六等分の幸せ (アルフレイン)
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第1話 上杉風太郎の決断

やっと14.5巻ゲットできました!
いや、ねぎ先生マジで神すぎて神。
大人になった5つ子が本当に顔とか大人びてて好き。(私だけ?)

もしお時間あればアンケートの方ご回答をお願いします。
結果は参考にさせていただく可能性があります。


俺は文化祭最終日に5つ子全員を教室に呼び出していた。

理由は簡単。俺の想いを告げるためだ。

俺は想いを告げ、あいつらと離れるんだ。

勝手なことは重々承知だ。だが、きっとこうするしかないんだ。

全員を呼び出した時間通りに俺は教室の扉の前に来た。

中から声が聞こえる。

どうやら全員そろっているみたいだな。

意を決して扉に手をかけると少し震えているのに気が付いた。

ビビってるんじゃねえよ。怖がるな。

どんな結末になろうと俺は()()()()()()()()()

それをあいつらに伝えなくちゃいけないんだ!

大きく息を吸い、フーッと一気に吐き出す。

大丈夫だ。これはけじめだ。いくぞ……。

俺は扉を開けた。

視線が一気に俺に向く。

 

「悪い、待たせちまったか?」

 

「ううん、大丈夫。

 私たちもさっき揃ったところ」

 

「でも、レディーを待たせるのは感心しないよ、フータロー君」

 

「今、揃ったところじゃないのかよ」

 

「でも待たせたことに変わりはないよね?」

 

「もう少し三玖の優しさを見習ったらどうだ?」

 

「え~。これでも優しいと思うけどな。

 それにフータロー君、これからもこんな機会増えるかもしれないしね」

 

一花のその発言で教室の空気が変わった。

だが、ちょうどいい。そのことでこいつらを呼び出したのだから。

 

「……。そんな機会増えないと思うけどな」

 

「そんなことないんじゃない?フー君」

 

「いや、きっとないだろうな」

 

それは諦念でもあった。

俺はきっとこれからも……。

 

「今日お前たちを呼び出したのは大事な話があるからだ」

 

「うん、知ってた。

 じゃーフータロー君。

 私は外にいるから終わったら呼んでね」

 

一花はそう言って教室から出ようとした。

俺は一花の手を逃がすまいとギュッと掴んだ。

一花はえっ、と小さく声を上げて俺の方を振り返る。

 

「わざわざお前も呼び出してるんだ。

 お前だけのけ者にするわけないだろ。

 ()()()()関係あるにきまってるだろ」

 

一花は信じられないと言いいたげに目を大きく見開いた。

恐らく一花は、いや全員かもしれない。

こいつらは俺が何について話すのかを理解しているのだろう。

だからこそ、一花は自分には関係ないと判断し、教室から出ていこうとしたのだろう。

なんせ修学旅行で色々とやってくれたからな、このバカ長女は。

 

俺は彼女たちに話す前に軽く深呼吸をした。

 

「俺はお前たち5人が好きだ」

 

俺の発言を聞いて、一瞬時間が止まったかのようにすべての音が消えた。

わずかな間を開け、5つ子全員の顔が真っ赤に染まった。

 

「え…。どういう意味なの?」

 

五月はそれでも理解ができないようでポカンとしている。

 

「いきなり来たね……」」

 

俺は顔をうつむけ、話をつづけた。

 

「この6人でずっとこのままの関係でいられたらと願っている。

 だから、申し訳ないがお前たちの中で一番を選ぶことは俺にはできない」

 

彼女たちはどのような顔をしてるのだろうか。

怒り?落胆?

罪悪感からか顔を上げることを本能的に拒んでしまう。

とりあえず、話を続けなければ。

 

「本当は文化祭初日にこの話をしたうえで今日までに1人を選ぶつもりだった。

 でも、お前たちの中で1人だけを選べる自信がなかった。

 だから、俺は問題を先送りにした。

 だが、いつまでも先送りにするわけにもいかない。お前たちにはお前たちの人生がある」

 

「それで今日そのことを言いに来たの?」

 

三玖の言葉に俺はゴクッと生唾を飲み込む。

 

「……そうだ。

 俺は最低な男だ。5人全員を欲しいと思ってしまった。

 お前たち5人には5人それぞれの魅力がある。

 誰か一人だけなんて何度考えても選ぶことなんてできなかった

 でもそんな我儘は許されない」

 

俺は優柔不断な男だ。親父みたいな1人の女性を愛し続けるかっこいい大人にはなれそうもない。

 

「フー君は私たちにどうしてほしいの?」

 

「好きにしてくれ。

 お前たちが近づくなというなら俺はお前たちに金輪際近づかない」

 

「好きに……していいんだね、フータロー」

 

「ああ」

 

「あの……」

 

なんとなく空気が悪くなっているのを察してか、五月がこそこそと手を挙げた。

 

「どうした五月」

 

 

「さすがのことで私もちょっと動転してるから、5人だけで少し話したいの。

 いいかな」

 

俺としてはここで判決を下してほしかった。

それはきっと罪悪感のせいだろう。

この期に及んで、こいつらにさっさと有罪判決を下されて俺は楽になりたいのか、俺は。

俺の事情でこれ以上こいつらを振り回すわけにはいかない

 

「もちろんだ」

 

「じゃあ、上杉君には後日、連絡するから今日はもう帰ってくれるかな?」

 

「わかった」

 

俺は結局5人の顔を見ないまま、そそくさと教室を後にした。

 

「ああ、らいはになんて言うかな。

 めちゃくちゃ怒られそうだな。

 親父にも怒られそうだ」

 

学校からの帰り道、俺は暗い夜道を重い足取りで帰っていく。

ふと空を見上げたら、きれいな満月が夜空を照らしていた。

 

「ふっ、こんな時でも『月がきれい』なんてとんだ皮肉だな」

 

俺の自嘲めいた呟きは誰に聞かれることもなく、闇に溶けていくだけだった。

 

 




最初の方(あと2,3話くらい)だけこんな感じです。
もう少しお付き合いください。


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第2話 足取りは重く

今回、かなり短いです。

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俺は帰宅してから、なるべく普段通りを心がけて行動した。

親父やらいはに心配されたくはないからな。

それでも親父に肩をポンと叩かれたり、らいはに「しっかりね」と言われるあたり、俺はわかりやすいのだろうか。

俺は何かを振り切るようにいつも以上に集中して勉強に取り掛かった。

だが、それでもあいつらの影がちらつく。

この問題をどう教えたらわかりやすいだろうかだの、あいつはこんな問題間違えてたなだの、間違えそうだなだの、キリがない。

全くいつの間にか、あいつらに大分浸食されてしまったな。

俺は自嘲的にフッと笑う。

なんとなく集中が切れてきてので時計を確認すると既に3時間が経過していた。

道理で疲れてきたはずだ。

俺はんーっと両腕を上にあげた。

 

「あ、お兄ちゃん。

 勉強はもう終わったの?」

 

「おう。

 ひと段落ついたが、どうした?」

 

「1時間くらい前にメールが来てたよ。

 全然気づいてなさそうだったけど」

 

「……わかった。

 ありがとな、らいは」

 

「うん」

 

俺はメールを確認した。差出人は五月。

 

「明日の朝10時に来い、か。」

 

文化祭が木金土で行われたため、明日は日曜日。

ついでに言うと、明後日は代休になっている

 

「了解、と」

 

俺はすぐにメールを返信した。

すぐとは言っても既に1時間が経過してしまっているのだが。

俺は明日遅刻しないように、勉強をほどほどできりあげ、床につくことにした。

 


 

翌朝、いつも通りの時間に目を覚ました。

10時まではまだ時間がある。

一応メールを確認したが、返事はなし。

当たり前だよな……。

俺は何となくじっとしていられなくなり、2人宛に書置きを残し、家を出た。

家を出ても、まだ時間はある。

近所の公園まで来た俺は、そこのベンチに腰掛けた。

一応持ってきていた単語帳を開き、勉強を始める。

そういえば、このベンチは一花と……。

思い出すのは文化祭初日の出来事。

俺は無意識に自分の唇に手を伸ばす。

一花、二乃、三玖。この3人には唇を奪われた。

男の俺が奪われた、というのもどうかと思うが事実なのだから仕方がない。

一花と二乃には不意打ちを喰らい、三玖には押し倒された。

俺、女子に押し倒されて好きにされるほど非力なんだな……。

受験が終わったら少し鍛えたほうがいいのかもしれないな。

はぁ、勉強一筋だった俺が随分と変わっちまったもんだな。

そう言えば、零奈の正体は誰なんだろうか。

俺と京都であった子はあの5人の誰か。

流石に小学生のころの記憶から5つ子ゲームは難易度高すぎてクリア不可能だな。

赤本解く方がよっぽど簡単だろうな。

そこまで考えて俺は頭を振った。

結局、あいつらのことを考えてしまうな。

はぁ、あまりよくない……んだろうな、きっと。

時計を見るとそろそろいい時間になっていた。

どんだけ長く考えてたんだ、俺は。

開いただけで読みもできなかった単語帳をしまい、俺はあいつらの家に向かうのだった。

 




腕龍様

高評価ありがとうございます。


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第3話 1/120

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9時50分。約束の10分前に彼女たちが今住んでいる高層マンション、PENTAGONに着いた。

にしても今更だが、5つ子の住むここの名前がPENTAGON(五角形)とはな。何かしらの縁でもあったのかもな。

ここに来るのも最後になるかもしれないと思うと少し感慨深いものがあるな。

あいつらを待たせるわけにいかないし、そろそろ入らねえとな。

俺は呼び出し器に中野家の部屋の番号を打つ。

くそっ、指がふるえてんじゃねえか。だせえな。

今更怖がってんじゃねえよ。これは俺がのぞんだことなんだ!

俺は意を決し、呼び出しボタンを押下した。

 

「……」

 

呼び出し先からは何も聞こえない。

確か、インターホンから誰が来たかは見えるはず。

 

「上杉だ」

 

俺は声を震わせないようにはっきりと名乗った。

すると、自動ドアが開いた。

どうやら開けてくれたようだ。

俺はどうもあの5人に嫌われることを自分でも思っていた以上にビビっているらしい。

それだけあいつらが俺にとって大きな存在になっているということか。

 

俺を乗せたエレベーターは俺の沈む気持ちとは裏腹に30階までどんどん上っていく。

あっという間に最上階にたどり着いたエレベーターはポンピンという音を立て、扉を開く。

 

俺はあいつらの部屋の前に来て大きく深呼吸をした。

そして、インターホンを押す。

ピンポンという音は鳴るが、部屋からの返事が聞こえない。

少し待っていると、扉からカチャッという音が聞こえた。

これは、どっちだ。

空いていた鍵を閉めたのか、鍵を開けたのか。

前者なら立ち直れねえかもな。

俺は自虐的に鼻で笑う。昨日今日と自虐とか自嘲ばっかりだな。

 

俺は、ゴクッと唾を飲み込み、ドアノブに手をかけた。

おそるおそるわずかに震える手でノブを回すと、回った。

俺はホッと1つため息をついた。どうやら最悪のパターンではなかったらしい。

ったく自業自得とはいえ心臓に悪い。

 

俺はそのまま扉を開けた。

 

「じゃまするぞ」

 

俺のあいさつに返事はなし。

その静けさが心地悪く感じる。

だが、頭を振り、俺はリビングまで入った。

そしてそこで唖然としてしまった。

 

「お前ら一体何考えてるんだ?」

 

「見たらわかるでしょ」

 

「そんなこともわからない君じゃないよね?」

 

「だって私たちに勉強教えてるんだからね」

 

「そんな頭のいい君に今度は私たちから問題だよ」

 

「君にこの難題が解けるかな」

 

「「「「「5つ子ゲームだよ」」」」」

 

リビングには零奈の格好をした5人がいた。

顔が同じなのはもはや言うまでもない

ウィッグって言うんだっけか?

かつらをかぶって、全員同じ髪型。

服も全員同じワンピース。

つまり、いつかの全員が五月の格好をしているのと同じような状況ということになる。

 

「……何がどうなってるんだ?」

 

「難しいことは考えなくていいよ」

 

「これは私たちが話し合って出した結論」

 

「ゲームの結果で全部決めるんだ」

 

「だから、真面目に取り組んでね」

 

「期待してるからね」

 

五月の時は四葉だけ話し方で判断できたが今回はそういうわけにいかないようだ。

話し方を全員で統一してやがる。

ったく、こっちは色々と考えながらここに来たってのにこんな状況どう受け止めていいのか全く分からん

 

「はぁ」

 

俺は後頭部を搔きながら、ため息をついた。

何となく少し落ちついた気がする

 

「あれ、どうしたの」

 

「もう諦める?」

 

「なんでこうなってるのかはさっぱりわからないが、これで決めるってんなら解いてやるよ。

 そしてついでに俺から簡単な問題だ」

 

俺は人差し指を一本立てて、そう言った。

 

「問題?」

 

「5つ子ゲームで正解を出す確率をお前らはわかるか?」

 

俺の質問に5つ子は全員ポカンとした。

まさか、この状況で俺から問題が出されるとは思ってなかったのだろう。

俺だって逆の立場だったら思わないだろう。

 

「急にどうしたの」

 

「いやせっかくだからな。

 中学生レベルの数学だ。数学が比較的得意な一花なら解けるかもしれないが、今回は特別だ。

 すぐに答えと解法を教えてやる」

 

「え、え、どういう」

 

「まあ、黙って聞いてろ。

 まず、お前ら5人に対してランダムに名前を振ると全部で何通りあるか考える必要がある。

 というかこの場合、それがわかればもう終わりだ。

 最初の1人に対して振れる名前は全員分。つまり5つだ。

 2人目は1人目で使っていない4つを使える。3人目は同様にして3つ。

 4人目は2つ。5人目は1つだ。

 さて、計算方法だが、例えば最初の1人に一花と答えたとしよう。

 すると今言ったように2人目は一花以外の4人から選ぶことになる。

 最初が二乃でも三玖でも四葉でも五月でも同じことだ。

 最初に1人選んで次に一人選ぶパターンが5通り×4通りで20通り。

 同じ作業を5人分続けると5の階乗で120通りになる」

 

俺が口頭でぺらぺらと話している内容に五つ子はちんぷんかんぷんといった顔をしている。

 

「まあ、今回は理屈はわからなくても構わない。

 要は5つ子ゲームを正解できる確率は1/120。

 1%未満ということになる」

 

「だから勘弁してほしいと?」

 

「勘弁?まさか。

 その1%未満の確率超えてやるからしっかり見てろよ」

 

俺はこの異様な状況と数学について話したせいか、体感では完全にいつも通りになった。

いや、ちょっと興奮してたかもしれない。

俺はわずかな興奮に乗り、堂々と5人に宣言した。

 




神代様 キティー様

高評価ありがとうございます。



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第4話 5つ子ゲーム 前編

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俺は零奈に扮した5つ子と向かい合っている。

呼び出されたのでこいつらの家に来ると、全員この格好をしていたのだ。

しかも、話し方まで統一しているという徹底ぶり。

そのやる気を少しでも勉強に向けてくれてれば、どれだけ楽だったことか。

 

「さて、じゃあ取りあえず左から順番に行くか」

 

「私から?

 いいよ」

 

そう言って一歩出てきたのは右にいた零奈。

あ、そうか。

 

「すまん、俺から見て左だからお前たちから見て右だ。

 別に右からでもいいんだが」

 

「じゃあ私からだね。

 それにしてもすごい自信だね。

 それとも私()()自信があるの?」

 

右の零奈は「なんだ、残念」と言って、一歩下がった。

代わりに左の零奈が一歩出てきた。

 

なんなんだ、その一歩出たり下がったりするシステムは。

それと右の零奈、左の零奈ってのもなんか変な感じだな。

 

「その答えはすぐにわかる。

 じゃあ、行くぞ」

 

「待って」

 

俺が名前を告げようとしたら右の零奈が遮った。

 

「せっかくだから私たちへの想いも一緒に言ってくれるかな?」

 

「は!?なんでそんなこと」

 

完全に想定外の要望に思わず取り乱す。

なんでそんなことしないといけないんだ。

 

「別にいいよね?

 そもそも、君に拒否権があると思ってるのかな?」

 

右の零奈が勝ち誇ったように微笑む。

確かにこいつの言う通り、今の俺に拒否権はない、か。

 

「……わかった。

 後で文句とか言うなよ」

 

「それは君次第かな」

 

「なら精々頑張らせてもらうか」

 

俺はそう告げて、ふぅっと小さく息を吐いた。

 

「じゃあ、行くぞ。

 お前との出会いは最悪に近かったな。

 最後まで頑なに勉強に取り掛からなかったというか、俺のこと認めやしなかったな。

 でもそれはお前が誰よりも姉妹のことを想っているからだった。

 誰よりも強がりなお前はその反面、実は弱いところもある。

 そんなお前を見ていて強さに惹かれ、弱さを守ってやりたくなった。

 ああっ、くそっ!

 本人を前にしてこんなこと言わされるなんてめちゃくちゃ恥ずかしいな」

 

俺はきっと今、顔を真っ赤にしている。

だが、言われている側も顔を赤くしている。

 

「姉妹のために強さと弱さを兼ね備えたお前が好きだ、二乃」

 

「正解よ」

 

二乃はかつらを取り、いつもの蝶のようなリボンを髪に括り付ける。

 

「フー君、どれだけ私のこと好きなのよ。

 もう、ちょっとどういう顔したらいいのかわからないわ」

 

そう言ってにやけている二乃。

 

「随分とにやけてるじゃないか」

 

「え、ウソ!」

 

二乃はそう言って、両頬を指でつまんでぐにょぐにょし始める。

 

なんだか、俺の想定していた状況とあまりにかけ離れすぎてるな。

俺はここで絶交を切り出されるかもくらいの覚悟できたのに、なんでまた告白してるんだ。

 

「今思い返せばフー君の言う通り、出会いは最悪だったわね」

 

「まったくだ。

 人の飲み物に薬まで入れやがって。しかも2回も」

 

「それについては悪かったと思ってるわ。

 あ、でもそうね。フー君に1つ言うことがあるわ」

 

「なんだ」

 

「今の告白、とっても良かったわ」

 

そういう二乃の満開の笑みはとても魅力的だった。

思わず、時間が止まったのかと錯覚するくらいには。

 

俺はすぐ、意識を戻した。

 

なんなんだ、この二乃の反応は。

一体どういうことだ?さっぱり理解できない。

だってこの反応は。

でもありえないだろう。とはいえ、この5つ子は突拍子もないことを考えることあるからな。

もはや考えるだけ無駄かもしれないな。

だったら、こんなこと考えていても仕方ないか。

難しいことを考えるは辞めだ。

俺は言われた通りに、この5つ子ゲームを実行し、1人1人に想いを伝えればいい。

なら、俺のやるべきことは次の子に想いを伝えること。

本当に何の意味があるんだか。

っと、結局考えそうになってるな。

 

俺は二乃の左にいた零奈に顔を向ける。

 

「次はお前だ」

 

「いつでもいいよ」

 

「思えば俺が最初に色々手を尽くしたのはお前が最初だったな。

 色々と言っても大したことはしていないが。

 でも、そのおかげでお前たち全員を卒業させる算段も付いたわけだしな。

 お前は姉妹の中でも一番自分に自信がなかったな。

 でも、お前はすごいやつだ。もっと自分に自信を持っていいと思う。

 俺の見ていた限り、5人の中で一番成長したのはお前だ」

 

「自信を少しずつ身に着けるたびに成長していくお前に惹かれていた。

 好きだ、三玖」

 

三玖も二乃と同じようにかつらをとった。

 

「うん、正解。

 さすが、フータロー。

 フータロー、顔赤いね」

 

どうやらというかやっぱりというか、本当に顔が赤くなっているらしい。

自覚したらちょっと顔が熱くなっているような気がしてきたな。

 

「お前も人のこと言えなそうだが?」

 

人の顔のことを言っているが、三玖もかなり顔が赤くなっている。

こんな状況じゃなきゃ熱を疑ったかもしれない。

 

「うん、知ってる」

 

「自覚あったのか」

 

「もちろん。

 ねぇ、フータロー」

 

「なんだ」

 

「お揃いだね」

 

そう言って三玖は笑みを浮かべた。

その笑みがあまりに素敵すぎて思わず、息が止まりそうになったのは俺だけの秘密だ。

 

「責任取ってよね」

 

「それは」

 

どういう意味だ、とは聞けなかった。

今聞いてはいけない気がした。

本当に何なんだ。この状況は。

 

俺は2人の反応に込みあがってくる期待をそんなわけないだろう、と普通に考えて

ありえないだろう、と必死に押しとどめていた。

 

俺の一瞬抱いてしまった期待はあり得るはずのない未来。

そんな期待を頭から追いやる。

俺が5人を好きになり、1人を選べなかった時点で5つ子と俺がずっと一緒に隣を歩いていく未来なんて、現実的に考えてありえないのだから。

 

 




完全無欠のボトル野郎様、ここじ様、Type S様

高評価ありがとうございます。

高評価と感想が作者の励みになります。
少しでも面白い、続きが見たいと思ってくれましたら、感想、高評価お待ちしております。


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第5話 5つ子ゲーム 後編

お気に入り50人達成しました!
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俺は来るはずのない未来を頭を振って、意識の外へ追い出す。

そんなもの考えるだけ(むな)しくなる。

そして、俺は3人目に視線を向ける。

 

「次はお前だ」

 

「うん」

 

「思い返せばお前と出会ってから俺の人生は二度目の転換期を迎えた気がする。

 結果的にお前らの父親から依頼が来ていたわけだから、お前との出会い自体が関係あったわけではないんだろうがな。

 それでもお前と出会ったのは、そのあれだ。

 こんなこと言うのは俺らしくないからこの上なく恥ずかしいな。

 その、お前と食堂で出会ったのは運命だったんじゃないかと思う」

 

くそっ。やっぱり恥ずかしいな。

絶対俺の顔は今赤くなってるだろうな。

目の前のこいつも赤くなっている。

 

「母親を誇りに夢に向かって歩き続けるお前が好きだ、五月」

 

「正解だよ」

 

やっぱり五月のため口は違和感があるな。

でも、これは五月が五月になったということでもある。

母親の影を追っていた子どもではなく、1人の人間として成長した証だ。

 

「悪いな、五月」

 

「えっと、どれのこと?」

 

どれって、そんなに思い当たる節が……あるな。

うん、かなりある。

 

「その、あれだ。

 俺はお前の理想としてはふさわしくなかった」

 

文化祭で五月に言われた言葉。

母親の影から脱却して、自分の足で踏みだした一歩目の言葉

 

『君だって私の理想なんだよ』

 

言われたときは敬語をやめた五月への戸惑いもあったが、それより何より嬉しかった。

 

小学校の修学旅行以降、いつの間にか人との接触を不要なものとしてきた俺はただ勉強()()ができるやつだった。

あの子と約束したのは誰かに必要とされる人になること。

 

勉強だけできるやつの需要が如何(いか)ほどか考えるまでもない。

そんな俺のことを理想だと言ってくれる女の子がいる。

本当にうれしかった。

なのに、俺はその子の理想の姿を裏切ってしまった。

 

「ああ、そのこと。

 うん、確かに上杉君の選択を理想とは言えないかな」

 

「そうだよな、すまん」

 

「でもね。

 それで上杉君のやってきたことが否定されるわけじゃない。

 君が私たちに色々と手を尽くしてくれたのは知ってるよ。

 その姿はこれからもずっと私の理想だからね」

 

「……っ!

 ありがとうな、五月」

 

「どういたしまして」

 

なんなんだ、本当に。

なんで俺がこんなことを言われているんだ。

ありえないだろ。

俺はこいつらを前に誰も選ばないという選択を下したんだ。

なんで、なんでこいつらは、こんな。

俺を期待させるようなことを……っ!

もしかして、あれか?

上げて落とすとかいうやつか!?

 

選べなかった俺を一度希望を持たせて持ち上げ、そこから落とすとかいう……。

俺の選択できないという選択はそれほどまでにこいつらにとって重いということなのだろう。

それなら俺は甘んじてその罰を受けようじゃないか。

 

「次はお前だな」

 

「いつでもどうぞ」

 

「お前は5人の中で一番バカだった。

 だが、お前の明るさやひたむきさは俺にはないものだ。

 面倒をかけられたこともあったが、それ以上にお前には掬われてきたよ。

 そして、今確信したことがある」

 

「確信?」

 

「まずは答え合わせだ」

 

「え、なんか私だけなんか違う」

 

「お前は四葉だな」

 

「はい!正解です!」

 

四葉は勢いよくかつらを外して、にっしっしと笑った。

そして「あれ?」と悩みだした。

感情豊かな奴だなホントに。

 

「私なんか思い伝えられてないような気が」

 

「まあ、そんな焦るな。

 四葉」

 

「はい!」

 

「お前が俺と京都であった女の子だな」

 

「え」

 

「違うのか?」

 

「いや、私なんかが上杉さんの思い出の女の子なわけ……」

 

「四葉。お前の謙虚さは美徳だが、ここでは邪魔だ。

 ここまで来たらわかるだろう。

 俺はお前らを見分けることができる。なら、昔のお前らでも同じことだ。

 零奈の格好をしてくれたから余計わかりやすかったぜ。

 本当のことを教えてくれ。あの子はお前なんだろ?」

 

俺の質問に四葉は黙ってうつむき、服の裾を震える手でつかんでいる。

そして、ついにいつもの元気さはどこへ行ったのか、か細い声で

 

「は、はい」

 

と、応えてくれた。

 

「やっぱりそうだったか」

 

「その、ごめ」

 

「まて。何でお前は謝罪しようとしてるんだ。

 文句を言われる筋合いはあっても謝罪される筋合いはないぞ」

 

「あの時の約束を守ることができなくて」

 

四葉の声は震えていた。

うつむく四葉の瞳が涙が溢れてくる。

とめどなくあふれる涙はぽとぽとと床を濡らす。

 

「お前はやっぱりバカだな」

 

「ちょっと、フー君!」

 

今まで黙ってみていた二乃が声を荒げた。

他の3人も怒りのこもった視線を向けてくる。

 

「いいよ、二乃。

 ほんとのことだから」

 

「いいわけないじゃない!

 フー君。撤回しなさい!」

 

「話は最後まで聞け。

 まったく、何でお前が謝るんだよ。

 四葉、お前はほんとにバカだ。

 俺はな、お前に感謝してるんだよ」

 

「え?」

 

四葉はうつむいていた顔を上げ、ポカンとした表情を浮かべた。

四葉の眼は真っ赤に充血していた。

 

「お前がいなかったら俺は今ここにいなかった。

 誰かに必要とされることなんてなかっただろうな。

 それにお前だって学校の色んな連中から頼りにされる人になった。

 約束を破ってなんかいない。

 ありがとうな、四葉。

 そして」

 

「6年前のあの日からずっとお前のことが好きだ、四葉」

 

「……っ!!!!」

 

四葉は俺の言葉を聞いて、また泣き出した。

それも今度は声を上げながら。

 

「えっ!すまん!

 まさか、泣かせるなんて思ってなくて!

 そうだよな、6年間思い続けてるなんて気持ち悪かったよな!

 四葉、すまなかった」

 

「あ、謝らないでください。

 私は今、悲しくて泣いてるんじゃないんです。

 嬉しくて」

 

「うれしい?」

 

「私は、私は」

 

「はい、ストップだよ。

 せっかくの感動的なところ悪いけど私だけ待たされてるからね。

 それに四葉。そこから先はあとで、でしょ?」

 

「あ、そうだったね。

 ごめん、私うれしくて気持ちを抑えきれなくて」

 

「うんうん。大丈夫。

 お姉さんはちゃんとわかってるから。

 だから、もう少しだけ待ってて」

 

「うん、ありがとう」

 

何のことかわからないが、最後の1人が四葉をなだめた?のか?

ちょっとよくわからないが後で何かしらあるらしい。

そういえば、これからのことを決める5つ子ゲームだったな。

想いを伝えるのに意識を向けすぎてつい忘れてたな。

 

「さ、待たせたね。フータロー君

 最後はお姉さんだよ」

 

「お前、隠す気ゼロじゃねえか」

 

「だって、二乃、三玖、五月ちゃん、四葉。

 もう私しか残ってないしね。

 もしかして自信ないから最後まで残してたの?

 それともお楽しみは最後にとっておくタイプなのかな?」

 

「アホ言え。

 左から順番に答えただけで意味なんてねえよ。

 大体お前の方から答えてもいいって言っただろ?」

 

「ああ、そういえばそうだったね」

 

「ったく。最後はお前の番だな」

 

「うん」

 

「お前にはほんとに迷惑かけられた。

 女優に注力するから学校辞めるだの修学旅行でのことだの。

 数えだしたらキリがない」

 

「え、ちょっと待って。

 何か私だけ言ってることひどくない?

 って言うか修学旅行のことはも忘れてってば!

 あれ、黒歴史なんだから!」

 

「ほんとのことだから仕方ないだろ。

 あ、あと部屋も汚い」

 

「それは今回関係ないじゃん!」

 

「ははは、悪いな。

 つい、からかっちまった」

 

俺は浮かべていた笑みを真剣な表情に戻した。

 

「そんなお前だが、姉として4人の妹を支えてきた。

 女優としての稼ぎで養おうともしてたな。

 いつもなんだかんだで妹のことを気にして優先しようとしてる」

 

「強くも優しいお前のことが好きだ、一花」

 

「うん、ありがと」

 

一花はいつも通りの感じで返事をくれた。

今までの4人があれだった分ちょっと拍子抜けな気もする。

 

「あ、一花」

 

「ん?なに?

 まだ、伝えたりない想いがあるのかな」

 

「そりゃ、お前らに伝えたいことなんて山ほどあるが」

 

「や、山ほどあるんだ。

 へ、へぇ~」

 

先ほどとは打って変わって今度は少し照れ始めた。

こいつらの感情のメーターはどうなってるんだ?

 

「お前ももしかして京都で俺に会ってないか?」

 

「え?」

 

「いや、あの子は四葉なのはさっき確定した。

 でも、お前のあの変装見てると、なんか昔会ったような気が」

 

「!!!!?」

 

「え?」

 

今度は一花の目から大粒の涙が溢れだした。

 

「え?え?どういうことだ?

 四葉に続いて一花まで!?

 全く理解できん!えっと、すまん一花!

 なんか癇に障ること言ったか!?」

 

「フータロー君」

 

「な、なんだ一花」

 

一花は泣きながら俺の名を呼んだ。

 

「ありがとう」

 

「え?」

 

「私のことも覚えててくれてありがとう」

 

「ってことはやっぱどっかで会ってたのか!?

 すまん、ちょっとどこで会ったか詳しく覚えてなくて。

 変装した一花を見たときにふと思ったから。

 ちょっと待ってな。今、思い出す」

 

「あはは、大丈夫だよ、フータロー君。

 その話はそのうち聞かせてあげるね」

 

「そ、そうか」

 

「うん。

 さあ、これで5つ子ゲーム終了だね」

 

そう、俺が一花を当てたことで、正確に言えば四葉を当てた時点で勝負はついていたが、このゲームは決着がついた。

 

「身内以外で完全に見破ったのはフー君が初めてね」

 

「私は信じてたよ、フータローに見つけてくれるって」

 

「にしし、上杉さんなら当然です!

 私たちの先生ですから」

 

「さあ、上杉君。

 審判の時間だよ」

 

ついに来た。なぜ5つ子ゲームに巻き込まれ、5人に想いを語ったのかは最初から最後まで全くもって理解できなかったが、ようやく一連の出来事に幕を落とす時が来た。

俺はどんなことを言われても受け入れなければならない。

それは、5人の想いを踏みにじった俺への罰。

罰を下され楽になりたがっているなんて、よく聞くが全くその通りだ。

俺はこの罪から早く逃れたがっている。

本当に情けない。

だが、これは誰も選ばない選択をとると決めたときから、決めていたことだ。

 

どんな審判が下されようと俺はただ受け入れるのみだ!

せめてそれくらいはしないと、俺は一生こいつらに顔向けなんてできない!

 

俺は覚悟を改めて決めなおし、5つ子からの言葉を待つのだった。

 

 




展開郎様、Spica0901様
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第6話 5つ子の告白

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俺は自分で言うのもなんだが、見事5つ子ゲームに勝利を収めることができた。

そして、あとは呼び出された理由を俺たちがこれからどうやっていくのかを聞くだけだ。

とは言っても、俺はこいつらの誰も選ばないという選択を下した。

中には俺のことを好いてくれている子がいるのも知っている。

それでも俺はこの中から1人だけをなんて選ぶことができなかった。

俺はこいつらとこれから付き合っていく権利はないんじゃないかと思っている。

だからこれは今思えば俺との最後の思い出だったのではないだろうか。

 

「さあ、上杉くん。

 準備はいい?」

 

様々なことに想いを馳せていると五月が声をかけた。

 

「ああ、いつでもいいぞ」

 

「フータロー君」

「フー君」

「フータロー」

「上杉さん」

「上杉君」

 

「「「「「私たちもあなたのことが大好きです」」」」」

 

「………え?」

 

こいつらの言葉が一瞬理解できず、思わず間抜けな声を漏らしてしまった。

今、こいつら何て言った?

俺のことを好きだと言ったのか?

こんな俺のことを?

 

「あれ、上杉さん。

 固まっちゃいましたよ?」

 

「さすがにこの距離で聞こえないわけはないでしょ」

 

「……えっと、すまん。

 聞き間違ったかもしれないからもう一度言ってもらっていいか」

 

とんでもない幻聴が聞こえた気がしたぞ。

流石にありえないだろう。

俺の願望が幻聴を起こしたのか!?

だとしたら、かなりヤバいんじゃないか?

 

「もう仕方ないな、フータロー君は。

 これが最後だからしっかり聞いてね。

 普通女の子に2回も言わせたらダメなんだからね」

 

一花はそう言うと目を閉じて息を大きく吸った。

吸った息をフーッと吐き出した一花は俺を見つめ、最高の笑顔を浮かべた。

 

「あんなことまでして私を見捨てず、ここまで引っ張ってくれたよね。

 私は本当にうれしかったよ。

 フータロー君が悪いんだよ。

 何度も諦めようとしたのに何度もあんな風に手を差し伸べられたら、我慢できなくなっちゃうよ。

 それにさっきのことも」

 

俺が悪い?諦める?差し伸べる?一花は何を言ってるんだ。

いや、俺が悪いのは理解しているが話し方的に今回のことを言ってるわけじゃないのは理解できる。

それにさっきのこと?

一花と会ってることを思い出したことか?

総合してこいつは何を言ってるんだ?

大体、さっきこんな長ゼリフは喋ってなかっただろ。

 

「うん、だからね。フータロー君。

 私はそんな君のことが大好きなんだよ。

 それこそ、他の子を蹴落としてでも手に入れたいと思ったくらいには、ね」

 

「っ!!!」

 

やっぱり、今大好き、って言ったのか?

なんでだ?

 

「フー君、次は私の番よ」

 

二乃は俺の顔を両手で抑え、無理やり自分の方を向かせた。

ってかなんだ。番って。さっき一緒に言ってたじゃねえか。

 

「はなしぇ。二乃」

 

「仕方ないわね。私もこれが最後よ」

 

「最初は知ってると思うけど大嫌いだったわ。

 私たち姉妹の仲に土足で足を踏み入れてくるあなたが許せなかった。

 それでもいつの間にか、あんたに惹かれてた。

 あんたは私の王子様。

 フー君、大好きよ」

 

二乃は俺にウインクをかましてきた。

しかも投げキッスのおまけつき。

これが少し前ならアホなことを、で済ませたのだろうが、今の俺にはひどく魅力的に見えた。

 

「フータロー、二乃に見惚れすぎ」

 

三玖が少し不機嫌そうに話しかけてきた。

 

「い、いや別に見惚れてたわけじゃ」

 

「嘘。フータロー、ボーっと二乃を眺めてた」

 

三玖は頬を膨らませ、ムスッとしている。

こんな表情までかわいい、と思うようになってしまった俺は病気なのかもしれないな。

 

「あら、フー君。

 いくらでも私のこと見惚れていいのよ」

 

「二乃は黙ってて。今からは私の番」

 

「フータロー、大好き」

 

直球だった。

照れながら三玖の口から放たれた一言は俺の心を打ちぬくには十分な威力だった。

俺、こいつらのこと好きすぎないか?

 

「もうこの気持ちを我慢できない。

 フータローがあんなこと言うから。

 ずっと好きだった。

 多分、フータローと最初にちゃんと話した時から」

 

「鼻水を入れなかったときか?」

 

「うん、そう。

 覚えててくれたんだ」

 

「まあ、そうだな。

 たかだか1年前の話だしな」

 

「それでもうれしい。

 ありがとう、フータロー」

 

「お、おう」

 

なんで俺が礼を言われてるんだ?

 

「私を5つ子の落ちこぼれじゃなくて、三玖として見てくれたあの日から、ずっと。

 だから、フータロー」

 

「ん?」

 

「責任取ってよね」

 

「おま、それ」

 

「これも覚えててくれたんだね」

 

あの日、図書館で三玖が言った言葉。

なぜか、頭に残っていた。

でも、今の笑顔、仕種、声。

何もかもがあの日よりも魅力的に感じてしまう。

 

今の俺は責任を取る、という言葉の意味を考える余裕すらなかった。

 

「じゃあ、次は私の番ですね!」

 

四葉の声に俺はハッとする。

いかんいかん。こいつらの笑顔を見るたびに意識が止まりそうになってんじゃねえか。

しっかりしろ、俺。

 

「いや、でも私バカだからみんなみたいに想いをたくさんとか話せないんですよね」

 

たはは、と右手を頭の後ろに置き、四葉は困り顔で笑う。

 

「先にやられちゃいましたが、私もストレートに行きます!」

 

四葉は大げさなほどに大きく深呼吸をした。

 

「約束を守ってくれて嬉しかった。

 私のこと見つけてくれて嬉しかった。

 ()()()()

 大好きだよ。今までも。これからも」

 

いつもの子どもっぽい四葉からは全く想像できない大人びた優しい笑みに俺は性懲(しょうこ)りもなく、その様子をただただ見つめてしまう。

 

「最後は私だね」

 

「五月」

 

「なんだか、まだこうやって話すの慣れないなぁ」

 

五月はあはは、と軽く笑いながら続けた。

 

「信じられないかもしれないけど昔はこんな感じで話してたんだよ。

 でも、いつの間にか私はお母さんの代わりになろうとして、自分をなくしてた。

 上杉君のおかげで私はまた私らしくいられるんだよ。

 うん、やっぱり君は私の理想だよ。

 上杉君。月がきれいですね」

 

いつか五月が言っていた言葉。

あの時はドキッとしたな。焦る方の意味で。

 

「あ、もちろん今度は意味を理解してるからね」

 

「五月」

 

「はい」

 

「まだ午前中だ」

 

「え」

 

「それに室内だし、月は見えん」

 

「なんで、そういうこと言うんですか!

 上杉君、本当にデリカシーがないですね!

 そこは男らしく返事をしてくださいよ!」

 

「うるせえ!

 男らしくできるならこんなわけのわからん状況になってないわ!」

 

「何偉そうに言ってるんですか!

 ホントにそうですよ!

 あなたが1人を選んでいればこのようなことはやらずに済んだのです!」

 

「それについては済まないと思ってるが、5つ子ゲームやらされるとか想定してるわけないだろうが、このバカ!」

 

「バ、バカ!?

 あなた、よく自分のこと棚に上げて私に暴言吐けますね!」

 

「ねえ、いいの?

 あれとめないで」

 

「五月ちゃんも話し方戻っちゃったね」

 

「仕方ないんじゃない」

 

「そのうち止まるでしょ。

 ほっときましょ」

 

俺と五月の言い合いを姉4人が側で何か言っていたが言い合いに集中している俺たちの耳には当然入ってこなかった。

 

 




ダストリア様
最高評価ありがとうございます。

ワラビポケ様
高評価ありがとうございます。

Sagy様
誤字報告ありがとうございます。


なんか話が進んでない……。
次はさすがに進むはず!(進むとは言ってない)
今日中に書けたら投稿しますがあまり期待しないで待っててください。


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第7話 指を結んで

日間ランキング載った~~~!!!!!
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俺と五月はお互いにひとしきり言いたいことを言いつくした。

 

「はぁはぁ」

「はぁはぁ」

 

2人揃って若干の前傾姿勢を取りながら、息を上げている。

 

「なんでこの2人は息が上がるまで言い続けてるのよ」

 

「フータローと五月だからしょうがない」

 

「それもそうね」

 

「おい、なんだ。

 そのまったくもって理解できない片づけ方は。

 五月はともかく、俺まで頭悪いみたいな言い方は辞めてもらおうか」

 

「ちょっと待ってください!

 私はともかくってどういうことですか!」

 

「お前がバカだってことだよ」

 

「はい、ストップ。

 そろそろ本題に入らないと」

 

俺と五月が再びヒートアップしてきたところを一花が止めに入った。

 

「そうです!

 上杉さんにまだその説明をしていませんでした」

 

そう言えばそうだ。

五月との言い合いですっかり忘れていたが、俺は今のところなぜここに呼ばれたのか全く理解できていない。

ここに来るまでは俺の出した答えがこいつらに対する裏切りだと思って、絶交する可能性まで頭には入れていた。

 

だが、ここまでの5人の反応を見る限り、どうやらそういうわけではなさそうだ。

挙句の果てにはこいつらは俺のことをだ、大好きとか言いやがる。

こいつらは何を考えてるんだ。

ここに来てそればかりを考えているが、全くわからない。

もし仮に、仮にだが5人が本当に俺のことを好きだったとしても、ここで全員が告白してくる意味がわからない。

ここで、1人を選べということだろうか。

もしそうならば、俺には無理だ。

何度も考えて俺は1人だけを選ばないという結論を下したのだから。

1人を無理やり選ばせて、俺が困惑する様を見ようというのだろうか。

流石にこいつらもそんなことは……。するかもしれないな。

 

「フータロー君は見事私たちを見分けることに成功したね」

 

「まあ、かれこれ1年半も一緒にいるんだ。

 さすがに見分けられるようにもなるさ」

 

「私たちを見分けるのに必要なものは時間だけじゃないわよ、フー君」

 

「問題だよ、上杉君。

 私たちを見分けるのに必要なものは何でしょうか」

 

「あ?お前たちを見分けるのに必要なもの?

 そんなも……の……。まさか」

 

いつかこいつらの祖父が言っていた。

五月も言っていた。

 

この5人を見分けるのに必要なもの、それは。

 

「思い出したみたいだね。

 私たち5人を見分けるのに必要なものは『愛』だよ」

 

「今回のゲームはフータローの愛を確かめるためのもの」

 

「だますような形になってしまってごめんなさい」

 

五月、三玖、四葉が順に話してくる。

愛?確かにそう言っていた。

だが、それを確かめるって一体どういうことだ。

 

「フータロー君、まだなんでこんなことをしたのかわからないって顔してるね」

 

「まあ、フー君じゃわからないでしょうね」

 

「多分、フータローじゃなくてもわからないと思う」

 

「私たち5人じゃないと多分、出ない案ですからね」

 

「それじゃあ、上杉君。

 答え合わせの時間だよ」

 

「フータロー君」

「フー君」

「フータロー」

「上杉さん」

「上杉君」

 

「「「「「私()()と付き合ってください」」」」」

 

「……は?」

 

多分、俺は今、生まれてから1番間抜けな顔を晒していると思う。

今、こいつらは何って言った?

()()と付き合って、って言ったのか?

 

その短い言葉が俺の脳内を何度も何度も駆け巡る。

だが、何度駆け巡ったところで、その言葉通り以外の意図を見つけることはできなかった。

 

「フータロー君は私たちのことが好きで」

 

「私たちもフー君のことが好き」

 

「お互い意中の関係で想いを告げあった」

 

「それはもう告白をOKしたのと同じだと思いませんか?」

 

「あとは上杉君の返事だけだよ」

 

今日何度思ったかわからないが、こいつらはいったい何を考えてるんだ。

 

「お前らは5人全員で俺と交際しようとしてるのか?」

 

「そう聞こえなかったのかしら?」

 

そうとしか聞こえなかったから聞き返したんだよ。

まったくこいつらは本当にバカだ。

 

「普通に考えてできるわけないだろ」

 

「普通じゃなくていい。

 私たちは5つ子なんだからその時点で普通じゃない」

 

「そもそも、同級生なのに家庭教師と生徒なんて関係はかなり普通じゃないよね」

 

「確かにそうかもしれないが、それでも6人で交際するなんて異常だろ」

 

「でも、それしか道はないんですよ。

 私たちもみんな上杉さんが好き。

 なのに選ばれなかった。

 他に好きな人がいるとかだったらまだ納得できました!

 でも、上杉さんは私たち全員が好きで1人を決められないと、そう言いましたよね?」

 

「5人で話し合って、それなら全員で付き合えば解決するね、と」

 

頭痛が痛くなる。

『頭痛が痛い』というのが重言(じゅうげん)だとわかっているが、それでも使ってしまうほどに頭が痛い状況だ。

一体、なぜこんなことに。

いや、なんでかはわかっている。

俺が誰も選ばなかったせいだ。

誰か1人を選んでいたら、きっとこいつらは自分の想いに蓋をして祝福してくれたんだと思う。

だが、俺の決断がああだったせいで、こんなことになってしまった。

 

「何ウジウジ考えてんのよ」

 

俺がわかりやすく頭を抱えていると二乃から激しい口調の言葉が飛んできた。

 

「そりゃ、うじうじと考えもする。

 こんなことになるなんて考えてもなかったからな」

 

「ああ、もう!じれったいわね!」

 

二乃がズンズンと俺の元まで足を踏み鳴らしながら、歩んできた。

 

「二乃?」

 

「何回も言ってあげる!

 私たちはあなたのことが好きなの!

 それはもうどうしようもないくらいね!

 暴走することだってある。知ってるでしょ!

 フー君が誰も選ばなかったのは私たちを傷つけたくなかったから、違う?」

 

違う、と言えばウソになる。

もちろん、俺が誰かを選ぶことで誰かを傷つけてしまうならと考えもした。

 

「私たち全員と付き合えば、あんたの不安材料はなくなるわ!

 何か問題ある!?」

 

俺が口をはさむ間すら与えず、二乃が激しく詰め寄ってくる。

 

「6人で付き合うなんて、今はよくてもそのうち壁にぶつかる」

 

「上等よ。

 今まで私たち5人。

 いえ、6人で何度壁を乗り越えたと思ってるのよ」

 

「周りにばれたら白い目で見られる」

 

「周りは周り。

 勝手に言わせておけばいいのよ。

 私たちは気にしないわ」

 

「それから」

 

「もういいでしょ、フー君。

 これ以上はムダよ。

 私たちだって色々考えて話し合って決めたの。

 何が起こっても大丈夫なように覚悟してるの」

 

……。これはどうやら詰みってやつかもしれない。

二乃の後ろを見ると他の4人も全員強い意志を持った瞳で俺を見つめている。

4人とも二乃と同じことを考えているのだろうか。

これは俺も覚悟を決めないとダメかもな。

俺は無意識にフッと笑った。

 

「フー君?」

 

「お前らやっぱそろいもそろってバカだな」

 

「この期に及んでまだ!」

 

「だが!」

 

今度は俺が二乃の言葉を遮る。

 

「俺もどうやら負けず劣らずのバカ野郎みたいだ。

 一花、二乃、三玖、四葉、五月」

 

「「「「「はい」」」」」

 

5人は俺の呼びかけに元気よく返事をした。

 

「俺と付き合ってください」

 

俺はそう言って、上半身を腰から90度に曲げ、右手を開いて前に突き出した。

 

「あれ?今、私たちが告白したんじゃなかったっけ?」

 

「まあ、けじめってやつだ。

 ここまでお膳立てしてもらっておいてなんだが、最後くらい男の俺に花を持たせてくれ」

 

「もう、仕方ないんだから」

 

一花のその言葉のあとに、5人が俺の伸ばした手の先に寄って来た。

 

「「「「「こちらこそよろしくお願いします」」」」」

 

一花が俺の親指を、二乃は人差し指を、三玖は中指を、四葉は薬指を、五月は小指を同時に握って、返事をしてくれた。

こういう時に、同時に寸分違わぬ言葉を発したり、握る指が被らなかったりするのはやはり5つ子だからなのだろうか。

 

と、まあ、かくして俺たちの奇妙な交際関係がスタートするのだった。




さばたつ様
高評価ありがとうございます


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第8話 新たに入ったもの

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文化祭が終わって、今、この瞬間、紆余曲折あって俺と5つ子は交際することになった。

他のどんな紆余曲折よりも今回の俺たちの一連の出来事の方が紆余曲折している自信がある。

 

「さあ、めでたく私たち全員で付き合えたことだし、今からどこに行こうか?」

 

「なんだ、どこかに行く予定でもあるのか?」

 

「もうフータロー君はこういう時は察しが悪いなあ。

 付き合った記念でデートに行こう、ってことだよ」

 

「……なるほど?」

 

ここでそんな記念必要か?などと言ってはいけないということはさすがの俺にも理解できている。

正直に言えば、せっかく丸く収まったのだから卒業や進学のために勉強に取り掛かってほしいのが本音だ。

とは言えこの状況、俺だけが反対したところで、5人に押し切られるのは目に見えている。

それに今回はこいつらに面倒もかけた。

一回くらいそういうことに付き合っても構わないだろう

 

「わかった。

 それじゃ、行こうか」

 

俺が賛同の意を示したところで、俺の腹がグゥ~、と大きな音を鳴らした。

そう言えば朝起きてから何も食ってなかったんだった。

 

「すまん。

 ちょっと家で何か軽く食ってくるから、ちょっと待っててくれ」

 

俺は朝ごはん、というか時間的には朝昼ごはんになるのだろうか。

とにかく、家で飯を食うために、5人に別れを告げた。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

そんな俺を引き留めたのは二乃だった。

 

「なんだ二乃?

 聞いての通り、俺の腹は空っぽで、五月に負けず劣らずの食欲を出しているところなんだが?」

 

「なっ!

 上杉君はいちいち私を引き合いに出さないと気が済まないんですか!」

 

五月が俺に突っかかってくる。

俺から(けしか)けてはいるのだが。

というか、五月は感情が高まると言葉遣いが丁寧口調に戻るんだな。

まだ、素の自分の喋り方に慣れてないだろうから仕方ないのかもしれないな

 

「五月もいちいち突っかからないの。話が進まないから」

 

二乃に(たしな)められ、五月はむぅ、と言いながらプクーッと頬を膨らます。

この表情が河豚(ふぐ)みたいとか言ったらまた怒られるんだろうな。

今回は言わないでおくとしよう。

 

「フー君。せっかくか、か、彼女の家にいるんだからご飯食べていきなさい。

 そ、その、ダメかしら」

 

「お、おう。

 そういうことなら、そのいただいていく」

 

二乃も恥ずかしいなら言い方考えろよ!

なんで自分で言いながら顔真っ赤にしてるんだよ!

こういうのを自爆って言うんだっけか?

くそっ!俺まで恥ずかしいじゃねえか!

しかも、なんで最後だけ自信なさげな感じで!

ああ、なんなんだアレは!

なんかこう、胸のあたりが変な感じがする。

 

「じゃあ、そこに座って待っててくれるかしら。

 ()()()()()()()()

 

二乃はテレビの前の低いテーブルではなく、その後ろにある通常の高さのテーブルを指さした。

 

「ああ、わか……。

 は?出来てる?」

 

それに返事をしようとしたが、二乃は今、出来てるって言ったのか?

なんでだ?

 

「上杉さん。私たちのことをなめてもらっては困ります。

 上杉さんが私たちのことをわかっているように私たちだって上杉さんのことわかってるんですからね」

 

えっへんと言わんばかりに四葉が胸を張る。

その行動のせいで豊満な胸元が強調され……、って俺は何を考えてるんだ!

今まで、意識してなかったわけじゃないが、そういった思考に持っていかれたことはなかったじゃないか!

彼女になったからってすぐ性的な視線で見るなんて俺は最低な野郎だ!

 

俺は自分の頬をパンッと叩いた。

 

「急にどうしたの、フータロー君?」

 

一花が怪訝そうな顔をして訪ねてきた。

ここで馬鹿正直に言うわけにはいかん。

 

「いや、なんでもない。

 そのあれだ。これからのことを考えて、気合を入れたみたいな感じだ」

 

「ふーん。うれしいけどなんだかフータロー君っぽくないね」

 

「そ、そんなことないだろ」

 

「ま、いいけどね」

 

「はい、フー君。

 一応後で何か食べるかもしれないから、少し軽めにね」

 

二乃が非常に良いタイミングで料理を持ってきてくれた。

 

「ありがとうな、二乃!」

 

「何よ、急に大声出して」

 

「いや、なんでもない。

 ってこの料理は」

 

俺の前に出された料理は小さいフライパンに入ったパンケーキのような料理だった。

 

「確か、ダッチベイビーだったか?

 二乃が三玖との料理対決で作ってくれたやつだよな?」

 

「さすがフー君ね。

 覚えててくれて嬉しいわ。

 でもあの時のものとは全然違うわよ。

 あの日には入ってなかったものが入ってるのよ」

 

「そうなのか?

 すまんな、俺にはそういうものがわからん。

 だが、冷める前にいただくとするか。

 いただきます」

 

俺は合掌し、ダッチベイビーを食べ始めた。

……。ゆっくり咀嚼し、じっくりと味わう。

あの日の味を明確に覚えているわけではないが、何が変わったのかやっぱりさっぱりわからないな。

 

「どう?おいしいかしら?」

 

「……んっ。

 ああ、うまい。さすが二乃だな」

 

俺はゴクッと、飲み込んでから答えた。

 

「それはよかったわ。

 だって、そのダッチベイビーにはあの時入ってなかった愛情がいっぱい入ってるからね」

 

「っ!!!!

 げほっげほっ」

 

俺は二乃の発言に思わずせき込んでしまった。

四葉がそんな俺を見て、お水お水!と水を汲んできてくれた。

俺はありがたく、その水を飲みほした。

 

「二乃!お前!」

 

「あら、何?

 愛情が足りなかったかしら?

 じゃあ」

 

二乃が俺の元まで寄ってきた。

俺が椅子に座り、二乃は立っているという位置関係のため、俺が二乃を見上げるという構造が完成する。

 

「二乃?」

 

二乃はふふっ、と笑い、俺の先ほど叩いたため、おそらく少し赤くなっているだろう頬をしっかり抑えた。

そして、そのまま俺と二乃の顔は近づき、そのまま唇を重ねた。

 

「どう?私の愛情たっぷり受け取ってくれたかしら?」

 

二乃は俺の顔から手を放すと真っ赤に染まった顔でそう言い放った。

こんな状況で微笑ましく見守られているのは、関係が変わったせいなのだろうか。

付き合う前だったら、修羅場になったかもなんてのはさすがに自意識過剰か。

 

「あ、ああ」

 

俺は動揺して、簡単な返事だけしか返せなかった。

その動揺を隠すように俺はダッチベイビーに意識を向け、バクバクと食事を再開した。

そんな中、にやにやと眺めている中で1つだけ違う視線が入っていることに気づいた。

 

俺がその視線の方に目をやると、そこには少し頬を膨らませた五月がいた。

 

「どうしたんだ、五月?」

 

「別に何でもないよ」

 

「いや、それにしてはジロジロと。

 あ、そういうことか。

 それなら早く言ってくれればいいだろ」

 

「え?いや、そんな急に!?

 心の準備がまだ……

 

俺は食べかけのダッチベイビーを五月の方に差し出した。

 

「お前にも分けてやるから、二乃いいか?

 って二乃?」

 

俺が二乃の方を見ると、眉間のあたりに指を当て、わかりやすく悩んでそうなポーズをとる二乃がいた。

 

「上杉君のバカ!!!!」

 

五月はそう叫んで、自分の部屋に閉じこもってしまった。

 

「え?おい、五月!?

 飯のことじゃなかったのか?」

 

「これはさすがにフー君が悪いわね」

 

「フータロー君、ちゃんと五月ちゃんに謝ってね」

 

「五月がかわいそうです!」

 

「フータロー、最低」

 

俺は残りの4人に散々に言われた。

なんでこうなった!

 




矛盾回路様、kakaka3様、ポタージュ様
高評価ありがとうございます。

祐☆様
誤字報告ありがとうございます。


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第9話 2人の初めて

お気に入りが200人を突破しました!

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皆さん、いつもありがとうございます!

アンケートのご協力もありがとうございます!


俺は今、五月以外の4人に呆れられている。

五月は俺にバカと言って、部屋に閉じこもってしまった。

五月にバカと言われるのは心外だが、4人曰く俺に問題があるらしい。

 

「ほんと、フータロー君は勉強以外のことになるとダメになるよね」

 

「忘れがちになるけど、五月は末っ子だし意外と甘えん坊なのよ」

 

「待て、一花の発言はいったん置いておくとして、甘えん坊とか関係あるのか?」

 

「あるから言ってるんじゃない」

 

「さっぱりわからん」

 

「フータローだししょうがない」

 

「まあ、上杉さんですしね」

 

なんでこんなに言われなくちゃならないんだ。

どうにも()せない。

 

だが、まあ、ここでこいつらの相手しながら待っててもしょうがないか。

 

俺は席を立ち、会談の方へ向かう。

 

「フータロー君、なんで五月ちゃん怒らせたのかわかってるの?」

 

「わからん」

 

俺は一花の質問にあっけらかんと答えた。

 

「大体わかるなら、こんなことになってない」

 

「それはそうかもしれないけど……。

 それで大丈夫?

 余計五月ちゃんを怒らせちゃうんじゃない?」

 

一花の心配は(もっと)もだ。

だが、ここは俺が行かないといけないような気がする。

 

「まあ、なんとかなるだろ」

 

「なんとかって」

 

「お前らは今日どこに行くかでも考えててくれ。

 悪いが、俺に頼られても素敵なデートプランなんぞ提供できないからな」

 

俺はそう言うと、足早に階段を昇って行った。

下からはぁ、というため息が4つほど聞こえた気がするが、そんなこといちいち気にしない。

2階、と言っていいのだろうか。

今更だが、なんでマンションの一室に2階とかあるんだよ。

既に30階だろ、ここ。

まあいいか。

とにかく、2階には5つ子それぞれの部屋がある。

階段から遠い部屋から一花、二乃、三玖、四葉、そして今回問題の五月の部屋だ。

 

俺は一番手前の部屋のドアをコンコンとノックした。

 

「五月、俺だ。

 入るぞ」

 

「……どうぞ」

 

少し間をおいて、中から返事が聞こえた。

声色的に機嫌がよくないことはわかる。

俺は五月の部屋に入った。

五月の部屋はかなりきれいに整頓されている。

どこぞの長女とは大違いだ。

そう言えば、あいつの部屋は今、どうなってるのだろうか?

一花は今、ホテル暮らしの生活だ。

荷物をいくらか運んだのは知ってるが、さすがにここに教えに来るときも個人の部屋に入ったりはしない。

引っ越しの準備の時に、少しは片づけたのか?

っと、今は五月のことだ。

 

自分のベッドの隅で体操座りをして枕を抱え込んでいる五月は、心なしかというか明らかに先ほどよりムスーッとしている。

え?なんでだ?

 

「あの、五月、さん?」

 

「今、誰のこと考えてたの?」

 

「は?」

 

「今、誰かほかの人のこと考えてたでしょ。

 誰?教えて?」

 

「えっと、一花のことを」

 

俺は五月の迫力に押されて素直に白状してしまった。

 

「どうして?」

 

「いや、この綺麗に整頓されてる部屋を見たら、一花の部屋とは全然違うな、と」

 

「ふーん」

 

これはまずい。

明らかに機嫌が現在進行形で損なわれている。

なんで五月は機嫌が悪くなってるんだ!

俺の人生経験の中に答えなんてないだろ。

探さなくてもわかる。

これは正直に話してしまおう。

 

「五月。

 俺は生まれてからついさっきまで誰かと交際したことはない」

 

「え?いきなり何の話ですか!?」

 

「いいから聞いてくれ。

 小学校の修学旅行以降、俺は他人との交流は最低限にとどめ、勉強にだけ注力してきた。

 だから、俺はお前が怒っている理由がわからん」

 

「はぁ!?

 怒ってる理由がわからないのに謝りに来たんですか!?」

 

五月が声を荒げる。

 

「そうだ。

 今の俺にはわからない。

 だから、五月。

 お前が怒っている理由を教えてくれ」

 

「普通、そういうの本人に聞きますか?」

 

「本人に聞かないとわからないだろ?」

 

俺と五月はしばしの間見つめあう。

こればかりは俺にはどうしようもない。

怒っている理由がわからないんだから手の打ちようがない。

他のカップルはこういう時どうしてるんだ?

俺が色々と考えていると五月が何かボソッとつぶやいた。

 

「すまん、五月。

 よく聞こえなかった。

 もう1回言ってくれるか?」

 

「…だけ……ス……から」

 

「すまん、所々聞き取れない。

 もう少しはっきり言ってもらえるか?」

 

「私だけまだキスしてないから!!!!!!」

 

五月がその髪と同じ真っ赤な顔をして、叫んだ。

五月は叫ぶとうぅ、と小さな声を上げながら抱えている枕に顔をうずめた。

 

え?は?キス?

確かに五月とはしたことがない。

 

「いや、四葉ともしたことないはずだが」

 

「ほんとですか?

 そこはちゃんと思い出してあげないと四葉がかわいそうです」

 

こういうときでも姉の心配はするんだから本当にこいつらは仲が良いな。

……じゃなくて、俺と四葉がキス?

そんなことあったか……。

あ。

 

「もしかして、あの時の五月……か?」

 

「そう言われると変な感じがするけどそうだよ。

 あの鐘のところでキスをしたのは四葉だよ」

 

「マジか」

 

「小学生の時のはわかったのに去年のことがわからないの?」

 

「あの時は、一瞬だったのと衝撃的だったので正直顔をはっきりと見れてなかったんだ」

 

「へぇ。

 で、もう1回」

 

「もう1回!?

 四葉とか?嘘だろ?

 あとキスしたのは……」

 

一花、二乃、三玖にはそれぞれ文化祭期間中に不意を突かれてキスをされた。

だが、四葉だと?

俺は記憶を漁りまくるが、やはり四葉とのキスなど他には見当たらない。

一体いつ……。

そこで俺はふと思い出した。

文化祭期間中に零奈と会ったような気がした。

あの時、疲れてうつらうつらしてたから夢だと思っていたが。

 

「もしかして、文化祭の時の零奈か?

 てっきり夢だとばかり」

 

「やっとわかったみたいだね。

 でも四葉のことは今回は後回し。

 今、上杉君にわかってほしいのは君が私以外の4人とキスをしたことがあるという事実」

 

「それはわかった。

 というかいつそんな情報交換したんだ?」

 

「昨日の夜だよ。

 もうこうなったんだから全部話そうってなって」

 

「なんでそうなるんだよ……」

 

というかキスのことなんて俺も恥ずかしくなるだろ!

本人のいないところでそういうこと話すなよ!

 

「なのに上杉君は、そんな私の前でキスを見せつけ、挙句の果てに私がおなかすいてると勘違いするなんて……!!!!!」

 

それを聞いてると確かに俺が悪い気がしてくる。

そもそも5股してる時点でかなり悪いやつではあるのだが。

少なくとも堂々と胸は張れないし、らいはにも話せない。

 

「というかそれは二乃も悪いんじゃ……?」

 

「二乃はいいんです!

 気持ちはわかりますから……。

 それなのに上杉君ときたら!!!!!」

 

そう言って、五月は俺に抱えていた枕を投げつけてきた。

しまった。

火に油を注いでしまったらしい。

ここはとりあえず話を進めてしまうとするか。

 

「それで五月は結局俺にどうしてほしいんだ?」

 

俺の発言に五月がフリーズした。

ん?俺は何かおかしなことを言っただろうか?

 

「まさか、ここまで話してわからないなんて……」

 

え?もうわかるようなことなのか!?

 

「本当に勉強以外はダメなんだから……」

 

五月はため息をついた。

そして、すぐに顔を真っ赤に染めた。

顔を真っ赤に染めた五月はどこか覚悟を決めたような表情でベッドから出て、俺に近づいてきた。

 

「キ、キキキキ、キ、キス、してほしい、な?」

 

俺のすぐ真正面に立った五月は首をわずかに傾け、上目遣いでそう言った。

俺は思わず、額に手を当て、天を仰ぐ。

こういうのを確かあざといと言うんだったか。

 

「う、上杉君?」

 

天井の方を見つめる俺に心配そうな声をかけた。

 

「五月、すまなかったな。

 まさか、お前がそんなにキスしたいと思っていたとは」

 

俺は五月を見下ろし、声をかけた。

五月は真っ赤な顔をさらに紅潮させ、俺に言いかかる。

 

「ななな、なんでそんな言い方するんですか!

 まるで私が、ち、ち、痴女みたいじゃないですか!

 断固撤回を求めます!」

 

女心って言うのは本当に難解だ。

この難問、俺に解ける日が来るとは到底思えないな。

 

「わかった。さっきの言葉は撤回する。

 えっと、五月」

 

「はい」

 

俺は五月の顔に自分の顔を近づける。

五月は何をされるか理解したのか、俺の顔を見上げ、目を閉じ、わずかに唇を突き出す。

だんだんと顔を近づけていく。

こうしてみると、まつ毛長いな。

顔だちも結構整っている。

鼻もスーッと通っていてきれいな形をしている。

 

そう言えば、こうやってこいつらの顔をまじまじと近距離で見るのは初めてだな。

 

俺は唇を寸前まで近づけ、目を閉じる。

そして、そのまま唇を重ねた。

 

思えば、俺からキスをしたのはこれが初めてだ。

 

一花にも二乃にも三玖にも四葉にもキスは()()()

 

俺は五月の唇からゆっくりと自分の唇を離す。

五月があっ、と口にしたのはまだ俺としていたかったということなのだろうか。

実際、少し物足りなそうな顔をしている。

 

「俺からキスをしたのはお前が初めてだ、五月」

 

五月が大きく目を見開いた。

 

「ズルいよ。そんなこと言われたら、私……。

 上杉君、もう一回……」

 

五月がまたも潤む瞳で上目遣いでねだってくる。

こいつは多分こういうの理解せずにやってるんだろうな……。

 

「なんだ、やっぱりキスしたかったんじゃないか」

 

俺はニヤッとしてそう言ってやる。

 

「別にそういう意味じゃ、んっ!」

 

俺は五月の言葉を最後まで待たずに2度目の口づけをした。

するとすぐに、五月の舌が俺の口の中に入ってきた。

 

こいつ!舌入れてきやがった!

 

俺は五月の突然の行動に驚きはしたが、拒絶することなく受け止める。

そして、五月の舌に自分の舌を絡ませる。

俺たちは2人で夢中になり、絡め合わせる。

息苦しくなってきた俺たちは示し合わせたわけではないが、同時に唇を離す。

俺と五月の口からは涎でできた橋ができていた。

 

俺の目の前にいる五月は今まで見たこともないような恍惚とした表情を浮かべていた。

その表情を見た俺の心臓はドキッと跳ねた。

鼓動が速くなっていくのを感じる。

俺と五月は三度顔を近づけ……。

 

「ストーーップ!!!!!

 2人ともいつまでそ、そんな(いや)らしいことやってんのよ!」

 

「「へ?」」

 

部屋の入口には姉4人が真っ赤な顔をして、こっちを見ていた。

 

 




yuuco様
最高評価ありがとうございます。

ジンベエザメ様、クロジャ/時々シロジャ様
高評価ありがとうございます。


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第10話 姉たちは見た

投稿遅れてごめんなさい。
リアルの方が忙しくて…。

短いけど許してください……。


「あんたたち、いつまでそんな厭らしいことやってるのよ!」

 

二乃の声に俺と五月はハッとした。

五月の部屋の入り口を見ると、顔を真っ赤にして、俺たちを見ている一花、二乃、三玖、四葉がいた。

四葉に至っては顔を手で覆ってはいるが、指の隙間からばっちり俺たちのことを見ている。

二乃の叫び声に我に返った俺は先ほどまでの行為を思い出した。

 

「……!?」

 

五月も同じなのか、顔を真っ赤にしている。

というか、俺も恐らく、真っ赤になっている気がする。

 

俺は無意識に口元に左手を持っていく。

そして、五月の顔、正確に言えば、口元に目をやる。

先ほどまでの舌を絡ませていた生々しい感触が鮮明に蘇ってくる。

 

なんというか、あれだな。

気持ちよかった。

好き合うやつ同士がキスをしたがる理由がよくわかる。

 

「フータロー、だらしない顔してる」

 

三玖がプクーッと頬を膨らませて指摘してきた。

なんでこの姉妹は機嫌が悪くなると、頬を膨らませるのだろうか。

 

「いや、だらしない顔なんてしてないだろ!」

 

「口元がにやついてるよ、ほら」

 

一花が手渡してきたのは手鏡。

鏡に自分の顔を映すと、確かに口元が若干緩んでいる。

 

「油断も隙もあったもんじゃないわ。

 確かにフー君とは2人きりにしてあげたけど、まさかし、舌まで……」

 

「こんな関係になった後で言うのも変な感じだけど、抜け駆けとはやるね、五月ちゃん」

 

「別にそんなつもりはなかったんだよ!

 ただ、なんだか止められなくて、気づけばその…」

 

「気づけば舌を入れるんだ。

 五月ってそういう子なんだね」

 

「上杉君、四葉まで冷たいよ!」

 

確かに四葉にしては珍しい反応だな。

心なしかいつもより冷たい視線を五月に向けている気がする。

 

「五月のことは一旦置いておいて、デートはどうするんだ?」

 

「露骨に話題をそらしましたね」

 

四葉に一瞬で見抜かれてしまった。

 

「まさか、四葉に見抜かれるとは!

 なんたる屈辱!」

 

「な!上杉さん、ひどいです!」

 

「冗談だ、冗談。

 で、どこ行くか決まったのか?」

 

「あ、考えてなかった」

 

一花の返事に俺は思わずガクッとなってしまった。

任せっきりにした俺にも責任の一端はあるかもしれないが。

 

「じゃあ、お前らここに来るまで何してたんだよ」

 

「何って、ねえ?」

 

「ほら、二乃」

 

「私!?」

 

「二乃が言ったんでしょ?」

 

何やら姉4人で責任の押し付け合いが行われているみたいだ。

そんなたいそうなことでもないと思うんだがな。

 

「……よ」

 

「え?」

 

二乃の声が小さくてよく聞こえなかった。

何でもはっきり言うこいつにしては珍しい反応だ。

 

「だから!最初から!全部!聞いてたって!言ったのよ!」

 

二乃が勢いに任せて叫んだ。

そんなはぁはぁ言うほど叫ばなくてもいいんじゃないか?

 

「ん?待て、二乃。

 今、お前は『全部聞いてた』と言ったか?」

 

「ええ、言ったわ」

 

俺と五月は顔を見合わせる。

 

「まさか」

 

「そのまさかよ。

 フー君が五月の部屋に入ってすぐ私たちもここに来たのよ」

 

「それで、ずっと2人のやり取りを聞いてたというわけです、あはは…」

 

頭の後ろに手を持っていき、四葉が苦笑を浮かべながら補足してくれた。

 

「私は辞めておこうって、言った。

 でも、二乃がどうしてもって聞かなくて」

 

「ちょっと三玖!?」

 

「うんうん。お姉さんとしても妹のあられもない姿を見るのはどうかと思ったんだけどね」

 

「一花まで裏切るの!?

 四葉!何とか言って!」

 

「えーっと、あの……。

 うー-ん……。

 私の頭じゃいい感じの言い訳が出てこないや……。

 ごめんね、二乃」

 

「四葉、それはもう言ってしまったようなもんだ」

 

「え!?」

 

これでも四葉は国語だけなら5つ子でトップなんだがな。

まあ、国語できるイコール言葉が巧みってわけじゃないしな。

実際、学校で行われる国語の試験程度なら満点をとれる俺でもこいつらの気持ちなんて完璧に理解できていないわけだからな。

所詮、勉強とリアルは別物か。

 

「なんだか、四葉らしいね」

 

「あと一花。

 お前は『あられもない』の使い方が間違ってる」

 

「え~。ここでも勉強?」

 

一花がぶーたれてくるがそんなことはしらん。

 

「当たり前だ。

 俺はお前らの家庭教師でもあるんでな。

 いいか、一花。

 あられもない姿ってのはこの中だとお前が一番当てはまる」

 

「え?私、そんな格好してるかな?」

 

「今のお前じゃない。

 寝てる時のお前だ」

 

「寝てる時の私?

 ……ッ!?」

 

一花は少し考えてどうやら答えにたどり着いたようだ。

話している間に元の顔色に戻ったのに、また頬が少し赤くなった。

 

「わかったようだな。

 あられもない姿って言うのは素っ裸、あるいは露出が多い格好のことを言うんだ。

 ちゃんと覚えておけよ」

 

「はい」

 

一花は少しシュンとなった。

 

「と、あられもない常習犯の一花のことは置いておいて、これからどうするんだ?」

 

「はい!」

 

俺の疑問に四葉がビシッと手を挙げた。

四葉がこういう時に意見を言うのは珍しいな。

四葉はこんな時は周りに合わせるイメージだが。

 

「はい、四葉」

 

俺は四葉に発言を促す。

 

「せっかくなので、やっぱり上杉さんが考えてください」

 

「は?」

 

まさかの俺任せだった。

 

 




3euren様、グルコース様
高評価ありがとうございます。

さばたつ様、Sagy様、高山流水様、psytoh様
誤字報告ありがとうございます。


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