日本国召喚 架空国家参戦(仮) (滅茶苦茶太郎/無茶苦茶太郎)
しおりを挟む

追加国家などに関する解説(スキップ可)

作者の滅茶苦茶太郎です。

今回、作中内に登場するオリジナル国家(新国家)についての詳細を書いておきたいと思います。
ただし今回はおおざっぱに書いているので、内容がスカスカだったり欲しい情報が入っていないかもしれません。

即席で作成した為、分かりずらい所や見づらい所があるかもしれませんが、予めご了承ください。
(わかりにくい点などに関しては、コメントでご指摘ください)


作中に登場する国家に関して。

 

・アルファ国

強大な海軍国家で島国。

 

海軍戦力として強力な原子力空母や原子力潜水艦などを有している他、多数のミサイル駆逐艦など中心とした強力な艦隊を有している。

 

移転以降は日本と共に同盟を結んで行動しており、数々の軍事支援活動などを行っていた。

 

 

・ベータ国

強大な陸軍国家で広大な国土を有している。

 

今回の作品内では余り活躍しないものの、強力な機甲師団を多数有しており、グラ・バルカス帝国の陸軍程度ならば単独で制圧できるほどの強さと規模を有している。

 

移転以降はアルファ国と同じように日本と同盟を結んでいる。

 

 

・ガンマ国

強大な空軍国家で半島国家。

 

空軍国家として強力な空軍戦力を有しており、戦闘機から偵察機に至るまで多数の航空機を有している。その他、平時からの偵察活動が盛んに行っており各国と情報共有を行っている。

 

移転以降は日本とは同盟を結んでいないが、友好国として交流を行っている。

 

 

・デルタ国

ベータ国に次ぐ広大な土地と、高い軍事力を有している国家。

 

若干、覇権主義的な部分を有しているものの平和的に活動している。他にも、特別尖っている部分が無い為にあらゆる分野で万年2、3位の座を占めている悲しい側面がある。

 

日本とは同盟を結んでおらず、後述するイプシロン国と特に友好関係を有している。

 

 

・イプシロン国

比較的、国土が小さいがそこそこの軍事力を有する国。

 

デルタ国と友好的な関係を有しており、強い同盟関係を有している。軍事力はそこまで強力ではないものの、決して弱いとも言えない程度には有している。

 

日本とは同盟は結んでいないがデルタ国とは軍事同盟を結んでいる。

 

 

・ゼータ国

イプシロン国と同じく、そこそこの軍事力を有する国。

 

ベータ国と日本との間に強い同盟関係を有しており、官民共に積極的な交流を行っている。軍事力に関しては、陸軍を中心とした強すぎず、弱すぎずの軍備を有している。

 

移転以降、ベータ国と日本の軍事活動の支援なども積極的に行っている。

 

 

・イータ国

アルファ国と同じく島国で、そこそこ高い軍事力を有している国家。

 

穏健な社会主義を掲げる政党が与党となっているが、日本を含めた他の新国家たちとは仲良くやっている。

(市場経済の導入などをしている他、選挙なども実施されている民主主義国家である)

軍事力に関しては、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ国よりかは弱いが、イプシロンやゼータよりかは強い程度に有している。

 

日本を含めたすべての国家と軍事同盟を結んでおり、軍事支援を行ってきた。

 

・・・・・・・・・・

その他

 

基本的な流れは原作と同じだが、細かいところなどでは異なっている部分が多数ある。

(いずれも本作には関係ないので、ここでは解説しない)

 

今回のグ帝戦において、

新国家7ヵ国は宣戦布告された事から、日本と臨時の軍事同盟を結んで対抗する事になっている。

(終戦後、軍事同盟は解消される事となっている)

 

新国家の世界的な評価は

7ヵ国集めて一つの連合と扱われており、列強以外の国の中では一番強いとされている。

そのため一応は、多くの国に一目置かれた存在として扱われている。

 

 

以下、必要であれば随時追加する予定です。




いかがでしたでしょうか?

追加して欲しい点や修正して欲しい部分がありましたら、ぜひともコメントください。
(ただし、お答えできない点などもありますので、その点に関してはご了承ください)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章 「タスクフォースコード100」
第0.1話


作者の無茶苦茶太郎です。

今回、どの辺りに投稿しようか迷いましたが、とりあえず0.1話として投稿する事にしました。
今後の流れ次第で話の位置が動くかもしれませんが、その辺りは予めご了承ください。

また、原作や今作において色々な変更点や矛盾などがありますが、その辺りに関しても予めご了承ください。


リーム王国 王都ヒルキガ グラ・バルカス帝国航空基地

 

リーム王国の王都ヒルキガの中央には巨大な王城がそびえ立つ。その王城の中では重大な会議が開かれる事となっていた。

王城の会議室の一室に多数の男達が集まる。多くはグラ・バルカス帝国軍の人間であったが、中にはリーム王国軍の人間も何人か参加していた。

「時間まであと5分か……」

会議室の中で一人の男が呟く。彼は腕時計から目を離すと周りを見渡し、人数が揃っている事を確認する。

「アーリ・トリガー殿、もう全員集まっているので会議を始めましょう」

「うむ、少し早いがそうしよう」

特殊殲滅作戦部の作戦部長であるアーリ・トリガーは軍幹部のムルノウの言う通りに会議を始める事にする。

「まず最初にですが、特殊殲滅作戦部の方から現状の説明を行いたいと思います」

アーリ・トリガーの傍にいた男が話し出す。

「戦略爆撃機に関してですが、こちらの方に来る途中で1機が故障により帰還しましたが、残りの203機は此処に到着しています。現在、いずれの機体も燃料補給と爆弾の搭載を完了しています」

別の男が地図を広げる。それらは爆撃予定の敵国の地図であった。

「現在の予定では最初に日本の本土を爆撃し、次に他の新国家7ヵ国の連中の本土を爆撃する予定です」

彼は地図の複数個所にペンで丸を付ける。

「まず最初にいずれの国に関しても、首都の防空が固いのは確実であります。軍本部からの指示もあり、今回は首都以外の大都市を狙いたいと思います」

男は日本の丸を付けた場所を指さす。

「ここは名古屋と言われる大都市です。ここを破壊すればかの国は大きく戦闘能力を失うでしょう」

続いて別の国の場所を指さす。

「こちらがアルファ国のウォルフラムと言われる都市で、こちらがベータ国のニオブと言われる都市となります」

その後も攻撃対象となる都市の名称の解説を続ける。

「以上の7ヵ所を攻撃したいと思います。ただし攻撃は有効な一撃を与える為に、一度に2ヵ所しか攻撃しません」

そういうと男は一歩後ろに退き、説明が終わった事を宣言した。

「それではリーム王国の者たちに命令を行いたいと思う」

ムルノウはリーム王国軍の人間たちに向かう。

「お前たちは全戦力を用いて近くのパーパルディア皇国の攻撃と通商破壊作戦を行ってもらいたいと思う」

リーム王国軍の関係者たちは驚愕の表情を浮かべる。一方のムルノウ達は何の反応も見せずに続けた。

「貴国のワイバーン部隊はパーパルディア皇国の適当な港を攻撃したまえ。また、艦隊の方は同国の海域で攪乱を目的として日本や新国家の民間船に攻撃するように」

粛々と話すムルノウに対し、リーム王国軍の関係者たちは肩を震わせていた。

「少しお待ちください!日本との戦いで大きく戦力を失ったパーパルディア皇国とはいえども、我々の軍では荷が重すぎます!どうかご再考を!」

リーム王国軍のリバルは必死に訴える。確かにパーパルディアは日本との戦いで国力と戦力の両方を落としたものの、現在のリーム王国では苦戦は避けられそうにない。

だがしかし、ムルノウ達の反応は薄かった。

「それがどうした?日本や新国家の本土に対して直接攻撃するよりかはマシだろう?それに、あくまで貴様らの任務は通商破壊による攪乱と、同盟国に対しての奇襲を行う事による心理的な圧力を掛ける事だから大した問題にはならんだろう?」

ムルノウ達はあっさりと言ってのける。それがリーム王国にとって高い難易度の任務であるとしても、彼らには大した問題とは感じていなかったのだ。

一方のリバルは委縮し縮こまっていた。相手は自国よりも圧倒的に強く、下手に機嫌を損ねるわけにはいかなかったのだ。

「わかりました。やれるだけやってみます」

リバルは俯きながらも話す。圧倒的な屈辱に他のリーム王国軍の人間らは本来ならば、その場でこの者たちを切り捨てていただろう。だが残念ながらもリバルからの忠告によってその様な行動を起こす者はいなかった。

「それでよい。それで本題に戻ろう」

その後もグラ・バルカス帝国軍の人間を中心に会議は続いていく。彼らは目的を達成するために計画をしっかりと練っているのだった。

 




いかがでしたでしょうか?

自分が認識している主な変更点に関しては

・グティマウンの出撃
原作ではカイザルの要請で陽動も兼ねた攻撃を行う事となっていますが、
今作では独自に特殊殲滅作戦部が攻撃を行う事になっています。
・第44任務部隊の出撃
原作ではGMと共同で攻撃を行う事となっていますが、
今作では独自に行動を行います。
・リーム王国軍の攻撃対象
原作では海軍が日本本土を攻撃する予定となっていますが、
今作ではパーパルディア近海で通商破壊作戦を行います、

の3つが大きく異なっています。
違和感を感じられるかもしれませんが、どうかご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.2話

作者の無茶苦茶太郎です。

今回、登場国家などに関する解説も同時に投稿しております。
興味のある方は、そちらもご覧ください。


リーム王国 王都ヒルキガ グラ・バルカス帝国航空基地

 

広大な滑走路上に多数の爆撃機が一列に並んでいた。その爆撃機たちはグラ・バルカス帝国が運用しているベガ型双発爆撃機よりも圧倒的に巨大であり、エンジンも6基も搭載している点が特徴的であった。

その巨大爆撃機の名はグティマウン型戦略爆撃機だった。グラ・バルカス帝国において初の戦略爆撃機であると同時に技術の粋を結集した機体である。

この爆撃機は移転直前に完成し、ケイン王国との最終決戦時に使用する予定だったのだが、異世界に移転してからは使用される機会が無かったため、特殊殲滅作戦部と共に冷遇されていた。だが、そんな彼女たちに転機が訪れる事となる。

それは皇太子グラ・カバルが捕獲された事により決定された懲罰攻撃作戦において、敵の本土爆撃の一番槍を行うという大変名誉な事なのであった。

話は変わり、彼女たちは離陸の準備を整えていた。載せられるだけ燃料と爆弾を積んだ後、エンジンの暖機運転を始めたところであった。

「でけぇなコレ……」

「ああ、そうだな……」

ある一機のグティマウンの近くに居た二人の整備兵は息を飲む。彼らは今まで何度もグティマウンの整備を行っていたのだが、その度に同じことを言っていた。

このグティマウンの姿は、他にも多数の人物にも目撃されていた。

「なんと、なんという大きさだ!」

グティマウン型爆撃機の姿を見たリバル達は驚きを隠せなかった。機体の大きさもさることながら、多数の自衛用の機銃を搭載し、6基のエンジンが唸り二重反転プロペラが回転する姿を見た彼らの中には腰を抜かしそうになる者も居た。

ざわめくリーム軍の人間の姿を見てアーリ・トリガーが話す。

「あの爆撃機には、高度10000m以上を飛行可能でムーの戦闘機程度の機銃弾ならば防げる装甲を有している。そして大量の爆弾を搭載可能で此処のちっぽけな都市なんぞ簡単に地図上から消すことが出来るだろう」

かなり無礼な発言であるが、圧倒的な実力を有するグラ・バルカス帝国の人間に対して怒りを表明したリーム王国の軍人はいなかった。

アーリ・トリガーは続ける。

「わが特殊殲滅作戦部ならばミリシアル帝国の首都であったとしても無傷で焼き払う事もできるだろう。これ程の大戦力に焼かれないことを光栄に思うが良い」

その時、アーリ・トリガーの元に一人の男が駆け寄って来た。

「アーリ・トリガー様、もうすぐで出撃準備が終わります。直ちに一番機にご搭乗ください」

「わかった。それでは行こう」

アーリ・トリガーは自分が搭乗するグティマウン一番機の元に足早に向かっていく。その彼の背中をリーム軍の軍人たちは呆然と眺めていた。

 

・・・・・・・・・・

 

グティマウンのパイロットであるグリティスはコックピットの窓から、リームの軍人たちがいる方向を眺めていた。

「見ろよ。あいつら呆然としてやがるぜ」

「ああ、実に滑稽だな」

隣に居たヘレルは軽く笑いながら答える。グラ・バルカス帝国の全技術力を結集した賜物を前に呆然とする蛮族たちの姿は滑稽に見えたのだ。

グリティスはコックピット内に並ぶ計器を確認し、暖機運転が終わるまでの時間を確認した。

「ヘレル、あと3分で暖機運転が終わるぞ」

「もうそろそろか」

ヘレルが言い終えると同時に、グリティスはある人影に気づいた。

「アーリ・トリガー部長が来たぞ!」

機内にいる全員に聞こえるような大きな声でグリティスが叫ぶ。その声を聞いた全員は急いで自分の持ち場へと移動した。

全員が自分の持ち場へ移動が終わると同時にグティマウン一番機にアーリ・トリガーと付添人がドアを開けて入って来る。

「あと何分で暖機運転は終わりそうだ?」

「あと2分です」

「そうか……。暖機運転が終わり次第、報告するように」

そう言うとアーリ・トリガーは近くにあった専用の座席へと深く腰掛ける。彼はその座席から時間が来るまで静かに待機し続けるのであった。

機内にはエンジンとプロペラの回転音だけが響く。2分がたった後、グリティスはアーリ・トリガーに告げた。

「アーリ・トリガー部長、本機の暖機運転が終わりました」

「うむ、これより本機は任務を開始する。無線手よ、後続の機体についてくるように無線を入れろ」

「了解!」

コックピットの近くに居た無線手は返事をすると、後続の爆撃機たちに本機に続けと無線を入れる。

「これより本機、離陸を開始します!」

グリティスとヘレルの2人が大きな声で告げる。その声を聞いた機内の全員は一気に気を引き締めて自分の仕事に集中する。

グリティスとヘレルの2人がスロットルレバーを動かすと、グティマウン一番機がどんどんと速度を上げて加速を始めた。それと同時にエンジンやプロペラの回転音も大きくなる。

「V1、ローテート!」

離陸をするに十分な速度を得たグティマウンは機首上げを始めて、少しづつ陸上から空へと向かって上がっていく。そして機内は、より大きな騒音に包まれていく。

障害物の無い空に向かってグティマウン一番機は轟音を辺り一面に響かせながら、ついに離陸をする。それに続き、後続のグティマウンが離陸を始めた。

「離陸しました」

深緑色に塗装されたグティマウンは太陽の光を反射させながら王都上空を飛行する。その姿を見たリーム王国の人々は太陽の存在も忘れ、ただその姿しか目に入らなかった。

市街地の家から、路上から、王城から、多くの人々の視線を浴びたグティマウンたちは編隊を組んだ後、遥か彼方へと去っていった。

 




いかがでしたでしょうか?

これからも完結できるように、更新を続けていきたいと思います。
もしよろしければ、コメントや評価などよろしくお願いします。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.3話

作者の無茶苦茶太郎です。

今後の予定になりますが、リーム&GM戦が終わった後は本編の更新を行いたいと思います。
予めご了承ください。


リーム王国 セニアの港

 

木造の軍艦と鋼鉄製の軍艦がひしめき合い、狭くなっている港の中である船団が港を出港しようとしていた。

「正気か?」

出港しようとしていたリーム海軍の提督は上からの命令に頭を抱えていた。その命令はパーパルディア皇国の近海域に展開し、日本や同盟国の民間船を攻撃せよという物であった。

「提督、どうしますか?」

「ううむ」

彼は頭を悩ませる。パーパルディアの海域で通商破壊作戦をやった場合、間違いなくパーパルディアを敵に回す事になるのは目に見えていた。

日本との戦いにより壊滅的な被害を受けたパーパルディア皇国と言えども、わずかながら海上戦力を有していた。ただし、そのわずかな海上戦力であれどもリーム王国海軍では太刀打ちできない可能性も十分にあるのだ。

「……上からの命令であれば仕方あるまい。全艦、セニアの港から出港せよ!」

彼は命令を下す。その命令に従って木造の戦列艦と竜母の艦隊は帆を張り、風神の涙を用いて港から離れていく。

82隻の艦隊はパーパルディアの近海を目指して進みだすのであった。

 

・・・・・・・・・・

 

イータ海軍 ミサイル巡洋艦 CG-12

 

イータ海軍が運用するスラヴァ級ミサイル巡洋艦のCG-12のCIC内は騒然としていた。

「レーダーに反応あり、数203、距離400km、高度15000m!」

「来たか!」

砲雷長は顎をさする。事前の情報が正しければ203機の正体は敵の戦略爆撃機に違いないのだろう。

砲雷長は敵が見つかった事を艦長に報告する。その返答はすぐに帰って来た。

「わかった。射程内に入り次第、直ちに迎撃せよ。私は陸上に連絡を入れておく」

「了解。射程内に入り次第、攻撃します」

彼はそういうとレーダーの画面の方に向く。その画面には203機もの機影が映っているのが見えた。

「多いな……」

敵機は高度15000mを飛翔しており、個艦防空ミサイルの4K33は届かない。唯一、届くであろう艦隊防空ミサイルのS-300Fは64発しか積んでおらず、全機を撃ち落とすことはできない。

一応、日本本土に戦闘機部隊が待機しており、その戦闘機部隊があれば全機迎撃できるだろう。しかし、ここで全機迎撃できないのは彼らにとっては歯がゆい思いであった。

だが何もしないのは論外である。彼らは可能な限り敵の数を減らすため、敵機の迎撃の準備を整えていく。

「砲雷長、もうすぐ敵が射程距離に入ります!」

一人の士官が報告を行う。その報告通り、敵はもうすぐでミサイルの射程内に入る所であった。

少し時間が経ち、ついに敵が射程内に入った。

「敵機、射程に入りました!」

「よし、攻撃開始!」

砲雷長が命令を下すと同時にミサイルの発射ボタンを押す。それと同時に甲板上にあったS-300F用のVLSの蓋が開いた。

CG-12の甲板上からミサイルが圧縮ガスによって空中に撃ち上げられる。空中に投げ出されたミサイルはロケットモーターに点火し、大量の煙を吐きながら敵に向かっていった。

続いてミサイルが再び発射される。このミサイルも高空の爆撃機を撃破する為に向かっていく。

ミサイル巡洋艦CG-12は本格的に戦闘を開始した。

 




いかがでしたでしょうか?

もしよろしければ、作品の評価や感想の方もよろしくお願いします。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.4話(上)

作者の無茶苦茶太郎です。

少し更新速度が落ちるかもしれませんが、予めご了承ください。


グラ・バルカス帝国 グティマウン爆撃機隊

 

203機もの巨大爆撃機が編隊を組んで飛行する。その様子は圧倒的であり、グラ・バルカス帝国の力の象徴と言えるだろう。

その203機の内の1機のある機体の中では、ちょっとした会話が行われていた。

「機長、敵機などは確認できませんでした」

「そうか」

さも当然であるかのように機長は答える。だが実際、高度15000mを飛ぶことが出来る飛行機はグラ・バルカス帝国において、このグティマウン型戦略爆撃機ぐらいであることから当然の反応であった。

報告を行った機銃手は引き続き監視を続ける。彼の眼下には真っ白な雲が辺り一面に広がっており、その上には青く澄んだ空が見えていた。

「(暇だな……)」

彼はふと思う。そもそもこの高度まで飛ぶことが出来る飛行機が存在しない以上、見張りをしていても無意味に感じていた。

機内にはエンジンの唸る音と機長と副操縦手の二人の会話する声が聞こえる。しばらくすると機銃手たちの多くも話始めるようになった。

「お前も楽にしたらどうだ?」

「ああ、そうしよう」

真面目に見張っていた機銃手は見張るのを一旦中止する。頭をかいている時、ふと嫌な予感がする。

「(なんだ、この感じは……)」

機銃手は再び見張りを再開する。彼が辺りを見渡した時、それが起きた。

「なっ!?」

彼は目を見開き大きな声で叫ぶ。全員の視線が集まる。

「機長!グティマウンが……」

彼の発言に全員が窓から外を見る。他の全員もすぐにその原因に気づいた。

「嘘だろ!?なぜだ!?」

機長が叫ぶ。そこには煙の中からバラバラになって落ちていくグティマウンだったものが見えた。

「事故か!?」

副操縦手は事故だと考えていた。彼は機内に搭載した爆弾が爆発した可能性を考えたのだ。

そう考えている時、再び別の機体が爆発した。

「なっ!?」

全員がその様子を目撃していた。黒い煙の中から、辛うじて原型をとどめていた機首と尾部と両翼の一部が火をまといながら地面へと落ちていくのが見えた。

「敵襲!機銃手は配置につけ!」

機長が叫ぶ。今まで気を抜いていた機銃手たちは銃座に寄って敵を探していた。

「どこだ!どこにいる!」

全員が血眼になって敵を探す。最初に異変に気付いた機銃手の目には次々と爆発していくグティマウンの姿が見えた。

「(一体、どこから攻撃しているのだ!)」

彼は心の中で悪態をつく。その時、先ほどよりも強い嫌な予感に襲われる。

「(まさか……)」

次は自分たちの番だと考えた。その次の瞬間、機体が強く揺れ、機内に強風が吹き荒れた。

CG-12の放ったミサイルは彼の乗ったグティマウンの右翼側に命中し、ミサイルの弾頭が炸裂した。その爆発によって右翼の全体だけではなく、胴体の右側にも大きな破孔を空ける事になったのであった。

「うああぁぁぁ!」

誰かの悲鳴が聞こえる。機体は右へ回転しながら急降下し、強風が吹き荒れる機体内は無茶苦茶な様相を呈していた。

被弾したグティマウンは胴体部分から火と煙を吐き、錐揉み状態となって地面へと向かっていく。片方の翼も機体の錐揉み運動により、強度の限界に達して空中でちぎれて飛んでいった。

やがて胴体だけとなったグティマウンは内部のガソリンタンクに引火して、多数の乗員を乗せたまま空中で爆発して消えていった。

 

・・・・・・・・・・

 

グティマウン爆撃機隊のリーダー機であるアーリ・トリガーの乗った機体の中では次々と報告が入っていく。

「17番機、被弾!爆発しました!」

彼の近くに居た機銃手の一人が報告を入れる。グティマウンたちは正体不明の攻撃の真っただ中にあり、全員が動揺していた。

「ひるむな!このまま潜り抜けるぞ!」

アーリ・トリガーは周りを鼓舞するように叫んでいたが、内心では大きく動揺していた。

「(何だ!何が俺たちを攻撃しているんだ!)」

戦闘機が見えない以上、高射砲からの攻撃と考えていた。しかしながらも、今は海上を飛んでいることから、高射砲の攻撃が飛んでくるなど本来はあり得ないのであった。

それに仮に高射砲だと仮定した場合、空中に多数の砲弾の爆発が起きるはずである。それらが起きず、ただ急に機体が爆発するなど彼は信じられなかったのである。

窓の外からは爆発し粉々になって落ちていったり、機体の一部がもぎとられて落ちていくグティマウンたちの姿が見える。いずれも程度の差こそあれども、撃墜されている事には変わりはない。

「くそっ!くそっ!」

機長が叫ぶ。誰もが口にはしなかったが、内心では同じような事を叫んでいた。

機長の声で騒然とする機内の中で、アーリ・トリガーは内心では動揺しながらも考えていた。

「(どこから攻撃が来ているのだ!空からでもない、地上でもない……。艦船からの迎撃か!カルトアルパスの巡洋艦の様な艦船から高射砲で我々を攻撃しているのだな!)」

アーリ・トリガーは一つの結論を出す。艦船からの高射砲による迎撃を受けているのだと結論を出した。先ほど高射砲による迎撃はあり得ないとしたが、よくよく思い出してみればカルトアルパスでの戦闘において高い防空能力を示した事から高射砲での攻撃も十分考えられたのだ。

彼は決断する。急いでこの空域から離れて高射砲の射程外に逃げるべきだと考えた。

「機長、急いでこの空域を離脱するぞ!敵艦の高射砲の射程外に出るんだ!」

「了解しました!」

「無線手、他の機体にも速度を上げて離脱するように伝えろ!」

「了解!」

味方が次々と撃ち落とされていく中、敵の迎撃を避ける為にアーリ・トリガーは忙しく指示を出すのであった。

 




いかがでしたでしょうか?

多少遅れるかもしれませんが、これからも頑張って投稿していきたいと思います。
もしよろしければ感想や評価の方もお願いします。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.4話(下)

作者の無茶苦茶太郎です。

色々とあり投稿が遅れました。
次回は早く投稿できるようにしたいと思います。


「アーリ・トリガー様、攻撃が止みました!」

グティマウン一番機のある機銃手が報告を入れる。おおよそ50機ほど撃墜された辺りで敵の攻撃は止んだのであった。

「そうか……。恐らく射程の外に出たのだな」

アーリ・トリガーは顎に手を当てて考える。少しの間考えた後、彼は意を決したように話し出した。

「いいか、よく聞け。敵の迎撃の損害を抑える為に必要な事を伝える。無線手は他の機体にも伝えるようにしろ」

機内が一気に沈黙する。全員が耳を傾けている事を確認したアーリ・トリガーは話し出す。

「まず最初に余剰の燃料を投棄せよ。ただし、往復に必要な燃料はきちんと残しておくように」

アーリ・トリガーは、まず最初にグティマウンに搭載されている余剰な燃料を投棄する事を決定した。次回の爆撃までにかかる給油時間の短縮の為に多く積んでいたのであった。

アーリ・トリガーが燃料投棄を指示した理由に気づいた全員が静かに頷く。機体の軽量化を行う事によって速度と高度を上げる目的があったのだ。

「次に爆弾の一部の投棄しろ。おおよそ2tほどを投棄するのだ」

これには全員が驚いた。いくら軽量化の為だとしても爆弾の投棄をすることは普通ならばあり得ない事であったからだ。

「アーリ・トリガー様、本当に爆弾を投棄するのですか?」

パイロットのヘレルが不安そうに尋ねる。

「ああ、2tほど投棄するんだ。本機は20tもの爆弾を積むことが出来る。2t程度ならば投棄しても、都市を爆撃するには十分すぎる量が残っているからな」

アーリ・トリガーは毅然とした態度で答える。実際に多数のグティマウンが残っているため、爆弾搭載量が少し減少したとしても任務遂行には問題は無いだろう。

その返答を聞いたパイロットたちは爆弾を投下する準備に取り掛かった。少しばかり時間がかかったものの、順調に投棄準備は整った。

「投棄準備完了、投棄します」

「よろしい。投棄せよ」

アーリ・トリガーの合図と共にグティマウンから2t分の爆弾が投棄される。本来ならば地上に投下されるはずだった爆弾は、高空から大きな風切り音を立てながら海上へと向かっていく。

「投棄完了しました」

各機体から投棄された爆弾の雨は何もない海上に降り注ぎ、海面には多数の水柱が発生した。その光景は人によっては芸術的に見えたかもしれない。

「うむ。それでは続いて話すぞ」

全員がアーリ・トリガーに注目する。彼は少しばかり息を飲んだのち話した。

「尾部機銃と下部機銃以外、全ての機銃の弾薬を投棄する」

先ほどよりかは小さかったものの、機内は再び驚愕に包まれる。

「アーリ・トリガー部長、本当に投棄するのですか?」

今度はグリティスが尋ねる。爆弾や燃料と比べても重量は少なく、なおかつ自衛用という大きな役割のある機銃の弾薬投棄にはさすがの彼も驚かずにはいられなかった。

「そうだ。グティマウンはこの世で最も高い高度を飛ぶことのできる飛行機だ。奴らの戦闘機がどれほど優秀であろうとも、ここまでは登れないだろうから自衛用の機銃も不要だろう」

アーリ・トリガーは内心で「だが」と付け足す。

「それでも念の為に尾部機銃と下部機銃の弾薬は残しておけ。正直、考えにくいが念の為にな」

彼がなぜこの二か所を残したのかと言えば、まず最初に攻撃を受ける可能性の高い部位として機体後方が挙げられる。そのために尾部機銃は必要となる。

続いて下部機銃を残した理由としては、敵機がグティマウンと同等の高度を飛行できる可能性は低いため上部機銃は残す必要は無い。だがしかし、敵機がグティマウンよりかは低い高度から弾を撃ち上げるように攻撃を行ってくる可能性は十分に考えられる。それに対処するために下部機銃は必要と判断したのだ。

「わかりました。それでは尾部と上部以外の銃座の弾薬を全て投棄します」

機銃手たちはアーリ・トリガーの命令に従って銃座の弾薬と投棄作業を始める。味方のグティマウンに命中させない様に気をつけながら、銃座から銃弾が放たれる。

「(……これで準備は完了したな)」

弾薬を全て撃ち尽くした機体から射撃は止み、曳光弾と言う黄色い光の雨粒は空から消えて無くなった。そのタイミングでアーリ・トリガーは最後の命令を出した。

「それでは最後に、俺が指名したグティマウンは各3機ごとに編隊を組んでくれ。編隊は10km間隔を保ちながら本隊の30km先を先行するように」

彼の指示は無線を伝って全体の編隊に伝わる。彼の指名した30機のグティマウンたちは10個の小編隊を組んで、残りの大編隊の30km先へと向かっていった。

「(果たして上手く行くだろうか?)」

アーリ・トリガーは作戦を思い返す。3機で編成された編隊を10km間隔で並ばせて先行させることによって敵の高射砲による迎撃を事前に探知しすると同時に、どこが迎撃されにくいかの迂回路を見つける役割があった。

ただし、そうなれば真っ先に犠牲になるのは先行するグティマウンたちだ。アーリ・トリガーは自身の下した命令の薄情さを憂いながらも、任務の達成の為に頭脳を最大限活用する。

こうしてグティマウンたちは迎撃に対する準備を整えていく。だが同時に、そのグティマウンたちを迎撃しようとする者たちも同じように準備を整えていくのであった。

 




いかがでしたでしょうか?

もしよろしければ、コメントや評価の方もよろしくお願いします。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.5話(上)

作者の無茶苦茶太郎です。

小説の内容には関係ないのですが、
作者名の部分が滅茶苦茶太郎となっているので、作者名の部分を「滅茶苦茶太郎/無茶苦茶太郎」と変更しました。

ただし、前書きの部分などでは無茶苦茶太郎か滅茶苦茶太郎のどちらかで表記しますので予めご了承ください。


日本海上空 第100合同任務部隊

 

日本海上空に28機の航空機が編隊を組み飛行していた。それらの編隊は日本へと迫っている140機ものグティマウン型爆撃機を迎撃する為に出撃した機体であった。

「こちらコマンダーX、敵機まで約200kmだ。全機、戦闘準備を整えろ」

早期警戒管制機のA-50から随伴する戦闘機たちに無線が入る。巨大な円盤の様なレーダーを搭載したその機体の周囲には18機のMiG-25と9機のSu-30が飛行している。

「イータ空軍の方はいい装備を持っているな……」

MiG-25に乗るイプシロン空軍のあるパイロットが呟く。18機もの旧式のMiG-25で編成されたイプシロン空軍に対して10機と数は少ないものの、新型の機体のみで構成されたイータ空軍をうらやましく思っていた。

「3番機、聞こえているぞ。それよりも準備はできたか?」

「すみません、これからします」

彼の乗っているMiG-25には4発のミサイルが吊り下げられていた。彼はそのミサイルを発射できるように準備を整える。

「3番機、発射準備完了しました」

「よろしい。そのまま指示に従って待機せよ」

隊長機からの通信が切れると彼は再びイータ空軍の戦闘機と早期警戒機に目を向ける。

「(やはり、あっちに乗ってみたいな……)」

イータ空軍のSu-30を見た彼は心底思う。角ばった見た目のMiG-25に対して滑らかな流線形で構成されたSu-30は高い機動性と多数のハードポイントを有している事に加えて高性能なレーダーを有していた。それに対して自身の乗っているMiG-25が勝っているとしたら最高速度ぐらいだろう。

だがしかし、この機体が迎撃作戦に参加した理由について彼は適任だと考えていた。高高度を高速で侵入してくる目標を迎撃する事を目的として開発されたMiG-25にとって、グティマウン型爆撃機は最も相性の良い目標と言えるであろう。

「こちらコマンダーX、敵まであと100kmだ。これより攻撃部隊は速度を上げて敵に向かう様に」

「(来たか!)」

A-50から無線が入る。その無線の指示に従う様に18機のMiG-25と6機のSu-30が速度を上げて、敵の爆撃機へと向かっていく。

「敵機まで70kmだ。最初にMiG-25隊が攻撃を開始せよ」

イータ空軍のSu-30が無線を入れる。

「了解。MiG-25隊、俺に続け」

隊長機が速度を上げると同時に、他のMiG-25が速度を上げて進んでいく。やがて18機のMiG-25はSu-30を引きはがして進んでいく。

「敵機まで残り50km!攻撃用意!」

隊長機が速度を落とし、全機に攻撃用意の指示を出す。全機のMiG-25は予め割り振られた目標に対してロックオンをする。

「距離40km!攻撃開始!」

隊長機からの無線に従って全機からミサイルが発射される。ミサイルの排煙による白い線が空を駆け巡り、目標へと向かっていく。

「(当たれよ……)」

3番機のパイロットはレーダー画面を見ていた。レーダー画面には多数の機影が映っており、それらに向かってミサイルが向かっているのが分かった。

少しばかり時間が経ち、画面上に映っていた多数の機影が消滅した。18機のMiG-25から放たれたミサイルは一発も外れる事無く、30機のグティマウンに命中し撃墜した。

「こちらコマンダーX、先行している敵30機の撃墜を確認した。続いて、後方の110機に対しても攻撃を開始せよ」

「了解。後方にいる奴らを攻撃するぞ。全機続け!」

再び先頭の隊長機が速度を上げて敵へと向かう。後続のMiG-25たちもそれに従い、編隊を崩す事無く速度を上げて進んでいく。

「(あれが奴らの先行部隊だった奴か……)」

3番機のパイロットは前方に見える黒い煙の塊を見てふと思う。それの正体は先ほど攻撃して撃墜した敵機の墓標であった。

「距離30km!攻撃開始!」

再び隊長機から攻撃開始の命令が下る。それに従い彼もミサイル発射のボタンを強く押した。

翼下に吊り下げられた2発のR-40ミサイルのシーカーはグティマウンのエンジンから放たれた赤外線に向かって進んでいく。また、別の機体のR-40ミサイルは機首のレーダーから放たれた電波の反射波を捕捉してグティマウンの方に向かっていく。

「これが我々の底力だ!」

MiG-25から放たれたミサイルの嵐が今、グティマウンたちの元へ襲いかかるのであった。




いかがでしたでしょうか?

先日の誤投稿の件については申し訳ありません。
忘れてくだされば幸いです。

もしよろしければ感想や評価の方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.5話(中)

作者の無茶苦茶太郎です。

今回、作品の一部のサブタイトルを上中下と言う形で分けてみる事にしました。
(そうしないとリーム艦隊戦が書けないのでそうしました)

紛らわしいかもしれませんが、どうかご了承ください。


グラ・バルカス帝国 グティマウン爆撃機隊

 

「アーリ・トリガー様!先行している爆撃機隊すべてからの通信が途切れました!」

「なんだと!」

グティマウン一番機の機内は騒然となる。先行させていた30機からの無線が一瞬の間に全て途切れたのだ。

「無線機の故障じゃないのか?」

「いいえ。先行している爆撃機隊以外にはつながりますので故障ではありません」

無線機の故障ではない事にアーリ・トリガーは顔を青くする。

「わかった。もう一度交信を試みろ!」

「了解しました。もう一度交信を試みてみます!」

アーリ・トリガーは頭を抱えて考える。

「(馬鹿な!?30機を一瞬で撃ち落とす程の防空網が待ち受けているのか!?)」

彼は狼狽する。自身の予想を上回る程の防空網が待ち受けている事に驚きを隠せなかった。

同時に彼の脳裏にある事がよぎった。

「(まずい!このまま進めばグティマウンは撃墜されてしまう!早く引き返さなければ!)」

30機ものグティマウンを一瞬で撃墜するほどの防空網があれば、110機程度のグティマウンなど短時間で殲滅可能であろう。そして自分たちは現在、その防空網に目掛けて前進しているところであることに気づく。

「無線手!直ちに爆弾を投棄して反転するように全機に通達するんだ!急げ!」

「わっ、わかりました!直ちに伝えます!」

無線手は無線機に向かって直ちにアーリ・トリガーの命令を伝えようとする。しかし、それよりも先に彼の懸念していた事態が始まった。。

エンジン音が響く機内に機銃手の大きな叫び声が聞こえる。全員がその叫び声に二つの意味で驚愕する事となった。

「アーリ・トリガー様、グティマウンが攻撃を受けています!」

「なんだと!?」

全員が驚きながら窓の外に視線を向ける。そこには爆発四散するグティマウンの姿が見えた。

「なっ!?」

アーリ・トリガーは一瞬だが固まる。爆発四散した巨大なグティマウンは主翼と尾翼の端を残して完全に破壊されているのが目に見えた。

だがしかし、被害を受けたのはこの機体だけでは無く、別の機体たちも同じように攻撃を受けていた。攻撃を受けた機体は多少差があれども、大抵が同じように撃墜されたのであった。

「操縦手!急いで反転しろ!急げ!」

「もうすでにやっています!」

パイロットたちは必死に操縦桿を引いて機体を反転させようとする。しかし巨大な機体は彼らの焦りとは裏腹にゆっくりと旋回しているのであった。

「ヘレル、もっと引けるか!?」

「限界だ!早く反転してくれよ!」

パイロットの二人は鬼の形相で叫ぶ。それでも機体が旋回する早さは変わらず、機内にはもどかしさが余計に強まるだけであった。

「(まだか!まだなのか!)」

アーリ・トリガーの額と手には汗が浮かんでいた。彼もまた反転が終わるまでの間、焦りと生きた心地がしなかったのは言うまでもないだろう。

丁度、機体が反転を終えて全員が一息をついた頃、無線手が報告を入れた。

「アーリ・トリガー様。敵の攻撃によりグティマウンは42機ほど撃墜されました!」

「なんだと!それほど撃ち落とされたのか!?」

ほんの一瞬の事であったと言えるだろう。その一瞬で42機ものグティマウンが撃墜されたのだ。

アーリ・トリガーは愕然とする。自身が予想していた以上の攻撃に震えが収まらなかった。

「(奴らは化け物だ!俺たちは一体どんな化け物を相手にしているんだ!?)」

彼は機外にいるグティマウンに目を向ける。作戦開始直後は圧倒的な大群であった爆撃機隊は、今や見る影もないほどに数を減らしていた。

本来の任務である名古屋爆撃を失敗した挙句、味方の多くを死なせてしまったことに彼は強く後悔する。極刑が免れない事は確実だろうが、そんなことは彼にとってはどうでもよかった。

だが悪夢は彼らを逃さなかった。失意のどん底にいる中、更なる悲劇が彼らを襲う事となった。

 




いかがでしたでしょうか?

これからも頑張って投稿していきたいと思います。
もしもよろしければ評価やコメントの方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.5話(下)

作者の無茶苦茶太郎です。

今回、普段と比べてかなり長くなっています。
(いつもは1500文字を目安としていますが、その倍ほどあります)

その点に関しては予めご了承ください。


日本海上空 第100合同任務部隊

 

MiG-25の攻撃によってグティマウンの編隊は旋回して撤退している事に合同任務部隊の全員が気が付いた。だがしかし、それで敵を逃すほど彼らは甘くは無かった。

「こちらMiG-25戦闘機隊、合計72機を撃墜した」

「了解。あとは任せてくれ」

Su-30の編隊はミサイルを撃ち尽くして帰投しているMiG-25の編隊を見送る。

「Su-30部隊、聞こえるか?」

後方で待機している早期警戒管制機から報告が入る。

「こちらコマンダーXだ。全機に告ぐ、残りの68機を撃墜せよ」

「了解、これより敵機を撃墜します」

隊長機のパイロットが宣言すると、全機は急速に速度を上げてグティマウンの元へと近づいていく。

全員がいつでも攻撃できるように準備を整えている中、隊長機のパイロットは考えていた。

「(R-77は全機で60発。1発で1機撃墜できるとすると、8機が残ってしまうか……。まあR-73が12発ほど残っているし、いざとなれば30mm機関砲で撃墜すれば良いか)」

彼は頭の中で素早く計算すると、無線機に叫ぶ。

「全機、攻撃を開始せよ!」

「了解、攻撃を開始します」

全機から返答が入ってくると、各機の主翼から白い煙が発生して敵のグティマウンの元に向かう。その正体はR-77空対空ミサイルである。

隊長機からも次々とミサイルが発射され、やがて全てのミサイルを撃ち尽くす。雲の上の空にはミサイルが通った多数の白い線がはっきりと見えた。

「壮観だな……」

「ええ、そうですね」

後部にいるレーダー迎撃士官も頷く。彼のレーダー画面には多数の敵機と、それに向かっていく多数のミサイルの二つが映っていた。

澄み渡った向こうには多数の敵機が待ち受けている。レーダーに映る機影を見ながらレーダー迎撃士官は攻撃が命中する、その時を待つのであった。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス帝国 グティマウン爆撃機隊

 

数を減らし、無様な姿をさらして撤退していたグティマウンの編隊たち。命からがら逃げられたと全員が感じた矢先、最後尾の機体が爆発した。

「また来やがった!」

ぐったりした様子の機銃手が叫ぶ。その叫びには驚愕よりも怒りや憎悪に近い感情が混ざっていた。

「そんな……」

アーリ・トリガーは次々と爆発していくグティマウンの姿に呆然とする。余りにも強力な攻撃に彼は夢を見ているように感じていた。

敵の攻撃を胴体などに受けた機体は空中分解を引き起こして空に散り、翼に攻撃を受けた機体は大きく回転したり、急激に速度を落として雲の下へと姿を消していく。

「ヘレル!右へ!」

グリティスが叫ぶ。攻撃を受けて制御不能になった別の機体が彼らの乗るグティマウンの方へと迫っていた。

「うあぁぁぁ!」

「間に合えぇぇぇ!」

全員がその光景に目を見開く。右翼は根元から消え去っており、そこから噴き出した燃料によって火達磨になった機体が彼らの元へと迫っていた。

炎の塊が眼前に迫り全員が思わず目を強く閉じる。誰もがぶつかると思った次の瞬間、機体はこれまでにない程に大きく揺れた後、何事も無かったように飛行を続けた。

「へ?」

誰かが間抜けた声をあげる。全員が恐る恐る目を空けると、そこには自分たちが乗るグティマウンの機内が見えた。

「たっ、助かった……」

パイロットの二人は深く息を吐く。彼らの乗るグティマウンは間一髪で回避する事に成功したのだ。その証拠に機体には傷一つ無かった。

全員が目前の危機を乗り越えた事に安堵した次の瞬間、近くのグティマウンが爆発する。

「ひっ!」

パイロットのヘレルが悲鳴を上げる。その時、アーリ・トリガーはある事に気づいた。

「(さっきよりも爆発が小さくないか?)」

その証拠として、爆発したグティマウンは翼の二基のエンジンから火を吹いているだけで済んでいた。先ほどの攻撃では翼がもぎ取られる程の威力があったのだ。

「(たまたま運が良かっただけなのか?)」

そのグティマウンを観察していた次の瞬間、再び爆発が起きた。

「アーリ・トリガー様!」

機銃手が叫ぶ。彼の声を聞いた全員が次の報告に耳を疑った。

「航空機らしき物体がこちらに近づいています!?」

「なんだって!?そんな馬鹿な!?」

アーリ・トリガーは叫び、全員が衝撃を受ける。アーリ・トリガーは近くの窓に顔を近づける。

「!?」

機銃手の報告を受けて外を見てみた結果、小さいながらも航空機の姿が見えたことに彼は強い衝撃を受ける。これ程の高高度を飛行できるのはグティマウンのみと考えていた彼らの常識は根底から覆る。

「なんだ!?」

航空機から白い煙が発生し、何かがこちらへと接近しているのが見える。その飛翔体は目にもとまらぬ速さで近くにいたグティマウンの翼へと命中する。

「っ!?まさか敵の攻撃は此処まで届くのか!?」

機銃よりも圧倒的に射程が長く、強力な一撃に彼らは狼狽する。そして同時に、彼らは自分たちがどのような方法で攻撃を受けた事を知った。

「(まさか今まであの飛翔体で攻撃を受けていたのか!)」

自分たちの常識から大きくかけ離れた攻撃に全員が混乱する。すると突然、敵の攻撃が止んだ。

「敵機、こちらに接近しています!」

敵機は急激に速度を上げて彼らの乗るグティマウンへと接近を始める。

「撃てっ!撃ち落とすんだ!」

アーリ・トリガーは叫ぶ。その指示に従う様に生き残った5機の自衛用機銃が発砲を始め、空に多数の曳光弾が放たれた。

だがしかし、敵の航空機は圧倒的な速度と機動力でそれらを躱すと、最初に被弾して速度を落としていたグティマウンに対して発砲し、これを撃墜した。

「嘘だろ!?」

航空機としては破格の装甲を有しており、部分的には20mm弾にすら耐えられるグティマウンが敵の銃弾に貫かれ撃墜された事実に誰もが驚く。

続いて敵の攻撃が始まったが今度は飛翔体であった。飛翔体は2発ほど撃ち込まれ、エンジンを破壊された機体は速度を落として雲の下に消えていく。

残り3機になった時、敵は3つに分かれてそれぞれに襲い掛かって来た。

「まずいぞ!」

残りの2機に対して5機の敵機が群がっているのが見える。そしてアーリ・トリガーが乗る一番機には1機の敵機が迫っていた。

「うあぁぁぁ!」

後部にある尾部機銃から多数の銃弾が放たれる。だが敵は上昇してそれらを躱す。

敵機が上昇するのに従って尾部機銃も角度を上げて放つが、途中で発砲が止まってしまった。

「まずい!弾切れだ!」

顔を青くした機銃手が叫ぶ。本来ならば上部にも機銃があったのだが、機体の軽量化の為に撃ち尽くしてしまったために発砲することが出来なかった。

機銃による攻撃が止んだ時を見計って敵機は翼から飛翔体を放った。放たれた飛翔体は一番機の左翼に命中し、機内は爆音と巨大な揺れに襲われる。

「うがっ!」

強い衝撃にアーリ・トリガーは壁に叩きつけられ、額から血を流す。そんな中、上の窓を見上げると敵機がグティマウンより高い高度から見下ろす様に向かっていた。

「(これが奴らの戦闘機か……)」

次の瞬間、敵機が光る。放たれた銃弾は一番機の機内を貫いた。

強い衝撃と共に機内には多数の破孔が開き、砕けた曳光弾と砲弾が機体を貫いた事によって生じた火花と閃光が機内を駆ける。それと同時に破壊された機体からガラスやジュラルミンの破片が飛散し、機内にいた人員を傷つけていく。

「うぅ……」

アーリ・トリガーは辺りを見回す。天井と床には多数の弾痕が出来ており、至る所から機体が軋む音が聞こえる。

「もう……だめか……」

彼の左足は攻撃によって消し飛び、腹からは大量の出血をしていた。薄れていく意識の中で彼は死んでいった部下たちに心の中で謝罪を済ますと、息を引き取った。

攻撃を受けたグティマウン一番機はやがて雲の下へと潜ると、燃料タンクのガソリンに引火し、空中で爆発して姿を消した。

一番機の攻撃が終わった直後、残りの2機も同様の運命を辿る。空には黒い煙の墓標が3つほどできていた。

これにより、名古屋爆撃を行おうとしていたグティマウン爆撃機たちは1機残らず殲滅され、戦闘は終了したのであった。

 




いかがでしたでしょうか?

つい普段よりも熱が入ってしまい、長くなってしまいました。
その点に関しては、どうか大目に見てください。

もしよろしければ、コメントや評価の方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.6話

作者の滅茶苦茶太郎です。

作者の諸事情によって作品の投稿が遅れてしまい誠に申し訳ございません。
後述の理由により次話の投稿も遅れるかもしれませんが、その点に関しましては予めご了承ください。

そしてですが今回アンケートを行いたいと思っています。
詳しい内容に関しては後書きの方に書いておきますので、そちらを参照してください。


リーム王国 竜母艦隊

 

セニアの港から出港した82隻は通商破壊作戦のためにパーパルディア皇国の東側の海域に向かっている最中であった。

純白の帆が張られた多数の帆船たちが海を行く。竜母艦隊の旗艦となった戦列艦パイルが艦隊の先頭を陣取っており、そのパイルの甲板上では複数の士官たちが水平線の先を眺めていた。

「もう少しだな……」

竜母艦隊を率いるサーモ提督は地図を見ながら話す。もうすぐで彼らが目指す活動海域となる場所に到着する予定であった。

「(今日は天気がいいな……)」

明るい太陽が雲ひとつもない程に澄み渡った水色の空の上に輝く。それに加えて綺麗な純白の帆が空一面に張られており、彼らの緊張も若干ながらも和らいでいた。

紺色の海が作り出す波に魔導戦列艦たちは小さく揺られながら風神の涙を用いて進み続ける。乗組員の全員にとって、これほど快適に感じれる時間は無いだろう。

航海を30分程続けた後、彼らの上空に多数のワイバーンたちが編隊を組んで通り過ぎようとする。それらの姿を見た全員が歓声を上げた。

「本土から出撃した奴らか……」

サーモは小さくつぶやく。その声は近くにいた士官たちにも聞こえなかった。

彼らの元に事前に伝えられた情報では竜母艦隊が出撃した後、準備を整えたワイバーン部隊がパーパルディアの都市を攻撃する手筈となっていた。この編隊はその部隊とみて間違いなかった。

そしてそのワイバーンの編隊たちがパーパルディアの都市に向かってゆく様子をサーモは苦い表情で見つめていた。もしも攻撃が行われば間違いなくリーム王国はパーパルディア皇国を敵に回す事となるのは確実であるからだ。例え日本との戦いで力を大幅に落としたとしても、彼らにとっては未だ強力な戦力を有している事には変わりなかった。

「(果たして作戦は成功するだろうか……)」

軍部の立てた事前の予想では、急な襲撃にパーパルディアは対処できず大きな混乱が起きてマトモに迎撃できないと予想を立てていた。しかしサーモはその予想を疑問視しており、実際には大きな被害が出るだろうと予想していた。

それ故に全員が喜んでいる中で唯一、彼は気持ちが沈んでいた。だが彼は上から命令が下された以上は従わなければならない為に、自身の感情を押し殺してその様子をただただ眺めていた。

ワイバーンの鳴き声が羽ばたく音と共に少しづつ小さくなっていき、編隊を組んだワイバーンたちは竜母艦隊の上空を飛び去っていく。ワイバーンが飛び去った頃には全員が再び緊張した表情で自身の仕事へと戻っていった。

「ううむ……」

その様子を見たサーモは少しばかりの安心感と共に、作戦の事で悩み続けるのであった。

 

・・・・・・・・・・

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

皇都エストシラントの中央にそびえ立つパラディス城は皇国の政治の中心地である。それは現在でも政治を行う者が変わっても変わらないのであった。

「カイオス様、報告です」

国家元首となったカイオスの元に一人の男が報告を行う為に入って来た。

「うむ、要件は何だ?」

「はっ、リーム王国に関する件です」

その言葉を聞いたカイオスは眉を顰める。彼は何かを察したようであった。

「何か動きがあったのだな?」

「そうでございます。現在、出撃した艦隊とワイバーン部隊はデュロへと向かっている事が確認されました」

「なるほど。デュロの方向に向かっているのか……」

カイオスはこめかみを指で押さえるとしばらく机の方に向かって黙り込む。少しばかり時間が経った後、彼は顔を上げて話し出した。

「これより緊急会議を行う。直ちに各大臣らを招集してくれ」

「わかりました。それでは失礼します」

そういうと報告に来た男は、部屋から出ると廊下を全力で走り抜ける。カイオスも立ち上がり、会議室の方へと歩き出した。

「(リーム王国のハイエナどもめ!叩き潰してやる!)」

先の戦いでリーム王国に攻撃を受けた憎しみを抱きながらカイオスは会議室の方へと向かうのであった。

 




いかがでしたでしょうか?

今回、アンケートを行いたいと思っています。内容は以下の通りです。
「リーム艦隊と交戦するのは誰が良いか」です。

次回、リーム王国軍と本格的な戦闘が起きるのですが、その中で竜母艦隊と戦闘を行うのはどれがいいかをアンケートで選んでいただきたいと思っています。

締め切りに関しては2021年3月8日ごろを考えていますが、細かい時間に関しては決めておりませんので、その辺に関しては予めご了承ください。


最後にですが誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


・追記
アンケート中の
「生き残ったパーパルディアの艦隊」
の場合は原作通りの艦隊が登場します。
「現代兵器で武装したパーパルディアの艦隊」
の場合は哨戒艇程度の戦力に置き換えられたパーパルディアの艦隊が登場するという事となります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.7話(上)

作者の無茶苦茶太郎です。

前回のアンケートは8日の17時を持って締め切りました。
ご協力いただきありがとうございました。

アンケートの結果、3の「現代兵器で武装したパーパルディアの艦隊」に決まりました。


パーパルディア皇国 工業都市デュロ

 

かつては皇国で最大の規模を誇っていた工業都市デュロ。先の戦いで一時は壊滅したものの、再度復興を始めていた。

多くの民間人たちがせっせと働き、所では談笑をしているなど街は平和な状態であった。しかしそんな中、デュロにある竜騎士団の基地では多くの兵士たちが慌てて走り回っていた。

「急げ!急げ!」

「おい!もたもたするな!」

基地内には怒号と人々が走り回る足音が聞こえる。慌てた様子の竜騎士たちは滑走路の脇の広場に集まっていた。

「全員集まったな?」

竜騎士団の隊長が整列している竜騎士たちの顔を見て話す。全員が不安そうな表情でこちらを見ていた。

「時間が無い為、単刀直入に話そう。心して聞いてくれ」

そう言うと隊長た一呼吸してから話し出した。

「リーム王国と思われるワイバーンがここデュロの方角へと向かってきているそうだ。恐らく目標はここを攻撃する事だろう」

全員の顔に驚愕の表情が浮かぶ。ある者は目を見開き、ある者は口を開いていた。

「だが奴らの好きにはさせてはいかん!これより我々の部隊は攻撃を行おうとしているリームのワイバーン部隊を迎撃する!全員わかったな!?」

「はっ!」

全員が威勢よく返事をする。彼らの表情には不安は無くなっており、この街を守り抜く覚悟を決めた表情が見えた。

「それでは出撃するぞ!各自のワイバーンロードに騎乗せよ!」

隊長の号令により、竜騎士たちは自身の愛騎の元へと駆け寄っていく。ワイバーンロードたちは自らの主が出撃しようとしている事を察し、自らの背中を低く降ろす。

「よしよし、いい子だ」

隊長はワイバーンロードの背中の鞍に騎乗すると、自身の装備の確認を行う。

「(問題なし)」

彼は強く手綱を引き、ワイバーンロードに指示を出す。

「相棒、離陸だ!」

ワイバーンロードはその命令に従ってゆっくりと羽を動かして加速を始める。加速したワイバーンロードは離陸するに十分な速度を得た瞬間、地面から足が浮いて空に浮く。

「お前らも続け!」

隊長は魔信に対して叫ぶ。それに続き後続のワイバーンロードたちも同じように続き空へと向かう。

合計で16騎ものワイバーンロードの編隊はデュロの上空に展開する。彼らの編隊はデュロを守るためにも敵の来る東の方角へと飛び去っていくのであった。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 竜騎士団

 

青く透き通った大空に150騎以上のワイバーンが空を飛んでいた。その姿はこの世界において有数の軍事力を持っている証拠であった。

「壮観だな……」

竜騎士団隊長のエサンは周りを見回しながら呟く。彼の率いる竜騎士団はパーパルディアの工業都市であるデュロを空襲するために出撃していた。

総勢157騎ものワイバーンを率いて行うこの作戦に関してエサンは楽な任務だと考えていた。日本との戦いでパーパルディアは敗北し戦力を大きく落としていたことから、奇襲的な今作戦に対応する事が出来ないと考えていた。

「(これ程の戦力があればデュロも火の海に出来るだろうな)」

彼は考える。これほどの数のワイバーンが導力火炎弾を放てばデュロの街はあっと言う間に火の海になることが容易に想像できる。

圧倒的な数を生かした短時間の攻撃で目的を遂行し敵が来る前に撤退する。そうすれば被害も無く目的を達成できるだろうと予想を立てていた。

エサンは魔信に向かって叫ぶ。

「あともう少しでデュロに到着する。街に大量の導力火炎弾を撃ち込んだら、すぐに撤退だ。いいな?」

「了解!」

威勢のいい返事が魔信から返って来る。エサンはそれに気を良くしていた。

「(数は十分で士気も高い。この作戦は間違いなく成功する。そして俺は昇進するだろうな……)」

このようにエサンは完全に油断しきっていた。そしてその油断が次の瞬間大きな代償として支払われる事となった。

突如として編隊内のワイバーンが炎に包まれて墜ちていく。その光景に驚いた全員が辺りを見回す。

「どこだ!何が起きたんだ!」

エサンは左右と後方を確認した後、上空を見上げる。するとそこには太陽を背にした多数のワイバーンが見えた。

「まずい!全騎、回避!回避!」

エサンは慌てて魔信に向かって叫ぶ。それと同時に上空のワイバーンから火の玉が放たれ、回避が遅れた何騎かのワイバーンに命中した。

「畜生!パーパルディアの奴らか!」

エサンは叫ぶ。それと同時に上空のワイバーンは竜騎士団の編隊の真ん中を突破して去っていく。油断していたリーム王国の竜騎士たちは先手を取られる形となってしまった。

「全騎、あのワイバーンを撃ち落とすぞ!続け!」

これよりパーパルディア皇国とリーム王国双方の竜騎士団の空戦が始まったのであった。

 




いかがでしたでしょうか?

しょっちゅう遅れてしまい、誠に申し訳ございません。
次回は少しばかり早く投稿できるようになると思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.7話(中)

作者の滅茶苦茶太郎です。

現在自分が考えている予定としてですが、
次回は竜母艦隊から出撃したワイバーン部隊との戦闘になります。
0.8話でリーム海軍vsパーパルディア海軍となります。

投稿のペースについては、変わらず投稿できるように頑張ります。


パーパルディア皇国 竜騎士団

 

「やったぞ!」

ワイバーンの大編隊の中を潜り抜けたパーパルディア皇国の竜騎士たちは歓喜する。最初の導力火炎弾は全て命中し、二回目の攻撃も半数に匹敵する9騎に命中した。

これによりパーパルディアの竜騎士団は初撃で25騎ものワイバーンを撃墜するという大戦果を挙げることに成功した。

「全騎、インメルマンターンで反転するぞ。いいか?」

「了解!」

隊長が無線で指示を入れる。その指示に合わせて全騎が大きく弧を描くように上昇を始め、綺麗に反転を終えた。

先の戦争以降、パーパルディア皇国は少しでも少なくなった兵力を補うために訓練による質の向上と戦術の見直しを行っていたために、この様な芸当ができた。

「全騎、もう一回攻撃を行うぞ!」

隊長は眼前に広がるリーム王国のワイバーンの編隊をにらみながら叫ぶ。ワイバーンロードの存在に気付いた相手は慌てて散開しようとしていた。

「各騎、急降下始め!俺に続け!」

まず最初に隊長が急降下を始め、散開の遅れていたワイバーンに対して導力火炎弾を発射する。放たれた導力火炎弾は吸い込まれるようにワイバーンに命中し、それを撃墜した。

「発射!」

後に続く部下たちも次々と導力火炎弾を発射する。外れたものがあったものの、半数以上の導力火炎弾が命中し、多数のワイバーンが火に包まれたまま海上に墜落する。

攻撃の終わったワイバーンロードは急降下時に発生した速度を生かし、本来ワイバーンロードが発揮できる以上の速度で過ぎ去っていく。リームのワイバーンは到底追いつくことができず、それらを見送るしかできなかった。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 竜騎士団

 

エサンは血走った目で遠ざかっていくワイバーンロードを睨む。彼は恨みの言葉を吐いた。

「畜生!あのくそったれが!」

奇襲的な攻撃によってリーム側のワイバーンは36騎も撃墜された。そして何よりも、敵のワイバーンロードは1騎たりとも撃墜できていなかった。

ふと魔信に通信が入る。

「エサン隊長!どうしますか?」

エサンは考える。自分たちが乗るワイバーンはパーパルディア皇国のワイバーンロードに速度、旋回能力のどちらでも負けている。もしも戦うとなれば数の優位を生かした戦いをしなければならない。

「(こちらの数は121騎で相手は16騎、まだ数での優位はこちらにある。しかし先の戦いで9騎程度でも甚大な被害を負ったことを考えれば、ここは竜母艦隊に増援を呼ぶべきか……)」

彼は魔信を手に取る。少しでも数の優位を生かすために彼は竜母艦隊に対して増援を求めることにした。

「こちら竜騎士団隊長のエサンだ!そちらの提督を呼び出してほしい!」

少しばかり時間が空いた後、魔信に応答があった。

「こちら竜母艦隊のサーモだ。なにがあった?」

「敵のワイバーンロードの迎撃を受けた。増援としてそちらのワイバーンを寄こしてもらいたい!」

魔信の向こうから息を飲む声が聞こえる。一瞬の静粛が挟まれた後、魔信から応答が入った。

「わかった。こちらのワイバーン40騎をそちらに派遣したいと思う」

「サーモ提督よ、感謝する」

エサンは肩を下ろして息を吐く。

「それでは武運を祈る」

そういうと相手の方から魔信は切れた。すると彼は意識を魔信から敵のワイバーンロードへと向けた。

「(必ず全騎撃ち落としてやる!)」

猛烈な復讐心を抱いたエサンは次にどうするべきか考える。数の優位を生かす戦いをするためにも必死に知恵を絞っていた。

「(固まって動かなければ良い的になるな。こうなったら分散して少しでも狙いにくくして時間を稼いだ方がいいな……)」

密集隊形を解けば、その分各個撃破される可能性が高くなる。だがしかし、このまま密集隊形を続けても機動力に制限が出て反撃が難しく、敵の攻撃を受け続けることになるだろう。

そうとなればリスクを冒してでも積極的に行動するべきだと彼は考えた。各個撃破されるリスクは高まるものの、分散することによって敵の攻撃を回避しやすくなる他、反撃を行いやすくなるという相手へのプレッシャー効果を期待しての判断であった。

「全騎に告ぐ!散開して行動せよ!一塊になって行動していると狙われやすくなるぞ!」

エサンは魔信に向かって叫ぶ。竜騎士たちは彼の命令に従ってバラバラに分散する。

「ん?」

エサンは前方に一騎のワイバーンロードがいることに気づく。そのワイバーンロードは別の一騎のワイバーンを追いかけていた。

「野郎っ!」

エサンは半ば反射的に手綱を引いて、味方を追いかけているワイバーンロードの方へと向かう。味方を助けるためにも彼はワイバーンに導力火炎弾を発射できるように準備を始めていた。

「あと少しだ……。あと少しっ!」

彼はワイバーンロードに照準を合わせて導力火炎弾を発射しようとした。その時、強い殺気を感じた。

「!?」

彼は後ろを振り返る。少し離れた距離にワイバーンロードがいて、その口から放たれたであろう導力火炎弾が目と鼻の距離に迫っていた。

「しまった!」

これがエサンの最期の言葉となった。その次の瞬間、彼とワイバーンは炎に包まれて海上へと真っ逆さまに墜落した。

少し時間を空けてエサンが追っていたワイバーンロードからも導力火炎弾が放たれる。放たれた導力火炎弾は味方のワイバーンに命中してこれを撃墜する。

「畜生!隊長がやられた!」

エサンと味方の一人が撃墜される様子を見た誰かが叫ぶ。それを聞いた味方たちの間では動揺が広がる。

隊長のエサンが戦死した事によってリーム王国の竜騎士団の指揮系統は混乱し、更にはエサンが分散するようにしていた事が災いしてリーム王国の竜騎士団たちは各個撃破されていくのであった。




いかがでしたでしょうか?

次回もできるだけ早く投稿できるように頑張ります。

それと最後に、もしよろしければ評価やコメントの方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.7話(下)

作者の滅茶苦茶太郎です。

少し急いで書いたので、幾つか拙い部分があるかもしれません。
予めご了承ください。


リーム王国 竜母艦隊

 

「まずいな……」

竜母艦隊の指揮官であるサーモは頭を抱える。魔信から別動隊の竜騎士団がパーパルディアの竜騎士団に迎撃されたとの情報が入ったのだ。そのため、竜母から合計で40騎ものワイバーンが出撃したものの、157騎もの竜騎士団が苦戦している事から焼け石に水だろう。

「(やはり断るべきだったか?)」

サーモは苦い表情を浮かべる。味方を見捨てることになるものの、下手に戦力をすり潰す様な使い方をするぐらいならば艦隊直掩などの使い方があっただろう。

だがしかし下手に戦力の出し惜しみをしてワイバーンロードが来襲したりした場合を考えると、出撃させる判断を下したのは正しかったかもしれない。

「ううむ」

サーモは竜騎士団の事を頭の隅に置いて、自分たちに課せられた任務の事を考える。彼は課された通商破壊任務を中断して本国に帰港する事を考えた。

「(恐らくは任務は失敗するな。……このまま帰港すれば軍法会議は避けられないが仕方ない)」

部下や軍艦を無駄に消耗させない為にもサーモは帰港する事を決意した。だが彼が帰投する事を周りに伝える前に、最悪の報告が入った。

「サーモ提督、2時の方角に艦影が見えます!」

「なにっ!?」

見張り員からの報告に士官たちは2時の方角に目を向ける。そこにはうっすらながらも2隻の船が見えた。

「(あれは何だ?……嫌な予感がする)」

サーモはその船に掲げられていた国旗を目にした。彼は大声で叫んだ。

「総員戦闘配備!奴らはパーパルディア軍だ!」

 

・・・・・・・・・・

 

パーパルディア皇国 竜騎士団

 

空中戦の戦況はパーパルディアが優勢であった。隊長騎を撃破された事から、統率がとれなくなったリーム王国軍は圧倒的な劣勢に立たされていた。

だがしかし、パーパルディアにとっても今は厳しい状況であった。質の面では圧倒しているものの数が少なく、大量のワイバーンを相手に手間取っていたのだ。

「くそっ!倒しても倒してもキリがねぇ!」

竜騎士団の一人が叫ぶ。合計で64騎も撃墜したにも関わらず、まだまだ敵がいる事に気が立っていたのだ。

「無理をするな!もうすぐで増援が来るから、それまで辛抱するんだ!」

気が立っている部下を見た隊長が叫ぶ。彼もまた魔信から入って来た増援の到着がとても待ち遠しく感じていた。

「目標発見、お前ら行くぞ!」

隊長騎は3騎のワイバーンロードを引き連れて急降下する。敵の接近に気づいていなかった10騎ほどのワンバーンに対して、彼らは導力火炎弾を発射した。

「やったぞ!」

放たれた導力火炎弾は全て命中した上に、驚いて回避行動をとったワイバーン同士が衝突した結果、一気に6騎も撃墜できた。

4騎のワイバーンロードは急速に敵から離れていく。ある程度、距離が離れて引き返そうとした時、彼らの目にあるものが見えた。

「隊長、前方に多数のワイバーンが居ます!」

「本当だ!これはまずいぞ!」

前方に見える多数のワイバーンに全員が衝撃を受ける。これ程の戦力が加われば、流石に勝てるかどうか怪しいだろう。

全員が身構える。そして敵の姿がしっかりと見えたその時、上空から火の玉が降り注いだ。

「!?」

全員が驚愕する。降って来た火の玉は回避行動を取らなかったワイバーンに次々に命中し、多数のワイバーンは火だるまになって落ちていく。

「隊長、あれは……!」

上空から16騎のワイバーンロードが現れた。その16騎は再び導力火炎弾を放ち、多数のワイバーンが撃墜されていった。

「こちらエストシラントからの増援部隊だ。これより支援を行う」

「了解、感謝する!」

増援にやって来た16騎のワイバーンロードたちは残った13騎のワイバーンに襲い掛かる。圧倒的に質と数の両方で劣っていたリーム竜騎士団はすぐに全騎が撃墜された。

「待たせてすまない。敵はどこにいる?」

こちらの方へやって来た増援部隊の隊長であるレクマイアが尋ねる。

「こっちだ。ついてきてくれ」

デュロ部隊の4騎は反転して、増援部隊の誘導を行う。彼らは上昇しながら空戦が行われている所まで移動する。

「これはすごいな……」

レクマイアは驚嘆する。圧倒的な数のワイバーンたちが空を舞い、導力火炎弾が流星の様に空を飛び交っている。だがそれ以上に味方のワイバーンロード部隊がこんな戦況でも一騎も撃墜されていない事にも彼らは驚いていた。

流れ弾に当たらない様に気をつけながら、彼らはワイバーンロードの限界まで上昇する。そして彼らは目標を見つけた後、急降下を開始した。

「喰らいやがれ!」

全騎から導力火炎弾が放たれる。炎の流星は飛び交うリームのワイバーンに次々と命中し、一気に多数のワイバーンが撃墜された。

「ひっ!?」

「新しい敵だ!畜生!」

新たに敵が現れた事にリーム竜騎士団の全員が驚く。そして彼らが追っていたワイバーンロードはその一瞬の隙をついて追跡を振り切った。

敵の追跡を振り切ったワイバーンロードたちは本隊と合流し、パーパルディア側の戦力は32騎となった。一方のリーム側は76騎であり、これでもまだ数の上では優位であるが質の面で圧倒的に劣っている事から、リーム竜騎士団は劣勢に立たされるのであった。

「待たせたな。これより反撃に移るぞ!」

「了解!」

パーパルディア竜騎士団は一気に反転してリーム竜騎士団へと襲い掛かる。群れを成して襲い掛かって来るワイバーンロードの口内には火の玉が蓄えられている。

「敵の攻撃に当たるなよ!」

前方には高熱の火球が向かってくるのが見えた。彼らは自らの技量とワイバーンロードが出せる最大限の能力を使って、飛んでくる攻撃を次々へと避けていく。

「(当たらないでくれよ……)」

レクマイアは風圧に交じって熱気を感じる。優れた動体視力と操縦技術を生かして導力火炎弾を避けているが、それでも熱気だけは強く感じるほどギリギリの飛行をしていたのだ。

導力火炎弾の嵐を抜けて、彼らはついに必中距離まで相手に迫った。それまでの間に1騎のワイバーンロードが尻尾の先に導力火炎弾が掠ったが、火はすぐに消えた事から普通に飛行を続けていた。

「今だ、放て!」

多数のワイバーンロードから導力火炎弾が放たれる。半分以上の導力火炎弾がワイバーンに命中し、多数のワイバーンが撃墜された。

「やったぜ!見たかリームの野郎ども!」

遂に恐れをなしたリームの竜騎士たちは戦うことを辞め、蜘蛛の巣を散らす様に闘争を始める。しかし彼らを逃すほどパーパルディアは甘くなかった。

「全騎、逃走する敵を追撃して撃墜せよ!容赦は不要だ!」

レクマイアの命令を聞いた竜騎士たちは逃走を始めた敵を追う。逃走を始めた敵はまともな抵抗もできずに撃墜されていく。

「レクマイア隊長!自分は右の敵を殺りますので、隊長は左の一騎を始末してください!」

「了解、必ず撃墜しろよ!」

彼は左に見えていたワイバーンへと急降下を始める。慎重に狙いを定めて、確実に目標を仕留めれるようにした。

「喰らえっ!」

放たれた導力火炎弾はワイバーンに直撃し、竜騎士とワイバーンの両名が炎に包まれる。炎に包まれたワイバーンは海へ墜落し、生じた巨大な水柱が二人の墓標となった。

「(終わったな……)」

もう一人もワイバーンを撃墜し、空中にはパーパルディアのワイバーンロードだけが空中に存在していた。

「任務終了だ、これより帰還する」

全員の生存を確認したレクマイアは魔信に帰還する事を告げる。出撃した32騎のワイバーンロードはデュロの基地へと戻っていくのであった。




いかがでしたでしょうか?

次回はパーパルディア艦隊vsリーム艦隊戦となります。
是非とも楽しみにしてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.8話(上)

作者の滅茶苦茶太郎です。

次回の投稿まで少しばかり時間がかかると思います。
その点に関しても予めご了承ください。


リーム王国 竜母艦隊 旗艦パイル

 

パイルの艦橋上では複数人の士官が向かってくる2隻の軍艦を睨んでいた。その2隻はパーパルディア皇国の物であるが、彼らの知っている魔導戦列艦とは大きく異なっていた。

「(魔導戦列艦よりかは小さく、小型の大砲らしき武器しか持っていないが油断できんな。恐らくは日本か新国家連合から供給された軍艦だろうな)」

サーモは望遠鏡で2隻の軍艦を観察し分析する。いずれも魔導戦列艦よりかは小型で帆は見当たらない。しかし煙突らしき部分から黒い煙を吐き、風神の涙を使った魔導戦列艦よりも高速で動いていた。

そして一番気になったのは武装である。小型な大砲と言うよりかは、大型の小銃の方が的確と言える武装を積んでいるのが見えた。

「(こちらの魔導砲の射程は1km。いくら日本や新国家の武器でもあの火砲は小型すぎて、ここまでは届かない気がするのだが……)」

彼は考える。いくら日本や新国家の武器と言えども、あれほど小型の火砲がこちらの魔導砲を上回る射程を有しているとは考えずらかった。

だがしかし油断はできない。高速性を生かした一撃離脱戦法を取られた場合、こちらにも被害が出る可能性は否定できないからだ。

「敵艦との距離2kmです!」

見張り員が報告を入れる。全員が自らの持ち場に着いて、いつでも戦闘できるように待機していた。

全員が来るべき時に備えている中、突如敵艦の艦首が光って光弾が放たれた。

「敵艦はっ……」

敵艦発砲と見張り員が言い終えるよりも先に、パイルの帆に多数の穴があく。遅れて連続した発砲音が海上に響き渡った。

「そんな馬鹿な!?」

射程が魔導砲の射程を上回っていた上に、連射ができることにサーモは驚いて叫んだ。

「続いて来ます!」

見張り員の叫び声が聞こえた直後、パイルの上部甲板に多数の光弾が降り注いで木片が飛び散る。甲板上にいた水兵達はそれらに薙ぎ払われる様に倒れた。

「まずいぞ!全艦、敵艦に対して突撃せよ!」

サーモは慌てて全ての戦列艦に突撃するように命令する。こちらの射程外から攻撃できる以上、早めに決着を付けなければ一方的に殴られるだけに終わってしまうと判断したからであった。

戦列艦たちはサーモの指令に従って、敵艦に向かって突撃を開始する。全ての戦列艦が帆を大きく張り風神の涙の出力を最大にする。

「敵艦、針路を変更しました!」

戦列艦たちの突撃に気づいたため、敵艦は針路を変更して距離を保とうとする。そのため攻撃は一旦は収まった。だがしかし進路変更が終わった後は速度を落として、艦隊との距離が一定に保たれた時に攻撃が再び始まった。

「伏せろ!」

誰かが叫んだその直後、放たれた弾丸の雨がパイルの舷側に命中する。それらは艦内に飛散して弾丸のように飛び散り、艦内にいた水兵達を次々と殺傷していく。

「うああぁぁぁ!」

「おい!しっかりするんだ!」

艦内の至る所に人体の破片が飛び散り、床は人体の一部を失った水兵達や死体が散乱していた。それに加えてあふれ出る血液が辺り一面に流れ出し、艦内は一瞬にして地獄の世界へと化していた。

負傷者たちの悲鳴と運よく無傷で済んだ水兵達の叫び声が艦内でこだまする。再び弾丸が着弾して艦内に居た水兵達は吹き飛ばされて倒れていく。

この様な地獄と化したのは旗艦のパイルだけでは無かった。同じように攻撃を受けていた全ての戦列艦で同じような光景が広がっていた。

「提督、先行する戦列艦17隻が被弾!その内の2隻が魔導士が死亡した為に突撃に参加できないとの事です!」

「くそっ!くそっ!」

サーモは悪態をつきながら、攻撃を行っていたパーパルディアの軍艦を睨んでいた。かの軍艦は戦列艦の射程外から攻撃を続けており、足の速さも相まって一方的に撃たれ続けている状態のままであった。

軍艦から放たれた赤色の光弾は戦列艦の帆や船体などに次々と穴をあけていく。一発あたりの破壊力は魔導砲よりも低いが、連続して発射されるために魔導砲以上の威力を発揮していた。

「提督!伏せてくだ……」

海面に跳弾した銃弾が近くにいた士官の頭に命中し首から上を吹き飛ばした。頭の無くなった死体は血を噴水の様に吹きながら床に倒れこむ。

「あっ、ああぁぁ……」

その光景を見たサーモは強い吐き気と恐怖で腰が抜けてしまう。彼が呆然としている間にも、放たれた銃弾が次々と水兵達の命を奪っていく。

「うああぁぁぁ!いやだぁぁぁ!」

雨の様に降り注ぐ銃弾、血と木片の嵐が艦内に吹き荒れる。その様子に耐えられなくなった何人もの水兵が嘔吐し、中には海の中へと飛び込んで脱出を図ろうとする者が出始める。

圧倒的な地獄に全員が戦慄する。しかしこれから大きな地獄が待っている事を彼らは知らなかった




いかがでしたでしょうか?

もうすぐでリーム編が終わります。
リーム戦が終わりましたら、本編に戻りますので予めご了承ください。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.8話(中)

作者の滅茶苦茶太郎です。

今回、執筆中のデータが消えたりしたため投稿が遅れてしまいました。
遅れてしまい申し訳ございません。

そして急いで書き上げた為に色々と変な所があるかもしれませんが、どうかご了承ください。


パーパルディア皇国 哨戒艇ガリアス

 

リーム王国の82隻の魔導戦列艦とパーパルディア皇国の2隻の哨戒艇が戦っていた。本来ならばパーパルディア側も魔導戦列艦を使って戦うだろうが、現在は違っていた。

「ポクトアール艦長、報告です!」

哨戒艇ガリアスの艦長であるポクトアールは振り向く。彼も今までの華美な装飾が施された軍服から、現在は青色のツナギとオレンジ色のライフジャケットを着ていた。

「増援部隊から報告です。あと15分でこの海域に到着するそうです」

「わかった。味方の到着まで時間稼ぎをするぞ!」

全員が彼の鼓舞に従って威勢の良い返事をする。新しく運用する事となった哨戒艇だったが練度も士気も以前とは変わらなかった。

彼らが戦列艦を捨てて哨戒艇を運用しているのには理由があった。それは先の戦いの敗北後に日本と新国家連合が、パーパルディアが残存戦力を使って対外侵略を開始する可能性があると考えたからであった。

そのため戦列艦よりも小型で外洋航行能力が低いが自衛のために必要な戦闘力を有している軍艦が必要となった。結果、その条件を満たす船として哨戒艇が選ばれるのであった。

当初は巡視船を供与してそれを哨戒艇として運用する事を考えたものの日本が反対した為に、様々な紆余曲折を経て新国家連合が哨戒艇を買い与える事になった。その後のサポートも彼らが行う事となった。

話を戻して、彼らは後部に設置されていた重機関銃を動かす。2基の連装重機関銃は近づいている戦列艦に照準を合わせる。

「撃てっ!」

轟音と共に多数の弾丸が放たれる。放たれた銃弾は戦列艦のマストと舷側に吸い込まれる様に命中し、命中した部分は次々にボロボロになっていく。

「命中!命中!」

放たれた14.5mm弾が次々に命中している様子を見た機銃手が叫ぶ。だが銃声によって近くにいた仲間にも聞こえていなかった。

弾丸の雨が降り注いでいる戦列艦の甲板上には遺体の残骸と血液、そして木片など船体の一部が辺り一面に飛散していた。

「ひいっ!」

断続して響く銃声と弾着時に船体が破壊されていく音に全員が恐怖する。すると突然、異常なまでの怒号と軋む音が一面に響く。

「マストが倒れるぞ!みんな逃げろ!」

誰かが叫ぶ。大きくそびえ立つ一本のマストが大きく傾き始め、船体に結ばれていたローブが次々に引きちぎられていく。

リームの水兵達は傾き始めていたマストの下敷きにならない様に逃げ惑う。それに合わせて哨戒艇からの攻撃は止んでいた。

「撃ち方やめ!」

「あっ、マストが折れたぞ!」

戦列艦のマストが根元から折れて隣のマストを巻き込みながら倒壊する。マストが折れた事によってその戦列艦は航行能力を失う事となった。

「よし、次はあの船だ!」

予想以上の戦果に全員が気を良くする。彼らは続いて別の船を狙う事にした。

「照準良し、撃ちます!」

2基の連装重機関銃から放たれた14.5mm弾は別の戦列艦に命中する。銃弾の雨は甲板の上に居た人間を木っ端微塵に破壊し、飛散した木片は白い帆に穴をあけて帆を繋いでいたロープを切断していく。

「お前たち、伏せるんだ!」

呆然としていた士官たちに艦長が叫ぶ。だがそれと同時に彼らは14.5mm弾に襲い掛かられて一瞬でバラバラに粉砕されてしまった。

艦長ら首脳陣が一瞬で戦死した事から、戦列艦の統制が執る者がいなくなり操船が出来なくなってしまう。それによって戦列艦は海に流される存在になってしまった。

「撃ち方やめ、撃ち方やめ!」

銃撃を続ける機銃手に指揮者が止める様に叫ぶ。それに従って重機関銃の銃撃は止んだ。

「ん?あれは……」

機銃手の一人が新しい目標を探している時、ある事に気づいた。それはリーム王国の戦列艦や竜母とは違う船がいる事に気づいた。

「味方の哨戒艇だ!増援が来たぞ!」

全員が歓喜する。そして彼らは増援部隊が来たことを艦橋の方へと伝える。

「よし、あともう少しばかりの辛抱だ。全員、最後まで頑張るのだ!」

ポクトアールは全員を鼓舞するように叫ぶ。それによって全員の士気が上がるのであった。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 竜母艦隊 旗艦パイル

 

「サーモ提督、大変です!」

ボロボロになった戦列艦パイルの艦橋に一人の士官が入って来る、サーモはこれ以上に大変な事があるものかと思いながら尋ねる。

「南の方角から新しい敵艦が現れました!数は凡そ6隻ほどです!」

それを聞いた全員が驚愕する。新しい敵が出現したとされる南の方角を全員が振り向いた。

「あれか!」

サーモが望遠鏡を覗いた先に6隻の船が見えた。それは帆が無く全体が金属でできている事から、おおむねパーパルディアの軍艦とよく似ていたのであった。

そして特に目に入ったのは武装であった。小さいながらも大砲らしき武装を搭載しており、非常に強い危険信号を全員の脳が発していた。

「まずい、全艦撤退だ!バラバラになって逃げるように魔信で報告しろ!」

「りょ、了解!急いで伝えます!」

勝ち目が無いと判断したサーモは撤退を決意する。その際に、ひと塊になって逃げれば包囲されて殲滅されると考えた為、彼はバラバラに散開して逃げるように各艦に通知した。

「各艦に対する通知が完了しました。提督、本艦も撤退しましょう!」

「うむ、これより本艦も撤退を開始する!」

サーモたちが撤退の準備を整えていたその時、艦隊の一番外側を航行していた戦列艦から少し離れた場所に大きな水柱が生まれる。

「敵艦発砲!戦列艦スタグの近くに着弾しました!」

「何だと!そこまで届くのか!?」

そこそこ離れているにもかかわらず、敵の大砲がすぐ近くまで届いたことに全員が驚愕する。少なくとも射程は8kmほどはあるだろう。

攻撃を行ったであろう軍艦は速度を上げて接近してくる。やがて双方の距離が7kmほどになった時に攻撃が始まった。

「戦列艦スタグ被弾!炎上しています!」

不運なことにスタグは敵艦と距離が近かった事から、敵から真っ先に攻撃を受けた。そして敵の攻撃を受けたスラグは搭載していた火薬に引火し、あっと言う間に炎に包まれていく。

「あっ!スタグが爆発しました!」

度重なる攻撃によって内部に搭載された大量の火薬に引火したスタグは大爆発を起こして轟沈した。

「あぁ……」

立ち上るキノコ雲を全員が絶望した表情で眺めていた。そのキノコ雲は彼らに訪れる悪夢の始まりに過ぎないのであった。

 




いかがでしたでしょうか?

これからも頑張って投稿をしていきたいと思います。
投稿が遅れることもあるでしょうが、どうか大目に見てくだされば幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.8話(下)

作者の滅茶苦茶太郎です。

投稿が遅れてしまいました。
楽しみにしていただいた皆様、誠に申し訳ございません。

次回の投稿に関してですが、本日中に投稿したいと思います。


パーパルディア皇国 哨戒艇フィシャヌス

 

「敵艦轟沈!撃ち方やめ!」

敵艦が大爆発したのを確認した砲手たちは指示に従って砲撃を中止する。砲撃が止むと同時に甲板上では歓喜の声が上がった。

「よし、次はあの戦列艦を狙うぞ!全員気を引き締めろよ!」

指揮官からの指示が出ると同時に歓喜の声は収まって全員が真剣な表情に戻る。その様子は水兵達の練度が今まで以上に高い事を証明していた。

彼らの乗っている哨戒艇に搭載された2基の57mm連装機関砲が個別に新しい目標に照準を合わせる。他にも射程圏外ではあるものの、2基の25mm連装機関砲も新たな目標へと照準を向けていた。

「照準良し……」

原始的な光学照準器で狙いを定めると砲手は小さく息を吐く。彼らが照準の微調整を済ませると同時に指揮官から発砲命令が来た。

「57mm砲、撃ち方はじめ!」

「撃ち方はじめ!」

機関砲の砲口が轟音と共に大きく光った。大きな機関砲の砲口から放たれた57mm砲弾は数秒間の飛行の後、目標から少しばかり離れた海へと弾着した。

「(右に200mほど修正……。次は当たるか?)」

砲手は着弾したことによって生じた水柱を元に再び照準を合わせる。その間に二人の装填手が機関砲に砲弾を装填していた。

濡れた甲板によって排出された高温の薬莢が急激に冷やされる。じゅわじゅわと音をたてている薬莢に波しぶきが更にかかると、更に激しい音を立てて海水が蒸発を始めていく。

少しばかり経って薬莢から生じる音が小さくなった。その時、前方の57mm連装機関砲が発砲を再開した。

「よし!」

今度は先ほどよりも近い位置に弾着しており、この調子で行けば次には命中弾を出せるだろう。砲手は必死に目標へ照準を合わせようとした。

「今度こそ当たれよ……」

砲手が小さく呟く。数秒ほど時間を置いた後、再び機関砲が轟音を立てて砲弾が砲口から放たれる。今度の砲弾は狙い通りに目標の戦列艦へと命中した。

その命中した57mm砲弾は木造の船体を簡単に貫徹すると、次の瞬間に弾頭の信管が作動し大きく爆ぜた。そして艦内で爆風と共に周囲に破片をまき散らす。

「神様っ!神様っ!」

全員が少しでも早く爆発の嵐が過ぎ去る事を祈る。その爆発の嵐が過ぎ去って全員が顔を上げた瞬間、再び爆発が発生した。

命中した57mm砲弾の爆発によって、周囲に置いてあった魔導砲の装薬にも誘爆が起きたのだ。それにより再び艦内で爆発音が轟いた。

「あああっ!?」

「助けてくれ!」

一瞬にして艦内は阿鼻叫喚の世界に戻され、同時に艦の命運が決した。これら二つ爆発によって船体に大きな破孔が生じた為、戦列艦はあっと言う間に横転して沈んでいった。

「やったぞ!敵艦撃沈!」

横転して沈んでいく戦列艦を見ながら砲手たちは喜んだ。その戦列艦と同じように、他の戦列艦も味方の哨戒艇からの攻撃を受けて次々と沈んでいく。

次々に沈んでいく戦列艦の中で指揮官は一隻の戦列艦を見つけた。その戦列艦は旗艦旗を掲げており、他にも味方の攻撃を受けたと推測できる特徴として帆や舷側に多数の穴が開いていた。

「よし、次はあの戦列艦を狙うぞ!」

砲手たちが指揮官の指さす方角へと顔を向ける。その戦列艦を確認した砲手たちは、撃沈するために連装機関砲を敵の戦列艦へと向けた。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 竜母艦隊 旗艦パイル

 

「サーモ提督、大変です!」

轟音が周囲から聞こえてくる中、マストの見張り台に居た水兵が声を大きくして報告を入れてきた。

「どうした!?何があったのだ!?」

自らが指揮する竜母艦隊が敵の艦隊に包囲されて次々に沈められていく。そんな絶望的な状況の中での報告にサーモは更に嫌な予感を感じた。

「敵艦がこちらの方へと向かってきています!更に砲身をこちらに向けて生きています!」

彼の予感は的中した。敵がこちらに向かって来ている上、砲身をこちらの方へと向けているという事からも分かる通り、間違いなく本艦を狙ってきているようだ。

「面舵180度、全速力で逃げるんだ!急げ!」

サーモは双眼鏡で迫って来る敵艦の覗きながら大きな声で叫ぶ。彼の双眼鏡の中の哨戒艇はどんどんと大きくなっていく。

全員が迫って来る哨戒艇を眺めていた。穴の開いた帆の一部を張り替え、魔導師は風神の涙を全開にしていたのだが、それでもなお敵との距離は違くなっていた。

「(まずい……。一体どうすれば……)」

サーモの額と手に汗が浮かぶ。敵に追いつかれて撃沈されるのは目に見えていた。

甲板上に居た全員が迫りくるパーパルディアの哨戒艇に恐怖しながら見つめていた。そして3kmほどの距離になったその時、並走していた哨戒艇が発砲を開始した。

「敵艦発砲!」

放たれた砲弾がパイルの前方に着弾し、複数の大きな水柱が発生した。それを見た全員が悲鳴を上げた。

「くそっ!しかたない、右舷の魔導砲を発射しろ!」

サーモが大きな声で叫ぶ。それを聞いた艦長が彼に尋ねた。

「提督、敵はまだ魔導砲の射程内に入っていません!撃っても当たりません!」

「牽制のための射撃だ!当たらなくてもいい!撃て、全員撃つんだ!」

鬼の形相で叫ぶサーモに圧倒された水兵達は転がり込むように魔導砲の元に駆け寄り、全員が魔導砲に火をつけた。

「敵艦発砲!」

双方の軍艦が同時に発砲を始めた。見かけでは戦列艦パイルの射撃の方が派手ではあったものの、命中弾を出したのは哨戒艇フィシャヌスの方であった。

フィシャヌスの放った57mmと25mmの砲弾はパイルの艦首付近に命中し、艦首のバウスプリットが根元からへし折れる。更に飛び散った破片が甲板上に到達し、そこにいた水兵達をなぎ倒していく。

「畜生!全員伏せるんだ!」

サーモが叫び全員が伏せた次の瞬間、再び攻撃が命中した。今度は砲列甲板に命中してそこに居た水兵達を次々と殺傷していった。

船が大きく揺れて全員が姿勢を崩す。そこに来て遂にサーモは決断を下した。

「帆を降ろせ!降伏だ、降伏するぞ!」

それを聞いた全員が急いで帆の元へ駆け寄る。魔導師は風神の涙を止め、サーモは魔信を使ってパーパルディアの哨戒艇へ連絡を取ろうとした。

「こちら竜母艦隊司令のサーモだ!降伏する!攻撃を中止して欲しい!」

サーモが必死に叫ぶ。すると直ぐに攻撃が止んだ。

「こちら哨戒艇フィシャヌスの艦長ポクトアールだ。貴艦は降伏するのだな?」

「そうだ、降伏する。これから全艦にも通達するので攻撃を中止して欲しい」

相手側からの攻撃が止んで降伏の交渉が出来たことから、サーモは部下を守るために思い切って全艦に降伏する事を決めた。

「了解、これより攻撃を中止するように通達する。貴艦も全艦に降伏をするように通達せよ」

「了解、感謝する」

サーモは魔信を切ると辺りを見渡した。攻撃を行っていたパーパルディアの哨戒艇は攻撃を止めていた。

「全員、よく頑張った。これより本艦は降伏するが、最後に負傷者の救助とボートを降ろす準備を整えてくれ」

それを来た水兵達は最後の仕事として負傷者の救助活動と搭載していたボートを降ろしていく。

「こちらサーモ提督だ!残っている竜母海軍の全艦に告ぐ、これより本艦隊はパーパルディアに降伏する!直ちに戦闘を止めて停船せよ!」

サーモは最後の一働きを終えた後、自分の額を強く拭った。その際に拭った手に血がついており、ようやく自身も負傷をしていた事に気づいた。

 

戦闘終了後、パーパルディア海軍は残ったリーム海軍の艦艇と共に、海の上に浮いていた水兵達の救助活動を開始した。少しばかり時間はかかったものの、生存していた水兵の大部分は救助された。

夕焼けの海の上に多数の軍艦が浮かんでいた。海戦終了後に沈まず残ったリームの軍艦は11隻のみであったという。

 




いかがでしたでしょうか?

今回で番外編は終わりますので、次回から本編を再開したいと思います。

最後に前書きで書きましたが、次回の投稿は本日中に行います。
少しストックが溜まっていますので、今後しばらくは一定のペースで投稿できると思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話

作者の滅茶苦茶太郎です。

まず最初に、この作品をご覧頂きありがとうございます。

本作はオリジナル国家が大量に出てくる他に、元々はお蔵入りしていたものを引っ張り出して加筆修正を行ったものになりますゆえに、文章などにおかしな点が出てくると思います。

それ故に面白くなく感じたり、不快に感じられるかもしれませんが予めご了承ください。

それではどうぞご覧ください。


フェン王国 ニシノミヤコ基地

 

ここニシノミヤコ基地に多数の航空機が待機している。これらの航空機は、侵攻してくるグラ・バルカス帝国の大艦隊を退けるために集結していた。

 

ガンマ空軍

F-15C 戦闘機 24機

トーネードIDS 攻撃機 14機

A-7 攻撃機 20機

E-2 早期警戒機 1機

KC-135 空中給油機 3機

 

ゼータ空軍

RF-4E 偵察機 2機

 

イプシロン空軍

Tu-16 戦略爆撃機 6機

 

合計70機の航空機たちは、リーム王国にあるグラ・バルカス帝国の艦艇と航空基地を攻撃し、それらを撃破する準備を終えて離陸しようとしていた。

タキシングを行っている航空機たちの轟音がニシノミヤコ中に轟く。その音と光景に多くの民間人たちが基地周辺に集まっていた。

フェン王国は最初、基地建設には賛同していなかったが日本を含めた多くの国の政治的な圧力により、ついに折れて認めたのだ。

そしてこの作戦には、これに日本も参加したかったが、政治的な問題(交戦国以外の国を攻撃することになるため。)により、見送られることになった。これは、後に行われる攻撃にも同じ理由により参加が見送られる事になった。

計70機もの航空機が次々と滑走路へ向かい配置につく。各機は次々と離陸準備を整えていく。

これほどの航空機がニシノミヤコ基地に集まることは初めてであり、これから始まるであろう出来事にニシノミヤコの住民は何ともいえない妙な不安を感じていた。

大きなエンジン音を轟かせた航空機たちは、次々と空へ飛び立つ。最初に爆撃機と早期警戒機たちが離陸し、続いて戦闘機や攻撃機たちが離陸を始める。

一機、また一機と空に上がっていく機体をニシノミヤコの住民たちが見守りながら、空の戦士たちは、姿を遠い空の彼方へと消していった。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 セニアの港

 

セニアの港には、56隻もの軍艦が係留していた。

駆逐艦24隻と潜水艦12隻に補給艦20隻と、懲罰艦隊全体としては少ない数の艦隊が係留されている。

この艦隊は、最初に潜水艦が先行し敵艦隊を攻撃し、可能なら本土に対しても攻撃を加え相手を混乱させる狙いがある。

これはグラ・バルカス帝国が、異世界において潜水艦を運用しているのは自国だけであると判断されたために計画された。

グラ・バルカス帝国の上層部はこの計画が上手く行くと考えていたが、それは大きな間違いであった。

そして同時に、日本ら連合軍は人工衛星で潜水艦が確認されたことから、最優先攻撃目標になっていることに彼らは知らなかった。




いかがでしたでしょうか?

現時点で(修正前の)ストックはありますが加筆作業は終わっていない為に、投稿は不定期になると思います。

また、投稿した作品の大規模な加筆を行う可能性があり、投稿頻度が極端に下がる可能性もなりますが、どうかご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話

作者の滅茶苦茶太郎です。

これからの展開に関してですが
元が、1年以上も前のブログの内容などを元に書いていた没作を加筆修正した程度の物なので、原作と大きな乖離が所々に見られますがご了承ください。

また、しばらくの間は強力なオリジナル国家の活躍が主な描写となります。
この点についてもご了承ください。


シーダス型潜水艦 メンカル

 

セニアの港にて多くの艦艇が待機していた。

その内の1隻の潜水艦の甲板上にて物資の積み込みが行われてた。その傍で対空砲を新しく入ったばかりのファキオという新人が磨いていた。

「いいぞファキオ、その調子だ」

近くにいた上官が、ファキオに声をかける。

「ありがとうございます」

「あと、もう少ししたら出航だから、きちんと磨いていてくれよ」

「わかりました」

そう言うと、上官は別のところに行く。

ファキオは上官の期待に答えるために必死に磨き続ける。10分ほど続けて必死に磨きつづけたが疲れたため、一回休憩する。

「あぁ、疲れたな」

額に流れた汗をぬぐいながら小さくぼやぐ。

ふと、海の向こうを見る。海の向こうにいる敵国にガバル皇子を捕らえられたことから決まった派遣であるだけに、敵に闘志を燃やす。

「こうしちゃいられない、もうそろそろ始めるか」

彼がそうつぶやいた時、ふと聞きなれない音がする。

「ん?なんだ」

ゴオオという妙な音がどこからか聞こえてくる。

最初は気のせいと思っていたその音は、やがて大きくなり物資の積み込みを行っていた水兵達も動きを止める。

「なんの音だ?」

「さあ、知らねえよ」

甲板上が騒がしくなる中、ファキオは水面ぎりぎりにゴマ粒のようなものがあることに気づく。

「なんだ、あれは!」

その声に水兵たちはファキオの方を見てから、ファキオの視線の先に目を向ける。

それは、矢のような物体だった。それが、1km手前で急上昇すると、メンカルの3隻隣にいた、別のシーダス型潜水艦に命中し爆発する。

「うあぁ!」

真っ赤な炎と大きな爆発音が港一面に響き渡る。だがこれは地獄の始まりでしかなかった。

「総員戦闘配置!」

近くに居た士官が叫ぶ。先ほどの爆発で腰を抜かした水兵たちは、すぐに起き上がり動き出す。

ファキオも急いで対空砲の元に駆け寄り、砲弾を装填しようとする。

「急げ、急げ、急げ!」

ファキオが砲弾の装填を終えるよりも先に、次の攻撃が別のシーダス型に命中する。

「くそっ!」

対空砲の装填が終わりコッキングレバーを引くと、近づいてくる矢のような物体を狙う。

「当たってくれぇ!」

接近してくる飛翔体に対してファキオが操る対空砲から砲弾が放たれる。だが、放たれた砲弾は虚しく空を切り、海面に小さな水しぶきを作り出すだけだった。

「ああああああ!」

ファキオは絶叫する。矢のような物体が急上昇し、ついにファキオのいるメンカルに命中した。

それが命中したメンカルは赤い炎と真っ黒な煙を上げる。そして艦内に搭載されていた魚雷が誘爆し急速に沈降していく。

セニア港からメンカルは1分もたたずに姿を消した。

 

 

爆発音と共に港一面が大きく揺れる。短時間の間に平和な光景の港は地獄のような光景と化していく。

「うわあああぁぁぁ!」

潜水艦の近くにあった駆逐艦の水兵が絶叫する。彼の近くに人の残骸が落ちてきたからだ。

「ぼやっとするな!撃て!」

近くに居た士官が叱責する。飛んでくる飛翔体に目がけて対空砲を撃つが相変わらず当たらない。

駆逐艦や潜水艦からの対空砲火をかいくぐった飛翔体はこのまま潜水艦へと弾着した後、残っていた駆逐艦にも弾着し始めた。

「こっちにも来たぞ!」

一人の水兵が叫ぶ。その方角へ向かって主砲や対空砲が放たれるも低空を超高速で這いつくばる様に飛行していた為に、いずれも命中しなかった。

「くそっ!くそっ!畜生!」

士官は当たらない対空砲火に苛立ち悪態をついた。それと同時に彼の乗っていた駆逐艦に飛翔体が命中し乗っていた全員の命を刈り取った。

 

多数の大きな砲声に加え、小さな砲声が絶え間なくセニアの港一面に轟くが、巨大な轟音が響くにつれてその数を減らしていく。

その後も攻撃は続き、グラ・バルカス帝国海軍は潜水艦12隻と駆逐艦24隻を喪失する大損害をこうむることとなるが本当の恐怖はこれからであった。

 




いかがでしたでしょうか?

現在、加筆作業を進めてはいるのですが、
所々矛盾していたりチェックから漏れておかしな部分が出てくるかもしれませんが、大目に見ていただけたら幸いです。
(随時修正を行いたいとは思っていますが、内容や規模次第では修正できないと判断し、放置する場合があるかもしれません。どうかご了承ください)

本作については色々とガバガバだったりしますが、それでも読んで頂ければとても幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話

作者の滅茶苦茶太郎です。

現在、順調に加筆作業は進んでいるので明日も投稿できると思います。


リーム王国 セニアの港 グラ・バルカス艦隊

 

いきなりの出来事に、不意打ちを食らう事となったグラ・バルカス帝国海軍は混乱の最中にあった。

港には、燃え上がる船だった残骸と真っ黒な煙が辺り一面を覆いつくす。また、水兵たちの怒号と悲鳴に加え、非常時に鳴るサイレンの音も加わりさらにカオスな様子を呈している。

無事な者たちは一刻も早く事態を良くするために奔走し、一方で先の攻撃によって負傷した者たちは苦痛に悲鳴をあげている。

先の攻撃から生き残った補給艦の対空砲座には多くの水兵達が座っている。これから来るであろう謎の攻撃に対しての準備は整えられていく。

そんな中、小さいながらもゴオオという先ほどの攻撃とよく似た音が聞こえてくるが、まだ誰も気づかない。

 

・・・・・・・・・・

 

新国家連合軍 第101合同任務部隊

 

澄み渡る青い海に、18機の飛行機が編隊を組み進む。

トーネードIDS攻撃機12機とF-15C戦闘機6機の混成部隊は、まず最初にシーイーグル空対艦ミサイルの第1波攻撃、36発もの攻撃をおこなった。

結果、潜水艦12隻と駆逐艦24隻を撃沈することに成功したため、つづいて第2波攻撃をしかけ、残りの補給艦20隻を撃沈することにする。

「シーイーグル、発射用意よし」

「攻撃開始!」

先ほど攻撃したトーネードIDSの9機は戦場を離脱し、また別の5機が積んでいた、計20発のシーイーグル空対艦ミサイルが発射される。

「A-7攻撃隊、敵艦が撃破されたのち港湾設備を破壊せよ。遠慮は無用だ、たっぷりと投下し破壊せよ」

「了解!」

A-7攻撃機12機は、高度を少しづつ上げていく。ECM攻撃を行いながら、高度を上げているため探知される心配は無い。

灰色の機体は、胴体下にOD色の物体を輝かせながら敵の艦隊へと進んでいく。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 セニアの港 グラ・バルカス艦隊

 

先ほどの攻撃と似た音が響きわたり、水兵たちはその音がする方向をにらむ。

「いっ、いたぞ!敵3時の方向、数は10機あまり!」

補給艦の見張りが叫ぶ。レーダーが正常に作動しなくなった今、見張り員の目視だけが唯一の頼りとなる。

補給艦の対空砲座が一斉に同じ方向に向く。まだゴマ粒程度の大きさしか見えないが、水兵たちはそれを食い入るようにみつめる。

「あっ!」

ゴマ粒のような物の数が一斉に増えていく。それはシーイーグル空対艦ミサイルだったが彼らには分からなかった。

その物体はみるみるうちに近づいていく。

「う、撃て、撃て撃て撃て、撃てえぇぇ!」

遠近感が分からなくなった彼らは恐怖心から、でたらめに対空砲を撃ち始めた。

当然、亜音速のシーイーグルにそんな攻撃があたるはずもなく、命中していく。

「ああっ、なんてことだ……」

大きな爆炎と轟音が轟く。1隻につき、1発が命中するだけだがその1発が強力すぎた。そのため決して沈まない船が出るという事はなかった。

次々と爆発し、炎に包まれていくグラ・バルカス帝国の艦隊。その様子は、前世界で世界統一がてきる寸前だった超大国の行き着く哀れな末路を暗示している様な光景であった。

20発ものシーイーグルの攻撃により、残っていた補給艦20隻の全部が沈没し、港に浮かんでいる船は無くなったのだった。

これにより、セニアの港にいたグラ・バルカス帝国の艦隊は完全に無力化された。

 

・・・・・・・・・・

 

セニアの港の上空にA-7攻撃機12機が達したとき、この港の運命は決した。

A-7攻撃機たちは1機につき24発もの500ポンド爆弾を搭載しており、それらを港のいたるところに投下していく。

「退避!退避!」

誰かが叫ぶ。これから何をしようと理解した彼らは慌てて港から逃げ出そうとする。

12機の攻撃機から大量の爆弾が投下される。その爆弾が掻き立てる風切り音が港中に響く。

「あっ……」

投下された爆弾は炸裂し、人、物、空気、何もかもを吹き飛ばす。炎の暴風が辺り一面に吹き荒れ、地面に大きなクレーターを作り上げた。

港への攻撃は容赦なく続き、セニアの港はいたるところから煙を上げ、炎に包まれる。

この攻撃により、セニアの港は灰燼に帰した。

大規模な攻撃の後、残されたセニアの港は悲惨な光景を醸し出していた。

粉々に粉砕された建物に加え、黒く焦げた船だった残骸が海面から浮いている。

港の陸地や海上には、無惨にも武器や何かの装備品だった残骸が散らばり、海の一面には水死体と共にそれらが浮かぶというこの世の地獄とも形容できる様な光景が醸し出されていたのだ。

そしてこの攻撃によるガンマ軍側の損失は無く、グラ・バルカス側は、港にいたすべての軍艦と人員1万人ほどの死者を出す結果に終わった。




いかがでしょうか?

リーム王国のグ帝艦隊は全滅したので、残る敵は第1・第2先遣隊と連合艦隊本隊になります。GMやリーム軍に関しては登場しませんので、その点に関してはご了承ください。
(もし需要があるのであれば、後日書こうと思っていますがどうでしょうか?)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話

作者の無茶苦茶太郎です。

唐突ですが、次回アンケートをとる予定です。
詳しくは、あとがきに書きます。


リーム王国 内陸部 グラ・バルカス帝国航空基地

 

もともとムーの空港だったこの空港は、現在はグラ・バルカス帝国に譲渡されて航空基地へ転用されていた。

滑走路上には、多数のベガ型双発爆撃機やアンタレス型戦闘機がエプロン(飛行機を補給・点検する場所)に止まっている。また、その傍には対空砲やレーダーも設置されている。

この空港の目的は、空母のいないリーム派遣艦隊の防空のために置いてあり、航空攻撃をしかけた場合は戦闘機が迎撃し、陸路や海路での攻撃の場合は爆撃機で対処を行う予定であった。

しかし、この時彼らは気づいていなかった。リーム派遣艦隊はもうすでに壊滅していたのだ。

では、なぜ気づかないかと言えば電子妨害を受けていたため無線が繋がらず、その間に全滅してしまっていたのだ。

だが、現時点で気づいている者はいない……。

 

・・・・・・・・・・

 

新国家連合軍 第102合同任務部隊

 

20機の編隊が目標に対して、飛行していた。

A-7攻撃機8機とF-15C戦闘機12機の編隊である。また、その後方にはTu-16爆撃機6機とRF-4E偵察機2機の編隊が、第2波攻撃を行うために待機している。

「ECM作動開始まであと、10、9、8、7、6、5・・・・」

A-7攻撃機のうちの1機の兵装管理士官が、カウントを始める。

「3、2、1、作動」

1機のA-7攻撃機がECM攻撃をグラ・バルカス帝国軍の航空基地に行う。これにより、レーダーによる探知や、無線による交信が不可能となる。

「よし、今のうちに大きく接近するぞ!」

攻撃隊は敵の航空基地がある場所に進んでいく。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 内陸部 グラ・バルカス帝国航空基地

 

航空基地に、1つの異常が発生する。レーダーが映らなくなった。

「あれ?」

2人のレーダー監視員は戸惑う。急にレーダーが映らなくなったのだ。

「おかしいな?」

レーダーの出力をあげてみたりするが、一向に良くならない。

「まさか、故障?」

彼らは故障したとふと思う。なぜなら、定期的なメンテナンスが3日後に行われる。つまり、最後に行ったメンテナンスからそこそこ経過していたのだ。

「まいったな。すまないが、上に報告してくれ」

「はい、わかりました。行ってきます」

てっきり故障したと思った2人は、上官の元に報告をすることにした。

 

「なに、レーダーが故障しただと?」

「はい、そうなんです」

上官は頭を抱える。よりによってレーダーが壊れたのだ。交換部品が元から少なく、ごく一部ではあるが、在庫が切れた部品のあると報告があったのだ。

「まあ、ここでどうこう言っても仕方ない」

手元に置いてある有線電話を手に取る。

「整備兵、レーダーが壊れたらしい。もし修理できるのであれば、修理してくれ」

「はい、わかりました」

有線電話を置くと、上官はレーダー監視員に話しかける。

「今、修理を頼んだ。おそらく直るはずだが、直らない場合はまた来てくれ」

「わかりました。では失礼します」

レーダー監視員が部屋を出ると、上官は窓に向かう。

「なにも起きなければよいが……」

不運にも彼の不安は的中することとなった。




アンケートについてです。

リーム編が終わり次第、GMやリーム王国軍と交戦する話の新規投稿に関するアンケートをとる予定です。
(リーム編は次回で終わりますので、次回アンケートをとります)

もし、GMやリーム王国軍との戦いを入れるとしたら、この辺りに入れると思います。
そのため、ひょっとしたら内容が変わる事になるかもしれませんがご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章 「タスクフォースコード200」
第5話


作者の無茶苦茶太郎です。

前回、予告していたアンケートを取っていこうと思います。
詳しい詳細については、あとがきをご覧ください。


新国家連合軍 第103合同任務部隊

 

A-7攻撃機たちの編隊はついに航空基地の上空10000m超に到達した。後方にいるE-2早期警戒機からの情報では、迎撃はまだ上ってきていないらしい。

「なぜ、迎撃に上がらないのだろうか?」

1人のパイロットは、ふと疑問の声を上げる。

「さあな。レーダーが故障したと思っているのだろう。それよりも、攻撃準備は終わったな?」

他のパイロットが軽くあしらうと、攻撃を行う準備が終わった事を確認する。

「ペイブウェイ、投下用意……。投下」

全機のA-7攻撃機から、それぞれ8発づつ、計48発の誘導爆弾を投下する。

投下された48発の誘導爆弾は、それぞれの目標に向かって落下していく。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 内陸部 グラ・バルカス帝国航空基地

 

「まだ直らないのか?」

「はい、ほとんどの部品は正常ですが、ただ1つだけ妙な点があります」

「なんだ?」

有線電話ごしに整備兵は上官に説明をする。

「レーダーの電子信号に異常がありまして、それが部品を取り替えても直らないのです」

「何!?他に原因があるのではないのか?」

「そう思いましたが異常はありません。ただ1つだけ可能性があります」

「それは何だ?」

整備兵は一息ついてから話をはじめる。

「外部から強い妨害電波を受けている可能性があります」

「なんだと!それはどういうことだ!」

「それは……」

整備兵が、その続きを話すことはなかった。

なぜなら、A-7攻撃隊が投下した誘導爆弾がレーダーサイトに命中し、彼らをまとめて粉砕してしまったからであった。

 

「なんだ!」

上官は狼狽する。電話が切れると同時に、外から大きな爆発音がする。

「大変です、敵襲です!」

部下の1人が、すぐさま声をあげる。だが、その間にも爆発は続く。

「くそっ、上がれる機体はすべて上がれ!」

上官は指示をだす。だが、本人はもちろん承知しているが今すぐ上がれるように用意していないため、航空機は1機たりとも上がらない。

そうもこうもしているうちに、爆撃は基地の主要な場所に行われ、レーダーサイト、高射砲陣地、滑走路、エプロンに待機中の戦闘機や爆撃機に行われる。

「嘘だろ……」

爆撃を受ける基地を上官は、ただただ呆然と眺めていた。

だが、彼いる場所にも爆弾が迫る。

ドオオォォォン

すさまじい爆炎と黒煙と共に上層部のいた司令所は爆破され、指揮をする士官たちが戦死した。

命令系統を失ったグラ・バルカス軍は混乱し、迷走し、なかなか体制を立て直すことができない。そうしているうちにも、脅威は確実に近づいていた。

 

・・・・・・・・・・

 

新国家連合軍 第102合同任務部隊

「攻撃成功、攻撃成功!」

命中の報告をRF-4E偵察機から受けた攻撃機たちは高度を落として、旋回を行う。

「第2波攻撃、開始せよ」

後方に待機していた、Tu-16爆撃機6機が、高度4000mから進入する。

6機の爆撃機から爆弾槽の扉が開く。

「爆弾投下用意、投下」

1機につき、9t分の250kg爆弾が投下される。投下された爆弾は、敵のグラ・バルカスの航空基地に向かって落下していく。

 

・・・・・・・・・・

 

リーム王国 内陸部 グラ・バルカス帝国航空基地

 

最初の精密な爆撃で基地の主要機能を破壊したものの、まだ完全な破壊を行うことができていない。そのため、基地内には多くの生存者がいた。

「なんてでかい飛行機だ!」

上空4000m近くを飛行するTu-16を見た、とある兵士が叫ぶ。それはベガ型双発爆撃機よりも倍近く大きかった。

「おい、お前!早く逃げろ!敵はここを爆撃をするつもりだ!」

近くにいたもう1人の兵士が声をかける。逃げるように言われた兵士たちは、急いで逃げ出そうとする。

そうする間にも、爆撃機は爆弾を投下し離脱していく。

「なっ!」

逃げながらふと上空を見上げると、爆弾が空一面を埋め尽くしている。予想よりも遥かに多い爆弾に、彼は生きる事ができるとは思わなかった。

基地には、物陰に隠れる者、伏せてやり過ごそうとする者、逃げ惑う者、ただ呆然と立ち尽くす者たちを、皆平等に爆弾の餌食となった。

数にして、216発の250kg爆弾が基地とその近くに着弾する。基地の辺り一面に爆音がこだまする。まきあげられた土煙が空に舞いあがり、基地は土煙と爆炎によって一時姿を消すほどの爆弾投射量だった。

その破壊はすさまじく、基地は原型もなく粉々になっていた。基地にいた人員は全員戦死し、戦いは幕を閉じた。

 




いかがでしたでしょうか?

前書きに書いた通り、アンケートを取っていきたいと思います。
締め切りについては、2021年の1月1日の12時頃を予定しています。

回答は3択ありますが、
もし「もっと話が進んでから回答したい」が多かった場合は、
後日、改めてアンケートを取ることにします。
(その際、今回のアンケートの結果は次回には引き継がれません。予めご了承ください。)

その他、コメントや評価もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話

作者の無茶苦茶太郎です。

現在、加筆作業が滞っているので更新速度が若干落ちるかもしれませんが、ご了承ください。

また現在、アンケートを取っていますので、そちらの方もよろしくお願いします。


ニューランド島 チエイズ王国

 

ニューランド島にあるチエイズ王国の港、その夜景は空が透き通り星が見える。功を焦った冒険者たちの攻撃が唯一止む時間帯であり、皆は一安心する。

だが、冒険者の散発的な攻撃に頭を悩ませているグラ・バルカス軍は早く終わらせようと、交代しながら積み込み作業をつづける。

「物資の積み込みは、あとどのくらいかかる?」

帝国の三大将のミレケネスは、部下に尋ねる。

「おそらく、明日の昼ごろには終わるでしょう」

「そう、長かったわね」

戦艦バルサーの艦橋から夜空を眺める。祖国では見られないほど澄み渡った空を見ることは、もうしばらくは見れないことだろう。明日ここを出航し、本隊と交流する予定なのだ。

「あと、物資の積み込みが終わる3時間前には総員配置につかせるように伝えなさい」

「わかりました」

部下の兵士が退出していく。艦橋にはミレケネス1人になった。

外の夜景を眺めながら、彼女はただ1人で何かつぶやいていた。

 

・・・・・・・・・・

 

新国家連合軍 第201合同任務部隊 アルファ部隊

ニューランド島 チエイズ王国 西方100kmの海上

 

真っ暗な海上に10隻の艦隊がいた。

 

ゼータ海軍

オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート 4隻

 

アルファ海軍

アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 2隻

オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート 4隻

 

第201合同任務部隊の任務はチエイズ王国にいるグラ・バルカス海軍の連合艦隊の第1先遣隊を撃破することだ。

ゼータ海軍のO.H.ペリー級のMK13ミサイル発射機には40発ものハープーン対艦ミサイルが搭載されており、合計で160発にもなる。

さらに、アルファ海軍のアーレイ・バーク級に搭載されているトマホーク巡航ミサイル16発とO.H.ペリー級に搭載されているハープーン対艦ミサイルも160発ある。

230隻の艦隊に対して320発の対艦ミサイルは、これだけでもオーバーキルにも感じられるだろう。だがそれに加えて別働のブラボー部隊も存在しており、第1先遣隊は完全に滅ぼされる運命にあるのだ。

 

 

第201合同任務部隊 アルファ海軍 旗艦DDG-114

 

DDG-114の艦橋からは暗い真夜中の海の上に浮かぶ9隻もの船の姿が見えた。

姉妹艦のDDG-115と共に補給施設への攻撃と艦隊の護衛任務を任されたDDG-114は、来るべき時を待っていた。

「あと1分か……」

艦長のルロイは腕時計を見て呟く。攻撃開始時刻まで1分を切っていた。

CICの内部は沈黙と緊張に満ちている。沈黙に満ちたCJCの中では、呼吸の音すら聞こえそうであった。

「作戦開始時刻まで、あと30秒」

砲雷長が告げる。DDG-114のCIC内で秒読みが始まった。

「あと20秒」

CIC内の緊張が高まる。もうすでに、艦隊においてのターゲットの振り分けは済んでおり、あとは時間を待つだけだ。

「10秒、9・8・7・・・」

秒読みが始まる。砲雷長の指がボタンの上に置かれる。

「5・4・3・2・1・・・0。攻撃開始」

「攻撃開始!」

攻撃開始のアナウンスと一緒に砲雷長がボタンを押す。

アーレイ・バーク級の艦橋前部のMK41VLSからミサイルが発射される。暗かった甲板はVLSの排気ハッチから昇る炎の柱と、発射された巡航ミサイルの炎によって昼間以上に明るく照らされる。

それと同時に、ゼータ海軍の4隻のO.H.ペリー級の艦首が明るく照らされる。艦首のMK13ミサイル発射機から対艦ミサイルが発射され、遅れてアルファ海軍の4隻からも発射される。

複数のミサイルは空を照らす強い閃光と共に遠く遠くへと飛んでいく。それらは、あっと言う間に姿を消した。

数秒後、再装填の終わったO.H.ペリー級からミサイルが再び発射される。8発もの対艦ミサイルは先ほどのミサイルと同じように姿を消していくのだった。




いかがでしたでしょうか?

現在、アンケートを取っています。
よろしければ回答の方もよろしくお願いします。

その他、感想や評価の方もお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話

作者の無茶苦茶太郎です。

今回、章を作って話を分けてみる事にしました。
詳しい事はあとがきに書きますので、そちらをご覧ください。


ニューランド島 チエイズ王国

 

唐突に船が爆発した。

そう形容できるほど急に、爆発が4箇所から発生する。

「何が起きた!?」

ミレケネスは爆発の起きた方角を見る。4隻の軽空母が真っ暗な暗闇から、爆炎で照らされていた。

「事故か!?」

そう叫んでいたが、4隻もの軍艦が同時に爆発事故を起こすことは、普通ならばありえないと言い切れるほどの確立だ。おそらく、敵の攻撃だろう。

「(でもどうやって?)」

長期間の物資の積み込みで疲労が溜まっていた事と夜間であったため、誰もハープーン対艦ミサイルの存在に気づかなかった。それはミレケネスにも当てはまっていた。

総員戦闘配置につけ。そう言おうとするよりも先に、また4回の爆発が起きる。

「なっ!?」

次は、2隻の正規空母と2隻の軽空母が爆発する。これにより第1先遣隊の航空戦力が全滅した。

「そんな、早すぎる!」

狼狽している間にも、爆発が続く。

「っ、総員戦闘配備に着け!」

ミレケネスと同じように呆然としていた乗員を急かし、迎撃の準備を急ぐ。

爆発した空母からさらに爆発が起きる。搭載されていた艦載機の燃料や弾薬に引火する。ダメコン要員がいないだけに、誘爆まで時間がかからなかった。

 

グレードアトラスター級戦艦 バルサー

 

「いそげ、いそげ!」

艦橋からの指令がおり大勢の兵士が、それぞれの配置に着こうと走り回る。

攻撃が隣の駆逐艦に命中したときに発生した船の破片が甲板に降り注ぎ、甲板を叩きつげる音が響く。

暗闇の中、降り注いだ破片に足をとられる者や、突然の爆発に腰を抜かす者、さまざまな怒声や悲鳴により、地獄絵図の一歩手前のような混乱の渦に包まれる。

このような光景はバルサーだけでなく多くの軍艦でも見ることができた。攻撃の正体がわからない以上、ミサイルに対する発砲は一切起こらない。

「敵はどこにいるんだ!」

「わかりません!」

「一体、どこから来ているんだ!」

とある対空砲座において兵士が叫ぶ。敵の攻撃が行われているとは知らなかったが、戦闘配置に着くように指令が下っていたので、直感的にそういっていた。

「何だ、あれは!」

対空砲座の一人が叫ぶが、それが回りに届くことはなかった。

彼が見たハープーン対艦ミサイルは、彼が叫んだ直後に命中し、甲板にある多数の対空砲座と1つの高射砲を吹き飛ばした。

 

・・・・・・・・・・

 

どれほど時間がたっただろうか、港にいたグラ・バルカス海軍第1先遣隊はチエイズ王国の港で炎に包まれていた。

チエイズ王国の港の住民たちは、その光景を見てただただ呆然としていた。ミリシアル含む世界連合軍を破った(と認識している)グラ・バルカス帝国の軍が炎上している。かの古の魔法帝国の空中戦艦すら撃破した、あのグラ・バルカスが一方的にやられる光景は想像していなかっただけに強い衝撃に襲われていた。

 

「ああ、なんて事だ!」

チエイズ王国の王はその光景を見て後悔した。この世界に敵うものはないと思っていた。だから、グラ・バルカス軍の受け入れを行い、戦後の自治権の保障をしてもらう魂胆だったが、失敗に終わるだろう。

おそらく、この王国は滅ぼされるだろう。世界を敵にしている以上に、グラ・バルカス帝国を上回る国を敵に回したからだ。文明圏外国のチエイズが勝てるわけがない。

「どうすればいいんだ……」

今後の王国の行く末に頭を悩ませる王だった。

 

・・・・・・・・・・

 

グレードアトラスター級戦艦 バルサー

 

「損害は?」

ミレケネスが問う。艦橋から見える光景から、甚大な損害が出ているのは一目瞭然だったが、今は具体的な数字がほしかった。

グラ・バルカス軍は先の攻撃で甚大な損害を出していた。特に駆逐艦は、艦隊を構成する中核的存在だったため集中的に攻撃を受けたこと、装甲がなかったこと、港に収める為に密集して係留していたことが災いした。

「現在の艦隊の損害は不明です。本艦の損害は、対空砲座多数とレーダー等非装甲部分を中心とした部分が損傷を受けてますが、主砲塔や重要装甲区画は問題ありません。」

「わかった。各自、損害情報の収集と対応に専念するように」

「わかりました」

鉄壁の防御力を誇るバルサーの損害は予想よりかはマシだが、あれほどの大規模な攻撃をおこなえるだけの戦力を敵が持っているとは思っていなかった。

無事な艦艇が少ない現在、攻撃に出る事はとても危険である。ミレケネスの心にひとつの迷いが生まれた。

だが、それ以上の危機が彼らには迫っていたのだった。

 




いかがでしたでしょうか?

今回から話を章を作って分けてみる事にしました。
(サブタイトルが無く物語の進行が分かりにくくなったため、作ることにしました)

何か疑問などがありましたら、コメントで質問ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話

作者の滅茶苦茶太郎です。

加筆作業が滞っている為、次回の投稿は2日後にさせてもらいます。
予めご了承ください。


新国家連合軍 第201合同任務部隊 ブラボー部隊

 

高度12000m近くに4機の攻撃機が飛んでいた。それは、F-117攻撃機である。

この機体は本格的なステルス性を持ち合わせており、難なくグラ・バルカス海軍のいるチエイズ王国の港の上空にまで侵入することができた。

「まもなく爆撃を行います」

F-117の兵装担当士官が宣言する。これから爆撃を行うのだ。

「ECM照射初め」

ステルス機でも、爆弾槽を開けている間は探知されやすくなるため、念の為にECMを仕掛けておく。

「目標、グレードアトラスター級1隻」

ペイブウェイ誘導爆弾が投下される。対艦ミサイルで撃沈できなかった艦艇を撃沈するために攻撃を行っていた。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス海軍 第1先遣隊 グレードアトラスター級戦艦 バルサー

 

港の炎がめらめらと揺らめき、辺り一面を灯す松明の代わりになっている中で数少ない損害が軽微なバルサーでは、会議が開かれていた。

「現在、判明している損害は空母全隻が沈没し、重巡洋艦や軽巡洋艦と駆逐艦も半数以上が沈没。また、残りの殆ども大破やそれに準ずるほどの被害を受け航行不能であり、事実上、艦隊は壊滅したと言えるでしょう」

司令塔内で衝撃が走る。短時間で230隻も有する艦隊が壊滅したのだ。

「では、無事なのはバルサーだけなのか?」

ミレケネスが口を開く。

「いいえ、バルサーの他に、オリオン級のミンタカやサイフ、タウルス級のアルデバランがなんとか航行可能です。また、中破程度ならば、軽巡が2隻あります」

そうは言ったものの、甚大な被害には変わりはない。

「本国や第2先遣隊などには、無線で伝えたか?」

「はい。ですがいずれも、先の攻撃で無線機は壊れてしまいできませんでした。また無線以外にもレーダーやソナーも壊れています」

「そうか」

無線機が壊れてしまったので、この情報は他の艦隊などに伝えることはできない。おそらく、第2先遣隊は不審がってこっちに来るだろう。ならば、これを機会に味方の増援を待つべきか。

いや、いけないだろう。来たらその時を狙い攻撃を行い、第1先遣隊の二の舞にする可能性も十分考えれる。もしこれが全力の攻撃で無いとした場合、おびき寄せての殲滅を狙っている可能性だって十分に考えられる。

「(それだけは避けなければ。)」

ミレケネスは意を決して話す。

「皆、聞いてほしい。おそらく第1先遣隊はこのまま攻撃を行う為に合流しようとするだろうが合流できず、直接ここに来るだろう。おそらく敵は、このタイミングで攻撃を行い、第2先遣隊をわれわれの二の舞にする可能性がある」

司令塔内がざわめく。あれほどの艦隊を壊滅させた相手だ。おそらく第2先遣隊を同じように壊滅させることなど容易いだろう。

「そのため、われわれの無事な艦艇の中で損傷が少ないバルサーが此処を出て何としてでも第2先遣隊に危険である事を伝える。やつらの攻撃に耐えられる最も強い戦艦だからな」

皆、息を飲む。無事といえども対空砲座や高角砲の多くが破壊され、多数の死者がでている。はたして耐えられるか。

「大丈夫だ、バルサーの装甲なら敵からの攻撃を耐える事ぐらい容易いだろう。それにミンタカやサイフは無事とはいえ、損傷が激しい」

皆の思っているであろう事をあらかじめ予想していたミレケネスは、付け足すように言う。

皆があんまり良い反応を示さない。わかっているとは言えども仕方あるまい。

説得はまだまだ長くなりそうだ。そう思ったミレケネスが話そうとした瞬間、強い衝撃が司令塔内を襲った。




いかがでしたでしょうか?

この作品を読んで下さり、誠にありがとうございます。
もしよろしければ、この作品のご感想や評価の方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話

作者の滅茶苦茶太郎です。

次回の投稿も遅れるかもしれません。
予めご了承ください。


時は少し遡る。

投下されたペイブウェイ誘導爆弾を誘導するレーザーは、バルサーの第2砲塔と第3砲塔に目掛けて照射されていた。

目標までの距離が、少しづつ迫っていく。

今回投下されたペイブウェイ誘導爆弾はMK84、2000ポンド爆弾にシーカーを取り付けたものである。この爆弾の貫徹力はグレードアトラスター級の主砲塔上部の270mmの装甲板を打ち抜くには十分だった。

命中したペイブウェイは、主砲塔上部の装甲を打ち抜き、昇降機をなぎ倒し中甲板の辺りで時限信管が作動し炸裂した。

爆発はたちまち揚弾筒内に駆け巡り、弾薬庫の隔壁を破壊し爆風が吹き込む。

そうなれば、いくらバルサーの装甲が強かろうと誘爆に耐える事は不可能である。

10秒足らずで、それぞれの弾薬庫にある砲弾と発射薬に引火し、大きな炎と煙が砲塔周辺の区画を破壊しながら、揚弾筒を伝って穴の開いた砲塔上部に向かう。

・・・ドオオォォォン・・・・

と、稲妻の様な大きな音が海面と地面を揺らし、赤い炎と煙がバルサーよりも大きく昇り、外にいたチエイズ王国の住民や港にいる軍艦の乗組員の度肝を抜いた。

同時に、爆発に耐えられなかったバルサーの船体が前後の副砲の手前近くで折れて、大きく三等分されるように千切れた。

「何だあれは!?」

オリオン級戦艦、サイフの艦長が叫ぶ。彼の目には突然、バルサーが爆発したように見えたのだ。

「わっ、わかりません!」

震えるような声で、副長が話す。正体不明の攻撃だと、彼は頭の中で思っていた。

2人以外の搭乗員も同じ様に、ただその光景を見ていた。

だが、攻撃はそれだけでは終わらない。

ミンタカにも、大きな爆発が起きる。今度もペイブウェイ誘導爆弾が二発命中し、バルサーと同じような末路をたどった。

そして、サイフにも攻撃が命中した。だがミンタカと違い、攻撃は煙突下の機関室を狙ったものであったため、バルサーやミンタカとは異なり、機関室のボイラーがすべて破壊され船体にできた大きな破孔からの浸水により、右90度に横転してしまった。

最後に攻撃を受けたタウルス級のアルデバランは、艦橋の部分と前部にある3基の主砲塔の内の2番砲塔に爆撃を受けて、艦橋と船体の前部を失った姿で着底していた。

 

・・・・・・・・・・

 

新国家連合軍 第201合同任務部隊 ブラボー部隊

 

「目標撃破。いずれも戦闘不能になりました」

兵装担当士官が報告する。

「よし。次、目標は地点Aのワイバーン用滑走路」

目標をチエイズ王国の軍事施設に変更する。あくまで脅しだが、後の講和の際に交渉を有利に進めるための材料にする。

「爆弾投下」

そう告げると攻撃を再開した。

 

・・・・・・・・・・

自分の乗っていたバルサーを見たミレケネスは、愕然とした。たまたま司令塔に居た為、他の参謀たちと九死に一生を得たのだ。司令塔以外に居た者の多くは、あの攻撃で戦死した。

帝国の最強の象徴と思っていたグレードアトラスター級戦艦のバルサーが無惨にも破壊された。その姿はまるでグラ・バルカス帝国の行き先を示しているようだった。

その周囲には、かつて船だった物の一部が水面から出ている。それはマストや艦橋や煙突などの上部構造物だったり、艦首や艦尾などの船体の一部だったり多種多様だ。その姿は、まるで船の墓場だ。

その光景を見た参謀の1人がつぶやく。

「最初から、我が国は勝てなかったのか……」

今まで無敗を誇っていただけに、その言葉は重くのしかかる。

そんな中、チエイズ王国の首都に轟音が轟く。ワイバーン用滑走路が爆撃を受けて煙を上げていた。

攻撃が止んだと思っていただけに軍人たちは驚いて逃げ惑っていた。ついさっきまでの地獄のような光景を思い出し冷静さを失って、その攻撃の対象に入っていなかったのに気づかなかったのだ。

その後、夜が明けて残っていた中破した軽巡2隻はアルホーら複数のワイバーンの導力火炎弾の攻撃を受けて無力化された。この時にワイバーンが1騎撃墜されたが、敗北には変わりがない。一応、二回目の船による攻撃は防げたが、敵の一隻が積んでいた魔導砲の攻撃で犠牲者が出ており、完全勝利とは言いがたかった。




いかがでしたでしょうか?

近日中にアンケートが終わりますので、投票していない人はぜひ投票してください。
(2022年1月1日の12時頃に締め切ります)

もしよろしければ、コメントや評価の方もよろしくお願いします。

・追記
誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ様
ありがとうございます。

誤字報告のお礼が抜けてしまい本当に申し訳ありませんでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話

作者の滅茶苦茶太郎です。

アンケートは明日締め切ります。
投票を済ませていない方は、それまでに投票を済ませてください。


ニューランド島 グルート騎国

 

同島、チエイズ王国と同じようにグルート騎国の港でもグラ・バルカス海軍の第2先遣隊がいた。

210隻もの艦艇から構成される第2先遣隊は第1先遣隊と合流し、日本を含む新国家連合を打ち破るという任務を達成するために派遣されたのだ。

現在、彼らは第1先遣隊と同じように補給物資の積み込み作業をしていた。

第2先遣隊はミレケネス率いる第1先遣隊と異なり、邪魔となる冒険者などの攻撃が少なかったために積み込み作業は順調に進んでいた。

冒険者らの妨害がほとんど起きなかっただけあり艦隊内には比較的、暢気な空気が流れていた。余裕があるとも言える。

しかし、少し前に第1先遣隊が攻撃を受けていた事から到底油断できる状況下には無かった。だが彼らは急な攻撃と無線妨害で情報が伝わる前に撃破された為に、その事を知らなかったのだ。

それゆえに、近づいている敵の脅威にまったくの無防備と言える状態だった。もっとも、例え伝わっていたとしても結果は余り変わらなかっただろうが。

 

・・・・・・・・・・

 

新国家連合軍 第202合同任務部隊

ニューランド島 グルート騎国 南方80kmの空域

 

空中に多数の航空機が飛行していた。その数は91機にものぼる。

 

第202合同任務部隊 アルファ部隊

F-15C 戦闘機 12機

トーネードIDS 攻撃機 36機 

E-2 早期警戒機 1機

 

第202合同任務部隊 ブラボー部隊

F-16 戦闘機 8機

F-4E 戦闘機 18機

 

第202合同任務部隊 チャーリー部隊

A-7 攻撃機 10機

Tu-22M 戦略爆撃機 6機

 

これらの部隊は、まずアルファ部隊の144発にものぼる圧倒的な数の対艦ミサイルで敵の艦隊を攻撃し、致命的な損害を与える。なお敵は210隻ほどであり、対艦ミサイルの数は十分とは言えないが第1先遣隊以上に港に密集しているため、艦隊の大多数を構成している駆逐艦が爆発に巻き込まれ、撃沈はせずとも戦闘不能になると想定し十分と判断された。

若干楽観的な試算でこそあるが、爆発の巻き添えによって戦闘能力に多少の影響を与えるのは間違いないだろう。

次に、ブラボー部隊のF-4Eの36発の対艦ミサイルである。敵の重巡洋艦と戦艦を攻撃することが主任務である。アルファ部隊のトーネードIDSが搭載しているコルモラン対艦ミサイルでは打撃力不足であり、重巡洋艦や戦艦相手には不十分とされた為である。ただ重巡洋艦は撃沈を主目的としているが、戦艦は対空兵器の排除が主目的であり、決して対艦ミサイルで戦艦を撃沈できると甘く見てはいない。

F-4Eの翼下には2発のハープーン対艦ミサイルが懸架されていた。それぞれが圧倒的な破壊力を秘めており、比較的硬い目標を攻撃するのにはうってつけだろう。

最後にチャーリー部隊のA-7攻撃機とTu-22Mの出番である。A-7は搭載されている500ポンド爆弾で戦闘不能になった艦艇に止めを刺す役割を担っている。

一方のTu-22Mが攻撃部隊にいるのは、港に6隻ほど戦艦があることが判明したからである。Tu-22Mから発射可能なKh-22超音速対艦ミサイルで6隻の戦艦を撃破する為にわざわざ編入されたのだ。

Tu-22Mからミサイルを1発ずつ発射して目標の戦艦を撃破する。もし撃破できていなければもう1発を撃ち込んで確実に目標を撃破する。

A-7の翼下には積めれるだけ多くの小さな爆弾をぶら下げている。一方のTu-22Mが搭載しているのは2発の巨大なミサイルという正反対な様相を醸し出していた。

「第202合同任務部隊の各隊に通達。攻撃体制に移行せよ」

隊長機であるE-2から無線が入った。

合計して91機もの大編隊は幾つかの小編隊に分かれる。敵であるグラ・バルカス軍への攻撃の準備の整えていく。

「アルファ部隊、前進せよ。ブラボー部隊とチャーリー部隊は指令が出るまで待機せよ」

アルファ部隊の49機の編隊が速度を上げて離れていく。残されたブラボー部隊とチャーリー部隊の42機は速度を落とし、指令が来るまでの間、空中待機を行っていた。

 

圧倒的な破壊をもたらす存在が大きく近づく。第2先遣隊の悪夢はすぐそこにまで来ていた。




いかがでしたでしょうか?

繰り返しになりますが、
アンケートは翌日の12時頃に締め切りますので終わらせていない方は必ず、その時までに終わらせてください。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話

作者の滅茶苦茶太郎です。

今回、アンケートの結果に関する話をしたいと思います。
詳細に関してはあとがきをご覧ください。


第202合同任務部隊 アルファ部隊

 

12機のF-15C戦闘機に護衛されながら、36機のトーネードIDSと1機のE-2が飛行していた。目標は戦艦と重巡洋艦以外となる194隻程のすべての艦艇である。

トーネードIDSに搭載されているコルモラン対艦ミサイルは全部で144発しかないので、重複しないように気をつけて狙う。

攻撃対象の数は駆逐艦168隻、軽巡洋艦14隻、正規空母4隻に軽空母及び護衛空母8隻である。チエイズ王国にいた先遣隊と違い比較的強力な艦隊だ。おそらく、合流する時に先に出るのだろうと推察できる。

49機もの編隊を組んで接近しているが、敵に気づかれる心配はいらなかった。なぜならば敵に攻撃を行う前に1機のトーネードIDSがジャミングを行っているためにレーダーに映る危険性はないからである。

敵艦隊との距離が50kmを切る。コルモランの有効射程に入った。パイロットたちは目標を捕捉できていることを確認した後、発射した。

夜空に赤い炎が現れるが、すぐに消えて見えなくなる。連続して発射しては少し時間を置き、また発射される。一度に144発を撃つのではなく、順番に空母に対して2発づつの計24発、駆逐艦168隻に対しての106発、軽巡洋艦に対して1発づつの計14発。その順番で3回に分けての攻撃を行う。

破壊の嵐が今、第2先遣隊へと迫っていた。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス帝国海軍 第2先遣隊 旗艦クエーサ

 

アウロネスは困惑していた。港にいる間も絶え間なくレーダーが作動していたが、少し前から急に故障したのだ。しかもクエーサだけではなく、すべての艦艇のレーダーがそうなっている。

「原因は判明したか?」

尋ねられた部下は首を横に振る。

「いいえ、まだです。ですが、おそらく磁気嵐の可能性が高いと思われます」

「磁気嵐か」

アウロネスは納得する。

帝国が異世界に移転してから、磁気嵐によるレーダーの故障などはしばしばあったため、彼らは磁気嵐のせいだと思っていた。

「見張りの人数を増やしてくれ。念のためにだ」

だいたい、こういう時は嫌な予感がする。それは前世界からもそうだったが、今回はやけにその予感が強い。

そう言い終えた直後に轟音が聞こえた。

「なんだ!?」

「空母が爆発しました!、数6隻、いや8隻です!」

見張り員からの報告が入る。空母がいきなり爆発した?

彼が返答するよりも先に、再び轟音がする。

「ああ、まただ!」

「何があった!?」

「残りの無事な空母4隻も爆発!さらに、先ほど爆発した空母もさらに爆発しました!」

「クソッ、いったいどうなっている!?」

急な出来事に悪態を吐く。彼はこの状態を理解できなかった。

あまりにも突然おきたことに艦隊は深い混乱の中に入るが、まだ始まりに過ぎない。

再び轟音がして、見張り員からの報告が入る。

「駆逐艦が爆発!、おそらくイトクーワだと思われます!」

「なんだとっ!?」

ここにきて、ようやく突然の事で頭の中が真っ白になっていたアウロネウスは敵の襲撃であることに気づく。

「そっ、総員戦闘配置につけ!敵だ、敵襲だ!」

彼と同じように固まっていた乗組員ははっと我に帰り、急いで準備に取り掛かる。

そうしている間にも攻撃は苛烈になっていった。

 

・・・・・・・・・・

 

港に停泊していた軍艦の対空砲から砲弾が放たれる。あちこちから放たれる曳光弾が空を覆いつくして砲火の光と共に、真夜中の港を昼の様に照らしていた。

それ程の対空砲火を潜り抜けたミサイルが軍艦に命中する毎、爆発と共に轟音が辺り一面に響く。一回の爆発が起きる度に対空砲火の勢いが弱まっていくのが見えていく。

なぜならば軍艦を密集して停泊させていた為、1発の対艦ミサイルが命中した際に爆発に巻き込まれたり、飛び散った破片が船体や兵装を破壊したり対空砲座に居た乗組員を殺傷した事が原因であった。

「急げ!急げ!」

クエーサの甲板上では多くの水兵が走り回る。積み込む途中だった物資が辺りに散らばっているのも気にせず、ただただ対空砲座に着き、飛んでくる攻撃を撃ち落とす事のみを考えていた。

「装填完了、いつでも撃てます!」

「よし、撃て!撃てっ!」

レーダーが故障したため、目視による射撃を行う。だが、恐慌状態の真っただ中の状態にあったために、誤認によって何もない所に砲撃を行っていた。

轟音と水兵の叫び声が響き渡り、高温の薬莢が甲板上に飛び散る。

「うがっ!」

「うぉっ!?おっ、おい!」

ある対空砲座に居た水兵達から悲鳴が上げる。彼らの近くに高速で破片が飛び散りそれらが給弾手の一人に命中したのだ。

その原因は他の軍艦から放たれた対空砲弾だった。それらは有りもしない方向へ放たれた際に発生した流れ弾で、それらが命中する事故があちこちで発生していた。

「気をつけろ!流れ弾だ!」

「土嚢の様な物を何でもいいから積むんだ!早く!」

手の空いていた水兵が近くにあったハンモッグや散らばっていた物資などを手あたり次第、拾って積み上げていった。

その後も流れ弾がクエーサに命中して時折、死傷者を出す。しかし、簡易的ながらも積み上げられた防御壁は被害を軽減する役割を果たしていた。

「くそっ!くそっ!」

彼らは悪態をつく。流れ弾の被害以外にも、特に当たらない対空砲火、爆発し無惨にも沈みゆく駆逐艦や軽巡洋艦や空母などの軍艦の姿。

それらに彼らの心は深く傷つけられていくのだった。




いかがでしたでしょうか?

GMとリーム王国戦に関するアンケートの結果についてですが、

投稿するべき          22票
投稿しなくてよい        1票
もっと話が進んでから回答したい 10票

でしたので、投稿していきたいと思います。
アンケートに回答してくださりました皆様、ありがとうございました。

また、GM戦の新話投稿は第2章が終わった後に投稿したいと思います。
その際に投稿速度が落ちるかもしれませんが、予めご了承ください。

誤字報告を行ってくださいました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話

作者の無茶苦茶太郎です。

次回の投稿に関しては1週間後に行いたいと思います。
ご了承ください。


第202合同任務部隊 ブラボー部隊

 

アルファ部隊から通信が入る。第一波目の攻撃は成功し、敵は大きく混乱しているらしい。

第二波攻撃を担当するブラボー部隊のF-4E戦闘機18機は攻撃の準備を整える。

「攻撃用意よし……。攻撃開始!」

F-4Eの翼下に吊るされている2発のハープーン対艦ミサイルが点火され切り離される。ハープーン対艦ミサイルは徐々に高度を下げて、目標へと進んでいく。

「発射完了」

「了解。F-4EM隊は直ちに基地に帰還し、F-16隊は後続のA-7隊の到着を待て」

基地からの命令に従いF-4E戦闘機18機は基地の方角に引き返し、F-16戦闘機8機はA-7攻撃機10機の到着を待つことになった。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス海軍 第2先遣隊 旗艦クエーサ

 

先ほどの苛烈な攻撃により、空母、軽巡洋艦、駆逐艦の大部分が沈没や大破に準ずるような損害を出す。

特に攻撃を受けなかった戦艦や重巡洋艦はおおむね無事だが、艦隊の大部分を構成する空母、軽巡洋艦、駆逐艦の損害がすさまじい事に、アウロネスは動揺を隠せない。

「損害は?」

「はい。現在、無事な艦艇は重巡10隻と戦艦6隻のみで、その他の艦艇は攻撃や誘爆に巻き込まれ沈没や大破しています」

聞かなければ良かったと思えるほどの損害にアウロネスは頭を抱える。

「このことは、本国や第1先遣隊に伝えたか?」

「だめでした。無線も使用不可能になっています。敵の所為かは分かりませんが」

「そうか。少なくとも、現時点では自分の身を守ることが最大の仕事だな……。各艦に見張りの強化と、常時対空戦闘用意をするように通達せよ」

「了解」

艦橋から各艦に指示が出される。クエーサも手空きの人員らを見張り員として増強するなどの追加措置をおこなった。

しばらくした頃か。アウロネスの中で不気味な予感がよぎった時に、それは起きた。

「報告!海面付近に謎の飛翔体……」

見張り員が言い終える前に轟音が響く。

「ああっ、アインに被弾しました!さらに来ます!」

攻撃が始まった。彼は直ちに周囲に命令する。

「始まったか、すべての火力を用いて迎撃しろ!急げ!」

爆発が起きた直後、すべての対空砲が火を噴く。真っ暗な夜空の中、曵光弾が次々と水平に撃ちだされる。

砲撃音と爆発音が港に轟いた。

対空砲から発射される曵光弾は雨のように飛び、海面に大きな水しぶきをあげるがまったく命中しない。そもそも目標が見えておらず、大きくずれた位置に攻撃をしていたのだ。

やがて、先ほど被弾したアインに2度目のハープーン対艦ミサイルが命中する。

この一撃は致命的だった。1発目は艦橋に命中したが2発目は魚雷発射管のある場所に命中したため、短時間で誘爆し沈没した。

「アイン轟沈!」

「クソッ!やられたか。」

見張り員から報告に思わず悪態をつく。

だがそうしている間にも攻撃が殺到し、ついにはクエーサにも命中する。

「ぬうっ!」

非常に強い衝撃が司令塔内を襲う。ハープーン対艦ミサイルが司令塔に命中する。だが、攻撃は司令塔の装甲の表面をへこまし焦がすほどの物理的効果しか無かった。

しかし、心理的効果は覿面だ。肝の据わっているアウロネスや実戦経験のある複数名の乗組員以外は萎縮しきっていた。

「大丈夫だ!司令塔は装甲が厚いから攻撃は効かん!」

そのことに気づいたアウロネスは周りを鼓舞するように声を上げる。

「敵の攻撃が司令塔に命中しましたが大丈夫ですか!?」

「大丈夫だ、問題ない。」

見張り員からの心配にアウロネスは答える。

その直後、爆音と同時に見張り員の返答が無くなる。彼は嫌な予感を頭に浮かべながら確認の為に、第一艦橋に報告を求める。

「第一艦橋応答せよ!」

返事がない。

「こちら、第二艦橋。第一艦橋は攻撃が被弾し壊滅した模様。」

なるほど。第一艦橋に命中した攻撃に見張り員は巻き込まれたのだろう。

「わかった。第二艦橋は損害の報告と状況の把握をせよ。」

「了解。」

次からは第二艦橋から報告が上がる。

「重巡アルキオネ、ケラエノ被弾!戦艦アンテも被弾!あっ!」

同時に衝撃が艦内を揺らす。

「本艦右舷の対空砲座に被弾!損害不明!」

3発目が命中する。今度は装甲が十分に無い対空砲座に命中したから、多数の対空砲座と高角砲が破壊されただろう。

「攻撃がアルキオネに命中!ああっ、アルキオネが爆発!おそらく魚雷に誘爆した模様!」

アインが轟沈した時と同じほどの轟音が司令塔内にも響く。装甲がある船でも、これほどの短期間で甚大な被害が出るとは思わなかった。

「アルキオネ轟沈!」

予想通りだ。悪夢ならどれほどすばらしいと思えるほどの損害にアウロネスの精神はどんどん磨り減っていった。

 




いかがでしたでしょうか?

前書きに書いた通り、次回の投稿は1週間後に行いたいと思います。
予めご了承ください。
(理由に関しては、加筆作業が滞っている事と作者の事情によるものです)

誤字報告を行ってくださりました、
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話

作者の無茶苦茶太郎です。

次回の投稿が終わり次第、リーム編の執筆と投稿をしたいと思います。
その際、投稿頻度が急激に下がると思われますが予めご了承ください。


第202合同任務部隊 チャーリー部隊

 

A-7攻撃機10機とTu-22M爆撃機6機が上空を飛行している。その中でもTu-22Mは攻撃を始めていた。

1発のKh-22対艦ミサイルが胴体から切り離される。5.8t程の巨大なミサイルは内部の液体燃料を点火すると、一気に速度を上げていく。

ミサイルは大きな炎と短時間で攻撃機や爆撃機を引き離すほどの加速を始め、空の彼方へと去っていった。

「Kh-22発射確認。全機待機せよ」

「了解」

6機のTu-22Mはミサイルが着弾するまでの間、大きく旋回を行い空中待機をする。一方のA-7攻撃機10機は編隊を組み、先行しているブラボー部隊の戦闘機と合流するために進んでいく。

「こちらチャーリー部隊、ブラボー部隊で間違いないか?」

「こちらブラボー部隊、間違いない」

その通信の後、F-16戦闘機8機とA-2攻撃機10機が合流する。合流した18機は編隊を組み上げて、目標へと進んでいく。

「チャーリー部隊と合流しました」

「了解。Kh-22が命中するまで、攻撃はするな」

「了解」

18機の攻撃隊は速度を落としながらも、少しづつ接近していった。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス帝国 第2先遣隊 旗艦クエーサ

 

会場には多くの船の残骸が浮いていた。黒く焦げた船体からは炎と煙がもくもくと昇っており、いずれの船も大きく変形し沈んでいた。

港内のあちこちで火災による炎の光で辺りが照らされる。その光の中では多くの怒号と悲鳴が聞こえ、多くの水兵達が集まって消火作業などを行っていた。

このような惨状の中、浮いている船はたった6隻のみである。

先ほどの攻撃で生き残っていた10隻の重巡洋艦が沈没し、6隻の戦艦の多くが損傷する損害が出たのだ。

その中でも旗艦のクエーサはすべての戦艦の中でも、もっとも装甲が厚かったため損傷が少なかった。だが無事というわけではない。

対艦ミサイルの命中した最上甲板は小さいながらも穴が開き、辺りにあった対空砲座などは完全に無くなっていた。また、装甲化された司令塔は黒く焦げへこみが出来た程度で済んだのに対し、第一艦橋は爆発によって破壊され、煙が昇っていた。

「第二艦橋より損害報告。第一艦橋は壊滅し要員は全員戦死。また、2基の高角砲と10基前後の対空砲座も破壊された他、死傷者多数出ました」

司令塔内に報告が入る。今まで体験した中で匹敵するとしたら、バルチスタの空中戦艦との戦いぐらいだろうか。

「また、重巡洋艦はすべて轟沈し、戦艦もアンテやパレネが大破、その他3隻は中破です」

残る戦艦たちも攻撃を受けて大きく損傷していた。特にアンテとパレネは甲板上に置いていた積み込み途中の主砲弾と装薬が誘爆し、船体に大きな被害を出していたのだ。

かの2隻の甲板上では大きな火災が起きており、もうもうと煙が空へ昇っている。クエーサを除いた他の3隻と比べても死傷者の数は甚大であった。

短時間の内に出た被害としては余りにも大きすぎる損害。その損害にアウロネスは頭を抱える。

「どうするべきだろうか……」

残った傷物の戦艦6隻だけの艦隊でどう戦うべきか悩む。どうやっても勝てないとアウロネスの頭の中では思っていた。

悲観的な空気が司令塔内に広がる。だが、そうしている間にも止めの一撃が近づいていた。




いかがでしたでしょうか?

前書きに書いた通り、
次回の投稿が終わり次第、リーム王国軍とGM戦の執筆と投稿をする事になります。
そのため、投稿までに時間が空くと思いますがご了承ください。

なお、次回の投稿は3日後に行いたいと思います。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話

作者の滅茶苦茶太郎です。

以前から言ってました通り、リーム&GM戦の話を次回から投稿したいと思います。
できるだけ早く投稿できるように頑張っていきたいと思いますが、投稿までに時間が空くと思います。

その点に関しては、予めご了承ください。


マッハ3.5もの速度で飛翔していたKh-22超音速対艦ミサイルのレーダーは、ちゃんとクエーサを捕らえていた。

クエーサとの距離が10kmを切った。弾着まで秒読み状態になった。

「残り、9km、8km、7km、6km、5km、4km、3km、2km、1km……」

オペレーターのカウントダウンが終わると同時に、Kh-22が目標がクエーサに命中する。右舷の司令塔の下から、3番主砲塔の弾薬庫へ突き破るように貫通し爆発する。

Kh-22は運動エネルギーにものを言わせて、装甲をいともたやすく突き破った。また1000kgもの弾頭に搭載されたRDX爆薬の破壊力は一瞬で主砲の弾薬庫に含まれている砲弾や装薬を誘爆させる。

2500tほどある砲塔は吹き飛び、砲塔があった穴から火が吹き上げる。その光景は、知る人なら陸奥の爆破事故を彷彿とさせるだろう。

そして、爆発に耐えられなくなった船体が第2副砲近くで折れた。くの字に折れ、艦首のバルバスバウや船底の赤い塗装が見える。だが、その状況は長くは続かない。ミサイルが突入した部分にできた大きな破口から大量の海水が浸水し、クエーサは完全に右舷へ横転した。

この攻撃でもバルサーと同じ様に司令塔にいたアウロネスらは助かったが、船体にいた要員、その中でも第3砲塔と機関室にいた乗組員の大半は戦死した。

 

戦艦アンテの艦長らはいきなりの出来事に呆然としていた。なにが起きたか理解できなかった。誰もKh-22超音速対艦ミサイルの存在に気づけなかったためいきなりクエーサが爆発したように見えた。

いきなりの爆発、そして真夜中を明るく照らす炎とキノコ雲。それは、見張り員も見張りという本来の任務を忘れてしまうほどであった。

「嘘だろ……」

ある見張り員は震える声を絞り出すように発する。敵の攻撃か事故かは分からないが、その光景がこの世の終わりに思えるほどの強烈さがあることだけは分かった。

ふとここで嫌な予感に気づく。まるで、生存本能が逃げるように叫んでいるようだった。

「艦長、パレネが!」

副長が叫んだ。近くに居たパレネが大爆発を起こす。

「何だ!何が起きたんだ!」

呆然となっていた艦橋内が騒然となる。

アンテの艦橋からは、火山の噴火の様に炎をあげて爆発するパレネの姿が見えていた。

「まっ、まさか!」

敵の攻撃か、と艦長が叫ぶよりも先にアンテに強い衝撃と轟音が加わる。

マッハ4.6もの速度で急降下してきたKh-22は、アンテの甲板を貫き機関室で弾頭が炸裂した。衝突時の被害もさることながら、爆発による被害が致命的な結果をもたらす事となる。

機関室はミサイルの爆発により完全に破壊された上、船底には巨大な破孔が開く。そこからの大量の浸水でアンテの喫水はどんどんと深くなっていく。

「まずい!総員退艦!総員退艦だ!」

着弾時の衝撃によって、負傷し意識を失った艦長に代わり副長が総員退艦命令を出す。

「見張り員、急いで航海長を連れて脱出するんだ!俺は艦長を連れて脱出する!」

「分かりました!」

いきなりの出来事に呆気を取られていたものの見張り員の男は、頭から血を流し、意識がもうろうとしている航海長を連れて脱出を始めた。

沈みゆくアンテの甲板からは多くの水兵達が湧くように現れる。命からがら脱出した彼らの目には、信じられない光景が広がっていた。

先の攻撃を生き残っていた5隻の戦艦が次々と沈んでいく。一隻は巨大な火柱をあげ、別の一隻は転覆して側面から煙があがり、また別の一隻は艦橋が根元から消えて無くなっていた。

「そんな馬鹿な……」

一人の水兵は膝から崩れ落ちる。

「畜生ぉ!」

多くの者が涙を流す。彼らのプライドは粉々に砕け散っていたのだった。

 

6隻の戦艦が沈みゆく中、止めの攻撃機たちが接近していた。

「こちらA-7攻撃隊、目標を確認。攻撃を開始する」

「了解。徹底的に破壊せよ」

A-7攻撃機10機は1機づつに分かれて、まだ浮かんでいた駆逐艦を攻撃した。いずれも辛うじて浮いている程度の状態だったので沈めることは容易であった。

「こっちに来たぞ!」

「逃げろ!」

残っている駆逐艦を始末するために、A-7攻撃機は反転して再度攻撃を試みる。

搭載された20mm機関砲を桟橋に打ち込み、そこに居た消火活動を行っていた乗組員らを撃ち殺しながら桟橋を砕き、限定的ながらも戦力と機能を奪っていく。

それと同時に500ポンド爆弾を投下し、沈没していなかった駆逐艦へ攻撃を行い確実に戦力を削っていく。

「隊長、残っていた駆逐艦を撃破しました。それで、あの戦艦などは攻撃しますか?」

「いや、戦艦は攻撃しなくていい。もし爆弾が残っているならば、補給設備を代わりに攻撃せよ」

「了解。補給設備に攻撃を行います」

残っていた駆逐艦を全部沈めた攻撃隊は、目標を港湾の補給設備に切り替えて攻撃を始める。

「爆弾投下!」

A-7の翼下のパイロンから500ポンド爆弾が次々と切り離されていく。

投下された何十発もの爆弾は地面に到達すると、大きな爆発を起こして地上に有るありとあらゆるものを粉砕する。

16発の巡航ミサイルによって大きく被害を受けていた港湾施設は、攻撃隊の残っていた爆弾と機銃掃射によって破壊しつくされた。

有効な反撃ができないまま、グラ・バルカス海軍第2先遣隊は壊滅した。

 




いかがでしたでしょうか?

前書きに書いた通り、次回からリーム&GM戦を投稿する予定です。
アンケートに参加してくださいました皆様、貴重なご意見ありがとうございました。

誤字報告を行ってくださりました
ぴょんすけうさぎ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3章 「タスクフォースコード300」
第15話


作者の滅茶苦茶太郎です。

今回から第3章が始まります。
これからカイザル率いる本隊との戦闘になっていきます。

その他、更新などに関する話が後書きに書いておりますので、最後の後書きの方もご覧ください。


日本国 東京都 防衛省

 

防衛省のとある一室で会議が行われていた。それは、グラ・バルカス海軍の大艦隊についての対策である。この会議には日本、新国家連合の軍関係者たちが主に出席していた。

「現在、ニューランド島にいた第1、第2先遣隊とセニアの港にいた第3先遣隊のいずれも撃破し終えました。そのため、残りは中央世界の東側の海域にある本隊だけです」

会議は順調に進んでいく。

「なお、中央世界方面に1023隻を確認しています」

会場がざわめく。事前に聞いていたとは言え、今までの予想を遥かに上回る数に驚いていた。

その様子を見た三津木が話を切り出す。

「なお、1023隻を一度に叩くのは骨です。そのため、何度かに分けて攻撃を行うことと、いくつかの塊に分割し撃破していきます」

ざわめきが消える。これからの話が重要であり、いつまでも驚き続けるわけにはいかないのである。

「現在、ミリシアルから空中戦艦1隻の戦力支援を行うと言ってきましたが、はっきり言って邪魔になりかねません。そのため、誤射の危険性を減らすためにも、敵艦隊を早期に撃破していきたいと思います」

プロジェクターがつき、スクリーンに地図が映る。

「では、説明を始めます」

三津木はレーザーポインターを取り出す。グラ・バルカスの艦隊を滅するための計画の会議が始まった

 

・・・・・・・・・・

 

三津木が映し出された地図の映像にレーザーポインターを当てる。

「敵艦隊は、まずフィルアデス大陸とベスタル大陸の間からロデ二ウス大陸の南を迂回するように侵攻すると思われています。北には島が多く奇襲を受けるリスクが高いから避けるでしょうね。

それで、まず我々は複数の防衛線を引くこととなりました。それぞれ、パンドーラとマールの間の海域を第1防衛線。次にアルタラスとベスタル大陸の間の海域を第2防衛線。そして、ロデ二ウス大陸から南の海域を第3防衛線として、旧太平洋域の海域を最終防衛線とします。

我々の想定では第2防衛線で敵艦隊を壊滅させ、撃ち漏らしや少数の艦隊を第3防衛線で壊滅させることです。

もし、最終防衛線まで到達された場合は各国が独自に攻撃することも可能です。」

一旦言い終える。次は、デルタ国の参謀が話し出す。

「現在、第1防衛線は我々とアルファ国の潜水艦部隊が攻撃を行い戦力を削ります。戦力として我々の軍から原子力潜水艦2隻と、アルファ軍から潜水艦4隻が攻撃を行います。」

次はアルファ国の参謀が口を開く。

「なお、目標としては戦力を削ると同時に敵艦隊をかく乱することにあります。また、空母戦力のすべてを削ることはできないので、第2防衛線においても航空戦力に対する警戒は怠らないほうが良いでしょう。」

一同は頷く。

次に三津木の出番となる。

「残った敵戦力はガンマ軍とイプシロン軍と航空自衛隊で攻撃し、いくつかの塊に分断します。

残った艦隊はそれぞれの艦隊が迎撃する方向で行こうと思いますが、よろしいでしょうか?」

全員が頷く。異論はない様だ。

「では、それぞれが担当する戦力についてについて話をしましょう。」

自分たちが担当する戦力について、会議は長く続いた。




いかがでしたでしょうか?

ある程度ストックが溜まっていますので、今後しばらくは一定のペースで投稿できると思います。
おおよそ5日から7日ぐらいのペースで投稿していく予定です。

最後にこの作品を見ていただき、本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話

作者の滅茶苦茶太郎です。

今回少しばかり短いですが、予めご了承ください。


フィルアデス大陸 西側海域 第1防衛線

 

静かな海の中、タンゴ型潜水艦のL-1は水中にいた。目標はこの海域を通過するグラ・バルカス海軍の大艦隊である。

「艦長、敵艦隊が目的地Aに来るまであと5分を切りました」

「わかった。事前の計画通りに行こう」

この潜水艦には6本もの魚雷発射管が備わっており、いずれのものにも魚雷が装填されていた。艦内で搭載されている合計24本の魚雷で多くの獲物を狩ることが与えられた任務であった。

「ソナーマン、聞き漏らさないように」

「了解」

艦長はソナーマンに念押しをする。L-1は静かに、その時を待ち続けていた。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス帝国海軍 連合艦隊 旗艦グレードアトラスター

 

1023隻もの艦隊が進んでいく。その多くは駆逐艦で構成されているものの迫力がある。

連合艦隊司令のカイザルは艦橋から外を見ていた。

艦橋からは軍艦以外には、広大に広がる紺色の海が見えた。水色の空には白い雲が所々に見えるものの、快晴であった。

「艦長、異常はないか?」

「はい、ありません」

「そうか」

不定期にされる質問に艦長のラクスタルはただ事務的に答える。

「まだ敵には気づかれていないようだが、そろそろ壁に当たると考えた方が良さそうだ」

カイザルの独り言に周囲は若干困惑する。いきなり不吉な事を言い出したからだ。

だが、その不吉な予感が的中することとなる。

艦橋内に無線手が転がり込んでくる。

「報告!第2艦隊から入電!駆逐艦ジュバ轟沈!」

「なんだと!?」

艦橋内に衝撃が走る。会敵したとの情報がないまま、攻撃を受けたという情報がいきなり入ってきたから当然である。

「雷撃を受けたことから、潜水艦による攻撃と思われるそうです!」

航空艦隊がいきなり攻撃を受けた。その衝撃は大きい。

「直ちに爆雷による攻撃を行い、潜水艦を撃破するように伝達せよ!また、ほかの航空艦隊に潜水艦に対する警戒を行うように伝達せよ!」

「わかりました!」

唐突なことに混乱が起きるが、カイザルは的確に指示を出し混乱を収めようとする。

「司令長官、安全のためにも司令塔に移動することをお勧めします」

艦長のラクスタルが提案する。攻撃が来た場合、装甲化されていない艦橋は危険なだが、装甲化された司令塔ならば安全であろう。

「わかった、司令塔に移動しよう」

そうしている間にもグレードアトラスターの数km先にいた駆逐艦が大きな水柱と炎をあげて沈んでいく。

「駆逐艦ミルザム轟沈!」

航海長の男が報告を入れる。

「司令長官、早く移動しましょう!」

「ああ、急ぐぞ!」

2人はエレベーターを使い、装甲化された司令塔へと降りていく。

2人が司令塔に着くまでの間、グレードアトラスターが攻撃を受ける事はなかったが、第1艦隊全体には多くの被害が出ていたのだった。




いかがでしたでしょうか?

これから本格的に懲罰艦隊本隊との戦いが始まります。
次回もお楽しみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話

作者の滅茶苦茶太郎です。

まだストックがありますので、次回も同じ頃に投稿します。
これからもよろしくお願いします。


第301合同任務部隊 通常動力型潜水艦 L-1

 

「魚雷、命中しました。圧壊音も聞こえます」

ソナーマンから報告が入る。1発目の攻撃はしっかりと命中したそうだ。

艦長は続けて発射するように命令する。

「続けて2番と3番を発射せよ。目標、航空母艦!」

「了解。魚雷発射管2番、3番発射します」

2発の魚雷が潜水艦から発射され、水の中を進んでいく。2発の53-65長魚雷は目標となるグラ・バルカス海軍連合艦隊へ牙をむく。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス海軍 連合艦隊 第2艦隊

 

先行していた駆逐艦のジュバが雷撃により轟沈したことで、艦隊内ではパニックになっていた。潜水艦が自国以外に保有していたこと以上に、何の前触れもなく沈んだことが大きいだろう。

ぺガスス級空母のマルカブの艦橋内では大きな騒ぎになっていた。

「急げ、急げ、上げられる航空機はすべて上がれ!」

甲板上には多数の爆撃機と雷撃機が待機していた。エンジン音とプロペラの回転

している音が辺り一面にとどろいていた。

「報告!航空機発艦かい……」

航空管制を行っている士官が言い終える前に、艦全体に強い衝撃が加わる。いきなり衝撃が来た為、艦橋にいた多くの要員が転倒する。

「なんだ!何が起きた!?」

額から血を流している艦長が叫ぶ。

「魚雷命中!魚雷2発命中!」

見張り員から報告が入った。

L-1が発射した2発の魚雷は舷側で爆発し、その攻撃が及ぼした損傷はマルカブの竜骨まで及ぶ。

竜骨が3つに分かれる同時に、舷側に開いた大きな破孔から艦内に多量の海水が流れ込んだ。グラ・バルカス帝国の想定よりも高威力な弾頭の威力にマルカブは耐える事ができなかった。

マルカブは短時間で大きく沈みこみ大きく揺れる。その揺れにより、甲板上にあった航空機は海へすべり落ちていった。

「いかん、総員退艦急げ!」

頭を打ちふらふらしていた艦長は危険な状況であることに気づき、急いで総員退艦命令を下す。だが浸水はひどく、短時間で格納庫まで浸水してしまう。そのため、脱出できた乗組員は多くなかった。

マルカブ以外の軍艦も同じように短時間で沈んでいく。一方駆逐艦は雷撃が来た方向がわからず、ただただ周辺の海域に爆雷を投下するか、回避運動をしてやり過ごそうとするものばかりである。マルカブを沈めた潜水艦L-1はためらわず攻撃を続けていく。

 

・・・・・・・・・・

 

第301合同任務部隊 原子力潜水艦 X-211

 

同海域に居たデルタ海軍のヴィクターIII型原子力潜水艦X-211も攻撃を行っていた。L-1潜水艦と交代しながら、魚雷を発射して攻撃を行う。

「650mm魚雷発射管の1番と2番、それぞれ空母に目標を定めました」

X-211には強力な650mm魚雷が6本ほど搭載されているため、空母や戦艦などの大型艦艇を積極的に狙う事にした。

「よし、650mm魚雷発射管の1番、2番発射せよ」

「650mmの1番、2番、発射!」

通常の533mm魚雷よりひと際、大きな魚雷が魚雷発射管から射出される。50ノットもの速度で650mm魚雷は海中を進んでいく。

しばらくたった後、ソナーマンから報告が入る。

「報告、本艦から発射した533mm魚雷により、敵駆逐艦4隻を撃沈しました」

再び時間が流れる。5分ほど経ったのちに、ソナーマンから報告が入った。

「650mm魚雷命中、空母2隻はいずれも轟沈しました」

「うむ、このまま攻撃を続けよ」

X-211は攻撃を続行する。

「艦長、戦艦と思われる軍艦がこちらに向かってきます!」

「何だって!?」

艦長らは探知されたのかと驚愕する。実際には偶然、戦艦の操舵手がミスを起こして、X-211の方向へと舵を切ったまま進んでいるだけだったが、艦長たちは焦る。

「その船に650mm魚雷を発射するのだ!」

「了解、発射します!」

X-211から650mm魚雷が発射される。それと同時にソナーマンから報告が入る。

「敵戦艦、進路変更しました。こちらから遠ざかっていきます」

艦隊からはぐれた事に気づいた戦艦は元の艦隊に戻るために針路を変更したのであったが、X-211の乗組員には理解不能な行動を行っているようにしか感じていなかったのだ。

発射された650mm魚雷は敵の戦艦に命中し、一撃で轟沈させる。これによって脅威は排除されたのだったが、艦長は決断する。

「念の為に、地点Dに転進せよ」

「了解、地点Dに転進します」

最終的にX-211は1隻で戦艦1隻と空母3隻と駆逐艦6隻を撃沈した後に一旦、優れた速力を生かして海域を離脱していった。

 




いかがでしたでしょうか?

これからも投稿を続けていきます。
もしよろしければ、感想や評価の方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話

作者の無茶苦茶太郎です。

投稿の設定を忘れてしまった結果、投稿が予定より遅れてしまいました。
誠に申し訳ございません。

次回から気をつけていきます。


グラ・バルカス海軍 連合艦隊 旗艦グレートアトラスター

 

旗艦であるグレートアトラスターの元に多くの情報が集まる。戦果の内容や敵と接触したとか、損害の情報とかだ。そして、現在は悪いことに損害の報告だけだった。

「駆逐艦アクラブ轟沈!あっ、駆逐艦サルガス被雷!」

「こちら第3艦隊、駆逐艦2隻と空母4隻沈没!同じく空母2隻も大破炎上中!」

「こちら第4艦隊、戦艦1隻大破!重巡洋艦1隻と駆逐艦2隻も沈没!」

司令塔内には艦橋からの報告と、それぞれの艦隊からの報告でいっぱいになる。

「うろたえるな!雷撃できる距離にいるからには、すぐそばにいるはずだ!」

カイザルは周りを鼓舞するように叫ぶ。だが攻撃している潜水艦は10km以上遠くから雷撃しており、いくら爆雷を投下してもまったく効果はない。

水柱があちこちで上がる。そのほとんどは、グラ・バルカス海軍の駆逐艦が投下した爆雷だが、それに紛れるように駆逐艦からも水柱が上がる。魚雷に命中した駆逐艦は誘爆を起こし短時間で跡形もなく沈んでゆく。

グラ・バルカス海軍は潜水艦による攻撃に踊らされ続けるだけであった。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス海軍 第6艦隊 旗艦エンケラドゥス

 

「空母サリム被雷しました!」

「またか!?」

第6艦隊の旗艦となっていた戦艦エンケラドゥスの艦橋内に大きな声が響く。それは悲鳴にも似た大きな声であった。

先ほど被雷した空母サリムの様子はエンケラドゥスの艦橋からもはっきりと見えた。水柱は空母の艦橋よりも高くのぼり、250mを超える巨大な船体は大きく揺らされる。

「なんて威力だ!」

今まで見てきた中で最も大きな威力に彼は驚きを隠せない。グラ・バルカス帝国の魚雷でもあれほど大きな水柱は作る事はできないし、空母を大きく揺らせるほどの衝撃も無い。

敵の魚雷の威力に驚いている間にも、別の軍艦が被雷した。

「駆逐艦ゴレブカ、ファエトン被雷!」

艦長たちは被雷した2隻を双眼鏡で確認する。先ほどの魚雷と比べれば威力は弱いが、それでも自国の魚雷よりも大きな破壊力があるのは確認できた。

巨大な水柱が収まると同時に2隻は爆発を起こす。搭載されていた魚雷や砲弾が誘爆を起こし、魚雷によって引きちぎられた船体を完全に破壊した。

「畜生!奴らはまだ見つからないのか!」

「レーダーやソナー、目視による監視を行っていますが、潜望鏡どころか痕跡すら見つかりません!」

見張り員から絶望的な報告が行われる。第6艦隊に対して攻撃を行っていた潜水艦から放たれる魚雷は痕跡は残らない代物であり、射程も長い事からソナーによる探知や目視やレーダーによる潜望鏡の探知もできなかったのだ。

すなわち、彼らは一方的に攻撃されるしかない状況であった。1度の攻撃によって何百人もの命か刈られる恐怖に、彼らは屈するしかなかったのだ。

「第602、第605駆逐隊、爆雷を投下します!」

何隻かの駆逐艦が艦隊の外側へ移動し、艦尾から爆雷を投下する。巨大な水柱が多数生まれるものの、いずれも攻撃してくる潜水艦には少しのダメージも与えられていなかった。

複数の駆逐艦が爆雷を投下している間、被雷した空母サリムが爆発を起こした。

搭載していた爆弾と気化した航空機用燃料の2つによって空母は真っ赤な火の玉になった。そして被雷した際に形成された巨大な破孔は更に拡大し、大量の海水が艦内に流入した為にサリムの船体は急速に海中に潜っていく。

「サリム、急速に沈降しています!」

見張り員が叫ぶと同時にまた別の空母が被雷する。今度も巨大な水柱が発生して空母を揺らす。

「空母ネンブス、被雷!」

「またか!」

なすすべなく沈められていく軍艦達を、彼らは絶望しなが見守る。彼らには自分が乗る船に攻撃が来ない事を祈る事しかできなかった。

 

・・・・・・・・・・

 

第301合同任務部隊 原子力潜水艦 X-212

 

デルタ国の原子力潜水艦であるX-212は次なる目標を探していた。

「空母を発見しました。数2隻」

ソナーマンが報告する。その反応を聞いた艦長は判断を下す。

「よし、650mm魚雷をそれぞれ1発ずつ発射せよ」

2本の650mm魚雷が発射され、海中をどんどんと進んでいく。

「命中、2隻とも沈没は避けられないでしょう」

ソナーマンは告げる。実際、2隻とも650mm魚雷の一撃で致命傷を受けており、沈没までそう時間はかからなかった。

この様にX-212は獲物を狩り続ける。しばらくすると魚雷も目標も数を減らしており、攻撃の手が緩んでいった。

「艦長、もうそろそろ引き上げましょう。時間も迫ってきていますから」

発令所にいた副長が艦長に進言する。

「ああ、そうだな。もう引き上げよう」

艦長は進路変更を告げると、原子力潜水艦X-212は事前に打ち合わせていた海域へと向かっていった。

 

・・・・・・・・・・

 

フィルアデス大陸 西側海域 第1防衛線 S地点

 

事前に打ち合わせしていた海域にたどり着いた潜水艦たちはシュノーケルだけを出して通信を行っていた。

デルタ海軍

原子力潜水艦 X-211 戦艦1隻、空母7隻、重巡1隻、駆逐艦12隻撃沈

原子力潜水艦 X-212 空母6隻、駆逐艦14隻撃沈

アルファ海軍

通常動力型潜水艦 L-1 空母8隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦5隻撃沈

通常動力型潜水艦 L-4 空母2隻、駆逐艦12隻撃沈、戦艦1隻、空母2隻大破

通常動力型潜水艦 L-5 重巡1隻、軽巡2隻、駆逐艦14隻撃沈、空母2隻大破

通常動力型潜水艦 L-10 空母1隻、駆逐艦17隻撃沈、空母1隻大破

合計

戦艦1隻、空母24隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦3隻、駆逐艦74隻を撃沈

戦艦1隻、空母5隻を大破

損害

なし

 

圧倒的な戦果であったが全体的に見れば少々の損害である。しかし計画通り攻撃は成功し、その戦果は本土に送られて本部の人間たちは戦果に喜んでいるのであった。




いかがでしたでしょうか?

まだストックが残っていますので、次も同じ間隔で投稿していきたいと思います。
これからもよろしくお願いします。

誤字報告を行ってくださりました
オンギョウギ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話

読者の皆様、滅茶苦茶太郎です。

もうそろそろストックが尽きそうになりますので更新が遅れるかもしれません。
その点に関しては、予めご了承ください。


グラ・バルカス海軍 連合艦隊 旗艦グレートアトラスター

 

雷撃が止んでも、しばらくは爆雷を投下していたが、やがて爆雷が尽きた船が出てくると自然に爆雷投下は収まった。

攻撃が静まった後の海には多数の漂流物が浮かんでいた。多くは船の部品だったものと燃料の油だったが、所々に人の遺体なども浮かんでいた。

潜水艦からの攻撃で艦隊全体が被害を受けた。全体としてもそこそこの被害を被ったが、何よりも多数の空母が撃沈されたことが一番響いていた。

「カイザル様、敵の潜水艦からの雷撃を受けた為、我が艦隊は爆雷を投下し反撃を行いました。しかし潜水艦の圧壊音や残骸等の浮遊物は発見できませんでした。その為、戦果は無いと判断するべきでしょう」

全員が驚愕する。あれほど多数の駆逐艦が爆雷を投下するなどして対応したにもかかわらず、一隻たりとも撃沈できなかった事に衝撃を受けた。

そんな彼らを気にすることなく、報告を行う士官は続ける。

「そして我が艦隊の被害としては、戦艦2隻、空母29隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦3隻、駆逐艦74隻喪失しました。なおその中の戦艦1隻と空母5隻は損傷が激しく雷撃処分を行ったものです」

「そうか……」

カイザルは予想以上にひどい損害を被ったに驚く。これほどの被害は異世界ではバルチスタ沖海戦ぐらいしか比較対象が存在しない程の大損害であった。

だがしかし、彼は甚大な損害は出たにも関わらず軍を引く判断はできなかった。

「このまま進むぞ。まだ全体としてはそこまでの損害ではない」

「そうですか……」

カイザルが進軍を決めた事に多くの士官たちは暗い表情を見せる。当のカイザルも相当の苦悩をした上での結論であった。

「だが、念のために艦隊を分割しよう。それぞれの艦隊の旗艦と配属は俺が決める」

カイザルは艦隊を複数に分けて行動を行う事に決める。だが、それが敵にとって一番の狙いであったことに気づかなかった。

 

・・・・・・・・・・

 

日本国 東京都 防衛省

 

「予想よりも、早く分断しましたね」

会議室内でグラ・バルカス海軍連合艦隊の様子を見た三津木は、そうつぶやく。人工衛星から撮影された写真には艦隊が6個に分かれていたのが見えた。

「作戦の流れを変える必要性が出てきましたな」

アルファ国の参謀が口にする。

「そうですね……。それではこういうのはどうでしょう?」

三津木は手を叩く。会議室内の全員が彼の方を向いた。

「敵艦隊は全部で6個に分かれました。分断役だった航空攻撃部隊は6個の艦隊の内、第2防衛線の前に最も少ない100隻前後の2個艦隊を中心に攻撃を仕掛けて2個艦隊を破壊し、4個艦隊に損害を与えます」

彼はホワイトボードに6つの丸を書くと2つにバツ印を付けた。

「そして残った4個艦隊は第2防衛線で待機している艦隊で迎撃し、これらを壊滅させます。これならば前回の作戦よりも1個艦隊に対して当てることのできる戦力数が増えて撃破もしやすいでしょう」

彼は残った4つの丸に対して対応する第2防衛線部隊の名前を書いていた。そして丸に再びバツ印を付ける。

その作戦を聞いた全員が互いの顔を見合わせる。そんな中、アルファ国の参謀が手を挙げた後に話した。

「なるほど、とても良い案だと思います。これならば上手く行くでしょうね」

会議室にいた全員が納得する。これならば対応できると踏んだからである。

そして、この計画はしっかりと練られていくのであった。

 




いかがでしたでしょうか?

これからも頑張って投稿していきます。
もしよろしければ、評価やコメントの方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話

作者の滅茶苦茶太郎です。

今回の投稿でついにストックが尽きてしまいました。
もしかしたら更新が遅れる事態が起きるかもしれませんが、予めご了承ください。


グラ・バルカス海軍 第1艦隊 旗艦グレートアトラスター

 

「(先の攻撃で雷跡が見当たらなかったから断言はできないが、あの本に書かれている事が事実ならば百発百中の誘導魚雷で攻撃されたに違いないな……)」

カイザルは前の攻撃で生き残った生存者から目撃証言から情報を収集していた。そして、その事で彼は頭を抱えていた。

日本の雑誌に書かれていた情報では、雷跡を発生させずに目標に誘導させる事のできる魚雷が存在すると情報が書かれていた。その誘導魚雷に攻撃されたかについては、雷跡が見つからなかった以上は証明のしようが無いものの、損害の状況などを考えれば確実に誘導魚雷で攻撃を受けたのだろう。

「(もしも本に書かれている事が本当だとすれば、誘導弾という誘導兵器もあるのだろう。他にも超音速で飛ぶ戦闘機なども存在する可能性が高いな……)」

本国で欺瞞情報と判断されていた物が本物であった事にカイザルは軽いめまいを感じる。それはカイザル以外の情報を知る司令官たちも一緒であった。

「失礼します。カイザル司令長官に報告があります」

司令塔内に一人の若い士官が入って来る。その士官の姿を見たカイザルは彼の元に駆け寄り、彼の手元に耳を寄せた。

「第1、第2先遣隊と連絡が取れなくなっています。これに関しては本艦以外の艦艇も同様であります」

報告は小さな声であったものの、カイザルにとっては大きな衝撃であった。彼は自身が抱える不安を押し殺して士官の方に返事をする。

「磁気嵐やその類に襲われているかもしれんな。とりあえず君は下がってくれ」

「はっ、了解しました!それでは失礼します」

士官が去っていくのをカイザルは見送る。彼が居なくなった後、カイザルは思考の世界に入った。

「(第1、第2先遣隊と連絡が取れないという事は間違いなくやられたな……。恐らく次は本艦隊が狙われるに違いない!)」

200隻以上の軍艦で構成される先遣隊から連絡が取れらくなるという異常事態に彼は頭を抱える。それも片方だけではなく両方で起きている事から、敵の攻撃を受けて少なくない損害が出た事は確実だろう。

「(まずいな。引くべきなのは確実だろうが、このまま引くべきだろうか……)」

彼はこの艦隊をどう動かすかで彼は戸惑っていた。戦うのは日本と新国家連合というわれわれを上回る強大な相手だ。勝てるはずがない。

だがこのまま軍を引けば、自分の死刑は免れないだろう。だがそれよりも、死なせた多くの部下に対して申し訳ない上に、国家の威信に関わる。自分の命などカイザルにとっては、この二つと比べたら取るに足らない物であった。

頭を抱えたカイザルを不審がったラクスタルが尋ねる。

「どうしたのですか?」

「ああ、すまない」

カイザルの反応にラクスタルは更に不信感が増した。それに加えて他の士官たちもおかしな様子に気づいた。

「司令長官、本当に何もないのですか?」

少しばかり強い口調でラクスタルは再び尋ねた。その様子を見た士官たちは少しばかり騒然とする。

「ああ、本当に何もない」

その返答を聞いたラクスタルは自身の抱えている違和感に確信をもった。彼は意を決して、あやふやな対応をしたカイザルに対して強い口調で踏み込んだ。

「司令長官、本当の事を言ってください!私は艦長としてグレードアトラスターの全乗組員の命を預かっています。ですので本艦にも関わる重大な案件である場合は、司令長官であったとしても必ず私に報告してください!」

すさまじい剣幕で話すラクスタルにカイザルは軽くうろたえた。他の士官たちもその剣幕に驚きを隠せなかった。

ラクスタルが怒鳴った事によって司令塔内が静まり返る。少しばかり時間が経った後、カイザルは口を開いた。

「……わかった。ラクスタルよ。よく聞いてほしい」

カイザルの発言によって士官たちは驚愕の表情に変わった。一方のラクスタルは動じた様子を見せずにカイザルと目を合わせていた。

「今、我々が相手しているのは我が帝国よりも遥かに強い相手だ。そんな国に戦いを挑んでいるのだ」

司令塔内にいた全員が驚愕する。ラクスタルも少しばかり驚いていた。

カイザルの爆弾発言によって艦橋内は静かな驚きに満たされていた。だがカイザルは少しばかり時間を空けた後、再び話を始めるのであった。




いかがでしたでしょうか?

これからも頑張って投稿していこうと思います。
もしよろしければ感想や評価の方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話

作者の滅茶苦茶太郎です。

作者の事情により、投稿が非常に遅れてしまいました。
誠に申し訳ありません。
今後もこの調子になると思いますが、どうかご容赦ください。


いきなりの爆弾発言に全員があっけに取られている中、カイザルは話を続ける。

「まさかと思っただろう?だが事実なのだ。今まで我々の認識が間違っていたのだ」

「それは、どういうことですか?」

カイザルの発言の真意を量り損ねたラクスタルが尋ねる。他の士官たちも困ったような表情を浮かべ、互いに顔を見合わせていた。

「そのままだ。我々が相手にしている日本国や新国家連合という国の集まりは、我々より強いということだ」

ラクスタル以外の人物は理解が追いつけず話に置いていかれるが、かまわずラクスタルは話す。

「なぜそう言えるのですか?」

「君は前にフォーク海峡で日本の船と戦っただろう」

「はい。戦いました」

ラクスタルはフォーク海峡での海戦を思い出す。白と青色の目立つ船体をした船は対空戦闘能力は高かったものの、対艦戦闘能力は自国の駆逐艦よりも低いように感じていたのを思い出した。

「あれは、軍艦ではなかったんだ」

「……は?」

「あれは、わが国でいう沿岸警備隊の巡視船だったんだ。信じられないことにな」

流石のラクスタルもこれにはついていけず、口が開いたままだった。

一方のカイザルは資料にあった記載の事を思い出し、顔を歪めながら話し出す。

「複数の情報筋から得た情報だが、あの時は日本国は軍艦を派遣せず巡視船を派遣したのだ」

「どうしてなのですか?」

「わからない。だが、いずれにしても事実であろう。我が国の最新鋭の艦戦や艦爆を叩き落としたがな」

航空隊の損害の中でも一番の原因が自国における巡視船だったことを知った時、カイザルは苦笑いを隠せなかった。その時の事がふと脳裏に蘇り、カイザルは溜息を吐いた。

「そんな……。あれが軍艦じゃないなんて普通は信じられませんよ!?」

カイザルは興奮ぎみに話すラクスタルのまえに手を出し、一旦落ち着かせる。

「君は第52地方隊は知っているな」

「はい。死神のイシュタムの事ですね」

「そうだ。その内の一部の部隊が日本の艦隊にやられ、もう一方は日本により強化されたムーにやられたそうだ」

「なんとっ!?」

「ムーの方は損害を出したそうだが、日本の艦隊は無傷だそうだ」

ラクスタルは息を飲む。

「それで、本国で欺瞞情報とされ伝わらなかった情報があったが、それに書かれていた内容とイシュタムの生存者の証言、それに今回の攻撃の目撃者の証言が一致した。つまり、欺瞞ではなかった。

そして、その情報に書かれていた内容はいくら我が帝国が背伸びしても届かない領域の強さだったのだ。まあ、俺も当初は信じられなかったがな……」

「それは一体?」

ラクスタルの声が震える。空中戦艦と時すら感じなかった恐怖がこみ上げてきた。

「その内容は、我が帝国の戦艦の主砲を遥かに上回る距離から、百発百中の誘導ロケット弾が飛んでくるんだ、当たれば巡洋艦が一撃で大破するほどのものがだ」

ラクスタル以外の士官たちの顔が引きつる。彼らの常識を遥かに逸脱し、反則的な性能を持つ兵器に誰もが納得の行かない様子であった。

「それに加えて、イージス艦と言う軍艦が搭載する対空用の誘導ロケット弾は100km以上先の目標にも当たり、同時に12目標を撃破可能ときた」

流石のラクスタルもこれには顔色が悪くなる

「潜水艦対策もなされているから、まさに鉄壁だ。我が国の総戦力ともいえるこの艦隊も効かないだろう」

司令塔内が冷える。そんなことを知らなかっただけに彼の言葉はとても響く。

「そして、それは日本だけではないぞ、新国家連合もだ。国の規模によって大小あれど皆そんな感じだそうだ。しかも日本国を越える規模の国もあるとね」

全員の体が震える。そんな中、ラクスタルが声を絞り出すように話す。

「……そんな国に戦争を仕掛け、首都を焼き払うのですか?」

一生懸命に声をだしたラクスタルにカイザルは無感情な口調で付け足す。

「外務省の連中はそう言ってしまったそうだ。……それだけではない。君が助けた捕虜を外務省が勝手に処刑したんだ」

そのことを聞きラクスタルは眉を吊り上げる。

「……なんて事を」

必死に戦った勇敢な敵に敬意を持ち、帝国軍人としての誇りを持っていたラクスタルの中で怒りがこみ上げる。目星はついている。おそらく、シエリアの上司のゲスタだろう。少なくともゲスタの悪評は聞いたことがある。ダラスもこの世界の全住民を見下すようなタイプだからありえるが、おそらく地位的にもゲスタが1番あり得るだろう。ダラスもありえなくもないだろうが、地位的には少し考えにくい。

そんな中、カイザルは声を上げる

「相手は強い。だが、我々も黙って逃げることはできない。帝国の威信をかけて、少しでも妥協点を見つけるためにも敵に一矢報いなければならん」

そうは言ったが周りはお通夜状態である。それは、決して勝てるとは思わない相手に戦わなければならない重圧があったからであるのは、此処にいる全員が気づいているのであった。




いかがでしたでしょうか?

前書きでも書いたように作者の私事情により、更新が遅れるかもしれません。
その辺りについてはご了承ください。

また勝手ながらもコメントに対する返信等に関して、しばらくの間は休止させていただきます。
どうかご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話

作者の滅茶苦茶太郎です。

今回、普段よりも少ないです。(普段は1500文字程度を目安に書いている)
予めご了承ください。


アルタラス王国 ルバイル空軍基地

 

王都郊外に存在するルバイル空軍基地。かつてムーが連絡用を目的に作られ、先の戦いによって拡張された滑走路に多数の航空機が駐機していた。

そこにいる航空機は胴体上に円盤があったり、主翼の下にエンジンを吊り下げていたり、形状は多種多様だが任務は同じである。

「チェックリスト確認……。全て正常であることを確認しました。いつでも発信可能です」

「了解、指示があるまで待機せよ」

第302合同任務部隊の航空機たちは数分前にエンジンを始動させ、アイドリング状態にして滑走路上で待機していた。滑走路上は多種多様な航空機のエンジンから発せられた熱風により焼けるように熱く、雷の様な轟音が辺り一面が轟いていた。

蜃気楼によって滑走路の景色が歪んで見える。夏で無いにもかかわらず蜃気楼が発生し揺れ動く様子は滑走路で無ければ多くの人が不思議がるだろう。

その滑走路上に灰色や白色に青色などの航空機が並ぶ。全員のパイロットがまだかまだかと無線機に向かい合っていた時、無線機から声が聞こえた。

「こちら第302合同任務部隊隊長のアレキスだ。たった今、攻撃準備の合図が来た。全機、離陸せよ」

基地にいたすべての航空機の無線から指示が出る。喜ぶ者に苦い表情を顔に浮かべる者など、それを聞いたパイロットの反応は多種多様だが行動は皆同じだった。

まず最初に、青色の戦闘機が離陸した。航空自衛隊のF-2戦闘機である。遅れて、灰色のF-15Jとガンマ空軍のF-15E戦闘機が次々と離陸していく。

それに続き、航空自衛隊のBP-3Cとエー空軍のTu-16が空へと続き、最後にガンマ空軍のE-3早期警戒管制機が空へ上がっていく。

多数の航空機が空へと昇っていく様子は基地の兵士たち以外にも基地の外にいた住民たちも目撃していた。太陽の光を閃かせ、轟音と共に去っていく様子は多くの住民たちにとって力強い印象を与え、実力を知る多くの住民たちは日本と新国家連合の勝利を確信するのであった。

 

航空自衛隊

F-2戦闘機 18機

F-15J戦闘機 18機

 

海上自衛隊

BP-3C哨戒機 40機

 

ガンマ空軍

F-15E戦闘機 54機

E-3早期警戒管制機 2機

 

イプシロン空軍

Tu-16戦術爆撃機 36機

 

合計 168機

 

168機にもなる航空機は事前のブリーフィングに沿って空中で陣形を組み上げていく。

少しばかり手間取ったりはしたものの、順調に複数の編隊が組み立て上げられていく様子は彼らの高い練度を表しているだろう。

大きく7組の編隊に分かれた航空機たちは戦うために第2防衛線へと向かって行くのであった。




いかがでしたでしょうか?

もうしばらくはこのペースになると思います。
どうかご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話

作者の滅茶苦茶太郎です。

頑張って加筆作業を行っていますが、少しばかり詰まっています。
ですが少しばかりペースを上げて従来通りのペースで投稿できるように頑張っていきたいと思います。


グラ・バルカス海軍 連合艦隊 第1艦隊 旗艦グレートアトラスター

 

グレートアトラスターの司令塔内の無線機がいきなり音が流れる。誰もが驚き、その内容を聞いてさらに驚く事となった。 

「こちら、第303合同任務部隊、アルファ海軍第1空母打撃群、艦隊司令のエーミールだ」

司令塔内の人員は、いきなり敵から無線に割り込んできたことに驚くが、同時にどうやって自分たちが使っている無線の周波数を割り出したのか疑問を持つ。

だが疑問を解決するよりも先に無線機からの声に思考は強制的に中断された。

「貴艦隊に告ぐ。即刻撤退せよ、さもなくば攻撃を行う」

抑揚の少ない声からの警告に司令塔内にいた全員が強い恐怖を覚えた。通常ならば戦闘前であるにも関わらず警告を入れてくる事に嘲笑する者が現れてもおかしくはないだろう。しかし、今までの攻撃を覚えている彼らの中には誰一人、嘲笑する者は居なかった。

少しばかり遅れて、我に返ったカイザルは素早く無線機に返答する。

「こちらグラ・バルカス海軍、連合艦隊司令のカイザルだ。何のつもりだ?」

少しばかり挑発的な口調で返事をしたが、相手の方は変わらず抑揚の少ない声で返答をした。

「簡単だ、早く撤退したまえということだ」

その返答にカイザルの周りにいる参謀たちの顔が暗い。だがカイザルはそれらを気にすることなく、強くはっきりと答える。

「断る」

「やめとけ、ただただ味方に死者を出すだけになる。君たちは知らないだろうが、貴国と我々の国たちの間には比べ物にならない程の差がある」

カイザルは思った。相手は事実を言っているだけだが、恐らく我々が相手の実力を知らない事を前提に話しているのだろう。

カイザルは周囲を見回す。多くの士官たちが見守る中、意を決したカイザルはゆっくりと口を開く。

「ああ、知っている。だがそれでも引くつもりは無い」

無線機の先から少しばかりのため息が聞こえた。双方ともに長い無言の後、再び今までと同じような声で尋ね返してきた。

「もう一度繰り返す、即刻撤退しろ。さもなくば攻撃する。手加減はしないし、必ず後悔することになるぞ?」

「断る」

カイザルはすぐに即答した。その返事を受けた相手は残念そうな口調でつぶやいた。

「そうか……」

そう言い残すとついに無線が切れた。司令塔内が静粛に包まれるが、すぐにカイザルは指示を出す。

「無線の発進元の方角はわかったか!?」

「はい、わかっています」

「よし、空母に発信元に攻撃隊を送るように伝令しろ!急げ!」

カイザルの命令によって、慌てて無線手は無線を取り指示を出す。カイザルはその無線手から呆然としていた士官たちの方に向く。

「お前たちも早く戦闘配置につくように指示を出せ!敵は待ってくれんぞ!」

「はっ!」

呆然としていた士官らに指示を出すとカイザルはラクスタルに向きこう言った。

「すまないが、俺の最後のわがままに付き合ってくれラクスタル」

「わかりました。部下には申し訳ないですが、司令長官の命令とあれば従うつもりです」

ラクスタルは帽子を目深にかぶりから話す。その行動は表情に出てこようとしている後悔と罪悪感を隠そうとしているしているようであった。

もし、このまま進めば敵は容赦なく攻撃してくるのは確実である。そうなれば自分や部下たちの命が危なくなるだろう。だがしかし、カイザルの苦しい立場を理解した彼は反対せずカイザルの決定をそのまま通す事にした。

「(ラクスタルよ、私を信じてくれた多くの兵士たちよ。……本当に申し訳ない、私は指揮官として失格だ。この責任は必ず償おう)」

カイザルは言葉には出さなかったが、内心ではラクスタルとその他の大勢の水兵たちに深く謝罪する。

かくして様々な感情が渦巻く司令塔内では最後の戦いに備えて準備を進めていくのであった。




いかがでしたでしょうか?

ここまで殆ど日本の出番が無いですが、もう少しばかりすれば出てきます。
ただし出番は少なくなりそうなので、予めご了承ください。
(出来る限り活躍する場面を増やせるようには頑張っていきたいと思います)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話

作者の滅茶苦茶太郎です。

短いながらも、初の日本登場です。
もうしばらくは空気状態ですが、本格的な活躍までもう少しばかりお待ちください。


第303合同任務部隊 アルファ海軍 第1空母打撃群 旗艦DDG-155

 

「断ってきたか……。恨まないでくれよ」

エーミールは抑揚の少ない声でそう言うと、データリンク装置を介して第302合同任務部隊へと交渉が決裂したと情報を送る。それは攻撃を行えと言う合図でもあった。

「(わかってはいたがやっぱり無理だったか。……まあ、しょうがないな)」

エーミールは黙って考える。おそらくは敵の司令官も本当は撤退したくてしょうがないだろうと彼は予想を立てていた。

しかし大艦隊を率いて損害を出した一方で、何の成果も出せず引くという事は国家の威信に関わる問題であるために引けないと予測していた。あるいは死んだ仲間に顔向けできないというコンコルド効果の様なものが作用している可能性もあるだろう。

「司令、よろしいですか?」

部下からの声にエーミールは現実に戻される。彼は部下へと視線を移した。

「司令、敵の航空戦力が来ます。準備を」

レーダー画面に多数の機影が映る。その数は少しづつ増えていき、こちらへだんだんと近づいていくのが見えた。

「わかった。戦闘機を直ちに発艦せよ」

第1空母打撃群にある空母CV-10から、18機のF/A-18戦闘機が上がってくる。晴れ渡る空に登った6機のF/A-18戦闘機が艦隊の上空に待機すると、残りの12機はグラ・バルカス海軍第1艦隊へと向かって行った。

 

・・・・・・・・・・

 

第302合同任務部隊 アルファ部隊

 

レーダーに映らないようにするために低空を4機づつのF-2とF-15Jの編隊が飛んでいた。両方ともフィンガー・フォーの編隊を組んでいる。

「司令機から攻撃を行う信号が来た。全員、攻撃の準備をせよ」

隊長機のパイロットが告げる。皆、無言のままだったがすぐに発射の準備を行う。

「ECM作動準備……作動しました。これで上昇しても大丈夫です」

「よし、全機上昇せよ」

ECMを作動させた後、全機がASM-2対艦ミサイルを発射するために一旦上昇する。F-2の機首のレーダーが目標を捕捉した後、F-2の隊長機に無線が入った。

「目標捕捉、いつでも撃てます」

「了解、指示があるまで待機せよ」

無線が切れ、機内はエンジンの騒音のみに包まれる。隊長機のパイロットは小さく息を吐いて気を落ち着かせた後、命令を下した。

「全機、攻撃始め!」

隊長機の命令に少し遅れて青色の迷彩柄の翼に吊り下げられていたミサイルが切り離され、慣性の法則に基づいて青い空を滑空する。だがその時間は1秒足らずに変化した。

青色の空に4本の白煙が線を描いて飛んでいく。それは1度だけでなく4度にわたって発生する。いずれもF-2から発射されたASM-2によって生じたものであった。

「全機、発射完了」

「了解。全機、高度を上げたまま旋回して待機せよ」

F-2から4回に分けてASM-2の一斉発射が行われる。合計16発この一撃は艦隊全体を狙うものとしては弱いが、真の目標は空母の撃破とかく乱であるため問題というわけではない。

同じようにブラボー部隊とチャーリー部隊とデルタ部隊でも同じ用に攻撃をおこなっていたがエコー部隊とフォックストロット部隊は若干異なっていた。

 

・・・・・・・・・・

 

第302合同任務部隊 エコー部隊

 

エコー部隊は18機づつのTu-16戦術爆撃機とF-15E戦闘機が編隊を組んでいた。この部隊はアルファ部隊と違い、全員の心中は穏やかな状況では無かった。

「敵機が上がってきているな……」

F-15Eの編隊長が呟く。彼の目の前にあるレーダーには多数の戦闘機の機影が映っていた。

「予定通りではありますが、あまり心地の良い物ではありませんね。戦闘機隊から何機かを先行させて撃墜しましょう」

後部座席にいた兵装システム士官が編隊長に提案する。編隊長は彼の意見を聞いて決意する。

「そうだな。早めに排除した方が気が楽になるからな」

編隊長はキャノピーから周囲を見回し、どの機体を先行させるかを決める。彼は適当な6機を決めると、命令を下した。

「戦闘機隊の内の6機は直掩機を撃ち落とす為に先に先行せよ。先行する部隊は第3小隊の全機と第4小隊のゲランとカルメットだ。発射のタイミングはゲランに任せる。いいな?」

「了解!」

そう言うと18機の中から6機のF-15Eが抜け出し、敵の直掩機へと近づいていく。数分ほどした後、先行していった6機のF-15E戦闘機がAIM-120空対空ミサイルを放つ。

F-15Eから放たれた12発のミサイルは、すでに上がっていた12機の直掩機を避ける暇も与えず全機を撃墜する。敵のパイロットは自身の身に何が起きたかを理解する前に即死しただろう。

「おい!アンタレスが撃墜されたぞ!」

「本当だ!クソッ、敵はどこにいるんだ!?」

甲板上に居た水兵達が空を見上げながら叫ぶ。彼らもいきなり全ての直掩機が撃墜されたことに驚き、同時に理解が出来ずにいた。

撃墜された機体の内の一部は空中で完全に破壊されず火達磨になって落ちていく。その光景は、まるで昼間に火球が落ちてくる様であった。

彼らの常識を超えた事態に多くのグラ・バルカス帝国の将兵たちは衝撃を受ける。しかし、これはまだ地獄の始まりにすぎなかった。




いかがでしたでしょうか?

次回からコメント返しを再開させていただきたいと思います。
ただし、次回の投稿までに来たコメントに関してはコメント返しはしないつもりですので、予めご了承ください。

誤字報告を行ってくださりました、
オンギョウキ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話

作者の滅茶苦茶太郎です。

かなり更新が遅れてしまい申し訳ありません。
身の回りで色々なことがあり、執筆が遅れてしまいました。


グラ・バルカス海軍 連合艦隊 第6艦隊

 

「畜生!どうなってやがるんだ!」

空を見合上げていたある空母の艦長が叫ぶ。青い空には黒い雲が浮いており、それがパイロットたちの墓標となっていた。

各空母から直掩機が上がるとすぐに謎の攻撃で撃ち落とされる。もちろんF-15Eが放ったミサイルが命中しているだけに過ぎないが、ミサイルの事を知らない彼らにとっては不可解かつ恐怖でしかなかった。

「司令、パイロットたちが出撃を拒否しています!どうしますか?」

「ううむ、しょうがない。……出撃を中止せよ」

戦艦エンケラドゥスの司令塔内に衝撃が走る。その報告を受けた艦隊司令官は今までの報告から出撃を中止する事を決定した。

継続的に続く謎の攻撃によって、ついにはパイロットが出撃をためらうようになっていた。本来ならばあってはならないが、敵の姿も見えない中で一方的に攻撃され無駄な被害の一つにはなりたくなかったのだ。

「航空攻撃は不可能か……。こうなれば艦隊決戦で決着をつけるしかないな。全艦、針路を維持したままにせよ」

「了解、全艦に通達します」

謎の攻撃によって航空機による攻撃が完封された状況下の今、第6艦隊に敵の艦隊を攻撃するには艦隊決戦以外の選択肢は残されていなかった。本来ならば過去の物となっていた艦隊決戦で決着をつける事に若干の不安があったものの、他に選択肢が無い以上は仕方ないだろう。

命令を下した艦隊司令官は椅子に座り腕を組む。彼はどう敵と艦隊決戦を始めるかばかりを考えていた為に致命的な失敗を犯す事となった。

 

 

紺碧の海上に複数のミサイルが低空飛行していた。音よりも少しばかり遅い速度で飛翔するそれはグラ・バルカス帝国製のレーダーに捕捉されることなく艦隊の方へと接近していく。

だが、そのミサイルの接近に気づいた見張り員はいなかった。なぜならば多くの見張り員が直掩機が撃墜された高空に意識が向いており、低空から接近しているミサイルに気づかなかったのだ。

やがてミサイルと軍艦との距離がほんの少しになった時に何人かの見張り員がミサイルの存在に気がづいた。しかし彼らがミサイルに気づいて報告を上げる頃にはもうすでにミサイルは急降下して軍艦へと突入しているのであった。

耳をつんざくような轟音と共にいくつもの軍艦が次々と爆発していく。爆発によって生じた爆風は船体を引き裂き、炎は乗組員たちを飲み込んで焼き尽くしていく。

彼らにとって唐突に発生した事態に多くの水兵たちが混乱する。急な事態に対処できず複数の軍艦が爆発を続けたが、攻撃が一旦止んでいる間に彼らは低空から飛んでくるミサイルを見つけて迎撃を開始した。

「艦長、10時の方角の低空から複数の飛翔体が接近中!」

「いかん、直ちに迎撃せよ!」

戦艦エンケラドゥスは艦長の命令に従い甲板上に設置されている多数の対空砲座が発砲する。射撃管制用レーダーがミサイルを捕捉できなかったために手動で照準を合わせて発砲するものの、彼らの常識を超えた高速で飛んでいるミサイルには一切命中しない。

エンケラドゥスの艦橋から多数の曳光弾が多数打ち上げられる光景と多数の船が燃える光景が見える。対空砲火をくぐり抜けたミサイルは次々にターゲットとして設定された軍艦へと命中していく。

「再び10時の方角の低空から飛翔体が接近中!こちらにも来ます!」

艦橋内が凍り付く。一瞬で駆逐艦を撃沈するほどの高威力な攻撃が自分たちの方向へと向かってきていることに全員が恐怖のどん底に落とされた。

「面舵一杯、最大戦速!対空砲は何としても撃ち落とせ!」

エンケラドゥスの艦長か叫ぶ。たとえ一撃でも命中すれば甚大な被害が出るだろう。

航海長が操舵輪を右に大きく回したために船が大きく右に傾く。少しでも当たる可能性を下げるために舵を切ったが、攻撃を避けることはできなかった。

「飛翔体2発が命中します」

「まずい、総員衝撃に備えろ!」

とても大きな振動がエンケラドゥスを2回ほど揺らす。巨大な戦艦の甲板上は爆発に包まれて多数の対空砲座が破壊されていく。

「被弾しました!」

「畜生!当たったか!」

艦長は歯を食いしばる。そんな中、あることに気づいた副長が叫んだ。

「艦長、右舷に駆逐艦がいます!このままでは衝突してしまいます!」

全員が驚いて右舷に視線を向ける。そこには攻撃を回避しようと左に舵を切った1隻の駆逐艦が居るのが見えた。それに気づいた全員が顔を青くする。

「しまった!速度落とせ、取り舵一杯!」

艦長が避けるように指示を出す。その命令に従い航海長が今度は左に大きく舵を切り、機関長は速度を最大まで下げようとする。

しかし巨大な質量を持つエンケラドゥスはすぐには動かなかった。慣性にしたがってエンケラドゥスは殆ど減速せず真っすぐ進み続け、エンケラドゥスに気づいて回避行動をとろうとしている駆逐艦の元へと進み続ける。

「面舵一杯!エンケラドゥスを避けろ!」

「うああああ!来るぞおおおお!」

駆逐艦の艦橋内は迫りくるエンケラドゥスに全員が戦慄する。誰もが一刻も早く船が旋回してくれることを望んでいたが、彼らの期待とは裏腹にゆっくりとしか動かない。やがて駆逐艦と戦艦が衝突することが確実な状況になる。

「艦長、エンケラドゥスと衝突します!」

「クソッ、甲板上にいる乗組員は船内に避難しろ!総員衝撃に備えろ!」

灰色の巨大な壁のような戦艦との衝突が不可能になったことに艦内は悲鳴が上がる。やがて駆逐艦は戦艦の進路上に飛び出してしまった。

そして遂に二隻は互いに衝突した。

「うあああああ!!!」

金属が軋む音とともに駆逐艦は大きく揺れる。彼らが経験したどんな台風をも超える巨大な揺れに全員が転倒し、運悪くエンケラドゥスの艦首と衝突した区画にいた乗組員は圧倒的な質量に悲鳴を上げる間もなく押しつぶされていく。

一方のエンケラドゥスの方にも先ほどの攻撃を受けたときよりも強い衝撃が加わった。エンケラドゥスは駆逐艦の横腹にぶち当たり、剣のような垂直な艦首は駆逐艦を一瞬で真っ二つに切り裂く。

「あっ……」

駆逐艦を二つに切断した次の瞬間、駆逐艦が大爆発した。甲板上に設置された魚雷が原因で起きた爆発はエンケラドゥスの艦首を完全に破壊し、艦橋の窓ガラスを木っ端みじんに粉砕した。

「うがあああぁぁ!目があああぁぁ!」

運悪く窓ガラスを顔面に浴びた誰かの悲鳴が艦橋内に響く。地獄からの断末魔のような叫びに全員が顔をしかめている中、艦長は心の中で謝罪した。

「(すまない……。私が間違った指示を出さなければこうならなかっただろう……)」

衝突した駆逐艦の全乗組員に謝罪を済ませた直後、再び爆発が起きる。今度は破断した船体から流れ込んだ海水がボイラーと接触したことによって起こった水蒸気爆発であった。

「うおおおおっ!?」

完全な不意打ちとなった一撃に全員が悲鳴を上げる。更にそれに追い打ちをかけるような攻撃が彼らへと襲い掛かろうとした。

「飛翔体来ます!」

「なんだと!?」

混乱している艦隊に次々にミサイルが降り注いで軍艦を沈めていく。それはエンケラドゥスも同様であり、複数のミサイルが急降下して命中していく。

度重なる轟音。やがてエンケラドゥスの甲板上は火の海と化し、衝突後の爆発の際に発生した船体の巨大な破孔から海水が流入してくる。やがて度重なる攻撃にさらされたエンケラドゥスは多数の乗組員と共に海へと沈んでいった。




いかがでしたでしょうか?

遅れてしまった分、少し多めに書きましたがいかがでしたでしょうか?
それとですが、これからコメント返しを再開していきたいと思います。

誤字報告を行ってくださりました
オンギョウキ 様
この場を借りてお礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。