正妻戦争 ーキリトオールスターズー (玖蘭 蒼)
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ちょっとしたおふざけ(カオス注意)
その1


もう自分でも途中から何が何だか分からないまま書いてました・・・・

一言で言うならカオスです


 

 

 

 

 

 

 

「む・・・・ここは・・・・?」

 

気づいたら私は、何もない空間に1人で立っていた。

いや、正確には奥に人影が・・・

 

ーーーー嫌な予感がした

 

 

「茅場さん、発言良いか。俺の名前はエギルだ。」

 

「・・・・・」

 

数m先から話しかけてきたのは、イカツイ見た目をしたスキンヘッドの男だった。

・・・・おまけに言うと、猫耳をつけていた。

 

「ここは・・・・「なんでや」みたいなことを言ったほうが良いのだろうか・・・・?」

 

いや、なぜこちらを向く。

 

「茅場さん、あんたの言いたいことはつまり、「俺の名前はエギルだ」ということだな?」

 

「ちょお待ってんか!」

 

あ、やばいこの声は嫌な予感しかしない

 

「ワイはキバオウってもんや。そいつと戦う前に、言わせてもらいたいことがある!」

 

え、いま僕を指ささなかった?なんで戦う対象にされてんの?

 

「キバオウさん、発言いいk・・」

 

「なんでや!!」

 

キレーなツッコミですねー相変わらず。

あー、エギルさんがしょんぼりしてるよ。なんかちょっとかわいい・・・

 

ん?なんだ?向こうに人影が・・・

 

「なんやて?」

 

いや向こうに人が・・・・っていうか地の文に入ってくんな

 

「あれは・・・・ディアベルじゃないか!?」

 

うおぉっ!びっくりした!急にどっからともなくキリトが!

 

「ディアベルはん!」

 

キバオウが駆け寄ろうとする。

・・・・ん?なんだ、上からなんか・・・・

 

「ぇ________」

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

凄まじい風と音だった。その音に混じってかすかにだれかの断末魔が聞こえた気がしたが、気のせいか。

 

空から降ってきたそれはーーーーー

 

イルファング・ザ・コボルドロードだった

 

 

落下してきたそいつから数m離れた場所に、横たわる人影

 

あ、めっちゃデジャヴ

 

「ディアベル!!」

 

キリトさんが駆け寄りました。よし、次の展開は読めた。

 

「キリトさん・・・・頼む・・・ボスを・・・・」

 

そう言い残し、ディアベルは息絶える。体がポリゴン片となって四散、いや爆散した。

 

「・・・・・っ!!」

 

そうだ、これでキリトがアスナと協力してボスを倒すんだったよね。

アスナ今いないけど、今のキリトならソロでいけんだろ、がんばれー

 

キリトが剣を構え、駆け出した。このまま・・・・

 

「なんでや!!!」

 

ふぇっ!!??

 

「!?」←キリト、立ち止まる

 

「なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!」

 

今かよ!もうちょい待てよ!

 

「見殺し・・・・?」

 

キリトも応じるな!うしろ!うしろ!

 

「ジブンは前にいたのがディアベルはんだって、知っとったやないか!」

 

え、ちょ、まじ危ないよキリトさん

なんかあいつ武器持ち替えて・・・

 

「それは・・・」

 

イルファングが走り出した。

あ、死んだなこれ・・・

 

 

と思った次の瞬間、頭と体を一切動かさずにキリトの腕だけが高速でーーーー

 

おお、これ知ってる・・・!「もう切った。」っていうやつだ!

 

そして次の瞬間ーーーー

凄まじい音とともにポリゴン片となって爆散する、キリトの体。

 

え、どゆこと・・・?

 

「キリトーーーー!!」

 

エギルさん・・?

 

「おい、おまえなんてことを・・・!」

 

え、ぼくですか・・・?というか猫耳つけたままでそんな怖い顔されてもw

 

「おまえがフラグを立てたからキリトが死んだんじゃねーか!!」

 

え・・・・あ、

 

ーーーーおお、これ知ってる・・・!「もう切った。」っていうやつだ!

 

あれかよ!

 

「なんでや!」

 

・・・ふぇ!?

 

「なんでキリトはんを見殺しにしたんや!」

 

見殺しって・・・・・あれ、てかそもそもお前のせいじゃね?

 

「ジブンはボスが来てること、しっとったやないか!」

 

待て待て待て!落ち着けって!

 

「発言良いか。」

 

おっとなんだ嫌な予感しかしないぞ

 

「なんや」

 

「キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり「俺の名前はエギルだ。」ということだな?」

 

「なんでや!」

 

なんでや!

 

 

 

 

「・・・・私がいることも忘れないでほしいのだが・・・・」

 

あ、茅場さんがいるのすっかり忘れてた。

 

「というか最初は私視点で始まっていたはずなのだが・・・・?」

 

あれそうだっt

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

キリトくん、そして蒼氏までもがこいつの餌食になってしまった。だが、これでいい。

 

「ご苦労だった、エギルくん。これで私の計画のじゃまになるものは消えた。」

 

「気にすんなよ、茅場さん。俺は報酬が貰えればそれでいい。」

 

「ふむ、これでどうだろうか。」

 

「ありがとよ、またいつでも呼んでくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーという夢を見た

 

 

 

どうやら俺は茅場と戦いの様子をモニタリングしている最中に寝てしまったようだ。

 

「・・・・・なあ。」

 

「なんだね、キリトくん。」

 

「エギルってプレイヤー・・・覚えてるか?」

 

「ああ、何度か攻略会議でも見かけたが・・・・彼は中層プレイヤーの育成に尽くしたそうだな。

・・・・それで?彼がどうしたのかね?」

 

「・・・・いや、なんでもない・・・」

 

 

 

 

 

 

 




 
 

 夢オチ最強

 
 人気があれば番外編続けようと思います
 本編優先なのでだいぶ先になるかもしれませんが・・・


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第1章 プロローグ
第一話 すべての始まり


ーーーーーーここは....どこだ?

 

 

気づいたら俺は何もない空間に一人で立っていた。

ーーーーいや、正確には奥に人影が見える。

なんとなく嫌な予感がした。

 

「目が覚めたかね、キリトくん。」

 

嫌な予感は的中する。そこには白衣を着た男が座ってモニターを見ていた。

 

「茅場...」

 

そう、この男こそデスゲームと呼ばれた「ソードアート・オンライン」のプログラマー・茅場晶彦その人である。

なぜここにーーーと思ったが、今の茅場と会える場所なら大体想像はつく。

 

「あんたに会うのも随分と久しぶりだが、どうせまたネットワークに散らばった意識の一部なんだろう?」

 

俺は余裕があるように装って尋ねる。

 

「そこまでわかっているのなら、もう説明はいらないだろう?」

 

茅場はこちらに振り向くと、淡々と答えた。

 

「まあ、そうだな。ところで一体ここはどこなんだ?仮想空間か?」

 

俺はやっとその疑問を口にする。

しかし、返ってきたのは全く予想のしていなかった一言だった。

 

 

「夢だ。」

 

 

「・・・・・は?」

 

思いも寄らない言葉に俺は困惑する。

 

「困惑するのも仕方ない。実際、このわたしでさえ、この状況をまだ飲み込めていないのだから。」

 

珍しく茅場は焦っているようにみえた。

 

「まずはこれを見たまえ。」

 

俺は茅場の視線の先のモニターをみる。

 

「・・・・!!?」

 

そこに映されていたのはーーーー

 

激しく剣をぶつけあう二人の・・・・・「俺」だった。

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

「まずはどうしてこのような事態になってしまったのか説明しよう。」

 

「ああ、頼む。」

 

俺は心が落ち着かないまま、とりあえず茅場の話を聞くことにした。

 

 

ーーー数分前のこと。

俺は信じられない光景を目にした。

異なる姿をした二人の俺が戦っていた。いや、殺し合っていたというべきか。

片方は、俺にとって懐かしい姿をしたアバターだった。

二刀を操り黒いロングコートをはためかせるその姿は、「黒の剣士」と呼ばれた俺そのものだ。

それに対して相手は両手剣と見間違うほどの大剣を振り回し、そして・・・・飛んでいた。

おそらくALOでのアスナ救出時の姿だろう。

 

しかし、なぜだーーー

 

俺はここにいるはずだ。過去を見ているにしても、それでは画面に映された光景の説明がつかない。

 

必死に考えたが、答えは見つからなかった。そこで茅場の説明を聞くことにしたというわけだ。

 

 

 

「キリトくん。私は先程、この世界は夢だ、といった。だが正確にはちがう。この世界はある人物の強い感情によって生み出されたのだ。」

 

「ある人物?」

 

「つい三週間ほど前のことだ、この世界が生まれてしまったのも、私と彼女たちが呼び出されたのも・・・」

 

 

 

 

******

 

 

「う・・・・ここ・・・は・・・?」

 

結城明日奈ことアスナは、見覚えのない空間で目覚めた。周りを見渡す、すると・・・。

 

「直葉ちゃん!?」

 

そこにはうつ伏せに倒れ込む黒髪の少女、桐ケ谷直葉がいた。

 

「ん・・・ア・・・スナ・・・・さん・・・・?」

 

「良かった・・・。」

 

「ここは・・・?」

 

直葉も、アスナと同じ疑問をもったようだった。

 

「わからないの。わたしも、気づいたらここにいて・・・・。」

 

もう一度周りを見渡す。しかし、他には誰もいないようだ。

ーーーーその時だった。

 

少し離れた空中に突然ゲートのようなものが現れ、その中から人影が・・・落下してきた。

女性のようだ。床に無造作に落とされた体は華奢だった。

 

「・・・!?」

 

体の感覚が戻り始めてきていたアスナは、すぐに駆け寄ろうとする。

しかし、それを遮るようにゲートが次々と現れーーーーーーー

 

 

 

そして数分後…

 

 

「まさか里香さんたちまで落ちてくるなんて、びっくりしましたよ〜。」

 

笑いながら直葉が言うと、

 

「あんたねぇ・・・、そんなのんきなこと言ってる場合じゃないでしょうが・・・。」

 

と篠崎里香ことリズベットが呆れた様子で返す。

 

「里香さんの言う通りですよ直葉ちゃん。」

 

「全くだわ・・・。」

 

綾野桂子ことシリカと、朝田詩乃ことシノンが同意する。

 

「あれ、なんか散々な言われよう・・・。」

 

「あはははは・・・」

 

アスナが思わず苦笑いする。

 

「ところで、なんでしののんだけアバターなの?」

 

アスナがふと尋ねた。

 

「GGOでスコードロン戦の真っ最中だったのよ。急に目の前が真っ暗になって・・・」

 

「でも、あたしたちは気がついたらここにいたわよね、桂子?」

 

リズが聞くと、シリカは首をかしげて

「不思議なことに直前に何をしていたかもよく覚えてないんですよね・・・」

 

「私もそんな感じかな。」

「あたしもです。」

 

アスナと直葉が共感したようにうなずいている。

 

「とりあえずここは一体どこなのかを・・・・・・!!?」

 

リズが言いかけてやめた。その理由をすでに全員・・・じゃない、シリカ以外は悟っていた。

 

 

首をかしげるシリカの後ろに、仮面をつけた男が立っている。

 

 

そして・・・

 

彼女たちからは見えていない仮面の裏からは、頭に巻いた悪趣味なバンダナが丸見えだった。

 

 

 




 はじめまして!玖蘭 蒼です。初投稿になります。
小説を書くこと自体が初めての経験なので、どうか温かい目で見守ってください。
作品への愛だけで乗り切ります!


注:この作品は基本的に自分の好きなように書くので、原作との矛盾が生じる場合がありますがそこはお許しを・・・。



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第二話 ヒロインたちの決意

 どうも、玖蘭 蒼です。
今回は原作では割と不遇なポジションのアイツが登場します。



 

ーーーー全く気づかなかった・・・!

 

アスナは自分の察知能力にかなり自信がある。だからこそ、仮面の男の接近に気づけなかったことに動揺してすぐに動けなかった。

男の手がシリカに迫る・・・。

 

「きゃあっっ!!・・・・・って・・・・・あれ?」

 

男がシリカを・・・・抱き上げた。

 

「「「「え・・・」」」」

 

そりゃもう見事なまでのお姫様抱っこだった。

アスナたちが混乱していると、ようやく男が口を開く。

 

「安心してください。女性を傷つけるなんてこと、オレ・・・私は致しませんよ・・・。」

 

聞き覚えのある声だった。

 

「ん・・・?」

 

 

「あり・・・?変声機が機能しねぇぞ・・・どういうことだ?」

 

口調が崩れたことで全員が確信した。

 

「「「「「クライン(さん)・・・・?」」」」」

 

 

 

 

しばしの沈黙・・・・・。

 

 

 

 

「ちくしょう・・・・・・ばれちまったじゃねぇか!しょうがねぇ、正直に白状する。お前らをここに呼び寄せたのはオレだ!」

 

という突然のカミングアウト。

するとすかさずリズが、

 

「嘘言わないでよ、あんたにそんな力があるわけ無いでしょうが。」

 

悪ふざけもいい加減してくれ、とでもいうように首を振って言う。

 

「オレにもよくわかんねぇけどよぉ・・・茅場のやつがよ・・・・・。ともかく!おまえらに「正妻戦争」ってやつをやってもらうために、オレはここへ呼んだんだ!」

 

「「「「「正妻・・・?」」」」」

 

「キリの字の正妻をいい加減決めて1人に絞れっつうことだよ!そして・・・!」

 

「そして・・・?」

 

なんだか予想はついていたが、あえてリズは聞いてみる。

 

「オレにもさっさと女の子をまわしてくれよぉぉぉ!!!」

 

モテない男の魂の叫びだった。

もちろん言うまでもなく、ガールズは呆れ返って言葉も出ないようだ。

 

「お前らにわかるかよ!?女の子に囲まれていちゃついてる男をずっとそばで見せられているオレの気持ちが!」

 

クライン氏、どうやら本気で限界のようだ。

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

女性陣はしばらく黙っていた。

しかしこのあとのリズのある一言が、この先の結末を180度変えてしまった。

 

 

「正妻をいい加減決めろ・・・・か。・・・いいんじゃない?」

 

「リズ!?」

 

「やっぱりここらではっきり決めといたほうが良いと思うのよ。あたしは、そのほうがみんなのためになると思う。」

 

リズはきっぱりと言い切った。

 

「で・・でも!そんなことしてもし・・・仲間の絆が壊れてしまったら・・・。」

 

アスナがいまにも泣き出しそうな顔で言う。

 

「もうそんなこと言ってる場合じゃないんですよアスナさん。」

 

「す、直葉ちゃん!?」

 

「キリトくんは・・・・お兄ちゃんは誰にも渡さない!!」

 

直葉もリズに触発され吹っ切れたようだ。

するとそれに続きシリカ、シノンまでもが・・・

 

「あたしもキリトさんを渡す気はありません!」

「そういうことなら私も負ける気はないわ。」

 

「みんな・・・」

 

アスナは最後の最後まで葛藤し続けた。

だが、正妻の座を譲るわけにはいかない。

 

「私も・・・負けない!」

 

 

 

 

 

 




少しクラインのセリフが無理やりすぎて意味わからなくなってしまったかも、と思っています。彼の言いたいことは伝わっていると信じることにしますw


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第三話 戦の地へ

 

 

 

「いいか、お前らにはキリトの正妻の座を賭けて七人で戦ってもらう。これだけは絶対だ。」

 

「七人・・・・?それだとあと二人足りないわよ?」

 

シノンが再度メンバーを数え直し、尋ねる。そうだ、この場には女性陣は五人しかいない。

 

「あとから来るはずだ・・・たぶん。とにかく、ルールの説明に移る。お前らには決着がつくまである都市にいって戦ってもらう。それがどこかはオレにもわからねぇが・・・都会でも田舎でもねぇ地方都市だと思う。そして、二週間は体裁を整える準備期間とする。その後はいつでもどこでも戦闘OKだ。ただ一般住民もいるから、真っ昼間は避けたほうが良いと思うがな。それと・・・」

 

「ちょっとまってください!」

 

シリカが挙手して話を遮る。

 

「戦闘ってことは実際に戦うんですか?それだとあたし、勝ち目がない気がするんですが・・・」

 

ーーーーー確かにそうだ、それに強さで正妻を決めるというのも納得できない。

 

説明を聞いていた全員が思ったことだった。

 

「いや、説明する順番を間違えた、すまねぇ。お前らには、「キリト」で戦ってもらう。」

 

「はい?」

 

シリカが、言っている意味がよくわからない、というように疑問符を浮かべる。

 

「簡単に言うとだな、それぞれが「キリト」として強く印象を持っている姿のキリトを相棒として戦うんだ。つまり、これがわたしにとっての「キリト」!ってわけだ。」

 

なるほど〜、と女性陣が頷く。

 

「それもあんたのバカみたいな夢の中だからできるってわけね・・・」

 

リズがぽつりとつぶやく。

 

「これで大体説明は終わったが・・・遅えな・・・」

 

「誰がよ」

 

「アリスとキリトの後輩の・・・なんだったか・・・」

 

えーっと、とクラインが頭をかく。

 

するとアスナがハッとして言う。

 

「もしかしてロニエさんのこと・・・!?」

 

「そうだそうだ!ロニエだ!」

 

まさかあの二人まで参加するなんて・・・、とアスナが考えていると。

 

「もう始めちまえばいいか!よし、それぞれバラバラのとこに飛ばすからな、味方でいるのは今のうちだ。挨拶でも済ましとけ。」

 

「・・・あんた、そういうとこだけは優しいのよね・・・。」

 

とリズが苦笑い。

 

 

 

ーーーーー数分後

 

 

 

「よっし、じゃあ飛ばすぞ。」

 

「あ、ちょっとまってください。」

 

シリカが止めた。そして隣に立つリズの手を取る。

 

「リズさん、お互い頑張りましょうね!あたし、リズさんとなら、どんな結果になっても仲良しのままでいられる気がするんです!」

 

「シリカ・・・。」

 

リズの目元が光った。普通だったらちょっと感動するシーンなのだろう。

・・・だがそれをぶち壊すのは、やっぱりあの男だった。

 

「何いってんだお前ら。お前らは二人一組だぞ?」

 

「「・・・え?」」

 

「だってお前らってさ、いつもセットじゃん?」

 

 

「「うそぉぉぉぉぉぉっぉおぉ!?!?」

 

 

その叫びを最後に彼女たちの魂は遥かな地へと飛んだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーー衝撃のあまり彼女たちは気づけなかった。

 

彼女たちが二人一組で参加するのなら、あとからアリスとロニエが来たとしても数が合わないことに・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 3日連続の投稿となりましたが、次回からは不定期になります。
 4話はなるべく早く出したいと思っているので、来週中には投稿すると思います。


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第四話 観戦者たちの憂鬱

 





 

ーーーーーまさか、クラインがそんなことを考えていたとは・・・・・というかオレが悪いのか?

      

俺は意外にもあっさりとバレた事件の黒幕にも衝撃をうけたが、その言い分にとても納得はできなかった。

だが、それよりも俺は「正妻戦争」とやらについてひとつだけどうしても言いたかった。

 

「あのさ…」

 

一度呼吸を整えて、俺はこの場で唯一会話ができる相手、茅場晶彦に向かって叫んだ。

 

 

「・・・・・俺の意思は!?」

 

「・・・・・」

 

茅場はあいかわらず真顔で、黙ったままだった。

しかし、俺はそんなことはお構いなしにまくしたてる。

 

「俺の意思は!?俺の正妻なんだよね茅場さん!?アイツラ何勝手に決めちゃってんの!?」

 

「落ち着けキリトくん!キャラが完全に崩壊しているっ・・・・!!!」

 

「____________________」

 

 

 

 

 

*****しばらくお待ち下さい*****

 

 

 

 

 

 

「えっと・・・・すまない・・・茅場。」

 

俺はやっと落ちついた。一応茅場にも謝っておく。

 

「君が素直に謝罪するとは珍しい。だが、一つ言っておこう。今回の件については、君の意思が尊重されないのは当然といっていい。」

 

茅場は妙に冷たい声で言った。

 

「なぜだ・・・!?俺は特に何もした覚えはないぞ・・・?」

 

実際、本当に茅場の言っている意味がわからなかった。

 

「・・・それだよキリトくん。その無自覚さが、今回の件を招いてしまった。君自身はアスナくん一筋のつもりかもしれないが、どうやら周りの女性たちのほとんどに思わせ振りな態度をとっているようじゃないか。特にゲーム時空で。」

 

「そんなつもりは・・・」

 

本当になかった。というかゲーム時空とは?

 

「そんなつもりはない、か・・・・無自覚系ハーレム主人公とはそういうものなんだろうな。」

 

「茅場・・・?」

 

先程の会話の中で違和感を感じて考えたところ、今のこの状況と全く関係のない疑問が、頭に浮かんでしまった。

 

「なんかおまえもキャラ変わってないか?」

 

「・・・・気のせいだ。」

 

茅場は真顔を保っていた。本当によく分からない男だ。

 

「なあ、ところであんた最初にこの世界がある人物の強い意志によって作られた、とか言ってたよな。それが結局クラインだったのか?」

 

俺はまだ、この事件がクラインの仕業ということにあまり納得できないでいたのだ。

 

「そういうことになるな。君の場合もそうだったが・・・本当に意思の力というものは私をいつも驚かせる。」

 

 

「・・・・・・アイツと一緒にするなよ・・・。」

 

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

「ふむ、どうやら成功したようじゃな。」

 

学者のような格好をした幼い少女が、ホッと息をつく。

するととなりに立つ女性ががっくりと肩を落として言う。

 

「はあ・・・・なぜ私だけ・・・」

 

彼女の名前はソルティリーナ・セルルト。修剣学院時代のキリトの指導生だ。

 

                     ・・

「しょうがないじゃろう、向こうへ送れるのは3人が限界だったのじゃから。」

 

特徴的な口調の彼女はカーディナル。通称・もうひとりの最高司祭だ。

カーディナルは遠くを見るように目を細め、悲しげな表情でつぶやく。

 

「・・・・・できることならわしも参加したかったのじゃが・・・」

 

「カーディナル様・・・・?」

 

カーディナルは未練を振り払うように首を振り、

 

「今から言っても仕方のないことじゃ。わしらは戦いの結末を見届けるとしよう。」

 

と言うと、あいかわらず未練たらたらなソルティリーナの肩を叩いた。

 

 

 

 




 えー、予定よりも早く書けたので出しました。今のところ最高傑作です。
 少し短くなってしまいましたが、書きたいことは書けたと思います。

 さて、次回からはいよいよ舞台が移ります。やっとという感じですね。早くバトルシーンが書きたい・・・
 


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第2章 正妻戦争 開戦前
第五話 開戦前 ーアスナとリーファー


どうも、玖蘭 蒼です。四日ぶりの更新です。

今回からは正妻戦争開戦前のヒロインたちの様子をお届けします。
本当は早くバトルシーンを書きたいのですが、省略というわけにもいかないので・・・・・・


 

 

 

「あれ・・・?ここは・・・・・」

 

アスナが気がつくと、そこには見知らぬ街並みがあった。

 

ーーーーたしかクラインさんの話を聞いたあと・・・・

 

「じゃあ、ここが戦いの場所・・・」

 

クラインの言ったとおりなんの変哲もない、どこにでもありそうな地方都市である。

アスナはその郊外の住宅街にいた。

 

「ほんとうにこんなところで戦うの・・・・?」

 

見える限り、住宅街は平和そのものだ。散歩の老人や下校中の小学生の集団。争いなんてまるで起こりそうもない。

アスナはとりあえず周辺を見て回ることにした。

 

住宅街を抜けると、大通りに出た。それなりに発展しているようで、コンビニやファミレス、書店などの店が並んでいる。

アスナの足は自然とコンビニへと向いていた。

 

中に入ると、おなじみの入店音が流れる。

ふと、新聞が目に入った。日付を確認する手段の鉄板である。

 

日付はーーーーー

 

 

平成17年 6月22日 水曜日

 

 

アスナが生まれる、二年前だった。

 

「はあ・・・やっぱり・・・・」

 

街並みを見たときに違和感を感じたのはこのせいか・・・

見知らぬ場所に飛ばされたのだ。時間の移動にさして驚きはなかった。

 

そういえば時間はわかったが、ここは日本のどこなのだろう。

何も買わずに出るのはなんとなく気が引けたが、アスナは店を飛び出し入り口の自動ドアに書いてある店名を見た。

 

「フレンドマート ー桐崎東店ー」

 

ーーーー桐崎・・・!?

 

アスナは自分の記憶を探し回ったが、そんな名前の都市は聞いたことがなかった。

ポケットをまさぐり、スマートフォンを取り出す。

 

 

ーーーいくら調べても、桐崎市という地名は出てこなかった。

アスナは少しばかり期待していたのだ。さっきまでの話は全て悪い夢、もしくは誰かの悪ふざけなんじゃないかと。

 

「みんなと戦うなんて、私には出来ないよ・・・」

 

しかし退路を断たれた以上、覚悟しなければならない。

 

「みんなとは戦いたくない、でも・・・」

 

「でもキリトくんは誰にも渡したくない、ですか?」

 

「・・・・・!?」

 

いきなり横から聞き覚えのある声がして、アスナはおもわず身構えた。

そこには、金髪のポニーテールの少女がいた。

 

「リ、リーファちゃん!?」

 

桐ケ谷直葉ことリーファは、まくしたてるように言う。

 

「いいですか、アスナさん!いつまでもそんな甘いこと言ってるからだめなんです!キリトくんを渡したくないなら、自分の力で手に入れるんです!戦いたくないだなんて言ってる場合じゃないんですよ!」

 

「リーファちゃんはそれでいいの!?だって、だって・・・」

 

「私にはお兄・・・キリトくんを手に入れるほうが大事です。」

 

「そんなっ・・・・!!でも・・・!」

 

いつまでも悩み続けるアスナに、リーファもかすかに苛立ちを覚える。

 

「この前の決心はどうしたんですか!?それともあなたにとってキリトくんはそこまでのものじゃないと!?」

 

「・・・!!」

 

その言葉は、葛藤するアスナの心にかなりの衝撃を与えたようだった。

 

「・・・・・場所を変えましょう、アスナさん。」

 

いつの間にか周りには人が集まってきていた。大通りのコンビニの目の前なのだからとうぜんだろう。

リーファがアスナの手を取って歩き出そうとすると、強引にその手が振りほどかれた。

 

「・・・・その必要はないわ。」

 

アスナはキッと前を見て言った。

 

「ごめんね、リーファちゃん。私、やっぱりキリトくんは誰にも渡したくない。だから・・・・戦う。」

 

アスナの目からは確かな決心が読み取れた。それをリーファも感じ取ったようで、

 

「・・・・今度こそ、信じますよ。」

 

と言い残し、彼女は去っていった。

 

 

 

 

一方、そのやり取りを影で見ていた人物が二人・・・

 

「あーあ、わざわざ敵に決心を固めさせるなんて、何やってんだかあの子は。」

 

「敵に塩を送るってやつですね!リーファさんはやっぱり正々堂々と戦って勝ちたいんですよ。」

 

リズベットとシリカはコンビニに停車している車の影に隠れていた。

アスナとリーファのやり取りに集まってきた人たちにめちゃくちゃ怪しい目で見られているのだが、会話に夢中な2人は気づかない。

 

「にしても怖かったわねぇ、あのリーファの剣幕!」

 

「うぅ、あたし、戦っていく自信がなくなってきました・・・」

 

彼女たちはアスナを見かけて声をかけようとしたのだが、リーファの剣幕に押されて、出るに出られなかったのだ。

 

「大丈夫よ!なんたってあたしたちだけ2人なんだから!」

 

「そ、そうですよね!なんとかなりますよね!2人ですから!」

 

表面上は笑いながらも、裏で二人は同じことを考え、お互いに言えないでいた。

 

ーーーーあれ、あたしたちが勝ったら、正妻決まらなくない・・・・?

 

ということはつまり・・・

 

 

 

ーーーーあたしたちが勝つことはないと思われてる・・・・!?

 

 

 

 





正妻戦争で勝てない。それはサブヒロインの宿命。


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第六話 開戦前 ーシリカとリズベットー

ーーーーヒロインたちが桐崎に降り立ってから一週間が経過した、6月29日。彼女たちはそれぞれ住居・収入源を確保し、順調に準備を整えつつあった。

 

一週間が経過してわかったことは、

 

・この場所ではSAOやALOのようにメニューウィンドウが開けること

・ヒロインたちは全員がアバター姿であること。

・身を守るための帯剣は可能だが、防具は身に着けられないこと。

・キリトしかソードスキルは使用できないこと。

・戦う手段であるキリトを呼び出すには自分の中のキリトのイメージを確立させ、はっきりと思い浮かべなければいけないこと

・アリスとロニエはどうやらもう来ているらしいこと

・リーファ、シノン、アリス、ロニエだけがすでにキリトを連れているということ

 

おそらくリーファ、シノン、アリス、ロニエはあまり多くのキリトの姿を知らないため、イメージの確立が早かったのだろう。一方ですべての世界をキリトと渡り歩いてきたアスナや、アスナほどではないにしろSAOからのつきあいであるリズやシリカはなかなかイメージを確立させる事ができなかった。

 

 

 

桐崎市内の喫茶店ーーー

 

「見せつけるようにイチャイチャしちゃって、何なのよもう・・・」

 

リズとシリカは作戦会議のために話し合っていたのだが、そこにリーファとキリトが入ってきたのだ。

 

「でもあたしたちの場合、呼び出せても取り合いになりません?」

 

「そうなのよねぇ・・・」

 

リズがテーブルに突っ伏す。向かいのテーブルではリーファとキリトが楽しそうに話していた。

 

「あれがリーファさんが呼び出したキリトさんですか・・・」

 

そこにいるキリトは、リズやシリカにはあまり馴染みのない姿のキリトだった。

黒ずくめの姿はあいかわらずだが、ツンツンと逆立った髪に吊り上がった目、浅黒い肌・・・・・・やんちゃな少年といった雰囲気だ。

 

「ALOでユイちゃんに言われて髪下ろす前のでしょ?

 確か、アスナを助けに行ったときにリーファと知り合ったって言ってたから、やっぱりリーファはあれに思い入れがあるんじゃないかしら。」

 

「あたしたちは、どうなるんでしょうね・・・」

 

シリカは不安そうにつぶやく。

 

「あたしたちの場合、二人の思い浮かべるキリトを一緒にすればなんとかなるような気がしなくもないけどねぇ。」

 

彼女たちは二人一組で参加しているがゆえに、二人のイメージするキリトに食い違いが起こってなかなかうまくいかないのだ。

 

「じゃあ、リズさんの思い浮かべるキリトさんは、どれなんですか?」

 

「もちろんSAOの黒の剣士(二刀流)に決まってるじゃない!」

 

それ一択!という風にリズが得意げに言う。

それを聞いたシリカは、

 

「はあぁ〜、やっぱりそういうことですか・・・・」

 

とため息をつきながら言う。

リズはシリカの言っている意味がよくわからないのか首をかしげている。

 

「よく考えてみてください。そのキリトさんはほぼほぼアスナさん専用みたいなものじゃないですか。おそらくすでにアスナさんが呼び出したか、優先されてるんだと思いますよ。」

 

「えー!そんなのズルいじゃん!」

 

「・・・・・あたしたちが七人に入れた事自体がもう奇跡なんですからそこは譲りましょうよ・・・」

 

「えーー・・・・」

 

リズは納得がいかないようで、必死に足をばたつかせて駄々をこねていた。

 

彼女たちの参加は、一生懸命に「MORE DEBAN」と書かれた看板を掲げる彼女たちを見たクラインが同情して与えてくれた枠なのだが、それは知らないほうが良いだろう。

 

「じゃあ一体どうするっていうのよ。」

 

リズの問いかけに、シリカは少し悩んでから切り出す。

 

「まずはキリトさんたちについて整理しましょう。」

 

シリカはテーブルの横においてあるナプキンを一枚取り出し、お客様アンケート用のボールペンも一緒にとって、次のような表を書き始めた。

 

 

 

アスナ  SAOー黒の剣士ー二刀流       リーファ ALOーツンツンヘアー

 

シノン  GGO                アリス  UW ?

 

ロニエ  UW ?

 

 

 

 

「こんなところですかね・・・」

 

書き終えたシリカはどうも腑に落ちない様子で図を眺めていた。

 

「この「UW ?」ってのは何?」

 

リズが質問するとシリカは思考を中断し、答える。

 

「えーと、アリスさんとロニエさんは今の所まだ会えてませんけど、ふたりがしっているのはアンダーワールドのキリトさんだけなので、その中の誰かって意味です。」

 

「へー、でもよくよく見ると、いくらいろんなアバターを持つキリトでももうそんなに残ってないんじゃ・・・・」

 

「確かに・・・・あと考えられるのは、SAOであたしと出会った頃のキリトさんか、ALOの今のアバター・・・・・・あっ! それとオーディナル・スケール!」

 

すっかり忘れられていた、「現実世界」のキリトの存在を思い出したようだ。

 

「でも、あたしたち的にはやっぱALOよねぇ。」

 

「まあ・・・そうですかね。」

 

リズの意見に賛同しながらも、シリカの目はさっき書いた図に向けられていた。

何か引っかかるらしい。

 

「ねぇ、リズさん。あたしたち、2人1組ってことは1人扱いなんですよね?」

 

「呼べるキリトが1人分なんだからそうでしょうよ。」

 

シリカはもう一度図を眺め回す。そして結論に辿り着く。

 

「・・・リズさん。この戦いに参加している人数が、どう考えても6人なんですけど・・・」

 

「え?そんなわけないでしょ。クラインのやつだってそういうところはちゃんとしてるじゃない。」

 

「リズさんって意外とクラインさんへの評価高いですよね。」

 

「今関係ないでしょそれ!」

 

「あはは・・・すいません、つい・・・」

 

おほん、と咳払いをして、シリカは一呼吸置いてから再び話しだした。

 

「リズさん、とりあえずこの戦いに参加している人の名前をあげてみてください。」

 

「え?あたしとシリカ、それにアスナとリーファとシノンと・・・アリスとロニエ?」

 

「何人になりますか?」

 

「えっと・・・七人?・・・・・・ってあれ?あたしたちが1人扱いってことは・・・6!?」

 

「やっぱりおかしいですよ!」

 

「いやぁ、でもクラインのことだから、数え間違えただけじゃないの?」

 

「・・・そうでしょうか・・・ならいいんですけど・・・・・・」

 

こうして、シリカだけがモヤモヤしたまま会議は解散となった。

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

「カーディナルさん、ありがとうございます。わがままを聞いてもらって。」

 

「良いのじゃ、礼ならそこで意気消沈している奴に言え。」

 

「もう大丈夫ですって!カーディナル様!」

 

 

「しかし驚いたな・・・まさかお前が・・・」

 

「__________」

 

「____________________」

 

 

「_______」

 

 

 

 

 

 

 

 





どうも、玖蘭 蒼です。
今回もヒロイン達の開戦前の様子でしたが、それもあと2話で終了、の予定です。このまま一週間に2話くらいのペースで行けるようにがんばります。

次回はついに7枠目のあの人が登場です。


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第七話 開戦前 ーシノンとアリスー

ーーーーこれは前回の話の一週間前、つまりヒロインたちが桐崎へやってきた日、6月22日のことである。

 

 

その日シノンが目覚めた場所は、不運にも桐崎市内の高校の教室だった。時刻は17時12分、幸い教室には誰もいないようだったが、早く出なければただの不法侵入者だ。

 

「あいつ・・・場所くらい考えなさいよ・・・・」

 

あいつとはもちろんクラインのことである。

シノンはため息をつき、とりあえず教室を出ようとした。

 

その時、突然教室の後ろ側の扉から女子生徒が入ってきた。

 

ーーーーまずい、隠れないと・・・!

 

しかしもう間に合わない。諦めたシノンは、無言で歩いてくる女子生徒に顔を向けた。

 

「・・・・!?」

 

シノンはその女子生徒を知っている。彼女はーーーーー

すると、1mほどまで近づいてきた女子生徒が、ようやく口を開く。

 

「目が覚めましたか、シノン。」

 

「アリス・・・」

 

そう、そこにいたのは整った顔立ちをした金髪碧眼の少女、アリスだった。

しかしなぜ制服を着ているのか。

 

「逃げたり隠れたりする必要はないと思いますよ。私達は、この学院の生徒の扱いのようですから。あのクラインという男も、案外ちゃんと考えているのですね。」

 

「生徒・・・?」

 

シノンは自分の服装を見下ろした。

彼女は、アリスと同じ制服を着ていた。ブレザーの胸の部分には星のようなマークが付いていた。校章だろうか。

 

「あなたはどうしてここにいるの?」

 

「私もこの教室で目覚めたのですが、となりにいたあなたが全く起きる気配がないので他の教室へ言ってみたのです。そうしたら、こんなものが・・・・」

 

アリスは手に持っていたプリントの束を、シノンに渡した。

 

「・・・・これってクラス名簿じゃない。」

 

アリスは目覚めたあと、せっせと放課後の教室を回ってクラス名簿を拝借してきたらしい。

 

「それって勝手に持ってきたらまずいんじゃ・・・」

 

「そうなのですか?大きな机の上に置いてあったので、てっきり持っていって良いものかと。」

 

アリスはきょとん、とした顔で言う。アリスの凛々しい騎士としての姿を見てきたシノンにとっては、なんだか拍子抜けだった。

 

「後で返しに行くわよ・・・・」

 

不満そうな顔をしたアリスだったが、すぐに表情を戻して、話すことを思い出したようだ。

 

「そうでした。シノン、これを見てください。」

 

アリスが指を指したのはこのクラスの名簿だった。

 

 

2年6組 1番 ーーーー

     2番 朝田詩乃

     3番 アリス

     

 

     8番 桐ヶ谷和人

 

 

 

「桐ケ谷・・・・和人・・・!!」

 

「次に、これを見てください。」

 

 

2年2組 1番 ーーーー

     2番 ーーーー 

 

     

     9番 桐ヶ谷和人

 

 

 

「え・・・?どういうことよ・・・これ・・・」

 

「これだけではありません。1組と9組にも同じ名前がありました。そして・・・」

 

アリスは机の上にプリントを広げ、制服のポケットから取り出したマーカーで線を引き始めた。

彼女が何をしているのか、一体何を言いたいのか、シノンにはなんとなくわかっていた。

 

 

「できました。これをみてください。」

 

                 

そこにはプリントの束から取り出した8枚にマーカーで線が引かれていた。

 

 2年1組 2年2組 2年6組 2年9組

 

 1年1組 1年3組

 

 3年7組 3年9組

 

 

「このクラスに、キリトや・・・アスナ達がいるのね?」

 

「そういうことのようです。この学院にいるのは、私達、シリカ、リーファ、ロニエ、アスナ、リズベットとキリト4人・・・・しかしキリトは全員が不登校の扱いになっていました。」

     

「どこで知ったのよそんなこと・・・」

 

アリスが答えようとしなかったので、シノンは触れないでおこう、と思いあまり深く突っ込まなかった。

 

「おそらくですが・・・私達が呼び出すというキリトのための学籍ではないかと思うのです。あの年齢で学校に行っていないというのも、リアルワールドでは不自然のようですし。」

 

「中卒で働く人も一応いるけど・・・・いえ、なんでもないわ。でもそうなると、なんで4つしか学籍がないのかしら?」

 

「それについては、私やロニエが19歳以降のキリトしか知らないためかと思ったのですが・・・・」

 

「あぁ、そういうことなら納得できるわ・・・ね・・・・?」

 

 

何かおかしい。そう思った。

 

「ねぇ、アリス。」

 

「なんですか?」

 

「この学院に籍があるキリトは4人なのよね?で、アンダーワールドから来たあなた達は、2人・・・?」

 

「はい・・・・あれ、おかしいですね。それでは数が合いません。」

 

「いや、もしかしたら私達のうちの誰かが19歳以降のキリトを呼び出すつもりなのかもしれないわ。」

     

「・・・・そう、ですかね。その可能性は低いと思いましたが・・・」

 

「でもそうならないと数が合わないもの。アスナとリーファ、私はたぶんもうどのキリトにするか決まってる。リズとシリカは・・・・多分アンダーワールドとかではないんじゃないかしら。だからこれで4人になって、残った・・・・・あれ?誰が残ったの?」

 

「誰も残りませんね・・・・どういうことです?」

 

「どれだけ数えても、そもそもこの正妻戦争への参加が7人になってないわ!シリカとリズベットがひとりあつかいになったんだから、当然だったのよ・・・・」

 

「・・・・!!思い出しました、シノン!たしかカーディナル様が私達2人をこちらの世界へ送ったときにおっしゃっていたんです。もうひとり自分に「こんたくと」を取ろうとした者がいる、と。」

 

「アンダーワールドから・・・・・もうひとり・・・!?」

 

「私は意識を失う直前、その姿を見たはずなんです・・・・・ぅ・・・・!?」

 

 

突然硬直し、目を限界まで見開くアリス。その視線の先には・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜麻色の髪の少年がいた。

 

 

 

 

 

 

「エンハンス・アーマメント」

 

 

 

 

 

 

 

シノンは、かすかに聞こえたキン、という音と、その直後に発せられた短いその言葉だけを聞き、意識が途絶えた。

 

 

1枚のプリントが舞い上がった。

 

 

 

 

 

 

2年3組   1番 ーーーー

      2番 ーーーー

      3番 ーーーー

 

 

 

 

      39番 ーーーー

      40番 ユージオ

 

 

 

 

 

 

 

彼はそれを手に取りーーーーー

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

氷漬けになった教室の中で、その少年ーーーーユージオはしばらく床に突き立てた愛剣に体を預けて何か呟いていた。

しかし突然フラフラと立ち上がったかと思うと、後方のドアを睨みつけた。

 

「ひっ・・・・!」

 

ドアの背後からかすかな悲鳴が聞こえた。

 

「ごめんよ・・・・・・こうしなきゃいけないんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

「ディスチャージ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シノンとアリスという珍しい組み合わせでしたが、どうだったでしょうか。
シノン視点で書くのが意外と難しかったのですが、ユージオをやっと登場させることができて良かった・・・・・。


アンケート実施中なので、よければどうぞ。


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第八話 開戦前 ーロニエとあの人ー

 どうも、玖蘭 蒼です。開戦前編、最後となります。
 今回はだいぶ短くなっています。ちなみにいま番外編も書いているので、そのうち出します。




 



 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、早くっ・・・逃げなきゃ・・・・・・!」

 

6月22日ーーーー北セントリア帝立修剣学院・初等錬士ロニエ・アラベルは、見知らぬ土地の見知らぬ場所を全力疾走していた。

 

彼女はシノン達が目覚めた高校の教室のちょうど下にあるゼミ室で目覚めた後、出口を探してさまよっていた。

 

その時に見てしまったのだ。

もう二度と会うことはないと思っていたあの人によく似た人影が、目の前の教室に入っていくところを。

まさか、と思い追いかけて教室を覗くと、そこにはーーーー

 

氷漬けになった教室の風景があった。

 

ーーーー間違いない、あの人だ・・・・・・!ユージオ先輩だ・・・!

 

ロニエは困惑しながらも安堵し、ドアの影から出ようとした。

              ・・

しかしロニエは、彼の隣にあるものを見てしまった。

氷漬けになった二人の女性ーーーーアリスとシノンだった。

 

「え・・・・」

 

ロニエは目の前の光景が一瞬理解できず、硬直する。

 

ただ、彼女の直感は告げていた。今見つかったら、確実にーーーーー

ロニエの心臓の鼓動が、速まる。

極度の緊張状態に陥ってしまった彼女の呼吸はどんどん荒くなっていく。

恐怖で動けない。

 

ーーーその時

彼がこちらを見た。

 

「ひっ・・・・!」

 

恐怖のあまり声が出てしまった。

 

「ごめんよ・・・こうしなきゃいけないんだ。」

 

その一言でわかる。彼は正気だ。別におかしくなっていたり、どっかの最高司祭さんに記憶をいじられていたりしてるわけではないようだ。

 

その事実が、ロニエの恐怖を少し和らげた。

彼が術式を唱えようと口を開いたその瞬間、ロニエは駆け出す。

 

「ディスチャージ」

 

打ち出された氷の矢は、ロニエの肩をかすっただけだった。

ロニエは振り向かずに走り続けた。ユージオも深追いする気はなかったようで、もう見当たらなかった。

 

 

 

 

 

ーーーそして現在

 

「あった・・・!出口・・・!」

 

構造の複雑な校舎を抜け出し、ようやくロニエは外へ出た。

 

見慣れない景色。玄関から見える校門のさらに奥には道があり、ロニエにとっては馴染みのない色とりどりの大きな物体が高速で行き交っていた。

 

「ここが・・・・りあるわーるど・・・なの・・・?」

 

リアルワールド人にとっては日常となっている自動車も、彼女にとっては孤独感と恐怖を増大させるだけだった。

この世界へ来た目的すら忘れ、ロニエは泣き始めた。

 

「助けて・・・・キリト先輩・・・」

 

 

 

 

 

 

「・・・ロニエ。」

 

 

 

 

「・・・ぅえ・・・・?」

 

ロニエは振り向く。そこには・・・・

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「泣くなよ、ロニエ。俺で良ければ力になるから。」

 

上級修剣士・キリトがいた。

 

「キリト先輩・・・・!」

 

思わずロニエは彼に抱きついた。キリトはそんな彼女の頭を撫でながら、玄関の方をちらっと見る。

 

ーーーーーユージオ・・・・?

 

 

一瞬見慣れた亜麻色の髪が目に入ったような気がした。

 

ーーーー気のせいか・・・?

 

                        

それよりも今は、目の前の少女のことが大事だっ

  ・・・・・・・

た。いつでも会える相棒よりも・・・・

 

 

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

 

「・・・・・・キリト・・・・僕の・・・親友・・・・・」

 

「僕の・・・・・英雄・・・」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


 そういえば、ユージオを出した途端一気にアクセス数や感想が増えたのは、メインヒロインの力でしょうか?



 挿絵の使い方がよくわからなかったので、なにか問題があればご指摘お願いします。




 


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第3章 正妻戦争 開幕
第九話 開戦の日



どうも、玖蘭 蒼です。
今回はだいぶ投稿が遅くなってしまいましたが、その分ストックが溜まったので少しは早くなるかも・・・


そういえば本日発売のSAO一番くじ早速引いてきました。
フィギュアは出なかったですがクッションと色紙とラバストでキリユジでたので満足です。





 

 


 

 

 

 

 

西暦2005年7月6日ーーーーー

 

正妻戦争、開幕

 

 

 

その日の朝、アスナは桐崎市内のアパートの一室で目覚めた。

傍らにはーーーーそう、キリトがいた。

相変わらずの黒ずくめの格好に、寝るときくらいどうにかならないものかと思いながらアスナは彼の頬をつつく。

今のアスナから見ると、彼はだいぶ幼く見えた。どちらかと言うと弟のようだ。

それも仕方ない、彼女が呼び出したのはSAOクリア時、つまり16歳のキリトなのだ。それに対し今のアスナの年齢は18歳ーーーー数字的には1年しか変わらなくとも、その間に色々なことがありすぎた。

当然、思い出したくもないことまで。

 

「・・・・ん・・・・アスナ・・・おはよう・・」

 

「おはよう、キリトくん。」

 

そう言ってアスナは布団から出る。

 

「朝ごはん、何が良い?」

 

「何でも良いよ、アスナの作るものなら。」

 

「もう・・・・それが一番困るんだけどな〜」

 

そんな平和な会話を交わし、アスナは台所に立つ。

冷蔵庫から卵を2個取り出すと、それを計量カップに割り、菜箸を使って器用に混ぜる。

十分に溶いた卵を加熱したフライパンに・・・

 

「・・・その描写、いる?」

 

 

ちょ、菜箸おろして!こわい! てかこっちみんなっt・・・・あ、すみません冗談です何も言ってないです

 

 

「どうした?アスナ」

 

「ううん、なんでもないよキリトくん。もうちょっとでできるから待っててね。」

 

切り替えはy・・・・ちょっ、待って、冗談です何も言ってn

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「ちょっとシリカ!今日はあたしの番でしょ!」

 

「良いじゃないですか、ちょっとくらい!リズさんのケチ!」

 

「いやぁ、あっははは・・・」

 

最後の苦笑いはキリトである。

真っ昼間の商店街を女の子二人連れでいちゃつきながら歩くと、ほぼすべての買い物客の視線を集めることができるとこれで証明された・・・・じゃなかった、えーと・・・・・

 

開戦前ギリギリの一昨日になってようやくキリトを呼び出すことに成功したリズベットとシリカは、今までの借りを返すかのように遊びまくった。もはや戦いのことなど忘れ、今日が開戦の日だということもすっかり忘れていた。

 

 

 

 

 

そして、うっかり夜に無防備な状態で外に出てしまったーーーーーーリズベットが。

 

 

シリカがリズの不在に気づいたのは、次の日の朝になってからだった。だって10時には寝てたもの。

 

 

「リズさん・・・おはよー・・・・あれ?散歩かな・・・」

 

部屋を見渡すが、人の気配はない。時計を確認すると、針は8時12分を指していた。

 

「まあ、すぐ戻ってくるでしょ・・・・二度寝二度寝・・・・」

 

おい、10時間寝てまだ寝るか・・・

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「ふぁ〜、おはよう・・・お兄ちゃん・・・」

 

「おはよう、リー・・・スグ。」

 

これまた別のアパートの、リーファが借りている206号室。

 

「なんかその姿のキリトくんに「スグ」って呼ばれるのって変な感じ・・・」

 

「お前がそうしろって言ったんだろ?こっちだってリーファって呼びそうでややこしいんだよ・・・」

 

「あははは・・・それもそうだね。じゃあお兄ちゃんの好きでいいよ。」

 

そんな他愛のない会話を交わしていると、リーファはあることを思い出す。

 

「そういえばお兄ちゃん、昨日の夜中外に出ていかなかった?」

 

「ん?あ、あぁ・・・・ちょっと・・・・コンビニに・・・・」

 

「まあいいけど・・・少しは休みなよ?もう戦いは始まってるんだから。」

 

「ああ、わかってる。」

 

そう言うとキリトは、奥の部屋へ入っていった。

 

「もう・・・」

 

なんだかここ最近、キリトの様子がおかしいのだ。急にどこかへでかけたり、部屋に籠もったり。

一応リーファは母・翠から言われた、「思春期男子の部屋、開けるべからず」という教訓(?)を守ってはいるが・・・・

 

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・ヒマだなぁ・・・」

 

近くの高校に籍があるらしいことは、リーファにも伝わっていた。

しかし今日は大事な要件があるため、欠席したのだ。

 

「正妻戦争参加者会議」と題されたそれは、表向きは参加人数の確認などとされている。

しかしその実態は、戦いの裏で起こる異変に気づき始めた者によるものであった。

 

約束の時刻は、今日の13時30分。アスナが参加者全員の住所を把握し、知らせてまわったのだから驚きである。

どうやって知ったのかについては触れないでおくが。

 

 

そして、現在は午前11時過ぎーーー

 

「せっかく午前中はキリトくんとデートしようと思ったのに・・・」

 

最初の頃は彼も色んな所に付き合ってくれたのに、先週あたりからどうも付き合いが悪い。

それでもリーファは彼のいる部屋へ行くことはせず、ソファに寝そべる。

 

そしてそのまま寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の話と次回の話は一応つながっているので、明日か明後日には出せたら良いなぁと思っています。


ユイについてのアンケート、ご協力ありがとうございました!
結果は「途中参加(ママすら押しのけパパ独占へ)」に決まりました!
2位に2倍以上差をつけてましたね・・・

この結果だとキャラ崩壊しないで書くの難しすぎませんかw



あ、次のアンケート出したのでできればご協力お願いいたします。
ある人がぶっちぎるような予感しかしませんが・・・
 


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第十話 英雄、再び

 

 

 

 

 

 

西暦2005年ーーーーアインクラッド・第100層

 

 

 

 

 

 

「_________________________」

 

「________」

 

 

「______は・・・団____________」

 

「やっぱりだ・・・・」

 

「あのとき・・・いやそれだけじゃない、あたしが浮かれてなければ・・・・・・そうすれば・・・・お兄ちゃんは・・・キリトくんは・・・・みんなは・・・・・」

 

 

「リーファちゃん、過去のことをどうこう言っても仕方ないよ。今は・・・・目の前のことだけ考えるの。」

 

「・・・そうだよ、リーファ。僕だって・・・」

 

 

 

 

 

様々な光景が視界に現れ、消えていく。

そして、視界が暗転する。

 

 

またかーーーーー

 

 

いつもこの会話のところで、目の前が真っ暗になる。

 

 

 

 

 

・・・・彼の声がする。

 

 

 

 

 

「____ジオ・・____ユージオ!!___えは________のk_________ユージ___」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体・・・・何度同じ夢を見ただろう

 

最後には必ず・・・・・・あの、彼の姿が・・・

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「・・・・・っ!」

 

 

 

この梅雨の時期に珍しく晴れた。

本当なら喜ぶところだろうが、もう真夏かと思わせるような強い日差しの中を全力疾走する彼女にとっては辛いだけだった・・・

 

「もう、なんでお兄ちゃんも起こしてくれないのよ・・・!」

 

額から汗をダラダラ垂らしながら、兄への愚痴をこぼす。

 

彼女ーーーーーリーファが昼寝から復帰したときには、すでに時刻は13時20分を過ぎていた。

約束の場所は、町外れにある誰も使わないような寂れた公園だ。

よってバス停なども近くになく自転車も持っていないため、この暑さの中の全力疾走。

 

「・・っ・・・・はあっ!もう・・・・限界・・・!」

 

もう視界も霞んできた。熱中症になるのではないかと思い始める。

公園まではあと500mほどだが、こんなバテバテの姿で行っても格好がつかないので一度日陰で休むことにする。

 

「あー・・・・・暑い・・・・」

 

都合よくベンチがあったので、座って休む。残念ながら飲み物は持っていない。

 

「・・・水・・・・」

 

このままでは本当に意識が飛ぶのではないかと思い始めたその時ーーー

 

道の向こうから、人が歩いてきた。真っ黒なシルエットの中で、彼の手元だけが赤く光る。

 

ーーーーこんな町外れに・・・・人・・・?

 

こんな暑さの中黒ずくめの、しかもロングコートに身を包んだその少年はーーーーー

 

黒と赤、二本の剣を持っていた。

 

そう、どこに納刀しているわけでもなく、その手に持っていたのだ。

しかし構えているわけではない。ただ両手に持って黙々と歩いている。

彼が近づいてくるにつれ、リーファは彼に対して妙な安心感を感じていた。

 

「お兄・・・・ちゃん・・・?」

 

 

彼が目の前を通過する。一度こちらを見たような気がするが、リーファはそれよりも彼の剣に釘付けだった。

 

 

 

眩しい光の中で、その赤い剣の輝きだけが異様なほど目立っていた。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

ーーーーあの光・・・・まるで・・・・人の・・・・

 

 

 

朦朧とした意識の中で、美しい赤薔薇の輝きだけが最後まで視界に残っていたーーーー

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「みんな・・・遅いわね・・・」

 

アスナは腕時計で時刻を確認する。今は13時40分、約束の時間はすでに過ぎている。

 

「もしかして、あたしたちに奇襲をかけるつもりなんじゃ・・・!」

 

「確かに・・・ありえますね・・・!」

 

「もう・・・・今の状況じゃ、冗談に聞こえないよ?」

 

おそらく奇襲などということはしないだろう。アスナは彼女たちを信じていた。

しかしーーーー

 

「三人しか来てないのは、流石に変よ・・・・」

 

そうなのだ、この場にはアスナ、リズベット、シリカの三人しかいない。残りの参加者たちはまだ来ていないのだ。

 

「本当に全員に通知したんでしょうね?」

 

「それは、大丈夫よ・・・・ただ、手紙を見ていなかったらちょっとまずいけど・・・・」

 

アスナはこの今日のことを参加者たちに通知する際、口頭ではなく手紙を使用した。

彼女たちを信用していないわけではないが、奇襲や監禁の可能性はゼロではなかったからだ。

 

「そういえば、聞いてくださいよアスナさん!この前、朝起きたらリズさんが急にいなくなってて・・・・・心配して探し回ってたあげく、散歩してたとか言って夕方にフラッと戻ってきたんですよ!?本当、あたしの1日を返してほしいです・・・」

 

「ま、待ってよシリカ!あれは・・・・しょうがなかったんだって!ちょっと野暮用で・・・!」

 

「リズ・・・言い訳は見苦しいよ・・・・」

 

「ちょっとアスナまで!?」

 

「リズさん・・・・1日何してたのか、あたしが聞いても教えてくれなくて・・・・」

 

「そうなの・・・・?どうして・・・?」

 

「その・・・・ちょっと言えない事情がありまして・・・・」

 

「・・・・・怪しいなぁ・・・・」

 

アスナのジト目、攻撃!

 

「う・・・・・・」

 

「ま、まあなんだって良いじゃない!ちょっと用事があっただけよ!」

 

リズベットには効果がないようだ・・・・・

 

「はあ・・・・まあ良いわ。プライベートの詮索は良くないわよね。」

 

 

 

そんな調子で平和な会話を繰り広げていると、公園の入口から人の気配が。

 

 

「・・・・だれか来ましたよ・・・・・・・って・・・え・・・・?」

 

 

シリカの声に、残りの2人が振り向くと・・・・

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

「キリト・・・・くん・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


 どうも、玖蘭 蒼です。
 いかがだったでしょうか、第十話。今回は色々情報量が多くて、アイデアノートからまとめるのが大変でした。

ちなみに挿絵のキリトは、偶然の産物です。
できたときには、自分でもつい「キリトさんまじかっけぇ・・・・!」ってなりました。





 


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第十一話 問おう、誰があなたのマスターか



 大変長らくお待たせいたしました。申し訳ありません、しかもそんなに長くないです。
言い訳をさせてもらうと、定期テストがありました。少しずつ書いてはいたんですが、なかなか進まなく・・・・。
今後も不定期になるので、連日だったり今回のように月単位で空く可能性大です。(ウマ娘も始めちゃったり・・・)

そして読んでくださる方、いつも感謝しております。

では、本編の方どうぞ。



 



 

 

 

 

町の郊外に位置する公園。現在は真っ昼間である。しかしたった今、その公園にはとてつもない緊張感が走っていた。

 

 

ーーーーあれは、本当にキリトくんなの?

 

アスナは思わず彼の正体を疑った。なぜなら、目の前にいるキリトの装備がアスナの知らないものだからだ。

特に異質な存在感を放っているのが・・・・・そう、彼の左手で真紅の輝きを纏っている剣。

 

ーーーーあの剣・・・・どこかで・・・

 

「あ・・・・」

 

そうだ、あの美しい薔薇の彫刻は、あの剣ーーーーアンダーワールドにかつて存在した彼の親友・上級修剣士ユージオの形見として精神喪失状態のキリトが絶対に離そうとしなかった、青薔薇の剣と同じものだ。

 

ーーーーでも、どういうこと・・・?私の知らないキリトくんは、アンダーワールドでの最初の2年間だけ。つまりその2年間のどこかで、キリトくんがあそこまで本気を出す戦いがあったってこと・・・?

 

「・・・・っ!! まさか・・・!」

 

アスナの頭に、いつかオーシャンタートルで聞いた比嘉タケルの言葉がよぎる。

 

ーーーーだから彼はセントラル・カセドラルにある連絡コンソールを目指したんでしょう。菊さん、あなたに全フラクトライトの保全を要請するためにね。それは容易なことではなかったはずです。襲撃中のことでログは確認できませんでしたがどうやら彼は公理教会との戦いの中で仲間を失ったようです。

 

 

公理教会との戦い

 

アスナやシノンたちがアンダーワールドに降り立つ前に起こった罪人の反逆。

詳しいことは知らなかったが、人界軍の野営地で修道士たちが話していたのを聞いたことがある。首謀者がキリトとユージオであることや、本来公理教会に絶対の忠誠を誓うはずの整合騎士であるアリス・シンセシス・サーティの反逆については伏せられているようだったが、噂というのは怖いもので、キリトの素性などはすっかり知れ渡っていた。

健在だった頃の公理教会をアスナはよく知らないが、アリスやベルクーリのような整合騎士が何人もいるのだ、相当に激しい戦いだったのだろう。それこそ、彼の仲間に何人も犠牲が出てしまうような。

 

「間違いない、あれは、公理教会との戦いのときのキリトくん・・・」

 

アスナがつぶやくと、リズベットとシリカは「?」マークを浮かべた。

 

「公理教会・・・ってなんでしたっけ?」

 

「あぁ、あれよ確か・・・えーと、アンダーワールドでレンリとかの騎士が所属してた人界の統治組織。」

 

「そう、それよ。でも・・・おかしいの。」

 

「おかしい?」

 

「どういうことよ?」

 

リズとシリカがまたもや「?」を浮かべる。

 

「だって、キリトくんが公理教会と戦ったときに一緒にいたのは、アリスと・・・・・・ぁ・・・・いや・・・でも、まさか・・・・」

 

アスナは1人で考え込んでしまう。何が何だか分からない様子の2人。

 

ーーーその時だった

 

 

 

「もう話は終わったのか?」

 

「「「・・・・・!!」」」

 

キリトが、ようやく口を開いた。

考えを中断されたアスナは、直接疑問をぶつける。

 

「あなたのマスt・・・・じゃなかった召喚主は誰なの!?」

 

「聞かれて言うと思うか?・・・・・閃光。」

 

「・・・!?」

 

まさか、彼にそう呼ばれようとは思ってもみなかった。しかし、それによって抱いていた疑念はさらに確かなものになっていく。

 

「・・・・・なら、一つだけ教えて。」

 

「・・・・なんだ?」

 

そう答えると同時に、彼はこちらへ歩き出す。

だが、それに構いもせず、アスナは質問を続ける。

 

漆黒の剣から放たれるライトエフェクト。

 

「・・・・あなたは本当に・・・キリトくん・・・・なの・・・?」

 

「・・・・・・それは・・・・・」

 

彼の動きが一瞬止まる。それに合わせて手元の青い輝きが弱まる。

しかしその迷いも一瞬だった。

 

 

「俺は・・・・・・剣士キリトだ!」

 

 

青く輝く刃が眼前に迫る。

 

 

背後から聞こえる悲鳴。

 

 

そしてーーー

 

 

アスナは目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







アスナは賞金として、1030円支払った.......

疲れて動けなくなった瀕死のポケ○ンたちをかばいながら、アスナは急いでポ○モンセンターに戻るのであった......





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第十二話 オリジナル

投稿が遅い上に短い
自分から見ても最悪です。原因?ウマ娘ですね。
真面目に言うとTwitterやなろうの方が忙しく、手が回りませんでした。
ストーリーはちゃんと構築してあるので書くだけなんですけどね、なかなか・・・



 

 

 

アスナの心には、いつも彼の姿があった。

 

黒一色に身を包み、二刀を構える頼もしい背中。

いつからか、アスナは自分の心の支えとして過去を、あの浮遊城での彼の存在を求めるようになっていた。

 

つまり、彼女はーーーー

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

「アスナ・・・!」

 

今まさに、自分の最愛の人の手によって、親友が殺されようとしている。

リズベットは、当然間に割って入ろうとした。

 

しかし、足が動かない。

 

ーーーーどうして・・・・!?

 

隣りにいるシリカは、状況が飲み込めないのか完全にパニック状態になっている。

 

ーーーーいったいどうしたら・・・・!

 

 

ふと、耳元で声がした。

 

 

「どうして彼女を助けようと思うんだい?」

 

 

「・・・!?」

 

 

とっさに振り向こうとしたが、足が動かないため相手の顔は見えなかった。

 

 

「誰なの・・・?」

 

「その前に、質問に答えて。」

 

 

どうして彼女を助けようと思うのか。さっき彼はそう聞いた。考えることもなく、リズベットは答える。

 

「そんなの、仲間だからに決まってるじゃない。」

 

「・・・仲間・・・・・か。でも、正妻戦争に勝つためには彼女は一番の脅威だ。違うかい?」

 

「あなた・・・どうして正妻戦争のことを!?」

 

「それは・・・・・・」

 

彼の声が途切れた。その後まもなく・・・

 

 

「俺は・・・・・・剣士キリトだ・・・・!」

 

 

アスナとなにか話していたらしいキリトが、叫びとともに彼女に切りかかった。

 

「アスッ・・・・・・!!」

 

リズベットは手を伸ばして叫ぶ。

 

しかし刃がアスナに迫ったその瞬間、視界は閃光で覆われた。

拡散する激しい光。

 

「くっ・・・・・・・!」

 

背後にいた彼も予想外だったらしく、かすかなうめき声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

拡散した光が収縮し、アスナの元へ集まって行く。その光の粒子は少しずつ人の形を作っていき・・・

 

「キリ・・・・ト・・・?」

 

そこには黒のロングコートをはためかせ二刀を背に吊るす少年、そう、彼もまたキリトである。

 

「まさか・・・・オリジナル・・・!?」

 

後ろから聞こえたかすかなつぶやき。

 

「オリジナル」

 

これが何を意味するのか今のリズベットにはわからなかった。

しかしその言葉に過剰に反応したものが一人。

アスナを襲ったあのキリトだ。

 

「そんな・・・オリジナル・・・!?おい、どういうことだユージオ!」

 

「僕は・・・僕は知らない・・・あの人の仕業だ、きっと」

 

「くっ、一旦引くぞ!」

 

するとリズベットを拘束していた謎の感覚は消えた。それと同時に、二人は姿を消した。

 

ーーーー何が起きたの・・・?

 

本当に、何が起きたのかまだ半分も理解できない。実際、まだアスナが襲撃されてから、まだ一分と経っていないのだ。しかしそれを考えるよりも、今はやるべきことがある。

 

「アスナっ・・・!!」

「アスナさんっ!」

 

シリカと二人揃って彼女たちの元へ駆け寄る。

 

そして二人がアスナの元へたどり着いたとき、彼女は泣いていた。

となりに立つ彼のことを見つめながら、あふれるほどの涙を流していた。

 

その光景を見たリズベットが感じたのは、今思えば少しばかりの恐怖だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 




今後もこの作品はメインで書くことにはならない可能性が高く、投稿が遅いと思われます。
万が一期待してくださっていた方がいれば、申し訳ありません。
ただもっとなろうで文章力を鍛えてからちゃんと書きたいとは思っています。
では、これからもよろしくお願いいたします。


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