不思議な美少年くんに、僕はなる! (猫峰にゃんこ)
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プロローグ
第一話 誕生


 初めまして、猫峰にゃんこです。
 この作品を開いて下さりありがとうございます。
 正直、小説を書くのは初めてなので誤字脱字等は気づいたら報告をして下さると嬉しいです。


 やぁ、初めまして、みんな大好き僕が来たよ。

 

 え、誰だかわからない?やだなぁ『気紛れ』で有名な僕だよ?

 

 それでも分からないの?はぁ……仕方ないなぁ、じゃあ僕がこれまで生きてきた10年間の、短い『昔話』でも少ししようか。

 

 

◆◆◆

 

 

 

「オンギャァァァァァ!!!」

 

 幼子の泣き声が、生命の誕生する音が室内に響き渡る。

 そこには両親と思われる男女の二人と、助産婦と思われる一人の女性が、幼子のことを囲み、食い入るように見つめていた。

 

「若旦那様!産まれました!元気な男の子です!」

 

「おお!そうか男の子か!よく頑張ったぞ渚紗!!」

 

「……っええ……本当に…良かったわ……」

 

 そこに居る皆が、その子の誕生に嬉しさを滲ませ、喜びを露わにしていた。そんな中、当事者である幼子は……

 

(え、あ……?何、この人たち………?危ない人?え、ああ、転生かぁ。そうですかそうですか、テンプレですね。あ、僕寝るんであとよろしくお願いします)

 

 従来の図太さでふて寝を決めていた。

 

 

◆◆◆

 

 

 どうも、あれから5歳になりました。神風(かみかぜ) (めぐる)です。

 うん、それはもうしっかりと転生してたよ。

 しかも異世界転生かと思ったら、まさかの生まれたのが昭和23年の日本なんだよね。

 もう本当にびっくりしたよ。

 まあ偶に世界バグってるから、もしかしたら僕の知ってる世界じゃないのかもしれないけど。

 

 え、何がバグってるかって?いやだって、普通人間は空飛んだり、雲吹き飛ばしたり、大怪我して次の日にはピンピンしてるみたいなことなでしょ?あったとしてもそれ人間じゃないよね。

 まあうちの両親のことなんだけど。

 え、僕の親は人間じゃないの?僕人外なの?

 まぁそれは追々考えればいいか。今考えるの面倒くさいし。

 

「ほーら、巡?あんまり目開けてると水が目に入るよ?」

 

 え、僕が今何してるのかって?普通に母上とお風呂に入っていますが何か?

 ん、なんで受話器なんて持ってんの?なに?変態がいるから警察に電話?

いや、仮に僕のことを言ってるのならちょっと待ってほしいんだけど、僕今五歳よ?

 そりゃ精神年齢は二十歳超えてるけど五歳の体で、しかも実の親相手に欲情するわけないじゃない。

 

 それに僕も嫌がったよ?でもさ、母上が『恥ずかしがってるの?良いのよ、まだ子供なんだから』って聞きゃしないんだよ……

 いやね?確かに言ってることは正しいんだよ?でもさ、

 

「そしたら服脱ごうね〜」

 

 とか

 

「ほら、母さんが体洗っちゃうから早く此処に座って?」

 

 とか、もう僕の心折りにきてるよね……?

 僕まだ子供だし性欲はないけど、羞恥心はしっかりあるのよ。それでこれだからね。本当生き地獄だったよ。

 

 え?もう5年もやってればいい加減慣れるだろ?これでも慣れたんだよ?

 0歳とかの頃はもっと酷かった……お風呂どころかおしめの交換までやってもらって……いや、仕方のないことだとはわかってるんだけどね。やっぱり割り切れないところは多少あってさ……

 

 うっ、思い出したくもない記憶が……

 

「……もうお婿にいけない……」

 

「あら、どうしたの?そんな顔して。可愛い顔が台無しよ?」

 

 誰のせいでしょう?あ、誰かのせいではないですね。

 オウ、ジーザス。神は死んだ!

 

 

◆◆◆

 

 

 やぁ、みんな。7歳になった巡だよ。

 

 あれから特に何事も無く、無事成長しております。

 

 父上はめっちゃ熱血。凄くうるさい。『ガハハハハハ!!』って笑う人。けどめっちゃ優しい。

 母上はめっちゃ優しいけど天然。何も無い所で転ぶ人。『なんで魚は水から出ないのかしらね?お肌ふやけないのかしら?』発言をして、其れを聞いていた僕は思わず宇宙を背負った。えら呼吸は知ってるよね?

 

 そして何より、父上が気力と妖力、母上が妖力と魔力を使えるのだ。

 

 もうね、此の二人リアル大乱闘出来るんだよね。此の前いかにもお命頂戴しますよって人が来たんだけど、もうやばかったね。え?何がやばいって?だってねぇ……余波で山の表面削れるって何?正直ちょっとちびったよ……

 

 そんなクセ強両親から生まれた僕だが、まあ普通ではなく、妖力、気力、魔力の類いは全て使えなかったが、摩訶不思議なよくわからん力使えるようなのだ。

 

 此れに関しては父上も母上もよくわからんらしい。が、少なくとも魔力や気力、妖力ではないことを、父上と母上が太鼓判を押している。

 

 つまりね?此の力によるけど、もしかしたら僕の夢である『不思議な美少年君』になれるかもしれないのさ!!

 

 もうね、興奮したよね。年甲斐もなく叫んだもん。

 

 だってあれだよ?気紛れに人を助けたり、意味深な発言したり、危ないもの扱ってたり出来るんだよ?やばくない?男の夢でしょ!

 

 まあ僕の力がゴリゴリの戦闘系だったら最強とかになるのもいいかもね?

 

 因みに此の力を何に使うのかを親に聞かれて「(気紛れに)人を助けたり、僕にしかできないこととかしたいんだ!」と答えたら、親バカである両親は「流石俺の息子だな!ガハハハハハ!!」「そうねぇ、本当に流石だわ。此れならいつかお友達も出来るわよ。」と凄く褒めて……褒めて?くれた。若干一名あれだが。

 

 まあ何はともあれ今世の夢を見つけましたね。目指せ、不思議さん!

 

 え?そんな僕が今何してるのか?其れ聞く?ねえ其れ聞いちゃう?

 

 今はねぇ〜?(ょぅι゛ょヴォイス)

 

 

「ガハハハハハ!!街に降りるのも久しいのう!」

 

「そうですねぇ。いつの間にこんなに発展したのかしら?みんな頑張ったのねぇ」

 

 

 父上と母上と僕でお出かけに来ています!

 

 なぁ?健全だろぉ?でもなぁ?何処に来てると思うぅ?其れはねぇ?

 

 

「お?着いたな。此処だ」

 

「あらあら、懐かしいわ。其れにしても、此処だけは変わらないのねぇ」

 

「うむ。しかし、相も変わらずかび臭いのう。凰蘭(ここ)は」

 

 

 如何にもあやかしが出ますよ〜な雰囲気を持つ店に来ています!

 

 ヒェ……ユウレイコワイ……((((;゚Д゚))))ガクブル

 

 

「ねぇ、母上?本当にここに入るの……?」

 

「あら?大丈夫よ。此処に居る人は母さんの知り合いだから」

 

「ほ、本当……?」

 

 

 嘘だったら許さんぞワレェェェ!!

 

 

「ガハハハハハ!!まだまだ子供よのう!だが其処も愛いわ!」

 

「いざとなったら父上が守ってね……?」

 

「ッ!?………ああ!任せよ!巡には指一本触れさせん!」

 

 

 本当に頼むよ……?まだ死にたくないしね……

 

 あ、因みに此の世界には幽霊とか妖魔とか獣魔とかが蔓延っていたりする。要するに簡単に死ぬ。やばい。

 

 だから僕はこういう場所が苦手なのである。もう大っ嫌い。自分が死ぬのも親しい人が死ぬのも嫌なのだ。

 

 そんなビビって僕が尻込みをしている間に、いつの間にか父上は僕の横から、巨大なボロボロの扉の目の前に移動していた。

 

 そして其のまま扉に足の裏を当てると、勢いよく扉を開いた。というか蹴り飛ばした。

 

 

「たのも〜!!」

 

 

 ん?

 

 

「ち、父上!?良いんですか、扉壊して!?」

 

「ガハハハハハ!!大丈夫だ!奴は旧友であるゆえ、そんな些細なことに一々目くじらを立てんわ!」

 

「い、いや、でも……」

 

「そうよ、ダメでしょう?貴方?」

 

 

 おお!流石(比較的)常識人!もっと、もっと言って!!

 

 

「巡の前で。巡が驚くわよ?」

 

 

 ちっがう!そうじゃない!そうじゃないんだよ母上!!

 

 

「おお!そうだな!確かに其の通りだ!今度からはもっと優しく開くとしよう!」

 

「ええ、そうしてくださいな。ねぇ?巡」

 

「ぇ、あ、ウン……ソウダネ………(濁った目)」

 

 

 残念、此処には僕の救いは無い様です。

 

 

「大丈夫じゃねぇわ。来る度来る度扉蹴り壊すのやめろって何回も言ってるだろ」

 

 

 両親の破天荒さに僕が軽く絶望していると、凛とした声が、扉の奥から響いてきた。

 

 其方に顔を向けると、黒髪翠目の美男が、柱に寄り掛かりながら此方に目を向け、其の整った顔を顰めて立っていた。

 

 え?何?めっちゃイケメン出てきたんですけど。誰、此の人呼んだの?

 

 

「おお!久しいのう雫玖(しずく)よ!息災で何よりだ!」

 

「久しぶりね、雫玖。今日はよろしく頼むわ」

 

「お前ら、人にもの頼む態度じゃ無いだろ……毎度いきなり手紙飛ばして来やがって………ほんとお前ら…………」

 

 

 ……何故だろう、さっきまでの凄く凛としたカッコいいお兄さんというイメージから、一気に苦労人という僕と同類の人種に見えてきたよ。

 

 

「……おい、其奴は誰だ。例の子か?」

 

「おお、そうだった!巡の名前は巡で、俺らの息子だ!」

 

「可愛いでしょう?流石は私と龍我さんの子供だわ」

 

「………えっと、初めまして。神風巡です。いつも父上と母上が本当にごめんなさい……」

 

 

 いや、すいません……言っても聞かないんです……本当ごめんなさい……

 

 

「…………いや、いい。巡と言ったな、よろしく頼む。其れにしても、この子がお前らの子か。何故お前らからこんなに礼儀正しい子が産まれる?正直もっと五月蝿いか、ぼーっとしてるような子が来るのを想像してたぞ」

 

「そうだろう!巡は可愛いからな!其れに、頭も良く運動も出来る。正しく俺と渚紗の子供だ!」

 

「其れに凄いのよ?巡は囲碁や将棋も強いの。ルールだってすぐ理解して覚えたし、記憶力もいいのよ」

 

「嗚呼、そうか、巡。お前も苦労しているのだな……」

 

「い、いえ、別に苦労という程では……僕は母上も父上も好きですから……」

 

「おお!俺も渚紗も巡のことが大好きだぞ!」

 

「ええ、そうよ。私も龍我さんも巡のことは大好きよ?」

 

 

 嗚呼!やめて!そんな憐れみの目で此方を見ないで!母上も父上も良い人ではあるから!良い人ではあるから!

 

 

「……まあ、いい。其れで?久々に顔を出すとは何の用だ?わざわざ無駄話をしに来た訳では無いだろ?」

 

「うむ!用はある!其れも重大な用がな!」

 

「……其れじゃ、さっさと上がれ。こっちは暇じゃないんだ。さっさと用事を済ませて帰れ」

 

「そうだな!では、失礼する!」

 

「失礼します」

 

「し、失礼します」

 

 

 あの、僕何も聞かされてないんですけど。重大な用ってなんですかね?

 

 

◆◆◆

 

 

「其れで?何の用だ?要件を言え」

 

「うむ!実は、巡が有している『謎の力』について鑑定をして欲しいのだ!」

 

 

 ああ、あれね?あの妖力にも気力にも魔力にも属さないよくわからん力ね?あ、此の人わかるの?って言うか鑑定?何其れ?どゆこと?

 

 

「父上、鑑定って?」

 

「おい、お前まだ此処が何処だか言ってないのかよ」

 

「おお、そうだった!うっかりしていたわ!此処は鑑定屋『凰蘭(おうらん)』。そう有名では無いが、腕だけで言えば日本一の店だ!」

 

 

 はぇ〜そうなんだ。

 

 

「腕『だけ』は余計だ」

 

「でもまぁ、もっと愛想良くして、お店の場所を人通りの多い場所に移動すれば、少なくとも名店凰蘭として名を挙げられると思うけどねぇ」

 

「俺は別に、誰彼構わず店に入れる気はねぇよ。俺が相手すんのはある程度の礼を弁えてて、俺が気に入った奴だけだ」

 

「ほう、つまり俺達は雫玖の御眼鏡に適ったわけか!ガハハハハハ!良かった良かった!」

 

「あ?調子乗んじゃねぇぞ?」

 

「ふふふ。そうねぇ、雫玖ちゃんは素直じゃないものねぇ?」

 

「うるせぇ。嗚呼、クソ。言うんじゃなかった……」

 

 

 ……なんか、良いよね。こういうやり取り。ほっこりするよねぇ。僕前世には別に親友と呼べる程仲がいい人いなかったからなぁ〜

 

 

「で?巡が持ってる『謎の力』の鑑定、だっけか?お前らだったら全部持ってるんだから解るだろ。其れとも何か?新種の力だとでも言うのか?」

 

「うむ、俺らはそう思うておる。しかし、確信はない。何かは感じるが、其の何かが解らん故、ここに来た」

 

「少なくとも禍々しいものではなさそうなんだけどねぇ……餅は餅屋って言うでしょ?だから雫玖ちゃんの所に来たのよ」

 

「……はぁ………まあ、今に始まったことじゃないか……いいだろう。付いてこい」

 

 

 ……急にスイッチ入ったなぁ。そういえば有能マンだったよね…‥なんか色々残念で忘れてたよ……

 

 

◆◆◆

 

 

 其処は、不思議な所だった。

 

 明るくもなく、暗くもない、そんな場所。

 

 壁からは淡い光を纏った水晶の様なものが所々に突出し、辺りを照らしている。

 

 

「此処は、人の本質を覗く場所。まあ、人の鑑定の仕事が舞い込んで来た時の仕事場だ」

 

 

 まじすか。めっちゃ綺麗なんですけど……

 でもなんだろ?此の光が、もの凄く落ち着く。

 

 廊下のように少し長い道は、中心に透明な台のある、八畳位の大きさの部屋まで続いていた。

 

 雫玖さんは、透明な台を挟んで自分達と対面の位置に移動し、手を此方に差し出してきた。

 

 

「巡、手こっちに出せ。」

 

 

 言われた通りに僕も手を差し出すと、手を握られ、其のまま台の上に置かれた。

 

 

「其れじゃあ始めるぞ。巡、幾らビビっても絶対台上から手離すなよ。死ぬぞ」

 

 

 ……ん?今結構やばいこと言わなかった?

 

 

「あの、雫玖さん。死ぬってどういう───」

 

 

 ことですか。と、続くはずの言葉は次の瞬間、台や水晶の様なものから発生した強烈な閃光によってかき消された。

 

 目も眩むような閃光は、長い様にも短い様にも感じられる時間、衰えることは無く、辺りを眩く照らしていた。

 

 其の後、徐々に光の激しさは鳴りを潜め、やがて元の静かな空間に戻っていた。

 

 ……やっばぁい。めっちゃびっくりした……思わず手を引っ込めようとしちゃったよね。まあ雫玖さんが手を握ってくれてたから離さなかったけどさ。せめて説明が欲しかった……

 

 

「どうだ?何か解ったか雫玖?」

 

 

 僕がそんな風に思い耽ていると、父上が先に雫玖さんに結果を訪ねていた。其のことにハッとし、雫玖さんに顔を向けると、さっきまでと変わらず、凛とした表情で、

 

 

「巡。お前、神と人間の混血だぞ」

 

 

と伝えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………はい?

 

 

 




神風(かみかぜ) (めぐる)
 本作主人公。人間ではなく半神半人。
 性格は気紛れで真面目。但し嫌いな人、気に入らない人にはもの凄く当たりが強い。
 頭がキレて、運動も同年代の中では出来る。さらに、人間じゃない為体力という概念がない。夢ができて、その夢に向かってこれから努力する。実は精神が身体に結構引っ張られてる。本人は気づいてない。
 容姿は銀髪というより雪の様な白銀色の髪に、ルビーのように輝く緋い瞳の絶世の美少年。身長は七歳の頃で100cmと、昭和三十年の同年代の子と比べると少し小さい。
「不思議な美少年目指して頑張ります!」

神風(かみかぜ) 龍我(りゅうが)
 主人公の父親。普通ではない人間
 性格は大雑把で熱血。「ガハハハハハ!!」と笑う。好きなものは渚沙と巡と雫玖とその他数人。嫌いなものは渚沙と同じく実家。実家の格式は龍我の実家の方が高い。というか頂点。駆け落ち済み。歴史上振り返っても五人しか居ない力の複数持ちの一人。めっちゃ珍しい。超強い。(因みに巡は複数持ちが珍しいことを知らない)
 容姿はまるでカラスの濡れた翼以上に美しい黒髪にルビーのように輝く緋い瞳の絶世の美男。
巡が可愛すぎて毎日幸せ。つまり親バカ。さすめぐが止まらない。
「流石は俺と渚紗の子だ!ガハハハハハ!!」

神風(かみかぜ) 渚紗(なぎさ)
 主人公の母親。普通じゃない人間
 性格は天然で抜けている。雰囲気はしっかりとしているけど何も無い所で転ぶ。好きなものは巡と龍我と雫玖とその他数人。嫌いなものは龍我と同じく実家。実家の格式は渚沙の実家の方が低い。駆け落ち済み。歴史上振り返っても五人しか居ない力の複数持ちの一人。めっちゃ珍しい。超強い。(因みに巡は複数持ちg(ry)
 容姿は銀髪というより雪の様な白銀色の髪に、まるで空の様に綺麗な蒼い瞳の前世の美女。
 巡が可愛すぎて毎日幸せ。つまり親バカ。さすめぐが止まらない。
「ふふふ、流石は龍我さんと私の子供ね」

夜闇(よやみ) 雫玖(しずく)
 主人公の両親の親友。普通ではない人間。鑑定屋『凰蘭』の店主。
 性格はクールでツンツンしてる。でも結構な頻度でデレる。つまりツンデレとクーデレを両立している。自由奔放で、気に入った人にしか心を開かない。龍我と渚沙のストッパー。常識人枠。因みにこの人も実家は格式が高い。渚沙の実家と同レベル。勝手に抜け出してきた。目が特殊で、物の本質を捉えることが出来る。が、余りにも情報量が多い為、補助具(あの透明な台と、周りの水晶の様なもの)が必須。眼を生き物に使う場合、相手にもダメージが行く為、必ず相手にも補助具を使わせる。簡易的な補助具もあるが、其方を使う場合は多少脳に負担がかかる為余り使わない。妖力がつかえる。普通に強い。
 容姿は緑の黒髪に、エメラルドの様に輝く翠の瞳の美男。主人公の両親に比べるとそこまででは無いが、それでも充分なイケメン。
 マイペースな龍我と、同じくマイペースな渚沙の息子である巡には若干憐れみの感情を向けている。其れにしても巡がしっかりしてるのがちょっとびっくり。
「またか……はぁ、仕方ねぇなぁ」

鑑定屋『凰蘭』
 主に物や人の鑑定、魔具、妖具、霊具などの買い取り、呪具、想具などの引き受けをやっている。買い取ったり、引き受けた物は、危険性が比較的無いと判断すれば、売却する。ただし、危険な物と判断すれば、宝物庫に封印する。


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第二話 神様(笑)



 遅くなってすいません。

 違うんです……今回めっちゃ設定とか考えるのに時間がかかったんです……自分設定厨なもので……
後半急ぎ足で書いたので誤字脱字や「あれれ〜おっかしいぞ〜」と、思った場所などが有れば是非、報告よろしくお願いします。
後、出来ればでいいのですがコメントも宜しくお願いします。自分コメント欲しさにやっていると言っても過言では無いので……




 

 不思議な雰囲気の仕事場から元の客間に戻ってきた僕達は、雫玖さんの『巡、お前人間と神の混血だぞ』発言についての概要を問い質した。

 

 

「どういうことだ?俺と渚紗はどちらも神ではないぞ?抑、神とはなんだ?其の様なものが、此の世に存在するのか?」

 

 確かに、僕が半分神様なら父上か母上が神様じゃないとおかしいよね?そこんとこどうなのよ雫玖くん?(混乱)

 

「ああ。まず、巡には確実に何かが混ざっている。しかし、此の混ざり方は親のどちらかの種族に引っ張られたのでは無く、魂が人では無い何かの性質を持ち、其れに肉体が引っ張られる形で肉体の格が変異する、又は先祖返りで先祖代々の血が濃くなり過去に採り入れた血によって変異するという二つの例に酷似している。お前らの家が神の血を採り入れた等は迷いごとの類いでも聞いたことが無いため、まあ十中八九魂に引っ張られていると仮定出来る」

 

「そして俺が神だと判断した理由は、凡そ五年程前に『ナニカ』を発する護符を回収して欲しいと地方から依頼が来てな。回収に行くと、其れは中に薄い木の板が入っている如何にも普通の御守りの様なものだった。が、其の木の板から確かに『ナニカ』が発せられていることも確認出来たため、とりあえず軽くその場で視たんだ。だが、其れは俺の眼でもそ(・・・・・・)こに(・・)存在するということ(・・・・・・・・・・)以外(・・)全く何も分からなか(・・・・・・・・・)った(・・)

 

「ッ!?其れは本当か?」

 

「ああ。で、其の正体不明の護符を後日、彼処で覗いたんだが、まるで何処かに結界でも貼っているかの様な波長の『ナニカ』が確認できた。しかも、其の『ナニカ』は幾ら印符や結界、呪縛で縛っても消えるどころか弱くなることもなかった。そんな封印すら出来ない妙なものをこんな危険な物が多いところに置く訳にはいなかくてな。『ナニカ』に関する文献などを隈無く探したんだよ。そしたら其の村に置いてあった文献のなかに、妙な書物を見つけてな」

 

 

 そう言って雫玖さんは、いつの間にか手に持っていたボロボロの書物のようなものを開いて、此方に差し出してきた。

 

 其の書物の様なものを覗くと、昔の、まるで蛇の様な文字がずらっと並んでいた。

 

 

「この文献には題名がなく、ここ以外には何も書いていない」

 

 

 え?此れこんなにページあるのに此処以外全部白紙なの?勿体無くない?などと、的外れなことを巡は思ったが、真剣な雰囲気の中でそんなことを言い出せるはずもなく、只々黙って読めもしない文字をひたすら眺めていた。

 

 雫玖は此方に向けた書物の一行目の一番上の文字を指差し、口を開いた。

 

 

「そしてここには、『今は昔、八岐大蛇という大妖怪が居たそうな。八岐大蛇は幾人もの人間を喰い殺し、数多くの村を壊滅させた。八岐大蛇を恐れた人々は、その地で信仰されている神に救いを求めた。

 

 その地の神は、人々の想いに答え、クガクという名でその地に降臨した。人々はクガクに助けを乞い、八岐大蛇の討伐を願った。クガクは人々の想いに答え、八岐大蛇に闘いを挑んだ。三日三晩続いた闘いは、クガクが自身の存在を贄に八岐大蛇の八つの首と、八つの尾、そして胴体をそれぞれに分け、封印する事で決着した。

 

 人々は、八岐大蛇が二度とこの世に顕現しないように、各地に欠片を点在させたそうな』と、そう書かれている。そして、此の書には例の護符が置かれていた地に一つの欠片が眠っているとも書いてある。つまり、この書に書いてある事が真実であるとするならば、この木の板はクガクが封印を施した17の体の内のどれかの欠片、という事だろう。そして、此の『ナニカ』が神の力であるとすると、俺の眼がなにも映さなかった事にも説明は付く。人は所詮人でしかないからな。人智を超えたものに、適うはずも無い」

 

 

 ……なんかめっちゃ話長くありません?雫玖さんめっちゃ喋るじゃん。いつ息継ぎしてんの?

 

 

「……ふむ、其の護符から発せられてる『ナニカ』が、巡の『摩訶不思議な力』と同類の物だと、そういうことか」

 

「ああ。だが、護符と比べると巡の方が随分と濃かったな」

 

「あら?そうなの?」

 

「ああ、憖巡は護符みたいに『ナニカ』を発している訳では無いが、それでも本質的なものは随分と濃かったぞ」

 

「一応、そう危険なものでは無いのだな?」

 

「少なくとも俺はそう思っている」

 

「そうかそうか!では問題ないな!いやぁ、良かった良かった!」

 

「そうねぇ、良かったわ。ね?巡。」

 

「あ、うん。その、雫玖さん、ありがとうございました」

 

「ん?ああ、別に、どうせ暇だったしな」

 

 あれ?最初忙しいって言ってませんでしたっけ?あ、分かりましたデレですね分かります。

 

「しかし、巡は神の子だったとは。流石、俺と渚紗の子だな!ガハハハハハ!!」

「本当、巡は凄いわ」

 

 っ!?気、急にやめてぇ!!恥ずかしくて死ねるぅ!!目の前に、目の前に雫玖さん居るからぁ!!

 

「で?どうすんだ?此のまま帰んのか?」

 

 あ、今サラッと流しましたね。流石父上と母上の親友をやっているだけのことはある。

 

「ふむ、そういえば例の護符はどうした?元の地に戻したのか?」

 

「いや、今は俺が預かっている。此れまで預かってきたものとそう変わらんことが分かったからな。見ていくか?」

 

「ああ、そうだな!ぜひ見せて欲しい!一目見てみたいのでな!」

 

「あら、そうねぇ、確かに見てみたいわ」

 

「……はぁ。んじゃ、此処で待ってろ」

 

 

 雫玖さんは、そう一言残し上り口の反対にある襖の向こうに消えていった。

 

 ……え?結構僕の力って何なの?戦闘系なの?其れとも補助系なの?え?そんなに焦るな?ああ、さいですか……(察し)

 

 

◆◆◆

 

 

「此れだ」

 

 

 其処に置かれた護符は、確かに話に聞いた通りの、何の変哲も無い御守りの様な物だった。

 

「ほう、此れが……確かに巡こと同じようなものを感じるな!」

 

「ええ。どう巡?何か感じる?」

 

 

 何故だろう?此の御守りを見ていると、何か、引っ張られる様な、変な感じがする。此れはまるで……

 

 

「……呼ばれてる?」

 

「?巡、何か言ったか?」

 

 

 そう口に出した瞬間、其れに触れたい、其れに会いたい(・・・・・・・)と、僕が僕でなくなったかの様な欲望が、濁流のように溢れ出してきた。

 

 

「おい巡、危ねぇから其れには触んな。何かあってからじゃ───ッ!!」

 

 

 雫玖さんの忠告を無視し、欲望のままに僕が其の御守りに触れると突然、強い衝撃と強烈な破裂音が、辺りに響いた。

 

 其の衝撃を一般人の僕が一番近くで全身に浴びて、無事であるはずがなかった。

 

 音が籠り、意識が遠のく。

 

 思考がまとまらず、為されるがままに落ちていく僕の耳に、微かに聞こえた声。

 

『ほぉ、珍しいね。いいよ。歓迎しよう、混ざり(同族)よ』

 

 一度聞くだけで、心の奥底から落ち着く其の声を聞きながら、僕の意識は完全に暗闇に落ちていた。

 

 

◆◆◆

 

 

 目が覚めると、僕の目の前に広がっていたのは終わりの見えない白だった。

 足元には赤、桃、黄、橙、そして白の、五つ色の彼岸花が点々と美しく咲き誇り、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

 え?何此処?父上母上渚沙さんは何処へ?

 

「ようこそ、私の世界へ。歓迎しよう、同族よ」

 

 僕が混乱し、オロオロと慌てていると、背後から優しい声色で、声がかけられた。

 

 ……あれ?なんか既視感。

 

「何方ですか?」

 

 おそらく僕の後ろにいるだろう其の人に声をかけながら、僕は振り返った。

 

「……驚きました。随分と可愛いお姿をしてるんですね」

 

 其処にいたのは、紫と黄の瞳を持ち、その背景と同化する程に真っ白な毛並みを持つ猫だった。

 

 …………なんで猫?

 

「貴方は誰で、ここは何処でしょう?僕はどうすれば此処から出られますか?」

 

 少し面食らったが、今欲しい情報を早口で捲し立てながら問う。

 

 すると猫は、其の分かりづらい表情を歪ませ、小さく笑い、応えた。

 

「ふふ、面白い子だね、君は。いいよ、君の疑問に答えよう。まず私が誰かだったかな?私はクガク。かつて八岐大蛇に挑み、無様に負けた一介の神さ。で、此処は私の神域。まあ住居みたいな物かな?そして君がここから出る方法は、私の後ろの方にある現世(彼処)神域(此方)を繋ぐ門から出ればいい。」

 

「待ってください。貴方がクガクですか?」

 

「おや?ひょっとすると私の名前を聞いたことがあるのかい?そこまで有名では無かった筈なんだけど……嗚呼、成程。君はあの書を読んだのか」

 

「……僕読んだなんて言いましたっけ」

 

「まあ此れでも神様だからね。全能では無いけど万能ではあるんだよ?」

 

「いや、神様でも人の頭の中除くのは良くないと思います。其れと、自分で自分に様付けるの虚しくないんですか?」

 

 いや、此の世の中にもプライバシーの権利ってもんがあるんですよ。あ、まだ此の世界には無いか。其れでもやめてください。

 

 そう、素直に其の場で感じたことを口に出すと、数秒キョトンとした顔を見せた後に、堪え切れなくなったのか、大笑いを始めた。

 

 えぇ……ちょっと怖いんですけど……(引)

 

 そんな僕の心情を無視し、一頻り笑うと、神(仮)は目尻に涙を貯めた顔を此方に向けた。

 

「はぁ〜おっかし。君本当に面白いね、最高だよ。でも私は神(仮)ではありません。減点だね」

 

「だから人の心勝手に除くんじゃねぇんですよ」

 

 何度言えばわかるんですかね此の神(笑)は。今貴方の評価最低ですからね?

 

「ふふ、其れは大変だ。ゴマでもすった方がいいかな?」

 

「止めてください。想像するだけで鳥肌が……」

 

「おや?良いのかい?其れなら、そろそろ本題に入ろうか」

 

「え、いや、もう帰らしてもらっても」

 

「君には私の後任を頼みたいんだ。まあ、単刀直入に言うと僕の尻拭いだね?」

 

「いや聞けよ」

 

 無視すんなし。器小さいなぁ。神様(笑)でしょう?

 

「全部聞こえてるからね?」

「わざとですよ」

 

 これだから神(笑)は。

 

「ふふ、其れで、私の後任をやって貰う君にはまず始めに、『神気』と『神威』の制御と発動、そして応用まで最低でもやって貰うよ」

 

「待ってください。僕一言もやるなんて言ってませんよね?」

 

「ふむ、まあやらなくてもいいけど、其の場合君の父上と母上は死ぬよ?」

 

 

 ………其れはまた、すごいこと言ってくれるなこの神(笑)は。

 

 

「どういうことですか。一から全て説明してください」

 

「まあ簡単な話、後5~10年位で私の力が完全に消滅するんだよね。そうすると私が貼った結界や封印は全て消えて無くなる。この意味が分からない君じゃないでしょ?」

 

「……八岐大蛇が復活するってことですか。でも其れに父上と母上が負けるとは思いませんが?」

 

 なんてったってあの父上母上だよ?負ける姿が想像できないんですが。

 

「……ふむ、確かに君の両親は素晴らしい潜在能力を秘めているね。もしかしたら人間という枠組みをもう超えてしまっているかもしれない。だが、其れでも八岐大蛇(やつ)には勝てないよ」

 

「根拠は?」

 

「八岐大蛇の厄介なところは恐ろしい程の耐久性と不死性でね。まず、神威か神気を纏った打撃か、神気が籠った武器による攻撃しか、八岐大蛇の持つ鱗に阻まれて効かない。しかも奴は16の頭と尾を同時に消し飛ばしても死ななかった。生半可な攻撃等はまず意味が無いね」

 

「……其れを封印出来た貴方は何なんですか?化け物ですか?」

 

「いや、神だね」

 

「ああ、そうですか」

 

「ふふ、まあ、君の両親が絶対に八岐大蛇に適わない理由はこの辺だね。君の両親は確かに人間を超越してるけど、決して神ではないからさ」

 

 ……困った。これは、本当に僕が頑張らないといけない感じなのか。ならば、

 

「一つ、条件があります」

 

「ふむ、言ってごらん?」

 

 わざわざ言わなくても分かるだろうに。この腹黒神は。

 

「まあ、この際僕にしか出来ないこと、ということで今は納得します。ですが、一旦帰してください。父上や母上に色々と説明しないといけないので」

 

「ああ、勿論。ただ、私が大丈夫だと判断する迄はには此方で過ごしてもらうことにはなるよ?」

 

「は?何故ですか?」

 

「君を神通力などに慣らさないといけないからね。今の君はまるで巨大タンクに繋がってはいるが、出口が凍ってしまったがために動かず、水の供給ができない水道だ。其れを少しずつ外側から溶かしていくために、此処に居てもらう必要が有るんだよ」

 

 ふざけんじゃねぇですよ、本当。

 

「……分かりました。ですが、僕の両親への説明は貴方がして下さいね」

 

「いや、私は此処から出られない………いや、うん。わかった。説明は私がしよう。只、君の身体を借りてもいいかい?」

 

「……依り代にでもするんですか?変な事したら殺しますよ?」

 

「しないよ。それじゃ、ひとまず君の両親に『巡君を僕に下さい!』とでも言いに行こうか」

 

「なんで僕の名前知ってるんですか。其れに、なんで其のネタ知ってるんですか」

 

「ん?勿論君の頭の中を覗いたからだけど?」

 

「……やっぱり受けたの間違いだったかなぁ……?」

 

「大丈夫。私に任せなさい」

 

 不安でしかない……

 

 僕はそんな爆弾を抱え、凰蘭に戻る為に歩き出した。

 

 




クガク
 主人公の師匠ポジ。神様。
 今の見た目はものすごく可愛らしいぬこ様だが、本来の姿は▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉
▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉。
 性格は優しいが、気に入ったものにちょっかい掛けたくなるかまってちゃん。善人が大好きで、巡はもっと好き。巡の頭の中を覗いたら、面白いものが多くてこの先頻繁に覗くようになる。この後雫玖の両親に挨拶に行く。
「巡を、私にください!」


◆作者の裏話(という名の雑談)◆
 正直、師匠ポジクガクにしようか雫玖にしようか悩みました。が、友人から「クガクでいいんじゃね?」と、意見を頂いたのでクガクにしました。え?大丈夫、雫玖は別の場面で活躍できるから!(フラグ)
 巡の母上出すのムズいぃ……ポジションが微妙なんだよなぁ……だって父上で事足りるもん!(言っちゃダメなやつ)
 後、クガクと雫玖の登場の仕方が被ってる件について。
 レパートリーが少ないのも死活問題ですね(白目)

 あ、尚作者はガラスのハートであるためアンチコメントはやめて下さい。アドバイス等はどんどん宜しくお願いします┏○ペコ



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第三話 誠意

 遅くなってしまったぁぁ!!
 つ、次こそは早めに出します……(フラグ)
 あと、もし面白いと感じていただけたなら是非、コメントよろしくお願いします。もうめちゃくちゃ欲しいんです!ください!


 

 

 (夜闇 雫玖)にとって紫奈(・・) 渚沙(・・)座散羅義(・・・・) 龍我(・・)とは、気心知れた親友の様なものだった。

 

 幼少の頃から共に戯れ、共に騒ぎ、そして共に笑い合った、唯一の友。

 

 暴走した龍我を、面白半分に渚沙が囃し立て、其れを俺が制止するという三角関係(いつもの流れ)の様なものもでき、高家の三好三人衆と影で言われる事もあった、そんな仲の奴等。

 

 其れは久々に会った今でも変わらず、最近増えた実家からの帰省命令(小言)で憂鬱な気分になっていた俺の心を、一瞬で曇り一つない晴れやかな気分にしてくれた。

 

 まだ小さく捻くれた俺の手を取り、居所を作ってくれた、そんな掛け替えの無い存在。其れが龍我と渚沙である。

 

 (夜闇 雫玖)にとって神風 巡とは、親友が突然連れてきた少し大人びている、という印象の普通の子供だった。

 

 とてもじゃ無いが、あの自由奔放で天真爛漫、胆大妄為の二人から産まれたとは思えないほどに大人びており、今日のやり取りを見て、立ち位置が俺に似てるな、と、同情と親近感を覚えていた子供でもあった。

 

 

 しかし、

 

 

(この子)を私にください!」

 

 

 其の、面倒事に此方を巻き込む感じ(雰囲気)は、『ああ、そういやぁコイツ、彼奴らの子供だったな』と、そう俺に思い出させる様な、そんな子供だった。

 

 

◆◆◆

 

 

 やあ皆、元気してる?僕はそんな元気(断定)な皆の大好きな巡君だよ?

 

 ああ、ンンッ!……勘違いしないでよね!?僕は別に皆の事が好きな訳でも、なんでも無いんだから!(高音ボイス)

 

 

 ………。……あぁ、なんでこんなにお空は綺麗なんだろう?

 

(この子)を私にください!」

 

 現実はこんなにもクソなのに……!

 

 おいお前ぇぇ!?何仕出かしてくれちゃってんの!?何仕出かしてくれちゃってんのぉぉぉぉ!?!?

 

「む、むうぅ?どういう事だ巡?巡は巡だろう?はっ!?まさか先程頭でも打ったのか!?」

 

「いいえ、違いますお義父様。私は巡ではないのです。私は……神なのです!」

 

 おいやめろクソ神!!其れはだたの痛い奴だろう!!概要を話せ概要を!!

 

「あら?巡どこか悪いの?痛い所はちゃんと言いなさい?」

 

「いいえ、()の体はどこも悪くないのです。しかし、私の心は(八岐大蛇)の事ばかりが頭に浮かび、胸が張り裂けそうで……」

 

 お前わざとだな!?其処までいったらもうわざとだな!?いいよね!?もう此奴ヤっちゃっていいよね!?

 

『おいクソ神、後で覚えとけよ……?』

 

『ふふ、そんな怖いこと言わない。ちょっとした私のお茶目だろう?ほら、笑って笑って』

 

 ……ふう、(伝説の中の)クガクは許そう。だがクソ神、テメーは駄目だ。

 

『……もういいです。僕が説明します。ですのでクソ神はさっさと僕の体から消えてください』

 

『えっ?本当に良いのかい?じゃあ後は頼んだよ。私は私の神域で待ってるからね。ああ、封守札(ふうしゅさつ)を触れば入る事は出来るよ』

 

 そうクソ神が言った途端、僕が動かそうとしても動かなかった身体が、まるで息を吹き返したかの様に自由に動かせる様になった。

 

 

 さて、

 

 

「渚沙よ!俺は町の医者を呼んでくる!其れ迄巡のことを頼んだぞ!」

 

「分かったわ。なるべく速く戻って来てね?」

 

「ああ、相分かった!」

 

「………(遠い目)」

 

 やっぱりあのクソ神は一回殺して(ヤって)おくべきだったかなぁ?

 

 

◆◆◆

 

 

 あの後、なんとか町まで音速(物理)で行こうとした父上を引き止め、混乱している母上を落ち着かせ、どこか懐かしむような遠い目をしている雫玖さんを正気に戻し、ことの顛末を事細かに説明した。まあ、あのクソ神のことは大分美化したが……

 

「ふむ、成程。クガクは、いや、クガク様は、素質のある巡を自身の後を任せたい、と」

 

「は、はい……」

 

 つ、疲れた……あと父上、クソ神に様なんて付けないでいいと思います。

 

「どう思う?渚沙よ」

 

「う〜ん、でも、クガク様は良い神様なんでしょう?なら任せてもいいんじゃないかしら?最終的には巡が嫌だと思えば帰ってくればいいと思うしねぇ」

 

「そうだな!よし、巡よ!もう一度クガク様を呼んでもらえないか?」

 

「わ、分かりました」

 

 え?これもう僕行くの決まった感じ?あの神(笑)の所にいたんじゃ僕の気苦労が絶えないのですが?

 

 ってかあの神(笑)どうやって呼び出すん?呼べば来るかな?おーいクソえもーん

 

『はいはーい、呼ばれて飛び出てじゃじゃーん!みんな大好きクガクだよ?』

 

 うわぁ、本当に来た……ってか元ネタ違うし帰ったんじゃないんですか?なんで来るんです?(理不尽)

 

『いやぁ、君の慌て具合が面白くてね。つい覗き見してしまったよ』

 

 ……この世にはプライバシーの権利ってものが(ry

 

 ……はあ、まあいいか。其れじゃ、僕と変わってください。良いですか?変なことしたらもう一回分殺しますからね?

 

『了解了解。じゃあ君は先に僕の神域に行っておいてね〜』

 

 はぁ!?ちょ、何勝手に決めてんの!?僕も一緒に居るよ!?

 

 おい!おいクソ神!!……マジですか……そろそろ本当にコロコロも想定に入れておいた方が良さそうだなぁ……

 

 

◆◆◆

 

 

 さて、巡もいなくなったところだし、そろそろご両親とご対面といこうか。

 

 私がゆっくり目を開けると、対面している三人は、目を見開いて驚いている様だった。

 

 ふふ、まあ確かに、瞳の色が変わってるんだから(・・・・・・・・・・・・・)驚くのも無理ないかな。

 

「初めましてご両親とそのご友人。私はクガク。かつて八岐大蛇と対峙し、無様にも負け仰せた一介の神でございます」

 

「おお、態々我々の為に恐縮でございます」

 

 ふむ、こうして面と向かって顔を合わせてみると、この者達の異常さが身にしみて分かるね。

 

「いえ、元は私が成し、終わらせなければならなかったことを、巡に押し付ける様な形になるのです。此れくらいのことは、心あるものとして当たり前のことだと私は思います」

 

「ふむ、成程」

 

「あの、巡の親として私の方から幾つかお聞かせ願えますか?」

 

 渚沙は真っ直ぐクガクの目を見て口を開いた。

 

「クガク様は、もし巡が断ったらどうするおつもりで?」

 

 それに対してクガクは、顔色一つ変えずに、しかし内心懐かしさを覚えながら答えた。

 

 ……ふふ、こうして誰かに試されるなんて、何年振りだろうか。時の流れというのは早いものだよ。

 

「私は、巡が人間として一生を過ごしたいと言ったならば、強要する気はありません」

 

「お心遣いに感謝します。しかし、巡にしか出来ないことなのでしょう?八岐大蛇はどうするおつもりですか?」

 

「その場合は私の魂を贄に、私の体の中に封印します。様々な問題があり、いずれは解かれるかと思いますが、其れでも100年は持つでしょう」

 

「その場合、贄としたクガク様の肉体と魂はどうなるので?」

 

「十中八九、魂は消滅し、肉体は八岐大蛇が復活する時の依り代となるでしょう」

 

「……其れしか方法は無いのですね?」

 

「現状は」

 

 クガクの返答を聞き渚沙と龍我は、少し顔を顰めて悩み、しばらく経ってから言葉を口にした。

 

「我々は正直、闘いを経験したものとして、巡を闘いの世界へ踏み入れさせたくありません」

 

「しかし其れでは、多くの人々が助からなくなってしまうかもしれないのも事実」

 

「今回、我々の呼びかけに応えたくださった貴方様の誠意も感じました」

 

 ………………ああ、全く

 

「ですので、我々からもお願いしたい。」

 

 

「巡のことをどうか、よろしくお願い致します」

「よろしくお願い致します」

 

 その我が子を想うお願いに対してクガクは

 

『此の親にして此の子あり』だね。

 

 と、そう思った。

 

 

◆◆◆

 

 

 イライライライラ……

 

 ああ、ムカつく。僕結構待ってるよね?体感時間もう二時間半は超えてるんだけど。

 

 あのクソ神め……

 

「ただいま。待ったかい?」

 

「此処で会ったが百年目ぇぇぇぇ!!死に腐れクソ野郎ぉぉぉぉ!!」

 

 そのよく通る綺麗な声(憎き声)が聞こえた瞬間、僕は声のした方向へと走り出し、腕を勢いよく振りかぶって心からの怨嗟を叫びながら振り下ろしていた

 

「ふふふ、危ないじゃないか。ダメだよ?動物に手出しちゃ。動物愛護団体が黙ってないからね」

 

 そんな渾身の一撃も、猫の姿になっているクソ神に余裕を持って避けられてしまう。

 

 ってかあのクソ神また僕の頭の中覗いたろ!ふざけんなぁ!!

 

「そんなカッカしないで。短気な男はモテないよ?」

 

 

 ………ピキ

 

 

「ねえ神様?猫ってどんな味がするんだろうね?」

 

「さあ?どうだろうね?案外美味しいかもよ?」

 

 へぇ〜そう思うんだ?

 

「じゃあさ、試してみない?丁度僕の目の前に廃棄用の猫が居るしねぇ?」

 

「そんなの見当たらないけど?ひょっとして巡ボケちゃったの?その歳で?大丈夫?」

 

 

 ………………ピキピキ

 

 

「やだなぁ〜神様〜?いるじゃないここに〜ほら〜」

 

「おっとそれ私だよ?大丈夫?そろそろ救えなくなってきたのかい?」

 

 

 ……………………ピキピキピキ

 

 

 此のクソ神……言わせておけば……!

 

「それじゃあ捌いていこうか」

 

「待って、ねえ待って?話し合おう巡?今ならまだ間に合うよ。だから僕を下ろして、其の包丁(凶器)を置こう?」

 

「ダメだね、もう遅いよ。それじゃあ、また逢う日まで」

 

「ぎゃああぁぁぁ!!………なーんてね?私になんの力も籠ってない武器が効くワケないじゃないか」

 

 此方を見て馬鹿だなぁ、とケラケラ笑うクソ神に、僕は決意した。

 

 

 

 

 いつか絶対泣かす、と

 

 閑話休題

 

 

「それで?父上と母上の説得はどうなったんですか?」

 

 僕はずっと気になっていたことをクソ神に聞いた。

 

「その前に其のクソ神止めようか?これから私のことは師匠って呼んでね?」

 

「うん、絶対に嫌ですね。まあ、どうしてもと言うならこれからはクガクと呼んで……く、屈辱だ……!」

 

「なんかキャラがここに居るとブレるよね?まあいいけどさ。其れで説得だけどね、なんと………」

 

 だらだらだらだらだらだらだらだら…………だん!

 

「無事出来たよ?」

 

「なんでドラムロールが聞こえてくるの?とか、テンションのギャップが凄くない?とか、言いたいことは沢山ありますが、今は置いておきましょう。よく説得出来ましたね?」

 

 本当なんでこんなので説得できちゃうんだか。父上母上、なんかちょろくないですか?詐欺には気をつけてくださいね?

 

「うん。私の誠心誠意をご両親にぶつけたら許可貰えたよ」

 

 うっわ胡散臭。

 

「まあ良かったですね。其れじゃあ此処でどのくらい修行的なのするんですか?」

 

「的なのじゃなくて歴とした修行だけどね。まあだいたい現世換算で2年くらいかな?」

 

 ……ん?其れだと可笑しくね?

 

「確か貴方、あと5年位で封印が解けるみたいなこと言いませんでしたっけ?なんで2年なんですか?」

 

「ああ。其れはね、長くなれば長くなるほど八岐大蛇が力を取り戻すからだよ。早めに強くなって、早めに封印解いちゃって、早めに倒した方が楽でしょう?其れにそれなら私も戦闘に参加できるからね。安心しなよ。神域(此処)での時間は現世の十倍遅く流れてるからね。最高20年修行出来るよ」

 

「なるほど……ってかクガクも参加するんですか?」

 

「当たり前だろう?私の尻拭いに私が参加しなくてどうするんだい?」

 

「まあ当たり前でしたね。それじゃあさっさと始めましょう」

 

「ふふ、其れもそうだね。大丈夫。最初は優しくしてあげるから」

 

 なんだろう?物凄く馬鹿にされてる気がする。

 

「馬鹿にしてるからね」

 

「だから勝手に心読むんじゃねぇんですよ」

 

 




◆作者の裏話(という名の雑談)◆
 龍我と渚沙の『座散羅義』と『紫奈』という苗字は、2人の元々の苗字です。それぞれ『座散羅義家』と『紫奈家』の生まれですが、二人とも実家が嫌いすぎて、二人で新しい『神風』に苗字を変更して結婚しています。

 最初のクガクが表面に出てる時に、何故瞳の色が変わらなかったかというと、巡の体の中に巡の魂が入った状態で、クガクが入り込んできた為変わりませんでした。二回目にクガクが入った時に変わったのは、巡の魂が神域にあり、巡の体の中には入っていなかったからです。

 途中の巡が両親に神域のことを説明するシーンについて、此処で巡がクガクのことを美化して話したのは、人柄が原因で断られるのを防ぐ為なんです。巡はクガクのことが現段階ではあまり好きではないけど、其れでも父上母上が死ぬのは許せんと、吐き気を感じながら美化して話しました。

 因みにプロローグはこの話で終わらせようと思っています。遂に、遂に本編が書ける……!!


 アンチコメ以外の素敵なコメントを、作者は全裸待機でお待ちしております。是非よろしくお願いします┏○ペコッ


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第一章 『古道具屋』凰蘭
第四話 店開き


 遅くなってしまい、本当に、本当に………申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!
 違うんです……別に書くのが嫌いなわけじゃなくて………只々暇で始めたのにめっちゃ忙しくなってきたんですぅ……
 許してぇ………
 しかも今回めっちゃ遅れたのにキリがいいからってめっちゃ短いんですよね……すいません……。


 

 

 とまぁ、其処から所謂『師匠と始める八岐大蛇大攻略!〜父上母上雫玖さんを添えて〜』が始まるんだよ。

 

 本当大変だったね。なんせ師匠、無茶振り凄いし少しも待ってくれないし、あろう事か父上と母上をダシにして『ほらほらー頑張ってー時間は待ってくれないよー?』と、煽ってくるしで『もう1回人として社会に揉まれてきたた方がいいんじゃないですか?』と何回も口から出そうになったよ。

 

 で、そんなある種の地獄みたいな日々を、大体15年位過ごしてやっと師匠から合格の二文字を貰ったんだよ〜。

 

 合格を貰った其の日の夜はもうお祭り騒ぎでね、僕と父上母上と、ちょくちょく相談事やら愚痴やらをお互い話し合ってる内に仲良くなった雫玖と、僕の体の中に入って現世に降りてきた師匠の5人でお餅付いてさ。僕の師匠も僕の体を使ってついて、『意外とつく餅って硬いんだなぁ』って感動してたよ。まあ僕は父上が雫玖の手をついちゃって、それにキレた雫玖が父上のことを追っかけ回してるのが一番面白かったけどね。師匠と一緒に爆笑してたなぁ〜。

 

 でも師匠と僕だけが行く予定だった八岐大蛇の討伐に、何故か父上母上と雫玖が同行することになったんだよね。当然僕は止めたよ?でも『なんで子どもが命張るのに大人が逃げんだ』って3人から言われてもう泣いたよ、嬉しくてさ。だって父上母上はともかく雫玖もそう言ってくれたんだもん。皆優しすぎでしょ。

 

 そしていよいよ次の日、絶海の孤島にある八岐大蛇の封印を解いたんだけどさ、やばかったよ。まずめちゃくちゃデカかった。標高300メートル級の山レベルの胴体がいきなり現れるんだもん。全長なら恐らく1000メートルは超えてたと思うし、鱗も想像してた100倍は大きく分厚くてさ、正直『此奴倒れるん?』って思ったよ。その後4日間ぶっ通しで戦い続けて、何とか僕の神域に縛り付けることが出来てね。これ迄の師匠が施した封印とは違って力の元が無くなる、まあ僕が死んだらそのままその世界と一緒に消滅する様に封印したんだ。

 

 まあ僕が神域から出たら封印が解けるから決して此処から出ることは出来なくなったんだけどね。

 

 でも八岐大蛇は封印出来たんだけど、その時にはもう父上と母上と雫玖は死んじゃって、師匠も完全に消えちゃってさ、この日も泣いたよ。何日も泣いた。声も涙も出なくなって、其れでも涙は止まらなかったよ。今は何とか立ち直ることが出来てるけど、ちょっと前までは何もする気が起きなかったし。

 

 まあ此処までが僕の今世の全てかな?ちょっとした昔話のつもりが結構長くなったね。

 

 

 

 

 因みに今僕は凰蘭に居るよ。

 

 此処にいる理由?なんか雫玖が死に際に机の一番下の引き出しの中に置き手紙あるからそれ読めって言ってきたんだよね。

 

 どう思う?生涯最後の言葉がそれだよ?もっとなんか言ってほしかったよね。まあ探すけどさ。

 

 えー一番下一番下……あ、これか、って3枚あるじゃん。あー父上母上のもそれぞれ作ってたのか。僕のは……これか。どれどれ、

 

『この手紙を巡が読んでるって事は俺は死んだってことだろう。だから、此処には言いたいことだけ書いた。心して読め。

 

 俺は元々、人と接する事が大嫌いだ。

 

 だが、巡があいつらの子どもだからか、それとも元々の人柄がそうなのかは知らんが、とにかく話しやすかった。

 

 お前は俺が同期のあいつら以外で信用できると思った唯一の友人だ。誇っていい。だから巡、俺が信用できると思ったお前に、凰蘭を任せたい。

 

 この店は俺の生き甲斐で、俺の人生の全てが詰まったものだ。

 

 嫌とは言わせねぇ。頼んだぞ』

 

 

 

 

 

 ……………………………あ、やばい

 

 

◆◆◆

 

 

 ふぅ。

 

 一回泣いたらスッキリしたね!(大嘘)

 

 

 

 …………いやずるいじゃん。そんな不意打ちでさぁ……。

 

 でも、はは。そうかぁ〜、雫玖にはそんな風に思われてたんだぁ〜

 

 

「…………直接言えよ、馬鹿野郎」

 

 

 全く、何でこうも不器用な大人が多いんだ。

 

 

◆◆◆

 

 

 さて、この凰蘭()を頼まれたわけだけども、僕は思ってしまった。

 

『あ、この店そのまま僕の神域に持って行って、そこで不思議さんやりゃいいじゃん』と!!

 

 そうだよね!そうだよね!確かに不思議さんは室内に居ないとも限らないもんね!!

 

 ……ふぅ、落ち着け僕。まずやらないといけない事を整理しよう。

 

 その一、凰蘭を神域に持っていく。

 

 そのニ、僕の神域にランダムで一週間以内に死ぬ人、もしくは最も親しい人が一週間以内に死ぬ人が辿り着ける様に、性質を付与する。

 

 その三、迷い込んだ人の運命を変える手伝いをする方法を考える。

 

 このくらいかな?

 

 まあでも、それぞれ手立ては考えてあるんだけどね。

 

 まずその一、凰蘭を神域に持っていくのは簡単、保持者の神域を一瞬地上に顕現させて、その一瞬で凰蘭の敷地と僕の神域に繋がりを作ればいい。

 

 という事でやりましょう!えーと……、

 

「地上に顕現させて……出来たかな?」

 

 大丈夫……だね、成功かな。

 

 そしてそのニ、これも簡単。ただそういう性質に僕の神域を変化させて定着させるだけだしね。それじゃ、やってみよ〜!

 

 

 『性質変化:《神の気紛れ(神隠し)・運命》』

 

 『対象:僕の神域(思い出の場所)

 

 『定着完了』

 

 『代償:呪いの申し子(運命の忌み子)

 

 

 あら?代償差し出すほど複雑な条件だったかな?

 

 ま、いっか。これで一応完成だし。

 

 ふっふっふ……我ながら自分の才能が怖いよ……。

 

 そしてその三、迷い込んだ人の運命を変える方法を考える。

 

 これよ、これが一番やばい。どうやって手助けしよう?

 

 案として出たのは、

 

『僕の言霊の籠った物を渡す』

 

『僕が直接アドバイスをする』

 

『僕の運命を司る力を使って改変しちゃう』

 

『未来を体験させる』

 

『僕が依り代に乗り移って直接手助けする』

 

 この5つなんだよね。本当どれにしよう……

 

 う〜ん…………………、

 

 

 

「……あ、別に一つに絞らなくてもいいか」

 

 

 そういうことになりました。

 確かに臨機応変は大事だよね、うん。

 

「やる事多いなぁ〜……」

 

 

 はぁ、頑張ろ

 

 

◆◆◆

 

 

 はい、取り敢えず全て終わらせた巡です。

 

 やっと、やっと終わった……。

 

 

 で、あの後考えたんだけど、ただ助けるだけだと人が自分で考える事ができなくなっちゃうから、僕がその人になら手貸してあげてもいいな、と思ったら手を貸すことにしたんだ。

 

 あ、もちろん対価は払ってもらうよ?そりゃ一応凰蘭は店だからね。

 

 あとこの『凰蘭』は鑑定屋じゃなくて古道具屋としてやろうかなと思ったんだよ。

 

 だって僕鑑定できないし。まあそれっぽいことはできるけどさ、雫玖程じゃ無いからね。

 

 ああ、一応僕の神域の時間経過の速度は通常の10倍程度遅くなる様にしたんだ。

 

 これならより多くの客に対応出来るからね。

 

 

 それじゃあ下準備は終わったし、そろそろ初仕事といこうか。

 

 おっと、その前に客が来た時の決め台詞でも決めておこうかな?

 

 何がいいかな………、あ、ふふ。そういえば師匠にお誂え向きの言葉を貰ってたね。

 

 いいじゃない、それにしようか。

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、僕の店(僕達の凰蘭)へ。歓迎しよう、人間君」

 

 

 




◆作者の裏話(という名の雑談)◆
 はい、正味雫玖は生かす予定だったんですけどね、今後の展開的にここでリタイアしてもらった方がいいかもと思いまして脱落させましたね。

 あと巡が雫玖を呼び捨てにしてたり、クガクを師匠と呼んでたりと色々変わった所がありますが、それは回想シーンで出す予定なので安心してください。

 正直雫玖の手紙が一番難しかったんですよ。修正かけまくったし今でも若干変だし……本職の方って本当すごいよね。

 すいません。巡が凰蘭にいる事が出来てるのは神域を一時的に地上に顕現させて、神域化してるからです。説明不足でした。ご指摘してくださった方本当にありがとうございました。

 それと、『神域との繋がりを作ればいい』という発言がありますが、詳しく説明すると、凰蘭のある土地を神域化して、凰蘭とその周辺の土地を一時的に神格化します。
 そしてそのあと、その神格化した凰蘭とその土地を巡は自分の神域の一部とする事で凰蘭を持っていった、という寸法になっています。こちらも説明不足でした。すいません。


 アンチコメント以外のアドバイスや誤字脱字の報告、感想等をお待ちしています。
 是非!是非!



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第五話 来店

遅くなりましたぁ!
新学期始まって課題の提出等に追われてたんですぅ

多分モチベはあるから次は一週間以内に出せるかも……?(多分)

めっちゃ短いですすいません……





 

 

 ………逃げたかった。

 

 

 俺を除け者にする家族から。

 

 

 俺を利用することしか考えてない家の人間から。

 

 

 

 親友はいた。

 

 

 でもアイツも逝った。

 

 

 だから、この辺が潮時だな、と 殆ど欠けてしまっている月を独り見上げて思った。

 

 

 

 そして俺は、近場の橋梁に向かおうと踵を返し、家の扉を開けて

 

 

 

 

 

 

 

 ──────次の瞬間、この世の物とは思えない、とても美しい景色の中に一人立っていた。

 

 

◆◆◆

 

 

「……何処だ、ここ」

 

 彼、霧島京也は、突然目に飛び込んできた景色に驚きを隠せないでいた。それもそのはず、京也は、確かにいつも外出する時に使う扉を潜ったはずなのだ。

 

 しかし、その目が映し出したのは、桃源郷もかくやというほどに美しい景色だった。

 

 真っ白な空に、青々とした葉をつけた木が密集している森。そして地面には、色とりどりの彼岸花が二~五本程度でかたまって所々に咲き誇ている。

 

 そしてよく見ると、奥の方に屋敷の様な建物がその存在を主張するかのように木々に囲まれ立っていた。

 

 暫く固まっていた京也は、周りを見渡し、目の前の屋敷以外人工物がない事を確認して顔を顰めた。

 

「……どういうことだよ」

 

 現状を打破する様ないい考えも浮かばず、京也は取り敢えず屋敷に人がいるか確認しようと歩みを進めた。

 

 

 少し歩いて屋敷の目の前まで移動すると、いきなり頭上から声が聞こえた。

 

 

「ようこそ、僕の店へ。歓迎しよう、人間君」

 

 

 驚きながら視線を移すとそこには、猫の仮面を被り、和服に身を包んだ白髪の子供が自然と佇んでいた。

 

 

◆◆◆

 

 

 やあやあ皆、現在絶賛初仕事中の巡さ!

 

 初仕事のお相手は〜このお方!

 

 

「お前は誰だ」

 

 

 天然茶髪の中学一年生、霧島京也くんで〜す!

 

 いやぁ〜よかったぁ、最初の人が変な人間じゃなくて。一番最初はやっぱり手助けしたいよね〜。

 

「僕は(かすみ)。この店の店主さ」

 

「ここは何処だ」

 

「ここは僕の世界。現実世界とは隔絶した場所」

 

「……俺に何の用だ。さっさと帰せ」

 

 ほお、混乱したりもしない、と。

 

「君、いいね。話の通じる子は大好きだよ?」

 

 京也は巡をジロリと睨んで口を開いた。

 

「子供扱いすんな」

 

「ふふ、子供はみんなそう言うんだよ?」

 

 そう巡が返すと、京也はイラついたように少し顔を顰めた。

 

「そもそもお前の方が年下じゃねぇか。」

 

「おや?残念僕はもう二十歳を超えてるよ?」

 

 なんてったって前世ありますし。

 

「……は?」

 

 事実巡は神域で2年間ほど過ごしていたため、実年齢は20歳を超えているのだが、それを聞いた京也は信じられないといった様子で巡のことを凝視していた。

 

「……どっからどう見ても子供じゃねぇか。誤魔化してんのか?」

 

「違うよ?僕は歳を取らない特殊な存在だからね。老いもしないしよっぽどの事がない限り死にもしない」

 

「……バケモンじゃん」

 

「まぁ人間では無いしねぇ〜」

 

 半分だけだけど

 

「……んな事どうでもいい。さっさと俺を帰せ」

 

 少し脱線したが、気を持ち直しさっきと同じ要求を霞にする京也。それに対してあっさりと霞は京也をあっさりと帰して───

 

「駄目だよ?ここに来たからには僕のお客様だからね。ただで帰す訳には行かない」

 

 そんな訳がなかった。霞からしたら京也は絶好のお客様(カモ)であり、そんな当たりくじを簡単に手放すわけが無いのだ。

 

「そもそも君、ここに来た時点であと少しで死ぬよ?」

 

 そんな事を言う霞に対して京也は、少し目を見開いて驚いたが、そのあとフッと目を細めて口を緩ませた。

 

「そんな事を初対面の人に言われて信じるわけねぇだろ。それに本当だとしても俺は別にいい。これ以上この人生に希望も持てねぇしな」

 

 そんなどこか悟った様な顔をした京也を、霞は目を少し細めて見た。

 

 ……ふむ、これば重症だね。

 

「……君は一度、人の優しさに触れた方がいい。幼いうちから汚い部分を見すぎてるよ」

 

 そう言いながら霞は、京也の目の前に霞む様に一瞬で移動し、京也の体を軽く押した。

 

 京也はなにを、と霞に対して口を開こうとしたが、まるで水の中に沈んでいく様に何事も発せず、そのまま後ろに倒れ始めた。

 

「じゃあね、人間君。次会う時を楽しみにしてるよ」

 

 そして京也の意識は、その言葉を最後に段々と暗闇に沈んでいった。

 

 




霧島京也(きりしまきょうや)
 凰蘭開店一人目のお客。天才の部類に入る人間。
 性格は大雑把で実は優しい。簡単に言うとツンデレ。ただ今は荒れてる。実家はクソ。実は雫玖の血縁。戦闘の才能だけなら雫玖より高い。
 容姿はサラサラとした綺麗な茶髪に切れ目な黒目。和服が似合いそうなスラッとした体型だが、脱ぐと筋肉がすごい。着痩せするタイプ。
「クソみたいな人生だわ、一人にすんじゃねぇよ親友」

◆作者の裏話(という名の雑談)◆
 巡が霞と名乗ってるのは実名(神風巡)を封印の溶媒にしてるからなんですよね。つまり自分の名前を言えないという辛さ。巡は親がつけてくれた自分の名前を気に入っているのでめっちゃ辛い。

 実は京也より霞の方がSAN値がピンチ。もし一番最初に来た客が人間のクズだったら自分ごと神域を封印してたかもしれない。

 え?自殺はしないのかって?そんなのネタバレになるじゃないかッ!

 まあ気軽に見てくださいってね

 アドバイスなどは本当に頼みます。正直読んでくださるだけ嬉しいのですが、やはりしっかりと楽しめる作品を読んでもらいたいのでm(*_ _)m


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