「いいことだらけ」と言うけれど (ゲガント)
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プロローグ

どうも皆様ゲガントです。新しいシリーズです。
個人的に好きな作品であるLobotomy Corporation、Library of Rainaとblood borneを合わせてみました。
どれか一つがいいと感じる方は静かに検索画面に戻って頂けたら幸いです。












それでも構わない方はご覧ください。


      

  パラ

 

 

周りを本に囲まれたソファで、一人の青年がどこか物憂げに微笑みながら本のページを一枚一枚捲る。

 

パラ

        パラ

 

 

また一枚、もう一枚と暫く読んでいると、疲れたのか一旦本を閉じて一息つき始めた。目を閉じ、手を組んで伸びをする。座りっぱなしで凝った肩を回してほぐしながら立ち上がり、ソファの隣に備え付けられたテーブルに読んでいた本を置いた。

 

 

「ん………と。」

「ちょっと!もうそろそろ仕事が始まるわよ!」

 

 

青年がもう一度伸びをしてとだらんと脱力すると、誰かが青年に対して呼び掛ける。ふと青年が声が聞こえた方向を見ると明らかに「怒ってます」と言わんばかりの表情の美少女が近づいてきた。少女に気がついた青年はふんわりと笑いながら答える。

 

 

「あ、ごめんねすぐに行くよ。」

「全くもう、しっかりしてよね。」

「あはは……。」

 

 

ジト目の少女にスレスレにまで迫られた状態で叱られる青年は、照れ臭そうに頭をかく。しばらくそのまま見つめあっていた二人だったが、やがて少女のポケットから着信音が鳴り響く。それに反応した青年は間髪入れず少女のポケットから連絡用の端末を取り出すと電話に応答した。

 

 

「はい、もしもし。」

『あら、彼女に連絡したつもりだったのだけど。』

「目の前にいますから。」

『…まぁいいわ、そろそろそちらの階層に三人送るから、「接待」を頼んだわ。』

「了解しました、館長……………そういえば、父さん達は今どうされてますか?」

『今日も研究に明け暮れてるわよ。この招待状の有効な使い方もね。そんなことはいいから、早く持ち場に着きなさい。』

「そうですか、あ、ちょっt「切るわよ!」」

 

 

青年から端末を奪い取った少女は怒鳴るように端末のマイクに話すとそのまま通話を切った。そのまま端末をポケットに仕舞うと頬を膨らませた少女が青年の手を握る。そっぽを向いたまま走り出す少女に手を引かれた青年も少しつまづきそうになりながらついて行っている。

 

 

「怒鳴らなくて良かったんじゃないかな。」

「………。」プクー

「おっとっと……どうすれば機嫌直してくれる?」

「…………………………一緒に寝て。

「いいよ。」

 

 

顔を赤くした少女に優しく頷いた青年は少し走るスピードを上げながら少女を抱き上げる。姫抱きされた少女は驚いたような表情をして、先程よりも顔が赤くなっている。

 

 

「ちょっ、別に私を抱き上げる必要はないでしょ!?」

「僕がしたかったからなんだけど………ダメだった?」

「んぐっ…………ダメじゃない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青年と少女……………ティファレトが去った後、机に置かれた本は静かに存在していた。よくよく見ると、周りに置かれた本よりも少しばかり禍々しい気配を感じる。その本の表紙には一つのタイトルが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『狩人の記憶~Bloodborne~』

 

 

 

 

タイトルの下に少し歪な形の鉈が描かれた赤黒いそれはただそこにあるだけで見たものを狂わせそうな気配がある。だが、周りに知性を持った存在はおらずただ怪しい空気を纏わせるだけであった。しばらくの間静かな空間が続いていたが、そこに一つの足音が聞こえてきた。その足音の主は本の元まで歩くとその表紙を指でなぞるように触れる。人間サイズのビスクドールのような見た目の女性は優しい声で祈るように呟く。

 

 

「………………狩人様方、御二人の生きる道が有意なものでありますように………………………おや。」

 

 

わずかに口角を上げている女性……"人形"が本を見つめているとその隣からおどろおどろしい小人が数人テーブルから生えるように出てきた。彼らは皆外套のようなものを羽織っている。どうやら今の流行りのようだ。

 

 

「ふふ、貴方達の主の衣装の真似ですか。とても似合っていますよ。」

「!、!」ワタワタ バサバサ

 

 

"人形"の言葉に喜ぶように身を動かす小人……使者達は、纏った外套をバサバサとはためかせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




色々と探していますがティファレト(リサとエノク)がメインの話をほとんど見掛けないので思わず書いてしまいました。Lobotomy Corporationのセフィラの中でもかなり好きなキャラクターです。もちろん他のセフィラも好きですが。あのゲーム魅力が沢山詰まりすぎだと思うのですが、いかがでしょうか。はたけしめじさんのように職員を愛でるのもいいですし、ストーリーを深く考察する動画も大好きです。

Bloodborneは友人達が熱く語っているのを聞いていたらいつの間にかある程度詳しくなっていました。まぁダクソで「折れた直剣」を最大強化して使っており、Bloodborneでも変態的な事してましたけど。




更新はゆっくりですので、読みたい方は気長にお待ち頂けたら嬉しいです。


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裏路地
悪夢の終わり


いきなりbloodborneのエンディングですが、ブラボのキャラクター達との交流はそのうち書くのでお待ちください。






それではどうぞ


ポタ    ポタ

 

 

人の形をした何かが白い花畑の上で赤黒い血を流して倒れ伏している。

骨格こそ人間のような形をしているが、異常な程に痩せ細り肋骨は剥き出しで肉や皮があるのは腕と脚、背中位だろう。貌は穴があいたような仮面と言うべき無貌であり、周りには無数の触手がさながら獅子の鬣のように生えている。瞳も、口さえもないまさしく仮面と言う他ない。更には複数に枝分かれした尻尾も生えていた。

 

 

……………………。

 

  ポタ       ポタ

 

 

しかしその異形が動く様子はなく、ただひたすら赤黒い血を流すのみだ。どうやら絶命しているらしい。

動かぬ異形……「月の魔物」の傍らでその骸を無言で見つめる影が二人(・・)。どちらも全身を覆うような格好をしているが、明らかに齢が10歳位であろう姿だ。しかし、その手には子供が持つには不釣り合いなほどに恐ろしい気配を感じさせる武器が握られていた。二人が右手に持つ武器……一人は鉈、もう一人は杖……が血塗られていることからこの現状を作り出したのがこの者達であることが分かる。しばらく無言の状態が続いたが、やがて片方の人物が口を開く。

 

「ねぇ、これで終わったの?」

 

口を開いた者は幼い声でそう言いながら頭に被っていたフードを取り外す。そこには金色の長髪と紫色の目を持つ少女がいた。問いかけられた片割れは振り向いてその少女の質問に答える。

 

「恐らくだけどね。取り敢えず、この夢の主は僕らになったみたいだ。」

 

優しく語りかける声の主もあどけない子供だった。頭に被っていた帽子を取り、鼻まで上げていたマスクを下ろして素顔を露にする。茶色の髪と青色の目を持つ少年だ。少女に笑いかけながら話す少年はやがて空へと目線を向ける。それにつられて少女も空を見た。

 

暗かった空に光が差し始める。

 

「だからさ、ほら、どうやら自由に目覚める事が出来るみたいだよ、リサ。」

「そうね、エノク……………もう私達が、エノクが死ななくていいんだよね?」

「まぁ向こう側(・・・・)に近くなった僕らが本当に死ぬのか怪しい所だけど。」

「そういうこと言うのはやめてよ。」

「あはは。」

 

頬を膨らませてポコスカと殴る少女……リサとそれを笑いながら受け止める少年……エノク。二人共血塗れであるが、なんとも微笑ましい様子である。

 

 

するとそこに足音と車輪の回る音が聞こえてきた。

 

「狩人様方。」

「「人形さん。」」

 

車椅子に老人……ゲールマンをのせて静かに歩いて来た女性……"人形"は二人の近くまで来ると立ち止まり、話し始める。

 

「御二人は………夢から、この悪夢から目覚めるのですね。」

「うん、そのつもりだよ。」

あんな奴ら(上位者)みたいになるのは嫌よ。」

「そうですか……。」

 

表情の動かない"人形"だが、その声色は何処か寂しそうな、別れを惜しむような感じがする。それを感じ取ったエノクとリサは優しく笑い、"人形"に話しかける。

 

「大丈夫、ここ(狩人の夢)が消える訳じゃない。」

「私達が眠る時にまた会えるからね。」

「そう……ですか、それならば…安心……なのでしょうか。」

 

戸惑うように話す"人形"だったが、納得したのか佇まいを直して二人に向き直る。それを見たエノクとリサは一つ頷き、光の方へ歩き出す。光に入る直前、二人は振り返って"人形"に笑いかける。

 

「またすぐ会えるよ。」

「またね、人形さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狩人様方、

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方達の目覚めが有意なものでありますように。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おはよう。」」

 

いつの間にか向かい合うように寝ていたリサとエノクは同時に目を開け、微笑みながら挨拶を交わす。

 

「ようやく戻ってこれたね…………ここに未練があるわけじゃ無いけど。」

「永遠に変わらない誰もが狂った夢の世界より未来があるこっちの方がマシでしょ?」

「そうかもね。」

「………それにしてもちょっと早起き過ぎたかしら。」

 

何もない部屋、少しボロい窓、暗いままの外。外郭にいる以上、安全な時間はなど無い。夜であるなら尚更だ。

 

「問題無いよ、死んでも夢に戻るだけ……あぁ、それだと別れたばかりの人形さんに格好がつかないね。」

「軽々しく死のうとしないでよ。」

「あいて。」

 

気にする部分がズレているエノクを呆れた目で見つめるながらポカリと叩くリサだった。

 

「まぁ、取り敢えず…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一回寝ましょ。」

「あの街に安全な場所は無いし、安全な狩人の夢では眠る事が出来なかったもんね。」

「ホント、ちゃんとした睡眠は何年ぶりなのかしら。」

「起きたら装備の確認しよっか。」

「それもそうね。じゃあ、おやすみエノク。」

「うん、また明日、リサ。」

 

 寝転んだままの二人は互いに抱きしめ合うとそのまま寝てしまった。

 

 

 

 

二人が寝てから数分後、近くに煙の渦が生じる。そこからおどろおどろしい小人たちが這い出てきた。よれよれのシルクハットを被った小人………使者たちはすやすやと眠っている自分たちの主を見つけると、何人かで話し合うように向き合った。

 

「」ワタワタ

「」フーム

「!」ピコン

 

激しいジェスチャーによる討論(のように見えるもの)の最中、何かを思い付いた様子の使者が渦の中に潜る。しばらく他の使者が首をひねる動作をしていると、潜っていた使者が何かを持って出てきた。その手にはブランケットの様な布が握られている。

 

「」ソッ

 

ファサッ

 

そして他の使者と協力して眠るエノクとリサに布をかけると、静かに渦の中へ帰っていく。

 

 

眠る二人の顔は穏やかだった。

 

 




この作品のエノクとリサ(本編でのティファレトAB)はヤーナムをn十週繰り返したカンスト勢です。なので体は小さいながらも全てのボスをコンビネーションで一方的にぶちのめす事が出来るぐらいには強いですし、一周を年単位で過ごしていたため精神年齢や狂気耐性もだいぶ高くなってます。抽出部門の井戸を見ても「わぁ」位の反応になります。
ラストの周で月の魔物を倒し、上位者(幼年期)になる所を強制的にねじ曲げて夢の主導権を手に入れ人間と上位者の中間みたいな存在なったことで、自分たち以外の夢を終わらせてproject moonの世界に戻って来たのが今回のお話です。下手なアブノーマリティよりヤバいです。
かなり自己解釈が入っているので指摘されたら即座に直します。


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狩人

使者達は本来狩人とはギブアンドテイクの関係ですが、半分上位者になった影響と長い間関わってきたせいで二人に対してかなり甘くなってます。距離感の近いアイドルを推す感覚ですね。


「ん………なんだろうこれ?」

 

二人が眠って数時間後、エノクが目を覚まして起き上がる。かけた記憶のないブランケットを首をかしげながらぼんやりと見つめていると、横から何かにつつかれた。

 

「?…あ、使者くん。今日のファッションはその包帯かな?」

「!」グッ

「うん、よく似合ってるよ。あ、これ(ブランケット)ありがとう。」

 

嬉しそうなジェスチャーをする使者に微笑ましそうな笑みを送るエノクは、そのまま寝ているリサにブランケットをかけなおした。

 

「さて先ずは、と。」

 

そのままそこに座り込んだエノクは使者の方に向き直り、虚空から一本の注射器を取り出した。中には赤い輸血液がたっぷりと入っている。

 

「品質の確認はしとかないとね………あぁ、補充はどうすればいいかな?」

「ー」カキカキ バッ

「えっと…《こっちの生物の血からでも作れるから渡して欲しい》?……じゃあ、これから暫くはここら辺で素材集め(蹂躙)だね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……………エノク?」

 

エノクが所持品の確認をとり始めて10分ほど後、ゆっくりとリサが目を開いた。それに気が付いたエノクは振り返りながらリサに笑いかける。

 

「おはようリサ。」

「おはよエノク………ふぁあ。」

 

寝ぼけ眼のリサはあくびをしながら起き上がるとそのままエノクの方へ寄りかかる。肩に顎をのせてエノクの頭の隣に自分の頭を持ってきたリサは目の前に並べられた注射器と弾丸、火炎瓶等、お世話になっている道具を一瞥する。エノクも特に気にすること無く目線を戻した。

 

「もうやってたの?起こしてくれてもいいのに。」

「とても気持ちよさそうに寝てたからね。起こすのも申し訳なくて……かわいい寝顔だったよ?」

「むぅ、そんな事言っても騙されないわよ!」

「本心だよ。」

 

若干嬉しそうに頬を膨らませたリサだったが、気にせずエノクは装備の確認を続ける。特に反応しなかったエノクに少し残念そうな顔をするリサであった。しばらくするとエノクの隣に移動して、虚空から様々な物体を取り出し始める。その手には人骨の破片や痩せた獣の手らしきもの、挙げ句の果てにはよくわからない生物が握られていた。

 

「秘儀の確認もやるの?」

「流石にここではしないわよ。馬鹿みたいに騒がしくなるだろうし被害がこっちに来るやつも……あ、抜け殻いる?」

「ルドウィークさんの聖剣もあるけど…まぁ、一応ノコギリ鉈に使えるし持っておこうかな。」

 

軽く手渡しされたらのは何かの抜け殻の様なものだった。左手でそれを受け取ったエノクは右手にあらかじめ取り出して整備していたノコギリ鉈を握りしめる。そしてその鉈に対して念じるように抜け殻をなぞると鉈が不思議な光を纏い始めた。

 

「うん、問題ないみたいだね。」

「?この前、血晶石で炎攻撃出来るようにしてなかったっけ?」

「あぁ、それはこっち。」

 

そう言ってエノクは虚空に手を入れ、もう一つノコギリ鉈を取り出した。 

 

「予備として作ってたんだよ。」

「ふーん…あ、銃火器銃火器。」

 

納得した様子のリサは何かを思い出したかのように虚空へと両手を突っ込んだ。しばらくの間、まさぐるように動かした後に一気に引っ張り出す。そこには多種多様で、中には異常な形をした銃があった。

 

「よっこい……しょっと。」ガチャン!

「もう、ちゃんと丁寧に扱わないとすぐボロボロになっちゃうよ。」

「いいのいいの、鍛えたこれらはそんな柔じゃないから………相変わらず手に馴染むわねこのエヴェリン。」

 

エノクにたしなめられるもそれを流したリサは一本の銃を手に取ると、懐かしむ様にそれ(エヴェリン)を眺め始める。

 

「いつからだっけ、それを使い始めたの。」

「えーと、たしか丁度折り返し地点ぐらいからだったはずなんだけど……」

 

銃を片手に首をかしげるリサ。その最中、何処からか音が聞こえる。

 

ペタ   ペタ

  

「………………エノク。」

「恐らく………ここら辺に迷い込んだ化物かな?まぁ、足音からして一匹だろうけど。」

「じゃあ、さっさと狩っちゃいましょ。」

 

何かの足音に敏感に反応しリサは隣で作業を続けるエノクと一言二言話し合うとエヴェリンを持ったまま立ち上がる。その顔はとても好戦的な笑みを浮かべている。

 

「あ、試し切りしたいから僕も行くよ。あとこれ持っといて。」

 

確認作業を一通り終えたエノクがリサに一つの武器を投げ渡す。反射的に掴み取ったリサがその武器を見ると特殊な形をした刃が鈍く輝いた。

 

「これってアイリーンさんの?」

「うん、慈悲の刃。一時期使ってたでしょ?」

「そうだけど……ほいっと。」

 

ガキン  シュンシュン  ガキン

 

「……変形機構に問題は無いわね、じゃあ行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外郭の一角、ボロボロになったコンクリート製の家屋が建ち並ぶ中、一匹の化物が道を歩く。

 

「……………………グルルルルルル………。」

 

全身が血で濡れており、まだ乾ききっていないその狼のような化物は歩く跡に血を残しながら目をギラギラと光らせる。

 

 

 

 

「ふーん、濃い匂いだなぁって思ってたけど、やっぱり獲物を狩った後だったみたいだね。」

 

 

「!…グルァッ!!」

 

背後から聞こえた声に対して、即座に振り返り威嚇する化物。その目線の先には帽子を被り、マスクを上げたエノクがいた。突如沸いたように現れたエノクに警戒する化物だったが、相手が人間の子供であることを確認すると、少し口角を上げながら近づき始めた。

 

「……。」

「あ、もしかして僕を食べようとしてる?」

「ガアァァァッッ!!」

 

エノクが可愛らしく首をこてんと倒したところに飛びかかる化物。鋭い牙を持った大きな口をこれでもかと開き、食らいつく。しかし狙った筈の少年に攻撃が当たる事はなかった。

 

「狼さん、こっちだよ。」

 

一瞬動揺した化物だったがこちらに笑いかけて話すエノクを見つけると即座に襲いかかる。どうやら馬鹿にされていると感じたようで、目が見開かれ毛が逆立つ。

 

バクン!

「おっとと、危ないなぁ。」

 

しかしエノクは軽いバックステップで避け続ける。

 

「もう、やんちゃだなぁ。そんな子は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゃんと仕付けないと…………ねっ!」

 

「ガウンッ!?」

 

ある程度繰り返された攻防はエノクが左手で突っ込んできた化物の頭を殴った事で唐突に終わりを迎える。振り抜かれたエノクの手には穴の空いた鉄塊………ガラシャの拳がいつの間にか握られていた。化物は頭に食らった異常なまでの衝撃に思わず怯んでしまっている。

 

「あ、結構怯んでくれた。じゃあ、狩っ(殺し)ちゃおうかリサ(・・)。」

「待たせ過ぎよ!」

 

突如頭上から慈悲の刃を展開したリサが化物目掛けて突っ込んで来た。そしてそのまま二つに別れた刃を逆手持ちで構え、

 

「ふん!」

ザシュッ!

「グガッ!?」

 

そのまま化物の背中を刺し貫いた。その痛みに悶絶し、暴れだす化物だったがリサは化物の背中を蹴り、蜻蛉を切ってエノクの隣に着地し、そのままエノクと会話を始めた。

 

「もう、時間かかりすぎ!」

「ごめんね、体が鈍ってないか確認しながら誘導してたもんだから……。」

 

痛みでのたうち回る化物とは対照的に、二人の顔には明らかに余裕がある。

 

「他の武器の確認もしたいし、この子を仕留めようか。」

「むぅ………ちゃんと後で話するから。」

「グガッ…………グルルルル……。」

 

よろよろと立ち上がる化物の目には二人の子供が異常な存在にしか見えなくなっていた。だが化物自身のプライドが撤退を許さず、そのまま二人へ向かっていく。

 

「ガアァァァァァァッ!!!」

「よっと。」

「何よ、まだ元気じゃない。」

 

しかし途方もない時間悪夢の中で獣達を狩り続けた二人にその様なものが通用する筈もない。横にずれて避けたエノクはそのまま通り抜けた化物に対し、振り向きながら虚空から取り出したノコギリ鉈を展開し、攻撃を仕掛ける。

 

「大人しく狩られてね?」

バシュッ!!!

「グルガッ!?」

 

振り下ろされたノコギリ鉈は化物の脚を容赦無く潰した。最早化物には動くことすら儘ならない。

 

「ガウ…………ガ「眠りなさい。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

バン

 

 

 

ベシャ

 

慈悲の刃を仕舞ったリサがエヴェリンで化物の頭を撃ち抜き、命を奪う。しばらくそのまま警戒していた二人は、倒れ伏し息絶えた化物の亡骸に近づく。

 

「復活は無し……敵の影も無し……うん、出てきて良いよ。」

 

ノコギリ鉈に付いた化物の血を振るって落としたエノクは使者達を呼び出す。数秒後、その場に煙の渦が生まれて使者達が化物の死体を持って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず、暫くはこんな感じの生活が続くかな。」

「…………マラソン?」

「そんな苦行じゃないよ。ノルマは1日一匹狩れたらいい位だし。」

 

訝しげに聞いてくるリサに思わず苦笑いになるエノクだった。




武器達は皆出すつもりです。ロマンが詰まった武器達の描写をしっかり頑張っていこうと思います。

ガラシャの拳の怯ませる力は原作より強めです。原作なら数瞬隙を作る位ですが、筋力99が思いっきり振り抜いたらここまでなりそうだなと思ったので。


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目指すもの

一応言って置きますが、二人のの肉体(外見)年齢は十歳ほどです。ただしステータスがカンストしてるので可愛い外見とは裏腹に馬鹿みたいに身体能力が高くなってます。一人でALEPHとタイマンで勝てます。

だって狩人なんだもの。


「~~♪」

シャッ  シャッ

 

目覚めた部屋の隅でパーカーとジーンズを着ているエノクが古い作業台の上で矢のような物を研いでいる。隣には機械じみた籠手の様なものが置いてある。

 

「最近使って無かったからなぁ。」

 

椅子に座り、足をぶらつかせるエノクは研ぎ終わった刃を籠手に装着していく。その過程で籠手の機械部分をいじくっている最中、部屋に近づいてくる気配を感じる。

 

「ただいま~。」

「おかえりリサ。」

 

てくてくと歩いてきたのはリサだった。いつもと同じ様子だったが、右手に握る細長い獲物…仕込み杖は血塗られている。

 

「他の人は?」

「ここら辺りは私達以外軒並掃除屋とかにやられちゃったみたい。化物かロボットがいるだけで人間の気配なんてほとんど無かったわよ。」

「やっぱりだね、あと素材になりそうな獲物はいた?」

「手頃なやつを何匹かぶちのめして来たわよ。あ、あとこれ潰したロボット回収したら出てきたの!」

 

ふんす!と聞こえてきそうなほどのどや顔を見せるリサ。左手には何か結晶の様なものが握られていた。

 

あの子(使者)達に聞いたんだけど、どうやらこれを幾つか集めて加工すると血晶石の代わりに出来るらしいの。」

「本当かい!?」

 

エノクは少し目を見開いて驚く。その様子に更に気分を良くしたリサは意気揚々と話を続けた。

 

「ええ、実際に携帯してた工房道具で軽く加工してみて出来たのがこれだから!………まぁ弱い奴ばっか素材にすると強い物も出来ないみたいなんだけど…………。」

「ちょっと見せて。」

 

若干言葉が尻すぼみになるリサをよそに、結晶を見つめ、観察するエノク。暫くその状態が続いたが、おもむろにエノクが口を開く。

 

「………放射型……恐らく「強化の血晶石」に近いね。別物っぽいけど効果はほとんど変わらないと思うよ。」

「ちなみにランクは?」

「4か5。」

「使えないじゃない。」

「いいや、これがいいんだよ。」

「?」

 

リサは自分が拾った物があまり役に立たない物だと分かり、肩を落としたが、エノクは目を輝かせている。

 

「丁度攻撃力が微妙な武器を作りたかったからね。有りがたく使わせて貰うよ。何にしようかな~?」

「そんなの作ってなにするのよ。」

 

ニコニコと笑うエノクに純粋な疑問をぶつけるリサ。

 

「あぁ、まだ話して無かったっけ。そろそろここから引っ越そうかと思ってね。」

「それとその石に何の関係があるの?」

手加減(・・・)するためだよ。」

「…………別にする必要無いんじゃないかしら。」

 

首をコテンとかしげるリサにエノクは笑いかけながら説明し始める。

 

「フィクサーを始めようと思うんだ。」

「てことは裏路地に?」

「うん、依頼の中には対象を捕獲する物もあると思うし、今から準備してたほうが良いと思ってね。」

「うーん………そうね、いつまでもこんなとこにいられないし。」

 

納得する様子を見せるリサだった。

 

「で、具体的に何処へ向かうか決めてるの?」

「それについてはこれを見て。」

 

そう言うとエノクは作業台の上に置いてあった紙束を見せる。そこには裏路地について簡単に説明された文章が書かれていた。右下には小さく《ハナ協会》と書かれていたいる。

 

「この前ゴミの山の前を通りかかった時に見つけたんだ。どうやら他のゴミと一緒に流れ付いたみたいでね。あとこれも。」

 

反対側の手には四角いカードの様なものを握っている。

 

「これは?」

「通行証。外郭から都市に入る為に必要な書類みたいなものだよ。ただ、一つ問題があってね………一人分なんだ。」

「誰から奪えばいいの?」

「話が早くて助かるよ。」

 

リサの質問に対し、エノクは笑顔で答える。

 

「時々、都市の中から外郭に調査に来る人達がいるんだよ。そのうちの一人を狩ればいい。使者くん達に頼めば偽装もいけるよ。」

「了解よ、探して来るわ。」

「僕も行くよ。そろそろ本腰入れて素材を集めなきゃいけないからね。」

 

エノクは手に持った物といじくっていたパイルハンマーを虚空へと仕舞うと、一瞬で狩人の衣へと着替え、両手に武器を持った。右手で巨大な塊のような剣……獣肉断ちを担ぎ、左手には大砲をそのまま装備している。

 

「結構殺意高めね?」

「そりゃあ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掃除屋もまとめて()るつもりだから。」

「なるほど私も即殺特化の方がいいのかしら。」

 

リサも仕込み杖を仕舞い、おどろおどろしい刀……千景を取り出す。それを鞘ごと腰に差したのち、左手にエヴェリンを持つ。

 

「最近エヴェリンをよく使ってるね。」

「なんかあの街の奴らより弾が効くのよね。ロボットとかは核を撃ち抜くと一発よ。」

「ふぅん、まぁ叩き潰せば同じだね。」

「狩りになるとホント脳筋になるわねエノクって。」

「そうかな?」

 

少し呆れたように笑うリサの言葉に首をかしげるエノク。

 

「割りとこういう人多いと思うよ?ほら、大分前だけど悪夢の辺境で鐘を持った人が召還した狩人、僕らを潰す気満々だったし。」

「ほぼ裸で頭に処刑隊の奴………金のアルデオだったっけ……被って大砲と車輪担いでた変態の事?あんな奴を基準にするのはどうかと思うわよ。」

「そうかな?何回か見掛けたけど……。」

「同一人物じゃないの?」

「肌の色がそれぞれ違ってたから恐らく別人かな?女の人も一人いたよ。」

「やっぱり変態じゃない!」

 

怒鳴ったリサはエノクの狩装束の襟を掴んで揺さぶり出す。

 

「ちょっと!あんな変態みたいな格好許さないわよ!」

「大丈夫大丈夫、あれをやることはないと思うから……………多分。」

「その多分は信用出来ないわよ!」

「わぁ~。」

 

揺らされて首がガクンガクンとなっているエノクに引リサは叱る様に話を続ける。

 

「貴方の外見考えなさいよ!」

「えーと……ただの子供だよ?」

「嘘おっしゃい、顔面偏差値かなり高めでしょうが!」

「リサもかなり高いと思うんだけどなぁ。」

「ありがとね!でも話が違ってくるから戻すわよ!」

「うーん、何か問題なの?リサはともかく僕が上半身を出してもあまり倫理的な問題が起こるとは思えないんだけども……。」

「背徳感がスッゴいのよ!よくそこまで情欲を掻き立てられるのか不思議な位に!」

「……………ふぇ?」

 

エノクの目が点になり、口から声が溢れる。しかしリサはその様子に気がつくことは無く、頬を紅潮させてさらに捲し立てる。うがー、と口を開けるリサはかなり錯乱しているようだ。

 

「気付きなさいよ!エノクったら無意識に色気を振り撒いて行く先々で女を……いや男もいたっけともかくそいつらとか私を誘惑して「ちょ、ちょっと待って?」何よ。」

 

興奮して顔をスレスレまで近づけるリサに引き気味に尋ねるエノク。息が荒く、見方によっては目が発情してるようにも見える位に開かれているので当たり前である。

 

「え、えっと……僕誘惑なんてした覚えはないしそんな目で見られた覚えも無いんだけど………。」

「はぁ!?あの時(・・・)みたいに色んな意味で貪るわよ!?」

「ここでは止めよう?」

「ああもぉお!ムラつくぅ!」

(どうすればいいんだろう…………。)

 

ちょっとずつはだけて来て少し冷や汗をかくエノクは狂乱状態のリサを落ち着かせようとするが全く効果が見られない。頬をかいて首をかしげるが中々よい案は出て来ないようだ。挙げ句の果てに頭を抱えながら地面に膝を付いたリサは髪をかき混ぜながら唸っている。

 

「……………ねぇエノク。」

 

ふらふらとゆっくり立ち上がるリサ。顔はうつ向いており、影で表情がよく見えない。が、何か荒い息づかいは聞こえる。少し嫌な予感がしたエノクは後ずさるが、リサはぴったりとついてくる。

 

「…なぁにリサ。」

「ヤらせろ。」

「っ……!」

 

エノクの目を真っ直ぐ見据えてリサが言う。エノクはその言葉に驚いたかのように固まった後、少し体を庇うようなポーズを取る。

 

「全く……リサはいつもそうだね、僕の事をなんだと思ってるんだい?」

家族()。」

「いやその通りだけどね、もうちょっと時と場合を考えようね………今どんなルビふったの?」

「大丈夫、大丈夫よ事実だから。」ガシッ

 

言葉は優しいが手をワキワキと動かしながらエノクに近づく様子は限りなく変態に近い。そして、両手でエノクの頭を捕らえた。

 

「さぁ、観念なさい!」グググ

「生活が安定したらいくらでもしていいから今は許して…………。」

だが断る(嫌だ)!」

「うわぁ強い意志。」

 

ずっと押し留めていたエノクが諦めてキスを受け入れようとしたその時。

 

 

ガチャ

 

 

「…………………。」←キス顔のまま固まるリサ

「…………………。」←同じく驚いて固まるエノク

 

 

 

 

 

「…………………。」

↑漁ろうとドアを開けて部屋に入ったら子供同士で深いキスをしようとしていた所を目撃してしまった掃除屋

 

暫く固まる三人。

 

「…………………152、493292327019082(あ、どうぞごゆっくり)」

 

掃除屋はそのままそそくさとドアを閉めて、その場から立ち去ろうとする。

 

「逃がさないわよ?」

 

次の瞬間、壁から数本の触手が突き抜けて掃除屋に襲いかかる。無論掃除屋も反撃して逃れようとする。が、その触手は想像以上に精密に動き、容易に掃除屋をからめとる。掃除屋はそのまま空いた穴へと引きずり込まれてしまった。

 

「3289!4372097373280!」

「エブちゃんの触手も問題無いわね!」

 

右手から先を5本の触手を生やしたリサはその捕らえた掃除屋を地面に叩きつける。その後、何か掃除屋が叫んでいたように見えたが特に気にせず触手を消し、腰の千景を抜刀して首を断ち切った。首の断面からはとんでもない量の液体が流れている。

 

「うえっ、肉無いわよこいつ。」

「んー……体の構造が虫に近いのかも。内側がほとんど水分だ。」

「ま、とりあえず回収しましょ。」

 

千景を振るい、液体を飛ばして納刀したリサは指を鳴らして使者達を呼び出す。わらわらと出てきてそのまま掃除屋の死体と共に消える前に、一人がエノクの袖を引っ張った。

 

「ッ」バッバッ ミブリテブリ

「えーと、《よくわかんない素材だからもっとサンプルが欲しい》……でいいのかな?」

「!」グッ

 

使者はサムズアップしている。

 

「あーもう萎えたんだけど~。」

「あはは、さっきも言ったけどそういうのは都市に入ってからね。」

 

そう言いながらエノクは部屋の角にあった作業台を使者と共に片付け始める。どんどん解体されていき、最終的には全て使者が持って行ってしまった。

 

「さ、そろそろ行こうか。」

「もう移動するの?」

「本当はもう少しここに居たかったんだけどね……。」

 

残念そうに笑うエノクはリサの方を向いたまま、先程空いた壁の穴辺りに大砲を向け、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら仲間を呼ばれたみたいだ。」

 

人影の様なものがが見えた瞬間、躊躇無く大砲の引き金を引いた。

 

 

 

 




この作品ではエノクとリサはほぼ恋人みたいな関係です。コンビネーション的な意味では熟練夫婦ですが。
ちなみにあの街にいた者でエノクの事をそういう目で見ているのはリサを含め数人程です。他は精々可愛い位にしか思ってません。

今さらですが、二人の狩装束はこんな感じです。
エノク 帽子  ヤーナムシリーズ
    装束  狩人シリーズ
    手袋  神父シリーズ
    ズボン ゲールマンシリーズ

リサ  フード 異邦シリーズ
    服   人形シリーズ
    腕帯  鴉羽シリーズ
    ズボン マリアシリーズ

それぞれ使者達に仕立て直してもらって子供サイズになってます。
普段(拠点中)は原作の格好です。


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掃除と依頼

掃除屋達のセリフは適当にそれっぽくやってます。

原作でも解読出来るのがほんの一部という動物言語なんてわからないのです。



それでは本編どうぞ


エノクが放った大砲の弾は壁ごと向こう側にいた存在を吹き飛ばす。パラパラと壁の破片が舞う中、エノクは広げた穴に飛び込みそのまま隣にいた掃除屋を右手に持った獣肉断ちで叩き潰した。間髪入れず後ろから別の個体が襲いかかって来るが、振り下ろしの勢いを利用して体をひねり、そのまま下からかち上げる。かち上げられた掃除屋は後ろにいた個体を巻き込みながら吹き飛ばされていった。

 

「さて、どれぐらいいるのかな?」

 

既に獣肉断ちの刀身やエノクの狩装束の一部は赤く染まっており、相手の恐怖を呼び起こす。一切笑みを崩していないので尚更だ。しかし相対するのは一切の慈悲を持たぬ掃除屋である。相手の容姿に対する恐怖など持ち合わせていない。残っていた掃除屋達はそのままエノクに狙いを定めて手に持った刃を振るって来る。

 

「《加速》。」パキン

 

しかしその凶刃が当たる事は無く、素通りしてしまう。攻撃を外した者が周囲を見回そうとした瞬間、固まっていた何人かが胴から真っ二つになって息絶える。無事だった掃除屋がそこを見ると血塗られた千景を振り抜いたリサがいた。

 

「結局なんなのよコレ、血みたいだけど匂いは若干違うし。」

「………738937、37942894348。」

「ん~何言ってるのか分かんないの………よっ!

 

警戒してジリジリと近づく掃除屋にエヴェリンを撃ち込み、怯んだ隙に腹に千景を突き刺す。そして刺した掃除屋がなにかアクションを起こす前に斬り上げて始末した。

 

「案外脆いのね。」

「372!738954216!」

「バレバレよ?」

 

千景に付いた血を振るって落として鞘に戻したリサに後ろから襲いかかる影が一人。先程壁と共に吹き飛ばされた個体のようだ。しかし彼が上から振り下ろした刃は振り向かないまま避けられる。追撃を仕掛けようとした掃除屋はそこで永遠の眠りにつく。背後には大砲を発射して上半身を消し飛ばした犯人であるエノクが立っていた。全身が赤く染まっている。

 

「他は?」

「最初に飛ばした奴ら以外は終わったよ。」

「そ、じゃあこれでいい?」

 

そう言ったリサはよろよろと近づいてくる掃除屋達を他所に虚空から油壺と発火ヤスリを取り出し、発火ヤスリをエノクに渡す。

 

「うん、お願い。」

「了解よ…ほいっと。」

 

軽い調子で投げられた油壺は放物線を描いて、見事に掃除屋達に命中した。

 

「5372!?7372879599982763!「そろそろいいかい?」27!………73896422!?」

 

混乱する掃除屋達に話しかけるエノクの手にはメラメラと燃え盛る炎を纏った獣肉断ちが握られていた。

 

「さぁ、もうおしまいの時間だよ。」

 

若干後ずさる姿勢を見せる掃除屋達に対し、ニコニコと追い詰めるエノク、やがてしびれを切らした掃除屋の一人が動こうとするがその前にエノクが獣肉断ちを横に振るう。それに応えるように獣肉断ちから金属がぶつかり合うような音が聞こえた。

 

「7246328976278!!」

「はいはい、それじゃあ…………

 

 

体をひねり、獣肉断ちを持った右手を後ろに構えると力を溜める様に力み始める。それをチャンスだと感じた掃除屋達は一斉に襲いかかってくる。しかし、攻撃が届く前にエノクはその凶器を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

燃え尽きろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガウンッ!!!

 

残っていた掃除屋達は鞭のようにしなる獣肉断ちと炎によって原型を留めない程に壊れてしまった。

 

 

 

辺りには掃除屋だった物が燃える音が聞こえるのみである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー、意外となんとかなるものね。」

 

一仕事終えたと言わんばかりに伸びをするリサと適当な所に座って獣肉断ちの整備をしているエノク。辺りには未だに掃除屋達から出てきた液体が散らばっている。

 

「だって……正直最後らへんのヤーナムの市民の方が強かったし……ねぇ?」

「なんであの悪夢繰り返すほど相手が強くなったのかしら?」

「さぁ?」

 

二人揃って首をかしげるが、答えが出る気配はない。

 

「ま、いいわ。それよりさっさと移動しましょ。」

「ちょっと待ってて…………よし、不備は無しと。」

 

獣肉断ちの整備を終えて大砲と共に虚空にしまい、代わりにノコギリ鉈と短銃を取り出して腰に装備し立ち上がる。服に付いた埃をはらっているとふとエノクの動き止まる。

 

「誰ですか?」

 

そう言ってエノクは装備したばかりの獣狩りの短銃を影となっている方に構える。リサも無言でエヴェリンを構えており、少し殺気も出している。

 

「出てこないなら撃ちますよ?」

「…………………………。」

「「えい。」」

 

バンッ!!

 

「ッ!?チッ。」

 

躊躇なく銃弾を同時に発射する二人。その攻撃を避けるため、影に潜んでいた人物は姿を現す。顔は見えず髪の毛が黒いということしかわからない。目の辺りには琥珀色のゴーグルを着けており、頭には黒っぽい包帯の様なものが巻かれている。鱗のような黒いコートを羽織っており、手には不気味なハンマーが握られている。

 

「……………すまないが、こちらに手を出す意志は無い。」

「…どうやらそうみたいですね。」

「紛らわしいことするからこうなるのよ。」

 

二人は銃をおろす。男は少し冷や汗を流したようで、ため息をついていた。

 

「全く…そこまで躊躇いなく攻撃する奴はあまりいないぞ?………いや、外郭としては優しい方か。」

「即座に戦闘になるよりマシでしょう?」

「……………違いない。」

 

男は地面を見やる。そこには掃除屋との戦闘痕と液体があった。

 

「それが、あの厄介な掃除屋どもを一方的に蹂躙する小僧共だったら尚更だ。」

「お褒めに預かり光栄ですよ。」

 

皮肉を織り混ぜた会話をする男と純粋に喜ぶエノク。そして会話は互いの素性の話になる。

 

「で?質問なんだけど、あんた誰よ?」

「……………本名は教えられん。便利屋とでも呼んでくれ。」

「おや、都市の人ですか?」

「ああ、そういうお前らはなんだ?」

「エノクです。狩人をしてます。」

「リサ、同じく狩人よ。」

「狩人………そんな組織や二つ名聞いたこと無いが………。」

「こっちには僕らしか居ませんよ今はですけど。

「何か言ったか?」

「いいえ何も?」

 

小声で話した事を無かったことにするエノク。それはそれとして、話を続ける。

 

「あ、便利屋ということは依頼も出来るんですよね。少々手伝って欲しい事があるのですが……よろしいですか?」

「………内容と報酬による。」

「僕らは都市の中に入りたいんです。そこだけどうにかなりませんか?」

「かなり難しいな、近くまで連れて行く事は可能だが都市に入る時の手続きが複雑過ぎる。」

 

エノクの頼みは即座に切り捨てられる。

 

「ふむ……そこまでなんですか。」

「正直、都市から自分で出て帰った奴はともかく、外郭に住んでる奴が都市に入った事はほとんど無いと言ってもいい。お前らを荷物として入れる事は出来るかも知れんがおそらく途中の検査に引っ掛かってアウトだ。」

「………ねぇ、これ使えない?」

 

便利屋の言葉に頭をひねるエノクにリサが話しかける。その手には髑髏が握られていた。

 

「それって確か……。」

「《使者の贈り物》よ。これを使えば激しい動きさえしなければ小さい物に擬態できるわ。」

 

そう言ってリサが使者の贈り物を使うと、黒い霧に包まれ、最終的に使者と同じ姿になった。

 

『ほらね?』

「そっかそれなら狭いバッグとかにもはいれるね。」

「…………なんだそれは。」

 

名案だと喜ぶエノクをよそに、便利屋が若干引き気味に尋ねてくる。顔は見えないが、何となく顔を歪ませている雰囲気がある。

 

「僕ら狩人が《秘儀》と呼んでるものです。これの場合だと「使者に化ける」と言った効果があります。」

「ふむ………俺でも使える物はあるか?」

 

先程までの様子とは一転、便利屋は興味深そうに話し始めた。

 

「残念ながら……特殊な技能が必要になるので、実践で使えるレベルにはならないかと……。」

「報酬次第では受けようかと思ったが……。」

「なら武器はどう?」

 

いつの間にか変身を解いていたリサが虚空に手を入れる。そのまま探るような仕草をした後、パイルハンマーを取り出した。

 

「瞬間火力ならトップレベルよ。」

「それは…籠手、いやダガーか?かなり特殊な形をしているが……正直あまりそそられんな。」

 

便利屋は訝しげにパイルハンマーを受けとる。その声には疑いがありありと浮かんでいた。

 

「あぁ、これは仕掛け武器ですからね、真価は実践じゃないと分かりませんよ。」

「ほぅ?」

 

笑みを崩さないエノクはノコギリ鉈をしまい、自分用のパイルハンマーを取り出すと右腕に装着した。少なくとも子どもが身につけるような代物では無いため、なんともアンバランスな姿である。

 

「まずこれをこうします。」カギンッ!

 

そのまま刃を上に向け、ガッツポーズを取るように腕を振るうと少し飛び出していた刃が籠手の方へ音を立てて収納される。その後、腕をおろしたエノクは辺りをキョロキョロと見回す。

 

「えーっと……何かいい的は無いかな?」

 

少しの間悩んだエノクは、近くの壁に向かって歩きだす。突拍子の無い行動に疑問を持つ他二人だったが、エノクは気にせず目の前まで来た所で左手の指先を噛みきった。

 

「ここに…丸っと。」

 

そのまま自分の血で円を描くと少し離れて足を前後に広げる。腰を落とし、体をひねり、パイルハンマーを持った右腕を限界まで引き絞って力を溜め始めた。

 

「1、2の…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3ッ!!」

 

 

ズガンッ!!!

 

エノクが右腕を振りかぶって壁にパイルハンマーを叩きつけた瞬間、轟音と共に壁が爆発した。砂埃と煙が舞い、一時的に視界が悪くなるが、エノクは変形しダガーとなったパイルハンマーを振るって掻き消した。煙が晴れるとそこには印を付けた辺りを中心に見事に消し飛んだ壁の成れの果てがあった。それを確認したエノクは便利屋の方へ振り向いて可愛らしくニコッと笑う。

 

「お気に召しましたか?」

「……あぁ、報酬としては十分だ。」

 

少し呆気にとられていたが、エノクの言葉に対し少しワクワクしたような声色で返答する便利屋だった。




Lobotomy corporationをしてる人なら分かると思いますが、この便利屋さんは原作に出てくる《黒の便利屋》です。設定では彼の装備が外郭の化物を倒して手に入れた物だと書かれてたので外郭と都市を行き来しているのが分かります。どうせだったら絡ませちゃおうと思って出しました。
パイルハンマーのようにこれでもかとロマンを詰め込んだカッコいい武器が欲しい………欲しくない?


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道のり

出して欲しいキャラが居ましたら、コメントで教えて頂けると嬉しいですできる限りの出そうと思います。


掃除屋達の活動時間が終わり、朝を迎える。エノクとリサは依頼を承諾した便利屋の後を着いていく。

辺りは崩壊した建物の残骸や都市から流れて来たであろう大量のゴミが散らばっている。血痕が有るものの肝心の死体は見当たらないため、恐らく掃除屋による襲撃があったのだろう。

 

「相変わらずひどいね。」

「………裏路地でもかなりの被害がある。隠れる場所すら見つけにくい上、化物が蔓延る外郭で安全な場所なんてあるわけ無い。何よりこれがここの日常だろう?」

 

エノクが周りを見回しポツリと呟いた言葉に便利屋が反応した。至極当然の事を告げ、振り向きもせず進み続ける。

 

「そもそも、あの都市の中も信用に値する物はほとんど無い。信じられるとしたらそれは己だけだ。」

「随分とネガティブな事言うのね。」

「伊達に便利屋をやっていない。場所によってはそこにいるだけで命を吸われる事もあるからな。」

「どこもかしこもそんな感じですか?」

「少なくとも「ここよりマシ」という位だ。秩序なく蹂躙されて死ぬより飼い殺されて管理されてでも生きる方が救いがある。お前らは違うのか?」

「さぁ?よく分かりませんね。」

 

 

 

 

一切休むことなく歩き続ける一行。三人とも疲れや息ぎれの予兆は見られない。しばらく無言の時間が続いたが、やがて便利屋の方から口を開く。

 

「一つ聞きたい事がある。」

「?何でしょうか。」

「お前らは何だ。少なくとも人間ではないだろう?」

 

その言葉と共に便利屋が立ち止まって振り返る。警戒はひしひしと感じられるものの、敵意は無く事を構える様子はない。

エノクとリサは一切表情を変えずに立ち止まった。

 

「……それはどういった意味でしょう?」

「分かっているはずだ。隠す気も無かっただろう。」

「お答えしてもいいのですが、そもそも何故そのような事をお聞きになったんです?薮蛇をわざわざ呼び立てるような方でもないでしょうに。」

「単純なる興味だ。情報の分かってない依頼主ほど信用出来ない物は早々無いからな」

 

肩をすくめながらエノクの質問に答える便利屋。立て続けに二人に対して問いかけを始める。

 

「大前提として、その異常なまでの強さからしておかしい。」

「何よ、文句あるの?」

「いいや、お前らは今何歳だ?」

「そうね……詳しくは分かんないけど恐らく10歳ぐらいじゃない?見た目もそれぐらいだし。」

「そこだ。」

 

顎に手を当て考えながら答えたリサに対して便利屋が指をさす。

 

「明らかに見た目の歳と技術が比例していない(・・・・・・・・・・・・・・・・)のが違和感しかない。奴らを相手にしていた時の動きに無駄が無いのもそうだが、お前らが持つ武器を軽々と振り回す様が慣れた奴のそれだ。それこそ十年ぐらいし続けた手慣れほどのな。」

 

便利屋は確かめるように言葉を並べるが、エノクは後ろで手を組みニコニコと笑ったまま、リサは腕を組み片足に体重を預けて黙っている。そこに焦り等はなく、ただ凪いだ目で便利屋を見つめていた。それは何かを品定めしているようだった。

 

「………なんだ、何か言いたいことでもあるのか?」

「いいえ?どうぞ続けてください。」

 

二人の視線の変化に少々たじろぐ便利屋だったが、気を取り直して考察を話し出す。

 

「……続けるぞ。」

「早くしなさい。」

「……まぁ強さについてはいくらでもどうにかなる方法がある。」

「ではどうしてそのような事を「目だ。」……へぇ?」

 

エノクの言葉に被せるように便利屋が言葉を放つ。

 

「完全に掃除屋どもを獲物として見ていただろう?外郭にいる……いや、この都市周辺に住んでる奴らなら大抵警戒か恐れるはずの奴らをそんな目で見つめる子供がただの人間な訳ないだろうよ。それに………。」

「「それに?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今も俺を殺そうとしてるだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………。」

「まぁわざとだろうが、いい加減その殺気を納めろ。思わずこれで殴ってしまいそうだ。まるで俺が今まで殺してきた()みたいにな。」

「………獣ですか。」

「あぁ、お前らが獲物であれば特上の物を落とす獣だろうよ。」

 

そう言って便利屋は手に持った奇妙なハンマーを肩に担ぐ。エノクとリサはその言葉にピクリと反応した

 

「……………探求心や好奇心が強い人なんですね。」

「じゃなかったらここ(外郭)にいない。」

「……僕らの事を探ろうとするのも?」

「さっきも言ったが単純なる好奇心だ。」

「そうですか………………。」

「さっさと話して欲しいもんだな、お前らがどんな秘密を隠し持っているかをッ!?」

 

次の瞬間、便利屋目掛けて数本の投げナイフが飛んでくる。それを察知した便利屋はハンマーを振り回し弾いて行き、全てを処理し終えた。そうして便利屋はナイフを投げてきた元凶……リサに目線を向け睨み付ける。

 

「………一体何のつもりだ。」

「あら、分からない?」

「あぁ心当たりはある。恐らく俺の質問がお前の何かに触れたんだろうな。」

「私だけなはずないじゃない。」

「何?………あいつはッ!?」

 

便利屋が何かに気がつく。辺りを見回すがそこにエノクはいない。忽然と姿を消してしまっていた。

 

「チッ、どこに「ここですよ?」グオッ!?」

 

突如エノクが現れ、便利屋に全力で足払いをかける。その華奢なはずの足は容易く便利屋の足を弾き、便利屋を地面に転がした。その隙を見逃さず、便利屋の腕を足で押さえつけ獣狩の短銃とノコギリ鉈を便利屋の頭と首にに突きつける。

 

「何をッ「そうですね、秘密とは甘いものです。」」

 

ニコニコと笑うエノクの目は一切の感情が読み取れない。いつの間にか隣にいたリサも冷たい目でエヴェリンを構えている。

 

「貴方の行動を非難するつもりはありません。僕らも秘密を暴いてきた側なので。」

「だったらさっさと離せ。」

「そうしたいのは山々なんですが、ちゃんと訂正しておきたい部分がありまして………先程僕らの事を獣と言いましたか?」

「………あぁ。」

「あはは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑えない冗談だなぁ。」

「ッ!?」

 

先程とは比べ物にならないほど濃密な殺気が便利屋を襲う。

 

「いいかい?僕らは狩人、狩る側なんだ。(かれら)として扱わないでくれないかな?」

「なにをそこまで「返事は?」…………………………………………分かった。」

 

便利屋が降参したかのように声をもらすと、エノクは短銃を突きつけたままゆっくりと足を退かす。解放された便利屋は両手を上げ、抵抗の意志が無いことをアピールしながら話しかける。

 

「……何故そこまで獣であることを拒んで狩人であろうとする?」

「獣になった者の末路を見続けたからですよ。狂ってしまっても死ねぬ者達の成れの果て、悪夢で苦しみ続ける人々(罹患者)。彼らを狩って弔い、目覚めさせるのが僕らのすべき事でしたから。勿論例外はいますけど。」

「少なくとも、ここに私達が救う相手はいないけど。元凶殺して終わらせたから。」

 

エノクは優しい声で話し、リサはぶっきらぼうに言葉を告げる。いつの間にか銃はおろされていた。立ち上がり埃をはらった便利屋は皮肉げに話し始める。

 

「はっ、何とも崇高な信念だな。狩人、狩人か。最早人間かどうかも怪しいお前らがか?確かにお前らは獣じゃないらしいがもっとヤバい別物だろう。」

「ええ、そうよ。私達も自分を人間だなんて思ってないわ。あくまで人間の形をした何かよ。あの悪夢で月の魔物を狩った時からね。」

「ほう?随分あっさりと認めるのだな。」

「事実をねじ曲げても仕方ないじゃない。獣になったら今まで狩った人に顔向け出来ないだけよ。」

 

しばらく睨み合っていたが、やがて面倒になったのか便利屋は二人に背を向ける。

 

「さっさと行くぞ。」

「あら、追及はもういいの?」

「お前ら相手に腹の探り合いなどやってられん。今ここに向かっている化物を相手取る方が楽だ。」

 

そう言って便利屋は右腕に着けたパイルハンマーの様子を確認すると、そのままパイルハンマーの刃を発射形態に変化させた。

 

「こいつの試運転も兼ねている。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

複数の影がかなりのスピードで外郭上空を旋回している。よくよく見ると羽ばたく様子が分かるため、少なくとも生物ではあるのだろう。全身が黒い羽で覆われており、幾つもの瞳が白く輝いている。

 

ギェァー   ギェァー

 

空を舞う大烏達の目線の先には三人の人間が無防備に立っている。何かを話し込んでいる様子のため、烏達は絶好のチャンスだと思っているらしい。しばらくして、痺れを切らした烏の一匹が三人へと突っ込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギェァーッ!」

「フンッ!」

 

バキィッ!!

 

「アギャッ!?」

 

上空から降るように下ってきた大烏に合わせるように便利屋がハンマーを振るう。いなしきれなかった大烏はそのままもろに一撃を喰らい、そのまま近くの瓦礫へと殴り飛ばされ、壁を破壊したところで地面と衝突した。脳を揺らしたのか少しふらついているが外傷はあまり見られず、少ししたら持ち直して殴ってきた便利屋の方を憎々しげに睨み付けた。その目にはありありと怒りが浮かんでいた。便利屋は油断せずハンマーを構えている。

 

「…………こい。」

「グルガァッ!!」

「ッ!」

 

挑発された烏が便利屋へと踊りかかる。脚の爪による切り裂きを喰らわそうとするものの、便利屋はハンマーの柄を使って上手く防ぐ。しかし、その時にとてつもない力の脚でハンマーの柄を掴まれてしまい、振りほどけなくなってしまった。

 

「チィッ!面倒くさいッ!」

「ギェガッ!」

「ッ!?クソッ!」

 

舌打ちをし、右手をハンマーから離した便利屋の頭に目掛けて嘴を突き刺そうとする大烏。その頭の中では「勝ったッ!」という思いが駆け巡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーカ。」

 

しかし次の瞬間その思考を行う大烏の頭が文字通り吹き飛ばされてしまう。クロスカウンターの要領で打ち出されたパイルハンマーは見事に役目を果たしたようだった。反動によって腕に痛みを感じる便利屋だったが、今の攻撃力を見てマスクの中で笑みを浮かべる。

 

「最初は火力特化の当てずらい切り札みたいなものだと思ったが……なるほど中々侮れない。少なくともこのハンマーとの区別は十分出来そうだな。」

 

外郭遠征の思わぬ成果に満足げな感想を漏らす便利屋、残りも片付けてしまおうと後ろの二人の方へ振り向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「墜ちろこの糞ボケ烏どもがぁッ!」

 

ダララララララララララララララララララララララララララララララ

 

「ははッ、ニガサナイヨ?」

 

ドォンッ   ドォンッ   ドォンッ

 

そして目の前で行われている狂気的な行動に固まる。リサ怒りを前面に出してどこからか出したガトリング銃を上空の大烏達目掛けて乱射し、エノクは狂ったように笑いながら逃れようとする大烏を片っ端から教会砲で撃ち落としていた。その光景を見た便利屋は暫くの間動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーすっきりした。」

「おい、狩りは弔いじゃなかったのか?どう見ても蹂躙だったぞ。」

「獣じゃないわ害獣よ。」

「……………烏に恨みでもあるのか?」

「アイリーンさん以外恨みしかない。」




エノクとリサは「狩人であること」に強いこだわりを持っています。獣は救済するべき相手であり、自分達が絶対に辿り着いてはいけない場所という認識です。別に狂う事に否定的な訳では無いんですよね。それが救いになるのなら。
リサは獣(けもの)ではなくても獣(意味深)にはなりますし。


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治安

今更ですが、自分は3つとも実際にプレイしたことはないので、所々おかしい部分があると思いますが、そこら辺はご了承下さい。





「おぉ、近くで見ると中々壮大だね。」

 

烏達を駆逐して何日か過ぎた後、道中化物や殺人鬼と遭遇し、その都度薙ぎ倒しながら進み続けた結果、遂に都市と外郭を隔てる壁まで辿り着いた。遠くから汽笛の音が聞こえてくる。

 

「…………さっさと行くぞ。」

「はーい、所であの馬鹿見たいに速く動いている物体は何?」

「汽車だ。かなり昔からあの速度で走り続けている。」

「何故そんなものが?」

「さぁな、俺も知らん。」

 

そう言って便利屋はずんずんと先に進んでいく。二人も質問は後にして、便利屋の後ろについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間ほどかけて、ようやく都市への入り口が見えてきた。かなり厳重な扉や兵器などが遠くからでも見受けられる。

 

「さて、そろそろ変装してもらうぞ。」

「あぁ、そうだ。一つ思ったんですけけど、これって使えませんか?」

 

エノクは虚空から少し前に拾ったカードを便利屋に見せる。

 

「これは………許可証か。何故お前が持っている?」

「拾いました。この資料と一緒にゴミ山の中にあったんです。」

「…………おおよそ、持ち主が死んでいるから使っても構わんだろうよ。」

「あ、じゃあ僕が化けたリサを隠し持って通ればいいんじゃないですか?」

「まぁ、そっちの方が楽だな。」

 

しばらく悩む様子の便利屋だったが、やがて二人の方へ向き直る。

 

「じゃあそれで行くぞ、お前は俺が拾ったただのガキのふりでもしてろ。」

「分かりました……あ、服は普通の方が良いですか?」

「あぁ、その方が危険視されにくくなるだろうな。」

 

便利屋の言葉を聞いたエノクは、指を鳴らし服装を狩装束からパーカーへと変化させた。

 

「さ、おいでリサ。」

「わーい。」パリン

 

再び使者の姿に変化したリサが差し出されたエノクの腕を伝い、服の中へ入って行った。暫くすると、首元からリサ(フードを被った使者)がひょこっと顔を出した。

 

『OKよ!さっさと入りましょ。』

「というわけで、都市の中までお願いします。」

「……………いつ突っ込もうか考えていたが、お前らは異次元に倉庫でも持ってるのか?」

「ただのインベントリですよ。夢に仕舞ってるだけです。」

 

訝しげな便利屋に笑って誤魔化すエノク。そう言ったやり取りをしていたその時、都市の方向から複数の足音が聞こえてきた。

 

「ん?あの方々は……。」

「……チッ、面倒な奴らが来やがった。」

 

足音を察知したエノクが呟いた事で便利屋もその方向を見る。その集団が便利屋の視界に入った瞬間、心底嫌そうな声を出した。しかしその集団は足を止めることなく二人の方へ近づいてきた。よくよく見ると全員が近未来的なフルアーマーを纏っている。

 

「おい、行くぞ。」

「あ、待ってください。あの人達は誰なんですか?」

「………R社の連中、あの装備からしてウサギチームだろうな。」

『ウサギ?物々しい見た目の割にずいぶんと可愛らしい名前なのね。』

「可愛い?ただの精神異常者の集まりだぞ。下手なフィクサーより質が悪い。」

「ふむ、そうなんですか。」

「絡まれると面倒だ、出来るだけ無視してろ。」

 

そう言って便利屋は無言で歩き出した。エノクもそれに習い、パーカーのポケットに手を入れて便利屋の後ろにぴったり着いて行った。リサは既にエノクの服の中に隠れている。

 

「…………………。」

「…………………。」

 

互いにすれ違う瞬間が訪れる。しかし互いに反応は無く、ただ無言で通り過ぎるだけで何もアクションは起こらない。

 

(………このままで済んで欲しいが。)

 

しかし便利屋の思いは届かず、最後尾の一人が便利屋とエノクに近づいてきた。

 

「おやおや、黒の便利屋さんじゃないですか~。こんな所で何を?」

「………別に、遠征から帰って来ただけだ。」

「じゃあ隣にいるガキはなんですかね~?新しいおもちゃですか~?」

「俺はお前らのように殺しに快楽を感じる変態じゃないんでな。こいつは今の依頼主だ。」

 

そう言って便利屋は親指でエノクのことを指す。エノクは静かに微笑んでいるだけだ。

 

「依頼主ぃ?あっはっは、そんなガキが依頼主だなんて、便利屋はいつから保育士になったんですか~?」

「………さっさと失せろ。頭を吹き飛ばされたくなければな。」イラァ

 

段々とイラついてきた便利屋の口調が喧嘩腰になってきた。しかし、話しかけてきたウサギチームの隊員は口を閉じる事はなく、他の隊員も遠巻きに話しながら見てるだけである。どうやら便利屋と隊員Aがどうなるか賭け事をしているようだ。

 

「ほら、保護者が罵倒されてるのに対してなんとか言ってみたらどうでちゅか~?」

「…………………。」

 

エノクにも絡む隊員Aだが、当の本人はガン無視して涼しい顔をして通り過ぎるようとする。

 

「あ?無視すんなよ。」

 

その態度にムカついたのか、隊員Aはエノクに向かって蹴りを入れようとする。しかし

 

サッ ヒョイッ

 

何度も当てようとするが当たる様子は一切無い。無駄に洗練されたステップで簡単に避けていた。

 

「クソガキがッ!避けんじゃねぇッ!」

 

痺れを切らして隊員Aが殴りかかってきた。普通の子供であれば最悪死んでしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、じゃあ反撃しますね。」

 

しかしそこにいるのはただの子供(狩られる側)ではない。隊員Aが突っ込んで来たところに合わせて、ポケットの中から手を出すと同時に獣狩りの短銃を虚空から取り出し、そのまま一発撃ち込んだ。

 

「うぐぉッ!?」

「おやすみなさい。」

 

そうして無理矢理作られた隙を利用してエノクは隊員Aの懐に入り込む。これ(銃パリィ)をしたら何が起こるか、狩人であれば誰でも分かるだろう。

 

 

 

ザチュンッ

 

 

 

内臓攻撃(モツ抜き)である。そのままエノクは掴んだ内臓を引きずり出して隊員Aを吹き飛ばす。

 

「あ、思わず殺っちゃった。いけないいけない、攻撃されたら必ずパリィする癖治さないと。………服が汚れちゃったなぁ。」

『ちょっと!私がいること忘れないでよね!』

「あぁ、ごめん。」

 

遠くにいたウサギチームは固まっている。幼い子供がいきなり重装備の人間の体を素手で貫いて内臓を引きずり出したのだから当然である。間近でそれを見た便利屋はこの数日で慣れたのか、普通に頭を掻いてエノクに話しかける。

 

「あー……もう行くぞ。」

「?放置しててよいのでしょうか。」

お前がやったことだろうが………あいつらが固まっている内にさっさと都市に入るぞ。」

 

そう言って便利屋はエノクの手を掴んでその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁこいつどうするよ。」

「どうもこうも………こいつもう死んでるだろ。」

「シャオラッ!俺の一人勝ちッ!」

「「ガキがあいつを殺す」なんて大穴予想出来るわけねぇだろうが!?」




狩人は攻撃して来た奴に対しては体が勝手に殺しに動くと思うんですよね。あの悪夢ではほぼ全員が敵として襲いかかって来ますから攻撃=殺す相手でしょうし。


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フィクサー

「……………やっと終わったか。」

「お待たせしてすいません。」

「あー、やっと都市ね。」

 

都市と外郭を隔てる関所の近く、裏路地の一角に便利屋が壁に背を預けて立っているところに手続きを終えたエノクが姿を現す。隣には、オレンジ色のワンピースを着たリサがいる。どうやら関所を出た瞬間に秘儀を解いたようだ。

 

「取り敢えず、契約はここまででいいか?」

「あ、もう一つお願いしたい事が………。」

「何だ。」

 

立ち去ろうとした便利屋を呼び止めたエノクは、そのまま虚空から資料を取り出す。数日前に通行証と共に拾ったハナ協会製の簡易的な都市の案内書である。

 

「僕らがフィクサーになるためにはどうしたらいいですか?」

「………まぁ、あんな戦闘力持ってる奴らからしたら丁度良い仕事だろうな……………報酬は。」

「パイルハンマーの替えの刃と手入れ道具でどう?」

「………いいだろう、ついてこい。」

 

そう言って便利屋は踵を返して歩き始める。エノクとリサは一瞬目を合わせると、てくてくと便利屋の後をついていった。

 

 

 

 

 

 

にゃ~ん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだ。」

「…………どこよここ。」

 

しばらく歩いた後、便利屋はとあるビルで立ち止まる。それに伴い後に続いていた二人も立ち止まり、そのまま上を見上げた。周りの他の建物と比べ、何とも重々しい雰囲気を醸し出しており、ここが如何に普通とは違う場所であるかが分かる。

 

「お前らが希望したフィクサーになる…………正しくはフィクサーを認定するハナ協会という組織のビルだ。あくまでもここは支部だか、ここら一帯のフィクサーの仕事を管理しているからな。権力はとんでもないから下手な騒ぎを起こすのはオススメしないぞ。」

「冗談言わないでよ。此方から喧嘩を売るのは依頼か素材集めの時の獣に対して位よ。」

「どうだか……。」

 

あまり信用してなさそうな声を出す便利屋。纏う雰囲気からも疑っているのがありありと感じる。エノクとリサは揃って左に目を反らした。それを見て便利屋はため息をつくと、そのままビルの中に入ってしまう。それを追いかけて二人もビルに入って行った。

 

「「わぁ。」」

「声を出すほどか?」

 

中は外に比べてかなり清潔に保たれており、元々いた外郭とは比べ物にならない程に綺麗である。もっとも、外郭にそんな場所があるとするなら、違法な研究をしている施設か狂気的なカルト集団の本拠地位だろう。しばらく周囲を見回すエノクとリサだったが、そこに一人の男性が便利屋に話しかけてくる。

 

「おや、ネグロさん。依頼は達成しましたか?」

 

その言葉に反応して便利屋……ネグロが振り向くと、そこにはスーツを着て資料らしき物を抱えた優男がいた。

 

「…あぁ、お前か。丁度今報告に向かおうとしていたところだ。」

「そうですか。ご無事で何よりです…………所でその子達は?」

 

そう言って優男はエノクとリサに目線を移動させる。その目には純粋な疑問が浮かんでいた。

 

「俺に外郭で依頼してきたガキだ。「都市までの案内とフィクサーになるまでの補助」だとよ。」

「護衛じゃなくて案内………ですか?」

 

便利屋……ネグロの言葉に若干困惑した目になる優男。

 

「エノクです。」

「リサよ、で、あんたは?」

「申し遅れました、私はここの受付をしているファルと言います…君たち二人はフィクサーになりたいってことでいいのかな?」

 

二人の軽い自己紹介に返事をする優男……ファルは苦笑いをしながら尋ねる。

 

「ええ、それが一番手っ取り早いでしょ?」

「うーん……でもなぁ、君たちみたいな子供だとどうしてもなぁ。」

「何か問題でもあるんですか?」

 

エノクの言葉に困った顔をするファル。しばらく悩むように目を閉じて、やがて二人に考えを告げた。

 

「いやぁ、フィクサーって言うのはほとんど危険と隣り合わせだからね。子供がやる仕事じゃないと思うよ、うん。中には…………まぁ、人殺しの依頼もあるわけだし、なんだったら、ここのお手伝いでもいいんだよ?」

「遠慮しとくわ。私達は血生臭い方が慣れてるもの。」

「えぇ、書類仕事よりも殺人とかそういう事を繰り返してましたから。」

「…………………………………外郭ってそんなに物騒なのかい?」

「外郭が物騒なのは間違い無いが、そいつらがそれ以上のとんでもない例外なだけだ。」

 

自分が躊躇った内容を迷い無く選んだ二人に思わず宇宙猫になるファル。それを見かねたネグロがフォローらしき発言をする。

 

「例外……ですか?」

「ただのガキが外郭の化物を銃で仕留めたり、俺を拘束したり、R社の連中の喧嘩を買って反撃一発で殺せるわけないだろう。」

「?………?…?」

 

フォローではなく捕捉だった。更なる宇宙へと飛び立ったファルはしばらく動きそうにない。その隙に二人はネグロの隣に行き、気になっていることを尋ねる。

 

「ネグロさんネグロさん。」

「名前で呼ぶな………なんだ?」

「何故掃除屋の事は言わなかったの?」

「あぁ………都市では掃除屋の事を口に出すのは余り推奨しない。裏が深すぎる。場合によっては消されるんでな。」

(医療教会じみてるなぁ。)

(闇しか感じない。)

 

その言葉に納得するエノクとリサ。あの街を取り巻いていた色々かこの世界の情勢と似ているように感じた二人は若干げんなりとする。その様子に疑問を持つネグロだったが、最早二人の事を理解することを諦めているため、気にせずファルを戻す作業を始めた。

 

「…………………?」

「おい、いい加減戻ってこい。」バシッ

「いだっ!?」

 

作業といっても一回ぶっ叩くだけの簡単な仕事である。痛みにより現実へと戻ってきたファルは叩かれた頭を押さえながら文句を言う。

 

「いってて……ちょっと私の扱いが雑すぎません?」

「反応しないお前が悪い。」

「うぅ……ネグロさん、さっき言ってた事は真実なんですね?」

「下らない嘘を言う趣味は無いんでな。じゃ、確かに伝えたぞ。」

「またもしもの時は依頼させていただきますね?」

「ハン、その時まで生きてたらな。」

 

取りつく島もないネグロに肩を落とすファル。そのままネグロはエノクと言葉を交わし、階段で別の階へ行った。どうやら報告に向かうようだ。ようやく姿勢を正したファルは二人に尋ねる。

 

「じゃあ、二人はフィクサーになるって事で手続きをして良いんだね?」

「えぇ、よろしくお願いします。」

「うん、わかったよ……あ、そうそう。」

 

ファルが何かを思い出したかのように手に持った書類の中から一枚の紙を二人に見せる。そこにはフィクサーの許可証を発行する手順や階級について書かれていた。

 

「取り敢えず、応接室で話をしようか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今から簡単な説明をするから、一応渡しとくね。」

 

ファルにそう言われ、二人は資料に目を通す。

 

「まずフィクサーについてだね。治安維持や探し物………あと人殺しも依頼であれば何でも行う何でも屋って感じだよ。所属している事務所とか翼によって種類は変わるけど、大体はその組織が受けた依頼をこなすのが一般的だね。」

「組織…………ファルさん、組織に所属せずに依頼を、とかは無理ですか?」

「?可能だよ。ネグロさんも組織に所属せず活動してる方の人だからね……でも……。」

「でも?」

「最初は軽い仕事しかないから収入も少ないよ?生活も安定もしないだろうし、やっぱり最初は事務所とかに所属しておくのがオススメだよ?」

 

ファルの表情からは二人に対する心配がひしひしと伝わってくる。しかしリサはそんな物気にせず話を続ける。

 

「別にいいわ、私達二人での活動は今までと変わらないし。むしろ余り組織っていうのを信用してないから。」

「…………その歳で一体どんな人生を歩んで来たのかい?」

「向かってくる奴らを殺すために文字通り死んでもやっただけですよ?」

「詳しく聞いたら発狂しそうだから止めとくよ。」

「賢明な方は好きですよ。」

 

ニコニコと笑うエノクと普通に資料を見ているリサに若干冷や汗を流すファル。見た目こそ美少年と美少女だが、抱えているものがそこらの人間とは格が違う事を仕事で培った勘で悟り、避けるのであった。

 

「……話を戻そうか。じゃあ次は試験についてだね。」

「「試験?」」

 

二人は揃って首をかしげる。どうやら、簡単に話は終わらないらしい。

 

 

 




黒の便利屋の名前である「ネグロ」は完全に捏造です。
スペイン語で「黒」という意味です。安直ですかね?
後、職員のファル君は完全にオリジナルです。恐らくこの後もちょくちょく出てきます。名前?パッションです。


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