ガンダムビルドダイバーズ スターダスト (オーマピジョン)
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キャラ設定

BDSDに出てくるキャラの設定です。

本編のネタバレが多く含みます。

本編を更新した後に新しい設定が出ると更新していきます。


敷島ナツキ/ナツキ

 

「僕は、何があろうともう逃げない!」

「ナツキ、突貫します!」

「0083、良いですよね!」(唐突な早口)

 

性別:男性

年齢:17

身長:175cm

職業:高校生

好きなもの:幼馴染、GBNで出会った人達、0083

嫌いまたは苦手なもの:過去から逃げてしまっていた自分、白いアルケー

 

見た目:黒髪で童顔。身長は平均的。ダイバールックは身体的な変化はなしで、ツナギに防弾ベストを着ている。

 

幼馴染四人で組んだフォース四季團のメンバーだったが、とある出来事で二年半の間止めてしまっていたGBNダイバー。離ればなれになってしまった幼馴染や自身のトラウマと向き合い直す為にGBNに復帰する。

性格が素直で実直、未熟さの中に優しさと強さを垣間見せる。

超が付くほど0083に出てくるGPシリーズが大好きで、ガンプラで必ずテーマに入れる程。

人の善さのせいか男女問わず好感度が高いが、自己評価の低さと鈍感なせいであまり察せれない。

 

 

冬木ノゾム/ノゾム

 

「甘ったれた根性で戦いに挑むな」

「表の顔と裏の素顔。これが俺のブラックローズ」

 

性別:男

年齢:17

身長:180cm

職業:高校生

好きなもの:幼馴染との思い出、辛いもの、??

嫌いまたは苦手なもの:甘すぎるもの、ナツキ

 

見た目:上の中ぐらいのガチのイケメン。身長は180前後。ダイバールックは身体的には変化なしで、服装は黒いロングコートに黒い長ズボン(シークレットガーデンの制服)を着ている。

 

フォース四季團の元メンバーで、現在は新進気鋭のフォースシークレットガーデンの二大エースの一人。

性格は冷静沈着で無慈悲。しかし、戦闘中には好戦的になったり、ナツキに対しては強い負の感情を剥き出しにする等、激情的な部分もある。

共にシークレットガーデンに入ったルナ(春奈)に好意を寄せているが、当の本人はナツキに好意を寄せているので、ナツキに嫉妬を向けている。

 

 

佐々木春奈/ルナ

 

「前線は私が切り開くわ。フォローよろしく!」

「共有のビルドコインは無駄使いせずに必要な時に最低限の消費にする事が重要なのよ」

「ナツキのバカ、唐変木、鈍感……」

 

性別:女性

年齢:17

身長:167cm

職業:高校生

好きなもの:お茶会、やり繰り、ナツキ

嫌いまたは苦手なもの:運動、無駄な浪費、ママ呼び、紫音/ヴィオレのセクハラ

 

見た目:ダイバールックはアッシュブロンドに黒いロングコートにミニスカート(シークレットガーデンの制服)に短めの白いマントとつけている。

どことは言わないがH。

 

フォース四季團の元メンバーで、シークレットガーデンの二大エースの一人。

真面目な性格で察しが良く、節約家。その性格に加えて圧倒的母性からママ、オカン、聖母と言われているが、年齢故に複雑な気持ちらしい。

ナツキに好意を向けていて、ナツキの鈍感さから四苦八苦していたが、現在は2年半前の出来事で後ろめたさを感じている。

幼馴染四人の中では一番ガンダム作品の知識が少ない。

 

 

秋山紫音/ヴィオレ

 

「私こそが、この世の全ての美少女を愛する者……ヴィオレだっ!」

「ルナママのおっぱい最高だわぁ……」

「百合に挟まる野郎はシねぇぇぇぇぇっ!」

 

性別:女

年齢:17

身長:169cm

職業:高校生

好きなもの:美少女、おっぱい(大小問わず)、他人の恋愛(性別問わず)

嫌いなもの:純愛カップル(性別問わず)に挟まろうとする森羅万象全て

 

見た目:ダイバールックは紫の三つ編みポニテに、縦セタの上にトレンチコートにジーパン。

どことは言わないがG。

 

ガンプラや美少女ダイバーとの自撮りでバズっているGBNで大人気のガンスタグラマー。

快活で自信過剰でうるさい。しかし、幼馴染達の事を心配しており、いち早く仲直りしてまた四人でGBNを楽しみたいと願っている。

また、超が付くほど美少女が変態レベルで大好き。あと、美少女にセクハラするのも大好き。

ガンプラは高火力を好む。更にGNドライヴをかなり気に入っており、何でもかんでもGNドライヴくっ付けてるところから『GN中毒者』等と呼ばれていたりする。しかし、その分拘っており、GNドライヴが不調を起こさないように機体は丁寧に作り込まれている。

 

 

セレン

 

「私、もっと空、飛びたい」

「ナツキ、アッシュ、皆、優しい」

「私、お姉ちゃん……」

 

性別:女

身体年齢:15

身長:151cm

種族:ELダイバー

好きなもの:空、空を飛べるガンプラ、フレンド全員

嫌いなもの:暴力

 

見た目:金髪蒼眼。身長は低め。純白のワンピースを着ている。

どことは言わないがF。

 

アッシュことヨウタに保護されたELダイバー。

感情の起伏が少なく、物静かで人見知りをしやすいが、穏やかで優しい少女。

GBNの空が大好きで、ガンプラで空を飛びたいと願っていた。

面倒を見てれているアッシュ/ヨウタと自分の為に専用のガンプラを作ってくれたナツキにかなり懐いており、アッシュ/ヨウタには父親の様に慕っており、ナツキに関しては兄のようになついている。

 

 

アッシュ

 

「お前ならまたやり直せる。俺が鍛え直してやる」

 

性別:男

年齢:32

身長:178cm

職業:サラリーマン

好きなもの:ヅダ、GPD、セレン

嫌いなもの:セレンに近づく不埒な男、 他人を下に見る奴

 

見た目:三白眼に天然パーマ。身長は少し高め。リアルでもダイバールックでもスカジャンを着ている。

 

GPDにて自身のヅダを駆って世界大会出場まで上り詰めた男。しかし、GBNに移行した後の戦闘をした際に自身のヅダが空中分解。今のヅダではGBNで生きていけないと確信してGBNでは隠居状態だった。

飄々としたグーダラだが、戦闘になるとワイルドで野性的な部分を見せる。そして、そんな性格に反して観察眼を持っており、ナツキの師匠として彼を導く。

ELダイバーのセレンを父親面して溺愛しており、親バカ発揮しつつもガンプラバトルを頑張るセレンを応援している。

また、ヅダを誰よりも愛していると豪語する程ヅダ好きである。

 

 

砂川帆立/スカロプ

 

「砂川帆立っす! 11月3日生まれの蠍座で、血液型はO型! 趣味は音楽鑑賞っす!」

「スカロプ、出るっす!」

「ただのグフだと侮るなかれ、っすよ!」

 

性別:男

年齢:16

身長:170cm

職業:高校生

好きなもの:音楽を聴くこと、綺麗なものを見ること、食べ物全般

嫌いなもの:他人の趣味を否定することから入る人、蛇

 

見た目:中性的な顔つきで、水兵の服を着ている。

 

リアルでは実家が模型店をしている少年。

物腰柔らかく、体育会系な口調が特徴的な少年。

ヴィオレのファンらしい。

 

 

エース

 

「俺こそが、スーパールーキーだ!」

「俺、ジャスティスカザミの大ファンなんだ!」

「魔王モーォォォォォド!!」

 

性別:男

年齢:不明

身長:181cm

職業:不明

好きなもの:G-Tube(特にカザミの動画)、正義のヒーロー

嫌いなもの:曲がった事、弱いものいじめ

 

見た目:ガタイが良く、髪を逆立てており、服装はキャプテン・ジオンやカザミの様なアメコミヒーローの様なスーツを着ている。

 

G-Tubeでカザミの動画を見て憧れて始めた初心者。

目立ちたがり屋でお調子者だが、カザミの戦闘スタイルを参考にしてる為、攻め方は堅実なものになっている。

また、カザミがリーダーを務めるフォースBUILD DiVERSの様な結束力のあるフォースを結成したいとも考えており、絶賛自分を売り込み中である。

 

 

ワイズ=ワイス

 

「私はワイズ。バルチャーさ」

「女だからって舐めてかかるな!」

「梟は何処でも見てるぞ!」

 

性別:女性

年齢:2?

身長:163cm

職業:???

好きなもの:ガンダムX、フクロウ、海

嫌いなもの:犬(昔に噛まれてから苦手)

 

見た目:鋭い目にボサボサとした緑髪にガロードに似た服装をしている。どことは言わないけどF。

 

大雑把で男勝りな女性。しかし、根は優しく義理堅い。それでいて、面倒見が良い女性。

GBNではバルチャー(トレジャーハンター)のような事をしており、ワイズ・ワラビー等のバルチャー御用達のガンプラを使用する。

 

 

ソーン

 

「一気にぶっ飛ぶよ~っ!」

「ブランと私は最強のコンビなんだから!」

「突撃ぃぃぃぃぃっ!」

 

性別:女性

年齢:18

身長:168cm

職業:学生

好きなもの:ブラン、運動

嫌いなもの:大人しくする事

 

見た目:濃いめの青い短髪。白いシャツの上に青いジャケットにミニスカートを着ている。どことは言わないがF。

 

ブランと共にコンビを組んで活動している少女。

活発で明るい性格で、運動が大好きだが、ガンプラ製作技術はそれに反して高いものとなっている。

ブランとは名コンビと豪語する位には息ピッタリ。実はブランとはそれ以上の関係なのでは?と噂されている。

ハルートジェミニでは機体制御と近接格闘を、分離形態ではGNアタッカーを担当する。

 

 

ブラン

 

「ブランよ、よろしくね」

「ソーン、落ち着いて、ね?」

「私が援護するわ!」

 

性別:女性

年齢:18

身長:167cm

職業:学生

好きなもの:読書、ソーン

嫌いなもの:激しい運動

 

見た目:白髪を短めのポニーテールにしており、青いシャツに白いコートとロングスカートを着ている。どことは言わないけどE。

 

ソーンとコンビを組んで活動している少女。

大人らしいお淑やかな性格。器用で、ガンプラ製作技術もソーンよりも細かい作業を得意としている。

ソーンが自身とは名コンビであると豪語している事は満更ではない様子で、 実はブランとはそれ以上の関係なのでは?と噂されている。

ハルートジェミニでは火器管制と射撃を、分離形態では下半身のGNナッターを担当する。

 

 

エレーナ

 

「ルナ様、紅茶です」

「私はシークレットガーデンの従者です」

「ルナ様、大丈夫ですか?」

 

性別:女

年齢:16

身長:159cm

職業:不明

好きなもの:不明

嫌いなもの:不明

 

見た目:アイスブルーの髪をポニテにしている。服はメイド服。

どことは言わないけどG。

 

シークレットガーデンの一員。

落ち着いた

メイドのロールをしており、ルナの手伝いや、ルナが離れていると散らかりやすいフォースネストの片付けをしている。

シークレットガーデンの中で最もリアルについて語っておらず、シークレットガーデンに入る前の経歴も秘密が多い。

 

 

淀橋しえり/シェリー

 

「シェリーじゃ。一応、今はフォース『シークレット・ガーデン』に所属しておる」

「わし、美人じゃろ? え? 美少女? なんじゃとぉ!?」

「スカロプならわしが育てたんじゃぞ。成長したあやつと戦うのも楽しみじゃな」

 

性別:女

年齢:19

身長:150

職業:大学生

好きなもの:飴玉、GBNで使う煙管

嫌いなもの:固茹で卵

 

見た目:黒髪に和服の上からシークレットガーデン制服のロングコートを着ている。

 

砂川帆立/スカロプの師匠。

浮世離れした様な雰囲気で、~じゃなと語尾を付けている。

フォースネストで度々煙管を咥えては、ルナに注意されている。歳の割に伸びない身長に危機感を覚えている。

 

 

レム

 

「動くの、ダル~い」

「リーダーお母さんみたい~」

「ねむねむ……」

 

性別:女

年齢:15

身長:148cm

職業:中学生

好きなもの:眠ること

嫌いなもの:激しい運動

 

見た目:少し長めの金髪。シークレットガーデンの制服を着ているが、ロングコートは袖余りで裾を引きずっている。

どことは言わないけどB。

 

シークレットガーデンの一員。

めんどくさがりで、フォースネストで良く寝ている。フォースネストを散らかす原因その1。

 

 

ローズ

 

「BL無しじゃ私は生きていられない……」

「フフフ、良いもの見せてもらったわ……」

「キョウヤ×リク……!それがあったわ……!」

 

性別:女

年齢:19

身長:161

職業:大学生

好きなもの:BL、二次創作小説

嫌いなもの:陽キャ

 

見た目:眼鏡をかけてシークレットガーデンの制服を着たポケモンのオカルトマニア。

どことは言わないけどC。

 

シークレットガーデンの一員。

BLをこよなく愛しており、GBN内で人気のBLカップリングで小説を書くことが多い。GBN内の大規模なイベントでその小説を無断で出そうとしてルナに怒られるまでがテンプレ。



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ガンプラ設定

ガンプラの設定です。投稿ミスしてたので再投稿しました。

ネタバレ注意!

随時更新していきます。


スターダストガンダム

 

ナツキがガンダム試作1号機ゼフィランサスを元に製作したガンプラ。

ゼフィランサス最大の特徴である汎用性を最大限まで引き伸ばすための改造を施されており、各部にジョイントが施されている。これは、ナツキが製作した様々な状況に合わせて装着が出来る装備『パッケージ』を装着するためのものである。

また、コアファイターのドッキング方式がホリゾンタル・イン・ザ・ボディ方式からバーティカル・イン・ザ・ボディ方式に変更されている。

 

・スタンダード

スターダストがパッケージ未使用時の状態。この状態でも戦闘はそれなりに可能で、オールラウンドである。

この状態ではチョバムアーマーと言う外部装甲を付けられるが、初めて使ってあまり役に立たないと分かったので使われなくなった。

 

装備:ビームライフル、ビームサーベル、バルカン、シールド

 

・アサルトパッケージ

対ナノラミネートアーマ用パッケージ。ジム・ストライカーやジーラインアサルトアーマーを参考にしており、チョバムアーマーをリサイクルして作られたウェアラブル・アーマー*1にしている。

しかし、物理に装備を片寄らせているのでPS装甲には滅法弱い。

 

武装:ショットガン、ショートバレルキャノン、ヒートランス、シールド(陸戦型ガンダムの物と同型)、バルカン

 

・スナイパーパッケージ

狙撃に特化したパッケージ。頭部に付けたゴーグルは暗視効果やサーモグラフィー効果がある。更に、両肩のシールドは推進機によってシールドビットとして扱える。

 

武装:バルカン、ビームスナイパーライフル、レドーム、スモークミサイル、シールドビット

 

・キャノンパッケージ

ビーム射撃・砲撃による支援攻撃に特化したパッケージ。頭部のセンサーによって精密性を上げることで後方支援としての性能を上げている。更に、ヴェズバーを装備している為、中距離での戦闘にも対応している。

しかし、近距離に弱く、高い火力の武装が多いので、エネルギー効率は比較的悪い方である。

 

武装:バルカン、シグマシスライフル、ビームガトリング砲、ビームキャノン、ヴェスバー×2

 

・ステルスパッケージ

隠密行動や奇襲に特化したパッケージ。頭部はアサルトパッケージで使えなかったチョバムアーマーを流用した高性能センサー付きのアーマーになっている。バックパックにはガンダムデスサイズを元にしたハイパージャマーが装備されており、それによってレーダーから気配を隠せる程度にステルス性を持っている。

それ以外には特にボディには装備は追加されていない。代わりにABCマントを身に纏っており、その裏に様々な武器が装備されている。

また、接近戦の火力向上の為にジム・ストライカーのツイン・ビーム・スピアを装備している。

 

武装:バルカンポットシステム、消音器付きサブマシンガン、ヒートダガー、ビームダガー、ツイン・ビーム・スピア

 

 

ブラックローズ

 

ノゾムがガーベラ・テトラを元に作ったガンプラ。全身黒かダークグレーになっており、背部はガンダム試作4号機ガーベラのフレキシブルスラスターに似た形になっているが、プロペラントタンクの所がテールスタビライザーに変更されている。

機動力が高く、場所を問わず高速移動で敵を翻弄しつつ、自身は敵を的確に倒すヒット&アウェイが主な戦法になっている。

尚、まだ何か機能があるらしいが、それを見たものは少ないと言う。

 

武装:ビームマシンガンorビーム・ショット・ライフル、腕部ビームガン兼ビームトンファー

特殊能力:???

 

 

ガンダムエリゴス

 

エースがぺイルライダーのパーツをガンダムフレームとミキシングビルドした機体。頭部はぺイルライダーキャバルリーに近い見た目をしている。

基本的に至近距離をメインにした機体で、シールドによる防御からのカウンターを得意としている。

また、ぺイルライダーに搭載されたシステム『HADES』と阿頼耶識システムを融合させた『魔王モード』が搭載されており、発動すると、機体性能が大幅に上昇する。

 

武装:ソードメイス、エリゴスシールド、レールガン

 

 

グフシェルカスタム

 

スカロプがグフイグナイテッドとグフカスタムに複数の要素を追加した上でミキシングビルドをしたガンプラ。

グフイグナイテッドとミキシングしている事で宇宙でも活動できるようになっている。

両肩はザクウォーリアの肩になっており、防御力が高い。

 

武装:ガトリングシールド、ガトリングガン、ヒートサーベル、ヒートロッド、ビームソードアックス

 

 

アブルホールスカイウォーカー

 

ナツキがスターダストの支援機兼セレンの専用機として作られたガンプラ。コンテナを三つ懸架しており、スターダスト関連を入れて持ち運べる。

GNドライヴ搭載機なのでトランザムは可能なのだが、あまり使われない。

 

武装:ビームバルカン

 

 

サンズ・オブ・ヅダ

 

アッシュがGPD時代に使用していたヅダのパーツを使って作り出した新たなガンプラ。フレームを強固なものにして速度オーバーによる自壊を防いでおり、運動機能はGPD時代のヅダ以上のスペックを発揮する。

 

武装:ザクマシンガン×2、ザクバズーカ、対艦ライフル、シュツルムファウスト×4、ヒートホーク×2

 

 

ラファエルガンダムヴァイオレット

 

ヴィオレがほぼスクラッチで作りあげたSDガンプラ。SDの時の後頭部にはGNドライヴが、前頭部にはGNフィールド発生装置が搭載されている。

更に、バックパックにはHGサイズの支援機『セラヴァイオレット』がおり、バックパック形態、MS形態の二つに加え、ラファエルガンダムヴァイオレットと合体してリアルモードになる。

リアルモードではSDのフェイスがセラフィムガンダムの様な粒子制御の補助をしており、GNフィールドの強度やビームの威力が上昇する。

武器は一部セラヴィーガンダムの武器に変更されている。

 

武装:GNバズーカV、GNキャノン、GNクロー、GNビックキャノン、GNビームサーベル、GNフィールド

 

 

ワイズ・ワラビー(ver.BDSD)

 

ワイズがドートレスを元にほぼスクラッチで製作した機体。武装は砲撃戦が得意な仕様になっているが、地上ではホバリングを行える為、機動力は高い。

しかし、完全に地上戦向けなので、ワイズは空間戦を行える様に考えているらしい。

 

武装:ビームキャノン、ハイパーバズーカ、小型シールド、ビームサーベル

 

 

シナンジュ・ヴィエルジュ

 

ルナがヴァイスシナンジュを元にカスタムビルドした機体。ヴァイスシナンジュと変化が少なそうに見えるが、バックパックにシナンジュ・スタインのフレキシブル・スラスターが追加されている他、手持ち武装にビームライフルとバズーカが追加されている。

最大の武器、モーントシュヴェールトは本家同様、分割形態のフォルモーントフォーム、変形形態のハルプムントフォームになる。

 

武装:モーントシュヴェールト、ビームライフル、バズーカ、ビームサーベル

 

ガンダムハルートジェミニ

 

ソーンとブランが以前ガンダムハルートを元に改造していたガンダムハルートスワローをカスタムビルドした機体。

飛行形態『GNスワロー』になる他、バウの様に上下半身が分離して上半身は『GNアタッカー』に、下半身は『GNナッター』になる。尚、上下半身にはそれぞれGNドライヴが内蔵されており、トランザムも可能。

GNアタッカーはGNソードライフルをウイングにしたヒット&アウェイを得意としており、機首部分にはアリオスガンダムアスカロンの様にGNソードが装備されている。

GNナッターは左右のコンテナユニットによる後方支援を得意としている。

 

武装:GNソードライフル、GNキャノン、GNミサイル、GNソード、GNビームサーベル

*1
被弾時の衝撃を内部炸薬で外部に拡散する装甲。一度きりでデッドウェイトになるのでパージが可能



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Scallop's origin
#1


スカロプこと帆立くん及び巻季さんのキャラ設定をしてくださった恋文さんがまさかの番外編を書いてくれました!
投稿の許可貰ったので、折角と思いましてここに置かせてもらいます。

それでは、どうぞ〜


ガンプラバトル。

かつては、自分のガンプラを実際に動かして戦う『GPデュエル』が主流だった。

 

しかし、今は違う。

GBN────『ガンプラバトル・ネクサスオンライン』の登場によって、その歴史は一変した。

 

ガンプラに仮想空間内で搭乗し、操るバトルシステムは数多のユーザーに受け入れられた一方、それがどうにも受け入れられず、離れるユーザーも多かった。

 

これから語るのは、GBNに出会ったある少年が仮想の宇宙に飛び立つまでの物語────

 

***

 

第1章

Scallop's origin #1

 

***

 

「姉さん、GBNの筐体置かないっすか?」

「まだGPDのユーザーもちょこちょこ来てるし、客足が途絶えたら置くよ。それに、今置いたら帆立が入り浸っちゃうじゃん」

 

とある商店街に店を構える『砂川模型店』

この店の店主である父の代わりに店番をしている、砂川巻季がGPDの筐体を指差しながら言った。

 

「まあ、GBNが受け入れられないって人もいるっすからねぇ」

「帆立なら少しは分かるでしょ、その気持ち。だって砂川模型店(うち)のGPDショップ大会の上位だもんね」

「……そうっすね。GPDの楽しさももちろん分かるっす」

「でも帆立はGBNを受け入れた。ちょっと遠いけどプロショップに行って、今日から始めようとするくらいだもんね」

「バンドメンバーにもこの機会に僕と一緒に始めないか、って勧めてるっすけどねぇ……やっぱりガンダムシリーズを知らないとあってちょっと敷居が高いみたいっす」

「まあ、そうだよね……あっ、そろそろ行かないとあそこのプロショップが開店しちゃうよ」

「あっ、そうっすね! 行ってきます!」

「遅くならないようにね〜」

 

砂川模型店の店主の息子、砂川帆立。

彼は自転車に乗り、風を切って最寄りのプロショップへ向かう。

 

自分のPCが無く、実家の店に筐体が無い以上、ショップに設置された筐体でログインする方が手っ取り早いのだ。

 

「はぁ……はぁ……着いた……」

「おっ、帆立くんか」

「淀橋さん!」

「そういやGBN始めるんだろ? 今日は君が一番乗りだ」

「はいっす! 行ってくるっすね!」

「楽しんでこいよ。これがダイバーギアな」

 

特徴的な六角形の端末(ダイバーギア)を受け取り、筐体の椅子に座る。

ダイバーギアをセットすると、電子音声によるアナウンスが開始された。

 

『ID data confirmed. Please scan your Gunpla.』

 

ダイバーギアの上には帆立がGPD時代に使っていた機体『グフイグナイテッド』が置かれ、スキャンされる。

 

備え付けのゴーグルを下ろし、操縦桿型のグリップを握る。

 

『Login data confirmed. Are you ready?』

 

アナウンスを瞑目して聞き、ゆっくりと目を開ける。

 

『Dive start now!』

 

こうして、砂川帆立のGBNは幕を開けた。

 

***

 

「ここが、GBN……」

 

全面ガラス張りの塔の中に帆立──ダイバーネーム『スカロプ』は立っていた。

 

ロビーは賑わっていて、この世界にログインしプレイしているダイバー達が多くいるのが伺える。

 

「何かないっすかね……初心者向けのとか……」

 

NPDのいるミッションカウンターへ行き、スカロプは初心者向けのミッションを探す。

 

「いきなり初心者向けのミッションに挑戦するつもりかの?」

「うわあっ!? 何っすかいきなり!?」

「にゃはは、反応が新鮮でいいのう。わしも嬉しいぞ」

「……なんでそんな事を聞いたっすか?」

「随分とプレイングに自信があるように見えたのでな。つい声をかけてしもうた」

 

黒の和服を身に纏う老獪な言葉遣いの少女は、朱羅宇(しゅらう)の長煙管を咥えながらスカロプに話しかける。

 

「なら、何かお勧めのミッションでも?」

「見たところ、今日がGBN初ログインじゃろ? なら、チュートリアルミッションを勧めるわい」

 

少女は口から離した煙管で、そのままスカロプの初心者向けミッションをチュートリアルミッションに変更し受注した。

 

「あっ、ちょっと」

「何事も慣れることからじゃぞ。そのミッションのクリア条件は3機のリーオーの撃破じゃ。わしもギャラリーモードで見ておるからの」

「……分かったっす」

 

渋々といった表情で格納庫に移動し、スカロプは自分の作り上げたグフを見上げる。

 

「おぉ……!」

「グフイグナイテッドか。わしもこの世界で様々な機体を見てきたが、GBN初心者がここまで基本に忠実に練り上げたガンプラは今のところ、両手の指で数え切れる程しか見ておらん。あやつ風に言うなら……『愛を感じる』と言ったところか」

 

スカロプはその台詞を聞き首を傾げるが、少女の知り合いだろうと深く詮索はしなかった。

 

「次はカタパルトでの出撃じゃ。カッコよく決めるのじゃぞ」

「な、なるほど……スカロプ、グフイグナイテッド! 出るっすよ!」

 

少女の注文通り、スカロプはお約束の出撃台詞を口に出した。

 

***

 

『ミッションの指定エリアには着いたかの?』

「そうっすね。よくある山みたいなところっす」

『その辺にリーオーが湧くはずじゃ。お主の技術、見せてもらうぞい』

 

シェリーからの通信が途絶えると同時に、木々の間から『リーオーNPD』が出現する。

 

「あれが……」

『NPDとはいえ、侮っていては痛い目を見るぞ。落ち着いて落としていくのじゃ』

「了解っす!」

 

後衛の2機のリーオーが射撃で援護をする間に、先頭に立ったリーオーがビームサーベルを展開し吶喊する。

スカロプは防御しながらテンペスト・ビームソードを引き抜き、リーオーのビームサーベルを受け止める。

 

「っく……! 防いでるだけじゃ、始まらないっすよねぇ!」

 

スカロプのグフは鍔迫り合いをしたまま左前腕部のスレイヤーウィップで、後衛のリーオーを1機捉える。

 

「っせー……のっ!」

 

そのままもう1機と衝突させ、一時的に後衛の行動を阻害すると、前衛のビームサーベルを弾く。

 

「こいつを喰らえっ!」

 

右腕のドラウプニルのゼロ距離射撃で前衛のリーオーを撃墜する。

体勢を立て直したリーオー達の射撃を対ビームシールドで受け流しながら、衝角で打突する。

 

「こいつで……終わりっ、すよ!」

 

再び構えたテンペストで2機をまとめて両断し、爆煙を背に立つ。

 

『Battle ended!』

 

「っ……」

『どうじゃった? 自分でそのグフを動かした感想は』

「……GPDとは感覚が違うっすね。でも、思い通りに動いてくれて助かったっす」

『ははあ、やはりGPDの経験者じゃったか』

「はいっす……ずっと機体に助けられたっすから、次からはもっと動けるようになるっすよ!」

 

画面越しに少女が笑う。

まるで、いいカモを見つけた詐欺師のような笑みだった。

 

『思い立ったが吉日じゃろう? お主、わしに弟子入りせんか?』

「弟子入りっすか?」

『そうとも。わしもGPDからGBNに来たからの、感覚の違いもよく分かっておる……じゃからわしの弟子になってもっと強くなってみんか?』

「……強く……なってみたいっす!」

『わしはシェリーじゃ。これからよろしく頼むぞい、弟子よ』

 

この師に弟子入りしたことを少し後悔する出来事が起ころうとは、この時の帆立はまだ知る由もない。




恋文さんによる帆立くんの過去編第1話でした。
三部作らしくあの2話あるそうなので、震えて待っててね★


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第1部 “STAR”T LINE
第1話 星屑の帰還


初めましての方は初めまして、オーマピジョンと申します。
初めて挑むガンダム作品に緊張しながら投稿しました。
良ければ是非見てください!

はじまりはじまり〜


これは、少し昔の、忘れたい記憶ーー

 

広大な雪原のど真ん中、純白を汚すように三機のMSが倒れていた。

純白のサザビー、ガンダムヴァーチェ、デルタプラスである。

 

「皆、どうして……!」

 

膝を着き、純白のサザビーを抱き上げるガンダム試作1号機ゼフィランサスは仲間を倒した張本人である白をメインに赤い線が入ったアルケーガンダムを見る。

 

「良くも、よくも仲間を!」

 

立ち上がったゼフィランサスは右手でビームサーベルを引き抜くとスラスターを吹かして接近しようとするが、ビット兵器『ファング』によって右腕と左足を切断された。

 

「うあぁぁぁっ!?」

 

頭から地面を滑るゼフィランサス。泥が混じった雪が、顔にへばりついた。

 

「う、ぐっ……!」

 

いつでも倒せるはずなのに、わざと生かされている事実に怒りと悔しさが止まらない。

仲間を守れず、何も出来ずに倒れている自分に、嫌気が差してきた。

 

『どうした?反撃しないのか?』

 

何か出来る状態ではないと分かった上で、白いアルケーが問いかける。ゼフィランサスは左腕で起き上がるのが精一杯だった。

 

『もう目的は達成してある。皆殺しにするのも良いが、屈辱的な思いをさせたまま見捨てるのも悪くはないな。あはははははっ!』

「っ、待て!このっ!」

 

アルケーは踵を返すと、何処かへと飛んでいく。ゼフィランサスは悪あがきと言わんばかりに頭部のバルカン砲を発砲するが、アルケーに当たってもびくともしない。

 

「何でっ、何で……!」

 

少年は無理だと分かってもバルカン砲を撃ち続ける。しかし、その悪足掻きは弾切れと言う結末で終わってしまった。

 

「ノゾム、ヴィオレ、ルナ……あぁぁぁぁぁ……っっっ!!」

 

操縦席の中で膝を着き、涙を流す少年。ゼフィランサスの頭部に溶けた氷水が流れる。それは宛ら、ゼフィランサスも泣いている様に見えた。

 

***

 

第一話

星屑の帰還

 

***

 

ピピピピ!と言う電子音と共に敷島ナツキは意識を無理矢理叩き起こされる。

 

「っは……あぁ、夢か……」

 

夢の中で昔を思い出すことなんてあるんだな。と思いつつ、ナツキはデジタル式の目覚まし時計を止める。現在8時より少し過ぎた時間帯だ。

 

「おはようございます……」

「あら、おはよう、ナツキくん」

「土曜日なのに早起きだねぇ」

「あー、今日はバイトです」

 

ナツキは現在、高校に進学するに当たって、母方の叔父叔母の元で居候をしている。今日は学校ではなく午前からバイトなのだが。

 

「朝御飯、食べるわよね?」

「はい、いただきます」

「僕ももう仕事に行かないとな」

 

叔父と入れ替わるようにナツキがテーブルに座る。

これがナツキが高校生になってからの日常……しかし、胸の内ではどこか空白を感じていた。

 

***

 

砂川模型店。それがナツキがバイトをしている店の名前である。

様々な模型を取り扱ってはいるが、メインとして売られているのはガンダムプラモデルーー通称ガンプラである。

 

「おはようございます、巻季さん」

「おはよう、ナツキくん」

 

砂川模型店の店員をしている女性ーー『砂川巻季』がやって来たナツキに柔和な笑みを浮かべる。

ナツキはスタッフルームに入ってタイムカードを切ると、店員用のエプロンを身に付け、名札を付けて仕事に入った。

 

「よし……あれ、巻季さんこれって……」

「あ、気づいた?実はね……GBNの筐体、ウチでも取り扱うようにしたの!」

 

カーテンによって隠されていた部屋が解放されており、そこにはGBNにログインするための筐体が置かれていた。

巻季曰く、GPD*1の筐体が置かれていたが時代の流れに連れて使わなくなったのを撤去して代わりに置いたらしい。

 

「やっぱり、お客さんを集めるならGBNが最適化なって思ってね。弟もやっているから、ちょうど良いかなって!」

「GBNの筐体と言えばガンダムベースか、プロショップにしか有りませんからね」

 

GBNーーガンプラバトル・ネクサス・オンライン。

作ったガンプラをスキャンさせて、実際に乗り、様々なミッションやバトルを行えるVRMMOゲームである。

ナツキも勿論GBNの事は知っている。と言うより、ナツキはG()B()N()()()()()だった。

 

「ナツキくんはやってないの?」

「僕ですか?……その、一時期幼馴染とやってました」

「幼馴染と、良いわね!青春みたいで」

「でも……僕はやめてしまって」

 

ナツキの脳裏にはかつての思い出が浮かび上がる。

かつて共にGBNを駆け抜けた三人の幼馴染。そしてそれを引き裂いた、純白の悪魔ーー

 

「どうしてやめてしまったの?」

「……逃げてしまったんです。自分の過ちから」

 

仲間を守れず、無様にも生き残ってしまった自分が許せなかった。そして、そんな許せない、弱い自分から逃げてしまった。

 

「結局、アカウントも消して、幼馴染とも離ればなれになって……2年半くらい経ってます」

「そうだったのね……」

 

巻季はナツキの手が強く握りしめられている事に気づく。彼の心情を少なからず察した巻季はナツキの手を握った。

 

「え、あ、巻季さん?」

「ナツキくん、私は何もしてやれないけど……ナツキくんなら何か出来るんじゃないの?」

 

巻季に聞かれたナツキはピクリと反応する。

自分自身に出来ること……それは、ナツキは少なからず何なのか理解できていた。

 

「またGBNに戻ってみたら?幼馴染だって今もやってるかもしれない。もしかしたら、また昔のように出来るかもしれないわよ?」

「巻季さん……僕、は……」

 

何度もGBNに戻ろうとは考えていた。しかし、その度にあの弱さ故の過ちを思い出して躊躇ってしまっていた。

しかし、今の自分には背中を押してくれる人がいる。その後押しを無下にすることは、逃げることより辛かった。

 

「ありがとうございます。僕、行きます!」

「ナツキくん……でも、今はお仕事頑張ろうね」

「あっ……は、はい」

 

ナツキは今絶賛バイト中だった事を思い出して、照れながら仕事に戻った。

 

***

 

バイトが終わったナツキは即座に家に帰った。目的は一つ。自分だけのガンプラを作るためだ。

 

「メインは、やっぱり……!」

 

自室に戻ったナツキは鍵を閉めていた引き出しの鍵を開けて、中に入っていたタッパーを開く。そこにはHGUCガンダム試作一号機ゼフィランサスがあった。

ナツキのガンダム作品の中で一番大好きなのが0083STARUSTMEMORYなのである。

 

「これも二年ぶり、か」

 

このゼフィランサスはナツキが2年半前に使っていた機体そのもので、かつて思い出を封じ込める意味合いも掛けて厳重に保管してあった。

 

「二年間も暗い所で眠らせちゃってごめん。もし君に意思があるなら、許してくれないかな。そして、君ともう一度空に飛びたい」

 

ゼフィランサスを撫でる。厳重に保管してたおかげか、二年近く手付かずにも関わらず、誇りなどは一つも付いてなかった。

 

「君を作り直す。僕の今持てる技術、全てで!」

 

ナツキはそう言うと、ゼフィランサスを机に立てて、椅子に座る。そして、ゼフィランサスを新生の為の作業を始める。

 

「ゼフィランサスはその汎用性の高さが特徴だし、それを活かしたいな……となると似た特徴を持つ機体を参考にしてその汎用性を広げていくとして……」

 

ナツキはブツブツと呟きながら設計用のコピー紙に書き込み始める。

 

「まず基礎を強化させるのは前提として……バックパックの換装かな?でもエールストライクとかフォースインパルスみたいな羽はちょっと違うしなぁ……」

 

思考に思考を重ねてあれじゃないこれじゃないと模索し続ける。描いて、丸めて、ゴミ箱にほり投げてを繰り返していると、いつの間にかゴミ箱が一杯になっていた。

 

「……ゴミ箱、もう少し大きいのにしよう」

 

デッサン以外にも作業はあるのを踏まえと、今よりも大きなゴミ箱は必要と判断したナツキは後で某密林通販サイトで買おうと決心した。

 

「……名前は何にしようかなぁ」

 

作業の途中にふと名前について思い浮かぶ。作品には名前が必須である。それはガンプラであろうと変わりはない。

 

「……君の新しい名前は」

 

ナツキは紙の端っこに英語で名前を書き込んでいく。

 

「スターダスト……これから生まれ変わる、君の名前だ!」

 

それは、ナツキの大好きな作品から取った名前だった。新しい名前を与えれた高揚感によってナツキのモチベーションが増幅されていく。

 

「よーし、目指せ、GBN復帰!」

 

それから砂川模型店や某密林にて道具や製作に必要なキットを大人買いしたナツキは製作を始めた。

巻季に製作の進捗を報告しつつ、スターダストは少しずつ形になっていく。

 

「っは……わぁ……!」

 

一週間後、ついにそれは完成した。

最後にパーツを合わせて完成したスターダストにナツキは達成感と感動を覚える。

 

「待っててね、スターダスト。明日、必ず君を飛び立たせるから!」

 

明日は日曜日。存分に楽しむ為にも、ナツキは寝る支度を始めた。

 

***

 

翌日、砂川模型店に来たナツキは巻季に完成したスターダストをお披露目していた。

 

「へぇ~、これがナツキくんのガンプラ?」

「はい、スターダストガンダムです!」

 

ナツキの自信と誇らしさに満ちた顔でスターダストガンダムを見せるナツキ。対して、巻季は少し首を傾げていた。

 

「何と言うか、顔はガンダムとジムを足して2で割った顔みたいね。それに、凄いゴテゴテしてる」

 

巻季の指摘の通り、スターダストは顔がガンダムヘッド特有のツインアイではなく、全身も灰色の装甲になっている。

 

「あぁ、試験的に作ったチョバムアーマーです。漫画版0083では、最初はこれに似た装甲が付けられていたんです」

 

漫画0083REBELLIONでは試作2号機と共に行動を前提としていた為、核に耐える為のチョバムアーマーが身に付けられていた。

ナツキはそれを()()()()()を封じるが、防御の向上の為に独自に製作したのだ。

 

「へぇー、じゃあ、中身はれっきとしたガンダムなんだ」

「はい。それじゃあ、行ってきます!」

「うん、頑張ってね!」

 

ナツキは新しく作り直したアカウントを登録したダイバーギアを片手に筐体へと向かう。

筐体にダイバーギアをセットして、その上にスターダストガンダムを置く。ダイブ用のヘッドギアを被って目元までバイザーを下ろした。

 

「行こう、もう一度、あの世界にーーー!」

 

覚悟と共に、ナツキはGBNへとログインした。

*1
ガンプラデュエル。実際にガンプラを動かして戦うゲームである。




第1話でした。
本格的なGBNライフはここからになります。

えーこの作品を書くにおいて様々な人に手伝ってもらいました。
ガンプラの監修にはミストラル0さんにお力を借りさせて頂きました。おかげで無茶苦茶良いガンプラが幾つも出来上がりました。
キャラの方も1部キャラがミストラル0さん、恋文さん、石動大空さんに作っていただきました。すんごい良いキャラ沢山過ぎて有難いです。これからバンバン使っていきます。
改めて、この場を持って感謝させていただきます。

では、次回予告へ……

***

次回予告

GBNへと戻ってきたナツキ。
彼を待ち受けるのは地獄と悪意ある者達だった。
そして、ナツキの前にとある人物が現れる!

第2話 再会の黒薔薇
お楽しみに


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第2話 再開の黒薔薇

投稿はまだまだ続くよ何処までも……
てな訳で第2話です。
果たして久々のGBNでナツキは何を見るのか……


浮遊感の後に来る重量感は宛らエレベーターの様な心地だった。ゲートが開かれてエントランスへとやって来たナツキは久々のGBNに胸踊らせる。

ナツキのダイバースキンはブラウンカラーのツナギに黒いベストを上に着ていた。

 

「さて、皆を探してみようかな……」

 

ナツキは早速幼馴染達を探すためにエントランスに向かおうとする。すると、ナツキの背後から肩に手を置いた。

 

「わぁっ!?」

「あーゴメンゴメン。君、初心者だよね?」

「え、えっと、新しくアカウントを作って復帰したんです」

 

ヘラヘラと笑いながら謝罪をする男性ダイバー。ナツキはその雰囲気に気圧されかけてしまう。

 

「丁度良かった!俺と一緒にミッションを受けて欲しいんだ」

「一緒に、ですか?」

「大丈夫だ。初心者向けミッションだからね」

 

ナツキは少し思案する。怪しい雰囲気の男であるが、困っている相手を簡単に見捨てようとは思えない。

 

「……分かりました!手伝います!」

「本当か!いやぁ、助かった!今から受注してくる!」

 

男は嬉しそうに笑いながらミッションを受注をしに受付嬢のNPDの元に向かう。

しかし、その顔に浮かべていた笑みは怪しげな笑みに変わる。

 

「完全な初心者じゃねぇが……釣れたのなら殺るしかないよなぁ?」

 

男が呟きながらそのミッションを選択する。そのミッションの概要欄のフィールドにはこう書かれていた。

ハードコアディメンション・ヴァルガーーと。

 

***

 

第2話

再開の黒薔薇

 

***

 

何も知らないナツキはロボットハンガーに来ていた。そこには12cmのプラモデルから18m近くまで巨大化したスターダストが立てられていた。

 

「わぁ、生のMSサイズのスターダスト……!」

「興奮するのも良いけど、早くミッションに行こう……チンタラすんなよ、まったく

「あ、はい!今行きます!」

 

相手を待たせる訳にはいかない。ナツキは慌ててスターダストのコックピット内に転送する。

男も白いザクⅡ……連邦軍カラーに乗ってハンガーに向かう。

 

「久々の出撃……緊張するなぁ」

 

エレベーターによって搬送されていくザクとスターダスト。ザクは先にカタパルトに固定された。

 

「それじゃあ、お先に」

「はい!いってらっしゃい、です!」

 

ザクがカタパルトレーンから発進していく。

スターダストもその後にエレベーターでカタパルトレーンに固定される。

 

「ふぅ……ナツキ、スターダスト、行きます!」

 

カタパルトレーンを高速で射出され、出口を目指して前進していく。出口と同時にスターダストは跳躍、スラスターでそのまま空へと飛び立っていく。

 

「わぁぁぁ……この感覚、久しぶりだ!」

 

ナツキはスターダストでゲートを潜る。

ゲートの先に広がった光景はーーー

 

「え゛っ」

 

ごんぶとのビームだった。

 

「わぁぁぁぁぁっ!?」

 

慌てて回避をすると、辺りを見回す。

そこはまさに地獄。ビーム、弾丸、爆発……どこを見ても流れ弾まみれの戦場だった。

 

「な、何、これ……!?」

 

ナツキは知らないが、このハードコアディメンション・ヴァルガは全フィールドフリーバトル可能なアナーキーディメンションなのである。

困惑している余裕なぞなく、空中にいればすぐに打ち落とされると判断したナツキはスターダストを地上まで降下させる。

 

「あ、あれ、さっきの人は……」

『ここだよぉ!』

 

背後から白いザクⅡがヒートホークを振りかぶりながら襲いかかってくる。

スターダストはそれを避けるとライフルをザクⅡへ向けたが、引き金は引くことはなかった。

 

「何でこんなことを!?ミッションは!?」

『あぁ!?分かんないなら教えてやるよ!お前は、騙されたんだってなぁ!』

 

ナツキは空かさずライフルからビームを放つ。しかし、ザクⅡはそれを簡単に避けてしまい、お返しと言わんばかりにザクマシンガンを発砲する。

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

ビームライフルを構えていない片腕で防御する。ザクマシンガンの弾丸は全てチョバムアーマーが全て防いだ。

 

「かてぇな、コイツ……」

『俺達に任せな』

『初心者一機、すぐに潰してやるよ!』

 

ザクⅡのダイバーの元に通信が入る。その直後、何処からともなく飛んできた砲弾がスターダストの肩に直撃した。

 

「っ、が!?」

 

スターダストはふらついてしまう。肩のチョバムアーマーは大きく凹んでおり、マトモに受ければ大ダメージは避けられないのが分かる。

 

「今のは……!」

『おらおらぁ!』

 

体勢を立て直すスターダストにヒートサーベルを構えたドムが迫る。

スターダストはバックパックのビームサーベルを引き抜いて受け止める。

 

「あの人の、味方……!?」

『おら、背中ががら空きだぞぉ!』

 

鍔迫り合いをするスターダストにザクⅡがヒートホークを振りかぶってくる。スターダストはドムとの鍔迫り合いを受け流してその場を離脱する。

 

「さっきのは砲撃……!」

 

スターダストのカメラを動かして辺りを見回すと、迷彩色のザメルがいた。

ザク、ドム、ザメル……現在ナツキは3VS1を強いられていた。

 

『そうした、もう抵抗もおしまいかぁ?』

「ぐっ……!」

 

ナツキはぐっと操縦レバーを握る。諦めるしかないのかと絶望しかけていた時、あの時の記憶を思い出す。

仲間を倒され、何も出来ずに地面を這いつくばって諦めてしまった自分ーーあのまま変われなくて良いのかと、自分に問いかける。

 

『さっさと堕ちて、ポイント寄越せぇ!』

 

ドムがバズーカを構えて発射させる。

その時、ナツキは吠えた。

 

「終われるか……こんな所で、終われるかぁ!」

 

その咆哮と共にスターダストのカメラアイが発光する。その直後、バズーカが着弾、爆発した。

ドムのダイバーが撃墜を確信したと思った、その時だった。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!」

 

爆煙の中から()()のスターダストが抜け出してくる。その下半身とバックパックのチョバムアーマーは外されており、隠されていたスラスターを吹いて移動を続ける。

 

『コイツぅ!』

『しぶとすぎか、コイツ!』

 

ザクがザクマシンガンを、ドムがバズーカを撃ち続けるが、全て避けられてしまう。ドムのバズーカが弾切れになった所をスターダストが直進し始める。

 

『このぉ!』

『待て!突っ走んな!』

 

バズーカを捨てたドムはヒートサーベルを構えてスターダストと真っ向から向かう。

 

『これでぇぇぇ!』

 

ヒートサーベルが振るわれ、スターダストを一刀両断ーーはしなかった。

ドムが両断をしたのは、スターダストがパージしたチョバムアーマーだった。

 

『え?……あっ』

 

ドムが徐に己の胸元を見る。ドムを操縦するダイバーが見たのは、胴体を斬ろうとするビームサーベルだった。

 

『あ、あああああぁぁぁぁぁっ!!?』

「やぁぁぁぁぁ!!」

 

スターダストがドムの胴体を横に叩き斬る。切り裂かれたドムが爆発するが、スターダストはそれを傍目にすら見ることはなく、そのまま突き進む。

 

「チョバムアーマー、全装甲解除。これが僕の、スターダストガンダムだッ!」

 

白と青をメインにしたトリコロールカラーが特徴としたカラーリングをした、本来のスターダストガンダムなのである。

 

『コイツゥ!!』

 

ザクがヒートホークを構えて前進をする。ヒートホークはスターダストのコックピットを目掛けて振るう。

 

「タイミング……今っ!」

 

ナツキはコンソールを操作してザクがヒートホークを振るうタイミングを合わせてその機能を起動させた。

 

『なっ……!?』

 

ザクのダイバーが見たのは、ヒートホークで斬られたスターダストではなく、上下半身が分離したスターダストだった。

 

「そこぉぉぉぉぉ!」

 

分離した上半身を上下反転させると、ザクを背後からビームライフルで蜂の巣にする。撃ち抜かれたザクは倒れる前に爆発する。

 

『な、何だよコイツ!ホントに初心者かよぉぉぉぉぉ!!』

 

ザメルは全力で後ろに後退しつつ、スターダストにカノン砲を連射する。

スターダストは更に上半身を分裂……否、分離させる。

 

『コイツ、分離すんのかよぉ!』

 

コアファイター、トップフライヤー、ボトムフライヤーの三機に分離したスターダストはザメルのカノン砲を簡単に避けると、空へと飛び立つ。

 

「スターダスト、ドッキング!」

 

コアファイターが変形、レッグフライヤーとチェストフライヤーが挟み込む様に合体する。

 

「うおぉぉぉぉっ!!」

 

合体したスターダストはビームサーベルを引き抜きながら急降下していく。

ザメルは抵抗する前にビームサーベルによって串刺しにされた。

 

「はぁ、はぁ……はぁぁぁ~~~」

 

ザメルが動かなくなったのを確認すると、ナツキは大きな溜め息と共に一息つく。しかし、これで一段落……と思った矢先だった。

 

『まだ、終わってないぞぉ!』

「なっ!?」

 

ナツキが動揺すると同時にザメルがスターダストに突進する。ザメルはスターダストを巻き込んで前進すると、岩にぶつけた。

 

『俺達に恥をかかせやがって……そのまま、潰れろぉぉぉ!』

「う、ぐぅぅぅ……!」

 

ザメルは己のボディと岩でスターダストを挟み潰そうとする。スターダストも抵抗しようと動くが、圧力によって動けずにいた。

 

「そんな、もう……!」

 

ナツキは今度こそ撃墜かと諦めかけていた、その時だった。

ザメルの頭上から一閃のビームが飛んでくる。ビームはザメルを貫通させると、今度こそ停止した。

 

「た、助かった……?」

 

スターダストはザメルを押し出すと、間から抜け出す。しかし、抜け出した直後に押し潰されかけた影響かふらついてしまった。

 

「わっ、ととっ」

 

膝を着いて体勢を立て直すスターダスト。その時、頭上から何かが降りてきた。

ナツキはザメルを止めてくれたダイバーだと気づき見上げる。

 

「ガーベラ・テトラ……」

 

それは、ナツキとスターダストの原型であるガンダム試作1号機の兄弟機である試作4号機を改造したMS『ガーベラ・テトラ』だった。

 

「あ、あの、助けてくれてありが……えっ」

 

ナツキはすぐに通信を繋げて感謝を述べようとする。しかし、その感謝の言葉は途中で止まってしまった。

ナツキを助けたガーベラ・テトラのダイバーはナツキも良く知っていた。知らないわけがなかった。

 

「ノゾム……!?」

 

そのダイバーこそ、ナツキの幼馴染の1人『冬木ノゾム』こと『ノゾム』だった。

 

『……懐かしいな、ナツキ』

「まさか、こんなところで会えるなんて!皆元気にしてた?ルナは?ヴィオレは?」

 

まさかの再開に興奮を隠せないナツキ。ノゾムは通信越しにそんなナツキを冷めた目で見ると、ガーベラ・テトラの改造機がスターダストに銃口を向けた。

 

「の、ノゾム?」

『何で……何で今になって戻ってきたっ』

 

ノゾムはそう言うとビームマシンガンを発砲する。スターダストはそれを即座に回避するが、ナツキ自身は困惑していた。

 

「な、何で急にっ!?」

『もう遅いんだよ……お前が逃げなかったらこんなことにならなかったのにっ!』

 

ガーベラ・テトラの改造機……ブラックローズはビームマシンガンでスターダストを狙って撃つ。

スターダストは訳が分からず、回避に専念し続けた。

 

『なのに、何故戻ってきた!』

「もう、もう逃げたくないんだ!あの出来事から、もう!」

『二年間ずっと逃げ続けてきたお前に、向き合う資格があると思うなっ!』

 

ブラックローズが急浮上の後に急降下する。ブラックローズのキックがスターダストに突き刺さり、スターダストは背中から地面を滑っていく。

 

『お前が逃げたから、俺も、ルナも、ヴィオレもバラバラになった!もうあの時みたいには戻れないんだよっ……!』

「そんな……」

『それなのに、お前はそうやって呑気に戻ってきたっ!お前は……戻ってくるべきじゃなかったんだ!』

 

戻ってくるべきじゃなかった。それを聞いたナツキはもうあの頃の様に四人で笑い合える事は出来ないと知って失意のドン底まで叩き落とされる。

ブラックローズが腕部ビームノズルに内蔵されているビームサーベルを排出してビーム刃を出す。

 

「それでも……僕はもう逃げないって決めたんだ!」

『何度も言わせんな!手遅れっつってんだろ!』

 

ブラックローズがビームサーベルで突きを繰り出す。スターダストはビームライフルに付けられたサブユニットからビーム刃を伸ばしてビームジュッテにする。

 

『おおおぉぉぉぉぉっ!』

「やあああぁぁぁぁぁっ!」

 

ビームサーベルの突きをビームジュッテで受け流す。スターダストはバックパックのビームサーベルを引き抜いた。

しかし、ブラックローズは腕部ビームノズルからビーム刃から伸ばしてビームトンファーとして使う。

 

「あっ……!?」

 

ビームトンファーはビームサーベルを掴んでいた腕を熔断される。ブラックローズはスターダストに突進すると、スターダストは倒れてしまった。

 

「ぐっ……!」

 

倒れたスターダストを立ち上げようとした時、コックピットにビームサーベルと向けられる。反撃しても、即座にコックピットを貫かれるだろう。

 

『これでおしまいだ』

「そん、な……」

 

このまま機体を貫かれるーーそう思った矢先、ブラックローズはスターダストから離れてビームマシンガンを拾った。

 

『早くここから抜け出してログアウトしろ。二度とGBNに来るな』

 

ブラックローズはそう言うとその場から離れていく。ナツキはレバーから手を離して膝を着く。

それでもと叫んだナツキの願いは、ノゾムと現実に届くことはなかった。




主人公補正で初勝利だけで済むと誰が言った。
キャラ設定は組み上がり次第随時更新していく予定です。
お楽しみに……

では、次回予告へ

***

次回予告

再開したノゾムに拒絶されたナツキ。
失意の中の彼に手を伸ばしたのは一人の少女。
彼に導かれたナツキは一人の男と出会う。

第3話 再起の兆し
お楽しみに


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第3話 再起の兆し

世間には自己紹介で自分のユーザー名を間違える人がいるそうだぞポッター。
だが人生何事も上手くいかないのだ。気にする事じゃない

挫折してしまったナツキくん。
皆の応援でナツキくんが(恐らく)立ち上がるぞ(きっと多分maybe)!


ミッションを中断してヴァルガからエントランスに帰還したナツキ。しかし、その表情は浮かないどころか、沈みきった表情だった。

折角戻ってきたに関わらず、騙されて危険な場所で戦闘をし、勝利したと思いきや幼馴染に戻ってくるなと言われた。

 

「そうすれば、良いのさ……」

 

エントランスの壁で座り込むナツキ。巻季には申し訳ないが、もう止めてしまおうかと考えてしまう。

その時、ナツキの元に一人の少女が現れた。

 

「だいじょうぶ?」

「え……」

 

ナツキはふと顔を見上げる。そこには一人の少女がいた。

明かりによって輝く金髪に透き通るような蒼眼をしている。例えるならば、西洋人形である。ちなみにその胸は身長とは少し不釣り合いなくらい大きい。

 

「あ、ごめん。心配させちゃったかな……?」

「ん、気にしてない。ウチ来る?」

「ウチ?」

「私の保護者がいる。来る?」

 

フラフラとだが立ち上がるナツキ。彼を心配した少女はGBN内にある保護者と言われている人物がいる拠点に招き入れようとしていた。

 

***

 

第3話

再起の兆し

 

***

 

アジアン・サーバー。その一つであるエスタニア・エリアに移動した二人。ナツキは少女に連れられるように中華街を歩いていた。

 

「えっと……まだなのかな?」

「もうすぐ」

 

精神的に参っていたナツキにとってはちょっとした移動も少し遠く感じていた。

 

「着いた、ここ」

「あぁ、ありがとう……」

 

路地裏をあるいて人気から少し離れた所に、扉が発見される。少女が先に入り、ナツキもそれを追うように入る。

 

「アッシュ、お客さん」

「ん……セレン……客って誰だよ」

 

家の中は木製の机と長椅子とハンモックだけとかなりシンプルだった。

ハンモックで寝ていた男をセレンと呼ばれた少女がハンモックを揺らして男を起こす。

 

「ん、客ってアンタか」

「ど、どうも。ナツキです」

 

ナツキは男に会釈する。飄々とした雰囲気をした袖と肩部分、脇腹がシルバーでそれ以外は黒のスカジャンを着た男だった。

 

「俺はアッシュだ。コイツはセレン」

「ど、どうも……」

「人見知りなセレンが話しかけるとは思わなかったが、アンタを見て納得したよ」

 

アッシュと名乗った男はナツキを連れて椅子に座らせる。アッシュはナツキと向き合うように座る。

キッチンでセレンは何か作業をしている。

 

「お前、初心者か?」

「えっと、2年半ぶりに復帰したんです」

「復帰勢か。初心者狩りにでも襲われたか?」

 

ナツキは初心者狩りと言われてやっと合点が行く。何故彼らが自分を騙して自分を襲ったのかが疑問でしょうがなかった。

 

「あ、あの人達、初心者狩りだったんだ……」

「天然なのか、それを考える余裕すらないくらい落ち込んでるのか分かんないからスルーさせてもらうからな」

 

アッシュはナツキにその初心者狩りとの戦いについて聞く。ナツキもそこについては特に問題はないので話した。

 

「あぁ……ヴァルガ行ったのか」

「ヴァルガ?」

 

ナツキがヴァルガの名前を言い返すのを聞いたアッシュが「知らないのか」と笑いながら話す。

 

「ハードコアディメンション・ヴァルガ……全フィールドフリーバトル可能な魔境さ」

「フリーバトルが自由に出来るんですか?」

「そこら辺が分かるって事は、脱初心者から中堅って所までやってた感じか?」

 

アッシュに言い当てられたナツキは凄いと感心する。実際、ナツキはノゾム達幼馴染達とフォースを結成して中堅フォースとして活躍していた。

 

「あそこは弱いもの虐め大好きな奴やバトルジャンキー、腕試しをしにきた上位ランカーやチャンピオンまで来る魔境だからな」

「詳しいんですね」

ここ(GBN)が始まった当初からずっと見てきたからな。見ることしかしなかったが」

 

アッシュは自嘲気味に呟く。彼もまた何かしらの理由でGBNにいるのだろうか、とナツキは考えてしまう。

 

「じゃあその初心者狩りにボコボコにされたのか?」

「いえ……初心者狩りは何とか倒せました」

「復帰して間もない奴とは思えない事をサラッと言うのやめろ。……じゃあ、何であんなに落ち込んでたんだ」

 

アッシュに落ち込んでいた理由を聞かれたナツキは俯いて手を強く握る。

すると、ナツキの手前にコトリとティーカップに入った紅茶が差し出された。差し出したのはセレンである。

 

「どうぞ。欧州ディメンションで買った良い茶葉。美味しい」

「セレン……ありがとう」

「アッシュもどうぞ」

「おう、サンキュ」

 

ナツキはセレンに出された紅茶を飲む。上品な味と共に暖かさが伝わってくる。暖かい飲み物を飲んだお陰か少し沈んだ気持ちがマシになった気がする。

それ故に、今なら話せるような気がした。

 

「……再開した幼馴染に、ちょっと言われちゃって」

「幼馴染、か」

「はい。2年半前、僕を含めた四人で四季團ってフォースを組んでました」

 

ナツキとノゾム、そして後二人の幼馴染で作られたフォース・四季團。四季團は初心者だけのフォースでありながらメキメキと実力を上げて中堅フォースにまで上り詰めていた。

 

「でも、その時、とあるダイバーに突然襲われて、僕以外は全滅してしまいました」

「荒し……2年半前となるとマスダイバーの可能性もあるな」

「僕、あの時何も出来ずに、皆を守れなくて、アイツを倒せなくて……それで、逃げてしまったんです」

 

あの時、幼馴染は何度も引き留めてくれた。「ナツキは悪くない」「悪いのはアイツだ」と許してくれていた。それでも、ナツキは逃げ出してしまった。

 

「それで、今日覚悟を決めて戻ってきたんです!なのに……!」

 

戻ってきて、再開したノゾムに言われたのは拒絶の言葉だった。

ナツキの目に涙が浮かび上がる。

 

「『もう遅い』って、『戻ってくるべきじゃなかった』って……もう、どうすれば良いのか分からなくて……!」

 

我慢できずに涙を流してしまうナツキ。すると、彼の頭に誰かの手が乗せられ、優しく撫でられた。

 

「え……?」

 

撫でられたナツキは隣に誰か座ってる事に気づく。横を見ると、セレンがナツキを撫でていた。

 

「セレン……?」

「ナツキ、辛そうだったから……嫌だった?」

「ううん、逆だよ。ありがとう」

 

ナツキはセレンに感謝を述べつつも涙を拭う。

 

「ナツキ、GBN、止めちゃうの?」

「それは……どうだろう」

 

ノゾムの言う通り全て手遅れなのだろうか。だとすれば、GBNに戻ってきた意味は完全に消失する。

しかし、そこで諦めて良いのかと心の何処かで問いかける己もいた。

 

「ちょっと聞いてたけどよ。ナツキ、お前はどうしたいんだ?」

 

すると、アッシュがナツキに問いかけてきた。ナツキはそれを聞いてこれまでの事、そして自身の思いを整理する。

確かに、2年半と言う月日は短そうでかなり長い。元四季團は後戻りは出来ないかもしれない。

 

「確かに、今四人はバラバラかもしれません。今日会った幼馴染以外の二人はどうしてるのか分かりません」

「そりゃそうだろうな。でも、諦めたくない、だろ?」

 

アッシュに聞かれたナツキは「はい」と答える。残りの幼馴染二人を探して現状と思いを聞きたい。そして、叶うなら仲直りがしたかった。

 

「また四人一緒……なんてのは高望みだとは思ってます。でも、皆とまたやり直したい失った時間を取り戻したいって、思ってます」

「ふっ……青春しやがって。しょうがねぇ、聞いた以上大人としてその青春を手伝ってやらねぇと、なっ」

 

アッシュは立ち上がるとその手を差し出す。アッシュの行動にナツキは頭に?を浮かばせる。

 

「俺は直接何かする訳じゃねぇけど……俺の弟子にならないか?」

「弟子、ですか!?」

 

アッシュは自分の師匠になると言い出して驚くナツキ。隣にいたセレンも目を輝かせる。

 

「ナツキ、ここ毎日来るの?」

「毎日とはいかねぇだろうが……セレンは姉弟子になるだろうな」

「姉……!お姉ちゃん……!」

 

姉と言うワードを聞いてセレンは嬉しそうに跳ねる。低身長とは不釣り合いな胸にある二つのメロンが揺れた。

女性に耐性のないナツキには目に毒である。

 

「え、えっと、その、アッシュさんは良いんですか?」

「良くねぇなら提案してねぇわバカ。自慢になってるかわかんねぇが、俺は長年GBNを見てきた。ガンプラバトル自体も長年やってるからな」

「つまり、大ベテラン、なんですかね……?」

 

ナツキに聞かれたアッシュは「どうだろうな」とはぐらかしてしまう。

しかし、経験者は自分みたいな復帰勢にはとても助かる。アッシュなら自分の道標になってくれるかもしれないと考えた。

 

「アッシュさん、御指南、よろしくお願いします!」

「おう。お前を一人前にしてやるよ」

 

ナツキはアッシュの手をガッチリ握る。横でセレンが「わーい」と拍手をしながら喜んでいた。

 

「さて、まず早速だが……お前のガンプラ、見せてくれないか?」

「ガンプラ、ですか?はい、どうぞ!」

 

ナツキは自分のガンプラであるスターダストのデータを見せる。アッシュはそれを見てふむと呟きながらじっくりと見ている。セレンもアッシュの隣に座ってそれを見ていた。

 

「この子、愛されてる」

「あぁ、良い機体だ。良く作り込まれている」

「一応、復帰の為に作った機体なので、これからこの先使えるようにって思いまして……」

「だけど、個性はまだ活かしきれてないな」

 

ズバッとアッシュが言う。先程までの好評からの急降下が如くの指摘はナツキの心にグサリと刺さった。

 

「い、活かしきれてない、ですか……」

「コイツ、肩やバックパックにジョイントあるって事は、状況に合わせて換装が出来るんだろ?」

「はいっ。ゼフィランサスの特性である汎用性を高めようと思いまして!」

「ならこのチョバムアーマー要らねぇだろ」

 

鋭い指摘にぐぅの音も出ない。試験的にとは言え、使ってみたナツキ自身、あまり使えるものじゃないと諦めていた。

 

「とりあえず、当分の目標は、コイツの装備を増やすことと……後もう一つだな」

 

アッシュは人差し指の次に中指を立てる。

 

「GBNは所詮オンラインゲームだ。大量のダイバーがいる。ならば、人脈を増やすのも一手だろうな」

「人脈、ですか」

 

確かに、多くのダイバーと知り合っていた方が損は無いだろう。今後フォースを作るに関しても有利だ。……もしかしたら、幼馴染達の情報が分かるかもしれない。

 

「と言うことで、フレンドも増やしていく。これがお前の第一の関門だ」

「関門……修行が始まったって事ですね」

「あぁ……気張っていけよ、ナツキ」

「ん、頑張って」

 

ナツキは落ち込んでいたのから心機一転、再起の為の修行が始まった。

 

***

 

アッシュとセレンに別れを告げてログアウトしたナツキはゴーグルを外して立ち上がる。

筐体の設置されている部屋に出ると、ナツキに気づいた巻季がこちらに来た。

 

「お疲れ様。どうだった?久々のGBN」

「あー……良い滑り出しとはとても言えませんが確かに進めた気がします」

「そっか……良かった」

 

巻季は自身の問いに答えたナツキの表情から、後押しして正解だったと確信する。

 

「あ、早速ですけど、新しいキット見てきて良いですか?」

「良いわよ。頑張って強くなってね!」

「はい!」

 

ナツキはガンプラ販売エリアへと向かう。ナツキの再起(リライズ)は始まろうとしていた。




新キャラのアッシュ&セレン登場回でした。
ナツキを導くアッシュと、それをサポートするセレン。
2人の支えがナツキをどう成長させるのか……お楽しみに

では、次回予告へ……

***

次回予告

ナツキの手によって作り出されたスターダストのパッケージ。
それを試す為、新たな出会いを求める為、とあるイベントに挑む。
そしてそのイベントでナツキの前に現れる新たなライバルに新装備を身に付けたスターダストで挑む!

第4話 絶壁の勇者


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第4話 絶壁の勇者

始めてのゲスト出演だから結構緊張したぞポッター。
と言うことで、ドキッ!始めての他作品からの出演!新キャラも出るよ!です。どうぞ~

あと今日これまでの倍くらいのボリュームになりました。
急に量が脹れて申し訳ない。

追記
ゲストキャラの台詞を幾つか修正しました


アッシュに弟子入りしてから数日が経った。ここ最近は簡単なミッションやリアルでのスターダストの新たな装備……通称パッケージを作っている真っ最中である。

 

「基本型、高機動型、水中戦……」

 

高校の食堂で一人ノートに新作パッケージのアイデアを纏めている真っ最中だった。

 

「一応ビーム兵器メインだけど……やっぱりナノラミネートアーマー持ちに対抗出来るようにした方が良いのかな」

 

ナノラミネートアーマー……鉄血のオルフェンズに出てくる動力エイハブリアクターによって生産されるエイハブ粒子が付着することで、強いビーム耐性を得ている装甲である。

スターダストにもマシンガンやバズーカを携行させることは可能である。しかし、それで苦労しない。ナノラミネートアーマーは衝撃にも強い耐性を持っているため、ジムや陸戦型ガンダムのマシンガンでは簡単に倒せないだろう。

 

「となると、対策用のパッケージも必要かな……?」

 

ナノラミネートアーマーに対抗するには断続的な熱、もしくは衝撃が必要である。

 

「宇宙世紀系列となると、やっぱりあれかな……?」

 

スマホで検索をしながら、ノートにアイデアを纏め始める。

 

「よし……後は砂川模型店で必要なのを買って、製作していこう!」

 

ノートに纏め上げたナツキはノートを閉じると、食堂から立ち去っていった。

 

***

 

第4話

絶壁の勇者

 

***

 

更に数日が経過し、ナツキは今日も今日とてGBNにログインする。

エントランスに来たナツキはアッシュの元に行こうと考えていると、話し声が聞こえた。

 

「あのあの!ヴィオレさんですよね!」

「ガンスタグラムいつも見てます!」

 

『ヴィオレ』と言う名前を聞いてナツキはすぐさまそちらを見る。

そこには二人の女性と話している紫の髪を三つ編みにした少女がいた。

 

「え、私の事知ってるんですか?嬉しいなぁ~!あ、折角だし記念撮影しない?次いでにガンスタに載せていい?」

「良いんですか!」

「是非!お願いします!」

 

紫髪の少女は二人の女性と一緒に撮影ーー所謂自撮りーーをすると、「ありがと~」と手を振りながら別れを告げる。

ナツキは別れを告げた紫髪の少女に声をかける。

 

「ヴィオレ!ヴィオレだよね!?」

 

声をかけられた少女ーーヴィオレはナツキの方を振り替える。一瞬誰なのか分からずに首を傾げるが、すぐに誰なのか察して「あー!」を叫ぶ。

 

「ナツキ!?おま、復帰してたの!?」

 

ヴィオレもノゾム同様、幼馴染の一人なのである。人がごった返すエントランスで出会えるとは思えず、ナツキも大興奮だった。

 

「まさかまた会えるなんt」

「お前戻ってきたなら言えやァ!」

「ぐはぁっ!?」

 

ヴィオレの怒りに任せたドロップキックがナツキの腹部に突き刺さる。ナツキは一発でノックアウトした。

 

***

 

復帰して思いっきり蹴られたお腹を撫でながら歩くナツキにヴィオレが背中をバシバシ叩く。

 

「いやぁ、まさかナツキが戻ってくるとは思わなかったからさぁ!」

「だからってドロップキックすることは無いだろう……」

「そこは私に免じて許してほしいな★」

 

わざとらしいあざといムーブにナツキはジト目で見る。

 

「……誰かのモノマネ?」

「あ、バレた?私の推しなんだけどね~」

「またそうやって女の子に色目で見て……」

 

ヴィオレは幼馴染の中でも屈指の濃い性格をしており、女性に色目で見たり、推しCPなるものを見出だしては一人で大興奮している変人である。

初めて会った人ならドン引きしてもおかしくは無いが、長年の付き合いであるナツキとしては『相変わらず』だった。

 

「鈍感なナツキよりかはマシでしょ」

「鈍感?何で?」

「さぁね~。灯台もと暗しって言うしっ」

 

ヴィオレはとある幼馴染を思い出しつつ、階段から飛び降りて着地する。トレンチコートが大きく靡き、縦セタに包まれた巨乳が大きく揺れた。

 

「それで?ナツキは今どうしてるの?」

「それは……」

 

ナツキはヴィオレにこれまでの経緯を話す。

 

ヴァルガに行ったこと

ノゾムに再会したこと

彼から拒絶されたこと

失意の中、セレンが見つけてアッシュの元に行ったこと

アッシュに弟子入りしたことーー

 

「成程なぁ……」

 

一連の出来事を聞いたヴィオレは「はえー」と驚嘆の声をあげる。

 

「最初にノゾムと会ったのはちょっとまずかったね。アイツ、君に嫉妬してるから」

「嫉妬?ノゾムが僕に嫉妬する要素なんて無いだろう?」

 

ナツキとノゾム。どちらが秀でているかと言われると、ナツキはすぐにノゾムと即答する位には、ノゾムは優秀だった。

勉強の成績も、運動神経も、ガンプラバトルも……全てにおいてナツキはノゾムに勝てた覚えはなかった。

 

「君、そんなんだから鈍感って言われるんだよ?」

「えぇ……?」

 

訳が分からず頭が疑問だらけになるナツキ。ヴィオレはそれを見て溜め息をついた。

 

「私から言って良いけど、ルナママがどう思うか分かんないしなぁ……」

「ルナもGBNやってるの!?」

 

ルナと言う名前を聞いたナツキが反応する。

ルナ……四季團最後のメンバーである幼馴染の一人である。

 

「今は……ノゾムと同じフォースにいるよ」

「えっ、フォース一緒の入ってるの!?」

「まぁねぇ……私も誘われたけど、断っちゃった」

 

ヴィオレは少し複雑そうな顔をする。その表情からして、あの一件がどれだけ大きかったかを改めて知ることになった。

 

「ゴメン。僕が逃げたばかりに……」

「もう二年半も前だろう?もう気にしてないからさ。あ、フレンド登録しない?」

「ヴィオレ……うん、今、アッシュさんからフレンド増やせって言われてて、丁度良かったよ」

 

ヴィオレは戻ってきてくれたことを快く歓迎してくれた。その事には内心とても感謝する。

しかし、そこで彼女の厚意に甘える訳にはいかない。ノゾムとルナと改めて向き合う必要があるからだ。

 

「フレンド増やしたいのかい?だったら、良いイベントがあるよ!」

「イベント?」

 

ヴィオレはウインドウを開くと、操作をする。そして、表裏を返してナツキの方に飛ばした。

 

「ユーロエリアのコロッセオで低ランクダイバー同士で勝ち抜け戦をするイベントさ」

「へぇ……オススメするくらいって事は、何かあるの?」

「お、乗り気なのは良いね~。このイベント、色んなフォースが期待の新人を探しに観戦に来るのさ。だから参加するダイバーはスカウトされたくて、実力に自信のある奴等ばかりさ!」

 

もしかしたら有名フォースーー例えばAVALONや第七機甲師団ーーがいて、彼らが自分に興味を持ってくれるかもしれない。

そんなロマンを感じるダイバー達が集まってくるのだろう。

 

「復帰勢のナツキでも苦戦しそうな相手ばかりだよ。どうだい?やってみないかい?」

「そうだね……良い出会いがありそうだ」

「よーし、そうと決まれば行ってみようか!」

 

ナツキはアッシュにイベントに向かう事をメッセージとして送ると、ヴィオレと共にユーロエリアへと向かった。

 

***

 

ユーロエリアにて、ナツキとヴィオレはイベント会場のコロッセオへと赴いていた。

 

「結構人いるんだね」

「大規模なフォースとか、出来立てホヤホヤなフォースは新人が欲しいからね~」

 

フィールドでは既にバトルが始まっており、文字通りの激戦となっていた。

 

「おっ、あそこにいるは~?」

 

ヴィオレは誰かを見つけたのかタタターっと走っていく。ナツキはそれを歩きではあるが追いかけた。

 

「グレイさ~ん!」

「ん?げっ、ヴィオレかよ」

「今ゲッって言いませんでしたか!?酷いですよぉ、撮影してくれたのに~」

「あれはお前が無理矢理撮らせようとしたからだろうが……」

 

ヴィオレがちょっかいをかけたのは、ライダースーツを着たダイバーだった。ナツキもヴィオレとライダースーツの男性の元に向かう。

 

「ヴィオレ、その人は?」

「あぁ、ナツキ、この人はGBNでカメラマンをしてる変わり者のグレイさん」

「お前にだけは変わり者言われたくない」

 

ヴィオレの知り合い(らしい)ダイバー・グレイがナツキに挨拶をする。

ヴィオレはナツキの隣に移動をすると、紹介をした。

 

「コイツはナツキ。私の幼馴染で2年半くらい?ぶりに復帰した奴なんです」

「えっと、ナツキです。よろしくお願いします!」

「ナツキ君か。よろしくね」

 

握手をするナツキとグレイ。その時、歓声がワッと上がる。バトルフィールドを見ると、身体中がひしゃげて戦闘不能になっているスレイヴ・レイスがあった。

 

「アイツすげぇな。今のところ三連勝だろ?」

「ガンダムフレーム……だよな?」

 

観戦している人達の声が聞こえる。彼らが話しているのはどれもスレイヴ・レイスを撃破した、暗いブルーの装甲を纏ったガンダムフレームだった。

 

「ガンダムフレーム?でもあんなのいたっけ?」

「フレームはガンダムフレームで、外装はペイルライダーのをミキシングしたんじゃないかな?」

 

ヴィオレが見たことのないガンプラに頭を傾げていると、ナツキがその改造について予想をする。

それを聞いていたグレイは「へぇ」と感心したように言葉を漏らす。

 

「詳しいね。宇宙世紀系が好きなのかい?」

「はい!0083は特に!」

「そうか。君もこのイベントに参加するなら気をつけるといい。一戦目二戦目を見てたが、あれに乗ってるダイバーは強いからね」

「ご忠告、ありがとうございます。それじゃあ、自分は行ってきます」

 

ナツキはその場を後にする。ヴィオレはナツキに「いってらっしゃーい」と見送ると、グレイを見た。

 

「どうです?面白い奴でしょ?」

「まぁな。お前よりマシで助かった」

「まるで私がマシじゃない言い方!酷い!」

「事実だからだよ……」

 

グレイは心底めんどくさそうな表情をしつつも、ナツキの出番まで待つことにした。

 

***

 

エントリーをしたナツキはスターダストのコックピットで待機をしていた。

 

スターダストは複数のコンテナの内の一つを開くと、ナツキがウインドウを操作してそれを装着していく。

 

「対ナノラミネートアーマー用装備……まさか最初に試すのがこれになるなんてね」

 

一人呟いていると、通信が入る。勝負が終わって、ナツキの番が来たと言う事だ。

 

「よし、行こう!」

 

ナツキは頬をパチン!と叩くと、フィールドへと向かわせた。

 

『さて、初心者勝ち抜け戦!次の参加者は、ダイバーランクEのナツキ選手!使用ガンプラはスターダストガンダムです!』

 

フィールドに出てきたスターダストガンダムは、クロー付きシールドに実弾ショットガン、バックパックには増加スラスターとショートバレルキャノンが追加されている。何より特徴的なのは腰にマウントされた大型の槍だった。

 

「槍!?何あれ……」

「ジーライン・アサルトアーマーのヒートランスか。中々攻めた装備だな」

 

グレイの指摘通り、対ナノラミネートアーマーの参考にしたのはジーラインの換装種類の一つであるアサルトアーマーである。

 

『その挑戦者を迎え撃つのは!現在4連勝中のエース選手の駆るガンダムエリゴス!』

『よっしゃー!行くぜぇ!』

 

アメコミに出てきそうなヒーローの用な格好をしたナツキと年が近そうなダイバー『エース』。そして、ガンダムフレームにペイルライダーをミキシングした機体『ガンダムエリゴス』がスターダストと相対する。

 

「凄い気合い……えと、エースさん、だっけ。よろしくお願いします」

『エースで良いぜ。俺もナツキと呼ばせてもらうからな!』

 

通信を繋いだ二人は勝負前のやり取りを始める。

 

『そう言えばよ。アンタ、キャプテン……ジャスティス・カザミは知ってるか?』

「えっと……何方?」

『えっ、知らないのぉ!?お前人生の半分損してるぞ!いやマジで!』

 

圧倒的迫力で気圧されるナツキ。

しかし悲しいかな。ナツキはつい最近このGBNに復帰したばかりで、半年前から人気を博したG-Tuberのカザミなぞ知らなかった。

 

『まぁ良いや。お前を倒して、ジャスティス・カザミを布教してやらぁ!』

「何か負けたら凄い目に遭いそうな予感!?」

『それでは、勝負、始めっ!』

 

ナツキが嫌な予感を感じ取ったその時、ブザーが鳴り響く。それは勝負開始の合図だった。

 

『行くぜ、エリゴス!』

 

エリゴスは腰のソードメイスを引き抜くと盾を構えて突進してきた。

スターダストはすかさずショットガンを撃つが、盾に防がれてしまう。

 

「何て堅さなんだあの盾……!」

 

後ろに下がりながらショットガンを打ち続けるスターダスト。しかし、エリゴスは盾で塞ぎながら前進を続けた。

 

『おらぁっ!』

「っ、来るっ!」

 

エリゴスのソードメイスが振るわれる。スターダストはそれを避けると、隙を見せたエリゴスにショットガンを放った。

 

『ぐぉっ!?』

 

エリゴスは避けようとするが、肩アーマーに直撃する。しかし、アーマーが凹む程度で済んでいた。

エースは直撃だったらダメージはもっと酷かったと冷や汗をかくが、すぐに戦闘に切り替える。

 

「直撃は避けられちゃったか……!だったら!」

 

スターダストはショットガンを納めると、ヒートサーベルと引き抜いた。槍部分がオレンジ色に輝き、熱を灯す。

 

『ヒート武器かっ!』

「行くぞっ!」

 

スラスターを吹かして突撃を繰り出すスターダスト。エリゴスはそれを真っ向からシールドで受け止めた。しかし、その先端の熱がシールドのナノラミネートアーマーを溶かし、盾を貫こうとする。

 

『やらせっかよぉっ!』

「っ、うぅっ!」

 

エリゴスがソードメイスを振り下ろしたのを、スターダストは大きく後ろへ跳躍して避ける。空中にいる間にバックパックのショートバレルキャノンを放った。

 

『フラウロスのキャノンか!?ぐおぉぉぉ!?』

 

追撃を行おうとしていたエリゴスはそれを避けようとするが、余波がエリゴスの動きを封じる。

着地したスターダストはすぐさま槍を構えて警戒した。

 

『は、ハハッやるじゃねぇかナツキ!そうこなくちゃな!』

「はぁ、はぁ……それは、どうも……!」

 

エースが笑いながらナツキを称賛する。ナツキはその笑みに「何かある」と警戒を強めた。

 

『俺ももっと本気出さねぇとヤバそうだな。行くぜ、エリゴス!お前の本気、見せてやろうぜ!』

 

エースはウインドウを操作してSPと書かれた所を押す。

その時、エリゴスのツインアイが赤く輝き、スラスター部分の光も同様に赤く染まった。

 

『魔王モーォォォォォド!!!』

 

ガンダムフレームのリミッター解除とペイルライダーに搭載されたシステム『HADES』が融合した機能『魔王モード』が今解禁された。

 

「うわ、ヤバそうなの来たなぁ……ナツキ、大丈夫かな?」

「苦戦は避けられないだろうな。どうする、ナツキ」

 

グレイはカメラ越しにバトルの様子を見る。

ナツキはエリゴスから伝わる先程のカザミの話をしている時のエースとはまた違った気迫に押されかけていた。

 

『おぉぉぉぉぉっ!』

 

ソードメイスを構えて突撃してくるエリゴス。スターダストはそれを避けるが、エリゴスとは先程とは違って即座に突きを繰り出してきた。

 

「なぁっ!?」

 

スターダストはすぐさまシールドで防ぐ。しかし、空中にいたせいで衝撃までは受け止めきれず、壁まで吹き飛ばされた。

 

「ゲホッ、魔王って名乗るだけはある……!」

 

コックピット内まで大きく揺れる。咳き込みながらも、衝撃でグラつく意識をエリゴスに向ける。

エリゴスはバックパックにかけていたそれをサブアームで支えながら構えていた。

 

「レールガンっ……!?」

 

スターダストを動かす前に、エリゴスのレールガンが放たれる。その一撃はスターダストの頭部の右を掠めてショートバレルキャノンを破壊していた。

スターダストは破壊されたショートバレルキャノンなど気にせずに立ち上がる。

 

『避けられたかっ。だがなぁ!』

 

スターダストがショットガンを構えるが、エリゴスは腰に内蔵されたアーミーナイフを引き抜いて投擲をする。ナイフはショットガンを弾いてスターダストは大きな隙を作ってしまう。

 

「しまっーーー!」

 

反応するも時すでに遅し。ソードメイスを構えたエリゴスが眼前まで迫っていた。

 

『どるぁぁぁぁぁっ!』

「っぐあぁぁぁっ!?」

 

スターダストが避けようとするが、その先端は右肩アーマーを深々と貫通した。そのまま突撃するエリゴスはスターダストを壁に叩きつける。

 

『これで、終わりだァっ!』

 

エリゴスはスターダストのコクピット部分にレールガンの先端を押し付ける。

 

「終わったか……」

 

その様子を見ていたグレイは決着が着いたと確信する。誰から見てもエリゴスがレールガンを撃ってコクピットを破壊。スターダストの戦闘不能までが目に浮かんでいた。

 

「んー、それはどうですかなぁー?」

 

しかし、その意見とは真逆に、ヴィオレは杞憂で済むかもしれないと言わんばかりに余裕の表情だった。

 

「終わり……?」

 

一方、コックピット内で目を見開いて胸部に押し付けられたレールガンを見ていたナツキはギュッと強くレバーを握った。

 

「まだ始まったばかりなんだ!こんな所で……終われるかぁぁぁっ!」

 

レールガンが撃たれる直前、ナツキの咆哮と共にスターダストはソードメイスが突き刺さった右肩を引き千切りながら拘束を抜け出す。

 

『っ、しぶてぇなぁ!』

 

突き刺していたソードメイスを引き抜いたエリゴスがレールガンを構え直すが、スターダストは左手に握ってあったショットガンを放ち、レールガンを破壊した。

 

『コイツッ……!』

「おぉぉぉぉぁぁぁぁっ!」

 

ショットガンを投げ捨てて、ヒートランスを構えたスターダストはスラスターを全開で吹かして一気に直進する。

ヒートランスの先端はコックピットに直撃するが、少し凹んだだけだった。

 

『残念だったな!これで……』

「まだだっ!」

 

スターダストはスラスターを吹かし続ける。ヒートランスで突き刺したエリゴスを巻き込んで壁に叩きつけた。

 

『まさか、熱でナノラミネートアーマーを貫くつもりか!?』

「ぐっ、うぅぅぅぅっ!」

 

獣の様に吠えるナツキは左のレバーを力任せに押し込む。しかし、エースもやられっぱなしは気にくわなかった。

 

『終われないのはこっちもなんだよ!』

 

エリゴスはソードメイスを真上に掲げる。そのまま重力に任せてソードメイスを振り下ろし、スターダストは潰されーー

 

『ごあっ!?』

 

その時、エースのコックピットが衝撃で揺れる。そして、真横に間接部分からもがれたソードメイスを握る腕が落ちてくる。

エースがスターダストを見ると、破壊されていなかったショートバレルキャノンから煙が出ていた。

 

『まだだ!まだ諦めてたまるかぁ!』

 

エリゴスは足を上げると、スターダストの腕を蹴りつけた。しかし、それでもスターダストは押し込もうとする。

 

「うあぁぁぁぁぁっ!!」

『うおぉぉぉぉぉっ!!』

 

両手で左レバーを押し込んで前進を続けるナツキと、エリゴスに何度も腕を蹴らせるエース。両者共に叫びながら抵抗を続けていた、その時だった。

ガキン!と何か重たい音が響いた。

 

「はぁーー、はぁーー……!」

 

荒く呼吸をするナツキはカメラを下に下げる。ヒートランスはエリゴスの胸部を深々と突き刺していた。

 

『し、勝負アリ!勝者、ナツキ選手ーーーっ!』

 

わぁぁぁっ!と歓声が上がる。

観客席から見ていたヴィオレも拍手をする。

 

「何と言うか、泥臭い奴だな」

「そこは二年半前から変わってなかったですねー。ちょっと安心しました」

 

グレイと会話しつつ、ヴィオレはスターダストを見る。その目は嬉しそうな、安心していた様子だった。

ヒートランスを手放したスターダストは尻餅を着いて座り込む。

 

「は、はぁぁぁ……」

緊張が解けて膝から崩れ落ちそうなのを必死に堪えながら、ナツキは勝利を掴んだ余韻に浸った。

 

***

 

本来なら勝ち抜き戦だが、スターダストはエリゴスとの激闘で大破していたのでナツキは抜けることになった。

 

「いやぁ、お見事だねぇナツキ!」

「ありがとう、ヴィオレ。でも背中が凄いいたたたたた!!」

 

ヴィオレがナツキの背中をバシバシ叩く。あまりの強さにナツキは絶叫せざるを得なかった。

 

「お疲れ様、ナツキ君。君の勇姿、しっかり撮らせてもらったからね」

「グレイさん!あ、撮影ありがとうございます!」

 

グレイが撮ったスクリーンショットをナツキに見せる。どれも上手く撮れており、ナツキは頭を下げて感謝する。

 

「おーい!」

「あれ……エース?」

 

すると、さっきまでナツキと戦っていたエースがやって来た。エースは走ってきたのか膝に手を着いてぜーぜーと息をすると、呼吸を整えてサムズアップを決めた。

 

「ナイスバトルだったぜ!」

「ありがとうエース。君もスゴかったよ。あと、ジャスティス・カザミだっけ?ちゃんと見るよ」

「おう、サンキューな!」

 

勝負の前に布教されたカザミの動画を見ることを約束しつつも、互いに称賛しあう。

それを微笑ましく見ていたヴィオレは本来の趣旨を思い出してナツキに言う。

 

「ナツキ、フレンド申請しなくていいの?」

「あっ!グレイさん、エース、僕とフレンドになってくれないかな?」

 

フレンドを増やすために来たのに、忘れてしまってた事にヴィオレは少し呆れる。しかし、思いだしたナツキはフレンド申請をした。

 

「おう、良いぜ!一緒にカザミさんについて語り合おうぜ!」

「君とフレンドになったらいつか面白いものが撮れそうだね。良いよ」

 

エースとグレイはその申請を受け取ってナツキとフレンドになる。

こうして、アッシュとセレンだけだったフレンド欄は少し増えたのだった。




と言うことで、今回のゲストはミストラルさんの執筆する作品『ガンダムビルドダイバーズ:Finder』からグレイさんでした。
ミストラルさんとは結構お世話になってまして、このBDSDに出てくるガンプラもミストラルさんにアイデアを貰いました。ホントに助かってます。
ビルドダイバーズ:Finderの方ももう何処からそんな湯水みたいにアイデアが溢れ出てるんだと言わんばかりに個性的なキャラとガンプラばかりなので無茶苦茶面白いです。

もうそろそろキャラもガンプラも増えてきたので設定も出す予定です。設定出したら話数出す度に更新する予定なので、そちらもお楽しみに。

それでは、次回予告へ……

***

とある出来事で見出されたスターダストの新たな可能性。

ナツキはその可能性を形にする為のヒントを求めて砂漠の聖地へと向かう。

聖地でナツキを待ち受けるのは、出会いか、それとも……

第4話 砂上の帆立貝
お楽しみに


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第5話 砂上の帆立貝

1~3話まで4000だったのが今回で一万文字いきました。書きたいこと詰め込もうとすると自然と文字数増えるんすね~。また一つ賢くなれた。

では、スタートー!


世の中、思いもしない所にアイデアがある。なんてのは良く聞く話であるが、まさか本当にあるとは思わなかった。

そう痛感せざるを得ない事がナツキの目の前で広がっていた。

 

「BUILD DiVERS……」

 

エースから推されて時間のある時に見始めたジャスティス・カザミの動画。その動画内でナツキが注目したのは、カザミーーではなく、彼と同じフォースに所属しているヒロトと言うダイバーだった。

彼の乗っているガンプラはガンダムよりも一回り小さな大きさをしているコアガンダムだった。換装することでサイズが通常のガンプラ程度にまで大きくなり、更に様々な状況に対応できるらしい。

 

「そうか、それがあったか……!」

 

しかし、ナツキの興味はコアガンダムのコアドッキング・システムではなく、別の物にあった。

 

「そうと決まれば……!」

 

ナツキは直ぐ様ノートを取り出すと、設計を始めた。

 

***

 

第4話

砂上の帆立貝

 

***

 

「うぁ~~~」

 

翌日、アッシュの隠れ家にてナツキは机に突っ伏して変な声を出していた。

 

「ナツキ、どうしたの」

 

机に突っ伏すナツキの隣にセレンが座る。ナツキはそれに気づいて顔だけ横に向けた。

 

「実はね。新しいアイデアが浮かんだんだけど、全然形に出来なくて……」

 

顔の真ん前を人差し指で円を描くながら呟くナツキ。セレンはそれを表情変えずに見ていた。

 

「また何か思い付いたのか?アイデアって何だよ」

 

コーヒーを淹れていたアッシュがマグカップを片手に机に座った。マグカップの中にはコーヒーが入っており、良い香りが漂ってくる。

 

「支援機なんです」

「支援機?悪くないアイデアだけど、採用するのは何でだ?」

 

支援機……ガンダムシリーズに幾度か出てくる、戦闘支援を目的とした機体で戦闘機タイプが多い。

ナツキはウインドウを開いてG-Tubeを開くと、とある動画を見せた。それはカザミが配信しているフォースBUILD DiVERS の動画である。

 

「この支援機みたいに、スターダストの戦術を広げるための支援機を作ってみたいなーなんて思いまして……」

 

ナツキが指を指したのはコアガンダムの支援機コアハンガーである。アッシュはそれを見ながら「ほーう」と関心を向けた。

 

「具体的にはどうしたいんだ?」

「ビクトリーやインパルスみたいな分離パーツの予備と、武装パッケージを載せたいなって思ってるんですけど……アイデアがこれ以上浮かばなくて……」

 

また机に突っ伏すナツキ。アッシュとセレンは互いに顔を見合う。アッシュは頭をかきながら提案した。

 

「あー、ナツキ、ぺリシアエリアに行ってみるのはどうだ?」

「ぺリシアエリアって、あの?」

 

ぺリシアエリアーーそれは、ガンプラビルダーの聖地とも言われる砂漠のど真ん中に存在する場所である。

 

「でも、今の僕じゃガンプラを出せないから、行くのも一苦労ですよ?」

 

ぺリシアエリアでは特定のランク以上でないとガンプラは出せず、未だEランクのナツキでは広い砂漠からぺリシアに向かうのも一苦労である。

 

「だが、そこさえ何とかすれば、メリットだらけだろ?」

「それは……確かに」

 

ぺリシアはガンプラビルダーと言われるに相応しい程に様々なビルダーがこの地に集まって自身のガンプラを見せ合って意見を交換し合っている。

 

「問題はどうやって行くかだな……」

「それは……あっ」

 

移動手段に関して考えていたナツキはふととある事を思い付く。ナツキはすぐさまウインドウを開いた。

 

***

 

『駄目だね』

 

幼馴染……ヴィオレからの返答はNoだった。

 

「お願い!ぺリシアに連れていって欲しいんだ」

『舐めないでほしいね!私はそんな軽い女じゃないんだよ』

 

ヴィオレなら連れていってくれるかも……と期待して連絡してみたら、速攻で拒絶された。

 

『忘れたのかいナツキ。私が乗り物に乗せたい相手は女の子さ!野郎だけなんて意地でも乗せないよ!』

「そこを何とかさ、ね!?」

『フン!なら可愛い女の子を連れてくると良いさ!まぁ、ナツキが女の子を連れてこれるとは思わないけどね!』

 

ヴィオレのNOの一点張りにナツキは頭を抱える。ヴィオレのオーダーをどうにかして突破すれば解決するのでは……と考えた時、ふと隣を見た。

 

「……?ナツキ?」

 

そこには、美少女(セレン)がいた。

 

***

 

砂漠のど真ん中に一台のモビルワーカーが走っていた。鉄華団が使用していたもので、後方部分にはナツキが立っている。

 

「助かったよ、ヴィオレ」

『ぐぬぅ……まさかナツキが既にこんな可愛い女の子と知り合っていたなんて……』

『ヴィオレ、暑苦しい』

『あぁん、そんな事言わないでよセレンちゅわ~ん』

 

操縦席から聞こえるのはヴィオレとセレンである。このモビルワーカーはヴィオレが自作したものらしく、ガンプラなので操縦席のスペースは二人乗りできる。とは言え、今は三人なのでナツキが後方部分に立っているのだが。

 

「ごめんね、セレン。巻き込んじゃって」

『ん、平気。お出掛け、慣れてる』

『セレンちゃんは偉いな~!』

『ん、むぅぅぅ~!』

 

ヴィオレがセレンに抱きついているのが容易に想像できる。「ガードフレーム呼んでやろうかな」とナツキは一瞬考えてしまった。

 

『んふふふふふ~……あ、見えてきたよ!』

 

ヴィオレの報告でナツキは視線を前に向ける。砂漠のど真ん中に大きな町が見える。

 

「ここも二年半ぶりに、なるのかな……」

 

砂漠の聖地・ぺリシア。

ナツキにとって2年半ぶりのそこではどんなものがあるのか、心の何処かでワクワクを感じる自分がいるのを感じた。

 

***

 

ぺリシアエリアは二年前と変わらず多くの人で賑わっていた。

ある人は自身の作品を披露するため。

ある人は展示された作品を見に行くため。

ある人は観光目的でーーー

 

「凄い。人が沢山だね」

「声、沢山聞こえる」

 

ナツキとセレンはその人だかりに少し気圧されつつも、その地へ踏み込んだ。

 

「それじゃあ、一時間後にここ集合ね」

「え、ヴィオレはどこか行くの?」

「私には私の思惑があってここに来たからね。それじゃ、セレンちゃん、また会おうね~」

 

ヴィオレはナツキに背中を向けると、人混みの中に消えていった。急に置いて行かれた二人は棒立ちになるが、すぐに互いの顔を見る。

 

「僕達も行こうか」

「ん、わかった」

 

ナツキの後ろをセレンが追いかける様に歩く。ナツキはふと初対面の時を思いだした。

 

「(あの時と逆だな……)」

 

挫折を味わされて、戻ってくるんじゃなかったと後悔していた時、セレンが手を差し伸ばしてくれた。

あれがなかったら、アッシュが師匠になってくれず、今頃自分はGBNを辞めていただろう。

 

「ありがとう、セレン」

「ん……何が?」

 

無意識に言葉に出してしまっていたことに気づくナツキ。唐突に感謝されたら誰だって困惑するはずだとすぐに察した。

 

「あぁいや!何でもないよ!」

「そう?なら、良いよ」

「そ、それはそうと、どれから見ようかな~」

 

照れ隠しに話を逸らすナツキ。だが、正直色んな作品が展示されているせいで何が何だかさっぱりな状態なのは事実だった。

 

「お困りっすかね?」

 

すると、誰かから呼び掛けられた気がしてそちらを向く。

ナツキに話しかけたのは、水兵の服を着た中性的な顔つきが特徴の少年だった。

 

「えっ……と、僕達?」

「そうっすよ。辺りをキョロキョロしてましたし、もしかして迷ったのかなって」

「あぁ……まぁ、実質迷子なのかな?」

 

ナツキは水兵の少年にここに着た経緯を話す。それを聞いていた少年は笑顔で大きくうなずいた。

 

「成程!そう言う事だったんすね!なら、僕に案内させてくれませんかね?」

「良いのかい?助かるよ!」

 

ぺリシアに詳しい人から案内されるのはとても助かった。これならあちこち行って迷子になることは無いだろう。

 

「僕はスカロプって言うっす!よろしくお願いするっす!」

「よろしくね、スカロプくん。僕はナツキ。この子はセレンって言うんだ」

「ん、よろしく」

 

互いに自己紹介をすると、スカロプがナツキと言う名前に反応した。

 

「ナツキ?どこかで聞いたような……気のせいっすね」

「ん?どうかした?」

「いいえ、大丈夫っす!さぁ、行くっすよ!」

 

一人増えて三人になったナツキ達はぺリシア散策を行うことにした。

 

***

 

それから一時間しかないと言うことで少しハイペースで展示されたガンプラを見て回っていたが、ナツキからはあまり目ぼしいものは見つからなかった。

 

「むしろ、色んなものを見すぎたせいで頭が混乱しちゃってる……」

「大丈夫っすか?一旦休憩にするっすよ?」

「ありがとう。でも、時間は結構少ないし、大丈夫だよ」

 

スカロプが心配してくれたのをナツキはありがたく思いつつも、散策は続けることにする。

ふと、セレンがいない事に気づいて辺りを見回すと、とある展示されたガンプラの前に立っているのが見つかった。

 

「セレン、どうかしたの?」

「ん、あの子……」

 

セレンが指を指したのは劇場版ガンダム00に出てくるガンダムハルートだった。オレンジ色なのが空色にカラーチェンジされており、背部コンテナ部分も大型のウイングに変更されている。

 

「このハルートがどうかしたの?」

「この子も空を飛ぶことが好きって言ってる」

 

セレンのまるでガンプラが話しているかのような独特な言い回しにナツキは少し困惑するが、彼女の感性が人一倍良いんだと自己完結する。

 

「この子もって、他に誰かいるの?」

「ん、私。私も、空が好き」

 

セレンの視線がハルートから更に上……偶然雲一つない青空に視線が向けられる。

ナツキもそれに合わせて空を見上げた。

 

「私は皆のもっと飛びたい、遠くへ行きたいって気持ちを貰って生まれてきたの」

「え……?」

 

ナツキはセレンが独特な感性を持っていると自己完結したが、そうでは無いとすぐに気づいた。

 

「セレン、君は一体……」

 

セレンが何者なのか、それが気になって聞こうとしーーー

 

「あの、気に入ってもらえましたか?」

「え?わぁっ!?」

 

ナツキは誰かに話しかけられたのに気づいて直ぐ様立ち上がる。

そこにはナツキやスカロプと年の近そうな二人の少女がいた。片方は白を基調とした大人しそうな、もう片方は青を基調とした活発そうな様子で、二人は色違いの同じ和服を来ていた。

 

「私達の作品、良かったかな?」

「えっと、二人で作ったんですか?」

 

青い活発な方の少女の私達と言うワードからナツキは二人で作ったことを聞く。ナツキの問いに白い大人しそうな方の少女が答えた。

 

「はい。私とソーンで作ったんです」

「私とブランが作った自信作なんだ!」

「お二人で作ったんですね。とっても良い機体ですよ」

 

青い活発な方はソーン。白い大人しそうなのがブランと言うらしい。

ナツキはハルートを見ながら自身の感想を素直に答えた。隣にいたセレンもハルートを見る。

 

「二人に作ってもらえて凄い嬉しいって言ってる。本当に幸せそう」

「そう?良かった……」

「私とブランが組めば最強のビルダーコンビだからね!」

 

ソーンが自慢げに胸を張って答える。ブランはそのソーンを見て微笑ましそうに笑っていた。

 

「二人で一緒に、か……」

 

ナツキはふとハルートからセレンを見る。その時、何か点と点が繋がっていくような感覚がした。

 

「それじゃあ、私達はもう帰るので……」

「もっと色んな人に見せたかったんだけどなー」

「仕方ないでしょ。展示にも順番があるんだから、次の人の為に空けておかないと」

 

ブランとソーンは展示を終えてぺリシアエリアから離れる様子だった。

 

「あの、最後にありがとうございました。僕、ちょっと悩んでた事があったんですけど、答えが見つかりそうです」

「それは良かったわ。私達も、最後に誰かの力になれて嬉しいもの」

「また会ったら、君のガンプラも見せてねー!」

 

ブランとソーンはハルートを消すと、ナツキとセレンに別れを告げて人混みの中に消えていった。

 

「おーい、ナツキさーん!」

 

すると、入れ替わるようにスカロプがやって来る。

 

「ごめん、待たせちゃった?」

「大丈夫っすよ。暇潰しにガンスタ見てましたし」

「が、ガンス……何それ」

 

悲しい事にナツキは復帰勢ではあるが、中堅ダイバーとして活動していたため、全て知っている程詳しくはなかった。

 

「ガンスタグラムっすよ、ナツキさん。SNSみたいなものっす」

「へ、へえ、成程?」

 

G-Tubeは知っていたが、まさかそんなものまであったとは知らなかったナツキは少し置いてけぼりにされてるような感覚になる。

 

「それで、僕がずっと応援してるダイバーの方がここ(ぺリシア)にいるかもしれないんすよ!この人なんですけど……」

 

スカロプがガンスタグラムの画面を見せる。

そこには、ガンプラを背景に女性ダイバーとツーショットをする幼馴染(ヴィオレ)がいた。

 

***

 

ぺリシア散策から一時間後、集合時間になったナツキとセレンはスカロプと共に集合場所でヴィオレと合流していた。

 

「ヴィ、ヴィ、ヴィオレさん!?」

 

スカロプは集合場所に来たヴィオレを見つけて大きく動揺する。当の本人であるヴィオレは少し首を傾げていた。

 

「んー……あ、もしかして、私のファン?」

「ひぇっ!?ひゃい!僕、毎日ヴィオレさんの投稿見てるっす!」

「マジ!?嬉しいなぁ~。あ、アカウント教えてほしいな。フォローしとくから」

「ふ、フォロー!?ぜ、是非お願いしますっす!」

 

大興奮のスカロプといつものノリで接しているヴィオレを「世間って狭いなー」と軽い気持ちで見ていた。

 

「ヴィオレ、有名人だったんだね」

「まぁね~。ガンスタグラムでトップクラスのフォロワー数だから、サ!」

 

ヴィオレはガンスタグラムで様々な写真を投稿していいねを稼いでいる俗に言うガンスタグラマーと言うやつである。ヴィオレはその中でもかなり有名らしい。

 

「どんなの投稿してるの?」

「んーと、GBNの美味しいご飯とか、他の人のガンプラとか、可愛い女の子とか!!」

「あ、うん、だろうと思った」

 

ヴィオレだから女の子とか狙ってるんだろうなぁとすぐに考えたが、まさにその通りだった。実際、スカロプに投稿を見せてもらった時は一日一回必ず女の子とツーショットがあった。ナツキがヴィオレと再開した時もだ。

 

「よーし、じゃ、そろそろ帰るとーー」

 

ヴィオレが帰るためにモビルワーカーを出したその時、ナツキのウインドウが突如出現して警報音に似た音が鳴り響いた。

 

「な、何これ!?」

「それって、エマージェンシーアラート?私それ切ってたけど、ナツキがいない間に実装されたし仕方ないか」

 

エマージェンシーアラート。

通常ディメンション内でプレイヤーキル、もしくはそれに相当する行為が行われた時に広範囲内のダイバーに救助要請を送るシステムである。

これで助けられたダイバーもいれば、逆に戦闘中に通知が来て邪魔になったり、単にうるさいと言う理由で通知をオフにしているダイバーが大半である。

ナツキの場合、そのシステム事態を知らないので通知をオフにしてなかったのだ。

 

「ナツキ、ナツキ、あの子が助けてって、言ってる……!」

「あの子……?」

 

セレンがナツキの袖を引っ張って助けを求められていることを訴える。セレンの言うあの子が誰なのか一瞬疑問に感じたナツキだったが、すぐに思いだした。

 

「青いハルートか!」

 

青いハルート……即ち、ブランとソーンが作ったガンプラに何か危機が迫っている事にナツキは気づいた。

 

「ヴィオレ、モビルワーカー借りるよ!」

「えっ、ちょっ、ナツキ!?」

 

ナツキはヴィオレの出したモビルワーカーに乗り込む。セレンもそれを追いかけてコックピット内に転送した。

 

「ナツキ、あっち!」

「分かった!フルスピードで行くよ!」

 

全速力でモビルワーカーを飛ばす。車輪が飛ばした砂煙にヴィオレは咳き込みながら呆れたように呟く。

 

「あのお人好しめ!どうしよう。私バトルとかする予定なかったからあの子置いてきちゃったしなぁ……!」

 

ヴィオレにもバトルをするために自作したガンプラがあるのだが、今日の予定ではバトルは無かったのでリアルの方にある。

 

「あの、大丈夫っすかね?」

 

心配したスカロプがヴィオレに話しかける。ヴィオレはスカロプを一瞬チラッと見た後、再度スカロプの方を見た。綺麗な二度見である。

ヴィオレはガッチリとスカロプの肩を掴む。捕まれたスカロプは「ひゃあ!?」と声をあげてしまう。驚きと言うよりかは、歓喜の方が近かったが。

 

「あの、私のファンとして、お願いを聞いてくれないかな……?」

「あ……はい、是非!」

 

ヴィオレの願いをあっさり聞いてしまうスカロプ。人はそれを惚れた弱み……と言うのかもしれない。

 

***

 

一方、砂漠のど真ん中で一機のMSが倒れていた。それは、ナツキが見たガンダム青いハルートである。

 

「ソーン、しっかりして!早く動かないと……!」

「う、あ……!」

 

ハルートが複座式であるように、二人のハルートも複座式の仕様であるのだが、本来機体操縦をするはずのソーンは完全に動けずにいた。

 

『手こずらせないでほしいですね』

「「っ!?」」

 

ブランとソーンはその声を聞いてハルートを振り返らせる。そこには、紫の黒の恐竜を模した見た目のガンダムレギルスがいた。

 

『全ての物事に終わりがあり、終わりを迎えることで完成します。貴方のガンプラもそうであるように』

 

紫のスーツを着た眼鏡の男『ギル』は自身のガンプラ『ガンダムレギルスビトレイ』を前進させて、二人のハルートへ迫る。

 

「ごめん。ごめん、ブラン……私がぺリシアに展示しようって言っちゃったばかりに……」

「ソーン……」

 

二人のハルート……『ハルートスワロー』は二人で一緒に空を飛べるようにと考えて一緒に作ったガンプラなのである。

 

「ソーンは悪くないわ。だから自分を責めないで」

「ブラン……ごめん。ううん、ありがとう……」

 

ブランは振り替えってソーンの顔に触れると、泣きそうになっている彼女の額に額を合わせて宥めるように言葉を紡ぐ。

ソーンも冷静になってブランに感謝の言葉を口にした。

 

『抵抗はしないのはこちらにとっても助かりますね。それでは……良き終末を』

 

レギルスビトレイが手のひらからビームサーベルを伸ばしてハルートスワローを切り裂こうとした、その時だった。

 

「やめろぉぉぉぉぉっ!」

 

激昂と共にレギルスビトレイの頭に弾丸が直撃した。弾丸はレギルスビトレイの頭部の装甲を凹ませた。

 

『……何方でしょうか』

 

ギルは攻撃を中断して自身の妨害をした相手を見る。それは、ナツキとセレンが乗るモビルワーカーだった。

 

「貴方は、さっきの……」

「助けてくれた……?」

 

ブランとソーンが助けが来てくれたことに驚く。

しかし、改造されたものとは言えモビルワーカー。ヴェイガンが作り出したガンダム、その改造機であるレギルスビトレイで対抗できるとは誰も思えなかった。

 

『まさか邪魔が入るとは……仕方有りません。まずは貴方から終わらせてあげましょう』

 

ギルの意識がモビルワーカーに向けられる。

ナツキはセレンに意識を向けた。

 

「(セレンがいる以上、無茶は出来ない。全速力で逃げ回って、助けが来るまで持ちこたえるしかない!)」

 

ハルートスワローが強制ログアウトやぺリシアエリアからの離脱出来る時間さえ作れれば実質ナツキの勝ちな様なものだった。

 

ナツキはモビルワーカーの銃口をレギルスに向けたまま全速力で走り出す。それと同時に両サイドに装備された機関銃連射する。

 

『たかがモビルワーカーの一つ程度……取るに足らないと分からないですか?』

 

レギルスビトレイの背部に搭載されたテイルブレードが伸びてモビルワーカーに飛ばされる。

 

「っ!!」

 

モビルワーカーを回避させようとする。

テイルブレードはモビルワーカーの真横に突き刺さるが、その衝撃によってモビルワーカーが横転してしまった。

 

「ぐぁぁぁぁぁっ!!」

「きゃぁぁぁっ!?」

 

何度も回転した後、横になったまま砂漠を滑る。

 

「ぐっ……大丈夫、セレン」

「ん、大丈、夫……」

 

揺れる頭の意識を正そうと頭を揺らす。モニターには目の前まで迫るレギルスビトレイがいた。

 

『大見得を張った割には呆気ないですね。これでおしまいにしましょう』

 

レギルスビトレイの銃口が倒れたモビルワーカーに向けられる。

ナツキが攻めてセレンだけでも逃がそうとした、その時だった。

 

「そこまでっすよ!」

 

声が聞こえたその時、ギルの耳にアラートが聞こえた。レギルスビトレイは見上げると、その影が見えた。

ーーその瞬間、鉄の雨が降り注いだ。

レギルスビトレイはすぐさま回避をする。

 

『新手ですか』

 

モビルワーカーとレギルスビトレイの間に割り込むようにそれは降り立つ。

それは、灰色の混じったようなくすんだ水色をしたグフイグナイテッドの改造機だった。両肩にはザクウォーリアのシールドが付けられており、左腕には3連装ガトリングが装着されている。そしてその上から六銃身ガトリングが装着されたシールドを持っていた。

一言で言うなら、グフイグナイテッドとグフカスタムを合わせて+αしたような機体だった。

 

「大丈夫っすか、ナツキさん!」

「スカロプくん!来てくれたのかい!?」

「ヴィオレさんから頼まれたっすからね」

 

グフイグナイテッドの改造機『グフシェルカスタム』に乗っているのはスカロプだった。

グフS(シェル)C(カスタム)はシールドガトリングの銃口をレギルスビトレイに向ける。

 

「ぺリシアエリアで展示目的で来ていたダイバーを狙う極悪ダイバー……噂に聞いてましたが、ホントにいるとは思わなかったっす」

『噂が立っていましたか……ですが問題は有りません。ここにいる全員を終わらせれば良いだけです』

 

レギルスビトレイがビームライフルを構えると、即座に発砲した。グフSCはそれを避けると、ガトリングから弾丸を連射する。レギルスビトレイは空中に飛び立つと、背部のウイングを広げた。

 

『そのガトリング、弾数は兎も角厄介では有りますね……こちらも本格的に仕掛けさせてもらいましょう』

 

レギルスビトレイの背中から光の粒子が展開される。特殊なビット兵器『レギルスビット』である。

レギルスビトレイが腕を振るうと、レギルスビットからビームが放たれた。今度はグフSCが避ける側になる。

 

「破壊できないビットなんて、厄介すね!」

 

飛んでくる数多のビームをグフSCは避けていく。レギルスビトレイはライフルを構えて回避を続けるグフSCに向けて放った。

 

「うわっ!?」

 

グフSCは肩のシールドを構えてビームを防いだ。

 

『ほう、シールドにはビームコーティングですか』

「グフだからと侮ること、なかれっす!」

 

グフSCはビームの弾幕の中から抜け出すと、ガトリングシールドを発砲しながら接近する。

 

『甘いですよっ』

 

レギルスビトレイはレギルスビットを前方に固めてシールドのようにして弾丸を全て防いだ。

 

「そこを待ってたっす!」

 

グフSCはシールドのガトリングを外すと、大きく跳躍した。レギルスビトレイはテイルブレードを飛ばす。しかし、グフSCは肩のシールドでそれを受け止める。テイルブレードはシールドに突き刺さるが、手持ちのシールドに納められたヒートサーベルを引き抜いてワイヤー部分を切断した。

 

『なんと……!?』

「せりゃーっ!」

 

肩のシールドをパージして手持ちのシールドを捨てると、3連装ガトリングガンを発砲して背部ウイングを撃ち抜いた。

 

『肉を切って、骨を断つとは、良く言ったものです……!』

「まだっす!」

 

グフSCは急降下してヒートサーベルを振り下ろすが、レギルスビトレイはそれを避けてライフルを構えた。

 

「させないっすよぉっ!」

 

グフSCはヒートサーベルを投げ捨てると、腕部に内蔵されたヒートロッドを伸ばしてライフルに先端を当てた。即座に電流が流し込まれてライフルは爆発してしまう。

 

『このままでは……っ!』

 

爆煙で視界を塞がれてしまったレギルスビトレイ。その直後、爆煙から弾丸が胴体を貫いた。

 

『バカな……!?』

 

レギルスビトレイは胸部から上をパージ。レギルスコアになって飛び出した。

地上を見ると、グフSCがガトリングガンを構えており、爆煙越しに狙い撃ったと考えられる。

 

『満身創痍ですが、一旦退けばこちらのものです。今度会った時こそ、終わらせてーー』

「逃がしはしないっすよぉぉぉぉぉっ!」

 

スカロプは残っていた肩のシールドに仕込まれていたビームアックスを引き抜くと、急上昇してレギルスコアを切り裂いた。

 

『あぁ、私が完成してしまう……!』

 

ギルが己の最後を悟った時、レギルスコアが爆発した。

 

「ふぅ……終わったっすよ~!」

「た、助かったぁ……ありがとう、スカロプ!」

 

通信が繋がってスカロプのサムズアップが映る。ナツキはホッと一安心すると、サムズアップをし返した。

 

***

 

ギルを倒したナツキ達は改めてぺリシアエリアを後にした。ナツキとセレンはスカロプのグフSCに乗り、ハルートの二人はヴィオレのモビルワーカーに乗せて、ヴィオレはその背部で立っていた。

ナツキが何故モビルワーカーを運転しなかったのかと聞くと、ヴィオレは真面目な表情で答えた。

 

「百合の間に割り込むような事は出来ない」

 

ぶれないなぁとナツキは苦笑してスカロプの元に向かった。

 

「本当に、ありがとね。助かったわ」

「ホント、あのままじゃ私達お陀仏だったからねー」

「あの時泣きかけてたのは誰かしら?」

「それ言わないでよブラン~!」

 

ブランとソーンの微笑ましい会話にヴィオレは合掌している。

 

「どうかしたの?」

「いや、うん、てぇてぇ……」

 

セレンが合掌しているヴィオレは壊滅した語彙力の中で言葉を振り絞る。ナツキはそっとしておこうと決心した。

 

「ん、ナツキ、フレンド」

「え?あぁ、そうだね」

 

折角三人も出会えたのだから今の内にフレンドのお誘いをする。

 

「良いわよ。またぺリシアに行くなら呼んでね」

「私的には少し勘弁かな~」

 

ブランとソーンはすぐに了承すると、別れを告げてその場を去っていった。

 

「スカロプもどうかな?」

「僕っすか?是非!よろしくお願いするっす!」

「あ、じゃあ私ともフレンドなろうよ」

 

スカロプともフレンドのお誘いすると、語彙力が復活したヴィオレもスカロプとフレンド申請をする。

 

「ふぇっ!?えっ、えっと、不束者ですが、よろしくお願いします!」

「あはは、何それ!まぁとりあえずよろしくね」

「僕の方もよろしくね」

 

ヴィオレとナツキがスカロプとフレンド登録をすると、ヴィオレは本来の趣旨を思い出してナツキの方を見た。

 

「そう言えばナツキ、何か良いアイデアは浮かんだかな?」

「え?あぁ……うん、大丈夫」

 

支援機のアイデアは既に固まっていたナツキは視線をセレンの方に向ける。セレンはその視線に気づいてナツキの方を見返した。




今回出てきたスカロプくんは恋文さんに作ってもらいました。この場を借りて再度感謝させてもらいます。ありがとうございます!

あと皆さんが待ってるであろう設定集は次回の話出したら出す予定です。待っててください。ちゃんと出しますので……

では、次回予告

***

次回予告

遂に形になるスターダストの支援機。

それを製作するためにナツキはリアルで行動を始める。

そのナツキに意外な再開が待ち受けていた!

次回、空への祈り
お楽しみに……


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第6話 空への祈り

前回一万字突破して、今回も一万字いくかなーって思ったらそんな事なかった。
今回、ついに、やっとメインヒロイン登場です。名前だけだったのでやっと出せたって感じです。

今回も他の方の作品からゲスト出演させていただきました。
誰なのか楽しみにしつつ、どうぞ~


木々が生い茂った山間のフィールドのど真ん中に存在する基地。そこでは複数のMSが倒れていた。

 

『ば、化け物だ……!』

 

大破して戦闘不能になったヘビーガンが自身を大破まで追い込んだMSを見る。そこには、白い二刀流のシナンジュが立っていた。

 

「…………」

 

シナンジュは実体剣でヘビーガンを刺し貫く。その時、背後の建物からガンキャノンD型が現れる。

 

『コイツゥゥゥッ!』

 

ガンキャノンD型が渾身のバズーカを放つが、シナンジュはヘビーガンから実体剣を引き抜くと、バズーカの弾を紙一重で回避する。

 

『う、うわぁぁぁ!』

 

ガンキャノンは再度バズーカを放つが、シナンジュはそれを実体剣で切断をすると、ガンキャノンの胴体を切断した。

 

【Battle Ended!】

【Winner:Your Teams!】

 

シナンジュを操縦していた女性のダイバーはコックピット内で腰まで伸ばされたアッシュブロンドの髪を靡かせる。

 

「あ、あの、助かりました!」

「どういたしまして。貴方もナイスファイトだったわよ」

 

建物に隠れていたガンダムNT-1アレックスの女性ダイバーがシナンジュのダイバーに連絡を繋げて感謝の言葉を述べる。

彼女らが参加していたのはシャフランダム・ロワイヤルと言われる受注した10人のダイバーをランダムに5対5に振り分けてチームバトルを行うミッションである。

 

「まさかスカーレット隊が味方になるなんて……」

「彼らだってベストを尽くしたはずよ……恐らく。それに、彼らが意識を向けてくれていたから接近できたのだし」

 

シャフランダムのルール上、そのランダム性のせいで当たり外れがかなり極端である。

彼女らの場合、0080でも有名な出オチ部隊『スカーレット隊』を参考にしたパーティーが仲間におり、避けられない運命だったのか即撃墜されていた。

しかし、彼らが実質陽動の働きをしてくれたお陰でシナンジュは見事敵との接近に成功。たった()()()()()で敵五機を全て撃墜してみせた。

 

「あの、フォースって入ってます!?今、仲間探してるんですけど……」

「ごめんなさい、フォースにはもう入ってるの」

 

アレックスのダイバーがフォースをお誘いをするが、シナンジュのダイバーは既にフォースに参加していた事から断ってしまう。

 

「そうですか……それじゃあ、名前だけ聞いて良いですか?」

 

純白のシナンジューーー『シナンジュ・ヴィエルジュ』に乗るダイバーはその名を名乗った。

 

「ルナよ。フォース『シークレットガーデン』のリーダーを務めてるわ」

 

***

 

第6話

空への祈り

 

***

 

ぺリシアエリアでの一件から数日後、ナツキは駆け足でエスタニアエリアを進んでいた。目的地はいつものアッシュの隠れ家である。

 

「出来ましたぁ!」

 

隠れ家の扉を開けて早々にナツキは笑顔で宣言する。隠れ家でくつろいでいたアッシュとセレンが驚いた様子で扉の方を見ていた。

 

「あー、ナツキ。……何がだ?」

 

アッシュが冷静になりながらそう聞く。ナツキは笑顔を絶やさずにテーブルに座る。

 

「支援機の設計ですよ!ぺリシアエリアで学んだことを活かせそうなんです!」

「あぁ、支援機か。どんなものなんだ?」

 

ぺリシアエリアに行ったその日からナツキはアイデアを整理し、どのような仕様にするのかを固めるためにリアルの方で活動していた。

 

「色々調べてみると、支援機は玄人向けでした」

 

BUILD DiVERSの動画でも、コアガンダムを操縦していたダイバー『ヒロト』がコアガンダムの戦闘に集中せざるを得なくなり、支援機の操縦がおざなりになる事があった。

その為、2年半ぶりに復帰してまだ間もないナツキが扱えるかといったら難しいだろう。

 

「だな。正直お前が上手く使いこなせるかと言われたら微妙だ」

「その為、一つアイデアが浮かんだんです。『支援機は無人じゃなくても良いんじゃないか』って」

「つまり、人を乗せると?」

「はい。2機での行動をメインにした機体にしたいと考えています」

 

ナツキのアイデアにアッシュは「ほう」と興味ありげに返事をする。しかし、そこまで来ると一つの疑問が浮かんできた。

 

「となると、誰を乗せるんだ?」

 

アッシュの言う通り、乗り手と言う問題が出てくる。支援機は支援する相手にとっては生命線に等しい存在。息を合わせ、的確な判断をし、相方が勝つまで生存しなければならない。

 

「それなんですけど……」

 

ナツキは視線をアッシュの後ろに向ける。アッシュは後ろを向くと、そこには見知った同居人がいた。

 

「……?どうか、した?」

 

西洋人形の様な綺麗な金髪と蒼い目をした少女ーーセレンだった。両手でお盆を持っており、そこには三人分のマグカップがある。

ナツキは席から立ち上がると、セレンの前に立つ。可愛らしく首を傾げるセレンにナツキは……頭を下げた。

 

「セレン、僕の支援機に乗ってくれないか?」

 

ナツキの懇願にセレンは表情を変えずにピクンと反応をする。むしろ、表情を変えたのはアッシュの方だった。顔を険しいものにして、ナツキを睨む。

 

「……お前、本気で言ってるのか?」

 

アッシュはセレンの『保護者』を名乗っている。親子関係ではなく、あくまでも保護者であることを貫いているアッシュだが、セレンに対して並々ならない思いで見守っているのは確かである。

 

「すみません、アッシュさん。でも、僕は彼女を乗せたいんです」

 

ナツキが思い出すのはぺリシアの一件。ブランとソーンの作ったハルートスワローを見ていたセレンの表情は起伏が小さいので分からなかったが、その目には確かな『憧れ』があった。

 

「セレンは空に飛びたい。色んな所へ行きたい。そうだよね」

「……ん、そう」

 

ナツキの問いかけにセレンは明確に答える。それを見たアッシュは一瞬息を詰まらせるが、少しして溜め息をついた。

 

「もしかしたら、俺はお前を縛り付けてたのかもしれねぇな」

「アッシュさん……?」

 

アッシュは罪悪感を思い出した様な、そんな顔をしており、セレンとアッシュの関係は簡単なものじゃないと考えられた。

 

「セレン、お前の自由にしな。俺にとやかく言う資格はねぇしよ」

「アッシュ……ありがと」

 

セレンに感謝されたアッシュは満更でもなさそうに顔を逸らすが、すぐにナツキの方を見る。

 

「それで、どんな機体なんだ?」

「あ、はい!これがセレンの為の支援機です」

 

ナツキが見せた画像は支援機のデッサンだった。

その機体はロボットと言うより戦闘機に近く、某歌で最終決戦がお馴染みのロボットアニメに出てきそうな見た目をしていた。

 

「これ……アブルホールか」

 

ガンダムアブルホール……ソレスタルビーイングの第二世代モビルスーツに相当する可変機である。

 

「はい。支援機として機能しつつも機体性能を維持できるものにしたいなと考えました」

 

ナツキが画像を別のものにする。それは複数のコンテナの画像で、中にはトップファイターとボトムファイター、パッケージが別々のコンテナに積まれていた。

 

「このコンテナをさっきのアブルホールに載せるのか」

「GN粒子には重量を軽減できる効果があるので、最大で3つのコンテナを懸架してもスペックが下がることは無いと思います」

 

アッシュはナツキのアイデアに感心する。そして、確信した。『これならセレンを任せれる』と。

 

「セレン、どうだ?」

「ん、とっても素敵……私、これ、乗る」

 

一応アッシュはセレンの意見を聞く。セレンも好評な様子だった。ナツキもそれを聞いて嬉しそうに笑う。

 

「これの製作、任せていいか?」

「勿論!元々僕が決めたことですし!」

 

セレンに許可を貰えたナツキはガッツポーズを決める。

 

「ナツキ、この子の名前は?」

「あぁ、このガンプラは……『アブルホールスカイウォーカー』」

 

セレンの為の支援機『アブルホールスカイウォーカー』にセレンは目を輝かせて見ていた。

 

***

 

翌日、ナツキは砂川模型店に向かっていた。

スカイウォーカーの元となるガンダムアブルホールはHGキットがない。その為、スカイウォーカーは完全自作となる。

 

「フレームはキュリオスだね」

 

砂川模型店に来たナツキは早速キュリオスとプラ板、パテを手に取ると、会計に向かう。

会計にいたのは巻季……ではなく、一人の少年だった。中性的な顔つきで、ナツキも一瞬女の子に見えた。会計にいると言うことは店員であることは分かるのだが、顔つきが巻季に似ている様な気がした。

店員は何か作業に没頭している様子で、ナツキが入店している事すら気づいてない様子である。

 

「えっと、すみません~」

「あ、はい!会計っすね!」

 

ナツキが話しかけると、店員は笑顔で立ち上がり、商品を受けとる。店員が会計をしている間にナツキはふと店員の作業が何だったのか気になって覗く。

 

「え……」

 

そこにあったのは、ぺリシアエリアで自分達を助けてくれたグフ……グフシェルカスタムだった。見た目が似ていると言う生半可なものではなく、寸分違わずに同じだった。

 

「お会計は……」

「君、スカロプだよね!?」

 

ナツキが店員にダイバーネームを聞くと、店員も驚いた様子でいた。

 

「な、何でその名前を!?」

「僕だよ!ナツキ!」

 

ナツキがダイバーギアを取り出してプロフィールを見せる。スカロプ(?)はそれを確認すると、「えぇぇぇ!?」と驚きの声をあげた。

 

***

 

GBNにはフォースネストと言われる。フォース専用の拠点が存在している。

そして、バーのような内装をしているフォースネストは強豪フォース『アダムの林檎』のものである。

 

「ぶはー!マギーさんの所で飲む子供ビールは美味しいなぁ!」

 

カウンター席でお酒……ではなく、子供ビールをゴクゴク飲みまくっているのはナツキの幼馴染『秋島紫音』こと、ガンスタグラマー・ヴィオレだった。

 

「おぉ、ヴィオちゃん良い飲みっぷりー。あ、マギーちゃん、ビールお代わり!」

「はーい。でも飲み過ぎは厳禁よ?」

 

そんなヴィオレに感心しつつ、ビールのお代わりをお願いしたのは胸がヴィオレ並みに大きい中学生くらいの背丈をした女性ダイバーだった。彼女はGBN内にて様々な渾名が飛び交うG-Tuber『チェリー・ラヴ』である。

そして、チェリーから渡されたジョッキを受け取ったのはツナギの前のチャックを上半身全開にした上に赤いボレロを着たオカマで、バー『アダムの林檎』のママを務めるダイバー『マギー』である。

 

「あー、チェリーさんちっちゃくて可愛いし、何着ても似合うし、おっぱいでっかくて最高だなぁ……おっぱい触って良い?」

「ヴィオちゃんもイマドキの女の子らしくて可愛いし、撮影上手いし、おっぱいおっきいじゃん……あ、私も触って良い?」

「こーら。お店でセクハラ合戦しない」

 

互いに両手をワキワキし合って巨乳を揉み合う三秒前みたいな状況だったが、マギーが注意をすると、すぐに大人しく止める。

二人は偶然アダムの林檎で知り合って、互いに嗜好が似通っていた為すぐに仲良くなって、今では時おりこのバーに飲みに行くくらいの仲になっている。

 

「そう言えば、ヴィオレちゃんはどうしてこの店に来たの?」

「あ、それ私も気になった。何で?」

 

ヴィオレがアダムの林檎に来るのはチェリーかヴィオレのどちらかが誘う時くらいで、今チェリーと飲んでいるのは偶然チェリーが店にいたからである。

要するにヴィオレがアダムの林檎に来るのは何かしらの理由があるからであり、マギーもチェリーもその理由が気になっていた。

 

「ん?あー、ちょっと知り合いとお話がしたくてね!」

「知り合い?女の子?」

「それは来てからのお楽しみに~……何て話をすれば、か」

 

すると、扉が開かれて一人の女性が入ってくる。

アッシュブロンドの髪に、黒いロングコートとミニスカートに表が白で裏が赤のマント、頭には白いカクテルハットが付けられている。

 

「ルナママ、来てくれてありがちゅー!」

「どういたしまして。あと、ママはやめてほしいわね」

 

入店してきたのはフォース『シークレットガーデン』のリーダーを務めているダイバー『ルナ』だった。

ヴィオレが抱きつこうとしながら歓迎するが、ルナはそれを避ける。

 

「あらルナちゃんじゃない!数ヵ月ぶりかしら?」

「お久しぶりです、マギーさん」

 

マギーが久々の再開に喜ぶと、ルナはマギーに軽く会釈をする。

チェリーは初対面なのか少し首を傾げたが、すぐに何かを思い出してハッとする。

 

「うん?……あー!GBNママランキング毎月上位に食い込んでる子かぁ!」

「G-Tuberのチェリー・ラヴさんですよね。あと何ですかそのランキング……?」

 

ルナが震えた声でGBNママランキングと言うパワーワードについてツッコミを入れるが、これ以上詮索したら頭痛がしそうなので諦めた。

 

「え、ヴィオちゃんルナママと知り合いだったの?」

「知り合いって言うか、ルナママとは幼馴染なんですよねー!」

 

ヴィオレとルナ……『佐々木春奈』はナツキやノゾム同様幼馴染であり、かつて四人でフォース四季團を結成していた。

 

「だから、ママはやめてくださいっ!ヴィオレも何度も言わせないで!」

 

怒濤のママいじりにルナはぜーぜーと息が荒くなる。

マギーはそんなルナを見てニコニコしていた。

 

「面倒見のよさは入った頃から変わってないわね、ルナちゃん」

「マギーさんも何とか言ってくださいよ……」

 

マギーはバーでの仕事以外では、初心者ダイバーを支援するお助けダイバーの様な活動をボランティアでしており、ルナ達四季團も最初はマギーに助けられたのである。

 

「それでヴィオレ。私をここに呼んでどうかしたの?」

「え?あぁ、今日は大切な話があってね」

 

ヴィオレは(中身は子供ビールの)ジョッキを置き、チェリーとバカ騒ぎを中断する。隣に座ったルナの方を見て今回呼んだ理由について話した。

 

「ナツキが帰ってきたよ、GBNに」

「…………えっ」

 

ヴィオレの報告にルナは硬直する。

ルナ……春奈にとってはナツキは幼馴染である以上に、異性としての好意……要は恋をしているのである。

想い人がGBNに戻ってきてくれた。その事実はルナの感情を大きく揺さぶった。

 

「ほ、本当に!?」

「わざわざ嘘をつくためにマギーさんの所に呼ばないよ」

 

心の底からの笑みを浮かべた後、胸元に手を置いて「良かった」と呟きながら安心する。

 

「マギーちゃん、ルナママがナツキって男の子が好きで、その子がGBNに復帰したのは伝わったけど、どんな子なの?」

「ナツキくん?そうねぇ……真面目で優しくて、ルナちゃん達幼馴染の事を大切に思ってる素敵な子よ」

 

チェリーがナツキについて気になってマギーに聞く。元四季團とは関わりのあったマギーはナツキについて思い出しながら彼の印象を語った。

 

「じゃあ何で止めちゃってたの?」

 

チェリーの問いを聞いていたルナは一瞬フリーズすると、明るい表情から一転落ち込んだ様子を見せる。それに気づいたチェリーは「地雷だったか」と自身の失言を後悔する。

 

「ゴメン。私不用心に聞いちゃった」

「あっ、大丈夫です!ごめんなさい。折角の楽しい雰囲気を壊してしまって……」

「んじゃあ、お互い様ってことにしよ。何なら私がルナママのおっぱいを触る事で手打ちってのでも……」

「こーら。女の子にセクハラしちゃダメよ」

 

チェリーが怪しい笑みを浮かべながら手をワキワキするが、マギーがそれを制する。チェリーは、ルナのコートからでも分かるくらいに盛り上がった(巨乳)を堪能できないことに少しガッカリしながらも諦めることにした。

 

「あははははっ……まぁそういう事だから、ナツキとは会える時に会いな。ノゾムの事もあるけど、頑張りなよ」

「ヴィオレ……ありがとう。私は失礼するわね」

 

ルナは立ち上がると、マギーやチェリーに会釈をすると、店から出ていった。

それを見送ったヴィオレはジョッキを手に取る。

 

「何か、色々あった様子だね」

「皆に言えない話題って訳じゃないけどね。そうだなぁ……お酒の摘まみ程度に聞いてくれる?」

「ん、良いよ。マギーちゃんはどうする?」

「私も聞いちゃおうかしら。ナツキくんが止めてた理由ちょっと気になるし」

 

ヴィオレは「ありがと」と感謝の言葉を伝えると、2年半前の出来事を語りながら子供ビールを飲むことにした。

 

***

 

一方、砂川模型店ではナツキとスカロプ……本名『砂川帆立』が談笑に浸っていた。

 

「そっかぁ。帆立は巻季さんの弟だったんだね」

「はいっす。姉さんは用事があって留守なので、今日は僕が店番をしてるっす」

 

まさか以前あったスカロプがこんなに身近にいたとは思わず、ナツキは「世間って狭いなー」と感じてしまう。

 

「あのショーケースに飾ってるガンプラも帆立が組んだの?」

「モノアイ系は全て僕が作ったんす。それ以外は姉さんとアルバイトの子に作ってもらってるって聞きましたけど、まさかナツキさんだったとは……」

 

会話の話題はガンプラに移っていく。

ナツキの視線はショーケースのガンプラに向けられており、その内のザクⅡやドム、ギャンなどがとても作り込みがされている事が良く分かる。

 

「キュリオスで新しい機体でも作るんすか?」

「ん?あぁ、これかい?」

 

帆立の興味はナツキが買ったキュリオスにあり、ナツキは隠す必要も無いかと思い、スマホで撮ったデッサンを見せる。

 

「僕のガンプラ……スターダストの支援機を作るのに必要だったんだ」

「これってアブルホールっすよね?キット化なんてしてないから、かなり難しそうすね……」

 

フルスクラッチとまではいかないだろうが、パーツの自作は避けては通れない為、苦労は更に増えるだろう。

 

「でも、これが完成すればスターダストはもっと強くなれる。必要な事なんだ」

 

スカイウォーカーがいれば、スターダストの戦闘継続時間はかなり延び、状況の適応力もあがるとナツキは確信している。ナツキのその熱意ある目を見た帆立はとある事を思い付いた。

 

「その、良ければ僕も手伝って良いっすかね?」

「帆立が手伝う?良いのかい?」

「大丈夫っすよ!それに、僕も一緒なら閉店後の製作ブースを使えるでしょうし!」

 

砂川模型店は名の通り砂川一家が営んでる。帆立が両親か巻季に許可さえ貰えれば、閉店後の製作ブースを使って一緒に作業も可能なのだ。

 

「わざわざ僕の為に……ありがとう、帆立。一緒にアブルホールスカイウォーカーを作ろう!」

「はいっす!」

 

握手を交わす二人。

アブルホールスカイウォーカーの製作に協力者が出来たのは大きな進展だった。




今回のゲストは朔紗奈さんの「可愛い子たちに会いに行く」からチェリー・ラヴちゃんでした。
新人G-Tuberチェリーちゃんがお酒飲んだり動画配信したりダイナミックにバトルしたりしてて見所沢山で面白いです。
何よりチェリーちゃんは合法ロリ巨乳だから推せる!……そんなのだから仲の良い書き手達からおっ鳩(恐らくおっぱい鳩)なんて言われるんでしょうね。

そして、そんなチェリーとも関わったのがメインヒロイン・ルナです。セレンだと思ってた皆さん。すまない。
幼馴染、巨乳、ママ属性ってだけでも濃いのですが、まだ属性を持ってます。震えて待て。
まぁ、GBNにはマギーさんとかガチのママとかロリママとかいるからそこまでしないとキャラが立たない……多分。

あ、設定もこれを投稿した数時間後に投稿するのでそちらも覗いてくれると嬉しいです。

では、次回予告……

***

次回予告

帆立の協力の元、ついに完成するアブルホールスカイウォーカー。

それをセレンに渡すため、初めてリアルで会うことになるナツキ。

そこで知る、セレンの正体とは。そしてアッシュの過去とは……

次回、過去の栄光
お楽しみに……


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第7話 過去の栄光

一週間以上待たせてしまったので初投稿です。

本当はようつべのSTARDUST MEMORYの配信に合わせたかったけど、無理でした。くやちい!!

今回もゲスト登場です。お楽しみ~


宇宙空間に3機のジェガンが飛行している。3機はあちこちを見回しており、警戒をしている様子だった。

その時、遥か遠くから砲弾が飛んできて3機の内の1機を撃墜させた。

ジェガンがやられてしまった仲間を見た後、砲弾が飛んできた方向を見る。

 

そこには、たった1機のモノアイのMSが物凄いスピードで飛んできた。

灰色の機体色をしたモノアイ機……通称『ヅダ』と呼ばれるそれは、単機でジェガンに立ち向かおうとしていた。

 

ジェガンは飛んできたヅダに向けてビームライフルを発砲する。

ヅダは対艦ライフルを投げ捨てると、異常なまでの加速力でジェガンの弾幕を潜り抜けていく。

ヅダはヒートホークを引き抜くと2機の内の1機を両断した。

 

最後のジェガンがビームライフルを捨ててビームサーベルを引き抜くと、スラスターを吹かしてヅダに迫る。

ヅダはヒートホークでビームサーベルを受け止めると、受け流してジェガンの腹部に蹴りを入れる。蹴飛ばされたジェガンにヅダがシュツルムファウストを発射して頭部を破壊した。

ヅダは無防備になったジェガンの胴体に大振りのヒートホークが食い込む。

 

〈Battle Ended〉

〈Winner Player1〉

 

電子音声の直後に歓声が沸き上がる。操縦レバーを握っていた男はレバーを手放すと、汗を拭って髪をかきあげる。

 

『GPデュエル世界大会!勝者は、芦原ヨウタ選手ーーーッ!』

 

フィールドが消滅したGPD筐体の上に直立するヅダを手に取った男ーー芦原ヨウタはヅダを真上に掲げた。

 

***

 

「ーーぁあ?」

 

『芦原ヨウタ』は朦朧とする意識の中で先程まで見ていたものが夢であると言うことに気づく。

 

「ヨウタ?」

 

聞きなれた優しい声が聞こえる。ヨウタはすぐに声の主が同居人であることに気づいた。

 

「わかってる。今日だろ……」

 

ベッドから抜け出したヨウタはデスクトップPCの傍に置かれているダイバーギアを取り出すと、自身の弟子……ナツキからのメッセージが来ていた。

 

***

 

第7話

過去の栄光

 

***

 

数日前、砂川模型店にてナツキと帆立の二人は作業を続けていた。セレンの為のガンプラ『アブルホールスカイウォーカー』は完成間近に迫っており、現在はちょっとした休憩時間だった。

 

「あれ、帆立、僕と同じ学校なんだ」

「あれ、そうなんすか!?世間って狭いっすね……」

 

ナツキと帆立はお互いのリアルについて話しており、偶然にも同じ高校であることが分かる。

 

「そう言えば、ナツキさんとヴィオレさんってどんな関係なんすか?」

 

ココアを手に帆立がふとナツキにヴィオレとの関係性を聞いてきた。

ヴィオレはGBN内では屈指のフォロワー数を誇るガンスタグラマーで有名で、帆立ことスカロプはその大ファンなのである。

 

「ただの幼馴染だよ?小学生の頃からの付き合いさ」

「幼馴染だったんすね」

「高校進学に合わせて別々になっちゃったけどね」

 

ナツキ達幼馴染四人は俗に言うド田舎だった。山に囲まれ、過疎化が進んでいるような村で生まれ育った。

小学校、中学校まではギリギリ一緒だったが、高校になるとそうはいかずに離ればなれになってしまった。

 

「まぁ、高校に進学する前に散り散りになちゃったけど……」

「何かあったんすか?」

 

ナツキは少し考えるが、帆立にGBNに離れるまでの経緯を語る。最近何度も話すようになったので、スラスラと出てきた。

 

「そんな事があったんすね……マスダイバーの一件は今でも覚えてるっす」

「その頃からやってたんだね。ヴィオレ達より少し遅いくらいかな?」

 

帆立は一つ年下らしいが、GBN歴はナツキ以外の幼馴染と大差は無い様子だった。

 

「さて、スカイウォーカーも完成目前だし、大詰めといこうか!」

「はいっす!」

 

二人はココアを飲み終えると、再び作業を開始した。

 

***

 

翌日、ナツキは共にログインしたスカロプを連れてアッシュの隠れ家に来ていた。

 

「ここにナツキさんの師匠さんがいるんすね……」

「緊張することはないよ。いい人だから」

 

初対面、しかもナツキの師匠と言うことからスカロプは少し緊張すあるが、ナツキは心配することはないと安心させながら扉を開く。

 

「ん、ナツキ……!」

「お、来たって事は完成したのか」

「はい!セレンが飛ぶための翼……アブルホールスカイウォーカーです」

 

ナツキがスカイウォーカーのステータスを見せる。セレンは目を輝かせてそれを見ていた。

 

「良い仕上がりじゃねぇか。……んで、コイツは誰だ?」

「あ、スカイウォーカー製作を手伝ってくれたスカロプです」

「ど、どうもっす!スカロプって申しますっす!」

 

アッシュに聞かれてスカロプを紹介するナツキ。スカロプは未だに緊張しつつも、頭を下げた。

 

「手伝ってくれたのか。ありがとうな」

「そ、そんなぁ……えへへ」

 

セレンの為にスカイウォーカーを製作してくれたスカロプに感謝する。

 

「それで……スカイウォーカーをセレンに手渡したいって思ってます」

「手渡すって……リアルで渡したいって事だよな」

「て事は、オフラインミーティングっすか!」

 

オフラインミーティングーーつまり、リアルで直接会って手渡しすると言う事だ。ナツキとしては実際のスカイウォーカーをセレンに見て、触れて欲しかった。

 

「俺としては構わねぇが……セレンは良いか?」

「ん、私、ナツキのガンプラも見たい」

 

セレンもリアルで出会うことに抵抗は無い様子だった。

 

「となると、何処で会うかですかね」

「そうだな……ここのガンダムベースとかどうだ?」

 

アッシュが見せたのはお台場近郊にあるガンダムベースだった。偶然にもナツキからも遠くはなく、帆立と共に行けそうだった。

 

「じゃあ、次の日曜の昼にこのガンダムベースに集合な」

「はい!セレン、楽しみにしててね」

「ん……楽しみ」

 

初めてのオフラインミーティングにナツキも胸をときめかせていた。

 

***

 

日曜日、帆立と共にガンプラベース・シーサイド店に来ていた。日曜日と言う事もあって人で賑わっており、誰も彼もガンプラやGBNのトークで盛り上がっていた。

 

「ガンダムベースとか初めてだなぁ」

「僕は別のところすけど、来たことあるっすよ。休日は早く行かないと筐体使えませんっすから」

「そっか。砂川模型店にGBNの筐体が置かれたのはホントに最近だもんね」

 

砂川模型店にGBNの筐体が置かれたのはナツキが復帰する数日前。帆立はナツキ達幼馴染より少し遅いくらいにGBNを始めたらしく、筐体が置かれている店に通っていたらしい。

 

「そう言えば、アッシュさんは何処なんすかね?」

「それなんだけど……」

 

ナツキはダイバーギアを取り出すと、アッシュからのメッセージを帆立に見せた。

 

『先にGカフェで待っている。店長に俺の名前を出せば通じると思うから早く来いよ』

 

「これだけ書かれてて……」

「大雑把っすね……」

 

しかし、アッシュにそうするように指示された以上、その通りにするしかない。ナツキと帆立は人の間をすり抜けていGカフェに向かう。

 

「すみませーん!」

「はい、何でしょうか……って、あれ、敷島くん?」

「あれっ、ムカイさん?」

 

Gカフェの店員を呼ぶと、やってきたのはナツキのクラスメイト『ムカイ・ヒナタ』だった。

 

「敷島くんもGBNやっているの?」

「あぁ、うん。久しぶりに復帰してさ。……クガくんは?彼もやってたよね、GBN」

 

ナツキは辺りを見回しながらヒナタの幼馴染『クガ・ヒロト』を探す。彼もまたGBNをやっていると言う噂は耳にしたことがある。

 

「ヒロトは今GBNにログインしてる。その子は?」

「ど、どうも、砂川帆立っす!ナツキさんと同じ高校って事は僕が後輩だと思うっす!」

「僕がログインに使ってるGBNの筐体がある模型店の子なんだ」

 

帆立が挨拶をする。ナツキが帆立との関係を話すと、本題を思い出す。

 

「そうだ。店長を呼んで欲しいんだ。ここで待ち人をしてるから、店長を呼べば案内してくれるって聞いたんだけど……」

「店長と話してた人って敷島くんの知り合いだったんだね。ちょっと待っててね!」

 

ヒナタはアッシュとガンダムベースの店長が話している様子を見ていたらしい。

 

「いい人っすね」

「クガくんが一緒にいるのも納得だよ」

 

ナツキと帆立はヒナタの人の良さに感心している様子だった。すると、店長と思われる男性が二人の元に来る。

 

「いらっしゃいませ。話は聞いているよ。今から案内するね」

「ありがとうございます!」

 

チョビ髭が特徴的な柔和な雰囲気を出す店長はナツキと帆立を連れて外のテーブルに案内する。そのテーブルには一人の男性がいた。

 

「あ……」

 

ナツキは彼を見てすぐに確信する。彼こそが、自分の師匠・アッシュのリアルなのだと。

 

「連れてきたよ、ヨウタくん」

「すみません、ケンさん。わざわざこんな事」

「ヨウタくんのお願いなら幾らでも聞くさ。それにしても、ヨウタくんが弟子なんてねぇ」

「やめてくださいよ……ちょっとむず痒いです」

 

ケンさんと呼ばれた店長はサムズアップをすると、その場を去っていった。

ヨウタと言われた男はナツキと帆立の方を見る。

 

「取って食うような事はしねぇよ。立ったままは辛いだろ。座りな」

「「は、はいっ」」

 

ヨウタに誘導されてナツキと帆立は座る。ヨウタは組んだ腕を机の上に乗せて身を少し乗り出した。

 

「俺は芦原ヨウタ。アッシュって言えば分かるか?」

「し、敷島ナツキ。ナツキです!」

「スカロプの砂川帆立っす!」

 

互いに自己紹介を終えると、ヨウタがナツキをじっと見る。その目にナツキは一瞬萎縮するが、ヨウタはふっと頬を緩めた。

 

「良い顔してるな。若い頃の俺を思い出すよ」

「え?」

「つまらない回帰だ。気にすんな。それよりも、スカイウォーカーは?」

 

ヨウタに言われたナツキは鞄の中に入っているタッパーを取り出す。スターダストの入っているタッパーより縦長である。

 

「あの、セレンちゃんは何処っすか?」

 

帆立に指摘されてナツキはハッとする。そう言えばテーブルにはヨウタだけで、同行すると思われていたセレンがいなかった。

 

「あぁ、そう言えばそうだったな」

 

ヨウタは思い出して足元に置いてあったプラスチックのツールボックスを取り出す。ヨウタはそれのロックを外して蓋を開けた。

ナツキが中身を覗こうとしたその時、ひょこっと何かが出てきた。

 

「わぁっ!?」

 

出てきた何かに驚いて椅子に戻るナツキ。

ツールボックスから出てきたのはーー小さなセレンだった。

 

「せ、セレン!?」

「ん、ナツキ」

 

小さなセレンに驚きを隠せないナツキ。帆立も驚いてはいたが何か知っている様子だった。

 

「セレンちゃんって、ELダイバーだったんすか!」

「あぁ、帆立は兎も角、ナツキはてっきり気づいてると思ってたが……あぁ、そうか。二年半前って言うとまだ第二次有志連合戦よりも前か。ELダイバー知らなくて当然か」

 

手のひらサイズのセレンに加え、ELダイバーと言う聞きなれないワードにナツキは目を黒白させて混乱していた。

 

「え、えるだいばー?」

「ELダイバーはっすねナツキさん。GBNで生まれた電子生命体っす」

 

帆立の口からELダイバーの説明がされる。

曰く、ログイン時のダイバー達の情報が集まった存在。

曰く、様々な思いを込められて生まれた。

曰く、一番最初に生まれたELダイバーを中心に一悶着あったとか。

曰く、今では100人以上いるとか……

 

「そう言えば……」

 

ナツキはふとペリシアの一件を思い出す。

 

『私は皆のもっと飛びたい、遠くへ行きたいって気持ちを貰って生まれてきたの』

 

その言葉やガンプラの声が聞こえる様な言い回しを思い出してナツキは合点がいく。

 

「そうだったんだ。セレンは皆の空を飛ぶのが好きって言う思いが宿ったELダイバーだったんだね」

「ん、そう」

 

ナツキは落ち着くと、セレンの頭を人指し指で撫でた。セレンはそれを嫌がらずに受け入れる。

 

「そうだ。セレン、これが本物のスカイウォーカーだよ」

 

ナツキはタッパーを開けて変形させると、机の上に立てた。ガンダムアブルホールスカイウォーカーである。

 

「わぁ……!」

 

感情の乏しいセレンだが、スカイウォーカーを見たセレンは明るい笑顔になった。その笑顔を見て「作って良かった」と改めて実感する。

 

「ありがとう、ナツキ、ホタテ」

「こちらこそ、僕達のガンプラに乗るって言ってくれてありがとう」

「沢山お空飛んでくださいっす!」

 

セレンの感謝の言葉にナツキと帆立は満面の笑みを浮かべる。

 

「ナツキ、あの子も見せて」

「あの子……あ、スターダストか」

「それじゃあ、僕もこれを!」

 

ナツキと帆立は共に自身のガンプラ……スターダストとグフシェルカスタムを取り出す。

 

「リアルで見ると、尚更伝わるな。凄い仕上がりだ」

「二人のガンプラから、色んな喜びの声が聞こえる」

 

ヨウタは二人のガンプラの出来に感心し、セレンも穏やかな笑みを浮かべる。

すると、店員と思われる青年がお盆にグラスを三つ乗せて持ってきた。

 

「お水です」

「あ、すみません!今すぐ片付けますね!」

 

ナツキや帆立、ヨウタは机にガンプラやツールボックスを広げて邪魔になるのではと考えてすぐに片付けようとする。

 

「大丈夫ですよ。それにガンプラとても上手く出来上がってますね」

 

青年は机で立っているスターダストやグフSCを見る。その目は何かを感じ取っている様子で、セレンが二人のガンプラを見た時に似た目だった。

 

「特に試作一号機やアブルホールからは、皆と一緒に飛びたいって聞こ……気持ちが伝わってきますよ!」

 

青年の言葉にナツキは少し驚く。セレンの為に作ったアブルホールは兎も角、自分のスターダストまで含まれている事に疑問を持つが、ふと思い出す。

 

「そう、ですね。僕にも皆の他にも、一緒に飛びたい人達がいるんです」

 

ナツキの脳裏には幼馴染達ーーノゾム、春奈、紫音が思い浮かぶ。

 

「叶うと良いですね。その願い」

「ありがとうございます。……あの、僕は敷島ナツキって言うんですけど、名前聞いて良いですか?」

「僕ですか?僕は『朱鳥慶』って言います」

「慶さんですね。改めて、ありがとうございます。それと僕の方が年下そうなのでタメ口でも大丈夫です」

「そっか。こちらこそ、ありがとうナツキくん。素敵なガンプラを見せてくれて」

 

「それじゃあ、仕事あるから!」と慶はその場を立ち去る。Gカフェに次いつ来るかは分からないが、近い内また会えるかもしれないとうっすら思いつつも、気持ちを切り替えた。

 

「そう言えば、ヨウタさんのガンプラって何なんすかね?」

 

帆立に聞かれたヨウタは少し反応する。ナツキもヨウタの使うガンプラに興味があった。

 

「それは……まぁ見せて損する事じゃねぇか」

 

セレンが少し不安げにヨウタを見たが、ヨウタは大丈夫だと頭を撫でると、ツールボックスから容器を取り出した。

 

「これが、俺のガンプラだ」

 

ヨウタが見せたのはMSIGLOOに出てくる機体ーーヅダの改造機だった。

 

「ヅダ、ですか?」

「あぁ、最近はもうメッキリ使ってねぇけどな」

 

ヨウタは少し自嘲気味に笑う。

 

「でも、ヅダってGBNだと自壊するっすよね?」

 

帆立の言う通り、ヅダは一定の加速量を超えるとエンジンが暴走して止まらなくなり最終的に空中分解して自爆する。GBNでもそれを忠実に再現しており、玄人向けな機体だった。

 

「そうだな……そもそもコイツはGBN向けに作られた機体じゃねぇ」

 

ヨウタの言葉にナツキは首を傾げるが、ヅダを観察していた帆立はふとヨウタに聞いた。

 

「もしかして、GPDっすか?」

「あ……!」

 

ナツキはヅダを良く見ると、少し継ぎ接ぎな所や小さな損傷が見えた。

GPD……ガンプラデュエルはプラフスキー式のガンプラバトルの後継機に近いものである。電力のみでガンプラを動かして戦える夢のようなゲームなのだが、ダメージがガンプラにそのまま反映する所から、爆発的な流行から衰退までは短くはないが長くもないものだった。

 

「俺もGPDを愛するバカでな。巷では有名だったんだぜ?」

「そうだったんすか……」

「じゃあ、何で戦ってないんっすか?」

 

帆立に聞かれたヨウタは何か懐かしむような、諦めている様な顔だった。

 

「お前ら、ヅダ事件って知ってるか?」

「ヅダ事件?」

「知ってるっす。GBN第一回世界大会でチャンピオンを追い詰めたヅダが空中分解で自爆して負けたって言う事件っすよね……もしかして」

「察しが良いな。お前探偵で食っていけるんじゃねぇの?」

 

ヨウタは茶化すが、ナツキもその時点で気づいた。目の前にいるヨウタがーーアッシュこそがヅダ事件でヅダに乗っていたダイバーだと。

 

「あれをきっかけにGBNは機体の設定にかなり忠実な事が知れ渡った。そして俺は、もう時代遅れな事を察した」

 

ヨウタはヅダを手に取ると、それを優しく撫でた。

 

「でもガンプラバトルから離れようって思えなくてな……そしたらセレンと出会った」

 

ヨウタはヅダを机に置くと、次はセレンを撫でる。その目は娘を思う父の様な慈しみのある目だった。

 

「コイツが俺とGBNを繋いでくれた。そしたらセレンがお前を見つけた」

 

ヨウタの視線がナツキに向けられる。

 

「お前とセレンには感謝してる。お前ら二人が、腐りかけた俺の心を繋ぎ止めてくれてるんだ」

 

ヨウタの目を見たナツキはその目から何かを感じとる。それを声に出そうとするが、その前にヨウタが口を開いた。

 

「さてと、辛気臭い話は終わりだ。俺が奢るから、好きなもん注文しな」

「ヨウタさん……はい、ありがとうございます」

 

ナツキは今は言葉を飲み込んで明るい話題に移ろうとしていた。

 

***

 

注文をした一同は、休憩中の慶も時折巻き込んでガンダム談義に盛り上がった。気がつけば夕暮れで、お開きになる。

 

「楽しかったぜ。ありがとな、二人とも」

 

ヨウタが別れを告げようとする。帆立は手を振るが、ナツキは口を開いた。

 

「あ、あの!」

「あん?どうかしたか?」

 

ナツキはあの時呑み込んだ言葉を口から出す。

 

「きっと、きっとヨウタさんは腐りかけてるんじゃなくて、燻っているんです!」

「燻ってる?俺が?」

 

ナツキがあの時見たヨウタの目はまだ諦めていなかった。

 

「ヨウタさん、ホントはそのヅダでまた戦いたいんじゃないんですか?」

「それは……」

 

ヨウタが言葉を詰まらせる。図星……と言うより、思い当たる節がある様子だった。

 

「……は、はははっ!まさか弟子に一本取られちまうなんてな!」

「え、えっと、すみません……?」

「怒ってねぇよ、バカ。むしろ感謝してるくらいだ」

 

ヨウタはナツキの前まで歩むと、肩に手を置いた。

 

「お前を弟子にして正解だったよ。それじゃあ、今度こそ俺は行くぜ。じゃあな」

 

ヨウタは二人に背中を向けながら手を振って立ち去る。

 

「ナツキさん、これで良かったんすか?」

「うん、これから先どうするかを決めるのはヨウタさんだし、それをヨウタさん自身自覚してると思う」

 

だから、今は信じて待とう。

ナツキはその言葉を胸の内で呟くと、帆立と共に帰路に向かった。




今回のゲストはガリアムスさんから『ガンダム:ビルドライジング』から主人公『朱鳥慶』でした!
何かとリアルでゲストキャラを出すのは初めてですね。
ビルドライジングはキャラが個性的で、主人公ケイの特殊な能力とその能力にベストマッチ!な機体による大活躍が無茶苦茶面白い作品です。

そして、セレンとアッシュの掘り下げ回前編でした。設定の方もセレンとアッシュが更新されます。是非見てください。

では、次回予告……

***

渡されたスカイウォーカーに乗って出掛けたいと言うセレン。

ナツキはセレンと共にGBNの空を飛ぶが、そこに悪意ある者達が襲いかかる。

窮地の二人の元に現れたのは、伝説から甦った英雄だった!

次回、灰色の太陽
お楽しみに……


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第8話 灰色の太陽

久々に一万字いったので初投稿です!


オフラインミーティングから帰宅したヨウタはデスクチェアに座り込んだ。ツールボックスから出てきたセレンがアブルホールスカイウォーカーに駆け寄る。

 

「気に入ったのか、それ」

「うん。ナツキの作ってくれたこの子で早く飛びたい」

 

セレンはナツキからアブルホールS(スカイ)W(ウォーカー)を貰えた事が嬉しい様子で、早く乗りたがっていた。

 

「燻ってるだけ、か……」

 

ヨウタは別れ際に言われた言葉を思い出す。ヨウタはツールボックスからヅダを取り出すと、ハァと息を吐いた。

 

「セレン、少し作業をするから離れとけ」

「?何するの?」

 

首を傾げるセレンにヨウタは頭をかきながら答えた。

 

「何と言うか、燻ってるもん吐き出す為の準備さ」

 

ヨウタは机に立つヅダを見る。セレンはその時のヨウタの目に燃える炎の様な何かを感じた。

 

***

 

第8話

灰色の太陽

 

***

 

浮遊感と共にルナはログインし、シークレットガーデンのフォースネストに転送される。

 

「ふぅ……」

 

ルナは少し広めの執務室の様な自身の部屋に転送されると、扉を開いた。

 

「皆、良い子にして……って、また散らかしてるじゃない!」

 

扉を開けて早々に広がっている惨状にルナは大声をあげてしまう。

部屋は色々なもので散らかっており、足場は辛うじて存在しているくらいだ。

 

「んー、リーダーもう来たー?」

 

大きなコートを袖余り、裾が引き摺ってしまっている位に小柄な体格をした少女『レム』が寝転がって寝ている。

 

「レム、GBNで寝ようとしない!リアルで寝落ちしちゃうわよ!」

「うぃー、ごめんなさいぃー」

 

ルナがレムを持ち上げると、立ち上がらせる。レムは眠たそうでフラフラしているが、急に倒れる様子は無かった。

ルナは次に窓際で煙管を吹いている一見ロリに見える着物の少女に話しかけた。

 

「シェリーさん、室内で煙草はダメです!」

「えー、でもここは電脳世界じゃから吹いても問題ないじゃろ?」

「モラルです!モラルの問題です!」

「そうかぁ……仕方ないの」

 

和服ロリの『シェリー』はルナに指摘されて仕方ないと言った様子で煙管をしまう。

次にルナは机に向かう。そこにはボサボサの黒髪に眼鏡をかけた陰気な女性の元に向かう。彼女は作文用紙に何かを執筆しており、足元は潰した紙屑の山だった。

 

「ローズさん、創作活動も良いですけどゴミはゴミ箱に入れてください!」

「そんな……書いてる二次小説が夏フェスに間に合わなくなる……」

「待ってください。それってどんな内容です……?」

 

ルナに小説の内容を聞かれた『ローズ』はにへらぁと笑いながら答える。

 

「えへへ……キョウヤ×テイトです」

「また実在する人で腐向けを書いているじゃない!それで怒られたの忘れたの?ほら、早く片付けて!」

 

ルナに片付けるように言われたローズは「そんなぁ」と残念そうに執筆道具を片付け始める。

ルナは色々と混沌としているフォースネストに頭を抱えていた。

 

「もう……ノゾムも何とか言ってくれないかしら?」

 

ルナは視線を壁際に立つ一人の少年……ノゾムに目線を向けた。ノゾムはそれに気づいてルナの方を見る。

 

「俺からか?……他の奴が何したって勝手だろ」

 

ノゾムは少し言葉につまるが、すぐに顔を背けて呟く。ルナははぁとため息をつくが、すぐに明るい表情になってノゾムに近づく。

 

「最近荒れてるけど、もしかしてナツキの事?」

 

ナツキの名前が出た途端にノゾムの表情が険しくなる。

 

「アイツの名前を出すな!あんな勝手な奴、戻ってこなければ……」

「ノゾムが何でナツキに対して突き放す様な態度なのか分からないけど、せめてフォースの皆とは仲良くしてね」

 

釘を刺されたノゾムは険しい顔ではあるが、少し舌打ちした後黙った。すると、二人の元に一人の少女がやってくる。

 

「ルナ様、キョウヤ様がいらっしゃいました」

「えぇ!?もう!?皆、早く片付けて!あ、ありがとうね、エレーナ!」

 

アイスブルーの髪をポニーテールにしたメイド服の少女『エレーナ』にルナは感謝を述べながら片付けを行う。

その後ろ姿を見ていたノゾムにティーカップを差し出された。差し出したのは、エレーナである。

 

「……これは?」

「紅茶です。客人が来る前にリラックスしてみてはどうでしょう」

 

エレーナの差し出されたティーカップをノゾムは受けとると、「ありがとな」と感謝の言葉をポツリと呟いて一口飲んだ。

 

***

 

オフラインミーティングから数日後、ナツキはセレンのアブルホールSWの練習に付き合っていた。

と言っても、流石ガンプラの声を聞けるELダイバーと言った所か。すぐにセレンはアブルホールSWを乗りこなしていた。

 

「そう言えば、最近アッシュさんと会えてないけど、どうかしたの?」

 

ナツキはふと疑問に感じた事を聞く。ここ最近、セレンとはアッシュの隠れ家ではなく、エントランスで合流しているのでアッシュを見ていなかった。

 

「ん、ガンプラ作ってる」

「ガンプラ?もしかして、またバトルに復帰するのかな?」

 

ナツキにとっては嬉しいニュースだった。自分の後押しが功を奏したと思うと喜びと安心を感じる。

 

「それじゃあ、製作途中なの?」

「ううん、完成はしたんだけど……」

 

セレンが途中で口を止める。言うべきか言わないべきか悩んでいる様子だ。ナツキは一瞬アッシュの身に何かあったのかと心配になる。

 

「何かあったのかい?」

「……徹夜のしすぎで寝てる」

 

ナツキは思わずずっこけそうになった。そりゃ大の大人がプラモ作りで徹夜しまくって現在爆睡中なんて言えるわけがない。

 

「そ、そっかぁ……それじゃあ、今日は二人でディメンション巡りでもしてみる?」

「ん、お散歩、楽しみ……!」

 

ナツキは様々な状況でも飛ぶ練習の為に各ディメンションでの空中散歩を提案する。セレンは空を飛べるなら大歓迎と言わんばかりに跳び跳ねていた。

 

「待っててね」

 

ナツキは受け付け嬢のNPDに話しかけると、とあるミッションを受注する。

それは『GBNスタンプラリー』と言い、様々なディメンションを回ってスタンプを集めると言ったミッションだった。

ナツキはセレンと一緒に飛ぶ練習をするに見越して探索系ミッションを探していた。

 

「これで良し……セレン、行こうか」

「ん……!」

 

二人はハンガーに転移すると、ガンプラに乗ってカタパルトに移動する。

 

「ナツキ!スターダストガンダム、出ます!」

「セレン。アブルホールスカイウォーカー、行ってきます」

 

2機は出撃すると、様々なディメンションへ巡りに行った。

 

***

 

シークレットガーデンのフォースネストにて、ルナがテーブルを跨いで相対しているのは一人の男性だった。

GBN屈指のトップフォースAVALONの制服に身を包んだ金髪の好青年と言った風貌だが、実際はGBNの頂点に立つ文字通り最強のダイバー……『クジョウ・キョウヤ』である。

 

「わざわざ来てくれてありがとうございます、キョウヤさん」

「気にしないでくれ。むしろ感謝すべきなのは私の方なのだから」

 

GBNの頂点……所謂チャンピオンであるキョウヤを前にしても動じない様子を見せるルナ。実を言うとルナはGBNでこう言った年上や有名人との対面は何度も経験済みなのである。

 

「それで、今日はどの様な件でいらっしゃったんでしょうか?」

「あぁ、ここ最近、厄介なフォースが存在していてね。フォースネストを解放しておきながら、入ってきたダイバーを侵入者扱いして襲撃するらしい」

 

それを聞いたルナは表情を険しくさせる。GBNには様々なダイバーが参加する。その中には悪意ある行為……俗に言う荒しをするダイバーもいるのも当然だ。

キョウヤ等のかつて有志連合と呼ばれた組織の参加者やG-Tuberのキャプテン・ジオンが荒しダイバーを懲らしめている。ルナ達シークレットガーデンもその一部だった。

 

「そんな方が……そのフォースネストは何処に?」

「フォースネストがあるディメンションは……シュバルツバルトだ」

 

***

 

一日中夜が続き、深い森が広がるディメンション・シュバルツバルト。

ナツキとセレンはスタンプラリーの最後のスタンプへと向かっていた。

 

「次で揃うね」

「ん、揃う……!」

 

山岳や砂漠、雪原等の局地でも飛び回ってスタンプは残り一つになった。ナツキはセレンが無事だった事に安心していた、その矢先だった。

 

「っ、セレン、回避!」

「え?っきゃあ!?」

 

警告音が検知したナツキがセレンに叫ぶ。二人を狙って弾丸やビームが飛んできた。

 

「何だ、今の一体……!?」

『オラァ!食らいなァ!』

 

困惑するナツキのスターダストにハイザックが現れてヒートホークを振るう。スターダストはそれをシールドでそれを防御するが、シールドが切断されてしまう。

 

『勝手にフォースネストに侵入しやがって!』

『BC出すかポイントになれやァ!』

 

複数のハイザックやジム・クゥエル、マラサイがスターダストとアブルホールSWが群がっていく。

 

「フォースネスト!?普通はアライアンスを結んでないと入れないのに……!」

「ナツキ、大丈夫……!?」

「大丈夫ッ!何とか乗りきろう!」

 

弾幕の中、アブルホールを庇いながら応戦するスターダスト。ジム・クゥエルが撃ったビームがスターダストの左腕に直撃してしまうが、反撃のビームがジム・クゥエルの東部を撃ち抜く。

しかし、アブルホールSWの背後からマラサイがフェダーインライフルを振るう。

 

「セレぇぇぇぇン!!」

 

スターダストはアブルホールSWを庇うようにマラサイの前に立つと、ビームジュッテを展開してそれを受け止める。

 

「離れろォッ!」

 

スターダストはマラサイを蹴飛ばすと、バックパックのビームサーベルを引き抜いて両断した。

 

「はぁ……はぁ……早く、抜け出さないーー」

『逃がすと思ってんのかァ?』

 

その時、スターダストの上に大きな影が現れる。スターダストは即座に振り替えるが、大きなアームがスターダストとアブルホールSWを地面に叩き落とした。

 

「ば、バウンド・ドック……!」

 

それはニュータイプ用可変MA『バウンド・ドック』だった。

 

『俺達のフォースネストに侵入しちまった事、後悔させてやるぜ……!』

 

ジム・クゥエルやハイザック、マラサイも集まってきて、ナツキとセレンは完全に追い詰められた状態になる。

ナツキは後ろにいるセレンの為にも一歩も下がるわけにはいかないと覚悟を決めるのだった。

 

***

 

「あー、やべ、寝すぎた」

 

頭をかきながらアッシュはエントランスにログインしてくる。やっとガンプラを作った後に徹夜の疲労でぶっ倒れて長い時間寝てしまった。

 

「セレンとナツキは何処行ったんだ……?」

 

メールを開くと、ナツキが『セレンと一緒にミッションに行ってきます』と書かれたものが送られており、ナツキがいるならセレンも無事かと考えて隠れ家に行こうとする。

 

「あれ、アッシュさんっすか?ナツキさんやセレンさんは別なんすかね?」

「アンタは……スカロプか。二人はミッションに行ったらしいぜ」

 

すると、スカロプがアッシュを見つけて話しかける。

 

「あれ、スカロプじゃん……と、誰?」

 

更にヴィオレがスカロプを見つけて会話にやって来る。しかし、ヴィオレはアッシュを知らないので疑問符を浮かべている。

 

「ヴぃ、ヴィオレさん!?えっと、この人はナツキさんの師匠で、セレンさんの保護者をしているアッシュさんっす!」

「へ~。あ、どもー。ナツキの幼馴染のヴィオレって言います」

「ナツキの幼馴染……あぁ、話は聞いてるぜ。ペリシアの時セレンがお世話になったな」

 

アッシュはセレンとナツキから既にヴィオレの話は聞いており、ペリシアでセレンが世話になった事で感謝を述べる。それに対してヴィオレは「どういたしまして~」と返事をした。

 

「あ、そう言えば、最近新手の荒しが現れたの知ってる?」

「新手の荒しっすか?」

 

ヴィオレの話題にスカロプが反応する。アッシュも隠れ家に戻っても何もすることが無いので会話を聞くだけ聞いておこうと考えてその場に留まった。

 

「そうそう。フォースネストだって分かりずらいようにした状態で解放しておいて、入ってきたダイバーを侵入者扱いしてリンチしてから、BCを巻き上げるか、撃墜するらしいよ」

「ズル賢い奴等っすね。他にやることないんすかね?」

 

ヴィオレの噂話をスカロプは呆れたように呟く。アッシュは「まだそんな事してる連中がいるんだなー」と内心思いつつ、話を聞き流していると、メールが送られてきた。

 

「ナツキか?」

 

アッシュはメールを開くと、それはセレンからだった。ミッションが終わったのか、それとも記念写真かと考えながらメールを開くと、そこにはたった一文のみだった。

 

『助けて』

 

その一文を見たアッシュは目を見開いた直後、険しい表情になる。

 

「?アッシュさんどうかしたっすか?」

「……なぁ、アンタ、その荒しって何処にいるとか分かるか?」

「え?あぁ……ファンからのリプで知ったんだけど、ディメンション・シュバルツバルトらしいですよ」

 

それを聞いたアッシュはすぐに何処かへと歩き出す。スカロプとヴィオレは急な出来事で困惑していた。

 

「ちょ、アッシュさん、何処に行くんすか!?」

「あ?あー……娘とバカ弟子助けに一暴れしに行くのさ」

 

スカロプの問いにアッシュはそう答えると、ハンガーへと移動した。

 

「どうしたんっすかねぇ……ヴィオレさん?」

「ん?アッシュって名前何処かで……あぁ!」

 

スカロプが何かを考えている様子をしたヴィオレは何かを思い出した素振りを見せる。

 

「アッシュって、最後のGPD世界大会出場経験のある、あの『灰色の太陽』じゃん!GBNで最初の大会の後すぐに失踪したって言われてたけど、いたんだ……!」

「え……もしかして、アッシュさん無茶苦茶凄い人っすか?」

 

ヴィオレからアッシュの素性を聞いたスカロプは「ちょっと有名じゃ済まない様な人では?」とオフラインミーティングでの話を思い出しながら心の中で呟いていた。

 

***

 

一方、ディメンション・シュバルツバルトでは大破したスターダストとアブルホールSWが森の中で隠れていた。

 

「ナツキ、大丈夫?」

「大丈夫。コアファイターまではダメージはいってないけど……」

 

コアファイターが搭載された胴体部分のダメージは最小まで押さえ込めたが、両腕や下半身のダメージは酷く、立つのもままならない状態である。武器も全て破壊されており、戦える状態では無かった。

 

「……セレン、コンテナは壊されてない?」

「ん、全部無事」

 

アブルホールSWが運んでいた三つのコンテナは全て無傷……と言うより、アブルホールSWは一切の傷を負っていなかった。ナツキの必死の抵抗が役に立ったのだろう。

 

「良かった……今から換装しよう。その後、セレンはここから逃げて」

「逃げる……ナツキは?」

「僕は……セレンが逃げる時間を稼ぐよ」

 

ナツキが言っている事はセレンが逃げるまでの間、囮をすると言うことだった。それをすぐに察したセレンは首を振る。

 

「や、ダメ。ナツキ、ダメ!」

「それでも、二人揃って共倒れよりマシだ。それに、もうあんな悲しい思いはしたくない」

 

ナツキが思い出すのは二年半前の悲劇だった。あの時の様に何も出来ずに終わってしまうと言う悲しい出来事は二度としたくなかった。

 

『ここら辺ですぜ兄貴!』

『絶対に遠くには逃げてないはずだ。追い詰めて搾り取ってやれ』

『探せ探せ~!』

 

近くで敵の声が聞こえる。これ以上ここに留まることは出来ないと悟ったセレンに強く言ってしまう。

 

「セレン、時間がないんだ。早く!」

「やぁ、やぁぁぁ……!」

 

ナツキの説得にセレンは首を振って嫌だと拒否する。気づけば、レーダーの中に一機近づいるのが見えた。

 

『こことか怪しそうだなぁ~……!』

 

近づく敵にナツキは焦燥感に駆られる。最悪、ボロボロの状態でも抵抗するしかないと考えていた、その時だった。

 

「え?」

『あ?』

『何だ……?』

 

常闇が広がるはずのディメンション・シュヴァルツバルトが昼のように明るくなっていた。見上げてみると、そこには無色の照明弾が打ち上げられていた。

 

『照明弾?一体何ーーー』

 

ナツキ達に迫っていたハイザックが見上げている間に胴体部分が薙ぎ飛ばされた。宙に飛ばされたハイザックの上半身はクルクルと回りながら地面に落ちていった。

 

『な、何だぁ!?』

『さっきのガンダムか!』

『あそこら辺から聞こえたぞ!』

 

大きな音を聞いた仲間達が集まってくる。ナツキも片目しかないスターダストのカメラアイでそれを見た。

 

「あれは……ヅダ?」

 

それは灰色に塗装されたヅダだった。

 

『テメェ、何モンだ?』

 

ジム・クゥエルやマラサイ、ハイザックが銃口をヅダの改造機に向ける中、バウンド・ドックが問いかける。

 

「あー……ここにゼフィランサスとアブルホールの改造機を見なかったか?」

『偶然だな。俺達もソイツらを探しているんだよ。お前みたいに勝手に俺達のフォースネストに侵入したからな』

 

それを聞いたヅダに乗ったダイバーはハァと息を吐く。

 

『て言うか、お前誰だよ!』

 

ハイザックの一機がザクマシンガンを構えながら聞いてくる。ヅダに乗るダイバーは手に持つヒートホークを納めた。

 

「俺?俺は……」

 

その時、ヅダは両足に懸架された二丁のザクマシンガンが引き抜いて前方に発砲する。バウンド・ドックはそれを避けるが、それ以外の機体が撃ち抜かれてしまう。

 

「俺はァ、灰色の太陽・アッシュだァァァッ!」

 

ヅダに乗るダイバー……アッシュは咆哮と共にヅダの改造機『サンズ・オブ・ヅダ』を前方に進める。他の機体がサンズ・オブ・ヅダを狙って発砲をするが、サンズ・オブ・ヅダはそれを避けることなく前進しながら左右にザクマシンガンを発砲する。

 

「いぃぃぃぃやっほぉぉぉぉ!!」

 

回転しながら次々と敵機を撃ち抜いていく。サンズ・オブ・ヅダが引き金を引き続けるが、カチカチと弾切れを報せる音が聞こえる。

背後からマラサイが迫るが、サンズ・オブ・ヅダは二丁のザクマシンガンを投げ捨てると、左右の背中にマウントされたザクバズーカと対艦ライフルを構える。

 

「砕けろォ!」

 

ザクバズーカから放たれたミサイルがマラサイを爆散させる。次々に迫る敵にミサイルと砲弾を立て続けに食らわせていく。

 

「どうしたァ!?甘っちょろい攻撃で攻撃しようとすんじゃねぇぞ!」

 

サンズ・オブ・ヅダは残り一発になったザクバズーカの銃口をジム・クゥエルにぶつけると、至近距離から炸裂させる。

 

『な、何だアイツ……!』

『灰色の太陽……聞いた事がある。最後のGPD世界大会の個人戦と団体戦をたった1人で挑戦して、両方ベスト8入りしたヅダ使いがいるって……!』

『こ、こんなの勘弁だぁッ!』

 

近くで見ていたハイザックがその気迫に押されて撤退しようとする。しかし、アッシュはそれを見逃しておらず、サンズ・オブ・ヅダは逃げていたハイザックの首を掴んだ。

 

「オイオイ、逃げてンじゃねぇよ。男なんだろ?玉ァついてんのかァ!?」

 

サンズ・オブ・ヅダは持ち上げたハイザックの股間を蹴りつけてから地面に叩きつける。そして、対艦ライフルをハイザックに向けて至近距離で発砲する。

 

「す、凄い。あれが、アッシュさんの実力……!」

「アッシュも、あの子も、嬉しそう」

 

アッシュとサンズ・オブ・ヅダの戦っている様子を見ていたナツキは口を引き締めてセレンを見る。

 

「セレン、換装しよう。僕達も戦うんだ」

「ナツキ……ん!」

 

ナツキはディスプレイを操作してトップフライヤーを外すと、コアファイターを発進させる。

アブルホールSWは二つのコンテナを開くと、トップフライヤーとボトムフライヤーを飛ばす。更に三つ目のコンテナからパッケージ装備を飛ばす。

 

「スターダスト、ドッキング!」

 

コアファイターがトップフライヤーと合体してから、ボトムフライヤーと合体する。更に頭部にゴーグルを、バックパックにレドームとミサイルポッドを、両肩にシールドが装着される。そして、手にビームスナイパーライフルを握った。

スターダストの派生武装・スナイパーパッケージである。

 

「セレン!足場お願い!」

「ん!」

 

セレンはコンテナを捨てると、スターダストを上に乗せる。スターダストはビームスナイパーライフルを構ると、

接近する機体を支援する機体を狙撃していく。

 

「アッシュさん、支援します!」

「ナツキとセレンか。やるじゃねぇか!」

 

一騎当千の立ち回りをするサンズ・オブ・ヅダを支援するスターダストの元に一つの影が飛んでくる。レドームで検知していたナツキはセレンに指示を送る。

 

「セレン、回避っ!」

「ん、避けるっ」

 

回避をするアブルホールSW。攻撃してきたのはMA形態のバウンド・ドックだった。

 

『お前らのせいで全部が無茶苦茶だ……!せめてお前らだけでも潰してやる!』

 

バウンド・ドックは拡散ビーム砲を放つ。

 

「シールドビット!」

 

スターダストの両肩にあるシールドが外れると、シールド裏の推進機で動いてビームを全て防ぐ。シールドが左右に動くと、ミサイルポッドからミサイルを放った。

 

『そんなもの……っ!?』

 

バウンド・ドックは応戦しようとするが、ミサイルはバウンド・ドックの前で煙を出しながら爆発する。

 

『煙幕ミサイルかっ!?』

 

スターダストはゴーグルによって煙の中が見えており、煙に浮かぶバウンド・ドックを狙ってビームを放つ。

 

「これでぇぇぇっ!」

『舐めるなぁぁぁぁぁ!』

 

しかし、バウンド・ドックはギリギリの所で回避した。片足を撃ち抜かれて落下していくが、バウンド・ドックは前進して迫ってくる。

 

『逃がさねぇぞぉぉぉ!』

「ぐっ、ビットっ!」

 

MS形態に変形したバウンド・ドックは右腕のクローアームでスターダストを握り潰そうとする。スターダストはそれをシールドビットで防ぐが、シールドビットを握り潰されて、爆発が起きる。

 

「アァ?まさか、ナツキかっ」

 

その爆発に気づいたサンズ・オブ・ヅダが空を見上げる。

そこには、空中戦を広げるアブルホールSWに乗ったスターダストとバウンド・ドックがいた。

 

「あそこまでは結構高度があるな……」

 

アッシュの脳裏に浮かぶのは、チャンピオンとの戦い。あの時の様にまた自壊してしまうのかと内心思うが、すぐにその考えを振り切った。

 

「やれるよな、ヅダ!俺と……お前ならぁぁぁぁぁっ!」

 

サンズ・オブ・ヅダは対艦ライフルを捨てると、スラスターを一気に吹かせると、真上へ急上昇していく。

 

『逃がさねぇっつってんだろ!』

「コ、イ、ツゥゥゥ……!」

 

バウンド・ドックが伸ばしたクローアームはスターダストが手に持っていたシールドビットを掴んでおり、スターダストは押されまいと耐えていた。

 

「ナツキ!そのままでいろよ!」

「アッシュさん!」

 

急上昇していたサンズ・オブ・ヅダが腰から引き抜いたヒートホークでバウンド・ドックを切り裂く。シールドを手放して地面に落下していくバウンド・ドックをビームスナイパーライフルで撃ち抜いた。

 

『う、嘘、だろぉぉぉ!?』

 

断末魔と共に爆発するバウンド・ドック。爆煙はすぐに電子の粒に変わって消えていった。

スターダスト、アブルホールSW、サンズ・オブ・ヅダの三機は地上に着地した。

 

「大丈夫か、セレン」

「ん、大丈夫。ナツキのおかげ」

「そうか。ありがとうな、ナツキ」

「そ、そんな!えへへ……」

 

ナツキが照れていると、周りから更に敵の機体が現れる。

 

『兄貴の仇だ!』

『全員やっちまえ!』

『うおぉぉぉぉぉ!!』

 

まだ来るかと警戒をする三人。

その時、黄金の刃が一気に敵を薙ぎ払った。

 

『な、何……ギャッ!?』

『おい大丈ぐはぁ!?』

 

残りの敵は白い影が両断し、黒い影が撃ち抜いていく。

 

「……あれって、ノゾム!?」

 

ナツキは黒い影の方はノゾムの駆るブラックローズだと気づく。

 

「何が、起きて……」

「ありゃあ……最強がおいでなすったって事だろ」

 

ヅダが見上げる先には最強の男……クジョウ・キョウヤの乗るガンダムトライエイジマグナムがいた。

 

「このフォースネストを所有しているフォースのダイバーの告げる。今すぐ投降してほしい。無駄な荒事は、君達だって望んでないはずだ」

 

キョウヤからの警告に敵はすぐに武装を解除する。

チャンプの存在感、そして影響力にナツキは気圧されていると、白いシナンジュ……シナンジュヴィエルジュがこちらに寄ってきた。

 

「そこのダイバー、大丈夫……」

「え、あ、はい!こちらこそ、助けてくれて……」

 

シナンジュヴィエルジュに乗るダイバー・ルナも、話しかけられたナツキも硬直する。二人は体や声を震わせながら通信相手の名前を呟いた。

 

「ナツキ……!?」

「ルナ……!?」

 

二人の間に起きる空気感にセレンは心配になって通信越しにアッシュを見る。アッシュは何かを察しながらも「大丈夫だ」とセレンに言った。

 

***

 

事態が終息した後、ナツキ達のいるフォースネストを使用していたダイバー達は次々と拘束されていった。

 

「ほら、早くお縄につきなって」

「これで全員ですね」

「そうか。ありがとう」

 

フォースAVALONの一員であるカルナとエミリアが全員の拘束を確認すると、キョウヤに指示を仰ぐ。キョウヤは頷くと、ルナの方を向いた。

 

「シークレットガーデンも協力感謝する。彼らの護送は任せてくれ」

「はい。また何かあったら呼んでください。協力します」

 

ルナはキョウヤの感謝の言葉に返答するが、どこか浮かない様子だった。キョウヤはその様子をすぐに察しており、優しい笑みのまま言葉を続ける。

 

「君はフォースのリーダーだ。色々なしがらみはあると思う。だが、自分を圧し殺すような真似は良くない。君はまだ子供なんだ。今の内に後悔のない選択をしてくれ」

「……すみません。お気遣い、感謝します」

 

ルナは頭を下げて踵を返すと、その場から離れようとする。

 

「ルナ!」

 

その時、ナツキが現れてルナを呼ぶ。ルナが声のした方向を見ると、ナツキが嬉しそうに笑顔でいた。

 

「……久しぶりね、ナツキ」

「やっぱりルナなんだね!ヴィオレから話は聞いてたんだけど、まさかこんな所で会えるとは思わなくて……また会えて良かった」

 

ナツキの安堵の笑みを見てルナは何か我慢していた何かが込み上げてきそうになる。

その時、ルナの元に一人の少年が歩み寄ってくる。それに気づいたナツキは険しい表情になった。

 

「……ノゾム」

「まだ、GBNに残ってたんだな」

 

それはGBNに復帰した時に一番最初に再開した相手……ノゾムだった。ノゾムはナツキに詰め寄ると、その胸ぐらを掴んだ。

 

「言ったはずだぞ。二度と戻ってくんなって」

 

ノゾムが怒気を孕んだ口調でナツキに言う。ナツキは少し気圧されるが、表情をすぐに引き締める。

 

「僕だって言ったよ。もう二度と逃げたくないんだって」

「お前は取り返しのつかない事をしたって理解してんのか!」

「分かってるよ!」

 

ナツキはノゾムの胸ぐらを掴み返して自分より背丈が上のノゾムを引っ張ると、顔を引き寄せた。

 

「分かってる上で向き合おうって言ってるんだ。だから僕は僕なりに前に進んでみる。そして、必ず皆に追い付くよ」

 

ナツキの真っ直ぐな目にノゾムは舌打ちしながらナツキを解放する。ナツキもそれに合わせてノゾムの胸ぐらから手を離した。

 

「だったら……だったら、早く追い付いてきな。真っ向からぶっ潰してやる」

「うん、待っててね。すぐに追い付くから」

 

ノゾムはルナの横を通り過ぎながら「行くぞ」と囁く。ルナはナツキを見て名残惜しそうにしながらノゾムを追いかけていく。

 

「覚悟が改めて決まったって感じだな」

「アッシュさん……はい。あ、助けに来てくれてありがとうございます!」

 

アッシュがナツキの隣に歩み寄る。アッシュは普段通りに飄々とした様子だったが、何か憑き物が取れたような様子だった。

 

「俺が助けに行けたのは、お前が後押ししてくれたからだ。一応、感謝しとくぜ」

「アッシュさん……!」

「でも、あの程度でへばってちゃまだまだだな。これから師匠としてしごき回してやるよ」

「ぐぁぁぁ……頑張ります」

 

ゲンナリするナツキを見てアッシュはケラケラ笑いながらその場を立ち去っていく。ナツキは頭をかきながらアッシュやセレンと共に帰路に向かった。




今回色々やりたいことを詰め込みました。
アッシュの本気とか、ルナのママムーブ、ナツキとノゾムの対話……ここから第一章は新たなステージに進みます。

今回は色々設定追加するので大忙しになりそう(白目)。良ければ設定参考にしてウチの子出してくれると嬉しいです。

では、次回予告へ……

***

次回予告

アッシュとの修行に励むナツキ。

彼らの元にとある依頼が来る。

その依頼に苦戦するナツキだったが、ヴィオレが動く。

次回、紫色の天使
お楽しみに……


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第9話 紫色の天使

一週間以上待たせてしまいました。すみません。
ですが今回は待たせた分を込めた魂の一万文字、しかもゲスト回です!
それでは、どうぞ……


二年半前……

 

初心者サーバー資源衛生付近は激戦となっていた。

非公式ツール『ブレイクデカール』を使用する者達、通称『マスダイバー』に対抗の為に結成された組織『有志連合』はブレイクデカールの根元を突き止めて突撃を仕掛けた。

 

激戦の中、一機のMSが宇宙(そら)を飛んでいた。紫色のセラヴィーガンダムである。

 

「何処……!何処にいるんだよっ……!」

 

セラヴィーに乗っているのは紫髪の少女『ヴィオレ』だった。彼女はセラヴィーで周囲を見回して何かを探していた。

 

『見つけたぞ!』

『やれ!返り討ちだ!』

 

すると、マスダイバーの乗るMSが二機やってくる。ヴィオレは「チィッ!」と舌打ちをしながら迫ってくるマスダイバーを応戦する。

 

「私はっ!お前らに割いてるっ!時間はっ!ないんだよっ!」

 

セラヴィーはGNフィールドを展開しながら前進すると、膝部分の隠し腕が展開してビームサーベルを展開する。

 

「おりゃあああああ!」

 

セラヴィーは膝蹴りの要領でビームサーベルを敵の一機に突き刺した。

 

『こ、コイツ!』

 

片方の敵機は射撃武器を構えるが、すぐさま振り返ったセラヴィーはGNビームバズーカⅡをツインバズーカモードにして胴体部分を消し飛ばした。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

荒い呼吸をするヴィオレ。彼女はセラヴィーを資源衛生付近へと飛んでいった。

 

***

 

「……さん!ヴィ……さん!」

 

何か声が聞こえる。ヴィオレは自身が上の空になっていることに気づいた。自分は今、ユーロエリアのコロッセオにいることを思い出した。

視線を向けると、スカロプがいた。

 

「ヴィオレさん!」

「えっ、あっ!ごめん!」

 

ヴィオレが反応した時、外で大きな音が聞こえる。ナツキがかつてエースと戦ったコロッセオである。

 

「大丈夫っすか?上の空だったすけど」

「大丈夫。えっと、何の話ーー」

 

その時、二人の上を影が覆う。何だと思って視線を向けたヴィオレとスカロプ。その先にはこちらに倒れてくるスターダストがいた。

 

『わぁぁぁぁぁっ!?』

 

ナツキの叫びと共に観客席のバリアにスターダストが衝突する。ナツキは衝撃で揺れる頭を前に向けると、そこには灰色のヅダがいた。

 

『おいどォしたナツキィ!そんなんじゃダチの足元すら届かねぇぞ!』

『分かって……ます!』

 

アッシュの乗るサンズ・オブ・ヅダは()()装備しているヒートホークを弄びながら発破をかける。スターダストはバックパックのビームサーベルを構えて再度接近を仕掛けた。

ナツキは現在、アッシュと何度も模擬戦を繰り広げていた。

 

「まさかナツキのお師匠さんがGPD世界大会出場者だったとはなぁ」

「僕も驚きっす。ナツキさんも運が良いっすね……」

 

絶賛アッシュにフルボッコ中のナツキを見ながらスカロプとヴィオレは語る。

アッシュはかつてGPD世界大会の個人戦・団体戦の両方を()()()()()で出場し、両方においてベスト8入りを果たした文字通りの孤高の戦士である。

 

「でも、彼なら短期間でナツキをノゾム達に追い付ける様な実力にしてくれるに違いないね」

「僕も負けてられないっす!」

 

アッシュならナツキを大きく成長出来るかもしれないと淡い期待を向けていると、ヴィオレの元に通信が入った。ヴィオレは「誰だろう」と疑問を持ちつつ、応答に答えた。

 

『ハロー!ヴィオレちゃーん!』

「マギーさんじゃん。どったの?」

 

ヴィオレの通信をしてきたのはマギーだった。マギーがヴィオレに通信してくるのは珍しい。

 

『ナツキくんはいるかしら?彼にお願いしたい事があるの』

「お願い?おーい、ナツキー!」

 

ヴィオレに呼ばれた事に気づいたナツキは意識をそちらに向ける。

 

『え、何!?』

『よそ見してんじゃねぇ!』

『どわぁぁぁ!?』

 

よそ見をしてしまったスターダストにサンズ・オブ・ヅダの一撃が繰り出される。ナツキの断末魔と共に轟音が鳴り響いた。

 

***

 

第9話

紫色の天使

 

***

 

スターダストに降りたナツキは通信中のヴィオレの元に向かう。通信している画面の先にはマギーがいた。

 

「マギーさん!お久しぶりです!」

『ナツキくんお久しぶりー!元気にしてた?』

「はい。お陰さまで」

 

ナツキは二年半前、GBNを始めたばかりの旧四季團メンバーは彼女(?)に助けられた事がある。ナツキはあれから二年半ぶりの再開になる。

 

「それで、ナツキが何の用なのかな?」

『あぁ、そうだったわね。二人は極東オープンは知ってるかしら?』

 

ナツキは『極東オープン』と言うワードに首を少しかしげるが、ヴィオレは知っているようでナツキに教える。

極東オープンとは、GBNでも屈指の大規模なガンプラバトルの大会である。ランクも存在しており、エキスパート、ハイ、ミドルの三種類がある。

 

『その大会にミドルクラスで参加しようとしている師弟コンビがいてね?頑張ってる二人を見てると、私も何か出来ないかなーって思ったの!』

「で、復帰したてのナツキにスポットが当てられたと」

 

ヴィオレの視線がナツキに向けられる。

一方、ナツキは師弟と言うワードに少し親近感が湧いてくる。極東オープンに参加する予定はなかったが、その師弟の力になる事には興味津々だった。

 

「どうする、ナツキ?……って、聞く必要もないか」

「うん。マギーさん、手伝わせてください!」

『ありがとう!明日エントランスで集合で、お願いね。あの子達にも伝えておくわ』

 

マギーは明日の用事を取り付けると、通信が切れる。

 

「何だか面白い事になりそうだね」

「うん、楽しみだ」

 

マギーの言っていた師弟……彼らとの出会いにナツキは期待を膨らましていた。

 

***

 

翌日、ナツキはGBNにログインをしてアッシュやセレン、ヴィオレと合流していた。

約束通り、話に出ていた師弟が来たのだが……

 

「嫌です!」

「えぇ!?」

 

即否定された。

 

「ゆ、『ユナ』。折角来て貰ったのにその態度は良くないと思うなぁ……」

「嫌って言ったら嫌です!ししょー以外から教えてもらう気はありません!」

 

師匠である大柄な男性『ダイチ』は弟子の桜色の髪の少女『ユナ』を説得しようとしているが、ユナ本人は頑なに拒絶している。

 

「えーっと、ユナちゃんだっけ?僕達はダイチさん程じゃないけど、色々教えるよ?」

 

折角呼ばれたのに、骨折り損はたまったものではない。何より、出来る事なら手助けはしたかった。

 

「嫌です!私をちょーきょーしていいのはししょーだけです!」

『ブッ!?』

 

『ちょーきょー』と言うワードにセレン以外の一同が吹き出す。ヴィオレの方は大笑いしかけているのを我慢している。

 

「あー、ちくしょう。ガキの面倒を見るのは嫌いじゃねぇが、めんどくさいのは嫌なんだよ……」

 

アッシュはかなり面倒くさそうに頭をかく。ダイチが「すみません……」と謝罪の言葉を漏らした。

 

「で、どうすんだよ。企画倒れ寸前だぞ?」

「ど、どうしよう……」

 

弟子のユナがナツキ達の教示を拒絶している以上、どうしようもない。ナツキが頭を抱えていると、ヴィオレがナツキの横を通り過ぎてユナの元へ歩む。

 

「ユナちゃん、ちょっとお出掛けしない?」

「へ?私、ですか?」

 

驚きを隠せないユナにヴィオレは笑顔を向けた。

 

***

 

臨海都市ーーその海辺のベンチにユナは座っていた。

 

「お待たせ~。はい、ゾック風抹茶カフェ。抹茶はいける?」

「だ、大丈夫ですっ」

「そんな緊張して畏まらなくて良いよ。私はGBNにいる全ての美少女の味方だからね!」

 

目をパチパチ何度も瞬きをしてサムズアップをすることでアピールをするヴィオレだったが、ユナは首を傾げるだけだった。

ヴィオレは「あ、冗談とか分からなかったり、通じないのか」と察してすぐに止めると、話を変える。

 

「ユナちゃんって、師匠ーーダイチさんが好きなの?」

「ふぇあ!?」

 

急な質問に動揺するユナ。それを見たヴィオレは目を光らせると、ニヤニヤしながら詰め寄る。

 

「どうやら直接聞かれると恥ずかしいのかな?それもまた良き!てかコロコロ色んな表情が変わって可愛いなぁ!」

 

ユナのあまりの可愛さに抱きついてしまうヴィオレ。ユナは突然のハグに困惑していたが、観念してすぐに大人しくなった。

 

「ユナちゃんが羨ましいよ。一途に恋なんてしたことなかったからさ」

「私も、ししょーが初恋の人ですよ?ヴィオレさんは好きな人がいないんですか?」

 

ユナに聞かれたヴィオレは少し困った風に頭をかくと、遠い目をしながら話す。

 

「ナツキいたでしょ?私とソイツ、あとノゾムとルナって子が幼馴染なんだけど……」

 

ヴィオレはナツキがやめるまでの経緯を語りだした。

 

***

 

一方、ナツキ達の方もナツキがダイチに同じ内容を話していた。

 

「そうか。そんな事が……」

「今はノゾムやルナに追い付くための準備段階ですね。だから、極東オープンには出れないと思います」

「マギーさんが呼んでくれる程なのに、戦えないのは残念だな」

「またの機会、と言うことで」

 

ナツキは今自分に必要なのは実力、そしてフォースだと考えている。なので極東オープンに出る余裕はないと考えている。

しかし、ダイチやユナと戦ってみたいと言う気持ちは一切ないわけではない。いつか戦おうと約束しあった。

 

「それほど、幼馴染が大切なんだね」

 

ダイチに言われたナツキは、少し照れ恥ずかしそうに頷く。

 

「はい。大切な幼馴染です。だから、尚更仲直りして、元通りになりたいんです」

「離れてしまったことに責任を感じてるんだね」

「……はい」

 

険しい表情をしながら頷くナツキ。それを見ていたダイチは笑顔になって背中を叩いた。

 

「うわっ!?だ、ダイチさん?」

「若いウチに色々悩んでぶつかっても良いさ。そうやって成長してきたからさ。頑張れ、ルーキー」

「ダイチさん……ありがとうございます」

 

ナツキはダイチに感謝の言葉を呟いた。

 

***

 

臨海都市の方でもユナがヴィオレから話を聞いていた。

 

「そんな寂しい事があったんですね……」

「まぁそこは前振りで……重要なのは次なんだよね」

 

ヴィオレはナツキが抜けた時の事を思い出す。

 

「ルナはナツキの事が好きなんだよね」

「そうなんですか!?」

 

ユナが驚いた様子で反応する。ヴィオレはカラカラと笑いながら話を続ける。

 

「それでね……ノゾムはルナが好きだったんだよ」

「え……えぇ!?三角関係ですか!?」

 

ヴィオレのカミングアウトにユナは動揺を隠せなかった。ヴィオレは「そうなるよねー」と笑っているが、少し冷めた様子だった。

 

「うん。まぁ、そう言う拗れた三角関係を見てたせいか、恋愛事態やる気を見いだせなくてさ……」

「そうなんですね……いつかヴィオレさんにも素敵な人が出来ますよ!」

「ん~!ユナちゃんは優しいなぁ!」

 

ヴィオレは感動してユナに抱きつく。ユナはヴィオレの豊満な胸に顔が埋まってしまい、息が出来ずに苦しんでしまう。

 

「あ、ユナちゃん、私と乙女の秘密の特訓してない?」

「乙女の、秘密……ですか?」

 

ヴィオレの提案に巨乳から顔を離したユナが反応する。ヴィオレは「ふふふ」と不適に笑っていた。

 

***

 

ユナとヴィオレが離れてから一時間弱、ナツキ達は待ち惚けを食らっていた。

 

「ユナ、大丈夫かな……」

「ヴィオレなら大丈夫ですよ。彼女は信頼できますから」

 

ダイチは心配な様子だったが、ナツキは幼馴染としてヴィオレを信頼していた。

 

「お待たせ~!」

「ししょー!」

 

すると、ナツキ達の元にヴィオレとユナがやってくる。

 

「結構長かったね。説得が長引いたの?」

「んー、秘密?」

 

ナツキの問いにヴィオレは適当にはぐらかす。ナツキは恐らくヴィオレが自分達の代わりにユナを鍛えたのだろうと察した。

 

「ありがとね、ヴィオレ」

「感謝するのはまだ早いよ。ダイチさん、今からユナちゃんに私に出来る最後の特訓をします。手伝ってくれませんか?」

「ヴィオレさん……分かった。是非手伝わせてくれ」

 

ダイチもナツキと同じ事を察したのか、ヴィオレの協力のお願いも快く受け入れてくれた。

 

「ユナちゃん、頑張っちゃおうか!」

「はい!」

 

***

 

ゼネラル・レビルーー一年戦争の名将『レビル将軍』の名前から取られた大型艦隊である。

ナツキ達が受けたミッションはこの艦隊を撃墜するミッションである。

 

「ここには沢山の、それでいて様々な敵に囲まれながら戦う必要がある。極東オープンは臨機応変さが試されるからね!」

「成程。それでこのミッションを選んだんだね」

 

スタート地点であるラー・カイラムのカタパルトデッキにはスターダスト、アブルホールスカイウォーカー、そしてダイチの乗る『ゼロクアンタライザー』とユナの『ガンダムブレイジングエクシア』がいた。

 

「皆~お待たせ~」

 

遅れてやって来たのはヴィオレの乗る機体だった。二頭身サイズのガンプラ……俗に言うSDガンプラである。

 

「ラファエルガンダムのSD?でもキットは無かったような……」

「おそらく自作だと思います。ヴィオレなら何週間何ヵ月経とうと意地でも作ろうとするので」

 

ダイチはそのSDサイズのラファエルガンダムを見る。

本体はラファエルガンダムをSDサイズに縮めている。更に特徴的なのはバックパックに背負われている巨大な何かを背負っている。00を全て見たダイチにはそれが何なのかすぐに分かった。

 

「よーし、役者が揃った所でお話タイムといこうか!」

 

ヴィオレはマップを共有しながら話し始める。

 

「ナツキ&セレンちゃんとダイチさん、私とユナちゃんの構成でいくよ」

「ししょーと一緒じゃダメなんですか?」

 

ユナとしてはダイチと離ればなれになることは不安になるらしい。それを察していたヴィオレが宥めるようにその理由を話す。

 

「気持ちは分かるけど、極東オープンではダイチさんと離ればなれになって知らない人と共闘を強いられる可能性もある。臨機応変さって言うのはそう言う意味も含んでるのさ!」

「成程!ヴィオレさんはししょーに負けないくらい賢いんですね!」

「うーん、サラッと私が下みたいに扱われたけど、称賛は素直に受け取ろう!さっさと出撃するよ!」

 

軽いノリで受け流すヴィオレだが、内心ちょっとショゲたのは秘密である。

スナイパーパッケージのスターダストがアブルホールSWの上に乗ってカタパルトに乗る。

 

「ナツキ、スターダスト、出ます!」

「セレン、アブルホールスカイウォーカー、行ってきます」

「ダイチ、ゼロクアンタライザー。出るぞ!」

「ユナ、ガンダムブレイジングエクシア。行きます!」

 

その後、ダイチ、ユナが続き、最後にヴィオレがカタパルトデッキに乗る。

 

「ヴィオレ……ラファエルガンダムヴァイオレット、出るね!」

 

ヴィオレの機体『ラファエルガンダムヴァイオレット』が出撃する。背部の大型バックパックにあるGNキャノンが真上に向いていたのが下に下ろされると、GN粒子を放出しながら他の四機を追いかけた。

 

「来るよ!全員指示通りに分裂してね!」

『あぁ!/はい!』

 

5機のMSは二手に別れると、ゼネラル・レビルから飛んできたジェガン、リゼルを応戦する。

 

「ダイチさん、サポートします!前線はお願いします!」

「任された!」

 

ダイチのゼロクアンタライザーがGNドッズライフルでジェガンを撃ち抜く。リゼルがウェイブライダー形態で包囲しようとするが、それをスターダストのビームスナイパーライフルが狙撃していった。

 

「うわぁぁぁ!」

 

一方、ユナは複数のリゼルに追いかけ回されていた。リゼルの放つビームライフルを寸での所で避けながらGNサブマシンガンで応戦するが、リゼルはそれを難なく避けてしまう。

 

「し、ししょー!どうすれば……」

「ユナちゃん焦らないで!あとすぐにダイチさん頼らない!」

「ヴィ、ヴィオレさん!」

 

逃げ惑うユナにヴィオレの通信が入る。ラファエルガンダムヴァイオレットは両手に持つGNバズーカVでジェガンに応戦していた。その背中の大型バックパックは存在しておらず、剥き出しの背中が見える。

 

「三秒直進しながらリゼルを誘導して!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「私を信じて!ほら!」

 

ユナはヴィオレを信じて前進をする。リゼルが追い付こうとしたその直後だった。

真上から放たれたビームがリゼルを撃ち抜いた。ユナは何が起きたのか分からず上を見上げる。

 

「頭のない……セラヴィー?」

 

そこには、紫と白のカラーをした頭が簡易的なセンサーだけのセラヴィーガンダムがいた。

 

「紹介しよう!これが私の相棒『ヴァイオレットセラ』!」

 

ラファエルガンダムヴァイオレットのサポート機体……HGサイズの00V戦記に登場するラファエルガンダムドミニオンズのサポートMS・セラを元にして作られた『セラヴァイオレット』はラファエルガンダムヴァイオレットの元に戻っていく。

 

「SDとHGの連携!それが私のラファエルガンダムヴァイオレットさ!」

 

セラヴァイオレットは変形してラファエルガンダムヴァイオレットに装着されると、GNバズーカVを合体させてダブルバズーカモードにする。更にGNクローを展開させて、GNビックキャノンとGNバズーカVを同時掃射する。

放たれた高圧縮されたビームはジェガンやリゼルを撃墜していく。

 

「凄い……!」

「へへーん!伊達に何ヵ月も拘って作った訳じゃあないよ!ユナちゃん、撃ち漏らしは任せた!」

「はい!行きます!」

 

ラファエルガンダムヴァイオレットのビーム砲撃の弾幕を抜けて迫ってくる敵機をブレイジングエクシアのGNガントレットが砕いていく。

 

「凄いですヴィオレさん!これなら……」

 

ユナがこの調子ならクリア出来ると予感した時、警告音が鳴り響いた。それと同時にゼネラル・レビルに一機のMSが出現する。

 

「あれは……バンシィか!」

 

黒き獅子と女神の名前を授かった第二の一角獣……『ユニコーンガンダム二号機 バンシィ・ノルン』である。しかし、ダイチ達が知ってるバンシィ・ノルンと違い、背部のアームドアーマーDEは二つになっており、両腕にはアームドアーマーVNとアームドアーマーBSが装備されていた。

 

「さながらバンシィ ペルフェクティビリティと言った所かな……でもどうして……」

 

今のバンシィはユニコーンガンダムのフルアーマー化のプランB、それにスタビライザーを追加したのが完全版ーーペルフェクティビリティである。

 

「まさか、隠し条件!?知らないよそんな事ぉ……!」

 

予想外のイベントに困惑するヴィオレ。

こちらへと出撃してきたバンシィに立ち向かってきたのは、なんとブレイジングエクシアだった。

 

「ユナちゃん!? まだバンシィがどんくらい強いのか分からないのに、突っ込んじゃダメだって!」

「ヴィオレさんと秘密の特訓をして強くなったところをししょーに見せたいんです!」

「それ言っちゃったら秘密言わないから!あぁ、もう、ヤバくなったら下がってね!」

 

ブレイジングエクシアの行く手を阻もうとする敵機を後方から砲撃をして先へと進ませる。

 

「短期決戦で行きます!スーパートランザム!」

 

ユナはブレイジングエクシアに搭載されたトランザムとスーパーモードが融合した特殊機能『スーパートランザム』を発動すると、ブレイジングエクシアがGNサブマシンガンを射撃する。

バンシィはそれを避けながらアームドアーマーBSを展開してビームを放った。

 

「これくらいっ!」

 

うねるように放たれる予測不能のビーム。しかし、ユナはブレイジングエクシアの機動力と持ち前の動体視力でそれを避けると、一気に接近をしかける。

 

「GNぅ……パァァァンチ!」

 

ブレイジングエクシアの拳をバンシィはアームドアーマーVNで受け止める。少し凹んでしまうが、バルカンを放って応戦する。それをブレイジングエクシアは宙返りをして避けると、蹴りの構えを取った。

 

「GNッ、キぃぃぃック!!」

 

ブレイジングエクシアの蹴りがバンシィの胴体に直撃すると、そのまま加速して突き抜けようとする。

その時、後ろに大きく下がっていたバンシィは急にピタリと止まった。

 

「えっ……!?」

 

ユナが幾ら加速してもバンシィは動かない。その時、バンシィに変化が起きた。

 

「あれは……ユナ、まずい!一旦下がれ!」

 

ダイチがユナにすかさず警告するが、すでに遅く。バンシィは装甲を展開して変形……否、変身をした。

 

「が、ガンダムになった!?」

 

新人類・ニュータイプを殲滅するために作られた機能『NT-D(ニュータイプデストロイヤー)』により、黒き一角獣(ユニコーンモード)から殲滅者となったガンダム(デストロイモード)へと変わったバンシィは胴体を蹴りつけていたブレイジングエクシアの足を掴む。

 

「そんなっ、離してっ!これは私とししょーの……!」

 

ブレイジングエクシアがGNサブマシンガンで抵抗しようとした時、バンシィのアームドアーマーDEが外れて急に動きだし、ブレイジングエクシアの腕を弾いた。サイコミュ機能によってアームドアーマーDEがさながらビットの様に動かしたのである。

バンシィはそのままアームドアーマーVNを展開し大型のクローを構えると、足目掛けて振り下ろした。

 

「きゃあぁぁぁ!?」

 

ブレイジングエクシアの足がもがれて吹き飛ばされる。吹き飛ばされるブレイジングエクシアにバンシィはアームドアーマーBSの銃口が向けられた。

 

「ユナぁぁぁっ!」

 

ダイチが名前を叫びながらゼロクアンタライザーでユナの元に向かおうとする。しかし、敵が阻み、距離が離れた状況で、トランザムをしても間に合う確率は低かった。

バンシィのアームドアーマーBSからビームが放たれーーブレイジングエクシアの所で爆発した。

 

「そんなっ……!」

「ユナっ!コイツ……!」

「待って。あの子は無事」

 

ダイチが激情に駆られてバンシィの元に向かおうとした時、セレンが制止の言葉をかける。ダイチとナツキはどういうわけか分からなかったが、煙が晴れてその意味を知った。

 

「あ、れ……無事?」

 

ユナ自身も己が撃墜されてしまっていたと思っており、無事である事に驚きを隠せなかった。

 

「まさか、ししょーが助けて……!」

 

ブレイジングエクシアのカメラアイを動かして前を見ると、そこにはゼロクアンタライザーではなく、ラファエルガンダムヴァイオレットがいた。

 

「ヴィ、ヴィオレさん……?」

「ごめんね、ユナちゃん。私が一緒にいれば、こんな事にならなかったのに」

 

責任をもって今日だけでも面倒を見ると決めておきながら、ユナを危険な目に遭わせてしまい、ダイチを心配させてしまった。その責任感がヴィオレを強く駆り立てるーー目の前の(バンシィ)を倒せと!

 

「いくよ、ラファエル、セラ……リアルモード!」

 

その時、セラヴァイオレットが上下半身に分かれると、上半身は分解されてラファエルガンダムヴァイオレットの上半身に装着される。

大きな頭は前頭部と後頭部に分かれると、後頭部のGNドライヴを覆うように前頭部が装着されてセラヴィーのバックパックのガンダムフェイスの様にバックパックに合体する。

下半身はラファエルガンダムヴァイオレットの爪先が閉じられると、下半身がすっぽり嵌まるように合体した。

 

「あれは……ラファエルガンダムドミニオンズ?」

 

それはガンダム00V戦記に出てくるラファエルガンダムの派生『ドミニオンズ』に類似していた。

 

「その通り!SDだから、出来た事なのさ!」

 

バンシィがアームドアーマーBSを放つ。ラファエルガンダムヴァイオレットはSD状態の頭に搭載されていたGNフィールド発生装置でGNフィールドを展開してビームを防ぐと、お返しと言わんばかりにバックパックのGNキャノンを撃つ。

 

「オラァ!美少女虐めた罰を受けろや失恋やさぐれ童貞!」

 

バンシィが避けるのを、ラファエルガンダムヴァイオレットはGNバズーカVで追撃する。バンシィはアームドアーマーDEを飛ばすが、ラファエルガンダムヴァイオレットは足を分離してGNクローでアームドアーマーDEを握り潰した。

 

「ナツキ!ダイチさんと一緒に艦隊潰しに行って!私はコイツをぶっ飛ばす!」

「分かった!ダイチさん、行きましょう!」

「分かった……ヴィオレさん、ユナを頼む!」

 

ヴィオレは「ガッテンテン!」と返事をしてバンシィに追撃しに行く。

スターダストとゼロクアンタライザーは艦隊に向けて飛んでいった。

ゼネラル・レビルにはディフェンサーユニットを装備したリゼルが待ち構えており、bユニットのリゼルが2つのメガビームランチャーからビームを放ち、aユニットはマイクロミサイルを放った。

 

「ダイチさん、敵の誘導お願いします!セレン、パッケージチェンジ!」

「任せてくれ!」

「ん……!」

 

スターダストがスナイパーパッケージを外すと、アブルホールスカイウォーカーから射出されたコンテナからパッケージが飛んでくる。

 

「スターダスト、ドッキング!」

 

バックパックに武装が追加され、頭部には追加センサーが装着される。手にはシグマシスライフルを武装された。

ビーム射撃支援仕様『キャノンパッケージ』である。

 

「僕はミサイルの迎撃の後支援攻撃をするので、ダイチさんは護衛の排除をお願いします!」

「分かった!」

 

aユニット装備のリゼルが放つマイクロミサイルをスターダストのバックパックに装備されたビームガトリング砲が次々と撃ち抜いていく。ミサイルを撃ち落とし終えると、シグマシスライフルでaユニットのリゼルを撃墜させていく。

 

「まだまだぁ……っ!?」

 

一方、バンシィと激戦を繰り広げていたヴィオレだったが、どこからか飛んできたビームが行く手を阻んだ。

 

「うっそ、ジェスタまで来るとか聞いてないんだけどッ!」

 

バンシィを一定まで追い詰めると発動するギミックなのか、ジェスタが二機とジェスタキャノンまで現れる。

バンシィに加えてジェスタまで現れると、流石のヴィオレも苦戦せざるを得ないのだが……

 

「たぁぁぁぁぁっ!」

 

片足がないにも関わらず飛んできたブレイジングエクシアがジェスタキャノンの頭部を飛ばす。ジェスタがブレイジングエクシアにビームを発砲するが、ブレイジングエクシアはそれをギリギリで避けてキックを繰り出して胴体を破壊した。

 

「ヴィオレさん!」

「ユナちゃん、ナイスっ!」

 

残ったジェスタはラファエルガンダムヴァイオレットのGNキャノンが撃墜する。

中破しているにも関わらず、助けてくれたユナにヴィオレは感激していた。

 

「折角助けてくれたのに、私も出し惜しみしてらんないね!」

 

ヴィオレはディスプレイを操作すると、特殊機能を作動させると、 ラファエルガンダムヴァイオレットの全身が紫色に染まる。

 

「トランザム・ヴァイオレット!」

 

トランザムをヴィオレなりに改造した機能『トランザム・ヴァイオレット』を発動させる。

 

「乙女の生きざま、見せてあげる!」

 

急接近を仕掛けるラファエルガンダムヴヴァイオレットにバンシィはアームドアーマーDEからビームを放つが、それを回避して更に接近する。

バンシィはそれをアームドアーマーVNで応戦するが、ラファエルガンダムヴァイオレットはそれを回避して足のGNクローで左腕を破壊した。

 

「足も器用に使わないとねぇ!」

 

バンシィは悪あがきなのかアームドアーマーBSを至近距離で放つが、ラファエルガンダムヴァイオレットはそれをGNフィールドで受け止めながらGNバズーカVをGNキャノンに接続させる。

 

「ぶっ飛んじゃえぇぇぇ!」

 

ツインバスターキャノンの状態になってGNフィールドを解除すると、アームドアーマーBSのビームを容易く押し返してバンシィの上半身を吹き飛ばした。

 

「ッシャーイ!!!ユナちゃん今の見た!?くぁー!バ火力気持ちィーッ!」

「凄かったです、ヴィオレさん!」

 

ヴィオレはガッツポーズをすると、ユナに大興奮しながら話した。

そして、ゼネラル・レビルの方ではゼロクアンタライザーとスターダストが最後の追い込みをかけていた。

 

「トランザムッ!」

 

ゼロクアンタライザーはGNセイバーを引き抜くと、リゼルを次々と切り裂いていく。

 

「今だ、ナツキくん!」

「はいっ!」

 

道を切り開いたダイチはナツキを先行させる。スターダストはシグマシスライフルを捨てると、バックパックに接続されたビームライフルを構えた。

 

「ヴェスバーァァァッ!」

 

特殊なビームライフル『ヴェスバー』を低速かつ低収束に調整してビームを放つ。拡散されたビームを前進しながら放つことで、ゼネラル・レビルは一刀両断された。

 

『MISSON COMPLETE』

 

ゼネラル・レビルが撃墜された事によって、ミッションクリアの報告が届く。ナツキは「ふぅ」と肩の力を抜くとダイチにサムズアップをした。

 

「お疲れ、ユナちゃん」

「えへへ、お疲れ様です!」

 

ラファエルガンダムヴァイオレットの拳にブレイジングエクシアの拳がカツンと音を立てながら当て合った。

 

***

 

ミッションを終えた一同はエントランスに戻っていた。

 

「今日はありがとうございました!」

「どーもどーも。美少女の為なら何だってするからね!」

 

今日数時間でヴィオレとユナはいつの間にか仲良くなっていた。これが俗に言う陽キャの力なのだろうかと内心ナツキは思った。

 

「ダイチさん、僕は余り力になれなくてすみません。寧ろ、アドバイスを貰ってしまって……」

「そんな事ないよ。ナツキ君も頑張って幼馴染に追い付いてね」

 

「っ……はい!」

 

ユナとダイチに別れを告げて二人を見送るナツキとヴィオレとセレン。ナツキはふとヴィオレに聞いた。

 

「二人は極東オープンで頑張れるかな?」

「うーん、正直言って厳しいかもね。極東オープンのミドルクラスって言うと、色んな意味で一筋縄じゃいかない人が参加してる」

 

様々な予選に加えて、ランクに比例してない実力の持ち主……ダイチとユナは多くの壁に挑まざるを得ないだろう。

 

「でも二人なら……ユナちゃんなら一人でも頑張れるよ。乙女って男子が思ってる百倍位は強いからね」

「そっか……極東オープン、応援しに行こうかなぁ」

「良いね!その時は私も呼んでね!」

 

ヴィオレは少し笑うと、「じゃあね」と手を振りながらナツキとセレンに別れを告げる。ナツキとセレンも隠れ家で待つアッシュの元に向かった。




今回のゲストはキラメイオレンジさんの『ガンダムビルドダイバーズ REBOOT』からダイチとユナちゃんでした!
GPDで大活躍していたダイチが、GBN初心者ユナちゃんの師匠として共に最強を目指すとても面白い作品です。オリキャラは個性のごった煮と言わんばかりに変人ばかりで、ししょーガチラブなユナちゃんにも必見です。
デッド(逮捕)オア()アライブ(婿入りか)!!

こっからは補足となります。
まず、元四季團の中で一番軽そうなノリを持つヴィオレですが、ちゃんと彼女にも背負ってるものがあります。今後そこも掘り下げる予定です。
そして、明らかになった地獄の三角関係。ノゾムはルナが好きで、ルナはナツキが好きで、ナツキはそれに気づけてません。ノゾムはそんなナツキに嫉妬しています。ノゾムがナツキを拒絶する理由にはそこも含まれています。彼の心情に関しても今後明確にさせる予定です。

設定集も更新したので是非覗いてください!

それでは、次回へ……

***

エースと再開したナツキ。

エースの提案で宝探しミッションへと向かう。

しかし、宝を奪おうとする者と戦うことになってしまう。

その時、現れたのは……

次回、星の指輪
お楽しみに……


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第10話 星の指輪

2週間近く待たせてしまいました……ですが今回も怒涛の1万文字超えました。
連続でのゲストメイン回です。それでは、スタート……


ダイチとユナとの一件から少し経った頃、ナツキは今日も砂川模型店にやって来ていた。

 

「ナツキくん!今日もGBN?」

「巻季さん。はい、少しでも上達するためには、特訓あるのみかなって」

 

今日の店番は巻季がしており、帆立は店の方にもGBNの筐体にもいなかった。

 

「帆立は今日は留守なんですか?」

「あの子?あぁ、自分の部屋で、ヴィオレって子の配信を見てるらしいよ」

 

ヴィオレの名前を聞いてナツキは帆立がヴィオレの大ファンであることを思い出す。

 

「そうだったんですね。あ、それじゃあ僕はこれで!」

「はーい、行ってらっしゃい」

 

ナツキは筐体に座ると、スターダストをスキャンさせてログインした。

 

***

 

第10話

星の指輪

 

***

 

ログインして早々、エントランスに出たナツキ。その背後から大柄な男が背中を叩いた。

 

「よっ、ナツキ!」

「うわぁっ!?……何だエースか」

 

ナツキを驚かせたのは、以前戦ったジャスティス・カザミのファンのエースだった。

 

「最近会ってなかったけど、調子どうだよ!俺は……まぁ、ボチボチだな」

「こっちも特に変化は……いや、沢山あったね」

 

ナツキはこの短い期間で起きた出来事を思い返す。帆立との出会いやアッシュのガンプラバトルへの復帰、そしてルナとの再開……本当に濃密な出来事ばかりだった。

 

「マジか。だったら尚更お前に頼みたい事があるんだよ!」

 

エースはディスプレイを開くと、ナツキにとあるミッションを見せた。それは俗に言う宝探し系のミッションだった。

 

「このミッションにあるレアアイテムが結構高値で売れるらしいんだよ!俺すっげぇ欲しい武器あってよ!それをゲットするには大量のビルドコインが必要なんだ!」

「つまり、そのレアアイテムを手に入れて、ビルドコインにして、武器をゲットしたいって事?」

 

ナツキがエースのハイテンション説明を上手く纏めあげると、エースは「そう言う事だな!」と頷いた。

 

「もしかして、そのレアアイテムを探す手伝いをして欲しいのかな?」

「流石ナツキだ!察しが良くて助かるぜ!」

 

ナツキはどうしようかと考えるが、今日は特に予定がなかった事と求められた助けを拒絶しようとは思えなかった。

 

「良いよ。ちょっと待ててね。仲間を呼んでくるから」

「ヨッシャ!サンキューナツキ!」

 

露骨に喜ぶエースを傍目に、ナツキはセレンにメッセージを送った。

 

***

 

宝探しミッション『月下の探求』。

真夜中の廃墟都市を進み、見張りの視線を交わしながらランダムに配置された宝箱を探すミッションである。

 

「よし、それじゃあ行こうか!セレン、後ろに着いてきてね」

「ん、分かった」

 

スターダスト、アブルホールスカイウォーカー、エリゴスの三機はスタート地点に立っていた。

 

「ヨッシャア!速攻で見つけて帰ろうぜ!」

「待ってアッシュ!慎重になりなって!」

 

早速探索を始めようとするエリゴスにスターダストは制止させる。

その姿は頭とバックパックから出ている排出口と思わしき部分以外は黒い布で覆われており、頭も黒いチョバムアーマーの様な装甲を被っていた。

 

「そ、そうか……て言うか、何で全身真っ黒なんだ?前はそんな見た目じゃなかったよな?」

「これかい?これはステルスパッケージ。隠密行動を得意とした装備さ。マントの中は特に変化は無いけど」

 

スターダストがマントを広げると、トリコロールカラーの装甲が見える。エースは「へー」と興味深そうにスターダストを見た。

 

「僕が先行するから、二人は極力音を抑えて着いてきてね」

「おう!任せとけって。そんな始まってすぐにトラブル起きねぇし大丈夫ーー」

 

その時、警告音と共にアブルホールSW目掛けてビームが飛んできた。エリゴスは反応に遅れたが、スターダストはマントでビームを防いだ。

 

『へぇ、ABCマントか』

 

ビームを撃ってきた相手はスターダストが身に纏う黒い布がクロスボーンガンダムに出てくるビーム耐性のコーティングが施されたマント『ABC(アンチビームコーティング)マント』であることを見破る。

 

「急に攻撃しやがって!誰だ!」

 

エースが襲撃者に問いかける。その問いに答える様に現れたのはのガンダムmk-2、そのエウーゴカラーの様なガンダムAN-01と、黒と青緑のバイアランだった。

 

『我々は……そうですね。地獄兄弟(ヘルブラザーズ)と名乗っておきましょう』

『お前らどうせレアアイテム狙いだろ?だったらライバルは速急に潰さないとなぁ!』

 

モノクロのガンダムAN-01……『エンジンガンダム』がビームライフルを撃ちながら接近してくる。アブルホールとスターダストはそれを避けると、スターダストがサプレッサー付きサブマシンガンを二丁取り出して射撃を行う。

 

「ナツキ!」

『よそ見している場合ですか?』

 

腕からビームサーベルを伸ばしながら迫るのはバイアランの改造機『バイアラン・リモート』。振り下ろされたビームの刃はエリゴスのシールドによって防がれた。

 

『ほう、ビームサーベルを受け止めるとは、固さだけは一丁前ですね』

「うるっ、せぇ!」

 

エリゴスはバックパックにマウントされたソードメイスを掴んで振るうが、バイアランはそれを宙に飛んで避けた。

 

『甘いんですよっ!』

「ぐおぉぉぉっ!?」

 

バイアランは一回転すると、エリゴスにキックを繰り出す。命中してしまったエリゴスは岩肌にぶつかってしまった。

 

「エース!」

『余所見すんなぁ!』

 

ナツキがエリゴスに視線を向けている間に、エンジンガンダムは腕部ビームガトリングを撃つ。

ABCマントは一度ビームを受けると蒸発してしまうので、出来るだけ被弾を避けたいスターダストは回避しながらサブマシンガンを撃つので精一杯だった。

 

「このままじゃじり貧だ……!」

 

エリゴスは追い詰められ、スターダストは助けに行こうにもエンジンガンダムに防がれている。万事休すかと思われたその時、どこかからミサイルが飛んできて、エンジンガンダムとバイアランリモートの動きを封じた。

 

「えっ……!?」

『こっちに来て!早く!』

 

スターダストはレーダーに映った第三者に気づいてそちらに視線を向ける。そこには、一機のジェスタが立っていた。

 

「助けてくれた……?っ、セレン、エリゴスを運んで!僕は時間を稼ぐ!」

「ん!エース、乗って」

「わりぃ……!」

 

スターダストは背部のABCマントに懸架しているスモークグレネードを取り出すと、投げる。

煙が立ち込める中、アブルホールSWがエリゴスを乗せてその場を逃げる。スターダストはそれを確認すると、アブルホールSWに続いた。

 

『待てっ!』

『落ち着きなさい、イカヅチ。どうせ彼らも『アレ』を狙ってここに来た輩です。また会えますよ』

 

追いかけようとするエンジンガンダムのダイバー『イカヅチ』にバイアランリモートのダイバー『アラシ』が制する。

アラシには彼らの狙いが透けて見えていた。

 

***

 

地獄兄弟から逃げることに成功したナツキ達は安全ゾーンで一息ついていた。

 

「じゅ、寿命縮むと思ったぜ……」

「助かったね……ありがとう!えっと……」

 

ジェガンの改造機『ハリケーンジェガンMkⅣ』から出てきたのはナツキやエースよりも幼そうな見た目の女の子だった。

 

「ユニって言うの。無事で良かったです」

「ユニちゃんか。僕はナツキ」

「エースだ!」

「ん、セレン」

 

ユニから名前を聞いた三人は自身の名前を名乗る。

 

「ユニちゃんも噂のレアアイテムを探しに来たの?」

「『も』って事は、ナツキさん達もなんだ」

 

ナツキ達同様、ユニもまたレアアイテムを狙って宝探しミッションに参加した者らしい。

 

「でも、探しても探しても見つからなくて、諦めて帰ろうとした所に……」

「僕達が戦ってるのを見つけたんだね」

 

ユニから経緯を聞いたナツキは成程と頷く。何かお礼をしてやりたいのだが、どうすれば良いのやらと考えていたその時だった。

 

「話は聞いたよ。アンタら、レアアイテムを見つけたいんだってな?」

 

その声と共に現れたのは長く少しボサッとした緑の髪をしており、ガンダムXのガロードと同じ服を着た女性だった。

 

「えっと……」

「あぁ、突然すまないな。私はワイズ=ワイス。バルチャーをやってるものさ」

 

バルチャー……ガンダムXに出てくるならず者等を指す言葉なのだが、GBNではトレジャーハンターに近い物である。

 

「ワイズさん、ですか。僕達に何か用が……」

「用も何も、そのアイテムの場所を知ってるのさ」

 

それを聞いたナツキ、エース、ユニの三人は反応してしまう。まさか逃げてきた所でこんな運の良い出来事に出会うなんて思いもしなかった。

 

「どうしてそんなこと教えるんだよ?」

「何でって、私一人じゃそのアイテムは一人で取れないからな」

 

ワイズ曰く、レアアイテムのあるエリアに近づけば近づく程、見張りのNPDが徘徊するようになり、レアアイテムのあるエリアに来ても強力な門番が待ち構えているらしい。

 

「何より、そのレアアイテムは先着一名のみ。だからお前達みたいに取り合いに巻き込まれるのさ」

 

ナツキの脳裏には先程の地獄兄弟が思い浮かぶ。彼らもまたレアアイテムを狙っている為、巡り会うのは避けられないだろう。

 

「どうする?私と手を組んでみないか?」

 

ナツキはエースに視線を向ける。エースは少し思案するが、サムズアップを返した。続けてユニに視線を向けると、ユニは「大丈夫!」と答えた。

 

「お願いします。案内してくれませんか?」

「おうとも。私に任せな」

 

こうして、ワイズを含んだ一同は再度レアアイテムゲットの為に動き出した。

 

***

 

荒野にはザクⅠやザクⅡ等が徘徊しており、侵入者がいないか監視を続けていた。

 

「監視、いるね」

「どうすんだよ。倒すか?」

「焦らなくて良いよ。僕がいる」

 

ナツキはABCマントの裏に喧嘩してあるビームダガーを引き抜くと、ビームを発振させながら監視のザクⅠの背後に接近する。

 

「あ、あぶなーー」

 

ユニが言い切る前にザクⅠは後ろからビームダガーでコックピットを貫かれる。ザクⅠは何が起きたのか分からないままその場にバタンと倒れてしまう。

 

「な、何が……」

「バックパックに付いてるの、デスサイズのハイパージャマーだろうな」

 

ワイズの言葉を聞いたユニが成程と頷く。スターダストのバックパックにはガンダムデスサイズのハイパージャマーは装備されており、これによりレーダーに移らずに接近できたと思われる。

 

「ナツキさんの機体、凄いです!私もまだお父さんに手伝ってもらわないと作れなくて……」

「そんな、僕なんてまだまだだよ。ワイズさんの機体も恐らくほぼスクラッチじゃないですかね?」

 

ワイズの機体はガンダムXに出てくるドートレスの改良機『ワイズ・ワラビー』だった。

 

「まぁな。でもナツキも謙遜しなくていいと思うぜ?」

「そ、そうですか?えっと……ありがとうございます」

 

誉められたナツキは少し照れ臭そうにしながら感謝の言葉を述べる。

 

「そういやよ~。何でユニはこのイベントに参加したんだ?」

「私?それは……」

 

すると、移動をしながらエースがユニがこのイベントをやっていた理由を聞いた。ナツキとセレンはエースの付き添い、ワイズはバルチャーロールの為……となると、ユニの理由が知りたかった。

 

「私、プレゼントを送りたい人がいるの」

「もしかして、テトラか?」

「えぇっ!?テトラってあのテトラさんか!?」

 

『テトラ』と言う名前が出てきてナツキは一人?を浮かばせている。それに気づいたワイズがははっと笑った。

 

「テトラって言うのは個人ランク一桁の化けもんみたいに強いGチューバーさ」

「個人ランク……一桁!?」

 

数万人近くいるGBN……その中でもトップを誇る実力者である事にナツキは驚きを隠せなかった。

 

***

 

今時の女子高生の様な部屋をしたフォースネスト。部屋にはSDギャンのぬいぐるみに、ガンプラフォーストーナメントの歴代チャンピオンのポスターが飾られていた。

 

「ちょりーっす★七つ八つ九つテトラでーっす!」

 

カメラが撮影している中、フェードインしてきたのは虎耳のギャ()系Gチューバー『テトラ』である。

更に反対側から高笑いと共に紫髪の少女がやって来た。

 

「オッス!オラ、ヴィオレ!はー、シャバ(美少女の部屋)の空気は上手いなぁ!!」

 

元気ハツラツ、テンションアゲアゲなノリでフェードインしてきたのはヴィオレだった。

 

『出オチの女』

『出てきて早々やべー事言ってて草』

『大丈夫?放送事故起きない?』

 

「え、皆辛辣過ぎん?お姉さん泣きそう」

「ヴィオっちいっつも変な事言ってるもんねー」

「え、テトラちゃんせめて擁護して???」

 

辛辣なコメントに悲しむ(ふりをする)ヴィオレにテトラは擁護するどころか肯定している。

 

「てことでね、私とテトラちゃんによるW配信なんだけど、前回のコラボは皆覚えているかな?」

 

『覚えてるよ!』

『どんな内容だったん?』

『アーカイブ、見よう!』

『今からは無理っしょ』

 

「知らない人の為に説明すると、私とテトラちゃんがギャン対決したんだよね」

「うんうん。私がボロ負けしたギャン対決ね」

 

ヴィオレとテトラは以前コラボはしており、両者共に改造したギャンを使って勝負をしたのだが、相手は個人ランク4位。案の定ボロ負けしていた。

 

「いやーいけると思ったんだけどなー。ギャン・GN(ガン)キャノン」

 

その時に使ってたのが、ギャン・キャノンにGNドライヴと疑似GNドライヴをいくつも搭載させて高火力を実現した『ギャン・GNキャノン』なのだが、テトラの作ったギャンに接近戦に持ち込まれて案の定敗北した。

 

『まーたGNドライヴ載せてるよ』

『ヴィオっちGNドライヴ好きすぎw』

『ヴィオレちゃんは何でもかんでもGNドライヴ載せるからなぁ』

『GN狂い』

 

「だってちゃんと作れば凄い機能してくれて、特殊機能としてトランザムがあるロマン動力だよ?使わないわけないじゃん」

「でもヴィオっち、GNドライヴ載せまくるけど一つ一つちゃんと作るし、付ける機体もそれに合わせて調整から凄いよねー」

「テトラちゃん……(トゥンク)」

 

そんなGN狂信者であるヴィオレだが、GNドライヴの作り込みは生半可なものではない。テトラからもその製作技術を称賛されてときめいていた。

 

「それはそうとして、私はあの時の私じゃない!新しいギャンがいる!」

「それは私も同じっしょ!この日の為に準備してきたからね!」

 

この企画の為に互いに新作のギャンを作ってきた。二人はそれを引っ提げて二度目のギャン対決を始めようとしていた。

 

***

 

ユニやエース、ワイズからテトラについて教えてもらっていたナツキは興味津々で聞いていた。

 

「そんな人と知り合いなんて、ユニちゃんは凄い人だなぁ~」

「私もテトラお姉ちゃんと仲良くなれて、すっごく嬉しかったの。それで、私に優しくしてくれるテトラさんに恩返しに何か贈り物をしたいなって思って……」

 

テトラに感謝のプレゼントをしたいと願っているユニ。それを知ったナツキはユニの魅力の一端を理解した。

 

「でも、レアアイテムは先着一名だけだぜ?どうするんだ?」

 

「あ」と声に出しながらナツキは通信越しにエースに視線を向けた。それに気づいたエースは「ぐぬぬぬ」と悩む。

 

「ぐぅ……しょうがねぇなぁ!譲ってやるよ、アイテム!ジャスティス・カザミだって、こんな時ならそうするだろうしな!」

「エースさん……ありがとうござます!」

「か、感謝するなら俺を導いてくれたジャスティス・カザミにするんだな!」

 

ユニに感謝されたエースは得意気になっているが、照れ隠しであることは誰にも見てとれた。

 

「とりあえず、早く向かおうぜ。あの地獄兄弟に先越されちまうかもしれないしな!」

「そうだね。早く行こう!」

 

ユニの為に一同は先に進んだ。

 

***

 

荒野の基地の最奥……そこが最後のエリアだった。

 

「ここにレアアイテムが……」

「ここにいる門番が厄介なんだよ」

 

一同がエリア内に入ってきたその時、巨大なゲートが開いてそれは現れた。

楕円形のボディに複数の固定砲があり、真上にはグフ・フライトタイプの上半身が出ていた。

 

「これって……アッザム・リペア!」

 

アッザム・リペア……0083 Rebellionに出てくるアッザムの改修機なのだが、目の前のアッザム・リペアはその魔改造機とも言える機体だった。

 

「コイツが厄介な門番……『アッザム・クラブ』さ!」

 

アッザム・クラブと名付けられたMAはナツキ達を見つけると、固定ビーム砲からビームの弾幕を放つ。

一同はそれを避ける。その内、エリゴスが前に出た。

 

「この程度の弾幕ならっ!」

「バカっ、容易に近づくな!」

 

ワイズの警告の直後、アッザム・クラブの楕円形のボディの左右から大型のクローが伸びた。

 

「うぉおおおっ!?」

「あれは、ヴァル・ヴァロのクローだ!」

 

アッザム・リペア同様0083に登場したMAであるヴァル・ヴァロのクローがエリゴスを襲うが、エリゴスはギリギリの所で回避した。

 

「クソッ、近づけねぇ!」

「だったら、これで!」

 

ハリケーンジェガンがビームライフルを構えて撃つが、アッザム・クラブはクローでそれを防いだ。

 

「あれは……Iフィールドか!」

「中々に厄介だろ?まさにレアアイテムを守る門番に相応しいぜ……!」

「それなら、物理はどうかなっ!」

 

ユニはビームライフルを収めると、ハイパーバズーカを放つ。しかし、クローは強固な装甲で出来ているのか、それすらも防いでしまった。

 

「そんな……!」

「言っただろ、厄介だって!」

 

その時、アッザム・クラブの胴体の前方にエネルギーが充填されていく。それが何なのかをナツキは知っていた。

 

「ヤバい……全員避けて!」

 

それと同時にアッザム・クラブから極太のビームが放たれた。ナツキの警告によって既に全員回避をしていたが、少しでも遅かったら全滅だっただろう。

 

「メガ粒子砲!?デタラメ過ぎんだろ!どう攻略しろってんだ!」

「落ち着いて!僕が何とかする!」

 

スターダストはABCマントの裏に折り畳まれて懸架されていた武器を取り出す。それはジム・ストライカーが武装していた特殊な格闘兵器『ツイン・ビーム・スピア』だった。

 

「僕がステルス状態で後ろに回って、本体を叩くよ。皆は陽動をお願い!」

「良いアイデアだな。やるぞ!」

 

ワイズ・ワラビーは背中に武装されたビームキャノンを、ハリケーンジェガンはハイパー・バズーカを撃ってアッザム・クラブの意識を向ける。

その間にスターダストは回り込むように移動していた。

 

「行け……っ!」

 

アッザム・クラブの背後に回ったその時、ビームがスターダストを狙って飛んできた。

 

「っ!?今のはっ!」

『見つけたぜぇっ!』

 

ビームサーベルを構えてスターダストを襲ってきたのはイカヅチのエンジンガンダムだった。

エンジンガンダムによってアッザム・クラブはスターダストとエンジンガンダムの方にもビームを放ってくる。

 

「このっ、今お前達に構ってる暇はないのにっ!」

『邪魔なのは貴方達も同じですよ』

 

更に、背後からバイアランリモートがビームサーベルを伸ばしながら襲いかかってくる。スターダストはビームダガーでそれを防御しながらアッザム・クラブから離れようとしていた。

 

「ナツキ!」

「僕は大丈夫!この二人は何とかするから、皆はアッザムを!」

『俺達を何とかするだってぇ?』

『舐められたものですねぇ!』

 

連携攻撃でスターダストを攻めたてていく地獄兄弟。追い詰められた状況にナツキは険しい表情をしながらスターダストにツイン・ビーム・スピアを構えさせた。

 

***

 

一方、フォース『北宋の壺』のフォースネスト、そのテトラの個室ではヴィオレがお通夜ムードでいた。

 

「はい、えー、テトラちゃんとのぉ、ギャン対決でしたがぁ……ッスー……何の成果もぉ、得られませんでしたぁ……」

 

某黄色いネズミの名探偵が如くしわしわになった顔で勝負の結果を言うヴィオレ。それに対しコメント欄は「草」で埋め尽くされていた。

 

「ヴィオっち、今回も凄い機体作ってきたのにね~」

「いけると思ったんだけどなぁ……ギャン・GN(ガン)マルク」

 

ヴィオレの作った機体はギャンにゲーマルクの要素を付け足した機体なのだが、ヴィオレの悪い癖(GN狂い)が発動してしまい、複数のマザーファンネル全てに疑似GNドライヴを付けると言う狂気の沙汰としか思えない機体を作ってきたのだが、見事敗北した。

 

「この前の反省を活かして、弾幕で接近戦を封じ込めようと思ったのに、ドウシテ……ドウシテ……」

「でもいつも通りGNドライヴは凄い作り込まれてたし、ファンネルの扱いとか凄かったよね!」

 

現在、二人は反省会と言う名目で今回のバトルの反省点を語り合うはずだったのだが、ヴィオレメインの反省会と化していた。

 

「ぐぬぬぬぅぅぅ……まぁ、反省点は幾つかあったし、第三回ギャンファイト、お楽しみにって事で!」

 

テトラに指摘やアドバイスを貰ってばかりでテトラに何も言えないヴィオレは申し訳なさに耐えきれず別の話題に移した。

 

「そう言えばテトラちゃんは最近ユニちゃんとはどうなの?」

「ん、ユニちゃん?そう言えば今日コメント欄でユニちゃん見なかったけど……何かあったのかな?」

 

テトラがコメント欄にユニのコメントが見つからないと言うと、ヴィオレは珍しそうに目を丸くする。

 

「ユニちゃんお留守ってマジ?明日はコロニーでも降ってくるんじゃないかな」

 

『そんな雨みたいなノリで降られても……』

『でもユニちゃんいないの心配っしょ』

『何かトラブったのかなぁ?』

 

コメントの方もテトラファンの中でも屈指の応援度であるユニがいないことにザワめき始める。テトラもコメント欄を見て少し不安そうにしていた。

 

「大丈夫だよテトラちゃん。ユニちゃんは二年半前よりもかなーり強くなった。何があっても必ずテトラちゃんの元に来るよ」

「ヴィオっち……ヴィオっちは優しいね」

「まぁそんな事はあるね!私はただこの世の全ての美少女の味方なのだから!」

 

ヴィオレはさっきまでの優しいセリフを台無しにするような発言の後に「それに」と続ける。

 

「私、思うんだ。愛の形ってのは……」

 

***

 

荒い息と共にスターダストが立ち上がる。既にABCマントはあちこちに穴が出来る程ボロボロになっており、サブマシンガンも弾切れをしていた。

 

『所詮はこの程度か』

『一人で何とかするとか言いながら……無様ですねぇ』

 

アッザム・クラブと戦っている三人も少しずつ疲弊している様子だった。しかし、スターダストは諦めずにツイン・ビーム・スピアを構えた。

 

「まだだ……!ユニちゃんがテトラさんに渡すアイテムをゲットするまで……諦めない!」

「ナツキさん……」

 

ナツキの諦めずに戦おうとする姿にユニは闘志を震え上がらせる。しかし、地獄兄弟はそれを鼻で笑うだけだった。

 

『ハン!女が女に惚れてるんじゃねぇよ、気持ち悪ぃ』

『個人ランク四位も堕ちたものですねぇ』

「っ、テトラお姉ちゃんをバカにーー」

「馬鹿っ、余所見するな!」

 

ユニが地獄兄弟に視線を向けてしまい、動きを止めてしまったアッザム・クラブにクローを繰り出す。

 

「うおぉぉぉぉっ!」

 

しかし、エリゴスがハリケーンジェガンが突き飛ばしてクローを盾で受け止めるが、吹き飛ばされて壁に激突してしまう。

 

「エースさん!」

「だ、大丈夫だ……!」

『微笑ましい友情ごっこだなぁ?』

『ですが所詮赤の他人。信じれるのは自分と血を分かつ兄弟のみなんですよっ!』

 

バイアランリモートが両手からビームサーベルを伸ばすと、飛び立とうとする。

その直前に背後からビームの刃が振り下ろされた。

 

『何っ!?』

 

振り返ったバイアランリモートはそれを受け止めると後ろに下がった。バイアランリモートを襲ったのはスターダストだった。

 

「違う……違う!僕の幼馴染(ヴィオレ)も言っていた。人を想う事に、愛する事に形なんてない!」

 

ツイン・ビーム・スピアを構えさせながらナツキは吼える。それは、人の愛情を侮辱する者達への怒りの言葉だった。

 

「それを馬鹿にする奴は……僕がここで倒すッ!」

『アァ?一丁前に格好付けやがって……兄貴、やるぞ!』

『地獄兄弟の恐ろしさ、体に教え込んであげますよっ!』

 

ナツキと地獄兄弟が戦闘を再開する。一方、エリゴスも立ち上がってソードメイスを構えていた。

 

「ちくしょう……ナツキばっか良いカッコ付けやがって!ジャスティス・カザミのファンとして、俺も負けてられるか!」

「ハハッ、その意気だ!私達で援護するぞ!」

「うんっ!」

 

ワイズ・ワラビーのビームキャノンとハリケーンジェガンのドッペルホルンによる砲撃がアッザム・クラブのクローを防御させる。

 

「魔王モーォォォドッ!」

 

その間にエリゴスは魔王モードを発動させると、ビームをエリゴス・シールドで受け止めながら前進していった。

 

「いっけぇぇぇぇぇ!」

 

エリゴスは跳躍すると、アッザム・クラブを制御するグフ・フライトタイプにソードメイスを向ける。グフ・フライトタイプは唯一装備していたガトリングシールドを連射するが、エリゴスはナノラミネートアーマーによる防御力を信じてソードメイスを振り下ろした。

 

「これがっ!俺のっ!勇姿だぁっ!」

 

胴体をエリゴスの渾身の一撃によって潰されたグフ・フライトタイプ。それと同時にアッザム部分も停止した。

 

「やった!これで……」

 

その時、アッザム・クラブのメガ粒子砲が急にチャージを開始した。しかも、アッザム・クラブも自爆しかねない程の威力まで溜められていた。

 

「コイツ、制御機関(グフ)が潰されると自爆特攻するのかよ!」

「ダメ、あの威力だと避けられない……!」

 

誰もが間に合わないと悟ったその時、メガ粒子砲の砲口の前にエリゴスがシールドを押さえ付けながら突進した。

 

「エースさん!?ダメ!そんな事したら……!」

「どーせレアアイテムは手に入らねぇんだ!だったら、せめて、俺のお陰で手に入ったって言われたいだろうがぁぁぁ!」

 

魔王モードのよって強化された赤く燃えるスラスターでアッザム・クラブを壁にまで押し付けるエリゴス。その直後、メガ粒子砲がエリゴスシールドと至近距離で直撃し、エリゴスとアッザム・クラブは共に爆発していった。

 

***

 

『いい加減墜ちろぉ!』

 

一方、エンジンガンダムが左腕からマイクロミサイルを放つ。スターダストはそれを避けるが、避けた方向にバイアランリモートがいた。

 

「しまっ!?」

『終わりです!』

 

バイアランリモートのビームサーベルがスターダストの胸部に突き刺さる。しかし、突き刺されたのが胸部で良かったとナツキは笑みを浮かべた。

 

「パージッ!」

『馬鹿なッ!?』

『分離しやがった!』

 

ナツキはスターダストのトップファイターを外すと、コアファイターとボトムファイターを接続した状態でその場から離脱する。

 

「セレェェェン!」

「ん!」

 

ナツキはセレンを呼ぶと、セレンはアブルホールSWからコンテナを二つ発射する。

 

「スターダスト、ドッキング!」

 

飛んできたコンテナの一つからトップファイターが飛んできてコア+ボトムファイターと合体する。そしてもう片方のコンテナからハイパージャマーをバックパックに付けて、ABCマントを身に纏うと、頭に追加装甲を付けた。

 

「仕切り直しだっ!」

 

スターダストはステルスパッケージとして復帰すると、ビームダガーを引き抜いて構える。

エンジンガンダムがビームサーベルを引き抜いて仕掛けてくるが、スターダストはそれをビームダガー受け止めると、もう一本で腕を切り落とした。

 

『なぁっ……!』

「これでぇっ!」

 

ビームダガーを二本エンジンガンダムの胴体に突き刺すと、続けてヒートダガーを引き抜いて突き刺す。更にツイン・ビーム・スピアで串刺しにした。

 

『た、助けてくれ!兄貴ぃぃぃ!』

 

ツイン・ビーム・スピアを引き抜かれると、エンジンガンダムは爆散していった。

しかし、戦いがこれで終わったわけではなく、バイアランリモートが頭上からビームを撃ってくる。

 

『よくも弟を……イカヅチをやってくれましたね!』

「上からの攻撃……っ!」

「ナツキ、こっち!」

 

セレンに呼ばれたと思いきや、スターダストの元にアブルホールSWが飛んできた。スターダストはアブルホールSWの上に乗ると、ツイン・ビーム・スピアを構えた。

 

『足場を手に入れた所でっ!』

 

バイアランリモートはビームサーベルを伸ばして襲ってくるが、スターダストがツイン・ビーム・スピアで受け止めると、押し返す。

 

『その程度でぇぇぇ!』

 

バイアランリモートは再度接近をしかけるが、スターダストはABCマントを脱ぐと、それをバイアランに投げつけた。

 

『っ!?』

 

バイアランは投げつけられたABCマントをビームサーベルで切り裂く。しかし、マントの先にはその場から離れるアブルホールSWだけで、スターダストはいなかった。

アラシはレーダーを見るが、スターダストはハイパージャマーによって姿を消していた。

 

『奴は何処にっ!?くっ、レーダーに映らない……!』

「こ、こ、だぁぁぁっ!!」

 

スターダストはバイアランリモートの真上におり、ツイン・ビーム・スピアをロッドモードからビーム発振部分を九十度前に倒してサイズモードにすると、バイアランリモートはビームの鎌によって一刀両断された。

 

『そん、な、我々地獄兄弟がやられるなんて……うわぁぁぁっ!?』

 

アラシの断末魔と共に二等分されたバイアランリモートは地面に叩きつけられながら爆発した。

 

「はぁ……はぁ……ふぃ~、終わったぁ」

「お疲れ、ナツキ」

 

肩の力を抜きながらナツキはアッザム・クラブが現れたゲートが再度開かれるのに気づき、ユニ達が倒してくれた事に安心した。

 

「ユニちゃん!ワイズさん!こっちは何とかなりましたけど……あれ、エースは?」

 

頭部の追加装甲とハイパージャマーのユニットを外してスタンダードになったスターダストはハリケーンジェガンとワイズ・ワラビーの元に向かうが、そこにはエリゴスの姿はなかった。

 

「実は、私達を庇ってくれて……」

「撃墜されてしまってんだ。でも、今は勝てたことを喜ぼうぜ。それがアイツの為にもなる」

「何かエースが死んだみたいなノリですけど、ワイズさんの言う通りですね!」

 

今の会話をエースが聞けば怒りそうだが、今は門番を倒した事により開かれた最高の宝のゲットが最優先だった。

 

「これが、レアアイテム?」

 

大きなゲートの先には宝箱があり、ナツキはユニに視線を向けると頷いた。ユニはそれの意味を察すると、意を決してハリケーンジェガンを動かして宝箱を開ける。

開けられた宝箱から光が溢れ出たと思うと、その光はハリケーンジェガンのコックピット部分……ユニの元に送られた。

 

「これは……」

「ハハッ、ピッタリな贈り物じゃないか」

「とっても、綺麗……」

 

このミッションのレアアイテム。それを手にした一同は目を丸くさせながらそれを見ていた。

 

***

 

ヴィオレはテトラに対して素直な気持ちを伝えていた。

 

「私はどんな人と恋をしても良いと思ってる。そこに迷いがないならね」

 

愛に形はないーーそれこそがヴィオレの信条だった。

 

「だからテトラちゃんも沢山想うと良いさ。そうすればきっと良いことあるはずだからね」

「ヴィオっち……私、ヴィオっちと知り合いでとっても良かった」

「あ、私の魅力に気づいてくれた?それほどでも~」

 

テトラに感謝されたヴィオレはデレデレしながら遠慮の言葉を返した。

 

『そう言えば、二人を知り合ったのっていつなの?』

 

「私とテトラちゃんの馴れ初め?確か、第一次有志連合の時に私が北宋の壺に来てーー」

 

その時、テトラの部屋が開けられる。突然開けられた事に二人は驚きながら振り向いた。

 

「あ、テトラちゃん……!」

「ユニちゃん!?」

 

部屋にやって来たのはユニ……と一緒に付いてきたナツキだった。

 

「ユニちゃん!……と、ナツキぃ!?何で君がいるのさ!?」

「ヴィオレ!?あ、そう言えばスカロプが配信見てるとか言ってたような……」

 

話をすればなんとやら。先程まで話題に出てたユニが出てきて視聴者が盛り上がりを見せる。

 

『ユニちゃんだ!』

『後ろの男誰だ?』

『ヴィオっちの知り合いそうだけど……』

『まさか、彼氏か!?』

 

「彼氏じゃないから。こんな奴男としてすら見てない」

「えっ、何か、男として傷つくんだけど」

「何さ。私に男として見られてなくても平気なくせに」

 

二人はそんなショボいことで話していたが、ユニがテトラの前に立ったのに気づいて黙ってそちらを見た。

 

「テトラお姉ちゃん……その、えっと……」

「どうしたの、ユニちゃん」

 

プレゼントは喜んでくれるのか。そんな心配で緊張してしまうユニ。テトラはユニが緊張しているのを察して優しく待っていた。

 

「私、テトラお姉ちゃんに何度も助けられ……そのお礼をしたくて、これを受け取ってください!」

 

ユニは小さな小箱を渡す。テトラはそれを受けとると、ゆっくりと開ける。

 

「これって……」

 

それは、星の様に輝く宝石が嵌め込まれた白銀の指輪だった。これこそがナツキ達が宝探しミッションで手に入れた最高レアのアイテム『星の指輪』だった。

 

「この人……ナツキさんや、色んな人達の力を借りて手に入れたんだ。……受け取ってくれますか?」

「っ……うん!ありがとう、ユニちゃん!」

 

テトラは嬉しさのあまりユニに抱きついてしまう。ユニは急に抱きつかれて驚くが、抱き締め返した。

 

『てぇてぇ……』

『おぉん……』

『ちょwおじさん達浄化されてるw』

『でも微笑ましいよね~』

 

コメント欄も予想外の展開に尊死する者や、興奮する者、感動する者等でいっぱいになっていた。

 

「今は生配信だし、後でしか聞けないけど、しっかり教えてもらうからね」

「分かってるよ。ちゃんと話すって」

「よしよし……じゃあ、今はこの言葉で一旦締め括らせてもらおうかな」

 

ヴィオレはカメラをヴィオレに向けるとサムズアップと共に言った。

 

「テトユニ、良いよね!」

 

***

 

一方、エントランスタワーの周辺にて、エースが一人ベンチで寝そべっていた。

 

「よぉ、今日の隠れMVPさん」

 

そこにエースの顔を覗き込む様に視界に入ってきたのはワイズだった。ワイズに気づいたエースは起き上がる。

 

「んだよ。からかいに来ただけか?」

「違うって。お前が体を張ってくれなかったら、私達は全滅だったのは確かさ」

 

エースはふて腐れぎみに聞くが、生き残ったワイズからしてみれば、エースは命の恩人みたいなものだった。

 

「じゃあ何しに来たんだよ」

「何……ほらっ」

 

ワイズはアイテムボックスからとある物を取り出すと、エースに投げ渡した。エースはそれをキャッチすると見た。

 

「何だ、これ」

「さっきのミッションで帰り際に取っておいたお宝さ。あのレアアイテム程じゃないけど、それでチャラにしてくれ」

 

ワイズは「じゃあな」と手を振りながら立ち去っていく。

 

「何だよ……有り難く受け取っておくか」

 

エースもワイズに内心感謝しつつも、そのお宝をアイテムボックスにしまうのだった。




という事で今回のゲストは笑う男さんの『GHC活動記録』からユニちゃんが、アルキメです。さんの『お嬢様はピーキーがお好き』の外伝からテトラちゃんを出させていただきました!
このお二人は百合カプとして青いカンテラさんの『GBN掲示板』にて幾度も語られており、有名なカップリングでした。現在は跡地となっており大半が消されている為、テトユニ関連を探すのは難しそうですが、良ければ探してみてください。
てぇてぇぞ……(語彙力消失)

そして、新キャラのワイズ=ワイスとワイズワラビー(ver.BDSD)は安定と信頼のミストラルさんに考えてもらいました!ワイズワラビーとか言うマイナーを責めていくミストラルさん流石だぜ……!

設定集も更新しておくので、良ければ覗いてくれると嬉しいです。書き手の皆さん、良ければウチの子を出してくれると嬉しいです……!

ゲスト云々の話題ついでに、界隈で有名になっているゲスト問題に関して少し語らせていただきますと、やっぱり相談することは大切だなーと改めて感じました。
二次創作の類はほぼ自己満足に近いですが、他人を巻き込むとなるとやっぱり礼儀と言うか、尊重が大切で、命綱無しの綱渡りみたいなノリでいかないとホントになっちゃうかもなーなんて思ってたりします。

まぁ後ろめたいニュースではありますが、これが原因でゲスト出演やりずらい……って思わずに、恐れずに書き手さんに許可もらって、判断に困る内容は質問して、ガンガン書いていって良いとは思ってます。
こう言うのは遊戯王と同じなんだと思います。マナーを守って楽しくデュエル!

感想もどしどし送ってくれると嬉しいです!
では、次回予告へ……

***

特殊なミッション『シャフランダム・ロワイヤル』に挑むナツキ。

そこで偶然ルナと再開する。

混沌と化す戦場の中、ルナの機体が駆け抜けるーー!

次回 純白の聖母
お楽しみに……


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第11話 純白の聖母

最近投稿ペースが落ち始めてますね。申し訳ございません!
来週からはペースを取り戻す予定なので、皆さん良ければ応援よろしくお願いします……!

それと、ミストラル0さんのガンダムビルドダイバーズ Finderにセレンとヴィオレを出してもらいました!ありがとうございます!

それでは、第11話です。どうぞ!


二年半前ーー後の第一次有志連合戦と呼ばれる戦い。それはマスダイバーとの熾烈な戦いを繰り広げていたが、戦況は拮抗から徐々に有志連合側の不利へと傾いていた。

原因として、有志連合は実力はあっても、倒されれば数が減ってしまう。対してマスダイバーは数も有志連合とぼぼ同じで、ブレイクデカールによって致命的な損傷をしない限り再生して動けるからだ。

 

「くそっ、あとどれくらい倒せば終わるんだ!?」

「しぶとすぎなんだよ!」

 

倒しても倒しても現れ、中途半端に倒すものなら復活してまた襲ってくるマスダイバーに有志連合の者達は苦しんでいた。

モジャモジャ髭を生やした中年ダイバーの乗るグレイズと屈強な体格にサングラスをかけた白熊のダイバーが乗るギラ・ドーガは悪態をつきながらも諦めずに攻撃を続けていた。

 

「また来たぞ!」

「チャンプはまだ元凶を見つけてないのか!?」

 

チャンプと複数の仲間が資源衛生に潜入したが、それから数十分近くかかっていた。

有志連合に選ばれた者達はチャンプことクジョウ・キョウヤによる選りすぐりのダイバーではあるが、所詮は人間。長い時間集中して戦うことは難しい。その為、一瞬の隙ができてしまうのは自明の理だった。

 

「ぐぉおぉぉぉっ!?」

「おい!大丈夫か!」

 

マスダイバーのνガンダムが繰り出したフィン・ファンネルがグレイズの腕を溶断する。本来ならナノラミネートアーマーによって防がれるような攻撃なのだが、ブレイクデカールによって強化されたフィン・ファンネルはナノラミネートアーマーを貫いたのだ。

 

「俺達も、ここまでか……!」

「くそぉ!マスダイバーめっ!」

 

10人近くいたフォースの一人として参加していた二人だったが、マスダイバーとの戦いで二人にまで減ってしまった。そして、残った自分達もここでおしまいかと思ったーーその時の事だった。

鋭い音と共にフィン・ファンネルが切断されると、爆発する。一つだけではなく、二つ、三つと立て続けに破壊されていった。

 

「な、何だ……!?」

「速くて捉えれねぇが……何かが通りすぎたぞ?」

 

マスダイバーのνガンダムもそれに気づいてビームライフルでその影を狙うが、純白の影はビームの弾幕を突破しながらνガンダムに衝突……否、その剣を突き刺した。

 

「あれは……サザビー?」

「どっちかってーと、ミスサザビーじゃねぇか?」

 

GPDが反映していた頃、世界大会に出場した選手『アイラ・ユルキアイネン』が作った機体『ミスサザビー』を再現したキットを元に改造されたと思われる機体はνガンダムからGNバスターソードⅢに似た剣を引き抜く。

そして、同じタイミングで周囲にいた有志連合のダイバーの元に通信が入った。

 

「有志連合の皆さん!まだ諦めてはいけません!」

 

それは、まだ若い、少女の声だった。しかし、その芯のある凛とした声にダイバー達は耳を傾けてしまう。

 

「状況は良くないのは事実です。ですがここで諦めては、GBNは悪意ある者達の巣窟と化し、全てが蹂躙されてしまいます!貴方が守りたい世界が、場所が、仲間が、愛する人が!」

 

グレイズとギラ・ドーガのダイバーも彼女の演説に聞き入ってしまっており、彼らの脳裏には倒されてしまった仲間達と酒場のようなフォースネストで騒ぎながら過ごす毎日が浮かんでいた。

 

「例え武器を失っても、腕や足を失っても、戦う意思がある限り戦ってください!この世界を救うために!」

 

彼女の演説が終わる。それと同時に有志連合のダイバー達が歓声をあげた。

 

「そうだ!俺達はその為に有志連合に入ったんだ!」

「これ以上、チーターに好き勝手やられてたまるか!」

「誰か武器を貸してくれ!片腕片足がなくても戦うぞ!」

「彼女に続けーっ!」

 

士気を取り戻した有志連合のダイバー達は果敢にマスダイバーと戦う。マスダイバーは逆に勢いを取り戻した有志連合に戸惑いを隠せなかった。

 

「彼女、一体ナニモンだ!?」

「わかんねぇ!でもこれだけは分かるぜ!」

 

グレイズとギラ・ドーガのダイバーもまだ諦めないと立ち上がってマスダイバーに立ち向かっていく。

 

「彼女は俺達の為に戦場に舞い降りてくれた、戦乙女さ!」

「戦乙女……純白の、戦乙女か!良いなそれ!」

 

後に純白の戦乙女と呼ばれるミスサザビーのダイバー……ルナはふーと息を吐くと、再度操縦レバーを強く握った。

 

「見てて、ナツキ。私は……!」

 

ルナは両手にある大剣を構えながら、別の戦場へと飛んでいった。仲間達の士気を取り戻すためにーー

 

***

 

第11話

純白の聖母

 

***

 

GBNを初めて早一ヶ月と少し。ナツキは日本の全ビルダー最大の天敵である梅雨の前にスターダストのパッケージ製作を一段落させた。

 

「こんにちは~」

「ナツキくん、いらっしゃい。ここ最近はバイトない日はずっとGBNに入り浸ってるわね」

「今はやりたいことがあるので……あ、展示品完成したので渡しておきますね」

「ありがとう~。これからもよろしくね!」

 

ナツキは巻季に展示用のガンプラが入った緩衝材入りのタッパーを渡すと、筐体に座ってダイバーギアをセットする。

 

「今日は何か起きそうな気がするなぁ……」

 

ナツキはポツリとそう呟くと、GBNへログインした。

不思議な感覚の後にエントランスへと入ると、いつも通りの賑わいだった。

 

「さてと、今日は何をしようかなぁ」

 

アッシュの隠れ家に行こうか?それとも誰かと一緒にミッションに行こうか?と考えるが、セレンと合流しないといけない事に気づく。

 

「いつの間にか、セレンがいないとダメって感じになっちゃったなぁ」

 

スターダストで戦うに合わせてアブルホールスカイウォーカーは必要不可欠なのは事実だが、それでもセレンがいないと落ち着かないと言うか、不安になる自分がいた。

 

「初めてGBNにログインした時も、一緒に支援機を考える時も……セレンがいないともうダメだったかもしれないなぁ」

 

改めてセレンの存在感にありがたみを感じるナツキ。そんな感慨に耽っていると、余所見してしまっていたせいか誰かと肩がぶつかってしまう。

 

「っ、わぁ!?すみません!余所見してて……」

「こちらこそ、別の事に意識を向けてしまってて……」

 

咄嗟に謝る両者だったが、すぐに言葉を止めてしまう。何故なら、ぶつかった相手は幼馴染だったのだから。

 

「ナツキ!?」

「春……ルナじゃないか!」

 

ぶつかってしまったのは以前灰色の太陽復活の一件で再開して以来のルナだった。突然の再開に両者は驚きを隠せずにいた。

 

「まさか、こんな所で会えるなんて……久しぶり」

「そ、そうね。……久しぶり」

 

互いに再開の言葉を向け合う両者。しかし、これ以上に話は続かなかった。

 

「(え、どうしよう。何話せば良いのかな……)」

「(どうしようかしら……完全に話すタイミングを失ったわ)」

 

困る二人だったが膠着状態はまずいと口を開く。

 

「「あのっ……あ、どうぞ」」

 

しかしほぼ同じタイミングである。ハモってしまった事にルナは少しおかしく感じたのかつい吹き出してしまった。

 

「わ、笑わないでよ!気まずいのに……」

「あはは……はぁー、ごめんなさい。つい面白くて」

 

むしろこの笑いは二人にとってプラスのものだった。先程まで何とも言えなかった空気は少し柔らかいものに変化している。

 

「えっと、ルナは今日は何か予定があるの?」

「え?私?フォースの皆はお休みだったり、別件だから、今日はシャフランダムロワイヤルをする予定だったわ」

「シャフランダム……?」

 

聞きなれないワードに首をかしげるナツキ。ルナはナツキが久々に復帰して環境の変化を完全に理解できていない事を察した。

 

「シャフランダムって言うのはね、野良プレイヤー同士でチームを組んで勝負をするちょっと変わったクエストね」

「そんなものがあるんだ。知らない人達とバトルかぁ……なんだか、楽しそうだね!」

「えぇ、臨機応変さが試されるから、練習にも打ってつけなの」

 

およそ10人のダイバーが二つのチームに分かれる。なので、誰が敵で誰が味方になるかは予想がつかないのだ。

 

「……その、ナツキもどうかしら?」

「僕?ルナと一緒にかぁ。良いね。やろう、シャフランダム!」

 

ルナはナツキを誘うと、ナツキはすぐに快諾する。ルナは一安心しつつも、ミッションカウンターへと向かおうとする。

 

「それじゃあ私はチーム申請するわね」

「申請?何それ」

「シャフランダムは同じチームになれるように申請出来るのよ」

「そうだったんだ……あ、それなら、もう少し待っててくれないかな?」

 

ナツキは何かを思い出してすぐにメッセージ欄を開く。ルナはその意図が分からずに首をかしげた。

 

「何をするの?」

「僕の……相棒?を連れていきたいんだ」

「相棒?」

 

ナツキの言葉を復唱したルナは彼の言う『相棒』が誰なのか疑問に感じた。

 

***

 

「初めまして。私、セレン」

「セレンちゃん……私はルナ。よろしくね」

 

エントランスにて、ナツキとルナの元にセレンが来ていた。ナツキは二人の間に入ると、紹介をする。

 

「セレンは僕の……姉弟子で、僕の支援機をなんだ」

「ん、お姉ちゃん」

「姉だけども……で、ルナは僕の幼馴染の一人なんだ」

「ちゃんと話したのは今日だけどね」

 

紹介を終えると、ルナはセレンの身長に合わせて中腰になる。

 

「セレンちゃんはナツキの事、どう思ってる?」

「ん、私が空を飛ぶ為に素敵な子を作ってくれた。家族みたいな、素敵な人」

 

自分の目の前でそんな事を言われたナツキは少し照れ臭そうに頭をかく。ルナは「そっか」と言いながらセレンの頭を撫でた。

 

「ナツキの事、姉弟子として力になってあげてね」

「ん、任せて。お姉ちゃん頑張る」

「だから姉弟子ってそう言う意味じゃないんだけどなぁ……」

 

ついついツッコミをいれてしまうナツキ。それを見ていたルナが微笑ましかったのかついつい笑ってしまう。

 

「ふう……じゃあ、三人で頑張りましょう」

「そうだね」

「ん!」

 

三人はシャフランダム・ロワイヤルに挑む為、改めて参加申請をすると、三人は格納庫まで転送される。

スターダスト、アブルホールの他に純白のシナンジュが立っていた。

 

「これ、ルナの機体か」

 

ナツキはアッシュが復活した際の一件でそのシナンジュを見ていたのですぐにそれがルナの機体であると気づいた。

ヴァイスシナンジュと言われる公式改造キットを元に作られており、バックパックのフレキシブル・スラスターはシナンジュ・スタインのものが追加されて二対になっており、ヴァイスシナンジュには本来無いバズーカ付きのビームライフルが装備されてる。

一見シンプルな改造に見えるが、細かい所まで改造が行き届いており、制作者ーールナがどれだけ丹精込めて作ったかが伝わる。

 

「シナンジュ・ヴィエルジュ。私の傑作とも言える機体ね」

「この子、ルナに作ってくれた事を凄い感謝してる」

「ルナがこんなに凄いガンプラを作れるようになるなんて……」

 

最初はガンプラのガの字も知らなかったルナ(春奈)がいつの間にかここまでガンプラ製作技術が上がっていたとは思いもしなかった。

 

「二年半あれば誰だって変化するわよ」

「そうだね。……そろそろ出ようか」

「そうね。三人、それぞれ頑張りましょう」

 

それぞれの機体のコックピットに入った三人はカタパルトに立つと、出撃するための体勢になる。

 

「ナツキ、スターダストガンダム、行きます!」

「セレン、アブルホールスカイウォーカー、行ってきます」

「シナンジュ・ヴィエルジュ、ルナ、出撃するわ!」

 

出撃する三機がカタパルトから出ると、そこは宇宙空間になっていた。

 

『おっ、今日はこう言うメンツか!』

『よろしく頼むな!』

 

五人の内の残る二人はジェムズガンとジャベリンだった。

 

「よろしくお願いします。とりあえず……私が前線に出るから、お二人はそれに続いてください。ナツキは……」

「キャノンパッケージは後方支援向けだから、後ろで何とかしてみるよ」

「お願いするわね。……それじゃあ、行きましょう!」

 

シナンジュ・ヴィエルジュが背部のフレキシブル・スラスターを吹かすと、一気に前に出た。

 

『はえぇ!?』

『俺達も行くぞ!』

「セレン、お願い」

「ん!」

 

ジャベリン、ジェムズガンも続き、スターダストはアブルホールSWに乗ってそれを追うように続いた。

一方、先頭で進み続けるシナンジュ・ヴィエルジュはビームライフルを構えた。

 

「敵は……ハンマ・ハンマとR・ジャジャね」

 

シナンジュ・ヴィエルジュはビームライフルに装備されたバズーカから弾を放つ。ハンマ・ハンマがシールドに付いているメガ粒子砲でそれを全て撃ち落とした。しかし、爆煙によってシナンジュ・ヴィエルジュの姿が見えなくなる。

ハンマ・ハンマとR・ジャジャが警戒していたその時、警告音と共に真上から一閃のビームがハンマ・ハンマのシールドを貫いた。

 

「ハァァァァッ!」

 

撃ち抜いたのは無論シナンジュ・ヴィエルジュであり、シールドと合体している剣『モーントシュヴェールト』を振り下ろす。二機はそれを咄嗟に避ける。ハンマ・ハンマは大きく下がり、代わりにR・ジャジャが前に出た。

ハンマ・ハンマが有線で腕を飛ばすと、三連ビーム砲を向ける。それを合わせるようにR・ジャジャがビームサーベルを構えた。

 

「来るっ……!」

 

R・ジャジャの刺突と同時に、ハンマ・ハンマの三連ビーム砲が左右から飛んでくる。

誰もが避けられないと思うような連携ーーしかし、シナンジュ・ヴィエルジュはそれを紙一重で避けた。

 

「私を、舐めないでッ!」

 

背後からR・ジャジャの胴体を刺し貫く。ハンマ・ハンマは即座に有線を戻そうとするが、シナンジュ・ヴィエルジュは有線をビームライフルで焼き切ると、一気に加速してハンマ・ハンマを一刀両断した。

 

「凄い。これが、ルナ……!」

『おい!こっちに一機来たぞ!』

『あれは……ハルートだ!』

 

ナツキがシナンジュ・ヴィエルジュの無双に度肝を抜かれていると、一機敵がこちらに来ているのをジェムズガンのダイバーが気づいた。スターダストがそちらを見ると、それは飛行形態の青いハルートだった。

 

「あのハルートって、まさか……!?」

 

ナツキはそのハルートに既視感があった。それはペリシアに訪れた時に見たハルート……ガンダムハルートスワローに似ていた。しかし、一部差異があり、飛行ユニットはハルートのものに近いコンテナになっており、武装も幾つか追加されていた。

 

『構わねぇ!やるぞ!』

『おう!』

 

ジェムズガンとジャベリンは恐れずに迫ってくるハルートを応戦しようとする。ハルートは飛行形態からMS形態になると、GNソードライフルを構える。

ジェムズガンが最初にビームライフルで仕掛けてくるが、ハルートはそれを避けてビームを撃つが、ジェムズガンはそれをビームシールドで受け止める。

 

『貰ったぁ!』

 

その間にジャベリンが背部のジャベリンユニットを構えながらハルートに迫った。直撃は避けられず、ジャベリンユニットの先端がハルートの胴体を抉る……と思ったその時、ハルートの上下半身が割れた。

 

『『!?』』

 

動揺を隠せないジェムズガンとジャベリン。分裂したハルートはそれぞれ飛行形態になると、別々に飛んでいく。

 

『へへーん!どう?驚いた?』

『これが私達の翼、『ハルートジェミニ』よ』

「その声、やっぱりあの二人だ!」

 

分裂した『ガンダムハルートジェミニ』から聞こえてきたのは以前ペリシアで出会ったダイバー『ソーン』と『ブラン』だった。

 

『分裂しただけでッ!』

『アハハッ、そんなのじゃやられちゃうよ!こんな風にねっ!』

 

ショットランサーのビームバルカンを発砲するジャベリン。しかし、上半身の『GNアタッカー』はそれを容易く避けると、背部にウイング代わりに装備されたGNソードライフルでジャベリンを切り裂いた。

 

『そんなっ!?このぉ!』

『ごめんなさい。でも、その程度のシールドじゃ、墜ちちゃうわよ!』

 

ジェムズガンがビームライフルで下半身の『GNナッター』を狙うが、すぐに避けられてしまう。GNナッターが左右コンテナのGNキャノンを放つと、ジャベリンの展開したビームシールドを貫通して撃墜した。

 

「す、凄い……!」

「あの子、生まれ変わって、凄い嬉しそう」

 

予想外のエンカウントに動揺を隠せないナツキと、生まれ変わったハルートを見てその感情を感じとるセレン。

ハルートジェミニは合体すると、スターダストとアブルホールSWに迫っていた。

 

「あの、ソーンさんとブランさんですよね!」

『その声、確か……ナツキくん?』

『まさかこんな所で会えるなんてね』

 

ナツキは通信を繋げると、ソーンとブランもまさかの再開に驚いていた。

とは言え、今はバトルの真っ最中だし、両者は敵同士。今は再開を喜び合う余裕はなかった。

 

『互いにこうやって本気を出し合うのは初めてね』

『もうあの時みたいな弱い私達じゃないよ!』

「上等です!セレン、行くよ!」

「ん!」

 

ハルートジェミニは変形して飛行形態『GNスワロー』になると、二機に迫る。スターダストはアブルホールSWをしっかり掴むと、シグマシスライフルを構えた。

 

「ッ!ナツキ、セレン!」

『お前の相手は俺達だ!』

『知らない奴だけど仲間の仇だ!』

 

ルナが助けに向かおうとしたその時、10機のポッド型のファンネルが飛んでくる。飛ばしてきたのはヤクト・ドーガとサイコ・ドーガだった。

ルナは眉間にシワを寄せながらビームライフルを構えると、二機を応戦した。

 

『ブラン、武器の操作お願い!』

『任せて!』

 

大型コンテナからGNミサイルが飛んでくる。アブルホールSWはそれを加速しながら避けようとするが、ミサイルは追い続けていた。

スターダストは背後を向くと、ビームガトリングで撃ち落としていく。

 

『隙ありぃ!』

「うわぁっ!?」

 

しかし、ミサイルは誘導のものだったのか、いつの間にか回り込んでいたハルートジェミニがGNソードライフルを振り下ろしてきた。キャノンパッケージのスターダストに近接武器はなく、迫るハルートジェミニに応戦できなかった。

 

「ナツキ!」

「うわぁっ!?」

 

その時、アブルホールSWが赤く輝いたと思いきや、急に動き出いてハルートジェミニの攻撃を回避した。反応に遅れて困惑するナツキだったが、すぐにビームキャノンをハルートジェミニに向けて放った。

 

「い、今のは、トランザム?」

「ん、危なかったから、使った」

 

先程の攻撃を避けることが出来たのはセレンがアブルホールSWのトランザムを発動したからである。今は解除しているが、セレンが発動する決断をしなかったらナツキは斬り伏せられていただろう。

 

『うわっ!?危なかったぁ!ごめんね、ブラン!』

『こっちこそ、急に動かしてごめんなさい』

 

一方、ハルートジェミニの方も普段は火器管制を行っていたブランが咄嗟に操作したことでスターダストのビームキャノンを避けていた。

 

『早くしないとあのシナンジュが来ちゃうよ』

『そうね。早く二人を撃墜しましょう』

 

ハルートジェミニは現在残りの仲間と戦闘をしているであろうルナのシナンジュ・ヴィエルジュを警戒しており、二人を倒さないと三機に囲まれる未来が見えていた。せめて1vs1の状況を作る為に仕掛ける。

 

「ルナが他の敵をやってくれているはずだ。ここで二人のハルートを倒すよ!」

「ん!」

 

GNスワローへと変形したハルートジェミニがGNキャノンを放ってくる。スターダストは回避をアブルホールSWに任せてシグマシスライフルとビームキャノンで応戦する。

 

「反撃のチャンスは、分離した後だ。やるしかないっ!」

 

ナツキの狙い通り、ハルートジェミニがGNアタッカーとGNナッターに分離すると、GNナッターがGNミサイルを飛ばしてくる。スターダストはビームガトリングでそれを再度打ち落とした。

 

『もらったっ!』

「来たァッ!」

 

GNアタッカーがウイング部分にしているGNソードライフルで切り裂こうとする。しかし、それは予測通りだったナツキはアブルホールSWから跳躍してその突撃を避けると、シグマシスライフルを捨ててバックパックからヴェスバーを構えた。

 

「貰ったぁぁぁぁぁっ!」

 

最大火力のビームが近距離で繰り出されようとする。ソーンがビームの光を見ながら顔を青ざめたその時だった。

 

『ソーォォォォォン!!』

 

ブランが彼女の叫びながらGNキャノンを放つ。スターダストはそのビームに気づくとヴェスバーをそのビームに向けて放ってしまった。両者のビームは拡散しながら相殺されてしまう。

 

「最大のチャンスがっ……ッ!?」

『いっけぇぇぇぇぇ!』

 

GNアタッカーを撃墜できるチャンスを逃してしまったスターダストに、GNアタッカーは機首部分からGNソードを展開して突撃してきた。今度こそ避けられない、そう確信したナツキは自身の敗北を受け入れようとした。

 

「ナツキぃっ!」

 

スターダストにGNソードが突き刺さる直前、トランザムを発動させたアブルホールSWがスターダストを突き飛ばした。アブルホールSWのボディがGNソードによって切り裂かれた。

 

『しまったっ……!』

「あ、あぁっ……!?」

 

ナツキはその光景を見て体を震わせる。目の前で庇われたと言う光景ーーそれは、二年半前にも見た光景だった。

 

「ナツキ、ごめんーー」

 

その言葉と共にアブルホールSWが爆発する。爆発に巻き込まれたスターダストとGNアタッカーは真反対に飛ばされた。

 

『ソーン、大丈夫?』

『あ、危なかった~』

 

吹き飛ばされたGNアタッカーはGNナッターが受け止めることで事なきを得たが、スターダストは力なく小惑星に叩きつけられた。

 

「せ、セレン……僕、僕は……!?」

 

トラウマとダブって見えた事と必ず守ると約束していたセレンを撃墜された事、二つの要素によってナツキは錯乱状態に陥っていた。

 

『ごめん、ナツキくんの機体が……』

『……良いわ。彼は今は戦えそうにないかもしれないから』

 

ソーンはスターダストを追撃しようとするが、ブランは動かないスターダストを見て彼に戦意がないことを感じとる。その時、ハルートジェミニにアラートが鳴り響いた。

 

『来たッ!』

『白い、シナンジュ』

 

ビームライフルの弾丸と共に現れたのはシナンジュ・ヴィエルジューールナだった。

 

「ナツキ、大丈夫?」

「ルナっ、セレン、セレンを、僕……!」

 

ナツキの震える声を聞いたルナは何が起きたのかを理解する。そして、自分が早く助けにこれなかった事を後悔した。シナンジュ・ヴィエルジュがビームライフルを捨てると、シールドの剣を取り外して『フォルモーントフォーム』にして構える。

 

「後は私に任せて。……貴方達の相手は私よ」

『絶対強敵だよね……』

『えぇ、でも、やるしかないわ』

 

ハルートジェミニはMS形態になると、GNソードライフルを構えた。

 

『『トランザム!』』

 

二人の宣言と共にハルートジェミニはトランザムを発動し、青と白のボディは赤く染まった。トランザム状態のハルートジェミニがGNソードライフルで近接を仕掛けてくる。

 

「そのレンジは私のものよっ!」

『それでもぉっ!』

 

ハルートジェミニの連撃をシナンジュ・ヴィエルジュは剣とシールドで応戦していく。一瞬のチャンスを狙ってシナンジュが反撃を仕掛けると、ハルートジェミニはそれを後ろに下がりながらGNキャノンを向けた。

 

『行って!』

「当たって、たまるものですかぁっ!」

 

極太のビームを紙一重で避けると、突きを繰り出すシナンジュ・ヴィエルジュ。しかし、その突きにハルートジェミニは分離する事で避けた。

 

『ブラン!』

『任せて!』

 

GNナッターがGNミサイルを放ちながらGNキャノンからビームを放つ。シナンジュ・ヴィエルジュはそれを加速して避けるが、すぐに二人の意図に気づいた。

 

『いっけぇぇぇ!』

「やっぱり、誘導っ」

 

GNソードを展開して突撃するGNアタッカー。シナンジュ・ヴィエルジュは剣とシールドを変形させると、二刀流の『ハルプムントフォーム』にしてそれを受け止めた。

 

『ブラン!』

『えぇ!』

 

突撃するGNアタッカーにGNナッターが合体すると、更に加速していく。

 

「この、くらいぃっ!」

 

シナンジュ・ヴィエルジュはハルートジェミニを弾く。ハルートはMS形態に一瞬で変形すると、GNソードライフルとGNキャノンを同時に放って強力なビームを放った。

シナンジュ・ヴィエルジュはそれを紙一重で避けると、片方の剣を投げた。投げられた剣はハルートジェミニに突き刺さる。

 

『『ッ!?』』

「ハァァァッ!!」

 

一瞬動きが固まってしまったハルートにシナンジュ・ヴィエルジュの一振りが炸裂した。

 

『負けちゃった、わね……』

『そうね。でも、楽しかったなぁ』

 

ブランとソーンは残念そうだが、満足した様子で言葉を交わせる。その直後、ハルートジェミニは爆発した。

 

『BATTLE ENDED

WINNER TEAM:A』

 

電子音声と共にシャフランダム・ロワイヤルが終焉を迎える。シナンジュ・ヴィエルジュはスターダストの方を見るが、倒れたままだった。

 

***

 

シャフランダム・ロワイヤル終了後、参加者はエントランスに転送された。

 

「GGだったよ。楽しかったなぁ」

「私達、ペリシアに展示する為にCランクまで上げたけど、まだまだね」

「いえ!お二人の機体の作り込みも素晴らしかったですし、何より連携が見事でした」

 

ブランとソーンの二人がルナと勝負の後の会話に花を咲かせていたが、ブランがルナの背後を見て聞く。

 

「あの子、大丈夫?」

「え?あ……」

 

ブランに聞かれたルナはすぐに背後を見る。そこには沈んだ表情のまま突っ立っているナツキだった。

 

「大丈夫……だと思います」

「そっか……ごめんね。私達、酷いことしちゃったかな?」

「そんな、謝らないでください!アイツはアイツでちゃんと立ち直ると、思います」

 

それを聞いた二人は互いに顔を見合うと、笑顔を見せる。

 

「そっか。じゃあ、後はお願いね!」

「ごめんなさい。後は任せたわ」

 

ソーンとブランはエントランスを後にする。ルナはすぐにナツキに元に向かう。

 

「ナツキ、大丈夫?」

「あ、あぁ、ルナ。大丈夫、だと思う……」

 

途切れ途切れの返答にルナはすぐにナツキが無理して平気だと答えている事を察する。

 

「アンタ、また無茶を……」

「ナツキ?」

 

その時、セレンが二人の会話に割り込むように現れた。ナツキは肩を震わせながら反応すると、セレンを見た。

 

「セレンちゃん、お疲れ様」

「ん……ナツキ、大丈夫?」

「セレン、その……ごめんっ」

 

ナツキはセレンに背を向けると、その場から離れてしまう。セレンとルナはそれを追いかけようとするが、その前にナツキはログアウトしてしまった。

 

「ナツキ……」

「ごめんなさい、セレンちゃん。きっと、私のせいなの」

 

ルナはナツキがあの様な状態になったのかはすぐに分かってしまった。ナツキもまた二年半前の自身の無力感に苦しんでいるのだ。

 

「ルナも、悲しそう」

「……私達は、これまでも、きっとこれからも、こうして自分の過去に苦しみつづけるんだと思うわ。セレンちゃん、ナツキを支えてあげてね」

 

ルナがセレンの頭を撫でる。セレンは不安そうな表情のまま「ん」と返答するのであった。




ルナの初陣なのに暗い感じの終わり方になりました。許してくれメインヒロイン……!
ルナのシナンジュ・ヴィエルジュとソーン&ブラン、そして彼女達のハルートジェミニの設定も追加しておきます!

あと、良ければ感想や評価、お気に入りもよろしくお願いします!ゲスト出演も良ければしてくれると嬉しいです……!

それでは、次回予告へ……

***

次回予告

セレンの撃墜が過去のトラウマと重なってしまうナツキ

それ故にナツキはセレンと距離を置いてしまう

それを見兼ねたアッシュはナツキを1人呼んだのだった

果たして、アッシュの真意とは……

次回、本当の再起へ
お楽しみに……


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第12話 本当の再起へ(改訂版)

ちょっと物足りないなと思ったので1部シーンを追加して再投稿しました。もう見たよ!と言う人も良ければまた見てください。
文字数は増えたけど1万はいかなかったよ……。

それでは、本編へ……


GBN黎明期、第2回GBNチャンピオンリーグ。

そのスタジアムに背を向けて離れようとする青年が一人いた。

 

「アッシュさん!」

「……キョウヤか」

 

それを呼び止めたのは第一回GBNチャンピオンリーグの優勝者であると同時に、今回の大会でアッシュに勝利したダイバーである。

 

「俺の分まで頑張って優勝してくれや。応援してるぜ」

「貴方だってあの結果は納得していないはずだ」

 

アッシュの敗因、それはGBNを理解していなかった事だった。

GBNは機体の設定や性能、機能の再現度がかなり高い。故にアッシュが乗ったヅダは全速力で飛んでしまい自壊してしまった。

 

「キョウヤ……いや、チャンピオン。俺が負けたのはアンタじゃないんだ」

「何だって……?」

 

ポツリポツリと雨が降り始める。アッシュはその曇り空を見上げながら呟く。

 

「俺が負けたのは時代だ。アンタに勝つ以前の問題だよ」

「なら、時代に勝つまでだ!貴方なら出来るはずです!」

「……お前はホントに根っからの善人だよな。……新しい時代(GBN)は任せたぜ」

 

アッシュはキョウヤとスタジアムに背を向けると、その場から立ち去った。その後、アッシュを見た者は少ないと言う。

 

***

 

第12話

本当の再起へ

 

***

 

シャフランダム・ロワイヤルから数日、ナツキは一人砂川模型店で働いていた。

 

「ナツキくん?」

 

呼ばれたナツキは振り返る。ナツキを呼んだのは巻季だった。ナツキは自分が上の空になっているのに気づいて慌ててしゃんとする。

 

「すみません!僕、ボケッとしてて……」

「大丈夫。今お客さんは来てないからね。でも……最近ボーっとしている事が多いわね」

 

ナツキは自身が上の空が多くなっている事が多きなっている理由が何なのか自覚していた。

シャフランダム・ロワイヤルにてセレンに庇われていまった事が、ナツキの過去のトラウマを抉ったからだ。

 

「気を、付けます」

「うん……何かあったのなら、相談してね?」

「あ、ありがとうございます」

 

巻季はナツキの事を心配しており、ナツキは心配してくれてることに気づいていた。

 

「ちゃんと向き合うって決めてたのに……」

 

ルナに庇われた様に、セレンに庇われてしまった。それだけではなく、セレン本人や信じてセレンを任せてくれたアッシュを裏切ってしまった。

その罪悪感がナツキを更に追い詰めてしまう。

 

「何も成長してないじゃないか……僕は……!」

 

ゆっくり、しかし着実に進めていると錯覚していた。実際には自分は何も変化していなくて、錯覚している自分に酔いしれていたのだ。

 

「僕は、このまま変われるのかな……?」

 

唐突に訪れた挫折にナツキはこれからどうすれば良いのか行き詰まってしまう。こんな時、幼馴染達がいれば……と思ってしまうが、無い物ねだりであることに虚しさを感じるしかなかった。

 

***

 

GBN・エスタニアエリアにてアッシュは自身の隠れ家にいた。コトリとテーブルに紅茶を置いたのは自身が保護しているELダイバー・セレンである。

 

「最近ナツキと会えてないのか?」

「ん……ログインはしてるそうだけど、呼んでくれなくて……」

 

セレンからナツキが自身が避けられている事を相談されたアッシュは腕を組む。

 

「ナツキが避け始めたって言うのはシャフランダム・ロワイヤルからだったよな」

「ん、あれから急にナツキが私から離れて……」

 

シャフランダム・ロワイヤルで何かがナツキの心情に影響を与えたと考えて妥当であるとアッシュは考察する。となると、今聞くべきなのはシャフランダムについてだろう。

 

「シャフランダム、何があったのか最初から教えてくれないか?」

「ん。えっと……」

 

セレンはシャフランダムでの一連の出来事を語り始める。三人目の幼馴染・ルナとの再会や、ソーン&ブランのコンビとの戦い。そしてーーセレンの撃墜。

 

「……私から話せるのはこのくらーーアッシュ?」

「っあーーー……」

 

それを聞いた時点でアッシュは目元を手で多いながら複雑な感情を少しずつ処理していた。

 

「ホント、大変な弟子を抱えちまったな」

「アッシュ、ナツキの事嫌いになった?」

「ならねぇよ。アイツは俺の弟子だ。簡単に見捨てるくらいなら最初から面倒見てねぇよ」

 

セレンが自分を守りきれず、距離を置いてしまったナツキをアッシュが嫌悪してしまったのではと不安になるがそんなことはなく、アッシュがそんなセレンの頭を撫でる。

 

「さてと……となると、師匠として動くべきか」

「何するの?」

 

アッシュは立ち上がると、首を回しながら隠れ家から出ようとする。セレンは何をするのかアッシュに問う。

 

「なーに、ちょっとバカ弟子(ナツキ)の目を覚ましに行くだけだ」

 

そう言いながらアッシュは扉を開けるのだった。

 

***

 

一方、ナツキは一人自室でスターダストとパッケージのメンテナンスを続けていた。

 

「はぁ……」

 

何度目の湿っぽい溜め息が出てしまう。

 

「セレンには悪いけど、でも……」

 

もう彼女と一緒に飛ぶ資格はない。ナツキはそう判断してセレンから離れると決めた。なのに、これで良かったのかと考えてしまう。

 

「僕は……ん?」

 

その時、ナツキのダイバーギアに一通のメッセージが送られてくる。ナツキは恐る恐るそのメッセージを開いた。

 

「アッシュさん?」

 

メッセージを送ってきたのはアッシュだった。恐らく、セレンから避けられている事を聞いたのだろう。問い詰めるために呼び出しかと予測しながらメッセージを開く。

 

『すぐにログインして座標を送るから来い。話はそれからだ』

 

唐突な呼び出しにナツキは不安になる。やはりかなり怒っているのだろうかと予感しつつも、ナツキはダイバーギアとスターダストを持って砂川模型店に向かった。

 

***

 

エントランスにてアッシュは一人歩いていた。

 

「あっ」

「ゲッ」

 

普通なら通り過ぎるようなダイバーでも、流石にスルーできない相手と遭遇してしまった。

 

「チャンピオン……」

「アッシュさん!まさか貴方と再会できるとは……」

 

今では不動のチャンピオン『クジョウ・キョウヤ』だったのだが、アッシュとしては会いたくない相手に遭遇してしまった。

 

「まだGBNにいてくれてたんですね」

「まぁ、つい最近まで隠居してたけどな……」

 

アッシュは頭をかきながら自身の現状について語る。キョウヤはとても嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

「前の一件の時はドタバタして話せなかったな」

「そうでしたね……今はどうしてるんです?」

「あぁ……弟子の世話を焼きにな」

 

弟子と言うワードを聞いてキョウヤは目を丸くして驚いた。

 

「貴方が、弟子ですか?」

「高校生くらいのまだまだ青臭い奴さ」

「高校生……リクくんとヒロトと年は近い感じかな」

 

アッシュは脳裏にナツキを思い出す。ナツキはまだリクの様に才能を開花させている訳でも、ヒロトの様に豊富な経験値があるわけではない。

しかし、ナツキには光る何かがあった。アッシュはそれに惹かれたのだ。

 

「アイツはいつか化ける。ビルドダイバーズやBUILD  DiVERSにも負けないフォースを作るぜ」

「そうですか……それは楽しみだ」

 

キョウヤとしても更なる強者の出現はGBNの発展にも繋がる。アッシュの弟子と言う存在がどれだけGBNに変化を与えるか楽しみだった。

 

「それに、俺もアイツの熱に当てられちまったようだ」

「それは、どういう?」

 

アッシュは強く、貪欲な笑みを浮かべる。キョウヤはその笑みを知っていた。獄炎のオーガ……そして何より、GPD時代やGBN黎明期のアッシュが浮かべていた笑みだった。

 

「俺は時代に追い付いてやる。そして……アンタを倒す」

「ガンプラバトルを……戻ってくるのですね」

「首洗って待ってな。その前に、弟子の方だがな」

 

アッシュはキョウヤの肩をポンと叩きながらその横を通り過ぎた。

 

***

 

フォース・シークレットガーデンのフォースネストにてルナは一人考えに耽っていた。

 

「どうかしましたか?」

「エレーナ。ごめんなさい。ついボーッとしちゃってたわ」

 

メイド服の女性ダイバー・エレーナが紅茶をテーブルに起きながら心配してくる。ルナはそれを謝ると、紅茶を一飲みした。

 

「最近上の空が多いですが、何かあったのでしょうか?」

「何もない……と言っても無駄そうね」

 

ルナは隠し事は出来ないと観念すると、話し始めた。

 

「最近、幼馴染と再会したの」

「幼馴染と言うと……ヴィオレ様ですか?」

「いいえ、四人目の幼馴染よ」

 

ルナからしてもナツキとの再会は予想外だった。

 

「彼と一緒にシャフランダムに挑んだの」

「またシャフランダムに挑んでいたのですね。結果はどうだったんでしょうか?」

「勝てたのは勝てたけど……その幼馴染は落ち込んじゃって」

 

あの時のナツキの顔は見覚えがあった。二年半前の紅白のアルケーガンダムに敗北した後、罪悪感にまみれた顔とほぼ同じ顔だった。

 

「あれから会えてないけど、大丈夫かなって……」

「そうだったんですね」

 

ルナはまた紅茶を飲む。

ルナの内心にはまたナツキがGBNを辞めて離れてしまうのではないかと不安な気持ちがあった。

 

「ナツキがその程度なら、俺としては構わないがな」

「ノゾム!」

 

そこに突如としてノゾムがフォースネストがやってくる。現れて早々ナツキを突き放す様な言い方をしてルナが咎めようとするが、ノゾムはそれを無視していた。

 

「アイツがまた逃げるならそれで良い。戻ってきたアイツもその程度って事だろ」

「でも……」

「まぁ、どうせアイツはまた戻ってくるぜ。アイツはそう言う奴だからな」

 

ノゾムはナツキの事を信頼しつつも、憎たらしげな表情をする。ノゾムはナツキの幼馴染として長年彼の心の強さを見てきた。だからこそ、彼はまた立ち上がるし、その心強さが憎かった。

 

「……クソっ。ヴァルガに行ってくる」

「ノゾム!もう……」

 

ノゾムは荒れた気持ちを沈める為にフォースネストを出ていった。ルナは立ち上がって制止しようとするが、溜め息と共に椅子に座り込んでしまった。

 

「……お辛い過去を持っているのですね」

「まぁ、ね。でも、いつか向き合わなくちゃいけない事なのも事実だから」

 

ルナはそう言いながらまた紅茶を飲む。少し冷めて飲みやすくなった紅茶が、喉を通り過ぎる感覚と共に今の心情を飲み込むのだった。

 

***

 

荒野のど真ん中に存在する軍基地にナツキは一人訪れていた。

 

「アッシュさん、何処ですかー……?」

「よォ、思ったより早く来たな」

 

倉庫の中に入ると、いきなり照明が点いてアッシュが姿を現れる。

 

「急に呼びつけて悪かったな。だが呼ぶなりの理由がある。分かるだろ?」

「……セレンの事、ですよね」

 

ナツキは目を背けながら答える。アッシュはフンと鼻を鳴らすと、ウインドウを開いて背後に巨大な影を出現させた。

 

「サンズ・オブ・ヅダ……!」

「お前も呼べよ。スターダストガンダムをよォ」

 

アッシュはナツキに自身のガンプラを呼び出すように促す。その意味が何なのかナツキにはすぐに分かった。

ナツキはすぐにウインドウを開いてスターダストを呼び出した。

 

「俺ァはっきり言って相談話は得意じゃねぇ。だから、俺なりの方法でやらせてもらうぜ」

「……上等です」

 

両者はそれぞれの機体に乗る。ナツキはスターダストで倉庫から出た。

 

『近くにコンテナがあるだろ。使いな』

「アサルトパッケージ……」

 

周り見回すと、見慣れたコンテナを見つける。スターダストはそれを開けると、アサルトパッケージが積載されていた。

 

『早く付けな。じゃないと……』

 

アッシュの言葉の直後に倉庫の扉を突き破ってサンズ・オブ・ヅダが現れる。

 

『お話する前にお前をぶっ潰しちまうぞ?』

「っ……分かりました」

 

アッシュの脅しは嘘ではないと悟ったナツキはスターダストのアサルトパッケージを装備させる。

手持ちの武器を持たせると、ヅダと向き合った。

 

「……お待たせしました」

『素早くて助かるぜ。こっちも準備しねぇとなぁ』

 

ヅダは全身に装備されている武装を次々と外されていく。そして、唯一残ったビームツイントマホークを構えた。

 

『ハンデだ。これくらいしないとお前が可哀想だからなぁ?』

「……上等です!」

 

スターダストはヒートランスを構えたその時、目の前が一瞬でヅダで埋め尽くされた。

 

「うぁあぁぁぁ!?」

『おせぇぞ三下ァ!』

 

ヅダの膝蹴りがスターダストの胴体に繰り出される。スターダストは大きく後ろに下がるが、すぐさまショットガンを引き抜いて発砲する。

 

『良い反射だ!だがまだすっとろい!』

 

ショットガンを避けたヅダはスターダストにアイアンクローを繰り出すと、地面に叩きつけた。

 

『本題と行こうぜナツキ!何故セレンと離れた!』

「っ、僕は、セレンと共に飛ぶ資格なんてもう無いんです!」

 

ヅダが踏み潰そうとした時、スターダストはスラスターを噴射して地面を引き摺られるように滑る。立ち上がったスターダストはバックパックのショートバレルキャノンを放つ。

 

「僕はセレンを守れなかった。貴方との約束を破った!これ以上にない理由は無いはずです!」

『ハッ!建前……いや、それも含んでるんだろうが、根幹は違うんだろ!えぇ!?』

 

ヅダはビームツイントマホークで放たれた砲弾を切断すると、一気にスターダストに迫るとビームツイントマホークを振り下ろす。

スターダストはそれを後ろに下がって避けると、ショットガンを構えて引き金を引く。

 

「何を証拠にっ!」

 

放たれた弾丸はヅダ目掛けて放たれるが、ヅダはツインビームトマホークを手放すと、それを避けてスターダストにドロップキックを繰り出した。

 

『証拠ォ?ねぇよンなモン!だが()()()!お前は過去に縛られてる!』

 

ヅダはドロップキックをした直後、落下しかけるのをスラスターを吹かして体勢を建て直すと、即座にツインビームトマホークを拾った。

 

『過去の過ち、失敗、後悔!それがトラウマになって剥がれなくなってるんだよ!』

 

スターダストは立ち上がってショットガンを構えるが、ヅダは即座にビームツイントマホークで斬り飛ばした。

 

「なッ……!?」

『トラウマをすぐに克服しろとは言わねぇ!だけどもう逃げねぇって決めたんだろォが!逃げんな若輩者!』

 

ヅダはスターダストのVアンテナを掴むと、地面に叩きつけた。

 

「ガッ……それでも、もうセレンとは……」

『まだ言うか!ならこの際だ。特別に言ってやるよ!』

 

うつ伏せで倒れているのを立ち上がろうとするスターダストをヅダが蹴り飛ばして無理矢理仰向けにすると、馬乗りになった。

 

『俺は、最初から、()()()()()()()()()()()

「えっ……」

 

突然突き付けられた事実にナツキはフリーズする。アッシュは頭を掻きながら「そう言う意味で言ってねぇよ」と言う。

 

『いつかセレンが撃墜されるとは予想してたさ』

「じゃあ、何で……」

『あァ?お前ならセレンに様々な世界を見せれくれると信じたからさ』

 

アッシュはセレン一人でGBNを歩かせるのは危険と感じて共に隠居生活を過ごすしかなかった。しかし、セレンがナツキ見つけた事が大きなターニングポイントになった。

 

『お前ならセレンに新しい世界を見せてくれる。だから、あの時許せたんだ』

「そう言う、理由で……」

 

ナツキならセレンと共にGBNを飛んでくれると信じてアッシュは任せたのだ。

ヅダは立ち上がると、ビームツイントマホークを拾い上げた。

 

『どうする?まだウジウジしてるなら叩き斬ってやるよ』

「っ、僕は……!」

 

ヅダがビームツイントマホークを掲げてスターダストに振り下ろした。それと同時にナツキは目を見開くと、操縦幹を強く握って動かした。ツインアイが光ると、スターダストは地面スレスレを飛んだ。

 

『っ、避けたか!良いぜ、それでいい!』

「僕はっ、まだ終わらせたくない!」

 

体勢を持ち直すと、ショートバレルキャノンを放つ。ヅダはそれを避けながらスターダストに迫る。スターダストはヒートランスを構えた。

 

「僕はこれからもセレンと共に飛びます!そして、またあんな事が無いように……もっと強くなります!」

 

ヅダのビームツイントマホークをスターダストのヒートランスで受け流す。

その防戦の中でナツキは改めて自身の答えを見出だした。

 

『そうさ!過ちを繰り返したくないなら、思いを貫きたいなら……強くなるしかないんだよ!それがガンプラバトルだァ!』

 

アッシュはナツキの答えに満面の狂暴な笑みを浮かべながらヅダにビームツイントマホークを振り回させる。

 

「アッシュさん!僕、決めました!」

『おう、何だ!言ってみろ!』

 

一瞬の隙を狙ってスターダストが渾身の突きを繰り出す。ヅダはそれをビームツイントマホークで受け止めた。

 

「僕、フォースを作ります!ノゾムやルナに追い付く為に、僕一人じゃ守れないセレンを守る為に、新しい世界を見に行く為にぃぃぃぃぃ!!!」

 

ナツキはレバーを引いて大声で宣言する。その時、スターダストの装甲が淡く青く輝いた。それに気づいたアッシュは少し驚くが、すぐに笑みを浮かべた。

 

『決めたならそれで良いさ!俺は師匠ではあるが縛るつもりはねぇ!お前の進みたい道に進み続ける限りな!』

 

ヅダはスターダストの一撃を受け流すと、マニュピレーターで強く拳を握るとスターダストを渾身のアッパーカットを繰り出した。

ヅダのパンチはスターダストを宙に浮かせ、トップ・ファイターを吹き飛ばした。

 

「トップ・ファイターが!?」

『これからもきっちり鍛えてやるから、覚悟しなァ!』

 

ヅダはビームツイントマホークを真上に掲げると、コアファイターがむき出しのスターダストに振り下ろした。

 

***

 

セレンは一人紅茶が入ったカップを両手で持ちながらアッシュの帰りを待っていた。

 

「アッシュ……ナツキ……」

 

セレンは少なくとも一年以上はアッシュと同じ時間を過ごしていたのでそれなりに人となりを理解していた。

今頃アッシュはナツキと喧嘩をしているかもしれない……そんな不安が胸の中で溜まり続けていた。

 

「二人共、仲良くして欲しい……」

 

セレンは切なる願いを呟くと、その願いを飲み込むように紅茶を飲んでいると、隠れ家の扉がバン!と乱暴に開けられた。急に大きな音を立てられてセレンはピクンと反応してしまう。

 

「ただいま、セレン」

「アッシュ。おかえり……」

 

帰ってきたのはアッシュで、やる事を成し遂げてスッキリした様な様子だった。何が起きたのかサッパリだったセレンは扉にまだ一人誰かいる事に気づいた。

 

「ナツキ……!」

「えっと……ただいま、セレン」

 

ナツキは照れ臭そうに笑みを浮かべながら良い慣れた言葉を言う。そして、セレンの前に立つと、頭を下げた。

 

「ごめんね、セレン。僕、セレンに何も言わずに距離を置いてしまった。傷つけちゃった、よね」

「ナツキ……良いよ。私もごめんなさいって言いたかったから。ナツキの事、悲しませてしまって……」

 

互いに謝り合う結果になってしまい、顔を上げた二人は可笑しくなって笑ってしまった。

 

「セレン、僕とフォースを組んでくれないかな?僕、セレンと一緒に色んなGBNの空を飛びたいんだ……良いかな?」

「ナツキ……」

 

セレンはアッシュの方を見る。セレンの保護者であるアッシュの意見を聞きたい様子であった。それに気づいたアッシュは「好きにしな」とだけ言うとコーヒーを淹れ始めた。

 

「……ん、私も色んな人と、色んな空、飛びたい」

「ありがとう、セレン。これからも宜しくね!」

 

セレンと共にフォースを組む約束をしたナツキは立ち上がると、アッシュの方を見る。

 

「そうだ!良ければアッシュさんも……」

「俺はパス」

「そんなぁ!?て言うか即答!?」

 

アッシュにもフォースの勧誘をするがアッシュは即座に蹴り飛ばした。アッシュは淹れたてのコーヒーを飲みながら拒否した理由を語り始める。

 

「俺みたいなのが大人げなくお前ら幼馴染の問題に足突っ込んだら意味無いだろうが」

「た、確かに……」

「それに、俺は孤高の一匹狼(ローンウルフ)、『灰色の太陽』だ。ガンプラバトルまで仲良しこよしするつもりはねぇからな」

 

ナツキの成長の為……そして自身の誇りの為にアッシュはフォースには入らないと決めたのだ。

 

「その代わり、これからフォースの仲間としてセレンと一緒に仲間を集めな」

「アッシュさん……はい!」

「アッシュ、ありがとう」

 

ナツキはセレンと共に新たなフォースを作る事を決めたと同時にその仲間を集める事を決めたのだった。




遂にフォース結成までの道に繋がりました。
長かったよ……ホントに待たせてしまいました。

今回は設定の追加は有りませんが、良ければまた設定を読んでくれると嬉しいです。GBD書いてる皆さんも良ければウチの子出してくれると嬉しいです……!

単発ネタになったキャラとかガンプラの設定集も作ってみようかな~なんて考えてます。

良ければ感想を送ってくれると嬉しいです!よろしくお願いします!

それでは、次回予告へ……

***

次回予告

フォースを結成すると決めたナツキ。

フォースの仲間を探す為にナツキはセレンと共に空を飛ぶ。

様々なディメンションを飛び回る中、様々な人との出会いや再開が起ころうとしていた……

次回、仲間の居場所
お楽しみに……


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第13話 仲間の居場所

1週間以内に間に合わなかったので初投稿です。
今回2度目のゲストキャラです!お楽しみに!

では、どうぞ……

※一部シーンに時系列の食い違いがあったので、変更しました。申し訳ございません。


アッシュの隠れ家にてナツキは知り合い二人を呼んでいた。

 

「ここがアッシュさんの隠れ家かぁ。秘密基地みたいでオシャレだなー」

「僕は一度来た事があるっすけど、こう言う隠れ家は憧れるっすね」

 

一人は一度訪れた事のある帆立ことスカロプ。もう一人はアッシュやセレンと交流はあったが、一度も来た事がなかったヴィオレである。

 

「二人共、来てくれてありがとう」

「色々あったらしいけど、今では本調子らしいし、安心したよ」

 

ナツキがトラウマを思い出して苦難してた時期はヴィオレやスカロプも会えてなかったので二人も心配していた。

ナツキは心配してくれた事を申し訳なく感じながらも嬉しくも感じた。

 

「それで?私達を呼んだ理由って何?」

「あぁ、それなんだけど……フォースを作ろうと思ってるんだ」

 

ヴィオレが用件を聞くと、ナツキは呼んだ理由を語る。フォースと言うワードに二人は反応した。

 

「フォースっすか!」

「アッシュさんは認めてくれたの?」

「今のナツキならむしろフォースに入ってた方が良いと判断したからな」

 

ヴィオレが師匠であるアッシュの判断について聞くと、アッシュが会話に参加する。隣にはお盆に紅茶を乗せて運んできたセレンもいた。

 

「アッシュさん、いたんっすね」

「元々俺がビルドコインで買った所だからなここ!……ナツキが追い付くと決めていた相手(幼馴染)はフォースを作ってるからな」

 

ナツキが戦うと決めた相手であるノゾムとルナはフォース『シークレットガーデン』を結成している。

 

「同じ土俵に立って勝負した方が相手も納得行き易いだろ」

「成程ねー。アッシュさんって放任主義な割には結構考えてるんだね」

「伊達に師匠名乗る訳にはいかないからな」

 

アッシュは頭をかきながら自分の淹れたコーヒーを飲んだ。セレンは紅茶を三人にそれぞれ置くとナツキの隣に座る。

 

「それで……私達を呼んだって事は、フォースへのお誘いって事?」

「うん。スカロプもヴィオレも実力は折り紙付きだからね」

 

ナツキは二人の実力を既に見ており、フォースに入ってくれれば百人力なのは理解していた。

 

「悪いけど、私はパスかな」

「えぇっ!?」

 

しかし、ヴィオレの方は即座にその誘いを蹴り飛ばした。ナツキは予想外の返答についつい声を出してしまう。

 

「私は今回の一件には中立の立場でいきたいからね。それに、私には私の道があるからね」

「ヴィオレの、道……」

 

それ聞いたナツキはノゾムやルナと決着した後、どうするのかと言うのを考えていなかった事に気づく。

 

「別に、四人全員また集まって四季團結成しなくても良いじゃん?ナツキは新しいフォース、私はガンスタグラマー、ルナママはフォースのリーダー、ノゾムは……どうするのか分かんないけど、それぞれの道でも良いと思うんだ」

「そっか……それも、良いかもね」

 

ヴィオレとまた共闘出来るのではないかと期待していたが、それぞれの道を進むと言う選択肢もアリだと気づけた。

 

「まぁ私は蹴っちゃったけど……スカロプはどうするの?」

「ぼ、僕っすか!?」

 

ヴィオレはスカロプに視線を向けながらフォースの誘いの答えについて聞く。現在スカロプはフォースには参加しておらず、長い期間ソロで活動していた。

 

「僕は……ナツキさんに着いていきます」

「スカロプ……!」

「ヴィオレさんの信じるナツキさんの力になれたらって思ったんっす」

 

スカロプはリアルとGBN、両方でナツキを見てきた。スカロプはその中でヴィオレがナツキを信頼する理由を垣間見てきた。

 

「スカロプ~!ありがとね、私の分まで!」

「うわわわっ!?ヴィオレさんそんな撫でられると困るっすよ~!」

 

ヴィオレは帆立の頭をワシャワシャと撫でる。撫でられた帆立本人は急に推しからのスキンシップに混乱する。

 

「んで、確定したのはナツキとスカロプだけ……あ、セレンちゃんもか」

「ん、私はナツキの姉弟子としてサポートするから」

 

セレンがフンスと誇らしげに言う。ヴィオレはうんうんと感心しつつもナツキに聞いた。

 

「まずは三人から?」

「いや、もう少し増やしたいなって考えてるんだ。だから、今から探しにいくつもり」

「今!?はーフォース作るのって大変なんだね」

 

ナツキは紅茶を飲みほすと、セレンと共に出発の準備をする。

 

「ヴィオレは作らないの?フォース」

「私はまだ良いかな~。一人でやりたい事沢山あるし」

「そっか……もしフォースを組んだら、その時は戦ってみたいな」

「私が返り討ちにしちゃうかもよ?」

 

ノゾムやルナの様にヴィオレとも戦いたいと言う気持ちはある。彼女の本気の戦いを見た時から尚更その気持ちは掻き立てられていた。

 

「用事が終わったのなら、私はこれで失礼するよ」

「僕も別件があるので失礼するっす!」

 

ヴィオレとスカロプはそれぞれ自身の用事の為、隠れ家を後にする。ナツキはセレンの方を見ると、セレンは頷いた。

 

「僕達も行こうか」

「ん。アッシュ、行ってきます」

「おう、変な奴には絡まれないようにな」

 

アッシュの見送りの元、二人も隠れ家を出たのだった。

 

***

 

第13話

仲間の居場所

 

***

 

エントランスに訪れた二人。見知った人物がいないかと見回してみると見慣れた青年がいた。

 

「グレイさん!」

「んお……?あ、ナツキくんか」

 

再開したのはエースと戦った際に初めて出会ったカメラマンの青年……グレイだった。隣にはもう一人男性がおり、ナツキとは初対面だった。

 

「また会えて嬉しいです」

「俺もまた会えて嬉しいよ。……彼女は?」

 

グレイはナツキと再開出来た事を喜んでいたが、セレンの方に視線が向く。ナツキはエースとの戦いの時にはセレンとはまだコンビを組んでいなかった事を思い出す。

 

「あぁ、この子はセレン。僕の相棒で……姉弟子です」

「セレン。ELダイバーで、ナツキの姉弟子」

 

セレンがいつも通り姉弟子である事を強調する。ナツキはアハハと苦笑いをするが、グレイは興味津々でセレンを見ていた。

 

「ELダイバーか。ナツキくんいつの間に?」

「あーセレンにはセレンの保護者がいると言うか」

 

アッシュが隠れ家でくしゃみをしている気がしたが、グレイは「そう言う事か」と納得する。

 

「あー……グレイ、知り合いか?」

「あ、スマン。ナツキ、彼はラスター。俺の友人なんだ」

 

グレイが紹介したのは彼の友人『ラスター』だった。

 

「えっと、ナツキって言います」

「あー!この前グレイが言ってたゼフィランサスの奴か!確か……スターダストガンダムだったか?」

「そうそう。彼、結構センスはあると思うんだ」

 

グレイから称賛されてナツキは「ど、どうも」と照れ臭そうに感謝の言葉を述べる。ラスターはグレイの好評に「ほー」と言いながらナツキを見る。

 

「何かあれば依頼しな、これでも傭兵の端くれでな」

「あ、ありがとうございます!」

 

ラスターは傭兵として活動しているのだが様々な依頼を受け持つのとその時々によってガンプラを変える為、『万事屋』と呼ばれているらしい。

 

「今日は何をしてるんだい?」

「えっと、フォースを作ろうと思ってて、今仲間を探してるんです」

 

ナツキの用事を聞いたグレイは「そうか……」と頷く。

 

「悪いけど、俺はフォースには入れないかな」

「やっぱり、ですか?」

「何処かに入っちゃうとどうしても贔屓目になっちゃうからね」

 

グレイはカメラマンとしてGBNを生きると決めており、何かに縛られているのは遠慮しているのだろう。

 

「俺も傭兵だからな、何処かのフォースに入る気は今のところないな」

「大丈夫です。フォースメンバーはこれから集めていく予定なんで!」

 

グレイやラスターも申し訳なさそうにするが、ナツキは断られている事も想定しており、更に二人からは断られそうだとは予感していた。

 

「そうか。頑張ってフォース結成目指してくれ」

「メンバー探しに行き詰まったら連絡しな。知り合いにも色々当たってやるから」

「グレイさん、ラスターさん……ありがとうございます!早速、仲間集め、続けていきます!」

「バイバイ」

 

二人から応援されて感激したナツキは、セレンと一緒にロボットハンガーへと向かった。

 

「何だが、面白い奴だな」

「でも、あの子もいつか大物になりそうな気がする」

「ハハッ、かもしれないな」

 

グレイとラスターはナツキの今後の活躍に期待しつつも、その場を後にした。

 

***

 

ナツキの乗るスターダストはセレンの乗るアブルホールスカイウォーカーの上に乗って空を飛んでいた。

 

「ナツキ、仲間見つかりそう?」

「うーん、そう簡単に見つからないと思うけど……」

 

すると、スターダストとアブルホールSWの傍に青と白の機体が近づいてきた。何者かと思ってカメラを動かすと、ガンダムハルートジェミニだった。

 

「もしかして……」

 

ハルートジェミニを見つけてまさかと予感していると、通信が繋がれて二人の女性の顔が出てくる。

 

『ハローナツキくん!』

『元気にしてたかしら?』

「ソーンさん、ブランさん!」

 

出会ったのは、ハルートのコンビであるソーンとブランだった。以前のシャフランダム・ロワイヤルでは激闘を繰り広げたのを思い出す。

 

『この前は元気なかったけど、大丈夫?』

「ご心配ありがとうございます。もう大丈夫です!」

 

シャフランダムではセレンに庇われて撃墜させてしまった事でトラウマを思い出して苦難する事になったのだが、セレンとアッシュのお陰でもう立ち直れていた。

 

『そっか。良かった~!』

『ソーン、あの後ソワソワしてたものね』

『それ言わないでよブラン!恥ずかしいじゃん……』

 

ブランにからかわれたソーンは顔を赤くして照れ臭そうにする。ナツキはそんな二人のやり取りを微笑ましく見ていた。

 

『そう言えばナツキくんは何してるの?』

「今はフォースに参加してくれそうな人を集めてるんです」

『あら、フォースを作るのね』

 

ソーンに聞かれたナツキが答えると、ブランは驚いて自分の様に喜んでくれる。

 

『人は集まってるの?』

「まだ三人ですね。セレンは支援機なので実質二人と言うか……」

 

まだ仲間探しが始まったとは言え、最初に出会ったのがグレイとラスターだったのでスタートダッシュはあまり良くなかった。

 

『そっかぁ……ねぇ、ブラン、ちょっと思ったんだけど!』

『奇遇ね。私も少し思った事があるの』

 

それを聞いたソーンがブランに話しかける。ブランはソーンと同じ事を考えていたらしく、互いに「フフフ」と笑い合っていた。話が理解できなかったナツキは苦笑いをしてしまう。

 

『ねぇ、ナツキくん、そのフォースに私達も仲間に入れてくれないかしら?』

「えっ、良いんですか!?」

『私達も誰かとフォース組みたいな~ってずっと考えてたからね』

 

ブランとソーンはナツキのフォースに入りたいと希望してきた。ナツキは驚きつつも、嬉しさで表情が明るくなる。

 

「是非!お願いします!」

『えぇ、こちらこそよろしくね』

『フォース作るとき呼んでね!飛んで来るから!』

 

ハルートジェミニは変形してGNスワローとなると、別方向へと飛んでいく。二人が作った翼はGN粒子の跡を描いていった。

 

***

 

ブランとソーンと約束をした後、ナツキはセレンと休憩と言うことで地上に降りていた。少し歩くと、そこは大地一面に広がる花畑だった。

 

「うわっ、スゴい綺麗……!」

「姉のお気に入りの場所。とっても綺麗」

 

セレンはこの場所を知っているらしく、『姉』と呼ばれる人物のお気に入りの場所らしい。ナツキは姉と言うワードでアッシュに教えてもらった事を思いだす。

 

『ELダイバー同士は生まれた順番で姉妹関係があるらしい。似てなくても、込められた願いは違っても、アイツらにはそう言うのじゃ語れない『何か』があるのかもな』

 

アッシュの言葉を思い出しつつも、他のELダイバーに興味が湧いてきた所で、背後で何かが着地した。ナツキは後ろを向いてそれを見ると、それは純白のダブルオーガンダムだった。

 

「あれは……」

 

ナツキはそのダブルオーガンダムの作り込みに感心する。そのダブルオーから男女一組が現れた。二人がそちらに来ていると察したナツキは思わず気を付けしてしまう。

 

「リク、あそこに人がいるよ」

「本当だ。こんにちはー!」

「えと、こんにちは!」

 

好青年と言う印象を具体化した様な雰囲気をしたナツキと年の近そうな少年が手を振ってきたのでナツキは思わず振り返した。少年の隣には何処かセレンと似た雰囲気をした少女がいる。

 

「えっと……」

「私はサラ」

「俺はリク。君は?」

「リク……僕はナツキ。それで、この子は……」

「サラ姉?」

 

ナツキが『リク』と『サラ』に自己紹介をすると、花畑にいたセレンがいつの間にか近くにまで来ていた。

 

「セレン!元気だった?」

「ん、私も元気。サラ姉も元気そうで嬉しい」

 

サラとセレンが仲睦まじそうに話しているのを見てナツキは困惑していると、リクが話しかけてくる。

 

「あの子もELダイバー?」

「え?あ、あぁ、うん。……分かるんだ」

「サラの事を姉って呼ぶのはELダイバーだからね」

 

ナツキはELダイバーの姉妹関係を思い出してポンと拳を手のひらに置いて納得する。そして、セレンの姉と言う事はサラがELダイバーである事なのだと気づく。

 

「サラちゃんもELダイバーなの?僕、最近……復帰?したばかりで、ELダイバーは詳しくないんだ」

「そうだったんだ。……サラは一番最初に皆に知られたELダイバーなんだ」

 

リクから語られたのは文字通りGBNの歴史の転換期とも言える出来事『第2次有志連合戦』についてだった。

ファーストELダイバーであるサラとGBNの存亡を賭けた戦いを聞いたナツキは何度も頷いて情報を飲み込んでいった。

 

「そんな事があったんだね。凄いなぁ、リクは」

「そんな事はないよ。GBNにいる人達がサラを、GBNが好きって気持ちを捨てないでいてくれたお陰だよ」

 

ナツキはリクの前向きな姿に尊敬してしまう。自分がGBNから逃げてしまった二年半の間にそんな事があったとは思いもしなかった。

 

「……僕は、色々あってGBNから逃げてしまったんだ。でも、今が違う。ちゃんと逃げてしまった事から向き合うって決めたんだ」

 

ナツキは一緒にヤナギランの花で花冠を作ろうとするセレンとサラを見ながら自身の事を語る。

彼女らは自分達ダイバーのGBNを愛する感情から生まれた存在。ならばGBNから逃げると言うことは彼女達を裏切るも当然だった。

 

「だから、ちゃんと折り合いを着けたら、その時はGBNが好きってちゃんと言えるようになりたいな」

「そうなんだ……頑張って、ナツキ!」

「ありがとう、リク」

 

だからこそ、ナツキは逃げた事や幼馴染との衝突を乗り越えたら、彼女達の為にもGBNへの気持ちを改めて言おうと決めた。

 

 

 

「……そうだ!フォースの仲間集めしないと!」

「ナツキ、フォースを作るの?」

「うん。今は僕より前に進んでる幼馴染達に追い付く為にね」

 

ふとナツキは今自分がフォース集めの真っ最中で、今はその休憩時間であることを思い出した。

 

「そっか。フォースを組んだら、紹介してね!」

「うん。今度会った時は、君のフォースとも会ってみたいな」

「紹介するね。とっても素敵な人達だから!」

 

リクとサラと今度会った時は互いのフォースを紹介し合おうと約束する。

ナツキは二人とフレンド登録をすると、セレンと共に再度仲間集めに向かった。

 

***

 

山岳地帯に轟音が鳴り響いた。爆煙の中から出てきたのはガンダムエリゴスである。

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!?」

 

エリゴスのパイロットであるエースの断末魔と共にエリゴスは地面に倒れた。

 

「ほら、どうした。そんなんじゃすぐにへばっちまうぞ?」

「まだやるのかよぅおおおぉぉぉ!?」

 

エースがぼやいていると、問答無用に砲弾がエリゴス目掛けて飛んで来た。エリゴスはそれをエリゴスシールドで受け止めると、その場から離脱する。

 

「しっかりしろよ。男だろっ!」

 

砲撃を行ったのはバルチャーのロールをするダイバー・ワイズ=ワイスである。ワイズの乗るワイズワラビーはビームキャノンを次々と撃っていく。

 

「マジで容赦無さすぎだろぉぉぉぉぉ!?」

 

逃げるエリゴスにビームの砲弾が迫ったその時、真横から飛んで来たビームがビーム弾を打ち落とした。

突然の乱入者にエースとワイズは警戒してそちらを見ると、アブルホールSWの上に立ってビームライフルを構えるスターダストがいた。

 

「……あれ、もしかして今の撃ち落としちゃダメだった?」

「おぉ!ナツキ、来てくれぐほぉぉぉぉぉ!?」

 

ナツキが来た事に喜ぶエースだったが、隙だらけだったエリゴスの顔面にビーム弾が直撃した。

 

***

 

四人はそれぞれの機体から降りる。エースに関しては少しグロッキーだった。

 

「大丈夫?エース」

「大丈夫だけど……普通あそこ撃たねぇだろ!?」

「隙を見せたお前が悪いんだよ」

 

ガルルルと威嚇をするエースにワイズは不敵な笑みを浮かべながら何処吹く風と言わんばかりでスルーする。

 

「そう言えば、何で二人はこんな事を?」

「コイツが『ナツキに負けない為に強くなりたい~』って言うから、付き合ってたんだよ」

 

エースとナツキは以前の宝探しイベントの門番との戦いで共闘しており、ナツキはたった一人で強敵二人を撃破した。エースの方はワイズやユニと共に門番を撃破したが、捨て身の特攻をしてやっとだった。

 

「お前が敵を二人も倒せたのに、あの時俺がもっと強かったら……って考えると、どうしてもな」

「僕も彼らを倒すのはホントに必死だったよ。正直、スターダストの分離がなかったらやられてたかもしれないし」

「それでもだよ。俺はお前やキャプテン・カザミみたいに強くなりたいんだよ」

 

ナツキはノゾム以外にライバルが存在する事を改めて理解させれる。すると、エースは何かを思い出してナツキを見た。

 

「そう言えば何でナツキはこんな所いるんだ?」

「あぁ、フォースに参加してくれそうな人を探してたんだ」

「フォースかぁ……フォースぅ!?」

 

エースはナツキの口からフォースと言うワードが出てきて大きく反応する。ナツキは急にエースが大声を出したので驚いてしまう。

 

「えっと……うん。フォース」

「お前……それならそうと早く言えよ!」

 

エースは肩を掴んでナツキに詰め寄るが、直立して頭を九十度頭を下げた。

 

「ナツキ、俺をフォースに入れてくれ!」

 

急に頭を下げられたナツキは困惑してしまう。それでもエースは頭を下げ続けていた。

 

「俺、考えたんだ。お前を間近で見れば俺も強くなれる気がするんだ!」

「よ、良く伝わったから!頭上げようよ、ね?」

 

頭を下げるエースと困惑するナツキを見かねたワイズはエースの頭を叩いた。

 

「いって!?何するんだよ……!?」

「ナツキが困っているからだよ。で、ナツキ、どうするんだ?」

「どうって……あっ」

 

ワイズの仲裁によってナツキは冷静になってエースのフォース参加について考える。とは言え、参加したいと言ってくれた時点で答えは既に決まっていた。

 

「エース、僕と一緒に戦ってくれないかな?」

「っあぁ!俺に任せとけ!」

 

エースの参加希望をナツキは快く受け入れる。ガッツポーズをしながら喜ぶエースをワイズは笑いながら見ていた。

 

「ったく、ナツくんは相変わらずだな」

「え?今の呼び方って……」

 

ワイズのナツキの呼び方に驚きを隠せずにいたが、ワイズはしまったと思いつつもナツキの背中を叩いた。

 

「折角だし、私もフォースに混ぜてくれよっ」

「いでっ……ワイズさんもですか?」

 

ワイズからもフォースの参加希望が来るとは思わず驚きを隠せないナツキだったが、後方支援はいてくれて困らなかった。

 

「えっと、よろしくお願いします」

「あぁ、私に任せな」

 

エースとワイズの二人が参加することになった。

これでフォースの参加者は六人。十分な人数が揃ったと考えて良いだろう。

 

「それじゃあ、フォース申請する時呼びますね!」

「おう、よろしくな!」

「また会おうぜ」

 

ナツキはエースとワイズにまた集まる約束をすると、またセレンと共に機体に乗ってまた空に飛んだ。

 

***

 

仲間集めが一段落した二人は湖の近くで機体を着地させると、機体から出て湖の前で座る。

 

「ナツキ、仲間集まった?」

「うん。沢山集まったよ」

 

スカロプやソーン&ブラン、エースにワイズ。新しいフォースを作るには十分な人数だ。

 

「これからもよろしくね、セレン」

「ん、よろしく」

 

ナツキが拳を突き出すと、セレンは拳を合わせる。

 

「ーーーイヴ?」

 

その時、二人の後ろから何者かが現れる。ナツキとセレンが振り替えると、ポンチョを見に纏ったナツキやリクと年の近い少年だった。

 

「君は……?」

「っ、あぁ、ごめん。人違いをしてしまっていた」

 

ポンチョの少年は申し訳なさそうに言うが、ナツキやセレンは特に迷惑は被ってないので平気である。

 

「大丈夫だよ。僕はナツキ」

「私はセレン」

「……ヒロトだ」

 

ポンチョの少年……『ヒロト』は自身の名前を名乗ると、ナツキは「ん?」と首をかしげる。ヒロトの顔を凝視していると、ハッと何かに気づいた。

 

「クガくん!クガくんだよね!」

「え、えっと……」

「僕だよ僕!敷島ナツキ!同じクラスの!」

 

ナツキは彼が高校のクラスメイトの『クガ・ヒロト』である事に気づいた。ナツキが自身のリアルの名前を言ってヒロトも気づいた。

 

「君もGBNをやってたんだな」

「まぁね。まさかクガく……ここではヒロトくんって呼んだ方が良いよね。会えると思ってなかったよ」

「呼び捨てで良いよ。俺もナツキって呼んで良いかな」

「良いよ!改めてよろしくね、ヒロト」

 

ナツキが手を差し出すと、ヒロトと握手をする。セレンはナツキの後ろからヒロトを見ていた。

 

「彼女は……ELダイバーかい?」

「え、分かるの!?」

「あぁ、いや……昔の知り合いにELダイバーがいて、似てた気がしてさ」

 

ヒロトがセレンがELダイバーである事を見破った事に驚くナツキだったが、ヒロトはELダイバーと出会った経験があると語っている事から納得した。

 

「ヒロトはGBNは長い期間やってるの?」

「一時期は不定期でログインをしてたんだ。でも、今はほぼ毎日フォースの仲間と一緒にいるよ」

 

ヒロトの表情から自分とはまた違った壮絶な経験をしているのが読み取れる。しかし、今の彼には仲間がいて、壮絶な経験も無事乗り越えたのだと察した。

 

「僕、フォースを作りたくて今日仲間集めをしていたんだ。僕も君みたいに素敵な仲間を集めれたと思う」

「そうか。また会った時は、君のフォースも紹介してくれ」

「ヒロトも、紹介してね!」

 

ヒロトとナツキは互いに約束し合う。その時、遠くの方から聞こえてきた。

 

「おーい、ヒロトー!早く戻ってこーい!」

「分かった!ごめん、もう行かなくちゃ」

「うん、またね!」

 

ナツキとセレンは恐らくフォースの仲間と思われる人達の元に向かっていくヒロトを見送る。すると、セレンが何かに反応して空を見上げた。

 

「セレン?どうしたの?」

「ん……遠い宇宙から誰かがあの人を見守ってる気がした」

 

あまりにも抽象的な言葉にナツキは首を傾げるが、セレンの様に空を見上げる。雲一つない純粋な青が広がる空。特に何か見えるわけではなかったが、きっとELダイバーであるセレンだから感じる何かがあったのかもしれない。

 

「遠い宇宙からヒロトを、かぁ」

「ん。そう感じただけ、だけど……」

「きっと、ヒロトの大切な何かが見守ってくれてるのかもね」

 

ヒロトに何があって、どんな出会いをして、どんな悲しみを背負っているのかはナツキには分からない。だが、ヒロトが一人ではなく、仲間や大切な人達に支えられている事は良く分かった。

 

「僕達も行こうか」

「ん、アッシュ待ってる」

 

二人は自身のガンプラの元に向かう。ヒロトの様に、待ってる人の元へと帰るのだった。




という事でミストラルさんのビルドダイバーズFinderから2度目のグレイと初登場のラスターでした。あまり絡みが少なかった気がするので今回再度出させていただきました。

そしてW原作キャラを出せましたヤッター!
ナツキとヒロトは同じ学校のクラスメイトと言う設定です。帆立も同じ高校ですが、1つ年下です。

設定集に追加は無いですが、1発ネタのキャラや機体の設定も作る予定です。お楽しみに!

感想お気に入りの方もよろしくお願いします!

では次回予告へ……

***

ついに結成するナツキのフォース。

フォース名や拠点の話で盛り上がっており、盛り上がっていく。

ナツキに大きな変化が訪れようとする中、それ以外の者達も新たな進展を起こそうとしていた。

次回、星屑のダイバー達
お楽しみに……


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第14話 星屑のダイバー達(改訂版)

フォース結成なので初投稿ですわ!!!

追記:フォース名を変えて改めて投稿しました。


何事も出だしが肝心と人は言う。

例えば、ドラマや漫画、小説だって一話は重要だ。見る側の心をどれだけ掴めるががかかっている。

例えば、徒競走だってスタートダッシュは肝心だ。どれだけ素早く駆け出して前に出られるかが重要である。

そして、ここにもその出だしを逃したくないと頭を捻る少年がいた。

 

「フォースの名前が、決まらない!!」

 

高校にいる少年、敷島ナツキ。ガンダムとガンプラが好きなGBNユーザーである。

彼は先日フォースの仲間を集めたのだが、そのフォース名が浮かばずにいた。

 

「またそれっすか?他の方から聞いてみるのはどうっすかね?」

「やっぱり誘った僕がキチンと決めた方が良いのかな~って思ってさ」

 

彼と一緒に昼食を食べているのは一歳年下の後輩であると同時に、同じフォースに入ると約束した相手であるスカロプこと砂川帆立である。

 

「やっぱり僕が、皆が背負っていく名前だからさ。ちゃんと決めないとなーって」

「ナツキさん……ナツキさんがそうやって皆の為に考えてくれた名前なら堂々とどのフォース名を名乗れるっすよ!」

 

集まった六人。彼ら全員が胸を張って名乗れるようなフォースを作りたいーーそれをナツキが伝えると、帆立はナツキの後押しをする。

 

「あるがとう。GBNにログインするまでに決めておくね!」

「はいっす!楽しみにしてるっすね!」

「うわっ、尚更プレッシャー!!」

 

ナツキと帆立は笑いながら昼食を食べる。フォース結成まで目前、ナツキはフォース名を必ず決めると決心して死に物狂いで購買で手に入れた焼きそばパンを頬張った。

 

***

 

第14話

星屑のダイバー達

 

***

 

時間は放課後。都市部にある俗に言うお嬢様学校に一人の女子生徒が廊下をあるいていた。金髪のウェーブのかかった少女は歩いているだけなのにも関わらず、気品溢れる雰囲気を出していた。

 

「見て、佐々木さんよ」

「いつ見ても麗しいですわね」

「本当、憧れるわ……」

 

彼女の歩く姿を見た生徒達は視線を奪われて見とれてしまっている。

彼女の名前は『佐々木春奈』……元四季團のメンバーであり、現在はフォース・シークレットガーデンのリーダーである『ルナ』のリアルの姿である。

 

「お嬢様、今日もお疲れ様です」

「ありがとう、雨音さん」

 

校門に来ると黒い高級車が停まっており、その傍にはメイド服の女性『芦原雨音』が立っており、春奈が来ると頭を下げて迎える。

 

「今日は『寄り道』は?」

「いいえ。家に向かって大丈夫よ」

 

運転席に乗った雨音は春奈に行き先の確認をすると、「畏まりました」と返して車を発進させる。春奈は学校から離れると、はぁと肩の力を抜いた。

 

「やっぱり学校じゃお嬢様ムーブしないといけないから大変ね……」

「普段の春奈様でも十分気品があると思いますが?」

「このノリで行ったら、お嬢様と言うよりお母様って言われそうだもの」

 

「GBNみたいにね」と春奈は付け足しながら窓から外の風景を見る。猫を被らなくても良いとは考えているが、リアルでもフォースの仲間達のようにママ扱いされるのは真っ平御免だった。

 

「今日もGBNに?」

「えぇ、曲がりなりともフォースのリーダーとして皆の面倒を見ないとだし……私がほっておくと何してるか分からないから」

 

春奈は遠い目をしながら呟く。フォースの仲間達は優秀な者ばかりなのだが、如何せんキャラが濃いしじゃじゃ馬ばかりなので放置する訳にはいかなかった。

 

「……噂では、ナツキ様がGBNに戻ってきたと聞きましたが」

「っ……!貴方の地獄耳も侮れないわね」

「春奈様の従者ですので」

 

雨音からナツキの名前が出てくると思わなかったルナは動揺してしまうが、雨音の情報収集能力は中々なものなのは知っていた。

 

「そうね……アイツは絶対私やノゾムの元まで追い付いてくるわ。必ずね」

「それは、幼馴染としての評価でしょうか?それとも……」

「そ、その事は聞かないでよ!」

 

雨音の意地悪な問いかけに春奈はストップをかける。しかし、春奈は幼馴染として評価していると同時に、異性としても評価していた。

 

「すみません。ついからかってしまいました。ですが、ナツキ様の成長性はGPD時代から見ております。春奈様の評価は正しいかと」

「もう……アイツが私達と同じ場所までたどり着いた時が私の正念場ね」

 

ナツキがフォースを作り、十分な実力を身に付ければ、必ずルナのフォースと戦うことになるだろう。それは避けられない事実だった。

 

「ノゾムも、吹っ切れると良いんだけれど……」

 

自身やナツキの幼馴染であると同時にナツキの最大かつ永遠のライバルであるノゾムの存在が心配だった。

今の彼はナツキに対して強い負の感情を向けている。そして、その理由は春奈も知っていた。

 

「何でこうも、バラバラになっちゃったのかしら……」

 

春奈としてはまた昔のように四人で集まりたかった。ナツキやヴィオレ、ノゾムと一緒に笑って過ごしたかった。

その為には、ナツキが追い付くまで待つしかない。

 

「そしたら……」

 

ナツキと戦って和解し、また四人が集まる場所を作る。それが春奈の願いだった。それがいつ叶うかは分からない。しかし、二年半待ってようやく来たチャンスなのだ。逃す訳にはいかなかった。

 

「私は、今度こそ……」

 

自分の思いを届けてみせる。

そう胸中で呟くと、春奈はまた窓の外の風景を眺めた。

 

***

 

GBNのアッシュの隠れ家は普段よりも狭く感じた。理由は人の賑わいだろう。普段は3人4人程度だったのが、今は9人だった。

 

「へー、ナツキくん師匠がいたんだー!」

「こんな所にフォースネストがあったのね」

「何か狭くないか?」

「お前がおっきいからだろ」

 

ソーンとブラン、エースとワイズがそれぞれに会話をしているのをナツキは見ていた。

 

「沢山集まったすね」

「ここって結構狭かったんだねー」

「あはは、僕も初めて感じたよ」

 

スカロプとヴィオレは他の様子を見ていたナツキと話す。

楽しげな雰囲気の中、一名青筋を立てている人物がいた。

 

「お前ら……狭い所で集まってんじゃねぇ!!」

 

隠れ家の本来の家主、アッシュは怒号を飛ばすと一同は静まり返る。アッシュははぁとため息をつきながら椅子に座った。

 

「ったく、何で俺の隠れ家に集まったんだよ」

「あ、集まる場所が思い浮かばなくて……」

「なら、フォース申請して仮設フォースネストにでも集まれ!ここは大人数が集まる場所じゃねぇんだよ!」

 

アッシュに指示を出されたナツキは「は、はぁい!」と返事しながら慌てて外に出る。他の面子もナツキに着いていく形でエントランスに向かった。

 

「全く、世話を焼かせる弟子だな」

「それにしては満更ではなさそうですねぇ」

 

呆れつつもフッと笑みが溢れてしまうアッシュに対して言ったのはヴィオレだった。ナツキを追いかけて行ったと思っていたアッシュは面倒くさそうな顔をしてしまう。

 

「お前、ナツキおっかけてたんじゃねぇのか」

「フォースに関しては私は何も言えませんからねー」

 

ヴィオレはフォースに所属しておらず、この二年半一人でGBNで活動していた。ガンスタグラマーとして様々な所に回る以上、団体行動は不向きなのだろう。

 

「何より、もうナツキも一人じゃない。仲間が出来て、その仲間と支え合わなきゃいけない訳ですしぃ?」

「……お前、何も考えてなさそうで結構他人の事考えてるんだな」

「えっ、私どんな評価だったの!?」

 

立場は違えど、ナツキの為と考えていたヴィオレにアッシュは彼女の評価を改めて良い方向へ変える必要があると思った。

 

***

 

エントランスの受付にてナツキはフォースの申請を行っていた。ダイバーネームとダイバーランクが表記されており、全員記入し終えると、フォース名に触れた。

 

「名前、決まったすか?」

「うん。あれから色んな事を考えたんだ」

 

これまで出会ったきたダイバー達、仲間を集める途中で巡り会った人達ーー様々な出会いを果たしてここまで来れた。

あれからリクやヒロトの所属してるフォースーービルドダイバーズとBUILD DiVERSについて調べた。以前BUILD DiVERSに関してはエースの紹介で知っていたが、まさかヒロトもそこに所属しているとは思わなかったので驚いた。

 

「出会いが繋がって一つの大きな奇跡になる。まるで、星が繋がって星座になるように」

 

そう言いながらナツキはウインドウのキーボードを打っていく。自分達七人は奇跡の様な偶然で集まった。故にこの名前が相応しいと決めた。

 

「フォース『グランシャリオ』。どうかな?」

 

グランシャリオ。それは北斗七星を意味し、自分達の奇跡の様な巡り合わせを象徴するに相応しい名前。それがナツキの考えたフォース名だった。

 

「ナツキさんがリーダーっすし、星繋がりでピッタリな名前すね!」

「うおぉ……俺も遂にフォースかぁ……!」

「お星さまかぁ……良い名前だね、ブラン」

「えぇ、素敵な名前ね」

「まぁ、シンプルにカッコいいな」

 

それを聞いた一同はそれぞれに反応を示すが、悪印象を持っている者は誰もいなかった。

 

「それじゃあ、これから僕達はグランシャリオだ!皆で頑張ろう!」

『おーっ!』

 

全員が拳を真上に掲げる。ナツキの新しいフォース『グランシャリオ』の誕生だった。

 

***

 

ハードコアディメンション・ヴァルガは今日も混沌に包まれていた。

ビーム、ミサイルの雨は今日も降り注いでいた。

 

『おらぁ!吹き飛べぇ!』

 

ウイングガンダムゼロに乗るダイバーがツインバスターライフルを両手に持って回転する。俗に言うローリングツインバスターライフルは回りにいたMSを無差別に吹き飛ばした。

 

「んぎもちぃぃぃぃぃ!やっぱローリングはたまらーー」

 

一気に増える撃墜数にハイになってしまうウイングゼロのダイバー。しかし、そのスコアは撃墜と言う形でストップすることになった。真上から現れた黒い影は腕から伸ばされたビーム刃によって一刀両断される。

 

「真上ぐらい警戒しろよ……」

 

グルグル回りながら極太のビームを放てば目立つ筈なのに、気にせず回り続けていたウイングゼロに呆れていたのはウイングゼロを撃墜した黒いガーベラ・テトラの改造機『ブラックローズ』に乗るノゾムだった。

 

「ヴァルガは相変わらずカオスだな。ま、暴れ甲斐があって飽きないんだがッ」

 

熱源反応を関知してそちらを見るブラックローズ。そこからはMLRS装備のサイサリスがいた。

 

「範囲攻撃か。だがっ」

 

ブラックローズはビーム・ショット・ライフルを構えると、拡散ビームでミサイルを撃ち落としていく。そして、一気に前進してサイサリスに奇襲を仕掛ける。

 

『い、いつの間に!?』

「伊達にヴァルガ潜ってる訳じゃねぇんだよッ!」

 

ビームサーベルを引き抜いたサイサリス。しかし、ブラックローズはビームサーベルを引き抜いた腕を狙って蹴りを入れる。

 

『しまっ』

「遅いッ」

 

ビームサーベルを落としてしまったサイサリスに腕のビームサーベルを伸ばして胴体を突き刺した。

 

「こんなもんか……戻ってきたナツキの方がまだ潰し甲斐あるのによ」

 

ノゾムは初めてナツキと再開した時を思い出す。あの時のナツキはブランクはあったものの、確かに変わっていなかった。

 

「相変わらず、か……」

 

思い出されるのは二年半よりも更に前。ノゾム達四人がまだ幼く、一緒にGPDをやっていた頃の思い出。

 

「感傷に浸るなんて、俺らしくねぇ……ッ!」

 

その時、アラート音が鳴り響いて背後から襲撃してくる。黒いガンダム……ブリッツだった。ブラックローズはブリッツの攻撃を受け流した。

 

「テメェ……確かに感傷なんてらしくねぇって言ったのは俺だけどよ……感傷してるのを邪魔しろだなんて一言も言ってねぇんだよ!」

 

ブリッツの左腕をビームサーベルで斬り飛ばすと、胴体にビーム・ショット・ライフルを至近距離で向ける。無慈悲にも引かれた引き金によってブリッツの胴体に風穴が開いた。

 

「ったく……どいつもこいつも、腹立たせやがって」

 

はぁと溜め息をついていると、近くで戦闘音が聞こえる。ストレス発散に漁夫の利で纏めて潰してやろうと考えたノゾムはすぐにそちらへ飛んでいく。

 

「あれは……初心者狩りか」

 

ジン、ザクⅢ、ビルゴの三機がダブルオーガンダムを囲んでおり、ダブルオーガンダムの方は中破していた。

 

「御愁傷様だな。俺には関係ないし……」

 

見なかったことにして立ち去ろうと思ったが、ふいに止まってしまう。ノゾムは初心者狩りに囲まれて尚応戦しようとするダブルオーを見てはぁと溜め息をついた。

 

「俺も焼きが回ったか……」

 

ブラックローズは背部の下に下ろされていたテールスタビライザーを吹かす。左右のスラスターを含めた三つのスラスターによって加速したブラックローズは腕からビームサーベルを伸ばしてビルゴを両断した。

 

『な、何だぁ!?』

『アイツは、シークレットガーデンの黒薔薇だ!』

 

ジンとザクⅢは動揺はするが、すぐに構える。伊達にヴァルガにいるわけでは無さそうだと思いつつ、ブラックローズはダブルオーを庇うように立った。

 

『あ、アンタは……』

「正直に言うと、俺は名も知らないお前なんてどうでもいい。さっさと強制離脱しな」

『な、何だと!俺だってまだやれる!』

「足手まといだ!こんな所でやられる位なら、もっと強くなって俺にやられとけ!」

 

ダブルオーのダイバーは心底悔しそうにしながら強制離脱をする。ノゾムはやっちまったと内心呟きつつもビーム・ショット・ライフルを構えた。

 

「見苦しい所見せたな。じゃ……ぶちのめしてやるよ」

 

ーー何で最近こうも、ムカつく事ばっかなんだ。

ノゾムは溜まり積もるストレスを発散してどうしようもなくなり、目の前の初心者狩りども目掛けて前進した。

 

***

 

フォースを結成すると、最初に支給されるのが仮設のフォースネストである。

外装はなくシンプルな一部屋だけだが、モニターやテーブル椅子など、必要そうな物は一通り揃っていた。

 

「懐かしいな……ルナ達とここで集まったっけ」

 

思い出されるのは初めて支給されたフォースネストにはしゃぐナツキとヴィオレ。呆れるノゾムに、暴れるなと叱るルナ……。

 

「ナツキさん?」

「ん?あぁ、ごめん。ちょっと思い出に耽っちゃってた」

 

スカロプに呼び掛けられたナツキは改めて部屋へと入っていく。

 

「ヨーシ!じゃあ、改めて自己紹介と行こうぜ!」

 

エースがパン!と手を合わせると、誇らしげに笑いながら進行を始める。エースにしても念願のフォース。隠しているつもりなのだろうが、興奮は隠せてなかった。

 

「俺はエース!尊敬するジャスティス・カザミを追いかけて最近GBNを始めたんだ!タンクは任せてくれ!」

 

エース。ナツキが初めて真っ当に対人戦を行った相手。

ガンダムフレームにペイルライダーをミキシングした『ガンダムエリゴス』は攻守優れたタンク役として活躍するであろう。

 

「で、コイツはー」

「勝手に進行するなッ。……アタシはワイズ=ワイス。バルチャーとして活動していたが、フォースで活動するのも悪くねぇかなって思ってここに参加させてもらった。支援砲撃は任せてくれ」

 

ワイズ=ワイス。ナツキとエースがユニの為に協力していた時に出会ったダイバー。

ドートレスを元にスクラッチし、独自の武装を追加したワイズ・ワラビーで後方支援を主な立ち回りをする。

 

「それじゃあ、私達だね!私はソーン!こっちはブラン!」

「私達は二人で一つのMSを乗るの。これからよろしくね」

 

ナツキが聖地ぺリシアで出会った女性コンビ。

ガンダムハルートを改造したガンダムハルートジェミニは飛行形態『GNスワロー』の他に、分離して『GNアタッカー』と『GNナッター』になる事で更に相手を撹乱させる。

 

「次は僕っすね!どうも、スカロプっす!ナツキさんとはリアルでも親しくて、ヴィオレさんの大ファンっす!中距離なら任せてくださいっす!」

 

ソーン&ブランと同じくぺリシアで出会い、リアルではナツキと面識があるスカロプ。

グフシェルカスタムは攻撃、防御、機動において安定しており、豊富な武器でミドルレンジを制するだろう。

 

「ん、セレン。ナツキの姉弟子。ナツキが作ってくれたアブルホールで頑張る」

 

ナツキの再起の切っ掛けを作ってくれた姉弟子にしてELダイバー、セレン。

ガンダムアブルホールSW(スカイウォーカー)は支援機としてはかなりの高機動で仲間達の支援を行う。

 

「じゃあ最後に……このフォースのリーダーとして勤めさせてもらう、ナツキです。換装を前提としているので何でもいけると思います」

 

最後に自己紹介をしたのはこのフォースを結成し、リーダーとして中心にナツキ。

スターダストガンダムは様々なパッケージによって状況に応じて対応できるオールラウンドな機体となっている。

 

「自己紹介の次いでにフォースの方針……そして、現時点での目標について話させてもらいます」

 

ナツキが次に語ったるのは、何故フォースを組むのか……その理由を語るに等しいものだった。ナツキがここまで高みに上り詰めようとする理由を知っているセレンとスカロプは反応する。

 

「僕は追い付きたい幼馴染がいるんです。彼らと決着を着ける。それが、二年半も逃げていた僕なりのケジメなんです」

 

二年半、それは四季團全員に等しくあったが、自身が逃げてしまった事で二年半の間に溝は大きくなってしまっていた。

 

「自分の過去に何が起きたのかは必ず語ります。だから、どうか皆の力を借りたいです。よろしくお願いします!」

 

ナツキは頭を下げて改めて協力を願う。それを見ていた一同はふっと笑った。

 

「何言ってんだ!俺らはお前だから着いていけるって決めた奴等だ。お前の我儘くらい聞けるっての!」

「明確な目標があるくらいが、アタシ達には丁度良いからな」

 

エースとワイスが笑みを浮かべながら答える。

 

「そうだね。私達も手伝うよ!」

「リーダーに任せるわ」

 

ソーンとブランの二人もナツキの思いが届いたのか、共に進んでいく意思を伝える。

 

「皆……!」

「僕達も忘れる事なかれっすよ。ヴィオレさんの幼馴染であるナツキさんを支えれる様に頑張るっす!」

「私も、姉弟子として、弟弟子のナツキの力、なる」

 

個人的な事情に関わらず、協力してくれる仲間達に感動するナツキに既に過去を知っているスカロプやセレンも改めて意思を伝える。

 

「ありがとう、ございますっ。ナツキ、リーダーとして全力を尽くします!よろしくお願いします!」

 

ナツキは目尻に浮かんだ涙を拭うとフォースリーダーとして改めて挨拶をした。

ナツキにとって2度目の、新しいフォース『グランシャリオ』。まだ出来たばかりだが、必ずルナ達シークレットガーデンに挑めると信じていた。




はい、どうだったでしょうか。
前の名前でもよかったんですけど、有りがちで名前長かったので満足してなかったので変更させて頂きました。
ですが、ついにフォース結成ですよ!もう二桁行っちゃってたので少し焦ってましたが、何とかなれてよかったです。
ここからもっとエンジン全快で行きますよ~~~!!!

あと、お気に入りが20。そしてUAは3000突破しました!有り難うございます!これからもBDSDをよろしくお願いします!
感想も大歓迎です。どうか宜しくお願いいたします……!

では、次回予告へ……


次回予告

遂に結成されたフォース『グランシャリオ』。

彼らの元にフォース戦の話が持ちかけられる。

初めてのフォース戦。果たして彼らは勝てるのか

次回、僕らのスタートライン
お楽しみに……


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第15話 僕らのスタートライン

三週間も待たせてすみませんでしたぁっ!!
三週間もかけて一万文字書いたので初投稿です!!


ハードコアディメンション・ヴァルガでは、破壊されたザクⅢとジンが倒れていた。この二機は先程ダブルオーに乗る初心者に襲いかかっていた俗に言う初心者狩りである。

そして、それを妨害し、二機を破壊したのはノゾムの駆るブラックローズであった。

 

「スッとしたぜ。ありがとな」

 

返事が来ないと分かった上でノゾムは感謝を述べると、その場から離れようとする。すると背後から何者かが来ているのに気づいた。

 

「誰だ」

「私だよ。ノーゾームっ」

 

ブラックローズが振り替えると、そこにはSDサイズの機体……ラファエルガンダムヴァイオレットがいた。それに乗っている人物が誰なのか知っているノゾムははぁと溜め息をつく。

 

「お前か、ヴィオレ」

「ルナママと話す機会は多いけど、君と話す機会は少なからね~。いつぶりだっけ?」

「一週間だ。前はお前が企画配信でここ(ヴァルガ)に潜った時だ」

 

ノゾムに言われたヴィオレは「そうだったね!」と思い出したかの様に言う。ノゾムはヴィオレが大袈裟に反応してるが、覚えている事は察していた。

 

「ったく……何だよ、またやられに来たのか?」

「GPD時代から私とノゾムの勝率五分五分であった事をお忘れで?」

 

ノゾムは嫌な顔をしながらかつての記憶を思い出す。幼馴染四人だけでGPDをやっていた頃、ノゾムとヴィオレが上位争いをしていた。

 

「って、そうじゃなくて!ナツキの事、話に来たんだよ」

「お前もルナと同じで説教か?」

「私はルナママみたいな事は言えないよ。近況報告さ」

 

ナツキが今どうしているのか……それはノゾムにも興味はあった。最近ナツキが落ち込んでいたとルナから聞いてたが、いつの間にか進展があったのだろうか。

 

「ナツキ、フォースを組んだらしいよ」

「アイツが?フォース?」

 

ノゾムはヴィオレから聞いたナツキの近況を聞いて耳を疑った。ノゾムは自身の想像以上に状況を進展させていた。

 

「驚いたでしょ?ノゾム、ナツキの事になると油断しやすいからね」

「……復帰したての割りに結構早いなと思っただけだ」

 

だが、ナツキがフォースを作ったと言う事は少なからずシークレットガーデンと戦う資格を得たと言うこと。ナツキがジリジリと着実に近づいている現実にノゾムは少し焦りを感じた。

 

「私はナツキのフォースに参加してないけど、応援はするつもりだよ」

「知るか。()()は大人しくしとけ」

 

『外野』と言うワードにヴィオレは反応する。……具体的には頭の中でカチン!と火のような感情が吹き出してきた。

 

「へ~。私が外野。ふぅ~ん……」

 

ヴィオレはラファエルヴァイオレットを動かしてGNビームバズーカVからビームを放つ。ブラックローズはビーム・ショット・ライフルでそのビームを撃ち落とした。

 

「バトルしようぜ……久しぶりにキレちゃったよ……」

「お前昔から配信でしょーもねぇ事でキレてるだろが!」

「うるさーい!流石に私だって傷つく事があるんだもん!」

 

ラファエルヴァイオレットがGNクローを外してGNビックキャノンを展開する。ブラックローズも腕からビーム刃を伸ばすと、両者は戦闘を始めた。

 

***

 

第15話

僕らのスタートライン

 

***

 

フォース結成から数日、ナツキ達はフォースミッション巡りをしていた。

理由としては、まず互いを理解する為。次に連携の練習の為である。

流石に最初から難しいミッションに挑む訳にはいかないので、簡単なものから仲間達と吟味しながら挑んでいた。

 

「いやぁ、皆凄い機体で魅力的っすね!」

「そうそう!どれもぺリシアで出展しててもおかしくないくらいだよね!」

「セレンちゃんのアブルホールやワイズさんのワイズワラビーはほぼスクラッチじゃないかしら?」

 

ミッションを終えて一段落と言った様子の中、スカロプやソーン&ブランのぺリシア組がガンプラの話題で盛り上がる。

フォースを結成する前から面識のあったナツキも改めて仲間達のガンプラの作り込みに感動していた。

 

「この子、ナツキに作ってもらった」

「アタシはドートレスを素体に使ったから多少楽は出来たな」

 

ブランに指摘されたセレンとワイズが答える。ぺリシア組がお~と感嘆の言葉を漏らした。

 

「は~い!皆元気?」

「ヴィオレ!」

「ヴィオレさん!」

 

そんな雑談をしていると、いつもの紫髪の幼馴染・ヴィオレがやってくる。

 

「今日は何しに来たの?」

「今回はね~。こんなものを準備してきたのさ」

 

ヴィオレはウィンドウを開くと、ナツキに見せる。それに合わせてスカロプやエースも覗く。

 

「これって……」

「フォース戦の募集だよ。今のナツキ達に相応しいかなって」

 

これまでのフォースミッションはNPDばかりで、対人戦はほぼ行っていなかった。だが、仲間同士の理解や連携は十分にやったと判断して良いだろう。

 

「わざわざ探してくれたの?」

「え?あー……早くノゾムをギャフンと言わせて欲しいからさ」

 

ヴィオレは頭を掻きながら探した理由を答える。

実を言うと先日ヴァルガでノゾムと戦い、惜しい所で負けてしまったのでその仕返しの為に準備してきたのである。

 

「俺達も遂にフォース戦か!」

「おいおい、リーダーの意思は無視か?」

「い、いや、ナツキならきっとフォース戦をするって信じてたからな……!」

 

エースが逸ってフォース戦を楽しみにしている。ワイズがそれを煽ったが、ナツキとしてもフォース戦は早い段階で行いたいと考えていた。

 

「ありがとう、ヴィオレ。申請出してみるよ」

「OK!後日を楽しみにしておくよ!」

 

ヴィオレは手を振りながらその場を離れる。ヴィオレが離れるとその代わりにフォースメンバーが集まった。

 

「早速来たね、フォース戦!」

「改めて情報の共有が必要すね」

「敵の調査も欠かさずにな」

 

フォース戦に沸き上がる仲間達。こんなに早くフォース戦にありつけるとは思わなかった。

 

「よし、一旦フォースネストに戻ろう。作戦会議だ!」

『おー!』

「ん、楽しみ」

 

初めてのフォース戦。それに備える為に準備を始めたのだった。

 

***

 

数日後、山林地帯にてフォースが行われようとしていた。

 

「クリムゾン部隊のクリスだ。よろしく頼む」

「え、えっとよろしくお願いします」

 

クリムゾン部隊。ポケットの中の戦争に出てくる伝説の出オチ部隊『スカーレット隊』を元にしたフォースらしい。リーダーの『クリス』がナツキと握手する。

 

「なぁ、ポケ戦のクリスって近所のお姉さんみたいな見た目だったよな?」

「あぁ、そのはずだぜ?」

 

フォースリーダーのクリスを見ながらエースがワイズと会話をする。クリスとは、ポケットの中の戦場に出てくる女性キャラクターである。

 

「いや、だってバリバリ男じゃん。何ならゴリラじゃん」

 

しかし、クリムゾン部隊のクリスは体格の良い外国人男性風のダイバールックだった。ナツキもポケットの中の戦争は知っている為、斜め上の見た目に少し戸惑っている。

 

「お互い全力を出してベストを尽くし合おう」

「っ、はい!僕達全員、全力でいかせてもらいます!」

 

クリスの言葉に力強くうなずきながらベストゲームを約束しあった。

 

一方、ミデアが停泊している観戦エリアにはヴィオレやアッシュがいた。

 

「ヴィオレちゃ~ん!」

「マギーさん、来てくれてありがとー!」

 

そこにヴィオレが誘ったマギーがやって来る。アッシュもマギーの事は風の噂で聞いてはいたが、予想の斜め上くらいにはインパクトがあった。

 

「貴方がナツキくんのお師匠さんね。私はマギーよ。よろしくね」

「アッシュだ。アンタの事は噂で聞いているよ。迷える初心者を導くハイランカーがいるってな」

「貴方みたいな生ける伝説みたいな人に知ってもらえるなんて光栄だわ」

 

バチコーンとウインクをするマギー。アッシュは「慣れるまで時間かかるだろうな」と内心思いつつも、マギー相手に親しんでるGBNのダイバーに感心していた。

 

「観客はこれだけかしら?」

「んにゃ、一番見てほしい人達がまだ来てないからね」

 

ヴィオレはマギー以外も呼んでいるらしく、それが誰なのかはアッシュはうっすら予想していた。

すると、観客席に複数人の男女がやって来た。マギーは彼女らを見て「そう言う事ね」と納得している。

 

「ヴィオレ、今日は呼んでくれてありがとう」

「ルナママー!来てくると信じてたぜー!」

「私だって気になるもの。あとママはやめてほしいわね……」

 

やって来たのはルナとノゾム、シェリーだった。今のナツキを、ナツキのフォースを見てもらう為にヴィオレが呼んだのだ。

 

「えっと、呼んだのはルナとノゾムだけだよね。シェリーちゃんはついてきたの?」

「ホホホ、ナツキとやらが作ったフォースに知り合いがいるからの」

 

ヴィオレはシェリーがついてきた事に疑問を持つが、シェリーは隠すことなく、モニターを見ながら答えた。

 

「そうなんだぁ……あ、ノゾムも来てくれたんだ」

「オマケみたいなノリで言うな。……敵情視察ぐらい当たり前だろ」

「良く言うよ。素直じゃないなぁ」

 

ヴィオレはニヤニヤしながらノゾムを見る。彼もまたルナの様に変化しようとするナツキの事が気になるのだろう。

 

「あらぁ!ノゾムくんじゃない!元気してたかしら?」

「マギーさん……えっと、それなりに」

 

マギーはノゾムとの再開に喜ぶが、ノゾムは何とも言えない、曖昧な返事をする。自分でもひねくれた性格になった自覚があり、恩人にそんな姿を見せるのは申し訳なかった。

 

「話は聞いてたけど、やっぱりナツキくんとは上手くいってないのね」

「すみません。……でも、これは俺なりの覚悟なんで」

 

マギーに心配された事を申し訳なく感じつつも、意思を曲げない事は既に決めているノゾムはマギーの横を通りすぎて観客席に座った。

 

「アイツがナツキの幼馴染か。らしいっちゃらしい奴等だな」

「ナツキがいなくなった後も、色々あったんですよ」

 

二年半の空白期間。それはナツキも知らないもので、それを知るのはそれこそ残された三人だけだろう。

 

「さ、色々話したいだろうけど、もうそろそろバトルが始まりますよ!」

「そうね。今は観戦をしましょう」

「そうですね……ナツキ、見せてもらうわ。だから、頑張ってね」

 

幼馴染三人は話したい気持ちもあったが、今はナツキ達グランシャリオの戦いだった。

 

***

 

グランシャリオの一同は既にそれぞれの機体に乗っており、いつでも発進できる状態だった。すると、連絡が繋がり、ウインドウにアッシュの顔が出てくる。

 

「ん、アッシュ」

「アッシュさん!応援に来てくれたんですね」

『お前の師匠だからな。初陣くらい見に行かねぇといけねぇだろ』

 

アッシュは頭を掻きながら言う。とは言え、見に行くだけで何もしないと言うのは流石にまずいと考えたアッシュはナツキの方に手を起きながら話す。

 

『初めてのフォース戦。俺はフォースに関しては詳しくないから言えないが、ガンプラファイターとして言える事は……所詮は遊びだ。真剣に楽しんでこい!』

「アッシュさん……!」

 

それは、GPDの時代からガンプラバトルと共に生きていたアッシュだから言える激励の言葉だった。

遊びだからこそ、真剣になれる。真剣になれるから、楽しめる。それがガンプラバトルなのだから。

 

「よし……全員、出撃準備しよう!最高のスタートダッシュを決めよう!」

『応ッ!』

 

一同は操縦幹を強く握ると、出撃の掛け声をする。

 

「エース!ガンダムエリゴス、行くぜぇ!」

「ワイズ=ワイス。ワイズワラビー、行動開始だ!」

「ソーン!」「ブラン」「「ガンダムハルートジェミニ、行きます!」」

「スカロプ、グフシェルカスタム、行くっすよ!」

「セレン、アブルホールスカイウォーカー、行ってきます」

「ナツキ、スターダスト!フォース・グランシャリオ、出ます!」

 

それと同時に六機のMSが飛翔していく。初のフォース戦・VSクリムゾン部隊との戦いが始まろうとしていた。

 

「んんっ、あー、テストテスト!ハーイ、皆元気?」

 

『お、配信来たな』

『予告してた配信だね』

『前のフォースの仲間のフォース戦だっけ』

 

一方、観戦に来ていたヴィオレが配信を着けていた。コメント欄が流れていく中、ヴィオレは腕を組む。

 

「前々から話してた通り、今回の配信は私の友人が組んだフォースの初陣を実況配信していくよ」

 

ヴィオレは大型のウィンドウを開いてフォース戦の内容を見せる。そこには二つのフォースのメンバーと使う機体が載せられていた。

 

「友人が結成したフォース『グランシャリオ』とフォース『クリムゾン部隊』による6VS6の殲滅戦。皆勝敗を予想しながら観戦してね!実況は私、ヴィオレ。解説は……色んな人にしてもらうよ!」

「コラ、まとめない。マギーさんだっているんだから……」

 

実況席と言うなの観客席を撮すと、豪華陣営にコメント欄が盛り上がる。

 

『ヴィオレネキの実況とマギーさんとシクガデの二大エースによる解説とか強すぎんか』

『相手はクリムゾン部隊か……あのゴリラがリーダーだよな』

『クリスはクリスでもそっちのゴリラだったか……』

 

「うんうん。でもネタだけじゃないゴリラだからね、あの人は」

 

ヴィオレはクリムゾン部隊の陣形を見る。

ジム・コマンド、ジムⅡ、量産型ガンキャノン、ガンキャノン・ディテクター、ジム・スナイパーⅡ……全員スカーレット隊のMSやその上位互換に近い機体を採用しており、リーダーのクリスは案の定NT-1を使っている。

 

「グランシャリオに比べて後方支援が磐石。初動をどう制するかね」

 

ルナの解説通り、ガンキャノン・ディテクター二機とジム・スナイパーⅡにによる防衛の布陣が敷かれていた。

 

「だがそれくらいナツキなら予測済みだ」

 

その時、グランシャリオサイドから一機のMSが駆け抜けてきた。騎士の悪魔のなを関したガンダムだった。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

エースの駆るガンダムエリゴスはエリゴスシールドを構えながら前線を一気に駆け抜けていく。

 

『隊長、どうします?』

『敵はナノラミネートアーマーだ。ガンキャノンでこっちの前線まで来るまでに応戦するんだ』

 

ジム・スナイパーⅡの改造機に乗るダイバー・スピアがクリスに判断を委ねる。クリスは敵が鉄血系の機体である事を加味して指示を出す。

指示の直後、量産型ガンキャノンが砲撃を開始する。

 

「来やがった……!信じて耐えてやるから、何とかしてしてくれよ!」

「あぁ、何とかな!」

 

迫り来る砲撃をエリゴスはシールドで受け止める。そして、木々に隠れたワイズワラビーが砲撃を開始した。狙いは勿論、量産型ガンキャノンである。

 

『仕掛けてきたか。ピアス、パドル、砲撃手をやれ!』

『『了解!』』

 

ジム・スナイパーⅡとガンキャノン・ディテクターがワイズワラビーを狙う。二機から狙われれば、地上でホバリング移動が出来るワイズワラビーであっても逃れられないだろう。

ジム・スナイパーⅡの指がビームスナイパーライフルにかけられたその時、影が被われた。

 

「させないっすよぉッ!」

 

ジム・スナイパーⅡの真上から鉛弾の雨と共に急降下してきたのはグフシェルカスタムだった。

 

『いつの間にっ!?……支援機(アブルホール)かっ!』

 

鉛弾の雨から逃げ出したジム・スナイパーⅡは一瞬空を見上げる。そこにはアブルホールSWがおり、グフSCを運んで来たことはすぐに察された。近接格闘を想定していないスナイパータイプの機体だが、その対策もしてない訳ではない。ビームサーベルを引き抜いたジム・スナイパーⅡはグフSC相手に身構えた。

 

「来るっすか!」

 

グフSCはガトリングシールドを180度回転させてヒートサーベルを構えた。スピアはまだ手出しされていないであろうガンキャノン・ディテクターに乗るパドルに連絡を繋げる。

 

『パドル、ドートレスは任せた!』

『スピアさん、すみません!背後から襲われました!』

 

しかし、パドルからの返答は予想外のものだった。ガンキャノン・ディテクターは背後からビームで攻撃をされていた。

ガンキャノン・ディテクターは見えない敵にビームガンで応戦するが、手応えを感じない。

 

『い、一体何処ーー』

 

背筋が凍りつくような予感と共に、パドルはガンキャノン・ディテクターが振り返ると同時に回避行動を取った。それと同時にビームの刃が先程までガンキャノン・ディテクターがいた所を通過していく。しかし、手に持っていたビームライフルが切り裂かれ、爆発してしまう。

ビームの刃を振るった主は、スターダストだった。

 

「避けられたっ」

『こ、コイツいつの間に!?』

 

ステルスパッケージを見に纏い、ツイン・ビーム・スピアを獲物として構えたスターダスト。

ガンキャノン・ディテクターは右肩のビームガンをスターダストに向けるが、スターダストはABCマントの裏側にあるヒートダガーを投げてビームガンを破壊した。

 

『はっ、速ーー』

「遅いっ!!」

 

ツイン・ビーム・スピアのビーム発進口が90°倒れ、サイズモードへと変貌する。スターダストはビームガンの爆発で体勢を崩したガンキャノン・ディテクターに大振りの一撃を繰り出した。ガンキャノン・ディテクターの上半身と下半身がさよならすると、飛んでいく上半身をロッドモードに変えて突き刺した。

 

「これで、一機!」

 

ツイン・ビーム・スピアに突き刺さったガンキャノン・ディテクターの上半身を振り捨てると、移動を開始する。

味方の撃墜を知ったクリスが舌打ちするが、味方の撃墜に動揺する余裕はなかった。

 

『アロマ、ラムセス!ガンダムフレームの奴に行ってくれ!俺はパドルをやった奴をやる!』

『『了解!』』

 

ジムⅡとジム・コマンドが前線に出て量産型ガンキャノンの砲撃に対するデコイになっているエリゴスに接近する。数的に3対1。エリゴスのリンチは避けられないだろう。ワイズワラビーの支援があっても、この有利は覆ることは早々無いだろう。

 

「させないよ~っ!!」

 

グランシャリオにまだ前線に出てなかった機体がいなければの話だったが。

現れたのは青と白の青空のような配色がなされたガンダムハルートジェミニ。

GNソードライフルによる射撃で牽制をしてから、MS形態になってジムⅡとジム・コマンドの前に立つ。

 

「エースくん、ガンキャノンをお願いね」

「おう、任せとけ!」

 

前線の状況が変貌した事により、エリゴスはこれ以上デコイとしては意味を成さない。ならば、ここからは一アタッカーとして攻める時だろう。

ハルートジェミニがGNミサイルを放って爆煙で視界を潰した間にエリゴスはその場から抜け出して量産型ガンキャノンの元へ向かっていく。

 

「1VS2。ワイズさんの支援があるけど、大丈夫かな?」

 

ソーンはビームジャベリンを構えるジムⅡとライフルを構えて支援射撃の体勢を取っているジム・コマンドを見てブランに問いかける。

 

「私達二人ならいける。そうでしょう?」

「えへへ、そうだね!」

 

しかし、二人に負ける気はしない。何故なら最高のバディがいるのだから。その時、ワイズから通信が入ってきた。

 

「あー、んんっ、そう言うの、家でやってくれ」

「はーい。行こう、ブラン!」

「家なら良いのね……えぇ、飛び立ちましょう!」

 

ハルートジェミニはGNソードライフルを構えると、ジムⅡとジム・コマンド相手に応戦し始めた。

 

『隊長すまない!敵を逃した!』

『任せろ。俺が向かーーッ!?』

 

クリスを狙って飛んでくるヒートダガー。クリスはNT-1の改造機『ガンダムNT-90』が武装しているジェガン(バーナム所属機)の新型ビームライフルとショットランサーを足して割ったような武装・ビームショットランサーで弾いた。

 

『パドルをやった奴かっ!』

「今のを弾くなんて……!」

 

生温い奇襲じゃクリスを倒せない。ヒートダガーを投擲したスターダストに乗るナツキはそう判断すると、ビームダガーを構えてNT-90の背後に回る。

 

「そこぉ!」

『ッ!?カァァァッ!』

 

スターダストの奇襲を察知したクリスはNT-90を振り向かせると、左手に持つ小さな盾を前に突き出す。赤い縦長の六角形と合体していた白いユニットが展開し、長方形のビームシールドを展開した。

ビームダガーのビーム刃はビームシールドに阻まれてしまう。

 

「ビームシール、ドォ!?」

 

今の奇襲まで受け止められた事に驚きつつも、ナツキは咄嗟にスターダストを後退させる。下から振り上げられたビームランサーを紙一重で避ける。

 

『避けたかっ!いや、ABCマントは切り裂けたな』

 

クリスの言った通り、スターダストのABCマントは先程の一振りで焼き斬れており、マントの中から胴体が見えた。

 

『その隙間から突き刺してやる。覚悟しろ』

「覚悟なんて、とっくにの前にしてます!」

 

NT-90とは互角のリーチでしか渡り合えないと判断したナツキはスターダストにツイン・ビーム・スピアを構えさせる。ロッドモードとビームショットランサーのビーム刃がぶつかり合った。

 

***

 

配信のコメント欄は乱戦となったバトルを見て盛り上がっていた。それを見ていたヴィオレは「盛り上がってきたねぇ」と呟きながら視線をモニターに向ける。

 

「六機の内の一枠を支援機に割いているグランシャリオがその一枠の差を埋める為に早急に一機倒したのが功を奏したな」

 

BUILD DiVERSのヒロトが使うコアガンダムは無人の支援機を使用しているが、スターダストの支援機のアブルホールSWは有人機なので人数一人カウントする必要がある。フォース戦になると、実質6VS5+αと言う扱いになってしまうのだ。

そこでアッシュの言う通り、グランシャリオはこのハンデを埋める為に敵の意識をエリゴスに向けている間にスターダストでガンキャノン・ディテクターを倒したのだ。

 

「だが、所詮五分五分にするだけの戦術に過ぎない……ナツキの真価は多分、こっからだ」

 

ノゾムはナツキはまだその強さを発揮してないと言う。とても目の敵にしているとは思えない評価だが、彼の意見は間違ってはいなかった。

 

***

 

ビームジェベリンを振るうジムⅡと近接戦をしながらジム・コマンドのビームライフルを避けるのはハルートジェミニだった。

 

「ワイズさん、牽制よろしく!」

「任せとけっ!」

 

ジム・コマンドの援護射撃を妨害したのはワイズワラビーの砲撃だった。ジム・コマンドがそれを避けている間にハルートジェミニはジムⅡのビームジャベリンを弾くと、GNソードガンを展開してGNシザースでジムⅡを挟み込んだ。

 

「ソーン!」

「いっけぇぇぇ!」

 

バチン!と言う鋭い音と共にジムⅡの体が分断されると爆発する。

砲撃から切り抜けたジム・コマンドが背後を見せているハルートジェミニを狙って銃口を向ける。

 

「ソーン、後ろ!」

「分かってる!分離行くよ!」

 

ジム・コマンドが放ったビーム。しかし、それはハルートジェミニに直撃はせず、天高く飛び立った。空中でハルートジェミニは分離すると、GNアタッカーが急降下する。

 

『ぶ、分裂したぁ!?』

 

後ろに後退しながら射撃を続けるジム・コマンド。しかし、GNナッターがコンテナからGNミサイルで後退を防ぐと、GNキャノンによってビームライフルを破壊する。

 

「おりゃぁーーっ!」

 

ビームライフルの爆発に巻き込まれて大きく動きを止めてしまうジム・コマンドにGNソードを展開したGNアタッカーが突撃する。ジム・コマンドの乗るダイバーは目の前に迫るGNアタッカーに顔を青ざめるが何も出来ないまま斬り伏せられてしまった。

 

「よーっし!やったよブラン!」

「ナイスよ、ソーン。ワイズさんもありがとうございます」

「良いって。撃墜スコアはそっちに譲るさ」

 

再度合体したハルートジェミニはワイズワラビーにサムズをする。

同じタイミングでガンダムエリゴスのソードメイスが量産型ガンキャノンを叩き潰した。

 

「いよっしゃー!やったぞー!」

「あ、やったのか。お疲れ」

「何か反応薄くないか!?」

 

ガッツポーズをしたエースにワイズは軽く言葉を返しただけで終わる。

彼女のあっさりした返事に反応するエースの声を端に、スカロプはシールドガトリングの銃口をジム・スナイパーⅡに向ける。

 

「後は貴方とリーダーだけっすね!」

『俺と隊長以外は全滅……だが、まだ終わっちゃいない!』

 

ガトリングシールドは放たれるが、ジム・スナイパーⅡはそれを避けると、ビームスナイパーライフルでガトリングシールドを撃ち抜いた。

 

「急に動きが……!?」

『まだやれるよな、ペイルスナイパー!』

 

ジム・スナイパーⅡ……に見せかけたペイルライダーとの改造機『ペイルスナイパー』は特殊システム『HADES』を発動させながらビームサーベルを引き抜くと、グフSCに迫る。

 

「HADESシステムッ……でも、その距離は僕の距離っす!」

 

融解して破壊されたガトリングとシールドから切り離すと、ヒートサーベルを構える。

サーベル同士がぶつかり合う。鍔迫り合いになった両者は押し返し合うと、ペイルスナイパーが押し勝った。

 

『掴んだぞッ!』

 

ペイルスナイパーがグフSCの顔にある排気ダクトを右手で掴む。さながらガンダムに引きちぎられたザクの様に排気ダクトを引っ張ろうとしたその時、ペイルスナイパーの右腕にヒートサーベルが食い込む。

 

「間に合えぇぇぇ!」

 

グフSCはペイルスナイパーの右腕を削ぐと体をすぐに捻るが、ペイルスナイパーの左手に持つビームサーベルはグフSCの左肩を斬り飛ばした。

 

『右腕程度、ちょうどいいハンデさ!』

「ガトリングがっ……ッ!?」

 

スカロプが吹き飛ばされていく左腕にある三連ガトリングに意識を向けていた間にペイルスナイパーはビームサーベルで突きを繰り出した。グフSCはヒートサーベルの腹で受け止めるが、融解を始める。

 

「もうっ……いや、ヴィオレさんが応援に来てるのに、諦める訳にはいかないっすよねぇっ!」

 

ヒートサーベルくらいくれてやるとグフSCは自身の獲物を手放して後ろに大きく下がる。ペイルスナイパーはビームサーベルに突き刺さったヒートサーベルを振り払うと、片手でビームスナイパーライフルを構えてろくに狙わずに発砲した。

 

「これくらいっ!」

 

飛んできたビームはグフSCの脇腹を貫くが、グフSCはお構いなしに突っ込むと、斬り飛ばされた左腕を掴んだ。

 

「貴方が斬ったんですから、あげるっすよォっ!」

 

グフSCは拾った左腕を振るった。振られた左腕……その肩にあるスパイクシールドがペイルスナイパーの片目に突き刺さった。

 

『カメラがっ!?』

「片目くらい我慢してほしいっすねぇ!今から命丸々一つ取られちゃうんすから!」

 

グフSCは左腕を投げ捨て、右肩のシールド裏にあるビーム・ソード・アックスを引き抜くと、ビームアックス状態にしてペイルスナイパーの胴体に食い込ませた。

 

『グッ……すみません隊長!ですが、隊長なら生き残れると信じてます!』

 

爆発するペイルスナイパー。爆発に巻き込まれたグフSCは尻餅をついてしまった。

 

「はぁ……ふぅ、ナツキさん、後は任せたっす!」

「ありがとう、スカロプ。後は任せてね!」

 

残るはクリスのNT-90のみである。

クリスはスピアまでやられてしまうとは思わず、コックピット内で震えていた。しかし、ここで諦める訳にはいかない。スピアやパドル達がベストを尽くさなければ、相手に対して無礼であると同時に、仲間達が報われない。

 

『弔いは、お前の首で果たす!』

 

接近を仕掛けるNT-90。ビームランスがスターダストに突きを繰り出されるが、スターダストはツイン・ビーム・スピアで受け流す。スターダストはツイン・ビーム・スピアを変形させてサイズモードに変えると、一振りを繰り出す。

NT-90はビームサイズの一振りを展開したメガ・ビーム・バリアで受け止める。NT-90はツイン・ビーム・スピアを振り払うと、ビームショットランサーで射撃をする。

 

「凄い気迫だ……!」

『伊達にフォースのリーダーを務めていると思うな!』

 

NT-90はビームショットランサーを構えると、ビームランサーが射出された。スターダストはそれをマント裏にあるビームダガーを引き抜いてビームランスを弾く。しかし、そのビームランスは向きを変えると、スターダストに飛んできた。

 

「動きを変えたッ!?ワイヤー兵器か!」

 

ビームランスにはワイヤーが付けられており、バルバトスルプスレクスのテイルブレードの様に予測不能の動きがスターダストを襲う。

スターダストはツイン・ビーム・スピアを捨てると、もう片方の手でビームダガーで弾いた。

 

『そこだぁッ!』

「しまった!?」

 

ナツキの意識は完全にビームランスに向けられたが故に、NT-90がビームサーベルを抜刀してスターダスト目掛けて突撃に近い刺突を繰り出した。スターダストは目を見開きながらスターダストを跳躍させる。ビーム刃の先端が右フロントスカートが突き刺さった。

 

「足くらいぃッ!」

 

そのまま上昇を続けるスターダストの足を焼き斬られていく。ナツキはコックピット内でコンソールを連打すると、ボトムファイターを切り離す。スターダストの上半身が更に上昇すると、残ったボトムファイターが爆発した。

 

『くッ、自爆かッ!』

「セレェェェェェン!」

「ん……!」

 

ナツキの激昂と共にアブルホールSWからコンテナが二つ飛ばされる。一つ目のコンテナから出てきたボトムファイターが上半身だけになったスターダストと合体する。

更に、スターダストはマントを脱ぎ捨て、ハイパージャマーをパージする。そこにもう片方のコンテナからパッケージが装備される。

 

「スターダスト、ドッキング!」

 

バックパックに装備が追加され、シグマシスライフルを手に持つ。キャノンパッケージになったスターダストはNT-90にシグマシスライフルを放つ。NT-90はそれをメガ・ビーム・シールドで受け止めた。

 

『装備を変えた所で!』

 

NT-90はビームサーベルを納めながら空へと飛ぶ。それと同時にビームショットランサーからビームを放った。スターダストはそれを避けながらビームガトリングで反撃をするが、全てメガ・ビーム・シールドに防がれてしまった。

 

「来いっ、牽制はしたんだ。挑んでこいッ……!」

 

スターダストはビームキャノンを放ちながら変則的な軌道でNT-90に迫る。NT-90はビームランスを射出した。スターダストはそれを避けると一気に接近するが、NT-90はすぐさまビームランスを戻してビームショットランサーで突きを繰り出した。

 

「チャンス到来ッ!」

 

スターダストはその一突きを避けると、バックパックのヴェスバーを発射した。NT-90はメガ・ビーム・シールドで防御するが、ヴェスバーのビームがシールドを貫く。しかし、NT-90はビームを避けてみせた。代わりに左腕を失ってしまう。

 

『お前を仕留めるまではァッ!』

 

NT-90はビームショットランサーで刺突を繰り出す。ビームランスがスターダストの体を貫こうとした時、上下半身がパージした。

 

『何ぃッ!?』

「勝つのは、僕だァァァッ!!」

 

上半身だけになったスターダストはヴェスバーでNT-90を撃ち貫いた。

コックピット内のクリスが悔しそうに顔を歪めるが冷静な表情になると、敬礼をした。それと同時にNT-90が爆発する。

 

〈BATTLE ENDED〉

〈WINNER Grand Chario〉

 

勝敗が決される。勝利したのはナツキ達、グランシャリオだった。

 

「勝った……!」

「やったなナツキ!」

「皆、ナイスファイトだったぜ」

 

パージしたボトムファイターがスターダストの上半身と合体させる。ナツキがスターダストを着地させながら勝利への歓喜と最高のスタートダッシュを噛み締めたのだった。

 

***

 

例え互いに戦意をぶつけ合おうと、戦いが終わればその必要はない。むしろ無粋と言えるだろう。

 

「まさかパーフェクト勝ちをされるとはな……素晴らしい戦いだった。グッドゲーム」

「いえ、クリスさんもとても強くて……グッドゲームです!」

 

互いに握手を行うクリスとナツキ。グランシャリオのパーフェクト勝ちだったが、スピアの奮闘やクリスの鬼神が如き戦いぶりは一同を戦慄させるには相応しかった。

 

「今度会った時は勝ってみせるさ」

「はい、楽しみにしてるっす!」

 

ナツキとクリスの次点で激しい戦いを繰り広げたスピアとスカロプが会話を交えていた。すると、スカロプの背後から何者かが背中を叩いた。スカロプが振り返ると、背中を叩いた犯人……ヴィオレがいた。

 

「カッコよかったよ、スカロプ」

「ヴィ、ヴィオレさん!?その、応援ありがとうございました!」

「いやいや〜、私も頑張る君を見れて良かったよ」

 

肩を組みながらヴィオレ的に1番魅せた戦いを繰り広げたスカロプに賞賛を送る。スカロプはヴィオレが見ている以上負けられないと吠えたが、まさか賞賛を送られるとは思わず慌てふためいていた。それを傍から見ていたスピアは「微笑ましいな」と笑っていた。

 

「お前ら、お疲れさん。なかなか良い戦いだったぜ」

「久々に見たけど、2年前の時よりももっと強くなって、感動しちゃったわ……お疲れ様、ナツキくん」

「ん、アッシュ」

「アッシュさん、マギーさん、ありがとうございます!」

 

アッシュがセレンの頭を撫でながら一同を称賛する。必死に戦っていた一同だったが、確かにガンプラバトルを楽しんでいた。GDPは廃れていったが、ガンプラを、ガンプラバトルを楽しむ精神は形を変えはしたが、未だに残り続けている。弟子と弟子が組んだフォースを見てアッシュはそう感じた。

 

「良ければフレンド登録してくれないだろうか」

「えぇ、是非!よろしくお願いします!」

 

フレンド登録をし合うグランシャリオとクリムゾン部隊。それを遠目に見ていたルナはそこから立ち去ろうとした。

 

「良いのか?何か言うなら今の内だぞ」

 

立ち去ろうとするルナにそう言ったのはノゾムだった。ナツキは独りからフォースを結成し、見事勝利した。シークレットガーデンに挑む時も、遠くはないだろう。

 

「良いの。余計な事を言わなくても、ナツキはいつか来るわ」

「余計、な……」

 

ーーお前の言葉は、アイツにとって特別なのによ。

二人揃って朴念仁共め。と脳裏で悪態をつきながらノゾムはルナの後ろ姿を追って歩いていった。




と言う事で初のフォース戦でした。どうしても複数の戦闘を書くとなると、文字数が増えてしまいますね。

そして、今回で第一章が完結です。次回からはナツキ達元四季團の過去を掘り下げる断章が始まります。如何にして幼馴染四人が集まったのか、如何にして四季團は解散したのか、空白の二年半に何が起きたのか……それを出来る限り掘り下げる予定です。

感想、お気に入り登録の方、よろしくお願いします!
感想の方は短くても良いので送ってくれると活力になるのでバンバン送ってください……!

では、次回予告へ……


次回予告

初勝利を飾ったフォースグランシャリオ。

快進撃を続ける一同だったが、ふとナツキの過去に疑問を持つ。

仲間に過去を聞かれたナツキはGBNに触れる前の話……幼馴染四人が集まった経緯を話す。

断章、開幕
第16話 四季、集う


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断章 在りし日の空
第16話 四季、集う


三週間以上待たせてしまって、申し訳ございませぇん!
n回目ですが、来週からはちゃんと投稿しますので何卒ご勘弁を……!

気を取り直して、断章開幕です。
幼馴染が今まで何をしてきたのか。思いっきり掘り下げるつもりです。
それでは、どうぞ!


フォース・グランシャリオの簡易フォースネストにナツキがやって来た。

既に全員が揃っており、リーダーである自身が最後になってしまった事に少し申し訳なさを感じつつも「お待たせしました!」と声を出しながら部屋に入った。

 

「今日はフォース戦やイベントは決まってないんだろ?誰も怒ってないし、気にしなくて良いぜ」

「えへへ、そう言ってくれると嬉しいです」

 

ワイズのフォローにナツキは感謝をしつつも、ウィンドウを開く。今日のトピックスや最新情報を確認した。すると、そんなナツキにエースが歩み寄ってくる。

 

「なぁ、ナツキ。ちょっと良いか?」

「エース?どうかしたの?」

 

エースは普段のような調子の良い感じではなく、何処か後ろめたそうな表情だった。エースは頭をかきながらナツキを見る。

 

「実はよ。勝手にナツキの事について調べちまったんだ」

「僕の……?」

 

エースはウィンドウを開いて操作すると、一つの動画をナツキに見せた。それはゼフィランサスの改造機と思わしき機体が戦闘している動画だった。投稿日時は二年半前より少し前……ナツキがまだGBNをやめる前だった。

 

「GTubeや掲示板で調べちまったんだ……わりぃ。気になっちまって」

「大丈夫だよ。いつか必ず話すって言ってたし」

 

エースは勝手にナツキの過去を詮索してしまった事を謝っていた。

ナツキの強さに魅力を感じていた彼は興味が勝ってしまって調べたが、彼の実直さが後から罪悪感を沸き立たせてしまったが故にナツキに謝罪してきたのだろう。

しかし、ナツキはいつか知ってほしいと考えていたので過去の詮索に関しては寛容で、むしろ仲間の方から踏み込んでくれたのは嬉しかった。

 

「……この際だし、今日は僕の過去の話をしようか」

 

ナツキとエースの会話を偶然聞いていた仲間達が反応してナツキを見る。

 

「皆もそれでいいかな?」

「そうね。私達も気になってたし、構わないわよ」

「僕も改めて聞いておきたいっす」

 

ナツキはソファーに座ると、それに合わせて仲間達も聞く体勢になる。

 

「それじゃあ……これから話すのは幼馴染四人と出会い、僕がGBNを止めるまでのお話だ」

 

***

 

第16話

四季、集う

 

***

 

GPデュエルはGBNが表舞台に出るまではガンプラバトルの代名詞だった。そして、ナツキもまたGPDに惹かれた者の一人だった。

 

「待ってよノゾム!早いって!」

「お前が遅いんだよ!早くしないと、他の奴に取られるだろ!」

 

ナツキの前をノゾムが走っていく。まだ幼い、小学生の二人が元気に向かっているのは、大型のショッピングモール。

確かにGPDは世界大会すら展開される程普及しているが、都会やプロショップ、模型店でもないとその筐体は置かれていない。

ナツキやノゾムは俗に言う過疎地に分類される所に住んでおり、学校や遊びに行くだけでもバスに乗る事を強いられる程である。

 

「もう誰か使ってるかな?」

「流石にここまで急いで行ったら空いてるだろ」

 

GPDが置かれているゲームセンターまで走る二人。

学校からバス停、バス停から家の帰り道で走り、家からバス停、バス停からショッピングモールまで走った二人としてはここまでの労力に見合う結果であってほしいと願いつつGPDの筐体が置かれているエリアを覗く。

 

「誰もいない?」

「あぁ、今なら使える!」

 

GPDの筐体は二台あり、どちらも誰も使っていない事を確認する。

ナツキが「やった!」と跳び跳ねているのを他所にノゾムは即座に筐体のあるコントローラーの前に立った。モニターを操作しながらひょこひょことやって来るナツキを見る。

 

「難易度はいつも通りので良いよな?」

「うん。ハイスコア目指そ!」

 

二人はガンプラを取り出して発進台に置くと、プラネットコーティングが付着してその目が輝く。

 

「ナツキ、GP-1000 ホウセンカ、行ってきます!」

「デルタシャープ、やるぞ」

 

二機のガンプラがフィールド内に入る。モニターにはガンプラのカメラから見える景色……宇宙がそのまま広がっていた。

 

「いつ見ても綺麗だな~」

「呑気に言ってる場合じゃないぞ」

 

ノゾムに言われたナツキは「ごめん」と言いながらゼフィランサスのカメラを前にすると、モスグリーンの丸い曲線で作られたずんぐりとした体型をした練習用ガンプラ……通称『ハイモック』が複数現れる。

 

「俺が先攻する。ナツキは後ろから支援だ!」

「うん。任せて!」

 

ノゾムはデルタプラスの改造機『デルタシャープ』をウェイブライダー形態にすると、ハイモックの集団に向かっていく。ハイモックはビームライフルを撃ってくるが、ノゾムはお構いなしに段幕の中を潜っていく。

 

「行くぞぉ!」

 

加速と共にデルタシャープの翼がハイモックの上半身と下半身を断ち切った。デルタシャープは羽がブレードになっており、加速力と翼の鋭さが重なって機体の装甲を容易く斬り裂ける程だった。

 

「ノゾムは凄いなぁ……こっちも負けられないね、ホウセンカ!」

 

ナツキの操作するホウセンカはバックパックの右側に懸架されたジャイアントガトリングを構える。

 

「いっけぇぇぇ!」

 

乱雑に放たれる弾丸はデルタシャープに意識を向けていたハイモックの集団を蜂の巣にしていく。

 

「甘いぜナツキ!もっと自分から攻めろよ!」

「攻めてるよ!誰もがノゾムみたいにガツガツ行けないって……」

 

デルタシャープはMS形態に変形すると、ビームライフルとシールドから発振するビーム刃で切り裂いていく。

ホウセンカは弾切れしたジャイアントガトリングを戻して170mmキャノン砲を構えて支援を続ける。

 

「これで、ラストォ!」

 

デルタシャープがシールドを最後のハイモックに突き刺すと、バトル終了のアナウンスが響く。ホウセンカがデルタシャープに近づくと、手を挙げる。ノゾムはナツキの意図を察すると、デルタシャープでハイタッチをした。

 

「やるじゃん、君達!」

 

その時、コントローラーの反対側から声が聞こえた。どれと同時にマップ内に反応が現れる。デルタシャープとホウセンカがそちらを見ると、そこには黒の部分が紫色になったヴァーチェが立っていた。

 

「何だテメェ。乱入者か?」

「そうとも言うねぇ……私は紫音。秋島紫音!そしてこの子はヴァーチェヴァイオレット!」

 

ノゾム達の反対側で『ガンダムヴァーチェヴァイオレット』を操作する二人と同い年ぐらいの少女『秋島紫音』が名乗る。

 

「そこのデルタプラス!私とデュエルしな」

「へぇ……」

「え、僕は?」

「君は何かつまんなさそうだし戻って良いよ。どうせ私にぼろ負けするだろうしね!」

 

紫音のあからさまに調子に乗っている発言にナツキはムッとしてホウセンカを前に出かけるが、デルタシャープがそれを制止する。

 

「ノゾム!」

「挑発に乗るな。アイツはお前を打ち負かして俺に見せしめようとしてるんだよ」

「僕は負けないよ!」

「ハイモック相手でも前に出て戦えない奴が勝てるかよ」

 

ノゾムに言い負かされたナツキは黙ってホウセンカを自身の元に戻すと、ナツキはコックピットから離れる。

 

「すまねぇ。負けた時は任したぜ……負けねぇけど」

「ヘッ!ちょっと強いからって良い気にならないでね!」

 

ヴァーチェヴァイオレットの足の装甲が展開して大量のGNマイクロミサイルが発射される。デルタシャープはウェイブライダー状態になると、ミサイルの段幕を避けながらヴァーチェヴァイオレットに迫った。

 

「前に出れない、かぁ」

 

ナツキは飛び回ってヴァーチェヴァイオレットのGNバズーカやGNキャノンの弾幕を避けながら翻弄するデルタシャープを見ながら考える。

ナツキはGPDが好きだ。しかし、どうしても前線をノゾムに頼ってしまう所があった。もし自分のガンプラが壊れたら……そんな恐怖がナツキを踏み留まらせたのだ。

 

「カッコいい……」

 

ふと、そんな声が聞こえた。ナツキが隣を見ると、金髪の同い年らしき少女がノゾムと紫音の戦闘を見ていた。

 

「GPDは始めて?」

「え?あ、えっと……うん、そうなの」

「そっかぁ!僕は敷島ナツキ!君は?」

「……佐々木春奈」

 

『春奈』と名乗る少女に話しかけるナツキ。ナツキは「春奈かぁ」と彼女の名前を呟きつつ興味津々に春奈を見る。

 

「えっと、これってGPDって言うの?」

「知らないの?ガンプラは?」

「ガンプラ……?」

「それも知らないの!?」

 

世界大会が開催される程の規模になっているGPDやガンプラを知らない春奈にナツキは驚くが、女の子だし知らないかなぁと内心気づいておかしい事ではないと気づいた。

 

「ごめんなさい。GPDの方は機械を見た事はあるけど、知る事が無くて……」

「謝らなくて良いよ!……あ、じゃあやってみない?」

「やるって、GPDを?」

 

春奈の問いにナツキが「うん!」と大きく頷く。春奈がどうしようかと悩んでいると、ナツキが春奈の手を掴んで引っ張っていく。

 

「し、敷島くん!?」

「ナツキで良いよ!僕が教えるから、チャレンジしてみよ!」

「……うん!」

 

手を引かれて困惑する春奈だったが、手を引く張本人であるナツキに後押しされて一緒に走る。

ナツキはノゾムなら紫音に勝てると信じてGPD筐体を後にした。

 

***

 

ガンプラ売り場に来た二人は最初に何を作るのかを選びに来ていた。

 

「始めるならやっぱり作りやすいファースト系とか、SDかなぁ……」

 

ナツキがガンプラ選びに熱中している間に春奈はずらっと壁一面に置かれているキットに視線を向ける。ふと、春奈の視線がとあるキットを見つけた。

 

「これ……」

「『ミスサザビー』?確か、世界大会参加者のアイラって人が使ってた機体の再現キットらしいよ」

 

キットのパッケージには銀髪の儚げな女性『アイラ・ユルキアイネン』が写されており、春奈は彼女に見とれていた。

 

「この人、綺麗……」

「綺麗だよね。……これ、組んでみる?」

「えぇ!是非組みたいわ!」

 

ナツキに聞かれた春奈は頷いた。ナツキがそれを掴もうとするが、春奈がそれを止めて自身がそれを持った。

 

「僕が買うのに……良いの?」

「良いの。私が買うわ。教えてもらうだけじゃなくて、買ってもらうだなんて申し訳ないし」

 

春奈はミスサザビーの箱をレジへと持っていく。ナツキは無理に誘ったんじゃないかと内心申し訳なく感じていたが、乗り気な春奈を見てほっと一安心した。

 

「それで、どうすれば良いの?」

「あぁ、道具は僕が貸すよ」

 

ビルダースペースに移動した二人。ナツキは春奈にニッパーとヤスリ、ピンセットを手渡す。

 

「これだけで良いの?」

「うん。まずはパーツの確認をしてね。ホントに珍しい事だけど、パーツが足りてなかったり、壊れてたりするからね」

 

天下の財団Bであれど、ミスぐらいある。春奈は箱をあけるとその中身を説明書を片手に確認した。

 

「大丈夫だったわ」

「良かった。じゃあ、早速組み立ててみよう!基本はゲート跡を少し残して切り離して、そのゲート跡を切るんだ。俗に言う二度切りだね」

 

ニッパーで直接切ればプラスチックに負荷がかかって白色化する可能性がある。それを最低限まで抑える為に二度切りがあるのである。

 

「ガンプラって一つ組むだけでこんなに大変なのね」

「難しい?」

「難しいけど……楽しいわ」

 

春奈は笑顔で答える。ナツキは良かったと呟きながら組み立て作業を手伝う。数時間すると、ミスサザビーは完成していた。

 

「出来た……!」

「凄いじゃないか春奈!」

 

春奈は完成に歓喜し、ナツキは春奈を称賛する。ナツキが追加で貸した流し込み式の墨入れペンでディティールアップが施されていた。

 

「それじゃあ、GPD、やってみる?」

「えぇ、やってみたいわ!」

 

ナツキと春奈は早速組み立てたミスサザビーを片手にGPDの筐体へと向かう。……その途中に号泣している紫音を見つけた。

 

「私のヴァーチェ~~~!!」

「あー泣くな泣くな」

 

紫音の手には破壊されたヴァーチェヴァイオレットがあり、ノゾムは宥めていた。ナツキと春奈は顔を見合う。ナツキの方は何が起きたのか少し察していた。

 

「ノゾムが勝ったの?」

「あぁ、そしたらヘソ曲げやがった」

「うるさぁい!私が端正込めて作ったのにぃ……」

 

GPDは確かに自分の作ったガンプラを動かせると言う夢のあるゲームだ。しかし、そんな都合の良いものではない。悲しい事に実際に破壊されると大破してしまうからだ。

 

「春奈、言い忘れててごめん。GPDはこう言う危険って言うか……辛い思いをするかもしれないんだ」

「そうだったのね……ねぇ、貴方」

「ん……何さ」

 

落ち込む紫音に春奈が歩み寄る。紫音は泣き止みはしたが、へなへなになって萎れていた。

 

「自信作、だったの?」

「うん。でも、こんな呆気なく壊されるなんて思わなくて……」

「私、GPDは今日が初めてで、それも今からだけど……貴方が作ったガンプラがとっても良いものなのは伝わるわ」

「……そう?」

 

春奈は紫音の両手で砕けたヴァーチェヴァイオレットを見ながら呟く。春奈は紫音の頭を撫でながら話を続ける。

 

「もし、貴方のガンプラを直せたら、私に見せてくれないかしら?私、貴方のガンプラが動いている所がまた見たいわ」

「……分かった。私は女の子との約束は、絶対守るもんね」

 

涙を拭った紫音は「ごめんね」と言いながら大破したヴァーチェヴァイオレットを自身のケースの中に仕舞う。春奈は立ち上がると、ナツキを見た。

 

「壊れるのは怖いけど……それでもやろうって思える程、楽しいのでしょう?なら、私もしてみたいわ」

「……凄い勇気があるな、コイツ」

「うん。本当に凄い人だよ……来て、春奈。GPDを教えるね!」

 

春奈とナツキがGPDの筐体へと改めて向かう。ノゾムはその後ろを着いていき、三人の後ろ姿を見た紫音は小さな歩幅で着いていった。

 

***

 

発進台に乗せられたミスサザビーが峡谷のフィールド内に飛び込んでいく。春奈は自身が作ったガンプラが動いている事に感動を覚える。

 

「凄い。私のミスサザビーが……!」

「凄いでしょ?僕も初めて動かした時は感動したよ」

 

春奈は興奮しながらミスサザビーを自由に飛び回らせる。ナツキは自身も似た感動をしている事を思い出しつつも春奈の初めての操作を手伝う。

 

「楽しそうじゃねぇか!」

「俺達も混ぜてくれよ~」

「遊ばせてくれって」

 

その時、マップに三機の反応が現れた。コックピットの反対側には三人の中学生くらいの男子がおり、悪そうな笑みを浮かべながら二人を見ていた。

 

「あの、今はこの子が遊んでて……」

「直接言わなきゃ分からねぇなら言ってやる。この筐体は俺達に使わせろ!」

 

三機の黒いジンクスⅢがミスサザビーに迫る。春奈は困惑して逃げようとするが、ジンクスに囲まれてしまった。

 

「春奈、逃げていいよ!やられたら、壊されるんだよ!」

「私は……」

 

春奈は紫音の破壊されたヴァーチェヴァイオレットを思い出す。しかし、操縦幹を強く握ると、スイートソードを構えた。

 

「春奈!?」

「私は、戦うわ!逃げないって決めたから!」

 

ミスサザビーがジンクスⅢに挑む。スイートソードとジンクスⅢのGNランスが衝突する。背後からもう一機迫るが、ミスサザビーはそれを避けた。

 

「今のを避けたのか!?」

「本当に初心者かよ!」

 

三機目のジンクスⅢがNGNバズーカでミスサザビーを狙い撃つが、拡散メガ粒子砲で砲弾を破壊する。

 

「凄い。初心者なのにあんな果敢に……」

 

初心者でたった一人であるにも関わらず、恐れずに挑戦しようとする春奈を見たナツキは自身の事を振り替える。

 

「壊れる恐怖を越えて……」

 

ナツキはとある決心をすると、ホウセンカを取り出して春奈から離れた。

 

「しょうがねぇ。アレやるぞ!」

「了解ィ!」

「痛い目遭わせてやらァ!」

 

ジンクスⅢはミスサザビーから離れて谷底へと姿を隠した。春奈は逃げるジンクスを追ってミスサザビーを追いかけた。

 

「行くぞ!トランザム!」

「「トランザム!」」

 

谷底まで着地したミスサザビーに向かって縦一列になったジンクスⅢが突撃してきた。

先頭のジンクスがGNビームライフルで射撃する。ミスサザビーがスイートシールドで防いでいると、二番目のジンクスⅢがNGNバズーカを撃つ。それによってスイートシールドが破壊されてしまった。

 

「しまっ……」

「仕舞いだぁぁぁ!」

 

三番目のジンクスⅢがGNランスで突きを繰り出す。春奈が終わりを察し、自身が作ったガンプラが破壊されるのを覚悟した、その時だった。

一閃のビームが三番目のジンクスⅢを狙って放たれた。ジンクスⅢはそれを避け、他の二機も一度下がる。

 

「誰だ!?」

「友達だ!!」

 

自由落下に身を任せながらビームライフルを撃つのはナツキの駆るホウセンカだった。ホウセンカはミスサザビーの前に立つと、ビームライフルを捨ててバックパックのビームサーベルを引き抜いた。

 

「もう一度やるぞ!トランザム!」

「「トランザム!」」

 

ジンクスはトランザムを発動すると、縦一列に並んだ。二本のビームサーベルを構えながらナツキはグッと息を呑んだ。

 

古典的な方法(ジェットストリームアタック)……攻略法なら、幾らでもあるさ!」

 

トランザムによって高速で迫るジンクスⅢ三機。ホウセンカは真正面から突き進むと、先頭のジンクスがGNビームライフルを射撃する。ホウセンカはビームの段幕を恐れずに突き進むと、先頭のジンクスⅢを踏みつけた。

 

「俺を踏み台にしたぁッ!?」

「それでも、俺がいるぜ!」

 

二番目のジンクスⅢがNGNバズーカを構えて砲口を向ける。ホウセンカはそれを左手に持つビームサーベルで突き刺した。

 

「何ぃぃぃ!?」

「三人目は防げねぇだろ!」

「伊達のもう一本じゃないんだぁぁぁ!」

 

三番目のジンクスⅢがGNランスで攻撃を仕掛けた。ホウセンカはそれを右手のビームサーベルで受け止めた。

 

「後ろががら空ーー」

「やぁっ!」

 

一番目のジンクスⅢがGNビームライフルをホウセンカに向けた時、背後からミスサザビーがスイートソードで両断した。

 

「ナイス春奈!」

「余所見してる場合か!」

 

鍔迫り合いをしていたジンクスⅢがホウセンカを押し出す。後ろに体勢を崩したホウセンカにジンクスⅢのGNランスの刺突が繰り出される。

 

「しまった……!?」

「お前を倒して、その後あのサザビーを倒してーー」

 

その直後、ジンクスⅢの胴体に飛んできたビームが貫通する。ジンクスⅢはホウセンカにGNランスを突き立てる前に爆発した。

 

「た、助かった……?」

「ったく、余計な世話かけんなよ」

 

ホウセンカが見上げると、そこにはビームライフルを構えたデルタシャープが空中で浮遊していた。

 

「ノゾム、ありがとう」

「見てられねぇから助けただけだっての」

 

バトル終了の知らせと共にジンクスⅢ人組は彼ら自身のジンクスⅢを回収すると逃げ出していく。

ノゾムは三人の後ろ姿を見た後にナツキに腕を構えると、ナツキは交差するように腕を合わせた。

 

***

 

ナツキやノゾム、春奈に紫音の四人はGPDを後にして帰路に向かおうとしていた。

 

「楽しかったなぁ……」

「トラブルもあったけどな」

「何がトラブルだい!私のヴァーチェを壊した癖に」

「喧嘩しないで二人とも!」

 

ノゾムに煽られてすぐに躍起になる紫音を春奈が制する。紫音はむぐぐと怒りを抑えると、何処かへと走り出した。

 

「紫音!どこ行くのー?」

「家に帰るの!今度会った時は覚悟しなよーッ!」

 

紫音はビシッとノゾムを指で指すと走ってその場を後にした。ナツキはノゾムの方を見るがどこ吹く風と言わん様子だった。

 

実際に負け惜しみなのだからそう反応しても間違ってないのだが。

 

「私も早く帰らないよ父さんも母さんも心配してしまうわ」

「俺達も早く帰らないとバス遅れるぜ」

「そうだね……」

 

バスに遅れてしまえば、家に帰った時には門限を越えてしまう。流石に怒られるのは嫌なので帰るしかなかった。

 

「また会えるかな?」

「えぇ、また会えるわ、必ずね」

 

ナツキがえ?と春奈に言葉の意味を聞く前に春奈を呼ぶ声が聞こえた。そちらを見ると、一人の女性が車の傍で立っている。

 

「迎えが来たわ。ありがとう、またね」

「うん、じゃあね!」

「またな」

 

春奈は車へと走っていく。ナツキとノゾムは彼女を乗せた車がショッピングモールを走り去っていくのを見送ってからバス停へと向かった。

 

***

 

翌日、学校に投稿してきたナツキとノゾムは硬直しながら目の前にいる少女を見ていた。

 

「な、何で君らがいるのさ!」

「知らねぇよ!て言うかお前同じ学校だったのかよ!」

 

前日ノゾムがボコボコにした紫音がそこにはいた。ノゾムと大声をあげ合う紫音を見ながらナツキは「世間って狭いなぁ」と思いつつ教室へ向かう。

 

「早く座れよ先生来るぞ」

「言われなくても座るよ!」

 

最初の方は声を荒くしていたが、途中から疲れたのかめんどくさそうにするノゾム。紫音はべーと舌を出しながら自身の席へ座った。

 

「皆さん、おはようございます。今日は皆さんに転校生を紹介します」

 

『転校生』と言うワードで教室が騒がしくなる。眼鏡をかけた男性の先生は喧騒を後に「入ってください」と言うと教室に金髪の髪の少女が入ってきた。

 

「今日からこの学校に入る佐々木春奈です。皆さん、これからよろしくお願いします」

 

転校生として自己紹介をした春奈にナツキは立ち上がってしまう。急に立ち上がったナツキに他の生徒や教師、そして春奈が視線をそちらを向けてしまう。

 

「敷島くん?」

「あ、ごめんなさい……」

 

我に返ったナツキは顔を赤くしながら席に座る。春奈はクスリと笑うと教師が指示した席……ナツキの隣の席に座る。

 

「これからよろしく、ナツキ」

「あ、うん!よろしくね!」

 

春奈との予想外の再会に驚きつつも、何か新しい事が起きる予感がした。




と言う事でかなり昔からのスタートです。掘り下げるならトコトン掘ってやらァ!って心意気で書きました。
過去のシーンでは三人称視点なのでリアルネームで書いてますが、ナツキはダイバーネームに置き換えて話してる感じです。

設定の方ですが、断章等の過去のお話関連は別の方で纏める予定です。一発ネタと過去の二つ設定を纏める必要がありますね。早くしないと……

良ければ、感想・お気に入りの方もよろしくお願いします!
感想がマジでモチベーションに直結するので!何卒、よろしくお願いします……!

では、次回予告へ……


次回予告

初めて四人揃ってからほんの数年。ナツキ達はGPDに熱中し続けていた。

そんな四人はGPDの世界大会が今年で最後と言う噂を聞く。

最後の僅かなチャンスを逃したくないと考えたナツキ達四人は予選大会に挑むのだった。

次回、絆、一つに
お楽しみに……


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第17話 絆、一つに

1週間投稿をすると言ったな。あれは嘘だ。
ポォォォォォォォォ!!(宇宙空間に投げ飛ばされる鳩)

はい、茶番は足止めさせていただいて……また待たせてしまい申し訳ございませんでしたァッ!リアルが忙しいが5割、積みプラ発散2割、バトオペ2楽しい(初心者です)2割、その他1割が理由です。因みにバトオペはジムナイトシーカーV(宇宙戦仕様)を使ってます。

あ、今回ゲスト出演させていただきました!どこの作品の誰なのかはお楽しみに!!!
では、どうぞ……


ナツキ達四人が知り合ってからほんの数年。四人はGPDを楽しみながら日々を送っていた。

小学校高学年になり、卒業も目前になり始めていた頃の出来事だった。

 

「春奈、おはよう」

「おはよう、ナツキ」

 

朝早くに来ると、既に教室に来ていた春奈と合流した。あれから春奈とは更に親しくなり、ほぼ毎日話していた。

 

「今日もGPDしに行く?」

「えぇ、良いわよ」

 

いつも通り、GPDの約束を取り付けていると、ガラッと扉が開かれて紫音が入ってきた。

 

「春奈ママ、ナツキ、いる!?」

「紫音?」

「どうしたのそんな急いで……って、誰がママよ」

 

大慌てでやってきた紫音に驚く二人だったが、春奈の方は紫音の聞き捨てならない呼び方にツッコミを入れる。

 

「いやそんな事はどうでも良いんだって!ヤバイニュースがあるんだよ!」

「どうでも良いわけないだけど……」

「ヤバいニュースって?」

 

紫音はランドセルから一枚の広告を取り出す。それはGPDの世界大会の広告だった。「そう言えば今年もこの時期か」と思っているととある一文に目が入った。

 

「これって……」

「まさか……」

 

二人はその一文に驚きを隠せなかった。何故なら……

 

***

 

第17話

絆、一つに

 

***

 

バスの中で幼馴染四人はとある話題で盛り上がっていた。

 

「GPDの世界大会は今年で最後!?」

 

ノゾムが大声で驚きの声をあげてしまう。GPD世界大会の広告には『最後の世界大会』と銘打たれていた。

 

「GPDももう終わりなんだぁ」

「多分、新しいガンプラバトルが出来るゲームが出るからだろうね。確か名前は……」

「ガンダムバトルネクサスオンライン。GBNって言われてるわ」

 

春奈がその名前を言うと、紫音は忘れていたことを思い出す。

 

「そう言えば春奈ママの家はガンプラバトル関連のお仕事もしてるんだっけ。GBNにも?」

「えぇ、仕事だと言っていたわ」

 

春奈は正真正銘のお嬢様である。彼女の家は俗に言う資産家で、ナツキ達の片田舎に転校してきたのは都会から離れた環境で過ごしてほしいと両親が考えて引っ越したらしい。

 

「……どうする?」

「どうするって、何するの?」

「世界大会だろ。最後のチャンスだぞ」

 

ノゾムが最後の世界大会に対してどうするかを問う。このままチャンスを見逃す事も出来る。だが、もしチャンスを掴む事が出来るのも今しか無いのだ。

 

「……僕は、出たいかな」

「こんなの出るしかないだろ」

「そうね。この数年で磨いた実力を、試してみたいわ」

「皆出る感じ?じゃあ私も出る!」

 

最初に言い出したのは、ナツキだった。

その次にノゾムがそれに乗るように参加を表明する。

春奈がやる気満々と行った様子で参加の意思を見せた。

紫音は自分以外の三人が参加の意思を見せた事を察して手を挙げた。

 

「よーし!私ら四人で頑張っちゃおー!」

「「「おー!」」」

 

勝鬨を上げる四人。斯くして幼馴染四人は最後のチャンスを掴み取る為に動き出した。

 

***

 

世界大会予選当日、幼馴染四人は揃って会場に挑もうとしていた。春奈が頼んで移動する為の車を準備してもらっていた。

 

「良い?私らが挑むのはチーム戦。最大4人の総力戦だよ」

「そんな事くらい何度も聞いたわ」

「連携の練習、嫌ってくらいしたわ。勝てるわ、私達!」

 

受け付けに渡された参加要項に紫音がボールペンで書き込みながら三人に話す。ノゾムも春奈も気合が十分といった様子で、ナツキはそんな三人の後ろ姿を見ていた。

 

「僕も、頑張らない、とぁっ!?」

 

三人の後ろ姿ばっかりを見ていたナツキは真横を通り過ぎた人物とぶつかってしまう。ぶつかってしまった相手は尻餅をついて杖を落としてしまった。

 

「うわぁぁぁぁ!?ごめんなさい!大丈夫ですか!?立てますか!?」

「あ、えぇ、大丈夫です。すみません……っと」

 

ナツキは大慌てで手を差し伸ばす。ぶつかってしまった小柄な女性はナツキの手を掴むと、それを支えに立つ。ナツキは杖を拾ってそれを女性に手渡した。

 

「ナツキ!何してるのさ!」

「あ、ごめん!すみません、僕はこれで!」

「あ、はい。気を付けて」

 

紫音に急かされたナツキは女性に頭を下げると、三人を追いかけて行く。

 

「えっと、何の話をしてたの?」

「紫音がチーム名を考えてたんだよ」

「ふふーん、そうなんだよなぁ!」

 

ノゾムがナツキに話の経緯を語ると、紫音は得意気に胸を張る。ナツキが「何て名前?」と問うと、紫音は待ってましたと言わんばかりにナツキを指差すと、参加要項を掲げた。

 

「その名も……ジャーン!四季團!!」

 

紫音の見せた要項に書かれた『四季團』と言う文字を見ながらナツキが拍手をする。春奈もそれに釣られて拍手した。ノゾムは何もせずに見てるだけだった。

 

「何で四季なんだ?」

「なんでって……“春”奈でしょ?“ナツ”キでしょ?私“秋”島で、ノゾムが“冬”木。ほら、春夏秋冬!」

 

紫音は順番に指差しをしながら命名の理由を話す。それを聞いた春奈とナツキは「おー」と感嘆の言葉が出て、ノゾムは「そう言う事か」と納得していた。

 

「と言う事で私らは今日から四季團ね!決まり!」

「決まりだな。早速準備すんぞ」

「そうだね。行きましょう、ナツキ!」

「うん、そうだね」

 

四人は会場の中へと歩んでいく。四人にとっては初めての大舞台。最後のチャンスを掴む為、その足を進めた。

 

***

 

観客席には先程ナツキがぶつかってしまった黒髪の小柄な松葉杖の女性……夜ノ森零はストンと座った。

彼女は本来ならナツキ達の様に予選に参加しているはずだった。しかし、数年前の交通事故で現在は足を失ってしまい、義足と松葉杖無しでは立てない状態になっていた。今はリハビリで精一杯でGPDに手を伸ばすほど余裕はなかった。

 

「隣、良いかい?」

「あ、どうぞ」

 

彼女の隣に一人の男性が座る。隣に誰が座ろうと関係ないので、視線をそちらには向けずに返事だけはしておいた。

 

「……なぁ、あそこの試合見えるか?あの、小学生くらいの子がいる試合」

「え、あ、はい。見えま……」

 

突然先程座った男性に話しかけられて困惑しつつもそちらを見て言葉を止めてしまう。シルバーアッシュのスカジャンを着た男性、GPD世界大会を見ているなら少なからず知っているだろう有名な選手だった。

 

「あ、芦原ヨウタ……さんっ……!?」

「んお、俺の事知ってるのか?嬉しいねぇ。こんな一匹狼を知ってくれてるなんて」

 

芦原ヨウタ。GPDの界隈では『灰色の太陽』、何て言われているヅダ使いの頂点に立つ男だ。そんな人物に話しかけられた零は困惑してしまう。

 

「あー、俺が誰なんて今は関係ねぇだろうからよ。今はさっきの質問に答えてくれれば良い」

「は、はい。えっと……あそこ、ですよね」

 

零が指差した所に四季團がいた。零は先程ぶつかってパニックになりつつも大謝りしてきた少年……ナツキがいる事に気づく。

 

「あの子は……」

「見えてるなら良いんだ。あの試合、どっちが勝つと思う?」

 

ヨウタが聞いてきたのはシンプルなもので、勝敗予想だった。零は今は足のせいで断念したが、世界大会に挑もうとしている程にはガンプラバトルには造詣がある。

 

「四人の相手は……」

 

敵チームは四季團達とは真反対の大人四人組だった。大人二人がかりで大きな箱を運んでいた。

 

「あの箱は……」

「奴さんらの秘密兵器ってやつだろうな。もしかしたらあのガキ四人、負けるかもしれないが……どっちが勝つと予想する?」

 

零は四季團と対戦相手を交互に見る。対戦相手の大きな箱の中身も大体予想は出来ていた。

 

「私は……」

 

零は勝敗の予想をする。零の答えを聞いたヨウタは面白そうに笑った。

 

「良い答えだ。結果が楽しみになったぜ」

 

ヨウタが視線を零から四季團の方を見る。零もヨウタの誘いに乗った以上今から観戦を止める訳にはいかなかったのでその視線をヨウタ同様四季團へと向けた。

 

***

 

「相手は大人か……」

「年齢がなんぼのもんじゃい!」

「そうだね。僕達の全力の力を合わせれば、勝てるはずさ!」

 

四季團はそれぞれのガンプラを発進台に立たせる。対戦相手もそれに合わせてガンプラを置く。

 

『それでは予選第一試合、スタートです』

 

アナウンスと共に筐体が宇宙のフィールドを構築。両チームのガンプラにプラネットコーティングが施されると、カメラアイが点灯する。

 

「ガンダムGP-1000 ホウセンカ!」

「デルタシャープ!」

「ガンダムヴァーチェヴァイオレット!」

「ミスサザビー……!」

『行きます!』

 

フィールド内に飛び込んでいく四機のガンプラ。フィールドの反対側からギラ・ズールが二機、ドライセン(袖付き)が現れた。

 

「相手は三機?一人足りなくねぇか?」

「何人だろうと倒すのには変わりないでしょ!」

 

ヴァーチェヴァイオレットの足からGNマイクロミサイルが飛ばされる。

敵機三機はそれを避けて突き進む。ドライセンとギラ・ズールAが前に出ると、前から反応が急接近していた。

 

「行くぞ、春奈!」

「えぇ、任せなさい!」

 

接近するのは変形したデルタシャープの上に乗るミスサザビー。

ドライセンがバックパックのトライブレードが発射され、二機へと飛んでいく。

 

「春奈、離れろ。変形して戦う!」

「えぇ、そっちは任せるわ!」

 

ミスサザビーが離れると、デルタシャープがMS形態へと変形する。デルタシャープはビームライフルからロング・ビーム・ライフルを発振してトライブレードを熔断する。

 

「来いよ太っちょ(ドライセン)!」

 

ドライセンは挑発に乗るようにビームトマホークを振るう。デルタシャープはロング・ビーム・ライフルで受け止めると、シールドのビーム刃で胴体に突き刺された。

 

「私も負けてられない!」

 

ミスサザビーはギラ・ズールのビームマシンガンを避けながらスイープソードを振るう。ギラ・ズールはそれをビーム・ホークで受け止めた。ギラ・ズールはミスサザビーを押し返した。

 

「クッ、でもっ!」

 

押し飛ばされたミスサザビーだったが、足から発振したビーム刃がギラ・ズールの腕を斬り飛ばした。

 

「これでぇぇぇっ!」

 

バック宙をしたミスサザビーは胴体をギラ・ズールに向けると、拡散メガ粒子砲がギラ・ズールを破壊した。

仲間がやられたギラ・ズールBがビーム・スナイパー・ライフルを構えてミスサザビーを狙った。

 

「させるかぁっ!」

 

しかし、ギラ・ズールBの頭上から二連装ビームガンからビームを連射しながら飛んできたのはホウセンカだった。

ギラ・ズールBはホウセンカが飛ばしてくるビームを避けながらビーム・スナイパー・ライフルを納めて小型のビームマシンガンで牽制をするが、ホウセンカはそれを二連装ビームガンに取り付けられたシールドで防いだ。

 

「紫音、誘導したよ!」

「やりぃ!じゃ、ぶっとんじゃえっ!」

 

逃げ回るギラ・ドーガを狙ってGNドライヴと連結させたGNビームバズーカを放ったのはヴァーチェヴァイオレットだった。

ギラ・ドーガは予想外の方向から飛んできたビームに撃墜された。

 

「よっしゃあい!楽勝だね!」

「いや、まだ一機いるはずだ。何処に隠れてーー」

 

その時、複数のビームがホウセンカの四肢を破壊した。

 

「うわぁぁぁっ!?」

「ナツキッ!?」

「焦るな!円陣を組め!」

 

下半身を奪われ自由に動けなくなったホウセンカ。春奈はミスサザビーでそちらに向かわせようとするが、ノゾムがそれを制して指示を出す。

三人は互いに背中を向け合って円陣を組むと、周囲の警戒を続ける。

 

「何だ今の。オールレンジか?」

「あー、ノゾム。予想は間違ってはないけど、最悪な形で当たったっぽいよ……」

 

ヴァーチェヴァイオレットの視線の先には文字通りの巨影が存在していた。それはMSとして必要な人形としての要素『足』が排除されたMS『ジオング』に由来する100m級のMA……『ネオ・ジオング』である。

 

「ね、ネオ・ジオング……!?」

「な、何よアレっ!?」

「GPDにそれ持ってくるか普通!?」

「これだから金にモノ言わせれる大人は!!」

 

ナツキがその名を呟き、ガンダムに関しての知識の浅い春奈が常識人として反応し、ノゾムはGPDに持ってくる様な代物ではない超大型キットに戦慄し、紫音はそう安くはない高額品であるはずの代物を引っ提げてこれる大人への悪態をついた。

 

「ったくよォ!俺らで何とかするぞ!」

「ッ、えぇ、やるわよ!」

「私が真っ向からやってやる!」

 

ヴァーチェヴァイオレットがトランザムを発動して赤く輝かせると、GNビームバズーカをGNドライヴと連結させてビームを放つ。強力なビームだったが、Iフィールドがそれを阻んだ。

 

「何で……ッ!?」

 

最大火力である筈のバーストモードを防がれた紫音は動揺せざるを得なかった。

そこにネオ・ジオングのアームユニット兼優先式の大型ファンネルが挟み込むように伸ばされた。

 

「ヤバっ……!?」

 

大型ファンネルからメガ粒子砲が繰り出される。ヴァーチェヴァイオレットはGNフィールドを展開するがビームに耐えきれず、胴体を貫通した。

 

「ちくしょーっ!」

「紫音!チッ、このデカブツがよぉぉぉ!」

 

デルタシャープがウェイブライダー形態で飛び回って射撃を続けるが、Iフィールドがそれを阻んだ。

 

「やっぱ、接近して攻撃するしかねぇか……春奈!一緒に段幕を突破するぞ!」

「えぇ、お願い!」

 

デルタシャープがミスサザビーの方まで飛ぶと、ミスサザビーを乗せて大型ファンネルの段幕を避けながら接近のタイミングを窺っていた。

 

「タイミングが来たら一気に接近する。構えとけ」

「分かったわ……!」

 

段幕の中を掻い潜りながら飛ぶデルタシャープ。ネオ・ジオングの肩の大型メガ粒子砲が放たれたのを回避したと同時に、一気に接近した。

 

「仕掛けるぞッ!」

「えぇ!」

 

MS形態に変形したデルタシャープはビームサーベルを構え、ミスサザビーはスイープソードを構える。本体(シナンジュ)を倒せば勝てる。接近すれば容易にファンネルは使えないし、本体も固定されている為応戦も大きなハンデになるだろう。

しかし、デルタシャープのカメラにとある物が見えた。

 

「ッ、春奈、逃げろッ!」

「えっ……」

 

デルタシャープがミスサザビーを蹴り飛ばす。その直後、デルタシャープはサブアームに捕まれてしまった。

 

「コイツッ!」

 

左右から現れる大型ファンネル。デルタシャープはビームサーベルを横回転で投げて右のファンネルを斬ると、シールドからビーム刃を伸ばして左の方も投げ刺す。

しかし、真正面のシナンジュがウェポンコンテナから取り出したバズーカがデルタシャープを狙った。

 

「ッ、くそォッ!!」

 

バズーカの一撃がデルタシャープを破壊する。

その時、ミスサザビーが頭上から急降下してスイープソードを振り下ろす。

 

「やぁぁぁぁーーッ!?」

 

しかし、ミスサザビーの一振りが届く前にアームユニットがミスサザビーを掴んだ。シナンジュはハルユニットから抜け出すと、ビームアックスを連結してビームナギナタにする。そして、ミスサザビーの上半身を斬り飛ばした。

 

「そん、な……」

「負けたのか、俺ら……」

 

ヴァーチェヴァイオレット、デルタシャープ、ミスサザビーは全てコックピット部分を破壊されて撃墜判定にされた。三人が敗けたと確信したその時、ビーッ!とブザー音と共にアナウンスが流れた。

 

『タイムアップです。勝敗が決してない試合は十分後、1対1の代表戦を行います』

 

そのアナウンスが聞こえたノゾムはGPDのディスプレイを見る。ディスプレイにはまだ勝敗が決したと言う通知は来ておらず、まだ戦闘中と言う扱いだった。

 

「何で……」

「僕、だと思う」

 

疑問を持つ三人だったが、とある人物の声を聞いてすぐにハッと気づいて彼に視線を向けた。

 

「「「ナツキ!?」」」

「偶然だけど、生き残っちゃったみたい」

 

彼の手には達磨状態にされたホウセンカ……そして、ホウセンカから切り離されたと思わしき戦闘機『コアファイター』があった。

 

「そうか。コアファイターで離脱してたんだね!」

「無事で良かった……」

 

紫音がナツキのお陰で負けずに済んだと喜び、春奈はナツキが無事であった事に安堵を溢す。しかし、ノゾムの表情は険しいままだった。

 

「ナツキが生き残った所で、その状態で代表戦勝てるのかよ」

 

ノゾムの言う通り、三人が撃墜された以上、今戦えるのはナツキのみだった。そして、そのナツキが使うホウセンカも四肢が奪われ戦おうにも戦えない。

 

「そうじゃん……私ら、ここで終わり……?」

「そう、なるかもな」

 

紫音は絶望し、ノゾムも受け入れたくないが実質的な敗北の事実が覆らない事を受け入れざるを得ない事を悔しそうに認める。

 

「皆……」

 

春奈は諦めムードの紫音とノゾムを見て諦めたくはないが、諦めざるを得ない事を察して受け入れかけてしまう。

そんな三人を見たナツキはその表情を引き締めた。

 

「……春奈、ミスサザビーの下半身、使える?」

「え、えぇ……まさか!」

 

ナツキの問いに答えた春奈はナツキの意図を察すると、ナツキにミスサザビーの下半身を渡した。

ナツキは「ありがとう」と感謝の言葉を述べると、ホウセンカの下半身をミスサザビーに付け替える。

 

「リペア……するつもりか」

「うん。だって、折角僕達、挑戦しようって思えたんだよ?こんな所で諦めたくないじゃないか」

 

ノゾムがナツキのやりたい事……現地修復(その場凌ぎ)を行おうとしているのを気づいた。すると、紫音がナツキの元に歩んで腕のパーツとシールドを渡した。

 

「紫音……これって」

「ヴァーチェの外装を外してナドレサイズにした。これでバランス調整できるでしょ」

 

紫音に渡されたナドレの腕を受け取ったナツキはホウセンカに腕を取り付ける。

それを見ていたノゾムは拳を強く握ると、ナツキの元に歩んだ。

 

「おい、使え」

「ノゾム……!」

 

ノゾムが渡したのはデルタシャープのビームライフルとシールドだった。ナツキはそれを受け取ると、ホウセンカに持たせる。

 

「バックパックはどうするの?」

「実は、偶然持ってきてたんだ」

 

紫音の問いに答えながら、ナツキはとあるパーツを取り出す。それは、ホウセンカの原型……ゼフィランサスの宇宙用装備『フルバーニアン』のバックパックだった。

 

「何でそれだけ持ってきてんだよ」

「バックパックがなくなったらって時だけの保険だったから……」

「良いから早く付けて、挑むよ!」

 

ナツキは「うん」と頷くと、四季團の仲間達から借りたパーツで修復させていった。

 

***

 

観客席の方では遠くから修復作業を行っている四季團を零が見ていた。

 

「あの四人を見てると、ガンプラバトルを始めた頃を思い出すよ」

 

ふとヨウタが呟く。零は話しかけられてるのかと感じてヨウタを見るが、「独り言だ」と言って遠回しに気にしなくていいと伝える。

 

「負けたら壊れて、無我夢中で直して、また戦う。……でも、勝ち負けとか関係なくてただ『諦めたくない。もっと楽しみたい』って気持ちで一心不乱だったよ」

 

ヨウタの独り言を聞いていた零はふととある記憶がフラッシュバックする。とある病室で妹とガンプラを組んだ記憶……実際にはそんな事をしてはないし、本来存在する記憶ではない。だが、何故かそんな記憶が思い浮かんだ。

 

「なぁ、予想、今からでも変えていいぜ?どうする?」

「……いえ、変えません。根拠はないですけど、予想は当たる気がするんで」

 

ヨウタの問いに零は即とまではいかないが、すぐに答えた。

早く答えた零に対してヨウタは「そーか」と返事すると視線を四季團の方へと向けた。

 

***

 

『それでは、代表戦開始してください』

 

アナウンスと共に修復されたホウセンカにプラネットコーティングが施され、そのツインアイに光が灯った。

 

「えっと……ホウセンカ・リペア、行きます!!」

 

発進台からホウセンカ・リペアが再度宇宙フィールド内に突入する。反対側からは大型ファンネルを修理したネオ・ジオングが飛んできていた。

 

「腕を直してきたじゃん!?」

「腕を生やした程度で騒がないでよ!」

 

ネオジオングは大型ファンネルを六基全て発射させると、メガ粒子砲でホウセンカリペアを狙ってくる。

 

「避けて!」

「スラスターが沢山あるからッ!」

 

ミスサザビーのリアスカートにあるスラスターで加速、バックパックのバーニアで方向転換を行う事で回避行動を取る。

ホウセンカ・リペアは回避行動と共に大型ファンネルをビームライフルで撃ち抜いていく。

 

「まず一基!!」

 

ホウセンカ・リペアは爆発する大型ファンネルから離れながら次の大型ファンネルを狙う。

挟み込むように大型ファンネルが現れるが、ホウセンカ・リペアは片方の大型ファンネルに接近する。接近した大型ファンネルからメガ粒子砲が放たれるが、ホウセンカ・リペアはそれを回避する。放たれたメガ粒子は反対方向にいた大型ファンネルを破壊した。

 

「ふたつ、同時にっ!」

 

シールドのビーム刃が大型ファンネルを斬り裂き、破壊した。更に大型ファンネルが来るが、足のビーム刃で斬りつける。

 

「ここからは、仕掛ける!」

 

背部と腰のバーニアを吹かせると、一気にシナンジュを狙って駆け抜ける。大型ファンネルと肩部のメガ粒子砲を回避すると、ビームを繰り出す。しかし、距離が足りず、ビームはIフィールドに防がれた。

 

「距離が足りないッ。ヘタレちゃう要素は限りなく潰すしかないか!」

 

背後から大型ファンネルがホウセンカを掴もうと延びてくる。ホウセンカ・リペアはそれをスラスターの噴射で体を捻らせて回避を行うと、ライフルからロング・ビームサーベルを伸ばして大型ファンネルを斬り飛ばす。

 

「全部斬った。これでッ!」

 

今度こそ接近を仕掛けるホウセンカ・リペア。しかし、腰から延びたサブアームがホウセンカ・リペアの右足を掴んだ。それを狙ってシナンジュがバズーカ二丁を構えた。

 

「足を切って!」

「ごめんねェェェェェッ!!」

 

ホウセンカ・リペアはビームライフルで右足を溶断すると、加速を仕掛ける。シナンジュがバズーカを放つが、ホウセンカはそれをシールドで防いだ。

 

「これでぇぇぇぇぇ!!」

 

爆煙の中からシールドを持っていた左腕を失ったホウセンカ・リペアが飛んでくる。ホウセンカはビームライフルを捨ててビームサーベルを抜くと、シナンジュに向かって肉薄した。

シナンジュがビームナギナタを構えて応戦しようとする。ホウセンカはビームサーベルを投げると、腕をナギナタを持つ腕を斬り飛ばした。

 

「2本目のサーベルは、伊達じゃない!」

 

ホウセンカは2本目のビームサーベルをバックパックから引き抜くと、シナンジュの体に突き刺した。シナンジュをそのままネオ・ジオングに押さえ付けると、シナンジュはネオ・ジオングに誘爆させながら爆発した。

 

〈Battle Ended〉

〈Winner:Team1〉

 

電子音声で勝敗の結果が通知される。ナツキは呆然としていたが、そこにノゾムが肩を叩いた。

 

「やったじゃねぇかナツキ!」

「私達の勝ちーーー!」

「お疲れ様、ナツキ!」

 

ナツキに飛び付く三人。すると、観客席から拍手が沸き上がっていた。

 

「い、いつの間に?」

「他の試合が終わって、視線が集まってたのかもな」

「良いじゃん良いじゃん!私ら人気者だよ!」

「でも、これじゃあ私達、続けれそうにないわね」

 

春奈の視線には爆発に巻き込まれてボロボロになったホウセンカ・リペアだった。

 

「私らのガンプラ、全部ダメになっちゃったね」

「そうだな。でも、また直しゃ良いだろ」

 

ナツキが大破したホウセンカ・リペアは拾い上げる。紫音は残念そうにするが、ノゾムの方は諦めてはいない様子だった。

 

「何度壊れても作り直せばいい。俺達、ガンプラビルダーだぜ?」

「ノゾム……うん、そうだね!」

 

拍手の中たった一戦だけ、それも僅差での終わり方になったが、四人はそれでもとある思いを感じていた。

ーー『楽しかった』と。

 

***

 

拍手の中、零もまた拍手をしながら彼ら四人の勇姿を見届けていた。

 

「お、予想は()()してたか」

 

すると、いつの間にか席を離れていたヨウタが缶ジュースを片手に戻ってきた。

 

「いつの間に離れて……じゃなくて、はい。とても良い試合でした」

「そうか。ほら、巻き込んだお礼と、当てた褒美だ」

 

ヨウタは手に持っていた缶ジュースを零に手渡す。零は「ありがとうございます」と受け取った。

 

「それじゃ、俺も試合があるから後にさせてもらうぜ」

「はい。えっと、頑張ってください」

「おう、さんきゅ」

 

ヨウタはその場を後にしようとすると、携帯に電話が入った。

 

「あ?何だよ?……は?支える主を見つけた?彼女こそがエレガント?何言ってんだお前……っておい!切んなよ……」

 

何か変な会話をしながらその場を後にするヨウタの後ろ姿を見ると、零は缶ジュースの栓を開けながら観戦を続けるのだった。

 

***

 

予選が終わり、四季團四人は帰る為の駅へと向かっていた。

 

「折角勝てたのに一回戦止まりかぁ」

「仕方ないわよ。私達、ガンプラが壊れてもう戦えないんだし」

 

四人のガンプラは既に大破しており、継続する事は困難だった。故に四季團は2回戦にて途中棄権となってしまった。

 

「良いじゃん。最後の世界大会予選に相応しい思い出になったし」

「そうかもな」

 

紫音が参加賞のエントリーグレードのガンダムを片手にそう言うと、ノゾムも賛同した。

 

「世界大会は最後だけど、ガンプラバトルは終わらないはずだよ。これからもっと強くなろう!」

「そうね。私達四人……四季團ならやれるわ!」

 

頷き合いながら前に進む四季團。彼らはこれからも四人で進んでいこうと心に決めていた。




どうだったでしょうか。

まずはゲスト出演関連ですね。
今回は青いカンテラさんのサイドダイバーズメモリーからクオンちゃんのリアル、夜ノ森零ちゃん(昔の姿)を出させていただきました〜!!ありがとうございます!!!
ハーメルンのビルドダイバーズ2次小説を読むなら必ず触れるであろう作品ですが、掲示板形式と普通の小説形式の2つを両方楽しめる小説のお子様ランチみたいな作品でとても入りやすい作品ではないでしょうか。
零ちゃんのダイバー姿、クオンちゃんはその作品の中でもダントツの人気っぷりですね。皆もクオンチャンカワイイヤッター!と叫びなさい。
自分もあの作品にウチの作品のキャラ達の名前が出るくらい人気になりたいなーなんて思いつつ目標の1つとして頑張ってます。

そして、過去編のGPDの話はここで終わり、次からは幼馴染4人が何故散らばる事になったのか……そんな悲劇までのカウントダウンを描いていこうと思っています。

最後に、良ければお気に入り登録、短めでもいいので感想よろしくお願いします!!

では、次回予告へ……


次回予告

突如として告げられる四季團解散の危機。

これからも一緒にいたいと願う4人は新たなステージへと足を踏み入れる。

それは、様々な可能性を秘めた新たなガンプラバトルだった。

次回、電子の中で煌めいて
お楽しみに……


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