「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 番外集 (カフェイン中毒)
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デルタ編
2度目の異世界


 番外編第一回はマクロスΔです。本編更新せずこんなことしてすいません。だけど書きたかったんです。許してください!何でもしますから!

 オリ主&オリキャラがビルドファイターズ時空からマクロスΔ時空へトリップする話ですので気に入らない方は自衛をお願いします。


 「少々お聞きしたいことがありますのでヤジマの研究施設まで来てもらえませんか?3人で」

 

 「別にいいけど」

 

 確か始まりはこんな感じだった。第七回世界選手権が終了して一月経つか経たないくらいの時に、ニルスからそう言われた俺とヒマリとツムギはヤジマの研究所にやってきていた。いやはや第七回世界選手権の後始末は大変だったよ。まさかレイジのやつが異世界人だったなんてなあ。しかもプラフスキー粒子の大本がそのアリスタとかいう宝石で、マシタ会長がその原石を持っていたって話。レイジが言うにはアリスタは世界を越える力を持つくらい凄い宝石らしい。まあ、今目の前にある馬鹿でかい宝石を見ても実感わかねえや。

 

 でもレイジのやつが目の前で消えたのも見たし、何食わぬ顔で戻ってきたのをこの1か月で何回か見た。つまり、マジの話らしい。まあそれを知ってるのは俺たちとセイぐらいなんだけど。で、俺と同じヤジマのファイター…研究者に転向したらしいニルスはプラフスキー粒子の謎を解明したくて躍起になってるわけで。準決勝の話、つまり歌でプラフスキー粒子越しに想いを届けたことに関して詳しく聞きたいとかなんとか。

 

 「というわけで詳しい話を聞きたいのですが…」

 

 「いや、そう言われても、なあ?出来ちまったからとしか」

 

 「…アルトに乗っかっただけだもん」

 

 「アルトくんに分からなかったら私はお手上げー」

 

 「……そうですか」

 

 「バカを見る目をやめろ」

 

 「いえ、そういうわけではなく。飲み物を取ってきますのでくつろいでいてください」

 

 ニルスのこれも駄目かみたいな顔での言い草に思わず口答えが出た俺を気にすることなく彼は部屋を出ていってしまった。大きなアリスタの原石が放つ不思議な光が部屋を照らしている。俺たちはうーんと考えてそれぞれ一つの丸い宝石を取り出す。レイジからもらったアリスタだ。ビー玉のようなそれは今な光も何もせずただの暗い色の石にしか見えない。ニルスとバトルできるかもーって思って持ってきたバルキリーたちが泣いちゃうぜ。なんだかんだあいつとバトルやってなかったしいい機会だと思ったんだけどなあ。

 

 「今でも信じられないねー。レイジ君が異世界の国の王子様だったなんて」

 

 「…アイラ、玉の輿」

 

 「アイラさんまさかあっちに移住するなんてな。まあよくこっちに戻ってくるみたいだけど」

 

 そんな感じで雑談をしているとほのかに手に持ってるアリスタが輝いているのに気づいた。それはヒマリとツムギのものも同じようで、二人も困惑の表情でアリスタを見つめている。と同時に俺たちの後ろにある巨大アリスタも光を増していることに気づく。なんだ?よくわかんないけど、やばい

 

 「おい、いったん部屋でよう。なんか嫌な感じがする」

 

 「うん。何なんだろ」

 

 「…まぶしい」

 

 強い光に弱いツムギの手を取って荷物を背負ってドアの方へ足を進めようとした瞬間、バァッ!と巨大アリスタから緑色の粒子、おそらく何の加工も施されていない純正のプラフスキー粒子が噴き出して俺たちの周りを覆ってしまった。突然の事で動きを止めてしまったがとっさに二人を抱き寄せて庇う態勢に入る。なんだなんだなんだなんだ!?

 

 「アルトくんっ?!」

 

 「…アルト、これ」

 

 「わっかんねえよ!とにかく離れないようにくっつけ!くっそニルス!入ってくんなよ!お前まで巻き込まれるぞ!」

 

 ホワイトアウトしかけた視界の隅でニルスがドアを開けようとしているのが見えた俺は視界が完全に真っ白に染まる前にそう叫んだ。感覚だけで二人と硬く抱き留めた俺の視界がホワイトアウトし、意識までも曖昧になっていく。離してなるものかと腕に力をこめる、上下の感覚すらも曖昧になり、ふつっと地面が消える。

 

 

 

 

 

 どさっっと音を立てて転がった俺たち。地面の感覚がある。コンクリートだ。だけどなんで?何が起こった?疑問しか湧き上がらない。戻ってきた視界に映るのは海とコンテナ。耳に聞こえるのは爆発音と悲鳴、きょろきょろとあたりを見回す二人が無事らしいことを確認してほっと息をついた。状況は全く分からないが二人に何もなくてよかった。

 

 「ここ、どこ?」

 

 「…研究所じゃ、ない?」

 

 「っ!危ねえっ!!!」

 

 咄嗟だった。驚く暇もないほどに立て続けに起きる意味不明に逆に冷静になった俺の視線の先にはありえないものがあった。バルキリーだ。プラモデルじゃない、実寸大かつ本物の動く可変戦闘機。それがガンポッドを四方八方に撃ちまくって暴れまわっていた。その銃口が俺たちの方に向いたのを見てしまった瞬間俺は二人を突き飛ばしていた。運よく二人はコンテナの影に入ることができたが俺は逃げ遅れた。吐き出された弾丸が俺の近くに着弾する。衝撃で俺は吹っ飛び思いっきりコンテナに打ち付けられた。

 

 「アルトくんっ!?やだっ!?アルトくん!!」

 

 「アルトっ!?しっかりして!大丈夫っ!?」

 

 「ぐうっ…大丈夫だっ!いいから動くなよ…っつぅ…」

 

 運悪く、もしくは運がよかったのかもしれないが擦り傷と打撲で終わったようだ。ズキズキと痛む全身に鞭打って這うように二人がいるコンテナの影に入った。二人の悲鳴に何とか言葉を返して笑って見せる。ほっとした顔をした二人と今起こってるありえないことについて話し合う。なんで、ないはずのものが存在しているんだ?あのバルキリー、VF-171 ナイトメアプラスはまだ俺が作ってない機体だ。設計図どころかデザインすら俺の頭の中にしかない。俺がいた世界では、という注釈が付くけど。そもそも、今どこにいるんだ?世界自体が違うとしか思えない。だって、原因はどう考えてもアリスタだ。レイジのように世界を移動したのかもしれない。

 

 「あれって、バルキリー、だよね?」

 

 「ああ。俺がまだ作ってない、な」

 

 「…もしかして、ここがレイジの世界っていうアリアン?」

 

 「レイジたちの世界は俺たちより科学は進んでないって言ってた。それに、バルキリーがある時点で…」

 

 「…アルト、自分が何言ってるか分かってる?」

 

 「マクロスの世界に来ちゃった…ってこと?アリスタのせいで!?」

 

 「そうじゃなかったらあれが説明つかないだろ。やばいっ!逃げるぞ!」

 

 ガンポッドが発射される轟音の中、大声で話しているとガンポッドの弾が無くなったらしいVF-171が脚部を開けてマイクロミサイルをのぞかせ始めた。今まではコンテナが壁になってくれたけどミサイルなんか打ち込まれたらひとたまりもない!強引に二人の手を引いてVF-171に背を向けて駆けだす。思えばなんでVF-171は暴れてるんだ?仮にこの世界がマクロスの世界だとしてあの機体は軍の正式機のはずだ。見境もなく暴れる軍人なんかいてたまるか。

 

 

 飛翔音、爆発の轟音。耳がいかれそうになる。全力で走りながら周りを見渡すと他にもリガード、グラージなどの兵器が暴れまわっていた。建物はもはやがれきとなり原型をとどめているものは存在していないだろう。走る、走る。途中で人とすれ違ったが彼らもパニック状態で逃げ回るばかり、極めつけには…

 

 「■■■■■■■っ!?■■■■■■!■■■■■■!」

 

 「はっ…はっ…何言ってるんだろう…っ!?」

 

 「ハァ、分かんねえ。ハァ、ヒマリ、ツムギ大丈夫か?」

 

 「…フゥ…ハァ…」

 

 言葉がわからない。英語とかフランス語とかイタリア語とかそうじゃなくて、言語の根源から違う言葉だ。周りにいる人の口から出る言葉が理解できない俺たちは彼らの逃げる方向に合わせることにした。走りっぱなしで息が苦しいし、打ち付けた全身が痛い。二人も限界が近いようで特に小柄なツムギは体力もそう多くない。もう言葉を話すのすら難しいほどに消耗している。大きなコンテナを曲がる…やばいっ!リガードが目の前に!

 

 「……あぁっ…!」

 

 「…ひぃ、うっ…!」

 

 「くっそおおお!」

 

 動くものはみな敵と思っているのかリガードは完全に俺たちをロックオンし銃口を向ける。逃げる時間すらないし、ヒマリとツムギは完全に恐怖で固まってしまった。唯一動ける俺が二人を押し倒して覆いかぶさる。撃たれたら痛みも感じる間もなく蒸発してしまうだろう。俺の薄い体なぞ盾にもならない。でも、少しでも恐怖が紛らわせられるなら、行動しない理由はない。ぎゅっと目を閉じる二人をきつく抱きしめて俺も覚悟を決める。どうか、二人が生き残れますように…!

 

 

 轟音と同時に俺の意識が消え…ない?大きな影が俺たちを覆い、聞こえるのは何かが弾かれる音と軽快な音楽。目を開けて見上げるとそこには白と緑色をした巨人がバリアで俺たちに降り注ぐ弾丸を受け止めているところだった。一目見てわかった。あの巨人の名はVF-31「ジークフリード」そしてその機体が来たということは

 

 『■■■■■■■ ■■ Walküre ■■■■■♪』

 

 単語だけ拾えた。Walküre、つまりは戦術音楽ユニット「ワルキューレ」、マクロスΔに登場する歌姫たちの名前。弾が止んだ一瞬の隙をついて両手にナイフを持ったVF-31がリガードの足を切り裂きダルマにして完全に動きを止めてしまう。なんて、鮮やかな手際。俺がガンプラバトルで操縦するバルキリーとは雲泥の差と言える。あれが、本当の可変戦闘機の動き…!緊急事態なのを忘れて見入ってしまった。そして体を起こして二人を開放する。上半身を持ち上げて座った二人が無事なのを確認して本日何度目かわからない安堵の息を吐いた。

 

 軽快な音楽が鳴り響く。どこからか響く高らかな歌声、壊れかけの建物にプロジェクションマッピングされたワルキューレのロゴ、そして投影されているのはやはり見覚えのある人物たち。ブーメランのような形をしたデバイスがあたりを飛び回っている。バトロイドのVF-31は俺たちの方をちらりと見るとすぐさまガウォークに変形して空へ舞い上がる。そうだ、まだここは戦場のど真ん中なんだ。逃げないと。

 

 「二人とも、まだ走れるか?」

 

 「うん、大丈夫。アルトくんこそ、怪我…」

 

 「…私たちより、アルトが心配。だって…」

 

 「俺はいいから!逃げれるなら逃げるぞ!後は何とかなるって!」

 

 俺の空元気を察したのはわからないが二人もこくんと頷いてまた走り出そうとする。リガードの背面が開いてゼントラーディの男性が現れた。腰につけた拳銃を抜き放ち何事か喚いている。俺たちからしたらあの拳銃ですら大砲と同義だ。彼は狙いを変えたわけではないのか、俺たちに向かって銃口を向ける。既に走り出した俺たちに向かって連続で発射される銃弾、幸い狙いがぞんざいなのか当たらないで済んでいるが…!

 

 「あっ!」

 

 「ツムギ!」

 

 「ツムギちゃん!」

 

 疲労の限界がきたのかツムギが足をもつれさせて転んでしまった。足が止まった俺たちに向かって拳銃が火を噴く。すんでのところでブーメランのような端末「シグナス」がピンポイントバリアを展開して俺たちを守ってくれた。歌声が近くまで来ている。そう思った瞬間、すたっと俺たちの隣に誰かが着地した。限界が来つつある体に言うことを聞かせてそっちを見ると歌いながらシグナスを操作している女性、赤い髪に垂れ気味な青い瞳をした女性が心配そうに俺たちを見ていた。彼女は…カナメ・バッカニア。ワルキューレのリーダーでマネージャー。ゼントラーディの男性は彼女の歌が聞こえた瞬間に動きを止めて、力を抜いた。

 

 やっぱり、ヴァールなのか?そうだとしたらこの世界が俺のいたガンダムビルドファイターズの世界ではなくマクロスΔの世界にアリスタの力で移動したということが確定的になる。完全に動けなくなった俺たちを守るためなのか彼女は動くことなく歌いながらシグナスを操作し続ける。降り注ぐ弾丸の雨から俺たちを守る彼女。歌の歌詞はわからないけどリズムは同一、擦り切れるほど聞いた「恋!ハレイション THE WAR」の音楽。次第に爆発音や銃の射撃音も聞こえなくなり聞こえるのは彼女たちの歌だけになる。

 

 そうして、戦闘音が完全に静かになった時、音楽と歌が止んだ。俺たちの近くにいた彼女…カナメさんの近くに衝撃を全く感じさせないほど静かに降り立った黒のVF-31…コックピットを開けたその中から出てきたのは長身の男性だ。ヘルメットで顔がわからないけど俺の知識が間違っていないのなら彼がカナメさんのバディであるメッサー・イーレフェルトのはず。もう完全に何が何だか分からない俺たちが身を寄せ合っているとカナメさんが腰を折って俺たちと目を合わせてくれた。

 

 「■■■■?■■■■■■■■■■■■?」

 

 やはり、言葉がわからない。通じてないのが向こうも分かったらしく困った顔をしている。とりあえず言葉は伝わらずともジェスチャーは伝わるだろうという考えのもとぺこりと頭を下げた。そうすると彼女も言わんとすることは分かったらしく笑ってくれた。そうすると彼女は爪につけているデバイスで空間に画面を投影して何やら話している。そうしていると他のデルタ小隊のVF-31に加えて残りのワルキューレのメンバーも俺たちのもとに集まってきた。被害者は他にも山ほどいるはずだ。新統合軍に任せるのならばすでに撤収するはず。俺たちを囲む必要はない。もしかして、俺たち犯罪者扱い?

 

 いや確かに突然現れて(不法フォールド&不法入星)逃げ回った(混乱の誘発)りしたけど…言い訳できないじゃん。不可抗力だとしても。真っ青になった俺を見てまた心配そうな顔になったカナメさん、何も反応しないメッサーさん。同じく心配そうなグラマラスなボディにピンクのツインテールなマキナ・中島、興味深そうな目で俺たちを見る緑色のショートヘアで小柄なレイナ・プラウラー、我関せずな紫と白が入り混じった不思議な色の長い髪をした美雲・ギンヌメール。この4人しかいないってことはまだ主人公であるハヤテ・インメルマンとヒロインであるフレイア・ヴィオンは加入してない、のかな?いやそんなことはどうでもいいか。牢獄とかに入れられないといいなあ。

 

 とりあえず、3人で頷きあって両手をあげたら、全力で首と手をぶんぶんと否定された。バトロイドでもそれやるって器用ですねチャックさん…。犯罪者扱いが違うなら何だろう、と思っているとワルキューレ用らしいVTOL機が降り立った。ドアが自動で開く。ああ、帰還ポイントがここだったのね。お邪魔してすいませんでした。助けてくれてありがとうございます。そう思ってると体が浮いた。何事!?と首を動かすとメッサーさんが俺を軽々と持ち上げたところだった。ヒマリはマキナさんが、ツムギはカナメさんがそれぞれ持ち上げている。そして頭の上に疑問符を浮かべた俺たちをぽいっと軽い感じでVTOL機に入れるとメッサーさんは出ていきワルキューレは乗り込んできた。

 

 体につけっぱなしだった荷物を外され、予備のシートらしき椅子にポンと座らされた俺たち。抵抗する力は残ってないのでされるがままである。不安そうなヒマリをマキナさんがぎゅっと抱きしめてからシートベルトを装着、ツムギはカナメさんに頭を撫でられて困惑気味だが同じくシートベルトを着けられた。俺もぽかんとしながら見様見真似でシートベルトを着ける。困惑している俺と美雲さんの目が会った。彼女は俺に微笑みかけると片手でワルキューレのハンドサインを作ってくれた。ファン根性よりも今は困惑が勝る。

 

 ワルキューレもシートに座ってベルトをつけると自動操縦らしいVTOL機が飛び立った。窓の外でVF-31も離陸しているのが見える。そこで、緊張の糸が切れてしまったのかどっと疲労ともう少しで死ぬところだったという恐怖が同時に襲ってきた。過呼吸一歩手前の呼吸を無理やり抑え込んでいると唐突に目の前が暗くなる。意識が持っていかれる。起きた時、ヤジマの研究所に戻ってるといいなあ、とだけ思って俺の意識は消えた。




はい、1話完結じゃなくて続きます。作者頑張ります。

 一応予定としてはマクロスΔ編を書いた後本編こぼれ話やビルドファイターズトライ突入前の話、余裕があったらトライの話もこっちで書きたいと思います。よろしくお願いします。s


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異世界コミュニケーション

 2話目です。本編の方と同時更新してますのでよかったらどうぞ


 鈍い痛みで目が覚めた。頭がぼんやりする。全身痛くないところがない、その痛みで徐々に意識が鮮明となった。思わずバッと起き上がってしまい走った痛みに悶絶する。周りと見ると、病室のようだ。白いシーツに簡素なベッド、消毒液の匂い。そして、見慣れない文字のドアプレート。どうやら都合よくヤジマの研究所に戻ってきたというわけではないらしい。

 

 そしてハッとなる。ヒマリとツムギは!?と周りを慌てて探すと隣にベッドが二つあり、そこで横たわってた。規則的に胸が上下しているので寝てるだけのようだ。とりあえず、よかった。荷物もベッド脇に置かれている。多分、中を見られてるんだろうけど。俺のバルキリーのプラモやヒマリのクァドラン、ツムギのヅダも見られてるに違いない。どうやって説明するか…それ以前に言葉が通じるのか?マクロスはどの作品も正史を元にしたフィクションだ。知ってる内容がどこまで真実かすら曖昧。しかもΔの舞台はそんな銀河の端っこだ。地球からどれほど遠いか分かったものじゃない。

 

 そもそも本当にΔの世界なのか?疑い始めたらきりがないけどワルキューレやVF-31がある時点でそうだと断定してるだけで確信はない。登場人物も推定そうだと外見で判断しただけで名前違ったら俺が持ってる知識は意味をなさないだろう。そもそも、今この状況がわからない。ケイオス、つまりワルキューレの所属する組織は民間の企業だ。金を積まないと動かないのに見るからに怪しい子供を助けるのはおかしくはないだろうか?いや、確かに彼らの任務はヴァールの鎮圧&救助であってこの状況も仕事かもしれないけど…後始末は統合軍じゃないか?だめだ、考えれば考えるほどドツボにはまってきた。

 

 俺が頭を抱えているとドアが開く。思わずそっちに目を向けるとそこにいたのはケイオスの制服に身を包んだカナメさんとスルメを咥えた壮年の男性おそらくはデルタ小隊の隊長アラド・メルダース。やはり、戻ってきてはいなかったか。それでも衝撃が大きかった俺がフリーズすると俺が目覚めてるのを確認してカナメさんはほっとしてるし、アラドさんも顔が緩んだ。つかつかと二人が俺のベッドの近くまで来るので体を完全に起こす。

 

 「■■■■?■■■■■■■■■■■■。■■■■■■」

 

 カナメさんが何事か話してくれたがやはりわからない。頷くこともできないので困惑した顔をしている俺を見て二人も困った様子だ。そうだよね、言葉通じないと困るよね。でも、とりあえずこれだけは言わないと

 

 「助けてくれて、ありがとうございました。通じないかもですけどお礼を言わせてください」

 

 そう言って俺は頭を下げる。そうして顔を上げると二人は顔を見合わせて何事か話し出した。そうして話が終わったのかアラドさんが急いだ様子で部屋を出ていく。そして残ったカナメさんが椅子に座る。こっちをじっと見る彼女、無言でなんだか気まずい。というか直視できない。ワルキューレが目の前にいる。転生する前に何度も聞いた歌声の持ち主がそこにいた。冷静になってしまった今だからこそマクロスファンとしての顔がむくりと顔を上げたのだ。何というか、とんでもねえ美人だな!こりゃ人気になるわ!というか俺気絶する前、生でワルキューレの鎮圧ライブ見てたんだ!最前線で!わぁい!…はあ、ダメだ。無理やりでも何時ものテンションに戻ろうとしたけどやっぱりきつい。

 

 百面相してるであろう俺を微笑ましいものを見る目で見てくるカナメさん。申し訳ねえ変なもの見せて。あとで土下座する…って気づいたけど俺たち一文無しだ。治療代とか払えねえ。やばい。というかそもそもこの世界の戸籍どころか経歴すらない。やばい、ちゃんと説明しないとあらぬ嫌疑がかけられそう。何とかして意思疎通の手段を確立しないと。

 

 とりあえず気まずいので荷物の中身を確認しよう。もしかしたら何か売れるものがあって当座の資金にできるものが…プラモくらいしか思いつかん。いかん、あの世界に毒されているぞ俺。仮に戻る手段を探すにしても現在手詰まりだ。どうしようかな…プラモは無事、携帯も無事、工具も無事、スペアパーツはオシャカ…うん、とりあえずは大丈夫そう?あっ!ポケット!あった、アリスタ。これが唯一の手掛かりだ。なくなったらもう戻れないと思っていいだろう。絶対に無くさないようにしなければ。ごそごそと体をよじっている俺をカナメさんが止めてくる。多分怪我してるから無理すんなみたいなニュアンスでやんわりと肩に手を置かれたのでやめてもう一度頭を下げる。うーん言葉が通じないと不便。どうしよう。

 

 うんうんと俺が唸っているとアラドさんが戻ってきた。その手には耳にかけるタイプのイヤホンが。それを俺に渡してくる。疑問符を浮かべる俺にカナメさんが耳にかけてとジェスチャー。とりあえず指示通りに耳にかける。すると

 

 「おう、聞こえてるか坊主?」

 

 「大丈夫かしら?言ってることわかる?」

 

 「えっ!?あっ、はい。分かります。どうして…?」

 

 言葉が通じた、というか耳にかけたイヤホンから言葉が聞こえた。そして、俺が言ってる言葉も通じる。耳の機械のせいか?日本語で話して通じるなんて…!

 

 「よかったわ~。それ、通訳機よ。まさか銀河共用語じゃなくて日本語が飛び出してくるとは思わなかったもの。あってよかったですね、アラド隊長」

 

 「そうですね、カナメリーダー。日本語は使われなくなって久しい、何とか通訳機はあったが…さて、坊主。自分の状況は分かるか?」

 

 「あ、はい。突然あの場に落とされて、必死に逃げ回って…あなた達に助けられました」

 

 「ま、概ねそうだな。お前たち3人は突然あの場にデフォールド、つまりは空間を飛び越えてあの場にやってきたわけだ。で、ヴァール発症者が暴れてる戦場のど真ん中で右往左往してたって話だ。お前さん、名前は?」

 

 「アルトです。サオトメ・アルト」

 

 「…偽名か?」

 

 「証明しようがないですけど紛れもなく本名です。そっちがスズカゼ・ヒマリとイロハ・ツムギです」

 

 「そういうことにしておこう。なんであの場に現れたかはわかるか?」

 

 「…よく、分かりません。あの、ここってどこなんですか?」

 

 質問攻め、というか怪しさマックスだから事情聴取といったところか。そして名乗ったら偽名扱いされた。つまり、バジュラ戦役において早乙女アルトはラグナにまで名前が轟くほど有名なパイロットになったということになる。彼が帰ってきているのか、それともそもそもクイーンと一緒にフォールドしてないのかはわからないけど。あれ俺怪しさのバーゲンセールじゃね?言葉が通じてもスパイ扱いされそう。

 

 「ここはケイオスが所有するマクロス級、マクロス・エリシオンの左腕になる空母アイテールの医務室だ。ああ、そっちの女の子二人は無傷だぜ。お前さん、頑張ったな」

 

 「あの…ケイオスって何ですか?」

 

 「知らないのか?」

 

 「はい。俺のいた場所では聞いたことがないです」

 

 「ケイオスを知らないなんて…じゃあ私たちの事も?」

 

 「えっと、はい。有名なんですか?」

 

 「おう、戦術音楽ユニット「ワルキューレ」今を時めく超人気グループさ。彼女がリーダーのカナメ・バッカニアさん。俺はデルタ小隊隊長のアラド・メルダース」

 

 「もう、必要以上に持ち上げないでくださいアラド隊長」

 

 それでケイオスとワルキューレについての話を詳しくされた。知ってる知ってるけど直接知ってたわけじゃないので嘘はついてない。ビルドファイターズの世界ではワルキューレどころかケイオスも、マクロスすら大部分は俺の頭の中にしかない。それに、今から伝える話が信じてもらえるかどうかすらわからない。

 

 「じゃあもう一つだけ尋ねるぞ。飛ばされる前には何をしていた?」

 

 「はい、研究所にいました。所属している企業の友人から誘われてちょっと遊びに行ってたんです。そこで、研究対象の鉱石が光って、気づいたらあそこに」

 

 「鉱石?もしかしてこれかしら?」

 

 「待て、そもそもなんで企業に所属なんかしてるんだ?お前さん子供だろ?」

 

 カナメさんが空間に投影した画像を見せてくる。紫色の宝石、おそらくフォールドクォーツ。俺は首を振って自分の携帯で写真を探す。確か撮ってあったはず。あった。緑色に光る巨大アリスタの写真が。

 

 「あの、とりあえず俺がいたところの話について全部お話します。信じがたい話かもしれませんけどとりあえず聞いてください」

 

 「わかった。聞こう」

 

 とりあえず俺は抜粋して必要そうなことを話した。世界を超える石アリスタ、副産物のプラフスキー粒子、ガンプラバトル、なぜ企業所属なのか、そしてマクロスは元居た場所では俺が作った作品群であるということ。薬でもやっていると思われそうだが事実だし、年号がそもそも違う。デルタの世界は西暦2067年、俺たちの世界は2020年代、つまり彼らの世界そのままの話なら第一次星間大戦が終わって10年後なのだ。仮にこの世界がアニメそのままならばという注釈が付くけど。

 

 「模型を動かして戦うガンプラバトル、それを支えるプラフスキー粒子とアリスタ…カナメリーダー、どう思う」

 

 「辻褄はあってます。彼らを保護した際に観測された未知の粒子もそれで説明が付きますし、フォールドクォーツとの類似点もあります、が…」

 

 「俄かには信じがたい、か」

 

 「…ええ。ごめんね、信じてあげられなくて」

 

 「いえ、荒唐無稽なのは分かってます。俺も、自分の頭の中の世界が再現されているようで、信じられないですから」

 

 「そもそもなんでその研究所に行ったんだ?何を聞かれるために?」

 

 「世界大会に出場した友達が研究者だったんです。プラフスキー粒子の謎を知りたがっていて、手掛かりが欲しかったみたいで。俺たちはバトルしに行くつもりだったんですけど」

 

 「何か証拠があったら、信じられるんだがな…」

 

 ある。アリスタそのものが俺とヒマリとツムギに一つづつ。でも、これを渡してしまったら俺たちが帰れる可能性が限りなくゼロに近づく。持っていてもしょうがないのは事実だけど渡すのはもっとやばい。困ったもんだ…見せるだけなら、いいか?

 

 「…それなら、これを」

 

 「何かしら?宝石?まさか…」

 

 「はい、アリスタ…の欠片です。無傷で返してくれると約束していただけるならいったん預けてもいいと思ってます。その石が今の俺たちと元の世界を繋ぐ唯一のものなので、絶対に無くしたくない」

 

 「…どうする?」

 

 「いったん、預かります。結果を問わず必ず返却するわ。とりあえずあなた達の素性はわかったから、暫く安静にしててね?特にアルト君は無茶しすぎ。もう少しで大怪我するところだったんだもの」

 

 「そう言ってやるなカナメさん。名誉の負傷ってやつだ。男としちゃあ、あんなの見せられたら信用の一つもしてやりたくなるがこっちも仕事なんでな。すまん坊主」

 

 「いえ、こっちが謝らなきゃいけないくらいなのにそんな…本当にありがとうございました。あの、それでなんで俺たちを連れて帰ったんですか?」

 

 「ん?何でって…怪しいからだが?」

 

 「あの、お話を聞く限りあなた達は警察や軍ではないはずです。それこそ軍に任せたりとか、星を移動するならその場に残してきてもいいはずなのに…」

 

 俺がそれを問うとカナメさんはそんなことを聞かれるとは思ってなかったみたいな驚いた顔を、アラドさんはにやりと面白い玩具を見つけたみたいな顔をしたスルメを噛み千切って飲み込み、話し始めた。

 

 「鋭いな、軍人向きだ。もうちょっと伏せておくべきだと思ったんだがな…カナメリーダー」

 

 「はい。貴方たちを保護したのは理由があるの。これを、って言っても分からないよね?えっとね、貴方たち、フォールドレセプターを持ってるみたいなの。特に、そっちの二人」

 

 「フォールドレセプター、さっきのお話に出てたそれを俺たちが?」

 

 「そう。ヒマリちゃんとツムギちゃん、でよかったかしら?彼女たちのフォールドレセプターは常にアクティブ状態で…歌ってなくても、ヴァールの予防効果が出るくらいの生体フォールド波が出てる、今もずっと」

 

 「それって何か悪いことじゃ…?それに、俺の世界にフォールド細菌は…ないはずです」

 

 「それは私にはわからないけど…彼女たちの状態は悪いものではないの。多かれ少なかれフォールドレセプターはアクティブになるものだもの。害はないはずよ。でも極めて珍しい状態だから保護したのは事実なの」

 

 「俺たちがいない間、エリシオンでヴァールが発生しても困るからな。言い方悪いが空気清浄機みたいなもんだ」

 

 「…複雑です。あの、それで俺たちは、どうしたら?」

 

 「詳しくは後ろの二人が起きたら話そうと思うが…どうだ?帰れるまでうち(ケイオス)で働いてみるのは?」

 

 「…元の世界では俺はちょっと手先が器用なだけの子供です。役に立てるとは思えません」

 

 「大いに結構。実は訓練後にペイントまみれになったバルキリーを洗ってくれる奴が足りなくてな。あと、汚れた執務室の掃除とか、な」

 

 「もう、それはアラド隊長がきちんと掃除しないからです!ごめんね、とにかくあなた達はケイオスラグナ支部が保護することになるから、迷惑とかそんなこと考えずに、これからの事をかんがえて、ね?じゃあアラド隊長?お仕事に戻りましょ」

 

 「あ~~~…出来りゃもうちっとこいつの話だな…」

 

 「サボったらだめですよ」

 

 俺が口を挟む間もなく彼らはアリスタを持って出ていってしまった。演技かもしれないけど彼らの優しさに胸にこみあげてくる何かがあった。俺は何も言えなくて申し訳ないという気持ちと感謝の気持ちを込めて彼らが出ていったドアへ深く深く頭を下げるのだった。

 

 深く眠った二人の寝顔を見て、俺はこれからどうすべきか、どうしたらヒマリとツムギの二人を無事に元の世界に戻してやれるかを改めて考えるのだった。




 いやぁ、番外なのに書いてて楽しいです。本編を完結させたらこっちに注力したいですね


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相談事と今後の話

 ふと、目が覚めた。どうやらあの後考え込むうちに寝てしまったようだ。宇宙船の中だからか時間感覚がわからないし壁に掛けてあるデジタル時計も読むことができない。枕元にはヒマリとツムギの分の通訳機も用意されていた。ありがたく使わせてもらうとしよう。

 

 「うう、ん…」

 

 「うう~~おかあさ~~ん、まだ眠いよ~~」

 

 「誰も起こしてないんだけどな。おはよう、二人とも」

 

 「…おはよ、アルト…アルトっ!?怪我!怪我大丈夫!?」

 

 「怪我?け~が~…あっ!そうだよアルトくん大丈夫なの!?」

 

 「ああ、大丈夫だ。きちんと治療してくれたみたいだしな。それで、今の状況を説明するぞ」

 

 俺が体を起こした衣擦れの音に反応して睡眠が浅くなっていたらしい二人の目が覚めたようだ。俺を見て一発で目が覚めた二人がそれはもう抱き着かんとせんばかりの勢いで心配してくれるので大丈夫と言葉を返してやると二人は一気に力が抜けたようでへにゃへにゃとベッドの上に沈んだ。よかったよ~~なんていうヒマリと頷くツムギを見て俺もちょっとだけ気分が晴れた。

 

 二人が落ち着いたのを確認してとりあえずあったことを話す。ケイオスの事、カナメさんたちワルキューレのこと、俺たちが今置かれてる現状について、俺が大体の事を説明してアラドさんと話し合ったこと。そして勝手にいろいろ喋ったことを謝って、通訳機を渡した。

 

 「とりあえず、こんなところだ。多分、アリスタが戻ってくるまではここにいられると思う。帰れるかどうかは…正直分からない。ごめんな」

 

 「ううん、アルト君が謝ることじゃないよ。何度も庇ってくれて、ありがとね」

 

 「…ありがと。でも、もうやらないで。お願い。アルトが死んじゃったら、私…」

 

 「わかんねえ、できるなら約束したいけど、もしまたああいうことがあったら同じことをすると思う。だから、悪い。約束できない。とりあえず、カナメさんたちにどうするか聞かれると思うから、決めよう」

 

 「…うん」

 

 「わかったよ」

 

 俺の強い言葉に説得できないことを悟った二人が話題の切り替えに乗ってくれた。二人が俺のベッドの上にやってきて膝を突き合わせてっていうと若干狭いけどとりあえずの方針の話し合いをする

 

 「さっき聞いた話だと、俺たちにはカナメさんたちがヴァールシンドロームっつー病気に対抗するための抗体みたいなもの、フォールドレセプターを備えてるって話だ」

 

 「突然人が狂暴化しちゃうっていう病気だよね?私たちを助けてくれた人たちはそれを止める為に歌ってる?ってこと?」

 

 「らしい。詳しい話はちんぷんかんぷんだけど、レセプター所持者の歌がヴァールを鎮めるって解釈で合ってると思う。で、ヒマリとツムギ、お前らはそのレセプターが常時活性状態になってる珍しい状態らしい。健康上の問題は今のところないっていうけどな」

 

 「…アルトだけ仲間外れ。じゃあ、私たちは…実験動物?」

 

 「そんなことはないとは思うが…仮にそうだとしてもアリスタが戻るまでは逃げられない。いや、正確にはこの船が星につくまでは、か。それに金も、稼ぐ手段も何もかも真っ白だ。八方塞がりたぁこのことだな」

 

 「アルトくんは、どうすればいいと思う?」

 

 「俺は、そうだな…実はケイオスで働く、雑用しねーかって誘われた。多分全員含めてだと思う。渡りに船っていうわけじゃないし都合がよすぎるけど、悪くない話じゃないか?」

 

 「…でも私たち、アルバイトすらしたことない」

 

 「どうしよう、アルトくん…うっ、うぁぁ…」

 

 「…ひぐっ…アルト…帰りたいよ…」

 

 「俺もだよ。大丈夫だ、何とかなる、してみせる。とりあえず今は吐き出しとけ、すっきりしたらまた話そう」

 

 「うんっ…」

 

 「…ん…」

 

 いろいろあって落ち着いてもやはり限界だったらしい二人の瞳からポロポロと涙がこぼれる。ぐしぐしと二人の頭をなでてやると二人してぎゅっと抱き着いてきた。震える体を俺も抱きしめ返してやって軽くたたいてあやしてやる。とりあえず、俺のやることは徹頭徹尾決まってる。何としても元の世界に戻ることだ。最悪、この二人だけでも戻すことができれば…!いや、俺も、元の世界に戻りたい。やり残したことは山ほどあるし、親友とだってまた話したい、タツヤさんとやりたいこともあるし、カイザーさんともまだやれてないことがあるんだから。

 

 暫く震える二人の顔を見ないように慰めていると、静かにドアが開いた。ドアの先にいるのは、カナメさんとアラドさん、そしてソフトモヒカンの長身の男性…メッサーさんだ。メッサーさんは表情一つ変わらないがカナメさんとアラドさんは俺たちの状態をみて流石にまずったという顔を見せた。俺が耳に通訳機をつけてペコリと頭を下げる。

 

 「あー…すまん。今大丈夫か?」

 

 「すいません。大丈夫です。二人はまだ無理そうなので俺が話します。あと、まだどうするかは決めてないです、ごめんなさい」

 

 「いやいやいや、そんな早くに結論出さなくても大丈夫だよ!?えーっと…あなた達の処遇が決まったのでお知らせにきた、んだけど…」

 

 バツの悪そうな顔をしたアラドさんと言葉が段々と尻すぼみになっていくカナメさん。非常に気まずいんだけどヒマリとツムギの心情を考えるなら全く責められないのも事実。俺は、元はいい年した大人だ。小学生中学生やってると周りと体に引っ張られて子供に戻るけど今この状況で必要なのは冷静な判断、子供じゃいられない。二人を安心させてやる必要があるんだから、俺は泣かなくていい。前だけ向いていれば、それでいい。

 

 「はい、すいませんお手数おかけして。どうしたらいいですか?」

 

 「とりあえず、この部屋の中なら自由にしてもらって構わない。もし外に出たいときは、俺かこいつに頼め。メッサー、ん」

 

 「メッサー・イーレフェルトだ」

 

 「そんだけかよ…」

 

 「えーっと、メッサー君は私のバディ、相棒なの。怖いかもしれないけどいい人だから安心してね?あとで他のデルタ小隊とワルキューレのメンバーも来るって言ってたから…」

 

 そういうとカナメさんはメッサーさんの方を見る。変わらずの仏頂面、名前だけの自己紹介で何というか、高い壁を感じる。アニメでの彼もそうだったけどこっちでもいっしょなのだろうか…?それに、暇なのだろうか?監視カメラでも付けてほっておくのが筋だと思うのだけど…

 

 「アルトくん、これどうやってつけるの?」

 

 「…こう?」

 

 どうやら人が来たことで気持ちを切り替えることができたらしい二人が訪ねてくるのでその耳に通訳機をつけてやる。そうして深呼吸して息を整えたヒマリと完全に人見知りが出て俺の後ろにびゃっと隠れてしまったツムギがそれぞれ挨拶をする。

 

 「その、御見苦しいところを見せてしまってごめんなさい。スズカゼ・ヒマリです。助けてくれてありがとうございます」

 

 「…イロハ・ツムギ、です。ありがとう、ございました。」

 

 「気にするな、任務だ」

 

 「メッサー、お前…」

 

 「あっと、えとえと…お腹、空かない?そろそろ食事の時間だし食堂に案内するわ」

 

 メッサーさんの余りにそっけない言葉に大きくため息をついたアラドさん、カナメさんはさっきまで泣いていた二人がもう一度泣いてしまわないか心配してわたわた慌ててくれる。かわいい、これはファンが増えるのが頷ける。ヒマリもツムギもそんな姿を見てちょっと警戒を解いたらしい。少しだけ体の力が抜けた。そうして、確かに俺は腹ペコだってことを思い出した。とりあえず荷物、は置いておいていいか。アリスタだけ忘れないように二人に言ってベッドから立ち上がった。メッサーさんでっかいな…ツムギとの身長差やばいよ。だってツムギ135㎝しかないもん。出会った時から全く伸びてないもん。ヒマリは147㎝、俺は150㎝、まだ成長期来てねーんだよな。みんなでかいわ。

 

 「…マキナが心配かも」

 

 「きゃわわってか?…ありうるかもな」 

 

 それぞれ立ち上がった俺たちを上から下まで眺めて、カナメさんがそう漏らした。うん?うん…?確かにヒマリとツムギは可愛いけど、マキナさんが心配?彼女メカにしか興味ないんじゃない?あとメッサーさん、お願いだから何か言ってほしい。それか表情筋を仕事させてほしい。ツムギがじろっと目線をやられて飛び上がらんばかりにびくついて俺の後ろに隠れたから。その鋭い瞳は…何となくカイザーさんを思わせて俺は嫌いじゃないけど。嫌悪感とかそういうのじゃなくてただ視線をくれただけっぽいし。

 

 ツムギがいつも通り首をふるふる振って髪で顔を隠す。やっぱりこの状態が落ち着くらしい、寝てるときは口に行かないようにピン使ってるのにな。カナメさんは何となく何か言いたげ。もったいないとか思ってるのかな?

 

 「じゃ、行くぞ…クラゲのスルメいるか?」

 

 「アルトくん、クラゲってスルメになるの??」

 

 「…わからん」

 

 まずスルメってイカじゃねえのという突っ込みはさておき、クラゲらしいスルメを新しくかじりだしたアラドさんがドアを開け、俺たちは初めて部屋の外に出ることになるのだった。

 

 

 

 「ここが食堂よ。メッサーくん、どこ行くの?」

 

 「俺はもう食事は済ませているので、フライトログの整理をしてきます。それでは」

 

 「そうなんだ。また今度食べようね」

 

 「あいつは全く…ごめんなさいねカナメさん。お前らも、悪いやつじゃないんだ。普通に接してやってくれ」

 

 食堂についた途端、メッサーさんは仕事は終わったとばかりに踵を返してどこかへ行ってしまった。アニメでもそうだけど、本当に一緒に食事したりしないんだ…それを少し寂しそうに見送るカナメさんと全くと言わんばかりに頭をガリガリかいたアラドさんが食堂に入っていく。俺たちも入っていくが、入った瞬間視線が一気にきた。多分、俺たちみたいなのが捕虜待遇じゃない状態でこんなことしてるのは相当珍しいんだ。ツムギは完全にビビっちゃったし、社交性が高いヒマリですらも俺の服の袖をつまんで後ろに隠れている。アラドさんがため息ついて手をひらひらと振ると視線が一気に散った。すげえ、カリスマだ。

 

 「あっカナカナ!それにアラド隊長も!んっ!?起きたんだ!よかった~~~!」

 

 「リーダー、隊長。お疲れ」

 

 「マキナ、レイナ!貴方たちもお昼?」

 

 「ジクフリちゃんの整備がひと段落したからね~~☆」

 

 「クラゲ、食べたい。ペコペコ」

 

 「ラグナじゃねえから生クラゲはねえぞ」

 

 「ん、分かってる。君」

 

 挨拶をしてたレイナさんが突然、俺に声をかけてきた。彼女はかつかつと足音を立てて俺たちの方にやってきた。マキナさんもだ。びゃっと後ろに隠れたツムギはともかくとしてヒマリまで俺を盾にするのをやめていただけないでしょうか?

 

 「私、レイナ・プラウラー。よろしく」

 

 「マキナ・中島だよ~大きな怪我無くてよかったね!わからないことがあったら何でも聞いてね~」

 

 「サオトメ・アルトです。助けてくれてありがとうございました。よろしくお願いします」

 

 「スズカゼ・ヒマリです。ありがとうございました。」

 

 「…イロハ・ツムギ、よろしく、お願いします」

 

 「どうしたの~レイレイ?」

 

 「シンパシーを感じた、ズキズキ」

 

 「ふふっレイレイなりのきゃわわ☆、だね!」

 

 俺の後ろから挨拶だけして隠れたツムギに何か感じ取ったらしいレイナさんがそう呟く。よくわからないが似た者同士、なのか?いや方向性がわからん。何を感じ取ったんだろうか。マキナさんが良かったね~と言ってレイナさんを引っ張っていって席に座った。アラドさんが取ってくるから待ってろと言って俺たちも座らされる。非常に申し訳なかったがここでうろちょろしても邪魔なだけだろうからおとなしくしておこう。

 

 「そういえば、貴方たち何歳なのかしら?」

 

 「俺とヒマリが12でツムギが13です」

 

 「そうだったの。しっかりしてるからもっと上だと思ってたわ」

 

 「そういえば~、さっき聞いたばっかりだけどアルアルの世界って模型を動かして戦わせるんだよね?例えばどんなの?」

 

 「アルアル…いえ、はいあの…口では説明しづらいのでこれを」

 

 唐突につけられたあだ名に俺が面食らいながら携帯に保存してるバトルの動画を選んで流す。流したのはチョマーさんVSツムギの動画。ヅダがビームの弾幕を躱しながら目にもとまらぬ速度で加速しながらドラグーンを落としてる所だ。それを見た瞬間マキナさんとレイナさんの顔つきが変わる、完全にメカニックとハッカーのプロとしての顔つきだ。画面が小さいのにもかかわらずそれを食い入るように見ている。

 

 「あっそれチョマーさんとのやつ」

 

 「…チョマーさん、強かった。楽しかった」

 

 「これ、本当に模型?」

 

 「模型ですよ、今は部屋に置いてきてますけど持ってきてますから」

 

 「ねえ、あとで見せてもらっても、いい?」

 

 「私もみたいかも~☆思ってたよりすごかった!」

 

 「…うれしい」

 

 ストレートに褒められたのが嬉しかったのかツムギがはにかんだ。ビルダー、ファイターとして機体をよく見せてほしいというのは最上級の誉め言葉に近い。そんなことを知らない人たちから出た言葉は、全くのアウェイであってもやはりうれしいものなのだ。




番外編ばっかり更新してすまない…!書きやすいんだ!

 でも話が進まないね。申し訳ない。


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異世界食堂 クラゲはでません

 ちょっとクオリティが低いですが次話へのつなぎなんで目をつぶってください




 嬉しそうにはにかんだツムギ。この世界に来てから初めての笑顔に安堵した。瞳が髪で隠れていても笑ったとわかったのか、レイナさんは微笑み、カナメさんもほっと一息ついた。代わりにマキナさんは

 

 「きゃ、きゃわわ~~~!!」

 

 「へうっ!?」

 

 机を飛び越えてツムギに抱き着いた!?ぎゅむぅっ!と熱烈なハグを受けたツムギは逃げる間も与えられなかったからかピシッとフリーズして動きを止めてしまった。あっちゃーという顔をしたカナメさんが申し訳なさそうに口を開いた。

 

 「ごめんね、マキナってかわいいものに目がないの。気に入られたってことだから、悪く思わないでね?」

 

 「ついでに小さいものも好き。ツムギ、ドストライク。スリーアウト」

 

 「な、なるほど…?アルトくんどうしよう?」

 

 「すまん、ツムギ…!」

 

 「…ふみゅうううう!?」

 

 俺たちに見捨てられたことを悟ったツムギが再起動してジッタバッタと暴れているが流石は戦場で歌うワルキューレ、基礎体力からもう違う。意にも介さずハグを継続されてる。やがて満足したらしいマキナさんがツムギから離れるとつやつやした顔でテーブルを回り込んでレイナさんの隣の席に戻った。残されたのは口から魂が出そうな、いやもう出てるかもしれないツムギ。一気に体力を持っていかれた顔してる。

 

 「…アルトォォォ…」

 

 「おーよしよし、びっくりしたなー」

 

 泣きついてきたツムギを一通りあやしてやる。身内とそうじゃない人で反応変わりすぎでしょツムギちゃん?もうちょっとこう…何とかならんもんかね?ヒマリの相方扱いでデビューしちゃったんだしいつだって俺が一緒なわけでもないから困るぞー直さないと、帰ってからな。

 

 「…何やってるんだ?」

 

 「アラド隊長、その…マキナが…」

 

 「あー、ああ分かった。悪かったな」

 

 「…だいじょぶ」

 

 「ま、とりあえず腹ごしらえからだな。ほれ、アイテール食堂名物、海蜘蛛唐揚げ定食だ」

 

 「ちょっ!?アラド隊長!?それは…」

 

 「美味しいけど知らない人に食べさせていいものじゃない、隊長ダメダメ」

 

 目の前に置かれたのは、スープ、ご飯、おかずのセット。おかずは…細長い脚が8本ついた正しくザ・虫というフォルムの何かがカラッと唐揚げにされたものだった。あー、もしかしてアニメに何度か出てた虫っぽいやつか。郷に入っては郷に従えと言いますし、手を合わせていただきます。俺どころかヒマリやツムギまで躊躇なく海蜘蛛にかじりついた。いや、レイジに付き合っていろんなもの食べてるから今更虫ごときでぎゃーぎゃー言わんよ。最初は悲鳴を上げてたヒマリも静かに引いてたツムギも食わされた結果もう怯むことすらなくなったからな!

 

 「美味しいですねこれ。なんて言ったらいいんだろ…」

 

 「うーん、エビかな?でも濃厚だよね」

 

 「…カニとエビの中間」

 

 何の躊躇もなく食べ進める俺たちにアラドさんは豪快に笑って自分の分を食べだした。フリーズしていた他の3人も食事を始める。空腹も手伝ってかいつもよりご飯が美味しい。あっという間に器を空にした俺たち、見た目と違ってうまかったなー海蜘蛛。見た目はこう…足の長いタランチュラと言ったらいいだろうか?足の部分はサクサクカリカリで胴体の部分は濃厚な味をしていた。

 

 「意外とバイタリティ高いのね…私は初めて見た時は食べられなかったのに…」

 

 「カナカナの反応が普通だよ~」

 

 「友達にすごく食い意地はったやつがいて…付き合わされて色々食わされました」

 

 「蜂の子とかイナゴとか、虫系多かったよね」

 

 「シュールストレミングはやばかった」

 

 「…髪の毛に匂いが染みついた。思い出したくない」

 

 「意外とえぐいことしてる、ヤバヤバ」

 

 「シュールストレミングってあの罰ゲームに使われるいたずら玩具の匂いの一つだよね?食べ物だったんだ~~」

 

 「ホントに売ってる、銀河ネット通販で。でもマジ高。罰ゲームに使える金額じゃない」

 

 気になったらしいレイナさんが空中に投影された画面を見ている。裏側から見える左右反転したそれはどう見ても二度と思いだしたくない缶詰のそれで世界線が違ってもここに地球はあるんだなということを強く実感するものだった。アラドさんが食べ終えスルメをかじりだす。食後にスルメ…どんだけ好きなんだろう。逆に味が気になってきた。

 

 

 

 そうして食事を終えた俺たちは元の部屋に戻されることになった。結局のところ俺たちが不審者なのは変わらないしアリスタ以外のものは証拠にならない。日本語があった以上に地球には日本があるのだろう。なら俺たちが持っているものの全てに印字されている日本語はこの世界のものと大差ないはずだ。異世界産であると確定しているアリスタが一番の証拠なのは変わらない。

 

 「そういえば、すごく古い端末使ってる。空間投影式じゃなくてディスプレイ型なんて、レトロ」

 

 「俺たちの世界だとこの携帯が最新式なんですよ。西暦2020年代ですから」

 

 「それが一番信じられないんだけどな…お前さん他に何持ってきてるんだ?」

 

 「…荷物見てないの?」

 

 「おいおい俺たちは警察じゃなくてただの民間会社だぜ?そんな権限はねえぞ。有事とか戦時特例とかでもない限りな」

 

 「えーっと、携帯とプラモ、あと充電器と音楽端末かな?」

 

 「俺も似たようなもんですかね。違うのは工具くらいです」

 

 「…アルトたちと一緒。遊びに行っただけだから大したもの持ってきてない」

 

 「みんな模型持ってるの~?人気なんだね、その…ガンプラ、バトル?」

 

 「そうですね、世界大会があるくらいですから」

 

 「大会だと?模型を戦わせるのに大会までやってるのか」

 

 「第7回まで行われたんですよー。みんな本気で勝ちに来てたんです」

 

 割と和やかだ。表面上は、だけど。ヒマリとツムギは愛想笑いこそ見せているがやはり不安らしくあんまり突っ込んだ話をしようとはしていない。アラドさんカナメさんあたりは多分気づいたうえで何も言っていないんだと思う。こちらが話しやすいように聞きたいことを質問してくれているのがありがたい。

 

 そうして部屋につくと、レイナさんとマキナさんは帰る、というわけでもなく模型を見せてほしいとお願いされた。いいんだけど…見せるのは選ばないとダメかも。多分一番波風立たないのはヅダかな?ツムギを見ると彼女は分かったとばかりに頷いて荷物をごそごそした後ヅダを取り出す。大会で使ったヅダ・マクロスパックではなく彼女が改めて作り直したフルスクラッチヅダだ。もちろん空中分解機能付き、まあこの世界じゃ意味もないことだけど。

 

 「…私の、愛機です」

 

 「お~~~!きゃわわ!凄い完成度かも!」

 

 「ただの模型じゃない。こっちの模型とは雲泥の差、ヤバヤバ」

 

 「私にはよくわからないんだけど…そんなに凄いものなの?」

 

 「カナカナに分かりやすく言うと…このままおっきくしてデストロイドにしても大丈夫なくらい?」

 

 「それってとんでもないことじゃないかしら…?」

 

 「そのくらい、凄い。これなら戦えるのも納得。もしかして、全部手作り?組み立てセットみたいなもの使ってる?」

 

 「…フルスクラッチだから、全部手作り。でも、私よりアルトのほうがすごい」

 

 えちょっ!?ツムギさん!?そういう言い方したら俺のも見せる流れになるじゃん!?バルキリーしか持ってきてないんだが?いや、確かに食事の前に向こうじゃバルキリーとかは俺が創作したコンテンツってことになってるって説明はしたけど…見せていいのか?というか見せることである意味証拠になるのか?ダメだ、期待の視線、特にマキナさんの視線が眩しい。もしかしてツムギさんさっき見捨てたこと根に持ってらっしゃる?ええい、ままよ!

 

 「アルアルのも見せてほしいな~~」

 

 「ドキドキ、ワクワク」

 

 「お手並み拝見ってやつだな」

 

 「も~みんなして…無理しなくていいのよ?」

 

 あっかん!ハードルが際限なく上がっていく!カナメさんの優しさが優しさになってない。ここで引いたら空気が冷めてめんどくさいことになるじゃん?よし、もう素直になれ俺!プラモの出来だけなら誰にも負けないという絶対の自負を思い出すんだ!というわけで覚悟を決めた俺は荷物をガサゴソ漁ってケースを取り出しそこから一つのバルキリーを取り出す。俺が初めて作成した始まりの一機の片割れ VF-1を。それを見た瞬間にやにや笑ってたアラドさんが真剣な表情に変わる。

 

 「こいつは…バルキリーか!?」

 

 「ふおおおお、これはVF-1EXじゃなくて開発当初のVF-1!すごいよアルアル!」

 

 「よかったら手に取ってください。唯一他人に誇れるものなんで、どっから見てもらっても大丈夫です」

 

 「…ほとんど現行品と変わらねえな、口径まで一致してやがる。なるほど確かにこれは凄いっていうわけだわ」

 

 「ん…?ねえアルアル、もしかしてこれ変形する?ちょっとここら辺とか動きそう」

 

 「しますよ。こっちのVF-1がどうなのかは知らないですけど俺のだとこう変形します」

 

 そんなわけで俺はVF-1をガウォークへ、そのままバトロイドへ変形させる。マキナさんは食い入るようにそれを見つめてぶつぶつと難しい単語を呟いている。メカニック的な…と思ったけどもしかしてそれ稼働部位にかかる強度計算を暗算でやってらっしゃる?アラドさんは変形しきったVF-1を見て唸る様に

 

 「坊主、お前これ少し器用で済ませていいもんじゃねえぞ。マキナ、どう見る」

 

 「はい、今ちょっと計算してみましたけどこっちのVF-1と99%同じ設計です。というか誤差レベルでしか差異がないんです~。可変戦闘機って軍用だから民間に設計図なんて公開されてないのに…」

 

 「その端末が最新だというならハッキングでの盗用の可能性は限りなく低い。腐っても軍のコンピュータ、カチカチ」

 

 「えーと…つまるところどういうことなんです?」

 

 「お前さんが持ってるそのVF-1だがな、実物と形どころか変形機構その他もろもろが一致してるんだよ。その設計のまま大きくしてエンジンぶち込んじまえば飛ぶっつーことだ。こりゃ異世界ってのが現実味を帯びてきたな…」

 

 つまり、俺のVF-1は今この世界にある現行、というか当時のものとほぼ同じ形かつ同じ変形機構を有している、ついでに武装の縮尺の口径も一致していると。さらにさらにレイナさんが言うには一応の最新式である俺の携帯の科学技術を見るに軍にハッキングかけて設計図を盗むなんてことは不可能であり、それが俺の話の信憑性を高める結果になった…ってことでいいのか?わからん。

 

 「ちなみにだが…ハッキングなんてやってないよな?」

 

 「やってませんし言葉が通じない時点で文字も分かんないです。というかハッキングそのものすらできません」

 

 「だろうなあ…お前さんたちボロが出ねーからな。寝起きですら日本語だ、こっちのコンピュータ言語なんて知る由もないか」

 

 「ねえアルアル、メカニックになる気はない?結構才能あると思うよ!」

 

 「いや模型作りでそんなこと言われても…」

 

 「え?だってアルアル1からこのバルちゃん作ったんでしょ!?その時点で設計できちゃうってことだよー!」

 

 それもそうか。あれっ!?これもしかして結構やばいこと!?この世界じゃ一番メジャーな兵器である可変戦闘機を模型とはいえほぼ完璧に再現したってことだよな?確かに前世のデザインの丸パクリとは言え実際に図面におこして製作したのは俺だし…実際そこは俺でも自分で誇れる部分だと思う。

 

 「それはそうと…いやどっから見ても大したもんだ。メッサーが見たらなんていうかな」

 

 「絶対無言で何も言わない」

 

 「そんなことはないと思うよ?メッサー君バルキリー大好きだし…」

 

 「メサメサの表情の違いを見抜けるのはカナカナだけだよ~」

 

 「ええ~…そうかしら?」

 

 惚気かな?というかメッサーさん普段からあの鉄面皮なんだ…俺やヒマリ、ツムギといった不穏分子がいるから務めて無表情でいるのかと思ったらそんなことはないみたい。いやだってすごかったよ?話しかけるなオーラみたいなものは一切出てないのにもかかわらず威圧感ヤバすぎてよろしくお願いしますの一言も発せなかったもん。身長もでかいから見上げなきゃいけなくて首がいてーし。

 

 「そういえば、動画で出てた機体じゃないみたいだけどあれって持ってきてないのカナ?あっちの方も気になるよ~」

 

 「動画も一瞬だったし、最後どうなるかも気になる。ワクワク」

 

 「…アルト、出しても大丈夫?」

 

 「うん、もうこの際大丈夫だよ」

 

 「…やった」

 

 そういってツムギがとてとてと自分のバッグの中を漁りに戻る。ヅダ・マクロスパックは世界大会の後改めて予備パーツを利用して組み立てなおしたから決勝で使った赤いマクロスパックプラスを含め2機ある。ツムギはどうやら俺の作ったそれらをたいそうに気に入ったらしく肌身離さず持ち歩いているようだ。足取りの軽さを見る限り自慢したいのかな?やっぱヅダが好きだなーあいつ。そう考えてると部屋内に放送が入って全員の動きが止まる。言葉はなく音だけだから俺たちは何のことかわからない。

 

 「ついたみたいだな。すまんな、お開きだ。あとでじっくり見せてもらいたい」

 

 「え~~もう?しょうがないな~」

 

 「タイミング悪すぎ」

 

 「もう、しょうがないでしょ?私だって気になってたのよ。じゃあ、貴方たちも準備してね?ついたから」

 

 「ついたってどこにですか?」

 

 「決まってるだろ。俺たちケイオスラグナ支部の母星、ラグナにだよ」

 

 そう言ってアラドさんは座っていた席を立ちあがるのだった。

 

 




 こっちばっかりになっちゃいますね。やはり序盤は書きやすいです。ですが本編を忘れているわけではないのでご安心ください。

 そんなわけで次回は本編と同時更新とさせていただきます。ではまた近いうちに。


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異星での初めての夜

 惑星ラグナ、マクロスΔの主な舞台であるブリージンガル球状星団に属する水の星。地球よりも水が多いためか現地民のラグナ人は水中生活に適応した種族としてプロトカルチャーにデザインされておりエラやひれなどを持つ。とまあこんな概要はここまでにしておいて、どうやらラグナに向かっているという俺の推測は外れていなかったらしい。というかまず俺がいた星ってどこよ?

 

 「いやー、アル・シャハルから帰る途中でまたヴァールに合うとはついてなかったな。何事もなく帰れてよかったですね、カナメさん」

 

 「ええ、それに面白そうな娘もいたし、アラド隊長も目星がついたんでしょう?」

 

 「はは、あれを見たらそうなりますな。君たちは荷物をまとめておいてくれ。着艦したらマクロスエリシオン艦長に挨拶に行くぞ」

 

 「あーあー、もっと見たかったのに、残念。でもジクフリちゃんの整備も大事大事!レイレイ、ハンガーへごー!」

 

 「了解、じゃ、そゆことで」

 

 あれよあれよと話が進んでいく。なんかこんな仕事の話を俺の前でしてよかったのか?それとも反応を見てる?信用されてない感じがビンビンにしてる。でも会話で目星がついた。もうすでに始まってるんだ。近いうちにこのラグナでワルキューレの選抜オーディションが開催されてそこでフレイア・ヴィオンが飛び入り参加して合格、ハヤテ・インメルマンがアラドさんにスカウトされてデルタ小隊に入隊し…戦争が、始まる。

 

 俺は何ができるんだろうか。いや、何かしようとすること自体がおこがましいかもしれない。だって、俺は器用さならいくらでも自信が沸いて出るがバルキリーを動かせるわけでもない。飛行理論も航空力学もそんなものはかけらも分からない。しいて言うなら、お荷物。マジでこれしかない。なぜ連れてこられたかと言えばフォールドレセプターがあるから。ヒマリとツムギは状態的に珍しいらしいのでどっかに行くってなった時に素直に放してくれるだろうか?

 

 ケイオスに後ろ暗い部分があることはアニメを見てわかっている。アラドさんたちから離れた瞬間何をされるかわからない。本気で誘拐されて人体実験されるなんてことも、ありうる。この世界において天涯孤独で戸籍すらもない俺たちが消えたところで誰も不審に思わないだろう。困った、もしかしたら助けられた時点で詰んでるのかもしれない。

 

 微細な振動が走って俺の思考が中断される。接舷したらしい、もっとすごい振動が走るもんかと思ったけど立ってても分からないレベルだ。バルキリーをケースに仕舞いなおして荷物をまとめ上げる。ヒマリもツムギもまとめ終えたようでそれを確認したアラドさんがドアを開けてカナメさんが続く。俺たちもその後ろについて行く。マキナさんとレイナさんは別の通路に消えて別れていってしまった。

 

 「今からこのマクロスエリシオンの艦長にあってもらう、がそんなに緊張しなくてもいい」

 

 「おおらかな人だから、多少の失礼は目をつぶってくれるわ。それに子供ならむしろ気にしないかも」

 

 「ええっと、仮にすぐ出ていきたいってなったらどうなります?」

 

 「止めはしない、が心配はするな。世間ってのは厳しいぞ坊主、子供だけで生きていけるほど甘くはない」

 

 「出来れば残ってほしいのが本音ではある。貴方たちが私たちを信用してないのはわかるけど、子供を放っておく大人にはなってないつもりだもの。それに言葉も文字も分からないのでしょう?せめて学んでから出ていってもらいたいところね」

 

 「…すいません、生意気言いました」

 

 正論だ。ぐうの音も出ない。どこかで焦っていたようだ。多分、これは本音だと思う。向こうも俺たちを怪しんでるのは当たり前なんだけどその前に一人の大人として子供を心配してるってわけか。クソ、歯がゆい。これから戦争をするであろう人たちに俺たちという異物が入って大丈夫なのだろうか?軟禁されることこそないだろうけど多分ずっとエリシオンで待機もしくは裸喰娘娘かどこかで働くのだろうか?しかも、アリスタがこれ以上何をするかすらわからない状態で。また暴走して俺たち以外の誰かを巻き込んだら目も当てられないぞ。ダメだ、負のイメージしかわかない。

 

 完全に難しい顔で黙り込んだ俺をひと笑いしたアラドさんはぐしゃりと俺の頭をかき混ぜてから大きなエレベーターに乗り込む。俺たちは無言でその後ろに付き添うのだった。

 

 

 

 そうして何度かエレベーターを乗り越えて一つの部屋の前につく。アラドさんはその扉をノックすることすらなく開いた。中は、アニメでよく見たブリーフィングルームだろう。そしてその中には一人、帽子をかぶった推定220㎝以上の身長を誇る大柄な体。緑色の肌、豪快そうな顔つきをした男性…マクロスエリシオン艦長のアーネスト・ジョンソンだ。ヒマリとツムギは肌の色を見てぎょっとしているようだが彼はゼントラーディと地球人のハーフだ。この世界では普通、ということになる。

 

 「アラド…ノックくらいしろ」

 

 「すんません。デルタ小隊及びワルキューレ、アイテールと共に帰還しました。それで…通信でお話したことなんですが」

 

 「ご苦労だった。ああ、聞いている。異世界からの漂流者、それも子供か。ほんとに信じたのか?」

 

 「まだ半信半疑ですが、疑う要素が次々潰れていってます。特に、カナメさん」

 

 「はい、彼から預かったアリスタという物質ですが…現時点で一致する物質は見つかっていません。簡易検査ですけど…それでもです」

 

 「ふむ、なるほどな…よしわかった!待たせてすまない。俺の名はアーネスト・ジョンソン、このマクロスエリシオンの艦長をしている。アルト君、ツムギ君、ヒマリ君、でよかったかな?」

 

 「はい、そうです。助けていただいて感謝してます」

 

 「うむ、気にすることはない!君たちが直面している事態についても概ね信じる方向で行こうと思う!アリスタとやらの解析が終わるまではここで次の行動に向けて準備するといい!もちろん終わった後、ここで働くというのなら歓迎しよう!元の世界に戻る方法についても、協力させてもらう」

 

 「あの、なんでそこまでしてくれるんですか?私たち、お金も持っていないのに…」

 

 「…私たちの世界だと、警察に引き渡して終わり、です」

 

 ツムギとヒマリはそう疑問を呈す。そう、本当ならそうして終わるハズなのだ。ケイオスのフォールドレセプター持ちの人材が不足しているのかもしれないが役に立たない子供まで使うほどなのだろうか?それに俺は二人をワルキューレにという話だったら全力で阻止するぞ。死ぬかもしれない戦場で歌うことなんて二人にさせられない。怪我でもしたら俺はどう二人の親御さんに顔向けしたらいいんだ?そう問うた二人を前にしてアラドさんとアーネストさんは豪快に大口を開けて笑った。そして二人そろって

 

 「「救難信号を無視する船乗りがいてたまるか!」」

 

 そういった。言葉の真意は何となくわかる。昔からそういうものなのだろうということは。

 

 「救難信号、ですか?」

 

 「そうだ!この広い宇宙で俺たち船乗りは互いに助け合わなければならん!たとえその救難信号が宇宙海賊のものだとしても、届いたならば助ける!それが船乗りというものだ!」

 

 「それに、お前さんらの事情が丸っと本物だとしたら統合軍は返すことなんてせんだろう。まあ俺たちもお前さんらの事は気になるし放っておいたらまずいことになるっつー予感もある。言い方は悪いが、手元に置いておきたい」

 

 「もちろん、解析中も働いてくれるならそれに応じたお給金も出すわ。その通訳機もあげるし、必要なら勉強の時間もとる。だから、出ていくのは待ってもらえないかな?」

 

 そう言われて、俺たちは顔を見合わせる。ここまでやってくれるというのにその手を振り払っていいのだろうか?本当に信用するべきなのだろうか、俺としては信用したい。あの二人そろっていった救難信号の話はそれを信じさせるにたるものがあった。ヒマリとツムギは俺に任せるという感じなので俺が代表して頭を下げる。

 

 「これから、よろしくお願いします」

 

 「承った!では、今日はこれで下がって大丈夫だ。アラド、カナメ、デルタ小隊とワルキューレも解散していい。今日はアイテールの休憩室を当てがってやれ」

 

 「ウーラ・サー!じゃ、今日のところは解散だ、と言いたいところだが…折角だ。もう少し付き合ってくれ」

 

 「では、また明日会おう!」

 

 アーネストさんに1礼して部屋を辞した俺たちを連れてアラドさんは今まで通ってきた道を戻った、と思いきや道を外れて別の場所に案内しだした。そうして道を外れた後、扉を開く。その先には茜色の夕焼けが広がっていた。外なんだ。この先。たぶん、アイテールのカタパルト、その上にアラドさんは俺たちを連れてきてくれたんだ。潮風の匂いと嗅いだことのない匂い、地球ではありえないほどの水一色の町並み、雄大で、奇麗で、そして大きい。

 

 「いい景色だろう?俺のお気に入りなんだ、改めてラグナへようこそ。ゆっくり、ってのは違うか。安心して過ごしてくれ」

 

 「きれー…」

 

 「…うん、すごい、奇麗」

 

 「すっげー…」

 

 言葉が、でない。圧倒されるとはまさにこのこと、日本のコンクリートジャングルが当たり前だった俺たちの前にある自然そのものと調和した街並みは別世界であるという事実をガツンとくれたがそれ以上に感動を禁じ得ないものだった。海にとぷんと沈みそうな茜色の夕日が優しく照らしている。太陽は眩しいと普段は嫌がるツムギですら、髪を分けて瞳を露出して景色を見てる。俺たちはアラドさんが苦笑いしながら声をかけてくれるまでそれを見つめ続けていた。カナメさんの微笑ましいものを見るような目に、ちょっと赤面したのは内緒だ。

 

 

 

 「ねー、アルトくん、起きてる?」

 

 「寝てる」

 

 「…起きてるじゃん、嘘つき」

 

 「眠れねえんだろ」

 

 「うん、ツムギちゃんも?」

 

 「…お昼に眠りすぎた。あと、色々あって眠れない」

 

 アラドさんたちと別れたそのあと、あてがわれた部屋の中で俺たちはそうぼやく、そう、眠れないのだ。幸い泊まり込みを想定して研究所に行ったので明日の分の着替えがあってよかったと思いシャワーを借りて着替え、床に入ったのだけれど眠れない。気絶するように眠ったおかげで眠気が完全にぶっ飛んでしまったのだ。

 

 体を起こした俺たち、携帯の充電にはまだ余裕があるけどインターネットにつながってないし電話回線だってつながってない。だから、全く使わない。話すことは専ら元の世界に戻れるかどうかという曖昧かつ後ろ向きな話題だけ、これでは気がめいってくる。

 

 「外、行くか。アラドさんが連れてってくれたとこ。いってもいいって言ってたよな?」

 

 「うん、扉を開けるカードもくれた。そこ以外はいけないらしいけど」

 

 「…外、出るの?」

 

 「眠くなるまでな。風に当たったら気分も晴れるかもしれないだろ?」

 

 「…うん、行く」

 

 そうして靴を履いた俺たちは上着を着てカードをリーダーに通して部屋を出る。多分大丈夫、ていうか部屋の中ばっかりじゃ気分も落ち込むだろ!緊急事態じゃなけりゃいつでも出ていいぞ!ってアラドさんが許可をくれたので大丈夫、なはずだ。人を感知して自動で電気がつく廊下を進んで、カタパルトデッキに出る。日が暮れた真っ暗な中、街の明かりが優しく光っていた。夕方とは違うその光景もまた、奇麗だ。

 

 資材を入れているらしい箱が出っぱなしになっていたので3人で肩を寄せ合うようにして座る。夜の少し冷たい風が二人の体温で相殺される。俺の右手にヒマリの、左手にツムギの手が重なる。柔らかな風が吹き抜ける中何も言わず傍にいて同じ方向を見るだけ。それだけでよかった。訳も分からず知らない場所に放り出された1日、疲れたし、訳が分からないし、不安だし。それがゆっくり溶けていくような感じがする。

 

 「たどりつく場所さえも わからない 届くと信じて 今 想いを走らせるよ~」

 

 ヒマリが歌いだした。アカペラで、ガンダムの曲…ガンダムSEEDの「Realize」を。マクロスの曲じゃないのは、多分誰かに聞かれたら面倒なことになるから。そして、元の世界の曲で思い出すものがあるから。例えば、セイ、レイジ、タツヤさん…マクロスは歌がメインではあるがガンダムだって曲は無数にある。ヒマリはよく歌ってたし、ツムギもそうだ。

 

 「カタチ変えてゆく 心もこの街も だけど消えない 願いがある」

 

 続くようにツムギが続いた。思えば彼女の歌も上手くなった。そりゃあ、もうプロだから当たり前っちゃそうなのかもしれないけど。それに俺たちにとって歌は大事な絆の一つなんだからいつ誰が歌いだしたってぴったりと合わせることができるんだ。軽音部で沢山練習したしな。

 

 「違う夢をみて 同じ空ながめた あの日誓った 負けないこと」

 

 二人に比べたらへたっぴだけど俺も続く。せっかく歌うなら気持ちよくいきたい。唐突に始まったアカペラだけど今に始まったことじゃないしな。タツヤさんは正気に戻そうとしたのも俺が無理やり歌い始めたんだっけなんて最近の話なのにもう忘れかけてる。それだけ毎日が濃いっていう話なんだけど。

 

 「ずっと2人 この手繋げずに 生まれてきた意味を 探してた」

 

 サビを二人に歌ってほしかった俺はバトンを渡さずにそのまま歌い続ける。俺の考えはお見通しなのか二人はクスッと笑って繋いでくれた。

 

 「たどりつく場所さえも わからない 届くと信じて 今 想いを走らせるよ~」

 

 「過ちも切なさも 越えるとき 願いがヒカリ抱きしめる~ 未来を呼び覚まして~」

 

 ヒマリの最後の声が風に紛れて消えていった。そのあと、二人も俺も何も言わず黙り込んだ。歌ったことで少し火照った体に風が当たって気持ちいい。

 

 「満足したか」

 

 後ろから声が聞こえた。念のため通訳機を付けたままだったから言葉はわかる。ビクッとなってしまった俺たちがそろそろと振り返るとそこにはメッサーさんがいた。多分当直か監視、おそらく後者。止めなかったのは俺たちが怪しい行動をしなかったからか。見上げた俺たちを変わらない仏頂面で見下ろした彼は俺たちが座っている箱の上にお盆をおいた。その上には3人分のマグカップとホットミルク。

 

 「眠れない、というのは理解する。心情的に責めはしない。だが、子供があまり危険なところに入るな。それを飲んだらおとなしく部屋へ戻れ」

 

 そう言ってメッサーさんは踵を返して扉を開けてエリシオンの中へ入っていった。俺たちは彼の不器用な優しさを前にして、顔を綻ばせた。なんだ、カナメさんの言う通り全然悪い人じゃないじゃん。むしろ、すごく優しい人だ。俺たちは彼が持ってきた少しだけ甘いホットミルクをありがたく頂きながら、笑い合うのだった。よく眠れそうだ。

 

 




 お待たせしました

 ガンダムの世界でマクロスの曲を歌うならマクロスの世界でガンダムの歌を歌ってもいいよね!?というひらめきに支配された結果の話でした。

 次回から原作に突入できたらいいなあ…(願望

 本編の方も同時投稿してるのでよかったらどうぞ


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ケイオス体験1日目!

 結局あの後ありがたくホットミルクを頂いた俺たちはもう一曲歌って部屋に戻った。歌ったことによって気持ちが切り換えられたのかそのあとはぐっすり眠ることができた。メッサーさんには感謝しかない。気持ちよく目が覚めた俺たちが乱れたシーツを片して布団を折りたたんでいるとドアが開いてカナメさんが姿を現した。

 

 「おはよう、よく眠れたかしら?ふふっ、大丈夫そうね?」

 

 「おはようございます、カナメさん」

 

 「おはようございます!」

 

 「…おはようございます」

 

 「じゃあ、さっそくご飯食べに行きましょうか!今日はどうしたいとか希望はある?」

 

 カナメさんが明るく聞いてくるので予め昨日話し合っておいたことを言ってみよう。正直何もしないでボーっとしてるよりは何かをしていた方が気分的にもいいと思うし。

 

 「はい、あの…よかったら雑用か何かさせてもらえませんか?何もしないと流石に申し訳なくって…」

 

 「お世話になってばっかりじゃ気が引けます!」

 

 「…出来ることがあるなら、やらせてください」

 

 「もー、気にしなくていいのに。じゃあ、お願いしようかな?とりあえず食堂に行きましょうか」

 

 俺たちが口々にそう尋ねるとカナメさんはしょうがないなあという顔をしつつもどこか嬉しそうにそう返してくれるのだった。それはそうと朝ごはんにまた虫は出てこないよね?いや別に食べさせてもらえるだけありがたいから文句なんか口が裂けても言えないんだけど精神衛生上虫を食べ続けるのはちょっとくるものがあるんですハイ。

 

 

 「美味しかったね~~サンドイッチ」

 

 「…BLTサンド、こっちにもあったんだ」

 

 「やっぱこっちにも地球あるんだな、うん」

 

 朝食はサンドイッチだった。何というか、ボリュームたっぷりのいたって普通のサンドイッチ。昨日が蜘蛛を食べただけにもっとすごいのが来るかとある意味身構えた部分があったのも事実だけどいたって普通のご飯で嬉しかったなあ。3人そろって首をかしげてるとカナメさんが「どっちかっていうと海蜘蛛はゲテモノの類なのよ?」と教えてくれた。アラドさん自分が好きだからってゲテモノ勧めたのか…美味しかったから文句はないけど。

 

 「そういえば、ここで待っててって言われたけど何するんだろう?」

 

 「俺たちにもできることだろ…掃除とか?」

 

 「…こんなところで?」

 

 現在俺たちがいるのはアイテールのカタパルトデッキ…の端っこ。カナメさんにここで待っててねーと言われたのでおとなしく待ってるわけなんだけど居心地が悪い。どういう風に俺たちの事が広まってるのかわかんないんだけどあっちこっちで働いてる整備士さんや誘導係の人たちが「フォールド事故とは大変だったね」だの「無理しなくていいんだよ?」だの「困ったことがあったら何でも言ってくれ!」とか滅茶苦茶にやさしくしてくれるから邪魔をしているようで申し訳ない。というかこんなガキンチョを邪険にせず気にかけてくれるって皆さん人間出来すぎじゃないですか?

 

 「すごーい、バルキリーが飛んでる」

 

 「こういう状況じゃなきゃあ全力でテンション上がったんだけどなあ」

 

 「…ちなみにアルト、あのバルキリーって構想にあるの?」

 

 「あったっちゃーあったけど…あと5年くらいたったら形にできるんじゃね?っていうレベルの曖昧なイメージなんだよな。つまり、ない」

 

 そう、さっきから連続でバルキリー、VF-31が発艦していってるのだ。最初はアラドさんの緑の機体、次にメッサーさんの黒、次にオレンジ、次にヴァイオレットとデルタ小隊が全部出ていってしまった。訓練か何かだろうか?動くVF-31という喉から手が出るほど欲しかった光景を見ることが出来てうれしいのは確かなんだけど代償がでかすぎて何とも言えんところだ。けど参考にしたいから目に焼き付けとこう。俺の飛行と何が違うのか、離陸からもうすでに10以上も違う。玩具と本物の違いとはいえものにできたらガンプラバトルでかなりのアドバンテージになるはずだ。

 

 でも、割とマジで何もすることがない。雑用というなの放置プレイである。もしかしてヒマリとツムギがなってるらしい常時アクティブ状態のフォールドレセプターによる空気清浄機の役目が今の俺、というか二人の仕事ってこと?そんで俺はマジでおまけ?あらやだちょっとグサッと来るんだけどそれ。と思ってると整備士さんの一人がタブレットを持って俺たちのところにやってきた。

 

 「もうちょっと待っててね~今仕事ができるだろうから。良かったら見るかい?」

 

 「なんですか?これ?」

 

 「これはメッサー中尉のジークフリートのカメラ映像だよ。今から模擬戦をするそうだから、ペイントで汚れた機体を洗ってもらおうってね。アラド隊長から聞いてるんだっけ?」

 

 「…動きが激しいのに全くぶれない、すごい」

 

 「お、分かるのかい?メッサー中尉はバルキリーの操縦ももちろんだけど負担のかけ方も一流でね、まいど一番消耗が少ないのさ、じゃあタブレット置いておくから好きなだけ見てね~」

 

 そう言って人のよさそうな整備士さんは去っていった。俺たちは3人こぞってタブレットを覗き込む。ジェットコースターをより激しくしたようなカメラの映像ではあるが不思議と酔わない、たぶんこれが操縦技量ってやつなんだと思う、デルタ小隊のVF-31は基本的にミサイル積んでないので腕部のミニガンポッドと機銃のやり取りだけどメッサーさんは四方八方から来る射撃を鮮やかに躱して反撃を確実に当ててる。ヒェッ、そこでそんな急制動するの?キャノピーに弾かすったぞ!?超怖い。そんなギリチョンで避けて怖くないんだろうか。

 

 「うお~~…すっげ。全然違うや」

 

 「…これ、バトルでだいぶ参考になるやつ」

 

 「いまのロールとか再現できるかな?」

 

 結局、そんな戦闘を見せられても俺たちは専らそれをガンプラバトルで再現できるかどうかが話題になる。通訳機は外してるから周りには謎言語に聞こえてるであろう俺たちの会話、まあ聞かれても普通に説明できるんだけど…通訳機結構大きくてずっとつけてると耳が痛くなるんだよね…話しかけられるかもって時につけよう。

 

 あっという間にペイントまみれにされるヴァイオレットの機体とオレンジの機体、たいしてメッサーさんの機体は被弾ゼロ、模擬戦が終わったのか奇麗に編隊を組んでこちらに帰ってくる。心なしかヴァイオレットの機体がちょっとズレてる?あんまり気にならないレベルだけど。

 

 あっという間に戻ってきたVF-31が次々と着艦した。全く無傷の緑と黒に対して赤いペイントまみれの紫と橙、こりゃー掃除のし甲斐がありますこって。と言っても俺達バルキリーどころか飛行機の掃除すらやったことないんだけど。いいとこお父さんの車の洗浄を手伝うくらい?

 

 「お!いるな坊主たち!こっちこい!お前らの仕事を説明してやる!」

 

 緑のVF-31のキャノピーが開いてヘルメットを脇に抱えたアラドさんが姿を現した。流石にスルメはかじってないか、整備士さんにお礼を言ってタブレットを返してアラドさんの機体に駆け寄る。彼はキャノピーから飛び降りるという傍目から見たらとんでもないことをサラリとこなして俺たちの前に着地した。他の機体からも操縦者が出てきて同じように飛び降りて着地した。もしかしてこれが普通?すっげ~。

 

 「全員、集合!よし。ではいつも通りジークフリードのペイントを落としてからブリーフィングとする。今日はお手伝いがいるから変なところは見せるなよ、特にチャック」

 

 「なんで俺名指しなんですか!?」

 

 「冗談だ。昨日説明した通りだ。被弾は死に直結する、己のバルキリーのペイントの量が今日のお前らが死んだ回数だ。噛み締めて掃除するように。メッサー、いくぞ」

 

 「う…ウーラ・サー…」

 

 「はい…」

 

 「了解」

 

 そう言ってアラドさんはメッサーさんを伴ってカタパルトから去っていった。残ったのはヘルメットをかぶったままの女性と恰幅のいい男性、彼らはヘルメットを脱ぐと俺たちに向き直った。

 

 「あー、自己紹介な!俺はチャック・マスタング少尉。事情は聞いてるよ、大変だったなあ」

 

 「ミラージュ・ファリーナ・ジーナス少尉です。どうぞミラージュと呼んでください。ところで何をするかは聞いてますか?」

 

 「いや、説明してくれると思ったんですけど…」

 

 「全くアラド隊長は…では代わりに私が。ペイント弾の清掃はそこまで難しくありません。水で流し、ブラシで擦る。以上です。まあ、大きさが大きさですから…」

 

 「…たしかに、大きい」

 

 ちょっと凹みながらミラージュさんが説明してくれた通り変形する大型ロボットであるジークフリードにこれでもかと塗りたくられたペイントを落とすのは苦労しそうだ。しかも話を聞くにこれは被弾した己を戒めるための罰のようなもののため基本的に一人でやらなければならず整備士さんたちが手伝うことはよくないんだとか。もちろん場合によりけりで別の仕事が入っている時とかは任せることもあるらしい。

 

 さっそくというわけで腕まくりとズボンを捲り上げた俺、ヒマリとツムギはスカートなのでホースを持たせることにしよう。デッキブラシを借りてごしごしとバルキリーを洗い出す、割とすぐに赤い塗料は落ちてくれるんだけど飛行してるときに乾いちゃった部分が結構頑固だ。というか近くで見るとジークフリード超かっけえ。やっべえ、暇なときに紙とペン借りてスケッチしたい。出来るならフルスクラッチしたい。一度見たから本物とそん色ない構造で作れると思う。

 

 「…メッサーさん、すごい。ね、アルト、ヒマリ」

 

 「ああ、超やばいな」

 

 「アルトくん語彙力語彙力」

 

 「なぜ、そう思われるのですか?」

 

 「…ペイント弾が機体の急所にしか当たってない。コックピット、エンジン、関節…一発で落ちるような場所ばっかり」

 

 「…そうですね…メッサー中尉はとんでもないお方ですってなんでそんなことわかるんですか!?」

 

 「あれ?どういう風に聞いてるんですか?私たちの事」

 

 「あー、フォールド事故でこっちにやってきた異世界人(仮)っていう話しか聞いてないんだ。なに?向こうでパイロットでもやってたの?そうだったら異世界殺伐としすぎじゃないか!?お兄さん怖いわー」

 

 「ああいえいえ!そういうわけじゃなくて!えーと…」

 

 どうやら中途半端な感じで話が通っていたらしい二人に掃除をしながら俺たちが元の世界でやっていたことを説明する。ガンプラバトルという模型を動かして戦う遊びがあってそれが一種の競技として認められており世界大会まであること。とりあえずそこら辺まで話し終えたら二人ともぽかんとしてしまった。

 

 「模型が動くね~~、ちょっとチャックさんの理解を超えてきたな。さすがは異世界」

 

 「私の世界では実際に変形する飛行機なんてなかったですよ?」

 

 「なるほど、おたがいさまなわけね」

 

 「ということは今の急所のくだりって…」

 

 「…ガンプラバトルで当たったら大体まずい場所。特にコックピットとエンジンは致命傷、関節はまあ?バトル続行?」

 

 「コックピットやられたら一発で負けだもんな」

 

 「シミュレーションに転用できないものでしょうか…?すいません、動かしますので離れててください」

 

 そう考えるとバルキリーの機首部分にコックピットというMSの内蔵式と違う構造は結構不利ではなかろうか?心臓を丸出しにしてるようなもんだよねバトロイドならともかく。まあ基本どっちも当たったら負けだから一緒っちゃ一緒か。

 

 奇麗になったファイター状態の2機が二人の手の動きで遠隔操作されて腕で体を支え足を展開してガウォークに変わる。おー、やっぱついてたんだ遠隔操作機能!あー、けっこう中までペイント入り込んでるのね。これはバトロイドもやらなきゃいかん奴。ついでに変形を見れてだいぶテンション上がった。ここがそうなるのね、記憶とイメージで作ってた他の機体と違ってジークフリードは実物を見れたしこれは捗る!

 

 「流石に高いところは危ないので私たちがやります。足をお願いしますね」

 

 「終わったら昼飯奢ってやるよ~~」

 

 そう言って二人はするするとジークフリードの上にホースを持って昇っていった。慣れが段違いですね。言われた通りに足に入り込んでいたペイントを流す作業に没頭することにする。何というか、楽しいわ。バルキリーに触れられるっていうこともそうだけど体を動かすことによって気分が晴れる。気持ちのいいラグナの潮風と景色のおかげで鬱屈とした気分が吹き飛んだんだと思う。

 

 降りてきた二人がまたジークフリードを変形させたバトロイドに変え掃除、そして懸架アームでジークフリードが掴まれファイターに変形させられた後、格納庫に運ばれていった。ふうと一息ついたミラージュさんがどこかに通信を入れている。アラドさんあたりだろうか?

 

 「チャック少尉、このまま昼休憩に入れ、とのことです」

 

 「あ、そうなの?じゃあ丁度いいか!昼飯奢ってやるよ~!行くぞ!」

 

 「どこに、ですか?」

 

 「決まってるさ!ラグナの名店、裸喰娘娘さ!」

 

 ヒマリの疑問にチャックさんは自信満々とした顔でそう答えるのだった。




 お待たせしました。本編の方は心が折れそうなのでもうちょっと待ってください。掲示板人気なのは分かってたけど通常回なくていいは心に来るんです…

 掲示板ね、書くの大変なんです。ネタ集めなきゃいけないし…反応考えないといけないし。

 とりあえず次の話は裸喰娘娘とワルキューレとの絡みで行きますんでよろしくお願いします


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異世界食堂 今度はクラゲが出る

 裸喰娘娘、チャックさんが経営する娘々の名前をパク…もといリスペクトしたオリジナリティ溢れるラグナのお食事処である。娘々の名前をそのまま扱ってることもあって初見の旅行者は系列店なのかと勘違いされること多数、らしい。ほぼギャグであるでるた小劇場の情報なのでどこまで信用していいやら。まあそんなことはともかくとして裸喰娘娘はケイオスの社員がみんなして集まる名店なのは間違いないだろう。

 

 「いいのかな、勝手に出てきちゃって」

 

 「…私たち、保護されてるのに」

 

 「いいっていいって!さっきアラド隊長に許可とっといたよ!さ、ついたぜ!ここがデルタ小隊の男子寮兼レストランの裸喰娘娘だ!」

 

 「なんか、すいません。連れてきてもらって…」

 

 「気にすることはありません。仲良くなるには食事を共にするのが一番といいます、遠慮なんて必要ないですよ」

 

 あの後特段汚れていなかった俺たちはチャックさんたちがパイロットスーツからケイオスの制服に着替えるのをカタパルトで待っていた。ヒマリがご機嫌なのか鼻歌が出ていて近くで聞いていたゼントラーディの整備士が「デカルチャー…」と動きを止めて他の整備士にスパナで叩かれてしまったので平謝りしていたんだけど、そういえば星間大戦以前の地球の音楽ってマクロス世界じゃ失われているものなんだったか。じゃあ失われなかった俺たちの世界の音楽は彼らの文化的遺伝子(カールチューン)を刺激するのに十分すぎる威力があるのかも。鼻歌であれなんだから、ちゃんと音楽付きで歌ったらどうなるか…まあ言葉が違うから意味ないかもな。

 

 そんなわけでやってきました裸喰娘娘、なんと船がそのまま店になっている水上店なのだ、まあラグナの基本的かつ伝統的な住居の形式らしいんだけど。名物料理はクラゲ料理、生の丸吞みがいいらしいのでいつか挑戦してみた…やべえレイジみたいな考えになってる。普通なら思いつかないぞこれ…!毒されてるなあ。

 

 「ここに座っててくれよな!まだ開店時間より早いからサクサクッと済ませてじゃましないように帰っちまおう!今日は俺のおごりだ!メニューはお任せだけどな!」

 

 「すいませんチャック少尉、私まで」

 

 「気にすることないない!それじゃ待っててくれよな~」

 

 そう言って酒らしいボトルが並ぶカウンターを抜けてその恰幅のいい体を器用に動かしチャックさんは厨房に消えていった。俺たちはミラージュさんにいろいろ尋ねられたんだけどそれはアラドさんにも尋ねられたことだからここでは割愛しよう。ジーナスの名をどうとも思わない人との会話は彼女にとって久しぶりだったらしくかなり柔らかい印象を持った。主人公であるハヤテに見せたツンツンとした面じゃなくて優しいお姉さんの印象だ。

 

 

 「おっまたせ~~~!裸喰娘娘名物、クラゲチャーハンとクラゲラーメン、クラゲまんお待ち!」

 

 「こっれは…!」

 

 「美味しそう…!だけど」

 

 「…量が多い、半分も食べられない」

 

 「あっりゃ、しまった何時ものパイロット連中と同じ量作っちまった。すまん!残してもいいから、な?というか残ったら俺が食う!」

 

 「アルトくん」

 

 「ああ…!」

 

 「…頑張る、べし」

 

 どかん、という効果音が付きそうな勢いで着地したのは滅茶苦茶美味しそうな大盛りのラーメンとチャーハン&大きな饅頭のセット。俺はともかくヒマリやツムギは一般女子のため軍人みたいな訓練してるパイロットと同量は食べられない、特にツムギは容量が大きくない。けどチャックさんの好意を無碍にするわけには…!俺たちは覚悟を決めてレンゲを手に取るのだった。 

 

 

 「すいませんミラージュさん…」

 

 「いえ、しいて言うなら無茶をする場面ではなかったと…」

 

 「そうそう、無理して食べてもいいことないよ~?」

 

 「でも、申し訳なくって…」

 

 「…美味しかったです」

 

 俺、完食。ヒマリ、チャーハン完食、ラーメンは手付かず、ツムギ、ラーメン半分で撃沈。残りはチャックさんとミラージュさんのお腹の中に消えた。動けなくなった俺たちを介抱してくれた二人に必死こいて謝るとミラージュさんがチャックさんにやりすぎですと怒ってチャックさんが謝ってしまった。というかあの量を食べてまだ他の物余裕綽々で食べれる余裕があるのか…ミラージュさんって女性なのに。もしかしてこれがゼントラーディの血か…?

 

 結局ゆっくりゆっくりエリシオンに帰るハメになってしまった。もちろん付き合ってくれたお二人には全力で謝った。快く許してくれた二人は人間がとてもできてると思う。ツムギがヒレについて尋ねても嫌な顔一つせずに解説してくれたくらいだし。

 

 

 

 

 「おかえりなさい。裸喰娘娘、いい店だったでしょ?私もよくお世話になるんだけど~…大丈夫?」

 

 「イ、いえ、お気になさらず。すぐ元通りになります」

 

 「アルトくん一番頑張ったもんね~」

 

 「…完全復活、しゃきーん」

 

 早々にリタイアした二人はともかく俺は食べ切ったのでなかなかキッツい、もうちょっと時間たてばだいぶ楽になると思う。部屋で休んでいるとカナメさんがやってきた。彼女が若干顔が青い俺を心配してくれるがとりあえず大丈夫だと返事を返すことにした。デルタ小隊は午前が訓練で午後がデスクワークらしい。俺たちのできることはないため部屋に戻ってきたのだ。なお俺以外の二人は復活してる。俺だけグロッキー、くすん。

 

 「ふふっ、元気そうでよかったわ。じゃあ、午後は私たちについてきてもらいましょうか。ワルキューレのレッスンは午後なの」

 

 「ワルキューレ…俺たちが役立つんですか?レッスンに?」

 

 「あら、観客がいるっていうのは重要なのよ。特に私たちの場合はね」

 

 「そうなんですか?」

 

 「…戦場で歌う訓練、凄そう」

 

 「見てのお楽しみ、よ。それじゃあいきましょっか」

 

 そう言われた俺たちはカナメさんについてアイテールの中を歩いていく。思ったんだけどやっぱマクロス級ってでかない?普通の建物みたいな安定感なんだけど、これでも横持ちされて空中で浮いてるのに。それはともかくとしてワルキューレのレッスンが行われてる場所は専用の音楽室らしい。

 

 カナメさんの案内でついた部屋は確かに大きい部屋でザ、金属むき出し!っていうマクロスの中にしては珍しくダンスレッスン用の鏡が壁にあり、木製らしい床など俺たちの世界にもあるダンス用スタジオとそんなに変わらないものだった。部屋の隅にある楽器や、スピーカーも相まって何となく親しみがわいてくる。既に部屋の中にはワルキューレのメンバーがスタンバイしていた。カナメさんも練習に使う服で迎えに来たしそのままやるんだろうか?

 

 「はいはーい、じゃあレッスン始めるわよ!まずは発声練習から!観客に見られると思って!」

 

 そんな感じでカナメさんの号令でレッスンが始まってしまった。もうすでに発声練習ですら感嘆の声が出る。びりびりと耳に来るのだ、声量の大きさが尋常じゃない、それもそうか。ともすればフォールドサウンドブースターが故障するかもしれないんだ、その時にでも彼女らは歌わなければならない、ブーストがかからない己の声だけで。声量があるのは当たり前か。

 

 「すっごい…すごいよ、アルトくん」

 

 「ああ、レッスン中なのに気迫がびりびり来る。比べたら失礼かもだけど、バトルの中にいるみたいだ」

 

 「…うん、背中がひりつくこの感じ、間違いない」

 

 特に音楽に慣れ親しんできたヒマリにはプロ中のプロであるワルキューレの存在は大きな衝撃として刻まれたらしい。デビューしたてとはいえヒマリもツムギもプロの端くれ、ヒマリと歌うとき限定というソロ活動NG宣言を出したツムギも彼女らのレッスン風景には思うところがあるのかもしれない。

 

 ダンスレッスンも、キレのある動きと一糸乱れぬフォーメーション、圧倒されるパフォーマンスだ。吞まれていく、ワルキューレの世界観に。

 

 「じゃあ休憩前最後!通しで一回歌いましょっか!」

 

 「やっとね。待ちくたびれたわ」

 

 「クモクモ、歌うの大好きだもんねー」

 

 「観客を引き込んじゃえ」

 

 そして、カナメさんがフォールドスピーカーらしいリモコンを操作して、曲が始まる。ギターの音で一発で分かる「いけないボーダーライン」だ。ここでメインボーカルになるのはあの後結局話すことも会うこともなかった謎の美女の美雲さん。歌いだしたメインボーカルにびりっときた。これが、本物…!フォールド波かどうかは分からないけど美雲さんの声に乗って発せられる不可視の力が俺たちを叩いているような気さえする。

 

 隣のヒマリをちらりと見ると、笑っていた。瞳の真剣具合はまさにファイター。音楽という彼女の世界に罅を入れたワルキューレの存在がヒマリに火をつけたのかもしれない、俺の話だけでマクロスの曲を完全に再現してみせたその才能を、今の一つの音楽全てに注いでいる。こうなったヒマリは、俺たちの話は耳に入らないし集中を途切れさせることはないだろう。音の一つもこぼすまいと耳をそばだてていた。そしてそれは俺とツムギも同じく。こうなった彼女がどうなるかを俺たちはよく知っているから。

 

 そしてダンスと歌が終わる。雰囲気が変わり談笑を始めたワルキューレを見てヒマリの雰囲気が元に戻る。その視線の先にはあまり使われてないらしい楽器類、ギター、ベース、シンセサイザー。ドラムはまあ、いないからな俺たちの場合。そして、口を開いたヒマリの言葉は決まっている。

 

 「アルトくん、ツムギちゃん、いけそう?」

 

 「ああ、ばっちり行けると思う」

 

 「…もちコース」

 

 「じゃあ帰ったらお部屋で相談だね~」

 

 今のは端的に言えば耳コピできた?って聞いてきたんだ。音楽をやるにあたってヒマリとヒマリのご両親に徹底的にしごかれた俺とツムギはとりあえず初めて聞いた曲を耳コピするという癖がついてしまった。で、できたら3人で弾いてみるっていうのが一種の流れ。今回は鼻歌で打ち合わせることになりそうだけど、視線の先にある楽器類を使わせてくれなんて頼むわけにもいかないし。

 

 休憩しているらしいワルキューレの中で俺たちがこそこそ話してるのを見たらしいカナメさんが不思議そうな顔をして近づいてきた。

 

 「あ、ごめんね放っておいちゃって。どうだったかな?」

 

 「いえいえそんな!凄かったです!これで本番じゃないっていうのが不思議なくらい!」

 

 「…凄い曲だった。あの人、とんでもない」

 

 「ああ、まだ会ってなかったわね。彼女は美雲・ギンヌメール。ワルキューレのエースボーカルなの、凄いのは当然ね」

 

 「それで、あのなんで俺たちをレッスンに?」

 

 「観客がいると気が引き締まるもの、重要よ。それとさっきは何の話してたのかしら?」

 

 「ああ、今の曲弾けるかなっていう話をしてたんですよ。話したと思いますけど俺たち軽音部なので」

 

 「そういうこと。じゃあアレ、使ってみる?売れてなかった時期に楽器持ったらどうかっていう案が出たんだけど結局採用されなかったの。手慰みに使う人はいるから使ってもらっても大丈夫よ」

 

 「いいんですかっ!?」

 

 ずい、とカナメさんの提案に瞳をきらめかせて迫るヒマリ、あまりの勢いにちょっと後ずさるカナメさん。声が聞こえたのか美雲さん、マキナさん、レイナさんが話すのをやめてこっちを見てる。それで若干赤くなって縮こまったヒマリをクスクスと笑って頭を撫でて勿論!と言ったカナメさんが俺たちの手を引いて楽器のところまで連れてってくれた。

 

 「好きに弾いていいわよ~。アンプが必要だったらこのボタンね!」

 

 「ありがとうございますっ!アルトくん!ヒマリちゃん!やろっ!!」

 

 「あーはいはい、やるから近いぞヒマリ~。ツムギ、ぱす」

 

 「…むぎゅう」

 

 そんな感じでテンションが振り切れたヒマリがやる気マックスなのでやってみることにする。取り敢えずチューニングしちゃうか、とギターを手に取って弾いてみるけど、なんか俺たちの世界のとズレてる?「チューニングはしてあるはずだけど」というカナメさんが言う通り間違ってはいないんだと思うけど…弄っていいか聞いたらいいそうなので俺の世界のと同じような感じでチューニングして音を出してみる。うん、いけそう。ベースを弄るヒマリや出る音を確認してるシンセサイザーのツムギ。作業量が多いツムギが一番苦戦してるけどヒマリが手伝って使う音だけを確認したっぽい。うん、いけるかもなこれ。

 

 「そんでだけどヒマリ、サビ途中のこのフレーズなんだけどこれでいい?あとそこから11秒後のここもこう?」

 

 「うん、それであってるけど、こうしたほうがかっこいいかも。私がこうするから、これでこう!」

 

 「…じゃあ、ここ、でこう!それでこうする?」

 

 「採用!アルトくんラスサビこういう風にできる?」

 

 「出来るけど、じゃあその前ヒマリこれしてくんね?」

 

 「わかったよ~~~」

 

 「なんで通じてるのかしら?全く分からないわ」

 

 「3人だけ別の世界、以心伝心、私とマキナ」

 

 「レイレイ~~~~!!!」

 

 「ふふっ、お手並み拝見ね」

 

 大体コピーは出来るんだけどヒマリに聞いた方が確実なので絶対にあってるという確信が持てる場所以外をヒマリに弾いてみせて尋ねる。んでその結果こっちのほうがよくね?ってなったら変えるしそのままのがよければそうするし、基本ここ、そこ、アレ、これ、それで大体伝わるので幼馴染とパートナーというくくりは大変便利だと思う。ボンボン、と適当なフレーズをスラップして指の確認をするヒマリとそれと同じフレーズをタッピングでする俺、速弾きしてみるツムギ、うん。できたな!

 

 「すいません、お待たせしました。いいですか?」

 

 「ええ、いいわよ!じゃあ繋ぐわね!」

 

 カナメさんがアンプに楽器をつなげてくれたので、確認を取った俺たちが一拍おいて演奏を始めた。




 お待たせしました。皆さん私の愚痴に温かい言葉を返していただきありがとうございました。これからもっと精進していきますので温かく見守ってくださると幸いです。

 そんな感じで皆さん忘れてるであろう軽音部設定がここで生きてきました(まったくの偶然

 アルトたちがこの世界でどのような役割になるのかは今しばらくお待ちください。ただ、パイロットというわけではないです。ですが、彼が得意なガンプラバトルを活かせる仕事につかせてあげたいなとは思ってます。具体的には内緒!何も考えてないともいう!

 本編も同時更新していますのでよかったらご覧ください。では、また次の更新で


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重なる音楽

 一拍おいての演奏、ツムギがシンセサイザーで入りリズム隊であるヒマリが入る、本当だったらラッパとかサックスとかの音があればビシッて決まるんだけどないものねだりは良くないし、俺たちからしたら十分なくらいかっこいい。最後に俺がギターをかき鳴らしてメロディーを作る。うん、ほぼ一緒だ。最初は、だけど歌に入るまでの前奏で美雲さんが俺たちに向かって口元に指を立てるジェスチャーをしてることに気づく。

 

 二人と一瞬顔を見合わせてアイコンタクト、多分美雲さん、歌いたいんだ。なんで俺たちの演奏でっていうのは置いておくとして、あの歌をもう一度聞けるなら悪い気はしないしある意味で歌ってもいいと認めてくれたのかもしれない、このほんの少しのメロディーで。歌いだしのタイミング、美雲さんが息を吸い込むのが見える。

 

 「見つめ合って恋をして 無我夢中で追いかけて だけどもっと知りたくて メラメラしてる」

 

 「美雲!?」

 

 「クモクモ…?」

 

 「ズキズキ、くる…!」

 

 美雲さんが歌いだした瞬間、他のワルキューレのメンバーが驚いたように彼女を振り返る。やっぱり、歌ってくれるってことだったんだ。それなら俺たちがやることは簡単、テンポをずらさず、リズムを保ち、完璧な演奏を披露すること。まあ、ヒマリの提案したアレンジくらいは許してほしいけど。

 

 「願うほど謎が増え 思うほど熱になる だからもっと飛び込むの 未開の世界 ah~」

 

 「クモクモ、フォールドレセプターが…!?」

 

 「ううん、そんなことより…!」

 

 「私たちも!」

 

 楽しい、奏でるリズムが、響くメロディーが部屋を満たしていくのがたまらなく楽しい。耳コピだとしても再現度はそれなりのものであると自負しているし、俺は前世で何度も何度も聞いた音楽なんだ。転生する前は音符すら読めなかったけど今は違う、どの音がどこを弾けばいいか分かってる。ミスタッチはしない、イメージ通りに動いてくれる体が理想通りに弾いてくれる。

 

 「恋とか夢とか誰でも信じるけど そこそこ攻めなきゃつまんないよ!」

 

 カナメさんが歌に入った!マキナさんもレイナさんも構えているので入るつもりなのかもしれない。サビ前、打ち合わせ通りのアレンジを入れる。生バンドっていうのはこういうアレンジを入れてこそだと思うんだよね!一番の盛り上がりのままパスを投げろ!

 

 「ギリギリ愛」

 「いけないボーダーライン 難易度Gでも」

 「全て壊して見せる!」

 

 やっぱり、すごい!歌唱力で俺たちを打ちのめそうとするくらいの圧、マイクがないなんてとても信じられない。負けるもんか、歌った後でやっぱりつまらなかったわ、なんて思わせたくないよなあ!?と、3人でアイコンタクトをした瞬間に気づいた。歌詞が、理解できてる?いや、あとで考えよう。今はとりあえず全力でやり切れ!

 

 「キリキリ舞」

 

 「更なるGへと 意識が溶ける 」

 

 ぶわっ、ときた。何かが繋がる感覚、このサビの最後の一瞬、ヒマリとツムギどころか、ワルキューレの全員とリンクしたような、そんなイメージ。何となく、で唐突に入れたそれぞれのアレンジが完璧に調和する。今までそんなことなかったのに。この感覚に一番近いのは…世界選手権でタツヤさん相手に歌った時、あのタツヤさんに正気に戻ってほしくて想いを叩きつけた感覚にすごく近かった。

 

 「体は制御不能 いっちゃうかもね…」

 

 この唐突なリンクの感覚に全員が止まる。演奏はストップし歌も、途切れる。それと同時につながってた感覚もなくなって何でもできそうだった全能感もなくなった。全員が首をかしげる、そしてクスクスと笑い出した。みんながシンクロして止まって、全く同じポカンとした表情をしてるのが何だかおかしかった。ひとしきり笑ったカナメさんが

 

 「あー、ごめんごめん!にしても美雲!びっくりしたじゃない、いきなり歌いだすんだもの。そんなにひかれたのかしら?」

 

 「そうね、始まりの1音からしてもう、たまらなくなったわ。不思議な感覚、とても気持ちがよかった」

 

 「すごい、私たち…みんなフォールドレセプターが…」

 

 「アクティブになってた。本番じゃなかったのに」

 

 マキナさんとレイナさんが手元の端末からホログラム画面を空中に投影してその画面に表示される情報を見てそう報告した。ワルキューレが戦場で歌うのはフォールドレセプター保有者の生声に伴う生体フォールド波がヴァール発症者への特効薬になるからだ。そしてフォールドレセプターは保有者の危機的状況やそれに伴う感情の爆発、高揚感に呼応してアクティブになる。ということは…

 

 「あなた達の演奏は私たちにとっては戦場と同じくらいの高揚感をもたらしてくれた、ということね」

 

 「ふぇっ!?」

 

 「…言い過ぎ、だと思う。私たち、まだそんなレベルじゃない。ヒマリはともかくとして」

 

 「ええ、まあ。素人に毛が生えたもんです。最後の方の感覚は、少し気になりますけど。あとヒマリがやばいのは同意」

 

 「やややめてよ二人とも!プロ中のプロの人たちの前で!」

 

 結構な過大評価をもらったのでそりゃ違うと否定しておく。まあでもヒマリがやべーのは一切の異論はないのでそこら辺は主張しておこう。でも、本当に気になる。さっきの感覚、一瞬で途切れたんだけど、何が何だかわからない、うーん。もしかしてアリスタ?二人が持ってるアリスタが何かに反応したのか?それとも別の要因があるのだろうか?

 

 「にしても凄いじゃない!初めて聞いた曲をほとんど完璧に演奏しきるなんて!ねね、ちょっと一つお願いしてもいいかしら?」

 

 カナメさんが手を合わせてニコニコしながらそう尋ねてくる。何だろう、というかこんな子供っぽい一面もあるんだなカナメさん、優しいお姉さんのお手本みたいな感じだからちょっと意外かもしれない。お世話になってるし出来ることならやりたい、その気持ちは二人も同じようなので聞いてみることにしよう

 

 「俺たちにできることなら。お世話になってますし」

 

 「ふふっ、気にしなくていいのに。折角だからあなたたちの世界の音楽、聞きたいなって。メッサー君から聞いたんだけど、昨日の夜歌ってたんでしょう?いいかしら?」

 

 「何それ!?アルアルたち歌ってたのっ!?」

 

 「後で監視プログラムにハッキングして動画を漁ってこないと」

 

 「歌いますからなんか恐ろしいことをしようとするのやめませんかっ!?あっ…」

 

 「じゃあアルトくんメインボーカルね!」

 

 「…墓穴を掘った」

 

 やっちまったあああああああああ!レイナさんが凄い恐ろしいことをボソッと呟いたので思わず止める為に歌うといってしまったが、あまりの勢いに二人にいいよなって聞くのを忘れた。そして、そういう場合虎視眈々となぜか俺を歌わせたいといつも狙ってる二人にとっては絶好のチャンスなわけで、俺に反論させる間もなくメインボーカルを俺に据えてしまった。

 

 あの、今からでも交代…と言おうと思ったがヒマリはつーんとそっぽを向いてツムギはふけてない口笛をふぅふぅ吹いている始末。ダメですねこれは間違いない。そしてレイナさんがツムギに向かってピースサイン、は…嵌められた…!?いつの間にあんなに仲良く…!?もしかしてハッキングする間もなく見ていたりして…あり得る。しょうがない、人に聞かせるにはちょっとあれかもだけど頑張ってみるかあ。

 

 「イエーイ!アルアルボーカル~~」

 

 「あんま期待しないでくださいよ」

 

 「男の子との歌なんてFIRE BOMBERくらいしか聞いたことない。ワクドキ」

 

 「そうね、初体験だわ」

 

 「胃が痛い…!」

 

 声変わり…!声変わりはよ!とりあえず歌ってもかっこがつく声になりたい!俺もカッコよく男性ボーカルの曲歌いたい!一人で練習で歌うならともかく人に聞かせていいものかってなるんだよ。原曲とのあまりの違いに自分で地面に沈むレベル。シャウトでごまかせる曲か?それとも勢いがつく曲?よし、これで行こう。

 

 「それでアルトくんどうするの~~?」

 

 「にやにやしやがって。アレで行こう。ほれ」

 

 「…ん、了解。アルトの歌、久しぶりに聞ける」

 

 「久しぶりっつったって1か月くらいじゃねーかよ…」

 

 「声変わりしてからって言いまくって歌わなかったアルトくんが悪いんです~」

 

 「あー、はいはい悪うござんした。じゃ、いくぞ」

 

 適当にサビを弾いてやる曲を伝えると二人ともわかったようで準備に入る。ガンダムの曲って色々あるけどやっぱり男性ボーカルのものも多いんだよな~、これでかっこいい感じで歌えてればいいんだけど。二人を見るともういけそう、じゃアイコンタクト、せーのっ!演奏開始!10秒ない前奏、息を大きく吸い込む。

 

 「FLYING IN THE SKY! 高くはばたけ 大空をどこまでも SHINING FINGER! 輝く光が 地の果て照らし奇跡を呼ぶSPELL」

 

 「あら」

 

 「わ~~~!」

 

 「けっこう、いいじゃん」

 

 よし!出だし決まった!いろいろ考えたけど、熱さと言ったらガンダム界でも屈指の作品の曲である。マクロスの曲じゃないのはまあ、お察しくださいってことで。これ以上不審者要素増やしてたまるか。でもいつかは打ち明けないといけないんだろうなあ。でもま、後回し!気分乗ってきたあああ!

 

 「振り向かず歩くのさ 無限の力がある」

 

 「…!?アルアル、フォールドレセプターアクティブ!?」

 

 「ええっ!?」

 

 「それだけ、じゃない…!ヒマリとツムギのレセプター数値が、上昇してる!」 

 

 ああ!歌はいい!下手なもん聞かせるくらいなら死にたくなるけど、反応が良かったり褒めてくれるってもんならそりゃあ歌ってて気持ちよくなるもんさ!響くギターライン、シンセサイザーの主旋律、ベースの重厚な低音、どれか一つでもあれば十分、全部揃ったら最高ってもんだ!

 

 「何度でも試すのさ どんなに苦しくてもやり遂げる」

 

 何だかよくわからんが、高揚感が高まってきた!やっぱ燃える曲だ!マクロス世界よ!これがガンダムの曲だ!二人の思考とシンクロする、さっきのつながった全員が丸裸になったような時とは違うガンプラバトルの時と同じ息が完璧に合ってお互いの思考が完全に一致してる状態、情熱をそのまま歌い上げろ!

 

 「愛はいつもこの胸に 永遠に消えることはない!この手が叫んでいる 明日へと走れ」

 

 「フォールドウェーブ、同調…!」

 

 「これ、アルアルがデフォールドした時に検出された粒子!?」

 

 「そんなことはどうでもいいわ」

 

 「クモクモ?」

 

 「後で見返せばいいものは置いておきなさい?今は、彼の歌を聞くのよ」

 

 投影された画面に集中してたマキナさんとレイナさんの手を止めさせた美雲さんが、彼女らの顔を画面から離させる。ポロっとでたがプラフスキー粒子が出たのか?ってことはアリスタは、生きているんだな。ここに来てからうんともすんともいわないから力を失ったのかと思ってたけどそんなことはなかったらしい。いかん、雑念が出た。集中!

 

 「BRIGHT YOU NOW!君が描いた 未来へのシナリオは」

 

 「…すごく、いい」

 

 ぽつりとそう言ったカナメさんの言葉ににっと全員の笑みがこぼれる。やはり、音楽というものは世界を超え、人種を超え、言葉を超えて心というものに直接響くツールであるらしい。多分、さっきの美雲さんが歌った時俺たちが歌詞の意味を理解できたのと同じように今、ワルキューレの彼女たちも俺たちが歌っている歌詞の意味を理解しているのだろう

 

 「SHINING FINGER!夢を掴もう すべては思うままに I GET A CHANCE!」

 

 「デカルチャー…!」

 

 演奏を終えた俺たちに渡されたこの言葉が今の歌の評価を如実に表しているのだった。振り向いた俺は両手をあげて、その両手にヒマリとツムギが同時にパン!と手を叩き合わせてハイタッチ。どうなることかと思ったけど、案外何とかなるもんだ。あんだけ拒否ったけど、終わってしまえば楽しかったからな。

 

 「アルアル~~!!凄かったよ~~!もー、デカルチャー!」

 

 「むぐ、どうも、ありが…!苦し、マキナさん、ちょ、たすけ…!」

 

 「ツムギ、ナイス演奏。褒めて遣わす」

 

 「…レイナさん、ありがと」

 

 「ヒマリちゃんも、ベース凄い上手なのね。ドラムがいないのにリズムキープをあんなに正確にできるなんて」

 

 「えへへ、ありがとうございます。でもアルトくんの歌があってこそですよ。アルトくん、いつもいつも何かしら理由をつけて逃げちゃいますけど、歌、上手なんですから」

 

 た、助けて…!楽器をおいた途端飛んできたのかと勘違いする勢いで突撃してきた、そしてツムギがされたように彼女の腕の中に納まる俺、ち、力がつよい!抜け出せない、というかハグの力が強すぎて胴体が締め上げられるせいで呼吸が苦しい!ベアハッグだこれ!なんでこんな力がつよ…!ぐえええ~~

 

 「きゃああああアルトくんっ!?」

 

 「ちょっとマキナ!アルト君泡噴いてる!」

 

 「うわわわごめんねアルアル~~!」

 

 「…アルト、昨日の私の気持ちわかった?」

 

 「…よく、理解したよ…!」




 お待たせしました。今回ほぼ歌しかやってないですねごめんなさい。さて、次回でストーリーを進め、れたらなあと思ってますけどまだかかるかも。

 実は今回使用しようとした曲は2パターンありまして、今回アルトが歌った「FLYING IN THE SKY」とツムギとヒマリで歌う「嵐の中で輝いて」のどっちかを使いたいな~と思って脳内会議の結果アルト君に歌ってもらいました。どっちもデカルチャーなガンダムの中でも1,2を争うくらい大好きな曲です。

 やはり音楽、音楽はすべてを解決する…!!

 ではまた次回!

 そういえばワルキューレが歌唱するとき色分けどうしよう…レイナとフレイアのカラーが思いっきり被ってる…!


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始まる物語

 「で、さっきのアルアルとヒマヒマとムギムギはフォールドレセプターが3人まとめて波形が一致してたの、私たちの間では共鳴って言われてる現象」

 

 「そうなんですか?感覚的には、割とよくあるよな?」

 

 「うん、世界大会の時とかしょっちゅうなってたよね?心が合わさってくような感じで」

 

 「…普通にやってたから、特別なものっていう感じしない。レイジとかセイとかコンビ組んでる人は割と良くある感じ」

 

 「フォールドクォーツもなしに、そんなことがあり得るとしたらさっきの」

 

 「プラフスキー粒子ですか。こっちでも未解明な部分が多いんですけど…人と人を繋げる性質があるとは言われています。想いを伝えることが出来ると」

 

 「むむむ…それは、また変わった性質だね~といってもフォールドクォーツもまだまだ未解明な部分があるから、なくても共鳴できるって言われてもありえるかも?っていう感じだよ」

 

 現在、歌い終わって楽器をそれぞれ片づけた俺たちが地べたに座って、マキマキ先生によるフォールドレセプター講座を受けつつ歌ってる途中に俺たちにおこったことの解説を聞いていた。何でも俺のフォールドレセプターの波形に重なる様に二人のレセプターの波形が変わったのだとか。どっちにしろ、俺のレセプターも歌ってるときはアクティブになって生体フォールド波を出していたらしい。

 

 「でもでもでも、3人とも凄い演奏上手だったよ!私たち基本的に打ち込みの音楽で歌ってるから、生演奏って迫力断然違うんだね~!ね、レイレイ!」

 

 「確かに。歌への入りやすさとかノリやすさとか全然ちがった」

 

 「バックバンドとか入れないんですか?人気グループなら当然なんじゃ…」

 

 「私たちのステージは戦場よ。途中で途切れるかもしれない生演奏は演者も私たちにも危険だわ。歌えれば、満足なのだけれどね」

 

 ああ、なるほど。基本的にヴァール発症者が暴れまわる戦場の中で演奏しつつ周りを見て救助もするとは言っちゃ悪いが死にに行くようなもんだ。あれ?それ考えるとサウンドフォースことFIRE BOMBERは人外の集まりだったんじゃ…?いや、やめよう。そもそも戦場で歌っていること自体がおかしいんだから、うん。とりあえ途切れるかもしれない生演奏よりも確実に音を届けてくれる機械打ちのほうがワルキューレの任務には最適ってことなのね。

 

 「あの、カナメさん?どうしました?」

 

 「ねえ、アルト君たちって…ステージに立つ気ないかしら?」

 

 「「「…はい?」」」

 

 地べたで何と無しに正座をしつつワルキューレ講座を聞いていた俺たちを見つめつつ何かを考えてる様子だったカナメさんが気になった俺はどうしたのかと尋ねてみたのだけれど、それに対して返ってきたものは予想外というか突拍子もないものだった。3人そろって同じ言葉で疑問を呈した俺たちに真剣な顔でカナメさんが説明してくれる。

 

 「鎮圧ライブで、なんて無情なことは言えないけどワクチンライブなら、と思ったの。フォールドレセプターをアクティブにできる人は貴重、というのは説明したわよね?ヴァールの予防のために行われるワクチンライブに出てもらえればかなりの効果が期待できると思うんだけど…」

 

 「えっと…流石に、急すぎて」

 

 「…何が何だか、分からない」

 

 「そうだよ~カナカナ、確かに歌も演奏もでかるちゃ~だったけど、急に話しても混乱させるだけだって~」

 

 「それに、明後日のワルキューレのオーディションの事もある。仕事キツキツ、もうちょっと後のほうがいい」

 

 「えっ!?ワルキューレってオーディションしてるんですか!?」

 

 ヒマリが驚いたように声をあげる。そりゃあ、戦場で歌い踊るワルキューレの任務に一般人からオーディションなんか出来るもんなのかと思うのも当然の話、というか明後日なのかオーディション!?フレイア・ヴィオンとハヤテ・インメルマンがここに来るのが明後日…俺たちも何かやることを決めておかないとダメだ。少なくとも戦争に突入しても持て余らされない有用性を証明する必要がある。保護してもらうと決めた以上役に立ちたい、っていう気持ちが大部分だけど。

 

 そう考えるとワクチンライブでのバックバンドなら悪くない提案じゃないだろうか?鎮圧ライブまで来いって言われたら俺だけならともかくヒマリとツムギがいる以上無理としか言えないけどワクチンライブなら、まあ大丈夫だろう。問題はワクチンライブのうちどれくらいにウィンダミア軍が介入してくるかってことなんだけど…

 

 「表向きは、ね。本当はフォールドレセプターの保有者を見つけるためなの。それに適性があっても…」

 

 「戦場で歌えるほどの人は多くない、やめた人もいる。仕方なし」

 

 「覚悟が足りないのよ。足手まといは不要だわ」

 

 ズバリと言い切る美雲さんに苦笑する面々、否定しないってことはそれだけワルキューレの任務がシビアだということなのだろう。戦場で歌う覚悟…見るのとやるのでは全くの別物だ。ただ見知らぬ他人のためと身命を賭せる彼女らはやはり戦場の女神としてふさわしいと今更ながらに感じた。とても、すごい人たちだ。

 

 「あ、でも明後日のオーディションは手伝ってほしいかな?今の演奏の感じだと、多分レセプターをアクティブにしやすいと思うの。それに貴方たちの肩書き、「ワルキューレ見習い」ってことになってるし」

 

 「初耳なんですけど!?」

 

 「…見習い?」

 

 思わず突っ込んだヒマリと小首をかしげるツムギ、言葉が出ない俺。ワルキューレの見習い?俺たちが?それはなんとも…不可思議というか何というか雑用君ではなかったのだろうか?

 

 「えっと、ね?まず貴方たちはレセプターを持ってます。その時点で保護する場合は医療研究施設に行くってことになっちゃうの。それにヒマリちゃんとツムギちゃんの状態を知られちゃうとちょっとまずくって…だから、どうしようって考えた時二つ手段があったの」

 

 「二つ、ですか?」

 

 「そう、まずワルキューレの見習いという立場とデルタ小隊の候補生っていう立場の二つ。年齢的にデルタ小隊の候補生は無理だし、こっちの免許もないでしょう?だから、ワルキューレの見習いっていうことに自動的になったの。今はむしろ音楽ができるってだけでグッと立場が固めやすくなって助かったって気分ね」

 

 なるほど、レセプターがあるというだけでケイオスからしたら格好の実験材料だから、か。遠回しにとはいえあれだけ出ていくのを引き留めていたのはラグナ支部の保護下を離れた瞬間本当にモルモットにされるかもしれなかったからなんだ。ワルキューレがメンバーを探しているのも事実だしレセプターがあった俺たちは本当にちょうどよかったということなんだろう。

 

 「すいません、なんだか色々させちゃったみたいで。ステージに立つのはともかくとして、明後日のオーディションはお手伝いさせてもらいます」

 

 「ううん、アルトくん。立とうよ、ステージに」

 

 「ヒマリ?でもお前まだどうするかだって決めてないだろ」

 

 「やりたいの。お願い」

 

 「…私も、やりたい。お返し、しよ?」

 

 二人がそう言ってくる。いいよと言ってやりたいけど先をある程度知っている身からすればダメだ、死ぬかもしれないんだぞと言ってやりたいけど…これは意味ないやつだ。昨日俺が命懸けで二人を守るのをやめろと説得されたのを突っぱねた時と同じ、言葉じゃ動かないのがわかる。なり立てだとしても二人はプロだ。プロがプロから求められたなら、絶対に応えたくなるのは必然。俺がセイやタツヤさん相手に本気で応えるのと同じだ。今度は俺が折れる番、か。

 

 「わかった。前言撤回します、バックバンドとオーディション補助、どっちもやらせてください!」

 

 「言っておいておかしいかもしれないけど、いいのかしら?ステージに立つって、難しいものよ?」

 

 「えっと、一応私とツムギちゃんはプロですから…」

 

 「…一月前にデビューしたばっかり」

 

 「ムギムギとヒマヒマ、アイドルだったの!?」

 

 「あ、アイドルってほどじゃないですけど…一応歌手としては、まあ?」

 

 「…私はヒマリのおまけ。ソロ活動はしないけど、相方としてならって」

 

 「…そうだったの。なんだか慣れてるなーって思ったけどそういうことだったのね。納得したわ」

 

 「アルトはデビューしてないの?」

 

 「俺はそういうのじゃないんで…一応企業所属のモデラーっていう立場ですし」

 

 「アルトくんいっくら誘っても一緒にやってくれないんですよー!もー!でも今回は一緒に立ってくれるってことでいいんだよね!?ねっ!?」

 

 「わかったわかったって。当然俺もやるから、ワルキューレの人たちが納得するパフォーマンスになるまで特訓だぞ?」

 

 「…その言葉を待ってた。アルト、覚悟」

 

 結局、なし崩し的というか逃げ場が無くなった俺はワルキューレのバックバンドに自分たちが抜擢されるという大役をどうしたもんかと思いつつ受け入れるのだった。楽譜を見せてもらったけどどうやら五線譜とか記号とかそういうものは共通しているようだ。解読どうこうの手間はないようでよかった。相変わらず歌詞は読めないけど一回聞かせてもらえればヒマリが完コピしてくれるし俺たちもそれなりに耳コピできるから何とかなりそうだ。

 

 

 

 そして翌々日、運命のと言ったら違うか。俺たちにとっては違ってもドアの向こうにいる彼女たちにとっては正しく運命の日なのだろう。この星系のあらゆる惑星からワルキューレに入るためだけにオーディションを繰り返し選抜されてきた女の子たち。そしてなぜか俺たちも一緒になってオリエンテーションに入ることになっている。なんで?とは今更言えないんだ、そんなことはどうでもいい。問題なのはヒマリとツムギの二人がアーネスト艦長に抱っこされているという謎の状況で突入ということである。

 

 「あの…アーネスト艦長?その…なぜ二人を?」

 

 「うむ、実は俺はどうも初対面の女性に受けが悪くてな。大抵悲鳴をあげられる。子供でも抱いてれば多少はましではないかという思い付きだ」

 

 「お~~!たかーい!」

 

 「…アルトを見下ろしてる、新鮮」

 

 「お前らを見上げるのは確かに新鮮だよ、うん」

 

 真面目に頑張ろうと思った矢先にこれだよ。というかヒマリもツムギもノリノリじゃねーか。そういえば二人は艦長を見ても驚きはしたが悲鳴まではいってなかったな。それにしてもでっけーなアーネスト艦長。マイクロンでも220㎝はありそうだ。戦闘種族のゼントラーディだけあって腕も足も丸太のように太く筋肉質だ。羽毛でも持つかのように二人を抱えて白い歯を見せて笑う余裕がある。うーん、俺も筋肉をつけてああなるべきなのだろうか…?え?お前も来ないか?さすがにちょっと…ま、まあそれはそれとして。

 

 「とりあえず使う曲は一夜漬けしましたけど…あれでよかったんです?」

 

 「アーネスト艦長……あっ、そうね、十分以上だったわ。ヒマリちゃん、彼女凄いわね…」

 

 「それは、まあそうですね。あいつがいなければ俺は全然違う生き方してたでしょうから」

 

 一昨日、ヒマリは使う曲を聞いてそれを全て楽譜に書き起こしてくれたのだ。で、それをもとに合わせてとりあえずアレンジも何もいれないただ正確に曲を奏でるように、レッスンの後ほぼ丸一日レッスン室を借り切ってひたすら練習して、とりあえず機械レベルまでもっていくことに成功した。で、すぐに爆睡して今日にいたる。そして現在俺たちはちょっとサイズが大きいケイオスの制服を着て今この場に立ってるわけだ。

 

 「時間だ、行くとするか!」

 

 「おー!」

 

 「…お~」

 

 「本当にそのまま行くんですか?艦長」

 

 「当然だ!」

 

 そう言ってアーネスト艦長は二人を抱きかかえたまま明らかに身長にあってないドアをかがんでくぐっていった。彼が向こうへ行った瞬間、きゃああああ!!!という悲鳴の合唱が聞こえた。クマにぬいぐるみ作戦はダメだったか…そしてカナメさんが続いた瞬間にそれが黄色い悲鳴に変わる。後ろについて行った俺にはちっとも視線が行ってない。視線が物理威力を持ってたらカナメさん穴だらけだこれ。

 

 「はい、静かに。戦術音楽ユニットワルキューレのリーダー、カナメ・バッカニアです。そして」

 

 「アーネスト・ジョンソン、マクロスエリシオンの艦長だ」

 

 「では、本日のオーディションを開始させていただきます。まず彼ら3人はバックバンドとしてオーディションに協力してもらう演者です」

 

 子供?なんで?とざわざわする彼女たちにカナメさんが説明してくれる。ちょっとへこんだらしいアーネスト艦長に降ろしてもらった二人が俺の近くまで来る。カナメさんが俺たちの事を紹介してくれたので3人そろって頭を下げておく。視線が少し和らいだ気がした。

 

 「では、開始前に一つ。私たちワルキューレの鎮圧ライブは命懸けの任務です。覚悟のない人は今この場で立ち去ってもらっても結構!」

 

 凛、としたカナメさんの厳しい言葉が参加者たちにびりっとした圧を与える。気を引き締めた参加者の中に、いた。豊かな明るい茶髪をくくったハート形のルン、新緑の瞳、あどけなさが残る顔立ちを緊張でガチガチにしたマクロスΔのメインヒロイン、フレイア・ヴィオンの姿が。彼女は緊張で目を回す寸前みたいだけど。

 

 俺はとりあえず目の前の仕事を完璧にこなすべきだと考え、彼女から視線を外して前を見つめるのだった。

 




 お待たせしました。

 今回からようやっと原作が進みます。んでまあ相変わらず本編の進みは遅いですけど書いてはいますのでご安心ください。あと少しですので

 で、一応なんですがルート的にはテレビ版を参照にしてます。映画だとハヤテは最初っからデルタ小隊ですからね。

 では、次回もよろしくお願いします


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オーディションと新メンバー

 オーディションが始まった。さっそく俺たちの出番、というわけではなく待機である。オーディションはいくつか分かれていて俺らがやるのは最後の総合パフォーマンスというものらしい。端的に言えば生音に合わせて歌ったり踊ったりをどれだけこなせるか、グループ単位でやるオーディションとのこと。なので今はマキナさんレイナさん、美雲さんと一緒にモニター室で待機してる。

 

 「クモクモお気に入りのこの子、どうかな~」

 

 「レセプターは、ある。けど反応よわよわ」

 

 「そうね、最後まで見てみないとわからないわ」

 

 カメラが別室で歌っているフレイアによってそのレセプターのパラメータを表示してる、らしい。らしいというのは俺たちが文字を読めないからそうとしか推測できないわけで、分からないのはしょうがない。現にヒマリは頭の上にひよこが舞ってるし、ツムギは虚空を見つめている。暇なのはわかるんだけどもうちょっと何とかならんのか。

 

 そして、ダンスオーディション、基礎体力テストと続いて俺たちが携わる総合パフォーマンスの時間がやってきた。現時点でいけるかもという人は31人中4人まで絞られているらしい。だけど、レセプターの数値的にはいかんともしがたいという感じとのこと。とにかくお願いね?とカナメさんに頼まれた俺たちが楽器を持って待機してると最初の5人が入ってきた。

 

 『はい、では総合パフォーマンスを始めます。演奏に合わせ、自由に歌い、踊ってください。これは鎮圧ライブ時に不測の事態が起きても問題なくパフォーマンスができるかどうかのアドリブ力の試験だと考えて。曲目は「一度だけの恋なら」カウントはそっちのバンドの子たちがやってくれます』

 

 そう言ってぷつんと通信が切れる。参加者の女の子たちがそれぞれ位置につくけど俺たちに注がれる視線はなんだか懐疑的だ。それもそうなのかもしれないけど、だって憧れのワルキューレのオーディションに来たと思ったらオーディションのバックバンドはこんなチンチクリン3人だとしたらそんな胡乱な視線になるさ。だけど大丈夫か?きちんと集中しないで、「一度だけの恋なら」は前奏が存在しない、集中してきちんと入れないと醜態をさらすかもよ?

 

 「行きます!ワン、ツー!ワンツースリー!」

 

 とカナメさんに指定された合図を刻んだヒマリを確認したツムギがメロディを演奏しだす、案の定入れなかった人が3人、きちんと入った人が2人、ダンスまでやってのけたのは1人だ。厳しい曲選だ。まあ俺たちは入れなかった人たちの事は考えなくていいと言われているので演奏を止めることもリズムを狂わせることもなく、忠実なリズムで弾く。入れなかった人が遅れを取り戻そうと無理やり入るが落ち着いてないのでリズムが狂いまくる。それが周りを引っ張ってかなり悲惨な感じになっているのが現状だ。当然、正しく入ってた人もそれにつられて狂いだす。

 

 がたがたのアンサンブル、正確なのは俺たちが奏でる音楽だけ。持ち直してる人は一人、この人は自分の世界に入ってる。俺たちの音と自分の体、自分の声しか意識を向けてない。他をシャットアウトしてるんだ。そうしてきちんと歌えて踊れたのは一人だけ、他の人の表情は沈んでいる。

 

 『はい、終了です。ありがとうございました、合否は全工程が終了してからお伝えします』

 

 「すいません!お願いします、もう一度だけ歌わせてください!」

 

 「私も、お願いします!」

 

 『ダメです。私たちワルキューレの任務に「2度目」は基本的に存在しません。大方バックバンドに気を取られて、と言いたいのでしょうが…その程度で乱される集中力で戦場に立てると思わないで』

 

 2度目を申請した参加者がカナメさんにばっさり切られた、がっくりと肩を落とした参加者が瞳に涙を浮かべてドアから出ていった。厳しい、歌のプロと戦場に立つプロという立場から送られる言葉は何よりも重く俺たちにも刻み込まれるのであった。

 

 

 

 「フ、フレイア・ヴィオンですっ!よろしゅくお願いしますっ!」

 

 あれから4組、それぞれ一発で俺たちの音を聞いてパフォーマンスをした人や自分の世界に入りすぎてズレた人、入れなかった人など千差万別ではあったが俺たちの方はトチることなく仕事をこなすことが出来た、と思う。多分だけどカナメさんたちが求める合格点には届いてないのかもしれないけど。俺が予想する合格基準は基準以上のレセプター数値か、レセプターの数値が低くともそれを補えるほどの歌唱力とダンスなどのパフォーマンス力、その二つのうちどっちか。俺が見る中でワルキューレ並のパフォーマンスをしてる人はいなかった、ありえるとしたら前者の可能性の方が高いから数値を見てない俺が断言できるものではないけど、あの演奏して歌ってもらった時と同じ感覚はついぞ現れなかった。

 

 そして今、目の前で俺たちに向かって噛みつつ自己紹介をして頭を下げた少女は、今のカナメさんたちにどう映っているんだろうか。今までたかがバックバンドと会釈だけされて終わってたからなんかきちんと挨拶してくれて嬉しい、年が近いからかな?そう考えるとウィンダミア人からしたら俺たちは子供じゃなくてもうすぐ成年扱いになるのかもしれない。

 

 「…よろしく、お願いします。頑張って」

 

 「は、はいな!」

 

 「じゃあ行きまーす!ワン、ツー!ワンツースリー!」

 

 「一度だけの恋なら、君の中で遊ぼう 我がままなキスをしよう」

 

 すっげえ、あんなに緊張してたのに一発で入りやがった。他の人たちも入ったけどフレイアさんだけ別格だ。歌が上手い、レセプターがこれでオフだとしたら…オンになったらどれだけ…!これ、俺たちもノリたくなってくるよ。だけど、贔屓になったらいけないのでぐっとこらえて決まったリズム、メロディーをキープし続ける。ほのかにルンが光るフレイアさんを見つめてしまう。流れ通りになるかは分からないけど、本当の最終試験に向けてどうなるか俄然気になってきたぞ。悟られては困るので、務めて無表情でいないと。

 

 

 そうして高い歌唱力と拙いダンスを披露しつつ、フレイアさんは他の参加者さんと一緒に出ていった。俺たちは楽器を下ろしてふーっと一息ついて地面に座り込む。ヒマリが口を開いた。

 

 「ねえ!さっきのフレイアさん、すごかったね!歌凄い上手だった!」

 

 「…うん、音楽をきちんと聴いて合わせてくれてた。あの人、合格かな。アルトはどう?」

 

 「そうだな、感覚的に一番ノリ易そうなのはやっぱフレイアさんだよな。いやあれはすげえよ、多分合格もぎ取ってくるんじゃないか?」

 

 そうやって雑談に花を咲かせているとドアが開いた。カナメさんだ。マキナさんたちは最終試験をするという話を事前に聞いているのでいないのは分かってるし、その試験を受けるのはフレイアさんなんだろう。そして今頃、ハヤテ・インメルマンもアラド隊長にスカウトを受けているころだと思う。

 

 「3人とも、お疲れ様!本当にありがとうね~!きちんと出来てたわよ~、やっぱり生音のほうがレセプター数値は上がるみたい」

 

 「お役に立ててよかったです。あの、それで合格者は…?」

 

 「あなた達は誰だと思うのかしら?」

 

 「「「フレイア・ヴィオン」」」

 

 「息ぴったりね…そんなに違った、のかしら。最終試験次第だけど…そうだ、今日から住む場所変わるけど大丈夫かしら?」

 

 「どこに、ですか?」

 

 「アルトくんは男子寮、ヒマリちゃんとツムギちゃんは女子寮になるのかしらね」

 

 「…アルトと離れたくない」

 

 「いや、です。ごめんなさい…」

 

 ぎゅむぅと二人して俺にくっついてきた。まあ、どっかでこうなるとは思ってたんだけど思ったより早かったな。あららと困った顔をするカナメさんとできれば二人を優先したい俺としては無言でカナメさんの裁定を待つしかない。二人からすれば俺と離れるのは同じ世界の事を共有できる人が一人減るということであるし、まだ警戒してる二人からしたら全力で嫌がるのもしかりって感じだろう。困ったなあ…

 

 「いつまでも休憩室間借りしてるわけには行かんだろうしなあ…何とかなりませんか?」

 

 「そうね、精神的にも無理矢理はがしちゃ可哀想だけど…アルト君は女子寮で寝られる?」

 

 「外でテント張って暮らしていいなら」

 

 「許しません」

 

 だよねー。結局離れなかった二人の事を考えて落ち着くまでは休憩室を間借りしてていいとアーネスト艦長が太鼓判を押してくれたのでとりあえずこの件は流れることになった。それとある意味でヒマリにとって朗報なのだがワルキューレが使う楽器全ての使用許可が下りたらしい。つまりギター、シンセ、ベースだけじゃなくてトランペットとかサックスとかも死蔵されてるだけであるらしい。使えるなら使っていいよとのこと。ワルキューレが迷走してた時期の副産物だって、バンド方面だけじゃなかったのね…

 

 何と無しの雑談を柔らかく笑うカナメさん、ギターやベースも数種類あるとかなんとか、マジで?アコギ使えるなら使いたいんだけど。それはともかくとして、どうやら合否の連絡が来たらしい。カナメさんが席を外して外に出ていった。俺たちも使った楽器の手入れを済ませて奇麗に片づける。結果が予想通りなら嬉しいんだけど…

 

 

 そう考えながら私服に戻った俺たち、でも私服も洗って着まわすのがきつくなってきそうだ。そろそろ服も変えないとなあ…いくら一瞬で洗濯されて乾くとはいえ。そしてカナメさんに呼び出された俺たちがケイオスの受付に赴くと私服のチャックさんとカナメさんに出迎えられた。

 

 「お、来たね~。初仕事お疲れさん!新入りの歓迎会やるんだ、お前らも主役だぞ~!」

 

 「ふふっ、貴方たちの予想通り、フレイアさんが合格よ。今日は一日お疲れ様」

 

 「…カナメさんたちのほうが大変だった。お疲れ様でした」

 

 「そうですよー。私たちは同じことしかしてませんし」

 

 「チャックさん、すいませんわざわざ…」

 

 「気にすんなよー。新人拾っていくぞー」

 

 そうしてモノレールで道を下って異国…異星?情緒あふれるラグナの街をおっかなびっくり進んでいく。待ち合わせ場所らしいカフェには既にフレイアさんの姿とハヤテ・インメルマンの姿がある。彼らは俺たちに気づくとフレイアさんはパッと顔を輝かせ、ハヤテさんの方は物凄い怪訝な顔をした。真逆の反応に思わず笑いそうになったよ。

 

 「あー!オーディションの時のゴリゴリバンド!」

 

 「ゴリゴリバンドのヒマリでーす!合格おめでとうございます!フレイア・ヴィオンさん!」

 

 「ゴリゴリ!」

 

 「ゴリゴリ!」

 

 「「ゴリゴリ~!」」

 

 「何やってんだか…で、お前らだれ?」

 

 「ふふっ、この子たちは貴方たちと同じ新入り。ワルキューレのバックバンドになる子たちなの。今日のオーディションにも協力してもらったわ」

 

 なんか波長が近いらしいフレイアさんとヒマリが一瞬で仲良くなってゴリゴリ言い合ってるのを尻目にハヤテさんがそう尋ねるのをカナメさんがサラッと説明してくれた。どうやら何もかもを話す必要はないらしい。おいおい必要になったら話すべきだろうか。

 

 「サオトメ・アルトです。よく言われるんですけど本名です。よろしくお願いします。あっちでゴリゴリ言い合ってるのがスズカゼ・ヒマリです」

 

 「…イロハ・ツムギです。よろしくお願いします」

 

 「なんかそんな露骨に警戒されるとちょっとくるな…ハヤテ・インメルマン、ハヤテでいい。よろしくな」

 

 人見知りを発動させて俺の後ろから顔だけ出してボソボソ自己紹介をしたツムギを見たハヤテさんが自己紹介を返してくれた。自己紹介が終わったのを見計らったのかチャックさんのとりなしで裸喰娘娘への道のりを歩いていく。前は昼にここを通ったけど夜に来ると全く風情が違う。まるで空中にクラゲが舞ってるような幻想的で淡い光が照らしていた。

 

 「なあ、アルトっつったっけ。バックバンドってことはお前も戦場に出るのか?」

 

 「それは、まだです。ワクチンライブのみってことになってます。出るのかどうかは決めてません」

 

 「ふぅん。ま、お互い仲良くしようぜ。いくつだ?俺17だけど」

 

 「12です、もうすぐ13ですかね。二人も大体一緒ですよ」

 

 「わっかいな~、今度何か聴かせてくれよ」

 

 「いいですよ。どういうのが好みなんです?」

 

 「リズム感がいいやつ」

 

 そうしてきょろきょろと周りを見渡してでかるちゃ~とつぶやくフレイアさんとそれを苦笑いしながら見るハヤテさんを連れて裸喰娘娘にやってきた。誇らしげに家兼デルタ小隊男子寮だというチャックさんとその家族が姿を現した。携帯が何だという話の中突然の「私のおさかな~~!」という声と共に、テラス席からこちらの方に猫の上半身とアザラシの下半身をくっつけた生き物が魚をくわえて此方に向かっているところだった。

 

 「なにあの…猫?」

 

 「…初めてみた」

 

 「ウミネコだ!あいつっ!また…!チャック兄さんに任せなさい!」

 

 そう言ってチャックさんがお魚咥えたウミネコと取っ組み合いに入るが、素早いウミネコに翻弄されて額をぶつけあって撃沈した。うわ、いったそ~…!その件のウミネコは逃げる為に俺たちの方へ向かってくる。げっ!狙いは…ハヤテさんか!

 

 「えっ!?俺か!?どわっ!?」

 

 「…だめ」

 

 「ブニャ゛ッ!?」

 

 ハヤテさんに向かって強烈な尻尾ビンタをかまそうとしていたウミネコはジャンプしたツムギに正確に脇に手を入れられてインターセプトされた。まさかキャッチされるとは思ってなかったウミネコが逃げ出そうと暴れるが長時間のガンプラバトルに耐えられる上にシンセサイザーという楽器もこなすツムギの握力は見た目以上に強い。ビチビチと陸の上の魚みたいな暴れ方をするが意に介さずツムギは手を伸ばして持ち続ける。やがて逃げられないことを悟ったウミネコがうなだれた。

 

 「ツムギちゃん、ナイスキャッチ!」

 

 「ツムギ、ナイス。まさかなお魚咥えたどら猫をホントに見る羽目になるとはな」

 

 「…ちょっとかわいい。でも泥棒も人を怪我させるのも、ダメ」

 

 「ウ゛ニャウ…」

 

 実際ツムギからすればあの程度の速度ならまあ止まって見えるのだろう。それで、何時もガンプラバトルでやってるように軌道の予測をして先読みしたうえで動いた。それを分かってるのは多分パイロットやってるチャックさんだけ。彼はポカンとした顔でツムギを見ている。そういえば彼女の目の良さはまだ誰も伝えてないんだっけか。

 

 「へくしっ!」

 

 後ろから盛大なくしゃみ。ハヤテさんが鼻をすすっている。鼻の頭が赤いからアレルギー性鼻炎なのかな?猫アレルギーかぁ、ラグナで暮らすには大変そうだ。心配そうなツムギが近づいて声をかける。ウミネコ持ったまま。

 

 「…大丈夫?」

 

 「近づけないでくれ!猫アレルギーなんだ、っくしゅん!」

 

 盛大なくしゃみが何発かくらいラグナの夜に響いた。




 お待たせしました。本日2話目です。やっと物語が進みますね~、といってもまだしばらくはラグナ周りの話になるでしょうしアルトくんの戦場ポジションを決めないといけません。

 本日同時更新している本編の方もよろしくお願いします


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フリー・セッション

 「…この子、どうしよう」

 

 「ブニャ~~~?」

 

 「よく見ると、ちょっとかわいいね。ドラ猫っていうのが形になった感じ?」

 

 「ホントにアザラシなんだな」

 

 ツムギが捕獲したお魚咥えたウミネコを俺たち3人が囲ってああだこうだと話し合う。あまり凶暴なタチではないらしくおっかなびっくりヒマリが撫でるのを気持ちよさそうに受け入れている。ゴロゴロと喉を鳴らしているウミネコにほっこりしていると、唐突にウミネコが咥えていた魚を放り投げて口でキャッチ、ごくんと丸呑みした。おお、そこら辺はアザラシなんだな。

 

 「お魚~~~~!!!」

 

 「…マキナさんのだったの?」

 

 「ヴニャン」

 

 「…もうとっちゃダメ。わかった?」

 

 「ニャ゛ン」

 

 「ホントに分かってるのかね~」

 

 ツムギの問いかけに律儀に返事をしてくれるウミネコ、分かってないなコイツ。繰り返す感じが伝わってくるわ。そのままツムギが海へ返すとすぐさま戻ってきたウミネコがツムギの手に何かを置いた。それは3枚のキレイな貝殻で、見る角度で虹色が反射するオパールのような輝きをしている不思議なものだった。そのままウミネコは潜ってどっかに行ってしまった、食事への代金のつもりだろうか。

 

 「…もらっちゃった」

 

 「よかったな、ツムギ」

 

 「きれいだね~~!猫の恩返しだ!」

 

 「ハヤテ、さっきからくしゃみばっかりだけど…大丈夫なん?鼻も真っ赤になっとる」

 

 「猫アレルギーなんだよっくしゃん!あー、もう最悪」

 

 「何を騒いでいる」

 

 「あ、メッサーくん、よかった!どう?ご飯一緒に食べない?」

 

 「いえ、自分は済ませてきましたので」

 

 くしゃみをしているハヤテさんをその長い長身で見下ろしているのはメッサーさん、パンと顔の前で手を合わせて笑顔で食事の誘いをするカナメさんをすげなくかわして寮に帰っていこうとする。あ!あっぶね!これ渡さねーと!

 

 「すいません、メッサーさん。ちょっといいですか?」

 

 「…何だ」

 

 「あの、よかったらこれ受け取ってください。その、いろいろお世話になったので」

 

 「………任務だ。気にしなくていい…受け取っておく」

 

 俺が差し出したのは一枚のスケッチ。昨日、スケッチブックと鉛筆を借りてせこせことデルタ小隊の訓練の時のカタパルトデッキの片隅を借りて描いたデルタ2のジークフリートだ。あのホットミルクはとてもありがたかったので今できるお礼を考えた結果こうなったわけで。出来としてはまあ悪くないと思う。それを見たメッサーさんはいつもと同じ言葉を返しはしたが受け取ってはくれた。そのまま彼は裸喰娘娘の2階に消えていった。

 

 

 

 

 「「「「「新入りを祝ってかんぱーい!!」」」」

 

 「よく来たフレフレにハヤハヤ!さあ食べて飲んで楽しむがよいぞ~~!」

 

 「くらげ、おいしい」

 

 「お、おう…」

 

 「アルト君とヒマリちゃんとツムギちゃんもたくさん食べてね。何が食べたい?」

 

 「あ、すいませんわざわざ…」

 

 何というか、宴会という言葉がしっくりくる。デルタ小隊とワルキューレのほぼ全員が集まっているという銀河のファンたちからしたらかなりヤバい状況ではあるのだけど。というか裸喰娘娘の料理美味しいな。クラゲチャーハンが一番好きかもしれない。塩っけがちょうどいい。もぐもぐとご飯を食べているとハヤテさんに一通り絡んだマキナさんがこっちにやってきた。

 

 「ねーえアルアル~」

 

 「なんでしょう?」

 

 「この前の動画の続き、見せてほしいな~って。すぐ切り上げちゃったでしょ?」

 

 「ああ、はい。どうぞ」

 

 そんなこんなで食事会は途中からみんなして俺のスマホを覗き込む状態に変わってしまった。画面小さくて済まねえ…と思ってると「じゃじゃーん!こんなこともあろうかと接続端子を作っておきました!これを、こう!」とマキナさんがケーブルを俺のスマホにぶっ刺すと大画面&大音量でツムギVSチョマーさんの動画がホログラフで流れだした。最初に唸ったのはアラドさんだ。

 

 「ほお、坊主、乗ってるのお前か?」

 

 「こっちです」

 

 「…アルトが作った、私のヅダ」

 

 「へえ、動きがいいな。このビームを撃つゴーストみてーなのとでかいデストロイド、下手な戦艦よりも弾幕が濃い。それをよくもまああそこまでデストロイドで避けるもんだ。近接武器で撃墜までしてる、評価にするならかなり高いぞ」

 

 「なんだ…これ。戦争…か?」

 

 「アルアルの故郷の遊びなんだって。模型を動かして戦うらしいの」

 

 「これが玩具だあ!?マジで言ってんのか!?」

 

 「ほ、ほわ~~~で、でかるちゃ~~~」

 

 ツムギの戦いにそれぞれコメントを残してくれるみんな。ツムギもヒマリも「…ここ、チョマーさん先読みが完璧すぎて当たるところだった」「あ~ひやりとしたよね」みたいな感じでしみじみと振り返っている。そうなんだよなー、チョマーさんジェスタキャノンで来ると思ったからデストロイガンダムが出てくるなんて夢にも思わなかったんだよ。で、スキュラと疑似マクロスキャノンのつばぜり合いが始まり、ヅダがビームの中を突き進もうとした瞬間プツン、と画面が切れた。

 

 「あ、電池切れた」

 

 どっ、と手に汗握ってたワルキューレとデルタ小隊の面々、ついでに見ていた周りのお客さんが一斉にずっこけた。大事に大事に使ってたけど流石にな。エリシオンに戻ったらポータブル充電器につながなきゃ。でもそれも限界だよな。がったんと音を立ててマキナさんが立ち上がる。

 

 「も~~~~いいとこだったのに~~~!アルアル!充電器ってどういうの!?電圧とか調べて作るから!」

 

 「いいんですか?どうお願いしたもんか迷ってたんですけど」

 

 「勿論!大事なものでしょ?ちゃんとお願いして!レイレイ、ごはん!」

 

 「はい、マキナ」

 

 そう言ってマキナさんはレイナさんに手を差し出す。するとレイナさんは取り皿に山盛りの料理を盛ってマキナさんに手渡す。やけ食いをし始めたマキナさんを見て周りもいつも通りに戻ったようだ。チャックさんが追加の料理を運んでくる。カナメさんが俺たちでも食べられそうなものを取り分けてくれた。お礼を言った俺たちは、料理をありがたく頂くのだった。クラゲまんうめえ!

 

 

 

 

 「ハヤテ候補生!どこにいるのですか!?」

 

 「あれ?ミラージュさんだ!こんにちはっ!」

 

 「…こんにちは、です。怒ってる?大丈夫?」

 

 「ミラージュさん、お疲れ様です。ハヤテさんがどうかしたんですか?」

 

 昨日、アラドさんに送られてエリシオンに帰った俺たち、午前中は開いているらしいレッスンルームを借りてワルキューレのライブ曲を練習していたんだけど、午後はワルキューレが使うという話なので楽器と場所を変えているのである。場所はエリシオンにいくつかある外に出るための扉近くの展望デッキ的な場所。いい海風が吹くんだよね。実はアイテールのカタパルトデッキを間借りしようとしたんだけどヒマリの鼻歌でデカルチャーが起きたのでガチ演奏したら仕事にならないんじゃないかという勝手な憶測を元にカナメさんとアラドさんに許可とってここを借りてるわけです。あと楽器は星の風土に合わせて作ってあるので塩水につけるとかでもしない限り大丈夫なんだって。ビバ異星技術。外でする演奏も嫌いじゃないよ。

 

 で、そこに怒りをあらわにしながらやってきたのがミラージュさん、どうやらハヤテさんを探しているらしい。そういえば飛行の実技以外はサボってるんだっけ、それで初日からバックレるもんだからそりゃあ、怒りもひとしおだよね。今のミラージュさんハヤテさん嫌いみたいだし。

 

 「いえ、ハヤテ候補生が座学に現れないものですから…どこで道草を食ってるのかと」

 

 「ハヤテさん授業に来なかったんですか?勉強しないと飛べないと思うんだけど…ね、ツムギちゃん」

 

 「…ん、楽器と一緒。ひたすら弾いても分かんない。音符とか記号とか勉強して、ちゃんと弾けるようになる」

 

 「その通り!ツムギちゃんえらい!」

 

 「まったく、こんな子供が当たり前のように努力を重ねているというのにやつときたら…!」

 

 「ま、まあまあミラージュさん。他にどこか心当たりありませんか?ほら、アイテールのデルタ小隊の機体があるところとか」

 

 ヒートアップするミラージュさんがズダン!という物凄い音を立てて足を踏み鳴らした。鍛えられた肉体とゼントラーディの血が生み出すパワーによって生み出された大きな音は、優秀な聴覚をもつヒマリと意外と普段はビビりなツムギをビクゥゥ!!と震え上がらせるには十分だったらしい。こっそり俺の後ろに隠れた二人をみたミラージュさんがあたふたしてる。

 

 「す、すいません大きな音をだして!ハヤテ候補生を見かけたら一報をお願いします!では!」

 

 そう言ってカツカツと音を立てて肩を怒らせたミラージュさんは去っていく。ありゃかなり怒ってるなあ…それはともかくとして…

 

 「一報って、どうすればいいんだ?」

 

 「「わかんない」」

 

 内線の使い方も知らない俺たちは全員でそう首をひねるのであった。ま、まあそれはともかくとして。

 

 「ヒマリのサックスなんて何時ぶりだ?軽音部入ってからはやってないよな」

 

 「家ではずっと吹いてたよ?お母さんの楽器だし」

 

 「…ヒマリ、いろんな楽器できる、いいな」

 

 「えっへへ~頑張ったんだよ!」

 

 そう、今ヒマリが持ってるのはサックスだ。いわゆるアルトサックスというやつ、何を隠そうヒマリのご両親はジャズ系の音楽家なのだ。お父さんがベーシスト、お母さんがサックス奏者、ちなみに祖母がピアニスト、祖父がギターである。その英才教育をぎゅぎゅっと詰め込んでおまけに歌の才能をマックスまでトッピングしたのが何を隠そうヒマリである。そんで俺が持ってるのがベース、5絃のベースである。ツムギは変わらずシンセサイザー。今日はピアノの気分、そう今からやるのはジャズセッションだ。実はこれ、アドリブの練習になるんだよね。あと楽しい、これ重要

 

 「じゃあやろっか~!いくよ~!」

 

 そういうヒマリの合図でセッションが始まる。貸し出してもらった鞄サイズのフォールドアンプからベースの重低音が鳴り響く、ヒマリのサックスの音とツムギのメロディーがエリシオンに反響してラグナの空に響いた。

 

 

 「いや~、いいな。楽しいわ」

 

 「ね~~~!やっぱりジャズも私は好き!」

 

 「…さっきのヒマリのソロ、私大好き」

 

 「やった~!ツムギちゃんぎゅうう~~!」

 

 「…ぎゅう」

 

 適当なタイミングでセッションを切り上げた俺ら。楽器を立て掛けて地べたに座り込む、眩しい太陽が照らしているが、風があるせいかあまり暑く感じない。ヒマリがツムギに熱烈なハグをしながら暫く雑談に花を咲かせてると扉が開く、ミラージュさんかなと思ったらめんどくさそうな顔をしたハヤテさんだった。

 

 「あ、ハヤテさん。ミラージュさんが探してましたよ?座学にこいって」

 

 「知ってるよ、めんどくさいから逃げてきた。飛行実技には出てるんだからいいだろ」

 

 「…そうなの?それで、ワルキューレを守れる?」

 

 「デルタ小隊の任務は戦闘じゃない、それだけだよ。お前らと一緒」

 

 「どうしてここに来たんです?」

 

 ツムギの率直な言葉にぶっきらぼうに返してくるハヤテさんにあ、これは空気が悪くなると思った俺がハヤテさんにそう尋ねる。彼も態度が悪かったかもみたいなことは思ってるようで俺の話に素直に乗るように口を開いた。

 

 「…いい感じの音が、聞こえてきたんだ。そしたら、お前らがいた。なあ、聞かせてくれよ。お前らの音楽」

 

 そのハヤテさんの言葉。昨日いいですよって言ったし俺は構わない。団子みたいにわちゃってたヒマリとツムギもオッケーらしくそれぞれ楽器に手をかける。んー、ドラムがいないとなかなか厳しいんだけどこいつで行くか。あ、ミラージュさんが怒りに来たら俺たちの分怒られてくださいねハヤテさん。

 

 無音の間の後に演奏が始まる。ジャンルはいわゆるフリージャズ、イメージするのは機動戦士ガンダム・サンダーボルトでイオ・フレミングが機体の中にテープを持ち込んでまで聞いていたジャズだ。激しいドラムはないけれど、俺のベースとツムギのシンセのトランペット音、そしてヒマリのアルトサックスがマッチした音楽になっている。

 

 「…いーい感じだ。よっと!」

 

 おお、と思わず感心してしまった。俺たちのアドリブの応酬の中にある根本のリズムを掴んだらしく、タップダンスのような感じの創作ダンスをハヤテさんが躍りだしたのだ。なるほど、まだ早いけどこれがインメルマンダンス、かな?心底楽しそうに音楽に乗るハヤテさんのステップが過熱する。悪くない、どころか確かにこれはいい感じ。もっとアドリブぶち込んでやれ!リズムだけは崩さずな!

 

 気づけば結構な時間、その状態が続いていた。汗を流すハヤテさんは心底楽しそうで、その楽しさが俺たちにも波及してる感じ。ふう、と一息ついて演奏をやめる。ハヤテさんが、手を飛行機に見立てて太陽にかざしていた、そして扉の前にはいつの間にいたのかミラージュさんの姿。あっやべ!彼女は俺たちのセッションを聞いていたらしくハッと我に返った感じでズンズンとこちらにやってくる。

 

 「ハヤテ候補生!」

 

 「あっやっべ…お前ら、ありがと!いい曲だったぜ!んじゃな!」

 

 「待ちなさい!ハヤテ候補生!」

 

 そのまま別の扉に逃げ込むハヤテさんをポカンと見送った俺たち。そしてそれを追いかけるミラージュさんを見てさらにポカンとするのであった。




 本編がいよいよ大詰めというときに番外編を更新する作品があるらしい。そして番外編でヒロインの情報が出る作品もあるらしい。この作品の事やな!

 本編はしばらくお待ちくださーい。多分1週間かそこら?かな。そして話が進まねえ!次はフレイヤとの絡みが書きたいのでもっと進まないと思うの。

 ではまた次回でお会いしましょう!


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ワルキューレ・レッスン

 ハヤテさんはどうやら捕まったらしく、俺たちが再びジャズの演奏を楽しんでいるところへドアを開けて引きずられて登場した。どうやらこの場所を経由しないと通れない場所に逃げ込んだらしいがミラージュさんは一枚上手だったようで、先回りを食らってあえなく御用とのこと。俺たちの状況に目を丸くしていたがそのまま講義室へ行くのかドアを開けてご退場なされた

 

 「ひゅー!」

 

 「いいなこのリズム!」

 

 「デカルチャー!」

 

 現在俺たちの居場所は変わってないが、整備士とかデルタ小隊じゃない別の小隊、つまりVF-31「カイロス」を使用している部隊とか内勤の人が集まってプチ演奏会みたいな感じになってる。売店でお菓子やらジュースやら買ってきてかぶりつきで見る始末。大丈夫なのかケイオス、こんな感じで

 

 まあそれはさておきカイロスとジークフリートとの違いは翼とフォールドクォーツではなくフォールドカーボンを使用していることと、ワルキューレと同調して機体性能が飛躍的に上がるフォールドウェーブシステムが搭載されているか否か。つまり基本的に同じ機体、というかジークフリートの大本がこっちみたいな感じか。

 

 まあ音楽は聴かれるためにあるので俺たちは演奏すること自体に全く拒否感はないんだけど、ここで一発アドリブ、合図出して二人が頷いたので三拍おいて転調、ヒマリのサックスが奏でるのはジャズアレンジバージョンの「恋!ハレイション THE WAR」知らない曲より知ってる曲の方がテンション上がるよね~っていうだけだけど、これが大受け、ケイオスの中にもワルキューレのファンはたくさんいるんだな。当たり前か。

 

 「おいおい、何やってんだこれは…」

 

 「あ、アーネスト艦長…」

 

 「聞いたこともない音楽が聞こえると報告を受けて来てみれば、仕事もせずに何をやっている!さっさと持ち場に戻れ!」

 

 まさかやってきたのはアーネスト艦長、やっぱ仕事をサボってやってきたのかみんな。演奏をやめてこれ怒られるやつだーと思って全員で首をすくめて怒声に備える。すると聞こえてきたのはお叱りの言葉ではなく優しい言葉だった。

 

 「すまないな、迷惑をかけた。今後は演奏する場所もきちんと用意せんといかんな!ハッハッハ!」

 

 「…怒らないの?」

 

 「何を言う、きちんとお前たちは許可を取って演奏していただろう!ならば俺が怒る権利はない!だが仕事が手につかないのは問題だな…かといって練習も必要だろう。となれば場所の変更だな…」

 

 「えー艦長横暴~!」

 

 「休憩時間ぐらいいいじゃないっすか~!」

 

 「ええい黙れ!とっくに休憩時間は終わっとるわ!さっさと仕事に戻らんか!」

 

 ぶーぶーと俺たちの演奏を聞いていた人たちからのブーイングを一喝したアーネスト艦長、こんな態度をとっても大丈夫だなんてケイオスってでかいわりにかなりアットホームな会社なのか?それとも平時だから緩いだけ?蜘蛛の子を散らすようにドアから出ていく社員の人たちや作業員の人たち、アーネスト艦長も出ていくと思ったらドカッと俺たちの目の前で胡坐で座った。

 

 「アーネストさんはいいの?行かなくて?」

 

 「俺は今から休憩なんだ。折角だし一曲聞かせてくれ。なぁに、これからも練習できる場所は確保するようにする」

 

 「俺たちはいいですけど、社員さんになんか言われません?」

 

 「気にすることはない。あいつらはきちんと切り替える、ケイオスの社員だからな」

 

 大丈夫かな…と思いつつも俺たちは演奏を再開する。ほお…と言いつつ聴く体制に入ったアーネスト艦長のために俺たちは出来る限りいい演奏を届けるために集中するのだった。

 

 

 

 「アーネストさん、音楽大好きだったんだね~!」

 

 「…3曲アンコール、実はきっと自分が聞きたかっただけ?」

 

 「さーな。でも気に入ってもらえたんだろ。嬉しいじゃん、それ」

 

 あの後、アーネスト艦長の3回アンコールに答えた俺たち、名残惜しいがと休憩を終えて去っていったアーネスト艦長を追うように楽器を片付けて背負い、アイテールの中、ワルキューレが使っているレッスンルームに行くことにした。楽器の片づけである。ついたレッスンルームの扉の前、練習中に邪魔しちゃ悪いので音楽とか声が聞こえていないのを確認したうえで静かにそっと開ける。

 

 「あら?アルト君たちじゃない。もう練習はいいのかしら?」

 

 「はい、すいません楽器持って行ったりして」

 

 「気にしなくていいよ~~!誰も使わなかったんだからアルアルたちが使ってくれて嬉しいくらいだよ!」

 

 「あと、噂になってた。艦内ネットワークで。私も聞きたかった」

 

 迎えてくれたのはいつも優しいカナメさん、俺たちが礼をして頭を下げるとフォローしてくれたのがマキナさん、レイナさん。美雲さんはミステリアスな微笑み顔でこっちを無言で見ている。そして最後の一人。

 

 「ごりごり~~…」

 

 「大丈夫ですか?フレイアさん?」

 

 「はっ!だ、大丈夫なんよ!元気元気!ヒマリちゃんにもツムギちゃんにも負けてられないかんね!」

 

 木製の床にぶっ倒れてたフレイアさんがヒマリの問いかけにバッ!と体を起こして答える。初日のレッスンはかなりきついものだったのだろうか。それともダメ出しが多くて凹んでいるのだろうか。高い身体能力をもつウィンダミア人がここまでなるなんて…かなりしごかれていると見える。

 

 「ちょうどよかったわ!今からアイテールのカタパルトデッキまで行って別のトレーニングをするのだけどアルト君たちもどうかしら?多分、ライブでやってもらうことになると思うの」

 

 「俺たちも、ですか?」

 

 「…私たちにもできること?」

 

 「何するんだろう…見当もつかないや。アルト君なんだと思う?」

 

 「………スカイダイビングか?」

 

 Δのアニメでそういえばワルキューレの登場シーンってだいたい空挺部隊みたいにスカイダイビングして登場してたなあと思ったのでそれを口に出す。風に乗れば飛べるというフレイアさんの言葉通り風に乗ってみようぜという話だろうか。バンジージャンプくらいの感じだったらいいんだけど。

 

 「あはは!違う違う!それはもっと先の話よ!ふふっ…行ってみてのお楽しみね」

 

 俺の発言の何が面白かったのか口に手を当てて笑うカナメさんについて行くことになった俺たちは楽器の手入れを手早く終わらせてワルキューレの面々にくっついていく。やっぱりレイナさんはツムギの事を気に入ったのだろうか?ぽむぽむと頭を軽く叩きながら色々話している。ヒマリはフレイアさんと歌についてあーだこーだと話している。お互いに未知の曲ばっかりだからこんど歌ってみよう!みたいな話。んで俺はカナメさんに捕まってここでの生活はどうだの問題はないかとヒアリングされている。明日服を買いに行きましょうか、と言われたのでありがたく受けることにする。私服がないのはきついよ。ケイオスの制服かっこいいんだけど、普段着にしようとは思えないし。

 

 そんな感じでやってきましたアイテールのカタパルトデッキ、何時もならデルタ小隊が使っているらしい場所ではあるが、合同訓練の時にも使うとのこと、んで俺たちの目の前にあるのは…シグナスだ。あのブーメラン型の無人誘導防御端末、ピンポイントバリアを張ったり掴まって飛んだりというなかなかに多機能かつ便利なものだな。あとホログラフ投影したりしてワルキューレのライブに欠かせないものだ。ジークフリートにミサイルの代わりとして搭載されるものでもある。つまり、超大事。

 

 「はい!シグナスの操作訓練を開始します!じゃあ初めての人もいるからマキナ、説明」

 

 「はぁ~い!シグシグちゃんは、ワルキューレがライブ中に操作する誘導端末だよ!ピンポイントバリアでお客さんを守ったり、演出のホログラフをはったりとにかく色々できるの!ジクフリちゃんに乗ってるシグナスは一機当たり16機!最低でも3機は同時操作できるようにならないとダメだよ~~!このフォルムが、きゃわわっ☆」 

 

 「基本的に自動で動いている…けど鎮圧ライブで私たちを守ってくれる盾、自分で動かせないといざという時、ドカン」

 

 「ほ、ほえ~~~うまくできるんかね…」

 

 「出来るようになってもらいます!アルト君たちも、ワクチンライブでも使うものだから一応、ね?まずは1機から!」

 

 「はい、アルアルとヒマヒマとムギムギのマルチデバイスね~~。日本語対応してあるから、人差し指と中指につけてVサインして~?」

 

 言われるがままにワルキューレが使っているものと同型らしい付け爪型のデバイスを手に付けてVサイン、すると爪の先に小型のホログラフが出てついでに音楽も流れ始めた。ほんとに日本語対応になってる…!この世界に来て日本語の文字を久しぶりに見た。シグナスの取り扱い説明の動画が流れる。

 

 ふむふむ、外装はフォールドカーボンを作る際に出るフォールドプラスチックというもので、最高速は時速500㎞…はぁっ!?そんな速度出るの!?いやゴーストと比べると遅いのは当たり前だけど…ああ、そっかピンポイントバリアを張ったりして守るのが仕事だからある程度の速度が出ないと間に合わないのか、納得。んで肝心の操作方法は…脳波コントロールとマニュアル制御…マニュアル制御のこれって…!

 

 「ねえアルトくん、これって」

 

 「…ガンプラバトルとほとんど変わらない…?どころか簡単になってる」

 

 「だよな。コンソールはないけど指の動きと掌の動きで動かせるのか…もしかしたら、ガンプラバトルの操作が応用できるかもしれん」

 

 「ん~~?アルアルどうしたの?分からないところあった?」

 

 「いえ、大丈夫です。全部見終わりました」

 

 「おっけ~~!それじゃ、シグシグちゃん、起動!はい、取り敢えず1機ずつね!動かしてみてね~~!」

 

 そうしてマキナさんの操作で俺たちの前にシグナスが1機づつふよふよと浮いてやってくる。チュートリアルの操作に従って目の前のシグナスとデバイスを接続、左、右、上、下、と動かしてみるがレスポンスがかなりいい、作りこまれたガンプラを操作するときと変わらないか若干上回るくらい。フレイアさんがむむむと両手を出しても動かせない感じでカナメさんがこうしてみてとアドバイスをしてるのを横目に俺たち全員はスッとシグナスを動かすことに成功した。

 

 「あれ?凄いねアルアルたち!そんなパッとできるなんて!」

 

 「いや、実はこれガンプラバトルとほとんど操作が変わらないんですよ。というか武装選択の操作が必要ない分簡単かもしれないです」

 

 「むむっ!そうなの!?アルアル、ちょっとシグシグ増やしてもいい?」

 

 「いいですよ。5機くらい増やしてください」

 

 ついでに言うとバルキリー操作の時の変形、手足を使うアンバック、さらには姿勢制御のための細かなブースターの制御の操作もなくなったという感じだ。ぶっちゃけ言うと物足りないくらい操作が簡単、現在俺はガンプラバトルで頑張れば10機を同時操作できる。ちなみに俺の同時操作の師匠であるカイザーさんは40機超、あの人ヤバすぎる。なんだけどこの操作具合なら多分もっともっと増やせる。コンソールがないのがちょっとあれかな…

 

 マキナさんが引っ張ってきた連結状態の5機のシグナス、俺の操作で接続されて浮き上がり、連結が解除されて別々に動き出す。うん、全然余裕、何だったら指の操作もいらないや。ファンネルを操作するときみたいな思考操作で腕をだらんとしたまま、シグナスが三角だったり星だったりいろんな形を作る。久しぶりにガンプラバトルしてる気分~~!あ、ツムギも5機もらってるや。ヒマリもか、そうだよな~割と簡単だよなこれ。

 

 「あ~~~難しいんよ~~~!!」

 

 「フレイアさん!こうです、こう!」

 

 「おっ?動いた!動いたんよ!ありがとヒマリちゃん~~~!」

 

 難しい~~と頭を抱えたフレイアさんに急いで近づいたヒマリが手を取ってここを、こうとやってみせるとフレイアさんのシグナスが動く。そのまま手を動かしてコツを伝授したヒマリにフレイアさんがありがとうとお礼を言っていた。ルンがピカピカしてるけど、それはウィンダミアの人として大丈夫なのだろうか。

 

 あっ、ツムギ、ちょっと手伝ってくんね?とアイコンタクト。俺のシグナスとツムギのシグナスが同時に動く、俺たちの周りをくるくる回ったり図形を描いてみせたり、やっぱ手足の操作がなくて動かすだけでかなり単純だから割と余裕だなこれ。どう、こんな感じ?数足りねえなこれ、もっと行けるんじゃね?

 

 「もう10機くらい足せません?」

 

 「…私はあと5機」

 

 「それレイレイの最高記録超えるんだけどほんとうにだいじょうぶ?」

 

 「私の最高記録の15機が、超えられるかな…?」

 

 「アルト君たち、どう~~?ってナニコレ!?」

 

 「カナカナ~~アルアル達シグシグの操作滅茶苦茶上手だよどうしよう~~~!」

 

 「私たちよりも、うまいかも」

 

 俺が16機、ツムギが11機を操るのをいったん席を外していたらしく確認に来たカナメさんが俺たちの周りでビュンビュン飛び回るシグナスを見てびっくりしてる。なんかちょっと楽しくなってきたぞこれ。もう20機くらいくれません?俺がもっと足せません?と尋ねたら変なものを見る目で見られてちょっと傷ついたのは内緒だ。

 




 次回に続く~~!

 暫く番外編強化週間ということでこっちを更新します。本編は鋭意執筆中です。

 あと掲示板も作らないとダメですね。皆さん欲しいっていってるので。あー、やること多いけど楽しい。

 また次回お会いしましょう!


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報いる手段

 「アルトくんアルトくん!次あれ作って!東京タワー!」

 

 「おっし任せろ!こうしてこうしてこうだ!どうよ!?」

 

 「…流石はアルト、完璧」

 

 「…うっわ~~~~」

 

 「さすがのマキナもドン引き」

 

 現在の状況と言えばワルキューレのシグナスの操作のトレーニングを一緒にやっているのであるが、両手をせわしなく動かす俺の操作で舞い上がるシグナスの数2()0()0()()、美雲さんが一体どれだけの数操作できるのかしら?と面白そうに提案したのをきっかけに、俺、ツムギ、ヒマリの3人とワルキューレメンバー全員で動かしてみたのだ。で、結果最後まで残ったのが俺、予備のシグナスまで引っ張り出して動かしている。

 

 まず最初に脱落したのがフレイアさん、2機、次、美雲さん、8機、カナメさん、10機、マキナさん、14機、レイナさん記録更新で16機、ヒマリ、20機、ツムギ、30機、ラストに俺、とりあえずあるやつ全部。で、俺がこんだけの数動かせるのにはカラクリがある。実際俺が完璧に細部まで動かせるのは50機が限界だ。それでも多い?多分カイザーさんなら今の俺と同じ200機をマニュアルで操作できるだろうからちょっと多い部類だ多分。

 

 実際に俺が動かしてるのは20機、1機のシグナスを親機として子機のシグナスを9機随伴させる、この方式で俺は200機を動かしてるように見せてるだけだ。あとは、動かす順番を決めるだけ。止まるやつは止まってるし、よく見れば動きにズレがあるのがわかるだろう。あとデバイス2個じゃ足りなかったので10個を指全部につけてます。あとは思考がごちゃらないように落ち着いて操作するだけだ。

 

 試しにワルキューレのロゴをシグナスで作ってみたりとかやってみて、おおやれるやんこれめっちゃ楽しいとなってしまったがいかんのだな!アルアル次ジクフリちゃ~~ん!というマキナさんのリクエストに応えてシグナスでジークフリードの形作ってみたりとか。他ウミネコとか、リンゴとか、クラゲとかツムギリクエストのヅダの顔(簡易版)とか今のヒマリの東京タワーとか。数が足りないので若干中途半端ではあるが形にはなってるだろう。

 

 「どんな脳みそしてるんねアルトは…」

 

 「…もともとアルトは同時操作が得意。世界大会の時、遊びで6機の機体を操って私たちと戦ったりしてた」

 

 「一個一個の強さは数が増えるほど下がるけどな。シグナスは操作がかなりシンプルだから数を増やせたんだと思う…でもきっつ…頭痛くなってきた。戻していいです?」

 

 「え、ええ!大丈夫?医務室に行った方がいいんじゃないかしら?」

 

 「いえ、限界まで同時操作やった時に出る知恵熱みたいなもんです。ほっときゃ元に戻ります。ああでも楽しかった~~」

 

 カナメさんの笑顔が引き攣っている。しょうがないけどちょっと傷ついた。本当に、ガンプラバトルで機体を動かしているみたいだった。でも俺たちはワクチンライブで演奏をするのが仕事なのでシグナスの操作はワルキューレがメインになるだろうし関知する隙は無いはずだ。演奏しながら操縦は、最近ちょっと成功したりしたけどそれもガンプラバトルの話。命がかかわるシグナスの操作を片手間でするのはよろしくないはずだ。

 

 「ヒマヒマもムギムギも凄かったけどアルアルだけおかしいね~次のワクチンライブ、シグシグ増やせるんじゃない?カナカナ」

 

 「そう、ね。かなり前向きに考えていいと思うわ。シグナスが増えれば演出もできることが増えるしホログラフもより大きいものが作れる。どう思う?美雲」

 

 「いや、スマンがこっちに貸してくれないか?カナメリーダー」

 

 「アラド隊長!?どうしてこちらに?」

 

 「アイテールの前でこんだけシグナスが動いてればいやでも目立つさ。誘導端末を同時にそこまで操る技量…デルタ小隊にも欲しいところだ」

 

 「まさか…バルキリーに乗せる気ですか!?まだ子供ですよ!?」

 

 かつかつとこちらに歩いてくるアラドさん。ひげを撫でつけながら俺の操作で次々とあるべきところに戻っていくシグナスを感心したように見ている。カナメさんが次にアラドさんが言わんとすることを予想して強烈に反対する。バルキリー!?と思ったけど1ファンとしては操縦席に乗って動かせればそりゃあ感無量というか思い残すことはないというかそういう感じだけど…乗るということは戦うということだ。つまるところそれは…もし人を殺せば俺はどんな顔をして元の世界に戻ればいいんだろうか。複雑な気持ちだ、でも断るべきだと…

 

 「まさか!カナメリーダー俺の事どう思ってるんだ!?」

 

 「…へ?」

 

 「言ったでしょう、誘導端末、だと。もう一つあるじゃないか、ジークフリード用に開発されはしたものの使われてないものが」

 

 アラドさんの全力の否定にカナメさんがポカンとした顔になる。俺もおそらく現在間抜け顔になってるだろう。そしていの一番にアラドさんの意図に気づいたのはやっぱりメカニックのマキナさんだった。彼女はポンと手を叩くと得心顔でうんうん頷いた。

 

 「ああ!スーパーゴーストちゃん!うんうん!カイロスちゃんとジクフリちゃん用の専用ゴースト!確かに誰も使わないから整備だけして死蔵してるよ~!」

 

 「だろ?もしあれを坊主が動かせるならゴーストによる曲芸飛行のプログラムが組める。ホログラフをでかくするのもいいがそっちも悪くないんじゃないか?」

 

 俺の知識にはない話が繰り広げられている。リル・ドラケンが銀河規格共通でジークフリードに装着可能なのは知っているが、それ以降は知らない。俺はΔの映画の2作目が公開される前に死んだから、そちらに出てくる設定のゴーストかもしれないが…そもそもゴーストって半自動操縦でAIが判断してるんじゃないっけ?人間が操縦できるものなの?マシン・マキシマム構想で人間の限界を超える機体だっていうのがコンセプトだし人が動かしたら戦力激減じゃね?

 

 「つまり、アラド隊長が言いたいのは、私にシグナスの操縦プログラムと同じゴーストの操縦プログラムを作ってアルトが動かせるようにしろってこと?」

 

 「できるなら、な。無理なら別に今のままでいい。現状思い付きだからな、そこまでしてできませんでしたじゃ徒労だ。まず坊主の意思を聞こうか」

 

 「すんません、とりあえず話についていけてないんですけど…つまり無人機があって、それを俺が遠隔操縦出来ればお役に立てるって解釈でいいですか?」

 

 「ああ、その通りだ。だが、ビーム砲もミサイルも付いてるシグナスとは全く違う兵器でもある。人を殺せる力がある機械だ。いやだというのならそれでいい」

 

 「…そうですか…明日まで待ってもらってもいいです?」

 

 「ああ、勿論だ。覚悟が決まったのなら、教えてくれ。邪魔したな」

 

 即座に拒否することはできなかった。なぜなら知っていたから、この先戦争が起きて、ワルキューレもデルタ小隊も否応なく戦場に赴くことを知っていたから。その時、仮に俺たちが保護され続けていた場合、エリシオンの中でずっと震えて待ち続けるしかない。もしも、もしもそれを少しでも覆せる力があれば…ヒマリとツムギの二人を守ることが出来るのなら…そう考えると即答は出来なかった。じっくり、この後考えよう。

 

 「アルト君、アラド隊長かなり無理を言ってると思うわ。できることとやるべきことは全くの別物よ。無理をしないで、貴方がこうしたいっていう答えを出して」

 

 「…わかってます。すいません、変な空気にしちゃって。続きお願いします」

 

 カナメさんの真剣な言葉に頷いた俺が思考を打ち切って頭を下げると、アルアル無理しないで~~~!とマキナさんに思いっきり胸の中に抱きすくめられた。顔面に柔らかいものを感じて今までの思考が吹っ飛びフリーズする俺をあーーーーーっ!!!というヒマリの悲鳴が襲う。やべえこれヒマリがすねちまう!やめてマキナさん!とタップするが力が緩まない!ヒマリに引っ張られてすぽっと抜けた俺を待っていたのはジト目の俺のパートナー二人であった。なおそのあと土下座を敢行したのは言うまでもない。下心はなかったけど、ごめんなさい。故意じゃないんです…!レイナさんがすげえニヤニヤしてたのが印象的だった。くそう。

 

 

 

 

 「みーつけたっ。隣、いいかしら?」

 

 「…カナメさん、どうしてここに?」

 

 「私、今日当直なの。あなたが部屋を出たのがわかったから追いかけてきちゃった」

 

 あの後しっちゃかめっちゃかになってしまった訓練で、考えを纏めることが出来なかった俺は一人で昼、ジャズセッションをした場所でラグナの夜景を見ていた。ヒマリもツムギも、俺が扉の外へ出たことは気づいていたようだが…そっとしておいてくれるらしい。一人で考えを纏めたいと思っていたから、ありがたかった。カナメさんが来たのは、予想外だけど。

 

 「お昼の事よね、アラド隊長も唐突なんだから…」

 

 「そうかも、しれません。けどある意味いいタイミングなのかもしれない、と思いました」

 

 「それは、どうして?」

 

 「ワルキューレのバックバンドの話…ワクチンライブだけっていう約束だったと思うんですけど、絶対どこかで無理になるって思うんです。だって、俺たちにはレセプターをオンにできて、ヴァールに対抗できる力がある。もし、俺たちが出ない鎮圧ライブでワルキューレの誰かが怪我をしたら、下がったレセプター数値を補えるスペアになれてしまう」

 

 「いいえ、ありえないわ。同意を取らないで戦場に送るなんてワルキューレのリーダーとして、私が許さない。あなた達を無理に戦場に送るなんてことはしない」

 

 「そこで、同意をとってもやらない、って言わないのがカナメさんの優しいところだと思います。できれば鎮圧ライブ、俺たちにも参加してほしいんですよね?」 

 

 カナメさんが俺から目をそらす。海のような深いブルーの瞳が、ラグナのあたたかな街並みを映していた。レセプターの数値は、多いほどいい。同意が取れるならば、いくらだっていて欲しいんだ。俺たちには力がある、これがただ無力なだけならばこんな面倒くさいことにはならない。本当に保護されて、ただの子供として処理されていたはず。

 

 現実は違う。レセプターがあって、膨大な数のシグナスを同時制御できる。そして、ワルキューレの精神を高ぶらせるほどの演奏を披露できる。欲しくないわけがない。どれか一つでもあれば、任務の成功率は格段に上がる、それがお得セットのようにまとめてくっついてるのであれば…そんなもの絶対に使いたいに決まってる。俺だってそうだ。

 

 「…本音を言うと、そうよ。協力してもらえればワルキューレもデルタ小隊も、一般市民すらかなりの被害の軽減が見込めるわ。より多くの人を助けることが出来る。だからって、それをするために人が犠牲になっていいわけじゃない」

 

 「でも、俺には覚悟がない。あなた達のように他人のために自分の命を犠牲にできない。俺が一番守るべきなのは…あの二人だから」

 

 「それも立派な覚悟よ。その覚悟があったから、私はあなた達をワクチンライブに誘った。あなた達を保護した時、身を挺して二人を庇っていた貴方がいたから私たちはあなた達を保護したの。命のやり取りの場で自己より他を優先していたから」

 

 「かないませんね。流石はワルキューレのリーダー…」

 

 「…こんな、人を戦場へ誘う言葉で褒められたくはないわ。自分の意思で来たハヤテやフレイアとあなた達は違う。拒否する権利がある。自由なのよ。少なくともその選択肢においては」

 

 しん、とラグナの海風が吹き抜ける音だけになる。手すりにもたれかかった俺とカナメさんの間に会話はなく、沈黙が場を支配した。なんで、どうしてと嘆くだけなら無限にできるけど…今俺が欲しいのはなんだ?力だ。人を殺す力じゃなくて二人を守ることかできる力。別にゴーストで誰かを殺せと言われてるわけじゃない、今はまだ。だったら、やることは決まっているじゃないか。

 

 「…もし、俺がゴーストを動かすって言った場合…一つだけお願いしたいことがあるんです」

 

 「…なにかしら?」

 

 「引き金は俺だけに引かせてください。あの二人が何をしても、人を殺すような兵器に触れさせたくない。ケイオスは軍隊じゃない、だけど軍事力はある。人を殺すことも、きっと」

 

 「否定は、できないわ。私たちが手にかけた人がゼロだなんて口が裂けても言えない」

 

 「もしそれが必要になったら、俺がやります。二人に危険が迫ったら、二人が汚れる前に俺が汚れます。それを、容認してください」

 

 「………わかったわ。だけど、これだけは覚えておいて。あなた達は、私たちが守る。何があっても、貴方たち3人に最後の一線は超えさせない。必ず、元の世界に返してみせるから」

 

 だから、一人で抱え込まないで、とカナメさんは真正面から俺を抱きしめてそう言った。強くなりたい。ガンプラバトルじゃない場で初めてそう思った。どんな嵐が来ても二人を守って乗り越えられる強さが欲しい。戦場はシビアだ、とラルさんが何時だか言っていた言葉が頭をよぎる。優しい人たちに報いる手段が、その人たちを苦しめる結果になるのがたまらなく悔しい。価値を見せないと、この人たちに認められる価値を。俺は強くそう決意するのだった。




 アルト君、悩む。デルタもフロンティアもそうですけどガチ戦争なんですよね。バルキリーに乗せるかどうかは最後まで悩みましたが、さすがに無理だと判断しました。

 ゴーストだからオッケーなわけないんですけどね。一人だけ来るかもしれない未来が分かってるからこそ、人を殺すかもしれないと悩む。カナメさんたちは考えすぎじゃないかという感じで接する。

 なんだこのシリアスは。もっとこう…こいつ変態やん…!みたいな感じにしたかったのに。では次回、よろしくお願いします。


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トライアル・デルタ

 翌日の事。昨日のカナメさんとの話し合いで覚悟を決めた俺は二人にきちんと話しておくことにした。朝に弱いヒマリですらも、俺の呼びかけで目を覚まし、3人そろって真剣な顔で向き合う。寝間着だからちょっと間抜けな絵面かもしれないけどそれは許してほしい。口火を切ったのは当然、俺。

 

 「昨日、よく考えたんだけど…ゴーストを動かす話、受けようと思う。それと、俺も鎮圧ライブの方に参加することにした」

 

 「鎮圧ライブ…って私たちが来たときみたいな…」

 

 「ああ、戦場だ。いつまでケイオスが俺たちを無償で保護してくれるか分からない。何かしらの価値を見せる必要がある。ワクチンライブと並行して俺たちをケイオスになくてはならない人材にできれば…帰るまでの衣食住が保証されるはずだ」

 

 「…そんなの勝手に決めたらだめ。私もやる」

 

 「そうだよ!アルトくんがやるなら私たちだって!」

 

 「ああ、多分そういうと思った。多分やめてくれって言ったって掴まってついてくるんだろ?だから…兵器を使うのは俺だけだ。鎮圧ライブに一緒に来てくれてもいい。だけど、ゴーストを動かすのは俺だけだ。銃もミサイルも俺が撃ってお前らとワルキューレの人たちを守る。だから…お前らはシグナス使って、俺の事守ってくれよ、頼むぜ」

 

 我ながら最低な妥協案だ。自分でもそう思う。でも、二人を納得させられる手段を俺は持ってない。俺一人だけ戦場に行くとして、二人は何としてでも俺を止めるか、一緒についてこようとする。知らないところで危険な目に合われるくらいなら手が届く俺が守れる範囲にいて欲しいという俺のエゴ。攻撃するための力は俺が持つ代わりに、守るための力を渡すからと一見フェアなトレードに見せて自らを守れる力を取り上げるという所業。ああ、吐き気がする。後戻りはできない。

 

 「ねえ、アルトくん…無理、してない?」

 

 「…私たちのためにアルトが壊れちゃうのは、やだ」

 

 「ここに来てからずっとそうだよ。心配すんな、お前らよりは頑丈だ。着替えていこうぜ」

 

 二人の納得できないけど、俺の提案以上の案が思いつかないから、というなし崩し的な了解の返事の後、そう言われた。無理をしてる自覚があるのはお互い様だ。二人が夜毎に声を押し殺して泣いていることを知っているし、ちょっとした暇があれば携帯の電話帳を眺めているのだって知っている。努めて明るく振舞っているのはわかるけど、何年一緒にいると思ってるんだ。俺が多少無理をするくらいなんだってんだ。女の子泣かせてまで自分が大事だなんて言うつもりは毛頭ない。これも元の世界に帰るためだ。

 

 

 

 「おはよう、3人とも。食堂に行きましょうか」

 

 「いえ、アラドさんと先に話してきます。食べたら後悔しそうですし」

 

 「ハヤテさん、大変そうだったもんね…」

 

 「…エチケット袋を用意しないと」

 

 「初日でそんなことはしない、と言えないのがアラド隊長よね…2人も、ってまさか」

 

 「私たちも鎮圧ライブに参加させて下さい。アルトくんだけに任せて引きこもっていられないです」

 

 「…自分の生活費くらい、自分で稼ぎます。アルトを、支えたい」

 

 「らしいです。少なくとも、足手まといにはならないようにします。あとで書類にサインさせてくださいね」

 

 「本当に、いいのね?」

 

 悲痛なものを見る顔で俺たちを見るカナメさんに、俺たちは深く頷いたのだった。かぶりを振るカナメさんも顔を引き締めて、アラド隊長のところに行きましょうか、と言ってくれた。

 

 

 「お、お揃いだな。カナメリーダーまで。決まったか?」

 

 「はい、やらせてもらおうと思います」

 

 「それとアラド隊長、3人とも鎮圧ライブへの参加を希望しているのでそれに向けた訓練も開始します。アルトくんがゴーストを動かすなら、彼女たちはシグナスをと。責任は持ってください」

 

 「お前…1日でそんなことまで決めてたのか。いや、自然な流れか。察しがいいのも考え物だな」

 

 「アラド隊長!」

 

 「分かってる。坊主、いやアルト。お前が何を考えてその答えを導きだしたのかは知らん、だがお前が撃つ前に俺たちが撃つぞ。ケイオスは、少年兵なんか必要としてないからな。お前が鎮圧ライブで撃つのは、こっちに飛んでくるミサイルくらいだ。人は、撃たせん」

 

 「そう、ですか。ちょっとほっとしました」

 

 アラドさんの言葉にほっとした。鎮圧ライブにも出ると決めた以上、基礎体力をはじめとしたトレーニングもしなければならない。ゴーストを動かす俺は必然的にデルタ小隊よりになるためデルタ小隊で基礎トレーニングをすることになるけど、ヒマリとツムギはシグナスのためワルキューレでの訓練となる。この世界で初めて二人と別れることになるが二人もここに来る前にカナメさんにお願いしている。置いていかれるのは嫌だ、ついて行けるようにしてくださいと。カナメさんもそれに了承を返している。

 

 「当然だ。さて、アルト候補生。朝飯は食べてきたか?」

 

 「抜いてきました」

 

 「ハヤテを見てればそうか。いいだろう、今日からお前も訓練に加える、みっちりしごいてやるので覚悟するように」

 

 「はいっ!」

 

 俺の顔を覗き込んでそう尋ねてくるアラドさんに俺は大きく返事を返すのだった。ワルキューレの方に行くらしい二人と軽くハイタッチして俺はアラドさんについて行くのだった。

 

 

 

 「総員、集合。よし、では本日の訓練を開始する。ミラージュ少尉はハヤテ候補生と引き続き飛行訓練を。チャック少尉は俺とメッサーとだ。何か質問は?」

 

 「あの、アラド隊長…どうしてアルトがここに?」

 

 「仮ではあるがこいつもデルタ小隊の候補生になる。バルキリーに乗せるわけではないがな、ジークフリード用のゴーストがあったろう。それの専任オペレーターになってもらう。鎮圧ライブもな」

 

 「反対しますっ!ただでさえ新入りが一人いるのに子供に割いてる時間はありません!」

 

 まあ、そうだよな。ミラージュさんの言葉は正しく正論だ。ただの子供、それもバルキリーに乗れないなら誰かと同乗するか現地での直接操作が求められる。危険なのは俺も承知の上、反対意見が出るのも分かってる。だから、価値を見せて認めさせてみせる。ちなみに新入りの部分でハヤテさんがめっちゃ不機嫌顔になってる。早く飛ばせろよみたいな顔だ。

 

 「言っておくがミラージュ、これはこの坊主の我がままじゃない。必要だと俺が感じて頼み込んだことだ。わかるな?」

 

 「アラド少佐、差し出がましいようですが俺も反対です。現状のフォーメーションを変えるにはリスクが大きすぎる。ゴーストをどうしても使いたいならチャック少尉に任せてはどうでしょう」

 

 「…昨日、アイテールのカタパルトデッキで何があったか知ってるか?」

 

 「いえ、その時間はフライトログの整理をしていました」

 

 「ああ、しってるぜ?シグナスっつったっけ?あれが滅茶苦茶飛んでたよな。おっさん、それがアルトと何の関係がある?」

 

 「ハヤテ候補生!」

 

 当然メッサーさんも反対、というかもし入った場合の問題点をあげつらうことで否定する理路整然とした理由だ。チャックさんはどうしたらいいもんかとかなりおろおろしてるが積極的に反対するつもりはないようだ。で、アラドさんが言ったのは昨日の出来事の話。ハヤテさんはアレを見ていたのかそれがどうしたとアラドさんに噛みついてミラージュさんが怒っている。

 

 「動かしてたのはこいつだ。現在アイテールに保管されているシグナス予備含めて200機、こいつが全てマニュアル操作で完璧に動かしていた。チャック、お前ジークフリートの電子プログラムを利用して飛行しながらいくつまで操作できる?」

 

 「攻撃が来ないと仮定して30機ですかね。しかしアラド隊長、それマジですか?」

 

 「大マジだ。何だったら動画見せてやろうか」

 

 「…もし仮にそれが本当だとして、なぜそんなことが出来る。答えろ、サオトメ・アルト」

 

 かつかつと靴を鳴らしながら威圧感たっぷりにメッサーさんがこちらにやってきた。流石は軍属上がり、恐怖の使い方というやつをよく理解している。喉が干上がりそうだ、だけど答えることくらいならできる。

 

 「ガンプラバトルです。シグナスの操作、爪にデバイスをつけて操作する方法がガンプラバトルの操縦方法と非常に近かったんです。数についてはもともと同時操作が得意だったとしか言えませんけど…」

 

 「ガンプラバトルってあの…アルトの故郷で流行ってるっていう遊びかい?確かにすごい迫力だったけど…」

 

 「信用するには根拠が薄い。そんな世迷言を信用するなど…アラド少佐、我々はワルキューレの命を守る生命線です」

 

 「なら試してみろ、メッサー。過去どうこうじゃない、今できるかどうかを確認すればいい。それで使えないとお前が判断すれば…その時は大人しくバックバンドやっててもらうさ」

 

 「…了解しました。それならば俺からは特に何も。ミラージュ少尉、まだあるか?」

 

 「いえ、了解しました。訓練へ移ります。ハヤテ候補生!」

 

 「へいへいっと…」

 

 ミラージュさんはメッサーさんが矛を収めたのなら自分も言うことはないという感じでハヤテさんを引っ張って訓練用のVF-1EXの方に行ってしまった。チャックさんもメッサーの相手だなんて可哀想に見たいな感じの顔をしつつもプロとしての判断なのか俺を擁護することなく自分の機体の方へ行ってしまった。

 

 「メッサー、テストはシミュレーターで行うものとする。訓練後だ、いいな?」

 

 「了解」

 

 「俺もすぐそっちに行く…そろそろ、お、きたきた。レイナ、どうだ?」

 

 「バッチリ、シミュレーターの方は大丈夫。あとは、アルト次第」

 

 やってきたのはレイナさんだ、どうやらシミュレーターの調整に来ていたらしい。多分、こうなることをアラドさんは予測していたんだ。仮に俺が断ってたらどうするつもりだったんだろうか?あと、俺がいくら性能がいいゴーストを何機操作しようともメッサーさんには勝てないと思うんだけど…

 

 いや、勝つ必要はないのか。あくまでメッサーさんを認めさせられればいいんだ。けど…何がラインなんだ?正直あの人を認めさせるのってかなりハードル高いような…

 

 「んじゃあ、すまんけどレイナは今日アルトに付き合ってやってくれ。アルト、訓練終わりまでシミュレーターで鍛えてろ。なに、メッサーを認めさせるなんざ軽いさ」

 

 そう言って、アラドさんは更衣室の方まで行ってしまった。残されたのはまさかの放置プレイを食らうという仕打ちを受けた俺と俺を丸投げされたレイナさんである。俺とほぼ同身長の彼女はジッと俺を見つめてそのまま手招きだけして歩き去る。俺は慌てて彼女の後ろをついて行くのだった。

 

 「アルト、ゴーストは基本的に半自動操縦、こうしろという命令はかき込めても人が自由自在に操作できるものじゃない、けど」

 

 アイテールの中、レイナさんが俺を先導してつらつらとゴーストについて説明してくれる。そう、ゴーストはAIによる自動兵器だ。人が操縦する事なんざ考えてはいない。だから、俺がすることもAIへの命令をするだけだと思っていてだからこそどうしようかと思ってたんだけど…

 

 「でも、どこの世界にもバカはいる。ゴーストに乗りたいっていう命知らずのためにシミュレーターにお遊びとして設定されたモードがある。今回それを流用してシグナスの操縦系統と合わせてゴーストの同時操作プログラムを作った」

 

 「あの、それってさり気に1日仕事じゃないような気がするんですけど」

 

 「そう、朝から疲れた。もっと褒めろ、給料出たら生クラゲ奢って」

 

 「あ、はいわかりましたありがとうございます。…本当に大丈夫ですか」

 

 俺がそういうと彼女は勢いよく振り向いてバッチン!と俺の頬を両手で叩いて固定する。そしてぐっと顔を近づけた。ミントみたいないい匂いがする、じゃなくて!無表情な彼女ではあるがその瞳の奥の感情にようやく気付いた。これは…怒り?

 

 「それはこっちのセリフ。私たちの了解もとらずに鎮圧ライブ行きに同意するなんて。サオトメ・アルト、お前が悪いやつじゃないというのは分かる。けど、目的が違うでしょ。死に急ぐ理由はないはず」

 

 「それは…ええ、そうです。俺たちは早く帰りたい。1秒でも早く。ですけど…助けてくれた人に恩が返せるなら、全力でそうしたいと思ったんです。できることをせずに取り返しのつかないことが起これば、絶対に後悔するから」

 

 もちろんこれが全ての理由じゃない。大きな部分を占めるのは全くの私情だ。だけど、今レイナさんに言ったことも紛れもない本音だ。例えば、洗脳されたタツヤさんを見捨てて、廃人にでもなったりしてたら…そんなこと考えるだけでも恐ろしいが、俺はガンプラバトルをやめてバルキリーすら投げ捨ててたはずだ。助けられたら助け返すのは当然の話、ただ唯々諾々と消費だけして過ごしたって、後悔しか生まない。なら、できることをできるだけ全力でやる方がいい。賢くはないだろうけど、それが俺だから。

 

 じっとレイナさんの目を見つめてそう伝える。彼女がどう思ったのかは知らないけど、頬から手が離れる。つかつかと踵を返していってしまう彼女を慌てて追いかける。こちらを振り向かないままレイナさんは

 

 「アルト、お前は馬鹿だ。でも、お前みたいなやつは嫌いじゃない。あのゴリラの驚く顔を、私に見せて。そしたら、クラゲ奢りはなしにしてあげる」

 

 「ええ、見せてやりますよ。俺なりのやり方でやってやります。期待しててください」

 

 俺はそう言ってレイナさんの横に並ぶのだった。シミュレーターとはいえ初めて動かすものだ、経験値も技量も相手が圧倒的に上、だけど俺にも経験はある。命のやり取りでもない本気の遊びだけど、熱量だけなら負けてない。デルタ小隊の訓練が終わる前に、ものにしてやる。




 というわけで次回がアルト君初戦闘のVSメッサーさんです。あれこれ勝てるビジョン浮かばなくね?でもアルト君ならワンチャンあると思うので頑張ってもらいます。

 思ったけどこれアルト君本番だと演奏しながらゴースト運転しなきゃダメなんだよな…どこのサウンドフォースだ。でもバサラさん来たらマジで歌で全部解決しちゃうし…

 あ、ちなみにアルト君が実際にバルキリーに乗るなら早期警戒機です。チャックさんやFのルカと同じタイプですね。ゴーストを操りながらバシバシ自分も攻撃する感じです。主役機?ツムギちゃんです。ヒマリちゃんは勿論歌姫。

 話が進まんね~。アニメの2話の経過時間がどれだけかわかんないけど1か月くらいはありそうって思ってる


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エンカウント・グリム・リーパー

 「じゃ、中に入って。それとこれ、マルチデバイス。指全部につけること。こっちで操縦を逐次見て最適な形に修正するからとりあえず1機だけで動かす」

 

 「はい、よろしくお願いします」

 

 でっかい棺桶のようなシミュレーターの前でレイナさんにそう言われて渡された付け爪型のマルチデバイスをパチパチと全ての指にはめていく。そのまま開いたシミュレーターの中に入り込んで操縦席に腰をかける。ガンプラバトルは立って全身を使って操縦するから座ってするのは始めてだな…そもそもが爪部分の動きと脳波制御だからあまり関係ないのかもしれない。

 

 『準備できた?よし、じゃあシミュレーター起動。揺れはしないけど、映像はゴースト視点だからそれだけ気を付けて』

 

 「はい、お願いします」

 

 ぼう、と正面と側面、上部のモニターが起動する。最初に表示されたのはこれから操縦するゴーストの外観と詳細データ。データの方は文字が読めないから分からないが外観を見てハッとする見た目、これ翼が違うだけでV-9とほぼ同じじゃん。実際の性能は下がるどころか上がってるんだろうけど…いや、どうでもいいや。いつもとやることは変わんない。データの空に舞い上がるだけ。

 

 『始める、3、2、1…スタート!』

 

 画面の文字、補助AIが表示するREADYがGOに変わる。1人称視点なのはガンプラバトルと変わらない。とりあえず手を使って操縦してみよう。ぐっと加速、ゴーストはガンプラバトルでのバルキリーとは比にならない急加速で空へ舞い上がる。おお、なるほど。バレルロール、インメルマンターン、ハンマーヘッド、レスポンスがほぼゼロだ。手の中に何時ものコンソールがないのが違和感半端ないけど、動かせる。

 

 マルチデバイスが表示する現在速度、マッハ3。確かV-9と同じ年代のゴーストであるQF-5100Dが大気圏内でマッハ5まで耐えられたはずだ。この機体もそれだけの加速ができると考えてもいいだろう。もっと速く!画面の中の空、音を軽く超えたゴーストの軌跡は今どうなっているのだろうか。雲を破って、海と空しかないデータの世界に舞い上がる。同じだ、ガンプラバトルと。ちょっと操縦しにくくなっただけ。ノウハウを完全に生かせそうだ。俺ならカバーできるだろう。

 

 『いくよ、仮想敵配置。敵機はVF-171が1機、3秒後、後方に出現』

 

 レイナさんの操作で仮想敵であるナイトメアプラスが俺の真後ろに出る。後方にアラート、即座に右旋回のあとバックをとる。マッハ4からマッハ1に速度が一瞬で落ちる。ゴーストの最大の利点は人体の限界を無視できること。俺がガンプラバトルでやってるような人が乗ったら一瞬でケチャップになるような動きをしても全く問題がないことだ。だから、相手のナイトメアプラスの真下に鋭角にもぐりこむ。そのまま、両の翼に向かって2発、ビームを打ち込んだ。翼をもぎ取られたナイトメアプラスは失速して海面に不時着、撃墜判定だろう。

 

 『お見事。少し待って、実際の操作と処理が追い付いてない。本当にできるんだね、正直かなりびっくりした』

 

 「かなり操作感覚が近いので、数も増やせそうです。2機に増やしてもらってもいいですか?」

 

 『わかった。次は2機で始める。とりあえずプログラムの修正を先にやる』

 

 多分、数はガンプラバトルと同じくらいだ。腕も足も変形もないけれど、強さを保てるラインはきっとそこまで。それに、ほぼ棒立ちだったナイトメアプラスだけどこれが動いてたらどうなのかもある。武装の選択と操作は大体わかった。あとは俺の動き、ガンプラバトルでのファイターの動きをどこまで流用できるか。こんな時ではあるがかなり楽しくなってきた。でも、兵器なんだ。それだけは必ず心に刻んで動かすようにしよう。

 

 

 

 

 

 

 「…本当に玩具の技術?どんなのかすごく気になってきた」

 

 「本当に遊びなんですよ。人生かける人が山ほどいますけど。ガンプラ売って生計立てたりするくらいには」

 

 「ヤバヤバ、玩具で暮らせるなら苦労はしない」

 

 3時間後、いったん休憩ということでシミュレーターから出た俺は、レイナさんがくれた水、めっちゃ見覚えのある天然水を飲んでいた。そう、Δ本編のリンゴと食うとヴァールを発症してしまうやつだ。水を見て一瞬固まった俺を不審そうな顔でレイナさんが見るので何でもないですと受け取って飲む。ウィンダミアアップルと一緒に食べなければ大丈夫、暫くリンゴはノーサンキューだな。レセプターがあるから発症自体はしないだろうけどこれもできるだけ早期に解決しないと。どう伝えたもんか…

 

 パリパリと小動物のようにクラゲチップスをかじるレイナさん。俺の視線をどう解釈したのか「私は安くない女、あげない」とチップスを腕の中に隠した。いえ別にこの後の事もあるんで食べたら面倒になるから要らないですと言ったら安心してパリパリを再開した。で、さっきまでのシミュレーターの結果なんだけどかなりいい感じだ。ハヤテさん風になったけど、シミュレーターのゴーストの性能がかなりいいし、逐次修正を加えられた操作プログラムのおかげでガンプラバトルと変わらないくらいの動きはできる。問題なのはガンプラバトルを上回る動きができないということだ。そのくらいしないとメッサーさんには勝てない。遊びと戦争の差は大きい。まだ理解していない俺でもその程度は分かる。

 

 

 「どうだ?多少は慣れたか?」

 

 「アラド隊長、アルトかなりできる。メッサー、覚悟すべし」

 

 「…どうだかな」

 

 「へえ、お手並み拝見といこうか。アルト、いいか?」

 

 「はい、メッサーさん…よろしくお願いします」

 

 「…準備しろ」

 

 シミュレータールームにやってきたのはアラドさんメッサーさんを始めとしたデルタ小隊の面々。パイロットスーツのままということは訓練が終わってすぐにこっちにやってきたということか、俺ももらったタオルで汗を拭きとってマルチデバイスを付け直す。メッサーさんは言葉少なに隣のシミュレーターの中に消えていってしまった。俺も頭を下げた後シミュレーターの中にはいる。すぐさまシステムが立ち上がった。

 

 『今回のテストでは、メッサーに全ての判断を一任する。撃墜判定でも有効打でも好きにしろ。アルトは使用するゴーストが全て撃墜されたら終了だ。俺たちも、シミュレーターの中で見学させてもらう』

 

 『了解しました。サオトメ候補生、俺に有効打、もしくは撃墜判定を出せば合格とする。チャンスは1回のみ、やるか?』

 

 「やります」

 

 『…5分後に開始とする。チェックをしておけ』

 

 チャンスは一回、当然の話か。ワルキューレのオーディションと一緒だ、ただ一度のチャンスをものにできるか、それに向こうはアラドさん以外俺を採用したくないはず、時間の無駄だと思っているということ。でも、俺も必死なんだ。食らいつけるだけ食らいついてやる。それに、レイナさんとも約束したし、ツムギとヒマリだって頑張っている。俺だって、やらなきゃいけないんだ。

 

 パキパキと指を鳴らしてリラックス、ガンプラバトルのコンソールを握る様に手を固定する。最後の確認に即答した俺をどう思ったのかメッサーさんはヘルメットのバイザーを下ろしつつそれだけ言って通信を切った。画面が立ち上がってREADYの文字が表示される。タイムカウントがゼロになり、始まった!

 

 画面が切り替わった瞬間素早く操作する。どこにいるか分からないメッサーさんに見つからないように4機のゴーストに指令を送って上空へ舞い上がらせた。そのまま、残り6機のゴーストを操って、レーダーを気にしつつ雲の中に入る。

 

 今俺が操縦しているゴーストは全部で10機、ガンプラバトルでやれる最大数と同じだ。メッサーさんもみんなも俺がどれだけのゴーストを使ってくるかなんてわからない。見つかってもいい、だけど見つからなかったらもっといい。上空の4機のうち二機を索敵機としてカメラの映像を確認する。左後方、俺の後ろに雲の乱れ、6機のうち2機を真横にブレイク、挟み撃ちにかかる。

 

 『6機だあ!?ジークフリードだったら2機が普通だぞ!?』

 

 『黙れチャック、双方に情報を与えるな』

 

 『う、ウーラ・サー…』

 

 雲を抜け、チェック、死神が描かれたジークフリード!真後ろにつけられた!ミニガンポッドの弾が容赦なく発射される。全部が直撃弾、どこまで予想して…ロールで回避、そのまま加速する4機のゴースト、メインカメラではなく上空のゴーストから送られてくる視点を俯瞰視点として扱い現在の状況を把握、真後ろにつけられた!

 

 ブレイクした2機が挟み撃ちの態勢で戻ってくる。発射されるビームをメッサーさんはわずかに上昇して躱した。狙いをつけられたゴーストへのガンポッドの雨あられ、何とか躱す。強い…!メッサーさんの両後方につけた2機と追いかけられている4機、有利なのは俺のはずなのに、隙がない。下手に動けば同士討ちを誘発する位置にメッサーさんは付いている。でも、想定内!

 

 『…っ!』

 

 追いかけまわされる4機のうち1機がエンジンを止めて失速、真後ろにいるVF-31へぶつかりにかかる。突然の質量弾にメッサーさんのVF-31が大きく動作を取って躱す、ここっ!失速してきりもみ回転しているゴーストからミサイルが発射される。すぐさま体勢を立て直したそのゴーストは直角軌道をもって下にもぐる。上空から降るミサイルと下からのビームでの狙撃、さらに後方からのビームの弾幕、さらに残っている前の二機が急加速、反転してビームを浴びせる。

 

 それに対して繰り出されたのは、神業だった。後方からのビームをガウォークに変形することで躱し、前方からのビームはピンポイントバリアを使って防御され、ミサイルはコンテナに格納されているビームガンポッドで撃墜、下方からのビームはバトロイドに変形することで躱された。ほぼ同時に繰り出された超絶マニューバ、だけどっ!

 

 同時操作、跳ね上がる様に後方のゴーストが上へ、前方のゴーストが下へ潜る。雲の中に入ったほかのゴーストを気にすることなく追いかけてくるVF-31。ほぼ直角の軌道をつけて追いかけられてるゴーストが曲がるが、最小限のロスでVF-31は追いかけてくる。やっぱり振り切れないかっ!だけどっ!斜め上空からのビーム、即座に変形したVF-31がピンポイントバリアで防いだ。とったっ!俯瞰視点役のゴーストからの突然の狙撃に足を止めたメッサーさんに襲い掛かる雲の隙間に身を隠したゴーストのミサイル、これもだめか!ガウォークのままバックし、即座にファイターに変わったVF-31がウェポンコンテナから出したビームガンポッドと右腕のミニガンポッドを斉射、俯瞰視点役のゴーストと雲の中に潜った内の1機が正確に撃ち抜かれる。即座に他のゴーストを退避!

 

 反転したVF-31が今度は俺に追いかけられる形になる。そろそろ、そろそろ…ここっ!追い込んだっ!上空からのミサイルの雨が降る。仕込んでおいた4機のうち2機、あのあとエンジンを止めアクティブステルス全開で風に乗せて待機させておいた。下手に動かすと完全にばれるためこの場所に追い込むしかなかった。上空の俯瞰視点役のゴーストも追いかけられるゴーストも全部囮、必殺竜鳥飛び…なんて言えないが。最後の最後まで残しておいた必殺の刃だ!これ以上時間がたったらアクティブステルスのエネルギーが無くなってバレてただろうけど。

 

 だが、それでも反応するのがデルタ小隊のエースパイロット、完全な不意打ちでも問題なく対処できるスーパーマン、両手のミニガンポッドを斉射してミサイルを撃墜してしまう、さらにはビームガンポッドでミサイルを発射したゴースト2機を撃墜してしまった。追いかけっこが再開される。ロックオンの警告が響いた。

 

 『ここまでだな』

 

 そう、聞こえてくる。確かにほぼほぼチェックメイト、俺の負けだ。でもラストの一手くらいはあがける!繊細かつ急いで操作をする。その瞬間、VF-31の展開されたビームガンポッドへビームが着弾した。メッサーさんは油断なんかしてない、俺の最後の悪あがきが成功しただけ。最初に分けた4機のゴーストの内最後の1機、俯瞰視点役のゴーストの片割れが放った超長距離狙撃、都合10キロの距離を超えて飛んできたビームがたまたま当たった。

 

 『メッサーに当てやがった…』

 

 『さてメッサー、条件は満たしたわけだが…どうする?』

 

 『……フォーメーション変更を考えます。確かに、使えるでしょう』

 

 はは、やった。じわじわと喜びが来る。と同時に鼻からたらり、と鉄臭い液体がでた。鼻血だ。どんだけ集中してたんだ俺、頭もゆだる様に熱いしぼやっとしてきた。一向に出てこない俺を不自然に思ったのか外からの操作でシミュレーターが開く。こっちを覗き込んだのはレイナさん、鼻を押さえて鼻血を止めようとする俺を見てぎょっとした彼女はタオルをもって中に飛び込んできた。顔にタオルが押し付けられる。

 

 「わっ、ちょ、レイナさん」

 

 「今は黙れ。あとよくやった、褒めてつかわす。メッサーの珍しい顔が見れた」

 

 「…はい」

 

 乱暴だけど優しい手つきで鼻血を拭ってくれるレイナさんの言葉で俺は湧き出てくる喜びが現実なのだと噛み締めた。




 VSメッサーさん、終わり。勝てたら普通におかしいので一矢報いるみたいな感じで行きましたけど、ホントだったら当てれること自体もおかしいというのは追記しておきます。メッサーさんは強いんです。表現できてるかどうかは別ですけど。

 メッサーさん、ゴースト2枚抜きできますから、オーバードライブ状態とはいえ。でもこれでデルタ小隊参加が決まりました。あとは体力強化を頑張ってもらいましょう。

 では次回もよろしくお願いします


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裏話・大人たちの憂鬱

 ラグナの夜は優しい、月明かりと満天の星空の元で潮風の匂いと露店のにぎやかな声が緩やかに聞こえてくるだろう。ラグナの繁華街を歩くのは一人の女神かと見まごう女性と長身の男性の姿。見る人が見ても分からないように変装している。それも当然の話だ。女性の名はカナメ・バッカニア、今を時めく戦術音楽ユニットワルキューレのリーダーにしてマネージャーをも兼務する有名人、じゃあその隣は?と聞かれれば彼女には劣るもののそれなりの有名人、ワルキューレと共同作戦を組む専用小隊、デルタ小隊のエースパイロットにして鬼教官を務める凄腕パイロットのメッサー・イーレフェルトだ。

 

 「まさかメッサー君とこんな形でご飯を食べられるなんてね」

 

 「アラド隊長からの呼び出しですから。それと、ワルキューレの護衛は自分の任務です」

 

 「それでもよ。いっつも誘っても乗ってくれないんだもの。アラド隊長が、エリシオン艦内じゃなくて外で話そうだなんて…よっぽどのことなのかしら」

 

 「…自分には、分かりかねます」

 

 最近、デルタ小隊とワルキューレの周りは嫌に忙しい。新人であるハヤテ・インメルマンとフレイア・ヴィオンのおかげでかなり体制が変わった。それは勿論いい方向なのではあるが、免許は持ってても空戦については全くの素人であるハヤテとワルキューレに入れて燃え尽き症候群にでもなってしまったのか、最終テスト以来一向にフォールドレセプターがアクティブにならないフレイア、問題は山積みだ。

 

 特にハヤテは問題行動が多く、教官役のミラージュ・ファリーナ・ジーナスの頭を悩ませている。飛行技術もバトロイドでの操作はかなり習熟しているがAIの補助を嫌って何回も失速して落ちる始末。このままではミラージュの堪忍袋の緒が切れるのも近い。相性自体は悪くはないはずだが、まっすぐ堅物娘と自由奔放な感性全振り男では性格的な反発を招くのも時間の問題だろう。

 

 「…アルト君、どうだった?シミュレーターで戦ったんでしょ?」

 

 店までの道のり、繁華街から少し外れた入り組んだ道のりに入った途端にカナメはメッサーに対してそう問うた。サオトメ・アルト、ヴァジュラ戦役の英雄と同じ顔、同じ名前を持つ少年。優れた演奏技術を持ち、歌まで熟す。現在行方不明とされている英雄との関係性は不明。そして、異世界から来たと主張している。

 

 ケイオスも馬鹿ではない。そんな世迷言は切り捨てて保護してしかるべき施設に移送するのが普通だ。だが、彼と彼と一緒にデフォールドしてきた二人は異常だった。未知の粒子と未知の物質、通じない言語、そして高い数値のフォールドレセプター。戸籍どころかこの世界にいた痕跡すら追えない3人をエリシオンで保護するべきと主張したのはカナメだ。それは、戦地である故郷ディバイドの光景と、命を懸けて女の子二人を庇いながら逃げ惑う少年に重なったという私情が少しと、観測された事象の関係者を確保するべきという戦場のプロとしての判断。

 

 大人びた少年だと思う。一緒に来たヒマリとツムギという少女たちを第一に考えるその姿勢はカナメ個人としては好ましい部類のものだった。だけど、決定的な部分で信用されていない。無償でここまでしてくれるなら裏があるという考えのもと動いているように見える。役に立とうと、捨てられまいとこちらにアピールし、実際に有用だからこそ「いいのよ、私たちに守られていて」と言わせてくれない。こちらの欲しいものを持っているから、運用せざるを得ない。もしも、何もできなかったとしてカナメ個人の財産で3人を元の世界に帰れるようになるまで保護することも検討に入れていたカナメとしては、複雑だった。

 

 「…私情を挟まず評価を下すのなら、欲しい人材です。今回本気で相手をしました、戦術の組み立て方も、操縦も100%我流ではありますがかなりのものです。特にゴーストを戦闘機動で6機同時に操れるのは得難い才能と言えます」

 

 同じく隣を歩くメッサーも、サオトメ・アルトに複雑な感情を抱く一人だ。隣のカナメやアラド以外のデルタ小隊とワルキューレは知らないことだが一度メッサーはヴァールを発症している。隣にいるカナメの歌のおかげで回復しているがいつまた発症するか分からない状況で、デルタ小隊の戦力を上げる手段があるなら喉から手が出る程欲しいのは事実。だがそれが、12才の子供であるなら話は別だ。確かにレイナ・プラウラーやフレイア・ヴィオンのように15才、14才のメンバーがいるのは事実だ。だが、レイナやフレイアも元の惑星において成人扱いされる年齢、だから問題なくワルキューレに在籍している。

 

 だが純粋な地球人である3人の場合成人年齢は18才になる。まだハイスクールにも上がってない3人、うち一人を人を殺す可能性のある役目につかせるのは全力で拒否したい。もっと言うならワクチンライブだけの参加でとどめておきたかった。自分で覚悟をして飛び込んでくるのと、巻き込まれて否応なしに選択を迫られるのでは違う。ただのホットミルクに、感謝の念を込めた絵を返してくれた少年を戻れない道に引き入れたくなかったとシミュレーターの中で唇をかんだことを思い出す。

 

 「そして、飛行機乗りにはなるべきではない人材です。自己犠牲が強すぎる、そして無理を押し通せてしまう根性と技術…危険だと言わざるを得ません。鼻血を出してまで俺に食らいついてきました」

 

 「…そう、だよね。ヒマリちゃんもツムギちゃんも…見てられないくらい必死だもの。フレイアが心配して慌てふためくくらい」

 

 今はあてがわれているアイテールの休憩室で休んでいるであろう3人を思い浮かべてカナメは大きくため息をついた。それもこれもデルタ小隊の隊長であるアラド・メルダースがシグナスの操縦訓練中に突然現れてゴーストを操縦してみないかなどと誘ったせいだ。あれがなければ今頃3人とも鎮圧ライブに行くなどと言い出さず基礎トレーニングを必死こいてやることもなく、メッサーとシミュレーターで戦闘することもなく、エリシオンのどこかで3人で笑いながらデカルチャーという歓声を浴びながら楽器を演奏していたはずなのだ。

 

 カナメとメッサーの思考がここぞとばかりにシンクロする「あのスルメ親父…!」と。普段は尊敬すべき隊長で実際に尊敬の念が絶えないアラドに対してとんでもない暴言を心の中で吐くバディ二人。流石は戦場で組むだけの事はある、息ぴったりだ。ようやく、アラドに指定された店にたどり着いた二人は何とか文句を言ってやろうと意気込んで裏路地に佇むバーの中へ入っていくのだった。

 

 

 

 「いらっしゃいませ。ご予約をされていますでしょうか?」

 

 「24番のショットをもらえないかしら?」

 

 「かしこまりました。こちらへどうぞ」

 

 符牒を口に出して案内されたのは防音用の個室。ドアを開けて内から鍵をかける。既に個室の中にはアラドとマクロス・エリシオンの艦長であるアーネスト・ジョンソンがいた。いつも通りのクラゲを咥えたその姿と私服姿のアーネストを見て向かいに席に着いたカナメとメッサー。アーネストがピッチャーからグラスに水を注いでくれたので礼を言って受け取る。既に向かい二人のコップの中にはラグナ特産のバナナ酒と思われる液体が氷と一緒に入っていた。

 

 「よう、お二人さん。悪いねこんな夜遅くに。メッサー、やっとお前と飯が食えるな」

 

 「アラド隊長!そんなことよりどういうつもりですか!?あの3人を鎮圧ライブに引き込むだなんて!」

 

 「俺からも聞かせてください。あなたはこんな急にチームの命を脅かすような変更はしない。いつだって万全の準備をしていた。なぜ、やつをデルタ小隊に…?」

 

 単刀直入という言葉はまさにこれが相応しい。水も飲まずに一息にワルキューレとデルタ小隊の中核を担う二人の口から飛び出たのは当然来る途中に話題にしていたことだ。予想はしていたらしくアラドは咥えていたクラゲを噛んで飲み込むと顔を引き締める。先に口を開いたのはアーネストだった。

 

 「事情がかわった。ケイオスの本社の方から高いレセプターを持つならよこせという話が来たんだ。当然、あの3人の事だ。ワルキューレの作戦行動に同行させるから不可能だという返答をしたんだがな…」

 

 「やつら、バックバンドなら必要ない。今まで通りでもいいだろう。それならばヴァールの研究に協力させるべき、と言い出したんだよ。それでも断ってやったけどな」

 

 「別に医療施設に行くのならそれはそれで正しい流れではないでしょうか」

 

 そう、今メッサーが口にした通りフォールドレセプターを持っている保護された人材は医療研究施設へ行くのが通例だ。むしろあの3人の保護が異常なのであって本来の流れに戻るだけの話だ。当然、異世界云々の話でひと悶着あるだろうが、それも保護した側が考えることだ。メッサーもカナメも反対の立場ではあるが本部のその連絡は理解できるものだった。

 

 「……お前、これ見てもそう言えるか」

 

 「…これは、なんでしょうか?」

 

 「あまりに向こうが強硬なのでな、おかしいと思ってレイナに調べさせた。向こうに3人が行った場合の「実験スケジュール」だそうだ」

 

 アラドがパサッと投げてよこした紙の束、今時珍しい紙を使うということは、データ上に残せないほどの重要機密か後ろ暗いことの証拠だ。読み進めていくうちにカナメの顔が凍り付く。メッサーの顔もこわばって紙がしわになるほど手に力が入っていた。

 

 書いてあることは実験…人体実験のスケジュールだった。ケイオスは複合企業であるため薬の開発も行っている。治験だってそうだ。だから検体に人を使うことはある。だが、移送してすぐ人体実験をするなんて常軌を逸しているとしか思えない。内容もかなりのものが多数を占める。

 

 「血液検査、ヴァール発症者の血液を輸血する実験、同意を取れれば内臓も抜き取る、と。この同意ってのも怪しいものだがな」

 

 「ようはあいつらが欲しいんだよ。3人とも戸籍も痕跡もない、消えても騒ぐやつはいない。これほど都合のいいモルモットはないって話だ」

 

 「…3人を別々の研究所に移送し、確認後実行…かなり綿密に練られているように思えます。検体名まで…!」

 

 「……ケイオスが、こんなことを…?」

 

 「いや、全体じゃない。大木の根の内の一部が腐っていただけだ。だが、レディ・Mに根回しされると面倒くさい、その前に…あいつらをラグナ支部の柱の一部にする。そうすれば俺たちより立場が下の頼みこむしかできねえマッドどもの手は振り払える」

 

 「じゃあ、昨日の急なデルタ小隊への勧誘は…」

 

 震える声でカナメがそうアラドに問う。何かが狂っていれば、3人の子供がヴァールの研究のための材料にされていたかもしれない事実。それが、自分の所属している企業で行われたかもしれないという衝撃。ラグナ支部に引き留めておいて良かった、ともし、そのまま見送っていたら…と考えて背筋が凍る。笑いながら演奏をする3人の顔が浮かんだ。

 

 「そういうことだ。ワクチンライブのバックバンドだけでは弱い。最低でもそれ以外に何かを任せられるほどの事があれば、今来てる要請を撥ね退けることが出来る。それこそ鎮圧ライブにおけるシグナスのオペレーターやゴーストの操縦者とかな」

 

 「もしこれでダメだった場合、新ユニットとして芸能部でのデビューも考えていた。俺たちは船乗りだ、みすみす沈む船を見捨てることはしない。ましてやそれが子供であれば猶更だ」

 

 ストン、と腑に落ちた思いだった。昨日と今日の上司の普段では決してしない強引な行動の理由をようやく理解することが出来た。あの3人には後がないのだ。どれだけ気付いているかは分からないが本当にできることをして必死に食らいついていかないと、待っているのは悲惨な結末だということだ。真剣な顔でアラドが続ける。

 

 「これは地獄の2択だ。カナメリーダー、メッサー…お前らには選択肢がある。戦場という地獄にあの子供たちを送り込むか、人体実験という地獄に送り込むか…どっちにしても辛い道になる。どうするかは二人の自由だ。俺とアーネストはもう腹を決めた。しかるべき時にこの資料はレディ・Mに提出して問いただす」

 

 「今日のこの話、聞かなかったことにしても構わない。なぜ話したかは、お前たちならわかるだろう。レイナは、もう既に決めたようだ」

 

 「…いえ、時間を頂くまでもありません。俺は協力させてもらいます」

 

 「私も、やります。いえ、やらせてください」

 

 迷いなくそう言ってくれる部下を見たアーネストとアラドはいい部下を持ったと嬉しくなる。同時に、部下を地獄に引きずり込んでしまったことを心の中で深くわびた。もともとアラドもアーネストも軍人上がりだ。守るべき存在である子供を手助けすることには何の躊躇も躊躇いもない。確かにおかしなところが沢山ある3人ではあっても、やはりただの子供なのは変わらない。とりあえず何か腹に入れるか、とアラドがメニューを取り出す。残りの話し合いは密室で、静かに行われた。




 この急なデルタ小隊への勧誘はなんだったのかというお話でした。初めて別視点というものに挑戦してみましたけどうまくできてますかね~?

 ケイオスに闇がある設定になっちゃいましたけど既に美雲さんという闇の塊があるのでこういう風になってもおかしくないなと思います。捏造ですけど。

 メッサーさんもカナメさんもアラドさんもアーネストさんもいい人に違いないんや…!というお話でした。次回からまたアルト君視点に戻ります


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 回りだす歯車

 俺が鼻血出してシミュレーターを汚した事件から3日たった。ちなみにあの後レイナさんの服の袖に鼻血が付いたので地面にめり込まんとせんぐらいの土下座を披露しようとしたのだけど機先を制されて「このくらいいい。むしろあのモヒカンゴリラに当てたんだからこうなるのが普通」って言われたよ。遠回しにメッサーさんを褒めてるんだか貶してるんだか分からないんだけどメッサーさんの顔が怖かったのでそっちを見れなかった。

 

 それでそのあと、ミラージュさんとかチャックさんにえらく心配されてやはり反対です!というミラージュさんをアラドさんが決定事項だ、と説き伏せてしまっていた。なら私が教官役をと買って出るミラージュさんだったけどアラドさんは

 

 「いや、それは俺かメッサーがやる。バルキリーを操縦するわけではないからな。必要なのはフォーメーションの把握と耐G訓練、あとはお勉強だ。で、アルト候補生。俺とメッサー、どっちがいい?」

 

 「…メッサーさんで、お願いします」

 

 「ほお、理由はあるか?」

 

 「一番容赦なく叩き潰してくれそうだからです。折れるつもりはないですけど」

 

 「…だ、そうだ。メッサー中尉」

 

 「了解しました。アルト候補生は自分が受け持ちます」

 

 戦場へ行く。それにはきっと強さが必要だ。いざという時に引き金を引ける強さと引かなくてもいいようにする強さ。俺はガンプラバトルの技術を人殺しには使いたくない。いざという時のために引き金を引く覚悟を持つべきなのだろうけど、今それが起きて引けるかと言われたら多分引けない。だって結局…シミュレーターの中でさえメッサーさんのコックピットに向かって攻撃をできなかったんだから。もし、もしこの世界で人を殺してしまったら…ガンプラバトルは辞めよう。そもそも帰っていいのかとも思うけれど、人殺しの技術を使ってセイたちと笑って遊ぶなんてできないから。

 

 いざという時、殺さない選択肢を取れるのは圧倒的な強さを持つものだけ。だから強くなろう、人を殺さないで済むように、帰った時に胸を張ってセイたちと再会できるように…。そう考えてるとバンッ!と強い勢いで背中を叩かれた。ゲッホゴッホとせき込んだ俺が涙目で犯人を見ると、ハヤテさんだ。

 

 「…やるじゃん」

 

 そう一言言ってハヤテさんは出ていってしまった。慌ててミラージュさんが追いかけていくが、次デスクワークだろ?と言われて目を白黒させている。それもそう、昨日はハヤテさんバルキリーの飛行訓練以外全部サボったもんね。そう考えるとミラージュさんが目をぱちくりするのも分かる。わかんねーとこ教えてくれよ教官、とすたすた行ってしまったハヤテさんをこちらに頭を下げて追いかけるミラージュさん。くっくっとアラドさんが笑っていたのが印象的だった。

 

 「アルト候補生」

 

 「はい!」

 

 「14時まで休憩だ。食事を取って体を動かせる状態にしてアイテールの甲板に来い」

 

 「はい!」

 

 「終わった?じゃ、アルト裸喰娘娘にいくべし。ツムギもヒマリも、一緒に」

 

 話が終わるのを待っていたらしいレイナさんに手を引っ張られて俺はシミュレータールームから退室するのだった。慌ててチャックさんが「ちょっと~~!合格祝いにチャックお兄さんに奢らせてよ~~!」とついてきてくれた。

 

 

 

 話は変わって今現在、勿論トレーニングを頑張っております。まあ俺だけ手加減に手加減を重ねたお子様メニューなんだけど。まあ一応基礎体力にはそれなりに自信が。ガンプラバトルって全身を動かして操縦するからどうしても体力いるんだよね。タツヤさんとか見ても分かるんだけど世界大会参加者ってだいたいムキムキよ?グレコさんとかボディビルやってんのかっていう感じで腹筋板チョコ肩メロンだったもん。あれだよ、えーっと前世にあったリングフィットなんちゃらってゲーム。あれを3時間くらいぶっ続けでやる感じだ。いやでも体力付く。

 

 現在走り込みの最中、俺はなんも付けてないけど他のデルタ小隊の面々はパワーアシストをオフにしたEXギアをつけてグラウンドを20周やってる。俺は15周だって。ハヤテさんとかヘロッヘロだけど、EXギア普通に重そうだもんね、実際何キロか分からないけどさ。ツムギもヒマリもワルキューレのトレーニングを頑張ってるようで、コーラス参加することになったんだ!って嬉しそうに教えてくれた。

 

 一応バックバンドとしても頑張らないといけないので俺は午前中はデルタ小隊のトレーニング、午後はワルキューレのレッスン&バンドとしての練習という感じで頑張っております。終わったらメッサーさんがつきっきりでフォーメーションとかそういうののお勉強、あとチャックさんが正しいゴーストの動かし方を教えてくれてる。やっぱりシミュレーターの動かし方だと癖が強いんだって。

 

 で、一番変わったことといえばハヤテさんだ。初手サボってて変な目で見られていたハヤテさんが俺がメッサーさんに一発入れた日からなんか少し真面目?というかサボらなくなった。普段の態度とかは変わらないけど遅刻することなくミラージュさんの座学に出て、デスクワークやって、フレイアさんを揶揄ってルンをツンツンしてえっちー!と言われている。ルンはピッカピカだったことをここに記しておこう。

 

 「はあ…ふう…」

 

 「よし、インターバル10分、次はEXギアをつけたまま腕立て伏せ!」

 

 「「「「ウーラ・サー!」」」」

 

 あと、トレーニング中に皮肉や愚痴をこぼすこともなくなったらしい。黙々とやることをこなして、トレーニングの後に何時もの自由人なハヤテさんに戻る。唯一変わってないのは飛行訓練の最中くらい。そこだけは自分のやり方でやらないと気が済まない感じだったのだろうか。ミラージュさんは多少真面目になったくらいで、とまだまだ認める気はないみたい。

 

 あと、初めてジークフリードに乗らせてもらった。というか耐G訓練の一環で。ジークフリードは複座式なのでサブシートを引っ張り出さなくても最初っから二人乗りができる。本当だったらメッサーさんの後ろはカナメさんの指定席なはずなので非常に申し訳なかったのだけれど、頑張らないとダメなので心の中で土下寝しつつ乗せてもらった。初めて入るバルキリーの中は計器やらスロットルレバーやらなんやらと複雑にごちゃごちゃしていて、胸が高鳴った。特にEXギアが座席に変形したのを見て声が出そうになったよ。

 

 もちろん、遊びじゃないのでそういうファン心は片隅にぶん投げたんだけど、管制のオペレーターとやり取りしながら次々と機体チェックを進めていくメッサーさんは滅茶苦茶かっこよかった。正しくベテラン、エースの風格というやつ。飛び立った時なんて現実の飛行機よりも滑らかかつGもかからなかった。語彙力が消えうせるくらい凄かった。

 

 でもそのあとの曲芸飛行は地獄だった。正直、ガンプラバトルで散々ひどい視点を見てきた目の方は酔わないんだけど初めて体感するGというやつが曲者だった。腹の中が持ち上がったり押し付けられたり急に横に行ったりともうしっちゃかめっちゃかにされた気分で。全くえげつないものだった。ハヤテさんが初日にひどい目にあわされてミラージュさんにゲロったのもとてもわかる。俺は何とか耐えたけど。視点がぐっちゃぐちゃになるのに慣れてなかったら多分俺もゲロリアンになってた。あと平衡感覚を失って降りた後ぶっ倒れた。見てたカナメさんが慌てて駆け寄ってきたり、メッサーさんに首根っこひっつかまれて無理やり立たせてもらったりと大変迷惑をかけた。申し訳ない。ジェットコースター?目じゃなかったよ…。

 

 

 

 「ほ、ほえええええ!?ぐ、グラビアかね!?」

 

 「そうよー、フレイアのデビューの後に発売される雑誌に掲載されるの。撮影頑張りましょうね」

 

 「う、うああああ、ぶっちゃごりごりぃ…」

 

 全身を苛め抜いたあとほうほうの体で食堂にやってきた…嘘です、メッサーさんに担がれてきました。ごめんなさいと謝ったら頭をポンと大きな手で撫でてくれた。この人やっぱり本来は滅茶苦茶優しい人なんだな、とそう思えてならない。小隊のために嫌われ役を買って出ているだけで、本来は誰よりも仲間想いに違いない。

 

 それで、机に垂れてたれあるとくんになっていた俺、つんつんとハヤテさんにほっぺをつつかれていると食堂に大きな声、よく通るこの声はフレイアさんだ。何とか動く頭を動かして声の方を見るとルンをピンクにピカピカさせながらそれ以上にほっぺたをリンゴ色に染めたフレイアさんがグラビアアアアア!?と大きな声を出していた。戦術アイドルユニットというワルキューレではあるが、一応営利企業であるケイオスの所属であるためドル箱のワルキューレを戦術ライブだけで終わらせるはずもなく、きちんとアイドル的なこともやらしているらしい。利益凄そう(小並感

 

 「あいつグラビアなんつー柄かよ…」

 

 「チャックさんは人気出ると思うんだけどなー、フレイアちゃんのグ・ラ・ビ・ア♪アルトはどう思うよ?あとハヤテ、俺らも撮るんだぞ?ワルキューレとデルタ小隊は基本的にセットなんだから」

 

 「はあ!?きいてねーよ!」

 

 「そりゃあ逃げられちゃ困るから今言ったんだよ」

 

 「確かに人気出るでしょうね。フレイアさん元気で可愛らしいですから、ハヤテさんとフレイアさんのツーショット楽しみにしておきます」

 

  何とか回復した俺がチャックさんと一緒になって突然のグラビア撮影への参加を強制されるハヤテさんを弄り倒していると、空の俺の隣にトスン、と軽い音が。隣を見るとレイナさんだ、その隣にはマキナさん、俺の向かいにはツムギもヒマリ。この3日間、何かとレイナさんに世話を焼かれているような気がする。ご飯は毎回一緒だし、シミュレーターの時も高確率で来るし、ヒマリとツムギもかなり世話を焼かれているみたい。何とレイナさんの銀河標準語講座を受けたりしたのだとか。マキナさんに聞いてみたら「レイレイ、きゃわわ~。んー、弟と妹ができたみたいな感じカナ?レイレイ、珍しいカモ!」だって。つまるところ真意はよくわからない。

 

 よ、と言わんばかりに片手を上げたレイナさんとアルアル~とほんわか挨拶してくれるマキナさん、そしてゆでだこみたいになってる俺のパートナー達。ヒマリはともかくツムギもそんなに真っ赤になるなんて何があった。フレイアさんに負けず劣らす真っ赤だぞ。レイナさんがにやにやとしながら衝撃の事実を俺に伝える。

 

 「ふふふ、アルト…撮影頑張るべし。あとでカメラの前でどんな顔するか楽しみ」

 

 「…へ?」

 

 「あのね、アルトくん…その、私たちも…」

 

 「…ワルキューレのバックバンドでデビューだから、きちんと周知する必要があるんだって…つ、つまり」

 

 「アルアル達も!写真を撮って雑誌に載るのだ~~~!」

 

 …………………ファッッッ!?!?!?!?

 

 

 

 

 「はい!ありがとうございま~す!いやーカナメさん流石分かってますね!いい映りです!」

 

 「ふふっ、ありがとうございます。メッサー君も、さすがね」

 

 「いえ、自分は立ってただけです。カナメさんこそ、素晴らしいと思います」

 

 ………うせやろ。どうしてこうなった。現在エリシオンはアイテール、4機のジークフリードを前にしてセットを組まれて撮影中である。理由は聞いたよ、そりゃあ天下のワルキューレのバックバンド、それも新メンバーと同時デビューのやつらなんてファンからしたら気になるよね。急すぎへんかでも、と聞いたらお昼前に急に決まったことなのだとか。心の準備ぃ…と思ったけどそういえば俺世界大会ですでに全世界に顔出ししてたわ。超今更の話だった。でも、ヒマリとツムギはそうじゃなかった、腹を据えて覚悟を決めたおれ、背中にへばりつくヒマリと真正面から抱き着くツムギ、アルトく~ん…アルト~…という鳴き声が聞こえる。既にお前らも顔出ししてるやんけって言ったらそうじゃないの~と帰ってきた。じゃあどうだって言うんだよ。

 

 カナメさんとメッサーさんという高身長イケメンとハイパー美人という実に絵になる組み合わせというお手本の後に、メインであるフレイアさんとハヤテさんのコンビ、緊張でガックガクのフレイアさんをみてにやりと笑ったハヤテさんが、ピンク色に光っているルンを突っついた。すぐさま悲鳴を上げて飛び上がるフレイアさん。

 

 「ほわぁっ!?なななな何するんね急にっ!?こ、ここは触っちゃいけん!」

 

 「だから何も感じねーよ。それより出番なんじゃねーの」

 

 恋人みてーなやりとりしてんなこの人たち、そしてその瞬間を逃さなかったカメラマンさんがパシャリとシャッターを切った。おおう、自然体とはいえそれは流石に…フラッシュに慌てふためいたフレイアさんが足をもつれさせて転ぶ、慌てて支えるハヤテさん、そしてまた焚かれるフラッシュ、わぁい悪いループに入ってる~!じゃなくて!ハヤテさんが何とかフレイアさんを落ち着かせて写真撮影に臨んだ。ハヤテさんって器用だよな、手先とかの話じゃなくて柔軟性があるというか、アドリブと本番に強い感じがする。ルンをほのかに光らせたまま何とか撮影を終わらせた。風に乗ったんだな。

 

 「次、アルト君たちなんだけど~…?」

 

 「ヒマリ、ツムギ、頑張ろうぜ。きちんとやったらそうだな…時間があるとき歌ってやる。どうだ?」

 

 「ほんとっ!?」

 

 「おう、アルト嘘つかない。哀・戦士でもSTAND UP TO THE VICTORYでもSurvivorでも何でも来やがれ。折角やらせてもらえるんだから頑張ろうぜ」

 

 「…やる、約束だよアルト」

 

 「当然、約束だ」

 

 こういう時有効なのはご褒美を目の前にぶら下げることなので、俺の歌がご褒美になるかどうかは分からんがどうしてもやってもらわないと迷惑がかかる以上リーサルウェポンを出すことにした。結果見事に一本釣りに成功した俺である。やったぜ、だがそのリーサルウェポンが効いたのは俺の相方たちだけではなかったようで。そわそわしだしたワルキューレとデルタ小隊。

 

 「ね、ねえアルト君?それって私たちも聞いていいかしら?せっかく上手なんだしもったいないわ」

 

 「アルアルの歌かなり良かったしまた聞きたーい!」

 

 指をツンツンしながらしながらそう言ってくるカナメさんとはいはいと手を上げるマキナさん、無言のプレッシャーをかけるレイナさん、ほわ~~と期待の眼差しをくれるフレイアさん、微笑みながらこっちを見る美雲さん。断りづれえ…ついでにデルタ小隊なんか「聞きたいよな」「「「「うん」」」」みたいな空気。ミラージュさんですら助けてくれない。俺がこの世界に来て2回目の墓穴を掘った瞬間であった。ぴえん。やってやろうじゃねえかこの野郎!という意気込みで「わかりました」と言うしかないよね。がんばろっと。

 

 まあ、気合を入れなおしたヒマリとツムギはいうに及ばず、自分の楽器を持って行った写真撮影はつつがなく終わった。とりあえずなんか弾いてくださ~いって言われたので一度だけの恋ならを演奏してたらその様子をバシャバシャ撮られて終わったのである。なんか構える必要なかったよね、どうせページの隅っこにちょこんって載るだけだろうし写真少なくていいのか(自己解決

 

 

 「ねえねえアルアル~オフショット撮っていい~?」

 

 撮影がつつがなく終わった後の話、携帯端末を持ったマキナさんとレイナさんにそう言われたのでいいっすよ、と言ってヒマリとツムギを探したんだけどヒマリのやつはカナメさんとメッサーさんと撮ってるし、ツムギは美雲さんに捕まってなんか親ペンギン子ペンギンみたいな感じになってアラドさんに撮られてた。なおハヤテさんはフレイアさんと追いかけっこしてる。しょうがないので俺一人でいいか…あれ?これ銀河ネットに投稿されるやつ?もしかしたらこの状況はファンにぶち殺されるやつでは?と軽くしゃがんだマキナさんとレイナさんの真ん中に入れられて女子女子した自撮りをやってみた。あの、どうする気ですかと聞くまでにマキナさんが超速で銀河版SNSに投稿してた。一足先に銀河デビューしたぜ(震え声

 

 燃えそう、と思ったけどどうやら新入社員とのオフショットみたいな感じになってるらしく、猛スピードで返ってきた反応をレイナさんが読み上げる限り女の子だと勘違いされてるっぽい、燃える心配はなさそう。良かった、常々感謝はしてるけど改めて自分の容姿をありがたく思った瞬間であった。でもそんなに俺女の子に見える?絶対本人と雰囲気真逆だと思うんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠く遠く離れた銀河の端、広大な開拓地の星のどこか、建てられた新築の一軒家の中にいるこの世界においてはさほど珍しくない緑色の髪をした女性、かなり容姿的には幼くとても成人には見えない。もう大人なんですーと知り合いの民間軍事会社の眼鏡をかけた友達にからかわれてはむくれるのが御約束。かなり、いや大分多忙な彼女は久々のオフを満喫していた。

 

 「ふっふ~んデカルチャー」

 

 鼻歌を歌いながら、巨人族の血を引くが故、髪をピコピコと犬のように動かしながら、8年前から変わらず使い続けているぬいぐるみのような携帯端末を握る。仮想画面に写されるのは自分もやっている銀河SNS、何時ものようにファンに向けての呟きを投稿した彼女は、流れてくる情報を流し見する。

 

 最近のマイトレンドは遠い星のユニット、ワルキューレ。お友達である銀河の妖精も一目置く素晴らしいユニットでライバル。ライバルの情報は詳しく見ておくべきだよね!という信条の元、ワルキューレのメンバーの個人アカウントの投稿を眺めていく。どうやら専用小隊のデルタ小隊と雑誌の撮影をしたらしい、そのオフショットが投稿されていた。新入社員と撮りました、というリーダーの投稿には元気そうな女の子と不愛想なパイロットスーツの男に挟まれた写真、エースボーカルの投稿にはまるで仲のいい姉妹のような写真、そしてもう一つの写真を見て彼女は固まった。

 

 「…嘘…!」

 

 ワルキューレの仲良しコンビに挟まれているのは、見覚えのある顔だった。8年前、異星の生物に歌を届けた立役者、そしてフォールドに巻き込まれて行方不明になった想い人の顔だった。取り落とした携帯端末から仮想画面が消える。かなり幼いかもしれないが瓜二つどころか生き写し、広い銀河の中では何が起こるか分からない。彼を探し続けた彼女にとっては、一筋の光であった。手掛かりか、本人か。分からない、だけど

 

 「行かなくちゃ…!」

 

 ベッドを立ち上がった彼女はドタバタと慌てつつも、階下にいる義理の兄のもとへ急いで走る。やっと見つけたかもしれない蜘蛛の糸を掴むために。




 やっちまったぜ(震え声

 作者は時の迷宮見れてないのでそこら辺は捏造します。まあ遅かれ早かれバレるよねって話。フロンティア好きなんです許して。ストーリーにはそこまで介入しないようにするからぁ!

 アルト君が次回歌うかどうかはもっと別の話。さっさとストーリー進ませてえな俺もな。いい加減長いとだれるかも。大胆カットしてもいいんだけど努力パートがあるほど説得力が産まれると思うので悩みどころさん

 ではまた次回をお楽しみに


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大胆奇襲のフロンティア

 「何でも、1週間後に俺の最終テストするんだと」

 

 「そうなん!?ハヤテ、もうミラージュさんに認められたんやね~」

 

 「いーや、「合格させると思わないでください」だと。あいつ俺の事嫌いすぎだろ」

 

 あのわいわいがやがや写真撮影からはやもう1週間、相変わらず元の世界に戻れる気配はない。多分、向こうでは捜索願とか出されててんやわんやだろう…駆け落ちとか思われてないよな?流石にそんなことを起こす人間とは思われてないと…信じたい。アリスタどうです?って聞いたら少ししたら返すわ、と言われたのでおとなしく待つとしよう。

 

 現在、お休みです。休養日というやつ、訓練し続けても体の発達に悪いとかそんな話で休め、絶対だぞという念を押されたのでヒマリ、ツムギ、俺、ついでに休みになったハヤテさんとフレイアさんというケイオス新人パーティーを組んで裸喰娘娘の外の浜辺で満喫しております。

 

 もうハヤテさんの最終テストが決まったのか、相手は当然ミラージュさんで、VF-1EXでやるらしい。アニメ通りかな、フレイアさんはかなりポジティブシンキングみたいでミラージュさんがハヤテを認めてくれた~って感じに思ってるんだろうけど多分ハヤテさんはさっさと追い返したいんだろうなあいつって思ってるんじゃないかな。ちなみに俺の考えではある程度形になったからこれ以上は正式採用になってからってラインにハヤテさんが届いたんだと思う。ミラージュさん、多分そこら辺に私情は挟むタイプじゃないと思うから。メッサーさんと一緒、じゃないかな。

 

 「ねーえ、アルトくん」

 

 「どうした?」

 

 「携帯…もらっちゃったね~充電器も作ってもらったし、専用の衣装も作ってくれる~って」

 

 「…シグナス操縦用の専用グローブ用意するって。楽器も、シグナスの操縦用と両立できるように新しく作るって言ってた」

 

 「…ああ、ゴーストの操縦もガンプラバトルのコンソール再現するって。俺も楽器頑張んねーとな~」

 

 そう、なんだか俺の知らないところでいろいろとプロジェクトが進んでるらしく、ゴーストとシグナスを操縦する時用の専用のグローブ、操縦機能を取り込んだ楽器に俺たち用の衣装が現在開発中らしい。プロだし戦場に行くしちゃんとした装備がないと困るとのことでマキナさんが腕まくりをしながら頑張っていた。めっちゃ楽しそうだった。レイナさんもプログラム関係は任せろとのことでワルキューレメカニック組の合作になるらしい。特に衣装はフォールドプロジェクターを利用したワルキューレと似たものになるのかと思いきや安全性を考えてガッチガチに防御力を高めたものになるとか。対人レーザーでも無傷を目指すらしい。

 

 訓練も順調、と言っていいのか分からないが、ランニングも腕立て伏せもなんとか食らいついている。訓練後にぶっ倒れてるのは変わらないし何ならメッサーさんに空輸されるのも変わらない。あとは必死こいてギターをかき鳴らしてワルキューレの曲を練習している。

 

 あと、3人で決めたことなんだけど向こうで俺とヒマリが再現したマクロスの曲については全て封印することにした。もう個人の端末にある楽譜や歌詞なども全部削除した。現物があるプラモについては誤魔化しようがないのでそのままだが、曲についてはこっちで聞くまでは言及しないことを3人で決めている。聞いた場合は耳コピしましたが言い訳になるので解除、そんな感じ。ちなみにこっちの音楽については随時聞いて情報アップデートしてるのでそう気にしなくても大丈夫そうだ。

 

 あと俺たちが異世界から来たという話はデルタ小隊とワルキューレ、それにアーネストさん以外は知らないということになってるので俺たちは未知のフォールド事象による事故に巻き込まれて今ここにいるということになっている。だから変わらず俺たちはフォールド事故に巻き込まれ、母星の特定ができない子供という扱いになっている。ワルキューレのバックバンドの件も外でやってる練習のおかげか、かなり好意的にみられてるみたいだ。

 

 「あれ?なんやろね、あの光」

 

 「あ、どれだよ?」

 

 「あれよ、あれ。なんね?不思議な光~」

 

 フレイアさんが空に何かを見つけたらしい。疑問符を浮かべる俺らに彼女が指をさし示す。ラグナの青い空に紫の光が映っていた。確かになんだか分からない、俺もヒマリもいつぞやのドラウミネコを膝の上に抱いたツムギもそろって首をかしげる。いち早く何かに気づいたのはハヤテさんだった。

 

 「あー、あれ。デフォールドの光だよ。めっずらしいな~、大気圏内じゃ基本デフォールドなんてしないのに。よっぽどの緊急事態か急いでたんじゃねーの?ま、俺たちには関係ない話だよ」

 

 「ほんに?なんかでてきとるよ?ん~~?エリシオンに向かっとるんかね?」

 

 「おー、そうみたいだな。ってことはフォールドブースターか、α小隊かβ小隊の誰かじゃねーの?よく気づいたなお前」

 

 「デフォールド…ってあの空間を飛び越えるってやつですか?」

 

 「そーそー、そんなのも知らねえのって当然か。ないんだもんな、大気圏外じゃ割と見るけど空間を折りたたんでるわけだから星に近すぎるとなんか異常が起こるかもしれねーんだっけ。だから、こうして生でデフォールドを見るのは中々ないんだよな」

 

 「ほへ~、ハヤテ物知りやんね。いひひひっ」

 

 「…んぅ、出てきた。青色のバルキリーと灰色のバルキリー。ちょっと眩しくてよく見えない。でも、エリシオンに向かってる」

 

 「ツムギ、お前よく見えるな…でも青だあ?デルタ小隊じゃあるまいしそんな派手なカラーリングのバルキリーって相当物好きな奴だな。おしっ!そろそろ海行くか、アルト!行くぞ!」

 

 「え?ちょっハヤテさんなにっ、うわあああ!?」

 

 ツムギが眩しそうにデフォールドの光を見て出てきたものを言う。流石に遠すぎてバルキリーっていうのは分かるけど機種までは分からない模様。俺もそっちを向いて何かな~と見てたらそれを隙に見たらしいハヤテさんに小脇に抱えられてそのまま桟橋から海へダイブした。ウィンダミアという冬の星出身で泳ぐという文化がなかったらしいフレイアさんはまだ泳げないらしく、ヒマリとツムギと一緒に桟橋に座って足を海につけてちゃぽちゃぽしていた。俺はハヤテさんに連れられて水中で目を開けても大丈夫なくらい奇麗なラグナの海を堪能するのだった。

 

 

 「はー、遊んだ遊んだ!いー感じだぜ」

 

 「ハヤテ、いっつもそうなんね。いー感じって、いひひっ」

 

 「たまには息抜きが重要なんだよ、ミラージュに負けるわけには行かねえからな、シミュレーションしてくるわ」

 

 「う~~、私もシグナスの操縦頑張らんと!」

 

 「私も、ツムギちゃんと同じくらいには操縦できるようになりたいな~」

 

 「…負けない、でもわかんないところあったら教える」

 

 「う~~~~ツムギちゃん大好きっ!」

 

 「なんか騒がしくね?なんかあったんかな?今日イベントなんかありましたっけハヤテさん」

 

 「さーな、どうでもいいだろ。とりあえずスルメ親父探すぞ、勝手に使ったらミラージュがうっせえからな」

 

 エリシオンに帰ってきた俺たち、ケーブルカーを降りてエントランスに入りエレベーターに乗ってアイテールの中に戻ってきたんだけどなんか騒がしい、何かあったっけ~?と全員で首をかしげながらアイテールのカタパルトデッキの手前の部屋に入ると、ずら~~~~っと事務方から整備員果ては別の小隊のパイロットまでが部屋の中にみっちり入って窓の外を熱心に見つめていた。なんじゃこりゃ!?

 

 「ほああああ!?ほんになんねこれぇ!?ハヤテ、なんかしたんなら謝らんといけん!」

 

 「はああ!?なんで俺なんだよ!どっちかっていうとお前じゃねーのかこのリンゴ娘!」

 

 「ま、まあまあ二人とも落ち着いてください。なんで二人で押し付け合ってるんですか」

 

 この混雑を見たフレイアさんはルンをビンッ!と青色にしつつ跳ねさせてあわあわとなぜかハヤテさんに向かって指をさしつつ犯人扱いした。流石にそれはひどいと俺も思ったんだけど冤罪を着せられたハヤテさんは売り言葉に買い言葉でフレイアさんと取っ組み合いを始めてしまった。お互いがお互いの頬を引っ張り合うという謎の状況が俺の前で繰り広げられているわけなんだけど…これどうしたらいいの?と思って近くの整備士さんに助けを求めようとしたら、周りの人みんなが俺たち、というか俺を見ているのに気づいた。

 

 「…え、と…俺何かしました…?もの壊したりとかはしてない、はずですけど」

 

 「目標物がきたぞおおお!」

 

 「隠せ隠せ!」

 

 「SMSが子供を目的に殴り込みに来やがった!」

 

 「正式な連絡もなしにフォールドブースターでエリシオンに来るなんて宣戦布告に違いねえ!」

 

 「しかもVF-25で来やがった!武装解除もしてねえ!関係が確認できるまではアルト君もヒマリちゃんもツムギちゃんも奴らに会わすな!!聞かれたら知らんで通せ!」

 

 「α小隊、戦闘に備えてヘーメラーの各自機体の中で待機!β小隊は白兵戦用意!要人を保護しろぉ!!!」

 

 「「「「「ウーラ・サー!!!!」」」」

 

 「わっ、ちょ、はええええアルトくんなにこれっ!?」

 

 「…わ、わわ、わわわ…アルト、何したの?」

 

 「いやいや俺のせいじゃねええええ!?」

 

 一瞬シンと静まった室内がひっくり返したように騒がしくなる。体力自慢のパイロット組に担がれた俺とヒマリとツムギ、滅茶苦茶に騒がしいケイオスのパイロットや整備員の人たちに次々たらいまわしの様にパスされていく。混乱した俺がなんか祭りのごとくわっしょわっしょいと担がれてる状態で窓の外を見ると、はぁっ!?スカルマーク背負ったグレーに黒と黄色のラインのVF-25Sと青と白いラインのVF-25G…!?予想が間違ってなかったら…!

 

 「ほわああああ!?み、皆さんなんね!?アルト君かついでどうしたん!?」

 

 「おいおい何慌ててるのか知らねーけど降ろしてやれよ、つーかなんだよ宣戦布告だのSMSだの、大袈裟だろ」

 

 「そんなわけねえだろ新入りぃ!SMSはフロンティアの政府と契約してる民間軍事会社だ!実質的にフロンティアの正規軍みたいなもんなんだよ!」

 

 「それがなんね?アルト君たちと何の関係があるん?」

 

 「あー、フレイアちゃんに分かりやすく言うとだね?あのVF-25ってヴァジュラ戦役の英雄が所属していたスカル小隊の機体なんだよ、さっきのデフォールド後の通信でもスカル小隊っつってたし」

 

 「ほんに!?じゃああの超時空シンデレラのランカ・リーさんと銀河の妖精シェリル・ノームさんと一緒に戦ったっていう!?」

 

 「そうそう、それで…どっから嗅ぎつけられたのかわかんないんだけどそのスカル小隊の英雄と同じ名前をしたやつがここにいるんだよね?そう、そこのポニテのカワイ子ちゃん」

 

 「それが何だってんだよ。別人だろこいつ」

 

 「ウチはそう考えてるけどさ~、向こうさん8年間ずっとその英雄を探してるんだよ、行方不明だから。んでこっちに突然来たわけ、事前に何の連絡もないし危険な大気圏内でのフォールドもしたもんだからスパイか宣戦布告かもって言う緊張状態なんだよ今。んで、そこのポニテお姫様が向こうさんに見られると面倒だから事実確認が終わるまで隠しておかないと…最悪戦争になる」

 

 そこまで聞いてハヤテさんとフレイアさんがサーッと青くなる。ルンも真っ青でしおしおだ。俺もようやっと状況を理解した。なるほど…つまり盛大な勘違いでケイオスとSMS双方に面倒をかけてるんだな俺の存在が!こうしちゃいられねえ!今すぐカタパルトデッキに飛び出してメッサーさんとアラドさん、カナメさんと話し合ってるパイロットスーツ二人組に向かって勘違いですごめんなさいの土下座をせねば!今だけでいい俺の身体!限界を超えろおおお!といこうとしたらむんずと体を掴まれた。ハヤテさんとフレイアさんだった。

 

 「まままままずいねハヤテ!戦争なんかしたらいけん!とにかくアルト君隠さんと~~~!!!」

 

 「そそそそうだなフレイア!どうする!?とりあえずあれだ!シミュレーターの中に突っ込んで外から鍵かけるぞ!そんでレイナ呼んでガッチガチにプロテクトかけてもらえ!あと炭素ケーブルでぐるぐる巻きにして物理的にも絶対に開けられないようにしろ!」

 

 「わかった!レイナさんよんでくる!」

 

 「ちょっとまって!?それおれやばいやつじゃないですか!?」

 

 なんか密室で餓死でもさせられそうな勢いなんだけど!?ハヤテさんを中心に担がれた俺はそのまま部屋を出されてシミュレーター室に運ばれる。あれよあれよという間に俺、ヒマリ、ツムギの順でシミュレーターに突っ込まれてシミュレーターが閉じられロックがかかる。

 

 「いった~い!もうもう何なのさっきから~~!SMSだかSNSだか知らないけどなんで私たちが閉じ込められなきゃならないの~~!?」

 

 「…アルト、知ってる?アルトが目的だって」

 

 「あ~~~…これ見て。銀河ネットの捜索願」

 

 「えっ、これ…」

 

 「…大きいアルトだ」

 

 「なんか知らないんだけど、俺の名前と容姿が8年前に行方不明になったパイロットに似てるんだと。で、俺がここにいることを知ったそのパイロットの仲間が俺を本人だと勘違いして急いでやってきた、んじゃないかな?」

 

 「…人違いで?」

 

 「人違いで」

 

 「なにそれ~~~~~!?」

 

 支給された携帯端末、レイナさん特製の日本語翻訳機能内蔵のそれの仮想画面にこの世界の早乙女アルトの顔写真と名前を出してつらつらと説明すると、ヒマリが困惑の限界を迎えたように脱力してそう言った。ほんと、どっから漏れたんだろうか…あれ?もしかしてこの間撮ったレイナさんとマキナさんのSNS用の写真のせい?う、うぐおおおおおお…原因がそこにあったああああ…

 

 ファーストコンタクトどうしよう、人違いです☆ってすごい言いにくいよ…とシミュレーターの中で3人団子になりながらそう思うのだった。




 はい、そんなわけで出ませんでしたね!誰がと言いませんけど!

 ちなみに一応いいわけですが今回奇襲してきた人たちは某シンデレラがSMSをその場で雇ってすぐさまフォールドパックでフォールド航行を敢行、7時間ほどのフォールド航行で7日後のラグナにやってきた、というわけです。そりゃ連絡できんわな。

 次回邂逅、という感じで行きまーす。ちょっとわちゃるケイオスは書いてて楽しかったです

 次回もよろしくお願いします


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SMS・エンカウント

 「ストライクフリーダム」

 

 「…ムウ・ラ・フラガ」

 

 「ガンダム!」

 

 「ヒマリそれさっき言った」

 

 「だってガってきたらつい~~…まだかな~」

 

 シミュレーターの中に閉じ込められて30分、これシミュレーター動かせるんじゃねと思ったけどレイナさんが本当にプロテクトかけたのかデフォルメレイナさんがバツマーク付いた看板をもって画面の中に映って以降反応しなくなったので今できることをしております。具体的にはガンダムしりとり、16周目でガンダムを2回言ったヒマリの負けが確定したんだけどそろそろ開かねーかな。ご丁寧に空調付いてるから熱いとかないんだけど暇なんよ。

 

 そんなことしてると俺の端末が震えた。確認してみるとアラドさんだ。渡りに船の救いの電話が来てくれたと嬉々として電話に出る。

 

 『あ~~~、お、繋がったな。今どこだ?』

 

 「ハヤテさんとフレイアさんとレイナさんによってシミュレーターに隠されてロックかけられました。助けてください」

 

 『何してるんだあいつらは…わかった。すぐに行くからそのまま待ってろ』

 

 そしてぶつっと電話が切れる。それから5分後、シミュレーターが開いた。あーなんか災難だったなあ、と思いつつ俺の上に乗ってるツムギ、ヒマリの順で外に出ていく、そんで俺もシミュレーターの中から這い出る。するといるのはアラドさんだけだ。もしかしてスカル小隊は俺が別人だってわかって帰ってったのかな?申し訳ないことしたなあ…俺は悪くないはずなんだけど、罪悪感が募るよ。

 

 「あの~~…閉じ込められた時にちょっと調べたんですけど…SMSのスカル小隊が来たんですよね?多分、俺目当てで。別人なんですけど」

 

 「向こうさんはそうは思ってないみたいでな。オズマの野郎、とにかく会わせろだのなんだの…フロンティアと本社の方から間一髪通信がなかったらおっぱじまるところだったぞ」

 

 「お知り合いなんですか?」

 

 「新統合軍にいたときに合同訓練でやり合った仲だ。なあ、マジでお前こっちの早乙女アルトと関わりがないんだよな?」

 

 「ありませんけど!?何ですか確かに証明しようがないですけど!遺伝子検査とかできるもんならやって証明したいくらいです!」

 

 「それなんだけどな…今さっきオズマの野郎が持ってきた英雄サマの遺伝子マップ、お前とほぼほぼ一致したんだよ。ほとんど同一人物だって結果だ、どう思う」

 

 「…………えっ?」

 

 思考が止まった。確かに俺は早乙女アルトと同じ顔をしている。けど、それは転生した時向こうにいた時に神様がこの体を作ったからだ。向こうの世界の両親は早乙女アルトの両親とは全く別の姿をしている、名前だって違う。だから俺はそのまま特に気にせず今に至る。俺が拾われたわけでもない、母さんの母子手帳も、俺が産まれた時の写真も臍の緒も保管してあった。遺伝子検査なんて大それたことはしてないけど証拠としては十分だと思う。でもあまりの衝撃でふらついてしまう。おっと、とアラドさんが受け止めてくれた。

 

 「その様子だと本当に知らないみたいだな…とにかく、どうする?会うか?SMSの連中に」

 

 「ちょっと…考えさせてください」

 

 「だろうな、向こうにもそう伝えよう。自室へ行って待ってろ、そっちの二人も、いいな?」

 

 「……はい」

 

 「アルトくん…」

 

 「…アルト、大丈夫?」

 

 二人の言葉に返事を返す余裕もない。なんだか、こっちへ来てからぐらぐらと揺さぶられることが多い気がする。とりあえず、どうするか考えないと。

 

 エリシオンの休憩室で、どうするか考える。二人は一人にしてほしいとお願いしたのでハヤテさんとフレイアさんの所に行っている。バサッとベッドの上で寝転びながら考えを巡らせた。まず、この世界の早乙女アルトは現在も見つかっていない。実際にはこの年代において帰ってきてるという話もあるのだがよくわからない。いないのは事実らしいのでそこはもうどうでもいい。問題なのは俺の身体だ。遺伝子が一致しただあ?冗談きついよ。フォールドなんて時空を超える技術がある世界だ。フォールドの影響で若返っただとかクローンの可能性だと考えられたらやばいぞ。

 

 特にだ、フロンティアに出てきたギャラクシー船団はかなりの科学技術を有している。当然そんな船団を敵に回していたフロンティアもそこら辺の技術があることを重々承知しているはずだ。あれ、詰んでね?これどんだけ否定しても記憶がない本人or本人のクローン扱いされるルートが見える…やべえよどうすんだよ!というか多分ケイオスも本人の可能性を視野に入れるぞ!?

 

 頼むから本人が今すぐどっかにデフォールドしてくんねーかな。どうやって別人でござるって言おう、仮にそれが通ってもじゃあクローンだな!ってなったらSMS激おこになるのが確定じゃん。いもしない黒幕探させるのはかわいそうだし素直に別世界人なんですよ、って言おうかな?うーん、うーん…

 

 ベッドから起き上がって腕を組んでると俄かに部屋の前が騒がしくなる。いや困ります、とにかく会わせなさい!シェリルさん落ち着いて…?シェリルさんっ!?ナニコレどういうこと!?という間に空気圧のドアがプシュッと開いた。ドアの先にいるのは滅茶苦茶困った顔をしてるカナメさんとストロベリーブロンドの美女と緑の髪の美人さん。なんかめっちゃ見覚えあるねんけど…?俺を見た瞬間、二人はやっと見つけたという感じで。

 

 「アルトっ!」

 

 「アルト君っ!」

 

 「ひ、ひとちがいです」

 

 声めっちゃ震えた、どうしようかっこわりぃ。見覚えは間違いなくあるんだけどそれは前世の話であって、今世では完全に初めて見る二人に俺は混乱するのだった。後ろであっちゃ~~~という感じに頭を抱えているアラドさんが印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 「…とりあえず、勝手に出歩くなって俺は言ったと思うんだけど?」

 

 「ご、ごめんねミシェル君!シェリルさんがお花を摘みに行ったときに抜けようとしてたから追いかけたんだけど…」

 

 「しょうがないじゃない。アルトがいるかもしれないのよ?たとえ撃ち殺されても探したくなるわ。休憩室にいるって聞いて探してみたけど、ビンゴね」

 

 「だから連れてくのは反対だって言ったんだよ…」

 

 現在俺の目の前で行われてるコント、あのあとすぐに入ってきたアラドさんとカナメさんが俺の目の前に立って壁になってくれたんだけど、それでメッサーさんに連れてこられた見覚えのある眼鏡の人が二人にたいして静かに訥々と説教をかましている。この世界じゃ生き残ったんだね、よかった。だけど心の準備ができない中で突然のエンカウントだ。あと、この二人が来てるならケイオス側も下手な真似できないよね、強制的に排除とかして二人がそれをカミングアウトでもしたらやべーもん。そりゃ言葉でやめてくださいくらいしか言えんわ。全く責められん。

 

 「とりあえず、場所を移しますか。いいな、坊主」

 

 「わかりました。会いたくないでどうにかならないのがよく分かったので」

 

 とりあえずの別人アピールのために皮肉を込めた言い方をしてみたんだけど向こうさんノーダメージだ。俺が立った瞬間思わずといった感じでこっちに駆け寄ろうとした二人をメッサーさんが静止してくれる。メッサーさんと行動を共にする様になって、彼の表情とかがわかるようになったから言えるんだけど、多分メッサーさん怒ってるよこれ。どうしたもんかな~~。もうね、力抜けるよ。と脱力した俺をいつの間にか抱え上げたメッサーさんに空輸された俺はこう思うのだった。どうにでもな~~れ。きっと今俺は目が死んでるだろう。

 

 俵抱きにされて、目が死んでる俺を見るカナメさんは、とても痛ましいものを見る目だった。なんか、今考えてることよりも本能で行動したほうがいい気がする。

 

 

 

 「とりあえず、人違いってどういう痛っ!?ちょっとミシェル!何するのよ!」

 

 「まず謝罪からでしょ。こっちはかなり無理言ってるんだから。オズマ隊長」

 

 「ああ、この度はこちらの突然の来訪及び連絡不備、そして強引な行動をとったことを深くお詫びさせていただきたい。また、丁寧な対応に感謝する」

 

 「そうね、それに関しては私に非があるわ…ごめんなさい。焦ってたの。何か賠償が必要ならするわ、お金でもこっちで歌ってくれっていう話でも無条件で受けるわ」

 

 「ごめんなさいっ!探し続けてようやく見つかったと思ったら、止まれなくてっ!必要なら私からも、シェリルさんと同じようにしてください!」

 

 「申し訳ありませんでした」

 

 移ったのは応接室、かな?改めて、場にいるのは…銀河の妖精、シェリル・ノーム、超時空シンデレラ、ランカ・リーそしてSMSスカル小隊の隊長、オズマ・リー、狙撃手のミハエル・ブランの4人だ。座った途端にいろいろと言葉が出てきたらしいシェリルさんの頭を軽くはたいたミシェルさん、すげえ勇気あるな。長い付き合いだから?俺そんなことできない。それでオズマさんがまず謝罪の言葉を述べて他の3人も謝った。で、口を開いたのはアラドさんだ。

 

 「謝罪を受け取らせてもらう。連絡不備については先日発生した次元断層のせいで9時間前に来るはずだった通信が遅れたらしい。それに関してはどちらにも非はないでしょう。だがなオズマ!こんなVIPを連れてくるならもっと護衛増やしてこい!」

 

 「しょうがないだろうアラド。お忍びなんだ、武装解除できない理由は分かってもらえただろ?」

 

 形式ばった謝罪を終えると突然砕けた口調になる隊長二人組、同じ新統合軍出身とはいえこんなにも仲良しなのか?あとカナメさんがめっちゃそわそわしてる。主にランカさんの方を見て。なんだろう?そう思っているとアラドさんが再び口を開いた。

 

 「本題に入りましょうか。あなた方の目的は、現在ケイオス支部で保護しているこいつが、8年前MIA判定されたスカル小隊所属の早乙女アルトかどうかを確認しに来た、ということでよろしいか?」

 

 「そうだ、目の前にしているとどうも小さくなった本人にしか見えないんだがな…違うとは思えない。アラド、どういうことなんだ?」

 

 「それに関してはこちらで既に確認している。フォールド事故での転移ではあったが、本人の聞き取りと年齢、状況証拠もろもろを含めて別人だという結論だ」

 

 「そんな…あの…アルト君、なんだよね!?覚えてる?私、ランカだよ!ランカ・リー!」

 

 「あら、私の前にいるのはただのそっくりさんということかしら?確かに…ちょっと小さいけどね」

 

 ますます言いだしづらいんだけど…だけど言わなきゃダメなんだよな…こっちに呼びかけるランカさんと挑戦的にこっちを見るシェリルさん。そうだよね~ここまでそっくりで名前も一緒でDNAまで一致してたらほぼほぼ本人だもんね~~~…よしっ!いうぞ!

 

 「えっと、その…俺はあなた方が探してる人じゃないです。見ての通り、翻訳機がないとこっちの言葉も分かりませんし、あなた方とも会ったことはないです。あの、アラドさん」

 

 「ああ、わかった。全部言わんでいい。まず、こっちが本人じゃないと断定した証拠から上げさせてもらう、とりあえずメッサー、資料映像を」

 

 そうして映し出されたのは俺たちが保護されたあの戦場の映像、おそらく監視カメラの映像だが、俺たちが紫色のデフォールドの光ではなく緑色の粒子、プラフスキー粒子が唐突に空間にあふれ出して、その中から俺たちが落ちてくる映像が映っていた。そこでカナメさんから当時の状況説明、それと俺たちが保護された後の話と聞き取り調査の結果、アリスタという物質の現在特定できてることが説明される。話が進むにつれてランカさんの髪がしょぼくれていった。感情と連動してるのは分かってたんだけど…大変いたたまれない。俺としては目を逸らすしかないのだ。それで、全部の説明を終えた後、ミシェルさんが眼鏡の下の瞳を鋭くした。

 

 「なるほど、異世界にアリスタ…オズマ隊長、姫のやつ…もしかしたらこの世界にいないのかもしれませんね」

 

 「…かもな。だが手掛かりにはなりそうだ。なあ、坊主…本当に違うんだな?」

 

 フロンティアの事件から8年たってるからか年を重ねて渋さを増したオズマさんがそう尋ねてくる。かなりこちらに気を使って言葉を選んでくれてるようだ。多分、本当にかなりの時間を捜索に費やしてやっと見つけた希望だったのかもしれない。だけど、俺は彼じゃない。彼は彼で、俺は俺だ。この人たちの求める早乙女アルトじゃない。だから、違うと答えなければならない。

 

 「ごめんなさい…やっぱりあなた方には会ったことはありません。あなた方の期待には、沿えないです。ごめんなさい」

 

 「…そう…か。いや、君が謝る必要は全くないんだ。きっと怖い思いをしただろう、俺達こそ…すまなかった」

 

 「オズマ、すまないがこれ以上こいつに精神的な負担をかけるわけにはいかない。ここで退席させるが、いいな?」

 

 「ああ、分かっている。ランカもシェリルも納得してくれ。ミハエル、いいな」

 

 「…うん」

 

 「…ええ」

 

 「了解」

 

 「アルト君、立てるかしら?…部屋まで行きましょう。ヒマリちゃんもツムギちゃんも待ってるわ」

 

 「…はい」

 

 そう言って俺はカナメさんに促されて席を立った。深く頭を下げて、席を立つ。カナメさんと一緒に部屋を出る前に見た、ランカさんとシェリルさんの顔はとても見てられるようなものじゃなかった。こっちの早乙女アルトがどっかで聞いてるならさっさと戻って来いってケツを蹴り上げてやるのに。




 はい、そんなわけでギャグにはならなかったSMSエンカウント編です。そりゃあね、無理だよね。そっくりな別人物とか詐欺だよ詐欺!

 で、現在どうしようかなってなってるのがSMS共闘ルートにするかウィンダミア宣戦布告ぐらいまで出して戦争が始まったらあぶねえからってフロンティアに戻らせるかです。

 共闘ルートにしたらどう考えてもウィンダミアがボッコボコにされて風の歌を歌っているハインツ陛下が壁に叩きつけられるくらいの歌パワーを発揮しそうなんですよねフロンティアの二人って。仮にSMSの二人がデルタ小隊入りしたらゴースト全部ミシェルさんが狙撃しちゃいそう。

 まあ適当に決めます。本編ほど頭を悩ませて書いてるわけではないのでサクサクかける息抜きみたいなイメージ。

 そんなわけで次回もよろしくお願いします


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フレンドリー・フロンティア

 「ね、アルトくんさっきの人たちって」

 

 「…話してくれてた、人たち?」

 

 「…そうだな。ここまで頭の中身と一致してたら流石におかしくなりそうだ。どうすっかね…」

 

 部屋に帰った俺を迎えてくれた二人、おずおずと聞かれたその言葉に俺は肯定の言葉返した。前の世界にいるときのこと、VB-6のペイントを書き換えるときにヒマリに聞かれたことがある。その女の子ってだれ?ってな。そんで、マクロスの設定ってことでフロンティアの話をした。ツムギはヒマリから聞いて教えてってことで細かいところまで話したんだけど主人公の設定が決まってないから仮称俺みたいな誤魔化し方で乗りきったんだけど…まさかこの世界で会うことになるとは思わなんだ。

 

 「調べてみると、ホントにすごい人たちなんだね。紹介してる記事を見ると、銀河を震わせた、なんて書いてあったし」

 

 「…でも、アルトが話してくれたのとは、ちょっと違う。あの人たちが探してる人、行方不明って」

 

 「そこなんだよな。現実と俺が考えてたことの違い、だといいんだけど。ちょっと俺も崩れそうだよ」

 

 俺が話したフロンティアはいわゆるテレビ版だ。だからミシェルさんは死んでいるし早乙女アルトは行方不明になっていないし、恋愛関係もはっきりとした決着はついていないと伝えている。だが、この世界ではミシェルさんは生き残り、早乙女アルトはずっと行方不明、近いのはサヨナラノツバサの終わり方なんだろうが、彼なしでシェリルさんは自力で起きれるものなのだろうか…?そもそも、俺が知ってるものとは違う。俺のフロンティアの知識は役に立たないかもしれない。

 

 「どっちにしろ、あの二人は話したキャラクターとは別人だ。ワルキューレと同等以上の凄い歌手、それだけは違いないけどな。ライオンもトライアングラーも…あのイベントで歌った歌はほとんどあの二人が歌っている歌のはずだ」

 

 「…うん、ヒットチャートに全部あった。びっくりした。でも、別にどうでもいい。こっちじゃアルトが作ってないってだけだから」

 

 「そうだね、きちんとあって歌えるかも!って思ったら、私たちだけがアルトくんがつくったってことを知ってれば十分だと思うの」

 

 「…ありがとな」

 

 俺からしたら俺はいい言い方をすればカバー、悪い言い方をすれば盗作をした身分なのでその言葉は嬉しくもあり、俺に罪を意識させるには十分だった。問題は山積みだし、フロンティアの人たちが来てしまったこと、俺の身体

の謎だって何にも解決してない。もしかしたら本当に俺は早乙女アルトで、フォールドしてきた本人を俺が乗っ取ったのかもしれないと考えると体を本人に返さなくてはいけない。だけど、そうすれば二人はどうなるのだろう。2度目の人生だ、待ってる人がいる他人を乗っ取ってまで生きたくはない、けど大切なものが出来ちゃった今、何をしたら正解なのか…答えって出てくれないもんなんだな。

 

 「そんなわけで!アルトくん!どーぞ?」

 

 「なにが?」

 

 唐突に明るい声を出したヒマリが俺のベッドの上で女の子座りをして腕を広げた。ぽっかーんとしてる俺に続けざまにヒマリが

 

 「なにって膝枕だよ~?もーアルトくんノリわる~~い!」

 

 「さっきと温度差がありすぎて風邪ひきそうだわ。何がどうしてそうなったをきちんと説明してくれ」

 

 「…ここきてから、アルト…タツヤさんが洗脳されてた時よりひどい顔してる。隠してても、バレバレ。アルトが私たちを見てくれてるように、私たちもアルトのこと、誰よりも見てるもん」

 

 「だから、私たちでアルトくんを笑顔にしたくって!ちゃんとスキンシップしたら…元気になってくれるかなって、思ったの」

 

 「あのなあ、その気持ちは大変うれしいんだけどさ…膝枕ってお前…」

 

 「まあまあそんなこと言わずに、ど~ぞ?」

 

 「いや、だから」

 

 「…マキナさんに効果ありと聞いた。とりあえずアルト、大人しく膝枕されて?次は私の番だから」

 

 ツムギにまあまあと押される。実際気持ちはありがたいんだけど…いや、折角だし甘えとこうか。二人がきっと真剣に考えてそう行動してるんだから、拒否したらもっとすごいこと言いだすかもしれないし。ツムギバレンタイン事件がアップグレードされてヒマリ&ツムギケイオス大暴走事故とかに進化されたら困る。抵抗をやめて、引っ張られるがままにヒマリの膝の上に後頭部を載せる。

 

 横になったせいなのか、安心感のせいなのか分からないけど、どっと抗いがたい眠気が襲ってきた。思えば今日は疲れた。会うはずもない人と会ったし、自分自身を見失いそうになったし、人をたくさん傷つけてしまったし。起きて考えを纏めないと、と思っても瞼が開いてくれない。意識も、薄くなってきた。

 

 「アルトくん、私とツムギちゃんは絶対にアルトくんの味方だから」

 

 「…アルトがどんな目にあったってずっと傍にいる。だから、ゆっくり休んで」

 

 意識が微睡に落ちる前、そんな声が聞こえた気がした。なんだかとても、安心できた。深い睡眠に落ちるのが、怖くなかった。

 

 

 

 

 

 

 「…んあ?」

 

 「…あ、起きた」

 

 「うわっツムギスマン!?何時間寝てたおれ!?」

 

 「ひーみつー!でもアルトくん、よく寝てたよ~?そんなに気持ちよかった?」

 

 「………」

 

 「…アルト、図星だ」

 

 「……もう勘弁してつかぁさい……」

 

 どうやらかなりの時間眠ってしまったらしい。眠る前の俺を一発殴り飛ばしてやりたい、なにその場の空気に流されて膝枕されてんだよ!いいか、確かに二人とは大切な幼馴染でパートナーではあるが恋愛関係とかそういうわけではないんだ!(力説)もっと鋼の意思をもって物事を遂行しないと…!どうやらもう日付は変わって朝方らしい、だから多分二人とも交代で俺に膝枕し続けてくれてたんだ。俺の横で寝っ転がるヒマリの揶揄いに真っ赤になった俺が黙りこくると俺を膝枕し続けるツムギがさらに俺の顔を覗き込んでそう言ってくる。思わず両手で顔を隠した俺を見る二人がケラケラと笑っている。もう、ダメ……お嫁にいけない。

 

 そんなことを思ってると、何となく精神的に軽くなってる感じがした。やっぱり、ため込んでたのかな俺。揶揄われてるから言わないけど、ありがとう。二人とも。

 

 

 

 

 「おはよーヒマヒマにツムツム!成功した?」

 

 「バッチリです!アルトくんったらそれはもうグッスリで!」

 

 「ナイスだよ~~~!アルアル!感想をどうぞ!」

 

 「こーら、追い詰めないの。アルト君、ちゃんと眠れたみたいでよかったわ。それと、これを返却します」

 

 「もう放っておいてください……ってアリスタ!?いいんですか?」

 

 「ええ、分析は終わったわ。これ以上の分析は成分採取とかしないとダメそうなの。変に傷つけたら約束と違うでしょ?十分にそれは証拠になったの」

 

 食堂での話、今日はワルキューレでのレッスンメインになるハズなのでデルタ小隊の基礎トレはお預けである。まあ音合わせというやつで、動きながら演奏したりとかそういうの。鎮圧ライブに適した動きをしつつ演奏するというなんか割と難しいことをやってるわけで。これが意外と楽しい。ガスジェットクラスターで飛びながらギターを鳴らしたりするのが超楽しい。まだワイヤー付きだけど。

 

 そして、マキナさんに捕まって色々聞きだされようとしているのを遮ってくれたのはいつも優しいカナメさん。彼女は俺のアリスタを取り出して返してくれる。そして、3つのペンダントを取り出した。

 

 「これは?」

 

 「いつも、そのまま持ち歩いてるみたいだから、なくさないようにと思って作ったの。こうやって、ほら!うん、似合うじゃない」

 

 ペンダントトップにアリスタをはめ込んだ後、保護用らしいガラスで蓋をして俺にかけてくれるカナメさん。どうやら素のまま持ち歩いてることを気にして保管保護用のペンダントを作ってくれたみたい。ヒマリもツムギもそれを受け取ってペンダントにアリスタをはめている。暗い緑色のアリスタがきらりと光る。案外悪くないかも。

 

 カナメさんにお礼を言って俺たちは食事を始めた。途中で合流したハヤテさんに昨日の事を心配されつつも、お揃いだな!とフォールドクォーツのペンダントを見せられてちょっと嬉しくなった。それはそうと、フロンティアの人たちはどうなったんだろう。帰っちゃったのかな?

 

 

 

 「ハァイ、よく眠れたかしら?」

 

 「お、おはよう!えっと、サオトメ君、かな?」

 

 「シェリルさんにランカさんがおる…!ご、ごり緊張する~~~!」

 

 「……」

 

 そんなことはなかった。思わず無言で固まってしまったが何時ものレッスン室に行った俺たちを待ち受けていたのはジャージ姿のシェリルさんとランカさん、そしていつものワルキューレの面々、フレイアさんの無邪気な感想をよそになんでいるのかと目を向けてしまう。察したらしいシェリルさんが

 

 「別に遊びに来たわけじゃないのよ?昨日貴方が部屋から出た後、大人の話をしたの。それで、暫くワルキューレのステージにゲストで立つことになったの」

 

 「えっと、サオトメ君の事は私たちもちゃんとわかったんだけど、ケイオスの人たちに迷惑をかけたから、提案してみたの」

 

 「それに、貴方が私たちのアルトじゃなくても、個人として仲良くするかどうかは別問題だわ。貴方が私たちの顔を見たくないっていうなら流石に考えるけどね」

 

 「そう、なんですね。確かにそうかもです。あとでサインください」

 

 行動力の化身か何かかこの人たち。予想してないわけじゃなかったけれど、実際にそうするか普通?一歩間違えばヤバかったのにその渦中の組織に居残るとかどんな胆力…そういえばこの人たち戦場で歌ってたんだったわ。多分この世界の歌手って基本胆力とかメンタルお化けなんだろうねきっと。とりあえず仲良くしたいという意思表示でサインを求めると快諾された。二人の視線は俺の後ろへいく。そうすると、俺の後ろに隠れる二人に気づいたらしく、シェリルさんとランカさんが近寄ってきた。

 

 「はじめましてね?私はシェリル・ノーム、シェリルでいいわ。一緒のステージに立つんだから仲良くして欲しいわね」

 

 「私はランカ・リー、ランカでいいよ。よろしくね!」

 

 「日本語…!?」

 

 「…どうして?」

 

 「あははっ、フロンティアだと日本語も使われてるんだ。びっくりした?」

 

 「フロンティアで暮らしていれば聞かない日はないもの。覚えちゃったわ」

 

 超絶びっくりした。二人がヒマリもツムギに話しかけた時に喋ったのは日本語、確かにフロンティアで日本語でメールするシーンなどはあったがまさかそんな感じになってるとは、ここも俺が知らないことだ。なんか嬉しい、何でもかんでも俺の頭の中が再現されてたら狂いそうになるけど、違いがあるたびになんだか安心する。

 

 「えっと、その、スズカゼ・ヒマリです。昨日、お二人の歌聞きました!もう、すごかったです!私じゃ追いつけないくらい!」

 

 「………イロハ・ツムギです、あう…アルト、ヘルプ」

 

 「昨日の威勢はどうしたんだお前…」

 

 「…電池が切れた」

 

 「充電しといてくれ」

 

 今日も立派に人見知りなツムギ、かなりぐいぐい来るシェリルさんとランカさんにたじたじなご様子、シェリルさんは「ふふ、可愛いじゃない」だって。音楽に関しては物怖じしないヒマリ、それはもうお二人を全力で褒めてた。歌詞は理解できなかったですけどとにかくとにかくすごいと思ったんです!って二人を褒めちぎってる。ランカさん嬉しそうに「ありがとう!」ってキラキラスマイル。キラッ☆のポージングがとってもお似合いですね。そしてシェリルさんはヒマリを見て

 

 「…なんだか他人の気がしないわ」

 

 「ふえええっ!?な、なんですかっ!?」

 

 ぎゅむっと熱烈なハグをした。確かになんだか二人とも顔のパーツが似てるような…?でも俺みたいなほぼ同一人物そっくりさんじゃなくて他人の空似、とか親戚で似てる人、みたいな感じだからあまりトラブル云々とかではなくなりそう。いつもはハグする側の癖にされる側になった途端にいつも通り真っ赤になって恥ずかしがるヒマリ、よしよしと可愛がられている。仲良くなれそうで安心した。

 

 「ツムギちゃん、恥ずかしがり屋さんなんだね。でも、仲良くしてくれると嬉しいな」

 

 「…ん、ランカさんの虹色クマクマ、聞いてて楽しかった」

 

 「ほんと?ふふ、歌ってあげようか?」

 

 「…いいの?」

 

 昨日、ハヤテさんとフレイアさんの所で二人の曲をたっぷりと聞いたらしい二人、どうやら元の曲を歌っていたとしてもシェリルさんとランカさんの歌は二人にとっては別物に映ったのかもしれない。俺としてはヒマリとツムギが歌う方も好きなんだけどな。だけど俺の事があっても、仲良くしようとしてくれる二人には頭が下がる思いだ。そして、当然なんだけどランカさんとシェリルさん、大人だ。もう完全に年上のお姉さんオーラが出てる。まあカナメさんより年上、もとい。お姉さんだから当然っちゃ当然だけど。

 

 

 「なんだったら、日本語で歌ってあげるわ。歌詞も一応あるし、歌えるわよ?」

 

 「えっ、ホントですか!?」

 

 「えっとね?フロンティアは日本文化を大事にしてるの。歌もそうなんだ」

 

 「…ちょっとフロンティア行ってみたいかも」

 

 なんか、姉妹見てる気分だ。それはともかくとして、レッスンしないと。頃合いを見計らっていたカナメさんの合図に気持ちを切り替える。それぞれの楽器を手に取ってチューニングを始めた俺たちを見るシェリルさんとランカさんの目がプロのものに変わる。そういえばオズマさんとミシェルさんはどうしてるんだろうか?じゃらんとなったギターの音に満足した俺はふとそんなことを考えるのだった。FIRE BOMBERの曲弾いたら釣れたりして、なーんて。




 なんか、難しいですね。いろいろ考えましたけど。どうやってもアルト君が曇ります。この作品のプロット考えた時に一番最初に思いついたのが救いようのないバッドエンドだったので引きずられてるのかもしれません。

 でも大丈夫です。今のまま進めばハッピーエンドになるはずっ!ちなみにフロンティアが日本文化云々は独自設定です。日本語自体は使われてるのは公式ですが。

 シェリルとランカが再現できねー…とりあえずDアニメストアで映画を無限ループしてきますわ。

 次回か次々回に大人たちの裏話書けたらいいな~~。あの別視点書いてて楽しかったです


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フロンティアな日々

 やばい、何がヤバいってランカさんとシェリルさんがヤバい。フロンティアの歌姫は伊達じゃなかった。8年たっても銀河チャートに居座り続ける実力はこけおどしでも何でもなく本物で、声量で5人いるワルキューレと張り合えるって何?歌も上手すぎて世界観がそのまま広がってくる。舞台装置も何もないのに歌だけで世界を作ってる。超やばい、これはバジュラもファンになりますわ。

 

 「…流石ね。生で聞くとよくわかるわ」

 

 「当然、私はシェリル・ノームなのよ?歌で負ける気なんて最初からないわ」

 

 「ランカさんやっぱ歌ごり上手いやんね!でっかるちゃ~!」

 

 「フレイアちゃんも上手だね!私の歌、ずっと聞いててくれたんだ?」

 

 「はいな!ウィンダミアには、最新の歌は入ってこんかったけど、これに入ってる曲はた~くさん聞いたんです!」

 

 美雲さんが他人の歌を素直に高評価するということにワルキューレの皆さんはかなり驚いてるようで、自信たっぷりに胸を張るシェリルさんにとっては当たり前の評価みたいだけど…ヒマリが結構やばい、もうワクワクのテカテカって感じで今にもベースを鳴らしそうな感じ。ほらヒマリ、気持ちはわかるけどステイステイ、え?いやだニャー?ほらあと少しで出番だから、そしたら思う存分スラップでも3連プルでもやっていいから。

 

 アカペラで歌ってもらったんだけど、その理由はレセプター数値の確認のため、らしい。というのも人類初であるフォールド細菌との共生を実現した二人だ、ケイオス側からしたら死ぬほどデータが欲しいだろうし、ただのレセプター保有者なんじゃなくて、フォールド細菌が腸に定着してネットワークを形成しているという特例中の特例がシェリルさんとランカさん、ランカさんは先天的に、シェリルさんは後天的にそうなったという話なのでヴァールに対抗したいワルキューレとしては喉から手がデフォールドするくらいに重要なデータなのだ。

 

 まあそれを目の前にして歌えないわ、演奏できないわってなってる俺たちにとっては拷問に等しいけどな!多分俺も結構、いやかなり我慢の限界が近づきつつある。どっかのガンプラバーでも言ったと思うけど何の拷問だオラァ!だめだ、平常心平常心、ちょっと落ち着いたせいでファン心が出てしまった。あとで金庫に仕舞って鍵をかけた後鍵を投げ捨てておかないと。怪しまれる行動はNG、これ大事。

 

 「すごい数値…美雲にも劣らないくらい…!」

 

 「生体フォールド波かぁ…バジュラたちと分かり合えたのに、今度はフォールド細菌が悪さをしてるなんて」

 

 「私がかかったV型感染症と同じくらいタチが悪いわね。私みたいな奇跡がそうポンポン起こるのなら苦労はないのだけど」

 

 「…歌でフォールド細菌をお腹に誘導できないかな?」

 

 なんかとんでもないことをお話しになってらっしゃる……!真面目な顔してとんでもないことを言ってるランカさん。つまり、全身の細胞に潜んでヴァールシンドロームを引き起こすフォールド細菌を再度別の方法でフォールドなりなんなりさせて感染者の腹でネットワークを築かせればヴァール無くなるんじゃね?ってことか。なんか実現性ありそうで怖い、だって歌で大概の事は何とかなるこの世界、生体フォールド波が実際効いてる以上、ワンチャンありそうなのがヤバいのだ。なんて~えへへって笑ってるランカさん、戦場帰りっていう感じの言葉がポンポン出てくる人だ。

 

 そんなこんなで進んでいくレッスン、ボイストレーニング、ダンス、フォーメーション、フレイアさんのレセプターはやっぱりオンにならないみたい。なんか、分かるんだよね。フレイアさんなんか気持ちが乗ってない感じする、ワルキューレに入りたいっていう目標は達成したけど入って何がしたいかが分からなくなったんだと思う。ウィンダミア風に言えば風が吹かないってことかな。

 

 「ごめんねアルト君たち!出番なんだけど大丈夫かしら?」

 

 「待ってました!やるよアルトくん、ツムギちゃん!」

 

 「く、食い気味だね…」

 

 「…ヒマリ、やる気満々、私も頑張らなくちゃ」

 

 「そうだな、俺も乗ってきた。今ならビルドストライク乗りこなせそう」

 

 「…レイジにすぐ取り返されちゃうよ」

 

 確かにその通りだけどそれは比喩表現なんですよツムギさん。あのくらいのじゃじゃ馬モビルスーツを操縦できるくらい指が動きそうって意味なんです。けっしてレイジとセイの機体を横取りしようとしてるわけじゃなくて…アハイ、演奏します。何弾けばええのん?え?ワルキューレの曲をシェリルさんとランカさんが歌うの?何それデカルチャー!あ、でもシェリルさんプロとしての目はかなり厳しいと思うから超がんばらないと、おしいくぞ!

 

 シェリルさんの挑発的な目に答えるため、俺は力強くギターをかき鳴らすのだった。なお、お二人の歌は俺たちの演奏をかき消しそうなくらい凄かったことをここに記しておく。これよりやべー熱気バサラって人がいるらしいが、そんな人がここに来たらレッスン室吹き飛ぶんじゃないだろうか。

 

 

 

 「意外とやるじゃない。確かにこれならステージを任せるのには十分なものだわ」

 

 「アルカトラズの事を思い出しちゃったな~。凄いね、3人とも。今度私とシェリルさんのライブでもバックバンドやらない?」

 

 「いいじゃない、こっちの事が片付いたら考えておいて。きっといいステージになると思うわ!」

 

 押されっぱなしだったレッスン、バチバチにフォールド波を浴びた俺たち3人に対してシェリルさんとランカさんはかなりの高評価をくれた。この二人にこんな高評価をもらえるのだとすれば俺たち結構自信持っていいってことでは?ほらみろヒマリどころかツムギですら目をキラキラさせてる。昨日歌を聞いた時にめちゃめちゃファンになったんだね二人とも。良かった~。

 

 あと、やっぱりフレイアさんのレセプターは最後までアクティブにはならなかった。レッスンにも身が入ってなかったようで美雲さんに叱責されてショボショボになってしまったフレイアさんにヒマリとツムギが慌てて近寄って行った。全力でフレイアさんを元気づけにかかる二人、気分転換しましょ!とご退出していった。なんかヒマリのやつフレイアさんと仲がいいんだよな~~年が近いからかな?二人も俺だけじゃなく周りにも目を向け始めて警戒を解いていったんだと思うと嬉しい。

 

 あとシェリルさんはリップサービスじゃなくてガチでそう思ってるらしくカナメさんに交渉を始めた。ランカさんもお願いしま~すと言っているが暫くは無理ですね。あと美雲さん?あげないわ、じゃないですけど?確かにラグナ星系を離れて遠くの星に行ってみたいなと思わないこともないんだけど、多分俺たちがこの星系に来たのは何か理由があるはずだ。それが何なのかは分からないし考えすぎなのが一番いいんだけどな。

 

 「あっ!思い出した!」

 

 「どうしたのランカちゃん?カナメの顔を見て何か引っかかってるみたいな顔してたのと関係ある?」

 

 「そうそう!カナメさん!だいぶ前に番組上の企画だけど共演したよね!?」

 

 「えっ!?はい、それはしましたけど…覚えていたんですかっ!?」

 

 「うん、今思い出したの!確か、新曲の宣伝のために熱湯風「わーーーー!!!わーわーわー!!!」」

 

 「なに!?カナカナ、ランカさんと共演してたの!?」

 

 「気になる、これは調査すべし」

 

 「面白そうじゃない、ぜひ聞かせてほしいわ」

 

 パっと思い出した!という顔をしたランカさんがカナメさんに話を振る。はぇー、共演してたんだカナメさん、でもなんでそんなに顔色が悪い上にあたふたしてるんだろ、と思ったら続く言葉に真っ赤になってランカさんを遮るように大声を出して口をふさいでしまった。だが時すでに遅し、ワルキューレメンバーは曲者ばっかりなのだ。ランカさんに群がって話を聞きたがっている。

 

 そういえば、ワルキューレに入る前のアイドル時代は黒歴史なんだっけ…?それでねー、と語りだすランカさんに耳まで真っ赤になった顔を手で覆い隠して崩れ落ちるカナメさん、私も色物系やったんだよ!って類似の件として語りだすのはニンジンのプロモーションの話、デビューの時に着ぐるみでー、という話で自分の話からそれてほっと一息ついてるカナメさん、なんか可愛いな。美人なのはそうだけど、ギャップがあるというか何というか。でも、あとで「カナメ・バッカニア 熱湯風呂」で検索しよっと。気になるし。

 

 

 

 「ふっ、ふっ、ふっ……」

 

 ところ変わって現在エリシオンの足元でございます、やってることは走り込み、当たり前の話なんだけど体力はあって困らないと思うんだ。だから毎日5キロくらいを自主練としてランニングしてる。ちなみにメッサーさんは出社前に10キロを30分で走ってから出社してくるらしい。化け物か何か?いや俺も慣れたら増やすつもりだけど。特に俺やワルキューレは鎮圧ライブにおいて動き回るのが必然だ。止まって演奏するにしてもいざという時動けませんではワルキューレもヒマリもツムギも守れないので基礎体力強化は毎日頑張るのだ!

 

 ラグナのからっとしつつも南国っぽいさわやかな暑さに包まれて汗だくになりつつ、グラウンドを何周もする。ちょっと離れたところでは他の小隊のパイロットの人たちが同じように自主練に励んでいる。毎日俺もここに来るから顔見知りになっている。俺が終わってぶっ倒れてると飲み物奢ってくれたりするいい人ばっかりだ。インドア派だけどな俺は!できるならバルキリースクラッチしたいぜ!今はできないけど!!!

 

 ペースを守りつつ完走、タイムは…聞かないでくれ。次は全力ダッシュ100mを10本やって今日は終わろう。とりあえずクールタイムと水分補給、しようと思ったら水を飲み切っていたことに気づく。もう一本余分に買ってこればよかったなあ、と思いつつ電子マネー入りの携帯端末を手に取って近くにある自販機を目指そうとヘロヘロで立ち上がる。と、体を起こした時点で後ろから首筋に冷たいものが当てられた

 

 「つめたっ!?」

 

 「自主練お疲れさん、頑張ってるな」

 

 「貴方は…」

 

 「ああ、自己紹介してなかったっけ。ミハエル・ブランだ。ミシェルでいい」

 

 そう、俺にドッキリを仕掛けたのは狙撃も女も百発百中の色男ことミシェルさんだった。近くにオズマさんはいない、多分ランカさんとシェリルさんはワルキューレと一緒だから護衛は不要となってミシェルさんの時間が空いたんだ、それで俺を見つけて構うことにしたらしい。まだパイロットとして前線にいることを選んだらしいミシェルさん、クラン・クランさんとはどうなったんだろう。くっついてる気配は、あるな。左手の薬指、シンプルだけどハイセンスな指輪がある。宝石は付いてないデザインで、指の動きを邪魔しない感じだ。

 

 「しかしまあ…ほんとにそっくりだな。瓜二つだ、お前には迷惑な話だけどな」

 

 「いえ、迷惑だとは思ってません。実のところ、申し訳ないって思ってます。変に似てるからこうやって空振りさせて、ぬか喜びさせてる」

 

 「考えすぎだ。勝手に早合点して勝手に来たのは俺たちだし、お前らだってフォールド事故じゃないか。変に自分を追い詰めるなよ、潰れちまうぞ」

 

 地べたに座り込む俺に買ってきたらしい水を渡して、俺の隣にドサッと腰を下ろすミシェルさん、大人って感じがするわ。前世でこんな雰囲気俺出せなかったけど。アニメだとおしゃれなカフェとか似合いそうだったのに今はシックなバーでも違和感なさそう。こりゃクランさん大変だな。結婚相手がクランさんと決まったわけではないけど。じー…っと眼鏡越しに俺を見るミシェルさん、なんだろうな?

 

 「なあ、お前どうして訓練してたんだ?バックバンドって聞いたけど、そんなパイロットみたいなことしなくてもいいだろ」

 

 「あれ、聞いてないんですか?鎮圧ライブにも出るからですよ?戦場に出るわけですから、生き残れるようにならないと」

 

 「おいおい、ケイオスってそこまで人不足なのか?冗談きついぜ…本気なのか?お前と一緒に来たっていうあの女の子たちもか?」

 

 「ええ、まあ。元の世界に戻りたいですから、ここにいられるようにすれば衣食住と帰れるチャンスを伺う時間が手に入ります。ヴァールシンドロームのど真ん中に落ちて来たんですから、帰る道もヴァールにあると思うんです」

 

 「確証はあるのかよ。戦場ってのはそう容易く出入りできるもんじゃないぞ」

 

 どうやら、俺たちがやることを中途半端にしか聞いてなかったらしいミシェルさんがかなり顔を厳しくしてそう問いただしてきた。そういえば、早乙女アルトがSMS入りするときかなり強硬に反対してたんだったなこの人。同じ顔の俺が戦場に赴くということで重ねてるのかもしれない、けどもう決めたことだしヴァールが発生した時に、アリスタをもっていけば何かが得られるかもしれない。動かなかったら腐るだけ、動いた方がいい。

 

 「確証なんてないですよ。でも、ここでじっとしてても何も変わらないですし、荷物を置いておけるほど営利企業は寛大ではないと思います。とにかく、一歩踏み出して飛んでみないと分からないんです」

 

 「……」

 

 「ミシェルさん?」

 

 「お前、見た目だけしか似てないのに、変なところであいつみたいなこと言うんだな…背伸びしたような事ばっか言った後に、飛ぶ…か」

 

 俺の答えを聞いたミシェルさんは、何かを思い出すように目を細めてしみじみとそう言った。きっと、俺にはわからないことだろうけど悪いことじゃないと思う。彼にとってのライバルで親友の事だ、俺が呼び水となって思い出すものがあったのかもしれないけど。

 

 「おい、お姫様、携帯貸してくれよ」

 

 「はい?まあいいですけど、忘れたんですか?あと、俺は男です」

 

 「知ってる、あだ名だよ。あ・だ・名。もうあいつのことは姫って呼べないからな、代わりに呼んでやるよ。あとそれ、俺の連絡先な。困ったら連絡しな、教えられることなら教えてやるよ。戦場での注意点とか、いい女の口説き方とかな」

 

 「…奥さんに怒られても知りませんよ」

 

 「おっと、こわいこわい。残念ながら今はあいつしか見えないんでね。残弾だけやるよ、それじゃな」

 

 なんだよ、アツアツじゃん。俺の支給品の端末に自分の連絡先を入れて俺に返したミシェルさんが冗談めかしてそう言う。お返しにと指輪を見ながらそう言い返すと、予想してたのかカウンターが帰ってきた。のろけに呆れた俺をよそに立ち上がった彼はひらひらと手を振って去っていった。俺は十分に休憩は取れたはずなので、そのままトレーニングを再開するのだった。結局何の用だったんだろう、ミシェルさん。




 ミシェルさん、アルト君を姫認定する。もう元の早乙女アルトはお姫様なんて呼べないからね、しょうがないね。ちなみにこれはアルト君が現在超未熟者なのでそう呼ばれてるのです。答えに至った早乙女アルトを見てる彼からしたらいらん重荷まで際限なく手を伸ばすアホ主人公は男には見えないでしょう。あとはクランといちゃついていてほしい(願望

 次回は別視点。フロンティアVSケイオス、子供たちをめぐってをお送りしとうございます。

 次回もよろしくお願いします


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インメルマンダンス

 「ハヤテ候補生!これよりデルタ小隊入団本試験を開始します!準備はよろしいですか?」

 

 「へーへー。いわれなくても分かってるぜミラージュ教官殿。さっさと始めようぜ、日が暮れちまう」

 

 「全くあなたはもう…!」

 

 どうも、ここ1週間頑張ったサオトメ・アルト12才、現場はマクロス・エリシオン艦橋よりお送りしております。いやマジでここ一週間すげえ忙しかったんだって。ハヤテさんのテストのために俺も協力したくってシミュレーターでハヤテさんと勝負を繰り返したりとか、ワルキューレのレッスンにお邪魔してギターかき鳴らしたりとか、ミシェルさんにからかわれたりとか。

 

 ハヤテさんってやっぱり才能あるんやなって思うの。それも飛行機、つまりファイターの状態は勿論目を見張るのはバトロイドの運用だ。ガウォークは若干苦手かもしれないけど、バトロイドに限って言えばかなりの力量を身に着けたはず、である。

 

 ここでなぜ疑問符が付くのかというと周りの人たちの技量がそれはもう高いから実際一般兵と比べてどうなのかっていうのがいまいち俺の中でピンとこないからだ。メッサーさんはいうに及ばず、アラドさんやミシェルさん、オズマさんとか。ミシェルさんヤバすぎんよ。一回やらせてもらったけど俺の射程外からの狙撃でほぼ完封されたもん。ビーム掠らせたけど、それしかできなかった。

 

 え?オズマさん?化け物だよあの人。なんで重いアーマードパックで俺より速いの?こっちはかするどころか反撃も許してくれなかった。ミサイルとロケットの嵐の中に紛れ込むガンポッドの弾丸、囮撃ちの見本のような形での敗北です。これには間違いなく白旗を上げるしかないね。ぜってえ8年前のバジュラ戦役の時より強くなってるよ。

 

 で、これはいかんと奮起して頑張ってる所です。ガンプラバトルをこっちの戦法に合わせる作業を続けてるんだけどこれがなかなか難しい。遊びと殺し合いの違いだからそれは違うんだけどこのままじゃダメなんだ。自分の命もヒマリとツムギも、ワルキューレだって守れやしない。足手まといになるのはごめんだ。

 

 「ハヤテさん」

 

 「アルトか。いっちょ一発クリアしてくるから、しっかり見とけ」

 

 「はい!あの、ハヤテさん。自分の得意を活かしてくださいね、同じようにする必要がある場合とない場合があって今は」

 

 「そうじゃないってんだろ?分かってんだよ、俺は俺のやり方で、だ。行ってくるぜ」

 

 「頑張ってください!」

 

 ハヤテさんは自信に満ち溢れた顔つきでヘルメットを片手に抱えて俺の頭をポンと叩くと艦橋を出ていった。複雑な顔をしたミラージュさんがそれに続く。俺の知ってるマクロスΔではこの時点のハヤテさんは覚悟も定まらず飛びたいだけの自由人でミラージュさんからすればちゃらんぽらんの存在だった。

 

 だけど今のハヤテさんはそれなりにまじめに課題に取り組み、きちんと仕事をしてある程度は飛行訓練時にも言うことを聞いている。問題児ではあるが即刻クビにしないといけないというほどの存在ではなくなってる上に、メキメキと実力を上げてきている。

 

 それはそうかもしれない。既にオズマさんにミシェルさんというメッサーさんを超えるキャリアの大ベテランが訓練に加わっていくら飛びたいからとはいえ戦場を駆ける以上はと心得を説いているのだ。本物の大戦争を生き抜いた人物の教えを一笑に伏すほどハヤテさんは愚かではなかったということ。

 

 つまりこの時点でハヤテさんは戦う気はないのではなく、戦うことをある程度念頭に置いて訓練している。強くなるわけだ。

 

 「アルト、お前はどう見る?」

 

 「勝ってほしいのは、ハヤテさんです。ですけどミラージュさんは甘くないと思います。それでも、きっとハヤテさんが勝ちます」

 

 「言い切るねえお姫様。根拠の一つでもあるのか?」

 

 「ないですけど。信じてます。ただそれだけです」

 

 ワルキューレのレッスンに行っているヒマリとツムギは恐らくレッスン室でテストの様子を見るだろう。ランカさんやシェリルさんも一緒に。アラドさんのスルメを咥えながらの質問にそう答えた俺に対して揶揄うように片目を閉じたミシェルさんがそう言ってくる。根拠なんてないし、原作の知識によってこうなるなんて口が裂けても言えるか。それにもう原作もクソもないよ、すでに色々変わってんだもん。ここは俺にとって現実なんだ。負けるかもしれない、だけど勝てると信じる。それだけだ。

 

 「いいこと言うねぇ。こりゃ一本取られたよ。それじゃ、お手並み拝見といこうか」

 

 「バトロイドの技術に関していやタマゴ野郎にしちゃやる方だがな。バルキリーは可変戦闘機だ。ファイターなくしてバトロイドはない、どうなるか」

 

 『デルタ4及びハヤテ候補生、搭乗完了しました。離陸及び試験開始の許可を求めます』

 

 「オーライ、では試験を始めるとしよう。ハヤテ候補生、時間内にミラージュに有効打を与えた場合合格とする。いくら被弾しようが構わんがそれを利用した特攻などは無効だ。いいな?」

 

 『了解。そんなことしねーけどな』

 

 「いい心がけだ。では離陸後所定の位置まで飛行ののち開始とする。デルタ4から離陸しろ」

 

 『ウーラ・サー。デルタ4、アイハブコントロール。発進します』

 

 2機のVF-1EXが離陸していく。ハヤテさんも危なげなく空を飛んでいる、これは搭載されている補助AIが作動しているからだろうがハヤテさんは自分の飛行になにか別のものが介入することをひどく嫌う、オールマニュアルでの操作をしたいと常々言って墜落すること数度、現状まだまだといった感じだが、このテストではどうする気なのだろう。

 

 

 

 「では、試験を開始する。双方、所定の位置へ。ブザーが鳴ったらスタートだ」

 

 『『了解!』』

 

 アーネストさんがデバイスを弄りカウントダウンが始まる。ブザーが鳴った瞬間、同時に動き出す二人。ハヤテさんの青いVF-1EXとミラージュさんの赤いVF-1EXによるドッグファイト。やはり一日の長であるミラージュさんの方が扱いが上手い。ドッグファイトの基本は後ろの取り合いになるのだがやはりあっさりと振り切ってハヤテさんの背後をとる。

 

 ガンポッドより発射されるペイント弾、ハヤテさんは何とか機体を左に傾けて躱す。その状態のままでガウォークになり自由になった射角を利用して腕を後ろに向けてガンポッドを乱射する。ミサイルはない、デルタ小隊の機体であるジークフリードにはシグナスが乗るし市街戦が主になるので爆発物はご法度だからだ。

 

 『この程度…!』

 

 『だろうな!じゃあこいつはどうだ!』

 

 大きく機体を振ってハヤテさんの射撃を躱したミラージュさんのスキをついて後ろを向いたハヤテさんのVF-1EXがきちんと狙いをつけてガンポッドを撃つ。それもバレルロールで躱すミラージュさん、回転しながら撃った弾がハヤテさんの機体の翼に着弾する。

 

 『クソッ!これじゃダメか!当たり前だな!』

 

 『ハヤテ候補生!まだやりますか!?』

 

 『当たり前のこと聞いてんじゃねえってうおっ!?』

 

 もはや喧嘩のような感じの通信を聞いてアラドさんがクックッと喉を鳴らした。こんな時にも二人は平常運転のようだ。試験は続く、お互いにファイターに変形してのドッグファイト、今度背後をとったのはハヤテさんだ。打ち込まれる射撃を右へ左へひらりひらりと躱すミラージュさんにハヤテさんの焦りは募っていく。

 

 『ちっ!やっぱり補助が邪魔だっ…!』

 

 「おいおい、まさか切る気か?何回失敗してると思ってるんだ。確かにありゃ楽しいが、俺でも戦場では補助はつける。生き残るためにな」

 

 顎に手を当てて面白そうにテストの様子を見ていたオズマさんが顎髭を撫でつけながらそう漏らした。既に試験時間の3分の1は過ぎている。補助AIなしのマニュアル飛行を楽しいと言い切るオズマさんにうへえという顔をしているミシェルさん。これもしかして何回かやらかしてるヤツ?それともオズマさんがヤバすぎてAIの先を行くイサムさんとかガルドさんとかと同じ現象が起きてるだけ?

 

 『これで終わりですっ!ハヤテ候補生!』

 

 『んなろっ!終われるかぁ!』

 

 必殺の射撃、それに対してハヤテさんが選択したのはバトロイドへの変形、限界ギリギリのGを許容しつつ自由になった足を動かしての進路変更、そう、それですよハヤテさん!貴方が一番得意なのはファイターでもガウォークでもなくバトロイド!生き残る手段なんて何でもいいんだ。だってそれが戦場における勝ちなのだから。

 

 発射されるガンポッド、ハヤテさんは通信の向こうで獰猛に歯をむき出して笑って、ヘルメットを脱いだ。同時に補助AIも切っていたらしく姿勢の制御を失ったVF-1EXが自由落下でミラージュさんの必殺の弾丸を躱す。そしてそのままラグナの海へ落下していく。

 

 『ハヤテ候補生!!機体を立て直してください!ハヤテ候補生!』

 

 「だめかっ…!」

 

 「案外、見どころあるかもなあいつ」

 

 チャックさんが両手を握ってハラハラしてるのを横目に面白そうに目を細めたミシェルさんがそう漏らす。狙いを悟ったのだろう、俺も多分わかった。アラドさんやオズマさんも同様。チャックさんも遅れて気づく。多分狙ってこうやったんだ。その証拠にハヤテさんの目は死んでない、どころか生き生きとし始める。

 

 『この歌…!風が吹いたぁ!』

 

 『なっ!?』

 

 歌、俺たちには聞こえないそれがハヤテさんにはおそらく聞こえている。VF-1EXのゴーグルに光が灯ったように見えた。バトロイドのまま翼を広げて揚力を確保し、細かく足のエンジンを噴射して体勢を立て直す。それを見たミラージュさんが顔を引き締め容赦なくガンポッドを撃ち込む。

 

 『いい感じだ!いける!』

 

 『なっ!?』

 

 「へえ、やるなあいつ」

 

 空中でステップを踏むように小刻みに足を動かして回避するハヤテさん、教科書では絶対にやらないその動きにミラージュさんは面食らってしまう。そこで足を下に向けたハヤテさんは一気に急上昇し、ミラージュさんにガンポッドを浴びせる。

 

 『そんなふざけた動きで!』

 

 『今アンタを躱せればふざけようが何だろうがいいんだよ!俺はここで飛びたいんだ!』

 

 『なら私に当てなさい!』

 

 『言われなくても!』

 

 ガウォークで躱したミラージュさんを執拗に追うバトロイドのハヤテさん、その動きはかなり荒っぽいがそれでもミラージュさんを追うには十分なもので、ガウォークのバックで逃げるミラージュさんの逃げ場を読んでその先にガンポッドを置く。先読みの技術の片鱗、それを見せたハヤテさんに対してひゅうっとミシェルさんが口笛を吹いた。

 

 「こりゃ、合格だな」

 

 ぽつりとそう漏らしたアラドさんの言葉を肯定するように、ガンポッドの一発が、ミラージュさんのキャノピーを直撃する。直後にハヤテさんのガンポッドが弾切れになる。だが、合格は合格、チャックさんがよっしゃあ!と腕を振り上げ。アラドさんは嬉しそうにスルメを噛み千切った。

 

 「お姫様の言うとおりになったわけだな」

 

 「あの、それ辞めません?」

 

 「なんで?」

 

 「見ての通り姫って柄じゃないです」

 

 「いやだね」

 

 「ええ~~」

 

 俺のささやかな抗議をさらりと受け流したミシェルさん。ぶーぶーと文句を言ってみるが変えるつもりはないらしく余裕の笑顔で微笑まれた。は、腹立つ~~!!!オズマさんもニヤニヤするばかりで助けてくれないし訂正してくれないし。玩具にされてるぞ俺…!

 

 『そこまでだ。アルト候補生、準備しろ』

 

 「え、あ!はい!」

 

 唐突な通信に俺は指ぬきのグローブを慌ててつける。通信相手はメッサーさん、スーパーゴーストを両翼にくっつけたジークフリードで先に試験空域に待機していたのだ。そして今から行うのはテスト後の奇襲である、それに乗じて俺も実機を動かしてやってみろという感じなのだ。

 

 レイナさんマキナさんお手製の手袋型操作デバイスをエリシオンに繋ぎ、そこからフォールド通信でメッサーさんのジークフリードに繋ぐ。それを確認したメッサーさんがジークフリードからゴーストを切り離した。

 

 『フォーメーションはダブル、攻撃はせずに俺の後ろから離れるな』

 

 「了解!」

 

 『おわっ!メッサー!?何しやがる!?』

 

 『一度勝ったぐらいで気を抜くなということだ。一機撃墜しても次が来る、戦場で落ちる前に俺がここで叩きなおしてやる』

 

 『クソッ!機体差が…!』

 

 『そんなものは言い訳にならん』

 

 そうしてメッサーさんに瞬く間にペイントまみれにされていくハヤテさんのVF-1EX。その光景はメッサーさんが弾切れし、俺がメッサーさんの飛行に必死に食らいついて、そしてハヤテさんの機体が一色になるまで続くのだった。




えー、長い間お待たせしました。復活とまではいきませんが時間ができたので番組内容を変更しつつお届けしております。

 流石にストーリー進めないとエタると思ったので別視点は封印し本編をさせてもらいました。

 ハヤテがバトロイドが得意という設定をうまく拾えたかどうかは分かりませんが、作者的には満足してます。

 ではまた次回にお会いしましょう。感想評価よろしくお願いします。


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デビューの準備

 「そんなわけで!デビューステージの日取りが決まりました!なので一曲用意しといてね!」

 

 「ちょっと待ってください」

 

 「え?私何か変なこと言ったかしら?」

 

 「はい、主に後半に」

 

 ハヤテさんが正式にデルタ小隊に所属することが決定し、ついでと言わんばかりに俺も所属することが決まって3日ほど経った。いつも通りお眠のヒマリを起こして背負ってツムギと一緒に食堂に行ってご飯を食べていると軽い足取りで俺たちの前にやってきて一緒に朝食を食べていたカナメさんが思い出したようにそう言った。

 

 「…デビューステージ、決まった?」

 

 「そうよ。フレイアと貴方たち3人のデビューにシェリルさんとランカさんコラボの超豪華ワクチンライブ!だから、貴方たちも歌ってね?」

 

 「そこです、そこ。俺たちステージバンドでしょ?裏方ですよ裏方。ワルキューレファンが望んでることじゃないですよ」

 

 なぜだから、なのか分からないけど歌えと言いなすったかこの美人のお姉さんは。半分寝ながら朝食を食べている話を聞いてないヒマリはともかくとしてがっつり話を聞いたツムギと俺は首をかしげる。俺たちに歌えって?ははは面白い冗談ですね?え?冗談じゃないって?あらやだ本当に真剣な顔ですやん。

 

 「…なんで?私たちが歌わないとダメなの?」

 

 「そーですよ。なんか理由あります?」

 

 「あるんです。まず一つ、私たちワルキューレ、シェリルさんとランカさん、そして貴方たち。3つの歌でのデータ取りね。比較データなんてなかなか取れないから貴重なの」

 

 なるほど、フォールドレセプターの検証のためなのか。まあそれなら納得と言えば納得か。だって現地のデータなんだから危険な鎮圧ライブもしくはワクチンライブのどっちかでしか取れないもんね。それなら安全なワクチンライブでとっとこうぜ!っていうのは当たり前か。しかも貴重な別タイプの生体フォールド波を発することが出来るランカさんにシェリルさんと一緒。これほど好条件なことがあるだろうか?いやない。

 

 「それともう一つは…こちらをご覧くださ~~い」

 

 「えーっと…なんじゃこりゃああああ!?」

 

 「へうっ!?あ、アルトくんツムギちゃんおはよ~。カナメさんもおはようございます~」

 

 「…おはよ、ヒマリ………これほんとに?」

 

 「おはよう、ヒマリちゃん。本当よ~。だから、歌ってね?」

 

 ご覧くださ~いなんて冗談めかしたカナメさんがホログラムの画面を空間に投影して俺たちの方に見せてくる。それを一通り眺めた俺から飛び出した絶叫にヒマリが素っ頓狂な声を上げて飛び起きた。暢気に挨拶するヒマリに挨拶を返して衝撃の事実に向き直る。

 

 そこにあったのはワルキューレのブログ、その中で練習風景の動画がアップロードされていてその中の一つに俺たち3人が楽器を演奏しながら歌っている動画があったのだ。うっそーいつのまに~、で思いっきり日本語でガンダムの歌を歌っていた俺たちの動画のコメント欄は曲の詳細を知りたがるものとか、デビューしたら歌ってくれとかそういうので埋め尽くされていた。

 

 一応フレイアさんと同じでバックバンドとして俺たちのことはすでに周知されているが恐ろしきはワルキューレの人気、金魚の糞のようなものである俺らにも注目が集まっているのである。だからってバックバンドに歌を求め…思いっきり歌ってる動画をアップロードされたから歌えるって思われたんですねクソァ!

 

 「え?なになに?どうしたのアルトくん」

 

 「デビューステージ決まったからそこで一曲歌えってハナシ」

 

 「歌えるのっ!?ほんとに!?いいんですかカナメさん!?」

 

 「…やっぱり食いついた」

 

 「もっちろん!是非ともお願いしたいわ!まあ本当に無理だったら断ってくれてもいいわよ?」

 

 「いや、やりますけど。ヒマリがこうなったら俺に選択肢ないです」

 

 「…右に同じ」

 

 「よーし!アルトくんツムギちゃん!頑張ろうね!」

 

 「ありがとう!それじゃ、選曲はお任せね!貴方たちの世界の曲でも私たちや他のグループのカバーでも何でも構わないわ!よろしくね?」

 

 「「「はいっ!」」」

 

 というわけで俺たちのデビューライブはますます失敗するわけには行かなくなったのであった。でも正直ちょっとワクワクしてるよ、ここだけの話。

 

 

 

 

 

 

 「第一回チキチキ!デビューライブの曲を決めよう会議~~~!!!」

 

 「…いえーい」「「いえーい!!」」

 

 「ヒマリ…で、お二人はなんでこちらに?」

 

 「面白そうだもの」

 

 「困ったらアドバイスできるかな~って。一応、先輩だしお姉さんだから!」

 

 ヒマリがマイクのように握ったペンケースを口元に当てて拳を振り上げながら思いっきりテンションを上げてのコールに便乗したツムギが両手を上げる。俺は暢気な二人にクスッと来たりしたがとりあえず同じく便乗コールをしたなぜかいる二人、ランカさんにシェリルさんに突っ込むと野次馬デースというステキな答えが返ってきた。

 

 シェリルさんは完全に居座るつもりのようでツムギを膝の上に乗っけてふふんと笑ってるし、何でも聞いてね~とほんわか笑いながらホワイトボードマーカーを手にしているランカさんも同様。というか呼んでないのになんでいるの?え?たまたま食堂で話を聞いた?そうなんだ…

 

 「で、まじめな話何がいいと思う?俺的にはキララさんのガンプラ☆ワールドとかよさそうだけど」

 

 「うーん…私たちの世界ならともかくこっちだとガンプラないから意味不明になっちゃうんじゃない?」

 

 「…ガンダムさん音頭」

 

 「ネタに走ると一生ついてくるからやめておこうかツムギさんよ」

 

 「私フリージア歌いたい!」

 

 「うーん、ステージに合うか?かなり曲調ゆっくりだしいい曲だけど楽しい気分になると思う?」

 

 「…私たちしかわかんないミームもあるし、折角なら盛り上がる曲がいいの、かも?」

 

 「じゃあ歌ってみればいいじゃない!案ずるより産むがやすし、だったかしら?やってみてからどれがいいか決めてみればいいのよ!」

 

 煮詰まった俺たちを見かねたのかぱちんと手を叩きながらシェリルさんが提案してくる。むむ、正論と言えば正論なんだけどとりあえずこれだけ聞いておこう。

 

 「シェリルさんだったらどうやって決めます?」

 

 「そんなの私が歌いたい曲を歌うに決まってるじゃない。私が相手に合わせるのはナンセンスだわ」

 

 「あはは…シェリルさんはそうだけど私もおんなじ、かな?自分が楽しくないと聞いてくれるお客さんも楽しくないからね」

 

 「なんか、予想通りですね…そんなこと言うと思いました、なんとなく」

 

 「…それじゃ、どの曲がいいか一通り聞いてもらって意見欲しい」

 

 「お願いしてもいいですか?シェリルさん、ランカさん!」

 

 「「もっちろん!」」

 

 そんなわけでさっそく携帯の音楽フォルダからヒマリ所望のフリージアを流す。歌うのはともかくとしてどういう曲なのか分かれば十分なはずだ。あーやっぱいい曲だよね~

 

 

 

 

 

 「うーん、やっぱりぴんと来ないかな」

 

 「…ランカさん的にはどうなのかな」

 

 「そうだね~。どれもステキな曲だけど3人がピタッとこれだ!って思うものを見つけたほうがいいかも?」

 

 「そうね、私だと「嵐の中で輝いて」「SUNRISE」「STAND UP TO THE VICTORY」あたりが好みかしら。今回の場合アップテンポの曲中心で行くみたいだから気にするなら揃えるのもありね」

 

 とりあえず一通り流し終えての感想がそれである。何となくあれじゃないコレジャナイってなってて俺たちの中でうまく足並みがそろわないのだ。それで難しい顔で現在黙り込んでるヒマリがどう思ってるかなんだが…その小骨が喉に引っかかって上手く出てこないみたいな顔は何だろうか。

 

 「あーーーーっ!!!なんで忘れてたんだろっ!」

 

 「どうした急に大声上げて」

 

 「ほらアルトくん!ガンプラバトル世界選手権のテーマソング!今年のやつぴったりじゃない!?」

 

 「…それだっ!ナイスヒマリ!」

 

 「…忘れてた。そっちもありかも」

 

 ぱっと顔を輝かせたヒマリがそう言ってくる。そうだよこれだ。実際俺たちにぴったりじゃないか!?「wimp ft. Lil' Fang 」!これならアップテンポだし俺たち3人で歌っても違和感ない!これだ!これにしよう!ついでに去年の「ニブンノイチ」も候補入りだ!そうと決まれば!

 

 「お二人とも!最終候補が二つできたんで今から歌います!どっちがいいか聞き比べてください!」

 

 「そうね、とても気になる話じゃない」

 

 「美雲さん!?いつからそこに!?」

 

 「第一回チキチキ!のあたりからいたわ」

 

 「ほぼ最初からじゃないですかどこに隠れてたんですか!?」

 

 「ふふっ、秘密よ」

 

 いつの間にか俺の後ろに現れて俺の頭の上に顎を載せた美雲さんがとても楽しそうにそうおっしゃった。マジでいつの間にいらっしゃったん?最初から?あとするっと抱き着こうとしないで。ヒマリの目が痛い。悲しそうな顔しないで欲しい、俺は悪くないから。多分。

 

 そんなわけで美雲さんを一行に加えた俺たちは部屋を出てレッスンルームまで行くことにしたのだった。翌日、決めた曲と仔細をカナメさんに報告すると「なんで呼んでくれなかったの!?ねえ美雲?何で私呼ばれなかったのかしら?」「それは貴方が仕事をしていたからよ。私をオフにしたのも貴方じゃない」っていうやり取りのあとしょんぼりしてしまったので謝りまくったのである。ちょうどいたメッサーさんの視線がクッソ痛かったのを覚えている。あとそのあとの訓練がみょーにきつかったりした。

 

 「あの、なんか怒ってます?メッサーさん?」

 

 「喋る余裕があるなら、脚を動かせ。3周追加だ」

 

 「はいっ!」

 

 やっぱり怒ってるでしょメッサーさん。

 

 

 

 

 『えー本日はお日柄もよく…』

 

 「フレイアちゃんとハヤテ!それにチビスケ3人の正式採用を祝って!かんぱぁぁい!!!」

 

 『あっおい!お前ら!』

 

 「「「「「「乾杯!」」」」」」

 

 ところ変わってここは裸喰娘娘、お祭り好きなケイオスの社員の皆さんがハヤテさんとフレイアさん、それとおまけで俺たちの歓迎会をもう一度開いてくれたのだ。アーネストさんがマイクを握って挨拶をしようとするのを誰かが遮って乾杯し、やんややんやと始まってしまったパーティーにアーネストさんが頭を抱えている。

 

 「おおっ!?アルトすごいっ!?」

 

 「アルトお兄ちゃんすっごーいっ!ねえねえ次はウミネコ!」

 

 「ほいさっさ~」

 

 ちなみに俺は早々に満腹になったのでちょい分厚目の紙を使っていろんなものを作っている。これがチャックさんのご兄弟たちに大受けである。プラモフルスクラッチより断然楽だね。ハサミ一本あればできるし。えーっとウミネコウミネコ…あのドラウミネコじゃあかんな。うーん、よしこれで行こう!こことここ塗って、折って切ってはめ込んで~はい完成!三毛猫っぽいウミネコである。はいエリザベスちゃんどーぞ。

 

 「……今アルト何秒で作ったんだ?」

 

 「1分ジャストです。とんでもない早業ですね」

 

 「どうなってんだ。途中の動きが理解できなかったんだが」

 

 「かわいい~~!アルトお兄ちゃんありがと~~!」

 

 「いいってことよ~。他の人も作れる範囲でリクエストお受けしますよ~!」

 

 プラモのフルスクラッチならいざ知らすペーパークラフトなら大幅に時間を短縮することが出来る。俺の場合フルスクラッチする前段階で変形機構の確認のためとかプロポーションの確認のためとかで一回紙で作ることが多いので慣れたもんです。流石に変形機構込みでバルキリー作れって言われたら1時間くらい時間欲しいけど。あとミラージュさんとハヤテさんはこそこそ内緒話してどうしたんだろ?

 

 「よっしゃ、チャックさんのリクエストを聞いてくれ!」

 

 「はい!チャックさんどうぞ!」

 

 「あそこのキレイどころを一つ…」

 

 「他の人いますか~?」

 

 「ちょっと~~~!?」

 

 「せめて被写体の許可を取ってください。時間かかりますし」

 

 意気揚々とやってきたチャックさんのリクエストは却下だ。指をさされたオペレーター娘3人の嫌そうな顔よ。え?作るだけならいいけどチャックさんに渡すな?むしろ作ってみて欲しい?お、おう…まあやりますけど…。20分後、俺が作った紙製フィギュアを前にしたケイオス社員から拍手をもらったのはここだけの話。

 

 

 「アルアル~」

 

 「はい何ですかマキナさん」

 

 「今度こそガンプラバトルの続きを見せて欲しくって!」

 

 「あ、いいですよ。はいどうぞ」

 

 「ドッキング~!!」

 

 マキナさん製充電器でマックスまで充電してある俺のスマートフォンにマキナさんがコネクタを繋いで途中で水入りになっちゃったチョマーさんとのガンプラバトルが最初から流れ出した。仮想画面を前にめいめい好きな飲み物をもって集まったデルタ小隊はじめα小隊やγ小隊の人たちがガンプラバトルを前にしてここはどうだここの動きはどうだだの戦術的な話をし始めてちょっと緊張した。

 

 この前途中で切れたスキュラの中を突き進むヅダがダイダロスアタックをぶち込んだ瞬間歓声が上がり、いや面白かっただのなんだの言われた。なんであんなことしたんだ?って聞かれたけど細かく説明するのがめんどくさかったので一番楽しそうだったからです!で通した。PS装甲がどうのって言っても通じないだろうし。

 

 終わったタイミングで荷物の中からヅダを持ってきていたらしいツムギがそれを取り出してテーブルに置くとすぐさま反応したマキナさんが様々な角度から観察を始めたり可動域の説明から武装から何から何まで色々聞かれまくったけど楽しかったのでオッケーです。メッサーさんがアラドさんとガンプラバトルをクソ真面目に考察していたのに噴きだしそうになったのは秘密だ!

 




 暫くちょっと巻きで進めていきたいと思います。

 次回でようやく原作の3話くらいに行けますかね。ではでは、次回でお会いしましょう!

 感想評価よろしくお願いします


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トライ編
母校に帰ると懐かしい気持ちになる


 「おお~~!かわんなーい!」

 

 「…懐かしい。通ってた時のまま」

 

 「変わんねーな、間違えて下駄箱行きそうだわ。来客用の窓口どっちだったっけ」

 

 どうも、サオトメ・アルト20才、職業は自営業兼プラモビルダー、最近幼馴染二人のアタックに陥落しかけてる気がする転生者です。どうぞよろしゅう。ちゃうねん、もう二人の気持ちには気づいてるし俺も責任を取るべきだと思うとるんやが二人いるねん、どっちか選ばんといかんと思っとったら二人して纏めてもらってください言われて宇宙猫になったんです。それでええんか、世間は許さない気がするんやが。なお外堀は全部埋めてある模様。いつの間にオッケー出してんですかマイファーザーマイマザー。二人の両親もいいよーって軽くない?なので責任とれるようになったら改めて背負わせてくれってお願いした。尻に敷かれそうな気がする。

 

 出すところに出したら殺されそうなあとは俺が墓穴を掘るのを待つばかりの現在の状況はともかくとして、今俺と幼馴染のヒマリとツムギは3人そろって6年間通った聖鳳学園にやってきてます。目的は7年前俺と初めてガンプラバトルをしたナイスガイ、ラルさんに呼び出されたからです。何でも、ガンプラバトル部の練習に付き合ってやってほしいという話なわけで。

 

 なんでも詳しく聞くと現在聖鳳学園には総合的に模型を扱う模型部とガンプラバトルを主軸に活動をするバトル部の二つのプラモ系の部活があって、大多数は模型部に所属しておりバトル部は風前の灯火なのだそうだ。まあ模型部に入る人たちの大多数の理由が3代目メイジン・カワグチが部長を務めていたからというものなのでしょうがないっちゃしょうがない。人気だもんあの人。今インドにいるらしいけど帰ったら飲みに行かないかって誘われてるし、ストレスもあるんじゃないかな?お酒弱いのに。

 

 んで打って変わってバトル部の方、人気がない。なんでかって言ったら模型部が強いから。バトルが強いんじゃなくて人数が多いほうが人をたくさん引っ張れるってだけの話。あとバトル部の目的、模型部はバトルはあくまでサブで模型を作る方を主眼に置いているらしいがバトル部は「全国大会優勝」が最終目標なのでバトル漬けになるのが分かってるし大会にも出る。要は意識高いって勘違いされてるわけだ。悲しいことに。

 

 でもなー、悪いんだけど俺たちじゃあ役に立てない気がするんだけど。バトル部が出場を目指す大会はガンプラバトル世界選手権だ。レギュレーションでガンプラと決まっているわけで俺たちがやっている無差別級じゃないんだよね。ラルさんにもそれは確認とったんだけどそれでもいいから来てくれってお願いされたので来ました。

 

 うーん、俺だけじゃダメやったんやろうか。自営業で基本空いてる(忙しくないとは言ってない)俺はともかく人気歌手のヒマリや締め切りに追われる作家のツムギまで呼び出してるし、ええんかお前らラルさん優先して仕事ほっぽり出して。え?ラルさんにお世話になったから当然?そりゃごもっとも。二人が無理してないならそれでいいけどさ。

 

 「あら?まあまあまあ!アルト君にヒマリさん、ツムギさんまで!どうしたの?学校まで来て!」

 

 「あ!マナ先生!お久しぶりでーす」

 

 「…マナ先生、こんにちは」

 

 「あ、どうも先生。ちょっとバトル部の方に呼ばれまして。お元気そうで何よりです」

 

 来客用の玄関で受付を済ませた俺たちが校舎の中に入るとちょうど横切ろうとした職員室の中から俺たちが高校3年生の時にお世話になった担任の先生が出てきた。彼女はパタパタと俺たちの方へやってきて嬉しそうに挨拶してくれた。ご年配の先生ではあるがかなりお世話になったので懐かしい気持ちになる。ツムギとかめちゃめちゃ懐いてたからな、優しい良い先生だよ。

 

 「まあ、バトル部に?模型部の方じゃないのね。じゃあ、部室棟に行くのね?ふふ、有名人が戻ってきちゃったわ~、囲まれないように気を付けてね」

 

 「…マナ先生、会えてうれしい。大丈夫、囲まれたらヒマリ置いて逃げる」

 

 「ひどいツムギちゃん!」

 

 「確かに一番有名人だしな、チャフみたいなもんか」

 

 「アルトくんまで!」

 

 「…冗談、ちゃんと付き合う」

 

 「ふふ、相変わらず仲良しね~。後輩に優しくしてあげるのよ?バトルになったら3人とも容赦ないんだもの、みんな泣いちゃうわ。じゃあ、会えてうれしかったわ。元気で頑張ってね」

 

 そう言ってマナ先生はぽんぽんぽんと俺たちの頭を軽く撫でて階段を上って去っていった。なっつかしーな、褒められるたびにこれしてきたんだよねマナ先生。子ども扱いされてる感じがして苦手な人が多かったみたいだけど。ノスタルジーな気分になったわ。さあそんなわけで部活棟に行きますか!

 

 「でもまだ集合時間には早いよ?」

 

 「あー、確かにな。じゃあさ、模型部にお邪魔してみるか?タツヤさんが残したのってあっちだし」

 

 「…いいかも。模型部の作品気になるし、バトル部だけ構っちゃっても可哀想だし」

 

 「後輩たちと触れ合うのも悪くないでしょ」

 

 そんなこんなで行く場所を決定した俺たちはそそくさ~、と移動して部活棟に向かう。途中すれ違う後輩たちが「えっ!?うそっ!?」「ヒマリさん…!?」「あの、サインくださいっ!」ってやってきたりしたけどそこらへんは全て慣れてるヒマリが対応した。え?俺?俺に来るのは野郎ばっかだったから対応楽だよ。マクロスめっちゃ好きッス!っていうのがほとんど、歌手活動やってるヒマリとツムギの方が大変そう。来てるの秘密ね?っていう約束でサインしたけどどこまで守ってくれるやら。

 

 ほいでやってきました模型部の部室。広いね~でかいね~、多分部員の増員に伴って運動部用の部室があてがわれたのかな?かなり大きい部屋だ。小窓から中をのぞくと作業机の上でプラモデルを弄ってる子や机に座ってだべっている子、満足げな顔で組み上げたプラモを前に頷いている子など様々、で多分奥にいるおかっぱというかキノコっぽい頭をした細いメガネの子が部長かな?よしよし、行くぞ二人とも!突撃隣のプラモデル!

 

 「お邪魔しまーす」

 

 「失礼しま~す!」

 

 「…お邪魔します」

 

 「へっ!?どなたで…す…?」

 

 時が止まるとはまさにこのこと。ライブやら異世界での何やらで無駄に度胸が付いた俺たちはこの程度なら全く気にすることない。引き戸を開けて中に闖入してきた俺たちを見た後輩たちが動きを止める。あ、どうもお久しぶりですと顧問のタケ先生に挨拶してみていいですかと許可を取る。快諾してくれたタケ先生、ありがとう。で、3人分かれて見回る。ヒマリはいつも通り、ツムギはお仕事モードオンで人見知り対策、んでおろっ?これは…

 

 「VF-9か。カットラスを選ぶとはなかなか分かってるな。けどエンジンの接合が甘い、ちょっと接着剤がはみ出ちゃってるぞ。こういう場合はこうしてだな…ほい、こんな感じで調整してみ?」

 

 「は、はい…ありがとうございます…?」

 

 「「「「「えええええええええええええ!?」」」」」

 

 「あはは~ドッキリ大成功~~」

 

 「ドッキリって言えるのかこれ?」

 

 「…いえーい、OB訪問だよ~」

 

 途中で見つけたバルキリーを組み立てている男の子に軽いアドバイスをしてみたあと、ようやく現実に気づいたらしい部員の子たちが驚いて大声を上げた。ちなみにタケ先生はめっちゃ爆笑してる。ちょっと面白かったなこれ、またどっかでやろうかね。ざわざわとしてる生徒たちをパンパンと手を叩いたタケ先生が収めにかかる。

 

 「おら、静かに!よし、知ってると思うが我が校の卒業生のサオトメ・アルトとスズカゼ・ヒマリ、イロハ・ツムギだ。今日はバトル部の方に用事があるそうなんだが時間があるので模型部にも顔を出してくれたってことで、失礼な態度とるなよ特に男子!」

 

 「えー!タケ先生ひっでー!」

 

 「はい黙れ!つってもあんまり時間ないらしいしな。そうだな~よし!作品を評価してもらいたいやつは作品持って見て欲しい人の所へ並べ!」

 

 タケ先生相変わらず生徒と距離が近くて仲がいいな~まあタツヤさんもよく聖鳳学園には帰ってきているみたいだしよくあることなのかも。俺たちが訪問するのは初めてだけど。うーむ、どんくらいで評価したらいいんだ?最初に聞いてみるか?

 

 「タケ先生どんな感じで評価あげたらいいですか?辛口にします?」

 

 「あーそうだな、じゃあバトルに出すならスズカゼに、レースに出すならイロハ、総合的に判断するならサオトメに並べ!あと容赦なしで頼む。ユウキのやつにも同じこと言ってるからこいつらも慣れてるだろうよ」

 

 「えー、私は二人と違って趣味だよ~?ファイター目線になっちゃいますけど」

 

 「…私といい勝負できるのにそれはないよヒマリ」

 

 「でも結局本気のツムギちゃんには勝てないんだもの」

 

 というタケ先生の言葉にぶーたれるヒマリをよそにさっそくと言わんばかりに俺たちの前に自分たちの作品をもって並ぶ生徒たち、というか俺の列ながっ!?まあいいけどな。えーと最初の君は…ジムスナイパーか。改造箇所は無さげだけど塗装が上手いな。ディテールもかなり慎重に入れてある、いいんじゃない?関節改造するだけでグッとポージングの幅が広がるよ。バトルで活躍させたいならスラスターを改造して頂戴、以上

 

 「はい、次~ん?君が部長かな?」

 

 「は、はい!ミヤガ・ダイキです!お願いします!」

 

 「AEUイナクトとアグリッサだな。ふむ、かなり素組みに近いけど抑えるべきところは抑えているな、悪くない。おっと、どっかで壊したかこれ?」

 

 「分かるんですか!?その、ガンプラバトルで少し」

 

 「へえ、バトルはしないもんだと思ってたけどな。そういうやつはバトル部に行くだろうから。んじゃあ指摘点だけど、修復箇所が雑、バリ残ってるし接合部が甘い、動かすかどうかは知らんけど合体して動かした瞬間空中分解するぞー、ここと、ここだな。パテでふさいで鑢で削れ。んでポリキャップ変えて接着剤で付けろ。以上」

 

 「…空中分解?」

 

 「ワードだけで寄ってくるようになったか…」

 

 「ありがとうございました。あの、サオトメ先輩…バトル部に何の用なんですか?」

 

 「あー、なんだ気になるのか?ラルさん、知ってるだろ?バトル部のコーチしてるらしくてな、呼ばれたから来たんだ」

 

 「先輩たちを呼び出すなんて相当恐れ多い…」

 

 「俺たちを何だと思ってんだよ。あの人にはかなりお世話になったからな、恩返しだよ。ほかになにかあるか?」 

 

 「あの…じゃあ一つだけ。バトル部にコウサカ・ユウマという中等部の後輩がいます。元は模型部に所属していましたけど、数日前にバトル部に行きました。模型部でのユウマは本当にやりたいことを押し込めて無理やりプラモに向き合ってるように見えていました。俺はあいつに悩みを聞けませんでしたけど、出来れば気にかけてあげて欲しいんです。勝手なお願いかと思いますが、お願いします」

 

 「コウサカ…ね。オッケー分かった。後輩想いなんだな」

 

 「いえ、責任です。失礼しました」

 

 そう言ってミヤガ君は列を離れた。コウサカっつーと覚えがあるのはチナの弟だな。1回セイと一緒にプラモを教えたことがあるんだけどそれっきりだ。なんせそれからセイも俺もクソ忙しかったからな、俺は映画が大詰めだったしテレビ放送する予定の7のスケジュールを抑えたりOVAのプラスとかゼロの指揮も同時にやってて自由な時間がなかったんだよね。セイのやつはもう既に外国に留学してた。どういうわけかレイジも一緒に写真に写ってた。それでいいのか王子様。

 

 あれこれとやっていると時間が来てしまったのでタケ先生に断って退室する。いやー後輩たちは可愛いね、ガンプラを続けるなら頑張ってほしいかな。良かったな男子ども、二人から投げキッスもらえて。ヒマリもツムギも悪ノリだけど受けてるからいいのか?分からん。ライブで投げキッスは確かによくやるけどな、参考は美雲さんです。あとマキナさんレイナさん監修、付き合わされたカナメさんも面倒見がよかったなー、今何やってるんだろう。

 

 

 「やっとだねー、バトル部!トロフィーどうなってるんだろう」

 

 「…あれ、見つかってるかな?」

 

 「見つかってたとしてもそんじょそこらのやつじゃ使えやしないだろ。俺とセイの合作だぜ?」

 

 そんな感じの話をしながらバトル部の部室、小窓から中を見るとどうやらラルさんしかいないらしい。じゃあ遠慮しなくていいやと引き戸を開けて中に入る、ラルさんが俺達に気づいて立ち上がった。

 

 「やっほーラルさん、久しぶり」

 

 「おお、アルト君たち今日は無理を言ってすまないな。どうしてもお願いしたいことがあったのだ」

 

 「…お願いしたいこと?」

 

 「そうだ。詳しくは部員が戻ってきてから話そう。飲み物を買いに行ってるだけだからすぐに戻ってくるはずだ」

 

 「いいよ~~。ラルさん変わんないね~~!今度バトルしよ!久しぶりにラルさんに相手して欲しい!」

 

 「もちろんだとも!このラル!受けた勝負からはけして逃げん!」

 

 中に入ってラルさんと挨拶する俺達、ラルさん変わんねーな。永遠の35才って言ってるけどマジ?七年前と年変わってないじゃん。ラルさん、どうやって聖鳳学園からコーチングの依頼を受けたんだろ、そう考えてるとドアの前がにわかに騒がしくなり、引き戸が開いた。一番前にいるのは女の子か、目をぱちくりしたその子はガラリと扉を閉じる。

 

 「どうしたんだよフミナ先輩」

 

 「うん、ごめんねセカイ君。部室の中にいたらおかしい人の幻覚が見えてつい」

 

 「はあ~~?」

 

 そこでもう一回扉が開く、今度は眼鏡をかけた男の子だ。そして、また目をぱちくり、扉閉鎖。むこうからお前もかよ!という声が聞こえる。ヒマリとツムギはもう完全に腹を抱えて笑っている。何だこのコントは、ちょっと俺も噴き出しそう。ラルさんも後ろ向いて口抑えてるし。そして、また扉が開く、今度は赤い髪の男の子だ、どことなくレイジに似てるな。別人だけどさ

 

 「誰なんだ?あんたたち」

 

 「ただのOBだよ。古巣が気になって遊びに来たんだ」

 

 「へーそうなのか!先輩!よろしくお願いします!」

 

 「おう、よろしく」

 

 やっと挨拶できるわ、後ろ二人は相変わらず固まってるっぽいけど。もうダメ~~というヒマリの笑い声だけが場を支配していた。俺も噴き出しそう、助けて




 はい、トライ編です。
 暫くトライ編やってプロット書き上げてからデルタの方を詰めていきたいですね。長編にしがちなのが私の悪いところ。

 では次回、改めて自己紹介をということでお願いします。もう有名人だからね、こんな反応されるのもしょうがないよね。


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先輩は後輩にいいところを見せたくなるもの

 「あの…えっと…サオトメ・アルトさん、ですよね?そっちはスズカゼ・ヒマリさんで、貴方がイロハ・ツムギさん」

 

 「おお、知ってるの?バトル部だっていうからヒマリならともかく俺やツムギも知ってるなんてな、よろしくなー」

 

 「…よろしくね。ラルさんに呼ばれただけだからあんまり気負わないで」

 

 「よっろしく~!ん!?君…もしかしてチナちゃんの弟のユウマくんじゃない!?うっわ~~!おっきくなったね~~!!!」

 

 「え?なに?有名人なの?うわっフミナ先輩!?」

 

 よろしくお願いします先輩!という感じだったレイジっぽい男子を短いポニテの女子が捕まえてあれこれ説明している、へー、俺やツムギならともかくヒマリを知らない子がいるんだな。まあそれが普通なんだよな~、興味を持たないものだってあるだろうし。いかにもレイジっぽいまっすぐ一直線な目をしている。見てて気持ちがいいな~。

 

 「そうね、セカイ君は知らないよね。この人たちは、色々ありすぎて紹介しきれないけどとっても凄い人達なの!ほらあの人!スズカゼさんなら見たことあるんじゃない!?」

 

 「お!ああ~!姉ちゃんがCDジャケット見せてくれました!ってことは芸能人!?」

 

 「そうそう、でイロハさんがガンプラバトルレース殿堂入りのレースクイーン!ガンプラ界隈で一番速いファイターなの!それで」

 

 「サオトメ・アルトさん、ガンプラバトル無差別級の初代チャンピオンにして3連覇ののち殿堂入り、現在最強のビルダーである3代目メイジン・カワグチと並んでもう一人のメイジンと呼ばれるビルダーだ。そのくらいはガンプラに携わるなら調べておけ…お久しぶりです、スズカゼさん」

 

 「一言余計だっつーの!って無差別級?普通のガンプラバトルとどう違うんだ?」

 

 「初心者のセカイ君が知らないのも無理はない。5年前に新設されたレギュレーションだからな。ガンプラに限らずありとあらゆるプラモデル、戦艦、飛行機、戦車、果てはオリジナルのロボット!プラスチックでできているならば制限はない!何でもありのレギュレーションなのだ」

 

 「残念ながらガンプラバトルには人気の面で遠く及ばないんだけどな~」

 

 あっはっは~と肩をすくめる俺。ほんとだよマジで、多少マシになったけどガンプラの方が人気が根強いんだなこれが。フルスクラッチの敷居の高さと大分盛り上がってきたとはいえ他作品のプラモキットの不足によって簡単、すぐできるガンプラレギュレーションの方がお手軽なんだよ。そのうち同じくらい人気になるまで盛り上げてやるからなこの野郎。今年はタツヤさんに勝ってやる。

 

 「…あの」

 

 「ああ、久しぶり。ユウマ君だろ?ガンプラ、続けてるんだな。機体見せてもらったけどよく練られたいい機体だった。コンテスト優勝おめでとさん。」

 

 「…はい!」

 

 やっぱり、コウサカときてユウマってのは俺が思い描いていた彼だったようだ。確か今年のアーティスティック・ガンプラ・コンテストで優勝したんだよとチナから聞いていたもんだから、てっきりバトルは辞めてビルダー方面に転向したんだと思ったんだけどバトルをする気になったのはいいことだ。一緒に教えたセイも喜ぶだろう

 

 「それで、なんでそんな凄い3人がこんなところにいるんです?」

 

 残り二人の必死の説明を聞いてうんうん頷いた赤毛の男子は単刀直入にそう言った。おお、確かに疑問に思うのもその通りだけど、この空気でよく言いだせたな。なるほど、初心者なんだな…で3人しか部員がいないと…割とマジでギリギリじゃんバトル部。

 

 「うむ!この3人を呼んだのは他でもない!君たちのためだ!」

 

 「私たち、ですか?」

 

 「そうだ!現在、学生のガンプラバトルは個人戦ではなくチーム戦、チームワークがなければ話にならない…で自覚はあると思うがどうかな?二人とも?」

 

 「うっ」

 

 「…はい」

 

 「…仲悪いの?」

 

 「ち、違うんですイロハ先輩!ユウ君もセカイ君も決して仲が悪いわけじゃなくてその~…」

 

 「もうそれ仲悪いって言ってるようなものだよ?え~っと」

 

 「あ、はい!ホシノ・フミナです!こっちがカミキ・セカイ君!よろしくお願いします!」

 

 「ってことは俺たちは3人にチーム戦を叩き込んでやればいいってこと?ラルさん?」

 

 「うむ!そういうことだ!なにせ、チーム戦において君たちの右に出るものはいまい!」

 

 そこまで言い切られるものでもない気がするけど、まあこの3人で組んで負けることなんて数えるほどしかないのは事実だ。そりゃあ相手側がなりふり構わずカイザーさん、タツヤさん、ジュリアンさんとかで来たときにはそりゃあ負けたけども。あれは反則だと思うの。確かにチーム戦なら得意な方かな?

 

 「オッケー、分かった。ラルさんの頼みだし、俺たちが君たちのチームを鍛えようじゃないか!さっそくで悪いが君たちの実力を見せてくれ!」

 

 

 

 

 そんな感じで部室のGPベースを起動した俺達、当然なんだけど俺やツムギ、ヒマリが本気で潰しにかかったら勝てないのは自明の理なので手加減仕様でございます。まず俺、VF-25Fでパック装備なし、続いてツムギ、青のVF-25S同じくパック装備無し、ヒマリは緑のVF-25Gでドラグノフ・アンチ・マテリアル・スナイパーライフル以外の装備を外している。ついでにMS戦を想定して俺たちは変形無しのバトロイド固定というガッチガチのサンドバック仕様である。ルールはCルール、ガンプラの破損がないヤジマ製のGPベースに新しく追加された3つの仕様のうち一つだ。

 

 「それじゃあ、どっからでもかかっておいで」

 

 「どこからでもいらっしゃ~い!」

 

 「…かもんかもん」

 

 バトルスタートという電子音の合図、ヒマリはふわりと浮かぶと後方に移ってスナイパーライフルを構える。前衛はツムギ、遊撃俺、後衛ヒマリという感じだ。ガンポッドを構えながら待ってると、おおきたきた…ってマジか!ガンプラをセットしたのが立体映像の中に入ってからだから相手のガンプラを見てなかったから、今日一番驚いた。運命を感じちまうな。

 

 「ねえ、アルトくんあのガンプラ!」

 

 「…見つけられちゃったね、アルト」

 

 「ビルドバーニングガンダム…!君が見つけたのか!」

 

 「先輩!お手合わせよろしくお願いします!」

 

 「私もいます!セカイ君!サオトメ先輩に突っ込んで!ユウ君はイロハ先輩を狙撃!」

 

 「了解ぃ!」

 

 「はい!」

 

 「なるほど、君が司令塔なんだな?じゃ、こうしようか。ツムギ頼んだ」

 

 「…おっけー、君は私ね」

 

 「なっ!はええ!?」

 

ビルドバーニングガンダム…セイが第11回世界大会で使用したスターバーニングガンダムを当時の全力で改修したらどうなるのかという悪ノリで作ったガンプラだ。誰乗せる?レイジ!じゃあ素手だな!というあんまりにもあんまりな仕様で武器はバルカン含め一切ないし防御兵装もない。コンセプト自体はほぼ悪ノリの産物だけど使われてる技術はガチガチのガチだ。そこらのファイターじゃまともに動かせないし機体に振り回される始末。だからレイジ以外にちゃんと使えるやつが現れるだろうと願ってセイと協力してドムの皮を被せてトロフィーの中に隠しておいたのだ。

 

 俺とセイが本気を出しただけあって、機体はセイ特製のムーバブルフレームとRGシステムの発展型を搭載して外部は俺特製の特殊装甲を採用しプラフスキー粒子との親和性を高めてある。ついでにもいっちょ俺製の高性能バーニアを有しており、速い、固い、近接特化という尖りに尖らせた機体だ。一番頑丈なのがマニピュレーターで、なんとビルドナックルの直撃を受けてもビクともしないのである。どんだけ殴っても大丈夫なのだ!やりようによってはビーム殴っても大丈夫だよ?

 

 変形させようぜ!って俺が暴走したんだけどRGシステム系のフレームと変形機構の相性が悪かったので不採用となりました畜生!しょうがないので当時の最新技術を自重無しでぶち込みまくったけどな!

 

 そんなゴリゴリの近接機に突っ込むのはツムギである。VF-25を再現したのは7年前ではあるが当然それ以降改修しないわけないので現行のトップと同等の性能は有している。当然殴りに来るビルドバーニングガンダム、ツムギは威力が乗り切る前のポイントを見極めてマニピュレーターにマニピュレーターをぶつけて防御する。止められたことに焦ったカミキ君がいったんバックで戻る。ここまで一瞬、俺の前に残るのはホシノさんのパワードジムの改造機と思われるジムだ。カミキ君はツムギを警戒してか遊撃と同じラインにいる。

 

 「さて、ここからどうする?」

 

 「カミキ君、援護するから突っ込んで!」

 

 「はい!」

 

 「よし、それならヒマリ!いっちょ頼んだ」

 

 「はいは~い!じゃあアルトくん、右に1ね!ツムギちゃんガンポッドバン!」

 

 ヒマリの言葉通り俺は右に一歩、ツムギはガンポッドを構える。そこで動いた多少の隙間を縫ってヒマリのスナイパーライフルの射撃が突き刺さった。俺の右脇を通った狙撃は一歩を踏み出したビルドバーニングガンダムの足元を穿ってこかし、ツムギのVF-25Sの左側頭部をギリギリかすめて飛んだ狙撃はジムの右肩の大型ライフルを撃ち抜いた。

 

 「あんな僅かな隙間から…!?」

 

 「やばい!撃ってきますよ!」

 

 「ユウ君!援護して!」

 

 ツムギと俺のガンポッドが火を噴いた。狙いは近づかせないようにする弾幕形成。ここで足を止めた俺とツムギ、絶好の狙撃チャンスを逃すユウマ君ではないだろうと予想してはいたが当たっていた。俺とツムギに飛ぶビームでの狙撃、だが予想できたことだ。同時に今俺が立ってる位置はヒマリが狙撃しやすいポイントなんだよな!

 

 「うそっ!?ユウ君!離脱して!場所がバレた!」

 

 「ビームを斬った!?」

 

 俺とツムギは同時にガンポッドを上に投げ捨てて、ナイフを抜く、正確にVF-25の胴体を撃ち抜くコースのビームに笑みをこぼしてピンポイントバリアナイフでビームを切り裂く、ツムギも同様の方法でビームを防御する。落ちて来たガンポッドをシールドをマウントしてる手でキャッチしてそのまま片手で乱射する。回避コースを誘導するためにあえて狙いを甘めにした。

 

 「みーつけた!チェック!」

 

 「よし、ツムギぶっ放せ!」

 

 「…了解!」

 

 送られてきたデータの地点に向かってツムギがミサイルをぶっ放す。ユウマ君が潜む位置を焦土にするミサイルたちにたまらずユウマ君のライトニングガンダムがブーストを吹かして飛び出す。はいこれでチェック。

 

 「ユウマ!誘われてる!防げ!」

 

 「…言われなくても!」

 

 「もう遅いよ!」

 

 「しまっ!?」

 

 スナイパーライフルの3連射、一撃でシールドを跳ね上げ、残り2撃でコックピットと頭を撃ち抜いた。さて、残り二人。あとはどうする?飛び出してきたのはカミキ君、ビルドバーニングガンダムのクリアパーツが光ってプラフスキー粒子を放出する、へえ!ちゃんと使えてるじゃないか!合格だ!

 

 「ユウマ!クソッ!先輩!本気で殴ります!次元覇王流!疾風突きぃ!」

 

 「それがガンプラバトルだ!突進技は後方注意だぞっ!そしてホシノさん!注意散漫!」

 

 「えっ!?きゃあああ!?」

 

 「…これで、おわり!」

 

 「後ろをとられたっ!?」

 

 俺は風を纏った右拳を突き出してこちらに迫るビルドバーニングガンダムをあえて無視し、ユウマ君が落とされたことに驚いていたホシノさんに向かって脚部ミサイルとレーザー機銃、ガンポッドをぶっ放して仕留める。だが当然俺は隙だらけになるがそこは俺のパートナーが埋めてくれる。突進技のモーションと俺の動きを見て狙いを見抜いたツムギが技に入る前に熱核バーストタービンを全開にして真後ろに回り込んだのだ。そしてガンポッドで背中を狙い撃ちにする。

 

 そして体勢を完全に崩して技が中断された、纏っていた風も霧散するビルドバーニングガンダムに向かって、ヒマリの狙撃が奔る。2発、3発と何とか固めたガードの上から耐えるビルドバーニングガンダム、さすがは俺とセイの合作。だが俺もタダ見てるわけではない。ナイフを構えて接近戦に入る。

 

 「次元覇王流!聖拳突き!」

 

 「このタイミングで技を繰り出すたぁ見どころありすぎだぞカミキ君!」

 

 一番硬いマニピュレーターで狙撃を耐え続けたカミキ君、その状態で技の予備動作も済ませていたらしく、滅茶苦茶に威力のありそうな拳を繰り出してきた。だけどガンプラバトルの経験値が違う、確かにまともに食らったらオシャカになるパンチだけどな、モビルファイターとかと対処は一緒だ。躱すか、相殺するか。俺の場合はこうだ!

 

 「弾いたっ!?」

 

 「個人としての強さは及第点だぜトライファイターズ!チームワークはまだまだだけどな!」

 

 左手のナイフを逆手に持ち替えてビルドバーニングガンダムの右拳に真横からぶっ刺した。衝撃で技の着弾位置がぶれる、俺はその状態のまま、右拳のピンポイントバリアパンチをコックピットに叩きつける。流石のビルドバーニングガンダムもコックピットをやられてはひとたまりもない、撃破判定が出て俺たちの勝利でバトルは終了した。いや、正直想像以上だ。

 

 「ラルさん…こいつら化けますよ。ちゃんと連携取れれば強くなれます」

 

 「そうだね~!ユウマ君、かなり隠れるの上手かったから私たちじゃなかったら3人纏めて撃たれて終わりだったかも」

 

 「…ホシノ、かなり指示が的確、ちゃんと従えてればいい線行ってた。自信もってよし」

 

 「なるほど!君たちほどのファイターが言うなら真実なのだろう!このラルの見立てが正しいと証明してくれたこと、感謝するぞ!」

 

 張り切って挑んだのにほとんど何もできずに負けてしまったことに落ち込むトライファイターズ、だけど俺たちからしたら割と驚いた。ユウマ君の狙撃の正確さ、ホシノさんの判断力、そしてカミキ君の突破力…うまくかみ合えば強さは倍増どころか累乗するだろう。ビルドバーニングガンダム…彼なら託してもいいかもしれない。見極めるにはまだ早いが面白くなってきたな、これだからガンプラバトルは辞められないんだ。

 

 

 

 




 一応ポジション解説しときます。3人が本気で戦う場合どういった感じでチームで動くか

 アルト君
 VF-25FアーマードパックにゴーストQF-4000を3機従えての遊撃、反則的な軌道を描くゴーストで相手を分断して連携を封じる。止まった場合ミサイルが飛んでくる。止まらなくてもミサイルが飛んでくる。

 ヒマリちゃん

 VF-25GスナイパーパックにRVF-25のレドーム増設、狙撃兼レーダーの役割。前線でゴリゴリやるのは向いていない。狙撃は割と正確、第七回でのサポートの役割から発展した支援専門。視野が広い人間レーダー。

 ツムギちゃん

 VF-25Sトルネードパックにパラディンパックのブレイズランスを装備。前衛ではあるが攻撃は避けるの専門なためパラディンパックではなくトルネードパックになった。あとミサイル、実はミサイルキチに片足突っ込んでる。アホみたいなスピードでミサイルよりも早く突っ込んできて槍でぶっ刺してくる。これは卑怯。


 というわけでいかがでしたでしょうか?次回以降はちょっと間が開きます。
 デルタ編も書かねーとなあ…もうプロットだけ公開でいい?ダメ?

 では次回、感想くれると執筆が加速するのでよろしくお願いします。


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掲示板系まとめ
ヤジマ主催大交流会実況スレ2日目


1:管理人

復旧しました。もう勘弁してくれ

 

2:名無しのビルダー

遅いぞ管理人、何時だと思うとる

 

3:名無しのビルダー

他のスレが立てられないんだが?

 

4:管理人

お前らのせいで要らん心労をもらうからこのスレしか建てられないようにした。乱立するスレのせいでサーバーが死ぬから。次落ちたらもーしらん

 

5:名無しのビルダー

おいたわしや管理人上…

 

6:名無しのビルダー

もうヤジマに頼んでサーバーもらえ

 

7:名無しのビルダー

名案ですわ

 

8:名無しのビルダー

しゃーねえツブヤイター使って現地集合とかの連絡とるか

 

9:名無しのビルダー

最初からそうしろ

 

10:名無しのビルダー

機能ヤバかったな

 

11:名無しのビルダー

めっちゃヤバかった。もうあれは落ちるよそら

 

12:名無しのビルダー

落ちなかったことはない定期

 

13:名無しのビルダー

8mの巨大プラモを見れるなんてなあ…

 

14:名無しのビルダー

間近で見たけどホント凄かった。あんなのを操縦できるファイターがいるなんてな。あとデストロイドも間近で見れたよ

 

15:名無しのビルダー

くああああ羨ましいいい

 

16:名無しのビルダー

お前ら今何してるん?

 

17:名無しのビルダー

物販でバルキリー買ってる。うっひょおおお早く組み立ててええええ

 

18:名無しのビルダー

ワイも同じく。もうニッパーがパチパチ言うとるんや

 

19:名無しのビルダー

幻聴が聞こえてらっしゃる?

 

20:名無しのビルダー

パインステーキセット食べてる。意外とうまい、うまい

 

21:名無しのビルダー

GPベースにいるよーん

 

22:名無しのビルダー

ここぞとばかりに戦艦プラモばっかりで草

 

23:名無しのビルダー

なーんだ今日はアルト君のレクチャーないのか

 

24:名無しのビルダー

普通ないぞ

 

25:名無しのビルダー

ワイもうけたいんやが…まあ高望みはせんわ

 

26:名無しのビルダー

ちゃんとバルキリー講座はスタッフさんがやってくれてるやん?

 

27:名無しのビルダー

所で艦これ勢いる?

 

28:名無しのビルダー

よんだ?

 

29:名無しのビルダー

大和でおるでー

 

30:名無しのビルダー

ワイは扶桑姉さまや

 

31:名無しのビルダー

木曾だキソー

 

32:名無しのビルダー

ぽいぬで参加中

 

33:名無しのビルダー

でち公だが

 

34:名無しのビルダー

艦隊組もうぜー、折角いるんだしー

 

35:名無しのビルダー

いいね、やろやろ

 

36:名無しのビルダー

俺も仲間に入れてくれよ

 

37:名無しのビルダー

ええけど、お前なんや

 

38:名無しのビルダー

漁船

 

39:名無しのビルダー

えぇ…(困惑

 

40:名無しのビルダー

シュールすぎる

 

41:名無しのビルダー

艦これ勢二極化してるの草

 

42:名無しのビルダー

戦艦プラモと艦これキャラを乗っけるアルペジオ方式とアニメ艦これ形式な

 

43:名無しのビルダー

大和の人だけ完成度ダンチやん。なんやねんあのデティールの細かさ

 

44:名無しのビルダー

かっちょえええ

 

45:名無しのビルダー

いやー楽しみだなー!昨日みたいなの今日もあるんでしょ!?

 

46:名無しのビルダー

そりゃあ、あるだろうな!

 

47:名無しのビルダー

昨日スレで涙を流したんや。是が非でも参加したる

 

48:名無しのビルダー

ワイも

 

49:名無しのビルダー

あー、空母の人たち、頼みがあるんやけど

 

50:名無しのビルダー

こちら赤城、聞こうじゃないか

 

51:名無しのビルダー

どうも、龍驤提督です

 

52:名無しのビルダー

ワイら戦闘機勢を発艦させてくれんかね?

 

53:名無しのビルダー

何それ面白そう、混ぜてくれ

 

54:名無しのビルダー

俺も

 

55:名無しのビルダー

ええぞええぞ、南の端っこあたりで空母機動部隊組んでるから集まれ~

 

56:名無しのビルダー

ふえええん、やっとできた~~~!

 

57:名無しのビルダー

どうした急に

 

58:名無しのビルダー

昨日、スレに買ったバルキリーが組み立てられないから助けってって言ったらみんな手伝ってくれて、今やっとできたの!

 

59:名無しのビルダー

おお、おめでとう!

 

60:名無しのビルダー

初プラモおめ!

 

61:名無しのビルダー

筋がよかったな、割と器用みたいだから伸びるぞ^^

 

62:名無しのビルダー

うん、これでバルキリー講座に行ってくる~~!

 

63:名無しのビルダー

ええ話や

 

64:名無しのビルダー

所でなんでガレオン船が浮いてるんですかね

 

65:名無しのビルダー

ワイの黄金の鹿号や。最新式もええが、こういうのもわるくなかろ?

 

66:名無しのビルダー

じゃあそっちの砲台のハリネズミみたいのは?

 

67:名無しのビルダー

アン女王の復讐号ですが?大海賊が乗った由緒ある船や

 

68:名無しのビルダー

その海賊オタクだったりしない?

 

 

 

 

 

 

 

 

277:名無しのビルダー

来てしまったか、ついに…!

 

278:名無しのビルダー

アナウンス来たああああ!

 

279:名無しのビルダー

この通信風のやり取りいいよな

 

280:名無しのビルダー

独自用語が山ほど入ってるけど全部マクロスの用語なんだろうな

 

281:名無しのビルダー

フォールドってのはやっぱりワープの事か

 

282:名無しのビルダー

ハルプ?クォーター?援軍の話かな?

 

283:名無しのビルダー

マクロス君火薬庫であることが判明

 

284:名無しのビルダー

地図が書き換わるとかマジですか

 

285:名無しのビルダー

ミッション告知来ました!

 

286:名無しのビルダー

今回はゲッタースリーですかゲッターニキ

 

287:名無しのビルダー

流石に3段変形は無理なんでな~、どれか一つにしかなれんのよ。ゲッタースリーがワンとかツーにはなれん

 

288:名無しのビルダー

まあ戦闘できるのに3形態に変形出来たら財団Bから声かかるでしょ

 

289:名無しのビルダー

なんか蟹いるんだけど?

 

290:名無しのビルダー

怪獣大決戦じゃねえかもはや

 

291:名無しのビルダー

世界最大級のカニさんことタスマニアキングクラブですね、お目が高い

 

292:名無しのビルダー

名前だけでもう強そう

 

293:名無しのビルダー

ノリで挟まれに行ってるやついて草

 

294:名無しのビルダー

本物はビール瓶を潰せるけどな。握力驚異の300越え

 

295:名無しのビルダー

ひぇっ

 

296:名無しのビルダー

まさか西村艦隊が示し合わせず現地で集合できるとは

 

297:名無しのビルダー

はっはー!テンション上がってきたああ!

 

298:名無しのビルダー

号令!号令くれ!旗艦の号令!

 

299:名無しのビルダー

よっしゃああああ!いくぜええええ!

 

300:名無しのビルダー

俺のセシリアたんがどこまで通用するか…!

 

301:名無しのビルダー

完成度鬼高いから大丈夫。顔面だけ気を付けろ

 

302:名無しのビルダー

知らないって言われてキレ散らかしてるの草。あと知らねーのにオルコッ党とか言われてもなwww

 

303:名無しのビルダー

そこでティファの名前出しちゃいかんですぜ。純愛過激派がうようよいるぞ

 

304:名無しのビルダー

脳を破壊されるといい

 

305:名無しのビルダー

なんか知らんが取り押さえろ!NTR大明神だ!

 

306:名無しのビルダー

NTR-D起動させなきゃ(使命感

 

307:名無しのビルダー

始まる前から追いかけっこ始まっとるやんけ

 

308:名無しのビルダー

ほっておけ、始まったら静かになる

 

309:名無しのビルダー

アルト君交じってるけど?

 

310:名無しのビルダー

おっと?

 

311:名無しのビルダー

お忍びで3人で参加ですか、勝ったな

 

312:名無しのビルダー

ヒマリちゃんのドストレートな派閥質問wwww

 

313:名無しのビルダー

ドキドキ…!

 

314:名無しのビルダー

ノーコメントはないぜ!男見せろよ!

 

315:名無しのビルダー

お前ら何聞き耳立ててんだ気持ち悪い

 

316:名無しのビルダー

開始来ました!

 

317:名無しのビルダー

おしゃああああああ!!!

 

318:名無しのビルダー

マクロスきたあああ!

 

319:名無しのビルダー

ワイらズゴック隊、底に大穴をあけてやろう

 

320:名無しのビルダー

これが俺の一番銛ぃぃぃ!!!

 

321:名無しのビルダー

うせやろ

 

322:名無しのビルダー

先越された!?漁船に!?

 

323:名無しのビルダー

そこはかとなくプライドが傷ついた

 

324:名無しのビルダー

なんでや

 

325:名無しのビルダー

お前もう艦隊組む必要ねーよ、立派なワンマンアーミーだよ海の男だよ

 

326:名無しのビルダー

降り注ぐ艦砲射撃、揺らがないマクロス

 

327:名無しのビルダー

反則じゃ反則!全方位バリアなんて反則じゃ!

 

328:名無しのビルダー

ん?いや、多分あれ当たる位置にバリア張ってるだけで接近自体はできるんじゃね?

 

329:名無しのビルダー

えぇ…ってことは手動でバリア張るかどうか選んでるってこと?

 

330:名無しのビルダー

誰だよ操縦してるヤツ~~~!

 

331:名無しのビルダー

真面目にド変態で草草の草

 

332:名無しのビルダー

昨日もいたトムキャット4人衆やばすぎる。なんで弾幕避けてんだ。なんで反撃までやれるんだ

 

333:名無しのビルダー

プロですから

 

334:名無しのビルダー

本職ですかっ!?

 

335:名無しのビルダー

エウレカ勢いきまーす!

 

336:名無しのビルダー

ファッ!?ニルヴァーシュspec2!?デビルフィッシュにターミナスシリーズまで!?

 

337:名無しのビルダー

ジエンドもいる!?

 

338:名無しのビルダー

我らネットでつながったエウレカクラスタ、この時を何度待ちわびたか

 

339:名無しのビルダー

月光号までいるのヤバすぎる

 

340:名無しのビルダー

ちょっと止まって!スクショとって待ち受けにする!

 

341:名無しのビルダー

無茶言うな

 

342:名無しのビルダー

すげーな、リアルでサーファーでもやってらっしゃる?

 

343:名無しのビルダー

レンタルバルキリー組、参加できないんだが?

 

344:名無しのビルダー

そういえば飛んでねーな。エンジンエンストした?

 

345:名無しのビルダー

したら空中爆発してるわ。始まる前に使うのここにおいてねーと言われて運営に没収された

 

346:名無しのビルダー

はーつっかえ!

 

347:名無しのビルダー

こんな神イベントでも運営はKUSOなのか

 

348:名無しのビルダー

神イベントな時点でクソではないはずだが

 

349:名無しのビルダー

なんかミッション更新された

 

350:名無しのビルダー

ハルプ?さっきの通信で出てきたやつ?

 

351:名無しのビルダー

マクロス・ハルプ?マクロスってまさか…

 

352:名無しのビルダー

大気圏突破!?って上!上見ろ!

 

353:名無しのビルダー

なんか落ちて来てるうううう!?

 

354:名無しのビルダー

もう一つあんの!?マジで言ってる!?張りぼてとかエフェクトとかじゃなくて!?

 

355:名無しのビルダー

やったあああああ!!!

 

356:名無しのビルダー

ヤジマ!ヤジマありがとう!

 

357:名無しのビルダー

ダメだ!もう掲示板見るのやめてGPベースに集中する!

 

358:名無しのビルダー

外野しか見れなくなるわこんなん

 

359:名無しのビルダー

ああああああ参加してええええええ!

 

360:名無しのビルダー

ファッ!?まさかあれから発進できるの!?

 

361:名無しのビルダー

発進コールして戦艦から発進!?MS乗りの夢ですわよ!?

 

362:名無しのビルダー

ちょっと俺も仲間に入れてくれよ!

 

363:名無しのビルダー

何とかして機体を折りたたんで滑走路に滑り込め

 

364:名無しのビルダー

無茶言うなよ、こっちは船だぞ

 

365:名無しのビルダー

そんなこと言えば俺はヒルドルブだぞ

 

366:名無しのビルダー

ゴリゴリの陸戦機で海に来るな

 

367:名無しのビルダー

ああああいいなあああ発進出来ていいなあああああ!

 

368:名無しのビルダー

あっ!あの機体!アルト君たちだ!

 

369:名無しのビルダー

3人そろって行くのか、いいなそれ

 

370:名無しのビルダー

YF-19いいなああれ重MSがアーマー外したら可変機とかロマンしかないじゃん

 

371:名無しのビルダー

ツムギちゃん公式の場でバルキリー乗るの初めてじゃない?ヅダカラーのやつ

 

372:名無しのビルダー

ヒマリちゃんは去年と一緒だね、ジオン系っぽいなにかだけど

 

373:名無しのビルダー

あえ!?マクロスが動いたんですが!?

 

374:名無しのビルダー

デストロイドのほかになにかあるの!?もう心臓持たないよ!

 

375:名無しのビルダー

今度は飛行機ってはやっ!?

 

376:名無しのビルダー

おっと誤射した

 

377:名無しのビルダー

せめて現実では申し訳ない態度をとれ

 

378:名無しのビルダー

あと開き直るな

 

379:名無しのビルダー

無人兵器?無人兵器がなんぼのもんじゃい!有人機にかてぬわああああああ!?

 

380:名無しのビルダー

ハヤオオオオオオオ!?

 

381:名無しのビルダー

昨日の百式に続いてお前ってやつは…

 

382:名無しのビルダー

いやゴースト君強すぎる。早いし当たらねーし、これホントに人間がやってんの?

 

383:名無しのビルダー

しらねーけどドッグファイトたのしい

 

384:名無しのビルダー

大戦期の戦闘機組の動きがダンチすぎる

 

385:名無しのビルダー

可変機縛りが功を奏した

 

386:名無しのビルダー

うわ、ツムギちゃんのバルキリークソはええ、機銃で2機同時に落としやがった

 

387:名無しのビルダー

アルトくんありがとう!落とされずにすんだよ!

 

388:名無しのビルダー

なんか懐かしいフォルムの飛行機が

 

389:名無しのビルダー

ジェットロボ!?ジェットロボじゃないか!

 

390:名無しのビルダー

合体して草

 

391:名無しのビルダー

合体中待っててくれるゴースト君優しい

 

392:名無しのビルダー

なー、お前消防車を俺の加賀さんの上に置くのやめてくれよ

 

393:名無しのビルダー

加賀さんフィギュアで圧をかけるな

 

394:名無しのビルダー

じゃあラストにするから空母の人3人、甲板貸して?

 

395:名無しのビルダー

しょうがねえなあ

 

396:名無しのビルダー

なにするん?

 

397:名無しのビルダー

そっち行くわ

 

398:名無しのビルダー

なんか海の底からいろいろなはたらくくるま出て来てんけど

 

399:名無しのビルダー

どうやって上ってきた。消防車、タービン車にドーザー車、輸送機にヘリコプター…

 

400:名無しのビルダー

ここで合体コールですか!?

 

401:名無しのビルダー

なんか引き立て役になった気分、ワイの加賀さん可愛いのに

 

402:名無しのビルダー

なんでフィギュアが表情変わってるんですか

 

403:名無しのビルダー

プラフスキー粒子の神秘でしょ

 

404:名無しのビルダー

アルト君邪魔しないように必死に妨害を排除してるのかわいい

 

405:名無しのビルダー

アルト君お目目キラキラになってそう

 

406:名無しのビルダー

好きそうだもんなあ、合体変形

 

407:名無しのビルダー

好きでしょ、変態飛行機作ってるくらいだから

 

408:名無しのビルダー

さっきから投げ銛がゴースト君を撃ち落としてるのを見て気が狂いそうになってる

 

409:名無しのビルダー

力こそパワーだぞ

 

410:名無しのビルダー

お前のせいだよこんがり焼けやがって

 

411:名無しのビルダー

紫電くん丸焦げになってるの草

 

412:名無しのビルダー

笑いこらえてんじゃねえよこのやろう。2回だぞ、2回誤射したんだぞ!俺に!同じ相手に2回!

 

413:名無しのビルダー

許してヒヤシンス

 

414:名無しのビルダー

この対応である。あっ、ゴースト君のミサイルもろに入った

 

415:名無しのビルダー

天罰かな?

 

416:名無しのビルダー

グレートワイバーン久しぶりに見たわ、いつ見てもかっけええ

 

417:名無しのビルダー

余りパーツでないのいいな

 

418:名無しのビルダー

あれっ!?マオくんいるじゃん!

 

419:名無しのビルダー

ホンマや!新機体で!アルト君たちと合流してる!

 

420:名無しのビルダー

ってはやッ!?

 

421:名無しのビルダー

分散してから鬼神みてーな戦闘してやがる

 

422:名無しのビルダー

通り過ぎたらゴースト君爆散してるんだが?

 

423:名無しのビルダー

マクロスが動いた!ハルプも!

 

424:名無しのビルダー

主砲きたあああ!ってうわああああ!?

 

425:名無しのビルダー

ひいいい転覆するうううう!

 

426:名無しのビルダー

転覆しました…

 

427:名無しのビルダー

漁船生き残ってるんやが

 

428:名無しのビルダー

元気すぎて草

 

429:名無しのビルダー

これが荒れ波を制するものか…

 

430:名無しのビルダー

なんかゴースト君つよない!?

 

431:名無しのビルダー

動きがだいぶ変わったってぐえええええ!?

 

432:名無しのビルダー

やばい脚がいかれたっ!?あ、マオくんありがとおおお!

 

433:名無しのビルダー

まともに相手できるのが限られてきたな…

 

 

 

 

 

 

 

 

605:名無しのビルダー

 そろそろヤバくなってきた

 

606:名無しのビルダー

損耗が激しいでござるう

 

607:名無しのビルダー

戦艦組は割と元気だけど、空が魔境すぎる

 

608:名無しのビルダー

実質アルト君たちで持ってる、たまにゲッタースリーの腕が出てきて助けてくれるけど

 

609:名無しのビルダー

おっと?

 

610:名無しのビルダー

アルト君たちが呼んでる。行かねば

 

611:名無しのビルダー

なんか作戦ある感じ?

 

612:名無しのビルダー

なるほどなるほど、弾幕抜けて

 

613:名無しのビルダー

マクロスに近づいて

 

614:名無しのビルダー

ぶっ壊せ、と

 

615:名無しのビルダー

出来たら苦労せんわ!

 

616:名無しのビルダー

脳筋め!言い出しっぺの法則だしやってもらおうぜ!

 

617:名無しのビルダー

そーだそーだ!アルト君主役にしてやろ!

 

618:名無しのビルダー

やべえマクロス飛ぶってよ!

 

619:名無しのビルダー

おらあああ火力を集中しろおおお!

 

620:名無しのビルダー

霧の艦隊の力を見せてくれるわ!

 

621:名無しのビルダー

かってええええ!

 

622:名無しのビルダー

ガチガチかよお前!PS装甲でも積んでんのか!

 

623:名無しのビルダー

アルト君行った!

 

624:名無しのビルダー

アーマー外しからの変形きたあああ!

 

625:名無しのビルダー

やばいやばい完全に飛ぶぞ!

 

626:名無しのビルダー

良しお前ら!仕込みは完了だあああ!

 

627:名無しのビルダー

おっしゃああああ!

 

628:名無しのビルダー

ジオン水泳部ここにあり!

 

629:名無しのビルダー

なんかマクロスの動き鈍くね?

 

630:名無しのビルダー

水中カメラ!水中用MSがマクロスにロープひっかけて引っ張ってる!

 

631:名無しのビルダー

原始的すぎる

 

632:名無しのビルダー

仕込みヤバすぎて草生える

 

633:名無しのビルダー

アルト君突っ込んだあああ!マクロスにダメージいったぞ!

 

634:名無しのビルダー

よしゃあああ畳みかけろ!

 

635:名無しのビルダー

マオくん!マオくんが!

 

636:名無しのビルダー

サテライトキャノン来た!つーか威力ヤバすぎ!抑えてるぞ!?

 

637:名無しのビルダー

うせやろ!?

 

638:名無しのビルダー

うおおおおおいけええええ!

 

639:名無しのビルダー

止まった?

 

640:名無しのビルダー

止まったっぽい?ゴースト君も墜落してく

 

641:名無しのビルダー

いった?やった!

 

642:名無しのビルダー

おしゃああああせいこううううう!

 

643:名無しのビルダー

超楽しかった!ありがとうヤジマ!

 

644:名無しのビルダー

何とか顔面は守り抜いたぞ

 

645:名無しのビルダー

芋砂してたからな。俺のアン女王の復讐号の中で

 

646:名無しのビルダー

ISの意味なくて草

 

647:名無しのビルダー

なお狙撃は一級品でした。キルレいくつよ

 

648:名無しのビルダー

デストロイド26!ゴースト18!

 

649:名無しのビルダー

割と稼いでるwww

 

650:名無しのビルダー

回収回収ッと

 

651:名無しのビルダー

明日またこんなお祭りやれるとか最高すぐる

 

652:名無しのビルダー

 

 

 

 

 

788:名無しのビルダー

いやーやったやった

 

789:名無しのビルダー

今日も楽しかったなあ

 

790:名無しのビルダー

あえ?まだなんかあるっぽいぞ

 

791:名無しのビルダー

ストーリー追加!?

 

792:名無しのビルダー

まじか、ワープしちゃった

 

793:名無しのビルダー

おお、明日宇宙だから宇宙に行ったっていうお話なのね

 

794:名無しのビルダー

指揮官型ゼントラーディ?なにそれ?

 

795:名無しのビルダー

カルチャーショックによる自意識のオーバーロード、うん?

 

796:名無しのビルダー

ああもう3行で言ってくれ

 

797:名無しのビルダー

マクロス、フォールド

AIの構成的に何か手段がありそう

カルチャーショックがどうのこうの

 

798:名無しのビルダー

ありがと

 

799:名無しのビルダー

ここで歌!?

 

800:名無しのビルダー

明日なんかやばそう

 

801:名無しのビルダー

歌、歌かあ…どんな風になるんだろうか

 

802:名無しのビルダー

ワクワクが止まらねえぜ!

 

803:名無しのビルダー

ミンメイ・アタックとは?

 

804:名無しのビルダー

情報を匂わせるのが上手だなあああ!

 

805:名無しのビルダー

ああああああ考察スレ立てられねえええ!

 

806:名無しのビルダー

頼む管理人!スレ立てさせて!

 

807:管理人

却下。このスレだけでもう落ちるかもしれへんのに

 

808:名無しのビルダー

そこを何とか!

 

809:管理人

だめです

 

810:名無しのビルダー

うわああああああああああ!

 

811:名無しのビルダー

ふざけんな!

 

812:名無しのビルダー

ふざけるな!ふざけるな!ばかやろおおおおお!

 

813:管理人

ああん?

 

814:名無しのビルダー

ひえっ

 

815:名無しのビルダー

すんませんした!

 

816:名無しのビルダー

ごめんなさい!悪気はなかったんです!

 

817:名無しのビルダー

しょうがねえこのスレ使って考察するかあ

 

818:名無しのビルダー

いや、多分もう無理や

 

819:名無しのビルダー

なんだと?

 

820:名無しのビルダー

イベントが終わった以上、どっと人が増える

 

821:名無しのビルダー

つまり?

 

822:名無しのビルダー

加速して考察どころではない

 

823:名無しのビルダー

ちくしょおおおお!!!

 

 




 スレをくださいと言われたので置いておきますね。掲示板、わちゃってるのを書くのは好きなんですけどな、どうも難しい。今回はネタ少な目です、次回は3日目で締めですね。管理人ニキの明日はどっちだ。

 本編完結記念ということでちょっとしたアンケをしています。活動報告からお願いします。
こちらからどうぞ

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=276245&uid=88429


 掲示板はネタがあってこそだからもう、ネタを収集しないと…!

 ではまた次回お会いしましょう


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【もう一人の】我らが変態について語ろうぜ【メイジン】

1:プラモデルバンザイ

このスレは我らが変態にして羨ましいリア充でもあり一つの世界観を作った男でもあるヤジマ所属ビルダー、もう一人のメイジンことサオトメ・アルトについて語るスレです。仲良くまったり進行で行こう!

 

2:プラモデルバンザイ

でかくなったなあアルト君(しみじみ

 

3:プラモデルバンザイ

もう20才になるのに君付けは草

 

4:プラモデルバンザイ

うるせえ!話題になった当時から知ってんだよこっちは!

 

5:プラモデルバンザイ

やーいおっさん!

 

6:プラモデルバンザイ

ぐへえあ

 

7:プラモデルバンザイ

最近のアルトくん、ネット番組に出演する

 

8:プラモデルバンザイ

あの布陣は反則だろ、勝てるわけねえよ

 

9:プラモデルバンザイ

3代目メイジン、もう一人のメイジン、両メイジンのライバル、これで勝てたらそいつ世界大会優勝できるで

 

10:プラモデルバンザイ

強すぎるんだよなあ

 

11:プラモデルバンザイ

一応大会開いてそこを優勝した人たちだったんだけどなあ

 

12:プラモデルバンザイ

アルト君が使った新型バルキリーのミサイルが強すぎる

 

13:プラモデルバンザイ

何やねんあのVF-31とかいう機体、アーマードパックごつすぎやろ

 

14:プラモデルバンザイ

もう一つの隠し玉は見せるだけで終了したしな。SV-262、いつか飛ぶ姿が見られるのやろか

 

15:プラモデルバンザイ

新型だすよーと言われてヒャッハーしたのもつかの間、戦力差に絶望するのである

 

16:プラモデルバンザイ

なおメイジンとセイ君、後衛のアルト君が放ったミサイルを隠れ蓑にして接近、見事に相手を切り捨てる

 

17:プラモデルバンザイ

何やねん世界の上位陣、本当に人間かあいつら

 

18:プラモデルバンザイ

もう一つのYF-30クロノスは再来年発売のゲームと同時にプラモ発売だってよ

 

19:プラモデルバンザイ

買うわ、両方

 

20:プラモデルバンザイ

ところでアルト君はいつになったらお店を開いてくれるんでしょうか

 

21:プラモデルバンザイ

悪いけど忙しいんだよね。気長に待ってやってくれ

 

22:プラモデルバンザイ

えーーーーー

 

23:プラモデルバンザイ

まじでツチノコレベルでしか開いてないのに。行けた奴いる?

 

24:プラモデルバンザイ

いけたー、たまたま通りかかったら開いてて本人いたから突撃していろいろ買ったよ~

 

25:プラモデルバンザイ

はあああああ!?

 

26:プラモデルバンザイ

羨ましい、限定モデルあるんでしょ!?

 

27:プラモデルバンザイ

うん、オリジナルモデルVF-1を買ったよ~!ネットじゃ常に売り切れだからやっと買えた!

 

28:プラモデルバンザイ

あの部品パーツが多すぎて組み立てられないでお馴染アルト君が使っているものとほとんど同じだというオリジナルシリーズだと…!?

 

29:プラモデルバンザイ

説明乙

 

30:プラモデルバンザイ

アルト君に手伝ってもらって作り上げました。教えるのうまいね、作れるとは思わなかったからありがたい限りだよ

 

31:プラモデルバンザイ

はあ!?許されねえぞお前

 

32:プラモデルバンザイ

いいんじゃない?組み立てられたってことは実力ありだってことだよ。手伝いがいたとはいえね

 

33:プラモデルバンザイ

いいなあ、アルト君開けるかどうか周知しないからさー!

 

34:プラモデルバンザイ

マジで店の前行ってからじゃないとわかんないんだよね、開いてるかどうか

 

35:プラモデルバンザイ

ところで全く関係ないけどフロンティア最終回終わったね

 

36:プラモデルバンザイ

アルト君遂に主人公になったからなあ

 

37:プラモデルバンザイ

まさかの中二病時代の黒歴史小説のようなものを全国に後悔するとは

 

38:プラモデルバンザイ

ちゃうねん、きっと考えてるうちにそうなっただけで最初はきちんと別方向になってたはずやねん

 

39:プラモデルバンザイ

公開だろ後悔してるかもしれへんけど

 

40:プラモデルバンザイ

アルトくんの作品の中で異彩を放っていた7を追い抜いて凄い作品になりましたね。主に黒歴史方面で

 

41:プラモデルバンザイ

なんでや7最高やったやろ

 

42:プラモデルバンザイ

それはそうなんだけどさ。7は最高だよ間違いない。だけど自分を主人公にしたFとかもうアイタタタタって感じで見てられない

 

43:プラモデルバンザイ

もうアルトはマクロス製作から追いだせばいいのに。才能尽きたからあんなことしたんだろ

 

44:プラモデルバンザイ

いなくてももうマクロスは回るやろ。新型のデザインとかもう全部吸い尽くして何もできないようにして捨ててしまえ

 

45:プラモデルバンザイ

嫉妬はやーねー

 

46:プラモデルバンザイ

アルト君いなくなったらヒマリちゃんは歌作って歌ってくれないだろうしツムギちゃんはノベライズしてくれなくなるぞ

 

47:プラモデルバンザイ

何が気に入らないのか、コレガワカラナイ

 

48:プラモデルバンザイ

気に入らないのなら自分でマクロス作れよ、許可は最初から下りてるだろ

 

49:プラモデルバンザイ

オリジナルマクロス、作れる人やべえよな

 

50:プラモデルバンザイ

そういえばアルト君一時期全然表舞台に出なかったよな

 

51:プラモデルバンザイ

ああ、何か1年くらい音沙汰なくて死亡説までささやかれてたけど

 

52:プラモデルバンザイ

学校まで休んで何やってたんやろなあ、ヒマリちゃんやツムギちゃんまで

 

53:プラモデルバンザイ

実際は外国にいたらしいが

 

54:プラモデルバンザイ

バイタリティありすぎで草

 

55:プラモデルバンザイ

ヤジマの支社を転々としながら己の腕を磨いていたらしい

 

56:プラモデルバンザイ

まあ実際帰ってきたら3人ともやべー位に強くなってたしな

 

57:プラモデルバンザイ

元はメイジンよりも弱かったのに帰ってきたらメイジンを追い詰めるくらいまで強くなってたからな

 

58:プラモデルバンザイ

2年前、アルト君が殿堂入りした際にやった3代目メイジンとの殿堂入り同士のバトルヤバすぎて当時脳が茹だった

 

59:プラモデルバンザイ

お披露目した新機体がマジで強すぎたもんな、本物がそこにあるという感じの完成度の高さ、存在しない偽物なはずなのに

 

60:プラモデルバンザイ

YF-29デュランダル、クソかっこいいので発売してくれ

 

61:プラモデルバンザイ

メイジンがあそこまで翻弄される姿を初めてみた。速さに追いつけないなんて初めてだったろうな

 

62:プラモデルバンザイ

あの時使ってたのはプロトガンダムアメイジングレッドウォーリアだったよな。現在の愛機の原型でもあるし当時のメイジンの最高傑作だったはず

 

63:プラモデルバンザイ

格闘戦ではメイジンが流石に上だったんだけどな、まさかゴースト3機を操りながらメイジンと渡り合うとは

 

64:プラモデルバンザイ

射撃戦弾幕戦なら現在最強かもしれん

 

65:プラモデルバンザイ

4vs1なんてやっといて最強は草生える

 

66:プラモデルバンザイ

何言ってんだお前、レギュレーション上ゴーストはフラッシュMSやファンネルと同じ扱いだぞ。戦艦使うなら艦載機が使えるのと一緒だわ

 

67:プラモデルバンザイ

カイザー2世というあだ名がついたの草生える。カイザーってアルト君の師匠なんだっけ?

 

68:プラモデルバンザイ

正確にはメイジンがアルト君の師匠っていうかバトルにのめり込ませた人、カイザーは同時操作を教えた人

 

69:プラモデルバンザイ

サラブレッドかな?

 

70:プラモデルバンザイ

最終的に二人はアシムレイトを発動、アルト君は光の舞を舞って、メイジンは紅い彗星を纏ってぶつかった。結果は僅差でアルト君の勝利

 

71:プラモデルバンザイ

あそこで初めてメイジンに勝ったんだよなアルト君

 

72:プラモデルバンザイ

もうあれテレビの前で変な踊り踊って喜んだわ俺

 

73:プラモデルバンザイ

観客席にいたツムギちゃんとヒマリちゃんがお互い抱き着いて泣いていたのが印象的

 

74:プラモデルバンザイ

そりゃあずっと勝てなかった相手にやっと勝ったんだから当然っちゃ当然

 

75:プラモデルバンザイ

去年は負けちゃったんだよなアルト君、メイジンに雪辱をはたされたんだ

 

76:プラモデルバンザイ

どっちが勝ってもおかしくなかったんだけどなー、完成したアメイジングレッドウォーリアがチョッピリ上回っただけ

 

77:プラモデルバンザイ

YF-29をアーマードパックにして挑んだアルト君、格闘戦にもつれ込まされたところが敗因だな

 

78:プラモデルバンザイ

頑なにナイフ以外の武装をつけないからそうなるんだよ、バカだなーアルト

 

79:プラモデルバンザイ

なんかちょくちょくアンチ紛れ込んでるな、帰れ!

 

80:プラモデルバンザイ

アンチスレでやってくれ。それにバルキリーの戦法上近接武器はあんまりいらないんだよ!

 

81:プラモデルバンザイ

話変えよう、今週のアルト君は?

 

82:プラモデルバンザイ

ヒマリちゃんのツブヤイターより「アルトくんとケーキ屋さんでお茶したよ!ケーキ二つ食べたら「太るぞ」っていうの!太ってないもん!」デートかよ

 

83:プラモデルバンザイ

デートだな

 

84:プラモデルバンザイ

デートでしょ

 

85:プラモデルバンザイ

本人はツブヤイター滅多に更新しないのに周りの人たちのツブヤイターに高確率で登場するせいで行動が把握されるやつがいるらしい

 

86:プラモデルバンザイ

ツムギちゃんのツブヤイター「ネットのオリジナルマクロスを読書中、マクロスセツルメント…なかなか面白い。原作者お墨付き」自分しか映ってない自撮りだが明らかに誰かの膝の上に座り体を預けている写真…どう考えてもアルト君です本当にありがとうございました

 

87:プラモデルバンザイ

これで付き合ってないってマジ?

 

88:プラモデルバンザイ

事実婚に持ち込もうと二人で画策しているらしい

 

89:プラモデルバンザイ

インタビューされた時に「二人で仲良くはんぶんこしたいと思います!」と言い放った歌手がいるらしい

 

90:プラモデルバンザイ

愛されすぎてて草。はー羨ましい。

 

91:プラモデルバンザイ

にしてもヒマリちゃんおっきくなったよなー170㎝だったっけ?なかなかの高身長

 

92:プラモデルバンザイ

これで出るところ出て引っ込むところ引っ込んでるんだからまーじで勝ち組やなあの主人公

 

93:プラモデルバンザイ

声がフェリーニと似てるからってプレイボーイなところまで似るなよ

 

94:プラモデルバンザイ

フェリーニよりだいぶマシじゃね?キララさんと何度破局の危機に至ってるんだよあの伊達男、渋くなりやがって

 

95:プラモデルバンザイ

まあアルト君、腹くくってるっぽいしなあ、あの二人とくっつくつもりなんでしょ

 

96:プラモデルバンザイ

二股が許された男

 

97:プラモデルバンザイ

フロンティア最終話の名?台詞「お前たちが、俺の翼だ!」が放送された瞬間二人して「私たちが、あなたの翼だよ!」ってリプ送る攻めの姿勢よ

 

98:プラモデルバンザイ

まさかの逆告白、つーかもう第七回の時点でくっついてたんでしょ?そうだと言ってくれ

 

99:プラモデルバンザイ

全力で外堀を埋めに来てる二人である

 

100:プラモデルバンザイ

なおご両親全員既に陥落済み、無駄な抵抗を続けるアルト氏「やり切ってからちゃんと返事する」ってさ

 

101:プラモデルバンザイ

なおツムギさん、135㎝、全く伸びず3人並ぶと妻、夫、娘に見えてしまう悲しみ

 

102:プラモデルバンザイ

身長弄りしすぎると怒って引きこもるからやめてやれ

 

103:プラモデルバンザイ

弄りすぎるとアルト君に泣きつきに行くツムギちゃんきゃわわ

 

104:プラモデルバンザイ

子供服のモデルの話がきてぷんすこしてたってヒマリさんが言ってらしたわ

 

105:プラモデルバンザイ

一応作家…なんだよな?

 

106:プラモデルバンザイ

歌って踊れる作家だな

 

107:プラモデルバンザイ

最早アイドルでは?ボブは訝しんだ。

 

108:プラモデルバンザイ

頑なにソロデビュー拒んでるけど。「ヒマリが一緒だったらいい」という定型句

 

109:プラモデルバンザイ

本人人見知りだからな、知り合いが誰かいないと途端にポンコツに変わっちゃうらしいし

 

110:プラモデルバンザイ

ライブの準備の時ヒマリちゃんが席を外したせいで超オロオロしちゃってアルト君が顔を見せた時にすてみタックルして押し倒した話好き

 

111:プラモデルバンザイ

大型犬、いや小型犬かな?ワンちゃんじゃん

 

112:プラモデルバンザイ

知り合い以外顔を合わせたくなくて原稿とかそういうの全部ネットでやり取りしてるらしい

 

113:プラモデルバンザイ

引きこもりツムギちゃんかわいい、でも体力かなりあるよな

 

114:プラモデルバンザイ

ヒマリちゃんもツムギちゃんもライブで飛んで跳ねて空飛んだりしてかなり動くのに歌は全然衰えないのおかしい

 

115:プラモデルバンザイ

あとライブに当然のようにいてギター弾いてるアルト君もかなり謎

 

116:プラモデルバンザイ

なぜ普通面してライブでバンド率いてんだこのビルダー

 

117:プラモデルバンザイ

ふむ、ビルダーでファイターで、絵が描けて、音楽もできて作曲出来て、設計出来て、企画主導できて自分の城を構えるプラモ店の店主がいるらしい

 

118:プラモデルバンザイ

逆に何ができないんだお前は

 

119:プラモデルバンザイ

ヒマリちゃん情報によると料理もできるらしい。3人で並んで料理する自撮りが投稿されたこともある

 

120:プラモデルバンザイ

いい加減結婚しろ(半ギレ

 

121:プラモデルバンザイ

責任とれよオオン!?

 

122:プラモデルバンザイ

はーつっかえ!!

 

123:プラモデルバンザイ

無茶苦茶いいやがって

 

124:プラモデルバンザイ

あ、メイジンのツブヤイターが更新された

 

125:プラモデルバンザイ

帰国したのでアルト君と飲みに行くらしい

 

126:プラモデルバンザイ

大変やなメイジンホンマに…

 

127:プラモデルバンザイ

おしゃれなバーとかに行っても似合うけど大衆居酒屋でビールを流し込んでる姿も見てみたい

 

128:プラモデルバンザイ

メイジンがビールジョッキ持ってる絵面想像して笑った

 

129:プラモデルバンザイ

解像度がたかい

 

130:プラモデルバンザイ

さっき話題になったマクロスセツルメントがヤバい

 

131:プラモデルバンザイ

どうした

 

132:プラモデルバンザイ

いや、作者の方がツブヤイター更新してさ

 

133:プラモデルバンザイ

「原作者のサオトメ・アルト様に自作のオリジナルバルキリー、VF-45「ヴァルキュリア」のイラストをもらいました。家宝にします」何しとんねん原作者ァ!

 

134:プラモデルバンザイ

こんなフットワーク軽い原作者いる?

 

135:プラモデルバンザイ

原作者お墨付きの面白さを体感しに行こうってこれ小説なのかあ

 

136:プラモデルバンザイ

ふっつーに面白いぞ。読みに行くべし

 

137:プラモデルバンザイ

ワンチャンこれアニメにならねーかな

 

138:プラモデルバンザイ

原作者と担当ライターは重度のスコッパーでもあるのだ

 

139:プラモデルバンザイ

つまり?

 

140:プラモデルバンザイ

誰よりも投稿されるオリジナルのマクロスを楽しみにしている

 

141:プラモデルバンザイ

原作者のチェックはいるとかゲロはいちゃう

 

142:プラモデルバンザイ

話は変わるがアルト君、新作の動画まだですか?

 

143:プラモデルバンザイ

新しいの作るたびに変形とかを見せるためGPベースで動画とってくれるアルト君だいすこ

 

144:プラモデルバンザイ

VF-31の動画待ってるんだよお!

 

145:プラモデルバンザイ

SV-262もな!見た目単発機だろ!?双発ばっか作ってるアルト君の単発機みてえんだよお!

 

146:プラモデルバンザイ

永遠にVF-25の動画見返してる

 

147:プラモデルバンザイ

メイジンしか持ってないバルキリー、いいなあ

 

148:プラモデルバンザイ

ああ、ルシファーね。7回の時プレゼントしてずっとメンテしながら大事に使ってるんだって、メイジン。改造もしてないらしい

 

149:プラモデルバンザイ

完成度たっかいから現行機相手でも通用するの凄いよね。流石に本人たちの最新鋭機とってなったらまあ、だけど

 

150:プラモデルバンザイ

7年たっても通用するって相当だけどな

 

151:プラモデルバンザイ

まだ時代がやつらに追いついていない…!

 

152:プラモデルバンザイ

次のマクロスなんだろうな~~、楽しみ

 

153:プラモデルバンザイ

映画のインパクトが強すぎる

 

154:プラモデルバンザイ

作品を吐き出す速度も速い

 

155:プラモデルバンザイ

ファッ!?

 

156:プラモデルバンザイ

どうした

 

157:プラモデルバンザイ

アルト君のお店開いてるから行ってくる!

 

158:プラモデルバンザイ

なんですとぉ!!!

 

159:プラモデルバンザイ

ワイもワイも!

 

160:プラモデルバンザイ

うおおおおお祭りじゃああああ!

 

161:プラモデルバンザイ

ツチノコを捕まえろおおおお!

 

 




 活動報告のアンケ、全部多すぎでは?キャパシティーオーバーだって言ってるじゃないですかやだ~~!

 アンケート結果のコメントを閲覧中…

 「やってやろうじゃねえかこの野郎!」

 となったのでとりあえずかけるところから書いていきます。なので7年後のアルト君を語るスレをとりあえず叩きつけておきます。書いてて尻が痒くなりました。

 次回は何が投稿されるか分かりませんがよろしくお願いします

 それではまた


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その他もろもろ
フレイアwithハヤテ welcome to ガンプラワールド 前編


 作中で矛盾点が山ほど出ますがこのお話は本編とは全くつながらない話ですのでお気になさらずゆるーく読んでください。

 一応分類としては活動報告アンケートの⑤の選択肢のお話になります


 「え?ハヤテさんとフレイアさんを俺たちの世界に、ですか?」

 

 『そうだ、ここのところ働きづめでな。順番に休暇を取らせようという話になったんだが・・・いかんせんどこに行っても休みが休みにならなくてな』

 

 「あー…」

 

 色々あってマクロスの世界から懐かしい我がガンプラ蔓延る世界に戻ってきてはや一年、両親とかその他の迷惑かけた人たちへの土下座行脚も終わって何とか日常が戻ってきた俺の元にかかってきたのは世界を超えた超時空通信、フォールドクォーツとか、アリスタとか俺には理解できない超技術の塊が詰まったトランクサイズの機械が映す仮想画面に映るのは滅茶苦茶お世話になった大恩人、デルタ小隊隊長のアラドさんだ。

 

 なんか俺らが帰るとき迎えに来てくれたレイジの協力を得てアリスタとフォールドクォーツの合わせ技で世界を超える技術を開発してしまったレイナさんとマキナさん、こうして俺がアラドさんと話すことが出来るのもそのおかげってワケ。

 

それでアラドさんが言うにはここ最近ドタバタしてワクチンライブ漬けになってしまったワルキューレとデルタ小隊を順々に休暇に入れたいんだけどなにせ全員が全員有名人なわけで、出歩くと絶対にバレて休暇にならないらしい。そんで白羽の矢が立ったのが俺の世界、もう洗いざらい吐いてマクロスの事を明かした俺ではあるがまだ初代マクロスが公開寸前でΔはこっちで吐き出してないのでこっちでの知名度は皆無だ。そして比較的安全でもある。詰まるところ、羽を休めるならうってつけの場所ということだ。

 

 「じゃあ、いいですよ。ちょうど俺も長期休みに入って時間が取れるので」

 

 『助かる。日時はいつがいい?こっちで調整する』

 

 「そうですね…じゃあ3日後でお願いします」

 

 『分かった。アルト、二人の事をよろしく頼む』

 

 「ウーラ・サー!」

 

 『ははっ、いい返事だ。ではな、アルト中尉』

 

 冗談めかして言ったケイオスでよく使われている返事に対して、アラドさんも冗談めかして俺のケイオス退社前の功績から授与された階級で返してくれた。久しぶりにやった敬礼が様になっているかどうかは分からなかったけれども、笑いながら返してくれた敬礼は滅茶苦茶かっこよかった。アラドさん、憧れるな~。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで3日たった。現在俺がいるのは俺専用のアトリエ的な建物。将来はここで模型店を開くことが出来たらな~って思ってる。ちなみに購入して2か月そこそこ、流石に俺の部屋で2mサイズのクォーターとか増え続けるパーツとか実験材料とかを保管するのは床が抜ける恐れが出てきたのでもうプラモで生きていくことを帰ってから決めていた俺が両親に頼み込んで一括購入した。版権費半端ねえな、バルキリー売れるたびに俺の元に金が入ってくる。もっと世界にマクロスを広める為に頑張らねば

 

 父さんからもらった家庭用3Dプリンターよりも大型高性能な3Dプリンターを買ってお高い工具やらハイスペックパソコンもそろえた俺の城、ついでに向こうでレイナさんが餞別にくれたこっちの比じゃないくらい高性能な端末もおいてプラモ量産体制はばっちりである。手始めに初めて向こうでみたナイトメアプラスを設計して今出力してる。設計段階で今の俺のどの機体よりも高性能になりそうでワクワクしてる。百聞は一見に如かずだな!その内向こうで見たカイロスとかジークフリードとかメサイアとかルシファーとかデュランダルとか作っちゃうもんねー!

 

 「ん、そろそろかな?」

 

 そんな独り言を呟きつつ空き部屋へ、持ってきたトランクを開くと独りでにパタパタと変形して部屋の床に固定される。なんとこれ個人用フォールドゲートである。え?そんな技術あるわけないだろ?あるんだなこれが、実はプラフスキー粒子とフォールドクォーツ、信じられないくらいに相性が良かったのだ。アリスタが繋いだ世界の穴をクォーツが広げ、安定化。プラフスキー粒子が対象物を保護するという、俺がマクロス世界に落ちた現象をコントロールしつつ意図的に再現する装置である。やべーよマキナさんとレイナさん、どうなっとんねん。

 

 ぽちっとボタンを操作して起動状態へ、あとは向こうで勝手に操作してくれればゲートが開きってうぉっ!?はええよ!俺がスイッチを押して機械が立ち上がってすぐにフォールドゲートが開いた。慌てて飛びのいた俺の目の前でゲートからプラフスキー粒子があふれ出し、ドサッと音を立てて二人の人物が投げ出された。

 

 「ぐえっ!?ってー…おいフレイア、重いからどいてくれ」

 

 「あー!重いってなんねー!そんな失礼なハヤテなんて知らん!」

 

 「悪い悪い、事実だけど言ったら悪いことがあるもんな」

 

 「またそういうーーー!」

 

 何開幕からいちゃついとんねんおどれら。おっとマオがうつった。一番下にハヤテさん、その上に座るフレイアさんと大荷物。そりゃ重いわ。しかしまー、仲がいいのはよろしいことで。二人の左薬指に光るエンゲージリングを見た俺はすごくうれしい気分になってしまった。直接会うのは久しぶりだけど、しっかり仲良ししてるじゃん。式は何時だろ?招待は無理だろうけどお祝い品くらい作っておかないとね。

 

 「相変わらず仲良しですね~、ハヤテさん、フレイアさん、お久しぶりです!ようこそ、別世界の地球へ!」

 

 「アルト!ほんと久しぶりだな!ごめんな、俺らの世界のあれこれにまた巻き込んじまって」

 

 「いーーーえ!このくらいなら全然ウェルカムですよ!しっかり骨休めしてくださいね!あ、言葉通じてます?久しぶりに銀河共通語話すんで忘れてないかと…」

 

 「いやいや、日本語でいーぜ?俺たちも翻訳機付けてるからな、勝手に日本語に直してくれるはずだけど…」

 

 「通じますね、あ!フレイアさんもお久しぶりです!会いたかったですよ!」

 

 「ほんに!?私も会いたかったんよ~~!アルト、おっきくなったんね!?画面の前だと身長分からんかったし!」

 

 立ち上がって二人に駆け寄って挨拶する。ハヤテさんもフレイアさんも変わんないな~、特にフレイアさんはウィンダミア人の老化の兆候である結晶化は見える範囲では見当たらない。どうやら治療はうまくいってるのかな?まあ元気にワルキューレやれてるみたいだからあまり心配する必要はないのかも。でも何というか、綺麗になったって感じする。恋する乙女パワー侮りがたし、幸せ者だねハヤテさんは。あとルンが眩しい、でもこれがフレイアさんのいいところ。

 

 「まあ、それなりに伸びましたよ。もっと伸びるんじゃないですかね?ハヤテさんを見下ろすのが楽しみです」

 

 「んだと~~~?まだまだはえーよチンチクリン!それよりも、ここお前の家だよな?親はどうしたんだ?世話になるし挨拶すんのが筋だと思うんだけどよ」

 

 「ああ、ここ俺のアトリエみたいなもんなんで両親は実家にいます。滞在する間は自由に使ってくださいね。会いたいなら実家の方に行きますか?父さんたちも普通に迎えてくれると思いますよ」

 

 「会わせて欲しいんよ!アルトにはいっぱいお世話になったし、きちんとお話しするべきやんね」

 

 「ってアトリエだあ?お前そんな金…ってこっちだとお金持ち様なんだったなアルト姫様は」

 

 「ミシェルさんじゃないんですからその呼び方はやめてください。コーヒーでもお出ししますんで下までどうぞ」

 

 とりあえずフォールドゲートを折りたたんで二人の荷物を脇にやった俺はドアを開けて二人を先導しつつ階段を降りる、降りてすぐの休憩室的なポジションの部屋に入って、ポットの中からお湯をだしコーヒーを淹れる。あと冷蔵庫の中からケーキ屋のケーキを出して切る。皿に盛って二人の前へ、ソファの前の机に並べられたそれを見てフレイアさんの瞳とルンがキラキラと光った。

 

 「わー!あぷじゅーとアップルパイ!」

 

 「はい、お二人が来るということで用意しておいたんです」

 

 「気が利くな、相変わらず。んで気になってたんだけどよ。お前らの世界のガンプラバトルってやつ見せてくれよ。折角こっちに来たんだし見たいと思ってたんだよな」

 

 「いいですけど、もうちょっと待ってください。もうすぐもう一人来るはずですから」

 

 「あ!もしかしてツムギかヒマリ!?二人にもずっと会いたいって思ってたんよ~!」

 

 「残念、二人は今日お仕事でいませーん」

 

 「ルンショボ…」

 

 「相変わらずわかりやすいですね。夜には来ますよ、たまたまお二人が来る日程に被っただけですから」

 

 今日来るんやでって言ったら二人してレコーディング休む~~~!って言ってたけどどうにもなりませんでした。大人の世界は厳しいのです。それを話したらすっかりプロのフレイアさんはそれは当然やね~と言ってハヤテさんが噴き出してなんね~~~!と怒っている。このやり取り見るのもなっつかしーな~!

 

 え?ところで誰が来るかって?セイ?レイジ?はたまたマオ?残念ながら違うのである。ガチャリと玄関が開けられる音がした。お二人に断って席を辞して会いに行く。玄関前できれいに靴を揃えていたのは3代目メイジン・カワグチことユウキ・タツヤさん。いつものサングラスオールバックのメイジンスタイルじゃなくて髪を下ろしたタツヤさん本来の姿。

 

 「やあ、アルト君。すまないね、長期休暇なのに」

 

 「いえいえ、いいですよ。今お客さんが来てるんですけど…いいですよね?」

 

 「ああ、昨日話してくれた…向こうでお世話になった人たちかい?構わないさ、私も個人的に礼を言いたいと思っていたからね」

 

 「なぜタツヤさんがあの人たちにお礼を言いたいのかは分かりませんけど、どうぞ」

 

 そんなこんなでタツヤさんを引き連れた俺が部屋に戻る。部屋のドアを開けるとリンゴジュースとアップルパイを食べてニッコニコのフレイアさんにハヤテさんが自分の分のアップルパイをあげているところだった。フレイアさん嬉しそー。

 

 「別にお代わり欲しければまだありますよ?」

 

 「ほあっ!?いいん?じゃあお代わりくださーい!」

 

 「フレイア…そっちは…」

 

 「初めまして、ユウキ・タツヤと言います。アルト君とはちょっとした仲でね。できればお礼を言わせてもらいたくて。アルト君を助けてくださりありがとうございました」

 

 「いいって、実際助けられたのは俺らのほうかもしれねーし。俺はハヤテ・インメルマン、こっちが」

 

 「はっはい!ワルキューレの新人!リンゴ大好き16才!フレイア・ヴィオンです!」

 

 「よろしく。異世界の人とは聞いていたけどあんまり変わらないんだね」

 

 「いーや?例えばホレ、こいつのこことか?」

 

 「ほあああっ!?ハ、ハヤテ!だからルンはそう触っちゃいけん!」

 

 「なるほど、髪飾りか何かだと思ってたけど体の一部なんだね」

 

 「あー、見つめるのやめてあげてくださいねタツヤさん。そこルンって言うんですけどじっと見られるのは裸を見られるくらいには恥ずかしいらしいです」

 

 意外と穏やかなファーストコンタクトだが、そこでタダで終わらせないのがハヤテさんである。初めての相手でルンを光らせながら緊張するフレイアさん、ハヤテさんはにんまり笑うと説明ついでみたいなあっさり感でフレイアさんのルンを突っついた。恋人同士でもやはり恥ずかしいものは恥ずかしいらしいフレイアさんが素っ頓狂な声でルンを眩しいくらいに光らせて抗議してる。これが銀河を震わす戦術音楽ユニットのもう一人のエースボーカルの姿である。ケイオスの人たちが末っ子扱いするのがわかるなー。

 

 「あ、来て早々に申し訳ないんですけどタツヤさん、ちょっと付き合ってもらえます?二人とも、ガンプラバトルに興味津々なんですよ」

 

 「へえ、勿論いいとも!私の役割は楽しいガンプラを広めることだ。当然、異世界の人相手でも楽しめるバトルをするのが仕事でもある」

 

 「流石ですメイジン。今年の優勝者は伊達じゃないですね」

 

 「そういう君も来年初開催の無差別級の優勝候補筆頭だろう?帰ってきてから一段と強くなっている。君がガンプラバトルをやめなかったことが私は嬉しいんだ」

 

 「周りの人が撃たせてくれなかったもので。辞める理由が無くなっちゃったんですよ…本当に、本当にありがたいことです」

 

 「メイジン…ってなんだ?」

 

 「えーっと…平たく言うとガンプラバトルを代表するビルダーの事です。圧倒的な作品を作った初代、最強のファイターだった2代目、そしてここにいるタツヤさんが3代目のメイジン。超強いファイターでビルダーってことですね」

 

 そう言いつつ立ち上がった俺が3人を先導して作業場のドアを開ける。中は結構広くて店を開いた時ここを店舗にしようかなって考えてる。真ん中に4つのGPベース、他は工具やら何やらが雑多に置かれて、棚には作り上げてきた作品がマクロスとガンダムに分かれて飾られている。そして、異様な存在感を放つのは強行形態のままマクロスキャノンを構えたポージングで固定されたマクロスクォーターである。店開いたらこいつをランドマークにして名物化しようと思うの。あ、マクロスとハルプは修復されて現在ヤジマ本社のエントランスホールに飾られてるよ。連日ファンが押しかけてるんだって。

 

 「でっ!?これマクロス級か!?」

 

 「はい、マクロス・クォーターです。SMSの方の戦艦ですね」

 

 「で、でかるちゃ~やね~。ほんにアルトが模型でマクロス作っとったんやね~」

 

 「ああ、ビルダーとしてならば私は正直完敗かもしれないな。アルト君の技術は、世界最高レベルと言っても過言ではない」

 

 「言い過ぎです。セイとか、それこそ貴方とか。俺がプラモを弄ってない間で大きく差をつけられました。追いつくのに必死ですよ。あ、そうだハヤテさんフレイアさん」

 

 「ん?なんだ?」

 

 「せっかくなんでどれ使うか選んでください。ジークフリードはないですけど、そっちから」

 

 「へえ、面白いじゃん。フレイア、来いよ」

 

 「わあっ引っ張らんでもちゃんと行くね!もう!」

 

 そんな感じの二人が仲良くバルキリーやらデストロイドやらゼントラーディの兵器やらが並んでいる棚に足を運んであーでもないこーでもないと言いながら俺の作品の前で頭を突き出しながら相談してる二人と見て、俺が知っている話とはかなり違う感じで終わったけれども、それがきっといい方向だったんだなと、そう感じたのだった。

 

 




 ハイ、そんなわけでフレイアさんとハヤテさんがビルド世界に来るお話でした。気づく方もいらっしゃいましたと思いますがトライ編ではマクロス世界とは全く連絡がつかない設定なのでこのお話はもしも、ということになります。なのでどんだけ設定変えても大丈夫!あとΔは通称優しい世界を採用しておりますのでご安心ください。

 もし反響がよければメッサーさん&カナメさんペアとかレイナさん&マキナさんペアとか、美雲さん&ミラージュさんとか、チャックさん&アラドさんとかいろいろな組み合わせでやってみたいですね。

 あと全力で世界観を壊しにかかるならワルキューレとデルタ小隊がビルド世界でワクチンライブ&エアショーとかやったら掲示板が消し炭になりそう。流石にやりすぎなのでやらないですけど。

 一応この話は前中後半か前後半で行きたいと思いますのでよろしゅう

 ではまた次回、これとは別の話かもしれませんが更新したらお会いしましょう


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フレイアwithハヤテ welcome to ガンプラワールド 中編

 「なあ、アルト。バルキリーもいいんだけどさ、こっちはダメなのか?」

 

 ガンプラバトルで俺が使う機体を選んでいたハヤテさんが指さしたのはガンダムの方の棚。それもそうかも。バルキリーが動くのも見せてあげたいけど本物を見慣れているハヤテさんからしたらこっちの方が新鮮で見てみたいと思うのかな?それならば

 

 「全然いいですよ。最近ガンプラの方も苦手克服したので」

 

 「おっ、いー感じ。んじゃあ、これは?」

 

 「いいですけど、なんでこれを?」

 

 「んー…直観、だな。多分一番いー感じなのがこれだと思う。な、フレイア」

 

 「はいな!なんとなーく、それが一番強そうやったんよ!」

 

 お目が高い、と言わざるを得ない。彼らが指し示したモビルスーツ、俺の趣味で可変機しかないガンプラの中での最高傑作。バルキリーのフルスクラッチだけではいずれ頭打ちになるかもと帰ってきて半年でそう思い、作成した機体だ。その名もガンダムハルート最終決戦仕様。キットで作ったほかのやつとフルスクラッチのこいつを勘で見極めたのは流石は感性全振りの男と飛べば飛べる女。じゃあ、決まりだな、とケースからハルートを出してMA形態から変形させる。ゴーストの扱いを経てビット系の操作が大得意になった俺だ。タツヤさん相手にこれでどこまで行けるか。

 

 「じゃ、やりましょうかタツヤさん。軽く、お願いしますよ」

 

 「久しぶりなんだ、アルト君。悪いが加減が効きそうにない。既に私は燃えている!」

 

 「急にキャラ変わったな…」

 

 「ほぉえ~~。ユウキさんのガンプラ?凄いかっこいい~」

 

 GPベースにガンプラをセットする。正直ハルートで勝てる気がしないんだけど。だってタツヤさんもうメイジン状態に入っちゃったもん。髪かき上げて瞳めっちゃ鋭くしてさ。しかも機体…現在の愛機であるアメイジングストライクフリーダム、滅茶苦茶にヤバイ完成度だ。どこまで食い下がれるかな。だけどねメイジン、俺にも見栄をはりたい時があるんです。今まで使わないようにしてましたけど、解禁しますよ?ゴーストじゃないけど…戦場仕込みの操縦を見せてあげます!俺は立体映像に包まれ、コンソールを力強く握るのだった。

 

 

 

 

 

 「だあああああ負けたあああああ!!!」

 

 「いや、ほとんど引き分けだぞアルト君。なぜ今まで隠していたんだ?その操縦を」

 

 「すげーな…いや、引き込まれたわ。フレイア?」

 

 「すっごい!すっごいんよー!わーってしてぐーってなって!もうゴリゴリ~~~!!!」

 

 「わわ、フレイアさんありがとうございます。いや、実はこれ向こうで教わった操縦なんです。いい加減、本気を隠して操縦するのも失礼ですから…相手を壊す操縦ってどうも主義に反する感じでしたけど、これも俺なんだって最近思うようになったんです。タツヤさんを呼んだのも俺の全部を見せたかったからで」

 

 結局、負けてしまった。真っ二つに胴が泣き別れになりシザービットとGNキャノン、両腕をすべて失った俺のハルートに対してアメイジングストライクフリーダムは片腕、片足脱落、ブレイブドラグーン全喪失という感じだ。確かに状態だけ見れば引き分けに近いかもしれないが負けは負けである。俺は向こうでメッサーさんに人を殺したくないのならばと徹底的に戦闘力を奪う操縦を身につけさせられた。俺の事情を汲んでくれたメッサーさんの指導でそれを身に着けた俺ではあるが、ガンプラバトルからすれば舐めプに近い技術だから今まで使わずにいた。

 

 「全部使わない方が失礼ですからね。踏ん切りがつかなかっただけで、ところでフレイアさん」

 

 「はいな?」

 

 「いい加減恥ずかしいんで降ろしてください」

 

 さっきからフレイアさんに高い高いの状態で振り回されてた俺、かっこ付かない。ウィンダミア人は身体能力が高いからねーあはは~。そう思っているとハヤテさんがワクワクした感じでボソボソ言ってる。

 

 「確かにこれは面白そうだな…なあ、俺もこれできるか?」

 

 そう言った瞬間タツヤさんの瞳がキラーンと光る。これはあれだ、入っちゃったな布教モードに。フレイアさんが俺を下ろしてくれる。じゃあキットを組み立ててみるのはどうかな?というけど違うんですよメイジン、この人本職パイロットなんですから、こっちの方がいいと思います。

 

 「ハヤテさん、VF-1EX使います?要は、風に乗りたくなったんでしょ?」

 

 「おっ、分かってるな~アルト!あれ見せられたらさ、いー感じの風が吹きそうだと思うだろ?」

 

 「いきなり操縦かい?こういったらなんだがバルキリーは難易度が高いだろう?慣れるための機体を組んでからでも悪くはないと思うけどね」

 

 「あ、タツヤさんに言うの忘れてた。ハヤテさん、本職パイロットですよ。向こうで実際にバルキリー飛ばしてます。こんなの。イメージが大事なガンプラバトルで本物を知ってるんだから平気ですよ」

 

 「本当か!?パイロット…凄いんですね、ハヤテさん」

 

 こんなの、の所で端末に保存してあるジークフリードとパイロットスーツ姿のハヤテさんの写真を見せるとタツヤさんは目を見開いてハヤテさんを褒めている。まあ、ガンプラバトルをやってるやつは絶対に一度は本物のMSに乗れたらなという夢を抱くものだから、形は違えど本物を動かす立場にある人と会ったら尊敬の念が湧き出てくるものだ。実際に俺がそうだし、戦争を経験したハヤテさんの操縦は素晴らしいものだから。インメルマンダンス、久しぶりに見たいな

 

 「よせよ、俺は自由に飛びたいだけだ。そこにこいつの歌があったら最高にいー感じだけどな」

 

 「ハヤテ…にひひっ。いつでも歌ってあげるんよ!何なら今からでも!」

 

 「嬉しー提案だけどよ、今はこっちだぜ?フレイアもやってみたらどうだ?」

 

 「んーん、私はいいんよ。ハヤテが飛ぶところを見れたらそれでいい」

 

 「そっか。んじゃあ見ててくれよ。飛べば飛べる、だろ?」

 

 「はいな!」

 

 「アルト君、ブラックコーヒーはあるかい?」

 

 「どうぞ。式はいつですかね~」

 

 イチャイチャのやり取りを見て口の中が甘くなったらしいタツヤさんに淹れておいたコーヒーを渡す。二人でぐいーっと飲んだブラックコーヒーがカフェオレに感じた。流石は全銀河規模で公開告白した男、この程度のイチャつきはジャブだというのだろうか。そうこうしているうちにハヤテさんはVF-1EXをGPベースにセットした。俺が操作してGPベースのモードをバトルからフリーに入れ替える。下は海で入道雲と青い空に飛び出したバルキリー、すぐさま風を掴んでふわりと浮く。

 

 「おっ?お~~~!すげえな、スロットルだとかペダルだとかはねえのに自分の好きに動かせる!AIの補助もない分、こっちの方が自由かもしれねえ!」

 

 「流石は本物…!何も説明していないのに乗りこなしている。操縦に癖のあるファイターをあんな自在に!」

 

 「流石は感覚派筆頭です!やりますねハヤテさん」

 

 飛行機雲の軌跡を残して広い空を駆けるバルキリー、VF-1EXとはいえハヤテさんの操縦技術は本物だ、デルタ小隊で培ったエアショーの技術は遺憾なく発揮されている。鮮やかかつ繊細で時に大胆、俺が最後に見た時よりも鋭く巧みでそれでいて楽しそうだった。戦争ではなくただ空を飛ぶという行為をようやく成し遂げられたハヤテさんはずっとずっと成長しているんだろう。

 

 「一度だけの恋なら 君の中で遊ぼう 我がままなキスをしよう」

 

 ハヤテさんがあまりに楽しそうに飛ぶからか、それを物凄く嬉しそうに見ていたフレイアさんの口から思わずと言った感じで歌が紡がれた。翻訳機の進化かどう聞いても日本語で歌われる、一度だけの恋なら。それを聞いたハヤテさんがにんまりと笑う。言葉にするなら何時もの口癖のいー感じ、というやつだ。もうすぐサビというところまできてノってきたハヤテさんが海面すれすれまで高度を落とす。

 

 「一度だけの恋なら 君の中で遊ぼう 光より早くキスをしよう 待っててね」

 

 ファイターガウォークで海面に足をつけてスケートのように移動する。そのままバク中でバトロイドに変形して海面に着地する。しぶきを上げる水を切り裂いて正しくダンスのような動きをするVF-1EX、すっげえ。リズム感覚というか乗り方に息がぴったり合いすぎている。やばいなこれ、俺の方が引き込まれそう。

 

 「忘れかけた体も ただ聞こえる心も 夢の中のシガラミなんて飛び越えて!」

 

 空中で小刻みに足を入れ替えつつタップダンスのように動くバルキリー、ダンサーとしても素晴らしいがそれをプラモデルでやっているハヤテさんが一番ヤバい。俺もできるかできないかで言ったらできるがあんなアドリブで流れるようにやるのはちょっときついかもしれない。それだけ難しい。

 

 「ほら 攫って 迫って このまま」

 

 最後のサビが終わるぐらいで飛び跳ねたVF-1EXはエビぞりのウミネコのような動き、いつかのウミネコターンで回転しつつファイターへ変形し飛び去った。いひひとにんまり笑ういたずらっ子のようなフレイアさんとグッとグッドサインを立てるハヤテさん。俺とタツヤさんは突如繰り広げられたプロのパフォーマンスに全力の拍手を送るのだった。結局歌ってるけどこれ休みになってるの?

 

 「「いー感じ!」っておいフレイア」

 

 「ハヤテがこうなったらそう言うって知っとるもんね!どう?楽しかった?」

 

 「ああ、データの空っていうが全然悪くねえ。鳥の気分っていうのはこういうのかもな」

 

 「ほんにね。ハヤテがライブと同じくらいノれるなんて、侮りがたいね~、ガンプラバトル、でかるちゃ~!」

 

 「その…でかるちゃ~っていうのは何の事なんだい?」

 

 「向こうの言葉で「信じられない!」とか「ヤバすぎ!」っていう意味があるゼントラーディの言葉です。簡単に言えば驚きと感動を現す最上級の言葉と考えていいですよ」

 

 「それは…なんだか嬉しいね。他の世界の人たちに自分たちの世界のものが認められるなんて」

 

 ニッコニコのフレイアさんの言葉を解説した俺、デカルチャー、実際言葉にするのは難しいのだが意味にするならこうだろう。それを理解したタツヤさんは穏やかに笑っている。楽しいガンプラバトルを普及すること目指しているタツヤさんは噛み締めるようにそう口にした。文化はどこだろうと通じるんですよ、異世界だろうが、異星の人だろうが。ここにいる二人がそれの実証者ですよ、タツヤさん。

 

 

 

 「戦術音楽ユニットワルキューレとデルタ小隊…凄い話だ。歌で病気をどうこうできるなんて」

 

 「でも、フォールドレセプターっていうのがないとヴァールは鎮められないんよ。平和になっても、やっぱりどこかでおこっちゃうもので…」

 

 「鎮圧ライブに行くたびひやひやするぜ、こいつ躊躇なく飛んで跳ねてヴァール発症者に接触するもんだからよ。美雲の真似もほどほどにしろよな」

 

 「やってて思いましたけど生身で戦場に行くって大分キテますよね。一歩間違ったらミサイルが飛んでくるんですけど」

 

 「…よく無事だったね、3人とも」

 

 「いやー、無事というか何というか…」

 

 「お前がアイテールの甲板から吹き飛ばされた時はホントもうダメかと思っちまった。あとマキナを庇って狙撃を受けた時だな」

 

 「あれは、その…あはは~…」

 

 「あははじゃねえ、血の気が引いたんだぞ、全員」

 

 休憩室に場を移しての思い出話、ハヤテさんの小言に乗っかった俺に返ってきたカウンターにたははと笑うしかない。だってしょうがないじゃん!前者はミサイルの爆発からワルキューレとヒマリにツムギを守るためにシグナス総動員したら俺の防御が間に合わなかったせいだし、結局そのあとフレイアさん飛び降りてたじゃんか!後者は狙撃に気づいたタイミングが俺の方が早くてレイナさんを庇うマキナさんの前に気づいたら勝手に出てしまったのだ。結果的に肩を弾丸が通っていっただけで済んだから問題ないよ!きちんと生きてるから!

 

 あー、でもやった後しこたま怒られたんだよね~。ヒマリにツムギは泣いちゃうし、カナメさんから始まりアラドさんを経てついには美雲さんにまで説教くらったこともあったっけ。何というか体が勝手に動いちゃったんだよ。俺だって自分が大事じゃないわけじゃないんだけど…それよりも上に大事なものがあるわけではい。エゴです自己満足です何が悪い!結果的に無事だから大丈夫でしょう!?確かに一時期ベッドとお友達だったけど!

 

 「本当に、よく帰ってきたなアルト君…!」

 

 「ちょっとタツヤさん!?そんな噛み締めるように言わないでください!腕や足が吹っ飛んだわけじゃないんですから!」

 

 「いやそれが普通の反応だぞアルト」

 

 「アルトって変なところで自分を大事にしないんよね。いっつも誰かを庇って危ない目にあっとるんよ。ほんにちゃんと帰れてよかったね~」

 

 あれ?よくよく考えたらそうかもしれない。いかんな、帰ってきて一年たつけど価値観が戦場から帰ってきてないかも?確かに知り合いが事件に巻き込まれて一時期すんげえ怪我してたってことやんな、行方不明のおまけつきで。でも鎮圧ライブ行くと砂まみれ泥まみれ切り傷擦過傷打撲なんて日常茶飯事だったし、女性でアイドルなワルキューレやヒマリにツムギはともかく俺本体は結構おざなりだったのは否定できないし気にもしてなかったや。

 

 でもさっきの話なんて序の口ですよタツヤさん。まだいろいろありますけど一番ヤバかったのはアレですね、ワルキューレとデルタ小隊と分断されてリルドラケン6機とドラケンⅢ2機をゴースト4機でどうにかしなきゃいけなかったときですね。

 

 ハヤテさん覚えてます?え?あの時でお前から目を離すとヤバいって学んだ?またまた大袈裟な。確かにビームの至近弾で結構な火傷をもらいましたけどあの時はアドレナリンドバドバ&レセプター全開で痛みとかわかんなかったですよ。ワルキューレの歌も届かなかったから自分で歌わないとまずかったですしね。超必死だったんですよタツヤさ…ぐええええ苦しいです!?

 

 ちゃんと生きてますから!向こうの医療おかげで傷一つ残ってないです!あちょっ!ハヤテさんフレイアさん助け…え?当然の反応?その時の私たちの気持ちを味わうといいんよ?それに関しては申し訳ないと思っているんですけどタツヤさんの全力はまずいです潰れます!この人インドア派なくせにムキムキなんですよぐええええええ!?




 中編デース。やっぱりハヤテさんはインメルマンダンスしてこそですね、フレイアさんとのバディで彼女の歌の風に乗る姿が一番かっこいいし一番強くなれると思うのです。

 次回で終わり、といきたいですね。もしかしたらもう1話くらい増えるかも。これ終わったらトライ編の続きを書くんだ…!正直もうパンクしかけててやばいかもあっはっは~~。

 ではまた次でお会いしましょう


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フレイアwithハヤテ welcome to ガンプラワールド 中編その2

 「潰れるかと思いました…」

 

 「いや、当然の反応っていうか話してなかったのかよ」

 

 「生死を懸けるのが鎮圧ライブのお約束だったので特別感薄れてて…なんか麻痺してました」

 

 「あの~私が言うのもなんやけど、アルトはもっと自分を大事にするべきなんよ」

 

 「悪運が強いのは分かったからもうちょっと怪我しない方面で動けよ」

 

 なんてひどい言われようなんだ、ベアハッグでミシミシとなる体を解放したもらった俺がそう漏らすと物凄い勢いで元同僚から突っ込みが入った。ちゃうねん、優先順位があるだけで俺も怪我したいわけじゃないんです!ちょっと俺自身よりも大切なものが多いだけで平時だったら普通にやりますとも!向こうにいた時は毎日が非常事態だったからああなっただけでこっちにいる俺はどっちかといえば自己中やぞ!

 

 「正直ぶっ倒れるまで訓練してメッサーのやつに運ばれてるのが毎日だったからなあ…信じられねえ」

 

 「なんでそんなに俺の信用度低いんですか!?」

 

 「それはケイオスにいる間に何回ヒマリとツムギを泣かせたか数えてから言うべきなんよ」

 

 「ぐぬぬ……」

 

 「アルト君、知らない私が言うのもおかしいかもしれないが彼らの言ってることは正しいんじゃないかな」

 

 ええそうですよ確かにド正論ですとも!向こうで怪我して気絶したりするたびに目が覚めたら涙で顔が濡れた二人が真っ先に迎えてくれましたよ!それについてはホントに申し訳なく思ってるんだけど…当時必死過ぎて何とかしなきゃが先行して止められなかったんですよね。

 

 だってだって何でか俺に向かって無駄に攻撃が集中するんだもん!なんでや!って思って戦争終結後騎士団に聴いたら俺がゴーストを操ってるのがバレてました。俺から風が吹いてそれがゴーストに行ってたからこいつが操縦してるんならこいつやっちまったらゴーストが弱体化するやろ、ワルキューレもワンチャン排除出来てお得や!という感じだったらしい。なるほどそれでミサイルが一気に10発飛んできたりしたんやな!

 

 「そういえばボーグさんとかヘルマンさんとかお元気です?空中騎士団の皆さんとはあれから連絡とってないもので」

 

 「お前…一応あいつら敵だったんだぞ」

 

 「それはそうですけど、なんだかんだ言って最後は俺の事助けてくれましたし。ヘルマンさんは裁判の時に俺たちを助けようとしてくれましたし」

 

 「だからってそんなあっけらかんとなるもんかぁ?ボーグに至ってはお前に大火傷させた張本人だろ」

 

 「なんだか…向こうでのアルト君は相当無茶をしでかしたようだね…」

 

 「そうなんよ!もうユウキさんアルトの事捕まえて離しちゃだめなんよ!ちょっとほっといたらいつの間にか怪我しとって!」

 

 「ああ、身に染みたよ。アルト君、これから出かけるときは誰かと一緒に出かけるんだぞ」

 

 「そんな子供じゃないんですから!」

 

 「「「子供だよ!!!」」」

 

 あまりにもあんまりな言われ方である。訴訟も辞さない。まあそんな笑い話…笑いどころはない気がするけどそれはそれ、これはこれ。お休みなハヤテさんにフレイアさんに重い話をいつまでもさせるわけにはいかないのでお出かけしましょう!え?話逸らした?はははまさかそんな。そろそろお腹空きません?いいお店あるんですよ~。うし、誤魔化せたな。なんか全員のジト目が怖いけど無視だ無視!あ、フレイアさん帽子でルンを隠すのだけお願いします。こっち純地球人しかいないので。

 

 

 

 

 「ほあ~~!全然ラグナとは違う景色やね~~」

 

 「だな、やっぱなんか古いっつーか技術が元から違う感じがする」

 

 「そりゃあハヤテさんの所は個人端末で仮想画面ですからね、こっちはまだタッチパネルですよ」

 

 お仕事があるから帰るというタツヤさんに盛大に口を酸っぱくして事故に気を付けるようにとか言われたけど釈然としない。もうお昼を少し過ぎた感じなんだけど、いつも俺がお世話になっている商店街にやってきた。ハヤテさんもフレイアさんもやっぱり一度焦土にされた地球を知ってるからか、かなり物珍しそうにあたりをきょろきょろしてる。まあ二人とも見た目外国人だから異国が珍しいで通じるでしょう多分、最悪俺が何とかすればいいし~。

 

 「ねね、アルト!ここってラグナの商店街と一緒なんよね?」

 

 「そうですよ~。ちょっと待っててくださいね~。おばちゃん、コロッケ3つ!」

 

 「はいよ、アルト君のお友達?」

 

 「はい、外に行ってた時にお世話になりまして、こっちに遊びに来てくれたんです」

 

 「まあまあ、それはいいことね!それじゃ、メンチカツおまけしちゃうわ!楽しんでいってね!」

 

 フレイアさんがあっちはなんね?こっちはなんね?と色々はしゃぎまわって俺に聞いてくるのに逐一答えながら俺はいつもお世話になっているお肉屋さんのおばちゃんにコロッケを注文する。マクロスの世界に落ちる前どころか転生した時からお世話になっているおばちゃんは顔見知りの俺がお世話になった人という紹介を聞くと破顔して注文のコロッケどころか肉汁溢れるメンチカツをおまけしてくれた。お礼を言って受け取り、つったかたーと二人のところまで戻って包み紙に包まれたそれを渡す。

 

 「どうぞ!この商店街でもおすすめの食べ歩きグルメです!美味しいですよ!」

 

 「お、ありがとさん…ってこれコロッケか?本家本元は初めてだな」

 

 「おお~ウィンダミアにも似たような料理があるんよ。いっただきま~す!ん!おいしい~~!」

 

 そういえばラグナにもコロッケやメンチカツはあったな~、こっちで食べるのとはやっぱりなんか違ってヒマリやツムギと一緒に首をかしげてたっけ。帰ってきてからこっちで改めておばちゃんの店でコロッケ買って、それをかじったらなんか3人そろって泣けてきちゃっておばちゃんを困らせたのも懐かしい。まあそんな話はともかく、フレイアさんはかなり気に入ってくれたみたいだ。よかったあ。

 

 「お~~、旨いなこれ!何個でもいけそう」

 

 「そうでしょうそうでしょう!あ、見えてきました。目的地です。俺の学校の友達の家なんですけど、レストランなんですよ」

 

 「お、なるほどな!正直これじゃ腹膨れねーと思ってたんだ。行こうぜ」

 

 「でもハヤテ、私らこっちのお金もっとらん…」

 

 「何言ってんですか!俺が全部出すに決まってるでしょう!そうと決まれば行きますよ!」

 

 そういえばお金持ってないとおろおろしだすフレイアさんとあっやっちまったみたいな顔をしているハヤテさんの手をひっつかんで引っ張る。こういうのは気づかれないうちに払ってしまったもん勝ちではあるがこういうのもアレだがお金はきちんとあるのだ。それをお世話になっている人のために使うことの何が悪い!というわけでコウサカのお父さん!日替わり定食3つ!よろしくお願いします!おっチナじゃん!珍しいなお前が実家手伝ってるなんて。セイとはうまくいってる?順調?あいつ鈍いから苦労するぞ~~。え?俺?俺はまあ、あれだ、あれ。うん。

 

 

 

 

 

 「美味しかったんよ~~~!」

 

 「ああ、正直驚いた。チャックの裸喰娘娘に匹敵する旨さだったな。地球侮りがたし、って感じか」

 

 「滅茶苦茶高評価で嬉しいです。次はどこに行きましょうか?」

 

 「ん~~、アルト、こっちの音楽ってどんなのがあるん?私、気になるんよ!」

 

 「お、確かに。昔の音楽も残ってるんだろ?カナメさんからも「絶対に聴いて持って帰ってきてね?ね?」なんて言われてるしよ」

 

 「ハヤテさんそれカナメさんの声真似ですか?似てませんよ?」

 

 「うっせーなー」

 

 レストランコウサカで食事を済ませた俺たち。ちょうどよくチナのやつが顔を出していたのであれこれと二人を紹介した。俺たちが異世界に行ってたのを知っているのは両親にセイとレイジ、タツヤさんにカイザーさん、それとニルスとその部下たちくらいだ。ヤジマの上層部も知っているがどこにも漏れてない。だからチナのやつは何も知らないし連絡不備で外国を回っていたということになっているから話を合わせてもらった。

 

 そんなこんなで俺が会計をして外に出る。そうして二人にリクエストを聞くと音楽、とのことだったのでCDショップに向かうことにした。そういえば向こうだと音楽って配信で聞く感じだからCDとかの媒体はなかったね。ビデオデッキを見てデカルチャーなオールドデバイスって言われた時には頭にひよこが舞うくらい衝撃を受けたものなんだけど。ついたCDショップを前にしてフレイアさんが凄い凄いと興奮しだした。まだ聞いてもないんだけどね~

 

 「お、おお~~!ほんにたくさんあるんね!アルトだったらどれがおすすめ?」

 

 「俺が薦めると大体ガンダムとかになるんですけど…」

 

 「ガンダムっつーとあれか?お前らがよく歌ってたやつだろ?」

 

 「そうですそうです。作品に使われてる主題歌とか、エンディングテーマとか、挿入歌とかたくさんあるんですよ。この店だったら…ここですね」

 

 「なっ…こんなに種類あるのか!?」

 

 「ええ、まあ40年続いているコンテンツですから、作品の違いはあれ一貫してガンダムの括りですね」

 

 おすすめ、を聞かれるのであれば俺の場合マクロス以外ならガンダムと答えるしかない。何といってもこの世界に来てマクロスと同じくらい付き合っているコンテンツなわけで、セイと一緒に耐久初代ガンダム一気見チャレンジ一とかZガンダム名台詞しりとりとか、SEEDシリーズをレイジ巻き込んでみたりとかしたから多分マクロスの次に詳しいコンテンツになるんじゃなかろうか。

 

 「40年!?ウィンダミア人が産まれて子供残して風に召されるくらいの年なんよ…」

 

 「40年っていうのはそりゃ凄いなって棚いっぱいこれガンダムなのか…」

 

 「本家も含めてアレンジとかカバーとかもありますからね。作品でまとめられてるやつとかもありますよ」

 

 案内した場所にあるのは棚いっぱいのガンダム、ガンダム、ガンダムのジャケットの山。本家本元の人が歌っているものもあれば作品ごとの歌を収録したベスト盤、別のアーティストのアレンジ、カバーを収録したCDなどが一挙にまとまっている。その中に、ラクス・クラインのキャラソンをカバーしたらしいキララさんのCDがあって思わず手に取った。とりあえずかっとこ。

 

 「ん~~いっぱいあってどれから聞いたらいいかわからんよ~~」

 

 「じゃあ、俺が好きな作品のやつ聞いてみてくださいよ。ガンダムの曲は名曲ぞろいですから!」

 

 「おっ自信ありだなアルト。じゃあ選んでくれよ、いっちょ聴いてやるぜ」

 

 「ふふん、任せてください!」

 

 俺はそう言って試聴用の端末をパパパッと操作する。フレイアさんには…そうだな、機動新世紀ガンダムXの「DREAMS」がいいかな~、そんでハヤテさんには機動戦士ガンダムF91の「ETERNAL WIND ほほえみは光る風の中」を聞いてもらおう。完全なる俺の趣味だけどいい曲なので許してもらいたい。

 

 前奏が流れ始めた瞬間二人はスッと顔を真剣にして瞳を閉じる、フレイアさんもハヤテさんももうプロだからある意味当然か。音だけの世界に集中する二人をそっと置いて先に俺はキララさんのCDのお会計を済ませてくる。戻ってきたとき、俺が行ったときと全く同じ体制の真剣な表情で音楽に聞き入る二人を見てやはり文化というものは通じるものなんだなと改めて感じる。

 

 「デカルチャー、いー感じだ」

 

 「ほんに、デカルチャー、やね。アルト、これっていつの音楽なん?」

 

 「フレイアさんが聞いてるのが1996年で、ハヤテさんが聞いてるのが1991年の音楽ですね。分かりやすく言うと第一次星間大戦以前の音楽です」

 

 「ってことはこれ、失われた文化の一つかもしれねえのか!」

 

 「と、とんでもないものを聞いてしまったんよ!」

 

 「うーん、そっちの地球とこっちが一緒だっていう保証はないですけど…まあ古さで行ったらそうかもしれないですね。向こうに持って帰ったら面白いことになるかも?」

 

 「持って帰るのはこえーよ。文化遺産扱いだぜ俺らのとこだと!」

 

 俺の解説を聞いて青を通り越して白い顔になる二人。ゼントラーディに焼かれた地球の文化の中にガンダムがあったかどうかは分からないけど年表が変わらないなら音楽も似たような成長をしているはずだと思う、と俺は適当考えながらとりあえず初代から始まりアナザーガンダムに至るまでの作品のCDをかたっぱしから籠に突っ込んで会計した。え?お土産必要でしょう?カナメさんに持って帰ってきてって言われてるみたいですし。文化交流ですよ一部ですけど。あ、でも取り扱い注意してくださいね、もしかしたらえらいことになるかもしれないので。布教完了、セイがいい笑顔で親指を立ててるのが見えるぜ。

 

 「こんだけあると流石に重いですね…」

 

 「いやいや、持たせてくれよ。払わせっぱなしじゃ居心地悪いぜ」

 

 「そうなんよ!こんなにたくさん、私にも持たせてほしい!カナメさんたちにいいお土産ができたんよ~」

 

 「ありがとうございます。そう言ってくれると嬉しいですね。じゃあ、次はこっちです」

 

 「まだどっか行くのか?」

 

 「ええ、次で最後にしようかと。レコーディングスタジオに行きましょう。ヒマリとツムギを迎えに」

 

 「おっ!そりゃいいな!フレイアも二人に会いたがってたし、俺も顔が見たいしな」

 

 「はいな!ほんにほんに久しぶりに会えるんね!?う~~~楽しみになってきた~~!」

 

 両手にいっぱいのCDを入れた袋を持ち上げながら帽子でも隠し切れないくらいルンを煌めかせるフレイアさん、二人には迎えに行くことは伝えてないのできっと驚くだろう。俺も俄然楽しみになってきた!じゃあ行きましょうか、と二人を促して俺はスタジオへ歩みを進めるのだった

 

 

 




 やっぱり終わりませんでしたわ。すまんな、もうちょっとだけ続くんじゃ。

 次回で最後、にできたらいいなあ。書いていくうちに勝手に文字数が増えていくんだからもう。

 マクロス世界にガンダムあるのかな?あったらあったで夢が広がる気がするけど。第一次星間大戦で全部まっさらになっちゃったからなあ。特撮とか無くなっちゃったのかな?寂しい。
 
 ではまた次回にお会いしましょう。何回も分割してごめんなさいね


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フレイアwithハヤテ welcome to ガンプラワールド 後編

 というわけでCD担いでえっちらおっちら歩くこと10分ほど、商店街から少し外れたところにあるスタジオにやってきました。レコーディングスタジオやダンススタジオなどが一纏めにされた複合ビルで、俺もたまにお世話になっている。ちなみにヒマリの紹介、ご両親がレコーディングに使っているのだそうだ。

 

 「こんちゃーっす。二人を迎えに来ました」

 

 「ん?アルト君か。いらっしゃい。後ろの二人は?」

 

 「外国に行ってた時にお世話になった人です。二人に会わせたくて連れてきました」

 

 「はいよ、じゃあ2階ね。もう終わってると思うからご自由に~」

 

 許可が出たのでフレイアさんとハヤテさんを連れて二階に上がる。ブースを確認すると、いた。どうやらレコーディングついでに生放送をしてたようでスタッフさんの前であれこれ話している姿が見える。まだこっちには気づいてないようなので二人に待つようにお願いしてみる。

 

 お二人とも疑問符を浮かべながら止まってくれたので俺はにやつきながら携帯で動画サイトを開く。そのまま二人の生放送を視聴し始めるのだった。

 

 『はいはい~、ツムギちゃん今日はどうだった?』

 

 『…ヒマリに抱き着かれたままレコーディングしてた』

 

 

 ・おっとぉ?

 ・キマシ?

 ・アルト君がいなくても仲良しで素晴らしいですな

 ・それはもはやバイノーラル録音だったのでは?

 ・マイク一本いらないやん

 

 「ほへ~ワルキューレTVみたいなことをヒマリたちもやっとるんね」

 

 「んでこれどうするんだよアルト。待つか?」

 

 「ん~~~、アルト、私も入ったら迷惑かね?」

 

 「それマジで言ってます?お休みでしょう?」

 

 「ど~してもお客さんにヒマリとツムギと一緒に歌ってる所を聞いてほしいんよ!もう一回できるかもって、思ってなかったから」

 

 フレイアさんが顔の前で両手を合わせてお願い!と頼み込んでくる。そう言われると確かに弱いのは俺なわけで、ぶっちゃけ超久しぶりにフレイアさんの歌を聞きたいのは事実。けど将来作るであろうΔのアニメのためにここで出すのは…いいやそんなこと。言い訳は後でどんだけでも湧いてくるだろうし、やっちゃえ。ワルキューレの言葉通り、命がけで楽しんじゃえばいいんだ。

 

 「ハヤテさんは?」

 

 「いいに決まってるだろ。こっちの世界で顔出すななんて言われてないしな。ああでもフレイア、ルンだけ気を付けろよ」

 

 「それは無理でしょう。もう髪飾りで誤魔化しますよ。プラフスキー粒子パワーです」

 

 「お前図太くなったな…」

 

 「おかげさまで」

 

 「なんか私がやらかすって言うてるん?二人とも?」

 

 「「うん」」

 

 「ひどいんよー!」

 

 ドストレートな俺とハヤテさんの言葉を受けたフレイアさんがぷんすこしてるのをハヤテさんに丸投げした俺が放送を続ける二人に見える位置までコツコツと歩いていくブースの窓の所のスタッフさんに適当に挨拶する。彼らも俺の事はよーくご存じなのでなんも言わない。そして、二人が俺に気づくと表情がパァァと輝いた。眩しい。

 

 ・本日最大の笑顔いただきました

 ・かわいい。スパチャしないと

 ・今月分のお布施が上限に行った

 ・誰か来たのかな?

 

 コメントをマイクが読み上げていくのが聞こえる。うーんいい笑顔してるなあ。あとフレイアさんがワクワクが止まらなくなってる。ルンの光が漏れてる漏れてる、ハヤテさんよろしく。目線で伝えるとハヤテさんはフレイアさんの帽子の中に乱暴に手を突っ込んでルンをぎゅっと握りしめる。フレイアさんはあまりのことにフリーズ、これでよし。

 

 「アルトくん!来てくれたんだ!もしかして出てくれるのっ!?」

 

 「…アルト、自分からこっちに来るなんて珍しい。生放送なんて私たちが引っ張っていかないと来ないのに。うれしい、ありがと」

 

 ・彼 氏 登 場

 ・アルト君来た!マクロスの話聞ける!?

 ・アルトくん来年の新大会でるってマジ!?

 ・この表情の変化よ。恋する乙女は無敵ですな

 

 声は二人に届かないのでフリフリと手を振ってにやにやしてると二人ともあっという顔をした。俺のこの表情を二人はよーく知っている。なんせ俺が何かを企んでいるときにやる悪ーい顔だからだ。でも、二人は思いつかないらしく頭をひねっている。そんなわけでネタ晴らし、フレイアさんハヤテさんかもーん!

 

 俺の手招きで取っ組み合いをしていた二人が中断してブース前にやってくる。そしてその姿を二人が目にした瞬間、驚きで二人して口元に手を当てながら目を見開いた。あらー、いい表情。ドッキリのし甲斐がありますなあ。今日来るっていうのは伝えてあったけどいつ来るかは伝えてなかったので驚いただろう。

 

 二人の瞳にうっすらと涙の膜ができ、それが決壊寸前となってようやく二人の時間が動き出した。ガタッと椅子を倒して立ち上がって全速力で二人して扉を開けてフレイアさんに抱き着いた。

 

 ・なにごと!?

 ・アルトくん何したんやことと次第によっては…

 ・よっては?

 ・きちんと慰めろ!

 ・二人があんな顔するの初めて見た。ツムギちゃんは顔見えないけど

 

 「フレイアさん!お久しぶりです!ずっとずっと会いたかったですよ~~~!」

 

 「…フレイア!会いたかった!電話じゃちょっと、寂しかった」

 

 「二人とも!久しぶりなんよ~~~!直接会えてぶっちゃごりごり~~!」

 

 むぎゅぎゅっと団子の塊のようになる3人ハヤテさんは俺にはなんもねーのかよ、という顔をしてたんで両手を広げてにじり寄ったら逆に捕獲された。現役パイロットの身体能力には勝てるはずもなく、俺はいつかのメッサーさんにやってもらったように俵担ぎをされる羽目になったのであった。

 

 「ハヤテさんも!お久しぶりです!」

 

 「…ハヤテ、久しぶり。フレイアと仲良くやってる?」

 

 「ああ、いー感じにな。にしてもお前ら、いいのか?これ」

 

 「「???」」

 

 ・おーい気づいてる~?

 ・何があったか説明キボンヌ

 ・おいスタッフ!nice boatじゃねーよ!

 ・こっちじゃ声が届かないから

 

 「「ああーーーっ!」」

 

 「やっちゃった!ごめんなさいフレイアさん!1時間くらいしたら終わりますから!」

 

 「…折角会えたけど、お仕事するから」

 

 「いや?フレイアさんにも出てもらおうぜ。一緒に歌いたいってさ」

 

 「うん!二人と久しぶりに歌いたいんよ!」

 

 「そういうことなら!」

 

 「…よろこんで!」

 

 そんな感じで俺とハヤテさんを残して3人はブースの中に戻っていった。突然のことにスタッフさんがあわあわしているが大丈夫ですっていうとアルトくんの知り合いだしそうだなと返された。変な信頼のされ方だぁ…フレイアさんが何を歌うかは分からないけどとりあえずワルキューレの曲のカラオケデータをスタッフさんに渡しておく、というか俺がこっちの操作を変わってもらうことにした。

 

 「ごめんなさい!実は久しぶりに会うお友達をアルトくんが連れて来てくれたの!」

 

 「…電話以外で会うのが久しぶりだったから、つい。ごめんなさい。それで、この人が」

 

 「はいな!フレイア・ヴィオン16才!大好物はリンゴ!よろしくお願いするんよ~~!」

 

 ・またキャラが濃い…!

 ・美少女の友達は美少女なんやなって

 ・まじか、自分ガチ恋いいっすか?

 ・まて、左手薬指…!

 ・ファッ!?

 

 「ざーんねん!フレイアお姉ちゃんは売約済みなのだ!画面の向こうでアルトくんと一緒にこっち見てるよ!」

 

 「…しかもちょっとやそっとじゃ離れない。貴方たちに入り込む隙間はない。ラブラブ、フォーエバー」

 

 「ななななにいうとるんねツムギ!は、恥ずかしいんよ…」

 

 「…レイナさんを真似してみた。多分こんな感じのこという」

 

 「「ああ~~~」」

 

 レイナさんへのイメージが俺とハヤテさんを含めて完全に一致した瞬間であった。レイナさんだったらこんな感じ…っていうかもっとストレートに結構毒舌聞かせてくれると思うよ。うん。

 

 「じゃあ時間が押してるので行っちゃいますか!せーのっ!」

 

 「「今日も1曲歌ってみようのコーナー!」」

 

 ・キタアアアアア!

 ・待ってました!

 ・あれ?でもお友達放っておいて歌ってええんか?

 ・今日は別に歌無しでもいいから

 ・お友達の事を聞かせておくれ!

 

 そう言うコメント欄だが、ここで特大のサプライズである。マイクをとったヒマリがそのままほいっとフレイアさんに渡したのである。驚愕したのはスタッフたち、そして画面の前の視聴者の方々。ハヤテさんはどこ吹く風だし俺に至ってはワルキューレのパフォーマンス力を知っているのでデカルチャー叩きつけて欲しいというだけである。

 

 ・フレイアちゃんが歌うんか!?

 ・二人と合唱ですか!?

 ・あ~いいっすね~!

 ・怒涛の展開過ぎてちょっと訳が分からないよ

 ・というか様になりすぎてないか?マイクを握る立ち姿が。プロみてーじゃん

 

 プロみてーじゃなくてプロそのものなんだよなあ。ん?ヒマリ何やってってあ!ワルキューレのハンドサインか!二人が行うのはレイナさんとマキナさんと同じもの、フレイアさんも自分のハンドサインで返した。よっし!盛り上がってきたあ!スタッフさんこのまま行きますよ!多分選曲はあれだろうし!

 

 「じゃあフレイアさん!合図お願いします!アルトくん!タイミングずらしちゃだめだよ!」

 

 「…アルト、責任重大。フレイアさんに恥かかせちゃだめ」

 

 ・アルトくんにめっちゃプレッシャーかけるやんけ

 ・どんだけフレイアちゃんの事大好きなんだよwww

 ・アルトくんが画面の前で苦笑いしてるのが見える見える

 ・というかさっきのやりとりなんなん?

 ・めっちゃ気になるんやけどさっきの無言のやり取り!教えてーなー!

 

 それに関してはあと何年後か分からんがΔのアニメ作るときになるとわかるから待っててくれー。つーかヒマリもツムギも大興奮だな。そんなに歌えるのがうれしいのか。いや嬉しいんだろうけどさ。おっと集中集中、フレイアさんが大きく息を吸い込むのが見える。ハヤテさんがソファ背もたれにもたれかかりながら手を飛行機に見立てている。風が吹くことが分かっているかのように。

 

 「準備はいいんかね!?」

 

 軽快なピアノサウンドが鳴り渡った。

 

 

 

 

 

 「二人と久しぶりに歌えて楽しかったんよーーー!」

 

 「はい!フレイアさんと一緒にまた歌えて夢みたいでした!」

 

 「…ほんとに、楽しかった。まだまだ歌い足りない」

 

 「私もなんよー!アルト、なんかいい方法ないんかね!?」

 

 あの後、ルンがピカッと光ったらをヒマリとツムギのコーラスで見事に歌い上げたフレイアさんだった。それはそれはもうルンはピッカピカであったがそれ以上に歌唱力がヤバすぎる。会ってない1年間でめちゃくちゃに巧くなっていた。多分フォールドレセプターは全開だったのだろう。

 

 コメント欄もやばいとかうますぎとかマジでアイドルか何か?みたいな反応だった。あとヒマリ担当のプロデューサーさんが生放送終了後妖怪名刺だけでもと化していたが残念ながらそっちでももう売約済みですと言ってごまかした。プロデューサーさんは非常に残念そうだったけど申し訳ない、彼女向こうの世界で必要な人なんです。

 

 「んー、じゃあ俺のアトリエの方に帰りましょうか。地下に防音室あるんで思いっきり歌いましょうよ」

 

 「おおー!流石はアルト、よう準備しとるんね!」

 

 「ところでハヤテさん、ちょっと手伝ってもらっていいです?」

 

 「いいけど、何すんだ?」

 

 「GPベースを地下に運ぶのを手伝ってほしいんです。そうすれば、歌に乗って飛べます」

 

 「いいこと考えるじゃねえかアルト。もちろん手伝わせてもらうぜ」

 

 ハヤテさんにも楽しんでほしくてそう提案してみたが、彼にとってはそれはそれは魅力的な話だったらしい。呵々大笑した彼は俺を担ぎ上げて通ってきた道を爆走していく。あーっ!と残された女性陣が慌てる声が聞こえた。ハヤテさんは早く来いよと言って足を緩める。むむっ!という顔をしたフレイアさんがツムギとヒマリを軽々と抱えあげて追いついてきた。流石はウィンダミア人ってやばっ!?帽子がとれるとれる!

 

 そんな感じで1週間、フレイアさんとハヤテさんは地球を堪能し、山ほどのお土産と俺製のガンプラとバルキリーのプラモをもって自分たちの世界へ帰っていった。別れるときは、寂しくなっちゃったけど、またいつか来れるだろう。道は繋がっているのだから。




 ハイ、ちょっと短いですがフレイアとハヤテのお休み旅行はこれで終了です!
 
 次回はデルタ本編かトライ編を更新したいですね。現在仕事が繁忙期に入ってなかなか時間とれないので月単位で時間開いちゃうかも。その前に一区切りつけて良かったです!

 それではまた次回会いましょう!感想評価どしどしください!作者が泣いて喜びます!


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