僕のヒーローアカデミア~究極生命体幼女RTA~  (ヴィヴィオ)
しおりを挟む

1話

 

 本日は生まれによって全てが決まる僕のヒーローアカデミアをやっていきたいと思います。このゲームは自由で、色々なエンディングが存在しています。

 その中でも今回、目指すのは“究極生命体”と呼ばれる称号を会得してエンディングを迎えます。はい、このゲームのラスボスであるオール・フォー・ワンさんとワン・フォー・オールさんのどちらか、またはどちらも討伐することです。ええ、はい。物理的にぶっ倒す必要があります。

 その為に全てが決まるキャラクター作成は頑張らないといけません。リセマラ必須なゲームです。(975敗)

 というわけで、キャラクター作成が完了次第タイマースタートです。

 では、早速ですがキャラクター作成を行っていきましょう。個性を決めるのは名前が重要です。このゲームでは名前が個性に関係することがあります。

 例えば水に関する個性なら名前に水を入れると狙った個性が手に入る確率が上がります。原作キャラである蛙吹梅雨ちゃんなら、カエルの個性というわけですね。

 そういうわけで今回、欲しいのは強い個性です。名前に欲しい個性を入れましょう。入れるのは改造細胞です。性別は男性、女性、ランダムが選択できますのでランダムを選択します。どっちでもいいですからね。容姿も全部ランダムにします。時間が無駄ですからね。

 さて、ここから色々な質問がされます。この質問によってヒーロー側かヴィラン側からのスタートが選択できます。この選択肢によって経歴が決まって得られる個性の強さが変わってきます。

 ヒーロー側なら普通に一般的な家庭などからヒーローを目指す感じですし、ヴィラン側なら親がヴィランやヴィランに攫われて実験体にされたりします。ヴィラン側は総じて強力な個性が手に入りますが、デメリットも多く付与されるのです。今回はヴィラン側を選択します。

 

『ようこそ、改造細胞ちゃん。僕の名前はオール・フォー・ワン。これから君の経歴を決める。君は個性に何を求めるのかな?』

 

 選択肢が出るので、全てランダムにします。強い個性が無いとこのゲームは普通に詰みますからね。

 

『これでいいかい?』

 

 表示された来歴には実験体と書かれています。まあ、体を改造するようなキャラクターなら実験体は確定だよな~。そんな訳でこれで決定します。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 オープニングが始まりましたのでタイマースタートです。会話は全てスキップします。説明も全てスキップったらスキップです。個性は四歳前後で発動するまで出来る限りぶっ飛ばしていくのがRTAの基本的ですからね、はい。速度こそ全てです。

 おっと、培養槽が複数並ぶ部屋が見えてきます。その中の一つに浮かぶ幼い女の子の姿があります。この子が改造細胞ちゃんですね。肌が白くて髪の毛が白髪で紫の瞳を持つ幼女です。

 

「おお、成功だ! ようやく完成したぞ!」

 

 研究者が何か言っていますが、無視です無視。そして自由になった時にステイタスを表示します。ここで狙った個性でなければリセットです。

 

名前:改造細胞No.976

個性:細胞改造Lv.1

年齢:4

外見:18

来歴:実験体

称号:なし

 

 よしよし、狙い通りの個性です。というか、これになるようにリセマラをしたので当然ですね。個性の後ろにあるレベルは個性を強化していくと上がります。10になると覚醒して強化できます。

 また名前に関してですが、この世界にはヒーローネームやヴィランネームがありますので変更可能です。そもそもこの子は実験体なので戸籍なんてありませんから後々好きな名前にできます。というわけで、名前は百合ちゃんにする予定です。ヒーローかヴィランネームはレッちゃんかレズちゃんですね。

 続いて改造細胞の個性ですが、その名の通り細胞を改造する事ができます。自分の細胞はもちろん、取り込んだ細胞も改造できます。具体的に言うと細胞を改造して増殖させたりできます。個性細胞とて例外ではありません。間違いなく最恐スキルです。

 ちなみに実験体は身体能力や個性が強化されますが、その分短命や暴走というデメリットが存在しているので気を付けましょう。まあ、RTAが終わるまで生きていればいいので問題はありません。RTA走者が外道と言われているのも納得です。

 外見の数値ですが、高ければ高いほど美少女や美女になります。レッちゃんは18なのでまごうことなき美少女です。いえ、美幼女ですね。誰からもうっとりと眺められるほど均整の取れた完璧な外見で、多くの人を虜にする素晴らしい感じです。人ごみに紛れることは困難なぐらいですね。なんでこうなった! 

 これでは雑踏に紛れて闇討ちなんてできません! ガバにもほどがあります。ですが、可愛いは正義ですから、オリチャーを発動して修正しましょう。正直、またリセマラはもういやです。

 

「?」

「976番。食事をしておくように」

 

 スキップが終わり、ようやく動けるようになりました。質素なワンピースを着たレッちゃんを操作します。

 まず机の上に用意されている食事を食べましょう。何かの肉団子のようですが、気にせず食べます。勿体ないので禍々しい気配がしているものでも気にせず食べましょう。食べなければステイタスが下がりますし、研究者達にお仕置きされますからね。

 レッちゃんは食べるのを嫌がっていますが、身体を操作して素手で掴んで食べさせます。食べた肉団子を早速細胞改造で体内に吸収していきます。何故かレッちゃんと相性がいいのかステイタスが上がりました。

 

「ちゃんと食べたな。次は訓練だ」

 

 研究者の人に言われた通り、訓練場に移動して訓練です。ここからはミニゲームなので連射機などがあればそれも使いましょう。

 今回やるのはランニングです。こちらはリズムよくボタンを押してスタミナと速度を維持して回避しながら進んでいきます。はい、妨害があるんです。

 レッちゃんがランニングマシンで走っていると、攻撃が飛んでくるのでそれを回避します。四歳児にやらせる訓練じゃありません。

 これが終われば次は格闘訓練です。サンドバッグにひたすら殴り続けます。ここは連射機で構いません。

 基本的にこの二つをしてから休憩して研究者に食事を要求します。研究者は快く用意してくれたのでどんどん食べていきます。

 サイクルとしては訓練、訓練、休憩、勉強です。途中で休憩を入れないと成長効率が落ちますので仕方がありません。

 

 こんな感じで一年が経つと、従順なレッちゃんに騙された研究者はある程度自由に行動させてくれます。この研究所でしっかりとやる事をやっておかないとタイムが死にますので、強化アイテムをしっかりと回収しておきましょう。

 

「……声が……聞こえる……ここ……?」

 

 はい、ここです。ゴミ捨て場ですね。ここには良い物が色々と落ちています。ゴミの中から必要な物を探すのは大変ですが、鉄や機械系は全て要りません。必要なのはお肉です。腐っててもいいのでそれを見つけて食べましょう。

 お腹を壊しますが、個性で毒や寄生虫に対する耐性を得るために必要ですからね。ここは心を鬼にして食べてもらいましょう。だって、ここでしか貰えませんからね。だいたい訓練所内部で個性のレベルを3から4にしておかないとタイムと肉体が死にますからね。これは必須な事です。よくやりました。

 

「えへへ~」

 

 嬉しそうにしているレッちゃんはルンルン気分です。そんな状態で新しく増えた訓練を始めましょう。そう、バトルです。相手は人間ではなく虎です。

 虎は突撃してくるだけなので、レッちゃんを操って回避してカウンターを決めてさっさと撃破しましょう。油断するとこちらが美味しく頂かれるので気を付けましょう。(45敗)

 

「んっ!」

 

 飛び掛かって来る虎の下に入り込んでレッちゃんの一撃。虎がへの字になって吹き飛んでいきます。レッちゃんは細胞改造のおかげでかなり肉体的に強くなっています。個性細胞も含めて増殖させまくっているので細胞の密度が違うのです。筋肉は筋細胞で構成されているので、そちらも徹底的に強化しているので歩く凶器です。

 と、いっても虎さん相手とて普通にやっては勝てないので、降ってきたところを狙って追加で横から飛び蹴りを喰らわせます。相手を浮かし続けながら嵌め殺ししてやりました。

 

「いただきます」

 

 倒した虎はしっかりとスタッフ(レッちゃん)が美味しく頂きました。こんな感じで動物を殺して食事によって動物の細胞を取り込み、肉体を強化していきます。常に個性を強化しながら必須イベントが起こるまで待ちます。いえ、待たなくてもいいんですけどね。

 次に起こるイベントは違法研究所の情報を知ったヒーローによる襲撃イベントです。ここでヴィランルートならヒーローを撃退します。ヒーロールートなら大人しく救助されるのを待ちます。ですが、本ルートでは究極生命体を目指しておりますので……どちらも選びません。とりあえずイベントまで鍛えます。サイクルは訓練、戦闘、実験、休憩です。実験の後はステイタスが増えますが寿命など色々と削れてしまいます。レッちゃんは二十代が限界でしょう。三十にはなれません。こんな感じで三ヶ月ほど飛ばしましょう。

 

 

 

「……ん……」

 

 夜。深夜に眠っているレッちゃんを起こします。今夜は眠らせねぇぜ! と、いうわけで突撃、隣の寝室だ! 

 隣では研究者達が今日もレッちゃんを観察して新しい投薬の薬や抽出された個性細胞などを用意してくれています。もしくは新しいレッちゃんの妹や弟達を作っているのかもしれません。

 

「あら、寝れないの?」

「ん」

「睡眠薬を用意し……ろ……?」

 

 別の研究者が驚きの表情をしました。何故ならレッちゃんが抱き着いていた女性の背中から腕が生えたからです。もちろん、小さなレッちゃんの手です。

 

「なんでだ……」

 

 何でも何も、ヒーローに経験値を取られるわけにはいかないので、しっかりとこちらで経験値を回収しておきましょう。彼等も自分達が作り上げた完成体に殺されるなら本望だよなぁ? 

 

「……なんで……? 神様が言うから」

「は? な、なにを言って……」

 

 油断していた研究者に近づいて蹴りを放ちます。相手は異形型の熊さんなので防御力が高いですが、相手は男性なので弱点は決まっています。あそこを蹴ってクリティカルヒットを出し、飛び上がって無防備な喉笛に噛みついて引きちぎって毒を流し込んでやります。毒蛇も食べていますから、これで終わりです。

 残った一人がやっと拳銃を取り出して撃ちながら緊急用のボタンを押そうとしていますが、銃弾を気にせずに突撃して殴って無力化します。

 

「た、たすけっ!?」

 

 お前が泣いても殴るのを止めない! これは妹達の分だ! お前達が犠牲にしてきたレッちゃんの姉妹たちの恨みを思い知れ! 

 

「ひぎゃあああぁぁぁあっ!?」

 

 ボコボコにして殴り殺したので少し休憩です。オートモードにしてレッちゃんのAI操作に任せます。その間にドリンクとってきます。

 

「ん。神様、居なくなった……ごはん」

 

 お待たせしました。再開です。アレ、なんだか部屋が綺麗になってますね。返り血を浴びたレッちゃんはニコニコしていますし、問題ないでっしゃろ。私達は何も見なかった。SANチェックはしない。いいね? 

 

「ん!」

 

 この部屋にある薬とか細胞はしっかりと回収して捕食してから進みます。回復アイテムゲットだぜ! ぶっちゃけるとレッちゃんは細胞改造で強化しまくってるせいで燃費が糞悪いです。人の十倍以上のカロリーを必要としています。大食いなんですよね。だから回復アイテムは必要なのです。

 では、監視カメラを操作しましょう。レッちゃんが操作できるはずがありませんが、そこはそれ、私が操ることでどうにかできます。決してレッちゃんに適当に触らせてはいけません。(28敗)

 監視カメラの映像を確認して最短コースで次のお部屋にいきましょう。そのお部屋も強襲してこの施設に居る生きとし生ける者達を皆殺しにします。経験値は残さず食べましょう。お残しはゆるしまへんで! 

 

 

 研究所内に居る人達を経験値に変えたので、ステイタスを確認しましょう。

 

名前:レッちゃん(改造細胞No.976)

個性:細胞改造Lv.4

年齢:5

外見:18

来歴:実験体

称号:《肉親殺し》《共食い》《無慈悲なる虐殺者》《無慈悲なる捕食者》

 

 称号をゲットしています。肉親殺しは親兄弟など家族を殺したら手に入ります。レッちゃんは戦闘訓練で兄弟姉妹を手にかけていますので仕方がありませんね。研究者達も親ともいえますし。

 効果は自らの血族に対するダメージが二割上昇し、カルマがヴィランよりになります。

 

 共食いはなんででしょうか? 怪しいのはありましたが、わかりません。ええ、わかりません。毒入りスープでも飲んだのでしょう。

 効果は食べてもデバフがかからないようになります。また同じ血族に対するダメージが一割上昇します。こちらもカルマがヴィランよりに増大します。人々から好感を得られにくくなりますが……レッちゃんはAPPお化けなので問題ありません。

 

 無慈悲なる虐殺者は一施設にいる全員を、生命を何一つ残さず殺したことで手に入ります。

 効果はクリティカルヒットの確率とダメージが三割上昇します。クリティカルヒットは当たり所が悪ければ即死させたり、大ダメージを与えることができます

 

 無慈悲なる捕食者は殺した生命を全て食べたことにより、会得する称号です。しっかりと、殺したら食べるという精神はお兄さん、関心です。偉いですね。

 

「えへへ~」

 

 効果は食べた物を効率よく吸収することです。普通なら経験値の上昇だけですが、レッちゃんは細胞改造で取り込んだ細胞を自らの血肉に変えられるので肉体改造がはかどるというわけですね。これを持っているか、持っていないかではタイムが数時間、下手したら数日単位で変わってきますので必須コンボです。

 さて、夜も空けてきたのでそろそろ終わりです。お金と服を回収してガソリンやガスボンベに穴をあけてから、ロマンである自爆装置をポチっと押して脱出です。証拠を残すはずがありません。ここで証拠を残せばレッちゃんが拘束されてタイムロスです。ですから、建物ごと崩壊させる必要があります。

 

『自爆装置が押されました。職員は直ちに脱出してください。繰り返します……』

 

 さあ、ここからはタイムアタックです。建物が爆発する前に外にでましょう。大丈夫、ルートは完全に頭に入っています。最短距離を逃げないと爆発に巻き込まれて大怪我をするか、最悪死にます。(6敗)

 希望の明日へ向かってレッツゴー! 

 

「お~!」

 

 研究所から脱出したところで本日はここまでです。またお会いしましょう。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話

 

 お待たせいたしました。それでは続きをやっていきましょう。前回は研究所からレッちゃんが脱出したところですね。

 現在、レッちゃんは爆風でコロコロされて地面から転がり落ち、止まったところでわけもわからずペタンと女の子座りをしながら周りをキョロキョロしています。

 まあ、無理もありません。彼女は研究所の外から出たのが初めてですからね。

 

「ん~? ん~!」

 

 さて、不思議そうに怪我しつつも遊んでいるレッちゃんを放置しておきます。どうせ細胞が増殖して再生するので放置しておいても問題ありません。

 むしろ、ここからが問題です。このままこの場所に居ると爆発を見たか、聞いたかは知りませんが、ヒーロー事務所に通報されます。そうすると近場のヒーローがやってくるんですよね。

 ヴィランルートであればここでコロコロするのも手ではありますが、タイムロスになるのでやりません。ヴィランとなると指名手配されて公共交通機関がほぼ使えなくなるんですよね。(5敗)

 ヒーローに見つかればいらないというのに保護された後、警察官に取り調べを受けます。戸籍も身元保証人も、居ないレッちゃんでは長期間拘束されること間違いなしです。そんなタイムロスは頂けないのです。ヒーローに保護されるにしても、欲しい細胞を手に入れてからでないといけません。ですから、研究所に居る間に個性のレベルを上げておかないといけなかったのです。

 ここからはヒーローに見つからないようにこっそりと研究所がある何処かの山から脱出しましょう。もちろん、研究所の位置はランダムなのでまず現在位置の把握からが重要です。とりあえず高いところにレッちゃんを登らせて周りを確認しましょう。

 

「ん!」

 

 木に指を突き入れながらするすると登っていきます。筋肉のなせる技ですね。物理さいきょー! 

 さて、レッちゃんが木に登り終えたので、周りを確認しましょう。どうやら遠くに海と港が見えるようです。見覚えはあります。目的の場所から少し遠いですが、まだましなところです。では、そちらの方に向かって山を下りていきましょう。イクぞー! 

 

「おー!」

 

 自動モードだとヒーローに見つかってしまうので、ここは手動でやりましょう。試走で二十回ほど走ったマップなので問題ありません。

 

「っ!?」

 

 木々を抜けると、そこは道路です。飛び出さずに木の後ろに隠れて少し待ちましょう。少しすると右側からサイレンの音と赤い回転灯をともした集団がやってきます。ここで飛び出していたら彼等に気づかれていたんです。

 息を殺してしばらく待っていると、全てが通り過ぎていきました。あの集団にはヒーローも乗っているので、見つかればタイムロスになります。わかりましたか? 

 

「ん」

 

 では、道路に飛び出して崖を飛び降りましょう。途中で崖を蹴って大きな木の方に移動します。

 それから枝に掴まって身体を回転させて速度を殺して木から木へと飛び移って移動しますが、タイミングをミスるとそのまま落ちて死にます(24敗)。

 何故こんな事をするかというと、地上を走ると移動した痕跡が残るのでまず味だからです。

 木から木への移動は慣れないと途中で落ちてタイムロスになりますが、走者の皆さんなら練習しているはずなので問題ないでしょう。練習する時は崖から飛び降りずに木から木でやりましょう。お兄さんとの約束だぞ! 

 

「ん!」

 

 移動していると、そろそろエンカウント地点に入ります。ヒーロー襲撃イベントは相手の拠点が判明しているので、襲撃するわけなので当然ですが、監視されています。一定の距離を置いて逃げられないよう布陣されています。

 襲撃後にこのルートを通ると、ほぼ確定でヒーローと警察とエンカウントします。ですが、今回はヒーロー側の準備が整う前に行動を起こし、研究所を爆破していますので警戒網に穴が出来ています。その穴から脱出しましょう。ここでガバると、タイムがまず味になります。

 

「ん~?」

 

 おっと、エンカウントしたようです。相手は──

 

「迷子か、怪我人か、まあいい。どちらにしろ濃密な血の匂いだ。捕獲すればいい」

「そうですね。お願いします」

「任せろ」

 

 なんで、なんでここにいるんですか! 止めてよ! タイムが、タイムが死んじゃう! 今までの試走であんたが出てきた事なんてないでしょうがぁぁぁぁっ! 

 

「ガルァアアアアアアアアアアァアァァァァッ!!!!」

 

 そう、そこに居たのは二足歩行の犬のような風貌をしているヒーローです。髪で隠れているため、耳の形状は不明。鍛えられた体躯と逆立った長髪により相当威圧感を感じる容姿であり、牙を剥き出した際の迫力は凄まじいです。

 そう雄英高校で教師をしているプロヒーロー、ハウンドドッグとそのサイドキックの人達のようです。何故彼がここに居るのか、答えは単純です。まだ教師になってないからでしょうね! 

 

「っ!?」

 

 急いでレッちゃんを操作して逃げます。というか、逃げるしかありません。ここで火をつけて山火事を起こして逃げ……れません。火種なんて持ってきてません。

 相手はレッちゃんの身体に滲みこんでいる血液の臭いとかに反応して追ってきているので、逃げきることは難しいです。ですので、倒すことになるのですが……そうなるとタイムロスです。もうこれはリセット案件──

 

「……みすて……ないで……」

 

 ──ではありません。ガバをリペアーしてこそ走者です。そもそもガバを起こさないのが一級の走者なのですが、万を超えるフラグがあるゲームですから仕方がありません。はい、仕方がないのです。

 レッちゃんをある方向に進ませます。後ろから怖い狼さんならぬワンコ達が追いかかけてきます。どんな風に逃げても追いつかれます。

 

「ハウンドドッグ! あっちは……」

「まさかっ!」

 

 レッちゃんがこちらの操作に従って、木を蹴って木々の間から外へと踊ります。そこには何もありません。いえ、下には激流と呼ぶべき渓流が流れております。つまり、川に落ちて山を下る方法ですね。

 

「ふがぁっ!?」

「くそっ! 落ちやがったぞ! すぐに救助部隊を要請しろ!」

 

 水中操作もしっかりと走者は覚えているので、飛び込みもなんのその。回避コマンドをタイミングよく押して回避しつつ、息継ぎもしっかりとやります。

 これで臭いも何もかも洗い流せるので追跡は不可能です。後はレッちゃんが負うダメージがどれだけかという問題があります。全部を回避することなどできませんからね。

 そう、ここはハイリスクハイリターンの短縮ルートでもあるのです。水に関する個性持ちなら使えるルートですが、それ以外だと基本的に死にます。

 はい、レッちゃんが気絶したのか視界が暗転しましたので今日はここまでです。また次回! あればいいです。リセマラからスタートとかいやだよレッちゃん! がんばれ、がんばれ! なんでもするから! (なんでもするとは言っていない)

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話

申し訳ございません。毛の部分を別の方法に修正しました。ご報告ありがとうございます。


 

 前回、レッちゃんが恐怖のハウンドドッグ(わんこ)から逃れるために渓谷に流れる川に飛び込び、視界が暗転したところまででした。

 今回は濁流に飲まれたレッちゃんがどうなったかですね。走者がコントロールできない部分もありますので、現在の状態は不明です。それではやっていきましょう。

 

 おや、画面にレッちゃんが映し出されましたね。レッちゃんは真っ暗な場所に落ちていっています。

 冷たい冷たい水の世界。息が苦しくて目も痛くて開いていられないでしょう。上には微かに水面に煌めく光が見えますので、それに向かって必死に手を向けていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 このままなら助かる! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思うのですが、水底から生えてくる無数の黒い腕によってレッちゃんの足が掴まれて底へと引きずり込まれていきます。

 なんで、なんでこのイベントが起こるのか意味がわかりません。

 レッちゃんが下を見た事によって腕以外も見えてきました。そこには白髪に白い肌をした無数の幼い女の子と白衣を着た研究者達の姿があります。

 はい、このイベントはカルマ・イベントと呼ばれています。イベント開始条件は生死の境を現在進行形で体験している状況です。つまり、今のレッちゃんですね。

 カルマ値と呼ばれる(レッちゃん)の業によって起こるイベントです。カルマ値は称号によって変動します。称号は操作キャラクター(レッちゃん)の行動によって会得します。

 例えば人の益になるヒーロー活動をしていると、カルマ値はプラスになります。逆に人を害するヴィラン活動をしていると、カルマ値はマイナスになります。

 プラスになると人々の応援が力となり、火事場の馬鹿力やどんな攻撃でも体力が1残る(ガッツ)が発動したりもします。つまり、オールマイトが人々の声援を受けて神野でオール・フォー・ワンを撃破した時のような状況が発生します。

 ですが、ヴィラン側だとその逆に今まで犠牲にしてきた人達の怨念によって足を引っ張られてそのまま殺されたりします。

 これだけ聞くとヴィラン側が不利だと思われるかもしれませんが、そんな事はありません。原作でオールマイトやオール・フォー・ワンが言っていたように、ヒーローは守るべきモノが多いのです。人質や相手を出来る限り殺さずに捕らえないといけないなど、様々な制約が課せられるのです。これを守らないと収入も少なくなりますし、ヒーロー免許を剥奪されて牢屋へ入れられたりします。

 簡単に言えばヒーローは戦闘する時に様々な制限が課せられますが、バフが色々と貰えます。ヴィラン側は制限はありませんが、デバフをかけられるというわけですね。

 

 あれれ、おかしいぞ~(コナン)

 

 はい、おかしいですね。レッちゃんは悪い事をしていません。違法研究所を潰すのはヒーロー側(プラス)の行いです。ですので、プラスのはずなんです、はい。やっぱり、ヒーローに発見されるのを遅らせるために爆破したのは駄目だったんでしょうか? 

 と、言い訳を重ねてみますが、原因はわかっています。《肉親殺し》《共食い》《無慈悲なる虐殺者》《無慈悲なる捕食者》。こんなヴィラン側の称号ばかり持っていたら当然ですね、はい。

 そもそもここで生死の境を彷徨うなんてガバもいいところです。ハウンドドッグ系統やオールマイト以外のヒーローなら試走で安全に逃げられたんですよ! (43敗)

 まあ、いいです(よくはない)。問題は世間知らずで純粋無垢なレッちゃんが精神力や物理でこいつらを振り切って無視できるかどうかです。プレイヤー側は操作できず、今までの行動によって自動で動いて進行するので絶望とかしているとあっさり諦めて死を受け入れます。ヒーロー殺しさんのように諦めが悪いと普通に蘇ってきます。

 

「……たべ、のこし……? おのこし、だめ……神様に……おこられりゅ……」

 

 あ、大丈夫そうですね。レッちゃんはこの怨霊さん達をただの食料としてしか見ていないようです。実際に自分から近づいてパクパク食べ始めましたね。よし、勝ったな。お風呂入ってくる! 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 レッちゃんがお食事を終えて怨霊達から追加の経験値を徴収し、無事に水面に顔を出して岸まで泳ぎきりました。服はかなりボロボロですが、お金もなんとか死守したようなので問題ありません。(ないとはいっていない)

 結果的にはタイムロスを免れて短縮できました。勝因はレッちゃんが走者に従順で純粋無垢なところですね。いいぞレッちゃん! 可愛いぞレッちゃん! 

 

「~♪」

 

 傷だらけで喜んでいるレッちゃんはちょっと危ない感じですが、改造した細胞達が増殖して治療していっているので傷はすぐに塞がります。問題は服装ですね。こんなボロボロの状況ではすぐに通報まった無しです。

 それは困るので、川からダイナミックエントリーした港町で服を新しく購入しましょう。職員の方々から奪った貰ったお金は諭吉さん10枚ほどです。これで泣く泣く買いましょう。タイムの為ならばお金は湯水のように使うものですからね! 

 宵越しの金はもたねぇぜ、ヒャッハー! 

 

「いらっしゃ……?」

「……転んで川に落ちたの。神様(ママ)が、これで新しい服を買ってきなさいって……」

 

 はい、港町にある近くの服屋さんに突入して、レッちゃんの口から入力した文章を言わせます。あと、身体を操作して上目遣いでお金を渡したら店員なんていちころです。外見(APP)18は伊達ではない! 

 

「可愛らしいお嬢さんね。ママは?」

「近くの病院に行った。一緒に川に入ったから……」

「そう。わかったわ。それじゃあ、好きに選んでちょうだい」

「ん」

 

 優しい店員さんがタオルで頭と身体を拭いてくれるので服を選びましょう。ぶっちゃけ、ここは服屋といっても水着屋さんなので基本的に水着とビーチなどで着るパーカーとかしか置いてません。

 ここは黒いパーカーと黒いビキニを選んでおきましょう。小さい子供用のもあるので、そちらを装着。これで外から見たら黒いパーカーを着た幼女の完成です。パンツじゃないから恥ずかしくないのです。(ストライクウィッチーズ)

 一応、予備も買っておきましょう。雨具も兼ねているので破れた時が怖いですからね。

 

「お値段、三万四千円です」

「ん」

 

 レッちゃんの初めての買い物はお高い物になりました。嬉しそうに新しい服を着てくるくる回ったり、両手をあげたりして遊んでいるレッちゃんは可愛いですね。

 では、次は靴屋さんに行きましょう。そちらでは可愛らしい感じではなく実用的なトレッキングシューズを選びます。こちらも子供用ですね。

 服と靴を買えばもうお金はほぼありません。このままではチャートに支障をきたしますので、レッちゃんには身体を使って稼いでいただきましょう。APP18の幼女なら買ってくれる変態も居るでしょうが、私の可愛い娘であるレッちゃんにそんなことはさせません。(させないとはいっていない)

 

「うにゅ?」

 

 次にレッちゃんを操作してやってきたお店に入ります。中に入ると多数の客が黄色い大きな物に真っ赤な血のような物をかけて食べています。

 

「いらっしゃいませ! お一人様ですか……?」

 

 疑問形なのはレッちゃんが幼いからでしょうね。親を探しているようですが、気にせずお金を出して注文しましょう。アレです。

 

「ん!」

 

 空いてるカウンター席に座り、メニューの中から一つの物を指差します。

 

「え? これ?」

「ん!」

「いやいや、子供が食べられる量じゃ……」

「ん!」

「わ、わかりました……ただ、食べられなかったらお支払いいただきますからね?」

「ん」

 

 お金を出して見せると、店員さんも納得してくれました。レッちゃんにスプーンを握らせてしばらく待っていると、レッちゃんの目の前に店員さんが二人がかりで持ってきたのは巨大な山のような黄色い物体。

 

「そ、それでは大食いチャレンジを始めます。制限時間は30分です。食べきれたら賞金一万円を差し上げます。失敗すれば代金として八千円を頂きます」

「ん」

「それではスタートです!」

 

 レッちゃんが食べるのはオムライスです。トッピングにハンバーグとデミグラスソースの部分もありますが、半分はトマトケチャップです。総重量はなんと五キロ。やばいですね☆

 

「ん~~~♪」

 

 レッちゃんは生まれて初めて食べるオムライスに大喜びです。パクパク食べていきます。再生や増殖に栄養がかなり使われてしまいましたので、レッちゃんはお腹ペコペコのぺコリーヌです。ですので、これぐらい余裕なようです。

 まあ、裏技とまでもはいきませんが、個性によってはカロリーを大量消費していくらでも食べれる人もいます。外側から見てわかる八百万百ちゃんのように生み出してたら、アウトで店員に止められます。ですが、レッちゃんのように内部で行われている場合はバレません。物理的にどこに消えているのかは不明ですけどね。とりあえず、これで全身にカロリーが染みわたったのでよしとしましょう。

 

「もきゅもきゅ」

 

 レッちゃんが食べている間にこれからの予定を説明します。まず、ここからでも目的地に船が出ていますが、船では時間がかかりますので電車である程度は進みます。別の港町についてからの方が時間を短縮できます。と、いうわけで食事を終えたら特急料金を支払って移動しましょう。

 っと、食べ終わったようなので賞金を貰って外に出ます。ちなみに同じ店ではもうチャレンジさせてくれません。他の店に情報が行けばそこもできなくなります。

 車や電車にビクビクしているレッちゃんですが、電車に乗り出すと窓にかじりつくようにして一心不乱に外を眺めています。可愛いですね。そんなレッちゃんを見ながら容赦なくスキップです。

 

 

 

 目的の場所まで到着しました。次はフェリーに乗ります。大きな船を見てポカーンとしているレッちゃんの身体を操作してチケット売り場に移動します。ここは特に問題なくスキップで──

 

あれ、なんで等速に戻す必要があるんですかっ!? 

 

「迷子か?」

 

 白いスーツを着た人型のシャチのような容姿をした厳つい人がしゃがんで話しかけてきました。レッちゃんはとりあえず両手をあげました。

 

「がおー」

「が、がおー?」

「がおー」

 

 混乱しているギャングオルカにレッちゃんの威嚇攻撃! あまり効いていないようですね。次なるレッちゃんの攻撃はジャンピング抱きつきです! 

 

「ま、待て! 口に手を入れるなっ!」

 

 ギャングオルカの口に手を入れて舌を掴んで引っ張っています。私達ができないことを平気でやってくれるレッちゃんに憧れます!

 流石のギャングオルカも幼いレッちゃんを無理矢理引き離すのはどうかと思ったのか、他の人達と一緒に宥めだしました。離れたレッちゃんは手についた唾液をぺろりと舐めました。

 無知とは怖いですね。流石はレッちゃん! 私達のできないことを平気でやってくれます! 

 

「お、親はどこだ?」

「会いにいくの」

「む?」

「島、会いにいくの」

「フェリーに乗って移動するのか。両親は?」

「お仕事?」

「親戚か誰かのところにいくのか」

「ん。島。チケット、どこ?」

「それならあそこだな」

「ありが、と~」

「ああ。気をつけてな。それと口の中に手を入れたら駄目だぞ。危ないからな」

 

 ギャングオルカに案内してもらった後、チケットを無事に購入してフェリーに乗ります。不安気な様子もないし、受け答えもちゃんとしているので騙されましたね。あと、ギャングオルカも子供好きですし、怖がらないレッちゃんに嬉しかったんでしょう。(ニチャァ

 さて、フェリーに乗ったレッちゃんですが、やることは簡単です。ヒューマンウォッチング~! (どんどんパフパフ! 

 はい。大型船は稀に海へ落ちたりして行方不明になる人もいますので、本来ならここで有用な個性を狙ったガチャを開催する事が可能です。ヴィランルートならありですね。ただ、近くにギャングオルカが居たのでまず助けられるので無理だと思われます。

 今回の場合は細胞さえ手に入ればいいので幼子なのをいい事に悪戯しまくる事も可能です。この場合は見つかれば船員に引き渡されて注意され、最悪は軟禁されて着くまで出してもらえません。

 まあ、普通に細胞狙いで行きましょう。探検して使えそうな個性の人を探していきます。スキップしながら探しましたが、残念ながら使える個性は無いようです。無念なり。

 

『那歩島~まもなく那歩島です。お降りのお客様は忘れ物なきよう、お願いします』

 

 はい、やってきたのは日本のはるか南に位置する那歩島です。ここは僕のヒーローアカデミア、ザ・ムービーの二作目で舞台となった島ですね。事前に島の隅々まで探索は終わっているので目的地まで移動します。

 もうここまで来たら私の狙いはお分かりでしょう。そう、島乃活真と父親の持つ細胞活性(A型B型)です。この二つがあれば改造細胞君達がより一層働いてくれるのです。

 と、いうわけで診療所にお邪魔します。島乃活真君はちょうど生まれてきたばかりの時期なはずなので家にいるはずです。やはり自宅に居ましたね。さあ、ヴィランの襲撃だぞ! 

 

「ん」

 

 レッちゃんが中に入っていきます。あ、敷かれた布団の上に母親が寝かされていて、その周りに父親さんと赤ん坊の真幌ちゃんと活真君がいます。

 母親は死にかけていますね。ここらあたりで少しカルマ値をプラスにしておきましょう。と、いうわけで助けてあげましょう。

 

「だ、誰だ?」

「……神様が、助けろって……」

「なにを言って……」

 

 レッちゃんは父親を気にせず近づいて母親さんの口に指を入れて個性を発動しようとしますが、父親が妨害してきます。それに対してレッちゃんは腕を振るって吹き飛ばしちゃいましたね。柱に身体をぶつけて少し血がでていますが、命に別状はありません。

 

「あ、あなたっ! ふがっ!?」

 

 夫を吹き飛ばされて驚いている彼女を無視して、口に指を突き入れて相手の細胞を回収。その細胞を改造してから改造した細胞を彼女に送り込みます。強制的に身体を作り替えて病気を滅ぼします。後はエネルギー、カロリーさえあれば勝手に治療されていくでしょう。

 

「ん、達成~!」

 

 喜んでいるレッちゃんの横で泣き叫ぶ赤ん坊達。その中から性別を確認して男の子の方から髪の毛を貰って食べます。父親の方は血で構いません。

 ハウンドドッグと怨霊戦で経験値を得て細胞改造で細胞活性の個性細胞を強化、増殖させて活性の効果も入れます。これによって相性がいい同じ細胞関係の個性が合わさることで覚醒が促され、個性が進化しました。新しい個性、細胞操作を手に入れました。

 父親と母親の治療をしてから、家の中にある新聞などで現在の時間を確認します。原作開始までしばらく時間があるようですので、徹底的に個性と肉体を鍛えましょう。幸い、ここには天然の修練所がありますのでタイム短縮になります。

 では、もうここに用はありませんので、お暇しましょう。ほな、さいなら! 

 

「バイバイ」

 

 では、家を出たらこの島にある離れ小島の城塞跡地へと移動しましょう。ここは原作でデク達が戦っていた場所です。そんな場所がレッちゃんのこれからの住処です。

 何故、ここかというと三点ほど利点があります。まず一つ目。雨風が防げます。二つ目、滝と地下の空間があるので修行ができます。三つ目は森と海が近くにあるので食料確保も容易というわけですね。

 ここでレッちゃんを徹底的に鍛え上げます。また、ヒーロー側とヴィラン側の二足わらじにするのが強くなるのに効率的なので、もう一つの姿を用意します。皮膚も細胞だから、皮を用意したら可能なんだよなぁ(ニヤァ

 こほん。とりあえずレッちゃんには格闘訓練、食事と食料調達、滝行、暗闇訓練、食事と睡眠のスケジュールでやってもらいましょう。あ、後、ハンターハンターの修行をまねて感謝の正拳突きとかしてみますか。目標は腕と足の一万回ですね。別に身体が壊れても飯食ったら治るから問題ないですし。

 

「ん、頑張る」

 

 とりあえず、細胞操作で強化しつつ、偶然手に入れたギャングオルカが持っているシャチの個性も適応させましょう。エコーロケーションや力強さも使えますからね。そのうち、食料調達や訓練効率をあげるために分身体を作成するのもありでしょう。アメーバみたいに分裂も他のプレイヤーがやっていましたので可能なはずです。夢が広がりますね、きひひひ! 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話

 

 

 

 

 前回、城塞跡地にレッちゃんが住み着いてから九ヶ月の時が経ちました。

 レッちゃんは現在、滝に撃たれながら“がおー”と言いながら拳を振り上げて滝を割る練習をしています。

 その間に現在のレッちゃんの頑張りについてお教えしましょう。

 現在のレッちゃんは細胞改造が細胞操作に覚醒した事によって、レッちゃんの細胞を操作して手に入れたギャングオルカの細胞から個性因子を持つ細胞を操作して増殖させて身体に適応させました。

 これにより、レッちゃんは超音波で敵や物を識別することができるようになり、水中でも自由に活動できるようになりました。

 もちろん、シャチの力を得たおかげか、訓練も合わせて身体能力も順調に成長しておりますので戦闘能力は順調に上がっています。

 ちなみに水に入る時はビクビクしながら、そーと水に足をつけては離れるなんて可愛らしい行動をしていたので、強制的に操作して川の中に入って克服させました。

 無駄な時間を過ごすのはタイムロスになりますから仕方が無いです。

 それとこの辺り一帯の漁獲量が減少しているらしいですが、いったい誰のせいなんでしょうねー(目逸らし)

 

「やー! とー!」

 

 滝を全て割る事はできていませんが、ある程度の水を吹き飛ばす事ができています。

 オールマイトの力にはまだまだ遠いです。

 さて、お食事の時間になったのか、レッちゃんが川から海へと出ていきました。

 超高速で進むレッちゃんが沖合に出て、マグロやサメなどを含めた大型魚を仕留めていっています。この頃のレッちゃんは海蛇をよく食べています。ちゃんと貝も食べるんじゃよ。(お祖母ちゃん風)

 あれ、スキップが止まりましたね。海中で等速になるとか……エンカウントしたとしか思えません。

 

『見つけたぞ!』

 

『が、がおー!』

 

 海中で威嚇するレッちゃん。暗い海の向こう側から高速でこちらに向かって突撃してくるらしき生物は、海のヒーロー・ギャングオルカ。

 

『俺は鯱ヒーローのギャングオルカだ。お前がこの辺り一帯の海産物を食い荒らしているのはわかっている。大人しく投降しろ。悪いようにはしない』

 

 ギャングオルカからエコーロケーションを通して言葉が送られてきます。逃走か、投降か、はたまた戦闘か。

 そんなのは決まっています。逃げの一択です。本当はここで捕まっても問題ありませんが、レッちゃんの境遇からして逃げるか、戦わないと疑われます。普通に考えて投降するという考えが(浮かびませんから)ないです。

 ある程度、力を示してからでないと、普通に孤児院とかに叩き込まれてタイムロスです。

 しかも、その孤児院がドクターやオール・フォー・ワンに繋がっていたらそれだけでアウトですからね。

 

『さらばー』

『逃がさん!』

 

 レッちゃんを操作して地上まで逃げますが、ギャングオルカの方が身体も大きく速さも上なので普通に追いつかれます。

 ですので、この辺りの地形を使います。

 海底にある砂を巻きあげて視界をふさぎます。エコーロケーションは音波によって識別しているので、細かな砂で一時的に妨害できます。

 まあ、一時しのぎですけどね。

 

『むっ』

 

 ギャングオルカとは試走で何度も戦っているので勝てなくとも逃げることはできます。(勝てないとは言っていない)

 これは本当にHP100だとしたら、攻撃を50発命中させればいいだけなのでなんとかなります。タイムが死にますので水中戦闘の選択ができないんですけどね~。

 と、いうわけでレッちゃんは私の華麗なるテクニックでギャングオルカさんを引き連れて城塞跡地に戻ります。そもそも海でギャングオルカと戦うとか愚の骨頂ですよね~。

 

「ん?」

 

 川を遡って城塞跡地に戻り、地上に出るとギャングオルカも当然、地上に出てきます。水陸両用ですからね。

 

「予想通り、ここに戻ったな」

「ん?」

「HAHAHAHA! 私がキタァァァァァ!」

 

 親方! 空から筋肉隆々の大男が降ってきたぁぁぁっ! なんで、なんであんたがここに居るんですか! 

 

「予知の通りだ。何も変わらん」

 

 眼鏡のスーツおじさんまで居るし、ここはもうどうしようもないので大人しく……スーツおじさんを狙いましょう。ワンちゃん狙いで未来予知個性を寄越しやがれ! と、挑みたいですが、挑んだら普通に彼に徹底的に警戒されて邪魔され、タイムロスがやばいぐらい発生します。(42敗)

 ですので、正解は玉砕覚悟でオールマイトに突貫です! イクぞー! 

 

「ん!」

 

 エコーロケーションによる妨害音波を放ちますが、ギャングオルカに相殺されます。身体能力に物言わせて突撃してオールマイトを殴ります。

 

「HAHAHA。腰がちゃんと入ってないぞ!」

「ん!」

「違う。もっとだ」

「んん!」

 

 オールマイトにとってレッちゃんの攻撃はポカポカ殴られているだけです。全盛期のオールマイトは本当にヤバイです。

 オール・フォー・ワンさんがやられるだけあります。ですので、徹底的に殴って蹴っていきます。何故って? 経験値が美味いからだよ! 

 

「んんんん!」

 

 オールマイトをサンドバッグにして経験値を稼いでいると、おや、レッちゃんの様子が……

 

「「「は?」」」

 

 ヒーロー三人が驚いた表情をします。たったた~! レッちゃんはバージョンアップした! そう、なんということでしょう! 蛇の尻尾が生えてきたのです! 

 

「オールマイト」

「わかっている!」

 

 ガブリと噛みつこうとする蛇をオールマイトは握りしめます。レッちゃんは自分の歯で噛みつきました。シャコガイを殻ごと食べることで貝と同等の挟む能力を持ったレッちゃんの顎の力はライオン並み! 

 ですが、オールマイトの強靭なる肉体(筋肉)にはレッちゃんの歯が通りません。唾液に含まれる神経系毒物も体内に入らなければ意味がありません! 

 

「かんきん、やー!」

「そんなことしないからね!」

「うそ! とじこめていたいのとかやるもん!」

「ナイトアイ」

「オールマイト……無理です。彼女は既に何十人も殺している」

「だが、それはあくまでも可能性だろう? 実際には爆破されて正確なことはわかっていない」

「駄目です。彼女は危険だ。第二、第三の奴になる可能性が高い」

「子供に罪はないさ。それにこの子は何も知らないだけだ。しっかりと教えれば大丈夫さ」

「しかし、誰が引き取るのですか。彼女の力は既に子供の領域を軽く逸脱している。貴方でなければ死んでいますよ」

「う~む」

「それなら俺が引きとろう」

「ギャングオルカ……」

 

 ギャングオルカがレッちゃんの前に来てしゃがみ、視線を合わせてきます。

 

「俺の個性を得たんだな?」

「ん」

「そうか。なら、俺の言う事を何個か守ってくれたらある程度は自由に過ごさせてやる。一つ目は攻撃されるまで自分から攻撃したら駄目だ。二つ目は……」

 

 それからギャングオルカに出された条件は基本的なことです。

 専守防衛に努め、こちらから手を出さないこと。

 ギャングオルカの側から許可が出るまで離れないこと。

 人を殺さない、食べないこと。

 食事は許可を取ること。

 勉強すること。

 などなど、基本的なことですね。

 まあ、レッちゃんは小首をかしげていましたが、そこはこちらで操作して頷いておけば問題ありません。

 それと孤児院などの施設の話もされましたが、断固、拒否させます。

 

「子供は生まれを選べない。教育が間違っていたのならまだ正せる。そうだろ?」

「ギャングオルカの言う通りだ。ナイトアイ」

「……わかりました。ですが、他の人はどう納得させるのですか?」

「俺の養子にする。そうすれば問題ないだろう。対外的にはシャチの個性を表に出せばいいからな」

 

 さて、レッちゃんの本当の父親と母親は置いておいて、育ての親ができました。これで戸籍がゲットできました。

 こんな感じに幼い子供だとヒーローは選択肢として施設に預けますが、一定以上の実力を持っていたりヒーロー達がちょろいと施設に預けられないと判断して特別に引き取ってくれたりします。

 施設に預けられるとヴィラン襲撃イベントや誘拐イベント。卒園イベントに見せかけた実験体に逆戻りフラグなどあります。

 施設を出てから幸せになったところで迎えに来るという、オール・フォー・ワンさんが愉悦するためのイベントも存在します。

 その場合、自分の手で好きな人達を殺させられるか、その人達が悲惨な目にあうのでやばいですね☆

 ギャングオルカの場合は子供が好きなのと、自分の個性を手に入れたレッちゃんをこのままにしておけないと思ったからです。

 ヒーローの下で修行して力をつけるのが安全でかつタイム的にもうまあじです。

 一定期間のみであればヴィランルートもありなのですが、肝心のオール・フォー・ワンを仕留めるのが大変ですからね。

 とりあえず、これからレッちゃんはカウンセリングと常識のお勉強です。訓練もやりますが、比率は下がります。

 このままだと雄英高校に入学できませんから仕方がありませんね。ええ、仕方がありません。最悪、私が操作して問題をクリアすればいいのですが、除籍処分になる可能性がありますし、林間合宿で自由に動けないのはいただけませんので頑張ってもらいます。

 

 

 

 




ギャングオルカの養子になるのが、レッちゃんが幸せになれる選択肢です。
オールマイトがきたのは研究所がオール・フォー・ワンの物だからです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話

オリキャラ登場注意です。ギャングオルカが引き取るために必要な子ですので、許してね。


 

 

 レッちゃんがギャングオルカに引き取られることが決まり、諸々の手続きがされている間に養子システムについて説明しましょう。

 養子システムですが、現代でも両親が必要で片親だけではできません。このゲームでもそれは同じです。ただ、それ以外の事は同じではありません。

 何が言いたいかというと、ギャングオルカは……結婚していることになります。原作では当然、存在しませんのでマスクデータからランダムに妻が決定されます。それも時代は個性婚が流行っている時辺りなので強い個性持ちの相手です。やったね! 

 

 そんな訳で嫁か夫を決めるガチャのお時間です。湾岸に設置され、家からすぐに海に飛び込めるように作られた桟橋にあるような大きなお家ですね。流石はヒーロー、金を持ってやがるぜ! 

 家の中に入ると、明らかに重たい空気というか、画面では黒い禍々しいような気配を現した描写が映し出されていますね。

 

「ひぃっ!?」

「大丈夫だ。来い」

 

 レッちゃんが手を握られて恐怖の迷宮(ダンジョン)に連れていかれます。アレ、これってなんかやばいです☆

 

 家の中を進み、少しすると地下へと向かいました。これはもう監禁フラグとか思っていると、巨大なガラスによって海の中が覗けるようになっている部屋に到着しました。

 その部屋に設置されているソファーに明らかに機嫌が悪そうな。16から18歳くらいの美少女女子高生が座っています。

 紫色の長い髪の毛をしたスレンダーな体形で、何処か見覚えがある少女ですね。具体的には追加DLCで追加されたルートによってプレイヤーを地獄の海へと突き落としたある意味ではオール・フォー・ワンの後継となった死柄木弔よりもヤベー女の子です。

 名前は龍宮寺メル。ヴィランネームは海の女王レヴィアタン。プレイヤー達からの呼び名はカイオー様。これは彼女が日本どころか世界に存在する大陸の九割を海底に沈めたことからつけられました。そう、ポケモンのカイオーガです。アレが擬人化したような存在です。個性は海流で、どこでも海流を生み出します。

 基本的な戦闘フィールドは海であり、水中戦が出来ないと瞬殺されます。彼女はオール・フォー・ワンの右腕であるギガントマキアが地上を担当するなら、海にも居るよな? ということでゲームに追加されたキャラです。

 正確にはオール・フォー・ワンの側近である龍宮寺乙姫の娘という扱いです。はい、龍宮城の主ですね。つまり、種族としては海龍の個性となるようオール・フォー・ワンから水系統の個性を与えられた上で代々、個性婚を繰り返してきた一族です。

 基本的に先生のスポンサーとなっており、海底資源の採掘などにより莫大な利益を得ている大企業のご令嬢というわけです。

 そんな彼女がオール・フォー・ワンとドクターによって改造されて個性をマシマシで与えられたのがDLCのレヴィアタンです。プレイヤーが水系統、海に属する個性のキャラクターを作っていたら海ルートになり、ラスボスとしてヒーロー達の前に立ちふさがります。(7666敗)

 メインルートで地上の死柄木弔と戦うルートでは、死柄木弔が彼女に認められていないと、彼が負けようが勝とうが、勝手に動いて海に沈めます。

 そこで死柄木弔と協力して倒す事すら可能というヤベーキャラです。ギガントマキアと違って、オール・フォー・ワンにそこまで心酔してもいないので(ブレーキが存在しない)怖いです。

 ルナティックモードでは覚醒版死柄木弔とギガントマキア、レヴィアタンを相手に同時で戦うという地獄が展開されます。(98654敗)

 勝利方法はグレートスーパーエンデヴァーを用意しないと話になりません。グレートスーパーエンデヴァーとは、ワン・フォー・オールをヒーロー達で回しに回して個性を集め、最終的に轟君バージョンになり、そこに超強化されたワン・フォー・オールをのっけて自爆特攻すれば勝てました。デクとかっちゃん?

 エンデヴァー以外、力を使うと身体がもたなくて爆散するので話になりません。筋肉が足りんのだよ、筋肉がァァァァッ!

 そう、究極生命体エンデヴァーですね。最速で究極生命体の称号を手に入れるならここまでいく必要はないんです。

 

「戻った」

「お帰りなさい。と、でも言うと思ったのかしら? どういうつもりか、しっかりと教えてもらいましょうか」

「この子が引き取る子供だ」

「ん」

「そう」

 

 彼女、メルちゃんはレッちゃんを見た後、近くに置いてあった書類を手に持ってテーブルに叩き付けます。そこには離婚届と書かれております。

 ヒャッハー! 修羅場だぜ修羅場! 

 

「どういうつもりだ?」

「そっちこそどういうつもりなのかしら? 結婚してから一年間。子供を作るために頑張ってきたけど、無理だった当て付けなのかしら?」

「違う! 断じて違う」

「無理しなくていいわ。どうせ別の女に作らせた子供でしょう。そんなのを育てるなんて私のプライドが許さないわ」

「この子はそういうのじゃない!」

「どちらにせよ、実家の方から子供が出来ないなら戻ってくるようにせっつかれているし、仕方がないわ」

「だから待ってくれ! 俺は……」

 

 おそらくですが、個性婚で彼女とギャングオルカは結婚したのでしょう。シャチの能力を手に入れたらかなり強くなりますしね。現状、個性を貰ってないのであくまでも海流操作しかできず、肉体的には弱々しい(弱いとは言っていない)ですからね。

 

「まあ、いいわ。それなら、その子か私。どちらかを選びなさい」

「俺は……」

「二つ共は駄目よ。一つだけ」

「ヒーローとして、この子を見捨てる事はできない」

「そう。残念ね。この生活も嫌いではなかったけれど、もうここに用はないわ」

 

 そう言って部屋から出ていくメルをギャングオルカはジッと見詰めています。

 ここで取れる選択肢は二つ。一つはメルをここで、今弱い内に殺してタイムの犠牲を少なくすること。このままいけば絶対的に将来、タイムの障害になります。

 ですが、ここは二つ目のお前がママになるんだよ! を選択します。

 

「ん!」

「かはっ!?」

 

 レッちゃんの渾身の一撃! 

 油断しているギャングオルカを吹き飛ばしました。

 

「な、何を……」

「んッ!」

 

 レッちゃんを操作して入口を指差します。ついでに顎でも示しておきます。

 

「追え、というのか?」

「ん!」

「だが……」

「だめ。このままじゃ、(タイムが)大変なことになる……」

「わかった。すまない!」

 

 ギャングオルカが追っていきましたので、放置された離婚届をビリビリに破って捨てておきましょう。

 後はソファーにちょこんと座って海に映るお魚さん達を眺めていれば、少しして言い争う声が聞こえてきます。

 部屋の入口を見ると、ギャングオルカがメルを担いで戻ってきていました。誘拐かな? 

 

「話を聞いてくれ。ちゃんと説明するから」

「……いいわ。聞いてあげる。でも、それだけよ。それに、嘘をついたらわかっているわね?」

「わかった。嘘偽りなく話す」

 

 そして、レッちゃんの事を話していくギャングオルカ。興味なさそうにしていたメルもレッちゃんの個性の話になり、ギャングオルカの個性を得たという話をすると獲物を見つけたような捕食者の瞳になりました。貴女の瞳にロックオン! にゃ~! 

 

「つまり、コイツに私のDNAを与えて個性を得たら、それはもう私と貴方の子供で間違いはないと」

「少なくとも、そちらの両親の説得は可能だろう」

「それに子供が出来ない原因も解決できるかもしれないわね。問題は私がしっかりと教育できるか、ということよね?」

「二人でやっていこう。メルはアイススケートをまたやりたいだろう?」

「当然よ。結婚を認めたのだって、家にいたらさせてもらえないからだし。貴方は子供さえ生んで育てたら後は自由にしていいって言っていたからね」

「俺もお前が舞っている姿が好きだった。だから、踊って欲しい」

「……そう。そうなのね。いいわ」

 

 惚気る二人を不思議そうに見ているレッちゃん。私としては個性婚でも、轟家とは違って普通に幸せになれるのは驚きですね。

 まあ、どうでもいいです。ラスボス候補を一人攻略したとしたら、美少女と野獣ですが、いいでしょう。爆破しやがれです! 

 レッちゃんは海流の個性を手に入れることができるようになりましたからね! 

 

「む。誰か来たようだな?」

「そうみたいね」

 

 レッちゃんがメルに抱きあげられながら、身体を触られてチェックされているとギャングオルカが対応したようです。

 少しして彼は戻ってきました。警察とヒーローを連れて。ギャングオルカの手には手錠が嵌められておりました。

 

「そういえば、見られていたものね」

「説明を頼む」

「ふふふ、どうしようかしら?」

 

 嗜虐的な視線を向けて楽しそうにするメルと、それを膝の上から不思議そうに見上げるレッちゃんの姿がありました。ギャングオルカ、逮捕!

 まあ、すぐに外されました。ただの痴話喧嘩ですしね。とりあえず、美少女の若い才能溢れるママが出来たので育成が捗るぞー!(なお、彼女の両親からオール・フォー・ワンに伝わるのは考えないものとする)

 

 

 




メルの外見は足が普通にあるFGOやFateのメルトリリスを想定です。ペンギンじゃないけど、シャチだからいいよね。なお、部屋にはペンギンのぬいぐるみがいっぱいあり、本物も飼っているもよう。
ギャングオルカとメルの家は水族館みたいなものです。レッちゃんも深海棲艦だから問題ないね!

製作者『水形の個性が活躍する場合が少なく? わかった。水系のラスボスクラスを用意したよ!』

こんな感じで用意されたメルちゃん。プレイヤーは阿鼻叫喚。海ではほぼ勝てないですからね。地上(内陸)に引っ張り出さないと無理です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 メル

本当はレッちゃんのから書こうとしましたが、レッちゃんが幼すぎるのでまだ無理でした。なので親側。



 

 

 

 

 目を開ける。視界に飛び込んできたのは大きな貝殻。この貝殻型の巨大ベッドには水を霧状にして噴出する装置が取り付けられており、私達のような地上や水中で活動できる者達に使えるようにされているわ。

 

「んん……」

 

 横を向けば、水が張られているマットに身体の大半を沈めて眠っている幼い少女の姿が見える。彼女は昨日、私の娘となった子だ。

 

「起きたか」

「ええ」

 

 身体を起こして視線を声が聞こえた方にやると、そこには夫であるギャングオルカこと、逆俣空悟(さかまた くうご)が椅子に座っている。

 彼は手に携帯端末を持ちながら、仕事をしている。一昨日までは私と一緒に寝ていた。薬を飲んだ私が気絶する限界までして、そのまま一緒に寝ていたのだけど流石にそういうわけにはいかない。

 

「その様子だと問題はなかったようね」

「ああ。ぐっすりと眠っている」

「そう」

 

 この子は色々と問題がある子供らしい。違法な研究所で生み出された人造生命体の可能性がある上にその研究所で戦闘訓練を受けていた。同じ姿と似た個性か同じ個性をした幼い子供達で殺し合わせ、戦闘技術と個性を極限まで高めていく。

 死んだ子供は文字通り、勝利した子供の血肉となるというおぞましいことも行われていたみたい。そうとわからないように加工されていたようだけど、この子の話と残っていた資料などからそれは事実みたい。確かに個性因子を増やすという上では大量のクローンを作って採取するというのは理にかなっている。倫理を完全に無視したらね。

 そんな状態で過ごしてきた彼女はある程度まで育ち、遂に暴走した。正確なことはわからないらしいけれど、残っていた音声データを復元した限りでは暴走し、研究者達を襲っていたのは事実みたい。その後、研究者か彼女かが自爆スイッチを押して逃亡したとのこと。

 この時にプロヒーローのハウンドドッグから逃げるために川に飛び込んで港街まで逃亡したことはわかっているわ。その後は何故かまるで目的が決まっているかのように島へと向かっていたようね。その途中で空悟と出会って個性を覚えられたみたい。

 まあ、その辺りはどうでもいいわ。私には関係ないし。問題は暴走する可能性があるということ。寝ている間に暴走したら私や空悟でも対抗できるかわからない。その為の対策としてどちらかが起きて見張っている必要があるというわけね。

 

「それじゃあ、交代する?」

「ああ。後、これを見ておいてくれ」

「なんなの……?」

「名前だ」

「確かに考えないといけないわね。でも、本人の要望が要るでしょう」

 

 呆れた表情をしながら、タブレットに書かれた名前の候補を確認する。この人、本当に子供が好きだから、いっぱい考えたみたい。

 

「それと仕事はちゃんとしたの?」

「終わらせてある」

「そう。それじゃあ、起こしましょうか」

 

 彼女を抱き上げて水が張られている貝殻型のベッドから出る。この部屋の水位は三十センチぐらいなので、個性を使ってすべるように移動する。

 空悟も立ち上がってこっちによってくる。彼の頬に軽く朝のキスをしてから服を着て、この子にも着せてから部屋を出ていく。

 廊下も水が張ってある。地下部分にある居住空間は自由に水位を調整できるようにしてあるので、泳ぐことも可能。一メートルぐらいまであげて生活していたけれど、この子がきたので、水位は下げてある。

 リビングルームに移動する。ここはひときわ高い位置にあって五メートルほど高い場所と低い場所の二つで構成されている。

 低い場所は水中でも寛げるようになっていて、家具も複数置いてある。ガラスを隔てた先にある海へと繋がっている扉もある。ペンギン達の出入りもここからしている。

 階段を上った先にある高い場所は水が来ないように設計してある場所で、普通のソファーや防水対策を施した電化製品やソファーなどが置かれている。ここは地上で生活するためのスペースね。

 キッチンも当然、ここにあるのでこの子を寝ているペンギン達の横に置いてから朝食の準備をしていく。しっかりと監視しながら料理を作っていく。

 

「んにゅ……」

 

 料理をしながらこれからのことを考える。彼女が私の個性を手に入れたら、問題はない。それが無理でも、私の子供が出来にくい体質を改善してくれたらなんの問題もなくなる。

 一応、せっついてきている実家には個性が発現しなかったから、黙っていたと言えばいい。この子の存在はトップシークレットとして公安以外には秘匿されることが決まっている。そういう話を昨日来た、警察のワンちゃんから聞いたわ。

 もちろん、空悟が私を誘拐したというように見られたことについては問題ないことになっている。相手も一応、という感じで手錠をかけただけで、すぐに外している。婚姻届もしっかりと出しているし、夫婦間の話し合いから私が飛び出したので、連れ戻しただけだということを言ったら納得してくれた。

 そりゃ、夫がいきなり知らない子供を連れてきたら喧嘩になるのは当然だもの。その説明も兼ねて彼等がやってきたのもあったので、そのままお話をして今まで隠していたということになった。出生届けなども公安が細工してあたかも出されていたかのように調整してくれるらしい。DNAを弄ることが出来る彼女の個性からして私と空悟の細胞を入れたら判別なんてできないもの。後は関係者が黙っていれば問題なしね。

 

「くっくく……これで好き勝手に遊べるわ」

 

 育児はしないといけないけれど、通院とかも必要なくなったし、本格的に練習を再開すればいい。この子にも教え込んで一緒に滑るようにすれば育児も同時にこなせるしね。

 そもそも私が空悟と結婚を承諾したのは、彼がアイススケートや海上で滑ることなどを続けていいと言ってくれたことと、彼の実家が水族館やクルージング船を作って売ったりするドックを持っていることが個性以外の理由だもの。

 実家としては造船所や潜水艦が欲しいけれど、許可とかを取るのは非常に面倒でノウハウもない。それに貧弱な身体をシャチの個性で強化でき、エコーロケーションなどで深海でのやりとりも可能になる。そうなると実家としては優良物件にしか見えない。

 空悟の実家は私達が手に入れる海底資源を格安で手に入れることができるし、海流の操作ができるとなると船を安全に航行させることもできる。

 故に両家の思惑が一致して結婚することは強制になった。私以外にも候補がいたけど、先の理由から豚共に嫁がされるよりは遥かに優良物件だから私も立候補した。何度かデートを重ねる上で、私が滑っている姿を気に入ってくれたのか、彼も乗り気になって年齢が離れて幼い私を選んでくれた。私の方も何度か襲われた時、身を挺して守ってくれたから安心もできた。まあ、その襲撃自体が実家の仕業だったみたいだけど。

 問題は結婚した後。薬まで使ってるのに全然子供ができないのよね。そのせいで実家からグチグチと鬱陶しいくらい言われるし、互いにすごく困っていた。そこにこの子のことだから……頭に来て離婚届まで用意した。結果的には本当にこの子は空悟の子供じゃなかったからよかった。

 

「んにゅ……ここ……どこ……?」

「ぴぎぃ!?」

「起きたのね。それともうちょっと力を抜いてあげなさい」

 

 起きたあの子はペンギンを抱きしめている。かなり力が入っているのか、ペンギンは悲鳴をあげている。

 

「朝ご飯?」

「ソレは朝ご飯じゃないわ。食べたら駄目。食べたらすごく怒るわ」

「……ん。食べちゃ駄目……」

「撫でたり、身体をこすりつけたりするのはいいわよ」

「ん」

 

 言ってあげると、その通りにやっていく。気に入ったのか、お腹に顔をこすり付けだした。尻尾で別の逃げようとするペンギンを捕獲して、サンドイッチのようにモフモフを堪能していく。可愛いので食べなければ問題ないとうことにしておきましょう。

 

「朝食はスクランブルエッグとパン、海藻のサラダよ」

「ん!」

 

 食べ始めたのだけど、色々と問題がある。仕方がないので彼女の後ろに立ってフォークの使い方などを教えていく。

 

「ほら、こうするのよ」

「難しい……」

「ちゃんと出来なかったら、ごはんが食べられないからね」

「う~」

「その代わり、ちゃんとできたらもっと美味しいのを食べさせてあげる」

「おいしい、の?」

「ええ。ちょっと待ってなさい」

 

 冷蔵庫からおやつの時間に食べるために用意しておいたケーキを取り出し、彼女の目の前に置いて一欠けらをフォークで切り取って口へとはこんであげる。

 

「あ~ん」

「っ!?」

 

 食べるとすぐに満面の笑みを浮かべて手を出してくる。けれど、私は取り上げて冷蔵庫にしまう。

 

「ちゃんと出来たら全部あげるわ。できなかったら私が食べる」

「がおーっ!」

「威嚇しても無駄よ」

 

 力づくで奪おうとしてくるけれど、海流を呼び出して押さえ込む。ぐるぐると空中に生み出した海流で回してあげると、大人しくなった。

 

「はい。それじゃあ、再開ね」

「ん……」

 

 ちゃんと教えると、すぐに覚えたので頭は悪くなさそうね。やっぱり知識が無いだけみたい。これなら仕込んだら良さそうね。

 ちゃんと頑張ったご褒美にケーキを食べさせてあげる。それが終わったら、手を握りながら家の中を案内して施設の使い方を教えていくことにした。

 

 

 空悟が起きてきたので、三人で話し合いをしていく。差し当たって一番必要なのはこの子の名前だ。

 

「名前は何がいいか? 一応、考えた候補はこれだけある」

「ん~神様が、レッちゃんって呼んでくれてるから、それがいいの」

「神様?」

「神、か……」

「大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。おそらく、別の作り出した人格があるのだろう」

「なるほど」

 

 二重人格か、それとも別の誰かから指示されているか。どちらにしろ、その神様ってのがろくでもない物の可能性があるわね。とりあえずは病院……は嫌がるみたいだし、CTスキャンの機械でも買って調べてみましょう。機械は使い終わったら、豪華客船を作るらしいから、そっちに回しておけばいいでしょうしね。

 

「それならこれはどうだろうか? 水蓮だ」

「確かにそれならレッちゃんでもいけるわね。私達の娘としても水を入れるのは良い事だわ」

「ん。字、こっちがいい」

「錬の文字か。 金属を良質のものにきたえ上げたり、心身や技をきたえ上げる意味はあるが……」

「ん。これがいい。鍛え上げる。はやく、はやくならないといけないの」

「いいじゃない。徹底的に鍛え上げるなら同じよ」

「まあ、いいか。将来、ヒーローになるのなら重要なことだしな」

「待ちなさい。将来はプリマよ」

 

 空悟と二人で睨み合う。しかし、どちらも引くつもりはないのが、話し合いでわかっていた。

 

「平行線ね」

「ああ、平行線だ」

「なら、仕方がないわね」

「ああ、仕方がないな」

 

 私達は水錬という名前に決まったレッちゃんの腕を両方から取る。

 

「うにゅ?」

「「両方だ」」

 

 プリマのヒーローにすればいいだけよ。この子の個性ならそれが十分に可能になる。まずは英才教育の準備をしましょうか。

 

「メル。服とか必要な物を買ってきてくれ」

「空悟も一緒に来てちょうだい。荷物持ちが必要よ。それに護衛もね」

「それもそうか。社員の女性も同伴させよう。流石に女性物の売り場には行けないからな」

「わかったわ」

 

 持って来させてもいいのだけど、それじゃあ面白くないし、教育にもよくはない。どちらにしろ、まずはお出かけね。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話

 

 

 

 

 深い深い海の底……ではなく、地上にある明るい場所。巨大な水槽が存在するリビングで一人の幼くも可愛らしい少女が元気に遊んでいます。

 彼女はとてとてと移動し、棚に手を伸ばしましたが、届きません。ですので、尻尾を使って自ら持ち上げて可愛らしい小さなおててで沢山の錠剤が入った危険を意味する黄色い三角のマークがつけられた瓶を持ち出しました。

 

「ん!」

 

 幼い少女はそれを戦利品でも掲げるかのように両手で持ち上げてぴょんぴょん踊っています。さて、この可愛らしい幼女は誰でしょうか? 

 そう、私が操作するキャラクター、レッちゃんです。彼女はギャングオルカ、逆俣空悟と逆俣メルの養子として引き取られました。

 あれから一年。レッちゃんは六歳となり、元気に楽しく過ごしております。義理の両親との仲も問題なく、昨日は一緒に遊園地に遊びに行ってギャングオルカの頭の上で遊び回りました。まあ、RTAではロスでしかないのでスキップです。

 成長に関しては毎日毎日、繰り返し水中で感謝の正拳突きと回し蹴りを一万回させながら個性因子を持つ細胞も含めて徹底的に強化しています。

 そのおかげで一定以上の個性因子が溜まり、無事に母親であるメルの個性である海流も習得して、そちらのレベル上げもやっております。つまり、レッちゃんは次の段階に入ったというわけですね。おっと、レッちゃんが不思議な踊りを止めて移動しだしたので画面を戻しましょう。

 

「れ、れ、れ~♪」

 

 ててて、と走っていく可愛らしいレッちゃんは階段の上から飛び降り、その下にある水へと飛び込みました。そして、そこで泳いでいたお母さんのペットである可愛らしい皇帝ペンギンを捕まえに泳いでいきます。

 ペンギン達は急いで逃げ出しますが、水中で毎日両方合わせて二万回もやっている間に肉体面と同時に強化されて増えたシャチの個性因子によってレッちゃんの泳ぐ速度はすぐに時速60キロまで加速していきます。ついでにペンギン達の進行方向に両手から生み出した海流を先回りさせます。

 これによってペンギン達は逃げることが許されず、捕食者であるレッちゃんの紫色の瞳に見詰められて震えながらレッちゃんを見ます。

 

「ん、決めた」

「ぺぎぃっ!?」

 

 選ばれた哀れなペンギンは身体に尻尾を巻きつけられ、尻尾の先端についている蛇に噛みつかれて神経を麻痺させる毒が注入されました。偉いね、レッちゃん。ちゃんと狩りの基本は覚えているようです。

 

「ん♪」

 

 スキップしながら、水の外にペンギンを連れて出たレッちゃんは床にペンギンを寝かせました。それから錠剤を口に含みながら、寝かせたペンギンのお腹に顔を埋めてモフモフしだします。その状態でテレビをつけていると、昔の映画が流れてあるシーンが映し出されました。

 

「っ!?」

 

 それを見たレッちゃんは何かを思い付いたのか、錠剤が入った蓋を開けてペンギンの口に全部放りこみました。ペンギンは必死に抵抗しようとしますが、小さな海流を作り出されて強制的に飲まされました。錠剤は砕かれていきます。

 

「ぺぎぃいいいいいいいいいいぃぃぃぃっ!?」

「れ、れ、れ~!」

 

 悲鳴をあげるペンギンを無視して楽しそうにしているレッちゃんは蛇を通して何かを送り込んでいきます。錠剤とレッちゃんが送り込んだものによってペンギンがのたうち回ります。

 次第にペンギンが動かなくなり、次の瞬間にはペンギンの身体が膨張していきます。筋肉が膨れ上がり、骨が伸びて……身体が巨大化していきます。

 レッちゃんはその周りで両手を上げた不思議な踊りをしながら、待っていると三メートル以上に巨大化したのでした。

 

「れ!」

 

 レッちゃんはおもむろにジャンプして巨大化した皇帝ペンギンのお腹に飛び乗りました。そのまま身体をペンギンのお腹に埋めて眠りについていきます。

 

「ん、ん~……」

 

 おや、だんだんとレッちゃんの瞼が下りていきます。

 

「……すやぁ……」

 

 どうやら眠ってしまったようですね。おやすみなさい、レッちゃん。

 

 

 さて、レッちゃんが眠ったので今回、スキップしなかった理由を説明しましょう。ぶっちゃけると、ペンギンはどうでもよくて、改造が成功するか、しないかが問題でした。これによってレッちゃんの成長過程がわかります。(9敗)

 改造に成功したことが、どう影響するかは簡単です。レッちゃんのウルトラ・レッちゃん細胞ことUR細胞は自己増殖、自己進化が可能です。自己再生はまだできません(できないとは言っていない)。

 さて、今回の改造はUR細胞を増殖させるにはレッちゃん一人ではたかが知れているからです。レッちゃんを強制的に巨大化させるのは色々と問題なので、別にUR細胞のタンクを作る必要があったのです。

 つまり、今回の実験では大量のウルトラでスーパーな超カロリーを圧縮して作り出された錠剤を大量に飲ませ、ペンギンの体内でUR細胞を増殖させてペンギンの細胞を進化させて巨大化させました。大きな身体ならその分だけUR細胞を蓄えられるので定期的にレッちゃんが搾取することで経験値が稼げるようになるのです。これぞヒロアカ風影分身の術! 

 まあ、こんな事までできるからこそ、細胞改造を覚醒させた細胞操作の個性はRTA御用達というわけですね。しかも、この方法ならAFOとドクターが組んでやっていた個性を増やす事を一人でできるのです! 奪ったりすることはできなくても与えることはできるので究極生命体と言えます。

 

「……な、なにこれ……」

 

 物が落ちる音と声が聞こえたので、そちらを向くとそこには……紫色の長い髪の毛を持つ綺麗な女子高生が立っていました。

 ふらふらと巨大化したペンギンに向かっていく彼女は誰でしょう? そう、女子高生のママです。

 彼女はレッちゃんを怒る……かと、思いましたが、その前にペンギンに飛びつきました。そう、彼女も一緒になってそのまま眠っていきます。

 ペンギンは最初、助けを求めていましたが、諦めた表情をしてそのままです。やったね、レッちゃん。味方が増えたよ。ペンギンはトトロ・ペンギンに進化したのでした。(適当)

 その後、帰ってきたパパによって二人は正座させられて怒られました。それとトトロ・ペンギンは海流の個性とシャチの個性を低レベルですが、持ってたので個性を持ったペンギンとして登録されました。校長先生と同じ扱いですね。ただ、校長先生とは違って世界を股にかける海底資源を発掘する大企業の庇護がありますので問題ありません。

 お祖母ちゃんが政治的に色々と手を回してくれたのです。その代わりに色々とお祖母ちゃんからの依頼を受けることになりましたが、問題ありません(無いとは言っていない)。

 タイム的に考えると、これを受けないとロスがとっても大きいです。受けてもロスが発生しますが、受けない場合と比べるとメリットが大きいです。(79敗)

 さて、次まではスキップです。思いっ切りスキップです。コッソリとレッちゃんが私の指示で他のペット達を改造していっていますが、スキップです。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 さて、本日はお祖母ちゃんから依頼されたことをやっていきたいと思います。このゲームではこうしてNPC達から依頼されていきます。依頼を達成することで経験値やお金、ヒーローかヴィランの名声が得られます。名声に関してはカルマ値が増えたり、減ったりする依頼もありますので気を付けましょう。

 では、本日の依頼は成功報酬はありません。何故なら、今回は巨大化した皇帝ペンギン、トトロ・ペンギンをこちらで管理するための政治工作の代価ですので、すでに貰っている扱いですね。

 

「……初めまして。鉄血瑞鶴です」

 

 家にやってきたのは可愛らしい幼い女の子とその両親です。お二人は政治家の方々ですね。お祖母ちゃんが今回、お願いした方々です。父親の方は日本人ですが、女性の方は欧州の人みたいですね。瑞鶴ちゃんも欧州の血が濃いですね。

 

「ん。レッちゃん」

「レッちゃん……?」

「水練が本名よ」

 

 ママが補足してくれます。レッちゃんはこういうのはまだわかりません。今回の目的はレッちゃんのお友達を作ることも含まれています。依頼ももちろんありますけどね。

 

「それで、その子は無個性なのよね?」

「そうだ。それで虐められて引き籠っているのを無理矢理連れてきた」

「そうか。やはりそういうのはなくならないのか……」

「頑張ってはいるがな。それよりも、我が家としても無個性なのは困る」

 

 では、大人達が話している間に今回の依頼について説明します。今回は政治家の人の家に生まれた無個性の少女に個性を与えるということです。これにより、虐めの理由も無くなり、彼女の価値が高くなるので政略結婚にも使えるというわけですね。

 

「私達の個性を瑞鶴に渡してくれ。ほら」

「お願い、します……」

「まっかせて~」

 

 ご両親が血液の入った瓶を差し出してきましたので、それをレッちゃんが飲んで新しい個性を手に入れます。個性“鉄血”。鉄は兵器を表し、血は兵士をさします。つまり、兵力と軍備というわけですね。

 

「個性はすぐ手に入れられるか?」

「ん~無理だよ~増やさないと~」

「どれくらい時間がかかる?」

「半年から一年くらい~」

「では、それまでこの子は預ける」

「わかったわ。その代わり、色々とお願いね」

「任された。流石に手を出されすぎるのは困るがな」

「注意しておくわ」

 

 色々(生物の魔改造)とやらかしていますので、生態系とかやばくなりますしね。ペンギン以外にもシャチとかも改造していますしね。数は力だって言っていましたしね。AFOもOFAも手駒や仲間がいますからね。少なくとも一対一に持ち込むのが楽に勝てるので、ある程度は数も集めないといけません。まあ、本チャートでは保険です。究極生命体を目指すので、纏めて潰せるように作っております。ガバがなければ問題ありません! 

 くっくく、いざという時は水中戦闘を強制するようにしてしまえば勝率は上がります。まあ、周りの被害が凄まじいですが、タイムのためには必要な犠牲ですよね! 是非もなし!(日本水没)

 

 

 

 




名前の変更をします。史奈から瑞鶴。深海棲艦で統一させていただきますね。アズレン系はなしで。苗字だけはそのままで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話

お待たせしました。


 

 

 

 本日も僕のヒーローアカデミアRTAをやっていきましょう。前はレッちゃんの前に鉄血瑞鶴ちゃんがやってきたことですね。

 彼女は上流階級である政治家の一家に生まれたのですが、無個性であり他の子達に虐められて心が弱り、引きこもりになったようです。おそらく家の中でも虐めとはいかなくても、それに近いことは受けてきたでしょう。

 鉄血の“個性”から考えるに日本の政治家と海外の軍人が軍人の“個性”と政治家から支援を引き出すことを狙って結婚をして作った子供ですから、その子供が“個性”を引き継がなければ政治家側は丸損になりますから無理もないです。

 そんな環境ですから、瑞鶴ちゃんに“個性”を与えようと両親は画策しているわけですね。愛しているからかどうかは知りません。どちらにせよ、心に深いダメージを抱えている瑞鶴ちゃんは“個性”をあげてレッちゃんの言う事ならなんでもしてくれるようにします。(なんでもするとは言っていない)

 

「本当に“個性”を与えられるのか?」

「ペンギンの巨大化は事実なのだろうが……」

「そうね……鉄血の“個性”は無理かもしれないけど、レッちゃん。私達の“個性”をあげることはできる?」

 

 もちろん、可能です。ですので、ちゃっちゃとやってしまいましょう。

 

「ん、できる」

「では、お願いする」

「やってくれ」

「頼む」

「ん!」

「んんっ!?」

 

 レッちゃんを操作して瑞鶴ちゃんに近づいて彼女の顔を両手ではさみ、可愛らしい桃色の唇を重ね合わせます。そして、そのまま舌をいれて絡み合わせます。

 

「ちゅっ、んっ、ちゅぱっ」

「やっ、やめっ……んっ、んんっ!?」

 

 唾液と唾液を交換してレッちゃんの体内に入れた瑞鶴ちゃんのDNAを習得し、それをUR細胞を通して操作して改造、瑞鶴ちゃんに唾液として送り込んでいきます。

 

「んんんんっ!?」

 

 顔を上気させながら身体を痙攣させる瑞鶴ちゃん。彼女の頭は尻尾が巻き付いて押さえているので外すこともできません。

 

「レンやめろ」

「いや、このままでいいわ」

「うむ……これは……」

「細胞を操作しているのであろう。必要な事だ。ディープキスの必要性があるかはわからないが……」

 

 趣味です。可愛い幼女の濃厚なキスシーン……いいよね。エロさはある? ない? どっちでもいいです。タイムロスにならなければ問題ありませんからね。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 瑞鶴ちゃんがしばらくしてレッちゃん(走者)から解放され、床にぺたんと女の子座りになりました。彼女の瞳は虚ろで座っている部分からも何かの液体が出てきていますが、気にしてはいけません。

 もちろん、それだけではなく、瑞鶴ちゃんの皮膚が膨張し、縮小し、骨が歪み、修正され、引き籠っていたことで不衛生だった肌がより白くなり、髪の毛の色も変色していきますが、なんの問題もありません。

 

「これは……」

「大丈夫なのか?」

「身体、作り替えてるだけ。大丈夫……神様がそう言ってる」

「神様?」

「気にしなくていいわ。レッちゃんの別人格みたいなものよ」

「そう、なのか……」

 

 レッちゃんは瑞鶴ちゃんの頭をナデナデしながら、お口に次々と超高カロリーの錠剤を入れて噛み砕き、唾液と一緒に瑞鶴ちゃんに飲ませていきます。

 はい、ゆりゆりなシーンを堪能するのはここまでで、スキップです。後はご自身でお愉しみください。もしくは動画でね! 

 

 


 

 少女改造中(Now Loading)……

 


 

 

 はい、三日が経ちました。本日、瑞鶴ちゃんの細胞を取り込んで一新させる改造が終わりました。

 瑞鶴ちゃんは白色の長い髪の毛に赤い瞳に変化しましたが、“個性”の発現を理由とするので問題はありません。幼い“無個性”の少女は今日から“強個性”の少女です。

 と、いうわけでレッちゃんが無理矢理、水中に瑞鶴ちゃんを引きずり込んでいきます。

 

「ひっ!? いっ、いやぁぁぁぁっ!?」

「大丈夫」

 

 水中に引きずり込まれた彼女は必死に暴れますが、少しすれば問題ないことに気づき、目をぱちくりとさせていますね。かぁわいいなぁ~! (何度か水中と水面を行き来しております)

 

『……あ……わ、わたしが……“個性”を……使え……て……』

『おめでとう……?』

 

 涙を流しながら喜ぶ瑞鶴ちゃんに不思議そうにしながら、祝福するレッちゃん。とりあえず、レッちゃんを通して分け与えたのは海流を操るシャチの“個性”です。

 

『ずーちゃんすごい!』

 

 さて、ここまでくれば徹底的に褒めてあげます。それはもう、徹底的に褒めて抱きしめて、撫でてあげます。

 

『す、すごくないよ……レッちゃんの方が……』

 

 照れながら反論しますが、構わず褒めて褒めまくり、彼女が告白してくる悪いところも全て受け入れ、承認してあげます。こうすることで瑞鶴ちゃんの好感度はうなぎ登りです。

 四歳を過ぎてから数年。碌に褒められず、蔑ろにされて虐めまで受けていた彼女の心は愛情や認められることに飢えています。そこに“個性”を与えてくれた子に認められたら……はい、依存していきます。(ニッコリ)

 レッちゃんなしでは生きられないぐらい依存させましょう。レッちゃんのためなら人を殺すのも笑顔で行えるようにします。やりすぎるとヤンデレとなって刺してきたり、監禁したりしてきますが、そうならないように注意しましょう。(87敗)力関係をハッキリとしておけば女を増やしても問題ありません。(495敗)

 瑞鶴ちゃんのご両親にも“個性”を見せてあげると、二人は笑って瑞鶴ちゃんの頭を撫でて褒めてくれます。これで後は鉄血の“個性”を手に入れるだけです。鉄血の“個性”でないと、浮気を疑われるから仕方がありません。

 

「ありがとう。私達にできることなら、なんでも言ってくれ」

「できる限り叶えよう」

 

 政治家のご両親からご褒美が貰えるので、ここはママにもお願いしましょう。有力者を集めたパーティーをするのです。招待客は決まってるよなぁ? (暗黒微笑)

 

「わかった。それぐらいなら構わない」

「任せてちょうだい。瑞鶴のお披露目もするから、“鉄血”を与えてからになるけど、いい?」

 

 選択肢“はい”“いいえ”が出てきますので、“はい”を選択します。これで構築していたルートよりもタイムを短縮できるので甘露です♪ 

 

「ん♪」

 

 ご両親達はパーティーについてお話しているので、招待客にレッちゃんを通して呼んで欲しい人達を呼んでもらいます。その後、彼等は帰っていきます。でも、瑞鶴ちゃんは一緒にいるのでレッちゃんと訓練も一緒にしてもらいます。

 一緒に深海に放り込んで、真っ暗闇で一人でしばらく放置すると、当然のように恐怖で震えて迎えに来てくれるレッちゃんへの依存度が上がります。

 こうしておくと、瑞鶴ちゃんもレッちゃんと出来る限り、一緒に居るように考えます。そのため、一生懸命、死に物狂いで修行してくれます。それを見てレッちゃんもどんどん修行していくので急速に仲良くなっていきます。成長にはライバルが必要だってハッキリとわかんだね。

 

 

 

 


 

 海の底で少女達修行中(Now Loading)……

 


 

 

 

 

 はい、一年後。レッちゃんは無事に七歳になりました~パチパチ。学校? 学校なんて時間の無駄なので行きません。瑞鶴ちゃんと一緒に家庭教師に教えてもらいます。美人家庭教師……ではなく、男性です。残念。ペドの人は憲兵さん(巨大ペンギン)に潰されますのでしっかりとガードされます。いくつか壁に滲みがありますが、気にしてはいけません。

 本日はレッちゃんがこの家にやってきた記念すべき日です。本日を誕生日とし、楽しい楽しい誕生日会が開かれております。参加者はパパとママ、瑞鶴ちゃんとレッちゃんの四人とヒーロー事務所の方々です。

 豪華な料理と沢山のプレゼントをもらい、両手でプレゼントを持ち上げて喜んで走り回るレッちゃんと、彼女の後ろをとてとてとついていく瑞鶴ちゃんと小さなペンギン達。リビングから繋がる水中フロアにはシャチ達も居て、レッちゃんに貢物を持ってきていますね。

 そんなレッちゃん達を横目にスキップさせます。その間に視聴者の皆様のために現在のレッちゃんについてご説明します。

 

 

名前:逆俣水錬(レッちゃん)改造細胞No.976

 

個性:【細胞操作Lv.2】【シャチLv.9】【海流操作Lv.6】【鉄血Lv.1】

 

年齢:7

 

外見:18

 

来歴:実験体

 

称号:《肉親殺し》《共食い》《無慈悲なる虐殺者》《無慈悲なる捕食者》《養子(ヴィラン)》《令嬢》《腹ペコ大魔王》《命を持て遊びし者》《修行僧》

 

 

 とりあえず、レッちゃんのステイタスはこんな感じです。それでは個別に説明していきましょう。

 細胞操作は複合型“個性”で覚醒済みなので経験値がかなり必要です。

 シャチは海中で訓練ばかりしているので上がりがいいです。その訓練に海流操作も使っているので同じく強化されています。鉄血の“個性”は手に入ったばかりなのでまだレベルが最低値ですが、これからですね。この“個性”は血を使って武器を持った兵隊を作り出します。兵器や武器は使用者の知識による制限を受けますので、兵器や指揮関連はしっかりと瑞鶴ちゃんに教えてもらってお勉強しましょう。

 瑞鶴ちゃんも細胞操作を除いたレッちゃんと同じ“個性”を持っているので、二人で毎日、クタクタに気絶するまで訓練しております。

 続いて称号の説明に入ります。新しい称号は養子(ヴィラン)、令嬢、腹ペコ大魔王、命を持て遊びし者、修行僧ですね。

 まず養子(ヴィラン)は養子縁組になったからです。ヴィランから養子になったので、知られるとマイナス補正を受けます。それ以外だとヴィラン側から勧誘されたりしやすくなります。カルマ値にマイナス補正されるので注意です。

 続いて令嬢。こちらは大会社などの娘だと手に入る称号で、礼儀作法など立ち振る舞いに補正が入ります。英才教育を施されるので経験値上昇系の称号です。半面、誘拐やパーティーの参加などの突発イベントも発生します。イベントが発生するとタイムロスになりますので、経験値を稼ぎつつ短縮を図りましょう。

 腹ペコ大魔王は単純に超高カロリーの錠剤や大量の食事をしたら得られる称号です。エネルギーの吸収効率が上昇し、一度に食べられる量が激増します。ただし、太ります。

 命を持て遊びし者は単純にペンギン達や瑞鶴ちゃんを改造したからですね。カルマ値にマイナス補正され、ヒーロー側の人達に白い目を向けられたり、やりすぎると捕まります。人にやれば普通に犯罪ですからね。動物は問題ありません。動物愛護団体もいますが、突然変異とかすでにこの世界ではありえることですからね。瑞鶴ちゃんの場合は本人と家族の同意がありますし、治療行為という扱いになるので問題ありません。“個性”が発現しなかった原因を取り除いて発現を促したなど、言い訳が可能です。ヒーローの監督の下でやっているので、こちらも大丈夫。それにバレなきゃいいんですよ。(フラグ?)

 修行僧はひたすら訓練ばかりをしていたら手に入ります。一日十時間以上、半年間訓練しないといけませんが、その分だけ経験値に補正が入ります。RTA走者は必ず手に入れる称号ですね。

 

 っと、説明している間に場面が移り変わり、とある高級ホテルのパーティー会場に移動して……等速になっていました。

 そして、レッちゃんの目の前に可愛らしいワンピースドレスを着た女の子が大人の人に連れられて挨拶にきていますね。

 

「初めまして。本日はお招きいただきありがとうございます。こちらは娘の八百万百です」

「八百万百と申します。よろしくお願いいたしますね」

 

 そう、やって来たのは八百万百です。彼女は私が呼びました! 一年前にお願いしていたのです。それもそのはず……彼女はチート“個性”である創造を持っているのです。

 “個性”創造。自分の体内にある脂質を使ってあらゆる無生物を創り出す事ができます。創り出せる無生物は多岐に渡り、対象は単純な布から刀剣、マトリョーシカ、果てはガスマスクや閃光弾、サーモグラフゴーグルといった小物製品から大砲や制圧用巨大スピーカー、スクーターなんて大物まで自由自在に作れます。作成するには対象物の分子構造まで理解する必要があるので勉強は必須です。創造物の量は本人の食事などによるカロリーの摂取に比例し、食べればたくさん作れます。それに作った物はそのまま残ります。

 今回のチャートではシャチと海流操作などという“個性”を手に入れたので、それと合わせますが、それ以前として彼女の“個性”は汎用性が非常に高くてRTA走者にとっては必須といえる“個性”です。お金が食べ物と勉強だけですみますからね! 

 

「レン、挨拶なさい」

「瑞鶴もだ」

「逆俣水錬。レッちゃんだよ、よろしくね~」

「私は鉄血瑞鶴」

 

 瑞鶴ちゃんはレッちゃんの後ろから挨拶していきます。彼女のお披露目もかねているので、皆でお話していきます。

 少ししてから、子供達だけで遊ぶようにレッちゃんから提案させます。

 

「一緒に探検しよ~! もーちゃん、案内して~ずーちゃんもいくよね?」

「レッちゃんが行くなら……」

「えっと……」

「ああ、いいよ。行っておいで」

「はい。それではご案内いたします」

 

 三人で仲良くお手てを繋いで歩いていきます。歩いている間に色々と話していきますが、レッちゃんが真ん中で引っ張っている感じです。

 仲良く会場を歩いていると、警備のヒーローをしているお兄さんを見つけたので突撃します。

 

「ちょ!」

 

 百ちゃんと瑞鶴ちゃんを引っ張って突き進み、ヒーローに激突……する前に抱き留められました。

 

「危ないよ」

「れ~?」

 

 そのまましゃがんで目線を合わせてくるヒーローのお兄さんに対して、レッちゃんを操作して顔をペタペタ触っていきます。

 

「硬い? 鉄? 鉄人間~?」

「違う。これはヘルメットだ」

「本当に?」

「あ、あの、この方はインゲニウムというヒーローの方で……」

「まあ、僕はまだインターンなんだけどね」

「顔見せて~」

「ああ、いいよ」

 

 ヘルメットを取ってくれたので、顔を触っていきます。その瞬間、髪の毛を一本、プチっと引き抜いてやります。

 

「こら!」

「ごめんなさい~」

 

 髪の毛を持ったまま、ぴゅーとずーちゃん達を連れて逃げます。子供だから許されることですね。手に入れた髪の毛は逃げながらすぐに口に入れておきます。

 さて、角を曲がったところで急ブレーキをして、百ちゃんが転げそうになるのを抱きかかえて、二人で一緒に転がります。

 

「……大丈夫?」

 

 瑞鶴ちゃんが二人を引き起こし、涙目になっている百ちゃんの身体を叩いて埃を落としていきます。

 

「あ、塵が……取るね」

「お、お願いしますわ……痛っ」

「ごめん。髪の毛も少し取れちゃった。私の髪の毛も取っていいよ」

「それは遠慮しておきますわ……」

「大丈夫か?」

 

 インゲニウムさんが追ってきたので、怪我がないことを確認してもらいます。怪我をしていたら、舐めて血液をもらうのですが、仕方がありません。

 インゲニウムさんに連れられて戻っていきます。

 

「はい」

「ありがと~」

 

 インゲニウムさんと百ちゃんが先を歩いていく後ろで、瑞鶴ちゃんがレッちゃんに百ちゃんから取った髪の毛を渡してきます。それをレッちゃんは食べます。

 これにて“個性”の創造とエンジンを手に入れる事ができました。後は細胞を増殖させていくだけです。

 

「ずーちゃん、大好き。神様、感謝してるー♪」

「えへへ……レッちゃんに喜んでもらえて嬉しいよ~♪」

 

 仲良くお手てを繋いで歩く二人はとても笑顔です。その後、ご両親の下に戻って少し叱られましたが、気にもしていません。する必要もないですからね。ただ、百ちゃんにはこれから世話になるかもしれないので、仲良くしておきましょう。プレゼントでもあげましょう。

 

「もーちゃん、もーちゃん」

「なんですか……?」

「友達の証にいいのあげるねー。ちょっと待ってて~」

 

 レッちゃんが一度離れ、噴水に居る小さなペンギン達を連れてきました。

 

「ぬいぐるみ?」

「違うよー」

「本物。生きてる」

「え?」

 

 百ちゃんにペンギンを渡します。ペンギンは手をあげて挨拶しました。もちろん、改造したペンギンです。

 

「この子は……」

「レッちゃんのペットだよ~もふもふで気持ちいいの~」

「可愛い!」

 

 レッちゃんや瑞鶴ちゃんも別のペンギンを抱き上げてもふもふしていきます。

 

「ママ、いいよね?」

「……構わないけれど、ご両親にちゃんと飼える環境があるのか聞かないと駄目よ。私達の家のようになってはいないから」

「お母様、お父様、駄目でしょうか……?」

「あ~ペンギンか」

「百の誕生日プレゼントとして、用意してあげましょう。それに動物を飼うことは教育にもいいわ」

「それもそうだな。百、しっかりと世話できるか? 生き物を飼うということは、命を預かるということで、とても大変なことだぞ?」

「がんばりますわ! 飼い方も教えてもらいます!」

「ならいいさ。そうだ。百の“個性”で二人にお礼をしなさい。髪飾りとかいいんじゃないかな?」

「わかりましたわ!」

 

 百ちゃんが“個性”を発動し、三つほどペンギンの形をした髪飾りを作りだしました。それを二人に差し出してきます。

 

「お揃いのを用意しました。どうぞ、受け取ってください!」

 

 眼を瞑って差し出してくる二つのペンギンの髪飾りをレッちゃんと瑞鶴ちゃんは受け取り、互いの髪の毛に挿します。

 

「おそろい」

「レ!」

「ですわ!」

 

 三人で笑い合う純真無垢な笑顔を見ながら、スキップボタンを押します。本日はここまで。次回、またお会いしましょう。

 

 

 




用意した“個性”は創造、鉄血、シャチ、海流操作、エンジン。コレが深海棲艦レシピだ!
できますよね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話

グレンラガンとスパロボのネタが少しあり。


 

 はい。本日は先日のパーティーから少ししたタイミングからです。ここで等速になりました。はい、イベントが始まったのです。

 

「いやぁぁぁっ!! 止めてぇぇっ! 放してっ!」

「大人しくしろ!」

 

 場所は自宅。そこで外国人である黒服の大男さん達が幼気な少女である瑞鶴ちゃんの腕を掴んで引きずっていくのです。

 

「レッちゃん助けっ!」

 

 必死に手を差し出す瑞鶴ちゃんにレッちゃんが気付いて、やってきました。ここで助けるか、助けないかの選択肢が出ます。もちろん、助けるを選択しましょう。このままでは瑞鶴ちゃんがひどい目にあってしまいますからね。(本人以外が酷い事になるとは言っていない)。安全に経験値を稼ぐためにも戦いましょう。

 

「離す!」

「なんだ?」

「あ、もう一方の娘の方か。お嬢様は……」

 

 やっちゃえ、レッちゃん! 飛び蹴りだ! どうせ相手は碌に反撃してこない! 

 

「んっ!」

「ぐっ!?」

 

 飛び上がって黒服の一人に飛び蹴りをするレッちゃん。黒服は振り返って両手を交差させてガードし……そのまま吹き飛ばされて壁に激突しましたね。

 

「落ち着いてください! 我々は……」

「レッ!」

 

 何かを言おうとした黒服を無視して、そのまま尻尾で顎を殴打して一人を制圧。残りの一人は瑞鶴ちゃんを連れていこうとするので、その辺にあったコップを投げ付けて怯ませ、追い付いて頭を殴り飛ばします。

 

「大丈夫?」

「レッちゃん……っ!」

 

 瑞鶴ちゃんがレッちゃんに抱きついてスリスリしています。いい感じだな~っと、思っているのですが、本番はここからです。

 

「何をしている」

「すいません少佐!」

 

 声の方へ向くと、階段の上にこちらを見下ろす女性と少女が居ました。女性は金髪のロングヘアーにやや吊り気味の碧眼。そして何より、隣の少女と違ってご立派な胸部装甲が特徴的な大人の女性。服装はグレイのパーカーに黒いミニスカート。その中に同じく黒いズボンも履いています。

 

「……お母様……」

「んにゅ? ママ?」

「ええ、ママよ」

 

 瑞鶴ちゃんはレッちゃんに強く抱きついて震えています。そう、この黒服さん達は誘拐犯でもなんでもなく……瑞鶴ちゃんのお母様の護衛、ボディーガードです。それも少佐という言葉から察せられるように、元軍人で瑞鶴ちゃんのお母様の元部下ですね。

 

「レッちゃん。瑞鶴とお別れの時間よ」

「そう、連れて帰るの。もう“個性”も手に入れたからここに住まわせる理由もないから、家に戻すわ」

 

 はい、そういうことです。瑞鶴ちゃんは“個性”を得るためにレッちゃんの側に居ましたが、“個性”を手に入れた今ではレッちゃんの側に居させる必要はなく、他家に預けておくのも外聞が悪いのです。後、瑞鶴ちゃんの依存度がパネェので、両親的にはそろそろ引き離さないとまずいんじゃね? という事ですね。

 おはようからおやすみまで、常に一緒で片時も離れませんからね。トイレ? 知ってるか、皆さん。美少女はトイレに行かない! まあ、冗談ですが、実際にレッちゃん達は行きません。老廃物が一切出ないからです。常に大量のエネルギーを効率良く使っているので、老廃物が出ないほど効率良くエネルギーに変換しているからですね。

 

「「やっ!」」

「嫌じゃない。連れて帰るわ。婚約者を決めたりもしないといけないらしいし、教育しないといけないこともあるの。特に私の“個性”は引継ぎが必要なのよ。だいたい学校にも行かないと……」

「やだ! ずーちゃんと一緒にいる!」

「レッちゃんと一緒がいい!」

 

 はい。ここで瑞鶴ちゃんを手放してはいけません。成長が遅れてタイムロスです。ですので、断固反対しましょう。

 

「レッちゃん。駄目よ。それに友達なんだからまた会えるわ」

「神様が別れちゃ駄目って言ってる! だから、絶対嫌!」

「神様……また、神様……ふ~ん。そう、そうね。ハンナ。家を多少壊してもいいわ」

「了解した。来い」

 

 さて、ここからが本番になります。このイベントのボスである二人の母親を相手に戦うのですが……難易度はベリーイージーから、ルナティックまであります。難易度の設定はプレイヤーキャラのステイタスとカルマ値に依存します。カルマ値が高ければ難易度が下がり、カルマ値が低ければ難易度が上がります。さて、レッちゃんのカルマ値は……マイナス82です。82っ!? 

ルナティック決定です。大丈夫か? 大丈夫だ、問題ない。全部称号が悪いんだ!(856敗)

 そうこうしている間にハンナと呼ばれた女性が腕をナイフで切裂くと、血液が出てきます。床に即座にできた血溜りから、質量を無視して何かが浮き出てきます。それは人型でした。

 

「Guten Tag」

 

 髪は赤毛のショートボブで、目つきの涼しさもあって幾分力強い印象を受ける眼は赤みを帯びた茶褐色。背筋を伸ばした姿勢のため控え目な胸部装甲が主張されていますね。服装は表が黒色で裏が白色のジャケットにスカートとベルト。ベルトには銃が装着されており、手にもアサルトライフルを持っています。

 彼女は鉄血の“個性”によって生み出された存在ですが、この世界に存在していないわけではありません(存在しているとは言っていない)。鉄血の“個性”は鉄(兵器)と血(兵隊)となりますので、事前に血の契約を交わした者達が“個性”に複製されて存在しています。その能力は交換した血液の量に依存します。想いを重ね合い、共に戦った者達が死した後であろうと共に戦ってくれるのです。戦場で死んだ者達も登録されるので、契約さえしておけば疑似的な復活が可能です。もっとも、登録に成功するかは運の部分もあります。簡単に言ってしまえば戦場で共に過ごし、敵の血を大量に吸い続けることで装備と共に鉄血の“個性”に取り込まれていきます。取り込まれた後は使用者やその血族の呼び出しに答えて永遠に戦う事になります。やばいですね☆

 

Major, Ordnung(少佐 命令を)

「殺さずに捕らえろ。私の娘だ」

「OK」

 

 出現した彼女は容赦なく、アサルトライフルを向けてぶっ放してきました。あくまでも威嚇なのであたりません。

 

「ちょっ!?」

「問題ない。模擬弾だ。そうだよな……?」

「もちろんです。投降を……」

「「や!」」

「ふぅん……なら、覚悟して」

 

 さあ、彼女が階段から飛び降りてレッちゃん達の前に来たので戦闘開始です。相手は十代の少女に見えますが、歴戦の戦士です。模擬弾とはいえ、命中したらタイムロスなので回避か防ぎましょう。

 

「レェェェェッ!」

 

 放たれるアサルトライフルの弾丸をシャチのエコーロケーションを使って吹き飛ばし、接近して殴ります。相手は即座に下がりながらジャケットの中からコンバッドナイフを引き出してこちらの拳に合わせてきますので、尻尾で足を掴んで引っ張って体勢を崩し、顔面に一発叩き込みます。

 

「レッ!」

「くっ!」

 

 顔面に入る前にコンバッドナイフで突きを放ってくるので、顔を背けます。頬が斬れましたが、無視して拳を叩き込みます。するともう片方の腕でガードしてきたので、上から殴って吹き飛ばします。

 階段に激突してバウンドした後、すぐに立ち上がってきました。どうやら、ジャケットは軍用のようでかなり強固な素材でつくられているみたいです。

 

「やるわね。腕が折られました」

「大丈夫か?」

「問題ありません。修復」

 

 “個性”を使ったようで、急速に腕が治っていきます。回復系の“個性”はタイムロスなのでさっさと潰しましょう。

 相手が治る前に接近して拳を放ちます。すると、今度はレッちゃんの拳をコンバッドナイフで弾きあげて、拳銃を引き抜いて至近距離で撃ってきます。

 

「ん」

「……ダメージなし?」

「ない」

 

 フハハハハハ! 毎日深海の水圧で鍛えているレッちゃんの肉体はすでに模擬弾など弾くのだよ! 水圧に対応できるようになっているから当然だね! 

 

「少佐、実弾か兵装の許可を」

「……模擬弾が効かないから実弾を使うが……いいか?」

「レッちゃん。諦める気はない?」

「ない」

「そう。なら許可するわ」

「了解」

 

 そう言うと、目の前の拳銃の弾が瞬時に変わったのか、火力が上昇しました。その弾丸を私の超絶テクニックで噛んで止めます。

 

「は? 実弾なんだけど……」

 

 一瞬、惚けた表情をした瞬間にアッパーを叩き込んで身体を浮き上がらせ、腹に全身を使った本気の拳を叩き込むと同時に喉笛に蛇を噛みつかせます。これでクリティカルヒットです。腕が腹を貫通し、彼女は驚愕の表情を向けます。

 

食事の時間だよ、レッちゃん

 

「いただきます」

「っ!? やっ、やめっ! あっ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 鉄血の“個性”によって作られた彼女は個性因子の塊です。つまり……レッちゃんの餌でしかありません。故に殺された彼女の身体は血液に戻っていきますが、その前に蛇から吸収しちゃいましょう。食べ終えたら逃げます。はい、逃げます。所詮、奴は鉄血の中では弱い方じゃけぇのぉ。(勝てないとは言っていない)

 

「ずーちゃん逃げるよ!」

「え? え?」

「家出する!」

「うん!」

 

 瑞鶴ちゃんの手を掴んだレッちゃんが奥へと走っていきます。水の中に飛び込んでいきました。

 

「こら待ちなさい!」

「止められるか?」

「任せなさい! 隔壁封鎖!」

 

 水路を進むと道が閉じられました。ちゃんと防犯の為に出入口を閉じられるようにしているのは当然です。

 

『どうするの?』

『どうしよう?』

 

 当然、ぶち壊します。レッちゃんの腕の周囲に海流操作の“個性”を使って高速回転する海流を生み出し、拳の方は百ちゃんから貰った創造の個性でドリルを生成。海流とエンジンの個性で超高速回転させます。先程、個性因子をいっぱい手に入れたので可能です。無茶を通して道理を押し込むのです! 

 

『無理だから諦めて戻ってきなさい! その隔壁は特殊合金で出来ているから魚雷でも無理! というか、普通に帰るだけだから!』

 

 俺たちが掴もうとしている明日(タイム)は! てめぇが決める明日(タイム)じゃねぇ! 俺達が……俺達自身が無限の宇宙から選び出した俺達の明日(タイム)だ! そう、俺達のドリルは……天を貫くドリルだァァァァァァァ!!!! 

 

「レェェェェェッ!!」

 

 分厚い隔壁をドリルが削り取り、巨大な穴を開けました。

 ドリルが一回転すればほんの少しだけ前に進み、一分前のレッちゃんたちよりも進化する。それがドリルなんだよ!! 

 

『壊したぁぁぁっ!?』

『もう兵器だな』

『すごい! レッちゃんすごい!』

『エッヘン』 

 

 ご両親は水中に設置されているモニターの声ですが、とても驚いております。そんな二人を無視して瑞鶴ちゃんの手を掴んで、レッちゃんは愛の逃避行です。

 ぶっちゃけると、シャチ、海流操作、鉄血、創造、エンジン……これだけ“個性”を手に入れたら、逃げ出しても問題ないんですよ。雄英高校に入るのが面倒になるのですが、裏口(勝手に侵入)から入るのもできますしね。

 そんなわけで外に出るのですが、まだ家の敷地範囲です。ここから沖合にある壁を抜けるまでが大変です。相手も本気になりますからね。はい、ママ達が本気になります。ガクガクブルブル(9987敗)

 

「レッちゃん……海が……」

「ママ」

 

 しばらく泳いで半分くらいくると、巨大な渦潮が発生しました。無理矢理、水中から出されたレッちゃん達は家の方を見ると、ママが水面に立ちながら両手から海流を生み出して海中に入れています。これによって渦潮が発生させられたわけですね。つまり、レッちゃん達は時速百キロを超える渦に巻き込まれています。

 

「レッちゃん……あ、アレ……」

「おっきい……」

 

 そんなママの後ろではグレイのパーカーとかいうラフな格好ではなく、ガチの軍服姿になったお母様、ハンナさんが両手から血液を流しながら、左右に巨大な兵器を呼び出していました。

 

「逃がさないわよ」

「ああ、逃がさん」

 

 無数の軍服の兵隊さん達が敬礼しています。そして、その巨大な砲はこちらに照準を合わせています。

 その兵器は重量1,350トン以上。全長約47.3m。銃身長約32.48m、全幅7.1m。全高11.6m。要員数は砲操作に約1,400人。支援要員に4,000人以上。それが二つなので倍。

 

「発射準備完了しました!」

「撃つのは海面で模擬弾だ。あてるなよ」

「はっ!」

 

 レッちゃんと瑞鶴ちゃんはガクガクブルブルと震えています。そりゃそうだろ。

 

「発射」

「ドーラ、発射!」

 

 轟音が響き、海面に着弾すると同時に海水が吹き飛びました。レッちゃんと瑞鶴ちゃんも吹き飛びました。さあ、ここからが本番です。空中で体勢を整えて吹き飛ばされる方向を操作して沖へと逃げます。足場は空中に打ち上げられたペンギンやシャチ、サメ、魚です。

 

「逃げられるわよ!」

「少佐!」

「グスタフ、放て。狙いは後方だ」

「はっ!」

 

 もう一発は海流を生み出して砲弾の軌道を変更。砲弾に足を付けてそのまま沖まで飛んでいきます。失敗すると死にます。はい、死にます。海に着弾させて衝撃を殺さないとやばいですからね☆

 ちなみに何もしなければ普通に気絶して捕まります。ちゃんと殺さないように手加減されています。このヒロアカ世界だと、普通に砲弾とか殴り飛ばす人とか結構居ますからね。という訳で、あばよとっちゃん! 

 

「とっちゃん?」

「?」

 

 沖合に落下した後、そのまま泳いで逃げます。敷地内から出たらママもお母様も“個性”が使えませんからね。ましてやお母様は無理です。ガチの兵器ですからね。

 

「ど、どうしよう!? どうしたらいいのかしら! このまま追う?」

「瑞鶴の体内には誘拐対策にGPSを仕込んである」

「うちもそうだけど……こっちは……ロストしているわ」

「私の方は……急速に太平洋に向かっているな」

「とりあえず、連絡を任せるわ。私は追うから」

「ああ。しかし、ここまで本気で逃げるとは……予想外だな」

「いや、逃げるのは仕方が無いでしょ。動けるとは思ってもみなかったけれど」

「……子育ては難しい。戦場の方が気楽だな」

「まったくね。後半には同意しかねるけど」

 

 ママが追ってきますが、気にしません。即座にパパに連絡されてやってきます。それとお母様が“個性”の使用申請をして戦闘ヘリとかを飛ばして探索してきますので、海に潜って逃げます。まあ、潜水艦まで導入されるので逃げるのは無理ですね! これだから海洋資源を取り扱う巨大会社と政治家と軍人の一家であるお母様の実家、ビスマルク家はやばい。

 捕まる前に海底資源や島、サメ、深海生物をゲットしておきましょう。特に資金確保の為に沈没船がいいです。お金がアレばある程度は自由に兵力を増やせますしね。どちらにせよ、相手側が根負けしてこちらの要求を受け入れるまで断固として帰りませんので、トレジャーポイントを周回しつつ経験値をためましょう。鉄血があるので、沈んだ兵器とかを回収するのも十分に旨味があります。もちろん、それぞれの“個性”を融合させていきます。

 

 

 はい、最初のトレジャーポイントで沈んだ潜水艦を見つけました。原子力潜水艦なら大当たりですが……大当たり(百面体ダイスのクリティカル)でした。汚染がやばいですが、細胞を強化しているので問題ありません。

 さて、エンジンの個性から、機械部分を身体に出して潜水艦に接触させ……浸食させます。金属を取り込んだ細胞は金属細胞となり、生きています。普通はあり得ませんが、金属の身体の人とかいますので、生きた金属とかできます。ナノマシンの集合体とかですね。スパロボ時空の増殖・吸収・複製創出能力を持つズフィルード・クリスタルとかみたいのもできます。その為には細胞操作だけでは無理で、機械系の個性が必要になるんですけどね。

 これで修復は必要ですが、原子力の力を手に入れました。これをエンジンにしてエネルギーを確保です。複製したら瑞鶴ちゃんにもあげましょう。ついでに放射能汚染もレッちゃんが吸収するように改造しておきましょう。汚染も除染してくれるレッちゃんは天使ですね! (やらないと瑞鶴ちゃんが死ぬ)

 暗い暗い世界で二人っきりで生活して、さらに命の危機もあって依存度が倍率ドン! 

 へっへっへ、これでもうレッちゃんが居ないと瑞鶴ちゃんは生きていけないぜ! ずっともだよ! 深海仲良し部結成! 

 

 

 70日。逃げたら捕まりました。無念。無人島を改造している時にオールマイトが降ってきて、空挺部隊で包囲されるとか、反則だよ! だけど、オールマイト……貴様に毒は仕込んだぜ。お前の未来は被爆して終わりだ! と、言いたいのですが、できません。ここでオールマイトを倒す事はできないからです。火力が足りないですし、下手にオールマイトを弱らせるとAFOさんに殺されて獲物が取られてしまいます。それは困るので大人しく普通に戦って敗北します。経験値は美味しいので出来る限り食いつきましょう。タイムの消費を考えて最高効率の修業ができます。オールマイトはサンドバッグだった? 

 連れて帰られた後は正座させられてすごく怒られましたが、スキップです。話し合いにより、二人は一緒に居られることになりました。ただ、互いの家を行き来して、一緒にお勉強することになりました。お勉強に政治と軍事が追加されたので、経済と普通のお勉強も合わせてとても大変です。

 とりあえず、レッちゃんは兵器関連のお勉強を集中しましょう。原子炉を核融合炉に進化させるのが目的です。これによって無尽蔵に兵器を量産してぶっ放す超兵器が完成する……かもしれません。

 

 追伸。母親二人は正座させられてしっかりと怒られ、子育て教室に通うことになりました。軍事しか知らない二十代前半のお母様と十代後半の少女なので仕方がありません。

 

 

 

 

 




追加で一人か二人、深海棲艦を増やして後は原作です。誰を出そうと思います。瑞鶴ちゃんが表で一緒なので、裏で一緒になる子ですね。アンケートでもします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オールマイト

 

 

 

 

 その依頼が来た時は驚いた。例のオール・フォー・ワンが関わっている事が確定した研究所から逃げ出した実験体の少女。その少女が友達と一緒に家出したというのだ。

 

「やはり、あの時に捕らえているべきだったのです!」

「そんな事はないよ。彼女の生活態度は問題なく……とは、言わないけれど問題ないみたいだったし」

「ああ、そこは保証しよう。今回、水錬が逃げだしたのは預かっている少女、瑞鶴と離れないためだ。数年ほど一緒に住んでいたせいで、離れることが受け入れられなかったのだろう」

「ほら、大丈夫じゃないか」

「ですが……」

「問題がない。とも言っていない。学校にも行きたがらずにひたすら水中や海底で訓練をしている。目標は打倒オールマイトらしいぞ」

「私か!?」

「あの時、勝てなかったのがよほど悔しかったのだろうな」

 

 確かにあの時は簡単に捕まえる事が出来た。だが、年齢にしてはかなり強かった。それがどれだけ成長しているのか、気になる。

 

「それで今回の依頼はなんですか?」

「捕獲だ。居場所は判明しているが、連れ戻しに行っても激しい抵抗にあっている。もう二人を離す事を諦めたと伝えても信じてくれなくてな……」

「ヒーローのギャングオルカとそのサイドキックでも無理だったのですか?」

「“個性”の使用申請を出して妻たちや実家にも手伝ってもらい、潜水艦や船を複数だしたのだが……それでも無理だった。広い太平洋では捕まえる前に接近を感知されて逃げられる」

「それはまあ……」

「HAHAHA!」

 

 やはり彼女は成長しているのだろう。これは一筋縄では行かないかもしれない。

 

「受けてくれるか?」

「ああ、受けよう。二人を捕まえて話を聞くようにすればいいんだね?」

「それで頼む」

「しかし、捕まえてまた逃げだされたらどうするのですか?」

「それについては原因になった者達も反省しているから、大丈夫だと思う。それに子育てのために専門家も雇うことにした」

「なるほど」

 

 受ける事を決め、移動を開始する。事務所の屋上にヘリが用意されているらしいので、それに乗って彼女達が出没する無人島へと移動する。その時に知ったのだが、今日で七十日目になるらしい。はやく保護してあげないと大変なことになる。

 

 


 

 

 ヘリに乗り、タンカーを経由してやってきた無人島。私はそこに飛び降りると、他にもたくさんあるヘリから軍服を着た人達がパラシュートで降下していく。

 彼等は瑞鶴という子の母親の“個性”で生み出されている存在らしい。その他にも潜水艦や複数の船が無人島を包囲しているので、彼女達の本気が伺える。

 

『オールマイト、大丈夫? 一応、逃げられないように包囲はしてあるわ』

「銃が見えるが、撃ったりしないよね?」

『こちらからは麻酔しか撃たないわ。ちなみに向こうは模擬弾を撃ってくるから気をつけて』

『スタングレネードも使ってくる。相手は四人だが、そのうちの二人は軍人でゲリラ戦も経験しているプロだ』

「それはまた……」

『その二人は“個性”だから、潰して問題ないからね』

「了解」

 

 インカムから伝えられる二人の母親からの情報を聞きながら、島に踏み込む。着地と同時に……カチっという音と共に地面が爆発する。

 

「なっ!?」

『来るぞ』

 

 地面が爆発されて浮かび上がったところを奥のジャングルから銃弾が飛来する。それを殴り飛ばし、後ろの空気を蹴ってジャングルへと突入する。すると、木々の間に張り巡らされたワイヤーにひっかかり、その先に仕掛けられていた無数の手榴弾が目に入る。

 

「やばっ!?」

 

 爆発と同時に破片が皮膚へと突き刺さる……前に筋肉の鎧で全てを弾く! 

 

「実弾はないんじゃなかったか? 確実に殺しにきてるよ!」

『相手がオールマイトだから、これぐらいは平気と思ってるのかもしれないわね』

 

 その時、奥から飛来した弾丸を指で受け止めて潰す。少し皮膚がすり減った。射線の先を見ると、狙撃銃を構えている軍服姿のショートボブの赤毛少女が見えた。スコープごしに赤みを帯びた茶褐色の瞳が見えたけれど、驚愕に彩られていた。

 

『ひとつ思うのだけど、あなた人間?』

「失礼だね。人間だよ!」

『アンチマテリアルライフルの弾丸を素手で掴んで潰す存在が人間か。ジョークだな』

「HAHAHA!」

 

 笑っていると、彼女は次にどでかい物を取り出してきた。そう、駆逐艦とかで使われている対空砲とかそんなの。

 

「一つ聞くが、君の“個性”は海軍に関するものかね?」

『その通りよ。うちはどちらかというと特殊作戦群の所属部隊だったから、海軍と海兵隊としての活動もしていたわ』

 

 轟音と共に二つの方向から放たれる銃弾の嵐。流石にこれは私でも少し傷を負うので、回避する。

 

『オールマイト、反応が上から来ている。その子達は囮だ』

「っ!?」

 

 上を見ると魚雷を持って降って来る二人の幼い少女。気付いたからか、声をあげてくる。

 

「「やぁぁぁぁぁっ!」」

『あの魚雷はヤバイぞ!』

「見たらわかる!」

 

 魚雷には放射能のマークが施されている。つまり、アレが爆発したらこの島ぐらいは吹き飛ぶだろう。私が取れる選択肢は二つ。一つは彼女達ごと魚雷を吹き飛ばして、上空で爆発させること。だが、それは二人が死ぬ。つまり、その選択はできない。

 

「しかし、これはまるで……アイツのよう、だッ!」

 

 地面を蹴って近づき、二人を抵抗される前に掴んで、下にやってから蹴りで爆発する前に遥か上空へと叩きあげる。反動で砂浜にクレーターを作りながら着地する。

 同時に上空で爆発が起きて中から無数の鉄球が降り注いでくる。どうやら、あの魚雷についていた放射能のマークは偽物だったようで、クラスター爆弾だったようだ。

 

「正気かっ!?」

 

 二人を浜辺に降ろし、全力で風圧を飛ばして鉄球を弾き飛ばす。その瞬間──

 

かはっ!? 

 

 ──両サイドから脇腹目掛けて拳が同じタイミングで一切の狂いなく放たれ、衝撃が逃げることもできずに体内を破壊された。吐血しながらも鉄球はどうにかできた。

 

「オールマイトなら、そうするって神様が言ってた」

「レッちゃんの言う通りだったね」

 

 私の脇腹に拳を付けたままの彼女達。私は即座に拳を振り下ろす。だが、その前に下がられた。

 

「君、達は……わかっていて、命を賭けたのか?」

「だって、助けてくれるって神様が言ってたもん」

「確実に一撃いれられるってレッちゃんが言ってたから」

 

 この二人の言葉から、考えられるのは……神様という存在がAFOである可能性が非常に高い。アイツならこれぐらいは平気でやってみせるだろう。

 

「どうする、レッちゃん?」

「勝てないけど、経験値になるって神様が言ってるから訓練続行だよ、ずーちゃん」

「うん、わかった」

 

 ハイタッチをしてから構えを取る二人。彼女達はこれが訓練だと思っているようだ。私は彼女達を殺さない。故に実戦経験を得られると思われているのだろう。

 

「あ、言い忘れてた」

「そうだね、レッちゃん」

「ん。一緒に言おう」

「うん」

 

 二人はこちらを見ながらそろえて告げてきた。

 

「「あ~そ~ぼ~」」

 

 そう言いながら、こちらに蹴りを放ってくる。それを掴んで捕獲しようとすると、いつの間にか手に握られていた手榴弾が目の前に放たれる。即座に彼女を投げてガードすると、フラッシュグレネードだったようで、閃光で視界が焼かれる。背後から気配を感じて蹴りを放つと、そこには瑞鶴という少女が居た。

 彼女達は互いに連携して左右から同じ場所を狙ってくる。そうでないとダメージが入らないのをわかっているようだ。

 

「これは遊びじゃないぞ!」

「遊びだよ?」

「遊びだよね?」

「深海で毎日やってるもん」

「毎日やってる」

 

 少女達の拳は七歳や八歳が放つには威力がありすぎる。私の軽い攻撃を防ぎ、迎撃してくるほどだ。本気を出せば制圧は容易いだろうが、それは彼女達の身体が壊れてしまう。

 

「どういう教育をしているのかな!?」

『毎日、水底や海底で遊んでいるとは思っていたが、こんな事をしているとは思っていなかったの……』

『動物と楽しく遊んでいるものだと……』

『俺はてっきり、ヒーローになるための訓練だと……』

 

 間違いではない。間違いではないんだろう。

 

「君達はヒーローを目指して、いるのかな?」

「目指してるの?」

「ん~? お~るまいと~とおーるなんとかというのを倒すのが目的だよ~って、神様が言ってる!」

「っ!?」

 

 彼女達はオール・フォー・ワンの事を知っているのか。それにしても、アイツと私を倒す為に鍛えているとは……ならば私がやる事は一つ。

 

「いいだろう。私が存分に相手をしてあげようじゃないか」

「「本当!?」」

「ただし、危険な行為は無しだ。素手でかかってきなさい」

「「わかった」」

「それと最後に……お父さんのようにヒーローになること。出来るかい?」

「「ん!」」

「よろしい。じゃあ、きなさい」

「いくよずーちゃん!」

「うん、レッちゃん!」

 

 彼女達が言う神様が誰かわからないが、利用されている事は確実だ。だからこそ、その呪縛から解き放つためにもしっかりとヒーローになるように導かねばならない。

 それにオール・フォー・ワンは私が倒す。だから、彼女達がすることはヒーローとして私を超える事。そういう風に倒すよう目的を変えてしまえばいい。何、彼女達もどのような手段で倒すとは言っていない。ならば、やるしかないだろう! 道を間違える子供を導いて助けるのもまたヒーローだ! 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サー・ナイトアイ

前の補足な感じです。


 

 

 

 

 オールマイトと子供二人の戦い。それはオールマイトが押しているように見えているが、実際は違う。

 オールマイトの動きは全て予測され、的確に回避されてダメージを積み重ねられている。だが、オールマイトの回復力が高いので問題ない。

 

「こちらの攻撃が読まれている! ならば更にその先へ行けばいい! Plus Ultra!!」

「あはっ♪ それもわかる!」

「こう、だね!」

 

 オールマイトが限界を超えてもそれを想定して行動してくる。それこそまるで未来が見えてくるようにオールマイトのパターンを把握している。

 

「これは面白い! 私の訓練にも使えるね!」

「遊ぼ!」

「遊びましょう!」

「ああ、遊ぼうか!」

「もっと、もっと、もっと!!」

 

 オールマイトと彼女達の技術がより高度に洗練されていく。成長速度はオールマイトよりも子供の二人の方が高い。

 一撃一撃が効率的に相手を破壊する技へと昇華され、音を置き去りにする拳と蹴りが交わされていく。間違いなく彼女達は戦いの中で進化し、身体能力を上昇させていっている。

 だが、それでも彼女達もわかっている通り、勝つのはオールマイトだ。彼女達には明確な弱点が存在している。それは──

 

「もうバテたのかね!」

「うにゅっ! まだまだぁっ!」

「うぅ~」

 

 ──体力と体格の限界。反応速度の限界。どんなにオールマイトの行動を予測し、未来を予測したとしても小さな身体には限界がある。

 故に彼女達は敗北する。まだ、オールマイトとの差が埋められないほど存在している。だが、あくまでも今は、だ。彼女達は物凄い速度で成長していっている。

 例えるならば可能性の獣と言ったところだろう。何れオールマイトという光を飲み込む闇になる。

 

「……ぁ……」

「むっ」

 

 一人脱落した。瑞鶴と呼ばれた少女が倒れた。だが、その程度で止まらない。あの少女はオールマイトと戦い続ける。

 回避できずに被弾していく。指が折れようが、腕が折れようが、気にせず楽し気に笑いながら戦っていく。

 

「楽しいね! 楽しいね! 神様がとっても喜んでくれているよ!」

「それは間違いだ! 君は怪我をしている、じゃないかっ! 痛いだろう!」

「痛いよ? でもね、でもね……? ソンナコトデトマラナイヨ! ダッテ、レッチャンガ動カシテイルワケジャナイモン!」

「っ!?」

 

 オールマイトの拳が小首をかしげた彼女のすぐ横を通り、頬が斬れる。しかし、彼女は気にせずに接近して金的を蹴り上げる。足を砂浜に入れて地中に埋まっていた魚雷を蹴り上げながら。

 

「危なっ!? 武器は禁止だと言っただろう!」

「? コレハ、不可抗力ダヨ? タマタマ巻キ上ゲタダケダモンネ!」

「そうか。ならばっ!」

 

 オールマイトが全力で地面を殴り、砂浜に埋まっていた地雷を衝撃波で吹き飛ばす。それを彼女は空中で更にオールマイトの方に蹴り飛ばすが、すでにそこにオールマイトは居ない。オールマイトは瑞鶴を持って離れていた。

 

「次ハドウシタライイ? ドウスルノ? コウナンダネ! アハハハハハッ!!」

 

 次第に彼女の瞳が虚ろになっていく。それでも彼女の身体は戦闘を止めない。次第に彼女の尻尾が巨大化していくと同時に機械化されていく。

 海蛇の頭が鉄へと代わり、口は鋭い鋼鉄の牙へと変化した。尾の部分も機械化され、エンジンが複数設置されていく。足にもエンジンが作られ、全てから推進力を得て一気に加速した。オールマイトは瑞鶴を置いて対応していく。

 

「キヒッ! キヒヒヒッ!」

 

 機械化された蛇を殴り飛ばす。彼女は接近してオールマイトと殴り合う。殴って、蹴って、殴って、蹴って、周りを破壊していく。もはやこれはヒーローとヴィランの戦いだ。

 

「もういい加減にしないか!?」

「マダダ、マダマダ動ク! 経験値、経験値ヲ寄越セ! 進化、進化シタイノ! Plus Ultra! モット、モット、モットモット、モットモットモットモット、モットモットモットモットモットモットモットモット、モットモットモットモットモットモットモットモット!!!!」

 

 血飛沫が彼女の身体から上がり、肉体が壊れていく。それでも彼女は止まらない。だが、気持ちだけではどうしようもない。

 

 十分。

 

 それが彼女の限界だった。砂浜に倒れて動かなくなった。ギャングオルカとその妻の少女が走って彼女を抱き上げる。

 

「大丈夫か!?」

「……大丈夫、生きてる。それに怪我も再生していってる」

「そうか。それならこれを与えておけばいいか」

 

 錠剤を食べさせていく。エネルギー切れなのだろう。エネルギーを補給したからか、すぐに傷口がゆっくりとだが、確実に再生していく。

 

「オールマイト、やはり彼女は然るべきところに閉じ込めるか、あるいは……」

「駄目だ。それはヒーローがやることではないさ。それに、だ」

「私と空悟の子供に手を出したら許さないわ」

「ああ、まったくだ」

 

 銃器が構えられる音が聞こえ、振り返る。後ろに軍人が私達を包囲するようにしていた。火砲も用意され、明らかにヤバイ連中だとわかる者達も居る。

 

「確実に彼女達が敵になるだろうね」

「子供を守るのは当然だろう?」

「ええ、その通りよ。私達が全力で相手してあげる。海が近いところで勝てるとは思わないでよ?」

「ギャングオルカ! 君なら彼女の危険性がどれだけあるかわかるだろう! このまま成長すれば不味い事になる!」

「サー・ナイトアイ。すまない。私はこの子の父親だ。父親が子供を殺すことなど、ヒーロー以前の問題としてやってはならない」

「だが、被害がとんでもないことになるぞ!」

「私が止める。私も覚悟を決めた。その時にも備えよう。メル、すまないが……」

「私もやるわよ。ええ、しっかりとやるわ。幸い、もう学校も卒業したし、後は自宅でこの子達の面倒を見ながら適当にやるわ。そうね、ヒーロー免許でも取っておこうかしら? ハンナもどう?」

「“個性”が気にせず使えるのであればそれもまた良いか」

「サー、君の負けだ。なに、私がもっと強くなればいいだけだ。それこそサー達もね」

「……わかりました。しかし、報告は上げます。公安がどう判断するかはわかりませんよ」

「問題ないわ。そうよね、ハンナ」

「ああ、本国からも圧力をかけさせる」

「じゃあ、私は経済的に圧力をかけましょうか」

「君達ね……」

「子供のために頑張るのが親なのだろう? なら、何も間違いではない」

「そうそう」

 

 ギャングオルカを見るが、彼は知らんと言った感じでそっぽを見ていた。確かに彼女達なら圧力をかけられる。何せ複数の国家をまたにかける大企業の娘と外交(安全保障)の都合で嫁いできたようなものだ。表向きは恋愛による結婚となっているが、それはあくまでも建前だ。ドイツが鉄血の“個性”で何をしようかなんて明白だ。いざという時の保険だ。裏切れば何時でもそれ相応の覚悟をしろ、というな。そうでないなら、他国に凶悪な“個性”持ちを引き渡すはずもない。

 

「うっ……」

「どうした?」

「ホッとしたせいか、なんか気持ち悪い……吐き気がするし……」

「大丈夫か!?」

「えっと、すぐに病院に連れていかないと……って、ここは無人島だ!」

「問題ない。私の“個性”で衛生兵と野戦病院を出す」

 

 すぐに衛生兵が現れ、彼女を診断していく。結果は……

 

「あ、おめでとうございます」

「「「「「は?」」」」」

「赤ちゃんがいます。妊娠です」

「しゃぁっ!」

「やったわ!」

 

 気付かなかったようだが、新たな子供ができるのは目出度い。これは何かプレゼントを用意しなくては……やはり、オールマイトグッズだな。

 

 

 

 




オールマイトとの戦いは経験値うまうまです。
オールマイト 戦闘能力100
エンデヴァー 戦闘能力80
レッちゃん  戦闘能力40
トップヒーロー戦闘能力30から50
一般ヒーロー 戦闘能力10
サイドキック 戦闘能力5
一般人    戦闘能力1

だいたいこんな感じかも。結構適当です。瑞鶴ちゃんは30ぐらい。

レッちゃん達はしばらく精密検査とカウンセリングされ、しばらく軟禁されてお勉強です。
公安には普通に圧力をかけて尊宅をしてもらいます。

公安「やった、コネと貸しが増えたぜ!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話

 

 レッちゃんと瑞鶴ちゃんが家出してから数日。現在は二人共、カウンセリングを終えて家でお勉強中です。それもしっかりと教師がつきました。それもとびっきりの人達ですね。

 

「ヒーロー公安委員会の依頼により来ました現身(うつしみ)似々花(ねねか)と申します。教育免許とカウンセリングの免許も持っていますので、基本的に私が教えます」

 

 小学生と大差ない身長をしたピンク色のカールがかかった髪の毛にピンクの瞳をしたスーツの女性です。身分証には二十代になっております。

 

「防衛省から来ました火鳳(かほう) 大空(おおぞら)と申します。お二人の護衛をするよう、申し付けられております」

 

 もみあげの長い、やや茶色みがかった黒髪のショートボブに茶色の瞳。頭にはヘッドギアをつけ、首や手には装甲が取り付けられています。身長はだいたい中学生くらいかな? こちらも年齢は二十代のようです。

 

「よろしくお願いしますね」

「よろしくお願いいたします」

 

 はい。実家と政治家としての圧力をかけてヒーロー公安委員会は黙らせましたが、流石に野放しにはしてくれません。

 ネネカさんは教育してコントロール下に置くために教育と監視のためにやってきたというわけです。幼い年齢でオールマイトと戦えるレッちゃん達がヴィランになったら大変ですからね。それにあわよくばヒーロー公安委員会の手駒にするためです。原作のホークスみたいな感じです。

 火鳳大空こと大鳳ちゃんは防衛省から派遣された護衛という名の監視です。国防の観点からして奪われたら大変危険ですから、しっかりと守って国益になるようにしろというわけです。

 今回の件を無かったことにしてやるから、監視と護衛、教育に関わらせろや! という国の思惑ですね。

 

「この人達は大丈夫なの?」

「夫の話では大臣からの命令だそうだ」

「ああ、なるほど。内閣情報調査室の所属ね」

「だろうな」

 

 ママもお母様もご理解しておられるようですが、言っちゃえばスパイです。レッちゃんの個性を経験豊富な走者が使えばスパイなんて余裕のよっちゃんですからね! (117敗)

 

「では、お勉強しましょう」

「「は~い」」

 

 ネネカさんが子供達にしっかりと教えている間に大鳳ちゃんは家の周りを確認していっています。もちろん、彼女達だけでなく日本人の黒服や明らかに外国人の黒服がいます。さらにさらに少年少女の外見をした兵士から厳つい如何にもな軍人さんまで、超厳戒態勢が敷かれております。流石にその人達は個人用携帯火器で武装している程度です。

 

「なんのお勉強がしたいですか?」

「これ~!」

「ほぅ、核についての勉強ですか。大変よろしい。ですが、まずは基礎的な知識から身につけましょうね。そうでないと内容がわかりませんから」

「は~い」

「まずは読み書きから?」

「そうですね。貴女達の学力がわからないので簡単なテストを作ってきました。まずはこちらをやってください」

 

 ネネカさんが十冊の問題集をカバンから取り出し、二人に渡していきます。国語や算数から始まり、多種多様な科目が用意されています。

 

「うぇ~」

「多い……」

「一冊終われば休憩です。ご褒美にアイスをあげましょう」

「「アイス!」」

 

 二人の目がキラキラしだしました。ネネカさんは持ち込んだ冷蔵庫からアイスを取り出し、二口分だけそれぞれスプーンで掬ってレッちゃん達に食べさせました。

 

「美味しい!」

「もっと……」

「ワンカップ十万円のアイスですからね。23金の食用金箔にマダガスカル産バニラビーンズを使用したアイスクリーム。そこにイラン産のサフラン、ブラックトリュフが使用されています。取り寄せて再現した私物ですが、終わったら差し上げます。やりますか? やりませんか?」

「「やる!」」

 

 レッちゃんと瑞鶴ちゃんの両親なら普通に買えますが、子供にとってはわかりません。そんなわけで二人は一生懸命にお勉強を開始しました。その様子をしっかりと監視しているネネカさん。

 ご両親は少し離れた場所で見守っています。特にママの方は身重なのでゆったりとしたゆりかごのような椅子に座っています。お母様の方はカウンターに座りながら多数のヒーロー活動に関する書類を処理しています。彼女はさっさとヒーロー免許を取ったのです。

 試験を特別にさせて習得しています。方法としては祖国の方で免許を発行させ、それを国内に持ち込んで国内でも活動できるように申請してテストを受けるのです。もちろん、このテストに妥協は一切ありません。権力があろうがなかろうが、既定の点数に達しなければ落とされます。ちゃんと公開されるから仕方がないね。

 まあ、現状はこんな感じで国側もしっかりと介入してきているので、放置でいいです。スキップしてレッちゃんに天啓を与えるために用意しておきましょう。スキップだ~! 

 

 

 

 


 

 

 

 

 等速に戻りました。どうやら、レッちゃん達は船で太平洋に来ているようですね。周りには既に何もありません。見渡す限り、大海原です。日本の排他的経済水域の少し外です。

 

「ここか?」

「教えてもらった座標ではそうよ」

 

 ギャングオルカこと空悟パパが嫁のメルに確認をしております。今回、来ているのはレッちゃんとその両親。それに瑞鶴ちゃんと護衛の大鳳ちゃん、先生のネネカさんにギャングオルカのサイドキック達です。

 

「そろそろ時間ね。全員、津波に備えなさい」

「「「サー!」」」

「「わくわく」」

「海底より超巨大物体接近中! 浮上してきます!」

 

 子供達が楽しそうに海を見ていると、急激に海面が盛り上がっていきます。少しすると海から凄い勢いで数キロはありそうな巨大なメタリックなクジラが飛び出し突き立ったようになり、重力に従って海面に倒れます。

 その衝撃により、巨大な津波が発生しますが、レッちゃん達の周りにママが海流を発生させて上空に巻き上げることで防ぎます。また、同時にレッちゃん達から半径五キロの範囲で発生した津波も全て別の海流が現れて水柱となって空にまきあげます。これらに加え、飛び出したクジラの下に渦潮が発生して周りの海水を急激に巻き取って深海へと送り込んでいますね。

 

「すご~い!」

「うん、すごいね……」

 

 びしょびしょになりながら喜んでいる子供達ですが、大人達も含めて服の下には水着を着ているのでスケスケになっても大丈夫ですし、救命胴衣もちゃんとつけています。

 

「これが私の実家、龍宮寺が保有する海底移動型拠点、超巨大潜水空母龍宮城よ」

「ふぇ~!」

「カッコイイ」

 

 全長2250.0m、全高540.0m、重量 82900.0t、最高速度827km/h(出したらオーバーホール必須)。武装は発破用の潜水魚雷や海賊や空賊などに対する対空砲、バンカーから弾道ミサイルまで日本政府に内緒で満載。中には自給自足可能なプラントも装備。海底資源を回収しながら大海原の海底を探索する調査船。そう、調査船扱い……馬鹿かな? 

 もちろん、動力とか知られてはいけない奴なので、基本的に日本などは排他的経済水域の外で待機し、他の船で買い出しなどを行っております。日本の領海に入らなければ臨検を受ける必要もありませんからね。そういう感じで献金や税金、他の企業への海上補給や救助部隊の派遣なども国際的にやっているので政府としては外に待機させるならよし。という扱いですね。

 終盤になるとメルちゃんが率いる海戦の本拠地として扱われるラストダンジョン扱いです。メルちゃんを撃退し、逃げた先にこのクジラさんが待ち構えているという恐怖。プレイヤーは魚雷の嵐から逃れながらメルが回復するまでの間にこいつを撃破、もしくは内部に侵入しないと大変です。

 最悪なルートの一つではオール・フォー・ワンさんの牙城となり、融合して超巨大金属生命体とのバトルにもなります。劇場版の一作目であった感じですね。あのノーマルヴィランさんがラスボスさんに代わり、制限なく兵器群を使ってくるのです。ヒーローが勝てるわけないだろ、いい加減にしろ! (51445敗)

 兄貴姉貴達が上げてくれた勝利動画には終末戦争よろしく、各国のヒーローや軍が共同で戦う必要があるぐらい悲惨な戦いになっていました。核ミサイルの撃ち合いから始まっていました。もちろん、ヒーローだけで倒す動画もありました。こちらはなんと100時間を超える趙大作です。

 そんな話をしている間にレッちゃん達が龍宮城の中へと入っていきました。中に入ると、さっそく案内の人がやって奥深くへ連れていってきます。もちろん、ママのメルちゃんは従業員の方々に歓迎されていきます。

 レッちゃん達が向かった先は龍宮城の奥深くであり、住居区画です。その中でもとても格式高いところですね。日本風の城主の間と言うべきところに綺麗な十二単に身を包んだメルによく似た女性がいます。

 

「ただいま帰りましたお母様」

「よく帰ってきました。空悟さんもお久しぶりですね」

「はい。本日はお招きいただきありがとうございます」

「メルが子を孕んだのであれば当然です。それに戻って来るように言っても聞かないのですから……」

「お母様。それよりも紹介したい子が……」

「でそちらの子ですね」

 

 瑞鶴ちゃんは不安そうにレッちゃんの服を握っていますが、肝心のレッちゃんは不思議そうに周りをキョロキョロと見ていますね。かぁわいい! 

 

「レッちゃん。挨拶しなさい」

「レッちゃんだよ」

「水錬が名前よ」

 

 レッちゃんの言葉に面倒になったのか、丁寧な言葉を止めてレッちゃんを抱き寄せて膝の上乗せてなでまくるママ。

 

「そうですか。私は乙姫。おばあちゃんになりますね」

「おばあちゃん?」

「はい」

「認めてくれるの?」

「ええ、認めましょう。どのような手段であれ、我が一族の血が入り、“個性”を持っているのであれば問題ありません。ましてや龍宮寺ではなく、逆俣家なので認めないはずはありません」

 

 乙姫さんからしたら、“個性”を確実に引継ぐことが出来るレッちゃんは大変使える存在です。手元に置いて庇護を与えるのに一切問題はないでしょう。

 

「我が家を継ぎたいのであれば養子としてこちらに来るか、空悟さんが婿入りすることですね」

「どっちでもいいのね」

「ええ、今のところ引継ぐ必要はありませんしね。スペアはまだ居ますから、最低限の役目を果たしたのであればお好きになさい」

「本当に?」

「まあ、こちらからお願いがないこともありません。ですが、ここには我が家系以外の部外者も居ますから、後程としましょう」

 

 乙姫さんは付いてきているネネカさん達を一瞥した後、手を叩きます。すぐに複数の人達がお膳を持ってやってきます。まあ、あちらからしたらスパイが入り込んできているので、適当なところでお帰り願うといったところでしょう。

 

「まずはお食事としましょう。もちろん、レッちゃんのお友達である瑞鶴ちゃんと護衛の方々も歓迎させていただきます」

 

 ネネカさんと乙姫さんが穏やかな表情で挨拶しながら、裏でバチバチやっているところは無視して、食事をしつつ親族の人達に挨拶をしていきます。

 

「メルに子供ができたって本当?」

「本当よ、姉様。レッちゃんとお腹の中に居るわ」

「それは目出度いわね」

「この人はおばちゃん」

「なっなっ!?」

「ええ、そうよ。レッちゃんのおばちゃんよ」

「誰がおばちゃんよ!」

 

 やってきた超巨乳のお姉さんが怒りだしますが、無視するママ。レッちゃんの口元を拭いてあげたり、甲斐甲斐しく世話をしています。

 

「おばちゃんだよね?」

「おばちゃんですね」

「えっと、関係的にはそうかと……?」

「潰す」

 

 両手に水が生まれ、それが巨大な爪を形成します。レッちゃん達は戦闘態勢を取ろうとしますが、ママは丁度いいとばかりにでてきた蟹のゴミを姉に向かって放りなげました。姉は反射的に両手で挟み込むようにすると、両手の間で水によって超圧縮されて一センチ以下になっていきます。

 

「め~る~!」

「レッちゃん、見た? ああいう使い方もできるのよ」

「お~すごい!」

「勉強になります」

「元気だな……」

 

 空悟さんは空悟さんでメルママのお父様と一緒にお酒を飲んでいきます。次第にレッちゃんと瑞鶴ちゃんを姉が追いだしますが、二人は逃げます。

 

「「やめなさい」」

 

 ここの主である乙姫さんと教育係であるネネカさんの言葉によって物理的に鎮圧されて正座させられる三人でした。メルママは我関せずと食事を終え、使用人の女性達に妊娠中の注意事項などを確認しております。大鳳ちゃんはしっかりと護衛をしていますので、お酒も飲みませんし、食事もしていません。

 

「探検だー!」

「探検ー!」

「なんで私が……」

「罰だからしっかりと案内してきなさい」

「護衛なので私もいいでしょうか?」

「いいわよ。どうせ案内するところは問題ないところだし。変なところに入ったら知らないから」

 

 罰として姉がレッちゃん達を案内することになったので、レッちゃんと瑞鶴ちゃん、大鳳ちゃん、お姉ちゃんは四人で探検ツアーに行きました。無茶苦茶広いのでレッちゃんと瑞鶴ちゃんはワクワクドキドキです。まあ、ただの施設案内なんて必要ないのでスキップです。

 

 

 

 おや、皆が寝静まったころに等速に戻りましたね。どうやらレッちゃんが誘拐されました。犯人は……おばあちゃんですね。

 

「連れてきましたよ」

『ありがとう』

 

 そこは複数の培養槽が存在し、中には裸の少女ががたゆたっている物や不気味な生物の死骸や生命活動こそしているものの眠っている物もあります。明らかに違法研究所のような感じすらする場所ですね。やばーい! 

 

 

 

 

 

 

 

 




対空砲やミサイルの搭載は政府も確認していますが、動力などについても謎です。もちろん、弾道ミサイルなんかも持っているとは知りません。未来で戦った時には持っていました。どこからか買ったのかもしれませんね。


ネネカさん:プリンセスコネクトの方をイメージ。トガチャンの親戚で“個性”は現身。対象の姿などを写し取ることができる。
大鳳ちゃん:皆さんご存知の装甲空母。こちらでは個性が火の鳥
姉:妹が姉になっただけ。圧縮能力は海流操作のちょっとした応用。
乙姫:BBではなく、大奥の方をイメージ。むしろ融合?


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。