見える子ちゃんと幼馴染君 (秋涼)
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見える子ちゃんと幼馴染君

私には幼馴染の男の子がいた。

 

「俵さんの頼光くんが帰ってくるみたいよ」

 

朝食を食べている時際に母が話した。

 

「隣に息子さんいたんだね」

 

「恭介もみこもよく一緒に遊んでたじゃない」

 

「え〜覚えてないなぁ」

 

「みこも覚えてない?」

 

「ん〜覚えてるような、覚えてないような」

 

今まで忘れていたが、そういえば小学生1年生ごろまでは

一緒に遊んでいたような気がする。

 

いつも私の後ろについてきてニコニコしてるような子だったような?

あれ、でもどうして両親残してその子だけ別で暮らしてるんだっけ?

 

「なんで一人だけ別の場所で暮らしてるの?」

 

「家庭の事情らしいけど、当時色々あったらしいから」

 

母が気まずそうに話を逸らした。

あまり聞かない方が良いことなのだろう、少し気になるが

そこまで興味を惹かれる話でもない

 

お父さんがトイレから帰ってきてた。

 

「お、頼光くんの話かい?今日の朝も会ったよ、会ったのは3年ぶりぐらいだけど立派になったなぁ、ちゃんと挨拶もしてくれるし」

 

「あなた、3年前に頼光君に会ったの?」

 

「いやー、出張先で交代事故に遭いかけた時に彼が助けてくれなかったらと思うとゾッとするよ」

 

「あなた、私そんな話聞いたことないんだけど」

 

「そうだっけ?まぁ隣の藤太と静さんにはもう御礼とかしたから大丈夫だよ。それに、家族に余計な心配かけたくないしな」

 

「あなた・・・・・・、それはそれとして詳しく聞かせてもらいますからね」

 

「あはは、僕はそろそろ仕事に行く準備しないとなぁ〜」

 

「今日はテレワークだって昨日話してましたよね?」

 

 

「ご馳走様」

 

リビングが変な空気になってきたので、恭介と目配せして、その場を後にする。

それにしても記憶の中の男の子は人を助ける等できる感じではなかったけど

男子、三日会わざれば刮目して見よということ?

相手も私のこと覚えてるわけないと思うし、まだあってもないから一目どんなになってるか見れたら良いなと思う。

 

「いってきます」

 

通学鞄を持ち、恭介と一緒に家を出る準備をする。

 

「行ってらっしゃい、みこ、恭介」

 

後ろを向くといつ抜け出してきたのか父がリビングの入り口から出てきた。

 

「二人とも学校から帰ったら冷蔵庫にプリンが入ってるから食べなさい」

 

「やりぃ」

 

やった!プリンだ!

恭介が喜びを露わにしているが、なんか恥ずかしいのでスルーすることにする。

 

「前から気になってたんだけど、あのお札ってなんなの?」

 

照れ隠しにいつ設置されているか分からないが玄関の上部にお札が貼ってある

書いてある文字はよく分からないが百足の絵が描かれているのが分かる。

百足の絵が妙にリアルで今にも動き出しそうで気持ちが悪い

 

「あぁ、俵の奥さんの実家が神社でね。神主自作のお札らしくてね。

頂いたから貼ってたけど、家内安全、商売繁盛のご利益があるらしいよ」

 

今日はよく出るな、俵家

 

「ちょうど貰って、家に貼った時から調子が良くてなぁ、本当にご利益が」

 

「あなた・・・・・・、トイレに行くって逃げたわね、まだお話が終わってませんよ!!恭介、みこ行ってらっしゃい」

 

「気をつけていってらっしゃい」

 

母に引きずられていく父を見送り

 

玄関の扉に手を掛け、深呼吸をする。

 

ある日突然、私には変なものが見えるようになった。

原因は分からないが、こちらに見える?見える?と確認してくるあたり

反応したらどんなことになるか分からない為、私は無視することしかできない。

幸い、対応が間違ってなかったのか今ところ特に問題は起こっていない。

私の精神的な疲れ以外

家の中には変な奴らが出てこないのが唯一の救いだ。家に近づいた変なものが

何かの壁に阻まれたあと、すぅっと消えていくのが見えたので何故かこいつらは私の家に入ってこれないだと感じで安心した。

 

しかし学校に行くためには、外に出ないといけない。

 

「ねぇちゃん?」

 

恭介が怪訝そうな目で見ていたので慌てて外にでる。

 

さりげなくあたりを見回すと変なやつらの姿が珍しく見当たらない

家に帰ったらプリンもある、今日はとても良いになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

深夜の住宅街を走る走る。

「ヒャァァァァッッ!!!!」

 

車ですら追いつけるか分からない速度で爆走する人影

「フィーーーーーー!!!」

 

時折人とぶつかるが人をすり抜けて爆走する。

そう、彼はもうすでに死んでいるのである。

 

彼は日本全国を爆走しており、時折微かに彼を視認できる人は

彼のことをマッハ青年と呼ぶだろう。

このまま走り続け、同系統の走り回る怪異のターボババアが

ハイパーババア、光速ババアと進化するように彼もまた光速青年に

至ることができたかもしれない。

 

十字路を理想的なコーナリングラインで曲がった後

しばらく直線的な道路を走る

 

「ファ!!」

 

リン

 

と急に鈴の音が聞こえたと思ったとき彼の頭と体が急に別れる

体のみが高速で離れ、制御を失った体は壁にぶつかり、消失した。

 

彼は体を失い、首だけになり空を見上げる

彼が最後に見たのは、民家を遥かに凌ぐ百足のような大きな影と

四谷と書いてある民家の表札だった。

 




2.3日に一回投稿できたらいいな


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出会い

最近、家の話題に頼光なる幼馴染の名が上がるようになった。

 

恭介曰く

「いい人だったよ。話しやすくて、一緒にゲームもやった。」

 

母曰く

「この前挨拶に来てくれてね、昔も可愛かったけど、随分格好よくなってたわよ。」

 

父曰く

「朝も挨拶してくれて、礼儀正しいいい子だなぁ」

 

私以外は全員彼に会ったことがあるというか割と頻繁に遭遇するらしい

私は会ったことがないんだが?

本当に実在してるのか、家族がおかしなこと最近おかしなものが見えるようになったせいで疑り深くなっているかもしれない。

 

 

次の日の朝、ちょうど家の外を掃除していた。静さんがいた。

 

「おはようございます。」

 

「あら、おはよう、みこちゃん」

 

静さんは母と同い年に見えないほど若々しい。

20台と言われれば通じるほどだ。この人の息子ならイケメンになるのも分かるかもしれない。

 

「みこちゃん、頼くんが恭介くんと遊んでたらしいけど、恭介くんに変なこと教えてなかった?」

 

頼くん呼びは高校生になっても変わってないのか

 

「恭介からは一緒に遊んでもらったとしか聞いてませんね、私はまだ会ったことないです。」

 

「あの子、みこちゃんに挨拶してないの?私から言っとくわね」

 

「ありがとうございます。隣ですしそのうち会えると思いますよ。」

 

静さんの反応的に一応、実在はしているらしい

 

「最近、良くない気があるから、みこちゃんもあまり遅くならないように気をつけてね。いってらっしゃい」

 

「いってきます。」

確かに最近は変なものがよく見えるため、ハナとの付き合いで寄り道すること以外で家に帰ることが多くなった。

何故か家だと一切、変なものが出ない為、精神安定上家に篭りがちになっている。

最近は通学路でも大通りを歩く際もあまり見かけなくなったが、学校にはいつもと変わらないぐらい変なものがでる。

 

学校自体は嫌いじゃないけど、変なものを無視するので精神をすり減らすので毎日通うのが憂鬱だ。

 

最近赴任してきた先生が前に猫の亡霊みたいなのを沢山連れたあの男の人だったけど、学校で見た時には猫の亡霊が見えなかったけど

 

あんないっぱい猫や動物の霊を連れていた人だし、絶対なにかある

 

私はため息をついて学校へ歩を進めた。

 

放課後、ハナと別れた後帰宅を急ぐ、家までそこまで離れていないが薄暗い為

あまり長居したくはない場所だ。

 

「ウゥッ・・・・・・」

 

電柱の影に隠れていたのか急に声が聞こえてきたのでつい目をやってしまった。

すぐに目を逸らしたが、しゃがみこんでいても2メートルほどの大きさがあり

それでいて体の幅が電柱の幅に薄い女だった。どう見ても人間ではない。

 

「?」

 

私が一瞬そっちに目をやったのが見えたのか、じっとこっちを見ている気配がする。

一刻もも早くここを立ち去らなければ

 

「ネェ・・・・・・ミエテル?」

 

急に視界にさっきの薄っぺらい女の顔が潜り込んできた。

咄嗟にスマホを確認する振りをして視界から逸らす。

顔の横に気配をビンビン感じる。怖気がとまらない。怖いから本当に勘弁してほしい。

薄っぺらい女の髪の毛が下を向いてスマホをみている端からチラチラ見えるまだ着いてきているようだ。

 

「ネェェェ!!!??ミエテルンデショショ!!!!??」

 

ついに癇癪を起こしたのか伸ばしてる首をぐねぐねと暴れ回ってる。

キモいし怖いし、本当に誰か助けて・・・・・・

 

「ミエテエ??????」

 

急に薄っぺらい女の声が離れていく。先ほどと同じように叫んでいるため、離れていったのは

薄っぺらい女の意志ではないようだ。

 

 

「ァアアアアアアアアアァァアア!!!!!

 イタイイタイ!!!!ヤメテェエエエエエ!!!!」

耳を澄ましているとなにかを叩いて潰すような音と薄っぺら女と思われる絶叫が聞こえてきた。

 

「ヤメ・・・・・・」

 

その言葉が聞こえた瞬間、スイカが潰れるような、水分を含んだ球体が潰れた音が聞こえた後

急にあたりが静かになった。

こちらに歩いてくる足音が聞こえてくる。

あの薄っぺらい女が叫んでいたあたりから聞こえてくる足音

普通の通行人がきたならいい、もし薄っぺら女よりやばいやつが近づいてきたならば?

 

「ねぇ、もしかして見え「あっ!!もうこんな時間だ!はやく家に帰らないと!」

 

大きな声を出しながら全力で帰り道を駆け出した。

 

 

 

「ただいまー、あら頼くんおかえりなさい、そういえばみこちゃんに挨拶したの?

 久しぶりに会うからって恥ずかしからずにちゃんと挨拶しにいきなさい。」

 

「挨拶しようと思ったけど、無視しされたんだよ・・・・・・」

 

「頼くん、みこちゃんになんかしたんじゃないの?」

 

「心当たりがないから困ってるんじゃないか・・・・・・」

 



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幼馴染くん

俺は昔から人には見えないものが見えた

昔は人がいないのに声が聞こえたり、誰がいるような気配するようなだけだった。

小学生の頃、ある日からはっきり見えるようになり、同じように見える母方の祖父母の神社に預けられた。ちなみに母は昔の俺みたいな感じで才能がなかったらしい。

 

祖母曰く、なにも触媒や霊的な物なしで直接干渉できるのはとても才能があるが、霊に直接干渉できるのは

相手からにも干渉をされるということで、身を安全を守れるように訓練をうけた。

 

よくある祈祷の修行ではなく、ひたすら祖父と一緒に神社の境内を走らされたり、木刀を振ったり

組手をやらされたりした。木刀も人を相手する感じではなく、より大きい獣などを想定する動きだった。

人型だったらどうするのか祖父に聞いたところ

 

「小さいやつは鍛えてなぐったら死ぬ、大きいやつはしぶといからな、武器で刈り取るのよ」

 

この言葉はある程度戦えるようになり、祖父母のお祓いを手伝った際に実感できた。祖父が見せてくれた刃を当てずに遠くのものを斬る剣技や祖母の放った矢が木を貫通するのをみてカッコいいと思ったことと、田舎なので何もすることもなかった為、ひたすら素振りや型の練習、弓で矢を射ったりしていた。

 

中学生に上がって、振っている木刀が真剣に変わり、振ったら刀から刃の斬撃が飛び、矢が木の幹を貫通するようになった頃

神社の裏山にある洞窟の奥にある祠に祖母に連れて行かれた。

祠のあるところは座敷牢みたいになっており、古いがちゃぶ台で箪笥などが置いてあった。

 

この座敷牢で夏休みの1週間過ごせと祖母はいい、祠近くで眠ると神社の御祭神である大百足様が試練を与えてくれるらしい。

この試練で出てくる怪異を倒せば、晴れて一人前ということ

 

「なに、頼光の倒せる相手しか出てこないよ、気張りな」

 

祖母はそう言い残し、俺を置いて座敷牢から出て行った。

 

ちなみに、祖母の時は刀を持った武士

祖父の時は片腕のない鬼だったらしい。

夢の中で怪異にやられても命に別状はないと聞いたが本当に大丈夫か?

と思ったが祖父母がこの試練が大丈夫と判断したから受けさせたのだろう

やるしかない。

 

早ければ1日で終わると聞いて試練に入った。

 

俺の相手は、山ほどの大きさの百足だった。

自分は橋の上、川の向こうにある山に巨大な百足がこちらを見ている

ガシャガシャと遠くにいるのに百足の足音が響いていた。

 

手元にには普段使っている刀とは違い一眼に業物だとわかる刀と弓と淡い光を放っている矢がはいった矢筒が置いてあった。

 

よく見たら刀は祖父が大事にしている髭切といわれる刀

矢は祖母がここぞという時に使う矢だった。

 

刀と弓を身につけながら、こちらを見ている大百足の様子を伺う

大百足はこちらを見つめているだけで動く気配がない

心なしか見つめている気配にも余裕を感じさせる

 

どうやら先手は譲ってくれるらしい

矢筒から矢を取り出し、弓の弦に矢をつがえる。

普段の訓練では連射するために次の矢を持ちながら矢を射るが

見るからに固そうな外皮をしている相手には生半可な矢の攻撃では通らないと判断し

限界まで弦を引き絞る。ギリギリ弦がなる。

なるほど、この弓はとても良い、俺が思いっきり振り絞っても弦が切れることも、弓が壊れることもない

 

自分の限界まで引き絞った弦を解放する。

矢は空気を裂きながら大百足に向かっていく。

淡い光を放っている矢は裂いた空気をそのまま矢に巻き込むように飛んでいく。

飛べば飛ぶほど威力が増しているようでまるで鏑矢を飛ばしたかのような音を立てながら

大百足に的中する。

 

大百足の第4胴節に命中した矢は大百足の固い外皮をものともせず大きな穴を開けて貫通した。

衝撃で大百足が吹き飛び山の向こう側に消える。

 

大百足が視界に消えたとの確認した後、残心を解く

夢の中だというのに全身から汗が噴き出る。

ここまで限界まで力を使って弓を射た

厳しい事を常にいう祖母だが、なにか自分の知らない方法で夢にも

矢と祖父の刀を用意してくれたのだろうか、普通の矢では大百足を吹き飛ばすことも

できなかっただろう。

 

それにしても矢の威力が高すぎないかとは思うが

夢にでてくる怪異を倒したら目が覚めると聞いてるが

一向に覚める気配がない

 

もう一度山を見ると大きなムカデが頭だけをこちらに出してこちらを見ていた。

顎肢を鳴らしながらまるで笑っているかのように音を鳴らしてこちらを見ていた。

 

矢を改めて構えて放つ前に山に大きな体を巻きつけた百足は山をそのまま締め付け粉砕し

破片を体で叩きこちらに飛ばしてくる。

大きな力で叩き出された破片は散弾銃のようにこちらに殺到する。

 

飛んでくる破片の落下予測をし回避していく、破片は自分のいる橋を遠慮なく削っていく

避けれる場所がなくなっていくうちに回避するのはなかなか大変で細かい破片は髭切で切り飛ばす。

 

残っている足場に飛び乗り足場を確保すると、大百足がこちらに迫ってくるのが見えた。

あのスピードならこちらにくるのはあと数秒だろう

弓を射るには距離が近すぎるため、弓と矢を橋の角に捨て、髭切を構える。

 

勢いそのままこちらに突っ込んでくる大百足の頭上にジャンプし、その勢いのまま

頭に刀を全身全霊の力を込めて突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでもいい話
大百足
 「難易度調整ミスった。刀とは弓をいい用意しすぎたかもしれない
 あの子供は生まれる時代を間違えている」

祖母の本気はステゴロ
祖父に素手で戦ってるところを見られたくない為弓を使っている。


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怪異

下ネタ注意


「どうした、寝不足か?」

 

「まぁね、睡眠はちゃんととってるつもりだけど、昨日は夢見が悪くて疲れが取れた気がしない」

 

 家の近くの男子校に転校して友人のト部に声をかけられる。

 試練で大百足をなんとか倒し、免許皆伝を受け取れたのはいいが、祠で寝たわけではないのに夢に

 大百足が度々出てくるようになった。祖母に聞いたところ

 

 「そりゃ、百足様に気に入られたのさ、可愛がってもらいな」

 

 笑いながら頭を撫でらえた。夢に出てくる度に刀が普通の刀になったり、矢が祖母お手製ではなく普通の矢にかわり

 何回も倒すたびにその武器すらなくなってきた。今は壊れた橋の柱を武器にして戦っている始末、某漫画の丸太を持って戦うのと

 いい勝負だ。

 いい修行にはなるけど、休んでいる気がしないのでできれば一月にいっぺんぐらいでいいのにと感じる。

 

 「神様って暇なのかね……」

 

 「どうした急に」

 

 「いや、なんでもない」

 

 咄嗟にもれた呟きに反応されたのを誤魔化していたら、ト部は他のクラスメイトに話に行ったらしい

 窓際の最前列にある自分の席から窓の外をみる。雲ひとつない綺麗な青空が広がっている。校庭を見ると

 登校していくる生徒の姿が見えた。見る限り目立つ怪異の姿もない、転校した次の日の夜に大掃除したあと

 結界を貼った甲斐があったようだ。怪異がいるのは慣れているが、見える人が少ないから基本構ってちゃんみたいなものなので

 授業中等に来られると非常に邪魔だから排除しておきたい。このクラスは俺以外見える人がいないので変なやつだと思われるしね。

 

 「ほら皆席につけー」

 

 担任の声が聞こえて来たので目線を黒板のほうへ移した。

 

 

 

 

 昼休みが終わり、腹が膨れて眠くなる5限目あたりのことだった。

 他のクラスメイト同様、催眠音波を発してる教師の言葉を聞きながら欠伸を噛み殺し、隣の家のみこちゃん

 いや、みこさんにどう話かけようか悩んでいた。

 祖父母のところで通っていた学校は田舎で女子生徒はいたが、どれも幼く、同世代の女子生徒は居なかったし、転校したのも近いってだけで

 選んだ男子校だし、同世代の女の子と話すのにびびったわけじゃない、断じてない

 母にちゃんと挨拶をしろと言われ、ちょうど学校の帰りにみこちゃんを見つけて声をかけようとしたら

 首だけ伸ばした女の霊がみこさんにちょっかい掛けていた。見える人に認識されたくて首を伸ばすパフォーマンスをしてたみたいで

 害はなさそうだったが、見た目と動きが気持ち悪いのと挨拶するのに邪魔だった為、捕まえて成仏させといた。

 

 幽霊の反応も見えない人にしては過剰に反応していたし、幽霊が消えたときにみこさんから感じる体の緊張もこころなしか和らいだ感じがしたので

 みこさんに幽霊が見えるのか確認しようとしたところ、そのまま走って逃げられてしまった。

 余裕で追いかけられるが、追って行ったらなんか怪しいやつだし、勇気を振り絞って話かけたのに無視されたのでその時はすこし傷ついた。

 今思えば、幽霊見慣れてないとそりゃ怖いだろうからすぐその場所から逃げたかったのだろうと判断した。嫌われてるってことはないはず。

 

 ちらっと見ただけど、小さい頃の面影は残しつつもすっごい美人になってて、さらに話かけるのに緊張して想像しただけで震える。

 大百足様と戦う時でさえここまで緊張しないのにと自分でも情けなくなる。

 とりあえず、今日家に帰ったら改めて挨拶しに行かねば

 

 ふと気配を感じて見てみると、教室の後方の引き戸を引いてないにも関わらず、ちょうどみこちゃんと同じぐらいの髪型の女の子が入ってきた。

 服装は制服だし、扉を開けずにすり抜けて入ってきたのと周りが一切反応してないので幽霊なのは確定。

 ここは男子校だし、女子生徒がいるはずがない。

 観察したところ、怨霊にもなっていないし、生霊か浮遊霊あたりか?

 この学校には結界が張ってあるし、悪意や、明確な目的がない霊は入ってこれない。万が一悪意がある霊が侵入したとしても

 俺には分かるようにもなっているので悪意があるわけでもない。

 女子生徒の霊は明確な目的があると思うが、この教室にいるクラスメイトに関係者がいるのだろうか?

 女子生徒の霊は、近くの机のクラスメイトの顔を一人ずつ見た後、しゃがみ込んで脚あたりを見ている。その後、次の生徒へ移動していた。

 誰か探しているのか?そう思い廊下側の生徒を観察し終えたあと、隣の席へ移動するためにこちらに振り向いた

 

 「デュフフ……」

 

 顔は美人だったが、顔がすごくだらしなく、100年の恋も冷めるぐらいあれな顔をしていた。

 

 「!!!」

 

 いま観察してるはうちのクラスで1番か2番ぐらいイケメンと言われてる、池谷くんだった。

 女子生徒は大変お気に召したようで机に頬杖ついてガン見している。

 まぁ害はないようだし、授業が終わったら窓から放り投げようと決め授業に戻ることにする。

 

 だいぶ観察してたせいで板書を写すのが遅れている。急いで写さなければ

 

 「こいつ○起してる!!」

 

 「ブホッ」

 

 「どうした俵」

 

 「いえ……なんでもないす。」

 

 急に女子生徒が変な言葉を発したセリフで吹き出してしまった。

 男には特に理由なく大きくなる時があるのでそっとしてほしいものだ。

 しゃがみ込んで見てたのはそういうのを見る為だったのかと女子生徒を見るとこっちをガン見していた。

 吹き出したからこっちが見えてるって分かったのか?あ、やだ、こっちきたわ

 

 「おい、お前」

 

 目の前に立ってこっちを見据えて女子生徒は口を開いた、

 

 「ち○こ見せろ」

 

 窓を開けて女子生徒の霊を掴んで窓から投げ捨てる

 あとで結界を強化しないとなと思い直して、急に窓を開けて何かを放り投げた俺に怪訝な顔をしている先生に

 虫がいたので窓から捨てましたと誤魔化し、授業に戻る。

 あんな欲望に忠実な幽霊は珍しいなと思いつつ、

 女子校でもああいう変態な幽霊が出るのかな?と考えていたら授業が終わり、ノートは写しそびれた。




教室に戻ろうとした女子生徒の霊は見える人に対するセクハラは害があると判断され校舎に入れず泣いた


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再会は突然

 

 小さな女の子の泣いている声がする。

 

 辺りを見回すと、少し古いような感じがするが、見慣れたガードレールや電柱等見覚えがあるものばかりだ。

 鳴き声がするほうへ自然と足が伸びる。

 

 鳴き声は止む事なく、さらに大きくなっている。只事ではないことを感じ、歩きではなくその場所へ駆けていく

 いって私に何が出来るのか分からないが、私は走っていた。

 曲がり角をまがると、空き地の角のほうに髪の長い女の子と血まみれで女の子の前で木の棒を構えている男の子がいた。

 男の子の前にいるのは爪と腕が異常にながい、化け物だった。

 化け物はまるでおちょくるかのようにゆっくりと男の方に向かっていた。

 

 「大丈夫!?」

 

 とりあえず助けなきゃと駆け寄ろうとするが、透明な壁のようなものに阻まれて進めない。

 見ているうちに化け物は男の子のほうへにじり寄っていく。

 

 「逃げて、みこちゃん」

 

 少し遠くにいるのにもかかわらず、はっきりと男の子の声が聞こえた。

 なんで私の名前と思った瞬間、男の子が化け物に吹き飛ばされて壁にぶつかり

 女の子の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 「びっくりした」

 

 跳ね起きるとびっくりした顔の恭介がいた。

 周囲を見回すと窓から陽の光が差していたし、ベッドの上だった。

 なんだ、夢かとベッドに倒れ込む。

 

 「ねえちゃん、学校遅刻するよ」

 

 時計を見ると準備しなければいない時間だった。

 着替える為に恭介を部屋から追い出して準備をしながら考える。

 夢の内容なのに血の臭いも悲鳴も鮮明にしっかり覚えている。

 そしてあの空き地、私が小さき時よく遊んでた場所だ。

 なんで今まで思い出せなかったんだろ、でも空き地では誰かと遊んでいたはずだ。

 頼光という隣の家にいた幼馴染?、てかいつ遊ばなくなったのか思い出せない。

 私はこんなに昔のことが思い出せないほど記憶力がなかったか?

 これ以上、思い出そうとしたら頭が痛くなった為考えないようにして支度を急いだ。

 

 

 ハナと一緒に買ったドンキで買った数珠が弾け飛んでしまい

 強力な数珠がないか立ち寄った。占いのお店でいただいた数珠も弾け飛び、落ち込んでいると

 

 「お嬢ちゃん、少し時間あるかな?」

 

 あきらかに私についてきているやつに視線をチラッとむけている。

 

 「あります!ハナもあるよね?」

 

 「う・・・うん」

 

 突然食い気味に返事した私に、ハナが少し困惑している

 なんかこの占い師のおばあさんは対策をしってそうな気がする。

 

 「そうかい、少し中で待っているといい」

 

 中に入れてもらうと着いてきていた幽霊が壁に阻まれたように弾き飛ばされて中に入れないようだ。

 すごい、数珠は吹き飛んだけど能力は確かなのかな?

 

 ゴットマザーは家の電話の近くでどこかへ電話をかけているようだ。

 

 「すぐに来てくれるそうだよ」

 

 「どなたがいらっしゃるんですか?」

 

 「特注の数珠を作ってくれる人さ」

 

 質問したハナに誤魔化すように返事をし、こちらにウィンクして誤魔化したゴットマザー

 ハナが見えてないのを考慮して誤魔化してくれたのか

 

 「まぁお茶でも飲んで待っていなさい、お菓子もあるからね」

 

 一体誰がくるのだろう、少し想像しながらお茶をすすった。

 

 

 

 



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再開は突然2

 帰り道にちらっと眼があった霊がこちらを覗き込んでいる。

 こちらを見ているか確認したいのかこちらの前で飛び跳ねたり手を振っていたり身振り手振りをして気付いてもらいたいようだった。どうやら喋れないらしい。

 

 見た目は男性の霊でスーツを着ており、顔はまだ若さを保っている。普通の霊はただ彷徨っていて最終的には町の数か所にある、霊道や死神みたいなものに連れていかれて成仏するが、なかには死に方が悪かったり、死に際に強い恨みをもっていたりすると周囲に怨嗟を齎す存在となる。

普通の霊なら怨嗟をまき散らしていても霊を感知できない人や、もとより霊的防御が元から高い人等には大して影響がない。

 見えている人にはもちろん叫び声だけで害だし、見えてるとなれば直接害が及ぶし、仲間を増やそうと付き纏ってもくる。

 

 

 しばらく霊を睨みつけていても、逃げる気配がない

 普通の霊ならば、「何でもないです……」って怯えながら逃げるのにこの霊は体は恐怖で震えているが、なにか伝えたいことでもあるのだろうか

 

 「……見えてますよ、なにか御用で?」

 

 男性はほっとしたあと、近くにある自動販売機の下を指す。

 

 「オネガイシマス」

 

 自動販売機の下にはぼろぼろになった指輪ケースがあり、なかには綺麗な指輪が入っていた。

 

 「これは誰に届ければいい?」

 

 誰に送るかは興味はないが、指輪は彼にとって大事なものだったのだろう。

 男性は次に近くの交番を指さした。

 

 「これを交番に持っていけばいいんですね?」

 

 聞くと男性の霊はお辞儀をし、すっと溶けるように消えていく。

 届ける義理はないけど、返事してしまった手前放置するわけもいかないので交番に指輪を届けることにした。

 

 

 指輪を届け、交番を出る。

 少し前に暴走した車が歩道につっこでくる事故があり一人の若い男性が被害にあったそうだ。結婚を控えていたらしくその日ちょうどプロポーズをしに向かう途中だったらしい。遺品から指輪だけが見つからず、事故現場を探しても出てこなかったらしい。

 指輪が落ちていた自動販売機と事故現場とは角を挟んだ向こう側にあったので見つからなかったのだろう。事故の衝撃がすごいかったと聞いたので指輪ケースが吹き飛んで自動販売機の下に嵌まって忘れ去られたのだろう。

 

 彼が満足して成仏できるように祈りながら、家路を急ぐ

 今日こそみこちゃんにちゃんと挨拶せねば……

 

 

 

 家までもうすこしというところで、仕事用のスマホが鳴った。

 まだ本格的にはやっていないが、祖母や祖父の手伝いの為の連絡用のスマホである。祖母かと思って番号を見ると、珍しい人から電話がかかってきていた。

 

 「頼光くんかい?久しぶりだねぇ」

 

 「お久しぶりです。ミツエさん」

 

 「茨ちゃんに電話したんだけどね、孫が近くにいるからそっちに頼みな!って言われてしまってね」

 

 「茨……あぁ祖母ですか、普段ばばあとかばあちゃんとかしか呼ばないんで、思い出せませんでしたよ。それでどうしました?」

 

 「お客さんに完全に見えちゃってる女の子がいてね。少しでもましになるかと私の特製の数珠をあげたんだけど、すぐ壊されてしまってね。今も変なのが付いているみたいだし、少し見てもらえないかい?」

 

 「分かりました。今時完全に見えるとか珍しいですね、何歳ぐらいのお子さんですか?」

 

 「高校生くらいの子だね。」

 

 「高校生ですか、特別な修行とか数珠を買おうとしているあたり、特別な魔除けも持っていないのにしてないのによく生きてますね、なんにせよすぐに行きますが場所はお店でよろしいですか?」

 

 「前から場所は変わらんよ。頼んだよ」

 

 「はい、では後ほど」

 

 みこちゃんに挨拶しなければならないが、こちらも緊急性が高そうだ。

 家までの道筋を駆け抜け、家に帰り、竹刀袋に入っている刀を取り、道具一式が入っている鞄を背負る。金庫から帯刀許可書のファイルを忘れずに入れる。

職務質問をされた際に一度携帯を忘れていて大変なことになった。

祖母と祖父の神社の近くだったのでなぁなぁになったが、今見つかるとかなりやばい

家をでて、ミツエさんが待つお店に向かう。

 

 ミツエさんのお店は駅前にある為、家からはそこまで遠くない。

 お店の近くにいくと、ミツエさんのお店の前にホラーゲームに出てきそうなズタ袋を被った首に鎖まいて血まみれの大柄な霊が佇んでいた。

 刀を取り出してすぐ処理したいが、人が歩いている通りで抜刀するわけにもいかないので霊を蹴り飛ばしながらミツエさんのお店の裏側まで連れていく。

 人目から完全に離れたのを確認後、竹刀袋から刀を取り出し、一撃で首を飛ばす。念のため体もばらばらに切り刻む。

 霊は存在を保てなかったのが完全に消え、復活や死んだふりだったという兆候もない。

 

 「さすがだね」

 

 刀を納刀し、竹刀袋に入れていた時に後ろから声を掛けられる。

 

 「改めて、お久しぶりです。」

 

 気配は感じでいたが、後ろを振り向くとミツエさんが庭の軒先に立っていた。

 

 「歳でね。もうそこにいるのは分かるんだが、完全に見えなくなってしまったね。茨ちゃんや綱さんのようなにいかんね。」

 

 「いえ、そのための僕ですからね、大丈夫ですよ。例の子は中ですか?」

 

 「そうさね、中に入ったら私のことはゴッドマザーと呼んでおくれよ」

 

 「分かりました。ゴッドマザー、僕のことも源と呼んでくださいね」

  

 「茨ちゃんのほうの苗字名乗っているんだね」

 

 「えぇ、本名だとなにかと面倒ですからね」

 

 店先から靴を脱ぎ、途中靴をみると女性用とみられるローファーが2足玄関に置いてあるのが見えた。ミツエさんに案内されてると女性二人の話声がしたが、扉の外に人の気配を感じたのか声がしなくなり静かになった。

 

 ミツエさんに促されて扉を開けて中にはいる。

 

 「ゴットマザーから話は伺っています。はじめまして源です」

 

 声をかけながら中に入ると、すごいオーラをしてる体格がいい女の子と

 こちらを見ているみこちゃんの姿があった。

 



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