聖杯戦争と薪の王 (楽しく遊びたい一般不死人)
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第一話 呼び声と応じる者

気付いたらオバロじゃなくてfateを書いていました。勢いで書いてしまいましたが後悔はしてません! 反省はしてます。


その日、間桐家は第四次聖杯戦争に向けてサーヴァントを呼び出そうとしていた。間桐雁夜は間桐桜を救う為自分の身を犠牲にしても戦うつもりだった。

その気持ちに反応したのか召喚陣から火が出る。間桐臓硯は初めて見る光景に驚き期待していた。自分の望みが叶う程の英霊が遂に召喚されるかもしれないという期待があった。

 

臓硯の横で英霊召喚をしていた間桐雁夜はその幻想的な光景に見惚れていた。青く輝く魔法陣に炎の赤い輝きが混ざりとても美しい光景を作り出していた。もし聖杯戦争中でなければもっとゆっくりと見ていたかったが義理の姪である間桐桜を救う為、参加した聖杯戦争で勝ち残るには強いサーヴァントを呼び出すしかなかった。

兄より魔術が優れているとはいえ他のマスター達は自分を軽々と超える者達ばかりだ。だからこそ他の陣営より強いサーヴァントを呼び出し自分の差をサーヴァントで埋めるしかない。そう考えていた雁夜からすれば今の状況はとてもありがたいと感じていた。何故なら隣にいる臓硯が驚いているのだからきっと強いサーヴァントが来ると思っていた。

その時雁夜は今から呼び出される英霊に感謝を送っていた。自分の様な者の願いを聞き入れ、呼び声に応じてくれたのだから。最大の敬意と感謝を送ろうと決めていた。

 

陣の中から人影が現れる。その男を見た時、雁夜はどうしようも無く興奮していた。その英霊は炎の中からゆっくりと姿を表す。焼け爛れた鎧に骸骨を思わせる兜、そして兜には王冠をイメージさせる珍しい装飾が見て取れた。

雁夜は隣にいる臓硯に目を向け、動揺していた。余程の事が起きなければ滅多に変えない顔を醜く歪めていたからだ。恐らくそれは、恐怖だろうか?咄嗟に雁夜は男に向き直る。臓硯があんなに怯える英霊だ。もし何か無礼な事をすれば殺されるかもしれない。膝を折り声を掛けようとした雁夜に深みのある落ち着いた声が届いた。

 

「貴様は生かしておけんな。私の前から失せろ。」

 

 

 

 

間桐臓硯は自分が感じている感情を理解出来ていなかった。最初は期待して見ていた召喚陣から人影が見えた時、恐怖した。紛れもなくそれは恐怖だった。だが臓硯は何故自分が恐怖を感じているのか理解出来ずに困惑していた。しかし、それが命取りだった。臓硯が困惑している間にそのサーヴァントは既に臓硯を焼いていた。

一瞬の激痛から始まり次第に自分が焼かれている事に気付くと既に手遅れだった。臓硯は叫び声を上げる。目の前にいるサーヴァントに反撃をしようとするが体は言う事を聞かず、悶え続ける。

その日間桐臓硯の長きに渡る妄執があっけなく終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

雁夜は何が起きているのか分からなかった。それは呼び出した英霊に臣下の礼を取ろうとした時だった。隣にいた臓硯が叫び声を上げ、苦しんでいた。しかし、雁夜が疑問に感じた事は他にあった。その時確かに臓硯を包んでいる炎が自分も焼いていたのだ。だが、雁夜にはこの炎はどこまでも暖かく包み込み自分の体を癒やしている様に感じた。

臓硯が燃え尽き灰になった頃には体は軽くなり調子がとても良くなっていた。喜びに打ち震えていた雁夜は自分が呼び出したサーヴァントに感謝を告げようとし、顔を上げると目の前に手甲が伸ばされていた。

 

「体は大丈夫か、貴公。突然体を曲げたからな、怪我があるのかと思い火を出したが、何か異常があれば教えて欲しい。」

 

雁夜は再度混乱した。目の前にいる恐らく王と思われる様な英霊が自分を気遣っていたのだ。それどころか臓硯すらも瞬時に焼き殺したのだ。自分が諦めていた事をやってくれた上に体まで治してくれた自分にとって最高の英雄に雁夜は感謝と厚かましいと思いながらも一つの願いを伝えた。

 

「いや、大丈夫だ。むしろ凄く調子が良くなった。俺みたいな奴を治してくれてありがとう。ただ、厚かましいのは分かってるんだがもう一つ願いがあるんだ。聞いてくれるか?」

 

最悪俺は断られても良いと思っていた。この英雄がいれば聖杯戦争で勝てると思っていたからだ。聖杯があれば桜ちゃんを助けられる。でも桜ちゃんには一刻も早く苦しみから解放されて欲しい、そう考えて目の前にいる英雄にダメ元で頼んでいたが、俺の願いはあっさりと叶えられた。

 

「勿論だ。貴公は私のマスターだろう?そのマスターからの頼みを断りはせんよ。それと、私に対して必要以上に敬意を持つのは辞めてほしい。私は敬意を持たれる様な存在では無いからな。」

 

「ありがとう、臓硯を倒してくれた上に俺の願いまで叶えてくれるなんて、やっぱり聖杯に選ばれる英霊は違うな。」

 

「・・・それよりマスター、名乗りがまだだったな。サーヴァント、バーサーカー呼び声に応じ参上した。

真名を薪の王と言う。最早この名を知る者はいないだろうが、よろしく頼む。」

 

「俺は間桐雁夜、今回の聖杯戦争のマスターだ。こちらこそよろしく頼む、えっとバーサーカーって呼べば良いのか?」

 

「そうだな、この時代に私の真名を知っている者はいないと思われるが用心してクラスで呼んでくれると助かる。」

 

その話を聞いた俺は少し悲しさを感じた。バーサーカーの真名を誰も知らないというのは俺だったら悲しいと思う。だがバーサーカーの声からは何も感じなかったように思える。まるで忘れられて当然と思っている様に感じた。

桜ちゃんの元に行く間に薪の王に俺の願いと事情を話した。

 

「俺にやった様に桜ちゃんを助けて欲しいんだ。日に日に感情を失っていくのはもう見てられないんだ。」

 

「まず桜嬢の様子を見なければ分からないが私に出来る最善を尽くす事は約束しよう。」

 

桜ちゃんが寝ている部屋に入ると薪の王が急に止まったのを不思議に思っているとゆっくりと近づき桜ちゃんの前で屈んで手を握りながら呟いた。

 

「よく耐えたな、桜嬢。あと少しだけ待っていて欲しい。出来るのなら無能な私を許して欲しい。」

 

何を言ってるのか俺には分からなかった。無能?薪の王が?俺のたった一人のサーヴァントが?俺の体を治し、臓硯を倒してその上、今桜ちゃんを助けようとしてくれているこの英雄が?俺が声を上げようとした時に薪の王が声を掛けて来た。

 

「すまないが雁夜、一階にソファーがあったろう。あそこに桜嬢を運ぼう。ここでは些か狭い。」

 

「ああ、分かった。俺が桜ちゃんを運ぶよ。バーサーカーは準備に集中してくれ。」

 

「助かる。それと大丈夫か、雁夜。貴公から怒りを感じたが、何か、あったのか?」

 

俺は何でも無いと言って桜ちゃんを一階のソファーに運んで起きない様にゆっくりと寝かせた。それを確認した薪の王の手から暖かな火が燃え始めた。俺が緊張してるのを紛らすためなのか薪の王が説明を始めた。

 

「私の火は少々特殊でな、最初の火を継いだ結果様々な力を引き継いだのだ。その中には神やそれに連なる者達もいる。故に先程焼いた臓硯の様に悪しきモノを焼き、殺す事が出来る。だからそう緊張するな雁夜。私は桜嬢に危害を加えるつもりはない。」

 

薪の王が説明をしてくれている間に桜ちゃんは火に包まれるが寝顔は安らかになっていく。少し待つと火は桜ちゃんに吸い込まれる様に消えていく。

 

「なあ、バーサーカー。今桜ちゃんに火が吸い込まれた様にみえたんだがどうなってるんだ?」

 

「それは私の火を桜嬢に少し分けたのだ。こうすれば二度と桜嬢は虫に寄生されない。更に言うなら悪しきモノ達の苗床にもならん。雁夜、貴公にも火は分けているが気付かなかったか?」

 

その発言に驚いていると薪の王が静かに笑っていた。俺は只々圧倒されていた。目の前にいるこの英雄は他のどんな英雄にも負けない強さと心を持っていると確信を持っていた。

安心したら眩暈がした。恐らく色んな事が起こり過ぎて疲れたのだろう。薪の王が俺を見ながら話掛けて来た。

 

「雁夜、貴公も休むと良い。流石に疲れたろう。後は私がやっておくから安心して桜嬢と寝たまえ。」

 

俺は久しぶりにゆっくりと桜ちゃんの手を握りながら眠った。

 

「桜ちゃん、遅くなったけどもう大丈夫だからね。」

 

 

 

「ふっ、どうやら私のマスターはかなり優しい者の様だ。眠る前に桜嬢の心配とはな、私のマスター運は良いようだ。さて、マスターと桜嬢の為にも残りの虫を始末しなければな。見るがいい臓硯よ、これが貴様を焼き殺す原初の火だ。」

 

その日間桐家は恐らくもっとも良い聖杯戦争のスタートを切った。




読んで頂きありがとうございます!こちらの灰の方は無印からIIIまで火を継ぎまくって(消したり亡者の王にもなったりした)全盛期のグウィンより強い状態で呼ばれてます。これから規格外の力を振るう予定なのでそういうのもありだぜッ!という方以外はブラウザバック推奨です。
後、更新頻度は遅いので気長にお待ち下さい。


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第二話 呪い

何故か既に評価とコメントがあってヒエッと怯え始めた作者です。なんか過大評価されてる気がしますが!ご期待に沿えるよう精進します。



俺は夢を見た。これは、恐らく薪の王の過去なんだろう。聖杯戦争をする前に臓硯が言っていた聖杯戦争の説明で一応知識として教えられていた。マスターはサーヴァントの過去や願い等を見る事があると。

 

その旅路は過酷なんて言葉では言い表せない。俺だったら確実に途中で心が折れて道半ばで諦めてしまう、それどころか大英雄と呼ばれる者でも心が折れてしまうかもしれない。そんな救いのない世界だった。

だが、俺はいつも最後まで夢を見れなかった。旅の終わりの時になるとまるで、誰かがこの先を見せないように、子どもの目を閉じるように周りが暗くなって次の夢になる。夢では何度も発狂しそうになっている薪の王がいた。

それでも薪の王は、あいつは進み続けた。終わりのない、無限に続く苦しみの中で足を止めなかった。俺は何度も止めた、声を張り上げて叫んだ。でもあいつに俺の声は届かなくて何処までも進み続けてしまう。誰かあいつに救いを与えて欲しい、誰かあいつを休ませてやって欲しいそんな祈りにも近い感情を持ってもどこにも行けない、行き着く場所が無い。気付けばあいつが、捩れた剣が刺さっている篝火に特徴的な目隠しをつけた銀に近い白色の髪をした女性と一緒に立っていた。

 

また、終わるのか。また、お前は進んで行くのか。もう休めよ、誰もお前を責めない、もし責める奴がいたら俺がそいつに文句を言ってやるから、もう、休んでくれ。

 

体を揺すられて目が覚める。目の前には俺が昨日契約した薪の王がいた。昨日と変わらない様子で俺を兜越しに見ていた。どうしたのかと思っていると薪の王が喋り始めた。

 

「雁夜、大丈夫か雁夜?酷くうなされていたぞ。何か、悪い夢を見たのか?大丈夫だ、桜嬢の体は昨夜完治した。貴公の体に潜んでいた虫も既に焼いた。もう何も心配は無いぞ。」

 

昨夜抱いた怒りが再び燃え始めた。何故この男は自分を蔑ろにして人の心配ばかりしているのか理解出来なかった。お前はもっと報われて良いんだ。誰かに頼っても良い筈だ。俺は我慢出来ず声を上げてしまった。

 

「どうしてお前は自分を大事にしないんだ!もっと他の奴に頼れよ!お前はもう充分頑張って来ただろ!確かに感謝してる、桜ちゃんを助けてくれた事も!俺の体を治してくれた事も!臓硯も倒してくれた。それでもお前は、」

 

途中で声が途切れてしまった。言いたい事が多過ぎて言葉に出来ない俺に薪の王は静かに語り始また。

 

「やはり、そうか。私の過去を見たのか。良いんだ雁夜、私は満足しているのだ。あの様な結果でも、どんなに救いが無くとも、私にはあれで良いのだ。それに、私の過去を見たのなら貴公も分かっているだろう?私は誰も救えなかったのだ。何も変えられなかった。だから、私はこれで良いんだ。」

 

「それでも俺は!」

 

「雁夜、分かっている。貴公が私を心配してくれている事も、私の過去に絶望を覚えた事も、しかし、既に終わった事だ。貴公が気にする事はないのだ。」

 

その言葉は俺に何も言えなくさせた。気付いてしまった。当事者じゃない俺が、薪の王の過去に文句を言う資格も無いし、むしろそれは薪の王を侮辱する事と変わらないんじゃないかと。冷静になった俺は薪の王に謝ろうと思った。しかし、それは以外な人物によって遮られた。

 

「どうしたんですか?大きな声が聞こえましたけど、あれ?雁夜おじさんと、えっと確か、昨日の夜私を運んでくれた、バーサーカーだったよね?」

 

少し開いた扉の隙間から桜ちゃんが顔を覗かせていた。そこまで大きな声を出していたとは思わず俺は謝ろうとして近寄った。

 

「ごめんよ、桜ちゃん。ちょっと俺が動揺してただけだから。ああ!後少ししたらご飯を作るから下で待っていてね。」

 

「うん、分かった。じゃあ下で待ってるね。バーサーカーも後でお話しようね。」

 

「ああ、桜嬢が楽しめる話を用意しておこう。では下でな。」

 

桜ちゃんが一階に行くのを見送ってから薪の王に向き直って再び話始めた。

 

「さっきはすまん。大声を出してしまって悪かった。俺はお前にもっと休んでも良いと言うつもりだったのに、つい感情的になってしまった。許して欲しい。」

 

「許すも何も貴公は私を心配してくれたのだろう?私が感謝をすれど貴公に謝られる事はないだろう。やはり、昨日も思ったが私のマスター運は良いようだ。」

 

俺は気を取り直して桜ちゃんと薪の王に朝食を作るために薪の王と一階に降りていった。




口調が難しいんじゃあ。早めに出せて良かったという思いでいっぱいであります。


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第三話 ソウルと魔術

雁夜おじさんはかなり情がある人だと思っている作者です。この最近考えている事なんですが作者か一般不死人どっちに固定するべきか迷っています。なのでこの先多分一人称がブレると思いますがすいません。

という事で雁夜おじさん強化計画、始まります。





一階に降りるとテレビを見ていた桜ちゃんがこっちに気づいた様で笑っていた。薪の王が桜ちゃんを助けてくれたお陰でまた桜ちゃんの笑顔が見れる事に喜びつつキッチンに向かう。

実を言うと何を作るかは決めていなかった。なので残りの材料を見ながら考えようと思って後ろにいる薪の王と桜ちゃんの会話に耳を傾けながら準備を始めた。

 

「桜嬢、先程私と話をしたいと言っていたが何の話をするのか教えてもらえるだろうか?」

 

「うん、バーサーカーって昨日話してくれたサーヴァントっていうのなんだよね?昔の人だったら何か面白い話とかってある?」

 

「ふむ、桜嬢の好みが分からないがそうだな。ありきたりかもしれないが英雄と姫君の話。タイトルは、騎士アルトリウスと宵闇の姫君という話はどうだろうか?」

 

「聞いてみたい!」

 

「そうか、では話し手としては拙いかもしれないが話すとしよう。この話は私も好きな話だ。」

 

そう言った薪の王はどこか嬉しそうだった。俺も興味があったので話を聞きながら朝食を作っていた。だが、この話はどうも覚えがある気がしてならない。

 

疑念が確信になったのは深淵の主マヌスの話を聞いた時だった。その化け物の見た目を聞いた時に夢で見た姿と合致した。この話は薪の王の過去を脚色した物だという事に気がつき少し悲しくなった。確かこの話はアルトリウスがマヌスに勝利した英雄譚に近い物だが実際にはアルトリウスはマヌスに敗北している。それを薪の王がアルトリウスの代わりに狼と共に倒したのだ。だが現実は薪の王ではなくアルトリウスが倒した事になっているこの話を何故か薪の王は楽しげに話している。

 

俺は後で理由を聞いてみようと思いながら二人が座って待っている食卓に出来上がった朝食を持っていく。俺が作ったのは焼いたベーコンと目玉焼き、それに白米を一緒にしたどこにでもある様な物だった。本当は恐らく久しぶりの食事になる薪の王に為にもっと美味い物を作りたかったが残念な事にこれしかなかった。後で食材を買い足そうと考え、二人の前に行くと薪の王が不思議そうに聞いてきた。

 

「ん?一つ多いが、まさか、私の分か?」

 

「そのつもりだが、どうしたんだ?」

 

「いや、まさか私の分があるとは思っていなかったからな。少し驚いただけだ。食事などいつぶりだろうか、ありがとう雁夜。」

 

予想以上の反応で俺は「ああ」としか言えなかった。気恥ずかしかった俺は急いで二人の前に朝食を置き、先に食べ始めていた。

桜ちゃんも美味しそうに食べているのを見て安心して薪の王を見るとまだ手を付けていなかった。疑問に思っていると薪の王の兜がいきなり消えて顔が見えた。多くの戦いで傷や火傷があるのかと思っていたが、顔には右目に、恐らく剣で切られた傷が一つだけあった。

 

だが、俺は別の事に驚いていた。薪の王の顔は自分と同い年と言われても納得する程若かったからだ。それもかなりイケメンであった事も拍車をかけていた。

 

「お前、そんなにイケメンだったのか!」

 

「む、そうなのか?私はあまり自分に興味が無かったからな。桜嬢から私の顔はどう見える?」

 

「うん。イケメンだと思うよ!カッコいい服とか似合いそう!」

 

「ふふっ、そうか、二人からそう言われるとはな。私も自信が持てるというものだ。それにしても、雁夜の料理は美味いな。久しぶりに食事の喜びを思い出せた。ありがとう、雁夜。」

 

「大袈裟だな、まあそこまで言われると俺も嬉しいよ。バーサーカー。」

 

そこまで言って俺は桜ちゃんの言葉にハッとした。薪の王の服をどこからか見繕わなくては。

 

「すまんバーサーカー。服は少し待ってくれないか?今家には服があまり無くてな。」

 

「構わんよ。そもそも霊体化すれば人目にもつかないだろう。」

 

「いや、だがなぁ。出来ればお前には近くで俺と桜ちゃんを守って欲しいからな。いや、待てよ。兄貴の服があった筈だからそれを貰うか。」

 

「雁夜の兄というのは昨夜出ていった。青髪の人物か?」

 

薪の王の説明に目を丸くさせた。昨夜兄貴は夜逃げしたらしく、特に引き止める理由の無い薪の王は放置したらしい。まあ今となっては出ていってくれた方が有り難いので何とも思わないが。それはそうと少し薄情だと思ったのは黙っておいた。まあ後で薪の王に服を選んでもらおうと考えていたが薪の王が俺に話しを振ってきた。

 

「それと、雁夜に聞きたい事がある。貴公、魔術は使えるか?」

 

その言葉を不思議に思いつつ俺は虫を出そうとしたが出てこなかった。というより虫が消えている様にも感じる。不思議に思っていると薪の王が申し訳なそうに言ってきた。

 

「やはり使えなくなっていたか。実を言うとな、雁夜を治す為に火を使ったのだがその時に体にいる虫を全て焼いてしまったのだ。だからもしやと思っていたがやはりそうか。すまない雁夜。」

 

「いや、大丈夫だ。体の方が重要だからな。しかしこれからどうするかな。虫が使えないとなると自衛が出来ないな。」

 

「そこで提案がある。私の魔術を覚えないか?」

 

その提案は願ってもなかったものだが正直甘え過ぎている気がして薪の王に悪いと思いつつ俺からも頼んだ。

 

「正直俺は三流もいい所だが全身全霊で努力するからよろしく頼む。」

 

「そうか、ならもう一つ提案があってな。桜嬢にも魔術を教えたいのだ。雁夜の家族である桜嬢にも危険が及ぶ可能性があると思ってな。自衛の手段が必要だろう?という訳で、どうだろうか、桜嬢。魔術を学んでみないか?」

 

「うん!やってみるよ。私も頑張るね!」

 

「であれば私は二階の空いている部屋で準備をしておく。用意ができたら呼ぶのでその間は待っていてくれ。そして、雁夜、食事をありがとう。とても美味かった。」

 

そう言って薪の王は二階に上がっていった。待っている間桜ちゃんとテレビを見て暇を潰していた。

 



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第四話 師と弟子

朝食の後、薪の王が準備の為に二階に上がってから一時間程だろうか。薪の王から「準備が終わったから桜嬢を連れて二階に来て欲しい」と、連絡が来て二階にある元々臓硯が使っていた部屋に行くとそこには白シャツに黒のズボンを着た薪の王が待っていた。

 

「準備に時間が掛かってしまってすまないな。必要な物を用意していたら遅くなってしまった。」

 

「そうなのか?特に何かあるようには見えないんだが。」

 

「まあ、それについては後で話すとしよう。まずは私の使っている魔術に関して話そうと思う。」

 

薪の王が説明するソウルの魔術というのはとても複雑だがそれ故に対応が取りずらい魔術と思えた。特に興味深いのは竜のニ相の理論だった。どんな状況でも岩のように佇む古竜の如く、攻める時は吠える古竜のように大きく強い攻撃を、という理論に俺はとても共感した。

 

どんな状況でも魔術は使えるようにしなければならない。だが、使えても肝心な効果や威力が発揮出来なくては意味が無い。薪の王が説明を終えると質問があれば聞いて欲しいと言ったので俺は質問を投げかけた。

 

「まず、ソウルについてなんだが、どうやって感じればいいんだ?バーサーカーの言うようなソウルを俺は今まで一度も感じたことも見たことない。」

 

俺がそう言うと桜ちゃんも頷いていた。薪の王は俺と桜ちゃんの前に手を出した。不思議に思っていると手の中に真っ白な浮遊した何かが出て来た。

 

「これがソウルだ。そもそもソウルというのは雁夜や桜嬢が思っている魂とは違うものだ。ソウルと魂の明確な違いは存在するか否かだ。ソウルは今の様にそこに在り、見ることも感じることが出来るが魂は違うのだ、魂というのは感じることも見ることも出来ないが確かにあるモノだ。」

 

「う〜ん、分かるような分からないような微妙な所だな。」

 

「そういう事もあるだろうと思ってな、一応策は用意してある。今から出すソウルを握り潰してほしい。」

 

そう言って薪の王は俺と桜ちゃんの前に出していた手から少し形の違うソウルを出して渡して来た。俺はどういう事かイマイチ掴めなかったが、言われた通りにソウルに触れてみた。てっきり何か感触があるのかと思っていたが特にそんな事もなく、自分の手の上に浮遊しているソウルを不思議に思っていると桜ちゃんは楽しそうに眺めていた。俺はソウルを握り潰してみようと手に力を込める。すると不思議な音とともにソウルが体に入っていくのを感じる。桜ちゃんもソウルを握って体に入ったようだ。俺と桜ちゃんの様子を見ていた薪の王が安心した様子で語り掛けてきた。

 

「上手くいったようだな。私も初めての試みだった故、少し不安だったが結果は上々だ。」

 

「どういう事だ?なあバーサーカー、何で不死人じゃない俺と桜ちゃんがソウルを取り込んだり握ったり出来るんだ?」

 

「元々ソウルは誰でも取り込む事は出来るのだが明確に感じる事が出来るのは限られている。」

 

「そうなのか?じゃあ何で、」

 

「だが、何事にも例外はある。昨日話したが雁夜と桜嬢には私の火を渡したと言っただろう?それは私のソウルを渡した事に他ならない。つまりだ、私のソウルを持った事によって雁夜と桜嬢はソウルをより感じやすくなっている。正直な話を言うとだな、恐らく聖杯戦争が始まるまであまり時間がない。その短期間でソウルの魔術を覚え、実戦に通用するレベルまで教えるには時間が足りない。故に私のソウルを利用し二人には早めに魔術を習得してもらおうと思っている。少し厳しくなると思うが許してくれ。」

 

その時俺はただただ薪の王の力に驚いていた。この短い時間でここまで考えて行動していたとは思わなかったからだ。俺は何度目か分からないがまた薪の王の評価を改めた。

 

「さて雁夜、桜嬢、今日からソウルの魔術を教えていくつもりだが私も誰かに教えるのは経験が少ないからお互いよろしく頼む。」

 

「俺もよろしく頼む。・・・師匠って言った方が良いか?」

 

「いや、今まで通りクラスで呼んでくれ。その呼び方はあまり、何だ、私には良い思い出がなくてな。」

 

「じゃあ私も今まで通りバーサーカーって呼ぶね。・・・それで何をするの?」

 

「まずは基礎のソウルの矢から始めるとしよう。」

 

それから桜ちゃんと俺は薪の王の指導でソウルの魔術を学び始めた。




グダッてしまい申し訳ありせん。上手く説明できないなぁ。


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第五話 開戦準備

今回からオリジナル魔術が出ます。雁夜おじさんの魔改造、始めます。


薪の王からソウルの矢という基礎魔術を練習している俺は焦っていた。その理由は隣で今まさにソウルの矢を連射している桜ちゃんの異常なまでの学習能力の高さのせいだ。俺もソウルの矢を放てるようになってはいるがまだ出力の調整中なのに対して桜ちゃんは既に出力の調整をマスターしており、さらには自分に合った放ち方を探し始めている。調整に苦労していると薪の王が桜ちゃんと話し始めている。

 

「桜嬢は才能があるようだな。既に出力の調整を完璧にこなしている。満足いく撃ち方を見つけたら次の魔術に移るとしよう。」

 

「うん!もう少し待っててねバーサーカー。あと少しで出来そうだからその間に休憩してて。」

 

その会話に俺は混ざっておらず少し寂しさを覚えていると薪の王が俺に話し掛けてきた。

 

「雁夜、少し待ってほしい。・・・む?すまない、調整が上手くいかないのは私のせいかもしれない。こちらの杖を持ってやってみてくれ。」

 

「ん?さっき渡してくれたこの杖じゃダメなのか?まあ、とりあえずやってみるが、」

 

そう言われさっきまで持っていた魔術師の杖から宮廷魔術師の杖に持ち替えてソウルの矢を放ってみると簡単に調整が出来た。何が原因なのか考えていると薪の王が訳を話してくれた。

 

「雁夜の調整が上手くいっていなかったのは杖が合っていなかったのだろう。雁夜の魔力の流れを見た時に杖を通る時に制御が上手く出来ていなかった様に見えてな。もしやと思ったが、当たりだったようだな。私のソウルを取り込んだせいで急激に増えた魔力を杖に上手く流せなかったという事だろう。まあ、これは憶測に過ぎんが。」

 

「いや、それでも凄いぞこれ。調整が簡単に出来た。これなら戦えるかもしれないぞ!」

 

俺は嬉しさのあまり声が大きくなっている事に気づかずはしゃいでいたのだが薪の王の話しは終わっていなかったようで俺は少し恥ずかしく思いつつも続きを聞いていた。

 

「そして雁夜の魔術は蟲を操る魔術だっただろう?そこで雁夜には私の考えた魔術を覚えてもらおうと思っている。恐らくこちらの方が雁夜に合っている筈だ。」

 

その言葉を聞いた時に思ったのは純粋な尊敬だった。魔術を自分でイチから作るのは簡単では無い。それに薪の王が作った魔術だ、生半可なものではないだろう。

 

薪の王の説明を聞きながら魔術を行使する。するとソウルが俺の意思に合わせて踊り始める。感覚を研ぎ澄ましソウルを動かし続ける。右へ左へ、上から下へ。縦横無尽に部屋の中を駆け巡らせる。薪の王からの終了の合図を聞いてソウルを霧散させる。気づけば額から汗を流しておりかなり疲れた気がするがそれより薪の王の言っていた通りにやったら上手くいった事に嬉しかった俺は後ろにいる薪の王に話し掛けていた。

 

「上手くいったぞ!どうだったバーサーカー!」

 

薪の王から声が聞こえない事が不安になった俺はどうしたのかと思って待っていると普段の薪の王からは想像出来ないような声が聞こえた。

 

「フフッ、ハハハハハハッ!素晴らしい!素晴らしいぞ雁夜ッ!私の想像以上だ!桜嬢も今の調子ならばいずれ奔流すらも使えるようになるだろう!これ程の逸材を私が育てる事になろうとは!ここにオーベックやローガンがいれば私と同じように喜んでいただろう!」

 

桜ちゃんも動揺しておりこのままでは不味いと思った俺は薪の王を落ち着かせるために声を掛け続けた。

 

「落ち着けバーサーカー!お前が喜んでくれているのは分かったからもう少し落ち着いてくれ!」

 

俺の声が届いたのか薪の王がスッと落ち着きを取り戻し始めていたが、薪の王はバツが悪そうに喋り始めた。

 

「雁夜、桜嬢、すまない。本当にすまない。喜びのあまり我を忘れてしまった。許してほしい。二人を見ていたら昔の友を思い出してしまって高揚してしまった。だがこれだけは信じてほしい。二人とも間違いなく素晴らしい才能がある上に努力を惜しまなければ確実に一流の魔術師になれる者だ。」

 

その言葉を聞き俺と桜ちゃんは顔を見合わせて喜びを表していた。その時ふと疑問を思い出した俺は薪の王に聞いていた。

 

「そういえばこの魔術はなんて名前なんだ?さっきは説明しかされなかったから気になっていたんだが。」

 

「ああ、魔術の名前か。それは浮遊するソウルというものを改良して作ったモノで、その見た目から安直だが「身に纏うソウル」という名前の魔術だ。」

 

俺は新しい魔術の身に纏うソウルを練習する事になった。感覚的には蟲を操るのにとても近いのでかなりやりやすい。蟲と違って体に負担もかからないしこちらの方が動かしやすいしで良い事づくめの魔術だった。

俺が動かす練習をしていると薪の王がとんでもない発言をした。

 

「それとその魔術は使い方を変えれば鎧にもなるぞ。後は少々難しいが移動に使う事も出来る上に武器にもなる。さあ、雁夜よ。我がマスターよ。貴殿の力を見せてくれ。」

 

その日俺はこの聖杯戦争においてとても頼りになる魔術を手に入れた。

 

 

 

 




という事でオリジナル魔術の「身に纏うソウル」です。術者の練度によって応用の幅が利く素晴らしい魔術です。雁夜おじさんはどう使うのか乞うご期待!


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第六話 開戦と衝撃

今回でやっと顔合わせが出来る。これを書きたかった!という事で薪の王が喜ぶのをお楽しみ下さい。


その日いつもの魔術訓練が終わり。桜ちゃんが寝た後に薪の王がいない事に気づいた俺は玄関から聞こえる音の正体が分かった。

 

「行くのか?バーサーカー。」

 

「ああ、そうだ。どうやら複数のサーヴァントが一度に集まるようだ。この機会を逃す訳にはいかん。それに、上手く行けば会いたい者に会えるかもしれん。」

 

そう答えた薪の王は家で着ている服ではなく、召喚した時に着ていた鎧姿に僅かな火の粉を纏っていた。どうやら薪の王が言っている事は本当のようだ。暫く考えていた俺は薪の王から意外な誘いを受けた。

 

「雁夜、貴公も来るか?サーヴァント同士の戦いを見るチャンスでもあるぞ。この機会にサーヴァントを知っておくのも悪くないだろう。」

 

「そう、だな。俺は隠れて行けば良いか?バーサーカー。」

 

「そうだな。念の為私の近くで隠れていてくれ。その方が都合が良い。」

 

俺は薪の王と一緒にサーヴァントが集まるというコンテナターミナルに向かった。

 

 

 

 

 

 

そこではセイバーとランサーの一騎打ちにライダーが割り込んだあげく、自分の真名を堂々と宣言するというマスターの心労を極限まで増やす行いをしていた。ライダーのマスターに同情しているとライダーが聖杯を譲るつもりはないかとか、臆病者がどうとか言っていると薪の王が動いた。

 

「私はいくら侮蔑されようが構わないが私のマスターが侮蔑を受けるのは許容できんな。・・・なるほど、ここにいる英霊は皆、素晴らしい者達のようだな。さてライダーが真名を名乗ったのだ私も名乗るとしよう。

我がクラスはバーサーカー、真名を薪の王と言う。世界の終わりと共に消えた者だ。」

 

その発言を誰もが黙って聞いていた。否、聞く事しか出来なかった。突然コンテナの上に現れライダーが名乗ったから名乗るという意味不明な行動をした薪の王に呆気に取られた訳ではない。理由は薪の王が放っている威圧感だ。この場にいる英霊達、真名を堂々と宣言したライダーですら一瞬だが気圧されたのだ。

 

最初に余裕を取り戻したライダーは自分のマスターに問い掛けていた。

 

「坊主、ありゃ何だ。」

 

「分からない。何でこんな強力なサーヴァントが世に知られてないんだよ。こんなのおかしいだろ!」

 

その発言に薪の王が反応するとは誰も思わなかっただろう。

 

「やはり、そうか。まあ仕方ないだろう。・・・いや、むしろ知らない方が良いのだろうか?」

 

余りにも場違いな発言している薪の王に言葉をぶつけたのはライダーのマスターではなく、予想外の人物であった。

 

「ハハハハハハハハッ!」

 

その笑い声はどこまでも愉快でたまらない様子だった。声のした方を向けば眩い輝きを放つ鎧を纏ったサーヴァントが街頭の上に立ち楽しそうに薪の王に問いを投げた。

 

「貴様が!貴様があの薪の王だというのか!フハハハハハッ!このような事が起きるとはな!貴様がいなければそこの王を名乗る不埒者共に我の裁定を下すつもりだったが、気が変わった。此度の聖杯戦争、暇潰しのつもりであったが、どうしてなかなか楽しめそうではないか。」

 

そのサーヴァントの一つ一つの発言はまるで自分こそが全てといった雰囲気を余りあるほどに感じさせた。だが、当の薪の王はそのサーヴァントの姿を見てから固まっていた。ふいに動いたと思った時にはコンテナから降り、近づいていた。

 

「ああ、貴公か。その黄金の如き輝きを持つソウルの持ち主は、なるほど出会えたか。人を導きし王よ。すまないが、貴公の真名を呼んでも良いだろうか?」

 

「ほう。よもやこの我を知っているとはな。その目は伝承の通りという事か。良いだろう。貴様には我の名を呼ぶ事を許す。」

 

そのやりとりにこの場にいる誰もが驚いた。何故真名が分かるのか?何故あのサーヴァントは薪の王を知っているのか。この二騎のサーヴァント以外は情報を集めるだけで精一杯だった。

 

「では、人を導きし王。英雄王ギルガメッシュ。私は貴公に感謝と敬意を捧げよう。よくぞ人を導いてくれた。貴公の偉業のお陰で私は今この時まで喜びに満ちていた。」

 

その発言を聞いた英雄王ギルガメッシュは笑みをより一層深めた。まるで聞きたかった言葉を聞けた子供のように。

 

「ほお。薪の王、貴様は今この我の偉業と言ったな?ふふっ、ハハハハハッ!これほど気分が良いのはいつぶりか!薪の王!これは我からの誘いだ。今から我と共に来い。」

 

「それは嬉しい誘いだ。だが、私にはマスターがいる。今回は縁がなかったようだ。心苦しいが断らせてもらう。その代わり、今ここで私と剣を交えないか?」

 

英雄王は笑みを浮かべたまま手を上げていた。その後ろには無数の武器が現れ、今か今かと待っているようだった。対する薪の王はいつのまにか手に持っていた螺旋状の剣を構えて待っていた。

 

先に動いたのは英雄王だった。手を振り降ろすと同時に一斉に放たれ、薪の王に向かった。薪の王は剣を横え、飛んで来る無数の武器を弾き続ける。弾かれた武器は周りに飛び、辺り一面にぶつかって土煙を出していた。一分程すると英雄王の攻撃が止み街頭の上で土煙の中を見ていた。少し待つと剣を振るい土煙を払った薪の王が傷一つ無い姿で話しかけていた。

 

「これほど良い武器を無造作に放つのは想定外だったな。もう少し武具は大切に扱った方が良いと思うが、どうだ?この機に使い方を変えるつもりはないか?」

 

「それは出来ぬ話だな、薪の王よ。これが王たる我の戦い方だ。生憎今貴様に放ったのは我の宝物の中でも価値の低い物だ。使い方を変える必要が無い。」

 

「ふむ。そうか。だが久しぶりに心躍る戦いだった。ありがとう英雄王。もし叶うのならばもう少し剣を交えたいが良いか?」

 

「フハハハハッ!我を誰だと思っている!貴様の誘いを受けてやろう。

さあ、武器を構えろ!我はまだ満足しておらんぞ!」

 

しかし次の瞬間に英雄王の顔が歪んだ。

 

「時臣、貴様如きがこの我の邪魔をするか。・・・薪の王!此度は邪魔が入った。次こそは我を満足させてくれるな?語り合いでも戦でもどれでも良い。」

 

「そうか!であればまず語り合いから始めるとしようではないか。私も貴公と話もせずに別れるのは望んでいない。ではまた会おう。」

 

その言葉を聞き英雄王は消えていき少しの静寂が訪れる。沈黙を破ったのは予想通りライダーだった。

 

「薪の王よ!お主は余に聖杯を譲るつもりはないか?さすれば余と共に受肉し共に世界を駆け回ろうぞ!」

 

「これはまた嬉しい誘いだな。だが征服王よ。私と貴公では求めるものが違うだろう?次の機会に話し会おう。そうすれば自ずと決まるだろう。」

 

「そうか。ならば次会える時を心待ちにしておくとしよう!そうと決まれば、そら、帰るぞ坊主。」

 

ライダーはそのまま空を駆けて行き見えなくなった。薪の王は残りの二騎に話しを振り始めていた。

 

「貴公らはどうするのだ?騎士同士の一騎打ちだったのだろう。もし、再開するのであれば見ていても構わないだろうか?」

 

その発言に答えたのはランサーだった。優しい笑みを浮かべながら笑っていた。

 

「残念ながら俺も帰還命令だ。薪の王、セイバー、また会おう!次は全力で戦えることを願っている。」

 

そう言ってランサーは消え、残ったのはセイバーとそのマスターらしき白髪の女性だけだった。

 

しばしの沈黙があり先に話したのはやはり薪の王だった。

 

「セイバー、質問なのだが何故マスターではないものを連れて来ている?何か特別な理由があるのだろうか?できれば教えてほしい。」

 

その発言に二人は驚いた顔になり、セイバーが口を開いた。

 

「まず、何故マスターではないと分かったのだ?先程アーチャーが言っていたが、貴方の目に関係するのか?」

 

「そうだ。私の目は特別でな。様々な事が見えるのだが、使い勝手が悪くて仕方がない。見る見ないの切り替えが出来ないのだ。」

 

「なるほど、理解した。話してもらったのにすまないが連れて来ている理由は話せない。申し訳ない。」

 

セイバーは本当に礼儀正しいと思っていると薪の王が「そろそろ帰るとしよう。」と連絡した来たので俺は帰る準備を進める事にした。

 

「セイバー。その騎士道は素晴らしいが相手を選んだ方が良いと思うぞ?ランサーのような者であれば良いが他の者に向けるのであれば相手を見極めた方が良い。それではさらばだ。また会おう。」

 

火の粉を出しながらセイバーの前から消え、俺の前に出て来た薪の王と一緒に家に帰った。




一さん 滅亡迅雷ネットさん 誤字報告ありがとうございます。
やらかしました。


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幕間 波紋

遅れてすみません。ちょっと忙しくなっておりました。まだ安定して書けないと思います。


その部屋には普通の人間では耐えられない重圧が満ちていた。その重圧を発している人物・・・否、サーヴァントは自分のマスターを今にも殺さないか不安になるほどの静かな怒りを感じさせていた。

 

「さて、この我の愉悦の邪魔をした弁解はあるか?時臣。」

 

ギルガメッシュを令呪の強制力を使って帰還させた遠坂時臣は額から冷や汗を流しながらどうするべきかを考えていた。

 

「あの場でバーサーカーとの戦闘を続けていれば王に少なくない損害が及ぶと思い今回は撤退をと・・・」

 

苦しい言い訳とは重々理解しているが今はこの選択しか見つけられなかった時臣はギルガメッシュが話すのを待っていた。

 

「まあ、ここで貴様を殺しては薪の王との時間も無くなる。今回は見逃してやる。が、次は無いぞ。肝に銘じておけ、時臣。」

 

そう言ってギルガメッシュは姿を消した。ソファーに身を沈めながらこの先について遠坂時臣は頭を悩ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやはや、余の時代に薪の王がいれば良き友となれたものを!なんとも悔しいのう。そう思わんか坊主!」

 

「そんな事よりお前もアイツについて考えろよ!まったく情報が無いんだぞ!真名が分かったってのにこれじゃあ対策も何も出来ないじゃないか。」

 

ライダーのマスター、ウェイバーベルベットは頭を抱えていた。謎のサーヴァントだけなら良かったが戦闘能力が桁違い過ぎるのが問題だった。どうにか情報はないか必死に先程の事を思い出していた。

 

「おい坊主。いくら考えても無駄だと余は思うぞ?」

 

「どういう意味だよそれ。」

 

「どうもこうも言っとったろ。ヤツ自身が、世界の終わりと共に消えたとな。」

 

「あ!いや、でもそれだとしたらどうすればいいんだよ!対策の練りようがないじゃないか!」

 

マスターは落胆し、サーヴァントは期待をする。二人は夜の空を走りながら話し続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、バーサーカーについては何か分かったかい?」

 

「ごめんなさい。何も分からなかったわ。セイバーは何か気づいた事はあるかしら?」

 

「いえ、残念ながら私も分かりません。ですが薪の王の目は何か特殊な力があると思います。実際にアーチャーの真名を当てていますし、」

 

「だろうね。だがバーサーカーの戦闘能力は未知数だ。正直な話真っ向から戦わない方が良いだろう。」

 

その三人の話は熱を帯びるわけでも無く淡々と進んでいった。そんな中セイバーがマスター、衛宮切嗣に質問をした。

 

「切嗣、薪の王について何か知っている事はありませんか?私の時代でも聞いた事が無い。」

 

「残念ながらその質問には答えを持っていないな。僕も薪の王なんて聞いた事が無い。それにあれ程の強さを持ちながら知られていないなんて事は異常だ。これからする事が増えた様だね。」

 

その後切嗣は薪の王について調べると言い部屋に籠る事になっていた。

 

 




エンダーリリィズは良いゲームです。


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第七話 理解

更新遅くてすみません!
もっと早く書けるようになりたい。

第六話にてOthuyegさん 誤字報告ありがとうございます。


家に帰ってすぐに俺は薪の王の肩を掴んだ。俺の行動を不思議に思ったのか薪の王が少し困惑しながら聞いて来た。

 

「雁夜?その、何だ。何故私の肩を掴むのだ?」

 

その言葉を聞いた俺の顔は薪の王が言うには口元だけが笑い、目が笑っていなかったそうだ。

 

「心当たりがあるんじゃないか?なあ、薪の王?」

 

「待ってくれ雁夜。確かに私の独断で動き過ぎたのは反省している。だが私も征服王や英雄王に出会えて舞い上がっていたのだ。」

 

「へえ?舞い上がっていたら隠すべき真名を自分から喋ったり勝手に英雄王と戦闘を始めて周りの被害を考えなくても良いと?」

 

「・・・すまなかった。」

 

「次からは確認くらいしてくれ。」

 

「ああ、次から気をつけるのでその目はやめてくれ。」

 

「はあ、今日はもう遅いから俺は寝るがバーサーカーはどうする?」

 

「ああ、その話なのだが私は調べる事が出来たから街を見てくる。」

 

「分かった。何かあったら教えてくれ。あ、ちょっと待て!」

 

「ん?何かあったか?」

 

「明日二人で話せるか?」

 

「?構わないが、どうしたのだ?」

 

「いや、色々聞きたい事があってな。」

 

「了解した。では朝までには戻ってくる。」

 

「ああ、じゃあ俺はもう寝るよ。」

 

バーサーカーを見送った後は念の為桜ちゃんがちゃんと居る事を確認してから俺はベッドに入ってさっきまでの事を思い出していた。

 

初めて見たサーヴァント同士の戦闘。人は勿論魔術師でも絶対に勝てない。一握りの英雄と呼ばれる者たちの戦い。だが、その中でも頂点に君臨するだろう英雄王を前に薪の王は相手にして無傷で帰って来た。

会ってまだ数日にしか経っていないがとても嬉しかった。それに今回の戦闘で確信した。薪の王となら聖杯戦争を勝ち残れる。聖杯を手に入れて桜ちゃんにこれ以上辛い思いをさせずに済むと思うと嬉しくなる。だけどその為にはまず俺が強くならなくてはならない。このまま薪の王に頼っていたら確実に負けてしまう。まずは薪の王が教えてくれた魔術を完璧に使えるようにしなければいけいない。

 

気づけば朝の四時になっていた。どうやらあのまま寝てしまったらしい。着替えていたら玄関から音が聞こえた。薪の王が帰って来たと思った俺は出迎えようとして玄関に向かったら疲れた様子の薪の王がいた。

 

「大丈夫か?何があったんだ?」

 

「む、雁夜か。こんな時間に起こしてしまってすまない。」

 

「いや、俺は勝手に起きただけだから大丈夫だが、本当に大丈夫か?」

 

「ああ、少し疲れた。だがそこまで消耗した訳では無いから大丈夫だ。それと話したい事があるので桜嬢が起きる前に良いか?」

 

「分かった。桜ちゃんには聞かせない方が良いんだな?」

 

「その通りだ。少々不味い事になった。」

 

「取り敢えず座って話そう。」

 

「了解した。」

 

薪の王とテーブルを挟んで向かい合う形で話し合う事にして玄関から移動する。

 

「それで何があったんだ?」

 

「まずキャスターの居場所を掴んだ。」

 

「な!キャスターの工房をか?てっきり高度な隠蔽がされてると思ったんだが、そうでも無いのか。」

 

「いや、今回のキャスターが異常なだけだろう。碌な魔術を使っていなかったからな。というよりアレはもっと別な・・・いや、まずは情報の共有が先だな。」

 

薪の王がふう、と一息いれてから昨夜調べた事を教えてくれた。

 

「まずキャスターを調べていた理由だが、ここ最近行方不明の子供が増えているのは雁夜も知っているだろう?」

 

「ああ、連日ニュースになってたからな。桜ちゃんも危ないかもしれないから気をつけるように言っていたが、それがどうしたんだ?」

 

「その事件にキャスターが関わっている。雁夜も知っているだろう。忌々しい魂喰らいを、その方法も。」

 

「は?いや、嘘だろ?あれは外部から魔力を得る手段ではあるが、まさかと思うがキャスターのマスターは召喚してからずっと子供を攫ってキャスターの魔力にしてるって事か?」

 

「そのまさかだ。更に言うならばアレは最早止まる事も無いだろう。次に私がキャスターを探すに至った理由だが私の目には様々なモノが見えるのは既に話したな?そして私は今も英雄王や征服王のソウルが見える。その中で穢れたソウルも見つけた。」

 

「なるほどな。その穢れたソウルっていうのがキャスターだった訳か。ん?ちょっと待て、ソウルが見えるって言ってたが英雄王や征服王に今から仕掛けられるって事か?」

 

「そうだな。だがキャスターが最優先だ。これ以上無辜の者を見殺しにする事は出来ない。それにこのままでは桜嬢も狙われる可能性がある。それは雁夜も望まないだろう。」

 

「だな。これ以上桜ちゃんに辛い思いはさせられない。よし!キャスターを叩くぞ。」

 

「ありがとう、雁夜。まずキャスターの工房は此処だ。この町の中でも特に大きい下水道に工房を作っている。突破に関してはそこまで問題では無い。問題はキャスターとそのマスターが不定期に行方を晦ます事だ。」

 

「でも薪の王の目なら分かるんじゃないのか?」

 

「それだ。この頃目の調子が悪い。不意に目の力が弱くなる事が多くなって来た。大雑把にしか位置を把握できない場合はあまり役に立つものでは無いからな。だから叩くと決めたからには速攻だ。遅くても3日以内には仕掛けるぞ。」

 

「分かった。それでこの話はこれで終わりか?なら昨日言った聞きたい事があるんだが、良いか?」

 

「構わないとも。それに再三言うが私に対してはもっと楽にしてほしい。私はそこまで気にしない、それにそちらの方が私も喜ばしいからな。」

 

「ハハハ、相変わらず薪の王には敵わないな。じゃあ俺から聞きたい事なんだが、この前桜ちゃんに騎士アルトリウスと宵闇の姫君の物語を話してくれただろ?あれってマヌスを倒したのはアルトリウスじゃなくてお前だよな。何でお前が意図的に消されている話を楽しそうに話しているのか気になってな。」

 

「そのことか。雁夜、私は人に希望を与える事は何より素晴らしいと思っている。あの話は少なからず子供や騎士見習いの者たちに光を与えた。それが私にとってとても嬉しいことなのだ。それに私のような忌み嫌われる不死よりも彼の騎士アルトリウスの方がよほど物語の主に相応しいだろう?」

 

「そう、か。お前はそう考えるのか。ちょっと悲しいけどお前がそれで良いならいいか。それと気分を悪くしたら謝るんだが、お前ってなんか変じゃないか?ああ、いや、なんて言えばいいんだろうな。そう、まるで薪の王の中に複数の薪の王が居る、みたいな。」

 

「ふむ。それは私の言動や雰囲気が変わると言う事か?」

 

「そう!それだ!それがちょっと引っかかってな。何か理由があるのか?」

 

「なるほど。であればちょうどいい機会だ。まだ話していない事を話すとしよう。まだ、時間はあるな。まず雁夜が言っている事についてだが私が火継ぎをしている事が関係している。私は火継ぎの最中、多くのソウルを取り込みこの身に宿した。その結果私自身に異常が起きた。数多のソウルが私のソウルに混じり合い、溶けた。それ故私の思考や言動が変わっていった。まあ、私そのものは変わらないからな。役作りの時には重宝したよ。」

 

「役作りってどういう事だ?」

 

「私は時に王や指導者、他にも様々な役職になることがあった。と言えば分かるか?」

 

「そうか、そうだよな。俺がお前の夢を見た時も色々な事をやってたしな。ああそれと何でギルガメッシュに会いたかったんだ?」

 

「私は火を消した。それは世界を終わらせる事と同じだ。故に人を案じていた。だが英雄王は人を神の側から離し、人を導いた。それに私は深く感謝したのだ。それは本来なら私がしなくていけなかったからだ。」

 

「そうだったのか。でも俺にとって薪の王は英雄王よりも凄い英雄だって事は覚えておいてくれ。勿論桜ちゃんだって同じ事を考えている筈だ。」

 

そう言うと薪の王は驚いたのか固まっていた。少しすると薪の王は嬉しそうにこう言った。

 

「ありがとう雁夜。その言葉で私は今とても嬉しい。ああ、今ならどの様な敵が来ようとも打ち倒せるだろう。」

 

その言葉はどこか祈りのような、とても優しく響いた。




初めての3,000字。上手く出来ていると良いなぁ。感想やコメントがあるとモチベが上がります!それに純粋に嬉しいです。


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第八話 英雄の共闘

資料やら知識の補填の為にまたダークソウルをリマスターから順にやり始めたら止まらなくなった一般不死人です。違うんです。最初は色々調べる為に始めたんです。気づいたら忙しいとか言ってたのに楽しんじゃったんです。お陰で時間が無くなりました(泣)

いやぁやっぱりダクソは楽しいなぁ!(現実逃避)




気づけばもう六時になっていた。薪の王とはあれからずっと話していた。あの後は薪の王の宝具についても少し聞いた。正直驚いた。まさか宝具が三つもあるとは思わなかった。薪の王にはずっと驚かされっぱなしだ。

 

桜ちゃんが降りて来たので朝食を作ろうと思って移動する。すると俺の座っていたイスに桜ちゃんが座り薪の王に話しかける。

 

「ねえバーサーカー。」

 

「どうしたのだ?桜嬢。」

 

「バーサーカーの本当の名前ってなんて言うの?」

 

「私の、本当の名前?それ、は、」

 

その時の薪の王の言葉はまるで思い出したくない事を聞かれた様に見えた。いや、今の俺なら分かる。ほんの少しだけだが体の中にある薪の王ソウルから感じる拒絶の感情。俺は桜ちゃんを止めるべきかどうかを迷っている間にも二人の会話は続く。

 

「すまないが、それはどういう意味だろうか。私の名前はバーサーカー以外ないのだが。」

 

薪の王はどうにか平静を取り戻して桜ちゃんに問いかけている。

 

「えっとね、私も雁夜おじさんとバーサーカーの役に立ちたくて家にある本を見て勉強してたんだけど、サーヴァントってクラス?て言うのと真名?て言うのがあるんだよね?それでバーサーカーの本当の名前を知りたいなって思ったんだけど。」

 

やってしまった。きっと俺が読んでいた聖杯戦争に関する本を見てしまったんだろう。今すぐ桜ちゃんを止めないと不味いと桜ちゃんを止めようとしたが、

 

「そう、か。そうなのか。それならば大丈夫だ。雁夜、桜嬢に私の真名を教えても良いだろうか?」

 

薪の王はいつの間にか普段と同じ雰囲気に戻っていた。

 

「ああ、良いと思うが、お前は大丈夫なのか?」

 

「私は大丈夫だ。では桜嬢にも私の真名を告げるとしようか。私の名前は薪の王と言うのだ。」

 

「薪の王?って言うの?本当に?」

 

「そうだとも。どうやら桜嬢には私の名前がお気に召さなかった様だ。」

 

「えっと、そうじゃなくってちょっと胸の辺りがモヤモヤするの。なんて言えばいいのかなぁ。」

 

どうやら桜ちゃんも薪の王のソウルを感じ取っているらしい。子ども特有の感受性の高さが理由だろうか?

 

「ふむ。であればこちらの名はどうだろうか?シン、と言うのだが。」

 

「シン?うん!そっちの方が良いと思う!それじゃあ次からシンって呼ぶね!」

 

「フフッ、そうか。であれば雁夜も私の事はシンと呼んでくれ。」

 

「分かった。じゃあ改めてよろしくな、シン。」

 

その名前はどう言う理由で付けられた名前なのか俺はまだ分からない。

 

 

 

 

俺は朝食を持って二人の所に向かい、三人で話し合いながら朝食を食べる。桜ちゃんは食べ終わると魔術の練習するため部屋に戻っていった。

 

「雁夜、出来れば今日の夜にキャスターを叩きたいが、構わないか?」

 

「ああ、俺もそのつもりだ。それといざとなったら宝具を使っても大丈夫だからな。」

 

「了解した。であれば私は少し休んでおく。万全の状態を維持した方が良いだろう。」

 

「分かった。じゃあゆっくり休んでくれ。俺も桜ちゃんと一緒に身に纏うソウルの練習をしておく。」

 

「では何かあったら連絡してくれ。」

 

そう言って薪の王は姿を消した。心配だが今の俺は薪の王に何も出来ない。いや、何をすれば良いのか分からない。俺には薪の王がどうしてシンと名乗ったのかも分からない。暗い気分のまま魔術の練習を始めた俺はなんとも言えない不安感を拭えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はあ、まさかここで過去に追われるとは思わなかったな。桜嬢に悪気は無いのだろうが、私のソウルを渡したのは不味かったか?」

 

その鎧姿の男は先程の答えが正しかったかどうかを考えていた。

 

「いや、やはり語るべきでは無いだろう。私の過去など。聞けば分かると思うが私が感じるこの恐怖は、思い出したくないから感じるのだろう。好奇心は猫をも殺す。・・・死ぬだけならば良いがその後に何が起きるか分からない、と言うのはなんともな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雁夜!襲撃は中止だ。セイバーの元へ行くぞ!」

 

扉を勢いよく開けた薪の王が急かす様に言葉を捲し立てた。

 

「ちょ、ちょっと待て、一体何があったんだ?どうして急にセイバーの所に行く事になったんだ?」

 

魔術の練習も区切りがつき、薪の王から貰った本を読んで復習していた俺はどういう状況か理解が追いつかなかった。

 

「キャスターがセイバーに悪質な襲撃を仕掛けた。襲撃だけならばまだ良かったが奴は、子供達を連れている。子供達のソウルは既に穢れていた。恐らく、子供達はもう手遅れだろう。だがセイバーを救援する必要がある。」

 

「分かった。じゃあ俺はどうすれば良い?」

 

「キャスター以外にも一人、不穏な者がいる。この前セイバーの隣にいた白髪の令嬢を狙っているらしい。そちらに加勢をしてほしい。」

 

「状況は分かった。そっちは任せてくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイバーは左手を負傷していながら海魔を次々と仕留めていた。だがセイバーの顔色はとても暗い。それもそうだろう。彼女が切り裂いている海魔は元々聖杯戦争に関係のない子供達だからだ。救える筈が救えなかった。

 

マスターとの関係も悪く、現状ではアイリしかまともな関係を築けていないセイバーは減ることの無い海魔を聖剣で切り続ける。そこにランサーが加勢に入り、セイバーと共に戦う。キャスターは怒りを露わにするがキャスターの不運はまだ終わらない。

 

「な!この炎はまさか!」

 

突如として炎が海魔たちの包囲網に穴を空ける。セイバーとランサーはその炎に見覚えがあった。コンテナターミナルで現れた一際変わったサーヴァント。薪の王の炎が見えた。

 

「セイバー、ランサー。加勢するぞ。これ以上キャスターの所業は見過ごしてはならない。」

 

現れた薪の王は静かな怒りを纏いながら螺旋状の剣を振るい海魔を焼き払う。

 

「おお!薪の王!まさかお前と肩を並べられるとはな!」

 

ランサーは喜びを示す。

 

「ありがとうございます。貴方が味方とは心強い限りです。」

 

セイバーは感謝を表す。

 

「私が魔物の数を減らす。貴公らはキャスターを頼む。」

 

「了解した。」

 

「ああ!任せろ!」

 

了承の言葉を聞き薪の王は走り出す。海魔の群れの中心部に向かい手を夜空に向かって掲げる。

 

「来れ、嵐の落雷!」

 

薪の王に落雷が落ちた。しかし、薪の王には少しの痛みも無い。薪の王に落ちた雷は薪の王を中心に円形に広がる。その威力は絶大であり、周りにいた海魔は雷に触れた途端に悶え、塵となった。

 

その光景はまるで戦神の様だった。

 

薪の王は即座に行動を再開し、武器である螺旋の剣を変形させる。

大剣から杖に切り替え、魔術を放つ。その名はファランの矢雨。本来は扱いが難しく、あまり使われない魔術である。

ただし薪の王の放つファランの矢雨は眼前に群がる海魔を一体の例外なく貫き殲滅する。

 

薪の王に何か動きがあれば海魔が減っていく。先程セイバーが無限のように感じていた海魔の群れは圧倒的な力を前に成す術なく消えていく。

 

 

 

 

 

 

ランサーと共にキャスターを追い詰めたセイバーはあと少しの所で逃げられてしまう。そこに追いついた薪の王にセイバーは謝罪をする。

 

「すまない!薪の王、貴方に協力してもらいながらキャスターを取り逃がしてしまった。」

 

「セイバー、貴公が謝ることでは無い。単純に奴が一枚上手だったと言う事だろう。」

 

「凄まじい戦いだったな、薪の王。お前との戦いが待ち遠しい。」

 

「それは私も同じだな。ランサー、貴公との戦いは楽しみだ。だが、私はそろそろマスターを迎えに行かねばならないのでな。先に行くぞ。」

 

そう言うと薪の王は二人の前から姿を消した。

 

 




更新が遅くなるなぁ。

「早く書けないのは何故だろう?」

「才能が無いからだな。」

と言う会話を頭の中でしながら書きました。毎日更新出来る人は一体どこの星の人なのでしょう。あいつら人間じゃねぇ!


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第九話 初陣




ほお、貴様。あの破滅しか待っていない男の願いを聞いてやったのか。
それは何ともまぁ、お人好しな事だ。
だが、運命すらも捻じ曲げるとはなぁ。
クックックックッ。
良くない、良くないなぁ。
そういうのは、良くないぞぉ!
ああ、貴様はいつ、自分の過ちに気づくのだろうなぁ。








 

 

身に纏うソウルを展開した俺は木々の間をスルスルと走り抜ける。薪の王に救援に行ってほしいと言われた時は不安だったがソウルを足場にして走れるお陰か案外簡単に森の中でも動ける。

 

森の中を走ること数分。

 

この前のコンテナターミナルで見た白い髪の女性を見つけた。彼女の隣にスーツを着た(恐らく仲間の)女性がおり、目の前にはカソックを着た神父の様な男がいた。多分あの神父が薪の王が言ってた奴だろう。俺は神父の視界に映らない様に少し上に上がりソウルの矢を撃つ。

 

「む。」

 

そう訝しげに呟いたと思ったら背後から首元を狙って放ったソウルの矢をあっさりと避けた。

 

「嘘だろ。」

 

予想外の動きに驚いていたら神父がこちらを見ていた。悪寒が走りすぐに場所を移そうと思ったが遅かった。目の前に拳が迫っている。咄嗟に身に纏っていたソウルを盾にする。

 

「ぐうッ!」

 

なんとかガード出来たが危なかった。後ろに飛びながら姿勢を整える。血の味が口に広がり顔を顰める。薪の王に日頃から戦いの心構えを学んでおきながらこの体たらくだ。気を引き締めて前を向く。

 

神父はこちらを見ているが隙が無い。ソウルを纏い直しつつ空中を滑る様に動き回る。今度は隙の少ないファランの短矢を撃つ。

 

「だめか。」

 

あの神父は一体なんなんだ?身のこなしが明らかに戦い慣れているし、しかも一撃一撃が重いと来た。

 

(時間稼ぎに方針を変えるか。)

 

今の俺じゃ倒せないと思い方針を変える。幸い時間はこちらの味方だ。セイバー陣営の二人も俺の事は取り敢えず敵では無いと考えてくれたらしい。いつ逃げるかタイミングを測っているようだ。

 

まずソウルの太矢を撃ち、続いてソウルの短矢を撃つ。着弾までの時間差を変え続け相手に攻撃の隙を与えないように立ち回る。

 

(薪の王も言ってたしな。)

 

薪の王に魔術の戦い方を教えて貰っていた時に言われた言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雁夜。ここからは魔術の鍛錬だけではなく身体も鍛えるようにするぞ。」

 

突然言われたその言葉に俺は難色を示した。

 

「どうしてだ?正直まだソウルの魔術も覚えたばかりだからしばらくは魔術に専念した方が良いと思うんだが、」

 

「理由に関しては幾つかある。まず貴公の継戦能力の上昇だ。雁夜、貴公はついこの前まで魔術の反動でまともに体を動かせずにいただろう?貴公に教えた身に纏うソウルはあくまで補助だ。

足場が無いから足場を作る。武器が無いから武器を作る。身を守る鎧が無いから鎧を作る。そういったモノなのだ。確かに使いこなせば移動中の加速や魔術の強化にも使えるがそれはまだ先の話だ。

故にこそ、まずは身体を鍛え基礎を上げる。目標は相手の魔術を避けれる様になることだな。」

 

「それは中々難しくないか?」

 

「これは次の理由にも関わっている。二つ目は単純に貴公の魔力の節約が目的だ。貴公の魔力は膨大な訳では無い。私のようにソウルを喰らい、膨大な魔力を持っていれば魔術に専念するのも良いが今回に限ってはそれは不味い。」

 

「ん?良いんじゃないか?拠点を工房化して立て籠もれる訳だろ。後は言い方は悪いがサーヴァントに任せる事も出来るだろうし、」

 

「今回の聖杯戦争には魔術師殺しに事欠かん。まずライダーだ。あの征服王のチャリオットであればそこらの魔術師が作った工房なぞ簡単に突破出来る。対抗するには神代の魔術師が必要だろう。次にセイバーだ。騎士王の不可視の剣、恐らくあれがエクスカリバーだろう。余り無いとは思うが宝具による工房の狙い撃ち、噂に名高き聖剣であれば工房など棺桶と変わらんだろう。まあ、最終手段と思いたいが。他にもあるが最後にアーチャー、英雄王は言わずもがなだ。彼こそはまさしく神代の英雄そのモノだ。あの宝物庫に耐えられる工房なぞそうは無い。」

 

薪の王の説明を聞いて理解した。これは本当の戦争なのだと。確かに最初のコンテナターミナルでの一戦で英霊の凄さを知ったつもりだったが言われてみればその通りだ。

これは魔術師だけの戦いでは無い。魔術師の格がどうのとか決闘がどうのとか、そんなものは次の瞬間には崩れ去る危険性がいつだって有る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まあ、それを知れたから身体を鍛えてきた訳なんだが、鍛えておいて良かった。)

 

先程から続く神父との戦闘は狙い通り膠着状態に持っていけた。恐らく初めて見る魔術に警戒している事もあるんだろう。走りながら木々で視界を遮り魔術を撃ち続ける。時折り軌道を変えたりしつつ上手く立ち回れていると思う。

 

そんな時だった神父が一瞬顔を顰めたかと思えば撤退を始めていた。

 

「いや、それにしてもあの神父可笑しいだろ。なんであんなに速いんだ?まだ鍛え方が足りないのか?」

 

そんな風にぼやいていると隣から声が聞こえる。

 

「あれは単純にあの神父が桁違いなのだろう。ふむ、あの身のこなしは戦いに身を置く者のそれだ。」

 

「そっちはどうだった?キャスターは仕留めらたのか?」

 

「いや、逃げられた。セイバーとランサーの二人に任せていたのだが、どうやらキャスターも準備をしていたらしい。」

 

「そうか。まあ、まずは家に帰るか。シン。」

 

「そうだな。帰るとしよう。」

 

そうして俺と薪の王の慌ただしい夜が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?バーサーカーのマスターに助けられた?それは本当かい?」

 

衛宮切嗣からの訝しげな声に肯定を示す声が二つ上がる。

 

「ええ、そうよね?舞弥さん。」

 

「はい。あれは間違い無く間桐雁夜でした。」

 

「あの男は調べた限りでは人助けをするような奴では無いんだが、一体どういう風の吹き回しだ?

・・・少し調べよう。ついでに他の陣営も洗い直すとしようか。舞弥、手伝ってくれ。」

 

「分かりました。」

 

そんな中、一人会話に混じらず思考を巡らせているセイバーはこんな事を考えていた。

 

(間桐雁夜、あの薪の王のマスター。彼も薪の王のような人物なのだろうか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すこしづつ、すこしづつ、歯車は狂い始める。

 

有り得ないが有り得るに、有り得たことが有り得ないことに。

 

けれども歯車は動き続ける。歯車は狂い続ける。

 

さあ、一体どうなるのでしょう。

 

それは、誰にもわからない。

 

だってそうでしょう?運命は偶然で、偶然が運命で、

 

しかし、運命は必然とも言う。

 

さあ、まだまだ幕は開けたばかり。

 

どうぞ皆さんお楽しみ下さいな。

 

 

 

 

 

 








やってみたかった事をやってみました。如何でしたでしょうか。個人的には上手く書けたように思えます。
最初の語りは素晴らしい方に、最後の語りは童話の少女にやって頂きました。fateとダークソウルの共演再び!
話は代わり近々初めてのアンケートを取りたいと思っております。初めての機能なので多分どこかでミスをすると思いますが、私の話を読んで下さっている方々には暖かい目で見て頂けると嬉しいです。
最後に私の後書きまで読んで頂きありがとうございます!

追記

活動報告の方にも記載しましたが非ログイン状態の方でもコメントや感想を書けるように変更致しました。頂けると嬉しいです。
アンケートの期限は特に決めていないのですが、八月の初め辺りにするか七月の終わりになると思います。


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第十話 聖杯問答 勧誘


活動報告でも書きましたがこちらでも。
アンケートの投票ありがとうございました!
計248票ものたくさんの投票ありがとうございます!

と、いうことで、遂にやってまいりました。聖杯問答編です。少し長くなるので分けました。
ここから佳境に進むので作者も一層気合いを入れ励んで参ります!







 

 

それは俺が薪の王と魔術について話を聞いていた時だった。

玄関からインターホン特有のピンポーンという音が聞こえ、扉を開けたらいたのだ、ライダーとそのマスターが。

 

「おお!出迎えは薪の王のマスターであったか!こりゃ丁度いい!」

 

「えぇと、取り敢えず何の用で家にまでライダーとそのマスターが来たんだ?」

 

そう受け答えをしていたら後ろからここ最近で聞き慣れた声が聞こえた。

 

「そうだな、私としても征服王。貴公がどのような用があり此処に来たのかは気になる所だ。」

 

「ほほぉ!薪の王!其方も当世の服を着ておったか!それにしても、やはりお主の顔はまさしく戦士の顔だな。」

 

「ふふ、貴公にそう言われるとはな。数多の英雄を率いた貴公からの言葉だ。有り難く頂戴しよう。」

 

いつも通りの白シャツと黒のズボンではなく、今日はスーツを着ていた薪の王とサイズが合っていないんじゃないかと思う短パン半袖のライダーが談笑している。

 

「こんの、大馬鹿野郎!いきなり僕を連れ出したかと思えばバーサーカーのマスターの家に真っ直ぐ直進とか何を考えてんだよ!?」

 

どうやらライダーのマスターは随分と手を焼かされているようだ。手を合わせるか迷っているとライダーが本題を話始める。

 

「だからなぁ、さっきも言っただろう?良い事を思いついたとな。」

 

「それがなんなのか教えろって言ってんだよ!?こっちは!」

 

「まあまあ、そう焦るな坊主。ほれ、説明してやるから落ち着け。此度のこの戦、王と名の付く者が多いときた!であればだ。聖杯を手にする前に!一度王としての格を問うてみようと考えた訳だ。まあ、そうさな。言うなれば聖杯問答、だな。」

 

「ほお?聖杯問答、か。これはまた貴公らしい提案だな。」

 

「ハハハハハ!そうであろう。そこでだ、聖杯問答をするためにお前さんらを誘いに来た訳だ。どうだ?」

 

「なるほど。そうか、これは断る理由が無いな。雁夜、ライダーのマスター、貴公らもそれで良いか?」

 

そこでずっと蚊帳の外だった俺とライダーのマスターに話が回って来た。

 

「あ、ああ。俺は大丈夫だ。」

 

「お前はほんっとに僕の意見を聞かないなあ!はあ、もういい。好きにしろよ。僕は疲れた。」

 

「坊主もやっと分かったか!では今夜の、そうだなぁ、セイバーの城にてまた会おうではないか?薪の王よ。」

 

「そうか。では私も遅れないようにそちらに向かうとしよう。今から待ち遠しいな。また会おう、征服王。」

 

薪の王がそう言うと俺と薪の王の肩をバシバシ叩きながらライダーはマスターを小脇に抱えて帰っていった。

 

「なんだか、嵐みたいだったな。」

 

「間違いでもないと思うぞ?だが、それこそ征服王の魅力の一つなのだろうな、私には無いものだ。」

 

「俺はお前のままが一番良いと思うがな。さてと、俺は準備をしてくるが、お前はどうする?」

 

「少し、外を歩いてこよう。」

 

「分かった。」

 

そう言って俺は家に戻った。その時、薪の王が呟いていた事に気づかずに。

 

 

 

 

 

「私にも、あのような輝きがあれば、もっと別の結末に変わっていたのだろうか。やはり、心底自分の無能ぶりに呆れるな。」

 

 

 

 

 

 

 

 






第六話および第七話にてOthuyegさん。誤字報告ありがとうございます!
いつもありがとうございます!








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第十一話 聖杯問答 前を向き



頑張って早めに出したかった作者です。
第十一話にてGジェネラーさん、赤頭巾さん。誤字報告ありがとうございます。

今回薪の王がメチャメチャ喋ります。過去一喋ります。なのでご注意下さい。



 

 

日も落ちてきて時間が経ちライダー、征服王の言っていた集合時間に近づいてきた。

 

「それじゃあ、そろそろ行くか?」

 

「そうだな。時間的にも丁度いい頃合いだろう。」

 

桜ちゃんには今日は夜出掛ける事について話をしておいたので恐らく問題は無い筈だ。

 

アインツベルンについては名前くらいしか俺は分からないが有名な魔術師という話は聞いているので罠があるかと思っていたのだが。

 

「なあ、これって、ライダーの乗ってた戦車でやったのか?」

 

「そのようだな。罠どころか木々も轢き潰して行ったらしい。」

 

そこには城の正面に向かって一本の道が出来ていた。

木々は倒され、正直これは不味いんじゃないかと思うような酷い有様になっていた。

 

城に入ろうとすればこれまたライダーがぶち開けたであろう城の入口。

しかしそこにはライダー達の姿は無く、辺りを探しても瓦礫ばかりで何も見つからない。

 

「雁夜、こちらのようだ。」

 

薪の王に着いて行くような形で俺は人生で初めて城に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、来たか!んん?・・・何だ、お前さんらだけか?」

 

「ああ、そうだ。私達だけだが、他に誰を呼んだのだ?征服王よ。」

 

「そりゃああの金ピカも呼んだわい。あいつも堂々と最古の王を名乗っておったしなぁ。呼ばん訳にはいくまい。」

 

「ほお!英雄王も呼んでいたのか。それは良いな。

ああそうだ。セイバー、今回は共に語り会おう。貴公とは戦場でばかり会っていたからな、こうして落ち着いて話をすることが楽しみだったのだ。」

 

「ええ。私も貴方とはちゃんと話をしたかったので此度は共に語りましょう。まあ、ライダーには言いたい事がいくつかありますが。」

 

「ハハハ、そうだな。だがセイバーよ。征服王がいなければこうして一度に集まる事も無かっただろう。」

 

「確かにそうなのですが、やはり、少し強引過ぎる気がしてならないのです。」

 

三者三様に話を始めつつ俺はこの場に居るライダーのマスターと白髪の女性に声を掛けた。

 

「えぇと、こうして顔を合わせて話?をすることになった訳だし少し俺達も話さないか?」

 

「まあ、そうだな。僕もアイツと話すのは疲れてきたし、少し休憩する。」

 

「そうね。私もお話したいわ。ねえ、バーサーカー、薪の王ってどんな人?」

 

「え、シンの事か?といってもなあ、面倒見が良くて、何でも出来て、その上強くてイケメンでって、アイツ言葉にすると凄いハイスペックだな。」

 

「何だよそれぇホントにバーサーカーなのかよ、アイツ。」

 

「それについては俺も良く分からない。」

 

「凄いのね。でも、セイバーだって負けてないわよ?」

 

いつの間にか良い雰囲気になって話をしていると唐突にその空気を変える男が現れた。

 

「ふん。この我を呼び出す割には随分と見窄らしいな。それに、貴様が持って来ているその酒も安酒であろう?全く、何もなっておらんな。この我が貴様らに教えてやろう。本当の「王」というものを。」

 

そう英雄王が言うと後ろの波紋から酒と器が出て来て、それが投げ渡される。何故か薪の王にだけは普通に渡している。

 

「おお!こいつはなんとも、まさしく極上の酒と呼べるな。こりゃあ神代のモンか?」

 

「ほお。これはとても美味いな。今まで口にしてきた物でも格別だ。流石は英雄王。」

 

確かに凄え美味い。けどこれ、俺が飲んでも大丈夫なのか?

 

「フハハハハ!そうであろう!この我の酒だぞ?そこらの雑種共が飲む酒などとは比べる事さえ烏滸がましいものだ。」

 

「ふむ。征服王が人を呼び、セイバーが場を設け、英雄王が酒と器を用意した。となれば私も何かしなければな。」

 

薪の王が一言そう言い指を鳴らすと周りが美しい城に変わった。

 

「良し。場を整える程度しか出来んが、どうだろうか?ここは私が見て来た中で美しいと思った場所の一つなのだ。アノールロンドと言う。」

 

周りを見渡せば美しい装飾は勿論、巨大な像が後ろには立っていてとても荘厳な雰囲気になっている。

 

「少々変えてはいるが、どうやら良いようだな。」

 

征服王はこりゃ凄いとはしゃいでいるし、セイバーは忙しなく辺りを見回している。英雄王はゆっくりと、笑みを浮かべながら周りを見ている。

 

「これは一体、」

 

「ほほぉ。薪の王、これがお前さんが見た城か。なんともまあ素晴らしいな。あの像は何と言うのだ?」

 

「あれは大王グウィンだ。今となっては随分と久しいが、何度も会ったものだ。」

 

「ほお?あれがグウィンか。・・・なるほどな。」

 

「さて、そろそろ始めるべきではないか?征服王よ。」

 

「お、そうであったな。では、始めるか。聖杯問答を。」

 

 

 

 

 

どうしてこうなったんだ?

ライダーと英雄王が王について語り終わったからセイバーの番になってブリテンの滅びを変えるって言ったら英雄王は爆笑してるし、ライダーはなんか痛ましいものを見るような目でセイバーに確認している。

さっきまでの良い雰囲気が台無しだ。そこでさっきから黙っている薪の王が気になって目線をずらすと、薪の王はどこか懐かしいものを見るような、しかし同時に悲しいものを見るような、そんな目を向けていた。

 

「何故だ、何故そう訝る!何故笑う!」

 

「いやな、セイバーよ、」

 

「ハハハハハハッ!傑作だ!セイバー、貴様が道化であったら褒美を取らす所であったぞ?」

 

セイバーの顔がどんどん沈んで行く。

しかし、次の瞬間にはこの場に全ての者が口を閉じた。

その理由は簡単だった。

周りの風景が変わったのだ。辺りは荒れ果てた街、いや滅びた国に変わった。

 

「セイバー。」

 

薪の王が口を開いた。

 

「貴公は過去を変えると言ったのだな。それはダメだ。してはならない。その行いは呪いとなる。赤子の赤子、ずっと先の赤子まで続く。

セイバー。奥に見える男が分かるか?」

 

そう言われて全員がその方向を見る。そこには装飾が施された騎士鎧を身に纏う男が居た。彼は国の中を彷徨い続けていたのだろう。膝を付いて体を震わせている。泣いているのだろうか。

 

薪の王が優しく、語り始める。

 

「アレがこの国の王だ。アレは民を救い続けた。その先に希望があると、輝かしい未来が民にあると信じてな。その行いは幾度に渡りやり直され、続けられた。

次こそは、もっと救える筈だと。次こそはもっと良くなると。

だが、どうだ。何度も、何十度も、何百度と繰り返しても、滅びは変わらなかった。何をしても無駄だった。

アレは気づけなかったのだ。己の行いの度し難さを。己の罪深さを。

セイバー。過去を変えるとは即ち、その時代を生きていた者たちを否定する事と同じだ。民の日々を、民の軌跡を、貴公は否定すると言うのか?他ならぬ王である貴公が。民の生きた証を捨て去ると言うのか。」

 

「だが、それでも私は、」

 

「それだけでは無い。貴公を信じ、共に歩んだ臣下すらも否定するのか?貴公の願いは停滞だ。人は歩み、進まなければならない。停滞は腐敗を生む。

国は民と共に生きているのだ。生あるものには必ず死が訪れる。それは民と共に生きる国も同じなのだ。」

 

薪の王の言うことは王ではない俺には全部は解らない。それでもある程度は解る。言葉は現実を突きつけている様に聞こえるが、実際は違う。

薪の王はずっと穏やかに話をしている。声を荒げず、強い非難もしていない。

 

周りを見ればライダーは意外そうに見つめ、英雄王はどこか面白そうにセイバーと薪の王を見ている。けれど二人とも薪の王の話をしっかりと聞いてはいる。

 

「セイバー。」

 

アイリスフィールさんが声を掛けている。

 

「私の願いは・・・間違いだと言うのか。」

 

その言葉に真っ先に返したのは薪の王だった。

 

「それは違う。」

 

力強い言葉だった。

 

「その願いは良きものだ。亡くしたものを悼むのは本来生者の特権だ。だが、既に死した私達が再びその想いを持てるのは紛う事なき奇跡なのだ。故にその想いは大切にしなければならない。

人とは確かに罪深い者だ。だが、その罪に向き合えるのもまた人だ。強き者がいれば弱き者もいる。人は未来への可能性を持っている。

セイバー、貴公がすべきなのは万能の奇跡を起こす事ではなく。前を向き、明日へと歩み出すことだ。」

 

場に沈黙が降りる。

 

「今答えを出す必要は無い。だが、聖杯を前にした時、貴公の迷いを晴らす太陽があらんことを。」

 

 

 

 

 






内心ウッキウキな英雄王。書いてて楽しいですね。
読んで頂きありがとうございます!
感想、コメントを頂けるとモチベが上がり更新が早くなります!(当社比)




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第十二話 聖杯問答 歩み出す



更新が遅れてしまい申し訳ありません。
ワクチン接種があったので行ったのですが副反応が辛かったです。二回目は少し怠いなぁ程度で済んだので油断していました。




 

セイバーは俯いたまま喋らない。少し話しづらい雰囲気で場を動かしたのはやはりと言うべきか薪の王だった。

 

「ライダー。気づいているか?客人だ。」

 

「応とも。今からあやつらにも誘いを掛ける所よ。」

 

周りを見ればアサシン達が取り囲む形で包囲している。

アサシン達にも誘いを掛けるライダーは流石というか何というか。案の定誘いを断ったアサシン達に俺は同情した。

 

本来隠れ潜み奇襲を仕掛けるアサシンにとって隠れられる場所の無い平地というのは絶対に避けるべき場所だろう。しかし、ライダーの宝具はそんなアサシンにとって避けたい平地、それも砂漠に固有結界で閉じ込められる。

そしてライダー一人ならまだ数で勝っているアサシンに勝機はあっだろうが、俺達の周りにはライダー、征服王イスカンダルが率いた英雄達が列を成している。

 

ライダーの堂々とした態度と共に始まった口上。それは俺から見ても英雄というものを理解させられるものだった。ライダーの言う「王道」を具現化した宝具、そんな宝具から逃げられる訳も無くアサシン達は蹂躙されていった。

 

「ふむ、こんなもんか。・・・さて、薪の王よ。まだお主の王道を余は聞いておらん。」

 

「そうだな。私も話すとしよう。だが、先に言っておくが私は王足り得る者では無い。故に、貴公らが満足するようなモノでは無いかもしれない。その上で語るとしよう。

私が聖杯に願うものは、征服王と同じ受肉だ。」

 

「ほほう。余と同じ受肉とな?そいつの理由は?」

 

「私は今まで自分のしたい事や、やりたい事があまり出来なかったのだ。故に受肉を果たし様々なものをこの目で見て、感じたい。

今の私の願いはこの世界と共に歩む事だからな。」

 

薪の王は単純にこの世界を見て回りたい、って事なのか?なんとなく掴み辛いがまあ、その時になれば分かるだろ。

 

「なるほどな。・・・であれば、その願いをこの我が叶えてやる。と言ったらどうする?」

 

「ふむ。悪くない提案だが、生憎と私も征服王と同じ考えだ。自分の願いは自分で叶えたいのだ。それが、たった一度だけの願いであれば尚更だろう?」

 

「クク、フハハハハ!そうだ、それで良い。やはり我の見立てに間違いは無かったな。・・・さて、我の用は終わった。後は雑種共で終わらせておけ。」

 

そう言ってアーチャーは金色の粒子になって消えていった。

 

「あの金ピカはせっかちだのう。まったく、とはいえそろそろ夜も更けてきた頃合い。余も帰るとするか、おい坊主!いつまで悩んでおるのだ。さっさと帰るぞ!」

 

「あ!ちょっと待てえぇ!僕はまだ聞きたい事が、」

 

叫ぶマスターを引っ掴んで飛んで行くライダーを見送ってからセイバーをもう一度見る。

 

まだセイバーは俯いたままだ。何を悩んでいるのか当事者じゃない俺には分からないが、薪の王があそこまで喋ったのはあまり見たことが無い。それだけ心配・・・いや、自分と似ていたのだろうか。

 

アイツは基本的に自分の事を話さない。それはマスターであり友人になれたと思っている俺としては少し寂しい。それでも時折見る夢、アイツが薪の王として歩んだ道を見た身としてはセイバーの願いは昔の薪の王に似ている。

 

「俺達もそろそろ帰るか?」

 

「そうだな、桜嬢の事もある。帰るとしよう。」

 

そう言うと薪の王はセイバーに近寄って声を掛けた。

 

「セイバー。次の一歩を踏み出すという事がどれだけ重く、苦しいかを私も知っているつもりだ。だが、それでも私は貴公に進んでほしいと思っている。

輝かしきアーサー王よ。私は貴公の道筋を悲劇だとは思わない。」

 

言いたい事は終わったようだ。俺達も帰るとしよう。

 

 

 

 

 

 






新しいのを書きたい!でもこれ以上増やしたら絶対に更新が遅れる。
そんな思いを抱えつつ書き上げた作者です。難しい。

よろしければ感想、コメント等して頂けると承認欲求が満たされて嬉しいです。モチベも上がります。



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第十三話 ーーーーの思い



大変お待たせしてしまい申し訳ありません。
お待ち下さっていた方には本当に頭が上がりません。





 

 

家に帰り、寝静まった間桐雁夜の部屋に音も無く現れるモノがいた。その男は間桐雁夜のサーヴァントにして友人である薪の王であった。

 

薪の王は間桐雁夜に近づくと胸の辺りに手を翳し、聞き取れない声量で何かを呟く。それを何度か繰り返した後、薪の王は部屋に現れた時と同じ様に音も無く消えていった。

 

一人残された間桐雁夜はそっと、口を動かした。

 

 

「やっぱり、お前だったのか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ最近は夢をよく見ていた。

 

夢の中の俺の目の前には死んだ時臣がいて、それに気づいた葵さんを自分の手で絞め殺すというなんとも俺らしいと思う夢だった。

 

その夢を初めて見たのは聖杯戦争に参加して少したったくらいだった。

夢を見た日は自分でも分かるくらいには顔色も悪かったし、薪の王だけじゃなく、桜ちゃんにも心配をかけてしまった。

 

 

しかし、そんな夢もある日突然変わった。

 

 

その日も悪夢を見てた。でも、突然、幸せな世界が広がった。

そこには葵さんと時臣が笑って凛ちゃんと一緒にこっちに向かって来ていた。

俺は桜ちゃんと手を繋いで三人をとても広い公園で待っていて、そこからは五人で楽しくレジャーをした。

あの時臣と一緒になって笑っていたのは今考えても信じられない。

 

 

でも、それを実現したいと思った。

だって、俺にはとても羨ましく、眩しく見えたから。

 

 

こんな事はおかしいと分かってる。だって俺には桜ちゃんと葵さんが居れば良いと思っていたから。時臣だって恨んでいたのだから、チャンスがあれば殺そうと思っていた程だ。

 

こんな夢を見せたのは、アイツしかいない。

神様みたいな力を使って俺を救ってくれた。薪の王

 

 

 

なあ、お前はいつも俺を助けてくれる。救ってくれる。でも、お前はどうなんだ?

お前は誰かに助けてもらったのか?救ってもらった事はあるのか?

きっとお前はいつもみたいに笑いながら言うだろうな。あるって。もう救われた、助けられてきたって。

 

 

ふざけるな。

 

 

アレで救われた?助けられてきた?俺が見てきたお前の旅路には、救いなんてなかった。助けてもらってもなかった。お前がやってきた事の方が何倍も凄かった。

俺なんかじゃお前を救うことは出来ない。でも、手助けくらいは出来る筈だ。だから、頼ってくれよ。これでもお前のマスターなんだよ。

 

 

 

目が覚める。いつもと同じ目覚め、いつもと同じ風景。きっといつものように薪の王は一階で待ってる筈だ。

 

 

 

「おはよう。雁夜。良く眠れたか?」

 

「ああ、お陰様でな。」

 

俺がそう言うと薪の王は溜め息を吐いた。それは、隠していた事が子供にバレた親のようだと思った。

 

「いつから気づいていたのだ?」

 

「それは答える意味が無いんじゃないか?俺の考えている事が分かるお前には。」

 

「それも気づいていたのか。やれやれ、どうやら私には人を騙す才能は無いらしい。」

 

「そもそも、隠すつもりがあったのか?」

 

「そこは貴公の想像に任せよう。」

 

そこからは薪の王と雑談をしつつこれからの事を考えた。

あの夢で見た平和な毎日を目指しても良いかもしれない。それか、薪の王に着いて行って旅をするのも悪く無いなと俺は思っていた。

 

 

 






久しぶりの投稿なのに薄味で申し訳ありません。
この話の詳しい説明等は別の話でする予定です。


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第十四話 分岐点




少しだけ早めに出せた!

赤頭巾さん。誤字報告ありがとうございます。





 

 

その日はちょうど先送りになっていたキャスターを倒す準備をしていた。と言っても俺は特に何かする訳じゃないから時間になるまで魔術の反復練習と桜ちゃんと時間を潰していたりしていた。

 

時間まであと一時間程という所でそれは現れた。

 

「ッ!なんだ、今の?」

 

薪の王のソウルのお陰で俺は気配とか魔力をそこそこ感じ取れるようになっていたから余計にその気持ち悪い感覚を感じ取った。しかしそれは桜ちゃんも同じようで少し震えていた。

 

「おじさん、今の何?」

 

「大丈夫だよ。桜ちゃん。おじさんとシンが絶対に守るからね。」

 

そうは言ったもののこのまま薪の王を待っているだけでは桜ちゃんを守りきれかどうかは分からない。そう判断した俺はこの最近改造した地下室を思い出した。

 

「桜ちゃん、この前一緒に行った地下室を覚えてる?シンとおじさんが帰って来るまであそこで待っててほしいんだ。いいかい?」

 

桜ちゃんは少し悩んでいたけど頷いてくれた。

 

「偉いね。あそこにはもう虫はいないから大丈夫。必ず帰って来るから良い子で待っててね。」

 

そこからは桜ちゃんを入り口まで送って俺は玄関を開けた。そしてそこには薪の王が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雁夜、桜嬢は?」

 

「大丈夫だ。地下室に行って隠れてもらっている。」

 

「そうか、それならば話は早い。すぐに川に行くぞ。どうやらキャスターの方から来てくれるらしい。」

 

そう言うと薪の王はすぐに俺を抱えてジャンプした。

もう一度言おう。俺を抱えてジャンプした。

 

「待て待て待て待て!おまッ、いくらなんでも一声掛けてくれてもいいだろ!」

 

「ハハ、すまないな。だがまあ、今回ばかりは許してくれ。急がねば犠牲者がこの町の住人だけでは済まなくなる。」

 

「そんなになのか?いったいキャスターは何を出したんだ?」

 

「もう少しで見えるぞ。アレに関しては見た方が早いだろう。他の者達も集まっているようだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間に合ったようだな。」

 

「なんなんだ、あの気持ち悪いのは。」

 

そこにいたのは言葉では表せない醜悪な蛸のような何かだった。サイズもサイズだがそれ以上に見るだけでも中々にキツイものがある。あんなのを呼び出すキャスターは正気じゃないな。

 

「あ!雁夜とバーサーカーも来たのか。」

 

こっちに気づいて話掛けてきたのはこの前の聖杯問答でそこそこ仲良くなったウェイバーだった。後ろを見ればライダーだけでは無くランサーとセイバーとアイリスフィールもいた。

 

「ああ、といっても俺はどうすれば良いか分からないからそっちに合わせる。シンもそれで良いよな?」

 

俺が確認を取ると薪の王も頷いていた。

 

「構わない。私のやり方では少々問題があるからな。」

 

そこからはウェイバーを中心に作戦を立てていった。

途中セイバーの宝具が対城宝具なのも分かり、ランサーがセイバーの手に掛けられた呪いを解除した。

作戦はライダーの宝具で時間を稼いでセイバーの宝具で打ち抜く、という分かりやすいものになった。

 

「ライダー、貴公の宝具に私も入れてもらえるだろうか?時間稼ぎであれば役に立てる筈だ。」

 

「ほほお!余の王道に加わるとな!して、どうするつもりなのだ?薪の王よ。」

 

「私の宝具を結界内で使おう。雁夜、令呪を一画使えるか?」

 

「分かったよ。好きな時に持ってけ。」

 

「感謝する。では、行くか。」

 

「そら、薪の王よ。お前さんもさっさと乗らんか。」

 

相変わらず強引なライダーにチャリオットに乗せられ、薪の王とライダーは結界内にあの海魔と消えた。

 

 

 

ふと上を見ると金色の船のような物が見えた。アーチャーだ。アーチャーがいる。なら、時臣も近くに居る筈だ。

 

俺の目は自然とそこへ向けられる。勝手に体が動いてた。意識して動かした訳じゃない。でもそこに時臣は居た。

 

ビルの屋上。まだ、俺には気づいていないのか。それとも気にする必要すら無いと思っているのか。俺には分からない。でも、俺の体は時臣の方へと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 














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