符の憂鬱~ 後編

「深谷、お前のアリバイはすべて崩れたぞ!!」

この南の言葉に深谷は、

「そんなわけないだろうが!!俺のアリバイは成立しているんだ!!」

と反論する。

 だが、南はある矛盾を深谷に突きつけた。

「たしか、昨日、アプリでソニック28号3号車の指定席をとったといったのよな」

これには、深谷、

「ああ、たしかにその通りだが・・・」

と言うと、南、すぐにこんなことを言い出してきた。

「それ自体嘘ですよね」

これには、深谷、

「なんでそう言えるんだ!!」

とすぐに反論するも、南、こう言い続けた。

「実はアプリで選べる指定席の号車は1・2号車のみなんだよ」

これには、曜、思い出したかのようにこう言ってしまう。

「あっ、たしかに、私たちで選ぶことができたのは1・2号車のみだった!!」

そう、思い出してほしい。曜とルビィが昨日大分から博多まで行く際、アプリで切符を予約したのだが、そのアプリで選べたのは1・2号車のみだったのである。なので、深谷が言う3号車指定席をアプリで予約することは不可能だったのである。

 しかし、深谷はまだ言い張る。

「それでも3号車指定席には座っていたんだ!!」

これだけは譲れないようである。

 ところが、南はそんな深谷に対しこんなことを言ってしまう。

「たしかに途中から3号車に乗っていたみたいだな」

これには、深谷、

「3号車指定席に乗っていたのは事実だ!!」

といまだに言い張るもそんな深谷に対し南はこう言った。

「でもな、深谷が実際に乗っていたのは3号車指定席ではなく3号車自由席だったんだよな」

この言葉に、ルビィ、驚く。

「えっ、ソニックって3号車は指定席じゃなかったの?」

そう、ソニックの3号車は指定席だったはずである。それなのに3号車が自由席というのは驚きである。

 そんなルビィに対し南はこう答えた。

「実はソニックの3号車は一部を除いて途中で指定席から自由席に変わるんだ」

これには、ルビィ、

「えっ、それって本当なの?」

と南に尋ねると南はこう答えた。

「あぁ、小倉を境に3号車は指定席から自由席に変わるんだ」

確かにその通りであった。ソニック下りのみであるが一部の便を除いて3号車指定席は小倉→博多間のみ自由席に変わるのである。これはこの区間は地元の人たちがよくソニックに乗って小倉から福岡まで行くことが多いためでありその利便性を考えてのことだった。

 さらに、南、深谷に対してこんな証拠を提示してきた。

「それに、このソニック24号の車掌から詳しく聞いたところ、深谷を目撃したのは小倉→博多間のみであり、そのときに確認した切符は1枚のみだった、と言っている。それに、お前が小倉到着時に4号車自由席から3号車自由席に移動している姿も動画で確認済みである」

 そして、南は深谷に対しある動画をみせた。そこには深谷が4号車から3号車に移動する姿が映っていたのである。

 ただ、その動画に対し曜はある疑問が出てきた。

「でも、一体誰がこの動画を撮影したの?」

 すると、南がこっそり曜にこの動画の秘密を話してくれた。

「実は曜ちゃんの親友の(ニジガクの)りなちゃんが撮っていてくれたんだ。どうやら偶然深谷と同じ4号車に乗っていたみたいだ」

たしかにこの動画を、小倉到着時にあやしい男こと深谷を撮影したのはりなだった。りな曰く、

「怪しい男の人がいたから撮った」

とのこと。実は、りなを含めたQU4RTZは深谷と同じソニック24号に乗っていたのである。その小倉到着時、4号車から3号車に移動する深谷をりなちゃんボードのカメラ撮影機能を使ってりなが撮っていたのである。そういうことなのでその証拠を突きつけられた深谷はただ、

「う~」

と苦虫をかむような表情をしていた。

 と、ここで、曜、ある疑問がわいてきた。それは・・・、

「でも、深谷さんはそんなややこしいことをしたのかな?」

たしかにその通りであった。深谷がわざわざ小倉で4号車から3号車に移動したのか謎だったのである。そう考えるとなんで深谷がややこしいことをしたのか疑問に感じてもおかしくなかったのだ。

 そんな曜に対し南はこう答えたのである。

「それは深谷が使ったチケットのせいなんだ」

これには、ルビィ、

「えっ、そのチケットって?」

と南に尋ねると南はこう答えてくれた。

「窓口で買える2枚切符を使ったのさ」

そう、深谷が使ったチケットというが2枚切符であった。この2枚切符は窓口で買える切符である。昔、安さで勝る高速バスに対抗するため、安い切符として2枚切符、4枚切符を九州総局(JR九州)が発売、回数券として高速バスの安さに対抗していたのである。むろん、高速バスも同じような回数券を発売し列車に対抗したのである。だが、今はネットやアプリで安い切符が買えるようになったことなどもあり九州総局は4枚切符を廃止したり2枚切符の発売区間を縮小したりしているもののそれでも主要区間は今でも発売している。なお、2枚切符には指定席タイプと自由席タイプがあり、福岡~別府大分間の2枚切符は指定席タイプである。

 ただ、これに対して、ルビィ、南に質問する。

「でも、2枚切符買うよりアプリやネットで買ったほうがいいんじゃないの?」

たしかにその通りである。アプリやネットで買ったほうが安くすむはずである。それにこんなまどろっこしいことを深谷がしなくても済むはずである。

 と、ここで南がその真実を伝えた。

「まぁ、深谷はそれくらいネットやアプリを嫌っていたんじゃないのかな」

たしかにそれは一理ある。深谷はネットが大嫌いである。なので、ネットを使わずに窓口で博多~別府大分間の2枚切符(6600円)で買ったというのがオチかもしれなかった。まぁ、通常ならこの2枚切符ならある期間を除いて指定席に座れるのですがね・・・。

 と、ここでそれを踏まえた上で、曜、2枚切符について調べたのか南に対しこう尋ねたのである。

「でも、博多~別府大分間の2枚切符って指定席タイプなのになんで深谷さんは自由席を使っていたわけ?」

たしかに博多~別府大分間の2枚切符は指定席タイプであるために深谷は指定席に乗れるはずである。でも、深谷は自由席を使っていた。それはなぜなのか?

 それについても南はこう答えてくれた。

「実は、2枚切符、繁忙期は指定席券がないと指定席には乗れないんだ」

そう、2枚切符指定席タイプであるが繁忙期には別途指定席券を買わないといけなかったのだ。で、今回の場合は1月4日5日ともに繁忙期にはいっていた。そんなこともあり、深谷は指定席ではなく自由席に座っていたのである。

 しかし、なぜ深谷はわざわざアプリで指定席のネット切符を買ったという嘘をついていたのだろうか。いや、なんで4号車から3号車に移動するというややこしいことをやったのか。そんな疑問が残る。それについても南がこう説明した。

「そして、深谷がややこしいことをしたのだけど、まぁ、指定席に座ったことにすればあまりに幼稚すぎるアリバイということで疑われずにすんだことと2枚切符の片割れになにか見られたくないなにかがあったのかもしれないね」

これには、深谷、

「ぐぐぐ・・・」

と図星を突かれたような表情になる。たしかに深谷が指定席を使ったと言い張ったことによりあまりに幼稚すぎるアリバイとして警察がスルーしてしまったような節がある。それくらい深谷の用意した偽のアリバイは幼稚すぎたと錯覚するものだったのである。

 そして、南は深谷に対して1月5日のことについても話してくれた。

「そして、1月5日の列車のトリックもわかりました。深谷さん、ソニック58号に乗ったのって大分→別府間のみですね」

これには、曜、驚く。

「えっ、たったその区間だけなの?」

これには、南、こう答えた。

「まぁ、別府で降りたときに無効印を押して持っておくことでソニック58号に乗って福岡に来たという証拠を作りたかったのでしょうね」

 ところが、深谷、南に対してこう反論する。

「でも、ソニック58号に福岡に来ないと任意同行した時間帯に間に合わないだろうが!!」

たしかにその通りであった。ソニック58号で福岡に来ないと任意同行した23時45分ごろに間に合わないのである。

 すると、南は時刻表を取り出しこんなことを言い出してきた。

「たしかに大分別府→博多に直通する列車はソニック58号と60号のあいだにはありません。ですが、小倉で乗り継げば別府から博多まで行くことが可能なのです、にちりん16号小倉行きとかささぎ201号佐賀行きに乗ればね・・・・」

そう、深谷は小倉で乗り継いで別府から博多まで来たのである。にちりんは、通常、シーガイアを除いて大分~宮崎間の特急であるがこのにちりん16号は宮崎→小倉へと行く特急であった。これだと別府21時04分発小倉22時27分着である。その後、小倉でかささぎ201号(小倉22時31分発博多23時21分着)に乗り換えれば任意同行が求められた23時45分ごろに福岡に来ることが可能なのである。

 ただ、それにも、曜、噛みつく。

「でも、それだと逆に高くなるのでは?」

たしかにその通りであった。2つの特急を乗り継ぐため、これだと料金が跳ね上がったりするのである。それを金にがめつい深谷がするとは考えにくいものである。

 ところが、それすら南は覆した。

「実は2枚切符なら乗り継ぐことができるのだよ」

たしかにその通りであった。2枚切符の場合、それ自体が乗車券であり特急券であった。そのため、2つの特急を乗り継ぐことすらできたのである。これには、深谷、

「その証拠はあるのか?」

と言うと、南、曜がりなから送られてきたメールに添付されていた動画を深谷に見せた。これには、深谷、

「く~」

と悔しがる姿をみせた。これには、曜、こう思ってしまう。

(まさか、ここでりなちゃんの動画が役に立つなんて・・・)

実は、りなが曜に送った動画、それは深谷がにちりん16号に乗って小倉に向かっている動画だったのである。どうやら、りなたちQU4RTZの4人はまたもや深谷と同じ列車に乗っていたようである。

 そして、南は警察に対しある指示を出した。

「すぐにでも九州総局にお願いして血痕がついた2枚切符を探してくれ!!」

これには、深谷、

「もうやめてくれ!!俺の負けだ・・・」

と白旗を上げてしまった・・・。

 その後、血痕がついた2枚切符がみつかった。その血痕や切符から採取した指紋からその血痕が深谷の元奥さんである立石のものであること、その2枚切符には深谷の指紋がついていたことがわかった。深谷が2人を殺した理由、それはやはり慰謝料を払いたくないためであった。深谷は1月4日に慰謝料について立石に払うか払わないか口論になった際、近くにあったナイフで立石を殺したのだが、そのときに偶然2枚切符の片割れに立石の血が付着したため、立石は仕方なくあんなややこしいことをしたのである。そして、翌日の1月5日も今の奥さんと慰謝料についてひと悶着があったために殺した上で2枚切符を使ったトリックを使ったのだという。ただ、これについては最初から計画にあったらしく、部下にわざとアプリから早得3の切符を購入させた上での犯行であったらしい。

 とはいえ、深谷は南の推理によりすべてが明るみになったため、逮捕されることとなtった・・・。ただ、これについては、南、

「あまりに身勝手すぎる犯行だな・・・」

と深谷に呆れるばかりであった・・・。

 

 とはいえ、今回も南の活躍もあり無事に事件を解決することができた。だが、これは、今回3回目の、南、この世界における最後の事件の幕開けを意味することになるとはこのときの南には知る由もなかった・・・。

 

(おまけ)

「今回はご苦労さん、QU4RTZのみんな!!」(千歌)

「陰の仕事は大変でしたよ!!」(かすみ)

「でも、楽しかったよ~」(エマ)

「彼方ちゃんもだよ~」(彼方)

「でも、まさか、私のボートの機能、ここで役に立つなんて、嬉しい!!」(りな)

「でも、本当に助かったよ!!本当にありがとう!!」(千歌)

「「「「こちらこそ!!」」」」(QU4RTZのみんな)

 

「立石さん、千歌、やったよ!!あの深谷をやっつけたよ!!これで成仏してね!!」(千歌)



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曜とルビィの事件簿 最終章 最終かも目の男 前編

「私もようやく警部か~」

と陽気よさそうに言葉にするのはこの物語でもおなじみのめんこい刑事であった。実は、めんこい刑事、今度、警部に出世することが決まったのである。南との対決では道化的なポジションだったのだが、南との対決以降、まじめに職務を全うし、ときには事件を解決に導いたりしていたため、(運というのもあるが、)今度、警部へと出世することが決まったのである。

 そんなめんこい刑事であったが仕事のあった長崎から(博多までの最終列車である)かもめ64号に乗り、門司港(0時52分着)まで来たのである。実は、かもめ64号、通常ならかもめ(リレーかもめ)は長崎駅を出発、武雄温泉駅で在来線に乗り換えて博多駅で終点のところ、その先の門司港駅まで行くのである。その門司港駅で降りためんこい刑事であるがなぜか門司港まで来ていたのである。で、その理由が・・・、

「そういえばここで待ち合わせだったな・・・

そう、誰かと門司港駅で待ち合わせをしていたのである。

 だが、そんなときだった。突然、

「うがぐふっ」

とめんこい刑事の口元がふさがれてしまった。そして・・・、

がくっ

とめんこい刑事は眠ってしまった・・・。

 

曜とルビィの事件簿 最終章 最終かもめの男

 

「うぅ、ここは・・・」

とめんこい刑事は目を覚ました。すると、

「なんじゃこりゃ!!」

と一瞬めんこい刑事は驚いてしまう。なぜなら・・・、

「って、なんで、私、鉄格子のなかにいるんだ・・・」

そう、そこは警察の留置所であった。

 すぐにめんこい刑事はそこにいる警察官に対してこう叫ぶ。

「なんで私はここにいるんだ?」

すると、その警察官はめんこい刑事に対してこう告げた。

「あなたが人を刺して殺したからです」

 むろん、この警察官の言葉に対してめんこい刑事はこう反論した。

「私は人を刺していない!!」

 だが、このめんこい刑事の反論に対しその警察官はこんなことを言ってきた。

「でもですね、あなたの指紋がついたナイフが殺人事件の現場で見つかっているのですよ」

そう、被疑者の血痕とめんこい刑事の指紋がついたナイフが事件現場に落ちていたのである。これには、めんこい刑事、

「う~」

とうなるしかなかっ・・・、

「それでも私はやっていない!!」

と叫び続けたのである。

 その後、取り調べにおいても無罪を叫び続けためんこい刑事、これにはさすがの刑事たちも、

「く~、これじゃ埒が明かない・・・」

 

とお手会上げ・・・。

 そんなわけで、

「めんこい刑事、それだったらあなたの無実を証明できる人を呼びなさい・・・」

とめんこい刑事の無実を証明できる人を呼ぶことに・・・。で、その人物とは・・・。

 

「で、俺がここに呼ばれたのですね・・・」

と南がめんこい刑事の前に来てはぼやいていた。そう、めんこい刑事が召喚したのは南であった。むろん、この子たちも・・・。

「曜です!!」「ルビィです!!」

もちろん、曜とルビィもついてきていた。これには、めんこい刑事、

「あっ、おまけか・・・」

とつい口走ると、曜、

「それじゃ、無実の証拠、教えてあげない!!」

とすねてしまった。これには、めんこい刑事、

「えっ、本当にあったのか!!」

と驚くと、曜、めんこい刑事に対して、

「これは私が見つけたものだよ!!」

と胸を張って自慢した。というのも、南、めんこい刑事から呼ばれるなり、

「曜とルビィ、すまないが次のところに行ってくれ!!」

と曜とルビィをとある場所へと行ってもらうことにしたのである。むろん、南の根回しはちゃんとしてだ。

 そんな曜の言葉に対し、めんこい刑事、

「ごめん、ごめん!!」

と詫びるとともに、

「それじゃ、それを見せてくれ!!」

と頼むと、曜、

「それじゃ、これね」

と自分のスマホからとある映像を流した。そこには、

「あっ、私が誰かに眠らされている・・・」

そう、めんこい刑事が誰かによって眠らされているシーン、さらには・・・、

「そして、私がどこかに連れ去らわれようとしている・・・」

とめんこい刑事がどこかに引っ張られていくようなシーンがあった。

 そして、曜はこう言った。

「これは門司港駅の防犯カメラの映像だよ!!」

そう、曜がみんなに見せた映像、それは事件当時の門司港駅の防犯カメラの映像だった。これには、南、こう述べる。

「めんこい刑事が門司港駅に到着してからすぐに記憶がなくなったと予測してみた。ならば、駅の防犯カメラの映像を見ればわかるかと思ったんだ」

南が曜とルビィを派遣した場所、それは門司港駅の防犯カメラを管理している場所であった。南がめんこい刑事に呼ばれたとき、すぐにそのことを予測して曜とルビィを門司港の防犯カメラの映像を管理しているところに派遣したのである。これは曜とルビィが自分たちで決めたことであった。というのも、曜とルビィ、2人を呼び出したときにこう言ったのである。

「最後こそ私たちにも手伝わせて!!」(曜)

「ルビィも最後だから頑張ルビィする!!」(ルビィ)

どうやらこれが最後の事件だと思ったのだろう、曜とルビィは進んで南たちの手伝いをお願いしたのである。むろん、南も寝耳に水のことであったが2人の思いを受け取ったのか、

「わかった!!」

と2人のお手伝いを認めたのである。そんなこともあり曜とルビィは南からの要望で門司港駅の防犯カメラの映像を管理している場所へと派遣されたのである。その後、曜とルビィ、リレーかもめ64号が到着する0時52分ごろを中心にめんこい刑事の形跡をたどったところ、曜がその映像をビンゴしたというわけである。

 そんなわけで、めんこい刑事の無実は証明されたのである。これにて一件落着・・・、ではなかった。南はこう言った。

「でも、被疑者はなぜ殺されたのだろうか・・・」

そう、なぜ被疑者は殺されたのかである。それもめんこい刑事に罪を擦り付けである。これにはめんこい刑事を陥れようとしたことが予想される。そう考えた上でもこの事件はまだ解決されていなかったのである。

 そこで南はめんこい刑事にあることを尋ねた。

「ところで、めんこい刑事、あなたは誰に呼ばれたのですか?」

そう、めんこい刑事は門司港駅で人と待ち合わせをしようと門司港駅に行ったのである。

 これには、めんこい刑事、こう述べた。

「それは同僚で同じ刑事の緒方です」

どうやら、めんこい刑事の同僚で同じ刑事の緒方に呼ばれたようである。

 さらにこんなことまでわかった。それはある少女たちの証言によるものだった。それは曜とルビィが聞き込みをしていたときにわかった。曜とルビィはめんこい刑事の無実を晴らしたあと、門司港駅付近で聞き込みをしていたのである。そこで、

「あっ、愛さん、果林さん、侑さん!!」

そう、偶然、曜とルビィが会ったのがニジガクの愛、果林のDiverDivaと侑であった。

 そんな3人に対し曜とルビィはあることを尋ねた。

「ところで、昨日の夜からきょう未明にかけてなにか不審なことが起きなかった?」(曜)

「小さいことでも教えて」(ルビィ)

 すると、愛がこんなことを教えてくれた。

「あっ、たしか、0時10分ごろ、2人組の男の人たちの一方が苦しみだして倒れたの。でも、まわりに人がいなかったからもう一方の人がその人を担いでどっかにいったわけ」

さらに果林もこう証言した。

「でも、もう一方の人は、たしか、少し焦っていた感じだったはず・・・」

最後に侑もこう証言した。

「だけど、その人、焦っていた割にはなにか計画的に動いていた感じもしたよ」

これには、曜とルビィ、

「うわ~、これはとても重要なものだね!!」(曜)

「たしかに!!」(ルビィ)

と驚くとともにニジガクの3人を南のもとに連れて行っては今さっきの証言を南に聞かせたのである。

 すると、南、すぐに南と一緒にいた高山に対してこんな命令を下した。

「高山、すまないが被疑者の死因を調べてくれ!!」

ところが、高山、こんなことを言ってきた。

「そうかと思ってここに来る前にちゃんと調べてきました」

どうやら、高山、このことを見越して被疑者の死因を調べていたようである。といっても、被疑者の遺体解剖の結果をしらべていただけであるが・・・。

 と、そんなことよりも、高山、南に対して被疑者の死因などについてこう答えた。

「被疑者の名前は内牧でした。で、死因ですが、ナイフ一刺しによる刺殺・・・」

やっぱりめんこい刑事が・・・、

「と見せかけての毒殺でした。死亡推定時刻も0時10分ごろでした」

そう、被疑者、内牧の死因は毒殺であった。それに殺された時間もニジガクの証言と同じ時刻であった。これには、南、

「それだったら(ニジガクの)3人の証言にあうな」

となにか確信したような気がしていた。

 そんななか、めんこい刑事の同僚である緒方が到着した。その緒方に対し南はこう言った。

「すまないが昨日から今日までのあなたの行動を教えてくれ」

どうやら、南、緒方に対し昨日から今日までのアリバイを聞いてみたのである。ただし、めんこい刑事の証言から門司港駅でめんこい刑事と待ち合わせをしていたことがわかっていた。なので変なアリバイは緒方にはできなかった。

 そんな緒方であるがこんなことを言ってきた。

「俺はかもめ62号で長崎を21時19分に出発し、22時47分に博多駅に到着しました。その後、博多駅23時10分発のきらめき12号に乗り換えて門司港駅(0時19分着)まで来ました」

この緒方の言葉に南は驚く。昨日から今日までの緒方のアリバイだと内牧が殺された0時10分ごろには緒方は門司港駅にはいなかったことになるからだ。このままだと緒方のアリバイは成立してしまう。ただ、このときの取り調べはここまでしかできなかった。

 

 その後、南はこの事件についていろいろと調べようとしていた。新しい証言も入った。まずは高山からだった。

「南さん、大変なことがわかりました!!」

と南のいる部屋に高山が飛び込んでくると、高山、南に対してこう言ったのである。

「内牧を殺した毒ですが、通常なら1時間以上ぐらいしないと効かない遅延性の毒でしたが、どうやら、内牧、薬が早く効く体質らしく、通常より早い30分で毒が効いて死んだみたいです」

 さらにこんな証言も・・・。これは曜とルビィによるものだった。

「南さん、大変なことがわかったよ!!」(曜)

「これはルビィが見つけたものだよ!!」(ルビィ)

と言っては2人が南のいる部屋に駆け込むと、南、

「一体どうしたの?」

とルビィに尋ねた。すると、ルビィはこんなことを言ってきたのである。

「実はね、(ニジガクの)愛さんと果林さんと侑さんがね、新幹線であの人を・・・」

この証言のあと、愛と果林に南は詳しいことを聞いてみると、

「たしかに、私たち、博多駅から小倉駅まで新幹線で来たんだよ!!」(愛)

「たった20分で到着するなんて凄いとか言えないけど・・・」(果林)

「たしか、そこであの人を・・・」(侑)

と証言してきたのである。

 その証言を聞いた南であるがすぐに長崎に飛ぶと、

「まずは緒方のアリバイを確認しないと・・・」

と緒方のアリバイを確かめることにした。

 そんななか、ある駅に近づくとこんなアナウンスが聞こえてきた。

「もうすぐ新鳥栖に到着します。・・・新幹線はお乗り換えです・・・」

このアナウンスを聞いたとき、南、確信したようである。。

「なるほど、なるほど。やっぱりか・・・」

 そして、南はある指令をだした。

「高山、すまないが関係者を門司港駅に集めてくれないか。それも23時40分ごろにね」



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曜とルビィの事件簿 最終章 最終かもめの男 後編

 そして、その日の23時40分ごろ、

「俺は明日も予定があるんだ。はやくしてくれ」

と緒方はぼやいていた、そんなときだった。突然、

「すまない、すまない」

と長崎に飛んでいたはずの南が現れたのである。これには、曜、

「えっ、今さっきまで長崎にいたはずでは?」

と驚くもすぐに緒方に対し、南、こう言い放った。

「これで緒方さんのアリバイは崩れました」

これには、緒方、

「俺のアリバイが崩れた?それってどういう・・・」

というと南がこんなことを言ってきたのである。

「緒方さん、本当はあなたが言っていたアリバイの40分以上前に門司港駅に到着していたのですよ」

むろん、これには、緒方、

「なんだって!!言っておくが私のアリバイのルートが1番早く門司港に到着することができるのですよ!!」

たしかに通常のルートなら緒方の言うことも一理あったりする。

 だが、南は緒方に対しこう言ってきた。

「でもね、お金に糸目をつけなければそれよりも最速のルートがあるのですよ」

 そして、南は時刻表を広げた、こう言いながら・・・。

「緒方さん、新鳥栖と博多で新幹線に乗り換えてきましたね」

これには、緒方、

「えっ・・・」

と驚いてしまった。

 すると、南、そんな緒方に対しこんなことを言ってきたのである。

「まず、かもめ(&リレーかもめ)62号に乗って長崎を21時19分に出発、途中、新鳥栖で22時22分に降りるとすぐにつばめ338号(新鳥栖22時32分発)に乗り換えて博多駅に22時44分に到着する」

この南の言葉に緒方はただ、

「・・・」

と顔をゆがませようとしていた。だが、南の言葉は続く。

「すぐに博多駅22時48分発のこだま780号に乗り小倉駅に23時06分に到着、そのあと、在来線の普通(23時24分発)に乗り換えたあと、門司港駅に23時38分に到着すると内牧さんに毒を盛られたなにかを食べたか飲んだのでしょう。そして、あとは遅延性の毒だから毒が効くまで内牧さんと一緒にいることでいつ内牧さんが死んでもいいように待っていたのでしょう」

この南の推理に緒方はすぐに、

「そんなことなんてできないはずじゃ・・・」

と言うと南はこう言ってきたのである。

「俺がここにいる、それだけでも証明できているのですがね・・・」

すると、南は自分が乗ってきた乗車券をみせた。そこには今日のかもめ62号だけでなくかもめやこだまの特急券もあったのである。むろん、そのすべてに門司港駅の無効印が押されていたのだが・・・。これにはさすがの緒方も、

「くくく・・・」

としかめっ面をするような感じになってしまった。

 と、ここで、南、緒方に詰め寄りこうも言った。

「言っておくがお前が新幹線に乗っていたという証言も獲ている、この子たちによってな!!」

 すると、ニジガクの3人が声をあげた。愛、果林、侑の3人もこの場にいたのである。

「たしかにこの人がこだま380号に乗っていたの、見たもん!!」(愛)

「たしかに間違いないね」(果林)

「たしかに、たしかに!!」(侑)

このニジガク3人の言葉に、緒方、

「くそ・・・」

と悔し顔になってしまった・・・。

 しかし、ここでルビィがこんな疑問を南にぶつけた。

「でも、なんで緒方さんは内牧さんに遅延性の毒を盛ったものを出したの?即効性の毒でもよかったはずなのに・・・」

そう、なんでわざわざ緒方が遅延性の毒を用いたのかである。即効性の毒でも殺せたはずである。なのに、なんで緒方は遅延性の毒を用いたのだろうか。

 すると、南はその理由についてこう述べたのである。

「それは1時間後に来るめんこい刑事のせいにしたかったからだよ。でも、思っていた以上に早く内牧は遅延性の毒によって死んでしまった。だから、緒方はめんこい刑事を眠らせては刺殺の線で話を進めようとしていたと思うよ」

そう、緒方は内牧が殺される時間の予測を外されたのである。1時間以上あとで効く遅延性の毒がいつ効くかどうかは個人差がある。早く効く人もいれば遅く効く人もいる。そして、内牧は早く効く方であった。そのことを緒方は知らなかったのである。そのため、通常の人なら1時間以上あとで効くために内牧を自分より1時間以上あとに来るめんこい刑事が毒殺したという筋書きにしたいところ、それができなくなったのである。そのため、緒方は焦ってしまい、めんこい刑事が内牧を刺殺した、という筋書きに変えたのである。だが、それは南によって阻止された、というわけである。

 そして、ニジガクの3人は緒方に対しこう言った。

「その内牧さんが死んでいった場面に私たちが偶然みかけたんだよ」(愛)

「あれは本当に思い出したくないわ」(果林)

「でも、それによって緒方さんの悪事を知らしめることができたのです」(侑)

 そんなニジガクの3人の言葉を前に緒方は膝を落としてはこう言った。

「まぁ、俺が内牧と一緒にいたためにいつ内牧が死んでも大丈夫だったはずなのにその直接の現場をこの3人に見られたなんてな・・・」

どうやら、緒方、用心深いのだろう、内牧がいつ死んでもいいようにずっと内牧と一緒にいたことでいつ内牧が死んでも秘密裏に対処できるようにしたのだがニジガクの3人によってそれを隠すことすらできなくなったのである。そう、ニジガクの3人の証言がなかったら緒方が内牧を殺したことを知ることなく迷宮入りしたかもしれなかった。それくらいニジガクの3人の証言はこの事件の解決に役に立ったのである。

 と、ここで、南、緒方に対しあることを尋ねた、とても重要な・・・。

「ところで、緒方、なんで内牧を殺したんだ?」

そう、殺人の動機である。

 すると、緒方は、こう答えたのである。

「俺よりも早くめんこい刑事が出世するなんておかしすぎるんだよ!!だkら、内牧を殺してその罪をめんこい刑事にかぶせようとしていたんだ・・・」

あまりにも短絡的な動機であった。先に出世しためんこい刑事へのねたみ・・・、ただそれだけのためにまったく関係ない内牧を殺したのである。あまりにも短絡的である。だが、殺人の動機のほとんどが短絡的なものだったりする。人に対する恨みやねたみ、その他もろもろ。人はいろんな感情を持つからこそ人は他人を殺すのかもしれない・・・。

 とはいえ、あまりに短絡的な動機を言った緒方に対しまわりのみんなは怒りに満ち溢れていた。特にめんこい刑事は相当怒っていた。だって・・・、

(ただの自分へのねたみのためだけに警察官としてやってはいけないkとをするなんて・・・)

だってめんこい刑事も同僚で同じ刑事の緒方も同じ警察官である。その警察官がただのねたみのためだけにまったく関係ない人を殺すという、いや、自分のねたみだけで他人を殺して自分に対し罪をかぶせようとするなんて許すことなんてできないからであった。むろん、それは警察官として、いや、人としてやってはいけないことをしたのである。そのことをめんこい刑事は許せなかったのである。

 そして、ついにめんこい刑事は手を・・・。

バシッ

なんと、緒方のほほを平手打ちした少女がいたのである。これには、めんこい刑事、

(あっ、だれかが私の代わりに緒方に平手打ちするなんて・・・)

と唖然としていた。だって、めんこい刑事は緒方に対して手をあげていないのだから・・・。

 では、誰が緒方に平手打ちをしたのか。それは・・・、

「えっ、千歌ちゃん!!}(曜)

「千歌ちゃん・・・」(ルビィ)

そう、緒方に平手打ちをしたのは(陰に隠れていた)千歌だった。千歌はこれまで陰として曜とルビィの旅のサポートを、いや、この物語における陰からのサポートをしてきた、つまり、この物語群における陰の功労者であった。だが、今、まさか、千歌、表に現れては事件の容疑者である緒方に対して平手打ちをかましたのである。それはよほどのことがない限りないことだった。それを覆すくらい千歌の心のなかではないかがあったのかもしれなかった。

 ただ、緒方は突然のことなので、

「・・・」

となにもいえなかった。そんな緒方に対し、千歌、こう叫ぶ。

「ほかの人に対してのねたみ、それによってまったく関係ない人を殺すなんておろかでしかないよ・・・。そんなの、許せない・・・、許しちゃダメなんだよ!!」

それは千歌がここにいるみんなの想いを代弁しているかのようだった。ただのねたみや恨みのためだけに人を殺すなんて許してはいけない、そんな想いを千歌がすべての人に対して言っている、そんな感じがしていた・・・。そのためか、緒方はただ、

「・・・」

とまるで誰かに謝罪するかのような表情で立つことしかできなかった・・・。

 

 その後、緒方は逮捕された。そのときの緒方は覇気が感じられない、そんな表情をしていた・・・。

 

 こうして、めんこい刑事に関する事件は解決した。そのためか、めんこい刑事、南に対してこうお礼を言った。

「今回はありがとう。君のおかげで助かった」

 すると、南、めんこい刑事に対してこう言った。

「別に助けにきたわけじゃない。仲間として駆けつけただけだ」

その南の表情はとても照れくさいものだった。

 だが、めんこい刑事はうれしかった。だって・・・、

(まさか私のことを仲間としてみてくれていたとはな・・・)

仲間、それはめんこい刑事にとってとても嬉しいものだった。これまでは2人がいれば対決する運命だったのである。だが、ここにきて仲間というのは対決してきた先でみえたものだったのかもしれない。そのことをめんこい刑事は実感していいたのかもしれない。

 ただ、このとき、この南の表情を見て、めんこい刑事、こう思ってしまう。

(でも、これが最後なのかもしれないな・・・)

そう、これが最後の出会いになる、そうめんこい刑事はそう思えたのである。でも、それはあながち間違いではなかった。これが本当に最後になる、最後の物語になる、それが最終章なのだから・・・。

 ただ、それでもめんこい刑事はそのkとを気にしていないかのように南に対しこう言った。

「それじゃ、またな、南・・・」

これには、南、こう答えた。

「あぁ、またな、めんこい刑事・・・」

 そして、2人は敬礼をして別れた。それはまるで最後ではないかのように・・・。

 

 こうして、南のこの物語群における最後の事件は終わった。だが、このあと、まさか、あの事件が、いや、騒動が起きるとはだれも知る由もなかった・・・。

 



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曜とルビィの事件簿 最終章 グランドエピローグ

グランドエピローグ

 

「というわけでこの物語はおしまい!!」

と曜はそういうと鉛筆を置いた。実は、曜、これまでに起きた南との事件を物語として書いてはほかの人たちに見せるために小説投稿サイトに投稿していたのである。それが大ヒットし今や曜は(船員業務のかたわら)大ヒット作家として人気になったのである。

 そして、すべての事件の物語を書き終えた日、久しぶりに八代駅のホームに曜は立った。そこには・・・、

「曜ちゃん、南さんと別れた日って今日だったよね・・・」

とルビィが横に立っていた。そう、この日、3月24日、その日は南たちが新庄さんの物語の世界に帰った日であった。この日はいつも、曜、ルビィと一緒に南たちへのねぎらいを込めて八代駅のホームに立ち寄るのであった。でも、いつもならなにも起きなかった、いつもなら・・・。

 ただ、このときは違った。

「ルビィちゃん、あのね、この鍵をね・・・」

と曜はルビィに対し鍵を見せた。この鍵は南たちが帰ったあとに八代駅のホームに落ちていた鍵であった。だが、どこの鍵かわからない、そんな鍵であった。それを曜は大事に持っていた。いつもは自分の寝室にある自分の宝箱のなかにいれていた。だが、今回は・・・、

(なにか感じる・・・)

と曜は思ったのか自分の宝箱から出してここまで持ってきたのである。

 そして、その鍵をルビィに見せたときだった。

「あっ、千歌ちゃん!!」

と、ルビィ、誰かを見つける、そう、その人は千歌だった。実は、千歌、

「あっ、誰かが呼んでいる!!」

と思ってか、曜とルビィには知らせずにここ八代駅のホームに来たのである。

 その後、千歌は曜とルビィに近づいた。その瞬間、

「うわ~、鍵が光った!!」

と曜が持っている鍵が光始めた。いや、それだけではなかった。

「あっ、千歌のなかからなにかがあふれている!!」

と千歌のなかから光のなにかが出てきた。どうやら、ある封印が解かれたようである、それは、あのとき、ある人が千歌にした封印だった。それがついに解放されたのである。

 そして、曜、ルビィ、千歌の前に、1つのドアが、現れた・・・。これには、曜、

「もしかして、この鍵をこの鍵穴に差し込めば・・・」

となにかに気づいたかのようにそのドアの鍵穴に光っている鍵を差し込んだ。

 すると・・・、

ギュア~ン

とドアが開くとともに、

「ようこそ、新庄さんの物語の世界へ・・・」

という男の声が聞こえた。これには、曜、ルビィ、ともに、

「あっ、南さん!!」(曜)

「お久しぶりだね!!」(ルビィ)

と、その男、南に声をかけていた・・・。

 

 こうしてこの物語群は幕をおろした。たしかに最終章である。でも、最終章だからといってこれが最後とは限らない。いつの日か、またいつの日か、この物語群が始まるかもしれない。いや、すでに始まっているのかもしれない、あなたの心のなかで・・・。

 

曜とルビィの事件簿 おわり・・・?



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