呉爾羅ですが、なにか? (VSシリーズ)
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転生したら、トカゲだった件

あらすじを確認したうえで、ご覧ください。


私はゴジラが好きだ。

 

今は華の女子高生である私だけど、昔からゴジラの映画を好んで視聴している。

ゴジラについての知識を網羅しているわけではないし、ゴジラに関連するグッズをともかく買い漁ったりするようなこともしていない。

だけど、ゴジラという圧倒的な存在が出てくる映画が好きで、暇さえあれば観ている。

 

ストレスがたまっている時は、ゴジラを見て発散させてきた。

勉強にやる気を出せない時も、ゴジラ映画を横目で視聴しながらだと進んだ。

冗談でもなんでもなく、ゴジラは私のエネルギー源だと思う。

 

今こうして古文の授業を受けている時も、思考の一つでゴジラの戦闘シーンを脳内再生させている。

ゴジラの映画を視聴しながら作業することが多かったためか、一度に複数のことを考えながら行動することは割と得意だと思う。

だから、別のことを考えながらも、授業の内容がちゃんと頭に入ってくる。

ふと、視界の端に、教室に巣を張っている蜘蛛の姿が映った。

そういえば、クモンガという蜘蛛型の怪獣もいたことを思い出し、そこから思考が広がっていく。

人間から見たら巨大なゴジラはまさしく「怪獣」と呼ぶにふさわしいけど、あの蜘蛛から見た私たちも怪獣のような存在に見えるのかな。

蜘蛛といえば、遺伝子操作された蜘蛛にかまれて超人になったヒーローもいたな。

あの蜘蛛も遺伝子操作とかしたら、怪獣みたいな大きさになるかもしれないな。

 

そんなどうでもいいことを考えていたら、ふと空気が変わったような感じがした。

とんでもなく嫌な予感がするけど、もう避けることができなくなった――そんなふうに感じた。

 

気づいたら、全身をすさまじい激痛が襲っていた。

これはもう助からないな、という、状況の割には冷静な思考を最後に、私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生まれ変わりというのは、本当にあるということを、私は身をもって知っていた。

 

教室で謎の激痛を味わい意識を失った私は、なぜかトカゲになっていた。

おそらく私は一度死んで、人間だったころの記憶を持ったまま生まれ変わったんだと思う。

気がついたら卵の中で、真っ暗な場所に閉じ込められていると思って混乱したし、卵から出てきたら出てきたで、周りや自分の状況が何もかも変わっていて錯乱しそうになった。

 

一度死んでしまった、ということを受け入れるのにも時間がかなりかかったけど、慣れざるを得ない環境であったこともあって、気持ちの整理は一応ついている。

とりあえず今は、一生懸命生きています。

 

トカゲとして生まれた場所は、暗い洞窟の中。

しかも、かなり広くて入り組んでいて、まるで自然の大迷宮のようだと思っている。

そんな迷宮の中には、今まで見たことがない、ファンタジーのなかでしか出てこないような生き物がわんさかいた。

かく言う私自身も、体の大きさが並のトカゲではありえないほどなので、そういう生物の一種なのだと思う。

 

今世の親は、いることにはいたのだけど、私がある程度育ったら姿を消していた。

多分、「あとは一人で生きていけ」ということだったのだろう。

狩りをしたことなんて前世ではなかったため、最初の方はかなり苦労したけど、トカゲとしての本能か、今は普通にできるようになった。

 

正直言って、この場所にいる生き物の中で、私は弱い部類に入ると思う。

だから、獲物にする対象も自然と限られてくるんだけど、カエルやら鼠やら、挙句の果てには大きな蜘蛛などといった、前世では食べる対象にまず入らなかった生き物ばかりで……まあ、そこらへんは覚悟を決めて食べている。

ともかく苦いものがほとんどで、最初のころは日本のおいしい食事が食べたい気持ちでいっぱいになって辛い想いをしてきたけど、今はそこまで気にしないようにしている。

最近食べたなかで一番まともだと言えるようなものは、小型の肉食恐竜のような生き物ぐらい。

 

そうやって日々を生きているうちに、この場所……というか、この世界?には、前世ではありえなかった不思議な仕組みがあることを知った。

 

《経験値が一定に達しました。個体、フェネグルがLV1からLV2になりました》

 

狩りをしている最中、獲物の息の根を止めた瞬間に、その機械的な声が頭の中に響いてきた。

それが、この世界で初めて私が聞いた日本語であり、一方的だけど様々なものを教えてくれた誰かの声だった。

この声は、私の行動によって特定の条件が満たされると聴こえてくるようで、経験値、基礎能力値、スキル、熟練度、レベルアップなど、文章に組み込まれた単語から、それらが存在しているということに気づけた。

それらの、テレビゲームぐらいでしか聞かないような言葉がどのような意味を持つのかも、ある程度は分かってきた。

 

経験値は、生きものを仕留めることで得られるもののようで、これが一定に達するとレベルアップという現象が起き、私のLVが一つずつ上がっていく。

レベルアップすると、基礎能力値というものが上昇するようで、スキル熟練度のボーナスやスキルポイントというものが手に入るらしい。

あと、体が傷ついていたり疲れているようなときにレベルアップすると、全快しているような気がする。

 

基礎能力値というのは、どう確認すればいいのか分からないから、単純に「上昇すれば強くなるかも」ぐらいにしか思っていない。

けど、スキルというものの存在はしっかりと感じていて、実際に使うことができていると思う。

 

該当する行動を取ったりする等でスキルの熟練度は溜まり、この熟練度が一定の基準に達することで、スキルを獲得したりレベルを上げたりすることができるようだ。

例えば、他の動物に気づかれないように行動しているうちに「隠密」というスキルを覚え、音をたてないように動いているうちに「無音」というスキルの熟練度をためていた。

それらのスキルは、念じることで発動することができるようで、使ってみると効果があるように感じた。

この効果は、スキルのレベルが上がるほど強くなるようなので、レベルを早く上げたいスキルに関しては、熟練度がたまるように行動することを心掛けている。

 

これらのスキルは、私が生きているなかで大きな助けになってくれていると思う。

そのなかでも、持っているということを最近知ったけど、今の段階でも大きな戦力になってくれると実感できるスキルがある。

なにより、そのスキルの名称が、ここにいる生物の中では弱い私にも確かな安心感を与えてくれるのを感じている。

 

考え事をしているうちに、気配感知に反応があった。

気配がした方に息をひそめながら向かうと、そこにはいつも食べているカエルの姿が。

そろそろおなかもすいてきたし、狩ろうか。

 

カエルが背を向けた瞬間、無音と隠密を使いながら走りだす。

ある程度カエルとの距離が縮まり、私の射程範囲に入る。

カエルはようやく後ろから迫る私の存在に気がつくけれど、既に私は()()を吐き出していた。

 

私の白い熱線を浴びたカエルは瞬く間に焼けていき、動かなくなった。

熱線を止め、動きが完全になくなったことを確認してから、私はカエルに付いた火を消し、亡骸にかぶりついた。

 

私がこのスキルの存在に気が付いたのは、熟練度がたまってスキルのレベルが上がった時だった。

このスキルの獲得が教えられたら真っ先に気づくはずなので、生まれつき持っているスキルだったんじゃないかと思う。

このスキルのレベルアップと同時に、「禁忌」というスキルの熟練度も一定に達してレベルが上がっていた。

禁忌がどのような効果を持つスキルかは知らないけど、このスキルは確かに、禁じられた力だと言ってもおかしくない名称だとは思っている。

 

そのスキルの名前は、「()()()」。

私が好きだった怪獣の力を、どういうわけか私は持っているようだった。




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグル LV5 名前 なし(大原 雅美)

・ステータス

 HP:418/418(緑)
 MP:370/370(青)
 SP:404/404(黄)
  :404/404(赤)
 平均攻撃能力:346
 平均防御能力:336
 平均魔法能力:322
 平均抵抗能力:322
 平均速度能力:346

・スキル
 
 地竜LV2,龍鱗LV2,
 HP高速回復LV1,
 火強化LV2,
 集中LV3,予測LV2,並列思考LV4,記憶LV1,
 命中LV1,回避LV2,隠密LV4,無音LV3,危険感知LV3,気配感知LV3,
 過食LV2,
 暗視LV7,
 火耐性LV1,大地無効,毒耐性LV4,酸耐性LV2,腐蝕耐性LV1,
 呉爾羅LV2
 禁忌LV2,n%I=W

・スキルポイント:100120

・称号

 呉爾羅、悪食

➁今作オリジナルのスキル・称号・種族の説明

○スキル「呉爾羅」
概要:主人公の、転生者としての固有スキル。魂の総量が多かったから、耐えられた
効果:ステータス全種にスキルレベル×100分プラス補正が掛かり、レベルアップ時にスキルレベル×10分の成長補正が掛かる。また、レベルにより特殊な効果を発揮する(LV1:白熱光、LV2:自己再生)
・白熱光:MPを消費して、火属性のダメージを与える熱線を吐き出す
・自己再生:「呉爾羅」のスキルと同レベルの「HP高速回復」と同等の効果
※隠し効果として、このスキルの獲得・使用は「禁忌」の熟練度をためる

○称号「呉爾羅」
取得スキル:「HP高速回復LV1」「火強化LV1」
取得条件:スキル「呉爾羅」の獲得
効果:取得する経験値と熟練度の上昇
説明:恐るべき怪獣の力を持つものに贈られる称号

○種族「フェネグル」
概要:下位の地竜の一種。トカゲのような姿をしている



設定への指摘などに関しては、オブラートに包んだ状態をお願いしたいです。


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VS蛇

カエルを食べ終わったので、腹ごなしがてらに散策する。

並列思考で、音を立てずに、気配を消しながら、感知系のスキルを使用して移動することを意識する。

スキルの鍛錬をルーティーンとして行えるようになってきたことを実感しながら、さっき使っていたスキル「呉爾羅」について考える。

 

今までは噛みつくぐらいしか攻撃手段がなかったけど、このスキルの存在に気づいてから熱線を使うようになったので、非常に戦いやすくなったと思う。

熱というのは大きな武器になるようで、さっきみたいに少し熱線を当てるだけで、たいていの獲物はすぐにしとめられるようになった。

しかも、噛みつきと違い距離が若干離れていても攻撃が当たるので、相手からの攻撃を避ける余裕も持つことができる。

おまけに、熱線で火をある程度通せば、まずい生肉もある程度はましになった。

 

さらに、「呉爾羅」の恩恵は熱線だけじゃないようだった。

このスキルがレベル2になってから、傷が治るのが以前よりも早くなっていた。

おそらく、原作のゴジラと同じような自己再生効果を、このスキルが多少なりとも再現してくれるのではないかと予想してる。

他の生き物は、自分のように短時間で傷が治っているようには見えないし。

まさに「呉爾羅」さまさまだった。

 

まあ、熱線を使い過ぎるのは、どうやら危険みたいだけど。

試しに熱線を限界まで使ってみようとしてみたけど、熱線が吐けなくなったと同時に、体がかなり苦しくなった。

しばらく安静にしていたら治まったけど、むやみやたらと使うのは控えようと思った。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「並列思考LV4」が「並列思考LV5」になりました》

 

そんな考え事をしていたら、並列思考のレベルが上がった。

このスキルは、結構熟練度がたまるのが早いと思う。

前世から、複数のことを同時に考えることを日常的に行なっていたからかな。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「予測LV2」が「予測LV3」になりました》

 

今度は予測のスキルレベルが上がった。

当たる外れるに関わらず、このスキルは予想するだけでレベルが上がっていく。

明確な効果は実感できてないけど、このスキルによって、敵の動きの予想が当たりやすくなっている……と思う。

きっと、たぶん、おそらく、メイビー。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「無音LV3」が「無音LV4」になりました》

 

そんなことを考えていたら、今度は無音が。

3つのスキルが一気にレベルアップしたので、この流れをどうにか保ちたくなる。

よし、記憶のスキルでもあげるか。

私が今持っているスキルは、呉爾羅LV2に禁忌LV2、集中LV3、予測LV3、並列思考LV5、記憶LV1、命中LV1、回避LV2、隠密LV4、無音は……LV4、危険感知LV3、気配感知LV3、過食LV2に、あとは毒耐性LV4に加えて……。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「記憶LV1」が「記憶LV2」になりました》

 

そこまでスキルを思い出して、記憶のレベルが上がった。

こうして自分のスキルを覚えておけるのはいいけど、そろそろ自分のスキルを確認できるようなスキルが欲しい。

基礎能力値だって、確認する方法がないわけではないと思う。

だけど、そのスキルが何なのか全くわからないし、どうやってそのスキルを獲得すればいいのかも不明。

ダメもとで、さっき自分にスキルのレベルアップを教えてくれた声に頼む形で祈ったりしてみたけど、まるで反応がない。

こういう時、多くのゲームをやっている人とかだったら、すぐにそんなスキルを手に入れられるんだろうか。

 

もしものことを考えてもしょうがないので、今後どうしようかという方向に考えを移すことにする。

今までは、他の生き物を狩って食べて、1日1日の命を繋いでいくことばかり考えていたけど、そろそろ中期的・長期的な目標が欲しい。

長期的な目標としては、この薄暗くて閉じた空間から出てしまいたい。

そのための中期的な目標だけど……まずは、自分を強くすることが第一にしたい。

 

この迷宮には、自分よりも強そうな生き物がたくさんいる。

ここから抜け出す際に、それらとの戦闘をすべて回避していくのは、困難だと思う。

だから、ある程度は戦えるように、より強い自分になりたい。

 

肝心の強くなる方法だけど、まずは「呉爾羅」のスキルのレベルを上げたい。

このスキルのレベルが上がる前と後で、身体能力に大きな差があることに気が付いた。

より強い攻撃が、より早い移動ができるようになっていた。

だから、このスキルのレベルを上げていけば、さらなる強さを手に入れることができると思う。

まずは、筋トレとかもやってみながら、「呉爾羅」のスキルレベルを上げる方法を見付けたい。

 

とりあえず、そろそろ腰を落ち着ける場所でも探そうか、と思った瞬間、危険感知と気配感知に反応が。

そちらの方を見てみると、そこには巨大な蛇が私の方に向かってスルスルと移動してきていた。

人と同じ大きさの私ですら一飲みにしてしまいそうなほどの大きさの蛇で、今まで避けてきた種族だ。

 

すぐさま反対方向に向かって駆け出す。

しかし、蛇の方が私よりも若干速いようで、感知している蛇との距離は広がることなく、少しずつ追いつかれていく。

 

ああ、くそ。

今まで倒せそうな生き物しか狙ってこなかったのに、今度は自分が狙われる対象か。

危険感知による警鐘が、じわじわと心に恐怖を与えてくる。

 

だけど、同時に自分自身に怒りを覚えてくる。

強くなろうと決めた矢先に、自分は逃げている。

「呉爾羅」のスキルレベルを上げれば体は強くなれるだろうけど、心が弱いままじゃ十分じゃない。

このスキルと同じ名前を持つ怪獣だって、体だけじゃなくて心も強かったじゃないか。

なのに、その怪獣の力を持っているであろう自分は、どうしようもないほど弱腰だった。

弱肉強食の環境で生き残るためには、体だけじゃない、強靭な心も必要なんだ。

 

さっきまでは怖かったけど、正直なところ、アイツから感じる危険度はそこまで大きくない。

蛇がどんなスキルを持っているのか全く分からないけど、冷静に戦えば勝てるかもしれない。

多少のダメージなら、低くはない自己再生能力でなんとかなるはずだ。

 

よし、覚悟は決めた。

格上を、倒そう。

 

私はすぐさま方向転換し、蛇に向かって走り出す。

私と正面から向き合う形になった蛇は、その大きな口を開けて私を呑み込もうとしてくる。

 

そんなに食べたいのなら、これでも喰らえ。

蛇の口に向かって、私は熱線を吐き出した。

 

「~~~~~~~!!!」

 

熱線をまともに受けた蛇の口内は炎上し、声にならない悲鳴を上げてのたうち回る。

暴れまわる蛇にぶつかることのないよう、予測と危険感知を活用して回避しながら、その胴体に少しずつ熱線を浴びせてダメージを与えていく。

鱗で覆われた体は、さすがに口のなかほど傷つけることができる訳じゃないけど、少しずつ火傷させていくことはできているようだった。

 

気配感知で感じ取れる蛇の存在が、少しずつ弱弱しくなっていく。

これは、いけるのでは……?

 

この戦いの勝利を予見したとき、体に何かをかけられるのを感じた。

それは、ジュウジュウと音を立てて私の体を少しずつ溶かしていく。

 

突然の事態に驚いてしまい、思考が混乱する。

気配感知で探ってみると、いつのまにか1体のカエルが私の背後にいた。

どうやら、蛇に夢中になっていた私は、カエルの酸をまんまと浴びてしまったようだった。

 

すぐさまカエルの方を向き、熱線で仕留める。

だけど、即座にそれが失敗だったと悟った。

 

意識をカエルの方に向けてしまった私のスキを、口内のダメージから立ち直った蛇は見逃さず、その長い胴体で私を巻き付き、締め上げていった。

い、いたい……くるしい……。

 

どうにか熱線を吐くけど、口のところにも胴体が巻き付かれていて、固い鱗に防がれてしまう。

ギリギリと締めつく力が強くなっていって、自己再生能力でも回復しきれていないほどのダメージを与えられていることが分かってしまう。

 

諦めずに熱線を吐くけど、今の私の熱線は、鱗の表面を軽く焦げ付かせるぐらいの力しかない。

熱は与えられるけど、物理的な威力はない、今の私の熱線。

最初のころのゴジラも、こんな熱線だったと思う。

後の作品になって、熱線はより強力に、破壊力を持つようになった。

私が使える熱線も、それぐらい強力になってくれたら……。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「呉爾羅LV2」が「呉爾羅LV3」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「禁忌LV2」が「禁忌LV3」になりました》

 

その声が聞こえてきた瞬間、私は確信した。

今まで使ってきた熱線よりも強力な、あの多くの物を破壊してきた熱線をイメージして、私は熱線を吐く。

 

それまでの熱線とは比べ物にならないほどの勢いで出てきた一撃は、蛇の強固な鱗を破壊し、その中の肉を弾き飛ばす。

予想外の反撃に蛇は悲鳴を上げ、巻き付く力が一気に弱まる。

私は再び蛇の顔の方を向き、ふたたび口の中めがけて強力になった熱線を吐き出す。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「命中LV1」が「命中LV2」になりました》

 

聞きなれた声が頭の中に響いてきた時、あらゆるものを破壊してきた熱線と同じ私の技は、蛇の口内に飲み込まれ、強敵の頭の半分を吹き飛ばした。

脳を失っただろう蛇の胴体は倒れ、その体から感知系のスキルでも何の反応も感じ取れなくなった。

 

もし、蛇とあまり違わない速度で私が逃げている時に、私との実力差がそう違わないことを感じ取って諦めていたら、あるいは私がカエルに意識を向けた時に撤退していたら、蛇がこうなることはなかっただろう。

私がこうなっていた可能性もあるとはいえ、この蛇がそうしなかったのは、そこまで考えていなかったのか、あるいは捕食者としての意地や慢心だったのか。

 

来世では、弱い相手でも逃げることを覚えた方がいいかもね。




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス(蛇を倒した際のレベルアップ込み)

フェネグル LV10

・ステータス

 HP:813/813(緑)
 MP:755/755(青)
 SP:794/794(黄)
  :794/794(赤)
 平均攻撃能力:726
 平均防御能力:716
 平均魔法能力:697
 平均抵抗能力:697
 平均速度能力:726

・スキル
 
 地竜LV3,龍鱗LV3,
 HP高速回復LV2,
 火強化LV3,
 集中LV3,予測LV4,並列思考LV5,記憶LV2,
 命中LV2,回避LV3,隠密LV4,無音LV4,危険感知LV4,気配感知LV4,
 過食LV3,
 暗視LV8,
 火耐性LV2,大地無効,毒耐性LV4,酸耐性LV3,腐蝕耐性LV2,
 呉爾羅LV4
 禁忌LV4,n%I=W

・スキルポイント:100270

・称号

 呉爾羅、悪食

➁今作オリジナルのスキルの説明

○スキル「呉爾羅」
概要:主人公の、転生者としての固有スキル
効果:ステータス全種にスキルレベル×100分プラス補正が掛かり、レベルアップ時にスキルレベル×10分の成長補正が掛かる。また、レベルにより特殊な効果を発揮する(LV1:白熱光、LV2:自己再生、LV3:放射熱線、LV4:螺旋熱線)
・放射熱線:白熱光よりも強力な熱線を吐き出す。単純にダメージ量が増加するほか、若干の衝撃属性の追加ダメージと、スキルレベルと同等の「破壊強化」相当の補正が入る
・螺旋熱線:放射熱線に、貫通属性の追加ダメージが加わる

➂今回の蛇について
LVを10台後半ぐらいとしているため、「蛇相手だと、主人公のステータスでは楽勝になってしまうのでは?」という不安は払拭できている……はず


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進化しよう PART1

《経験値が一定に達しました。個体、フェネグルがLV5からLV6になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

 

いつものように、レベルアップを伝えてくるメッセージが、頭の中に響く。

蛇を倒したことで手に入れた経験値により、レベルアップしたんだ。

しかも、レベルアップは1回にとどまらず、いつもの機械的な音声は、何回にも渡ってLVが上がったことを伝えてくる。

 

どうやら、自分よりも強い生き物を倒すことで得られる経験値は、想像以上に多いようだ。

多くのスキルのレベルも、熟練度ボーナスで上がっていった。

 

そんなことを考えながらも、私は生まれて初めて自分よりも強い敵を倒すことができた喜びに浸っていた。

呉爾羅という非常に強力なスキルがあったからとはいえ、最後まで諦めずに戦えたことが誇らしい。

今までは自分よりも弱い敵ばかりを狙って戦ってきた自分の心が、大きく成長できたような気がする。

 

そんな感動に震えながらも、いちおう周囲の警戒を並列思考で行なう。

それはそれで、さっきの戦いでは、一番注意すべき敵から目を離すという大きな失敗をしてしまった。

そのせいで窮地に陥った身としては、今度は同じようなことがないように注意を怠らないようにしたい。

 

《条件を満たしました。個体、フェネグルが進化可能です》

 

……え?

ちょっと待って……今なんて?

 

《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。

 フェネグラン

 フェネセブン》 

 

あー……うん?

選ぶって……なにを?

進化?

 

LV10にまでレベルアップしたと思ったら、進化可能とか進化先とか、フェネセブンとかフェネグランとか、理解が追い付かない単語が次々出てきたんだけど?

うん、一旦落ち着いて、まずは情報を整理しよう。

 

進化っていってたけど、これってもしかして、某世界的に有名なモンスター育成ゲームでおなじみの、アレと同じ現象かな?

なんかこう……進化すると、体が大きくなって、能力も上がる、みたいな?

で、今の私は、その進化を行うための条件を満たしていて、その進化した先が、フェネセブンという生き物かフェネグランという生き物で、選んだ方に進化をする――つまり、その生物になると。

今の私はフェネグルという生き物だから、頭についている語感からして、たぶんそういうことだよね?

 

……うん、もう少し考える時間が欲しい。

考えながら、倒した蛇やカエルを食べられるだけ食べちゃおうと思う。

 

 

 

カエルを食べ終わり、蛇もある程度食べて満腹になった。

蛇は、鱗が邪魔で外側からだと食べにくいから、強化した熱線であけた穴や口を足掛かりに、内側から食べていった。

でも、蛇の体は非常に大きいので、さすがに全部食べるまえにお腹がいっぱいになってしまった。

残りは後で食べるしかない。

 

で、進化のことだけど……正直どうしようか、まだ迷ってる。

進化すれば、おそらく、より強い生き物になることができる、と思う。

だけど、なにぶん初めてのことだから、本当にそうなのか、という不安もある。

まあ、この不安に関しては、そこまで重要じゃない。

進化、という言葉の響きは、プラスのイメージ寄りだし、あの声の言い方から「進化しないと先に進めない」というニュアンスが感じられたから、強くなるうえで進化するのは必須なんだと思う。

というか、トカゲより強い生き物になりたい、という気持ちがかなり……。

それで失敗したとしても、まあ、これはしょうがないんじゃないかなーと思ってる。

 

問題なのは、進化している最中。

いざ進化するとして、別の生き物へと変わっている真っただ中の私は、どんな状態なのか。

外敵がやってきても、迎え撃てる状況なのかどうかが、命に直結するのだ。

それに、そんな状態がいつまで続くのかも、気にする必要があると思う。

短時間で終わるものなのか、何日もかけることになるのか、それも重要な問題なのだ。

 

……う~ん、難しい。

他の生き物の進化事情を知っていれば、こんなに悩む必要はないんだろうけど……。

 

……うん、進化はいったん保留にしておこう。

 

 

 

進化するかどうか、その問題を後回しにした私は、スキルを検証していた。

蛇との戦闘では、呉爾羅というスキルが勿論大活躍だったわけだけど、その他にも、危険感知が大いに役に立ってくれて、おそらく回避や予測も勝利に貢献してくれたと思う。

だから、これからは、自分の持っているスキルをしっかり把握しておく必要があると考えたので、今まで意識していなかったスキルの中で検証できるものは検証してみることにした。

 

今回のレベルアップで存在を知ったHP高速回復は、体に傷がない状態で念じてみても、特に変化がなかった。

もしかしたら、呉爾羅の自然回復能力と同様、念じなくても常に発動するタイプのスキルなのかもしれない。

暗視に関しても、念じたら視界が明るくなるとかはなかったので、同じようなものなのかもと思った。

他には、過食や龍鱗、火強化、耐性系のスキルも試してみたけど、これらはそもそもスキルを使用できる環境になかったかもしれないと、よくよく考えてみたら発動しなくてもおかしくはなかった。

 

この検証で理解が深まったのは、地竜のスキルだ。

どうやらこのスキル、呉爾羅のように複数の技を内包するタイプだったらしい。

よく考えてみると、どっちのスキルも生き物の名称を表しているみたいだし、そういうものなのかもしれない。

生まれた時から持っているスキルだけど、他のスキルと違って効果が全く想像できないからという理由で使ってきてなかった……。

もっと積極的に使おうとすれば良かった。

 

どんな技が使えるのか名前からだけじゃ想像できなかったけど、このスキルを使おうとした瞬間、不思議なことに朧げに理解することができた。

もしかしたら、私は地竜という種族で、私の場合は使ってこなかったけど、普通の地竜はこのスキルを使って生きていくから、本能的に使い方を理解しているものなのかもしれない。

そう考えると、このスキルを使ってこなかった私って、種族としてのアイデンティティが崩壊していたのでは……?

まあ、自分のことを竜というかトカゲだと思ってたし、うん。

 

で、肝心の技の内容だけど、「地」竜というだけあって、土関連の技が多かった。

まずは、口から土をドバっと吐き出す技。

この体のどこにそんな量の土が入っていたのかってぐらい出てくるんだけど、まあ呉爾羅のスキルで熱線を吐き出すのも大概だし、スキルは物理法則を無視しているんだと納得するしかないのかも。

次は、体の表面を、これまたどこから出てくるのか不明な石で覆う技。

こっちの技は、敵の攻撃を防御する際に使えると思う。

ただ、この技と使っている時は体の動きがかなり阻害されるから、使い時は考えた方がいいみたいだ。

 

で、土を吐き出す技の方なんだけど、こっちは戦闘で役に立つかどうかは微妙なところ。

実際に攻撃手段として使ってみたわけじゃないけど、正直呉爾羅のスキルで使える熱線の方が強力だし……。

今のところ、無から土を生み出すための技ぐらいにしか思っていない。

 

だけど、この土を作り出すスキルは、私の頭の中に、あるアイデアをもたらしてくれた。

 

 

 

いま私は、地竜のスキルで出した土を固めている。

固めると言っても、中にある程度の広い空間を残した、いわば土で作るかまくらのようなものだ。

トカゲの身で作るのは非常に大変だけど、しっかり作っておかないと後悔することになる可能性が高いから、気は抜けない。

 

このかまくらは、進化するための安全地帯として利用するつもりだ。

少し試してみたけど、このかまくらは作ってみたら意外と丈夫で、私の攻撃に耐えられるぐらいの強度はあった。

だから、この中で進化すれば、私自身が無防備な状態だとしても、土の壁が外敵から私を守ってくれるはずだ。

それに、自然の素材で作られたシェルターだから、意外と他の生き物から気にされない……かもしれない。

一応このかまくらは、この洞窟内の目立ちそうにないところを探したうえで、そこの壁に接するように作っている。

 

実は、このかまくらの骨組みには蛇の亡骸を使用している。

だから、進化する期間が長くて、かまくら内部で空腹になったとしても、内側から食料を補給することができるようになっている。

今の私の身体能力なら、食べにくいとはいえ固い鱗も食い破ることができたし、たぶん大丈夫なはず。

 

そんなことを考えているうちに、かまくらを満足する出来に仕上げることができた。

熱線のように土を吐き出しすぎると苦しくなるし、四足歩行だと作ること自体が難しいから、それなりの時間がかかってしまった。

それでも、その分安全性は考慮することができたと思う。

 

中に入り、入り口の方も土でしっかりと固めていく。

空気が無くなると困るから、多少の穴は残しておく状態にはしておく。

これで、進化する準備は整った。

 

……正直、不安はまだ残ってる。

こんなかまくらは作ったけど、それでも外敵に襲われないか。

蛇を食料として確保しているけど、進化している最中はそれで足りるのか。

このかまくら自体に、気づいていない問題があるんじゃないのか。

そもそも、進化すれば本当に強くなれるのか。

 

それでも、私は今、進化しようと思う。

そんなこと言ったら、ここで普通に生きているだけで命の危険は常にある。

だったら、自分なりの最善を考えて、それを実行して生きていきたい。

進化をして今よりも強い生き物になったら、外敵に命を脅かされる危険は減るはず。

ゴジラのように……とはいかなくても、より強く、より大きな体を手に入れて、この弱肉強食の環境を生き抜いていきたい。

考えられるだけのことをしたうえで、そのためのリスクは、負おう。

 

私が進化する対象に選ぶのは、フェネグラン。

名前から考えて、今の私の種族であるフェネグルが成長したような感じになると思う。

 

覚悟は決めた、さあ来い!

 

《個体フェネグルがフェネグランに進化します》

 

その声が聞こえてきたと思ったら、私の意識は遠くなっていった……。

 

 

 

《進化が完了しました》

《種族フェネグランになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『地竜LV3』が『地竜LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『集中LV3』が『集中LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『記憶LV2』が『記憶LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『隠密LV4』が『隠密LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『過食LV3』が『過食LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『暗視LV8』が『暗視LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒耐性LV4』が『毒耐性LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『気配感知LV4』が『気配感知LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『呉爾羅LV4』が『呉爾羅LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌LV4』が『禁忌LV5』になりました》

《進化によりスキル『甲殻LV1』を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス(進化後)

フェネグラン LV1

・ステータス

 HP:1090/1090(緑)
 MP:990/990(青)
 SP:1045/1045(黄)
  :1060/1060(赤)
 平均攻撃能力:985
 平均防御能力:975
 平均魔法能力:905
 平均抵抗能力:905
 平均速度能力:955

・スキル
 
 地竜LV4,龍鱗LV3,甲殻LV1,
 HP高速回復LV2,
 火強化LV3,
 集中LV4,予測LV4,並列思考LV5,記憶LV3,
 命中LV2,回避LV3,隠密LV5,無音LV4,危険感知LV4,気配感知LV5,
 過食LV4,
 暗視LV9,
 火耐性LV2,大地無効,毒耐性LV5,酸耐性LV3,腐蝕耐性LV2,
 呉爾羅LV5,
 禁忌LV5,n%I=W

・スキルポイント:100600

・称号

 呉爾羅、悪食

➁今作オリジナルの種族の説明

○種族「フェネグラン」
概要:フェネグルの進化形であり、下位の地竜。主人公の進化先
   スキル「甲殻」を獲得し、防御力がアップした

○種族「フェネセブン」
概要:同じくフェネグルの進化形であり、下位の地竜。牛のような見た目
   火竜のゲネラッシュに相当するかのようにフェネラッシュという地竜が原作にいたため、通称ナマズに相当する地竜として進化先の候補とした

➂スキル「地竜」についてのオリジナル設定
説明:地竜種が有する特殊スキル。レベルにより特殊な効果を発揮する
・LV1:土ブレス。MPを消費して、地属性のダメージを与える土を吐き出す
・LV2;石纏。平均速度能力が下がるが、石を纏って防御力を高める
・LV3:生命変遷。火竜と同じ
・LV4:地恵。地面などに接することで、MPが少しずつ回復する


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フェネグラン

サブタイトルは「成長期」でも可


とりあえず、無事に進化は完了したみたいで良かった。

 

可能性の一つとして考えていたとはいえ、進化している最中は眠ってしまう仕様なんだ……。

もしまた進化する機会があったら、今回と同じように対策をしっかりするよう心がけよう。

 

というか、すごくお腹がすいているので、食料として側に置いてあった蛇を、熱線で焼きながら食べている。

進化はかなりエネルギーを使うのか、気を失う前は食欲が満たされていたはずなのに、今は蛇を全部食べてしまえる勢いだ。

安全だけじゃなくて、食料のことも考えて進化しなくちゃね。

 

さて、進化した結果についてだけど、とりあえずは成功だと思う。

だって、進化することで強くなったことを感じているから。

 

具体的に言うと、まず体が大きくなった。

進化前よりも、二回りぐらい大きくなったんじゃないかな。

最近戦った蛇然り、体の大きさは立派な武器になると思う。

まあ、その蛇はずっと小さかった私に負けたんだけど。

 

次に、体がより戦闘に向いたものになった。

手足の先に鋭い爪がつき、腕や足の長さも若干伸びている気がする。

なんとなく、頑張れば後ろ足で立つこととかもできそう。

口の長さもちょっと長くなったけど、それ以上に顎の力が強くなったと思う。

トカゲというか、ワニの口という感じかな。

 

それ以上に特徴的なのが、体の一部にプロテクターのようなものがついていること。

肩とかに、固い結晶のようなものが鱗のさらに上を覆うようにできていた。

こんなトカゲは、さすがにいないよね?

 

最後に、身体能力が高くなったことを確認している。

以前よりも大きくなり、重量感も増した体だけど、なんとトカゲでいた時よりも素早く動けるようになっていた。

これは、かなりパワーアップしたとみていいんじゃないかと思ってる。

 

あー、良かった。

もし進化して体が小さくなっていたり、能力が下がっているようだったらどうしようかと思ってた。

でも、進化は基本的にプラスであることが分かって良かった。

進化する機会は、できるだけ逃さないようにしよう。

 

さて、蛇を食べ終わったら、また迷宮内を歩き回るとしようか。

 

 

 

強敵であり、進化するきっかけを作ってくれた蛇を残さず平らげた私は、再び迷宮内を探索しはじめた。

探索中に、他のモンスターと戦う機会が何度もあったわけだけど、そのどれもが、トカゲだったころよりも成長している私の敵ではなかった。

呉爾羅ではなく地竜のスキルを使って戦ったこともあるけど、吐き出した土を被っただけで、なぜか倒れてしまうのもいた。

物理法則を無視していることもそうだけど、原理が不明だ。

 

そんなふうに多くの生き物を倒していったら、「魔物殺し」なる称号を手に入れていた。

その称号に伴って、強力と堅固というスキルも獲得したんだけど、気になったのは「魔物」という単語。

全部が全部という訳じゃないかもしれないけど、私が倒してきた生物って、それこそお伽話とかで出てくる魔物だったのか……。

いや、別の種族に進化なんていうことをしている私自身も、魔物である可能性が高いけども……。

分かっていたことだけど、この世界は本当にゲームみたいな世界なんだなって……。

 

あと、「暗殺者」という称号も手に入れて、新しく「影魔法」なるスキルも手に入れている。

いろんなスキルを持っているけど、魔法と名のついたスキルは初めてだった。

魔法が使えるかもしれないと思ってワクワクしたんだけど、この魔法のスキル、どうも念じるだけじゃ発動しないみたいだった。

結構がっくり来たけど、まあ、私には呉爾羅のスキルがあるし。

それと、称号とかで、既に持っているスキルと同じスキルを与えられた場合、もともと持っているほうのスキルに統合されるということも知った。

統合されるとどうなるか分からないけど、今のところマイナスの要素が無くて良かったと思っている。

 

で、話を戻すと……実は、戦った生き物の中には、あの蛇と同じ魔物もいた。

いた……んだけど、いざ戦ってみたら、かなりあっさりと倒してしまった。

自分が進化して強くなったことが原因なのか、あの蛇だけ異常に強い個体とかだったのか……。

同じ種族でも、LVによって強さがかなり変わるのかもしれないと思った。

 

強さは違っても、体の大きさは大して違わないので、蛇を全部食べるのには時間がかかる。

日本にいたころから食べ物を残すことはあまりなかったけど、トカゲになって他の生き物を直接狩って命を頂くようになってからは、食べ残しを作るようなことは可能な限りしたくない。

なので、その蛇を全部食べ終わるまでは、探索をいったん中止して其の辺りに留まっている。

 

このあいだに、スキルの獲得やレベル上げを目的に、いわゆる特訓をしてみた。

以前試してみようと思った筋トレや、短距離走のような運動をするほか、地竜や呉爾羅のスキルで使える技を練習してみたりして、既存のスキルのレベルを上げようとした。

あとは、どんな行動で新しいスキルを手に入れられるか分からないから、いろいろなことにチャレンジもしてみた。

その結果、かなり多くのスキルを覚えることができた。

 

まずは、筋トレや短距離走をしていた結果として、瞬発や持久に疾走、SP消費緩和やSP回復速度などといったスキルを新しく手に入れた。

瞬発・持久・疾走の三つのスキルの効果は定かじゃないけど、運動したり走ったりするとスキルのレベルが上がるようなので、身体能力がプラスされるようなスキルなんじゃないかと思っている。

SP消費緩和やSP回復速度は、言葉の響き的に、HP高速回復に似た系統のスキルだと予想していた。

そこから、SPってもしかしてスタミナとか持久力のことなんじゃないかと思って、体力の消費を抑えるように動いたりしてみたら、この二つのスキルのレベルも上げることができた。

身体能力や持久力は重要なので、これからもトレーニングを続けてスキルを高めていきたい。

 

次に、呉爾羅のスキルで熱線を吐いたり、地竜のスキルをいろいろ使ってみたりしたら、MP回復速度・MP消費緩和・魔量・術師・護法などといったスキルを始めの方に手に入れた。

MPという言葉に関しては、HPやSPと同系統の物なんだろうけど、これが何を意味するのかよく分からない。

ただ、もしかしたら、呉爾羅の熱線や地竜の土を生み出すために必要なものがあって、それがMPなのかもしれないとは思ってる。

MPの消費を抑えたり回復させたり、っていうのは全くやり方が分からないから、とりあえず熱線を吐いたりしてスキルのレベルを上げるしかないのが、これらのスキルの現状なんだよね。

ちなみに、残りの三つのスキルに関しても同じ。

 

呉爾羅や地竜のスキルを使っていたら獲得したスキルはこれだけじゃなくて、熱線の使用中に火攻撃、土を吐き出している時に土攻撃のスキルが手に入った。

火攻撃は単純で、牙でも爪でも尻尾でも、攻撃しようと思った際に、その攻撃に使う部位に炎を纏わせるスキルだった。

最初は火傷すると思ったんだけど、火耐性があるおかげか、そこまでダメージはない感じかな。

土攻撃は……よく分からない。

火攻撃同様に、なにかしら纏ってる気がするんだけど、別に土とかを纏ってるわけじゃないんだよね……。

まあ、火攻撃に関しては、今までは熱線で焼いていた生肉に火を通すのにも役立ってるから、使う機会が多くて、レベルが上がっていってる。

土攻撃は……何かの役に立つといいな……。

 

他には、五感を鍛えていたら、それぞれの感覚を強化するスキルが手に入って、身体能力に任せて三角跳びをやってみようとしていたら、立体機動というスキルを手に入れていた。

あとは、計算をしていたら演算処理というスキルを入手していたんだよね。

まあ、計算する機会なんて、そんなに多くないだろうけど……。

それと、いつのまにか生命なんていうスキルも手に入ってた。

効果はよく分からないけど、生命力が強くなるとかだったら嬉しい。

 

新しいスキルをたくさん獲得することに成功したわけだけど、既存のスキルのレベルもしっかり上がっている。

頻繁に使う呉爾羅や地竜はもちろん、決めた位置に技を当てることを意識することで命中のスキルも向上させることができてるし、並列思考や集中のスキルも鍛えている。

称号で獲得した強力と堅固も、筋トレしたらレベルが上がったし。

あと、暗視がLV10になって、そのスキルから派生するという形で、視覚領域拡張なんていうスキルも新しく覚えた。

LV10になったら、そのスキルから別のスキルが派生するって、凄い発見をしたと自分で思っちゃった。

派生した視覚領域拡張の効果は実感できないけど、新しいスキルも手に入るなら、ともかくスキルのレベル上げをしちゃいたいとついつい思っちゃうわけですよ。

明らかにまずい感じのする禁忌は、今更ながら、できればレベルが上がってほしくないけど。

 

……発見と言えば、もう一つあった。

スキルポイントは、スキルのレベル上げに使うことができた。

 

いや、名前から考えたら、すぐわかるようなことかもしれないけどね。

今まで生きることやスキルについての考察に夢中で、スキルポイントのことは、すっかり忘れちゃってたんだよ。

スキルポイントがどうだの教えてくれるのは、レベルアップの時ぐらいだったはずだし。

進化した後にレベルアップして、ようやく存在を思い出せたんだよ。

だからこれは不可抗力なんだよ、誰に対して言い訳してるのか、自分でも分からなくなってきたけど。

 

ごほん、話を戻そう。

スキルポイントのことを思い出した私は、これはスキルのレベル上げに使うものなんだろうなと改めて思ったわけ。

だって、名前が「スキル」ポイントなわけですから。

で、試しに使ってみようとして、自分の持っているポイントの桁に驚いた。

10万って。

ただ桁数が多いだけかもと考えはしたけど、スキルのレベルを1つ上げるのに必要なポイントが3桁だった時は、言葉がなかった。

今までコツコツと、スキルのレベル上げをしてきた時間は何だったのかと。

まあ、これからも続けるつもりだけど。

 

で、話がちょっと逸れるけど、実は隠蔽と無音のスキル、レベルを上げづらくなってたんだよね。

トカゲの時よりも体が大きくなった分、目立つし音がたちやすくなったから、それが関係してるんじゃないかと思ってる。

だから思い切って、お試しで使って効果が実証された後、この二つのスキルのレベル上げに使っちゃった。

 

どっちもLV10になるまで、スキルポイントでレベルを上げまくっちゃった。

おかげで、隠蔽LV10からは迷彩っていうスキルが、無音LV10からは無臭っていうスキルが派生した。

確かめてみた感じ、派生したスキルは不思議なことに派生元のスキルよりもレベルを上げやすいみたいだ。

隠蔽と無音ほど、この体の大きさで行なうことが難しい、というわけじゃないからかな。

なんにしろ、これらのスキルは自力で鍛えていけそうなので、スキルポイントを使うのはやめてる。

こうやって、私はスキルポイントを使って、スキルのレベル上げをすることに成功しました、とさ。

 

……いや、分かってはいるんだ。

呉爾羅のレベルを上げるのに使えばいいのに、ていうのは。

このスキルのレベルを上げれば、身体能力も向上するはずだし、新しい技だって使えるようになるはず。

隠蔽や無音よりも、強力なスキルであることは間違いないだろうし。

 

でも、このスキル……スキルポイントを使わなくても、かなりレベルが上がる。

 

スキルについて知ってから時間はそこまで経ってないけど、スキルというのは、レベルが上がるほど次のレベルに至るまでにかかる時間が長くなる。

だけど、呉爾羅のスキルに関して言うなら、そんなことが通用しないように思えるほどレベルアップのスピードが速い。

このスキルで熱線とかを使用する頻度が多いことが理由かもしれないけど、それでも呉爾羅のスキルを認識する前から重用していたスキルのレベルすら追い越すぐらいにまでなってるのは只事じゃないと思う。

 

スキルのレベルの最大が10なら、そう遠くないうちに呉爾羅のスキルは成長限界に至るはず。

なら、わざわざスキルポイントを使う必要はないんじゃないかなって思う。

むしろ、今のことだけ考えてスキルポイントを消費するのは、のちのち危険なんじゃないかとすら思う。

 

呉爾羅のスキルは強力だけど、所有者である私の危険を完全に排除してくれるわけではない。

私がどうしようもない窮地に陥って、そこから抜け出すためには別のスキルが必要で、そのスキルのレベルを上げなければ助からない、という状況のために、スキルポイントは温存していくべきなんじゃないかな、と正直思ってる。

そこまでの状況じゃなくても、今そこまで困っているわけじゃないから、もしもの時を備えて使わないでおきたい、と思っちゃう。

 

……まあ、結局これも、自分の持っているスキルがどんな効果なのか、はっきりわかっていないからこその対処なんだけどね。

もしスキルの効果を把握できて、そのスキルをレベルアップさせるメリットが大きかった場合、スキルポイントを消費したと思うし、デメリットの方が大きかったら消費しなかった。

でも、情報が足りないから、なんだかあいまいな判断を下すことになっちゃってる。

 

はあ……情報を得るためのスキルは、どうやって手に入れられるんだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************************************

 

 

 

鑑定の妨害!?

なら叡智様でゴリ押しだ!!

 

………………

 

…オリジンタラテクト?

魔王!?

LV139!?!?

平均ステータス9万!?!?!?

 

 

 

はぽっ




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラン LV4

・ステータス

 HP:1394/1394(緑)
 MP:1266/1266(青)
 SP:1349/1349(黄)
  :1361/1361(赤)
 平均攻撃能力:1287
 平均防御能力:1286
 平均魔法能力:1178
 平均抵抗能力:1181
 平均速度能力:1262

・スキル
 
 地竜LV4,龍鱗LV3,甲殻LV2,
 HP高速回復LV2,
 MP回復速度LV1,MP消費緩和LV1,
 SP回復速度LV2,SP消費緩和LV2,
 火強化LV5,
 火攻撃LV2,土攻撃LV1,
 立体機動LV1,
 集中LV5,予測LV4,並列思考LV6,記憶LV4,演算処理LV1,
 命中LV3,回避LV3,隠密LV10,迷彩LV1,無音LV10,無臭LV1,
 危険感知LV5,気配感知LV6,
 影魔法LV1,
 過食LV4,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV1,
 火耐性LV3,大地無効,毒耐性LV5,酸耐性LV3,腐蝕耐性LV2,
 視覚強化LV2,聴覚強化LV2,嗅覚強化LV2,味覚強化LV1,触覚強化LV1,
 生命LV2,魔量LV1,瞬発LV2,持久LV2,強力LV3,堅固LV3,術師LV1,護法LV1,疾走LV2,
 呉爾羅LV6,
 禁忌LV6,n%I=W

・スキルポイント:95110

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁今作オリジナルのスキルの説明

○スキル「呉爾羅」
概要:主人公の、転生者としての固有スキル
効果:ステータス全種にスキルレベル×100分プラス補正が掛かり、レベルアップ時にスキルレベル×10分の成長補正が掛かる。また、レベルにより特殊な効果を発揮する(LV1:白熱光、LV2:自己再生、LV3:放射熱線、LV4:螺旋熱線、LV5:細胞活性、LV6:体内放射)
・細胞活性:MPとSPを消費して、攻撃・防御・魔法・抵抗の能力を底上げする。イメージとしては、ステータス向上のみの龍力
・体内放射:放射熱線のエネルギーを衝撃波として全身から放出する。範囲攻撃である分、MP消費が多い

➂最後の
情報を得るタイプとしては最上位であろうスキルを持っている某蜘蛛の、知ることができたゆえの絶望


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転落

今回は短め。
漫画版アラクネが想像以上にカワイイ。


最近は、かなり調子がいいと自分でも思う。

 

呉爾羅のスキルを持っていることに気づいてから、狩りが断然に楽になり、強敵にも勝てるようになり、進化して体も成長し、高い身体能力と多くのスキルを手に入れた。

今は迷宮内の探索に戻っているけど、特訓の続きで更に新しいスキルを得ていた。

 

あの蛇との戦闘などでスキルのレベルが上がったことで、より強力な熱線が使えるようになったんだけど、その熱線を使っているうちに覚えたスキルが三つある。

二つは、呉爾羅のスキルがLV3になったことで使えるようになった、物理的破壊力を持った熱線を練習しているうちに覚えたスキルで、その名称は破壊強化と衝撃強化。

もう一つは、進化して呉爾羅LV5になってから使えることに気づいた、その名もスパイラル熱線!の練習で獲得した貫通強化。

火強化と同じような感じだけど、たぶん、言葉の通り、それぞれ破壊力・衝撃・貫通力を強化してくれるスキルなんじゃないかな。

他にも、爪や尻尾を使った攻撃を練習しているうちに、斬撃強化や打撃強化といった、同系統だと思われるスキルを獲得してる。

 

その他にも、進化したことで獲得したのか、甲殻というスキルも何時の間にかあった。

数えてみたら、全部で50個以上ものスキルを持っていることに気づいた。

本当に、たくさんのスキルを手に入れたものだと思う。

今はまだレベルが低いものも多いけど、レベルを上げていけば凄いことになるんじゃないかな。

こんなに多くなると、鍛錬するのも大変になってるだろうけど。

 

それと、レベルが上がったことで呉爾羅のスキルにも新しい技が加わっていた。

そのおかげで、熱線とは異なる、新しい必殺技を使えるようになった。

消費が激しいみたいだけど、ここぞという時に使用したいと思う。

 

しかし、本当に私は強くなったと思う。

トカゲとして生まれた時からは信じられないぐらいの成長ぶりだと自画自賛してしまう。

ほとんど呉爾羅のスキルのおかげのようなものとはいえ、この辺りでは敵なしといえるぐらいにまでなったんじゃないかな。

強くなるという目標を予想以上に速いペースで達成してきているので、呉爾羅のスキルがLV10になったら、本格的に迷宮から出るルートを探すのもいいかもしれない。

 

 

そんなふうに調子にのってたのが悪かったのか、気づけば危険感知が今までにないほど大きな警鐘を鳴らしていた。

 

 

……隠密と無音、迷彩などのスキルを全開で働かせるイメージを持ちながら、特大の危険を感知した方向を確認する。

遠くの方に、巨大な蜘蛛がいた。

白くて、私が狩っている人サイズの蜘蛛の何倍も大きいと分かる、みるからに強固な外骨格を持った、紛れもない食物連鎖ピラミッドにおける上位存在。

 

勝てない。

そう直感してしまった。

それほどまでに、危険感知で感じた脅威は尋常なものではなかった。

さっきまで満ちていた自分の強さに対する自信が、一気に失われていくのを感じた。

 

幸いにも、あの蜘蛛に私の存在はまだ気づかれていなかった。

静かにこの場を離れて距離をとれば、大丈夫なは――

 

 

此方を向いた蜘蛛の八つの目が、私を確実に捉えた。

 

 

すぐさま反対方向に駆け出す。

もしあれに捕まったら、ほぼ間違いなく死ぬ。

危険感知と気配感知で、恐ろしいほどの速度で大蜘蛛は私との距離を縮めてくるのが分かってしまう。

あの大きさで、ここまで速く動けるなんて反則でしょうが。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「動体感知LV1」を獲得しました》

 

新しいスキルが手に入ったみたいだけど、逃げること以外を気にする余裕なんてない。

こちらを追いかけてくる蜘蛛の魔物が、恐ろしくてたまらない。

速く、もっと速く。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「疾走LV2」が「疾走LV3」になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「危険感知LV5」が「危険感知LV6」になりました》

 

危険感知で真後ろから急速に迫ってくるものを察知し、左に避けた瞬間、太い蜘蛛の糸が私のいた場所を通り過ぎていた。

蜘蛛の糸は、強い粘着性を持っていることを私は知っている。

あの糸に捕まっていたら、あの大蜘蛛から逃げられなくなることは、ほぼ間違いなかった。

 

ちょうど分かれ道に差し掛かったので、左の道へと向かう。

そこから分岐点が幾度となく存在していたことは、私にとって非常に幸運だった。

私が逃げられるルートが多ければ多いほど、あの魔物が見失う可能性が高くなるはずだから。

 

私の思惑通り、大蜘蛛は分かれ道があるたびに移動を一度止めるようになってきた。

そのうち完全に動きは止まり、やがてもと来た道を引き換えしていった。

やった!

 

ひとまずは自分の命が助かったことに安堵するけど、気は抜けない。

感知系のスキルで、あの恐ろしい大蜘蛛の位置を確認しながら、少しでも遠ざかるために走り続けた。

 

甘かった。

完全に油断していた。

自分の本質は、まだトカゲだった時から変わっていなかった。

少し連勝が続いたからって、この広い迷宮のなかで自分は無敵だと信じていた。

この迷宮での、強さの上限も知らないくせに。

 

弱い生き物は、強い生き物に食われる。

この場所の厳しさを知っていたくせに、中途半端な強さで満足しかけていた。

強い怪獣の力にあやかっているだけの私が、そんなこと思う資格なんてないのに。

最悪で、最低だ。

 

そんなことを頭の片隅で考えていたからなのか。

それとも、自分よりも圧倒的な強さを持つ大蜘蛛から逃げるのに気を取られ過ぎていたのか。

 

私の足は、地面を踏むことなく、体が前方へと倒れていった。

地面と正面衝突すると思ったけど、その勢いのまま頭が下になり、下へと掛かる重力がどんどん強くなっていくのを感じる。

何が起きているのか気づいた時には、遅かった。

 

私の体は、底の見えない大穴に投げ出され、そして落ちていった。

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラン LV4

・ステータス

 HP:1394/1394(緑)
 MP:1267/1267(青)
 SP:541/1350(黄)
  :1362/1362(赤)
 平均攻撃能力:1288
 平均防御能力:1287
 平均魔法能力:1179
 平均抵抗能力:1182
 平均速度能力:1263

・スキル
 
 地竜LV4,龍鱗LV3,甲殻LV2,
 HP高速回復LV2,
 MP回復速度LV2,MP消費緩和LV2,
 SP回復速度LV3,SP消費緩和LV3,
 破壊強化LV2,打撃強化LV1,斬撃強化LV1,貫通強化LV1,衝撃強化LV2,火強化LV6,
 火攻撃LV3,土攻撃LV1,
 立体機動LV1,
 集中LV5,予測LV4,並列思考LV6,記憶LV4,演算処理LV1,
 命中LV3,回避LV3,隠密LV10,迷彩LV2,無音LV10,無臭LV1,
 危険感知LV6,気配感知LV6,動体感知LV1,
 影魔法LV1,
 過食LV5,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV1,
 火耐性LV4,大地無効,毒耐性LV5,酸耐性LV3,腐蝕耐性LV2,恐怖耐性LV1,
 視覚強化LV2,聴覚強化LV2,嗅覚強化LV2,味覚強化LV1,触覚強化LV1,
 生命LV2,魔量LV2,瞬発LV3,持久LV3,強力LV4,堅固LV4,術師LV2,護法LV2,疾走LV3,
 呉爾羅LV6,
 禁忌LV6,n%I=W

・スキルポイント:95110

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁今回登場した大蜘蛛について
自分より遅く生まれた反逆者ならぬ反逆蜘蛛の捜索のために大迷宮上層をうろついていたところ、そこそこ大きい地竜に遭遇。ちょうど小腹がすいてきたので捕まえて食べようとしたが、思った以上に素早くて、捕まえるのを断念。のちにその反逆蜘蛛に返り討ちにされてしまうため、これ以上の出番はなし


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窮地

1週間ぶりです。


あ、これもう死んだわ。

事態を理解した私は、まずそう思った。

 

だって、ここから生き残るとか、無理だもん。

他の魔物と戦うならスキルの力が使えるけど、空を飛ぶことができるスキルはないもん。

まさか、死なないようにと他の魔物に殺されないよう立ち回ってきた私が、そのための行動で死ぬとか思ってなかった。

 

ああ、どうしてこうなっちゃったんだろう。

私はもともと日本にいた普通の女子高生で、ゴジラ映画は視聴する側の、ただの人間だった。

それが、死んだと思ったらトカゲになっていて、ゴジラと同じ熱線を使えるようになって、こんな弱肉強食の世界で必死に生きてきたはずなのに、バカみたいに呆気なく死ぬなんて……。

誰が望むんだ、こんなアホみたいな話。

 

でも、これはこれでいいのかもしれない。

こんな血と闘争にあふれた世界から解放されるのなら、悪くないかも。

何度リアリティのありすぎる悪夢かと思ったことか。

正直、今でも夢だと思いたい気持ちがある。

早く、こんな夢から覚めて、ゴジラの映画がまた観たいと何度も望んだ。

 

あのシーンでも、もう一度見たら感動するかもしれない。

いくらなんでも、熱線でそこまではできないだろうと思った、あの……。

 

 

 

それだ!!!

 

 

 

一気に思考を現実へと引き戻した私は、立体機動のスキルを意識しながら体勢を立て直し、同時並行で穴の側面との距離などを確認する。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「立体機動LV1」が「立体機動LV2」になりました》

 

この状況でのレベルアップはありがたい。

私は落下しながら体勢を整え、ちょっと斜めの下方向に顔が向くようにする。

そして、思いっきりの力を込めて、放射熱線を吐き出した。

 

空中で熱線を吐き出した反動で、体が回転しそうになるが、どうにか体勢を維持できるようにスキルを意識しながら努める。

最低でも、上の方を向いてしまうようなことは決して起こしてはいけない。

 

流石に熱線の反動を完全には殺し切れず、体が少しずつ回転して、熱線の噴射先も下方向から横方向にずれていく。

だけど、上の方を向いてさえいなければ、むしろありがたい。

 

熱線を吐き出し続けた私の背に、衝撃と凄まじい痛みが襲う。

穴の側面の壁にぶつかった!

 

私は、口から吐き出した熱線を推進力にして、落下速度を少しでも緩めると同時に、自分の体が壁にぶつかるように行動していたのだ。

穴の深さが尋常ではないおかげで、地面に衝突するまでの時間も大分あるようなのが不幸中の幸いだった。

この大穴がもし浅かったら、地面の染みになる方が早かったかもしれない。

まあ、その場合は、大けがで済んで死ぬことはなかった可能性もあるけど。

 

壁にぶつかった衝撃で、熱線を一度止めてしまい、壁との距離ができてしまう。

しかし、私は覚悟を決めて、熱線を吐き出し続けて自身の体を壁に押し付けた。

 

壁に自身の体を押し当てることで、壁との間に重力とは逆向きの摩擦力が生じ、落下スピードは落ちるはずだ。

そう考えた通り、少しずつ落ちていく速度が遅くなっているように、目で見ている限りでは感じている。

同時に、自分の背中で壁との摩擦を起こしているから、背中には削られていく痛みが襲い続けている。

焼けるように痛いけど、落下スピードを下げることを優先しないと死んでしまうので、熱線を吐くことと体勢を保つことに集中する。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「苦痛耐性LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「集中LV5」が「集中LV6」になりました》

 

また新しいスキルを手に入れたみたいだけど、そっちに意識を割く余裕はない。

ただ熱線を吐いて、少しでも落下する速度を遅くして、死ぬ可能性を少なくする。

そのことを第一に考えて行動したおかげか、最初の時と比べて下に落ちていく速度が遅くなっているのが目に見えて分かる。

これは、いけるのでは?

 

どうにか落下死を回避できる可能性が見えてきたことで、心に若干の余裕ができた。

そしてようやく、私は気配感知と危機感地――それと、新しく手に入れていた動体感知で、この縦穴にいた魔物の存在に気が付いた。

 

蜂だ。

人よりも大きいサイズの巨大な蜂が、何匹も縦穴の中をブンブンと飛び回っていた。

落ちることに気をとられて、全く意識できなかった。

 

蜂は、自分たちの縄張りに入ってきたものは許さないとばかりに、私に襲い掛かってきた。

こっちは地面に激突しないようにするのが精いっぱいだっていうのに!

 

幸いにも、気配感知による脅威は、いつも狩っているカエルと違わないぐらいのが大半だ。

熱線は落下の勢いを落とすために使っている最中で、空中で天地が逆転しているという非常に戦いにくい状況だけど、戦えない訳じゃない。

 

あくまで下向きに熱線を吐くことを中心に考え、並列意思で蜂への対策を行う。

火攻撃のスキルで手と足、尻尾に火をつけ、蜂が寄ってこないように体勢を崩さない程度に振るう。

今までの魔物と同じく蜂も火が苦手なのか、私のそういう行動だけで近くに寄ってくることはなくなった。

 

そうやって蜂を遠ざけながら熱線を吐き続けていたら、やがて蜂たちは諦めたのか、縦穴の上の方へと遠ざかっていった。

そして、ついに地面が近づいていき、下を向いていた私の頭が地面と衝突し、かなりの衝撃が頭の中を走った。

 

頭痛を覚えながらも、私は生き残ることができた嬉しさでいっぱいだった。

ゴジラ映画の、ネタとしか思えないようなシーンから思いついた咄嗟の策だったけど、どうにかうまくいって良かった。

本当に、熱線を空中での推進力にするなんて方法を、よく考えついたと自分でも思う。

 

上を見上げると、本当にかなり深いところに落ちたことが分かる。

ここから元居た高さまで戻るのは、無理だろうなと思った。

立体機動のスキルのレベルが上がれば行けなくはないのかもしれないけど、さっきの蜂に邪魔されることを考えると、行かない方がいいと思う。

別のところから戻れるかもしれないから、まずはここの探索を先に行なおう。

 

そう考えた私の背中に、ブスリという音とともに何かを刺される感触がした。

 

突然の事態に一瞬呆けてしまいそうになったが、すぐに感知系のスキルを使用。

私に攻撃を仕掛けていたのは、蜂だった。

しかも、さっきの蜂の何倍も大きく、感じ取れる脅威度も高い。

 

すぐに対処しようとしたけど、それは無理だった。

体が、動かないのだ。

まるで痺れているようで、行動しようとしても動くことができなかった。

 

 

この状況で体を動かせないことに焦っている私に対し、蜂が針を通して何かを私の体内に流し込んできた。

すると、またたくまに体の内側から激痛が襲ってきた。

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

 

体が中からひび割れてくるような凄まじい痛みに、かつてないほどの命の危機を感じる。

背中から針を刺す蜂をどうにかしないといけないと分かっているけど、痺れている体はまだ動かない。

 

それでも、このままだと死ぬ。

激痛に苦しみながらも、どうにかしようともがく。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「麻痺耐性LV1」を獲得しました》

 

その声が聞こえてきた時、少しだけ痺れが弱まったようで、体も少しだけ動かせるようになったのを感じた。

そのことを認識した私は、蜂を攻撃するために体内放射を使用した。

 

体内放射は、呉爾羅のスキルがレベル6になったことで使用できるようになった技だ。

放射熱線のエネルギーを衝撃波として全身から放出する技で、口から直線的に放たれる熱線と違って、自分の周り全てを攻撃することができる。

熱線の何倍も消耗が激しい技だから使い時は選んでいたけど、熱線が当たらない背中の蜂を迎撃するにはこれしかない。

 

私の体内放射をまともに受けた蜂はひとたまりもなかったようで、気配感知で感じ取れる反応がすぐに消えてしまった。

どうにか原因は排除できたけど、激痛はまだ私を蝕んでくる。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV5」が「毒耐性LV6」になりました》

 

毒……?

そうか、毒だ!

あの蜂、私に毒を盛ったんだ!

 

蜂と言えば毒だということを、すっかり失念していた。

毒を浴びたことも取り込んだことも何度もあるけど、こんなにも痛い思いをしたのは初めてだから気づかなかった。

 

でも、気づいたからと言って、どうにかできるわけじゃない。

まだ麻痺が残っているけど、身を隠せそうな場所を探して、そっちの方にどうにか移動した。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「苦痛耐性LV1」が「苦痛耐性LV2」になりました》

 

また何かのスキルのレベルが上がったみたいだけど、とにかく体が痛くて意識できない。

この激痛、間違いなく蜂に刺されて入れられた毒によるものだろう。

痛いだけじゃなく、体が弱っていくことも分かってしまう。

呉爾羅やHP高速回復でも間に合わないほどの速さで、命を削られていくのを感じてしまう。

 

いやだ、死にたくない。

 

その想いが通じたのか、痛みは治まらないけど、自分の命が繋がっていく感覚がする。

なんとなく、体力を、生命力に変換するような、そんな感覚……。

そう長くは続きそうにないけど、それでも自分の命が少しでも長引いてくれることに泣きそうになる。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「HP高速回復LV2」が「HP高速回復LV3」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV1」が「恐怖耐性LV2」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV6」が「毒耐性LV7」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「苦痛耐性LV2」が「苦痛耐性LV3」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性L2」が「恐怖耐性LV3」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「HP高速回復LV3」が「HP高速回復L4」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「呉爾羅LV6」が「呉爾羅LV7」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「禁忌LV6」が「禁忌LV7」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV3」が「恐怖耐性LV4」になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV7」が「毒耐性LV8」になりました》

 

気が付いたら、その感覚も収まり、自分の命が削られていくような感覚もしなくなった。

毒による激痛と死への恐怖で、どれだけの時間が過ぎたのかも分からなかった。

 

気配感知で自分自身を探ってみると、大分弱ってはいるけど、一定の気配の大きさを保っているようだった。

たぶん、毒によるダメージと、再生能力が拮抗しているような状態なんだと思う。

 

……どうにか、蜂の毒で死ぬ事態は回避できたみたいだった。

だけど、状況は今までで最悪だ。

 

上はさっきみたいな蜂がたくさん飛んでいて、また襲ってくるかもしれない。

生命力を回復させた代償なのか、お腹がひどくすいている。

だけど、ここは初めて来た場所で、食料になるようなものがあるかどうかも分からない。

 

悪夢は、まだ続くようだった。

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラン LV4

・ステータス

 HP:914/1494(緑)
 MP:318/1367(青)
 SP:571/1450(黄)
  :236/1462(赤)
 平均攻撃能力:1388
 平均防御能力:1387
 平均魔法能力:1279
 平均抵抗能力:1282
 平均速度能力:1363

・スキル
 
 地竜LV4,龍鱗LV3,甲殻LV2,
 HP高速回復LV4,
 MP回復速度LV2,MP消費緩和LV2,
 SP回復速度LV3,SP消費緩和LV3,
 破壊強化LV2,打撃強化LV1,斬撃強化LV1,貫通強化LV1,衝撃強化LV2,火強化LV6,
 火攻撃LV3,土攻撃LV1,
 立体機動LV2,
 集中LV6,予測LV4,並列思考LV6,記憶LV4,演算処理LV1,
 命中LV3,回避LV3,隠密LV10,迷彩LV2,無音LV10,無臭LV1,
 危険感知LV6,気配感知LV6,動体感知LV1,
 影魔法LV1,
 過食LV5,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV1,
 火耐性LV4,大地無効,毒耐性LV8,麻痺耐性LV1,酸耐性LV3,腐蝕耐性LV2,
 恐怖耐性LV4,苦痛耐性LV3
 視覚強化LV2,聴覚強化LV2,嗅覚強化LV2,味覚強化LV1,触覚強化LV1,
 生命LV2,魔量LV2,瞬発LV3,持久LV3,強力LV4,堅固LV4,術師LV2,護法LV2,疾走LV3,
 呉爾羅LV7,
 禁忌LV7,n%I=W

・スキルポイント:95110

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁今作オリジナルの種族の説明

○種族「アサシンフィンジゴアット」

 概要:ハイフィンジゴアットの特殊進化先。ステータスはジェネラルと比べると
    低めだが、猛毒針や、針で刺した相手を麻痺状態にする麻痺毒針などの
    強力な状態異常攻撃を持っているほか、隠密と無音のスキルを高いレベルで
    保有しているため、ステータスの高い魔物相手でも、毒や麻痺に対する
    耐性が高くないと倒してしまえるほどの厄介さがある


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生きあがく

※主人公がアナフィラキシーショックについて心配する描写がありますが、この世界の蜂の魔物が持っている毒では起こりえない設定ですので、そのことをご理解いただきたいと思います



追記、彼女に蜘蛛子並のメンタルを期待しないでください


正直いうと、もう心が折れそうだった。

自分よりも圧倒的に強い大蜘蛛に狙われ、底が見えないほど深い穴に落ちた。

どうにか落下死せずに済んだと思ったら、あの蜂に今までにないほど強力な毒を注入されて、この地下深くで苦しむことになっている。

 

HP高速回復と呉爾羅のレベルが上がって再生能力が向上したから、耐性が上がったこともあって毒で体力が削られることはなくなった……と思う。

でも、毒によるものと思われる痛みは、まだ体に残っている。

それに、壁に体を押し当てている時に摩擦で削れた背中の傷も、じくじくと痛んでいる。

いつもなら回復し始めているはずなんだけど、毒のダメージを回復するのに手いっぱいで、こっちの傷は回復する余裕がないのかもしれない。

 

今までで最悪のコンディションであるにもかかわらず、周囲の状況も良くない。

エネルギーを消耗したのか、かなりお腹がすいてしまっていて、はやく何か食べた方がいいかもしれない。

だけど、この場所に、上層のように食料になるような魔物がいるかどうかも分からず、いたとしても獲物になるような弱い魔物はいないかもしれない。

こんな状態で、初めての場所で狩りに行くのは、不安が大きい。

 

それに、上にいる蜂も怖い。

さっきみたいな蜂がやってきて毒をまた盛られたら、今度こそ死んじゃう。

今のところ、それと同じ蜂の存在は感知系のスキルで感じられないけど、警戒をやめることなんてできない。

 

毒に、痛みに、空腹に、蜂を始めとした外敵。

それらが、今の私を追い詰めている。

 

 

……もう嫌だ。

どうして私がこんな目に……。

私が一体、何をしたっていうの……?

 

今まで、他の生き物を殺して生きてきたから?

そうでもしないと、生きていくことなんてできなかったのに?

それとも、私の心構えとかが、何か悪かったの……?

 

……帰りたい……。

誰か、助けて……。

 

 

 

 

 

……どうにか気持ちを立て直して、行動を起こす。

まず、少し心もとないけど、進化するときに以前作ったような土のシェルターを作った。

今回は、白熱光で熱を加えることで、より強度を持たせることに成功した。

 

自作のシェルターは、少しばかりの安心感を私に与えてくれた。

その安心を頼りに、今後のことを慎重に考える。

 

現状について、まずは毒と傷のダメージを治すことを優先したいと思う。

初めての場所で、ダメージが残ったままの体で他の魔物を狩りに行くのは、できるだけ避けたい。

空腹が限界を迎える前に食料を確保したい気持ちもあるけど、蜂に襲われる可能性も考慮したら、まずはダメージを回復させたい。

 

傷を治したりする手段は、今のところHP高速回復と呉爾羅の二つのスキルしか思いつかない。

これらのレベルが上がれば、徐々に回復してくるようになると思う。

熱線や他のスキルのように、明確に「使用する」という意思をもってスキルを使っているわけじゃないけど、体を休めて癒すことを意識していれば、もしかしたらスキルのレベルが上がるかもしれない。

この二つのスキルは大事な命綱なので、可能性が低くても試していきたい。

 

私の上の方を飛んでいる蜂だけど、私との距離はかなり離れているし、こうしてシェルターにこもっていれば襲われないかもしれない。

気配感知や危険感知で警戒することはやめないけど、シェルターがあるから不意打ちは仕掛けられないだろうし、大丈夫だと思う。

 

……よし、感知系のスキルで外敵を警戒しながら、再生系のスキルを高めることを意識して体を休めよう。

 

 

 

土のシェルターの中で眠って、目を覚ます。

正直、蜂が襲い掛かってくるかもしれない状態で眠るのは不安だったけど、眠気は対処しきれなかった。

眠ってしまうのを我慢していたら、睡眠耐性なんていうスキルを手に入れていたけど、さすがに眠らずにはいられなかった。

体の痛みはまだ治まらないけど、それでも眠気は襲ってくるという、知りたくもないことを知った。

 

すぐに感知系のスキルを使用して、周囲に危険がないことを知ってホッとする。

無事とは言えない状態だけど、こうして生きていくことができるのは、やっぱり嬉しい。

 

寝るまでに、再生系のスキルのレベルが上がることは結局なかった。

空腹も、少しずつひどくなっている気がする。

それでも、今は回復することを優先したい。

 

 

 

起きてからしばらく、周囲の警戒をして過ごしていたら、待ち望んでいた瞬間が来た。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「HP高速回復LV4」が「HP高速回復LV5」になりました》

 

HP高速回復のレベルが、上がってくれたのだ。

自分の生命力が、回復の傾向に向かっていくことが分かる。

毒による激痛も、少しずつ収まってきた気がする。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV8」が「毒耐性LV9」になりました》

 

ちょうど毒耐性のレベルも上がってくれた。

この調子なら、近いうちに毒も抜けきってくれると思う。

そうしたら、背中の傷も治り始めると思うので、その傷が完治したら狩りに行こうと思う。

 

まずは、再生が終わるのを待とう。

 

 

 

おなかが、すいた。

 

体の再生は……一応、終わった。

体の痛みもなくなったし、背中の傷もすっかり治ってる。

途中で、苦痛耐性がLV7になったことをアナウンスで聞いた。

 

でも、それ以上に空腹が気になって仕方がない。

自分の体が回復したことに安心して気が抜けたのか、一気に空腹感が押し寄せてきた。

そのせいか、ちょっと頭がふらふらしてきた気がする。

 

この状態で狩りにいくのは、かなり危険だと思う。

かと言って、このままだと食料が手に入らないから、最悪本当に餓死するかもしれない。

 

そんな時、チラッと視界に映ったのは、昨日体内放射で仕留めた蜂の亡骸。

その毒で、私を大いに苦しめた、あの蜂。

 

……あの蜂を食べればいいじゃないかと、思っちゃった……。

 

確かにそうだけども、どう考えても悪手でしかない。

刺されて毒を注入された時にあんなに苦しんだのに、その毒をもう一度体内に取り込むような真似をするなんて、本当にどうかしてる。

それに、確率は低いとはいえ、アナフィラキシーの危険性もある。

あの蜂の毒で、このトカゲの体で、それが起きるかどうかは分からないけど、あの蜂は食べないのが一番だ。

 

……でも、今はそれ以上に空腹をどうにかしないといけないと考えちゃう……。

お腹がすいてくるのに耐えられなくなってきて、食べないよりも食べた方がいいと思うようになってくる。

 

……それに、最初に蜂の毒を喰らった時に比べて、毒耐性もHP高速回復もレベルが上がってパワーアップしてる。

今なら、蜂の毒を取り込んでも、なんとかなるかもしれない。

アナフィラキシーに関しては、起きないことを祈るしかない。

 

……食べよう。

このままだと、空腹で死ぬことになるかもしれない。

私の持っているスキルが毒を上回っていることを祈ろう。

 

体内放射で焼けた蜂の亡骸に近づき、いただきますと心の中で礼をする。

自分を守るためとはいえ、奪うことになった命。

できることなら、無駄にすることは避けたいという思いもあった。

 

覚悟を決めて、一口かぶりついた。

牙でかみ砕き、飲み込んで胃へと送り込む。

 

瞬間、私の体をまた痛みが襲った。

それに、少し体も痺れてきた。

麻痺のことをすっかり忘れていた……。

馬鹿か私は!!

 

幸い、毒による痛みは最初ほどではなく、麻痺の痺れもそこまでではなかった。

少しだけ動きがぎこちない体を動かして、蜂をくわえてシェルターへと戻る。

空腹で冷静じゃなかったのか、無防備な場所で蜂を食べ始めたけど、さすがに続きは安全な場所で食べることにする。

 

食べかけの蜂をシェルターの中に入れて、自分も中に入る。

さっきの一口に含まれていた毒でダメージを受けたけど、今はもう回復し始めてるのを感じる。

どうやら、この蜂の毒でまた死にかける、という展開はなくなったみたいだ。

 

我ながら、バカなことをしちゃったとは思う。

空腹で、ここまで思考を乱されるとは思ってなかった。

お腹がすくっていうことは、私が考えていた以上に恐ろしいことだった。

今まで食べてきた生き物たちには、これまで以上に感謝しないと。

 

それはそうと、この蜂を食べることに危険が全くないという訳じゃないけど、少し食べる分なら危機的状況に陥るわけじゃないと分かった。

すると、現金なことに、できれば全部食べておきたいと考えるようになってしまった。

 

今までの経験上、毒持ちの魔物を食べていると、毒耐性のスキルのレベルが上がることがある。

なら、この強力な毒を持つ蜂を食べていれば、毒耐性も強くなっていって、今後毒を持つ魔物との戦いで多少有利になるんじゃないかと思う。

それに、HP高速回復のレベルも上がるかもしれないと考えると、苦しい思いをしても食べた方がいいかもしれない。

 

そう考えながら、私は回復を待つ。

回復を待ちながら、周囲への警戒を感知系スキルで行なった。

 

 

 

穴の底に落ちてから、3日目。

といっても、時間の感覚なんてなくなっているから、寝て起きて、を1日の基準として考えているだけだけど。

 

昨日から今日にかけて、蜂を少しずつ食べていった。

食べて毒を喰らって、毒が抜けきるまで体を休めて、の繰り返し。

 

再生系のスキルで回復するまでの間、他のスキルのレベルを上げたりした。

シェルターに閉じこもっているから鍛えたスキルの数は少ないけど。

 

蜂はもう、食べきっている。

この蜂には、本当に世話になった。

いろんな意味で、本当に。

 

この蜂のおかげで、毒耐性が大幅にレベルアップした。

少しずつ食べているうちに、毒耐性のスキルがLV10になって、猛毒耐性というスキルになったらしい。

LV10になったら、進化という形で別のスキルになるものもあることを、初めて知った。

名前や進化という単語から考えて、より毒への耐性が強くなるスキルだと思う。

 

で、毒への耐性がそういう感じで強くなった私だけど、ふと気づいた。

スキルポイントで、毒耐性を強くすれば良かったんじゃないかと……。

 

うん、激しく後悔しましたとも。

毒耐性に限らず、HP高速回復とかのレベルも上げられるわけですから。

スキルポイントの存在をもっと早く思い出していれば、ここまで苦労することはなかったわけですから。

どうしてこう、スキルポイントのことをすぐ忘れちゃうのか……。

 

で、せっかくだから、麻痺耐性のレベルを上げるのにポイントを使った。

思えば蜂の攻撃で、まず体が麻痺してたんだよね。

あのとき行動できていれば猛毒をくらうこともなかったと考えると、麻痺というものも厄介だと今なら思う。

ちょうどLV2になったことをいつもの声で知っていたから、LV10になって強麻痺耐性というスキルに進化するまでポイントを消費した。

 

HP高速回復にもスキルポイントを使おうと思ったけど、やめた。

私は、今回のことで初めて麻痺というものの恐ろしさを知り、毒で死にかけることになった。

毒耐性は蜂を食べているうちに猛毒耐性へと進化し、スキルポイントで麻痺への耐性は強化したけど、これからは、これらに匹敵する――あるいはそれ以上の脅威に遭遇する可能性だってある。

そのことを考えると、その脅威への対策として、スキルポイントはできるだけ取っておきたいという気持ちが強かった。

まあ、けっきょくのところ状況次第だけど。

 

さて、蜂は食べきってしまったため、食料を得るにはシェルターの外に出るしかない。

不安は大いにあるけど、十分に回復した以上、あとはなるようになるしかない。

 

私は、隠密系や感知系のスキルをフルに使いながら、未知の場所を歩み始めた。

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラン LV4

・ステータス

 HP:1494/1494(緑)
 MP:1367/1367(青)
 SP:1450/1450(黄)
  :714/1462(赤)
 平均攻撃能力:1388
 平均防御能力:1387
 平均魔法能力:1279
 平均抵抗能力:1282
 平均速度能力:1363

・スキル
 
 地竜LV4,龍鱗LV3,甲殻LV2,
 HP高速回復LV5,
 MP回復速度LV2,MP消費緩和LV2,
 SP回復速度LV3,SP消費緩和LV3,
 破壊強化LV2,打撃強化LV1,斬撃強化LV1,貫通強化LV1,衝撃強化LV2,火強化LV6,
 火攻撃LV3,土攻撃LV2,
 立体機動LV2,
 集中LV6,予測LV6,並列思考LV7,記憶LV5,演算処理LV1,
 命中LV3,回避LV3,隠密LV10,迷彩LV2,無音LV10,無臭LV1,
 危険感知LV7,気配感知LV7,動体感知LV3,
 影魔法LV1,
 過食LV5,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV2,
 火耐性LV4,大地無効,猛毒耐性LV2,強麻痺耐性LV1,睡眠耐性LV2,酸耐性LV3,腐蝕耐性LV2,
 恐怖耐性LV4,苦痛耐性LV8,
 視覚強化LV2,聴覚強化LV2,嗅覚強化LV2,味覚強化LV1,触覚強化LV1,
 生命LV2,魔量LV2,瞬発LV3,持久LV3,強力LV4,堅固LV4,術師LV2,護法LV2,疾走LV3,
 呉爾羅LV7,
 禁忌LV7,n%I=W

・スキルポイント:93510

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁作者の、耐性系スキルに対する考え方
・ステータス上の抵抗能力の大きさに関わらず、所持により対応する属性に
 抵抗できるかどうかが大きく左右される
→本作で、平均抵抗能力は1000を超える主人公が麻痺を喰らったのは、
 麻痺耐性のスキルを所持していなかったから


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落ちた場所は、さらなる魔窟でした。だけど私は元気です

今回は、大量レベルアップ&トレーニング回(終了済み)


生まれた場所からずっと深いところに落ちて、上に戻る道を見つけるための探索を始めてから、おそらく2週間ぐらい経ったと思う。

その結果わかったことだけど、ここは、私がいた場所とは比べ物にならないぐらいの危険地帯だったようです。

 

ここは上よりもずっと広い道が続いているんだけど、かなり強い魔物がうじゃうじゃいる。

今まで見たことない魔物や、上の方で見た魔物の進化形だと思われる魔物とか、種類はいろいろだけど、危険感知で判断した限り私と同じぐらい強いのなんてたくさんいる。

進化したことで大分強くなったはずの私だけど、ここにいると、まだ生まれたばかりのトカゲだった時を思い出す。

まあ、毒とかを持っている種類なら、上にいた頃によく見た魔物もそれなりにいるけど。

 

そんなわけで、私は隠密や無音、迷彩に無臭といった隠密系のスキルを駆使して先に進んでいる。

それらのスキルを突破されて急に襲い掛かられても心の準備はできているように、感知系のスキルもしっかり働かせてる。

 

とはいっても、食料の確保に関しては、気配を消せばいいってものじゃない。

空腹になってきたら狩りをするわけだけど、私と同じくらいの強さの魔物と戦ったことも少なくない。

 

例えば、この階層で最初に戦ったのが、5メートルもある巨大な蟷螂だった。

普通の蟷螂と違って腕が6本もあって、両手の鎌を巧みに操って戦う魔物。

あの鎌で切り裂かれたら、ひとたまりもないだろうなと考えた。

 

私はそんな蟷螂と向き合い、命がけの戦いになるかもしれないと感じた。

そして戦いが始まり、私は意を決して蟷螂に向かって熱線を吐き出した。

 

 

結果、蟷螂は何もできないまま倒れました。

 

 

まあ、倒した直後はポカーンとしたよ。

でも、よく考えたら、虫って火に弱いだろうし、そのことを考えたら、こうなるのも仕方ないのかもしれない。

危険感知の反応の割にはあっさりと倒してしまって、本当に呆気にとられた。

その後、蟷螂はおいしくなかったけど頂きました。

 

でも、油断するのは良くない。

この前の蜂のように、気づいたらこちらがピンチになるような技を使ってくる魔物もいるかもしれないから、十分注意しないと。

あんな目にはもうあいたくない。

 

ということで、警戒はしながら先に進んでいる。

蟷螂以外にも、いろんな魔物と戦ってきている。

その全てにあっさりと勝てたわけじゃないけど、苦しい戦いを強いられるような相手はいなかったのが幸いかな。

 

感知系のスキルで、危険そうな魔物は遠くから存在を察知して、避けるように意識している。

だいたいはそれで回避できているはずだけど、私のスキルでも回避できない相手はいた。

 

 

 

それは、まさに強者と呼ぶべきオーラを放つ存在だった。

私の何倍もの体躯を持ち、それでいて重量感を感じさせないスマートな姿。

スピード感がある鋭利なフォルムをしており、腕には切れ味のある刃のような部位がついていた。

そして、感知系で認識した限り、その脅威の高さは上で襲ってきた大蜘蛛にも劣らなかった。

 

この階層でも群を抜いた実力を持つであろう魔物は、間違いなく私の存在を認識し、正面から捉えていた。

私は、その魔物の圧倒的なオーラに恐怖していたのか、それとも見惚れていたのか、自分でも理由は分からないけど動くことができなかった。

しようと思えば、すぐにでも私を喰らうことができただろう魔物は、私に何をするわけでもなく去っていった。

 

それがなぜなのかは、分からない。

ただ、あの魔物を見て、あんなふうに威風堂々とした存在になりたいと、私は強く思った。

体も、そして心も。

 

 

 

 

あの魔物にはまず勝てないだろうけど、それを除いても、ここの魔物は強いのが多い。

そして、強い魔物を倒すと、そのぶん多くの経験値が入るらしいことは知っている。

なので、食べるために魔物を狩っていると、私のLVがどんどん上がっていってるのだ。

上にいた時よりもずっと速いペースでレベルアップしていくから、スキルのレベルも結構上がっていく。

 

それと、レベルアップでも身体能力が上がることが確認できるほどに、強さの違いを実感できるようになっていた。

レベルアップで上がる基礎能力値というのは、身体能力という認識で合っていたんだと思った。

 

そんなふうにLVが上がっていってるんだけど、トレーニングの方もしている。

上で蛇を倒した時のように、時間をかけないと食べきれない質量の獲物がとれた際は、食べきるまでスキルの鍛錬に時間を使っているからね。

おかげで、またいろんなスキルのレベルが上がってきた。

 

特に地竜のスキルは、体の表面を石で覆う技を戦闘中に使うようになったこともあり、レベルが上がって新しい技が使えるようになった。

一つが、土を吐き出す技の強化版っぽいけど、威力が全然違った。

この技で吐き出すのは、丸く固められた大きめの土の塊なんだけど、まるで岩のように硬いから、ぶつけられた相手に大きなダメージを与えられるようになった。

戦闘中にも使える技だからガンガン使っていて、地竜のスキルの熟練度稼ぎに貢献している技だと思う。

 

もう一つの技は、土や石を食べられるようにする技……だと思う。

本能のような感じでやってみた技だから、前から土を食べられたかもしれないとか、そういうのは分からない。

この技は、土や石とかを食べることで、一時的に身体能力を上げる技のようで、空腹を満たすために食べるわけじゃないみたい。

ただ、普通に有用な技みたいなので、こっちも使えるときに使ってる。

 

また、新しいスキルもいくつか覚えた。

周囲の熱エネルギーを感じ取ることができる熱感知はその一つで、他の感知系と同じように使用している。

 

他には、トレーニング中に、破壊耐性・貫通耐性・衝撃耐性・打撃耐性・斬撃耐性などのスキルを新しく獲得した。

具体的な効果を知ることはできないけど、物理的な防御力を高めてくれるスキルだと期待してる。

強化系のスキルと同じような感じで、熱線によって破壊耐性・衝撃耐性・貫通耐性を、爪や尻尾などの攻撃によって斬撃耐性・打撃耐性を鍛えている。

 

新しいスキルを覚えたり、既存のスキルのレベルが上がったりしたわけだけど、そのなかでも一番活躍してくれるスキルは、やっぱり呉爾羅。

まずは、このスキルがレベル8になった時の衝撃が凄い。

体を再生させる効果が、それ以前とは比べ物にならないほど強力なものになった。

すさまじい速度で傷が再生していく光景に、正直、自分は不死身になったんじゃないかと思った。

 

それに、スキルレベルが9になって使えるようになった技も、非常に強力。

なんと、シン・ゴジラで出てきた、背びれから熱線をいくつも発射する放射線流だった。

私の場合は背びれがないけど、背中から熱線を発射することができる。

背中側という死角を狙える、強力な遠距離攻撃を手に入れて、私はご満悦です。

……まあ、技の消耗が凄いし、一度使ったら暫くの間、熱線自体を使うことができなくなるから、本当に使い時を選ばなきゃいけないんだけどね……。

 

この呉爾羅のスキルも、あと少しでLV10になる。

私のLVが20になる頃には、レベルアップしているかな。

LV10になったら、どんな技を使えるようになるのか、新しいスキルが派生したり進化するのか、本当に楽しみにしてる。

 

……まあ、同時に禁忌っていうスキルもLV10になるだろうけどね。

 

呉爾羅のスキルとLVが連動している――というか、呉爾羅の熟練度に比例して熟練度がたまっていて、かつ未だに効果が全く分からないのが、この禁忌のスキル。

どんな効果を私にもたらしているのかLV9になってもさっぱりなんだけど、名前からしてレベルを上げちゃいけない感じのスキルなんだよね……。

LV10になったら進化したりするスキルがあるから、多分LV10になることで効果を発揮するようになるんじゃないかなと思うんだけど……正直、何が起きるか分からなくて怖い。

呉爾羅のレベルを上げれば強くなれる!という考えで行動してきたから禁忌のレベルが上がるのも気にしないようにしてきたけど、いざデメリットが自分を襲うかもしれないと考えると、やっぱり怖い。

 

……まあ、こればかりは仕方ない。

もう呉爾羅のスキルを使わないようにしたとしても、レベルアップでも熟練度は入ってくるだろうし、遅かれ早かれLV10になるのは確定的。

仮にLV10になった途端、死ぬようなことがあったとしても、それはもう受け入れるほかない。

今まで呉爾羅のスキルに何度も命を救われてきたんだから、その代償があるのなら支払わなきゃいけない。

 

ここまできたら、なるようになれ、だね。

案外いい結果に収まるかもしれないし、これ以上禁忌のことで悩むのはやめておこう。

 

さてと、先に進んで、上への帰り道を見つけるとしますか。

 

 

 

 

 

この時の私は、本当に何も知らなかった。

 

禁忌がどのようなものなのかも、この世界のことも。

自分がなぜ、この世界に生まれてきたのかも。

そして、呉爾羅の力を使うということが、どういうことなのかも。

 

 

 

例え知っていたとしても、同じ選択を選んだだろうけど。

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラン LV17

・ステータス

 HP:2942/2942(緑)
 MP:2697/2697(青)
 SP:2897/2897(黄)
  :2896/2896(赤)
 平均攻撃能力:2822
 平均防御能力:2860
 平均魔法能力:2596
 平均抵抗能力:2612
 平均速度能力:2824

・スキル
 
 地竜LV6,龍鱗LV4,甲殻LV4,
 HP高速回復LV6,
 MP回復速度LV5,MP消費緩和LV4,
 SP回復速度LV6,SP消費緩和LV6,
 破壊強化LV4,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV3,衝撃強化LV4,火強化LV7,土強化LV3,
 火攻撃LV5,土攻撃LV4,
 立体機動LV3,
 集中LV7,予測LV8,並列思考LV8,記憶LV6,演算処理LV4,
 命中LV5,回避LV5,隠密LV10,迷彩LV4,無音LV10,無臭LV3,
 危険感知LV8,気配感知LV8,熱感知LV2,動体感知LV4,
 影魔法LV2,
 過食LV7,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV2,
 破壊耐性LV2,打撃耐性LV1,斬撃耐性LV1,貫通耐性LV1,衝撃耐性LV2,火耐性LV7,大地無効,
 猛毒耐性LV3,強麻痺耐性LV2,睡眠耐性LV4,酸耐性LV4,腐蝕耐性LV3,恐怖耐性LV4,苦痛耐性LV9,
 視覚強化LV4,聴覚強化LV4,嗅覚強化LV4,味覚強化LV2,触覚強化LV3,
 生命LV8,魔量LV7,瞬発LV8,持久LV8,強力LV9,堅固LV9,術師LV7,護法LV7,疾走LV9,
 呉爾羅LV9,
 禁忌LV9,n%I=W

・スキルポイント:94420

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁今作オリジナルのスキルの説明

○スキル「呉爾羅」
概要:主人公の、転生者としての固有スキル
効果:ステータス全種にスキルレベル×100分プラス補正が掛かり、レベルアップ時にスキルレベル×10分の成長補正が掛かる。また、レベルにより特殊な効果を発揮する(LV1:白熱光、LV2:自己再生、LV3:放射熱線、LV4:螺旋熱線、LV5:細胞活性、LV6:体内放射、LV7:引力熱線、LV8:超再生、LV9:放射線流、LV10: 轟天熱線)
・引力熱線:重属性の追加ダメージが加わった放射熱線。
      重耐性を持たない相手には、防御を一定数無視してダメージを与える
・超再生:呉爾羅のスキルと同レベルのHP超速回復と同等の効果
     自己再生の効果と重複するため、えげつない速度でHPが回復する
・放射線流:いくつもの熱線を背中から放射する。強力な技ゆえ、MP消費が激しい。
      また、一度使用すると暫くのあいだ熱線が使用不可となる
・轟天熱線:MPをかなり消費する、通常よりもかなり威力が高い放射熱線。
      炎、雷、光、貫通、破壊、衝撃など様々な属性の追加ダメ―ジも加わる

➂スキル「地竜」についてのオリジナル設定
説明:地竜種が有する特殊スキル。レベルにより特殊な効果を発揮する
・LV5:大地ブレス。MPを消費して、土を圧縮した塊を吐き出す。
   地属性のダメージに加え、物理的なダメージも与える
・LV6:食地。土や石などを食すことで能力値が上昇する。吸血鬼の基礎能力的な技

➃圧倒的な強者のオーラを纏う魔物の正体
原作ではお馴染み、スピードタイプの地龍ゲエレさん。もとは主人公と同じ種族のため、地竜を食べるようなことなんてしない。蜘蛛とかだったら食べていたはず


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蜘蛛1 同じ転生者?知らんな

初の蜘蛛子側。
並列意思含めて口調に不安……


オッス!オラ蜘蛛!名前はねえぞ!

今日は、オラのすんげー冒険を聞かせてやっぞ!

 

日本では普通のJKだったオラは、ある日教室で起きた大爆発で死んじまったぞ!

それはDってゆーすんげー性格がわりー邪神のせいだっていうんだから、マジ○○(ピー)だぞ!

 

そんでもって、魔物や魔法が存在するファンタジーな世界に転生することになったんだぞ!

それだけなら素直に、オラわくわくすっぞ!できたんだけど、なんとオラだけ蜘蛛の魔物に転生しちまった!

ほんとやってられねーってばよ!

あ、間違えた……やってらんねーぞ!

 

しかも転生した先は、狂暴な魔獣はびこるエルロー大迷宮!

この世界のラストダンジョン的な場所で生まれ変わっちまったんだぞ!

そのうえ、オラの生まれた時の強さは、魔物として最低クラスだなんて話だから、さぁー大変!

いや、マジで大変だったわ……。

 

すんげーよえー、最底辺の蜘蛛の魔物に転生しちまったオラだけど、そこはオラ!

元人間様の知恵と度胸を駆使して、ありとあらゆるつえー奴らをなぎ倒し、ついにエルロー大迷宮を脱出したぞ!

だけど、それを許さねえヒデー奴がいたんだ!

 

オラの生みの親でありながら、虐待上等、ネグレクト上等、我が子を食べるのも上等な、正真正銘の外道な巨大蜘蛛――マザーだ!

マザーは、生まれたばかりのオラを喰おうとしてたくせに、オラが強くなった途端、眷属支配のスキルでこっちを従えようとしてくる、本当にヒデー奴だった!

だから、マザーの悪辣な支配の糸を断ち切るために、仕方なく、ほんと~~~うに仕方なく、オラの並列意思たちをマザーの精神に送り込んで、やめさせるよう説得(物理)をしたんだぞ!

そしたら、マザーは自分のしたことも忘れて、怒り狂ってオラを殺しに来たんだぞ!

 

配下を送り込んできたり、大迷宮を壊してでも襲ってきたり、挙句の果てにステータスがアホみたいな数値の魔王にオラを一度始末させたり、本当に散々だったぞ!

だから、オラはマザーのところに(並列意思が散々弱らせた後)直接むかってやって、決着を付けようとしたんだぞ!

 

でも、マザーは狡猾で、オラはマザーの罠にかかって絶体絶命のピンチに陥っちまったんだぞ!

もはやここまでか……と思ったその時、並列意思たちがオラの体に戻ってきて、マザーからうば…今までの慰謝料代わりに貰ってきた力で、超絶パワーアップ!

オラは、友情(的な並列意思たちとの絆、ただし自分のコピー相手)・努力!(強調)の力で、ついにマザーに勝利したんだぞ!

 

{情報担当、いつまで茶番を続けているんだい?}

 

茶番とは失礼な、私の冒険を某有名なインフレバトル漫画風に振り返ってただけでしょーが。

 

〈いいけど、早くせんと魔王がくるばい〉

 

おっと、そうだった。

マザーから情報を受け取っただろう魔王がここに来る前に、急いで転移しないと。

 

 

 

エルロー大迷宮を脱出し、マザーを倒した私だけど、魔王からは逃亡をする日々を続けている。

マザーは魔王の眷属だったから、マザーの眷属でありながら反逆を起こし、マザーを倒すに至った私の存在を、魔王は決して許しはしないだろう。

私が魔王の立場だったら許せるはずないし。

 

マザーの力を取り込んだとはいえ、平均ステータスが9万というアホみたいな数値の魔王相手では、どんな準備をしたとしても戦えるはずもない。

いちおう並列意思の体担当が、マザーにやったみたいに魔王の精神に侵入して魂を攻撃してはいるんだけど、マザー相手でも並列意思3人分で長い時間がかかったから、並列意思1人分で魔王の魂を削り切るとなると、相当な期間が必要になるはず。

体担当の侵食を当てにするとしても、私本体は逃げ続けなきゃいけないって訳よ。

 

まあ、叡智様によるマーキングと空間魔法の転移で、油断さえしなければ魔王の追跡は問題なく振り切れるから、かなり余裕がある逃亡生活だけどね。

あ~~、せっかくエルロー大迷宮の外に出たんだから、久しぶりに甘いものが食べたい。

 

{本当に余裕だね……}

 

〈とてもあのバケモノに追われてるんとは思えんばい……〉

 

だって、ようやくあのマザーを倒したんだよ。

あの、私の二度目の人生におけるトラウマNo.1のマザーに!!

トラウマを克服した喜びに浸りながら、手に入れた自由を存分に謳歌するしかないでしょうが!!

 

{まあ、気持ちはわかるよ}

 

〈で、自由はいいけど、これからどうするとね?〉

 

これから……そうか、これからのことか。

確かに、魔王から逃げるにしても、何かしらの目的はあった方がいいか。

 

今は逃走一択だけど、魔王との力の差を縮めておくために力をつけておきたい。

まずありえないけど、気づいたらばったり遭遇していたなんていう万が一もあるかもしれないし。

 

で、強くなるのに一番手っ取り早い手段といえば、レベルアップだ。

LVを上げればアラクネへの進化も近づくし、進化してもステータスとかが上昇する。

アラクネへの進化はもともと目指していたし、やっぱりこれが一番の目標かな。

 

そんでもって、最近は向こうの方から強い奴がくるから経験値には事欠かなかったけど、今は違う。

マザーの次に強いパペットタラテクトたちは魔王の周りに固まってるし、その他の強めな眷属たちは軒並み倒してしまった。

エルロー大迷宮には魔王が網を張ってるだろうし、ここら辺には強そうな魔物はいない。

つまり、自分の足で稼がないと、経験値は入ってこないか。

 

とりあえずは、エルロー大迷宮ほどではないにしろ、魔物が多くいる所を探してみようか。

あ、魔王が従えているタラテクト種はいないところね。

見つかったら、すぐばれるだろうし。

 

まあ、人間は魔物より多めに経験値を持ってるから、人間の集落を襲ったほうが速いだろうけど。

でも、ほら、いちおう私、もと人間だし?

正当防衛はまだしも、自分から積極的にヤろうとかは考えたくない。

うん、かなり魅力的だけど、進んでヤろうとかは思ってないよ?

 

というわけで、魔王から距離を取ることを優先しながら、経験値稼ぎによさそうなところを探すとします。

 

{うん、私も当面はその方針で良いと思うよ}

 

〈じゃけん、そげんなところ見つけんのは、時間がかかるかもしれんけん〉

 

{確かに、エルロー大迷宮には魔物があふれていたけど、あそこは例外だろうからね。

 かなり広い範囲で探していかなきゃ、ちょうどよさそうなところを見つけるのは難しいかもしれない}

 

〈あ、もしかしたら、その途中で他の転生者に会うかもしれんね〉

 

{その可能性はなくはないけど、この広い世界に25人だと出会う確率はかなり低いだろうね}

 

……他の転生者、か。

 

 

 

********************************************

 

 

 

他の転生者の大半が人族に転生して、私だけ蜘蛛っておかしくない!?

しかも、転生した場所は狂暴な魔物だらけのエルロー大迷宮だし!!

おかげで難易度ルナティックな人生ならぬ蜘蛛生だわ!!

 

『いいじゃないですか、私が見る分には面白いですし』

 

それが一番腹立つんだよ!!

ひとが必死になって生きているのを……この邪神!!

 

はぁーないわー!!

私だけこんな扱いとか、マジないわー!!

 

『一応言っておくと、魔物に転生している方はあなた以外にもいますよ』

 

え?

マジで?

ほとんどが人族に転生してるんじゃないの?

 

『転生させた方々の大半は人族に転生しましたが、例外もいます。

 その例外に入る人たちは、それぞれ魂の波長が近い種族の魔物に転生しています。

 なかには、あなたと同様にエルロー大迷宮に生息する魔物になった方もいるんですよ?』

 

マジかー……。

私も同じ境遇とはいえ、それは災難だったとしか言いようがないわ。

ちなみに、どんな魔物に転生してるの?

 

『そこに転生していたのは貴方を除くと二人で、どちらも地竜に生まれ変わることになるでしょうね』

 

地竜かよ!!

竜とか、魔物のなかだとエリートコースじゃん!!

少なくとも底辺ステータスの蜘蛛より恵まれてるじゃん!!

やっぱ不公平だわ!!

 

ん?

『生まれ変わることになる』?

それって、まだ生まれてないってこと?

 

『正確には、地竜の転生者のうち一人は、まだ卵から孵化していない状態ですね。

 いずれは生まれることになるでしょうが、おそらく数年はかかることになるでしょう。

 もう一人の方は既に活動を開始していて、この大迷宮の片隅でたくましく生きていますよ』

 

ふーん。

ま、別にいいけど。

 

『同じ転生者ですが、特にどうしようとかは考えないのですね』

 

まあ、全く気にならないと言えば違うけど、自分から接触しようとかは思わないかな。

この大迷宮で最強クラスのマザーとの戦いに巻き込むようなことになったら、後味悪いだろうし。

 

そもそも、何度も死にかけたとはいえ、最弱種族に転生した私ですら、ここまで成り上がった訳だよ?

竜なんていう優遇種族に転生したんだから、自分一人でどうにか生きていってほしいわ。

 

『普通の人は、あなたのように生きていくことはできないと思いますけどね』

 

いやいや、確かにここは危険とはいえ、私みたいに人生綱渡りな状態にはなってないでしょ。

多分。

 

『そうではなく、精神的な問題ですね』

 

ん?

どゆこと?

 

『日本で普通の女子高生として過ごしていた人が、ある日死んでしまって、記憶を持ったまま異なる世界で全く別の生き物として生まれ変わって、弱肉強食の環境で生きていかないといけなくなる。

 今まで平和な世界で日々を送っていたことを考えれば、その精神的負荷は尋常ではないでしょう。

 実際、彼女の人間としての精神は、あまりのストレスに何度も崩壊しそうになっています。

 まあ、そのたびにどうにか立ち直り、精神を修復しながら一生懸命に生きていますが』

 

Oh……私も同じような境遇とはいえ、そういうふうに聞くと同情しちゃいそうになるわ……。

で、アンタはそうやって苦しみながら生き抜いている元クラスメイトをただ見てるだけなわけだ。

いや、その様子を見て愉しんでいるって言ったほうがいいか。

 

『邪神ですから』

 

アンタやっぱクソだわ。

というか、同じような状況でも割と自分のメンタルを保っている私って、実はかなり凄い?

 

『そうですね、並外れて図太いメンタルだと思いますよ』

 

おい!

もっと言い方あるだろ!

 

『あなたの尋常ではないほどの図太さはさておいて、彼女に干渉するつもりがないのなら、私からは特に言うことはありません。

 彼女は、あなたが関わらない方が面白いことになりそうですから、私としては歓迎です。

 あなたも、せっかく不死の魔物になった訳ですし、これからも私を楽しませてくださいね』

 

 

 

********************************************

 

 

 

誰がじゃい!!

こっちはお前のために強くなってるわけじゃないんだよ!!

あの邪神ホント腹立つ!!

 

〈いきなりどうした!?〉

 

情報担当(じょーたん)が急に怒り出したばい!?}

 

あ、あー、気にしないで。

ムカつくことを思い出しただけだから、D関連の。

 

〈あー、なるほど〉

 

{いったい何事かと思ったばい……}

 

ごめん。

 

さて、腹立つことも思い出しちゃったわけだけど、そういえばDから他の転生者の現状も少し聞いてたな。

Dの話からすると、私と同様エルロー大迷宮に魔物として転生した元クラスメイトは二人いるんだったっけ。

で、私がザナ・ホロワに進化した時点では、一人はどういうわけか生まれていなくて、もう一人は既に生まれていて、活動しているって話だった。

 

まあ、思い出しただけで、方針は変わらないけど。

元同郷ではあるけど、会いに行ったり助けに行ったりする旨味がないんだよね。

叡智様があるとはいえ、アホみたいに広いエルロー大迷宮のなかを探す手間はとんでもないだろうし。

そもそも、魔王がいるかもしれないから、無理。

 

それに、マザーよりも格上の魔王を敵にまわしちゃっているから、あの時よりも私が置かれている状況がより悪いものだと分かった以上、会いにいかない方があっちのためでしょ。

だってステータスが鬼高いし、スキルもほとんどカンストしているバケモノだよ?

そんな奴との戦いに巻き込まれたら、たまったものじゃないでしょ。

少なくとも私が巻き込まれる立場だったら、原因になった奴に対して殺意を抱くね。

 

うん、やっぱり自分からは関わらない方針を続行で。

あの邪神の望み通りの行動をするのは癪だけど、それはそれ。

 

その転生者が、魔王を倒すうえで強い味方になってくれる可能性があれば、話は違うんだけどなー。

例えば、めっちゃ強力なスキルを転生特典に貰っているとか、ステータスがむっちゃ高いとか、そんな感じ。

でも、それはいくらなんでも期待しすぎでしょ。

Dの話からすると苦労しているみたいだし、弱くはないにしても魔王に勝てるほど強いとは思えない。

 

Dはなんか気にしているみたいだったけど、十中八九転生者だからだよね。

私と同様、この世界で自分が転生させた人間がどう生きているのか、娯楽感覚で見てるに違いない。

そのなかで不遇な目にあっている奴を見て愉悦しているのが、あの邪神だ。

 

アイツのことを考えていたら、またムカムカしてきた。

あー、やめやめ。

さっさと移動することにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は勘違いしていた。

Dは、全ての転生者に対して興味を持っていると思っていた。

だから、気にしているといっても、「転生者だから」という理由だと考えていた。

 

でも、それは違った。

私は、()()D()()()()()()()()ということの意味を、重く考えていなかったのだ。




次回、進化。からの……


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進化しよう PART2

今回、主人公の精神が限界を迎えます。ご注意を


いまだに上に戻る道を見付けられていないけど、LV20になった。

そしたら、進化可能な状態になっていた。

 

どうやら、フェネグランはLV20になることで進化可能になるらしい。

前のフェネグルという種族だった時はLV10で進化できるようになったけど、今回はその時よりもLVが高い。

あと何回進化することになるかは分からないけど、たぶん進化するたびに次の進化へのハードルが上がるんだと思う。

 

前回は進化しようかどうか迷ったけど、今回は進化することに最初から決めていた。

まだ2回目だけど、1回目では進化したら確実に強くなっていたからだ。

それに、懸念していた以上にリスクは少なかったからね。

これからも強くなりたいと思っているから、進化することでさらなる強さを手に入れたい。

 

最近、ここよりも下の方から、凄い揺れとともに激しい爆発音のようなものが何度も聞こえてきたことがあった。

あれが何だったのかはよく分からないけど、もしも魔物によるものだとしたら、地響きの大きさからして凄まじい力を持つ存在だと思う。

さすがに今そんな魔物に出会ったらひとたまりもないだろうけど、いつか来るかもしれないその時に備えて力をつけておきたい。

 

スキルの方もどんどんレベルが上がっていって、進化するスキルも増えてきた。

この調子で、慢心することなく強さを追い求めていきたい。

このまま強くなっていけば、きっとこれからも生きていくことができるはず。

 

さて、進化の準備をしよう。

 

 

 

よし、今回の準備はこれくらいでいいかな。

 

まず、前回と同じように、土でシェルターを作って、その中で進化できるようにした。

1回目の進化では体のサイズがかなり大きくなった。

なので、2回目の進化でも体がより大きくなると考られるので、かなり中を広めにシェルターを作った。

場所は、魔物の通りが少ない場所の隅に作ることで、大きくても気づかれにくいようにできたと思う。

 

次に、食料の確保をした。

進化をするとエネルギーを使うようで、フェネグランになったばかりの頃は非常にお腹がすいていた。

だから、進化する際には食べるものをしっかり用意しておきたい。

進化する前に満腹になるまで食べて、そのうえで進化した後に食べる分を確保してある。

これで、お腹がすいていても大丈夫なはず。

 

食料の用意のために、かなりの数の魔物を倒したと思うけど、レベルアップは起こらなかった。

もしかしたら、LVも種族ごとに上限が決められていて、それ以上は上げられないのかもしれない。

フェネグランはLV20までしかレベルアップしないとか。

もしそうだとしたら、さらなるレベルアップをするためには、進化で別の種族になってLVをリセットする必要があるはず。

強くなっていくうえでは進化は必要不可欠なのかもしれない……。

 

最後に、進化先の選択だ。

今回はフェネグラッドとフェネレイブという2つの種族から選ぶようだ。

前回は、最初の種族であるフェネグル――それが成長したかのような名称という理由でフェネグランを選んで進化した。

そういう理由で選ぶことが正解だったのかは分からないけど、今回も同じ理由で、フェネグラッドに進化したいと思う。

前回の進化と同じように、体が大きくなる可能性が高いと思うし。

 

準備は整った。

二度目の進化をしよう。

 

いちおうシェルターに入る前に、周りを強化した五感と感知系スキルで探り、魔物がいないことを確認する。

そしてシェルターの中に入り、入り口をあらかじめ用意していた蓋で内側からふさぐ。

 

いよいよ進化するという段階で、ふと思い出したことがあった。

私のLVが20になる頃にはレベルアップしているかなと思っていた呉爾羅と禁忌のスキルだけど、まだLV9のままだった。

だけど、進化するとスキルのレベルも上がるらしいことを考えると、今回の進化でLV10になると思う。

 

結局、禁忌がLV10になったら何が起こるか分からないままだけど、そこはもう腹をくくるしかない。

もし禁忌がLV10になった時の効果が、所有者の死だったとしても、対処しようがない。

進化している最中の眠っている時だったら、むしろ穏やかに死ねる分ある意味幸運なのかもしれないし。

 

……よし、死ぬかもしれないという覚悟は決めた。

二度目の進化だ。

 

《個体フェネグランがフェネグラッドに進化します》

 

前回と同じように、私の意識が遠ざかっていく。

できれば、ちゃんと目覚めることができますように……。

 

 

 

 

 

 

 

《進化が完了しました》

《種族フェネグラッドになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度進化ボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『地竜LV6』が『地竜LV7』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『龍鱗LV4』が『龍鱗LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『甲殻LV4』が『甲殻LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『MP回復速度LV5』が『MP回復速度LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『破壊強化LV4』が『破壊強化LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『衝撃強化LV4』が『衝撃強化LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『火強化LV7』が『火強化LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『火攻撃LV5』が『火攻撃LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『立体機動LV3』が『立体機動LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『演算処理LV4』が『演算処理LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『影魔法LV2』が『影魔法LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『腐蝕耐性LV3』が『腐蝕耐性LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『視覚強化LV4』が『視覚強化LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『生命LV9』が『生命LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『生命LV10』がスキル『身命LV1』に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『瞬発LV9』が『瞬発LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『瞬発LV10』がスキル『瞬身LV1』に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『持久LV9』が『持久LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『持久LV10』がスキル『耐久LV1』に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『呉爾羅LV9』が『呉爾羅LV10』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌LV9』が『禁忌LV10』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《条件を満たしました。禁忌の効果を発動します。インストール中です》

《インストールが完了しました》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……もう、嫌だ……。

どうして私が、こんな目に……。

 

私はただ、毎日を普通に生きていくだけで良かった……。

大きすぎる幸せなんて求めず、平穏に生きていければ、それで良かったのに……。

 

悪いことだって、していない……!

少なくても、こんな地獄に落とされるようなことなんて、していない!!

それなのに……どうして、どうしてこんな!!

 

 

 

……誰か……助けて……。

 

助けてよ!

殺すのも殺されるのも、もう嫌だよ!!

誰か私を、ここから助けてよ!!

もう嫌だよぉ!!

 

 

 

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

********************************************

 

 

 

「もともと期待していたとはいえ、彼女もここまで強くなりましたか。

 そろそろ彼女にも、頑張ってきたご褒美を用意するとしましょうか」

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス(進化前)

フェネグラン LV20

・ステータス

 HP:3265/3265(緑)
 MP:2993/2993(青)
 SP:3220/3220(黄)
  :3216/3216(赤)
 平均攻撃能力:3143
 平均防御能力:3190
 平均魔法能力:2889
 平均抵抗能力:2908
 平均速度能力:3151

・スキル
 
 地竜LV6,龍鱗LV4,甲殻LV4,
 HP高速回復LV6,
 MP回復速度LV5,MP消費緩和LV4,
 SP回復速度LV7,SP消費緩和LV7,
 破壊強化LV4,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV3,衝撃強化LV4,火強化LV7,土強化LV4,
 火攻撃LV5,土攻撃LV5,
 立体機動LV3,
 集中LV8,予測LV9,並列思考LV9,記憶LV7,演算処理LV4,
 命中LV5,回避LV6,隠密LV10,迷彩LV4,無音LV10,無臭LV4,
 危険感知LV8,気配感知LV8,熱感知LV3,動体感知LV5,
 影魔法LV2,
 過食LV7,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV2,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV2,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,火耐性LV7,大地無効,
 猛毒耐性LV3,強麻痺耐性LV2,睡眠耐性LV4,酸耐性LV4,腐蝕耐性LV3,恐怖耐性LV4,苦痛耐性LV9,
 視覚強化LV4,聴覚強化LV4,嗅覚強化LV4,味覚強化LV2,触覚強化LV3,
 生命LV9,魔量LV8,瞬発LV9,持久LV9,剛力LV1,堅牢LV1,術師LV8,護法LV8,縮地LV1,
 呉爾羅LV9,
 禁忌LV9,n%I=W

・スキルポイント:94630

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁今作オリジナルの種族の説明

○種族「フェネレイブ」
概要:フェネグランの進化形の一つであり、中位の地竜。マンモスのような見た目
   フェネセブンと同様、火竜のウナギに相当する地竜として進化先の候補にした

➂種族「フェネグラッド」について
原作で登場している地竜。少なくとも漫画版には名前とともに登場している。
この種族になるために、主人公を地竜に転生させたといっても過言ではない

➃スキル「禁忌」についての独自解釈
熟練度をためる条件に、魂に影響を及ぼすスキルが関わっていると思われる
例)魂に直接はたらきかける外道魔法→カンストで禁忌が派生
  魂を直接破壊しにいく外道攻撃→それに分類されるような行為で禁忌の熟練度がたまる模様
  支配者スキル→取得だけで禁忌の熟練度が大幅にたまる


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生きて、生きて、生き抜く

今回の主人公は、出だしから憂鬱モードです。ご注意を


…………。

 

…………?

 

……ここ、どこ……?

 

暗くて、何も見えない……。

 

……私、生きてるの……?

 

……なにも、分からない……。

 

 

 

********************************************

 

 

 

禁忌は、LV10になることで初めて効果を発揮するスキルだった。

その効果とは、この世界に関する知識を、禁忌の所有者にインストールすること。

 

熟練度をためることでスキルというものを入手して鍛え、他の魔物を倒すことで経験値を手に入れレベルアップする。

そうすることで強くなっていく、前世では現実に存在しなかった、この世界独自の仕組み――システム。

禁忌のスキルによって、それらについての情報を頭の中に叩き込まれ、理解させられた。

 

 

 

そして私は――この世界が牢獄であることを、知った。

 

 

 

かつてこの世界の人間たちの愚行によって星が崩壊寸前にまでなり、人類も絶滅の危機に瀕した。

自分たちの行いで滅びそうになった人間たちは、女神と呼ばれる存在を犠牲にすることで生き延びようとした。

この星に住んでいた他の高次生命体が自分たちを滅ぼそうとするのを防いでくれていた、その女神を。

 

女神は、恩を仇で返そうとした人間たちの悪辣な意思を受け入れ、その身を犠牲にすることを選んだ。

しかし、女神と仲の良かった高次生命体――とある神の一柱が、彼女を消滅させはしないと行動を起こした。

 

彼――ギュリエディストディエスは、女神の命を守り、同時に「人類を守りたい」という彼女の願いをかなえるために、魔術という超常的な力で構築したシステムを稼働させた。

システムは壊れかけの星を管理下におき、その星に住む全ての人間たちに、自らの罪を償わせるための術となった。

 

システムによって、この星に住む生き物は戦うことで魂のエネルギーが増やしやすくなっており、その増やしたエネルギーは死んだ時に回収される。

回収されたエネルギーは星の再生に使用され、このエネルギーでシステムが星を完全に再生させることで、現在も星の崩壊を防いでいる女神を助け出すことができる、ということだった。

 

その魂のエネルギーこそ、スキル、基礎能力値、経験値などというように呼ばれているもの。

この星の生き物たちは、そのエネルギーを高めるために戦い、殺し合い、そして死ぬことを、女神への償いという理由で強制されていた。

 

そして、死んでもシステムから解放されることはない。

自然な状態なら、生を終えた魂は、別の世界、別の星に、生まれ変わることはおかしいことじゃないらしい。

だけど、システムという魔術は、この星に魂を縛り付け、同じ星で転生させ、また戦わせ、魂のエネルギーを肥大化させ、そして死ぬことを贖罪として決定づける。

女神が救われるその時まで、システムによる管理に終焉はない。

 

 

 

これが、この世界の真実。

禁忌を冒した者が知ることになる、絶望。

 

 

 

……そんな世界に、なぜか私は生まれ落ちてしまった。

この星とは全く関係ない世界で生きていたはずの私が、この終わりの見えない監獄のような世界に。

そのことがショックで、辛くて、封印しようとし続けてきた私の弱い心が、一気に噴き出してしまった。

 

進化して目を覚ました直後、禁忌によって世界の真実を知った私は、あまりに不条理な現実に心折れ、助けを求め、泣いた。

泣いて、泣き続けて、どうやら泣きつかれて再び眠ってしまったらしい。

また目覚めた時には、涙はもう流れなかった。

 

……でも、もう少し眠っていたい……。

 

 

 

********************************************

 

 

 

 

なに……これ……?

私……トカゲになってるの……?

 

 

 

……まさか、私……あの時、ほんとうに死んで……?

 

 

 

……うそ、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!

 

 

 

……なんで、こんなことになっちゃったの……?

 

 

 

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……また、目が覚めた。

……できれば、ずっと眠っていたかった……。

 

……進化はした。

体も、以前よりも大きく、より力強くなっていることを感じる。

……でも、前回の時のような嬉しさはない。

 

お腹は、まったくすいてないっていうわけじゃない。

でも、今は……食べたくない。

何かをしたいと、何かをしようと思う気持ちが、自分の中から存在しなくなったみたいに……無気力なんだ。

 

……もう少し、眠ろう……。

もう少し心を休めたら、きっとまた立ち直れるはずだから……。

 

 

 

……あるいは、ずっとこのまま……。

 

 

 

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……うっぶ、おえええぇ!

 

 

 

まずい……苦い……臭い……気持ち悪いよぉ……。

 

 

 

……でも、食べなきゃ……食べなきゃ……生きていけない……!

 

 

 

……もう、いやだよぉ……。

おいしいご飯が、食べたいよぉ……。

 

 

 

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……目が、さめた……。

目を、さまして……何も変わっていないことに、落胆した。

 

思えば、この世界で魔物に生まれ変わってしまった時からそうだった。

私は、ずっと絶望していたんだと思う。

 

私は、ただの女子高生で、こんな戦いばかりの世界とは無縁の生活を送っていた。

ただただ平凡でいいから、ありきたりの幸せさえあれば良かった。

 

そういう、どこにでもあるような幸せは、実は得難いものだという考えは知っていた。

私も、頭ではそういうものだと理解しているつもりだった。

でも、この場所に生まれ変わって、それがどれだけ有難かったのかをようやく理解できた。

 

人ではなく、魔物として生きていくのは、辛かった。

人間だった時の自分が死んでしまったという現実の受け入れがたさ。

生きるためとはいえ、日本にいた時には食べたこともなかった食料のまずさ。

弱肉強食という、自分が命を取られるかもしれないという環境の厳しさ。

そのすべてが、私の心を追い詰め、精神を削り取っていった。

 

……前までは、日本にいた時のことを夢に見るほどだった。

でも、禁忌がLV10になってからは、この世界で生まれ変わってから味わった苦痛の日々ばかり思い出してしまう。

……私の精神も、もう限界なのかもしれない。

 

禁忌によって与えられた情報のすべてが正しいという保証はないし、隠されたこともあるかもしれない。

違和感を覚えている部分も、あるにはある。

でも、これ以外の情報はないとはいえ、ある程度の疑問の答えになっているから、全くの嘘ではないと思う。

つまり、この世界にいる限り、この星にすむ生き物たちは贖罪しなければならないというのは、おそらく間違いがないと思う……。

 

……それに、精神を追いつめてくるのは、インストールされた情報だけじゃない。

 

 

 

――贖え。

 

 

 

禁忌の情報をインストールされてから、呪詛のように贖いを要求する思念が叩きつけられている。

おそらく、罪を犯した人間たちの意識にこうして働きかけることで、償いをより確かなものにする仕組みの一つのつもりなんだと思う……。

……禁忌の熟練度をためたとはいえ、この世界の人間ではない、魔物の私にとっては、とばっちり以外の何物ではない。

 

でも、この思念が、辛い。

私には、その贖罪の責任はないのに、「贖え」という言葉が、たまらなく辛い。

 

……もう、このまま起きているのも、辛い。

……もう一度、眠ろう……。

今回は、立ち直るのには、まだ、時間が必要だから……。

 

 

 

********************************************

 

 

 

怖い……怖い……怖いよぉ……。

狩りなんて、無理だよ……。

 

 

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

 

痛い、痛いよぉ!!

死んじゃう……死んじゃう!!

怖い怖い怖い怖い怖い!!

誰か、誰か、助けて!!

 

 

 

お願い……誰か、助けて……。

 

 

 

ごめんなさい……ごめんなさい……。

殺してしまって、ごめんなさい……。

 

 

 

ごめんなさい……。

 

 

 

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……もう、無理だ……。

 

……今までと同じように、どうにか立ち直ろうとしたけど、今回は無理だ……。

……禁忌によって与えられた情報は、私の精神にとどめを刺した……。

 

ここで生きていくことは、元日本人だった私にとって、苦痛の日々だった。

私は何度も心折れて、精神が崩壊しそうになった時も少なくない、と思う……。

それでも、その度にどうにか立ち直って、生き残り続けることができた。

 

禁忌によって知識を得たから分かるけど、おそらく、地竜として生きることで精神を修復してたんだと思う。

傷ついて崩れそうになった人間としての精神を、地竜に転生してから培った精神で補修して、どうにか形を保つ。

さらに、この地竜としての体から生じた精神が混ざることで、他の魔物を狩ることや食べることへの忌避感が、少しずつなくなっていったんだと今なら分かる。

 

……そのことも、私が生きる気力を失っている要因だった……。

それってつまり、人間としての私の意識は、ほとんどなくなっているかもしれないということだったから。

そう考えると、私は今まで死にたくなくて生きていたのに、何のために生きていたんだろうって……。

 

……いや、人間としての私は、もう死んでいた。

それを認めたくなくて、地竜として――トカゲとして生まれ変わっても、前世の私の意識さえあれば、それは「私が生きている」っていうことになるから、と心の片隅で考えて、それを生きる動機にしていた。

……でも、もう……本当に、受け入れる時が、来たんだろうと思う……。

 

人間としての私は、死んだ。

そして、それを認めてしまった今の私にも、これ以上いきようとする気力はない。

 

……もう、無理なんだ……。

もうこれ以上、苦しみながら生きていくなんて、私にはできないんだ……。

 

今まで生きていくうえで犠牲にしてきた命たちには、本当に申し訳ないことをしてしまったと思う……。

でも、私の弱い心は、辛すぎる現実にこれ以上耐えることなんてできない……。

 

ごめんなさい……ごめんなさい……。

もう、死なせてください……。

 

……できれば、眠っているうちに自分の命が尽きることを願って、私は、目を閉じた……。

 

 

 

********************************************

 

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「呉爾羅LV1」が「呉爾羅LV2」になりました》

 

 

 

……え……?

ゴ……ジラ……?

 

え……嘘……なんで……?

スキル……?

……どういう、こと……?

 

 

 

………………。

 

 

 

……どうか、あなたの力を貸してください……。

私の弱い心じゃ、この場所を生き抜くことはできないと思います……。

でも、あなたの力があれば、きっと私は、明日を生きていくことができる。

 

……お願いします。

貴方の力を、強い心を、どうか私に分けてください……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

********************************************

 

 

 

……どうして忘れちゃったんだろう……私がこの場所で生きていける、一番の理由を……。

そんな自分に、少し――いや、かなり腹が立つ。

 

腹立ちまぎれに、いつものように心の中でいただきますと祈ってから、近くに置いてあった魔物の遺骸を食べ始める。

うん、相変わらずひどい味だった。

しかも、若干時間を置いたせいか、少し腐ったような味がするかもしれない。

うじうじ悩んでいたせいで、損をしてしまった。

 

 

 

もう、迷わない――私はこの世界で、生きていく。

 

 

 

今まで私は、呉爾羅のスキルに――ゴジラの力に、大いに助けてもらったうえで生きてきた。

ゴジラに、力を貸してほしいとお願いしたうえで。

そんな私が、いまさら生きるのが辛いから死なせてほしいだなんて、よく言えたもんだと思ってしまう。

 

 

 

私は、ゴジラの力を借りて、他の生き物の命を食べて、今まで生きてきた。

だったら、最期の最後まで、生きて生きて生き抜こうとするべきじゃないか。

 

 

 

――贖え。

 

私の生きようとする意志を削ぐかの如く、不快感をもたらす思念が叩きつけられる。

それに対する嫌悪感は覚えるけれど、自ら死を望む要因となるようなことは、もう、ない。

 

贖えって言われたって、こっちには全く関係ないものなんだ。

身に覚えのない罪を贖えって言われたって、理不尽でしかない。

むしろ、こっちが不快感を味わわされている責任を取ってほしいわ!

 

確かに私は、自分が生きていくために、他の魔物の命を奪って、糧にしてきた。

自分の一方的な思いだろうけど、その責任は、背負わなきゃいけないと思っている。

 

だけど、それは決して死を選ぶことじゃない。

生きるために命を奪ったのに、生きることを諦めたんじゃ、じゃあ最初からそうしとけって話になるだけ。

生きるためにそうしたのなら、最後まで生きる意志を捨てないことが、最低限の責任だと思う。

それは、結局のところ私の自己満足で、本当にするべきことは別のことなのかもしれない。

でも、私はそれを、今まで頂いてきた命に感謝したうえで、その責任を果たす行為だと思っている。

 

人間としての私は死んだ?

今の私には、ほとんど人間としての精神が残ってない?

それがどうした!

少なくとも、私は「私」だと認識したうえで、ちゃんと生きている!

 

例え精神のほとんどが地竜の物になっていたとしても、私はちゃんと人間だった時のことを覚えている。

私は、自分が「大原 雅美」だったことを――「大原 雅美」であることをしっかり覚えている!

どんな人生を歩んできたか、ゴジラのことや家族のこと、学校のこととかの記憶を、人間だった時から変わらず保持している!

 

どんなにこの精神が変わったとしても、それは――成長的なアレなんだ!

言葉にうまくできないけど、人間だった時と同じように、体とともに心が成長していく感じのアレなんだ!

だから、そこまで悲観するようなものじゃないんだ!

うん!

 

大事なのは、今の自分が何者なのか、ちゃんと認識することだ!

別の世界で、別の生き物に生まれ変わったとしても、私は――「大原 雅美」だ!

 

いま、私はここに、はっきりと宣言する。

私の名前は、「大原 雅美」。

ゴジラ映画が大好きで、ゴジラの力を借り受けている――「大原 雅美」だ!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「命名LV1」を獲得しました》

《条件を満たしました。個体フェネグラッドに名前が付与されます》

《個体フェネグラッドの名前が「大原 雅美」に変更されました》

 

いつものシステムのアナウンスが聞こえてきて、システム上でも自分の名前が「大原 雅美」になったことを知る。

でもそれ以上に、ようやく自分が自分であることを認めることができたことが、嬉しかった。

 

転生してからずっと、自分が人間でなくなってしまったことが、辛かった。

人間として生きてきた人生のすべてが、失われてしまったように感じて、悲しくてたまらなかった。

でも、たとえ生まれ変わったとしても、自分という存在を、新しい命の中で生かしていく意思を持ったことで、もう苦しむ必要はないことを知った。

 

食事をしながら、これからどうするか考えを巡らせていく。

禁忌は、たちが悪い仕組みだけど、現状では貴重な情報源であることには変わらない。

この情報源を活かして、もっと強くなって――これからも、生きていく。

 

世界の危機だなんて、今どうこうできる問題じゃない。

まず力をつけて、自分の手が届くようになったら、改めて考えよう。

 

そうだ、もう死にたいなんて思う必要なんてない。

私は――

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列思考LV9』が『並列思考LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『並列思考LV10』がスキル『並列意思LV1』に進化しました》

 

「これからも、全力で生きていく!」

[これからも、全力で生きていく!]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[え……誰?]」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV1 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:3696/3696(緑)
 MP:2937/3288(青)
 SP:3774/3826(黄)
  :2508/3796(赤)
 平均攻撃能力:3612
 平均防御能力:3887
 平均魔法能力:3168
 平均抵抗能力:3223
 平均速度能力:3837

・スキル
 
 地竜LV7,龍鱗LV5,甲殻LV5,
 HP高速回復LV6,
 MP回復速度LV6,MP消費緩和LV4,
 SP回復速度LV7,SP消費緩和LV7,
 破壊強化LV5,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV3,衝撃強化LV5,火強化LV8,土強化LV4,
 火攻撃LV6,土攻撃LV5,
 立体機動LV4,
 集中LV8,予測LV9,並列意思LV1,記憶LV7,演算処理LV5,
 命中LV5,回避LV6,隠密LV10,迷彩LV4,無音LV10,無臭LV4,
 危険感知LV8,気配感知LV8,熱感知LV3,動体感知LV5,
 影魔法LV3,
 過食LV7,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV2,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV2,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,火耐性LV7,大地無効,
 猛毒耐性LV3,強麻痺耐性LV2,睡眠耐性LV4,酸耐性LV4,腐蝕耐性LV4,恐怖耐性LV4,苦痛耐性LV9,
 視覚強化LV5,聴覚強化LV4,嗅覚強化LV4,味覚強化LV2,触覚強化LV3,
 身命LV1,魔量LV8,瞬身LV1,耐久LV1,剛力LV1,堅牢LV1,術師LV8,護法LV8,縮地LV1,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV1,
 n%I=W

・スキルポイント:95400

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁主人公が禁忌の情報の内容に対して抱いている違和感について
⑴女神の望みが「人類を守ること」であるにも関わらず、その人類を互いに殺し合わせるという
 仕組みになっているのは、女神の意に反しているのでは?
⑵「戦うことでエネルギーを高めることができる」とあるが、スキルやステータスは
 トレーニング等でも鍛え上げることができ、戦うことは必須ではない
⑶星という広い範囲で、一人ひとり、魔物一体にも適応されている模様のシステムという
 大規模な魔術を構築することができるのにもかかわらず、星一つを再生させることは
 本当に不可能だったのか
⑷魂のエネルギーを、わざわざステータスやスキルといった強さに変換させる必要はあるのか

➂主人公の精神の現状
元日本人として欠けてしまった部分を、地竜の物として復元しているような状態。
戦いや強くなること等に対してストイックなところがあるのは、その影響が大きい

➃最後の
ちょっとしたオチ。次回、コンビ結成?


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家族(自分自身)が増えました

ステータスに計算違いがあったため、ついでに今までの加算の仕方を見直し、1話からすべて修正しました。
その結果、最新話のステータスが更に上昇しました。これがゴジラの力か……。


進化して、この世界で生きていく決意を改めて固めてから数日、上に戻る道の探索は変わらず続けている。

この世界の真実を知っても、結局この場所から外に出てみたいという気持ちは変わらない。

世界の現状を、いちど自分の目で見ておきたいという気持ちが新たに加わったけど。

より強さを求めながら、上へと続く道がないかどうか、探しながら移動を続けている。

 

進化が終わった直後は禁忌のことで気にするどころじゃなかったけど、二度目の進化も上々の結果だった。

体はさらに大きくなって、ずいぶんと目線も高くなったのを感じるほどになった。

尻尾や後ろ足がかなり太く、そして長くなって、二本足で移動することができるようになってる。

鏡とかがないから予想になるけど、見た目はティラノサウルスのようになっていると思う。

恐竜の中でも代表的な捕食者のような存在になった自分を想像したら、だいぶ強くなったんじゃないかと思う。

 

もちろん、まだまだ強くなるつもりだけど。

次の進化がいつになるかは分からないけど、少しずつでも日々強くなっていきたい。

 

自分の持っているスキルを改めて思い返したうえで、トレーニングの幅を広げたりもしてる。

身体能力だけじゃなく、スキルを鍛えることも重要だと改めて思ったからだ。

まあ、トレーニングはいつも一人でしているわけだから、そこまでメニューは多くないけど。

 

もう当たり前のことになっちゃったけど、私は生まれて少し経ってから、ずっと一人で行動している。

だから、こうして移動していると、話し相手がいないからか寂しさを覚えることも少なくなかった。

 

だけど最近は、少し賑やかになった。

 

[ブレイン、そろそろ休憩取っていい?]

 

分かった。

ついでに、小腹がすいてきたから、狩りもお願いしていい?

 

[了解、その時はこっちもよろしく]

 

こちらこそ、マテリア。

 

いやー、マテリアがいてくれるおかげで、話し相手ができて寂しさを覚えなくなった気がする。

向こうも多分、同じ気持ちだと思う。

結局、私一人なのは変わらないんだけどね。

 

最初の時は、すごく驚いた。

自分一人しかいないはずなのに、もう一人の声がなぜか聞こえてくるんだもん。

そのうえ、私も相手も、自分が「大原 雅美」だっていうんだから、それはそれは混乱した。

 

一度冷静になって、記憶を振り返ってみたら、その原因と思われるものが分かった。

LV10になった並列思考のスキルが進化した、並列意思というスキルだ。

 

並列思考は、使っていた感じだと、複数のことを考えるのを補助してくれるスキルだと思う。

そのスキルが進化した並列意思は、どうやら私の意思を二つに分けるスキルのようだ。

確認してみた感じ、このスキルを得るまでの記憶は一致していたし、多分ね。

しかも、それまでの並列思考の能力もそのままみたいだから、私の意思が増えたことで思考能力が二倍ぐらいになったんじゃないかな。

そのおかげで、手に入れた情報を整理する担当と、体を動かすことに専念する担当に一つずつ意思を割り振って、それぞれの作業に集中したうえで取り組むことができるようになった。

 

つまり、ブレインは、主に情報整理を担当する意思。

マテリアは、体での作業を基本的に担当する意思。

役割は違うけど、どちらも並列意思のスキルで増えた「大原 雅美」の意思というわけ。

意思は違うわけだから、脳内での会話はできるけどね。

 

意思、という言い方をしたけど、全く同じ人格を増やした、という言い方の方が合っているかな。

この状況、もしかしたら一歩間違えれば、自分が何者なのか疑問視し始めて大変な事態になるかもしれないとも思うけど、私の場合は今のところ問題はない。

ずっと一人で行動していたから、こうやって会話することができる存在を求めていたからかもしれない。

相手も自分自身だという認識はあるけど。

あるいは、別の体に転生しても、ちゃんと記憶を持っているから自分は「大原 雅美」だとしっかり認めることができるようになったから、意思が分かれても両方とも「大原 雅美」なんだと受け入れることができているのかも。

 

まあ、ここでの生存競争が辛くて、自然と同じような状態になっていたかもしれないほど精神を追い詰められた経験によるものとも考えられるけども……。

 

[ブレインー、魔物見つけたよー]

 

ああ、考え事していたから気づくのが遅れちゃった。

ありがとう、マテリア。

 

[どういたしまして。

 それじゃあ、()()をお願い]

 

分かった。

じゃあさっそく……鑑定!

 

『エルローランダネル』

『エルローランダネル』

『エルローランダネル』

 

マテリアが見つけたのは、いつも3体でかたまって行動している、小型の恐竜のような魔物。

上にいた時にも何度も戦ったことがある種族で、危険感知での反応が小さいことからもわかるように、今の私だとまず苦戦することはない。

 

そんな魔物たちに向かって、新しく手に入れたスキル「鑑定」を使用する。

すると、頭の中に情報がスッと入ってくる感覚がして、種族名と思われる固有名詞がイメージされた。

つまり、あの魔物の名前は、エルローランダネル……と。

なんだかエルローという単語が名前の頭につく魔物が多いな。

もしかしたら、この場所の名前がエルローだからなんだろうか。

 

鑑定を使用された魔物――エルローランダネルたちは、隠密と迷彩のスキルを使用しているはずだった私の存在に気づき、こちらに向かってきた。

……やっぱりこれは、そういうことかな。

 

[おそらく、そうだろうね。

 今までは気づかれることは少ない方だったのに、ここまで気づかれるようになったのはおかしい。

 やっぱり、鑑定したことが原因だと思う]

 

だろうね……。

しょうがない、それについてはこれから考えておこうか。

じゃあ――マテリア、戦闘はお願いできる?

 

[OK。いちおう油断はしないから、周囲の警戒はよろしく]

 

 

 

エルローランダネルたちを問題なく倒した私は、彼らの命を頂いて、少し休憩をとっている。

 

鑑定は、スキルポイントを消費することで新しく手に入れたスキルだ。

スキルポイントは、既に持っているスキルのレベルを上げるだけじゃなく、こうやって持っていないスキルを獲得するうえでも使用できるようだ。

ダメもとで試してみたけど、情報の獲得に活躍しそうなスキルを入手できたのは、大きいと思う。

 

さっきは魔物相手に使用したけど、壁や石といった無機物にも鑑定は使用できる。

まあ、それで手に入る情報はたいしたものじゃないけど。

今の鑑定のレベルは2で、魔物だと種族名と思われる情報が手に入るぐらいの性能だ。

レベル1のときは、「蛙」や「蟷螂」といったふうに、私が見たままの情報しか入ってこなかったことを考えると、かなり進歩してくれたと思う。

ちなみに、自分を鑑定した結果、いつものアナウンスで聞いていた「フェネグラッド」という種族が出てきたので、これが今の自分の種族名で間違いないと思っている。

 

でも、そんな鑑定にはデメリットがある。

最初に気づいたのは、鑑定し過ぎると気分が悪くなるという点。

頭の中に情報が入ってくるわけだから、いっぺんに多くの物を鑑定を使用して情報を取り込みすぎると、情報過多に車酔いのように調子を崩してしまうのかもしれない。

対策としては、むやみやたらと使わないようにすることかな。

 

で、さっき分かったデメリットなんだけど、どうやら魔物に鑑定を使うと、こっちの存在に気づかれるみたい。

鑑定のスキルを手に入れて、出会った魔物に鑑定をするようになったんだけど、隠密と迷彩のスキルで気づかれにくくなっているはずの私の存在を、鑑定を使用した途端に察知できるようになってる。

もしかしたら、鑑定を使用したことが、鑑定された側にも分かる仕組みなのかもしれない。

今までは問題なく倒せる魔物相手だから問題なかったけど、これからは鑑定を使用する相手は考えた方がいいみたいだ。

 

でも、そういうデメリットがあることを考慮しても、鑑定というスキルは使い勝手がいい。

ただ使用しようと思うだけで、一瞬で、量は少なくても情報がしっかり手に入るんだから。

鑑定、という言葉の響きから、もっとじっくり時間をかけないと情報が手に入らなかったり、手に入っても理解が難しかったり……という可能性も考慮していたけど、これは嬉しい誤算だね。

鑑定という文字を見て、もしかしたらと思って取得してよかったと本当に思う。

 

で、どうやって鑑定というスキルの存在を知ったかというと――

 

うっ、これ以上はもう無理そう。

 

[……替わろうか?]

 

いや、私が情報整理の担当だって決めたから、これは私がやるよ。

 

[でも、やっぱりそれを一人で読み進めていくのは無理があるよ。

 それに、それを読んでいたせいで調子を崩して、もしもの時に問題が起きたら困るわけだし]

 

……分かった、じゃあ少しお願い。

読み過ぎると精神が参るだろうから、気を付けて。

 

[それを一人でやろうとした人に言われたくはないかなー]

 

そう言われると痛いですねアハハ。

……ありがとう。

 

[どういたしまして]

 

……やっぱりマテリアがいてくれて良かったよ。

元は同じ自分自身だけど。

 

きつい作業だと分かっているだろうに、私と作業を交替してくれたマテリアは、()()によって与えられた情報の解読を始めてくれた。

 

そう、私が鑑定をスキルを知ったきっかけは、禁忌のスキルでインストールされた情報からだ。

インストールされた情報には、この世界でシステムが稼働するようになった経緯のほかに、システムに関する説明も含まれていた。

そのなかには、システム内のスキルの名前も一通り記載されているようで、鑑定の名前もそこで知ったものだ。

 

鑑定を手に入れた後は、なにか有用そうなスキルはないか、こうやって禁忌の情報を調べるようにしている。

といっても、禁忌がもたらした情報を閲覧すると尋常ではないほど気分が悪くなるから、精神的に余裕がある時のみ調べてる。

本当はもっと情報を手に入れておきたいところだけど、本当にきついから、ゆっくりでも時間をかけてやっていくしかない。

 

でも、システムのなかに存在しているスキルの種類の数は、本当に膨大だと思う。

私の地竜のように特定の種族専用と思われるスキルや、空を飛ぶ魔物しか覚えない飛翔といったスキルのような取得できなさそうなスキルも多く含まれているけど、それを除いても数えきれない。

このなかから使えそうなスキルを見つけて選ぶのは大変だけど、スキルは生存していくうえで重要な戦力だから、頑張るしかない。

 

インストールされた情報は他にもあるけど、それは後回しにしておきたい。

システム内のスキルを一通り見終わってから、少しずつ手を付けていきたいと思う。

 

禁忌がLV10になって知ったことは負の印象が強いけど、こういうふうに、生きるための術を得るうえで大切な情報源にもなっている。

多分だけど、システムがこの星を再生させるためのものなら、この情報源から世界の危機をどうにか乗り越えるためのヒントを見つけることができる可能性もあると思う。

今は強くなることが一番の目標だけど、後々のことも考えて、そっちも考慮しておく。

 

現状では差し迫った危険を感じていないとはいえ、状況は想像以上にひっ迫しているのかもしれない。

だけど、生きていくことを諦めずに、少しずつでも自分のできることをしていこうと思う。

 

それが、今の私だから。

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV3 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:3947/3947(緑)
 MP:3522/3522(青)
 SP:4083/4083(黄)
  :4051/4051(赤)
 平均攻撃能力:3861
 平均防御能力:4146
 平均魔法能力:3396
 平均抵抗能力:3453
 平均速度能力:4094

・スキル
 
 地竜LV7,龍鱗LV5,甲殻LV5,
 HP高速回復LV6,
 MP回復速度LV6,MP消費緩和LV5,
 SP回復速度LV7,SP消費緩和LV7,
 破壊強化LV5,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV3,衝撃強化LV5,火強化LV8,土強化LV5,
 火攻撃LV7,土攻撃LV6,
 立体機動LV4,
 集中LV9,予見LV1,並列意思LV1,記憶LV8,演算処理LV6,
 命中LV6,回避LV7,隠密LV10,迷彩LV5,無音LV10,無臭LV5,
 鑑定LV2,危険感知LV9,気配感知LV9,熱感知LV4,動体感知LV6,
 影魔法LV3,
 過食LV8,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV2,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV2,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,火耐性LV7,大地無効,
 猛毒耐性LV3,強麻痺耐性LV2,睡眠耐性LV4,酸耐性LV4,腐蝕耐性LV4,恐怖耐性LV4,苦痛耐性LV9,
 視覚強化LV5,聴覚強化LV4,嗅覚強化LV4,味覚強化LV2,触覚強化LV3,
 身命LV1,魔量LV9,瞬身LV1,耐久LV1,剛力LV1,堅牢LV1,術師LV9,護法LV9,縮地LV1,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV2,
 n%I=W

・スキルポイント:95400

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁並列意思のネーミング
ブレインは、文字通り情報を扱う→頭脳の担当ということで、この命名に。
その考えでいくと、蜘蛛子で言うところの体担当の並列意思の名前は「ボディ」に
なるところだが、さすがにこの名前はないだろうということで、物質を表す「マテリアル」から
とって、体を動かす方の担当はマテリアという名前になった

➂禁忌の情報に含まれているスキル一覧
禁忌の内容としては、「システム概要」「システム各項目詳細説明」「アップデート履歴」が
ある。このうち、各項目の詳細説明のなかでシステム内のスキルをすべてまとめたものが
あったり、アップデート履歴からどんなスキルが追加された等を調べることができるのでは?と
考え、今回のような展開に。正直、主人公が鑑定を手に入れる道筋がこれぐらいしかなかった。
今回はプラスになったが、逆に存在を知らない方が良かったかもしれないスキルもあるため……


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誰だってそーする、私もそーしたby蜘蛛子

お待たせしました。
執筆が進まなかったあげく、探知の話だけで1話消費してしまうという体たらく……。
なので今回はつまらないかもしれませんが、よろしければどうぞ。


失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した……

 

[ブレイーーーーン!!

 お願いだから正気に戻ってーーーーー!!]

 

だって!!

私はとんでもないことをしちゃったんだよ!!

あああああ……私はなんてことを……。

 

[あ、意外と話が通じる状態だった。

 いや、確かにあまり良くない結果だけど、これはしょうがないって。

 私だって、あのスキルの名前を見たら間違いなく同じ選択をしたと思うし……]

 

うう……まさか、こんなことになるなんて……。

「探知」が、こういうスキルだと知ってさえいれば……!

 

 

 

ことのはじまりは、禁忌からの情報を確認しているなかで、探知というスキル名を見つけたことだ。

これを発見した私は、すぐにスキルポイントを消費して手に入れようと思った。

 

その時は、このスキルが探索に役立つスキルだと思ったからだ。

現状、地図なんて持っているわけがない私は、自分の足で移動して、目で確認したうえで、上に戻る道や出口を探さないといけない。

だけど、この探知というスキルは、自分の探しているものが見つかりやすくなるスキルかもしれないと感じた。

これさえあれば、ここから出るために自分がどこに行けばいいのか分かるようになり、探索の効率が段違いに上がるかもしれないという少ないない期待があった。

 

そして私は、システムのアナウンスに探知の取得を要請し、スキルポイントを消費して、新たに探知のスキルを手に入れた。

その時、思いもよらないことが起こった。

 

危険感知、気配感知、熱感知に動体感知。

私が周囲の警戒のために重用していた感知系のスキルが、入手したばかりの探知にすべて統合され、探知のスキルレベルが一気に5にまで上がった。

え……なんで探知に統合されてるの?ってすごく驚いたね。

でも、違和感を覚えた時には、もう遅かった。

 

試しに探知を使ってみて、そのスキルの最大のデメリットをようやく知った。

周囲にある様々なものの情報が、一気に私の頭の中に流れ込んできた。

その尋常じゃない量の情報量が私の頭の中を満たしていき、やがてひどい痛みを覚えるようになった。

慌てて探知をオフにしたけど、あのときはほんと、何が起こったのか分からなかった。

 

結論から言うと、探知は私が期待していたような、探し物を見つけやすくするようなスキルじゃなかった。

危険感知や気配感知と同系統の、周囲にあるものの情報を取り込むタイプのスキルだった。

しかも、危険感知や気配感知とは違い、何種類もの情報を一気に取り込むほど高性能の。

 

私が今まで使用していた感知系スキルは、一つのスキルにつき一種類の情報しか感知できない。

例えば、熱感知なら熱を、危険感知なら私が危険だと判断するだろうものを感知する。

でも探知というスキルは、他のスキルでは一つずつ感知していた気配や熱、さらに今までスキルで感知したことのない対象まで、さまざまなものを感知し、情報として取り込んだ。

もしかしたら、これ一つで他の全ての感知系スキルと同等の役割を果たすのかもしれないと思うほどの性能だった。

持っていた感知系スキルがすべて探知に吸収されたのも、探知がありとあらゆる感知スキルの上位互換だと考えると、不自然じゃない。

 

だけど、このスキルはあまりにも性能が高すぎた。

探知が収集する情報の量は余りにも膨大で、私のキャパシティを超えて危険信号を発するほどだった。

おまけに、統合されてしまったスキルのように一種類の情報に絞って感知を行おうとしても、この探知のスキルでは不可能だった。

つまり、スキルの性能自体は高くなったけど、以前のように感知系スキルを負担なしで使うことができなくなってしまった。

 

危険感知や気配感知といった感知系スキルは、重要な索敵手段であり、敵の強さを知るための指標でもあった。

それらを恒常的に使用できなくなってしまったのは、重い。

使おうと思えば使えるけど、次々流れ込んでくる情報の制御に意識をとられてしまい、他の動作のパフォーマンスが落ちることは否めない。

探知というスキルを安易に手に入れちゃったせいで、危機回避に重要な役割を果たしてくれていたスキルを、使い物にならない状態にしてしまった……。

 

……はあ……。

同じ経緯で手に入れた鑑定が役立つスキルだったからって、警戒しなさすぎだったんだろうな……。

もっと用心深くなっていたら、こんなことには……。

 

[過ぎたことを引きづっても、しょうがないよ。

 一応、どうにかする手段はないことにはないわけだし]

 

まあ、その通りではあるんだよね……。

 

どうにかもっと使い勝手のいいスキルにできないか、何度も探知を発動させて試行錯誤しているうちに、外道耐性なるスキルを手に入れていた。

名前からして耐性系スキルの一つなんだろうけど、このスキルを獲得したら、探知の情報量過多による痛みがかなり和らいだのを感じた。

おそらく、探知によって発生する苦痛はシステムで設定されているダメージの一種で、そのダメージを軽減してくれるのが、この外道耐性なんだと思う。

 

耐性系のスキルは、それぞれに対応するダメージを受けることで、熟練度をためることができるみたいだということが分かっている。

例えば毒耐性の場合は、毒でダメージを受けているとレベルが上がることがあった。

つまり、探知による痛みを何度も経験することで外道耐性の熟練度をためていき、このスキルのレベルを上げていって情報量過多に対するダメージを軽減していくことで、恒常的に探知を使えるようにすればいいってこと。

 

……外道耐性のレベルと同じくらい、探知のレベルが上がっていってるっていう問題があるんだけどね……。

余りにも多くの情報を感知しているからなのか、熟練度がたまるのがかなり速いみたい。

他の感知系が統合されてLV5になったのに、数回の発動でもうLV8にまでなってんだよ……。

レベルが上がった分、感知される情報も増える=痛みも激しくなるってことだから、外道耐性のレベルが上がっても、今のところ鼬ごっこなんだよ……。

 

あと、情報処理にかかわる問題だからか、外道耐性以外にも演算処理のレベルも上がってる。

外道耐性のように痛み自体への対抗策にはならないけど、このスキルのレベル向上に伴って処理できる情報量が増えるみたいで、外道耐性ほどじゃないけど痛みを少なくしてくれてる。

でも探知のレベルが上がるのが速いから、やっぱり鼬ごっこ……。

 

まあ、スキルのレベルはLV10よりも上になることはないみたいだから、探知がLV10になったら外道耐性のレベルだけ上がるようになると思うけどね。

どっちも速いペースでレベルが上がっていってるし、ここは問題ないかな。

……LV10になったら進化するスキルもあるけど、探知もLV10になったら進化するスキルじゃないよね?

じゅうぶん高性能なのに、これ以上情報を集めてくるようなスキルにはならないよね?

そうなったら困りますからホント。

 

[で、探知を使えるようにする方法はいいとして、外道耐性を上げていく間の索敵手段はどうする?]

 

ああ、そっちはちょうど代替案を思いついたところ。

 

[代替案?]

 

そう、五感を強化するスキルがあったでしょ。

あれのなかでも、視覚強化や聴覚強化、嗅覚強化のスキルが、周囲の状況を探るのに適していると思ったんだ。

使ってみた感じ、かなり広い範囲まで五感で捉えることができるようになったみたいだし、これを索敵の代わりにできるんじゃないかなーって。

もちろん、危険感知のように、それが危険かどうかという判断はできるわけじゃないんだけど。

 

[なるほど、五感か……。

 分かった、いったんこっちの方で試してみる]

 

ありがとう!

自分自身に言うのもなんだけど、マテリアは頼りになるよホント!

 

[そうだね、うっかり探知を取っちゃって感知系スキルをダメにしちゃった人と違ってね]

 

……本当にすみませんでした!

詫び探知はいります!

 

[ちょっ!?

 冗談だったのに!]

 

うっ!

うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『外道耐性LV2』が『外道耐性LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『演算処理LV8』が『演算処理LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列意思LV1』が『並列意思LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『探知LV8』が『探知LV9』になりました》

 

探知オフ!

……はぁっ!

ホント痛いわー……。

これをあと何度もやらないといけないと考えると、やっぱり憂鬱かも……。

 

[いや、勢いで探知をオンにするな!

 私も悪かったけど、今の状態での探知はホント危険だから!

 できるだけ万全の状態で、探知は使っていくべきでしょうが!]

 

いや、ごめん……思わず……。

 

[はあ……。

 情緒不安定になると、こんなにも衝動的になる面が自分にあるなんて、知りたくなかった……]

 

{こんな自分を客観的に見るのは、辛いよねー}

 

[まったく、その通り]

 

返す言葉もございません……。

……ん?

ちょっと待って、声がなんか多くない?

 

[え?

 あ……確かに]

 

{あ、どうも初めまして……になるかな?

 どうやら私、新しく生まれた「大原 雅美」の意思みたいです}

 

ええ!?

 

[ええ!?

 どうして新しい意思が……あ、そういえば並列意思のスキルのレベルが上がってたから、それか!

 てっきり並列思考のように分かりやすい指標とかはないと思ってたけど、まさか並列意思のレベルが上がるたびに増やせる意思の数も増えるとか……?]

 

まあ、そこらへんはまだ確認ができないから、おいておこう。

それで、新しく生まれたあなたに確認したいことがあるんだけど、ちょっといい?

 

{いいけど、何を聞きたいの?}

 

ちょっと聞きづらいんだけど……あなたは、マテリアから分かれて増えた意思?

それとも、私――ブレインから分かれて増えた意思?

どっちから増えたことになるかで、任せる仕事は選ぼうかなーとか思ってるんだけど……。

 

{どっちでもあり、どっちでもない、かな?

 私が「大原 雅美」の意思の一つであることは明らかだけど、いちおうブレインとマテリアの両方の経験を、自分の物として認識してる。

 既に存在している一つの意思からコピーされて生じた、というよりかは、「大原 雅美」という全体から生じた全く新しい意思、てな感じかな。

 まあ、ブレインとマテリアの二人より後から生まれてきた意思だということは自認してるけど}

 

そうか……じゃあ、五感を強化するスキルについてだけど、あなたに任せてもいい?

 

[え?

 私が五感を担当することになったんじゃないの?]

 

いや、それは試してみるって段階での話だから。

新しく意思が生まれたなら、そっちに感覚による索敵を専念してもらった方が、より効果的かなって思って。

 

{りょーかい。

 じゃあ私の並列意思としての名前だけど、五感ということで「センス」でよろしく}

 

え……その名前で良いの?

こう言っちゃなんだけど、もっといい名前があると思うけど……。

 

{いや、変に捻るよりかは、分かりやすい名前でいいかなって思って。

 あくまで意思の一つに付ける名前だし、変えたくなったら変えればいいだけの話でしょ?}

 

それもそっか。

じゃあ、これからよろしく。

 

{こちらこそ、よろしくー}

 

しかし、並列意思の数が増えてくれるのは、嬉しい誤算だった。

これなら、並列意思のスキルレベルが上がるたびに、もっと作業を分担できるようになるかもしれない。

 

……まあ、禁忌と探知という二大精神ダメージは、情報担当の私が負担するんですけど……。

禁忌はともかく、探知は自分の責任だから、早く何とかしないとね……。

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV4 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:4080/4080(緑)
 MP:3646/3646(青)
 SP:4219/4219(黄)
  :4186/4186(赤)
 平均攻撃能力:4005
 平均防御能力:4295
 平均魔法能力:3517
 平均抵抗能力:3575
 平均速度能力:4242

・スキル
 
 地竜LV7,龍鱗LV6,甲殻LV5,
 HP高速回復LV6,
 MP回復速度LV6,MP消費緩和LV5,
 SP回復速度LV8,SP消費緩和LV8,
 破壊強化LV5,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火強化LV9,土強化LV5,
 火攻撃LV7,土攻撃LV6,
 立体機動LV4,
 集中LV9,予見LV1,並列意思LV2,記憶LV8,演算処理LV9,
 命中LV7,回避LV8,隠密LV10,迷彩LV5,無音LV10,無臭LV5,
 鑑定LV2,探知LV9,
 影魔法LV3,
 過食LV8,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV3,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV2,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,火耐性LV8,大地無効,
 猛毒耐性LV3,強麻痺耐性LV2,睡眠耐性LV4,酸耐性LV5,腐蝕耐性LV4,
 恐怖耐性LV4,外道耐性LV3,苦痛耐性LV9,
 視覚強化LV5,聴覚強化LV4,嗅覚強化LV4,味覚強化LV2,触覚強化LV3,
 身命LV1,魔量LV9,瞬身LV1,耐久LV1,剛力LV2,堅牢LV2,術師LV9,護法LV9,縮地LV2,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV2,
 n%I=W

・スキルポイント:95400

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁探知の痛みについて
前回の後書きにて語った「存在を知らない方が良かったかもしれないスキル」の
代表的存在が探知であり、その理由がコレ。頭に情報を入れ過ぎて覚える痛み。
原作の蜘蛛子よりも余裕があるような感じなのは、抵抗のステータスの高さから。
(ステータスの抵抗能力は、外道属性のダメージも低減するものと思われるため)

※参照
・蜘蛛子(ゾア・エレLV1):抵抗300ぐらい、並列思考LV5、演算処理LV7、外道耐性LV3
・主人公        :抵抗3500ぐらい、並列意思LV1、演算処理LV6


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VS大蛇①

お久しぶりです。
今回は、下層に落ちてから初めての強敵との戦闘の始まりになります。
お待たせしました。


まず、周りに他の魔物がいないことを確認する。

スキルによって強化された聴覚で耳を澄まし、同じく遠くまで見えるようになった視覚で辺りを見渡す。

そうして周囲の安全を確かめたうえで、訓練を始める。

 

地竜のスキルにより、圧縮された土の塊を、自分の真上に向かって射出する。

上に向かって打ち出された土の弾丸は、やがて重力がかかり続けたことで勢いが衰えていき、真下にいる私に向かって落ちてくる。

私は、やがて自分にぶつかっているだろう土の塊に命中させることを意識して、熱線を吐き出す。

確実に目標を砕けるように、熱線の種類はスパイラル熱線を選んで使用する。

 

土の弾丸に熱線が当たり、いくつもの破片に砕け散る。

それでも、分かれた塊は地面に向かって落下してきて、そのうちのいくつかは私に当たるコースにある。

ここからが本番。

 

集中、思考加速、予見、高速演算をオンにすることを意識する。

思考加速は、LV10になった集中のスキルから派生したスキルで、思考速度を加速させる効果があるみたい。

周りの動きがいつもより少し遅く感じられるんだけど、体の動きも鈍く感じちゃうというデメリットもある。

だけど、周囲の状況を把握する分なら高い有用性があるスキルだと思う。

高速演算は、演算処理のスキルがLV10になって進化したスキルで、このスキルで思考による演算が更に強化されたのを感じている。

予見は、予測の進化先のスキルで、発動すると、片方の視界でコンマ数秒先ぐらいの景色――いわば未来――が見えるようになるスキル……だと思う。

まだどんなスキルなのか正確に把握できる状態じゃないから、あくまで予想だけど。

 

で、それらのスキルを使い、降ってくる破片を避けていく。

思考加速で破片の位置を把握し、予見で動きを捉え、高速演算で自分なりに破片を避けていくためのルートを導き出し、動き回る。

この方法でよけきれない破片に関しては、熱線なり地竜のスキルで使える技なりで対応する。

そうしているうちに全ての破片が地面に落ちたら、周囲を警戒するところから再開する。

 

これが、私の新しく始めた訓練。

今あるスキルを伸ばしていくための、地道な方法。

 

私が持っているスキルの数は、覚えている限りでも50は超えている。

だけど、今までと同じ方法で鍛えているスキルを除くと、自分の力で強くしていけるスキルは多くない。

特に耐性系のスキルなんかは、役立つスキルだから私としても積極的に強化していきたいんだけど、ダメージを受けることでレベルが上がる印象が強いから、自分から鍛えることはできないと思う。

 

私一人でもレベルを上げていくことができ、かつ戦闘に役立ちそうなスキルは、集中、思考加速、予見、高速演算、それに命中と回避のスキルだった。

この訓練にて、思考関係のスキルを駆使しながら回避を行い、熱線などを目標に命中させることを意識することで、これらのスキルのレベルを上げていっている。

 

こうやって反復練習によるスキルの訓練をしていると、スキルのレベルが上がることによる効果の増大を、確かなものとして感じることができる。

そのことも、この訓練をするモチベーションになってくれる。

 

でも、目標回数に達したから、今日の分はここまでかな。

休憩に入ろっと。

 

 

 

ふう、神経使ったなー。

スキルのレベルは、集中するほど上がりやすいみたいだから、これぐらいしないと意味がないわけだけど。

でも、そのかいあってか、スキルのレベルもどんどん高まっていってる。

気のせいか、自分自身の種族が進化すると、スキルが成長しやすくなるような気がする……。

 

最近は、禁忌のスキルで得た情報から、鑑定とか探知とかの新しいスキルを獲得したりとかしていた。

けど今は、こういうふうに既存のスキルのレベルを上げるのを優先したほうがいいかもしれない。

探知みたいに、安易に取得したら後悔することになるかもしれないし。

 

その探知は、既にLV10になってる。

LV10になった探知から、新しいスキルが派生したり進化したりはしなかった。

発動すると頭が痛くなるのは相変わらずだけど、レベルが上限に達して性能が上がらなくなったのは有難い。

このおかげで、外道耐性のレベルが上がるごとに、探知がもたらす痛みが少しずつ軽減されていっているから、これを繰り返して実用性を上げていきたい。

 

探知の代わりに索敵用として使いだした、五感を強化するスキルの方だけど、こっちもレベルがどんどん上がってる。

あまり意識して使ってこなかったとはいえ、今までとは比べ物にならないペースでレベルアップするようになったのは予想外だった。

もしかしたら、並列意思のセンスに、これらのスキルを任せたおかげかもしれない。

並列意思を丸々一つ、五感強化系のスキルに集中させることで、熟練度がたまりやすくなったのかも。

 

そう考えると、並列意思のスキルのレベルを上げていきたいという気持ちが強くなってきた。

意思が多ければ多いほど、他のスキルのレベルを上げるうえでも役立つなら、ぜひそうしたい。

思わぬデメリットもあるかもしれないけど、とりあえず弱肉強食の環境で生き残るための力を優先しよう。

 

そういう意味では、進化前の並列思考のスキルを、早い段階からレベル上げしてきて良かったなーって思う。

並列意思なんていうスキルに進化するなんて完全に予想外だったけど、スキルレベルが上がりやすいっていう理由で鍛えてきたのが、まさかこんなに大きなリターンになるなんてね……。

自画自賛ながら、過去の自分に「よくやった!」って褒めまくりたい気持ちだよ。

 

鍛えると言えば、並列意思の熟練度をためるのにも、探知を使い続けるのがいいかもしれない。

探知による膨大な情報を処理するうえで、並列思考――および進化先の並列意思のスキルは、自然と使用することになる。

今は外道耐性を強化することを目的に探知を使用しているわけだけど、その過程で並列意思のスキルもどんどん強化されていくといいなーなんて思ってしまう。

現に、探知を使っているうちに並列意思のレベルが上がってるわけだし。

 

よし、体も十分に休めたし、精神状態も安定してる……はず。

日課になった探知、やりますか!

探知発動!

 

あぐっ!

相変わらず痛いな―ー!?

 

膨大な情報のなか、危険感知に大きな反応あり。

その反応は、私の背後からだった。

 

反射的に、前に向かって大きく跳躍しながら、体の向きを反転させる。

目に映ったのは、大きな、大きな蛇。

 

まだ私がフェネグルという種族だったとき、上の階で遭遇した大蛇。

おそらくその種族の進化形と思われる、二回りは大きくなっているほど巨大な蛇がそこにはいた。

 

その大蛇の、極太な鞭のような尻尾が、横から私に襲い掛かってきた。

さっきの跳躍で距離を取り始めていたとはいえ、この敵の存在を察知できなかった私に向かって放たれた攻撃は、私の頭に命中した。

 

大蛇の尻尾による攻撃の衝撃で、空中での移動先がずれ、体勢も崩れはじめる。

どうにか立て直そうとして、若干体を動かしにくいことに気づいた。

それでも気力を振り絞り、なんとか空中で体勢を整え、着地する。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『強麻痺耐性LV2』が『強麻痺耐性LV3』になりました》

 

……なるほど、どうやら今の攻撃には、相手を麻痺にする効果も含まれていたみたい。

しかも、攻撃を受けた箇所には、単に打撃を受けた痛みとは別に、内側から徐々に壊れていくような痛みが走り、さらに皮膚がジュウジュウと音を立てて溶けていくような感覚までする。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV5』が『酸耐性LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚軽減LV1』が『痛覚軽減LV2』になりました》

 

酸耐性のスキルレベルが上がったことからも、カエルの攻撃と同じ、酸によるダメージを受けていることは確実らしい。

ついでに、毒によるダメージも含まれていることは、この痛みから分かる。

毒の痛みは、嫌というほど味わったことがあるからね、うん。

つまり、この大蛇による攻撃には、物理的な威力に加えて、少なくとも毒・麻痺・酸という3種類のダメージが含まれていることが分かった訳だ。

 

おそらく、私が持っている火攻撃や土攻撃のように、自身のあらゆる攻撃に毒や麻痺を付与するスキルがあるんだと思う。

それを使って、さっきの尻尾による攻撃に、更なるダメージを上乗せしてきた。

こういう器用なことをしてきてない私にとっては、正直おそろしい。

 

酸耐性はともかく、毒や麻痺に対する耐性を高めてきて良かったと思う。

下手したら、毒によるダメージでアウトになっているか、麻痺で体が動かなくなって、そのまま一方的にやられてアウトっていう展開もあった訳だから。

ほんと、恐ろしい話だよ。

 

だけど、麻痺で体の動きが鈍くなっているのは、あまりよろしくない。

今のところは、少し動かしづらいっていうぐらいだけど、気配感知や危機感知によると、この大蛇は油断したら危ないほどの相手だから、この状況で安心なんてできない。

それに、麻痺を付与した攻撃を受け続けたら、さらに体の動きが鈍くなる可能性もある。

 

なら、この大蛇を相手にするうえで一番優先すべきは、できるだけ攻撃を受けないこと。

けど、体の動きに麻痺の悪影響が出ているわけだから、近距離で相手の攻撃をかわしていくのは難しいと思う。

この状態で大蛇からの攻撃を避けるには、十分すぎるほどの余裕――距離が必要だ。

他にどんな攻撃手段を相手が持っているかは分からないけど、こっちは距離を詰められずに遠距離攻撃していくのが望ましい。

 

つまり、私の十八番の出番。

 

さきほど自分の攻撃を回避しかけたのを警戒しているのか、じっとこちらの様子を窺って動かない大蛇。

実力が拮抗――もしくは、上回っている魔物を相手にするのは、かなり久しぶりのことに思える。

私の種族がフェネグラン――いや、フェネグルだった時以来かもしれない。

 

マテリア、センス、準備はいい?

 

[万全……とはいえないけど、とりあえず心の準備はできてる。

 私は、あの大蛇の攻撃を避けることを優先しながら、熱線でダメージを与えていけばいいってことだね]

 

{私の場合は五感担当だから、戦闘中に何をすればいいのか分からないんだけど……}

 

じゃあ悪いけど、探知をお願い。

私は探知以外での情報収集とかに集中したいから。

 

{了解。

 きつそうだけど、四の五の言う余裕はないだろうしね}

 

ありがとう。

 

フェネグラッドに進化してから、おそらく初めてとなるだろう激戦の予感。

いろんなスキルを手に入れてきたけど、それらを実戦でうまく使いこなせるか、不安はある。

だけど、その不安を乗り越えるぐらいじゃなければ、この世界で生き残っていくなんてできないだろう。

 

今まで培ってきた力を全開にして、この強敵に打ち勝つ。

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV6 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:3941/4339(緑)
 MP:2547/3882(青)
 SP:4129/4485(黄)
  :3743/4450(赤)
 平均攻撃能力:4256
 平均防御能力:4556
 平均魔法能力:3747
 平均抵抗能力:3807
 平均速度能力:4503

・スキル
 
 地竜LV7,龍鱗LV6,甲殻LV5,
 HP高速回復LV6,
 MP回復速度LV7,MP消費緩和LV5,
 SP回復速度LV8,SP消費緩和LV8,
 破壊強化LV5,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火強化LV9,土強化LV5,
 火攻撃LV7,土攻撃LV6,
 立体機動LV5,
 集中LV10,思考加速LV2,予見LV3,並列意思LV2,記憶LV9,高速演算LV3,
 命中LV8,回避LV9,隠密LV10,迷彩LV6,無音LV10,無臭LV5,
 鑑定LV2,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV8,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV2,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,火耐性LV8,大地無効,
 猛毒耐性LV4,強麻痺耐性LV3,睡眠耐性LV5,酸耐性LV6,腐蝕耐性LV4,
 恐怖耐性LV4,外道耐性LV7,苦痛無効,痛覚軽減LV2,
 視覚強化LV7,聴覚強化LV6,嗅覚強化LV6,味覚強化LV2,触覚強化LV5,
 身命LV2,魔蔵LV1,瞬身LV2,耐久LV2,剛力LV2,堅牢LV2,道士LV1,護符LV1,縮地LV2,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV2,
 n%I=W

・スキルポイント:95600

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁「進化するほどスキルが育ちやすいかも」という記述について
今作では、システムの恩恵を除外した()()()()()()が高いほど、ステータスやスキルも
育ちやすいという設定になっている。
魂は肉体の影響を受けて変容するもの、というのは(自分が解釈した限りの)公式設定。
そして、ステータスやスキルは、システムによって能力として使えるようになった魂の一部。
ならば、進化によって肉体がより強力なものになっていけば、その分スキルやステータスが
強くなりやすくなると、今作では設定している。
原作でも、人族よりも素の身体能力が高い魔族は、同じ訓練量なら人族よりもステータスの伸びで
軍配が上がるらしい。システムの設定によるものかもしれないけど。

➂「並列意思を丸々一つ集中させることで、スキルの熟練度がたまりやすくなる」
今作での設定。原作の描写などを根拠にしている訳ではないので、この小説オリジナルの設定。
しいて言うなら、実戦などで集中するほどスキルのレベルが上がりやすくなるらしいので、
スキルの力で分割しているとはいえ意思の一つに集中させれば、その分スキルの熟練度が
たまるようになり、育ちやすくなると思ったため。

➃今回の敵である大蛇
種族名は「エルローバラギッシュ」。主人公が「VS蛇」で戦った蛇型の魔物、
「エルローバラドラード」の進化先と思われる魔物で、原作主人公はエルローバラドラードが
2回進化したらエルローバラギッシュになるんじゃないかと予想するほどの大きな体を持つ。
漫画版で登場した個体は、地龍に匹敵するほどのステータスを持つうえ、毒・麻痺などの
状態異常を始めとした攻撃スキルを多く有しており、それらの属性を強化するスキルまで
持っている。単純なステータスの数値だけで測ったら痛い目に合うこと間違いなしな相手。
今回、主人公が戦うことになる個体は、LVが1ケタ台のためステータス自体は主人公より
かなり低めなのだが、スキルの質は主人公より高めなのがいくつもあるため、楽勝にはならない。


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VS大蛇②

最近ハガ○ンのOPを聴いていて思ったこと:GTLの歌詞が蜘蛛子のイメージにかなり合ってる……気がする


まず、最近使い始めた鑑定で、相手の情報を少しでも手に入れてみる。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『鑑定LV2』が『鑑定LV3』になりました》

 

『エルローバラギッシュ LV8』

 

大蛇に鑑定を使用したことで、ちょうど鑑定のスキルレベルが上がったようで、種族名の他にLVの表記も出てきた。

まあ、これだけの情報は、危険感知がある以上あってないようなものだけど。

 

隠密で気配を消していても、鑑定を魔物に使用すると、鑑定を使用した私の存在を相手の魔物に察知された。

つまり鑑定は、対象となった魔物に、私のことを認識できるようにする何らかの効果をもたらすということになる。

そしてそれは、相手の魔物の集中力を乱すことに繋がるんじゃないかと私は思った。

 

大蛇――エルローバラギッシュを対象に鑑定のスキルを発動すると同時に、私はスパイラル熱線を吐き出していた。

鑑定は、相手の気を少しそらすための手段。

これで、私の攻撃が当たる確率が少しでも上がってくれれば、と思ってね。

 

私の目論見がうまくいったのか、スパイラル熱線が大蛇の胴体に当たった。

当たったけど……あまり、ダメージはないみたい。

上で戦った蛇よりもずっと強固な鱗に体を守られているから、威力の大部分が鱗に防がれているようだった。

私と同じように、衝撃耐性や貫通耐性――あるいはそれらの上位スキルを持っている可能性もある。

やっぱり、このレベルの魔物相手だと一筋縄じゃいかないか。

 

だけど、全く攻撃が通じていない訳じゃない。

熱線が当たった場所の鱗は少し黒く変色していて、もろくなったような印象がある。

それに、あそこからわずかに肉が焦げるような臭いもする。

このまま熱線による攻撃を続けていけば、着実にダメージを与えていくことができる。

それに、鱗さえ破壊できれば、剥き出しの肉に熱線の威力をそのままぶつけることもできるはず。

とにかく、相手からの攻撃を受けないように距離を保つことを優先しながら、少しずつでもダメージを与えていこう。

 

と思ったところで、エルローバラギッシュからの攻撃が来る。

既に思考加速や予見などのスキルは発動しているため、わずかに時間の流れが遅くなった視界のなか、ほんの少し先の未来の動きが、今の動きと少しぶれるような形で見えているのが分かる。

さっきと同じ、横なぎの尻尾攻撃だ。

だけど今度は不意打ちじゃない分、回避することができる。

高速演算で、既におおよその回避ルートは算出している。

回避よろしく、マテリア!

 

[了解!]

 

私の考えたことは、しようと思えばコミュニケーションをとることなくマテリアにも伝わる。

スキルで分けられた別の意思とはいえ、元は同じ「私」だから、しっかりとした繋がりがあるんだと思う。

その繋がりを通じて、算出した回避ルートを実際に体を動かしているマテリアに瞬時に伝達する。

そして計算した通りに、私の体は大蛇の攻撃を回避した。

 

[って、アブな!?]

 

{思った以上にギリギリだった!?}

 

高速演算で導き出したルートよりも、実際の大蛇の攻撃は正確に私を狙ってきたようだった。

もしかしたら、命中のスキルも持っているのかもしれない。

これからの回避ルートは、この誤差を考慮して導き出さないと……。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『回避LV9』が『回避LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『回避LV10』からスキル『確率補正LV1』が派生しました》

 

回避のスキルレベルが上がったりしたみたいだけど、それは後回し。

マテリアは、私に当たりそこなったエルローバラギッシュの尻尾めがけて、スパイラル熱線を吐いた。

攻撃した後のスキを狙うつもりで放った熱線だけど、相手にもうまいことかわされてしまった。

回避のスキルを持っている可能性もあるな……。

攻撃を仕掛ける際にも、相手の動きを高速演算で算出しておく必要があるかもしれない。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『高速演算LV3』が『高速演算LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP高速回復LV6』が『HP高速回復LV7』になりました》

 

そんなことを考えた時にも、スキルのレベルが上がっていく。

実戦になると、こうもスキルのレベルが上がっていくものなのだろうか。

 

戦闘中に別のことを思考した隙を突くかのように、エルローバラギッシュは次の動きを見せる。

頭を後ろに引き、その長い胴体をまるでバネのように縮めていく。

あっ、まずいと思った時には、既に遅かった。

 

自身の体を縮めていた大蛇は一気に体を伸ばし、まさにバネの反動のように、凄まじい勢いでこちらに飛び掛かってきた。

今度は真正面から私に攻撃を仕掛けてきて、その鋭くて大きな牙を私の体に突き刺そうとしているのがよく分かる。

多分、あの牙や口から送り込まれる猛毒や酸は、尻尾の攻撃によるものとは比較にならないくらい強力なものだと思う。

あれだけはどうにか防がないといけない。

 

すぐさま熱線で迎撃するけど、それで止まるような相手じゃない。

大蛇の頭を狙った私の攻撃は、相手が空中でも柔軟に胴体をくねらせたことで着弾点がずれ、胴体にあたった。

スパイラル熱線による物理的威力はそう低くはないはずだけど、この大蛇の攻撃を止めるには至らなかった。

 

そして私の熱線を器用に回避したエルローバラギッシュは、命中のスキルも大いに効果を発揮しているのか、私の首を正確に狙ってきた。

猛毒を送り込む大蛇の牙が、容赦なく私の首筋に突き立てられようとした。

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

だけど、その牙は私の皮膚に突き刺さることなく弾かれた。

私の体を覆っていた石が、大蛇の猛毒の牙を防いだ。

 

地竜のスキルで使える技の一つである、自身の体を石で覆って防御する技。

その技を使って、私はエルローバラギッシュによる牙での攻撃をガードした。

上手くいくかどうかは賭けだったけど、どうにか防ぐことはできて良かった……。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『思考加速LV2』が『思考加速LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV6』が『酸耐性LV7』になりました》

 

それでも、牙が通じないくらいで大蛇は諦めなかった。

今度は、その長い胴体をすぐさま私にからめ、締め付け始めた。

その巨体による圧迫はすさまじく、私の身体を覆う石の鎧も少しずつ罅が入っていく。

それに、牙による攻撃も続いていて、首筋の護りも削られていっているのが分かる。

 

このままだと、いずれ首に牙を突き立てられ、猛毒を送り込まれて死ぬことになるか。

それとも、体全体を強烈に締め付けられて死ぬことになるか。

この状態に陥った大蛇の獲物は、そのどちらかの末路を迎えることになるんだろうな。

こうなっちゃったら、もう打つ手はなくなるだろうしね。

 

……ただし、私は別だけど。

マテリア。

 

[OK]

 

体内放射、発動。

私の体から放射熱線のエネルギーが衝撃波として放たれ、私の体を締め付けて密着していたエルローバラギッシュの体を焼いていく。

しっかりと胴体を私の体に巻き付けていた分、体表面の大部分に体内放射をまともに食らうことになったから、相手に与えられたダメージは決して少なくないはずだ。

 

予想外の反撃でダメージを受けた大蛇は、たまらずといった感じで拘束を緩め、私から距離を取ろうとする。

そんな大蛇に向かって、私は次の手を打つ。

地竜のスキルにより、土の弾丸をエルローバラギッシュに向かって吐き出す。

 

土の弾丸は熱線と比べるとかなり遅めで、この大蛇なら楽々とかわすことができるだろう。

実際、予見で視える限りの次のエルローバラギッシュの動きでは、既に回避できるコースにある。

そこに一手くわえる。

 

私は()()()()()()()()()()()()()()土の弾丸めがけて、スパイラル熱線を発射した。

先に吐き出された土の弾丸は後ろから迫ってくる熱線に追いつかれ、破壊されて幾つもの破片に砕け散る。

そして、回避できるはずの攻撃が分散したことによって、エルローバラギッシュの頭辺りに岩のような土の塊がいくつもぶつかっていく。

たいしたダメージにはならないだろうけど、意表を突くには十分なはず。

 

スパイラル熱線を、今度はエルローバラギッシュの頭めがけて発射。

さっきは着弾点をうまくずらされたけど、私の奇策に動揺していたのか、放った熱線は大蛇の頭に命中した。

これはたまらなかったのか、エルローバラギッシュの口から呻き声のように空気が漏れる音が聞こえる。

上で戦った蛇の時のように、口内に熱線を直接撃ち込んだわけじゃないから、流石にこの一発で勝負は決まっていない。

だけど、この一撃で与えられたダメージは少ないないはず。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『命中LV8』が『命中LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『外道耐性LV7』が『外道耐性LV8』になりました》

 

私の熱線をまともに食らった大蛇は、私から離れるための動きを再開した。

遠ざかっていくエルローバラギッシュに向かって追い打ち気味に熱線を発射してみるけど、さすがに今度は回避されてしまう。

十分に私との距離を取った大蛇は、私への警戒心を高めたのか、攻撃を仕掛けるのは一旦やめたようだった。

私とエルローバラギッシュは、互いの動きを少しも見逃さないようにと、いくらかの距離を空けて睨み合いを続ける状態になった。

 

ここまでの戦闘でわかったことだけど、この大蛇、全快状態の私よりは速度は遅い。

スキルのおかげか、命中精度や回避能力は高めだけど、移動速度とかは私なりに測定した限り、麻痺で体の動きが鈍い状態じゃなかったら私が上をとれた。

もっとも、最初の不意打ちで麻痺を喰らっていたから、その次の尻尾の攻撃を避けるのがギリギリになったりしたわけだけど。

 

やっぱり麻痺は恐ろしいものだって、再実感した。

前回は体が全く動かなくなることに恐怖を覚えたけど、今回は体が少し動かしづらいってだけでも脅威だということを知った。

こういうふうに、実力にそれほど差がない相手との戦いでは、体の動きが鈍くなるってことは十二分に不利な要素になるわけだからね。

本当に、麻痺は厄介なものだと思い知った。

 

 

 

まあ今回に限っては、もう問題ないだろうけど。

 

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『猛毒耐性LV4』が『猛毒耐性LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『強麻痺耐性LV3』が『強麻痺耐性LV4』になりました》

 

ちょうど、耐性のレベルも上がったかー……。

もう麻痺による体の鈍さもほとんどなくなってきたけど、耐性がさらに上がるのは歓迎だね。

 

そういえば、猛毒や酸によるダメージも回復してるみたい。

戦闘中にレベルアップしていた酸耐性や猛毒耐性のおかげもあるだろうけど、やっぱりそれ以上に呉爾羅のスキルによる再生能力のおかげが大きいかな。

HP高速回復のスキルもあるけど、ほんと、このスキルのおかげで、凄い勢いで傷が治っていくからね……。

呉爾羅の再生能力があるなら、単純なダメージや傷――HPを気にせずに戦闘できるんじゃないかなって思うぐらい。

 

ともかく、不意打ちで与えられたダメージは回復して、麻痺もすっかり治った。

エルローバラギッシュには、少なくないダメージを与えられている。

あとは、相手の攻撃を受けないように注意しながら、着実にダメージを与えていけばいい。

麻痺していない今なら、エルローバラギッシュの速度にも十分対応できるだろうしね。

 

{ブレイン!}

 

え?

センス、どうしたの?

 

{探知に新しい反応があった!

 これが何なのかは分からないけど、何か来る!}

 

慌てた様子のセンスから、探知で知り得た情報が送られてきた。

それを受け取って、戦闘中にもかかわらず、私は混乱してしまいそうになった。

 

()()は、探知で感知したことがないものだった。

熱や気配など、今まで感知したもののどれとも違うものが、自分の体の上に出現していた。

感知した印象では、それはまるで、魔法陣のような複雑な模様を描くように存在していたようだった。

 

直後、上から急激な圧力がかかってきた。

押さえつけてくるものなんてないはずなのに、上から強い力が自分に襲い掛かっているのをハッキリと感じる。

思わず地面に倒れそうになるけど、体に力を込めて、どうにかこらえる。

だけど、こんな状態じゃまともに動くこともできない。

 

偶然、というにはタイミングが良すぎる。

十中八九、あの大蛇が何か仕掛けてきたんだと思う。

でも、それが何なのか全く分からない。

どうやって対処すればいいのか、まるで見当がつかない。

 

最初に不意打ちを喰らってから、状況が良くなったことに思わず気を抜いてしまったのが悪かったのか。

正体不明の攻撃で、戦局が一気に変わってしまうことをじわじわと感じていた。

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV6 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:4294/4339(緑)
 MP:2074/3882(青)
 SP:3843/4485(黄)
  :3643/4450(赤)
 平均攻撃能力:4256
 平均防御能力:4556
 平均魔法能力:3747
 平均抵抗能力:3807
 平均速度能力:4503

・スキル
 
 地竜LV7,龍鱗LV6,甲殻LV5,
 HP高速回復LV7,
 MP回復速度LV7,MP消費緩和LV5,
 SP回復速度LV8,SP消費緩和LV8,
 破壊強化LV5,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火強化LV9,土強化LV5,
 火攻撃LV7,土攻撃LV6,
 立体機動LV5,
 集中LV10,思考加速LV3,予見LV3,並列意思LV2,記憶LV9,高速演算LV4,
 命中LV9,回避LV10,確率補正LV1,隠密LV10,迷彩LV6,無音LV10,無臭LV5,
 鑑定LV3,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV8,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV2,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,火耐性LV8,大地無効,
 猛毒耐性LV5,強麻痺耐性LV4,睡眠耐性LV5,酸耐性LV7,腐蝕耐性LV4,
 恐怖耐性LV4,外道耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV2,
 視覚強化LV7,聴覚強化LV6,嗅覚強化LV6,味覚強化LV2,触覚強化LV5,
 身命LV2,魔蔵LV1,瞬身LV2,耐久LV2,剛力LV2,堅牢LV2,道士LV1,護符LV1,縮地LV2,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV2,
 n%I=W

・スキルポイント:95600

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁呉爾羅LV10によるHP回復効果について
呉爾羅の特殊効果には「自己再生」と「超再生」というものがあり、自己再生の場合は
呉爾羅のスキルと同レベルのHP高速回復と同等の効果、超再生の場合は呉爾羅の
スキルと同レベルのHP超速回復と同等の効果をもたらしている。
つまり、通常のHP自動回復系のスキルとは別に、呉爾羅LV10のスキルを持っていると、
HP超速回復LV10とHP高速回復LV10を同時に持っているのと同じくらいのスピードで
HPが自動回復していくことになる。この設定のせいで、HPだけの話なら主人公の方が
アラバよりもかなりタフかも

➂最後の正体不明の攻撃
原作でもエルローバラギッシュのスキルの中にあった、重魔法。魔法陣が目に見えるものか
どうか分からなかったので、主人公の場合は探知に含まれる術式感知で存在を確認できる
ことにした。あと魔力感知でも感じ取れるかもしれない。
今回は、上から重力をかける魔法で主人公の動きを封じたような感じ


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VS大蛇③

お久しぶりです。
今回は逆転が唐突過ぎて困惑されるかもしれませんが、大目に見てくださると助かります。


まずい状況になった……。

まさか、こんな攻撃を受けるなんて……。

目に見える攻撃とかなら対処できるだろうけど、これは予想外過ぎる……。

 

上から目に見えない強烈な力で押さえつけられていて、それに押し潰れないようにこらえることはできてる。

けど、こんな状態じゃ移動速度はどう考えてもガタ落ちだ。

多分、私にかかる重力を強くされているんだと思う。

どんな方法でそんなことをしているのか全く分からないけど……。

 

大蛇は、そんな私をじっと観察するように見続けているだけのように見える。

だけど、その実、こうして私の動きを封じるためのナニカをしているはず……。

 

どうにかこの状況から抜け出すために、エルローバラギッシュに向かって熱線を吐き出してみる。

だけど、上から重力がかかり続けているせいで狙いがずれてしまい、相手に当たらない。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「重耐性LV1」を獲得しました》

 

新しいスキルを獲得した——ということは、この攻撃はシステムに基づくもので間違いない。

名前からして、やっぱり私にかかる下向きの力を大きくするような攻撃を受けているはず。

この攻撃への耐性になるスキルを手に入れたからか、いくらかマシに動けるようになったんじゃないかと思う。

 

そんな私の考えをあざ笑うかのように、エルローバラギッシュの尻尾攻撃が繰り出される。

多少は耐性ができたとはいえ、謎の攻撃のせいで体が重くなっていた私は回避しきれず、尻尾による攻撃に当たってしまった。

また体が痺れ始め、当たった箇所に猛毒と酸による痛みが走る。

尻尾による物理的威力はあまりなかったから、猛毒と麻痺、酸によるダメージが狙いだと思う。

衝撃を加えるのを控えてきたのは、私の体が押し出されて、この重力をかけてくる攻撃の範囲から外れる可能性をなくすためなのかもしれない。

 

エルローバラギッシュは、間隔を置きながらも尻尾を私に叩きつけてくる。

攻撃を受け続けている箇所からは猛毒と酸によるダメージが大きくなっていくのを感じ、身体を蝕む麻痺も徐々にダメージが蓄積されて侵食が進んでいくのが分かってしまう。

さっきの体内放射によるカウンターを警戒しているのか、この原理不明な私の動きを封じている攻撃といい、向こうも距離を空けて慎重にダメージを加えてくるようになった。

 

まずい。

さっきは不意打ちで受けた一撃分のダメージしかなかったから、毒も麻痺も酸も短時間で回復した。

けど、予想外の手で碌に動けなくなって、こうも何度も攻撃を加えられ続けたら、どうしようもない状況に追い込まれることになる。

呉爾羅の再生能力は強力だけど、こんな状況じゃ再生が追い付かなくなるのも時間の問題だろう。

こう考えている間にも、猛毒と酸によるダメージはたまっていって、重力に加えて麻痺が体に広がっていって体が動かせなくなっていく。

 

 

 

どうする?

どうすれば、この状況を打破できる?

耐性が早く上がるように強く意識する?

一か八かの賭けで、後先考えずに放射線流で攻撃を仕掛ける?

それとも、今持っているスキルの中に、何らかの対抗策がある?

 

 

 

考えろ。

考えるんだ。

限界まで思考速度を加速しろ。

今までの経験から、思いついた案をシミュレーションしろ。

頭の中を隅から隅まで――並列意思の並列思考を――「私」のすべてを、一片残らず使い切るつもりで考えつくせ――!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『思考加速LV3』が『思考加速LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『高速演算LV4』が『高速演算LV5』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『並列意思LV2』が『並列意思LV3』になりました》

 

 

 

一瞬ともいえるような短い時間のなかで思考に思考を重ね、この窮地を脱する方法を自分の中からひねり出す。

その結果、頭に浮かんだ言葉は、たった一言。

 

 

 

――()()すればいい。

 

 

 

考えに考えた結果として出てきたとは思えないほど、論理に欠けた案。

誰かに説明するにはあまりにも曖昧な内容で、思いついた私としても言葉だけでは何のことかさっぱりな言葉。

 

だけど、その言葉と同時に、この窮地を切り抜けるための方法を、私は()()()()()知った。

まるで以前使用したことがあるかのような感じで、どうすればいいかを体で認識した。

私自身が経験したことがないことを、あたかも経験したことかのように感じている。

平常時なら不信感を抱くこと待ったなしで対応することを、私は、命に迫る危機に対応するために自然と受け入れていた。

 

 

 

感じ取ったままに、呉爾羅のスキルを新しい形で発動する。

瞬間、私の身体能力が大幅に向上したのを感じた。

 

少しずつ体を蝕んでいた麻痺への抵抗が一気に高まり、体の痺れが完全になくなる。

上からの重力も、まるで気にせず動けるようになったのが分かる。

エルローバラギッシュの攻撃による負荷から解放され、それどころか通常時よりも能力が高まっていることが本能的に理解できた。

 

だけど、この効果は制限時間付きだ。

はやいところ決着をつける必要がある。

 

スキルの発動を確認した私は、大蛇に向かって駆け出す。

まさか重力と麻痺による束縛から抜け出けるとは思っていなかったのか、自分の方に向かってきた私に対して、エルローバラギッシュは慌てた様子で距離を取ろうと動きはじめる。

けど、麻痺して動きがぎこちなくなっている時ならともかく、今の私の攻撃を防ぐには遅かった。

 

両腕に火攻撃と土攻撃を付与。

まずは、一番近いところにある尻尾から、両手の鋭くて大きな爪で大蛇の体を切り裂いていく。

この一時的な身体能力の向上に加えて、斬撃強化のスキルのおかげか、固い鱗をも貫き予想以上に深く切り込むことができた。

火攻撃のスキルにより火炎を纏っている斬撃は、相手の体を切り裂くだけではなく、その炎で肉を焼いていく。

 

大ダメージを与えられたエルローバラギッシュは、その激痛によるものか、はたまた私の攻撃から少しでも逃れるためか、その巨体をのたうち回らせて暴れ出した。

その滅茶苦茶に繰り出される大蛇の攻撃を、思考加速・予見・高速演算などのスキルを意識しながら躱していき、大蛇の体を切り裂き続ける。

時には、自分に迫ってくるエルローバラギッシュの胴体を、熱線で弾き飛ばしたりした。

 

とにかく、攻撃を止めないようにすることに夢中だった。

この身体能力の飛躍にはリミットがあることを、本能的に私は理解している。

そのリミットが来る前に勝負を決めないと、今度こそ終わりだという確信があった。

それに、相手に何かするスキを与えてしまったら、またさっきみたいに動きを封じられる恐れもあるから、もう距離を取って慎重に攻撃していくなんて出来ない。

ここで、決着をつける。

 

両手の爪で、大蛇の体を、切り裂いて、切り裂いて、切り裂いて切り裂いて切り裂いていく。

不規則に自分に迫ってくる攻撃は、避けて、いなして、跳んで、迎撃して、回避していく。

とにかく、攻撃を途切れさせないことだけを考えた。

そうして、攻撃して、切り裂いて、熱線を吐いて、攻撃して攻撃して攻撃して……。

 

 

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『土強化LV5』が『土強化LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『火攻撃LV7』が『火攻撃LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『土攻撃LV6』が『土攻撃LV7』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『魔闘法LV1』を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『気闘法LV1』を獲得しました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『縮地LV2』が『縮地LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『剛力LV2』が『剛力LV3』になりました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『予見LV3』が『予見LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『確率補正LV1』が『確率補正LV2』になりました》

 

 

 

《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV6からLV7になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『斬撃強化LV3』が『斬撃強化LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『命中LV9』が『命中LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『命中LV10』からスキル『確率補正LV1』が派生しました》

《『確率補正LV1』が『確率補正LV2』に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『確率補正LV2』が『確率補正LV3』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV7からLV8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『打撃耐性LV2』が『打撃耐性LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚軽減LV2』が『痛覚軽減LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『堅牢LV2』が『堅牢LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『鉱体LV1』を獲得しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV8からLV9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『地竜LV7』が『地竜LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『破壊強化LV5』が『破壊強化LV6』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV9からLV10になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『甲殻LV5』が『甲殻LV6』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『鉱体LV1』が『鉱体LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『火強化LV9』が『火強化LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『火強化LV10』がスキル『火炎強化LV1』に進化しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

そのことに気づいたのは、レベルアップを知らせるアナウンスが何回か聞こえてから。

攻撃し続けていた対象であるエルローバラギッシュは、体の至る所に焦げ付く臭いのする斬撃跡を刻みつけられて絶命していた。

 

私は、大蛇との戦いに勝利したのだ。

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV10 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:4815/4815(緑)
 MP:4327/4327(青)
 SP:4973/4973(黄)
  :4934/4934(赤)
 平均攻撃能力:4752
 平均防御能力:5060
 平均魔法能力:4175
 平均抵抗能力:4239
 平均速度能力:5015

・スキル
 
 地竜LV8,龍鱗LV6,甲殻LV6,鉱体LV2,
 HP高速回復LV7,
 MP回復速度LV7,MP消費緩和LV5,魔闘法LV1,
 SP回復速度LV8,SP消費緩和LV8,気闘法LV1,
 破壊強化LV6,打撃強化LV3,斬撃強化LV4,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火炎強化LV1,土強化LV6,
 火攻撃LV8,土攻撃LV7,
 立体機動LV5,
 集中LV10,思考加速LV4,予見LV4,並列意思LV3,記憶LV9,高速演算LV5,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV3,隠密LV10,迷彩LV6,無音LV10,無臭LV5,
 鑑定LV3,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV8,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV3,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,
 火耐性LV8,大地無効,重耐性LV1,
 猛毒耐性LV5,強麻痺耐性LV4,睡眠耐性LV5,酸耐性LV7,腐蝕耐性LV4,
 恐怖耐性LV4,外道耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV3,
 視覚強化LV7,聴覚強化LV6,嗅覚強化LV6,味覚強化LV2,触覚強化LV5,
 身命LV2,魔蔵LV1,瞬身LV2,耐久LV2,剛力LV3,堅牢LV3,道士LV1,護符LV1,縮地LV3,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV2,
 n%I=W

・スキルポイント:96000

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁スキル「地竜」についてのオリジナル設定
説明:地竜種が有する特殊スキル。レベルにより特殊な効果を発揮する
・LV7:地竜ブレス。大地ブレス系統とは違い、光線状のブレス攻撃
   アニメの地竜が使っていたような感じのイメージ
・LV8:大地纏。石纏の強化版で、より頑丈な土と岩の鎧をまとって防御を高める
   名前に関しては、「岩石纏」や「岩盤纏」等の候補と、どれにしようか迷った

➂スキル「鉱体」について
原作では、「甲殻」と並んでスモールロックタートルという魔物が所持しているスキル
「甲殻→堅甲殻→重甲殻」のような感じで、「鉱体→鋼体→神鋼体」というように
進化していくスキルだと予想し、地竜が持つようになりそうなスキルだったので、今回
獲得した。熟練度については、地竜のスキルで使える「石纏」を使用していったら
たまっていったという感じで……

➃スキル「呉爾羅」によるステータス向上について
LV5での特殊効果「細胞活性」によるもの。MPとSPを消費することで、魔神法や闘神法、
竜力のように、攻撃・防御・魔法・抵抗の能力を底上げする。この効果を使用したことで、
同じ分類のスキルである魔闘法と気闘法のスキルの熟練度がたまり獲得したことになる
主人公が言っていたリミットとは、使用に必要なMPとSPの残存量のこと
今のところステータスの一時的な向上のみを恩恵としているが、呉爾羅のスキルに含まれる
技なので、熱線や地竜の技などのブレスを強化する効果もつけようかと考えている

➄主人公が「細胞活性」の効果と使い方を感覚的に理解できた理由
いちおう伏線……のつもり


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大蛇を倒して

今回からアンケートを始めたいと思います。
後書きの「主人公のステータス」にて追加を希望される要素を、私が用意した選択肢の中から選んで回答することができます。
読者の皆様の回答を参考に、ステータスの書き方を変えるかもしれません。
あくまで参考にする程度であり、絶対ではありませんのでご注意ください。
回答される方は、後書きの下からお願いします。


気を抜いていたところに不意打ちを受けて始まった、強敵との戦闘。

身体的な能力なら私の方が上だったんだろうけど、最初に猛毒や麻痺といったハンデを負ってしまい、さらに謎の攻撃で動きを封じられたりして、だいぶ苦しい戦いだったと思う。

魔物と戦ううえでの苦労は重ねてきたけど、純粋に「相手が手ごわい」という点では今回の戦闘ほど大変な思いをしたことはなかったと思う。

こういう思いをするたびに、慢心するのは本当に危ないということを実感する。

 

だけど、こっちも新しく手に入れたスキルとかを活用して戦うことができたと思う。

地竜のスキルを使った咄嗟の防御や、体内放射による反撃も悪くなかったんじゃないかな。

日常的に鍛えてきたスキルを、戦闘にうまく活かせるように使用して、並々ならぬ力を持つ相手に勝つことができた。

これは、この弱肉強食の環境で生き続けている私からしたら、すごく嬉しいことだ。

 

……ただし、ちょっと今回は、素直に喜べない。

自分の力だけで勝った、と言い切れない要素があったから。

最後に、身体能力を一時的に向上させ、窮地を逆転させてエルローバラギッシュに勝利する大きな要因となったのは、確かに私が持つ呉爾羅のスキルではある。

だけど、私はまだ呉爾羅のスキルで使える技を全て理解しているわけではなく、その身体能力大幅向上の効果も存在すら知らなかった。

にも関わらず、いくら頭を全力で働かせて考えたとはいえ、()()()()()()()()()()()技を使えばいいという思考が出てきて、さらには()()()使()()()()()()()()()()()()()発動の仕方まで思い浮かんでいた。

あの時は目の前の危機から抜け出すために棚上げしていたことだけど、これはどう考えても異常だ。

こんなことは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

常識で考えれば、私に全く姿を見せることなく、直接脳内に干渉するかのように私の考えに影響を及ぼすことができるはずがない。

だけど、この世界では、私の常識が必ずしも通用するわけじゃない。

ここには、自分の中の意思を増やしたり、思考速度を加速させる方法が、スキルという形で存在している。

スキルなら、知らない情報を私の頭の中に送り込んだり、私の思考を都合のいい方に誘導することもできるかもしれない。

実際、禁忌のスキルで頭の中に情報をインストールされているわけだし。

つまり、今回の勝利は、私に存在を知られることなく、スキルなどの手段により私の行動をコントロールした第三者の手によって、お膳立てされたものである可能性があるという……。

 

……正直、不快だ。

確かに、あの場面で動きを封じられたままだったら、私が今こうして生きている可能性は低かったと思う。

私の思考への何者かの干渉に助けられたことは、重々理解しているつもりだ。

だけど、そのことを考慮しても、顔も知らない誰かに自分の精神を弄られたかもしれないということに不快感を覚える。

せめて、その相手が名乗ってくれでもしたら納得はするかもしれないけど、例の技に関すること以外での影響は受けていないと思われる。

 

これが今回だけのことだとしたら、原因は分からないにしろ、そこまで気にしなくてもいいとは思う。

けど、そんなふうに楽観的に考えられるわけはなく、今後も自分の思考に干渉される可能性は高いと私は考えている。

今回は戦闘におけるアドバイスで済んでいるけど、そのうち、自分の本来の意思に反することに誘導されるようになり、自分が望まない方向に精神を改悪されることになるかもしれないと危惧してしまう。

そう考えると、気が非常に重くなる。

 

それを防ぐためのスキルとかがあると分かっていれば少しは気が楽になると思うけど、まるで心当たりがない。

自分が今持っているスキルの中に思い当たる節がなければ、禁忌で得た情報にも、精神を侵されないようにできるような名前のスキルを見つけた覚えはなかった。

つまり、少なくともスキルという手段で、自分への精神干渉を防ぐ方法は私の知る限り持っていなくて、さらに新しく手に入れることもできない、という状況にあるわけだった。

 

……まあ、それについては今はおいておくしかないか。

対策となるスキルを現時点で持っていなくて、見当もつかないんだったら、いくら考えても仕方がない。

せいぜい、気が付いたら手遅れなんていう状態にならないうちに、精神への干渉を防ぐようなスキルの存在に気を付けておくぐらいしかできないかな。

 

それに、なんだかんだいって、あの呉爾羅の新しい技で窮地を切り抜けられたのは事実だ。

自分の精神を好き勝手に操られるかもしれないからマイナスのイメージを持っちゃったけど、今回はこっちが救われたわけだから、私の味方をしてくれる、という考え方も十分にできる。

向こうの存在を私に知らせてこないのも、なにか事情があるかもしれないし。

感情的に納得できない点もあるけど、自分の感情だけで敵視一択にするには、まだ早いのかもしれないかもね。

 

よし、とりあえず精神干渉について考えるのは、いったんここまでにしよう。

まずは、戦闘の後始末から始めようか。

 

[はぁ~、ようやく気が抜けるよ~]

 

{一時はどうなることかと思ったけど、ぶじ切り抜けることができて良かった~}

 

あ、マテリアにセンス。

あなたたちもお疲れ様。

お疲れのところ悪いけど、これから大蛇との戦闘での反省点とかをみんなでまとめるよー。

 

[りょうかーい]

 

{確かに、今回の戦闘で学ぶべきことはあったしね}

 

あ、悪いけど、マテリアには別の仕事をお願いしたいかな。

 

[別の仕事?]

 

うん、あの大蛇をしまうためのシェルターを作ってもらおうかと思って。

あの大きさだと、前の蛇の時みたいに、1回で食べきるのは無理そうでしょ。

でも、あれだけ大きいと、他の魔物がやってきて食べてくる可能性が大きい。

それは癪だから、他の魔物が食べられないように、シェルターで保管しちゃおうかなと思って。

できれば、私も中に入って過ごせるようなものを作ってほしい。

マテリアが作っている間に、私たちの方で反省会は進めておくよ。

 

[分かった、そういうことなら任せておいて]

 

頼んだよー。

 

 

 

さて、マテリアがシェルターを作っている間に、今回の戦闘での反省会を始めちゃおうか。

 

{そうだね}

 

〈さっさと始めるか〉

 

……あれ?

なんだか声が一つ多い?

もしかして、また並列意思ふえてない?

 

〈ん?

 あー、どうやらそうみたいだな。

 いちおう初めまして、と挨拶させてもらうわ〉

 

ということは、並列意思のスキルのレベルがまた上がった?

一体いつ……って、そういえば、動きを封じられて必死に頭を働かせたときに、アナウンスが聞こえてた。

あの時は考えるのに全神経を使っていたから気づかなかったけど、LV9の記憶のスキルのおかげか、思考加速や高速演算のスキルレベルも上がっていたことも併せて覚えてたわ。

 

じゃあ、これからよろしく。

さっそくだけど、名前はどうしようか。

 

〈別にそれは後でいいだろ。

 それより先に、さっきの戦闘の反省点を振り返るんじゃなかったのか?〉

 

……まあ、それは最もだけど……なんか……。

 

〈? どうした?〉

 

{ブレインが言いたいことは分かる。

 私もさっきから違和感を覚えてるし……}

 

〈いや、だからなんだよ〉

 

いや、なんで口調が変わってるのかな……と思って……。

 

〈ああ、そういうことか。

 こっちもよく分かんねーよ。

 自然とこういう口調になっちまうんだからな〉

 

うーん……なんでだろう……。

「これ以上並列意思が増えたら、口調を変えるとかしないと区別がつかなくなるかな」とか考えたことがあるから、それが影響したのかな……。

 

〈それも後で構わねぇだろ。

 さっさと反省会を始めるぞ〉

 

……そうだね。

記憶に新しいうちに、さっきの戦闘で学んだことを振り返るとしようか。

 

{まずは、不意打ちで攻撃を喰らっちゃったことだね。

 毒と酸はともかく、最初に麻痺を受けていなかったら、もっと有利に戦うことができた}

 

〈そうだな、麻痺を喰らっていない状態なら、速度で相手を上回っているわけだからな。

 時間経過で麻痺が抜けていったから良かったが、もし攻撃を受け続けていたら、麻痺が蓄積して完全に動けなくなっていただろうな〉

 

最初に反省すべきは、やっぱりそこだよねー……。

探知で大蛇の存在を偶然に気づくことができたのが幸運だったけど、もし不意打ちをまともに受けていたら、もっとまずい状況になってたよね……。

 

もし、探知に統合されずに気配感知や危険感知のスキルを使うことがあったら、大蛇の存在に気づかないなんてことはおそらくなかった。

いや、探知を使いこなすことができていたら、と言ったほうがいいか……。

五感強化系のスキルで代用しようとしたけど、やっぱり探知を使わないと、こんなことが起きちゃうか……。

 

〈あのクラスの蛇型の魔物だと、無音や無臭、それに隠蔽のスキルも持っているもんなんだろう。

 かなりの高レベルで五感を強化しないと、気づくのは難しいだろうな。

 LV10の探知を使えば、たいていの相手なら察知することができるだろうけどな……〉

 

{今は私が五感強化系のスキルを担当して鍛えてるけど、やっぱり探知を使い続けるようになった方がいいと思う。

 いちおう私も頑張ってみるけど、感知系のスキルの方が索敵に向いているのは確かだよ}

 

……やっぱり、そうだよね……。

……よし、今までは外道耐性のレベルアップと並行して禁忌の情報を解析してたけど、探知を使い続けることができるようになるまでは、私は外道耐性を鍛えることに専念する。

 

{え?

 いや、確かに探知は大事だけど……禁忌はもういいの?}

 

禁忌で開示された情報を把握することは重要だと、今でも思ってる。

でも、まずは自分の安全のために探知を使いこなすようになることを優先すべきだと思う。

それに、禁忌の情報で分かるシステム内のスキルについては、粗方名前を見たはずだしね。

鑑定と探知は取ったけど、それ以外のスキルは新しく取ろうとは考えてないけど。

禁忌の情報を探る一番の目的は済んだわけだから、探知の問題の方を先に解決したほうがいい。

 

{それもそうか。

 じゃあ、探知のことはブレインに任せる}

 

〈なんなら、外道耐性のレベルアップに付き合ってやろうか?

 並列意思2つ分なら、レベルアップが早くなる可能性が高いからな〉

 

それは助かるよ。

どうもありがとう。

 

〈礼なんて要らねえよ〉

 

{じゃあ、次にいこうか}

 

次か……あまり思いつかないかな……。

自画自賛になるけど、今回は自分の持っているスキルを活かして戦うことができたと思う。

 

{地竜のスキルを使った咄嗟の防御とか、訓練での経験から思いついた石の散弾とかは、私もよくやったんじゃないかって思うよ}

 

〈確かに、多くのスキルを実戦でうまく使えてたかもな。

 それはそれとして、戦闘中に余計なことを考えたり気を抜いたりしてたのは、じゅうぶん反省点なんじゃねーか?〉

 

あっ、そういえばそうだった……。

スキルのレベルが上がりやすいなぁとか、そんなこと考えてた……。

確かにそれは反省点だわ……。

 

〈まあ、こういうのは戦闘経験を積まなきゃ改善しにくいことかもな。

 並列意思のスキルにはLV10の並列思考が含まれているようなもんだから、多少余計なことを考えても大した問題にはならないとは思うけどな……〉

 

{それ以外の方法だと、やっぱり意識的に気を付けるぐらいしかできないかな。

 集中なんていうスキルがあるんだから、そのスキルを意識して戦闘に専念するつもりでいったほうがいいかもね}

 

そうか……。

分かった、今度センスの言ったことをやってみるよ。

あと反省すべきなことは……なにかあったかな?

 

〈そうだな……無駄な動きもあったと思うが、それも経験を積むしかねえよな……〉

 

{他には、今度は動きを封じられるリスクを減らすために、重耐性をレベルアップさせたり……。

 でも、重耐性はどんなふうにすれば熟練度がたまるのか、分からないからなぁ……。

 あ、そういえば、これは反省点とは少し違うんだけど、ちょっと聞いてもらえる?}

 

うん。

 

{なんていうかさ、戦闘中に私たち並列意思が完全に同調しているような感じが何度もあったでしょ?

 実際、そんなふうに一つになるような感覚が続いていたから、並列意思同士の会話もなくなっていった気がするし}

 

あー、あれかぁ。

確かに、なんていうか、並列意思が重なり合うような感覚がしたね。

元は同じ「大原 雅美」だから、3つに分かれている意識を同調させることができるのかな。

あれって、思考加速のスキルとは別に、思考能力が格段に上がるような気がする……。

 

〈単純計算で考えると、並列意思一人当たりの思考能力3倍分ぐらいだろうだからな。

 1つの行動に対して3倍の思考ができるんだったら、そりゃ上がったように感じるな〉

 

{それって凄いね……。

 じゃあ、これからのことを考えると、あの感覚も意識的にできるようになった方がいいかな}

 

そうだね。

精神に関わることだからリスクもしっかり考慮する必要があるけど、できれば使えるようになった方がいいよね。

じゃあ、このスキル……というか技術についても、使いこなすことを目標にします。

 

反省点……というか、戦闘のフィードバックはこれぐらいかな?

他にもあるかもしれないけど、とりあえず主だったものは以上、ということで。

 

〈まあ、これぐらいだろうな〉

 

{細かいのは、後でじっくりと考える機会があったら見直してみようか}

 

じゃあ、反省会は一旦終わりにしようか。

……あっ!

そういえば、忘れていたことがあった。

 

{どうしたの?}

 

大蛇との戦闘の初めの方で、鑑定のレベルが上がってた。

レベルが上がったことで、新しく魔物のLVが分かるようになったんだ。

いちおう、自分自身も鑑定してみて効果を確かめてみる。

 

『フェネグラッド LV10 名前 大原 雅美』

 

おお、私のLVも表記されるようになってる。

有難いと言えば有難いんだけど、やっぱりもう少し情報が欲しいなぁ。

このフェネグラッドっていう種族がどんな生き物なのか、具体的に分かると嬉しいんだけど……。

 

『フェネグラッド:中位の地竜』

 

そんなことを思ったら、フェネグラッドについての説明と思われるものが、頭の中に浮かんでいた。

もしかしてこれ、鑑定結果に対して更に鑑定を重ねた?

鑑定のレベルが上がったから、こんなこともできるようになった?

試しに、今度は「地竜」という単語に対して鑑定してみる。

 

『地竜:竜の一種』

 

また出てきた。

これは、本当に鑑定の重ね掛けができるようになったみたいだ。

これなら、一つの鑑定結果から連鎖的に情報を手に入れることができる。

やっぱり、鑑定のスキルを手に入れたことは間違いじゃなかった……。

 

……よし、そうときまれば。

ちょっといい?

 

{スキルポイントで、鑑定のレベルを上げるんでしょ?}

 

あっ、やっぱり分かるかぁ。

まあ、前から考えてたことだから、それもそうか。

 

鑑定は、情報を手に入れるうえで重要なスキルだと、前々から認識していた。

本当に自分にとって必要なスキルかどうか、ある程度レベルが上がるまでは効果を確かめていくつもりだった。

それで、十分に自分の期待に応えてくれるスキルだと分かったら、より多くの情報を手に入れられるように、スキルポイントを消費して一気にレベルを上げようと考えていた。

LV3になって、その時が来たことが分かったから、鑑定のレベルをスキルポイントで上げることにした。

一応並列意思に確認を取ろうと思ったけど……。

 

{私も同じ意見だから、異議なしだよ}

 

どうやらその必要はなかったみたい。

じゃあ、鑑定のレベルを上げるね。

 

〈まあ、こっちも同じ意見だから構わねぇけど、ちょっといいか……〉

 

どうしたの?

 

〈いや……重耐性のレベルをスキルポイントで上げていたら、麻痺属性込みの攻撃を受ける前に動けるようになってたんじゃねえか……?〉

 

 

 

……………………あ。

 

 

 

{……思えば、蜂の猛毒で苦しんでいた時も、そうだったよね……?}

 

……ご尤もです……。

こういう時のために、スキルポイントは使うようにしようと決めてたのに……。

……今度こそは、スキルポイントの存在をしっかり思い出さなくちゃ……。

 

…………これが、今回の戦闘での一番の反省点かもしれない……。

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV10 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:4815/4815(緑)
 MP:4327/4327(青)
 SP:4973/4973(黄)
  :4934/4934(赤)
 平均攻撃能力:4752
 平均防御能力:5060
 平均魔法能力:4175
 平均抵抗能力:4239
 平均速度能力:5015

・スキル
 
 地竜LV8,龍鱗LV6,甲殻LV6,鉱体LV2,
 HP高速回復LV7,
 MP回復速度LV7,MP消費緩和LV5,魔闘法LV1,
 SP回復速度LV8,SP消費緩和LV8,気闘法LV1,
 破壊強化LV6,打撃強化LV3,斬撃強化LV4,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火炎強化LV1,土強化LV6,
 火攻撃LV8,土攻撃LV7,
 立体機動LV5,
 集中LV10,思考加速LV4,予見LV4,並列意思LV3,記憶LV9,高速演算LV5,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV3,隠密LV10,迷彩LV6,無音LV10,無臭LV5,
 鑑定LV3,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV8,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV3,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,
 火耐性LV8,大地無効,重耐性LV1,
 猛毒耐性LV5,強麻痺耐性LV4,睡眠耐性LV5,酸耐性LV7,腐蝕耐性LV4,
 恐怖耐性LV4,外道耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV3,
 視覚強化LV7,聴覚強化LV6,嗅覚強化LV6,味覚強化LV2,触覚強化LV5,
 身命LV2,魔蔵LV1,瞬身LV2,耐久LV2,剛力LV3,堅牢LV3,道士LV1,護符LV1,縮地LV3,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV2,
 n%I=W

・スキルポイント:96000

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者


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出動! スキル鑑定団!

前回から始めたアンケートですが、とりあえずどんな感じになるかイメージを持ってもらうために、後書きのステータスの表示の仕方を試しに変えてみました。参考になればと思います。
今回はスキルを鑑定しまくる回ですが、文字数が制御しきれなくなって、もうちょっと省略すれば良かったかなとか思ったり……。ほとんど説明回だと思っていただければと思います。

2021/09/16
耐性系のスキルあたりに追記などをしました。
また、読者の方からの誤字報告を適用させていただきました。誤字報告していただき、ありがとうございます。


大きな反省点が見つかってしまったけど、私はどうにか気を取り直した。

そして、スキルポイントを使って鑑定のレベルを上げていった。

念のために、レベルを一つ上げるごとに試しに鑑定を使ってみて、効果を確認していった。 

 

LV4だと、種族名の下に色のついた4本の横棒が追加されていた。

その横棒を一つずつ鑑定していったら、それぞれ「HPバー」「MPバー」「SPバー」と出てきた。

下のSPバーについては、上の黄色と下の赤の2本がくっついているような感じだ。

 

HPとSPなら予測は付いていたけど、MPは具体的には何を意味するのか分からなかったのもあり、この三つを対象に、さらに鑑定して意味を調べた。

 

『HP:ヒットポイント』

『MP:マジックポイント』

『SP:スタミナポイント』

 

出てきた言葉を、更に鑑定。

 

『ヒットポイント:ダメージにより消費されるポイント』

『マジックポイント:特殊能力により消費されるポイント』

『スタミナポイント:運動により消費されるポイント』

 

この説明により、私の予想と同じく、HPは体に傷を負ったりすると減る、いわば残りの生命力を表すようなものである可能性が高いことが分かった。

SPについても、スタミナという理解で間違いなかった。

あと、この説明からすると、MPは一部のスキルを使うときとかに消費するためのものじゃないかと思ってもいいんじゃないかと考えられる。

もしかしたら、SPもそうかもしれないけど。

後でしっかり確認しておかないと。

 

LV5だと、SPバーの下に『ステータス 強い』という表記が新たに加わっていた。

さらにLV6になると、『強い』という表記の代わりに複数の項目が出てきて、HPやMPも併せてステータスが数値として表示されるようになった。

それぞれを鑑定した結果も含めると、以下の項目が出てくるようになった。

 

『平均攻撃能力:その個体の平均的な物理攻撃能力を表す。平均であるがゆえ、部位によってその数値は異なる』

『平均防御能力:その個体の平均的な物理防御能力を表す。平均であるがゆえ、部位によってその数値は異なる』

『平均魔法能力:その個体の平均的な魔法運用能力を表す。平均であるがゆえ、作業によってその数値は異なる』

『平均抵抗能力:その個体の平均的な魔法防御能力を表す。平均であるがゆえ、属性によってその数値は異なる』

『平均速度能力:その個体の平均的な物理速度能力を表す。平均であるがゆえ、部位によってその数値は異なる』

 

どの項目の数値も4000を超え、5000を超えるものもいくつかあったけど、比較対象がまだないから高いのかどうか分からなかった。

けど、最初の「強い」という表記に間違いがなければ、多分高い方だとは思った。

 

そして、LV7にまで鑑定がレベルアップすると、ついに私が今持っているスキルも鑑定で出てくるようになった。

鑑定結果に含まれる単語を、さらに鑑定して意味を調べることができるのは既に分かっていた。

つまり、鑑定結果に出てきたスキルを対象に鑑定を使用することで、自分が所持しているスキルの効果を、ようやく正確に知ることができるようになったんだ。

だいたいは名前から想像できるような効果だったけど、ちゃんと正しく理解できた方がいいに決まってるよね。

 

所持しているスキルは、一通り鑑定してみた。

まずは地竜のスキルから振り返ってみよう。

 

『地竜:地竜種が有する特殊スキル。レベルにより特殊な効果を発揮する。LV1:土ブレス、LV2:石纏、LV3:生命変遷、LV4:地恵、LV5:大地ブレス、LV6:食地、LV7:地竜ブレス、LV8:大地纏』

 

地竜のスキルは、やっぱりこのスキル単体で複数の技を使えるスキルみたいだった。

その技の半分くらいは知っていたけど、使ったことがない技や、意識せずに使っていたけど地竜のスキルによるものだと知らなかった技もあった。

つまり、鑑定なしだと、地竜で使える技のうち半分しか使いこなせない可能性もあったということ。

やっぱり鑑定で調べられるようにしてよかったと思った。

 

地竜のスキルの近くに並んでいた龍鱗や甲殻、鉱体などは、防御を強化するスキルのようだった。

できれば強化していきたいスキルではあるんだけど、熟練度の稼ぎ方がよく分からなかったりする。

今度いろいろ試してみないと……。

 

次はHP高速回復とかのスキル。

 

『HP高速回復:HPが時間経過とともに回復する。自然回復しないような怪我でも回復可能』

『MP回復速度:MPが自然回復する速度が上昇する』

『MP消費緩和:MPの消費量が減少する』

『SP回復速度:SPが自然回復する速度が上昇する』

『SP消費緩和:SPの消費量が減少する』

 

まあ、これらのスキルも、だいたい名前から推測した通りの効果かな。

あと、呉爾羅の技の一つで身体能力を向上させていた時に入手した魔闘法や気闘法も調べてみたけど、どうやらこれらも身体能力を上げるスキルだったみたい。

身体能力というか、ステータスを一時的に上昇させるみたいだけど。

魔闘法の場合はMPを、気闘法の場合は赤い方のSPを消費して、平均攻撃能力や平均防御能力をブーストさせるスキルだった。

同時に発動すれば、発動した分だけ恩恵をしっかり受けられるみたいだから、スキルのレベルを上げて呉爾羅も併せて使っていきたいところ。

 

次は「~強化」という名前で統一されている――私は強化系と呼んでいる――スキル群についてだけど、こっちも鑑定してみたら名前通りの効果だったかな。

 

『破壊強化:物を破壊する際のダメージにプラス補正が働く』

『打撃強化:打撃属性による攻撃能力が増加する』

『衝撃強化:衝撃属性による攻撃能力が増加する』

『火炎強化:火属性による攻撃能力が大幅に増加する』

『土強化:土属性による攻撃能力が増加する』

 

破壊強化の説明文は少し違ったけど、まあ想像からかけ離れているわけじゃなかった。

火炎強化に関しては、火強化のスキルから進化したからか「大幅に」という一言が加わって、より強力なスキルになったのが分かる。

他のスキルも、早く進化させたいところだね。

 

火攻撃と土攻撃に関しても、自身の攻撃に火属性や土属性を付与するスキルってことは分かっていたから、特にいうことなし。

あ、でも進化して火炎攻撃とかになるかな、とは思ってる。

 

『立体機動:壁走りや天井着地などの三次元的な動きを可能にする』

 

深い穴に落ちた時に取得したけど、あの時このスキルを手に入れたおかげで助かる可能性が上がったかもしれないと思うと、感慨深い気持ちになる。

今はトレーニング中ぐらいしか活用できてないけど、そのうち活躍することを祈ろう。

 

で、次は思考に関係するスキル。

 

『集中:集中力が増す』

『思考加速:思考を加速させ、知覚できる時間を引き伸ばす』

『予見:予測効果が高まる。それにより未来の可能性が僅かに見えるようになる』

『並列意思:複数の事柄を同時に思考可能になる効果が高まる。さらに意思が増えるようになる』

『記憶:記憶力がよくなる』

『高速演算:思考の演算能力を大幅に強化する』

 

これらのスキルも、鑑定してみた限りだと名前の通りの効果だね。

進化前から使っているスキルも多くて、戦闘も含めてお世話になる機会が多いスキルの皆様です。

これからも愛用させていただきます。

 

戦闘でお世話になると言えば、確率系のスキルも忘れてはいけない。

 

『命中:あらゆる状況における命中率にプラス補正が働く』

『回避:あらゆる状況における回避率にプラス補正が働く』

『確率補正:確率が関与するスキルの力にプラス補正が働く』

 

こっちも説明文が名前の通りなんだけど、「あらゆる状況」っていうのは検証してみたいところ。

確率補正のスキルは、命中と回避がLV10になった時に派生したスキルだ。

今までは命中と回避のスキルを鍛えてきたけど、今度はこっちのスキルレベルが上がるようにトレーニングしたほうがよさそう。

 

隠密や迷彩といったスキルも、相手に察知されない確率を上げてくれる重要なスキルだ。

最近は強くなってきたけど、周囲への警戒を怠らないようにしていた最初の頃を忘れないように、これらも大事にしていきたい。

 

最近手に入れた鑑定と探知に関しては、以下の通りだった。

 

『鑑定:ものの情報を読み取る』

『探知:感知系全てを複合したスキル。概要:魔力感知、術式感知、物質感知、気配感知、危険感知、動体感知、熱感知、反応感知、空間感知』

 

うん、鑑定は分かる。

だけど探知が明らかにおかしい。

まさか九つのスキルを複合したスキルだとは思ってなかった。

そりゃ頭が痛くなるほどの情報量になるわけだわ。

後でそれぞれのスキルについて調べておかないと……。

 

で、ここまで鑑定してきて、影魔法――というか、魔法についての情報を手に入れることができるようになったことに気が付いた。

スキルとしては手に入れても、魔法を使うには具体的にどうすればいいのか分からなかったから、ずっと使ってなかったせいで存在をすっかり忘れてた……。

まあ、使えるのなら使ってみたいので、影魔法のスキルも鑑定してる。

 

『影魔法:影を操る下位の闇魔法。使用可能な魔法はレベルによって異なる。LV1:濃影、LV2:大影、LV3:影表』

 

とりあえず影魔法について分かったのは、呉爾羅や地竜のスキルと同様に、スキルのレベルが上がると使用できる技が増えるということだった。

他にも魔法のスキルがあるなら、おそらくこの点は同じだと思う。

 

この説明だけじゃ、魔法の使い方を理解することはできない。

だけど、この説明文に含まれる「魔法」という単語を鑑定すれば、魔法を扱う方法が分かるんじゃないかと私は期待を抱いた。

そして、この単語に対して鑑定を使用したんだけど、まあ、うまくはいかなかった。

 

『魔法:魔力をスキルで変化させ、現象として確立させたもの』

 

さすがにこの説明だけじゃ、魔法の使い方なんて分からない。

でも、ヒントは見つけることができた。

そのうち、このヒントから切り込んでいってみたいと思ってる。

魔法に関して本格的に取り組むのは、それからでいいと今は考えることにした。

 

あと、LVごとに使用できる影魔法の効果も、一つずつ鑑定してみた。

 

『濃影:影が濃くなる』

『大影:影の大きさを変更する』

『影表:影を光の中でも発生させる』

 

……うん。

正直、何の役に立つのか分からない。

魔法に対する意欲がなんとなく弱くなっちゃうのは、もしかしたらこの微妙な効果が原因なのかも……。

気を取り直して、次のスキルに移ろう。

 

『過食:食事を限界を超えて摂取可能になる。また、その分のスタミナを余剰分としてストックすることができる。ただし、その分太る。レベルの上昇によってストックできる量が増える』

 

このスキルに関しては、今まで想像していた以上の効果で、かなり驚いた。

たくさん食べているときにレベルが上がる印象が強いスキルだったけど、こんな効果だったなんて……。

胃袋が多少膨らむようになるくらいだと思ってた。

その実、ト○コから来たような効果のスキルだった。

鑑定して、ようやく分かる凄さよ……。

 

次は、視覚に関係するスキルについて。

 

『暗視:光源がなくとも視覚が働くようになる』

『視覚領域拡張:可視光域を広げる』

 

どっちも名前から考えられる効果だったけど、改めて考えると、何気に凄いスキルだよね。

視覚領域拡張に至っては、今まで気づいていなかったけど、もしかして普通なら見えないものも見えるようになってる?

赤外線とか紫外線とは、人間の目だと本来なら見えないものが可視になってる?

今の私の体は人間じゃないけど、スキルの力でどんどん人間離れした存在になってる気がする……。

今更な感じはするけど。

 

で、ここでくるのが「~耐性」という名前で統一されている、耐性系のスキル。

耐性系のスキルについては多くの種類を持っているけど、大体が対応する属性への防御能力が増すといった効果だった。

いくつか取り上げると、こんな感じ。

 

『火耐性:火属性に対しての防御能力が増加する』

『猛毒耐性:毒属性に対しての防御能力が大幅に増加する』

『重耐性:重属性に対しての防御能力が増加する』

 

耐性系のスキルの説明はこんな感じがほとんどだったけど、違う感じの説明もあった。

 

『大地無効:土属性に対しての防御能力が極限まで増加する』

『睡眠耐性:睡眠をとらないことで生じる悪影響が減少する』

『恐怖耐性:恐怖を覚えにくくなる』

『外道耐性:魂を直接犯す効果に対しての防御能力が増加する』

『苦痛無効:苦痛による身体及び精神に対する能力制限を無効化する』

『痛覚軽減:痛覚を低減する。その際危険信号は継続される』

 

他のスキルはともかく、一番気になったのは大地無効のスキルだった。

私が持っているスキルの中でも、今回の鑑定で初めて存在を知ったスキルだった。

たぶん、地竜という種族が生まれながらに持っているスキルなんだと思う。

極限まで、というのがどれくらいなのかは正確に分からないけど、名前の通りダメージをゼロにしてくれるのかもしれない。

他の耐性系スキルも、最終的にこれと同程度の性能のスキルにまで進化するのかな……。

 

それと、いま所有している耐性系スキルに対応する属性についてだけど、一部気になる属性もある。

今度その属性について、しっかり調べておこうと思う。

 

で、五感強化系の効果を確認した後は、主にトレーニングをすることでレベルを上げていた、身体能力とかを向上させるためのスキルなんじゃないかと思っていたスキルとかを鑑定して、その効果をハッキリと知ることになった。

 

『身命:スキルレベル×10分HPにプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

『魔蔵:スキルレベル×10分MPにプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

『瞬身:スキルレベル×10分SP(黄)にプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

『耐久:スキルレベル×10分SP(赤)にプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

『剛力:スキルレベル×10分平均攻撃能力にプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

『堅牢:スキルレベル×10分平均防御能力にプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

『道士:スキルレベル×10分平均魔法能力にプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

『護符:スキルレベル×10分平均抵抗能力にプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

『縮地:スキルレベル×10分平均速度能力にプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル分の成長補正が掛かる』

 

どうやら、私の予想はそこまで外れていなかったらしい。

正確には、身体能力というかステータスにプラス補正がかかるスキルで、数値という分かりやすい形で恩恵を受けていたみたいだけど。

魔量・術師・護法のスキルに関してはどんな効果なのか予想がついてなかったけど、瞬身や剛力と同類のスキルだとは思ってなかった。

 

ちなみに、抵抗能力というのは火や毒といった属性に対する防御力らしい。

 

あと、これらのスキルはレベルアップ時にステータスに成長補正がかかるみたいだけど、そのレベルアップの時に上がっている基礎能力値もステータスとイコールなのかもしれない。

スキルでレベルアップ時に成長補正がかかるのなら、それとは別に本来上がるべきステータスの成長値というものがあってもおかしくはないはず。

某有名な携帯獣ゲームでも、レベルアップで強さの指標となる数値が増加しているし。

レベルアップしたときに、改めてステータスを確認してみることにしよう。

 

そして、私が生まれ変わってから一番お世話になっているといってもいいスキル、呉爾羅も鑑定した。

地竜のスキルと同様に複数の技が使えるようになり、身体能力――おそらくステータスを上昇させてくれる効果があるのは、鑑定前から分かっていた。

でも鑑定してみたら、その恩恵が予想以上で驚くことになった。

 

『呉爾羅:ステータス全種にスキルレベル×100分プラス補正が掛かり、レベルアップ時にスキルレベル×10分の成長補正が掛かる。また、レベルにより特殊な効果を発揮する。LV1:白熱光、LV2:自己再生、LV3:放射熱線、LV4:螺旋熱線、LV5:細胞活性、LV6:体内放射、LV7:引力熱線、LV8:超再生、LV9:放射線流、LV10: 轟天熱線』

 

うん、凄いよね。

やっぱりゴジラって凄いわ、ほんと。

 

身命とかのスキルと同じように、ステータスにプラス補正と成長補正がかかる効果があるわけだけど、まずステータス「全種」が対象ってのが凄い。

補正がかかるステータスの種類が、他の補正をかけるスキルの9倍もあるってことだもん。

この時点で十分性能が高い。

 

次に、補正の数値が凄い。

他のがスキルレベル×10分のプラス補正とスキルレベル分の成長補正なのに対して、それの10倍の数値の補正がかかってる。

つまり、さっきのステータスを上昇させる効果のスキル――いわばステータス増強系のスキルを全部ひっくるめて、さらに10倍の性能にしたようなものということになる……。

しかも呉爾羅のレベルは、最大だと思われるLV10に達しているわけだから、1000のプラス補正と100の成長補正が全てのステータスに入っているということに……。

 

というか、記憶で覚えている限りの呉爾羅のレベルアップのタイミングから高速演算を使って計算してみたけど、呉爾羅の成長補正の数値が私のステータスを占める割合が圧倒的な件について。

どのステータスの数値も半分以上は呉爾羅の成長補正によるものだった。

プラス補正も併せれば、呉爾羅による補正の影響が4分の3にもなるステータスの種類が多かった。

この補正が無かったら、計算通りのステータスだと高いもので1000を超える程度、低いものだと500以下だったから、呉爾羅のスキルの恩恵が凄まじいことがよく分かる。

この補正がもたらす高水準のステータスが無かったら、今まで生き延びることはできなかった可能性は高い。

本当に、呉爾羅のスキルがあって良かったと心の底から思う。

 

……このことを知って、私はあることを決めたんだけど、それはちょっと後で。

あと、まだ使ってなかった技についても知ったけど、それも後で使ってみることにする。

次のスキルの説明にいこう。

 

で、呉爾羅のスキルとともに熟練度がたまっていって、LV10になった時に私を絶望させてくれた禁忌のスキル。

もう効果は嫌というほど知ってるけど、これも一応鑑定した。

 

『禁忌:禁忌を犯した者が得るスキル。決して上げることなかれ』

 

うん、具体的な説明がない所にいやらしさを感じる。

もっと早く知っていれば……とも思ったけど、例え知っていたとしても呉爾羅は使っていっただろうから、そんなに早く知る意味はなかったかも。

まあ、禁忌について考えるのは、気分が悪くなるから、もうやめよう。

 

命名のスキルも鑑定して、残ったスキルについてだけど、これが名前からして異質だった。

 

『n%I=W:鑑定不能』

 

名前が、少なくとも私の知る範囲で、言語の体を為していない。

それに説明文が「鑑定不能」という、実質鑑定することができないことを表すような内容だった。

ハッキリ言って、なんでこんなスキルを持っているのか、全く分からない。

 

……と、鑑定だけで調べたなら、そんな気持ちになったんだと思う。

実は、このスキルに関しては、鑑定する前から存在を既に知っていた。

今回の鑑定で、このスキルを持っているということをはっきり確認できたわけだけど。

 

禁忌のスキルによって与えられた情報の中に、このスキルについての説明もあった。

あまり詳しくは調べてなかったけど、私がステータスや他のスキルを使うことができているのは、どうやらこのスキルのおかげらしい。

この「n%I=W」についてはいろいろと考えてしまうけど、それはまた別の機会にしよう。

 

こんな感じで、私は自分の持っているスキルを鑑定していった。

 

 

 

自分のスキルの鑑定を終えた私は、スキルポイントを使って、ある分類のスキルをレベルアップさせようと考えた。

いちおう、並列意思同士で十分に話し合ってから、実行に移した。

その結果がこちら。

 

『HP:5795/5795(緑)(980up)

 MP:5317/5317(青)(990up)

 SP:5953/5953(黄)(980up)

  :5914/5914(赤)(980up)

 平均攻撃能力:5722(970up)

 平均防御能力:6030(970up)

 平均魔法能力:5165(990up)

 平均抵抗能力:5229(990up)

 平均速度能力:5985(970up)   』

 

いやー、スキルポイントを大分消費したけど、ステータスが一気に上がったのを見た時は気持ちよかったわー。

スキルによるプラス補正の数値を上げられるところまで上げたおかげで、1000近くも増加した。

そう、私がレベルアップさせたのは、身命を始めとしたステータス増強系のスキルだ。

 

自惚れじゃなければ、今の私は生まれた時の何十倍も強くなっている。

それは、呉爾羅のスキルによってステータスが大幅に増強されてきたからのが一番の理由だと思う。

最大で1000にもなったプラス補正、そして何よりも、LVが1上がるごとに高い数値でステータスに加算される成長補正があるおかげで、ここまでのステータスを手に入れることができた。

 

呉爾羅のレベル上げは、効果を体感していたプラス補正を目当てに行なってた。

けど成長補正の面から見ても、早い段階でスキルのレベルを上げていったおかげで、レベルアップによるステータスの上昇値がどんどん大きくなり、基礎能力値の増大に大きく貢献してくれたことが今ならよく分かる。

呉爾羅のスキルがLV10に達すると共にプラス補正も最大の数値になったけど、計算が正しければ、今までの成長補正によるステータスの上昇値は、このプラス補正の3倍近くにもなっている。

やっぱり、呉爾羅のレベルを上げて成長補正を大きくしてからレベルアップしていったのが大きいと思う。

 

要するに、成長補正を上げてからレベルアップしていったことで、私は高いステータスという強みを手に入れることができたんだと考えた。

そのおかげで、あの大蛇相手にも戦えるほどになったと思うと、この強みを活かし、さらに伸ばしていきたいという気持ちになった。

だから、これからLVが上がっていく前に、同じように成長補正が掛かるスキルのレベルを上げて最大まで強化し、レベルアップによるステータスの成長値をより増大させることを決めた。

そうして行動した結果、すぐに反映されるプラス補正も上がって現在のステータスが上昇したから、いまの段階でも十分に得をすることができたよ。

 

呉爾羅の補正の大きさから予想はしていたけど、持っていたステータス増強系のスキルをLV10にしたら、揃って進化した。

そのうえで最大までスキルポイントを使っていったから、7万近くもポイントを消費することになっちゃった。

だけど、そのおかげで成長補正の数値が大きく上がって、LVが一つ上がるたびに成長補正によりステータス全種が200も上昇するようになったから、後悔は……今のところしてない。

 

今回スキルポイントを大量に消費したことで、のちのち耐性系とかのスキルのレベルを上げる必要がある時に困ることになるかもしれないけど、たぶん大丈夫だと思う。

今まで耐性系のレベルを上げる時とかに消費したスキルポイントからすると、2万ポイント以上残っていれば大丈夫……なはず。

絶対に大丈夫とは言い切れないから、どうしたって不安は残っちゃうけどね。

 

でも、ステータスの抵抗能力が上昇すれば、各属性に対する防御力が全体的に上がることになるようだから、少なくとも耐性系のスキルに関しては、そういう必要が出てくる可能性は低くなっているかな。

他のスキルについても、至急でレベルを上げなきゃいけないものはないわけだから、早い段階でレベルを上げた方がいいと分かっているスキルにポイントを使ったのは、そこまで間違いじゃないと思う。

 

とにかく、これで私がステータスの面で今やっておくべきだと考えたことは済んだ。

鑑定で新しい情報を大量に手に入れることができるようになったわけだし、これからのするべきことについて改めて思考をめぐらせて、生きていくための行動をしていこう。

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV10 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:5795/5795( 978 / 1000 / 1000(980up) / 2720 / 14 / 83 )(緑)(980up)
 MP:5317/5317( 501 / 1000 / 1000(990up) / 2720 / 4 / 92 )(青)(990up)
 SP:5953/5953( 1135 / 1000 / 1000(980up) / 2720 / 14 / 84 )(黄)(980up)
  :5914/5914( 1096 / 1000 / 1000(980up) / 2720 / 14 / 84 )(赤)(980up)
 平均攻撃能力:5722( 884 / 1000 / 1000(970up) / 2720 / 22 / 96 )(970up)
 平均防御能力:6030( 1204 / 1000 / 1000(970up) / 2720 / 20 / 86 )(970up)
 平均魔法能力:5165( 354 / 1000 / 1000(990up) / 2720 / 4 / 87 )(990up)
 平均抵抗能力:5229( 418 / 1000 / 1000(990up) / 2720 / 4 / 87 )(990up)
 平均速度能力:5985( 1145 / 1000 / 1000(970up) / 2720 / 22 / 98 )(970up)

※()内の数値は内訳で、左から種族値、呉爾羅のプラス補正、その他のプラス補正、
 呉爾羅の成長補正、その他の成長補正、他の要因

・スキル
 
 地竜LV8,龍鱗LV6,甲殻LV6,鉱体LV2,
 HP高速回復LV7,
 MP回復速度LV7,MP消費緩和LV5,魔闘法LV1,
 SP回復速度LV8,SP消費緩和LV8,気闘法LV1,
 破壊強化LV6,打撃強化LV3,斬撃強化LV4,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火炎強化LV1,土強化LV6,
 火攻撃LV8,土攻撃LV7,
 立体機動LV5,
 集中LV10,思考加速LV4,予見LV4,並列意思LV3,記憶LV9,高速演算LV5,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV3,隠密LV10,迷彩LV6,無音LV10,無臭LV5,
 鑑定LV7(4up),探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV8,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV3,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,
 火耐性LV8,大地無効,重耐性LV1,
 猛毒耐性LV5,強麻痺耐性LV4,睡眠耐性LV5,酸耐性LV7,腐蝕耐性LV4,
 恐怖耐性LV4,外道耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV3,
 視覚強化LV7,聴覚強化LV6,嗅覚強化LV6,味覚強化LV2,触覚強化LV5,
 天命LV10(new),天魔LV10(new),天動LV10(new),富天LV10(new),剛毅LV10(new),城塞LV10(new),天道LV10(new),天守LV10(new),韋駄天LV10(new),
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV2,
 n%I=W

・スキルポイント:27700

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁鑑定によるスキルなどの説明文について
主にWeb版を参照し、鑑定による説明がないスキルは独自に作成
いちおう関連がありそうなスキルの説明文を参考にしている

➂呉爾羅の成長補正について
通常のステータス強化系スキルを進化+カンストさせるまでは、今までの呉爾羅の
成長補正の数値は、ステータスの半分以上を占めていた(本当)
つまり、プラス補正はそのままだとしても、成長補正がなくなるとステータスの
半分が消え去る計算だった。成長補正は大事。マザーだってスキルによる成長補正が
なくなったら同じことになるに違いない

➃主人公、スキルによる成長補正が最大に
これで成長補正により、レベルアップ1回につきステータス全種が200以上は
上昇するようになった。二十数回分のレベルアップで、アラバのステータスの合計と
同じくらい基礎能力値が成長する。マザークラスになるのだって夢じゃない!
なお、MP・魔法・抵抗に関しては、成長値を2倍にするスキル「傲慢」と、天魔LV10・
天道LV10・天守LV10を複合したスキル「星魔」を持つ蜘蛛子の成長補正も同じ模様


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スキルのレベリング中……

前回、誤字報告を読者の方からいただいたので、適用させていただきました。
こういう場合、誤字報告していただいた方のお名前を出していいものかどうか分からなかったので、この場でお礼を伝えさせていただきます。ありがとうございました。

誤字報告だけでなく、作中で気になったことなどがあれば、お気軽にご感想で書いてくださればと思っています。過激な言葉などが使われていなければ、こちらとしても嬉しいです。


マテリアがシェルターを作り終わったので、その中に入って食事をすることにした。

大蛇の体を端の方に運んでから、それを囲むようにシェルターを作ってくれたので、わざわざ大蛇を運ぶ必要はなかった。

 

蛇と同じように、鱗の邪魔がない体内から食べていってる。

その蛇と同じ感じかなと思っていたけど、食べた感じは、どちらかというと蛙の方が近い。

なぜかというと、蛇にはなくて、蛙にはある、酸による痛みがあったから。

蛙は、毒と酸の二つの属性を複合した液体で攻撃をしてくる魔物だった。

そのためか、毒による苦みと、酸が原因と思われる痛みが、食べた時に襲ってくる。

この毒と酸による攻撃をしてきた大蛇を食べている時にも、それと同じ感覚がするのだ。

まあ、魔物の強さから考えて、エルローバラギッシュの毒と酸の方がずっと強力だろうけど。

あと、前に食べた時の蜂と同じように、体が少し痺れるような感覚もする。

麻痺属性も含めた攻撃をしてきたから、それもそうだけど。

 

味としては美味しくはないけど、スキルの熟練度を稼ぐ点では優れていた。

猛毒耐性や酸耐性、それに強麻痺耐性のレベルが、食べることで上がっていった。

特に酸耐性は、他の二つに比べて上がるのが早い気がする。

味はともかくとして、戦わなくてもスキルのレベルアップができるのは嬉しかった。

 

今後のことを簡単に考えたけど、とりあえず探知を使いこなせるようにするため、情報過多による頭痛を緩和する外道耐性の強化を目標に行動することにした。

そのため、外道耐性が十分に高まるまでは、このシェルターの中で過ごすことを決めた。

その間の食料は、この大蛇があれば無駄に食べたりしない限り賄うことができると思う。

 

どうやら赤色のSPは、ものを食べることで回復することができるらしい。

過食の説明文から予想して、ステータスを見て確認できた。

だから、赤色のSPがどれだけ減っているかは、私の今の空腹状態を表しているんだと思う。

前に赤色のSPを大量に消費したと予想される事態になったときも、そのあとすごくお腹が減っていたし。

蜂に猛毒を注入されて死にかけた時、地竜の効果の一つである生命変遷でHPを回復して、赤色のSPが消費されたみたいだ。

つまり、赤色のSPの減りが大きくなり過ぎないように気を付けて生活する必要がある、というわけ。

 

体を動かすトレーニングとかは控える必要があるだろうけど、それ以外にやってみたいことは結構ある。

このシェルターの中に入っているあいだは、それらに対して取り組んでいくことにしよう。

できれば、食べるものが無くなる前に、外道耐性が目標まで強くなってくれると助かるけどね。

 

 

 

そんな感じで、エルローバラギッシュとの戦闘の後は、シェルターの中で穏やかな日々を送っていた。

 

頭脳担当(ブレイン)である私は、外道耐性のレベルアップに専念した。

探知を発動させ、取り込んでくる大量の情報量による痛みに耐え、限界だと思ったら探知を切り、痛みが完全に引いたら、また探知を起動する。

それの繰り返しで外道耐性の熟練度をためていき、レベルを上げていった。

そのおかげで、スキルが進化して外道大耐性にまでなった。

 

『外道大耐性:魂を直接犯す効果に対しての防御能力が大幅に増加する』

 

進化したおかげで、探知の痛みも少し和らいだ気がする。

というか、大蛇と戦闘する前と比べて、探知の痛みがかなり抑えられてると思う。

レベルアップやスキルによるプラス補正の増大とかで、抵抗のステータスが大きく上昇したからかな。

そうだとしたら、これもステータス増強系のスキルを大幅に強化した恩恵だね。

 

探知の痛みが引くまで待っている間は、主に考え事をして過ごした。

こんなふうにゆっくりする機会はあまりないかもしれないし、今のうちに考えておかないとね。

そうやって過ごすうちに、思考加速のスキルの隠れた効果について知ることになった。

周りの状況を気にせずに自分の思考に没頭すると、スキルによって加速される思考速度は、いつものように使っている時の何倍にもなるらしい。

これは、思わぬ発見だった。

 

また、考えた内容や、それによって気づいたことを記憶しているうちに、ついに記憶のスキルがLV10になった。

記憶LV10は進化して、記録という新しいスキルになった。

 

『記録:記憶力が高まり、経験したことや覚えたことを忘れないようになる。また、それらを鮮明に思い出すことができる』

 

以前より性能が高くなって、ありがたい。

これでもう、スキルポイントの存在を忘れるような事態にはならない!

……まあ、それは冗談だけど……。

 

他の並列意思についても、各々スキルのレベル上げをしてくれてる。

いつも体の動きを担当してくれるマテリアも、それは同じだ。

赤色のSPを過度に消費しないようにトレーニングとかの激しい運動はしないで生活してるんだけど、魔闘法のスキルを発動して熟練度をためていってる。

 

呉爾羅の特殊効果の中には細胞活性というものがあり、これはエルローバラギッシュとの戦闘で身体能力を向上させた技だと思っていたものの正体であり、正確には、MPとSPを消費してステータスを底上げしてくれたりする効果だと鑑定で分かった。

それと同じようにステータスを一時的に向上させてくれるのが魔闘法と気闘法で、魔闘法はMPだけを、気闘法の方は赤色のSPだけを消費する。

今は赤色のSPを使いたくないから気闘法は使用しないけど、どっちのスキルも、もしもの時のために頼りになる存在になることが期待できる。

まだレベルが低いけど、こうして発動だけしていっても熟練度は溜まるようだから、マテリアがレベルを上げようとしてくれるのは嬉しかった。

 

魔闘法以外のスキルだと、迷彩や無臭のレベルアップも試みているらしい。

周囲の景色に体の色を溶け込ませることや、臭いを発生させないことを意識して過ごしているようだ。

隠密性が上がってほしいと私も思うので、マテリアにはぜひ頑張ってほしい。

 

センスの方は、五感強化系のスキルの熟練度稼ぎを頑張ってくれている。

今回は、目よりも耳で周囲の魔物の存在などを捉えられるようにしているらしい。

あと、視覚領域拡張のスキルについても、このスキルをもっと伸ばしていけないか、今以上に活用できるようにならないか、いろいろと試してくれている。

 

残念ながら、視覚領域拡張はそこまで成果は出てないけど、センスが集中してくれるおかげで、やっぱり五感強化系の伸びは著しかった。

これなら、視覚強化や聴覚強化がLV10になるのも、そう遠くはないかもしれない。

 

それと、大蛇との戦闘中に新しく生まれた並列意思だけど、属性を強化するスキルや、属性を攻撃に付与するスキルを担当することになった。

名前についてだけど、ちょっと物騒な雰囲気になっちゃたけど、本人……本人?の希望で「アサルト」に決まった。

で、アサルトについてだけど、今は外道耐性のレベルを上げることが優先だとして、いっしょに探知の発動による熟練度上げをしてくれている。

この前も思ったけど、私ひとりじゃ厳しいかもしれないから、正直ありがたい。

 

並列意思ごとにやってきたことはこんな感じだけど、大蛇を食べているだけでも、猛毒耐性や酸耐性といったスキルのレベルが上がっている。

特に酸耐性は、強酸耐性という上位のスキルに進化して、さらに酸による攻撃への防御能力がアップした。

それと、HPが毒と酸によって減るのとスキルの力で回復するのを繰り返しているからか、HP高速回復のスキルもレベルアップした。

こうして、リスクが少ない形でスキルが強化されるのは助かる。

 

他のスキルだと、SP消費緩和とかがレベルアップしてる。

赤色のSPを減らさないことを意識しながら行動しているから、このスキルの熟練度がたまりやすくなっているんだと思う。

SP消費緩和以外だと、魔闘法で常にMPがいくらか消費されている状態になっているからか、MP回復速度とMP消費緩和のレベルも上がった。

 

赤色のSPの減少に注意しながら、まだ使ったことがない地竜と呉爾羅の特殊効果を試してみたりもした。

技を使ってみる際は、周囲をよく警戒してからシェルターの外に出ていた。

 

地竜の技の中で鑑定をするまで知らなかったのは、LV3の生命変遷、LV4の地恵、LV7の地竜ブレス、LV8の大地纏の四つ。

そのうち生命変遷は知らず知らずのうちに使っていて、地恵はMPの回復速度が増すという自動的に発動する効果だったので、地竜ブレスと大地纏を使用してみた。

地竜ブレスは、土で形成された土ブレスや大地ブレスとは違い、熱線のような感じでビームを吐き出す技だった。

熱線とは威力がどれくらい違うのかは分からないけど、見た感じ強力そうなのでメインウエポンにしてきたいと思ってる。

大地纏は石纏の強化版のようで、より頑丈そうな防御になっていた。

どちらも、実戦でさらに活躍してくれそうな技で、心強くなった気がした。

 

というか地竜のスキルは、能動的に使う技だったら、その技を意識すれば使い方を理解できるようになるんだった。

LV6まではそんなふうにして使い方を学んでいたけど、LV7からは忘れちゃってたな……。

そういえば、そのころは禁忌による世界の真実とかの情報をインストールされてショックを受けた頃だった。

そのせいで、すっかり忘れちゃってたんだな……。

まあ、今は鑑定でどんな技があるのか分かるし、もう心配する必要はない、ということで。

 

呉爾羅のスキルの方で試す必要があったのは、LV7の引力熱線LとV10の轟天熱線の二つだけだった。

まずは引力熱線の方を使ってみたけど……これ、ゴジラとモスラとキングギドラの「大怪獣総攻撃」で出てきた引力放射熱線だわー…。

キングギドラの引力光線のエネルギーを背びれにチャージしてから発射した熱線だね……。

引力熱線を鑑定してみたら、関連性を感じさせる説明だったし。

 

『引力熱線:重属性の追加ダメージが加わった放射熱線。重耐性を持たない相手には、防御を一定数無視してダメージを与える』

 

確か、キングギドラの引力光線は、重力制御能力を用いることによってゴジラの頑丈な皮膚でもダメージを与えるものだったはず。

その光線のエネルギーを吸収して放つ熱線なら、重属性、防御を無視といった効果が付くのは決して変なことじゃないと思う。

重耐性を持たないことが前提だけど、相手の防御をある程度無視してダメージを与えるのなら、かなり強いかもしれない。

MPの消費もその分多いから、そこには気を付けよう。

 

轟天熱線の方は、通常の熱線とは違い赤色の熱線で、普通の熱線とは比べ物にならないほど強力な感じがした。

MPの消費もかなりのもので、連発するような物じゃないということはハッキリわかった。

多分これは、「FINAL WARS」で新・轟天号からエネルギーを受け取った後に放たれた、バーニングGスパーク熱線だと思う。

一応、スキルの特殊効果としての名前から想像できなくはない技だった……。

 

『轟天熱線:MPをかなり消費する、通常よりもかなり威力が高い放射熱線。炎、雷、光、貫通、破壊、衝撃など様々な属性の追加ダメ―ジも加わる』

 

こっちも鑑定してみたけど、やっぱり非常に強力な熱線らしいことが分かる。

この轟天熱線は、やっぱりここぞという場面で使うような技みたいだ。

LV10になって覚える技だしね。

基本的には奥の手として考えておくことにしよう。

 

そういえば、このあいだ耐性系のスキルを鑑定したときに気になった腐蝕属性についてだけど、これが意外なものだった。

たしか、称号の「悪食」を手に入れた時に、腐蝕耐性を手に入れてた。

てっきり私は、腐りかけたものを食べても耐性がつくといった感じのスキルかと思ってたんだけど、全然違った。

腐蝕耐性は、名前の通り腐蝕属性への防御力を高めるスキルだったわけだけど、その腐蝕属性を鑑定した結果が、これ。

 

『腐蝕属性:死の崩壊を司る属性』

 

うん、実に恐ろしい属性だった。

こんなに恐ろしい属性があるなんて、知りませんでした。

 

今はまだ遭遇したことがないけど、この腐蝕属性の攻撃をしてくる敵に襲われたら、いったいどうなることやら……。

想像するだけで震えてくる……。

 

そういうことで、スキルポイントで腐蝕耐性を進化させました。

結構使っちゃったけど、まあ命には代えられないからね……。

しかし、大量に消費してから時間がたたないうちにまた使っちゃうとは、もしかして私って、実はかなり無駄遣いするタイプだった……?

これからは、もっと計画的に使わないといけないかもしれない。

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV10 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:5820/5820( 978 / 1000 / 1000 / 2720 / 14 / 108(25up) )(緑)
 MP:5337/5337( 501 / 1000 / 1000 / 2720 / 4 / 112(20up) )(青)
 SP:5953/5953( 1135 / 1000 / 1000 / 2720 / 14 / 84 )(黄)
  :5914/5914( 1096 / 1000 / 1000 / 2720 / 14 / 84 )(赤)
 平均攻撃能力:5722( 884 / 1000 / 1000 / 2720 / 22 / 96 )
 平均防御能力:6030( 1204 / 1000 / 1000 / 2720 / 20 / 86 )
 平均魔法能力:5165( 354 / 1000 / 1000 / 2720 / 4 / 87 )
 平均抵抗能力:5254( 418 / 1000 / 1000 / 2720 / 4 / 112(25up) )
 平均速度能力:5985( 1145 / 1000 / 1000 / 2720 / 22 / 98 )

※()内の数値は内訳で、左から種族値、呉爾羅のプラス補正、その他のプラス補正、
 呉爾羅の成長補正、その他の成長補正、他の要因

・スキル
 
 地竜LV8,龍鱗LV6,甲殻LV6,鉱体LV2,
 HP高速回復LV8(1up),
 MP回復速度LV8(1up),MP消費緩和LV6(1up),魔闘法LV3(2up),
 SP回復速度LV8,SP消費緩和LV9(1up),気闘法LV1,
 破壊強化LV6,打撃強化LV3,斬撃強化LV4,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火炎強化LV1,土強化LV6,
 火攻撃LV8,土攻撃LV7,
 立体機動LV5,
 集中LV10,思考加速LV4,予見LV4,並列意思LV3,記録LV1(new),高速演算LV5,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV3,隠密LV10,迷彩LV6,無音LV10,無臭LV5,
 鑑定LV7,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV8,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV3,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,
 火耐性LV8,大地無効,重耐性LV1,
 猛毒耐性LV7(2up),強麻痺耐性LV5(1up),睡眠耐性LV5,強酸耐性LV2(new),腐蝕大耐性LV1(new),
 恐怖耐性LV4,外道大耐性LV2(new),苦痛無効,痛覚軽減LV3,
 視覚強化LV8(1up),聴覚強化LV8(2up),嗅覚強化LV7(1up),味覚強化LV2,触覚強化LV5,
 天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,
 剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV2,
 n%I=W

・スキルポイント:21700

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁呉爾羅の特殊効果で使用できる熱線の元ネタ
・白熱光 :『ゴジラ』(初代)などの熱線
・放射熱線:平成シリーズなどの通常の熱線
・螺旋熱線:『ゴジラVSキングギドラ』の「スパイラル熱線」
・体内放射:『ゴジラVSビオランテ』などの体内放射
・引力熱線:『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』の
      「引力放射熱線」
・放射線流:『シン・ゴジラ』の、背ビレからの「放射線流」
・轟天熱線:『ゴジラ FINAL WARS』の「バーニングGスパーク熱線」


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「この世界で生きること=レベリング」でいいと思う

17話から行なっていたアンケートを締め切りました。ご回答ありがとうございました。
アンケート結果は、以下の通りになります。

○後書きの「主人公のステータス」にて、追加してほしい要素はありますか?(参考までに)
(5) ①前回からのステータスの上昇値
(2) ➁前回からのスキルのレベルの上昇値
(18) ➂呉爾羅などのスキルによる補正値
(7) ①と➁
(2) ①と➂
(1) ➁と➂
(18) ①と➁と➂
(32) 特になし

回答人数32名の「特になし」が一番多かったため、次回からは1話~17話の後書きでのステータスと同じ形式の表示に戻したいと思います。
ただ、このアンケートは、手本として上昇値や補正値をステータスに載せる前に実施し始めたため、手本を確認できる状態で読者の皆様のご意見を伺うために、もう一度実施させていただきたいと思います。
ステータスの上昇値やスキルの補正値がどのように表示されているかは、18話・19話の後書きをご参照ください。
アンケートに再度ご回答いただければと思います。

また、今回の後書きのステータスでは、補正値の有り無しを見比べることを目的として、補正値はドラッグすることで表示できるようにしています。
ご参考になればと思いますので、よろしければご覧ください。

今回もレベリング回ですが、次回はボス戦になる予定です。
原作でも有名な、あの魔物がパワーアップして出てきますよ……。
どうぞお楽しみに。



エルローバラギッシュを少しずつ食べながら、探知を使いこなすために耐性の熟練度をためていく日々。

そんな日々も、あの巨大だった大蛇も残らず私のお腹の中に納まることで、終わりを迎えた。

 

結論から言うと、私の目標に届くくらいまで、外道大耐性に進化したスキルをパワーアップさせることができた。

全く痛みがないってわけじゃないけど、探知を続けて使用することができるくらいにはなった。

たまに休憩を挟む必要はあるだろうけど、これで索敵は十分に行うことができるようになったと思う。

 

索敵に使うことができるようになった探知だけど、頭痛が減ってきたことで、あらゆる情報を取り込む感覚、というものを実感できるようにもなっていた。

この感覚を一言で表すなら……壮観。

私の周りに存在する様々な情報を感知していると、高い山の上から全てを見下ろすのと同じように、世界の広大さを感じたような気持ちになる。

いくつかの感知系スキルを同時に使ったことはあるけど、こんな気持ちになったのは初めてだった。

もし過剰な情報量に伴う痛みが完全に無くなったら、ずっと探知を発動していたいと思うほどかもしれない。

そんな感覚を味わううちに、神性領域拡張という新しいスキルを手に入れていた。

 

『神性領域拡張:神性領域を拡張する』

『神性領域:生命が持つ魂の深層領域。全ての生命の根源であり、自己の最終依存領域でもある』

 

鑑定で調べてみたけど、ここにきて哲学的な説明文が出てきて、なんだか置いてけぼりを喰らったような気持ちになった。

禁忌からの情報で、魂という概念がシステムに関わっていることは理解できているんだけど、それだけじゃ具体的な意味が分からない。

精神統一の修行とかに関係ありそうなスキルだな、とは思うけど……。

このスキルに関しては上げるメリットとか様々なことが不明だから、不干渉かな。

 

そんなこともあったけど、以前と比べて探知を索敵に使えるようになったので、ここからの出口を見つけるための移動を再開した。

ちなみにここは、どうやらエルロー大迷宮の下層という名前らしい。

鑑定して出てくる魔物の種族名をさらに鑑定したら、その魔物が生息している場所として説明文の中に載っていた。

魔物の名前から推定していたけど、やっぱりここはエルローと名の付く地名だったみたい。

ここが下層なら、私がもともといた階層は上層にあたるのかな。

中層や最下層があることは、鑑定で分かっているけど。

下層はともかく上層は入り組んだ構造だったから、大迷宮の名にふさわしい場所だとは思う。

 

魔物といえば、LV7になった鑑定のスキルで、他の魔物のステータスを一部見ることができるようになったんだった。

今はHPにMP、それにSPの数値だけしか確認できないけど、鑑定のレベルが上がったら他のステータスも見れるようになるんじゃないかと思う。

で、そんなふうに比較対象となる他のステータスによって分かったことがある。

私の現在のステータスって、かなり高い。

 

私の元いた所にも生息している魔物と、今のところ下層でしか見かけていない魔物のステータスの差は、大体の場合において大きく開いている。

上の方で戦ったことがある魔物のステータスは、せいぜい100を超えるものが何個かあればいい方で、確認できる限りでは全てが2桁という種族もいる。

一方、下層で初めて遭遇した種族については、どのステータスも100を超えているものが多く、なかには1000に届きそうな能力もある個体もいるほどだった。

つまり、私が元いた所と現在いる場所との魔物の平均ステータスの差は、何倍もあると言っていいと考えられる。

ちなみに、上で遭遇して、ここに来る原因となった大蜘蛛については、例外だとする。

あれはどう考えてもレベルが違い過ぎる。

 

危険感知で測った脅威度や実際に戦ってみた感触としても、ステータスの高さと戦闘での強さは比例しているとみて問題ない感じだった。

そして、ステータスの差が大きければ大きいほど、戦闘能力の差も大きかった。

場合にもよるけど、少なくとも、ステータスが十倍近くもある相手に対して勝利することは非常に難しいと思う。

スキルをうまく使えば、どうにかなるかもしれないけど。

 

……で、探索を再開した際の私のステータスといえば、低いものでも5000は超えていて、防御能力に至っては6000に達しているという感じ。

他の魔物の攻撃能力や防御能力は確認できないけど、HPやSPだけでいっても大きな差をつけていることは分かる。

この下層の平均値をはるかに上回るステータス――強さを持っていると言っても、全然過言じゃないと私は思った。

呉爾羅のスキルによる成長補正がいかにすごいかが、よく分かりました。

このスキルがあって、本当に良かった……。

 

しかも、他の魔物を狩るようになったから、経験値がたまって、レベルが上がることでステータスはさらに成長していってる。

呉爾羅と他のステータス増強系スキルのおかげで、1回分のレベルアップで全てのステータスが最低でも200は増加していくから、凄い勢いで強くなっているのが分かる。

スキルの成長補正を除いたステータスの成長値も計算してみたけど、一番増えている防御能力でも、補正なしの成長値は成長補正の10分の1ぐらいしかなかったよ……。

このことを知ったら、やっぱり成長補正を重要視したのは間違いじゃなかった気がしてくるんだよね……。

 

レベルアップによる能力の上昇率が大幅に増加したわけだけど、そのLVが上がるスピードも以前より早くなった気がする。

フェネグラッドに進化してから大蛇と戦うまでと比較して、ステータスが高めな魔物に遭遇するようになったことが原因だと思う。

私のLVも上がったけど、倒す魔物の平均ステータスが大きく引き上げられたことで経験地が多く入るようになり、次のLVに上がるまでの時間が短くなっていると考えられる。

なかには、私が今まで戦ってきた魔物の進化形と思われる種族もそれなりにいた。

例を挙げると、こんな感じ。

 

『エルロービッグフロッグ』

『アイアンタートル』

『サンダーライトエルローペカトット』

 

単純に能力が上昇しているタイプが多いけど、なかには進化前にはなかった属性で攻撃してくる魔物もいた。

私も、いまとは違う進化先を選んでいたら、炎と土以外の属性攻撃を使っていたのかな。

相手にとっては残念なことに、ステータスの差がありすぎて私には通用しなかったけど。

 

属性攻撃と言えば、新しい属性攻撃系のスキルを私は獲得した。

そのきっかけは、私が倒した大蛇からだった。

 

肉を食べきって骨だけになった大蛇を見ていたら、ふと魔法で有名な某小説の一場面を思い出した。

主人公が蛇の怪物の牙を使って、その牙から染み出す猛毒で敵を倒す場面だ。

あれと同じように上手くいくとは限らないけど、自身の体とスキル以外にも攻撃手段が得られるかもしれないという期待から、エルローバラギッシュの牙を武器として使ってみたくなってしまった。

 

この体の手で物を持つことができるかどうかは半々だと思っていたけど、予想に反して大蛇の牙を手に持つことはできた。

腕が短めだから相当近寄らないと牙を魔物に刺すことはできないけど、相手を圧倒する速度能力と思考加速とかのスキルでカバーしてエルローバラギッシュの牙で攻撃していた。

結果、この牙で攻撃すると、相手には追加で毒属性と麻痺属性のダメージが入っているらしいことが分かった。

あの大蛇は猛毒と麻痺を使って攻撃してきたから、それが反映されているのかな。

 

牙を使えば毒と麻痺を加えた攻撃もできると分かった訳だけど、正直なところ、この牙を活かした戦いは無理そうかな。

理由はいろいろあるけど、いちおう手に持つことはできるとはいえ、牙が手に対して大きめだから、手の中に保持していようと意識しちゃうことが一番の理由。

かなり気を遣うから、戦闘に集中したいときとかは邪魔になる可能性が高い。

メリットよりもデメリットの方が大きいように感じたから、エルローバラギッシュの牙を武器として使うことはやめることにした。

 

でも、牙を戦闘に使ってみたことは無駄じゃなかった。

大蛇の牙で攻撃して、相手の魔物に毒属性と麻痺属性のダメージを与えてきたことが熟練度の蓄積になったのか、毒攻撃と麻痺攻撃のスキルを新しく手に入れていた。

今はレベルが低いけど、エルローバラギッシュのように自分の攻撃に毒と麻痺を上乗せさせることができたらとは思うので、他のスキルと合わせてレベル上げをしてる。

 

スキルのレベル上げについては、それぞれの並列意思が担当するべきスキルを定めていることもあって順調だと思う。

特に、攻撃において重要な役割を果たしてくれる属性強化系や属性攻撃系のスキルに関しては、新しい並列意思のアサルトが専念してくれているおかげで、レベルアップが早くなってきた。

このあいだの戦いでも、土攻撃と火攻撃のコンボで強力な接近攻撃ができたと思うので、熱線のような遠距離攻撃だけでなく近距離攻撃も強めていくためにも、彼女には頑張ってほしい。

 

最近は、熱線よりもスキルで火属性などを付与した接近戦や地竜のスキルを使った攻撃を主体に戦うようになってる。

レベルが最大になった呉爾羅のスキルに頼った攻撃よりも、まだレベルが上がると分かっているスキルを用いた攻撃の方が、いま持っているスキルを鍛えるという点では合理的だと判断できるから。

油断はしているつもりはないけど、戦い方を大幅に変えたことで思わぬ事態に陥ることになるかもしれないから、そこだけは気を付けてる。

地竜ブレスなら、熱線と同じような感じで攻撃することができるから、大丈夫だとは思う。

まあ、私としては熱線の方が愛着があるわけだけど。

 

そんな感じで、スキルの力で属性を付与した攻撃をするようになってる。

今だと、属性攻撃系のスキルの熟練度をいっぺんにためるために、火攻撃・土攻撃・毒攻撃・麻痺攻撃の四つのスキルを同時に発動して攻撃していることが多い。

加えて、魔闘法と気闘法も使用して、ステータスをさらに上昇させて戦っている。

この二つのスキルも、強敵を相手にしたときに重宝するスキルになるはずだから、できるだけLVを上げておきたい。

 

でも、こんなふうにスキルを使っていくうえで、とある問題があることに気が付いた。

それは、特殊能力により消費されるというMPについて。

どうやら属性攻撃系のスキルは、呉爾羅の熱線とかと同様にMPを消費するタイプのスキルだったみたい。

一つだけならMPの消費量はそこまでではないけど、四つ同時に発動ともなると、それなりに消費が激しくなる。

さらに魔闘法もMPを使うスキルだから、これらすべてをまとめて使用していると、MPがどんどんなくなっていく。

贅沢な悩みだと思うけど、自分がレベルを上げたいスキルを全部鍛えるには、MPの量が足りないのが現状だった。

 

地竜のスキルの特殊効果の一つである地恵がMPの回復を手助けしてくれているみたいだけど、それでもMPが不足しているように感じてしまう。

MPの回復を促してくれるMP回復速度や、スキルによるMPの消費を抑えてくれるMP消費緩和のスキルのレベルがもっと上がれば問題は解決するんだろうけど、MPが常に回復する必要があるような状態になったりMPを消費するスキルを使用したりするぐらいしか熟練度をためる方法が思いつかない。

つまり、現状他にできそうなことはないってことになる。

 

――だけど、私はある仮説を立てたうえで、この二つのスキルをどうにか鍛えられないか試行錯誤していたりする。

自分のスキルを鑑定したときのことだけど、一部のスキルとかの説明文の中に「魔力」という単語が出てきたことがある。

そして私は、()闘法というスキルがMPを消費することなどから「MP=魔力」という方程式を組み立ててみて、MP回復速度やMP消費緩和といったスキルの熟練度をためるには、魔力という存在から切り込んでいった方がいいと仮定した。

探知に複合されているスキルのなかに「魔力感知」というものがあるおかげで、魔力と思われるものは既に感知できていて、感知することに神経を研ぎ澄ませれば、この魔力の流れも認識することができる。

MPを消費するスキルを発動する際、MPが回復していく際に、この流れがどんなふうになるのかも私は理解している。

あとは、その魔力の流れを、どうにか自分の意思でコントロールできるように感覚をつかむ――もしくは、そのためのスキルを取得して、MPの消費の減少・回復の増大を促せるようにすればいいと考えているというわけ。

 

実は、新しく生まれた並列意思に、その大仕事を任せているところだったりする。

名前は、「魔力を操れるようになりますように」という願いを込めて、マジシャン。

並列意思のレベルが上がったのがほんの少し前で、魔力のコントロール方法の発現を任せてから時間は殆んど経過してないから結果が出るわけないんだけど、並列意思一人分に集中してもらっているわけだから、近いうちに成果が出てくることを期待してもいいと思う。

 

SP関連のスキルについては、SP消費緩和のスキルが進化して、より消費量を抑えてくれるSP消費大緩和というスキルになってくれたりと、順調に成長している感じだ。

あと他には、鉱体のレベルが上がったりしたし、地竜のスキルも使用する頻度が多くなってきたから、そろそろレベルが上がるかもしれない。

 

鑑定のスキルで基礎能力値を数値として確認できるようになって、自分が強くなっていくのがハッキリと分かるようになった。

スキルについても、数と質の両方が充実していって、どんどん力をつけていっていることが実感できる。

トレーニングとかでもスキルとステータスを成長させることができるけど、やっぱり現時点だとレベルアップによる恩恵が大きい。

他の魔物を倒して、経験値を得て、レベルアップをして、ステータスやスキルが強化する。

システムという魔術によって成立している、そんな流れで更なる力を手に入れて強くなることができる仕組みは、まさにテレビゲームのようだった。

 

 

 

……本当に、この世界はゲームのようだとしか言いようがない。

 

 

 

禁忌のスキルの効果で、私は「この世界の真実」としてシステム等に関する知識を頭に叩き込まれた。

その知識によると、人類の存続と星の再生という女神の願いと、その女神の延命という目的を両立させるために、ギュリエディストディエスという神が稼働させたのがシステム。

このシステムの管理下で、スキルや基礎能力値、経験値といった形で魂のエネルギーが戦いによって高められ、増幅されたエネルギーは死後に回収されて星を再生させるための糧となる。

システムは、星を滅ぼしかけた罪を人間たちに償わせるため、この星に魂を縛り付けて何度も転生させ、星が再生し女神が救われるまで、エネルギーを供給させ続けている、らしい……。

 

まあ確かに、ステータスやスキルといった不思議な力が使えている訳は、この知識で納得できる。

魂のエネルギーとか、地球で科学文明に囲まれた生活をしてきた私からしてみれば眉唾物だけど、「超常的な力が使えるのは超常的な理由があるから」と言われちゃうと反論しにくい。

実際、地球では起こり得なかった力をおおいに使いながら生きているわけですから。

そこに関しては、特に言うことはない。

 

――問題は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことにある。

 

他の生き物の命を奪った際に得る経験値というのは、それまで相手が蓄積してきたスキルやステータスといった魂のエネルギーの一部で、星の再生のために回収される分を差し引いた余りらしい。

この経験値が一定に達するとレベルアップという形で能力が上がるわけだけど、私は、なんでこんな仕組みになっているのか、疑問を覚えている。

本来は星の再生という目的のために蓄積されてきたエネルギーが、一部とはいえ別の用途のために割かれているのは、システムの存在意義を考えると変だと思う。

経験値になる分のエネルギーに何か問題があって、本来の目的に使うことができないから別の使い方をしている、といった理由があるのかもしれないけど、それが倒した方の能力強化のためのリソースになっている、という現状には納得しにくいものがある。

これだと、より力を得るために、経験値を目的として人間同士の争いが助長されることになる。

「魂のエネルギーは戦うことによって高められる」と禁忌の情報にあったけど、あくまで人類の償いのためにシステムが構築されたのに、戦いの機会を増やすためとはいえ勝者にこんなメリットを与える仕組みになっていることに違和感がぬぐえないでいる。

 

そもそも、蓄積した魂のエネルギーをステータスやスキルとして戦闘に使用できることも、星を再生させるためのエネルギーとして高めさせるうえでは不要なことのはず。

ただ増幅させるだけなら、わざわざ戦闘に用いるためのものとして加工する必要はないと思う。

こういう形にすることで、よりエネルギーを増やしやすくなるとか、そういう理由を考えることはできるよ?

でもさ、ズラッと並んだ多種多様なスキルを見るとさ、ここまで数多くの種類のスキルを作った理由がそれだけだとは思えなくなってくるんだよね。

 

それにさ、戦うことで魂のエネルギーを増幅させることができると禁忌の情報の中にはあったけど、トレーニングとか戦う以外の方法でも、スキルのレベル上げやステータスの増加ができることを私は知ってる。

別に争いをしなくてもエネルギーを増やせるのなら、そういう方法でスキルやステータスを上げていけばいいんじゃないかと考えるわけ。

戦いをした方がエネルギーを高めやすいのは知っているけど、それでもエネルギーを増やすための人員が必然的に減ることになる殺し合いをするよりかは、人数を自分たちの方から減らすことなく、それぞれが寿命を迎えるまでエネルギーを蓄積させていく方法のほうが、結果的に多くのエネルギーを生み出すことになるんじゃないかと思う。

 

こう考えると、システムの稼働目的という点から考えても、現状が矛盾しているように思えてくる。

このシステムを稼働させ、システムの管理者となったギュリエディストディエスは、女神を延命させながら彼女の願いをかなえることが目的だったはず。

その女神の願いは、恩を忘れて自分を世界再生のための生贄にしてきた人類を、それでも守りたいというもの。

なのに、その女神の願いのためにあるはずのシステムは、もう一つの目的を達成するためとはいえ、人類に殺し合いをさせることを前提にしている。

そうやって戦わせることしか魂のエネルギーを高めることができないのなら理解できなくはないけど、それ以外の方法でスキルやステータスを鍛えることができることを実体験として知っている以上、これは無視できないほど不自然なことだと考えられる。

 

そんな感じで、システムが稼働された理由を前提に考えると、禁忌によって与えられた情報と現状におかしいことがあると私は結論付けた。

まあ、禁忌のスキルで情報を与えられたわけだけど、その情報が真実で全てだと保証されているわけじゃないしね。

このスキルを作った奴は、そうとう性格が悪いんじゃないかと思う。

実際、この禁忌のスキルがLV10になってから、不愉快な思いをしまくっているし。

だけど、女神の延命と願いとは別の目的があると仮定すると、ステータスやスキル、それに経験地といった存在があることに説明がつくことに気が付いてしまった。

そんなはずはない――と否定しようとしたけども、反論を思いつけずに、そんな目的があったことを逆に信憑づけてしまうことになってしまう。

 

それは――()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ステータスやスキル、経験値というのは、地球ではゲームの中で使用されている単語だというのは、私も知っている。

この世界は、そんなゲームの中でしか在り得ないはずの仕組みを、システムという超常的な力によって現実のものとして成立させている。

魂のエネルギーが、スキル・ステータス・経験値などといった形で自身の力として使えるようになっているのも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という目的があると仮定したなら、おかしいと思っていたことが解決してしまう。

つまり、システムとは、まさにゲームと同じように力を手に入れ、強くなることを現実のものにするための装置でもあると考えられることになる……。

 

……正直、そういう考えに至っても、疑問は尽きない。

じゃあ、なんで強くなることができる仕組みにしたのか?

それがなんで、私も知っているゲームに基づく形になっているのか?

分からないし、確かめようがないことが次々と浮かんでくる。

だけど、この世界がゲームを模したものにされているというのは、今この世界に生きている私にとって、いい気持ちになるようなものじゃなかった。

 

私がこの世界で、魔物に転生しているのだって、本来なら在り得ないはずのことだ。

この世界の魂の流れはシステムによって管理されていて、他の世界――それこそ、私がいた地球とかから別の魂が紛れ込んできて、あまつさえ記憶を持ったまま生まれ変わる、なんてことは起こらないだろうと禁忌の情報を読み解いた限り認識している。

それなのに、この星の人類が過去に犯した大罪と全く関係ないはずの私が、この世界で地竜という魔物になって、スキルやステータスといった力を使いながら生きている。

 

スキルやステータスといったシステムの恩恵が受けられる理由なら、禁忌のスキルで得た情報から分かっている。

私の持っている、読み方不明な「n%I=W」のスキルこそ、本来ならシステムの適用対象ではない私が、この世界で生きていくための力を身に着けていくことができる要因だ。

このスキルが、この世界のシステムに私の魂を紐づけており、そのおかげでスキルやステータスといった魂の力、魔物の私の場合だと進化も含めて、システムの管理下にある「強さ」を得ることができているのだという。

あと、本来は違う言語で表示されたり聞こえたりする鑑定などでの説明文やアナウンスを、日本語に変換する役割もあるらしい。

まあ、世界が違うなら言語も全く違うはずだから、日本語じゃないのが当然だったね。

 

それと、「n%I=W」のスキルは、私の魂がシステムに馴染み過ぎないようにもしているらしい。

本来、この世界で星の再生のために償っている人間たちは、システムが役目を終えるまで魂を縛り付けられ、この星で転生を繰り返す。

だけど私の場合は、この世界の人間たちの大罪とは関係ない、他の世界からやってきた魂なので、システムに馴染み切って縛られることのないように調整されているらしい。

正直、次は記憶を持ちこせないとはいえ、こんな世界にずっと縛られたままっていうのは嫌だと思っていたから、このことを知ってホッとした。

 

だけど、このことを知って、私のなかの疑問はさらに増えた。

全く別の世界に生きていた私が、この世界に生まれ変わった理由。

加えて、この世界の人間たちに罪を償わせるためのシステムにおいて、本来なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という大きな疑問が、新たに生まれた。

 

なぜ、システムに管理されているこの世界に、地球から私の魂が紛れ込んでしまったのか。

どうして、ありえない存在である私のために作られたようなスキルがあるのか。

こんなスキルを作ったのは、システムの管理者だというギュリエディストディエスなのか。

なんで「n%I=W」のスキルまで作っておきながら、私への説明はないのか。

批判的な思いすらも含んだ疑問が、私の中にどんどんあふれてくる。

 

胸の内深くに存在している疑問の答えを、私が生きているあいだに知ることができるかどうかは分からない。

だけど私は、この数々の疑問の答えを得るためにも、今を懸命に生きていこうと思う。

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV16 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:7142/7142(1322up)(緑)( 1080 / 1000 / 1000 / 3320 / 614 / 128 )
 MP:6621/6621(1284up)(青)( 555 / 1000 / 1000 / 3320 / 604 / 142 )
 SP:7303/7303(1350up)(黄)( 1255 / 1000 / 1000 / 3320 / 614 / 114 )
  :7253/7253(1339up)(赤)( 1210 / 1000 / 1000 / 3320 / 614 / 109 )
 平均攻撃能力:7048(1326up)( 980 / 1000 / 1000 / 3320 / 622 / 126 )
 平均防御能力:7381(1351up)( 1330 / 1000 / 1000 / 3320 / 620 / 111
 平均魔法能力:6431(1266up)( 390 / 1000 / 1000 / 3320 / 604 / 117 )
 平均抵抗能力:6521(1267up)( 460 / 1000 / 1000 / 3320 / 604 / 137 )
 平均速度能力:7335(1350up)( 1265 / 1000 / 1000 / 3320 / 622 / 128 )

※()内の数値は内訳で、左から種族値、呉爾羅のプラス補正、その他のプラス補正、
 呉爾羅の成長補正、その他の成長補正、他の要因

・スキル
 
 地竜LV8,龍鱗LV7(1up),甲殻LV7(1up),鉱体LV4(2up),
 HP高速回復LV8,
 MP回復速度LV8,MP消費緩和LV7(1up),魔闘法LV4(1up),
 SP回復速度LV9(1up),SP消費大緩和LV1(new),気闘法LV3(2up),
 破壊強化LV6,打撃強化LV5(2up),斬撃強化LV5(1up),貫通強化LV4,衝撃強化LV6(1up),火炎強化LV2(1up),土強化LV7(1up),
 火攻撃LV9(1up),土攻撃LV8(1up),毒攻撃LV2(new),麻痺攻撃LV1(new)
 立体機動LV6(1up),
 集中LV10,思考加速LV4,予見LV4,並列意思LV4(1up),記録LV2(1up),高速演算LV6(1up),
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV4(1up),隠密LV10,迷彩LV7(1up),無音LV10,無臭LV6(1up),
 鑑定LV7,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV9(1up),
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV3,打撃耐性LV3,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,
 火耐性LV9(1up),大地無効,重耐性LV2(1up),
 猛毒耐性LV8(1up),強麻痺耐性LV5,睡眠耐性LV6(1up),強酸耐性LV5(3up),腐蝕大耐性LV1,
 恐怖耐性LV4,外道大耐性LV5(3up),苦痛無効,痛覚軽減LV4(1up),
 視覚強化LV9(1up),聴覚強化LV9(1up),嗅覚強化LV7,味覚強化LV2,触覚強化LV6(1up),
 神性領域拡張LV1(new),
 天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,
 剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV3(1up),
 n%I=W

・スキルポイント:22300(600up)

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁今作オリジナルの種族の説明

○種族「エルロービッグフロッグ」
概要:エルローフロッグの進化形で、ステータスの平均値は500ぐらい
   エルローフロッグが2回進化した姿という設定
   主にステータスが成長しているが、特殊なスキルは持っていない

○種族「アイアンタートル」
概要:スモールロックタートルの進化形。ロックタートルから「鋼体」のスキルを
   持っていることで進化することができる設定
   防御能力は非常に高いが、特殊な攻撃スキルを持っているというわけではなく、
   純粋にステータスやスキルが成長したような感じのイメージ

○種族「サンダーライトエルローペカトット」
概要:エルローペカトットの亜種?から進化したという設定。雷属性の攻撃をしてくる
   ペカトットの亜種?の存在については、スピンオフ漫画を参照
   進化前の種族名は「サンダーエルローペカトット」

➂毒攻撃と麻痺攻撃のスキルについて
スキルポイントを消費しない場合は、毒属性や麻痺属性を持つ武器を使って攻撃することで
熟練度をためて取得できるという、この小説での独自設定
エルローバラギッシュほどの魔物の牙なら、素で毒属性と麻痺属性のダメージを
与えることができそうだと思い、とりあえず使わせてみてスキルを取得させてみた
なお、元ネタの蛇のモンスターの牙は、魂も破壊できるほどの凶悪な代物の模様

➃魔力の操作を応用してMP系のスキルのレベル上げ
少なくとも「システムにおける魔力=MP」という等式が成り立つならば、魔力の回復の流れを
促すように操作したりすれば、MP回復速度やMP消費緩和のスキルのレベル上げをすることが
できるんじゃないかと考えたため。この小説の独自設定


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VS猿①

この話から一つ前の話にて、再び読者の方から誤字報告をしていただきました。
前回と同じ方が誤字を教えてくださいました。いつもありがとうございます。適用させてもらいました。
これでお礼になるかどうかは分かりませんが、書けるところまで本作を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

タイトルの通り、今回からアノグラッチ、通称猿との戦いになります。
今作で主人公が戦うのは、ある状態異常を扱う種族になってます。通常のアノグラッチとは異なるので、そこはご注意を。
もう一個ぐらい展開を入れようかと思いましたが、なんだか無駄に長くなってしまいそうなので、次回のお楽しみとさせていただきます。

2021/10/09
・カースアノグラッチのスキルに「暗視LV10」「視覚領域拡張LV1」を追加
・後書きの➃の内容を修正  などの変更を行ないました。


――まさか、こんなことになるなんて……!

 

焦る気持ちがどんどん大きくなるなか、私は敵の集団からできるだけ距離を取っていく。

一体一体のステータスは脅威ではないけど、数百という圧倒的な数で攻められていることを考えると、迂闊な対処では済まない。

いや、数だけじゃなく、その魔物たちが持つスキルも恐るべきものだ。

あの特殊なスキルと、この場所にあふれんばかりの数……その組み合わせが、私を追い込みつつあった。

 

相手の数が多ければ多いほど、例のスキルの脅威も増していく。

しかも、ただでさえ目がくらみそうになるほどの数なのに、まだ増援が来ているようだった。

もしかしたら、このまま減ることなく永遠と増え続けるんじゃないかとすら錯覚しそうになる。

 

本当に、こんなことになるなんて思いもよらなかった。

もっと早く鑑定のレベルが上がっていれば……いや、上げていれば、こんなことにはならなかったのに……。

今さらな話だけど、そう思わずにはいられないほどの現状だった。

 

とにかく今は、相手の集団との距離を離していきながら、どうしたらいいのか考え続ける他ない。

そう思いなおし、何百体もの群れを成して襲い掛かってくる、猿によく似た外見をした魔物たちから逃げ続けた。

 

 

 

********************************************

 

 

 

どうして私はこの世界にいるのか。

トカゲに生まれ変わったばかりの頃はよく思っていたことだけど、禁忌の情報で世界の真実というものを知ったことで、久しぶりにそんなことを考えた気がする。

とにかく生きることに目を向け続けることで、考えまいとしていたのかもしれない。

まあ、それを知る術がないのは、今も変わらないかもしれないだろうけど。

 

そんなことを時々考えながらも、下層での探索は続けていた。

スキルのレベル上げは順調で、いくつかのスキルはLV10になって、進化したり新しいスキルが派生したりした。

そのなかで、探索に役に立ちそうだと思ったのが、視覚強化から派生した望遠のスキル。

 

『望遠:遠くの景色を拡大して見ることができるようになる』

 

こんな効果のスキルだけど、このスキルは片方の目だけを対象にして効果を発揮することができる。

つまり、片方の目で通常の視界を確保しつつ、もう片方の目で望遠のスキルを発動して、遠くの景色も見ることができるわけ。

視界の違いについて普通だったら混乱しそうになりそうだけど、並列思考とかで情報を処理すれば大丈夫な感じだ。

今はまだレベルが低いけど、もっとレベルを上げていけば探索の手間を減らせるようになると思うので、ぜひセンスには熟練度獲得に努めてほしい。

 

他には、聴覚強化LV10から聴覚領域拡張というスキルが派生した。

同じ五感強化系なのに、LV10になったときに派生するスキルの(自分なりの)分類が若干違うのは意外だった。

視覚領域拡張は暗視から派生したスキルだから、視覚領域拡張だけは扱いが別なのかもしれない。

 

進化したスキルは火属性関連の物で、火攻撃のスキルが火炎攻撃に、火耐性のスキルが火炎耐性に進化した。

どちらもシンプルな性能強化で、火炎攻撃は攻撃能力が、火炎耐性は火属性に対する防御能力が上昇している。

我ながら、火属性が強い魔物になっていくなぁと思ってる。

ちなみに、土属性関連のスキルは、まだ進化していないものばかりである。

土属性よりも火属性に長けてるなんて、これじゃあ地竜じゃなくて火竜かな(笑)

 

属性に関するものだと、全く新しいスキルを他に四つ手に入れてる。

うち二つは、毒攻撃と麻痺攻撃を使っているうちに熟練度をためたと思われる毒強化と麻痺強化のスキル。

もう二つは、他の魔物の攻撃に掠ったりとかで手に入れた水耐性と雷耐性の耐性系のスキル。

毒強化と麻痺強化は、対応する属性の攻撃をしていればレベルが上がっていくはずなので、毒攻撃と麻痺攻撃を使っていけば問題ないと思う。

耐性系のスキルに関しては、まずダメージを受けなきゃ熟練度が蓄積されないみたいだから、レベルが上がるのは期待しない方がいいはずだよね……。

 

そして、もう一つ新しいスキルを手に入れたんだけど、なんと、それは私がマジシャンにどうにか手に入れてほしいと任せていた、魔力をコントロールするためのスキルなのです!

その名も、魔力操作!

名前の通り、魔力が操作できるようになる効果を持つスキルです!

このスキルを手に入れてくれたマジシャンに拍手!

 

[お疲れー]

{ありがとー}

〈よくやってくれたと思う、本当に〉

(頑張りました)

 

感知できるとはいえ、魔力なんて未知の分野で成果を上げてくれたのは快挙だと本当に思う。

まだレベルが低いとはいえ、このスキルのおかげで操作すること自体はできるようになったから、熟練度をためる効率は良くなったと思う。

このスキルをまずは上げていって、それからMP回復速度やMP消費緩和のレベル上げに応用できるかどうか試していこう。

 

進化や派生が起こっていないスキルも、実戦で使っているスキルとかは順調にレベルが上がっていってる。

私自身のLVもアップしているのも要因の一つだと思う。

そのなかでも、レベルが上がったことによる恩恵が目に見えて分かるのは、情報を開示する鑑定のスキルだった。

 

まず、自身を鑑定したときに出てくる情報についてだけど、新しくスキルポイントの項目が追加されて、現在のスキルポイントの数値が鑑定で分かるようになった。

このスキルポイントを対象に更に鑑定を使用した結果、驚くべきことが分かった。

現在のスキルポイントで取得できるスキルが、一覧として確認できるようになっていた。

取得可能なスキルは必要なポイント数とともに表示されていて、これらのスキルは鑑定で調べることで、効果を確かめることもできていた。

どんな効果なのか鑑定で分かったうえで取得できるのは、非常にありがたい。

これでもう、禁忌で不快感を味わいながら調べる必要はないし、探知の二の舞をすることも多分なくなる!

二万ポイント残ってるからか大量のスキルがズラッと表示されたけど、今は生きることで切羽詰まってるわけじゃないから、後悔することのないよう時間をかけて調べていこうと思う。

 

他にも、他の魔物に対して鑑定を使用した際の結果についても変化が出ていた。

LV7だった時は、3回か4回のうち1回はHPからSPの鑑定ができて、それ以外の場合はステータスの鑑定自体に失敗していた。

レベルアップしたことで、基本的にHPとかは鑑定できるようになり、3回に1回ぐらいの確率で攻撃能力や速度能力などの鑑定ができるようになった。

つまり、より他の魔物のステータスについて得られる情報が増えたことになる。

やっぱり、鑑定を取得して良かった。

 

こうしてできることが増えたり、自分が強くなっていくことには、満足感を覚える。

今まで培ってきた力が、自分が明日へ生きていくための大事な資源だということを身をもって知っているからだと思う。

影魔法も、今の段階だと持て余していることになるけど、魔力操作のスキルを覚えたから、そろそろチャレンジしてみるのもいいかもしれない。

 

思えば、私に重力をかけてきたエルローバラギッシュの謎の攻撃も魔法なのかもしれない。

よくよく思い出してみれば、魔力感知に反応があったんだと理解できるようになった。

私に重属性のダメージを与える魔法だから、さしずめ重魔法かな?

影魔法自体はあそこまで強力とは思えない効果ばかりだけど、派生したり進化したりすれば、実戦に役立つ魔法が使えるようになるのかも。

 

[ブレインー、考え事してる時に悪いけど、魔物見つけたよー]

 

あ、ほんとだ。

初めて見る魔物だ。

危険感知での反応は小さいけど、鑑定してみよう。

 

『カースアノグラッチ LV7

 ステータス

 HP:356/356(緑)

 MP:162/162(青)

 SP:203/285(黄)

  :243/273(赤)

 平均攻撃能力:253

 平均防御能力:222

 平均魔法能力:116

 平均抵抗能力:128

 平均速度能力:253

 ステータスの鑑定に失敗しました』

 

うん、ステータスも全部3ケタ台だった。

鼠の魔物を食べているようで、食事中だったようだ。

私の存在に気が付くと、食べていた魔物をこっちに向かって投げてきた。

私は投げつけられたものを回避したけど、今度は周りに落ちていた石を投げつけ始めた。

 

攻撃を仕掛けられたようなので、こちらも反撃させてもらうことにする。

最近、自分でも恐ろしいほどになってきた速度で相手に接近し、四つの属性を付与した爪で攻撃。

ステータスでは圧倒的に劣るカースアノグラッチは、その一撃でHPが0になった。

 

HPが0になるということは、その命が尽きるのと同意義。

でも、HPが無くなったはずのカースアノグラッチは、凄まじい咆哮をあげた。

思わぬ事態に驚いて、すぐに身構えたんだけど、雄たけびを放ち終えたアノグラッチは、そのまま動かなくなった。

 

HPが0になっても動くなんて今までなかったから、この魔物の行動には驚かされた。

最後の最後まで気を抜いちゃいけないってことを実感したよ。

 

珍しいことにカースアノグラッチという魔物は毒を持っていないようで、食べてみたところ毒を使う魔物特有の苦みはなかった。

ちょっと臭みはあるけど、白熱光で焼いているからか、そこまで気にはならなかった。

ごちそうさまでした。

 

カースアノグラッチを食べ終わった私は、探索を再開した。

 

 

 

異変に気付いたのは、歩き始めてから少し時間が経過した頃だった。

探知のスキルで、十数体の魔物が私の方に近づいていることを感知した。

 

望遠のスキルで見てみると、カースアノグラッチが何体も、雄たけびを上げながら向かってきていた。

なんだか、全体的に怒っているように見えるんだけど……もしかして、仲間をやられたから?

さっき私が倒したアノグラッチの敵討ちにでも来たのだろうか?

近くに同種の個体はいなかったから目撃されてないはずだけど……もしかしたら、あの最期の咆哮に何かしら特殊な効果でもあったのかもしれない。

 

一体一体のステータスは私の十分の一もなかったけど、相手の数が多い状況で戦った経験は少ないから、戦闘に入るのは少し不安だ。

向こうはやる気満々のようだけど、ここは逃げの一手を打たせてもらうことにしよう。

私の方が移動速度は圧倒的に速いから、追いつけないと思ったら諦めてくれるでしょ。

 

 

 

そんなふうに思って、カースアノグラッチの群れに背を向け続けて移動していたけど、あの魔物たちは思った以上に執念深かった。

どれだけこっちが引き離しても、どんなに時間が経っても、しつこく私を追いかけ続けてきた。

ときどき休憩を挟みながら望遠で様子を見てみるんだけど、こっちに迫ってくる勢いが全く衰えていないのは恐ろしいものを感じる。

 

しかも、新しい個体がどんどん合流してきて、追跡してくる数が増え続けてる。

最初は十体かそこらだったのに、今では少なくても百は超えていると思う。

そこまでの数が、みんな怒りを露わにした様子でこっちに来ているわけだから、しょうじき私の精神衛生的にも良くない状態だと思う。

 

これはもう、諦めてもらえると考えない方がいいみたいだ。

このまま背を向けたままじゃ、なにも改善しない。

むしろ、相手の数ばかりが増えていって、数的有利を相手に与えてしまっている。

これ以上向こうの戦力が増加する前に、いちど戦ったほうがよさそう。

 

敵討ちが目的で来たと思われる相手と戦うのは、あまり気分は良くない。

だけど、ここは弱肉強食。

私が倒したカースアノグラッチだって、その理に則って行動していた。

だったら、ここまで粘着質に付き纏われる謂れはない。

そっちがその気なら、こっちからも打って出させてもらう。

 

方向を反転し、私を追ってきた魔物の群れへと真正面から向かう。

有効距離にまで近づいたら、カースアノグラッチたちを一気に鑑定。

百を超える対象のステータスを確認していく。

 

……よし、どのアノグラッチたちのステータスも、3桁どまりだった。

並外れて高いステータスの個体とか、そういう想定外の種はなさそう。

危険感知でだいたいの強さは分かるけど、いちおう確認しておくのは大事。

なら、最初から思いっきりやらせてもらう。

 

私は口にエネルギーをチャージし、強烈な一発を放つ準備をする。

アノグラッチたちは私の異変に動きをいったん止めるけど、もう避けられない。

口内に溜めたエネルギーを解放し、そのエネルギーは地竜ブレスとなってカースアノグラッチたちに襲い掛かった。

 

ブレスをまともに受けたアノグラッチは容赦なく焼かれ、消し炭になってしまった。

体の一部に当たっただけでも、ブレスの威力が高すぎるためにHPがすぐさま削り取られていき、その命を失う個体も少なくなかった。

そうして私が長めにチャージした後に解き放った地竜ブレスは、カースアノグラッチの群れの中央を幅広く焼き尽くしていき、大半のアノグラッチたちを倒すに至った。

我ながら、初っ端から大打撃を与えたな、と思う。

これだけの被害を受けたわけだから、私を倒そうとするのは無謀なことだと諦めてくれるといいんだけど……。

 

《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV20からLV21になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒強化LV1』が『毒強化LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『記録LV2』が『記録LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『鑑定LV8』が『鑑定LV9』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

多くの魔物を一気に倒したことで経験値もだいぶ入ってきたようで、レベルアップしたようだ。

これで私のスキルのレベルがいくつか上がって、ステータスも更に増加したことになる。

カースアノグラッチたちとの力の差がまた広がって――!?

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『呪い耐性LV1』を獲得しました》

 

突然、体が重くなったように感じた。

重属性による攻撃かと思ったけど、違う。

まるで、急に身体能力が下がったかのように、体に力が入らない……。

それに、なんだか苦しい……。

 

異変を感じた私は、自分自身の鑑定結果を確認してみる。

するとそこには、信じられない情報が載っていた。

 

『フェネグラッド LV21 名前 大原 雅美

 ステータス(低下中)

 HP:4379/8242(緑)

 MP:3691/7686(青)

 SP:4427/8423(黄)

  :4365/8365(赤)

↓平均攻撃能力:4099(8148)

↓平均防御能力:4276(8503)

↓平均魔法能力:3751(7481)

↓平均抵抗能力:3802(7573)

↓平均速度能力:4253(8455)』

 

私のステータスが、大幅に減少している!?

どうして!?

いったい、何が起こったの!?

 

お、落ち着いて考えなきゃ。

冷静に、素早く原因を明らかにしないと、もっとまずい事態になるかもしれない。

 

まず、今の私の状態について。

一番の異常は、攻撃や防御とかの能力値が半分くらいにまで減少していることだ。

横のカッコ内に本来のステータスの数値が表示されているみたいだけど、文字の色が灰色になっていて、数字通りの効果を発揮していないような状態になっているのが分かる。

HPやMPとかと違って、今まで減ったことがない能力値が一気に低下するなんて、明らかに異常なことだ。

それに、HPやMP、SPも4000ぐらい消費されてる。

さっき感じた、体からエネルギーが抜け出たような感覚は、このステータスの大幅な減少が原因だと思う。

 

鑑定結果にステータスの低下を示す表示がされているということは、なんらかのスキルによる攻撃を受けたと想定するべき。

さっき、呪い耐性というスキルを取得したことから、このスキルから現状について知ることができるはず。

すぐに鑑定を行う。

 

『呪い耐性:呪い属性に対しての防御能力が増加する』

 

呪い属性について、さらに鑑定。

 

『呪い:各種能力値を弱体化させ、HP、MP、SPにダメージを与える』

 

間違いなく、この属性が原因だ。

HPやMPが大量に減少しているのも、私の能力値が下がっているのも、この属性によるものなら説明できる。

でも、この呪い属性が原因だと考えられても、呪い属性のダメージが与えられるような、攻撃らしい攻撃は受けていないはず。

むしろ、ステータスが下がったと思われる感覚がする直前は、大量のカースアノグラッチを倒して、レベルアップまでしている。

一体どのタイミングで、呪い属性によるダメージが私に与えられたの……?

 

そんなことを考えていて、ふと私は、アノグラッチの鑑定結果に新しい項目が追加されていることに気づいた。

それは、カースアノグラッチの所持しているスキルについての表示だった。

 

『カースアノグラッチ LV6(狂気)

 ステータス

 HP:350/350(緑)

 MP:156/156(青)

 SP:188/276(黄)

  :213/265(赤)

↑平均攻撃能力:996(249)

↑平均防御能力:864(216)

↑平均魔法能力:148(114)

↑平均抵抗能力:161(124)

 平均速度能力:247

 スキル

 投擲LV4,立体機動LV4,連携LV7,命中LV4,

 呪怨LV1,激怒LV1,暗視LV10,視覚領域拡張LV1,復讐,怨念』

 

鑑定のレベルが上がって確認できるようになった、アノグラッチが持つスキル。

そのスキルの中から、効果を知らないものを鑑定して調べていく。

 

投擲のスキルは、投擲時に威力や命中にプラス補正が働くスキルで、連携のスキルは連携力を増す効果がある。

それらのスキルや立体機動・命中はまだいいとして、問題は他のスキル。

復讐というスキルは、どうやら仲間と認識する存在を害した生き物にしつこく攻撃を繰り返すようになる効果があって、このスキルによってカースアノグラッチたちは私を執拗に追いかけてきているみたい。

激怒のスキルは、自身に状態異常の一種である「狂気」を付与する代わりに、ステータスを大幅に上昇させる効果のようだ。

レベルが上がった鑑定でも激怒の効果を確認することができていて、どうやら物理系の能力が特に強化されるみたいだ。

この二つだけでも十分に厄介なのに、残りの二つのスキルが私の頭を悩ませる。

 

『呪怨:直接的な攻撃に呪い属性を付与する。また、この効果で減らしたHP、MP、SPを、スキルレベルに応じて吸収する』

『怨念:HPが0になって死亡した際、復讐のスキルが効果を発揮している場合、その対象に呪い属性のダメージを与える。このスキルによる能力値の弱体化は、他のスキルによる弱体化と区別される』

 

この説明文を確認して、私は怨念のスキルの効果で呪い属性のダメージを受けたことに気づいた。

大量のカースアノグラッチを倒したことで、HPが0になった数多くのアノグラッチたちが持つ怨念の効果が発動し、呪い属性のダメージを受けて私のステータスが低下したと理解した。

一体分のダメージなら私の抵抗能力の高さで防ぐことができただろうけど、一気に百体近くも倒してしまったことで、そのぶん一度に襲い掛かってくる怨念による呪い属性のダメージも大きなものになって、ここまで能力値が減少してしまう事態になってしまった。

 

このことを知った私は、どうすればいいのか分からなくなってしまった。

というのも、こっちから攻めて勝つことが、到底できないように思えるからだ。

 

怨念のスキルが、カースアノグラッチのHPを0にすることで発動する物なら、相手を倒せば倒すほど自分自身も追いつめることになる。

相手の数が少なければ強引に突破することもできるだろうけど、さっき百体近く倒したというのに、その穴を埋めるかのように増援が次々にやってくる。

復讐のスキルの効果で、私の命を奪うまでカースアノグラッチたちは出てくるのかもしれない。

この数の多さで、怨念のスキルのことを無視して戦うなんて出来るわけがない。

 

おまけに、激怒の効果でカースアノグラッチたちの能力は大幅に上昇している。

今はまだ対処可能なレベルだけど、呪い属性のダメージでステータスが今以上に低下したら、数で負けている以上逆転される可能性が高い。

直接攻撃限定とはいえ、怨念に頼ることなく呪い属性のダメージを与える呪怨のスキルも持っているから、一度でも攻撃を許してしまったら転がり落ちるように戦況が悪化する。

この魔物の数の多さと持っているスキルの効果が上手いこと嚙み合って、私をじわじわと追いつめてくるのが分かってしまった。

 

逃げるにしても、百体近く私にやられても執念深く追い続けていることから、到底諦めてくれるとは思えない。

復讐のスキルの効果に加えて、激怒のデメリットで精神が狂気に侵されている状態になっていることで、私のHPが0になるまで攻撃し続ける以外の行動がとれなくなっているのかもしれない。

だとしたら、逃げ切ることは不可能だと言っていい。

 

逃げ切れないようだから戦うということはあった。

勝てそうにない相手から逃げることで生き延びたこともある。

けど、このまま戦っても生き残れそうになく、逃走することで戦いを回避するという方法も成功しそうにない、なんていう事態は初めてだった。

自分の命を繋ぐための選択肢を見失ってしまった現状に、じわじわと焦燥感を覚えていく。

それでも、どうにか生きあがくための方法を考え出すために、またアノグラッチたちに背を向けて走りはじめた。

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV21 名前 大原 雅美

・ステータス(低下中)

 HP:4379/8242(緑)
 MP:3691/7686(青)
 SP:4427/8423(黄)
  :4365/8365(赤)
↓平均攻撃能力:4099(8148)
↓平均防御能力:4276(8503)
↓平均魔法能力:3751(7481)
↓平均抵抗能力:3802(7573)
↓平均速度能力:4253(8455)

・スキル
 
 地竜LV9,龍鱗LV7,甲殻LV7,鉱体LV5,
 HP高速回復LV8,
 MP回復速度LV9,MP消費緩和LV7,魔力操作LV1,魔闘法LV5,
 SP回復速度LV9,SP消費大緩和LV2,気闘法LV4,
 破壊強化LV6,打撃強化LV5,斬撃強化LV5,貫通強化LV4,衝撃強化LV6,
 火炎強化LV3,土強化LV8,毒強化LV2,麻痺強化LV1,
 火炎攻撃LV2,土攻撃LV9,毒攻撃LV4,麻痺攻撃LV2,
 立体機動LV6,
 集中LV10,思考加速LV4,予見LV4,並列意思LV4,記録LV3,高速演算LV6,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV4,隠密LV10,迷彩LV7,無音LV10,無臭LV6,
 鑑定LV9,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV9,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV4,打撃耐性LV3,斬撃耐性LV3,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV4,
 火炎耐性LV1,水耐性LV1,大地無効,雷耐性LV1,重耐性LV2,
 猛毒耐性LV8,強麻痺耐性LV5,呪い耐性LV1,睡眠耐性LV6,強酸耐性LV5,腐蝕大耐性LV1,
 恐怖耐性LV4,外道大耐性LV6,苦痛無効,痛覚軽減LV4,
 視覚強化LV10,望遠LV2,聴覚強化LV10,聴覚領域拡張LV1,
 嗅覚強化LV8,味覚強化LV2,触覚強化LV7,
 神性領域拡張LV1,
 天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,
 剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV3,
 n%I=W

・スキルポイント:22800

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁今作オリジナルの種族・スキルの説明

○種族「カースアノグラッチ」
概要:アノグラッチの特殊進化先。バグラグラッチとは異なり、怒の進化した激怒のスキルと、
   仲間を害した存在に対して執拗に攻撃を繰り返す復讐のスキルを進化しても保持している
   さらに新たに呪怨のスキルと、この種族固有の怨念というスキルを手に入れており、
   単体での危険度はCランクに上がり、群れた場合の危険度は最悪神話級にも匹敵する
   ちなみに進化条件には、復讐のスキルの一定回数以上の発動が含まれている
   なお、カースアノグラッチからはカースアノグラッチが生まれてくるので、個体数が
   足りない、なんてことは基本的にないらしい

○スキル「怨念」
概要:カースアノグラッチが有する特殊スキル。HPが0になって死亡した際、復讐のスキルが
   効果を発揮している場合、その対象に呪い属性のダメージを与える。また、このスキルに
   よる能力値の弱体化は、他のスキルによる弱体化と区別される

➂スキル「怨念」による弱体化の仕様
怨念による能力値の弱体化は、通常の呪い属性による弱体化と区別されている
例えば、通常の呪い属性により低下する能力値をA、怨念により低下する能力値をBとする
Aの最大は、通常のステータスの半分より少し小さいぐらい。つまり、通常の呪い属性による
能力値の弱体化は、本来の能力値が半分と少し残るくらいまでが限度となっている
Bの最大はAと同じで、怨念による弱体化だけだったら、同様に半分まで少しぐらいが限度となる
しかし、AとBは別の物と区別されているため、怨念による弱体化と、それ以外のスキルによる
弱体化が重なった場合、ステータスのほとんどが削られることになる

例)平均攻撃能力が50の場合の弱体化の仕様
⑴Aが最大、Bの影響なし:50→26
⑵Aの影響なし、Bが最大:50→26
⑶Aが最大、Bも最大  :50→2

※Aの最大の基準については、(おそらく)独自設定

Q.どうしてこんな仕様にしたのですか?
A.こうでもしないと、主人公が苦しい思いをして(戦いが盛り上がって)くれないからです

➃「怒」系列のスキルによるステータス上昇の仕様(考察に基づく独自設定)
・怒 :攻撃・防御に、(本来の数値×0.3×スキルレベル)の分だけプラスされる
例)怒LV6のスキルを持っている場合
 平均攻撃能力:50→50+(50×0.3×6)=50+90=140
 平均防御能力:50→50+(50×0.3×6)=50+90=140
・激怒:攻撃・防御に、(本来の数値×3)の分だけプラスされ、魔法・抵抗には、
    (本来の数値×0.3×スキルレベル)の分だけプラスされる
例)激怒LV5のスキルを持っている場合
 平均攻撃能力:50→50+(50×3)=50+150=200
 平均防御能力:50→50+(50×3)=50+150=200
 平均魔法能力:50→50+(50×0.3×5)=50+75=125
 平均抵抗能力:50→50+(50×0.3×5)=50+75=125

➄カースアノグラッチの恐ろしい点についてのまとめ
・復讐のスキルにより、一匹でも倒されたら群れが全滅するまで襲い掛かってくる
・復讐状態だと、「怒」系列のスキルによりステータスが大幅に上昇している
・群れ全体で連携の取れた攻撃をしてくる
・呪怨のスキルで、相手の能力値を下げてくる(new)
・倒されれば倒されるほど、怨念のスキルで相手のステータスを削っていく(new)
アノグラッチである

➅ちょっとした次回予告(微ネタバレ?)
呪い属性でステータスが下がっちゃった……どうしよう……。
そうだ! スキルポイントで呪い耐性のレベルを上げればいいじゃん!
耐性が強くなれば、ステータスも元に戻るかもしれない!
もー、またこんなことを失念しちゃうなんて、私ってばホントうっかりさん!
さっそくスキルポイントを使おーっと!





























え? なんで?

➆Q.おい最後のなんだよ
 A.次回のお楽しみです


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VS猿②

本当に、この魔物はどうやって対処すればいいの……?

倒しても呪い属性のダメージを受ける、逃げてもスキルの効果でどこまでも追ってくる。

そんなカースアノグラッチ相手に、時間稼ぎのために背を向けて逃げ続けている現状だけど、どう対処すればいいのか思いつかない。

 

一応、逃げ続けている間に、呪い属性について新しく分かったこともある。

毒や麻痺と同じように、呪い属性による能力値の弱体化は、再度ダメージを受けなければ時間経過によって解除されていくみたいだ。

こうやってカースアノグラッチたちから距離を取り続けているうちに、少しずつステータスが回復しているのを鑑定のスキルで確認している。

ただ、効果が完全に解けるまでの時間は、どうやら毒や麻痺よりもかなり長いようだ。

いまカースアノグラッチたちから逃げるうえで黄色のSPの消費は欠かせないわけだけど、その残量から考えて、ステータスが元に戻るまで逃げ続けるのは無理だと思う。

 

こうして逃げていることのメリットは、一応ある。

同じく呪い属性によって減ったHPやMP、SPは、それ以上ダメージを受けないようにしていることで、どんどん回復させることができている。

特にHPに関しては、呉爾羅のスキルがもたらす圧倒的回復力によって、かなり早い段階で全快してる。

呉爾羅のスキルのおかげで、少なくてもHPのことで困ることはなさそう。

なんなら、他のステータスの減少をHPで肩代わりできないかなと、つい思っちゃうくらいだ。

 

でも、このまま逃げることのデメリットの方が大きいかな。

私を追っているカースアノグラッチの群れが、どんどん大規模なものになっていってる。

復讐のスキルで私の命を狙うカースアノグラッチが、遠いところからもやってきているのか、相手側の増援が尽きることがない。

下手したら、この広大なエルロー大迷宮に存在する全てのアノグラッチがやってくるかもしれないと思って、背筋が冷たくなった。

早いところ手を打たないと、逆転の目が完全になくなるかもしれない。

 

でも、一体どうすればいいのか、本当に検討が付かない。

逃げ切るのは、相手に復讐のスキルがある限り無理だというのは、嫌というほど味わってる。

かと言って、今回ばかりは相手を倒せばいいっていう話じゃない。

一体一体が激怒のスキルで攻撃と防御のステータスが数倍にもなっていて、呪い属性が付与された攻撃をしてくる。

私の持っているスキルとステータスがあれば攻撃を受けずに倒すことができるけど、問題は倒しても呪い属性のダメージを受けること。

この呪い属性のダメージ自体になんとか対処しない限り、この戦いで私が勝利することはできない。

呪い耐性のレベルがもっと高かったら、ダメージを防げるかもしれないのに……。

 

 

…………………………………………………………………………………………………………ん?

 

 

あ、あーーーー!!

そうだった!!

呪い耐性のレベルを上げればよかった!!

スキルポイントを消費して!!

 

毒で苦しんだ時や、重属性で身動きが取れない時と同じじゃん!!

スキルポイントで耐性スキルを強化すればいいだけの話じゃん!!

なんで私は、こんな命の危険が迫っている時に毎度毎度そのことを忘れちゃうの!?

うっかりにも程がある!!

自分のことなのに自分が憎くてたまらない!!

 

ま、まあ、今回はしっかり思い出すことができただけ良しとしよう。

というか、並列意思のみんなも教えてくれればよかったのに……。

 

[いやぁ……]

{私たちもついうっかり……}

〈思っていた以上に忘れちまうもんなんだな……〉

(これが大原 雅美の宿命だというのか……)

 

……つまり、他のみんなも私と同じだったと……。

これは、ちょっとへこむ……。

 

それはさておき、ダメージを受けることなく呪い耐性を高められるのなら、これ以上の解決策は現状では存在しないと思う。

強化された呪い耐性なら、怨念によるダメージを全く受けずにカースアノグラッチたちを倒せるようになるかもしれない。

それに、呪い耐性が高ければ、能力値が回復する時間も短くなる可能性もある。

どっちにしろ、やらない手はない。

 

なにはともあれ、解決策を思いつくことができて良かった。

早速、スキルポイントを使うことにしよう。

 

《ザ、……ザー、…ザ、ザー、ザー、……》

 

……え?

何、この音……?

まるでテレビの砂嵐みたいな音が聞こえてくるんだけど……?

 

《ザー、…上位管理者権限かく、ザー、…理者サリ………ザー》

 

……管理者?

管理者って、あの、システムの管理者?

でも、上位管理者って……?

いや、そんなことに構ってる場合じゃない。

はやく呪い耐性のレベルを上げないと――。

 

《ザー、ピン!》

《上位管理者Dの権限により、個体名「大原 雅美」のスキルポイント使用に制限がかかりました》

《現在、大原 雅美がスキルポイントを使用することはできません》

 

 

……………………は?

 

 

一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

いつも、レベルアップしたときやスキルを取得したときなど、システム関連のあれこれを通知してくれるアナウンス。

そのアナウンスが、どういうわけか、今はスキルポイントを使用できないとか言っている。

よりにもよって、死ぬかもしれないという、この瀬戸際で。

 

な、何かの間違いかもしれない。

もう一度やってみなきゃ……。

 

《現在、スキルポイントを使用することはできません》

 

……もう一度。

 

《現在、スキルポイントを使用することはできません》

 

もう一度!

 

《現在、スキルポイントを使用することはできません》

 

――もういち――!

 

 

 

 

 

『だから現在はスキルポイントを使用することはできませんって』

 

 

 

 

 

――!?

 

 

聞き覚えのない声が急に聞こえてきて、思わず身がすくんでしまいそうになる。

いつもアナウンスとして聞こえてくる声とは、似ても似つかない声。

まるで私を窘めるかのように、それは私に伝わってきた。

聞いているだけで底冷えするような声で――だけど、どこか覚えがあるような感じが……。

 

『思っていた以上に諦めが悪い様子だったので、ついつい話しかけてしまいました。

 とりあえず、どう頑張ってもスキルポイントは使えない状況になっているので、「別の方法」で頑張って生き残ってくださいね』

 

いったい、何を……。

 

『では、ご武運を』

 

 

 

 

 

その声が聞こえたのは、それっきりだった。

おそらくだけど、あの底冷えのする声の主が上位管理者Dとやらなんだと思った。

アナウンスで、上位管理者Dにスキルポイントを制限されたことを聞いた後、というタイミング的に、そうと考えられる。

 

結局、スキルポイントで呪い耐性を上げることはできなかった。

今もまだ、怒りを露わにしたカースアノグラッチたちから逃げ続けている。

向こうの数はさらに増えていって、数えきれないほどになっている。

ここは横幅がかなり広い通路だけど、私の後ろには、その横幅を埋め尽くすアノグラッチの群れが、かなり遠くまで続いている。

本格的にまずい状況になってきた。

 

どうにか対処する方法を考えようとしているんだけど、こんな命が懸かった状況にもかかわらず、どうしても思考が上位管理者Dの方にずれてしまう。

上位管理者Dとは、何者なのか。

どうして、私がスキルポイントを使って呪い耐性のレベルを上げようとするのを妨害してきたのか。

今はそんなことを考える余裕はないと分かり切っているのに、管理者という存在が私に突然干渉してきたことが不気味でたまらないからか、気づいたら上位管理者Dのことを考えてしまっている。

それを知ったからって、この現状が良くなる保証なんて全くないって理解しているのに……。

 

〈ブレイン〉

 

ッアサルト!?

ごめん、また関係ないこと考えてた……。

どうにか、方法を考え出してみせるから……。

 

〈――いや、別に責めるつもりなわけじゃない。

 アレを気にするな、っていう方が無理があるだろうしな。

 私が言いたいのは、()()()()()()()()()()()()()()、ってことだ〉

 

っ――。

それは……。

 

〈もうわかってるはずだろ。

 確かに、もし予想と外れていたら、間違いなくアウトだ。

 だけど、これ以上考えても、他に方法を思いつけるとは到底考えられない〉

 

[……私も同意見。

 確実性がなくて不安なのは私も同じだけど、逃げ続けても状況は悪くなってる。

 だったら、自分の直感を信じてみるべきだと私は思うよ、ブレイン]

 

{右に同じ。

 まあ、十中八九予想通りだと思うし、これぐらいのリスクは負うぐらいの気持ちでいこうよ}

 

(同じく。

 気持ちはみんな同じだし、一蓮托生ってことで)

 

……そうだね。

最善策(プランA)に頼れない以上、次善策(プランB)をやるしかないか……。

うん、覚悟は決まった。

それじゃあ、いこう。

 

[よし!

 それじゃあ任せたよ、頭脳担当(ブレイン)

 

{じゃあ、事前に決めた通り、私が情報収集担当ってことで}

 

〈確率関係の演算は任された〉

 

(ということは、間隔や減りぐあいの計算は、私が担当ってことになるか……。

 今回限りの作業だろうけど、これが最後の作業にならないように細心を払うよ)

 

これから行うことのために、さっきまで会話していた並列意思を重ね合わせていく。

体を動かす意思が一つ、探知や鑑定を行う意思が一つ、演算を行う意思が二つ、そして行動の方針を決める意志が一つ。

合計五つの意思がこれ以上ないほどに同調して、「私」の思考能力が大幅に上昇する。

これで、準備は整った。

 

方向転換し、再びカースアノグラッチたちの群れへと向かう。

今度は、さっきみたいに何匹も巻き込むような大技を使うわけにはいかない。

確実に、1体だけ倒すように気を付けないと。

 

向かってくる私に向けて、アノグラッチたちは吠えながら石を投げつけてくる。

何百体もの数が石を投げてくるだけあって、とんでもない密度の攻撃になっている。

それを私は、自身の速度能力と、思考加速・予見といったスキルを用いて、どうにか回避していく。

回避のスキルと確率補正のスキルがあるおかげと、高速演算のスキルで回避できるルートを瞬時に導き出しているおかげもあって、この量の攻撃でもかわしていくことができる。

 

そうしてカースアノグラッチたちからの投石攻撃を避けていくうちに、相手との距離も縮まってきた。

私が近くにやってきたことで、群れの前の方にいたアノグラッチたちは石を投げてくるのをやめ、ちょくせつ攻撃を叩き込もうと何体も跳びかかってきた。

カースアノグラッチには直接攻撃に呪い属性を付与する呪怨のスキルがあるから、この攻撃は最優先で避けなくちゃいけない。

跳びかかってくるアノグラッチたちに集中して、直接攻撃を受けないように立ち回る。

 

私に攻撃を仕掛けてきた個体の中から一体を選択し、その頭に噛みつく。

噛みつかれたカースアノグラッチは抵抗を始めようとするけど、その前に顎に思い切り力を籠める。

呪怨のスキルで私の攻撃能力は大幅に下がり、激怒の効果でアノグラッチの防御能力は倍増しているけど、それでもステータスに圧倒的な差があるため、私の牙は噛みついた個体の頭を貫通し、破壊した。

その個体のHPが0になるのを鑑定のスキルで確認しながら、私はカースアノグラッチの群れから再び距離を取るため駆け出す。

跳びかかってきた個体は急いで私を追ってこようとするけど、呪い属性で弱体化しても速度能力に圧倒的な差があるため、距離はどんどんと開くばかりだった。

すぐに大きく遠ざかった私に、アノグラッチたちは直接攻撃も投石攻撃もやめ、また私を追いかけるだけの状態に戻った。

 

いちおうアノグラッチの様子を警戒しながら、自分のステータスを確認する。

……よし、能力値は下がっていない。

MPやSPはちょっと減少したみたいだけど、MPに関してはスキルの効果もあって瞬時に回復するぐらいの損耗でしかなかった。

赤色のSPはスキルの効果で自然に回復したりはしないけど、回復手段はちょうどここにある。

 

私は、噛みついたまま持ってきたカースアノグラッチの亡骸を、口の中にほおばって食べ始める。

焼くことなく生のまま食べているから、口の中に広がる生臭さが尋常じゃない。

最近は白熱光で焼いてから肉を食べることがほとんどだから、この久しぶりに味わう生臭さはキツイものがある。

だけど、MPはできるだけ消費しないようにしたいから、私の気持ちの問題で済むのなら許容範囲だった。

これで、さっきの怨念の効果で減少した分以上に、赤色のSPを回復させることができた。

収支で言うなら、文句なしにプラスになっている。

結論から言うと、カースアノグラッチ一体分の怨念なら、今の抵抗能力や呪い耐性で問題ないダメージに抑えられることが分かった。

 

それなりに手間をかけてカースアノグラッチを一体だけ倒したのは、一体分の怨念の効果による呪い属性のダメージなら、半分ほどになっても4000近くは残ってる抵抗能力と呪い耐性のスキルにより十分に防ぐことができ、能力値の弱体化やMPやSPの大幅な減少は起こらないことを確認するためだ。

最初に呪い属性で能力値が大きく下がったのは、一気に倒してしまった約百体分の怨念のダメージが一斉に与えられたことで、一度に襲い掛かる呪い属性のダメージが非常に大きくなり、7500近くあった抵抗能力でも防ぐことができなかったからだと私は考えている。

でも、もし事実が私の想像とは違って、一体倒しただけでも能力値が大きく下がるような仕様になっているのなら、カースアノグラッチを倒すことは本当に不可能になる。

そのもしもを恐れて、今まで別の方法を見つけようと足掻いていたわけだけど、私の杞憂で終わって本当に良かった……。

 

ともかく、これで少しずつ倒す分なら、いまのところ大きな問題にならないことは分かった。

次は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を理解する。

 

一体分の怨念なら、ステータスの抵抗能力とスキルの効果で、呪い属性のダメージを防げる。

だけど、この数相手に一体ずつ倒していくのは、いくらなんでも時間を必要とし過ぎている。

だから、一度に倒す数を一体ずつ増やしていって、私の持つステータスとスキルで問題ない範囲にまで怨念によるダメージを抑えられるのは、同時だと何体までになるのかを明らかにする。

 

それと、どれくらいの時間の間隔をあけないと、複数体の怨念による呪い属性のダメージが別々の物として認識されないのかもはっきりさせる必要がある。

一体倒した後、その10秒後にもう一体のHPを0にした結果、二体分の呪い属性のダメージが襲い掛かってきた、なんてことも起こり得るかもしれない。

下手して大きなダメージを受けるようなことにしないために、カースアノグラッチたちのHPを0にしていくタイミングの間隔についても、どれぐらいの時間を要するのか導き出さなくちゃいけない。

 

そのために、並列意思のうち一人分を、それ専用の演算担当にしている。

倒したアノグラッチのLVやステータス、経過時間、私のステータスの減り具合とかを記録してもらって、それらからカースアノグラッチを倒していくペースを算出する。

呪い属性でこれ以上不利な状況にならないようにするうえで、重要な仕事だ。

 

今の私にとって丁度いいペースは、怨念の効果で能力値が減少するようなことはなく、だけどHPやSPがちょっと減少するぐらいのペースだ。

呪い属性で、HPとかにダメージを受けている、ということが重要だ。

だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はずだから。

この方法が、私が思いつける唯一の、スキルポイントを使わずに呪い耐性を強化していくための方法だった。

あの上位管理者Dが言っていた「別の方法」っていうのも、おそらくこれのことなんだろう。

なんだか納得いかないけど、他に方法が思いつかなかった以上、こういうやり方でしか呪い耐性のレベルを上げることはできない。

まあ、最大の懸念事項はなくなったわけだから、多少は気が楽になったけど。

 

呪い属性によるステータスの減少は、能力値に気をつけておけばいいと思ってる。

HPは、呉爾羅のスキルでどんどん回復していくから、問題になることはないと信じてる。

MPについては、これを消費するスキルを使いさえしなければ、MP回復速度の効果で補っていくことができるはず。

赤色のSPはスキルの効果で回復したりしないけど、さっきみたいに倒したアノグラッチを食べれば回復することができるから、大丈夫だと思う。

ちなみに黄色のSPは、消費しないように立ち回れば短時間で回復するから、問題ないでしょ。

 

ずっと逃げの姿勢を取り続けたことで、カースアノグラッチの数は驚くほどに膨れ上がっている。

この方法を実践することを早い段階で決断していれば、あふれかえるほどの数を同時に相手取ることもなかっただろうけど、今更後悔したところでどうしようもないか。

ともかく、ここからは逆襲の時間だ。

 

口の中から、食べていたアノグラッチの骨を吐き出して、また群れの方へと向かう。

今まで生きていた中で一番長い戦いになるだろうけど、気張っていこう。




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV21 名前 大原 雅美

・ステータス(低下中)

 HP:8242/8242(緑)
 MP:5495/7686(青)
 SP:2139/8423(黄)
  :4280/8365(赤)
↓平均攻撃能力:4249(8148)
↓平均防御能力:4426(8503)
↓平均魔法能力:3901(7481)
↓平均抵抗能力:3952(7573)
↓平均速度能力:4403(8455)

・スキル
 
 地竜LV9,龍鱗LV7,甲殻LV7,鉱体LV5,
 HP高速回復LV8,
 MP回復速度LV9,MP消費緩和LV7,魔力操作LV1,魔闘法LV5,
 SP回復速度LV9,SP消費大緩和LV2,気闘法LV4,
 破壊強化LV6,打撃強化LV5,斬撃強化LV5,貫通強化LV4,衝撃強化LV6,
 火炎強化LV3,土強化LV8,毒強化LV2,麻痺強化LV1,
 火炎攻撃LV2,土攻撃LV9,毒攻撃LV4,麻痺攻撃LV2,
 立体機動LV6,
 集中LV10,思考加速LV4,予見LV4,並列意思LV4,記録LV3,高速演算LV6,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV4,隠密LV10,迷彩LV7,無音LV10,無臭LV6,
 鑑定LV9,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV9,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV4,打撃耐性LV3,斬撃耐性LV3,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV4,
 火炎耐性LV1,水耐性LV1,大地無効,雷耐性LV1,重耐性LV2,
 猛毒耐性LV8,強麻痺耐性LV5,呪い耐性LV1,睡眠耐性LV6,強酸耐性LV5,腐蝕大耐性LV1,
 恐怖耐性LV5,外道大耐性LV6,苦痛無効,痛覚軽減LV4,
 視覚強化LV10,望遠LV2,聴覚強化LV10,聴覚領域拡張LV1,
 嗅覚強化LV8,味覚強化LV2,触覚強化LV7,
 神性領域拡張LV1,
 天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,
 剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV3,
 n%I=W

・スキルポイント:22800

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁呪い属性による弱体化の効果が薄まる時間について
HPをごりごり削っていく毒や、体の動きを封じる麻痺と比べると、能力値の弱体化というのは
まだマシだと考えられる為、この小説では効果が薄まるのにかかる時間は、毒や麻痺よりも
多めに設定している。いちおう、呪い耐性のレベルが高いほど弱体化が速く治るようになってる
原作で呪い属性を扱っているのが蜘蛛子ぐらいで、しかも見続けて永続的にダメージを与える
邪眼ぐらいしか描写がなかったから、ここら辺は独自設定にせざるを得ないと思う





➂で、D様なにしてるの?
「面白そうなことになる予感がしたので、うっかり干渉してしまいました」とのこと
なお、生きるか死ぬかの分け目を弄った自覚はお有りなため、一応もしもの場合には、
命の保障はしてあげる予定の模様


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VS猿③

さいきん調子悪いせいか、投稿が遅れました……。
これ内容大丈夫かなーとか思いながら書いたこともあるけど、原作が原作だから今更ではあるか、と思い直しました。
とりあえず、この作品の原作は「蜘蛛ですが、なにか?」ですので、あしからず。


カースアノグラッチを、10体ほど尻尾で叩き潰す。

尻尾で攻撃されたアノグラッチたちのHPは、たちまち0になった。

十体分の怨念のスキルが発動するけど、今の抵抗能力と呪い耐性により能力値はほとんど下がらない。

MPやSPは多少減るけど、そのぐらいの量なら許容範囲内だ。

 

続いて、十分なインターバルを置いたうえで、カースアノグラッチに噛みつき攻撃を仕掛けていく。

噛みつかれたアノグラッチのHPは、例外なく無くなっている。

5体目に噛みついたところで、その体を牙に突き刺したまま、群れからいったん離れた。

いまだに吠え続けるカースアノグラッチの群れの様子を気にしながらも、倒したアノグラッチを食べてSPを回復させる。

 

怨念のスキルで呪い属性のダメージを受けることを覚悟したうえで攻撃し始めてから、だいぶ時間が経った。

自分なりにしっかりとした対処をしているおかげか、状況は良くなる傾向にあった。

 

一体分の怨念によるダメージがそこまでではないことを確認した後、まずは二体同時にHPを0にしてみた。

結果、一体分よりはMPとかへのダメージは大きかったけど、MP回復速度などのスキルの効果もあって、そう時間が経たないうちにダメージ分は回復した。

なので、複数体を同時に倒しても深刻な問題にはならないと判断して、情報を集めながらカースアノグラッチたちと戦い続けた。

 

まず怨念のスキルについて、時間差でカースアノグラッチを倒した際に、それぞれの分の呪い属性のダメージが一つの物として認識されないようにするためのインターバルがどれくらいなのかを、演算担当の並列意思に導き出してもらった。

それが分かったら、同時に何体まで倒しても問題ない範囲で収まるのか、自分のステータスの減少ぐらいを細かに観察しながら探っていった。

倒したアノグラッチのステータスなども記録して、関係あるかどうかもチェックしている。

そうして情報を集積していき、最終的には私が大丈夫だと判断できる範囲内で最大となるペースでカースアノグラッチたちを倒していくようになった。

 

カースアノグラッチは魔物のなかでは頭がいいようで、私の動きに対策をしてきたこともあった。

だけど、私の元々のステータスの高さと、思考加速といったスキルで強引に突破することができた。

これから打つ手には注意しておく必要があるだろうけど、今のところは大きな障害はない。

 

そうしてカースアノグラッチをどんどん倒していくうちに、経験値がたまってレベルアップした。

レベルアップすると、HP・MP・SPが全回復する。

最初に百体近くを同時に倒したことで怨念のスキルにより削られたMPやSPも、このおかげで回復している。

MPやSPの減少も地味に気にしておかないといけなかったけど、それが少し楽になった気持ちだった。

 

呪い耐性のレベルも、怨念によるダメージは受けていることで上がり続けている。

この耐性スキルの強化は、敵の数を減らすことと同じくらい現状では重要なことなので、結果が出ていて良かったと本当に思っている。

能力値が元に戻っていくペースも、呪い耐性のレベルが高くなるほど上がっていって、だいぶ回復してきた。

レベルアップでの能力値の増加もあるし、今の状態だと戦闘開始時から少し劣るぐらいの能力値になってるかな。

 

他にも、戦闘中に使っているものを中心に、いくつかのスキルのレベルが上がっている。

MP回復速度とSP回復速度についてはLV10になったことで進化して、それぞれ効果が上がったMP高速回復とMP高速回復のスキルになっている。

レベルアップで満タンになるけど、怨念のスキルで減った際も素早く回復されるようになったのは嬉しい。

まあMPに関しては、地竜のスキルに含まれる特殊効果でさらに回復力が増しているけど。

 

『フェネグラッド LV25 名前 大原 雅美

 ステータス(低下中)

 HP:9115/9115(緑)

 MP:8466/8527(青)

 SP:9245/9308(黄)

  :9183/9246(赤)

↓平均攻撃能力:7099(9017)

↓平均防御能力:7291(9387)

↓平均魔法能力:6706(8305)

↓平均抵抗能力:6761(8401)

↓平均速度能力:7269(9340)

 スキル

 地竜LV9,龍鱗LV7,甲殻LV7,鉱体LV5,

 HP高速回復LV9,

 MP高速回復LV1,MP消費緩和LV7,魔力操作LV1,魔闘法LV5,

 SP高速回復LV1,SP消費大緩和LV2,気闘法LV4,

 破壊強化LV6,打撃強化LV5,斬撃強化LV5,貫通強化LV4,衝撃強化LV6,

 火炎強化LV3,土強化LV8,毒強化LV2,麻痺強化LV1,

 火炎攻撃LV2,土攻撃LV9,毒攻撃LV4,麻痺攻撃LV2,

 立体機動LV7,

 集中LV10,思考加速LV6,予見LV6,並列意思LV4,記録LV4,高速演算LV7,

 命中LV10,回避LV10,確率補正LV7,隠密LV10,迷彩LV8,無音LV10,無臭LV7,

 鑑定LV9,探知LV10,

 影魔法LV3,

 過食LV9,

 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,

 破壊耐性LV4,打撃耐性LV4,斬撃耐性LV3,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV4,

 火炎耐性LV1,水耐性LV1,大地無効,雷耐性LV2,重耐性LV3,

 猛毒耐性LV8,強麻痺耐性LV5,呪い耐性LV5,睡眠耐性LV7,強酸耐性LV5,腐蝕大耐性LV1,

 恐怖耐性LV4,外道大耐性LV7,苦痛無効,痛覚軽減LV5,

 視覚強化LV10,望遠LV2,聴覚強化LV10,聴覚領域拡張LV1,

 嗅覚強化LV8,味覚強化LV2,触覚強化LV7,

 神性領域拡張LV1,

 天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,

 剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,

 呉爾羅LV10,

 禁忌LV10,命名LV3,

 n%I=W

 スキルポイント:23200』

 

そんな感じでスキルがレベルアップしたりステータスが回復・増加する一方で、少しずつではあるけれど、カースアノグラッチを倒していった。

一度に倒す数は全体からすると微々たるものでしかないけど、それを何回も積み重ねることで、着実に相手の戦力を削っていってる。

当初は無限に増え続けるかと思われたアノグラッチの群れだけど、相当の数を倒した今では、その規模が確実に縮小していることが分かる。

まだまだ残ってるけど、ステータスの抵抗能力が元の数値に戻りつつあって、呪い耐性のレベルも上がっている現状なら、今のやり方でどうにか倒し切ることができると思う。

 

呪い属性に対する確かな対処法を手に入れた今なら、この数相手でも勝つことができる。

今のやり方をずっと続けていれば、生き残ることは確実のはず。

 

 

そう考えているはずなのに、さっきからどうしても不安がぬぐえない。

私のその考えをひっくり返すようなことがこれから起きてしまうような、そんな気がしてしまう……。

嫌な予感が、私の心をどんどん侵食していくのを感じる。

その兆候を見逃さないようにはしているんだけど、その原因となりそうなものに全く見当がつかないから、対処しようがない。

 

 

そして、ついに嫌な予感は現実のものとなって襲い掛かってくる。

 

大規模なカースアノグラッチの群れの一部、それでも数百体という決して少なくはない数が、信じられない行動を取り始めた。

自身の首を両手で掴んで、思い切り握りしめているのだ。

数多くのアノグラッチたちが、自分で自分のHPを減らしていき、自らの命を削っていく。

カースアノグラッチは、もともと防御能力よりも攻撃能力の方が高い傾向にある魔物。

攻撃と防御の能力の差は、自身の能力値を倍増させる激怒のスキルの効果で広がっているため、自分自身を害しているアノグラッチたちのHPはどんどん減少していく。

 

自分で自分の命を絶ちにいくという、私なら絶対に取らないであろう光景に、思わず思考が停止してしまいそうになる。

だけど、カースアノグラッチたちがそんな行動を取り始めた理由に思い至った瞬間、背筋が凍り付きそうになった。

 

私は最初、およそ百体分のカースアノグラッチが持つ怨念のスキルによるダメージをいっぺんに受けた結果、能力値が大幅に低下した。

だからこそ、こうして何回にも分けて少しずつ倒すことで、一気にステータスが下がってしまうような事態は二度と起こさないようにしてきた。

それを、カースアノグラッチたちは、自分たちの方からHPを0にすることで起こそうとしている。

自らの命と引き換えに。

 

生まれ変わってから自分の命を必死に守ってきた私にとっては異常すぎる行動に戦慄する。

けど、それ以上に、このカースアノグラッチたちの自害をどうにか止めないといけないという焦りが湧き上がってくる。

いくらステータスが回復してきて、呪い耐性もある程度ついてきたからって、数百体分の怨念の効果を一度に受けて無事で済むはずがない。

今までと同じペースで倒していくだけじゃ、到底間に合わない。

どうにかして、せめて一度に襲い掛かってくるダメージを減らさないと……。

 

思考能力を限界まで高めて、対処法を模索する。

そのおかげで、どうにか短時間で思いつくことができた。

完璧とはとても言えない方法だけど、しないよりはずっとマシだ。

既にカースアノグラッチたちの方に駆け出した体に指令を出して、考え付いた対処法を実施する。

 

走っている勢いのまま跳躍し、自分のHPを減らし続けるアノグラッチたちのところまで一気に飛んでいく。

着地するまでの間に、頭に腕に尻尾、攻撃に用いるための全ての部位に、麻痺攻撃のスキルで属性の付与を行なっておく。

そして目的の集団まで辿り着いた瞬間、私は麻痺属性が付与された攻撃を、怨念を発動させようとするカースアノグラッチたちに食らわせた!

 

攻撃を喰らったアノグラッチたちの何体かは麻痺状態になり、体を動かせなくなる。

こうして麻痺させた状態にして行動できなくすれば、自分のHPを減らすこともできなくなる。

時間が経てば麻痺も解除されていくだろうけど、これが今思いつくことができる唯一の方法だった。

 

だけど、思った以上にうまくいかない。

攻撃の威力が高くて、麻痺にするよりもHPを0にしてしまった個体の方が多い。

おかげで、許容範囲を超える数の怨念を発動させてしまった。

まだ自分のHPを減らしているカースアノグラッチは多いというのに、この調子だとますい。

 

できるだけ、攻撃の威力を殺すことを意識する。

打撃や衝撃によるダメージを限りなく0に近づけて、ほぼ触れるような感じで麻痺状態にするようにしないといけない。

とにかく、攻撃を加えたカースアノグラッチのHPを0にしないように注意して立ち回った。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『手加減LV1』を獲得しました》

 

そのうち、手加減なんていうスキルを手に入れた。

効果を確認している余裕はないけど、このスキルを獲得してから、HPを残したまま麻痺状態にできたカースアノグラッチの数がかなり増えたから、今の状況に役に立つスキルなんだと思う。

このタイミングでこのスキルが手に入ったのは、ありがたかった。

 

だけど、怨念を発動させようと自分のHPを減らすカースアノグラッチだけに注意していることはできない。

私が飛び込んだのは、前後左右にカースアノグラッチが存在している群れの中。

自害しようとしている個体を除いたアノグラッチたちが跳びあがり、まさに雨あられのように私へと襲い掛かってくる。

思考加速とかのスキルや、高速演算によって算出した回避ルートを使って、攻撃をできるだけ受けないように避けていく。

なんとか大半の攻撃は回避することができたけど、流石に全ての攻撃を避け切ることはできなかった。

 

カースアノグラッチの直接攻撃には、呪怨のスキルの効果で呪い属性が付与されている。

つまり、直接攻撃を受けた分だけ、呪い属性のダメージを受けることになる。

現状では呪怨により受けたダメージはそこまでではないけど、四方をカースアノグラッチに囲まれている以上、攻撃を受けることは避けられない。

そのうち、呪い属性のダメージが蓄積して、能力値が下がり始めることになる。

こうなった以上、怨念だけじゃなくて呪怨によるダメージにも気を付けなくちゃいけない。

 

襲い掛かってきた個体にも、反撃に麻痺属性が付与された攻撃を喰らわせて麻痺状態にしている。

こうして全ての個体を麻痺させて動けなくさせることができればいいんだけど、そうする前に麻痺が解けてしまう個体が出てくるから現実的じゃない。

自分のHPを0にして怨念を発動させようとするアノグラッチを中心に麻痺状態にしていって、一度に発動する怨念の数を調整しながら、少しずつ数を減らしていくしかない。

言うのは簡単だけど、実際にやるとなると厳しいにも程がある。

 

自分のHPを減らしているカースアノグラッチが一斉に怨念を発動しないように麻痺させなくちゃいけないわけだけど、そのなかから怨念のダメージが許容範囲内に収まる程度に選んで数を減らす必要もある。

だけど、自分に襲い掛かってくる個体も場合によっては倒す必要があるから、自害しようとする個体と攻撃してくる個体とでバランスを考えながら倒さないといけない。

しかも、襲い掛かってくる個体の呪怨攻撃も警戒する必要まであるから、可能な限り攻撃を受けないようにして、という条件もついてくる。

この状況で呪い属性のダメージを抑えながら戦っていくのに、どれだけのことを考慮する必要があるのか。

その時点で怨念を発動させようとしている個体数、一体一体のHPの残量、攻撃をかわすための回避ルート、一体ごとの麻痺が解除されるまでの予測時間、その他諸々……。

考えるだけで、もう嫌になってくる。

 

嫌な予感はしていたとはいえ、まさかここまで大変なことになるとは思っていなかった。

だけどこうなった以上、覚悟を決めるしかないってことは経験上よく知ってる。

使えるスキルを全開で使っていって、思考能力を最大まで高めて、戦っていくしかない……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうやって戦い始めて、どれだけの時間が過ぎたのかも、よく分からない……。

目の前の戦いに意識を集中しすぎて、長い時間が過ぎたのか、それとも大して時間は経っていないのか、時間の間隔がとても曖昧になってる……。

とにかく、大量のアノグラッチを倒したことは覚えている……。

それと、私の方も呪い属性のダメージをたっぷり受けてしまっていることも……。

 

呪怨と怨念の両方に警戒を払い、できるだけ呪い属性のダメージを受けないように立ち回ったつもりだった。

だけど、持っているスキルを全力で使っていっても、一度に多くのカースアノグラッチに怨念を発動させてしまったり、何体からも同時に呪い属性が付与された直接攻撃をくらってしまうことを、何度か許してしまった。

並列意思二つ分を演算に集中させているけど、アノグラッチの膨大な数を相手にダメージを抑えられると考えたのが、そもそも無謀に過ぎたのかもしれない。

この戦いで多用しているおかげか、思考加速・予見・並列意思・高速演算とかのスキルのレベルが上がって、さらに増えた並列意思を演算のために使うことで回避能力は上がっているはずだけど、それでも相手の数の暴力には勝てなかった。

速度能力を始めとした能力値が、どんどん下がってしまっているせいもあったと思う。

 

そうして呪い属性のダメージが積み重なってしまって、能力値は目をそむけたくなるほど下がってしまっている。

ダメージを受けることで呪い耐性のレベルも上がっていったけど、それ以上に抵抗能力が低下してしまっていることで呪いを防げなくなっていった。

呪いへの防御が下がってしまうことで受けるダメージが大きくなり、さらにダメージを受けることで防御が更に弱まり……という悪循環で、どんどん私は弱体化していってしまった。

 

それでも、これまでの時間の分だけカースアノグラッチを倒していくことができたのも確かだった。

私のステータスが低下していくのと比例するようにアノグラッチたちの数も減っていき、この場所に溢れるばありに集っていたのが、まばらな感じになったと言ってもいいほどまでに減少した。

少なくとも私にとっては、これは勝利への希望と呼ぶには十分な成果だった。

あともう少し戦い続ければ、このカースアノグラッチたちとの戦いに勝利できるはずだ。

 

 

 

あの魔物が現れなければ。

 

 

 

『カースバグラグラッチ LV18

 ステータス

 HP:1332/1332(緑)(詳細)

 MP:419/419(青)(詳細)

 SP:1256/1297(黄)(詳細)

  :1083/1262(赤)(詳細)

 平均攻撃能力:1284(詳細)

 平均防御能力:1159(詳細)

 平均魔法能力:306(詳細)

 平均抵抗能力:324(詳細)

 平均速度能力:1196(詳細)

 スキル

 投擲LV9,立体機動LV9,連携LV9,命中LV9,呪怨LV5,矜持LV3,過食LV3,休LV3,

 暗視LV10,視覚領域拡張LV3,毒耐性LV5,呪い耐性LV4,腐蝕耐性LV3,

 生命LV6,瞬発LV6,持久LV6,剛力LV3,堅牢LV3,疾走LV6

 スキルポイント:3200

 称号

 悪食、魔物殺し、魔物の殺戮者』

 

アノグラッチと同じように猿に似ているけど、アノグラッチの数倍の大きさはある魔物だった。

巨大なワニのような口を持ち、その口から凶悪な牙がはみ出しているのが見える。

種族名から考えて、カースアノグラッチの進化形と思われる大きな魔物が、おそらく増援としてやってきていた。

 

アノグラッチの倍近くの数のスキルを持っているけど、激怒や復讐、怨念といった対アノグラッチで厄介なスキルは何故か見当たらない。

だけど、呪怨のスキルは持っているわけだから、この魔物の直接攻撃にも注意する必要はある。

なにより、激怒のスキルなしで高いステータスを持っていることが、この魔物が脅威となる最大の理由だった。

今の私の大きく弱体化した能力値で対処しきれるかどうか、半々よりも悪い確率だと思う。

 

そんな魔物が、5体もいる。

 

……いちおう、今まで温存してきた手を使えば、勝てる確率を上げることはできるとは思う。

それでも、この状況で「必ず勝てる」だなんて決して思うことはできない。

アノグラッチの呪怨や怨念のスキルで散々苦しめられた挙句に、その進化形と思われるバグラグラッチにステータスの差で負けることになるかもしれないなんて。

まったく、皮肉すぎて笑うかもしれない。

 

……今回ばかりは、本当にダメかもしれない……。

 

 

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス
 
フェネグラッド LV27 名前 大原 雅美
 
・ステータス

 HP:9554/9554(緑)
 MP:6127/8950(青)
 SP:4864/9753(黄)
  :2198/9689(赤)
↓平均攻撃能力:1331(9449)
↓平均防御能力:1538(9834)
↓平均魔法能力:928(8727)
↓平均抵抗能力:980(8825)
↓平均速度能力:1519(9790)

・スキル

 地竜LV9,龍鱗LV8,甲殻LV8,鉱体LV6,
 HP高速回復LV9,
 MP高速回復LV3,MP消費緩和LV8,魔力操作LV2,魔闘法LV5,
 SP高速回復LV3,SP消費大緩和LV3,気闘法LV4,
 破壊強化LV6,打撃強化LV5,斬撃強化LV5,貫通強化LV4,衝撃強化LV6,
 火炎強化LV3,土強化LV8,毒強化LV2,麻痺強化LV4,
 火炎攻撃LV2,土攻撃LV9,毒攻撃LV4,麻痺攻撃LV5,
 立体機動LV8,手加減LV4,
 集中LV10,思考加速LV9,予見LV9,並列意思LV5,記録LV5,高速演算LV8,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV9,隠密LV10,迷彩LV8,無音LV10,無臭LV7,
 鑑定LV10,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV9,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV4,打撃耐性LV6,斬撃耐性LV3,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV5,
 火炎耐性LV2,水耐性LV2,大地無効,雷耐性LV3,重耐性LV3,
 猛毒耐性LV8,強麻痺耐性LV6,呪い耐性LV8,睡眠耐性LV7,強酸耐性LV5,腐蝕大耐性LV2,
 恐怖耐性LV6,外道大耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV6,
 視覚強化LV10,望遠LV2,聴覚強化LV10,聴覚領域拡張LV2,
 嗅覚強化LV8,味覚強化LV2,触覚強化LV7,
 神性領域拡張LV1,
 天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,
 剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV3,
 n%I=W

・スキルポイント:23400

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者、魔物の殺戮者

➁今作オリジナルの種族の説明

○種族「カースバグラグラッチ」
概要:カースアノグラッチの進化先。通常のバグラグラッチと同じように、激怒や復讐、
   それに怨念などのアノグラッチならではのスキルを進化することで失っている
   復讐のスキルがなくなったことによって数の暴力という危険性もなくなったが、
   強力な効果のスキルを失った見返りか高いステータスを得ている。相手の能力値を下げる
   呪い属性については呪怨のスキルが残っているため扱うことができることも含め、
   単体での危険度はAに近いBランクとなっている

➂今作における呪い属性の仕様についての追加記載
転生者特有のレベルアップによる全回復で、呪い属性で弱体化している能力値は治らない
という設定。仮にレベルアップで治ったら、ここまで追い詰めることはできないため(メタ)
もし原作にレベルアップにより石化以外の状態異常も治る描写があったら、この戦いでは
状態異常が治らないように()()()()()という認識で

➃スキル「手加減」について
具体的な効果についての記載はないが、原作にも登場はしているスキル。魔物の調教師が
持っていそうなスキル。鑑定で調べた際の説明文が思いつかないため、今のところ名前だけ

➄Q.怨念発動させるためとはいえ自害する?アノグラッチとはいえ
 A.激怒のスキルで状態異常「狂化」になっているし、する可能性は高い。アノグラッチだし


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VS猿④

うん、気が付いたら前回の投稿から半年経ってました。
お待ちいただいた方、申し訳ございません。

そして、ついにWeb版・書籍版ともに原作が完結。
原作者の先生、ご執筆ありがとうございました。大変お疲れ様でした。

さて、今回は内容がかなりボリューミーなものとなっております。
だいぶ久しぶりの更新ですが、お楽しみいただけると幸いです。

2022/05/15
・後書きの「➀主人公のステータス」のスキル一覧に、新しく獲得した「気絶耐性LV1」を追記しました。


まず、今まで温存していた技を使う。

呪い属性のダメージでHP・MP・SPも減少しているから、このMPと赤い方のSPを消費する技はできれば使いたくなかった。

だけど、もう消耗を気にして戦っている場合じゃない。

今の自分の状態のステータスと大差ない強さの敵が複数いるからには、出し惜しみはしない。

 

細胞活性、発動。

並行して、魔闘法と気闘法のスキルもオンにする。

 

これらのスキルを発動することで、自分自身の能力値を一時的に上昇させる。

呪い属性により下がった分を全部取り戻せるほどじゃないけど、それでも今の状態なら十分に大幅な強化になる。

もっとも、この系統のスキルを使っている間はMPとSPが消費されていくから、いつまで使えるのか気にしておく必要はあるけど。

とにかく、少しのあいだだけとはいえステータスを上昇させておけば、一対多数の状況でもどうにか戦えるようにはなったはず。

とは言っても、油断なんてできるわけがない。

 

細胞活性とかのステータス強化系スキルをオンにした瞬間、5体いるカースバグラグラッチのうち一体が、こっちに駆け出してきて攻撃を仕掛けてくる。

速度能力が今の私とたいして違わないせいか、かなり速く動いているように感じる。

細胞活性や魔闘法とかのスキルを使っても速度能力は上がらないから、この攻撃を回避するには他のスキルに頼るほかない。

高速演算のスキルで計算を行い、回避するためのルートを頭の中で導き出す。

 

思考加速や予見などの他のスキルの力も借りながら、一応算出できた回避ルートに従い、迫ってきたカースバグラグラッチの攻撃をかわす。

けど、回避した先には、離れた場所から一気に跳躍してきた他のバグラグラッチが、空中から私に攻撃を仕掛けようとしてきていた。

熱線で迎撃――ダメだ、放つ前に直撃を受ける。

ギリギリのところで回避を選択し、相手の攻撃が掠りながらも距離を取っていく。

だけど、そうして距離を取った先にもカースバグラグラッチがやってきていて、私に攻撃をくらわせようと待ち構えていた。

 

気が付いたら、そんなことを繰り返すループの中に嵌まってしまっていた。

おそらくカースバグラグラッチたちが所持している高レベルの連携のスキルが可能としている、ピッタリ息の合った連携攻撃を受け続けるしかなくなってしまっている。

高速演算のスキルでどうにか攻撃をかわすルートは導き出せているけど、相手の連携がうますぎるせいで、こっちが攻撃できるスキを作ることができない。

……スキル云々とは別の、自分自身の戦闘経験の少なさにも原因があることは否定できなかった。

 

今まで複数の魔物を相手に戦ったことはあるけど、連携のスキルがある相手は、数の多さを活かした戦い方をしてくるから、こっちにとっては戦いづらいことこの上ない。

この連携に、アノグラッチたちが加わっていないことが幸いだった。

私からの攻撃と自身の怨念発動を狙った行動でだいぶ数を減らしたからか、バグラグラッチがやってくる前のような積極的な動きは見せず、カースアノグラッチたちは私とバグラグラッチとの戦いを傍観するようになっていた。

あるいは、強力な援軍であるカースバグラグラッチたちが襲撃に参加したことで、私との戦いは自分たちの勝利で決まったと思っているのかもしれない。

この連携攻撃をどうにかしないとそうなる可能性が高いわけだから、笑えない。

 

今のところカースバグラグラッチ達からの攻撃は掠る程度に抑えられているけど、このまま連携が続いていけば決定的な一撃を受けるかもしれない。

それに、掠るだけでも呪い属性のダメージを受けているから、実は現時点でも明らかな形で、じわじわと追いつめられている。

いい加減、私のターンに入らせてもらうことにする。

 

攻撃を避けるために横に跳躍して、その先に待ち構えているバグラグラッチを視界におさめる。

予見のスキルを使い、そのバグラグラッチの次の動作を映像という形で捉える。

どうやら、私の正中線を狙って大きく振りかぶってからぶん殴るつもりみたいだ。

カースバグラグラッチの前に着地した瞬間、その光景通りに攻撃は放たれ、私はその攻撃を受けた。

 

だけど、ダメージを受けたわけじゃない。

体に当たる前に、真剣白刃取りのように両腕で挟み込むことで、カースバグラグラッチの攻撃を受け止めていたから。

 

なにも高速演算は、相手の攻撃を避けるためだけにしか使えない訳じゃない。

相手の攻撃をちょうどいいタイミングで防御することにだって使える。

私がさっきから回避に専念しているから、カースバグラグラッチたちの連携も私が回避することを前提としたものになってる。

だから、こうして急に防御に切り替えることで、目の前のバグラグラッチを倒せるだけの隙を作ることができた。

 

しっかりとカースバグラグラッチの腕をつかみながら、熱線を放つ準備をする。

私が攻撃しようとするのに気づいて相手は暴れ始めるけど、もう遅い。

十分にチャージしたのち、私は目の前のバグラグラッチに向けて引力熱線を発射した。

 

通常の熱線にキングギドラの引力光線のパワーを加えたような見た目の熱線がカースバグラグラッチに直撃し、その一撃でHPを削り切った。

それなりのダメージになるとは思っていたけど、まさか一撃で倒せてしまうとは思わなかった。

HPが0になったバグラグラッチは、絶命して背中から倒れていった。

 

《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV27からLV28になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『高速演算LV8』が『高速演算LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『睡眠耐性LV7』が『睡眠耐性LV8』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『望遠LV2』が『望遠LV3』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

カースバグラグラッチを一体倒して得た経験値で、レベルアップしたみたいだ。

呪い属性で低下している能力値が元に戻るわけじゃないけど、MPとSPが全回復してくれるから有難い。

細胞活性とかで消費した分も、これで回復できたわけだ。

 

レベルアップも嬉しいけど、引力熱線による攻撃が予想以上に強力だったのも嬉しい誤算だった。

こっちはスキルで底上げしているとはいえ、ステータスに大差がなかった相手を一撃で倒せるなんて……。

重耐性を持たない相手には、防御をある程度無視してダメージを与えることは知っていたけど、いざ接戦で使ってみて真価が分かった気がする。

この熱線があるなら、カースバグラグラッチが複数相手でも戦っていけるかもしれない。

 

残りのバグラグラッチたちは、仲間を一撃で倒した私の技を警戒してなのか、積極的に攻撃を仕掛けてくるのをやめて慎重にこちらの様子を窺うようになった。

能力値がだいぶ弱体化しちゃったから弱気になっていたけど、気持ちが落ち着いた今なら、冷静に戦えば勝機は十分にあると考えることができる。

あとは、カースアノグラッチたちの行動にも注意を払いながら一体一体倒していければ――!?

 

 

プツリと、私の中で糸が切れるような感覚が駆け巡った。

その直後、視界がグラリと大きく揺らいだ、気がした。

慌てて足に力を込めて、どうにか体勢を保つ。

 

なにが……一体なにが起こったの……?

なんらかの攻撃を受けた……という訳じゃないと思う……。

なんだかよく分からないけど……さっきまでとは世界の見え方が全然違う……

 

突然おそってきた不調をこらえながら、その原因を明らかにするため今の自分の状態を確認していく。

すると、思考加速や予見の効果が切れていることに気づいた。

さっきのが原因でスキルがオフになったのかもしれない、急いで再発動しないと――!?

 

スキルが、発動しない――!?

そんな……噓でしょ!?

いったいなんでこんなことに……!?

まさか、スキルを使い過ぎたから……!?

スキルをあまりにも長時間使い過ぎたから、不具合を起こして発動しなくなったの!?

 

もしかして、この精神的な不調も、スキルが発動しなくなったことが原因……?

そうだ!集中のスキル!

スキルの効果で集中力を長い時間保ち続けていたところに、その効果が切れたことで集中力もなくなって、精神的な疲れが一気に襲い掛かってきたんだ……。

 

まずい。

精神系スキルがあったからこそ苦しい状況でも戦うことができていたのに、それらが使えなくなったのは命取りだ。

それでも、戦える状況にまで持ち直さないと。

 

スキルに頼らずに集中しなおそうとするけど、うまく頭が回らない。

今まで集中のスキルがあったからこそ無視できていた精神的疲労が、私の思考を大きく妨げてくる。

呪い属性で能力値が大幅に下がっているからか、体もすごくだるい。

スキルが使えないどころか、ろくに頭も体も働かせられない。

こんな状況で、戦うなんて――。

 

 

――気が付いたら、思考するだけでいっぱいいっぱいになっていた私の横っ面に、カースバグラグラッチの拳が叩き込まれていた。

完全に予想外の事態に激しく動揺し、隙だらけな状態を見せ続けている今の私は、敵にとって格好の攻撃の的だった。

 

その攻撃を始めとして、私に襲いかかってきた1体のカースバグラグラッチはどんどん攻撃を繰り出してきた。

バグラグラッチの攻撃はスキルの効果で呪い属性が付与されていて、それを受けるということは私にとって能力値の更なる低下という戦況悪化に繋がる。

そんなことは嫌というほど分かっているのに、心身ともに絶不調に陥ってしまい、スキルもまともに使えない今の私は、避けることもできずに相手の攻撃を受け続けることを許してしまっている。

そして、呪い属性のダメージが私の体にどんどん蓄積していき、ただでさえ著しく低下している能力値がより削られて、さらに窮地へと追い込まれていく。

 

さっきまで1体だけ攻撃に出させて様子見していた他のカースバグラグラッチも、もはや私の勝利の可能性は完全に失われたと見たのか、今まで攻撃を加えてきた1体に加勢して連携を取りながら攻撃を仕掛けはじめた。

呪怨の恩恵を受けて私にダメージを与えてくる相手が1体から4体に増えたことで、呪い属性による能力値の低下のペースはさらに上がっていく。

抵抗能力のステータスが下がることで呪い属性への耐性も弱くなり、能力値全体が加速度的に下がるようになってしまった。

 

 

このままだと、まず間違いなく私は敗北して、死ぬ。

この状況をどうにかするための一手を打たなきゃ生き残れないのに、この自分自身の絶体絶命の状況を、私はまるで他人事かのように、ぼんやりと認識していた。

生まれ変わってから、ずっと自分の生に執着していた私の思考は、自分の生死がかかった場面で在り得ないほど曖昧なものになっていた。

原因は、この長く続いている戦いのなかで厚く積み重なった精神的疲労か、逆転の術が全く分からず心が敗北を受け入れてしまいそうになる絶望的な戦況か、あるいはその両方か。

自分が思いつく限りのやれることはやり切ったから、敗北という結果だろうが受け入れてしまえ、という気持ちもあったのかもしれない。

 

 

――だけど、それと同時に、頭のなかが比較的クリアな状態になっているからか、自分のなかに確かにある《それ》の存在を、私は感じ取れるようになった。

 

 

《それ》は、まるで膨大なエネルギーが凝縮されているようで、常に高熱を放ちながら私の中に存在している――ような感じがした。

その存在を感じ取ったことで、疲弊しきったはずの体と心にも、少なからず力が入ってくるような感覚がした。

呪い属性によって能力値がどんどん低下していくという絶望的状況が変わった訳じゃないし、そんな状況を打開するためのいい作戦が思いついたわけじゃない。

だけど、策なんて何も思いつかないまま、まだ生きあがくことができるだけの力は体に残っている、そんな私の心は、一つの決断を下した。

 

 

 

 

 

――気の向くままに、力を振るってしまえ。

 

 

 

 

 

今までの私は、いくつものスキルの補助を得たうえで思考と計算を重ねることで、戦闘における自分の優位を確立しようとしてきた。

だけど、今の私はそれらのスキルを使うことができず、ろくに頭を働かせることもできない。

なら――これが例え自分の最期の戦いになるとしても、いや、だからこそ!――いっそのこと、自分の心が赴くままに動きながら戦っちゃえばいい、と私は思うようになっていた。

 

喜びのあまり、思わず歓声を上げてしまうように。

悲しみのあまり、激しく泣き出してしまうように。

 

 

何も考えず、ただ衝動のままに、この力を――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、私の意識が現実に戻ってきた時、そうして行動した結果を目の当たりにした。

私に攻撃を加えていたカースバグラグラッチのうち2体が、オレンジ色に発光する泥のようなものに塗れた状態で、仰向けに倒れて絶命していた。

 

この光景を最初に見て、どうしてカースバグラグラッチが倒されているのか、という疑問が浮かんだ。

呪い属性の効果で本来の数値通りの力をほとんど発揮できない今のステータスじゃ、よっぽどの手段を使わない限り私を上回る能力値を持つバグラグラッチを倒すことなんてできないはずなのに。

しかも、倒したのが2体なら、なおさらの話だった。

だけど、HPが0になったカースバグラグラッチに纏わりついているドロっとしたものを鑑定して、それが何なのか分かったことで、自分がどのような方法で敵を倒したのかを、なんとなく理解した。

 

他のカースバグラグラッチの様子を見てみると、倒した2体ほどではないにしろ、そのオレンジ色に光る泥のようなものが体にくっついていて、それを振り払おうと腕や足を振り回すほど必死になっているようだった。

確認のために鑑定してみたら、()()()()その2体のHPが削られていっていることが分かった。

そのことを確認した私は、さっきは何も考えずに使っていた技を、今度は頭で理解しながら使用する。

 

 

地竜のスキルと、呉爾羅のスキルを同時に発動。

それぞれのスキルの効果で生まれた土属性の力と火属性の力を、口の中にため込みながら融合させる。

そして、自分の望む形で一つになったら、それを一気に解き放つ!

 

そうして解き放たれたものは、私の攻撃を回避する余裕がなくなっている2体のカースバグラグラッチに襲いかかった。

最初は光線のように真っすぐ放つことができたけど、時間が経つと勢いがなくなっていって、ホースから出る水のように、私の口から出ていくと直ぐに下に落ちていくようになるのが目でわかる。

この攻撃を受けたカースバグラグラッチたちの方は、浴びたものが先ほどのオレンジ色のドロッとしたものになって纏わりつき、それに比例するかのようにHPの減少するペースが急激に上がった。

バグラグラッチたちのもがく動きがさらに激しくなって、振り払われるドロの量も多くなるけど、2体のHPは凄まじい勢いで減っていく。

やがて、2体の動きは弱弱しいものに変わっていき、ピクリとも動かなくなるころには、2体のHPは0になっていた。

 

 

これが、偶然にも作り出した、私の新しい武器となる技術だった。

地竜のスキルなどで作り出した土属性の物質に、呉爾羅のスキルで発生させた火属性のエネルギーを加え、熔岩のように高熱を発するモノにして、攻撃として相手にぶつける。

この攻撃は、相手に当たった際にダメージを与える他、形のある物として相手にくっつき、その熱により接触しているあいだはダメージを与え続けることができるようだ。

分かりやすく言うなら、他の属性で毒を再現したようなもの、といった感じかもしれない。

 

名づけるなら、「熔岩熱線」……かな?

 

 

《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV28からLV29になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『火炎強化LV3』が『火炎強化LV4』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『神性領域拡張LV1』が『神性領域拡張LV2』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

 

カースバグラグラッチを4体倒した経験値で、レベルアップした。

これで、呪い属性のダメージでかなり減っていたMPとSPが全回復した状態に戻った。

とはいえ、カースバグラグラッチたちの攻撃で大きく低下してしまった能力値は戻らない。

 

思わぬきっかけで逆転して、この場にいるカースバグラグラッチは倒し切った。

残るは進化前と思われるカースアノグラッチだけだけど、その数の多さから油断ができない相手であることは変わらない。

今の大きく弱体化した状態じゃ、アノグラッチの大群相手に、満足に戦える気がしない。

 

呪怨や怨念といった厄介なスキルを持つカースアノグラッチたちを相手にして、なんとか戦い抜くことができていたのは、思考加速・予見・高速演算といった精神系スキルの恩恵があったからこそだ。

それらのスキルが使えなくなって、さらに著しく能力値が弱体化している今の状態で、アノグラッチたちと戦って勝つのは、至難。

ハッキリ言って、まともな手段で勝利をつかむことは不可能だと思う。

 

それに、また増援として新しいカースバグラグラッチがやってくる可能性だってある。

カースバグラグラッチ相手なら、この熔岩熱線があれば対処できると思うけど、その場合も弱体化した能力値が不安要素になる。

つまり、呪い属性によって大幅に下がった状態にされてしまっているステータスをどうにかしないと、この状況を乗り越えることができない、と言ってもいい。

 

呪い属性のダメージを受けない状態で時間がある程度経過すれば、ステータスは元の数値に戻るよう上がり始めるとは思う。

だけど、カースアノグラッチたちが、私にそんな時間を与えてくれるとは到底思えない。

もう、アノグラッチたちが与えてくる呪い属性のダメージを受けないように立ち回ることは不可能だと思う。

だから、短時間で、全回復とまではいかなくても、ある程度は能力値を元に戻すような手段を、今この場で取る必要があると私は判断した。

 

 

……実は、そんな手段について一つだけ、少し前に思いついたものがあった。

だけど、思いついた当初は、そんな方法を実行に移すつもりなんて全くなかった。

上手くいくという確証がなかったこともそうだけど、それ以上にリスクが高くつくものだったから。

だから、精神系スキルが使うことができているうちは、そんなことをしようだなんて思わなかった。

 

 

――だけど、ここまで追い詰められている以上、もう手段を選んでいる余裕なんてない。

非常に危険な行為だけど、覚悟を決めて、やるしかない。

 

 

口にエネルギーをチャージし、螺旋熱線を放つための準備をする。

白熱光や放射熱線だと威力が小さすぎるから、少なくともスパイラル熱線ぐらいは使わなくちゃいけないと思う。

チャージが完了し、しっかりと目標に当たるように角度を調整してから、私は意を決して螺旋熱線を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情報収集のためにカースアノグラッチたちに鑑定を使用しているうちに、鑑定のスキルレベルが上がって、LV10になった。

LV10に至った鑑定のスキルは、対象の能力値についての詳細を確認することを可能としてくれた。

その情報から、体の部位ごとに能力値が異なっていることを、私は知った。

 

例えば私の体の場合だと、牙に爪、それに尻尾の攻撃能力が高めになっていた。

それ等の部位の攻撃能力はステータス上の平均攻撃能力より高めで、他の部位との関係が体積や質量といった要素も考慮されたうえで平均攻撃能力の数値が計算されているんだろうと思う。

そして、呪い属性によりマイナスされている能力値……これもまた、私の体の部位ごとに、平均値を多少上回ったり下回ったりと異なっていることが分かった。

それも、呪いによるマイナスの値は、ステータスの能力値と比例の関係にあった。

つまり、各部位の能力値の大小に比例するように、呪い属性による能力値の低下は、部位ごとに分かれた状態になっていると予想できる。

 

それまではステータスを見て、単純に数値という形でしか呪い属性のマイナスの影響を捉えていなかった。

でも、この体の部位ごとの詳細な能力値の状況というものを知ることができるようになって、見方が変わった。

この「呪い」というものは、もしかしたら、「毒」や「麻痺」といったものと同じように、この体に物理的に悪影響を与えるようなモノなのかもしれないと考えた。

情報としてしか存在しないものや、霊的なものではなく、私の体の中に物質として存在しているようなものじゃないのか、と。

 

仮に、「呪い」が私の体の中に存在する物質だとしたら、物理的な手段で取り除くことも不可能じゃないはずだと私は考えた。

そして、部位ごとだと元々の能力値が高いほど呪い属性によって下がる能力値も高いのなら、元々の能力値が高い部位ほど「呪い」が多く含まれている可能性が高い、とも考えた。

例えば――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――意図的に螺旋熱線で切り離した、自分の尻尾とか。

 

 

 

――ガ、アアアアアアアアアアアァァ!!!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚軽減LV6』が『痛覚軽減LV7』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『貫通耐性LV2』が『貫通耐性LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『破壊耐性LV4』が『破壊耐性LV5』になりました》

 

痛い!!

痛い!!

痛い!!

今まで味わったことのない、信じられないほどの痛みで頭がいっぱいになる!!

決めていた覚悟が無駄に思えるほどの痛みと喪失感に、心が折れそうになる!!

 

余りの痛さに、意識がどこかに飛んでいってしまいそうになるのを感じたけど、牙を死ぬほど噛みしめて耐える!!

ここで意識を失ったら、わざわざ自分の体の一部を切り離して痛い思いをした意味がなくなる!!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『気絶耐性LV1』を獲得しました》

 

いつもと変わり映えのないアナウンスが聞こえてきて、新しいスキルが手に入ったことが分かった。

そのスキルのおかげか、どうにか意識を保つことができた……。

……とりあえず、敵の前で自傷して、痛みで気を失って隙だらけになって死亡、っていうバカみたいな末路は回避できた……

 

意識はあるけど、尻尾が切り離された部分がひどく痛むのは変わらない。

何もかもほっぽり出して、ただ痛がっていたい気持ちでいっぱい……。

だけど、こんなことまでした成果がちゃんとあるのかどうか、鑑定で確認しておかないと。

もしこれで何の成果も得られなかったら、ホントにもう無理……。

 

…………よし。

今までからは信じられない速さで、能力値が回復していってる。

こんなにも痛い思いをした意味はちゃんとあったことが、本当に嬉しい。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP高速回復LV9』が『HP高速回復LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『HP高速回復LV10』がスキル『HP超速回復LV1』に進化しました》

 

あ、HP高速回復のスキルがLV10になって進化した。

……まあ、熟練度が大量にたまるようなことが起こったばかりだからかな……。

そう思いながら、私は自分の体の後ろの方をチラリと目視してみた。

 

……既に、断面()()()箇所から、元の半分ほどの長さまでに再生した尻尾があった。

呉爾羅のスキルがもたらす再生能力は、やっぱり常軌を逸していることがハッキリと分かった。

部位欠損なんて初めてだけど、こんな簡単に元に戻るのが普通だとは絶対に思わない。

だけど、呉爾羅のスキルさえあれば、おそらくこうなるだろうと考えていなければ、呪い除去のため、こんな方法を取ろうとは決して思わなかったに違いない。

 

 

一部だけど、自分の中にある「呪い」を、自分の体ごと切り離す。

これが、この状況で考えて、実行に移すことができると思った、能力値を元に戻すための唯一の方法だった。

 

いや、本当にリスクが高い方法だとは思う。

想像通り、めちゃくちゃ痛いし。

痛みで気を失ったら、隙だらけになってアノグラッチどもに間違いなく殺されるだろうし。

気絶しなくても、凄まじい痛みで隙だらけになっていたことは間違いないだろうし。

というか、カースアノグラッチたち、なんか、私に攻撃しなくなってない?

バグラグラッチたちを倒したあたりから、私の様子をじっと見ているだけになっているような気がするんだけど……。

いやいや、油断大敵油断大敵。

戦いの最後まで、気を抜いちゃいけない。

 

それに、万が一だけど、尻尾を切り離すための螺旋熱線のダメージと、その後の尻尾を失ったことによるダメージで、HPが0になって死んでしまう可能性もあるにはあった。

でも、呉爾羅のスキルに含まれる特殊な効果である自己再生と超再生、それにHP高速回復のスキルがあるから、その心配はほとんどしていなかった。

HPが半分ほど削られても短時間で全回復してしまうほどの回復力をもたらしてくれるからこそ、体の一部を失うとはいえ生命活動自体にそこまで影響が出ないのなら大丈夫だと信じることができた。

「自然回復しないような怪我でも回復可能」としてくれるHP高速回復と呉爾羅のスキルがあるなら、尻尾を失っても再生するだろうと考えたのも、この方法を実行に移すことができた要因の一つだった。

まあ、この辺りは理屈というか、確信に近い形での根拠になるけど。

 

 

そして、尻尾を自ら切り離してから大して時間が経たないうちに、失ったHPは元通りに戻った。

尻尾も、地面に落ちている切り離した方さえ目に入らなければ、まるで何事もなかったかのように再生していた。

……痛みはまだ残ってるけどね。

 

で、こんなに痛い思いをして、呪い属性によって下がっていた能力値がどれくらい戻ったかというと、2割と少しってところぐらいかな。

能力によって多少戻ってきた数値が異なるけど、だいぶ力を取り戻すことができたと思う。

他に分かったことは、再生したほうの尻尾にも呪い属性の影響が出るようになって、その分だけ他の部位の能力値が、呪いの影響が薄くなったかのように元に戻っているっていうこと。

これは、切り落とした尻尾以外の体に残っていた呪い属性による弱体化が、尻尾を新しく作ったことで元の状態より全体的には薄まった、と考えていいはず。

 

呪い属性で能力値が低下している体で、その一部を切り離して新しく再生させれば、全体的に能力値が元の数値に近いものになる。

それなら、切り離しと再生を繰り返していけば、弱体化したステータスをどんどん元の状態まで戻していくことができる。

尻尾を切り落として再生させることで、その時の低下している能力値の約2割を取り戻すことができるとすると……1回目で20%、2回目で16%、3回目で13%ぐらい……といった感じか。

……あんな痛い思いをするのは嫌だけど、死ぬよりかはずっといい。

 

それに、ある程度まで抵抗能力が上がってくれば、ステータス上での呪い属性への耐性も高まるし。

呪い耐性のスキルレベルが低いうちはカースアノグラッチが与えてくる呪い属性のダメージを防ぎきれなかったけど、今はスキルレベルがだいぶ高くなったから、能力値における抵抗能力を上げれば少なくとも相手を倒し切るまでは持つと思う。

 

カースアノグラッチたちが、また怨念の効果による呪い属性の大ダメージを狙った行動を取るかもしれないけど、奴らが怨念を発動させるよりも、こっちが尻尾を切り落として再生させる方が早いだろうから、まあ問題ないでしょ。

呪怨のスキルを発動させた直接攻撃も、こっちから近づかなきゃ大丈夫だろうし。

相手の数の多さがかなり問題だったけど、バグラグラッチが来てからアノグラッチの増援は全く来ないし、たぶんこれ以上、カースアノグラッチが来るようなことはないはず。

来たら来たで、こっちが死ぬほど痛い思いをする回数が増えるだけの話だからね!

物凄く痛いだけで実際に死ぬってわけじゃないから、問題ない問題ない!!

ハハハハハハハハハハハハハ!!

 

 

あー、なんだかすごくスッキリする!

呉爾羅のスキルのおかげでHPの心配なんてする必要なんてなかったんだから、そのことを最初から活かして戦うべきだった!

こんなにも痛くて、心が折れそうだけど、死んじゃうことに比べたら、なんてことないんだから!!

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV6』が『恐怖耐性LV7』になりました》

 

アハハハハハーーハァ。

 

 

……よく見ると、カースアノグラッチたちが自分を見る目に変化が出ていることに気づいた。

怒りとか、憎しみ以外のものが目に宿っている。

あれは、もしかして……怯え?

まさか、ここまで来て、今さら奴らが私のことを恐れるようになったとでも?

 

ハハハーー笑えない。

 

お互い、今までずっと命の奪い合いをしてきたんだぞ?

こっちはこんな思いしてまで戦い続けてるんだぞ?

そっちだって仲間を大勢失ったし、なんなら仲間が捨て身になるのを止めもしなかっただろ?

それなのに、まだ生きているお前らが後戻りなんて、許すわけないだろ?

 

こっちだって覚悟を決めてるんだ。

そっちも覚悟を決めろ――殺しつくされる覚悟をな。

 

 

《条件を満たしました。称号『恐怖を齎す者』を獲得しました》

《称号『恐怖を齎す者』の効果により、スキル『威圧LV1』『外道攻撃LV1』を獲得しました》

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV29 名前 大原 雅美

・ステータス(低下中)

 HP:8792/9993(緑)
 MP:9217/9368(青)
 SP:10193/10193(黄)
  :10127/10127(赤)
↓平均攻撃能力:3013(9881)
↓平均防御能力:3250(10281)
↓平均魔法能力:2500(9139)
↓平均抵抗能力:2564(9244)
↓平均速度能力:3213(10230)

・スキル

 地竜LV9,龍鱗LV8,甲殻LV8,鉱体LV6,
 HP超速回復LV1,
 MP高速回復LV3,MP消費緩和LV8,魔力操作LV2,魔闘法LV5,
 SP高速回復LV3,SP消費大緩和LV3,気闘法LV4,
 破壊強化LV6,打撃強化LV5,斬撃強化LV5,貫通強化LV4,衝撃強化LV6,
 火炎強化LV4,土強化LV8,毒強化LV2,麻痺強化LV4,
 火炎攻撃LV2,土攻撃LV9,毒攻撃LV4,麻痺攻撃LV5,外道攻撃LV1,
 立体機動LV8,手加減LV4,
 集中LV10,思考加速LV9,予見LV9,並列意思LV5,記録LV5,高速演算LV9,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV9,隠密LV10,迷彩LV8,無音LV10,無臭LV7,威圧LV1,
 鑑定LV10,探知LV10,
 影魔法LV3,
 過食LV9,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV5,打撃耐性LV6,斬撃耐性LV3,貫通耐性LV3,衝撃耐性LV5,
 火炎耐性LV2,水耐性LV2,大地無効,雷耐性LV3,重耐性LV3,
 猛毒耐性LV8,強麻痺耐性LV6,呪い耐性LV8,睡眠耐性LV8,強酸耐性LV5,腐蝕大耐性LV2,
 気絶耐性LV1,恐怖耐性LV7,外道大耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV7,
 視覚強化LV10,望遠LV3,聴覚強化LV10,聴覚領域拡張LV2,
 嗅覚強化LV8,味覚強化LV2,触覚強化LV7,
 神性領域拡張LV2,
 天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,
 剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV3,
 n%I=W

・スキルポイント:23600

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者、魔物の殺戮者、恐怖を齎す者

➁精神系スキルが発動不可になった理由
主人公は「長時間使用し続けたことにより生じた、スキル自体の不具合」と予想したが、
作者的には「スキル発動に必要なエネルギーが枯渇したから」……ということにしたい
Web版でも、描写は限られているが、スキルの発動に必要な力が尽きると、自分の力で
止められない発動中のものも含めてスキルが停止する場面がある。だけど、ほぼ
独自設定という扱いでいいと自分では思う。ちなみに、主人公がそんな状態でも
一部のスキルを使用できたのは、ここでは明かせない理由があります

➂熔岩熱線
作者が主人公にやらせてみたかったこと。説明終わり

➃「呪い」の仕様(独自設定)
部位ごとに弱体化している数値が細かく設定されていたり、その部位を体から切り離せば
その分だけ弱体化が緩和するというのは、完全に独自設定。体の部位によって攻撃能力や
防御能力などが異なっているのはWeb版に記載あり。正直、「呪い」を毒や麻痺などと
同じようなものだとみなし、体ごと削り飛ばすという方法ぐらいしか思いつかなかった……
あと、主人公に自らブレーキを壊してもらうためのきっかけだったりする

➄蛇足:なんとなく思いついたアイデア集(今作関係なし、ネタバレ注意)






※ネタバレ注意





















⑴蜘蛛のアリエル ディスカバリー
アリエルが、突如空に現れた謎のうずに吸い込まれて、気が付いたら
「星のカービィ ディスカバリー」の舞台となる世界にいて、カービィたちと
なんやかんやする話。なお、「ディスカバリー」の方の話が終わったら、
「蜘蛛ですが、なにか?」の世界にカービィたちと戻ってエライことになる予定

⑵白織さんハードモード
「星のカービィ ディスカバリー」のラスボスやらなんやらがやってきて、
白織さんにとってのハードモードになるお話。「絶対お前のせいだろ、D!!」



星のカービィ ディスカバリー、いいゾ~これ(布教)


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VS猿 終結……そして、愉悦する邪神の気まぐれ

書き方にこだわると、執筆が遅くなるのでは?と気づきました。
綺麗な文章にしようと思っていると、時間がどんどん過ぎていくことがしばしば。
とりあえず終わりまで書きまくってから見直し修正するスタイルに変えるべきか……。
書きたいところを先に書いちゃって、後から間を埋めていくのが早そうな気がしますけど、うまくいかない気がするんですよね……。

今回の話の冒頭で、猿との戦いは終わりを迎えます。
そしてサブタイトルの通り、みんな大好き()な邪神が主人公にちょっかいをかけ始めます。
主人公のメンタルやいかに!?
ちなみに今回は比較的コンパクトな字数になったと思います。

2022/05/15
・後書きの「➀主人公のステータス」のスキル一覧に、記載し忘れていた「気絶耐性」のスキルを追加しました。


この空間で生きているのは、私と、目の前にいるカースアノグラッチ1体だけだった。

私の周りには、数体のカースバグラグラッチと、数えるのが億劫になるほどのカースアノグラッチの死体が転がっており、1体を除いて、この戦いで私の敵だった魔物は死に絶えたと言っていいだろう。

その生き残っていた1体も、その頭に噛みつき、牙で思い切り噛み砕いた。

 

《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV29からLV30になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『龍鱗LV8』が『龍鱗LV9』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『予見LV9』が『予見LV10』になりました》

《条件を満たしました。スキル『予見LV10』がスキル『未来視LV1』に進化しました》

《スキルポイントを入手しました》

《条件を満たしました。個体、フェネグラッドが進化可能です》

 

最後の1体を倒して、ちょうどレベルアップしたか。

ボリボリ食事をしながら、本当に戦いが終わったかどうか、探知を使って周囲の様子を確認する。

……大丈夫みたいだ。

アノグラッチの増援どころか、他の魔物も全然いない。

私とカースアノグラッチ・バグラグラッチの戦いに巻き込まれないために逃げたのかもしれない。

なんにしろ、これでようやく長くて苦しい戦いが終わった。

 

…………戦いが終わった後も、いろいろとやらなくちゃいけないことはある。

だけど今は、ただ寝たい……。

安全のためにシェルターは作るけど、それが終わったら、ゆっくりと休みたい……。

 

生存競争による緊張感が抜けて、眠気が一気に襲ってくるけど、それでもなんとか自分が眠るためのシェルターを用意する。

そうして、自分の安眠スペースを作り上げて、その中で体を休めながら瞼を閉じた。

 

……おやすみなさい……。

 

 

 

じっくり睡眠をとって、疲れ切った心と体を十分に癒してから目覚めた私は、まずはそこら中に散らばっているアノグラッチやバグラグラッチを1か所に集めはじめた。

理由はもちろん、自分の糧として食べるためだ。

奪った命は、可能な限り無駄にしないよう自分の血肉にしたいからね。

戦っている最中にSP回復のため食べた数もそれなりだったけど、こうして集めていると、とんでもない数を相手にして自分は戦っていたことを実感した。

数えきれないほどの数だから、それを集める時間も結構なものになってしまい、ときどき食事をしながら作業を進めていった。

 

ひと眠りしたからか、それともそれ以外の要因があったのか、カースバグラグラッチと戦っている最中に使えなくなった精神系スキルは、もう使用できるようになっていた。

だから、自分が倒したカースアノグラッチたちの亡骸を集めている最中に、脳内で済むような作業を並列意思で相談しながら進めていった。

 

話し合った内容はいろいろあるけど、主な内容としては、まず新しい並列意思について。

並列意思をフル活用してカースアノグラッチと戦闘していたのが熟練度をためることにつながったのか、スキルのレベルが1つ上がって、新しい意思を生み出せるようになった。

その並列意思には「オッズ」と名乗ってもらって、確率補正や迷彩といった確率に関係するスキルをレベルアップさせるために働く役割を担ってもらうことにした。

戦闘の際は、高速演算などのスキルで回避ルートを算出したりといった役割も、オッズにしてもらう予定だ。

しかし、新しい並列意思が生まれるたびに熟練度をためてほしいスキルを任せてきたけど、それも少なくなってきたなー。

まあ、今回の戦いみたいに高速演算を任せる並列意思が足りなくなることがあると困るから、やっぱり並列意思は多いほどいいかもしれない。

 

で、まあ、話し合いにおける残りの主要な内容は、やっぱり対カースアノグラッチ・カースバグラグラッチ戦についての反省会。

その最たるものは、最初のカースアノグラッチを迂闊に倒してしまったこと。

最初にアノグラッチに遭遇した際の鑑定のスキルレベルは8だったから、他の魔物が持つスキルについての情報を得ることはできなかった。

仮に、カースアノグラッチが持つ復讐や怨念といったスキルのことを知ることができていたなら、窮地に陥るなんてことにはならなかった。

でも、それ以上に、見たこともない魔物に対する警戒心を強く持っていれば……という後悔がある。

鑑定がLV10になったことで、他の魔物についてのスキルを含めた完全な鑑定結果を100%得られるようになっているけど、未知の魔物に対して警戒する必要性を、私は強く感じた。

 

付随して、ブレインとして私が、情報を幅広く収集する必要があることを思い知った。

呪い属性についての知識があり、そして対策を戦闘の前に用意していた場合でも、カースアノグラッチ相手にあそこまで追い詰められる、ということは起こらなかったはずだから。

鑑定のスキルを使った情報収集に、より力を入れなければいけない。

 

2つ目は、カースバグラグラッチと戦っている最中に、集中や思考加速、高速演算といった精神系スキルが使えなくなってしまったこと。

具体的には、何が原因でそんな現象が起こってしまったのかさえ分からないけど、今のところ、長時間の戦闘で使い過ぎたことによるもの、と私たちは考えている。

今までの戦闘では精神系スキルに頼ることが多かったけど、今回のことで、頼り過ぎたら大変なことになることが分かってしまった。

今後は、長引く戦いになるかどうかも踏まえたうえで、戦闘に精神系スキルを使うのは程々になるよう戦うスタイルを考える必要があるという結論になった。

 

まあ、ずっと回避とかを前提にして戦いつづけてきたけど、私の防御能力って速度能力と同じくらい高いからね。

呉爾羅のスキルで再生能力はえげつないことになってるし、地竜のスキルには防御のための技も含まれているし、防御前提の戦闘スタイルの方が今の私に合っているのかもしれない。

ダメージを受けたら受けたで、スキルの熟練度がたまっていくしね!

アハハハハハハハハハ!!

 

ちなみに、バグラグラッチたちを倒してカースアノグラッチたちと戦っているうちに、呪い耐性のスキルが進化して呪怨耐性になっていた。

これで少なくとも呪い属性に対しては、今後はそこまで心配する必要がなくなった。

まあ、相手によっては私の防御を突破してくるだろうから、油断をするわけにはいかないけど。

 

それ以外は、そこまで重要な話をしたわけじゃない、と思う。

カースバグラグラッチとの戦いで「熔岩熱線」なんていう技ができたけど、それについて詳しく調べるのは、またの機会にしておいた。

あの時の不思議な感覚については、どう確かめればいいのか見当もつかないから、探るのは早々に諦めた。

またスキルが使えなくなる状況を自分で作るのは、かなり危険だし。

 

そんな感じで5人分の並列意思で話し合いながら、体を動かす担当の並列意思であるマテリアにカースアノグラッチたちの回収をしてもらっていた。

で、その途中で倒したアノグラッチの群れの一部を食べるわけなんだけど、気が付いたらマテリアが()にこだわるようになっていた。

 

今は肉を焼く余裕があるから、いつも食事をするときのように食べる肉を火で熱しているんだけど、その日の入れ方にマテリアは注意を払うようになっていた。

少しでも味が良くなるよう、食べては火を入れ、食べては熱を加え、というように食事をする。

戦闘中に焼く暇もなく生のまま食べた時に生臭さを散々味わい、嫌気がさしてしまったからこその行動だと私は思う。

そんなふうに、細かく手を加えながら食事していたため、アノグラッチ一体分にかかる食事時間がかなり長いものになっていた。

 

[この魔物は毒を持ってない分、いつも食べているような魔物と違って苦みがない。

 生臭さはあるけど、うまく火を入れて調理すれば、生まれ変わってからだとコレが一番おいしいものになる。

 ……この魔物を食べる機会が今回ぐらいになるならさ、今のうちに最大限美味しくしてから食べたいじゃん]

 

このマテリアの言葉に、何も反論できませんでした。

後片付けにあまりにも長い時間かけるのはどうかと思ったけど、前世とは比べ物にならないくらい酷い食生活を送ってきた私にとって、この言葉は凄く効くものでした。

なので、食事のタイミングになったら、マテリアシェフが調理してくださったカースアノグラッチを、並列意思のみんなでしっかり味わいました。

美味しかったです、まる

 

……味覚強化のスキルがLV2からLV6にまでレベルアップしたり、過食のスキルが進化して飽食というスキルになったりと、そういう意味でも美味しかったです、まる

 

『飽食:食事を限界を超えて摂取可能になる。その際HP、MP、SPが回復する。また、余剰分をストックすることができる。余剰分は純粋なエネルギーとしてストックされるため、太らない。レベルの上昇によってストックできる量が増える』

 

そんなことがありながらも、倒したアノグラッチたちをようやく1か所に集めておくことができた。

今は、保管庫代わりに作っておいた土のシェルターの中に全部押し込んでいる。

分かっていたこととはいえ、これだけで1ヶ月分の食料にはなるんじゃないかってぐらい大量に集まっている。

どんなふうに消費していくかは、これから考えておこう。

マテリア、お疲れ様。

 

[あー、しんどかった]

{面倒くさい作業だけど、最後までやり切ってくれて、どうもありがとう}

〈まあ、食べるときは好きに動いていたけどな〉

(途中から私たちも美味しい思いしてましたけどねー)

〔おいし……かった……〕

 

うん、自分も美味しいものを堪能させてもらいました。

今までは味にこだわる余裕なんてなかったけど、たまには美食を味わう機会がないと、これからの生活はやっていけないかもしれない。

普段食べてるものも、もしかしたらもっと美味しいものにすることができるかも。

この生活に大分余裕ができてきたら、主に自分のメンタルのために調理の仕方にこだわってみることも考えてみよう。

 

戦闘の後片付けが終わったら、少し休憩タイム。

呪い属性という脅威にさらされた戦闘に比べたら大分楽だけど、それでも疲れがたまることをしたことには変わらないから、休める時にしっかり休んでおきたい。

というか、あんな限界ギリギリの戦闘をしたばかりだから、少しでも休みたい気持ちだった。

 

そんなふうに考えて、久しぶりにスキルのレベル上げのことも考えず、しばらくだらけることにした。

最初のうちは気持ちを緩ませて過ごしていたんだけど、時間が経つにつれ、自然とこれからどうするか、ということを考えるようになっていた。

やっぱり、これからのために考え事をする習慣が沁みついちゃってるのかな。

まあ、心身ともに疲れが取れた状態になっていればいいか。

 

思いがけないことから始まったとはいえ、最終的に大量の食糧を手に入れることができた。

しばらくはここら辺にとどまって、スキルの鍛錬とか、新技の熔岩熱線についての検証とか、新しい戦闘スタイルの確立とか、そういうことをよく考えながら過ごしていこうかな。

あとは、情報収集も積極的に行なって、自分をいろんな面で強化していくことにしたい。

今回は大変な目にあったけど、自分を強くしていけば逆境を乗り越えられる可能性も高くなるから。

 

……そういえば、何か忘れているような気がするけど、なんだっけ……?

 

 

 

 

 

『進化できるようになったことを、忘れていますよ』

 

 

 

 

 

――!?

 

 

何の前触れもなく、急に声が聞こえてきた――!?

これは、呪い耐性のレベルをスキルポイントで上げようとしたときも同じ――!

 

『そういえば、まだこちらから名乗ってはいませんでしたね。

 あなたが先ほど予想していた通り、私がシステムの上位管理者Dです』

 

前の時と同じく、聞いているだけで底冷えするような声だった。

だけど、自らを「上位管理者D」と名乗った声に、なぜか私は覚えがあるような気がした。

こんな寒気を覚えるような声で話しかけられたら間違いなく記憶に残るはずだけど、誰のものなのか思い出せない。

いったい誰の声なのか……それも重要なことかもしれないけど、管理者、という単語はそれ以上に聞き逃せない。

 

LV10になった禁忌のスキルによって私が得た情報では、管理者とは、星を再生させることを目的とし、スキルや基礎能力値などを形作っているシステムという超常技術の結晶――それを管理する者のことを指していた。

禁忌の情報に記載されていた管理者は、システムを稼働させたギュリエディストディエスと、この星全体に影響を与えることができるシステムという大規模魔術を支える核となっている女神の2柱であり、Dという名前はなかったはず。

女神の名前がDという可能性もあるけど、それ以前に「上位」管理者という、明らかに通常の管理者とは区別された名称は、禁忌で与えられた知識のなかでも確認したことすらない。

 

……禁忌のスキルで閲覧できるようになった情報は、新しいスキルの獲得とかの面で私の助けになることも多かった。

だけど、その情報の全てが真実であり、また隠されたことがないものであるとは限らない、とは考えていた。

システムの運用状況については、疑問に覚える事柄もあったから。

つまり、この上位管理者を名乗るDという存在は、禁忌のスキルでも知ることができない、ギュリエディストディエスや女神と同じ――いや、その2柱以上の管理者ということに……?

 

『はい、その認識で間違っていません』

 

――!?

わたしの、考えが、読まれた……?

 

『あなた()喋ることができませんから、コミュニケーションのための一時的な措置で読ませてもらってます。

 基本的に転生者に干渉することはないのですが、今回は私の権限を使ったら面白そうなことになりそうだったので、つい手を出してしまいました。

 そのお詫びと、先ほどの戦いで私を楽しませてくれたお礼に、あなたが知りたいことを教えてあげようと思いまして、こうして会話の機会を設けることにしました』

 

息をするのと同じくらい簡単なことかのように他者の思考を覗き見ていることを口にする態度は、声の主がまさに管理者――神という存在であることを私に実感させる。

 

「面白そうなことになりそうだから」という理由で、不利な戦況を立て直すための一手を潰された。

私が命懸けで臨んだ戦いを、ただ自分を楽しませるための娯楽ぐらいにしか認識していない。

それらのことに私は、怒りを――それも尋常じゃないほどの怒りを覚えても不思議じゃないはず。

いや、実際に怒りは、感じてはいる。

だけど、それ以上に私は、声だけしか聞こえていない上位管理者Dに対し、恐れを抱いていた。

実際に目の当たりにしている訳でもないのに、体の震えを止めることができないほどに。

 

この声は、確かに神と呼ばれるにふさわしい存在のものだとは思う。

だけど、神は神でも、「神聖」という言葉から遥かにかけ離れた存在だと、私は声だけで確信していた。

 

『確かに、私のイメージは「神聖」とは程遠いものなのかもしれませんね。

 他人がそう思っているだけで、実際の私は清らかな美しい乙女なんですけどね。

 ですが折角ですから、一番知られている呼び名で改めて自己紹介させていただきます』

 

 

 

『世界最悪の邪神、Dです。

 覚えておいてくださいね、大原雅美さん』

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラッド LV30 名前 大原 雅美

・ステータス

 HP:10240/10240(緑)
 MP:9587/9587(青)
 SP:10418/10418(黄)
  :10351/10351(赤)
 平均攻撃能力:10097
 平均防御能力:10522
 平均魔法能力:9360
 平均抵抗能力:9471
 平均速度能力:10455

・スキル

 地竜LV9,龍鱗LV9,甲殻LV8,鉱体LV6,
 HP超速回復LV2,
 MP高速回復LV3,MP消費緩和LV8,魔力操作LV2,魔闘法LV5,
 SP高速回復LV3,SP消費大緩和LV3,気闘法LV5,
 破壊強化LV7,打撃強化LV5,斬撃強化LV5,貫通強化LV5,衝撃強化LV6,
 火炎強化LV4,土強化LV8,毒強化LV2,麻痺強化LV4,
 火炎攻撃LV2,土攻撃LV9,毒攻撃LV4,麻痺攻撃LV5,外道攻撃LV1,
 立体機動LV8,手加減LV4,
 集中LV10,思考加速LV9,未来視LV1,並列意思LV5,記録LV5,高速演算LV9,
 命中LV10,回避LV10,確率補正LV9,隠密LV10,迷彩LV8,無音LV10,無臭LV7,威圧LV2,
 鑑定LV10,探知LV10,
 影魔法LV3,
 飽食LV2,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
 破壊耐性LV7,打撃耐性LV6,斬撃耐性LV3,貫通耐性LV6,衝撃耐性LV5,
 火炎耐性LV2,水耐性LV2,大地無効,雷耐性LV3,重耐性LV3,
 猛毒耐性LV8,強麻痺耐性LV6,呪怨耐性LV1,睡眠耐性LV8,強酸耐性LV5,腐蝕大耐性LV2,
 気絶耐性LV4,恐怖耐性LV8,外道大耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV9,
 視覚強化LV10,望遠LV3,聴覚強化LV10,聴覚領域拡張LV2,
 嗅覚強化LV8,味覚強化LV6,触覚強化LV7,
 神性領域拡張LV2,
 天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,
 剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,
 呉爾羅LV10,
 禁忌LV10,命名LV3,
 n%I=W

・スキルポイント:23700

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者、魔物の殺戮者、恐怖を齎す者

➁主人公が倒したカースアノグラッチの群れの規模
ちょうど繁殖期だったため、最大規模だった。おかげでLV20の中位竜が、
経験値がもりもり入ったことでLV30にまでレベルアップしました。ごちそうさまでした

➂鑑定による以下のスキルの説明文(自作、独自設定)
・HP超速回復:HPが時間経過とともに大幅に回復する。自然回復しないような怪我でも
       回復可能
・未来視  :予測効果が高まる。それにより未来の可能性が持続的に見えるようになる

➃主人公の、「禁忌LV10」によって与えられた情報に対する考え方
→この話から5話前の『「この世界で生きること=レベリング」でいいと思う』を参照

➄Q.どうしてマテリアはカースアノグラッチの味にこだわっていたのか
 A.さっさと五感強化の各スキルをLV10にしてもらって、五感大強化のスキルに進化させて
  もらったほうが楽だからです(作者が)  


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《設定まとめ①》

今まで後書きに書いてきた設定について、多少の編集を加えたうえで、分類して纏めてみました。
できるだけ原作との齟齬がないように注意したつもりではありますが、(特に「そのほかの独自設定」に分類されている設定で)気になるものがありましたら、できましたら柔らかい表現で、感想でご指摘いただきたいと思っております。
その他にも、あまり過激な内容でなければ、ご感想を書いていただけると作者が喜びますので、よろしくお願いします。



●今作オリジナルのスキルの説明

 

○スキル「呉爾羅」

・概要:主人公の、転生者としての固有スキル。非常に強力なスキルであり、

    主人公の魂でなければ受け入れることができなかった

・効果:ステータス全種にスキルレベル×100分プラス補正が掛かり、レベルアップ時に

    スキルレベル×10分の成長補正が掛かる。また、レベルにより特殊な効果を

    発揮する(LV1:白熱光、LV2:自己再生、LV3:放射熱線、LV4:螺旋熱線、

    LV5:細胞活性、LV6:体内放射、LV7:引力熱線、LV8:超再生、LV9:放射線流、

    LV10:轟天熱線)

 白熱光 :MPを消費して、火属性のダメージを与える熱線を吐き出す

 自己再生:「呉爾羅」のスキルと同レベルの「HP高速回復」と同等の効果

 放射熱線:白熱光よりも強力な熱線を吐き出す。単純にダメージ量が増加しているほか、

      若干の衝撃属性の追加ダメージと、スキルレベルと同等の「破壊強化」相当の

      補正が加わっている

 螺旋熱線:放射熱線に、更に貫通属性の追加ダメージが加わった熱線を吐き出す

 細胞活性:MPとSPを消費して、攻撃・防御・魔法・抵抗の能力を底上げする。

      ステータス向上のみの龍力、という表現が当てはまる技

 体内放射:放射熱線のエネルギーを衝撃波として全身から放出する。範囲攻撃である分、

      基本的に熱線系の技よりもMP消費が多い

 引力熱線:放射熱線に、重属性の追加ダメージが加わった熱線を吐き出す

      更に、重耐性を持たない相手には、防御能力を一定数無視してダメージを与える

 超再生 :呉爾羅のスキルと同レベルのHP超速回復と同等の効果

      自己再生の効果と重複するため、えげつない速度でHPが回復する

 放射線流:いくつもの熱線を背中から放射する。強力な技ゆえ、MP消費が激しい

      また、一度使用すると暫くのあいだ熱線が使用不可となる

 轟天熱線:通常よりもかなり威力が高い放射熱線で、炎・雷・光・貫通・破壊・衝撃など、

      様々な属性のダメ―ジが含まれている。MPをかなり消費する

※隠し効果として、このスキルの獲得・使用は「禁忌」の熟練度をためる

 

○スキル「怨念」

概要:カースアノグラッチが有する特殊スキル。HPが0になって死亡した際、復讐のスキルが

   効果を発揮している場合、その対象に呪い属性のダメージを与える。また、このスキルに

   よる能力値の弱体化は、他のスキルによる弱体化と区別される

※スキル「怨念」による弱体化の仕様

怨念による能力値の弱体化は、通常の呪い属性による弱体化と区別されている

例えば、通常の呪い属性により低下する能力値をA、怨念により低下する能力値をBとする

Aの最大は、通常のステータスの半分より少し小さいぐらい。つまり、通常の呪い属性による

能力値の弱体化は、本来の能力値が半分と少し残るくらいまでが限度となっている

Bの最大はAと同じで、怨念による弱体化だけだったら、同様に半分まで少しぐらいが限度となる

しかし、AとBは別の物と区別されているため、怨念による弱体化と、それ以外のスキルによる

弱体化が重なった場合、ステータスのほとんどが削られることになる

 

例)平均攻撃能力が50の場合の弱体化の仕様

⑴Aが最大、Bの影響なし:50→26

⑵Aの影響なし、Bが最大:50→26

⑶Aが最大、Bも最大  :50→2

※Aの最大の基準については、(おそらく)独自設定

 

 

 

●今作オリジナルの種族の説明

 

○種族「フェネグル」

・概要:下位の地竜の一種。トカゲのような姿をしている。速度能力が高く、素早さを

    活かして戦う個体が生き残りやすい

 

○種族「フェネグラン」

・概要:フェネグルの進化形であり、下位の地竜。主人公の進化先。体つきはトカゲに近いが、

    口はワニのように長い形状になっている。進化によって甲殻のスキルを獲得したことで

    打たれ強くなり、もともと高い攻撃能力と速度能力に加え、レベルが上がっていくに

    つれて防御能力がどんどん上がっていく

 

○種族「フェネセブン」

・概要:同じくフェネグルの進化形であり、下位の地竜。牛のような見た目をしている

    フェネグランと比べると速度能力は劣るが、その分攻撃能力や防御能力のステータスが

    上回っており、耐久面が強くなる方向性での進化をしていると言える

    火竜のゲネラッシュに相当するかのようにフェネラッシュという地竜が原作にいたため、

    通称ナマズに相当する地竜という立ち位置で、主人公の進化先として登場

 

○種族「フェネレイブ」

・概要:フェネグランの進化形の一つであり、中位の地竜。マンモスのような見た目をしている

    フェネグラッドと比較すると、黄色のSPや速度の能力値は低いが、その分だけHP・赤の

    SP・抵抗などのステータスが高くなっていて、耐久力がある地竜になっている

    フェネセブンと同様、火竜のウナギに相当する地竜という立ち位置

 

○種族「アサシンフィンジゴアット」

・概要:ハイフィンジゴアットの特殊進化先。ステータスはジェネラルと比べると

    低めだが、猛毒針や、針で刺した相手を麻痺状態にする麻痺毒針などの

    強力な状態異常攻撃を持っているほか、隠密と無音のスキルを高いレベルで

    保有しているため、ステータスの高い魔物相手でも、毒や麻痺に対する

    耐性が高くないと倒してしまえるほどの厄介さがある

 

○種族「エルロービッグフロッグ」

・概要:エルローフロッグの進化形で、ステータスの平均値は500ぐらい

    エルローフロッグが2回進化した姿という設定

    主にステータスが成長しているが、特殊なスキルは持っていない

 

○種族「アイアンタートル」

・概要:スモールロックタートルの進化形。鋼体のスキルを持っていることで

    ロックタートルから進化することができるという設定

    防御能力は非常に高いが、特殊な攻撃スキルを持っているというわけではなく、

    純粋にステータスやスキルが成長したといった感じ

 

○種族「サンダーライトエルローペカトット」

・概要:エルローペカトットの亜種?から進化したという設定。雷属性の攻撃をしてくる

    ペカトットの亜種?の存在については、スピンオフ漫画を参照

    進化前の種族名は「サンダーエルローペカトット」という設定

 

○種族「カースアノグラッチ」

・概要:アノグラッチの特殊進化先。バグラグラッチとは異なり、怒の進化した激怒のスキルと、

    仲間を害した存在に対して執拗に攻撃を繰り返す復讐のスキルを進化しても保持している

    さらに新たに呪怨のスキルと、この種族固有の怨念というスキルを手に入れており、

    単体での危険度はCランクに上がり、群れた場合の危険度は最悪神話級にも匹敵する

    ちなみに進化条件には、復讐のスキルの一定回数以上の発動が含まれている

    なお、カースアノグラッチからはカースアノグラッチが生まれてくるので、個体数が

    足りない、なんてことは基本的にないらしい

 

○種族「カースバグラグラッチ」

・概要:カースアノグラッチの進化先。通常のバグラグラッチと同じように、激怒や復讐、

    それに怨念などのアノグラッチならではのスキルを進化することで失っている

    復讐のスキルがなくなったことによって数の暴力という危険性もなくなったが、

    強力な効果のスキルを失った見返りか高いステータスを得ている。相手の能力値を下げる

    呪い属性については呪怨のスキルが残っているため扱うことができることも含め、

    単体での危険度はAに近いBランクとなっている

 

 

 

●今作オリジナルの称号の説明

 

○称号「呉爾羅」

・取得スキル:「HP高速回復LV1」「火強化LV1」

・取得条件:スキル「呉爾羅」の獲得

・効果:取得する経験値と熟練度の上昇

・説明:恐るべき怪獣の力を持つものに贈られる称号

 

 

 

●そのほか、オリジナル要素

 

○熔岩熱線

地竜として土属性の適性が高いことと、呉爾羅のスキルによって火属性に長けていることにより

成立した、スキルの掛け合わせにより生まれた技

地竜のスキルなどで作り出した土属性の物質に、呉爾羅のスキルで発生させた

火属性のエネルギーを加えるイメージで2つの属性を混ぜ合わせ、熔岩のように高熱を発する

モノにして、攻撃として相手にぶつける。この攻撃は、通常の熱線などと同じく相手に

当たった際にダメージを与えるだけではなく、形のある物として相手にくっつき、それが

接触しているあいだは主に火属性のダメージを与え続けることができる

蜘蛛子風に表現するなら、土属性と火属性で再現した、摂取ダメージはないが接触ダメージが

大きい毒といったところ。作者が主人公にやらせてみたかったこと

 

 

 

●既存のスキルの独自設定

 

○スキル「地竜」についての独自設定

・説明:地竜種が有する特殊スキル。レベルにより特殊な効果を発揮する

 LV1:土ブレス。MPを消費して、地属性のダメージを与える土を吐き出す

 LV2;石纏。平均速度能力が下がるが、石を纏って防御力を高める

 LV3:生命変遷。火竜と同じく、赤色のSPを消費することでHPを回復する技

 LV4:地恵。地面などに接することで、MPが少しずつ回復する

 LV5:大地ブレス。MPを消費して、土を圧縮した塊を吐き出す地属性のダメージに加え、

   物理的なダメージも与えることができる

 LV6:食地。土や石などを食すことで能力値が上昇する。吸血鬼の基礎能力的な技

 LV7:地竜ブレス。大地ブレス系統とは違い、光線状のブレスで攻撃する技

   アニメの地竜が使っていたような感じのイメージ

 LV8:大地纏。石纏の強化版で、より頑丈な土と岩の鎧をまとって防御を高める

   名前に関しては、「岩石纏」や「岩盤纏」等の候補と、どれにしようか迷った

 

 

 

●既存の種族について

 

○種族「フェネグラッド」について

原作で登場している地竜。少なくとも漫画版には名前とともに登場している

この種族に進化させるために、主人公を地竜に転生させたといっても過言ではない

 

 

 

●そのほかの独自設定

 

○耐性系スキルの仕様

・ステータス上の抵抗能力の大きさに関わらず、耐性系スキルの所持により、

 対応する属性に抵抗できるかどうかが大きく左右される

 

○スキル「禁忌」についての独自解釈

熟練度をためる条件に、魂に影響を及ぼすスキルが関わっていると思われる

例)魂に直接はたらきかける外道魔法→カンストで禁忌が派生

  魂を直接破壊しにいく外道攻撃→それに分類されるような行為で禁忌の熟練度がたまる模様

  支配者スキル→取得だけで禁忌の熟練度が大幅にたまる

 

○進化するほどスキルが育ちやすくなる

今作では、肉体等の元の能力が高いほど、ステータスやスキルなどのシステムによる恩恵も

育ちやすいという設定になっている。よって、進化によって肉体がより強力なものに

なっていけば、その分スキルやステータスが強くなりやすくなると、今作では設定している

原作でも、Web版におけるアリエルの過去語りでは、ステータスによる補正は元の能力に

依るものとあるため、今作ではスキルも同様の物としている

 

○並列意思を丸々一つ集中させることで、スキルの熟練度がたまりやすくなる

今作での設定。原作の描写などを根拠にしている訳ではないので、この小説オリジナルの設定

しいて言うなら、実戦などで集中するほどスキルのレベルが上がりやすくなるらしいので、

スキルの力で分割しているとはいえ意思の一つに集中させれば、その分スキルの熟練度が

たまるようになり、育ちやすくなると思ったため

 

○呉爾羅LV10によるHP回復効果について

呉爾羅の特殊効果には、自己再生と超再生の二つが含まれている。自己再生の場合は

呉爾羅のスキルと同レベルのHP高速回復のスキルと同等の効果、超再生の場合は呉爾羅の

スキルと同レベルのHP超速回復のスキルと同等の効果をもたらしている

つまり、通常のHP自動回復系のスキルとは別に、呉爾羅LV10のスキルを持っていると、

HP超速回復LV10とHP高速回復LV10を同時に持っているのと同じくらいのスピードで

HPが自動回復していくことになる

 

○スキル「鉱体」について

原作では、「甲殻」と並んでスモールロックタートルという魔物が所持しているスキル

「甲殻→堅甲殻→重甲殻」のような感じで、「鉱体→鋼体→神鋼体」というように

進化していくスキルだと予想し、地竜が持つようになるスキルだと設定している

地竜のスキルで使える「石纏」を使用することで熟練度がたまっていく

 

○毒攻撃と麻痺攻撃のスキルについて

スキルポイントを消費しない場合は、毒属性や麻痺属性を持つ武器を使って攻撃することで

熟練度をためて取得できる

 

○魔力の操作を応用したMP系のスキルのレベル上げ

「システムにおける魔力=MP」という等式が成り立つならば、魔力の回復の流れを促すように

操作する等で、MP回復速度やMP消費緩和のスキルのレベル上げをすることができると

考えられる為、魔力の操作を応用してMP系のスキルのレベル上げができるという設定に

している

 

○「怒」系列のスキルによるステータス上昇の仕様(考察に基づく独自設定)

・怒 :攻撃・防御に、(本来の数値×0.3×スキルレベル)の分だけプラスされる

例)怒LV6のスキルを持っている場合

 平均攻撃能力:50→50+(50×0.3×6)=50+90=140

 平均防御能力:50→50+(50×0.3×6)=50+90=140

・激怒:攻撃・防御に、(本来の数値×3)の分だけプラスされ、魔法・抵抗には、

    (本来の数値×0.3×スキルレベル)の分だけプラスされる

例)激怒LV5のスキルを持っている場合

 平均攻撃能力:50→50+(50×3)=50+150=200

 平均防御能力:50→50+(50×3)=50+150=200

 平均魔法能力:50→50+(50×0.3×5)=50+75=125

 平均抵抗能力:50→50+(50×0.3×5)=50+75=125

 

○呪い属性による弱体化の効果が薄まる時間について

HPをごりごり削っていく毒や、体の動きを封じる麻痺と比べると、能力値の弱体化というのは

まだマシだと考えられる為、この小説では効果が薄まるのにかかる時間は、毒や麻痺よりも

多めに設定している。いちおう、呪い耐性のレベルが高いほど弱体化が速く治るようになってる

 

○「呪い」の仕様

部位ごとに弱体化している数値が細かく設定されていたり、その部位を体から切り離せば

その分だけ弱体化が緩和する(完全な独自設定)




前回までの後書きに書いてある設定は、以上になります。
魔物のステータスやスキルについては、また別の機会に記載することを予定しています。
オリジナルのスキルや種族などは、ストーリーの進行とともに新しいものが出てくる予定です。
本編の方も、これからも読んでいただけると幸いです。
ありがとうございました。


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