後悔はしていないが公開した(激うまギャグ)。
あなたは、どういうわけか転生することになってしまった青年、の傍観者である。
傍観者というのはその名の通り、転生者を見守ることができる存在だ。
いつ目を離してもいいし、再び見守ることも自由である。
青年について話をしよう。
その青年に何があって転生することになったのかも分からないし、青年の過去も分からない。
だが、これからおそらく異世界に行き、なにかしらを成すであろう青年を見守ることができるのだ。
そして青年は見守られていることを知っており、たびたびあなたは青年に神託という形で何か指示したりできる。
といっても傍観者はあなた一人だけというわけではなく、不特定多数の傍観者が存在し、多数派の意見が信託という形で青年に伝えられる。
そして、その青年がもし死んでしまっても、あなたは次の転生者の傍観者となることができる。
さぁ、これから青年の新たな人生が幕を開ける。
数人の、あるいはもっと多くの傍観者に見られながら…。
名前:(なし)
性別:(未定(元男))
特殊技能:覗かれし者
ステータス
STR:9/18(C)
CON:4/18(D)
POW:7/18(C)
DEX:14/18(A)
APP:9/18(C)
SIZ:14/18(A)
INT:11/18(B)
EDU:12/18(B)
LUK:8/18(C)
【Tips】
・ステータス
転生者が転生する際に決まる、能力値。
能力値といってもあくまで「成長しやすさ」を表すもの。
数値によりS~E評価が決定され、
Sは16~18、Aは13~15…Eは1~3となっている。
S:神、A:天才、B:得意、C:普通、D:苦手、E:無理
という評価となっている。
STR:筋力。力。パワー。
CON:体力。持久力。ヤー。
POW:精神力。我慢強さ。自制力。
DEX:敏捷。素早さ。反射神経。
APP:外見。イケメンは滅べ。
SIZ:体格。身長。
INT:知性。頭の良さ。
EDU:教育。前世の記憶。傍観者とのつながり。
LUK:幸運。運の良さ。金。
つまり、この転生者は、体力はないが、身長が高く、俊敏。
いざというときにしか力を発揮しない温存火力型。
例えるならMPは少ないが魔法攻撃力が高い魔法使い、めぐみんタイプ。
さぁ、では今度は傍観者の出番だ。
まずは、転生するにあたって、性別を傍観者で決めることにしようと考えた。
さらに生まれる家柄も決めることにしよう。
A:裕福、B:普通、C:貧しい
1:男、2:女
これだけでは足りない、そう感じたあなた、もしくはあなたたちはもうひとつ何か決めることにする。
考えた挙句、覗かれし者とは別に特殊技能を持たせるかどうか、決めることにした。
X:特殊技能あり、Y:特殊技能なし
あなたは、今から転生する青年はどうやら1―A―Xを望んでいるようだと感じた。
ただ、感じただけで本当にそうかは限らない。
さぁ、青年のこれから歩む人生をあなたたち傍観者で決めることにしよう。
EDUに関して適当に改変、年収財産のかわりにLUK追加しました。
深淵を覗くとき、深淵もあなたを覗いているのだ…。
↑この小説のモチーフ
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一人目:幼少期
気づけば3人目の方がアンケートしてくれていたので、経済状況は少し貧しい、ということで。
(追記)っていうかいつの間にか6人の方がアンケートに答えてくれていました。
ありがとうございます!
ふと目が覚めると青年は、見覚えのない女性に抱えられていた。
二十歳にもなって抱っこされている状況に困惑するも、そういえば転生したんだった、と思い至り、冷静に、
なれなかった。
青年、いや元青年の心の中は荒れに荒れていた。
そして、残念なことに、その心の中は傍観者たちに筒抜けであった。
え?やっば、マジで転生してんじゃん!うわ、体動かな過ぎて草なんだけどwてか母親結構美人じゃね?いや、もともとっていうか前世の俺がブサイクだったから美人に感じるだけか、いやでも普通以上の顔立ちは正直めちゃくちゃ有り難いっすありがとう神様!しかも優しそうじゃん、これは勝ち組なのではなかろうか?前世で読んでた転生物の中には、最初不遇だけど成り上がる系、最初生まれた時点で捨てられてたり奴隷だったりするハードモードでないことは確かだ、裕福でもなさそうだが、必要なだけの金はあると見た。よし、ひとまずの心配はいらないのか、となるとやっぱり異世界と言ったら魔法じゃね?超常的なパワーじゃね?今の内から鍛えることで魔法で無双できるようになるという奴ですね!?
なかなかに残念な中身をしている元青年であったが、自分が生きていけるか確認するだけましである。
あ、どうも傍観者さんたち、こんにちは。
サポートよろしくお願いします!
いやー、どうせなら裕福な家庭に生まれたかったんすけどねー、多分そちらの考え的に、貴族とかめんどくさいしやめとけば?みたいな感じだったんじゃないかなと思います、今になって考えたらその通りだと思うのでありがとうございました。
で、俺自分のこと全然知らないんすけど、何か教えてくれません?
…へー、ほー-。なるへそ。
ポケモンでいうところのヌケニン、このすばでいうところのめぐみんタイプなんですねー、まぁ体力しか欠点がないことに感謝しときます。
え?追加特殊技能ありなしが同じだったから半分ある形になる?
なにそれ半分ってwどういうことw
え?…歌が上手くなる?は?それだけ?
半分だから戦闘向きじゃない技能?え?えぇ?
ここ、じつは前世と同じ感じで発展してて歌手とかなれませんかね…無理ですかそうですか。
NEW!特殊技能:祝福の歌声
歌が上手くなる。
って、俺、女になってるじゃないっすか!!?
なんでぇ?え?傍観者全員女選んだ?
…お前らTS好きすぎだろ…。
そんなこんなで転生者はホルンという名前を付けられ、すくすくと育っていった。
ホルンがいるのは、コフカップ王国の辺境、というより田舎の、ヒマワリ村(ヒマワリが有名なのでヒマワリ村)で、豊かな自然に囲まれている。
周囲には草原や森、山などの実に様々な地形があり、そこには多くの生き物が生息していた。
ほとんどはおとなしい草食動物だが、中には凶暴な生き物もいるため、村には自衛のための自衛団があり、これがなかなかに強く、盗賊も撃退し、凶暴な動物や魔物も同様に撃退できていたため、村の中は普通に平和であった。
ヒマワリ村には大きく分けて3つの仕事があり、生産、観光、自衛とに分けられる。
生産は、農業や漁業、畜産などの食料や衣類に関することで、観光はヒマワリを見に来る旅人や冒険者のための施設、宿屋や鍛冶屋などで、ホルンが生まれた家はこの宿屋に類している。自衛は言わずもがな自衛団である。
ホルンは魔法や冒険に興味を持つ変わった女の子であり、宿泊客から話を聞いては自分もいつか旅にでたいと空想する日々を送り、体力を鍛えようと休みの日には村の自衛団に行っては訓練に混ざり(もちろん子供用の訓練メニュー)、旅に役立つような知識のために薬師の家に、食堂に、色々な場所に入り浸り、いつか旅に出るときのための技術を磨いていった。
身長が高いこともあってか、おかげで同年代の子供からは一目置かれる存在になり、特に女の子からは支持を集め女番長のような感じになってしまっていた。
そんなホルンの活躍を面白く感じない男子、もといクソガキに邪魔されたりしたが、やはりそこは転生者、男の子も大人の対応でうまいようにあしらい、一躍子供のリーダー的存在になってしまった。
この大人びた対応のせいでホルンを慕う子供が男女問わず増えてしまい、この先少し、苦労してしまうのはまだホルンには知る由もなかった。
これまでが、ホルンが年少、前世で言うところの小学1年生になるまでのおおまかなストーリ-である。
さて、本題として、旅に出るという目的はあるにしろ、具体的な計画はいまだ立っていない。
つまるところ、旅の商人だったり旅の剣士なのか、どのような職業で旅に出るのか、ということである。
さぁ、傍観者として、あなたが望む物語を綴ろう。
アンケートになってほしい職業がない!っていう方は是非感想で教えてください。
そうじゃなくても感想くれると嬉しいです。
感想くれないかな チラッ|д゚)
(追記)6人の方がアンケート協力してくれたのですが…
全員TS選んでるってマ?
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一人目:家族
ただし、副職業として、音楽、僧侶、武闘家(宿屋は旅する以上無理でした)を鑑みて、楽器有り、薬学履修、武器なし、ということになりました。
ただ、メインは吟遊詩人なので、戦闘能力は低めです。そもそも体力無いし…。
あなたたちは協議の結果、メインを吟遊詩人として彼女を育成していくことにした。
他にも、薬や武闘、音楽などに関しても成長させるのだが、あくまで、いわゆるサブスキルとしてだ。
彼女はEDUがBと、比較的高めなので、傍観者の指示に従うことによる成長ボーナスもそこそこ高めなので、歌が上手くなるスキルと合わせて優れた吟遊詩人になれることだろう。
彼女からしてみれば、前世で音楽を聴くことが好きなのも相まって、吟遊詩人という職業に賛成であり、彼女は早速歌の練習を始めた。
つい最近できた彼女の妹を勝手ながら練習相手にして、適当にこの世界にある歌、子守歌や勇者のお話などを歌っていた。
彼女の妹、スーザンはどうやらホルンの歌が気に入ってるようで、スーザンが泣いているときにホルンが歌えば泣き止むくらいにはホルンの歌が好きなようであった。
傍観者はそんな幼女たちのほほえましい場面を見て和んでいるようである。
…和むよなぁ?(圧)
そんな可愛い妹スーザンの能力値を傍観者たちは見ることにした。
だって気になったんだもん。仕方ないよね。
名前:スーザン
性別:女
特殊技能:なし
ステータス
STR:A
CON:A
POW:B
DEX:B
APP:D
SIZ:B
INT:A
EDU:B
LUK:C
…ん?なんだこのチート系主人公みたいなステータスは?
力が強くて体力もあって賢い、けど見た目が残念、それってゴリラかな?
傍観者たちは妹が将来ゴリラになってしまうかもしれないことをホルンには秘密にすることにした。
それからホルンは精力的に日々を過ごしていった。
力も普通くらいで体力は低めなことを考えて、ホルンが将来的にどんな戦闘スタイルにしようかと考えた結果、戦わないことに決めた。
つまり、逃げることに特化したビルドということである。
考えてほしい。
STRがCというのは一般女性ほどの力、ということだ。
自衛団に混ざって、特訓しているといっても剣や弓の扱いはさっぱりで、旅をするにあたって必要だと考えられる基礎体力を鍛えることしかしていないのである。
そんな一般女性が森で出会った熊さんを拳一発でぶっ飛ばせるわけがないのだ。
それどころか肉弾戦で勝てるかどうかも怪しい、というかほぼ負けるだろう。
なかには熊よりも強い生物、魔物もいるだろう。
なので、高いDEXとやや高いINTに沿って、薬で麻痺させたり煙幕とか使ったりして逃げる、そんなスタイルにしようと考えた。
そう考えた結果、今までよりも薬学を学ぶことに集中し、ランニングもしつつ、歌も磨きながら、幼少期を過ごしていった。
彼女が8歳になるころには、スーザンもたどたどしくはあるが喋れるようになるくらいには成長しており、お姉ちゃん大好きなスーザンはホルンのすることなすことほぼすべて真似しようとして、ランニングにもついてくるし、薬学も一緒に学ぶし、歌も一緒に歌った。
その結果、高いステータスが猛威を振り、ホルンが10歳になるころにはスーザンはゴリr…逞しい女性へと成長していった。
もう今ではランニングの時間は同じとはいえ、内容が違う、ホルンが1キロ走る間にスーザンは5キロ走るし、薬学もホルンは回復薬や足止めのための薬を学んでいるが、スーザンは薬を越えて医学、人体の急所とかも含めて学んでいたりする。
というのも、どうやらスーザンはホルンの旅についていく気満々で、両親は最近生まれた弟に宿屋を任せることにしている。
子供いすぎじゃね?と傍観者は思うかもしれないが、このヒマワリ村は田舎であり、土地が余ってるといっても過言ではなく、開墾することも魔法パワーで比較的簡単にできるので、食料には困っていないのである。
それどころか観光業でも収入があるため、田舎とはいえヒマワリ村は結構にぎわっているのだ。
だから子供をたくさん作っても食料がなくなったりしないし、逆に人手が足りないこともあってたくさん子供を作ったほうがいいのである。
そんなこんなでついていく気満々なシスコンスーザンは非力な姉に変わって道中の危険を取り除こうと考え、天性の才能も相まってゴリ…逞しくなってしまったのであった。
そんな中、直向に努力するこの二人の姉妹の姿勢が気に入られ、村中から可愛がられ、同年代からは田舎ながらホルンは歌姫、姫と呼ばれるようになるくらいに中心的存在になり、当然ながら慕う男の子もいたのだが、告白しようとした男の子たちは悉くシスコンもといゴリラにボコボコにされるのであった。
表でのスーザンのあだ名が騎士や番人であるのに対し、裏、彼女やホルンがいないところではゴリラと呼ばれるようになったのは言うまでもない。
武闘家を選んでくれた方、すいません、なんか暗殺者スタイルになってもーた。
代わりに妹をゴリr、武闘家にしたんで許して。
スーザンのステータスです↓
https://img.syosetu.org/img/user/386430/97402.png
ホルンのはどっかいった。
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一人目:旅立ちの時
田舎と町をめぐることになりました。
それと3人の方から感想をいただきました。
ほすさん、こたつ犬さん、ななしさん(非ログインユーザーさん)感想ありがとうございました。
それからというもの、必要最低限の体力と、薬学を学んだ(と思う)私は、音楽と歌を練習することにした。
体力と薬学はあくまで吟遊詩人のようなことをするための土台、前世で言うところの義務教育で、そんなに大事じゃない。
大事だけど、妹という私より戦闘も薬学もできる頼もしい人がついてきてくれることになっているので、妹に任せて私は歌に集中することにした。
妹は妹で、そもそも戦うのが好きな男勝りな人柄で、嬉々として自衛団に混ざり同年代どころかいい年のおっさんも含めて男どもをボコボコにしているようだ。
といっても強い人には勝ててはいないのだが、妹は10歳にもなっていない。
うわようじょつよい。
そんで、私が10歳、妹が7歳のころに、本格的に歌の練習を始めたのだが、やはり特殊技能なだけあってそれはとても上達した。
前世の記憶はあまりはっきりとしていないが、特に記憶に残っていた歌や音楽は今でも鮮明に覚えていたので、洋楽あふれるこの中世ヨーロッパ風な世界に近未来的な音楽を持ち込んだ。
最初は口ずさむ程度で、大っぴらにしていなかったのだが、妹という名のシスコンにストーカーされているのに気づかずそのまま歌ってしまった結果、何それかっこいい!となってそれからというもの、近未来的な歌を歌う羽目になったのであった。
私は以前からスーザンはもしかしたら転生者なのではないかと疑っていたのだが、この反応でほぼその可能性はないと判断した。
まぁ、転生者だったからどうということはないのだが。
逆に素であのバカみたいなステータスだったことに驚きだ。
もう勇者一向に加わる運命とかだったんじゃないかと思うくらいにスーザンは強い。
あれか、パワー系ヒーラーにでもなるつもりか?薬作っていて非力かと思ったらメンバーの戦士よりも力が強いとかいうギャグなのか?
もしスーザンが本当は勇者一向とかになるはずだったのならすまんな、私のこと好きなんで(彼氏面)。
スーザンに前世の歌がバレてしまうというアクシデントはあったものの、順調に歌が上手くなっていった、だが、私はある時致命的な問題に気づいた…!
楽器がねぇ、と。
◆◆◆
傍観者はせっかく吟遊詩人になるのならば、前世で有名であった歌を歌うことを勧めたが、転生者バレを避けたかったホルンの意思を尊重し、ならば中世ヨーロッパ風な世界にふさわしい曲を俺らで作ってやろうと傍観者の間で勝手に曲を作っていたところ、あっさりと妹もといゴリラにバレてしまった。
妹が内緒にする、なんてこともなく、うちのお姉ちゃんかっこいい歌歌うんだぜ☆とあちこちに吹聴して回った結果、結局前世の歌を歌う羽目になってしまったホルンであった。
こうなったら歌ってもらうしかない、と考えた傍観者たちはやはり歌ってほしい歌を彼女に勧めた。
さすがに電波ソングなどの未来すぎる曲は避けたのだが、ロックやアイドルといった概念を中世ヨーロッパ風なこの世界にぶち込むことになった。
もはや彼女は吟遊詩人などではなく、旅するアイドルとなったのだ!
…APPがCなのは気にしないでもらう方向で。
歌上手かったらええやろがい!ってとでアイドルになることになった。
とはいってもアイドルなんて言葉があるはずもなく、ちょっと変わった吟遊詩人として、デビューすることになりそうだ。
こうなったら俺らでアイドルソングを作ってやろう!ってことで現在傍観者たちはアイドルソング絶賛制作中である。
傍観者たちの趣味、某有名アイドルなんたらとか、バンドのなんちゃらとかを悪魔融合したような曲や、まんまやないか!と叫ばずにはいられないような曲が出来上がっていくのだが、その歌が異世界にぶちこまれるのはそう遠い未来ではないのである。
◆◆◆
相変わらず楽器はないけれど、歌を歌うこと数年、相当うまくなってきた自信がある。
それと最近思い当たったのが、楽器がないならヒューマンビートボックスや!ってなわけで挑戦したのだが、どうやら特殊技能の範囲ではなかったらしく、点でできなかった。
口でブーブーしていると妹からすら変人を見るかのような目で見られてから練習しなくなったのはご愛嬌。
妹に、楽器がないから口でやろうと思った旨を話したところ、妹が動物や魔物を倒して稼いだお金で買ってくれることになった。
もちろん私にも少なからず貯金はあるものの、ちょっとくらいの貯金では買えないほど楽器は高価で、そんな高価なものを親にねだるわけにもいかず今まで買えなかった。
そんな高価なものを妹に買わせることに気が引けた私は、最初断ったのだが、妹はたびたびやってくる行商人に私には内緒で楽器を頼んだ挙句、私に内緒で購入、そして私の誕生日に渡してきたのである。
ハープという楽器で、なんと弦に馬型の魔物の毛を使っているらしく、楽器の中でも高価な部類であったらしいそれを妹に渡されたとき、申し訳ないやら不甲斐ないやら嬉しいやらで泣いてしまった。
妹が頑張って稼いだお金を私のために使ってくれているのだ、と気合をこれまで以上に入れて楽器と歌と、練習に励んでいった。
そして、私が16歳、妹が14歳になったときには、楽器を弾きながら歌を歌えるまでになっており、ハープも自分の手足のように操れるまでになっていた。
そして、家族や村のみんなに惜しまれつつも、当初の目標通りに妹とともに旅に出ることになった。
急いで都会に行きたいわけでもないので旅になれるまで、最初は田舎をめぐりながら、旅をしようということになり、私と妹の旅が始まったのであった。
なお、私はあんまり見た目がよくない(普通)こともあって仮面をつけて、妹に関してはガッチガチにフルプレートアーマーを着込み、だが重さを全く感じさせない速さで歩いていく。
ふと、前世の記憶が、不審者なんじゃ?とささやきかけてきた気がしたが、気にせずに、ワクワクする心を落ち着かせながら異世界へと旅立つのであった。
なにをアンケートで決めるか悩みますね…。
感想でアンケートの内容や、物語についてどしどし意見下さい!
他力本願なんですこの小説…。
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一人目:ハプニング
おまたせしてすみません…。
「この干し肉を、そうだな…、10個くれ。」
「はいよ。」
俺は旅する商人、といっても商人になりたてでまだこれといった実績はない。
俺はガキの頃から英雄譚や冒険ものが好きで、いつか自分も旅をしてお宝を見つけたり英雄的活躍をすることを夢見てきた。
だが、年を重ねると、自分ごときには英雄なんぞなれないことはわかるもの。
だからいってあきらめきれなかったからこそ俺はこうして旅の商人としてあっちこっち放浪しているのだが。
そんな俺だが情報はかなり持っているのではないかと思う。
あの町は貴族が庶民派で過ごしやすいだの、盗賊が多い地域だの、旅をしているなら普通かもしれないが、ここら一帯のことなら結構詳しいつもりだ。
だが、自分の知らない新たな何かが出現するのも珍しくはなく、俺は自分の知らないことが噂されていると、無性に知りたくもなったりするため、町に着くと必ず酒場にいって酒を飲みながら周りの話に耳を傾けるのだ。
「あそこの受付嬢がよぉ…」「そこで俺はなんて言ったと思う?俺はな…」「あっちでは魔物のせいで食糧難とか。」「ヒマワリ村は一回行ってみる価値があるね、ありゃあ絶景よ。」
「なんでも謎の仮面野郎二人がいるらしい。」
謎の仮面二人?
…聞いたことないな…。よし、聞いてみるか。
「もし、そこのお方。エールおごるのでお話聞かせてもらえませんか?」
「おう、いいぞ。で、聞きたいのは仮面のことかい?」
曰く、一人は頑強な鎧を着ており、そこんじょそこらの魔物は一撃でぶちのめすらしい。
曰く、もう一人は女のようで、華奢な体躯をしているらしい。
曰く、女に手を出そうものなら鎧野郎にぶちのめされるらしい。
曰く、女は行く町々で世にも珍しい歌を歌うらしい。
「俺はあったことねぇが、どうやら気分が高揚するような、そんな歌らしい。本当なら歌なんぞに興味はねぇがいっぺん聴いてみたいね。」
「なるほど、仮面の二人組ねぇ…。悪い奴ではないのでしょう?」
「あぁ。なんでも人助けもするらしいぞ。ま、あくまで噂だけどな。」
世にも珍しい歌、か。
むむむ、これは金のにおいがする、かも?
目的も特にない旅だし、探してみるとするか。
さて、この商人は謎の仮面不審者二人組に会うことはできたのか、できなかったのか…。
◆◆◆
「♪~」
あちらこちらを旅しながら歌ってはや数か月。
どうやら噂になるくらい私たちは知れ渡っているらしく、あ、仮面の歌い手だ、とかなんとか言われることもしばしば。
この世界では異端ともいえる前世の歌が、受け入れてもらえたことにはほっとした記憶がある。
今では「珍しい歌」としてそこそこ聴いてくれる人がいるのもありがたいことだ。
だが、「珍しい歌」で有名になってもあんまり良い気分にはならないので、「素晴らしい」方面で有名になれるように頑張ろうと思う今日この頃。
ほっとしたといえば、数か月のこの旅で幾度かアクシデントに遭うこともあった。
私などでは到底かなわないような魔物に遭遇し、死を覚悟したとき(スーザンがボコボコにしました)や、女を見かけると見境なしに手を出すようなチンピラに遭遇したり(スーザンがボコボコにしました)、森の中で迷ってしまったり(スーザンが頑張って無事に抜け出した)、こいつ妹に頼ってばっかりだな。
その中でも、一番ヒヤッとしたのが、衛兵とスーザンがバチバチにやりあおうとしたときだ。
なんというか、仮面の二人組という怪しさ満載のやつらを衛兵が止めるのも当然なのだが、態度が悪い若い衛兵をスーザンがぶちのめした結果、お縄になりかけたのだ。
さすがに持ち物を調べるから服脱げなんて言われたときにはこいつ殴ってやろうかとも思ったけど、普通に断ろうとしたらいつのまにか宙に舞っている衛兵。
スカッとしたとかよりも、唖然としたね。もうポカーンって効果音が付くくらいポカーンしてたね。
まぁ、衛兵の偉い人がその場を収めてくれたおかげで事なきを得たけど、偉い人もそんなんだったらどうなってたことやら…。
私にはスーザンは全員ぶちのめして指名手配される未来しか見えないよ…。
で、そんなこんなで今日も歌っているのだが、この町はさっさと出ていきたい。
なぜ今すぐに出ていかないかというと、準備ができていないからだ。
特に食料が、なんでも近くの村から多くの食料、穀物や野菜を仕入れていたのだが、魔物の影響で仕入れが難しくなったらしく、値段も高ければ量も少ない。
かといってその魔物を退治しに行こうにもその道中のための食料がない、そんな状況。
あー、誰か早く倒してくれー。あ、また来た。
「おぅい、ぼくちんの妾になる準備できた?」
「失せろカス」(スーザン)
そう、なんかこの町の領主であるなんたらという貴族の次男に絡まれているのである。
それも、ほぼ毎日、まるでこちらが了承しているかの如く妾にしてこようとする、このボンボン、生理的に受け付けるの無理。
髪は油でギトギト、ニキビはぶつぶつ、おなかはぽよんぽよん、清潔感もなければ何もない、あるのは金と地位くらい、そんな糞貴族に私は毎日絡まれているのだ。
スーザンも貴族に手を出すわけにはいかず、というか私が止めていなければいまごろどうなっていることやら…。
でもまだ、無理やり連れて行こうとしていないのでましっちゃましではある。
多分、悪気はないんだろう、きっと、メイビー。
「えぇー、いつうちに来てくれるの?美味しい料理あるよ?」
「失せろゴミ」
それにこのボンボンの護衛、スーザンの暴言に苦笑いするだけで、特に罰したりしようとしていない。
スーザンが最初殴り飛ばそうとしたときにはボンボンを守ろうとしていたが、この無礼者!っていうよりか、このボンボンがごめんなさいって感じだった。
まぁ、本人が気にしてないからね、ご苦労様です。
この町を治める貴族は、いわゆる庶民派で、庶民にとってプラスになる政策などをしており、庶民に支持されている。
その長男も優秀で且つ思いやりがあるらしく、こちらもまた庶民に支持されている、のだがなんで同じ環境でこんなのが育つんだ?
と思ったことが顔に出ていたのか、護衛の人が教えてくれた。
どうやら長男は両親が、まぁ、頑張って教育して育てたらしいのだが、次男になると、長男を甘やかせなかった祖父母がもう、それはそれは甘やかした結果、こうなった、らしい。
一応、思いやりとか、一応、あるらしいが、ほしいものは基本祖父母が用意してくれたいたので自分が欲しいものはもらえる、と思っているらしい。
で、今回のその「欲しいもの」が「私」ということらしい。
さすがに祖父母も人をあげるわけにもいかず、私に孫をよろしく、と頼みこんできたのだが…。
なぜ?
APP高くないのに…、私のどこに魅力があるのだろうか?
もう最近では「好き!」とか、「愛してる!」とか、直球のプロポーズを受けても微塵も慌てたりすることなくスルーできるようにもなった。
そして、ほとんど毎日一緒にいさせられた(強制)せいか、まだ一定の嫌悪感はあれど、最初よりもましになってきて思うことがある。
私がプロデュースすればよくね?と。
多分、洗顔とか、食事とか、運動とか、色々やれば今よりましになるだろう。
前世が男であったことで、男に対する感情が友情方面に特化しているので、恋愛感情を抱くことはないが、ギトギトはやめてほしい切実に。
あわよくば貴族の友達ポジションにおさまり、一定の権力に対抗できるようになれたら、なんて下心もありつつ、私はこのぽっちゃりニキビくんをイケメンとまではいかずとも、普通くらいの男にはしてやることにした。
洗顔は、妹の薬師スキルがいかんなく発揮し、食事は妹の家事スキルがいかんなく(略)、運動は妹が(略)した結果、ギトギトじゃなくなり、ニキビもすっかり無くなり、健康的な肉体となった。
そんで気づいたんだけど…
なんだこのイケメン?(なんていうか、そうなる気はしてた)
ハッピーエンド厨な僕なりの精一杯のクズ貴族(天竜人風)でした。
だってこうしないとスーザンがヤりそうだったんだもん…。
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