悪の科学者を超える転生者 (ヘルスパイダー)
しおりを挟む

最悪の名前で生まれ変わりました

原作突入は人造人間編のセルゲームからなので、それまで何話かそこに至るまでの駄文を書くと思いますがご了承ください。


はじめましてと言っておこう。

 

私の名はボゲと言う。……言っておくがこれはふざけているのでも混乱して言っている訳でも無い。残念ながら正真正銘の私の名前だ。

 

こんな名前を授けた親の頭はおかしいのか狂っているのどちらかだと言いたいが、皮肉な事に私の親はこの地球上で見れば最高峰の頭脳の持ち主だ。

ただまあ、一般的に見ればマッドサイエンティストと呼ばれる類の人間なのでやはり狂ってはいるのだろう。

 

さて、愚痴が多くなってしまったな。改めて自己紹介の続きといこうか。

単刀直入に言おう。私は日本からの転生者だ。

 

前世の私は齢45という歳で病によって亡くなった。

呆気ない死に様だと自分の事ながら思ったものだ。痛みと苦しさにもがいているウチに気がつけば赤ん坊となってボゲなんて最低なネーミングをつけられた日のことを昨日のように覚えている。

 

それから何年もの年月が経った。赤子であった私は幼少期の子供まで成長し、両親の顔の面影が出てくる年齢にまでなった。

 

さて、ここまで私の独白を読んでくれている聡明な読者の諸君らならば既に私の親の正体に感づいているのではなかろうか?

まだ分からないから待ってくれといった方々には申し訳ないが、私は勿体ぶるのが嫌いな性格でね。

 

私の親はあのレッドリボン軍に所属する悪の天才科学者ドクター・ゲロである。

母親はゲーム『ドラゴンボールファイターズ』で初登場した人造人間21号で、両親共に研究に付きっ切りだった為に私の世話をするのはいつも雇われの家事代行サービスのおばさんだった。

 

だからだろうか、人造人間16号のベースとなった私の兄である彼が非行少年の道に走ったのは。

そうなれば、家庭内で暴力を振るわれるのは当たり前で、兄弟げんかは日常茶飯事ではないにしろ、時たま兄の機嫌が悪かったり、見解の相違でぶつかることはしばしばあった。

その度に負けるのはいつも弟である私で、そもそも自分には喧嘩の才能が無く、自分が兄と同じ強さへの道を進めばきっと一生追いつけないということを理解してしまった。

 

そんな彼がいたからこそ、私は力による未来でなく両親と同じ科学者の道を歩むことに決めた。

 

この決断に迷いがなかった訳ではなかった。子供の頃から好きだったアニメであるドラゴンボールの世界で主人公と一緒の道を歩むのを諦めるのは苦しかった。

何故サイヤ人に生まれなかったのか?何でドクター・ゲロの子供に生まれてしまったのか?

ずっとその考えがグルグルと頭の中を支配していた。

 

そんな呪縛のような苦しみから解放されたのは私が学校に通い始めてからだった。

当然のことながら、私は前世の記憶が存在しており、小学校などの義務教育ではトップの成績を誇っており、それに目を付けた父の名を知る教育者が次々と上の問題を出していき、ついには高校レベルを超えて大学レベルの問題まで解かされることとなったのだが、私はそれを苦も無くあっさりと解いてしまった。

 

齢5歳にして一流大学に所属する天才達と肩を並べられる神童と周りの大人達から評価を受けた。

 

これには私も最初は戸惑った。前世では一応大学は卒業していたとはいえ、精々が二流の下の方の大学で遊び人をしていた程度の学力しかない私が問題を読むだけで頭痛がしそうな難問を前にスラスラと答えを出せるという現状に困惑した。

 

だが、これが私に与えられたある種のチート能力なのだと考えるとストンと納得することが出来た。

まさに科学者として生きる私にとってふさわしい能力だと当時の私は思ったものだが、この能力には一つ欠点があった。

それは答えが既に存在している問題しかこのチートは機能しないということだ。

 

どういうことかと言われると、例えばここに世界最高峰の科学者でも作り出すことが不可能と思えるようなロボットの設計図が目の前にあるとする。

今の私ならばチラリと目を通すだけで何をどうすればいいのか必要なプロセスを脳内で瞬時に組み立てることが可能となる。

だけど、逆に存在しないロボットの設計図を作り出せと言われれば私には無理と言わざるを得ない。

 

もっと簡単に説明するならば、私は答えを出すのは得意なのだが創造(クリエイティブ)は不得意というのが現状だ。

だから、私は大学を飛び級で卒業した後に、あらゆる企業の製品を分解改造し、それらを改良した案を企業へと売って回って研究資金と人脈の確保に専念して回った。

だが、その頃からだろうか。世間で軍隊よりも力を持った悪の軍隊レッドリボンの悪名が轟き始めたのは。

 

一応父親であるドクター・ゲロの存在は世間にはバレてはいないとはいえ、息子である私はそれが心配であると同時に不安でもある。

このまま原作通りに父親を放置していていいのかと考えることもあるが、説得はまず不可能だろう。

 

あの人は研究者としての矜持を最後まで貫く頑固な人だ。会ったことなど家政婦のおばさんよりも低い頻度でしかなかったが、私が大学に飛び級で進学したと聞いた時には嬉しそうな顔で祝いにやって来たし、自分の研究成果などを楽しそうに教えてくる姿には悪の科学者とはとても思えなかった。

きっと、下手な野望さえ持たなければこの人は悪に染まることは無いんだろうなと何度考えただろうか?

 

それでも、私がゲロを止めずにいられなかったのはレッドリボンの豊富な軍資金が科学者であるゲロを強く引き留めてしまっているからだと私の頭が理解してしまっているからだろう。

下手に頭が良すぎるのが災いして私は勝算の無い戦いには挑めない性質になってしまっていた。

 

だからこそ、私はレッドリボン軍に負けない程の軍資金を蓄える為に行動している。既に私の齢は18歳となり、そろそろ本格的に父親であるゲロを引き抜こうと重い腰を上げようとしたとき、一通の知らせが私の元に届いた。

それは、私の母と兄が揃って死んだという知らせだった。母親は不治の病で、兄は父親と同じくレッドリボン軍に兵士として入っていたらしく、敵の弾丸に撃たれて死亡したらしい。

正直言って母や兄にそれほど強い思い入れがあった訳じゃなかった。だが、それでもこの世界で同じ血を引く家族だったのは間違いない。

私は2人の葬儀に参加したが、結局父親であるゲロは最後まで葬儀に顔を出さなかった。

 

何故だ、2人はあんたの家族だろうが!?そんな思いが私の中で怒りと恨みに変わり、あの人を引き抜こうと蓄えた金は全て私個人の研究費用へと変わったのは当然のことだった。

 

そんな今の私の将来の夢……いや、野望は父親であるドクター・ゲロの全てを否定することだった。

 

そこで真っ先に思いついたのが父の最高傑作ともいえる人造人間セルを超える人造人間を造りだすことだった。

しかし、問題があった。私は既存の物を作りだしたり、改良することは可能ではあるが、新しく何かを作り出すといったことは難しいのだ。

 

なら別にドクター・ゲロの研究成果を盗んで改良してしまえばいいと言う者もいるかもしれないが、それは難しいのだ。

今のドクター・ゲロはレッドリボン軍の兵器開発に携わっており、人造人間は造り出してはいるもののその力はまだアドベンチャー編程度の物であり、それをただ改造したとしてもピッコロ大魔王を倒せる程度の人造人間しか作り出せないだろう。

 

なら、Z編の人造人間が出来上がった頃に盗んでしまえばいいと言う者もいるだろうが、それも無理だ。

 

17号と18号は元人間で、設定ではゲロに誘拐されて人造人間に改造された筈だった。

そんな悪役のような事を私ができる筈もなく、そもそもそれではセルの第一形態か第二形態程度の強さしか造れないだろう。

それでは駄目なのだ!あの完全体であるセルを超える人造人間でなければ意味がない!!

 

袋小路に入り込んでしまったかのような絶望にうなだれていると、ふと天啓が私の脳裏に舞い降りてきた。無いのならばあるところから引っ張てくればいい。それでも無理ならば別の物とくっつけて改造してしまえば問題無い。

そんな単純明快な答えに辿り着いた私は早速行動を起こした。

 

まず手始めに何をしたのかと言うと、超小型のスパイカメラの開発に着手したのだ。原作でもあった通り、セルを造り出すために必要な細胞はゲロが開発した虫型の小型スパイカメラで収集したのだと。

私は既にゲロの研究成果で虫型のスパイカメラの設計図は頭の中に入っているため、あっさりと造り出すことに成功した。

これを使って何をするのかといえば、主な目的は3つある。それは、1つ目は超えるべき目標のゲロの現状把握とその研究成果だ。これは私の知らない後の人造人間17号と18号の開発に必要な永久エネルギー炉の造り方を知るためだ。

 

2つ目はドクター・ウィローの居場所を探り当てる為だ。彼はゲロと同じマッドサイエンティストの科学者だが、その頭脳はゲロに負けず劣らずの優秀なもので、ゲロと違いバイオ研究を専門にしており、彼の過去の研究をひと通り見させて貰ったが、私の結論から言えばゲロが1から100を生み出す天才とするならば、ウィローは0から1を生み出す天才だ。

もし仮に2人が手を組んで人造人間の開発に着手していれば、恐らくセル以上の力を持った驚異的な人造人間が誕生していたことだろう。

 

そして、最後の目的はこの地球に封印されている筈の魔人ブウを発見することだ。かの魔人はセルと同等と悟空たちが言っていたダーブラをあっさりと倒すことができるパワーを持っており、封印状態とはいえその力を解析することが出来ればセルを超える究極の人造人間開発の大きな足掛かりになるだろう。

 

「さて、これから忙しくなるな」

 




作者は俺様がカイドウだ!!!!というハンターハンターの二次創作も書いてますので、そちらの方も読んでみてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒幕気取りのボゲ

評価してくれる人と感想くれる人に感謝します。
今後も励みになりますのでドンドン送ってください。


 前回作ったスパイカメラの結果はゲロの居場所の把握と研究成果の盗み撮りには成功したが、残りの目標であったウィローの研究所は映画通り雪崩で埋まっており、小型スパイカメラでは到底侵入することが出来なかった。

 

 そして、魔人ブウの方はそもそも発見することが出来ず、恐らくだが何らかの方法で封印状態のブウを隠していると思われる。

 地球に住まう神の神殿にすら飛行機などの乗り物は近づけない結界を張っているというのに、そんな神よりも何段階も上の界王神を殺して回った魔神ブウをただ人間の手に届かない場所に放置するとは考えづらい。

 

 そうした以下の理由によって、現状ではゲロの監視以外は役に立たないスパイカメラであったが、ようやっと他に出番が回ってきた。

 

 それはつい先日の話だが、昼間だというのに空が夜のように真っ暗闇になったのだ。

 これはきっとピラフ大王が神龍を呼び出したということなのだろう。

 

 そうなってくると、次の天下一武道会で孫悟空やクリリン、そして変装した亀仙人であるジャッキーチュンが参加するということ。

 

 未だ私が思い描く最強の人造人間プランはほぼ白紙の状態ではあるが、そもそも私は気という存在を把握出来ていないのだ。

 現実世界には存在しない物質と呼べるのかどうかも分からない。まさに、ダークマターのような存在で、他の漫画では魔力、チャクラ、コスモ、闘気などと様々な呼び方をされており、私はこれを総じて不思議なパワーという意味を込めてFパワーと名付けることにした。

 

 まずはFパワーが熱エネルギーなのか光エネルギーなのか電気エネルギーなのかを探るべく、天下一武道会で彼らの出すかめはめ波を始めとした戦闘シーンの研究をしようとスパイカメラの増大に加え、ハイスピードカメラやモーションキャプチャー等々、様々なカメラの性能面向上も追加するべく研究に取り掛かった。

 

 結果、なんとか天下一武道会の開催前までに間に合わせることが出来た。

 ついでに言えば、出来たスパイカメラを大きくなるよう改造してドローンのような形状にし、ドローンカメラとしてテレビ局や天体観測の研究者などカメラに関する職の者達に高値で売り払うことが出来た。

 

 そして、スパイカメラによって一番大きい気を放ったジャッキーこと亀仙人が月を破壊したかめはめ波を観測して分かったことがいくつかあった。

 Fパワーとは人間などのような生命体だけではなく、植物や海や大地などといった無機物にすら宿っているのだ。

 

 思い返してみれば、悟空が元気玉を集めるセリフで海や大地に空と生き物でないものに語り掛けたり、草花からエネルギーのような光が集められるシーンが描写されていた。

 

 つまり、Fパワーとは生物だけが持つ力ではないということだ。っとすると、無機物で構成された完全なロボットタイプである人造人間16号が気を扱えたのも、エネルギーコアが埋め込まれただけが理由ではない? 

 

 これはいくつか検証する事が必要が出てきた。流石に無機物に宿るFパワーは生物に比べて微々たるものだが、もし仮に無機物が持つFパワーを増幅させることに成功したならば、セルを超える人造人間の完成に大きく近づくことが出来る。

 

 さっそく私は実験に取り掛かった。

 今回の観測によってFパワーという概念を数値化し、ドクターゲロやドクターウィロー、その他原作には名前すら登場していなかった過去現在の名だたる科学者たちの役に立ちそうな研究成果を片っ端から読み漁り、それらを組み合わせ、改造して出来た機械によって気の再現化することに成功した。

 更にそれを増幅させるエネルギー回路の開発を今回の実験を参考にして、奇跡的に自分1人の力で成功させたのだ。

 

「驚くほどに上手くいった。だが、ここまでくるのに早1年程度か……」

 

 思い返してみれば光陰矢の如しといわんばかりに時間は過ぎ去っていた。

 

 そして、私が研究に着手している間にレッドリボン軍は既に壊滅していた。今のドクターゲロは原作通りあの人造人間17号18号を造った研究所で孫悟空への復讐の為に研究に没頭しているのだろうか? 

 それとも、突然の軍の解散で今頃は茫然自失しているかもしれない。

 

 だが、どちらにせよ未来では人造人間が暴れ回るのは確定しているだろう。

 ならば私は、その人造人間を超える最強の人造人間開発に一分一秒でも早く完成へと近づけねばなるまい。

 

 そう決意を新たに、次なる研究目標である素材回収の為にスパイカメラの強化を進めることにした。

 

 まず手始めに行ったのが、金稼ぎの為にカメラ関係各所の者達に売り渡したドローンカメラの問題点や改善点などを定期的に書類で送ってもらい、簡単なものならば無料でアップデートし、多少手を加えて改良しなければならない場合は少しの金銭もしくは私の研究に役立ちそうな情報を対価に私自らがドローンカメラの手直しに向かった。

 

 それが功を成して、今後私の役に立ちそうな情報が手に入った。それが光学迷彩機能だ。

 動物保護を目的とする組織からの依頼で売り渡したドローンカメラだが、保護対象の動物たちに警戒されてストレスを与えていると苦情が入り、ならば普段はどのように保護対象を監視しているのかと尋ねると、自身の体を周りと同じ色の保護色で覆い隠していると答えた。

 

 そこで私はピーン! ときた。レッドリボン軍が壊滅したということは、今後の悟空たちの監視をする際はドクターゲロのスパイカメラも付近に存在するということになる。

 そうすれば、もしかすればあの天才科学者ゲロならばこちらのスパイカメラの存在に気づいてしまうのではないか? 

 

 そう考えた私は、彼らから迷彩関係の資料をドローンカメラの性能向上の為と半分噓をついて譲り渡してもらった。

 それを元手に私はスパイカメラに光学迷彩機能の追加に成功し、ドローンカメラにもその光学迷彩機能を取り付けて組織の者に譲り渡した。

 結果、次に送られた経過報告書では動物達はドローンカメラの存在に気付くことなくいつも通りの生活を送っていると返答が帰ってきた。

 

 これならば次の天下一武道会にもスパイカメラを送りつけても問題はないだろう。

 それに、その天下一武道会終了後には私の目的とする人物が登場する予定だ。この光学迷彩機能があれば通常よりも遥かに間近で観測することが出来る。

 

 そして迎えた次の天下一武道会では、案の定ドクターゲロのスパイカメラと思わしき虫型ロボットを発見したが向こうはこちらの様子に気づいた様子は無く、リングの上で戦う悟空達をジッと監視していた。

 

「やはり何事も他者からの声と創意工夫というのは大事だな。これで安全にピッコロ大魔王の細胞を手に入れることが出来る」

 

 ニヤリと笑みを浮かべて天下一武道会を映すモニターとは別のもう一つのモニターに映る復活したピッコロ大魔王を見つめるボゲの姿はどこからどう見ても悪の科学者以外の何者でもなかった。

 

 だが、これは必要なことなのだ。Zの3大ボスキャラはフリーザを除くセルとブウは強力な再生能力を有しており、持久戦ともなれば再生能力の有無は戦況に大きく関わってくる。

 故に、私の造り出す最強の人造人間開発の為には、ピッコロもといナメック星人の再生能力は必要不可欠なのだ。

 

 それに、今このタイミングで入手するのにも訳がある。魔人ブウは再生するのに大してFパワーをほとんど消耗せずに済んでいるが、ナメック星人の再生はFパワーを大量に消耗する。

 フリーザとの戦いでネイルが斬り落とされた腕を再生させた際、フリーザから戦闘力が大分落ちていると口にしている描写があった。

 

 つまり、何が言いたいのかというとだ。私はピッコロ大魔王の細胞を手に入れ次第、すぐさま再生能力の改良に取り掛かりさえすれば、人造人間編までにはFパワーの消耗を魔人ブウ並に落とせるのではないかと思うのだ。

 そうすれば、いくら強力な攻撃を喰らおうとも、即座に再生して戦うことが出来る筈だ。

 

「さて、細胞を採取したスパイカメラは帰ってきたが、これを検査機に入れて詳しく解剖するにも時間はかかる。それまでの間は、悟空と天津飯の戦いでも観戦させてもらうとするか」

 

 パチン! と指を鳴らすと、部屋の壁の一部が忍者屋敷のどんでん返しのように回転し、奥からイスと飲み物が入ったカップがボゲの近くにやって来る。

 

「ふふ、気分はさながら裏で糸引く黒幕気分といったところか……」

 

 カップに口をつけながら悪い笑みを零して悟空と天津飯のリアルな戦いを久方ぶりに純粋な子供心で楽しんだ。

 

 

 




今回はちょっと話が短い気もしますがどうだったでしょうか??
今話に登場したオリジナルのFパワーはファンタジー小説を考えている際によく作者が脳内で使っている単語で、せっかくだから科学者らしく新しい単語の1つとか使ったらカッコイイから折角なのでと思い使いました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

医術はドラゴンボールを超える!

今回の話はオリ主が滅茶苦茶なこと言ってますが無視してください。


 天下一武道会が終了し、ピッコロ大魔王がドラゴンボールによって若返りを果たした。

 ここまでは原作通りであるが、悟空の方はヤジロベーによってカリン塔に登っている最中だ。

 漫画版ならばカリン様から直接超神水を手渡されるが、アニメ版ならば氷のダンジョンのような場所でヤジロベーと共に攻略して番人のような者から超神水を飲むこととなる。

 

 まあ、漫画版だろうがアニメ版だろうが私にとってはどちらでもいいことだ。私の目的は潜在能力を解放させる超神水を一滴でもいいから手に入れることのみだ。

 

 今後のZ編ではナメック星の最長老や老界王神など潜在能力を解放出来るキャラはいるが、その潜在能力の解放率がどのくらいなのかは把握していない。

 

 最長老はきっかけを作る程度と言っていた。恐らくは引き出せていても精々が20~30%程だろう。

 老界王神の場合なら、推測ではあるが100%の潜在能力解放が可能なのだろう。

 

 ならば、この超神水はどれだけの潜在能力を解放出来るのだろうか? 

 そもそも、仮にもサイヤ人である悟空ならばその潜在能力はいかほどなのだろうか? 

 

 将来的に伝説のスーパーサイヤ人になれる実力の持ち主なのだから、その潜在能力は凄まじいのは間違いない筈なのだ。

 それがピッコロ大魔王を少し圧倒する程度なのは少々不自然なのだが、これは作品を面白くする為に必要なことと考えれば納得はできる。

 

 おっと、私が思考している間に悟空たちがカリン塔の頂上に辿り着いたみたいだ。

 はてさて、これでこの世界が漫画かアニメどちらの世界線なのかこれでハッキリする。

 

 まあ、私がこうして存在している時点でどちらともいえない世界線なのだが。

 むっ、カリンが奥から神と書かれた水差しを持ってきた。どうやらこの世界は漫画版に近い世界線のようだな。

 

 さて、いくら悟空といえど毒をがぶ飲みすれば悲鳴を上げてのたうち回るようだ。

 その間に落とした超神水の水差しの中に残っているほんの少しの超神水を回収することに成功した。

 

 今回の計画で最も警戒していたカリンも、流石にこの気を持たないスパイカメラの存在に気が付いてはいなかったようだ。

 

 ひやひやしながら見守っていたが、スパイカメラは無事に超神水を研究所まで届けることが出来た。

 

 早速検査機でこれの成分を分析してみせよう。

 前回手に入れたピッコロ大魔王の細胞の分析は既に済んでいるし、細胞のクローン化にも成功している。

 これで再生能力の研究に取り組むことが出来る。

 

 とはいえ、再生能力も超神水による潜在能力の解放も素体である人造人間の完成が出来なければ意味をなさない産物だ。

 

 言うなれば設定やキャラクターは出来ているのに、ストーリーが出来上がっていない小説を作っているというのが今の私の現状だ。

 

 早く人造人間開発の基本設計図を完成させなければならないと焦る私の気持ちに反して私の頭脳は肝心の人造人間開発計画に有用なプランを何一つ生み出せずにいた。

 

 テレビを点けてみれば、世間ではピッコロ大魔王を謎の少年が倒したというニュースで持ち切りとなっていた。

 Z編に突入するまで天界での修業編とマジュニアとの対決する天下一武道会編の2つしか残っていない。

 

 こうなってくると漠然とした不安が私の胸に湧き上がってくる。分かっていたことだが、私に何か新しい物を作り出す発想力と呼べるものはない。

 だからこそ、別の誰かの研究成果を盗んででも最強の人造人間を造ってみせると意気込んでいたというのに、現状では父であるゲロをおいて他に人造人間開発に有用な研究をしている者はいなかった。

 

 当初から目をつけていたドクターウィローは氷漬けで、その助手であるドクターコーチンもウィローの救出のために動いてるだけで役には立たない。

 

 先行きの見えない絶望は絶えず私を襲ってくるが、それでも私は研究の手を止めることはなかった。

 

 今のところ私の研究で成功しているのはスパイカメラとナメック星人の細胞のクローン化の2つのみだ。

 一応人造人間8号の改造資料も手に入れたので人間を人造人間化させるのは出来ると言えばできるのだが、こんな程度のものでは私の理想は遥か遠くフリーザにさえ敵わないデクが一体完成する程度でしかない。

 

「はぁ、夏休みの宿題がラスト1週間前でまっさらな状態の学生の気分だ」

 

 愚痴をこぼしながら目の前のコンピューターをいじくりまわして超神水の解析を続ける。

 分かっていたことだが、この超神水はかなりの劇薬だな。構成成分の9割がほとんどの生物に効く猛毒だ。

 そして、残りの1割が全身の細胞に超回復を施す謎の成分であった。

 

 つまり、まとめると超神水は潜在能力を解放させる代物ではなく、全身を毒で破壊し、それを耐え抜いた者に超回復の効果で癒してパワーアップさせるもの。

 いうなれば、サイヤ人専用と言っても過言ではないお手軽パワーアップアイテムなのだ。

 

「ふぅ~、期待していたぶん落胆もデカイな……」

 

 目の前のモニターに表示された超神水の分析結果に落ち込む様子をみせるボゲは椅子の背もたれに寄りかかりながら、酷使した目を癒すようにこめかみを軽く揉みほぐす。

 

 一応は超神水の培養に成功した。もっといえば超神水の成分の1割である超回復は仙豆と同様の効果があるのでは? と考えた私は即座に超回復成分の研究に取り掛かり、なんちゃって仙豆を量産させることに成功した。

 

 これでかなり実験に無茶できるようになっただろう。とはいえ、無茶するような実験をする予定が今のところ未定なのだが……。

 

 それからダラダラと研究資金の蓄えを増やしたり、他の研究者の実験結果を盗み撮りして人造人間の役に立てるかと思案しながら時を過ごしていると、スパイカメラが面白い映像を持ってきた。

 

「ほぉ、サイヤ人の宇宙船であるアタックボールがやって来たか。乗っているのは原作通りにラディッツ1人だけか……」

 

 周囲に他のアタックボールの姿はなく、スパイカメラを宇宙視点に切り替えても他のアタックボールは影の1つも見当たらなかった。

 

「このままいけば原作通りに悟空とラディッツがピッコロに殺されることになるな」

 

 数秒ほど思案すると、すぐさま周囲のスパイカメラを総動員させてラディッツが悟空を探しに行っている間にアタックボール内のコンピューターにハッキングを仕掛ける。

 

 すると出るは出るはと言わんばかりに宇宙の最先端技術の数々に感動すら覚えるが、急いで全てコピーしてこの場から離れなければ悟飯を人質にとったラディッツが戻ってきてしまう。

 それでもまだ時間的な猶予はあるが、バトルが始まってしまえば怒りで覚醒した悟飯がアタックボールを破壊してまうからな。

 

 なんとかラディッツが帰ってくる前にデータを全てコピーすることが出来たのだが、スパイカメラをその場から避難させることなく全機待機させている。

 

 さて、何故私がスパイカメラを避難させずに全機待機させているのか疑問に思った者もいるだろう。

 目的は2つある。1つはZ編の戦闘をあらゆる角度、あらゆる視点で見たいというのが1つだな。

 もう1つはラディッツの回収が目当てだ。むっ、私が目的の解説をしている間にいつの間にかピッコロが悟空とラディッツに魔貫光殺砲を撃とうとしている。

 

「魔貫光殺砲!!!」

 

 ふぅ~む、中々の威力ではあるが、この間私が作った疑似カッチン鋼を貫くほどではないな。

 だがまあ、現状では魔封波を除いて唯一といっていい格上殺しの技なのだ。あまり酷評しては可哀想であるな。

 

「ずあっ!!!!」

 

 おっと、私が魔貫光殺砲の評価をしている間にまたもやいつの間にかピッコロがラディッツにトドメを刺そうとしている。

 

 あれは確実に即死だな。とはいえ、舐めてもらっては困る。

 この数年間なにも無駄に時間を喰らい潰してきたわけではない。

 私は再生能力の研究に伴って、医療技術を個人で人類が数百年単位で到達する域にまで発展させたのだ。

 たかが即死の一撃如きで死ぬと神が言うのならば!! 神など謀ってしまえばいい!! 

 

「輪廻を切り裂き、摂理を歪め!! 熱力学第二法則に真っ向からぶん殴る!! それが今の私の医術だぁ!!!!」

 

 超絶無茶苦茶なことを宣言しながら、現場にいるピッコロや合流してきたクリリンや亀仙人達にバレないように、光学迷彩機能を更にパワーアップして透明化に成功させたスパイカメラを死んだラディッツの傷口に密集させ、内部に保管させてあるナメック星人の細胞を移植させ、超神水の超回復成分で無くなった臓器の再生を施しながら止まった心臓の蘇生作業に入る。

 

 総勢200機以上のスパイカメラに搭載された機能をフルで使用すればサイヤ人の一匹や二匹なぞ蘇生させるのになんら問題はない。

 

 蘇生手術におよそ30分もの時間を掛けてラディッツの傷口は完全に塞がった。心臓の方も今は問題無く動いている、その他バイタル測定も問題は見つかっていない。

 

「結論、死者蘇生にドラゴンボールは必要なかった件について」

 

 今までしてきた研究が役に立ったというのは存外気持ちいいものだ。30分という短い時間ながらも現場にいるZ戦士たちにバレることなく治療を施すのは神経を削るような作業だった。

 

 恐らく今頃はあの世で混乱が起こっていることだろう。神もすぐにこのことを知るだろうから、今のうちに意識を取り戻していないラディッツを研究所に移送しなくてはなるまい。

 スパイカメラを改造させた移送型ドローンをすぐ近くに配置しているので、神やピッコロたちが来るまでに回収は完了し研究所への移送も終わらせた。

 

「さて、あとはこのラディッツが目を覚まして暴走せぬように制御装置を取り付けねばな……。それに、少し試してみたい実験もちょうど出来たことだ。命を助けた報酬としては安いものだろう」

 

 寝ているラディッツに更に深く眠るよう麻酔をプスッと打ち込むと、人造人間8号の設計図を改良させ、より強化させた人造人間αの誕生に貢献してもらおう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あの世の騒動

 ラディッツとの死闘の結果、死んでしまった悟空は神によって肉体を持ったままあの世へと連れてこられていた。

 

「うっひゃー、でっけぇおっちゃんだな」

 

「こ、こら……! 閻魔大王様と言わんか!」

 

 相変わらずの無礼ともとれる悟空の発言に神様が叱りの声をあげるが、言われた当人である閻魔大王は構わんと寛容な態度で許してくれた。

 

「なあ、オラのちょっと前にラディッツってやつが来た?」

 

「うん? ああ、奴のことか。ううむ、来たのは来たんだがな……」

 

「…………ん?」

 

 なにやら歯切れの悪そうに答える閻魔大王は意を決したように正直に告白する。

 

「実はお前の兄弟であるラディッツのやつは来たのは来たんじゃが、裁判が終わる前に消えよったんじゃ。恐らくだが現世で何らかの方法で生き返ったのだろうな」

 

「いぃ!!? そりゃマズイって神様! オラ急いで地球に帰らねぇと!!」

 

「お、落ち着け悟空! 今お前が地球に帰ってラディッツを再び倒したとしても、今のままでは一年後に地球にやって来るサイヤ人に殺されてしまうぞ!」

 

「じゃあどうすんだよ。このままじゃどっちみち地球が侵略されっちまうよ!?」

 

 ラディッツがまだ生きていると聞いて、慌てて地球に帰ろうとする悟空を止める神様は必死の説得を試みる。

 

「地球の事は私とピッコロに任せよ。いくら生き返ったといってもそうあっさりとあの傷が治ることは無いはずだ。ラディッツのことは地球にいる者たちでなんとかしてみせる。だから悟空よ、お前は界王様に修業をつけてもらい今よりも更に強くなるんじゃ!」

 

「っく、……分かった。なら、オラ急いで界王様って人の所で修業をつけてもらってウンと強くなって戻ってくる。だからそれまでの間、地球のことは任せたぞ!」

 

 苦渋の決断ながらも悟空は地球にいる仲間たちを信頼することに決め、界王様の元で今よりもずっと強くなることを決意し走り出す。

 

「ああ、私とて地球の神だ。お前が留守の間は地球を守ってみせる。だからお前は安心して強くなってみせ、再び地球を救ってみせてくれ!」

 

 遠ざかっていく悟空の背中を見つめながら、地球の神としての決意を新たに地球に帰ろうとしたすると、界王様の元に向かって走り出した悟空が再び戻ってきた。

 

「ん? どうした悟空?」

 

「そういやオラ、界王様ってのがどこにいるか聞いてなかった!」

 

 ズコッ!! ×2

 

 アッハッハッハ! と自分のミスを笑って誤魔化す悟空に、神と閻魔は本当に大丈夫か? と若干不安になりながらも、地球の命運を悟空に託して蛇の道までの案内役の鬼をガイドとしてつかせることにした。

 

「そんじゃ、今度こそ界王様って人のとこで修業してくる」

 

「ああ、地球の命運は任せたぞ」

 

「…………お前さんら、そろそろ邪魔だから帰ってくれんかの」

 

「「あっ、はい……」」

 

 感動的な雰囲気を醸し出す2人だが、後続の列がそろそろ長蛇になりそうでいい加減帰って欲しそうに言う閻魔大王だった。

 

 

 ♦

 

 

 あの世に悟空を送り届けた神様は地球に戻り次第、急いで天界からラディッツの死体があった場所を覗き込んで見るが、そこには既にラディッツの姿は影も形も無くなっていた。

 

「うう~ぬ、まさか本当に生き返ったというのか。だが、あの時ピッコロは確かにトドメを刺したはず?」

 

「どうした神様?」

 

「ぬっ、ポポか。私があの世に行っている間にドラゴンボールを使用した者はいるか?」

 

「いいや、空はずっと明るいままだった。だからドラゴンボール使われていない」

 

 なんと、ならば奴は自力で死の淵から蘇ったということか!? だとしても、あの状態であそこからたった一人で私の観測できぬほど遠くへ逃げたというのか? 

 

「サイヤ人か……、これはまた手強い相手だぞ悟空」

 

 あの世にいる悟空が将来立ち向かう敵の凶悪さが自身の想像以上であると危惧するが、今の自分には祈り願うことしか出来なかった。

 

「神様……」

 

「ふっ、神ともあろうものがたった一人の人間に全てを託さねばならぬとはな」

 

 悲観した雰囲気を醸し出す神様だが、その顔は全てを諦めた者のそれではなかった。

 彼とてただ長く生きてきただけの人生を送ってきたわけではない。

 

 そもそも、神様の持つ一番古い記憶は諦めの記憶であった。

 自身の記憶がないまま親からの手紙であろう『あとでいくから待っててくれ』という文を信じて何十年も待った結果、結局誰も迎えに来ることはなかった。

 そんな彼は長い旅の果てに神の存在を知り、更に長い年月を修行に費やして神の座を手に入れたのだ。

 

 だからこそ、神様は悲観的になりながらも、神としての立場で地球を守る為に己の半身であるピッコロにラディッツ生存の報告の為に下界へ降り立つことに決めた。

 

「すまんがMr.ポポ。また再びこの神殿の留守を任せる。私はあやつの元に行かねばならぬ」

 

「分かった。気を付けて神様」

 

千里眼でピッコロの居場所を探り当てた神様は、下界へと降り立っていった。

 

「…………一体この俺様に何の用だ神よ?」

 

「気づいておったか、流石だなピッコロよ」

 

 瞑想中に後ろに立った神の気配に感づいたピッコロは後ろを確認することなく、そのままの態勢で後ろに立つ神に話しかける。

 

「世間話をしに来たのならさっさと帰るんだな。こっちはいずれ来るサイヤ人とやらを始末する為に強くならんといかんからな」

 

「勿論、貴様の邪魔をしに来た訳ではない。っが、……悟空の息子はどうした? 確かお前が育てると言って連れ去った筈だが……?」

 

 辺りを見回しても孫悟飯の姿はどこにもなく、ピッコロ一人しかこの場には存在しなかった。

 

「そうか、あの小僧の心配か。だが残念だったな。あいつなら戦士としての心構えからなってないから、過酷な環境に放り込んで今はサバイバル中だ!」

 

「な、なに!? ならあの小僧は今は一人で行動しておるのか。い、いかん! 今すぐにあの小僧を迎えに行くんじゃ!!」

 

 目が飛びでるかと思うほどに驚愕する神の態度に、悪の大魔王であるピッコロはくだらなさそうに笑みを浮かべる。

 

「くっくっく、相変わらずお優しいこった。今すぐあの小僧を助けた所で1年後にやって来るサイヤ人との戦いを乗り切らんことにはあの小僧どころか、この地球そのものが危ういんだぞ?」

 

「ち、違う!? いいかよく聞けピッコロよ、貴様と悟空が協力して倒したあのラディッツという男、そやつがまだ生きておるのだ!」

 

「なに? 寝言は寝て言うんだな。奴は確かにこの俺様がトドメを刺した。あの状態から生き返る筈がなかろう」

 

 ラディッツ生存の知らせを受けたピッコロだが、自身の非情さから手加減などするはずもなく、確実にトドメを刺した相手が生きているという言葉を信じることなく、大方あの小僧を助ける為の噓だと認識していた。

 

「確かに信じられん気持ちは分かる。私とてあの世で閻魔大王から魂があの世からこの世へ戻ったと聞いても半信半疑だったが、現にあやつの死体があった場所から既に死体は消えておったのだ」

 

「…………到底信じられん話だ。とはいえ、いつまでも貴様がくだらんジョークを口にする奴ではないとも承知している」

 

 くだらんと一笑にふすのは簡単だが、万が一の可能性も捨てきれないピッコロは瞑想を止めて立ち上がる。

 

「いいだろう。予定変更だ。あのくたばりぞこないがあのガキを狙わんとも限らん。あのままサバイバルをしていた方がマシだったという地獄を小僧にプレゼントしてやるとするか」

 

 そう言い捨てて即座に孫悟飯がいる場所目掛けて飛んでいった。

 ただこれは悟飯を助ける為の甘さからではなく、将来やって来るであろうサイヤ人との戦いの貴重な戦力を失わない為の行動には間違いないのだが……。

 

「やはり、あやつはどこか変わった。悪には違いないが、昔のずる賢い粗暴さが消えてるように感じる。この一年であやつが悟空の息子をどう育てるのか? 今の地球を守る役目はあの2人に任せるしかあるまい」

 

 とはいえ、ただ黙って地球の命運を任せっぱなしにするわけにもいかない。自分もピッコロと同じく育てるのだ、未来の希望足りえる戦士たちを……。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

目覚めた新たな戦士!?人造人間α

随分と待たせたね読者諸君!もうお気に入り登録したのも忘れている人もいるかもしれないが、新しい新作だ受け取りたまえ。


 世界が一変するような感覚に襲われながら、重たい瞼を開けて俺は目を覚ました。

 

「……? ここは一体」

 

 目を覚ました場所は見覚えのない部屋の1室で、自分が寝ているベッド以外は机と椅子が1つだけという簡素な部屋だった。

 

 起き上がろうとした直後、この部屋唯一の扉が開いて1人の男が入って来た。

 

「ふむ、意識が戻ったようだな。体にどこか不調はないか? なければ早速で悪いが私の願いを聞いてもらえんだろうか?」

 

「いきなり現れて何を言っている? 見たところ地球人のようだが、俺様を助けたのは貴様か?」

 

「さよう」

 

「はっ! 言っとくが俺様はこの星を侵略しに来たんだ。命を助けられたからと言って義理を返すつもりはないぞ!」

 

「だろうな。だから手は打たせてもらった……」

 

 男がこちらに対して手をかざすと、急に今まで感じたことの無いレベルの頭痛が襲い掛かってきた。

 

「ッ、グオオオオォォォ!!!」

 

「すまんが、君が眠っている隙に肉体を改造させてもらい、君の脳に制御装置であるマイクロチップを埋め込ませてもらった。ああ、言っておくが、私を殺そうとしても無駄だ。これは私の脳波を感知して動きを止めている。先程のように、私が脳波を遮断すれば装置が作動し強烈な痛みが君を襲うだろう。つまり、私が死ねば永久に君はその痛みを背負って生きていくことになる」

 

「わ、分かったから……。は、早くこの痛みをどうにかしろ!?」

 

「そうだな。これで私と君の力関係も理解出来ただろう」

 

 すっと手を下ろすと痛みに悶えていたラディッツの顔が良くなっていき、はぁ……はぁ……と息を荒げてこちらを睨みつける。

 そこから読み取れる感情はまさしく敵意以外ないだろう。

 

「さて、目覚めたばかりで状況もロクに吞み込めず、腹も減っているだろう。ついてくるがいい、食事も用意したからそれでも食べながらゆっくりと説明しよう」

 

 そう言って部屋を出て行くボゲの背中を仕方なしに追いかけるラディッツ。

 案内された部屋には大量の食事が用意されており、ラディッツは許可を取ることなく席について食事を始める。

 

「……毒が入っていると警戒はせんのか?」

 

「ふん、既に俺の脳に制御装置とやらを埋め込んでいるのだろう。今更キサマが毒なんぞを用意しているとは思わん」

 

「まあ、そうだな。さて、そのまま食事を続けながらでかまわん。これを見てほしい……」

 

 ウィーンと天井からスクリーンが降りてきて、そこからラディッツが蘇生した過程やボゲの目的、今現在のラディッツの肉体情報などが流れるように映し出されていく。

 自身の肉体が半ばロボット化していることに驚きつつも、ラディッツの地頭は悪くないらしく、ボゲの説明にも返事を返しながら質問も交えて自分が置かれている現状を大まかにだが理解した。

 

「正直言って信じられん技術力だ。ここまでの技術は宇宙でも例は見ないだろう。キサマ本当に地球人か? かつてこの星に逃げ延びてきた最先端技術を持った宇宙人と言われた方がまだ納得できる」

 

「だろうな。君の宇宙船をハッキングさせてもらったが、宇宙の未知の技術力には目を光らせるものがあったが、既にそれら全て改良して私の研究所に生かさせてもらったよ」

 

「なに!? キサマいつの間に俺のアタックボールを調べ上げた!!」

 

「君が地球に着いて孫 悟空……いや、カカロットと言った方が分かりやすいか? ともかく、君が弟を探しに出て行った隙にちょっとね……」

 

「あの時か……。それで、キサマさっき全て改良したと言ったが、本当か……?」

 

「疑うのも仕方ないだろう。ほれ、君が着ている戦闘服の頑丈さを超大幅アップさせた設計図に、性能を3倍以上に上げたアタックボールの開発映像もあるぞ」

 

 スクリーンの映像が切り替わり、そこには確かに戦闘服とアタックボールの改良案が書かれた図面が映し出された。

 研究者でないためにその情報が本物かどうかは判断できないが、その真偽の信憑性はかなり高いと考えられる。

 

「はぁ……、もうキサマの技術力に驚くのには面倒だ。それで、お前が俺を助けたのは、その未来で産まれるというセルという名の人造人間を倒す為らしいが……」

 

「ああ、既に君の肉体は改造を施し、今の君の戦闘力は1万を超えている。力だけならばエリートと呼ばれる領域に既に足を踏み入れているぞ」

 

「…………あまり実感は出来ないな。本当に眠っている間に俺の戦闘力がそこまで上がっているのか?」

 

「信じられないのも無理は無いだろう。ふむ、食事も済んだようだし、私の研究所には特製のトレーニングルームも兼備してある。ついてきなさい」

 

 再びボゲに案内されるままに部屋を出てついて行くと、辿り着いた先は殺風景ながらも頑丈そうな造りの部屋だった。

 確かにここなら思う存分に暴れ回ることが出来そうだ。

 

「さて、これから君の宇宙船のデータから作り上げたサイバイマンと戦ってもらう。言っておくが、ただのサイバイマンと思って戦えば手痛い目にあうぞ。なにせ、私が短時間ながら最大限に改造と改良を加えた強化種だからな……」

 

 そう言い残してボゲがトレーニングルームから出て行くと、部屋の奥の壁が迫り上がってゆき、その奥から緑色の怪物がゆっくりと歩いて迫ってくる。

 現れたサイバイマンは通常種と違って体格も大きく、その風貌も強者の貫禄すら漂わせていた。

 

「なるほど、たしかに並みのサイバイマンではなさそうだ」

 

 現れたサイバイマンを油断なく睨みつけながら、ラディッツはいつでも戦えるよう構えをとった。

 それを合図に部屋の内部のどこかに設置されているであろうスピーカーからボゲの声が響き渡る。

 

「戦闘の準備は出来ているようだな。それでは両者共に存分に戦ってくれたまえ!」

 

 ビィー!! っとホイッスル変わりに鳴り響く機械音をきっかけに、ラディッツと強化種のサイバイマンがスタートダッシュを決めて部屋の中央で拳を重ねる。

 

 超スピードで縦横無尽に部屋の中で戦う両者の姿は一科学者であるボゲには見えないでいたが、備え付けのハイパースローモーションカメラからの映像で確認は取れる。

 

 それでも、動きの速すぎる両者の姿は一瞬でも目を離せばいなくなり、気がつけば戦況がガラリと変わる。

 

「これは私も人造人間に改造しなければ観戦すら出来そうもないな……」

 

 サイヤ人編の戦闘ですらまともに観戦出来ないのだ、人造人間編ともなれば気づかぬうちに全てが終わってしまうだろう。

 

 そうして、私が密かに自身の人造人間化を決意したのと同時に、トレーニングルームからドカン!! と強烈な衝撃音が聞こえた。

 

 見ればサイバイマンが見るも無残な姿で壁にメリ込んでいる姿が確認できた。

 それに対して、ラディッツの様子は多少の怪我はあれど、その全てがかすり傷程度の取るに足らないレベルであった。

 

 あのサイバイマンは戦闘力でいえば5000以上の、かつてのラディッツならば決して勝てない強さを誇る個体だったのだが……。

 

「人造人間化の実験はひとまず第一段階クリアといったところか……」

 

 まずまずの結果に薄っすらと微笑みを浮かべながら、トレーニングルームで自身の肉体の変化に驚いているラディッツの元へと足を運ぶ。

 

 

 




ラディッツの人造人間化終了しました。
次回は修業編に突入です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

文字通り血反吐を吐くトレーニング(バカです)

ドラゴンボールレジェンドのストーリーって原作よりも胸アツな展開になるの多いよね。
お気に入りは魔人ベジータと復活のFフリーザVSバーダックチームのストーリーの2つっスね。


強化サイバイマンとの戦闘を終え、自身の戦闘力を身をもって確かめたラディッツの元へ行く。

そこでは、手を握ったり閉じたりしながら肉体の変化に戸惑いながらも、歓喜の表情を浮かべているラディッツの姿があった。

 

「どうかね、私が改造してパワーアップした肉体の調子は?」

 

「はっきり言って想像以上だ…!以前の俺からでは考えられないスピードとパワーだった。……キサマの説明では俺はまだ未完成と言っていたな?」

 

「ああ、人造人間αは成長性を重視した性能だ。常に進化を続けるサイヤ人の特性との相性は抜群だろう」

 

「なら、キサマの言う通りにすれば俺はまだまだ強くなれるのか?」

 

「当然だ……」

 

ラディッツの疑問に間髪入れずに答えると、フフフ…と笑いながら拳を握り締め、野心に満ちた眼でこちらを睨んできた。

 

「いいだろう!肉体改造だろうとなんだろうとキサマの言う通りにしてやる!!ただし、俺を強くしろ!誰よりも強い戦士に鍛え上げろ!!」

 

なんとも傲慢ともいえる上から目線の言い方に、私はつい目を丸くして驚いたが、すぐに口角を上げてラディッツの願いに是と唱える。

 

「ならばこちらも!いいだろうと答えよう!!既にトレーニングメニューは考案してある。改造と改良の手順も先の戦闘で構想は出来た!!死ぬほど辛いメニューになるが、君をこの世界最強の存在にしてみせよう!!!」

 

強くなりたいラディッツと強くさせたいボゲの両者の思いが一致した瞬間だった。

 

こうして、ラディッツの肉体改造が始まった。

 

まず初めに取り組まされたのはサイバイマンとの戦闘訓練だった。1~10体とランダムに選出された数の集団戦をその日は朝から晩まで倒れるまで行われた。

 

「「「「「キキャキャキャッ!!!」」」」

 

「消え失せろ!サタデークラッシュ!!!」

 

流石は戦闘民族サイヤ人といったところか。

これによりラディッツの肉体操作レベルは飛躍的に跳ね上がり、自身の戦闘力に相応しい技量を会得することが出来た。

 

ビー!と戦闘訓練終了のブザーが鳴り響き、それと同時にラディッツは地面に倒れ荒い呼吸を繰り返す。

そんな中、監視室でトレーニングの様子をデータにしていたボゲが水差しを片手にやって来た。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、…み…水をくれ……」

 

「ほれ……」

 

ぐびぐび……っ!!?と手渡された水差しを勢い良く飲み干すラディッツ。

 

パリーン!

 

「ぐっ!?がはぁっっ!!?」

 

手に持った水差しを地面に落っことし、急にもがき苦しむラディッツ。

地面に落ちて割れた水差しの破片の一部に神と書かれた文字があることから、ボゲが差し出したのは超神水の入ったものだったのだろう。

 

「な…なんだ…この水?は……」

 

「これは超神水という潜在能力を引き出す……まあ、いわば毒薬だ」

 

「毒薬!!?な…なんてもの……飲ませやがる……!?」

 

床に倒れて転がり伏せるラディッツの恨み言を聞きながら、私は淡々と今回のトレーニングの効果と超神水の効能を説明し終えてから部屋を出ていった。

 

その後、人造人間に改造したおかげか、悟空よりも戦闘力が高いおかげか?ラディッツはその日の真夜中には超神水の毒に打ち勝ち復活を果たす。

 

「う!!!―――かぁっ!!!!」

 

ドバァン!!!!

 

目を覚ましたラディッツは怒りの感情に吞まれるまま気を解放する。

強力なエネルギーの奔流にトレーニングルームは荒れ果て、ボロボロと天井から瓦礫が降ってくる。

 

「はぁ…、はぁ…、はぁ…?これが、俺のパワーなのか……?」

 

ただ単純な気の解放でこのありさまだ。もし本気で気功波を放てばどうなるか想像もつかない。

 

この地球に来てからは想像できないことばかりだった。

仲間にしにきた弟に殺されかけ、目が覚めれば以前の自分では考えられない戦闘力を身につけており、こうして修業後に毒薬を飲まされたと思えば、再び目覚めてみればあの毒薬を飲む前よりもはるかに凌駕するパワーを得ている。

 

「この俺がここまで強く……」

 

ラディッツの暴れた音を聞きつけてか、ボゲがトレーニングルームの扉をくぐって現れた。

 

「ほぉ……、もう目覚めたのか。私の予想では明日の朝まで倒れているものと思ったのだがな」

 

「ちっ!おかげさまでな……。本当ならキサマを殺してやりたいぐらいにブチギレてたんだがな!」

 

舌打ちを鳴らしながら睨みつけてくるが、尋常ではない自身のパワーアップに感謝しているのか、殺す気は失せたようで、イラついた様子は隠す気は無いようだが殺気は感じられなかった。

 

ぐぅ〜〜〜!!!

 

盛大に腹の虫がラディッツの腹から聞こえてきた。

顔を見てみると、さっきまで怒りで顔赤くしていたのとは別の理由で顔を赤らめていた。

 

「ふっはっはっ!!飯ならすぐに用意出来る。君もトレーニング後のすぐ後に超神水を飲んでから何も口にしてなかったからな。私の配慮が足りなかった許してくれ」

 

「っぐ!う…うるさい!!さっさと飯を食わせろ!!」

 

お望み通りサイヤ人でも満腹になる量の飯を用意してやった。

相当に腹が減っていたのだろう。掃除機で吸い込むかのようなスピードで次々と皿に乗った料理を口に放り込んでいった。

 

まあ、ほぼ丸一日何も口にしないままトレーニングと超神水により床を転がりまくっていたのだ、仕方のないことだろう。

 

大量にあった飯は1時間と経たずに全てラディッツの胃の中に消えていき、腹を若干膨らませた状態のラディッツが満足そうに口を拭っていた。

 

「ふぅ~、食った食った!それで?今の俺の戦闘力は一体いくつになってるんだ?」

 

「うむ、中々に興味深い結果が取れたぞ。映像に映すから見るといい……」

 

リモコンを操作し壁からスクリーンが現れ、そこに先程の怒り狂って気を解放したラディッツの映像が映し出された。

次に映像が変化し、スカウターの画面に切り替わりピピピッッ……という機械音と共に戦闘力が画面に表示される。

 

「一、十、百、千、万、十万、百万…………に、二千五百万…だと……!?」

 

「凄まじい戦闘力の伸びだ。直前まで強化サイバイマン達との戦闘がキッカケか?もしくは君の潜在能力が凄まじかったのか……?」

 

ここで結論を出すのは容易いが、より完璧なデータを叩き出すためにトレーニングを積み重ねるほかあるまい。

とりあえず、今日はもう深夜だ。ひとまず体を回復させるように言いつけて寝室へと連れていく。

 

「おっと、言い忘れていたが、あの超神水はトレーニング後には必ず飲んでもらうぞ……」

 

「なっ!?ふっざけるなぁ!!あんな毒薬1回飲むだけで充分だ!!というか、あんなもの2回目から飲めるものか!!!」

 

予想はしていたが、想像通りの拒否反応だな。

まあ、あれだけ苦しんでいたのだ。当然、相当のイカレ野郎以外は拒絶するだろう。

 

「惑星ベジータの真実…………それを知っていて拒絶するのかね?」

 

「…………キサマ一体どこまで知っている?俺のアタックボールに惑星ベジータの情報は入っていない筈だ」

 

「それはいずれ語るとしよう。ひとまず、今言えることはフリーザを倒すには今の戦闘力では相手にならないということだけだ……」

 

それだけ言い残してボゲは去って行き、残されたラディッツは用意された部屋のベットに横になって様々なことを考えた。

この星に来る前のことを、死んで甦り強くなったことを、そしてなにより、かつての故郷惑星ベジータが滅んだ真相のことを……。

 

「俺はどうすればいいのだ……」

 

天井にかつて死んだ親父を浮かべる。

強く誇り高いサイヤ人だった父の姿は俺の憧れであり、いつか追いつくべき存在だった。

 

それが惑星ベジータの隕石衝突で惑星諸共死んだと聞かされ、後にベジータから黒幕はフリーザによる仕業だと聞かされた。

 

あの日の俺はそれを聞いてどう思ったのだったか?怒ったのか、それとも絶望したのか?

あのフリーザの恐ろしさは充分に理解している。奴には決して敵わない……。

 

「それでいいのか……?」

 

「っ!誰だ!?」

 

突如聞こえてきた声に俺は周りを見渡し、声の主を探した。

 

すると、目の前に死んだ筈の親父が険しい顔つきで立っていた。

 

「情けねえ、俺のガキともあろうもんがフリーザなんぞにビビって逃げ腰なんざ恥だぜ……」

 

「お、親父……なのか……?」

 

「うるせぇ!今のオメェに親父なんざ呼ばれたくねえ!!」

 

「なっ!それが息子に対する口の利き方かよ!!い、今の俺の戦闘力はアンタよりも遥かに上なんだぞ!!!」

 

「けっ、なにが上だ!!ヒヨッ子風情が吠えてんじゃねえ!」

 

そう言って親父が俺に殴りかかってきた。俺はその拳を避けることも出来ずに無様に顔面で喰らって吹き飛ばされる。

 

「げほっ!?」

 

「オラどうした?テメエの力はその程度かぁ?この腰抜け野郎が!!」

 

「こ、この野郎ぉおお!!」

 

今度は俺の方から仕掛けた。だが、俺の拳は何発撃ち込もうと親父に届くことはなく、呆れた顔をした親父が腕を組んで避け続ける。

そして、俺は遂に膝をついて崩れ落ちる。

 

「ぐっ……ちくしょう……」

 

「けっ、こんなもんで終わりか?まあ、所詮はまだまだヒヨッ子のレベルだったわけだ。情けねぇぜ……」

 

「ち、畜生ぉおおお!!!」

 

悔しさのあまり拳を地面に叩きつける。こんなにも……こんなにも親父と俺の距離は遠いものだったのか?

戦闘力では俺は間違いなく親父を超えた筈なのだ。だというのにこの実力差は一体なんなのだ……。

 

自分の無力さに絶望を味わい下を向き続ける不出来な息子の首を乱暴に掴み上げ、自分の目線と同じ高さまで持ち上げる。

 

「惨めったらしさもここまでくると笑いを通り越して怒りが湧いてきやがらぁ!いいか、俺達戦闘民族サイヤ人ってのは誇りと共に生きている!!」

 

「お、親父……?」

 

「……サイヤ人はまだ滅んじゃいねぇ!ベジータ王もフリーザの下で生き延びることなんざ考えちゃいなかった。例え地に頭をつけようと、反逆の機会をずっと密かに待ち続けていた!!」

 

「……っ!?」

 

「戦い続けるんだ!復讐しろだなんて勝手は言わねえ。だがな、もしテメェに少しでも俺の血が繋がっているのなら、気にくわねえことには……死んでも意地を通しやがれ!!」

 

再び頬に親父の鋭い一撃が襲った。

 

そこで俺の目は覚めた。

 

「っは!」

 

起き上がっているとそこはベットの上で、俺はいつの間にか眠っていたのだろう。

 

「あれは夢?なのか……」

 

殴られた頬に触れてみても、そこには傷一つ無かった。

だが、そこには確かに親父に殴られた痛みがあった。

 

「……誇りか、久しく忘れていた言葉だ」

 

俺は部屋を出てボゲの元へと足を運んだ。

昨日の部屋の案内の際に教えられたボゲの自室の扉を開けると、そこでは様々な画面にデータを打ち込みながら、科学者でない俺には理解出来ない複雑な計算式やら図面やらを作成しているボゲがいた。

 

「ん?もうお目覚めか……。その顔……ふむ、話を聞こうじゃないか、コーヒーは飲めるかな?」

 

「ああ、だが俺はどちらかといえば紅茶の方が好みだな。何なら昨日のクソ不味い水でもかまわん」

 

「ほぉ……」

 

昨日とは違う明らかな余裕に若干の疑問を抱きながらも、ボゲはラディッツの好みの紅茶を用意して昨夜の奇妙な夢の話と自身の覚悟を聞かされた。

 




バーダックを原作っぽくしました。超の方のバーダックはなんかコレジャナイ感が凄まじいからね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ワールド・エピタフ

やりたいことは書けたけど、内容については満足してないから、イマイチな点があれば感想欄で意見お願いするっす!


 あの日からラディッツの心境は大きく変化した。

 以前にも増して、以前より先を見据えて、以前と違い誇りを胸に持って生きている。

 

 ボゲから課される頭のネジが吹っ飛んだようなイカれたトレーニングを文句はつけるものの、全て予定通りに……時には想像以上の結果を叩き出していった。

 

「普通にこれサイヤ人でも死ぬぞ……」

 

「はっはっは、君はもう普通のサイヤ人じゃないから問題なかろう」

 

 ボゲから課されたトレーニングメニューは常軌を逸しており、手始めに100倍の重力に設定された部屋で筋トレしながら時折襲いかかってくる小型ロボットを倒すといったものだったり……。

 

「ぐっぬおおぉぉ!! 1……2……3……」

 

「ただの筋トレでは効率が悪い。ほれ、追加だ……」

 

「ピピピ……、ターゲットロックオン! 排除シマス」

 

「なにっ!? ぬわあああ!!?」

 

 通常の水の80倍もの水圧による負荷を生み出す謎の液体で満たされたプールの中に酸素ボンベを装着させられ、数時間の潜水と時折壁から発射される魚雷を爆発させずに避けるというものや……。

 

「ブクブクブク(確かに普通の水よりも動き難いな……)」

 

「あ~、これより特殊魚雷を発射する。当たれば爆発して酸素ボンベが無事ではすまない為に回避に専念するように……」

 

「ピピピ……、ターゲットロックオン! 追跡シマス」

 

「モガッ!? (はぁ!?)」

 

 気を探る練習として目隠しした状態で無数の強化サイバイマンたちとの無限組み手を強制させられたりと……。

 

「な、なんだコレは……!? 何も見えんぞ!!」

 

「強制視覚シャットダウン装置だ。無理に取ろうとすれば瞼の皮膚ごとベリッ! とめくれるから注意してくれたまえ」

 

「ふっざけんなぁぁ!!?」

 

「はっはっは、私はそっちじゃなくて後ろだぞ。やはり、視覚が機能しない状態では背後を盗られやすいな。少々手荒だが荒療治でいかせてもらおう。出番だサイバイマンたちよ……」

 

「「「「「キキキィィ!!!」」」」」

 

「ぬぅおっ!? こっちか? そっちか? ええい、クソったれめぇぇぇ!!!」

 

 終始ラディッツの悲鳴が聞こえていたがデータを見る限り問題は無いので私は無視している。

 ちなみに、最後のトレーニングでは半日という短さでラディッツは気を感じる力を手に入れておった。(まあ、サイバイマンに滅茶苦茶ボロボロにされたが……)

 

「チクショウめ……、何度飲んでもあの超神水とかいう水だけは慣れんな……」

 

「おお……、トレーニングお疲れ様だな……」

 

 青ざめた顔をしながらも、初めて飲んだ時よりもマシな顔つきでよろめきながらやって来たラディッツに労いの言葉だけかけると、さっさと作業に戻って集中する。

 

「今日までこの研究所で暮らして様々な発明品を見てきたが、今キサマが作ってるこれはなんだ? 宇宙でもこんなもの発明されておらんぞ」

 

「だろうな、これは私のスパイカメラ約5億台と宇宙で最も性能の高いAIを組み合わせ、そこに更に私の未来知識を混ぜ込んで作り上げた観測装置だ」

 

 地球を模った模型に、その周りを絶えず変化する無数の0と1で構成された巨大な輪が2つ展開されている。

 他にも周りには様々なグラフやメーター等がモニターに表示されていた。

 

「確か前に言っていたアレか? 世界中の情報を記録して擬似的に未来予測すら可能とされるとか言っていた……」

 

「その通り、今はまだ未完成だが実用の目処は立っている。証拠にほれ……」

 

 手元の装置を操作して稼働させる。すると、地球の模型の上部から光が浮かび上がり、空中にSFなどによくある光のモニターが2つ出現する。

 

 そこに映し出されるのは何処かの街の道路だ。だが、よく見れば右のモニターと左のモニターでは同じ景色でありながら、少し内容が違う。

 右のモニターに赤色の車が通り過ぎたと思えば、左のモニターにも同じように赤色の車が通り過ぎる。

 

 普通ならただ単純に同じ映像を時間差で流しているだけと思うが、この装置の機能を知っているラディッツから見てみれば、驚愕に値する内容だった。

 

「今はまだ単純な未来予知しか出来んが、開発を進めて行けば戦闘の際に、敵の動きを99.9%近くの精度で予測し映し出す」

 

「そして、その結果を改造した俺の脳に直接送り付け、疑似的な未来予知を可能とさせるだったか……?」

 

「その通りだ……」

 

「まったくデタラメだな。世界中全ての情報を取得するというのもデタラメだというのに、そこから得た情報で疑似的に未来を予測するなどフリーザ軍の科学者でも出来ん偉業だぞ……」

 

「はっはっは、宇宙でもトップクラスの科学力を持つフリーザ軍以上とは光栄だな」

 

 笑って誤魔化してはいるが、このボゲの持つ科学力は凄まじ過ぎる。

 あまりに行き過ぎた科学は魔法と区別がつかないと称されるが、まさしくこの男の科学力は魔法と遜色ないほどに行き過ぎている。っというかやり過ぎている。

 

 今はまだ単純な行動パターンしか未来予知出来ないとはいえ、これを使えば世界中の事故や事件を未然に防ぐことが可能となる。

 もし売りにでも出せば国の1つや2つ余裕で買えてお釣りが出る程の金が転がり込んでくるだろう。

 

 だが、この機械の使用目的はあくまでドクターゲロの造り出す最高傑作であるセルを倒すため。

 歪んだ野望に燃えるボゲの熱量は計り知れず、このような発明をいくつも作り上げている。

 

「それで、この機械に名前はあるのか?」

 

「ああ、勿論あるとも。世界近未来観測システム……通称ワールド・エピタフだ」

 

「また大層な名前をつけたものだな……」

 

「なぁに、今はまだ名前負けの性能だが、数年後にはこの名にふさわしい性能になっているさ……」

 

 そう言って再び作業に戻るボゲを見ながらラディッツは戦慄する。

 

 この男は一体どれほど先を見据えているのか? そして、どれだけ常識外れのアイデアを頭の中に秘めているのか? 

 俺の身体を改造した人造人間化は父親の研究成果をかすめ取ったものといったが、それでもこの肉体は凄まじい。どれだけ激しく動こうともスタミナ切れはおこらず、痛みといた痛覚も以前よりも鈍い感じがする。

 

 この男、頭脳だけで神の領域に至っているといっても過言ではない。

 

「俺も負けてられないな……」

 

「ん? なにか言ったか……?」

 

「いや、俺もトレーニングに戻るだけだ……」

 

「ふむ、あまり無理だけはせぬようにな……」

 

 分かってるとだけ返事してラディッツは再びトレーニング室へと戻る。

 

「うおおぉぉぉ!!!」

 

 強くなる! 強くなりたい!! という願望を胸に次々と現れる強化サイバイマンを倒していく。

 今の俺の戦闘力はあの遠い存在だったエリート戦士であるベジータを遥かに上回るほどに高い。

 

 しかし、まだ足りない。フリーザはボゲが言うには今の俺の5倍は強いと言っていた。

 夢とはいえ、戦闘力の低い親父に経験と精神力の差でボコボコに叩きのめされた。

 

「俺は……!? もっとだ! もっと強くなって誰にも負けない戦士へと……!!」

 

 今の俺は弱虫ラディッツじゃない! 誰が何と言おうと戦闘民族サイヤ人の戦士なのだ!! 

 

 

 

 ピッ! 

 

 トレーニング室の監視モニターの電源を切る。

 

「監視する必要もないか。夢とはいえ、父親からの叱咤の激励は効いたということだな……」

 

 安心したように作業に戻るボゲは、ふと隣に置いてある時計についてあるカレンダーをチラ見する。

 

「あと数日でベジータ達が地球にやって来るか……。はてさて、ラディッツを生き返らせたことで今後のストーリーがどう変わっていくか見物だな」

 

 

 




ザ・ワールドという名前はディオ様から取りましたけれども、違和感とかこっちの名前の方がいいって意見があればドンドンちょうだいね♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイヤ人強襲IFその1

前回の感想が多かったのでやる気が継続して早めに書き上げることができました。
これからも感想と評価次第で早く投稿できるからドンドン送ってきてやぁ~♪


 今朝方、宇宙からこの地球に迫ってくる2つのアタックボールが確認できた。

 このままの調子でいけば昼頃には地球へ着陸するだろう。

 

 折角の機会だからと、本来ならトレーニングの時間に入っているラディッツを呼び出し、今回のサイヤ人VSZ戦士達の戦闘を共に観賞し、現在の主人公達の力の差の確認と本職の戦士の意見を聞くことにする。

 

「よもやただの観賞部屋にここまでの装備を用意するとはな……」

 

 部屋に設置されている大型モニターはまだいいだろう。その両隣に設置されてある高性能スピーカーも戦闘の音をよく聞くのにも必要だろうしな。

 

 しかし、部屋の後ろに設置されてあるドリンクバーやポップコーン製造機に加えて、自動AIロボット3体の配置に最高級ソファーやイスは明らかに要らないだろう? 

 

「折角の観賞なんだ、どうせなら菓子や飲み物を飲みながら優雅に見たいだろう? まあ、君が嫌だというのならばそこで立って見ていればいい」

 

「…………俺もポップコーンとコーラを1つ」

 

「了解シマシタ」

 

 散々言ってはいたが、ここでの生活の娯楽にどっぷりハマったラディッツは立って観賞はせず、ソファーに身を沈めて気恥ずかしそうにAIロボットに菓子とジュースを要求した。

 

「これじゃまるで映画の観賞会だな」

 

「はっはっは、あながち否定は出来んしその通りだろう。それに、もしいざとなれば、君が横から助太刀に入れば事は問題なく終わるのだからな」

 

 実際問題、別に今のベジータ達程度ならばラディッツがその場に行けばものの数秒も経たぬうちに片をつけることが出来るのだから、今回の戦いは映画感覚で見ていても問題は無いだろう。

 

 おっと、ベジータ達が地球に着陸したな。そしてそのまま、原作通り街1つ滅ぼした後にピッコロ達の元に飛んでいった。

 

「君は今回の戦いの結果はどうなると予想している?」

 

「……以前、俺との戦いで見せたあの実力のままでは万が一にも勝ち目はないだろうな。だが、もしも俺のように大きく実力を伸ばせたのならば、あるいは……」

 

「なるほど。まあ、結果はこの目で確認するとしよう」

 

 さて、ラディッツを助けた結果で今後の展開がどう転ぶのか? 

 是非とも心躍るような闘いを見せて欲しいものだ……。

 

 

 ♦︎

 

 何もない荒野で地球のZ戦士達が集結していた。

 

 本来の歴史ならベジータが来る前に合流するのはクリリンだけの筈なのだが、歴史が変わった影響のせいかZ戦士達がベジータ達が来るよりも前に既に全員集まっていたのだ。

 

「来やがったぞぉ! サイヤ人共だ!!」

 

 そんなZ戦士達の中で一番の実力者であるピッコロがいち早くサイヤ人の襲来に気が付き声をあげる。

 

「へっへっへ、どうやらオレ達を歓迎する準備は既に出来てたようだぜ……」

 

「どうやらその通りのようだな」

 

 現れたサイヤ人から放たれる気は物凄く、鬼気迫るような圧迫感が襲い掛かってくる。

 クリリンや悟飯らはそのプレッシャーに押されて身体が震えてすらいた。

 

「…………もう1人お仲間のサイヤ人は来ないのか?」

 

「もう1人だと……?」

 

 キョロキョロと辺りを見渡し、やって来るだろうと思っていた男がいないことに疑問に持ったピッコロはベジータ達に問いかけた。

 

「あのラディッツとかいう男だ。どうやら俺の詰めが甘く生き延びたようだったから。てっきり復讐へはお前らと一緒になって仕掛けてくるものだとばかり思っていたが……」

 

「ほぉ~う……」

 

「だぁ~っはっはっは、なんだあの弱虫ラディッツの奴め、死んだと思っていたがしぶとく生きていやがったのか」

 

 

 この様子では奴らも生存していたのは知らなかったようだ。

 まあ、今となってはあの程度の奴が割って入ったところで苦戦することもないだろう。

 

「だが、生きているとなるとこの場に姿を現さない理由はまだオレ達の存在に気がついてないからか、もしくは……」

 

「ビビって何処かに隠れ潜んでるのかもな!」

 

 まるでラディッツの心配をせずにほくそ笑んでいる2人のサイヤ人に画面越しに見ているラディッツが小さく舌打ちを鳴らす。

 

「ちっ、奴らめ……。ちょっくら行ってぶっ飛ばしてきてもいいか?」

 

「やめなさい。私はお前を弱い者イジメさせるために強くしたんじゃないぞ」

 

「はっ、かつては弱虫ラディッツと呼ばれたこの俺がベジータ達を相手に弱い者イジメとはな」

 

 愉快そうに笑ってから、立ち上がりかけた姿勢を戻してソファーに再び身を沈め、画面の先で戦うZ戦士達の活躍をポップコーン片手に観戦する。

 

「そういえばナッパよ、サイバイマンがあと6粒ほどあったはずだ。それで奴らの相手をしてやれ」

 

「サイバイマンをか? へへへ……、相変わらずゲームが好きだなベジータ」

 

 持っていたサイバイマンの種を地面に植えると、1分もしないうちに6体のサイバイマンが姿を現した。

 

 それを見てラディッツがふと疑問に思い口を開く。

 

「ん? サイバイマンはあれほどに弱かったか……?」

 

「馬鹿を言うな……、今日までお前のサンドバッグになっていたサイバイマンは全て私が強化して育て上げた品種だ。それこそ、最近のサイバイマンは戦闘力10000超えの強化種だぞ。あの程度の戦闘力1200と比べては可哀想というものだ……」

 

「ああ、そういえばそうだな」

 

 疑問が晴れ納得したラディッツはポップコーンを口に放り込んで現在戦っている天津飯とサイバイマンの1戦に目を向けるも、戦闘力1万以下の両者の戦いはラディッツからすれば蟻んこ同士が争っているようにしか見えず退屈な様子だった。

 

 決着は原作よりも早く、サイバイマンの溶解液を避けることなく逆に弾き返してトドメを刺した。

 次に戦うヤムチャも互角以上の力でサイバイマンを押していた。これはラディッツが生き返ったことで修業のランクをアップさせたことによるせいなのだろうか? 

 

 ここ1年はZ戦士達の修業よりもラディッツの魔改造と世界近未来観測システム(ワールド・エピタフ)の開発に力を入れて取り組んでいた為にスパイカメラで修業風景なんぞ見ていなかったので正確なことは分からんが、いい影響なのは確かなことだ。

 

 おっと、少し考えごとをしていたらヤムチャがサイバイマンにかめはめ波でトドメを刺しに入った。ここは原作通りなのだな……、そしてそのかめはめ波を喰らったサイバイマンもまだかろうじて息をしている。

 いくらヤムチャが強くなったとはいえこの流れは流石に変わらんか……。

 

「おまえたち思っているほどこの化け物どもは強くなかったようだな。残り全部も俺がカタをつけてやるぜ!」

 

「くっくっく……、今度はおまえたちの方が甘くみていたようだな」

 

「なにっ……!?」

 

 地面に倒れ伏していたサイバイマンの手がほんのわずかだがピクリと動きをみせ、油断していたヤムチャの体にしがみついた。

 

「なっ!!?」

 

「ニヤ……」

 

 抱き着いたサイバイマンが薄気味悪い笑みを浮かべ体が発光し出したその瞬間、ピッコロがいち早く気がつき、カッ! と目から怪光線を放ちサイバイマンを貫いた。

 

「グゲェッ!?」

 

「「なっ……!?」」

 

「へっ、こっちも甘くみてもらっちゃ困るぜ。ソイツが生きていたことくらいお見通しだ……」

 

 なんと、まさかピッコロがサイバイマンを倒すとは……。死体のフリをしたサイバイマンの演技を見破れたのは、やはりラディッツのトドメを完璧に決め切れていなかった過去の教訓で学んだからか。

 将来、セル戦でお手本のような舐めプで父親を死なせ、後の魔人ブウ戦でも舐めプでゴテンクスとピッコロを吸収された悟飯の師匠とは思えん学習能力だな。

 

「た……助かったぜ、ピッコロ……」

 

「ふん、キサマごときの礼なぞ不要だ。油断しやがって、もういい! 残りの奴らは全員俺がカタづけてやる! お前らは手を出すな!!」

 

 重いターバンとマントを脱ぎ捨て身軽になると、Z戦士達を下がらせて残り4体のサイバイマンの相手を買って出る。

 それを聞いた悟飯やクリリンはやめるように言うがピッコロは聞く耳を持たず、さっさとかかってこいとばかしに手招きして挑発を煽る。

 

「けっ、ちょっとばかしサイバイマンをぶっ殺したからといって調子に乗りやがって! ナメック星人のクセに身の程をわきまえねぇ野郎だぜ!」

 

「まあそう怒るなナッパ。丁度いい、ここでサイバイマン共に奴をイタめつけさせ、ドラゴンボールのありかを吐かせてやるとしよう」

 

「おお! そいつは名案だぜベジータ。よし、お前ら! あのナメック星人を死なねぇ程度に痛めつけろ。間違っても殺すんじゃねぇぞ!!」

 

「「「「キキィッ!!!」」」」

 

 ナッパの命令を受けて残りのサイバイマンが一斉にピッコロに飛び掛かりにいった。

 流石のピッコロといえど、サイバイマンを4体同時に相手するのは少々苦戦するかと思いきや、真っ先に飛び掛かりにいったサイバイマンの懐に入り込み、腹部へ重い一撃を喰らわせ悶絶したところを、次に向かってくる2体目の方へ吹き飛ばし重なったところを気弾の一撃で2体まとめて粉々に破壊した。

 

「「キィッ……」」

 

 残る2体はそれを見て怯えて足を止めたが、後ろに控えているナッパの「テメェら!! なにをビビってやがる!! そのナメック星人の代わりにオレがぶっ殺してやろうかぁ!!!」という脅迫に背を押され、左右からの同時攻撃に打って出た。

 

「「キキャキャキャッ!!」」

 

「同時にかかれば倒せるとでも思ったか?」

 

「ハキャッ!?」

 

 左右から繰り出される拳の攻撃を引っ掴まえると、そのまま地面に叩きつける。

 

「こんな雑魚共を相手にオレがやれると思ったのか?」

 

「やれやれ、あの地球人と同じ失敗を繰り返すとはな……」

 

「なに……?」

 

 地面に目をやると叩きつけられ絶命したと思われていたサイバイマンのうちの片方が起きあがり、ピッコロにヤムチャの胴体にしがみついたサイバイマンとまったく同じ手法をとってきた。

 

「「「「「あっ!!」」」」」

 

「何度も言わせるな。この程度の雑魚ではオレはやれん!! クワッ!!!」

 

 抱き着いたサイバイマンの頭部を魔口砲の一撃で消し飛ばし、死体となったサイバイマンの拘束をふん! とバラバラに破壊して自由となる。

 

「す……すげえ……」

 

「さ……流石はピッコロだな。いずれまた敵となると思うとゾッとするぜ……」

 

「こ……こりゃ、ひょっとして悟空の到着を待たなくても決着が付くんじゃないか?」

 

 サイバイマンを圧倒したピッコロの強さに希望を見出したZ戦士達は騒ぐが、敵であるサイヤ人の2人は焦る様子もなく、死んだサイバイマンの体たらくに眉をひそめていた。

 

「ちっ、情けないサイバイマン共だぜ。6体もいやがったというのに虫1匹殺せちゃいねえんだからよ!!」

 

「まあいいだろう。どうせナッパ、おまえがやれば全員始末できるだろう?」

 

「そりゃそうだけどよ……。ちぇ、せっかく金を出して買ったのに無駄金だったぜ! こうなったおまえら全員の命でオレ様の怒りを発散させてくれよ……」

 

 怒りの感情を剝き出しにしたナッパがZ戦士達を殺すべく前に出る。

 

「あ……あのデカブツが動きだしたぞ!」

 

「さ……流石にアイツは全員でかかったほうがよくないか?」

 

 ナッパの迫力に押されてヤムチャとクリリンが及び腰になっているが、肝心のピッコロは怯えた様子は一切見せず、逆に敵の殺意にあてられてやる気満々といった感じだった。

 

「下がっていろ! キサマらでは足手まといでしかならん。それに言ったはずだぞ。残りの奴らは全員このオレがカタづけるとな……」

 

「ぐっへっへ……、調子に乗るなよナメック星人風情が、サイバイマンとオレ達サイヤ人を同格に見てるなら死ぬほど後悔する目にあうぜ!」

 

 バチバチと視線が火花を飛ばし、強者の激突を予感して大地が震えあがるように唸りを上げている。

 

 果たして、原作通りナッパがピッコロを圧倒するのか? それとも、予想を覆しピッコロがナッパを倒すのか? 

 

 一体この勝負の行方はどう転んでしまうのかぁ!!? 

 

 




次回!ヤムチャ死すをまさかのピッコロさんが助けることになるとは……。
原作バタフライエフェクトしようと考えたらヤムチャ生存が脳裏にチラついたんで救助しちゃいました。

ですが、いつかの未来でヤムチャが自爆で死す場面を作るつもりです。

奴は運命から逃れられない!次次回『栽培マン暁には散る』乞うご期待!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイヤ人強襲IFその2

ナッパ戦の戦闘シーン難しかった……。
マジで何回も激昂するシーン作ってしまったからクドくないように削除と改変の日々が辛タニエン……。


 

 ふむ、原作ではナッパにはZ戦士達全員で挑みかかっていたが、この世界ではピッコロとの一騎打ちとはな……。

 戦闘力はナッパが4000に対してピッコロの戦闘力は3000ほどか……、まあZ戦士達は戦闘中に戦闘力を変化させることが出来るから最低3000というわけだが、果たしてどちらが勝つのか? 

 

 おっ、戦闘が始まったか! 互いにまずは力試しといったところか、真っ正面からのぶつかり合いを選んだようだ。

 

 ふむ、ナッパの方は余裕の表情だが、ピッコロの方は驚きと悔しさが滲んでいる。

 

 実際、ナッパはパワー型に対してピッコロは技量で戦うテクニック型だ。真っ向からのパワー対決はナッパが勝つことはピッコロの方も予想はしていただろうが、予想外なのは相手の力量の高さといったところか……。

 

 さて、ピッコロはこの差をどう覆すのか? はたまた、原作通りに殺されてしまうのか? 

 

見物(みもの)だな……」

 

 コーラを胃に流し込みながら、画面の中の2人の戦いに注目する。

 

 

 ♦

 

 荒野のど真ん中で2人の男が殺気立った声を上げながら、拳を握って対峙していた。

 

「ずええああぁぁ!!!」

 

「どりゃああぁぁ!!!」

 

 互いにどちらも譲らず、拳だけでなく蹴りも交えたラッシュの攻防は並みの武闘家では太刀打ちできないほどに激しく、なによりあまりのスピードに目で追うことさえ至難の業とも呼べる領域だ。

 だが、そんな高次元の戦いを繰り広げている両者ではあるが、まったくの互角というわけではない。

 実際にピッコロとナッパの真っ向からの殴り合いはナッパが勝っており、次第にピッコロの方が後ろへと押し出されていった。

 

「っく、パワーではキサマが上だが、スピードはどうかな?」

 

 このまま正面からのぶつかり合いでは分が悪いと即座に判断したピッコロは、真っ向からの撃ち合いを一時止めて空へと逃げ、スピードで翻弄せんと縦横無尽に駆け回る。

 

「っち! ブンブンと目障りな!! 鬱陶しいんだよ!!」

 

 ピッコロのスピードを見て、とても自分では追いつけないと判断したナッパは、腕の一振りでエネルギー波を空へと向けて放つ。

 その瞬間、空一面がグワッ! と爆炎で染まり、ピッコロの姿が見えなくなってしまった。

 

「「「「「ピッコロ(さん)!!!!」」」」」

 

 地上で2人の戦いを見ていたZ戦士達はピッコロの安否に悲鳴を上げて叫ぶ。

 

「くっくっく……、ナメック星人如きが調子に乗りやがって、サイヤ人の怖さを思い知ったか!!」

 

 一瞬でケリがついたと判断したナッパは笑って声を上げるが、冷静に戦場を俯瞰していたベジータが油断しているナッパに警告を発する。

 

「……っち! ナッパ!! 後ろを見ろ!!」

 

「ん? なっ!!?」

 

 ベジータに言われるがままに背後を確認すると、吹き飛ばしたと思っていたピッコロが無傷の状態で立っていたのだ。

 

「バカめ! 自分から視界を塞ぐとはな……!!」

 

 あの時、ナッパが放ったエネルギー波を煙幕に使い、ピッコロは気づかれぬように超スピードで気配を消してナッパの背後をとっていたのだ。

 そして、完全に油断し無防備となっているナッパの背中目掛けて渾身の一撃を叩き込む。

 

「喰らえ! 爆力魔波!!!」

 

「がぁっっっ!!?」

 

 油断していたところを背後から攻撃を受けたナッパは爆炎で吹っ飛ばされ、岩山へとぶつかり大ダメージを受けた。

 

「やったぁ!!」

 

「ピッコロの奴め、驚かしやがって!!」

 

「だが、これで残るサイヤ人はあと1人だ!」

 

「ピッコロ凄い!」

 

「さ、さすがピッコロさん!」

 

 皆が喜ぶなか、当の本人であるピッコロは浮かれた表情どころか、未だピンと緊張の糸を張りつめたような顔で、吹っ飛ばされたナッパがぶつかり瓦礫の山となった岩山の方をジッと見つめる。

 

「まったく、これじゃあサイバイマン共の体たらくを笑えんぞ! さっさと起きろナッパ!!」

 

 サイヤ人として無様な真似を晒すナッパの不甲斐なさに頭にきているベジータは、怒鳴り声を上げて未だノビているナッパを叩き起こす。

 その声に反応して、瓦礫の山の一番上の石ころが転げ落ちる。その後、すぐに瓦礫の中からナッパが勢いよく飛び上がってその姿を現した。

 

「くっそがぁぁ!! ふざけやがってぇぇ!! ぶっ殺してやるぞぉ! ナメック星人がぁ!!!」

 

 瓦礫となった岩山からブチギレながら現れたナッパの背中に傷痕はあっても効いている様子はなく、恐らく怒りで痛みを忘れているのだろう。

 ピンピンした様子のナッパにZ戦士達はそのタフさに震えるが、ピッコロだけはニヤリとその口を笑わせて戦いの構えをとる。

 

「っっ!!? ムカつくぜ、その余裕そうな笑みをすぐに恐怖にひきつった顔に変えてやる!!」

 

「どうやら見た目通りの単細胞のようだな。このオレが真っ正面から正々堂々と戦うと思ったか?」

 

 余裕綽々の顔で対峙するピッコロめがけてナッパは全力で突進を仕掛ける。

 

「ぶっ殺してやらぁ!!!」

 

「自分から突っ込んでくれるならありがたいぜ!! どりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

 勢いだけで突っ込んでくるナッパめがけてピッコロは気弾をグミ撃ちで迎撃するも、その勢いは止まることなくピッコロに近づいていき、そのままの勢いでピッコロに強烈なタックルを決めて今度は逆にピッコロが岩山にぶつかる結果となった。

 

「ピ……ピッコロさ~ん!!」

 

「へっへっへ……、ナメック星人の後はテメェだチビすけ、カカロットの息子ならサイヤ人の血をひいてるんだ、せいぜいこのオレ様を楽しませてくれよ!」

 

 さっきとは逆の結果となった戦場に悟飯の悲痛な叫びがこだまする。

 そんな悟飯の叫びに高笑いするナッパの声に反応したのか、ピッコロが吹っ飛ばされた岩山が吹き飛んで粉塵が巻き起こり、そこから人影が空へと飛び出した。

 

「へっ、今度は見逃すか! もう一度吹っ飛びやがれぇ!!」

 

「はっ、この単細胞が! 足元をよく見やがれってんだ!!」

 

「っなにぃ!?」

 

 空へ飛んだピッコロを撃ち落とそうとエネルギー波を叩き込まんとしたその時、ズボ! とナッパの足元からピッコロの伸びた手が地面から飛び出し、ナッパの足を掴んで転がすと、伸びた腕を引き戻しながら大きくグルグルと回転させてジャイアントスイングで地面にへと投げ飛ばす。

 

「ピッコロの奴、自分を囮にして粉塵のなか伸ばした腕を地面に潜らせてやがったんだ!」

 

「まったく、本当に大した奴だぜ……」

 

 ヤムチャと天津飯がピッコロの頭脳プレイに驚嘆の声を上げながら、グッと拳を握っていた。

 現在の戦況は見る限りピッコロの有利なまま。このままいけば本当にピッコロ1人の力であのサイヤ人を倒してしまえそうな勢いだ。

 

「地球を舐めるなよ……サイヤ人!」

 

 まんまと罠に掛かったナッパの醜態に笑いながら空から降りてくるピッコロ。

 地面にピッコロが着地するのと同時に投げ飛ばされたナッパが起き上がり、怒りに震えながら怒号を吠えながらピッコロを睨みつける。

 

「ちっくしょぉぉ~~!!!! オレは名門出のエリート戦士だぞ!! たかだかナメック星人風情に滑稽にされてたまるかぁ!!!」

 

「っち、まだあんなに叫び元気があるのか。ほとほとタフな野郎だぜ……」

 

 かなり勢いをつけてブン投げたというのに、耳がキーンとなりそうなバカデカい声で叫ぶナッパのタフさに辟易しながらもポキポキと首の骨を鳴らして戦闘続行の意思を見せる。

 ナッパもそれを見て怒り心頭といった様子でピッコロに再び何も考えずに飛び掛かりそうになったところを、ベジータの一喝で踏みとどまる。

 

「愚か者め!!! 頭を冷やさんかナッパ!!! 冷静に判断すれば決していいようにされるような相手ではないだろう!!!」

 

「……っ!! そ、そうだったな!! ありがとうよ、ベジータ。おかげで冷静になれたぜ!」

 

 怯えたようにベジータと呼ばれるサイヤ人のチビの言うこと聞くナッパの様子を見て、ピッコロは内心で焦りを見せていた。

 この戦いでナッパの厄介さを垣間見たピッコロはあのチビがこのデカブツと同程度であれば悟空が参戦すれば充分に勝ち目があると判断していたのだが、もし仮にあのチビがこのデカブツ以上の実力者だった場合、悟空が駆けつけてきたとしても厳しい状況になるかもしれない。

 

「っち! 嫌になるぜまったく……」

 

 いつの間にか敵であった悟空を無意識のうちに仲間として考えていた自分の思考に舌打ちをしながら、冷静になってこちらの様子を伺ってくるナッパに意識を戻す。

 ヒリつく空気の中で最初に仕掛けたのはピッコロだった。

 

「一気にいかせてもらうぞ!」

 

「ぬっ!?」

 

 地面を蹴って飛び出したピッコロの猛攻は激しく、気弾やズームパンチなどで決して接近戦には持ち込まさず、中距離を維持したままだけではなく、時たま近接戦闘を仕掛けて緩急ついた戦いを仕掛けてくるものだからか、戦いのリズムを掴めず終始主導権をピッコロに握られて押され続けるナッパ。

 

「ずえりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

「っぐぅ、めんどくせぇ戦いしやがって!!」

 

 サイヤ人にとって武という概念=雑魚が使う面倒なものという認識であり、その持ち前の圧倒的バトルセンスと戦闘力で真っ正面から叩き潰して来たのだが、自分の足元どころか首筋まで迫ってきている相手が使ってくる武がここまで厄介なモノだとは思ってもみなかったようだ。

 ベジータによって冷静になった頭がすぐにヒートアップしていき、だんだんと攻撃も大振りの杜撰なものへと変わっていき、どうあっても勝利はピッコロの方へと転がり込むと思われたその時、ついに我慢の限界を迎えたベジータが大声でナッパに後ろへ下がるように指示を下した。

 

「っち! もういいナッパ!! この役立たずが!! 敵に翻弄されていいようにされるがままとはな。これ以上やっても時間の無駄だ! このオレがソイツを片付けてやる!!」

 

「っな!? べ、ベジータ!! ちょっと待ってくれよ! こんなナメック星人ぐらいオレがぶっ殺してみせらぁ!!」

 

「この単細胞がぁ! 今のお前では頭に血が登って勝てる戦いも勝てるものか!! いいから黙ってオレの言うことを聞け!!」

 

 ぐぬぬぬ……と悔しそうな顔でベジータの指示を聞くナッパに対してピッコロはあまりにも早い展開に焦燥感を抱いていた。

 目の前のナッパとは戦いの相性がいい為にどうにかなっていたが、見るからに冷静沈着そうな態度に加え、ナッパも怯えるほどの実力者であろうベジータとは悟空が参戦してからの2対1の構図にしたかったピッコロからしてみれば最悪に近い状況だ。

 

(っく! 敵を追い込み過ぎた。下手に加減すればオレの方がやられていたとはいえ、デカブツを倒せないままあのチビと戦り合うハメになるとはな……)

 

「……テメェの始末はベジータに譲るぜ」

 

「はっ、その言い方じゃまるでキサマがオレを殺せるように聞こえるが?」

 

「な、なに~!!」

 

 ナッパの売り言葉にピッコロは買い言葉で返し逆上させるが、後ろで控えているベジータが怖いのか睨みつけるだけで相手をすることはなく、渋々とベジータと交代すべくピッコロから離れる。

 

「確かにオレじゃオメェは殺せねぇかもしれねえな? だが、あの地球人共なら楽に殺せるぜ!!」

 

「!! しまった、逃げろお前らぁ!!!」

 

 積もった怒りをぶつけるように、ナッパはこちらをただ観戦していたZ戦士達に向けてエネルギー波を放ってきた。

 実戦経験が豊富なクリリン達はいざ知らず、ピッコロとの組手以外ではまるで経験が浅い悟飯だけはナッパの攻撃に反応するのが遅れて空へ逃げられないでいた。

 

「あっ……ああ……!?」

 

「ご……悟飯……!!!」

 

「「っ!!?」」

 

 1人取り残された悟飯を目にした瞬間、ピッコロは考えるよりも先に体が無意識のうちに動き出し、ナッパの攻撃が悟飯に届く前にその身を盾にして攻撃を防いだのだ。

 これにはベジータとナッパも驚きの表情で固まってしまう。

 

「ぐぅ……がぁぁ……」

 

「ピ……ピッコロさん……、ど……どうしてボクなんかを……」

 

「し……知るか、気づいたら体が勝手に動いてやがった。まったく、きさまら親子の甘い情がうつっちまいやがったのかもな……」

 

 片膝をついて倒れるピッコロに駆け寄ってきた悟飯の無事を確認したピッコロは痛む体を酷使して立ち上がる。

 原作であればナッパの尻尾を掴んで反撃する際に手痛いダメージを喰らったこともあり、今の一撃で死んでいたのだが、この世界線のピッコロは大ダメージは受けておらず戦闘力も原作以上の為に死ぬどころか戦闘不能にも陥っていないようだ。

 

「下がっていろ悟飯。あのデカブツはオレが何とかする! だからお前は残ったあのチビのサイヤ人をどうにかしろ!!」

 

「そ……そんなの無理だよ。ボクなんかじゃ……」

 

「いいや、お前には力がある。この1年でそれがよく分かった。真の力を解放しろ! そうすれば、お前はオレや孫よりも強くなれる!!」

 

 そう言って悟飯の頭に手を置くと、立ち上がって戦う構えをとる。

 それを見て、ナッパは笑って戦う意思を見せるピッコロに近づいていく。

 

「へっへっへ……、カカロットのガキを庇うなんざ思ったよりも随分と甘い野郎だぜ! なあ、ベジータ! やっぱりオレにやらせてくれよ! こんな死にぞこないの甘ちゃんには反吐がでるんだ!!」

 

「……好きにしろ。そんなくたばりぞこないならもう負けはないだろうしな! だが、くれぐれも勢い余って殺すなよ。オレ達の目的はソイツらを殺すことじゃなくドラゴンボールとやらのこと聞き出すことだからな……」

 

「へっへっへ……、そりゃそうだな。精々た~っぷりかわいがって喋らせてやるぜ!」

 

 ベジータからの許しをもらえたナッパは残虐な笑みを浮かべながらポキポキと拳を鳴らしてムカつくナメック星人をいたぶらんと近づいていく。

 そんな中、空へ逃げたZ戦士達がピッコロの元に着地する。

 

「す……すまない、ピッコロ! 悟飯のこと、助かった!」

 

「やはりオレ達も一緒に戦うぜ! 今のお前1人じゃあのデカいのは無理だろ!!」

 

「正直、あの戦闘を見て今の俺達が役に立つかは分からんが、助太刀するぞ!」

 

「うん……!」

 

「いらん!! あのデカブツは俺様が相手すると言った筈だ! お前らは大人しく見物しておけ……」

 

「け、見物しとけって、その怪我のまま1人で戦う気かよ!?」

 

 いくらなんでも無茶を言うピッコロを心配してクリリンが食い下がるが、ピッコロは頑固として譲ろうとはせず、たった1人でナッパを相手すると言い張る。

 

「お前達も分かってる筈だ。あのもう1人のチビのサイヤ人は目の前のデカブツ以上にヤバい存在だ。今のオレではどうあっても勝ち目はない。希望があるとすれば孫の奴と悟飯しかないが、孫がここに来るまでにはまだ時間がかかる! 悟飯に関してもまだ奴ら相手に実戦で戦えるほどの実力はつけていない!」

 

「だ……だからこそ! オレ達全員でかかって時間稼ぎをだな……」

 

「ハッキリと言ってお前らが何人束になってかかろうが、あのデカブツ相手には意味をなさん。だが、盾くらいにならなるだろう……」

 

 ジッと悟飯の方を見てそう言い放つピッコロの真意に気づいたクリリンは、一瞬悔しそうな顔を浮かべたあと、覚悟を決めた顔で後ろへと下がる。

 

「……分かったよ、お前の言いたい事は……。でも、言ったからには絶対に勝てよな!!」

 

「っへ、キサマに言われずともこのオレ様が負けるはずがなかろう。なぜならオレはピッコロ大魔王だからな!」

 

 不敵な笑みを浮かべ、とても死に掛けとは思えない力強い立ち姿を見せつける。

 それはまさに、かつて全世界を恐怖に陥れたピッコロ大魔王と呼ばれた魔族の威厳ある立ち振る舞いそのものだった。

 

「へっへっへ……、お仲間との最後のお喋りは終わったか? 麗しの友情ごっこの為に命を落とすんだ。哀れなもんだぜ……」

 

「言ってろデカブツめ、このピッコロ大魔王様を舐めるなよ!!!!」

 

 再びピッコロとナッパの激戦が繰り広げられるが、ナッパからの痛恨の一撃を受けたピッコロは先程までの動きのキレはなく、唯一勝っていたスピードもガタ落ちになりほとんど互角の速度にまで下がっていた。

 

 だが、流石はピッコロというべきか、スピードが落ちた分の穴を技量で対処してナッパの攻撃を捌ききっている。だが、捌けているだけだ。ナッパからの一方的な攻撃に防御で手一杯といった様子で、とてもではないが反撃に出れるような隙を見つけられないでいた。

 

 あまりの差にヤムチャが割って入ろうとしたが、それをクリリンが後ろから道着を掴んで止めにかかった。

 

「なにをするんだ、クリリン!?」

 

「待ってくださいヤムチャさん! 多分、ピッコロにはまだ勝算があるんだと思います……。だからもう少しだけ……」

 

 クリリンはきっと信じているのだろう。かつては敵であり、自分を殺した魔族の親玉の生まれ変わりであるピッコロの強さを……。

 

 そして、その信頼は形となって現れる。

 

 次々と繰り出されるナッパの攻撃を次第に見切り始めたピッコロだったが、悲しいことに戦闘力という絶対の現実がスタミナという形で両者に命運を分けさせた。

 

 徐々に疲弊するピッコロとナッパであるが、戦闘力が低いピッコロの体の方が先に音を上げていき、ダメージ以上に動きのキレを悪くさせていった。

 

「っく! このままやりあっても負けるのはオレの方か……。なら!!」

 

 ビュン! と高速移動で空へ逃げ、一発逆転を狙ってタメを必要とする技を放とうとする。

 だが、そんな隙をわざわざ見逃す筈はなく、すぐさま追いついたナッパの強烈な一撃によってピッコロは地上まで真っ逆さまに叩き落されることとなった。

 

「ぬおっ!?」

 

「げはははは!! 追い詰められてヤケになりやがったか? そんな隙をこのナッパ様が見逃すはずねえだろ!!」

 

 確かに、ピッコロにしては間違いなく悪手であろう手をとったということは、それだけ追い詰められているということなのだろう。

 

「クソったれぇぇ!!!!」

 

 地面に落とされ、ヤケになったように狙いもつけずに無闇矢鱈と気弾を撃ちまくるピッコロに、ついにイカれたか! とナッパが叫びながら地上から次々に撃ち込まれる気弾を避けていく。

 

 これには流石のクリリンも、もうダメかと判断し飛び出そうとしたその時だった。

 

「ま、待ってください!」

 

 ピッコロの加勢に向かおうとしていたZ戦士達を、今度は悟飯が止めに入った。

 

「なに言ってんだよ悟飯!? このままじゃピッコロが殺されちまう!」

 

「そうだぜ! 早く助けに行かなきゃなんねえだろ!!」

 

「ま、まだピッコロさんは負けてません! それに、きっとピッコロさんはアレを狙ってるんだと思うんです」

 

 この1年の修業期間の間、ピッコロが悟飯の育成と並行して自身の更なるオリジナル技の習得を目指して努力を積み重ねていた。

 それを間近で見ていた悟飯のみが、今のピッコロの無意味ともとれる我武者羅な攻撃の意味を理解していた。

 

「ったく、惨めったらしく抵抗しやがって! そろそろ、おねんねの時間にしてやるぜ!!」

 

「っへ、先におねんねするのはテメェの方じゃないか?」

 

「な……なにぃ……! 戯言ばかり言いやがって!!!」

 

「…………」

 

 あのナメック星人、あれほど追い詰められた状況だというのに、何故ああも冷静でいられる? いや、行動自体は追い詰められている者のそれだ……。

 だというのに、一体なんだこの違和感は……。

 

 ふとベジータはピッコロからナッパへ視線を移し変えるとその違和感の正体に気がついた。

 

「っ!? 周りをよく見ろナッパ!! 囲まれてるぞ!!!」

 

「っ、んな!? いつの間に……!!!」

 

 あのデタラメに撃っていた気弾が全て消えずにナッパの周りで漂っていた。

 全ての気弾がコントロールを失わず、ピッコロの指揮下で動いているという驚愕に値する技量の高さに敵味方の全員が破顔して身を固まらせる。

 

「脳みその足りないデカブツは罠にハメやすくて助かるぜ! もうキサマに逃げ場はないぞ!!!」

 

「ッッッ!! このクソォナメック星人がぁぁぁ!!!!」

 

 罠にハメられたと気づいた時にはもうどうしようもなく、一部の隙さえ見えないほど周りを囲まれたナッパは悔しさのあまりに叫び声を漏らす。

 しかし、いくら叫んだところで状況が変わるはずもない。

 今、ベジータに助けに来てもらったとしても、周りは爆弾の海といってしかるべきこの状況では、自身が助かる前に全弾命中してお陀仏になるのが関の山だろう。

 

「こうなったら! 死なばもろともじゃぁぁぁ!!!!」

 

 ここで何も出来ずくたばるくらいならと、真っ正面から気弾の中へと突っ込んでいく。

 

「っけ! 今更突っ込んできたところでもう遅い!!! くたばりやがれぇぇ!!!!」

 

 周囲に展開していた気弾を全てナッパめがけて集中砲火させる。

 その威力は凄まじく、ピッコロに近づかんとしたナッパを覆い隠す程の爆炎が舞い上がり、周囲の空気を震えさせるほどの爆音が響き渡った。

 

 これには誰もがナッパの生存は無理だと疑っていなかった。それは技を決めたピッコロでさえそうだったのだ。

 ニヤリと笑い勝利を確信したその時だった。未だ空中で渦巻いている黒い爆炎の中から1つの影が凄まじい勢いで飛び出して来た。

 

「グオオオオォォォ!!!!」

 

「っっ!? なにぃ!!?」

 

 全身火傷の傷だらけ状態のナッパが地獄の鬼すら怯えてしまいそうな顔で油断したピッコロに突撃してきた。

 これには流石のピッコロも面食らった表情で驚いて固まり、ナッパの突撃に何も出来ず衝突を許してしまう。

 

 そして、盛大に衝突した2人は共に地面にへとぶつかる。その際に、天にも届かんほどの土煙が2人を覆い隠し、暫しの沈黙が辺りに流れる。

 

 決着はどうなったのかとZ戦士達が唾を吞み込んだと同時に、舞い上がり続ける土煙の中から1つの人影が現れる。

 

「ふぅ……。ナメック星人が、このナッパ様をここまで追い詰めやがるとはな……」

 

 ふらつきながら立ち上がったのはボロボロになったナッパの方だった。そのことにZ戦士達はピッコロの敗北を知って絶望しながらも、敵を討ってやると意気込む。

 

「そ……そんな……。ピッコロがやられちまうなんて……」

 

「だ……だが……、奴も充分に弱っている! オレ達全員でかかればピッコロの敵討ちぐらいは……」

 

「だな、俺達も無駄に修業してたわけでは無いというところを見せてやる!」

 

「ボクも超能力で戦うよ!」

 

 クリリン達が立ち上がったナッパに恐怖しているなか、悟飯そしてベジータのみが静かに戦況を見守っていた。

 

「このカスの地球人どもが! ボロボロになったとはいえ、テメェら如きをぶっ殺すくらい訳はねぇぞ!!」

 

 ブチ切れたナッパの怒りは容易くクリリン達の戦意を削っていく。

 戦おうと構える手足に恐怖で震えが走る。それでも逃げることはできない。

 せめて1分……いや10秒でもいいから悟空が来るまでの時間稼ぎをしなければと心を奮い立たせる。

 

 だが、そのような必要はなかった。

 なぜならば──―、

 

「っがはぁ!!?」

 

「あれでこのオレが殺れたとでも思ったか? 脳みその足りないデカブツは最後のツメも甘いものだな……」

 

 やられたと思われたピッコロがナッパの背後に忍び寄り、その心臓を自身の右腕で刺し貫いたのだ。

 

「て……テメェ……、まだ……動けたのか……?」

 

「っへ! 心臓を貫いたってのに、まだ喋れるとは本当にタフな野郎だぜ! あのままテメェが油断せずにオレを確実に殺しにかかっていれば、あるいは今とは逆の結果になってたかもな……」

 

 ズボッ! とナッパの体から腕を引っこ抜くと、支えを失ったナッパは地面に倒れ、そのまま息を引き取り死体となったナッパをピッコロが気功波で消し炭に変える。

 既に心臓を貫き死んで死体になってたとはいえ、ラディッツのように原形を残せば後々厄介なことになる可能性が少しでもある以上、残り少ない気を消費してでもサイヤ人の死体は消し飛ばしておきたかった。

 だがこれでピッコロの力は完全に底をついた。もはや立ち上がる力も残っておらず、片膝をついて荒い息を繰り返す。

 

「まったく、この演技派め! ビックリさせやがって、この野郎!!」

 

「だが、これで残るサイヤ人はあのチビ1人だぜ……!」

 

 クリリンとヤムチャがピッコロの勝利に喜び舞い上がる。

 だがそうも喜んでばかりはいられない。ナッパを倒すだけで力尽きたピッコロは事実上の戦線離脱となった今、残されたZ戦士達だけでベジータを倒す。または、悟空が到着する迄の間の時間稼ぎをしなければならない。

 

「まったく、ナッパの奴め、まさかズタボロのナメック星人1匹に油断して殺されるとはな。だがまあ、あんな役立たずのゴミが死のうがこのオレ様には関係ない。ドラゴンボールで不老不死の願いさえ叶えられればこのオレ様が全宇宙を支配することが出来るのだからな……」

 

 なんたる邪悪な野望か……。仲間が殺されたというのに、涙を流すどころか悲しむことさえせず、あまつさえゴミと呼んで吐き捨てる。

 怒りで感情的になるナッパとは違う、冷徹で残酷なベジータの邪悪さに、ピッコロの勝利で浮かれていたクリリンとヤムチャは冷水を頭からぶっかけられたかのように熱が冷めていくような感じがした。

 

 そもそも、先程のピッコロとナッパの戦闘でさえ自分達との実力差を感じていたからこそ、クリリンとヤムチャは空元気を見せていたのだ。

 それを更に格上と思われるベジータからの底知れぬ悪意に飲まれて完全に戦意が薄れてしまっている。

 

 こうなってしまえば生半可なことでは士気を盛り返すことなど不可能だ。

 そう、それこそ誰もが頼れるスーパーヒーローが登場でもしない限りは……。

 

「「!?」」

 

 その存在にいの一番に気づいたのはピッコロと悟飯だった。遠くの方からもの凄いスピードでこちらへ向かってとてつもない力の持ち主がやって来るのを感じ、クリリン達もその存在の気を探り感じ取った。

 

「こ、この感じ……、間違いない!」

 

「ああ、やって来るぞ! あいつが……!!」

 

「これって、天さん……」

 

「ああ、まったく、待たせやがって……」

 

「あ……ああ……、この……すごいけど、なんだか懐かしい気は……」

 

「ああ、ヤツしかいない……。孫悟空がようやくやって来るぞ──―っ!!! 

 

 強敵ナッパを撃破し、ついに始まる最悪の敵ベジータとの戦いを前に、ついにこの世に戻ってきた悟空。

 果たして、悟空は仲間たちのピンチに間に合うことが出来るのか!?

 

 




次回は悟空参戦か?Z戦士達VSベジータに作者自身失踪してしまいそうな難産の予感が……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイヤ人強襲IFその3

ピッコロがナッパに勝利したバタフライエフェクト考えなくちゃ!(使命感)


 スパイカメラでサイヤ人との戦いを観戦していたボゲとラディッツは、ピッコロの奮闘にほぉ! っと感心したような声を上げる。

 原作以上の戦闘力を持っていたとはいえ、ナッパの戦闘力と比べれば10:7と明らかに格下であったのは確かだった。

 その差を戦術と技量で見事に埋めてきたのは天晴なものだった。

 

 しかし、その代償は決して小さくはなく、悟飯を庇ったとはいえ、ベジータと戦うだけの体力は尽きていた。

 

 だが、ちょうどいいタイミングであの世から悟空が地球へと帰還した。

 残す問題は残りのZ戦士達だけでベジータを足止めできるかどうかということか……。

 

「まさかあのナメック星人がナッパを倒してしまうとはな……。オレが言えたことではないが、たったの1年で強くなりすぎではないか?」

 

「いいや違うな。たった1年ではない、1年もあったというべきだろう。しかるべき環境と修業の内容次第で人は大きく成長することが出来る。それを今までお前たちがしてこなかっただけということだ……」

 

「なるほどな……」

 

 ボゲの言い分に頷き返し、もしサイヤ人全員が強くなる修業をしていればフリーザに勝つ未来もあったのではないかと思いながら、ようやく出番の訪れたベジータの戦いに意識を戻す。

 

 

 ♦

 

 

「なるほど……、確かにスカウターからもここへ向かってくる反応が1つ。それも戦闘力5000以上の奴ときたか……」

 

 ピッコロ達が悟空が来たと騒ぎ立てるからわざわざスカウターで探ってみると、遠くの方からこちらに向かってくる存在の反応をキャッチした。

 これが奴らが悟空と呼ぶカカロットならば、どんな願いをも叶えるドラゴンボールの力が本物だという証明になる。

 

「とはいえ、まとめてこられると面倒だ! カカロットがここへ来る前に貴様ら全員を殺しておくとしよう!」

 

「ついに俺達の出番がきたって訳か……」

 

「な……なに……、悟空が来るまでの時間稼ぎくらいどうってことないさ、なんなら俺達全員でかかればあんなチビ1人くらいはなんとかなるってもんよ……!」

 

「相変わらずの自信だな、ヤムチャ。だが、今はそれが心強いぜ」

 

「「「「いくぞ!!!」」」」

 

 悟空の存在により士気が上がったZ戦士達はベジータと戦う覚悟を決め、それぞれがベジータに向けて渾身の技を放つ。

 しかし、ナッパ以上の戦闘力を持つベジータにとってはその程度の攻撃は土煙を上げるお遊び程度でしかなかった。

 

「やはりな、所詮ナッパを仕留めたナメック星人が1番の実力者の集まり程度じゃ、このレベルか……ガッカリだぜ!」

 

「「「「なっ……!?」」」」

 

「そういえばキサマ、さっきこの俺に対してチビと言ったあげく、全員でかかれば倒せると言っていたな……?」

 

「いっ……!! 聞かれちゃってたのね……」

 

「随分と面白い冗談だ──―っな!」

 

「っごふ!」

 

 ベジータの姿が一瞬搔き消えたかと思えば、いつの間にかヤムチャの傍へと接近しており、鋭い一撃がヤムチャの鳩尾に決まり悶絶して倒れる。

 まだ死んではいないようだが、とてもすぐには戦闘に戻れそうな様子では無かった。

 

「っがぁ……はぁ……??!」

 

「キサマは最後に殺してやる。せいぜいそこでお仲間が死ぬところでも見て絶望するんだな」

 

「な……なんて邪悪な野郎だ! これじゃまだピッコロの奴が可愛く見えるぜ……」

 

「まったくだ……、だがやるしかないぞ!」

 

 ヤムチャが倒れ戦力が減ったZ戦士達はそれでもまだ戦う意思を鈍らすことはなく、戦う構えを取る。

 

 だが、そんなZ戦士達の必死の抵抗をまるで子犬がじゃれついてくるかのように軽くあしらうベジータの圧倒的な強さに絶望を覚える。

 この絶望にせめて一矢抗わんと天津飯が覚悟を決めた表情で決死の技を放つ。

 

「っく、いくぞ! この俺の持つ最高の技を味わってみろ! この俺の……気功砲を!!!!」

 

「むぅっ……!」

 

 天津飯の三角に組んだ手から強烈な光が発射され、ベジータも流石に驚きの声を上げる。

 一瞬のうちにベジータを覆い隠す程の強烈な気功砲の一撃が直撃する。

 

 これにはZ戦士達全員がやったか! と内心で歓喜する……っが、現実は容易くその希望をへし折って絶望に突き落とす。

 

「ッッ!!?」

 

「……まったく、無駄な抵抗をしやがって。少し驚きはしたが大した攻撃ではなかったようだな……」

 

「そ……そんな……、俺の渾身の気功砲を喰らって無傷だなんて。あ……悪夢だぜ……」

 

 体内の生命力を大きく使用しての気功砲は天津飯にとっても負担はデカく、精神的ショックも合わさって片膝をついて地面に崩れ落ちる。

 それを見たベジータがもう遊べないと判断し、トドメとして右手に溜めたエネルギー波で仕留めに来た。

 

「さ……させない……!!」

 

「ほぉ……」

 

 咄嗟に超能力でベジータの動きを止めに入る餃子(チャオズ)だったが、実力差があり過ぎるせいか、動きを止めることが出来たのは一瞬だけで、ベジータの意識が天津飯から餃子に移り変わる。

 

「ひぃ……」

 

「キサマだな? さっきの小賢しい超能力をこの俺に使ったのは……」

 

 攻撃対象を天津飯から餃子へと変えたベジータは即座に餃子を殺しにかかってみせた。

 

「俺はテメェみたいな超能力でコソコソする奴が大嫌いなんだ!!」

 

「や……やめろぉぉ……!!!」

 

「テ……天さん……」

 

 ピッ!! ドゴ──ン!!! 

 

「……チャ……オ……ズ、餃子──―っ!!!」

 

 強力なエネルギーを餃子にぶつけることで体内から爆発させ、あっという間に餃子を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまった。

 ここに来て初めての死者、それも一度ドラゴンボールで甦りもう二度と復活することが出来ない餃子が死んだショックはZ戦士達全員の心を叩き折るには充分なものだった。

 その中で、天津飯だけが餃子を殺された怒りに震え復讐の炎を燃やす。

 

「お……おのれぇ……、餃子は一度ドラゴンボールで蘇っているかもう二度と復活することは出来ないんだぞ! こうなったら、俺も一緒に逝ってやる!!」

 

 先程よりも更に強力なエネルギーを手に込め、絶命することすら覚悟の上の気功砲を放つことを決めた。

 餃子を殺したことで油断したベジータの背後を狙いすました天津飯は自身の命を賭した気功砲をぶつける。

 

「っ! はああぁぁっ!!!」

 

「っっ!!?」

 

 天津飯の気功砲に気づいたベジータは今度は真っ向から受けることもなく、気合いの咆哮だけで消し飛ばしてしまった。

 

「そんな、む……無念……」

 

 餃子の敵討ちどころかかすり傷1つ負わすことなく倒れることに未練を残して、餃子に続いて天津飯までが倒れた。

 次々と圧倒的なベジータの実力に倒れていく仲間の姿を見てクリリンが未だここに到着しない悟空に助けを求める声を木霊する。

 

「早く来てくれぇぇ! 悟空ぅぅぅ!!!」

 

 まさに絶望的な状況を前にしても未だ悟空は遥か遠くの距離にいる。このままのスピードでいけば、悟空が到着するよりも早くこの場にいる全員が全滅する方が早いだろう。

 そんな状況だからか、クリリンは破れかぶれの大技である気円斬をベジータに向けて投げつけた。

 

「なるほど! 中々面白い技だ……。だが!! はああぁぁ!!!!」

 

 両手にエネルギーを集中させ、真っ向から迫りくる気円斬をベジータはなんと掴み取り、そのまま地面を削りながら後退しながらも、やがて力任せに気円斬を握力で粉々に砕き壊した。

 

「なっ、そんな、噓だろ……。俺の気円斬が全く通用しないだなんて……」

 

 見れば多少手に焦げ目のようなものが出来ただけで、傷1つ無いベジータに驚愕するクリリン。

 もはや打つ手なしかと諦めベジータの最後のトドメに抵抗することなく受け入れようとしたのを止める者がいた。

 

「やめろぉぉ!!!」

 

「っぬ!」

 

 今まで静観していた悟飯が動きをみせた。その動きはZ戦士達よりも速く、力強いものだった。

 それは、今までZ戦士達の攻撃を余裕を持って対処してみせたベジータさえも一歩間違えば怪我を負いかねないパワーとスピードといえばその脅威を分かってもらえるだろうか? 

 

「ご……悟飯、お前……」

 

「クリリンさんはヤムチャさんを連れて下がってください。もう……もう誰も殺させやしない!」

 

「ほう……、この俺を相手に殺させやしないときたか。確かに、サイヤ人の血を引いているだけあって子供ながらに中々の戦闘力だ。しかし、このベジータ様を相手にするには少々実力不足じゃないか……?」

 

 事実、悟飯とベジータの一騎打ちは最初こそ善戦したものの、次第にスタミナ差で押し切られてきており、そのまま岩山に叩き付けられる。

 

「ぎゃふっ!!!」

 

「……悟飯!!!!」

 

「ふっ、ガキとはいえここまで楽しませてくれるとはな。とはいえ、所詮はガキの戦いだな。大した技もなければ戦闘の駆け引きがまるで浅い!」

 

 これでトドメだ! と未だ岩山に打ち付けられた痛みで硬直している悟飯に最後の一撃を刺そうとしたタイミングで、後ろから強力なエネルギーを感じて振り返ると、そこには倒れていた筈のピッコロが魔貫光殺法の構えでこちらを狙っていたのだ。

 

「調子に乗り過ぎだ! これで終いだサイヤ人!!」

 

「っちぃ! ぜぇあああぁぁぁ!!!」

 

 悟飯に向けて投げつけようとしたエネルギー波を、迎撃の為にとっさの判断でピッコロの魔貫光殺法にぶつけて相殺を試みる。

 その結果、貫通タイプのピッコロの技の方が僅かに勝っており、ベジータのエネルギー波を貫通していった。

 

「なっ!? クソォ!!」

 

 なんとかギリギリのタイミングで自身の顔に向かって飛んでくる魔貫光殺法を避けることには成功した。

 とはいえ、完全に避けることは出来ずに頬の辺りを僅か程度であるがかすり傷がついていた。

 

「なるほど……、これがあのラディッツを倒した技というわけか。スピードと貫通力は目を見張るものがあるが、直線的過ぎて油断しなければ避けるのは容易な……」

 

 ん……? ふと頬の部分に違和感を感じて手の甲で拭ってみせるとそこには紛れもない自分の血が付着していた。

 ば……馬鹿な!? この俺が、あんな死に掛けのナメック星人ごときに、この気高き血を流すだと……!? 

 

「ち、ちくしょうがぁ!! キサマはドラゴンボールのことを聞き出す為に生かしていたが、もう面倒だぁ!」

 

 ブチ切れたベジータは一息のうちにピッコロの目の前にまで接近し、その速度を落とすことなく片膝をついているピッコロの体に飛び蹴りを決める。

 あまりにも一瞬のことだったので誰も反応することが出来ず、気がつけば蹴り飛ばされていたピッコロ自身も地面を転がってようやく自分が攻撃されたのだと理解するレベルの速度だった。

 

 そして、地面を転がり数回転しようやく止まったと同時に、ベジータが地面に横たわるピッコロを踏みつける。

 踏みつける足に体重をかけると、ミシミシとピッコロの体から嫌な音が聞こえてくる。それは空耳ではなく、その証拠として踏みつけられているピッコロが痛みのあまりに悲鳴を上げている。

 

「ぐおわあぁぁぁあ!!」

 

「このままじっくりといたぶってやるのも面白いが、あともう少しすればカカロットの野郎がやって来るからな。ここは一思いに首を刎ねてやろう!」

 

「っんな! や……やめろぉ……!! ピッコロはドラゴンボールを作った神様の半身なんだ! もしピッコロを殺せば神様も死んで、二度とドラゴンボールは使用できなくなるんだぞ!!」

 

「っなに!?」

 

 ピッコロを殺そうとするベジータの発言に焦ったクリリンがドラゴンボールの秘密をバラす。

 これにはベジータもピッコロを殺そうとする手を止めてしばらく熟考する。この星に来たのは何も侵略目的やラディッツの敵討ちではなく、どんな願いをも叶えることが出来るドラゴンボールを手に入れるためだ。

 それを自らの手で不意にするのはあまりにも勿体無いことだ。

 

 しかし、とある噂話を思い出したベジータは警告を飛ばしたクリリンの方を向いてニヤリと口角を上げる。

 

「いいことを聞かせてもらった礼として、俺からも1ついい事を教えてやろう。このナメック星人の故郷であるナメック星にはなんでも願いを叶える不思議に球が存在するという噂話がある。ただのホラ話だと思っていたが、カカロットが生き返ったというのならば、それもあながち噓ではないのだろう。つまり、ここでこのナメック星人を殺したところで、ナメック星へ行けばより強力なドラゴンボールを手に入れられるということだ……!」

 

「そ、そんな……」

 

「そういう訳だ。くっくっく……、当てが外れたな。とはいえ、いい情報を得られたのはコチラとしても好都合だ。ナメック星へ行ってもなるべく無駄な殺しはしないでおこう。ドラゴンボールを手に入れるまではな……」

 

 話すべきことは全て話したベジータは、ピッコロの頭を潰すべく右手にエネルギーを集中させ振り落とす。

 

「ピッコロさんから離れろぉぉ!!!!」

 

「っぬおぉ!」

 

 ピッコロにトドメを決めるその瞬間に、横から悟飯の蹴りがベジータに命中し吹き飛ばす。

 

「大丈夫ですか、ピッコロさん?」

 

「ば、バカ野郎! オレを心配する余裕があるなら、奴に追撃の1つでも与えやがれ!」

 

「で、でも……」

 

 おずおずとピッコロの叱責に困る悟飯をよそに、蹴り飛ばされたベジータが起き上がる。

 その形相は修羅を思わす程に怒りで歪み、既にその右手には悟飯を消し飛ばすのに充分なエネルギーが集まっていた。

 

「こ、このクソガキがぁ!! よくもこの俺様を足蹴にしてくれたな!! そんなにも死にたいのなら、そのナメック星人共々粉微塵に消し飛ばしてくれる!!!」

 

「っ、まずい! 地面に伏せろ悟飯!!!」

 

「うわっぶ!?」

 

「死ねぇ!!」

 

 咄嗟に悟飯の頭を無理矢理掴んで地面に押し倒し、最後の力を振り絞ってピッコロは我が身を盾にしてベジータの攻撃から悟飯を守った。

 

「ぐおわぁ!!!」

 

「あ……あぁ……、そんな、ピッコロさん……」

 

 だがその対価として、その身を盾にして悟飯を守ったピッコロは断末魔の声を上げたのを最後に、全身が真っ黒焦げの焼死体となって絶命してしまった。

 

「ははは……、ガキ諸共消し飛ばすつもりだったが、虫ケラのナメック星人にしてはよく頑張った方だと褒めておいてやろう。ま、もう聞こえてはいないだろうがな。カカロットのガキもすぐにあの世でそのナメック星人に会わせてやる! この俺に感謝して死ぬんだな!!」

 

 再び悟飯を消し飛ばす為のエネルギー波を投げ飛ばしたベジータ。

 

 これで今度こそカカロットのガキは死んだ。そう思ったのも束の間、悟飯に命中すると確信していたエネルギー波が、その悟飯によっていとも容易く片手で弾き飛ばされてしまった。

 

「な、なんだと!?」

 

 その事実に驚くベジータをよそに、静かに怒りに震える悟飯はキッ! と睨みあげた目でベジータの方へ視線を向ける。

 

「訂正しろ……。ピッコロさんを虫ケラと呼んだことを訂正しろ!」

 

「……っは! なんだそのことか、そこの焼け焦げて死んだカスを虫ケラと呼んで何が悪い?」

 

 本当に悪びれる様子もないベジータのその発言に、ついに悟飯の怒りが頂点に達する。

 

「ゆ……許さない……!」

 

 ざわざわと悟飯の頭髪が逆立ち、周りの大地が恐怖で怯えているかのごとく震え始め、空に浮かぶ雲が逃げるように散っていく。

 

「な……なんだ……!? 何が起こっていやがる!!」

 

 突如として変わりだした悟飯の変化を感じ取ったベジータは、無意識のうちにスカウターを起動させ、悟飯の戦闘力を計測してみせた。

 

「戦闘力2000……3000……5000……8000!? バカな、まだ上がり続けていやがるだと!!?」

 

 とっくにナッパの戦闘力を上回り、自身に迫る勢いで急上昇し続ける悟飯の戦闘力に驚愕の声を出す。

 これにはベジータだけでなく、生き残っていたクリリンとヤムチャが驚きに目を見開いていた。

 

「ご……悟飯の奴……、なんてパワーをしてるんだ!? ピッコロが言ってた悟空をも上回る力ってのは噓じゃなかったんだ……」

 

「情けないな……、大の大人があんな子供に全てを任すことになるなんて……」

 

 もはや自分達では介入することの出来ない次元の戦いに歯嚙みしながら、クリリンとヤムチャは悟飯の勝利を願ってただ見ていることしか出来ないでいた。

 

「こ……こんな馬鹿なことがあるか! こんなものスカウターの故障に決まっている!!」

 

 乱暴にスカウターを外して地面に叩きつける。その衝撃でスカウターは破損し、ボン! という爆発音と共に砕け散った。

 

 そんな取り乱したベジータをよそに、気を極限までに高めきった悟飯は、その逆立つ頭髪がほんの一瞬だけ金髪に変化したように見えたと同時に、地面を蹴ってベジータをへと肉薄する。

 

「でりやぁ!!!」

 

「っな!? ごほぉあ!!?」

 

 ベジータも反応が遅れてしまう程の超スピードで迫った悟飯から、この戦いで初めてのクリーンヒットを顔面に当てられた。

 

 その威力は凄まじく、今までどんな攻撃も通用しなかったベジータがタタラを踏んで後退する。

 

「うりゃりゃりゃ!!!」

 

 そこを間髪入れず悟飯が左右の拳を目一杯握り締め、ガラ空きとなったベジータの胴体にラッシュ攻撃を決め込み、反撃がくる前に蹴りでぶっ飛ばして追撃の魔閃光を叩き込んだ。

 

「お前なんか……お前なんか……、死んじゃえぇぇぇ!!!」

 

「っ、ぐおおわぁぁぁ!!!?」

 

 怒りで理性がぶっ飛んだ悟飯の攻撃は凄まじく、蹴り飛ばされたベジータは岩山を3つ貫通してようやく止まり、そこに撃ち込まれた魔閃光は巨大なキノコ雲を作り出した。

 

 それだけやってようやく悟飯の理性が戻ってゆき、全身の力が抜けたのか、その場でへたり込んで動けなくなっていた。

 だがあれだけの猛攻を受けたのだ、いくらあの化け物みたいに強いサイヤ人といえどもう立ってはこれまいと確信していた。

 

「やったな、悟飯!!」

 

「本当によくやったぜ! 流石は悟空の息子だな!!」

 

 倒れる悟飯に抱きつくクリリンと、乱暴に頭を撫で回して褒めるヤムチャの2人に困ったような笑みを浮かべながら、ピッコロの敵を討てたと満足そうにしている悟飯。

 

 だが、そんな平穏な時間はすぐさま終わりを告げた。

 

「き……キサマら! この俺様があの程度でくたばったと思ったか!?」

 

「「「なっ!?」」」

 

 倒したと思われたベジータが悠然とした歩みで再び姿を現した。

 

 ボロボロになった戦闘服に口から垂れ流している血がそのダメージのデカさを物語っているが、手足にふらつきはなく、感じられる気の大きさからして戦闘不能には程遠い状態といえる。

 

「とはいえ、さっきの攻撃は随分と効いたぞ! このベジータ様が一瞬だけとはいえ敗北を覚悟してしまうくらいにな!!」

 

 あのクソガキめ! さっきの一瞬だけとはいえ、この俺様を上回るスピードとパワーをみせやがった!?

 まだガキだからか、怒りでブチ切れた時しか本来の実力を発揮することが出来ないのだろう。

 

 現に、今の奴からは先ほどの恐ろしいまでの気迫といえるものは感じられず、ただのガキに成り下がっている。

 

「ドラゴンボールを手に入れら為に地球に来たが、運が良かったぜ! もしそのガキが成長して力を自由にコントロール出来ていれば、この俺様でさえ手に負えない怪物になっていたかもしれんからな!」

 

ギロッ!と腰を抜かして倒れている悟飯のことを睨みつけながら、ベジータはゆっくりと悟飯を殺そうと近寄っていく。

 

「さ、させるか!」

 

「子供ばかりに任せてられるかってんだ!!」

 

「邪魔だぁ!!」

 

「「ぐわぁ!?」」

 

 クリリンとヤムチャが悟飯を守らんとその身を盾にして立ちはだかるが、ベジータの腕の一振りで放たれた強力なエネルギーの爆風に呆気なく吹き飛ばされてしまう。

 

 残されたのはもう動く体力も残っていない悟飯のみだった。

 

「さあ、これでお前を守ってくれる盾はいなくなったぞ?」

 

「っ! た……例えボクがやられたって、お父さんがきっとお前を倒してくれる!!」

 

「なるほど、素晴らしい親子の絆だな。なら、あの世で一緒になれるようにキサマの死体のそばにカカロットの死体をそえてやる!!」

 

「っぐ!!」

 

 ベジータが悟飯を殺そうと右手に込めたエネルギー弾を投げつけようとしたその瞬間だった。

 遠くの方からこっちに急速に近づく者がいた。

 

『3倍界王拳!!!』

 

「っ!? ぐおわぁ!!?」

 

 途轍もないスピードで飛んできた男の拳がベジータに突き刺さり、悟飯のピンチを救った。

 倒れる悟飯を背にし、戦場に降り立ったのは──ー、

 

「ずいぶんと待たせたな!」

 

「「「悟空(お父さん)!!!」」」

 

 ヒュオオオッッ! とはためく風を背に、ついに皆んなの希望の救世主である孫悟空が登場した。

 

 




悟飯ちゃんが軽くスーパー化しかけた。
ナメック星編では悟空より先にスーパーサイヤ人化のルートも微レ存かも?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイヤ人強襲IFその4

まだまだ終わらないサイヤ人編。これでナメック星編や人造人間編を書くと思うと今から肩が痛くなる。


 

「凄まじいパワーの爆発力だったな……」

 

「ああ……、まさか、あのガキがベジータを圧倒するパワーを見せるとはな。前に戦った時もそうだが、怒りで我を忘れた状態に陥った時のアイツはトンデモない強さを発揮してみせた。アレはサイヤ人と地球人のハーフだからそうなっているのか?」

 

「ふむ、私の考える結論から言えばNOだ。あれは一種の突然変異に近い存在だな。潜在能力に特化した個体と言い換えてもいいだろう」

 

 後に産まれてくる悟天や、ベジータの息子のトランクスは基礎戦闘力は高いが、潜在能力は悟飯ほどは高くない。

 これは作者的な考えでいえば、悟飯のような存在をポンポン出せばパワーバランスが崩れるからだろうが、現実的な考えで言えば私の提唱した突然変異論が強いのだろう。

 

 まだ悟飯のDNA細胞を入手していないから、そこまで詳しくは分からないが、今回の戦闘で悟飯の血をスパイカメラが入手したからな。数日中には事実が判明するだろう。

 

 さて、悟空も悟飯が死ぬ前に到着したことだし、今の時点で原作と剝離しているのはヤムチャの生存とベジータの負傷のみか……。

 大筋のナメック星へ行くフラグとなるピッコロの死亡とナメック星の情報の入手は変わらないようだな。

 

「む! もう空になってしまったか。これから面白くなりそうな場面でポップコーンが無くなっちまうとはな。おい! バターしょうゆ味とついでに飲み物にメロンソーダを持って来い!」

 

「ああ、私も同じのを貰おうか……」

 

「カシコマリマシタ」

 

 空になった容器をロボットに渡し、すぐさまおかわりのポップコーンとジュースを持ってこさせる。

 

「さて、今回の戦いは我々も学ぶべきことが多いものになるだろう。心して観戦するとしようではないか」

 

「ああ、エリート様と下級戦士の戦いなど滅多に見れるものではないからな」

 

 

 

 ♦

 

 

 

 戦場に現れた悟空はすぐさま戦おうとはせず、ベジータの挙動を見逃さないよう注意を払いながら、傷ついた悟飯とクリリンとヤムチャに向き直る。

 

「ずいぶんと手酷くやられたみてぇだな。……生きているのはオメェらだけか?」

 

「ああ……、あのサイヤ人、トンデモなく強くってよ。天津飯や餃子、それに最悪なことにピッコロも殺されっちまった……」

 

「……っ! なんてこった、ピッコロが死んじまったってことは神様も死んじまったってことか!」

 

 ピッコロの気が消えたことで悪い予感を感じていたが、まさか本当にピッコロが殺されていると知った悟空は歯嚙みしながら、もう二度とドラゴンボールによる復活は叶わない事実に悔しさを滲ませる。

 

「っく! オラがもう少し早く辿り着いていれば!!」

 

「き、気にすんなよ、悟空。お前が来てくれたおかげで悟飯の命が助かったんだからよ! それに、まだ希望は無くなった訳じゃない。理由は後で話すけど、あのサイヤ人を倒しさえすれば皆が生き返るチャンスがあるんだ」

 

「ほ……本当か!? ……分かった。なら、アイツはオラがやる。皆は巻き込まれねえように下がっておいてくれ!」

 

 クリリンの言葉に驚きながらも、親友の言葉を信じて悟空はたった1人でベジータと戦う意思を表明する。

 

「なっ! 悟空、お前まさか1人であのサイヤ人と戦う気か?」

 

「馬鹿野郎! お前はあのサイヤ人の強さを何も分かっちゃいない! 俺やクリリン、それに悟飯を加えた4人がかりで倒しに行かなきゃとても勝てん相手だぞ!」

 

「そ、そうだよお父さん! アイツはメチャクチャ強くて、ボクもピッコロさんの仇を討とうと頑張ったんだけど、結局倒せなくって……」

 

 クリリン達が必死になって止めようとするが、悟空は頑なに1人で戦おうとする。

 

「やっぱり、さっきのものスゲェ気は悟飯のものだったのか。オラおどれぇたぞ!」

 

 そう褒めてあげ、ボロボロになった悟飯に仙豆を渡す。

 これで残りはあと1粒となったが、悟空はそれを半分に割ってクリリンとヤムチャに渡した。

 

「ま……待てよ、悟空。この仙豆はお前が持ってろよ。情けない話だが、悟飯はともかく、俺らじゃ足手まといにしかならねし、これは返すよ……」

 

「ああ……、クリリンの言う通りだ。俺も流石にアイツとの戦いにはついていけそうにないし、この仙豆は悟空がいざって時に食ってくれ!」

 

「何言ってんだ? オメェ達もアイツにやられてボロボロじゃねぇか、そんな状態で無理すんな。オメェらが食わないならオラそれ捨てっちまうぞ!」

 

 こうなった悟空は頑固として仙豆を受け取らないのを長い付き合いのある2人は知っている為、渋々納得して仙豆を口にする。

 

「「「治った!!」」」

 

「なにっ!?」

 

 ボロボロで体力も空の状態だった3人が一斉に回復したことに驚くベジータ。

 

 なんだ今のは!? あの地球人とカカロットのガキが一瞬のうちに回復しやがった。

 あのカカロットが渡した妙な豆を口にした瞬間に傷や体力が回復したように見えた。

 なるほど、ドラゴンボールくらいしか価値のない星かと思ったが、どうやらまだまだ役に立ちそうなアイテムが眠っているみたのようだ。

 

「さて、おい! お前も今の間に悟飯から受けたダメージもちょっとは回復しただろう!」

 

「ほう、気づいていたのか? ならさっさとソイツらを回復させて襲い掛かってくるべきだったな。せっかくの絶好のチャンスを逃したぞ……」

 

「そんな必要ねえさ……。言っただろう、オメェはオラ1人でぶっ倒すってな……!」

 

「くっくっく……、いいだろう。相手の力量も見抜けん下級戦士の思い上がりを、このエリートであるベジータ様が直々に叩きのめして教えてやる」

 

「ここじゃ皆の死体を巻き込んじまう。場所を変えるぞ、ついてこい!」

 

「はっ、いいだろう。自分の墓場くらいは決めさせてやる」

 

 場所を変える為に飛んでいった2人を見送った悟飯達は死体になったピッコロと天津飯を連れてカメハウスに帰ることにした。

 

「天津飯はお前らじゃ体格的に厳しそうだし、俺が運ぶぜ。ピッコロは……」

 

「ボクが運びます!」

 

「悟飯、お前だけじゃ運びにくいだろ? 俺が左から抱えるから、右はお前が抱えてくれ」

 

 そうして俺達は仲間の死体を担いでカメハウスへ向かう。本当なら餃子の死体も持ち帰ってやりたいところなんだが、あのベジータに死体が残らないほど木っ端微塵に消し飛ばされてしまったからそれは不可能だ。

 

 俺はピッコロを抱えながら、遠ざかる悟空の気を感じて「絶対に勝てよ。親友!」と心の中で勝利を願ってこの場を去っていった。

 

 そんなクリリンの勝利を願う祈りを受けた悟空は、先ほどの場所から充分に離れた荒野で止まり、そこに降り立っていく。

 

「なるほど、ここがきさまの選んだ墓場というわけか……」

 

「ここなら誰もいねえみてぇだし、思う存分やり闘うことができんだろ」

 

 地上に降り立った2人は睨み合いながら、互いに仕掛けるタイミングを探り合っている。

 

「戦う前に教えておいてやろう。サイヤ人は産まれてすぐに戦闘力を測られる。その際に、きさまのような才能のない下級戦士はこうした程度の低い星へ送られるのだ!」

 

「ならそのことに感謝しねえとな。こうしてオラが地球に来れたのも下級だったからだろ。それに、産まれた時がどんなに弱くても、そっから強くなろうと必死に努力すりゃ、エリートだって超えられるかもしんねえぞ?」

 

「はっ! なにをバカなことを……。なら教えてやる。努力だけではどうやっても超えられないエリートの壁というやつをな!!!」

 

 カッ! とベジータの気が爆発したと思うと、その足場となった岩山が崩れ落ち、それと同時にベジータが悟空に向かって突っ込んできた。

 これに対して悟空も前に出て対応する。両者の拳が空中で激突すると、周囲の大気は激しく震え上がる。

 

 そして、その激突は1回では終わらず、ぶつかっては離れ、ぶつかっては離れを繰り返し、荒野の空に無数の衝突した際の衝撃波を生み出していく。

 

「はっはっは! どうした、カカロット。これがきさまの全力か? あのガキの方がまだ手ごたえを感じられたぞ!」

 

「っぐ! なんて奴だ! まだ全力じゃねえってのに、オラよりもパワーもスピードもずっと上をいってやがる!!」

 

 この数回のぶつかり合いで基礎能力の差はベジータが上だと格付けが決まった。

 このままいけばベジータの勝利は揺らぐことはないだろう。このままいけばの話ではあるが……。

 

「いいぜ! なら見せてやる。オラの界王拳を!!」

 

「っ!!」

 

 はぁ! と悟空が赤い闘気を纏うと、先ほど以上のパワーとスピードでベジータと渡り合う。

 これにはベジータも度肝を抜かれ、かなりの手痛いダメージを貰うことになった。

 

 だが、流石は自他共に認められているベジータか。即座に悟空への認識を切り替えて対処してみせた。

 

「っく……。なるほど、今のは最初にきさまが現れた時に見せた技だな? 最初からそれを使わなかったのは俺を舐めていたからか、もしくは肉体に相当な負担を強いるものだからか?」

 

「へへへ……、ご名答。この技は気をコントロールして何倍にも増幅させる技だから肉体に相当な無茶をさせっちまうんだよな……」

 

「いいのか? そうやってベラベラと敵に技の内容を教えてしまって?」

 

「へっ、問題ねえよ。オメェだって薄々は気づいてたろ? それに、速攻でオメェを倒せばいいだけの話だ!」

 

「バカめ! 確かにさっきの攻撃は油断して喰らってしまったが、あの程度ならば俺様の全力には遠く及ばんわ!!!」

 

 そう言うと、事実としてベジータは更に気を跳ね上げてゆく。その凄まじさといえば、さきの悟飯の怒り時に匹敵するほどのもので、地球全体が揺れていると錯覚してしまうほどのエネルギーが(ほとばし)る。

 

「はぁ──―っ!!!!」

 

 気を全力解放したベジータ。大気の震えるや大地の揺れが納まり、周囲に浮かんでいた雲が1つ残らず散った荒野でベジータと対峙する悟空は、見た目こそ変化はないものの、先ほどまでとは一線を画す雰囲気を纏ったベジータを見て背筋にゾクッとした悪寒が走った。

 

「……終わりだ。カカロット……」

 

「っ!!」

 

 この瞬間からベジータの独壇場となる。

 さきのぶつかり合いとは次元の違ったパワーとスピードを見せるベジータの猛攻に悟空はなすすべもなく圧倒され、咄嗟に界王拳2倍を使うもベジータの攻撃を避けるので手一杯の様子だ。

 

「はぁーはっは! どうした、カカロット? それが限界ならばガッカリだぞ!」

 

「ちくしょう! なんてパワーとスピードだ……。ここまで実力差があったなんて。こうなったら、まだ安定しちゃいねえが、使うしかねえ! 3倍の界王拳を!!!!」

 

「っ! 何をするつもりか知らんが、もうきさまを舐めてかかったりはせんぞ! このまま圧倒的パワーで一気に押しつぶしてやる!!!!」

 

 これまでの戦いでナッパがやられ、悟飯に戦闘力を一時的とはいえ追い抜かれたベジータから油断は無くなり、カカロットが脅威であると認めたベジータはこのまま相手に奥の手を使わせることなく一気に仕留めにかかる選択を取った。

 

 こうなってしまえば悟空に3倍界王拳を使用する余裕はなくなってくる。

 

 原作と違いラディッツが生きていたと知った悟空は原作よりも早く界王星へ到着した。これにより、界王拳の制御を高め3倍までならば一時的にほぼノーリスクで扱えることに成功したのだが、さりとてベジータの攻撃を避けながら片手間でなれるほど熟練しておらず、数秒の溜めと集中を経てようやくノーリスクで使用できるというわけだ。

 

「そらそらそら! どうした! 避けるだけで精一杯か!」

 

「っく! ならやってやる! なんとかカラダもってくれよぉ!! 3倍界王拳だぁぁ!!!」

 

 ベジータのグミ撃ちを避けながら、このままでは先にこちらの方が倒れてしまうと判断した悟空が、博打覚悟で無理矢理に3倍の界王拳を発動した。

 爆発的に上がった悟空の赤い闘気がベジータのグミ撃ちの気弾を全て吹き飛ばし、その勢いのままベジータへと特攻をかます。

 

「っなに!? ぐぉわぁ!!?」

 

「わりぃが、このまま一気に決めさせてもらうぞ!!!」

 

 悟空の一撃一撃が全力に限りなく近いもので、スタミナ配分のことなど一切考えていない攻撃にベジータは抵抗すら出来ずに吹っ飛ばされていく。

 先程までとは立場が逆転した2人だったが、その実、真に追い込まれているのは悟空の方だった。

 

 未だ完全に制御しきれていない3倍の界王拳を使っての高速戦闘は確実に悟空の体を蝕んでいき、ベジータからの攻撃をカウンターで反撃した際に肉体が激痛を訴えた。

 それでも悟空はそれを無視して戦い続ける。

 

「おのれぇ! 下級戦士ごときが調子に乗るな!!」

 

 ブチ切れたベジータは悟空の姿を捉え殴りかかりに入ったが、超スピードで躱した悟空から再びのカウンターを鳩尾に貰ってしまう。

 

「あ……ぐ……!! きさま~~!! よくもこの俺に……!!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、なんてタフな野郎だ!! 3倍の界王拳を使って殴ってるってのに、まだ動くことができるなんてよ……」

 

 ズキッ! と体に激痛が走る。もはやタイムリミットは極僅かだぞと肉体が訴えかけてくる。

 荒れた息を整えながら、怒りに震えるベジータの行動に注視する。

 

 悟空からの猛攻が止み、一旦冷静に考えられる時間が出来たベジータは口から流れる血に気づく。

 

「こ……この俺様が、こんなちんけな星で3度もこの気高き血を流すことになるとは……!!!」

 

 しかし、ベジータは冷静になるどころか、血を流されたという事実に気が付き、更に怒りのボルテージが上昇した。

 そして、怒りによって憤怒したベジータが取った行動は地球を人質にした全力の必殺技を放つことだった。

 

「避けれるものなら避けてみろ!! きさまは助かっても地球はコナゴナだぞ──ー!!!」

 

「ちくしょう!! 考えやがったな!!! ならやってやる! 3倍界王拳のかめはめ波を!!!!」

 

 ベジータのギャリック砲と悟空の3倍かめはめ波がぶつかり合う。互いの必殺技はほぼ互角の接戦を演じる。

 だが、ベジータは素のパワーであるのに対して、悟空は界王拳というドーピングを使用しての互角だ。

 

 このままでは悟空の方が先に限界を迎えて潰されるだろう。

 だからこそ、悟空は自滅覚悟で更なる博打に打って出る。

 

「4倍だぁ────っ!!!」

 

「!! おっ押されぇ──ー!?」

 

 4倍まで跳ね上げた界王拳かめはめ波は両者の均衡を崩し、一気にベジータを空高くまで打つ上げた。

 だがまだ勝負は決してはいなかった。確かに必殺技による鍔迫り合いは悟空が勝利した。

 しかし、上空まで吹き飛ばされたベジータはなんとか宇宙に達する前にかめはめ波から脱出することに成功する。

 

「くっそぉー! 何故このエリート戦士である俺様があんな下級戦士に戦闘力を上回られている!? こ……こうなっては醜くて嫌だが、大猿になるしかあるまい!!」

 

 地球に来てからやられっぱなしになっているベジータは問答無用でカカロットを倒すべく大猿になることを決意する。

 

 しかし、今はまだ昼を過ぎたばかり。原作であればナッパ戦の最中にベジータがカカロットを待つために時間をおいていたが、この世界線では原作以上にピッコロが善戦したことと、悟空がより早く到着したことで満月が出現する時刻にはなっていなかった。

 もっとも、この1年の修業期間の間にピッコロが月を破壊しているために、そもそも満月はないのだが……。

 

「ちくしょうめ!! 大幅にパワーは減ってしまうが、こうなったらアレをするしかあるまい……」

 

 ベジータが地上に降り立ってみると、そこには見知らぬ太っちょの地球人が傍に立っていた。

 まさかあの回復する豆でも持って来たのかと内心で焦りはしたが、どうやらカカロットが勝利したと勘違いして現れただけのただの雑魚だったようだ。

 

「まずは褒めてやろう。たかが下級戦士だったきさまがこのベジータ様をここまで追い詰めるとは夢にも思わなかったぞ。しかし、結局のところ、きさまのような下級戦士がエリートであるこの俺様を超えることは出来ぬということを身をもって教えてやろう!」

 

「なにっ!?」

 

 ベジータの妙な自信が噓やハッタリの類いではないことを見抜いた悟空は驚きの声を上げるが、今のベジータは満身創痍に近しい状態だ。

 勿論、悟空はベジータよりも酷い状態であるのは間違いないのだが、だからといってここまで余裕な態度をとれるものだろうか? 

 

 その疑問はすぐに晴れることになる。

 

 ベジータが残り少ない気を絞り出して作り上げたおかしな光の玉を上空に放つと、それが爆発し酸素と混ざり合うことで疑似的な月を生み出した。

 

 そこから先はご存知の通り、ベジータが大猿にへと変身するとその圧倒的なパワーに物言わせて悟空を追い詰める。

 それはまさに猫と鼠の戦いというべきものだろう。か弱い鼠の必死の抵抗を嘲笑うかのように叩き伏せる猫が如くベジータは悟空を追い込んでいく。

 

 勿論、悟空にもこの危機的状況を覆す技が1つある。しかし、それは大きな溜めの時間を必要とする。

 今のベジータを相手に10秒は途轍もなく大きな隙だ。力を溜めている間にやられてしまうのがオチだろう。

 

「だりゃりゃりゃりゃ!!!!」

 

「なんだそれは……? それで攻撃しているつもりか?」

 

 悟空の気弾による連撃も今の大猿となったベジータには蚊に刺されたぐらいにしか通用せず、鬱陶しいと手で払いのけられてしまう。

 

「こうなったら、もう1度4倍の界王拳でやってやる!!」

 

 絶望的な戦闘力の差に悟空は4倍界王拳の再発動に賭けたのだ。

 これによって疑似的に悟空は大猿ベジータの戦闘力の半分まで届いた。

 

 だが、所詮は半分程度の戦闘力でしかない。そんな付け焼き刃の戦闘力では真っ正面から大猿になったベジータと渡り合うことなど不可能だ。

 ならば、馬鹿正直に真っ正面から攻めなければいいだけの話。悟空にはある1つ考えがあった。

 

 それはベジータ達サイヤ人は相手の気を探ることはできないという点だ。1年前に来た自身の兄を名乗るラディッツはスカウターと呼ばれる機械で気を探っていた。

 あのベジータも戦ってみたところ相手の気を感じ取っているような様子は見られず、全て目に頼った動きだった。

 

「だったら、だりゃりゃりゃりゃ!」

 

「今度は何処を狙っている? ついに頭がイカれたか?」

 

 悟空はベジータではなく周囲の岩山に向けて気弾を放ち続ける。

 

「こんだけぶっ壊せば! それぇー!!」

 

 壊れて倒壊した岩山が巻き起こした土煙に紛れるように悟空は飛び込んだ。

 

「なっ! しまった!! 奴めこれが狙いであえて攻撃を外してやがったのか!?」

 

 スカウターをつけていないベジータでは悟空の現在位置を把握することが出来ず、辺りに立ち込める土煙目掛けて無暗矢鱈に殴る蹴るを繰り返すが、その全てが空振りに終わる。

 

「こっちだ!!」

 

「っく! 小癪な!!!」

 

 土煙に紛れて襲い掛かってくる悟空の攻撃は致命傷にはならないが、積み重なることで無視できないダメージになっていく。

 

「へへへ……、ミスターポポには感謝しねえとな。目に頼らない気配によって感じる修業が生きたぜ!!」

 

 いくらパワーがあろうともそれが生かせていなければ無駄なことだと幼い頃に教えてもらったことに感謝しながら徐々にベジータを追い詰めていく。

 

「ぐぬぅ~、コソコソと面倒だぁ! こうなったら、ここら一帯をまとめて吹き飛ばしてくれるぅぅぅ!!!!」

 

 空へ飛んだ大猿ベジータは先程と全く同じようにギャリック砲の構えをとる。確かに、これならばパワーで劣る悟空ではどうしようもなくなるだろう。

 事実その通り、土煙に紛れていた悟空はそれに焦って自ら飛び出してベジータに向かって突っ込んでくる。

 

「はっはっは! そう来ると思ったぞ、カカロット! これで終わりだ!!」

 

 悟空の行動を読んでいた大猿ベジータは即座に構えを解き、自ら敵の懐へと飛び込んできた悟空目掛けて拳を振り落とす。

 だが、その拳は悟空の体を蜃気楼のようにすり抜けて不発に終わる。

 

「なに!? なんだ今のは!! 奴は何処へ消えた!!?」

 

「今のは残像だ! オラはこっちにいるぞ!!」

 

「っ!!?」

 

 いつの間にか後ろへ回り込んでいた悟空は無防備となったベジータの尻尾を掴み上げると、不意をついた隙を狙って力任せにブン回して地面へ向けてジャイアントスイングで放り投げる。

 いかに大猿になろうとも、否、大猿になったことで質量も大きくなったベジータは地面に叩き付けられ、大きなダメージと大きな隙を作ることになった。

 

 そして、地面に投げ飛ばされたことでうつ伏せに転倒し、無防備になった背中を晒している大猿ベジータに向けて最後のチャンスだと悟った悟空は限界を超えた5倍の界王拳を発動することに決めた。

 

「これで最後だぁっ!!!! 5倍の界王拳によるかめはめ波だぁぁ!!!!」

 

 それは今まで悟空が放ってきたかめはめ波の中で一際デカく太いもので、巨体を誇る大猿であろうとも余すことなく包み込んでしまう。

 そして、かめはめ波が着弾すると同時に、星を震撼せてしまうほどの巨大な爆発が巻き起こり、悟飯が打ち込んだ魔閃光を超えるキノコ雲が発生する。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……、これで……終わった……よな?」

 

 全身の至る箇所が激痛を訴える。もはや空を飛んでいることさえ苦痛に感じるなか、嫌な予感が脳裏にこびりついて離れない。

 いくら大猿に変身して化け物染みた力をみせたベジータといえど、今のかめはめ波を喰らって生きているとは思えない。

 

 だが、そんな悟空の予感は最悪のカタチで的中することになる。

 

 いまだ轟轟と大量の土煙を上げる地面を見続けていると、その中から何かが動く影を見つける。

 まさかと思いながら、その影を注視して見続けると、そこには戦闘服が消し飛びボロボロになった大猿ベジータが姿を現した。

 

「い……今のは本当に死ぬかと思ったぜ! だが、ギリギリ大猿の耐久力の方が勝ったようだな。まさか、この戦闘服が吹っ飛ぶ程の威力とは恐れ入ったぜ!!」

 

「は……ははは、呆れるほどタフな野郎だな。こちとらもう限界まで(リキ)を使い果たしてるってのに……」

 

 どうやらまだベジータは立ち上がるだけの余力が残っていたらしい。そして、そんな姿を見てしまえばいくら悟空といえど……。

 

(くそ……ここまでなのか? あの世に行ったらまずはじいちゃんに謝らないとな。オラが月を見ちまったから大猿になってじいちゃんを踏んづけて殺しちまったんだし……)

 

 あの世へ行ったらまずは祖父に謝罪することを考えた悟空はふと気がつく。自身が満月を見たのは記憶している中で3回だ。

 1度目は自身の祖父が死んだ日の晩だった。2度目はピラフ一味に囚われた城で見て、3度目は天下一武道会でジャッキー・チュンに追い詰められた時だった。

 

 1度目に月を目にした際、気がつけば朝になっていた。

 だが2度目は気がついても朝ではなく、尻尾がなくなっていた。

 そして3度目は尻尾ではなく月が消えていた。

 

「そうか! 大猿を解くには月か尻尾をどうにかすれば解けるんだ!!」

 

 だが、その答えに辿り着くには遅すぎた。もはや悟空に気弾1発とて撃つ体力は残っておらず、風前の灯火といった現状では月、ましてやベジータの尻尾を引きちぎることは不可能だろう。

 

「くっそぉ~~!! 気づくのが遅すぎた!!」

 

 今のかめはめ波が大猿状態でなければ確実に悟空の勝ちだったのだ。

 そんな悟空の後悔をよそに、大猿ベジータは悔しがっている悟空の元へと飛んでいきフラフラのまま浮いているだけの悟空を掴み上げる。

 

「っ! やべぇ!!」

 

「逃がすか! よ~し、掴まえたぞ!! 惜しかったがここまでだな。ふははは、このエリート戦士であるベジータ様をここまで追い込んだことを冥途の土産としてあの世にいくんだな!!」

 

「うぎゃぁぁぁ~~~~っ!!!!」

 

 ゴリゴリと大猿の握力で握りしめられた悟空は体の骨を何本か折られてしまう。

 もはやこれで終わりかと思われたが、悟空の瞳からはまだ絶望は感じられない。そこにあるのは勝利を渇望する戦士の光だった。

 

「へへへ……、失敗したな、ベジータ。オラを握る際に両手を一緒に掴まなかったことが仇になったな!!」

 

「っ!? 今度はなにを……?」

 

 悟空の言葉に何をするつもりなのかと視線を集中してしまった。それこそが悟空の罠だとも知らずに。

 

「天津飯!!! 技を借りるぜぇっ!!! 太陽拳!!!!」

 

「うおっ!!!!」

 

 目の前で突然出現した太陽のような光量に目を焼かれたベジータは思わず悟空を掴んでいた手を離し、瞼に手を押し当てて苦しむ。

 そうして自由になった悟空はベジータから急いで距離を取り、未だ視力の戻っていないベジータに向けて大声で叫ぶ。

 

「今度こそコレで終いだ!!! 10倍の界王拳によるかめはめ波だぁぁ!!!」

 

「っ!? バカめ!! 2度も同じ技を喰らうか!! きさまの声で位置がバレバレだ!!!」

 

 警戒していたベジータは視力を失っても悟空の声から位置を特定し、そこへ向けて超魔口砲を撃ち込んだ。

 

「やっぱり! お前ならそう来ると思ってたぜ!!!」

 

 ベジータの行動を信じていた悟空は、それを逆手にとり、始めから避けるつもりでいたためギリギリのところで避けれた。

 そして悟空に当たらずにその後ろへ飛んでいった超魔口砲が何処へいったかというと、それは先程ベジータが作り上げた疑似満月へと向かっていった。

 

ドカーン!!! 

 

 僅かに回復した視力で薄っすら目を開いて見ると、そこには避けた悟空と破壊された月が視界に映る。

 

「!! し、しまった!! 奴め、俺を使って満月を破壊させやがった!!!!」

 

 満月が破壊されたことで大猿に変身するために必要だったブルーツ波の供給が途絶え、徐々にベジータの体がしぼんでゆき、やがて完全に元の肉体へと戻ってしまった。

 

「よっしゃー! 狙い通り大猿から元の姿に戻ったぞぉ!!」

 

「くっ、くっそぉ~~!! またしてもカカロットの奴にハメられた!!!」

 

 上半身が裸になったベジータが怒りに震えながら、未だフラフラのまま宙へ浮いている悟空を睨みつける。

 そして、怒りのままにベジータは悟空へと殴りかかる。

 

「っ!!!」

 

「体力が無くなったきさまなんぞ、たとえ大猿でなくとも始末できるだけの力は残っているぞぉ!」

 

 すでにヨロヨロになっているのはベジータも同じだが、それでも攻撃できるだけの力が残っている分、悟空はサンドバックのように殴られ続ける。

 

「うっ! ぐっ! がぁ……!!」

 

「ぜぇ、ぜぇ、我ながら情けないぜ! たかが、下級戦士1匹を殺すのにここまで手こずるとはな……。だが、それももうお終いだ! このまま心臓を貫いて完全に息の根を止めてやる!!」

 

 ベジータの猛攻を受けて立ち上がる力も無くなった悟空は地面に仰向けに倒れ、そのまま目の前に立つベジータにトドメの一撃を貰う寸前だった。

 指一本すら動かない現状で、さしもの悟空も死を覚悟した。

 

「「「はあっ!!!」」」

 

「「っ!!?」」

 

 突如として3つの気弾が最後のトドメを刺そうとしたベジータに向けて飛んできた。

 

「がぁっ!!?」

 

 完全な不意打ちにベジータはモロに喰らってしまい、ゴロゴロと地面を転がって悟空から遠ざけられる。

 

「お……おめぇら!!?」

 

「大丈夫か、悟空!?」

 

 遠く離れた岩山の上にいたのはカメハウスに帰った筈のクリリン達だった。

 

 




大猿化を月を破壊によって解除することでナメック星編に変化がおきます。これぞまさしくバタフライエフェクト!!

予約投稿の日付間違えた


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイヤ人強襲IFその5

これでようやくサイヤ人編が終了。

な…長かった……。


「なるほど、アレが界王拳か……。それにベジータが使ったパワーボールも中々に研究のし甲斐があるな」

 

「界王拳か? 確かに今回カカロットがベジータを追い詰めることが出来た要因はそれだろうが、アレは見るからに諸刃の剣だぞ?」

 

「問題無い。最初の方を見ればほとんどリスク無く運用出来ていた。つまり、技の熟練度と肉体のスペックを高めることが出来れば、ほぼ肉体に負担なく活用できるということ……。それと界王拳だけではない。お前にはパワーボールを使っての新たなトレーニングメニューを熟してもらう」

 

「うげっ! 俺にアレを覚えて大猿になって戦えっていうのか? 言っておくが、大猿になっても理性を保てるのは一部のサイヤ人だけで下級戦士である俺は理性を無くしたただの大猿にしかならんぞ!」

 

「安心しろ。別にパワーボールを覚えろとも、大猿になって戦えともいわん。しかし、それに似たことはしてもらうがな……」

 

 そう不敵に笑うボゲの表情を見て、ラディッツは更に過酷なトレーニングが待っていることを予感して、げんなりした表情を浮かべてポップコーンを口に運んだ。

 

「それにしても、ボゲ。お前の言う通り、地球人とカカロットのガキが途中で助けに戻ったな。これもキサマの言う原作知識というやつか?」

 

「その通りだ。だが、何も原作知識だけではない。人間の心理と言うのは複雑ではあるが、表面的なものは酷く単純なものだ。そこから計算式を組み立てれば、余程腹に黒いものを抱えてさえいなければ予測は容易い」

 

「おっかないな、地球の科学者というものは……」

 

「はっはっは、こんな物騒な科学者は私を含めて精々が3~5人ほどだ!」

 

 私と父とウィローの3人に加え、そのウィローの助手とバイオブロリーを作った研究者とか辺りなら該当しそうじゃな。ピラフ大王はハレンチな行為も投げキッス程度の悪さだから該当しないだろうしな。

 

「さて、そろそろ観戦に戻ろうか。物語もいよいよ佳境に入る。これを見逃す手はないだろう」

 

「だな。あのカカロットがベジータを追い詰めたのは驚いたが、ここから倒せるかどうかは別問題だ。俺の弟ならば最後はしっかりと勝ってくれねば困るからな……」

 

「ははは、しっかりと負けた相手の言葉は重みが違うな!!」

 

「っぐは! やめろ、その言葉は俺に効く!!」

 

「ふっふっふ、君も随分とこちらの俗世に染まってきたな。さぁ、彼らの戦いの続きを見ようではないか」

 

 

 ♦

 

 

「お……オメェら!? 一体どうしてここへ……?」

 

「あのでっかい満月を見て悟飯が急に戻るって言いだしてな。ヤムチャさんも嫌な予感がするって一緒に戻ることにしたんだよ。天津飯やピッコロには悪いが途中の島で置いていっていまったが……」

 

「オレも最初はあのベジータって野郎の気が跳ね上がったのを感じて、もしやと思ってな。悟空、お前ももう気が付いたかもしんねえが、俺はお前の尻尾を切り落とした経験があったから役に立つと思って戻ってきたが、まさか俺達の助けなくあの大猿化を止めるとはな!」

 

「ははは……、随分と迷惑をかけちまってたみてぇだな」

 

「まったくだぜ……って言いたいとこだが、俺達も随分とお前に助けられたタチだからな。これでおあいこだ!」

 

 ヤムチャが差し出すグーに悟空も同じようにグーで返してコツンと当てる。

 

「大丈夫、お父さん?」

 

「ああ……、オメェらが来てくれたからオラ助かったぞ」

 

 心配して駆け寄って来た息子に感謝の礼を伝え、痛む体を酷使して立ち上がる。

 

「悟空、お前だいぶ気が減ってるだろ? 俺から渡せる目一杯の気だ。受け取ってくれ!」

 

「オレも!」

 

「ボクも!」

 

「3人共……、サンキューな! オラまだまだやれるぐれえ元気が出たぞ!」

 

 体の傷は治ってはいないが、底を尽き欠けていた気が回復したことにより、パワーが戻った悟空はニッ! と笑って拳を握りしめる。

 

「くっ、クソったれ共めぇ~~!! 何度もこの俺様の邪魔ばかりしやがってぇ!! 絶対に許さんぞぉ!!!」

 

 フラフラと幽鬼のように立ち上がって向かってくるベジータに悟空を除く3人が驚きながら臨戦態勢に入る。

 

「あ……あんにゃろう! あれだけやられてまだ動けんのかよ!?」

 

「だが奴ももうボロボロだ。4人がかりで一斉にかかれば絶対に倒せる筈だ!」

 

「そうですね。お父さんも気が回復しましたし、ボクら全員で挑めばあんな奴! いきましょう、皆さん!!」

 

 3人がそれぞれ構えた瞬間、悟空が待ったをかけた。

 

「待ってくれ! 悪いがアイツとの決着はオラ1人でつけたいんだ!」

 

「「えっ!?」」

 

「な! バカ言うな、悟空。今のお前は気こそ回復したが、その体で1人で戦うなんて無茶だぜ!」

 

「かもな! でもオラ、今最高にワクワクしてんだ。地球のピンチだってのにさ、やっぱりオラもサイヤ人の血が流れてるからかもな……」

 

 ヤムチャからの説得も意に介さず、悟空はワクワクしているからという理由で1人で戦うことを決めた。

 こうなってしまえばテコでもいうことを聞かない悟空の頑固さは折り紙つきだ。渋々と3人は悟空の戦いを見守ることにしてその場から距離を取った。

 

「甘っちょろい野郎だ。まさか本当に1人でこの俺様と決着を着けるつもりとはな……」

 

「ああかもな……、でもよオメェは強え! オラが出会ってきた奴らの中でダントツに一番の強さだ。だからさ、勿体ねぇと思ってよぉ……」

 

「勿体無いだと……?」

 

 悟空のその発言に理解できないと顔に書いてあるベジータに、悟空は己の心境を打ち明ける。

 

「ああ、こんな強い奴を数で攻め立てて倒すなんて勿体無いってな! オメェとはオラと一対一の勝負で倒したい。そう思っちまったんだ……」

 

 それを聞いたベジータは口元を歪ませ、なにかに堪えるように体を震わす。

 

「……っくっくっく、は~っはっはっは!!! サイヤ人の誇りも忘れ、地球人として生きてきたきさまが、よもやこの俺様との戦いをそこまで楽しんでいるとはな……」

 

 いつもならば舐めやがってとキレるところだが、限界まで追い詰められたことによる影響か、ベジータは残酷なサイヤ人ではなく、戦士としてのサイヤ人へと変わっていた。

 

 戦う前までの邪悪な笑いとは違う。純然たる戦士の顔つきに変わったベジータは、一対一の勝負を提案してきた悟空に本当の意味で向き直る。

 

「いいだろう。もうきさまを落ちこぼれの下級戦士なぞと侮りはせん! ここからは生き残った最後のサイヤ人として、どちらが真のナンバー1(ワン)かを決める戦いだ!!」

 

 その目からは噓は感じられず、悟空と同じように、ただ純粋にどちらが上なのかを試したい。そんなサイヤ人の本能ともいえる部分に火がついた戦士の目をしていた。

 

「いいぜ! オラとオメェ、どっちが強いのか勝負だ!!!」

 

「ふん、言っておくが勝つのはこの俺様だ!!!」

 

 こうして再び始まった2人の戦い。どちらも限界をとっくに迎えているのに、それでもなお戦い続ける。

 

「はあぁぁぁ!!!」

 

「ぜあぁぁぁ!!!」

 

 拳がぶつかり合いながらも両者共に一歩も引かず、時には悟空の回し蹴りがベジータ脇腹をえぐり、時にはベジータの投げが悟空を岩山へ叩きつける。互いが常に相手に勝つことを意識し、攻撃の手を止むことはない。

 流す血の量が大きな水溜りを作れる量になっても、どちらも諦めることはなく、もはや意地と気合だけで戦っている状態だ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……、いい加減倒れやがれ、カカロット!!!」

 

「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……、やなこった。オラ、人一倍負けず嫌いなんだ!!!」

 

 互いにボロボロの体を引きずって、歩くのも精一杯な悟空とベジータは両手を組みあって、力比べの状態のまま両者は同時に頭突きを決める。

 

「あぐ……!」

 

「うが……!」

 

 互いの額がぶつかり合い、そこから額が切れて血が垂れる。

 だが、そんなことお構いなしに悟空もベジータも再び頭突きをする為に背を後ろに仰け反らせ、その反動で思いっきり頭を振り下ろす。

 

 ガン! ガン! ガン! と2回目からは血の飛び散る水音さえ聞こえてくる程に苛烈な頭突き合いに、見ているクリリン達の方が頭が割れそうになっていた。

 

「うおおぉぉぉ!!!!」

 

「でりゃぁぁぁ!!!!」

 

 ガァン! とより一際大きな音を立てて、悟空とベジータの額がぶつかった。

 

「「…………」」

 

 そこでようやく動き続けていた両者の動きが完全にストップし、数秒の沈黙がこの場を支配した。

 

「っうぐ……」

 

 先に動いた……否、先に倒れたのは白目を向いて失神したベジータだった。

 ずるりと悟空の手を握っていた力が抜け、そのまま前へとうつ伏せに倒れ落ちたのだ。

 

「……っ、か……勝った……」

 

 血を流し過ぎて朦朧とする意識の中、ドサっとベジータが倒れる音を耳にして悟空は勝利したという事実に気が付いた。

 それと同時に、緊張の糸がきれたのか全身の力がふっと抜けていき、そのまま背中から地面に倒れ落ちた。

 

「やっ……やったぁ!!! 悟空が勝った!!!」

 

「よっしゃー! 流石は悟空だぜ!」

 

「よかった! お父さんが勝ったんだ!!」

 

 遠くで2人の戦いの勝敗を見守っていた3人が、悟空の勝利を目にして喜びを叫びながら駆けつけていく。

 全身余すことなく傷だらけの悟空を囲い込み、各々があの激闘を繰り広げ勝ち取った悟空を褒め称える。

 

 そうして、クリリン達が喜びに浮かれ上がっていると、遠くの空から1つの飛行物体が飛んできた。

 

 何事かと驚いていると、それはサイヤ人が乗ってきた宇宙船だった。

 

「ぐぅ、この……俺が……、まさか逃げ帰ることに……なるとは……」

 

「あいつ、あんな状態でまだ動けるのかよ!? クリリン……」

 

「ええ、皆んなの敵討ちは俺達で……」

 

 這って逃げるベジータの背中を捉え、クリリンとヤムチャはかめはめ波の構えをとる。

 ようやくベジータが飛んできた宇宙船に這いずって辿り着いた頃には、背後からエネルギーを溜め終えた2人がかめはめ波を放つ直前だった。

 

 これでは宇宙船で脱出するよりも先に宇宙船ごと撃たれて終わりだろう。

 

 ちくしょう……!! と本気で悔しがりながら今にも自分にトドメを刺そうとする2人を睨みつける。

 

 これでこの戦いの決着がようやく着く。そう確信していた2人を止める声が割り込んだ。

 

「まっ……待ってくれ! 2人共!!」

 

「っ!? どうしたんだよ、悟空?」

 

「お前、まさか!?」

 

 こういった時の悟空の頼みごとは我儘であるパターンであると、長年の付き合いのある2人は察する。

 

「へへへ……、すまねえけどよ……そいつを逃がしてやっちゃくんねえか……?」

 

「に……逃がすだと……!!?」

 

「馬鹿言うなよ悟空!! ここでこいつを逃がしたら、今度はまた勝てるかどうかも分かんないんだぞ!!」

 

「そ……それでもよ……。オラ、まだそいつと完全に決着を着けれてねえ……。一対一っていってもよ、オラが来た時には……悟飯からダメージを……受けてたし、さっきもオメェ達が来なけれりゃ、オラの方が……先に殺されてた……。気だって分けてもらっちまってよ……。これじゃ……公平じゃ……ねぇ……」

 

「公平じゃないだと! 何言ってるんだよ、悟空! あれはどう見てもお前の勝ちだろ!!」

 

「ヤムチャさんの言う通りだぜ! あの勝負はお前の力による勝利だったって!!」

 

「そ……それでもよ……。オラ、今度こそたった1人の力でそいつと戦って勝ちを拾いたいんだ……」

 

 そんな悟空の我儘をクリリンは溜息混じりにしょうがないと承諾した。

 だが、ヤムチャは違った。

 

「どうかしてるぜ、悟空もクリリンも!! こいつはみんなを、地球人全員を殺そうとした大悪党なんだぜ!?」

 

「それでもよ……。次はオラ1人で必ず勝ってみせる。だから……ヤムチャ……」

 

「うっ……、っおおぉぉぉ!!!」

 

 悟空の我儘にヤムチャは悩みながら、それでもとかめはめ波を撃ちはなった。それは真っ直ぐに飛んでいき、ベジータを巻き込んでの爆発を起こす。

 

「ああ……っ!!」

 

 ヤムチャの行動に悟飯は口を開けて驚いた。きっと悟飯もなんやかんだでヤムチャもクリリンのように悟空の我儘を聞くだろうという思いが心の中にあったからだろう。

 そして、当の我儘を言った本人はというと……。

 

「……すまねえな、ヤムチャ」

 

 ヤムチャが放ったかめはめ波による爆炎による煙が晴れると、そこにはまだ生きているベジータと無傷の宇宙船が存在しており、その横にあった岩山が無惨な形で倒壊していた。

 ヤムチャのかめはめ波はベジータには当たらず、その横にあった岩山に命中したのだろう。

 

「っ! いいか、悟空! そこまで大口を叩いたからには、次はけちょんけちょんにやっつけてしまえよ!」

 

 しょうがなく悟空の我儘を受け入れたヤムチャは、次にベジータがやって来た時には絶対に勝つことを約束させる。

 

「ああ……、絶対にオラ1人で勝ってみせるさ……」

 

 ウィィン! とハッチの閉じる音がして、その音の発生源となる宇宙船を見ると、傷だらけのベジータが操縦席に座っており、こちらを睨んでいた。

 

「1度ならず2度もチャンスを逃すとはな。本当に甘ちゃんばかりの連中でヘドが出るぜ……。だが、カカロット! 今はナンバー(ワン)の座はきさまに譲っておいてやる。だがな! 次に会う時はこのベジータ様が必ずきさまを倒し、その座に返り咲いてやる!! 覚悟していやがれ!!!」

 

「へっ、次に戦った時もオラが必ず勝ってみせるさ。また会おうぜ、ベジータ……!」

 

「……っち!」

 

 悟空の別れの台詞に舌打ちで返してベジータは地球から去っていった。

 

「はぁ~、呆れた野郎だぜ……。あんなに傷だらけだってのに、まだあんなに叫ぶ元気が残ってるんだもんな~」

 

 宇宙へ飛んでいったベジータの宇宙船を見送りながら、クリリンはそう呟いて、この天下分け目の超決戦の終わりを実感する。

 

 

 

 ♦

 

 

 

 そして、そんな彼らの激闘をスクリーン越しに観賞していた2人。ボゲとラディッツは満足そうな顔で余韻に浸りながらジュースを啜る。

 

「んぐ、んぐ、っぷは! まさか、あのベジータがカカロットをライバルとして認めるとはな……」

 

「元々、本来の原作による世界ではベジータは孫悟空をライバルとして認めていた。まあ、この時点でのベジータからの印象は運がいい下級戦士といったところだったんだがな」

 

 これもラディッツが生きていた影響によるものだろう。まさか、元気玉を使わずに制御能力を上げた界王拳による強行突破で大猿になったベジータと渡り合うとは……。

 今回はパワーアップした影響がいい方に向いたとはいえ、ナメック星で同じような事になった場合、下手にフリーザを怒らせてクリリンよりも悟空が死ねばストーリーは終わってしまう。

 

 はてさて、ナメック星編に手を加えるかどうか? 今回は同じ地球だからと静観していたが、流石に遠く離れたナメック星は先に行動していなければ手は出し辛いな……。

 

 もう既にラディッツが乗ってきたアタックボールの再現&改良は済んでいるので、今からでもナメック星へは1週間もあれば到着する。

 

 だが、今のラディッツの戦闘力ではフリーザとはまだ戦うには早過ぎる。

 第三形態までならどうとでもなるが、最終形態に変身されれば勝ち目は無くなる。

 

 こうなれば、ナメック星編はスルーでいこう。今回の件でも分かったが、バタフライエフェクトが多少起こったとしても、世界はある程度原作通りにことが進む。

 そもそも、私の目的は我が父ドクター・ゲロの作り出すセルを超えること

 で、原作厳守を誓った覚えはない。

 

「さて、私も君の新たなトレーニングメニューと器具の開発に戻らねばな。ああそれと、今日のトレーニングについての指示書を先に渡しておこうか……」

 

「ん? うげっ!! なぁ、お前は俺を強くしたいのか、殺したいのかどっちなんだ!? こんなのただの自殺用の拷問メニューだぞ!」

 

 ボゲから渡された指示書に書かれていたのは修業と呼ぶにはあまりにも過酷で残酷とすら言い換えてもよいぐらいのエゲツない内容だった。

 

「はっはっはっ! 勿論、君が殺されないように(死なない程度の)修業を課してるだけさ。言っておくが、手を抜けば修業中に本当に死ぬから覚悟してくれたまえ」

 

「クソったれめぇ~~!!」

 

 事実、この数日後のトレーニングルームで今回の戦いで悟空とベジータが流した血と汗以上の量を全身から垂れ流すラディッツの姿が確認された。

 

※ちなみに、その翌日には界王拳をマスターしたラディッツの姿が目撃されたとか。




最後にラディッツを使っての漫才はメッチャ書きやすかったwwww


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

砕け!ガーリックjrの邪悪な野望!!

まるでストックは出来ていないが、生存報告ついでに最新話を投稿します。


 とある魔族の城の玉座にて1人の魔族が下界の様子を覗き見していた。

 

「ふっふっふ、まさかこのような事態になろうとはな。宇宙から来たサイヤ人か……」

 

 ワインを片手に先のZ戦士達とサイヤ人達の戦いの結末を見ていたその魔族、ガーリックjrはくっくっくと笑いながら持っていたワイングラスを握り潰す。

 

「時は満ちた! 忌々しい神の半身たるピッコロが死に! 神も死んだ!! 我々の邪魔になるであろう戦士も今は傷だらけの死人同然! これからは我ら魔族の時代がやってくるのだぁ!!!」

 

 は~っはっはっは! とマントを翻し、天に向かって高笑いをする。

 これから訪れるであろう魔族の時代を夢想しているのだろう。

 

 

 

 

「まあ、絶対に君が阻止するのだがな」

 

「……一体どういうことか説明が欲しいのだが?」

 

 全世界に散りばめられていたスパイカメラからの映像を急に見せられたラディッツは、いきなりのボゲからの押し付けに困惑を口にする。

 

 そこでボゲから語られる話にラディッツは頭を抱えてため息を吐いた。

 

 この映像に映っている魔族の名前はガーリックjrという、かつてこの星の神を目指していた男の生まれ変わりらしい。

 そして、本来ならば時期としてこの俺が地球にやって来る前にドラゴンボールを集めて不老不死となり、カカロットとあのナメック星人のピッコロとかいう奴に倒されている存在なのだというのだが……。

 

「まさか、私が改良して売り込んだ酒に酔って夢中になり、ドラゴンボールを集める時期がこうまでズレてしまうとは……。とんだ誤算だった」

 

「神を目指していたとはとても思えんほど欲望を我慢できないアホだな……。あとついでに、お前のやらかしの尻拭いに俺を使うな!」

 

 しれっと面倒事を押し付けてくるボゲにラディッツが怒りのツッコミを入れる。

 黙って聞いていれば、意図してやったことではないとしても、今回の原因はボゲの資金集めの為の行為が発端となっている。

 

 確かに、今の地球でまともに戦えるのはカカロットのガキと生き残った地球人2人だけだ。

 こんな状況で不意打ちであの魔族からの襲撃を受けたら地球はたちまち魔族によって支配されてしまうのは目に見えている。

 

「だが、だからといって元侵略者に地球の危機を救ってくれと頼むか普通?」

 

「確かに君は元侵略者ではあるが、今はれっきとした私の協力者だ。つまるところ、私のミスは君のミスということで助けてくれんかね?」

 

「アホ抜かせ! そもそも、あんな程度の低い連中ならお前の作り上げた強化サイバイマン共を向かわせれば一瞬でカタがつくだろうが!!!」

 

「ぬ~、それが困ったことに、先の戦闘でデータが取れたことで新しい発明をしていてな。その為にサイバイマンの量産をストップしており、今の私の手元にはサイバイマンはおらんのだよ」

 

「やはり貴様のやらかしではないか!!」

 

 悪びれることなく困ったなと顎をさするボゲにラディッツの渾身のツッコミが飛ぶ。

 

 そもそも、何故この俺が地球の危機を救わなければならないのだ。ここでの特訓生活はフリーザ軍時代よりも過酷ではあるが、以前よりも充実した快適な生活をおくれている。

 だが、それと地球を救うのは別問題だ。俺はこの星がどうなろうとも一切関係ない。

 このボゲと共に暮らしているのも俺が強くなる為であって、決して馴れ合っているからではない。

 

「まあ、どうしても断るというのであれば仕方ない」

 

「……? 随分と聞き訳がいいが、お前がそうも素直だとこっちは嫌な予感がしてたまらんのだが……」

 

「ここ最近は全く出番のなかった制御装置の出番といったところか……」

 

「なにっ……!?」

 

「っふ、冗談だよ。今更こんなもので君に言うことを聞かそうだなんて思ってはいない。だが、これだけは言っておこう。ここ最近、君がトレーニング終わりに楽しみにしているビターチョコのアイスだが、あれを作っているのは私ではなく他の地球人だ。もしここでガーリックjrが暴れて地上に被害が出ればどうなるか? 聡明な君ならこの後の言葉の続きは必要ないだろう……」

 

「なっ! 貴様、卑怯だぞ! っというかやり方がせこい! それでも天才科学者か!?」

 

「勿論、これで君が動いてくれると私の計算では出ている。さあ、どうかね?」

 

「ぐぬぬぬ……、ああ、分かった! 行けばいいんだろ! 行けば!!」

 

「そうか、行ってくれるか。場所は君の脳に直接データを送る。夕飯前にはカタが付くだろうし、飯とアイスの準備をして待っている。くれぐれも油断して足元を掬われぬようにな……」

 

「はんっ! 誰にモノを言っている。あの程度の雑魚にやられる俺ではないわ!」

 

 こうして、アイスを人質に取られたラディッツは渋々ながらも件の魔族を対処するために、その魔族がいる本拠地に単身で乗り込むこととなった。

 

 ボゲの研究所から飛び立って数分、送られてきたデータから向かった先には、禍々しい雰囲気を醸し出す城が視界に入ってきた。

 

「あそこが例の魔族がいる城か……。感じる気もやはり大したことないな……」

 

 ここから感じられる気は4つ。1つはあの映像に映っていた魔族ものだろう。残りの3つの気はその魔族よりも低いことから、恐らくは配下の部下か何かだろう。

 

 戦闘力こそが全てとは今の俺は思ってはいないが、工夫や戦力程度で人間が飛来してくる巨大な隕石をどうにかできるだろうか? 答えは否である。

 さしずめ、俺が隕石だとするならば、あの魔族は人間。ここまでの差があるならば、真正面から堂々と乗り込んで攻めていこうが万が一にも不覚を取ることはあるまい。

 

 そう考えるてラディッツは何の警戒もせず、堂々と城の入り口からガーリックjrのいる玉座までの道を迷わずに歩いていく。

 

「フリーザのとは違う意味で悪趣味な内装だぜ。それにしても、戦闘力たかが2500程度の雑魚がこれほどの宮廷の王になれるとはな。つくづくこの地球という星は程度が低い。まあ、一部例外のイカレ野郎はいるが……」

 

 やがてラディッツは他の部屋とは違う大きな扉の前に辿り着く。

 その先に4つの気配がこちらに対して敵意を向けてくるのを感じる。

 

「ふん、俺が来たことにはあちらさんもお気づきってことか。まあ、隠れずに堂々とやって来たんだ。これで気づいてなきゃ相当なマヌケだがな……」

 

 ラディッツはそのまま警戒をすることなく、扉に手をついてゆっくりと開けて入っていく。

 

「「「「今だぁ!!!」」」」

 

 ラディッツが部屋に足を一歩踏み入れた瞬間、部屋の中にいた4人の魔族からの総攻撃を受けた。

 

「くっくっく、人間め。わざわざ自分から死にに来るとはな。貴様からは凄まじいハチャメチャで摩訶不思議なパワーを感じられたが、我々の総攻撃を受けてはタダでは済むまい……」

 

 今の総攻撃でボロボロになってしまった城内だが、得体の知れない敵を何もさせずに倒すことが出来たと考えればお釣りがでるくらいだ。

 そう考えていたのだが、攻撃の際に巻き起こった煙が晴れ出してくると、その中心には無傷で立っている侵入者の姿があった。

 

「まったく、この星の連中は砂埃をたてる技が好きなようだな」

 

「「「「っ!!?」」」」

 

 パッパッと服についた埃を払うように叩くラディッツの姿に一同は絶句する。

 そんな彼らを馬鹿にしたように鼻で笑い、さっさとかかって来いと手招きをする。

 

「ぐぬぬぬ……、舐めるなよ人間めぇ!!! いけ! お前たち!!!」

 

「「「はっ!!!」」」

 

 ガーリックjrの命令により、3人の魔族が突撃を仕掛けてくる。

 

 だが……、今のラディッツからしてみれば鈍亀のごときスピードで迫ってくる魔族なぞ脅威でも何でもなかった。

 

「ノロマめ……」

 

 俺はまず先頭で迫ってくるジンジャーの腹に一撃を決めて気を大量に注ぎ込んで爆散させ、続いて迫るサンショーもそれにビビッて直前で動きを止めた瞬間に顔を掴まれて気弾の放出で顔面を消し飛ばす。

 

「はひぃっ!!?」

 

「貴様もこうなりたくなければとっとと失せろ」

 

「は……はい!!!」

 

 最後に残ったニッキーは前の2人があっさりと消し飛ばされたことで完全に及び腰になり、ラディッツの見逃すという発言に素直に頷いてガーリックjrを置いてとっとと逃げ出していった。

 

「ぐぬぬ……、おのれニッキーめ! 敵を前に逃げ出すとは魔族の恥晒しめ!!」

 

「さて、これで残ったのは貴様1人だがどうする?」

 

「ほざけ! いずれこの星の神となるこの私がたった1人の人間を恐れるとでも思ったか!?」

 

 たった1人残されたガーリックjrは怒り心頭といった様子でラディッツを睨みつける。

 そして羽織っていたマントを脱ぎ捨て、小さかった体を巨大化させて筋骨隆々の大男へと変身する。

 

「ほぉ……、変身タイプか。やはり地球人と違い魔族は完全な別種族なのだな」

 

 興味深そうに自身を観察するラディッツの目からは好奇心の色は見えても、恐怖や警戒心といった色は全くといっていいほど見えなかった。

 

「おのれぇ! このガーリックjrを本気にさせたことを後悔させてくれるわ!!!」

 

 両手を広げて襲い掛かるガーリックjrだが、ラディッツからして見れば蠅が止まりそうなスピードにガラ空きの腹に突っ込んで蹴りを喰らわせてやった。

 

「がはっ!?」

 

 あまりの威力に白目を向いて向こうの壁まで吹っ飛ばされる。

 そのまま壁に激突して崩れた瓦礫の下敷きになる。ガーリックjrの戦闘力では今の一撃で死ぬことは無くとも、まともに戦闘を続行させることは不可能だろ。

 

「さて、これで掃除はほぼ完了だな」

 

「ほ……ほざくなよ! このガーリックjr様が今の攻撃で死ぬとでも!?」

 

 下敷きになっていた瓦礫を押し除けて立ち上がったガーリックjrが更なる怒りの表情で吠える。

 

「吠えるなよ死に損ないめ。今のその死に掛けの状態で何が出来るというんだ?」

 

「ふん! ならば思い知るがいい、このガーリックjr様と貴様の格の違いというものを!!!」

 

 その今にも倒れてしまいそうなボロボロの状態になりながらも、未だに自身の優位性を疑わぬその様子から何か奥の手でも隠し持っているか、はたまた未だに互いの実力差を理解出来ぬアホなのか? 

 

「できることなら後者であって欲しいがな……」

 

 なんにせよ、いかなる隠し玉を持っていようとも両者の圧倒的な戦闘力の差を埋められることは無いとラディッツは確信しており、余裕の笑みすら浮かべて見守っていた。

 

「見るがいい! このガーリックjr様の最大にして最強の技である『デッドゾーン』を!!!」

 

 直後、ガーリックjrの背後に巨大な暗黒空間が出現する。

 

「この『デッドゾーン』は一条の光すら差さぬ完璧なる闇の空間だ! いくら貴様が強大な力を秘めていようとも、ここに飲み込まれれば一生脱出することは叶わんぞ!!」

 

「なるほど、これが貴様の奥の手というわけか。期待して待っていたが想像以上にチンケな技だな」

 

「なにっ!?」

 

 デッドゾーンが発動し、周囲の物が暗黒空間に吸い込まれるなか、ラディッツは平然とした態度でその場から一歩たりとも動くことはなかった。

 

「馬鹿な! 私のデッドゾーンが通用しないだと!?」

 

「封印技はいい案だ。だかな、この俺を吸い込みたければ星を巻き込むレベルでなければ通用せんぞ」

 

「ぐぬぬぬ……!!?」

 

 最後の奥の手すらまるで通用しないという事実に悔しげに顔を歪めるガーリックjr。

 そんなガーリックjrに直接トドメを刺せる状況だというのに、ラディッツは遊んでいるのか、指鉄砲の形にしてガーリックjrの足元に狙いを定めて小さな気弾を発射して床を破壊していく。

 

「んなっ!? や、やめろ!」

 

「ほぉ、随分と上から目線な態度だな」

 

 次々と破壊されていく足場から無事な足場へ移動するため、ガーリックjrはコメディ漫画のような愉快なタップダンスを踊ることになる。

 もう無事な足場が残されておらず、このままでは自らデッドゾーンに吸い込まれそうになってようやくガーリックjrは自身の敗北を予感する。

 

「うぬぬ、そ、そうだ! 貴様と私で手を組まないか? それほどの強さを持つ貴様……いえ、貴方様と私が手を組めば世界征服も夢ではない!」

 

「ふっふっふ、ようやく自らの立場を弁えたか。なるほど、世界征服か。面白い提案だな……だが断る!!」

 

「っ!?」

 

 追い詰められたガーリックjrは高圧的な態度から一転して、下手に出たガーリックjrにラディッツは凛とした態度で拒絶する。

 

「1つだけいいことを教えてやる。俺はこの程度の文化レベルの惑星は幾つも侵略している。貴様如き侵略ルーキーの手を借りずとも征服することなど容易いことだ。まあ、一部例外の化け物が存在してはいるがな……」

 

 もはや語ることはないとばかしにラディッツは未だに喚き続けるガーリックjrの胸に気弾を打ち込んで、背後に構えるデッドゾーンへと吹っ飛ばした。

 発動者であるガーリックjrが消えたことでデッドゾーンも消滅し、地球は魔族の支配の危機から人知れず免れたのだった。

 

 




現在、劇場版編をストック中です!それが終わり次第、ナメック星IF編を始めます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

溶かせ永久凍土!目覚める悪の天才科学者!?

久しぶりの投稿になります。
最近は暑くて執筆どころじゃない日々が続きますが、皆さんも熱中症には気を付けてください。


 無事に何事もなくガーリックjrを始末したラディッツは、相も変わらずボゲに課された修行をひたすらこなしていると、緊急でボゲに呼び出され、地球からついにカカロットがナメック星へと宇宙船に乗って向かったと報告を受けた。

 

「それで、俺にどうしろというんだ?俺もナメック星に向かってフリーザを倒すのを手伝えと言うのか?」

 

「いや、フリーザ退治はもう少し後で頼むとしよう。それよりもこれだ……」

 

「ふっ、フリーザ退治などと気軽に言える奴など、この宇宙全土を探しても貴様ぐらいなものだぞ。それで、俺への用事は……。ああ、なるほど、ついにお前の求める頭脳を手に入れるということか……」

 

 ボゲに提示されたマップの目標地点が、かつて自身の父であるDrゲロの最高傑作であるセルを倒すのにどうしても必要な頭脳であると言わしめた劇場版ボスの1人であるDrウィローの研究所だった。

 

 ここは現在、永久凍土と言われる分厚い氷の壁で覆われており、中にある研究所には侵入不可能になっている。

 それこそ、神龍の力をもってしなければその氷は溶けることはなかったのだが……。

 

 

 

 

 

 ボゲからの任務を受け、その現場にラディッツが向かう。

 

「ここが永久凍土か、話通り凄まじい寒さだ。それにこの分厚い氷の壁、地球の科学力では砕くことは無理だろう。ただ1人アイツを除いてな……」

 

 脳裏に思い浮かべるのはバグレベルの科学力を持つあの男の姿。

 そんな男に任されたからには、この程度の任務で失敗などしていられない。

 

「はああぁぁぁ……!!」

 

 永久凍土に手を当てて自身の気を熱エネルギーに変化させて注ぎ込む。

 ジュワァァッ……という音と共に溶けることのなかった永久凍土はラディッツの触れた箇所を中心に解凍されていく。

 

 やがて永久凍土の大部分が溶けていき、充分に研究所に入れるスペースを確保することが出来た。

 そこから研究所内部へ侵入すると、突然の警報音と共に謎の男の声が辺りから響き渡った。

 

『何者だ?このDrウィローの研究所に無断で侵入してきたのは……』

 

「そいつは悪かった。だが、ここの研究所を覆っていた氷を溶かしてやったんだ。それで充分にここへ入る権利はあると思うんだが!?」

 

『なにっ!?あの氷を溶かしたのは貴様だったのか……』

 

 こちらを監視していたカメラがジーっと音を立てて更に警戒の色を強くする。

 いや、それだけではないのだろう。先程までのただ監視されるような視線とは別に、値踏みされるような視線が増えた気がする。

 

『なるほど、その肉体の完成度。内に秘められた莫大なエネルギー。どうやら噓ではないらしい』

 

「それで、俺は研究所内に足を踏み入れる許可は出たのか?」

 

『ああ、いいだろう。ただし、客人としてではなく、私の新たな肉体としてだがな!!!』

 

 ガシャン!ガシャン!と研究所の入り口が封鎖され閉じ込められてしまったラディッツ。

 しかし閉じ込められた当の本人はまるで慌てる様子もなく、そのまま研究所の奥へと足を踏み入れる。

 それもその筈、この程度の防壁ではラディッツの攻撃を防ぐことなど出来るはずもなく、気弾一発で破壊することなど容易いからだ。

 

 そうして研究所の奥に向かって歩を進めていると、ラディッツの不意を突こうとしている3つの影が上空から襲い掛かってきた。

 

「「「シャアァァァッッ!!!」」」

 

「……それで奇襲のつもりか?」

 

 上から襲い掛かってきたキシーメ、エビフリャー、ミソカッツンの3体だったが、ラディッツは始めから3体の気配に気づいており、それを軽くあしらうと順番に拳を叩き込んでいく。

 

「「ガッ!?」」

 

「グヒッ!」

 

「あん?」

 

 キシーメとエビフリャーはラディッツの一撃を受けて爆散し戦闘不能に陥ったが、ミソカッツンだけはその自慢の軟体ボディでラディッツの攻撃を受け止めた。だが、所詮は受け止めただけに過ぎない。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

 ラディッツは攻撃が効かなかったのはその柔軟性にあると見抜き、即座に貫通性のある気弾をミソカッツンの腹に撃ち込んだ。

 

「──―っ、グッボォォォ!!!」

 

 気弾を跳ね返そうと必死に耐えるも、一瞬で限界まで伸びきった体はその攻撃に耐えられず見事に貫通してみせた。

 

 パンパンとゴミの掃除が終わったとばかりに手を叩くラディッツに、またもや辺りからDrウィローの声が響き渡る。

 

『流石だ。まさかバイオテクノロジーで作り上げた三体の凶暴戦士をこうもあっさりと始末するとは……』

 

「どんだゴミ掃除を押し付けられたもんだ。この程度の相手ならば百体二百体揃えたところで、俺の相手はつとまらんぞ!」

 

『どうやらその通りのようだ。だが、こちらもそう容易く引き下がることはできぬのでな……』

 

 ウィーンと今まで閉じていた扉が勝手に開いた。恐らくはこっちへ来いと誘っているのだろう。

 別にこれが罠であろうとも、ラディッツからしてみればあの程度の刺客しか寄こしてこない連中を警戒する必要はないと判断して素直にその誘いに乗った。

 

 そして案の定、ラディッツが扉を抜けて部屋に入ると床に仕掛けられていた電撃式の拘束装置が作動した。

 

「っ、ぐぉっ──―!?」

 

 バチィッ!!という激しい音と共に全身に高圧電流が流れる。並みの者では身動きする間もなく絶命するほどの電力ではあるのだが……。

 

「ふぅ~、むん!!」

 

 バチン!とラディッツは呆気ないほどに床に仕掛けられていた電撃式の拘束装置を破壊してみせた。

 この程度の仕掛けではラディッツの足を止めることは出来ず、容易く突破され、そのまま奥に鎮座していた巨大な脳のロボットに成り果てたDrウィローの元へ辿り着いた。

 

「まさか、あれが貴様の切り札だったのか?なら申し訳ないことをしたな。もう少し苦しんだ末になんとかギリギリ破ってみせたと演出してみせた方が良かったか?」

 

『いや、あの程度で貴様を止められるとは微塵も思ってはいない。ただ確かめたかっただけだ』

 

「なにを……?」

 

『この私の力が通じるような存在かどうかをな……』

 

 ゴゴゴゴゴゴ……!!!とDrウィローが動き出した。

 見上げるような巨体を誇るDrウィローだが、ラディッツは未だなお余裕の笑みを崩さずに眺めていた。

 

「まさか、あれで俺が貴様よりも弱いと判断したのか?」

 

『いいや、その逆だ。貴様は強い。この私のボディに相応し過ぎる程に強大な肉体である。だからこそ、1つの疑問が残るのだ?貴様は一体何の目的で私の研究所にやって来たのか?』

 

 当然の疑問だろう。戦士であるラディッツがどういう目的で氷に閉じ込められていたこの研究所を解放したのか?

 そこには必ずラディッツの背後に黒幕と呼べる何者かの存在がいることぐらいは容易に想像できる。

 しかし、その人物の正体と目的までは分からない。

 

「まったく、本当にアイツの言う通りの展開になったな」

 

『アイツだと?』

 

 ラディッツが懐からホイポイカプセルを投げて何かの機械を床に設置する。

 その機械は設置されると同時に空中に映像を浮かび上がらせる。

 

 ここが遠く離れた凍土だからなのだろうか、最初はジジジ……とノイズばかりが走っていたが、数十秒待つと映像は綺麗になり始め、そこにはボゲの姿が映し出される。

 

「ご機嫌よう、Drウィロー。私の名はDrボゲ、貴殿の協力者になりたいと願う者だ……」

 

「Drボゲだと……?」

 

 

 この研究所に閉じ込められて外界からの情報を一切入手出来ないDrウィローからしてみればDrボゲなどという名前は聞いた事がない。

 だが、その顔には見覚えがある。というより、知っている科学者の顔の面影がある。

 

『そうか、貴様!?もしや、あのDrゲロの息子か!?』

 

「いかにも、私の父の名はDrゲロ。どうやら、あまり詳しい身の上話しをせずに済みそうで助かりそうだ……」

 

 どうやら、私の事は知らずとも父の事は知っていてくれたようだ。

 

「ならば早速これを見てもらおうか。私が貴殿の協力者になりえるという証のようなものだ」

 

 それから私は映像越しに今考えている共同研究のプレゼンを行なう。

 そこいらの自称天才科学者程度では一切理解出来ないであろう、現代科学を優に超える数式や図面を流しながら説明を行っていくと、Drウィローの態度がドンドンと変わっていくのが手に取るように分かる。

 

「ほう……、なんと!?そんな発想が……!?」

 

「更にここから……、この研究を元に……、貴殿の望む……」

 

 私の研究内容に興味津々といった様子のDrウィローだが、私は敢えてここで一呼吸入れてみる。

 ここまで興味を惹く話題を出しておきながらも、そこで一旦切ることで相手の反応を見る。

 すると、案の定、Drウィローは話の続きを聞きたくて仕方ない様子だった。

 

 やはり、悪の科学者といえどこの男もまた研究者なのだ。

 自身のまだ知らぬ未知の科学には興味を惹かれてしまうのは無理からぬこと。

 だからこそ、彼が興味を持ったこのタイミングで私は協力関係を築かないかと提案する。

 

「どうだろうか?私は貴殿と手を組みたいと願っている。勿論、世界征服なんてものは止めさせてもらうが、それでも貴殿の研究には最大限協力はさせてもらう」

 

「…………。1つ聞きたい。何故私なのだ?確かに、私はそこいらの科学者よりも優れた頭脳を有していると自負しているが、これ程までの頭脳を持つ貴様であれば時間と金さえかければいずれは自力で成し遂げられるだろうに?」

 

「……確かに、Drウィロー。貴殿の言う通りだ。しかし、私には時間がない。これから私が話す内容は荒唐無稽かもしれないが、真実であると信用してもらった上で聞いてもらいたい」

 

 それから私はDrウィローにこの先の未来で起きることや、父であるDrゲロの野望を止めたいということ。

 そして、最終的に私が造り上げようとしている最強の人造人間開発の計画を全て話した。

 

「なるほど、ほぼ確定された未来。その来たるべき時までに独力では間に合わないと判断したが故の協力関係の提案か……」

 

 脳みそだけしかないので表情からその心情は察せられないが、その声色からして半信半疑なのだと察せられる。

 それから数秒、沈黙が場を支配する。

 そして、たっぷり考え込んだのだろう。

 

「いいだろう。君の計画に協力させてもらおうじゃないか!」

 

「やはり、貴殿ならばこの提案に乗ってくれると思っていたよ。その上で、この計画を貴殿にプレゼントしよう」

 

 一度映像を切り替えて、前々から私が考案していた人造人間プランを画面に映し出すと、興奮したのかゴボゴボと脳みそが入った培養液が泡を立てる。

 どうやら、案の定気に入ってくれたようだ。

 

「ふはははは!!!これは確かに、私の理想を実現させるのに最高のプランだ!!」

 

 ふっ、これで人造人間編に突入するまでに成し遂げたい目的の1つが完了した。

 

「Drウィロー!!!」

 

 突然の乱入者がこの部屋に入ってきた。

 その人物はDrウィローの助手であるDrコーチンだった。

 

 どうやら、この研究所の氷が突然溶けたのを知って慌てて駆けつけたようだ。

 そして、ラディッツによって破壊されたバイオ戦士の亡骸を見て血相を変えてここへやって来たという経緯だろう。

 

「っ!?貴様らDrウィローから離れろ!!!」

 

 ガトリングへと変形させた左腕で脅しかけてくるが、そんな現代兵器程度ではコケ脅しにもならないことを教えてやるために、私がプレゼン中退屈そうに壁に寄りかかっていたラディッツが一瞬の隙にDrコーチンの前に接近し、そのガトリングに変形した左腕を無造作に引きちぎった。

 

「っっな!!?」

 

「さて、おい!この爺は殺してもいいのか?」

 

「いや待て、コーチンは私の優秀な助手だ。出来る事なら、殺すことなく私と一緒に協力関係を結ばせたい」

 

 そんなDrウィローの答えに、そうかと淡白な返答で引きちぎった左腕をコーチンの目の前に捨てて距離を取った。

 それから私はコーチンも交えてDrウィローとの会話を再開させる。

 先程のプレゼンをもう一度最初から行ない直し、Drウィローと私で作り上げる人造人間の素晴らしさを説いていく。

 その話を黙って聞いていたコーチンだったが、突如笑い出した。

 

「素晴らしい!素晴らしいですぞ!!」

 

 どうやら、感極まったようで感情が爆発してしまったようだ。

 まさかここまで感涙にむせぶとは思っておらず、内心で若干引くがここまで喜んでいるのなら、計画にも積極的に協力してくれるだろう。

 

 




実はサイヤ人編IFみたいに、ラディッツが全く介入しないナメック星編IFをやるかスキップするか悩んでいるのでアンケート取ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。