鬼を狩る異形 (奥歯)
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キャラクター

 

竈門悠

本作主人公、二年前の雪の降る日に竈門家の家の前に倒れていたところを拾われた。記憶がなく自身の名前しか覚えていない。性格は炭治郎に似て優しく、困っている人がいれば放って置けない。髪の色は茶髪で目の色は緑。常人を遥かに超える力があり、丸太や大きな岩を片手で持ててしまうほど、その理由は悠が人間ではなくアマゾンという生命体であったためだった。接近戦を得意とし、戦闘は不慣れなため、力任せな戦い方が多い。戦闘が長引くと、興奮状態となり暴走してしまう。今はその異形の力を鬼やアマゾンたちから守るために使っている。

 

身長 181cm

性別 男性

年齢 不明

誕生日 不明

種族 アマゾン

 

 

 

 

名前 鷹山仁

本作品オリキャラ。四年前、胡蝶カナエを鬼から助け、その時に鬼殺隊に入り、今は鬼柱となっている。性格は飄々としており掴みどころがない。いつも周りを煽るような言動をするため、周りからは嫌われている。しかし、カナエだけは仲が良い。髪の色は黒で金色のメッシュが入っていて、目の色は赤。鬼殺隊に入る前から鬼とアマゾンを狩っていて、十年ほど前にアマゾンになった。格闘戦を得意とし、積み上げて来た経験を活かして相手を圧倒する。今は鬼殺隊の柱としての責務をはたしているとかいないとか。たまにタバコを吸う。

 

身長 180cm

性別 男性

年齢 三十二歳

誕生日 4月1日

種族 人間→アマゾン

 

 

 

 

名前 石動天十郎

元鳴柱の男性で、今は隠をやっている。性格は鷹山と同じように飄々としているが、周りからは親しまれている。口調は関西弁でおそらく関西出身の男である。天十郎は唯一柱に対してタメ口で話す男である。周りからは好かれてはいるが、彼の過去を知っているものはいない。髪の色は黒の短髪で、目の色は青。結構タバコを吸う。

 

身長 180cm

性別 男性

年齢 二十三歳

誕生日 5月19日

種族 人間

 

 

 

仮面ライダー

 

名前 アマゾンΩ

竈門悠が変身した姿。見た目は緑色の体に赤い目をしているトカゲのような見た目。腕部と脚部に備わる鋭い刃で相手を切り裂くほか、手のひらからアマゾン細胞を変化させた武器を生成することが可能。その中には鞭状のもの、槍状のもの、小太刀状のもの、鎌状のものがある。

 

身長 188.0cm

体重 92.7kg

パンチ力 21.0t

キック力 27.0t

ジャンプ力 60.0m(ひと跳び)

走力 3.2秒(100m)

 

名前 アマゾンα

鷹山仁から変身した姿。見た目は赤い体に緑色の目をしている全身傷だらけのトカゲのような見た目。腕部と脚部に備わる鋭い刃で相手を切り裂くほか、鋭い爪で相手を貫くことも可能。Ωとは違い武器を生成することはできない。

 

身長 186.5cm

体重 91.4kg

パンチ力 20.7t

キック力 25.5t

ジャンプ力 65.0m(ひと跳び)

走力 2.7秒(100m)



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第一章〜Ω〜
始まりの夜


初投稿です。誤字脱字があれば指摘して下さい。


ある雪の降る夜の山道、この季節は大雪で外に出るには危険な日だ。動物達は既に冬眠をして、姿を見ることはない。しかしそんな山道に一人の男が歩いていた。男は血だらけで服もぼろぼろ、呼吸もか細く今にも死にそうなのは誰が見ても明らかだ。この男は一体どこに向かっているのか分からない。ただ目的もなく歩いている。するとその男の前に一軒の家を見つけた。男は家の前まで来た途端糸が切れたように倒れ、深い眠りに落ちた.....。この物語は、千年以上にもわたる人間と鬼、そして人間でも鬼でもない、ある異形の怪物たちの戦いである。

 

●●●

 

目が覚めると目の前に何人かの子供が僕をのぞいており目が合うと逃げるように散っていった。起きてみると体のいたるところに包帯が巻かれていてボロボロだった服も新しい服に変えられていた。あたりを見渡すとさっき自分から逃げて行った子供が母親らしき人の背中に隠れていた。

 

「あっやっと目が覚めたみたいですね。もう三日もうなされてたんですよ?大丈夫ですか?」

 

母親らしき人が話しかけて僕の安否を聞いてきたので軽く頷くと安心したような顔をして「よかった」とだけ呟いた。

 

「もうすぐ夕食の準備をしますから少し待って下さいね」

 

彼女はそう言うと台所のほうに向かいしばらくして額に傷がある少年が自分に話しかけてきた。

 

「怪我はもう大丈夫ですか?名前、なんていうんですか?どこからきたんですか?」

 

「.........名前?」

 

ふと僕の名前を聞かれ思い出してみる。かすかではあるが自分が呼ばれていた名前を思い出した。

 

(はるか)...。どこからきたかは、憶えてない」

 

「そうですか、記憶が.......、俺の名前は竈門(かまど)炭治郎(たんじろう)って言います!こいつらは俺の兄弟で俺はその長男です!」

 

この少年の名前は炭治郎というらしいどうやらこの家は竈門家というものの家で母親と六人の兄弟が暮らしており父親はすでに他界している。家族と一緒に炭を売って懸命に生きている健気な家族だ。兄弟たちの名前は、次男の竹雄(たけお)、三男の(しげる)、四男の六太(ろくた)、長女の禰豆子(ねずこ)、次女の花子(はなこ)と言う。母親の名前は葵枝(きえ)さんと言う。

 

「みんな、もうすぐ夕食の用意ができるから手伝って」

 

「「「はーい!」」」

 

葵枝さんの呼び声に答えた何人かの兄弟たちはそそくさと台所の方えと向かった。呆然としていた僕はすぐ隣にいる禰豆子という少女に話しかけられた。

 

「怪我、もう大丈夫みたいですね。あの時傷だらけで家の前で倒れてたあなたを茂が見つけてみんな大慌てだったんですよ。すぐにお医者様を呼んで見てもらった時は治るのに一ヶ月はかかると言ってたのに一日でほとんど治っちゃってお医者様もすごく驚いてました。体すごく丈夫なんですね」

 

優しく微笑みかけた禰豆子に僕は軽く頷いた。

 

「お待たせしました悠さん夕食の用意ができました」

 

しばらくして葵枝と兄弟たちが夕食を持ってきた。ほくほく湯気が立ちのぼる味噌汁と雪のように白いご飯が僕の前に置かれた。

 

「い、いただけないです」

 

「まぁ、そんなに遠慮しないで。みんなの分もちゃんとありますから」

 

「そうですよ、遠慮しないで食べて下さい。これを食べればすぐに元気になりますから!」

 

葵枝さんと炭治郎の押しに負けて潔ぎよく食べる。みんなで手を合わせて「いただきます。」と言い箸を手に取りご飯を口の中に運ぶ。三日間眠っていて何も食べていなかったせいか、あっという間に平らげてしまった。

 

「お兄ちゃん食いしん坊だね」

 

茂がそう言うとみんな笑い出し僕もつられて笑い出した。みんな食べ終わりご飯をいただいたお礼に葵枝さんと一緒に台所の手伝いをしているとき、僕は隣にいる葵枝さんの視線に気付いて振り向く。

 

「どうしたんです?」

 

「いえ、なんでもありません。そういえば悠さんはこの後どうするんですか?」

 

「....ずっとこの場所にはいらないので明日の朝には出て行くことにします。」

 

「いくあてはあるんですか?」

 

「.....正直に言うとありません」

 

「だったらこの家に一緒に住みませんか?」

 

「えっそ、それはできません!葵枝さん達に迷惑がかかります!」

 

「大丈夫ですよ。家族が一人増えるぐらいそれにみんなもあなたに打ち解けていますしきっと受け入れてくれますよ」

 

「家族...僕が...」

 

こうして僕は竈門家の家族になった僕には苗字がなかったため「竈門悠」と言う名前になった。




初めて書いてみましたけどて結構楽しい。


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覚醒

悠初変身回です。


あれからニ年の月日が流れた。僕はもうすっかり竈門家に馴染んでおり今では義理ではあるものの竈門家の長男である。今は兄弟たちと一緒に炭を売る仕事をしていて、生活は楽じゃないけど、今はすごく幸せだ。

 

「兄ちゃん今日も町に行くの!?」

 

「私も行く!」

 

「ニ人ともダメだよ雪も積もってて危ないし荷車も引いていけないから乗せてもらって行けないし今日は諦めて」

 

僕は茂と花子を宥めて諦めさせたが、ニ人は残念そうな顔をしていた。

 

「悠、竹雄、できる範囲で構わないら少し木を切っといてくれ」

 

「わかりました」

 

「わかった」

 

僕と竹雄は葵枝さんに頼まれて炭を作るための木を切りに行くことにした。竹雄は少し残念そうな顔をしているがやる事はちゃんとやるようだ。

 

「それじゃあ行ってきます」

 

「早く帰ってきてね」

 

「もし困った事があったらすぐ帰ってこいよ、炭治郎」

 

「わかってるよ兄ちゃん何かあったらまた帰ってくるよ」

 

「ああ!兄ちゃんに任しとけ!」

 

今ではもう炭治郎も僕のことを兄ちゃんと呼ぶようになった。最初の頃は悠さんだったけど気付いた頃にはそうよばなくなっていた。僕たちは炭治郎を見送った後、竹雄と一緒に木を切りに行きその夜僕たちはいつものように夕食の準備をしていた。僕は葵枝さんの料理を手伝い他の兄弟は食器を並べ終わり遊んでいるようだ。

 

「悠、もうできあがったからこれ持っていってくれる?」

 

「はい」

 

僕は葵枝さんのために重い料理を持って行った。僕は家族の中で一番力が強い、丸太を片手で持ち上げたり、家族全員を軽々と持ち上げるくらいに力がある。だからこれぐらいの料理を運ぶことは造作もない。

 

「みんなー夕食だよー」

 

「「「はーい!」」」

 

いつものようにみんなを夕食に呼び席につかせ、いつものようにみんなで手を合わせ挨拶をする。

 

「「「いただきます」」」

 

僕たちはいつものように箸を持ちご飯を口に運びいつものように他愛もない話をする。こんな当たり前の日常でもすごく幸せに感じるこんな日が毎日毎日続いたらいいなと思っていた。けどそんな幸せは突如として崩れ去った。みんなといつものように夕食を食べ終え食器を片付けて風呂に入り寝巻きに着替え寝る準備をするために布団を敷いていると、突然誰かが扉を叩く音がした。

 

「あら、こんな時間に誰かしら?」

 

「僕が行きます」

 

僕は誰かなと思い、急いで扉を開けた。そこに立っていたのは白い帽子を被りタキシードを着ている肌の青白い男が立っていた。その男は僕と同じくらいの背丈で目はまるで死んでいるかのように生気がかんじられなかった。僕はその男の目を見てゾッとする。本能的にこいつはやばいと思った。すると突然僕の体に衝撃が走り吹き飛ばされた。

 

「グハァッ!?」

 

「悠兄ちゃん!?」

 

「キャアア!!」

 

男はズカズカと家に上がり次々と家族を惨殺した。最初に竹雄の胸を切り裂き、今度はしげる背中を引き裂き、花子と葵枝さんの腹を切り裂いた。男はまるで息をするように家族に手をかけていった。

 

「やめろオオオオ!!!」

 

僕はこれ以上家族が傷つかないように男の体にしがみつくしかしどんなに力を入れても男はびくともしなかった。この男は人間じゃないそう確信した。じゃあ一体この男は何者なのか一つ心当たりがあった。それはこの男は鬼と言う怪物ということを、去年三郎(さぶろう)さんという人に鬼と言う異形の怪物がいると言う話を思い出した。最初に聞いた時は三郎さんの御伽話かと思っていた。しかし今目の前にいるのが三郎さんの言っていた鬼だとしたら僕はどうすればいい?どうするもこうするも、最後の家族だけは守らなくては行けない。最後に残った家族さえ助かれば僕はどうなってもいい。炭治郎...僕の弟は大丈夫だろうか?今はもう三郎さんのとこで寝ているのかな?さよなら炭治郎、そしてごめん僕は家族をまもれなかった。でも最後に残った家族だけでも守り通す最後に残った禰豆子と六太を守るために。

 

「禰豆子オ!!六太を連れて逃げろオ!!」

 

「でも!」

 

「いいから早く!!」

 

禰豆子は僕の言葉を聞き六太を連れて逃げようとするけど現実はそう甘くはなかった。

 

「逃がさん」

 

その鬼は触手を素早く伸ばし禰豆子の背中を切り裂いた。

 

「禰豆子オオオオオ!!六太アアアア!!」

 

僕は最後に残った家族も殺され絶望し、鬼にしがみつくのをやめた。家族を守れなかった。最後に僕だけが生き残ってしまった。いや、もうすぐ死ぬのか、もうすぐ目の前にいる鬼に無残に殺されるのか、いやまだだ!炭治郎怒るだろうな、家族一人も守れなかった僕をみんな怒るだろうなでもこのまま死んでまた家族に会えるならそれでいいかな、いやまだだ!でも僕が死んだら炭治郎はひとりぼっち寂しいだろうな、でもごめん炭治郎もうすぐ僕、家族の所へ行くよ、さよなら.....。いやまだだ!まだ死なない!この鬼を殺すまでは!まだ死ねない!家族の無念を晴らすために!まだ!

 

「死んでたまるかアアアア!!!!」

 

すると頭の中で走馬灯のようにある言葉がよぎった、"アマゾン"その言葉はなんなのかどう言う意味なのかはわからない。けどその言葉はすごく特別な意味を持っているような気がした。僕は頭に駆け巡るその言葉を叫んだ。

 

「アマゾンッッ!!」

 

すると突然何かが起こった急に目の前にいる鬼が吹き飛ばされた。吹き飛ばされた鬼は、すぐ近くにあった木に激突し、倒れた。

 

「ウガアアアアアアアアア!!!!」

 

でもそんなことは関係ないとにかく目の前の家族を殺した鬼を殺すただそれだけしか考えていない。それしか頭にない。僕は想像もできない程の高さまで跳び上がりその鬼に飛びかかる。

 

「な、なんだこの化け物は!ち、近寄るな!」

 

鬼はひどく怯えていたよく分からないが何かが変わった僕にその鬼は怯えていた。鬼は左の触手を僕に向けて放つ、しかし僕は紙一重で右に避け、右手の拳で鬼の顔面に叩き込もうとするが、鬼はもう一つの右の触手を突き出し僕の右腕と激突したすると、鬼は触手で僕の右腕を飲み込みそのまま食いちぎった。僕は体勢を崩しそのまま地面に落ちてしまった。

 

「ふはははは!急に姿が変わって驚いたがたいしたことなっ!......アガッッ!な、なんだ、苦しい!!体が内側から食われているようだ!どうなっている!わ、わたしの右腕がああああ!?」

 

高笑いした鬼が急に苦しみ出したと思うと突然鬼の右腕が崩れていった。僕の腕を食ったからか?僕にそんな力が?今ならあの鬼に攻撃できるかもしれない。けど僕には指一本も動かすことができない。

 

(クソ!もうすぐあの鬼を殺せそうなのに!)

 

「どうなっている?!あの化け物の腕を食ってから身体がおかしい!体制を立て直さなくては!あの化け物から逃げなくては!クソ!またあの時と同じだ!」

 

慌てている鬼は僕から離れていきそして、琵琶の音が響いたと思ったらその鬼は消えていた。逃してしてまった。家族の無念を晴らせなかった。僕は悔しさのあまり雄叫びを上げた。

 

「ヴオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ア"ア"ア"ア"アアアアア!!!」

 

僕の雄叫びが夜の雪が降る山に轟く、そういえば初めてあの家族と出会った時も雪の降る夜だったな。僕は最後にあの時の出会い思い出しながら深い眠りに落ちた。

 

「ご......め.......ん.....なさい...ね..ずこ....たけお...しげる...ろ...く....た....はな........こ..................は............る.......か.......」

 

悠が眠りに落ちた後葵枝は最後に蚊が鳴く音より小さな声で家族に謝罪をした。




悠アマゾンの姿はCISのアマゾンΩのベルトをつけていない感じです。


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出会い

あの男の登場回です。


幸せが壊れる時にはいつも血の匂いがする。俺は三郎爺さんの家に泊めてもらい家族が待つ家まで歩いていた。けど、どうにも家の方から血の匂いがする。俺は嫌な予感がして走って家まで帰った。そして俺は見てしまった。家の前に倒れている悠兄ちゃんと禰豆子と六太が無残な姿で倒れていた。

 

「どうしたんだみんな!禰豆子なにがあったん...ッ!」

 

俺は家を見てみると他のみんなも全員殺されていた。

 

「母ちゃん...花子...竹雄.....茂....禰豆子...六太.....兄ちゃん...」

 

「うっ......ぐ.....」

 

「!!」

 

俺は家族の姿を見て絶望していると微かに呻き声が聞こえ振り返ってみると悠兄ちゃんがまだ息をしている。俺は急いで兄ちゃんのそばに駆け寄り安否を確認した。

 

「兄ちゃん!大丈夫!?に、兄ちゃんう、腕が!」

 

「僕のことはいいから...早く禰豆子のところへ.......まだ...息が...ある」

 

俺は言われたとうりに禰豆子のそばへ駆け寄り禰豆子の顔に耳を近づけた。すると禰豆子から微かに呼吸を感じ少し安心した。

 

「炭...治郎...早く...禰豆子を医者に見せないと...手遅れになる前に...」

 

「でもどうしこんなことに!?」

 

「説明は後だ....早く...禰豆子を.....」

 

「で、でも!」

 

「いいから早く!」

 

「う、うん!」

 

俺は禰豆子を背負い兄ちゃんを立たせ医者のいる町まで向かった。どうしてこんなことになった?冬眠出来なかった熊のせいか?いやあり得ない。もし熊が出たなら兄ちゃんを見た途端逃げ出すはずだ。けど今はそんなことを考えてる場合じゃない。早く禰豆子と兄ちゃんを医者に見せないと。

 

「兄ちゃん腕、大丈夫?」

 

「大丈夫だよもう血は止まっているし」

 

俺は少し安心した、そうだ兄ちゃんは家族の中で1番強い、熊に出くわした時も助けてくれた。俺たちに出来ないことはみんな兄ちゃんがやってくれた。いつも助けられてばかりだ。けど今度は、俺が助ける番だ。このまま山を降りていけば町まで着く、三郎爺さんにも助けてもらおう。けどまた俺達に不幸が降り注いだ。

 

「炭治郎危ない!」

 

「!?」

 

「グオオオオ!!!」

 

すると突然背負っていた禰豆子が叫び出し俺は驚いて足を滑らして崖から落ちてしまった。幸い崖はそれ程高くなく崖の下に積もっていた雪のおかげで助かった。

 

「炭治郎!大丈夫!?」

 

「俺は大丈夫!けど禰豆子が!」

 

俺は禰豆子がいる方へと振り向くとそこに禰豆子が立っていた。俺は禰豆子に駆け寄り話しかける。

 

「禰豆子!大丈夫か!?歩かなくていい!俺が町まで運んでやるから!」

 

「炭治郎ダメだ!禰豆子に近づくな危ない!」

 

「禰豆子...!」

 

俺は兄ちゃんの忠告を無視して禰豆子に駆け寄る。すると禰豆子は俺に襲いかかり噛みつこうとした。俺はすぐさま手に持っていた斧で防ぐ。

けどものすごい力でこれ以上食い止めることができない。

 

「炭治郎、今助けに行く!」

 

兄ちゃんはそう言うと崖から降りてきて俺を助けようとした。それと同時に刀を持った一人の男が禰豆子に襲いかかった。俺は反射的に避け禰

豆子は刀で斬られることはなかった。男は一旦距離を置くと俺に話かける。

 

「.....何故庇う?」

 

「こいつは俺の妹なんだ!」

 

「炭治郎ー!」

 

俺と男が兄ちゃんの方へと振り向くと、今度は兄ちゃんに話かけた。

 

「....お前、腕はどうした?」

 

「鬼に喰われた」

 

「そこの鬼に喰われたのか?」

 

「違う!」

 

男は少し考えるようなそぶりを見せると、俺に向かって走り出した。俺は禰豆子に覆い被さり守ろうとしたけど既に禰豆子はおらず男に捕まっていた。俺と兄ちゃんはすぐに禰豆子を助けようとする。

 

「動くな」

 

「「!!」」

 

「俺の仕事は鬼を斬ることだ。勿論お前の妹の首も刎ねる」

 

「待ってくれ、禰豆子は誰も殺してない!!俺の家にはもう一つ嗅いだことのない誰かの匂いがした!」

 

「そうだ!俺はその鬼に襲われて家族が殺された!」

 

「禰豆子は違うんだ!どうしてそうなったのかは分からないけど!」

 

「簡単な話だ、傷口に鬼の血を浴びたから鬼になった。人喰い鬼はそうやって増える」

 

(そうか、禰豆子はあの時!)

 

「禰豆子は人を喰ったりしない!」

 

「よくもまあ、今しがた己が喰われそうになっておいて」

 

「違う!!俺のことはちゃんとわかっているはずだ!」

 

「俺が誰も傷つけさせない!きっと禰豆子を人間に戻す!絶対に治します!」

 

「鬼になったら人間に戻ることはない」

 

俺が禰豆子を助けようと必死に説得しても男は動じなかった。けど諦めない必ず禰豆子を助ける。

 

「家族を殺した奴も見つけ出すから!俺が全部ちゃんとするから!だから、だから...!やめてくれ!」

 

俺の説得も虚しく男は禰豆子に刀を突きつける。俺はもうどうしていいか分からない。だから俺は男の目の前で土下座をした。

 

「やめて下さい.......どうか妹を殺さないで下さい.....お願いします...お願いします...」

 

「炭治郎....」

 

すると男は俺に喝を入れるように突然怒り出した。

 

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」

 

「「!!」」

 

「惨めったらしくうずくまるのはやめろ!!そんなことが通用するならお前の家族は殺されていない!奪うか奪われるかの時に主導権を握れない弱者が、妹を治す?仇を見つける?笑止千万!!弱者にはなんの権利もなんの選択肢もない!ことごとく力で強者にねじ伏せられるのみ!!妹を治す方法なら鬼なら知っているかもしれない、だが!鬼どもがお前の意志や願いを尊重してくれると思うなよ!当然俺もお前のことを尊重しない!それが現実だ!なぜ、さっきお前は妹に覆い被さった!?あんなことで妹を守ったつもりか!?なぜ斧を振らなかった!?なぜ俺に背中を見せた!?そのしくじりで妹を取られている!お前ごと妹を串刺しにしてもよかったのだぞ!」

 

俺は男の言葉で思い知らされた、弱者にはなんの力もない弱い奴は強い奴に喰われるのが世の常、自然でも社会でもそれは変わらない。けどどうすればいい。今の俺には禰豆子ををあの男から救ってやる力もない。権利もない一体どうしたら禰豆子を助けられるんだ。そうしてる内に男は禰豆子に刀を突き立て禰豆子に突き刺した。

 

「やめろオオオオ!!」

 

俺は禰豆子を助けるために駆け出した。どうなっても構わない。禰豆子さえ助けられれば、すると俺の隣から一つの影が通り過ぎる。よく見るとその影の正体は兄ちゃんだった。兄ちゃんは勢いつけて飛び上がり男の顔面に蹴りを入れた。男は受け身を取り体勢を立て直す。

 

「これ以上家族を傷つけさせない。これ以上家族を失うわけにはいかない!」

 

「兄ちゃん!」

 

「くっ....!」

 

男はは何か危険を感じたのか兄ちゃんに向かって刀を向ける。兄ちゃんの今まで見たこともない形相で男を睨みつけていた。兄ちゃんは俺の方へ向くと一言呟いた。

 

「炭治郎...僕から離れて」

 

兄ちゃんの形相に驚きながら、言われるがままに距離を置いた。

 

「炭治郎...いつか話そうと思ってたけど今見せる時みたいだね。炭治郎見ていてくれ僕の...変身!」

 

「なにをするつもりだ!?」

 

男は警戒を緩めず兄ちゃんに刀を構えている。すると兄ちゃんは大きく息を吸い雄叫び上げるように叫んだ。

 

「アマゾンッ!!」

 

兄ちゃんが叫ぶとものすごい衝撃が起き吹き飛ばされそうになる。兄ちゃんの体からは緑色の炎のようなものが噴き出しあまりの熱さから地面の雪は溶け、木が燃え始めた。やがてそれが収まると目の前には兄ちゃんはおらず代わりに異形の怪物が立っていた。その怪物は全身が緑色で

赤い目をしており、手足には、どんなものでも切り裂いてしまいそうな刃物がついていた。その怪物は雄叫びを上げ男に飛びかかり蹴りを入れようとする。が、男はすぐに反応して後ろに飛び攻撃を避ける。怪物はすぐさま男に攻撃を仕掛け、連続して拳を突き出してきた。男は刀を巧みに操りなんとか怪物の攻撃をいなした。それでも怪物は男に攻撃を仕掛け、今度は腕にたいていは刃物で男を切り裂こうとした。しかしそれでも男は怪物の攻撃を紙一重で避け続ける。怪物の攻撃が止んだ隙に男は怪物に刀を斬りつけた。怪物は男の刀を受けよろめき膝をつく、男は怪物に近づいて首を斬ろうと刀を振り落としたが、片手で受け止められてしまった。

 

「何っ!」

 

男は刀を離そうと力を込めるが、びくともしない様子だ。そのうち男につけられた傷はあっという間に治り、怪物は男の刀をへし折った。

 

「しまった!」

 

刀を折られた男はすぐに距離をとり折られた刀で構えをとる。男は少し焦っているようだった。そんなことは御構い無しな怪物は男に近づき腕を大きく振り上げ男に向かって振り下ろす。男は覚悟を決めたのか、折られた刀で怪物に斬りつこうとする。けどどちらが勝つのかは素人の俺でもわかった。このままではあの怪物、すなわち自分の兄がこの男を殺してしまうだろう。そんなことはさせない。兄ちゃんを人殺しにはさせない。俺は大声で叫んだ。

 

「兄ちゃん!!!」

 

俺の叫びに気付いたのかもう少しで男に当たりそうなところで止また。男も折れた刀を鞘に戻し怪物見る。怪物も男を睨みつけた後元の姿

竈門悠に戻り、いつの間にか無くなっていた右腕が戻っていた。

 

「炭治郎....」

 

「........」

 

「ごめん、炭治郎ついかっとなって」

 

元の兄ちゃん戻って一安心した俺は男の元から離れた禰豆子を探す。

 

「禰豆子っ!禰豆子!」

 

俺は禰豆子を見つけ駆け寄ろうとすると、後ろから兄ちゃんに止められた。

 

「ダメだ炭治郎今禰豆子は鬼なんだ近づいたらだめだ」

 

兄ちゃんにそう言われた俺は否定した。

 

「大丈夫だよ兄ちゃん禰豆子は人は襲わないよ」

 

俺はそう言って禰豆子に近づきこう言った。

 

「大丈夫だよ禰豆子、もう大丈夫」

 

俺は禰豆子の頭を優しく撫でる。すると禰豆子はまるで遊び疲れた子供のように眠ってしまった。

 

(こいつらは何か違うかもしれない)

 

男は俺に近づいてこういった。

 

「狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)という老人を訪ねろ。冨岡義勇(とみおかぎゆう)に言われてきたと言え。夜の間に出発しろ、大丈夫だ、この辺りは鬼が殆ど居ない」

 

男はそう言って兄ちゃんを見たあと何処かへと消えた。




戦闘描写かくのむじぃ


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決意

お待たせしました。第四話です。


僕は炭治郎と禰豆子と冨岡という男が言っていた場所に向かうことにした。出発する前に家族を埋葬してから出発することにした。

 

「行こう炭治郎、禰豆子」

 

「うん」

 

僕はまだ悲しい顔をしている炭治郎とぼーっとしている禰豆子を連れて鱗滝と言う老人がいる狭霧山の麓に向かった。途中、禰豆子のために畑仕事をしている人からいらない籠と藁と竹をもらい、それを使って穴の空いた籠を直した。そこに禰豆子を入れさせようとするが、禰豆子の体が大きくて入らなかった。すると禰豆子が突然小さくなり始め籠の中に入った。

 

「禰豆子、小さくなれるんだ」

 

「偉いぞ禰豆子」

 

僕は禰豆子が小さくなったことに驚いていると、炭治郎は優しく禰豆子の頭を撫でる。禰豆子も心なしか嬉しそうだ。日が沈み、月が昇る頃、

僕たちは寝泊まりできる場所がないか探していると、小さなお堂を見つけた。

 

「今夜はここでここで寝よう。明かりがついているし、誰がいるみたいだから、泊めてもらおう、夜は鬼が出るかもしれないし、危険だ」

 

「!!待って兄ちゃん!お堂から血の匂いがする!」

 

「そんな....炭治郎、禰豆子を連れて離れてるだ」

 

「わかった!」

 

僕は炭治郎と禰豆子を安全な場所まで離れさせ、お堂の中に入る。

 

「(もしかすると、鬼がいるかもしれない)」

 

「!!」

 

案の定そこにいたのは今まさに人を喰っている鬼がいた。鬼は気付いたのか、僕の方えと振り向く。

 

「なんだ、おい。ここは俺の縄張りだぞ俺の餌場を荒らしたら許さねぇぞ」

 

(やっぱり鬼だ!)

 

鬼は舌舐めずりをして僕を不思議そうに見る。

 

「.......んん?妙な感じがするな?お前、人間か?」

 

すると鬼はものすごい速さで僕に飛びかかり噛みつこうとする。僕は咄嗟に鬼の腹に蹴りを入れて噛まれずに済んだ。

 

「兄ちゃん!」

 

「炭治郎!こっちに来るな!」

 

「お前なかなかやるなぁ。でも蹴りを入れただけじゃ俺は殺せない」

 

「それはどうかな?」

 

「ああぁ?」

 

僕は鬼を睨みつけながら立ち上がり大きく息を吸う。そして変身するためにあの言葉を叫ぶ。

 

「アマゾンッ!」

 

僕は怪物の姿に変身し、鬼は僕が変身した衝撃で吹き飛ばされる。僕は鬼に威嚇しながら攻撃の態勢を取る。

 

「ぐうあああ!」

 

「な、なんだこいつは!?」

 

吹き飛ばされた鬼は僕の姿を見て訳もわからず困惑していた。僕は隙をついて鬼に飛び掛かる。しかし鬼は咄嗟に飛び上がり攻撃を避けた。

 

「クソッなんなんだこいつは!?俺と同じ鬼か!?いや、何か鬼とは違う気がする!」(とにかくこいつはやべえというのは確かだ。まずは、こいつよりも先に、あのガキを喰おう問題はその後だ!)

 

鬼は急に僕の方ではなく、別の方向に走り出した。

 

「!?」

 

どこに向かうきだ?僕は鬼の走って行った方向に目をやる。そこにいたのは炭治郎と禰豆子であった。鬼は僕より先に炭治郎の方を襲おうとしたのだろう。炭治郎は禰豆子を守るように体を疼くまる。

 

「しまった!炭治郎!禰豆子!」

 

この距離では間に合わない。そんな時だった。

 

「うしゃああああ!まずはお前から喰ってやぎゅ!?」

 

禰豆子が炭治郎の体をすり抜けて鬼の顔面を蹴り飛ばした。禰豆子が蹴り飛ばした勢いで鬼の頭は吹き飛んでしまった。

 

「禰豆子!」

 

「フゥ、フゥ」

 

禰豆子は炭治郎が襲われたことに対して怒っているのか青筋が立っている。しかし鬼は頭が吹き飛ばされた程度では死なず、体だけになった鬼は今度は禰豆子に襲い掛かろうとした。僕は襲われている禰豆子の方へと走り出す。

 

「てめぇえらぁあ!何故鬼と人間がつるんでるだぁああ!?訳の分からねぇ奴もいるしよおおお!」

 

頭の方も腕を生やして炭治郎に襲い掛かる。炭治郎は斧を使い、鬼の攻撃を防ぐ、そして炭治郎は自慢の硬い頭で鬼に頭突きをした。相当効いたのか鬼は少し怯みその隙に木に向かって投げ飛ばし身動きを取れないようにした。禰豆子を助けに行った僕は禰豆子を崖から突き落とそうとする鬼の体を背中から突き刺しそのまま腕を振り上げ、真っ二つに切り裂いた。

 

「ぎゃっ!!!」

 

遠くの方で鬼の声がしたので僕と禰豆子は炭治郎のもとへと走り出した。そこにいたのは小刀を持っている炭治郎と気絶している鬼がいた。炭治郎はこの小刀で鬼に止めを刺そうとしているようだ。僕は変身を解き炭治郎を見守る。すると後ろから気配を感じ振り返ると、そこには天狗の面をつけた老人が立っていた。

 

「(この人は誰だ?もしかして冨岡という男が言っていた鱗滝がこの人か?)」

 

天狗の面をつけた老人は炭治郎に近寄り肩を掴んだ。驚いた炭治郎は振り向く。

 

「そんなものでは止めを刺せん」

 

「ど、どうしたら止めを刺せますか?」

 

「人に聞くな、自分の頭で考えられないのか」

 

炭治郎は天狗の面をつけた老人にどうやって止めを刺すのか質問をする。しかし老人は炭治郎の質問には答えなかった。炭治郎はどうするか悩み近くにあった大きな石を持ち鬼の頭を潰そうとする。しかし炭治郎はまだ決心がついていないのか、迷っている様子だ。その間に鬼が目覚め周りを見渡し状況を確認していた。

 

「あっ!」

 

「!!」

 

「もたもたしてたら夜が明けてしまった.....」

 

炭治郎が悩んでいる内に太陽が顔を出し鬼に日差しが当たる。

 

「ギャアッ!ギャアアア!!ギィャアアア!!!」

 

すると鬼はたちまち灰になって消滅した。

 

(日に当たったら鬼が灰になった!?禰豆子は大丈夫だろうか?)

 

僕は禰豆子を探すと禰豆子はいつの間にお堂の中に隠れていた。

 

「よかった無事か」

 

僕は禰豆子が無事で安心し外に出る。

 

(そういえば僕は日に当たっても平気みたいだ。僕は鬼じゃないのか?)

 

僕はそんな疑問を持つ日に当たっても平気なようだし、鬼ではないようだ。しかしあんな怪物の姿になれるのだから人間ではないのも確かだ。

 

(考えても仕方ないな)

 

自分は何者なのか、考えるのは後にして炭治郎のもとに行く。炭治郎のもとへと来る頃には、老人は鬼に殺された人を埋葬していた。老人は僕たちの方へ向き自己紹介をする。

 

「儂は鱗滝左近次だ。義勇の紹介はお前たちで間違いないな?」

 

「は、はい、竈門炭治郎と言います。妹は禰豆子で、こっちは....」

 

「竈門悠です」

 

鱗滝と名乗る老人は僕たちを見た後炭治郎の方に質問を投げかけた。

 

「.....炭治郎、妹が人を喰った時お前はどうする?」

 

「.......」

 

炭治郎は鱗滝という老人の質問に答えられず、黙っていると、炭治郎は頬を叩かれた。

 

「判断が遅い。お前はとにかく判断が遅い、朝になるまで鬼にとどめを刺せなかった」

 

「..........」

 

「今の質問に間髪入れず、答えられなかったのは何故か?お前の覚悟が甘いからだ。妹が人を喰った時やることは二つ、妹を殺す、お前はひらを切って死ぬ、鬼になった妹を連れて行くということはそういうことなのだ、しかしこれは絶対にあってはならないと肝に銘じておけ、罪なき人の命を奪う、それだけはあってはならない。儂のいっていることがわかるか?」

 

「はい!!」

 

鱗滝という人の喝に炭治郎は力強く答えた。

 

「.......では、これからお前が鬼殺の剣士として相応しいかどうかを試す。妹を背負ってついてこい」

 

「はい!」

 

もう一度力強く答えた炭治郎は、禰豆子を連れて行くためにお堂の中へ入っていった。炭治郎がお堂に行ってる間に鱗滝という人は今度は僕に質問をしてきた。

 

「.....悠」

 

「は、はい」

 

「お前はあの力を何のために使う?」

 

その質問に僕は迷いなく答えた。

 

「家族や鬼に脅かされる人々を守るために使います」

 

鱗滝という人はこれ以上僕に質問をしてこなかった。




次回までお楽しみに


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狭霧山にて

第五話です。今回は短めです。


僕と炭治郎は鱗滝さんについて来いと言われ走りながら鱗滝さんについて行った。鱗滝さんは老人とは思えない程の速さで走り、僕たちはついて行くのに必死だった。僕はまだ平気だが、炭治郎は禰豆子を背負っているのもあって相当疲れているようだ。

 

「大丈夫炭治郎?禰豆子、僕が代わりに背負ってあげようか?」

 

「大丈夫だよ兄ちゃんはぁ、はぁ、少しでも強くなりたいんだ!はぁ、兄ちゃんに!はぁ、助けられてばかりじゃ嫌なんだ!はぁ、自分だけで鬼を倒せるぐらい強くなりたいんだ!はぁはぁぜぇっ......!」

 

「炭治郎......」

 

僕は炭治郎の決意を尊重し、そのまま走ることにした。しばらく走り、小さな家の前に止まった。どうやらここは、鱗滝さんの家らしい。着いた頃にはもう日が暮れていた。炭治郎はかなりこたえたのか、その場で膝を突いて息をきらし顔が青白くなり汗も大量にかいていた。普通の人間じゃない僕は少しも汗をかいていないし息もあがっていなかった。

 

「こ....、これでゼェ、ゼェ、俺は、認められましたか?」

 

「試すのは今からだ、山に登る」

 

鱗滝さんの言葉に、炭治郎は驚きつつも鱗滝さんの方へとついてった。疲れきった炭治郎の背中を僕は心配しながら禰豆子と一緒に見送った。しばらく禰豆子と待っていると何故か鱗滝さんだけが戻ってきた。

 

「あれ?鱗滝さん、炭治郎は.....?」

 

「山においてきた」

 

「ええっ!どうして!」

 

「炭治郎には一人で夜明け前には戻ってくるように命じた。山には罠が仕掛けられている、そう簡単には戻ってこれん」

 

「そんな!じゃあ戻ってこれなかったら!?」

 

「山を降りて来られないようでは、奴を認める訳にはいかん」

 

僕は居ても立っても居られなくなり炭治郎を助けようと外に出る。すると鱗滝さんが僕を止めた。

 

「どこに行くつもりだ?」

 

「どこに行くって、炭治郎を助けに行くんですよ!」

 

「ダメだ、奴一人で降りてこなければ意味がない」

 

「そんなの関係ない!もし降りて来られなかったら炭治郎が死んでしまう!」

 

「お前たちは兄弟であろう?家族を信じてやらなくてどうする?」

 

「!!」

 

僕はあの時炭治郎が言っていたことを思い出した。

 

(少しでも強くなりたいんだ!はぁ、兄ちゃんに!はぁ、助けられてばかりじゃ嫌なんだ!はぁ、自分だけで鬼を倒せるぐらい強くなりたいんだ!)

 

(そうだよな、弟を信じてやらなくてどうするんだ)

 

僕は家に戻り炭治郎が戻ってくるのを祈る。

 

「炭治郎、絶対に戻ってきてくれ、僕は信じてるよ」

 

僕は絶対に戻って来ると信じ、炭治郎の帰りを待った。あれからどれくらい経っただろうか。禰豆子は眠ってしまい、月はもう山に隠れて、もうすぐ夜明けが近づいていた。しかし炭治郎は未だ戻ってこない。けど僕は必ず炭治郎が戻ってくると信じる。山から明かりが差し込み始めもうダメかと思ったその時誰かが扉を開ける。そこに立っていたのは、ぼろぼろになった炭治郎だった。

 

「炭治郎.....!」

 

「も....どり、ました」

 

「......お前を認める。竈門炭治郎」

 

僕は駆け寄り炭治郎の帰りを喜んだ、そして鱗滝さんは炭治郎を認めてくれた。




次回までお楽しみに。


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悠日記

第六話です。


鬼殺隊、その数およそ数百名、政府から正式に認められていない組織。だが古より今日も鬼を狩る。しかし鬼殺隊を誰が率いているのか、謎に包まれていた。

 

鬼、主食・人間、人間を殺して喰べる。いつ、どこから現れたかは不明身体能力が高く傷などもたちどころに治る。斬り落とされた肉も繋がり手足も新たに生やすことも可能。体の形を変えたり異能を持つ鬼もいる。太陽の光か特別な刀で首を切り落とさない限り殺さない。

 

鬼殺隊は生身の体で鬼に立ち向かう。人であるから傷の治りも遅く、失った手足が元に戻ることもない。それでも鬼に立ち向かう、人を守るために。

 

「儂は"育手"だ。文字通り剣士を育てる。育手は山程いてそれぞれの場所それぞれのやり方で剣士を育てる。鬼殺隊に入るためには"藤襲山"で行われる"最終選別"で生き残らなければならない。最終選別を受けていいかどうかは儂が決める」

 

炭治郎の修行が始まった。炭治郎は毎日罠だらけの山を下っている。炭治郎が死んでしまわないか心配だが、信じると決めた僕は見守ることにした。炭治郎は日に日に強くなっている。炭治郎がどんどん成長していくのは見ていてとても嬉しかった。刀を持って山を下ることもあるようだ炭治郎曰く、本当に邪魔で仕方がないと言って、僕に愚痴をこぼしていた。最近は刀の素振りをするようになり、腕が動かなくなるほど素振りをして、ご飯の時は僕が代わりに食べさせている。今日は刀の使い方の練習で、もし刀を折ったらお前の骨を折ると脅されていた。今度は受け身の練習、炭治郎は刀を持ち鱗滝さんは丸腰だ、炭治郎は何度も立ち向かうが、全く鱗滝さんには歯が立っていなかった。今日は呼吸法と型のようなものを習っている。どうやらその呼吸法というのは、人間の身体能力を極限まで上げる方法らしい。鬼殺隊はみんなこの呼吸法を使って鬼と戦っているようだ。禰豆子が目覚めなくなり半年が経った。医者に診てもらっても、どこにも異常がなく結局どうして目覚めなかったのかわからない。何度も禰豆子が死ぬんじゃないかと不安になる。朝目覚めたら、もう動かなくなってるんじゃないかと不安で仕方なかった。炭治郎は今日も山下りだ。何度も何度も繰り返して死に物狂いで頑張っている。

 

「もう教えることはない」

 

狭霧山に来てから丁度一年が経った頃炭治郎は突然鱗滝さんにそう言われた。後で鱗滝さんから聞いたところ、炭治郎に岩を斬ったら最終選別に行くことを許可するという無理難題を出してきた。僕は、炭治郎がいつかちゃんと岩を斬ると信じている。けど半年経っても炭治郎はま岩を斬ることがでいなかった。半年が過ぎた頃鱗滝さんは僕にある質問をしてきた。

 

「悠よ、お前は赤い怪人という者を知っているか?」

 

「?さぁ、分かりません。誰なんです?その、赤い怪人って?」

 

鱗滝さんは腕を組み赤い怪人という者について語り出した。

 

「赤い怪人、その者は文字通り体が赤く緑色の目をしており手足には鋭利なトカゲの襟のようなものがついてる。奴は今から八年前突如鬼殺隊の前に現れ、鬼を狩り始めた。赤い怪人は突然現れては人間には目もくれず鬼ばかりを狙っていた。正体誰にも分からず、いつしかその者を赤い怪人と呼ぶようになった」

 

「その赤い怪人ってなんか兄ちゃんのあの姿に似てますね」

 

「その通り、だからお前も何か知っていると思っていたが....」

 

「すみません、お役に立てなくて」

 

「もしかすると、赤い怪人はお前の秘密を何か知っているかもしれん。見つけたら、聞き出すんだ」

 

僕はなんとなくだけど、近い内に赤い怪人に会うような気がした。炭治郎は未だ、岩を斬ることができなかった。最近では、炭治郎は錆兎(さびと)という少年と真菰(まこも)という少女に鍛えてもらっているらしい、話によるとその二人は鱗滝さんの弟子とのこと、あれからまた半年が経ち、遂に炭治郎は、岩斬ることができた。実は鱗滝さんは炭治郎を最終選別に行かせたくなくあんな無茶な課題を出したらしい。その気持ちはすごくわかる、僕も鱗滝さんと同じ立場だったら炭治郎を最終選別には行かせたくない。でも、炭治郎はこの二年間で本当に頑張った。これなら安心して最終選別に行かせられる。炭治郎は鱗滝さんから狐の面をもらい支度をし、7日間の最終選別に向かった。

 

「兄ちゃん!鱗滝さん!行って来ます!錆兎と真菰によろしく!」

 

「ちゃんと帰ってこいよ!禰豆子も待っているから!」

 

僕は大きく手を振り、炭治郎を見送った。すると隣にいた鱗滝さんが少し驚いた声で呟いた。

 

「炭治郎.....なぜお前が........死んだあの子たちの名を知っている?」

 

「えっ......?」

 

 

 

炭治郎が最終選別に向かって今日で7日目だ。炭治郎が今日で帰ってくる、そのために今夜はご馳走を作ろう。でも、禰豆子はまだ目を覚さない、一体いつになったら目を覚ますのだろうか。このままずっと目を覚まさないんじゃないかといつも思う。しかし突然いままで目を覚さなかった禰豆子が急に起き上がった。

 

「ね、禰豆子!?やっと目が覚めたんだっ...て、ちょとどこ行くの!」

 

禰豆子は目を覚ましたと思ったら、扉を蹴飛ばし外に出た。僕は慌てて追いかける。

 

「ちょっと禰豆子、外に出るならちゃんと扉を開けて出ていかないと!扉壊れちゃったじゃないか.....」

 

僕は禰豆子に注意していると、誰かがそこにいた。振り返るとそこにいたのは最終選別に行っていた炭治郎が帰っていた。炭治郎は杖をついておりかなり疲れている様子だった。

 

「炭治郎!」

 

「兄ちゃん!禰豆子!やっと目を覚ましたんだ!」

 

炭治郎は僕たちに駆け寄ろとするが、足に力が入らないのか、その場でこけてしまった。禰豆子は立ち上がれない炭治郎を抱きしめる。僕も続い抱きしめ、炭治郎は泣き出した。

 

「わーーーーーっ!お前なんで急に寝るんだよぉ!ずっと起きないでさぁ!しぬかとおもっただろうがぁ!」

 

「炭治郎、炭治郎、よくやったな。よくやった」

 

僕もたまらず泣いてしまい、今度は鱗滝さんも涙を流しながら抱きしめてきた。

 

「よく生きて戻った!!!」

 

あれから十五日後、炭治郎もすっかり元気になり、禰豆子もあれからなんの異常もない。

 

「あっ兄ちゃんあの人かな?」

 

僕は扉から顔を出すと遠くの方に沢山の風鈴がついた傘を被った人が来ていた。顔は傘のせいで見えないが、多分あの人が炭治郎の刀を作ってくれた人だろう。

 

「ふ、風鈴」

 

「俺は鋼鐡塚(はがねづか)という者だ、竈門炭治郎の刀を打った者だ。」

 

「竈門炭治郎は俺です。こっちは俺の兄の.....」

 

「竈門悠です。炭治郎の刀を作ってくれてありがとうございます」

 

「お前には興味ない、邪魔だ」

 

「ええっ!?」

 

軽く自己紹介僕は鋼鐡塚さんに邪魔だと言われ少し傷ついた。鋼鐡塚さんは家に入らずその場で風呂敷を開け始めた。

 

「あの、一旦家に上がってからにしませんか?」

 

「うるせえな、邪魔だって言ってんだろ」

 

「.........」

 

僕はまたしても鋼鐡塚さんに邪魔だと言われてしまった。顔を上げた鋼鐡塚さんは鱗滝さんと同じようにひょっとこの面を被っていた。鬼殺隊に関係する人はみんな面を被っているのだろうか。そんなことを考えていると、鋼鐡塚さんは風呂敷から刀を取り出した。

 

「これが日輪刀だ」

 

「あの....どうぞ中へ」

 

「俺が打った刀だ」

 

「お茶入れますよ」

 

「日輪刀の原料である砂鉄と鉱石は太陽に1番近い山でとれる。"猩々緋砂鉄""猩々緋鉱石"陽の光を吸収する鉱石だ」

 

「風呂敷が土で汚れると思うんですよ」

 

「陽光山は一年中陽が射している山だ。曇らないし、雨も降らない」

 

(この人全然人の話を聞かないな)

 

僕は心の中でそう思っていると、鋼鐡塚さんは炭治郎の顔を見た。

 

「んん?んんん?あぁお前"赫灼の子"じゃねえか、こりゃあ縁起がいい」

 

「いや俺は炭十郎と葵枝の息子です」

 

「炭治郎、そういう意味じゃないと思うよ」

 

「頭の毛と目ん玉が赤みがかってんだろう、火仕事する家はそうゆう子が生まれると縁起がいいって喜ぶんだぜぇ」

 

「....そうなんですか、知りませんでした」

 

鋼鐡塚さんは炭治郎の頬を指で刺しながら赫灼の子について説明した。

 

「こりゃあ、刀が赤くなるかもしれんぞ、なぁ鱗滝」

 

「刀が赤く?それってどう言う.....?」

 

「まぁ見ればわかる」

 

鋼鐡塚さんはやっと家に上がってくれ、炭治郎に刀を渡す。炭治郎は刀を引き抜き刀身を見る。その刀は普通の刀となにも変わりがなかった。

 

「日輪刀は別名、色変わりの刀と言ってなぁ、持ち主によって色が変わるのさぁ」

 

すると炭治郎の日輪刀はみるみる内に刀身が黒くなっていった。

 

「おおっ!」

 

「色が変わった!」

 

「黒っ!」

 

「黒いな....」

 

「えっ!黒いとなんかよくないんですか!?不吉ですか!?」

 

「いやそうゆうらかではないが......、あまり見ないな漆黒は」

 

「キーーーーーーーッ!俺は鮮やかな赤い刀身が観れると思ったのにクソーーーーーーッ!」

 

「いたたっ危ない!落ち着いて下さい!何歳ですか!?」

 

「三十七だ!!」

 

鋼鐡塚さんは突然癇癪を起こし、炭治郎に飛びかかる。僕は慌てて鋼鐡塚さんを止める。どうやら炭治郎の刀に出た、黒い刃になる人は余りおらず数が少なすぎて詳細がわからないらしい。わからなさすぎて、出世できない剣士は黒い刃と言われるみたいだ。因みに炭治郎の階級は癸で甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸の十段階の内1番下だ。

 

「カアア!竈門炭治郎!北西ノ町ヘェ向カエェ!!鬼狩リトシテノォ最初ノ仕事デアル!」

 

「烏が喋ってる....」

 

「心シテカカレェェ!北西ノ町デワァァ!少女ガ消エテイルゥ!毎夜毎夜!少女ガ!少女ガ!消エテイル!!!」




次回からやっと戦闘、上手く書けるか不安


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初仕事

第七話、炭治郎の初仕事。


今夜は炭治郎の初仕事だ。炭治郎は今鬼殺隊専用の隊服を着て市松模様の羽織を羽織っており、腰には鋼鐡塚さんから貰った、日輪刀をさげていて、もう立派な隊士だ。炭治郎が今来ている隊服は特別な繊維でできていて、通気性が良く、濡れににくく、燃えにくい。弱い鬼では爪や牙では裂くことすらできない程頑丈だ。禰豆子には昼間でも移動できるように鱗滝さんが箱作ってくれた、"霧雲杉"という非常に軽い木でできており、"岩漆"というもので強度を上げている。これで禰豆子も日に晒されることもないので安心だ。鱗滝さんの憶測によると禰豆子は人を喰べる代わりに眠ることによって体力を回復しているのかもしれないとのこと、僕は炭治郎と一緒に鎹鴉が言っていた北西の町にいる。因みに鎹鴉が何故喋れるのかは分からない。すると僕の隣にふらふらと男の人が通り過ぎた。顔には殴られた跡がありかなり落ち込んだ様子だ。僕は近くにいた人に話を聞いた。

 

「すみません。あの人何かあったんですか?」

 

「ああ、和巳さんのこと?可哀想にあの人一緒にいた里子ちゃんが攫われちゃったのよ、毎晩毎晩気味が悪い、ああ嫌だ。夜が来るとまた若い娘が攫われる」

 

「炭治郎」

 

「うん。和巳さん!ちょっとお話しを聞きたいのですが、いいですか?」

 

「........」

 

和巳さんは里子さんが攫われた夜この場所でなにがあったのか説明した。

 

「ここで里子さんが消えたんだ、信じて貰えないかもしれないが.....」

 

「信じます!信じますよ!!信じる!!!」

 

「僕も信じますよ和巳さん、絶対に里子さんを見つけてみせます。だから安心して下さい。僕の弟は鼻がいいんです」

 

炭治郎は鬼を探すため、地面に伏せ匂いが残っていないか探す。和巳さんはその行動に引いていたが、僕が和巳さんを安心させる。

 

(微かに鬼の匂いが残っているけど、斑というか.....変な感じだ....)

 

「!炭治郎!鬼の気配がする!あっちだ!」

 

「匂いが濃くなった!!鬼が現れてる!!」

 

「ど、どうしたんだ急に!?」

 

「和巳さんはここで待ってて下さい!鬼が出ました!」

 

「えっ!?」

 

僕と炭治郎は屋根に飛び越のり鬼の気配がする方に向かう。

 

(と、跳んだ....!鬼の話、鬼殺隊、本当に...)

 

僕と炭治郎は鬼がいる場所がどこに隠れているか探す。しかし気配は感じるが、どこにどこにも見当たらない。見失ったか。そう思っていると、炭治郎の真下から強い気配を感じた。

 

「炭治郎!下だ!」

 

炭治郎は日輪刀を地面に突き刺す。

 

「ギャッ!!!」

 

すると地面から声がし、突然黒い何かが溢れ出す。その中から一人の女性が出てきた。僕は咄嗟に女性を掴む。鬼も掴もうとするが、間一髪のところで、避けることができた。

 

(こいつ、異能の鬼か)

 

地面から出てきた三本角の鬼は"血鬼術"という特殊な術を使う鬼だ。鱗滝さんの話によると血鬼術というのは長い年月をかけて人を喰らい力をつけた者が使えるらしい。あとで和巳さんも追いついてきた。

 

「和巳さん!?あそこで待っててって言ったじゃないですか!」

 

「こいつが里子さんを攫ったやつなんだろ!?黙って待ってるわけにはいかない!」

 

「.........わかりました。その代わり僕から離れないで下さい」

 

僕は和巳さんを守らながら相手の鬼を睨む。炭治郎が鬼に対して質問をした。

 

「攫った女の人たちはどこにいる!!!それから二つ聞く.....!」

 

しかし鬼は炭治郎の質問には答えず歯軋りをして地面に潜った。

 

「炭治郎気をつけろ。落ち着いて相手の匂いを探るんだ。和巳さんこの人を抱えて下さい」

 

僕は和巳さんに女性を抱えさせて鬼の気配を探る。炭治郎は集中し、鬼の匂いを探っている。そして目をカッと開き技を繰り出す。

 

水の呼吸 伍の型......

 

しかし飛び出してきたのは三体の鬼だった。炭治郎は驚き技は不発に終わったが落ち着いて別の技をくりだす。

 

(三人!?落ち着け!やれる!!)

 

捌の型 滝壺!!

 

炭治郎は刀を振り落とし真下にいる鬼に一撃を喰らわした。しかし途中で型を変えたせいで、まだ鬼は倒せていない。そして鬼はまた地面に潜り、姿をくらます。

 

(やっぱり人を守りながらでは鬼を斬れない。ここは僕も炭治郎を援護しないと)

 

すると後ろから二本角の鬼が女性を狙おうと迫る。炭治郎は咄嗟に技を繰り出す。

 

全集中 弐の型 水車!!

 

しかしまたしても炭治郎は鬼を着ることができなかった。

 

炭治郎は追撃しようとするが二本角の鬼は後ろによけ距離を取る。すると二本角の鬼は急に炭治郎に怒鳴った。

 

「貴様ァアアア!!邪魔をするなァァァ!!女の鮮度が落ちるだろうがァ!!もう今その女は十六になっているんだよ!!早く喰わないと刻一刻で味落ちるんだ!!」

 

すると後ろから一本角の鬼が二本角の鬼を宥めるように話し出した。

 

「冷静になれ俺よ、まぁいいさ、こんな夜があっても、この町では随分十六の娘を喰ったからな、どれも肉付きが良くて美味だった、俺は満足だよ」

 

「俺は満足じゃないんだよ!!まだ喰いたいのだ!!」

 

「化け物....、一昨晩攫った里子さんを返せ」

 

「里子?誰のことかねぇ?この蒐集品の中にその娘のかんざしがあれば喰ってるよ」

 

和巳さんは一本角の懐から出した沢山のかんざしを見ると里子さんのかんざしを見つけたのか涙を流した。それを見た僕は沸々と怒りが湧き上がってくる。炭治郎もそのようだ。

 

「.......炭治郎、和巳さんを連れて離れてくれ。この鬼は僕が殺す」

 

「わかったよ。和巳さんこっちです」

 

炭治郎は和巳さんを連れてある程度離れるのを見て、僕は変身のために息を吸う。

 

「何をするつもりだ?」

 

そして僕は相手を声で殺すかの如く大声で叫ぶ。

 

「アマゾンッッッ!!!」

 

そして僕は掛け声と共にアマゾンに変身する。それを見た和巳さんは驚いた様子で僕を見ていた。

 

「あ、あの人もあいつらと同じ化け物なのか!?」

 

「いいえ。兄ちゃんはあいつらとは違います。兄ちゃんはあんな奴らよりもずっと強い」

 

僕は構を取り相手を睨みつける。一本角の鬼は不思議そうに僕を見ていた。

 

「何者だ貴様?俺と同じ鬼........ではなさそうだな。まぁそんな事は俺には関係ない事だ地面に引きづり込んで串刺しにしてやる!」

 

一本角の鬼は僕に接近し、黒い沼のようなものの中に引きずり込もうとする。しかし僕はその中に引きずり込まれることはなかった。

 

「なに!?引きずり込まないだと!?何故だ!?何故お前は引きずり込めない!!」

 

「そんなこと、僕が知るか!!」

 

何故僕が鬼の沼に引きずり込められなかったのかはわからない。でもこれを勝機と見た僕は真下にいる一本角の鬼の頭を足で叩き潰そうとする。しかし、一本角の鬼は瞬時に地面に潜り回避した。またどこからか不意打ちでくるのだろう。しかし今の僕は変身する前よりも感覚が鋭くなっている。隠れていても、手にとるように鬼の場所がわかる。僕は感覚は感覚を研ぎ澄まし鬼を探す。すると今度は後ろの壁から出現し僕の背中を貫こうとするが、僕は振り返って貫こうとする鬼の腕を掴んだ。鬼は腕を引っ込めようとするが僕の力が強いせいで離すことができない。僕は腕を掴んだまま今度こそ鬼の顔にめがけて拳を突き出す。しかし鬼は咄嗟に自分の腕を切り落とし後ろに飛んで回避する。

 

「こいつなんて馬鹿力だ。この俺が力負けするとは.....、貴様!何故お前は人間と一緒にいる!?」

 

「そんなの簡単だ!炭治郎たちは俺の家族だからだ!!」

 

「家族?そんなくだらない理由で一緒にいるのか?」

 

「くだらなくなんかない!炭治郎と禰豆子は俺の大切な家族なんだ!もう二度と失うわけにはいかない!大切な家族は僕が守る!」

 

一本角の鬼はもう小細工は通用しないと悟ったのか、真正面から僕に突撃してきた。僕も構えを取り真正面から突撃する。僕は腕についている刃を鬼の首を狙い、鬼も爪で僕の首を狙う、すれ違がった僕と鬼は互いに振り返る。すると鬼の頭がごとりと落ち灰となって消滅した。僕は炭治郎がいる方に振り向くともう決着はついていた。炭治郎は今二本角の鬼にある質問をしようとしているところだ。

 

「鬼舞辻 無惨について知っていることを話してもらう」

 

「言えない」

 

二本角の鬼は酷く怯えた様子で質問には答えようとしない。

 

「言えない!言えない!言えない!言えない!言えない!言えないんだよオオオ!!!」

 

二本角の鬼は恐怖をかき消すように炭治郎に攻撃したが、炭治郎はぎりがり避けて鬼の首を切り、鬼は灰になって消滅した。




次回もお楽しみに。


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再会と出会い

第八話です


「次ハァ東京府浅草ァ!鬼ガ潜ンデイルトノ噂アリ!!カァアア!!」

 

「えっもう次に行くのか?」

 

「行クノヨォオ!!」

 

「炭治郎、早く行くぞ」

 

「ちょっと待って」

 

「待タァナイ!!」

 

鎹鴉は急かすように炭治郎の頭を突き、炭治郎は鎹鴉から逃げるように目的地に向かった。それから翌々日、浅草に着いた僕たちは夜でも昼のように明るい都会に驚いていた。

 

「夜でもこんなに明るいなんて......、都会ってすごいな」

 

(街はこんなに発展してるのか!!夜なのに明るい!!建物高っなんだあれ!!都会って......都会って.......)

 

炭治郎は都会に慣れていないせいか目眩がするようだ。かと言う僕もかなりしんどい。僕は心配して声をかける。

 

「大丈夫?炭治郎、もう少し静かな場所に行こう」

 

「う、うん」

 

僕たちは都会のはずれに行き、近くにあった屋台に止まる。この頃にはもう炭治郎はかなりやつれていた。

 

「山かけうどん二つください」

 

「あいよ」

 

炭治郎はやっと落ち着てお茶を飲む。都会の話は聞いたことはあったが、こんなに煌びやかな場所とは思っても見なかった。

 

「兄ちゃんたちここに来るのは初めてかい?」

 

「はい、田舎の方から来たもので」

 

「やっぱりな、まぁ都会は田舎と違って夜でもやかましいし、驚くのも当然か、俺も初めて来た時はぶったまげたもんよ。まぁ結局は慣れが肝心だな、しばらくここにいたら、いつかはなんともなくなる、俺もこうしてうどん屋やってんだ........、はいよ!山かけうどん二つ!」

 

「ありがとうございます」

 

僕は山かけうどんを二つもらい片方を炭治郎に渡し、できたてのうどんをすする。このうどんがまた美味しくて、特に出汁が美味い。この出汁はなにでできているのか、質問をする。

 

「このうどん美味しいですね。特にこのお出汁、なにを使ってるんですか?」

 

「悪いな、出汁の作り方は誰にも教えないと決めてるんだ」 

 

どうやら、出汁の作り方は秘密だそうだ。僕と炭治郎はあっと言う間に平らげて出汁も全て飲み干し、屋台のおじさんに、お金を払う。

 

「ありがとうございました。こんなに美味しいうどんを食べさせてくれて」

 

「いいんだよ、うまいうどんを客に食わせんのが俺の仕事だからな」

 

僕は美味しいうどんを食べて満足している時、突然感じたことのある気配を感じた。

 

「炭治郎、近くに鬼舞辻(きぶつじ)無惨(むざん)がいる!」

 

「うん!俺もあいつの匂いを感じる!」

 

鬼舞辻無惨、その鬼は今から千年以上前一番初めに鬼となった者、その鬼は自分の血を使い人間を鬼にかえることができ、禰豆子を元に戻す方法を知っているものかもしれない鬼だ。僕と炭治郎は人をかき分け気配を感じる方に行く。そしてその気配の正体の肩を掴んだ。男は僕の方へと振り返ると、化け物を見ているかのような顔をし、かなり驚いていた。

 

「き、貴様!?」

 

「見つけたぞ!鬼舞辻無惨!」

 

僕は無惨に殴りかかろうとする。しかし無惨が抱えていたものを見て僕は背筋が凍った。無惨が抱えていたのはまだ小さい女の子だった。炭治郎もそれを見て、驚いている。

 

「おとおさん、だぁれ?」

 

(こいつ.....!人間のふりをしているのか!?この子は普通の人間だ、家族のふりをしているのか!?この男は!?)

 

「私に何か様ですか?随分慌てていらっしゃるようですが......?」

 

「あら、どうしたの?」

 

「おかあさん」

 

「この人たちは、お知り合い?」

 

「いいや、困ったことに少しも.......知らない人たちですね、人違い、ではないでしょうか?」

 

「まぁ、そおなの?」

 

無惨は僕たちとは他人のふりをしやり過ごす。そしてその隙に近くに通りかかった夫婦の男の首に自分の血を流し込み男は痛みでよろける。

 

「あなた、どうしました?」

 

そして男は隣にいる女性に襲いかかり肩に噛みついた。

 

「キャアアアッ!?」

 

「クソッ!」

 

「どうした!?」

 

「なんだ!?」

 

「血が!?」

 

僕は即座に男を蹴り飛ばし取り押さえ、噛み付かれないように首を押さえる。

 

「あなた!?」

 

「奥さん!!こちらよりも自分のことを!!傷口に布を当てて強く抑えてください!!」

 

炭治郎は女性に駆け寄り傷口を布で抑えている。

 

「鬼舞辻無惨!!お前は僕が必ず殺す!!絶対に!その首を引き裂いてやる!!!」

 

「どうしたのかしらあの人.....?ねぇ月彦さん?」

 

「麗さんここは危険だ、向こうへ行こう」(あの化け物、まだ生きていたのか、一体なんなんだあいつは?まさかあの男の仲間か?)

 

無惨は人ごみに隠れ姿をくらます。その後警察が来て僕を引き離そうとする。

 

「貴様ら、何をしている!?」

 

「下がれ!」

 

「酔っ払いか!?離れろ!!」

 

「下がれ下がれ!どけ!」

 

「待ってくれ!あんたたちじゃ無理だ!抑えることはできない!お願いだ、離れてくれ!!」

 

「何を言っている!?あんたこそその男から離れろ!あっ何だこいつの顔!?これは.....、正気を失っているのか!?」

 

「こいつを引き剥がせ!」

 

「わかった!」

 

僕は必死に引き離されないように身を屈める。すると突然周りの人達が何やら騒ぎ始めた。

 

「わぁぁ!何だこの紋様は!?」

 

「周りが見えない!」

 

周りの人達は紋様とか何かが見えているようだが、僕にはなにも見えなかった。

 

「惑血 視覚夢幻の香」

 

「炭治郎!一体なにが見えているんだ!?説明してくれ!」

 

炭治郎は何かが見えているのか周りを見渡している。するとそこに着物を着た女性とその後ろに目つきの悪い男性が立っていた。

 

「あなたは、私の血鬼術が効かないようですね?その人を助けたいのならば力を貸します。見ての通り私は鬼ですが、医者でもあり、あの男鬼舞辻を抹殺したいと思っている」

 

僕たちは置いてきてしまった、禰豆子を連れ戻しあの二人がいる場所に向かおうとする。すると禰豆子は突然目つきを鋭くし目の前にいる男に警戒する。

 

「禰豆子、あの人は鬼だけど悪い人じゃないよ、多分.....」

 

僕もあまり確証が持てないが、禰豆子を宥める。

 

「待っててくれたんですか?俺は匂いを辿れるのに.......」

 

「目眩しの術をかけている場所にいるんだ、辿れるものか、まぁその男には何故か効かないみたいだが、それより、鬼じゃないかその女はしかも醜女だ」

 

「なんだと。聞き間違いか?禰豆子が醜女?なにを言ってる、お前の目は腐ってるのか!?」

 

「そうだ!醜女のはずないだろう!!よくみて見ろこの顔立ちを!!町でも評価の美人だったんだぞ禰豆子は!!」

 

「行くぞ」

 

「いやそこに座れ!!そして禰豆子の顔をよく見てみろ!!口枷外したらすっげぇぞ!ぶったまげんぞ!!」

 

男は僕たちの言うことには気にも止めずさっさと歩いていく。会って早々禰豆子を醜女というとはけしからん男だ。僕たちは歩きながら男に罵詈雑言浴びるが、男は顔色ひとつ変えなかった。そして家が見えてきて男の人が扉を開ける。

 

「戻りました」

 

「おかえりなさい」

 

「あっ大丈夫でしたか?お任せしてすみません」

 

「この方は大丈夫ですよ、ご主人は気の毒ですが、拘束して地下牢に」

 

どうやら襲われた女性も命に別状はないみたいだ。そして女性は僕たちに自己紹介をした。

 

「名乗っていませんでしたね、私は珠世(たまよ)と申します。その子は愈史郎(ゆしろう)、仲良くしてやって下さいね」

 

僕は隣にいる愈史郎さんに目をやる。愈史郎さんはものすごい形相で僕たちを睨みつけている、仲良くするのは無理そうだ。

 

「私は自分の体を随分弄っていますから、鬼舞辻の呪いも外しています。人を喰らうことなく暮らしていけるようにしました。人の血を少量飲むだけで事足りる」

 

「血を?一体どこから?」

 

僕は珠世さんが飲む血をどこから仕入れているのか質問する。

 

「不快に思われるかもしれませんが、金銭に余裕の無い方から輸血と称して血を買っています。勿論体には支障が出ない量です」

 

「(そうか.....この人たちも人は襲わないとしてもやはり鬼、人間の血は必要なんだ)」

 

「愈史郎はもっと少量の血で足ります。この子は私が鬼にしました」

 

「えっ!あなたがですか!?でも.....えっ?」

 

「そうですね、鬼舞辻以外は鬼を増やすことができないとされている。それは概ね正しいです。二百年以上かかって鬼にできたのは愈史郎ただ一人ですから」

 

珠世さんの言葉に炭治郎は驚き、僕も驚いていた。

 

「二百年以上も!?珠世さんは何歳ですか!?」

 

「女性に歳を聞くな無礼者!!」

 

「炭治郎、いくらなんでも女の人に年齢を聞くのは失礼だよ」

 

炭治郎は珠世さんに年齢を聞こうとして、愈史郎さんに怒りの喉突きを喰らい、喉を抑えてむせこんでいた。

 

「愈史郎!次にその子を殴ったら許しませんよ!」

 

「はい!!」(怒った顔も美しい........)

 

(なんなんだこの人........)

 

僕は切り替えの早い愈史郎さんの行動に少し引く。

 

「一つ.....誤解しないでほしいのですが、私は鬼を増やそうとはしません。不治の病や怪我などを負って余命幾許もない、そんな人にしかその処置はしません。その時は必ず本人に鬼となっても生き永らえたいか訊ねてからします」

 

珠世さんは何故人を鬼にするのか理由を話す。僕は嘘を言っているようには感じなかった。炭治郎は次に重要な質問をする。

 

「珠世さん、鬼になってしまった人を、人に戻す方法はありますか?」




次回もお楽しみに。


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暴走

第九話です今回は長め。


炭治郎の質問に珠世さんはゆっくりと答える。

 

「鬼を人に戻す方法は.............、あります」

 

「やっぱりあるんだ!」

 

「教えて下さっ...!」

 

「寄ろうとするな!珠世様に!」

 

「.........愈史郎」

 

「投げたのです珠世様、殴ってません」

 

「どちらもダメです」

 

炭治郎は珠世さんに鬼に戻す方法を教えて貰おうと珠世さんに近寄るが愈史郎さんに投げ飛ばされてしまった。珠世さんは愈史郎さんを叱りつけるが、全く反省していない様子だ。

 

「どんな傷にもどんな病にも必ず薬や治療法があるのです。ただ、今の時点では、鬼を人に戻すことはできない。ですが私たちは必ず、その治療法を確立させたいと思っています。治療薬を作るためには沢山の鬼の血を調べる必要がある。あなたにお願いしたいことは二つ。一つ、妹さんの血を調べさせて欲しい。二つできる限り鬼舞辻の血が濃い鬼からも血液を採取して来て欲しい。禰豆子さんは今極めて稀で特殊な状態です。二年間眠り続けたとのお話でしたが、恐らくはその際体が変化している。通常それ程長い間人の血肉や、獣の肉をくちにできなければ、まず間違いなく凶暴化します。しかし驚くべきことに禰豆子さんにはその症状が無い、この奇跡は今後の鍵になるでしょう。もう一つの願いは苛酷なものになる.....、鬼舞辻の血が濃い鬼とは即ち、鬼舞辻に.......より近い強さを持つ鬼ということです。そのような鬼から血を獲るのは容易ではありません。それでもあなたはこの願いを聞いてくれますか?」

 

「.......それ以外に道が無ければ俺はやります。珠世さんが沢山の鬼の血を調べて薬を作ってくれるなら、禰豆子だけじゃなくもっとたくさんの人が助かりますよね?」

 

「炭治郎......、僕もやります。炭治郎がそうゆのなら、長男としてやらなくちゃいけないですし」

 

「............二人ともありがとう。そういえば悠さん、あなたにも一つお願いしたいことが......」

 

「僕にですか?それは一体?」

 

「!?まずい!ふせろ!!」

 

珠世さんが僕に何かお願いをしようとしたその時、愈史郎さんが何かに気付いたのか、珠世さんを庇い身を屈める。すると突然壁から毬が勢いよく飛び出して、家の中を高速で跳ね返る。僕は飛んでくる毬を蹴飛ばそうするが、逆に足を吹き飛ばされてしまった。

 

「アグッ!!」

 

「兄ちゃん!!」

 

「キャハハッ!矢琶羽(やはば)の言う通りじゃ、何もなかった場所に建物が現れたぞ」

 

「巧妙に物を隠す血鬼術が使われていたようだ。そしてあの御方が言っていた化け物の足を吹き飛ばしてやったぞ、それに鬼狩りは鬼と一緒におるのか?どう言うことじゃ?それにしても朱沙丸(すさまる)お前はやることが幼いというか......短絡というか.....汚れたぞ。儂の着物が塵で汚れた」

 

「うるさいのう、私の毬のお蔭ですぐ見つかったのだからいいだろう。たくさん遊べるしのう、それに着物は汚れてなどはおらぬ神経質めが」

 

(クソっ!足がやられた!早く変身しないと!毬だけで家をこんなに壊すなんて!)

 

「キャハハ!見つけた、見つけた」

 

僕はすぐに変身しようとするが毬を持った女がすぐにまた投げつけてきた。毬はまた家の中を破壊しながら跳ね返る。すると毬は突然空中で曲がり愈史郎さんの頭を吹き飛ばした。

 

「愈史郎さん!!....禰豆子!!奥で眠っている人を安全な所へ運んでくれ!!」

 

禰豆子は炭治郎の言葉を聞き女性を安全なところに避難させに行った。炭治郎は鬼に向かって日輪刀を構える。僕も炭治郎と一緒に戦うために構えをとる。

 

「兄ちゃん!足が!」

 

「大丈夫だ炭治郎、変身すれば僕の足もまた元に戻る。そんなことより僕の心配よりもまずは相手に集中しろ、また毬を投げてくるぞ。毬の動きをよく見るんだ。さっき空中で毬の軌道が変わった。毬には何か矢印のようなものがついている。矢印の向きによって軌道が変わるみたいだ」

 

「でもそんなもの全然見えなかったよ?」

 

「普通の人間には見えないんだろう。けど僕には見える。まだ他に誰かの気配を感じる。警戒するんだ」

 

「あの御方が言っておった化け物と耳に飾りの鬼狩りはお前たちじゃのう」

 

「!!無惨の手下か!炭治郎!珠世さんと愈史郎さんを連れて離れるんだ!」

 

僕は炭治郎に珠世さんと頭がなくなった愈史郎さんをある程度まで離してもらい、変身する準備をする。そして大きく息を吸い叫ぶ。その隙に毬を持った鬼は僕に向かって投げつけてくる。

 

「アマゾンッ!」

 

僕は変身した衝撃で毬の軌道を無理矢理ずらし攻撃を防ぐ。そして僕は構えを取り相手を睨みつつ威嚇する。

 

「あの姿は......!」

 

「あれは、兄ちゃんのもう一つの姿、アマゾンです」

 

「アマゾン......」

 

珠世さんは噛み締めるように僕のもう一つの名前を呟く。

 

「キャハハッ!それがあの御方が言っていた姿か」

 

そして鬼はまた毬を三つ投げる。僕は全て切り落とすが、毬は空中で止まりまた僕に激突する。やはり毬についている矢印をなんとかしない限り毬は止まらないようだ。その間に愈史郎さんの頭が元に戻ろうとしていた。

 

「珠世様!!俺は言いましたよね!?鬼狩りに関わるはやめましょうと最初から!!俺の"目隠し"の術も完璧ではないんだ!貴女にもそれはわかっていますよね!?建物や人の匂いを隠せるが、存在自体を消せるわけではない!!人数が増えるほど痕跡が残り鬼舞辻に見つかる確率も上がる!!貴女と二人で過ごす時を邪魔する者が俺は大嫌いだ!!許せない!!」

 

「キャハハッ!何を言うておる!面白いのう!楽しいのう!十二鬼月である私に殺されることを光栄に思うがいい!」

 

「十二鬼月?」

 

「鬼舞辻直属の配下です!」

 

「遊び続けよう!朝になるまで!命尽きるまで!」

 

鬼は上着を脱ぎそして胴体から腕が四本も生えてきた。そして全ての腕に持っている毬を全力で僕たちに投げつけまた家の中で跳ね返る。僕は珠世さんたちに当たらないように切り落とすが、炭治郎は矢印が見えないせいでかなり苦戦している様子だ。すると愈史郎さんが炭治郎の額に札のようなものをつける。

 

「おい!間抜けな鬼狩り!俺の視覚を貸してやる!」

 

「愈史郎さんありがとう!俺にも矢印が見えました!禰豆子!木だ!木の上だ!!」

 

そして禰豆子は木の上にいる鬼に向かって蹴りを入れるが左手で受け止められてしまった。毬を持った鬼はもう一度投げつけてくるが。炭治郎が全て防ぎ鬼の腕を切り落とす。

 

水の呼吸 参の型 流流舞い!!

 

「炭治郎!そいつらが十二鬼月なら、今まで戦ってきた相手よりも手強いぞ!お前は矢印の方をやれ!僕と禰豆子は毬の方をやる!」

 

「わかった!禰豆子.......絶対に無茶するなよ」

 

僕と禰豆子は毬の鬼を炭治郎は矢印の鬼の方に向かった。僕は毬の攻撃を避けつつ首を狙って拳を突き出す。しかしまたしても毬で防がれてしまった。

 

「朱沙丸よ、そちらにいるのは"流れ者"の珠世ではないか。これはいい手土産じゃ」

 

「そうかえ!!」

 

毬を持った鬼は今度は禰豆子に投げつけ禰豆子は蹴り跳ね返そうとすが、僕はそれを止める。

 

「禰豆子!蹴るんじゃない!」

 

しかし時すでに遅く禰豆子の右足は吹き飛ばされてしまった。

 

「禰豆子!転がれ!」

 

禰豆子は転がる前に壁に激突してしまう。すぐに珠世さんが駆け寄り、状態を確認する。

 

「楽しいのう、楽しいのう、蹴毬も良い。矢琶羽、首を五つ持ち帰ればいいのかの?」

 

「違う三つじゃ、鬼狩りと逃れ者、そしてあの化け物、残り二つはいらぬ」

 

矢琶羽という鬼は着物についた土をはらいながら朱沙丸と言う鬼にどの首を獲るか説明をする。僕は怒りを覚えた、あいつは許さない。家族を傷つけさせたりはしない。朱沙丸は再度僕に毬を投げつけてくるが、僕はお構いなく突進する。

 

(こ、こいつ!全く効いておらぬ!傷ひとつついておらぬ!どういうことじゃ!?どれだけ体が硬いんじゃ!?こいつはやばい!!早くなんとかせねば!!)

 

僕は朱沙丸が慌てている隙にすぐそばまで近づき、横腹を全力で蹴る。

その勢いで朱沙丸の体は真っ二つに裂けてしまった。朱沙丸は壁に激突しその場で倒れる。

 

「ち、近寄るな!私に近寄るな化け物め!!!」

 

朱沙丸は怯えながら何度も何度も僕に毬を投げつける。けど僕にはそんなものは効かない。僕は朱沙丸に近づき顔面を全力で踏みつける。朱沙丸はもう気絶している、しかしそんなことは関係ない僕は再度顔面を踏みつけた。

 

(なんだこれ........、なんだかすごく楽しい!もっと戦いたい!もっと殴り合いたい!もっと俺を楽しませろ!!)

 

 

●●●

 

 

俺はやっとの思いで鬼を倒した。俺は技を連続で使ったせいで、息ができず、刀を握れるくらいの力もなかった。俺は口で刀を取り、兄ちゃんたちのいる方に向かう。

 

(禰豆子、兄ちゃん、珠世さん、愈史郎さん。早く行かなければ.....鬼はまだいる。すぐ行く!!すぐ行くから無事でいてくれ!!どうか無事で......!!)

 

しかし俺はそんな心配なんてすぐに消えてしまうほどの光景を見てしまった。

 

「ギャアアアアアアアアア!!!」

 

「ウシャアアアアアアアア!!!」

 

なんと兄ちゃんが、まるで怪物のような雄叫びをあげ鬼の腕を一つづつ引きちぎっていた。全て引きちぎった後蹴り飛ばし踏みつける。そして馬乗りになり何度も何度も鬼の顔面を殴りつけていた。もう鬼の顔はぐしゃぐしゃになり原型をとどめていない。そしてその頭を兄ちゃんは口に入れ飲み込んだ。禰豆子たちもかなりの恐怖をかんじていた。

 

「フシュウウウウウウウ!!!」

 

「に、兄ちゃん!!どうしたんだよ!?」

 

兄ちゃんは俺の呼び掛けには反応せず禰豆子たちのいる方へと振り返る。そして気付いた時にはもう禰豆子の目の前まだ来ていた、兄ちゃんは禰豆子の首を掴み持ち上げる。禰豆子も必死に抵抗するがびくともしない様子だ。兄ちゃんは拳を振り上げ禰豆子の顔に向かって振り下ろす。

 

「兄ちゃん!!やめろオオオオオオオ!!!」

 

兄ちゃんの拳が禰豆子の顔に当たる直前に兄ちゃんの拳はぴたりと止まった。そして兄ちゃんは禰豆子の首を離し変身が解け、その場で倒れてしまった。

 

「兄ちゃん!禰豆子!」

 

俺は兄ちゃんと禰豆子の所に這いつくばりながら安否を確認する。禰豆子は首を押さえているが、どこにも怪我はしていないようだ。兄ちゃんも気絶しているだけだ。俺は安心し、緊張が解けたせいかどっと疲労が押し寄せてくる。珠世さんはさっき兄ちゃんが倒した鬼に駆け寄る。

 

「死んでしまったんですか?」

 

「恐らく、間もなく死ぬでしょう。基本的に....鬼同士の戦いは不毛です。意味がない。致命傷を与えることができませんから。陽光と鬼殺の剣士の刀以外は、しかし悠さんのアマゾンの力には鬼の細胞を破壊することができるようです」

 

愈史郎さんは鬼の形相で俺の口に布を押し当てる。

 

「うわっ!」

 

「珠世様の術を吸い込むなよ。人体には害が出る」

 

「炭治郎さん、この方は十二鬼月ではありません」

 

「!?」

 

「十二鬼月には眼球に数字が刻まれています。この方には無い......、もう一方も恐らく十二鬼月ではないでしょう、弱すぎる」

 

珠世さんは鬼から血を注射器で採取する。

 

「血は採りました。私は禰豆子さんと悠さんを診ます。薬を使ったうえに術も吸わせてしまって。悠さんもかなり疲労がきているはず」

 

俺はそこで一人取り残されてしまった。気づいたら朝になって、陽の光を浴びた鬼は灰となって消えた。俺はその鬼から微かに悲しみの匂いを感じた。俺は珠世さんに地下へ呼ばれ降りると、禰豆子が何事もなく立っていた。兄ちゃんはまだ寝ているみたいだ。

 

「禰豆子」

 

禰豆子は俺に抱きついた後、珠世さんにも抱きつき、愈史郎さんの頭を撫でた、愈史郎さんは嫌がっているみたいだったけど。

 

「先程から禰豆子さんがこのような状態なのですが......」

 

「大丈夫です。多分二人のことを家族の誰かだと思っているんです」

 

「?しかし禰豆子さんのかかっている暗示は人間が家族に見えるものでは?私たちは鬼ですが......?」

 

「でも禰豆子は人間だと判断してます。だから守ろうとした。兄ちゃんもそうです。兄ちゃんもあなたたちのことを鬼だとは思っていません。.............................兄ちゃんは本当の兄弟じゃないんです」

 

「えっ?」

 

「兄ちゃんは二年前、僕たちの家の前で血だらけで倒れてて、看病してやったんです。兄ちゃんは昔の記憶がない、だから本当の家族を知らない。その代わりが俺たちなんです。兄ちゃんはきっと寂しい思いをしていたはず。だからあの時暴走してしまったんだと思うんです。まぁ、わかんないんですけど。兄ちゃんは何故か匂いが感じられなくて」

 

珠世さんは禰豆子に抱きしめられながら涙を流し俺は慌てて謝罪する。

 

「すみません!!禰豆子、禰豆子!!離れるんだ失礼だから!!」

 

珠世さんは禰豆子を抱きしめてお礼を言う。

 

「ありがとう禰豆子さん。ありがとう.....」

 

珠世さんは最後に俺にあるお願いをしてきた。

 

「炭治郎さん、悠さんの血を少し調べさせてくれませんか?」

 

「兄ちゃんのですか?どうして?」

 

「悠さんのあの姿、アマゾンでしたか、私は悠さんがどうしても気になるんです。血鬼術が効かず、鬼の細胞を破壊する力、私は悠さんが普通の鬼とは何か違うものを感じます。悠さんの血を調べれば何か鬼舞辻に対抗できるものが作れるはず」

 

「いいですよ、兄ちゃんもきっとそうゆう筈」

 

「ありがとう、私たちはこの土地を去ります。鬼舞辻に近づきすぎました。早く身を隠さなければ危険な状態です。それに、うまく隠しているつもりでも医者として人と関わりを持てば、鬼だと気付かれる時もある。特に子供や年配の方は鋭いです。炭治郎さん、禰豆子さんと悠さんは私たちがお預かりしましょうか?」

 

「えっ?」

 

「絶対に安全とは言いきれませんが戦いの場に連れて行くよりは危険が少ないかと」

 

(嫌だ、嫌だ)

 

(そうかもしれない.....確かに預けた方が兄ちゃんと禰豆子のためにも......)

 

すると禰豆子は俺の手を握って強い眼差しで見つめてきた。その目は覚悟を決めためだっだ。

 

「......ありがとうございます。でも、俺たちは一緒に行きます。離れ離れにはなりません。もう二度と」

 

「....わかりました。では武運長久を祈ります」

 

「じゃあな、俺たちは痕跡を消してから行く、お前らも行け」

 

「あっはい。じゃあ兄ちゃんを起こしてから」

 

「炭治郎、お前の妹は美人だよ」

 

愈史郎さんのその言葉に俺は笑顔で返した。




次回もお楽しみに


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泣き虫と猪頭と蜘蛛の怪人

第十話 あの二人の登場回です。



僕は昨日の戦いのことはよく覚えていない。炭治郎から聞いたところ、どうやら僕は暴走して危うく禰豆子を殺そうとしてしまったようだ。

 

「ごめん炭治郎、僕のせいで禰豆子が.......」

 

「大丈夫だよ兄ちゃん。禰豆子も許してくれてる。そういえばどうしてあの時暴走したんだろう?」

 

「わかんない、けどなんかすごくいい気分だったんだ。まぁその後は頭が痛くて仕方ないけど。まだ痛い」

 

「なんか二日酔いみたいだね」

 

「まぁ、そんな感じだね。二日酔いってこんな感じなのかな?」

 

すると鎹鴉が次の目的地を告げる。僕はその声で頭がより痛んだ。

 

「南南東、南南東、南南東!!次ノオ場所ハァ南南東!!」

 

「うるさいなぁ、静かにしてくれ。頭に響く」

 

「わかった!!わかったからもう少し黙ってくれ、頼むよ」

 

「ギャーーー!!」

 

「うるせぇーーーーー!!」

 

「「!?」」

 

僕は突然の叫び声に思わず怒声を上げた。隣にいた炭治郎と鎹鴉はものすごい顔で驚いている。

 

「頼むよ!!頼む頼む頼む!!結婚してくれ!!いつ死ぬか分からないんだ俺は!!だから結婚して欲しいというわけで!!頼むよオーーーーーーーッ!!」

 

そこにいたのは情け無く女の人に縋り付く金髪の炭治郎ぐらいの少年がいた。なにやらもめてるようだ。

 

「何だ?」

 

僕と炭治郎は女の人から少年を離すために駆け寄る。すると炭治郎の元に雀が何やら慌てた様子で僕たちに何かを伝えようとしている。

 

「チュン!チュン!チュン!チュン!」

 

「そうかわかった!なんとかするから!」

 

「えっ!?」

 

炭治郎はどこで覚えたかは知らないが雀の言葉がわかるようだ。僕は女の子に捕まる少年の持ち上げる。

 

「ちょっと君!その子が困ってるじゃないか!離れるんだ!大丈夫ですか?怪我はないですか?」

 

「えっは、はい。ありがとうございます」

 

「よかった」

 

僕は女の子に怪我はないかと確認するがどうやら大丈夫みたいだ。少し顔が赤いけど。すると少年は僕に掴みかかってきた。

 

「てめええええ!!何すんだよ!!そいつは俺が結婚するんだぞ!!なに獲ろうとしてんだ!!なにちゃっかり惚れさせてんだよ!?」

 

「うるさい!結婚なんて君の一方的な好意じゃないか!!そんなんじゃ結婚したくてもできないぞ!」

 

「じゃあお前は結婚してんのかよ!!」

 

「........」

 

「図星じゃねえか!」

 

僕は少年に図星を突かれ、何も言い返せなくなる。そして少年は炭治郎を見ると仲間を見つけたような顔で炭治郎に近づく。

 

「あっ!隊服.....!お前は最終選別の時の........!」

 

「炭治郎、知り合い?」

 

「いや、こんな奴知らない」

 

「えーーーーーー!!会っただろうが!!会っただろうが!!お前の問題だよ記憶力のさ!!」

 

どうやら炭治郎はこの少年を知らないようだ、しかしうるさくてしょうがない。彼の大声で頭が痛む。僕は女の子を先に帰らせると、彼はまだ着いて行こうとする。僕は少年を止めるためにはがいじめにした。

 

「おい、離せよおおおおおお!!俺はその子と結婚するんだ!!俺のこと好きなんだから!!」

 

「嘘つけ!!」

 

「嘘じゃねえええよおおおお!!俺のこと心配して声をかけてくれたんだぞ!!絶対俺のこと好きじゃん!!」

 

「完全に君の思い込みだろ!!なんでそれであの子が君のこと好きだと思ったんだ!!」

 

僕は少年を離しその場に座らせるが、まだ少年はまだ喚いている。この少年は完全にどうかしてる。なんて哀れな少年なんだ。

 

「そんな目でみんなよおおおお!!可哀想な奴を見る目で見んな!!いいか!!俺はもうすぐ死ぬ!!次の仕事でだ!!俺はなもの凄く弱いんだぜ舐めるなよ!!俺が結婚できるまでお前たちは俺を守れよな!!」

 

そんな彼に僕と炭治郎は自己紹介をする。いつまでもお前と言われては困る。気が進まないが。

 

「僕は竈門悠だ」

 

「俺は竈門炭治郎だ!!」

 

「そうかい!!ごめんなさいね!!俺は我妻善逸(あがつまぜんいつ)だよ!!助けてくれよ悠さん!!炭治郎!!」

 

この少年の名は我妻善逸というらしい。善逸君も、隊服を着ているみたいだから剣士だろうか。

 

「善逸君、どうして君は剣士なのにそんな情けなく泣いているんだ?」

 

「女に騙されて借金したんだよ!!借金を肩代わりしてくれたジジイが育手だったの!!毎日毎日地獄の鍛錬だよ!!死んだ方がマシってくらいの!!最終選別で死ねると思ったのにさ!!運良く生き残こるからいまだに地獄の日々だぜ!!あーーーー怖い怖い怖い怖い!!イィヤァアアーーー!!助けてェーーーーー!!」

 

「うるさい!!」

 

「痛えええええ!!?」

 

僕はたまらず善逸君の頭を殴ってしまった。あまりにも痛かったのかのたうち回っている。少し落ちついて善逸君はずっと叫び続けたせいか、お腹空いて頭には僕につけられたこぶができており、炭治郎のおにぎりを食べていた。

 

「炭治郎、早く目的地に行こうあまり無理はするなよ骨折れてんるんだから。善逸君もどうやら同じ場所みたいだし、善逸君も一緒にこう」

 

「は!?なんで!?なんで俺も行くの!?死にたくないって言ったよね!?」

 

「わかった、わかったから。何があったら僕のそばにいていいから」

 

「嫌だよ!!鬼殺隊でも無い悠さんについて行ったら絶対死ぬ!!」

 

「善逸!!兄ちゃんを馬鹿にするな!!兄ちゃんは俺よりもずっとずっと強いんだぞ!!」

 

「嘘つけ!!呼吸も使えない!!日輪刀も持っていない奴にどうやって鬼と戦うんだよ!!」

 

善逸君は信じてもらえないようだ。まぁそれもそうだ。善逸君は僕の力を知らないから、信じてもらえないのも無理はない。歩いてる間に僕たちは目的地に着いた。

 

「血の匂いがする」

 

「えっ、血?そんなことより変な音しないか?なんか気持ち悪い」

 

「確か鬼の気配を感じる」

 

僕は屋敷の周りを見渡していると草むらの中に二人の子供が怯えながらこちらを見ていた。僕は子供に近づいて話を聞く。

 

「君たちどうしてここにいるんだ?ここは危険だ」

 

しかし二人の子供は怯えて話してくれないようだ。すると炭治郎が子供に近づき善逸の雀を使って子供と打ち明けていた。話によると、この屋敷に来た時二人の兄が化け物に攫われてしまったらしい。

 

「早くなんとかしないとまずいことになるぞ、炭治郎、善逸君、僕が屋敷の中を確認してくるからここで待っててくれ。安全だとわかったら戻ってくる」

 

「なぁ、さっきから鼓の音がしないか?気持ち悪い」

 

すると屋敷から鼓の音がしたと思えば突然障子が開き血だらけの男が落ちてきた。炭治郎は男に近寄り安否を確認する。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「クソッ......やっと.........出......ら.....れたの....に.......」

 

男はそこでこときれてしまった。炭治郎は涙を流し、僕はあの男が兄かどうかを聞く。

 

「あの人が君たちのお兄さん?」

 

「違う、兄ちゃんは柿色の着物を着てる.......」

 

「そっか、ごめんね怖い思いさせちゃって。炭治郎!善逸君!屋敷の中を確認している暇はない!多少危険でも行くぞ!」

 

「わかった!」

 

炭治郎は行こうとしているが善逸君は全力で首を振っていた。

 

「善逸君!それでも君は男か!?」

 

「嫌なもんは嫌なんだよーーーーー!!」

 

「そうか、わかった。嫌ならついてこなくていい、弱い奴はいるだけ無駄だからな」

 

「わかった!!わかりました!!だからそんなこと言わないでーーーーーー!!」

 

僕はあえて突き放すような言い方で善逸君を無理矢理ついてこさせた。少し言い過ぎだかもしれないけど。

 

「中は普通の屋敷だな。静かすぎる」

 

「なぁ悠さん、炭治郎、守ってくれるよな。俺を守ってくれるよな」

 

「それは無理な相談だね、この屋敷じゃいつどこで何が起きるか分からないし鬼の血鬼術もどんなものかわからない、もしこの屋敷ではぐれてしまったら君を守ることはできない。それに炭治郎も肋と足の骨が折れてるんだ、本調子じゃない、自分の身は自分で守るんだ」

 

「そんなぁーーーーー!!なんで骨折れてんだよ!!骨折れてちゃダメだろ!!これじゃ俺を守れないじゃんかーーーーー!!死んだーーーーーーー!!俺死んだーーーーーー!!九分九厘死んだーーーーー!!」

 

「善逸、静かにするんだ。お前は大丈夫だ」

 

「気休めはよせーーーーーー!!」

 

炭治郎は必死に善逸君を宥めるが全く効果がないようだ。すると二人の子供が屋敷の中に入ってきた。

 

「ちょっと!!屋敷の中に入っちゃダメだろ!!」

 

「で、でもあの箱カリカリ音がして!」

 

「だからって中に入っちゃダメじゃないか!!この中には鬼がいるんだぞ!!はぁ、取り敢えず、二人とも屋敷から出るんだ。ここは僕たち三人の仕事だから邪魔しないでくれるかな。じゃあ僕はあっちの部屋を見てくるから炭治郎と善逸君は二人を連れて外に出るんだ」

 

僕はふたつ向こうの部屋に行き誰かいないか確認する。しばらくすると屋敷の中から突然何が軋む音が聞こえた。すると今度は鼓の音が聞こえ、突然部屋が変わり、また鼓の音が抱えたかと思えば同時に部屋が変わった。

 

「炭治郎!善逸君!クソッはぐれてしまった!早く合流しないっ....?」

 

僕は早く炭治郎と合流するために動こうとする。しかし目の前には一人の血だらけ男が膝をついて座って何かをしている様子だった。僕は鬼に捕まった人だと思い近付く。

 

「だ、大丈夫ですか........!!」

 

僕はとんでもないものを見てしまった。なんとこの男は鬼を喰っていたのだ。僕は警戒し距離をとる。男がこちらに気づき振り向いた。

 

「お前もこいつを喰いにきたのか?俺は腹が減って仕方がなくてな、この屋敷に入ると鬼が沢山いたもんだからついてたよ。鬼の肉は本当に美味い、人間の肉より少し硬いが喰う価値はある。どうだお前も喰って見ないか?美味いぞ?お前も俺と同じ仲間だよな?」

 

「!!お前もしかしてアマゾンか!?」

 

「そうそう!俺もお前と同じアマゾンさ。同じ仲間なら俺と一緒に鬼と人間たちを喰おうぜ!」

 

男は僕に仲間になれと言ってるのか、やはり僕は人間とは違う化け物なんだと思った、東京での暴走で禰豆子を危うく殺しかけたんだ一緒にいたらいつか禰豆子と炭治郎を僕は喰い殺してしまうかもしれない。いや、そんなことない!僕は炭治郎たちに信頼されてるんだ。死んでしまった家族のためにも最後に残った炭治郎と禰豆子だけでも守り抜く、僕は人間を喰う奴なんかと仲間になるつもりはない。僕はハッキリと答えた。

 

「僕は人間も鬼も喰うつもりはない!!お前がもし人間を喰い続けるのならお前は僕が殺す!!」

 

「.............そうかよ、なら仕方ねぇここで殺されるのは御免だ。お前が俺を殺すなら、俺はお前を殺すまでだ!!」

 

すると男の体から蒸気が出て体が隠れる、蒸気が晴れるとそこに立っていたのは蜘蛛のような姿をした怪物だった。仮にそいつをクモアマゾンと名づけよう。クモアマゾンは僕に飛び掛かり八本の脚で切り裂こうとする僕は咄嗟に避けなんとか食らわずに済んだ。僕は大きく息を吸いあの言葉を大声で叫ぶ。

 

「アマゾンッ!!」

 

クモアマゾンは僕に攻撃しようとするが、変身の衝撃で吹き飛ばされ壁に背中を打ち付けた。しかしなんともないかのように立ち上がり僕に威嚇する。

 

「グシャアアアアア!!!」

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

僕も負けじとクモアマゾンに威嚇した。僕はクモアマゾンに連発して拳を突き出し腕の刃で切り付ける。クモアマゾンも連続で爪を僕に切り付ける。お互い一歩も引かず僕には赤い血が飛び散りクモアマゾンには黒い血が飛び散った。僕隙を突いてクモアマゾンに蹴りを入れ距離をとる。すると鼓の音が鳴り響き部屋が連続で切り替わった。僕は空中浮遊の状態になりクモアマゾンとつかみ合いまた殴る。やがて鼓の音も止み僕は着地し、体制を立て直す。

 

「(こいつ鬼より硬い!まるで鉄を殴ってるみたいだ!)」

 

「ウシャアアアアアアア!!」

 

「ウガアアアア!!」

 

クモアマゾンは僕に体当たりし、屋敷の外に放り出した。そこには炭治郎と善逸君と猪の頭をした謎の少年がそこにいた。炭治郎は今、猪頭と喧嘩をしている真っ最中なようだ。

 

「ギィヤアアアアアアアアア!!今度はなんだよオオオオオオ!?」

 

「兄ちゃん!!」

 

「ぐわはははは!!また新しい奴が現れたぞ!!」

 

「炭治郎!こいつ、アマゾンだ!!」

 

「えっ!?」

 

僕はクモアマゾンに両足蹴りをくらわし、クモアマゾンは吹き飛ばされ炭治郎たちの方に落ちる。クモアマゾンはやっと炭治郎たちの存在に気づいたのか、振り返り襲い掛かろうとする。炭治郎と猪頭は刀を構え善逸君は少年の後ろで怯えていた。クモアマゾンは炭治郎たちの攻撃を飛び越え後ろの方にいる兄弟たちに狙いを定める。僕はそうはさせまいと全力で走りあともう少しで届きそうなところで、クモアマゾンの背中かを貫き心臓らしきものを引きずり出した。クモアマゾンはその場でドロドロに溶けて黒い血のようなものだけが残った。僕は膝をつき兄弟たちを見る。兄弟たちは無事なようだしかしひどく怯えた様子で僕を見ていた。

 

「だ、大丈......」

 

「「「ひいいいいいいいい!!」」」

 

「.............」

 

僕が手を差し伸べようとすると兄弟たちは大声で叫んだ。変身を解き木の下に休んで後は炭治郎たちに任すことにした。屋敷の中の人たちを供養し、兄弟たちも無事に帰り後は善逸君たちに説明するだけだ。けど善逸君は炭治郎の後ろに隠れ、猪頭は僕に勝負を挑もうとして、炭治郎に止められていた。

 

「大丈夫だよ善逸、伊之助(いのすけ)、兄ちゃんは人を喰ったりなんかしない」

 

「嘘つけ!!じゃあなんのためについてんだよ!!あの牙!あの爪!絶対人間喰うためのものじゃん!!俺に近づくんじゃねええええええ!!炭治郎助けてえええええええ!!イャアアアアア!!」

 

「おいお前!!さっきのやつなんだ!!もう一度あの姿で俺と戦え!!」

 

「おい二人とも!!兄ちゃんを化け物呼ばわりするな!!」

 

「いいんだ炭治郎。怖がる方がむしろ自然だし、いつかこうなるってわかってたから」

 

僕たちは歩きながら説明した、アマゾンのことを今まで何があったのかを。




次回もお楽しみに。


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那田蜘蛛山と赤い怪人

長らくお待たせしました。第十一話です。


「ーーと言うわけで僕と炭治郎は旅をしているんだ」

 

僕は善逸君と伊之助君に全てを話した。善逸君どこか納得した様子だし伊之助君は興味がないのか全然話を聞いていない。因みに伊之助君は鬼殺隊と力比べをしている時に鬼の存在を知ったらしい。育手に教えてもらってないのに自ら呼吸を作った結構すごい少年だ。善逸君かぼろぼろなのは伊之助君から箱を守るためだったらしい。僕たちは鎹鴉に連れられてある場所に来た、そこは藤の花の家紋の家だった。すると門から一人のお婆さんが出てくる。善逸君はお婆さんを見るとお化けだと言って絶叫し、かなり失礼な事を言って炭治郎に怒られていた。僕たちは家の中に入りお婆さんの仕事の早さに驚いた。なんでもお婆さんの一族は鬼殺隊に命を救われたようで鬼殺隊であれば無性で家に入れてくれるそうだ。

 

「あれ?他に誰かいるんですか?」

 

「はい、もう一人鬼狩り様がおりまして、今は外を散歩しているんです」

 

「そうですか......」

 

僕たちは食事をしている。伊之助君は炭治郎のご飯を奪って挑発しているが、全く効果がないようだ、しかも食べ方が汚い。炭治郎は肋三本、善逸君は肋二本、伊之助君は肋四本と、三人とも肋の骨を折っており、僕はご飯を食べていたらもう治ってしまった。しばらくして善逸君は僕に質問をしてきた。

 

「悠さん、箱の中にいる禰豆子ちゃんってどんな子なの?」

 

「それはもうすごく美人な子だよ。町1番」

 

「うへへぇ、どんな子なんだろ」

 

善逸君は気持ち悪い笑い方をすると箱の扉が開き禰豆子が中から出てきた。善逸君は禰豆子を見るや否や物凄い勢いで叫ぶ。

 

「うはああああああああ!!超美人じゃん!!超可愛いじゃん!!てめえ炭治郎!!いいご身分だな!!なんでこんな可愛い妹と旅なんかしてんだあああああ!!」

 

善逸君は日輪刀を抜き炭治郎に嫉妬丸出しで襲い掛かる。僕は疲れてるっていうのに、寝る時でも騒がしい奴だ。炭治郎は善逸君を黙らせるために何度も頭に頭突きをする。しかしいくらやっても善逸君は倒れなかった。仕舞いには、夜明けまで続き炭治郎も耐えきれず気絶してしまいそれと同時に善逸君も倒れてしまった。炭治郎の硬い頭を耐えるなんてなんで頑丈な奴なんだと内心僕は関心したし同時に呆れもした。おかげで朝まで目が覚まりっぱなしだ。それからというもの善逸君は禰豆子を見た時から妙に僕と炭治郎にゴマをするようになったし伊之助君は何度も僕と戦えと言ってくる。休養しているはずなのに全然休まらない毎日だ。そんなある日一人の男が僕たちに話しかけてきた。その男は髪がボサボサで先が金髪になっていて、目つきも悪く顎髭をたくわえている浮浪者のような男だ。

 

「最近騒がしい奴らはお前たちか?毎日うるさくって眠れもしねぇ」

 

「す、すみません!迷惑かけてしまって」

 

「まぁいい、元気なのはいいことだ。俺もそろそろ行くし、またどこかで会えるかもしれねぇな。そん時はあの世かもしれねぇけど。じゃあな俺はもう行く」

 

男は振り向きもせずに行ってしまった。その男に炭治郎は少し不思議がり、善逸君は僕の後ろに隠れて怯え、伊之助君は動物みたいに威嚇していた。各々の反応はあまり良さそうじゃない、かと言う僕も少し怪しげな感じはする。それからどれくらい経ったか、炭治郎たちの傷も治り、鎹鴉から次の仕事も来ていた。どうやら那田蜘蛛山という場所にいくらしい。僕たちは準備をし、お婆さんから切り火をしてもらう、その行為に伊之助君は攻撃だと思いお婆さんに襲い掛かろうとするが炭治郎に抑えられた。どうやら切り火というのはこれから危険な仕事をするためのお清めらしい。僕たちはお婆さんにお礼をし、那田蜘蛛山に向かった。那田蜘蛛山に着いた頃にはもう夜になっていた。すると善逸君が突然何かを言い出す。

 

「待ってくれ!!ちょっと待ってくれないか!!怖いんだ!!目的地が近づいてきてとても怖い!!」

 

「善逸君またか、ここまで来てどうして君はそうなるんだ。鬼殺隊としての誇りはないのか?」

 

「ないよ!!あるわけないでしょ!!逆にあるほうが異常だ!!」

 

すると向こうの方から誰かの気配がし、振り返ると倒れている人影があった。近寄ってみるとその人は隊服を着ており、鬼殺隊というのがすぐにわかった。

 

「たす.........助けて...........」

 

「隊服を着ている!!何かあったんだ!!」

 

「大丈夫か!?どうした!?」

 

炭治郎が駆け寄ろうとすると突然鬼殺隊員は何かに引っ張られるように山の中へ消えていった。

 

「アアアア!!繋がっていた!!俺にも!!たすけてくれえ!!」

 

「そんな.......炭治郎!善逸君!伊之助君!僕たちも行くぞ!!」

 

「う、うん!!」

 

「俺が先に行く!!お前たちはガクガク震えながら俺についてきな!!腹が減るぜ!!」

 

「腕が鳴るだろ........」

 

僕たちは善逸君を置いて山の中に入って行く。しばらくして茂みの中に身を潜めている隊服を着た男を見つけた。僕はその人に近づき慌てさせないように落ち着かせる。

 

「応援に来ました。階級癸の竈門炭治郎です」

 

「癸........、癸...........、なんで柱じゃないんだ....!!それに一般人まで連れて!危険すぎる!!」

 

「そんなことより状況を説明して下さい!!」

 

「一般人が知ってなんになっ........!」

 

「うるせぇ!!さっさと説明しろ!!」

 

伊之助君は痺れを切らし鬼殺隊の剣士を殴る。炭治郎が伊之助君止めている間に鬼殺隊の剣士は慌てて説明した。

 

「かっ鴉から指令が入って十人の隊員がここに来た!山に入ってしばらくしたら隊員が隊員同士で斬り合いになって!!」

 

「そうですか、ありがとうございます。ところで名前は?」

 

「俺の名前は村田(むらた)だ」

 

「僕の名前は竈門悠ですあっちにいる猪の被り物をしているのが伊之助君と言います。村田さん、僕たちとっ........!」

 

すると茂みの方から何やら気配がする。振り向くと、そこには隊服を着た隊士だった。しかしどこか虚ろな目をしており、生気を感がない。その隊士は千鳥足で近づいてくる。すると隊士は突然僕たちに切り掛かってきた。

 

「こいつらみんな馬鹿だぜ!!隊員同士で斬り合うのは御法度だってしらねぇんだ!!」

 

「違う伊之助君!何か様子がおかしい!!」

 

僕は動きがおかしい隊士を見て背中にある糸のようなものを見つけた。僕は操られている隊士たちを蹴り飛ばし距離を取る。

 

「炭治郎!伊之助君!この人たちに何か糸のようなもので操られている!!それを切るんだ!!」

 

「うるせぇ!そんなもん最初からわかってらぁ!!」

 

炭治郎と伊之助君と村田さんは僕が言ったとおりに隊士についている糸のようなものを切っていく。すると隊士たちはたちまち倒れてしまった。しかまた糸により起き上がり襲い掛かる。

 

「くっ、元を仕留めないと意味がない!!炭治郎!!操っている奴を探してくれ!!僕たちはこの人たちをなんとかする!!」

 

「わかった!!探してみる!!」

 

「おい!こいつらは俺がなんとかする!!お前たちは鬼を探せ!!」

 

「わかりました!!ここは任せます!!行くぞ伊之助君!!」

 

「うるせぇ!!俺に命令するんじゃねぇ!!」

 

炭治郎は操っている鬼を探しに行き、僕と伊之助君は操られている隊士と向き合う。すると気配を感じ、上の方に顔を向けると、そこには少年が空中に立っていた。よく見ると左目には下弦の伍と書かれてある。どうやらこいつが十二鬼月のようだ。

 

「僕たちの家族の静かな暮らしを邪魔するな。お前らなんかすぐに母さんが殺すから。」

 

そして下弦の伍はどこかへ行ってしまった。伊之助君は斬りかかろうとするが、あと少しのところで届かない。

 

「クソッテメェ待ちやがれ!」

 

「伊之助君!今は仕方ない!まずはこの状況をなんとかするんだ!!」

 

「お願い逃げて!このままじゃあなたたちを殺してしまう!!」

 

「大丈夫!絶対に助ける!!伊之助君!この人たちを木に投げるんだ!!糸が絡まって動けなくなるはずだから!!」

 

「なんだよそれ!面白そうじゃねぇか!!」

 

僕と伊之助君は操られている隊士たちを木に投げ、動けないようにした。これで炭治郎が操っている鬼を倒せば一件落着だ。しかし現実はそう甘くはない、突然隊士たちの首があり得ない方向に曲がり死んでしまった。助けられなかった、僕は簡単に命を奪う鬼たちと助けられなかった僕の無力感に静かに怒りをあらわにする。

 

「.........行くぞ」

 

「お、おう」

 

僕と伊之助君は走りながら操っている鬼を探す。すると突然目の前に大きな鎌をつけた首のない鬼が糸で操られていた。

 

「こいつには首がない!伊之助君袈裟斬りだ!首の付け根あたりから斬ってみよう!!僕は変身するから時間稼ぎをしておいてくれ!!」

 

「うるせぇんだよてめぇさっきから!!そんなん最初からわかったとるわ!!俺に偉そうに命令するんじゃねえ!!」

 

伊之助君は僕に悪態をつくが言うことはちゃんと聞いてくれるようだ。伊之助君が時間稼ぎをしている間、僕は大きく息を吸い大声で叫ぶ。

 

「アマゾンッ!!」

 

僕は変身し、首無しに飛び掛かる。首無しは鎌で僕に攻撃するがすぐに反応して避け蹴りを入れる。そして蹴り飛ばした反動で木を蹴りもう一度鬼に向かって腕の刃で鎌を切り落とし、同時に伊之助君が袈裟斬りをして首無しは崩れてしまった。

 

「よし!なんとか倒せた。伊之助君ここからは別行動で行こう。まとまっていくより鬼を探しやすい。君はあっち、僕はこっちに行く。」

 

「だから俺に命令するじゃねぇ!!」

 

伊之助君はそう言うと僕が言った通りの場所に走っていった。僕も行く。誰かいないかと探していると、そこには村田さんがおり鬼に襲われて。繭のようなものの中に閉じ込められてしまった。

 

「村田さん!!」

 

「だ、誰!?な、何だよこいつ!!他にも鬼がいるの!?」

 

「お前!村田さんをそこから出すんだ!!」

 

「は?村田?この繭の中にいる人間のこと?あんたもこいつを喰いに来たの?残念だけどこいつは私がいただいたわ。すぐにどろどろになって私が喰うの」

 

「そんなことはさせない!!返さないのなら力ずくで奪い返す!!」

 

僕は村田さんを助け出すために鬼に飛び掛かる。鬼は蜘蛛の糸のようなもので攻撃しようとするが、僕は簡単に避け鬼の首を斬った。鬼はそのまま崩れ去り消えてしまった。僕は繭を切り崩し村田さんを助け出す。

 

「村田さん!村田さん!大丈夫ですか!?」

 

「うあああああああ!!なんでこんな時に!!」

 

「村田さん落ち着いて!!僕です!悠です!」

 

僕は変身を解き姿を見せる。それを見た村田さんはものすごい顔で驚いた。

 

「は、悠!?お前なんで!!さっきの姿は!?」

 

「説明は後でします。取り敢えず僕の羽織を貸してあげるので着てください。今、全裸ですよ」

 

「あ.......」

 

村田さんは顔が赤くなり、僕の羽織を受け取った。僕は村田さんを木の下に休ませて炭治郎の元に向かう。

 

「早く炭治郎のところへ向かわないと、心配だ」

 

「まぁ、随分仲間思いな鬼ですね」

 

「!?」

 

突然誰かが後ろから話しかけた。振り返るとそこには頭に蝶の髪飾りをした少女が立っていた。

 

蟲柱(むしばしら)様!!」

 

「蟲柱?」

 

「鬼殺隊最高戦力の柱と呼ばれる九人の一人!!蟲柱の胡蝶(こちょう)しのぶ様だよ!!」

 

なんと言うことだ。よりにもよって鬼殺隊の最高戦力が僕の前に現れるなんて。このままではまずいなんとかしないと炭治郎が危ない。

 

「そこを退いてください。早くしないと弟が危ないんです」

 

「あらそうなんですか。鬼にも家族がいるんですね。私にもいるんですよ、姉と妹が。まぁ退くわけないじゃないですか、人を喰う奴を見逃すわけにはいきませんから」

 

「僕は人を喰わない。絶対に、これからもずっと」

 

「そんな嘘、信じるわけないでしょ。嘘をつくならもっとマシな嘘をついて下さい」

 

しのぶという少女は刀を抜く、するとその刀にはどういうわけか刃がついていなかった。

 

「私は鬼の首を斬れないくらい力が弱いですが、鬼を殺せるくらいの毒を作ることができるんですよ」

 

しのぶという少女は僕に襲い掛かり刀を斬りつけてくる。ぼくは咄嗟に避け、少女を説得する。

 

「そこを退いてくれ!!頼む!弟が危ないんだ!!」

 

「まだそんなこと言うんですか」

 

少女は何度も僕に斬りつけようとするが、僕はなんとか避け続け、毒を回避する。このままでは埒が開かない。こう思った僕は変身する。

 

「アマゾンッ!」

 

少女は僕が変身した衝撃で吹き飛ばされそうになるがなんとか上に飛び避け、着地する。

 

「それがあなたの本来の姿ですか。どう見ても人を喰う鬼にしか見えないですね」

 

「もう一度言うが、僕は人を喰わない!!」

 

僕は少女の攻撃に備え、防御の体制を取る。しかし戦いになることはなかった。そらを止めたのは一匹の鴉だ。

 

「カァ!カァ!伝令!伝令!竈門炭治郎と一体の鬼を捕獲!!赤い怪人も捕獲!!」

 

「炭治郎!!そんな.....」

 

「........どうやら炭治郎という少年はあなたの知り合いのようですね。それに赤い怪人もやっと捕まえたみたいです。あなたもついてきてもらいますよ」

 

そう言われて僕は少女に連れて行かれた。

 

●●●

 

時は少し戻り炭治郎が下弦の伍の(るい)と対峙している時間まで遡る。炭治郎は今絶望的な状況に立たされていた。首を斬ったと思っていた累の首は斬れておらず今炭治郎を殺そうとしているところだ。

 

「僕に勝ったと思ったの?可哀想に哀れな妄想をして幸せだった?僕は自分で首を切ったんだよ。お前に首を切られるより先に。もういいお前も妹も僕が殺してやる。こんなに腹が立ったとは久しぶりだよ。不快だ本当に不快だ、前に同じくらい腹が立ったけどずっと昔だよ覚えていない。そもそも何でお前は燃えてないのかな?僕と僕の糸だけ燃えたよね。妹の力なのか知らないが、苛々させてくれてありがとう。なんの未練もなくお前たちを刻めるよ」

 

累は炭治郎を殺すために血鬼術を発動しようとするが、突然茂みが動き誰かが近寄ってきた。誰かと思い炭治郎と累は振り向く。そこに立っていたのは炭治郎が藤の家で出会った不思議な男だった。

 

(あの人は藤の家の時の......)

 

男は片手に何故か卵を持っており殻を割って中にある生卵を口の中に入れた。そして男は累の方に近づき、少し不気味な笑みを浮かべる。するとその男は悠しか言ったことのないあの言葉を呟く。

 

「アマゾン」

 

すると男の体は赤い炎のようなものに包まれ衝撃が走る。熱により木々は燃え、地面は鉄板の上にいるかのように熱くなる。累は男が変身した衝撃で吹き飛ばされた。炎は晴れそこに立っていたのは赤い体に緑色の目トカゲの襟のような刃でおまけに全身が傷だらけであった。炭治郎は鱗滝さんが言っていた。あの話を思い出す。

 

(赤い怪人!この人が!)

 

赤い怪人は累と禰豆子に指をさしどちらかを選んでいるような動作をした後累の方に振り向く。累は咄嗟に攻撃しようとするがそれよりも早く赤い怪人は腹に蹴りを入れ腹を抑えている間に顔面を殴りハイキックで顎を蹴り上げそのまま叩きつける。そして首を掴み動けなくした。累は必死にもがくがいくら動いてもびくともしない。赤い怪人は累の顔をまじまじと見つめ最後にこう呟いた。

 

「家族ごっこもこれまでだ」

 

そして赤い怪人は累の首を斬り、累は灰になって消滅した。圧倒的だった。炭治郎が全力を出しても倒すことができなかった累をこうもあっさり倒してしまう赤い怪人の強さがどれほどのものが窺える。赤い怪人は今度は禰豆子の方に振り向いて首を掴む。

 

「やめろ!禰豆子に手を出すな!!」

 

炭治郎の声も届かず赤い怪人は腕の刃で禰豆子の首を切り裂こうとする。しかしそうはならなかった、なぜなら赤い怪人の背中が突然血を吹き出したのだ。赤い怪人は振り返ると背中を切り裂いた正体は冨岡義勇だった。

 

「............あ、やべ」

 

赤い怪人は最後にそう呟き倒れてしまう。変身も解かれ完全に無防備な状態だ。禰豆子も大丈夫なようだ。

 

「ありがとうございます。冨岡さん」

 

「.............」

 

冨岡は何も答えずただずっと下にいる赤い怪人を見つめていた。




次回もお楽しみに。


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第二章〜α〜
柱会議と悠の謎


第十二話です。伝説のヒモ降臨。


悠は目を覚ました。どれくらい寝ていたのだろうか、目を開け用途するが悠は目隠しをされていて何がどうなっているのか分からない。悠は今隠の男に運ばれている。すると隠は悠が目覚めたのに気づいたのか、悠に話しかけられた。

 

「お!目ぇ覚めたか?今から兄ちゃんには大事な用事があるから少し時間くれへん?いやぁ、お前さんえらいでかいからな、運べるやつが俺ぐらいしかおらんのや。我慢しといてや。ちょっと疲れてるんやったら寝といてもええで」

 

どうやら悠を運んでいる隠は関西人のようだ。悠は那田蜘蛛山の戦いで疲れたのか、関西人の隠に言われた通りまた眠ってしまった。それからどれくらい経っただろうか。悠は隠に起こされ目が覚める。

 

「兄ちゃんよお寝たか?今柱の前におるから起きとってや。ほなまた、後は任せます」

 

目が覚めた悠の前に立っていたのはおおよそ八人程の男女が立っていた。

 

岩柱(いわばしら) 悲鳴嶼(ひめじま)行冥(ぎょうめい)

 

蛇柱(へびばしら) 伊黒(いぐろ)小芭内(おばない)

 

恋柱(こいばしら) 甘露寺(かんろじ)蜜璃(みつり)

 

蟲柱 胡蝶しのぶ

 

霞柱(かすみばしら) 時透(ときとう)無一郎(むいちろう)

 

音柱(おとばしら) 宇髄(うずい)天元(てんげん)

 

炎柱(えんばしら) 煉獄(れんごく)杏寿郎(きょうじゅろう)

 

水柱(みずばしら) 冨岡義勇

 

いずれも鬼殺隊最高戦力の人間である。悠はその威圧感に圧倒された。あたりを見渡すとそこには炭治郎と藤の家で出会った男がいた。

 

「炭治郎!!」

 

「兄ちゃん!!」

 

悠は炭治郎の無事で安心し、次に男の方を見る。男はこちらの視線に気づいて振り向いた。

 

「お、また会ったな。久しぶり一ヶ月ぶりかな?」

 

「な、なんであなたが?」

 

「あ、そうそう俺が例の赤い怪人」

 

「!?」

 

すると後ろからやけに派手な格好をした大男、宇髄天元が話しかける。

 

「なんだお前ら、派手に知り合いなのか?」

 

「まぁちょっとな」

 

男は宇髄の質問に適当に答え、今度は宇髄よりも更に大きい男悲鳴嶼行冥が呟いた。

 

「嗚呼.......なんと哀れな青年だ、このような男に関わってしまったとは、嗚呼.......哀れ」

 

悲鳴嶼はそう呟き涙を流す。男はどこかむず痒そうにして顰めっ面をしていた。

 

「なぁ、縄解いてくれないか、背中痒いんだけど」

 

「それは無理だ!そこの隊律違反をした隊士もそこの二人の怪人も鬼もろとも斬首する!!」

 

「裁判なのに斬首するの決まってるとか意味わかんねぇ。それに俺は日にあったても平気だから人間だって」

 

「お前さっき自分から赤い怪人って派手に言ってたじゃねぇか」

 

「あ、そうだった」

 

男は宇髄に指摘されていると木の上にいる口に包帯を巻き肩に蛇を下げている伊黒小芭内が話す。

 

「鬼が人間を喰う前に斬るのは当たり前だ、しかしお前らは鬼なのか?日に当たっているのに死なないとは。それに胡蝶の話では冨岡も処罰を受ける必要があるんじゃないか?どうだ冨岡?」

 

小芭内は冨岡に指をさすが、冨岡は無言を貫く。

 

「冨岡さんの処罰は後にしましょう。それよりも炭治郎君はどうして鬼を連れているんですか?」

 

「鬼になった妹を元に戻したいとかそんなんだろ」

 

「あなたは黙ってて下さい」

 

「はいはい」 

 

胡蝶の質問に男は当てずっぽで答える。 

 

「おいおい、なんだが面白れぇことになってるじゃねえか」

 

後ろから声がし、振り返ると全身傷だらけの男が禰豆子が入っている箱を担いで立っていた。

 

風柱(かぜばしら) 不死川(しなずがわ)実弥(さねみ)

 

「こいつらか?鬼を連れているバカ隊士と怪人の二人は」

 

「おい!禰豆子をどうするつもりだ!!」

 

「決まってんだろ、鬼殺隊が鬼にすることは一つ!!」

 

「禰豆子!!」

 

実弥は箱に向かって刀を突き刺そうとする。しかし悠が縄を引きちぎり実弥の刀を直接掴み、禰豆子に刀が刺さらないようにした。悠は刀を直接掴んだため血が箱の上に滴り落ちる。悠と実弥はお互いに睨み合う。悠は手を離し、実弥は刀を元に戻した。

 

「てめぇ、どうゆうつもりだ?」

 

「家族は傷つけさせない、絶対に」

 

悠を睨みつける実弥に炭治郎は拘束されたまま頭突きをする。

 

「善良な鬼と悪鬼の区別がつかないなら柱なんて辞めてしまえ!!」

 

緊張が走る。柱たちは刀を取り悠は炭治郎たちを守るために変身しようとするが、それは起きることはなかった。

 

「お館様のお成りです」

 

二人の髪が白い瓜二つの少女ひなきとにちかの言葉により静まり返る。すると後ろから一人の病弱そうな男が歩いてくる。柱たちはすぐさま膝をつき、悠たちも押さえつけられる。鬼殺隊を率いるこの男産屋敷(うぶやしき)耀哉(かがや)である。

 

「おはよう皆んな今日はいい天気だね」

 

「うわぁ、顔色悪そうだね。指で突いただけで死にそう」

 

男の言葉に柱たちは睨みつける。男は睨みつけられてもなんともない様子だ。

 

「あなた、人を怒らせるのが得意みたいですね」

 

「いやぁそれほどでも。褒めても何も出てこないよ」

 

男は柱たちの怒りの視線にはなんともない様子だ。すぐに静まり柱たちは耀哉の言葉を待つ。

 

「君が例の赤い怪人かな?」

 

「まぁそんなとこかな」

 

耀哉の質問に対して男はまた適当に答える。

 

「炭治郎と禰豆子のことは私が容認していた。皆んなにも認めてもらいたい」

 

しかし柱たちの反応は二名を除いて全員反対のようだ。鬼殺隊として当然の反応である。

 

「鬼を斬ってこその鬼殺隊、竈門、冨岡の処罰をお願いします」

 

「おいおい、お館様の忠誠心はどうしたの」

 

柱たちの反応に男はすかさず煽り、何人かは青筋を立てていた。

 

「では手紙を......」

 

にちかは手紙を読み始める。その内容は元柱である鱗滝の手紙だ。禰豆子は二年間人間を喰わなかったこと、もし禰豆子が人を襲ったなら鱗滝と義勇が切腹すると言う内容だ。炭治郎は禰豆子のために命をかけてくれることに涙を流した。

 

「切腹するからなんだと言うのだ。死にたいなら勝手にした腐れよ。なんの保証にもなりはしません」

 

「不死川の言う通りです!人を喰い殺せば取り返しがつかない!!殺された人は戻らない!」

 

「確かにそうだね、人を襲わないという保証ができない。証明もできない、ただ、人を襲うというのもまた証明できない」

 

どうやら耀哉は炭治郎と禰豆子にとてつもない信頼を寄せているようだ。どうしてそこまで信頼を寄せるのか男は疑問を問う。

 

「おいお前、なんでそこまでこの鬼を庇う?イカれてんのか?」

 

「貴様さっきからお館様に向かって!死にてェのか!」

 

実弥は男の煽りに耐えきれず暴言を吐く。すぐに耀哉に止められ鎮まったが、まだ睨みつけている。

 

「確かに、鬼殺隊の当主である私が鬼を庇うのはあってはならないことだ、しかしそれほど信頼できる価値がある。私はそう信じている。禰豆子が二年以上もの間人を喰わずにいるという事実があり、禰豆子のために三人の者の命が懸けられている。これを否定するためには否定する側もそれ以上のものを差し出さねばならない」

 

屋敷が静まり返る。禰豆子が人を襲わないと言う事実に匹敵する証拠があるのか?次に耀哉が口を開いた時屋敷に衝撃が走った。

 

「それに炭治郎は鬼舞辻と遭遇している」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

柱たちは一斉に炭治郎に質問攻めをした。悠も無惨に遭遇しているのだが、その情報は伝わってはいないようだ。耀哉は口に指をあて柱たちを静かにさせる。

 

「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて見せた尻尾を掴んで離したくない。恐らく禰豆子にも、鬼舞辻にとって予想外の何かが起きているのだと思うんだ。わかってくれるかな?」

 

柱たちは完全に黙ってしまった。耀哉の説得と無惨の手掛かりにつながる証拠まである。これには柱たちも禰豆子を斬る理由はない。しかし一人の男だけは納得できないでいた。

 

「わかりませんお館様!人間ならば生かしておいてもいいが、鬼はダメです!承知できない!」

 

すると実弥は自分の刀で自ら腕を切り血を流し、庭の上に血が落ち滴りる。

 

「お館様.....!!証明しますよ俺が!鬼という物の醜さを!!おい鬼!!飯の時間だぞ喰らいつけ!!」

 

「禰豆子!!」

 

悠は禰豆子を助けてようと動こうとするが悲鳴嶼に押さえつけられ動けなくなる。悠も力に自信はある方なのだが、悲鳴嶼はそれ以上の力があった。炭治郎も動こうとするが男に止められる。

 

「お前!!」

 

「年上の人にお前とは中々礼儀知らずな奴だな。まぁ、見とけ」

 

実弥は日の当たらない屋敷の中に入り箱の蓋を開ける。すると禰豆子はむくりと起き上がり実弥の血を涎を垂らしながら血走った目で見ていた。炭治郎は禰豆子を助けようとするが小芭内に押さえつけられる。炭治郎は強引に拘束を引きちぎり小芭内がもう一度押さえつけようとするが冨岡に止められた。禰豆子は突き出された実弥の腕をじっと耐えるように見つめるしかし禰豆子はそっぽを向いた。これには実弥も驚かざるを得ない。

 

「どうしたのかな?」

 

「鬼の女の子はそっぽを向きました」

 

「目の前に血まみれの腕を突き出されても我慢して噛まなかったです」

 

「ではこれで、禰豆子が人を襲わないことの証明ができたね」

 

禰豆子は箱の中に戻り、炭治郎は元の場所に戻る。

 

「炭治郎、それでもまだ禰豆子のことを快く思わない者もいるだろう。証明しなければならない、これから炭治郎と禰豆子が鬼殺隊として役にたてること。十二鬼月を倒しておいで、そうしたら皆に認められる。炭治郎の言葉に重みが変わってくる」

 

「俺は.....!俺と禰豆子と兄ちゃんは鬼舞辻無惨を倒します!!俺と禰豆子と兄ちゃんが必ず!!悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう!!」

 

「今の炭治郎にはできないからまず十二鬼月を倒そうね」

 

「はい」

 

意気込んだのも束の間柱でもない奴が何を言っていると、失笑が出て、炭治郎は顔を真っ赤にした。

 

「いやぁ、感動したね。家族愛というのは人間と鬼の壁を越えるようだ。これで一件落着。俺は帰らせてもらいます」

 

「何どさくさに紛れて逃げようとするんですか?まだあなたの話が終わってないですよ?怪人さん?」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

「まだ話は終わってはいない。君は一体何者なのかな?」

 

耀哉の質問に男は少し考えるそぶりをし、周りを見渡すこの屋敷にいる者全員が男を見ていた。男は大きくため息を吐く。

 

「この拘束を解いてくれたら話してもいいよ」

 

「それはできない!解いた瞬間逃げられては困るからな!」

 

「じゃあ、話さない」

 

男はそっぽを向き話さないつもりでいる。男の態度に柱たちは苛々していた。

 

「わかった。しのぶ、縄を解いてくれ」

 

「御意」

 

しのぶは了解はしたがあからさまに嫌な顔で男の縄を解く。男は笑顔で「ご苦労さん」とだけ答えた。

 

「じゃあ話して貰うぞ、お前は何者だ?名前は?どこから来た?何故隊服を着ている?何が目的だ?」

 

「ちょっと、ちょっと、質問は一つずつだってばさ。まあ、どっから話せばいいか、話せば結構長いよ。それでもいい?」

 

「いいからとっとと話せ!」

 

「わかった。わかりました。全くせっかちなんだから。そうだな、まず俺の名前は鷹山(たかやま)(じん)つってな。訳あって鬼を狩っている。お館さん、俺とお前はすごく深い関係にあるんだ。鬼舞辻無惨、みんな知ってるよな?千年以上前最初に鬼になった男」

 

「貴様なぜそれを!?」

 

「落ち着けって、お館さん、鬼舞辻無惨を鬼にした男を知ってるよな?」

 

「ああ、知っているよ」

 

「俺は無惨を鬼にした医者の末裔だ」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

鷹山の発言に屋敷全体は驚きに包まれた。無惨を鬼にした医者、それはいわば人々を苦しめる鬼たちを生み出した元凶の元凶である。その男の末裔であれば誰だって驚くはずだ。実弥は刀を抜き鷹山に斬りかかろうとする。

 

「止めるんだ、実弥」

 

「何故ですか!?こいつは俺たちの敵ですよ!?こいつのせいで俺の家族は死んでしまった!!殺すべきです!!」

 

「止めるんだ」

 

耀哉は実弥を無言の圧力で鎮め、実弥は渋々刀を鞘に納めた。周りも、耀哉の圧に圧倒されている。

 

「次に、君は何故鬼を狩っているんだ?」

 

「それはまぁ、永遠に終わらない罪を償っているって感じかな。俺たちの一族は到底許されない過ちを犯してしまったんだからな」

 

鷹山は周りを見渡しながら答える。周りは怒りに満ち溢れた顔で睨みつけていた。

 

「そうか.......、それじゃあ次に君のその赤い怪人は一体なんなんだ?」

 

「あの姿のこと?あれは.....」

 

「アマゾン........」

 

「そうそう、それ!アマゾンだ」

 

耀哉は次の質問を問い鷹山は答えようとするが代わりに悠が答えた。

 

「アマゾン?」

 

「お前たちが言っている赤い怪人のことだ。アマゾンってのは俺たち一族が何百年もかけて作り上げた対鬼専用生物兵器でね、アマゾン細胞という人工細胞で構成されててな、そのアマゾン細胞は鬼の細胞を破壊して喰らう、いわば鬼の天敵ってわけ」

 

「ということは君は元から人間ではないのか?」

 

「いやそういうわけじゃない。俺は元々人間だ。自分の体にアマゾン細胞を移植したんだ」

 

「いつからアマゾンに?」

 

「十年くらい前かな」

 

「いつから鬼殺隊にいる?」

 

「四年前」

 

鷹山は淡々と説明する。他の者たちは突拍子のない話に驚きを隠せない。悠はやはり自分は人間じゃないんだと改めて実感する。

 

「じゃあ君の一族のアマゾンを開発している組織の名前は?どこにある?」

 

「野座間製薬。場所は分からん」

 

「野座間製薬ってあの!?」

 

「おい!分からないってどう言うことだ!」

 

「言葉どうりだ。わかんねぇんだよ。俺は組織を抜けたからな」

 

「どう言うことだ?何故組織を抜けた?」

 

「俺がいた野座間製薬はな、鬼を駆除するためとか言って、四千体のアマゾンを東京中に放ったんだ。それから俺は野座間に不信感を抱いてな。そして抜けた。八年前にな。あいつらはもう場所を移してるはずだ。野座間製薬のところに突撃しようとか考えんなよ?そこに行っても情報は得られないし、そこにいる職員たちはアマゾンのことは知らないんだからな」

 

少し疲れたのか、鷹山はため息をつく。悠を含めた他の者たちは、驚きの連続で言葉が出なかった。鬼殺隊の面々も自分たち以外にも鬼と戦う組織があったことにも驚きだし、悠も自分が生物兵器だったことにも驚きつつも、どこか納得していた。

 

「まぁ、ざっとこんなもんかな。ほら、もう話したんだから返してくれないかな?」

 

しかしまだ話は終わらなかった。耀哉は帰ろうする鷹山を呼び止める。

 

「今度は何?」

 

「君は正式に鬼殺隊に入っているんだね?」

 

「まぁ、記録を見ればあると思うけど」

 

耀哉少し考えるそぶりを見せた後、顔をあげ覚悟を決めたように口を開いた。

 

「私も.........、彼のゆう通り、我ながらかなりイカれたことを言うが........、鷹山仁を柱にしたいと思う」

 

「「「「「「「「「はあっ!?」」」」」」」」」

 

その提案は余りにもイカれた提案であり、余りにも強烈なインパクトだった。




こんな状況で柱にしてやりたいと思う自分も我ながらイカれてます。

あと、鷹山のキャラなんですけど、一応オリキャラなんで性格は少し変えておこうかなと思いました。

耀哉のこと輝哉って書いてました申し訳ございません。


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鬼柱 鷹山仁

第十三話です。


先程とは打って変わり屋敷は騒然としていた。鷹山もどこか呆れた顔で輝哉を見ている。

 

「お前、本当にどうかしてるぜ。俺を柱にしたい?さっき俺が誰か説明したところだろ」

 

鷹山の言う通りさっきの説明で鷹山はこの鬼殺隊の敵とも言っていいほどの男だ、なのにその男を柱にしたいというのは余りにも、今風に言うならば空気が読めないと言ったところだ。

 

「お館様いくらあなたの提案でもこれは受け入れられません!この男は我々の敵!今すぐに斬首するべきです!」

 

「煉獄の言う通りこの男は敵、鬼殺隊として受け入れるべき者ではない」

 

「確かに彼は我々の敵かもしれない。しかし彼は鬼舞辻を鬼にした医者ではない、それに柱になってもらうほうがこっちにも都合がいい、何より君は目撃情報があった八年間で既に五十体以上の鬼を倒しているし、那田蜘蛛山では十二鬼月を倒してる。柱は九人という決まりはあるが、彼はその規律を覆すほどの者だ、柱にしておけば鷹山を監視下におけるし、他にも何か情報が得られるかもしれない。まだ他にもあるんだろう?秘密が」

 

「それは、どうかな」

 

鷹山は軽くはぐらかす。確かに彼を柱にしておけば常に行動を把握できるかもしれないが、一部の柱たちとしては家族の仇と一緒に戦わなくてはいけないと言うのが苦痛でしかない。そう簡単に受け入れられないのは当然だ。

 

「賛成の者はいないかな?」

 

「俺は派手にお断りします」

 

「私も.........、ちょっと怖いし」

 

「僕も」

 

「私も嫌です」 

 

「お館様の命であっても受け入れられない」

 

「今すぐ殺すべきだ!」

 

「..............」

 

九人中九人が鷹山が柱に入ることは受け入れられないとの事だ、冨岡に関しては口には出していないが、顔には嫌だと出ている。これはどうするのか、このままでは鷹山を柱にすることができない。等の本人はなる気なんて更々ないが。

 

「私は賛成です」

 

すると後ろから賛成の声がする。振り返るとそこには一人の女性が立っていた。頭の両側にしのぶと同じ蝶の髪飾りをつけている。それは元花柱(はなばしら)で柱である胡蝶しのぶの姉である胡蝶カナエだった。

 

「姉さん!?」

 

「カナエちゃん」

 

しのぶはひどく驚き鷹山はどこか知り合いのようにさらっとカナエの名前を呟いた。

 

「私は賛成です。仁さんが柱になってくれるのは。私は仁さんが味方になってくれれば心強いですし」

 

「ちょっと姉さん!!一体どう言うつもり!?」

 

しのぶのこの反応は当然のことだ。他の者たちももう何度目かも分からない驚きで包まれていた。

 

「カナエちゃんいいの?俺みたいな奴が柱になっちゃって。後悔しても知らないよ」

 

「いいんです。私がいいって言ってるんですもの」

 

どこか仲睦まじい雰囲気だ。他の者も黙ってられず質問する。

 

「おい!!お前らどういう関係だ!!」

 

「どういう関係って、そーだな。まぁ、長い付き合いの友人というか、なんというか.........」

 

鷹山はまたしてもはぐらかす。この男は色々と秘密がありすぎる。悠は内心そう思っていた。

 

「友人だなんて、強いて言うなら夫婦みたいな?」

 

「はあ!?」

 

「俺たちまだ結婚してないじゃん」

 

「じゃあこれからすればいいじゃないですか」

 

カナエも中々ぶっ飛んだことを言う。驚きを通り越してもはや呆れてしまう。

 

「皆落ち着いて、カナエと鷹山の関係は後で聞くとしてまずは一人、賛成の者が入ったね」

 

「お館様、一人だけでは納得できません」

 

「それもそうだね、それじゃあどうしたら認めてくれるのかな?」

 

「それではこの男がどれほどの実力があるのかを試させてもらいます。実力次第では考えてもみます」

 

「は?」

 

「だったら俺が相手だ」

 

●●●

 

鷹山がどれほどの実力なのかを確かめるため実弥が代表して出ることにした。場所は移り鷹山と実弥は向かい合って立つ。他の柱も見守る中、カナエは鷹山を応援していた。

 

「仁さん頑張って!」

 

鷹山はカナエに手を振り、しのぶはものすごい顔で鷹山を睨みつけた。鷹山は少しビビりつつも実弥と向き合う。実弥は刀を抜きもう既に構えをとり、実弥は鷹山を目で殺すかの如く睨みつける。どう見ても殺す気満々だ。鷹山はため息を吐き構えてをとる。

 

「テメェ、なぜあの姿にならない」

 

「悪いな、アマゾンに変身するのは鬼とアマゾンを狩る時だけだ」

 

鷹山は変身しない理由を語る。しかし実弥は真剣、鷹山は丸腰というどう考えても鷹山が不利な状況だが、鷹山は余裕そうな顔をしている。実弥はそんな鷹山の態度に苛立ちを感じていた。実弥は先手を打ち鷹山に切りかかる。鷹山はギリギリで避け距離をり、お互いを睨み合う。実弥はもう一度切りかかり、鷹山はその場に動かず避ける。そして何度も切りかかるが、鷹山は全て避けきった。実弥は涼しい顔をしている鷹山に苛立つが、同時に感じていた。鷹山は実弥の攻撃を避けてカウンターを入れる瞬間は幾度とあった。しかし鷹山はわざとそれをせずに避けるだけにとどまる。完全に舐められている、それが実弥をさらに苛立たせることになった。鷹山は指を動かし実弥を挑発する。

 

「チッ舐めやがって!」

 

実弥は舌打ちをし、呼吸を整え技をくり出す。

 

風の呼吸 壱の型 塵旋風・削ぎ!

 

実弥は地面を抉る勢いで突撃し、凄まじい衝撃波を放つ。鷹山はそれでも動くことはなかった。ただ相手の攻撃を真正面で受け止めるかの如く構えもとらず棒立ちをしている。そして実弥の技が鷹山に直撃する。

 

(手応えがねぇ!)

 

しかし攻撃はあたらず、実弥は鷹山の姿を見失う。辺りを見渡し、上を見上げるとそこには鷹山がいた。鷹山はあたる直前、上に飛び上がり実弥の攻撃を回避していたのだ。鷹山は腕を振り上げ実弥の顔面に拳を突き出す。

 

(クソッ!避けられねぇ!!)

 

しかし拳はあたることはなかった。鷹山は直前で拳を止めて手を腰に当てる。

 

「これで俺も正式に柱になったのかな?」

 

鷹山は悲鳴嶼を見て確認する。悲鳴嶼は不服そうな顔をしているが、自分で言っておいて認めないというのは大人気ないと言うものだ。

 

「..........認めたくはないが、お前は柱としての実力はあることだけは認めよう」

 

この事実に何人かの柱はあからさまに嫌な顔をしていた。

 

「それでは鷹山仁、君を鬼柱(おにばしら)として任命する」

 

鷹山はこれにて正式に十人目の柱として認められた。

 

「それじゃ、これからよろしく」

 

鷹山は笑顔で挨拶をする。柱たちは今にでも殺したい思いでいるがここは我慢するしかなかった。




これにて鷹山さんを柱にすることができました。次回もお楽しみに。


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鷹山とカナエ

大変お待たせしました。第十四話です。


「おめでとうございます。仁さん」

 

「ありがと」

 

これで正式に柱に認められた鷹山はさっさと帰ろうとする。しかしまだ帰らせてはくれなかった。目の前にしのぶがたち鷹山をいかせようとはしない。因みに悠たちは鷹山と実弥の勝負の間に蝶の屋敷に連れて行かれた。

 

「もお、今度は何?」

 

「まだ帰れませんよ。姉さんとあなたの関係を聞きたいんです。勿論姉さんもよ」

 

鷹山は頭を掻き、カナエは少し狼狽えるが、しのぶの圧に負けて渋々話し出す。

 

「仁さんとは四年前に出会って、私が鬼にやられそうなところを助けてくれたのよ」

 

「そん時に俺は鬼殺隊に入ったってわけ」

 

「どうして鷹山さんのことを話さなかったの?」

 

「そんなことしたら仁さんのこと、皆が黙ってないじゃない」

 

もしカナエが鷹山のことを話していたら、確実に鷹山は殺されていただろう。

 

「...........それに、私は仁さんのこと愛しているから」  

 

カナエは顔を赤くし呟く。薄々周りも感じていたがやはりそうだったようだ。しのぶは自分の姉に呆れて溜め息を吐く。

 

「もういいだろ、それじゃ俺は帰らせてもらうから」

 

「あ!まだ話はっ!」

 

しのぶの声も届かず鷹山は帰ってしまい、カナエもそのあとについていきそのうち姿は見えなくなった。どうして姉はあんな男を好いているのかしのぶには理解出来なかった。

 

●●●

 

鷹山は考えていた。帰ると言ったもののどこに行けばいい。藤の家までは遠すぎるしかと言ってそこら辺の森で野宿するには少し寒い。一体どうしたらいいのか悩んでいると鷹山についてきたカナエはある提案をしてきた。

 

「仁さん、もし泊まる場所がなかったら私の所に来ませんか?それに柱には屋敷も用意してくれるんですよ。用意してくれる間だけでも泊まっていきません?」

 

「本当に?いやぁ、ありがとうカナエちゃんやっぱり持つべきものは愛する人だな」

 

「もう、仁さんったら」

 

鷹山は肩を持ち笑う。カナエも嬉しいのか恥ずかしいのか顔が少し赤くなっていた。二人の姿を見ていると仲のいい夫婦のようだ。しばらく歩き例の蝶屋敷に着いた。鷹山は辺りを見渡すとなんとも大きい屋敷だと驚いていた。

 

「ここが蝶屋敷か、なんとも立派な屋敷だな」

 

「早く入りましょう、後ずっと思ってたんですけど、ちょっと臭いです」

 

「悪いね、風呂には最近ご無沙汰だから」

 

那田蜘蛛山の辺りから鷹山は一ヶ月くらい風呂に入っておらず山の中を走り回っていた。カナエは扉を開けて屋敷に案内しようとするが、目の前にしのぶが立ち塞がっていた。笑顔を取り繕っているが、明らかに鷹山を敵視している。

 

「あら、しのぶ先に帰ってたのね」

 

「.........姉さん、その男をここに入れるつもり?」

 

「そうよ?なにか問題でもある?」

 

「私は嫌よ、こんなクソ野郎を屋敷に一歩でも踏み入れさせたくない」

 

「しのぶ!仁さんになんてこと言うの!」

 

「まぁまぁカナエちゃんそう怒らないの。悪いけど入れてもらえないかな?俺今泊まれる場所がなくてさ」

 

「無理です。不快です。消えてください。死んでください」

 

鷹山はダメもとで頼んでみるが案の定簡単に断られてしまった。どうやら屋敷には入れさせてくれないようだ。鷹山は肩をすくめる。

 

「しのぶ、そこをどきなさい」

 

「いくら姉さんでも絶対に嫌よ」

 

カナエとしのぶの目の間に火花が散るほどの睨み合いをする。鷹山はこの張り詰めた空気に気まずさを感じていた。すると突然後ろから声が聞こえた。

 

「よぉ、お二人さんと例の鬼柱様、門前で何しとるの?」

 

後ろを振り返るとそこに立っていたのは柱会議の前に悠を運んでいた隠であった。

 

「あ!天十郎(てんじゅうろう)さん!しのぶが屋敷の中に入れさせてくれないんです!」

 

「ほんまかいな?しのぶちゃんそらあかんで同じ柱なんやから、仲ようせんとあかんぞ?」

 

「天十郎さんは関係ないです」

 

隠と柱という位がかなり違うと言うのに馴れ馴れしく話すこの男に鷹山は一体誰なのかと質問した。

 

「誰だこいつ?随分馴れ馴れしい奴だな」

 

「仁さん紹介します。この人は石動(いするぎ)天十郎さん私と同じ元柱で今は隠をやってるんです」

 

「ほんまやったら育手になるはずなんやけど、俺はあまりにも教えんのが下手くそでな、せやから今は隠をやっとんのや」

 

この男は柱たちには面識があるらしく、唯一柱にタメ口で話せる隠だ。鷹山も周りから敬語で話されるのかと思っていたが、立場的に絶対にないなと自分で納得していた。

 

「しのぶちゃん嫌なんはよぉわかるで、でもな今は同じ柱なんやで?いつか同じ任務に一緒になるかも知れへん。そん時は嫌いやからって意地張らんと我慢せなあかん時があんねん。それが大人っちゅうもんやろ?」

 

「............」

 

しのぶは少し考え込み決心したのか鷹山を屋敷に入れることにした。

 

「言っておきますけど許したわけじゃありませんからね。天十郎さんが入れてあげてほしいと言ったから入れてあげるんです」

 

何はともあれ屋敷の中に入ることができた鷹山はズカズカと入っていく。

 

「そんじゃ俺は仕事があるから、ほなまた」

 

天十郎は仕事があると言ってカナエたちにさよならを告げた。屋敷に入ると何やら騒がしい、汚い高音が屋敷に響いていた。

 

「イャアアアアア!!」

 

「善逸君!ちゃんと飲むんだよ!!」

 

「嫌だよ!!こんな不味い薬を三ヶ月も飲むだなんて!!本当に治るの!?俺の手足は元に戻るのか!?」

 

「またあいつらか」

 

鷹山はため息を吐き出して声のする方に向かう。そこにいたのは案の定善逸がいた。どうやら薬が不味いせいで嫌がってそれを悠が無理矢理飲ませようとしているらしい。

 

「よお、またあったな、お前らどこでもそんなな騒がしいのか?」

 

「あっ!お前は!!」

 

悠と炭治郎は鷹山の存在に気づいて威嚇し、善逸は薬を飲む以上にビビり散らかした。

 

「よこせ」

 

鷹山は悠が持っていた薬を手に取り善逸の頭を掴んで無理矢理飲ませた。

 

「まっずうううううう!!テメェ何すんっ!?」

 

善逸は無理矢理飲まされたことに怒るが鷹山の目を見てあまりの恐怖に絶句してしまった。今度は炭治郎たちを見るが、炭治郎と悠はまだ鷹山に威嚇している。伊之助は何故か落ち込んでいる様子だ。

 

「なに、まだあのこと怒ってんのかよ」

 

「当たり前だ!俺は絶対にお前を許さない!!」

 

「仁さん何したんですか?」

 

「仕事をしようとしただけだ」

 

鷹山は思う。これほどの馬鹿は見たことがない。鬼になった妹を人間に戻したいのは勝手だが、何故わざわざ連れている。どこか別の場所に預けるとかしなかったのか。もしどこかで鬼殺隊の隊士に会っていたならさっきみたいな裁判沙汰になるではないか。これじゃ妹を殺してくださいと言っているようなものだ。

 

「なんで鬼を連れている?お前ら本当に助ける気あんのか?」

 

「お前に言われる筋合いはない!!」

 

「........そうかい、それじゃ俺は会議があるから先に戻るわ。それじゃ行ってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

鷹山は後ろを振り向かず手を振って行ってしまい。カナエも手を振って見送った。 

 

●●●

 

それからしばらく長い会議が始まった。鬼の被害や無惨の行動、その対処など、この時の鷹山の態度は非常に悪くあぐらをかいたり、欠伸をしたり、何を考えているのかずっとぼーっとしている。何人かの柱たちも鷹山の態度の悪さに今にもキレそうな状態だ。どれくらいだっただろうか、耀哉は鷹山にある質問をしてきた。

 

「鷹山、質問があるのだが、君の言っていたアマゾンというものは人間を喰うのか?」

 

「まぁそうだな、アマゾンたちの主食は鬼と人間の肉ってところだ」

 

「奴らの弱点は?」

 

「人間と同じだ、頭と心臓と致命傷を負ったら死ぬ。だが安心するなよ鬼と違って再生能力も低いし体力にも限界はある、太陽にあたっても死にはしないが頑丈なんだよな、お前らの刀で斬りつけることはできても、切り落とすことはほぼ無理だ」

 

「奴らの習性は?」

 

「それも人間と同じだ、普段は人間に擬態してどこかで普通の人間みたいに暮らしている。そっくりだから誰がアマゾンか見当もつかない。知能も人間並みだ、例え見つけても何かしらの方法で逃げ切るかもしれない。お前らが一度も会わなかったのもそのせいかもな」

 

耀哉は考える。アマゾンは鬼と違って太陽が弱点じゃない。故にいつどこで人が襲われるかわからない。その対策を立てなくてはいけない。鬼殺隊の人数はおよそ数百名、とても足りる人数じゃない。それに人間に擬態もできるのなら情報を集めるのも困難だ。人間並みの知能なら上手く人目につかないように襲っているはずだ。

 

「...........これはかなりの難敵になりそうだね。今日はここまでだ皆ご苦労様。アマゾンのことは後ほど対策を立てるとしよう鷹山の話だけではまだ分かりにくい目撃情報か何かそう言った噂があればすぐに報告するんだ」

 

「「「「「「「「「御意」」」」」」」」」

 

「了解」

 

鷹山はなんの挨拶もなしにそそくさと帰ってしまった。なんとも無礼極まりない男だ。

 

「あの野郎ォ、絶対に殺す」

 

「よもやよもや、なんと失礼な男だ」

 

(姉さん、あんな奴のどこを好きになったの?)

 

会議も終わりもうすっかり夜になっていた。鷹山の腹が鳴り、お腹を抑える。あの時は朝食はおろか昼食も食べられていない。腹が鳴るのも当然だ。

 

「はぁ、腹減った早く帰って飯が食いてぇなぁ、カナエちゃんの作ってくれた飯が食いてぇなぁ、特に肉主体のやつ」

 

鷹山は自分の食べたい夕飯を想像するが余計に腹が減ったため夕飯のことは考えないようにして、さっさと蝶屋敷に戻った。屋敷に戻るとそこにはちゃんとカナエが迎えてくれた。

 

「柱としての初仕事、どうでした?」

 

「正直退屈だ、カナエちゃんよくあんなのに耐えられたな」

 

「最初はそう言うものです。続けていけばいつかは慣れますよ。さっ、屋敷に上がって夕飯の用意ができてますよ」

 

カナエは屋敷に鷹山を連れて夕飯の支度をする。鷹山は座ると隣には悠たちがそこにいた。

 

「よお、またまた会ったな」

 

「お前!なんでここに!」

 

「いい加減人に対してお前って言うのはやめろ。社会じゃそう言う奴は生きていけねぇぞ。いただきまーす」

 

鷹山はいつまでたっても自分のことをお前呼ばわりする炭治郎に注意して、鷹山は自分の用意された夕飯を食べる。悠たちも少し落ち着いてきたのか鷹山に質問してきた。

 

「あ、あの鷹山さん?鬼を人間に戻す方法って知りませんか?」

 

「知らん」

 

「えっ!?」

 

「俺はアマゾンの開発兼鬼の殲滅だからな。元だけど、鬼に関してはある程度の知識しかない」

 

「そうですか」

 

悠たちは禰豆子の戻し方を知っていると思い鷹山に聞いたがあいにく鷹山はそのことはわからない。

 

「けど、あの人なら知ってるかもな。水澤(みずさわ)っていう人なんだけどな。あの人は今どこにいるのか分からねぇけど、その人なら鬼の戻し方がわかるかもしれない」

 

「本当ですか!?」

 

悠はその言葉に希望を見出す。もしその人にあったなら禰豆子の戻し方がわかるかもしれない。

 

「まっ、生きているかもわからねぇし、なんにせよ鬼を人間に戻すんだ。それはもう酷い目に遭うかもしれないぞ」

 

「禰豆子のためならどんなに過酷なことでも僕は耐えてみせます!」

 

「俺も禰豆子のために兄ちゃんと一緒に!」

 

悠と炭治郎の意気込みに鷹山は少し笑みを浮かべた。夕食も食べ終わり鷹山は縁側で夜の月を眺めていた。今夜は満月月明かりに照らされて夜でも少し明るい、鷹山はじっと満月を眺めていると隣りにカナエが座った。

 

「隣いいですか?」

 

「いいよ」

 

鷹山とカナエはじっと満月を見つめ沈黙が続く。それを破るようにカナエが話し出した。

 

「私たちが出会った夜もこんな満月でしたね」

 

「そうだな」

 

「..........皆も仁さんのことを知ってくれたらきっと仲良くできるのに」

 

「ははは、それはどうかな。俺の先祖のせいであいつらの家族とか友人とかが殺されたんだ。恨まれて当然、好きになってもらうのは逆に気持ち悪いかな」

 

「またそんなこと言って、大丈夫ですよ、いつかきっとあなたのことをわかってくれる人がいるはず。嫌われて当然なんて言わないでください。あなたは悪い人じゃありません。私が惚れた人なんですから」

 

「全くカナエちゃんは俺を惚れさせるのが得意みたいだな」

 

鷹山とカナエは見つめ合いお互い顔を近づけて、口が触れ合おうとした瞬間、どこからともなく刀が鷹山めがけて飛んできた。鷹山はギリギリのところで避け飛んできた方向を見る。そこには予想通りしのぶが立っていた。

 

「しのぶ!?」

 

「姉さん、こいつとさっき何をしようとしてたの?」

 

「いいじゃないの!二人の時間を邪魔しないで!!」

 

「あなたも姉さんに触れないでください。さもなくば殺します」

 

「おーこわ」

 

「しのぶ!どうしてわかってくれないの!!この人は私が愛した人よ!!誰がなんと言おうと私は絶対にこの人から離れない!!」

 

またしてもあの朝みたいなことが起ころうとしている。鷹山もうんざりしていた。カナエとしのぶ、二人の睨み合いを止めるようにまたしてもあの男が割り込んできた。

 

「仕事が終わって戻ってみたらまーた喧嘩しとんのかお二人さんええ加減にせえよ、姉妹なんやから」

 

「天十郎さん!」

 

「鬼柱様も困っとんねん。喧嘩はあかんで、何もおもしろないからな、みんなといる時は楽しいことせんと、福が逃げるで。しのぶもうええやろ二人はそういう関係なんやから暖かいめでみとき、カナエが好きなんやったら、カナエの幸せを願ってやるのが妹の務めやろ?」

 

「........わかりました。天十郎さんがそう言うのなら今回は許してやります。でも姉さんに何かしようとしたらその時は斬り捨てます」

 

「はいはい、わかりましたよ」

 

「しのぶも恋をしたらカナエの気持ちもわかるかも知れへんな」

 

「さあ、どうですかね」

 

しのぶはそっぽを向き顔を見せないようにしたが、少し顔が赤くなっている。

 

「それじゃ俺はこの辺で、もう喧嘩すんなよ?」

 

天十郎はカナエとしのぶに指を差しまた何処かいってしまった。しのぶもその後に後始末があるからと刀を抜き取って部屋を出ていき二人は取り残された。

 

「さっきの続きする?」

 

「いえ、もうそんな気分じゃないです」




次回もお楽しみに。


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もう一人の赤い怪人

大変長らくお待たせしました。結構忙しい日々が続いててなかなか書くことが出来ず今日に至ります。もしかすると次の話まで間が空いてしまうかもしれないです。


ある朝鷹山は急に叩き起こされた。目を開けるとそこには頭に蝶の髪飾りを二つつけた目のキリッとした少女がいた。

 

「おはようございます鬼柱様、あなたにはやってもらうことがありますので起きてください」

 

「はあ?なんで俺が?他のやつに頼めよ。てゆうか誰だ、お願いするなら名前を言え」

 

「私の名前は神崎(かんざき)アオイです。カナエ様のご指名によりあなたを起こしに来ました」

 

「そうか、カナエちゃんのお願いなら断れないな」

 

カナエのお願いなら断れないとすぐさま立ち上がり鷹山は言われた場所に向かったなんでも炭治郎たちの機能回復訓練の手伝いをしてほしいとのこと。鷹山は呼吸と剣術に関しては全くといいほどできないため、反射訓練や全身訓練といったことをするらしい。鷹山は訓練場に着くとそこにはカナエとしのぶと悠そして初めて見る少女が四人ほどいた。

 

「おはようカナエちゃんと悠としのぶとどっかの誰かさん」

 

「おはようございます。仁さん」

 

「お、おはようございます」

 

鷹山は座っている六人に挨拶するが、返してくれたのはカナエと悠だけでしのぶは完全無視同じように蝶の髪飾りをつけた少女はコインのようなものを弾いたと思ったら何も言わず無反応、残りの三人は鷹山に怯えてしまっている。

 

「みんな冷たいね、で?俺が相手するのはこの三人かな?」

 

鷹山が振り返るとそこにはびしょ濡れになった炭治郎と善逸、伊之助の三人がいた。炭治郎は真面目な顔で立ち善逸は怯え、伊之助は威嚇している。

 

「よ、よろしくお願いします!鷹山さん!」

 

「なんでよりによってこいつの相手しなくちゃいけないんだよぉ」

 

「なんだテメェ!!」

 

鷹山はクセの強い相手を任されたなと内心面倒だったが、カナエのお願いなら我慢できた。まずは最初に反射訓練、台に並べてある薬を先に相手にかけた方が勝ち、薬をかけられないように邪魔をするのが訓練の内容だ。鷹山は席につき誰が相手になるか待っている。そして先に名を挙げたのが伊之助であった。

 

「まずは俺からやらせろ!!」

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前は鷹山仁お前の名前は?」

 

「俺様の名前は嘴平(はしびら)伊之助だ!覚えておけ!!中山凛!!」

 

伊之助は自信満々に名前を名乗り堂々と鷹山の名前を間違え席に座る。そして合図を取る役をアオイがやり鷹山と伊之助の間に手をおく、そして「始め!」の掛け声と共に伊之助が先を越されまいと手を素早く出すが、いつのまにか頭に薬をかけられていた。伊之助は何が起こったのか訳がわからず声を荒げる。

 

「おい!!どうなってやがる!!」

 

「次」

 

「じゃあ今度は俺が!俺の名前はっ!」

 

「もう知ってる」

 

今度は炭治郎が相手だ。炭治郎は名前を名乗ろうとしたが鷹山は既に知っているので時間の無駄だとして遮った。炭治郎はやる気に満ちた顔で席に座る。同じようにアオイが間に手をおき合図をする炭治郎は素早く湯飲みを取ろうとするが塞がれてしまう。鷹山は別の湯飲みを取ろうとするが炭治郎はそうはさせまいと防いだ。鷹山と炭治郎は一進一退で手が見えなくなるほどの速さでどうなっているのかわからないが勝利したのは鷹山の方だった。炭治郎はお辞儀をして元の場所に戻る。

 

「最後だな。名前は?」

 

鷹山は最後に善逸の顔を見る顔を見られた善逸は小さい悲鳴をあげ炭治郎の背中に隠れた。鷹山は隠れても無駄だと言わんばかりに善逸を見つめ続ける。善逸は観念したのか渋々席につき、途切れとぎれに我妻善逸と鷹山に名乗った。善逸は鷹山が近くにいるせいか分かり易いくらいに体が震えていた。普段なら汚い高音を出しているところだが、鷹山の前だけではあまりの恐怖にか声も出ないほどビビってしまう。そうしている間にアオイが合図をする。善逸はヤケになり湯飲みを取ろうとするが先程の伊之助の如く薬をかけられてしまった。

 

「話になんねぇな」

 

鷹山最後に言い放ち三人は肩を落とした。

 

●●●

 

今度は全身訓練だ訓練内容は端的にいうと鬼ごっこである。時間内に相手を捕まえる、もしくは捕まらないようにするのだ。勿論鬼は鷹山がやることになった。鷹山は「三人同時に相手してやる。」といい余裕な感じだ。鷹山は準備運動をし、準備万端の様子。炭治郎たちはさっきかけられた薬を拭き取り準備運動をする。炭治郎と伊之助はやる気満々だが、善逸はさっきと同じく震えている。アオイが合図を出すと同時に砂時計をひっくり返し訓練が始まった。鷹山は炭治郎たちを追いかけようとする。それを見た炭治郎たちは鷹山の凄さを目の当たりにした。鷹山の目がまるで獲物を狩る獣のような目をしている。何年もの間鬼やアマゾンたちを狩る時にしている目だ。炭治郎たちは本能的な恐怖を感じたのか、大声を上げて逃げるように走り出す。しかしそこは鷹山、まだ砂時計が落ち始めたところだというのにもう既に三人は捕まってしまった。これでは訓練にならないので全身訓練は無しになってしまった。少し休憩に入り鷹山はカナエのそばに座ろうとするがしのぶがそうはさせまいと邪魔をする。

 

「姉さんには触らないでって言いましたよね?忘れたんですか?」

 

「そんなこと言うなよ、妹なら妹らしく姉の幸せでも願ってたらどうなんだ?」

 

「姉さんの幸せを願ってあなたに近づけさせないんです。あっ、昨日の二人だけの時間を邪魔してすみません、あなたの幸せを潰してしまって」

 

しのぶは作り笑顔で鷹山を煽る。しかし鷹山はどこ吹く風という感じで、特に気にもとめていない様子。

 

「別に、あれが初めてってわけじゃないし」

 

「は?」

 

しのぶは一瞬何を言っているのかわからなかった。カナエの方を振り返るとカナエはそっぽを向いてだんまりを決め込んでいる。鷹山の言っていることを理解し、沸々と怒りが込み上げてきた。その威圧感に周りは気圧されるが、鷹山はそれに対してもどこ吹く風である。ふと鷹山は怯えている三人の少女と黙っている少女の名前を尋ねた。

 

「お前ら、名前は?」

 

「て、寺内(てらうち)きよです!」

 

中原(なかはら)すみ......です」

 

「たったたた!高田(たかだ)なほです!」

 

三人は完全に鷹山にびびってしまい詰まりながら自己紹介をしていた。最後にずっと無表情で黙っている少女がまたあの時のようにコインを弾くとさっきと同じように何も言わなかった。

 

「カナエちゃんから聞いてたけどほんとにコインがないと何もしないんだな。まっ名前はカナエちゃんから聞いてるからいいけど、よろしくな寺内、中原、高田そして栗花落(つゆり)カナヲ」

 

鷹山は不敵な笑みを浮かべる。その顔を見たきよ、すみ、なほは恐怖で声が出なくなってしまった。

 

●●●

 

ある夜のとある場所そこは奇妙な場所であった天井や襖など上下左右がバラバラになっている夢の中でよく見そうな場所があった。その奇妙な空間で突然琵琶の音が鳴り響く。それと同時に五人の鬼たちが集められた鬼たちは一体何が起こったのか困惑している様子。ここは無限城鬼舞辻無惨が隠れ蓑にしている場所である。

 

下弦の壱 魘夢(えんむ)

 

下弦の弐 轆轤(ろくろ)

 

下弦の参 病葉(わくらば)

 

下弦の肆 零余子(むかご)

 

下弦の陸 釜鵺(かまぬえ)

 

彼らは十二鬼月の下弦の鬼たちであった。どうして彼らは集められたのかわからない。そしてもう一度琵琶の音が鳴り、一か所に集められた。そして彼らを見下すように一人の女性と琵琶を持った長髪の女が立っていた。

 

「頭を垂れて蹲え、平伏せよ」

 

彼女の言葉に下弦の鬼たちは一斉に頭を下げる。彼女、いや彼は鬼舞辻無惨であった。

 

「も、申し訳ございません。お姿も気配も異なっていらしたので......」

 

「誰が喋って良いと言った?」

 

無惨の言葉に零余子の体は震え出す。圧倒的な威圧感の前にはいくら十二鬼月でも震え上がってしまう。

 

「貴様共のくだらぬ意思で物を言うな。私に聞かれたことにのみ答えよ」

 

お前たちに発言する権利はない私が絶対なのだということを無惨は再度見せつけ、彼らも心の底から理解していた。

 

「累があの忌々しい化け物に殺された。下弦の伍だ。私が問いたいのはただ一つ何故に下弦の鬼はそれ程までに弱いのか。十二鬼月に数えられたからと言って終わりではないそこから始まりだ。より人を喰らいより強くなり私の役に立つための始まり。ここ百年余り十二鬼月の上弦は顔ぶれが変わらない鬼狩りの柱共を葬ってきたのは常に上弦の鬼たちだ。しかし下弦はどうか?なんだ入れ替わった?」

 

(そんなこと俺たちに言われても........!)

 

無惨の理不尽な発言に釜鵺は心の中で悪態をつく。

 

「"そんなこと俺たちに言われても"何だ?言ってみろ」

 

「!?」

 

無惨は釜鵺の心が読めるのか釜鵺の言ったことをオウム返しする。すると無惨は巨大な肉塊を作り釜鵺を捕らえる。

 

「お許しくださいませ鬼舞辻様どうか!!どうかお慈悲を!!申し訳ありません!!申し訳ありません!!」

 

彼の必死の謝罪も無惨には届かず肉塊から大きな口が出現し、釜鵺を喰らおうとしたその時だった。

 

「ねぇ、ちょっと許してやったら?可哀想でしょ」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」

 

突然どこからともなく声が聞こえる一体どこから喋ってきているのか、無惨は周りを見渡すがどこにも見当たらない。他の鬼たちも周りを見渡しているがどこから聞こえてくるのかわからなかった。

 

「誰だ!どこから入ってきた!姿を現せ!」

 

一向に姿を現さない謎の人物に無惨は痺れを切らし先に釜鵺を喰い殺そうとしたがそこにはどういう訳か既に釜鵺の姿はなかった。どこに行った?無惨は消えた釜鵺を探す。するとそこにはさっき捕らえたはずの釜鵺がそこにいた。そこまではいいただ一つだけ確かな違和感があった釜鵺の隣に誰かが立っている。無惨はその誰かを見て驚愕する。そいつは赤い身体に緑色の目そして手足にはトカゲの襟のような刃物が付いている。無惨はすぐにこいつが誰か理解した。こいつはかつて無惨を襲ったあの化け物ではないか。

 

「大丈夫かお前?全く散々だな、お前らの当主の気分で殺されちまうなんて」

 

無惨は目の前にいる化け物をすぐに排除しようと触手を伸ばす。しかしその化け物は飛び上がり触手を回避するそして空中でバク転しながら無惨の後ろに着地し、刃物を無惨の首にあてる。

 

「出会った矢先に触手で攻撃とはあたたかいご挨拶ありがとう。おっと動くんじゃねぇぞ。少しでも動いたらお前の首を切り落とす。勿論それだけじゃ死なない事ぐらいわかる。お前の生態は既に把握している。お前の脳みそと心臓を一瞬で潰して最後に首を切り落とすことぐらい容易に出来んだぜ。それをされたくなかったらその触手を元に戻して俺の話を聞いてくれないかな?お前にとって特別なことを教えてあげるぜ。そのかわり俺と協力しろ、そしたら話してやる。約束する」

 

無惨はどうするか思考を巡らせる。この化け物を信用するべきか?もしこいつが自分を殺しに来た存在ならすぐにでも殺す。無惨は一旦冷静になって考える。もしこいつが自分が今まさに欲しがっているものを知っているのなら話を聞くべきではないだろうか。もしこいつの言っていることが嘘であるとわかればすぐに殺せばいい話だ。無惨はそう考え伸ばした触手を元に戻す。

 

「よしそれでいいじゃあ約束通り話をしよう。まずは自己紹介からだ俺の名前は蛮野惣一(ばんのそういち)、言っておくがお前の出会った化け物は俺じゃないからな。勘違いしてもらっちゃ困るぜ。後、確証を持たせるために一つ言っておこう俺は千年以上前君を鬼にした医者のことを知っている」

 

「何?」

 

「これで信じてくれるかな?」

 

この化け物の名は蛮野惣一という名前らしい。どうやら彼は鬼舞辻の過去を知っているようだ。軽く自己紹介した蛮野は早速本題に入る。

 

「早速本題に入ろう。そういえば鬼舞辻さん君が最近知ったあの化け物の名前なんだけどね、アマゾンって言うんだ」

 

「アマゾン?」

 

「あいつらは俺を含めてお前らを君たちを殺すために作られた生物兵器だ。俺の中にあるアマゾン細胞が君たち鬼の細胞を喰い殺す。まぁ要するに君たち鬼の天敵って訳だな。そんな俺が何故君たちに協力を持ちかけてきたのか、実は俺はある組織の一員だったんだけど追い出されちゃったね、そいつらに復讐する為に君たちのところに来たわけ」

 

無惨はいつまで経っても自分の聞きたいことを言わない蛮野に苛立ちを覚えていた。

 

「ごめんごめんそれじゃ焦らすのもこれくらいにして君が1番聴きたがっていることを話そう青い彼岸花を探しているそうじゃないか」

 

「知っているのか!?」

 

「ああ勿論知っているだが今持っているわけじゃない。だがそれを見つけ出すことは俺には出来る。青い彼岸花は気候によっちゃ一年中咲かない厄介なやつでな。しかも昼の間にしか咲かず数分で花が閉じちまう。閉じた時にはつくしのような形になるから探しにくいんだ。夜しか活動できない君たちじゃ見つけられないのも無理はない。それを俺が見つけやろう俺は日にあたっても死なないから大丈夫だ。ついでにあの鬼殺隊とか言う奴らにも全滅させるよう俺がやってやろうか?悪くない話だろ?」

 

無惨は考える、もしこいつと協力すれば自分も完全なる不老不死に近づけるかもしれない。運命は自分に味方してくれている。協力しない手はなかった。

 

「わかったいいだろう。もし青い彼岸花を見つけ出してくれるのなら貴様の復讐とやらも手伝ってやる」

 

「そうかどうもありがとう!賢明な判断だ!早速だけどさ。そこにいるあの下弦の鬼たちを俺にくれないかな?いらないんでしょ?」

 

無惨は役に立たない下弦の鬼たちならいくらでも持っていっていいと考えすぐさま承諾する。

 

「いいだろう、持っていけ」

 

「ありがとう鬼舞辻さん!じゃあ早速みんな俺のところに来てくれないかな?今日から君たちは俺の仲間だ!」

 

下弦の鬼たちは突如として現れた蛮野惣一と名乗る男の仲間になった。彼らはこれからどうなるのか不安で仕方がなかった。




次回もお楽しみに


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夢列車

炭治郎は伊之助と善逸よりも先に機能回復訓練が終わり、今は全集中の呼吸の常中ができるように訓練しているとのこと。常中とは、全集中の呼吸を常にし続けるというものである。それは相当にキツく、例えるならば、短距離走の速さのままで長距離を走るようなものである。炭治郎はそれを習得する為に、頑張っているらしい。悠はその姿を見守っていた。

 

「炭治郎大丈夫?ちょっと休憩する?」

 

「ゼェゼェ、大丈ゼェ、まだゼェゼェ、やれゼェハァゼェ」

 

炭治郎は大丈夫と言っているが、見らからに大丈夫そうではない。悠は全集中の呼吸は使う必要がない為、炭治郎の気持ちはわからなかったが、かなりキツイということだけは伝わっていた。そんな炭治郎を悠は心配そうに見ていると、悠の後ろを誰かが通りかかった。

 

「よぉ、お前さん方、頑張っとるか?」

 

「あ、こんにちは」

 

悠が振り返るとそこにいたのは隠であった。しかもこの関西弁の喋り方、柱合会議の時に悠を運んだ男であった。悠は軽く挨拶する。

 

「こゼェゼェこんにちゼェゼェ......ハァァァァ、ハァ、こんにちは」

 

炭治郎も挨拶しようとするが、息切れしているせいで中々言えなかった。

 

「こんにちは。しんどそうやな。常中か、懐かしいな。俺もそれやらされて死ぬかと思ったわ」

 

「あなたも鬼狩りだったんですか?」

 

「ああそうや、こう見えても元柱やったんやけどな」

 

「柱だったんですか?」

 

「そうやで、鳴柱(なりばしら) 石動天十郎!ってな、カッコええやろ」

 

隠こと石動天十郎は自慢気に昔話をし始めた。

 

「俺は雷の呼吸の使い手でな、それはもう神足の如くバッサバッサと鬼を狩っていったんやで」

 

「そうだったんですか、じゃあなんで今隠を?」

 

炭治郎は天十郎にどうして今隠をやっているのか尋ねる。すると天十郎は自分の膝を触った。

 

「足をやられてもうてな。この辺をこうズバってな」

 

天十郎は両膝を横になぞる。悠はと炭治郎はその膝を見ていた。すると天十郎は質問をした。

 

「そういや、あの金髪と猪頭は?」

 

「ああ、善逸と伊之助はまだ訓練です。しばらくサボってたみたいなんで」

 

「なんやそれ、まぁサボる気持ちも分からんくもないけどな」

 

そして天十郎は思い出したかのように二人にさよならを言った。

 

「あ、俺用事あるから、またどっかでな。あとそれ終わったら瓢箪割らなあかんらしいで、息吹きかけてな」

 

「はい!頑張ります!.....えっ瓢箪!?」

 

天十郎の言葉に炭治郎は驚き、頭を抱えた。

 

「瓢箪なんてどうやって割るんだあああ!」

 

大声をあげている炭治郎を後ろに、悠は不思議そうに天十郎の背中を見ていた。

 

●●●

 

場所は変わり蝶屋敷、ここでは今サボっていたツケを払っている善逸と伊之助が機能回復訓練をしているところであった。今は組み手をしており、それは鷹山が請け負っていた。鷹山はいつものように二人を軽くあしらっていた。伊之助は突っ込んでいくが躱され、善逸が逃げようとするところを捕まえて叩きつけるなど、ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返し最終的に二人はボロ雑巾のようになってしまった。

 

「そこまで!ちょっと鬼柱様、少しやりすぎですよ!」

 

「こういう奴にはやり過ぎるぐらいが丁度いいんだよ。ね、カナエちゃん」

 

鷹山はアオイに注意されるが反省する様子はない。床に倒れている二人は死んでいるんじゃないかと思うほどぴくりとも動かない。そんな二人にカナヲは指でつついている。

 

「アオイの言うとおり、やり過ぎですよ仁さん。少しは優しくしてあげないと」

 

「え〜わかったよ....」

 

カナエに怒られてしまった鷹山は少し落ち込んでしまう。すると鷹山の後ろに倒れていた善逸と伊之助が勢いよく立ち上がりそれにカナヲは驚く。

 

「テメェェェェェ!!さっきからよおおおお!!なにカナエさんと仲良く話してんだ!!?」

 

「おい!俺はまだ負けてねぇぞ!!もう一回勝負だ!!」

 

善逸はカナエと仲が良さそうに話していた鷹山にブチギれ、伊之助は意地を張ってもう一度勝負を吹っ掛ける。善逸の怒りの疑問にカナエは優しい笑顔で答えた。

 

「それは、仁さんは私の夫ですからね」

 

「はあああああ!!?」

 

カナエの答えに善逸は理解できず、さらに怒りの声を上げる。そしてカナエの隣にいたしのぶは笑顔の顔をしているが、怒りが滲み出ているのが丸わかりであった。

 

「おい!聞いてんのか!!もう一回勝負だ!!」

 

「うるせぇよ。もう疲れたからここで終わりだ」

 

鷹山はさっさと屋敷から出て行こうとする。そんな鷹山にカナエはどこへ行くのか質問した。

 

「どこにいくんですか?」

 

「ちょっと外の空気吸いにな」

 

そう言って鷹山は屋敷から出て行った。

 

●●●

 

鷹山が屋敷の外に出ると一人の隠と出会った。

 

「お!鬼柱様やないですか。奇遇ですね」

 

それは天十郎であった。鷹山は天十郎を見ると少し怪しそうに見る。

 

「お前、ここに何しに来たんだ?」

 

「いや〜珍しく暇ができましてね。ちょっとここに顔出そうかなって思うただけです」

 

鷹山の質問に天十郎は愛想良く答える。そして天十郎も同じように鷹山に質問した。

 

「そういう鬼柱様もここで何を?」

 

「まぁ、ちょっとした手伝いってところだ」

 

「へぇ、そうですか。じゃあ俺にもなんか手伝えることはないですかね?ほら俺、今暇なんで」

 

天十郎は愛想笑いしながら何か手伝えることはないか鷹山に聞く。鷹山は少し考えていると後ろから誰かが歩いて来た。

 

「鷹山さん。ここで何してるんですか?」

 

二人は振り向くとそこにいたのはしのぶであった。天十郎は軽く挨拶する。

 

「しのぶちゃん久しぶり」

 

「天十郎さん!」

 

しのぶは足早に天十郎に近づき挨拶する。

 

「天十郎さんお久しぶりです。どうしてここに?」

 

「いやちょっと珍しく暇ができてね。ちょっとここに顔出そうかなってと思うたんやけどな」

 

「それなら中に入ってくださいよ。お茶を用意しますから」

 

「いや、顔出すだけやしすぐ戻るから」

 

「いいじゃないですか少しくらい」

 

「んーーそうやなぁ」

 

鷹山は楽しそうに話している二人を黙って見ていた。特にしのぶの方はいつも作り笑いをしているような顔をしているのに何故か天十郎と話している時は本当に笑っているように鷹山は見えた。しばらく見ていると何かを察したのか鷹山は二人から離れる。

 

「あーそういうことね。なるほど、悪いね邪魔しちゃって。俺もう行くから」

 

そう言って鷹山は二人を見ながら後ろ歩きで離れていった。そんな鷹山に天十郎としのぶは見ていた。何かあったんじゃないかと心配になったしのぶは天十郎に質問する。

 

「天十郎さん、あの人に何か言われたんですか?」

 

「いいや別に、なんも言われてへんで」

 

「そうですか、でももしあの人に何かされたら私に言って....」

 

「気にせんでええってしのぶちゃん。あの鬼柱様は悪いやつとちゃう。カナエちゃんが惚れた男なんやで?心配せんでええ。それよりほら、みんなに久しぶりに会いたいからな、案内してくれや」

 

しのぶの心配そうな顔を元気つけるために天十郎は止め、しのぶに蝶屋敷を案内してもらうように頼んだ。

 

●●●

 

鷹山は屋敷の前に立つ。ここは鷹山の屋敷である。鷹山は屋敷の扉を開けるとまずは台所があり、その横に十畳ほどの居間がある。そのさらに向こうは寝室だ。ニ階はないが、一人で住むには充分なほどに広い。しかし、掃除をしていないのか部屋は非常に散らかっている。ゴミ屋敷とはいえないにしても、衣服や本などが散らばっている。鷹山は靴を脱ぎ居間に上がり、畳に大の字で寝転がり、大きくため息をついた。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ......疲れたぁぁ」

 

あの時の組み手でかなり疲れにより非常に体が怠い、普段なら組み手程度で疲れはしないのだが、カナエが応援するたびにしのぶの殺気が鷹山を鋭く貫くため普段より息苦しかった。もはや呪いである。これはしのぶだけに限ったことではなく、他の柱たち、ましてや他の隊士たちにもしのぶと同じ殺気をおくられることとなる。仕方が無いことではあるが流石の鷹山も気が滅入る。

 

「あーあ、俺の味方はカナエちゃんだけだよ....」

 

そう呟いた鷹山は静かに目を瞑った.....と思ったら突然鎹鴉の鳴き声で叩き起こされてしまう。

 

「カァー!!カァー!!鬼柱鷹山仁!スグニトアル列車デ失踪事件ガ起キテイル!!早ク行カナイト大変ナコトッグエェ!!」

 

鷹山はあまりの煩さに鎹鴉の首根っこを掴む。

 

「ゲェ....ガァ.....!」

 

「うるせぇよゆっくり寝ようとしたのに急に起こすなよ、焼き鳥にすんぞ」

 

そういうと鷹山は鎹鴉から手を離す。鎹鴉は何度か咳き込んだ後、もう一度伝言を伝える。

 

「スグニ列車二向カエ!!早クシナイト大勢ノ人ガ鬼ノ犠牲ニナッチマウカモ知レナイジャン!早ク行カナイト手遅レニっ....!」

 

「わかった、わかったから落ち着け、キツツキ。ったくその心配症な性格治した方がいいぜ」

 

鷹山を叩き起こしたこの鎹鴉。名をキツツキという。何故烏なのにキツツキという名前なのかというと、このキツツキの頭の方が赤くなっていて、それがキツツキに似ているからキツツキというな名前になった。

 

「心配しているだけじゃ何も変わらん。行くしかないか....」

 

●●●

 

なんやかんやあって炭治郎たちの治療も終わり、今からとある列車の調査に向かうこととなった。炭治郎と善逸は泣きながらは泣きながらその前に、悠は自分の寸法があった隊服をもらった。その上に真緑色の羽織りを羽織っている。そのことに道中炭治郎に言われた。

 

「兄ちゃん、その隊服似合ってるね。それにその羽織り」

 

「ん?ああこれ?この羽織りはカナエさんが選んでくれたんだ」

 

「へぇー」

 

そんな話をしている間に悠たちは汽車に到着した。列車には沢山の人々がいて賑わっている。とてもここに鬼がいるとは思えないようだ。もう直ぐ夜になるといったところで善逸が炭治郎につかみかかり怒声をあげていた。

 

「えーーー!!まだ指令来てなかったのかよ!!いても良かったじゃんしのぶさんち!!」

 

「いや......治療終わったし、一箇所に集まっているより....」

 

「あんな悲しい別れしなくてよかっただろ!!」

 

「いや....指令が来た時動きやすいように.....あと炎柱の.....」

 

「バカバカバカァ!!」

 

「善逸君。そんなにうるさくしちゃ、周りの人に迷惑だよ....」

 

「おい」

 

「今忙しいんだよ!」

 

「おい!おい!」

 

「なんだようるさいなぁ!」

 

「なんだあの生き物はぁ!!?」

 

伊之助の見る方向に三人は視線を向ける。そこにあったのは巨大な汽車であった。初めて見る列車に伊之助は何かの生き物かと思い冷や汗をかいていた。

 

「こいつはあれだぜ、この土地の主.....この土地を統べる者。この長さ、この威圧感、間違いねぇ、今は眠っているようだが油断するな!!」

 

「ああ、伊之助君、それはね....」

 

「汽車だ。一八○二年に英国のコーンウォールの鉱山で働く親方の息子であるリチャード・トレビシックが世界初の軌道上を走る蒸気機関車を発明し、一八○四年に同じく英国のウェールズのマーサー・ディドヴィルにあるペナダレン製鉄所で初走行させたのが始まり。山の主でもなんでもねぇよ」

 

後ろから声がし、四人は振り返るとそこにいたのは赤い羽織を羽織った鷹山がいた。

 

「鷹山さん...」

 

「よっ、ここで会うとは奇遇だな。どうださっきの名解説。博識だろ?」

 

「あああああ!!おま、おまおまお前!!なんでここにいんだよ!?」

 

「俺もここに来いと言われてね。そんで言われた通りに来たらたまたまお前らがいたから声かけただけだ」

 

鷹山がここに来た経緯を話す。善逸は悠と炭治郎の後ろ隠れ、伊之助は鷹山に威嚇する。

 

「そうだったんですか。ていうかそれ、似合ってますね赤い羽織」

 

「まぁな、カナエちゃんが選んでくれたんだ。いい感性してるだろ?」

 

「あ。僕もカナエさんに選んでもらったんです」

 

「え、そうなの?ほんとカナエちゃんってば誰にでも優しいんだから。まぁそこが良いんだけど」

 

そんなこんなで悠一行は汽車の中に乗り込む。その中には家族や旅人などの様々な人たちがいる。汽車の存在だけは知っていた悠も任務中であっても内心少しわくわくしていた。そんな中でなんだか騒がしい声が聞こえてくる。

 

「うまい!うまい!うまい!」

 

そこにいたのは列車の弁当箱を食べている炎柱こと煉獄杏寿郎であった。弁当を食べながら「うまい!」と大声で連呼している。煉獄はかなりの大食いなのか、大量の弁当の空が運ばれていた。

 

「よく食うな。任務中でゲロったりしねぇのか?」

 

「む!?お前は鷹山!何故ここに!?」

 

「任務で呼ばれたからな。俺も」

 

煉獄は弁当を食べている途中で鷹山に気づき驚く。鷹山は煉獄の前に座り、炭治郎たちを向こうにいかせる。

 

「おいお前ら向こうに行け。ここからは大人の話だからな」

 

炭治郎たちは渋々すぐ隣の席に座ろうとするが、悠だけは呼び止められる。

 

「あーお前はここだ悠。ここに座れ」

 

「?」

 

悠派言われた通りに鷹山の隣に座る。そして鷹山は前を向きなおり弁当を食べている煉獄に話し始めた。

 

「こうして話すのは初めてかな?煉獄」

 

「そうだな!しかし貴様と食事しながら話すのは気分が乗らん!」

 

「そんなはっきり言うか?もうちょっと建前とかないの?いくらこいつが嫌いだからってそんな言い方ないだろ」

 

「え....」

 

いきなりの言われように鷹山は自分のことを言われていると分かりながら悠が言われていることにし、悠は少し面食らう。そんな悠をよそに鷹山は続ける。

 

「まぁいいや。煉獄、前にも言ったが念のために忠告しておく。もしここでアマゾンが出て来たら俺たちに任せろ。倒そうだなんて思うなよ。そこだけはハッキリ言っておく。アマゾンに襲われて死なれちゃこっちも気分が悪い。カナエちゃんも悲しむからな」

 

「そんなことを言うためにわざわざ俺の前に座ったのか!?」

 

「それ以外に何があんだよ!デケェ声出しやがって!少しは周りのことも考えろ!」

 

大きな声を出してくる煉獄に対抗するように鷹山もできるだけ大きな声で話す。そんなところでどこかやつれている駅員が切符の拝見をしに来た。既に後ろでは炭治郎たちの切符は拝見済みのようだ。

 

「切符を拝見します....」

 

やけにやつれている駅員に少し心配しながらも悠たちは切符を渡し、鷹山と煉獄も続けて渡す。そして駅員が悠と鷹山の切符を切り、そして最後に煉獄の切符を切った途端に煉獄は突然気絶するようにかくんと首を落とした。

 

「え!?煉獄さんどうしたんですか!?」

 

突然眠ってしまった煉獄に悠は驚き、煉獄を起こそうとするがなんの反応もない。

 

「やっぱりな。この切符、鬼の術が仕込んである。幸い俺たちには効かないようだったが....」

 

どこか納得している鷹山に対して悠はまだ状況が飲み込めていなかったが、やっと理解する。

 

「術って.....まさかもうここに鬼が!?」

 

「ああ、俺たちすでに攻撃をうけているってわけだ」

 

冷静な鷹山と焦っている悠を駅員はわけもわからないような顔をしていた。

 

「なんで....なんで眠らないんだ!?」

 

「お前も鬼の仲間か。普通の人間みてぇだが....」

 

「もしかして脅されて!?」

 

「だろうな....おい、お前を脅している鬼はどこにいる?」

 

混乱している駅員に鷹山は質問するが何を思ったのか駅員は懐から針のようなものを出し鷹山に襲いかかった。

 

「邪魔しないでくれ!お前たちがいるから夢が見られないんだ!!」

 

どうやら自らの意思で鬼と協力しているらしい。駅員の男は針を鷹山に向けて突き刺そうとする。そして鷹山は右手で受け止め、針は右手を貫通した。駅員は驚き、その隙に鷹山は駅員の胸ぐらを掴む。

 

「もう一度言うぞ。鬼はどこだ?さっさと答えろ」

 

鷹山の威圧感に駅員の男は恐怖で顔が引き攣り、震えながらも質問に答えた。

 

「し、知らない。俺は知らない」

 

鷹山はため息を吐き駅員を殴り飛ばし気絶させた後、右手に刺さった針を抜き投げ捨てる。

 

「鷹山さん、大丈夫ですか?」

 

「大したことねぇよこんな傷。それよりもこいつらを起こす方法を見つけねぇとな。車内をくまなく探すぞ。鬼が潜んでいるかも知れねぇ」

 

「でも、炭治郎たちは....?」

 

「放っておけ、今は仲間よりも市民を守るのが最優先だ。あいつらなら後で起こす」

 

そういうと鷹山は車内の中を探し始めた。悠は炭治郎たちが心配だったが鷹山の言う通り今は一般市民を守ることを優先しなくてはならない。悠は炭治郎たちを信じて車内の中を探しに行った。



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