異世界帰りの魔王様 (大倉 雪之丞)
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序章-異世界帰りの勇者が魔王様になった日-
勇者が魔王に至った日


初めまして、大倉雪之丞です!
処女作になるので、拙い部分があると思いますが、よろしくお願いします!


______あぁ、まったく。どうしてこんなことになったんだ?

  

 頭上で輝く太陽と、それを僕から包み隠すように立ち尽くす巨大な人型の影。そして、その人影のちょうど心臓に位置する部分に突き刺さるように存在する棒状のナニカ(・・・)

 

 全身に走る激痛に耐えつつ、それを眺めながら僕はどうしてもそう考えざるを得なかった。

 

 剣道にのめり込み、気が付けば全国一位を取ったこと?

 

 異世界に召喚され、言われるがまま勇者として聖剣をふるったこと?

 

 それとも、異世界に残してきた聖剣に似た物が見たくて、世界の刀剣展を見に行ったことか。

 

 いや、きっと全部だ。要は運が悪かった(・・・・・・)

 

 僕の身体を乗っ取ったあいつにとって、剣の才能に恵まれていて、剣をふるった経験があり、戦い慣れていた身体を欲していたところに______僕が現れた。

 

 あいつにとっては幸運な、そして僕にとっては不運なことに。

 

______なら、こうなったことは僕にとって幸運なのだろうか。

 

「…ふふふ、嗚呼。まったくこれだから人の子は面白い!」

 

 人影が笑う。心底面白いものを見た幼子のように。

 

「さてさて、人の子が我を、神を殺した!さすれば来るのは、ただ一人。

 

 ______そうであろう?パンドラよ」

 

 気が付けば、人影がもう一つ増えている。

 

 この人影がパンドラなのだろうか。対面にある、巨人に比べたら随分と小さいように見える。

 

「えぇ、その通りですわ、フレイ様。私は神と人のいるところに必ず顕現する者。あらゆる災厄と一握りの希望を与える魔女ですもの。

 ふふ、あなたね?私の新しい息子になるのは。…あら?この子、もしかして」

 

「うむ、そなたの思う通りじゃ。我ら神が真にある場所。不死の領域を超えた先、次元すらも超えた異世界に召喚された経験を持つものじゃ。異世界の勇者が、元の世界では魔王となる。______これほど面白いことはあるまい?」

 

 どうやら、彼らにとって自分はある意味での有名人であったようだ。まあ、異世界に召喚されたことのある人間なんて、そうそういないのだろう。

 

「こんなこともあるのですね…あら?これは______異世界の女神の祝福?少し邪魔ね…えいっ」

 

 パンドラが指を振った瞬間。

 

「いぎぃっ!!!???ぎぃ、がああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

 先ほどから全身を苛んでいた激痛を、優に超えるさらなる激痛が全身をめぐる。

 

 まるで、全身の皮を無理やり剥がされていくような、こうして意識を保っていることすら奇跡に感じられる、そんな痛みだった。

 

「あら、少し無理やりすぎたかしらね。ごめんなさいね、でも我慢しなさい。

 

 その痛みはあなたを最強の高みへと導くための代償______まあ、異世界の女神の祝福をすこぉし改変するから、その辺の痛みとかもあるのはあなただけだけども。でも、その代わりに私がこの祝福も一緒に導いてあげる。だから、甘んじて受け入れなさい!」

 

 段々と意識が朦朧としてくる。正直、なぜ彼らの会話を聞き続けられているのかがわからない。

 

 あぁ、やばい。意識が、もぅ、保て…。

 

「さあ、皆さま、祝福と憎悪をこの子に捧げて頂戴!六人目の神殺し______歴史上、最も若き神殺しとなる運命を得た子に、聖なる言霊を捧げて頂戴!」

 

「ふむ、よかろう______では、異世界の勇者にして、この世界において魔王として新生する者よ。暖かき陽光とともに豊穣と勝利を運ぶ我から権能を簒奪せし貴様に、祝福と憎悪を与えよう。

 強く生きよ。この後に待ち受ける我が愛しき妹と、隻腕の軍神との死闘をまずは生き抜くのだ。そうして、神殺しとして生き抜いた先に我との再戦があるだろう。それまで、誰にも負けてはならぬ、貴様は我が獲物ゆえに、ほかのどの神にも負けられては困る。あれだぞ、妹にだけは絶対負けるなよ?不死の領域にある我の肩身が狭くなるからな。絶対に、妹にだけは負けてはならぬぞ、よいな!!!」

 

 なんというか、非常に情けない言葉を最後に、僕の意識は完全に手放されたのだった…。

 

 




ここまでありがとうございます!
誤字脱字等の指摘、感想コメントお待ちしています!


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主亡き王国にて

こんにちは、大倉雪之丞です。

お待たせいたしました、異世界帰りの魔王様第二話です。

あとがきのほうに前回も含めた、オリジナル用語集を書きました。




 さて、前回より少し時は遡り、幽世(かくりよ)のとある小屋の中。

 

「ほぉ、あの異世界に召喚されたガキ。北欧のキカン坊相手によく渡り合ってるじゃねぇか」

 

「まことに。これは、異世界帰還者初の羅刹王の誕生になるやもしれませぬな」

 

「ですが、大丈夫でしょうか。例え、北欧のフレイ様にこの少年が打ち勝つことができたとしても、その後にはフレイヤ様、テュール様との闘いになるでしょう。それに生き残ることができるのかどうか…」

 

 囲炉裏を三人の人物が取り囲んで、何やら鍋の中を覗き込みながら、談笑していた。

 

 鍋に張られた水は、不思議なことに、まるでテレビや映画のスクリーンのようにどこかの情景を映し出していた。

 

「そりゃァ、このガキ次第だろ。本当に神殺しを為したなら、そう簡単には死なないだろうしな。まぁ、俺もこいつにゃァ少し興味がある。もし、本当に為し得たのなら、ここで一時的に保護することも考えといて損はねぇ」

 

「そうですな。まこと為し得たのであれば、彼の御仁は日の本初の羅刹王と為られます。そのうえ、あと二柱のまつろわぬ神との決闘を控える身となりましょう。ここで傷を癒していただく間に、彼の御仁のお人柄などを見極めることもできましょうぞ」

 

 大柄な老人と黒衣の即身仏のような二人は、くつくつと笑いをこらえながらそう宣う。

 

 それに対し、色鮮やかな十二単に身を包んだ媛は少し不愉快そうに眉をひそめた。

 

「また、そのようなことを…。お二人とも。どうやら、趨勢は決したようです。この国初の羅刹の君が誕生いたしました」

 

 媛のその言葉に、二人も身を乗り出して、鍋の中をのぞきだす。

 

 その鍋の中では確かに、巨人の如く大柄な男の心臓部分に、しっかりと剣だったナニカが突き刺さっており、男の信じられないとばかりに大きく眼を見開き、一瞬の後に大笑いをしだした様子もしっかりと映し出されていた。

 

「はっ、随分と楽しそうに笑うじゃねぇか。______それにしても、本当に為すとはな。ちったァ、期待してもいいってことかァ?こいつは」

 

「記念すべき吉報、いや現世の呪術師どもにとっては忌むべき凶報、というべきですかな?」

 

「いずれにせよ、まずはこの羅刹の君を保護せねばなりますまい。私は、いまだ眠れる羅刹の君をお迎えに行ってまいります。御坊と御老公はどうなさいますか?」

 

 老人と即身仏は、ニヤリと悪い笑みを浮かべ、そんな二人を媛は困ったものを見るように見ている。

 

「そりゃァ、もちろん。会うさ」

 

「某も会いまするぞ」

 

 その言葉を最後に、三人の姿は小屋から消え去った。

 

 目指すは、新たな魔王が生まれた場所。

 

 まつろわぬフレイが、まつろわぬフレイヤとまつろわぬテュールという二柱の神を迎え撃つために整備した、彼の王国である。

 

 

 

 

 

______目を覚ますと、目を見張るほどの美女に膝枕されていた。

 

 どんな三文芝居でもそんな言葉は出てこないだろう。だが、僕が現状置かれている状況は、そう称する以外思いつかなかった。

 

「おはようございます、異世界の勇者殿。まずはまつろわぬフレイから無事権能を簒奪なされ、羅刹の君へと新生されたこと、おめでとうございます。あなた様の歩まれる道は今後、困難を極めると思われますが______」

 

「らせつの、きみ…?」

 

 正直、彼女が何を言っているのか僕にはわからなかった。勇者だの、自分の行く末だのについて話しているのは分かるのだが、覚醒したばかりの頭ではそこまで頭が回らない。

 

 ただ、一つだけ言えるとしたら______

 

「綺麗だ」

 

「…はい?」

 

 彼女の表情が固まる。

 

 嗚呼、それではいけない。美しいものは美しくあらねばならないように、美しい女性には微笑んでいてほしい。

 

 まぁ、いきなりこんなことを言い出した自分のせいであるが、覚醒したばかりの頭であるからか、止めようとしても、口が止まってくれない。

 

「貴女のように綺麗な女性は初めて見ました」

 

 彼女の頬に手を伸ばし、ゆっくりと、愛おしいものを撫でるように触れる。

 

 女性に対してこのようなふるまいをするようになったのはいつ頃だったか。召喚される前はそこまで特別扱いをした覚えは彼にはなかった。

 

 たしか______そう、あの普段は清楚そうに微笑み、子供などであれば敵対者であった魔族にすら情けをかけながら敵として立ちふさがったときには"氷の聖女"などという言葉が似合うほど冷ややかな表情を一切変えず処理していた、あの聖女を旅の伴に迎えてからだろう。

 

 あの旅の中で少しでも女性への配慮に欠ければ即座に冷笑を浮かべ、説教をし始めたあの聖女にきっちりと女性への扱い方なるものを叩き込まれたせいだったはずだ。

 

 その度に魔女が何やら『自分にさせたい扱いを刷り込むって…』と小さくつぶやいていたり、騎士があきれた物を見るように聖女を見ていたりと、まあ本人的には教育のつもりでも、周りから見れば所謂『逆光源氏計画』に見えていたのだろう。

 

 まだ、義務教育を受ける身であり、世間知らずだったし、女性に逆らうと碌な目に合わないという父の言葉からそれを素直に受け取っていたのだが、今思い返してみると当事者の片割れからみても私欲がにじみ出ていた気がする。

 

 実際、常に『実践あるのみ!』となんだかんだ理由をつけては即座に実行させられ、その度にどこかご満悦にしていた気がするし、それを魔物の乱入とかで邪魔をされると烈火のごとく怒っていたし。

 

 ______あれ、意外と思い出すとあの人も割と色物枠だったなぁ。当時は大人なお姉さんって感じで普通に憧れてたけど。しかも、最終的に開き直ってなかったか?『誰も不幸にならないんだからいいじゃないですか!実際、貴女たちもまんざらでもなさそうにしていたではありませんか!?』とか叫んでたような記憶がある。

 

「ははァ、新たな神殺しは随分と女にやさしいなァ。おめぇも顔を赤らめて、惚れたか?」

 

 思考の海に潜り込んでいると、突然第三者の声が聞こえた。

 

 反射的に立ち上がり、腰に手をやり______今は無き相棒を探して空を切った。

 

 それに顔をしかめつつも、声のした方向に目を向ける。

 

 そこに立っていたのは、弥生時代の人々が身に着けるような簡素な服に身を包んだ大柄な老人とミイラのように干からびた即身仏のような黒衣の僧だった。

 

「この度は神殺しの大業を達成為されたこと、お慶び申し上げます。異世界の勇者殿。______御気分はいかがですかな?それに媛のことも随分とお気に召されたようで…嫁入りですかな?」

 

 ニヤニヤと面白いものを見たかのように笑いながら言う二人に対して、自然と眉間にしわが寄ってしまう。

 

 しかも、あの老人。なんというか、ただ者ではない気がする。実際、アレが現れてからは全身に力がみなぎって仕方がない。五感が研ぎ澄まされ、老人の一挙手一投足を見逃すまいと驚異的な集中力が発揮される。

 

 ______まるで、魔王を目の前にしたときみたいだな。

 

 異世界の女神により与えられた祝福。それは女神聖教曰く『魔王を討滅するための、魔王殺したる勇者を生む大呪法』。それゆえに、魔王を相手にするとき、勇者は戦いに向けて常に万全の状態が保たれ、女神の加護を発揮するとか。

 

 実際、この祝福には最終決戦の時にはかなり助けられたものだ。物理攻撃は通じず、魔法も通じず、唯一通じるのは魔王討滅の祝福を与えられた勇者と、勇者だけが持つことができる聖剣による手傷のみと、非常に厄介な存在だった。

 

「...御坊、御老公。お戯れはそこまでになさいませ。我らはそのような目的でやってきたわけではありません」

 

 先ほどまで、膝枕をしていた"媛"と呼ばれる女性の凛とした、鈴の音色のような清涼な声が響く。

 

「はっはっはっ、そう恐ぇ顔すんな。まんざらでもねぇのは事実だろうが。...さて、初めましてだな、岩戸周。俺は速須佐之男命。須佐之男でいいぜぇ」

 

「なんで、僕の名前を知ってるんだ?」

 

「そりゃあ、お前が異世界に召喚され、その挙句帰ってきた貴重な存在だからだよ。異世界の連中からの拉致ってのは、ままあることだ。だが、その中で帰ってきたのはごく少数でな。お前みたいに無事帰ってきたやつらは自然と不死の領域とかにいる奴らにも名前が知られるんだ。まあ、俺たちは別に不死の領域にいるわけじゃねぇから知る由もねぇが...異世界帰還者支援機関は知ってるだろ?」

 

 異世界帰還者支援機関。

 

 彼らの職務は主に二つ。行方不明者が発生したら、それが通常の手段であるのか、それとも異世界による拉致なのかの調査を行うことと、もし帰還することができたものが現れた場合には、その人物が日常生活に戻れるよう、支援を行うことだ。

 

 異世界帰還者である僕も、この機関の支援の元、最近ようやく平和な日常に慣れることができた。

 

 ちなみに、職務などについてを教えてくれたのは僕の担当者である甘粕さんだ。

 

 本来は機関の本元である政府のある組織の東京分室の次期室長に仕える身らしいのだが、機関に所属する人員が極端に少ないことと、空いている人手がなかったため、室長から出向命令を受けたらしい。

 

 随分とくたびれた感じの苦労人だった。ただ、アニメ等に詳しい人物で、一度語りだしたら止まらない、というのが難点だろうか。

 

「知ってるけど...。あなたたちと何の関係が?」

 

「あの機関の本家本元である正史編纂委員会には、我らも少し力を貸しておるのです。とは言っても、あのものどもが、地上の些事にかまけて、眠れる虎を起こさぬようにするためなのですが」

 

「じゃあ、僕のこともその、正史編纂委員会から?」

 

「えぇ、その通りです。特に御身は異世界からの女神の祝福を得たまま、お戻りになられたので、我らも少々注視していたのです」

 

 黒衣の僧と媛のいうことを信じるならば、軽く監視されていた、ということなのだろう。

 

「そうですか。じゃあ、いくつか質問いいですか?」

 

「______待ちな。来たぜ」

 

 気が付けば、須佐之男は空を見上げていた。

 

 それに習うように僕も空を見上げる。そこにいたのは______

 

「久しいな、異世界の勇者。いや、我らが仇敵よ」

 

 月の光を溶かし込んだかのような銀髪をなびかせ、無数の戦乙女を従えたとても美しい女神だった。




今回(前回を含め)出てきたオリジナル用語集

・魔王討伐パーティー
 王国の『救世主招来の儀』により、異世界から召喚された勇者を中核とし、現代において最高峰の実力を有する魔女、女神聖教始まって以来最高と称される聖女、召喚した王国の第一王女であり、優れた外交官でもある王女、そして、女性のみで構成され、王国最強との呼び声高い近衛騎士団の次期騎士団長であり、第一王女の側近である女騎士で構成された世界最強のパーティー。魔王討伐後に勇者が異世界へと帰還したことで解散されたが...?

・女神聖教
 異世界において広く信仰される宗教。宗教の上層部には女性しかいないが、これの任命権を持つのは女神か、女神の代弁者であり、女神の言葉を神託により得る聖女のみ。『魔王討滅の祝福』なる大呪法があるらしい。

・魔王討滅の祝福
 周が召喚された異世界の女神が、ある世界の『人間を神とも戦える人類最強の戦士』へと昇華させる大呪法と、『魔王が世界に多く存在している場合に魔王を殲滅する宿命を持った勇士を召喚』する儀式をモデルに作り上げられた女神の加護。この祝福を得た勇者は聖剣をふるう資格を得るほか、魔王と相対したとき、いつでも戦闘行為を全力で行えるように体が整えられるなどの特徴がある。今回、パンドラにより変更が加えられたようだが...?

・聖女
 王国からは『慈愛の聖女』と呼ばれ、魔族からは『氷の聖女』と呼ばれた女神聖教の修道女。女神の代弁者たる今代の聖女。年齢は20代前半。周の旅には女神の神託により同行していた。当時、周は気が付かなかったようだが、若干ショタコンの気があった。彼女からすれば程よく年を取りながら、今だショタと呼べる容姿をしていた勇者は(世間体を気にしなくてもいいという意味でも)かなり好みだったらしい。

・聖剣
 『魔王討滅の祝福』を持つ勇者のみが振るうことのできる剣。イメージ的には白銀に輝くヴァイキングたちが使っていたというウルフバートが一番近い。現在、担い手たる勇者が元居た世界に帰ったため、女神聖教と聖女が管理している。

・異世界帰還者支援機関
 日本政府の正史編纂委員会の傘下、というか一部門の一つ。異世界に拉致された疑惑がある行方不明者が出た場合には、異世界からの拉致なのかどうかを呪術的観点、科学的観点の両方からアプローチを行い、異世界による拉致なのかを判断する。ほかにも、異世界に拉致され、帰還した人物は帰還後に精神疾患を発症したり、人を傷つけることになんの抵抗もなくなっている場合が多いため、彼らが日常生活に戻れるように支援も行う。日本全国から集められた行方不明事件に強い警官や物理学者、結界や転移系の術式に長けた術者が所属している。



第二話を読んでくださりありがとうございます。
感想や誤字脱字報告、指摘などお待ちしております!


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まつろわぬフレイヤ

『あ...ありのまま今起こったことを話すぜ!

「おれは8月に投稿しようと思っていた小説を投稿したら、いつの間にか11月になっていた」

な...何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった...

頭がどうにかなりそうだった...催眠術だとか、超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...』


と、いうわけでこの度は投稿が三か月も遅れてしまい申し訳ございません!!!

言い訳としては原神やユナイトにはまってしまったこと、また明日やろう明日やろうと先延ばしにしていたこと...です。

でも、この間にポケモンや原神、あとはアズレンとかの創作ネタが温まっているので、今後は単発にはなると思いますがそちらの投稿も行うと思います。それで勘弁してください

では、異世界帰りの魔王様の第三話、どうぞお楽しみください。


「久しいな、異世界の勇者。いや、我らが仇敵よ」

 

 月の光を靡かせ、無数の戦乙女(ワルキューレ)を従える女神、まつろわぬフレイヤ。

 

 先日、僕が打倒したまつろわぬフレイの妹にして、アース神族側に所属していながら、敵方のヴァン神族の出身である女神。

 

 彼女は、典型的な美の女神だ。オーズという夫がありながら、彼女に貞操観念は存在しない。体を合わせた男は数知れず、その中で有名なのは、彼女に猪に変えられてしまった人間の愛人オッタルや「ブリーシンガメンの首飾り」を作らせるためにドワーフたちと交わった逸話だろう。

 

 一方で、彼女は戦場の女神だ。北欧において死んだ勇士たちを、主神オーディンの館「ヴァルハラ」に導く戦乙女たち「ワルキューレ」の女主人であり、死んだ勇士たちはオーディンとフレイヤとで分け合われた。このことから、フレイヤはオーディンの妻であるフリッグという女神とも同一視され、キリスト教が台頭してきてからは、フリッグの役目の多くをフレイヤが務めていた。

 

 次々と湧き上がる、知らないはずのフレイヤの知識。

 

 ______剣を研げ。大地にあまねく恵みをもたらす陽光よ、猛々しく燃えよ。大地(ゲルズ)を征服するため。

 

 頭の中に響くのは忘れもしない、フレイの声だ。

 

 声とともに一本の古びた剣が、徐々にかつての輝きを取り戻しつついく様が浮かぶ。

 

 ______剣を研げ。大地にあまねく恵みをもたらす陽光よ、猛々しく燃えよ。世界の終末(ラグナロク)で世界を焼き尽くすため。

 

「ほぅ、我が愚兄の剣を研ぐか。私を魅了してやまない黄金の剣。私たちをまつろわせる(・・・・・・)忌々しい勝利の剣を!」

 

 フレイヤの美しい顔が歪む。

 

 酷く憎いものを見るような、とても眩しい存在を見つめるような、そんな複雑な表情だ。

 

「だが、今は許そう。私は寛大だ。だが、その前に______疾く失せよ、極東の《鋼》よ、我ら女神が零落した末路たる神祖よ。これより我が兄が治めるアルフヘイムは我ら二人の逢引の場となる。よもや、邪魔をする、などという無粋な真似はせぬな?」

 

 ふっ、と笑うフレイヤが睨むのはこの場にいてはいけない、無粋な輩。

 

「わぁってるよ、そんくらい。だが、まあ、最後に助言だけしていくか。神からの神託ってやつだ。

 

 ______お前の中に眠るキカン坊の権能。そこの淫売の言葉を借りるならそれは"勝利の剣"だ。最源流の《鋼》に連なる、あまねく女神どもをまつろわせる征服者の剣。お前はすでに知っているはずだ」

 

「は?いや、知ってるってどういう...」

 

「そんくらい自分で考えろ。いずれにしろ、そこのおっかねぇ女神を倒せなきゃお前は死ぬ。死にたくなきゃ思い出せ、かつての旅路でふるったお前の相棒を」

 

 かつての旅路でふるった僕の相棒。

 

 聖剣のことだろうか。だが、聖剣は魔王討伐後に帰還の魔法陣を使う前に聖女に預けたはずだ。

 

 それを思い出す?一体、どういう______。

 

 その時、パシッと、媛のたおやかな手が僕の頬を包む。

 

 その行動に驚き、彼女の顔を見やる。

 

 とても、柔らかな、穏やかな表情だ。愛おしい我が子を見つめる母の表情だ。

 

「羅刹の君よ、御身に施されたかの女神の祝福______それは"あのお方"を再現するものです。彼と救世の神刀は魂でつながった縁深きもの、そして、それは御身と救世の聖剣にも言えるのです。どうか、それをお忘れなきよう______再び、あなた様にお会いできるのを楽しみに待っております」

 

 その言葉を最後に、御老公と呼ばれていた三人はその場から消失した。

 

 いや、どちらかというと転移が近いだろう。かの魔女が駆使した空間魔術の最高峰、彼女ですら行使に際して多くの準備を必要としていたそれを、事も無げに行うとは...。

 

 ______いや、確かフレイがここは生と不死の境界であるアストラル界だとか言ってたよな。なら、問題はないのか、要は世界と世界を隔てる境界線、そういった場所は得てして空間自体が不安定だと、魔女が講義の中でいっていたはず。

 

「さて、ようやく邪魔者が消えたな。まずはあなたに賛辞を贈ろう、異世界の勇者殿。よくぞ我が愚兄を打倒し、その権能を簒奪した。そして、失望を。あなたの魂はとても美しい。煌々と輝く魂のきらめき。それはほかの凡俗なものどもは持たない、唯一無二の輝きだ。さながら天上で我らを照らす太陽のように。神殺しの獣になど堕ちず、勇者のままであったのならば、我が愛すべき勇士として我が閨に招き、熱い夜を過ごそうとも思ったが...詮無きことよ。ゆえに、せめて我が手であなたを葬ることにした。それがかつての勇士であった、あなたへ贈る私の愛なのだから!」

 

 その言葉と同時に、フレイヤの背後に控える戦乙女(ワルキューレ)たちが武器を構える。

 

 ああ、これはまずい状況だ。フレイの時とは異なり、僕は武器を持っていない。

 

 ______ほんとうに?

 

 心のうちから湧き上がる疑問。本当に僕は武器を持っていないのか?

 

 先ほどフレイヤは、スサノオは何と言っていた?

 

 『勝利の剣』。二人の言葉を信じるならば、神殺しの魔王とかいう存在に生まれ変わった僕は、フレイからその剣を奪い取っているはず。

 

 でも、どうやって使えばいい?

 

戦乙女(ワルキューレ)たちよ、我が娘らよ!汝らの定めを果たすのだ、神殺しを我が館へ招待せよ!」

 

 フレイヤの号令とともに戦乙女たちの攻撃が放たれた。

 

 彼女らが持つ槍が、魔術が、矢の雨が降り注ぐ。

 

 どうする、どうすればこの状況を切り抜けることができる?

 

 ______思い出せ、聖剣を。想起しろ、勝利の剣を。

 

(つるぎ)よ、輝け______我が勝利のために!」

 

 自然と口をついた言霊。それと同時に手を、かつて聖剣を握ったときのように前に突き出した。

 

 熱が生まれる。光が産まれる。形が形成()まれる。

 

 かつての相棒とは異なり、黄金に光り輝く剣がいつの間にか僕の手の中に存在していた。

 

 なんとなく、剣を上空へと振るう______そうすれば、この状況を切り抜けられるという確信があったからだ。

 

 剣から熱が発せられ、光の奔流が戦乙女たちから放たれた攻撃の雨を、いや戦乙女たちすらも飲み込んだ。

 

 光が晴れると、先ほどまで戦乙女たちが浮かんでいた空には何も残っていなかった。

 

「______ふふ、ふふふふふふふふ。あぁ、懐かしい、忌々しい輝きだ」

 

 フレイヤの笑い声が周囲に響く。

 

「さぁ、神殺し______我が愛する勇士よ、殺し合い(愛し合い)ましょう?」

 

 そういったフレイヤの顔は、艶を含んだ恍惚の表情が浮かんでいた。

 




今回のオリジナル用語
・大地/ゲルズ
フレイの妻である巨人。その名は垣で囲まれた播種された耕地を意味すると考えられている。彼女はあらゆる女の中で最も美しいとされ、彼女の腕の輝きにより空と海が明るくなったとされている。ゲルズに求婚する際に召使であるスキールニルを使いに渡したが、その際に勝利の剣を手放した。このことから、元々は大地の女神と夜明け(もしくは太陽)の女神が習合した存在なのでは、と個人的に考えている。

・あのお方
魔王討滅の宿命を背負った英雄神。原作のラスボス的存在。ぶっちゃけオリジナル用語ではない。


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一方、その頃

皆さん、お久しぶりです。

大倉雪之丞です。

就活やらレポートやら卒業論文やら卒業研究やらで今まで時間が取れていなかったのですが、何とか新しい話を書くことができました。これから引っ越しなどもあり、本当に微々たる速度での執筆となりますが、ご容赦願います。

今後とも『異世界帰りの魔王様』をよろしくお願いします。

では、異世界帰りの魔王様の第四話、どうぞお楽しみください。


「さぁ、神殺し______我が愛する勇士よ、殺し合い(愛し合い)ましょう?」

 

 フレイヤの美しい顔に浮かぶのは、艶を含んだ恍惚の表情。あらゆる男を誘い、惑わし、(かどわ)かす美の女神としての表情だ。

 

 ______さて、どうしたもんかなぁ。出せるには出せたけど、正直使い方なんてよくわかんないし。というか、何出たの?あれ。聖剣と同じって言ってたじゃん!嘘じゃん!!!僕の知ってる聖剣、あんなの出ないよ!!!???聖剣(あれ)はあくまでも、勇者の証であり、不死の魔王に《死》っていう結果を与えるためだけのものだよ!?

 

 美の女神のような(こういった)手合いにはあまり隙を見せてはならない。かつての旅路の中で出会った魔族軍四天王の一人である《邪淫》のグリゼルダは、フレイヤほど魂を握られるような、惹き込まれるような美しさは持っていなかった。しかし、彼女はこちらがつい零してしまった表情や言葉、動揺などに敏感で、少しでも隙を見せればあっという間に隙を作りだしてはこちらにとって非常に嫌なことを仕掛けてきた。正直、今思い出すのすら嫌なくらい、彼女には多大な迷惑と気苦労などを掛けられてきた。

 

 彼女に対抗するためには、兎にも角にもまずは表情を取り繕うことが必要だった。彼女は相手の表情のわずかな強張り、視線の動き方、呼吸の頻度、大きさなどなど表情から多くの情報を抜き取り、そこから相手の次の行動を予測するというとんでもない戦い方をしていたからだ。

 

 その経験から、何とか表情を取り繕っているが、僕の内心は焦りまくりである。

 

 対して、フレイヤは相も変わらず恍惚の表情を浮かべている。ただ、こっちが内心焦っていることは読まれている気がする。

 

 ついと、手元に現れた《勝利の剣》を見る。

 

 黄金に輝いている、バイキングたちが持つ剣______確か、ウルフバートだったか______に似ており、色を除けば本当に聖剣に似ていた。

 

 ______須佐之男は、聖剣を思い出せと言っていた。媛は、聖剣と僕は今も繋がっているはずだと言っていた。

 

 聖剣を、否、この剣を振るうためには何が必要だ?

 

 自分の内側へとそう問いかける。聖剣は、基本的には物言わぬただの武器である。だが、正当なる所有者である勇者が何か大きな困難に直面していたり、悩んでいた時には声なき声を、イメージとして伝えてくれた。意思の疎通ができていたのだ。聖剣の意思によって励まされたことも多く、聖剣の導きによって解決できたこともあった。

 

 だからこそ、この剣も問いかければ、応えてくれるのではないか。何となくだが、そんな気がしたのだ。

 

 ______万物切り裂くには、目の前の障碍を敵と認めよ。

 ______陽光照らすには、敵が強大である必要がある。

______勝利得るには、神に対する十分な知識が必要である。

 

 応えてくれた。

 

 ふっと、笑みがこぼれる。幸い、難しい条件はなさそうだ。僕はすでにフレイヤを敵と認識しているし、相手は神だ。十分強大な敵といえるだろう。フレイヤに関する知識も、この領域にいる限りは問題ない、と思う。

 

「フレイヤ、お前を僕の敵と認める!」

 

「あぁ、そうだとも。私はもとより、あなたの敵だ」

 

 宣言することにより、剣の性質が変わったように感じられた。おそらく、先ほどまでは陽光照らす、という状態だったのだろう。だが、改めて宣言したことにより、剣の性質が万物を切り裂くものに変わった。

 

 ______もう一押し、ほしいな。

 

 おそらく、この状態でも十分フレイヤとは渡り合えるだろう。だが、若干の不安はある。

 

 彼女はメソポタミアのイシュタルに起源をもつ戦の女神であり、美の女神、豊穣の女神だ。そして、魂を操るセイズの使い手なのだ。備えておいて、損はない。

 

「勝利の剣よ、万物を切り裂き、太陽の陽光が如き我が剣よ。我が勝利のために光り輝け!」

 

 イメージは鍛えなおす感じだ。もっと鋭く、もっと重く、もっと硬く、もっともっともっと!

 

 勝利の剣の輝きがより強まっていく。より強固な、よりフレイヤの命を脅かせるような輝きを放ち始める。

 

「...我が従者たちよ、我が敵を滅ぼせ!」

 

 再び、戦乙女たちが現れ、僕に対して敵意を向けてくる。多勢に無勢、かつての僕だったならばこの絶体絶命の危機に冷や汗の一つでも流していただろう。

 

 だが、どうしても僕は戦乙女たちを敵として、否脅威として認識することができなかった。確かに数は多いし、当たれば痛いのだろう。だが、その程度(・・・・)だ。

 

「邪魔っ!」

 

 剣を一薙ぎ。上空に浮かぶ戦乙女を、フレイヤを捉えられるように斬撃が弧を描くように周囲のすべてを切り裂くのをイメージする。

 

 斬っ。

 

 刹那、上空に浮かぶすべての戦乙女が見えない刃によって切り裂かれたかのように両断されていく。

 

 ある者は首が、ある者は胴体から、ある者は腰から、またある者は頭が切り裂かれ、そして灰となって消えていく。

 

 まあ、肝心のフレイヤは余裕綽綽、という表情を崩さない。艶の含まれた恍惚の表情はそのままに。然も、何もありませんでしたという風体だ。

 

 足りない、足りない。万物を切り裂くだけではフレイヤを殺すことはできない。太陽も対して効果はないだろう。ならば...。

 

「剣よ、輝け。我が勝利のために!」

 

 作り変えよう、剣を。呼び起こそう、勝利の剣を!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 一方、その頃。幽世のどこか。

 

「ふむ。フレイヤ殿と神殺しの戦いが始まったか...」

 

 巨大な木の下で休んでいる隻腕の戦士がいた。

 

 そして、その目の前には大きな泉があり、その一部にはまつろわぬフレイヤと周が対峙している姿が映っていた。

 

 さて、読者諸君に紹介しよう。

 

 彼の名はまつろわぬテュール。北欧神話が誇る隻腕の軍神である。

 

 元々は今は亡きまつろわぬフレイ、まつろわぬフレイヤがアールヴヘイムの王権を争っていた所に乱入したのが彼だ。その後、三つ巴の争いを繰り広げている彼らのもとに現れたのが聖霊ローランに体を乗っ取られた周である。ただ、乗っ取った割にはほぼ消えかけだったローランの魂はフレイヤの一喝によって消え去り、その後乗っ取られた周も気を失っていたため、彼らは再び争い始めたのだが...気が付けば、ローランが残した剣を用いてまつろわぬフレイは打ち取られ、あれよあれよという間に神殺し生誕の儀式が執り行われた。

 

 そして、フレイヤとテュールは互いに自身の獲物であったフレイを奪った神殺しへの再戦を誓い、どちらが先に戦うか、という舌戦を繰り広げ、見事まつろわぬフレイヤが"元々、私と兄上が戦っていた時に乱入してきたのが貴方なのだから、ここは私に譲るべき"という主張が通り、現在に至る。

 

「うぅむ、やはり我も向かうべきか...いやいや、フレイヤ殿との約束もある。堪えねば...しかしなぁ、やはり我ら《鋼》と神殺しめは有史以前より争いあってきた宿敵。あの場はフレイヤ殿の主張が正しいと思ったがやはり参加するべきではないか?いや、しかし...」

 

 むむむむむ...と、唸るように悩んでいる。

 

 それに、何より非常にソワソワしていて落ち着きがない。まあ、それもそうだろう。彼は軍神、それも《鋼》の聖性を秘めた軍神だ。血沸き肉躍る闘争こそ、本望。それを前にして浮つかない軍神はいない、ということだろう。

 

 落ち着かないように泉に移る戦場を見ながら、ソワソワしていたテュールがピタリ、と止まった。

 

「・・・いや、悩む必要がなくなったようだな」

 

 そういって、今まで背を向けていた大樹の方向へと向き直る。

 

 大樹に体を預けるようにして立っていたのは、金髪の美丈夫だった。

 

「ふむ、さすがは北欧の軍神、テュール殿...といったところでしょうか」

 

「斯く言う貴様は、どこぞの《鋼》だな。それも、最後の王に連なるものだ。違うか?」

 

「ふふふ、わかりますか?えぇ、その通りです」

 

「して、その《鋼》の勇者が何用か。それも、気配も神気も隠して、背後に立つとは...穏やかではあるまい」

 

 互いに剣の柄に手を掛ける。まさに一触即発。

 

 どちらかが動けば、すぐさまこの場は戦場へと変わるだろう。それゆえに動けない。互いに互いの隙を伺っている。

 

 しかし、どうやら一歩上手だったのは、美丈夫のようだった。

 

「...がっ!?一体、何が...」

 

 テュールの背後には、巌のような益荒男が立っていた。その手に握られているこん棒がテュールの頭の半分を削り取ったのだ。

 

「ふふふ、さすがだな。わが友よ。如何に《鋼》と言えども、君の一撃を食らえばひとたまりもないか。ふふふ、さて。悪く思わないでほしい、軍神テュールよ。私も、かの異世界の勇者殿には興味があってね。神から勇者たれと生み出された我々と、勇者でありながら神々に弓引く魔王となった者。どちらが優れているのか興味があってね。まあ、我々が優れているのは明白だが、その結果にケチをつけられたくなかったのさ。ゆえに最初に始末させてもらった」

 

 気が付けば、美丈夫の周りには様々な人影が集まっていた。

 

「さあ、テュール殿。我が友の存在をより強固なものにするための贄となってくれたまえ!」

 

「きっ、貴様ぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああぁぁぁぁああ!!!!!!!!!!!」

 

 肉を貪るようなおぞましい音が辺りへと響く中、美丈夫は泉に移る岩戸周(宿敵) へと目を向けた。

 

「さぁ、我々■■■■■■■と貴様とで格を争うときはもうすぐだ」

 

 狂ったような哄笑を上げながら、美丈夫たちは姿を消した。

 

 

 




オリジナル用語集

・聖剣
 現在は女神聖教と聖女によって管理されている異世界の神器。勇者のみが扱うことができ、どんな不死・不滅の存在にも《死》という因果を押し付け、殺すことができる。元々は聖剣などではなかったようだが、異世界の女神によって改造され、聖剣となった。所有者にのみ感じ取ることのできる意思が存在するようだ。

・魔族軍
 異世界の魔王によって率いられていた軍団。ミノタウロスやオーガ、ゴブリン、ダークエルフ、悪魔、淫魔など魔族に分類される種族のみで構成されている。頂点に魔王、その下に四天王と呼ばれる幹部がおり、その幹部の特性によって軍団が編成されている。

・魔族軍四天王
 異世界の魔王によって率いられていた軍団、その四人の軍団長のこと。《邪淫》《暴食》《怠惰》《憤怒》の異名がそれぞれに与えられていた。主人公がまだ勇者だったころには、彼らによって大いに苦しめられたらしい。魔王がいなくなった現在は、彼らを中心に共和制の国家へと変わりつつあるらしい。

・淫魔族
 魔族の中でも女性しかいない部族。淫魔、と名にあるが地球でイメージされるような淫魔ではなく、どちらかと言えばアマゾネスに近い種族。自分よりも強い男、あるいは自分よりも賢い男を非常に好み、あの手この手で攫って自分の婿にしようとする部族としての特徴というか、本能から淫魔の名を与えられた。

・《邪淫》のグリゼルダ
 魔族軍四天王の一人。淫魔族。絡め手や罠などの姑息な手法を好んで扱う。退廃的な雰囲気を漂わせている美女。相手の表情や雰囲気などから相手の思考を読み、相手の手札を前もって封じる、または発動されても無効化するような非常に厄介な戦闘を得意としている。

・■■■■■■■
 《最後の王》に連なる英雄の集団。英雄たちは偉大なる旅路を経て、彼らの存在はより強大になっていく。

・聖霊ローラン
 まつろわぬ神にもなれず、ただ自身の剣に似た剣に憑りつきながらただ消滅を待っていた存在。本来ならば、そのまま消滅する運命だった。しかし、ちょうど目の前に依代としてふさわしい存在が現れたため、自身の存在を確固たるものとするために他のまつろわぬ神へとけんかを吹っ掛けた。が、すぐ吹き飛んでしまった根性なし。

・勝利の剣
 まつろわぬフレイから周が簒奪した権能。《万物を切り裂く剣》《陽光照らす剣》《勝利の剣》という三つの能力を秘めている。それぞれ使用に一応の条件はあるが、《勝利の剣》を除いてほぼ合って無いようなもの。何らかの意思を感じる。


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