宇宙戦艦YAM@TOガミラス戦役編 (Brahma)
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第1話 冥王星会戦と火星に墜落したなぞの宇宙船
圧倒的な軍事力を持つガミラスに対し、なすすべがなく地球艦隊の艦艇は次々と撃沈されていった。
しかし、地球にはまだ一縷の希望があった。圧倒的敗勢であった冥王星海戦で、分艦隊を率いた美人少将日高舞は、陽動ではあきたらず、隕石群を用いた奇策でガミラス艦隊に大損害を与え、一人気を吐いた。戦死した夫、日高正道少将が地球の未来を託した舞の将才は花開くのか…そして干上がった海底にそびえる坊ノ岬沖の構築物の正体とは…
冥王星空域では、武田蒼一大将および日高正道少将率いる主力艦隊と日高舞少将率いる別働隊がガミラス艦隊を迎え撃つべく向かっていた。
地球防衛軍日高舞分艦隊
「敵艦隊接近、2時の方向。9時の方向に小惑星群があります。」
舞は航海長に「9時の方向へ取り舵」と命じた。
「9時の方向へ取り舵します。」
「秋月技師長、反重力反応機発射してください。」
律子はにやりと笑みをうかべて「了解。」と唱和し、
「反重力反応機、小惑星群に向けて発射。」と命じる。
反重力反応機がおのおのの小惑星に食い込んだ。もし空気があるならば「バシュ」と音を発したであろうが、真空中では無音である。
「敵艦隊接近。30宇宙キロ」
「全艦全速前進。小惑星群を敵の方向へ向かわせる。」
「敵艦隊砲撃開始しました。」敵艦隊の砲門から数十もの光条が向かってくる。
「小惑星群を敵にぶつけなさい。」
反重力反応機のつけられた小惑星群はガミラス艦隊へ向かっていき、ガミラス艦隊は混乱した。
「敵艦隊、ミサイルの射程内にはいりました。」
「いまだ。取り舵90度。ミサイル斉射。」
小惑星で混乱したガミラス艦隊に十数本のミサイルが向かっていく。
次の瞬間十数隻のガミラス艦は次々と火球となった。
しかし、ミサイル駆逐艦4隻の分艦隊である。ただではすまなかった。
ガミラス艦隊のうす赤い光線砲は地球軍の駆逐艦を貫き、次々に火球に変えた。
しかし舞の駆逐艦144Mのミサイルは、最後のガミラス艦を貫き火球に変える。
「敵に知られないようステルスシャトルで本隊に伝えなさい。『我敵艦隊戦艦2、駆逐艦15ノ撃沈ニ成功ス』と」
地球防衛軍本隊
「日高舞少将より入電『我敵艦隊戦艦2、駆逐艦15ノ陽動ニ成功ス』」
「武田司令どうしますか。」
「目的地である冥王星A1G3空域に集結。衛星カロンの陰に隠れて応戦だ。」
「前方50宇宙キロ、ガミラス艦隊接近中。日高舞分艦隊によって陽動されたとはいえ、戦艦4、巡洋艦8 駆逐艦10、われわれの3倍相当の艦隊です。」
武田は「総員戦闘配置」と命じた。
「ガミラス艦隊より入電。『地球艦隊に告ぐ。直ちに降伏せよ。』返答いかがしますか。」
「ばかめ、といってやれ。」
「は?」
「ばかめ、だ。」
「地球艦隊よりガミラス艦隊へ。『ばかめ』」
「ガミラス艦隊がたけり狂ったように向かってきます。」
「よし。クロスファイアーポイントに集まってきたな。」
「測敵完了。主砲発射できます。」
「主砲発射」
十数本の光条が宇宙空間を走っていく。しかし宇宙空間の闇を切り裂くようなガミラス主砲の輝きにくらべ明らかに弱弱しいものであった。
地球艦隊の砲撃はガミラス艦隊の隊列に多少の混乱をもたらし、数隻が衝突して爆発したものの、主砲自体はガミラス艦の装甲を貫くことはなく、跳ね返された。
「!!主砲がまったく効きません。」
今度はガミラス艦隊から数十本に達するかと思われるうす赤く輝く光条が地球艦隊の薄い包囲網に向かって放たれた。
次の瞬間地球艦隊の各艦の船体が貫かれ、艦内は爆音と火炎と「ぎゃああああ」という悲鳴にあふれた。
「三番艦撃沈。四番艦、通信途絶。」
「十番艦、五番艦も撃沈された模様。」
武田はクルーにたずねた。「わが艦隊の残存戦力は?」とたずねた。
「当艦『きりしま』と日高少将の『ゆきかぜ』だけです。」
「この艦ではやつらに勝てないか。これ以上戦っても無駄ということだな。よし、撤退だ。
日高少将に伝えよ。『コレヨリ我ガ艦隊ハ撤退スル』と。」
「伝えます。『日高少将、コレヨリ我ガ艦隊ハ撤退スル』」
「武田司令、『ゆきかぜ』がついてきません。」
「そうか。」
「『ゆきかぜ』より通信。『我弾薬ツキルマデ敵艦隊トノ交戦ヲ続行シ敵ノ戦力ヲ削リ後日ノ憂イヲ除クモノナリ。』」
「日高君、撤退するんだ。」
「武田さん、敵に後ろを見せるんですか。男なら最後の最後まで戦うべきだ。」
「日高君、今死ぬのはやさしいことだ。男というなら今日の屈辱に耐え、明日のために戦うべきだ。これからの地球は誰が守るのだ。」
「武田さん、舞はわたしに勝る将才をもっています。あなたと舞ならきっと地球を守れると信じています。わたしが囮になりますから撤退してください。地球を頼みます。」
「そうか、日高君、死ぬなよ。」と武田は力なく返答した。
『ゆきかぜ』は巧みな操艦でガミラス駆逐艦を一隻ひきつけるとミサイルを撃ち込んで撃沈した。さらに追いすがってくるもう一隻も後方へ向けたミサイル斉射で返り討ちとばかり沈めたのだった。しかし『ゆきかぜ』の善戦もそこまでだった。ガミラス艦隊の輪形陣にかこまれクロスファイアーポイントに誘い込まれた。ガミラス艦隊の数十に及ぶ火線がたった一隻に向けられ、その光条が『ゆきかぜ』の船体をつらぬいて火球に変えた。
「日高君...。」武田は歯をくいしばってつぶやく。『きりしま』の乗員は悔し涙にむせび、上官に倣って歯をくいしばっている者もいた。
舞からのステルスシャトルが「きりしま」についたのはそれから5分もたっていなかった。
「日高舞少将より、『我敵艦隊戦艦2、駆逐艦15ノ撃沈ニ成功ス』とのことです。」
「駆逐艦144Mに伝えよ。日高正道少将は、冥王星宙域にて戦死したと。」
「あ、日高舞少将より通信です。」
「そうか、メインパネルに変えてくれ。」
「こちら駆逐艦144M。陽動でひきつけた敵の分艦隊を全滅させました。」
「あくまでも陽動のはずだったではないか。」
「いえ、秋月技師長と相談して撃破できるとおもったので撃破しました。」
武田は苦笑したが、次の瞬間表情をくもらせて
「残念なことを伝えなければならない。きみの夫日高正道少将は、冥王星宙域で戦死した。みごとな最後だった。僕には、舞と地球をたのむと、君には君の将才で地球を救ってくれと伝えるよう頼まれた。」
舞は、一瞬なにが起こったかわからないようであったが、やがてその美しい顔をゆがめて下を向いた。目から大粒の涙があふれ、しゃくりあげはじめた。
「本艦隊はまもなく海王星宙域に到達します。」
「正体不明の飛行物体確認。外宇宙速度でとんできます。数分で火星軌道まで到達します。」
「敵ミサイルか?」
「いえ宇宙船のようです。武装はないようです。形状が明確に把握できませんが地球のものでもガミラスのものでもないように思われます。」
「火星基地には誰かいるのか。」
「宇宙戦士訓練学校を卒業後着任して1年の天海中尉と如月中尉がいるはずです。」
「よし、宇宙船がついたら調査するよう伝えてくれ。」
「千早ちゃん。なんか機器の調子がおかしいみたいなんだけど。」
千早と呼ばれたのは、如月千早中尉で、青みがかったワンレングスの長髪とすらりとした長身が美しい女性士官である。彼女を名前で呼んだのは春香こと天海春香中尉である。栗色のセミショートの髪に左右の耳から少し上に赤いリボンをつけているのが特徴的で、美人の部類にはいるがどちらかというとくりっとした目がかわいらしい印象を与える。
千早が「え...さっき調整したはずなんだけど...」と答えた瞬間、正体不明の宇宙船が火星基地付近に激突し、「グオオオオン」という轟音とともに振動がふたりのところまで伝わってきた。
「地震かしら?それとも火山の爆発かしら??この近くにはないはずなんだけど??」
「千早ちゃん、火星の火山は死火山だから違うと思うけど...」
「春香。地球司令部から通信よ。飛行物体が墜落したから調査せよ、だって。」
「千早ちゃん、きっと今の振動がそれだよ。」
二人は基地にある飛行艇にのりこんだ。操縦は、操船や飛行艇の操縦については、宇宙戦士訓練学校では首席の成績を収めていた如月中尉が行い、衝突地点へ向かった。
「春香、あそこに宇宙船がみえるわ。」
「千早ちゃん、見たこともない形だね。地球のものでもガミラスのものでもない。」
「みたこともない金属だわ。船体の形も独特ね。」
「千早ちゃん、内部を見てみるね。」
「春香、気をつけてね。」
「あいたたた...」
地球上であれば「どんがらがっしゃーん」という音が聞こえそうだが大気の薄い火星では大気のわずかなゆれだけが伝わる。
「春香、大丈夫。」
「うん..」
春香は、立ち上がって数歩歩き、宇宙船の扉を開けた。
すると内部に金色の長髪をもつ美しい女性の姿をみとめた。
「千早ちゃん」
千早もその女性をみとめて、宇宙服の上からその女性に触れたが生命反応は感じられなかった。「どうやら息はないようね。」
その女性の手からなにやら小さな物体が落ちた。
「なんだろう。」
「通信カプセルか。何かの記憶媒体かしら。」
「手がかりになりそうなものは、このくらいかしら。春香、ひきあげましょう。」
「うん、千早ちゃん。」
二人は飛行艇に乗り込んで基地に帰還した。
ふたりが武田の指揮する『きりしま』に乗って地球に帰還するよう命令が来たのはその2日後であった。
「如月中尉、天海中尉の収容終わりました。」
「地球への進路をとれ。」
「了解。」
「すみません、火星に墜落した宇宙船から回収しました。何かの通信カプセルか記憶媒体のようです。武田提督にわたしてください。」
うけとった士官は、二人にかすかに微笑むと「お疲れ様。」と返事をした。
「地球に接近。20宇宙キロ。」
『きりしま』の窓からは、放射能をあびてすっかり赤銅色に焼けただれた地球の姿がうつった。そこへ遊星爆弾がさらに飛来しようとしていた。
武田は、唇をかみしめ
「あれがわが地球の姿か...かって300年近く前にガガーリンが青かったといった地球のすがたはもうすっかり喪われてしまったのかもしれない。いまあの遊星爆弾を防ぐ力はわれわれにはないのかもしれない。しかし...。」とつぶやいた。
「地下都市にはいります。着艦ゲート開きます。」という通信士のアナウンスがあると、赤銅色の地盤の一部が持ち上がって着艦ゲートが開いた。『きりしま』はゆっくりと入っていく。千早と春香は、『きりしま』を降りるとエレベーターで放射線のとどかない地下都市の居住区におりた。
「千早ちゃん。地球防衛軍司令部にいこう。あのカプセルが何なのか。」
「うん、春香。わかった。」
二人は地球防衛軍司令部へ行くことにした。
春香と千早が司令部に向かう途中で、ブヒッ、ブヒッという動物のうなり声が聞こえてきた。
みると、20才くらいであろうか白衣を着た黒髪の美しい女性が豚をひっぱっている。
「あの~この子を手術しなければいけないの。手伝ってもらえないかしら。」
女性はおっとりした口調で二人に話しかけた。
二人は顔を見合わせたが豚を手術室に押し込もうとするが豚も抵抗してなかなかはいってくれない。はあはあと息をきらしていると
「ワタシニオマカセクダサイ」という機械質の声が聞こえた。
身長は、1m20cmほどであろうか。みると頭部は半球形のスケルトンでガラスの内側に機器のようなものがのぞいている。平たい角というかちょんまげのようなようなものが頭部に垂直に三列ついている。胴体は寸胴で、赤く塗装されている。足と思われる部分にはキャタビラのようなものをつけて小さな転輪を回転させて動いている人型と思われるロボットだった。
ロボットは女性ごと豚を手術室に蹴りこんで、「コンナコトハタヤスイモノデス。ワタシハテンサイロボット「アナライザー」」と発声した。
「あの人はだれなの?」と千早が聞くと「アナライザー」と名乗ったロボットは、「三浦あずさ先生デス。動物モ人間モ診察デキルオ医者サンデスガ...」
と発声したとき、ブヒヒ~とひときわつんざくようなブタの悲鳴が聞こえた。
「あれ~手術失敗してしまいました。」とあずさと呼ばれた美人女医はすまなそうな、そして少々恥ずかしげな微笑をうかべた。
二人は、はあ...と下をむいてため息をつくしかなかった。
「申告します。火星基地から帰還を命じられた如月千早中尉です。」
「同じく天海春香中尉です。武田提督にお預けした通信カプセルについておうかがいできれば、と。」
「話は聞いています。ちょうどよかった。通信カプセルの分析結果を伝えるとともに、二人には新たな任務も与えるとのことですので、中央コンピューター室へ行ってください。」
二人に話しかけれた守衛は中央コンピューター室の方向を指差した。
中央コンピューター室にはいると、そこには、防衛軍司令長官である武田と日高舞少将がいた。春香と千早が敬礼すると武田と舞が答礼した。細いめがねをかけた理知的な女性がふたりに向かって話しかける。
「天海中尉、如月中尉。まってたわ。わたしは秋月律子。技術中佐としてこちらに勤務しているの。カプセルの分析が終わったのでお知らせするわ。これは音声と大量の画像データが記録されていて、宇宙船のエンジンのデータもあったわ。まず、メッセージの翻訳ができたので再生するわね。」
「こちらは、地球から14万8千光年にある大マゼラン雲サンザー太陽系第3惑星イスカンダルの女王スターシャです。地球の皆さん、あなた方がガミラスとの戦闘に打ち勝って生き残る望みはありません。ただ滅亡がまっているだけです。わたしは、そうした地球を見捨てておけず、妹のサーシャを使者として送ることにしました。このメッセージがあなた方の手に渡り解読できたなら、疑わずにイスカンダルにくるのです。
放射能の汚染で地球上の生物が絶滅するのはあと1年。もし、あなたがたに生きる勇気と決意があるのなら、イスカンダルにくるのです。
ここには放射能除去装置コスモクリーナーDがあります。残念ながらわたしがこれを地球にとどけることはできませんが、そのかわり1年以内に往復30万光年の旅を可能にする宇宙船のエンジンの設計図を送ります。地球の皆さんがすべての知恵と勇気をはたらかせてイスカンダルにくることを私は信じています。」
「どうだ。舞くん。自分はこの話を信じたいが。」
「わたしも信じます。このエンジンがあればイスカンダルへ行き、コスモクリーナーを持ち帰ることができます。武田司令、わたしに希望を託して亡くなった夫に報いるためにも必ず持ち帰ります。」
そのときビイーッツビィーッツと機械音が鳴った。
名無し士官「ガミラスの艦載機隊が九州坊ノ岬付近に出現。」
「なぜそんなところに…」
「ガミラスがかぎつけはじめたようね。」
「何かあるんですか?」
「重大な軍事機密よ。秘密兵器。」
「守らなければならないんですね。操縦は得意です。
行ってみたほうがいいでしょうか。」
「千早ちゃん、私も行くよ。」
千早は微笑むと
千早「春香、乗って。」
春香「うわあああ…ほいっと」
二人を乗せた戦闘機は飛び立ちまもなく目的とする坊ノ岬沖上空付近に着いた。
「もう坊ノ岬上空に到達したわ。」
「千早ちゃん、ガミラスの艦載機がレーダーに映ってる。」
「追うわよ。春香」
「うん。」
千早は機のスピードを上げようとしたがそのとき、プスプスと異音がして、
二人を乗せた戦闘機はガクガクノッキングして後ろから黒煙をふきはじめた。
「あら…」
「千早ちゃん。なんか調子よくないみたいだね。」
「ええ。」千早は必死に操縦桿を握って操作をし、なんとか不時着に成功した。
【推奨BGM:夕陽に眠るヤマト】
「千早ちゃん。なんかあるね。建物??」
「そういえば、200年以上前の戦争で大和という日本の戦艦が沈められた場所だって話を聴いたことがあるわ。」
「もしかして、この鉄くずのようなものが秘密兵器??」
「さあ…」
「春香。ガミラスの艦載機はいってしまったみたいだし帰りましょう。」
「うん、千早ちゃん。」
「故障しちゃったから連絡しなきゃね。」
こうして二人が坊ノ岬から帰還して数日後。司令部には、舞と武田がいた。
舞は技術士官に「ヤマトの改造はすすんでる?」とたずねた。
士官は「予定より3%ほど遅れていますがほぼ順調です。」と答えた。
「武田司令。一刻の猶予も惜しまれます。これからの工程は飛行しながらします。」
そしてと舞は近くにいた士官に「火星からこの通信カプセルを持ち帰った新人の二人はどうしているの?」とたずねると
「坊ノ岬の調査の際に戦闘機が不時着して、多少打撲したので病院地区にいるようです。」
と士官は答えた。舞は出頭命令を出すよう士官に伝えた。
地球艦隊は冥王星会戦で敗北しますがかろうじて『きりしま』とチート駆逐艦144Mは地球に帰ることができます。冥王星付近から超高速で火星に不時着したなぞの宇宙船を宇宙戦士訓練学校を卒業したばかりの天海春香中尉と如月千早中尉が調査します。その結果、乗っていた女性はすでに死亡していましたが、通信カプセルをもっていました。二人はこれを拾い、地球防衛軍司令部へもちこみます。分析したところ、驚くべきことにはるか14万8千光年のかなたからの救いのメッセージでした。
はたしてどうやって果てしない旅路を行くのでしょうか。
それから舞の駆逐艦144Mはミサイル駆逐艦144号という意味なのですが、「クロスファイアーポイント」という語を文中に出したことから、鋭い方は、この船が青緑とセルリアンブルーの中間色ではないかと思い浮かんだかもしれません。
※武田のセリフを全面改訂(H28.2.28,1:12am)
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第2話 ヤマト発進、往路14万8千光年への挑戦!
まもなくしてヤマトはガミラスに発見され、上空にガミラスのポルメリア級空母が現れ、艦載機に攻撃される。実は冥王星基地からも惑星間弾道ミサイルが発射されていた。主砲で空母を撃沈し、間一髪で惑星間弾道ミサイルを破壊したヤマトは、いよいよ14万8千光年の旅に旅立つ。
病院で診察を受けていた春香と千早に出頭命令が伝えられた。
二人は迎えの無人反重力車に乗ろうとすると、
白衣を着た美女が乗り込もうとする。
「三浦先生?あなたも司令部に呼ばれたんですか。」
美女は「そうなんです。いっしょに乗せてくださいますか。」
「はい…」千早はしかたないとばかりに生返事をしていると
「ワタシモノセテクダサイ。オモシロソウデス。」とアナライザーが乗り込んできた。
「アナライザーさんは、乗れないと思うけど^^;。」と春香が言うとアナライザーは、体を分解し、
「コウスレバノレマス」と乗り込んできた。
千早は「いくわよ。」と操縦桿を握ってエンジンをふかした。自動ナビゲーターの画面を見ながら操縦していく。反重力車が止まるとその前にエレベーターのようなものがあるので、三人とロボット一台はそのエレベーターに乗る。
エレベーターの自動ドアが開いて三人と一台が降りた場所は上下左右が金属でできた廊下のような場所であった。しばらく歩くと自動ドアが開き目の前に広い空間が広がっていた。
窓際には精密機器がひしめくようにならび、イスが数脚ならんでいる。
「天海さんに如月さんだっけ。来たわね。」
目の前に現れたのは、ウエーブがかかった栗色の美しい長髪でりんとした美しい女性であった。
「宇宙戦艦ヤマト艦長の日高舞よ。あなたたちに来てもらったのはこの艦に乗り組む任務につくよう選ばれたからなの。二人とも私の指揮下に入ってもらうわ。」
「艦長。この艦はもう完成しているんですか。」と春香が尋ねると
「波動エンジンの取り付けと点検があるわね。一番大事な最後の仕上げってこと。」
「例の通信カプセルから解読したエンジンですね。」
「そう。問題はこのエンジンを地球人に使いこなせるかどうかね...」
そのときビイーッツビィーッツと警報音が鳴った。
「ガミラス空母が降下中。艦載機を20機発進させました。さらに発進を試みている模様。」
「メインスクリーンに投影。」
メインスクリーンには、四つの突起をもつ円盤状の物体が映し出される。円盤の底部が開閉してブーメラン上の艦載機が射出されていた。後にポルメリア級として知られることとなるガミラス空母であった。
「いままでなんとかごまかしてきたけど気づかれちゃったみたいね。」
舞はそうつぶやきながらメインスクリーンをながめていたが、
「主砲発射用意。艦載機は無視して、ガミラス空母を狙いなさい。」
「仰角55度、方位角右25度、地球自転自動追尾装置セット2分前。ショックカノン動力接続90%」
「3番砲塔、仰角が0.0002度くるっています。落ち着いて狙ってください。」
「作業員なので、慣れていないものでして...」
「天海さん、訓練学校で砲撃訓練を受けてるよね。主砲撃って。」
舞の問いに春香は「はい」と答え、砲術席に座った。
「三つの数字が表示されるから合わせればいいの。標準器の扱い方は訓練をうけたとおり。」
「これほど大きなものを扱ったのは初めてなのですが...」
「おちつけば撃てるから。」
「ガミラス空母、距離10万キロ、1.5宇宙ノットで移動。自動追尾よし。発射用意完了。」
「主砲発射。」
三連装ショックカノンの光条はうなりをあげガミラス空母を貫いた。
次の瞬間ガミラス空母は「グオオオオ~ン」と大爆発を起こして、爆発音と煙がひろがった。
「天海さん、如月さん、明日0900時に再びヤマトに集合してね。もう猶予がないから。明日が出航ね。」
「はい。」春香と千早は唱和してヤマトを退出した。
翌日、舞は集合者をみわたして「昨日までに集合するよう命令された人で来てない人はいる?」とそばの士官に尋ねた。「脱落者はいません。皆集合しています。」と返事がある。
「日高艦長。」春香と千早は舞に呼びかけた。
「天海さんに如月さんね。二人ともうれしい知らせがあるの。天海さんは大尉に昇進。戦闘班長よ。如月さんも昇進。大尉として航海班長ね。」
「はい。全身全霊でがんばります。」と二人は答えた。
「紹介するわね。ゆっきー、じゃなかった、通信班長の萩原雪歩大尉。彼女は見かけはすごくおとなしい感じだけど萩原組のご令嬢で、戦車道西住流群馬支部で戦車長と通信手を兼任で活躍したあと訓練学校の通信部門を主席で卒業した逸材よ。」
紹介された女性士官は、やや長めのボブカットでおとなしくて気の弱そうで清純という文字をそのまま人間にしたような印象である。戦車道で指揮官として活躍したようには見えない。
「訓練学校以来ね。」「うん、春香ちゃん、千早ちゃん。ヤマトでもよろしくね。」
と雪歩は二人に敬礼した。
つぎに舞は、おでこの目立つ長い髪のやや小柄の女性士官を紹介する。眼光がするどいが春香や千早よりもやや年下に見える。
「戦闘副長で砲術長の水瀬伊織中尉。水瀬コンツェルンのご令嬢なんだけど訓練学校を志願したの。彼女も砲撃についてはつねに3位以下に落ちたことがないという逸材なの。」
「金持ちの娘だからといって甘えていられないわ。さすがに白兵戦は無理だけど地球のために女だって戦えるってところを見せたいの。よろしくね。」
「白兵戦技はわたしもむりですぅ。女性士官は訓練学校では選択制だったからわたしは陸戦工兵演習をとりましたぁ。」
「そうね。わたしも白兵戦技はとらなかった。男性は必須科目だけどぎりぎり合格で卒業の人が多いみたいだし。操縦、運送、補給、戦史、機動部隊指揮演習は得意科目だったけど、砲撃と総合戦闘指揮演習は春香のほうが成績よかったわね。」
「総合操縦演習は千早ちゃんがダントツだったね。」
千早は苦笑する。春香は戦闘機操縦演習以外は操縦系がまったくダメでレッド法九春香の異名までとっていた。戦闘機も愛機であるコスモゼロ以外に乗るとたちまち操縦があやしくなるので、コスモゼロ以外乗らないようにといいわたされ、実際春香はコスモファルコンや探査艇は操縦したことが(というよりは操縦させてもらえ)ない。
二人がそんな会話をしながら雪歩と伊織に敬礼を返していると、イケメンといってもいい「男性」が近づいてきた。
「ボクは機関長の菊地真。よろしく。」
「真クンはボーイッシュだけど実は女の子なのよね。機関部の専門家だけど武道や白兵戦技の成績はすこぶるよかったって聞いてるわ。」と舞は紹介する。
「よろしくおねがいします。」と春香と千早は答礼する。
そのとき「あら、また会ったわね。」と眼鏡と二つの三つ編みをした理知的という文字が歩いているような女性が近づいてきた。
「秋月中佐ですね?」
千早が律子に呼びかけると
「如月大尉と天海大尉ね。この度、ヤマト技師長に任じられた秋月律子よ。よろしくね。」
「二人とも、実は律子は、冥王星会戦で活躍したんだから。」と舞は春香と千早ににやにやしながら話しかける。
「お聞きしました。小惑星に反重力反応機をつけてガミラス艦隊を誘導してふくろだだきにしたとか。」
「あの作戦を指揮したのは艦長です。わたしは手伝っただけ。」と律子は答えるが、舞がすかさず、「なにいってるの。「こんなこともあろうかと」とにやにやしたのはどこの誰よ」
舞は軽く笑って律子を見ると、律子も舞に(この人にはかなわないわね)と苦笑を返した。
「さて出航準備よ。それぞれ席について。」
舞がそう命じたとき、警報がなった。
雪歩が「地球防衛軍司令部より緊急通信です。日高艦長、レーダーが外惑星軌道を通過して地球に接近する巨大な物体を捕らえたとのことです。」
「何が飛んできたの?詳細な情報は?」
「金属質の硬い物体のようです。おそらく大型ミサイルと思われ、当艦めがけて飛んできているようだ、とのことです。」
「予想到達時間は?」
「1時間10分ほどとのことです。」
「そんだけ時間あるならかまわない、かまわない。発進準備!OK?」
「波動エンジン始動。シリンダー圧力上昇。エネルギー充填95%」
「エネルギー充填120%」
「サブエンジン点火。」
エンジンの唸りが聞こえてきたもののしぼんだように音が止まる。
「エンジンかかりません。」
「もう一度やってみる。さあ。」
エンジンの唸りがいったん大きくなるもののまた静かになりはじめる。
第一艦橋の空気が重くなったが、再びエンジン音が大きくなり、安堵の空気が漏れた。
舞は「ヤマト発進。」命じると
「ヤマト発進します。」と千早が復唱し、船体が前に持ち上がって、轟音をあげてヤマトは飛び立った。
「ミサイル、ヤマトまであと15分」と雪歩が伝えると
「一番砲塔、旋回、測的急げ。」と舞が命じ、
「ミサイルに標準あわせたわよ。」伊織が答える。
「主砲発射。」
三連装ショックカノンの光条は、ミサイルを貫いた。次の瞬間ミサイルは爆発し、爆音と大量の煙が空を覆った。
「大気圏脱出します。」千早がアナウンスする。
「なんとか無事に出航できたようね。」と舞はつぶやいた。そして
「これから、早速ワープテストね。今のヤマトの位置は?」といった。
レーダー手が「地球の衛星軌道上、10宇宙キロです。」と答える。
「真クン、ワープは可能?。」舞がたずねると
「波動エンジンは順調に動いてるよ。この調子なら可能だよ。」と真が
答える。
「ワープってなんでしょうか。」春香が質問する。
「単純にいえば超光速航法ね。光よりも速い速度で、航行する技術。これまで地球の宇宙船にはワープを行うだけのスペックのエンジンや船体がなかったけどこのヤマトの波動エンジンなら理論的に可能なの。」と律子が答える。
「如月さん、頼むわよ。」と舞は千早に命じる。
「はい。ワープ準備に入ります。」
「10時の方向にガミラス艦隊接近。20宇宙キロ。」
「ワープ20秒前。各自ベルト着用。」
千早の前にある画面上には、光点が横倒しの振り子のように上下に動いている。この光点が5本の空間曲線が交わる交点に重なった瞬間にワープするのである。
「10,9,8,7,6...」
「ガミラス艦より発砲反応。」
「この距離ならとどかない。ワープ続行。」
「3,2,1,ワープ」千早がアナウンスしたとき、宇宙空間からヤマトが消え数秒後にガミラス艦から砲撃された光線がその空間を走った。
さて、数分ほどさかのぼってガミラス艦の艦内では…
「ポルメリア級2番空母と惑星間弾道ミサイルを破壊した宇宙戦艦、2時方向に発見。」
「よし、砲撃しろ。」
「敵は20宇宙キロの位置にいます。」
「よし。主砲発射準備にかかれ。」
「照準固定。主砲発射準備完了。」
「発射。」
ガミラス艦から主砲が発射されると、幽霊のようにヤマトの姿が消失した。
「なに...消えただと。」
「確かに消えました。エネルギー反応も消えています。」
「物体が超光速移動を行った際に生じる痕跡が例の戦艦が確認された空間から検出されました。」
「なに!」ガミラス司令官の顔がこわばった。
「冥王星基地のシュルツ司令にデスラー総統に報告するよう伝えるのだ。いままでの地球の戦艦では考えられない。」
「ところであの戦艦の名前はわかったのか。」
「地球側の通信をわずかながら傍受した内容から「ヤマト」と呼ばれていると思われます。」
「ヤマトか...」ガミラス艦隊司令官はつぶやいた。
「「ヤマト」なる地球の戦艦がワープに成功。小惑星帯と木星の間にワープアウトするものと予想される、と伝えよ。」
「それから「ヤマト」を太陽系外へ出すわけにはいかん。冥王星空域で阻止するのだ。もっとも遊星爆弾の発射基地である冥王星基地をヤマトが見過ごすとは思えないが。」
「はつ。」ガミラス艦の通信士は上官から命じられたこの内容を復唱し、地球近郊で起きたこの出来事を冥王星ガミラス基地に知らせた。
冥王星基地からの巨大ミサイルを撃破し、地球の宇宙船としては、はじめてワープで光速を超えることに成功したヤマト。そのヤマトのワープをガミラスの前衛艦隊は冥王星基地に伝える。
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第3話 光速を超えたヤマト、木星圏を脱出せよ!
「ワープ完了。木星まで50宇宙キロの空間です。木星重力の影響は軽微。」
そのときヤマトの船体が振動した。がたがた動いている。
機関長席の通信ランプが点灯した。
「どうしたんだ。」
「まこちん、なんかエネルギーの動力回路の調子がおかしいよぉ。」
「うわ。火事だよ。」
「亜美、真美おちつけ。消火して、異常が回路のどこにあるのか至急調査するんだ。」
「右舷後部に破損確認。船体に負担がかかったようです。」
機関部員「伝導管が過熱。一部溶融。エンジン内にエネルギー30%オーバーで流入しています。」
「くっ...艦長、コントロールが...できません。」千早がうめく。
「木星にある程度接近して、その重力場をブレーキにしなさい。」
「亜美、真美、側面非常弁開け。全力で噴射しろ。」
「まこちん、がってん承知。」
機関部員「非常弁全力噴射。」
「木星の引力は地球の2.5倍もあるの。メタンの大気の奥に入ったら出てこられなくなるから艦の姿勢を制御して。」
「かろうじて木星大気の衛星軌道上に乗りました。前方に巨大物体。」
「コレハ艦隊ノヨウナ人工物デハアリマセン。面積19,000平方キロ。四国規模の巨大岩塊デス。」
「巨大岩塊カラミサイルデス。」
「ここにもガミラス基地があったのか。」
「ガミラス艦隊接近中。距離20宇宙キロデス。」
「艦首波動砲、発射用意。」
「ちょっと、舞、待って。波動エンジンも使いこなせないのに波動胞を撃つなんて...」
「律子。撃とう。エンジンの暴走でエネルギーは有り余る状態。ガミラス基地や艦隊を確実に破壊できるし、早めにヤマトのスペックを理解しておきたいし。それから重力アンカーははずしておいて。理由はわかるわね。」
「エンジンが不調なので、波動砲を撃った衝撃をばねにして木星の重力圏を脱出するということですね。」
「エンジンへのエネルギー弁完全閉鎖。回路艦首波動胞へ。波動砲安全装置解除。」
「電影クロスゲージ明度20、エネルギー充填80%」
「春香、操縦装置をわたすわ。」
「千早ちゃん。OK」
「対ショック、対閃光防御」
「エネルギー充填120%。波動胞発射準備完了、10,9,8,7,6,5,4,3,2,1、発射。」
ヤマトの船体が一瞬激しく揺れ、まばゆいばかりの光の束がヤマト艦首から発射された。
光の束はガミラス艦隊と巨大な浮遊岩塊をつつんで引き裂いた。
浮遊岩塊はこなごなにくだけていく。一方ヤマトは波動砲の衝撃で木星の引力圏からみるみる離れていった。
「木星の重力圏から完全に離脱し、土星軌道方向へ向かっています。」
「艦長、エネルギーが減って異常暴走がおさまりました。」
「そう。真クン。よかったわね。壊れたとこやエネルギーが何で暴走したかチェックと修理班による修理おねがい。」
「結果論を言えば、ガミラスの基地だけを破壊すればよかったんだけど、あの状態じゃしかたなかったかもね。」
「波動砲はとんでもない武器ね。やたらに使うのはさすがの私でもどうかと思うわ。」
「艦長、エネルギー伝導管、エンジン修理で備蓄のコスモナイトが底尽きつつあるわ。どこかで補給の必要があるけど。」
「アナライザー、最も近い採掘可能天体はどこ?。」
「土星ノ衛星エンケラドゥス、ヤペトゥス、フェーベガ考エラレマス。タダシ、エンケラドゥスハ重力ガ小サイ上ニ氷ニオオワレテ採掘ニ時間を要シマス。フェーベモ重力ガ小サスギ、着陸シテモ安定シタ作業ハ不可能デス。反重力車ト反重力靴ガ軽重力ニタエラレルノハ0.24m/s2ガ限界デスノデ、0.255 m/s2ノヤペトゥスガ適当ト思ワレマス。」
「地球の有人宇宙船が楽に離発着できて、基地設置にテキトーな規模の星を前提に作ってるからしたかないわね。では、進路右60度、ヤペトゥスへ。」
「ヤペトゥスまで50宇宙キロ」
「アナライザーは探査艇に乗ってコスモナイト鉱山の正確な位置を分析して。」
「イヨイヨワタシノ出番デス。オマカセクダサイ。」
「探査艇発進。」
アナライザーは、調査員と一緒に乗り込んで発進する。
「小鳥ちゃん、万一ガミラスがいるといけないから探査艇の護衛にいってきて。」
「了解。発進します。」
「わたしも行っていいですか。砲撃は伊織ちゃんがいるのでパトロールしたいんです。」
「しょうがないわね。天海大尉の出撃を許可します(まあ、コスモゼロに乗ってる分には、そこそこ操縦できてたからいいでしょう)。気をつけてね。無理と思ったらさっさと帰ってくること。」
「行ってきます。」
「ガミラスの戦闘機出現。」
「航宙隊は、戦闘しつつヤマト側面と真上にひきつけなさい。」
ブラックファルコン隊は、戦闘しつつヤマトの真上とパルスレーザー砲塔群の前にガミラス戦闘機をひきつけ、次々に撃墜されていく。真上のガミラス機は煙突ミサイルに貫かれて次々と四散した。
「ヤペトゥスの北緯40度、東経60度の位置にガミラス基地発見。20機の陸攻が発進してきます。」
「春香ちゃん、こちらへひきつけてヤマトへ帰って。」
「小鳥さん、基地を爆撃してから帰ります。」
春香はガミラス機の死角を飛行してやり過ごすと基地の攻撃をはじめた。しかし、それに気がついたガミラス機群がもどってくる。
「基地撃破完了。きゃあ。」
帰還しようとする春香機を4機のガミラス機が囲んだが小鳥のファルコン隊がすんでのところで間に合って、機銃で次々ガミラス機を撃墜していく。
(やっぱかなわないや。こんなふうに赤羽根教官も撃墜されちゃったのかなあ。)と春香は思ったが我に返って、
「小鳥さん後は任せます。」
「了解。ここは、まかせてヤマトにもどって。」
小鳥機はガミラス機をひきつけると宙返りをして、機体を左側に捻らせて旋回し、ガミラス機の真後ろに着いた。ガミラス機のパイロットからは小鳥機が消えたかのように見えたであろう。この小鳥の神技ともいうべき「左捻りこみ」にガミラス機はたちまちのうちに5機、6機と後ろへ回りこまれ落とされていく。
また小鳥機は、ガミラス機の前で機体を微妙にスライドさせて飛び、敵の機銃をながすようによけていく。
他の機は三機一隊でガミラス機を落としていき、巧みにヤマトへ帰還し、パルスレーザーの砲塔前に引きずり込む。
その間に無事に探索艇はヤマトに帰還し、
「コスモナイト採掘隊、帰還しました。」と技術班が舞に報告する。
その後数分たって春香機はなんとかヤマトに着艦。
「天海大尉、ただいま帰還しました。」
「無理しないでって言ったでしょう。」
「はい。すみません。」
小鳥が帰還したのはさらにその数分後であった。
「皆無事に帰還したようね。中央作戦室に集まって。」
と舞は全員に命じた。
「これからワープしていよいよ冥王星空域にでるわ。無駄な戦闘は極力避けていきたいところだけど、遊星爆弾をさんざん地球に降らせ続けた冥王星基地だけはたたきつぶす。」
舞はにやりとしてこぶしを握って胸の位置まであげてみせる。
「冥王星の表面には熱源反応のある箇所が30箇所ほど確認されているわ。このうちひとつがガミラス太陽系方面軍の中枢基地ってことね。」と説明をつづける。
「ガミラス冥王星基地はおそらくなんらかの遮蔽装置で発見されないようステルス化しているものと思われます。一方こちらにも次元波動装置を応用した波動防壁でたいていの陽電子ビームについては防御できます。」律子が重要な情報を付け加える。
「ヤマトが敵をひきつけている間に航宙隊がニクス、カロンといった衛星の陰に隠れつつ、冥王星に接近、基地を発見しだい航宙隊と艦砲射撃で叩きます。」春香が作戦を説明する。
「意見具申。」
「水瀬中尉、どうぞ。」
「波動砲で冥王星ごと吹き飛ばすってのはどうかしら。」
「伊織、実は冥王星にはあの酷寒のなかで生きている原生生物がいることがわかってるの。火星、エウロパ、タイタン、エンケラドスで発見されたのも驚きだったけどまさか冥王星にもいるとはおどろきだった。さすがの私でも太陽系の同胞を死なせるのはしのびないわ。」
「でも航宙隊に犠牲がでることを防げます。」
「伊織ちゃん、気持ちはありがたいけどだいじょうぶだから。」
「小鳥...」
「波動砲を使用しないのは既定事項よ。水瀬中尉、絶対大丈夫だからみんなに任せて。」
「はい...」
「では、みんな自席にもどって。ワープ準備、各自ベルト着用。」
数分後、土星空域からヤマトの姿は消えた。
ヤマトは、木星圏をみごと脱出し、ガミラスの妨害を受けながらもコスモナイト採掘に成功する。いよいよ遊星爆弾を発射してくる冥王星基地を叩くときが来た。
コスモナイト採掘を行なった土星の衛星は旧作だとタイタンで2199だとエンケラドスですが、現在の知見だとタイタンは分厚い大気の描写やメタンの湖の描写が必要になります。エンケラドスは小さすぎるのでとびはねてしまって採掘どころでないと思い、ヤペトゥスにしてみました。反重力車と反重力靴が安定するのに限界の重力であるというオリジナル設定に、岩石でできた衛星ですのでエンケラドスの氷の描写をなくし、春香には兄はいないし、旧作では名場面であった『ゆきかぜ』と戦士の銃の描写もなくました。
舞は艦長なので、夫の『ゆきかぜ』をみつけるという設定には無理があるという理由もあります。
小鳥は加藤の位置づけなので旧日本海軍にはそういう技術をもった方がいたのを最近知ったので、操縦でチートぶりを見せる描写を加えました。
艦載機のブラックファルコンとは、2199ネタです。つまり「ハヤブサ」です。
また春香は操縦はダメでもなぜかコスモゼロだけは操縦できることにしました。そうしないとのちのち描写に困るのでw。
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第4話 ガミラス冥王星基地の敗北
そんなヤマトを待ち構えるガミラス冥王星基地はおそるべき兵器をもってヤマト撃滅を図る。
それは、「反射衛星砲」といい、反射板搭載衛星を用いてどこへ逃げても攻撃可能という、死角のない罠というべきものだった。
その頃ガミラス冥王星基地では...
「ヤマトが土星ヤペトゥス基地を破壊後、ワープしたもよう。」
「ヤマトはおそらくこの冥王星基地へ向かってくるだろう。かれらの地球をあのような星にしたのだからな。」シュルツはつぶやく。
そのとき、メインパネルにいかにもどら声でほお骨と無精ひげが目立つあまり上品とはいえない男の顔が画面に映し出された。
「わしは、銀河系方面軍司令、ゲールである。ヤマトは必ず冥王星基地をたたきに来るだろう。君たちがそれを撃破して総統への忠誠を見せるのだ。」
「われわれザール人も総統への忠誠にかけては、純血ガミラスの方々にひけはとりません。」
「がはは。わかった。吉報を期待してるぞ。デスラー総統万歳。」
「デスラー総統万歳。」シュルツも最後の総統万歳のみは唱和する。
「やつは、戦果を自分の手柄として報告するでしょうね。」
「そうであっても戦わねばならん。反射衛星砲発射準備。」
「反射衛星4号、リフレクター展開。修正5度」
「反射衛星7号、リフレクター展開。修正4度」
「岩塊072号に照準固定。反射衛星砲発射。」
反射衛星砲の光条が命中すると平たい形をした岩塊は火を噴きながら太陽方面に向かって飛来しはじめた。
ヤマトは無事に冥王星空域にワープアウトしたところだった。
「ワープ終了。」
「エンジン異常なし。」
「火器管制異常なし。」
「カイパーベルト天体、F9393ガ軌道ヲハズレ、内惑星軌道ニ向カッテ飛来ヲ開始。遊星爆弾デス。」
「悪魔め。」と舞はつぶやいた。
「30宇宙キロの範囲内に敵影なし。」
「冥王星基地攻略作戦を開始します。航宙隊アルファーは北半球を、ブラボーは南半球を偵察してください。航宙隊の指揮は天海さんにまかせます。」
「アルファー分隊、ブラボー分隊発艦します。目標発見まで通信管制。ECM起動。各分隊、成功を祈ります。」
「ラジャー。」
しかし、この様子をガミラス偵察衛星がとらえていた。
「シュルツ司令、ヤマトが接近してきます。赤道面で28宇宙キロです。」
「反射衛星砲発射用意。」
「薬室内圧力上昇。」
「反射衛星2号、リフレクター展開。修正3度」
「反射衛星6号、リフレクター展開。修正5度」
「反射衛星21号、リフレクター展開。修正4度」
「反射衛星砲発射30秒前。」
「「反射衛星砲発射。」
氷に包まれた湾内からうす赤い光条が飛び出して、反射衛星に到達すると鏡が光を反射するように光条が反射される。それが数回繰り返され、ヤマトに向かってきた。
「エネルギー反応。これは大きいです。」
艦内に轟音が響いた。
「波動防壁が貫通され、左舷に被弾。」
「3時方向からの敵のロングレンジ攻撃と思われます。」
「弾道解析して。」
「弾道解析しました。敵の艦影なし。死角と思われる位置へはいります。」
「いやにデブリのようなものが多いわね。アナライザー解析して。」
「了解。」
「敵に息つく暇を与えるな。反射衛星砲発射。」
再び衛星の反射板が鏡のように光条を反射し、それ数回繰り返され、ヤマトに向かってくる。
「デブリト思ワレタモノハ、敵ノ人工衛星デス。エネルギーヲ反射、中継シテコチラヲ攻撃シテクルモヨウデス。」
「なにか昔のアニメで見た「バベルの光」と「しもべの星」のようね。衛星の数が多いから実質この空域には死角がない。どの衛星をつかうのか見極めないと防げないわね。」
「発射の信号と砲台の位置を特定できないかしら。」
「また、光学エネルギー接近。先ほどの攻撃と同じ光線砲です。」
「千早ちゃん、コースターン」
「はい。」千早は船体をずらし、そのすぐ脇を反射衛星砲のうす赤い光条が通過した。
「アナライザー、次の発射信号を確認して。」
「了解。発射信号捕ラエマシタ。水瀬サン、中継衛星ノ座標送リマス。」
「了解。一番砲塔、発射信号で指定された衛星に向けて発射。続いて2番砲塔その付近の衛星へ向けて発射。」
ショックカノンの光条が、うす赤い光条を中継しようとした反射衛星を火球に変え、その周囲の衛星も火球に変えた。その模様が冥王星基地のスクリーンに映し出される。
ガミラス冥王星基地では、シュルツは唇をかみ締めていた。
「ヤマトめ。もう反射衛星を発見したのか。」
「ですがやつらはまだ反射衛星砲の砲塔は確認できていない模様です。」
「やつらの射程外から攻撃してやる。」
「反射衛星砲、発射準備。反射衛星103号、リフレクター修正5度、125号、リフレクター修正3度、112号、リフレクター修正4度。143号、リフレクター修正1度。」
「薬室内圧力上昇。発射30秒前。」
「発射信号ヲトラエマシタ。弾道解析完了。コチラノ射程外カラネラッテクル模様。最後ノ反射衛星ハ7時ノ方向。」
「了解。」千早は船体を動かして反射衛星砲の弾道をたくみにかわした。
「春香さん、アナライザーさんに解析してもらったこれまでの弾道解析データを送りますぅ。砲台の位置を特定してほしいですぅ。」
「天海サンニコレマデ発射サレタ弾道解析データヲ送リマス。」
「了解。」
「北緯45度、西経30度付近の氷結した湾内付近にあると思われます。」
一方、ガミラス冥王星基地
「敵が砲台の位置を絞り込んできたようです。」
「うぬぬ。迎撃機を発進させろ。」
「前方、2時、「オーロラ」内から敵迎撃機5機出現。敵基地が近くにある模様。」
「小鳥さん、ブラボー分隊で北緯45度、西経30度付近の氷結した湾内にビーム砲台がないかさぐって。わたしは、「オーロラ」の内部に敵基地がないかさぐります。」
「了解。ブラボー、北緯45度、西経30度付近に向かいます。」
春香はオーロラのある方向に岩の隙間を発見し、コスモゼロで低空飛行し入り込んでいく。
「警告、警告、計測不能のエネルギー反応あり。」
一瞬、視界が白くなり、再び開けると、青黒色のキノコのような建造物が林立している空間に出た。その周囲には8箇所の「街灯」のような施設がみられる。春香とアルファー分隊は、その「街灯」へ向かってミサイルを発射し、次々に破壊していく。
「こちら天海、敵基地発見。北緯47度50分6秒、西経32度32分7秒。アルファーの火力じゃ足りません。ただいま敵陸攻と交戦中。」
「ステルスシールド発生装置が破壊されました。」
「司令。ここにいては危険です。脱出しましょう。」
「ぐぬぬ。」シュルツは部下たちとともにドッグへ向かって姿を消した。
一方で、ブラボー分隊は、反射衛星砲が発射される瞬間を捉えた。
「敵ビーム砲台からただいま発射反応。座標送ります。」
「にひひっ。いよいよ天才砲手伊織ちゃんの出番ね。狙点固定。目標敵ビーム砲台。主砲発射。」
ショックカノンの光条は反射衛星砲台に命中し、爆発光と煙がもくもくと広がった。
「ビーム砲台のエネルギー反応消失。破壊に成功した模様。」
「ブラボー、敵基地攻撃に向かいます。」
「これから最大射程で主砲発射準備にかかります。アルファー、ブラボーはただちに帰還しなさい。」
「アルファー、ブラボー、帰還します。ただいま敵基地より1宇宙キロ」
「北緯47度50分6秒、西経32度32分7秒。狙点固定。主砲発射。」
爆発光と煙が立ち込めた。ガミラス艦が脱出しようとするが基地の爆発に巻き込まれて30隻が火球に変わり、脱出に成功したのはわずか4隻であった。
「敵艦発見。戦艦1、巡洋艦1、駆逐艦2」
「主砲発射。目標敵駆逐艦。」
ガミラス駆逐艦がショックカノンに貫かれ、火炎と煙に包まれる。
「敵巡洋艦向かってきます。」
「うーぬ。伊織ちゃんの本気を見せてあげる。2番砲塔、敵艦橋に狙点固定。発射。」
必死に砲撃するヤレトラー艦は船体と艦橋を貫かれた。
「ぎゃああああーーーー。」
舞は勇敢な敵副将の艦に敬礼した。
一方、冥王星基地旗艦からその様子見ていたガンツは「ワープせよ。」と命じて、シュルツの冥王星基地旗艦はワープし戦闘区域から消えた。
「これで冥王星基地は終りね。もう地球に遊星爆弾が落ちることはない。これから地球から5.9光年のバーナード星にワープします。」
「ワープ準備、各自ベルト着用。」
「ワープ終了。バーナード星まで40宇宙キロ。」
「前方、宇宙機雷デス。ヒトリデニ近ズイテキマス。」
「機雷と機雷の間にも電磁波が出ているわね。それに引っかかったらヤマトは、爆発してしまうわ。」
「この機雷はなんらかの信号で動いているようです。コントロールする機雷があると思われます。わたしとアナライザーで探ってみます。」
「律っちゃん、おねがいね。」
5分後
「如月さん、右5度」
「右5度。ヨーソロー。」
「艦尾気持ち上げ。左2度。」
「艦尾上げます。左2度。ヨーソロー。律子さん、どんどん機雷が接近してくるわ。コントロール機雷はまだ発見できませんか。」
「こちら秋月。まだ発見できないわね。ただし、電波が強くなっているわ。」
7分後
「コントロール機雷発見。宇宙遊泳で接近します。」
「艦首上げ。左4度。」
「艦首上げ。左4度。ヨーソロー。」
「コントロール機雷の電波発信源確認。解体します。」
作業が開始されてから2分が経った。
「発信機解体成功。」
「機雷がとまったわ。でもこのままでは進めないわね。」
「律子さんとアナライザーがさわってなにもなかったのなら、人間が触っても爆発しないのでは?」と千早がつぶやく。
「艦長、わたし行って来ます。戦闘班で手のすいている人は船外活動で機雷の移動お願いします。」
「秋月技師長、春香さんが機雷除去に向かうということですぅ。」
「春香、ありがとう。技術班も連れて行ってもいいわよ。」
「律子さんありがとうございます。技術班の方もよろしければお手伝いをお願いします。わたしについてきてください。」
「こちら真。機関部で手のすいている人は、機雷の移動おねがい。」
こうしてヤマトは機雷原を突破したのだった。
ガミラス冥王星基地攻略に成功し、バーナード星宙域にはられたデスラー機雷の機雷網を突破するヤマト。しかしガミラスの総統デスラーは自ら作戦をたててヤマトを待ち構える。
ちなみに律子のいう「昔のアニメ」とは、ジュール・ベルヌの『海底二万マイル』を元に大のヤマトファンの方が作った例の作品ですw。
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第5話 デスラーの罠
ガミラス本星、デスラー総統の寝室には、副総統のヒスが戦況報告のために訪れていた。
「総統」
「ヒス君。君は寝室にいるわたしをつまらない用事で起こすなと命じたはずだが。」
「実は、ヤマトが機雷原を突破したもようです。」
「何い?」
「地球人たちは、われわれの思いもつかない手段で機雷原を突破しました。つまり手で動かして...。」
「ふふふ....ふははははは。ヒス君、あの機雷の名前はなんといったかな。」
「はつ。誠に申し訳ございません。」
「地球人にヤマトか。まあ、よい。野蛮人らしい素朴な発想に感服したとしか言いようがないな。次の作戦はわたしが指揮をとろう。このグラスを見たまえ。」
「総統、この黒いものはなんでしょうか。」
「これはガス生命体だ。見ろ。」
デスラーはブラスターをガス生命体に向けて撃った。
黒い生命体は、ブラスターの光線を吸収し。電気を発しながらぐんぐん大きくなっていく。
デスラーがガス生命体にブラスターを投げ込んだら、ガス生命体はさらに大きくなった。
天井にある吸収装置がガス生命体をすいこんでいく。
「ヤマトの運命は、このガス生命体にのみこまれるか、バーナード星につっこむかいずれしかない。赤色矮星とはいえ、若く活発な星であるのは変わりない。至近距離なら溶鉱炉と同じだ。生命が生きていくことはできない。このガス生命体を封入した魚雷をシュルツに送れ。復讐戦と名誉回復の機会を与えるのだ。」
「ははつ。」
シュルツは、バーナード星第一惑星ガミラス基地へのがれていた。
「シュルツ司令。ヒス副総統がでました。」
「シュルツよ。聞け。総統より復讐戦と名誉回復の機会をあたえる。この特殊魚雷には、すべてのエネルギーを吸収して成長するガス生命体が封し込められている。艦隊を率いてバーナード星の至近距離でヤマトへ向かって放つのだ。ヤマトは、このガス生命体にのみこまれるか、バーナード星につっこんで、飛んで火にいる夏の虫になるしかない。どうだやれるか。もし成功しない場合はヤマトと刺し違えてでも沈めろ。ガミラス軍人の意地をみせるのだ。」
「ははつ。必ずやヤマトを沈めます。」
シュルツは揮下の艦隊を率いて第一惑星基地から出航した。
「真。」
「どうした?千早。」
「艦の速度が落ちているわ。スピードが出ない。」
「エンジンの調子はどうだ、亜美、真美。」
「まこちん、エンジンは異常ないよ。なにかに反応して自動制動装置が働いて速度が落ちてるみたい。」
「超磁力バリアーデス。ヤマトノ周囲ニ張リ巡ラサレテイマス。」
「バリアーがないのはバーナード星の方向だけね。」
「後方5時ノ方向及ビ7時ノ方向カラガミラス艦隊出現。」
「ガミラス艦隊カラ発射反応。魚雷10コチラニ向カッテキマス。」
「魚雷ガ自爆シマシタ。」
「何なのかしら。」
「魚雷の自爆した方向の星が消えたわ。いや宇宙空間にある微量な物質が自爆地点から吸収されてる。」
「黒色ガスノヨウデス。少シヅツ大キクナッテイマス。」
「ただの黒色ガスじゃないわ。ヤマトのエンジン噴射口にひきつけられている感じ。エネルギーや物質を吸収して成長するガス体よ。」
「じゃあ、主砲を撃ったりしたら?」
「間違いなく大変なことになるわね。」
「それにしても、ぴったりくっついいてくるわね。ど変態ガス。どうしたらいいのよ。この天才伊織ちゃんのせっかくの出番がないじゃないの。」
それまで黙っていた舞が決心したように言った。
「これよりヤマトはバーナード星付近に突入します。」
デスラーが総統府でメインパネルを見ている。
「ふふふ。ヤマトは、溶鉱炉へ突入する道を選んだか。」
「真。艦の速度が落ちているわ。ここままだとバーナード星に引き込まれる。」
「バーナード星のエネルギーを吸収して艦内空調システムフル稼働でしているけど外の温度が高すぎて船体は高温のために外面が溶けかけてる。艦内温度はなんとか50度。」
「エンジンの調子はどうだ、亜美、真美。」
「まこちん、なんかエネルギーが吸収されている感じだよ。なにか外にエネルギーを吸収するようなものがいるの??。」
「例のガス体ね。バーナード星の近くにいるおかけでかろうじてヤマトは動いているけど...」
「如月さん、スウィングバイができるバーナード星の周回軌道に乗って。」
「了解。右30度。」
「!!前方に巨大プロミネンス出現。幅は地球の10倍です。」
「くっ...よけきれない。」
「波動砲発射準備。」
「舞!」
「律子、このままだとガスに飲み込まれるかプロミネンスで溶けるかどちらかしかない。バーナード星の近くにいるからエネルギーの回復は通常よりも早いわ。ここは撃つしかない。」
「はい、わかりました。」
「春香ちゃん、発射お願い。」
「はい。波動砲発射準備、波動エンジン内圧力上昇。エネルギー充填開始します。」
「波動砲安全装置解除。最終セーフティロック解除。」
「電影クロスゲージ明度45。エネルギー充填120%、総員対ショック、対閃光防御。」
「波動砲発射10秒前。9、8、7、....2、1、0、波動砲発射。」
波動砲の閃光と巨大な光のエネルギーの束がプロミネンスをうがって地球の直径はあるかとおもわれる孔がうがたれた。ヤマトはありあまるバーナード星のエネルギーを波動エネルギーに変えて航行しつつエネルギーを回復し、フルスピードでプロミネンスの通過し、スウィングバイのための周回軌道に乗ることに成功する。ヤマトをおいかけてきたガス生命体はヤマトよりも大きなエネルギーを放つバーナード星本体にとりつこうとしたが、その膨大なエネルギーと炎に包まれ逆に燃え尽くされていった。
シュルツは、作戦の失敗をさとったがまだあきらめてはいなかった。ガミラス軍人の意地を最後まで見せるのだ…「追え、ヤマトを追うのだ。」と揮下の艦隊に命じて追いかけようと試みる。しかし、プロミネンスに波動砲でうがたれた孔はヤマト通過後にみるみるふさがっていく。
「司令、前方にプロミネンス。よけ切れません。」
プロミネンスは、波打つ巨大な竜となってシュルツ艦隊におそいかかった。シュルツ艦隊の艦列の前方にいた艦はあっという間に溶けて蒸発した。後方の艦の中は、高温と悲鳴に包まれたがそれも一瞬で、艦列の前方の艦と同じ運命をたどった。
「ガス体が燃えていきます。」
「大きなエサに飛びついて自滅したというわけね。後方のガミラス艦隊もプロミネンスに飲み込まれて全滅したみたいだし。」
「波動エンジン出力最大。」
「スウィングバイ軌道にのりました。5分後にバーナード星の引力圏を脱出します。」
「銀河系外延部のマゼラニックストリーム近傍へ抜け、さらに大マゼラン雲方向へ流れている亜空間回廊でいっきに3万光年をワープし、銀河系と大マゼラン雲の中間地点のバラン星に向かいます。」
「いよいよ銀河系を抜けるわよ。バーナード星引力圏を脱出後、ワープします。」
ヤマトはオリオン腕付近の空間から姿を消した。
「ぬう。ヤマトはバーナード星系近傍からワープしただと。」
「はい。シュルツ艦隊は全滅し、ガス生命体もバーナード星に取り付きましたが燃えてしまいました。」
「シュルツは二階級特進だ。ガミラス名誉市民勲章を贈ってやれ。それから遺族には不自由させないだけの報奨金を送ってやるのだ。」
「ははつ。きっとガミラス臣民は総統をたたえることでしょう。」
「うむ。それからドメル将軍を小マゼラン戦線から召還するのだ。」
「ははつ。」
ヒスはデスラーの命令を受け、ドメル召還の準備をするとともに、バラン星のゲールにドメルへ召還命令があったことを伝えた。
「ゲール、総統のご意思はドメルを召還して銀河系方面の戦線に当たらせるということだ。この意味はわかっているだろうな。」
「ははつ...。」ゲールは蒼くなってヒスへの返事をした。
「なんとか、ドメルが来る前に...」
「そういうことだ。」バラン星ガミラス基地のメインパネルからヒスの姿が消えるとゲールは半ば呆然とその真っ暗な画面を眺めていた。
旧作の赤色巨星アルファ(ベテルギウスか?)の場面は、ひおあきら版ですとベーター星(あの青色巨星リゲルか??表面温度は数万度、近づくだけで蒸発してしまいそう。)、2199ですと赤色矮星グリューゼ581になっていますが、グリューゼ581と同じような赤色矮星(スペクトルM5型)で天文、SFファンにはおなじみのバーナード星に登場してもらうことにしました。
ついにガミラスの総統デスラーは、ルビー、サファイアなど小マゼラン戦線で戦う名将ドメルを召還する決心をします。
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第6話 ヤマト、異次元空洞と宇宙要塞を突破せよ
一方、ヤマトは、銀河系を抜け、異次元回廊でバラン星まで行こうと試みていた。
そのころガミラスの名将ドメルは、小マゼラン戦線にてガトランティス艦隊相手に善戦、いや敵を圧倒していた。ガトランティスはアンドロメダ星雲を制圧中で、小マゼラン雲にも侵攻してきていた。後に銀河系及び地球の侵略を試みることとなるガトランティスであるが、艦隊戦はそれほど強くない。
「敵艦隊接近。50宇宙キロ。」
「着弾しました。」
「第七戦闘団バーガー少佐、敵艦隊に楔を打ち込め。」
「了解。」
ガミラス艦隊は、ガトランティス艦隊に一点集中砲火をあびせ中央突破をはかった。
薄赤色の光条がガトランティスの駆逐艦、高速中型空母、大型空母の甲板と甲板の間を
貫いて次々爆発光と煙幕に変えていく。
「包囲して平らげろ。」
中央突破を図ったガミラス艦隊は背面展開を行い、たちまちのうちに円陣による包囲陣を築いた。ガミラス艦隊のすばやい攻撃と一転集中砲火により、ガトランティス艦隊は、円形回転砲塔によってガミラス駆逐艦を数隻沈めるものの、その10倍の艦艇が、艦載機デスバ・テーターを飛ばすこともできずに撃沈、撃墜されていく。
「敵艦隊の七割を殲滅。やつらは逃げるように退却していきます。」
ドメルは満足そうに戦況をみつめ、副官ハイデルンに
「お前の楽しみがなくなるな。」と笑いかけた。
「まったくです。」初老のハイデルンは、尊敬する司令官にわらいかける。
そのとき通信士がドメルに話しかける。
「ドメル司令、首都から入電です。」
「バレラスから?何だ?」
「ヒス副総統がでます。」
「ドメル、君に召還命令だ。首都で特一等デスラー勲章が授与される。」
「わたしは、前線指揮官です。わたしを召還してしまったら敵を利するのではありませんか。」
「総統にはお考えがあるようだ。後任者も決まっているし、君は二階級特進になって別の戦線に派遣されることも決まっている。」
「わかりました。帰還いたします。」
ドメルは5千隻の艦隊を率いて帰還した。
そのころ、銀河系外縁部をヤマトは航行していた。
「ワープ開始後、2秒経過。」
「!!何か様子がおかしいわね。」
「なんでワープ開始後からの時間が普通に測れるのかしら。」
「!!エンジンが停止した。亜美、真美どうなってるんだ??」
「まこちん、わからないよ。なんかエネルギーが吸われてる感じだよ。」
「なんか宇宙船の残骸のようなものがただよってますぅ。」
「なんか異次元空間なのかしら。昔の天文学者が、五億年前に大マゼラン雲が通過してすれ違ったときに水素ガスが噴出して離れていく銀河系との間に長い架け橋のようなものができた。秒速200kmのスピードで大マゼラン雲から銀河系へ向かって流れているんだけど、その逆に銀河系から大マゼラン雲から流れている流れがわずかにあるの。その流れにのって大マゼラン雲まで行こうと考えていたんだけど...。」
「律子、そのマゼニックストリームには、正体不明の空洞があるという説もあったわね。今確認するのは、現在の座標が予定地点なのか確認する必要があるんじゃないかしら。」
「そうですね。マゼラニックストリーム近傍へ抜けるというのは、地球にいた時点で計算した座標だから...アナライザー、現在位置を特定して。」
「現在座標、銀径20度5分、銀緯マイナス10度7分デ地球カラ4万1000光年ノ位置デス。
異次元空間ノセイカコレ以上正確ナ座標ハ示セマセン。」
「計算は間違っていなかったようね。マゼラニックストリームの位置が地球観測時とずれたと考えるしかないわね。」
そのころヤマトが異次元空洞にはまったことを知ったガミラス艦隊が接近していた。
「航海長。ヤマトの異次元空洞はこの近くのはずだろう?。」
「ゲール司令。ヤマトは我が艦隊の前方6000宇宙キロの異次元空洞にいます。」
「ヒス副総統からドメルが召還されたと聞いた。シュルツの敗戦の責任を問われる前にヤマトを倒さねばならんのだ。全艦密集隊形で続け。」
「ヤマトまで300宇宙キロ。射程距離に突入しました。」
「よし。全艦隊主砲斉射。」
「後方よりガミラス艦隊、主砲斉射してきます。」
「総員戦闘配置。砲雷戦用意。波動防壁展開。反転180度。」
ガミラスの主砲を波動防壁で防御しつつ、ガミラス艦隊を迎え撃つ。
「ガミラス艦隊が来たということはどこかに空洞の出口があるはず。逃げる方向へ着いていけば脱出できるはず。」
ヤマトのショックカノンの光条は次々とガミラス艦隊を貫き、引き裂き四散させていく。
「うぬぬ。なんという攻撃力だ。」
「ガミラス艦隊に告ぐ。これ以上戦うのは無益である。降伏されたし。」
ガミラス艦隊は、旗艦を含め、ついに二艦まで撃ち減らされた。ゲールはこの状況からどうすればいいか打算をめぐらす。
「脱出だ。引き返せ。」
「ヤマトがぴったりついてきます。」
「もっとスピードをあげるのだ。」
「これ以上スピードを上げるとエネルギーの消耗でこの空洞から脱出できなくなります。」
「うぐぐ。」
「司令。ヤマトは撃ってきません。おそらくこのまま無事に抜けられるかと。」
「通常空間に抜けたらただちにワープだ。こんどこそヤマトを沈めてやるのだ。」
「通常空間に抜けられました。ガミラス艦隊ワープします。」
「追わなくていいわ。現在座標を確認して航路の設定をして。それから敵基地のありそうな場所を探索して。」
「航路の設定をします。マゼラン雲方面への亜空間回廊にはいるには100光年先になります。」
「その地点に何もなければいいんだけどね。ワープ終了後、ただちに総員戦闘配備ね。」
「ワープ準備、各自ベルト着用。ワープ目標亜空間回廊入り口、10秒前,9,8,7,・・・0、ワープ。」
「ワープ終了。座標確認、目標地点に到達。」
「波動エンジン以上なし。」
「艦の損傷認めず。」
「千早、タイミングに誤差がなくなってきたわね。」
「はい。艦長、律子さん。おかげで艦の損傷やエンジンへの負担をかけずにすむようになってわたしもうれしいです。」
「前方500宇宙キロにサツマイモ状の物体二基がありますぅ。」
「やな予感がするわね。ステルス探査装置を発射しなさい。」
「ステルス探査装置、発進させます。」
「ステルス探査装置の様子をおってみて。」
探査装置は、一対のサツマイモ状の物体について、50kmまで接近し、縦1km、幅300mであることを伝えてきたがやがてばらばらになって爆発した。
「探査装置の様子を動画で記録してみました。」
「どう?春香?」
「なんか継ぎ目が外れてばらバラになっている感じですね。」
「亜空間回廊の入り口を守るガミラスの宇宙要塞で、マグネトロンウェーブを発信していると思われます。」
「あそこを通過するかしないかによって日程に大幅な差がでるわ。律子、なんとか処理してもらえない??」
「すでに継ぎ目のないシームレス戦闘機を製作しました。」
「アナライザーは継ぎ目があるからつれていくわけにはいかないわね。小鳥、何かあるといけないから律子に護衛でついていってあげて。」
「はい。わかりました。」
シームレス戦闘機にもかかわらず、接近するとマグネトロンウェーブの影響で機体のがたつきが感じられる。
「射程距離にはいったわ。小鳥さん、あの孔に機銃を打ち込んでみて。」
「はい。」
機銃を発射すると、孔はシャッターでしまる。
「やはり...外からの攻撃があれば、それに反応してシャッターがしまる仕掛けになってるってわけね。そうなると内側からの破壊するしかないわね。」
二人と一台は、「サツマイモ」要塞の孔のうちひとつにシームレス戦闘機を接舷させて内部にはいっていった。通路は腸の内部のようにひだがある。
「小鳥さん!」
みると伝説の首なし騎士「デュラハン」のような監視ロボットが通過していく。
全体は、銀色のよろいをまとったように見えるので、「デュラハン」のようなイメージだが、首を斬った痕のようなものはなく、胸がやたらにおおきく、頭部をかねたように見える。胸には、ひし形を細くしたような黒色の部分が逆ハの字というかV字状に二箇所あり、丸いモノアイがうごいている。全体的な形は、某国民的人気アニメのジオン軍のスゴックに中世ヨーロッパ騎士のフルプレートを着せたらこうなるみたいな姿をして、両腕には三またの鋭いツメをもっている。
小鳥はあわてて、「デュラハン」の死角になる通路に隠れた。
通路を延々と歩いているうちに律子はコンピューターの回路のような構造であることに気がつき始める。
1時間ほどたったであろうか。
「律子さん。」と小鳥が叫んで、「デュラハン」を銃撃して倒す。
「あぶなかった...ありがとう小鳥さん。」
「いいえ、どういたしまして。それより律子さん、もうかなり歩いてますけど...」
「小鳥さん、どうやらこの通路の配置から考えてコンピューターの構造のようになってるみたいだと気がついたの。この要塞の動力源の場所がわかってきた。」
律子が右側へ数メートルいくと広い空間に出た。中央部にまるいものがあり、ボイラーパイプかエネルギー伝導管のようなものがうにのとげのように数十本「生えて」いる。
そこへ接触しようとすると警報がなった。例の「デュラハン」を呼び寄せる警報に違いなかった。律子はすばやく時限爆弾をつけると
「小鳥さん、これにこれまでの通路と近道が記録してある。「デュラハン」の位置もわかるから脱出するわよ。」律子は小鳥にスマホよりやや大きいくらいのタブレットを見せる。
「はい。よろしくお願いします。」小鳥は律子に返事をしてついていくことにした。
幸いにも「デュラハン」は動力源の部屋に集まってくるだけで外へは出てこない。
律子と小鳥は、通路を右、左、右、右、左と巧みに「デュラハン」をさけてついに出口についた。シームレス戦闘機はみっつほど離れた孔に接舷されていた。
「壁に沿って宇宙遊泳ね。」
二人は宇宙遊泳してシームレス戦闘機に乗り込む。
律子は腕時計をみながら「あと3分ほどで爆発するわ。」
「発進します。」小鳥は操縦席ですばやく操縦桿をにぎってシームレス戦闘機を発進させた。
「ふたりから通信ですぅ。」
雪歩がうれしそうに第一艦橋の面々に伝える。
「秋月律子、音無小鳥、時限爆弾の設置に成功しました。これから帰還するところです。」
しばらくして一対の「サツマイモ」状の要塞は煙をはきながら大爆発をおこして炎上した。
「ゲール司令、宇宙要塞13号と14号が突破されました。」
「何!!」
「ヤマトは、あそこからいっきにバラン星に向かってくるもようです。」
「回廊出口でヤマトを待ち構えるのだ。バラノドン特攻隊、準備せよ。」
「ははつ。」
要塞がなくなったあとには、そこが亜空間回廊の入り口であることを示すフラフープのような円形の構築物のみが残されていた。
「それでは、亜空間回廊を使って一気に三万光年ワープするわ。各自ベルト着用。
それからあの要塞が破壊されたことはガミラスにも知られてるでしょうから出口で奇襲があるかもしれないわ。第一種戦闘配備で。」
ヤマトは、亜空間回廊にはいっていった。そして出口で目前にバラン星を望むことになる。
異次元回廊の入り口に敵が侵入しないよう、ガミラスはマグネトロンウェーブを発する宇宙要塞を配置していましたが、ヤマトはそれを突破しました。ドメルの派遣に伴い、いよいよ召還が近くなったゲールが必死に最後のわなを用意して待ち構えるバラン星に到着します。
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第7話 バラン星の攻防
そのころ、バラン星では、ゲールがバラノドン特攻隊の訓練を繰り返していた。
バラノドンは、バラン星に生息する生き物でふだんは団子のようになってバラン星の火山岩のミネラルがたっぷりとけこんだ海水にすみついている。比較的テイムがしやすく、犬を凶暴にしつけることが可能なように、飼い主の意向によっては猛獣のような怪物にしたてることができる。分裂合体が可能で真空中でも12時間は平気で生きていることができる。
ゲールは数年間かけてバラノドンを兵器としてしつけることに成功し、それはもうすぐ仕上がろうとしていた。
いつものように火山岩の粒子が溶け込んで褐色をした海水のなかをバラノドンの粒子の群れがレミングのように一定方向に進み、ころがりながら徐々に合体していく。バラノドンの合体形は、回転しながら空中に巨大なボールのようになって浮かび上がる。ガミラス戦闘機が発進し、ゲールが頭にかぶったイメージ投影機によってバラノドンに念波をおくり、バラノドンの変身体が形成される。
「う~む。まだわしのイメージ投影力がたりんのかもしれん。明日また実験しよう。」
ゲールは、部下である戦闘機の操縦手に話しかけ、部下は
「はつ。」と短く答えた。
翌日...ゲールは実戦を想定した訓練を行うことにして、部下に命じた。
「ヤマトの航行能力を想定したダミー艦を打ち上げろ。」
「はつ。」
「バラノドン特攻隊、出撃。」
褐色をした海水のなかをバラノドン粒子の群れが一定方向に進み、合体して回転しながら巨大なボールとなって空中に浮かんだ。
ゲールがイメージ投影機に念じるとバラノドンの合体形は「トリケラトプス」のような形になる。バラノドン完成形である。
「おお。ついに成功だ。」
バラノドン粒子が次々合体し、完成形の「トリケラトプス」形状になっていく。
「トリケラトプス」の群れは、さらに合体し、350mに達する「巨大トリケラトプス」になった。バラノドン最終形態である。
「「ヤマト」発見。座標H3、X3、Y-6」
「バラノドン、「ヤマト」を攻撃せよ。」
「ヤマト」のダミーはショックカノンを撃つがバラノドンは分裂して再び「ヤマト」におそいかかり、ついにダミーの「ヤマト」を破壊する。
「ぐふふ。ヤマトも同じ運命になるのだ。ドメルが来るまでにわしが片付けてやる。勝利報告で召還命令は取り消しだ。」ゲールは満足そうに笑っていた。
ヤマトは、亜空間回廊を抜けてバラン星空域に現れた。
「ワープ終了。」
「航路に間違いありません。」航海班の千早の部下が報告する。
「バラン星と思われる天体まで100宇宙キロ。」
ヤマトの第一艦橋の窓には全体的には暗黒であるが火山活動で赤道付近が赤く輝く惑星が見えている。
「艦長、これまでの航路データと現在位置です。」
「どうやらバラン星にまちがいないようね。」
「いよいよここまできたわね。」律子が感慨深げにつぶやく。
第一艦橋の面々は感慨深げに安堵の息が漏れた。しかしそれが長く続かないことをヤマトの面々は思い知ることになる。
「小鳥、航宙隊を率いて偵察に行って来てくれない?。」
「了解。音無小鳥、コスモファルコン隊で偵察に行ってきます。」
「わたしもアナライザーを乗せてコスモゼロで行ってきます。」
「春香、無理しないでね。」
「はい。」
「アナライザー、直径はどのくらいあるの?」
「約2千600万キロ。地球ノオヨソ二倍強デス。」
「あれ??なんか輝いている星のようなものが??太陽のように見えるけど??」
「ソウデス。アレハバラン星ヲ公転スル太陽デス。」
「ええつ??太陽のほうが回っているの??」
「直径オヨビ質量ハ地球ト同ジクライデス。」
「植物みたいなものが生えてるけど地下にもぐろうとしている。」
「前方ニ強イ金属反応ガアリマス。」
すこし遠くに大きなクレーターがあり、半分が水と思われる液体でみたされていた。カルデラ湖と思われ、火山岩の成分が溶け込んで赤茶けて見える。その周囲には人工的な構築物が点在している。その中央にはそれほどは大きくないもののひときわ目立つ塔のような構築物がそびえていた。
「あれは...基地なんじゃ...。」
「小鳥さん、基地らしきものを発見。あのカルデラ湖の周囲を探りましょう。」
「了解。」
「ヤマト、ヤマト、聞こえますか。」
「こちらヤマト。聞こえてますぅ。」
「みんな、基地ですよ、基地です。ガミラス基地を発見しました。これから調査にはいります。」
「基地....」
「基地ですってえ。」千早と伊織が顔を見合わせる。
ガミラス基地は、ヤマト艦載機に気がついて対空砲火がはじまる。それからガミラスの迎撃機の編隊が現れる。
「きた...。」
「春香ちゃん、ここは私に任せて、ヤマトに帰還してください。」
「小鳥さん。」
「春香サン。操縦代ワリマス。」
ためらっている春香を操縦席から助手席にもちあげて、アナライザーが操縦席に座る。
小鳥機は、ガミラス機の前で機体を微妙にスライドさせて飛び、敵の機銃をながすようによけていき、巧みにガミラス機をひきつけて撃墜していく。
「春香機、着艦します。」
「了解。アナライザーお手柄よ。」
苦笑いを」浮かべながら春香が第一艦橋に戻ると、舞は
「ゆっきー、小鳥さんにも帰還するよう伝えて。」
「了解ですぅ。」
「こちらヤマト、こちらヤマト、小鳥さん、帰還してください。」
小鳥がヤマトにもどってきて、数分もたたないうちに、ブーツブーツという警報音が空気を破った。
「レーダーに反応あり。右15度、500宇宙ノットで接近中。ビデオパネルに映します。」
「ガミラス機だわ。」
「総員戦闘配備。」
ガミラス機の後方には4つの卵形のカプセル浮遊体がついてきていた。
「バラノドン粒子、放出。」
ゲールが命じるとバラノドン粒子がカプセル浮遊体から放出される。
バラノドン粒子は合体を繰り返してたちまち完成形になる。
「ショックカノン、発射準備します。」
「目標、射程距離に入ったわ。右5度、相対速度+4、主砲発射。」
ショックカノンはバラノドン完成形の群れに命中するが、ばらばらと粒子にかわり、粒子はイナゴの群れのようにヤマトへ向かってくる。
「なんなのよぅ。あれはー。」
伊織は思わず叫んでしまう。
「なんか、ばらばらになるだけなのね。効き目がまったくないわ。」
千早がぼそりとつぶやく。
「また合体してうしろからついてくるわ。もう変態~。ど変態。どっかへいってよ。三番主砲発射~。」
「伊織ちゃん、落ち着いてよ。」
また再びばらばらになったバラノドン粒子はヤマトの前方で合体を繰り返し、ついに最終形態の「巨大トリケラトプス」になる。
そのとき舞は、「波動砲発射準備。」といった。
「艦長、ワープが終了したばかりで船体への衝撃が心配です。」
「今、この危機を乗り切るには、船体へ影響があるかもしれないけど、これしかないわ。春香、真、準備して。」
「エネルギー弁閉鎖。波動砲への回路開け。」
「エネルギー充填100%。最終セーフテイロック解除。」
「修正右3度。軸線にのりました。電影クロスゲージ明度15。対ショック、対閃光防御。」
「エネルギー充填120%。波動砲発射準備完了。」
「発射10秒前....3,2,1,0 、波動砲発射。」
艦首の波動砲口から宇宙空間を照らすように輝くエネルギーの奔流がバラノドン最終形態にうなりをあげてぶつかった。さすがのバラノドンも激しい熱と光の奔流につつまれ、押し流されて、爆発し、粒子も溶けて燃え尽きていった。
ゲールは愕然としたが、気を取り直し、
「退却だ。」と部下に命じた。
「逃がさないわ。主砲発射。」
伊織がショックカノンを撃つが、その光条は、空のカプセルを数個破壊するものの、ゲール機には当たらなかった。
ゲールは、
「基地へワープだ。」と操縦手に命じ、ゲール機はワープして消えた。
ゲールは、
「全艦隊、出撃。ヤマトをバラン星の上空に誘い込み、人工太陽をバラン星に落としておだぶつにするのだ。」
ゲールは30数隻の艦隊を率いてヤマトへの砲撃を行う。ヤマトの射程距離ぎりぎりに引きつけ、人工太陽をじわじわとバラン星に接近させる。バラン星基地からはミサイルが発射される。
「バラン星の周りを回っていた太陽が軌道から外れてバラン星に接近しているわ。」
千早が気づいて皆に話しかける。
「あれは、おそらく人工太陽ね。バラン星ガミラス基地かゲールの艦隊で操作されているんだわ。」律子が説明する。
「バラン星の上空に誘い込んで、人工太陽をバラン星とヤマトの上に落として自分たちは逃げる気ね。」舞がゲールの作戦を見破る。
「側面非常弁噴射して、波動砲の軸線を人工太陽、ゲール艦隊、ガミラス基地に並ぶように姿勢制御して。」
「ええい、忌々しいヤマトめ。人工太陽にヤマトを追わせろ。」
「はつ。」
「アナライザー、千早にゲール艦隊とガミラス基地の軸線の座標と小ワープ後のゲール艦隊の予想位置を至急計算して送ってあげて。」
「ハイ。計算シマス。」
「アナライザー、人工太陽が接近してくるからはやくしてね。」
伊織が心配そうに声をかける。
数分後に「結果ガ出マシタ。千早サン、座標送リマス。」とデータが入力され、千早の席に数字とアルファベットの列が表示される。
「了解。ワープ十秒前。」
「人工太陽接近してきます。あと15宇宙キロ。」
「ワープ。」
次の瞬間、ヤマトはゲール旗艦のパネルからその姿を消した。
「ワープしたか。」ゲールはくやしがったがあとの祭りである。
「ヤマト、ワープアウト。6時の方向、300宇宙キロ。」
「!! 後ろへ回りこまれたか。」
「いくわよ。主砲、発射。」
ショックカノンの光条は、ゲール艦隊を貫き、地上のガミラス基地に雨あられのようにふりそそぐ。地上からの人工太陽のコントロールは効かなくなりつつあった。
「ぎゃあああ。」
「人工太陽の...制御装置が破壊されました。もう...コントロール不能です。」
バラン星ガミラス基地の悲鳴がゲールの旗艦の艦橋内のパネルに映し出されたパネルから響いてくる。
「こうなったらこっちもワープしてヤマトの後ろへ回り込み、人工太陽で挟み撃ちにするまでだ。人工太陽とヤマトの後方の軸線上へワープせよ。」
「マゼラン方面への亜空間回廊入り口発見ですぅ。現在位置から2時の方向に2300宇宙キロ」
「人工太陽とヤマトの後方にワープする気じゃないかしら。やつらがワープしてきたら人工太陽の引力圏に急接近してスウィングバイして一気にワープするわよ。もうこの戦いはほとんど意味がない。さっきの攻撃で30数隻だったのがもう10隻を割ってる。やつは無事に本国に帰ったところで作戦の失敗の責任取らされて処刑されるのが関の山よ。」
舞はゲール艦隊が小ワープするのを確認すると
「人工太陽にゲール艦隊を飲み込ませるとともに一気にスウィングバイして亜空間回廊へ飛び込むわよ。」
ゲールは人工太陽を操作し、ヤマトにぶつけるつもりだった。
(ヤマトはわれわれの艦隊の攻撃で蜂の巣になり、太陽の中に落ち込んで火の中の虫の運命になるのだ….)
「ワープ。」
「ヤマトの後方にワープ完了。」
「主砲を打ちながらじわじわ追い詰めるのだ。」
「ゲール司令、ヤマトがスピードをあげて人工太陽に接近します。」
「ばかがw。ついに観念して、火の中に飛び込むか。」
「司令、人工太陽がとまりません。」
「何いい!!」
「こっちへ向かってきます。とまりません。あ~ヤマト、人工太陽でスウィングバイして…あれはマゼラン方面の亜空間ゲートへ向かっています。」
「うぐぐ…謀られた。」
「ぎゃあああああ。のみこまれる….」
とまらなくなった人工太陽はゲール艦隊を飲み込んだ。軌道をはずれ、バラン星へだんだん接近して行った。人工太陽は周回軌道を落ち込むように公転し、一週間後にバラン星へ落下し大爆発を起こすことになる。
ヤマトはバラン星空域でマゼラン方面へ向かう亜空間回廊の入り口を発見、ワープしてとびこみ、一路イスカンダルへ向かう道をいそぐ。出航後55日が経過していた。人類滅亡まであと310日しかないのだ...
人工太陽をバラン星に落としてヤマトをほうむりさろうとしたゲールの策略を逆手にとっていっきに大マゼラン雲までワープしたヤマト。その行き先には何が待ち構えているのか...バレラスに召還されたドメルとヤマトの対決の日が近づいていた。
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第8話 ドメルの挑戦状
その頃、ガミラス星では、小マゼラン戦線から名将ドメル中将が召還されていた。
ガミラスの総統デスラーは、大浴場につかっていたが、青年士官が時間を告げにおとづれた。
「総統、ドメル中将の叙勲及び昇進式典の準備が整いました。」
「わかった。」
バレラスの中央通りでは、「ドメル!」「ドメル!」の歓声が響くなか、ドメルが反重力艇に乗りそのあと兵士の行列が続いた。
デスラーは正装すると総統府の1階にある謁見台の階段の上にマントをひるがえしながら現れる。
今度は、「デスラー総統万歳!」「デスラー総統万歳!」の歓声が幾度となく繰り返される。
ドメルが右手をひじを曲げて90度上に上げる敬礼をするとデスラーも同じ答礼をする。
デスラーが謁見台の階段をおりて、
「ドメル中将、貴君を上級大将に任じる。また銀河系方面軍司令長官を命じる。」
とドメルに伝え、自ら特一等デスラー勲章をドメルの胸につけると歓声はいよいよ大きくなり、
「デスラー総統万歳!ドメル将軍万歳!」の歓声が繰り返される。
ドメルはデスラーに
「総統、小耳にはさんだのですが、例のオリオン腕のG型恒星の惑星に住む野蛮人どもの「ヤマト」とかいう船がシュルツの基地をつぶし、その恒星系を飛び出してきたとのことですが。」とささやくと
「なに、銀河系をうろうろしているところをひまつぶしにかまってやったがね。」
「わたしがひねりにいってきましょうか。」
「君を派遣する前に、ゲールを召還して度重なる作戦の失敗の責を問う予定だったが手間が省けた。君の場合は彼と違って勲章が増えるだけだろうがね。ただ、枕元に蚊がとびまわっているのは、愉快なものじゃないということだ。とっとと叩き潰してきてくれたまえ。」
「はつ。」
その頃、ヤマトは...
「ワープ終了。」
「波動エンジン異常なし。」
「艦の損傷みとめず。」
「バラン星から5万光年ワープしました。自動操縦に切り替えます。」
「技術班は、バラン星で採集した資料の分析をいそいで。」
「はい。鋭意行っています。」
ワープが終了し、自動操縦に切り替えたため、千早は操縦席を離れることができた。
春香が千早に声をかける。
「千早ちゃん、分析室に行ってみようよ。現時点でどれだけのことがわかっているのか。」
「そうね。今後の航海のことを考えても決して無駄にはならないわね。」
二人は分析室へ行き、春香が律子に声をかける。
「律子さん、ガミラスがどこから、何のために、どうやって地球まで来たのかわかってきましたか。」
「まあ、敵は、ヤマトの基地攻撃が終わった後、艦隊戦と人工太陽をヤマトにぶつけることにこだわっていたから短い時間ではあったけれど幾分かの資料はあつめられた。それで、なんとなくわかってきたことはあるわ。」
「っていうと...。」
「それは、ガミラス人がどうやら何らかの理由で地球に移住することを考えていたのではということよ。具体的には、ガミラスの本星も大マゼラン雲のなかにあるらしいこと、遺体を収容したところ、体形やDNAは私たち人類に非常によくにているけど、放射能耐性というか、放射能があるほうが都合がよい青い皮膚と遺伝子をもっていること、地球の放射能汚染の測定を行って、本国へ連絡していた記録があるということね。」
「放射能汚染の測定記録って…?放射能があるほうが快適ということですか。」
「わたしたちの常識からは考えにくいけど、そういう種族である可能性があるということね。わたしたちが火星や木星の衛星を地球のような環境に変えていくことをテラフォーミングっていうのは春香も知ってるわよね。」
「はい...ということは、ガミラスフォーミングって言っていのかわからないけどそういうことを遊星爆弾で試みてたってことですか。」
「そーいうことになるわね。」
分析室で春香と律子と、自動操縦で操縦席から離れて休憩していた千早の話に、元気な双子姉妹がわりこんできた。
「ねえねえ。りっちゃんにはるるん。さっきから「てらふぉあぐら」とか「がみらすふぉあぐら」って話してるけど、それっておいしいの??」
「あのねえ。「フォアグラ」じゃなくてフォーミング。「テラフォーミング」は簡単に言えば「地球化する」ってこと。」
「亜美に真美、機関室の仕事は??」
「ワープ終わったし、機関室は交代で、亜美と真美は休憩時間なんだ。面白そうだからきてみたの。」
律子と春香と千早は顔を見合わせて苦笑する。春香が話をもどす。
「って話をもどしてっと。そうするとガミラス人の目的が地球への移住だとしたら、中間地点であるバラン星基地は重要な拠点っていうことになりますね。」
「そういった場所にある基地を破壊されて、だまってはいないでしょうね。何か仕掛けてくると考えたほうがいいわ。」
「何か仕掛けてくるの??爆弾かな。こわいなあ。りっちゃん?どうすればいいの?。」
「う~ん。もう。それをわかれば苦労しないわよ。」
ガミラス星ではドメルが出発に当たって戦場の選定にあたっていた。もうヤマトはバラン星のワープゲートを通過し、大マゼラン雲から2万光年弱の位置にいる。
ドメルは幕僚をあつめて作戦を練っていた。
「これがゲルマリウス三連星、通称「三つ子星団」です。」
「う~む。ここは放射能風が強すぎて、今回の作戦には向かない。」
「それでは、ネガ星系の重力星団はどうでしょうか。」
「我が艦隊の隠れる場所がないな。ここもだめだ。」
「七色混成発色星域です。通常「七色星団」と呼ばれています。それぞれの星が特殊な物質を含んでいるため、紫、青、緑、黄、橙、赤に輝き、暗黒星雲からなっています。」
「うむ。ここにしよう。俺の挑戦状をヤマトに送るのだ。」
「はつ。」
「実は、今回の作戦にあたっては、兵器開発部で新たに開発した新兵器を使うことにしている。」
ドメルは副官に
「新しく開発した瞬間物質移送機だ。これは簡単に言えばワープ光線で、物質移送空間をつくり、物体を好きな場所へワープさせられる。戦闘機を一挙にヤマト上空に移送して奇襲をかけるのだ。」
「司令。並みの戦艦ならそれで沈むでしょうがヤマトには艦載機がいます。それからやつは波動砲をもっています。その対策はいかがなさいますか。」
「これをみろ。民需用の岩盤掘削弾の転用だがドリルミサイルだ。これをヤマトの波動砲口に撃ち込み爆破させる。ただちに、ヤマトへ挑戦状を送り、ルビー戦線のゲットー、ダイヤ戦線のクロイツに決戦の檄を伝え集結させろ。」
「御意。」
その頃ヤマトでは航海班が航行日程の確認をしていた。
「あと1万7千光年でイスカンダルに着く予定だけど...」
「何もなければいいんだけど。」
「まあここまで60日で着いているわけだから上出来といえば上出来ね。」
「千早ちゃん、大至急第一艦橋へ来てくれる?」
「春香、どうしたの。」
5分前後で第一艦橋へ、メインクルーが集まってきた。
「何が起こったの?春香?」
「みんな、挑戦状よ。挑戦状。ガミラスからの。」
「挑戦状だって??」
真が口をへの字にまげてうなるよう話す。
「翻訳機セットしますぅ。」
雪歩が報告すると、舞が
「再生おねがいね。」と指示した。
雪歩が翻訳装置のスイッチを押して再生がはじまる。
「ヤマトの艦長及び乗組員諸君に告ぐ。そろそろ雌雄を決する時が来たようだ。
諸君がイスカンダルへ行こうとしているように、われわれには地球移住計画がある。
その目的を達するためには、お互いに敵である相手を倒さねばならぬ。
諸君はわれわれを、われわれは諸君をだ。もし、諸君がどうしてもイスカンダルへ行くことを欲するなら、我が軍を正面から打ち破る必要があるが、われわれこそが、諸君をかならずや撃沈してその希望を打ち砕き、ガミラス民族の移住を達成させていただくことになろう。本日より五日後に七色星団において決戦を申し入れる。大ガミラス帝国銀河系方面軍司令長官上級大将ドメルより、ヤマト艦長及び乗組員諸君各位。」
舞はしばらく沈黙していた。
「ねーねー、りっちゃん?「しゆうを決する」ってどういうこと?」
「どっちが優れているか勝負するってことよ。「雌雄を決する」って書くの。」
「ねーねーこの字って「雌(メス)」って字だよね。亜美たちみんな女の子じゃん。」
「そっかあ、亜美、雌(メス)の字のほうが先にあるから、これはきっと雌のほうが優れているって決めることなんだよ。」
「そっかあ。」
「二人とも、まぜっかえさないでw。さて、このあいだの分析結果ですが、ドメル将軍がいうように地球移住計画とガミラス人が大マゼラン雲にいること、地球をガミラスフォーミングしてきたことしかわかりませんでした。」
「まあ、忙しかったからね。あの時は。律子さん、ありがとう。」
「艦長、少しでも回避できるなら回避したいのですが。七色星団は難所ですし。」
「律子、春香、どう思う?」
「千早ちゃんの言うことはもっともだと思います。だけど七色星団での戦いを避けてもまた別の戦場でドメル将軍に待ち伏せされるだけなので...。」
「ガミラスはバラン星基地を叩き潰されてだまってないわね。」
「そうですね。千早のいうことはわたしももっともだと思うのですが、春香の言うような結果になるのが目に見えてるのが心配なんです。」
「だから戦場としての七色星団を分析。この際だからばーんとやっつけちゃう。春香!。」舞は春香に振る。
「みんな。ここまでがんばってきたんだもん。必ず勝ってイスカンダル行こう。ヤマトクルー、ファイト。」
円陣を組んで皆が手のひらを重ねて「ヤマトクルー、ファイト。」と唱和した。
「ところで七色星団ってどういうところなの?」
「七色混成発色星域といって、それぞれの星が特殊な物質を含んでいるの。カリウム、ナトリウム、ストロンチウム、銅を含んでいるので、炎色反応で紫、青、緑、黄、橙、赤に輝いているわ。それに濃密な暗黒ガスによる暗黒星雲があり、古い星の死骸である黒色矮星がある。恒星の近くには恒星風、電磁波。暗黒星雲の中はときどきイオン乱流が起こる。」
「うかつに入り込んでレーダーをつぶされたら苦戦必至ね。」
「敵艦載機の奇襲があるわよ。主砲と煙突ミサイル、サーモバリックモードね。
それから律子、やつらがヤマトのレーダーを効かなくしてハヤブサひっぱって、ヤマトの近くに艦載機とかをワープさせてくるってのはどうかしら。わたしだったらそうやってヤマトをふくろだだきにするわね。」
「!!」
すぐれた指揮官は、人知も及ばない直感があるという。古今の名将、ハンニバル、ナポレオン、チムールの戦術的センスと直感はおそるべきものだったが、律子はあらためて舞のすごみを感じた。そういえば、この人は訓練学校に入る前は歌えばビルひとつたつというアイドルだった。今は指揮官として天才的才能を発揮している。
「ガミラスの科学力なら十分に考えられます。」
「もし、艦載機がきたら、その作戦ね。そんときは、ただちにワープ。敵の後ろとってこっちがぶちのめす…あっと、やっつけるのほうがいいかしら~。レーダーがまったく効かないんじゃ困るから。」
そのころ、ガミラス本星では、各部隊がドメルの指揮下に加わるために各戦線から集結しつつあった。
ルビー戦線からえり抜きの部隊を率いてきたのはゲットーである。戦闘機が満載された第一空母を指揮している。ダイヤ戦線からは雷撃機を積んだ第三空母を指揮するクロイツが加わった。第七戦闘団を指揮するバーガーは急降下爆撃機の母艦である第二空母に指揮座を移した。また、ドメルの副官ハイデルンは、重爆撃機を載せた戦闘空母に指揮座を移して参戦することとなった。
「ひさしぶりに故郷の土が踏めるな。」ゲットーやクロイツは部下たちの顔をみながら笑いかける。部下たちもひさびさにガミラス本星に帰還でき、うれしそうであった。
第一空母が宇宙港に着陸し、その隣に第二空母が着陸する。
「よし。わが第三空母は、第二空母の隣に着陸する。降下用意。」
「了解。」
第三空母が着陸すると、ハイデルンも
「わが戦闘空母は、第三空母の隣に着陸する。降下用意だ。」
「了解。」
宇宙港に四隻の空母が並ぶ様子はさながら巨大な城が現れたような壮観さであった。
さて、作戦室に副総統のヒスをはじめ、将軍たちが集まってくると、ドメルは作戦を説明する。
「それでは、諸将、遠路はるばるご苦労であった。お集まりいただいたので、早速作戦を説明したい。まず、暗黒星雲の後ろ側に布陣する。第一空母から戦闘機を発進させる。そしてやつらの直援機を誘い出す。続いて第二空母から急降下爆撃機、第三空母から雷撃機を瞬間物質移送機で送り出します。」
「なるほど。ヤマトはさぞ混乱するだろう。」
ヒスが満足そうにうなづく。
「この攻撃は、完全に奇襲になります。突然現れる急降下爆撃機と雷撃機に対処が遅れ場合によってはこの時点で撃沈の可能性もありますが、万一撃沈できなくても相当抵抗力が弱っていることでしょう。そこへドリルミサイルを搭載した重爆機で波動砲口をふさぎ内部から爆破してしまいます。ヤマトは七色星団にただよう鉄くずとなりはてるでしょう。」
「ドメル司令。すばらしい作戦だ。大ガミラスの存亡と総統のご信頼に報いるためにも、思う存分戦いたまえ。」
「はつ...。」
ドメルは作戦会議を終え、居室へ戻ろうとしたところ、週番士官が彼に声をかけた。
「ドメル司令。ルビー戦線とダイヤ戦線から選抜された空挺団が到着しました。空挺団の各指揮官が司令にお会いしたいとおっしゃっておられますが...。」
ドメルは、かって戦場で労苦をともに分かち合い、勝利をつかんできた懐かしい戦友の顔に出会い、うれしさがこみ上げてくる。
「やあ、ゲットーか。よく来てくれた。」
「ドメル司令。お久しぶりです。また司令のもとで、働けることを部下ともどもよろこんでおります。」
「うむ。頼むぞ。」
「クロイツ、遠いところからご苦労だった。」
「いいえ。ドメル司令のお呼びとあれば、部下ともども喜んでかけつけます。」
「ありがとう。よろしく頼むぞ。」
「小耳にはさんだのですが、冥王星でシュルツが戦死し、バラン星基地も破壊されゲールも戦死したとか。」
「うむ。敵はあの反射衛星砲を打ち破ったのだ。それにヤマトのヒダカマイという艦長は、冥王星会戦で我が艦隊に敗北した地球防衛軍で、別働隊をひきいて隕石を用いた奇策で唯一我が軍に戦艦や駆逐艦を沈めるなどの損害を与えて戦果を挙げているそうだ。ゆだんならない敵だ。」
「さすがに今回の瞬間物質移送機には対処できないでしょう。」
「そうありたいものだな。」
「まあ、諸君、明朝が出撃だ。今晩は、ゆっくり休んでくれたまえ。」
ドメルが敬礼をするとゲットーとクロイツは答礼し、それぞれの居室へもどっていった。
ドメル艦隊の作戦を七色星団という戦場から分析し、非凡な才能をみせる舞。ガミラス星ではドメル艦隊が集結し、出撃に備えてしばしの休息をとっていた。
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第9話 決戦!七色星団
七色星団へ向かうヤマトでは、各部署が整備と点検を念入りに行っていた。
「第一砲塔電探連動異常なし。」
「第二砲塔も異常なし。」
「ヤマトのメインレーダーが破壊されたときにきちんと砲塔が敵機や敵艦隊を捕らえて攻撃するためのレーダーよ。念入りに点検してね。」
「はい、水瀬補佐。」
「第一副砲異常なし。」
コスモファルコンも航宙隊員が念入りに点検する。
「みんな、エンジンの調子はだいじょうぶかしら。あと射角の調整をわすれないでね。」
「おお!!」
力強い答えが唱和される。
「難しいところは、整備班の皆さんにやってもらいますけど、自分でできる範囲ではやっておいて。射角がずれてて、あとで整備班長とけんかしたり、なぐったりしないでね。」
格納庫は笑いにつつまれる。
「まこちん、補助エンジン、波動エンジンともに快調だよ。」
「亜美、真美ありがとう。」
「まこちん。」
「何?」
「この戦い、勝てるよね。きっと。」
「「しゆうを決する」って「雌雄を決する」って書くって、りっちゃんが教えてくれたんだ。雌(メス)の字のほうが先にあるから、亜美たちがかつってことだよね。」
真は苦笑して
「ボクたちは、いざというときにエンジンが完全に動くよう努力すればいいんだよ。」
「そうだね。」亜美と真美はにっこりと笑顔を返した。
ガミラス本星ではドメル艦隊の壮行式が行われていた。
総統府の前の広場にはドメル以下の将兵が整然と整列していた。広場を埋め尽くす兵士とそれを取り囲むバレラス市民。「ドメル!ドメル!」という歓声が広場全体をつつむ。
やがてデスラーが現れ、市民は「デスラー総統万歳!デスラー総統万歳!」と歓呼する。
デスラーは身振りで市民の歓呼に答え、それを制止するよう合図をするとマイクへ向かって激励の演説をはじめる。
「諸君!いよいよ大ガミラスの力を見せるときがきた。われわれはすべてをここにいるドメル将軍以下の勇敢なる戦士諸君の双肩にゆだねる。われわれは勝利する。次に戦士諸君に会うときは戦士諸君が凱旋したときになるだろう。戦士諸君は存分に戦ってきてほしい。そして再びわれわれに雄姿を見せてほしい。」
デスラーの演説が終わると広場は「デスラー総統万歳!ドメル将軍万歳!」の大歓声につつまれる。
「では、これより出発する。諸君の健闘を祈る。全員、乗艦せよ。」
ドメルの命令で将兵たちは自分たちの乗艦に乗り込んでいく。
やがて各艦から報告がなされる。
「第一空母分艦隊、ゲットー、全員乗艦完了。」
「第二空母分艦隊、バーガー、全員乗艦完了。」
「第三空母分艦隊、クロイツ、全員乗艦完了。」
「戦闘空母分艦隊、ハイデルン、全員乗艦完了。」
ドメルは、旗艦の艦橋から艦隊をながめながら諸将からの報告を聞いていたが、全員乗艦の報告を確認すると、
「全艦、発進せよ。」と命じ、第一空母から浮上を開始し、戦闘空母の浮上を確認すると旗艦を発進させた。
七色星団へ向けて航行中にドメルは分艦隊司令官たちにスクリーンを通して作戦を伝えていた。
「われわれは、この暗黒星雲の外でヤマトを待ち構える。ヤマトは七色星団の発する電磁波でレーダーに障害が起こるだろう。第一攻撃隊がヤマトのレーダーを破壊し、やつらの直援機を誘い出す。電探連動で主砲を発射するだろうが、精度はレーダーがあるときよりは落ちる。事実上まるはだかだ。」
「なるほど...」ゲットーとバーガーが首を軽く縦に振ってうなづいてみせる。
「その状態で瞬間物質移送機で至近距離に出現する急降下爆撃機や雷撃機の攻撃にさらされて無事にすむまい。普通ならここで撃沈だが、それでも沈められなかった場合に瞬間物質移送機で送り込まれた重爆機からドリルミサイルが発射され、波動砲口を封じて内部から爆破する。ヤマトはわれわれの位置を突き止めることすらできずに沈むということだ。」
「ドメル司令。さすがです。十重二十重に考えられた作戦。ヤマトは手も足も出ないですな。」ハイデルンがコメントすると、クロイツがうなずく。
「だが、君たちも知っているようにヤマトの艦長、ヒダカマイは油断ならない人物だからな。万一、レーダーが効かないためにわれわれの背後に回って波動砲を撃って一気に勝負を決めようとする可能性もある。その場合の作戦も考えてある。まあ、楽しみにしていてくれたまえ。」
そのころヤマトの食堂では珍しくステーキがふるまわえていた。
艦医であるあずさが食事をしていた。亜美と真美がそれをそばで眺めている。
「ステーキはたしかにおいしいけれど力がでるっていうのは本当かしら。」
「あずさお姉ちゃん...」亜美と真美があずさの顔をながめているのに、あずさが気づく。
「わたしは、みんなの忍耐と使命感が鍵だと思うのよね。そう思わない?」
何の気なしにあずさは二人に話しかけるが
「ふうううん。」亜美と真美の顔がだんだんにやついてくる。
「いっただきまーす。」ふた切れに切られたステーキがあっというまに皿から取り去られる。
「あ、こら!亜美、真美、それはわたしのステーキじゃない。」
あずさはあわてて二人の後を追う。そばで見ていた乗組員は苦笑しながらそれを眺めていた。
第一艦橋では、千早が舞に報告する。
「艦長、あと30宇宙キロで七色星団に達します。」
「自動操縦にきりかえて。」
「了解。」
「みんなを大会議室にあつめて。」
雪歩が
「皆さん、大会議室に集合ですぅ。艦長からこれからの指示がありますぅ。」
と全艦放送で伝える。
「何だろう?」
「作戦の変更かな?」
「ガミラスのやつらはどうやって攻めてくるんだろう」
「やつらを片付けるチャンスともいえるぞ。」
乗組員はわいわい話しながら集まってくる。
そのうち一人が春香を見つけて話しかける
「天海班長、なんだかこんな挑発に乗るべきじゃないって気がしてきましたよ。」
「いい?たとえばここで逃げたとするよね。自分がドメル将軍だったらどうすると思う?」
春香に話しかけた乗組員はだまりこんでしまった。
「艦長が来たぞ。」
大会議室は静まり返る。
「いよいよ、ドメル艦隊との決戦になるわ。彼らも地球への移住を考えていたみたいだからなみなみならない決意を持っているわ。
この戦場からかんがえて、彼らは戦闘機による奇襲を考えているでしょうね。ここで勝って地球の危機を救うわよ。みんなこの私がこれまで勝ってきたように、勝てるための算段はしてあるから、思う存分戦って。」
「班長たちは未成年が多いのよね。水さかづきでちょうどいいわね。」
舞のことばに爆笑がおこる。
「水さかづきの意味を知ってる人もいると思うけど、これは、死を決意するものじゃない。もう一度みんなで勝利を宣言するためのものなの。成人してる人は勝った後に思いっきり飲んでね。」また、爆笑が起こる。
「春香、お願い。」
皆が円陣をくんで手のひらを重ねる。
「ヤマトクルー、ファイトー」
「レーダーが効かなくなりましたぁ。」
雪歩が伝える。
「みんな、戦闘機隊がくるか、目で確かめるのよ。」舞がいう。
「目ですか。」
「そう。それが勝利を分けるの。」
「総員、戦闘配置。」舞が指示すると
「総員、戦闘配置。」と春香が復唱し、非常警報のブザーがブーツブーツっと艦内にひびきわたる。
砲術員は、パルスレーザー砲塔、主砲塔、副砲塔の持ち場に着く。
コスモファルコンの搭乗員も出撃準備をととのえた。
「ねずみがわなにかかってきたな...」
ドメルは薄ら笑いをうかべた。
「全艦、戦闘配備!」
「全艦、戦闘配備!」副官が復唱する。
「戦闘機第一波発進。」
第一空母の司令官ゲットーは、
「戦闘機隊第一波発進せよ。」
「敵戦闘機、発見。」
観測員が第一艦橋に伝える。」
「ワープ準備。暗黒星雲の裏に抜けるわよ。」
「ワープ準備、各自ベルト着用。」
ガミラス戦闘機は、爆撃をしかける。
「左舷、101装甲板被弾!」
「右舷、210装甲版被弾!」
「左舷、150装甲版被弾!」
「右舷、271装甲版被弾!」
「このままじゃやられてしまいますぅ。」
「かまわないわ。このままワープよ。」
「ヤマト、抵抗してきません。」
「そうか。ヤマトはワープしてわれわれの背後にまわりこむつもりだ。やつがワープする瞬間にワープアウト予想地点を計算しておけ。われわれの位置を予想している場合も計算しておけ。」
「伊織、主砲を一発見舞ってやって。」舞が指示する。
「にひひっ。主砲発射。」
サーモバリックモードでガミラス戦闘機のエンジンから引火してあっというまに半数の機体が撃墜される。
「なんだ、あれは...」
驚愕したのはドメルのほうだった。戦闘機隊も動揺している。
「いまよ、千早。」
「ワープ10秒前..3,2,1,ワープ。」
「ヤマト、ワープしました。」
「ワープトレースからワープアウト位置を計算しろ。」
「われわれの後方、4時半の方向、3500宇宙キロと思われます。」
「われわれの位置がわかってるわけではないな。」
「そのようです。」
「瞬間物質移送機作動!」
「戦闘機隊第二波、ワープ光線のエリアに入れ。」
「全機、ワープ光線のエリアに入りました。」
「よし!」
ドメルはにやりと笑い、移送スイッチを押す。
「ワープ完了。」
「敵が襲ってくるわよ。」
「!!」
「左上方に、ガミラス機出現。」
「主砲、発射!」
「航宙隊、発進。」
主砲が発射され、引火して、ガミラスの編隊は一気に半数消滅する。
やがて、コスモファルコン隊が発進し、空中戦になる。ガミラス機はレーダーを執拗に狙ってくる。激しい空中戦でレーダーも破壊される。ドメル艦隊のガミラス機パイロットはガミラスきっての精鋭である。なかなか撃墜されず、さすがの小鳥も苦戦を強いられる。「左捻り込み」を相手も使ってくるのだ。しかも混戦になるとサーモバリックモードは味方機もまきこんでしまう。この混戦の状態のまま、ガミラス編隊はヤマトのコスモファルコン隊を引き離しにかかっていく。
「ぬうう。このままじゃ撃てないじゃないの。」
伊織は思わず不平を言ってしまう。
「伊織、またやつらはワープで飛行編隊を送ってくるわ。主砲のほかに煙突ミサイルも準備しておいて。それから、律子、ていさ...気象探査衛星を4機ほどうちあげといて。」
「はい。」
「了解。」
ドメルはヤマトの戦いぶりをみていて、
「なんだ、あの砲門は」
「やつらには予想より優れた兵器と指揮官がいるようです。」
「そうだな。あの砲門は、設定を変えられるということだな。」
「そのようです。われわれが戦闘機による攻撃をしかけてくることをあらかじめ予想していたということです。あれは、戦闘機のエンジンに引火して爆発する物質を撒き散らしているんでしょう。」
「ヒダカマイ、おそるべき指揮官だな。瞬間物質移送機の効果が半減している。すぐれた部下にも恵まれているんだろう。ゲールごときが負けたのもうなづけるな。」
そうこうしているうちに第二空母のクロイツから通信が入る。
「急降下爆撃隊、発進準備完了しました。」
「よし、雷撃隊発進、ワープエリアに入れ。」
「それからハイデルン、重爆機の発進をいそげ。このあとすぐにワープさせる。」
「了解。」
「やつらの偵察機はきていないか。」
「見当たらないようです。ただ歌のようなものが周波数を変化させて聞こえはじめました。」
「乙女よ大志をいだっけ~、ゆ・め・みてすてっきになれ~、乙女よ大志をいだっけ~、恋してきれいになれ~、たっちあがれ、お・ん・な諸君~ たたた~たた~チャチャ~...目覚ましジリジリ、学校にまたギリギリ….。」とドメル旗艦の通信機から緊張感もそっけもない歌が流れる。
その歌はヤマトにも流れてくる。
「えええ~。これって。」
春香が顔を赤らめて、第一艦橋をきょろきょろと見回す。舞はあさっての方向を向いている。律子の顔がいつもよりも涼しげに見える。
機関室では亜美と真美が「あ~、はるるんの曲だwww。」とはしゃいでいた。
「みんな、ドメル将軍は一流の将帥なの。そういう人の足元をすくうには二流のトリックが有効って話した将軍がいたの訓練学校の戦史の授業で習わなかった?もちろん、この春香の歌はすばらしいわ。」
「あのぉ~艦長。そうじゃなくって。」春香は舞をにらむ。
「宇宙まで貴女の曲が流れるなんてロマンチックじゃない。わたしのaliveじゃなくてあなたの曲を流したのよ。」
「….」
「しかたないわね。マゼランパフェかゴージャスセレブプリン
で手打たない?」
「うん..もう。わかりました。」春香が仕方ないといわんばかりに生返事をする。
ドメルの旗艦では...
「暗号の可能性は?」
「その可能性はすくないようです。もしかしたら何かを伝えている可能性があります。」
「発信源をさぐれ。」
「はつ。」
「発信源は複数です。110宇宙キロ2時の方向、125宇宙キロ5時の方向、122宇宙キロ7時の方向、117宇宙キロ11時の方向です。」
「妨害電波を発信せよ。」
「はつ。」
「敵妨害電波発信されました。」
「周波数帯と発信源の座標を確認して。」
「敵の急降下爆撃機、ヤマト甲板の直上に出現です。」
「左舷、140装甲板被弾!」
「右舷、50装甲板被弾!」
「上部甲板、20装甲板被弾!」
「上部甲板35装甲板被弾!」
「波動防壁展開。」
「!!」
「ドメル司令?。」
「妨害電波発信やめろ。」
「!?」
「いいからやめるんだ。お前がつきとめた発信源には敵の監視衛星がいる。冥王星の反射衛星砲の応用で、こっちの位置を探るための欺瞞工作だ...まあ、もう遅いかもしれないが...。」
「敵の座標確認しました。」
「暗黒星雲でてこずったけど、大体予想どおりの位置だったわね。いまのうちにワープ準備して。敵に殴り込みをかけるわよ。」
急降下爆撃機がさかんにヤマトに攻撃をかけるが波動防壁に防がれる。
「敵重爆機出現。12時の方向、仰角20度。至近です。」
「ワープ10秒前、9、8、7、...」
「ドリルミサイル発射。」
「3,2,1,ワープ。」
ドリルミサイルがワープの時空震で爆発する。
「ドメル司令、何かがワープアウトしてきます。」
「3時の方向、350宇宙キロです。」
「ワープ終了。」
「主砲発射!」
まさかのヤマトのワープによる攻撃に的が定まらず、ドメル艦隊は爆煙につつまれる。
「波動砲発射準備。エネルギー充填。」
「ぬ、やつは波動砲を撃とうとしている。やつの波動砲の予想到達時間とこちらのワープ準備時間はどのくらいだ。」
分析士官の顔が青くなり始めた。
「司令、やつの予想到達時間は、1分30秒前後、こちらがワープできるのが1分45秒前後です。」
「全艦散開して、逃げるのだ。」
「ドメル艦隊、逃走をはじめました。」
「エネルギー充填120%、波動砲発射準備完了。対ショック対閃光防御。」
「電影クロスゲージ明度10、波動砲、発射10秒前、9,8、・・・3,2,1,発射。」
ヤマトから激しい勢いで光の束が発射され、漆黒の宇宙空間を照らす。その束は、散開して逃走しようとするドメル艦隊へ向かっていく。
「司令、前方イオン乱流です。」
「いかん、ヤマトのいる方向へ散開して逃走せよ。」
「うわあああああ。」
ドメル艦隊の6割は、波動砲にのみこまれ、3割は、イオン乱流にのみこまれる。
「うわあああ、ぶつかる。回避~、回避~。」
ドメル艦隊の艦内では、波動砲にのみこまれる悲鳴とイオン乱流のために艦の姿勢をたもてず、回避できずにぶつかるのを回避するよう叫ぶ悲鳴の二種類でうめつくされた。
「主砲、発射。」
ショックカノンの光条は、イオン乱流と波動砲をのがれた残り1割にそそがれ、ガミラス艦は次々に貫かれて四散した。もうすでにまともに隊列を組める数はのこっておらず、混乱した状態になっていた。しかしそのなかでも白い円盤状の宇宙船がヤマトへすさまじいスピードでせまってくる。
ドメルのゼルグート級の艦橋から切り離された「旗艦」である。
「敵艦がこっちへ向かってくる。何よ、すばやくて狙いが定まらないじゃない。」
伊織の声に思わず「泣き」がはいる。舞は、直感でドメルの意図を悟る。
「まずい、逃げて。」
「ヤマトめ。このドメルから逃げられると思うなよ。」
「敵艦、当艦の直下ですぅ;;。」
「千早ちゃん!」
「くつ...間に合わない!」
「こうなったらやつに接舷して、自爆するのだ。」
「司令...」
「これが私の切り札だよ。ヤマトに接舷したらセットしたまえ。」
ドメルは副官に告げる。副官は無言で同意を示し、上官の意図を察して口を閉じてわずかにうなずいた。
「メインスクリーンになにか反応していますぅ。」
「ゆっきー、投影して。」
「了解。」
メインスクリーンに映し出されたのは精悍な軍人の顔だった。
その顔だけで歴戦の勇将であり、数々の会戦に打ち勝ってきた人望ある名将であることがわかる。
ドメルは、艦長席にいると思われるウエーブかかった髪の優美な女性をみてちょっと驚いた色を一瞬その顔にうかべたが、すぐに表情をひきしめる。
「ヒダカマイ艦長、わたしはガミラス銀河系方面軍司令官、ドメルである。」
(うわつ、かっこいい...。)雪歩以外は心の中で叫んでしまう。女性乗組員はほおをわずかに赤らめてつぶやき、男性乗組員は圧倒されてしまう。
「ドメル司令、わたしが宇宙戦艦ヤマト艦長の日高舞よ。」
「偉大なる地球の名将であるあなたの勇気、決断力、知恵に心からの敬意を表する。冥王星会戦の話からあなたの話をうかがっていたが...まさか女性とは...」
「ドメル司令、あなたの勇戦ぶり、指揮ぶりはこの戦いで十分拝見させていただいたわ。紙一重の戦いだった。わたしたちは、お互いの星のために戦ってきたけど、これ以上犠牲を出すことは望まない。わたしたちをイスカンダルへ行かせていただけないかしら。」
「それはできない。」
「女性でありながら軍人として大成し、地球のために戦ってきたあなたならわかるはずだ。あなたが地球を救うために戦っているのと同じように、わたしの戦いにも、ガミラス人の命運がかかっている。あなたにはガミラスに生まれてほしかった。」
「あなたこそ、地球に生まれてほしかった。あなたが地球にいればここまで地球が苦戦することもなかったし、わたしも夫を喪うこともなかった...。」
「!!」
「わたしは、冥王星で自分のわずかばかりの戦果と引き換えに夫を喪いました。」
「そうだったのですか...しかし、わたしにもエリーサ...妻がいる。妻を悲しませることになるのかもしれないが、それでも、ヤマトをイスカンダルには行かせるわけにはいかない。ガミラスを救うためにはあなたたちをイスカンダルへ行くのを断固阻止しなければならないのだ。最後に、あなたのように女性としても指揮官としても一流の人物と戦えたことを光栄に思う。さらばだ、偉大なる地球とガミラスに栄光あれ!」
スクリーンからドメルの顔が消えるや否や
「敵艦は自爆するつもりよ。第三艦橋の乗組員は大至急上にあがりなさい。」と舞は叫んだ。
「第六、第七隔壁閉鎖。放射線防御壁注水開始。」
そのときヤマトに下から突き上げる衝撃、轟音とともに大爆発が起こった。
「波動防壁展開に成功しました。ヤマトは無事です。艦長?艦長!」
律子が振り向くとあの元気で明るく、いつも余裕綽々で不敵な笑みを浮かべている舞が下を向いていた。
「きっとご主人のことを思い出しちゃったのね...」
「ドメル司令が立派な方だったのは画面を見ているだけで伝わってきたわ。」
「春香、なんでそんな悲しそうな顔してるのよ。」
「そういう伊織だって...。」
「あんなかっこいいやつ、地球にいないわね。この伊織ちゃんの心が動いちゃったじゃないの。敵なのに...。ジュピターみたいなイケメンはいっぱいいるし、金持ちでハンサムでってやつはいっぱいいるけど...。地球が苦戦したのもなんかわかる気がするわ。」
「艦の応急処置がすんだら宇宙葬よ。準備がすんだら艦長室に...。」
舞はようやくそれだけつぶやくとこもるように艦長室へ行った。
「宇宙葬の準備がととのいました。甲板へお願いします。」律子が呼びに行くと
「わかったわ。」と舞は答えて宇宙服に着替える。
「地球のために命をかけたすべての勇士に送る。わたしたちは決してあなたたちを忘れません。」
舞が弔辞をよむと、春香が
「敬礼!」と言った。
弔砲としてコスモガンが数回撃たれ、それに続いて副砲が撃たれた。多くの戦死者のカプセルが宇宙空間に放たれていった。
後日談
「艦長、どうでもいいですけれど、あの偵察…ごほん、気象探査衛星から流れてきた曲はなんで春香のアイドル時代の曲だったんですか。」と千早が問うと、舞はにやにやしながら、
「亜美~、真美~説明してあげて。」と亜美と真美に振る。
「艦長とりっちゃんがあの衛星のニックネーム考えてくれって、いいの考えたら、ごほうびにマゼランパフェかゴージャスセレブプリン
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か、イケイケファンシーゼリー
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をプレゼントするからって。」
「それで、「はるるん」と、「はるかっか」を採用して4つあるから偶数ってことで「はるるん1号」、「はるるん2号」、「はるかっか1号」と「はるかっか2号」って名前に決めたわけ。」
「艦長、それ逆だよぉ。この戦場にふさわしいのは、「乙女よ、大志を抱け」だから、なにかいい名前ないかしら、って言ったじゃん。」
「艦長!それでわたしをお菓子でなだめたみたいに、亜美たちをお菓子で釣ったんですか。」春香がききつけて舞をにらむ。
「あ~ら、釣ったなんて人聞きの悪い。わたしは地球の歌をガミラスの皆さんにも聞いてもらいたかっただけよ。それから三人ともちゃんとご褒美もらってるじゃない。文句いいっこなしよ。」
春香はほおをふくらませてみるものの反論できずに、はあ、とため息をつくしかなかった。
サーモバリックモードとは、紺○の艦隊に出てくる新三八弾(小説だと「新三式弾」)という燃料気化弾がアメリカ航空機隊を一瞬にして消滅させた描写にヒントを得てチート律ちゃんが開発したということになりますでしょうか^^;。ヤマトが艦載機に攻撃される機会が多いのに生き残れているという理由付けにもなりますし...新三八弾ヤマトバージョンということで...
気がついた方もおられるかもしれませんが銀英伝ネタが2ヶ所あります。え?3ヶ所のまちがいじゃないかって?そう見れなくもないですが...
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第10話 デスラーの演説
ヤマトの第一艦橋では、司令室の中央にある次元レーダーを千早と春香が凝視していた。
次元レーダーは、増光と減光を繰り返しながら、針は、特定の方向を示すようにゆれている。
雪歩の通信機にも、ときおりガガ、ガガと小さな雑音が入っている。
律子と舞も次元レーダーのところへやってきて、のぞきこむ。
「ん。技師長としての意見を言わせてもらうとこれは故障じゃないわ。安心して。」
「通信機もただ雑音がはいってるだけで異常ないですぅ。」雪歩も答える。
「でも律子さん。針はヤマトの飛んでいる方向を示していないんだよ。」
「わたしも、このレーダーの針がなぜヤマトの飛んでいる方向を指していないのか、航海班長として非常に気になります。」
「これから私たちの行くべき方向を示しているのかもしれないわね。ただ問題は、
誰が、何のために、そんな操作を、宇宙のかなたからしてるのかってことね。」
舞がつぶやく。
「わたしは、イスカンダルって信じたい。スターシャさんはあれだけのメッセージを送ってくる意志の強い人だから。」春香が彼女らしい前向きな意見を言う。
律子は静かにうなずいて、
「雪歩、発信源はわかった?」と雪歩にたずねる。
雪歩は、
「も、もうちょっと、まってね。今調整してるから。」
といいながら、額に汗をにじませて、ダイヤルの調整を続けていた。
「大マゼラン雲の中からっていうのは確かなんだけど...」
第一艦橋の乗組員は雪歩の後ろにあつまって通信機のパネルをみつめていた。
そのとき「ねえねえ、ゆきぴょん。なぞのゆーどー電波なの?」機関室から聞こえてくる。
「え?亜美、真美なんでわかるの?」
「だってこっちにもつながってて、話が聞こえるんだもん。」
「ええ?」
「ご、ごめんなさい。まちがってこっちのレバー押しちゃった。わたし、まただめだめですぅ。」
律子がどこから取り出したかわからない雪歩のスコップをすばやく取り上げる。
「いいから。雪歩、ダイヤル調整して。」
「ねえねえ、りっちゃん、どこからの電波かあてたら今度は何くれる?」
「それはいいから。」
「亜美はイスカンダルだと思う。」
「真美も~」
「当たったら、マゼランパフェね~。大マゼラン雲だけに。」
「もう、二人ともわかったから。」
「やくそ...」
律子は、放送スイッチを切る。
機関室では、亜美と真美は
「約束だよ~。」といい終わらないうちにブチっと通信の切れる音がしたので、
顔を見合わせて
「亜美」
「真美」
「国会へいって「でも」をつるちかないのだ。」
「りっちゃんぎいんは、「こーやく」をまもれ~って「でも」をつるのだ。」
「おす!」二人は「敬礼」をして、のぼり旗をつくって、第一艦橋まで行進していった。
「あ、発信波が音声波にかわった。」
「雪歩、音声信号だよ。」
「う、うん、今あわせてみる。」雪歩は忙しく複数のダイヤルを操作する。
「スターシャ...、こちらイスカンダルのスターシャ...。」
ゆがんだ小さな音声であったがはっきりと第一艦橋のメンバーには聞き取ることが可能であった。春香の顔がぱあっと明るくなる。
「間違いないですぅ。大マゼラン雲、2時の方向、X0072,Y7200,Z9393の座標からとおもわれますぅ。」雪歩もうれしそうだ。
音声はますます明瞭になり、スターシャ当人の澄んだ声に変わっていく。
「こちら、こちらイスカンダルのスターシャ...ヤマトの皆さん、聞こえますか。あなたがたは、ついにやってきたのです。目的地である私の星イスカンダルへ。」
しばらく間をおいてメッセージは続く。
「イスカンダルは、大マゼラン雲の恒星サンザーを公転する第8番目の惑星です。あなた方の位置からは0.7光年。どうぞ、誘導電波に従っておいでください。」
スターシャからの通信は切れたが誘導電波はヤマトヘそそがれ、順調に航行している。
第一艦橋の面々の顔は一人の例外もなく喜色にあふれていた。
「千早ちゃん。」
「春香!」
「ついにきたんだよ。私たち、イスカンダルへ!」
春香は千早にだきつこうとしてとびはねる。
舞と雪歩と伊織もそんなふたりをうれしそうに眺めていた。
「あああつ。」例によって春香はころびそうになって、千早が抱きとめて、春香は顔をほのかに赤くする。第一艦橋はあかるい穏やかな笑いにつつまれる。
伊織は、「お約束ね。」と目を伏せて、両手をひろげてあきれてみせた。
第一艦橋にのぼり旗をもって歩いてきた亜美と真美は、みんなが喜んでいるのをみてあっけにとられる。律子が呆れ顔で二人にかけより、
「亜美、真美そんなことしなくても約束守るから。マゼランパフェ二個ね。」
「りっちゃん。」亜美と真美は真顔で律子を見つめる。
「何...」
「本当にイスカンダルなの?もうすぐイスカンダルに着くの?」
「そうよ。」
「よかった...よかった...よかったね。りっちゃん。」
亜美と真美もうれしそうに泣いた。機関室という密室でいつ果てぬとも知らずに長い間操作をしたり修理をしたりする毎日だった。その苦労が報われたのだ。「一時的」ではあったが、マゼランパフェの約束が二人の脳裏から消え去っていた。
ヤマト食堂では、配膳口に紅白もちが山盛りにおかれる。
男性乗組員の一人が厨房に向かってたずねる。
「あれつ。おめでたいから紅白もちを出したの?」
調理員はうれしそうにうなづく。
「手回しがいいねえ。」彼はひとつほおばると、もうひとつとって、トレーにのせる。
「うん、美味い。」
展望室では、大マゼラン雲を背景に雪歩と真が写真をとっている。
「よーし、雪歩、今度はセルフタイマーだよ。」
「うん。真ちゃん。」雪歩は両腕を肩ほどまで上げてうれしそうにこぶしをつくっている。
真は雪歩のそばにかけよる。
パシャとシャッターが落ちて写真がカメラから出てくる。
「あらあら、真クンに雪歩ちゃん。」
「あずささん。」
「真クンファンがどう思うかしら。」あずさが苦笑する。
「ん~。ただ二人で写ってるだけでなんともないと思いますよ。ボクは女の子だってことは公表してますし。」
「そうね。雪歩ちゃんのファンが問題かな。」
「私、男の人苦手だから...。」
「そんなにかわいいのに...もったいないわね。」
「あずささんこそ、いい人みつけましょうよ。」
「そうね...。」
そのとき、通信班の女性一人が雪歩を呼びにきた。
「班長!」
「なあに?」
「ちょっと来ていただけますか。」
「う、うん。真ちゃん、ありがとう。私行く。」
「いってらっしゃい、雪歩。」
真もしばらく空を眺めていたが、ゆっくりと第一艦橋へもどっていった。
「ど、どうしたの?」雪歩は通信室へいき、通信班の面々に尋ねる。
「イスカンダルからの誘導電波が...」
「き、切れたの??」
通信班の班員は、表情を暗くしてうなづく。
雪歩は、まったく音を発しなくなった計器類をみて、自分でも操作をしてみたが、誘導電波をとらえることはできない。
「だ、第一艦橋で操作するように切り替えて。艦長に私がはなしますぅ。」
雪歩は、通信室を出ると第一艦橋へ報告に行く。
「誘導電波が切れたようですぅ。」
雪歩の真剣な表情をみて、舞、律子、春香、千早、伊織の表情がかたくなる。
スクリーンに大マゼラン雲の地図を投影して千早が航路の説明をするが、その表情は誘導電波がつながっていたときとは一転して暗いものになっている。
「これがイスカンダル星です。恒星サンザーは、太陽よりやや大きめなので、約2.5億キロから3.5億キロがハビタブルゾーンになります。イスカンダル星は、8番目の惑星で、恒星サンザーからの推定距離は3億キロ、直径は地球の1.3倍と推定されます。」
「千早ちゃん?何か困ったことがあるの?」
「そうなのよ。春香。」
「え...イスカンダルから誘導電波がきれたことと何か関係が??」
「春香...第8惑星イスカンダルが二つ現れたの。」
「え...」
第一艦橋の面々は言葉をつまらせて、千早を見る。
「雪歩、レーダーで捉えたものをパネルに投影して。」
「はい。千早ちゃん、投影するね。」
あまり鮮明ではないが、パネルにふたつの惑星が重なっている様子が映し出される。
「二つあるわね...。」舞がつぶやく。
「イスカンダルは、双子星、二重惑星ってことだと私は思う。」
「あの、千早ちゃん、もしかして二つの星がペアになって互いに回りながら太陽のまわりをまわってるってこと?」両手を二つのボールをつかんでまわすように春香が手振りをしてみせる。
「そう...。そういうこと。」
春香がパネルをみていると二つの惑星のうち、海に覆われた青い惑星が姿を消した。
「!!」
「妨害電波ですぅ。誘導電波がきれたのもおそらくそのせいですぅ。」
「前方11時ノ方向カラミサイル多数接近。現在距離250kmデス。」
「ええっ。」
「アナライザー、11時の方向ってイスカンダルなんだけど...」伊織が言う。
「とにかく攻撃を受けたことにはちがいないわ。春香!」
「第一砲塔、第二砲塔、迎撃用意。伊織、たのんだわよ。」
「了解。主砲発射用意、方位左25度。」
「第一砲塔、第二砲塔、調整よし。」
「主砲発射!」
「敵ミサイル、四方向に散開。当艦を上下左右から攻撃する模様。」
「敵ミサイル、55%撃破。なお残弾27接近中。」
「全砲塔開いて。パルスレーザー発射。」
「小鳥さん。」春香が小鳥に指示する。
「はい。音無です。」
「偵察機に乗って待機して。」
「!!」
「敵ミサイルの様子がおかしいわ。」舞が気づくが、さすがの彼女にも想像がつかない。
破壊されたミサイルからは黒い煙のようなものが撒き散らされる。また、接近してくるミサイルは分解して、小型ミサイルを多数吐き出した。
「右舷302装甲版被弾!」
「前方甲板72装甲版被弾!」
「いけない。」
「真、エンジン止めて。全艦停止!」
「千早ちゃん、どうしたの。」
「計器が全部狂ってるの。」春香がみるとほとんどの計器が狂ったように針を左右させている。
「どうやら、敵の目的はヤマトの目と耳をふさぐことだったようね。」
「きいいい。ガミラスど変態。」伊織が叫ぶ。
「伊織...、今なんて言ったの?」
「だって、こんな変態的な攻撃するのってガミラスしか考えられないじゃない。」
第一艦橋の面々はなるほどとうなづくが皆確信をもてないでいる。律子は、
「春香、小鳥さんにミサイルの破片を採集するよう指示して。計器がくるっているから大変だとは思うけど、憶測で判断するのは危険だわ。」と春香に伝える。
「小鳥さん、おねがい。ミサイルの破片の採集。このとおり。」
春香は手をあわせてみせる。
「わかりました。ちょっとたいへんですけど。亜美ちゃんや真美ちゃんみたいにおねだりはしません。」
「ピヨちゃん、ひどいよぉ。亜美や真美がいつもおねだりしてるみたいじゃん。」
「ご、ごめんなさい。また艦内放送モードになってましたぁ。」雪歩が少し泣き声のように話す。艦内には爆笑がおこって、すこし冷静な空気になる。
しばらくして小鳥がミサイルの破片をひろって着艦し、律子に手渡すと分析室にさっそくかけこむ。分析して律子が口をひらく。
「ガミラスのミサイルね。」
春香は少し驚いて
「律子さん?もう一度お願い。」と律子に問う。
「これは、ガミラスのミサイルの破片よ。」
春香は千早をみた。
「千早ちゃん。律子さんが、ガミラスも大マゼラン雲のどこかにあるって言ってたけど、まさか…」千早も春香を見返す。
「も、もしかして、わたしたち、ガミラスに来ちゃったのかもしれないですぅ。」
雪歩が少々泣き声のようになる。
「航路には間違いない。イスカンダルの近くには来ている。だだ…春香、さっき、わたしは不安そうにしてたでしょ。」
「うん...。」
「イスカンダルがなぜ二つあるのかってことなのよ。」
「なぜ、パネルに写った二つの惑星のうちひとつが妨害電波で消えたのかしらね。」
律子がつぶやく。
「そうね。おそらく妨害電波で消えたのがイスカンダルなのかもしれないわね。」
舞がつぶやく。
その頃、ガミラス星では、デスラーが総統府のプールに浸かっていた。
「イスカンダルのスターシャ様からホットラインが入っております。
黄色い制服を着た小姓の少年がデスラーに話しかける。
デスラーはプールの片隅にあるスクリーンに向かう。
そこには椅子に座った青いワンピースを着て、クリーム色の長髪をした美しい女性の姿が映っている。
「久しぶりだね。スターシャ。何年ぶりかな。」
「わたくしも、通じるとは思いませんでしたわ、デスラー総統。」
「ふむ。このホットラインも錆付いて通じなくなったのかなと思ったよ。で、何の話かな。」
「デスラー総統、どうしてイスカンダルの電波妨害をなさるのですか。」
「それは、抗議かね、スターシャ。」
「そうです。」
「抗議、抗議、あなたが電話をされるときは、抗議ばっかりだ。たまには優しい言葉を聴きたいものだと思っているのだが。」
「とにかく、あなた方は、大マゼラン、小マゼランのみではあきたらず、となりの天の川銀河まで侵略の手を伸ばした、違いますか。」
「判ってほしいなあ。スターシャ。われわれの星はもう寿命が近づいているのは君もわかっているだろう。ガミラス人は自己の幸せを追求するのに貪欲だというだけだよ。だから私は、たまたま天の川銀河に移住先をさがした、それのどこが悪いというのだ。」
「あなた方は、地球に目をつけ、地球人を絶滅させてまで、移住を試みようとしました。」
「移住先に虫けらがいた。じゃまだから掃除して退治した。それだけのことだ。」
「虫けら...彼らは科学の力は劣っているかもしれませんが、同じ人間です。生きる権利があるはずです。」
「ガミラス人の生きる権利はどうなるのかね。」
「あなた方がやっていることは、他人の家に押し入って家財を破壊して住み着こうとしているのと同じです。どうしてそれにお気づきにならないんですか。」
「さっきも言ったが、虫けらどもになぜ遠慮する必要があるのか理解できないな。われわれガミラス人は、星の終わりの運命を受け入れてともに死んでいくなどということはできない。」
「そうですか...残念です。私は、ヤマトが自分の力で来る限り放射能除去装置を渡すつもりです。」
「それはどうも。だが、このデスラーが生きている限り、ヤマトをあなたのところへ行かせはしませんよ。では。」
画面が再び漆黒に戻る。
ガミラスのアゴラともいうべき広場に衛兵が銃剣を下げて居並んでいる。
その中をマントをひるがえしてデスラーが入っていく。
群衆は「デスラー総統、万歳!、デスラー総統、万歳!」と歓呼する。
デスラーはひときわ高い場所にある演壇に昇っていく。
デスラーが演壇にのぼって片手を上げると
一層歓声が大きくなり、「デスラー総統、万歳!」と群衆は唱和する。
デスラーが手を下げると、広場は静かになる。
「諸君、天の川銀河からはるばる虫けらどもがヤマトなる鉄くずに乗ってやってきた。」
「やつらはここまで来たとはいえ、所詮、鉄くずにすぎん。私は諸君らに命じる。このガミラス本星をもって、ヤマトの前にたちふさがるのだ!」
わああああ...と歓声がわき起こった。
デスラーが合図すると、照明が落とされ、デスラーの背後のスクリーンにガミラス星が映し出される。
「作戦を説明する。これが我がガミラス星だ。次にその断面を示す。」
ガミラス星の断面が映し出される。
「ガミラス星は、厚さ10kmの外皮がマントル表面の固形化したリソスフェアの大陸からそびえる山脈によって支えられるという構造になっている。これは、元来地底であったものが水や風、そして硫化した海によって浸食されてできたもので、ガミラス星の構造上の特色をなしている。」
スクリーンの画面がかわり、ガミラスの都市の姿が映し出される。
「諸君も知っているように、われわれの都市は、大陸の上にあるものと、外皮の裏側に釣り下がっているものもある。これらの建物の中には、ミサイルになっているものもある。」
「もし、ヤマトがここへくれば、上下から攻撃をうけて蜂の巣になる。」
拍手と歓声が起こる。デスラーは満足げに手振りで制止を合図して静まる。
「それから、諸君も知っているようにガミラス星の星としての寿命は、もう長くはない。
ガミラスの地底物質は急速に硫化しつつあるのだ。火山は本来は水蒸気であるはずが実際には亜硫酸ガスの噴煙をあげて、硫化化合物の灰を降らせ、硫酸性の溶岩を流す。それが海に影響を与え、ガミラスの海は生物のまったく棲まない濃硫酸の海だ。希硫酸の雲が硫酸の雨を降らせる。気圧変圧器を使えば硫酸の嵐を起こせるのだ。諸君、これでヤマトは無事に済むはずがない。」
広場の群衆は、わああああつとどよめく。
「すでにヤマトは、ガミラス本体の上空7000kmに強磁性フェライトの雲によってとらえてある。この強磁性フェライトの雲は、計器類を狂わせ、マグネット発振機によって、対象をひきつける能力をもっている。ちょうど磁石にひきつけられた砂鉄のようなものだ。」
スクリーンには、ガミラスの外皮の孔のそばに発振機がいくつもある画像が映し出される。
「外皮の孔へヤマトをさそいこみ、空洞へ入ってきたところを気圧変圧器で低気圧を発生させ、外皮の裏と地表から爆雷をみまう。まさしく、ヤマトの運命は硫酸のつぼへ落ちた虫けらと同じだ。」
再び、拍手と歓声がどよめくようにおこった。デスラーは満面に笑みをうかべ得意気に演壇から退場していった。
イスカンダルの方向からミサイルが発射され、その破片はガミラスのものだった。
強磁性フェライトの雲に包まれたヤマト。果たしてヤマトには対応策があるのか。
ガミラス星の「内核星」の「地上」「地殻」は「固形化リソスフェア」と表現しました。
地球では本来、地殻の下に溶融した岩石でできた分厚い灼熱のマントルがあり、プレートとしてはそのうち地表から深さ100kmまでは岩盤のように固いリソスフェアでできています(地殻はリソスフェアに含まれる)。ガミラスの断面構造は、地球ならまだ分厚いマントルのうち上部マントルが冷えて固まって岩盤と空洞をつくり、下部マントルもひからびて質量が減っているような構造にみえます。実際にこんな構造の惑星がありうるのか考えますがありうるとしたら冷えて干からびた、もう余命少ない惑星というのはこの構造からも首肯できるなと思います。
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第11話 ガミラス本星の死闘
ヤマトは、強磁性フェライトの雲に包まれた状態であった。
「律子、この雲のようなものの物質は何なのかわかった??」
「強磁性フェライトです。」
「なるほど、さすがにこんな手があるとは、さすがのわたしも思いつかなかったわ。」
舞は自嘲気味に笑う。
「わたしもあきれました。それほどガミラスは追い詰められているということです。それに、残念ながらこの強磁性フェライトの雲は除去できません。」
「磁石のように空洞の中にヤマトをひきつけて、あの岩盤の裏面あたりと地上にミサイルがあって、それで袋だたきにしようって算段なわけね。律子、あの地上になにかあるかほかにわからないかしら。」
「火山があるようです。あと陸地と海に分かれているようです。」
「なるほどねえ。どこかに磁石のようにひきつける装置があるんでしょうけど...」
「艦載機で装置を破壊してもこの状態は変わりませんから。敵がヤマトを空洞に近づけた後はこの雲は不要になるはずですからそのときがチャンスなのですが...。」
皆が思案にふけっていたとき、雪歩が
「み、みんな!、スターシャさんからの声がはいりました!。」
第一艦橋の面々は「え?」
と軽く叫んで雪歩のほうをみる。スターシャの声はゆがんで聞き取りにくいものの、内容は理解できる。
「こちら、イスカンダルのスターシャ...ガミラスによって通信が妨害されています。誘導はできません。ガミラスの妨害を破って自分の力でイスカンダルへ来てください。そこまでくればもうお分かりでしょうが、私たちは双子星なのです。一方がガミラスで、一方がイスカンダル...」
「千早ちゃん...」
「春香...」
(少しでも疑って)「ごめんね。」
「わ、わたしもごめんね。」
「いえ...いいのよ。よかった...。」
千早の顔は、不安から責任を果たした者の安堵感にみちた表情に変わった。
「もう一息ね。」
「うん。」春香と雪歩の表情が明るくなる。
そのとき鈍い振動がヤマトの船体全体にかかり、第一艦橋の面々はよろめく。
「当艦ニ強力ナ磁力ガ作用シテイマス。ガミラスノ方向ニ引ッ張ラレテイキマス。」
「きたわね。真。逆噴射できるかしら。」
「亜美、真美、逆噴射だ。」
「逆噴射最大出力....だめだよ...まこちん、ひっぱられていくよ。」
「総員、戦闘配置。おそらく引っ張られていくでしょう。上下から攻撃があるだろうから波動防壁を展開できる準備だけはしておいて。」
「了解。」
第一艦橋では、工具や小物がぷかぷか空中にうかぶ。
医務室でも器具がぷかぷかうかぶ。
「あらあら...」あずさが器具をおさえつけて引き出しに入れてテープでとめる。
「こまったわねえ。こんなときにけが人とかこなければいいけど...。」
「くつ...操縦できない...」
千早は操縦桿をにぎっているのがやっとの状態である。
ガミラスの外皮の孔からヤマトの船体が空洞のなかにはいってくるとマグネット発振機が作動をやめ、強磁性フェライトの雲は消失していく。
ヤマトは「地表」に激突し、艦内の乗組員はころげてはねかえり床にたたきつけられる。
非常ベルがけたたましくなり始める。
千早は必死に操縦パネルにしがみついた。やがてヤマトは「海」に着水して止まった。
「痛い....。」春香はかろうじてたちあがり、非常ベルのスイッチを停止させた。
「もう、レディを招待するのにこんな手荒な扱いして...ガミラスぅ...ただじゃすまないわよ。」伊織が怒りをあらわす。
「春香、外皮裏の天井都市をなぎはらうわ。伊織に指示して。」
「了解。主砲、発射準備。」
「右20度、次左15度、その次右2度。」
「右20度仰角35度、次左15度仰角20度、その次右2度仰角15度。」
「にひひっ。主砲発射ぁー。」
三連装ショックカノンは天井都市の爆雷群を次々に掻き落としていく。
デスラーの作戦司令室では
「総統…先手を打たれました。第三、第四、第五、第七、第九、第十二地区全滅です。」
「何い!?」
「残った地区でヤマトを攻撃するのだ。ホーミングミサイルを使え。気圧変圧器を作動させろ。」
「アナライザー、敵の発射指令電波を特定できる?」
「艦長、春香、さっきの衝撃でアナライザーがばらばらになってしまってる。ごめんね。組み立てるからちょっと待って。」
「雨雲が広がっているわ。嵐になるかもしれないわね...。」千早がつぶやく。
空中に黒雲が立ちこめてきた。やがて強い風と雨が降り始める。「海」面には、波がたちはじめた。
「修理完了。アナライザー頼むわよ。」
「ハイ、ヤッテミマス。」
律子と春香がチューブやコードをアナライザーにつなげ、発信源の解析が開始される。
「電波微弱により発信源特定デキマセン。」
「仕方ないわね。それじゃあ高い建物をさがして。」
「了解。」
「敵ホーミングミサイル多数接近。後方120、距離5500。前方からも110、距離6500。」
「デコイ、2時と11時と5時と7時の方向へ放出!」律子が命じる。
ガミラスのホーミングミサイルは、熱源及び赤外線反応を探知するとともに、レーダー照射を行なうタイプのものであるため、中途半端なデコイでは効果がないが、律子が放出したデコイはヤマトとそっくりの熱源及び赤外線反応を示し、レーダー照射をされるとヤマトの形を返す精巧なものであり、一定の効果を示し、多数のミサイルがデコイへ向かっていくものの、一部はヤマトへ接近してきた。
「前方12時40基、距離500、後方6時45基、距離450、ミサイル接近。」
「第一砲塔、第三砲塔、サーモバリックモード、発射。」
多数のミサイルが一瞬で爆発して消失する。
第二主砲のみが天井都市のミサイル群を搔き落とし、地上のミサイルを破壊していくが、海が荒れ、嵐が激しくなり命中率がさがる。
「敵ミサイルが海で溶けていきます。」
「!!」
「アナライザー、海水及び雨水の成分を分析して。」
「ハイ。」
数分後に分析が終わり報告がなされる。
「報告シマス。大気ハ希硫酸ガス。雨ハ希硫酸、海水はPh3ノ濃硫酸デス。」
「....」
「敵ホーミングミサイル、第二波接近。3時の方向150、距離7500。8時の方向130、距離8000」
「デコイ、3時と8時の方向に放出。」
「しかし、きりがないわね。」
「律子とアナライザー、技術班に、総統府がどこにあるか解析させて。」
「波動防壁展開。」舞が命じる。
「あの~どうでもいいですけれど、デコイに「のワの」「川 ゚ -゚)」「lw '‐'ノv」
「(-Φ-Φ)」「∬゚ ヮ゚)」「凸」「(^ヮ゚)b」「d(゚ヮ^)9」「ミ*゚ー゚)」という表示があるのはどういう意味なんでしょうか。」千早が律子へ向かってたずねると
律子は恥ずかしそうにうつむき、「ああ、あれ?深い意味はないわよ。」舞が即答する。
そのとき第一艦橋では、はぁ…というため息がもれる。
「なんなのよう。あれ、なんか一つ顔文字っぽくないものがあるじゃない。」
伊織が抗議するように叫ぶと、第一艦橋は微妙に笑いをかみ殺す空気にかわった。
その頃、ガミラスの作戦司令室では、デスラーが仁王立ちになり敵意むき出しで自ら指揮をとっていた。
「第二十一号基地、爆雷投下しろ。続いて第二十五号基地上空へミサイル発射だ。ホーミングミサイル150発射。」
「第二十一号基地、爆雷投下します。続いて第二十五号基地も上空ミサイル発射。ホーミングミサイル130発射。」
「ヤマト、2時の方向へ旋回。」
「第十七号基地、爆雷投下だ。第三十二号基地、ミサイル発射しろ。」
「第十七号基地、爆雷投下。第三十二号基地、ミサイル発射。」
「ヤマト、今度は11時の方向へ旋回。」
「第三十六号基地、爆雷投下。第三十九号基地、ミサイル発射だ。」
「ミサイル、爆雷がバリアで防がれています。」
「こしゃくな。気圧変圧器作動を最大にしろ。硫酸の嵐でヤマトを叩き落すんだ。」
「了解。」
「嵐が激しくなってきたわ。」
千早が不安そうに空模様をみあげる。
「総統府はまだ発見できないの?」伊織が不安そうに話す。
「波動防壁が切れるまであと5分ね。」
「総統府らしき建物を発見。3時の方向、距離15000」
「よくやったわ。じゃあ主砲で気圧変圧器を攻撃。」
「にひひつ。2時の方向1500、10時の方向2500、主砲発射。」
近くの気圧変圧器が破壊され、嵐がおさまっていく。
「ヤマト、気圧変圧器を破壊。」
「うぬぬ、ホーミングミサイル1000発見舞ってやれ。」
「波動砲エネルギー充填。発射用意、発射10秒前に着水。」
「艦長、溶けてしまいますが。」
「かまわないわ。発射時間程度じゃとけないでしょ。」
「敵ミサイルと総統府をまとめて始末するわよ。千早、サイドキック、じゃなかったw
発射後右180度まで船体を旋回させて。」
「はい。」
「エネルギー充填、90%」
「エネルギー充填、100%、対ショック、対閃光防御。」
第一艦橋の面々が遮光ゴーグルをつける。
「最終セーフテイロック解除。エネルギー充填120%」
「ターゲットスコープオープン、電影クロスゲージ明度20」
「波動砲発射10秒前、9,8,7・・・3,2,1,0、発射。」
「海面で右方向に旋回します。」
波動砲が昼間のようにガミラスの地底を照らし左から右方向へ天井都市が次々となぎ倒され、ホーミングミサイルが光の本流に飲み込まれことごとく溶解した。ガミラス星の外皮が轟音を立てて崩れ、地底のミサイル群が天井の崩落により爆発していく。
地底表面ではすでに、相次ぐミサイル、爆雷及び外皮崩落の衝撃で、固形化リソスフェアに亀裂が走っていた。波動砲によっていっぺんに外皮と天井都市が崩落すると、ついに固形化リソスフェアを突き破ってマグマが噴出し、割れ目噴火を起こす。また、火山が次々に噴火する。ついには数十もの火山がいっせいに轟音をたてて溶岩と噴煙を噴出し、外皮裏面と地下空洞上の都市を破壊していく。溶岩がどろどろと流れて林立するキノコ状の建物を押し流していく。
ガミラスの地底表面では火山性地震が続いていた。デスラーはよろめきながら司令室の窓辺に近づいた。眼下には赤々と溶岩流がてらついて流れている。その照り返しを受けてデスラーの顔も赤く見えたであろう。
ガミラスの人々は何が起こったかわからずに逃げ惑い溶岩流に流されていく。まさしく地獄絵図のようであった。
デスラーは
「ふはははは...ヤマトめ....やりおったか....ヤマトめ....ふはははは....」
デスラーは上半身で踊るようにして高笑いをはじめ、しばらくの間笑い続けた。
副総統のヒスや側近はまゆをひそめ、(気が狂われたか...)と感じていた。
「ふはははは....」
何分経ったであろうか。側近たちには時間が長く感じられた。
デスラーはスクリーンに示されたヤマトの光点をにらみつけ、
「やつの前方の天井都市と地底都市のミサイル、爆雷を発射しろ。」
と命じた。しかし、ヤマトはショックカノンで残り少なくなった天井都市のミサイルを打ち落とし、地底都市のミサイルを破壊しながら進んでいく。ガミラス星の外皮はさらにいたるところで崩れ落ちた。
ヒスは考えた。
(このままだと移住どころか脱出すらかなわなくなる...)
デスラーは
「われわれも苦しいがヤマトも苦しいはず。勝利はこの一瞬を耐え抜いた方に訪れるのだ。諸君、あと一歩の辛抱だぞ。」
「総統。お願いです。もうおやめください。」
「何!」
「まだ、お気づきになりませんか。このままではガミラス自体がこのまま滅んでしまいます。攻撃をおやめになって、遅まきながらもヤマトとの和平を...話し合いによる地球との共存の道を...」
デスラーは冷淡な視線をヒスに向け、彼の額へ向かってブラスターを撃ちこんだ。
顔面を血で染めて、ヒスはどうとたおれる。
「ほかには敗北主義者はいないだろうな。」
デスラーは部下たちをにらみつける。部下たちは蒼白になりながらうつむくばかりだった。
そのときだった。ヤマトの波動砲が総統府の周辺に命中した。天井に亀裂がはいり、ゆれが激しくなり、瓦礫がデスラーの真上に落下してきた。
「うわーーーつ。」
デスラーは絶叫して瓦礫の下に埋まったと思われた。総統府の建物は地盤が崩壊して倒壊していった。ガミラス星のミサイル、爆雷攻撃はいっさいとまっていた。
ヤマトは建物も溶岩もないやや高台になった平たい固形化リソスフェアの上に着陸する。ガミラス都市の残骸と溶岩流が見渡す限り広がっている。遠くには噴煙と溶岩を流している火山がいくつか見える。
生き物の姿は一切見られず、火山の爆発音のみが響く。
春香は、宇宙の星のひとつが最後を迎えた..と感じた。
「千早ちゃん。」
「春香...」
「アイドル時代はオーディションで負けても、切磋琢磨してやり直しが効いた。いくら意地悪されても終わりではなかった。地球が滅びるわけでもなかった...。でもこの場合の負けはやり直しが効かない。ガミラス星は滅んでしまった。ガミラスの人々は地球に移住したがっていたけど滅んでしまった。」
「ガミラスの人も地球の人も幸せに生きたいという気持ちに変わりなかったのに...
なんでわたしたち、戦ってしまったんだろう...わたしたちは戦うべきではなかったのに...。千早ちゃん、くやしいよ。あのドメル将軍だって生き残るために戦ったけど、ガミラスにもあのような立派な人はいたはずだよ。戦争すべきじゃないって意見をもった人もきっといたはずなのに。」
「誤った指導者を選んだ者のたどる末路よ。」
舞は得意そうに胸をはってつぶやいてみせる。しかし、次の瞬間には足早に艦長室へ立ち去った。
「あの人はいつもそうなのよ。敵が心理戦を挑めばそれを見破ってかえって冷静になって倍返しを考えるような強い人。アイドルとしても指揮官としても死角はない。だけど、人並みに悲しいことは悲しいから徹底的に弱いところは見せまいとするの。トップアイドルの時代もそうだったし今もそうだわ。」
律子が述懐する。
「何よ。つらいときは泣いたっていいじゃない。わたしんちは知らない人がいないくらい大きな会社だけど、私は兄たちのようになれなかったわ。だからわたしは負けた人間。でもアイドルをやっていくつかのオーデイションに受かったし、訓練学校へ行って砲撃のプロになったわ。そして今私たちはガミラスに勝った。だけど勝つってことがこんなにむなしいなんて...。」伊織がつぶやき、皆がその言葉をかみしめる。
「みんな、行こう、イスカンダルへ。」春香は第一艦橋の面々をはげます。
千早が操縦席に戻る。千早と真が顔を見合わせかすかにうなずく。
「補助エンジン動力接続スイッチオン」
「微速前進0.5」
「波動エンジン内エネルギー注入」
「フライホイール始動」
「メインエンジン接続、点火。」
「ヤマト発進。」
そのとき、舞は艦長席にもどってきた。
「みんな...」しばらく間をおいて舞は言葉を続ける。
「艦長の日高舞よ。わたしたちは、ついにイスカンダルへ来た。ほら、みんなの前にイスカンダルがあるわ。」
第一艦橋の面々は青い海におおわれた美しいイスカンダルを見つめていた。
「この機会に艦長として一言みんなに伝えたい。ほんとうにありがとう。」
地球を出航して87日が経とうとしていた。ヤマトは、苦しみながらも最終的には圧勝してここまで来た。人類滅亡まであと278日にせまっていたが、ヤマトの乗組員たちの表情は希望にあふれていた。
3ヶ月弱でガミラスを破り、イスカンダルを指呼の間にしたヤマト。人類滅亡まであと278日。地球は君たちの帰りだけを待っているのだ...
ぜんぜん死闘になってないじゃん^^とのご感想をお持ちの方!あなたは正しいw
どうやって舞チートにしようか考え、いったん書いた火山脈を波動砲で撃つ話をやめて最初から天井都市を壊す話にしました。しかもちょうどよいことに昨年の秋アニメにみぽりんの中の人と、響の中の人が演じるすばらしい作品が...あれだけのナガラを一掃する場面を思い出し、ティンと来ましたw。
もちろんDVDとコミックは全巻そろえ、12月には生まれて初めてライブというものに行きましたw
サブタイトルはガミラスにとってはまさに死闘だったということで^^;
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第12話 約束の地、イスカンダル
「イスカンダル地表まで、高度2000キロまで接近しました。衛星軌道にうつります。アナライザー、着陸地点設定のために報告お願い。」
「ハイ。イスカンダルノ表面ハ、海洋ガ95%、大気主成分は窒素71%、酸素22%、二酸化炭素1.5%...、平均気圧は1010ヘクトパスカル。」
アナライザーが報告を続けていると、雪歩が
「イスカンダルより入電ですぅ。」とうれしそうな声をあげた。
「誘導電波が回復しましたぁ。」
「雪歩、メインスピーカーに切り替えて。」
「はいっ。」
「こちら、イスカンダルのスターシャ...こちらイスカンダルのスターシャ...ヤマトの皆さんを歓迎します。皆さんには、マザータウンの正面の海に降りていただきます。着水を誘導しますので、操縦装置を私の指示にあわせるようお願いします。」
まもなく真はヤマトが大気圏に入ったことを計器で確認する。
「本艦はイスカンダルの大気圏にはいりました。波動エンジン停止してください。」
「波動エンジン停止。」
ヤマトはゆっくりと降下していく。眼下には、ひときわ高く聳え立つ水晶のようにきらめく建物があって、それを中心に放射状に道路が延びて、またその道路沿いにある建物も小さいながらガラスないし水晶のような輝きを放っている。最も高い建物の頂点には、うす桃色の宝石のようなものが乗っている。スターシャの住む宮殿であろう。
舞はスターシャのもとへ派遣する使節団を決定し、指示をあたえた。
えらばれたのは、春香、千早、律子である。
「わたしの指示は以上よ。春香、あなたは地球を代表する全権大使ってことだから。アリーナライブでリーダーをすでに体験してるんだからよろしくね^^。」
「はいっ。」
「ところで、艦長はなぜいらっしゃらないのですか。」
「わたしが行ったらどっちが女王だかわからなくなるじゃない。」
舞は胸をはってみせる。そこかい、と第一艦橋の面々はのけぞるが
「ていうかね。いざというときの保険よ。ガミラスの総統はあれしきのことじゃ死んでないかもって実は思ってるのが本音ね。」
「敵に決定的な打撃を与えて戦意を喪失させようとおもったけど、波動砲を撃った後も、弱弱しいとはいえミサイルや爆雷の反撃が数発だったけどあった。最後まで抵抗しようという執念か感じられた。こうして安心しきってるときが一番危ないのよね。アナライザー、監視おねがいね。」
ヤマトはマザータウンの港の桟橋に接岸し、艦腹の一部がひらいてタラップになる。
春香、千早、律子の順にタラップを降りる。
「春香。あれは...。」
小高い丘の上で手を左右に振る女性の姿が見える。
「あれは、スターシャさん!」
春香はうれしくなり、大きく手を振る。
「スターシャさあぁーーーーん。」
スターシャが出迎えに出ていることを知った3人の足は自然と早足なった。
丘に着くと、春香と千早は火星での出来事を思い出した。
(よく、似ている...)
「イスカンダルへようこそ。わたしがスターシャです。」
春香は、はっとして直立姿勢になった。
「天海春香です。こちらは...」
「サーシャ...あなたは髪を青く...」
「あ...わたしは...」
スターシャははっとして、まったく別人であることに気づく。千早のすらりとした長身と長い髪に妹のサーシャの面影をおもわず重ねてしまったのだ。
「サーシャって、もしかしてあの火星でなくなった方ですか。」
春香の言葉に
「やはり、そうでしたか。サーシャは、妹は、どうなったのですか。」
「妹さんの宇宙船は、おそらくガミラスに攻撃され、火星に不時着しました。
わたしと千早ちゃ..如月大尉は火星にいて、その宇宙船の調査を命じられました。現地へ駆けつけたときには、すでに妹さん、サーシャさんは、息をひきとっておられました。
でもその宇宙船のなかから、放射能除去装置を取りに来るようにというあなたのメッセージと波動エンジンの設計図をいただくことができたのです。」
スターシャは、目に浮かんだしずくをそっとぬぐって、
「妹は、命がけで私の使者を果たしてくれたのですね。」
春香はうなずいて
「地球の恩人です。感謝してもしきれません。」
「しかし、結局地球を救うのはあなたがたの知恵と勇気です。はるばるとイスカンダルへやってこさせ、あなたがたを試すようなことをして...すみませんでした。」
「いえ。どうなることか...とおもいましたが...無事にたどりつけてよかったです。」
ほほえみながらうれしそうに語る春香の言葉を聞いてスターシャもほほえんだ。
(彼女には「明日の幸せは...」などという言葉は必要はないだろう、この航海とそれ以前に積み重ねた経験が笑顔から感じ取れる)、とスターシャは感じていた。
春香は、地球に残してきた後輩の顔を思い浮かべた。
(加奈ちゃん、愛ちゃん、ついにイスカンダルまで来たよ。まっててね。)
春香のような宇宙戦士になりたいと受験勉強をはじめた矢吹加奈、そして舞の娘で訓練学校に入学したばかりの愛のことである。
一方、スターシャの指示で放射能除去装置の部品が大型トレーラーに積み込まれて運ばれ、リフトでヤマト艦内に積み込まれていく。
律子が運びこまれる部品リストをチェックしているのを艦医のあずさが眺めていた。
「これが地球の大気から放射能を除去してくれる装置なのね…。」
「完成品という形ではなかったので、部品と設計図を受け取りました。地球に帰り着くまでに艦内工場で組み立てます。本当はイスカンダルの技師に見てもらいたかったのですが…。」
「なんとか3ヶ月で運よくイスカンダルへ着けたものの、帰路もありますし。」
「帰路に何も起こらずにすむとは限らないしね。」
「そういえば、人がスターシャさん以外一人もいませんねえ。」
「実はそのことなんですが…」
放射能除去装置を受け取る直前、律子、春香、千早はマザータウンの背後の丘で、ささやかであるがサーシャの葬儀をおこなったのだ。そのとき
「お葬式に参列していただいてありがとう。天海さん、如月さん、秋月さん。これでサーシャもイスカンダルの大地へ還ることができました。」
「スターシャさん?」律子がたずねる。
「何ですか?」
「私たちは、イスカンダルへ来てあちこちご案内いただきましたけど、スターシャさん以外の方をお見かけしません。イスカンダルの皆さんはどこにおいでなのでしょうか?」
「ここです。」
そこには見渡す限りの墓標の列が並んでいた。
「それじゃあ、イスカンダルの皆さんはお亡くなりになっているってことですか。」
「そうです。王家の娘であるわたしとサーシャが最後のイスカンダル人でした。妹のサーシャを葬った今はわたしが唯一のイスカンダル人ということです。」
「なぜ、そうなってしまったのですか。」
「すべてのものには定められた寿命というものがあります。このイスカンダル星と」
といいかけて、スターシャは空にうかぶガミラス星を指差す。
「あのガミラス星は、二重惑星として誕生したのですが星の寿命が終わりに近づいているのです。」
「そこでガミラスの人々は地球を第二のガミラス星としようとした結果は、あなた方のよく知っているとおりです。わたしたちイスカンダルの者は、よその星に迷惑をかけたくないと決心しました。運命をだまって受け入れ、子孫を残すことすらあきらめました。」
「ということなのです。」
「そんな決心をしてまで渡そうとした放射能除去装置なのね。私たちの生き方が問われるわね。」
二週間が経過し、放射能除去装置、食料などの物資の補充、船体の修理が完了した。
「千早、いつでも発進できるわ。」律子は千早に伝える。
千早が艦長室へ報告へ行くとそこにはスターシャと春香と真がいた。
「発信準備完了しました。地球へ向け、発進したいと思います。」
舞は「全艦発進準備。部署に付きなさい」と命じる。
「はい。」春香、千早をはじめ乗組員は敬礼する。
「スターシャさん、わたしたちといっしょに地球へいらっしゃいませんか。」と舞はスターシャに問う。
「お気持ちはうれしいのですが、私はイスカンダルを離れることはできません。」
「ひとりさびしくこの星でお亡くなりになるより、恩人として地球で暮らしたほうが良い、と考えるのはあさはかなのでしょうか。でもそのような決断を下したイスカンダルの語り部としてもいらしていただきたいと思いますが。」
舞の顔と口調が真剣になる。舞は、この人を説得するのはガミラス一万隻を沈めるよりも困難かもしれないと悟り始めたのだ。しかもその予感はあたることとなる。
「祖先からの星、家族が眠る星を残していくということは考えられません。それに滅び行く星といっても今日明日に滅びるわけではありませんから、わたしには見捨てられません。」
スターシャの返答は実に単純であった。舞はどんな策もこの人には通用しないことを悟った。
「では、いつまでもお元気で。」舞と春香は交互に手を差し伸べ、スターシャもその手を交互に握った。
スターシャはタラップを降り、舞と春香はタラップを昇る。
「さようなら。」と手を振ると、スターシャが笑顔を浮かべて手をふった。
「地球へ向けて出発。」春香が宣言し、千早が操縦舘桿をにぎりながら笑顔を向ける。
「補助エンジン動力接続、スイッチオン。」
「補助エンジン動力接続。スイッチオン。」
「微速前進0.5」
「波動エンジン内エネルギー注入」
「波動エンジンシリンダーへの閉鎖弁オープン。」
「波動エンジン内圧力上昇。」
「フライホイール始動。」
「メインエンジン点火、10秒前、9,8,7.....2,1,0、ヤマト発進。」
ヤマトはイスカンダルの海から飛び立っていった。第一艦橋の窓から見えるイスカンダルは青いビーチボールのように見えていたが、みるみる小さくなり、青い光点となり、ついには見えなくなった。
イスカンダルの人々はほかの星に移住して生きながらえることを選ばなかった。舞はスターシャに地球の恩人として移住してほしいと伝えるが、スターシャは父祖の地、イスカンダルを離れることはできないと固辞する。ヤマトは放射能除去装置を積み込むとイスカンダルを出航した。
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第13話 地球よ!遂にヤマトは帰ってきた!
ヤマトは、マゼラニックストリームの亜空間回廊を巧みに使い十二万光年の行程を二~三週間で帰還し、銀河系を目前にしていた。放射能除去装置の組立ても律子の指揮の下、前羅(まえら)という下士官など技術班の面々が精力的に取り組み、完成間近となっていた。
「銀河系だよ。千早ちゃん。」
「戻ってきたのね。」なつかしげに千早がつぶやく。
銀河系外縁部に達すると、雪歩と通信班は一刻も早く地球に吉報を伝えたいと通信機の調整に余念がなかった。二万光年までは減衰せず、ほぼリアルタイムの会話が可能である。ある日、通信装置のランプが点滅し、通信可能になったことがわかった。
「み、みなさん、地球との更新が回復しましたぁ。」
雪歩がうれしそうに伝える。
「メインスクリーン投影しますぅ。」
「こちら地球防衛軍司令部だ。もしかしてヤマトか。放射能除去装置が入手できたのか。」
「こちらヤマト。放射能除去装置はもうすぐ完成します。」律子が答える。
「了解した。ヤマトの地球到達まであとどのくらいなのか。」
「ワープを繰り返し、あと三週間ほど、3月下旬には到着予定できます。」舞が答える。
「そうか。よかった。地球は救われる。君たちのおかげだ。ありがとう。」
「舞君。」
「はい。」
「君のご主人のおっしゃったとおりだったな。ほんとうにありがとう。」
「長官。あの程度の敵、わたしには役不足です、って言いたいところですが。」
舞と武田は笑いあう。
「作戦はそれを忠実に実行してくれる部下なくしてはなりたちません。優秀な部下を配属していただいてありがとうございます。この勝利は彼らの力です。」
画面に春香、千早、真、律子、雪歩をはじめ第一艦橋の面々が映る。
「ゆきぴょん。ずるいよ。亜美たちも映してよ。」
「双海君たちか、二人とも元気でなによりだ。」
「長官。ごほうびまってるからぁ。」
「あはは。君たちにはかなわないな。」武田は笑顔を二人に向けるやいなやプツンという小さな音がして、通信がきれる。またスクリーンは漆黒の状態に戻る。
雪歩が必死に操作するものの回復しなかった。
「で、電波状態が悪化しましたぁ。これ以上調整できません。」
「きっと地球側の出力が不安定なのね。」律子がつぶやく。
「ワープします。各自ベルト着用してください。」
千早が伝達する。乗組員はそれぞれの定位置でベルトを着用し、ワープの秒読みがはじまった。
そんなヤマトを7000宇宙キロ後方で、憎憎しげに見つめる目があった。
ガミラス星が崩壊したときかろうじて脱出に成功したデスラーが、天井都市のひとつに隠してあった、いざというときの旗艦に乗り込んで追いかけてきたのである。
「ヤマト発見。1時の方向。6900宇宙キロ。」
「デスラー砲発射用意。」
「デスラー砲発射用意。エネルギー充填。」
「エネルギー充填100%。デスラー砲発射用意完了。」
砲手が照準を固定し、発射レバーを押さえデスラーの命令を待っていた。
デスラーは鞭をならし、砲手に近づくと彼を押しのけて自分がその席に座る。
砲手をしていた士官は驚きながらも偉大なる総統にその席をゆずる。
「デスラー砲、発射。」
レバーを引くとうす赤色の太い光条が昼間のように宇宙空間をてらしヤマトへ向かっていく。しかし、その光条がヤマトのいる空間に達しようとしたとき、ヤマトの姿はその空間から消え去った。
「!!どうしたのだ。」
「一瞬の差でヤマトはワープしたものと思われます。」
(ヤマトめ、運のいいヤツだ。)
「追え!直ちにワープするのだ。」
デスラーは語気を強めて士官に命じる。
「総統、航路計算に時間を要します。しばらくお待ちを。」
「推定位置でかまわん。ワープしろ。」
「ワープ終了。太陽系圏内にはいりました。」
「波動エンジン異常なし。」
千早と真が報告したそのとき、大きな振動と衝撃がヤマトを襲った。
「うわーーつ。」「きゃああああ。」
艦内は悲鳴に包まれ、座席から床にたたきつけられる乗組員もいる。
「どうしたの。」
窓の外を見るとガミラス艦が右舷に斜めに突き刺さった状態になっている。
ガミラス艦では、士官たちがようやくたちあがり、デスラーも額の傷から血をながして顔を上げる。窓からはあの怨んでも怨みきれないヤマトの艦橋がみえる。
「これは、どういうことだ。」
「ワープアウト地点が偶然に一致してヤマトの艦腹に突っ込んでしまいました。」
「そうか。」デスラーは不敵な笑いを浮かべる。
(復讐を晴らすときがこんなに簡単にめぐってくるとは...)
「ガミラス本星での敵をとるときがきた。総員、ヤマトへ乗り移って白兵戦を挑むのだ。放射能ガスを送って地球の虫けらどもを駆除するのだ。」
ガミラス艦からは接舷通路がヤマトに打ち込まれ、放射能ガス射出パイプからガスが放出される。ガミラス兵が武装して乗り込んでくる。
接舷通路は、機関室に開いていた。真は
「みんな、大丈夫?」と衝撃で倒れた部下たちを励ましていたところ、シュウシュウと音を立てて、煙のようなものがひろがってくる。そしてその奥からガミラス兵の人影が見える。
「うわああ。しゅーしゅーってへんな音がするよ。まこちん。」
「現在、右舷にガミラス艦が接触。戦闘準備。」と艦内放送がなされ、真は事態に気がつく。
ガスに巻かれた部下たちが苦しむのに気がつき、
「亜美、真美、みんな、マスクをかぶれ。毒ガスだ。」と叫びマスクつきフルフェイスヘルメットにとびついた。亜美は近くにあった艦内放送マイクをとって、
「みんなぁ、機関室にガミラスがはいってきちゃったんだって。まこちんが、ガミラスがどくがすをばらまいてるって言ってる。こわいからマスクつけて~。」
と放送する
真美は必死に機関部員に呼びかける。
「みんな、どくがすだよ~。こわいからマスクつけようよ~。」
機関室で機関部員とガミラス兵の戦闘がはじまり、コスモガンの光条が飛び交う。
春香は腰のコスモガンを抜き、
「小鳥さん、伊織、行こう。」と指示する。
舞は「艦内隔壁閉鎖」と命じ、平常通路は隔壁閉鎖され、ガミラス兵は非常通路をめざとくみつけて侵入する。非常通路に侵入してきたガミラス兵を倒しながら春香たちは機関室にたどりつき、
真が傷ついた部下を背負っているのに目が止まる。
「真!」
春香たちが真にかけよると
「はつはっは...。」という笑い声が響きわたる。」
「!?」
機関室の配管が複雑にからんでいる向こう側に大またになった男が春香たちをにらみつけている。
「ぼうや、じゃないか、これはこれはお嬢ちゃん方。無駄な抵抗はするもんじゃないよ。」
不敵な笑みをうかべてデスラーは春香たちを見すえる。
「艦長はどこにいるんだ?お嬢ちゃん。」
「誰ですか?」
「はつはつは。勇ましいなお嬢ちゃん。私がガミラスの総統デスラーだよ。」
春香は息を飲む。
「ふふふ。死んだと思っていたようだな。ガミラスは死なんよ。このデスラーもな。」
「わが大ガミラスとこれまでよく戦ってきた。ほめておいてやろう。しかし、戦いの本番はこれからなのだよ。」
マスクをかぶっているため息苦しくならなかったが倦怠感と痺れが体をおそう。
「これは放射能ガスだよ。ヤマト艦内はあの赤い地球とおなじになる。われわれがミラス人はなんともないが、たしかお前たちは生きられないだったな。はっはっは。」
「ひ、非常警報!非常警報ですぅ!放射能ガスは全艦に充満しつつありますぅ。総員、宇宙服を着用してください。」
「春香さん。」
技術班の一人が工作室にかけこむ。律子の部下で放射能除去装置の組立てに精力的にかかわった下士官の前羅だった。彼は戦闘になるとびびってしまう臆病者として有名だったが、技術面での腕はたしかで、律子は彼に一目置いていた。前羅は、血相を変えて、放射能除去装置によじ登る。
「前羅君、何をするつもり!」
前羅は、放射能除去装置のコントロール席に座った。
「機関室に放射能ガスが充満しているんでしょう。今こそこれを使うときじゃありませんか。」
律子はあせる。しかし、作動するかどうかもわからない放射能除去装置を使わせるわけに行かない。
「やめて、前羅君。」
駆け寄ろうとしたとき、ガミラス兵が侵入してきた。律子はコスモガンを抜いてとっさに撃ち倒し、放射能除去装置に走りよって
「やめて、前羅君、まだテストもしていないのよ。」
「今すればいいじゃありませんか。」
前羅は、パネルの操作を始める。自分は臆病な一技術士官だ。だけどこの放射能除去装置を組み立てている。作動すればすべてがうまくいく。
「前羅君!」
律子は倦怠感におそわれる。放射能ガスがひろがっているに気づき、すぐさま工作室を出て行く。
「前羅君、ガスが来ているわ。早く逃げて。」
「僕はかまいません。春香さんが死んでしまう。」
「そういえば、あなたは春香のファンだったわね。」
「はい。班は違うとはいえ、憧れの人と同じ船に乗れて幸せでした。」
律子は微笑み
「わかったわ。メインボタンをセットしたら、起動プラグの振幅をプラスになるまで確認して。」
律子の声に前羅は振り向く。工作室を見下ろす位置にある技師長室のガラス張りの窓の向こうに律子がマイクを持って立っているのが見える。
「技師長。ありがとうございます。」
「振幅プラス30、始動装置セット完了。コスモクリーナー起動。」
前羅は、レバーを一気に押し下げる。放射能除去装置は、低い唸るような起動音を発して震えはじめる。
律子は、放射能除去装置を見つめていた。
放射能ガスの中で閃光がはしった。ひときわ大きなゆれが技師長室にまで伝わる。
「前羅君!」
放射能ガスが薄れていき、ついに工作室全体の空気が澄んでいく。
安定した静音が続いて放射能除去装置は順調に運転していた。
「やったわ。放射能ガスが消えた。成功だわ。」
律子は喜んだが、深刻な事態が起こっていることに気がつく。
放射能除去装置のコントロール席にうつぶせのまま動かない部下の姿に蒼白になった。
「前羅君! 前羅君!」律子は技師長室を駆け下りて工作室の部下のもとに駆け寄る。
放射能ガスは、急速に浄化されて消えていく。通路から機関室までガスが消滅していく様子にデスラーのほうがあせりを見せる。
「放射能ガスが消えていく。なんていうことだ。」
部下のガミラス兵も苦しみ始める。
「撤退だ。地球型の空気ではこっちが宇宙服を着なければならん。」
ガミラス兵は我先に接舷通路に入っていく。
「ヤマトよ。わたしは必ずもどってくる。お前を沈めるために。」
とデスラーはヤマトの艦内をにらみ、引き上げ、ガミラス艦の接舷通路は切り離された。
放射能ガスが消えたのは、放射能除去装置の効果であると考えた春香は律子にお礼を言おうとして工作室へ入る。
「春香、無事でよかった。」
「律子さん。亜美の艦内放送がなければヘルメットをかぶらなかったんですが、さすがにあのガスのなかでは、倦怠感としびれがひどかったです。」
「あのね、春香。」
「どうかしたんですか。」
「覚えてる?あなたがアイドルやってたときのファンレター送ってくれた人に前羅君っていたのを。」
「はい。」
「彼、実はヤマトの技術班にいたのよ。」
「ええつ。そうなんですか。」
春香は驚く。彼女が無名時代から熱心にファンレターを送ってきていた一人が彼だったからだ。namugoプロがスキャンダル記事を書かれたときにも
「僕は、味方です。」と書き送ってくれていた。
「結婚してくれって書かれちゃって。」春香はほのかに顔をあからめる。
「そんなこともあったわね。」
律子が笑う。
「イケメンタイプとか浮気するタイプじゃないと思ったから逆に断りにくかったな。」
「でも、そんなわたしの気持ちをくんでくれて無理強いしないでくれた。彼氏はいないって書いて、のらりくらりとして結局ほったらかしにしちゃった。」
「それでよかったのよ。夢をこわさないでくれたと彼は思ってたんだから。」
「訓練学校では雪歩や千早ちゃんと赤羽根教官をとりあっちゃってたけど。」
「そんなこともあったわね。」
「あのね。春香聞いて。彼は...さっき亡くなったの。コスモクリーナーは起動時するときに決定的な欠陥というか問題点があったの。彼は、放射能除去装置を起動させたとき工作室が一瞬酸欠空気になって...。」
春香は愕然とした。赤羽根教官のことはあきらめていた。しかし、自分のことを本気で受け止めていてくれた人が亡くなった。彼は自分からの返事をいつまでもまっていただろうに...。
「あの、律子さん。彼のために「Do-dai」と「キッチン・ビーナス」を歌って録画したディスクを彼の宇宙葬用カプセルに入れようと思います。わたしの顔写真入りで。」
「そうね。後の曲はnamugoプロの曲じゃないけどリクエストがあって歌ったらヒットしたもんね。」
律子はガミラス兵が侵入し、放射能除去装置を操作して切り抜けた顛末を舞に報告する。
「なるほど。そういうことがあったのね。これからのことだけど...
敵は、かならずまた仕掛けてくる。いやあの様子からはあのガミラス艦はヤマトを完全に捕捉していた。もういちど仕掛けてくるとしたら今度は遠距離攻撃の可能性が高い。律子、あの光学兵器反射装置は完成しそう?」
「いえ、どうしてもあと1年、短縮できても半年は要します。」
「それなら、千早に小惑星帯にワープするよう伝えて。反重力反応機を小惑星帯内の岩塊につけてヤマトに装着させる。」
「あの案を使うんですね。」
「そう。冥王星会戦のときはいきなり応用問題だったけどね。それから、ヤマトの反応を消してパッシブレーダーのみにするやいなやデコイを発射する。」
ガミラス艦の図がパネルに投影される。
「相手の艦形からみて艦首波動砲をもっていそうね。エネルギー充填から発射反応、発射時間を計測できるかしら。」
「可能です。」
「それなら様子を見ましょう。」
律子が千早に指示を伝えるとヤマトはワープした。
「周囲5000宇宙キロに敵の反応みとめず。」
「反重力反応機発射。岩盤装着。」
反重力反応機が発射され、岩盤がヤマトに装着される。
「エンジン停止、パッシブレーダー作動。デコイ発射。」
ヤマトの反応が消され、デコイが発射される。
「敵艦、ワープアウトしてきました。」
「ヤマトめ。こんなところに隠れていたか。」
今度は時間をかけてヤマトのワープアウト地点を正確に計算したデスラー艦が出現する。
「デスラー砲、エネルギー充填。」
「デスラー砲、発射準備完了。」
「10,9,8....3,2,1、ヤマトよ。これで終わりだ。発射。」
デスラーは、確信した笑みをうかべ、デスラー砲を発射する。
デスラー砲は、デコイを貫いて爆発する。
しかし、ヤマトのレーダーにその様子はしっかりとらえられていた。
「敵艦3時の方向に発見。エネルギー反応増大。」
「敵艦から発射反応。高エネルギー帯やってきます。」
「あれは...波動砲そっくりね。」
「そう見ていいと思います。」
「デコイに弾着。」
「エンジン始動」
「主砲発射準備。目標デスラー艦」
「3時の方向、仰角1度。」
「発射。」
「ぬ。」
「ヤマト発見。」
「何だと?さっきのはデコイだったのか。」
「ヤマトから発射反応あり。」
ショックカノンがデスラー艦に命中するが効果がない。
「!!なんですってえ。」伊織が驚く。
「波動砲しかないじゃない。でも艦首を動かしている間に攻撃されたら...。」
「大丈夫。敵は波動砲を撃ってくるだろうけど、もう対策済みだわ。」律子は微笑んでみせる。
「ふははは...この艦はドメルのゼルグート級と同じでショックカノンは至近距離からでないと効果がないのだよ。さて、波動防壁などしても無駄なように、デスラー砲でとどめをさすか。」
「!!総統、敵魚雷、デスラー砲の砲口へ向かってきます。」
「何!」
デスラー砲のエネルギーを充填している砲口へヤマトの魚雷がとびこむ。
デスラー砲口の奥に魚雷が命中し、デスラー艦は、エネルギーが艦内で暴走し、高温になる。
「ぎゃああああ。」
次の瞬間、デスラー艦は、爆煙とエネルギーの奔流があふれ出して輝き、船体は引き裂かれた。そして、宇宙空間を昼間のように照らして、大爆発を起こした。
「まこちん、機関室の修理完了したよ。」
「聞いた?千早。あとは地球へ向かうだけよ。」
「了解。地球へ向けて、最終ワープ。」
西暦2200年3月20日、ヤマトは人類滅亡まで7ヶ月を残して帰還した。放射能は除去され、地球はもとの青い姿をとりもどした。一方、小マゼラン銀河の軍事バランスが崩れ、再び地球に脅威が訪れるのは1年数ヵ月後となるがそれは後の話である。
デスラーの復讐を退けたヤマト。地球は以前のように澄んだ空気と海を取り戻し、赤茶けた姿から、生命のあふれる青い星によみがえった。しかし、あらたな脅威がすこしづつ頭をもたげつつあった。
12話のほうがよかったかもしれませんが、「ばかめ」と同じくらいか、もしかしたらそれ以上に有名な戦史上のネタを仕込みましたw。
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