転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。 (”蒼龍”)
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第1話『建国女王、転生する』

初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はこんにちは、自分は”蒼龍”と言います。
今作は夢の中で見た魔法物の内容(但し一回しか見ていない上余り深く内容が無かった)を文字起こしした初の一次創作となります。
何処まで内容を詰めれるか分からない拙い作品ですが、お付き合い頂けたら幸いです。
では、本編へどうぞ


これはこの世界に生きる者達の物語である。

 

 

 

 

 

 

始まりは500年以上前、『魔界』より現れし『魔族』達により『人間』や『エルフ』、『ドワーフ』と言った生命が生きる『地上界』が侵略された事に始まる。

しかし、その侵略に争った勇者達の手により奪われた領土は取り戻され、新たに国を(つく)る事になった。

 

「…やれるだけの事は全部やった。

後はこの『予言の日』に私が行動を起こすだけ…。

さようなら皆。

私、この世界を守って来るから」

 

それから20年、勇者一行の大魔法使いにして魔法王国『セレスティア』の女王『ライラ』は同じく勇者一行の『ダークエルフ』の予言者『リリアナ』の予言により20年後の今日、領土を取り戻した地上界に再び魔族と『魔物』の大群勢が魔界と地上界を結ぶ『門』より2度目の侵略を開始すると予言されたのだ。

 

「今の地上界は疲弊し切っている、だからもう一度魔界から攻撃を受ければ今度こそ地上界は滅ぼされてしまう。

なら、その前に………」

 

ライラは例え勇者一行が健在であろうと2度目の侵略を許せば地上界は制圧され、魔族達の蛮行に対抗する者が根絶やしにされる事現状を把握しており、そうならない為にこの20年で全ての準備を進めて来た。

そしてそれを終え、予言の日を迎えたライラは転移魔法である場所へと赴いた。

その場所とはーーー。

 

「…魔族達が攻め入る前に門を封印する‼︎

体内魔力、魔法元素(マナ)接続‼︎

設置済み魔法陣起動1番から6番まで起動‼︎

大封印魔法『縛られし門(バインドゲート)』発動‼︎」

 

門がある海に囲まれた遺跡群その中心点、門の目の前であった。

そして魔界の空気である『魔素』が濃くなり空が暗雲に包まれている中でライラは体内にある魔力と空気中の魔法元素(マナ)を20年の間に設置した魔法陣に接続し、それぞれから魔力の光が伸び門を中心に六芒星を形成、門から溢れる魔素を遮断し始める。

 

「な、何だ⁉︎

門から出られないぞ‼︎」

 

「アレを見ろ‼︎

忌まわしき魔法使いライラが居るぞ‼︎」

 

「まさか、門の封印をしているのか?

我々魔族にも出来ぬ事を⁉︎」

 

そして門の中から魔族が出て来ようとした瞬間、見えない壁に阻まれ魔族達は者より外に出られず慌てふためく。

更にライラの姿を捉え、彼女が魔族にも出来ない門の封印を試みていると察知し戦慄しながらも見えない壁に魔法や戦闘術技をぶつけ破壊しようとするが、その壁は一向に破壊される気配が無く寧ろ逆に強度が更に高まり始めていた。

 

「無駄だよ、この門の封印は私が20年の時間を掛けて作り上げた大魔法!

アンタ達魔族には一生掛かっても封印の壁を壊す事なんて出来やしないよ‼︎」

 

「お、おのれぇ‼︎

なら魔物だ、魔物を連れて来い‼︎

魔族が駄目なら魔物なら恐らく通れる筈だぁ‼︎」

 

ライラは体内の血管や神経が焼き切れる感覚を覚えながらもそれを表情に出さず門の封印を続行する。

魔族達は封印完了まで時間が無いと察知しならば『魔物』なら、自分達が作り上げた生命ならば通れる筈と一縷の望みを賭けて魔物を通そうとした。

しかし、強弱関係無く全ての魔物すらこの見えぬ壁を通り抜ける事が叶わなかった。

 

「言った筈だよ、これは『門』の封印‼︎

アンタ達魔族だけを通さないとか甘めの設定じゃない、門その物を封印して何者も通さぬ様にする大封印魔法と‼︎

さあお別れの時間よ魔族達、いきがって2回目の侵略をしようとした時の光景を目に焼き付けながら魔界に閉じ込められろ‼︎」

 

「お、おのれ、ライラァァァァァァァ‼︎」

 

『キュイィィィィン、キィンッ‼︎』

 

ライラは魔族に最後の言葉を掛けて門の封印を行い、魔族達は憎らしげにライラを睨み付けながら呪詛の言葉を投げかけながら壁を叩き続けた。

そうしてその直後、門の封印が完全に完了し門の先に居た魔族も魔物も見えなくなり魔素も消え、太陽の日を通さぬ暗雲が消え青空が広がっていた。

 

「…はは、成る様に成るって良く言うけど本当に何とかなった…あ、はは………」

 

ライラは大封印魔法の完了を見届け、自分の試みの『1つ』が成功した事にガッツポーズを取ろうとした。

だが、大封印魔法の代償により体内の血管や神経が全て比喩表現では無く本当に焼き切れ、その生命の灯火が今消え去り倒れそうになった。

 

「ーーーライラァ‼︎」

 

『ガバッ‼︎』

 

そんな倒れそうになったライラに大声で叫び、駆け寄って抱き抱えた人物が居た。

それは勇者一行のリーダーであり、神剣を奮い世界を守った英雄の中の英雄、勇者『ロア』であった。

更にロアの後方からリリアナやエルフの『ロック』、ドワーフの『ゴッフ』と勇者一行が勢揃いしライラの周りに集まっていた。

 

「皆…内緒にしてた筈なのに、何で…」

 

「ごめんなさいライラ、私、黙っていられなかった…」

 

「リリアナから聞いたぞ、門の封印なんてとんでもない無茶を‼︎

アレは世界創世の時代からある代物、何事も無く封印するなら君レベルの魔法使いが10人居ないとならないのにたった1人でやるなんて‼︎」

 

ライラは全てを内密に、それこそ大臣や子供達に親愛なる仲間達に全てを進め今がある筈なのにロア達が来た事を怪訝に思うがリリアナが直ぐに答えを出した。

更にエルフであり知恵者でもあるロックはこんな大魔法はライラが10人居なければ無事に終わらないと話し、その上でそれを1人でやった事を咎めていた。

 

「畜生が、お前はいつもいつも後方担当なのに無茶してグイグイと前に出て来やがる‼︎

おいリリアナ、早くライラに回復魔法を掛けてやれよ‼︎

このままじゃあライラは死んじまうぞ‼︎」

 

「…ごめんゴッフ、もう手遅れなの。

私の生命はもう此処で終わるの…」

 

「ライラ………」

 

ゴッフは口調は荒いがライラの見た目は綺麗だが中身はズタボロになっている事を察知していた。

その為リリアナに回復魔法を掛けて生命を救おうとするが、ライラは常に皆に見せた笑みを浮かべながらもう手遅れであると言い切り、リリアナを始めとした全員は目を背け、皆一様に涙を流していた。

 

「…何時もそうだ、僕は勇者と持て囃されながら何時も大切な人達を守れない!

家族も、友も、そして君でさえ‼︎

僕は…勇者なんかじゃない、ただの愚か者だ…‼︎」

 

「…ロア、確かに救えなかった人達も居たけど、皆その瞬間瞬間を懸命に生きて、笑って生きて走り抜いたんだよ。

そしてその分多くの人達を救い上げて来た。

だから君は愚か者じゃない、私達にとって本当の勇者なんだよ…」

 

「ライラ………けど、僕は…‼︎」

 

ロアは脳裏に救えなかった人々の姿を思い浮かべ、勇者なのにそれらを救えなかった事を悔やみ自らを愚か者だと蔑み、ライラも救えぬ事を悔やんでいた。

しかしライラは救えなかった人々は後悔せずに生き抜いた事を語り、更に救った者達も引き合いに出してロアを勇者だと断言して頬の涙を拭いていた。

 

「ライラ…」

 

「それにね…ただ死ぬ為に、私はこの魔法を創り上げた訳じゃ無いんだよ?

もう1個だけ魔法を創り上げて、それに望みを託してこの大魔法を使ったんだ…」

 

「ライラ、それ、前に私に話していた…」

 

ロアや皆がが悲痛な表情を浮かべる中でライラはもう1つ魔法を創り上げた事を話し、それに望みを託し此度の大魔法行使に至ったと告げる。

それを聞いたリリアナはこの計画で話した魔法を思い出していた。

 

「…じゃあ、皆…封印魔法は大体200年で魔物が、500年後には効果が切れて魔族が通れる様になるから気を付けてね…。

それから500年後には必ず魔王は倒される筈だから皆心配…しないで………ね………」

 

「っ、ライラ、ライラァ‼︎」

 

ライラは最後に200年で門から魔物が、500年で封印が切れて魔族が通れる様になる事と、500年後には必ず魔王は倒されると確信めいた事を告げ終えると手がパタリと地面に落ち、その意識は黒く塗り潰されロアの叫び声を最後にライラはその生命を使い果たし息絶えてしまった。

 

「クソ、クソ、クソォ‼︎」

 

「ライラ…‼︎」

 

「(…ライラ、貴女の賭けが成功する事を祈るわ。

だからそれまで、ロアの子孫や私達『ダークエルフ』やロック達エルフやドワーフが世界を守るから………だから…500年後に…)」

 

この日世界は1人の英雄を失った。

その悲しみは瞬く間に世界中に広がり、また200年後と500年後の脅威を忘れぬ様にと短命な人間も長命な他種族もこの日を大魔法使いライラの命日と定めその忠告を胸に刻み込む。

そしてリリアナはライラが自身に何を託したのか遺言を英雄達の間で共有しそのとんでもない賭けが成功する事を祈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからライラの魂は暗闇を彷徨い、何時しか明るい光に包まれその魂が新たなる形に変わる瞬間を認識し始めた。

その瞬間ライラの魂は魔法陣に包まれ、その意識が再び浮上し始めた。

 

「(…術式解凍確認、魂の固定化開始。

記憶、知識、技術継承を開始…同期開始、『転生魔法』の正常起動確認。

…さあ目覚めよう、私の第2の人生を始める為に!)」

 

ライラの魂は転生魔法と銘打ったその魔法の正常動作を確認し、ライラ『だった』頃の記憶や魔法知識に技術を第2の人生を始める新しい肉体に継承されて行く事を確認し賭けに成功した、そう確信を持ち光に向かって手を伸ばし………次の瞬間身体が軽くなっている事を感じていた。

 

「おぎゃぁ、おぎゃぁ、おぎゃぁ‼︎」

 

「国王陛下、王妃様、生まれました‼︎

元気な女の子でございます‼︎」

 

「おおそうか、女の子か‼︎

良く頑張ったな我が妻よ、そして良く元気に生まれて来てくれたな、我が娘『エミル』‼︎」

 

「はい、あなた…!

ああ、愛しいエミル、生まれて来てありがとう…!」

 

そして目はまだ開かないが耳は聞こえ、ライラ『だった』者…エミルと呼ばれた娘は前世の記憶や知識、技術を受け継ぎながら国王と王妃の間に生まれた王女だと認識しつつ現状把握を終えて次の目標を思案していた。

 

「(よし、転生魔法が正常に働いたから此処はアレから500年後の世界で間違いない筈!

なら次に目指すべきは………修行し直してロアや皆で達成出来なかった最大の目標、魔王討伐の悲願達成よ‼︎)」

 

そう、転生魔法はライラの時には達成出来なかった目標…地上界を侵略する魔族の長、魔王討伐の為に行った物である。

こうして今此処に転生した建国女王、エミルの波瀾万丈の第2の人生が幕を開けた。

そして世界の命運はエミルと彼女と出会う仲間達の手に懸かる事となったのは言うまでもなかった。

全ては魔王を倒す為、エミルを中心に渦巻く物語が始まる。

それを未だ本人は知らない。




此処までの閲覧ありがとうございました。
次回からはライラ改めエミルがメイドや執事、兄弟や姉と共にかつての自分が書き起こした理論内容を振り返りながら家族に夢を語る回になる予定です。
それから理不尽タグに付きましてはどんな意味を持つのかもまた次回に楽しみにお待ち下さいませ。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘をお願い致します。


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第2話『エミル、決意する』

皆様こんにちはです、第2話目更新でございます。
今回エミルで家族が登場したり色々な物が詰まってます。
専用単語も多いですか、それも世界観説明の一環ですのでご容赦下さいませ。
では、本編へどうぞ。


エミルが生まれてから6年が経過した。

初めの4年、エミルは立つ練習等普通の赤子の覚える事を教わるまでも無く行い、更に執事達の前での魔法行使でいきなり身体を強化する光の初歩魔法では無く火の初級魔法『火球(ファイヤーボール)』でも無く中級魔法『火炎弾(バーンバレット)』を発動させ周りにその魔法の才覚の大きさを見せ付け驚かせていた。

 

「(とは言えこの歳では体内魔力の形成がまだまだ出来上がってないから最上級魔法の『灼熱雨(マグマレイン)』所か上級魔法の『大熱砲(フレアブラスト)』、その他諸々の魔法が使えないから前世の100分の1にすら満たないんだよね〜)」

 

エミルは中級魔法をいきなり使った事から数百年に1人の才覚の持ち主と持て囃されたが、これは全てライラの時の知識や技術を基に行使しただけであり本人にとってみれば呼吸と同じであった。

故にこの世界の6属性ある原始魔法、一部の属性にある派生属性魔法を使い熟す事などエミルにとっては赤子が立つのと同義でありこれまた周りを驚かせた。

普通の魔法使いで100%の力を発揮出来る属性は多くて3つなので、まるで初代女王ライラの生まれ変わりと持て囃された(実際そうなのだが)。

 

「(ああ〜早く魔法元素(マナ)の聖地で修行したいよ〜‼︎)』

 

しかし生まれたばかりでレベルも当時の250から1に逆戻りした上に体内魔力も形成され切ってない為ライラの時の実力には程遠い為エミルは早く体内魔力を強化する修行をしたいとうずうずしていた。

…但し現在の年齢では肉体がその負荷に今は耐えられない為、その修行はせめて10歳になった時にしようと計画を頭の中で計画を立てていた。

 

「では、今日はエミル第2王女様の授業を兼ねて魔法元素(マナ)と体内魔力、そして魔法の結び付きについての説明をさせて頂きます。

よろしいですね『アルク』第1王子様、『レオナ』第1王女様、『カルロ』第2王子様?」

 

「はい、よろしくお願いします『アレスター』先生」

 

そして6年目に入ったエミルは長男のアルク、長女レオナ、次男カルロとセレスティア王家4兄妹全員で専属魔法講師アレスターに講義を受ける事となった。

因みに3人の兄妹達は全員エミルと同じ赤毛で、それぞれの人柄は長男のアルクは王位継承権第1位として強き者が前に立ち弱き者を守り導くノブレスオブリージュを信条とし、第2位のレオナはそんな兄を支えるべく外交や商業等を学んでいた。

 

「へっ、今更初歩中の初歩を学び直すなんざ時間の無駄だっての!

これなら『絶技』の練習をしてた方が有意義だっての!」

 

「おいカルロ、どんな事に於いても初歩を振り返り基礎を学び直す事はただ剣や魔法を振るうよりも有意義なんだと何度言えば分かるんだ!

…すみませんアレスター先生、カルロの不理解をお許し下さい」

 

一方の第2王子のカルロは周りと比べて育った為か卑屈な性格をしており、更に魔法の才覚に満ち溢れた妹が生まれたとなりより一層自己中心的な性格となり周りを困らせる問題児となっていた。

アルクやレオナはそんなカルロを何度注意しても悪化するだけであり、そんな様子を見ていたエミルはカルロには当たらず触らずと言う一定の距離を保ちながら、前世では謳歌出来なかった家族との温かな時を6年間過ごしていた。

 

「いえいえ、今回の講義は私からセレスティア国王陛下に進言して執り行われる事になった謂わば私の我儘です。

なのでアルク王子様もレオナ王女様もどうかお気になさらずに軽く流す程度に講師を受けて頂いてもよろしいですよ」

 

そんなカルロを見てもアレスターは自身の我儘でこの講義をしていると大人の対応をし、また何時かはカルロもアルク達の様に一皮剥ける筈と期待を掛けており余り贔屓になる様な咎め方はしていなかった。

寧ろカルロも努力家である事を見抜き、大事に教え育てようと思っているのだ。

最もカルロはそんな事は9歳になっても未だ気付いていないのか、それとも素直になれないのか、何方にせよ問題児には間違い無かった。

 

「では先ず魔法元素(マナ)について、アルク王子様お答え下さい」

 

「はい、魔法元素(マナ)とはこの世界に存在する元素の事であり、目に見えずとも酸素の様に其処に存在する魔法や絶技、剣術等の技の魔法版とも言うべき技の行使に必要不可欠な存在で、それらを使う事で消費される物です」

 

「はい、その通りです。

補足として魔法元素(マナ)は世界各地の世界樹から放出されており、その放出量は我々『地上界』の生命が一生懸けても消費量を上回る事はないとされ、世界樹の群生地は特に魔法元素(マナ)が濃く体内魔力強化に打って付けの場所と言われてます」

 

アレスターの講義に最初にアルクが答え始め

この世界の魔法元素(マナ)の在り方を答えてレオナは真面目に聞きながらメモを取り、カルロは全く聞いていないと言った様子だった。

一方エミルはこれは前世で自身が研究し尽くし論文や学術書に残した物だと振り返り、今の時代でもそれらが間違った知識が入る事無く脈々と受け継がれている事に感慨深い物を感じていた。

 

「では体内魔力について、カルロ王子様お答え下さい」

 

「…ふん、体内魔力は文字通り身体の中に出来る魔法や絶技を使う為の器官。

魔法元素(マナ)を呼吸で体内に入れる事で形成されるから多かれ少なかれこの世界の誰もが体内魔力を有している。

そして体内魔力の強化には高濃度の魔法元素(マナ)を取り入れる事が必要不可欠だけど最低でも10歳にならないとその修行に肉体が負荷に耐えられないから幼い子供には危険とされている、これで良い?」

 

次にカルロが体内魔力について模範解答所か完璧な解答を行い、アルクやレオナも黙って頷きなんだかんだで正しい知識を身に付けているカルロを認めていた。

エミルもまた同様の感情を抱き、カルロは矢張り王族であり、また影の努力家なのだと思っていた。

 

「はい、完璧でしたよカルロ王子様。

矢張りカルロ王子様も王族、正しい知識を身に付けて反復していらっしゃるのですね」

 

「…けっ」

 

アレスターもそれを理解しているのかしっかりとカルロの事を分け隔てなく褒めており笑顔を見せていた。

しかしカルロは意地っ張りな問題児な為か素直になれず、そっぽを向き当たり前だと言う雰囲気を醸し出していた。

 

「では何故高濃度の魔法元素(マナ)吸収による体内魔力の強化が必要か、魔法元素(マナ)と体内魔力、そして魔法の密接な結びつきをレオナ王女様お答え下さい」

 

「はい、体内魔力の強化が必要とされる理由は体内魔力の大きさ、強度により同じ魔法や絶技を使っても威力に差が生まれる為です。

この理論は初代セレスティア女王ライラ様がこの世界に形として残した最も世に知られる魔法理論であり、一つが欠けても魔法が成り立たなくなります。

これを通称として『魔力一体論』と言われています」

 

次にレオナが魔法理論の基盤となっている魔力一体論を答え、既に15のレオナはこの理論に基づいた修行を終えておりエミルの光の基礎魔法の一つ『観察眼(アナライズ)』ではレベル68となっておりそれ相応の努力をしていたと思っていた。

 

「(まぁ、アルク兄さんはレベル97と今の時代ではレベル100に入った時点で英雄と言われるラインの一歩手前まで来てまだ修行しているから、戦いの事はアルク兄さんやこれからのカルロ兄さんに任せてレオナ姉さんは外交メインの国のバックアップ担当だから此処でレベルを意図的にストップさせてるんだよね〜)」

 

更にエミルは頭の中でレオナのレベルとアルクのレベルを見比べてレオナは外交等をメインに進める為にレベル上げを意図的に止めて外交等の事を学んでいる事を理解し、更に今の世界でアルクはもう少しで英雄と呼ばれる領域に立つ事も理解していた。

因みにアレスターはレベル120の魔法の天才と謳われるエルフである。

 

「はい、これらが魔法や体内魔力、魔法元素(マナ)についての事柄です。

エミル王女様、理解出来ましたか?」

 

「はい、お兄様やお姉様達、アレスター講師様の指導で私は魔法の基礎について学べました。

それともう1つ、魔法元素(マナ)のもう1つの特性について話してよろしいでしょうか?」

 

魔法元素(マナ)のもう1つの特性…成る程、これから先必要になる知識でしょうからエミル王女様、どうぞ語って下さいませ」

 

エミルは王位継承権第4位の末席の王女として兄や姉達の顔を立てながらかつて自分が打ち立てた理論を学び直す。

更にエミルは此処で魔法元素(マナ)のもう1つの特性を話したいとアレスター達に話すと、アレスターはエミルを年に似合わず余程勉学好きと捉えて魔法元素(マナ)の第2の特性について話す事を了承する。

 

「はい、では…魔法元素(マナ)の第2の特性として魔物や魔族達の身体や魂を形成する魔素、特に戦闘により高純度にまで高まった魔素とと結合する事で劇的に肉体強度や反射速度、体内魔力の大きさや強度すら上げる特殊な元素となります。

これを『熟練度元素(レベルポイント)』と呼び、魔物や魔族達の討伐の際にレベルが上がる事はこれを吸収する事により発生する現象とされています」

 

「その通りです、なので中には『レベリング』と言われる死と隣り合わせですが自身やパーティメンバーのレベルを上げる為に魔物の巣、『ダンジョン』に理由無く立ち入るパーティも居る程です。

しかし、私は理由無きレベリングは推奨しません。

それは命を粗末にする事と同じなのですから」

 

エミルは魔族や魔物の身体や魂を構成する魔界特有の元素、魔素が魔法元素(マナ)と高純度で結合した際に生まれる元素、熟練度元素(レベルポイント)であると話してアレスターにそれが正しい知識である事、また危険な行為として魔物の巣に理由無く立ち入りレベルアップを図るレベリングと言う行為があるが、これは本当に危険であり推奨しないとアレスターは補足しカルロを含めた3人の兄や姉達は固唾を飲んでいた。

 

「(そう、レベリングは非常に危険が付き纏う行為。

罠を張る知能を持つ魔物の巣(ダンジョン)に入り込んで罠に掛かって死んだ何て例が500年前も絶えなかった。

だけど、500年前に関してはそうでもしないと魔物や魔族達から奪われた地上界の領土を取り戻せなかった…だから仕方無かった面があったのよね)」

 

エミルもライラだった頃を思い出し、500年前の侵略完遂寸前だった地上界を取り戻すにはレベリングが必要だったのだと思い返しながら死んでしまった友や教え子達を思い返していた。

そしてこの世界には高濃度の魔法元素(マナ)を取り込み体内魔力を上げる安全なレベル上げと熟練度元素(レベルポイント)吸収を目的とするレベリングと言う危険なレベル上げがあると言う自身の知識との摩擦が無い事をエミルはこの話で確かめたのであった。

 

「しかしエミル王女様はよく熟練度元素(レベルポイント)の事をご存じで。

何処かの書庫で知識として読まれたのですか?」

 

「はい、アルクお兄様やカルロお兄様が書庫でレベル上げについて学んでいる所を横で見せて頂いて知識として身に付きました」

 

「おいエミル‼︎」

 

アレスターは何故熟練度元素(レベルポイント)の事をエミルが知っていたのか尋ねると、元々知ってはいたがそれらが後世にも伝わっているか確かめるべくアルクや陰でこっそり本を熟読していたカルロの横からそれらを見て自分達が犠牲を払いながらも打ち立てた理論は危険な行為であるとされながらも伝わっている事を確認したのだ。

当然陰で勉学していたカルロはそれを暴露された為エミルに顔を赤くしながら怒鳴り、当のエミルはごめんなさいと謝っていた。

 

「あっはっは、エミル王女様だけでなくカルロ王子様の勉学が伝わって来て私は陛下達にこの講義を進言した甲斐があったと思いましたよ」

 

「全くだよ。

カルロも素直に俺と一緒に勉学すれば良いのに」

 

「うっせぇよブラコン兄貴‼︎

ああもう今日は何で日だよ‼︎」

 

アレスターはこの講義に確かな意味はあったと再確認し、カルロが問題児ながらも独自に勉学をし戦う王族として知識を身に付けている事をアルク共々喜んでいた。

それをカルロは耳まで赤くなりながらそっぽを向き、講義室はアレスターや兄弟姉妹の微笑ましい笑い声に包まれていたのであった。

 

「(ああ、こんな温かな時は初めてだ………。

ライラの時は夫と子供達を得ても明日にも魔族が攻め入るかもと言う恐怖に震えながら過ごして来た。

こんな温かな時間が何時までも続けは良いなぁ…)」

 

そしてエミルもまたライラだった頃には真に得られなかった家族温もりを肌で感じ取り、この様な平和な時間が続けば良い。

そんな他愛の無い、しかしライラの時代の地獄…魔族や魔物に蹂躙され尽くす地獄を経験してるからこそ思う優しい願いをエミルは抱くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、エミルは思い出した。

否、忘れていたのだ。

この世界には理不尽な事象が突然襲い掛かり、全てを奪って行く事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3年後、カルロが10歳の誕生日を迎えて世界樹の下で修行をする事になってから2年の月日が経ち、エミルもいよいよ後1年で修行の旅に出る事になったある日の事。

その日は雷雨が降っており、エミルは慌てた様子で城の弔い部屋へと息を切らしながら走っていた。

それは、修行を途中で切り上げたカルロから齎された訃報であった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…‼︎

カルロ、お兄様…‼︎」

 

「エ、エミル………畜生、俺の所為だ、俺の所為でアレスター先生がぁ…‼︎」

 

其処には国王や王妃、更に3人の兄妹達が棺桶の周りに立ちエミルもヨロヨロと近付きながら棺桶の中を見ていた。

其処には肌が青白くなりまるで眠る様に中に入れられたアレスターの姿があった。

そう、アレスターは死んだのだ、カルロの修行の付き添い人として共に世界樹の下で修行していた時に。

 

「カルロそれは違うぞ、あれはあの場所付近に『エンシェントドラゴン』が偶然巣作りをしに来た所為であって」

 

「けど‼︎

俺がちゃんと逃げ切れていたら‼︎

俺があんな所で足を引っ掛けずに逃げ切ってたら先生は死ななかったんだ‼︎

俺が転んだ所為で先生はエンシェントドラゴンの攻撃を受けて、それで戦わざるを得なくなって、命懸けの魔法でアイツを先生がぶっ殺したけど…けど…‼︎」

 

如何やらカルロとアレスターは放浪型の魔物であり討伐推奨レベル140のエンシェントドラゴン…ドラゴン種の中でも上位に当たる竜に運悪く遭遇してしまい逃げ出したは良いが、カルロが逃げ遅れた為に止む無く戦闘になり、アレスターはカルロを庇いながらエンシェントドラゴンを討伐したのだ、その命を以って。

それによりカルロはレベリングにより当初はレベル79で帰る予定がレベル105にまで上がり現在のアルクのレベル110に並ぶレベルにまでなっていたのだ。

 

「畜生、俺が、俺がもっとしっかりすれば先生は、先生はぁ‼︎

うわぁぁぁぁぁ………‼︎」

 

「カルロ…アレスター先生…う、うう…」

 

しかし、そんなレベルアップを喜ぶ程カルロは薄情では無く寧ろアレスターを陰では先生と呼び慕っていたのだ。

そんな師が目の前で犠牲になった、それをカルロは大粒の涙を流しレオナも涙を流し、弔い部屋に居る王族達はカルロに如何声を掛けたら良いのか分からず暗い雰囲気が周りを包んでいた。

 

「…こんな事があるから嫌なんだ…魔物の存在も、魔族も…‼︎」

 

「…エミル?」

 

そんな中、エミルはライラの時代からあった理不尽な隣人の死を思い出し、魔物や魔族達に対する怒りの感情を向けながら拳を作り、より一層自身の目標を達成しなければならないとさえ思っていた。

そしてエミルはカルロの方を向き、彼の肩に手を出す。

 

「しっかりしてカルロお兄様、それでも貴方は王族ですか⁉︎

貴方は何の為に生き残ったかしっかりとお考え下さい‼︎」

 

「五月蝿ぇよエミル‼︎

お前に俺や先生の何が分かるんだよ‼︎」

 

「少なくともアレスター先生の気持ちなら分かります‼︎

自分の教え子が危機に晒された、ならそれを救うのが教師の使命なんです‼︎

アレスター先生はそれを全うして死んで行ったのです、ならカルロお兄様はアレスター先生の行為に答える義務があります‼︎

生き残った者として先生の教えを伝え広めたり、更に強くなり先生が安心して眠られる様にする事ですよ‼︎

違いますか⁉︎

違うなら私を叩いて下さい、それが兄から妹への示しであるのですから‼︎」

 

今までアレスターの死を悔やみ、カルロの姿に声を掛けられなかった周りの中でエミルは王家として、妹として、ライラの時代の感情を呼び起こしながらアレスターの気持ちを代弁する。

彼が安心して眠りに就ける様にする事やアレスターの教えを広める事が義務だと叫び、初めはそれを突っ撥ねていたカルロもこんなしっかりとした意志を見せる妹が居るのに自分は情け無いと感じ始めていた。

そして次第に涙を拭き、棺桶の中に居るアレスターを見ながら覚悟を決めた表情を見せていた。

 

「…先生、俺、エミルの言う通り戦いながら先生の教えを周りに伝えて来ます。

俺は魔法と絶技の両方が使える『勇者』じゃないから魔法は使えないけど、絶技の教え方を先生流にアレンジして伝えて来ます。

だから…今まで、ありがとうございました………‼︎」

 

カルロはエミルに諭されアレスターが安心して眠るには自分がアレスターの跡を継ぎ彼の教えを広めて行こうと言う決意に満ち、そして家族の誰もが見た事が無い目の前の頭まで下げてアレスターに最後の礼を述べていた。

こうして問題児カルロは一皮剥けて王族でありながら講師を目指す道を見出したのである。

それも、嫉妬対象だった筈のエミルに諭されて、である。

 

「カルロ、お前…!」

 

「エミル、貴女は…!」

 

「(…教え子に先立たれてしまう、そんな悲しい事は嫌ですよね、アレスター先生…。

だからこそ貴方は命を賭してカルロ兄さんを守ったのでしょう、そしてそれは例え王族であろうとなかろうと貴方はその道を選んだでしょう。

………そして、こんな理不尽をもっと少なくする為にも、私は…‼︎)」

 

国王や王妃、兄妹達がカルロの決意やエミルの説得に驚く中で、エミルはライラの時代に何人も弟子が居たがその弟子達はライラが教え切る前に戦場で死ぬと言う悲しき別れを何度も経験していた。

故に自身がアレスターの立場なら如何言っていたかを考えてカルロに話していたのだ。

事実アレスターの人柄ならばカルロが王族であろうとそうでなくとも同じ道を選び死んでいただろう、教え子を持ったことのあるライラだったエミルにはそれが容易に想像出来た。

そしてエミルの頭の中には自身の目標がより明確化していく感覚に満ち国王達家族を見ていた。

 

「…お父様、いえ国王陛下、お願いしとう事がございます」

 

「エミル…何なのだ改まって?

ワシに出来る事なら何でも言ってみせよ」

 

セレスティア国王や王妃、兄妹達はこの弔い部屋でエミルが実の父に陛下と畏まり何かを話そうとする事にただならぬ雰囲気を感じ取りそれを国王は親子らしく軽々しく、しかし王として厳格な態度を持つと言うある意味矛盾した態度を見せながらエミルの目標…決意を聞こうとしていた。

 

「はい陛下。

私魔法王国セレスティア第2王女エミルはこの様な理不尽をこの世から消し去る為………全ての元凶たる存在、魔界の王、魔王の討伐をしとうございます‼︎」

 

「っ、な、なんと…⁉︎」

 

「エミル、お前…‼︎」

 

エミルは久しく忘れていた親しき者の突然の死別と言う理不尽なる蹂躙にライラの時代にあった正しき怒り…平和ボケと言えばそれでお終いだが、ライラの時代に碌に経験した事の無い長き温かな時間により目標達成をこの世界ならば気軽に出来る、優しい時間が長く続けば良いと言う頭の隅にあった気軽さと他愛無い願いを一切捨て去り、前世で果たせなかった悲願を必ず達成すると言う決意を此処に表明する。

 

「(そうだ、何処かにあった甘え…この世界の温かさから生まれた余裕を全部捨てて前世の時の刹那的な感覚を思い出せ‼︎

お前は、その為に転生したのだろうエミル‼︎)」

 

そしてエミル自身も自問自答をし、自身の中の悲願の大きさを再確認した上で魔王討伐に必要な事は全てやろう…そうする為に転生したのだとエミルは思い出す。

かつて仲間達と果たせなかった悲願、その達成を現実にする決意を。

 

「…そうか、エミル。

お前は荊の道を歩むと申すのだな。

そしてその目はまるで伝説に伝わる初代女王ライラ様と同じではないか…ならば、誰にも止める事は出来ん。

行って参れエミル、そして初代様の果たせなかった悲願を達成せよ、これは魔法王国セレスティア現国王の勅令である‼︎」

 

「…はっ‼︎」

 

そして国王、更に王家一同はその瞳に折れこの決意表明を皮切りにエミルは書庫にあった生き残った弟子達が見出した魔法、絶技論文も全て見通し、そして1年後に群生する世界樹の中でも凶悪な魔物が巣を作っている箇所に狙いを絞りそれらに旅立ち世界樹付近の高濃度魔法元素(マナ)吸引の安全性とレベリングの危険性の両方を兼ね備えた危険な修行の旅に出るのであった。

そしてこの旅はエミルの、ライラの時代から続く悲願を達成する為の第1歩を踏み出す物でもあった。

 




此処までの閲覧ありがとうございました。
補足説明として体内魔力についてはゲームで言う所のMP、絶技はMP消費して放つ技であります。
そして理不尽タグの意味、それは今の世界でレベル100オーバーは英雄や天才呼ばれる存在すら死ぬ時はサックリ死んでしまう事を初めとして色々物が詰まってるのです。
そうして改めて理不尽な死に直面したエミルは甘ったるい考えを捨てた修行に入ります。

次回もよろしくお願い致します。


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第3話『エミル、成長する』

皆様こんばんはです、第3話目更新でございます。
今回はエミルの修行と冒険者ギルドに入ろうとする話になります。
では、本編へどうぞ。


エミルが10歳の誕生日を迎えた時の事。

早速エミルは国王より魔王討伐の勅令書を作って貰った後に荷造りをして付き添い人抜きで城に書き置きを残して自身の世界地図を見て危険な場所が多い世界樹の群生地を目指す旅が始まった。

 

「しかし王女様良かったのですか?

王家の習わしである世界樹での修行には付き添い人が付く事を無視して家出同然に飛び出すなんて」

 

「これで良いのです、私が向かう場所は本来なら高濃度の魔法元素(マナ)により魔物が寄り付かない筈の聖地に巣を作る知能ある魔物が生息し、エンシェントドラゴンの様な魔物が立ち寄る危険地帯。

付き人を迂闊に付けよう物ならその付き人を死なせてしまいます。

ならば1人で行き、修行をする事が理不尽なる死を回避する事となるのです」

 

「王女様…」

 

そう、エミルはアレスターの死から例えレベル100オーバーでも死ぬ時は死ぬと言う理不尽を改めて思い出し、ならば付き人を付けず1人で修行をした方がそんな理不尽な死を回避出来ると思い馬車で家出同然に城を飛び出したのだ。

しかし馬主はその理不尽な死に自分を抜いているエミルの危うさに悲痛な表情を向けるが、エミルは覚悟の上だと言う表情を向け返し何も言わせようとしなかった。

 

 

 

 

 

それから馬車に揺られて1週間が過ぎた。

セレスティアの港街に何事も無く辿り着いたエミルは船に乗り込み、門が1番近くにある国、深緑なる森の木々溢れるエルフとダークエルフの国、『フィールウッド』の更に門の遺跡群に近い魔素が海を渡り届いてしまっている世界樹を目指して船旅に入った。

 

「フィールウッド国か〜。

ロックやリリアナは元気かな〜?

まぁそれよりも、先ずはこの聖地でありながらトレントやダークドライアド、ドラゴンにゴブリンと言った知能があるモンスターが跳梁跋扈する危険地帯に着くのが楽しみだなぁ〜。

体内魔力回復用と体力回復用ポーションも買いに買い込んだし、準備万端!

さあ最北の世界樹でビシバシレベル上げするぞ〜‼︎」

 

エミルは甲板の上でかつての仲間達のリリアナやロックの事に一時想いを馳せたが、あの2人は長命で元気だろう、殺しても死なないと改めて思いそれよりも知能ある魔物の群の中の上位種が跋扈する世界樹で只管レベルを上げるぞと吼えて周りを驚かせた。

それもこんな身形の良い小さな女の子があんな危険地帯を修行地に選ぶなど自殺行為でしか無いのだから。

 

「お、お嬢ちゃん、悪い事は言わねえからあの場所は止めとけって!

命が幾つ有っても足りないって言われてる危険地帯なんだぜ⁉︎

そんなトコよりもフィールウッド国なら手頃な世界樹が沢山あるからそっちに」

 

「大丈夫大丈夫!

だって其処で修行しないと魔王討伐なんて夢のまた夢なんだから!」

 

「へっ⁉︎」

 

船員が南に位置するフィールウッド国の最北の世界樹に行くと叫んだエミルに彼処は危険だ止めておけと警告をしたが、当然ながらエミルは聞く耳を持たず魔王討伐の悲願を口にして更に船員を驚かせた。

そうして船に揺られて3日でフィールウッド国の港に着き、早速最北の世界樹付近に行く馬車に乗り込みその日の昼頃に世界樹のある森の前まで辿り着いた。

 

「うっわ、やっぱりおどろおどろしいねぇ〜」

 

「わ、悪いなお嬢ちゃん、この先からは魔物のテリトリーなんだ。

近付いたら俺の命が無いんだ、だからこの先は」

 

「うん分かってるよ、後は自分の足で向かうから!

じゃあね〜!」

 

そうして馬車の主はこの先からは魔境であり、魔物のテリトリーに入る為にエミル1人で向かう様に告げるとそのままUターンをして港町に戻って行った。

それを見届けたエミルは1本森の中に踏み入る。

すると全方位から殺気が飛び交い、まるで500年前の戦場に似た空気を感じ取り武者震いをしていた。

 

「…来た来た、この感覚、死と隣り合わせの戦いの感覚‼︎

さあ魔物達、新しい大魔法使いエミル様の伝説の始まりを刮目なさい‼︎」

 

エミルは杖を手に持つと自らを鼓舞して此れから4年間この地で修行をし、最低でも遠い場所を見渡す『千里眼(ディスタントアイ)』と転移魔法(ディメンションマジック)の両方が使えるレベル140まではこの地に留まりレベリングと高濃度魔法元素(マナ)吸引を繰り返すと決めて突撃を始めた。

そして木の影からゴブリンロード、ダークドライアリード、ダークトレント等の魔物が襲い掛かり始め、エミルはこの1年で覚え直した上級魔法の数々を体内魔力回復用ポーションをガブ飲みしながら連発して使い、世界樹の下に向かい始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ来なさいゴブリンロード達‼︎

私はアンタ達の罠を看破したわ、それでも怯えずに戦うなら掛かって来なさい‼︎」

 

『ガァァァァァ‼︎』

 

修行開始から2年目になり、エミルはフィールウッド国の最北の世界樹

が危険と言われている所以、海の向こうに門がある遺跡群がどの世界樹よりも近い位置にあり、魔素が濃い為に強い魔物達が集まり魔物の巣(ダンジョン)化しており討伐推奨レベル70〜100オーバーの魔物が跳梁跋扈しているのだ。

そしてその巣に突入し、魔物退治によるレベリングを行なっているのである。

 

大熱砲(フレアブラスト)大熱砲(フレアブラスト)、『暴風撃(トルネードスマッシュ)』‼︎

はぁぁぁぁ、やぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

そんな危険地帯の洞窟内で威力をやや絞った火の上級魔法2連発と風の中級魔法で洞窟内を逃げ場のない炎が魔物を襲う灼熱地獄にさせ、更に自分が焼かれない様にする為と近接攻撃をする為に身体の強度や力、速さや反射神経等を一時的に上げる『身体強化(ボディバフ)』の魔法を掛けて炎に巻かれて逃げ惑うゴブリンロードを杖で殴り倒し始めていた。

因みにゴブリンロードの討伐推奨レベルは90であり、群れを成す為実際はそれ以上のレベルが必要だとエミルは記憶していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあエンシェントドラゴン、受けなさい‼︎

大水流(タイダルウェイブ)』‼︎

乱風束(バインドストーム)』‼︎

大地震(ガイアブレイク)‼︎』」

 

そして修行開始から4年後、1年目はモンスターを倒しながら世界樹の下で精神統一や睡眠をし、2年目には魔物の巣(ダンジョン)に殴り込みをして魔物が絶滅しない程度に間引きしながらレベルを上げ、3年目は遂に魔素の濃い場所に寄り易い放浪型の魔物のドラゴン種に喧嘩を売り退治を続けると言う修行をしていた。

因みに1年目に遭遇していたダークドライアリードは無害なドライアドが魔物化したダークドライアドの上位種で討伐推奨レベルは85、ダークトレントは森の番人のトレントが様々な理由で魔物化した存在であり、これが討伐推奨レベル70の最低値の魔物であった。

 

灼熱雨(マグマレイン)‼︎

極光破(ビッグバン)‼︎』

超重孔(ブラックホール)‼︎』」

 

それ等を倒して倒してレベリングをした事によりエミルは最上級魔法を操る立派な14歳になり、最早最北の世界樹に生息する魔物でも寝首を掻こうとしても下級魔法で屠られ、起きてる時は最上級攻撃魔法の連発の実験台にされ魔物の方から出会い頭に逃げ出す様になってしまっていた。

今のエミルの魔法大砲には最早アレスターを殺害したエンシェントドラゴンも迂闊に近寄らなくなっていた。

 

「ふう、自己レベル換算でレベル150台は堅いかな?

実際に千里眼(ディスタントアイ)転移魔法(ディメンションマジック)が使える様になったし、此れで最低目標は達成したね!

後はダークドライアリードとダークトレントの素材から作り出した魔法袋(マナポーチ)に倒したモンスターの素材が沢山入ってるし早速フィールウッドの港街『リリアーデ』にある冒険者ギルドに行って素材爆売りと冒険者登録だぁ‼︎」

 

エミルは自分の4年前から比べて遥かに強くなり、アレスターを上回る魔法使いになったと実感を得ており天に手を掲げていた(但し前世の全盛期の50%の実力を漸く超えた程度であると認識している)。

それから魔物や周囲の木々や草むらから手に入れた素材を冒険者ギルド…今の世界の冒険者パーティを管理する組織に冒険者登録をし、素材を売り魔王討伐の更なる1歩を踏み出そうと早速リリアーデ港に転移した。

因みにこの光景を陰から見ていた魔物達は漸くエミルが消えた事で平穏を取り戻し溜め息を吐いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい早速リリアーデ冒険者ギルド前に転移完了!

それじゃあ早速…お邪魔しまーす!」

 

エミルは周りの人間が同時に宿屋から目を離したタイミングで転移を終え、冒険者ギルド経営の宿屋を開けて受付にまで早歩きで向かった。

宿屋内に居た冒険者や一般人達は赤いセミロングの髪の毛や色白の肌の手入れだけは行き届きつつも、服はボロボロと言う若者あるまじき異様な姿に目を引かれて直ぐに世界樹での修行を終えた人間だと察知する。

 

「貴女は…世界樹での修行を終えたばかりの子ね?」

 

「あ、分かりますか?

はい、此方の世界樹で修行をして色々服もボロボロになったりしたので冒険者登録と世界樹近辺で手に入れた素材を売りに来ました!」

 

「やっぱりね。

貴女みたいにボロボロな若者が良く冒険者ギルドに登録に来るから直ぐに分かったわよ。

良いでしょう、冒険者登録と素材売却を承ります。

此方にサインと素材を出して下さいませ」

 

ギルド経営宿屋の受付のエルフの女性はエミルの様なボロボロな若者でギルド登録に来るのは世界樹での修行を終えたばかりの者だと経験則から理解しており、スムーズに冒険者登録書を取り出しエミルも自身の名や出身国をスラスラと書きながらセレスティア国王の勅令書を出しつつ普通なら持てない量の物を入れて重さも無く持ち運ぶ魔法袋(マナポーチ)3つから素材を取り出し始めた。

 

「ほいしょっと!」

 

『…⁉︎

っ!

っっっ!?!?』

 

それも最北の世界樹近辺でしか生えない『月光花』や魔物素材に至ってはゴブリンロードの王冠やエンシェントドラゴンの牙等高額換金素材をドサドサと取り出し床一面に広げていた。

その素材の山を見て冒険者達や受付嬢達は目が飛び出る程見開き、その素材を見て声が上がらずに居た。

 

「…と、名前書き終わりましたし勅令書も見せましたし素材を出し終わりました、換金と冒険者登録をお願い致します」

 

「は、はぃぃぃぃ‼︎」

 

エミルはそんな周りの様子などいざ知らず受付嬢に登録と換金を終える様にお願いすると奥からギルド員達が大慌てで素材を調べ上げたり等をし始め、エミルは隙になった為宿屋のテーブル椅子に腰を掛け久々の都会の空気に伸び伸びとしていた。

 

「な、なぁ、今のゴブリンロードの王冠とかダークドライアリードの惑葉とかあったよな?

見間違いじゃ無いよな?」

 

「あ、ああ、俺もエンシェントドラゴンの牙とか初めて見たぞ⁉︎

まさかあの子、最北の世界樹で…」

 

「いやいやいや、あの若さでそんな………いやしかし………だが勅令書って…」

 

そんな中で周りの冒険者一同はザワ吐き始め、最北の世界樹でしか取れない魔物素材や月光花の様な高級アイテム用素材を見て、更に勅令書と言う単語を聞きエミルを何者なのだと思い始めていた。

そんなザワ吐きを気にせず換金や冒険者登録が済むのを待つ事30分後、受付嬢がエミルの席まで小走りで少し息を切らしながら直接呼びに来ていた。

 

「エ、エミル王女殿下お待たせしました‼︎

冒険者登録と換金が終わりましたので受付までお越し下さいませ‼︎」

 

「はい、分かりました。

それと冒険者になるんだから敬語は」

 

「とんでもありません、セレスティア王国の第2王女殿下に粗相を働いたとなれば国際問題に発展してしまいます‼︎

なのでどうかこのまま敬語や敬称を使われる事をお許し下さいませ‼︎」

 

「うーん、お父様やお母様は其処まで器量は狭く無いんだけど…まぁ、仕方無いよね。

分かりました、では受付に参りますね」

 

エミルはエルフの受付嬢に身分を堂々と明かされた事を特に何も思わなかったが敬語等はこそばゆい為それを抜いて貰おうとした所で国際問題になると言われて引き下がりながら受付まで歩いて行った。

因みに周りの冒険者達はエミルの名を聞きセレスティア王国希代の魔法王女と言う2つ名を思い出しその2つ名に偽りは無かったと唖然としていた。

 

「で、ではまず素材の換金額をお伝え致します!

全ての素材が良質に保たれていた事と全ての素材が何れも此れも高額換金素材であった為、総額で500万G(ゴールド)とさせて頂きます!

それから、冒険者登録に当たり最後にスタートランクを決めたい為に観察眼(アナライズ)でレベルを測らせて頂きます!

で、では失礼致します!」

 

エミルは受付嬢から全ての素材が良質であった為相場が落ちる事無く、また全て高額換金素材だった為この世界の通貨であるS(シルバー)G(ゴールド)の中で総額500万G(ゴールド)と言う普通に暮らすだけなら一生遊んで暮らせる額を手にした。

これは魔法袋(マナポーチ)に入れた物はその時点の材質で保存される副次効果を利用した為である。

そして次にエミルのレベルを測る為に受付嬢は観察眼(アナライズ)でレベルを測り始めた。

すると受付嬢は腰を抜かしてしまう。

 

「は、はわわわわわわ、レ、レベル163⁉︎

そんな、まるで500年前の冒険者の推奨レベルですよこれぇ⁉︎」

 

「ありゃ、150台と思ったら163だった。

…まあ良いかな、私の悲願達成のスタートラインとしてはまぁまぁかな?」

 

エミルのレベルは何と163と言う魔法の天才と言わしめたアレスターを更に超える、500年前の冒険者に必要ラインである150を有に超えた実力となっていた。

観察眼(アナライズ)は鏡を使っても自分自身を対象には使えない為、エミルはレベルを良い意味で測り間違えてしまったのだ。

これはエミルとっては良くもあり、ある意味悪い誤算でもあった。

 

「こ、ここここんなの前例にはありませんのでギルド協会本部と協議してランクを決めさせて頂きますぅぅぅぅぅ‼︎」

 

「あ、ちょっ…!

…まぁ、確かに私が調べた限りで冒険者ギルド登録で1番レベルが高かったのは78。

その方達はCランクから冒険者を始めたってあったからなぁ。

その倍以上だからそりゃこうなっちゃうか。

でもそうなると協議するって言ってたから何れだけ時間が掛かるか分からないなぁ…如何しようかな?」

 

すると受付嬢は前例に無い事態の為冒険者ギルド協会本部と協議してランクを決めると言い奥へと走り去ってしまいエミルは置いてけぼりを食らってしまう。

しかし1番レベルが高かった前例は200年前のレベル78で冒険者ギルドに登録に来たエルフの女の子とドワーフの男の子の2人組であり、その時も今の様に置いてけぼりを食らいギルド協会本部と協議し合ったとされている。

これが悪い意味での誤算である。

因みにCランクの査定が下りたのは登録日から3日掛けての事だった。

 

「うーん、最低でも3日、最悪それより時間が掛かる訳だし…王族として理由も無くブラブラ遊びに行く訳にも行かないし………あ、そうだ‼︎」

 

当のエミルは冒険者ランクを早く決めて欲しい、しかしそれは前例的に3日以上掛かると計算してその間に何をするか決めようとしていた。

無論セレスティア王国第2王女として国の品格を落とす遊んで回るのを頭の中で排除しながら考えていた。

その時エミルは1つの案を思い浮かび手をポンと叩き、それを見ていた周りは何を思い浮かんだのかを注目していた。

 

「ーーー『勇者』を誘おう、それも飛び切り強くて本当の勇気を持つ勇者を‼︎

私の悲願達成の為もそれが1番良い、うん‼︎」

 

その案とは勇者ーーー生まれた時から絶技と魔法を使う事の許された初代勇者ロアの血筋を継ぐ者。

その中でも特に強く、勇者らしい優しさや勇気を持つロアの様な勇者を共に冒険しようと勧誘する事、それがエミルの案であった。

 

「魔王討伐には絶対に勇者の存在が必要不可欠‼︎

今は何処にあるか行方知れずになったけど、『神剣』の担い手として一緒に冒険に出てくれる勇者を探さなきゃ!

うん、これが1番だ‼︎」

 

更に魔王を倒す為には現在何処にあるのかあらゆる書物から秘匿され名前のみの存在となりし剣、真の勇者にしか使い熟せない『天界』の『神』の遣い、『天使』よりロアが授かった『神剣ライブグリッター』を振るう本当の優しさ、勇気を持つ勇者を探す事。

これが次の最優先事項だとエミルは決定した。

 

「じゃあ早速………あ、皆様、此処で見聞きした事は絶対に口外しないで下さいませ。

私が求める勇者が寄り付かなくなってしまう可能性がありますので。

もし口止め料が欲しいなら差し上げますが…」

 

『いえ、大丈夫ですっ‼︎』

 

エミルはそうと決めて宿屋の外に向かい勇者勧誘をしようとしたーーーその前に、宿屋に居た全員に此処であった事を口外しない様に頼み込み、口止め料をたった今貰った換金された500万G(ゴールド)を取り出そうとした。

が、この宿屋に居た全員は相手がセレスティア王国の王族、しかもレベル160オーバーのトンデモ存在である為逆らったら何をされるか分からないと思い全員一斉に口を揃えて口外しない事を誓うのであった。

 

「あ、はい、ではありがとうございます。

………さあ私の求める勇者さん、共に私の悲願達成をしましょう、そう、魔王討伐を‼︎」

 

口止め料を払おうとしたエミルは宿屋に居た冒険者や一般人全員のやたら良い反応の良さに面食らってしまうが、直ぐに思考を切り替えて未だ見ぬ勇者に想いを馳せ、共に魔王討伐をしようと外に聞こえない程度の声で鼓舞すると宿屋の戸を引き外に出た。

魔王討伐の為に勇者を募る為に。

 

「っと、その前にこの服もボロボロだからその前に防具屋で防護服の新調とお風呂に入って汚れを落とさなきゃ」

 

しかしその前にパツンパツンでボロボロな服を見たエミルは先ず宿屋の風呂に入ってから防具屋に行き、手に入ったお金から超良質な魔法使い用の赤と黒を基調とした『ミスリル』を服の繊維内部に粒子レベルで融合させた防護服、ミスリルローブを買い、魔法使い用の大きなお洒落帽子も買いその後は勇者勧誘に必要な物を意気揚々と買いに行くのであった。

 




此処までの閲覧ありがとうございました。
エミルは作中修行する事に浮かれていましたが別にバトルマニアではありません、単純に魔王討伐の為のレベリングにうずうずしていただけです。
因みにS(シルバー)は1000S(シルバー)で1G(ゴールド)になり、1G(ゴールド)は現実金額換算で10ドルになります。
さて、今回は港街リリアーデについて書きます。
リリアーデ港街:初代勇者一行の1人、予言者リリアナがよく海を眺めていた場所として人々が集まり出来たフィールウッド国際大の港街。
近くには最北の世界樹があり、貿易品を乗せた馬車は回り道を強いられるが、この街はリリアナが直接魔物避けの結界を張ったとして最北の世界樹に生息する魔物達も近寄らず、ある範囲をテリトリーとする習性を魔物達は得るに至った由緒正しい街である。

次回もまたよろしくお願い致します。


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第4話『エミル、勧誘する』

皆様おはようございます、第4話目更新でございます。
今回からタグにあるもう1人の主人公、勇者が登場致します。
では、本編へどうぞ。


防具屋から出たエミルは早速必要となる物を買い出し魔法袋(マナポーチ)の中に収め、更にリリアーデ港街の領主にある許可を貰うべく領主に謁見を求めた。

 

「すみません、セレスティア王国第2王女のエミルと申します。

急で申し訳ありませんが、リリアーデ港街の領主様に内謁させて頂きたいのですがよろしいでしょうか?

因みに此方が私の身分を保証する勅令書となります」

 

「は、はぃぃ⁉︎

えと、『この者は我がセレスティア王家第2王女エミルと認め、彼の者に魔王討伐の任を与えたし。

セレスティア王国第12代国王ランパルド』………王家の家紋も朱印も本物…⁉︎

す、直ぐに領主様との内謁の準備をさせて頂きます‼︎」

 

領主館の受付はエミルの突然の訪問に驚き、更に現セレスティア国王の勅令書すらも見せられ大慌てで領主の下へと向かい、内謁する用意を取り急ぎ行っていた。

エミルは少し悪い事をしたなと思いつつ受付を待った。

 

「エミル王女殿下、お待たせ致しました‼︎

領主様との内謁の準備が整いましたのでご案内致します‼︎」

 

そしてそれから15分後、受付前で立たされていたエミルの下に受付が小走りで戻り領主の間に案内を始めた。

そして受付が領主の間の扉を開け、中にエミルを案内した。

 

「ああこれはこれはエミル王女殿下、この様な者に内謁して頂くとは有り難き幸せ!

ささ、どうぞ此方にお座り下さいませ‼︎」

 

「はい、失礼致しますリリアーデ港街領主様」

 

その中にはリリアーデ港街領主が事務卓から立ち上がっており、エミルにお辞儀をしながら客席の上座へと座らせ自身は下座に座りお互いに挨拶と握手を交わしていた。

 

「それで、エミル王女殿下が内謁を希望されたとお聞き致しましたが如何されましたか?

確かギルド協会の宿屋で冒険者登録と素材換金をして頂いたと耳に入れましたが、まさかそこで何か粗相が?」

 

「いえ、素材は相場通りの価格で換金されました。

そして冒険者登録については私のレベルが163と前例の無いレベルで登録してしまった為冒険者ランクについて協会本部と会議で決まるとの事です。

それより私がこの場に赴いた理由はある事を許可して頂く為にあります」

 

領主はギルド協会の宿屋での事を既に耳に入れており、大きな港街ながら情報伝達が早いとエミルは感心しながら宿屋では何も問題は無かったと話した。

それよりも自身の目的、勇者勧誘の為にある事の許可を貰うべく来たと少し濁しながら話し領主の出方も伺っていた。

 

「え、えと、ある事とは………王女殿下には魔王討伐の勅命が国王陛下より承っておりますから………もしや、勇者の勧誘、でしょうか?」

 

「正解です。

私は国王陛下より魔王討伐の任をこの身に帯びました。

しかし矮小な私1人の存在では魔王討伐は絶対に叶いません。

其処で考えたのは、共に戦う真の勇者の勧誘です」

 

領主が必死になり頭の中で魔王討伐に必要な要素を知識の中から絞り出し、それが初代勇者ロアの血を引く勇者の存在であると言う答えに行き着く。

エミルはそれに正解を出し、自分1人では矮小で魔王討伐は叶わないと話し、その上で共に戦う勇者…但しエミルの中では単に勇者ロアの血を引くのみならず、真の優しさと勇気を兼ね備えた真の勇者の存在が必要だと領主に伝え、その固唾を飲ませた。

 

「真の勇者とは今は我々セレスティア王家にすら在処を秘匿され所在が分からない神剣ライブグリッターを振るい魔王を斃す存在です。

なので私は私の目で見定めた勇者を勧誘し、その勇者や恐らく今後旅やギルドで仲間になるであろう未だ見ぬ戦友(とも)達と共に魔王討伐を果たしたいのです」

 

「ライブグリッター…しかし、アレは名前だけで実際に見た者は居ないと」

 

エミルは領主に真の勇者と存在が名前のみになり在処が秘匿されたライブグリッターを求めている事を口にし、更にこれから先出会うであろう未だ見ぬ仲間と共に魔王討伐をしたいと熱弁していた。

しかし領主はライブグリッターは勇者や初代勇者パーティは存在すれど眉唾物だと口にしようとしながら汗を拭き始める。

 

「いえ、ライブグリッターは必ずこの世界に存在します!

何故ならフィールウッド国の王にして初代勇者パーティのエルフの賢王ロック国王陛下や予言者リリアナ様、更にドワーフの国、荒地と鉱山に囲まれた『ミスリラント』の職人王ゴッフ様までご健在で存在なされていますからライブグリッターも必ずやある筈なのです‼︎」

 

するとエミルはライラだった時代に確かにロアは天使からライブグリッターを授かり振るっていた場面を何度も記憶しており、それを初代勇者パーティの長寿組が未だ健在である事からライブグリッターも必ずあると逆説を唱えその熱意にリリアーデ領主は圧に押され座席に背中を押しつけてしまっていた。

 

「…つ、つまり王女殿下はライブグリッターは必ずあると確信し、それの担い手である勇者ロアの後継者を見い出したい、そう仰られているのですね?」

 

「はい、ですから私にギルド協会から冒険者ランクが下りるまでの間に私の身分やレベルを隠した上で『勇者勧誘所』を経営させて頂きたいのです。

既に勧誘所を建てる為の木材や椅子等も用意してあります、ですから後は領主様が全国に魔王を討伐する勇者勧誘中と言う情報を流し、勧誘所経営許可を下ろして頂きたいのです!

領主様、どうか、お願い致します‼︎」

 

領主はエミルの熱意によりライブグリッターは存在し、彼女はその担い手を探しているとしっかりと理解する。

そしてエミルは本題となる勇者勧誘所の経営許可を取得し、更に全国に勇者勧誘中の情報を流す様に説得を開始し勧誘所を建てるのに必要な木材や椅子等は既に自腹で用意していると話しその上で頭を下げてそれら全ての許可を取ろうとしていた。

そして、領主の答えは………。

 

「…分かりました、貴女様の熱意には負けました。

直ぐにエルフの建築士達を用意してその用意した木材で勧誘所を建てましょう、更に全国と言わずセレスティアやミスリラント、そして絶技の国『ヒノモト』にも情報を流し、魔王を討伐する為に勇者を勧誘する者が居る事を流布致しましょう!」

 

「あ、ありがとうございます、領主様‼︎」

 

領主はエミルの熱意の懇願に首を縦に振り、勇者勧誘所の経営許可やエルフの建築士に費用は領主持ちとなりながらフィールウッド国のみならず故郷のセレスティアやミスリラント、更には絶技の国として熟達の剣士や槍士、騎馬兵などが集うヒノモトと全世界に向けての情報流布をすると約束され、昼前に手続きを全て終えて勇者勧誘所の建築が始まり、更に小さな店と言う事で直ぐに終わり太陽の日が西に傾き始めた所で次に流布する内容の取り決めが始まった。

 

「先ず身分は隠すとして、どんな風に勧誘をするのでしょうか?」

 

「そうですね…内容は『世界を救いたい勇者よ集え!

今こそ君の勇気と力が必要な時が来た!

女魔法使いと共に魔王を倒そう‼︎』で如何でしょうか?

勿論女魔法使いの部分に引っかかったエセ勇者は最初の段階でお断りしますが。

あ、因みに私の容姿はこの帽子を深く被らせながら顔の上半分が見えないアングルで転写して下さい」

 

「はは…流布する内容にトラップを仕込むとは本気なんですねぇ」

 

流布する紙の広告内容には帽子を深々と被りながらも端正な容姿だとキチンと判る様に魔法で転写し、更にエミルの言った内容の文言を大きく書き女魔法使いの部分は黒字では無く赤字にして目立つ様にし、堂々とトラップが仕込まれた広告が出来上がりリリアーデから全世界へ転送魔法で流布が始まった。

因みにセレスティア国民も良く見なければエミルと分からず、一目でエミルと分かり更に広告に罠が仕掛けてある事を理解出来るのは家族のみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから翌日の朝。

エミルは勇者勧誘所で食事を摂り勇者が来ないかと待っていると早速ドアをノックする音が響いた。

 

「はい、入って下さい」

 

エミルは早速勧誘勇者候補が来たのだと思いドアを開けさせると、其処には金一色の防具を着た如何にも地雷系の男が立っていた。

 

「へ〜い、君が勇者を勧誘している子か〜い?」

 

「アーハイソウデスネ」

 

エミルは観察眼(アナライズ)職業(ジョブ)がちゃんと勇者だと見抜くが、レベルは57と及第点以下のチャランポラン臭が漂う男がいきなり来たと思い適当な対応をしていた。

 

「ああ〜声と絵を見た時から分かったよ〜、君は僕の運命の人なんだと〜。

さぁ〜、一緒に魔王を倒しに行こう」

 

「あ、私の容姿に惹かれて来た人は門前払いなんでお引き取り下さいませ。

私は簡単に靡かず、真の勇気と優しさ、強さを持つ真の勇者を求めてますので。

さあ回れ右してお引き取り下さいませ〜」

 

「ガァ〜ン辛辣ぅ〜‼︎」

 

そして早速容姿に惑わされてやって来たダメ勇者だと会話で判定して完全に話を聞く気も無く地雷勇者を門前払いして次の勇者候補が来るのを待った。

それから30分後、再びドアがノックされてエミルが入る様に促すと、其処には巨大な戰斧を携えた軽装の少女が立っていた。

 

「魔王討伐をしたいって言う魔法使いはアンタか?」

 

「はい、そうですよ」

 

「なら良かった、丁度刺激が欲しかった所なんだ。

魔王討伐なら願ったり叶ったりだよ」

 

その少女は観察眼(アナライズ)で間違い無く勇者であり、またレベルも先程のチャランポラン勇者の倍以上の135を叩き出し、明らかに多くの魔物を狩って来たと言う雰囲気を顔や腕等の傷から醸し出していた。

そして先程のチャランポランと違い容姿に惑わされて来た訳で無い為紅茶を出し、テーブルに座らせて対面面接を始める。

 

「…貴女は先程刺激が欲しかったと言いましたね?

つまり、戦う事その物を目的として旅をしてきたのですか?」

 

「ああそうさ、あたしの村は魔物に滅ぼされた。

それをキッカケに戦いを始めて、其処で初めて勇者だって分かってあたしは魔物共を狩って狩って狩って来た。

勿論復讐が全部じゃないけど、あたしは戦う為に生まれて来たんだって自覚してんのさ」

 

如何やら彼女は生い立ちから不幸な始まりを持ち、其処で復讐心から始まった戦いは何時しか戦いその物が目的と化した謂わばバトルマニアとなっているとエミルは判断する。

それらを聞き、この少女に真の優しさや勇気は備わっているか疑問に思うが、それでも質問を続けた。

 

「…では、貴女は弱き人々の事を如何思っていますか?

守りたいと思ったりしますか?」

 

「弱っちい奴は弱っちい奴、ただそれだけだよ。

まぁ目の前で死なれちゃ寝覚めが悪いから一応助けといてやるけど、それ以上の感情なんて持ち合わせてないね」

 

エミルは力無き弱く人を如何思うか少女に問うと、バトルマニアらしく興味が無い無いと言った様子で、しかし死なれたら寝覚めが悪いと話す事から多少の優しさはあるのだと分かった。

が、この性格からして態々弱き者を無茶して、しかし必ず助ける様なロアの様なお人好しの様な優しさと勇気は持ち合わせて無いと判断して溜め息を吐き目をジッと見ながら話を進める。

 

「貴女の考えは分かりました。

確かに貴女は多少は優しい方なのでしょう………けれど、真の勇者に相応しき真の優しさと勇気を持ち合わせていないと判断しました。

残念ですが、貴女と旅は出来ません」

 

「…真の優しさと勇気ね。

もしかしなくてもアンタ、伝説の神剣ライブグリッターを振るう勇者が欲しいんだろ、態々魔王討伐なんて大々的に広告してんだから。

だったら諦めなよ、今の世の中には戦う覚悟も無いチャランポラン自称勇者か、あたしみたいなバトルマニアな職業(ジョブ)としての勇者しか居ないよ」

 

エミルは戰斧の勇者に自分が求める真の勇者にはやや遠めな人物だとして共に旅する事は出来ないと話して頭を下げた。

すると少女勇者は神剣ライブグリッターの事を知っていたらしく、且つ今の時代には最初のチャランポラン勇者や自身の様なバトルマニアと言った職業(ジョブ)としての勇者しか居ない事を告げながら席を立つ。

 

「それでもこの勧誘を続けるならあたしは止めない、寧ろ頑張んなよ。

此れでも魔王に消えて欲しいのは本心だからさ。

終わりが見えない戦いってのもちょいと堪えるしさ。

だからアンタが求める本当の勇者、見つかると良いね」

 

「…はい、態々ご足労ありがとうございました」

 

そして去り際に少女勇者はこの勧誘自体は応援している事を話し、最後に労いの言葉をエミルに掛けて去って行った。

エミルも少女勇者に頭を下げて態々この場まで足を運んで来た事に礼を述べながら扉が完全に閉まるまで頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

それから2日後、エミルは3日間で何度も来る勇者に勧誘を試みているが矢張りあの少女勇者の言った様な職業(ジョブ)としての勇者しか居ない事を嫌と言う程痛感し、遂にギルドからの通達で明日には協議が終了すると来てタイムリミットが今日までしかなかった。

 

「はぁ、真の勇者が居ないと魔王討伐の確率が限り無く0に近くなるのに何でチャランポラン勇者やバトルマニア、復讐者の様な勇者しか居ないんだろう…。

やっぱり、ロアみたいな本当の優しさと勇気を持った勇者なんて奇跡みたいな存在だったのかな…」

 

エミルは卓に突っ伏しながらロアの様な真の勇者は居ないのだろうか?

あれは奇跡の存在だったのか?

そんな諦めムードが漂い飲んでいる紅茶も不味くなる程に打ち拉がれ最早これまでかと感じ始めていた。

 

『トン………トントン、トン…』

 

「あ、ノック…入って来てどうぞ〜」

 

するとドアから弱々しいが確かなノック音が響き、エミルは直ぐ様王族らしく正しい姿勢になりながら外に居る人物に入る様に促す。

 

「あ、あの、失礼、します…」

 

すると外から青髪の、少しボロボロな軽装の鎧と剣を携えたエミルと余り年齢が変わらない気が弱そうな少年が中に入って来た。

そしてエミルは直ぐに観察眼(アナライズ)を使いこの少年の職業(ジョブ)とレベルを調べる。

すると確かに職業(ジョブ)は勇者だが、レベルの方が異常だった。

 

「…えっ、レベル160⁉︎

凄い、今まで来た勇者の中で1番レベルが高いわよ君‼︎

さあ座って、何で此処に来たのか私に聞かせて‼︎」

 

「え、ええ⁉︎

僕が、1番………?

あ、あの、何かの間違いじゃ」

 

「間違いじゃないわ、実際観察眼(アナライズ)を使って測ってるんだから‼︎

ほら早く座って‼︎」

 

その気の弱い少年は見た目とは裏腹にレベル160とエミルと同等のレベルを誇るトンデモ少年であった。

当の少年は何かの間違いではと言うが、エミルは間違っていないとしてその少年を座らせ、話を聴き始める。

 

「あ、あの…僕は『ロマン』と言います。

此処に来た理由は、魔王を斃す勇者を求めていると知った、からです…」

 

「ロマン君ね、この広告で魔王討伐の方に着目したのはバトルマニアや復讐系勇者以外で君だけよ。

それで、何で魔王を斃そうと思ったの?」

 

少年の名はロマン、広告は魔王討伐に着目したとエミルの目を見ながら話し、彼は嘘を吐いていないと判断したエミルは何故魔王討伐をしようと思ったのか問い質してみた。

 

「あ、あの、僕はミスリラントの『アイアン村』って田舎の村に住んでいたんです。

其処はセレスティアとの国境が近いから、他の地域と比べて緑があって、僕は農家の子として生まれたん、です」

 

「アイアン村…確かに彼処はミスリラントの中で1番緑があって農業が盛んね。

カボチャが名物なのよね〜」

 

ロマンは先ず生まれ育ったアイアン村の農家の子として育っていた事を話し、エミルはそれに合わせてアイアン村の名物であるカボチャの話をしてアイアン村を知っているニュアンスで話しロマンが話し易い様に会話を運ぶ。

 

「は、はい、僕の家もカボチャを作ってて、それで村1番を取った事もあるんです!

…3歳頃の話、ですけど。

でも、僕は父さんと違って気が弱くて…元々絶技を使えたんですけどよくいじめっ子達の標的になってたんです…」

 

「そうなんだ…それでその後は?」

 

「それで6歳の頃にいじめっ子達の攻撃に反射で手を翳して、そしたら火球(ファイヤーボール)を撃ててしまって…それで、村で勇者だっていじめっ子からも持て囃される様になって…」

 

ロマンの話にエミルは相槌を打ちながら生い立ちを聴き出し、いじめられっ子だった過去も話した上で6歳の頃に無意識の抵抗で魔法を撃ててしまい勇者の血を引く者だといじめっ子からも持て囃される様になったと少し暗めな表情で話していた。

 

「(…そうよね、幼くして今までの環境が劇的に変化したのだもの。

その変化に付いて行けず今の様な気弱な性格のまま育つか天狗になるしかないもの)」

 

ロマンの話を聴きエミルは無理もないと思っていた。

6歳までいじめを受け、その多感な6歳の頃に勇者としての資質を見出してしまった事による環境の変化に幼い子が付いて行ける訳が無く今があると理解し、勇者の血を引くと言う事もある意味では呪いに近しい物だと此処で初めて気付くに至った。

 

「そ、それで父さんや母さんと一緒に魔法や絶技の練習をして、10歳にミスリラントの世界樹で修行を始めたんです。

初めは辛かったけれど、村の皆や父さんや母さんの期待を裏切りたくないから出来る限り頑張ったんです!」

 

「…君なりに頑張ったんだね」

 

そしてロマンは世界樹での修行を辛かったと話しつつ、皆の期待を裏切りたくない。

そんな気持ちで辛さも我慢して頑張ったのだと話しエミルもその努力の仕方を500年前の最初期のロアや教え子、更にカルロと言った人物達を思い出しながら更に話に耳を傾ける。

 

「で、でも12歳の時、世界樹の修行の最中に………『ミスリルゴーレム』が現れて、僕達は逃げようとして………でも逃げられずに、父さんや母さんが必死に抵抗したけど、体にヒビを入れるのがやっとで、それで僕は父さん達を守れずに…‼︎」

 

だがロマンの口から12歳の時にミスリルゴーレムに襲われ、両親の必死の抵抗も虚しく体にヒビを入れるのがやっとで蹂躙され、殺されたと話し始めた。

その表情は悲痛な物になり、涙すら流し当時の事を記憶から引き出していた。

 

「ミスリルゴーレム⁉︎

討伐推奨レベル130のゴーレム種の上位種…‼︎

そんな物が世界樹の周りに理由も無く現れるなんて…‼︎」

 

此処でエミルはミスリルゴーレムは金属、それも世界で2番目に硬く国名や魔物の名にもなっているミスリルを含む岩場の多い魔素の濃い場所にしか現れない上位種であると理解していた。

しかしミスリラントの世界樹は最南の世界樹でさえ金属を含む岩場が少なく現れてもアイアンゴーレム程度しか出ない筈である為、何か恣意的な物を感じ取っていた。

 

「それで、僕は父さん達を殺された事で頭の中がグチャグチャになって………気が付いた時には父さんの剣を持ってミスリルゴーレムの体のヒビを壊して倒してたんだ…。

でも、それが出来たなら僕がもっと早く、もっと上手くやっていれば…‼︎」

 

「…ミスリルゴーレムは文字通りミスリルで出来てる。

魔法の通りも悪いし倒すなら君のお父様がした様に体にヒビを入れて、其処を崩すか最上級魔法をぶつけるしか無いわ…慰めにもならないけど、君やご両親は勇敢で、特にご両親は君を生かす為に最善を尽くしたのよ」

 

そうしてロマンは気が付けばミスリルゴーレムを倒していたと話し、それをエミルは非情ながらもロマンやその両親の行動は勇敢であり今に繋がる事を口にする。

ロマンは顔を伏せながら涙を流し、未だこの両親の死を乗り越えられていないとエミルに見せていた。

 

「…それで僕は、村の皆に父さん達を弔って貰った後1人で旅に出て、それで今魔王討伐の紙を見て此処に…」

 

「…待って、君は今まで1人旅だったの?

なのにそんなレベルに?」

 

「ううん、僕は…弱虫で何時も邪魔だからパーティから追い出されて、それでつい2日前もレベリングを切り上げようって話したらパーティから…。

何時もレベリングは危険だから長い時間は止めようって言っただけで…」

 

ロマンは両親を弔った後は旅に出ていたと話し、エミルはもしや1人旅だったのかと問うと如何やらレベリングの話で意見がすれ違い何度もパーティを追い出されていると話していた。

これを聞いたエミルは、レベリングが危険だと弱気ながらも進言する『勇気』と皆の疲労等を気遣う『優しさ』があると言う見方が出来る事が分かり、最後に弱き人々を如何思うかを聞こうとした。

 

「ねえロマン、君は…」

 

『大変だぁぁぁぁ‼︎

海からミニクラーケンの群れが出たぁぁ‼︎』

 

「なっ、街には魔物避けの結界がある筈なのに何で魔物が⁉︎」

 

エミルが最後の問い掛けをしようとした瞬間、

外からミニクラーケンの群れが現れたと言う叫び声が響く。

エミルやロマンは街や村と言った生活圏にはギルド所属のレベル100オーバーの魔法使いが魔物避けの結界を張り、魔素が濃くても魔物が近付き難い様にしている筈なのに魔物が侵入した事に驚き外に飛び出た。

 

「あっ‼︎」

 

その時2人の目に転んだ子供を庇う母親がミニクラーケンに襲われそうになっている光景が映り急いで助けねば2人の生命が失われると確信し行動に移り始める。

 

「うおぁぁぁ、間に合えぇぇぇぇぇ‼︎」

 

【キィィィィィン‼︎】

 

先ずロマンがワンタッチの差で動き身体強化(ボディバフ)の魔法で親子の目の前に素早く立ち『結界魔法(シールドマジック)』を使いミニクラーケンの攻撃を防ぎ、そのか弱き生命を守り抜く。

 

「『風刃(ウインドスラッシュ)』‼︎」

 

次にエミルが港に上がったミニクラーケンに風の下級魔法の風刃(ウインドスラッシュ)で小さな鎌鼬を発生させ切り裂き、ロマンの目の前のミニクラーケンも倒し親子の逃げ道を確保する。

 

「さあ早く逃げて‼︎」

 

「は、はい‼︎」

 

【タッタッタッタッ!】

 

「…よし、行ったね。

行くぞ魔物達、僕達が相手だ‼︎

『疾風剣』‼︎

はぁぁぁぁ‼︎」

 

ロマンは逃げ遅れた親子が屋内に避難したのを確認するとミニクラーケンの群れに風の下位絶技で素早く斬り裂き、魔物を海鮮料理の具材に瞬く間に変える。

 

「私の目から逃れられない…喰らいなさい、大水流(タイダルウェイブ)乱風束(バインドストーム)‼︎」

 

次にエミルは港の船着場まで移動し、『透視(クリアアイ)』と観察眼(アナライズ)の併用で海の中に居るミニクラーケンを全て捉え、水の最上級魔法で1ヶ所に集めた後風の最上級魔法で海水と共に巻き上げながら斬り裂き、風と水の渦によりミニクラーケンを全て内部に閉じ込める。

 

「今よ、雷で合わせて‼︎

極雷破(サンダーブラスト)』‼︎」

 

「分かったよ、『極雷剣』‼︎」

 

【ズガァァァァンッ‼︎】

 

そして2人は最後に風の派生属性、雷の上級魔法と上位絶技を合わせて放ち、宙に浮く渦の内部に居たミニクラーケンは2つの巨大な極雷を水の浸透により全個体感電、丸焦げにして倒す。

そして渦が消えた瞬間焦げたミニクラーケンは全て海に落ちて行き、屋内の窓から外を見ていた港街の人々はロマンが助けた親子含め歓声を上げ港街を守り抜いた2人を讃えた。

 

「ああ、皆無事みたいだ、良かったぁ…!」

 

「(…勇者ロマン、この人はあの親子を守る為に飛び出して、そして見事に救い出した。

全く、大変無茶な事をしでかすわね………でも、あの親子を、街を守る事は無理じゃ無かった。

恐らく私が居なくてもこの人は街を守り切れた…その普段の気弱さから考えられない決断力…勇気、そして他者を守る優しさで…私が聞かずともそれを行動で指し示した。

なら私の聞く事は…)」

 

ロマンは周りを見て街の人々が全員無事である事を確認すると良かったと呟き、本心から赤の他人達の無事を喜んでいた。

一方エミルはこの港にもしも自分が居らず、彼だけが居たとしてもリリアーデ港街を守り抜いた筈だと思っていた。

そう、普段の気弱さから考えられない勇気と他者を無茶してでも守る優しさを兼ね備えて。

それを行動で示されたエミルは最後の質問内容を変更し、今この場で問い質し始める。

 

「…ロマン君、君にとって魔王って如何言う存在?

憎い敵?

ご両親の仇?」

 

「えっ…?

………正直、分からないです。

確かに僕の親は魔物に殺され、僕は今勇者として魔王討伐を目指してます。

でも………憎く無いと言えば嘘になりますけど、僕は魔王がどんな存在なのか、何故こんな理不尽な事を生み出すのか知りたいです。

そして…それが如何しようもない理由で戦う事を避けられないなら、僕は勇者として魔王を倒したいです!

そうすれば、少なくても僕みたいな思いをする人が居なくなる…期待を掛けてくれた皆を、裏切らずに済みますから…‼︎」

 

エミルは最後か質問として魔王とは何なのかを問うと、ロマンは憎しみは無いとは言い切れないが戦いが避けられないなら倒したい。

そうすれば自身の様な想いをせず、またこんな自分に期待を込めてくれた皆の想いを裏切らずに済むと答え、前を向きながら、エミルの目を見ながら全てを打ち明けた。

 

「(…凄い、凄いよこの子は!

そうだ、この子こそが私の探していた…‼︎)」

 

それを聞いたエミルは彼が如何答えるか予想し、その期待以上の答えを以て返したのだ。

何故ならば………エミル自身も見た事の無い『魔王』と話し合いで解決出来るならそうしたいと言う他人からは甘い、理解出来ないと言われる考えを示したのだ。

しかしエミルは、それを無益な争いを好まない優しさから来る憎しみを超えた勇気の決断なのだと思い知り、彼女は確信する。

この少年こそが自分が探していた『真の勇者』なのだと。

 

「…ロマン君、確かに魔王は初代勇者ロア様やセレスティア王国初代女王陛下のライラ様達の力を以てしても魔界に踏み入る事が出来ず、地上界の復興を何より優先して、そしてライラ様は門を閉じ生命を落とした事でどんな存在かも未だ謎に包まれています。

けれど、魔族に関しては人間やドワーフ、エルフみたいに色んな者が居る事は知られてます。

正々堂々を好む者、卑劣を好む者など…でも、その何もが地上界との戦いは避けられないと、500年前から遺された書物に記されています」

 

エミルはライラの時代から魔王は居るとされたが自分達が終ぞ見えずに終わった事や、その目で見て来た様々な魔族について思い返しそれを書物に記されていたと若干の嘘を交えながら事実を話して行く。

 

「更にその魔族達は皆一様に『全ては魔王様の意向の下に』と言う思想統一されていて、地上界の侵略を緩める事は無かったのです。

だから多分、魔王と話し合いでこの戦いを解決する事は難しいと思われます」

 

「…そう、ですか」

 

「でも、君…ううん、貴方様が無益な争いを好まない優しい性格といざと言う時に自ら苦難に飛び込む勇気の持ち主だと、私セレスティア王国第2王女エミルは見届けました!」

 

そして魔族は全て思想統一が為されており、地上界の侵略の手を緩める事は一切無かった事を話しつつ、しかしロマンは自分が求めた優しさと勇気を兼ね備えた真の勇者、ロアの再来だと確信を持ちながらエミルは自らの身分を明かし、ロマンのそれを見届けたと高らかに声を上げる。

 

「え、ええ⁉︎

セ、セレスティア王国の、第2王女様⁉︎」

 

「はい、身分を隠し、実力すら隠しながら勧誘をしていた無礼をお許し下さい。

こうでもしないと相手が萎縮し、その方の素顔を、人格を見れないと思い隠していたのです。

そしてその中で、貴方は私にロア様の再来だと確信を持たせる物を行動で指し示しました」

 

ロマンはエミルがセレスティア王国の王女だと知り驚くと、エミルは身分を隠し自身のレベルまで隠さなければ対面する勇者の素顔や素の性格を見られなかったと話す。

そして無礼を詫びながら頭を下げて、且つロマンこそがロアの再来だと確信を持ったと口にした。

 

「僕が、ロア様の………?」

 

「はい、実感は持てないでしょうが少なくとも私はそう確信を持ちました。

なので、共に魔王を討伐する旅に付いて来て貰えませんか?」

 

エミルはロマンの事を高く評価し、少なくとも自分はロアの再来だと信じて疑わないと話しながら魔王討伐の旅に付いて来て欲しいと再び頭を下げた後同意の握手を求めた。

 

「…あの、突然王女様だとか、初代様の再来だとか頭が追い付かないですけど、もしこんな僕で良いのでしたら、どうかその旅に同行させて下さい………王女様…」

 

「エミルで結構ですよ。

私もロマン君と呼びますから」

 

そうしてロマンは突然ロアの再来だと言われた事や目の前の少女が王女様だと驚きながらも、この500年も続く恐怖との戦いに終止符を打てるならと思い、エミルの求めた握手を優しく握り返してその旅に同行する事に決めた。

 

「(…ああ、転生して良かった…この時代に…こんな強くて優しい子が居る世界に…)」

 

こうしてエミルは勇者ロマンと言う魔王討伐の最大戦力にして最高の仲間に早速出会い、自分はこの時代に転生して良かったと思いながら長いのか短いのか、兎に角体感時間は長い握手を交わしてロマンの様な優しい者と共に魔王討伐の旅をする事を喜ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや、勇者募集中と言う紙を見てリリアーデに魔物を適当に放ったが、如何やら圧倒的な力量差で制圧され返されたらしいなぁ」

 

「………」

 

エミルとロマンがリリアーデの街を守った同時刻、肌が褐色色で額に赤い水晶が付き、漆黒色の鎧や軽装を纏う紅目の2人組の男女が港街を見渡せる空の上で見ながら男は嘲笑し、女は黙ってそれを見ていた。

 

「さて如何するかな『シエル』?

今ならあの2人を我々2人なら殺せるが?」

 

「…今は大した脅威と感じられない、お前が倒されれば話は別になるがな、『アギラ』」

 

「ほう…流石は『魔族』1の剣士様は余裕な事で。

では私は臆病なので他の地上界に潜伏した魔族達にあの2人の脅威を伝えて来るよ。

何せ、あの勇者…ロマンと言う小僧やあの魔法使いは我等魔族にとって危険な存在だからなぁ」

 

互いにアギラ、シエルと呼ばれた者…魔物の創造主にして操りし者、魔族の2人は互いに意見を食い違わせ、アギラはエミルとロマンの実力を脅威と見做し他の魔族達に報告するべく転移魔法(ディメンションマジック)でその場から去る。

 

「………そう、今は脅威などでは無い。

けれど、もしかしたら………」

 

アルスが消えた後シエルはエミルとロマンの2人を見ながら何かを考える素振りを見せ、そしてアギラと同様に何処かへと転移し、

その場に静寂が訪れた。

そしてそんな魔族が居た事を、誰も知る由が無かった………




此処までの閲覧ありがとうございました。
もう1人の主人公、ロマンは弱気な勇者と少し勇者としては腰が引けた子ですが、いざと言う時は自ら苦難に立ち向かう勇気や弱き人々を無茶を押し通してでも守ろうとする優しさがある子です。
そんなロマンがエミルと如何に絡み、そしてどんな冒険譚を紡ぐのかお楽しみ下さいませ。

次回もよろしくお願い致します。


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第5話『エミル、糾弾する』

皆様おはようございます、第5話目更新でございます。
今回はタイトルにある様な行動をエミルが取ります。
では、本編へどうぞ。


エミルとロマンがリリアーデ港街を守った日の夜、宿屋ではエミルとロマンの活躍を祝う為に宴会が開かれ、2人は中央席でぶどうジュース(※本当にただのジュース)をジョッキに注ぎながら、周りがガヤガヤと飲み食いする中でエミルは王族らしくテーブルマナーを守りながら食事をしていた。

 

「あの、エミルさ…エ、エミル。

やっぱり王族なのにこんなどんちゃん騒ぎな宴会って馴染まない…よね?」

 

「いいえ、こう言った祝杯はどの様な形であれ私は大好きよ。

勿論私は王族として、お父様達の品位を落とさない様にマナーを守りながらの参加になりますがね。

それよりエミル君も一杯食べて一杯飲んで下さいな。

折角の祝杯です、楽しまなきゃ損しか無いのよ?」

 

「あ…う、うん、分かったよ」

 

ロマンはエミルがテーブルマナーを守りながら食事をする事に窮屈なのではと感じたが、それは王族らしく振る舞う為に仕方無い事であると言われた後にテーブルにまた料理が運ばれて来てエミルはロマンに沢山食べる様に促し、ロマンもこれ以上は宴会に無粋だとして運ばれて来た料理を食べていた。

 

「それにしても前のパーティはロマン君を追い出した上に食糧もお金も与えずに何処かに行ってしまうなんて如何かしてますね。

それでロマン君が死んでしまったら世界の大損失所では無いのに」

 

「あ、あはは…でも、川の水とかを飲みながら此処まで来れて、それで外に張り紙であの広告を見たからエミルと出会えたから、ある意味では追い出されたのも悪くない…かも?」

 

「ロマン君、それ悪い意味しか無いよ」

 

するとエミルはロマンを追い出した前の冒険者パーティの事を話し始め、金も食糧も与えずに追い出した為ロマンがもし道端で飢え死んだら如何するのかと不満を漏らす。

だが追い出されたロマン本人はそれがきっかけでエミルと出会えた為ある意味良かったと話してた…が、矢張りエミルには悪い意味しか見出せない為ぶどうジュースを飲みながら次の食事に手を付け始めた。

 

『バタンッ‼︎』

 

「おうおうおう、何か楽しそうな宴会やってんじゃないか‼︎

俺等も混ぜろよ〜!」

 

すると宿屋の戸を勢い良く開けて、外から平均レベル97の剣士、剣士の腰巾着なシーフ、荷物を持たされてる魔法使いの少女、見た目から明らかにギャランと同類の女戦士と言った柄の悪いパーティと付き合わされてる1名が宿屋内に入り周りを見渡し宴会に混ぜろとリーダーの剣士が言い放って来た。

 

「あ、『ギャラン』達だ…」

 

「もしかして、2日前にロマン君を前に追い出したパーティ?」

 

「…うん」

 

ロマンはリーダー格の剣士、ギャランとその仲間を見て萎縮し、それを見たエミルは敢えて彼に2日前に食糧を渡さず追い出したパーティなのかと問う。

するとロマンは小さく頷きながら肯定し、エミルは面倒な事になったと認識していた。

 

「おっ、彼処に居るのは役立たずのロマンじゃねぇか!

おいお前等、彼処に弱虫君が居るから行こうぜ〜‼︎」

 

「あっはは、何か女の子の魔法使いと一緒にチビチビと食べてるし仲間外れの慰め合いかなぁ?」

 

「いやマジウケるわ」

 

するとギャランは仲間の女戦士とシーフに声を掛けてエミル達の席まで歩いて来る。

するとギャランは料理が置かれているテーブルの腰を付けると言うあり得ない行為に出て、取り巻きの2人はロマンを囲み魔法使いの少女はオドオドとしながら荷物を置きながらエミルの側までやって来た。

 

「ようようようロマンくぅ〜ん?

よく食糧も金も無く此処まで来てこの女魔法使いちゃんに集ってるなぁ?

やっぱ役立たずは役立たず、この嬢ちゃんに土下座でもしてご飯を食べさせて貰ってるのかぁ〜?」

 

『ギャハハハハハハハハ‼︎』

 

ギャランと2人の仲間はロマンに絡み付き、ロマンの事をやれ役立たず、エミルに土下座して食べさせて貰ってる等俗な笑みを上げていた。

一方エミルや宿屋に居る面々は宴会の主役の1人がこうも悪口を言われていては気分も悪く、更にエミルはギャランを『見た事がある』為尚更悪感情を抱いていた。

 

「あ、あの、ギャランさん、マナーが悪いです」

 

「あぁん何だぁ荷物持ちぃ‼︎」

 

「ひっ‼︎」

 

すると魔法使いの少女がギャランに意見を出すが、ギャランは威圧してそれを黙らせてしまう。

エミルは理解した、この魔法使いの少女もロマンの様にカースト制を敷かれ、ギャラン達に奴隷以下の扱いを受けているのだと頭の中で図式が出来上がった。

 

「ギャ、ギャラン、『キャシー』に僕が居た時以上の酷い事をしてるの⁉︎

そ、そんなの本当に酷いよ…!」

 

「あぁん何だぁ‼︎

一丁前にレベルだけ160とか行ってるだけの金食い虫が‼︎

てめぇはもう俺達のパーティから追い出されてんだよ、何も言う権利なんざ無いぜ‼︎」

 

「そんなの、可笑しいって‼︎

大体、キャシーは2日前に見た時より肌荒れしてるし目に隈が出来てるじゃないか‼︎

い、幾らもう追い出されて無関係な僕でもこんなのは異常だって言い続けるよ‼︎」

 

ロマンはキャシーと言う魔法使いの少女の状態が自身が居た時よりも明らかに酷くなっている事をギャランに糾弾するが、当のギャランやその仲間2人はロマンに嫌味な表情で睨み付けながら無関係な奴は出しゃばるなと言った文言を飛ばす。

しかしロマンは弱気ながらも持って生まれた優しさからかキャシーを庇い続ける様に叫びながら席を立ち、ギャラン達が異常だと言い放つ。

 

「ったく、これだから田舎村の勇者様は…」

 

「おほん、失礼ですがセレスティア王国『ベヘルット侯爵家』の『ロード』・ベヘルット侯爵様、テーブルには料理が置かれており座る場所ではありません。

そしてパーティメンバーの酷使や不当な締め出しはギルド協会から禁止されている行為ですよ。

なので侯爵家の家門に泥を塗る様な行為はお止め下さいませんか?」

 

ギャランはロマンの正義感にうんざりしながら田舎村の勇者如きと愚弄していた。

そうしてこれ等一連のギャラン達の蛮行に遂にエミルは動き出し、ギャランの一族であるベヘルット侯爵家の名を出しながらテーブルマナーやギルド協会で禁止されている行為を口に出し注意する。

 

「あぁ!

何なんだてめぇは‼︎

俺は侯爵家の息子なんだ、金さえ払えば何だって許されるんだよ‼︎

それが分かって俺に指図してるのかぁこの田舎の魔法使い如きが‼︎」

 

「…あちゃ〜…」

 

するとギャランはエミルの注意に侯爵家だから金さえ払えば全てが許されると高らかに叫び、彼女を指差しながら身分の差があると言わんばかりに罵声を浴びせる。

すると周りに居た冒険者の1人がやってしまったと言わんばかりにあちゃ〜と呟き、目の前に居るロマンは穏便に済めばそれで良かったのに地雷を踏み抜いたとして顔を伏せて後はエミル側に全てを委ねると言った姿勢を見せた。

 

「あら、田舎娘で申し訳ありませんロード・ベヘルット侯爵様。

そう言えば、私はこう言った者なのですが、失礼ながらこの勅令書を一読下さいませ」

 

「あ、ああ?

ちょ、勅令書?

………な、な、セ、セレスティア第2王女エミル殿下……⁉︎」

 

『えっ⁉︎』

 

エミルはロマンの態度を見てこの蛮行に終わりを告げよう、そう決意した瞬間勅令書をギャランに見せ、その内容を一読させた。

そしてギャランは自分の侯爵家より遥か上の王族の姫に喧嘩を売ってしまったと知り血の気が引いて行き、更に取り巻き2人もギャランの口から出た王女殿下と言う単語に同様に青褪めてしまい、3人でガタガタと震え始めてしまう。

 

「お金で全てが許される、その愚考でギルド協会の敷いたルールを無視し、パーティメンバーを奴隷よりも酷な扱いをし、この祝杯の場でテーブルに腰を付け料理を台無しにし、挙句私の仲間であり友であるロマン君に罵声を浴びせた…。

私に罵声を浴びせるのは結構ですが、それ等の蛮行は無視出来ません。

受付嬢さん、『ギルドナイト』をお呼び下さい‼︎

セレスティア王国第2王女エミルの名の下に彼等に拘束命令を出します‼︎」

 

「は、はい、承りました‼︎」

 

「あちょ、あっ‼︎」

 

エミルは自らが見聞きしたギャラン達3人の蛮行に遂に自らの名の下に冒険者ギルド協会の法の番人ギルドナイトを受付嬢に呼び寄せる様に命じ、受付嬢もそれを聞きギャランの声になってない静止を無視して宿屋の奥へと走り出す。

そして取り巻き2人は旗色が悪くなった為声を出さずに逃げようとしたが、周りの冒険者達にギャラン毎拘束されてしまう。

 

「ち、畜生、何で、何で…‼︎」

 

「何故こうなったか分からない様でしたら牢の中でじっくりと考え、そして2度と同じ事を繰り返さぬ事です。

最も、この様な状況では冒険者ランク剥奪、そしてベヘルット侯爵殿まで貴方の不祥事を財力で黙殺していたのならベヘルット侯爵家は爵位剥奪も免れないでしょう。

であるなら、貴方達が見下した者達と同じ目線に立ち自分達の罪を懺悔なさい」

 

頭の中が真っ白になり、テーブルから退かされ床に膝を突くギャランにエミルは王族としての立場から彼が見下した者達と同じ目線に立ち懺悔する様に、またベヘルット侯爵家は爵位剥奪は間違い無いとも言い全てを失いながら罪を償う事になると暗に告げた。

そして程無くギルドナイトが転移魔法(ディメンションマジック)で到着し、ギャラン達3人を捕らえて協会本部に連行して行った。

 

「…エミル、君はやっぱり本物の王女様なんだね」

 

「ふう、出来ればこんな事したくないのよ。

王族としてマナーを守る程度ならまだしも、今みたいな王族の名の下に引っ捕らえよ〜とか色々苦手な物が多いんだから…」

 

ロマンはエミルが改めて本物の王女だと思い知り、キャシーを救った事やこんな自分の為に怒ってくれた事を感謝していた。

しかしエミルは社交辞令や今の様な物は大変苦手であり、それは寧ろアルクやレオナ達兄姉達の分野である為ドッと汗を流しながら椅子にゆっくり腰を付けていた。

 

「あ、あの、エミル王女殿下、この度は私をお救い頂き誠にありがとうございました。

この御恩は一生」

 

「あ〜、そう言った物は大丈夫よ気にしなくて。

それより、私に恩を感じたのなら貴女の目で、耳で、手で、足で、貴女の知らない世界を冒険して。

そして何時か再会した時に私にそのお話を聴かせて、貴女の冒険譚を。

それが私が貴女に求める物よキャシーちゃん」

 

するとキャシーはエミルに恩を感じ一生忘れないと言おうとした所、当のエミルはキャシーに何かの恩返しは求めず、それよりもキャシーが自ら描く冒険譚を何時の日か聴かせて欲しいと言い握手を求めた。

 

「…うう、はい、王女様。

私、未だ知らない物を見て聞いて何時の日か王女様にそれ等をお話致したいです…‼︎」

 

その瞬間キャシーの涙腺は決壊し、止めどなく涙が溢れながらエミルに冒険譚を聴かせる約束を握手しながら交わした。

 

「じゃあ次からはあんな連中みたいなのには引っ掛からずちゃんとした冒険者パーティメンバーと一緒に冒険してねキャシーちゃん。

幸い貴女のレベルは92だし、あんなの以外の何処のパーティでもやっていけるよ」

 

「はい…はい…‼︎」

 

「………うん、これならキャシーは新しい道を進められるね。

ありがとう、エミル」

 

次にエミルはキャシーにギャラン達の様な悪徳パーティに引っ掛からない様に注意し、更にレベルは92と英雄と呼ばれる領域に近い為何処でも上手くやって行けると話して自信を持たせる。

キャシーもこれに懲りて人選びはしっかりしようと気を付けると心掛け、ロマンも自分が追い出されてから気掛かりだったキャシーがこれからは真っ当なパーティと共に冒険や魔物退治をする未来図を浮かべ、エミルにありがとうと告げるのであった。

そのエミルはロマンの言葉にサムズアップで返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから翌日、エミルの下に転送魔法(トランサーマジック)でベヘルット侯爵家の爵位剥奪が早急に行われた事や、ギャラン達が今まで行って来た悪事により冒険者ランクも剥奪、冒険者ギルド協会から永久追放になったと書簡が送られて来ていた。

それをロマンにも見せロマンもこれでキャシーみたいな子が減る事に繋がればと考えていた。

 

「そう言えばロマン君、貴方が追い出された冒険者パーティって他にもあるんだよね?

それを訴えるって事は?」

 

「ううん良いんだ、特に酷かったギャラン達と違って他は僕だけが追い出されて、キャシーみたいな子は居なかったから…。

それに話し合いで決まった事だし、彼等が何処に居るか僕には分からない上に訴える気は無いから…」

 

「…そっか。

ロマン君が良いならそれで良いんだけど」

 

エミルは他のロマンを追い出したパーティを問い質すと、当の本人は他のパーティはギャラン達程では無いと伝え、そして自分だけがそんな扱いなら幾らでも我慢出来る為今回はキャシーを救おうと動いたのだ。

更にロマンは自分を追い出したギャラン達より前のパーティ達は今何をしているのかも分からないと伝えてそれ以上は求めないと言う雰囲気を出し、エミルもロマンがそれでOKならと言いながら1階へ降りた。

 

「あ、エミル王女殿下!

おはようございます!」

 

「受付嬢さんおはようございます。

…そう言えばキャシーちゃんは何処に?」

 

「はい、実は朝早く祝杯の場でギャラン一行を取り押さえてくれたパーティに引き取られてそのまま旅立ちました。

そのパーティはこのフィールウッド国で有名な冒険者達の集まりで、決してギャランパーティの様な事にはならない事を私が保証致します」

 

1階へ降りたエミルは受付嬢からキャシーのその後を聞き、どうやら有名冒険者パーティに引き取られたらしい。

この受付嬢が確実に信頼出来ると其処まで太鼓判を押すなら信じる事にし、キャシーの未来に幸がある事を祈っていた。

 

「あ、それとエミル王女殿下の冒険者ランクの協議が終わり、冒険者ランクの紙が本部から送られて来ました!」

 

「あ、そう言えば色々あり過ぎたから自分の冒険者ランクの事を忘れてた!

それで、冒険者ランクはどの位になりましたか?」

 

「ふふ、それはですね………今のエミルさんと同じBランクからスタートになりました‼︎

此処から依頼を熟して、Aランクまで如何か無理なく頑張って下さいませ‼︎」

 

そしてエミルの冒険者ランクも決まった事が受付嬢から告知され、ミニクラーケン襲撃やギャランパーティの拘束等ですっかり忘れていたランクの是非を聞くと、エミルは今のロマンと同じBランクからスタートとなり手渡された魔法紙(マナシート)にもそう書かれていた。

 

「Bランク…最高ランクであるAの、一個下…〜〜っ‼︎」

 

エミルはそれを見て早速Bランクから始まる事に心が躍り、魔法紙を魔法袋(マナポーチ)に収納し、エミルはロマンに手を翳し、ロマンも何かとそれに合わせるとエミルからハイタッチをして爛漫な笑顔を見せていた。

 

「では、今後ともギルド協会をご利用下さいませ!

ギルド協会の違反事項は敢えて説明致しますが、渡した魔法紙(マナシート)に記載されていますので違反しない様にご注意下さいませ」

 

「大丈夫ですよ、ルールを守って無茶はしても無理はしないが私の信条ですから!

じゃあロマン君、早速防具屋に行って防具を新調しよう!

大丈夫、私まだ400万G(ゴールド)以上残っているから‼︎」

 

「あ、ちょ、エミルゥ⁉︎」

 

受付嬢の違反事項の敢えての説明に先程の無茶せずと言う言葉と一緒にエミルはルールを守り、無茶はしても無理はしないと信条を語った後ロマンの手を引き防具屋でボロボロなロマンの防具を新調しようと言う話になる。

そんな押しの強いエミルにロマンはタジタジになりながら手を引かれ、宿屋から外へと出て行った。

 

「………新たな冒険者に幸があらん事を」

 

その後ろ姿を見ていた受付嬢は150年この仕事をして来た中で初めて現れる嵐の様に激しく、しかし花の様に美しい新人冒険者にその旅路………魔王討伐と言うとてつも無く大きな使命を帯びた魔法王女とその王女が見出した勇者。

この2人の行く末に幸多き事を祈りながら扉が閉まる寸前に頭を下げてその去り際を見送るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからエミルとロマンは、エミルがミスリルローブを買った武器屋兼防具屋に立ち寄り、早速品定めを始めていた。

 

「うーん中々見つからないなぁ…これでもあれでも無いし…」

 

「えっと、エミルは何を探してるの?」

 

「えっ、それは勿論職人王ゴッフ一門が作り上げた武器と防具だよ。

ほら、君の剣や防具に同じシンプルな金槌の紋様があるでしょ?

これが初代勇者パーティの一員で伝説として語られる武具を数多く作り出したドワーフの王様の使う紋様なんだよ。

まぁ職人王様自体は300年前に弟子を漸く取って引退したって各国情勢の授業で教わったけどね」

 

ロマンはエミルが何を探しているのかを問うと、本人はロマンの武器や防具にあるシンプルな金槌の紋様の物を探しているらしく、それはミスリラントの職人王ゴッフとその弟子が作り上げた物と聞きそれを知らなかったロマンは驚いていた。

 

「えっ、この剣や防具があのゴッフ様とそのお弟子様が作り上げた物なの⁉︎

…このミスリルソードは父さんの形見で、それと同じ紋様の物を自然と選んでいたんだけど…」

 

ロマンは父の形見のミスリルソードがそんな由緒正しい物と知らず驚き、更に同じ紋様の防具は確かに他より値段が高かったが身体に馴染む様な感覚があった為気にせず買っていた為再びタジタジになっていた。

ギャランが金食い虫発言をした理由とは恐らくゴッフ一門の防具を買っていた事が一因だとロマンは知り、しかしそれでもギャラン達のやり方は許せなかった為同情は出来なかった。

 

「成る程ね〜…っと、漸く見つけた‼︎

ゴッフ一門作ミスリル製戦士用防具‼︎

お値段何と20万G(ゴールド)‼︎

まぁ、やっぱり値段は張るけどこれ位の価値が無いと可笑しい、それがゴッフ一門の武具‼︎」

 

「おっ、やっぱりまたゴッフ様とそのお弟子さんの防具を買うのかい王女殿下!

なら勇者君のサイズに仕立てて………今なら街を救ってくれたりあの柄が悪い冒険者に一泡吹かせた事にサービスして出血大サービス20%オフの16万G(ゴールド)だ‼︎」

 

エミルはロマンの剣が父親の形見と知り、ならこの後『やる事』には使ってはならないと思いながらも遂にゴッフ一門作の戦士用ミスリル製防具一式を発見し、それをレジに提示すると店長はロマンの身長に合うサイズを仕立てた上で、街をミニクラーケンから救った英雄とギャランパーティを永久追放した事にサービスして16万G(ゴールド)で売ると宣言する。

 

「おっとそんなにサービスしてくれますか…ならはい、20万G(ゴールド)払ってお釣りは要らないよ!」

 

「って元の相場のままじゃないかーい!」

 

エミルは王女と言う事や街を救った事は兎も角ギャランパーティの件までこの店に伝わってる事を知り、この分では街中にギャラン達が冒険者ギルドから永久追放された事が広まってると思いつつ、其処までサービスされると逆に買うのが退けてしまう為か元の相場のお金を支払い釣りは要らないと話しながら防具を持ち着替え室にロマンを入れる。

 

「さあ、宿屋で洗濯された私服に新品の防具を着て私に見せて!」

 

「う、うん…よーし、袖を通して…」

 

エミルはカーテン越しにロマンのボロボロになってたが洗濯して綺麗になった私服に新調された防具が装備された所を見せてと頼み、ロマンはそれに応えてレギンスやガントレット、無駄に重く無くしかし防御力が高いアーマーや盾を装備し始める。

 

「(…うん、やっぱり駄目だよね)」

 

するとエミルはロマンのある言葉からこれから直ぐに実行しようとする事に、一部許容出来ない物が出来たと脳裏で考えそしてその案に静かに修正を行い、更にその先の旅路の道筋にも変更点を付け加えて行く。

そしてエミルが思案し終わると同時にロマンの着替え終わりその姿を見せる。

 

「わぁ、やっぱり似合う!

私の見立ては確かだった!」

 

ロマンは青と白を基調とした私服にミスリル製の防具一式を装備させ、丁度エミルの赤と黒を基調としたミスリルローブと対になる色合いとなり更に元々容姿は並以上だったロマンにしっかりとした防具が合わさり、未だ弱気に見えるがそれでも新調前の時よりも格好良くなったとエミルは思っていた。

 

「んじゃお古の防具は俺が引き取らせて貰うから、魔王討伐の旅に最初に買った防具は此処で買ったって事を2人共覚えてくれよな‼︎」

 

「は、はい、こんな素敵な防具ありがとうございます‼︎」

 

「それじゃあおじさん、またリリアーデに来たらお世話になるからその時もよろしくお願いしますね!」

 

そして店主はロマンのボロボロになっていた古い防具を引き取り、2人に魔王討伐の旅に初めて立ち寄った店である事を覚える様に頼みながら見送る。

それをロマンはこの防具を仕立ててくれた事に礼を述べ、エミルはまたリリアーデに立ち寄った時は立ち寄ると約束をして店の外に出て港前まで移動する。

 

「さてと、此処まで移動したらロマン君、少し道の端に寄って動かないでね」

 

「えっ、う、うん」

 

するとエミルはロマンを道の端に立たせて動かない様に指示し、ロマンは素直にそれを聞いてジッと立つとエミルは杖を掲げ体内魔力を活性化させ、足下に魔法陣が現れる。

 

「じゃあ、ロマン君の防具一式に軽量化、防御力アップ、魔法ダメージ減衰魔法祝印(エンチャント)の3種を最大限のIV、刻みま〜す‼︎」

 

「えっ、わぁ!」

 

するとエミルはロマンの防具全てに3種類の魔法祝印(エンチャント)を掛け、防具に3つの印が刻まれる。

この支援魔法は武器や防具に様々な効果をI〜IVまでの効力で付与する物である。

IとIIは例えば防御力アップ効果を引き出す代わりに重量増加デバフも掛かる様になるが、IIIからデバフ効果が消え、最大のIVになればIIIの効果量を上回る効力を発揮するのだ。

 

「す、凄い…魔法祝印(エンチャント)のIVの3種類を複数の物に同時掛けなんて、エミルは相当魔法の熟練度を上げたんだね…!」

 

ロマンはそれを3種同時に掛け、更に支援魔法はその種類の魔法を何度も何度も繰り返して使わなければIVを使える様にならない為エミルを相当な努力を重ねた魔法使いなのだと認識する。

 

「うん、まぁね〜。

魔王討伐を目指して最北の世界樹でレベル163まで修行したからね〜」

 

当のエミルはライラの時の知識や技術を引き継いでいる為、やろうと思えばレベル18程度でも支援魔法IVは使える。

しかしキチンとした効力や攻撃魔法の熟練度に応じた威力上昇を発揮するには『その肉体』で何度も同じ魔法を繰り返さなければならないとエミルは途中で気付き、最北の世界樹で攻撃魔法のみならず支援魔法の練習を欠かさなかったのだ。

 

「(修行前に転生魔法の弊害に気付いて助かったわ。

でないと私はライラの時の技術継承に胡座を掻く所だった…4歳の時に火炎弾(バーンバレット)を使った時の違和感に気づいて正解だったわ)」

 

そしてそれを4歳の時の魔法の天才児と周りに言われた際の魔法行使で熟練度も振り出しに戻ってる事に気付けた事は僥倖だったとエミルは思いながら船着場の旅客船を見ながら次の行動指針を、修正を加えた物をロマンに話し始める。

 

「ふう。

ロマン君、私本当は貴方の剣にも威力上昇や強度上昇、軽量化魔法祝印(エンチャント)を付ける気だったわ」

 

「えっ、そうなの?

それじゃあ」

 

「でも私はその選択を捨てたわ。

だってその剣は貴方のお父様の形見でしょう?

そんな物に勝手に魔法祝印(エンチャント)を掛ける程私は非常識な人間じゃないわ」

 

「あっ…エミル…」

 

エミルはロマンの剣に魔法祝印(エンチャント)を掛ける選択肢があったが、父親の形見である事からそれを勝手に手を付けて良い訳が無いと彼女は思い、ロマンもまた剣に関してはかなり気遣ってくれた事を理解し魔法祝印(エンチャント)を気軽に頼もうとした自分に少し心に喝を入れてその先の言葉を紡がなかった。

 

「だから、その少し刃毀れもしてる剣を私は打ち直して貰ってしっかりと最後まで使える様にして貰おうって思ったの。

他でも無いその剣を作った人、ゴッフ一門のお弟子さんに頼み込みに行こうと思うの」

 

「剣を作ってくれた人…つまり僕達の次の目的はそのお弟子様を探す事なんだよね?」

 

「そう、武具職人でもあり150年前にレベル78でエルフの女性と一緒に冒険者ギルド協会に登録して当時初の登録時Cランク発行をされ、今は私達と同じBランクになってるドワーフの男性…。

ゴッフ一門のお弟子さん、『アル』さんを探しに行くわよ!」

 

ロマンが自身に喝を入れる中、エミルはロマンの刃毀れしている剣を作った本人に打ち直して貰う事を告げる。

それによりロマンは最初の旅の目的は自分の剣の打ち直すゴッフ一門の弟子を探す事と理解する。

そしてエミルはそのゴッフ一門の弟子のドワーフは150年前にレベル78で相方のエルフの女性と共に冒険者登録をした者…武具職人アルを探す旅をすると海に指差しながら宣言するのだった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
ロマンを追い出したパーティですが、特に酷かったのはギャランパーティで、他は意見の食い違いの結果互いに違う道を取ろうとと話し合ったりしてロマンはパーティを出て行ってます(勿論お金や食糧は渡されてます)。
そしてエミルの王女としての立場が光ったり、次の旅の道筋が決まる回でした。
さて、今回は魔法の属性について説明致します。
魔法は火、水、土、風、光、闇の原始属性に風と水の派生属性の雷、氷が存在します。
原始属性は下級、中級、上級、最上級の4種魔法がありますが、派生属性は下級と上級しかありません。

次回もよろしくお願い致します。


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第6話「エミルとロマン、人助けする」

皆様おはようございます、第6話目更新でございます。
今回は新しい主要人物が顔見せ程度にですが登場致します。
では、本編へどうぞ。


エミルとロマンが防具屋で買い物を終えた直後のセレスティアに港町『リーバ』の宿屋。

其処の掲示板に貼られていたエミルの『勇者募集中』の広告が剥がされ出し、受付の男がそのまま奥に持って行こうとしていた。

 

『ガチャッ』

 

「あ、その紙もう外しちゃうんですか〜⁉︎

私達もちょっと気になっていたんですけど!」

 

其処に少し息を切らした緑服の弓兵用装備を着熟したエルフの少女が宿屋に入り、受付にエミルの作った『勇者募集中』広告を剥がす場面を目撃しそれが気になっていたと話す。

すると受付は冒険者ギルドの一員として長い年月、それこそこの男性が子供だった頃から既に名のある冒険者として活躍していた為受付はこれが外される理由を話そうと思っていた。

 

「ああ『サラ』さん、おはようございます。

此方の広告が剥がされる理由ですが、何でも昨日フィールウッド国の港街リリアーデでこの募集をしていた方が勇者を見つけたらしく、それでもうこの張り紙は必要無くなったって訳なんだ」

 

「えぇ〜、じゃあその紙に写されてる魔法使いの女の子は勇者を見つけちゃったの〜⁉︎

あぁ〜、私達の『用事』さえなければフィールウッドに行ってその子に出会えたのに〜‼︎」

 

「………ごめんなさいサラ、今回の『山場』は私達が…この国で動かないとならないって、『予知』が見えたから…」

 

するとサラは地団駄を踏みながらこの国であった『用事』があり、セレスティアの中央都市『ライラック』まで赴いていたのだ。

それが終わり、馬車でリーバまで飛ばしてたった今辿り着きこの場面に遭遇したのだ。

するとその後ろからロープを深々と被った褐色肌の少女…肌の色からダークエルフとわかるその子はサラに今回の『用事』は自分達が動かねばならないと予知で視た為、それを片付けてきた最中であった。

 

「ううん、『ルル』のせいじゃ無いよ!

悪いのは不正なお金を隠し持っていたり、冒険者の息子の不祥事をお金で揉み消したりしたベヘルット元侯爵の所為なんだから!」

 

するとサラはルルの所為では無くベヘルット元侯爵が悪いと話していた。

実はベヘルット元侯爵の爵位剥奪が手早く行われた理由はこのサラやルル、そしてドアから入り閉めた茶色い立派なヒゲが特徴のドワーフの男性…このドワーフこそが、エミルが探しに行こうとしているゴッフ一門の弟子のアルである。

この3人が関わった為である。

 

「まぁそう言うこった。

ルルの予知で俺らも関わらないといけないって出ちゃあそれこそ無視は出来ねえからな」

 

そう、この3人がルルの予知でベヘルット元侯爵の悪事を暴く事を視えてしまった為サラやアルは無視出来ず、ルルも『本業』の発揮だとして張り切ったがベヘルット元侯爵は中々尻尾を出さず、昨夜になり漸く証拠を掴み近衛兵達に突き出して、それから馬車でリーバまで急いで戻って来た所であったのだ。

それは奇しくもギャランがギルドナイトに連行されたのと同時刻であった。

 

「そうだけど〜…うぅ〜、魔王討伐の為に勇者募集なんて見たら私もうずうずしてこれが終わったら直ぐにフィールウッド国のリリアーデに向かうってプランだったのに〜‼︎」

 

「まぁお前の親父が初代勇者一行のロックで、お前は親父さんから魔王討伐の悲願を託されたからそううずうずするのは仕方無ぇが、世の中そう簡単に物事は運ばないんだぜ。

俺様がゴッフ(ジジイ)の弟子になって武具職人になったのも俺が20で頼み込んで、30年も掛かって漸くゴッフ(ジジイ)が俺様の作った斧を見て折れた位だからな、早々苦労せず事が運ぶのは珍しいもんだ」

 

サラがプランが崩れて地団駄を踏んでる所にアルがサラはエルフの国の国王、初代勇者一行の1人のロックが父でありその父の悲願である魔王討伐の使命を帯びてる為、天真爛漫が服を着た様なサラも強い使命感に満ちてる事を話しつつ、自分もゴッフの弟子になるまでかなり時間と鍛治回数が掛かった事を引き合いに出して世の中其処まで上手く行く事は珍しいと口は悪いが何処か達観した会話を交わし、するとサラの地団駄が止まる。

 

「うぅ〜、それはそう、そうなんだよね。

でもやっぱりその魔法使いの子に会いたかったのよ、私みたいに魔王討伐を真面目に目指す熱意があの広告から伝わって来たから…」

 

「まぁ今から向かったんじゃ何処かで入れ違いになっちまう。

だったら此処で待ってた方が良い訳だぜ」

 

「そう………ですね…。

では…暫く宿を………あっ‼︎」

 

サラは広告の女魔法使い…彼女は未だ知らないエミルが本気で魔王討伐を目指す熱意がその紙から伝わった事で会いたいと言う気持ちが生まれていたのだ。

しかしゴッフは今からフィールウッド国に向かっても何処かで入れ違いになる事を話し、宿の予約をルルも賛成しながら取ろうとした。

その時ルルは、脳裏にダークエルフの文字と予知のビジョンが浮かびそれ等を読み解き始めていた。

 

「如何かしたのかルル?」

 

「もしかして、また予知?

こんなに立て続けに予知を視るなんて珍しいね〜。

それで、どんな内容だったの?」

 

するとゴッフが心配する言葉を掛けると、サラが直ぐに予知がまた発動して何かを見た事を察知し、親友のルルにどんな物が視えたのかを問い掛け始めた。

そうしてルルはフードの奥で瞳を閉じながら話し始めた。

 

「…『世界の命運を握りし彼の子、自らが求めし真の勇者見出し、我等を求め旅に出ずる。

我等は彼の子等が来たるまでドワーフの国の鉄の村で待つべし』………これが、視えた内容、です…」

 

「ミスリラントの鉄の村?

そりゃアイアン村じゃねぇか。

此処からなら海を渡るよりも国境門を越えて馬車で向かった方が早いぜ?」

 

「えっ、彼の子?

それってルルが14年前に視た予知にあった世界の命運を握る子だよね?

その子が勇者募集してたの〜⁉︎

…でもそう考えたら自然なのかも…」

 

ルルは2人に予知で見えた内容を整理し改めて予言として口にし、アルは鉄の村がアイアン村だと話して此処からなら馬車で向かった方が良い事を口にする。

更にサラは14年前にルルが予言した世界の命運を握る彼の者と知り驚きながらも、その『予言に記されし者』ならば魔王討伐の為に勇者募集を行うと納得するに至った。

 

「あの、では宿のご利用は」

 

「ああ、すまんが無しにさせて貰うぜ。

俺様達は馬車でセレスティア大陸のミスリラント領にあるアイアン村に向かうんだからな」

 

「うん、ルルの予知の的中率はリリアナ様と同じ位なんだから、絶対その子と勇者君は私達と出会う運命なんだよ!

だから受付さん、もしも勇者募集してた子が私達の内の1人を探してたならミスリラントのアイアン村に向かったってギルド協会全体で伝えて欲しいんだ。

じゃあ善は急げ、それじゃあまたね〜!」

 

「…失礼、しました…」

 

そうしてサラは宿屋の受付にギルド協会全体に自身やアル、ルルを勇者募集していたエミルが探している様ならミスリラントのアイアン村に来る様にと伝える為に情報共有する事を頼みながら3人は外に出て馬車へと向かって行った。

 

「ふう、やれやれだよ。

まあこれも出会いの縁を繋ぐ為だと思えば良いか。

さて、じゃあギルド協会全体に通信魔法が掛けられた水晶石で伝言を、と」

 

宿屋の受付は宿泊客が予知で別の場所に向かった事にやれやれと思いながらも、水晶石でなギルド協会本部に各ギルド協会運営宿屋にサラパーティの居場所を聞いて来た者に彼女達はミスリラント領のアイアン村へ行った事を情報共有するのであった。

ギルド協会はこう言った冒険者パーティ達の出会いのきっかけ作りも日々行い、冒険者同士の絆を深め合わせるのも仕事なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロマンの新たなミスリル製防具に魔法祝印(エンチャント)を掛け終わり、エミルは海に指差して彼の剣を打ち直してくれる剣を打った冒険者兼武具職人アルを探すと意気込んでいた。

 

「あ、あのさ…そのアルさんを探すとして、一体何処に居るか分かるの?」

 

「私には分からないわ。

千里眼(ディスタントアイ)も視える距離が名前に反して私の場合は約300キロメートル、もっと使い熟せば更に先が視える様になるはずだけど今はこれだけ。

そして分かった事は300キロメートル範囲内に講義で習ったアルさんの姿は無かった。

つまりフィールウッド国の更に奥か、それとも他国に居るか、になるわ」

 

そんな中でロマンは現実的な意見としてアルは何処に居るか、冒険者なら1点に留まる訳が無い為エミルに聞くが、当のエミル自身にはお手上げらしく少なくとも彼女を中心として視れる300キロメートル範囲内に居ないとしてロマンも其処まで視れて居ないなら他国に居るのでは?

そんな風に思っていた。

 

「でも、私に手が無い訳じゃないわ。

先ず宿屋に戻って受付嬢さんにアルさんが何処に居たのか、何処のギルド運営宿屋を利用したのか聞くの。

其処でその国に向かって、次に何処に向かったのか情報屋でも何でも利用して場所を割り出せば…」

 

「…ああそうか、ギルド協会は冒険者同士の繋がりを持つ様に会いたい人に会わせられる様に協力するって制度があったね。

それを利用する訳なんだ」

 

しかしエミルにも策が無い訳では無く、ギルド協会の冒険者同士の出会いや遠い地方からのパーティ勧誘等をしている制度があり、ロマンもその先のプラン等を考えてるエミルはやっぱり聡明だと思っていた。

因みにエミルが何故この制度を利用してロマンを勧誘しなかったのか、それは自分の目や耳でしっかりと見聞きしてライブグリッターを振るうに相応しい真の勇者か見極める必要があった為である。

 

「そうと決まれば早速宿屋さんに出戻りしてアルさんを探してる事を伝えに行こう!」

 

「うん、そうだね」

 

そして善は急げとして先程の宿屋に戻り、アルの最後の居場所を聞こうと言う事に決まり2人は早速出て行った宿屋に戻って来た。

それを見た受付嬢は何があったのか少し顔を傾げていた。

 

「あら、エミル王女殿下にロマンさん?

何か忘れ物でも致しましたか?」

 

「いえ、実は先程ロマン君の武具の仕立てをしてて、その中でロマン君が今使っているボロボロになったミスリルソードを手放せない理由が出来て、それで武器を打ち直して貰う為に剣を打った本人である冒険者兼ゴッフ一門の武具職人のアルさんを探したいのです」

 

受付嬢がエミル達が戻って来た理由を忘れ物か如何か尋ねると、エミルはロマンの剣が父親の形見と言う重い理由を伏せながらそれを手放す訳に行かず、ならば剣を打った本人でもある冒険者のアルに剣を打ち直して貰う為に探して貰いたいと頼み込む。

すると受付嬢はハッとしながらエミル達を見ていた。

 

「アルさん…そうだ、その件に関しましてエミル王女殿下達にお伝えしなければならない事がありました!」

 

「え、何でしょうか?」

 

「実はアルさんのパーティ、メンバーはエルフのサラさんとダークエルフのルルさん、この3名様が勇者募集をしていた方…つまりエミル王女殿下にミスリラント領のアイアン村に居るから来て欲しいとつい先程ギルド協会全体の情報共有がありました!」

 

すると2人は何があったのかを問うと、受付嬢は先程エルフのサラ、ダークエルフのルル、そしてアルのパーティがエミルを探していて、しかもロマンの故郷であるミスリラントのアイアン村に居ると伝える様にと向こうからギルドの冒険者同士の交流制度を利用していた事を知らされる。

 

「す、凄い良いタイミングですね!」

 

「はい、なので何かの示し合わせかと少し驚いた次第なのです!」

 

「良かったねロマン君、これで剣を新品当然に鍛え直して貰えるよ!

それでは受付嬢さん、お教えして頂き誠にありがとうございました!

今度こそ失礼致しました‼︎」

 

ロマンは何と都合の良いタイミングかと言うと受付嬢も驚いた様子を見せ、本当にタイミングが都合良く噛み合ったと思っていた。

するとエミルはロマンの両手を持ち、形見の剣を鍛え直して貰える事を自分の事の様に喜び、再び宿屋の扉を開けて受付嬢に礼と挨拶を述べてロマンの手を再び引き今度は港へと向かって行った。

 

「さてじゃあ早速…船員さん、セレスティア王国リーバ港行きの船はありますか!」

 

「お、街を守ってくれた王女殿下に勇者君かい!

丁度今荷物の積荷をしているこの船がリーバ港行きの船になりますぜ!」

 

エミルは丁度港に停まってる船の船員にリーバ港行きの船は無いかと聞くと、その船が丁度目的地に向かう船だと知り2人は互いの顔を見て正に渡りに船と言った表情で笑っていた。

 

「良かった、それじゃあお金を払いますので乗せて行って下さい!」

 

「勿論さ、海の男はあんなチャランポラン冒険者だろうが来るもの拒まずだぜ!

まぁやり過ぎたら締めるけどな!」

 

エミルは船旅代を2人分取り出し、船員に渡して乗せて貰おうとした。

すると船員はチャランポラン冒険者、ギャラン達の事を指しながら金を払うなら乗せると言い、しかしやり過ぎれば問答無用で締めると宣言して貴族や冒険者相手に物怖じしない海の男の意地を2人に腕っぷしを見せながら語っていた。

 

「ありがとうございます!

じゃあロマン君、早速乗って待ちましょう!」

 

「そ、そうだね、船の上で邪魔にならない様に待とう!」

 

エミルは早速船旅代を出し、ロマンと共に船の上で積荷の邪魔にならない位置で出港する時まで待っていた。

それから30分後、船員が船長と共に積荷の確認をし、セレスティア王国リーパ港に行く最終準備を整えていた。

 

「………よし、積荷確認終了!

出港だ、錨を上げて帆を張れ‼︎」

 

『オォォォォ‼︎』

 

そして船長命令により錨が上げられ、帆を張り遂にリリアーデ港街から船が出港し、船が海に揺られながら前へと進み出し次第にリリアーデの街並みが小さくなって行った。

 

「さようなら、フィールウッド国。

ロマン君の武器を鍛え直して貰ったら旅でまた立ち寄って探し物をするからその時はまた、よろしくお願い致します…」

 

「…えっと、エミル、探し物って?」

 

エミルは離れて行くフィールウッド国に別れの言葉を投げ掛け、更にロマンのミスリルソードが直された暁には自身が求める物…神剣ライブグリッターを求める旅で必ず立ち寄る気でおり、その時によろしくとも言って頭を下げた。

するとロマンはエミルがまだライブグリッターを探している事を知らずそれを彼女に質問する。

 

「うふふ、良くぞ聞いてくれましたロマン君!

私が探す物、それは魔王討伐には絶対欠かせない神器、神剣ライブグリッターよ‼︎

それをロマン君に振るって貰って魔王を討ち斃すのよ‼︎」

 

「え、ええ、ライブグリッターってあの伝説の神剣⁉︎

…た、確かに魔王を倒すには神剣が必要だって伝説で伝わってるし、エミルが言うなら多分実在する確証があるんだと思う。

でも………僕に振るう事が出来るかな………?」

 

ロマンに聞かれたエミルは嬉々としてライブグリッターを探し出し、ロマンに振るって貰うと彼女が魔王討伐の勅令を受けてる事を噂で知る船員達が聞いてる中で堂々と答える。

ロマンは彼女は自信家であり、何処かその言葉の1つ1つに真実味があるとパーティを組み始めてから僅かな時間で悟り、そんなエミルが言うなら伝説の神剣も実在すると信じ始める。

但し、それを自分が振るう資格があるか元からある弱気から不安になってしまう。

 

「大丈夫、貴方は私が見出した本当の優しさと勇気を持つ勇者なんだから、絶対に使い熟して魔王を討ち取ると確信を持ってるわ!

私を信じて、ね!」

 

「エミル………う、うん。

僕、エミルの期待を裏切らない様に頑張るよ!」

 

そんなロマンに対してエミルは失望する訳無く、寧ろロマンに対して自身が見出した真の勇者と鼓舞し、更に目を見ながら自身の事を信じて欲しいとまで言って来る。

今まで其処まで期待をしてくれたのは死んだ両親位で、それを聞いたロマンは少し考えながらも此処まで自分を信じる彼女の期待に裏切らない様に頑張ると返し2人はまだ見えないセレスティア王国の方角を見ていた。

 

「(そうだ、こんなに期待をしてくれる人が現れたんだ!

なら、それに応えなくちゃいけない!

父さんから本当に信じてくれる人の信頼を裏切るな、そう教わったんだから…!

だから応えるんだ、この信頼に!

そしてなるんだ、エミルの言う真の勇者に‼︎)」

 

ロマンは両親以外で此処まで自分を信じ切る人と接したのは初めてであり、此処で修行中に父から教わった事を反復し、エミルと言う自分を信じ切る者の信頼を裏切らない様にしよう、そう自らに言い聞かせた上で奮い立たせ、これからエミルと共に魔王を斃すに相応しい勇者になろうと決心をした。

 

「(うん、今はこれで良い。

ロマン君は今まで本当に人に信じられる事無く此処まで来て自信が持てないんだろう。

精々信じてくれたのはキャシーちゃんや同じ考え方の人位。

だから、私が彼に自信を持たせられる様に何処までも信じるんだ、あの時私に見せてくれた他人を思いやる優しさと、他人を守る為に弱気な自分を奮い立たせて前に出た勇気を‼︎

そして何より彼自身を‼︎)」

 

一方エミルはロマンが自分自身に自信を持てない理由を、パーティから何度も追い出されては入ってを繰り返した結果真に信頼される事無く此処まで来てしまったと分析する。

キャシーの様に信じてくれた人間も勿論居ただろうがそれは数少ないとすら考えた。

故に自分だけは何があろうとロマンが見せた優しさや勇気、そして彼自身を信じようと此方も決心する。

 

「…さあ、お昼も近いし食堂でご飯を食べよう!

腹が減っては入る力も入らなくなりますから、しっかり食べれる時に食べましょう!」

 

「うん、じゃあ行こうエミル!」

 

そうして2人は食堂に赴き、食事係から出された料理を食べながら船の旅を堪能しながらセレスティア王国まで目指す。

前世はセレスティア王国初代女王にしてその知識と技術、記憶を継承した自信家な魔法使いエミル。

自信は余り無いが優しさと勇気を持ち、信じてくれる者の期待に応えたい現代の勇者ロマン。

この対照的な2人は、エミルには無い勇者の資質、ロマンには無い絶対的な自信を互いが持ち合わせ、そしてそれが2人を繋ぎ無い物を埋め合う立派なコンビである事は誰から見てもそう言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、船旅に何事も無いのはごく稀である。

例えばミニクラーケンが成長したクラーケンやその他海に住まう魔物が襲って来たり、人間同士でも今エミル達が乗る商業船を襲う海賊が来たり等様々である。

そして今回はと言えば。

 

「船長、9時の方向から海賊船がこっちに来てる‼︎

しかもマストに張られた旗はこの辺で幅を利かせる『ディスト海賊団』の旗だ‼︎」

 

「何⁉︎

ディスト海賊団…4隻の大小様々な海賊船が列を組み、そして相手を加虐的に追い詰めて船の積荷を全て奪うこの辺じゃ大きな海賊団だ‼︎

船員はマストに登って全方位を監視、他に海賊船が居ないか見渡せ‼︎」

 

如何やらこの辺りで大きな海賊船団に目を付けられたらしく、ギルド所属の船員達は望遠鏡を覗きながら周りを監視し始めた。

するとエミルは千里眼(ディスタントアイ)観察眼(アナライズ)を使い周りを見渡すと既に4隻の海賊船に四方を囲まれた状態だった。

 

「あ〜駄目ね、既に四方600メートル間隔でこの船は囲まれてるわ。

逃げようとして間を抜けようとしてもこっちが風上、前のは風下と逃げようとしたら直ぐに囲まれる様に配置されてる。

そして相手の船員の平均レベルは80位、こっちの船員は1番強くて68、とてもじゃ無いけど数も質も負けてるわ」

 

「そんな、じゃあエミル、僕達が船を守らないと‼︎」

 

「勿論よ、その為に結界魔法(シールドマジック)は発動中よ」

 

エミルは海賊船の配置を冷静に分析して面舵、取舵何方で逃げようとしても結局囲まれる事、更に相手の平均レベルは80とそこそこ高く、この商業船を守るギルド所属の船員はレベル68が精々であとは囲んで棒ならぬ大砲に撃たれるだけだった。

ロマンはそれを聞き守らないとと口にすると、エミルはウインクして結界魔法(シールドマジック)を既に発動中だと話していた。

 

『ドォォォン‼︎』

 

「うお、迫撃砲でもう撃って来やがった‼︎

だが、王女殿下の結界魔法(シールドマジック)が完全に防いでるみたいだ‼︎」

 

「まぁこの程度なら破られませんよ、だって船を覆う様に発動した結界魔法(シールドマジック)はIV、細心の注意を払って絶対にあの数ではどんなに砲塔を向けられて撃たれても破られない様にする為に最大防御を張ってますから」

 

すると相手は其処まで辛抱強く無いのか、否、囲んで叩く用意が出来たので先ず迫撃砲が飛んで来るが、エミルの結界魔法(シールドマジック)IVがその悉くを防ぎ切り、且つ結界にヒビが入らない程に強固な物であった。

エミルはもしもと言う可能性を考えてこの数の海賊船の砲撃では絶対に破られない最大防御結界を張り、船を守っているのだ。

 

「さ、流石レベル163の魔法使い!

まるでかつての魔法の天才アレスターを見てる様だぜ!」

 

「…当然ですよ、私の先生はアレスター先生だったんですから」

 

すると1人の船員がエミルの事をまるでアレスターの様だと歓喜で叫ぶと、エミルは物悲しそうな表情で自分はアレスターの教え子だと、砲撃の爆音でロマンにしか聞こえない程度の声で話していた。

すると四方から船が近場まで来て全方位から主砲の雨霰が飛ぶが、エミルの結界が全てを防ぎ切り全く海賊船の攻撃を寄せ付けなかった。

 

「ちぃ、なんで固い結界だ‼︎

こうなりゃ直接乗り込め‼︎」

 

『オォォォォォォォォォ‼︎』

 

「無駄、風刃(ウインドスラッシュ)暴風撃(トルネードスマッシュ)‼︎」

 

すると痺れを切らした海賊団船長『ディスト』は、直接乗り込むと言うシンプルながらも攻撃では無い物はすり抜ける結界魔法(シールドマジック)の欠点を突く作戦を出すが、エミルは飛んで来る鉤爪付きロープを風刃(ウインドスラッシュ)で切り、ならば船のロープを使い直接跳躍してくる海賊達には威力をかなり抑えた暴風撃(トルネードスマッシュ)で船に押し返し、自分達の船には1歩も近付かせなかった。

 

「ちぃ、なんて魔法使いだ‼︎

数はこっちが上なのに全部捌き切りやがる‼︎」

 

「よし、ロマン君、一緒に火の中級魔法で海賊船の船底に穴を開けて船を沈めるわよ‼︎

私に合わせて‼︎」

 

「分かったよ、エミル‼︎」

 

ディストはエミル1人に80を超える船員全員が捌かれ切り、自分の船より小さな商業船に1歩も踏み込めない事に焦りが生まれ始めていた。

するとエミルは前側の船に狙いを絞り、ロマンに指示を出して火炎弾(バーンバレット)で船底に穴を開ける様に言い放つとロマンも了解し魔法を撃つ用意を始めた。

 

「…よし、今‼︎」

 

火炎弾(バーンバレット)‼︎』

 

【ボォォォン‼︎】

 

そしてエミルの合図で2人は前側の船の底に威力を絞った魔法を当てて穴を開けて、船員達は慌てて海に飛び込み周りの仲間の海賊船に逃げ込み出し、前側の海賊船は海の藻屑と成り果てた。

 

「げぇ、あいつ等中級魔法で船に穴を開けやがった⁉︎

どんだけレベル高くて魔法を使い込んでやがんだ⁉︎」

 

「其処の海賊船団の船長達に告げる、今直ぐに降伏なさい‼︎

これはセレスティア王国第2王女エミルの温情である‼︎

もし降伏しないのならば全ての船を沈めると此処に宣告します‼︎」

 

「う、うげ、セレスティア王国の王女だと⁉︎

しかも降伏しなきゃ船を沈めるたぁ………敵を撃つ奴は撃たれる覚悟をしろってこの事か…畜生め、お前等白旗を上げて俺の船に集まれ‼︎」

 

ディストは船を沈めた魔法の威力に驚き、慌てふためく中でエミルは間髪容れずに王女の身分を明かしながら降伏する様に警告し、更に頭上にはロマンと一緒に火炎弾(バーンバレット)を待機させ、それを残りの船に向けて放とうとしていた。

ディストはそれ等を聞き、此処で逃げても国の王女を狙った罪で一生追われ、降伏しなければ沈められると詰みに入った事を悟り残った船に海賊旗から白旗に変えて降伏をし、総勢80名以上に船団員は船団長船に集まる事になった。

 

「…よし、では船長、降伏した様ですから船団長に船に乗り込み彼らを縛り上げましょう。

勿論向こうに移る時に砲撃して来ない様に魔法を発射待機しながら移動して、ね。

ロマン君も手伝って下さいね」

 

「勿論だよエミル!」

 

そうして全海賊団員がディストの船に集まった事を確認するとエミルは船長に彼等を縛り上げる様に告げると船員達が船の間に渡り板を付け、更に彼等がいきなり反旗を翻さない様に魔法を発射待機させながら縛り上げ始める。

それをロマンも手伝い次々と海賊達を縛り上げ、そして最後に船長ディストを縛り上げて全員をその場に跪かせて残るはこの海賊船を先導する為のロープを固定するだけになった。

 

「うん、ではこの船の船首にロープを固定して私達の船で先導して」

 

「ハッハァ‼︎

甘いぜ王女様よぉ‼︎」

 

するとエミルは海賊船に敢えて乗り込み、海賊船の船首と自分達の船尾をロープで固定し航行を再開しよう。

そう言おうとした瞬間ディスト以下10名程の海賊達が縄を仕込みナイフで斬りそのままエミルに向かって襲い込み始める。

 

「お、王女様ぁ‼︎」

 

「…はぁ、甘いですよ‼︎」

 

【ボカッ、バキッ、ゴンッ‼︎】

 

船長がそれを見てエミルを守ろうと走り出した………そんな所でエミルとロマンは身体強化(ボディバフ)IIIを掛け、杖と鞘から抜かない剣でディスト達を叩き伏せて気絶させる。

 

「魔法使いだから近接は出来ないと思いましたか?

残念ですが身体強化(ボディバフ)を使えばこんな非力な女でも大の男を叩き伏せられますよ?

それに護身術は習ってますし。

そもそも私のレベルは163、ロマン君も160ですから貴方達如きに初めから遅れを取る訳がありませんよ」

 

「…ふう、分かったならこのまま大人しくして欲しいよ。

死なせない様に手加減するのって気を使うんだから…」

 

ディスト達10名程を気絶させたエミルは残りの船員達に自分が近接戦も出来る魔法使いである事や、ロマンと共に160以上のレベルを誇る事を告げて絶対的な差を実践と言葉で示した。

そしてロマンも人間で自分達よりも遥かに弱い相手の為死なない様に手加減するのが難しいと話しながらもうこのまま大人しくする様に警告する。

 

『は、はぃぃぃ、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

すると残った海賊達は青褪めながら首が取れそうになる位縦に振り、更に頭を船の床に抉りつけて土下座をしてエミルやロマン達に許しを乞いていた。

それ等を聞きやっと実力差を理解した事を知ったエミルは気絶したディスト達を再び縄で、今度はマストに縛り付けてナイフも取り上げて逃げられない様にした。

 

「さて船長、このままこの船を先導して船旅に戻りましょう」

 

「ははっ!

…それから王女様と勇者ロマンさん、この海賊団を捕らえて頂き誠にありがとうございます。

こいつ等はこの辺りの海域を荒らす厄介者で、偶に大きな貿易船すら狙って物資を奪って来た連中でした。

これでこの海域での海賊行為が少しは減るでしょう」

 

そしてエミルは船長に航海を続ける様に進言するとそれに了解を示す。

そしてそれと同時にエミルとロマンにディスト達はこの辺りの海域を荒らしてた厄介者であり、彼等が捕まればこの近辺の海域の安全は更に確保されると話しながら頭を下げて礼を述べていた。

 

「良かったねロマン君、早速人助けが出来て」

 

「あ、あはは…船を守ったのはエミルだから僕は其処まで活躍して無いよ。

…でもやっぱり、誰かを助ける事って心の奥が温かくなるね…」

 

エミルは商業船に戻りながらロマンに人助け出来た事を良かったと労い、しかしロマンは船を守っていたのはエミルとして謙虚にエミルの方が活躍していたと話した。

しかしその先に誰かを助ける事は心が温かくなると話して自分達の乗る船や将来此処を通る船舶の船員達の助けになった事を喜んでいた。

 

「ええ、弱きを助け悪しき者を挫く。

それは私達冒険者の義務でもあり、そして理由が如何あれ良き事に変わらないのですよ」

 

対するエミルも冒険者の義務でもある弱きを助け悪しき者を挫く事、更にエミルは王女の為兄アルクの様なノブレスオブリージュを背中で見て来た為それが当たり前だと思っていた。

そして理由が如何あれ人助けは良き事であると締め括ると、ロマンもそれに頷きこれからも今回の様な人助けをもっとして行こう、そう思いながら2人は船に揺られるのであった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
サラやルル、アルは今後エミル達と深く関わる登場人物です。
それぞれのキャラを上手く動かしたいと思います。
さて今回はセレスティア大陸ミスリラント領について補足説明します。
セレスティア王国とミスリラントは本来地続きでしたが、500年前の戦いのツケが周り500年の間に地殻変動が起き一部が海に沈み、ミスリラント領はその時に沈まなかった名残りの大地です。
なおこの地殻変動による被害はリリアナの予言により事前に住民達がそれぞれの大陸に移動した結果犠牲者0で事が済みました。

次回もよろしくお願い致します。


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第7話「エミルとロマン、出会う」

皆様おはようございます、第7話目更新でございます。
今回いよいよエミル達がアイアン村に向かう話になります。
其処で待つサラ達の対応は如何なるかお楽しみ下さいませ。
では、本編へどうぞ。


リーバ港に到着した3日目。

2日目に海賊団を捕らえ、その後は船は何のトラブルも無く港に辿り着き、エミルとロマンは3日振りに大地に足を付ける。

 

「さあ来い、今までの略奪行為の代償を支払わせてやるからな!」

 

「トホホ…王族殺害未遂まで加わって一生牢獄暮らしかよ…」

 

「ブツブツ言わずにキリキリ歩け‼︎」

 

そのエミル達を襲ったディスト海賊団全員はセレスティア王国軍王族親衛兵団とギルドの緊急依頼を受けた冒険者パーティに引き連れられ何台もの馬車で中央都市ライラックまで運ばれて行くのをエミルとロマンは見送っていた。

 

「王女殿下、ご無事で何よりです!

殿下と船を守った勇者ロマン、君にはこの親衛隊長の『マークス』が幾ら感謝しても仕切れない!

本当にありがとう、勇敢なる少年君!」

 

「い、いえ!

船を直接守ったのはエミル………王女殿下でありますし、僕は本当に微力ながら加勢しただけですよ‼︎」

 

するとロマンは親衛隊の隊長マークスに頭を下げられ、エミルを守った事に深く感謝されていた。

しかし此処でもロマンは自身よりエミルの方が活躍していた事、自分は微力な加勢だったと引き腰になりながらマークスに謙虚過ぎると思わせる程エミルを立てていた。

 

「あはは、マークスは顔が強面だけど誠実で親衛隊長として数々の実績を積み重ねた誠実な人だから、そんな人に褒められたロマン君は十分凄いよ。

それでマークス、この後私達はロマン君の剣を打ち直す為にミスリラント領のアイアン村に行く用事があるから直ぐに行ける馬車の手配をお願いしたいんだけど、駄目かな?」

 

「ふむミスリラント領に。

いえ、王女殿下の命であるならばこの親衛隊長マークスは人道に反さぬ限り従い申し上げます。

では馬車屋に直ぐ手配致しますので少々お待ちを」

 

するとエミルはロマンの肩に手を掛け、マークスが親衛隊長として厳格にして誠実な人物と紹介しその彼に褒められたのは凄い事だと説明する。

ロマンはそれに実感を持てていなかったが、その横でエミルはロマンの剣を鍛え直す為にミスリラントのアイアン村に直ぐに行きたいとマークスに頼み、そのマークスも人道に反さない様なら王女殿下であるエミルに意見しないとして馬車屋に向かう。

 

「…親衛隊長さん、か。

そんな人に僕は褒められたのにそれを無碍にしてちょっと僕って駄目だよね」

 

「そんな事無いよ、マークスはさっきのエミル君の発言で機嫌を損ねる様な人じゃないよ!

だってあの人は冒険者ギルドで実績を積み重ねた後お父様に直々に親衛隊に所属する事を頼まれた誠実な人物なの。

其処から更に実績を重ねて遂に人格と実力を認められて親衛隊長に抜擢されたから、さっきのを気にする程器の小さな人じゃないから!」

 

ロマンはマークスの言葉に及び腰になり過ぎた事を反省しながら駄目な奴と自分を戒めるが、其処にエミルがフォローに入りながらマークスの人柄を説明した。

実際エミルが知るマークスは人道に反さないなら王族の命に忠実に従いつつ、そうでないなら意見をし考え直す様にと言われる程に誠実が鎧を着た人物とされ、レベルも4年前は115、現在は123と親衛隊長に相応しい実力を持つ人物であった。

 

「王女殿下、アイアン村行きの馬車の手配が完了致しました、直ぐに出発出来ます!」

 

「あ、早いねマークス!

おほん、馬車の手配に感謝致します、親衛隊長マークス」

 

「ありがたき幸せにございます。

では王女殿下、陛下の勅令による旅路にご健闘をお祈り致します、どうか無理をなさらぬ様にお気を付けて下さいませ!」

 

するとマークスは直ぐに戻り馬車の手配が完了したとエミルに報告を入れる。

そして公の場である為エミルは跪く彼の手を取り、その仕事の早さを王女として労う。

マークスもそれを頭を下げながら重く受け止め、エミルが手を離してから立ち上がり国王の勅令である魔王討伐の旅に健闘を祈っていた。

そしてエミルとの会話を終えたマークスは隣に居たロマンに視線を送り言葉を投げ掛け始める。

 

「ロマン君。

君は少し謙虚過ぎる、が、それと同時に誠実さや人道に反する行いを許さない正義を私は感じた。

だからこそ敢えて申し上げよう、この旅路に同行出来ない私の代わりに王女殿下の御身をお守りする事を任せます!」

 

「えっ、あ、は、はい‼︎」

 

「…うん、良い返事だ、流石は王女殿下が見出した勇者だ。

では王女殿下の期待に応えられる様に君の健闘も祈るよ、王女殿下をよろしく頼みましたよ!」

 

マークスはロマンの一挙一動から彼の人柄を見抜き、エミルの旅に同行出来ない自分の代わりに彼女を守る様にロマンに頼み込む。

それを聞きロマンはいきなりだった為驚きながらも返事をし、それを聞いたマークスはエミルの目に狂いは無いしっかりと人間が出来た勇者だと判断し、そして健闘を祈るとの言葉とエミルをよろしくと言う責務を任せると言うロマンに期待を寄せている事を示しながら馬に乗り去って行った。

 

「凄いよロマン君、マークスに期待されるって本当に将来有望な勇者だよ貴方は‼︎」

 

「…僕に、期待、健闘を祈って………。

うん、その期待や信頼を裏切れない人がまた増えた…マークスさん、必ずエミルの事を守って魔王討伐を果たします‼︎」

 

エミルはマークスが期待を掛けた事は誉れあるとしてロマンの両手を握りながら話すと、そのロマンは馬で去り行くマークスの背中を見つめながら期待や健闘を祈ってくれた、その想いを裏切らない様にしようとより一層気を引き締めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから花束を買い手配された馬車に乗り込みエミルが手綱を握り、ロマンが隣に座り2時間。

国境門に辿り着き見張り番にエミルは勅令書を帽子を外しながら見せ、その見張り番達は王女殿下が此処に来た事に驚きながらも馬車を通し、直立立ちをして馬車を見送っていた。

 

「さて、ミスリラント領のアイアン村にはこの馬車の速度で何事も無ければ更に3時間、日が落ちるより前には必ず辿り着ける計算になるわ。

ロマン君、嫌な思い出も沢山あると思うけど故郷に帰る気持ちは如何かな?」

 

「うん…父さんと母さんの命日には必ず帰る様にしてたから其処まで足が重くなる事は無いよ。

いじめっ子達も僕と同じ15やもっと大きくなって少しは物の見方も変わってる筈だから、嫌な気持ちは特に無いよ」

 

エミルはこのまま何もなければ後3時間あればアイアン村に辿り着くとして、ロマンに故郷に帰る気分を尋ねるとロマンは両親の命日には必ず帰ってる事、かつてのいじめっ子達も成長してもう昔みたいな事はない筈として嫌な気持ちは特に無いと話しエミルに笑顔を向けていた。

 

「(…嫌な気持ちは無い、か。

でもロマン君、貴方の口から『良い気持ち』があるとも私は聞いてないよ。

それってつまりは、嫌な思い出…特にご両親を失った事に縛られて辛い気持ちでいるって事だよね…)」

 

しかしエミルはその笑顔が苦笑であると感じ、更にロマンの口から良い感情があるとも聞いていない事から、エミルは彼が辛い思い出に縛られてしまい故郷に帰る事は本当は辛くなっていると穿った考え方をしており、その源流は間違い無く両親の死であるとエミルは手綱を握る力を強める。

しかしロマンの口からそれが出ない為これ以上は踏み込めないとしてエミルは歯痒さを感じながらアイアン村に馬を走らせるのであった。

 

 

 

 

そして3時間後、何事も無くアイアン村の木の門の前に到達し、門番がロマンの顔を見るなり直ぐ様後ろを振り向いた。

 

「おお〜い、ロマンが帰って来たぞ〜‼︎」

 

すると門番は門を開けながら声を張り上げると、村の中から人々が門側に集まり始め道を譲りながらも馬車の周りを村人達が囲みロマンに話し掛け始めた。

 

「あらロマン君、数ヶ月振りね!」

 

「ロマンにいちゃんおかえりなさい!」

 

「ロマン、またレベルが上がったじゃないか‼︎

160とか俺達の見れない先を行って、お前は本当に勇者だよ‼︎

隣の女の子もレベル163の魔法使いとかヤベェよ‼︎」

 

村人達は老若男女、様々な人が馬車に居るロマンに一斉に声を掛けて彼の帰郷を祝っていた。

それら全員にロマンは手を振ったり握手したりと本当に村で勇者として持て囃されているとエミルは感じ、この環境もまたロマンの現在の性格を作ったとして良き部分もあれば悪しき部分もあるとさえ感じていた。

 

「…おほん、皆様、私達はとある方達を探してこのアイアン村までやって来ました。

何方かご存知の方はいらっしゃらないでしょうか?

冒険者パーティでエルフのサラさん、ダークエルフのルルさん、そしてこのミスリラント領でも顔を知らない人は居ない筈のドワーフのアルさんなのですが」

 

「えっ、ロマンや嬢ちゃんはアルさんを探して来たのかい‼︎

それなら丁度この村の『ガル』一家が営む宿屋、『かぼちゃ亭』に宿泊してるぜ!

何でも魔王討伐を目指す勇者と魔法使いの女の子を待ってるとかで………て事はロマンが魔王討伐を⁉︎

お前本当に凄えや‼︎」

 

するとエミルは周りに集まった人々にアル達がこの村の何処に居るか尋ねると、ロマンやエミルのレベルを測った青年がかぼちゃ亭と言う宿屋に泊まっている事を話し、更に魔王討伐をロマンやエミルが目指している事を告げると彼を中心にお祭り騒ぎになり、馬が少し驚き足を止めた為エミルは手綱を引きながら「どうどう」と言い止まる様に馬に指示した。

 

「あ、あはは………兎に角ガルさん達の所で泊まってるんだね。

なら馬車を馬屋に預けて村長様に顔見せたら尋ねるよ、ありがとう『エヌ』」

 

そしてロマンはこのお祭り騒ぎに苦笑しながら先ず村長に顔を見せてから宿屋に行く事を伝え、更にアル達の居場所を教えたエヌと言う青年に礼を言いながら馬屋に行くと話す。

すると周りの人々は馬屋までの道を開けるとエミルは馬に進む様に指示を出し、そして馬屋に馬車と馬を預けて地面に足を付ける。

 

「ふう…それでロマン君、あの中に昔のいじめっ子達は居た?」

 

「う、うん、エヌがそのリーダーだったんだ。

ただ、あの様子だと本当に落ち着いて大人になったって感じがするよ」

 

「ふむふむ…まぁロマン君がそう言うなら信じるし、それよりも早速村長様に挨拶をしましょう」

 

村を歩く中でエミルは集まった人々の中に昔ロマンを虐めてた者は居るのか問うと矢張り居たらしく、しかも気前の良さそうな青年エヌがそのリーダーだったとロマンは告げる。

しかし同時にロマンは気にしていない様子だった為エミルはそれ以上は言わずに村長への挨拶と、『もう一つの用事』を済ませてからかぼちゃ亭に向かう道筋を立てて村長宅に向かった。

 

「よし、それじゃあ…村長様、奥様、僕です、ロマンです!」

 

【トントントン!】

 

そしてロマンは村長宅のドアの取手に手を掛け、名前を出しながらノックをすると鍵が開き、扉の先から初老の女性が現れロマンを見るなり驚いていた。

 

「あらロマン君‼︎

ご両親の命日以外で帰って来るなんて珍しいわね‼︎

お隣のお嬢ちゃんは旅の仲間かしら?」

 

「はい、申し遅れましたが私はセレスティア王国第2王女のエミルと申します。

以降お見知り置きを、村長夫人様」

 

「ええ、王女殿下⁉︎

そんな方が仲間になっていらっしゃるなんてロマン君は本当に凄い子ね‼︎

あなた、ロマン君とセレスティア王国の王女様がいらっしゃっりましたからお出迎えの準備をしますわよ‼︎」

 

すると出て来た村長夫人ロマンが親の命日以外で帰った事やエミルを見てロマンの仲間かと首を傾げると、エミルは礼節として魔法使いの帽子を取り、ミスリルローブの裾を掴み頭を下げる。

すると村長夫人エミルを王女と知りそんな者を仲間にしたロマンを凄いと言いながら夫の村長に出迎えの準備をする様に叫びながら中に戻って行った。

 

「本当に凄いのはエミルなんだけどね」

 

「いやいやロマン君だって凄いわよ!

だって勇者としての資質もそうだし、レベル160なんて相当のレベリングや高濃度魔法元素(マナ)吸収をしなきゃ辿り着けない領域なんだから!」

 

そんな村長夫人の凄いと言う言葉にロマンはエミルの方が凄いと口にしていたが、エミルはロマンの勇者としての資質もその鍛え上げられたレベルを相当なレベリング等をしなければ辿り着けないと言い放つ。

その言葉にロマンは苦笑しながらも受け取り、そのまま村長夫人が来るまで黙って待ち続けた。

 

「お待たせ致しました王女殿下、ロマン君!

中で粗末ですがお茶菓子をご用意致しましたのでどうぞお上り下さいませ!」

 

「はい、失礼致します」

 

「お邪魔します」

 

そして村長夫人は直ぐに準備を終えてパタパタと戻って来ておもてなしの準備が出来たとしてエミルとロマンを村長宅へと上げる。

2人は挨拶しながら客間に入ると、初老の男性が立ちながら2人を待っていた。

 

「おおロマン、久し振りだな、元気にしてたか?

そして王女殿下、この様な粗末なお出迎えしか出来なかった粗相をお許し下さい」

 

「はい村長、お久し振りです」

 

「いいえ、此方も突然の訪問をした次第。

ですので変に気遣いをなさらないで下さいませ」

 

初老の男、村長はロマンの肩を叩きながら帰って来た事を喜びながら元気だったかと言い、更にエミルに村長的に王族を出迎えるのに不十分な物しか用意出来なかった事を謝罪していた。

するとロマンは笑顔で久々に村長に会えた事を喜び、エミルは突然の訪問だから仕方無いと話して気にしない様にお願いしていた。

すると村長夫人は2人の椅子を引き、座る用意をして2人は座ると出された茶菓子を礼儀良く堪能していた。

 

「それでロマンに王女殿下、何故この様な田舎村に訪問を?

ロマンに至ってはご両親の命日以外で帰る事は滅多に無いのに」

 

「それはですね、この村にロマン君が扱う剣を打ったゴッフ一門のお弟子様のアル様がいらっしゃるからです。

私達は刃毀れや汚れ等の悪い状態のロマン君の剣を鍛え直して貰う為にフィールウッド国で出会ってから此処までやって来ました」

 

それから村長と話し合いになり、突然この村に来た経緯を簡潔にエミルが説明し、フィールウッド国から此処まで来たと話していると村長は少し考える素振りをする。

 

「フィールウッド…もしや貴女様が魔王討伐の勇者を募った魔法使い様でしたか‼︎

この村にもその張り紙が届き、かぼちゃ亭で貼られてましたから良く存じ上げております!

そうでしたか…そしてロマンの剣は確かにゴッフ様のお弟子様が打ったと彼の父親である『ケイ』から伺っておりました。

そしてそのアル様がこの村に来て…これも1つの星の巡り合わせでしょう」

 

会話の中で村長はあの張り紙の件を思い出し、かぼちゃ亭に貼られていたので知っていた事を話す。

更にロマンの父、ケイの剣はアルが打った物だとも覚えており、その本人すら村にやって来ている事から星の巡り合わせと話して運命的な物を感じていた。

 

「はい、私達もこれは1つの運命として巡り合わせを神様に感謝しております。

そして村長様達への挨拶ともう1つ…ロマン君のご両親のお墓に献花してご挨拶をしたらかぼちゃ亭に向かおうと道筋を立てておりました」

 

「そうでしたか…ならこの時間帯でしたら1泊村に滞在すると良いでしょう。

この近くでミスリルが取れる鉱山まではとてもではありませんが、今からでは夜になるまでに村へ戻る事は出来ません。

そして夜道は夜盗や魔物の跋扈する時間帯、王女殿下やロマンを危険に晒したくはありませんのでどうかご滞在をお願い申し上げます」

 

そしてエミルも運命めいた巡り合わせを神に感謝しながら、村長への挨拶を終えた後にもう1つの用事…ロマンの両親の墓に献花し挨拶をし、それからアル達の居るかぼちゃ亭に向かうと話す。

すると村長はこの村の近くでミスリルが取れる鉱山に今から行けば日が落ちるまでに村に戻って来れないと話し、1日の滞在を促した。

エミルもロマンも確かに夜は魔物が活発化する為互いに隣に居るパーティのパートナーにもしもがあってはと考え、滞在する方に思考を落ち着ける。

 

「分かりました、ではアイアン村に滞在させて頂きます。

それでは村長夫妻様、突然の訪問に美味なおもてなしをして頂き誠にありがとうございました」

 

「いえ、こちらこそこの村の名物のかぼちゃパイや紅茶を美味しいと言って頂きありがとうございます。

ではロマン、ご両親に挨拶して来なさい」

 

「はい、村長に奥様、ご馳走様でした。

…じゃあ、僕の両親の墓に案内しますね」

 

そしてエミル達は村長への挨拶が終わり、名物のかぼちゃパイと紅茶をご馳走した夫妻に感謝しながらロマンが両親の墓がある共同墓地へとエミルを案内し始めた。

因みに公の場であった為ロマンはエミルを呼び捨てする事無く拙い礼節の手を引きながらではあるがしっかりと案内をし、そして直ぐに墓地へと辿り着く。

するとロマンの両親の墓に比較的新しい花が添えられていた。

 

「…あれ、父さん達の墓に誰かが献花している?」

 

「あ、本当ね。

村の誰かが花を?」

 

「そうかも知れない…けど、この花添えられてからまだ新しいからきっと父さん達の知り合いの誰かが村に来て花を添えてくれたんだと思う。

この村のルールで共同墓地に花を添える日が決まってるし、その日までまだ時間があるから…」

 

エミルは村の誰かが花を添えたのかとロマンに聞くと、彼も誰が添えたか分からず、そもそもこの墓地に花を添える日は決まってる為村の外から両親の知り合いが花を添えた可能性も唱え、2人は不思議がりながらも献花をし墓の前でお祈りに話を掛け始めていた。

 

「…父さん、母さん、久し振りだね。

僕、新しい仲間が出来たんだ。

此方の魔法使いのエミル。

エミルはセレスティア王国の王女様で、本当に凄い人なんだよ。

自信家で、強くて、優しい…そんな人なんだ」

 

「初めましてロマン君のお父様、お母様。

私はセレスティア王国第2王女のエミルです。

彼は私を凄いと言いますが、ロマン君も本当に素晴らしい人です。

その優しく、勇気ある人柄や強さは私の魔王討伐と言う悲願達成に1歩前進させて貰わせて頂きました。

なので、これからも彼に大いに助けられる事になりましょう。

立派な息子さんを育ててくださった事をとても感謝しております…」

 

2人はそれぞれの思いや互いの良さを互いの目で見た物を思い出しながら話し、更にエミルはロマンが毎年命日に献花しに来る程互いを愛していた事を頭で理解し、ロマンを大切に育てた事に感謝しながらこれから彼が自分を助け、ロマンがエミルを助ける未来図を立てながら再び祈りを捧げるのだった。

 

「…それじゃあエミル、かぼちゃ亭に行こう。

日が傾き始めたし、幾らセレスティアの近くでもミスリラント領は本国並に夜は寒くなるから早く屋内に入ろう」

 

「そうですね、では行きましょうかロマン君。

さようなら、ロマン君のご両親様方。

また何時か村に赴く事があればお伺い致します」

 

そして、日が傾き始めた為ロマンがエミルに話を掛け、エミルも彼の両親に最後の挨拶を済ませた後2人でかぼちゃ亭まで歩き始めるのであった。

 

「それでエミル、かぼちゃ亭は村の中でのギルド運営の宿屋さんで、僕は其処で冒険者登録をして当時レベル77だったからCランクで旅に出る事になったんだ」

 

「つまりロマン君には色んな思い入れがある場所であり、旅の始まりの場所なのね。

そんな所にアルさんが泊まってるって運命的だよね〜」

 

「うん、小さな村だけど宿屋ならもう一軒あるのにね………あ、此処がかぼちゃ亭だよ!」

 

その案内の間にロマンはエミルにかぼちゃ亭こそがこの村のギルド運営の宿屋であり、ロマンが両親を失った際にレベル77で冒険者登録をし旅立った様々な物が詰まった場所だとエミルは口にし、其処にアルが泊まってるのも運命的だと話しながら2人はかぼちゃ亭に辿り着き扉を開けて中に入った。

 

「いらっしゃいロマン!

村の皆から君が帰って来たって大騒ぎになってたから来ると思ってたぜ!

何でも魔王討伐を目指す女魔法使いさんと一緒に来たんだってな!」

 

「お久し振りですガルさん。

はい、そして此方に居る魔法使いの女の子、エミルがその魔王討伐を目指す子なんです」

 

「初めまして、魔法使いのエミルと申します」

 

すると客がそれなりに居るかぼちゃ亭受付に立つ男性、ガルが入って来たロマンに村の騒ぎから此処に来ると思いながら待っており、更に魔王討伐を目指すエミルと共に来た事も伝わっており、ロマンはその魔法使いのエミルを紹介すると当のエミルはローブの裾を摘みながら挨拶をし、ガルは驚いた様子で彼女を見ていた。

 

「こりゃ驚いた、張り紙じゃ分からなかったけど直に見たら分かったよ、貴女はセレスティア王国の第2王女殿下じゃないですか!

そんな方とこの村が誇る勇者のロマンが魔王討伐に………まるで500年前の初代勇者一行の再来みたいじゃないですか‼︎」

 

「あはは、そう言われましたら私は初代女王のライラ様に当たりますね、勿論ロマン君はロア様に。

それでなのですが、私達は探し人が居てこの村に来ました」

 

ガルはエミルを王女だと見抜きながら、その王女魔法使いと勇者が魔王討伐の旅をする事を初代勇者一行の再来と話すとエミルは自身をライラみたいだと言い(実際前世はライラである)、ロマンをロアに見立てそれを横で聞いてるロマンは少し恥ずかしがりながら苦笑していた。

そしてエミルは本題の人探しをしている事を明かしながら話を始める。

 

「それも聞いてますよ、ゴッフ様のお弟子のアルさんを探しに来たのでしょう。

そのアルさんなら」

 

「俺様なら此処に居るぜ、王女殿下様よぉ!」

 

ガルはエミル達がアルを探している事も聞き及んでいたらしく、その居場所を教えようとした所で宿屋の客席の一角から声が上がり、エミルとロマンがそちらを見ると爛漫な笑顔で手を振る弓を携えたエルフの少女に、ローブのフードを深々と被る体格的に見れば女性が、そしてドワーフの低身長に合わせた左右対称に巨大な刃が付いたの斧を背負い、更に手投げ斧も装備している髭が立派なドワーフが居た。

 

「(エルフの女の子に…あっちは多分ダークエルフの女の子、そしてドワーフの男性!

間違い無い、この人達だ!)」

 

「(あのドワーフの方は、やっぱりアルさんだ!

直接会った事は無いけど、間違い無い!)」

 

エミルは直感し、ロマンもドワーフの男性を見て理解する、この3人がサラ、ダークエルフのルル、そしてゴッフ一門のアルだと。

するとアルがジョッキの酒を飲み終えると席から立ち上がりエミル達の方にやって来る。

 

「ふむ、如何やら勇者の坊主の武具は俺の作った物一式らしいな。

王女殿下様のミスリルローブもエルフの服職人と共同で編んでミスリルで仕立て上げた物だ。

目の付け所は褒めてやる、俺様の作り上げた物を選んだんだからな」

 

「それは光栄に存じ上げます、ゴッフ様のお弟子様のアル様」

 

「アルで良い、様付けなんか痒いぜ。

…所で、お前さん等俺様が魂を込めて作り上げたもんに魔法祝印(エンチャント)を掛けてやがるな?」

 

アルは自身が作り上げた物を使うエミル達の目利きを褒めると、エミルはゴッフの弟子としてアルに礼節を以て話し掛けるが、本人は如何やらその手の物は痒くなると言い他人から様を付けられるのを拒んでいた。

するとアルは続けて自身が作り上げた防具に魔法祝印(エンチャント)を掛けた事を見抜き、サラが「あ〜」と言いながら頭を押さえた所を見てエミルは何か拙い事をしたのかと思い始めた。

 

「あ、あの、アルさん?

エミルが掛けてくれた魔法祝印(エンチャント)が何か拙い事が?」

 

「ああ、大いにあるさ勇者の坊主。

何せ………俺様が魂込めて作り上げた芸術品にして武具に勝手に魔法祝印(エンチャント)なんて小細工を掛けるのが俺様は気に食わないんだよ‼︎

王女殿下様よぉ、そんな小細工が必要無い俺様の作り上げたもんに誰の許可を得て俺様の武具に魔法祝印(エンチャント)を掛けやがった‼︎」

 

如何やらアルは自身が作り上げた物に絶対の自信があり、それに魔法祝印(エンチャント)を掛ける事を大いに嫌う性格らしくエミルに食って掛かり始めた。

エミルは彼はライラの時に世話になったゴッフと違い魔法祝印(エンチャント)によるバフで自分の作った物にチャチを付けられたと感じる質だと思い、正直に謝ろうと思った。

 

「…それはごめんなさい、私は良かれと思ってロマン君の防具やこのローブに魔法祝印(エンチャント)を勝手に掛けてしまいました。

貴方がご自身の作り上げた物に絶対的な自信と誇りを持っていると知らずに。

この非礼は許して頂けるまでお詫び致します」

 

「あぁん?

詫びだぁ?

一度掛けられた魔法祝印(エンチャント)は武具が壊れない限り外れねぇんだよ、そしたら俺様の防具はそんじょそこらなもんじゃ壊れねぇから一生詫び続けるって事だぞ分かってんのか!」

 

「はい、それは大いに。

なので詫び続けます、申し訳ありませんでした」

 

エミルはアルに頭を下げ、勝手な事をした詫びを入れると言うとアルは自分の防具が壊れない自信があるらしく一生詫び続けるのかと問うと、それを肯定しながら頭を下げ続けていた。

するとサラとルルがアルに近付き彼を押さえ始めた。

 

「ほらアル、エミル王女殿下は勇者君の力をもっと引き出したいから魔法祝印(エンチャント)を掛けてるんだからさ、イチャモンを付けるのは止めなってばぁ」

 

「イチャモンだぁ⁉︎

俺様はゴッフ(ジジイ)の弟子として作り上げたもんは滅多に壊れないのとそんな小細工抜きでエンチャントドラゴンだろうが何だろうが通用する自信があるんだよ‼︎

それを」

 

「はいストップ‼︎

もうこれ以上は他のお客さんにも迷惑になるから押さえてよ!

じゃないとアルの髭を抜くよ!」

 

サラはアルのヒートアップを止める様にエミルとの間に入り、彼女がロマンの為に魔法祝印(エンチャント)を掛けたと話しながらアルの文句をイチャモンと言い放つ。

するとアルは自身の作り上げた物に対する愛着心から来る物をイチャモン呼ばわりされた事に更に怒るが、サラが髭を抜くと言うと舌打ちしながらエミルにこれ以上何かを言うのを止めた。

 

「ごめんね、アルってばこんな頑固者で気に入らないお客にも出てけ〜って言うタイプなの。

気を悪くしないでねエミル王女殿下に勇者ロマン君」

 

「あ、私の事はエミルと呼んでくれて構いませんよ。

そして以降お見知り置きを、賢王ロック様のご息女、サラ王女殿下」

 

「あ、私の方もサラで良いよ、多分だけどこれから長い付き合いになると思うし!

ささ、こっちに来て一緒にお話しましょ!」

 

サラはアルの頑固振りを説明して謝ると同時に、エミルとロマンの事を互いに気軽に呼び合い更に自然とテーブルに招き話をする形になった。

それを聞いていたルルはフードを取って褐色でサラやエミルに負けない美少女の顔を見せ、1回頭を下げるとまたフードを被り直した。

 

「な、何だか嵐みたいなパーティだよねエミル。

でも、アルさんは頑固だけど自分に自信を持ってサラさんも元気一杯そうだよねエミル」

 

「ええ。

そしてルルさんも何だか不思議な感じがするけど良い人そう。

夜もこれからだから沢山話がしたいわ」

 

それ等を見てロマンもエミルもアルは頑固者だが3人共根は良い人物だと思い2人で同じテーブルまで歩いて行きロマンの剣を含め沢山話をしようと決めるのであった。

しかし、その中でエミルはサラを見ながらある事を考えていた。

 

「(…そう、話をしないといけない。

私の先生のアレスター先生がどんな風に私達兄妹達を指導して、そして何故死んでしまったのかを。

だってサラさん、彼女は『アレスター先生の実のお姉さん』なんだから…)」

 

それは自分達の講師であり、魔法の天才と謳われた者、エルフの青年でありサラの弟…つまり賢王ロックの実子であったアレスターについてどんな風に自分達に講義し、そしてどの様に死んだのかを説明すると言う王女でもあり生徒でもあったエミルの重く辛い話をすると言う覚悟の要る事であった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
アルは自分の作った武具に勝手に魔法祝印(エンチャント)を掛けられるのが嫌いな人物でした。
つまり頑固者です、はい。
そしてアレスターは実はエルフでサラの弟でした…。

さて、今回は絶技の説明を致します。
絶技は魔法と同じく8属性存在し、技の種類は1属性につき下位と上位の2つになります。
そして技名は例えば風の下位絶技なら『疾風剣or疾風斧or疾風槍』と技名に使ってる武器の名前が入ります。
例外は光属性と闇属性の絶技になり、此方は名前が固定されてます。

次回もよろしくお願い致します。


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第8話「エミルとロマン、会話する」

皆様おはようございます、第8話目を更新致しました。
今回は主要人物達の会話に重点を置く回になります。
その中で意外な人物関係が分かったりするかもしれません。
では、本編へどうぞ。


「さて、私達について聞きたい事があるならジャンジャン言ってよ!

何でもは答えられないけど、答えられる物は絶対答えるよ!」

 

エミルとロマンの2人がサラ達と同じ席に座った瞬間、サラは爛漫と言う言葉が似合う綺麗で明るい笑顔を見せる。

それに合わせてルルもフード越しに頷き、アルはまだエミルの魔法祝印(エンチャント)の件で不機嫌なのか酒を更に頼み飲みながら、先程騒いだ事を料理を運ぶガルの妻『リィナ』に謝りながらチップを渡していた。

 

「えっと、それじゃあ……皆さんは何故アイアン村、僕の故郷へ来たのですか?」

 

「ああそれはね、ルルが予知で私達と君達がこの村で出会うって内容を視たからなんだよ!

ルルはね、リリアナ様の1人娘でリリアナ様の予知を受け継いで、リリアナ様と同じ位的中率が高いんだよ‼︎

外した回数なんて両手の指で数える程度しかないの‼︎」

 

「ええ、リリアナ様の娘さん⁉︎

凄い人の集まりなんだ、このパーティ…!」

 

先ずロマンが当たり障りなく、何故アイアン村にサラ達が来た事を尋ねると何とルルは初代勇者一行の予言者リリアナの1人娘だと知りロマンも、そしてエミルもリリアナの娘やその予知により巡り合わせた事等に驚きながらルルを見ていた。

 

「…あ、あの………予知ならお母様の方が外さないですし、私は………シーフとして冒険してた方が…気が楽、何です…なので、私の事は様付けとかさん付け、しないで下さい…少し恥ずかしい、です」

 

「は、はい………ルルはシーフなんだ…。

エミル、皆さんのレベルってどれ位なの?」

 

「えっとね、アルが162、サラが158、ルルはロマン君と同じ160だね。

皆も相当のレベリングと高濃度魔法元素(マナ)吸収を繰り返したんだね」

 

するとルルはフード越しに喋り、気恥ずかしそうにしながら自分より母の方が凄いと話しつつ、さん付け等をせずに呼び捨てして貰う様に頼み込んでいた。

それを聞いたロマンは早速ルルを呼び捨てにしながらエミルに3人のレベルを聞くとサラ以外が160に到達しており、158のサラを入れても平均レベルは160を叩き出しており、エミルをして相当なレベリング等を繰り返していたと言わしめていた。

 

「まぁ俺様の武具職人の納期がある時期は一旦解散してそれぞれの仕事優先で仕事を終えたらまた集まってを繰り返しだからよ、本当ならゴッフ(ジジイ)のレベル250を超えたい所だが、それも中々出来ずにいるんだ。

だからこそゴッフ(ジジイ)やその仲間達である賢王や予言者は本当に強えんだよ」

 

「…そうですね、ゴッフ様達は強いですよ」

 

しかしながらこのパーティはゴッフの本業の繁忙期には一旦解散しそれぞれの本業、サラは王女の責務、ルルは恐らくリリアナの子として第2の予言者として活動をしているだろうとエミル達は思いながらそれが理由で中々レベル250に届かないとしてアルはゴッフをジジイと呼びながら本当に強いと尊敬している様だった。

それを聞きエミルは彼等は本当に強かったとその当時の姿を思い描きながら笑みを浮かべるのだった。

 

「(そしてリリアナの子であるなら恐らくは……彼女は『ダークエルフと人間』のハーフ。

リリアナには愛する人が居て、更に殿方も相思相愛婚だった。

でも、私達のある取り決めでリリアナの夫を誰であるかを秘匿する事にした…そしてその子供…ルルももしかしたら…)」

 

更にエミルはリリアナの事を特に思い浮かべ、その殿方は人間で相思相愛の末に婚姻を結んだ事を知っていた。

しかし初代勇者一行の取り決めで夫の存在は秘匿され、その子供となればある可能性も頭に浮かべていた。

しかし、それでもエミルは自分の『決めた事』を曲げる気は無いとしてルルには悪く思うが自分のプランを進める気でいた。

 

「じゃあ他に聞きたい事とか無いかな、無いかな?」

 

「…では個人的に、お話したい事があります、サラ、いいえ、サラ王女殿下。

それは私の先生だった方、魔法講師アレスター先生の事です。

あの方がセレスティア王国の専属魔法講師をしていらっしゃったのはご存知ですよね。

…他でも無い、アレスター先生のご令姉であらせられる貴女なら」

 

「…うん、知ってるよ。

死んじゃったアレスターが貴女達ランパルド国王陛下の推薦でご子息達の講師になって、皆の才覚を凄いって評価してた事を手紙とかで良く聞いたり見たりしてたから。

それで、あの子の死に顔は如何だったの?

私はフィールウッドに運ばれた時の顔しか知らないから教えてくれないかな?」

 

次にサラが何か他に聞きたい事は無いかと聞くと、エミルは王女としてアレスターの事を話したいと考えていた事を実行し、サラもそれを聞き少し苦笑気味になりながら弟が生徒達を高く評価していた事を聞いたり手紙のやりとりで知ったと話した。

そしてフィールウッドに運ばれた際の死後の顔しか知らない為、エミルにどんな死に顔だったのかを問いた。

 

「…先生の最期を見届けたのは私のお兄様のカルロ第2王子でしたが、その後に運ばれて来た弔い部屋での顔は拝見しております。

そのお顔は………生徒を守り切った事からの安堵か、安らかに眠る様に目を閉じておりましたわ、サラ王女殿下」

 

「…そっか、そうだよね。

あの子が誰かを呪ったりする人じゃないし、ましてや生徒を守った末だったって話だったから満足して神様の下に旅立ったんだって改めて分かったよ。

ありがとうございました、エミル王女殿下」

 

エミルは嘘偽り無く死んだ後に弔い部屋に運ばれた際の顔を返答すると、サラも死因を知ってる為納得し改めて弟が満足して神の下に旅立って行った事を話すとサラはエミルに握手を求めて来る。

無論それを拒む訳無く握手をする。

するとサラの手が少し震えていた事を察知しながら思考し始める。

 

「(震えてる…無理も無いですね。

サラは第1王女にしてロックの第1子、既に450年以上は生きておられる…もしかしたらロアを見た事もあるかも知れない方だ。

対するアレスター先生は第3子にして第1王子、150年前に漸く生まれた男児にして魔法の天才だった。

でもエルフからしてみれば余りに若過ぎる年齢で死んでしまわれた…辛く、悔しくある筈ですよ…)」

 

エミルはサラが450年以上、正確には480年生きるロックの第1子である事をアレスターの世界の国々の王族達に関する講義で教わり、そのアレスターは第3子でまだ150年程度しか生きていないエルフからしてみればまだまだ若く早過ぎる死であった。

それを考えればエミルは理不尽に何もかも奪う魔物や魔族達への怒りの炎が余計に、但し静かに燃える事を感じていた。

 

「………さて、しんみりしちゃったしお口直ししながら今度は私達からエミル達に聞きたい事があるよ!

エミルやロマン君は何で魔王討伐を目指すのかな?

私はお父様からその使命を受け継いだからだけど、2人は何でかな?」

 

そうして握手を止めたサラは次にエミル達に何故魔王討伐を目指したのかを問い質して来る。

自身も魔王討伐の使命をロックから継いだ事を明かしながら、2人を見やり返答を待っていた。

 

「あ、あの、じゃあ僕から。

僕はエミルから君が真の勇者だって誘われる形で魔王討伐をする事になったんだ。

でも僕自身は話し合いで終われば、とかも考えてたんだけどエミルに諭されてそれは無理だって知ったんだ」

 

サラの問いに先ずロマンから答え、エミルに勇者勧誘で誘われそこで勇者の資質を見出され魔王を斃す旅に同行する事を話す。

更に魔王と話し合いで決着出来れば良かったとも話して無益な争いを好まない優しさや、まさか斃すべき相手と話し合いで解決しようと言う斜め上の考えを抱き、生きて来た勇気ある部分もサラ達に見せ彼女達を感心させる。

しかし話し合いの部分はエミルに無理だと言われている事も明かしていた

 

「じゃあ次は私ね。

私は勿論アレスター先生の理不尽な死がきっかけだけど、私の場合生まれた後物心付いた時から魔王討伐をしようって考えてたわ。

だってこれは私達の先祖である『ライラ』様の悲願、なら『私』が叶えるんだ、そう思いながら今お父様の勅令で旅をしているわ」

 

次にロマンを旅に誘った張本人のエミルが答え始め、アレスターの理不尽な死からがきっかけとしつつ、現代に生まれ物心付いた時から魔王討伐を考えていたとしながら4人に明かした。

それは『ライラの時』からの悲願であり、その転生者である『自分』が達成しなければならないのが本当の理由であるが、これを一族の悲願と言い換えながら国王の勅令で旅をしていると話した。

 

「すっごいよエミル‼︎

物心付いた時から一族の悲願を胸に生きるって相当な決心だよ‼︎

それにロマン君も、誰も思い浮かべなかった視点から戦いが終わればって考えるのは周りから色々言われるけど、それを持つのは勇気ある事だよ‼︎

無益な戦いも嫌いそうだし、本当に勇者ロア様みたいな方だよ君‼︎

そしてそのレベル、人間の寿命で其処まで上げたのは2人が長寿の私達以上に血の滲む努力をした証だよ‼︎」

 

「…ふん、認めてやるぜ、お前等の魔王討伐の想いは『本物』だってな」

 

サラはそれを聞きエミルやロマンの凄さを実感し、エミルには悲願達成の使命感の大きさ、ロマンには無益な争いを拒む優しさと勇気を兼ね備えてる事を溢れんばかりの笑顔で満足気に話していた。

更に長寿の自分達と違い寿命が短い人間の2人が自分達以上に血の滲む努力をした事も褒め称え、不機嫌だったアルもそれらを聞き少し機嫌を直した様子だった。

 

「そ、そうかな………と言うより、サラはご先祖様を見た事が?」

 

「うん、私は480年生きるエルフ、ルルは490年も生きるダークエルフと人間のハーフだからロア様を2人共見た事あるよ!」

 

「は、はい、あの方は、本当に素晴らしい勇者、でした」

 

ロマンはロアの様だと言われ苦笑気味になるが、此処でサラは初代勇者ロアを見た事があるかと聞くと、サラは480年生きた中で、ルルも人間とダークエルフのハーフと490年も生きていると明かしながら見た事があると話した。

そしてルルも此処でおどおどした口調ながらハッキリとした声でロアは本物の勇者だったと答えた。

 

「ルルは人間とダークエルフのハーフで、2人共ロア様が死んでしまわれた時に立ち会った生き証人なんだ…凄いな…」

 

「単に長生きなだけだよ〜。

それにしてもロマン君もだけど、エミルも流石はルルが視た『予言に記された子』だよ、魔王討伐の意気込みが半端ないよ!」

 

「…えっ、予言に記された、子?」

 

ロマンは長寿組の2人がロアが没した時代に立ち会った生き証人であることをすごいと口にするが、サラは単に長生きなだけと其処まで凄くはないと話していた。

そしてエミルをルルが視た予知にある予言に記された子と呼ぶと、エミルは素っ頓狂な声を上げて何なのかを3人に聞き始めた。

 

「ああ、お前は14年前に俺様達が魔物討伐の依頼後に突然ルルが視た予知にあった奴なんだよ。

その内容は『世界の命運を握りし彼の子、この世に誕生せり。

その者世界を左右する選択を取りし者也、神託を受けし者達は彼の者の旅立ちを待つべし』だ」

 

アルはエミルの疑問に応える様にルルが14年前、つまりエミルが生まれた時に予知でその存在を知り、更に自分が世界の命運を握っているとまで話され空いた口が塞がらず、ロマンも驚きながらエミルの方を見ていた。

 

「つまり俺様達はお前が旅立つその時を待ってたんだよ。

そしたらお前関連の3度目の予知で魔王討伐やら真の勇者を見出して俺達を探してるから必ずアイアン村で待つ事とか色々とぶっ飛んだ事をやってるから俺様達はコイツは間違いねぇ、世界の命運を握ってやがると感じて予言の待ち合い場所のアイアン村でお前達を待つ事にしたんだ。

丁度俺様も久々に会いたい奴等が居たから願ったり叶ったりだった…だがそいつ等は3年も前に死んじまったと言われちまったがな」

 

更にアルは言葉を重ね、ルルはエミルが魔王討伐の旅に出たり、ロマンに真の勇者の資質を見出した事すら予知し、更には3人を探してるとまで当てられそしてアイアン村で待つ事すら予知により定められていたと知り此処まで当てられるとエミルもロマンもリリアナ譲りと言われた予知の的中率に驚愕していた。

 

「(さ、流石リリアナの子…物すっごい予言の的中率よ………それにしても私が世界の命運を握る、ねぇ。

寧ろ命運を握ってるのはロマン君じゃ?)」

 

「あ、それと貴女に関する2度目の予知は『1人の勇者、悲しみを背負い故郷を旅立つ。

その勇者、世界の命運を握りし彼の子に巡り逢いし運命也。

しかし勇者と関わる事無かれ、勇者の資質を高める為艱難辛苦に向かわせるべし』だったんだよ。

だから私達3人は勇者勧誘はせずに旅してたのよ」

 

「それって………僕の事、だよね、間違って無ければ…」

 

エミルがルルのリリアナ譲りの予言的中に脱帽し、しかし世界の命運を握るのは勇者、つまりロマンの方だと感じていた。

其処にサラが2度目の予言の内容を話し始め、其処には明らかにロマンの事を指す内容が予知されていた事が窺い知れ、更にサラ達側からロマンに関わってはいけないと制約付きの予言であった事まで聞き、ロマン本人は自信が無いながらも自分の事かと3人に問いていた。

 

「ああ、2度目と3度目の予言を照らし合わせばお前の事になるぜロマン。

悲しみを背負ってとか言うのが何なのか分からんかったが………この村に来て知っちまったよ。

まさか、お前にがケイと『テニア』の息子だったとはな。

2人が死んでるのを初めて知って愕然としちまったぜ、俺様も」

 

「えっ、アルさ…ア、アルは父さん達を知ってるんですか⁉︎」

 

するとアルが予言を照らし合わせれば勇者がロマンの事を指すのを話し、更に2度目の予言に記された『悲しみ』をこの村に来て初めて知り、且つロマンの両親の名を出してロマンに両親を知ってるのかと聞かれ、酒を飲みながら答え始めた。

 

「ああ、ケイは冒険者で俺が店に武具を直接納品してる時に初めて出会って、俺様の武具の良さを見抜いてその店で買って行ったんだ。

そして俺様が作ったと知ってビックリ仰天してな、あれは面白かったぜ。

オマケにそれをテニアに見られてそれがきっかけで2人は冒険して、そして結婚してからは冒険家を引退するって俺に言いに来たんだ」

 

「あ、因みにアルは気に入らない奴は客でも追い返す頑固者ね」

 

如何やらアルはロマンの両親の旅の始まりに立ち会った者らしく、その時のエピソードを嬉々として語り、サラが頑固だと語るアルに此処まで言わせるのは本当の上客だったのだとロマンは知り、自分の両親の偉大さをまた1つ知れて嬉しさで笑みが溢れていた。

 

「そして息子が10歳の誕生日を迎えて、しかも勇者だった事を初めて俺様も聞いた。

で、あの子に修行が終わったら俺様の打った最高の武器をあげたいって2人で話して来やがったから特別にミスリルソードを打って譲ってやったんだ」

 

「…父さん…母さん…」

 

更に話は続きロマンが10歳の誕生日を迎え世界樹での修行を始める際に、それが完遂した暁にはアルの打った武器を渡したいと話に来ていた事を聞き、其処でミスリルソードを打ち鍛え譲った事を語り、ロマンはこの剣は元から自分に渡される予定の物だったと知り剣の柄頭に手を掛けながら両親の愛に涙を流しそうになりながら堪え、話を聞き続ける。

 

「そしてそれから5年が経過したからもう修行は終わってるだろうって思って予言もあったからアイアン村に来たら………2人は3年前にミスリルゴーレムに襲われて死んじまってた、息子はケイの形見のミスリルソードを持って旅立っちまったって村の連中に言われたんだ。

だから俺様は花屋に立ち寄って墓地に花を供えたんだ、別れの言葉を掛けながらな」

 

「あの花はアルが…本当に、ありがとうございます」

 

そしてアルは村に来て2人の死を初めて知り、さらに息子のロマンは形見のミスリルソードを持って旅立ったと言う事を聞き急ぎ花屋で花を買い墓に供えたと話す。

2人が見たあの花束はアルが供えた物と知りロマンはアルに礼を述べて頭を下げた。

アルは別段特別な事をした認識では無い為そっぽを向いていたが、黙って聞いている為これが彼なりの礼等の受け取り方なのだとエミルは思っていた。

 

「それで、しんみりした所で空気を一新するために聞くをだけど、エミルやロマン君は何で私達に会いに来てくれたのかな?」

 

「ああ〜それはですね、ロマン君の剣を打ち直して貰いたいからなんです。

ロマン君、アルに剣を見せましょう」

 

「うん。

あの、これが父さんの形見のミスリルソードなんですけど…」

 

そうしてサラがジョッキのお酒を飲み直し、場の空気を帰る為に何故エミル達が自分達に会いに来たかを聞くと、エミルからロマンの剣を打ち直す様に話す。

そしてロマンがアルに剣を鞘毎渡すとアルは唸る様に声を出し始めた。

 

「コイツは間違いねぇ、ケイ達にやったミスリルソードだ。

さて、具合は…」

 

【シャキン】

 

「…ふむ、手入れは欠かされてないが刃毀れや刀身にダメージが目立つ。

こりゃ打ち直しが必要だったのにそれが出来ねぇまま使い続けた結果だな。

だが此処まで状態が悪いのに折れる様子が無いのは間違い無く担い手が良い腕をしてるからだな。

よし良いぜ、この剣は俺様が直々に打ち直してやる、明日の朝に鉱山に向かうぜ」

 

アルはロマンの剣をまじまじと見ながら指で刀身を叩いたり等をして今の強度を確かめ、それにより確かに剣はボロボロにはなってるが折れる心配も無い、ロマンの使い方が良かった為と言いながら剣の打ち直しと明日に鉱山に向かう事が決められると同時に鞘に戻したロマンの剣を返却する。

 

「あ、ありがとうございます‼︎

お代は必ず支払い」

 

「ああ金なら要らねぇよ、俺様達は食い扶持に困る程貧乏じゃねぇしな!

それにコイツはお前の親に譲ったモンだ、それを更にその息子から金を取ったら俺様やゴッフ(ジジイ)の一門の職人魂を穢ちまう」

 

ロマンは剣を打ち直す事を承諾したアルに礼を言い、それに掛かる代金を支払うと言おうとした所でアルが金は要らないと言い放つ。

その最大の理由としてロマンの両親に譲った物であるその剣を直したとしてロマンから金を貰ってしまうとアルや師のゴッフの一門の職人魂を穢すと言う武具職人にしか分からない独特の感性による物だった。

 

「…で、でも」

 

「はぁ、それでも代価を払いたいなら…おい宿主、俺様からコイツ達に依頼を出したい‼︎

内容は一緒に鉱山へ行ってミスリル鉱石を採掘する、報酬はコイツの剣の修理だ‼︎」

 

「はい、依頼を受託しました!

と言う訳でロマンに王女殿下、これを受託しますかい?」

 

しかしそれでもロマンが引き下がらない為何とアルはロマンの剣を直す為のミスリル鉱石の採掘依頼を出し、その報酬に剣の打ち直すと言う依頼に対する対価を取り決めてそれをガルに叫びながら委任させる。

そしてガルもそれを魔法紙(マナシート)に書き正式な依頼とするとロマンとエミルに受けるかと敢えて確認して来る。

当然エミルの中の答えは決まってる為、ロマンを見ながら彼に返答を任せた。

 

「………はい、受けさせて頂きます!」

 

「あいよ、それじゃあエミル一行様に武具職人アルさんからの依頼を正式な受けた事を認めますぜ!

当然依頼の破棄には違約金が発生しますが…アルさんは如何しますか?」

 

「当然この話は無し、その程度だったってして2度と俺に会わねえって誓って貰うぜ!

このゴッフ(ジジイ)の弟子であるアル様と言う世界2位の武具職人に2度と会えねぇ、これ以上に無い違約金だぜ?」

 

ロマンはエミルの表情を読み取り依頼を受ける事を元気良く返事すると正式な依頼として組まれ、違約金はアルに2度と会えない=腕の立つ職人に武具の修繕依頼を出せないと言う普通なら別の人に頼む選択肢があるが、アルはゴッフ一門を任されてる職人。

彼の右に出る者が居るとするなら師のゴッフしか居ない為違約金として成立する物だった。

 

「はいでは………ロマンと王女殿下が依頼を受けた事を此処に証明します、魔法紙(マナシート)を渡しますので受け取って下さいな!」

 

「はい!」

 

そしてロマンは受付まで歩き依頼が書かれた魔法紙(マナシート)を受け取りに行くと正式に依頼を受けた事がギルド協会に認められた判を押されエミルの初依頼はアルの鉱石取りの手伝いとなるのであった。

 

「ねっ、1度決めた事は曲げない頑固者でしょアルは?

でも腕は間違い無く保証出来るから絶対破棄しちゃダメだよ〜?

破棄したら本気でアルは見捨てに掛かるから」

 

「たく、俺様の腕をコイツ等にとって見ず知らずのお前に保証されても全く信用ならねぇっての!

兎に角明日だ、明日鉱山に向かうからそれまで力を付ける為に飲んで食うぞ!」

 

「は、はい…小口ながら、食べたり飲んだり、します…!」

 

次に席に戻ったロマンと座って様子を見てたエミルにサラがアルは頑固者だが腕は確かだと言うが、それをアルはエミル達には見ず知らずの女に保証されても信用出来ないと本人の目の前で言い放ち、サラはブーイングを出すが明日の依頼の為にアルはガツガツと料理と酒を飲食し出し、ルルもチマチマと小口ながら食べ始めていた。

 

「じゃあ私達も料理を食べて明日に備えようロマン君!」

 

「うん、リィナさん注文を頼みます!」

 

そしてエミルとロマンも料理を頼み始め、運ばれて来る肉料理やかぼちゃをふんだんに使った料理を食べ始める。

更に宿屋にある風呂場でそれぞれ男性陣、女性陣に時間を分けて入り用意された2階の宿泊室のベッドに寝て英気を養うのであった。

その中でロマンは剣を修復出来る事、エミルは初依頼を熟す事に心を躍らせながら睡眠を取り、その日は何時も以上に寝つきが良かったのだった。

 

 

 

 

 

そうして迎えた翌朝、朝日が登り切る前に起きたエミル達とサラ達はほぼ同時に2階から1階に降り、するとリィナがテーブルを拭きながら5人が降りて来るのを待っていた。

 

「あらおはようございます、多分鉱山へ向かうから朝日が出る前に起きると思ってましたよ。

直ぐに朝食をお持ちしますのでお待ち下さいませ!」

 

「はいリィナさん!」

 

リィナは5人が鉱山に向かうならば朝日が登り切る前に起きて来ると冒険者達に長年料理を運んだ経験則から分かっていた為直ぐに5人の朝食に体が温まるお茶を用意し、5人はそれ等を食べ切りご馳走様の挨拶をするとリィナに見送られながらかぼちゃ亭を後にし、馬屋に預けていた馬と馬車を受け取り代金を払って門から外へ馬を歩かせ、そのまま一旦アイアン村から出て行った。

 

「さて、俺様達が向かう鉱山はミスリラント領の中の鉱山でもミスリルが採掘出来て1番近い『アグ山』の第2採掘場だ!

採掘道具は俺様の魔法袋(マナポーチ)の中に入ってるからお前等全員に貸してやるぜ!」

 

「分かりました、現地での採掘指示はよろしくお願いします」

 

村を出た後のアグ山への道をサラ達の馬車(手綱はサラが握ってる)が前を行き、アルは馬車の荷台の中からサラ達含むエミル達4人に採掘道具を貸すと気前良く言い放ち、エミルとロマンは彼の指示を聞きながら採掘しようと決めながら馬車を運転して行った。

エミルは冒険者になり初の、ロマンは形見の剣の今後が掛かった依頼を失敗しない様に心掛けながら東の方角から朝日が出始め、その温かな光に照らされながら目的地に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キシシシ、見ぃ〜つっけた〜!」

 

しかし、その2つの馬車から800メートル後方の更に鳥達が飛ぶ様な上空にて、浮遊しながらエミル達の姿を捉える者が居た。

その者は褐色肌に額に赤い水晶が付き、漆黒の鎧を付けし者………アギラの全体への忠告を聞きエミル達の命を狙い功績を立てようと画策した名も無き魔族であった。

そしてエミル達はその魔族に狙いを定められた事を未だ知らずに居たのだった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
エミル達とサラ達には図にすると意外な繋がりがあり、それ等が結び付いて今回の会話回になりました。
因みにルルは人間とダークエルフのハーフだからと言って純血のダークエルフより寿命が短くなる事は無いです、この世界のエルフやダークエルフ、ドワーフはそんな種族です。
そして最後に不穏な影がチラつきましたが…それは次回、牙を剥きます。

次回もよろしくお願い致します。


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第9話「エミル達、遭遇する」

皆様おはようございます、第9話目更新でございます。
今回は漸く本格的なバトル回になります。
それがどんな内容かお楽しみに下さいませ。
では、本編へどうぞ。


エミル達とサラ達、互いの馬車は街道を並びながら走行し、荷台からアルが顔を乗り出し自らの武勇伝、ゴッフに弟子入りするまでの話を始めていた。

 

「それで俺様は20にして他の武具職人達の研鑽して来た匠の技術を上回り、これならゴッフ(ジジイ)が俺を弟子にする筈だ、そう天狗になってたのさ。

ゴッフ(ジジイ)は生涯現役とか抜かして弟子を取らずにいたからな、俺様がその初弟子になってやる、それが俺様の夢だった。

だが…いざゴッフ(ジジイ)の下に向かうと職人勝負をして勝ったら弟子入りさせてやると言われ、其処で俺は周りを泣かせた武具作りの腕を見せたんだ」

 

そのエピソードは彼が他のドワーフ達よりも才覚があり、ゴッフの弟子入りに相応しいのは我こそだと天狗になってたと自ら語る所から始まり、ロマンは興味津々に聞きエミルもあのゴッフが弟子入りをを認めた者の話には興味が引かれ耳を傾けていた。

そして職人勝負をしたと話し始めた辺りで1つ溜め息をアルは吐いていた。

 

「だが…其処で俺様は天狗になってたと気付かされた。

ゴッフ(ジジイ)が鍛え打った武具の輝きは当時の俺なんかが足下にすら及ばない本当に凄ぇもんだった。

負けた、完膚無きまでに負けた。

それからはもう天狗の鼻は折れて、あの輝きに1歩でも近付こうと踠いた。

その度に負けて、だがそれでも諦め切れなかった、ゴッフ(ジジイ)の弟子になりたい、それは嘘偽りの無い夢だったからな」

 

更にアルはゴッフに真の武具職人の業の輝きを見せ付けられ完全に負けて天狗の鼻は折れたと話し始めた。

エミルもライラの時に見たあの鍛え上げられた武具の輝き、それはアルも言う通り真に武具職人の魂が乗った物だったと思い浮かべていた。

そのゴッフの武具に何度も助けられた事も。

そしてアルは夢を諦め切れずに何度も挑んだと語り、エミルやロマンは歴史の裏側を見ているかの感覚に浸っていた。

 

「そして50の時…俺様は遂にゴッフ(ジジイ)に負けだと言わしめる事になった。

それは今も俺様が使っているこのミスリルアックスだ」

 

「えっ、そうだったんですか⁉︎」

 

「ああ、そしていざ弟子入りしたんだが…ゴッフ(ジジイ)はワシから教える事は無い、只管職人の道を歩めとか言って現役引退しやがったんだ。

初めは何やってんだって癇癪を起こしそうになったが………思い返せば、あの職人勝負こそが俺様を弟子として鍛え上げていたのでは?

そんな単純な事に気付いたんだ、天狗の鼻が折れてたからな」

 

そして50の時に今も武器として使っているミスリルアックスこそが弟子入りを決めた逸品だと話しエミルとロマンはその斧を見て確かに10年や20年じゃない、かなり使い古された戦斧だと改めて伺い知り歴史ある武具だと初めて気付いた。

そして弟子入りした直後の引退宣言もアルの話を聞けば腑に落ちる物であり、エミルは立派な弟子を取る事が出来たと思い感慨に耽るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その談話を嘲笑い、そして魔力を込め始める者が居た。

そう、エミル達に狙いを定めた名も無き魔族である。

 

「キシシシ、コイツで殺してやる!

灼熱雨(マグマレイン)‼︎」

 

【ゴォォォォ‼︎】

 

魔族は火の最上級魔法、本来なら拡散し辺り一体に名前通りマグマの雨を降らせる灼熱雨(マグマレイン)を収束し、巨大な灼熱の焔の塊にして手で抱える様に待機させ、そして腕を振り下ろしてその業焔がエミル達に迫る。

 

 

 

 

 

 

 

エミル達はアルの話を聞き終えて馬車を走らせ、後2時間でアグ山に辿り着こうとしていた。

 

『ヒヒィィィン‼︎』

 

「うわっ、どうしたの⁉︎

どー、どー‼︎」

 

「うわサラ、何馬を暴れさせてやがんだ、早く落ち着かせろ‼︎」

 

その時、エミルとサラが手綱を引いていた馬達が暴れ出し、サラが宥めようと声を掛けたり等をし、アルは突然馬が暴れた事で荷台が揺れた為早く落ち着かせる様に叫ぶ。

そしてエミルもまた馬を落ち着かせようとした

 

【ゾクッ‼︎】

 

「っ、殺気‼︎」

 

その時、エミルは明確な殺気を感じ取る。

それはこの時代の海賊達が放った矮小な物でも、魔物達の様な方向性の無い物でも無い、明らかに自分達を狙っている。

しかもそれは500以上年前に明確に肌で何度も感じていた物………魔族が放つ圧力ある地上界の者への絶対的な殺意だった。

エミルはその方向を見ると、収束された灼熱雨(マグマレイン)が放たれようとしていた瞬間だった。

 

「エミル、どうし…何、あの焔の塊は⁉︎」

 

「…来る…来る………悪意が、魔族の悪意が…‼︎」

 

「魔族だとぉ⁉︎」

 

エミルが視線を向けた方にロマン、サラが向くと其処には巨大な灼熱の焔の塊があり、それが今放たれようとしていた。

全てを灰燼に帰す為に。

更にルルの予知が発動し、魔族の悪意が来ると告げ、アルはそれを聞き驚愕していた。

何故ならサラ達も魔族を直に見るのは初めてなのだから。

 

【ゴォォォォ‼︎】

 

「っ、あの焔こっちに来てる‼︎

エミル、ロマン君早く逃げ」

 

「もう逃げるのは間に合わない‼︎

なら………相殺する‼︎

火には水、土には風、闇には光‼︎

相反する属性の魔法をぶつけ合わせた時威力が同じなら相殺される‼︎

行け、大水流(タイダルウェイブ)‼︎」

 

【シュゥゥ、ドバァッ‼︎】

 

サラはエミル達に逃げようと提案しようとしたがエミルは即座に間に合わないと切り捨て、ならばと火の最上級魔法に水の最上級魔法を打つけて相殺を狙う選択肢を取る。

するとエミルの杖から巨大な水流が収束し、巨大な瀑布となり上空から迫り来る灰燼の焔と衝突する。

 

【ゴォォォォ、ドバァァァァ‼︎】

 

「っ、焔の塊を水流が穴を開けた‼︎」

 

「つまりエミルの方が勝った⁉︎」

 

そして幾許かの衝突の末にエミルの放った清浄の瀑布が灰燼の業焔に穴を開け、水流が灼熱雨(マグマレイン)の放たれた方角へと向かう。

更にエミルの千里眼(ディスタントアイ)が捉える、業焔を放った悪意の塊が水流を避けてエミル達の前方に向かう姿を。

そしてそれは降り立った。

 

「キッシシシシ…!

結構真面目に撃ち込んだ灼熱雨(マグマレイン)を相殺所が打ち勝つとは…中々やるじゃねえか、矮小な人間の魔法使い!」

 

褐色肌と漆黒の鎧、更に悪意に満ちた笑み、極め付けはその額に赤い水晶があるダークエルフともかけ離れた存在………エミルの記憶にあるそれと寸分違わない存在、魔族がエミルの放った大水流(タイダルウェイブ)で自らの魔法を打ち破ったのに感心しつつも、矮小な人間と付け加え明らかに見下した態度を取りながら漆黒の槍を構えて5人に絶対的な殺意を向けて来た。

 

「アレが魔族………アル、ルル、戦うよ‼︎」

 

「よし来たぜ、魔族に俺様の武具の力を見せてやる‼︎」

 

「…うん…‼︎」

 

先ずサラ達が馬車から降り、サラが後衛、他2人は前衛に立ちそれぞれ弓、戦斧、そしてルルはフードを外し、小さな双剣を逆手で持ち、その表情はフード越しに見ていたオドオドとした態度から想像出来ない程眼光が強く、魔族の殺意に飲まれていない勇猛な物であった。

 

「ロマン君、私達も行くよ‼︎」

 

「わ、分かったよ‼︎」

 

そのサラ達の直ぐ後にエミルとロマンも馬車から降り、エミルはサラの隣、ロマンはアルの隣に陣取り、サラの弓矢が通る陣形を整える。

すると馬達は魔族の殺意に飲まれている為、乗り手が降りるとそのまま馬車を引きながら走って逃げてしまう。

 

「キシシシ、レベル150オーバーが5人も…これは殺せば大手柄だぜ!

他の奴らを出し抜いてアギラ様の幹部に上り詰められるぜ、シィィ!」

 

「…コイツは三流ね、獲物を前にして油断し過ぎてる。

自分が逆に獲物になる可能性を考えない時点で救い様が無いわ、魔族だから元から救う気なんて無いけど、ね」

 

「確かにそうだなルル!

俺様達に狩られる恐怖ってもんを見せてやるぜ‼︎

おぉりぃあぁぁぁぁぁ‼︎」

 

魔族はエミル達を前にして油断し過ぎてる様で自らの手柄の事しか考えておらず、己が斃される可能性を思考していない三流とルルは普段の口調と違う強い口調で魔族を睨み付けながら話す。

それにアルが同調し狩られる恐怖を叩き込むとして真っ先に突撃し、魔族もその突撃に乗り槍のリーチを活かして突きを連打し、足がやや遅いドワーフの身体を悪意で貫こうとする。

 

「けっ、そんなトロい突きじゃあ俺様は止められねぇぜ‼︎

うおらぁ‼︎」

 

「おっと危ない!」

 

【ドガァァァァァァ‼︎】

 

しかしアルはその突きの連打を強引に潜り込むことで回避し、その勢いで土の上位絶技『震撃斧』で大地を力任せに穿つ。

これが直撃すればこの魔族も一溜まりも無かっただろう。

しかし魔族は前にジャンプして回避し、次はロマンに狙いを定める。

 

「させないよ、『暴風弓』‼︎」

 

【ビュゥゥゥンッ‼︎】

 

其処にサラが風の上位絶技暴風弓を使用し、暴れる風を纏い速度の上がった矢が魔族に一直線に向かい鎧の間を撃ち抜こうとした。

 

「ははっ、『爆炎槍』‼︎」

 

しかしそれを火の上級絶技『爆炎槍』を使い矢を弾きながら燃やし、そのまま着地しロマンに襲い掛かる。

 

「『疾風槍』‼︎」

 

「くっ、疾風剣‼︎」

 

魔族は先ず小手調べなのか風の下位絶技同士で互いの武器を弾き合わせ、両鎌槍の穂とロマンの刃毀れしながらもまだ折れる気配の無い剣の刃が何度も打ち合いその度に周りに風が吹き荒れていた。

もし冒険者でもレベルが低かったりそもそも常人がこの風を受ければその部位が両断されてしまう程の鎌鼬であり、それに近付こうと言う者は両者のレベルに近いか愚か者しかいないだろう。

 

「(なんて重い一撃、そして最初の不意打ちの魔法と言い明確な殺意を感じる攻撃なんだ…これが、魔族‼︎

エミルの言う通りだ、話し合いの余地が無い‼︎

何方が殺されるか、ただそれだけしか無い‼︎)」

 

その中でロマンは魔族の攻撃1つ1つの重さや殺意に溢れたその突きを前にエミルが話した事を理解する。

魔族は思想統一されてる、話し合いの余地は無い、それを肌で感じ嫌な汗が流れ始めていた。

 

「うぉらぁ、『極雷斧』‼︎」

 

「『氷結剣』‼︎

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「おっと、『暴風槍』‼︎」

 

「っ、『爆炎剣』‼︎」

 

そんな暴風にアル、ルルが突撃しそれぞれ雷、氷の上位絶技を使用し戦斧に極雷を、双剣に絶氷を纏わせ魔族を攻撃しようとし、それを見た魔族は爆風を槍に纏わせ、対するロマンも火の上位絶技で爆炎を剣に纏わせ4つの絶技が衝突する。

 

「ちぃ‼︎」

 

「…」

 

「くっ、強い‼︎」

 

そしてそれぞれ技の衝突で地面を滑り距離が開き、更に重鎧や軽装の鎧等に傷が付いたり、頬や額に切り傷が出来る等の軽傷を負う。

しかしロマンの鎧は魔法祝印(エンチャント)で強化されてる為か鎧やガントレットに傷が付く事が無かった。

 

「キシシシシシシシ‼︎

矮小な地上界の者共にしては中々やる‼︎

流石はレベル150オーバーと言った所か‼︎

だが、それでも俺が勝つ‼︎

何故なら我々は魔王様の忠実な僕であり選ばれし戦士だからだ‼︎

貴様等矮小な存在に勝ち目は毛頭」

 

乱風束(バインドストーム)超重孔(ブラックホール)‼︎」

 

「其処だよ、『光流波』‼︎」

 

「っ、エミル、サラ!」

 

同じ様に傷付いた魔族はロマン達を嘲笑しながら自分は負けないと高らかに宣言し、選ばれた戦士とも言い完全に地上界の生命全てを見下していた。

だがそんな話を長々としている隙にエミルが遂に動き、仲間が密接状態だった為撃てなかった最上級魔法で魔族の動きを止め、更にサラが光の上位絶技を発動し、光を纏い閃光の矢となった物が風と闇の中を突き切り出す。

 

「ぐっ、矮小な存在はこんな小賢しい手しか使えんか‼︎

だが無理も無いな、貴様等は劣等種なんだからなぁ‼︎」

 

その閃光の矢は明らかに魔族に当たったらしく、吹き荒れる風に血が…しかし地上界の者と違い青い血が混じりサラに手応えありと感じさせる。

 

「今だ、皆に身体強化(ボディバフ)IV&ロマン君達に『回復魔法(ライフマジック)IV』‼︎

まだまだ戦いはこれからだよ、油断しないで皆‼︎」

 

「回復と身体の強化か、ありがてぇぜ‼︎

さあ魔族め来やがれ、職人王ゴッフの弟子のアル様の力を見せてやるぜ‼︎」

 

更にエミルはタイミングを図り身体強化(ボディバフ)とロマン達3人に回復魔法(ライフマジック)を使い強化と体力を全快にさせ、それを受けたアルも魔族の粘り強さからか素直に礼を述べた後職人王の弟子の力を見せるとして戦斧を構う直した。

 

「お前の末路は予知するまでも無い、その魔法が消えた瞬間がお前の死だ!」

 

「…そうだ、僕の背後にも仲間が居るんだ…さあ来い魔族‼︎

エミルやサラの方には僕達が行かせないぞ‼︎」

 

「ほざけ、下等生物が‼︎」

 

更にルルが予知をするまでも無く敵の死を確信しながら双剣を構え、ロマンも盾と剣を構え直し背後に居るサラ、そしてエミルを守るべく弱気な自分を抑えて自らを奮い立たせる。

そんなロマンに魔法の攻撃が収まった瞬間サラの矢の貫通痕が見える魔族が襲い掛かり、再び先程の風の下位絶技同士で弾き合う。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「っ、このガキバフを受けただけの筈なのに俺を上回り始めただと⁉︎」

 

しかしそれは先程の焼き直しでは無い。

ロマンはバフを受けた事、そして後衛の2人を守る為に奮い立った結果、剣に勢いが乗り魔族の槍を弾く回数が明確に増えていた。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「うお、ぐ、懐にぃ‼︎

ぬおおあぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

そして遂に懐に飛び込み斬撃と突きを連発し魔族を後退させ始め槍の持ち柄等で魔族は徐々にガードをするしか出来なくなっていた。

そしてその背後にアルとルルが回り込み、無防備なその後ろ側から攻撃を開始する。

 

「今度こそ食いやがれ、震撃斧ぅぅ‼︎」

 

「はぁぁぁぁぁ、『暴風剣』‼︎」

 

「な、ぐぁぁぁぉ‼︎」

 

そしてアルとルルの攻撃をまともに受けてしまいアルの斧で右腕を肩から叩き斬り、ルルの双剣は鎧の背面の間を縫いながら突き刺され刃が背中に突き刺さり、それを更に間を縫いながら滑らせ抉り斬り魔族のバランスが崩れる。

 

「ロマン君ちょっと退いて、『暗黒撃(ダークバースト)』‼︎」

 

「『爆炎弓』‼︎」

 

そしてエミルがロマンに退く様に叫ぶと、ロマンはエミルとサラの2人の射線上から離れ、アルとルルも既に離れてた為闇の上級魔法で放たれた闇の波動と火の上位絶技により爆炎を纏った矢は魔族の肉体に直撃し、それぞれのダメージを重く乗せる。

 

「グフッ、だがまだまだだぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

すると魔族は斬り落とされた右腕を取り、回復魔法(ライフマジック)で全快と行かずとも斬り落とされた右腕を癒着させて再び槍を構え、更に身体強化(ボディバフ)も掛けたのかロマンと再び弾き合いになった瞬間最初の焼き直しが発生する。

 

「くっ、さっきからダメージを与えているのに弱る気配が無い⁉︎」

 

「当たり前だ、我等魔族は高等生命、下等生物の貴様等と肉体の出来が違うんだよぉ‼︎」

 

【バキッ‼︎】

 

「うわっ‼︎」

 

更に魔族はロマンのダメージを与えてる筈なのに堪えて無いのを魔族が高等生命だからと叫び、そして懐に入り蹴りを食らわしロマンをエミルの側まで吹き飛ばす。

 

「先ずは邪魔な後衛と勇者だ、死ねぇ、大水流(タイダルウェイブ)‼︎

超重孔(ブラックホール)‼︎」

 

「死なない、こんな所で‼︎

灼熱雨(マグマレイン)極光破(ビッグバン)‼︎」

 

魔族はエミル達を殺そうと大水流(タイダルウェイブ)を使いエミルが不意打ち迎撃の際に使われた物と同等の大瀑布と魔族を押さえた時のと同等の闇の孔が押し寄せる。

しかし、エミルは悲願達成の為にもこんな『名も無き魔族』に殺される訳には、ロマンを失う訳には行かない。

その為今出せる『全力』の灼熱雨(マグマレイン)極光波(ビッグバン)を放つ。

 

【ゴゥゥゥゥゥ‼︎】

 

「な、何ぃ、お、押し返され…先程と違い本気で放った魔法が何故⁉︎」

 

「魔法は体内魔力の強度や熟練度によって威力が左右される。

だからこそ言えるわ、お前如きより私の方が何方も上だったって事よ‼︎」

 

「そ、そんな、地上界の者共の中で更に矮小な人間如きが魔族の魔法を上回るなど…それではまるで…ぐあぁ‼︎」

 

【ドォォォォォォンッ‼︎】

 

魔族はまさか全力の魔法を押し返されるとは思ってもみなかったのかエミルの魔法に驚いていた。

しかし、エミルにとってみればこんな事は500年前にも出来た事。

そして現代に転生してからその領域に近付く、否、上回る為に修行を重ね当時の250に1歩1歩近付いていた。

そして魔族側もこの事象に思い当たる節があったのかそれを口にしようとしたが、魔法が直撃し遮られてしまう。

 

「やったの⁉︎」

 

「いえ、相手は未だ生きています‼︎

しかも逃げようとしてます‼︎」

 

サラがエミルに倒したのかを確認するが、エミルは現在透視(クリアアイ)観察眼(アナライズ)を併用し使っている為敵が逃げようとしている事を察知し、体内魔力回復用ポーションを飲み次の魔法の準備をしていた。

すると爆炎の中から魔族が右腕は吹き飛び、左手で槍を持って空を飛び逃げようとしていた。

 

「逃がさない、乱風束(バインドストーム)‼︎」

 

「なっ、うおぁ‼︎」

 

そして飛び去ろうとした所で乱風束(バインドストーム)に空中で捕まり、動けなくなりながら嵐を超える吹き荒れる風の中心で身体を漆黒の鎧ごと切り裂かれながら防御しようと結界魔法(シールドマジック)を使うが、その結界すら破られ始めてエミルの眼から見て魔族は焦り始めていた。

 

「今よ皆、あの中に攻撃を‼︎」

 

「おっしゃあ、行くぜぇ‼︎」

 

「分かったよエミル、此処で………斃す‼︎」

 

そしてエミルの指示により全員が武器や杖を構え、絶技と魔法を乱風束(バインドストーム)内に叩き込もうとする。

ロマンもあの魔族を逃したら駄目だ、そんな確信めいた物を感じ取り意志のある敵の命を奪う覚悟をして剣を構えた。

 

「くらえ、極雷斧‼︎」

 

「はぁぁぁぁ…『暗黒破』‼︎」

 

「爆炎弓‼︎」

 

「光流波‼︎」

 

超重孔(ブラックホール)‼︎」

 

そしてロマンやアル達が雷、闇、火、光の上位絶技により戦斧から極雷と暗黒の闇を纏った逆手から普通の持ち手に変えた双剣による重ね一閃、弓から真っ直ぐ放たれた爆炎の矢、光を纏った剣の閃光の斬撃、そして闇の最上級魔法による暗黒の孔による超重力の拘束と圧殺が魔族を襲い、それぞれが直撃して大爆発を起こした。

 

「今度こそやったよな、エミルさんよぉ‼︎」

 

「爆煙の中から力尽きて落ちて来る姿が見えます…」

 

アルは今度こそやったかとエミルに叫ぶと、爆煙の中から力尽きて落ちて来る魔族を確認していた。

そうして飛ぶ力も失った魔族は地面に叩き付けられ、その場を転がった。

また力尽きた際に鎧の一部が破損したり槍を手放してしまい地面に突き刺さる等勝利は確定した瞬間だった。

しかしエミルは杖を構えたまま魔族に近付いて行き警戒した様子だった。

 

「エ、エミル、戦いは終わったんじゃ」

 

「まだだよロマン、魔族も魔物の様に死ねば熟練度元素(レベルポイント)が発生すると書物やお母様の話にあった。

つまりは」

 

「まだ生きてやがんのか、しぶとい奴め、首を刎ねてやる‼︎」

 

ロマンはエミルの様子に戦いは終わった筈と話したが、其処にルルが書物やリリアナの話から魔族も死ねば熟練度元素(レベルポイント)が発生する事を話した。

ロマンはそれを聞き、自身の強さが変わった感覚が無かった為魔族が死んでいないと判断し、アルもサラも武器を構えてゆっくりと近付き始めた。

 

「………やっぱりアレで死んでないなんて、私もまだまだ修練不足ね。

それで、お前には何か逆転の手はあるの?」

 

「は、はははは、今からアギラ様や他の仲間を呼び逆転を図ってみせる!

アギラ様のレベルは280、お前達が今勝てる様な相手では無い!

さあアギラ様、そのお力でコイツ等を………はっ?

な、何を仰られているのですかアギラ様‼︎

早くコイツ等を………そ、そん、な………」

 

エミルは魔族に逆転の目はあるかと聞くと、魔族はベラベラとアギラと言う名の魔族を口にし、更にそのレベルは280とエミルも流石に驚くべき数値を耳にしてしまう。

それは自身がライラだった時の勇者一行のレベルを優に超えるからであった。

その為矢張りかつての自分超えをする事が急務とプランに急変更を入れると、魔族は何故か独り言を話し、勝手に絶望して空を見上げてしまっていた。

 

「何だコイツ、独り言を話しやがって」

 

「アル、魔族はあの額にある赤い水晶を介して念話が可能なんだよ。

お父様やリリアナ様が確かにそう言ってたよ、ね、ルル?」

 

「言ってたわ。

そしてアギラ様とか言う魔族の名を出した後勝手に絶望した所を見るにそのアギラに見捨てられたと推察が可能よ」

 

アルはブツブツと独り言を話した魔族を怪訝な目で見てると、サラとルルが魔族は額にある赤い水晶で念話が可能、更には勝手に絶望感に満たされている所を見てルルはアギラと言う魔族が死に体のこの魔族を切り捨てたと推察しながら次にエミルが何をするのかを見届ける気で居た。

 

「…逆転の目は無くなったわね。

じゃあ心置き無く止めを刺すわ………但し、コレは貰うわ‼︎」

 

【ググッ、ブシャァ‼︎】

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

エミルは逆転する事が無くなった魔族に止めを宣言し魔法で殺す………かと思った次の瞬間、エミルは魔族の赤い水晶を引き抜くと言うロマン達も理解し難い行動に出た。

そして水晶を引き抜かれた額からは青い鮮血が噴き出し、その血がエミルに掛かりながら魔族は踠き苦しみ始めていた。

 

「それじゃあ止めよ、消えなさい、『星珖波(スターバースト)』‼︎」

 

【キィィィィィン、ドォォォン‼︎】

 

そうして漸く止めに入ったエミルは光の上級魔法を使い、星の光を集約して炸裂させ魔族を消滅させた。

容赦無く、問答無用に。

 

「エ、エミル、何でその水晶を引き抜いて態々苦しめる真似を…?」

 

「別に苦しめさせる意図は無かったわ、ただ将来的な事に必要な物だったから引き抜いたのよ。

それより…そろそろね」

 

ロマンはエミルの行動について本人に問うと、エミルは将来的に必要だと話すだけだった。

ロマン達には分からないがエミルにはしっかりとした目的があった。

それは前世に残して来た課題であり、絶対にその課題を終わらせなければならないのだ。

そしてエミルがそろそろと告げた次の瞬間、ロマン達はレベルが自分自身で明らかに上がったと感じる実感を持ち自身の手を見ていた。

 

「これって…レベルアップ?

でも明らかに強くなり過ぎてる気が…」

 

「当然よ、相手はレベル173と私達を上回ってた魔族よ。

でもお飾りのレベルみたいで魔法も絶技も余り強く無かったわ……兎に角、サラ達もロマン君もレベルが20以上上がったわ。

正確にはサラがレベル180、アルが184、ルルとロマン君が182よ。

おめでとう」

 

ロマン達は明らかに上がり過ぎたと感じる自分のレベルに違和感を感じていた所、エミルは黙っていた相手のレベルを明かし、その数値は173と明らかに自分達1人1人を上回る物であった。

しかしエミル曰く飾りらしく、魔法も絶技も強く無いと言い放ち、しかしエミルもやや肩で息をしながら話を続けてロマン達全員はレベルが22も上がると言う違和感の正体を話していた。

 

「ほう、レベルが22も上がるか。

なら魔族狩りでもやってみるか?」

 

「駄目よ、故意に魔族に挑むのは危険よ。

特に名前がある魔族は全員レベルが220を優に超えてるって文献であったわ。

そしてアギラと言う魔族のレベルは280だとさっきの名無しの魔族は言ってた。

この事から私とロマン君はレベリングをしながら探し物をする事になったわ。

アル、もう一度だけ言います、魔族狩りは駄目。

名ありの魔族に当たれば死ぬわ」

 

アルは此処で冗談半分で魔族狩りをしようかと提案した所、エミルは猛反発しライラの時の記憶や遺された文献から名前のある魔族に当たれば確実に死ぬ事を警告で伝え、2度も同じ事を念押しで言い放ちサラやルルもアルを心配した目で見ながら魔族狩りは駄目だと雰囲気で伝えていた。

 

「…けっ、冗談だよ、真に受けるなよ」

 

「それで良いわ。

後、皆に言って置く事があるわ。

500年前に冒険者推奨レベルが150以上必要だったのは何故か、よ」

 

アルは冗談だと言い切り戦斧を背負いながらそっぽを向き少し地雷なジョークだったと内心感じていた。

するとエミルは500年前の冒険者推奨レベルが何故150以上必要だったかを言うと話し始め、サラやルルは親から聞いてる為改めて復習を兼ねて聞く様にし、ロマンとアルは先程の名無しの魔族との戦いの後にそれを言う事にある程度予測が付き、しかし黙って聞いていた。

 

「それはエンシェントドラゴン等が今より居たのもあるけど、本当の理由は名無しの魔族の時点でレベル150オーバーだったからなの。

これは王家の中に秘匿されたライラ様が残した検閲文献の中にそう書かれていたからよ。

だから私は魔王討伐に当たりフィールウッド国の最北の世界樹で千里眼(ディスタントアイ)転移魔法(ディメンションマジック)が使えるレベル140を最低ラインにしてレベリングしたのよ、10程度の差は工夫すれば埋められるから。

実際は163になったけれどね」

 

エミルはライラの時の記憶や検閲文献内に書かれたその理由、名無し魔族の時点で最低150オーバーのレベルを持っていたからである。

そしてエミルが最低140を目指したのも千里眼(ディスタントアイ)転移魔法(ディメンションマジック)を支える最低ラインでもあり、レベル10程度なら差を埋めるが可能な為でもあった為である。

 

「…そして、こうやって魔族が平然と現れた…つまりお父様達が言っていた戦いの刻が来たってことになるね…」

 

それ等を聞き場の空気が重くなる中でサラが最後に賢王ロック達の言っていた戦いの刻が来たと告げるとルルも頷き、エミルも実感として持っていた。

名無しの魔族が自分達の前に現れ、名ありの魔族に念話をしていたと言う事はそれ即ち、門の封印が完全に解けている事の証明であるからだ。

更にそうであるならば魔界からの侵略が再び始まるのもそう遠くないのだと、その場に居た5人は理解せざるを得なかった…。




此処までの閲覧ありがとうございました。
ルルはフードを取るとスイッチが入り性格が超強気になる一癖ある子でした。
そして名無し魔族でレベル150オーバー、500年前の世界は魔境だったのです。
さて、今回は属性の関係についてです。
火と水、風と土、光と闇は反発し合い、雷は水系に大ダメージを与え、氷は強ければ火すら凍らし、雷と氷も反発しない様に見えて反発作用が発生します。
そしてこの反発作用の中で威力が上回った方の魔法は打ち勝ちますが威力がその分減らされます。
そして火は風と土に、水は土と風に対しては互いを助け合って片方の威力を上げたり拘束力を上げたりと副次効果が発生します。

次回もよろしくお願い致します。

追記:乱風束のルビ振りが初期案とごっちゃになって投稿されていたのに気付き過去投稿分の物までを修正しました、大変失礼致しました。


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第10話『エミル達、採掘する』

皆様おはようございます、第10話目更新でございます。
今回は前回の戦闘の後の続きとなります。
魔族の襲撃を突破したエミル達は本来の依頼に戻ります。
では、本編へどうぞ。


エミル達が魔族を斃した後、エミルは浴びた青い鮮血を洗い流す為近場の川辺で身体を洗い、服も洗い火の下級魔法で焚いた焚き火で直ぐに乾かし、そして全員がエミルを待っている間に逃げ出した馬達も全てが終わった事を察し馬車を引いて戻って来ていた。

因みにアルは気になる事があり魔族の破損した鎧の一部と槍を回収して荷台に乗せていた。

 

「それにしてもエミルが言っていたあの魔族の赤い水晶…『魔血晶(デモンズクリスタル)』が将来的に必要になるって何なんだろうね〜?」

 

「…分かり、ません。

魔血晶(デモンズクリスタル)は………念話に使われるだけで無く…魔族の、核にもなってる、厄介な…物です………。

アレが、ある限り………魔族は、名ありの、魔族に与えられた力で………復活します…」

 

サラがエミルの言う将来的な事に必要になると言う言葉を改めて振り返り、他の3人にも質問してみるがアルはお手上げ、ルルはリリアナや書物から学んだ魔族の額にある赤い水晶、魔血晶(デモンズクリスタル)の持つ厄介な特性、名ありの魔族の手に渡れば魔族が復活する事を話し、尚の事必要になると言う意味が分からなくなっていた。

 

「…でも、エミルが必要だって言うなら絶対に必要なんだと思う。

まだ数日しかパーティを組んでいないけど、エミルの自信家な部分は信用出来るんだ。

だからそのエミルが必要だって言うなら僕は信じたい、エミルが僕を信じてくれた様に…!」

 

だが此処でロマンがエミルが必要ならばと言った事に対して彼女は数日間で不思議と自信家な面が見え、ライブグリッターの話を加味してそのエミルが必要と言った言葉を信じたいと口にする。

それはエミルが自身の優しさや勇気を信じた様に、エミルのその部分やエミル自身を信じたい、そんな信頼から出て来た言葉だった。

 

「…まぁ、アイツが世界の命運を握ってるってルルの予知で出ちまったし、何より会って直ぐの俺様達よりもお前が信じるっつうならそれで良いんじゃねぇか?

何せロマン、お前がエミルのパーティメンバーなんだからな」

 

「だね〜、ロマン君が言うならそれ以上私達から言う事は無いね〜。

…あ、エミルが来た!

お〜い、早く早く〜!」

 

そのロマンの言葉にアルやサラは世界の命運を握るエミルのパーティメンバーのロマンが言うなら自分達が口を挟む必要は無いとしてそれ以上何かを言うのを止めた。

それと同時に川辺がある森からエミルが出て来た為サラは手を振り彼女を早足にさせた。

 

「ごめんなさい、待たせちゃった?」

 

「いや、魔族と戦った時よりかは時間は喰っちゃいねぇよ。

さあ行くぜ、馬を歩きから走らせて少し時間短縮を図るぞ!」

 

「手綱を握るのは私だけどね〜」

 

エミルは待たせたかと4人に聞くと、依頼人でもあるアルが先程の魔族との戦闘よりも待っていないと気を利かせた。

しかし魔族との戦闘等もあり、予定よりも大幅に時間を取られたとして馬車を飛ばして時間短縮を図ると予定変更を叫び、サラ達は変わらずアルとルルは荷台に乗りサラが手綱を持った。

 

「あ、ロマン君少しお願いがあるんだけど馬の手綱を持ってくれないかな?

私はこの魔血晶(デモンズクリスタル)にちょっと用があって手綱を握られないから」

 

「そうなんだ…うん、分かった。

じゃあ僕が馬の手綱引きを継ぐから荷台でそれに集中してて良いよ」

 

「本当にごめんねロマン君、この埋め合わせは必ず払うからね」

 

するとエミルは魔血晶(デモンズクリスタル)に集中したいとして手綱をロマンに握る様に頼み出す。

それを引き受けたロマンは快諾して荷台にエミルを乗せて手綱を握った。

 

「それじゃ行くよロマン君、ハイッ‼︎」

 

「うん、ハイッ‼︎」

 

『ヒヒーン‼︎』

 

そうしてロマンが手綱を握ったのを確認してサラが先に馬に早く走る様に指示を出して馬車が急発進し、その後を追い掛ける為にロマンも馬に指示を出して後ろを付いて行くのであった。

その間にエミルは首紐に掛けた魔血晶(デモンズクリスタル)に手を翳し、魔力を放出し小さな魔法陣を形成し、過去からの課題を片付ける為に作業を開始するのであった。

しかしその間ロマンや馬の気分の悪くなる光が魔血晶(デモンズクリスタル)から放たれ、見た者や浴びた者、馬は気分が優れずにいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから山道に入り、崖から落ちない様に間隔を開けながら馬車を操り合計1時間半後、ほぼ予定時刻の昼前に鉱山に辿り着き全員で第2採掘場前に馬車から降りてアルが魔法袋(マナポーチ)から取り出した鶴嘴等の採掘道具を全員に渡していた。

 

「さて!

本来ならロマンの剣の分のミスリル鉱石を回収して帰ればよかったがさっきの魔族との戦闘で俺とルルのミスリルアーマー一式やミスリルプレート、武器まで傷付きやがった。

だから俺様達の分も含めて採掘せにゃならんくなっちまった。

エミル、透視(クリアアイ)観察眼(アナライズ)が使えるなら純度の高い鉱石を俺様達に教えやがれ!」

 

「分かったわアル。

それじゃあ採掘開始ね」

 

そしてアルは鶴嘴を抱えながら本来の予定よりも更にミスリル鉱石が必要になった事をエミルとロマンにも伝え、エミルに透視(クリアアイ)観察眼(アナライズ)を使い純度の高い鉱石を見つける様に指示を出し、坑道内に設けられた松明に火を点けて行きながら奥へと進み始めた。

 

「あ、ロマン君此処に純度の高いミスリル功績があるから此処で採掘して。

アルはこっち、サラはあっち。

ルルは私と一緒にちょっと奥の方にある鉱石を掘ろうね。

じゃあ採掘作業を楽にする為にも、身体強化(ボディバフ)III‼︎」

 

「おう、鉱石を傷めず確実に掘れる為に敢えて身体強化(ボディバフ)をIIIで止めるのは採掘についてそこそこ知識がある証拠だな。

流石は王族、そんなトコまで教育が行き渡ってるか。

じゃあエミルが言った場所で掘って掘って掘りまくるぞお前等ぁ‼︎」

 

そうして坑道を歩く中でエミルは純度の高いミスリル鉱石が大量に含まれる採掘ポイントを割り出し、それぞれに掘る場所を指示を出すと更に鉱石を傷めず、それでいて楽に掘れる様に身体強化(ボディバフ)IIIを自身を含む全員に掛ける。

それを見聞きしたアルはこんな炭鉱夫の知識すらある事に感心しながら全員に掘る様に指示を出し、皆がポイントに付き鶴嘴を振るったりし始めた。

 

「そう言えばルルって、フードを取って戦闘に入った時滅茶苦茶強気で普段の口調からは考えられない位、物をしっかりと言ってたよね?

アレは、何なのかな?」

 

「あ、あれは、その………戦闘モード、みたいな…物、です!

何方も、ちゃんとした私なので………気にしないで、下さい…!」

 

そうして鉱石の採掘作業に入ると、エミルはルルに戦闘時の普段との変わり様について聞くとルル曰く戦闘モードらしく、何方もちゃんとした自分だと言って二重人格の様な物では無く気分がハイになっているだけだとエミルは解釈し、そう言う性分であると記憶に留める事にした。

 

「あ、わ〜いやった〜、ミスリル鉱石ゲット〜‼︎」

 

「わ、硬い!

これは…やっぱりミスリル鉱石だ!」

 

「ガッハッハッハッハ、大量大量‼︎

これなら直ぐ必要な分が集まるわ‼︎」

 

それから30分後、エミル達を含めて5人は次々と純度の高いミスリル鉱石を採掘し、これを眺めていたアルは高笑いしながら必要な分が直ぐに揃うと叫び、そして身体強化(ボディバフ)の効果が切れる度にエミルは掛け直しを行い、そうして採掘開始から1時間半が経過した頃、アルとエミルの魔法袋(マナポーチ)に大量の純度高めのミスリル鉱石が収められ坑道の外に出て作業を終了する。

因みにエミルとルル、アルは当初の採る量より更に多く採っていた。

 

「ガッハッハッハッハ‼︎

これだけあればロマンの剣を鍛え直すついでに俺様達の装備も鍛え直せるわい‼︎

それじゃあアイアン村に帰るぞ、あそこの鍛冶屋を借りて早速作業に移るぜ‼︎」

 

「これなら日が落ちる前に帰れそうね。

あ、ロマン君、帰りも手綱を握ってくれないかな?」

 

「うん、分かったよ」

 

採掘道具をアルに返品すると、エミルのも合わせて魔法袋(マナポーチ)を覗き見て集まった鉱石を見てアルはご満悦と言った表情を見せ、早速アイアン村の鍛冶屋を借りて作業に移ると言い馬車の荷台にルルと共に乗り込む。

そしてエミルは魔族を斃した後の鉱山に来る時と同じく、ロマンに手綱を任せて赤魔晶(デモンズクリスタル)に集中し始めた。

 

「後はまた魔族がまた襲撃して来なかったら日が傾く前に村に帰れるね」

 

「うん、どうか魔族が出ない様に…!」

 

「けっ、あんな不意打ちはレアケースだっての‼︎」

 

気分が優れない光の中で馬車が動き出し、山道を馬達が馬車を転がさない様にゆっくり歩く中、ロマンは日が傾く前に村に帰れると話しつつ、魔族の襲撃が無ければと口にし、それを聞くとサラはまた魔族が出ない事を祈っていた。

しかしアルはあの襲撃はレアケースだと話しながらまた来ないであろうと楽観視では無いが、魔族との戦いで感じたある種の死の匂いを感じない為恐らくは襲撃は無いと判断していた。

 

「…大丈夫、300キロメートル範囲内には魔族の存在は確認出来ないから」

 

「エミル、魔血晶(ソレ)に集中しながら千里眼(ディスタントアイ)で警戒してるの?

凄いマルチタスクだね…」

 

するとエミルがロマンに聴こえる様に魔族の存在は確認出来ないと話し、それを聞いたロマンは魔血晶(デモンズクリスタル)に集中しながら千里眼(ディスタントアイ)で300キロメートル範囲内を警戒し、二の轍は踏まない様にしてる事を知り、そんなマルチタスクをこなすエミルをロマンは凄いとはっきりと口にした。

何故なら自分にはそんなマルチタスクが出来ないからである。

 

「…ロマン君も、サラもアルもルルも凄いよ。

初めての魔族との戦闘で小さな怪我をした程度で終わらせられたんだから」

 

「そ、それを言うなら………エミルも凄いと、思います。

………エミルも、魔族と『初めて』、戦ったのにちゃんと、魔法使いの…役割を、果たしてました、から…」

 

「…そうね、ありがとう、ルル」

 

そのロマンの凄いと言う言葉にエミルは前世においての魔族との戦いは死が付き纏う恐ろしい物であるのに、本当に初めて戦ったのに軽傷と武具の少しの破損で済ませた4人にも凄いと言う。

するとルルがエミルも初めて戦ってと言い、確かに『エミルでは』初めて戦った為額面通りでは無いが、ルルの言葉を素直に受け取り魔族との戦闘の勘は鈍ってない事を自身でも知るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

それから2時間半後、日が傾き始める直前にアイアン村に辿り着き、門が開かれ馬車が村の中へと入った。

因みにエミルは魔力を魔血晶(デモンズクリスタル)に通すのを村の見える前で止めている。

 

「ロマンにアルさん達お帰り…って、皆そのレベル如何したの⁉︎

ロマンとルルさんはレベル182、サラ王女殿下はレベル180、アルさんはレベル184、そしてエミル王女殿下もレベル185になってる⁉︎

一体アグ山に行く間に何があったのさ⁉︎」

 

「あ、あはは、色々あったんだよ、色々…」

 

するとエミルやロマン達を迎えたエヌは全員のレベルがたった半日程で22も上がった事に驚き、一体何があったのかと叫ぶとロマンも魔族に襲われましたと混乱を招く事は言わず色々あったと濁していた。

 

「それよりおい坊主、かぼちゃ亭で依頼達成報告をした後にこの村の鍛冶屋に案内しろ。

俺様が俺様達の武具の鍛え直しをする為に借りてぇ」

 

「え、あ、はい、分かりました!

では話を通してかぼちゃ亭の外で待ってます‼︎」

 

するとアルがエヌに鍛冶屋を借りて自分達の武具を鍛え直すと言い、それを聞いた瞬間エヌは敬礼をして鍛冶屋に話を通してかぼちゃ亭の外で待つと言いながらその場を去って行った。

するとアルがロマンにウインクをし、これ以上根掘り葉掘り聴かれるのを防いだとロマンは理解し、アルに頭を下げていた。

そして馬屋に馬車を入れ、馬達を預けると真っ直ぐかぼちゃ亭に向かい中に入る。

 

「いらっしゃいっと、ロマンにアルさん達か!

ロマンにエミル王女殿下、依頼は達成しましたか?」

 

「はいばっちりと、これがその証拠のミスリル鉱石です」

 

宿屋の亭主のガルがロマン達が入って来たのを確認すると、依頼達成は出来たかと聞いて来た為エミルとアルは魔法袋(マナポーチ)からミスリル鉱石を大量に取り出し、最後に依頼の書かれた魔法紙(マナシート)を取り出しガルに提出した。

 

「うお、滅茶苦茶採掘しましたね!

何かあったのでしょうか?」

 

「はい、ある事が発生し、それにより懸念事項が出来た為ルルやロマン君達に協力して貰って多く採掘しました。

そしてそのある事は………驚かず聞いて、騒ぎにならない様にして下さい。

実は私達はアグ山に向かう途中で魔族に襲われました」

 

ガルは大量のミスリル鉱石をみておどろきながらなにかあったのかと尋ねると、エミルはアグ山に向かう途中であった事…魔族の襲撃に遭った事を驚かず騒ぎにならない様に前置きをしながら話した。

するとガルは周りを見て聞き耳を立ててる者が居ないか確認すると、カウンターから屈み気味になり小声でエミルと話を続け始めた。

 

「それは確かですか、王女殿下?」

 

「はい、現に私が今首から下げているこの赤い水晶、魔族の核たる魔血晶(デモンズクリスタル)です。

1度お渡ししますので奥で魔力を通してみて下さい、ギルド協会の方なら知っている筈です。

魔血晶(デモンズクリスタル)は地上界の者の魔力を通すと地上界の者の気分を害する光を放つと」

 

ガルはエミルにそれは確かかと話し始めるとその当本人は魔族から摘出された魔血晶(デモンズクリスタル)の特性(無論検閲内容)を話し、ガルはそれを受け取り奥へ行き魔力を集中して魔血晶(デモンズクリスタル)に魔力を通した。

 

『っ⁉︎』

 

すると赤き水晶は邪気とも言うべき物を多分に含む光を放ち、ガルは驚きそれを床に落としてしまった。

更に巻き添えでリィナも皿を落とし割ってしまう。

そして恐る恐る拾い上げ、直ぐにエミルの下に走りそれを手渡した。

 

「か、確認しました…間違い無くこれは魔血晶(デモンズクリスタル)、魔族の核です…!

い、依頼完了の承認後にこの事はギルド協会全体に共有し警告を促します、魔族が遂に出現した、と…!」

 

「はい、私が言いたかった事を率先して行うと言って頂きありがとうございました。

では依頼完了の判をお願い致します」

 

ガルは魔血晶(デモンズクリスタル)を返却し、エミルがやりたかった事の1つである全体への警鐘を鳴らす事を言う前から率先して行うと約束したガルに礼を述べながら魔法紙(マナシート)に依頼完了の了の判が刻まれ、これで依頼は達成され、報酬のエミルの剣の修理が行われる事になった。

 

「エミル、もしかしてガルさんに全体に警告を出して貰いたかったからそれを?」

 

「それもありますけど、本当は別の理由があるの。

今は内緒ですけど伝えるべき時が来れば必ず伝えますよ。

それよりロマン君、剣を鞘から抜いて状態を見てください」

 

ロマンは魔血晶(デモンズクリスタル)を引き抜いた理由はこれなのかとエミルに尋ねると、そのエミルは今は内緒と言い本当の答えは未だ言わない様にしていた。

そんな会話をしていた中、エミルはロマンの剣を抜き状態確認をする様に促した。

 

「え、うん………って、うわ⁉︎

昨日アルに見せた時よりも更に酷い状態に⁉︎」

 

「…やっぱしか、俺様の見間違えじゃなかったみてぇだな。

お前、持ち帰ったあの魔族の槍と何度も打ち合っただろ?

で、最後の方にはその状態、更に刃毀れして刀身もヒビ割れて何時折れても可笑しく無い状態になってやがった。

エミル、防具にエンチャントを掛けた理由はこれか?」

 

鞘から抜かれたミスリルソードは最早まともに戦いに耐えられない見るも無惨な状態と化し、それを戦闘後にアルは鞘に収める瞬間に気付き自分達の防具用と言い張りながらこの状態の剣を鍛え直そうとし、エミルも同じ事を考えていた為必要以上に鉱石を採掘したのである。

そしてアルは問いた、ロマンの防具に魔法祝印(エンチャント)を掛けた理由はコレかと。

 

「ええ。

嬉しい誤算だったのはロマン君が剣で弾いて防具にダメージが入らない様にした事。

第4の魔法祝印(エンチャント)は防具の強度アップにしてあの魔族の武器で余計な傷を増やしたく無かったのだけど今は未だ付けなくて大丈夫…と思っていたら魔族の襲撃が来てしまったの、見通しが甘かったわ」

 

エミルはアルの問い掛けにYESを出し、ミスリル製武具から付けられる様になる第4エンチャントは未だ抜きで大丈夫と踏んでいた所に魔族が現れた事で何もかもが見通しが甘かったと話し、完全な誤算だったと話した。

 

「(そう、見通しが甘かった、まさかあんなに早く魔族が来るなんて…。

そして、魔族が現れたならもう門に掛けた縛られし門(バインドゲート)も解けてる…プランの大幅な見直しが必要になるわ)」

 

事実エミルはエンチャントを完全にするのはロマンの剣が直ってからが良いタイミングだと考えていた為あの戦いは誤算だったのだ。

しかしロマンが武器で弾き合いをした為防具に余計なダメージが入らなかったのだけは嬉しい誤算でもあった。

でなければミスリル鉱石が更に必要になったからだ。

そして同時に、エミルは自身の中のプランを大幅な見直しをしなければならないと考えていた。

 

「…ふん、兎に角ロマンの剣や俺様達の武具の鍛え直しが先決だ。

何せ俺の斧も鎧も、ルルの武具も魔族の鎧を斬ったり槍を弾いたりしたから傷付いちまったからな。

ついでにあの槍と防具の破片にどんな魔法祝印(エンチャント)が付いてるかも調べてやる。

さあ、ルルもミスリルダガー2本とミスリルプレート、軽装ガントレットやレギンスも寄越しな。

俺様の武具と一緒に直してやる」

 

「…はい…」

 

それらを聞き、少しは納得したのか傷付いた自分達の武具とロマンの剣の鍛え直しをするとアルは宣言し、同時にあの槍や防具の破片に付いた魔族側の魔法祝印(エンチャント)も片手間に調べ上げると宣言する。

エミルは壊れた防具からそれを読み解くのは難しい筈だが、ゴッフの弟子なら大丈夫だろうと思いそれもアルの目に実際に見て貰おうと考えた。

そしてロマンとルルは自身の傷付いた剣と武具一式を渡した。

 

「さて久々の大仕事だ、こりゃ暫くは鍛冶屋に籠り切りだぜ…」

 

アルは手渡されたロマンの剣、ルルの武具に自身の武具、そして改めて自身とエミルの魔法袋(マナポーチ)に入れたミスリル鉱石を持って外に出て、エヌの案内で鍛冶屋まで赴きその戸を開け中に入って行った。

 

「大丈夫かな、アルは…暫く籠るって言っていたけど…」

 

「心配ないよ〜ロマン君!

アルは頑固者だし色々納得させるのに骨は折れるけど仕事の腕は確かだよ!

だから、絶対皆の武具を鍛え直してくれるよ‼︎

…でも鍛冶屋に籠るのは珍しいから、暫くは外に出ないだろうから食事は持って行ってあげようね」

 

ロマンは剣の心配とアル自身の心配をし、その背中が梶谷の中に入るまで見送っていた所にサラが心配は要らないと話した。

それは偏にアルの腕を信じているからこそ出る言葉であった。

しかしそんなサラでも鍛冶屋に籠って作業は珍しいと話し、仕事は暫く掛かるだろうと話しながらかぼちゃ亭の中に入って行った。

 

「それじゃあ皆、アルが武具の鍛え直しが終わるまではアイアン村で待機しましょうか。

あ、サラにロマン君、貴女の上級弓『フェザーボウ』や弓兵用防護服でも上位にある『賢人の衣』にフルで魔法祝印(エンチャント)を、ロマン君は防具に第4の魔法祝印(エンチャント)を掛けて良いかな?」

 

「えっ、良いの⁉︎

じゃあ付けて‼︎」

 

「僕もお願い、エミル」

 

そうしてエミルが手を叩き、アルの仕事が終わるまでは村に残ろうと話すとサラ達もロマンも頷き、アイアン村で暫く滞在する事になった。

するとエミルは丁度良い為サラのフェザーボウと賢人の衣に魔法祝印(エンチャント)を掛けると提案するとサラは快諾。

ロマンも了承しそれを聞きエミルは杖を取り出し早速準備に入った。

 

「先ずフェザーボウ、此方には射程距離アップ、威力アップ、魔力浸透率アップ、そして矢の速度アップを。

次に賢人の衣には防御力アップと魔法ダメージ減衰、回復力アップ、そして移動速度アップ魔法祝印(エンチャント)全部IVを付与‼︎

更にロマン君の防具全部に強度アップIVを付与‼︎

えい‼︎」

 

「お、おぉ〜‼︎

凄い、この服着てるだけで走るスピードが上がった事が実感出来る‼︎

ありがとう、エミル‼︎」

 

そうしてエミルは後衛のサラに掛ける魔法祝印(エンチャント)を考えて決め、直ぐに距離を空けて其処から速度が上昇し絶技用の魔力浸透率も上がった矢を放つのと元から距離が空いてる場合は射程距離が上がった弓で狙撃すると言う無駄が無い魔法祝印(エンチャント)を掛けていた。

それにサラは大喜びし、エミルの手を持ち屈託の無い純粋な笑顔を向けていた。

 

「僕の防具も強度が上がって、更に硬くなったよ。

ありがとう、エミル!」

 

そしてロマンも第4魔法祝印(エンチャント)の効果を確かめるべくアーマーをガントレットで叩くと先程よりも硬くなった事が分かりエミルに礼を述べていた。

 

「…さて、そろそろ食事にしてアルにも食事を運びましょうか」

 

「そうだね。

じゃあリィナさん、早いですけど晩御飯の用意をお願いします!

それから暫く宿泊しますのでよろしくお願いします!

後先程のお皿の代金は弁償致します」

 

「はい、わかりましたよ!

あ、皿は良いですよ、沢山ありますから!」

 

その後魔法祝印(エンチャント)を掛け終え、やり切った表情を見せたエミルは早速食事にしようと咳に着きながらリィナに食事を注文し始め、更にお皿弁償と暫く滞在する為に宿泊すると言いリィナもそれを聞き宿泊者名簿にロマンやエミル、サラ達の名を書き始めていた。

因みにお皿の弁償は向こうの意思を汲みしなくて済まされてしまった。

 

「(…さて、私は過去の課題に決着をつけましょうか。

ライラの時代で結局片付けられなかった課題を…)」

 

そしてエミルは首からぶら下げた魔血晶(デモンズクリスタル)に手を掛け、ライラの時に残してしまった課題の着手に掛かりこの滞在期間中にそれを片付けてしまおうと考え運ばれて来る食事を口にしながら思案するのであった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
ロマンの剣、更にボロボロになってしまうの巻。
更にアルとルルの武具も傷付いてしまってました。
この理由は次回に。
そしてロマンの防具に第4魔法祝印(エンチャント)、サラの武具にも魔法祝印(エンチャント)が付きました。
魔血晶(デモンズクリスタル)の特性は地上界の者の魔力を通されると不快な光を出すだけで無く魔族同士の念話、名ありの魔族や勿論魔王の手に渡ると肉体が滅せられた魔族が復活すると並べただけでもチートな物です。
それを手にしたエミルは何をするのか、またロマンの剣は無事に直るかお楽しみ下さいませ。

次回もよろしくお願い致します。


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第11話『エミル達、誓いの翼となる』

皆様おはようございます、第11話目を更新致しました。
今回はロマンの剣の修復とその他にも重要な事がある回となっております。
では、本編へどうぞ。


【カン、カン、カン‼︎】

 

エミル達の滞在が決まり、鍛冶屋にアルが籠りその店主がアルが振るい上げ打ち付ける金槌とその音に耳を奪われながら、アルは先ずは先に直ぐに終わるルルの武具の修復から汗を掻きながら始めていた。

 

「ふう、ルルの戦闘スタイルは相手の防具の縫い目を狙いやり方で助かったぜ。

お陰で前衛で1番ダメージ少なかったからな、がこれならアイツ等が寝静まる頃には終わりそうだぜ。

さあ、ミスリルプレートは終わったから次は軽装ガントレット、レギンス、そしてダガー2本の順だ…さあ店主、火の魔法や溶けたミスリルの管理は欠かすなよ!」

 

「は、はい‼︎」

 

【ジュゥゥゥ、ジョワッ‼︎

ギリギリギリギリ、カンカンカンカン‼︎】

 

既にルルのミスリルプレートを修繕したアルは店主を即席助手にして簡単な火の魔法を浴びせて溶けたミスリルの温度管理等をやらせ、自身は常に持ち歩く鍛冶道具一式で溶けたミスリル鉱石を型に嵌めたり、冷やして固めたりルルの手に馴染む様に削り曲げたり、そして打ち付けるを繰り返し行い始めた。

 

「凄い、これが職人王ゴッフ様のお弟子様、アルさんの腕…‼︎」

 

その手際の良さ、シンプルながらも他者を魅了する職人の輝き、それをアルは放ちながらミスリルガントレットの修繕があっという間に6割も終わり始めていた。

店主はその職人芸にすっかり虜となり、温度管理をする傍らにそれ等を見て遥か高みの存在の鍛治を体験していたのだった。

 

 

 

 

 

一方宿屋ではエミルが風呂を入り終えた後部屋に戻り、その地上界の生物を不愉快にさせる光が漏れぬ様に仕切りや窓に布を被せ閉め切り魔血晶(デモンズクリスタル)に魔力を集中して昼間にしていた事を更に続けていた。

これを一刻も早く終わらせる事がエミルの絶対にやらねばならない事であり、それは自身がはっきりと分かってやっているのであった。

 

「(今頃アルはルルの武具の修繕を終えて自分の武具の修繕に入った筈。

ロマン君の武器の鍛え直しは魔族の槍と打ち合ってあんな状態になっているから明日中掛かり通しにしないとならない筈)」

 

その中でエミルはアルの仕事作業進捗を予想しながらロマンの剣が1番最後に回されるとも思っていた。

それは『魔族の武器と打ち合った結果』、剣が更に酷いダメージを負った為鍛え直す範囲が広がり過ぎた為である。

無論何故そうなったかはライラの記憶と知識を継ぐエミルには如何なる要素がそうしたか確信が持てていた。

 

「(なら私も明日、休憩としてアルやルルの武具にも魔法祝印(エンチャント)を掛ける事を聞きに行った後これに集中しよう。

そしてその間に必ず過去の私(ライラ)が残した課題を…)」

 

更にマルチタスクの思考はルルは兎も角魔法祝印(エンチャント)嫌いなアルの武具にすら魔法祝印(エンチャント)をする事を聞きに行った後にこの魔血晶(デモンズクリスタル)へ行っている作業に集中すると決め、そしてロマンの剣が仕上がる間に必ず前世で終わらせられなかった課題を片付けると心に決めながら魔力を魔族の核に通し続けるのであった。

 

 

 

 

その翌朝、エミルは夜通しの作業の休憩に1階へ降りると、其処にはサラとルルと、そしてロマンが朝食を摂っていた。

それを見つけたエミルは同じテーブルの椅子に座り3人に話し掛け始めた。

因みに魔血晶(デモンズクリスタル)は万が一に盗まれない様に首から下げている。

 

「ロマン君、サラ、ルル、おはよう!

ルルの武具はまだ帰って来ないかな?」

 

「あ、エミルおはよう。

うん、サラから僕の剣は多分大作業になるから今日に回されるって話だから先ずルルのが先に来ないか今こうしてご飯を食べながら待ってるんだよ」

 

如何やらアルはまだ鍛冶屋から戻らないらしく、ロマン達は朝食を食べながら彼が来るのを待っていたらしい。

エミルも朝食に焼きパンと玉子焼きと軽めの朝食を食べ、同じ様に席で待っていた。

 

「んぐ、んぐ…ふう、ご馳走様でした」

 

【ガチャ、キィィ】

 

「ようお前等、おはようだな」

 

そうしてエミルが朝食食べ終わりご馳走様の礼をした直後、かぼちゃ亭の戸が開き、外からアルが自身の鍛え直した武具を装着しつつルルの武具も持って来てルルの前までやって来た。

 

「ほれルル、お前の武具だ。

早く装備して来い」

 

「…ありがとう、アル…!」

 

早速アルはルルに武具を渡すと、彼女は2階に上がり鍛え直されたミスリルプレート等の防具やミスリルダガー2本を装備して1階へと降り、全員で周りに人が居ない屋外の開けた場所に出るとルルはフードを取り、身体をクルリと回転させた後腰に差したミスリルダガー2本を抜き、軽く振り回して感触を確かめると以前よりも更に手に馴染み身体の一部の様に感じていた。

 

「…うん、コレなら前よりももっと戦える。

本当にありがとう、アル」

 

「へっ、そう言ってくれるなら職人冥利に尽きるってもんよ。

そんじゃぁ俺様はロマンの剣を鍛え直しに行くからまた明日会おうか」

 

それからミスリルダガー2本を手の上で回転させながら鞘に収めると、ルルはアルに感謝の礼を口にするとアルは流石に鍛え直した物を軽快に使い熟すのを見て少し素直に礼を受け取りそのままロマンの剣の作業へと行こうとした。

 

「あ、その前に2人共、2人の武具にも魔法祝印(エンチャント)を掛けたいんだけどダメかな?」

 

するとエミルは昨夜から決めていた2人の武具にも魔法祝印(エンチャント)を掛けたいと言う意志を伝える。

ルルは何も言わずに居たが、アルは不機嫌そうにエミルのその目をじっと見ていた。

サラは2日前の夜にアレだけアルは魔法祝印(エンチャント)嫌いなのを理解した筈なのにこのエミルの言葉に驚きながら、何時でも2人の間に入れる様に準備をしていた。

 

「………ふん、お前ならそう言うと思ったよ。

ほら、好きなだけ魔法祝印(エンチャント)を掛けやがれ、この頑固者のアル様の機嫌が変わらねぇ内にな」

 

『えっ⁉︎』

 

所が、何とアルはルルだけで無く自身の武具にも魔法祝印(エンチャント)を掛ける事を承諾し、サラと更に2日前の夜の出来事を目撃していた為明日は槍が降るのでは無いか?と3人に思わせてしまった。

そしてそれを聞きエミルはアルの武具から先に魔法祝印(エンチャント)を掛け始めた。

 

「じゃあアルの防具一式には防御力アップ、魔法ダメージ減衰、軽量化、強度アップを。

ミスリルアックスには威力アップ、魔力浸透率アップ、軽量化、強度アップ。

手投げ斧には威力アップ、魔力浸透率アップ、投擲速度アップ、強度アップの魔法祝印(エンチャント)IVを一気に掛けるわ、えい‼︎」

 

そうしてエミルの足下に魔法陣が現れ、アルの武具全てに4つの魔法祝印(エンチャント)が掛けられアルはその感触を確かめていた。

 

「…ふん、動き易くなったし俺様のミスリルアックスも振り回し易くなったな。

そしてこの手投げ用の斧にすら最高効力の魔法祝印(エンチャント)を掛けるとは中々慎重だな」

 

「それは魔族と本格戦闘を見据えてるからよ。

それを理解したからアルも嫌いな魔法祝印(エンチャント)を受け入れたんでしょう?」

 

「…ふん!」

 

エミルはアルの武具全てに魔法祝印(エンチャント)を掛けた理由を魔族と戦うからと話すと、アルは鼻息を荒くしながらもそれ以上は何も言わずにそっぽを向きルルにも早く魔法祝印(エンチャント)を掛ける様に促していた。

 

「それじゃあルルの防具一式には防御力アップ、魔法ダメージ減衰、強度アップは共通として、元々軽装だから回復力アップを掛けるね。

そしてミスリルダガー2本には威力アップ、魔力浸透率アップ、強度アップと硬い物を貫ける様に貫通力アップを掛けるね。

サラの矢は魔族の鎧をあの時貫いていたから貫通力は問題無いからこれでOK?」

 

「良いわエミル、掛けて」

 

そうしてルルの防具一式とミスリルダガー2本にも魔法祝印(エンチャント)IVが掛けられ、それを受けたルルは再びミスリルダガーを引き抜き火の下位絶技『火炎剣』を使うと自身の魔力がダガーにより浸透し、威力増加に繋がっていた。

 

「うん、コレなら魔族の防具や武器に掛けられた魔法祝印(エンチャント)にも負けない。

ありがとう、エミル」

 

「どういたしまして、ルル」

 

「魔族の武具の魔法祝印(エンチャント)………あっ、忘れてた⁉︎」

 

ルルはエミルの魔法祝印(エンチャント)に礼を言い、更に魔族側の魔法祝印(エンチャント)に負けないと口にしながらダガーに纏った火を消し鞘に収める。

するとサラはルルの言葉で自身が忘れていた物を思い出し声を上げる。

 

「え、サラ、忘れてたって何を?

それに魔族の武具の魔法祝印(エンチャント)って何なの?」

 

「ロマン君、ロマン君の剣があんなになった原因はその魔法祝印(エンチャント)が関係してるのよ。

魔族の防具には地上界の武器や魔法のダメージを減らし、地上界の武器が当たった瞬間強度を引き上げる魔法祝印(エンチャント)が。

武器には地上界の者に対する殺傷力を高めて地上界の防具や武器の破壊効果がある魔法祝印(エンチャント)が掛かってるの。

だからロマン君の剣はあんなにボロボロになったのよ」

 

ロマンは魔族側の魔法祝印(エンチャント)が何なのかと聞くと、エミルが魔族の防具と武器にそれぞれ掛けられた対地上界用魔法祝印(エンチャント)と言うべき物が掛けられている事を明かし、ルルや思い出したサラは頷きそれが事実だとしていた。

それを聞いていたアルも溜め息を吐き、後ろを振り返りながらエミル達に言葉を掛け始めた。

 

「俺様は、俺様の武具は何者にも負けない、それこそ魔族にさえ勝つとさえ信じていた。

事実昨日の魔族には勝てたしな。

だが…あの魔法祝印(エンチャント)が掛かった漆黒に澱んだミスリルの武具を見て、ルルからそれがどんなもんか聞いたらゾッとしたぜ。

奴等は俺様達地上界の者を皆殺しにしたいからあんな魔法祝印(エンチャント)を掛けやがったんだってな。

それに対抗するには同じ様に魔法祝印(エンチャント)で武具の防御力や強度を上げるしか無い、そう理解しちまったよ」

 

アルは自身が作り上げた武具に絶対的な自信があり、魂を込めた物でもある為これなら魔族にも負けないと信じて疑っていなかった。

だが魔族の武具を調べ魔法祝印(エンチャント)が掛けられていると知り、更にルルから聞いた内容で地上界に対する絶対の殺意とも言うべき物を背筋で感じてしまい、昨日は良く武具を破壊されずに勝てたと思い、自分は井の中の蛙だとゴッフとの職人対決以来に思い知らされてしまったのだ。

その為エミルの魔法祝印(エンチャント)の提案を受けたのであった。

 

「さあこれで俺様が大嫌いな魔法祝印(エンチャント)を受けた理由が分かっただろ。

なら今日はもう自由時間だ、お前等は英気を養ってろ。

俺様はロマンの剣を鍛え直す、いや、最上の剣に生まれ変わらせてやるぜ」

 

自らが嫌う魔法祝印(エンチャント)を受け入れた理由を語り終えたアルは、エミル達を置いて鍛冶屋に戻って行く。

その去り際にロマンの剣を鍛え直す以上の出来にしてみせると語り、その背中からはその熱意が伝わり、サラとルルはこれならばロマンの剣の心配は要らないと感じエミル達の方を向く。

因みにルルはフードを被り直した。

 

「じゃあ自由時間になったし、エミルやロマン君達はどうするのかな?」

 

「私はアルみたいに魔血晶(コレ)に付き切りになってやらなきゃいけない事があるから、ロマン君達は村の中を散策してて良いよ。

それじゃあ解散、ロマン君後は任せたよ」

 

「え、エミル⁉︎

…行っちゃった…あの魔血晶(デモンズクリスタル)にどんな価値があるんだろう…?」

 

残されたサラはルルやエミル達に何をしようかと語ると、エミルは魔血晶(デモンズクリスタル)に付き切りになると宣言してロマンに2人を任せてかぼちゃ亭の宿泊中の部屋へと走り去る。

サラはエミルが抜き取った魔血晶(デモンズクリスタル)にどんな価値があるか分からず首を傾げながら他の2人を見た。

 

「分からない。

分からないけど…エミルなら無意味な事は絶対にしない、そう信じてるから僕は何か成果がある事を信じるよ」

 

「…確かに昨日の魔族との戦闘、最初の不意打ちに対応する時私の『逃げる』じゃなくて『相殺する』を選んだからね。

逃げるのは間に合わないって即判断して。

そんな子が無意味な事をする訳がない、何だかそう思えて来ちゃうね〜」

 

「…はい………」

 

しかしロマンはエミルの事を信じると決めた日から彼女の自信家でありつつ慎重な姿勢、そしていざと言う際の大胆さを見て来た為無意味な事はしない、そう確信し何かを成すと信じ切っていた。

その言葉を聞きサラも魔族の灼熱雨(マグマレイン)を相殺する選択をした事もあり、世界の命運を握るの有無に関わらずルルと共に信じよう。

そう決めた2人はロマンに村を案内させて貰うのであった。

 

 

 

 

 

「グビ、グビ、グビ、ふぅ!

やっぱ大仕事には酒が欠かせないぜ、集中力が研ぎ澄まされる‼︎」

 

【カン、カン、カン、カン、カン‼︎】

 

「な、なんて方だ、刃毀れが全体に及んだ上に刀身にヒビが入ったロマンの剣をみるみる内に鍛え直している‼︎

俺じゃあ諦めで新しい剣を薦めるのに…やっぱり鍛治職人としての腕が違い過ぎるッ‼︎」

 

それから半日が経過して日が傾き、沈み始めた頃。

アルは酒を飲みながら作業を続け、現在は金槌を振るい刀身をミスリルで刃毀れした部分やヒビ割れた部分を打ち直し最初にアルが見たミスリルソードの状態よりも良く修復が成され始める。

アイアン村の鍛治師はとても自分には不可能な事をやって退けるアルの冴え渡る腕に感動すら覚え、溶かしたミスリルの管理をしながら業の数々を見ていた。

 

「グビ、グビ。

ほれ、ミスリル流せ‼︎

これを繰り返してロマンの剣を復活させんぞ‼︎」

 

「は、はい‼︎」

 

【ジュゥゥゥ、カンカンカン‼︎

カン、カン、カン‼︎】

 

それからも金槌でロマンの剣を打つ音が鍛冶屋の方から夜通し聞こえ、村人達もロマンの剣が直るか否かを心配する者も居れば、ゴッフ一門のアルが居るから何とかなると言うサラの言葉を信じた村人も居た。

それは当然村長達もであり、アルの最高の腕を以てしてロマンの剣が鍛え直される事を祈っていた。

 

「(やってやるぜロマン‼︎

ケイやテニアが残したこの剣、必ず修復してアイツ等の生きた証を、お前を守り抜いた愛と命、勇気に覚悟の籠った物をぜってぇ捨て去らせはしねぇぜ‼︎)」

 

【カン、カン、カン‼︎

カン、カン、カン、カン‼︎】

 

アルは更に自身が見送れなかったケイとテニア、2人の想いが詰まったこの剣を必ずや復活させると自らも想いを、魂を込めて鍛え直して行く。

それが鍛治職人の、ロマンの両親を知るアルが金槌を振るう力を更に強く鋭くし、彼の持つ全てが、300年間職人王ゴッフの弟子として剣を作り上げたアルと言う1人のドワーフの誇りを輝かせる。

 

【カン、カン、カン‼︎

カン、カン、カン、カン‼︎】

 

そうして誰もが寝静まる頃にも金槌を振るう音が聞こえ、その音色は子供には子守唄、大人には魂の叫びに聴こえ村中にその音は1日中響き渡るのであった.

 

 

 

 

「………よし、魔血晶(デモンズクリスタル)の完全解析完了‼︎

奴等がどんな原理で念話を使うのかも分かったわ‼︎

ふう、思えば魔血晶(デモンズクリスタル)の解析半ばで奴等の復活の原理を魔法化させて転生魔法を作り上げたのよ。

その私が解析出来ない訳が無いわね」

 

一方同じ頃、魔血晶(デモンズクリスタル)に魔力を通して解析を完了させ、念話は原理までをも把握し切ったエミル。

そして転生魔法は同じく魔血晶(デモンズクリスタル)を解析し、その半ばで作り上げる事が出来た過去の自分(ライラ)の記録に残らない禁忌の魔法だった。

しかしそれを使い、500年の月日を掛けられエミルに転生し今日まで魔法を振るい続けたのだ。

その自分自身が残した課題、魔血晶(デモンズクリスタル)の解析をし念話が何の様に行われてるかを知るのが課題終了の第1段階だった。

 

「さあ、次はこの魔族の念話を読み解き、聴く事が可能になる新しい魔法を作り上げるわよ‼︎

何、心配するな私!

あの魔法が解析半ばで理論構築が出来て完成させられたんだ。

今度は完全解析してから作り上げるからそう難しくは無い!

さあ行くわよ、体内魔力接続、魔法理論構築開始…!」

 

そしてエミルは第2段階にして完成物、『魔族の念話を傍受する』魔法を構築すると言う全く新しく、誰も試みれなかった行為に踏み込み始めた。

転生魔法を解析半ばで作り上げた自分なら此方も意図も容易く出来る、そう確信しながら魔法理論構を開始する。

この日、ずっとエミルの部屋から少しだけ漏れていた不快な光は消え、代わりに彼女の魔力光が部屋を包みその光もまた、夜が明けるまで消える事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌朝、エミル、アルが居ない中で3人は朝食を摂り始め、そして食べ終えるが肝心な2人は何方もまだ来ずロマンの剣を鍛え直しているアルは兎も角エミルが降りて来ないのは心配になり始めたロマンは階段を見始めて20分以上が経過した。

 

「エミル大丈夫かな、何かあったのかな…?」

 

「昨日は降りて来たのに今日は来ないって少し心配だよね〜」

 

「………エミルさん、大丈夫…なんでしょう、か…?」

 

ロマンが心配する中でサラやルルも同様に心配し始め、昨日の元気な姿から全く姿を見せないエミルに三者三様の不安な気持ちが場の空気を支配し始めていた。

そしてそれがピークに達した途端、ロマンは席を立ち上がり始めた。

 

「ーーー僕、エミルの様子を見てくる!」

 

「あ、それなら私も!」

 

「…私も…!」

 

ロマンはエミルへの心配から彼女の部屋に行き様子を見に行くと言い始め、するとサラやルルもその後に続き階段へ向かい上り始めようとした。

 

「あ、ロマン君にサラにルル、皆おはよう」

 

「あ、エミル‼︎」

 

その階段を上り始めようとした所でエミルが階段を下り始めている瞬間を互いに目撃し、エミルは目に隈が出来ながら呑気におはようと言い、その姿を見たが目の隈が気になり大声を上げてしまうロマンと、全く対称的な2人の反応の差が出てしまう。

そしてロマン達が階段から退くとエミルは階段を下り切り、改めて3人を見る事にするとエミルは3人が心配した様子を見せた事に気付き、口を開いた。

 

「あ〜、朝食を皆で食べるタイミングで起きて来なかった事で心配掛けちゃった?

ごめんなさい、でももう私がやるべき事は徹夜で終わったからもう心配しなくて良いよ?」

 

「そ、そうなんだ、その隈は徹夜したからなのか…良かった、その水晶に変な呪いが掛けられててそれで危なくなったのかと…」

 

エミルは3人に心配を掛けた事を謝罪し、目の隈も徹夜が原因だと説明をするとロマンは未だエミルの首からぶら下がっている魔血晶(デモンズクリスタル)の所為で何かあったのかと心配になった事を告げると、3人はエミルを伴い自分達が座っていた席に戻り、エミルは朝食と紅茶を頼み席に座りながら休み始めた。

 

「…それで、徹夜したって魔血晶(ソレ)が関係してるよね?

一体何をしていたの?」

 

「ああ、新しい魔法を作る為に如何してもコレが必要だったのよ。

だからあの魔族から態々魔血晶(デモンズクリスタル)を抜き取って、夜通し解析をしていたのよ」

 

「え、そんな凄い事を内緒でやってたの⁉︎

しかも魔法を作るって確か術式から構築しなきゃいけないから大変なのに本当に凄いよ‼︎

それで、一体どんな魔法を作ったの⁉︎」

 

ロマンは早速魔血晶(デモンズクリスタル)が原因で徹夜した事を話し、何をしていたかと問うとエミルはしれっと新しい魔法を作り上げたと話した。

新しい魔法を作り上げるには理論を完璧に構築し魔法陣内で作り切らなければならず、そんな事をしたのはセレスティア王国初代女王のライラ位しかサラもルルも知らない為どんな魔法かと聞き始めた。

 

「ああ、それは…」

 

【ガチャ、キィィ】

 

「よう、お揃いだな…って、エミルお前も徹夜したのか?

ドワーフやエルフ達と違って人間の体は脆いんだ、余り無茶してパーティメンバーのロマンを心配させんなよ?」

 

エミルは早速作り上げた魔法の説明をしようとした所でかぼちゃ亭にアルが袋に包んだ物…アルが態々持って来る物はロマンの剣しかなくいよいよ皆来たかと思い始め、その間にエミルは朝食を摂り始めた。

するとアルは人間は他種族と違い体が脆い為ロマンに心配掛けるなと言われ反省するのであった。

 

「アル…遂に出来上がったんだね」

 

「ああ、お前の両親が遺した剣、しっかりと生まれ変わる事が出来たぞ」

 

ロマンはアルに近付き頼んだ物が仕上がったのだと聞くとアルはハッキリと剣が生まれ変わったと彼は包みから鞘に収められた剣を取り出した。

その瞬間にエミルの朝食は終わり早速立ち上がり見ると、鞘に収められてる時点で剣の鍔の形が少し変わり、十字型の鍔には変わりないが柄頭の様に鍔の真ん中に丸い紋様を彫った部分が加わり、鍔から柄の色も黒から金に変わっていた。

 

「鍔には昔ケイから教えられたお前の家の家紋を彫った。

つまり正真正銘お前の剣だ。

外に出て出来上がりを確かめな」

 

「本当だ、僕の家の家紋だ…うん、早速見てみるよ‼︎」

 

アルは鍔の紋様はロマンの家の家紋である事を告げ、正真正銘彼専用の剣に仕上がった事を告げてその出来具合を確かめる様に話す。

それを聞きロマンは早速ルルが出来具体を確かめた人気の無い広場に出て鞘を左腰に差し、そして柄を持ち勢い良く剣を引き抜いた。

するとその刀身は刃毀れも1つも無くミスリルの名に相応しい1点の曇りの無い輝きを放ち、剣はロマンの身体の一部の様に吸い付き正に自分専用に相応しき物だった。

 

「…凄い、こんなに僕に馴染む武器に仕上がるなんて…ありがとう、アル‼︎」

 

「へっ、良いって事よ。

俺様が直々に直したいからそうしただけなんだからな。

…大事に使ってやれよ、両親の形見を」

 

ロマンはその出来栄えに息を呑み、アルに心の底から感謝するとそのアル自身は頼まれたからやっただけと言いつつ、最後に両親の形見を大事に使う様に話してその肩を叩いていた。

 

「…それじゃあロマン君、改めて貴方の剣に魔法祝印(エンチャント)を掛けたいのだけれど………大丈夫かな?」

 

「…うん、やって。

あの魔族の様に魔法祝印(エンチャント)抜きで戦って壊すなんて二の轍を踏みたく無いから…だからお願い、エミル」

 

「分かったわ。

それじゃあ威力アップ、魔力浸透率アップ、軽量化、強度アップの魔法祝印(エンチャント)IVを掛けるわ!

えい!」

 

そうしてエミルは改めてロマンの親の形見の剣に場保ちでは無く本格的な戦闘の為の魔法祝印(エンチャント)を掛けても良いかとロマンに問うと、ロマンは2日前の魔族の様な二の轍を踏み再び剣を壊したく無い為それを了承する。

そうしてロマンのミスリルソードにも魔法祝印(エンチャント)が掛けられロマンは少し振るうと先程以上に使い易くなった事を実感し、それから鞘に収めた。

 

「さて、俺様達は依頼が終わって後は互いにそれぞれの道を行くだけだがサラ達は如何するんだ?」

 

「う〜ん、取り急ぎ用事も無いから如何しようかな…お父様に魔族の事を報告は多分ギルド協会からもう情報が流れてるだろうし…」

 

「…それなら、私からサラ達に提案があるんだけど良いかな?

勿論貴女達とロマン君の許可が要るけど」

 

そしてアルは依頼の報酬を渡し、後はサラ達に如何するかを尋ねるとサラは魔族の件はギルド協会から伝わってるとしながら、やる事が見当たらない様子だった。

するとエミルがサラ達に提案をし、彼女達とロマンの了承が要る事と話しながらサラやロマン達を見た。

 

「僕達の了承…何かそれが必要な事があるの、エミル?」

 

「うん、実は魔族を斃した辺りから思っていたんだけど………この場に居る5人でパーティを組まないかな?

それも目的は勿論魔王討伐のパーティを!」

 

ロマンはエミルに了承が必要な事と言われ何なのかと問うと、そのエミル当本人は魔王討伐の為のパーティをこの場に居る5人で組まないかと話し、ロマンのみならずサラ達も驚きながらエミルを見ていた。

 

「だってサラの使命は魔王討伐なんでしょう?

それなら私達と組んで戦った方が効率も良いし手伝えるよ。

何ならあの魔族と戦った時に私達の息はピッタリだったからパーティを組めばかなり良い感じになると思うのだけど…サラ達は大丈夫かな?」

 

エミルはパーティを組む理由を話し始め、サラの使命を手伝えたり効率化が図れる事、更に名無し魔族と戦った際の息ピッタリな連携にパーティを組めばかなり良い物になると話した。

それに対してサラ達の反応は。

 

「えぇ〜本当に良いの⁉︎

ありがとう、魔王討伐を一緒にしてくれる仲間を探そうかなとかも思ってたから‼︎」

 

「おいサラ、勝手に………まぁ、名無しの魔族であれだけ強いんだ、戦力が多い事に越した事は無いか。

俺様もあの魔族の物言いにはムカついたからな」

 

「…あの、後は………ロマンさんが、良ければ、よろしくお願いします…」

 

サラはその話を快諾し、アルは少しムキになろうとしたが名無しの魔族でレベル173だった事や言動が気に食わなかった為、それを顧みて戦力が多い方が良いと判断し、反対意見を引っ込める。

そしてルルは後はロマンが良いならと話して皆でロマンを見始めその答えを待った。

そしてその口から出たのは………。

 

「…うん、この2日半でサラやアル、ルルの人となりも分かったし、エミルも同じ事を考えててくれたなら僕も嬉しいよ。

だから、よろしくお願いします!」

 

「わぁ、ロマン君もエミルと同じ事考えててくれたんだ、ありがとう2人共‼︎

アル達もありがとう‼︎」

 

如何やらロマンも同じ事を考えていたらしく、エミルとも同意見で反対する理由が無かった為ロマンはサラ達3人に頭を下げた。

するとサラは大喜びし、ルルはフード越しながら笑みを浮かべ、アルは仏頂面に見えそうだが口元は笑みを浮かべ満更でも無い様子を見せるのであった。

 

「それじゃあ早速かぼちゃ亭のガルさんに話を付けに行こうかサラ、アル、ルル!」

 

「了解〜‼︎」

 

そうして5人はかぼちゃ亭内に入り、ガルにパーティを組む事を話しに行く。

するとそれぞれのリーダーのエミルとサラが魔法紙(マナシート)を取り出し、其処に記載された別々のパーティが同じパーティを組む場合はリーダーを新しく選出し、それを両方が承諾した時パーティメンバーになれる項目を見せながらガルに話し掛けた。

 

「ガルさん、私達でパーティを組みたいんだけど良いかな?

リーダーは………魔王討伐を謳ってロマン君を選び抜いたエミルで!」

 

「あ、私になるの?

てっきりサラがリーダーになりたいって言うと思ったけど…でも何方も魔王討伐は一緒なので私はOKですよガルさん」

 

「僕達も大丈夫です!」

 

するとサラがリーダーをエミルに選出し、本人は驚いていたが同じ使命を持つ為OKをエミルは出し、ロマンも同じく大丈夫だと話し、フード越しにルルも頷きアルも反対意見を出さなかった。

 

「よし、ならリーダーはエミル王女殿下にして…5人以上のパーティになったからパーティの名前を決める事が出来るけど何か名前はあるかい?」

 

「あります、私達は初代勇者ロア一行の様に魔王討伐を目指すメンバーです。

なのでそんな彼等はパーティ名『誓いの剣(オースブレード)』を名乗っていました。

それに肖り、私達は『誓いの翼(オースウイングズ)』を名乗ります」

 

ガルはそれらを聞き5人パーティになってからパーティの名前が決められる事を告げ、案はあるかと言うとエミルは過去の自分(ライラ)達がロアをリーダーとして名乗った名である誓いの剣(オースブレード)を出し、それに肖る、否、今度こそ魔王討伐を果たすべくエミルは決意を込めて誓いの翼(オースウイングズ)にし、サラ達は父や母、師や先祖の名に肖る事を喜びエミルに声掛けし始めた。

 

誓いの翼(オースウイングズ)、すっごく良い名前だよエミル‼︎」

 

「…お母様の…パーティ名と、良く似た…」

 

「ふっ、ゴッフ(ジジイ)のパーティ名に肖るか、悪くねぇ」

 

「…誓いの、翼…僕達の、パーティ名…!」

 

4人はそれぞれ嬉し気な反応を示し、エミルもこの名前にして悪く無かったと思い手に力を込め、このメンバーで今度こそ魔王討伐を成すと意気込み始めるのであった。

 

「それではギルド協会でエミル一行とサラ一行が合流して誓いの翼(オースウイングズ)を名乗る事になったと全体にお伝え致します。

…ロマン、皆様、良き旅を」

 

「はい、ガルさん、リィナさん‼︎」

 

そうしてロマンやエミル達は誓いの翼(オースウイングズ)の名を背負い、共に仲間として冒険の旅に出る事になった。

それをガルや奥のリィナも祝福し、そのエールを背にかぼちゃ亭の宿泊代を払い外へと出た。

 

「大変だ〜‼︎

セレスティア王国のランパルド国王陛下戦達が村にいらっしゃるぞ〜‼︎」

 

「…えぇ⁉︎」

 

しかしその誓いの翼(オースウイングズ)に早速最初の胃痛になる関門が迫って来た。

それはセレスティア王国現国王ランパルド達がやって来ると言うエミルにとっても想定外な事態であった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
ロマンの剣はケイがアルに譲り受けた時以上の物に修復され、エミル達とサラ達が合流し、初代勇者一行の誓いの剣(オースブレード)からその使命を継ぐ物として誓いの翼(オースウイングズ)を名乗る様になりました。
これからこの5人は共に魔王討伐を目指す仲間として行動を共にする事になります。
これからエミル、ロマン、サラ、アル、ルルがどの様に冒険するかお楽しみ下さいませ。

次回もよろしくお願い致します。


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第12話『誓いの翼、謁見させられる」

皆様おはようございます、第12話更新でございます。
今回は突然来訪したエミルの父達との話になります。
では、本編へどうぞ。


ランパルド国王が来ると言う騒ぎの直後、アイアン村の門が開け放たれその外からは親衛隊長マークスを含む親衛隊がランパルド国王、更にこの4年で逞しくなり騎士甲冑を身に纏うアルク第1王子と更に王女らしくなったドレス姿のレオナ第1王女、そしてアルクと同じく騎士甲冑を身に纏うカルロ第2王子までもが現れ村は騒然と化した。

因みにエミルが王女だと言う事は村の狭いコミュニティの為既に知れ渡っていた。

 

「うわぁ、セレスティア王国の王族が勢揃いだ…一体、何が起きるの…⁉︎」

 

「…これは、私達への最初の試練がお父様達になるとは…このエミルの目を以てしても見抜けなかったわ…」

 

「おい、バカ言ってねぇでお前さんが1番前に出るんだよ!」

 

サラはセレスティア王国の王族が留守の王妃以外は勢揃いした事に驚き、何が起きるか珍しく爛漫な態度が消え慌てていた。

一方エミルは最初の関門が大き過ぎた為少しふざけた事を言うと、アルが後ろから小声で1番前に出る様に言うとエミルは直ぐにハッとなり1番前に出てその後ろにロマン、サラ、アル、ルルが横に並びマークス達親衛隊が道を開けると馬からランパルド達が地に降り立ち、親衛隊達が跪くと、エミル達も合わせて跪き父王が何か言うまで顔を下げていた。

 

「面を上げよエミル王女よ。

其方の活躍、マークス達やギルド協会から聞き及んでおるぞ。

勇者ロマンと共にリリアーデ港街の守護ベヘルット元侯爵家の息子の蛮行の断罪、ディスト海賊団の拿捕、それらを聞き父は良き娘を持ったと誇りに思うぞ」

 

「はい、国王陛下。

全ては私が悪しきを罰し、弱き民や不当な扱いを受けた冒険者を救おうとした結果であります。

そしてそれ等は勇者ロマン殿も居なければ成り立たなかったと私エミル第2王女は心得ております」

 

先ずランパルドが国王としてエミルに話し掛け、その活躍を全て聞き及び誇りに思うと口にしていた。

しかしエミルはまだ顔を上げず、天狗にならず、かと言って謙虚過ぎる事も無くさり気無くロマンの顔を立てて自分の力だけでは成り立たないと口にしていた。

実際ロマンが居なければリリアーデの民を無傷で守れたか怪しく、ギャラン達の蛮行を早々と押さえる事は出来ず、ディスト海賊団を早期に捕らえられなかったと感じていた。

 

「ふむ、では勇者ロマンよ、面を上げよ」

 

「は、はい、国王陛下!」

 

「其方が我が娘、我が国の第2王女の助けになったそうな。

その事に偽りはないか、顔を上げ答えよ」

 

次にランパルドはロマンにこれ等が偽りないかと話し始め、ロマンは真っ白になりそうな頭の中で必死になって考えた事を口にする。

 

「は、はい、エミル王女殿下の言葉に偽りはありません!

し、しかし………ぽ、僕1人でもそれ等を成せたかと言えば違うと申し上げます。

全てはエミル王女殿下の自信と慎重さ、そして他者を想う優しさが全て噛み合い成り立ったとロマンは思います…」

 

ロマンもまたエミルが居なければ国王が言う功績が成り立たなかったと2度も顔を上げる様に言われてから顔を上げ話し始める。

それはロマンも嘘偽り無く、全ての事柄にエミルが関わらなければロマンはリリアーデに留まらず、ギャランの悪事を見逃した可能性がありキャシーを救えなかったかも知れず、船を海賊から守れなかったと思っていた。

 

「ふむ…では何方も顔を上げよ。

両者は互いに互いの存在がなければこれ等は成せなかったと申すのか?」

 

「は、はい、国王陛下!

僕1人の力ではとても大きな事を成せず」

 

「無論私1人の力でも成り立ちませぬと申し上げます。

結論を申し上げれば、我々2人は互いに助け合った結果上手く事を成せました。

これが我々2人の見解でございます国王陛下」

 

そしてランパルドは結論として互いの存在が無ければ成せなかったと2人に聞き上げると、ロマンもエミルも同じ見解を示し互いの助け合いによりあの激動の2日間は乗り切れなかった事を進言した。

そしてそれを聞いた国王は………満足気な笑みを浮かべ言葉を続け始める。

 

「私が聞きたかった事を突然の来訪にも関わらず2人は進言出来た。

エミルにロマン君よ、良く互いに頑張り事を成したな、ロマン君の友人の父親としても誇りに思うぞ」

 

「も、勿体無きお言葉にございます!」

 

「その言葉を聞き、私は大変嬉しゅうございます…お父様」

 

ランパルドは国王から1人の娘の父親に戻り、2人が互いに頑張って此処まで来れた事を心から誇りに思い、優しい笑みを浮かべていた。

ロマンは相変わらず及び腰ではあるが、それでもランパルドの言葉に心は温まり、エミルも同様に思い王女から1人の娘に戻りランパルドの様に優しく、久々にあった家族としての顔を覗かせていた。

 

「さて、もう他の皆も顔を上げ立ち上がって良いぞ。

賢王ロック殿の第1子サラ王女、予言者リリアナ様の1人娘のルル殿、そして職人王ゴッフ殿の弟子アル殿」

 

『はい、国王陛下』

 

そしてランパルドはサラ達にも顔を上げて良いと話しすっかり国王から末っ子娘の父親となり、3人は社交辞令として国王陛下と呼びながら顔を上げ5人は立ち上がる。

すると馬からアルク、レオナ、カルロも降りて来て先ずエミルと談笑を始める。

 

「エミル、久し振りだな。

大きくなったな」

 

「レベルもアルクお兄様やカルロを追い抜いて185、素晴らしいですわ」

 

「そのレベルをきっとアレスター先生も神様の下で喜んで見てるだろうな。

そして、本当に自慢の妹だよ、お前は」

 

成長し25歳の大人になったアルク、22歳レオナ、17歳になったカルロはそれぞれエミルの頭を撫でて久々に再会した末っ子を可愛がっていた。

エミルも観察眼(アナライズ)を使いアルクは158、レオナは148、カルロは153と単騎で親衛隊を上回る戦力になると言う4年間会わなかった中で彼等もまた中身も成長し、恩師アレスターの死が彼等を更に一回り大きくし4年で魔族と戦う前の自身に並ぶ実力を手にしたのだと思いながら頭を撫でられる事を黙って受け入れていた。

 

「へっ、魔王討伐を目指す姫様も人の子かー…まぁ、じゃなきゃ人は寄り付かないか」

 

アルはエミルの久々に会った末っ子として頭を撫でられてる姿を見てあの魔族と魔法対決で戦った凛々しい少女と打って変わって完全に兄達に愛され、自身も兄達を愛する姿を見て人の子と称し、仏頂面ながら悪くないと思っていた。

 

「貴方は武具職人ゴッフ一門のアル殿、賢王ロック殿の第1子サラ王女、リリアナ様の1人娘のルル様、ですね。

お初にお目にかかれます、私はセレスティア王国第1王子にして王国騎士団団長を務めさせて頂いておりますアルクと申します。

此方は第1王女で外交長官のレオナ、そして第2王子で絶技講師官のカルロであります。

以降お見知り置きを」

 

するとそのアルやサラ、ルルの3人にアルク達が話し掛け始めて来る。

そのエミル以上に整った王族の雰囲気や役職等を聞き、更にアルは3人が自身の作った武具を身に纏い、更に生存性を高める為に魔法祝印(エンチャント)が掛けられていると知り、以前なら癇癪を起こしたが魔族の武具の影響もありそうはならなかった。

 

「サラ王女殿下、ルル様、お久しゅうございます。

またこうして出会える幸運にこのレオナは喜びに満ち足りております。

…そして、アレスター先生の件について何とお詫びすれば良いか…」

 

「ああ、その件なら大丈夫だよレオナの王女殿下!

立派な妹様のエミル王女殿下にご説明を頂きましたから!

なのでお互い、あの子を知る身としてアレスターを誇りに思いましょう、ね?」

 

「…私も………その方が、アレスター君は、喜ぶと、思います…」

 

更にレオナはサラとルルと面識があり、サラ達が冒険者をし、レオナ達エミルの兄姉は更に修行やレベリングを積んだ為本当に、実に4年も会っていなかった事もありアレスターの件を話し始めようとしたが、エミルから話を聞いていた為サラはそれ以上は聞かず、アレスターを互いに誇りに思おうと言う形に落ち着きルルも交えて握手を交わすのだった。

 

「あ、それからエミル王女殿下にルル様、ベヘルット元侯爵の件はお世話になりました」

 

「良いの良いの、私達が関わるってルルの予知に出たし、ルルの『本業』発揮の時間だったからそっちも気にしないで良いよ!」

 

更にレオナはベヘルット元侯爵の件の事で礼を述べると、それも気にしないで欲しいと言われ更にルルにも頷かれ、レオナも流石に苦笑したが本人達がそれで良いならと何も言わなかった。

 

「…家族、かぁ…」

 

「よう、お前がエミルが選んだ勇者ロマンだってな。

俺は第2王子で絶技の講師のカルロだ、よろしくな。

早速で悪いが何か絶技を見せてくれないか?」

 

「は、はい⁉︎

エミル…王女殿下の、お兄様⁉︎

それに絶技を見せてって…えっと、じゃあ空に向かって、光流波‼︎」

 

一方ロマンは家族と言う結び付きを見て両親の遺志が詰まった剣の柄頭に手を掛けているとカルロが気軽に話し掛けて来た為面食らい、更に絶技を見せてくれと言われた為剣を引き抜き空に向かって光流波を威力を絞って撃った。

するとカルロはそれを見て頷き、再びエミルに話し掛け始める。

 

「体内魔力と魔法元素(マナ)の結び付きに問題無し、技の熟練度も威力の絞り込み方も正しい…良い先生に教わったんだな」

 

「は、はい、死んだ…両親から。

冒険者時代に魔力一体論を凄く教え方の良いエルフの人に教えて貰ったから、それで魔法と絶技の使用時の魔力の循環とかを教えて貰い、ました…」

 

カルロはアレスターに教わった全てを頭に叩き込んだ上でロマンの絶技の使い方や魔力の流れを見てそれが正しい在り方である事を見抜き、良き師に教わったと話すとロマンは死んだ両親にと告げ、その両親も冒険者時代に教え方が良いエルフの人に自分が教わった事を伝授された事を話した。

 

「…凄く教え方が良いエルフの人…まさか………ふっ、良いご両親に育てて貰ったんだな。

なら両親の事を忘れず、エミルが選んだ勇者だと気負わずありのままの自分でアイツを助けてやってくれ。

アイツは、天才だが無茶するからな…支えてやってくれ、妹を」

 

「あ………は、はい‼︎」

 

カルロはそのエルフについて心当たりがあり、まさかと呟いた。

が、直ぐに切り替えてエミルをロマンと言うありのままの少年のまま守り抜いてほしいと彼女の兄であるカルロに頼まれる。

それを聞きロマンはこのカルロ王子も自身に期待を寄せ、更にエミルが心配なんだと理解し力強くYESと答えた。

その様子を遠目で見たマークスは矢張り自分の目に狂い無しともかんじていたのだった。

 

「さて、談笑も此処までにして我々が此処に来た理由を話したい。

エミル、ロマン君、そしてサラ王女にアル殿にルル殿、我々4人とマークスと共にこの村のギルド運営の宿屋に来て貰えぬか?

他の誰にも聞かれたくない話があるのだ」

 

そうして談話をする中でランパルド国王は自身達がこの場に来た本題をかぼちゃ亭で他の誰にも聞かれず話したいと告げるとエミルやロマンのみならずサラ達も含めそれをしたいと話した。

この時5人は直感する、国王は魔族と戦った件でこの場に来たのだと。

 

「…分かりました。

勇者ロマン、国王陛下や兄君達をかぼちゃ亭へと案内しましょう。

ガル殿やリィナ殿はギルド運営の宿主夫妻故、話を聞いても問題は無いので陛下が仰った人達のみでかぼちゃ亭へと入りましょう」

 

「わ、分かりました、エミル王女殿下!」

 

そうしてエミルも再び王女モードに入りながらロマンに話し掛け、ランパルドやアルク達をかぼちゃ亭に案内する事になりロマンは空気を読みエミルを王女殿下と呼びながらサラ達と共にかぼちゃ亭内へと入り、其処で飲み食いしていた客達には急いで外に出て貰い空いている席にランパルド、アルク、レオナ、カルロが座り他の面々は立ったまま話をする流れになった。

 

「さて、先ずこのまま話をしても良いのですが………折角ですから『新しい魔法』の一つを試しましょう!」

 

するとエミルは話を始める前に『新しい魔法』と言い、杖を出すと魔法陣が足下に浮かび始め、そしてかぼちゃ亭全体を何重にも覆う結界魔法が発動し、更にその結界は本来なら無色透明のガラスの様な結界では無く、碧玉色の結界でありそれを見たランパルド達は驚いていた。

 

「この結界は一体…エミル、新しい魔法と言ったが、これは何なのだ⁉︎」

 

「この結界は外から盗み聞く事、そしてこの中ではある物を阻害する効力を持つ結界魔法…名前は『盗聴防止結界(カーム)』と名付けましょう。

レベル40から使える様に魔法構築しましたので術式を流布すれば誰でも使える様になりますよ」

 

ランパルド国王が狼狽える中、エミルは淡々とした口調で結界の名と効力を説明し、全員それを聞き新しい魔法を作ったエミルに脱帽し、ロマンは昨晩から取り組んでいた事とはこれだったのかと思い聞き始めた。

 

「あの、エミル王女殿下。

もしかして貴女が仰った新しい魔法ってもしかしてこれの事でしょうか?」

 

「ううん、違うよロマン君。

これは単なる副産物で出来上がった物だよ。

ただ今の状況的に役に立つから使っただけだよ?」

 

「つまり別の魔法作ったついでにこれも作ったんだ…エミル凄いや…」

 

ロマンは作った魔法はこれかと聞くとエミルは副産物で出来上がった物だと口にし、サラやロマン達はこの他にも新しい魔法を作り上げたのだと知り凄いと思っていた。

しかしエミルにとっては過去の自分(ライラ)の課題を終わらせただけの認識の為別段規格外な事をしでかした覚えは無かった。

 

「と、兎も角、これで外部に漏れる心配は無いのだな?

なら話そう、我々が此処に来た理由を。

と言ってもエミルやロマン君達5人を含めた時点で何なのか分かるであろう?」

 

「魔族、ですね」

 

「うむ、エミル達が魔族を倒したと聞きそれを確かめに来たのだ。

それが真ならミスリラント、フィールウッド、ヒノモトと共に対策を考えねばならない。

魔血晶(デモンズクリスタル)も有している…と言うより、エミルが首から下げているとも聞く。

それをじっくりと見せ、そして魔力を通してみたまえ」

 

ランパルド国王はエミルの為す事を半ば強引に受け入れつつ外部に話が漏れない事を理解し、本題である魔族の件についてをエミル達に話し始めた。

それが事実ならば魔族を警戒する4国家で議論を交わす必要性が出ると腹積りをし、事実確認に来たのだ。

そしてエミルに魔血晶(デモンズクリスタル)を見せ、魔力を通す様にと命じる。

 

「はい、国王陛下。

これが魔族の核、魔血晶(デモンズクリスタル)でございます。

その証明に例の特性もお見せ致します」

 

エミルは命じられるまま首から下げた魔血晶(デモンズクリスタル)を見て、そして魔力を通し始めて地上界の者を不快にする魔の光が放たれ、その場にいる全員はそれを見て浴び、嫌な気分になり始めた。

 

「う、うむ…これは間違い無く魔血晶(デモンズクリスタル)だ…もう良いぞエミル、その光を消しておくれ」

 

「はい、陛下」

 

「これが魔族の核………となれば本当にエミル王女殿下は魔族を倒したのか…。

となると伝承の門の封印が解けてしまわれたと言う事に…」

 

ランパルド国王は十分確認が取れた為エミルに魔血晶(デモンズクリスタル)に魔力を通すのを止める様に促すとエミルは魔力を通すのを止め、1歩下がる。

マークスは初めて目にした魔血晶(デモンズクリスタル)が悍ましく感じつつエミル達の功績が大変な物であると実感していた。

しかし同時に門の封印が解けた事を指摘するとランパルド国王もそれに頷く。

 

「うむ、名無しの魔族が地上界に進出して来ている。

その可能性は極めて高いと言えよう」

 

「更にアギラ、と言う名ありの魔族までいる事が判明しております。

我々が斃した名無しの魔族がレベル280の、とも言っておりました。

そして、名ありの魔族と念話をしていた事から間違い無くライラ様の縛られし門(バインドゲート)は解けてしまってます」

 

「名ありの魔族まで、しかもレベル280だと⁉︎

何たる事だ、急ぎ4国会議を開かねばなるまい‼︎

エミル、此度はその情報を持ち帰り助かったぞ!」

 

ランパルド国王やエミルもマークスの指摘に同意し、更にエミルは名無し魔族が最後に呟いたアギラの名とレベルを開示し、それ等を聞いたランパルド国王はセレスティア、ミスリラント、フィールウッド、ヒノモトの王達を招き4国会議を急ぎ行う意志を見せる。

そしてエミルにその情報開示をした事に礼を述べると席から立ち上がり、アルク達も立ち上がりランパルド国王と最後の会議を開く。

 

「では陛下、私が書簡で3国の各国王陛下にこれ等の情報を送り、セレスティア王国に招きます!

更にギルド協会全体に魔族出現を冒険者達に流布し、警戒を促します!」

 

「では私とカルロは親衛隊含む王国騎士団、魔術師団より人選しレベリングを図る為諸外国訪問の名目の下、危険地帯へ足を踏み入れ魔物退治を行います!」

 

「うむ、事は一刻を争う。

手早く事を済ませ、それぞれの役割を果たせ!」

 

『はっ‼︎』

 

先ずレオナが外交長官として他の3国の各王に書簡を送り、4国家会議を開く事を伝えると同時に冒険者ギルド全体に魔族出現を知らせ、冒険者達に警告を促すと話し、次にアルクがカルロやマークス等と共に人選した人物達と共にレベリングを図る事を提案し、ランパルド国王はそれを了承。

そしてそれぞれの役割を果たす様に促すと3人の息子と娘、更にマークスは跪き王命を承る事となった。

 

「では国王陛下、私達誓いの翼(オースウイングズ)は魔王討伐の勅令に基づき行動し、最優先事項としてレベリングと共に神剣ライブグリッターの探索を行います」

 

誓いの翼(オースウイングズ)…そうか、其方達はパーティを組んだのか。

そして伝説の神剣の探索か………確かにそれが無くば魔王討伐は果たせぬと言われている。

良かろう、エミル達は引き続き勅令に基づき行動せよ‼︎」

 

『はっ‼︎』

 

次にエミルがサラ達と合流して誓いの翼(オースウイングズ)と言うパーティ名になったと知り、更にエミルはライブグリッター探索をしている事を明かしてサラ達を驚かせながら、ランパルド国王より勅令に基づき行動する事を告げられ5人も跪きその命を承る。

そして会議が終わった所でエミルは盗聴防止結界(カーム)の使用を止め、マークス達が先に出ながら周りを確認しそのままランパルド国王を外に出し解散となった。

 

「それにしてもエミルとロマン君はライブグリッターを探しているんだね〜!

確かにロマン君なら振るう事が出来る筈だね!」

 

「あ、あはは…兎に角、皆と助け合う為に僕、頑張るよ‼︎

サラ達も、エミルもこれからもよろしくね‼︎」

 

「勿論だよロマン君!」

 

そうして国王達の帰還を見届けに行きながらサラはライブグリッター探しをしている2人に関心し、更にロマンなら振るう事が出来ると話すとルルも頷き、信頼を寄せる人が一気に増えた為戸惑いながらもエミル達と共に助け合いながら頑張ると話すとエミルは少しずつだがロマンが自信を持ち、且つ独り善がりでは無い皆と支え合う道を行こうとしていると感じ取り矢張り自分の目は狂いがなかったとして笑みを浮かべていた。

 

「さて、じゃあライブグリッター探索の旅の最初の目的地はミスリラント本国、レベリングをしながら職人街ゴッフェニアを目指そう!」

 

「ゴッフェニア…成る程、誓いの剣(オースブレード)ゴッフ(ジジイ)に話を聞きゃぁ行方が分かるかもな。

だが、レベリングはこんなレベルになっちまったらもう思う様には上がらないぜ?」

 

それから暫くしてランパルド達は無言でエミル達に会釈すると門から村の外に出てセレスティアへ戻って行った。

するとエミルはライブグリッター探索とレベリングを図る為ミスリラント本国のゴッフェニア、ゴッフの名を刻んだ職人街を目指すと決める。

アルはゴッフなら何か知っていると合理的に考えたが、レベリングはレベル180オーバーでは中々上がらないと話して首を傾げていた。

 

「其処で依頼、ミスリルゴーレムに狙いを定めて薙ぎ倒すのよ!

連中は熟練度元素(レベルポイント)の塊で魔物の巣(ダンジョン)化した廃坑内をウロウロしてるから鉱石を乱獲するわよ!」

 

「ミスリルゴーレム………確かに、あれなら…レベル200まで上げる事が…出来るかも、知れません…」

 

其処にエミルはミスリルゴーレムを依頼で受けながら鉱石目的で乱獲すると言い出し、ルルもミスリルゴーレムならば今のレベルでも上げられると話し、全員それで納得した上でその方針で行く事になった。

 

「それじゃあ早速このままミスリラント領の港から本国の港にまで行くとして…その前に、魔血晶(コレ)を、いい加減始末するわ‼︎

光龍波(ドラグライトウェイブ)』‼︎」

 

【ポイ、ジュワッ‼︎】

 

そうして誓いの翼(オースウイングズ)の行動方針が決まった所でエミルは首から下げていた魔血晶(デモンズクリスタル)を空高く投げると光の中級魔法を使用し、今まで盗まれない様に肌身離さず持った魔族の核を消滅させ、あの名無しの魔族の一生を終わらせた。

 

「…もう魔血晶(デモンズクリスタル)は必要無くなったの?」

 

「ええ、アレは解析して新しい魔法を作る為に必要だった物ですからね。

そうで無ければ百害あって一利無しの物を確保するメリットが無いですから」

 

ロマンも魔族の核を破壊した事でエミルはもうアレは必要無くなったのだと思いながら敢えて聞くと、エミルは百害あって一利無しの魔血晶(デモンズクリスタル)を確保する理由が無くなればそのまま消すタイプと改めて知り、今後は魔族は魔血晶(デモンズクリスタル)を消滅させる様な攻撃しかしないだろうと思いながらならば自身もエミル達を守る為に魔血晶(デモンズクリスタル)を積極的に狙おうと覚悟するのだった。

 

「…うん、そうだよね。

あ、そう言えば新しく作った魔法って一体何なの?」

 

「ああ、色々あって言いそびれちゃったね。

じゃあ盗聴防止結界(カーム)を掛けてと」

 

更にロマンは結局新しい魔法とは何か、エミルに問い質すとエミルも言いそびれていた事を思い出し、再び盗聴防止結界(カーム)を掛けながら話し始めた。

 

「私があの魔血晶(デモンズクリスタル)を解析して作り上げた魔法、それは魔族が魔法元素(マナ)を介して念話をする事から、その念話に使われた魔法元素(マナ)を見て連中が何を話しているかを視て聞く魔法…『念話傍受魔法(インターセプション)』よ」

 

「…魔族の、念話を………盗み見したり聴ける、魔法ですか…⁉︎」

 

エミルは魔族の念話の仕組みを理解し、それを魔法術式を構築し組み込む事で念話を視て聞く魔法、念話傍受魔法(インターセプション)を作り上げた事を話すと、ルルを初めとした面々は驚愕し、あの魔血晶(デモンズクリスタル)1個からそんな魔法を作り上げ、副産物すらも用意したエミルと言う少女を改めて凄い人物だと思っていた。

 

「けど、誰彼もがこれを使って悪戯に魔族に命を奪われない様にする為に使用出来る人を名無しの魔族の最低ラインと同じレベル150以上にしたわ、理由は…少し分かるよね?」

 

「あ〜、皆使えたら魔族に挑み掛かる無謀な人とか出ちゃうから、でしょ?

その判断は正しいね」

 

更にエミルはこの魔法を使える者をレベル150以上に設定し、変な気を起こす者が出ぬ様にし、その意図を皆に分かるか聞くとサラが真っ先に答え、賢王の娘は矢張り同じ様に聡いと思いながらエミルは頷き、ロマン達もまたそれが正しいと思っていた。

 

「で、私がこれを作った理由なんだけど。

相手の動向を知りたいからってのもあるけど………相手ばっかり念話で秘密の作戦を立てるなんて狡いでしょ?

それにその所為で友人や知人を失うなんて結果は受け入れる事何て出来ない、そう思ったからなの」

 

最後にエミルは念話傍受魔法(インターセプション)を作り上げた理由を話し始め、途中子供じみた理由があったが、大体は理不尽なる謀略を防ぐ為に作り上げたと言う事を話した。

それを聞き皆が黙って聞き………そして頷き返された。

 

「へっ、エミルの言ってる事も分かるぜ、相手ばかりズルしてんじゃねぇってな!

それじゃあ行こうぜ、魔族に一泡吹かせる俺様達の初の旅路って奴によ‼︎」

 

「うん、さんせ〜い‼︎」

 

「…お、おー…!」

 

そして、最初にアルがエミルの話した理由に同意しながら全員に声を掛け馬車へと走り、サラ達も自分達の馬車に乗り込み始め出発準備を整え残りはエミルとロマンだけとなったから

 

「さあ行こうロマン君、未だ見ぬ先の世界へ皆で歩んで行こう!」

 

「うん、行こうエミル‼︎」

 

最後にエミルがロマンの手を引き、自分達の馬車へと乗り込むと馬屋に賃金を払い馬車を走らせ門を潜り村人達が見送る中でアイアン村をエミル達誓いの翼(オースウイングズ)は去って行った。

全ては魔王討伐を果たす為に。

その1歩としてライブグリッターを探索する為に。

 

「(…さて、新しく作った魔法が機能するか試運転しましょうか。

…うん、成功ね。

覚悟なさい魔族達、貴方達の好きにはさせないわよ…‼︎)」

 

その中でエミルは念話傍受魔法(インターセプション)を使い始め、魔族にこれ以上好き勝手はさせないと固く誓いながら港へと馬車を走らせ、何かがあれば記憶し、全員に警戒を促す事に決めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、この先はミスリラント本国………なら罠を張らせて貰うとしますか。

クフフ、フハハハ………」

 

そんなエミル達の様子をエミルが感知する300キロメートル範囲外から千里眼(ディスタントアイ)を使用し、アギラが覗き込みミスリラント本国に向かう事を予想してその先に罠を張るべく転移魔法(ディメンションマジック)でその場から消えるのだった。

悪意を剥き出しにした名ありの魔族にエミル達の行く末が如何なるか、それは誰も分からないのであった…。

 




此処までの閲覧ありがとうございました。
エミルは新しい魔法を作り上げた事に寄り魔族側の念話傍受が可能に。
しかしアギラがその影から先周りを開始して来ました。
これにより誓いの翼(オースウイングズ)はミスリラント本国でも魔族との戦いは避けられない事になります…。

次回もよろしくお願い致します。


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第13話『エミル、内緒話しをする』

皆様おはようございます、第13話目更新でございます。
今回はエミルと誰かが内緒話をします。
その誰かは本編でお見せ致します。
では、本編へどうぞ。


エミル達はミスリラント領から本国行きの船に乗り、1日でその大地に足を付けた。

アルは戻ってきたぞ故郷と言わんばかりに空気を吸い、サラやルルももしフィールウッドに帰れば同じ事をするだろうと考えていた。

 

「ふう、懐かしの鉄と、砂の臭い。

帰って来てやったぜ、この俺様がよ!」

 

「あ、よう兄弟元気してたか!

俺に会えなくて寂しかったか?」

 

「はっ、本国に帰って会うのがお前か『ゴン』、ああ元気にしてたぜこの野郎!

前に貸したメタル鉱石の分を早く返しやがれよ!」

 

アルが生まれ育った本国の臭いを嗅ぎ、帰郷したと思いを馳せていた。

そんな所にロンと呼ばれたドワーフが馬車に乗りながらアルに声を掛け、如何やら2人には貸し借りがある間柄らしく軽口を互いに叩きながらロンの馬車は鉱石を運びながら何処かに行ってしまった。

 

「アル、今のは?」

 

「ああ、アイツはゴン。

ズボラでやや間抜けだが鍛治職人としては真面目で実直な奴だぜ。

それと、アイツが兄弟っつったのは俺様達鍛治職人は皆兄弟の精神をゴッフ(ジジイ)から叩き込まれたからだぜ?

さて、5人用馬車を使ってこの港から離れるぞ」

 

ロマンはゴンに付いて聴くとアルは軽めに説明し、更にゴッフが職人達叩き込んだ教え、鍛治職人は皆兄弟と言う精神から兄弟と呼ばれた事を全員に教えると、アルは早く馬車を借りて港から離れる事をエミル達に告げるとエミル達も頷き行動を開始する。

 

「すみません、5人用の馬車を貸して下さい」

 

「はいよってアルさん!

何だあんたらアルさんの知り合いなのか〜、料金はオマケしとくよ!」

 

「流石アル、この国には自分を知らない奴は居ないって毎日自慢してだだけはあるね〜」

 

エミルは馬屋に向かうとその馬屋の主人もアルの顔を知ってるらしく、通常よりも料金を安くして馬車を快く貸してくれていた。

それを見たサラはアルが毎日自慢していたこの国に自分の顔を知らない奴は居ないと言う話を思い出しながらアルを見ると、そのアルは如何だ思い知ったかと言わんばかりの表情を見せていた。

 

「よし、じゃあ最初に向かうのはゴッフェニアとこの港の間の街、2番目に大きな都市の『セレン』よ!

其処で廃坑内のミスリルゴーレム狩りの依頼を見つけるわよ!」

 

「なぁに、あの忌々しいゴーレム共が徘徊して廃坑になった場所は沢山ある、ミスリルゴーレムがうじゃうじゃ居る廃坑だってあるだろうさ!

そいつらを片付けりゃ鉱山も取り戻せてレベルアップを図れる、俺様達も職人達もウハウハだぜ!」

 

「じゃあ皆様、セレンに行こう!」

 

エミルは地図を広げ、現在の港町とゴッフェニアを間に挟む2番目に大きな都市セレンに向かう事を決め、馬車に乗り込み始めると同時にアルはゴーレムの所為で廃坑になった鉱山が大量にあると告げ、其処からゴーレムを排除すれば職人達も喜ぶとしてエミルが提案したミスリルゴーレム狩りに乗り気だった。

サラやルルからも反対意見が無い為ロマンが最後に号令を掛けて馬車が港から荒野へと向かい始め、誓いの翼(オースウイングズ)はセレンへと向かい始めた。

 

 

 

 

 

「セレンまでは馬車で2日は掛かる、この国は昼は暑く夜は冷えるから水の用意と焚き火をして馬を冷えさせない事も重要だぜ」

 

「それからギルド協会の情報屋にも会ったら一応ライブグリッターの話をしてみようよ、もしかしたら良い情報があるかもだし」

 

「…セレンに着くまでは………それが、良いですね…」

 

馬車で移動している際にエミルに対してアルが昼夜の寒暖差がある為水と馬を冷やさない為に焚き火を欠かさない事を忠告され、サラからはギルド協会の情報屋に会ったらライブグリッターの事を話してみる事を提案され、ゴッフに聴くだけでなくそちらの線も当たる事もサラから出た事は良いと思い、自分1人が引っ張るのでは無く皆で知恵を出し合う事こそ冒険者パーティと思いながら耳を傾けてていた。

 

「サラ達の案も良いかもね、エミル」

 

「そうね…って、早速情報屋発見!

聞き出してみるわよ!」

 

ロマンもサラ達が出した案を良いかもと話し、彼もまた冒険者パーティとしての本当のあり方を理解しつつありエミルはそれが嬉しく思いながら手綱を握っていた。

其処に噂をすれば影と言う言葉通りにギルド協会の情報屋が現れ、エミルは馬車を止めると情報屋の馬車が横に来るのを待った。

すると情報屋もエミル達を発見し馬車を止める。

 

「おや、アルさんが居るパーティ…と言う事は貴女達が誓いの翼(オースウイングズ)ですね、魔王討伐を目指す冒険者パーティの!」

 

「流石ギルド協会直営の情報屋所属なだけあって耳が早いですね。

はい、そうです、我々が誓いの翼(オースウイングズ)です。

早速なんですがある物の情報を伺いたいのですが大丈夫でしょうか?」

 

情報屋はアルを見た途端、エミル達を誓いの翼(オースウイングズ)だと判別し、目的も知っていると言う情報屋らしい情報伝達の速さを見せる。

するとエミルは早速ライブグリッターについて聴こうと言う流れになり、全員で情報屋に視線を向ける。

 

「王女殿下達やアルさんに期待されるとプレッシャーが凄いなぁ…聞きたい事とは何ですか?」

 

「あの、僕達は魔王を斃す為に伝説の神剣ライブグリッターを探して旅をしているんです。

それで、その在処をギルド協会の情報屋として何か知りませんか?」

 

「ライブグリッター…あの伝説の神剣ですね。

ギルドの古い情報になりますが確かに480年前まではその存在を確認が取れていました。

当時のエルフの協会職員が初代勇者ロア様が携えていたと記録しておりますから間違いないです」

 

情報屋はプレッシャーを感じながらもどんな情報が欲しいかと聞いてくると此処でロマンがライブグリッターについて笑われる覚悟で探している旨を伝え、何か知らないかと問うと、情報屋は古い情報として480年前にエルフの協会職員がロアが確かに携えていたと話し、笑われる所か存在証明がなされ一気にロマン達は伝説は実在していたとして笑みを溢した。

対してエミルはロアの性格ならずっと持っていても可笑しく無いと思いながら話を聞いていた。

 

「そ、それでそれ以降は?

ライブグリッターは一体何処に行ったのでしょうか⁉︎」

 

「あー、それがですね…460年前、ロア様が80歳で没したその時にライブグリッターの管理についていざこざが発生してその際に紛失と言う記録がなされています。

ロア様が振るった伝説の神剣なのに扱いが雑だと思いませんか?

その所為で当時の関わったギルド協会職員は免職を喰らい、その元職員達も人間なら亡くなり、長寿の者は行方しれずとなったみたいです。

すみません、こんな情報しか無く…」

 

ロマンは更にライブグリッターについて食い下がるが、情報屋は460前、ロアが没した年に起きたいざこざにより紛失と言う神剣にあるまじき扱いをしたことを語り、関わった職員は人間なら寿命で、長寿の者は行方不明となりライブグリッターの在処を知る者は居ないと話した。

最後に一言謝罪をしながらエミル達を一瞥する。

 

「そう、なんですか…それじゃあ情報の対価を」

 

「ああいえ、あんなみっともない情報しか無いのでお代は結構です。

では王女殿下達と勇者さん、魔王討伐を果たして下さいませ」

 

ロマンはガッカリした様子を見せるが、それでも情報は出た為その代金を払おうとした。

だが、情報屋は代金は要らないと話し、そのまま一礼して馬車を走らせて行く。

するとエミルも馬車を走らせ、更に先程の話を聞いていた事である事が浮かび、そして一言だけ口にした。

 

「嘘を吐きましたね、情報屋」

 

「えっ、嘘⁉︎」

 

「ええ、それも最後辺りに話したロア様が没した年にの件辺りが」

 

ロマンは信じていた様子だったが、エミルは最後の方のロアが死んだ年に起きたいざこざを聞いている際に、ほんの少し情報屋の顔の仕草…作り笑いに違和感を持った為である。

しかもその作り笑いはそれと無く、自然過ぎる作り笑いだった為ロマンの様に見逃す者が大半と言う余りにも上手過ぎた物だった。

 

「え、じゃあエミル、情報屋さんが嘘を吐くメリットって何なの?」

 

「それは分からない…ただ、あの情報屋個人で嘘を付けばそれこそギルド協会の信用に関わる…となると可能性的には…」

 

「…ギルド協会で、ライブグリッターの在処は………秘匿する、様になっている…とか…?」

 

サラはなぜ嘘を吐いたかメリット面をエミルに聞くが、エミルも万能では無い為他人の考え等は分からない。

しかし、『ギルド協会の情報屋』と言う組織の人間であるならある程度は可能性を絞り込めるとして口にしようとした。

そんな時ルルがエミルの代弁をして、ギルド協会全体でライブグリッターを秘匿する箝口令が敷かれている事を話すと、エミルは静かに頷きそんな可能性がある事を示す。

 

「箝口令…でも何でそんな物を?」

 

「さあ?

ただ私なら魔族が現れる500年後の事を思って奴等に神剣の在処を教えない為に極一部の者しか知らない様にするし、なんなら150年前に出来た『あの国』に奪わせない様にするとか?」

 

ロマンは箝口令と言う言葉に何故と聞くとエミルは自分ならばと言う条件で未来を見据えて神剣の在処を魔族に知られない様にする為、更に付け加えて150年前に出来た『国』の話をすると全員それぞれ違った反応を見せるが、共通点は『快く思っていない』事であった。

 

「あの国…魔族信奉者共が魔物に支配されていた大陸を魔物を操る術を身に付けて建国してセレスティアを始めとした4国と国交断絶しながら魔族が来る時を待つ馬鹿野郎共の国…『グランヴァニア』か」

 

「そう、グランヴァニアは魔王を倒し得る神剣の存在なんか許さない、壊してしまいたいとすら考える筈よ。

だからそんな連中に漏れない様にする為にあれこれするわよ、私なら」

 

アルは魔族信奉者の国、4国でタブー視されている禁忌の国家グランヴァニアの名を口に出すとエミルは肯定しつつ、そんな神剣を壊したがる連中に神剣の情報が漏れない様にする為にライブグリッターの在処は徹底的に秘匿する事を話した。

但し自分ならばと言う条件を加えながらである。

 

「…でも、そうなら僕でもその案には賛成しちゃうかも知れない。

ご先祖様が振るった伝説の神剣を盗られたり壊されたりしない様にする為に」

 

「…私も、です…」

 

「私も…そうしちゃうかなぁ〜?」

 

すると話を聞き終えたロマン、ルル、サラはエミルが出した箝口令の予測について考えた結果賛成すると話し、アルも無言の肯定をするとエミルは500年後の世界には面倒な者達が面倒な…魔物を魔族の様に自在に操って国を作ったものだと考えながら空を見上げ、照りつける太陽に体力が減り始めた為馬と共に日陰に行き水分を補給し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

それからその夜、全員が寝静まる時間にエミルは焚き火の前で魔力を活性化させ、魔法理論を構築しまた魔法を作り上げようとしていた。

無論念話傍受魔法(インターセプション)を使いながら。

 

「…まだ、起きていたの…ですね、エミルさん…」

 

「あ、ルル」

 

すると既に寝ていたと思っていたルルが起きており、皆を起こさぬ様な小声で名前を呼び合った後、ルルはエミルの対面側に座りながら話を掛け始めた。

 

「…あの、また…新しい魔法を………作っている、のですか…?」

 

「うん、結界魔法(シールドマジック)の欠点…『攻撃以外はすり抜ける』って物を補う為にちょっと手を加えてるの。

ただ、1から10まで作る訳じゃ無いから其処まで時間は掛からないし、終わったら直ぐに寝るから安心して」

 

ルルはエミルにまた魔法を作っているのかと聞き、それにエミルはYESを出し結界魔法(シールドマジック)の欠点…攻撃以外、例えばロープやそもそも武器を持った者がすり抜ける、更に自然の雷もすり抜ける欠陥点がある為、それを補うべく結界魔法(シールドマジック)に手を加えているのだ。

 

「(最も500年前の世界では敵が近付いて来れば死ぬから後衛に近付かせる前にやれが基本だったから余り気にしなかったけど、今は違う。

今の時代は平和を謳歌してそんな殺伐と無縁に過ごした人が多過ぎる。

魔族の襲来があった今、これをしないと大勢が死ぬ…必ず。

だからこそ手を加えなきゃいけない、『魔族達や天災』を寄せ付けない様にする為に)」

 

しかし500年前の時点で敵が近付いて来たら死ぬと言う死と隣り合わせだった為、そんな欠点は敢えて見過ごしていたが流石に500年後の世界にそんな事は無い為急いで手を加えているのだった。

このまま手を加えねば将来的に大勢の人が死ぬ、その可能性を考えた為に。

そして地上界の者以外を近付けない様にする為に魔血晶(デモンズクリスタル)を解析し、魔族や魔物の魔力の波長すらも読み取りそれを組み込む事でこの結界は完成するのだ。

 

「…流石はエミル、世界の命運を握りし子…いえ、『ライラ様の転生者』であらせられますね」

 

「…えっ?」

 

するとルルはフードを取り、エミルに世界の命運を握りし子…では無く、過去の自分(ライラ)の転生者である事をハッキリと告げられ、驚きながらも盗聴防止結界(カーム)を張りながらルルの方を見ていた。

 

「私、予知は余り外さないとサラ達が言ってましたよね?

その予知で少し嘘を吐きました。

『ライラ様の転生体』と言う部分を世界の命運を握りし子に…何方でも意味は変わらないから嘘になってない嘘、ですがね」

 

「あちゃ〜、貴女の予知は本当にリリアナ譲りで外れじゃないよ………ちょっとショック。

でも、なら何で14年前にそんな嘘を?」

 

ルルは予知でエミルがライラの転生体だと見抜いてしまっており、それを言葉起こしする際に嘘を吐き、ライラの転生体だと言う事を意図的に隠していた様である。

エミルはリリアナには事前に予知で見ても誰かは知らせない事を告げてた為誰にも知られてないと思っていたが、リリアナの娘の予知にまで引っ掛かった事に頭を抱えてしまうが、それなら何故そんな嘘をとエミルは尋ねる。

するとルルは静かに話し始めた。

 

「私、お母様に言われたんです。

もしもライラ様の転生者に出会う様ならそんなに畏まらず、ありのままの自分で付き合ってあげなさい、その方がライラ様も喜ぶと。

だから、それに従い貴女がライラ様の転生体だと言う事を隠しました。

そしてこれからも貴女の事を『エミル』と呼び続けます…他でも無い、私の仲間として」

 

如何やらルルはリリアナに前以てありのままの自分で付き合う様にと言われたらしく、それを実行する為にサラやアルにすら嘘を吐き、あの2人もありのままの自分でエミルに付き合ってくれてたのだ。

それを聞き、エミルはリリアナやルルには敵わないと思いながら一呼吸入れて話を続け始めた。

 

「そっか…リリアナと貴女には感謝しないとね。

お陰で私がライラだったって事を周りに内緒にしてたのを助けられたみたいだから。

ありがとうルル。

…それで何だけど、その内緒話をしたって事は私からも対価で何か話をして良いって受け取って良いの?

勿論お互いの秘密として」

 

「ええ、勿論」

 

エミルはルルに感謝しながら、自分が内緒にしていた事を此処で話した為自分からも内緒話をして良いのかと聞くと、ルルは勿論と答える。

エミルは副産物の盗聴防止結界(カーム)が大助かりになる場面が来る日が早くもあるとはと思いながら話し始めた。

 

「ルル、貴女は人間とリリアナの間に生まれた娘、確かそうサラからも言われてたよね?」

 

「はい」

 

エミルはライラの転生体と前置きしてルルに聞きたかった事…『ルルの出生やそれらに関わる事』を、自身の目と耳で確かめたかった事を此処で聞く、そう意を決して彼女の目を見ながら踏み込み始める。

誓いの剣(オースブレード)で取り決めた事、リリアナの夫は誰か、ルルの父は誰なのかを秘匿すると決めた事をこの時は『ライラ』として聞く為に言葉を紡ぎ始める。

 

「なら、その父親の事を敢えて私はライラの転生体として聞きたいわ。

貴女の父親は………私達誓いの剣(オースブレード)が関係を秘匿すると決めた人………『初代勇者ロア』、彼なのよね?」

 

「そうです、私はお母様とお父様…ロア様の1人娘です。

なので端的に言えば、私はロマン君の遠いご先祖の1人娘になります。

そして私自身も、魔法と絶技の両方が使える…つまり勇者としての資質は、一応あります」

 

エミルはルルの父親が、リリアナの夫と秘匿されたロアである事を確認すると彼女は両手から小さな炎を出し、魔法と絶技が使える勇者ロアの血筋である事を証明して見せた。

それらを確認したエミルは内心でリリアナとロアにおめでとうと思いながら更に話を続けた。

 

「ライブグリッターを渡した天使…『アイリス』が残した言葉、『神剣を振るう勇者の血筋を絶やしてはならない、それは魔王を倒せなくなる事を意味する』と私達に伝えて来た事。

それに従い私達は各地にロアの血筋が残る様に子を儲けさせた…ロアが倒れた後にその跡を継ぐ誰かを世に残す為に。

ただ、ロア本人はリリアナだけを愛したかったから2人の仲を裂く残酷な事をしたって私は思ってた…だけど、それでも2人の愛は変わらず、私達はリリアナとロアが婚姻を結んだ事を隠した。

そしてその後に貴女が生まれたのね、ルル」

 

エミルはリリアナとロアに負い目を感じる事…天使アイリスの言い付けとは言えロアにリリアナ1人を愛する環境を作れない様にした事をしたのを当時後悔し、謝罪しても仕切れない事をしたとさえ思っていた。

所が、リリアナとロアの愛は変わらず最後には婚姻を自分達の間だけで周りに秘匿して結んだ事があり、其処から10年経過し漸くルルが生まれたのだと理解する。

ルルもそれに頷きながらエミルをじっと見続けていた。

 

「そっか、2人の子なのね…良かった、しっかり愛し合った2人の間にこんなに可愛い娘が出来て…ああ、良かった…あの2人の愛がしっかりと形に残って……本当に、良かった…」

 

エミルはリリアナとロアにしっかりと娘が出来た事を泣きながら喜び、そして出会えた事に運命的な物を感じながら自信家の彼女から想像出来ない程大粒の涙を流していた。

その涙はそれ程ロアとリリアナの行く末を気にしていた証明にもなっていた。

 

「…あの、感涙に咽ぶのは良いのですが、私からライブグリッターの在処を聴き出そうとか考えないのですか?

ロアとリリアナの1人娘、知らない訳が無いと思わないのですか?」

 

しかし此処でルルはエミルに自分にライブグリッターの在処を聞こうと思わないか、知らない訳が無いと言う現実的観点をエミルが泣き止むのを少し待ちながら聞き始める。

 

「うん、思わない。

だって、あの2人の事だから貴女に在処を託しても黙ってる様に伝えるでしょう?

私がライラだったって事を黙る様に伝えたリリアナなら」

 

するとエミルはあっさりと思わないと答える。

その理由もリリアナとロアならルルにライブグリッターの在処を託しても絶対に漏らさない様にすると2人の事を知る者として答える。

事実、リリアナはライラの転生体は誰かだと話す事は無い様に伝えていた為、その理論は屁理屈だが通る物であった。

 

「…では、これからゴッフ様にライブグリッターの在処を聞き出すのも無意味では?

私の父が、お母様の夫が誰かを此処まで隠して来た方達なんですよ?

それなのに行くのですか?」

 

「うん、直接的な在処までは流石に言わないだろうけどヒントは必ずくれるって信じてるから。

魔王を斃したい、その想いが真実ならば…だって、同じ目的で戦って来た『仲間』なんだから」

 

ルルはリリアナがそうならゴッフに聞きに行く事も無意味だと投げ掛け、なのに行くのかと『エミル』に聞くと、本人は在処を直接は言わないだろうがヒント程度はくれると信じていた。

その理由をエミルは魔王討伐と言う同じ目的で戦って来た『仲間』だと、様々な思いを込めながら笑顔で告げる。

それを聞いたルルは少しキョトンとしながらも根負けしたと思い、溜め息を吐きながらも苦笑していた。

 

「…よし、話してる間に結界魔法(シールドマジック)の改良型の構築完了と。

名前は…単純に『結界魔法(シールドマジック)V』で良いかな?

と言う訳で行動方針は変わらずセレンに行ってレベル上げをして、其処からゴッフェニアでゴッフに話を聴きに行くわ。

後ルルには申し訳無いんだけど、ライブグリッターを振るうのはロマン君って私は」

 

「それなら大丈夫ですよ。

昔持った事がありますが、私では4割しか使いこなせませんでしたから。

多分今現在でも6割が精々だと考えてますから、私もロマン君が相応しいと思ってます」

 

そうして結界魔法(シールドマジック)Vの理論構築を完了し、行動方針は変えないと話したエミルはその後にロマンにライブグリッターを継承させる気も譲らないと話す。

するとルルはあっさりと引き自分では使い熟せ無かった過去を教え、更にロマンならばとルル自身も考えている事を話2人は秘密を共有する友人となり2人で笑みを溢していた。

 

「じゃあルルにもこの魔法を万が一があった場合の為に教えるわね。

リリアナの事だから絶技も魔法も一流になってねって天然なんだけど妙にプレッシャーを感じさせる課題とか出してそうだから問題無く貴女も使えそうだから」

 

「はい、お母様はそのつもりは無いんでしょうが、なんかその…ちょっと怖い雰囲気を出すんですよ、偶に。

…結界の強度自体はIVと変わらず問題点を改良したみたいね。

これならもしもの時は使えます、ありがとう、エミル」

 

そしてエミルはルルにも結界魔法(シールドマジック)Vを教えながらリリアナの少し怖い部分を互いに話し合い、そのつもりがないのに何故怖いのかと思いながら会話に花を咲かせ、そしてエミルは盗聴防止結界(カーム)を解除してお互いに寝床に就き始めた。

 

「じゃあルル、おやすみなさい」

 

「…おやすみなさい、エミル…」

 

こうしてリリアナの1人娘とライラの転生者はちょっとした内緒話を共有する共犯者になり、ルルは少しサラやアルにまた悪いと思いながらもこの話を胸の内に仕舞い、エミルもルルから聞いた事は漏らさぬ様に、自分から話すまでは言わない様にしようと思いながら眠りに就いた。

そしてその夜、エミルは過去の自分(ライラ)の時の夢を見ていた。

内容は他愛の無い、魔王を斃した後に何をしたいのかと全員で語り合った、そんな過去の夢を。

 

 

 

 

 

 

それからエミルは朝起きた後、ロマンにも結界魔法(シールドマジック)Vを教えた後何事も無く馬車は街道を進み、3日目の朝にして遂にセレンに到着する。

ロマンは本国に来た事が無い為かリリアーデやリーバ等を超える大きさの街に四方を覗き見し、エミルはライラックより少し小さいが荒野に似合う石造りの建物とあちこちから聞こえる金槌の音や鍛治特有の臭いに流石ドワーフの王が治める国の都市の1つだと感心していた。

 

「ガッハッハッハッハ、これがセレンの街並みよ‼︎

見よ、石造りの建物、鍛治職人達の汗水垂らすこの光景を‼︎

セレンとゴッフェニアは他の国の中央都市にだって負けてないぜ‼︎」

 

「凄い街並みだね、皆」

 

「そうだね〜、何度来てもこんな大きな街だと迷子になるかもね〜?」

 

アルは故郷の国の第2都市を自慢げに語り、その鉄の臭いや巨大な街並みにロマンやサラは圧倒されながら馬車は馬屋に預かって貰い、其処からギルド運営の宿屋へと向かい始めた。

 

「よう兄弟、久し振りだな‼︎」

 

「腕は鈍ってないだろうな兄弟‼︎」

 

「ガッハッハッハッハ、俺様を誰だと思ってやがる‼︎

ゴッフ(ジジイ)の弟子のアル様だぜ、腕が鈍る訳無いだろうが‼︎」

 

その間に行く先々でアルは人間やドワーフに兄弟と声を掛けられ、ロマンは改めてゴッフの弟子のアルと言う存在の大きさを知り、エミルも流石頑固者ゴッフの弟子だと思いながら歩いていた。

そしてギルド運営の宿屋『酒飲亭セレン支店』に辿り着き中へと入るとドワーフ達が昼間から酒を飲みながらも和気藹々とした空気が宿屋から漂っていた。

 

「おっ、アルの兄弟じゃねぇか久し振りだな‼︎

おお〜い『キーラ』の嬢さん、アルの奴が来たぜ〜‼︎」

 

「えっ、あらあらアルさん、お久し振りですね!

横に居る方達はパーティメンバーですか?」

 

すると客の1人がアルに気が付くと、宿屋の主人であるドワーフの女性キーラを呼び出す。

そのキーラも料理を運びながらアルが久々にセレンに来た事を驚きながら、連れの4人がパーティメンバーであるかを確認して来る。

 

「おう、ついでにリーダーはこの魔法使いの女だぜ」

 

「はい、誓いの翼(オースウイングズ)のリーダー、エミルです。

今回この街に来た理由ですが、この近くの廃坑になった鉱山でミスリルゴーレムが数多く徘徊していて、それの駆除依頼が無いかを確かめに来ました」

 

アルはエミルがリーダーだと告げると1歩下りエミルに話し掛けろと合図を送ると、エミルは一礼をしてから誓いの翼(オースウイングズ)のリーダーだと話し、更に近場の廃坑でミスリルゴーレムを駆除する依頼が無いかをキーラに尋ね始める。

 

誓いの翼(オースウイングズ)…ああ、つい先日出来上がったパーティね‼︎

ええありますとも、ざっと数えて5件、その内1番近いのはこの『ビーエ山』の廃坑に大量のミスリルゴーレムが徘徊してますよ!

魔王を斃したいならこの依頼を片付けないとまず無理ですから頑張って下さいね‼︎」

 

するとキーラはカウンターに戻り、地図と魔法紙(マナシート)を取り出しその中でビーエ山の廃坑にミスリルゴーレムが大量発生していると話して依頼書を渡してくる。

エミルはそれにサインしながらキーラも流石にギルド協会の一員である為エミル達誓いの翼(オースウイングズ)の目的を共有しているらしく、これ位を片付けられないなら無理と言いつつ笑顔で激励し、エミルもそれを重々理解している為頷いていた。

 

「何だ兄弟、何時から正義の味方になったんだよ?

魔王を斃したいのは其処のサラちゃんやルルちゃん位だったろ〜?」

 

「五月蝿ぇそんなんじゃねぇっての‼︎

俺様の作った武具が魔族、更には魔王をぶっ斃した事の証を立てたいだけだっつうの‼︎」

 

すると客の1人がアルを冷やかしに掛かると、アルは自分の作った武具が魔族や魔王を斃した証を立てたい…と、話してはいるがサラやルルは長年付き合っている経験から知っている。

アルは仲間の義理人情に行動で応えるタイプだと。

それが魔王討伐と言う大役になり客でもあり仲間でもある自分達を心配しての事だと。

 

「さて、キーラさん。

ギルド協会にこの魔法を冒険者に流布して欲しいのですが良いですか?」

 

「魔法?

…あらあらあら、これはまた3つの新しい魔法を作り上げてしまうなんて素晴らしいですわね!

魔王を斃しい意気込みが良く伝わりますわ、ええ此方はギルド協会で冒険者全体に流布致しますわ。

ただ…このレベル150以上で使える魔法は余り使える人が出ないと思いますけどね」

 

そしてエミルは自身が作り上げた3つの魔法を流布するタイミングは此処だと、名ありの魔族の件もありそう感じながら術式を写した魔法紙(マナシート)を3枚を渡す。

それを見てキーラはエミル達の熱意を感じ取り、ギルド協会に流布すると話しながら奥へ行き始めた。

但し念話傍受魔法(インターセプション)は使える者が限られると話しをすると、エミルは内心そうじゃ無いと困ると思いながらその背中を見送った。

 

「さて、少し休んだら早速ビーエ山に行くよ皆!

幸い其処まではそんなに離れていないから馬車を使えば直ぐに着くから頑張って行こう‼︎」

 

「お〜‼︎」

 

「え、えと、お〜…!」

 

エミルは地図確認を終えてビーエ山に着くまでは馬車で其処まで掛からないと話し、号令を掛けるとサラが真っ先に応え、次にロマンが戸惑いながら号令に応え、アルとルルも無言で応え、5人は馬屋に戻り早速ビーエ山に向かい始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのビーエ山上空にて、エミル達が向かう瞬間を見たアギラは連れて来た部下の1人に向き命令を始めた。

 

「では手筈通りに『例の魔物』で奴等を殺すか追い詰めろ。

追い詰めた場合は貴様が残りを詰めに入りあの魔法使いと勇者から優先的に殺せ。

そうすれば名ありの魔族に昇級させてやる、期待しているぞ」

 

「はっ、必ずやご期待に応えて見せましょう‼︎」

 

名無し魔族にアギラは命令を下すと転移魔法(ディメンションマジック)で消え去り、部下の魔物は昇級が後少しで出来る為か張り切りを見せ、用意した魔物に命令を下し始めた。

 

「さあ行け、中のゴーレムが邪魔ならお前の好きな様にするが良い。

そして『同じゴーレム種』でも格が違うと坑道内のミスリルゴーレムや今から来る奴らにそれを見せ受けてやれ…」

 

その部下の名無しの魔族はアギラから預かった『ゴーレム』に対し命令し、そのゴーレムは悪意に操られた他の魔物と違う命令に基づき動き始めた。

そして洞窟内のミスリルゴーレムを自身の使命の邪魔になるとして排除を開始した。

ゴーレムは知能が無いと思われがちであるが、実は魔族に一度操られれば無機物から生まれた存在からは考えられない思考能力を身に付け、下された命令に邪魔な者は排除する忠実な僕程度に思考出来るのだ。

 

「そうだ、そうやって邪魔な奴は排除し、今から来る勇者と魔法使いを殺せ…ふふふふ!」

 

そうしてアギラから手渡されたゴーレムの思考能力を見届けると名無し魔族も転移魔法(ディメンションマジック)でその場から離れる。

そして残されたゴーレムはミスリルゴーレムから攻撃を受けても傷1つ付かない、ミスリルとはまた違った輝きを持ちながら強度の差でミスリルゴーレムを粉砕する。

こんな事が出来る理由はただ1つ、このゴーレムはミスリルゴーレムよりランクが上の、最上位に分類されるゴーレムなのだからである。

そして魔族はこれからエミル達が味わう地獄に心躍らせながらアギラに報告の為に『念話』をするのであった。

 

 

 

「っ、魔族の念話がある、しかも『ビーエ山に罠を張った』って奴等は話してる!」

 

「あぁん、俺様の国で小細工をしやがるのかぁ?

そいつは頂けねぇなぁ、その罠毎奴等を粉砕してやるぜ‼︎」

 

しかしその念話はエミルにより傍受され、これから依頼で向かうビーエ山に魔族の罠ある事をロマン達は理解する。

そしてアルは生まれ育った国で好き勝手される事を良しとせず、魔法祝印(エンチャント)を掛けたミスリルアックスでそれらを粉砕しようと高らかに叫び、エミル達もこれから待ち受ける罠に敢えて飛び込む様にし魔族の思い通りにはさせないと警戒しながら馬車を目的地に走らせるのであった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
今までの中でルルの父親は誰だとエミルが予想立てするフラグがあり、それを回収しました。
更にルル側もエミルの正体に気付くと言う2人は仲間の中でちょっとした秘密の共有者になりました。
そして魔族の罠が張られた地にエミル達は飛び込みますがその結果は如何なるかお楽しみ下さいませ。
それからお知らせとしてストック切れにより更新速度が遅くなります。
楽しみに待っていた方は申し訳ありません。

次回もよろしくお願い致します。


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第14話『誓いの翼、罠に飛び込む』

皆様おはようございます、第14話目更新でございます。
今回罠に飛び込んだ誓いの翼の面々に待つものとは…?
後お知らせとしてストック不足な為毎日投稿から不定期更新に速度ダウン致します。
楽しみにしていた皆様、誠に申し訳ありません。
では、本編へどうぞ。


エミルの念話傍受魔法(インターセプション)により、魔族がビーエ山に何らかの罠を張った事を知り、少し離れた場所で馬車から降りた後誓いの翼(オースウイングズ)は山道を登りその足で廃坑入口まで辿り着く。

それから入口の外から中を覗き、武器を構えながらエミル達は陣取り、そして陣形を組みながら突入する。

 

「さて魔族の野朗共、どんな罠を仕掛けやがったか見せて貰おうじゃねぇか…!」

 

前衛に立つアルは早速魔族の罠に熱り立ちながらミスリルアックスを構え前へと進み始める。

それに続きロマンとフードを取ったルルが、そして後衛にサラとエミルが立ちながら周りを警戒しながら進み、エミルに至っては透視(クリアアイ)観察眼(アナライズ)を使い、岩場に隠れても直ぐに見つけられる様にしながら警戒心を最大限にしていた。

 

【カラカラ】

 

「むっ?

…コイツはミスリル鉱石じゃねえか!

こっちにも、あっちにも沢山ありやがる!

こりゃまさか、ミスリルゴーレムの残骸か?」

 

「…うん、僕ミスリルゴーレムや他のゴーレムを倒した事があるから分かるよ。

ゴーレムは倒したらこんな風に体を構築してた鉱石が崩れて動かなくなるって」

 

それからある程度奥に進んだ中で前衛のアルとロマンはミスリルゴーレムの残骸を発見し、それがあちこちにある事を確認し合い更に本当にミスリルゴーレムの残骸かを確認し合いながら残骸を手に触れ、何故残骸になっているかを疑問に思っていた。

 

「…ねえアル、ロマン、それに皆、ミスリルってこんな削れ方をする?

ほらこの残骸、まるでミスリルより硬い何かに抉る様に攻撃された痕、みたいなのが沢山付いてる」

 

「あ、本当だ!

でも可笑しいよね、ミスリルより硬い物なんて言ったらこの世界で1番硬い鉱石、『オリハルコン』しか無いよね?」

 

するとシーフと言う目利きが働く(ジョブ)に就いてるルルがミスリルゴーレムの残骸から『より硬い何かに攻撃され削られた痕』を発見し、サラも確認するとミスリルより硬い鉱石はこの世界には1つしか無く、それはミスリル以上に採掘が難しく発見され辛い超希少鉱石オリハルコンしかないと断言する。

それを聞いたアル、エミルは更に周りを警戒し始め少しずつではあるが後ろに後退し始めていた。

 

「あ、あれ、如何したのアルにエミル?」

 

「如何したもこうしたもねぇよ‼︎

今お前言っただろ、ミスリルより硬いモンはオリハルコンしか無ぇって‼︎

つまりこれをやった奴はな…‼︎」

 

サラはエミルやアルの反応に質問をすると、アルはサラの天然ボケ振りに頭を抱えながら先程彼女が言った事を反復し、ミスリルゴーレムをこんなにした者にある程度予測が出来た為後退し始めている事を告げようとしていた。

 

【ズン、ズン…】

 

すると廃坑の奥から重い足音が響き渡り、その方向をエミル達は覗き見る。

するとエミルが発動している2つの眼の魔法にミスリルゴーレムをこんな無惨な残骸に変えた主が移り、更に観察眼(アナライズ)で一体何なのか判別出来てしまった為固唾を呑み始めていた。

 

【カラカラ、ズン、ズン!】

 

そして、その悪魔はミスリルゴーレムの残骸を踏み荒らしながら現れた。

ミスリルの銀の光とは違う、金の光を放ち銅のような色合いを持つこの坑道には存在しない筈のモノがエミル達に近付いていた。

 

「…チッ、マジでで出やがったぜ…‼︎」

 

「こ、このゴーレムは…⁉︎」

 

「…『オリハルコンゴーレム』‼︎

討伐推奨レベル210、ゴーレム種の…最上位の魔物…‼︎」

 

そう、其処に居たのはミスリルゴーレムを超える最上位の魔物、全身がオリハルコンで構成された怪物、オリハルコンゴーレムであった。

エミル達はこのゴーレムこそが魔族達が用意した罠だと判断し、1歩相手が近付く毎に後ろに下がり始める。

 

「…今よ、入口まで走って‼︎」

 

そしてある程度後ろに下がった瞬間、全員でオリハルコンゴーレムから背を向けて入り口まで走り始めた。

ゴーレム種は体内の核部分に攻撃を当て破壊すれば倒せるが、上位に上がる程体の硬さや魔法ダメージ減衰が上がって行き、オリハルコンゴーレムにもなれば生半可な魔法は反射され、強度アップIVの魔法祝印(エンチャント)が無いミスリル製武器はあっさり刃が砕け散る正真正銘の怪物と化すのだ。

 

「クソが、こんな所じゃエミルの魔法なんかも撃てはしないし真っ直ぐ来て殴り殺されるシンプルな図にしかならねぇ‼︎

早く入口までずらかれぇ‼︎」

 

「魔族め、あんな怪物を用意するなんて…‼︎」

 

アルもルルも完全に愚痴を溢しながら全速力で走り、エミルは後ろを振り返りながらオリハルコンゴーレムが真っ直ぐ、しかしゴーレムらしくゆっくりと近付いて来ている事を確認し、本来なら無差別に暴れ回るしか無い魔物が明確に自分達を狙いに来ている。

これは魔族が直接操っている、エミルはそう確信していた。

 

「出口だ、皆頑張って‼︎」

 

そうしている内にロマンが声を上げ、出口の光に全員で近付き、一気に走り抜け出した。

更に後ろを見ればまだオリハルコンゴーレムは近付いて来ており、坑道の出口の少し先は崖になっており、エミルはその崖下を覗きながら杖を構えていた。

 

「おい、早く転移魔法(ディメンションマジック)を使って馬車まで行くぞ‼︎

幾ら俺様自慢の武器でもミスリル製の武器で倒せる敵にも限度があるってもんだ‼︎

エンシェントドラゴンより硬いオリハルコンゴーレムの相手は流石に想定出来てねぇぞ‼︎」

 

「…確かに竜鱗よりも硬い鉱石相手にミスリル製の武器で戦うのは無謀。

だけど魔法祝印(エンチャント)IVで強度アップを付けたミスリル製武器はエンチャント抜きのオリハルコンに近い硬度まで上げられる!

そして魔物には魔法祝印(エンチャント)は付かない、ならちょっと苦しいけど戦えるわ‼︎」

 

アルは流石にミスリルより硬い相手は自身の自慢の武器でも砕かれてしまうのを自覚はしてる為か、エンシェントドラゴンを引き合いに出し馬車まで転移する事をエミルに叫ぶ。

しかしエミルは誓いの剣(オースブレード)がミスリル製武器で如何にオリハルコンゴーレムを倒したかを記憶している事、更に自分達の武具は対魔族用に魔法祝印(エンチャント)を施している為戦えると叫びながら杖を構えたまま立っていた。

 

【ズン、ズン、ズン‼︎】

 

「わぁ、来た来た来た来た来たぁ⁉︎」

 

「チッ、戦えるなら戦えるで早く指示しろ‼︎

エミルさんよぉ‼︎」

 

「…後、少し」

 

そうこうしている内にオリハルコンゴーレムが入口に辿り着き、サラが慌てふためきアルが腹を括る中、エミルはタイミングを図りながら杖を構え続けていた。

そうして崖の直ぐ手前まで追い詰められたロマン達の前にオリハルコンゴーレムが腕を振り被るーーー。

 

「今、皆捕まって‼︎」

 

その刹那、エミルから自身に捕まる様に叫ぶと全員がエミルに手を振れる。

そしてそれを確認した0.2秒の内に転移魔法(ディメンションマジック)を使用、エミル達はその場から消える。

するとオリハルコンゴーレムの振り被った腕は空振りに終わり、更に崖を攻撃してしまい崖先の岩場を崩してしまいオリハルコンゴーレムはそのまま崩れ行く足場と共に山から転げ落ち、高い地面へと真っ逆様になった。

 

 

 

 

 

転移魔法(ディメンションマジック)でもしも先程の足場が崩れた際に落下する岩が何処に落ちるかを計算しながら崖の下にエミルは転移する。

すると予想通り岩はエミル達には当たらず、オリハルコンゴーレムは転げ落ちて行く様を見ていた。

 

「わぁゴーレムがゴロゴロ〜」

 

「だがあればオリハルコン、『メタルゴーレム』程度ならこの山から落ちればそれでバラバラだが硬さが違い過ぎて落下してもダメージにはならないぜ?

一応倒し方なら存在するが…」

 

サラはオリハルコンゴーレムが転がる様を見て呑気な事を言い始めたが、アルは流石にオリハルコンともなれば山から滑落させたとしても無意味と理解しており、如何に戦うかをエミルに問い質し始める。

但し、鍛治職人としての知識を敢えて出さない様にしてである。

 

「職人のアルなら分かるんじゃないかな?

『硬い物を熱して急に冷やして思い切り叩く』と如何なるか?」

 

「…やっぱりそれだよな。

分かった、だったらやってやるぜ、とことんまでな!」

 

するとエミルは少し余裕が生まれた為アルに笑みを浮かべながら『硬い物を熱して冷やして叩く』と言う言葉を投げ掛けた。

それをアルも予想していた、と言うより現状はそれ以外にオリハルコンで出来た怪物を倒す手段が無い為、エミルの案に最後まで付き合うとして武器を構えた。

そうして直ぐにオリハルコンゴーレムが落ちて落ちて来て、丁度エミル達が後ろに居りロマン達は前衛となっていた。

 

「お前等、一点狙いだ‼︎

火の魔法、絶技で熱した後は水でも氷でも良い、兎に角熱した石野朗がキンキンに冷える奴を使って最後は俺達前衛の誰かが土の絶技でアイツをぶっ叩くんだ‼︎

それを一点狙いで繰り返して戦うぞ‼︎」

 

「アル…そう言う事か、ロマン、サラもエミルも合わせる事、用意は良い?」

 

「分かったよ、アル、ルル!

その作戦で行くよ‼︎」

 

オリハルコンゴーレムが起き上がる間にアルが周りに作戦を説明し、ルルが如何言う事なのかを理解すると次にロマンもエミルが伝えたヒントからアルが練った作戦でもあり、村に鍛冶屋があり其処で石や硬い物を同じ事をしたら如何なったか見ていた為理解し、声を張り上げながら応えた。

その間にエミルは身体強化(ボディバフ)IVを全員に掛けていた。

 

「…ああ、そう言う事⁉︎

なら私から行くよ、弓なら一点狙いが得意だからね、爆炎弓‼︎」

 

最後にサラが理解すると矢を構え、火の上級絶技を使用して狙い易い胸の中心に矢を放つ。

当然相手はオリハルコンその物の為矢自体は弾かれるが、矢に纏った炎はそのまま燃え移り始める。

しかしその炎も直ぐに消えようとしていた。

 

「まだだ、もっと火で熱するぞ、爆炎斧‼︎」

 

『爆炎剣‼︎』

 

だが其処にアル、ルル、ロマンの3人が同時に『サラが狙った箇所』に火の上位絶技を更に当て、アルは力任せに振り、ルルとロマンは斬り伏せた後に直ぐに離脱して距離を作りエミルが最上級魔法を使う環境を整える。

 

「まだまだよ、灼熱雨(マグマレイン)‼︎」

 

「爆炎弓‼︎」

 

其処にエミルが動き出し、まだ熱するとして灼熱雨(マグマレイン)を出来るだけ小さく収束し、しかし威力は据え置きのまま熱し始めた箇所をサラと同時に熱する。

すると矢が弾かれるのは一緒であったが、オリハルコンゴーレムの方に変化が現れた。

炎で熱した金色に輝く胸部の中心がその炎の隙間から赤く熱せられた痕が見えていた。

そしてそれをエミル達は見逃さなかった。

 

「今よ、大水流(タイダルウェイブ)‼︎」

 

「『絶氷弓』、いっけぇ‼︎」

 

次にエミルが水の最上級魔法、サラが氷の上位絶技を使用し、熱せられていた箇所を一気に冷やし、元の熱せられていない状態に戻した。

其処にアルが動き出し、ミスリルアックスを思い切り振り被る用意をしていた。

 

「うおりゃぁ、震撃斧ゥゥ‼︎」

 

オリハルコンゴーレムが動き出す前に軽量化魔法祝印(エンチャント)をされた武具のお陰で1手早く動き、土の上位絶技を胸部の中心に力任せに叩き込み更に吹き飛ばし、地面に転ばせる。

 

「(確かにエミルの言う通りだ、武器に傷が付いちゃいねぇぜ‼︎)」

 

そして本来ならオリハルコンに此処までミスリル製の武器を加減抜きで叩き付ければ武器側が折れる筈だが、エミルの強度アップIVのお陰で本当にミスリルの刃その物の硬度がオリハルコンに近くなっていた為刃毀れすらしていなかった。

 

【ググググ】

 

それを確認したアルの目の前でオリハルコンゴーレムが起き上がりだし、再び行動開始をしようとしていた………だが、その胸部の中心を良く見るとオリハルコンに僅か、本当に僅かだが傷が付き、エミルやアルの考えた作戦が正しい物だったと証明された。

 

「おし、やっぱオリハルコンと言えど急に熱した後に更に急に冷やしてぶっ叩けば傷が付く‼︎

お前等この調子で戦うぞ‼︎」

 

「OKだよ、アル‼︎」

 

アルはエミルのヒントにより思い付いた事が正しかったとガッツポーズを取りながらこの調子で行けばオリハルコンゴーレムを倒せる、そう確信し全員に檄を飛ばしオリハルコンゴーレム討伐に集中し始める。

 

「………っ、エミル上‼︎」

 

そう思っていた矢先にサラの危険予知が発動し、エミルに危機が迫っている事を叫び、エミルとサラが上を見ると魔族が上から迫り来ており、双剣を構えようとしていた。

 

「っ、結界魔法(シールドマジック)‼︎」

 

「はははバカめ、結界魔法(シールドマジック)は何もせずに懐に飛び込めば無意味と言う物‼︎

アギラ様は何故こんな魔法使いや勇者を狙えと仰ったか分からんが、兎に角死ぬが良い‼︎」

 

「エミル‼︎」

 

エミルは魔族の接近で咄嗟に結界を張るが、敵も結界魔法(シールドマジック)の欠点は熟知している為剣の柄から手を離しそのまま結界内に飛び込もうとし、ロマン達はエミルの危機に走り始める。

…だが此処でルルは思考する、エミルは結界魔法(シールドマジック)とは言ったが何番であるかを宣言していないと。

その為もしかしたらと思いながらも走っていた。

そして………。

 

【ガンッ‼︎】

 

「グエッ⁉︎

な、何故、結界魔法(シールドマジック)は攻撃以外はすり抜ける様になってた…筈…⁉︎」

 

するとその魔族は結界に阻まれてしまい、素通りする事が叶わなかった為一旦距離を置き、何故そうなったのか分からず慌てふためきながらエミルを見ていた。

 

「大成功、岩が降って来る時もこれを使わないで正解だったわ‼︎

そうよ、結界魔法(シールドマジック)はその欠点があったから改良型を作ったのよ、名付けて結界魔法(シールドマジック)Vよ‼︎」

 

そのエミルは落石時にも結界魔法(シールドマジック)Vを使わず落石を避けれる形で転移した理由は魔族が何処かで見ている可能性を、オリハルコンゴーレムが自分達を明確に狙って来ている為近くで操っていると考えた為であった。

そしてその予想は当たり、レベル200の魔族が現れ不意打ちを行おうとしたのである。

因みに魔物は魔族に造られた生命の為レベル差に関係無くあらゆる魔族、そして魔王の命令を受け付けると過去の自分(ライラ)は魔族から直に聞いている。

 

「さてレベル200の魔族と討伐推奨レベル210のオリハルコンゴーレム…押さえるならやっぱり何時でもやれるオリハルコンゴーレムを押さえるべきね、結界魔法(シールドマジック)V‼︎」

 

するとエミルは魔族とオリハルコンゴーレムの何方を押さえるべきかを考え、何時でも倒せて鈍重なオリハルコンゴーレムを押さえ、知性を持ち素早く行動する魔族を斃すべきだと考えたエミルはオリハルコンゴーレムに結界魔法(シールドマジック)Vを張る。

但し逆張りであり、内側に効力が発揮される拘束タイプの結界を張ったのだ。

 

「な、あの結界は逆張りで魔物まで押さえる事が可能なのか⁉︎

アギラ様が仰った魔法使いと勇者が危険な理由の一端が知れたわ…‼︎

貴様、一体何者だ、名を名乗れ‼︎」

 

「あらこれは失礼を。

私はセレスティア王国第2王女エミルよ。

ああ覚えなくて良いわよ、どうせこの戦闘で何方が死ぬか片が付くから、ね‼︎

大地震(ガイアブレイク)灼熱雨(マグマレイン)‼︎」

 

双剣の魔族はアギラが言った勇者は神剣を万が一使える可能性がある為だが、魔法使いの方の危険性…既存の魔法を改良してしまうその人間離れした才覚に汗を流し、名乗る様にエミルに叫ぶ。

そのエミルは片手間に身体強化(ボディバフ)IVを全員に掛け直し、切れる時間を延長しながら名乗りながら大地震(ガイアブレイク)灼熱雨(マグマレイン)を放った。

 

「くっ、結界魔法(シールドマジック)IV‼︎」

 

双剣の魔族は上からの灼熱雨(マグマレイン)、下からの大地震(ガイアブレイク)を防ぐべく結界魔法(シールドマジック)IVを使い両方を防御する。

しかし、その結界は2つの魔法の威力により結界が破れて行き、最終的に2つの魔法を結界分と魔法祝印(エンチャント)分を差し引きエミルの魔法大砲を受ける事になった。

 

「ぐおぉ、我が魔界の鎧を以てしてもこの威力を発揮するとは…貴様、これではまるで魔界で忌まわしき者と聞き及ぶセレスティア初代女王ライラの様ではないか⁉︎」

 

「私はライラ様の子孫よ?

ならその才覚を継ぐのは当たり前だと思わないの、魔族!

大水流(タイダルウェイブ)‼︎」

 

「極雷剣‼︎」

 

「暴風弓‼︎」

 

魔族はこの魔法威力に噂に聞く誓いの剣(オースブレード)の魔法使いライラの様だと口にすると、エミルは子孫だからと言う理由付けをしながら大水流(タイダルウェイブ)を使い、其処にロマンも駆け付けサラと共に3人で攻撃をする。

それを双剣の魔族は流石に危ないと感じたのか避ける選択を取り、魔法と絶技を避けて態勢を立て直す。

其処にアル、ルルも駆けつけフルメンバーで双剣の魔族を相手にする事になり、全員で武器を構える。

 

「…はっ、アギラ様が警戒しろと仰った理由は良く分かった!

ならば我が双剣の餌食にし、名を授かりアギラ様に更に貢献させて貰う事としようではないか‼︎

さあ来い下等な地上界の者共等貴様達の死に場所は此処だ‼︎」

 

「何方が死ぬかは最後まで分からない…全力で抵抗する‼︎」

 

「さあ来やがれ、今度は俺様が大嫌いな魔法祝印(エンチャント)次の武具で相手だ、覚悟しやがれよ魔族が‼︎」

 

双剣の魔族はアギラが言った言葉を全て理解した上で下等な地上界の者共等とエミル達を蔑み、彼女達を殺して名を授かろうと言う欲を見せながら双剣を構える。

対するルルは死ぬかは最後まで分からないとした上で逆手でミスリルダガー2本を構え、アルも大嫌いな魔法祝印(エンチャント)を受け入れた上での魔族との第2戦に挑む事となる。

 

「さあ、その首寄越せ‼︎」

 

「断る、僕達はこんな所で負けられない‼︎」

 

双剣の魔族は先ず1番前に出たロマンから狙いを定め、漆黒の双剣で首を斬ろうとする。

それをロマンが盾と剣で受け止め、その瞬間にアルやルルが割り込み引き剥がす。

そして魔族の双剣を受け止めた剣と盾は傷が付かず、魔法祝印(エンチャント)とアルの腕前が合わさり魔族の武具と魔法祝印(エンチャント)に負けない様になっていた。

 

「凄い…刃毀れもしない、これなら皆を守る為に戦える!」

 

「そうよロマン、貴方は貴方の戦いをしなさい!」

 

「敵を能動的にぶっ斃すのは俺たちの役目だ‼︎

さあ、行くぜぇ‼︎」

 

ロマンが武具を見ながら心から誓いの翼(オースウイングズ)や心の中に思い浮かべた者達を守る為に戦えると気合を入れながら叫ぶ。

それを聞きアル、ルルもロマンは自分自身の戦い方をする様にアドバイスし、エミルの魔法とサラの弓が飛び交う中3人の前衛は突撃し、双剣の魔族と戦いを更に繰り広げて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ビーエ山の先頭箇所を覗き見出来る場所にて、アギラは頬を掻きながらロマンとエミル、特にエミルの方を見て苦々しい顔をしていた。

 

「ん〜む…あの結界魔法(シールドマジック)を欠陥を改良したのと魔法自体の威力と熟練度………更に私の眼から視える『魂の色』、あの女は矢張り…」

 

アギラはエミルを見て様々な事柄から、特に魔族の眼が捉える『魂の色』を指摘しながら考え込みながら、このままエミルが育つのは危険だと判断し、次からは更に妨害工作を強めるべきか、それとも自らが立てた『プラン』を早々に決行し地上界を混乱に陥れてしまうか考えていた。

 

「…あの戦いを視ながら何かを思案する。

当ててみせようかしら、魔法使いエミルと勇者ロマン達の妨害を更に続けるか、それとも貴方が魔王様に進言し許可を貰った計画を実行して地上界全てを混乱させようか…遊戯遊びが大好きな貴方が考えそうな事ね、アギラ?」

 

「む…おやおや、シエルにその唯一の部下3名様がいらっしゃるとは。

これは失礼、突然来訪されては茶菓子を用意出来なくてなぁ」

 

そのアギラの背後から転移魔法(ディメンションマジック)を使用し、以前アギラと会話していた魔族の少女、シエルが現れ、その背後には彼女の部下と呼ばれた赤髪の少年の魔族に青髪の少女の魔族、そして4人の中で最も背丈が高く、片目の瞼周りや頬等に斬り傷がある白髪の屈強な魔族が立っていた。

 

「それで、一体貴方は何を恐れているのかしら?

例え彼女達が脅威的になろうとも精々250が限界よ、それが『地上界の者達の限界ライン』よ。

ならば貴方が無駄に恐れる必要は無い筈よ?

 

「はっ、流石魔界1の剣士様は言う事が違うなぁ。

確かに、地上界の者共は『レベル250を現状は超えられない』。

だがその方法に気づいてしまったら?

その可能性に至る人物があの中に居るとしたら?

それを考えずに済むのは次元が違う化物の領域に立つ君らしい考えだよシエル!」

 

「アギラ、貴様シエル様に何たる態度を!」

 

シエルとアギラは地上界の者がレベル250を超えるか否か、その口論となりながらシエルはその可能性は薄いと話しながら、アギラは逆にエミルの魂の色を目撃している為その方法を知る可能性を指摘しつつ、シエルを化物と呼称しながらその可能性を考えない事を嗤いながら遠回しに能天気だとアギラはシエルを馬鹿にしていた。

それを聞き赤髪の少年が剣を引き抜こうとし、アギラもやる気かと挑発的な態度を取った。

 

「『ティターン』、止せ。

アギラも挑発が過ぎるぞ、少しその口を直せ。

それにお前が心配性ならばそれを私達が解消してやろうではないか?」

 

「…ほう、貴女から動くのは本当に珍しいですねぇ。

其処まで私が神経質になってしまったから謝るよ、シエル殿?」

 

シエルは赤髪に少年、ティターンを叱り付けると同時にアギラに対しても口が過ぎている事を指摘し、ティターンはシエルに謝罪の一礼をしながら矛を収める。

更にシエルは続けて自分達でアギラの懸念を確かめると話しながら戦いを覗き見し始める。

それに対してアギラはやや神経質気味になっていたとして謝罪しようとしていた。

 

「口先だけの言葉は必要無い、私達が結果を示してから何か言え」

 

「…アギラ、私『ティターニア』やティターン、『アザフィール』様、そしてシエル様が動く。

それで貴方の懸念が杞憂であるなら真に謝罪なさい、それが挑発をして来た対価」

 

そしてシエルはアギラの口先だけの謝罪を断り、自分達の行動で得られた結果を見て何か発言する事を求める。

更に自らを『ティターニア』と呼ぶ魔族の少女はティターンと屈強な魔族、『アザフィール』で動き杞憂で終わるならシエルに謝罪せよと口にしながらシエルと共に戦いを視る。

それをアギラは面白く無いと思いながらも、自身の手を汚さずシエル達が動くならと思いながら作り笑いを浮かべ、同じ様に戦闘を視るのであった。

 




此処までの閲覧ありがとうございました。
オリハルコンゴーレムと魔族との戦いを見て不穏な影をチラつかせるアギラとシエル達名あり魔族。
それらが絡み合った末の結末はまた次回に。

次回もよろしくお願い致します。


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第15話『誓いの翼、敗北する』

皆様こんにちはです、第15話目更新でございます。
今回は遂にタグの2つが機能し始めます。
そしてタイトルから…。
では、本編へどうぞ。


オリハルコンゴーレムを逆張りの結界で閉じ込め、双剣の魔族側に集中を始めるエミル達。

オリハルコンゴーレムは何度も結界を殴り破ろうと試みたり、双剣の魔族は絶技を使用し迫る。

それも、左右で違う属性の上位絶技で、である。

 

「『瀑水剣』、極雷剣‼︎」

 

「爆炎剣‼︎」

 

「絶氷剣‼︎」

 

魔族の水、雷の上位絶技に対してロマンは火、ルルは氷の上位絶技を使用し相殺し合いながら両者の威力はロマン達が弱かった為若干押され気味に距離が離れる。

 

「うぉりぁ‼︎

暴風斧‼︎」

 

「キッ‼︎

グググ…ッ‼︎」

 

その次にアルが飛び込み風の上位絶技を使用し、暴風を纏った斧で魔族を叩き割ろうとするが、魔族は双剣でガードし吹き飛ばされながらも態勢を崩さず地面に着地し、ロマンやアル達を睨み付ける。

そして距離が離れた瞬間を狙いサラとエミルが動き出す。

 

「『震撃弓』‼︎」

 

乱風束(バインドストーム)‼︎」

 

「っ、暴風剣、『震撃剣』‼︎」

 

地の上位絶技を使用した矢が地面に刺さり、その場所から魔族に対して突き進む地割れが発生し、更にエミルが風の最上級魔法を使用し、その動きを封じ込めようとしていた。

しかし魔族は風と土の上位絶技を使用し、先程の防御よりも相殺の道を選びサラの絶技とエミルの魔法、両者を相殺する。

 

「成る程、あの魔族は絶技を得意としている魔族の様ね。

私より強い攻撃魔法が使えるならさっさと使う筈なのに使わないのがその証拠…皆、奴に対して攻撃の手を緩めず戦って‼︎

傷の回復は私がしっかり果たすから‼︎」

 

エミルは先程から双剣の魔族が攻撃魔法を使わず、絶技を左右で違う属性の物に分けながら使う戦闘スタイルから敵は攻撃魔法は自身以下の威力しか無いと判断する。

それならばと攻撃の手を緩めず相手の攻撃数を上回れば単純に勝てるとしてロマン達前衛やサラに攻撃指示を出し、自身は回復魔法でダメージを抑えると全員に声を届かせた。

 

「分かった、エミル‼︎

それと、お前がさっきから見せてる物、使わせて貰う‼︎

光流波、暗黒破ぁ‼︎」

 

「猿真似が‼︎

我が技を下等な地上界のダークエルフ如きが使った事を後悔させてやる、暗黒破、光流波‼︎」

 

それを聞いたルルは目の前の双剣と言う戦闘スタイルが似た魔族が興味深い事………左右で違う属性の絶技を使い、此方に攻撃して来る事に思考をし、体内魔力を左右で持つミスリルダガーに送り込むと同時に別々の属性に変換、エミルが良くやる魔法連発の要領で魔族の技を盗み取り、光と闇の閃光が魔族に押し寄せる。

それに怒った魔族も同じ技で返し、暗黒破の方が押され気味になるが光流波は逆に押していた。

 

「何、何故光流波の方が押される⁉︎」

 

「そっか、魔族は闇属性が強くなる傾向があるってお父様が言ってたからミスリルダガーで使う属性を光と闇、完璧に相殺するなら対抗属性を使わなきゃいけないからルルはそれで絶技の選択をそれにしたんだ‼︎

なら私は相手の闇属性を押し返すのを手伝う、光流波‼︎」

 

魔族が自身の光属性の上位絶技がルルの闇属性の上位絶技に押されているのに驚く中、サラは賢王ロックから学んだ魔族の闇属性が強くなる傾向を口にし、ルルも少し後ろを向きながら頷いていた。

それ等を見聞きしたサラは魔族の闇属性絶技を押し返すべく光流波を使用、光の閃光を纏った矢がルルの光の閃光と重なり合い、其方も押し返し始めていた。

 

「チッ‼︎」

 

それを見た魔族は分が悪いと判断し技を中断、回避に専念し、2つの閃光を躱す。

その瞬間横からロマンとアルが飛び込み、既に極雷斧と絶氷剣を使用しており、既に振り被る寸前であった。

 

「絶氷剣、極雷剣‼︎」

 

しかし魔族は持ち前の反応速度から反属性の絶技を使い、2人を押し返し何とかダメージを受けない様に攻勢防御を行う。

しかし視線を少し外したのが魔族にとってのミスだった。

その視界を外した一瞬の隙にルルが死角から懐に潜り込み、攻撃準備を行なっていた。

 

「な、しま」

 

「爆炎剣‼︎」

 

【グサッ‼︎

ジュゥゥゥゥ‼︎】

 

そしてルルは鎧の隙間に爆炎剣を突き立て、その突き刺さられた部分から肉が焦げる音と臭いがし、明らかに直撃したと言う感触がルルのダガーに伝わる。

 

「ぐぁ、このぉ‼︎」

 

しかし魔族はその痛みに耐えながらルルを蹴り上げ、無理矢理ダガーを引き抜かせると直ぐに回復魔法(ライフマジック)を使用しダメージの回復を始めていた。

エミルは矢張りこの魔族の男は絶技を得意とし、魔法は支援以外は苦手なのだと判別し早速魔法を使う用意が出来ていた。

 

「先ず皆に回復魔法(ライフマジック)IVと身体強化(ボディバフ)IV‼︎

そして乱風束(バインドストーム)大水流(タイダルウェイブ)灼熱雨(マグマレイン)大地震(ガイアブレイク)‼︎」

 

「なっ、身体強化(ボディバフ)IV、結界魔法(シールドマジック)IV…ぐぉぉぉ⁉︎」

 

エミルは回復と強化を全員に掛けた後、エンシェントドラゴンを単独で沈めた時の様な最上級魔法連射を行い、魔族もそれに驚き強化と結界の魔法を張るが、2つの魔法の時点で魔族の結界は破られていた為それが4つになった時点で完全にダメージを防ぎ切れず防御態勢になりやり過ごすしか出来なかった。

そうして魔法連射が収まった直後、魔族は回復魔法(ライフマジック)を掛けながら突撃し始める。

 

「行かせねぇぜ、震撃斧‼︎」

 

「エミル達は、僕達が守る‼︎

爆炎剣‼︎」

 

「はぁぁぁぁ、瀑水剣、暴風剣‼︎」

 

「邪魔だ貴様等、絶氷剣、極雷剣‼︎」

 

その突撃はエミル達が狙いだとロマン達は判断し、3人で別々の絶技を使用し相手が属性による相殺を防ぎに掛かる。

すると魔族も属性相殺を諦め、双剣に氷と雷の上位絶技を使い、威力自体による相殺をするべく3人の武器と衝突し合う。

その結果は………拮抗だった。

 

「何ぃ、レベル200の我が双剣が、たかが180程度の連中に止められただとぉ…⁉︎」

 

魔族はレベル差がありながら止められた事を理解出来ずにいた。

しかし対するロマン達は3人で協力し合い、1人の魔族の双剣に挑み掛かる事で1人では止められずともこの誓いの翼(オースウイングズ)の3人ならば止められる事を証明してみせたのだ。

 

「ぐぅぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

 

「はぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「ふぅぅぅ、やぁ‼︎」

 

そしてアル、ルル、ロマンが力を込めて武器で押し返すと、魔族は驚愕の表情を見せながら吹き飛ばされ、地面に着時して改めて認識する。

この地上界の者達は将来的に、否、自分が負ければその熟練度元素(レベルポイント)を基に名無しの魔族が単体では間違い無く止められなくなる、それこそ自身は見た事無いが誓いの剣(オースブレード)達の様に。

 

「くそ、ならば尚更負けられん、魔族の将来の不安要素排除の為に、我が剣は折れる訳にはいかんのだぁぁぁぁ‼︎」

 

「負けられないのは僕達もだ‼︎

此処で負けたら僕達に期待を敷してくれた皆さんや、この仲間の皆を裏切る事になる…!

だから、僕は、僕達は負けられないんだ‼︎

少なくてもこの仲間の皆を守る為にも‼︎」

 

「そう言うこった、だからてめぇが此処で負けやがれ‼︎」

 

魔族は地上界の侵略完遂の障害となり得る誓いの翼(オースウイングズ)に脅威を感じ取り、此処で排除するべく死に物狂いで絶技を使い始め、ロマン達への攻撃を強める。

しかしロマン達もまた自分達に期待を寄せた者達やこの場に居る仲間達の為に負けられないと吠え、先ずロマンが盾と結界魔法(シールドマジック)の二重防御で絶技を防ぎながらアルやルルに攻撃のチャンスを与え、その間に自身もサラの矢と共に突撃する。

 

「オリハルコンゴーレムの結界がそろそろ壊れそうね。

なら張り直す、結界魔法(シールドマジック)V!

そして回復魔法(ライフマジック)IV、身体強化(ボディバフ)IV、極光破(ビッグバン)超重孔(ブラックホール)、『極氷結(コキュートス)』、極雷破(サンダーブラスト)‼︎」

 

其処にエミルが体内魔力回復用ポーションを飲みながらオリハルコンゴーレムの束縛、全員への支援、更に光と闇の最上級魔法と氷と雷の上級魔法を使い魔族の足を止めさせながら攻撃を加えて行く。

ロマンの吠えた事に自身も自身のやり方で応えようと思いながらも。

 

「其処よ、光波弓、爆炎弓、『絶氷弓』‼︎」

 

更に其処にサラが絶技の矢を連発しながら足が止まった魔族を射抜き、ダメージを蓄積させて行く。

1人1人が与えるダメージ少なくとも全員で与えれば魔族の回復量を上回る。

そして横に居る仲間達を信じ戦いを続けた。

この魔族が張った罠を完全に突破する為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの魔族はもうダメでしょうね。

魔法使いエミルと勇者ロマン達に確実に敗北する。

そして彼女達はレベル210まで一気にレベルアップするでしょうね」

 

「全く面白く無い………それで、どうやって私に彼女達がレベル250を超える可能性は無いと如何に証明する気なんだい?

『例の場所』すらライラが500年もの間、門を封印したが為に調査が遅れ破壊が出来ていないんだけど?

奴等が『深淵』を覗いたら如何する?」

 

その戦闘の様子を見ていたシエル、アギラ達は双剣の魔族は最早これまでと口にし、アギラはそれ等を面白く無いとまで口にし、その上でシエルに250を超える事は無いのは如何に証明するかを問い始める。

アギラが脳裏に浮かべる破壊したい場所も口にしながら不満を隠さずに話していた。

この不満は自らの策が上手く行かない事への苛立ちである。

 

「…そんな事は簡単だ。

あの5人の心を折る、圧倒的な実力の下に。

それで再起不能にする」

 

「へぇ…弱い奴は殺さない、但し戦場に出る価値無しで心は折るお優しいシエル様のやり方が見れる訳ですねぇ。

OK、それじゃあ奴等の心を存分にへし折って下さいな」

 

其処にシエルはエミル達の心を折りに行くと宣言し、それを聞いたアギラは魔界でも同じ様にこの4人に心を折られては戦意喪失した魔族は数知れずと言われており、それを生で見れる事に興味が湧き観察する事とした。

アギラは内心シエルを甘いと見下している。

彼女が甘いのか否かを此処で見極める為に早く双剣の魔族には死んで貰わないとすら考え、部下は消耗品と言う彼の身内にも冷酷な考えがその笑みから透けて見えるのであった。

 

 

 

 

 

「うおぉぉ、我が剣に貴様等を殺せと命じたアギラ様の為にも早く死ねぇ‼︎」

 

「何度だって言うよ、負けてたまるかぁ‼︎」

 

双剣の魔族は初めは絶技を以て互角以上に誓いの翼(オースウイングズ)達と戦っていたが、攻撃魔法を使わない事からエミルに狙い撃ちに晒されそれがダメージレースで魔族側が下回り始め、更にロマン達の前衛の粘り強さによりその攻撃が当たり始め、いよいよ以て魔族の勝ち目が薄くなり始めていた。

 

「く、くそ、アギラ様の為に負けられん、負けられんのに…貴様等は‼︎

下等な地上界の者共め、我が剣の前に斃れ伏せろ、爆炎剣‼︎

暴風剣‼︎」

 

「爆炎剣、震撃剣‼︎

ぐっ…ロマンもアル達も言ってる、こんな所で負けていられないと‼︎

なら私も、仲間の為にこの武器を手放さない‼︎」

 

魔族は焦り始めながら技の繊細さを欠いて行き力任せに絶技を振い始めた。

其処にルルが反属性の絶技で割り込み、力では負けながらもエミルの身体強化(ボディバフ)IVでそれ等を補いながら仲間の為にと武器を捨てず、勝つ気で絶技を振るっていた。

其処にアル、ロマンが再び来るのを察知した魔族は距離を置き態勢を立て直そうとする。

 

大熱砲(フレアブラスト)、『暴水撃(アクアランページ)』、『嵐気流(ストレイトタイフーン)』、『岩石群(ロッククロード)』、星珖波(スターバースト)、『暗黒撃(ダークバースト)』、極雷破(サンダーブラスト)極氷結(コキュートス)‼︎」

 

「な、ぐあ⁉︎」

 

【ドォォォン‼︎】

 

其処にエミルが隙を逃さないとして、足止め用に全属性の上級魔法を連射し爆炎が上がる。

しかし最上級では無いとは言え、足止め用とは思えぬ威力に魔族は結界魔法(シールドマジック)が間に合わずただ撃たれ放題と化しエミルの狙い通り足が止まる。

更に防御態勢と爆煙で魔族の視界は0になり、急いで透視(クリアアイ)を使わねばならなかったが、エミルの魔法連射がそれを許さなかった。

 

「光波流‼︎」

 

「グホッ‼︎」

 

其処にサラの光を纏った矢が放たれ、魔族の鎧毎腹を貫き青い血を吐血する。

更にそれを合図にルルが爆煙の中に飛び込み、左には風、右には炎の上位絶技を纏わせ鎧の間に刃を通した。

 

「がぁぁぁぁ‼︎」

 

体内に風が吹き荒れ、その風が炎を強め体内を焼き始めながらルルは刃を滑らせ、腹を斬り裂き鎧の間を縫って身体を斬り裂くと身軽な身体を直ぐに後退させる。

其処に詰めのアルとロマンが突撃し剣と斧を振りかぶっていた。

 

「極雷剣‼︎」

 

「震撃斧‼︎」

 

ロマンの極雷を纏った剣と土の絶技により大地を割る斧がそれぞれ魔族を一閃し、双剣の魔族は魔法等で傷付いた鎧を肉体毎完全に斬られてしまう。

そして青い鮮血を噴き出しながら額の魔血晶(デモンズクリスタル)もアルの斧で砕かれてしまいその生命を絶たれてしまった。

 

「アギラ…様…」

 

最期にアギラの名を呼ぶと双剣の魔族は青い炎が噴き上がり、倒れながらその身を焼き尽くされ地面に倒れる頃には灰になり残ったのは破壊された鎧と傷つき始めていた双剣であった。

そして残るはオリハルコンゴーレムだけとなり、エミルは観察眼(アナライズ)でレベルがそれぞれロマンとルルが212、アルが214、サラが210となり、ロマン達も更に力が増し今ならオリハルコンゴーレムを倒せる確信を持つに至った。

 

「へっ、俺様でも分かるぜ。

今の魔族を斃したお陰で今も結界をぶっ壊そうと暴れてるオリハルコンゴーレムを倒せるってな‼︎」

 

「ええ、皆レベル210を突破したからね。

さあ、残りはあのゴーレムを皆で倒してセレンに帰るわよ‼︎」

 

アルも自らの力が先程と比べ物にならない事を自覚し、それをエミルが全員のレベルが210オーバーを果たしたからだと説明する。

そして残るオリハルコンゴーレムを倒し、依頼を果たして帰るだけとなり全員で気合を入れ直しターゲットを見据えた。

…そう、此処まではただ依頼を達成するだけであった。

イレギュラーが発生するまでは。

 

「…『焔震撃(マグマブレイク)』」

 

【ドォォォォォォッ】

 

『うあぁっ‼︎』

 

突如としてオリハルコンゴーレムの足下からエミル達の目の前までの間を大地震(ガイアブレイク)に火属性をそのまま追加した様な魔法が炸裂し、そのエミルの魔法を上回る爆煙を起こす威力にロマン達は吹き飛ばされそうになりながらも何とかその場に立つ事を維持し、目の前で何が起きたのかを把握しようとした。

 

「な、何が起きたの今⁉︎」

 

「まるで灼熱雨(マグマレイン)大地震(ガイアブレイク)をそのまま足した様な魔法が炸裂したのは確かだ‼︎

おいエミル、今のは何なのか知らないか⁉︎」

 

「今のは…『複合属性魔法』………2つの属性を掛け合わせて発動する超高等魔法…。

でも、あれはコントロールが難しいから使える者が限られる物の筈…なのに何故…⁉︎」

 

サラが狼狽え、アルがエミルに何かを知らないかと問う中、本人は複合属性魔法と呟き、独り言をブツブツと口にしながら状況を飲み込もうと必死だった。

何故なら複合属性魔法は、過去の自分(ライラ)がレベル250になり漸く安定して使える様になった最上級魔法を上回る威力とコントロールが困難な魔法であるからだ。

それを使ったのは何者かと思い周りを見渡す。

すると視線が自然と自分達の頭上付近の上空に向き、それを見つけてしまった。

 

「エミル、何を見て………なっ…」

 

「…魔族、それも4人も…⁉︎」

 

ルルやロマン、サラとアルもその視線の先を見ると上空に魔族の男女が4人其処に居り、そして自分達に気が付いたエミル達を見て焔震撃(マグマブレイク)でボロボロになった地面に降り立ち、更に背後にあるオリハルコンゴーレムの『残骸』を魔族の少年が見て口を開き始めた。

 

「流石オリハルコン、アザフィールの旦那の魔法を受けても尚も原型を止めてるか」

 

「そうじゃ無いとミスリルを超えるとは言わないよ、ティターン」

 

「ま、だよなティターニア」

 

ティターンと呼ばれた魔族はオリハルコンの硬さに太鼓判を出し視線を明らかにエミル達から外し隙だらけの様子を見せ、ティターニアと言う少女魔族もまたティターンに話し掛けていた。

この隙だらけの様子に本来ならアルが真っ先に突撃する筈であった。

しかし………誓いの翼(オースウイングズ)の全員がその魔族達から放たれる威圧感に押し潰されそうになり、動けない状態と化していた。

 

「(ち、畜生が!

このアル様が…震えてるだと⁉︎

何だ、この魔族共は⁉︎

名ありの魔族だからレベル220は突破してる筈だが、これはそんなレベルじゃねぇぞ⁉︎)」

 

「(やだ…怖い…何なの、この魔族達…⁉︎)」

 

先ずアルとサラが頭の中で危険信号が鳴り響き、動けない所か恐怖すら感じ取り視線を外さずとも防御と逃亡を出来る姿勢を自然と、無意識に取ってしまい完全に飲まれてしまっていた。

 

「(名あり魔族…しかもあのティターンとティターニアもそうだけど、他の2人私達より遥か上に居る魔族だ…⁉︎

こんな化物が存在するなんて…‼︎)」

 

「(こ、攻撃したら駄目だ‼︎

盾を、盾を使って皆を守らないと…‼︎)」

 

次にルルがティターン達が今の自分達より強く、他の2人…恐らく屈強で傷有りの魔族がアザフィールであり、彼等の中心に居る銀髪の魔族の少女が明らかに別格であり、ルルも化物と感じてしまう者が目の前に存在し、予知が引っ切り無しに発動し、迂闊に戦えば死ぬしか無い未来が脳裏に焼き付けられる。

そしてロマンも攻撃したら駄目だと本能的に察し、盾を身構えながら全員の1番前に出ていた。

 

「ほう、攻撃してはならぬと感じ盾を身構えながら仲間を守ろうとするその心意気、流石は勇者と言えよう。

このアザフィール、貴殿の勇気に免じてこの1撃を防げば見逃してやると約束しよう…防げれば、の話だがな」

 

「アザフィール、勝手に話を進めるな。

お前の武人としての心意気は関心するが、私の許可無く決めるな。

…だが、心を折るなら1撃で全てを決するのも有りだな」

 

「ではシエル様、私は行きますぞ」

 

そしてアザフィールはロマンの剣では無く盾を身構える行動に分を弁えてる事や仲間を見捨てず守る心意気を感じ取り背中に背負った大剣を身構え、絶技の構えを取る。

其処にシエルと呼ばれた4人組の魔族のリーダー格はアザフィールの行動について様々な考えを持ったが、最終的に1撃で全てを決する事で相手を折るのも有りだとしてエミル達を見ながらアザフィールを前に出した。

 

「お、おいエミル、奴等のレベルは⁉︎

奴等のレベルは何なんだ⁉︎」

 

其処にアルがエミル対して観察眼(アナライズ)で見ているレベルは何なのかと叫び、彼女の口からそれを聞こうとしていた。

だが…エミルはシエル達と対面してから常に視線を外せず、異常な量の汗や呼吸を繰り返し、過去の自分(ライラ)も遭遇した事の無い前代未聞のレベル差に絶望的な何かさえ感じ取りながら、レベルを口にし始めた。

 

「はぁ、はぁ…ティターニアが1番低くて280、ティターンが290。

あの大剣の持ち主、アザフィールが…350………そしてあのシエルって魔族は………450よ………‼︎」

 

「…何ぃ…⁉︎」

 

アルはエミルから語られた1番レベルが低いティターニアの時点で280、今攻撃してこようとして来るアザフィールがレベルが350、そしてシエルが450だと聞かされ、アルもただ一言、絶望が支配するレベル差を全員が耳にしてしまい攻撃してはならない、逃げなければ死ぬと確信してしまう。

 

「では参る、死なぬ様に防げよ?

ふぅぅぅぅ…『爆震剣』‼︎」

 

【ズガァァァァァ‼︎】

 

アザフィールは絶技、それも先程の複合属性魔法と同じく『複合属性絶技』を使用し、魔力が異常に収束した大剣を荒野に振り下ろす。

その大剣から発生した爆炎が地を揺らし、割りながらエミル達の下に迫っていた。

 

『っ、結界魔法(シールドマジック)IV‼︎』

 

それを見たエミル、ロマンは結界魔法(シールドマジック)IVを発動し、更にロマンに至っては盾を身構えながら魔法を発動し三重防御を敷きアザフィールの一撃をガードしようとしていた。

そして先ずはエミルの結界にアザフィールの1撃が接触し………結界はあっさりと破られてしまいロマンの結界も当然破壊され、そしてミスリルシールドに爆震剣が接触した。

 

【ドガァァァァァァ‼︎】

 

『うわぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

その瞬間、余りの威力と余波により全員が吹き飛ばされ、地面に全員が転がりながら倒れ、特にこの中で体力があるアルも気絶し、ミスリルシールドを持ったロマンは更に大きく飛ばされてしまい宙を舞ってしまっていた。

 

「っ、ロマン…君…‼︎」

 

そして1番後列に居たエミルはロマンが地面に叩き付けられない様に風の魔法で落下速度を緩和し、ゆっくりと地面に降り立たせる。

そのロマンの状態は盾は二重の結界が功を奏したのか破壊されていないが、1番前で攻撃を受けた為特にボロボロになっており、誰が見ても瀕死の状態だった。

「くっ…回復魔法(ライフマジック)…IV…!」

 

エミルは直ぐ様全員に回復魔法(ライフマジック)IVを掛け、中には呼吸が絶えそうな者も居た為体力や傷を回復させてその生命を繋ぎ止めようとした。

 

『ゴホッ、ゴホッ!』

 

すると全員息を吹き返し、呼吸が安定しこれ以上余計な攻撃を受けなければ何とか生き延びる事が可能だとエミルは思っていた。

だが、それと同時にある事さえ感じていた。

 

「(…か、勝てない…過去の自分(ライラ)の時と同じ力を得ても勝てない…これだから、前世超えをしようって決めたのに…‼︎)」

 

エミルはハッキリと勝てないと確信し、例え前世の最高レベル250に達してもこの4人には勝てない。

魔王討伐、その前に立ちはだかった大きな壁………その大きさにエミルは500年後の世界で初めて、前世で散々味わい2度としたく無いと思っていた挫折をしてしまう。

 

「ふむ………死なない様に打った技だから別段気にもしないのだが、まさか魔法使いだけが意識を保つとは情け無い。

うん、いや、これは………。

…ふむ、ではこのアザフィールの剣を受けて生き延びた事を素直に喜ぶが良い。

約束通り見逃してやる」

 

「………」

 

更にアザフィールは当然ながら手加減していた事を知り、エミルは無言で杖を置き後は成り行きに任せるしか出来なかった。

しかし、エミルは転んでもただでは起きない質の為念話傍受魔法(インターセプション)を発動し相手の念話を聞き出そうとしていた。

 

[アギラ、全員に我々魔族の真の力と言う物を見せ、骨の髄まで染み込ませたわ。

そして私から言える事は1つ、矢張り彼女達はレベル250より上に行く事は無いわ。

と言う事で例の場所をさっさと探しなさい、その為に10年以上前から潜んで活動したのだろう?]

 

[ふぅ〜ん…まぁ、君が言うなら私が臆し過ぎただけかも知れないな。

ならばお言葉に甘えて『楔の泉』を探させて貰うよ。

そのついでに、地上界も混乱に陥れるとしよう]

 

シエルは如何やらエミル達に自分達の力を見せ付ける為に態々出向き、そしてアザフィールが1撃を加えた事をアギラとの念話を傍受しているエミルは知る。

更にアギラ側は『楔の泉』なる場所を探しており、其処を破壊する事を目的とエミルは理解するが、それが何を意味するか分からずにいた。

 

[…アギラは行った様だ。

お前達、我々も戻るぞ。

…ああそうだ、魔法使いエミル。

我々の念話を傍受しているのは分かっているぞ?

だから黙って聞いていると良い、一言でも話せば命は無いぞ、全員]

 

「(な、バレてる…⁉︎)」

 

シエルはアギラが何処かに転移したのを確認すると他の3人と共にその場を去ろうとした…が、再びエミルに顔を向け、念話を傍受しているのを把握しながらアザフィール達と念話を続けエミルを驚愕させながら更に念話を続ける。

 

[何故念話を傍受してるのが分かったか?

単純だ、我々魔族は魂の色が視える、故に貴様があのライラの転生体だと把握し、我々魔族の念話に何の対策をしていないと私は思ってるからだ。

まぁそんな事より、楔の泉について話そう。

楔の泉は門の機能を制限し、『魔王』様が地上界に来れぬ様にする為の正に楔だ。

神が魔界と地上界の争いを一方的な虐殺にせね様講じた安全策と言える。

全部で3箇所ある]

 

シエルはエミルがライラの転生体である事すら見抜き、その理由を明かしながら楔の泉について説明を始め、その性質は魔王が地上界に来られぬ様にする安全策と呼んでいた。

しかし、その説明の仕方にエミルは違和感を持った。

まるで『神が魔界と地上界の争いを望む』かの様な物言いであった。

 

[魔族はそれを探していた、500年前も。

しかし神の隠し方は上手く、結果お前達地上界に反撃を許され500年も門を封じられてしまった。

故に魔界側は今度こそ楔の泉を破壊すべく地上界の限界レベルである250より上の魔族を派兵したのだ。

我々4人はその内の者だ]

 

シエルはこの場を支配する語り部として500年前の戦いも同じく楔の泉を破壊する為に魔界は地上界を攻めていたと話すが、500年前にはレベル250を上回る敵など存在しなかった。

つまりは、誓いの剣(オースブレード)がレベル250に到達したのが想定外だったらしく、その想定外を此度は無くす為にレベル250を上回る魔族が来たのだと言う。

 

[だからこそ言おう、此度の戦いは地上界に勝ち目は無い。

…そう、貴様達地上界の者達の『限界レベルが250である』限り。

そうはなりたくなければ『壁を破れ』、でなければアギラの様な小悪党が跋扈する事になるぞ]

 

「(…レベル250の…壁…?)」

 

シエルは3人の部下と念話をしている内に地上界に勝ち目は無いと話す。

しかしその内容は敵に塩を送る様な物言いで地上界の者には限界レベルがあり、それが誓いの剣(オースブレード)が到達した250だと言い放ち、その壁を破らなければアギラの様な者が好き勝手する世になるとさえ告げていた。

しかしエミルはダメージで深く考える事が出来ず徐々に意識を失い始めていた。

 

[では我等は行く。

…壁の破り方のヒントは魔力一体論にあり、アレスターはそれを察したから消された。

ならばお前達も魔力を辿りその深淵を覗くと良い。

尤も、悠長なレベリングをしている時間は無いから直ぐにでも壁を破る事が出来なければ地上界は終わりだ]

 

更にシエルは壁の破り方のヒントとして魔力一体論を口にし、アレスターの名すら出して魔力の深淵を覗く様にと話す。

更に悠長な時間は無く、それが出来なければ地上界は終わると一方的な勝利宣言をエミルに投げ掛ける。

 

「(この魔族、何を言って…駄目…意識が…]

 

[其処のアザフィールの剣を受けて未だ生きている勇気ある勇者や仲間達にも伝えると良い、神剣探しは中止して目の前の魔族共を如何にかする方が先だとな]

 

そうしてシエルはエミルが気絶する直前、アザフィールの1撃を受けて死ななかったロマンやサラ達にも神剣探しは中止、魔族の方を如何にかしろとまるで警告の様な物言いで転移魔法(ディメンションマジック)を使いエミルの前から何処かへと去って行く。

それと同時に、エミルもまた意識を失い後に残ったのはアザフィールが1撃で屠ったオリハルコンゴーレムの残骸と魔族の双剣と鎧の一部、そしてエミル達誓いの翼(オースウイングズ)の5人だけであった…。

 




此処までの閲覧ありがとうございました。
半チート主人公エミルやその仲間達を超えるライバル組である魔族シエル組が動きました。
それによりエミル達は初敗北となりました、それも念話傍受すら見切られての。
それから今回登場した複合属性の魔法と絶技について説明を。
複合属性は反属性では無く組み合わせられる属性同士を組み合わせ使う単体の魔法や絶技を上回る威力を持つ物です。
しかしコントロールが難しく、ライラやリリアナ位しか使えなかった為現代では忘れ去られた物になります。
因みに雷は光、氷は闇としか組み合わせが出来ません、そして複合属性魔法&絶技は1つの組み合わせに1個ずつ存在します。

此処までの閲覧ありがとうございました。


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第16話『誓いの翼、行動転換する』

皆様おはようございます、第16話目更新でございます。
今回から少しずつエミルにも変化が…?

では、本編へどうぞ。


「爆震剣‼︎」

 

『っ、結界魔法(シールドマジック)IV‼︎』

 

アザフィールの放った1撃がエミル達に迫り、エミルとロマンは共に結界魔法(シールドマジック)IVを張り、更にロマンは盾を構えその1撃を防御しようとする。

 

【ドガァァァァァァ‼︎】

 

『うわぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

だが…結界は触れた瞬間から破られ、更にロマンの盾に直撃した瞬間炸裂し、全員吹き飛ばされ、特にロマンは宙を舞ってしまう。

 

「っ、ロマン…君…‼︎」

 

其処に意識の残っていたエミルはロマンに風の魔法を使い衝撃を和らげ、ゆっくりと地面に降ろしそれから回復魔法の準備に入る。

 

「くっ…回復魔法(ライフマジック)…IV…!」

 

そしてロマンやサラ達に回復魔法(ライフマジック)を掛け、全員の傷を治そうとした。

だが………傷は回復すれど、全員が息を吹き返す事は無かった。

 

「…え…あ………」

 

この瞬間、エミルは嫌でも理解してしまう。

500年前に誓いの剣(オースブレード)と共に戦った冒険者、教え子達、そして現代ではアレスター。

それ等と同じ末路に…死と言う絶望の闇の中へと叩き込まれたのだと。

 

「分かったか魔法使いエミル、いやライラ。

これがお前達地上界の者達の限界だ。

これで魔王討伐を謳うなど愚かな考えを持ったからだ」

 

其処にアザフィールの後ろに待機していたシエルが前へと進み始めエミル、否、ライラに対し地上界の者の限界と魔王討伐が如何に愚かであったかを話し始める。

それも、死に去った仲間達やいつの間にか周りに居る自分が良く知る者達の死体を指差しながら。

 

「あ………あぁ………」

 

「その結果がこれだ。

良いか、お前に惑わされた者達は我々の手で死んだ。

つまりは…」

 

そしてシエルはエミルの前に立ちその顔を見下しながら侮蔑の目を向け、絶望の言葉を彼女に投げ掛け始めた。

 

「全てお前が招いた結果だ。

魔法使いライラ、お前は自身の愚かさを見ずに突き進んだからこそ死なずに済んだ者も死なせた。

偽善者にして愚者のライラ、人を騙すのが得意なお前に付いて来てしまったからこの結末がある。

それを胸に刻み、我等魔族が地上界を支配する様を見届けるが良い」

 

シエルはそのままライラに絶望の言葉を送るとその場から去って行き、更に空が暗雲に包まれ門のある方角から巨大な闇の柱が立ち上る。

その中から『何か』が現れ、地上界に数多の魔法を放ち地上界を一気に荒廃させてしまう。

 

「いや…いや…」

 

そして地上界が滅ぼされ絶望の淵に立つライラに『何か』は目を付け、ただ1人生き残っていた彼女にも自身とは比べ物にならない、強大で凶悪な魔法を放つのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

その魔法が当たる瞬間ライラ、否、エミルは飛び跳ねる様に身体を起こし、嫌な汗を流しながら洗い呼吸をしながら周りを見るのであった。

 

「…今のは…夢…?」

 

エミルは見知らぬ部屋、汗に濡れたシーツとベッド、そして包帯巻きにされた自身の身体を見ながら先程見た物は夢だと自覚する。

しかし…アレが現実に起きてしまうと。

そう思うと恐怖が支配し身体が震え始める。

更に自分がこんな見知らぬ部屋に居るならロマン達は?

そう感じながらベッドから動こうとした。

 

【バタン!】

 

「エミル、如何したの⁉︎

大丈夫⁉︎」

 

「あ…ロマン君、皆…」

 

その瞬間、部屋のドアが勢い良く開き、其処からロマンやサラ達が同じく包帯を巻かれながらへやに雪崩れ込み始め、エミルの状態を見に来ていた。

 

「あ、エミル目が覚めたんだ…良かったぁ………」

 

「ロマン君…サラ…ルル…アル…目を覚ました………あっ!」

 

エミルの様子を見に来た仲間達は彼女の様子を見るとサラとルルが泣き出し、アルが一息吐き、ロマンが近付いて来た後手を握りながら良かったと呟き顔を俯せる。

それ等を見てエミルはゆっくりと記憶を呼び起こすと、アザフィールの1撃を受けてから全員を回復させ、そしてシエルの念話を聴いてから気絶した事を思い出す。

 

「思い出した様だな。

そうさ、俺様達は負けちまったんだよ、あの4人組の魔族、しかもその中のたった1人の1撃を以てな」

 

「でも、皆生きてて良かったよぉ〜…‼︎」

 

アルはエミルの様子を見て改めて自分達は完敗したのだと話し深刻そうな表情を浮かべていた。

対するサラは全員が無事に生きていて良かったと泣き膝を突いていた。

 

「…皆、此処は?」

 

「…セレンの、酒飲亭の…宿泊室、です…」

 

「俺様達が気絶した後、ロマンの奴が気絶したフリをして息を殺し、奴等が去るのを待ってたらしい。

そして奴等が転移したのを見ると全員を馬車まで運び、セレンまで戻って来て訳を話して部屋を緊急で借りたって訳さ。

因みに依頼だが、坑道自体は使用可能になったからどんな形であれ成功だとよ」

 

エミルはこの場所は何処かと聞くとルルとアルが此処はセレンの酒飲亭の宿泊室であり、如何やらロマンが気絶したフリと言う危ない橋を渡り、シエル達が去った後全員を馬車を乗せ、セレンの酒飲亭まで運び今に至ると言う。

更に依頼は坑道が使える様になっていた為成功と見做された様であった。

 

「…そう…皆生きてる…良かったぁ…」

 

「エミル…」

 

エミルそれらを聞き漸く自分達全員が無事に生きている事を再確認し、俯きながら泣き出すとロマンは今までの自信家のエミルでは無い、普通の少女のエミルを見てあの魔族達との遭遇は最早彼女の手に負える様な物では無かったのだと改めて感じ取る。

サラ達も同様の感想を抱き、本当に自分達が生きているのが不思議でならなかった。

 

「エミル…兎に角僕達は生き残ったんだよ。

だから今日はもうゆっくり休んで、明日からまた如何するか話し合おう。

皆もそれで良いよね?」

 

「…おう」

 

ロマンはエミルの様子を見ながら、全員に今日はゆっくり休み、明日に行動方針を如何するかを検討する事を提案すると、アルやサラ、ルルは同意して自室へと戻って行った。

その時の部屋から去る目はエミルが奮起するのを信じる瞳であり、最後まで残ったロマンもゆっくりと手を離し、最後に「信じてるから」と励ましの言葉を投げ掛け部屋から立ち去って行った。

 

「うぅ………っ………!」

 

その部屋に残されたエミルは完膚無きまでの敗北を静かに受け入れ、自身の想定が如何に甘かったかを思い知らされながら再びベッドの横になり夜通し涙を流すのであった。

魔族シエルに現実で言われた事、悪夢で投げ掛けられた事をその胸に刻みながら………。

 

 

 

 

 

エミル達が意識を取り戻していた頃のとある場所、其処にアギラが既にテーブルを用意し茶菓子も丁寧に自身を入れて3人分用意してると其処にもう1人の男の魔族、更に魔族シエルが転移して現れ用意された椅子に座り茶菓子に手をつける。

 

「シエルと『ダイズ』も揃った様だね。

ではこれより第3回『魔王幹部三人衆』の会議を始めようと」

 

「誰が貴様如きと同列だアギラ、所詮は姑息な手段で成り上がっただけの者が、俺とシエルを同列に扱うのは反吐が出る!」

 

「ダイズの言う事も最もだ。

アギラ、楔の泉を満足に探せないお前と『魔王』様降臨の下地作りを行うダイズ、そして大局を見極め一方に力を貸す私達を同列にされては折角の茶菓子も不味くなる」

 

アギラは魔王幹部三人衆と言う括りでシエル、更にダイズと呼ばれた魔族を同列扱いに呼ぶと2人から反発があり、何方もアギラを姑息な手段で成り上がった為気に食わないと言う共通理由と、シエルに至ってはまともに指名達成出来ていないアギラを見下しこの反発を起こしていた。

 

「んん〜…とは言う物も、楔の泉は我々魔族の眼には只の泉にしか映らず、確証があってこれだ、と言う決め撃ちが出来ずまだ発見出来ないのが現実なのだけどね。

私の使命に2人が協力的ならそれも捗るんだけどね…特にシエル、君には楔の泉に反応する『魔剣』の正統所有者なのだから」

 

「『魔王』様はそれぞれ出来る使命を与えて我々を派兵した。

それを他の使命を与えられた私やダイズの責任と呼ぶのは些か可笑しくは無いか?

魔界1の策士のアギラ『殿』?」

 

対するアギラはダイズとシエルの両名が協力的なら指名達成が可能であり、更にシエルに対しては楔の泉を探知する事が可能な『魔剣』を所持する者と呟くが、シエルはそれを一蹴し自らの手で使命を達成出来ず他の者に当たるのは可笑しいとしながらアギラを侮蔑する目で見つめていた。

アギラはその2人の言動に手に血管を浮かせ魔力を放出し掛かるが、直ぐに収めて溜め息を吐いた。

 

「…ふう、分かりましたよ。

楔の泉探索は私が最後まで行いましょう。

幸いにして1個には当たりを付けました、其処を皮切りに残る2箇所をこの手で破壊しましょう。

では、用意した茶菓子を堪能したらお帰り下さいませ、ダイズ様にシエル様?」

 

アギラは自分の言い分が通らない事を悟ると楔の泉探索は自身の派閥が最後までやると宣言し、更に1箇所は当たりを付けたと話した後アギラは転移して後にはダイズとシエルの2人が残されるのみだった。

 

「ふん、下らない策に溺れる小物が…。

それでシエル。

魔法使いエミル、いやライラの転生体に関しては如何だった?」

 

「アザフィールが勝手に1撃を耐えたら見逃すと宣告したのでな。

そしてあの中で意識を保ったのはエミルと今代の勇者ロマンだけだったよ。

その中でエミルは念話傍受、ロマンは気絶したフリをして我々が去るのをジッと待っていたよ。

片や期待通りに動き片や無謀と勇気を履き違えない弱気な者からは想像出来ない勇気を持つ者だ」

 

アギラが去った後、紅茶に手を付けながらシエルに三者三様に気に掛けるエミル達の話を振ると、シエルはエミルは期待通りとし、ロマンは想像以上の無謀と勇気を履き違えない者と称し、紅茶を飲みながら2人のスタンスの違いや其処から生まれる物について想像していた。

 

「ほうアザフィール殿の…。

俺やシエル、我等が師の1撃を受け切るとは、勇者達には『期待』が持てそうだ…」

 

「それは狂戦士(バトルマニア)としてのお前か、それとも私と『盟約』を結んだダイズと言う魔族としてか?」

 

「無論、何方も」

 

ダイズはかつての自身やシエルの師アザフィールの1撃を受けて生きてる誓いの翼(オースウイングズ)達に狂戦士(バトルマニア)としての顔とアギラが知らないシエルと極秘の『盟約』を結んだダイズとしての顔、両方で『期待』を寄せながら茶菓子を口にし切り、両者も席を立ち転移する。

シエルはアギラとダイズの両者を取り持ちつつ少数精鋭で支援、ダイズはアギラとはまた別の使命を帯びながら。

そしてその場には紅茶の残り香しか存在しなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エミルは夜通し泣き続けてから朝を迎え、こんな様子を仲間に未だ見せる訳にも行かない為涙を拭き、装備を整え包帯を巻かれた身体をゆっくり動かしながら全員のための椅子とテーブル、紅茶をキーラに部屋に用意して貰い、再びベッドに戻りながら色々と思い出していた。

すると部屋のドアが開き、紅茶を飲みながら様子を見るとロマン達は同じタイミングで1部屋へと入って来る。

 

「あ、エミル!

もう具合とかは良いの?」

 

「ロマン君に皆、おはよう!

昨日あの後寝たらスッキリしたからね!

さっ、早く座って座って!」

 

エミルの姿を確認したロマンが真っ先に駆け寄ると、彼女は夜通し泣いたのを隠し寝たから大丈夫と言い張り全員に座る様に促した。

だがロマンやサラ達はそれが空元気だと直ぐに解る。

何故ならその目元には涙の跡がくっきりと残っていた為であった。

しかしそれを指摘しエミルの空元気を崩し今の彼女を折る訳には行かず、全員頷き椅子に着く。

そしてエミルは早速盗聴防止魔法(カーム)を使い話を始める。

 

「さて、皆集まった訳だけど…ぶっちゃけあの魔族達の存在は想定外も良い所だったわ」

 

「ギルド協会のキーラさんに報告したら震え上がってたもんね〜。

何、レベル350と450って?

私達が相手していた連中が可愛く見えるヤバヤバのヤバめって感じだったよね〜」

 

「…あの魔族の4人組、将来的に如何にかしないとならないからアレのレベルまで追い付くのは必至ね」

 

話で早速エミルはシエル達4人の魔族、特にサラが言う様にアザフィールとシエルが規格化レベルの極みである為かルルもフードを人前で珍しく取り、深刻な表情でシエル達に追い付く事は必要だと進言する。

 

「だがあんな奴等が居たんじゃ悠長にレベル上げなんかしてる余裕はあるのか?

エミル、其処は如何なんだ?」

 

「それがね、あの連中目の前の魔族を如何にかしろとかどうのこうの念話で言ってたんだよね、思い出してみると。

悠長にしてる暇は無いのは間違いないけど」

 

アルは付け加えてシエル達の存在は正に悠長な旅をしながらレベルアップを図ってる暇は無いとエミルに話し、何か無いかと聞くとエミルはシエルに言い放たれた事全てを夜通しで思い出し、その内容を話そうとしていた。

アルの悠長にしてると言う部分に同意しながら。

 

「えっ、エミルあんな状況で念話傍受魔法(インターセプション)を使ってたの⁉︎

なんて無茶な…いや、魔族の魔法相殺したり新しい魔法作ったりで無茶苦茶やってるから今更だけど、僕より危ない事をしてるじゃないか!」

 

「私の信条は無茶はしても無理はするなだからね、彼処まで盛大に転ばされて何もしないのは魔族に屈した事を意味したから意地でも情報を抜こうと思ったのよ。

ただ向こうも念話傍受をしてる事を看破して来たけど」

 

『なっ⁉︎』

 

ロマンはエミルの念話傍受を自身の気絶したフリよりも危ない橋を渡り過ぎている事を話し、此処に来てロマンが火を吹きエミルの無謀に近い行動を咎めていると、エミルも真剣な表情で魔族にやられっぱなしは信条に反する為にやったと反論をした。

その上でシエル達に念話傍受まで看破されていた事を話しロマン達は驚愕していた。

あのエミルを4人組の魔族は完全に出し抜いてしまってたのだと。

そしてあのエミルが彼女達の掌の上でただ転がされていた事を。

 

「其処まで看破されやがったのか…⁉︎

それで、その後は如何なったんだ⁉︎」

 

「如何なったも何もこの通りになったわアル。

ただ、あっちは何が目的かオリハルコンゴーレムを仕掛けた奴の上に居るアギラが何処かに行ったのを確認してから念話でこっちが傍受してるのは分かってるから黙って聞け、じゃないと全員殺すって言われたわ。

…本当に完敗よ、こっちの手を完全に読まれ切ったんだから」

 

アルが先ず口火を切ってその後の経緯を聞くと、エミルは向こうの目的が分からず終いな上に念話傍受を知りながらアギラ側に伝えず、その上で黙って聞く様にとアザフィール達との間の念話で言われてしまいエミルをして完敗だと言わしめていた。

 

「…それで、あのシエルって魔族は何を念話で漏らしたの?

黙って聞いてろって言われて、目の前の魔族を何とかしろって言われたなら他にも色々言われたんじゃないの?」

 

その直後にサラからエミルに質問が為され、シエルがエミルに対して漏らした事が他にあるのではと問い質し始める。

するとエミルはシエル達の事を考えながら少々不機嫌そうに話し始める。

 

「鋭いねサラ。

ええ、あのシエルって魔族達は向こう側の重要そうな情報………楔の泉、って呼ばれる物を探してるだとか、地上界の者はレベル250が限界レベルだからそれを超えろとか訳の分からない、情報漏洩を敢えてして来たわ。

それから、神剣探しは中止して目の前の魔族をってね」

 

エミルが話した内容にロマンやサラ達はあの4人組はわざと情報を漏らしたのかと思う程魔族側の動きを話し、更に地上界の者達の限界レベルと言う自分達地上界の者が知らない様な事まで話し、その上で神剣探しは中止して魔族に集中せよと言う警告すら出し何がしたいのか不明な点が多過ぎた。

 

「…何か、不明瞭な事ばかりで分からなさ過ぎるのですか…楔の泉とは一体?」

 

「シエル曰く、地上界に3箇所あって魔王が門から出られない様にする楔。

500年前から魔族が探す物、神が用意した魔界と地上界の争いを一方の虐殺にしない為の措置、だとか訳の分からない事を言っていたけど、重要なのは魔王がその楔の泉で魔界から出られないって事ね」

 

「…神様が、用意した…」

 

ルルは考え込む様にしながらエミルに楔の泉の詳細を聞くと彼女はシエルに言われたまま、魔王が門から出られない様にする楔だと話し、重要な点であるこの楔がある限り『魔王は地上界には来れない』事を強調しながら言う。

しかし此処でロマンやサラ、ルルにアルでさえ神が用意した、と言う部分に引っ掛かりを覚え、エミルが考えた様な事を脳内で思案し始めていた。

 

「まぁ兎に角私達があのシエル達の言う様に行動するなら目的は2つに絞られるわ。

先ず第1に楔の泉を探索、そして出来るなら魔族が触れられない様に結界で守る事。

第2に地上界の者の限界レベルと言う物を超える事。

此方は態々あの魔族シエルがありがたい事にアレスター先生が何かに辿り着きそうだったから消されたと話してくれたわ」

 

「アレスターが⁉︎」

 

その間にエミルは魔族4人組のリーダー格シエルが念話でわざと漏らした事を辿る道である楔の泉の探索、更に地上界の限界レベル突破を提示し、更に第2の議題にはアレスターが何かに辿り着き掛けて消された=殺された事を全員に話し、サラはアレスターの名を聞き驚きながらテーブルを揺らし、席を立ち上がった。

 

「魔族シエルの談が本当なら、ね。

これを無視するなら私達は方針通りゴッフェニアに行く事にして神剣探しを続行するわ。

ただ、これは私1人では決められないから皆の意見が聞きたいわ。

皆はどっちが良い?

これまでの方針通りに行くか、それとも魔族シエルがわざと示した道を罠を想定して行くか?」

 

そしてエミルは1番大事な話である自分達の今後の行動方針についてを4人に話し始める。

1つは自分たちが決めた道を行き、神剣探しを行う道。

もう1つは魔族シエルが提示した物に沿った道。

それらから何方に行くかを自分1人では無く全員で決める様に促し始める。

其処で全員が悩む様なそぶりを見せる…と思いきや、アルが先ず口を開き始めた。

 

「なら話は早い、頑固者のゴッフ(ジジイ)に神剣の手掛かりを聞きに行くより先に魔族シエルが提示した方に行く。

あの女やアザフィールが350オーバーのレベルなら魔王はその上を行く筈だ。

その出現阻止をする為に楔の泉とやらを意地でも探す方が先だろう、ライブグリッターならその後から探せる。

何よりあの4人組に借りを返さなきゃアル様の名が廃るぜ」

 

アルの言い分はライブグリッターと言うゴッフなら在処を知る物より楔の泉と言う聞いた事も見た事も無い物を探す無謀に思えるが、魔王出現を阻止する為に自分達に出来る事=魔族シエルから教えられた事から片付け、神剣は後回しにする選択をすると言う物だった。

更に個人的な感情を挟むが魔族シエル達4人組に借りを返さないと気が済まないと言う物だった。

 

「アルの言い分は分かったわ、他の皆は?」

 

「私は…私は知りたい。

アレスター、あの子が何を掴んだかを、何故あの子が殺される様になったか、あのエンシェントドラゴン襲撃は本当に偶然だったのか、知りたいの!」

 

次にサラがアレスターが掴んだ物や彼が何故死に行く事になったかを知りたいと叫び、彼の姉として知らなければならない事が増えた為アルに同調しこれで方針変更側に2人が寄る事になった。

それを聞きエミルが頷いていると次はルルが話し始めた。

 

「私も楔の泉探索に賛成するわ。

実際如何言った物かは分からないけれど、確かお母様と賢王ロック様が不思議な泉を200年前に偶然発見した話があるわ。

もしかしたらそれが件の泉かも知れない」

 

ルルはリリアナやロックが200年前、偶然発見した泉の話をすると全員の目の色が変わり、もしかしたら楔の泉の1個目を早速見つけたのかと思いながらルルを見つめていた。

 

「僕は…僕の意見なんだけど…皆に合わせたってならない様に言うけど、知らなければいけない気がするんだ。

魔族シエルが何故わざわざ僕達を試す様な真似を取るのか、その真意を。

それと…楔の泉について教えたって事は、穿った見方をすると相手も大体の場所を絞り込めてるんじゃないかな?

ならそれを知る僕達が魔族達を止めて魔王の出現を止めないといけないと、僕は思うんだ!」

 

最後に不安な表情を見せながらもロマンはその口で楔の泉探索をすべきだと自身の考えを持ちながら発言し、更に魔族シエルが何故この様な相手を試す様な真似をするのか、重要な情報を流したのは既に場所を絞り込み始めているのでは無いかと自身の考えを発言する。

その上で魔王が門から出現するのを止めなければと、皆に同調気味にならない様に話すとエミルは全員の意見を聞き終え頷き始め、頭の中の行動方針に変更を加え始めて口を開く。

 

「皆の意見は大体同じみたいね。

なら私は今後の方針転換としてゴッフェニアには行かずフィールウッド国の中央王村『ロックヴィレッジ』に向かうわ。

賢王ロック様達に楔の泉らしき物を聴きに行くと同時にアレスター先生の知り得た事を解き明かそう。

アレスター先生の遺品はフィールウッドに送られているから其処で閲覧して何方も同じ国で解消出来るかも」

 

エミルは方針転換によりゴッフェニアに向かう事を変更し、フィールウッド国のロックヴィレッジに向かう事とし、其処でロック達が見つけた泉が楔の泉か確かめるのと並行しアレスターが掴んだ何か…地上界の限界レベルを超えるヒントを得る為彼の保管された遺品を閲覧しそれを知る事に決めてロマン達もそれで同意をした。

 

「それじゃあ何時から向かい始めるの?」

 

「今から。

あんな化物レベルの魔族が出たもの、悠長に明日からなんて言ってられないわ。

と言う訳で、食事を摂ったら直ぐに港へ向かってフィールウッド国へ行くわ!

早速1階に降りて食事して来ましょう!」

 

サラは何時からとエミル聞くと、今からと返答が即座に返って来て理由も魔族シエル達の様な化物レベルの魔族が居る事を確認した為悠長な行動をしていられないと発言して盗聴防止結界(カーム)を解き1階に下り始めた。

 

「よし、そう言う事なら俺様達もさっさと行くぜ‼︎」

 

「うん、行こうロマン君、ルル!」

 

「分かったわ」

 

「うん!」

 

その後にアルやロマン達も続き、さっと朝食を摂ると宿泊費等を払い、馬屋で預かってた馬車に乗り込みセレンの街からミスリラント本国1の港『ジルコン』へと馬を走らせ始める。

 

「(あの夢が私の持つ魔王像や完敗から来た負のイメージなら………それが実現しない様に頑張らないといけない。

………あんな光景は、ごめんだから…)」

 

その間にエミルはあの悪夢の光景を思い出し、荒廃する地上界や知人、何よりリリアナ達前世の仲間達やロマン達今の仲間達、全てが無慈悲に失われ何もかもが魔族達の思い通りにならぬ様にと恐怖心を押し殺しながら決心し街道へと出てジルコンを目指した。

 

 

 

しかし、エミル達の馬車がジルコンへ向かう場面を目撃する者が居た。

それは銀髪のロングヘア額に赤い水晶を輝かせる褐色肌の少女………エミル達が現在最も警戒する者、シエルが居り、その背後にはアザフィール達まで佇んでいた。

 

「そうだ、それで良い。

そうしなければアギラ達小悪党がのさばる結末を迎える。

そんなつまらない結末など興味無いし見たくも無い。

だからせいぜいアギラ如きには勝って見せろよ、エミル一行様?」

 

「では征来ましょうシエル様、我等が『目的』が為に」

 

シエルは彼女なりの思惑があるのかアギラ一派がのさばるのを良しとしない発言をし、何かエミル達に期待するかの発言をしながらアザフィール達と共に転移魔法を使いその場を去る。

この魔族達の目的は何か?

それを知る者は『盟約』を交わしたダイズ位しか現在は居なかった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
誓いの翼(オースウイングズ)は魔族シエルが敢えて示した道を行く事になり、そしてシエル達は何らかの思惑を持って行動してますがそれが判明するのはまた随分先になると思われます。
更に魔族ダイズと言う名あり魔族の3派閥がある事になり、ダイズも『魔剣』を持つシエルと『盟約』を交わしていると言う複雑な関係に…。
これらが意味する所まで長いですがお付き合い頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願い致します。


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第17話『誓いの翼、結束する』

皆様おはようございます、第17話目更新でございます。
今回はロマン君がもう1人の主人公として動く回になります。
では、本編へどうぞ


馬車に揺られて2日が経過し、エミル達はミスリラント本国の最大の港ジルコンに辿り着く。

其処はエミル達が本国に入国した港より更に大きく、船の大きさも数も段違いであった。

これにはロマンも初めて見る物に口を開けながら周りを見渡していた。

 

「おいロマン、田舎風吹かせてる暇があったらこの船に乗るぞ‼︎

フィールウッド国までの直行船だ、早く乗れ‼︎」

 

「わっ、ごめんアル!」

 

周りの船を見渡していたロマンだったが、それに気を取られ過ぎた為か他の仲間達と逸れそうになり、アルが大声でロマンを呼びフィールウッド国への直行船に共に乗る事が出来た。

そうして船室で一旦集まり、全員で盗聴防止結界(カーム)内で改めて目的確認となった。

 

「じゃあ改めてだけど、私達の目的はフィールウッド国へ行き賢王ロック様達と謁見、珍しい泉やアレスター先生の遺物の閲覧。

これを並行してやって魔族シエルが漏らした楔の泉や限界レベル250の真偽確認や事実なら泉の防衛策構築と限界レベルの突破をするわ、良いわね?」

 

「うん、大丈夫だよ〜エミル!」

 

エミルは改めての行動方針を説明すると、サラが1番に同意し、他はサラの勢いに負けて頷く形になった。

エミルとしてはアレスターの死に関連する事の為、姉として知りたいのもあるのだろう。

この爛漫な元気さの裏にはそんな悲しい感情があるのだとロマン達は悟り黙って同意していた。

 

「うん、それじゃあ後は解散ね。

皆これから5日間の船旅で英気を養おうね」

 

そうして同意を確認したエミルは盗聴防止結界(カーム)を解除し、誓いの翼(オースウイングズ)は負傷した身体を休めながらの船旅になりそれぞれがロマンとアルの船室から女性陣の船室に戻り、船が出港する時を待っていた。

 

「(………そう、あんな夢が現実になるのはゴメンだから…)」

 

「(…エミル?)」

 

その直前にエミルは自身が見た悪夢を思い出し、あの内容が現実の物になるのはゴメンだと考え、使命感と…若干の恐怖心を胸に秘めながら船室を後にする。

その後ろ姿にロマンは何かを感じ、彼女を目で追うが手を伸ばそうとする前に船室にはアルと2人で残されてしまう。

 

「何かあったのかロマン?」

 

「………うん、何か………何時もの勢いが無くて。

それでエミルに何か声を掛けないとって…」

 

アルはロマンの様子から何かあったのかと声を掛けると、本人はエミルに何か声を掛けないと…そう言ってドアの方を見続け、船室は静寂に包まれる。

そうしている内に船が出港したらしく、船全体が揺られ始めるのだった。

 

 

 

 

 

それからロマンはサラやルル、アルにも協力してエミルに話し掛けようとしたが、その度に間が悪く話し掛けられず船旅2日目になり、その間に誰1人としてまともに彼女に話し掛けられなかった。

 

「あ〜もう、何でなの〜!

何でエミルに話し掛けようとしたら向こうは用事があったり、こっちに用事が回って話し掛けられないの〜⁉︎」

 

「………間が悪い、なんてレベルを、超えて…いますね………」

 

テーブルに突っ伏したサラやフードを被ったルルはこの間の悪さに嫌気が刺し、食事も別々に摂る等明らかにエミル側から避けられてる様な感覚を覚え、現在の昼食時もアルが不機嫌に酒を飲んでいた。

 

「たく、俺様達は仲間だろ?

なのに何故避けやがるんだエミルは⁉︎

おいロマン、お前何とか声を掛けるタイミングを図りやがれ!

サラやルルでダメなら俺様達じゃタイミングが合えばなんて言ってられねぇ、お前が何とかしろ!」

 

「うん…僕もそのつもりなんだけど………何か、上手く噛み合わないんだよね…」

 

アルはコミュニケーション能力の高いサラやこう見えて話にはグイグイと行くフードありのルルでさえもエミルと話が出来ず彼等ではお手上げとして協力を求めたロマンに堂々巡りで出番を回されるが、ロマンも肉料理を食べながらタイミングが合わないと溢し全然上手く話をする場面を見つけられずにいた。

 

「うぅ〜、何だか誓いの翼(オースウイングズ)が結成早々に解散の危機みたいな雰囲気になってるよ〜う!

ねぇルル〜、何か良い案や予知は無いの〜?」

 

「…ごめんなさい、予知は任意で、見れる物では………。

………あれ、そう言えばこの海域は………」

 

サラはお手上げな空気を出しながらルルに無茶ながら何か案か予知は無いかと聞くが、矢張りと言うべきかダークエルフの予知は任意で見れる物では無い為ルルも俯いていた………が、俯いた影響で懐に仕舞った世界地図を見つけ取り出すと、船の進行ルートと現在の海域を計算し始め、1人で何か唸っていた。

 

「如何したルル、何か案が浮かんだのか?」

 

「…はい、恐らくですが………今日の夜に………」

 

アルはルルの様子から案が浮かんだのかを問い、サラやロマンも様子を見るとルルは自身が知る『反則情報』からエミルが今夜何をするのかを予測し、その反則情報の内容が分からない様にしながらロマン達に予測を伝えると、ロマンもそのタイミングしかないと感じルルの予測に思い切って乗っかろうと思っていた。

そして現在の場所は………門がある遺跡群に近い海域であり、夜に最接近する航路を船は取っていたのだった。

 

 

 

その晩、エミルは甲板に出て望遠鏡で門の遺跡群を覗き見ていた。

500年前に自身(ライラ)の手で封印した門。

其処から溢れる瘴気や暗雲からその時の場面を思い出し、そして溜め息を吐きながらある事を考えていた。

 

「(…アレスター先生の死やあの悪夢で麻痺していた感覚が戻った、500年前に常にあった隣人達の理不尽な死…。

そして何より500年前に私が取った行動………それが最善策と思って、私はロックやロア達に…)」

 

それは500年前にあった魔物や魔族達に仲間や友の命を奪われる理不尽な蹂躙、それにより生まれる喪失や絶望、哀しみ。

エミルは…ライラはそれを防ぐ為に縛られし門(バインドゲート)使用を踏み切り、そして転生魔法により現代へと再び生を受けた。

だが…特にあの悪夢を見た時から生まれた感情、それは誓いの剣(オースブレード)の皆に同じ絶望を自らの死で与えてしまった、その明確な後悔の念であった。

 

「(あのアザフィールやシエル達の実力差と完敗、そして悪夢…それで漸く私は私の犯した過ちに気付いた、気付いてしまった。

自分の命を勘定に入れなかったから気付けなかった、リリアナ達に刻んでしまった哀しみや絶望。

そして今度はロマン君達を死に掛けさせて私は…。

なら私は、ロマン君達を死地に追いやるとんでも無い過ちを…⁉︎)」

 

エミルはライラの時から自身の生命について軽薄で、勘定に入れず常に無茶をして来た。

それをロア達に咎められた事もあるが結局そのまま突き進み500年前の最期に至った。

その際に遺してしまった仲間達に絶望感を与えてしまったのでは?

そしてアザフィールやシエルの規格外なレベル差に今度はロマン達を自身の軽はずみな行動で死に追いやるのではと悪夢を見た時からその恐怖心が芽生え、遺跡群を見た瞬間それが膨らみ今まで考えなかった重圧に潰されそうになっていた。

 

「…エミル」

 

「っ⁉︎

ロマン…君…」

 

そんな重くのし掛かる負の感情に思考が支配されそうになった時、背後から声が掛かる。

それは現代の仲間であり自身が見出した勇者ロマンである。

そしてそのロマンから離れた位置にはアル達も居り、全員エミルを心配してその様子を見に来ていたのは彼女にも分かってしまう。

 

「あ〜、何か心配掛けたみたいね。

でも大丈夫だから心配しないで良いよ。

さ、船の中に」

 

「待ってよエミル!

…そんな辛そうな顔をして、大丈夫な訳無いでしょ⁉︎」

 

「…辛そ、う…」

 

エミルはロマン達の顔を見て作り笑いをし、心配せず船内へ戻ろうと言い掛ける。

だが、それをロマンが許さず腕を掴み彼女が辛そうであった事を伝える。

それを聞いたエミルはその言葉が深く刺さり立ち止まってしまう。

 

「…ルルから聞いたんだ、この時間帯に多分エミルは遺跡群…門を見て何か1人で抱え込んじゃうんじゃないかって。

それも全部、あの4人組の魔族が関係してるよね?

ねぇ、それなら僕達にもその辛さを教えて分けてよ、その為の冒険者パーティ…誓いの翼(オースウイングズ)なんでしょ!」

 

「ロマン君…」

 

ロマンはルルからこの時間帯に此処に来て何かを抱え込むと聞き、それも内容は魔族シエル達が関わるとロマンはエミルが自身達を避け始めた事から考えに至っていた。

そしてその鬱屈とした感情を自分達にも分ける様に叫び、その為の誓いの翼(オースウイングズ)だと言われ、エミルはその仲間思いで真っ直ぐな眼差しに誤魔化しが効かなくなり、諦めた様に甲板の背凭れに腕を掛け、遺跡群を見ながら口を開き始めた。

 

「…私さ、悪夢を見たんだ。

あのアザフィールの攻撃で皆を助けられず、そしてあの遺跡群から魔王が出て来て地上界を滅ぼされる夢を」

 

「…そう、なんだね」

 

エミルは詳しい内容は省きながら夢の内容を話し、ロマンや離れて聞いているサラ達はそんな悪夢を見ていた事を此処に来て初めて知り、あの敗北が自信家のエミルに深い傷を負わせたと考え、エミルの前世を知るルルはもっと複雑な理由があるのだと思いながら次の言葉を待っていた。

 

「それでね、私は夢の中であのシエルにこう言われたんだ。

これがお前達の限界だ、お前に惑わされてこうなった。

偽善者にして愚者エミル、お前が自らの愚かさを見ず突き進んだから死なずに済んだ皆が死んだ。

その結末を胸に刻みながら魔族が地上界を支配する様を見届けるがいいって」

 

エミルは更にライラである事を伏せながらも夢の中のシエルに言い放たれた言葉を告白し、その一言一言を告げる度に夢の中のシエルが向けた失望の眼差しや味わった絶望感が胸を締め付け、更にロマン達の死の光景や前世を含めた自身の愚かさを認識して行きその表情が曇り始め、腕も震え始めていた。

 

「…それで、エミルはその夢を見てどんな感情が1番大きかったの?」

 

「えっ、ロマン君…?

…恐怖、皆を失う事や、地上界で知り合えた人や全てを喪う事…それが、怖いって…」

 

するとロマンはその夢の中で何の感情が大きくエミルを支配したのか彼女に問うと、エミルはロマンを真っ直ぐ見ながら皆を喪う事が怖かったのだと伝える。

確かにエミルが感じた自己嫌悪の感情は全て恐怖から来ており、それは嘘偽り無き告白であった。

それを聞きロマンは…笑みを浮かべながら口を開き始めた。

 

「そっか、やっぱりエミルも同じだったんだね」

 

「えっ?」

 

「僕も、あの時アザフィール達を前にして…怖かった、逃げ出したかった。

けれど、エミル達を置いて逃げるなんて僕には出来なかった。

だってエミル達の期待を裏切るなんて真似は出来なかったし、何より………エミル達を喪うのが怖かったから。

だから、僕は…」

 

ロマンはエミルが同じだと言い放ち、それを聞いたエミルは突然の事に惚ける。

ロマンの言を思考に起こすと、如何やらアザフィール達の威圧感に怯みあの場から逃げようとも考えたらしかった。

しかしロマンはエミル達から受けた期待を裏切れず、そしてその仲間達を喪うのが怖かったからこそ前に出て盾を構えたのだと言う。

それらを話す時のロマンの手はエミル同様に震えていた。

 

「だからさ、エミルは仲間想いで優しくて、それでいてリーダーらしく自信家で…でも怖い物は怖くて…根本からして僕達と同じくお互いを想い合う人なんだよ。

だったら、怖いって想いも僕達に分けて欲しいんだ。

それが、仲間でしょ?」

 

ロマンはその震えを押さえながら今まで自身が見て来たエミルの人物像を口にして行き、アル達も見ながら互いを思い合える者だとし、その上で仲間であるなら怖いと言う感情も共有しようと苦笑しながら自身が信じる『エミル』に想いを伝える。

それを聞いたエミルは自身の前世を含め、その半分以下しか生きていない目の前の弱気な、しかし確かな勇気を持つ勇者に諭され少し俯き、そして全員に向き直る。

 

「…そう、よね。

私達は誓いの翼(オースウイングズ)…苦楽を共にする仲間………ごめんなさい、私、皆を勝手に道を決めて突き進んで喪う事に勝手に怯えて、皆を避けちゃった…」

 

「僕達なら大丈夫だよ、エミルのそう言う部分も含めて支え合うのが仲間なんだからね。

そうでしょ、皆?」

 

「…まぁな」

 

エミルは自身の弱さにより仲間達を避けてしまい、更に勝手に仲間を喪う恐怖に怯えていた事を誓いの翼(オースウイングズ)の仲間達に告白しながら謝罪する。

それをロマンはそのエミルの弱さも含め支え合うのが仲間だと口にしながらサラ達の方に向く。

するとサラは和かに手を振り、ルルは気恥ずかしくなりながら頷き、アルもそっぽを向きながら肯定していた。

 

「さっエミル、船室に行って作戦会議をしよう。

今度はアザフィール達にも負けない様に、これからの事をきっちりと話し合おう?」

 

「…そうね、ええロマン君、サラ、ルル、アル!

もうあの理不尽の権化みたいな連中に一泡吹かせる為に色々会議するわよ!」

 

「あは、何時ものエミルに戻ったね!

オッケー、夜中まで作戦会議をしよ〜う‼︎」

 

そうして『仲間達』に自身が抱いた物を告白し、漸く胸の中にあった恐怖心を拭い去る事が出来たエミルは何時もの調子に戻り作戦会議をしようと高らかに叫ぶとサラもルルもアルも、そしてロマンも自分達が知るエミルに戻った事を喜びながら船内に戻り始める。

 

「…ありがとうロマン君、私の弱さとかを受け止めてくれて」

 

「それは僕もだよエミル。

君は僕を優しさと勇気を持つ勇者だって言ってくれてるから。

だから、これはお互い様だよ」

 

「…ええ、そうね」

 

そうして船内に戻る途中でエミルはロマンにありがとうと口にすると、ロマンもリリアーデで自身を真の勇者だと信じたエミルに感謝しか無く、故にお互い様だと口にして船内へ戻った。

そうしてロマンとアルの船室に再び集まり盗聴防止結界(カーム)を発動させて5人の作戦タイムに入る。

 

「それじゃあ作戦なんだけど、名あり魔族の中でもレベル230が2人までなら今の私達なら苦しいけど相手に出来る、これは共有して置くべきね」

 

「ならそれ以下の奴等なら其処まで物量で来られなきゃサックリ勝てる訳だな?」

 

「ええ、その認識で間違いないわアル」

 

先ずエミル達は自分達のレベルならレベル230の名あり魔族2人までなら相手出来るレベルと魔法、技の熟練度を持っているとエミルは豪語する。

其処にアルも物量で攻められなければそれ以下の魔族に勝てると発言すると此方もエミルは肯定する。

それ等を共有し合い、次にフードを取ったルルが次の議題に入る。

 

「ならアギラは?

奴のレベルは280と聞くわ。

今の私達では勝てないと思うけど?」

 

「それはそうね、ええ今は勝てない。

レベル250になれればアギラ1人ならギリギリだけど勝てると思う…こっちも無事に済まない可能性を考慮しながらなら。

ただレベル220から私達地上界の者はレベルが上がり辛くなるって書物にあったから…確実に勝つ為にはやっぱりアレスター先生が掴みそうだった物を私達で成すしか無いわ」

 

ルルから現段階で行く先々で罠を張ったアギラ1人に勝てないと言われるとエミルはあっさり肯定し、レベル250になれればアギラ『1人ならば』犠牲を考慮してギリギリ勝てる様になる可能性が出ると発言する。

しかしエミルは前世の経験からレベル220から先は中々レベルが上がり辛くなる事を書物で見たと話し、これが地上界の者の限界レベルに近付く事だと内心で考察していた。

そしてアレスターの掴み掛けた物を自分達で掴むとも話す。

 

「ならアレスターの坊主の遺したもんを見る為に賢王ロックに会うのは絶対だな。

予言者リリアナと一緒に見た珍しい泉の件も聞くならな」

 

「ええ、先生の遺した物とその珍しい泉がフィールウッド国に一緒にあったのは僥倖よ。

その泉が楔の泉なら魔族から守る方法を見出すのも並行出来るから尚更ね」

 

そしてアルもアレスターが遺した物と珍しい泉の確認は絶対だとし、エミルも肯定しながら楔の泉を守る専用魔法を作る事も考慮しながら船室からフィールウッドの方角を見ていた。

その発言と目には既に恐怖心は拭い去られ、自信家のエミルが完全復活していた事を全員に知らしめていた。

するとサラが手を上げ質問を始める。

 

「はいはいはーい!

じゃああのティターニアとティターン、アザフィールとシエルの4人組に会ったら如何するの?」

 

「うん、あんなの相手にしてたら生命が幾つ有っても足りないから逃げるが勝ちよ逃げるが。

転移魔法(ディメンションマジック)で300キロ向こうに逃げ続けるわ。

ただ追って来た場合を考慮して隠密用のアイテムやら分身魔法(アバターマジック)やらを駆使して全力で逃げるわ。

…通用するか分からないけど」

 

サラはシエル達4人組に会ったら如何するかを質問すると、エミルは風の魔法の1つである分身魔法(アバターマジック)や隠密アイテムを駆使して全力で逃げると恥ずかし気も無く宣言する。

しかしアザフィールの1撃を受けて全員死に掛け、その上にまだシエルが控えている為妥当な判断だとして全員納得していた。

逃げ切れるかは別問題としていたが。

 

「じゃあ纏めるとフィールウッドでシエルの言った限界レベル突破や楔の泉探索をロック様達の下でする、シエル達にあったら全力で逃げる、こんな感じで良いよねエミル?」

 

「ええ、そんな感じよロマン君。

話の纏めありがとうね」

 

最後にロマンが話の纏めに入り、エミルも概ねOKを出し作戦会議(特にシエル達4人組に関して)は終わり、全員がそれ等を共有し終わりエミルは一呼吸入れ、全員を見渡した。

 

「皆、敵は500年前の魔族を上回る強さを持つ恐ろしい存在よ。

でもね………不思議と皆なら超えられる、必ず魔王を倒せるって予感がするの。

私はこの予感を信じて、私は皆と一緒に何処までも行くわ!

だから、最後まで頑張るわよ、無理せず無茶を壊しながら‼︎」

 

エミルはアギラを含め敵が500年前の敵を上回る事を改めて告げ、それでもなおこのメンバーとならそれ等を超え、魔王を倒す予感がするのだと口にする。

最後に彼女の信条たる無茶はしても無理はするなも同じく口にしながらロマン達を鼓舞する。

その反応はと言えば。

 

「ガッハッハッハッハ、心配すんな!

このアル様が無理を無茶にしっかり変えてやるぜ‼︎」

 

「うんうん、無理したら身体に毒だからね〜!」

 

「但しエミル、無茶振りも程々に」

 

「あ、あはは…でも、皆同じ気持ちだから前を向いて行こう、エミル!」

 

それぞれ無茶に飛び込み押し通る気満々でエミルに言葉を返していた。

ロマンも苦笑しつつも前を向き行こうと言い反対せずにエミルのガンガン行く事に賛同している事を示し改めて誓いの翼(オースウイングズ)の結束力が深まり始めていた。

 

「うん…じゃあ皆、作戦会議終了!

この後はしっかりと休みながらフィールウッドまで行くわよ、じゃあ解散!」

 

『おお〜‼︎』

 

「お、おお〜!」

 

最後に作戦会議終了と解散をエミルが宣言して全員に休む事を言い渡す。

それに対してサラ達は元気に、そして真っ先に返事し遅れてロマンも返事をすると盗聴防止結界(カーム)を解除し、女性陣は自身達の船室へと戻って行った。

 

「…ふう、良かったな。

ウチのリーダー様の機嫌が直ってよ」

 

「うん、そうだね。

じゃあアルおやすみ」

 

その後ろ姿を見送りながらアルはエミルの機嫌が直った事を彼なりに気に掛けながらロマンに話すと、短く会話を交わした後消灯し、船に揺られながら2人はベッドの横になり眠りに就くのだった。

この時ロマンはエミルと初めて出会った時の事を夢に見て、その時からずっと自分を信じてくれる彼女には感謝しかないと思いながら夢の中であの時の問答を繰り返すのであった。

 

 

 

 

 

 

「んん〜…面白く無いですねぇ。

ちょっとシエルさん、ライラの転生体もその仲間達も完全復帰してフィールウッドに向かってるじゃないか、これは如何言う事かな?」

 

「私に聞くな、アザフィールのあの1撃で全て決したと私は思ったんだ。

しかし存外しぶとい様だ、誓いの翼(オースウイングズ)を名乗るだけはある」

 

その船から離れた位置の小島にて、千里眼(ディスタントアイ)を使いエミル達が完全復活したのを気に食わないアギラはシエルに対し捲し立てていたが、当のシエルは右から左に流しその話を聞いている様子は無かった。

アギラはその態度に血管が浮き出ており、しかし此処でこの女に挑んでも神剣ライブグリッターの対となる『魔剣』を持つ魔界1の剣士にしてアザフィールの弟子であった者を殺せる訳が無いとして少し堪えていた。

 

「…ん、くくく、君が使命を怠慢しあの勇者達を野放しにしているのは分かったよ。

ならシエル、この事を魔王様に報告させて」

 

「その『魔王』様からの伝言だ。

『何時になったら楔の泉を見つける、貴様の愉快な計画とやらの決行は未だか?』との事だ。

今報告に戻れば確実に首が飛ぶのはお前の方だぞ、アギラ?」

 

「なっ⁉︎

ぐっ…」

 

アギラはシエルの態度から崇拝する魔王に彼女の行動を耳に入れ、その首を飛ばそうと画策しようとした…が、逆にシエルに魔王からの伝言を伝えられてしまい今魔界に帰れば生命が無いのは楔の泉発見に至らず、更に自身の計画を実行しないアギラ自身だと気付かされてしまい何も言えなくなりながらシエルを睨んでいた。

 

「それじゃあ私はダイズの使命を少し手伝ってくる。

精々その策とやらで地上界を混乱させられる様に祈って置くとするよ、アギラ?」

 

シエルは最後にダイズ側の魔王から与えられた使命の手伝いをすると宣言し、その軽い足取りと台詞を言い放ちながら転移魔法(ディメンションマジック)で恐らくダイズの近くに転移して行った。

それ等を見て聞いていたアギラは………完全に切れて島の木々に大熱砲(フレアブラスト)を撃ち込み火災を発生させていた。

 

「がぁぁぁぁぁぁぉ、シエルシエルシエルゥゥゥゥ‼︎

たかが『魔剣』を持つだけで魔王様の幹部になっただけの女がぁぁぁ‼︎

私を苛立たせんじゃねぇぇぇぇぇ‼︎

はぁ、はぁ、はぁ………良いだろう、計画実行と楔の泉破壊をしてやる‼︎

それでお前が吠え面をかく姿を嘲笑ってやるわっ‼︎」

 

アギラは周囲の木々を燃やし尽くした後シエルへの怨嗟の言葉を口にし、そして一通り辺りを燃やし尽くした後自身の与えられた使命を果たすべく転移してその場から消えるのだった。

その思惑はシエルに屈辱を与えると言う余りに稚拙で、しかし彼女に対する恨みを滲ませる物であり明らかにシエルを蹴落とそうとしているのがこれを誰かが見ていれば分かる物だった。

そして後に残ったのは灰と焼け落ちた木々がある小島だけだった。

 




此処までの閲覧ありがとうございました。
エミルが敗北の事を引き摺りネガティブな状態になっていた所でロマン君が気付き、ズルズルと引き摺るのを止めた回になりました。
そしてアギラ、遂にブチギレる(しかも実力差から周りに八つ当たりしか出来ない模様)。
結束する味方側と(主にアギラの存在の為)バラバラになる敵側と、書いている内に対比になりました。

次回もよろしくお願い致します。


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