最近【剣姫】さんの様子がおかしいってよ (アカヤシ)
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プロローグ的なヤツ
第一話 まるで別人?


本名、アイズ・ヴァレンシュタイン。【ロキ・ファミリア】の中核を担う女剣士。

 

剣の腕前は間違いなく冒険者の中でもトップクラス。たった一人でLv.5相当のモンスターの大群を殲滅したこともあり、冒険者の間でついた、もう一つの渾名が【剣姫】をもじった【戦姫】。

 

神様達の間でもその名は知れ渡っており、『アイズたん無双』とまで称賛されている。

 

下心を持って近寄ってくる異性は軒並み玉砕、あるいは粉砕。

 

女神と見紛う容姿に異種族間の女性の中でも最強の一角と謳われる強さ、話題が尽きない冒険者。

 

そんな彼女の最近おかしいらしい。

 

それはいつからだろうか?

 

兆候が現れたのは二週間前の『遠征』だと、ロキ・ファミリアの団員(自称アイズさんマイスター)が語る。

 

迷宮都市オラリオの地中に存在する広大無辺の地下迷宮。モンスターが際限なく湧き出る深大な地の底に、日々多くの冒険者がダンジョンへと足を踏み入れている。神々もまた自派閥の勢力拡大・増強のため、多くが探索系の【ファミリア】を営み、迷宮の探索・攻略に乗り出していた。

 

【ロキ・ファミリア】もダンジョンの遥か深部まで潜り、長期間かけて未到達階層を目指していたが異常事態に遭遇後、攻略を諦め、地上への帰還している時だった。

 

 

彼女が突然、余所余所しくなった。

 

(例)仲間をミドルネームで呼ぶ

レフィーヤ→ウィリディスさん

ティオネ→ヒリュテさん

ティオナ→妹さん

リヴェリア→副団長

フィン→団長

ベートさん→屑野郎

 

帰還時、遠征の帰り道というもあって、団員、特に荷物を運搬するサポーター役の下っ端等の疲労は色濃く。

 

「アルシェさん、手伝いましょうか?」

 

「・・・えっ?あ、だ、大丈夫です!?」

 

ヒューマンの少女にアイズが声をかけると、滅相もないと勢いよく断られた。第一級冒険者に荷物持ちなど任せられない、という意識が見て取れた。

 

「止めろっての、アイズ。雑魚に構うな」

 

その様子を見ていた獣人、狼人のベートが声を挟んだ。彼は追い払うようにサポーターの団員を軽く蹴りつけアイズと向き直った。

 

「それだけ強えのに、まだわかってねえのか、お前は。弱ぇ奴等にかかずらうだけ時間の無駄だ、間違っても手なんて貸すんじゃねー」

 

「・・・・・・・」

 

「精々見下してろ。強いお前は、お前のままでいいんだよ」

 

鼻を鳴らしながら口を吊り上げるベートに、

 

「・・・・・・チッ!!!」

 

アイズはゴミを見るような冷たい目で盛大な舌打ちをした。

 

「・・・・・・は?」

 

唖然とするベートに言い放った。

 

「気安く名前で呼ばないでください。セクハラで訴えますよ屑野郎」

 

(例)女性からのスキンシップ等を避ける。

抱きつこうとするティオナやロキを察知してやめさせる

入浴時は必ず一人で浴室利用

 

 

彼女が帰還後突然、装備と戦闘スタイルを変えた。

 

(例)装備・戦闘スタイル

細剣→長剣

騎士盾を装備

軽鎧→騎士鎧

俊敏値と器用値を生かした正確さと手数→力値と耐久値に頼った一撃必殺

アイズのせっかくの高い俊敏値を捨てた戦法。足を止めて盾で敵の攻撃を防ぎ、流し、弾き、必殺の一撃を叩き込むを、モンスターの代表格にも数えられる牛頭人体のミノタウロスに武器を持たせて色々と試していた。

 

「レイピアより断然コッチの方が好みですね。時代はやはりパリィです」

 

 

彼女は帰還後、服装が趣向が変わった。

 

(例)普段着

大きく背中が開かれた薄手の乳房に伸びる脇の線までかけて瑞々しい肌が丸見えの服→白衣、黒のスーツに革手袋、女性物ではなく男性物の服を着始めた。

 

「スカートはスースーして落ち着きませんね。下着も全て買い替えましょう・・・恥ずかしいです」

 

 

そして、遠征帰還二週間後・・・大事件勃発!!!

 

【ロキ・ファミリア】の本拠地『黄昏の館』にある食堂で多くの団員が食事をする中、遅れてきたアイズの姿を見た人間は例外なく度肝を抜かれた。

 

アイズの美しい金色の長髪が肩ほどまでバッサリと切られていた。

 

彼女が来るまでは【ロキ・ファミリア】の主神ロキがいたため、いつも以上に騒がしかった食堂が、時が止まってしまったかのように静寂が拡がる。この空間を生み出したアイズ・ヴァレンシュタインは気にも止めず主神ロキへ爆弾を放り込んだ。

 

「Lv.1からやり直したいので全経験値を破棄したいのですができますか?」

 

「アイズたん・・・今なんて言うた?」

 

「発展アビリティ、魔法やスキルが選び直し等ができないなら初めからやり直したいのでLv.1にしてください」

 

アイズ・ヴァレンシュタインは大勢の団員がいる中で言い放ったのだ・・・お前達との冒険は、歩んできたこれまでの人生が全くの無駄だったと、言われているような気がした(自称アイズさんマイスター)。

 

しかし、この自称アイズさんマイスター含め団員は全員が勘違いしていた。

 

この『男』はそんな事、微塵も思っていないのだから。

 




この話はアイズに憑依した『男』の物語。
『男』は原作知らず。
『兎』はいるが、ミノタウロス救出イベントはなし(17階層ミノタウロス逃亡イベントなし)。
『男』は女性に憑依した事を不服に思ってる。
『男』が髪を切った理由は過去との決別。
(変化)
スピード型→パワー型
金づち→マーメイド
精神幼女→精神大人
酒乱→酒呑童子
天然→捻くれ
コミュ症→普通?
復讐→挑戦
喫煙者・博徒・基本誰に対しても、とりあえず敬語で気に入らない人は空気扱いか舌打ち・男である事を諦めていない、

酒呑童子は酒好きやヤマタノオロチの息子説からいずれ手にするスキルのための伏線的な感じで書いただけなんで今は酒好きになった程度のレベルで読んでください。

今はプロローグ的な感じで他人視点しか書いてないが本人視点の本編で諸々説明する・・・かな?


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第二話 剣姫豹変から半年経過

【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの豹変から約半年が経過した。

 

最近の【ロキ・ファミリア】の内部の雰囲気は最悪でありギスギスしており殺伐とした空気が漂っている。

 

【ロキ・ファミリア】の本拠地『黄昏の館』の食堂での朝食時、半年前は和気藹々であった空間は今では見渡せば、イライラ顔、疲れ顔があちらこちらに見える。

 

先日のアイズ・ヴァレンシュタインの『Lv3』へのランクアップの報で更に酷くなり、アイズに憧憬の念を抱いていたレフィーヤは生気のない、魂が抜けたような顔で座っていた。

 

無理もない、彼女の現在のランクはLv3…冒険者歴3年。たった半年で追いつかれたのだ。彼女はまだいい、抜かれた者は堪ったもんじゃない。

 

焦りからかLv1・2の団員から無茶をする者が増えて、死者は出ていないものの重傷を負い冒険者を引退せざるをえない者が少なからず出ていた。

 

原因の一端でもあるアイズ・ヴァレンシュタインの姿は食堂にはない。

 

彼女の朝は早く、3:00頃には起床して4:00頃にはダンジョンに向かってしまう。

 

昼頃に一度地上に戻ってきて昼食と教会で天界にいる神様にお祈りを捧げてから再びダンジョンに向かう。

 

一度主神ロキが『アイズたんの神はウチなんやからウチに祈ったらええや~ん』と言ったら鼻で笑われたそうだ。

 

『下界に降りてきた零能の神様って…有難味薄れますよねwww。それに裏切り者の代名詞にもなってるロキにですか?閉ざす者、終わらせる者、邪悪な気質で気が変わりやすい、狡滑さでは誰にも引けを取らず、よく嘘をつく…そんな神様に何を祈れと?今から誰か陥れるんでうまくいきますようにって祈れと?裏切りの予定皆無なんで結構です。己の過去と向き合ってから出直してください。はい、ごめんなさい』と。

 

18:00にはダンジョン探索を切り上げ、本拠地に戻り、私服に着替えて夜の街へ繰り出す。

 

下戸であったはずのアイズがお酒を愉しむようになった。

 

一度主神ロキが『アイズたん!アイズたん!お酒飲むならウチと一緒に飲も!』と誘ったらハッキリ断られた。

 

『私は一人で静かに飲みたい派なんで。酒に飲まれる人って嫌いなんですよね。ロキの飲み方は汚いんで一緒にはちょっと…あと酔った勢いでセクハラされそうで正直、嫌です、ごめんなさい。さっきからチラチラ見てくるカタパルト(ベート・ローガ)さんも、ごめんなさい』と。

 

*なぜベートがアイズに【射出機(カタパルト)】と呼ばれているかは本編(主人公視点)スタート時にわかる。

 

23:00に帰宅し、0:00までに就寝。3:00に起床が月曜~金曜日までの彼女の日常である。あと土日はスキル習得のために費やしているらしい。アイズは土日外泊するので・・・この半年、【ロキ・ファミリア】団員との交流はほとんどと言っていいほどない。

 

アイズ・ヴァレンシュタイン 元Lv5【剣姫】、半年経過 現Lv3【狂姫】

 

白銀の鎧を身に纏い、Lv3になり長剣と盾から『特大剣と大剣の二刀流』に切り替え、『風と炎と雷と光の4種』の魔法を操り、『漆黒の翼』で飛翔し戦場を舞う少女。

 

その姿…その強さ…その美しさ…は、Lv5だった【剣姫】になんら遜色ない姿だった。

 

彼女はLv1の一時期、『一定以上の装備過重時における能力補正スキル』の習得の為に『サポーター』をやっていた時を除き、基本はソロ。Lv3になり次の遠征を視野に、アイズを同行させるか決めるため久しぶりにフィン、リヴェリア、ティオネ、ティオナ、ベート、レフィーヤ、アイズでダンジョンへ行ったのだが。

 

6人はアイズの新たな姿を見せられ…いや、見せつけられたように思えた。

 

『貴方達がちんたらしてる間に私ここまで強くなれましたけどwww。この調子なら1~2年もしないうちに余裕で追いつき…いえ、追い越しそうですねwww』

 

と6人がドヤ顔のアイズを想像してしまうほどに。

 

 




【狂姫】の理由はLv.1の頃、【イシュタル・ファミリア】のフリュネが率いる女戦士(アマゾネス)の集団にダンジョン内で襲撃され半殺しにされた。報告を受けて【ロキ・ファミリア】の団員が現場に駆け付ける。アマゾネス達は【ロキ・ファミリア】の接近に気付いて慌てて逃げ出した後だった。残されていたのは武器は破壊され鎧は剥ぎ取られ、全身痣だらけ、骨を折られ、全裸にされ手足を鎖で縛られ放置されており、呼吸が止まっていた無残な姿のアイズだった。

性的な暴行は受けていないようだったが・・・もし駆けつけるのが遅ければされていたかもしれない。ロキの危惧していた事が現実になった。もしかしたら今回の一件でアイズの心は折れてしまったかと。

しかし、やられた本人は何もなかったかのように目覚めてすぐロキの所へステータス更新する為と治療費を持ってきた。

そして目覚めた日の夜に【イシュタル・ファミリア】の本拠地へアイズは単身で乗り込んだ。

フリュネに一対一の決闘を申し込むが、申し出を受ける気がなく大勢で囲んでリンチにしようとするフリュネに条件を叩き付けた。

『負けたら・・・絶対服従、お前の奴隷になる。死ねと命令すれば介錯無しで腹を切って死んでやる。気に入らないヤツがいるなら殺してきてやる。男に抱かれてこいと言うならその辺の男共に抱かれてやるよ・・・ただし、私が勝ったら、お前を絶対に殺す。お前はLv.1に負けたLv.5と未来永劫語り継がれて逝け』

結果、アイズはフリュネに勝利した。

決闘後に逃がさないと【イシュタル・ファミリア】の女戦士達に囲まれるが、何故か【フレイヤ・ファミリア】が介入して助かった。気を失い、地面に倒れそうになるアイズをドレスを汚すのを躊躇わず抱き止める女神フレイヤの顔は・・・恍惚な笑みを浮かべていた。

フリュネ決闘時、【アイズ装備】

二刀流短剣、全裸にボロボロの灰色のマントを羽織っただけの姿。現れた時点で身体は既にボロボロ、全身傷だらけで血塗れの状態だった。

※全裸だったのも傷だらけであったのも『スキル発動条件を満たす』ためです。けしてマゾや露出に目覚めたわけではありません!

『さあ、続きを始めましょう』

『あれが、【剣姫】、元Lv.5の女剣士・・・アイズ・ヴァレンシュタイン!!!』

アイズ・ヴァレンシュタインの新たな伝説の始まりの目撃者の中に・・・白兎の姿が。

【ベル・クラネル】
この時点では【ヘスティア・ファミリア】に入っていません。受け入れてくれるファミリアが見つからず、【イシュタル・ファミリア】の本拠地である歓楽街の酒場でアルバイトをしていた。
心の中ではどこかで冒険者を諦めかけていた・・・だが、見てしまった。Lv.1がLv.5を破るジャイアントキリング。大岩も砕いてしまいそうな大斧にみすぼらしい短剣で挑むその姿に白兎の消えかけていた火が燃え上がる。

※今作品では本作のダンまちイベント時期は、ズレています。


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第三話 美の神様の様子がおかしいってよ

「見つけた・・・私の伴侶(オーズ)になるべき者」

 

この下界でも『伴侶(オーズ)』とは出会えないのかと諦めかけていた時に・・・その『男』を見つけ出したのは。

 

その魂は荘厳な輝きを放ち、余りにも巨大でオラリオを覆ってしまえるほど大きかった。これほどの魂はオラリオで目にしたことがない。

 

無理矢理で例えるなら金碧珠(きんぺきしゅ)。青の中に金を隠し青緑色の海から金色の太陽が昇る様子を一色で表現した色で、二色が引き立て合うことで目の覚めるような鮮やかさが圧巻であった。

 

腰まで真っ直ぐ伸びる金髪、蒼色の軽装に包まれた細身の体、種族はヒューマン・・・【剣姫】!?ロキの眷族!?

 

あの子供の魂は視た事はある。目も眩むような鮮烈な光を放つ金色の輝きだったはず。それに女性であるはずの【剣姫】が『男』としか見れないのは何故?

 

『欲しい』

 

しかし、そんな些細な疑問など一瞬で消し飛ばしてしまう。全身がぞくぞくと打ち震え、下腹部は疼き、恍惚の吐息が喉から溢れ出してくる。彼を自分のモノにしたいと、醜くも子供のような望みがもたげた。

 

それは純粋な女神としての欲望。『未知』を前にした神の興味がつきることはない。

 

まず眷族達に【剣姫】を徹底的に調べさせよう。他神であり、ロキのお気に入りの眷族・・・必ず奪い合いになるはず。

 

アイズ・ヴァレンシュタイン 種族ヒューマン

 

未到達階層の開拓、遠征の失敗を機に経験値(エクセリア)を破棄。初期値からのやり直しで半年でLv.3に返り咲く。Lv.3へ昇華して僅か二週間でLv.4間近という噂が流れている。

 

細剣がメイン武器だったはずだが、破棄後Lv.1~2までは軽装に長剣と盾、Lv.3からは全身型鎧に特大剣と大剣を装備した二刀流スタイル。オッタルがダンジョンで観察した際には、以前の【剣姫】はモンスターを殺すためだけに特化した技。現在の【狂姫】はどちらかと言えば、対人戦に特化した技に変わっていたらしい。

 

趣味嗜好も変わっており、腰まで真っ直ぐ伸びる金髪を肩ほどまでバッサリと切り、服装も大きく背中が開かれた薄手の乳房に伸びる脇の線までかけて瑞々しい肌が丸見えの服を着ていたが、白衣、黒のスーツに革手袋、女性物ではなく男性物の服を着始めた。

 

冒険者稼業だけでなく、オラリオを統べる管理機関ギルドで事務、受付嬢、アドバイザーや【ディアンケヒト・ファミリア】治療師(ヒーラー)、アミッド・テアサナーレの助手や教育機関『学区』の非常勤講師や教会で聖職者や他にも様々な職に就いている。

 

本人いわく『スキルと魔法の習得と効果の底上げの為』らしいが詳細は不明。

 

アイズ・ヴァレンシュタインは夜の酒場や大賭博場でよく目撃されたりもする。

 

ゆっくりゆっくり知っていけばいい。そして距離を埋めていけばいい・・・と思っていたのだけど!半年、半年!!全く距離が埋めれてないわ!もう我慢の限界!耐えきれずちょっかいを出した事も偶然を装って接触しようとしても全く認識してもらえなかった。格上のはずのモンスターをぶつけても一蹴するし、そもそもオラリオでも『彼』と接触できずにいる。ダンジョンや仕事中は論外、彼の行きつけの酒場は隠れ家的なBarで一人飲みで『豊穣の女主人』には一切顔を出さなくなった。仕事以外でも何かしらやっているので気づいてもらえない。

 

【イシュタル・ファミリア】から助けた時もお礼と治療費を渡されただけで終わってしまった。

 

彼が今どこにいるか?そんな事は地上、オラリオ内であれば視ずともわかる。今日も側に少年がいる。

 

名はベル・クラネル。最近彼がアドバイザーとして担当している駆け出しの冒険者。

 

処女雪のような白い髪に、兎のような深紅の瞳、種族はヒューマン。魂の輝きは、とても小さかったが綺麗な色をしていた。コレクターとしては欲しい気もしなくもないが、彼ほどの感動は感じなかった。

 

ただ、私が欲しい彼を独占しているのが許せなくて、何度かモンスターをぶつけた事がある。

 

ミノタウロスを19回ほどwww。

 

10回は同行していた彼に助けられ、8回は逃げ切り、そして1回は撃破した。

 

これ以上は彼のアドバイザーとしての評価に影響が出てしまうと思い断念した。

 

その代わりに、ダンジョン外で四つ子の小人族で第一級冒険者である【炎金の四戦士】で襲わせた事もあるが、ベル・クラネルのピンチに颯爽と登場したアイズにより【炎金の四戦士】はボコボコにされてしまった。

 

何で側にいるのが私ではなく、その少年なの?

 

許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!

 

私は覚えてもらえず、その他大勢のモブ女なの?

 

許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!

 

女神の心奥で渦巻く感情。それは嫉妬から怒り、怒りは一途な狂気に変わる。

 

矜持も外聞も自ら課したルールを、富も名誉も栄光も全てを投げ出していい。必要なら眷族達を生け贄に捧げてもいい。ようやく気付けた。やっと気付けた。私は欲しいモノを手に入れる為なら、つまらない男でも一夜をともにするくらい安いと思っていた。だがこの半年間、誰かを閨事に誘う事はなかった。彼以外に触れられたくなかった。

 

彼でなければ駄目なの!だから・・・彼以外の全て、ひれ伏しなさい。

 

私の権能、魅力でも彼相手では大海の一滴の雫にすぎないでしょう。なら、その他を犯してしまえばいい。本当は使いたくなかった。

 

もう彼以外を愛する事はできない。彼が誰かに盗られるのは我慢ならない。彼以外に抱かれたくないと彼だけの愛が欲しいと思ってしまっている今の私で十全に発揮するかは未知数。

 

女神フレイヤは真の魅力を発動。

 

銀の神威が巨大な円蓋状の輝きとなって、オラリオを覆いつくした瞬間、魂の蹂躙が始まり、侵略され、ねじ曲げられ、統一される・・・はずだったが。蹂躙が始まる前に銀の神威が作り出した巨大な円蓋状の輝きは消え去った。

 

少年と一緒に都市外縁部で鍛練していたはずの彼が、途轍もない距離があるはずの都市中央、更に高さ五十階のバベルの最上階に当たる自室、椅子に腰をかけていたフレイヤの目の前に立っておりフレイヤを見下ろす。

 

『貴女は・・・今何をしようとした』

 

その後、彼からギルドに報告され【フレイヤ・ファミリア】は重い罰則を課せられた。

 

私は次の手を打った。

 

自分の全てを献上した上でロキに真っ正面から開戦を要求『戦争遊戯(ウォーゲーム)』。

 

彼の主神ロキは拒否したが、彼本人は条件付きでなら私からの戦争遊戯を受けると言った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

条件その1

【猛者】【女神の戦車】【黒妖の魔剣】【白妖の魔杖】【炎金の四戦士】と【狂姫】の8VS1での決闘。

 

条件その2

武器、防具、道具の持ち込み制限無し。

 

条件その3

死んでしまっても相手に一切の責任を問わない。

 

条件その4

場所は迷宮都市オラリオの外で行う。

 

条件その5

戦争遊戯は一ヶ月後。

 

条件その6

今回の戦争遊戯は敗北した場合、申し込んだ者又は受けた者個人が支払うものとする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

どういう事?

 

Lv.7が一人、Lv.6が三人とLv.5が四人の計八人。トップファミリアの【フレイヤ・ファミリア】最高戦力とLv.3一人で戦う?何の冗談?

 

元々殺す気なんてない。場所も期間も何の問題はない。ただ、条件の6は少し気になった。

 

『神フレイヤは私が欲しい・・・なら私も貴女を望みましょう。確か改宗(コンバージョン)の期間は一年でしたよね。それくらいの期間にしますかね。一年間貴女の愛を独占するのも悪くはないですねえ。ああ、神フレイヤは多情と聞きますが、私のモノになる一年間は火遊び厳禁です。ふふふ、【フレイヤ・ファミリア】は貴女の寵愛を得る為に毎日殺し合うとか?いやあ、そんな女神の愛を独占できるなんて感無量ですねえ・・・奪われたくないなら殺す気でこいよ最強達』

 

彼の言葉はオッタル達を焚き付ける為の方便にすぎない事はすぐ理解できた。

 

けど彼の言葉は私を打ち震わせる。

 

そして、一ヶ月後の戦争遊戯。

 

結果なんて最初から分かっていたことだった。

 

目の前の結果が全てである。

 

立っているのは【猛者】と【女神の戦車】と【白妖の魔杖】である。【黒妖の魔剣】【炎金の戦士】は戦闘不能。

 

【猛者】は無傷、【女神の戦車】は軽傷、【白妖の魔杖】は左腕を失っていた。

 

そして【狂姫】、彼は自らの血でできた血だまりに倒れ伏していた。

 

やる前から分かりきっていた現実。

 

私はその姿を見て、涙を流していた。

 

この涙は歓喜の涙ではない。自分の眷族が勝った喜びではない。彼が手に入るからではない。

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン!!!・・・立って・・・ちなさい・・・立ちなさい!!!貴方は私が見初めた伴侶(オーズ)なのよ!!!奇跡の1つや2つくらい起こしてみなさいよ!!!」

 

この戦争遊戯の勝者・・・『アイズ・ヴァレンシュタイン』!!!

 

 




戦争遊戯の勝者はアイズ・ヴァレンシュタイン。

最初、実は舐めプしてましたwww。

『彼』が持つ『ステータスを大幅に減少させるかわりに経験値を大量に入手する』事ができるスキルを使用していましたが、さすがにフレイヤ・ファミリア最強戦力には封印したままでは勝てませんでした。

封印解除の全力+装備効果+スキル魔法の重ね掛け=ゴリ押しで勝利しました。


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第四話 兎さんが変わるってよ

やはりベル・クラネルにはミノタウロスイベントは必要だろうね。


『クラネル君・・・君、何で逃げたんですか?』

 

その言葉には叱責の念は含まれていない。首を傾げて心底不思議そうに。

 

『・・・宝の持ち腐れですね』

 

ミノタウロスから逃げ切った際に言われた言葉。

 

自惚れかもしれない。

 

『どれほど強く激しい力であろうと礎となるのは地道な積み重ねです・・・無論、例外はいる。しかし、そうでない者は積み重ねるしかない。少なくとも私はこのやり方しか知りません。鍛練と冒険とでは得られる経験値は全く違ったものになる。私との鍛練で得たものをダンジョンで馴染ませなさい。なあに、安心して失敗しなさい。貴方の成否ごときで、私の仕事になんら影響することはありません』

 

僕の胸に、その言葉が深々と突き刺さる。僕はヴァレンシュタインさんにダンジョンの同行してもらうのをやめてもらった。

 

「勝てる勝てないじゃなく!ここで僕は!立向かわなきゃいけないんだよ!!!」

 

18回ミノタウロスに襲われて、10回同行していたヴァレンシュタインさんに助けられて、8回は逃げた。ミノタウロスは何故か他の冒険者を無視して僕だけを追いかけてきた。

 

いいのかよ!ベル・クラネル!全部貰い物じゃないか!

 

神様が言ってた。僕のスキル保有数はLv.1ではあり得ない数らしい。それはヴァレンシュタインさんに秒単位で管理された狂気の悪魔的スケジュールをこなして手に入れたスキルだ。

 

今僕が装備している二対の曲短剣の武器と防具は僕用に手直しして貰ったヴァレンシュタインさんのお下がり。バフ効果がある強化ポーション等の道具もヴァレンシュタインさんの試作品。

 

肺が苦しい、だけど破れたって関係ない!・・・足が重い・・・でもまだ動く!

 

僕は何度も挫けてきた!

 

前任のアドバイザーには「ハズレ引いたあ~」とガッカリされ、無能の烙印を押されて転職を勧められた。

 

誰よりも挫けてきた!

 

酒場のバイトで先輩冒険者に夢を笑われ頭から酒をぶっかけられてもヘラヘラ笑ってやり過ごすしかない自分の情けなさに部屋で一人で泣いた。

 

誰よりも悔しい気持ちになったのは僕だ!

 

今度こそ冒険者になるために休みもほとんど取らず仕事を掛け持ちして必死に貯めたお金を『犬人の女の子』に騙されて全部失って。

 

誰よりも勝ちたい気持ちが強いのは僕だ!

 

書類処理の片手間にミノタウロスを瞬殺するヴァレンシュタインさん。

 

絶対に譲らない!絶対に!絶対に!・・・絶対は僕だっあああああああああああああああああああああああああ!!!

 

追い付いてみせる・・・あの憧憬の背に。

 

勝負だっあああああああああああああああああああああああああああ!!!

 

僕は目が血走り泡を吹き、大剣を力の限り振り回す狂牛へ駆け出す。

 

馬鹿みたいに一途な気炎が傷の痛みと恐怖を吹き飛ばした。

 

相手は正気じゃない。

 

防御は疎かに、身体能力に物を言わせて大剣を振り回しているだけ。あらゆる物を破砕する力だろうと直撃さえしなければいい話。

 

「ヴヴォオオオオオオオオオオオ!!!」

 

「ああああああああああああああ!!!」

 

モンスターとヒューマンが真っ向から衝突し、力と速度の戦いを継続させる。

 

傷が増える度に体が軽くなっていく。

浴びせられる雄叫びを聞く度に力が湧き上がっていく。

勝利を掴みとる為に前へ前へ進む度に頭が冴えていく。

 

自分が師事した女性に比べれば、目の前の敵はただの木偶だ。

 

僕には強くて、激しくて、無慈悲で、圧倒的で、一度は使ってみたいと望む英雄達が使いこなすような起死回生の神秘・・・魔法は習得していない。

 

僕が勝つには敵の胸部、厚すぎる胸筋を貫いて魔石を砕くしかない。

 

不可能ではない・・・けど、

 

「双曲短剣・白兎月【上弦】黒兎月【下弦】・・・合体ゲージMAX!合体【双弦月】!!!スキル【ストライク・ライザー】!【ブレードダンス】!【ハンティングギア】!【ジェノサイドリッパー】!【マッシブクラッシュ】!【オーダーライズ】!【餓兎の闘志】!【クライマックス・ブースト】発動!!!」

 

一分間、この一分だけ僕の能力値はお前を上回る!!!

 

スキルの一個一個なら代償が少しで済むのだが、これだけのスキルを一度に使えば相応の代償が必要だろう。おそらく十分間は動けなくなるかもしれない。

 

あとの事なんてどうでもいい!!!一分・・・いや、この一撃で決める!!!

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「ヴヴォオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

真っ向からの突撃、一気に縮まる間合い。

 

力任せに振り下ろされた大剣にベル・クラネルの全身全霊の刺突の一撃が邂逅した。

 

銀塊が砕ける音。根元の辺りから粉々に破砕され、大剣の剣身が空中を舞う。

 

「【致命の三日月】!!!」

 

ベル・クラネルの一撃が天然の鎧を突き破り、ミノタウロスの巨体を回転させていた魔石を粉砕させた。

 

ミノタウロスの巨体はぐらりと崩れ落ちた。

 

空高く舞い上がっていた大剣の剣身が、ザンッと地面に突きたった。

 

勝者・・・ベル・クラネル!

 




今作のフレイヤ様はアイズ(オリ主)Loveのため、ベルに魔導書は渡っていません。というより今作のフレイヤ様はシル・フローヴァでいる時間はほとんどない。

皆もわかってらっしゃるだろうが、ベルを騙した犬人の女の子は変身したあの子。原作より悪めの事もしてる感じにしときたいんで。

ベルがミノタウロス討伐後、冒険者の新人卒業という事でアイズ(オリ主)がベルの担当から外れ、アイズ(オリ主)が指名したハーフエルフのエイナ・チュールがベルの担当になる。

あ、ちなみに動けなくなったベルを助けたのは、「男のケモ耳なんて何処に需要があるんですか?引っこ抜くぞパワハラカタパルトさん』と言われて落ち込んでいて気晴らしがてらダンジョン探索に赴いたベートです。

「何で俺だけ?他の獣人には言わねえのに?それもパワハラじゃねえのか?あとカタパルトって何だ?(|||´Д`)」

アイズ(オリ主)、いやアカヤシ(作者)は大剣等の大型武器が大好きです。これからアイズ(オリ主)を使って布教しまくっていきます。

次は『突撃大賭博場、それ行け豊穣のポンコツ娘達!』か『狂姫の舎弟?頑張れラウルさん!』をお送りします・・・あくまで予定。

まだ、本編ではありません。

プロローグ的なヤツですごめんなさい。






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第五話 【剣姫】さんが目覚めたってよ

予定変更 予告詐欺 めんご!!

駄文続くが許して!!


「・・・・・・」

 

意識がゆっくりと浮上していく。

 

ぼやけて視界の中に映るのは、見慣れた殺風景な自室ではなく知らない部屋だった。

 

うっすらと瞼が開いていき、少女は二度三度瞬きを繰り返し、もう一度部屋を見渡す。

 

少女の記憶にある自室は机にベッドにカーテン。調度品は少なく飾り気の欠片もない寂しい部屋だったはず。

背の高い本棚に囲まれ、部屋の家具全てが上質で高級そうな物ばかり。

 

「・・・・・・?」

 

身体が重い?気のせい?

 

身体の異変も気にはなるが己の現状を把握するため辺りを再度確認する。すると見知らぬ部屋だが、見覚えのある物を発見した。

 

自身の愛剣、不壊属性(デュランダル)のデスペレート。

 

しかし、その細剣はいつもなら窓辺へ立てかけてあるはずが、まるで美術品のように壁に掛けられ鞘と共に飾られていた。

 

本棚にある本は難しすぎて少女の頭では全く理解ができなかった。机の上にある紙のやに目を通すが自身の筆跡ではない。クローゼットの中には男物の服や下着しかない。

 

少女の普段着ていた服が見つからないのでクローゼットの中から借りた。見覚えがないはずなのに自然とスーツに手が伸びる。サイズも自身の身体にピッタリ、そしてネクタイも自分で締めれた。

 

少女は部屋から出ると見覚えがある廊下だった。部屋の内装が変わっただけ?

 

少女は人の声がする方へ進む。

 

声がするのは大食堂の方。

 

少女が食堂の扉を開けると、食堂にいた者達の視線が一斉に少女一人に向けられ、騒がしかった声が一斉に止んだ。

 

「ヴァレン、シュタイン、さん?その髪どうしたんですか?」

 

髪?髪がどうしたのだろうか?少女は自身の髪に触れてみるが、別に変わったところはない。

 

少女は声を掛けてくれた山吹色の髪を後ろでまとめたエルフの少女を『レフィーヤ』と名前を呼んだだけで、名前を呼ばれたエルフの少女は、突然『アイズさん!アイズさん!アイズさん!』と少女の名前を連呼し抱き付いて泣き出してしまった。

 

状況が全く理解できない少女、アイズは助けを求める為に他の者の名前を呼ぶと全員が飛び付いて泣き出して、何度も何度もアイズの名前を連呼する。

 

アイズは全員の重みに耐えきれず倒れこんでしまう。

 

「どうして、皆泣いてるの?」

 

その答えを聞けたのは、一時間後だった。皆が落ち着き話を聞いてビックリした。

 

どうやら私は『一年以上の記憶がないらしい』。

 

アイズが覚えている最後の記憶の『遠征』から一年経過したらしい。

 

記憶にない一年間でアイズは何度も死にかけたらしい。主神ロキや団長のフィンや他の団員の意見も無視して一人で突っ走ってきたらしい。

 

果ては昨晩に『黒竜ぶっ殺してくるんで、しばらくの間オラリオの外に行ってきますね』と。

 

「お前本当にいい加減にせえよ!!!」

 

好き勝手過ぎるアイズに、さすがにブチギレしたロキがアイズのステータスを封印し、仕事も全部辞めさせ、アイズを自室に閉じ込めた。必要以上の部屋から出ることすら禁止した。

 

人間性を排除した神性。ロキの体から神威が立ち昇り、人々を畏れさせる超俗し神々しい波動をアイズに叩き付けるが、アイズは突風となって吹き寄せる凄まじい神の威光を真っ向から弾いてみせた。

 

その時・・・神ロキはようやく気付いたのだ。

 

このアイズ・ヴァレンシュタインは自分の知るアイズ・ヴァレンシュタインではないと。

 

その眼に宿る底知れぬナニカにロキは恐怖したという。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アイズ・ヴァレンシュタイン『遠征前』

Lv.5

力D549 耐久D540 器用A823 敏捷A821 魔力A899

狩人G 耐異常G 剣士I

 

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

 

アイズ・ヴァレンシュタイン『一年後』

Lv.4

力EX 耐久EX 器用S 敏捷B 魔力SSS

聖騎士S 教皇A 召喚士A 大総統EX

 

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

 

アイズ・ヴァレンシュタイン『現在』

Lv.5 【封印中】

力D555 耐久D547 器用825 敏捷A822 魔力A899

狩人G 耐異常G 剣士I

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アイズの変化にはステータスの封印が関係している可能性があると考えられチェックした結果がコレである。

 

アイズの身に何が起こっているのか?

 

 




『この体は駄目だ。どうするか?Lv.の上昇より高次な器への昇華ではなく・・・創造するか?理想の器を?』



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第六話 【剣姫】さんの迷い

風が吹いてる。

 

蒼い東の空から流れる朝風。

 

高い市壁の上で涼し気な風を感じる少女は、静かにたたずみ、それを見つめていた。

 

都市の中央を、白亜の巨塔を。

 

「私は・・・何で生きているの?」

 

アイズ・ヴァレンシュタインは一年の眠りから目覚め、【ロキ・ファミリア】の団員から矢継ぎ早に豹変したアイズの一年の凶行・奇行を聞かされた。

 

一番衝撃だったのが【フレイヤ・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)だ。

 

俄には信じ難い内容だった。

 

【フレイヤ・ファミリア】の最強戦力八人の戦士に自身が一人で勝ったという。

 

【炎金の四戦士】【黒妖の魔剣】【白妖の魔杖】【女神の戦車】を打ち破り・・・・あの【猛者】オッタルを殴り合いで勝ったというのだ。

 

アイズはオッタルを訪ねた。

 

現在【フレイヤ・ファミリア】は活動休止状態。主神フレイヤは行方不明。

 

幹部六人もオラリオ外。

 

【猛者】と【女神の戦車】は『豊穣の女主人』にいるらしい。

 

【女神の戦車】アレン・フローメルは【狂姫】敗北後に何故か妹愛が炸裂し、重度のシスコンに転身。酒場で働く妹にベッタリと張り付いているらしい。

 

【猛者】オッタルは、【狂姫】敗北後に・・・Lv.8にランクアップするが一線を退くと宣言。

 

そして・・・豊穣の女主人を営んでいるミア・グランド、20以上も年の差がある彼女と結婚し、オッタルは酒場の皿洗いをしているらしい。

 

酒場で働くオラリオ最高ランク冒険者。エプロンを着けて働くオッタルの姿に吹き出しそうになった。

 

休憩時間に僅かに話せた。

 

「俺は全てを出し切った・・・・俺の中に残ったのはフレイヤ様でもない、【女帝】でもなく、ミアだった」

 

一線を退く理由を聞いた。

 

するとオッタルは彼女が見たことがない豪快に笑って言った「お前が言うか?」と。

 

「アルフリッグ・ドヴァリン・ベーリング・グレール・ヘグニ・へディン・アレンの7人を倒したお前が突然装備していた武器を地面に突き立て、鎧を脱ぎ捨てた」

 

そして『秘密兵器ゴッコはもういいだろう?小細工を労して勝ったところで然程意味が無い・・・殴り合おう!正面からだ、足を止めて男らしく堂々と!』

 

『オッタルに勝つ・・・魔法で勝つ?装備で勝つ?どっちも違う!オッタルに勝つってそういうことじゃない!力で勝つ!避けずに!防御を捨て!真っ正面だけ!殴って、押しきる!!!』

 

「自分の半分も満たない少女に押し負けた。これほどの恥辱はないだろ?俺は出し尽くした・・・そして悟った俺の上限はここまで。俺の最頂はここ(Lv.8)までなんだと」

 

オッタルから話を聞いた後、私は行くあてもなくさ迷い歩いた。その行く先々で話し掛けられた。

 

町を歩けば子供達に先生と呼ばれ抱き付かれた。

 

「先生っ!今日は何を教えてくれるの?」

 

「先生っ!この前の宿題一人で解けたよ!」

 

「先生っ!この前の授業でわからなかったところがあるんですけど!」

 

子供達の質問攻めに答える事ができず、小さい子供が突き出してきた問題集の問題が解けないと『え?こんな簡単な問題解けないの?』という視線を浴びせられ、本気で勉強しようかと頭を悩まされた。

 

お店の前を通ると、

 

「先生っ!この前はありがとよ!これお礼っ!受け取ってくれ!」

 

「先生っ!実は相談があるんだけど?ちょっといいかい?」

 

「先生っ!先生のアドバイスのおかげで売上が倍になったよ!」

 

「先生っ!食事は済ませました?まだ?それならぜひウチの店に!」

 

「先生っ!偶々良いお酒が手に入ったんですよ!ぜひ試飲お願いします!」

 

色々な人が話し掛けてくる・・・今までこんな事なかったのに。どれだけ多くの魔物を殺しても。どれだけ強い魔物を殺しても。

 

ギルドへ行くと私を師事しているという少年に出会った。少年はギルドに入ってきた私を姿を見つけると駆け寄ってくると元気よく挨拶をしてくれた。私は少年に事情を説明し、記憶が無い事を伝えると、少年は一瞬凄く悲しそうにするも笑顔を作り、「それでも貴女は・・・僕の憧れです!」と言ってダンジョンへと走り去っていく。

 

私はその後1日、ファミリアの本拠地へは帰らずにさ迷い歩いた。

 

自分が『記憶を無くす前』の『遠征』の最中の事を思い返しながら。

 

50階層、ダンジョンの中でもモンスターが産まれない貴重な安全階層に辿り付いた事は覚えてる。

 

それから【ディアンケヒト・ファミリア】の冒険者依頼(クエスト)『カドモスの泉の泉水の採取』の為に、一班アイズ・ティオナ・ティオネ・レフィーヤ。二班フィン・ベート・ガレス。拠点防衛にその他団員で別れて行動した事は覚えてる。

 

私がいた一班が向かったカドモスの泉の前で異常があった。泉の前に大量の積もる灰。その灰にカドモスの皮膜が埋まっており、間の主である強竜(カドモス)と断定。突如、ラウルの絶叫が入り乱れた迷宮に響き渡った。

 

悲鳴の方角と勘を頼りに進むと、芋虫の形状に似ている新種らしきモンスターに、第一級冒険者が揃う二班が、戦闘を放棄して、全力で逃走している姿を見つけたのは覚えてる。

 

『怪物の宴』に『野営地が強襲された』・・・思い出した。私は50階層で、紫紺の外套に禍々しい仮面を着けた謎の人物に胸を貫かれた事を。

 

私の最後の記憶、私の身体を貫通したメタルグローブを装着している腕を押し返すのは私の貫かれた穴から生えた男性のモノと思われる逞しい腕。薄れゆく意識の中、『離セ!』と不気味な肉声と仮面の人物の手の骨が折れ、肉が握り潰される音が生々しく耳に入ってくる。私はもう意識が朦朧として身体に力が入らない。しかし、私から生えた腕は圧倒的な力で仮面の人物を振り回し、ダンジョンの壁へ投げ飛ばした。

 

身体が自分の意志に関係なく勝手に動く。私から生えた腕が地面に落ちた細剣を掴むと切っ先を壁に突き刺さった仮面の人物へと向ける。そして、私の口から私の声ではない男性の声で唱えられる。

 

【創生せよ 天に描いた星辰を 我らは煌めく流れ星】

 

【愚かなり 無知蒙昧たる玉座の主よ 絶海の牢獄と 無限に続く迷宮で 我が心より希望と明日を略奪できると何故貴様は信じたのだ】

 

【この両眼を見るがいい 視線に宿る猛き不滅の焔を知れ 荘厳な太陽を目指し 高みへ羽ばたく翼は既に天空の遥か彼方を駆けている】

 

【融け堕ちていく飛翔さえ 恐れることは何もない】

 

【罪業を滅却すべく闇を切り裂き 飛べ蝋翼 怒り 砕き 焼き尽くせ】

 

【勝利の光に焦がされながら 遍く不浄へ裁きを下さん】

 

【我が墜落の暁に創世の火は訪れる】

 

【故に邪悪なるもの 一切よ ただ安らかに息絶えろ】

 

【超新星ー煌翼たれ 蒼穹を舞う天駆翔・紅焔の型】

 

最後の記憶、視界を埋め尽くす赫怒の炎。闇を砕く核爆発した赤き炎。

 

その炎は私の、最強の【力】と精霊【魔法】を合わせた【黒嵐】ですら遠く及ばない。

 

「私は・・・目覚めるべきじゃなかった?」

 




注)アイズさんの中身はオリ主であり、とあるゲームキャラではありません。

作者が詠唱厨の為。

『光の奴隷』を知ってる人達がいるならいいか、本作品のネタばれになりますが、アイズとオリ主は一時的に分離します。そこからが本編がスタート。

分離時期は59層予定・・・つまりは、まだまだプロローグ的なヤツです。



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