魔法科高校の劣等生に転生してしまった男の物語 (ラルド1572684)
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プロローグ1〜俺とトラックと神様達〜

初めまして!ラルド1572684です!お酒の勢いでここまで書いちゃいました^_^
処女作で色々と拙い所はあると思いますが色々と温かい目で見てくれると嬉しいです♪
よろしくお願いします!


俺の名前は黒岩 悠仁《くろいわ ゆうじん》25歳!趣味はサッカーだ!

 

そんな下手くそな自己紹介をしたいぐらいに俺はおかしな状況になっている。

なぜかというと、周りは真っ白な世界で目の前には80歳ぐらいの爺さんが土下座しているからだ。

 

「ごめんなさい!」

 

何かひたすら謝ってるけどこの爺さんは何を謝ってるんだ?

そう思いながらさっきまでのことを思い出してみようと思う。

 

ーーーーー回想入りまーすーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ある金曜日の夜、俺は晩酌用の酒を買いにコンビニまで歩いていた。

 

「ついでにおつまみも買って行こうかな?」

 

そう独り言を呟きながら1人寂しく歩いている時、上から大きな音で

 

ガタンッ!!

 

そんな音が聞こえたから上を見上げてみたら…

 

トラックが空から落ちてきた!?

 

ーーーーー回想終わりますーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

いやいや!

ありえねーよ。

まだ何処かの名探偵みたいに体が縮んでしまった方がまだわかるよ!?

わからねーけど(困惑)

 

「とりあえずこの状況を説明してくれ」

 

俺は目の前の爺さんにそう言うと爺さんは恐る恐るこちらを見た後説明を始めた。

 

「実はカクカクしかじかでして…」

 

何か長かったから適当にまとめるとここは神界でこの爺さんは神様と…

んで、暇だったから他の神様と一緒にマ●オなカートを再現してリアルマリ●カートをしていたと…

んで、この爺さんはそのコースをノリでトラックで運転していたけどコースアウトして落下した先が俺の頭上だったと…

 

何言ってんだこのジジイ?

 

俺は心の中の複雑でドロドロした気持ちを整理させながらこの神様(笑)に聞いた。

 

「何でコースアウトしてすぐに釣り糸で引っ張らなかったんだ?」

 

俺もまだ気持ちを整理できていないらしい…

他のことを聞かないと…

 

「トラック重すぎて釣り糸が切れた…」

 

この神様(笑)死ねばいいのに…

頭の中で目の前の神様(屑)の殺した方考えていると目の前に美人が現れた!

 

「祖父が申し訳ございません」

 

女神だ!目の前に女神がいる!!そうだ告白しy…

 

「ごめんなさい。気持ちは嬉しいですけど…」

 

…告白もさせてくれないだと!

えっ?この女神様俺の心の声w…

 

「これでも神ですから(ドヤ!)

 それより今後について説明させて下さい。

 なろう系です」

 

なるほど!この女神様説明が短くて助かる。

できる女性って奴だな。

 

「ありがとうございます♪

 最近の日本人はこれ言えば大体話が通じて助かります」

 

どんな世界に転生するんですか?

…喋らなくていいから楽だな〜

 

女神様は

「まだ決まってないです。

 なんか使いこなしてますね…」

 

ならDa●sとかブルー●ックとかアオ●シとかエリアの●士とか…

えっ?サッカー系ばっかりだって?異世界系?俺ももう25歳で異世界転生とかやりたくない。

やっぱサッカーでしょ!スポーツ最高!ラブ&ピース!

 

俺はここから1時間ぐらいサッカーと平和について語r…

 

「結構です!

 それよりも転生する世界とお詫びの特典はこれで決めるんですよ!」

 

そう言うと女神様は指パッチンした。

目の前にルーレットが現れた。

 

えっ!これで決めんの?

 

「ハイ!そうですよ!では始めますね♪」

 

ちょっ待てk…

 

何か強引に進められた…

 

転生する世界はルーレットで…

特典の数はサイコロで…

特典はダーツで決められた…

 

「結果発表〜!!

 悠仁さん!あなたが転生する世界と特典はこれです!」

 

転生先 :魔法科高校の劣等生

 

転生特典:・重力魔法適正

    ・武術適正

    ・魔力操作適正

    ・魔力増大(中)

    ・身体操作向上

ここからはお詫びです♪(by女神!!)

    ・自己鑑定魔法

    ・限界突破

    ・賭博神の加護

    ・トラックの加護(笑)

 

こんな結果だった…

俺は声を大にして主張しよう!

 

「転生先チェンジで!」

 

「却下です♪」

 

ばっさり切られた…

嫌だ嫌だ!俺は平和な世界に転生したい!

バトル物は見るだけで十分!

平和な世界でアニメしたい!

サッカーしたい!

ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ…

 

「そこまで言うなら〜呪術廻s…」

 

「転生先に不満はありません!ぜひ魔法科高校の劣等生の世界に転生させて下さい!」

 

「分かりました〜」

 

女神様は嬉しそう言った後に姿勢を正して俺を見る。数秒俺の目を見つめた後口をひらく。

 

「今回は祖父がこのような事態を引き起こしてしまい大変申し訳ございませんでした。悠仁さんには多大なご迷惑を掛けてしまいました。以後このようなことがない様に私が責任を持って祖父を監視して躾けます。」 

 

孫が祖父の躾をする?

ちょっと疑問には思ったがまぁいいか。

俺は女神様にこう言った。

 

「女神様が責任を持ってあのジジイ(神)の面倒見てくれるなら一旦許します。最後にあのジジイ(あんな奴死ねばいいのに…)に一言いいですか?ていうかジジイ!テメー何顔あげてんだ!立場分かってんのか!土下座しろ!」

 

そう言うとクソジジイ(神)は再び土下座した。

土下座しているクソジジイ(神)の耳元まで行き俺はこう囁いた。

 

「あの女神様に迷惑かけるなよ?もし迷惑かけることがあったらどんな手を使っても必ず呪い殺してやる。分かったよな♪」

 

クソジジイのビクビク震えている様を見る所、多分脅しは効いただろう!

ひたすら頭の中で世界の拷問方法を考えた甲斐があったわ〜

 

そんなこと思いながら女神様の所に向かった。

 

「もう大丈夫です♪」

 

俺は女神様にそう言うと女神様は一旦呆けていたがすぐに気を持ち直して

 

「っ!分かりました。ではお気をつけて下さい。」

 

女神様はそう言った後俺の体は光に包まれ、

目の前が真っ暗になった。

 

こうして俺は転生したのであった。

 

 




この後はもういきなり原作に突入しようと思います。
神様達もこの後登場させるかどうかは決まってません。
どうしようかな?
以上、ありがとうございました。


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入学式編〜原作主人公と俺〜
入学式編Ⅰ


どうも〜この作品を見ていただきありがとうございます♪

本編スタートですどうぞ


おっす!オラ悠仁15歳ピチピチの高校生!

えっ?25歳?何言ってるか全然分かりません。

どう見ても高校生でしょ!

そんなことは置いといて俺は何と第一高校に見事合格しました。

俺の目的はあの完全無欠のチートなシスコンお兄様、司波達也くんと友達になることです。

事件には巻き込まれてしまうけどそれを差し置いてもあの再成魔法の使い手と仲良くしておきたい。

俺のモットーは死なないことだから!でも早くも達也くん友達作戦が失敗しそうだ。

 

なぜなら…

遅刻だぁーーーーーーーーーーーーーーーー遅刻だ!

朝起きたら入学式のはじまる16分前!

今から着替えて学校行くのに最速で約15分…

 

ギリギリ間に合う!急げ俺!

 

俺の体内時計はただ今14分ぐらい。

目の前には校門!間に合う!

俺は校門を通過した。俺の体内時計タイムは14分45秒!!

 

さすがだな俺!俺は前世も含め常に遅刻と1分1秒を争った男。

俺ぐらいのベテランになると、一度下見しただけで学校に着く最速のタイムを逆算できる。

流石に社会人になってからはもう少し余裕を見るようになったけど今は学生。

遅刻しそうになっても仕方がないよね。

 

自画自賛しながら息を整えているとある女子生徒が俺に声をかけてきた。

 

「あの〜新入生の方ですか?」

 

俺は返事しようにも今は酸素が足りない。

声をかけてもらったのに失礼かなぁと思いながらも俺は首を縦に振って肯定を示した。

 

すると女子生徒は

 

「まだ入学式の1時間前ですよ?そんなに慌ててどうしたんですか?」

 

俺は聞き捨てならないことを聞いてしまった。俺は思わずその女子生徒を睨みつけた。

 

ギラッ

 

「ひゃうっ」

 

女子生徒は驚き悲鳴を上げてしまった。

 

俺はしまったと思った。

せっかく善意で声をかけてくれたのに…

俺は謝ろうとした時気づいてしまった。

 

小柄で小動物思わせるような雰囲気にかわいい外見。

制服には8枚の花弁のエンブレムがついており、CADを携帯している。

 

ーー中条あずささんだ!ーー

 

そう思いながらも俺は謝罪も込めて自己紹介をした。

 

「新入生の黒岩悠仁です。先程は申し訳ございませんでした。それで、

 入学式の時間は変更されたんですか?」

 

「あっ!ハイ!生徒会書記、2年の中条あずさです。入学式の時間は変わってないですよ?」

 

そう言ってあずさは学校の時計を指差した。

 

そして俺は膝から崩れ落ちた…

 

あずさは

「だ!大丈夫ですか!やっぱり体調が悪いんですか!!」

 

そんなあたふたしてるあずさを無視して俺は30秒ぐらい放心状態になっていた。

 

やがて俺は気持ちを切り替えてあずさに

「ありがとうございます。中条先輩のおかげで恥をかかずにすみました。適当な所で寝て時間を潰します。ありがとうございました。」

 

そう言って俺はお昼寝スポットを探すのであった。

 

閑話休題

 

「どうしたの?あーちゃん?」

 

「あっ!会長!実は…」

 

あずさはさっきここであったことを話した。

するとその会長はお腹を抱えて笑っていたそうだ…

まるで新しいおもちゃを見つけたとばかりに満面の笑みで…

 

ー閑話休題、本編戻りまーす!ー

俺はお昼寝スポットを見つけた!やったぜ^_^

お昼寝スポット-通称ベンチ-に腰掛け寝ていた。

 

ー入学式30分前ー

 

「新入生ですね?開場の時間ですよ」

 

俺はその声で目が覚めるとそこには主人公こと司波達也(しばたつや)くんと腹黒で猫被りな人、七草真由美(さえぐさまゆみ)さんがいた!!

俺は慌てて立ち上がり姿勢を正す。

 

すると真由美はジト目になりながら俺に向かって

「何か失礼なこと考えていませんか?」

 

「考えていませんよ?」

 

やっぱ鋭いなこの人。色々と気をつけよう。

 

すると達也は

「声をかけていただきありがとうございます。すぐに行きます。」

 

達也は立ち去ろうとするが真由美は

 

「感心ですね、スクリーン型ですか」

 

「仮想型は読書に不向きですので」

 

「動画でなく読書ですか、ますます珍しいです。

 私も映像資料より書籍資料が好きな方だから、何だか嬉しいわね」

 

何か俺抜きに盛り上がってるし…俺今空気じゃね?先に入学式にいこうかn…

 

「あっ、申し遅れました。私は第一高校で生徒会長を務めてます、七草真由美です。ななくさ、と書いてさえぐさ、と読みます。よろしくね!」

 

「俺は、いえ、自分は司波達也です」

 

その名前を聞いた後、真由美は「あの司波達也くんね」と言って達也の筆記テストの結果を誉めていた。

 

流石主人公!

やっぱ違うな!

何か達也はこっちをチラチラ見てるけど、俺とっては他人事なので気づかないフリをして真由美の話を聞いていた。

 

すると真由美は俺の方を見た。達也もこっちを見た。

 

あぁ俺の番ね!

「私の名前は黒岩悠仁です。」

 

「あぁ!あの黒岩くんね」

 

待って!

どの黒岩くん!?

色々と問い詰めようと思ったが入学式までそんなに時間がない。

仕方ない…、戦略的撤退だ!

 

「多分その黒岩くんじゃないですよ。そろそろ時間なので失礼します」

 

俺は達也くんと一緒にこの場を立ち去った




そのうち悠仁くんの能力表を作りたいと思います


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入学式編Ⅱ

 

俺と達也は会場に向かう間改めて自己紹介をした。

 

「改めて!俺の名前は黒岩悠仁!よろしくな司波くん!」

 

「こちらこそよろしく。黒岩。」

 

「悠仁でいいよ司波くん」

 

「なら俺の方も達也でいい」

 

「了解!達也!」

 

よし!達也くんお友達作戦第一関門突破!!

 

その後世間話をしながら俺達は会場に向かった。

 

会場の中に入って俺が思わず…

 

「一科生と二科生綺麗に分かれてるなぁ〜」

 

達也も…

 

「そうだな…最も差別意識が強いのは、差別を受けている者である、か……

 

「そうかもしれないな。まぁそんなことよりここに座ろうぜ達也!」

 

達也はまさか聞かれていたと思わず少し驚いたがすぐに「ああ」と返事をして悠仁の隣に座った。

 

少しして悠仁は席で爆睡中。

達也の方もやることもないので素直に睡魔に委ねようとする前にある女子生徒に声をかけられた。

 

「あの、お隣は空いてますか?」

 

悠仁が通路側の席に座っているが達也の反対側はまだ誰も座っていない。

空席も少なくないのだが何故わざわざここに?と思ったが達也はむさ苦し男よりましだと思い、「どうぞ」と返事をした。

 

すると奥から3人程女子がこちらにやってきた。

達也は納得した。

4人まとめて座れるところを探していたらしい。

するといきなり

「あの…」

さっきの女子生徒に声をかけられた。

なんだと思い女子生徒の方を見ると

 

「私、柴田美月(しばたみづき)っていいます。よろしくお願いします」

 

何故か自己紹介されたが達也の方も…

 

「司波達也です。こちらこそよろしく」

 

自己紹介をした。

すると美月の隣から…

 

「あたしは千葉(ちば)エリカ。よろしくね、司波くん」

 

「こちらこそ」

 

達也は自己紹介の流れで一応悠仁も紹介した方がいいと思い、悠仁を起こした。

 

「一旦起きろ。悠仁」

 

「何だ?達也。もう入学式終わったのk……人違いです

 

 

何でエリカがここにいるんだ!?

ってそうか!原作はここで達也と知り合ったんだった!ヤベェ…

こんな所で会うと絶対面倒臭いことになる。

達也助けて!ヘルプ!ヘルプ!

 

すると達也は揶揄いながら…

 

「俺の名前は黒岩悠仁。よろしくな司波くんとさっきの自己紹介したじゃないか」

 

「おい!達也ちょっとm…「悠仁!半年間も道場来ないで一体どこで何してたの?」Ah…」

 

エリカが叫びながら俺を問い詰めた。

 

「ちょっと待て!エリカ後で話すから落ち着け!周りを見ろ!」

 

悠仁に言われ、エリカが周りを見ると会場の全視線がエリカの方に向いていた。

エリカは気付き、恥ずかしそうに席に座る。

 

覚えときなさいよ。悠仁…

 

絶対に嫌だ!どうやって惚けよう?

それより達也!テメエ覚えておけよ!

 

そんなことがあって入学式が終了した。

 

俺達は生徒用のIDカードを受け取った後エリカが…

 

「司波君、何組?…ついでに悠仁も」

 

「E組だ」

 

「俺もE組^_^」

 

達也と俺の答えに…

 

「やった!司波君と同じクラス!」

 

あの〜俺もおるんだけど?

そう思ったが今エリカを刺激すると面倒臭いことになるから黙っておこう。

 

美月も「私もE組です。」

 

成程!E組は俺、達也、エリカ、柴田さんだな!

俺以外原作通り!

 

そんなこと思っているとエリカが…

 

「どうする?あたしらもホームルーム行ってみる?」

 

すると達也が…

「悪い。妹と待ち合わせしてるんだ」

 

「へぇ…司波君の妹ならさぞかし可愛いんじゃないの?」とエリカ。

 

「妹さんってもしかして新入生総代の司波深雪さんですか」と美月。

 

「双子?」と俺。

 

すると達也は…

 

「よく聞かれるけど双子じゃないよ。俺が四月生まれで妹が三月生まれ、俺が前に一ヶ月ずれても妹が一ヶ月過ぎても、同じ学年じゃなかった」

 

「本当に双子じゃないの?」と俺は言った。

 

「違うぞ。どうしてそう思うんだ悠仁?見た目とか全然違うと思うけど…」

 

「だってあまりにもオーラというか雰囲気が似てるんだもん。」

 

俺がそういうと美月も…

 

「分かります!お二人のオーラは凛とした面差しがとても良く似ていますもんね!!」

 

うぉ!美月がこんな嬉しそうに同意をしてきた。

原作だともう少し落ち着いていたと思うけど…

 

「悠仁に柴田さん、オーラとかよくわかるね。目が本当にいいんだね。」

 

その言葉にエリカが食いついた。

 

「悠仁はともかく美月はメガネかけてるよ?」

 

「そういう意味じゃないよ。それにそのメガネ度が入ってないだろ?」

 

エリカがメガネを覗き込んでいる。

 

俺はともかくってどういうこと?

エリカ俺の扱い雑じゃね?

 

「お兄様、お待たせ致しました」

 

講堂の隅っこで話し込んでいた俺たちの背後から達也の待ち人の声がした。

おお!あの超絶ブラコン娘の司波深雪(しばみゆき)女王陛下だ!!

そう思っていると達也と深雪がこちらを睨んできた。

何で?っていうかやっぱりお前ら双子だろ!

そう思っていると

 

「また会いましたね。司波君、黒岩君」

 

「そうですねまた会いましたね。生徒会長、何か生徒会長も大変そうですね。」

 

俺はそう言いながら後ろの人達を見た。

さっきまで5〜6人ぐらいの人達と同時に喋ってたからなあー

 

「本当に大変なのよ〜」

 

そんな雑談を真由美としている頃、深雪達は丁度エリカ達と自己紹介をしていた。

 

「初めまして、柴田さん、千葉さん。司波深雪です。わたしも新入生ですのでお兄様同様、よろしくお願いします。」

 

「柴田美月です。こちらこそよろしくお願いします」

 

「よろしく。あたしのことはエリカでいいわ、貴方のことも深雪って呼ばせてもらってもいい?」

 

「ええどうぞ。苗字ではお兄様と区別がつきにくいですものね。」

 

俺も自己紹介したいなぁ〜

と思いながらも悠仁は真由美に質問する。

 

「雑談もいいですけど、本当は司波さんに用事があったんじゃないんですか?」

 

そう言うと深雪達がこちらを見た。

 

「大丈夫ですよ司波さん、今日はご挨拶させて頂いただけだから。

 深雪さん…と、呼ばせてもらってもいいかしら?」

 

「ええっ…どうぞ。」

 

「では深雪さん詳しい話はまた後日に…」

 

「会長!それでは予定が!」

 

真由美の後ろにいる男が引き止めようするが、真由美は…

 

「予めお約束していたものではないですから、予定があるならそちらを優先すべきです。」と言い。

 

ついでに俺も「当然ですね。社会人になる為の当たり前のルールですね」と言った。

 

真由美は…

「それでは深雪さん、今日はこれで。司波君、黒岩君もいずれまた、ゆっくりと」

 

そう言って真由美達は達也立ち去っていく。

その背後に続く男子生徒は突然振り返り、悠仁と達也の両方を睨みつけていた。

何で俺も?

俺当たり前のことしか言っていないよ?

 

「……さて帰ろうか」

 

達也はそう言うが俺は達也に言いたいことがある。

 

「達也?何で会長と話していた時、助けてくれなかったんだ?

 お前のせいであの生徒会役員に目をつけられちまったじゃないか」

 

「あれは自業自得だろ…それに俺も目をつけられた」

 

「そーよそーよ!最後の一言のせいよ悠仁」

 

美月がオロオロしている中、俺、達也、エリカが冗談混じりで話していると…

 

「あの?お兄様?そちらの方は?」

 

「そうだったな…紹介するよ深雪。同じクラスになる黒岩悠仁だ」

 

「よろしくね!司波さん黒岩でも悠仁でも好きな方呼んでもらっていいから」

 

「ええ、分かりました。黒岩君、こちらこそよろしくお願いします。」

 

その後はエリカがチェックしていたお店で昼食を摂り、しばらく話し込んでから家に帰宅した。




まだしばらく魔法は出てこないかな)


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入学式編Ⅲ

 

拝啓 女神様

気持ちの良い春風が私達を包んでくれる今日この頃。

女神様はお元気でしょうか?

クソジジイ(神)を躾けていますでしょうか?

クソジジイ(神)は迷惑をかけていませんでしょうか?

私は今遠くの敵(今はクソジジイだけです)にお腹の調子を悪くする呪いを開発中です。

呪いの発動中たまに形代が黒焦げになることもありますが何とかやっています。

いつか必ずあのクソジジイ(神)にも効果のある呪いを開発しておきます。

楽しみに待っていてください。

 

追伸:賭博神の加護のおかけで一人暮らしができるようになりました。

  ありがとうございます。

  

 黒岩悠仁 敬具

 

よし!

多分これでOK!

んっ?何してるかって?

これはあの女神様に毎年送っている手紙だよ!

女神様の神像の前に御供物と一緒に置いておくといつのまにか無くなっているから多分届いてると思う。

女神様に感謝の気持ちを込めて書いているからきっと届いている!

はず…

 

そんなことより今は達也くんお友達作戦について話そうと思う。

もう作戦成功じゃね?

達也とクラスメイトにもなったし入学式の最後ご飯まで食べに行けたよ!

もうこれは九分九厘作戦は成功したと言っても過言じゃない!

 

色々と安心できたから明日ぐらいから日課を再開しようかなー

 

閑話休題

 

一方その頃達也は…

 

「黒岩悠仁…聞いたことない名前だ。だがあの悠仁のオーラとかの発言…もしかしたら美月と同等の霊子放射光を見れる可能性がある。しかもメガネを使用していないと言うことはそれは悠仁が美月以上に優れた制御能力を持っていることのなる…杞憂かもしれないが師匠には相談しておこう」

 

悠仁の軽はずみな発言で友達というよりも要注意人物として見られてしまうのであった。

 

閑話休題

 

俺が1年E組の教室に入り、自分の席を探そうとするとエリカとハーフの男が言い争っていた…

まあ…無視しよ!

 

「おはよう!達也!柴田さん」

 

「おはよう」 「おはようございます」

 

「なぁ?あの2人は何やってんだ?」

 

「「口喧嘩だ(です)」」

 

「いや、その内容知りたかったんだけど…まあいいか…

 おーいお二人さん?もうすぐ予鈴がなるから自分の席に戻っておいた方がいいぞ?」

 

俺はそう言うと自分の席に戻り必要な操作を行った。

 

カリキュラムの説明や公安の女カウンセラーのカウセリングの話とかどうでもいいので省略…

 

「悠仁!」

 

「どうした?達也?」

 

「レオ達と一緒に授業見学をするんだが… 一緒に観に行かないか?」

 

「OK!行くけど…レオって誰だ?」

 

本当は誰か知ってるけど初対面だから聞いとかないと…

そんなこと思っていると…

 

「おっす!お前が黒岩か?俺は西城(さいじょう)レオンハルト!レオって呼んでくれ!」

 

「おっす!レオだな、分かった!俺は黒岩悠仁。俺も悠仁でいいぞ!よろしくな!」

 

「それじゃあ行くか」

 

レオとの自己紹介も済んだし見学会にレッツゴー!!

 

学校2日目の夕方…

俺は夕日を見ながら現実逃避をしていた。

 

「なぁ達也?どうすれば争いは無くなると思う? 今すぐあいつらを気絶させてとっとと帰らない?」

 

俺はそんな物騒なことを呟いていた。

 

「やめろ!さらにひどくなるぞ悠仁」

 

「だよな〜」

 

そんなこと言っていると深雪が…

 

「申し訳ございません、お兄様」

 

「深雪。謝らなくていいんだ。これは一厘一毛たりとも、お前のせいじゃないんだから」

 

「はい…しかしどうしましょう?」

 

「俺にいい考えがある。司波さん!あのケンカしてる奴らのところに行って「私の為にあらそw」」

 

「「却下」」

 

いい考えだと思うのになぁ…ぐすん( i _ i )

 

そんなことやっているうちに、ええっと、あれは確かそう!森山くん!絶対にそうだ!

そんな森山くんはCADを抜いてエリカに魔法を放とうとした!

バカだな森山くん。

もうそこはエリカの間合いだよ?

絶対CAD叩き落されるよ?

案の定、森山くんのCADはエリカが持っている警棒に叩き落とされた。

半年前よりも動きのキレが良くなってるなぁー

俺以外の全員が呆気に取られている。

あれ?森山くんの後ろの方から魔力(サイオン)反応?

止めた方が良くね?

と思ったらさらに遠方から魔力反応!!

 

女子生徒のCADが展開中だった起動式がサイオンの弾丸によって打ち砕かれた!

 

「止めなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」

 

警告を発して、魔法を打ち砕いたのは生徒会長•七草真由美である。

 

「あなたたち、1-Aと1-Eの生徒ね。事情を聞きます。ついてきなさい。」

そう命令するのは真由美の隣に立つ風紀委員長•渡辺摩利(わたなべまり)

二人の雰囲気に圧倒され、誰も動けない1年生達。

 

そんな中達也は気負うことなく、二人の前まで歩いて行き、軽く一礼した。

 

「すみません悪ふざけが過ぎました」

 

「悪ふざけ?」

 

唐突に思えるセリフに摩利が反応した。

 

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学の為に見せてもらうだけのつもりだったのですが、あまりに真に迫っていたもので思わず手を出してしまいました」

 

あれ森山じゃなくて森崎だったんだ…顔は森山顔なのに

俺は人知れず別の所でショックを受けていた。

 

そんなこと思っている間に達也の説得(笑)は続いていた。

 

「ほぉ…どうやら君は、展開された起動式を読み取ることができるらしいな」

 

「実技は苦手ですが、分析は得意です。」

 

「…誤魔化すのも得意のようだな」

 

通常あり得ないことのはずなんだけどなぁ〜

あの風紀委員長(笑)も何であれで引き下がるのだろう?

 

とりあえず、事態は収束したようだ。

最後に摩利が達也に問いかけた。

 

「君、名前は?」

 

「1年E組、司波達也です」

 

「覚えておこう」

 

そう言って真由美と摩利は立ち去った。

 

何かまだ森崎くんと達也が話しているけど帰らせて欲しいんだけどな〜

俺は達也の所に向かった。

 

「達也〜もう帰ろうぜ?これ以上話すことあんの?明日でも良くない?」

 

「そうだな…もう帰ろう」

 

達也はそう言った。

最後に森崎は達也に向かって言い放った。

 

「僕は認めないぞ、司波達也。司波さんは、僕たちと一緒にいるべきなんだ」

 

「いきなりフルネームで呼び捨てか」

 

「別に森崎くんに認められてもな〜達也は大変だww」

 

達也と悠仁の独り言のように呟いた言葉に森崎は反応し、肩を震わせていたがそのまま歩いて帰っていった。

 

「疲れた〜帰ろうぜ!みんな」

 

最後の達也と悠仁の半分喧嘩を売っている言動に深雪達は困惑していたが、悠仁に声をかけられてすぐに返事をして帰ろうとした。

 

「あの!すみません!」

 

全員が声をかけられた方を見ると先程真由美に魔法を打ち抜かれた少女とその隣にいた少女がいた。

 

「私は光井(みつい)ほのかです、先程はすみませんでした。お兄さんが庇ってくれたお陰で大事にはなりませんでした」

 

「…どういたしまして。でも、お兄さんはやめてくれ。同じ一年生なんだから…」

 

「分かりました、何とお呼びしたら…」

 

「達也、でいいから」

 

「分かりました…その…駅まで一緒に帰りませんか?」

 

達也達は断る理由もないので一緒にほのか達と帰ることになった。

帰りながら互いに自己紹介をした。

ほのかと一緒にいた少女は北山雫(きたやましずく)。深雪やほのかと同じクラスメイトらしい…

 

達也達がCADについて話ししている中、俺は内心感動していた。

転生しておよそ15年、ここまで長かった…

挫けそうなこともあった!人知れず夜一人で泣いてしまう夜もあった。

でも俺は何とかここまで来れた!

俺の平和の為n…

 

「悠仁はどう思うんだ?」

 

何か急にレオに聞かれた。

 

「ごめん、何が?」

 

「だから、エリカの兜割りについてどう思うんだ?」

 

「質問の意図があまりわからないが、あんなの奥義とか言われてるけど、俺は3日であれをマスターしたぞ?」

 

その発言に全員がドン引きした。

解せぬ…

 

「何でエリカも引いてるんだ?エリカも普通に兜割り使えるだろ?」

 

「3日って悠仁…」

 

最後変な雰囲気になったが俺達は帰宅した。

 




悠仁は特典の関係上サイオンとプシオンをまとめて魔力として捉えております。悠仁からするとわざわざ魔力の名称を複雑に分けていることを疑問に思っております…
後、森崎くんの扱いをどうしよう?


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入学式編Ⅳ

前回まで
下校中、達也、深雪、エリカ、レオ、美月、ほのか、雫全員にドン引きされた俺。
解せぬ…
俺はショックを受けたまま帰宅した。


 

次の日の早朝、俺は半年前まで毎日やっていた日課を再開することにした。

誰もいない公園で俺は木刀を持って素振りをしていた。

(…体の軸が右にずれてるな、もう少し調整しよ…)

 

悠仁は特典である身体操作向上と自己鑑定魔法を駆使して自身の体の軸のブレを調整していた。

自己鑑定で自身の体の状態を把握。

そのデータを元に身体操作で軸のブレを調整。

武術を嗜む者にとって体幹・体軸はとても大切なことだと悠仁は思い知らされている。

だから悠仁もこの作業を真剣に取り組んでいる。

普通は数十分で自身の体の調整を完璧にはできないのだが、悠仁はこの作業は武術を嗜む者ならみんなできると思っている。

 

(よし…調整終了…次は瞑想か…)

 

悠仁は素振りをやめ、地面に座り瞑想を始めた。

瞑想をしながら悠仁は自身の魔力(サイオンとプシオン)を体内で循環させる。

そして、呼吸の吐き出すタイミングで魔力を吐き出し、吸い込むタイミングで魔力を取り込む。

これも特典である魔力操作適正のお陰である。

数十分後、悠仁は立ち上がり

 

「シャワー浴びて、学校行こう…」

 

一人そう呟いて家に戻った。

 

閑話休題

 

俺は登校中に達也達を見つけた。

 

「おはよう。達也、深雪、エリカ、美月、レオ!」

 

みんなも俺だと気付くと挨拶を返した。

ちなみに俺が深雪や美月のことを名前呼びするのは、達也とほのかの名前呼びの際、俺もそのノリでみんなに名前呼びの許可をもぎ取ったからである。

なお、エリカと美月も達也やレオのことを名前呼びするようになった…

 

みんなと話ししていると後ろの方から声が…

 

達也く〜ん、悠仁く〜ん、オハヨ〜。深雪さんもおはようございます。」

 

何か俺と達也だけ扱いおかしくね?

内容としては深雪のことで昼休みに時間とれる?ついでに一緒にご飯も食べましょう♪みたいな話だった。

 

「なお、悠仁くんは強制です。拒否権はないわよ♪」

 

「えっ!俺は関係ないでしょ!ちょっとm…」

 

「では、失礼します」

 

真由美は学校の方に去っていった。

 

早くも昼休み…

悠仁と達也の足は重い。

(今から生徒会室に隕石でも降ってこないかなぁ?)

悠仁は割と物騒なことを考えていた…

 

生徒会室前…

本日の主役であろう深雪を先頭に生徒会室に入っていく…

俺も達也の後に続いて中に入るとあの風紀委員長が…

 

「1年E組 黒岩悠仁!七草生徒会長から生徒会室に来なさいと言われましたので来ました!生徒会室の中まで来ましたので私はこれで失礼します。」

 

全員がポカン?となった。

よし!完璧!すぐに戦線を離脱s…

 

「達也離せ!俺はお前と争いたくない…」

「逃げるな悠仁…お前だけ何か卑怯だ」

 

「まさか達也と争う日が来るとは…仕方がない…くr…」

 

スパン!

別のやつに頭を叩かれた。

 

「誰だ!頭を叩いた奴は…

 

摩利だった…

やっば!よりによって何でここにいるんだよ!

エリカの次に会いたくなかったのに…。

まだ会うの早いよ!?

 

「悠仁!お前、今までどこほっつき歩いていた!何で道場に来なくなったんだ!」

 

「あーちょっと落ち着いてよお姉ちゃん

 

「「「「お姉ちゃん!?」」」

 

俺とお姉ちゃん以外の全員が叫んだ。

 

「誰がお姉ちゃんだ!悠仁と私は姉弟ではないだろう!」

 

「でも…前までそう呼べって言ってたのに…」

 

「昔の話だ!」

 

「なら、姐さん」

 

「姐さん言うな!お前は鋼太郎(こうたろう)か!」

 

「違うよ、まりっぺ。俺は悠仁だよ?」

 

「あぁーもういい加減にしろ!後、まりっぺも禁止だ!」

 

「え〜わがままだなぁ、まぁどうでもいいけど…それより摩利さん、先に深雪の話をしないといけないんじゃないの?」

 

「どうでもいいって…お前は〜 まぁ、真由美達の邪魔するのも悪い。一度座るか…悠仁、後で覚えておけよ?

 

(嫌です♪)

俺は心の中で思いながらずっと笑顔のまま席に座った。

 

深雪の件は生徒会加入のお願いだった…

途中達也も生徒会に加入させようと交渉していたブラコン娘に笑いそうになったが…

 

すると深雪は「何か変な事考えていません?」と言ってきたので

 

俺は「別に?気のせいじゃないか?」と誤魔化しておく。

 

今度は達也に風紀委員の話が出た…

よし!チャンス!

達也は風紀委員推薦を辞退しようとしてるがそうは問屋が卸さない!

達也を説得するにはまず深雪の方から攻める。

 

「すごいなぁ!達也は。深雪もそう思うだろ?」

 

「そうですね!悠仁さん。さすがはお兄様です」

 

「いや、深雪…そんな「決まりですね!」みたいな目をするのはちょっと待ってくれ…後、悠仁煽るな!」

 

「別に煽ってないぞ?達也。ただ、一科生にもなれない人がいる中での推薦だ…友人として誇らしい。深雪もそう思うだろ?」

 

「分かっているじゃないですか悠仁さん!妹としても誇らしいです!」

 

(後もう少しすれば、達也を落とせる。でも後一歩手が足りない…どうする…)

 

俺は達也を落とす最後の手を考えていた。

 

すると摩利は達也にこう言った。

 

「悪いが昼休みももう終わる。続きは放課後でもいいか?」

 

「…分かりました」

 

「では、またここに来てくれ…ついでに悠仁、お前もここに来い」

 

「拒否権はありますか?」

 

「ない」

 

「…分かりました」

 

 

「「奇妙な話になった」」

 

悠仁と達也は同時に同じことを言った。

 

エリカが「奇妙な話って何?達也君」

 

「風紀委員になれってさ」

 

達也の一言に悠仁以外の三人が盛り上がった。

 

「ついでに悠仁は?」

 

エリカに聞かれた。

 

「また生徒会室に呼び出された」

 

「「「あー」」」

 

レオが「本当に何やったんだ?」

 

エリカが「本当に何やってるの…」

 

美月が「悪いことはすぐに謝った方がいいですよ?」

 

解せぬ…

ちなみに美月のセリフに一番心が傷ついた。

 

 

放課後、悠仁と達也に深雪は生徒会室に向かっていた。

 

「悠仁、次はすぐに逃げるなよ?」

 

「流石に同じネタは今日一日で二回も使えないよ?達也」

 

そんなこと言ってると生徒会室に着いてしまった。

 

「「「失礼します」」」

 

摩利が「よっ!来たな」

 

真由美が「いらっしゃい、深雪さん。達也君も悠仁君もご苦労様」

 

何か身内のノリなんだけど…

 

すると摩利が「さて、行こうか!達也君、悠仁」

 

「分かりました」と達也

 

「えっ?どこに?」と悠仁

 

「待って下さい、渡辺先輩」

 

呼び止めたのは生徒会副会長服部刑部少丞範蔵(はっとりぎょうぶしょうじょうはんぞう)だった。

名前長いよ!

はんぞー先輩でいいか…

俺は素直にそう思った。

何か要約すると達也の風紀委員入りを反対しているようだ…

何か深雪が爆発しそうなんですけど…

 

はんぞー先輩が「会長、渡辺先輩、私は生徒会副会長として、司波達也と黒岩悠仁の風紀委員就任を反対します」

 

ん?

聞き捨てならない所があったよ?

 

「摩利さん、はんぞー先輩ちょっといいですか?俺風紀委員の話とか知らないですけど?」

 

「誰がはんz「部活連にも推薦の枠が空いているからな。私が十文字に掛け合った。十文字もどんな奴か確認したいと言ってたから後でお前の風紀委員就任テストの時に見に来るぞ」」

 

「拒否権は?」

 

「ない」

 

ですよね〜

推薦までしちゃってるもんね〜

 

「はぁー分かりました。はんぞー先輩ひとつ物申したいことがあります」

 

「な、なんだ?」

 

「確かに魔法の才能はあなた達の方がありますよ?でも魔法なんて所詮は手段です。一科生(ブルーム)の方達はそれが分かってない。戦いで必要な物を見れていない。今のあなたならば俺と達也でも簡単に倒せます。」

「つけあがるなよ!二科生(ウィード)のくせに!」

 

「おい!悠仁、俺まで巻き込むな!」

 

達也に肩を掴まれた。

俺はそのまま達也の近くまで行き達也にしか聞こえないぐらいの声で呟いた。

 

「深雪を見てみろよ。もう爆発寸前だぞ?同じ生徒会の人と言い争うのは深雪の心象が悪くなるぞ?まだ俺たちがケンカを売った方がいい。本当は俺がやりたいが俺は試験があるからな。達也がはんぞー先輩を潰してくれ」

 

達也は一旦深雪の方を見た後…

 

「ああ。分かった。すまなかった…そして、ありがとう」

 

達也がはんぞー先輩のところに向かった。

 

「服部副会長。俺と模擬戦をやりませんか」

 

「何!」

 

「悠仁にあそこまで言われて何も感じないわけではありません。あいつの期待に応えてみたいと思います」

 

「お前も身の程を弁えない奴のようだな!いいだろうお前と黒岩には身の程を弁える重要性をたっぷりと教えてやる」

 

すると真由美が口を挟んだ。

 

「私は生徒会長の権限により、2年B組・服部刑部と1年E組・司波達也の模擬戦を正式な試合と認めます」

 

「生徒会長の宣言に基づき、風紀委員長として二人の試合が校則で認められた課外活動であると認めます」

 

「時間はこれより30分後、場所は第三演習室、試合は非公開とし双方にCADの使用を認めます」

 

これにより達也とはんぞー先輩の模擬戦が正式に決まった。

原作通り♪




次回!達也vsはんぞー先輩そして悠仁!風紀委員就任テスト!
ついに悠仁君の魔法が観れるかも!


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入学式編Ⅴ

初めての戦闘シーン!
大丈夫かな?
暖かい目でご覧下さい!


 

第三演習室

俺も模擬戦の見学が許された。

まぁ、焚き付けた本人だし…

 

他に見学が許されたのは真由美を含む生徒役員と風紀委員長の摩利だけである。

達也が準備するのを待っていると深雪がこちら側に来て声をかけた。

 

「あの…悠仁さん、先程はありがとうございました。」

 

「えっ?何が?」

 

「お兄様から話は聞きました。」

 

「えっ!達也喋ったの?まぁ、いいけど…別にいいよ?俺もあの発言にはムカついていたし…それより達也を巻き込んでごめんね!本当は俺がやりたかったけど…」

 

「大丈夫ですよ。お兄様は実践なら誰にも負けないですもの!」

 

「達也は強そうだしなーこの勝負も多分達也が勝つだろうし…」

 

「そうですね!お兄様が絶対勝ちます。」

 

(絶対って言ってるよ…このブラコン娘…)

今度は真由美達が会話に参戦してきた。

 

「悠仁君、深雪さん、達也君が勝つと思っているの?普通に考えればはんぞー君だと思うのだけど…」

 

「達也でしょうね…多分」

 

「お兄様が勝ちます!」

 

即答で答えた二人に怯む真由美。

続いてあずさが聞いてきた。

 

「どうしてそう思うんですか?服部君は実技なら2年の中でもトップなのに…」

 

「勘です。後、強いて言うなら一科生(ブルーム)であるが故の油断って奴ですね。」

 

「そろそろ始まるようですよ。皆さん」

 

生徒会会計の市原鈴音(いちはらすずね)通称<リンちゃん>が教えてくれた。

 

「ありがとうございます。リンちゃん先輩」

 

何か全員がこっちを向いてきた。

 

真由美が「悠仁君…その名前…」

 

「リンちゃん先輩ですか?いい名前だと思いますけど?あーちゃん先輩の名前といい、いいネーミングセンスだと思いますよ?七草会長?」

 

あーちゃんとは中条あずさ先輩のことである。

今度は全員が真由美の方を見た。

真由美は苦笑いしていた。

 

達也、服部が所定の位置についた。

達也のCADは銃形態の特化型CAD。

対して服部はブレスレット形態の汎用型CADである。

摩利が合図を発した。

 

「始め!」

 

服部がCADを向け目の前の達也に魔法を放とうとする。

しかし達也は服部の目の前から消えていた。

達也を探している服部の背後から達也はCADの引き金を一度だけ引いた。

服部は意識をなくしてしまう…

 

原作通り瞬殺だった。

やっぱすごいな達也は!俺もあの高速移動はできるけど、俺は女神様のお陰でできるようになったけど、達也は特典無しであれだもんなぁ〜

さすおにって奴ですね!

 

そんなこと思っているうちに達也達の方も一段落つき、今度は自分の番だそうだ…

俺は摩利さんに確認する。

 

「摩利さん、俺はこれから何すればいいの?」

 

すると摩利とは違う人から返答をもらえた。

 

「それについては俺が話そう。まず、俺の名前は十文字克人(じゅうもんじかつと)。部活連の会頭をしている」

 

「あっ…私の名前は黒岩悠仁です。1年E組に所属しております。」

 

「うむ。黒岩、テストについてだが、渡辺と模擬戦をしてもらう。」

 

「別にいいですけど…まr…渡辺先輩に勝てば合格ですか?」

 

「いや、勝つ必要ない。そもそも1年と3年の差もあるが、渡辺に勝てる奴はこの学校にも数人しかいない。」

 

「分かりました。最善を尽くします。」

 

すると摩利が悠仁に声をかけた。

 

「そうだぞ悠仁、全力で来い。わたしも風紀委員長とだけではなく千葉流剣術ー目録ーとしても戦うつもりだ」

 

「千葉流剣術として戦う?それを俺に言う意味、本当に分かってます?」

俺は少し強めに摩利に問い詰めた。

 

そして、摩利の返答も聞かず、会頭に質問をした。

 

「会頭、木刀は使用してもよろしいでしょうか?もちろん直接は打ち込みません。」

 

「それはこのテストに、最善を尽くすことに必要なことか?」

 

「必要ありません。しかし千葉流剣術としては必要なことです」

 

「分かった。許可しよう」

 

「ありがとうございます」

 

俺は準備に向かった。

 

悠仁が模擬戦の準備をしている際、達也達はさっきの悠仁の様子について話をしていた。

 

「お兄様?悠仁さん、どうしたんでしょうか?」

 

「分からない。ただ、渡辺先輩やエリカの発言を考ればだが、悠仁は昔、千葉家で剣術の修練をしていたようだな?」

 

真由美が口を挿んできた。

 

「摩利に聞いた方がいいわよね?摩利!さっきの悠仁君の様子どう思う?」

 

「分からない。半年前道場に居なくなってしまったからな…」

 

すると克人も口を挿んできた。

 

「黒岩は千葉流剣術で戦うと言った。ならば、この模擬戦でさっきの様子の答えもわかるだろう」

 

克人はそう言い、この話を打ち切った。

 

悠仁の準備も終わり二人は所定の位置で構えた。 

摩利は警棒を片手に持ち、ブレスレット型のCADを装着している。

悠仁も同じように木刀を片手に持ちCADを腕に巻き付けている。

ただ悠仁のCADは見た目は汎用型のCADなのにコンソール等操作するスイッチが何一つ付いていない。

(あのCAD…どうやって操作するんだ?)

達也は疑問に思っていた。

 

真由美が審判として合図を取る前に確認をした。

 

「ルールは先程と同じです。二人とも準備はいい?」

 

「はい」

 

「ああ」

 

「では、始め!」

 

模擬戦が始まった。

 

「そういえば、すまない。名乗りをしていなかった。」

 

悠仁は少し挑発的に摩利に声をかけた。

悠仁は摩利の返事も聞かずそのまま名乗りをした。

 

「千葉流剣術 ー皆伝ー 黒岩悠仁、参る!」

 

悠仁はそう言うと2つの魔法を同時に展開する。

魔法の発動を確認した悠仁はまだ距離も離れているのにも関わらず摩利に向かって木刀を振り下ろす。

すると振り下される木刀から黒い斬撃波が発生し、摩利に襲い掛かる。

その魔法や魔法の発動スピードに驚く摩利だが、すぐに自己加速術式を使い悠仁の斬撃波を躱す。

悠仁は摩利の重心や体の向きとかで摩利の次の移動位置を予測し、予測した先に黒い斬撃波を放つ。

摩利は躱せないと判断して、警棒に硬化魔法を発動し、斬撃波を叩き落とす。

 

(思っている以上に威力が無いな…しかし、近づけない!)

 

摩利は斬撃波の威力の弱さに安堵しつつも自分の間合いにすら入らせてもらえないことに焦っていた。

しかも、回避することに精一杯で悠仁に攻撃魔法を放つ余裕がない。

悠仁が木刀を振るうごとに発動する黒い斬撃波。

形状や角度、スピード等の全てがバラバラな斬撃波に惑わされて圧倒されている摩利。

しかも、前もって斬撃波の射線上から逃れても追尾して向かってくる斬撃波に対して成す術がない。

 

「こんなもんか…もう終わらせるか…」

 

悠仁がそう言うともう一度木刀を振った。

すると一振りで九つの斬撃波が同時に摩利を襲う。

摩利はその斬撃波を避けきれず直撃し、吹き飛ばされてしまった。

 

 

達也や服部の時以上に周りは静寂と化していた。

誰もが摩利の勝利を疑っていなかったからだ…

あの達也ですらも…

風紀委員長が1年の二科生に圧倒された。

誰もがこの事実を受け止めきれなかった。

決着はついたのに判定がない為、悠仁は真由美に声をかけた。

 

「七草会長、判定を」

 

「あっ!…ハイ…勝者黒岩悠仁」

 

勝った…

だけど俺はそこまで嬉しくない。

当たり前だからだ…

たかが、千葉流剣術の目録程度に負けるほど皆伝の地位は甘くない

俺は借りていた木刀の消耗具合を確認していた。

 

(多分…大丈夫だな。まぁ、だいぶ丁寧に使ったし、こんなもんだろ…)

 

俺はCADを片づけ、木刀を返しに行こうとしたら十文字会頭に声をかけられた。

 

「待て…」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「今の魔法は何だ?」

 

「魔法の詮索はマナー違反では?」

 

「頼む…」

 

「まぁ…いいですよ?摩利さんには言うつもりでしたし…」

 

「感謝する」

 

俺と十文字会頭は摩利さんの所へ向かった。

 

「摩利さん?大丈夫ですか?」

 

俺は摩利さんに声をかけた。

 

「悠仁!大丈夫だ…それより皆伝ってどう言うことだ!」

 

「えっ?摩利さん知らなかったの?(しゅう)兄に何も聞いてないの?」

 

修兄とは、摩利さんの恋人でエリカの兄である千葉修次(ちばなおつぐ)のことである。

千葉流剣術の段位は俺と同じく皆伝で俺と違いイケメン。

<千葉の麒麟児(ちばのきりんじ)>や<幻影刀(イリュージョン・ブレード)>との異名で呼ばれ、3mの間合いなら世界で十指に入る達人だと噂されているイケメンである。

さぞ、そのイケメンフェイスで女の子を引っ掛け回しているんでしょうね!

爆発すればいいのに…

 

「何!シュウは知っているのか?」

 

「ええ…知ってますよ?ていうかごめんなさい。知らなかったんですね。」

 

「何がごめんなさいなの?悠仁君」

 

真由美が口を挿んだ。

 

「ええ、たかが、目録の癖に皆伝相手に「全力で来い」とか調子乗ってるなこの女と思ってました」

 

悠仁を除く全員が納得した。

ただムカついていただけなんだと…

すると克人が声をかけてきた。

 

「それより黒岩、さっきの魔法についてなのだが…」

 

意外とグイグイくるなこの人…

 

「えーさっきの魔法は…

 

ー次回に続くー

 




次回!悠仁君の魔法説明会
キーワードは「黒い斬撃波」「追尾」「九つの斬撃」です!

ついでに千葉流剣術の段位について…
切紙…簡単な基礎を身に付けた見習い
目録…千葉の術式を身に付けた者(圧斬り等)中段者
印可…千葉の奥義・秘剣を身に付けた者。上段者
皆伝…千葉家当主直々に認められた者。個人的に千葉流剣術を教えることが認められる
口伝…千葉流剣術を道場を開いて教えることができる者。基本的に千葉家当主又はその血筋の者

こんなイメージです。
合ってるかな?


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入学式編Ⅵ

皆様お疲れ様でございます。作者です。
魔法科高校に劣等生に転生してしまった男の物語(仮)をご覧いただき誠にありがとうございます。
正直アンケート結果を見てどうしようかと思っております。
このままだと悠仁vs達也の深雪争奪戦になりかねない…
それはまた後ほど考えてみます。
それはそうとして、感想・評価をしていただいた方誠にありがとうございます。この場をお借りして感謝を申し上げます。
また、誤字脱字も報告していただいた方もありがとうございます。
達也の魔法名を間違えてたのは恥ずかしかった…
そんなこんなで悠仁のキャラクター性とかどうでs…
悠仁「長えよ!さっさと始めろ!」

…どうぞ


 

皆様おはようございます。

 

〜第一回黒岩悠仁魔法説明会〜

講師役の黒岩悠仁です。

この講義はこの物語の主人公である黒岩悠仁の特殊魔法講座でございます。

この講義を受講しますと世間の常識力が落ち、テストの点が落ちる可能性がありますが、黒岩悠仁のことをよりもっと知れる講義となっております。

常識力の低下、テストの点が赤点になっても私共は一切の責任を持ちませんので予めご了承ください。

 

 

「あの魔法は千葉の術式の一つである圧斬り(へしぎり)を参考にした魔法です」

 

…説明しよう!圧斬り(へしぎり)とは!

圧斬り(へしぎり)は、加重系の系統魔法である。

細い棒や針金に沿って極細の斥力場を形成し接触したものを割断する近接術式

光に干渉するほどの強度があるため、正面から見ると切先が黒い線になる。

 

ちなみに重力と斥力は違うものらしい…

知らなかったなぁ〜

 

そんなこと思いつつ俺はざっくりと圧斬り(へしぎり)を説明した。

 

「ただ、圧斬り(へしぎり)とは違い俺は重力を木刀に這わせるように収束、収束した重力をさっきの場合、木刀を振るうというのを条件に斬撃波として放つ魔法としています。魔…、想子(サイオン)の込め具合と木刀を振るスピードで斬撃波の威力、有効距離が全て調整出来ます。一応、木刀の振り方を変えれば、斬撃波の形状も変わります。一振り一斬撃が条件になりますが振った後にループキャストで再び魔法を発動すれば連撃も可能になる使い勝手の良い魔法になりました。魔法名は重力刃(グラビティ・ブレード)としています。圧斬り(へしぎり)の飛ぶ斬撃のイメージです。俺が頑張って作りました!」

 

達也が聞いてきた。

 

「重力を収束するとはどういうことだ?現代魔法で聞いたことないのだが…」

 

「何で?重力を収束するだけだよ?」

 

「それが分からないのだが…」

 

何でわからないのだろう重力という力そのものを対象に収束魔法を発動しているだけなのに…

今度は摩利が聞いてきた。

 

「どうやって斬撃波を出すんだ?」

 

想子(サイオン)込めて振るだけですけど…」

 

「放出系統の魔法は使ってないのか?」

 

「だから、振るだけですよ!摩利さん、それに俺、加重系統と収束系統の魔法しか使えないですし…」

 

みんな何で分からないのだろう?

 

「七草会長だって想子(サイオン)の弾丸を射てるでしょ?俺も剣とか振れば斬撃を放てる…それと一緒ですよ?」

 

意味が分からない…悠仁以外の全員が思った。

 

重力刃(グラビティ・ブレード)想子(サイオン)を木刀に込めたまま振ればポンポン発動するので楽ですよ?体内の想子(サイオン)が無くならない限り無限に放てますし…」

 

想子(サイオン)が無くならない限り無限に放てる魔法…

現代魔法として非常識である…

 

鈴音が聞いてきた。

 

「後もう一ついいですか?渡辺委員長に追尾する様な斬撃波はどうやって放っているのですか?」

 

「俺、実は重力刃(グラビティ・ブレード)以外に試合開始直後にもう一つ魔法を発動していたんですよ。魔法名は魔力印(マーキング)です。でも、これ以上は秘密にさせて下さい。千葉の術式を参考にした重力刃(グラビティ・ブレード)は話すつもりではいましたけど、これは完全なオリジナルですので話しません。」

 

魔力印(マーキング)…少量の魔力をレーダーのように放ち、放った魔力の範囲内の情報を取得。

取得した情報の中から好きなところに俺だけが分かる印を意識的に付ける魔法。

 

さっきは摩利さん本人に印を付けた。

これをすれば座標指定とかしなくても印の付けた所に魔法を発動するというアバウトな感じで魔法を発動できる。

しかも印が動けば魔法もそれに合わせて印の所に動こうとする…

疑似的な追尾魔法が完成した。

説明しても意味わからないと思うからみんなには説明しない!

面倒だし…

 

摩利が悠仁に言った。

 

「わたしを吹き飛ばした最後のは?」

 

実はあれ、CADのおかげだ…魔法ではない。

 

CADの名前は「九頭龍閃」

察しのいい人には分かるだろうが、あれは飛天御剣流の技を再現したくて作ったCADだ…

知り合いからCADをもらって、色々と改造して作った…

重力刃(グラビティ・ブレード)は斬撃波発動条件も変更して設定できる為、斬撃波の波動条件を”CADの操作“を条件にすることによって最大九つの斬撃波の保存をすることに成功した。

 

「あれは秘密です。修兄にもまだバレてないんですよ?修兄にバレるまでは誰にも話したくないです。」

 

嘘である…

ただ、説明が面倒だから説明しないだけだ…

魔法じゃないし…

 

 

十文字会頭が俺に話かけてきた。

 

「黒岩、魔法について話してくれて感謝する。正直意味が分からなかったが…」

 

これって俺の説明が悪いのか?

重力を木刀に貯めて斬撃として放つだけなのに…

続けて十文字会頭は問いかけてきた。

 

「黒岩、お前は全生徒のために風紀委員として職務を全うすることができるか?」

 

「正直出来ませんね…ですが、渡辺先輩が推薦してくれている。十文字会頭が推薦してくれている。私のために推薦してくれた人に泥を塗るような行為は決してしないつもりです。有象無象の奴らより私は期待してくれている人のために風紀委員の職務を全うするつもりではあります。」

 

「うむ。ここで何も考えず、出来ると答えていたら落とすつもりだったのだが…よかろう、俺は部活連会頭として、1年E組黒岩悠仁の風紀委員に推薦する」

 

「わたしは風紀委員長として1年E組黒岩悠仁の風紀委員就任を正式に認める」

俺は正式に風紀委員として認められた。

 

 

俺と達也は摩利さんに風紀委員会本部に連れ込まれた。

俺は風紀委員会本部に入った瞬間、写真を撮る。

数枚撮った後、摩利さんに向かってこう言い放った。

 

「この現状を修兄に見せる…摩利さんは掃除も出来ない女性だと言ってやる」

 

「待ってくれ!悠仁、これは、その…あれだ…」

 

「「あれだ…」とは?」

 

「片付けようとはしたんだ!でも片付けられなかったんだ!」

 

「そっちの方が問題でしょう…はぁ…片付けますよ…悪い、達也も手伝ってくれないか?」

 

「いいぞ…俺も魔工技師志望としてこの状況は見過ごせません」

 

「魔工技師志望…あれだけの対人スキルがあるのにか?」

 

(摩利さん片付けろよ…)

 

今邪魔すると達也が風紀委員に入らない可能性がある。

邪魔出来ない。

原作通りに事が進まない。

だが、修兄にさっきの風紀委員会本部の写真とこっそり録音していた「片付けようとはしたんだ!でも片付けられなかったんだ!」の音声を送る事が今決定した。

 

七草会長が生徒会室から降りてきた。生徒会を閉めるようだ。

 

「…ここ風紀委員会本部よね?」

 

「いきなりのご挨拶だな」

 

「だって、どうしちゃったの摩利。リンちゃんがいくら注意しても、あーちゃんがいくらお願いしても、全然片付けようとしなかったのに」

 

ホゥ!何か聞き捨てならないことを聞いたぞ?

 

「事実に反する中傷には断固抗議するぞ、真由美!片付けようとしなかったわけではない、片付かなかったんだ!」

 

「そこで威張っちゃダメだよ、摩利さん…これはもうお仕置き決定です。」

 

掃除が終わった俺は二人の会話に参戦した。

 

「悠仁君、お仕置きって何?」

 

「七草会長、摩利さんの彼氏にさっきの本部の写真を送りつけて掃除が出来ない女性っというレッテルを貼らせます。」

 

「な!それはやめろ!」

 

「あら?いい考えね悠仁君!」

 

「ですよね!しばらくこのネタで摩利さんを弄り回す予定ですので、七草会長もよければぜひ…」

 

「ありがとう、悠仁君是非参加させてもらうわね♪」

 

「二人で何してるんですか?」

 

掃除の終えた達也がこちらにやってきた。

達也がこっちに来たら達也の風紀委員就任の話と達也と七草会長の茶番が繰り広げられた。

はぁ〜面白い!でも、達也もう少し動揺しろよ!

そんなこんなで野次馬を決め込んでいたら、矛先がこっちに向いた。

 

「そういえば、悠仁君?あなたわたしにだけいつまでも「七草会長」って呼んでるでしょ?他の人には名前とかあだ名とかで呼んでるのに…オネーサンの扱いだけ他人行儀過ぎな〜い?」

 

「逆になんて呼べばいいんです?会長は何も教えてくれなかったので…」

 

「じゃあ…悠仁君が決めて!」

 

「何でもいいんです?」

 

「いいわよ」

 

「なら、ななみん先輩で…」

 

「あははは!?悠仁!最高だ!よし!ななみんでいこう」

 

摩利が笑いながら言った。

 

「何でもいいんですよね?」

 

今度は俺と摩利さんでななみん先輩を弄る。

最後に真由美はこう呟いた。

 

「悠仁君のいじわる…」

 

「俺は気に入った人にはいじわるするんですよ…ななみん先輩♪」

 

そのまま摩利さんに「俺はこれで帰りますね、摩利さん」と伝えてから

一足先に本部から出て行った。




作者「魔法の説明とか大丈夫ですかね?」
悠仁「大丈夫じゃね?大丈夫じゃなかったら評価が下がるだけだし…」
作者「………」
返事をしないただの屍のようだ…。
悠仁「ドラ●エ!?」


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入学式編Ⅶ

入学式編Ⅶまでいきましたー
やっと原作小説の1話分…
単純計算で後倍ぐらい入学式編の話数続くのか…
予想外だ…


次の日、俺はいつもの日課を行った後

学校に登校し、授業を受けた。

 


放課後

 

俺は達也と一緒に風紀委員本部に向かっていた。

向かっている途中、達也に部活動勧誘期間について教えてもらった。

何か昼休みの時に摩利さんから教えてもらったそうだ…

ざっくりまとめると、その期間中はCAD使えるから、CADを使っての行き過ぎた行為の取り締まりを強化しろよ〜

めっちゃ忙しいぞ〜

みたいな感じである。

 

そんなこんなで本部に着いた。

本部の中に入ると…

 

「何故ここにお前らがいる!」

 

森…森y…森崎くんだ!そう森崎くん。森崎くんが叫んでる…

 

「オイ、達也、言われてるぞ?」

 

「俺だけじゃないぞ…お前もだからな?」

 

「ふざけるな!質問にk…」

 

「うるさいぞ!新入り!」

 

森崎くんは摩利さんに怒られてたww

 

摩利は風紀委員が全員揃ったことを確認すると本部の中にいる全員に…

 

「全員揃ったようだな…そのまま聞いてくれ。今年もまた、あのバカ騒ぎが始まった。だが、今年は幸いな事に卒業生分の補充が間に合った。紹介しよう。立て」

 

悠仁、達也、森崎の三人は立ち上がった。

 

「1-A 森崎駿(もりさきしゅん)に1-E 黒岩悠仁、1-E 司波達也だ」

 

風紀委員に二科生…それも二人もいる事もあって、ざわめきが生じた。

 

「役に立つんですか?」

 

風紀委員の一人が摩利に問いかけた。

 

「あぁ、問題ない。三人とも役に立つ。森崎のデバイス操作は中々だ。司波の腕前はわたしが直接見た。黒岩はわたしと十文字のお墨付きだ」

 

摩利がそう言うと先輩の風紀委員は全員、悠仁の方を向いた。

 

(えっ何この視線?)

 

「他に意見はないな?では、巡回を始めてくれ。一年生の三人には説明することがあるからこの場に残ってくれ。」

 

摩利は全員に指示を行った。

 

俺は摩利さんから風紀委員の腕章、レコーダー、風紀委員用の専用コードをもらった。

そして、レコーダーの操作方法や巡回時の注意事項等教えてもらった。

 

「何か質問はあるか?」

 

摩利さんが聞いてきた。

達也が風紀委員に備品のCADを使用しても良いか聞いている。

自分の使わないんだー

それに二個も使ってどうするんだろう?

そんなこと思っている間に達也の質問が終わった。

今度は俺が摩利さんに質問した。

 

「摩利さん、俺の木刀の許可ってどうなったの?」

 

「それは許可が出た。ただの木刀だしな…けど、何で木刀に鞘が付いているんだ?

 

俺が自分の木刀を使いたいのには訳がある。

一つは木刀そのものの強度の問題。

そして、もう一つは…

 

「鞘付きだと俺の魔法の速度が二倍ぐらいになるからですよ」

 

「そ…そうか…ではでは巡回を始めてくれ」

 

何か摩利さんが引き攣った顔してたけど…

まぁ、いっか!

 

俺は一度教室に戻り、木刀を二本取りに行った後、巡回を始めた。

適当にブラブラしてるとSSボード・バイアスロン部の近くで雫とほのかがいた。

ただしこの学校じゃない女子大生ぐらいの人に拉致されている…

その後ろから摩利さんが追いかけていた。

拉致犯はボードに魔法をかけて自転車以上のスピードで逃げ回っている。

…はっ?

 

「悠仁!あいつらを捕まえろ!」

 

俺は慌てて、腕章をつけて、レコーダーに電源を入れた後、拉致されている雫とほのかを改めて確認すると拉致犯が雫とほのかを解放していた。

丁度タイミングがいいな…

あの二人を盾にされると手も足も出せなかったし…

 

「拉致犯二人!今から拘束します!」

 

「後輩くん、そこをどいて!」

 

「後輩くんには捕まえられないよ〜」

 

舐めたこと吐かしている拉致犯二人に俺は重力刃(グラビティ・ブレード)を展開し、腰に差している二刀の木刀を同時に抜刀…

斬!

拉致犯二人のボードを同時に斬った。

空かさず、二の太刀も放ち、腕に着けていたCADも斬って壊した。

拉致犯はボードが斬られ、突然魔法も使えなくなり転倒…

俺は転がっている拉致犯二人の首根っこを引っ張り摩利さんの所まで向かった。

 

「摩利さん、拉致犯を捕まえました」

 

「よくやった!悠仁」

 

「で?これって誰なんです?摩利さんの知り合いです?」

 

「これって…」

 

「わたし達、年上なんだけど…」

 

拉致犯二人は立場が分かっていないようだ…

 

「犯罪者に敬意もクソもありません」

 

解放された雫とほのかがこっちに話しかけてきた。

 

「悠仁、風紀委員になったんだ」と雫が話しかけてきた。

 

「おう!ドヤッ!!」

 

「悠仁さん、さっきの魔法凄かったです」とほのかが俺の魔法を誉めてきた。

 

「ありがとう、ほのか」

 

そのまま雫がこう切り出した。

 

「実はその人達、ここのOGなんだって」

 

何か雫達の話をまとめるとこの拉致犯二人は元SSボード・バイアスロン部の部員だったらしい…

んで、拉致犯二人が言うには、「わたし達の抜けた穴はわたし達で埋める責任がある!」と言って目星の付けた一年生を片っ端から自主的に拉致してSSボード・バイアスロン部の案内の所まで連れて行ったそうだ…

 

「アウトでしょ…」と俺

 

「アウトだな…だがしかし、当校の生徒じゃない為私たちじゃ長時間拘束できない」と摩利さんが言った。

 

「とりあえず、この二人のCADは斬って壊したので今日の所はこれ以上犯行に及ばないと思いますよ。」

 

「本当だ!きられてる!」

 

「高かったのに〜」

 

「オー!お二人さん、そこまで喜んでくれると斬った甲斐がありました!俺、違反者のCADは斬って壊す事に決めてるんで、また違反行為をしたら斬り壊しますよ」

 

この場にいる俺以外の全員がドン引きした。

摩利さんが最後に忠告した。

 

「やり過ぎるなよ…」

 

「んで、雫とほのかはこの後どうするんだ?あれなら校門まで送っていくけど」

 

雫とほのかはさっきの拉致されたSSボード・バイアスロン部に入部を決めたそうだ。

部活を決めたら後は鬱陶しい勧誘しかないので俺はそう提案した。

 

「じゃあお願いしてもいい?」

 

雫がそう答えたから俺は悪ふざけで…

 

「それでは校門までエスコートさせていただきます。お嬢様」

 

俺はお嬢様二人を校門までエスコートした。

 




魔法科高校の優等生要素も入れてみました!
内容がうろ覚えだがらちょっと無理あるかも…


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入学式編Ⅷ

どうもー
明日の仕事は休みたい…
毎日そう考えてる作者でーすm(_ _)m

何か悲しい…
とりあえず続き、どうぞ!


俺は雫とほのかを校門まで送り届けた後、巡回に戻った。

たまに悪質な違反者が見つかる為、

その度にCADを斬り壊す。

その後木刀で気絶させる。

本部に連行…を繰り返した。

 

閉門時間間際、十文字会頭達に呼ばれた為、俺は部活連の本部に来ていた。

 

何か達也もいた…

内容を聞くに剣道部と剣術部の争いに介入。

魔法の不適切使用で剣術部のエースを取り押さえ…

その後暴徒と化した剣術部員達を鎮圧したと…

 

深雪がここにいたら「さすがお兄様です!」と言う賞賛の嵐が聞こえてきそうだなぁ〜

 

達也の報告の番は終了したようだ…

今度は俺の番か…

 

「悠仁、お前はやりすぎだ…生徒から苦情が出ているぞ…」

 

「風紀委員一日目にして、もう苦情ですか…ちなみに何で私に苦情が出たんでしょうか?」

 

一応風紀委員の報告なのでそれなりの敬語を心がける。

因みに苦情の原因はCADを斬られた生徒が「やりすぎだ!」と苦情を入れたらしい…

 

CAD意外と高いもんね…まぁ、だからわざわざ斬ったんだけど…

 

俺は摩利さん達に反論した。

 

「CADを斬る事に問題はあるのでしょうか?私がCADを斬った生徒は私が声をかけても言うことを聞かず、私に魔法を放とうした人だけですよ?なんならレコーダーで証拠も撮ったのでそちらに提出しているはずですが…」

 

ななみん先輩が聞いてきた。

 

「ええ、証拠も確認しています。だから罰を与えるわけじゃないのだけれど…何でわざわざCADを斬ったりするの?」

 

「CADを斬っておけば、処罰を受けた後すぐに強引な勧誘をするということがなくなります。自分のCADは学校内では基本的に使えないはずですからそこまでの支障は出ません。それに…」

 

「それに?」

 

「CADは意外と高いですよね?CADを買うのは親の金だと思うので、親にCADを買う相談をする時に経緯を説明した後、親にもう一度怒られたりすれば、よっぽど懲りると思ってCADを斬っております。」

 

「そこまで考えていたのね〜」

 

そうですよ!意外と考えて壊してるよ?

だから達也を含めて、全員「お前そこまで考えていたのか!」って言う顔やめてもらえますか?

 

「話を戻しますよ?最後に私がCADを壊す風紀委員と広がれば、私が巡回するだけで、生徒達が警戒して強引な勧誘をしてこなくなると思います」

 

俺はそう言ってCADを斬り壊す訳とその後のメリットを皆さんに報告した。

 

十文字先輩が口を開いた。

 

「いいだろう。黒岩のCADを斬り壊す事については俺が各部活動に話しておこう。むしろ魔法の不適切使用を未然に防いだという意味で感謝したいぐらいだ」

 

「ありがとうございます。」

 

摩利がこの場を締めた。

 

「二人ともご苦労だった。退出してもいいぞ」

 

「「失礼します」」

 

俺と達也は本部を退出した。

 


 

帰り支度している途中、深雪、エリカ、レオが待っていた為、待たせていたお詫びも込めて軽く食事を取りに行くことになった。

最初は達也が奢る事になっていたが、風紀委員の達也が奢るって言うのに俺が奢らないってなると格好がつかない為、俺と達也の折半で奢る事にした。

 


 

入学式の時に行ったのとは別のカフェで、俺達は今日一日のこと(入部したクラブのことなど)や、色々な体験談に花を咲かせが、やっぱり一番の話題は達也の捕物劇だった。

達也の体術のレベルの高さなどにも驚いたが、それよりもアンティナイトを使わない「特定魔法のジャミング」については原作を知っていても、すごい!って言うよりヤバい…

 

「達也…ヤバい物俺らに教えやがって…」

 

俺は達也にそう返した。 

 

そしたらレオが聞いてきた。

 

「何がヤバいんだ?」

 

「アンティナイトを使わない“キャストジャミング”って言うのがヤバいんだ。考えてみろ、今のこの世の中で高い魔法力や高価で貴重なアンティナイトを使わないでお手軽に魔法を無効化する魔法だぞ。反魔法勢力やテロリストが喉から手が出るぐらい欲しがる技術じゃないか…」

 

「悠仁の言う通りだな…そう言う理由もあって対抗手段が見つかるまでは、キャストジャミングもどきを公表するつもりはない」

 

達也がそう締めた。

 

俺は思ったことを口にした。

 

「まぁ…相手の展開中の起動式を読み取る技術がいるから、実際はそこまで使える人はいないと思うけどな…」

 

「悠仁さんの言う通りです。お兄様の考えすぎだと思いますよ?それに起動式の読み取りはもちろん、CADの干渉波の投射も誰にでもできるものではありませんし。ですが、それでこそお兄様ということでしょうか」

 

「…それは暗に、俺が優柔不断のヘタレだと言っているのか?」

 

深雪の指摘に達也は心底、情けなさそうな表情を作った。

 

「さあ?エリカはどう思うかしら?」

 

素気ない態度を演じてエリカに球を投げる。

 

「さぁねー、悠仁はどう思う?」

 

おっと球がこっちにきたぞ…

変化球で返すか…

誰か引っ掛かれよ…

 

俺は達也に向かってわざとらしく言ってやった。

 

「やーい、やーい、達也のヘタレ〜」

 

「ダメですよ!悠仁さん!そんなこと達也さんに言っちゃあ…」

 

よし…美月が引っ掛かった!

チャンス!

 

「俺は冗談のつもりで言ったんだけど…美月は本当にそう思っているんだ…」

 

俺は美月にそう返した。

 

「えっ!えーと…」

 

「否定してくれないんだな…」

 

オロオロしてる美月に達也がトドメを刺した。

 

 

達也は話題を変えたかったのか俺に話を振ってきた。

 

「そういえば、悠仁お前も活躍したようだな」

 

「達也に比べると大したことないけどな…」

 

俺はみんなに今日の出来事をみんなに話した。

レオが口を開いた。

 

「悠仁、どうやって木刀でCADを斬り壊すんだよ…意味分かんねえぜ…」

 

「んっ?魔法を展開して、テイッ みたいな感じで?エリカなら分かるよな?」

 

「分かんないわよ!アンタの非常識に巻き込むな!」

 

「酷い言い草だな…あっ!俺の魔法教えてないからか!」

 

「「そう言う問題じゃないと思うぞ(ますよ)…」」

 

達也と深雪に言われたが俺は残りの三人に重力刃(グラビティ・ブレード)について話した。

ついでにエリカに千葉剣術の段位が皆伝なのがバレた…

エリカに胸ぐら掴まれながら…

 

「どうしてアンタが皆伝なのよ!!兄貴達は知ってるの!?」

 

「知っている!だから離してくれ…」

 

「いつから!いつからなったの!」

 

「俺が道場に来なくなった日からだよ…」

 

「いい加減我慢出来ない…悠仁、どうして道場に来なくなったのか教えなさい」

 

ヤバい…エリカの目がヤバい…

でも、俺はエリカに問いかけに答えた。

 

「本当はエリカにすぐに教えたかったけど、先に筋を通さないといけない人がいるから今は無理」

 

「ふざけてるの?その筋を通さないといけない人って誰?」

 

「…お前のお父さんだよ」

 

「…はっ?」

 

「俺が第一高校に入学する為に辞めないといけなくなった道場を、無理矢理辞めなくするようわざわざ俺を皆伝にまでしたお前のお父さんだよ!」

 

俺のその一言にエリカはすごく驚いていた。

そして、エリカが聞いてきた。

 

「…道場を辞めないといけない理由はお父様以外に誰が知ってるの」

 

「皆伝の試験に参加した修兄と寿兄だけだよ…後、お前のお父さんにはもうアポ自体は取ってるから筋を通した後、すぐにエリカに半年前からのことちゃんと話すから待っててくれないか?」

 

「分かった…後、今度道場にいつ来るか教えなさい!」

 

「OK!後で携帯に予定送っておく…」

 

ヤッベ!変な空気になっちまった。

どうしよう…

 

達也と深雪を見た途端、気付いてしまった…

あの二人、さり気なく笑ってやがる…

まるで新しいおもちゃでも見つけたかのような…

俺にとって嫌な感じがする。

エリカもその雰囲気に気付いたのか達也達の方を見る。

 

「んっ?痴話喧嘩は終わったのか?中々興味深かったが…」

 

「そうですね、お兄様。まるで喧嘩しているカップルのような感じでしたわね?」

 

あの兄弟…爆弾落としやがったぞ!

エリカ…頼む!反応するな…

 

「何言ってるの!?達也くん、深雪!こいつとカップルなんて…そんなのありえないわよ!」

 

「残念だったな…悠仁、振られたぞ?」

 

「達也、テメー!俺、エリカに告ってもないのに振られたとか悲しすぎるだろ!覚えとけよ…達也それに深雪!」

 

「安心して下さい、悠仁さん。明日には忘れますので♪」

 

こいつら…絶対仕返ししてやる。

倍返しでだ…

 

なんだかんだでエリカを宥めるのに時間がかかってしまった。

もう夜も遅くなるということで今日のところはこれで解散した。

 




この世界でCADは幾らぐらいだと思いますか?
自分は最近機種の携帯の本体の価格ぐらいかなーって思ってます!
そんなホイホイ買える金額じゃないよね?
皆さんは幾らぐらいになると思いますか?


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入学式編Ⅸ

皆様お久しぶりでございます。
季節はもう10月…
早いですねー
もう秋になります。
悠仁達はまだ春なのにww
いつになったら話が進むか作者の私にも分からなくなってしまいました。
気長にお話しが進むのを待っていただけると助かります。

さて、秋といえば食欲の秋…

作者「悠仁くん?そろそろ私のトークを止めてくれないと…話始まらないよ?」
悠仁「ネタ尽きるまでなってみようと思った…どうせもうネタなんかないだろ?食欲の秋の続きとか言ってみろよ?」
作者「そ…そんなことないし!でも読者さん待たせるのもアレだからお話し始めます!ど、どうぞ!」
悠仁「…逃げたなあいつ」


 

新入部員勧誘週間真っ最中…

やっぱり二科生の風紀委員は目立つようだ…

 

達也は剣術部を手玉にとった二科生の風紀委員。

俺はCADを手当たり次第ぶっ壊す二科生の風紀委員。

 

そんな評判が学校中に広まった。

 

巡回中、俺が近づくとみんな逃げようとするのはどうにかしてほしい…

特に声をかけると悲鳴をあげるのは本当にやめてほしい…

めっちゃ心にくる…

 

俺のガラスの心(笑)にひびが入るのを感じながら巡回していると見知った顔ともう一人がコソコソしている。

 

多分原作だと達也を襲っている犯人を特定しようとしていたはず…

というか、犯人を特定した後、尾行中にブランシュに襲われていたはずだ…

 

この三人の行為をやめさせたいなぁ〜

 

友達に危ないことをさせたくなかったので俺は声をかけることにした。

 

「雫、ほのか、何やっているんだ?」

 

「ハイ!えーと、その…」

 

慌てまくるほのか。

対して雫は…

 

「!…悠仁さん、お疲れ」

 

一瞬驚いていたがすぐに冷静になって俺に挨拶をしてきた。

 

雫はほのかみたいにもう少し慌てるとからかいがいあるのに…

そんなことを思っていたが、風紀委員としても言わないといけないことがある。

 

「風紀委員の黒岩悠仁だ。えーと、同じ風紀委員の司波達也を遠くから観察していたのは何故だ?傍から見たらストーキングしている不審者と勘違いするぞ?」

 

「「「うっ…」」」

 

三人とも気まずそうな声をあげる。

 

「実は…」

 

雫が事情を説明した。

話によると達也が他の生徒から意図的に魔法で襲われていることを見てしまった。

風紀委員はみんな巡回で忙しい…

それなら私達でその犯人を捕まえよう!

そんな感じらしい…

 

「事情は分かった。けど、三人には危ないことしてほしくないなぁ…」

 

「え〜、ダメなの?」

 

「「え〜」って…そういえば君は?」

 

「私は1年B組明智英美(あけちえいみ)!正式には英美゠アメリア゠ゴールディ゠明智!エイミィって呼んでね!」

 

「OK!エイミィ!改めて俺は、1年E組黒岩悠仁!俺も悠仁でいいぞ!よろしく」

 

「よろしくね!悠仁!で、本当にダメ?」

 

「ダメ!監視までなら許すけど犯人を捕まえるのはダメ!どうしても捕まえたいなら犯人を捕まえる時は俺を呼ぶこと!」

 

三人は俺の発言に驚いていた。

俺は不思議に思い、三人に聞いてみた。

 

「何で驚いているんだ?」

 

雫が答えた。

 

「悠仁さん、絶対止めると思った。」

 

絶対止められると思っていることをやるなよ…

俺はそう思った。

けど俺は雫達にはこう返した。

 

「「やめろ!」って言ってもどうせ犯人捕まえるのはやめないだろ?なら、俺も手伝った方がまだ安心だし、三人とも危ない目に遭いにくくなるはずだ」

 

「…悠仁さん、わたし達のこと子供扱いしてる?」

 

「子供じゃないよ。女の子扱いをしている」

 

エイミィが口を挿んできた。

 

「悠仁、なんか手慣れてない?」

 

「失敬な!俺は今まで彼女の一人もできたことないぞ?むしろエイミィ達と喋るのにも少し緊張してるくらいだ」

 

「「「嘘だ!(だよね?)(ですよね?)」」」

 

三人が同時に答えた。

三人とも俺のことをジト目で俺のことを見ている…

 

「三人とも俺のことをどんな風に見てるか分かった気がするよ…それよりも三人の監視、多分だけど達也にバレてるぞ?」

 

「「「えっ!」」」

 

「偶に達也の視線を感じるし…」

 

「「「嘘!」」」

 

「達也にバレてるということは、そのうち深雪にもバレると思うぞ?とりあえず、雫、ほのか、深雪に達也をストーキングしてる理由の説明は頑張れよ?」

 

「悠仁さん、ちょっとm…」

 

「俺、まだ巡回中で忙しいんだよね〜それじゃあ、頑張ってねー」

 

俺は逃げるようにその場を去った。

 

なんだかんだで俺は違反者のCADを壊しまくった。

なんか新入部員勧誘週間の中間日ぐらいには主にCADを壊された人達による”黒岩悠仁被害者の会”が結成されたらしい…

巡回中にも何回か襲撃されたりもしたが返り討ちにしてやった。

ストレス発散も兼ねてたから結構楽しかった。

そんなこともあったがなんとか新入部員勧誘週間が終了した。

 


 

数日後…

放課後、レオが達也と悠仁に声をかけてきた。

 

「達也、悠仁、今日も委員会か?」

 

達也がレオの質問に答えた。

 

「いや、俺も悠仁も今日は非番だ。ようやくゆっくりできる」

 

「大活躍だったもんな〜」

 

「少しも嬉しくないな」

 

ため息をつきながら答える達也にレオは噴き出すのを我慢している様子だった。

 

「今や有名人だぜ、達也。魔法を使わず、並み居る魔法競技者(レギュラー)を連覇した謎の一年生、ってな」

 

「「謎の」ってなんだよ…」

 

「一説によると、達也くんは魔法否定派から送り込まれた刺客らしいよ〜」

 

帰り支度中ひょっこり顔を出してエリカはそう言った。

 

「誰だよ、そんな噂流したのは…」

 

「あたし〜」

 

「おい!」

 

「もちろん冗談よ…噂の中身は本当だけど」

 

その言葉を聞き、達也は大きなため息をついた。

 

「随分大きなため息だな?」

「他人ごとだな…一週間で三回も死ぬかと思う体験をさせられた身になってみろ」

 

悠仁も口を挟んだ。

 

「そうだな…いきなり魔法を使って襲撃させられたもんな〜」

 

「真っ平だ」

 

レオは達也と悠仁の答えを面白がって答えていた。

 

「そういえば、悠仁、お前も有名人だぜ?」

 

レオは今度は悠仁に向かって言った。

 

「違反者のCADを壊しまくる悪魔のような一年生。検挙率、生徒からクレームの多さが共にトップの問題児な二科生の風紀委員。他にも…色々あるが、ある意味、達也よりも危ない奴認定になってるぞ?」

 

「待ってくれ!達也より危ない奴認定させられるのは心外だ!」

 

「「「「自業自得だろ…(よ)(です)」」」」

 

達也、レオ、エリカ、美月の全員に言われた悠仁は「嘘だろ!」とショックを受けた。

 




前書きは私のその日のノリで書いてます。
特に普段の仕事が大変だと内容もおかしくなると思います。
基本的には茶番になりますので生暖かい目で見守って下さい。

以上、作者ラルドからのささやかなお願いでございました!


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入学式編Ⅹ

悠仁くんの魔法説明は後書きの方に載せました!
ネーミングセンス?
…気にしないでください。

ではどうぞ!


 

ある日の放課後俺は突然声をかけられた…

 

「黒岩悠仁くん、ちょっといい?」

 

「ハイ?」

 

俺は振り返ると同じ二科生の女子生徒がいた。

 

「2年E組の壬生紗耶香(みぶさやか)、君と同じ二科生よ」

 

「よろしくお願いします。先輩、用件はなんでしょうか?」

 

「あ…うん…よろしく。えーと今時間あるかな?」

 

「ありますけど…私は剣道部に入部するつもりはありませんよ?」

 

どーせ部活動の勧誘からブランシュの構成員に仕立て上げるんだろ…

自分自身を二科生と蔑んでテロリストに与してしまった奴らに興味はないんだよな〜

それより早く達也のところに行けよ…

 

俺はそう思いながら壬生先輩に剣道部に入部しないことを先に伝えた…

すると…

 

「どうして?君も剣を使うんだよね?非魔法競技で剣を使う部活なら剣道部でもいいと思うんだけど…」

 

問い詰めてきた。

 

二科生は魔法競技の部活にすら参加する資格がない…

言外にそう言われている気がして正直腹が立った俺は言ってやった。

 

「私はマーシャル・マジック・アーツ部に入部する予定です。…それに、剣道部も巡回中ですけど見学しました。今の剣道部に入部しても私が得る物は何もありません。むしろ私の剣が汚染されると思ったので剣道部に入部することは絶対にないです」 

 

ピピピ…

 

雫から電話が来たようだ…

雫の電話の内容を聞く為俺はこの場を退散しよう…

最後に壬生先輩に伝えた。

 

「壬生先輩…私は二科生とかいう学校の評価なんぞどうでもいいんです。私のことを評価してくれる人がいるんです。その評価してくれる人達の為にも私は恥ずかしい行動はしたくないのです。壬生先輩…あなたはそんな人いないのですか?今のあなたのままだとその内に一生後悔する事になりますよ」

 

俺は壬生先輩の返答も聞かずそのまま去っていった。

 


 

…少し俺の体質について話をしよう。

俺の目は想子と霊子(まりょく)が見える。

この世界風にいうと霊子放射光過敏症という奴らしい。

霊子(プシオン)は情動を司る粒子らしい…

だからなのか分からないが、俺には人の悪意が色で見える。

たちが悪い奴、憎悪が深い奴程、悪意がどす黒く見えてしまう。

普段は魔力を見ないよう制御しているがこの悪意っていうものだけはどうしても見えてしまう。

 

だからなのかな…

壬生先輩に言わなくてもいいことを言ってしまった。

壬生先輩にこびり付いていた悪意が気持ち悪すぎて…

あの悪意に取り憑かれた壬生先輩が不憫すぎて…

だから俺は原作等関係なく思ってしまったことをそのまま伝えてしまった。

まぁ、言ってしまったことはしょうがない…

達也、あとは任せた!

 

俺は心の中で達也にエールを送った。

届いてないと思うけど…

 


 

閑話休題…

 


 

俺は雫の電話に出た。

 

「もしもし雫、どうした?」

 

「やっと出た、悠仁さん。今、達也さんを襲った犯人を尾行しているの。

校門出たところだから悠仁さんも早く来て」

 

「…何だって?」

 

「だから、今尾行c…」

 

「分かった。とりあえず危ないと思ったらすぐに逃げろよ?分かったな!」

 

俺は雫の返事を聞かず電話を切った。

 

やべえ…

雫達が襲われる…

原作では深雪が助けるんだが…

友達が危ない目に遭うっていうのに何もしないほど俺は大人じゃない!

原作?最終的にはブランシュがなくなるんだからこのぐらい些細なことだろう。

急ごう!

 

俺は魔力探知を使い、雫達の大体の位置を把握、急いで雫達所に向かった。

 


 

校門を出て少しした所の路地裏に雫達がいた。

雫達が倒れていた。

テロリストがナイフを持って三人を殺そうとしている。

悠仁はナイフを持っているテロリストに飛び蹴りを喰らわした。

 

「ライダーキック!」

 

「ぐわぁ!」

 

ナイフを持ったテロリストはぶっ飛んで壁に激突した…

どうやら気絶したようだ…

他のテロリスト達が騒ぎ出した。

 

テロリスト1「誰だ!」

テロリスト2 「一体どこから?」

テロリスト3「いつの間に?」

テロリスト4「この化け物達の仲間か!」

テロリスト5「俺達の邪魔をs…」

 

「うるせぇー!一気に喋るな!」

 

テロリスト?「ふん!所詮は化け物の仲間だな…口の利き方がなってないようだな…お前もキャストジャミングを受けて這いつくばれ!」

 

テロリスト達はアンティナイトを使いキャストジャミングを発動する。

 

「ダメ…逃げて!」

 

雫が悠仁に逃げるよう促した。

 

「大丈夫だよ、雫。安心して」

 

キャストジャミング…

魔力を超音波みたいに放つようなものだ。

 

悠仁は向かってくる魔力を完全に制御して自分の支配下においておく。

そして…

 

「グラビティ…」

 

「「「「「ぐわ!!!」」」」」

 

悠仁がそう口にした瞬間、テロリスト達が全員地面に叩きつけられた。

 

テロリスト1「何が起きた!?」

テロリスト2「何故魔法が使える!」

テロリスト3「キャストジャミングが効かないのか!?」

テロリスト4「化け物め!」

テロリスト5「俺達はお前ら化け物に決して屈しn…」

 

「だからうるせぇよ!一気に喋るな!」

 

(しかし、元気だなこいつら…うるさいし、さっさと気絶させよう)

 

悠仁はそう思い、さっきよりも倍ぐらいの重力をテロリスト(笑)達にかける。

テロリスト達は強烈な衝撃に耐えきれず気絶した。

 


 

俺は雫達の安否を確認する。

 

「雫、ほのか、エイミィ、無事か?怪我はないか?大丈夫か?」

 

俺の質問に最初にエイミィが答える。

 

「悠仁くん、落ち着いて?」

 

その後、ほのかが…

 

「怪我はないですよ」

 

最後に雫が…

 

「それよりも助けてくれてありがとう。悠仁さん」

 

「良かった〜怪我がなくて…」

 

俺はその場にへたれこんだ…

よく見ると三人共申し訳なさそうにしている…

 

「どうかしたか?」

 

俺は気になったので質問した。

エイミィが最初に口を出した。

 

「あのー悠仁の言うことを聞かずに勝手に尾行しちゃったじゃない?」

 

次にほのかが…

 

「そうです…達也さんの為に頑張ろうとして結局、悠仁さんに迷惑をかけてしまいました」

 

最後に雫が…

 

「わたし達、悠仁さんが助けてくれなかったら本当に危なかった」

 

「「「本当にごめんなさい」」」

 

三人共、俺に謝ってきた。

ここは俺が大人な対応をしよう!

 

「三人共、無事だったなら大丈夫だよ。第一、いきなり通り魔に襲われるとは思わないしね…今度からは俺のこともっと頼ってくれよ?二科生だけど腕っぷしだけは一科生の人達よりも強いから」

 

「分かったよー」

 

「分かりました」

 

「うん…」

 

三人達はそう答えてくれた。

 

「よし、ならこの話はこれでおしまい!それより、こいつら警察とかに上手いこと説明しとくから三人は先に帰ってね」

 

「わたしたちは残らなくてもいいのー?」

 

「エイミィ達は襲われただろう?少なくとも今日は真っ直ぐ家に帰った方がいい。警察の取り締まりに捕まると夜遅くまで帰れないぞ?」

 

俺は適当な理由をつけて三人組を帰らした。

三人組が帰ってくのを確認するとある人に声をかける。

 

「深雪、隠れているのは分かっている。出て来い」

 

すると深雪が出てきた。

 

「隠れているの分かっていたのですね…」

 

「ああ、深雪…俺よりも先にあの現場にいただろう?それより何か用か?」

 

「てっきり雫達を助けなかった事を怒るんだと思いました…」

 

「俺が助けたからそれは別にいいだろう?それより何の用だ?」

 

深雪は一度深呼吸すると、覚悟を決めたかのように俺に問いかけた。

 

「あなたは一体何者ですか?」

 

「何者っていっても黒岩悠仁だが?」

 

「そう言う意味ではありません。あなたは今のテロリストを一瞬の内に制圧した。しかもキャストジャミングの中で…あまりにも実践慣れしすぎている。十師族でもない、一般の生徒ができることではありません」

 

「舐めてもらっては困るよ深雪。こいつらはただの雑魚だぞ?殺気も大した事ないし、そんな奴らに千葉家で修行した俺が負けるわけないだろう?それより俺も前々から一つ達也と深雪に聞きたいことがあるんだけど…」

 

深雪が警戒しながら答える。

 

「…何でしょうか?」

 

「何で俺のこと調べて回っているんだ?」

 

「…何のことでしょうか?」

 

「惚けんなよ?こっちはネタが上がってんだ…九重寺のあの住職に俺の事探るようにお願いしたんだろう?」

 

「!?」

 

深雪が動揺した。

 

「え…マジで!?鎌かけただけなんだけど…」

 

「!!??」

 

深雪はさらに動揺した。

 

「悠仁くん、深雪くんをそこまでいじめないでおくれ」

 

近くから別の声が聞こえた。

この声は…

 

「いつの間にいたんですか?八雲さん」

 

「ついさっきだよ。面白そうな顔ぶれだね」

 

坊主のおっさんが深雪の背後から出現した。

 

「わっ!?」

 

「八雲さん…女性の背後に忍び寄るなんてダメだと思うんですが」

 

「そう言ってもね悠仁くん、僕は忍びだよ?忍び寄るのが性ってもんだ」

 

坊主のおっさんの名前は九重八雲(ここのえやくも)

俺の茶飲み仲間だ。

偶に体術の組み手の相手になってくれる。

この人意外と有名だ。

 

九重 八雲は、天台宗の僧侶。九重寺住職、八雲和尚(*3)。九重の姓は先代から受け継いだもの。

対人戦闘を長じた者には高名な「忍術使い」。

由緒正しい「忍び」。

忍術を昔ながらのノウハウで現代に伝える古式魔法の伝承者。

果心居士の再来とも謳われ「今果心」の異名を持つ。実際、魔法知識が豊富である。(wiki参照)

らしい。

 

深雪が口を挿んできた。

 

「先生は悠仁さんとお知り合いなのですか?」

 

「うん?悠仁くんとは茶飲み仲間だよ」

 

「実は俺も八雲さんにはお世話になっているよ。そう言えば八雲さん、達也達が俺の事調べて欲しいって言われたの本当なの?」

 

「本当だよ。僕も君のこと色々調べてみたけどめぼしい情報はないね。」

 

「あの…先生。悠仁さんは本当に…」

 

「悠仁くんはただの一般家庭に生まれた一般人だよ。今までの家系で魔法師はいなくて悠仁くんが突然魔法師の才能を持って生まれたようだよ?」

 

「そうなのですか…ごめんなさい悠仁さん!色々疑ってしまって…」

 

「別にいいよ…けど達也に言っといて、「次も俺の事探ろうとしたら俺も達也達の事色々と探るから」てね」

 

「それって、何か探って欲しくない情報がある人が言う台詞では?」

 

「深雪は家の中のプライベートな情報を探って欲しいの?」

 

「失言でした…」

 

俺と八雲さんの関係を深雪に理解してもらった所で俺は八雲さんにお願いをする。

 

「八雲さん、こいつらの事お願いできますか?」

 

「もちろんいいよ。それにしても悠仁くん、こいつらの正体分かっているのかな」

 

「もちろんですよ、ブランシュでしょ?相手の目的の一つもなんとなく分かっているつもりですよ。」

 

「そうなんですか!」

 

深雪が驚いて俺に聞いてきた。

 

「あれ?深雪知らなかったの?まぁ達也はある程度推測してるはずだけど…詳しい話は達也に聞くといいよ」

 

八雲が声をかけてきた。

 

「僕はこいつらを回収するよ。二人共、気をつけて帰るんだよ?」

 

八雲はそう言うとテロリストを回収してその場を去った。

 

「…とりあえず学校に戻るか。荷物置いてきてるし」

「そうですね…わたしも生徒会の途中ですし」

 

あっ!深雪にお願いしたいことがあった!

 

「深雪、一つお願い聞いてくれない?」

 

「何でしょうか?」

 

「明日、雫達の様子を見てあげてほしいんだ。今日はあんなことに巻き込まれたし…」

 

「分かりました。悠仁さん、人を揶揄うのを好きなのは知ってますけど、意外と優しくて面倒見もいいのですね」

 

深雪は笑いながら俺にそう言った。

 

「俺が優しいのは友達限定だよ…」

 

ちょっと恥ずかしいが俺はそう答えた。

 

そのまま雑談しながら学校に二人は戻って行った。

 




説明しよう!
「グラビティ」とは、範囲型重力増幅魔法である。
魔力の込め具合によってどんどん重力の比重が上がるぞ!
範囲は俺の魔力操作が届く範囲まで!
(正直限界まで試したことないから正確な距離は出ないけど…)
イメージは100人の魔物達が魔界の王様を決める戦いで最後まで残って、主人公達に敗れてしまった重力使いの魔物の技を参考にしているぞ!


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入学式編Ⅺ

今更ですけどサブタイトル、「入学編」だと思う…
なんで「入学式編」にしちゃったんだろう…
まぁ、サブタイトルはこのままで行くつもりですけど内心

「入学編だろう…」

って言う感想は見なかったことにしようと思います。

以上、作者の一言でしたー

悠仁「……ああ、終わったのね…では入学式編Ⅺ、どうぞ!」


テロリストを捕縛して数日後…

まず、テロリストについてだが八雲さんに話を聞くと、思った通りブランシュだった。

他にブランシュの潜伏先も分かった。

それ以外は特にめぼしい情報はなかった。

 

まぁ、潜伏先が分かっただけでもだいぶ違うか…

 

それともう一つブランシュの協力者であろう壬生先輩にもある魔法をかけることが出来た。

 


 

魔法名称は呪い(弱)

まだ正式名称は決まっていない。

実はあのジジイ(神)に腹を下す呪いをかける時に気がついたんだが、呪いを極端に弱くして人にかけると気付かれず呪うことができる。

まぁ、ほとんど効力自体はないんだが、呪いが成功すると呪った相手の情報が分かるようになる。

それを少しアレンジして、魔力消費中、呪った相手の今いる場所や話している内容が分かるように開発した。

イメージするならば薬で背が縮んでしまった、見た目は子供、頭脳は大人な名探偵が愛用している犯人追跡メガネの魔法版である。

相手を攻撃することとかは出来ないが情報集めとかする時に大変役に立つ。

一応、人だけではなく物にも呪うことができる。

しかし、呪う相手の毛や血などが必要な為、事前準備が大変なのと呪い発動中の魔力の消費量が多いのが欠点だ。

しかも、呪ったけど長時間放置していると勝手に呪いが消えてしまったりもする。

呪いが残る期間は長くて一ヶ月程ぐらいだ。

 

今思えば女神様が呪●廻戦の世界を勧めてきた理由が分かった気がする…

俺、呪術の適正あったんだ…

でも、絶対あの世界には行きたくないけど…

 

閑話休題…

 


 

とある放課後の放送室…

ある事件が起きていた。

学内の「差別撤廃を求める有志同盟」とやらが放送室を占拠して立て篭っているようだ。

 

俺は達也よりも早く現場に着いた。

現場には既に十文字会頭、摩利さん、リンちゃん先輩が到着している。

俺は現場に来たことを伝える為と今後の対応を聞く為、摩利さんに話しかける。

 

「お疲れ様です。摩利さん、こいつらどうします?強行突破します?」

 

「悠仁、ご苦労。わたしもそうしたいところだが…まだ考え中だ、それより達也くんは?」

 

「多分、深雪を迎えに行ってるんじゃないです?シスコンですからね」

 

「そうだな、シスコンの達也くんなら…」

 

摩利さんと話の途中で達也と深雪が俺達に挨拶をする。

 

「「お待たせしました」」

 

「「遅いぞ」」

 

俺と摩利さんは達也にさっきの話を誤魔化す為、形だけの叱責を達也にした。

 

「すみません」

 

達也も形だけの謝罪をしてすぐに状況確認を行う。

 

ふぅーさっきの話は聞かれてないな?

危なかった〜

 

俺は内心冷や汗をかいていた。

 


 

悠仁が内心どう思ってようが話は進んで行く。

情報確認を終えた後、達也は携帯端末を取り出し、電話をし始めた。

 

「壬生先輩ですか?司波です。」

 

達也にギョッとした視線が集まる。

 

「…それで、今どちらに?」

 

さらに達也に視線が集まる。

 

「はぁ、放送室に居るんですか。それは……お気の毒です」

 

直後、達也は顔を顰める。

おそらく、大声で返されたのだろう…

 

「馬鹿にしてるわけではありません。先輩も、もう少し冷静に状況を……ええ、すみません。それで、本題に入りたいんですが」

 

場がさらに緊迫してきた…

 

「十文字会頭は交渉に応じると仰っております。生徒会長の意向は未確認ですが…いえ、生徒会長も同様です」

 

鈴音のジャスチャーで、達也はすぐに言い直した。

 

「ということで、交渉の場所やら日程やらの打ち合わせをしたいのですが……ええ、今すぐです。学校側の横槍が入らない内に……いえ、先輩の自由は保障します……では」

 

達也は電話を切った。

そして摩利へ向き直った。

 

「すぐに出てくるようです」

 

「今のは壬生沙耶香か?」

 

「ええ、待ち合わせの為にとプライベートナンバーを教えられていたのが、思わぬところで役に立ちましたね。」

 

「手が早いな、君も…」

 

「誤解です」

 

そんな会話をしてる二人の様子を見て悠仁と深雪が達也のことについて話をしていた。

 

「深雪は実際どう思う?」

 

「お兄様とはお話しをしないといけないようですね…」

 

「達也って案外女性にモテるよな?俺が知らない内にどんどん女性の人と仲良くなっているし…同級生の女の子に、先輩の女の子、大人の女性教師まで幅広く仲良くなっているし…ぶっちゃけ、男性より女性の人の方が知り合い多いんじゃないか?」

 

「……さらにお話しすることが増えましたね。悠仁さん、後で詳しくそのお話しを聞かせてください。」

 

「OK!……俺も正直、達也のそのナンパ技術について詳しく聞きたかったところだ」

 

「「ふふふふふ……」」

 

悠仁と深雪の周りに不気味な雰囲気が漂っていた。

 

達也は悠仁と深雪の話は聞こえていた。

 

(今のあの二人に話しかけるのは危険だな…無視しよう)

 

達也はそう思い、摩利達に次の行動を促す。

 

「それより、態勢を整えるべきだと思うのですが」

 

「態勢?」

 

摩利が何言ってるんだ?の顔で、達也を見た。

達也も何言っているんですか?の顔で摩利を見返した。

 

「中の奴らを拘束する態勢ですよ。鍵まで盗み出す連中です、CADとか他の武器とかも所持しているかもしれません」

 

「……君はさっき、自由を保障するという趣旨のことを言っていた気がするのだが?」

 

「俺が自由を保障したのは壬生先輩一人だけです。それに俺は、風紀委員を代表して交渉しているなど一言も述べていませんよ」

 

摩利だけではなく、鈴音も、克人までもが、呆気に取られた表情を浮かべていた。

ただ、悠仁は…

 

「よっ!極悪人!女の敵!この詐欺師め!」

 

達也に賞賛?(悪口)を送っていた。

 

「絶対に褒めていないよな?悠仁…後で覚えてろよ?」

 

「半分ぐらいは褒めてるよ、それと達也、そんなこと言ってもいいのか?お前は後で必ず俺に助けを求める筈だ

 

悠仁は後半、達也にしか聞こえない声量で言い放った

意味が分からず達也は困惑する。

 

「どういう意味だ?悠仁…」

 

悠仁に問い詰めようとした時、達也と悠仁の会話に深雪が参戦する。

 

「ふふふ、お兄様は本当悪い人ですね」

「今更だな、深雪」

「ふふ、そうですね」

 

楽しげに非難する深雪に達也もそう返した。

ふと、達也が疑問に思った。

 

(悠仁が俺のことをあれだけ酷く言うのに悠仁に対して深雪が何も反応を示さないだと?……何か嫌な予感がする)

 

そう、深雪は今まで、達也が明らかな悪口を言われる度、すぐに不機嫌になる。

悪口を言った相手に悪口を撤回させる為、その相手に突撃しようとする程なのだ。

その深雪を宥める為、達也は毎回苦労していた。

そんな深雪が、悠仁が言った、悪口染みた非難に乗っかる形で達也に満面の笑みで非難しているのだ。

そして、達也の嫌な予感は見事に的中する。

 

「ですが、壬生先輩のプライベートナンバーをわざわざ登録されていた件については、今更ではありませんし、それに、わたしの知らない所で様々な女性の方と仲良くしているようですね?後程、悠仁さんと詳しくお話したいことがあります」

 

悠仁が会話に再び加わる。

 

「安心しろ、達也!普段の達也の様子を深雪に伝えるだけだ。嘘だけは言わない…ただ多少、大袈裟に話してしまうかも知れない。まぁ、噂レベルの事でも達也のことはしっかりと聞きたいよな?深雪」

 

「はい!悠仁さん、色々とお兄様の事教えて下さい!」

 

「OK!任せとけ!」

 

達也は、二人の様子を見て現実逃避をすることにした。

 

(後で、悠仁に余計なこと喋らせないようにしよう)

 

達也はそう、心に誓った。

 


 

その後について話をしよう。

壬生先輩以外の占拠していた奴らは俺達風紀委員で取り押さえた。

しかし、壬生先輩一人じゃ交渉も出来ないからと結局、残りの奴らも解放。

その後は生徒会の人達と交渉の打ち合わせに行った。

俺、達也、深雪はもう帰ってもいいと言うことなので達也達と帰ることなった。

 

帰り道…

 

俺は達也に問いかける。

 

「なぁ、達也?これからお前達の家に行ってもいいか?」

 

「何故だ?」

 

「今回の件の事で情報の共有をしたい。俺の事は深雪から聞いているだろ?」

 

俺の質問にあの兄妹はお互いを見た後、少し考えた素振りを出してから答える。

 

「聞いているぞ……分かった、家に招待しよう」

 

そうして、俺は司波家に行く事になった。

 




悠仁「呪い(弱)ってなんだよ?世界観滅茶苦茶だし…名前も適当だし…いいのかよ作者?」
作者「ん?大丈夫じゃない?細かい事は気にしないようにしようぜ!」
悠仁「ダメだ…こいつ」
作者「ついでに呪い(弱)の名前とかも募集しまーす!」
悠仁「考えることも放棄しやがった!」
作者「お酒サイコー!!」
悠仁「ダメだこれww」


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入学式編Ⅻ

皆様お久しぶりでございます。
最近忙しくて投稿出来てませんでした。
これからまた少しずつ投稿するつもりです。
とりあえず入学編まではどうにかしたい…
これからもよろしくお願いします!


俺は一度家に帰るとすぐに制服から私服に着替え、司波家に向かう。

家の場所は先程、達也に聞いたからおそらく迷わず行けると思う…

 

「これから、司波家突撃作戦を開始する!悠仁、行きまーす」

 

俺はどこぞのガンダムのパイロットみたいに気合を入れて司波家に向かった。

 


 

司波家前…

 

…緊張するなぁ〜

友達の家に行くなんて何年ぶりだろ?

えっ?エリカの家?あれは道場だからノーカンで〜す!

 

そんなどうでもいい事考えながらも俺は司波家のインターホンを押す。

 

ピンポーン

 

少しすると達也が出てきた。

 

「待ってたぞ、悠仁。上がってくれ」

 

「お邪魔しまーす」

 

俺は司波家の中に入って行った。

リビングのソファーにいた深雪が声をかけてくれた。

 

「いらっしゃいませ、悠仁さん」

 

「お邪魔します。深雪」

 

俺は深雪にも挨拶をした後、達也に質問する。

 

「達也達の親御さんは?急にお邪魔したから挨拶をしたいんだが…」

 

本当は達也達の親子関係は知っているのだが、今は何も知らない風を装う。

その質問で深雪が少し不機嫌になったが、達也が俺の質問に答える。

 

「母さんはもういない…親父の方は再婚相手の家に移り住んでいるからここでは俺と深雪の二人だけだ」

 

「……ごめん、二人とも」

 

俺は二人に謝った。

 

「気にするな(しないで下さい)」

 

二人はそう返してくれた。

 


 

俺達はリビングのソファーに座った。

早速だが達也達に話をする。

 

「単刀直入に聞くぞ?達也達は今回の件どこまで掴んでいる?」

 

「今回の件とは?壬生先輩のことか?」

 

「一応合っている。けど、聞きたいのはそれじゃない。ブランシュの事だ。壬生先輩個人の事なんてどうでもいい」

 

俺がブランシュの名前を出してから達也の雰囲気が変わった。

 

「どこでその名前を?」

 

「学校の周りをコソコソしてたんだぞ?そりゃあ調べるだろ?いくら国が情報規制してるからって調べようとすれば情報なんて色々集められるぞ……それより達也、どうなんだ?」

 

達也は一度、悠仁に知っていることを話すか考えた。

(深雪の話によると師匠と知り合いのようだしな…それなら情報を共有して悠仁を巻き込もう)

 

「……ああ、ブランシュの事は知っている。壬生先輩というか剣道部全体がブランシュの手先になっているだろうな。」

 

「そうだな。アイツらの目的は分かるか?」

 

「そこまではまだはっきりとは分からない」

 

「俺もアイツらの目的の全ては分からないが…目的の一つは達也、お前だぞ?」

 

「…何故そう思うんだ?」

 

「達也のキャストジャミングもどきに興味を持ったんだろうな…だから何度も襲われてたんじゃないのか?」

 

ピキピキッ!

 

部屋の温度が急激に下がる。

 

「あのテロリスト共…よりにもよって、お兄様を狙うとは…万死に値します」

 

達也が深雪を諭そうとするがそれより速く、俺が口を挿む。

 

「俺もそう思う。達也、深雪、ブランシュ潰さないか?」

 

達也が聞いてきた。

 

「悠仁、ブランシュの件はお前にとっては関係ないだろう?どうしてブランシュを潰すのにこだわるんだ?」

 

俺は思いの丈を達也達に伝える。

 

「関係ないことはないぞ… 雫達が襲われた。達也も狙われている。俺の友達が悪意に襲われている。この世は悪意に溢れている。だからこそ、今の高校生活という日常はとても貴重で尊いものだと俺は思っている。俺にとって日常と言うものは俺が生きる意味そのものだ…俺が求めていた平和な日常(高校生活)がブランシュに壊されそうになっている…」

 

俺は一度深呼吸する。そして…

 

「俺の平和な日常を壊す奴は例え神であっても許さない。アイツらは必ず排除する…」

 

「その平和な日常とやらに俺達も入っているのか?」

 

「お兄様?」

 

「当たり前だろ。達也や深雪は勿論、エリカやレオや美月、雫にほのかだって俺にはもう大切な友達だ。俺が望んでいた日常にもうなっている…」

 

「…悠仁からそんなクサイ台詞聞くと思わなかった…分かった。協力しよう」

 

「わたしも協力します。お兄様を狙う不届き者は排除しなければいけません。」

 

「二人共…ありがとう」

 

こうして達也と深雪の協力を得る事ができた。

そしていつの間にか部屋の温度も元に戻っていた…

 


 

達也達と情報共有した所で達也が俺に聞いてきた。

 

「悠仁、敵のアジトは分かったのか?」

 

「…ブランシュの奴ら幾つかアジトを持っているからどこにブランシュの奴らがいるかまだ分からない。もう少し待ってくれ」

 

「分かった」

 

話が一旦落ち着いた所で俺は達也達にお願いする。

 

「達也、深雪。今日お前達の家に泊まってもいいか?」

 

「「はっ?」」

 

いきなりのお願いに達也と深雪は困惑した。

そして俺のお願い達也はこう答えた。

 

「いきなりだな…悠仁の家の門限とかは大丈夫なのか?」

 

「俺一人暮らしだから平気だよ〜」

 

俺はそう答えるが二人は渋っている様子だ…

だが、俺には切り札がある!

 

「本当は達也の壬生先輩、プライベートナンバー登録の件について詳しく聞きたいと思っていたが…どうやら無理そうd…」

 

「悠仁さん、今日は泊まって下さい」

 

深雪から許可が出た。

 

「深雪ならそう言ってくれると思っていたよ。ありがとう」

 

「わたしもその件に関してはじっくり聞きたいです…普段の授業のお兄様の様子も勿論教えてくださるのですよね?」

 

「勿論だ。なんなら達也の写真集でも作ってやろうか?」

 

「最高です!悠仁さん!!」

 

俺と深雪で盛り上がっていると達也が口を挿んできた。

 

「二人共、待ってくれ。まだ俺は許可を出してないぞ?」

 

「「ダメか(なんですか)?」」

 

「…許可しよう」

 

流石、シスコン魔王達也様だ。深雪の一言で簡単に許可が出た。

計算通りだ…

 

「さて達也、これが本題だ。お前の女性関係について聞き出してやる。特にななみん先輩、壬生先輩、エリカ、ほのか、ついでに美月もかな?協力してくれ、深雪!」

 

「勿論です。悠仁さん…今が一番、悠仁さんと友人関係になれてよかったと思います。」

 

()()だけにな!」

 

「「あはははは」」

 

(深雪がおかしくなった…悠仁は後でしばこう!)

達也はそう心に決めた。

 

次の日、朝からハイテンションで登校する悠仁と深雪、とても疲れた様子でげんなりとしている達也が目撃されたようだ。

 

 




久々だから誤字とか大丈夫ですかね…
誤字脱字の報告、感想、評価、バンバンお待ちしてます!


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入学式編ⅩⅢ


お久しぶりです!
やっと一話分出来ました。
後もう少しでやっと入学式編終わります〜




 

第一高校講堂…

 

「悠仁、状況はどうなっている?」

 

「黒岩悠仁、リストアップされた生徒を確認。現在監視をしております…後何分ぐらいで討論会終わりますか?正直眠たいであります!どうぞ」

 

俺は風紀委員としてある生徒を監視している。

そして今、摩利さんに通信で報告しているところだ…

ちなみに俺は二科生の集団の後ろの席で監視。

摩利さんは舞台袖でななみん先輩の護衛だ。

どうしてこうなったのか簡単に説明しよう!

 

→生徒会と壬生先輩含む差別撤廃を求める有志同盟(笑)が話し合う。

→講堂にて全校生徒の前で討論会を行う事が決まる。

→風紀委員会が警備を行う。

→有志同盟(ブランシュのメンバー)が暴走する可能性も考えて、事前にリストアップした生徒の監視。

→今に至る。

 

こんな感じだ…

細かい事はどうでもいいので省略…

 

閑話休題

 

摩利さんが俺の返答に呆れながらも質問してきた。

 

「悠仁…お前はこの討論会は興味ないのか?二科生のお前にも関係ある内容だと思うが…」

 

「興味ないですね…自分の実力不足を棚に上げて、自分達をもっと優遇しろ!って言う奴らの意見でしょ?それ以前にもっとやるべきことをやってから意見出せよ!って思いますね。」

 

「…辛辣だな」

 

「まぁ、学校は少し一科生を甘やかしている所はあると思いますけどね…一科生を二科生に降格。二科生を一科生に昇格する校則とかあるともっと差別は減ると思います。」

 

そんなことを摩利さんと話している内に会場の盛り上がりはピークを迎えていた。

 

「では、そろそろ切ります。そろそろ暴れそうな雰囲気出てるんで…」

 

「ああ、気をつけてな」

 

プツッ

俺は摩利さんとの通信を切った。

 


 

討論会は終わった。

真由美は有志同盟の具体性のない観念論をばっさり切り捨て、一科生、二科生の差別を無くすことよりも()()()()の克服を訴えた。

その結果、一科生のみならず二科生までもがその意見に賛同し、満場の拍手が起こった。

そしてそのまま、討論会は無事終了するはずだった…

 

どかーん

 

突如、轟音が鳴り響く。

先程まで拍手していた生徒はその音に驚き、呆然としてしまった。

その隙に生じて、リストアップされていた生徒達は行動に移ろうとしている。

 

「取り押さえろ!」

 

摩利の一言により、風紀委員の各々が事前にリストアップした生徒を取り押さえる。

リストアップされた生徒を全員取り押さた直後、講堂の外から榴弾が飛び込んできた。

床に落ちると同時に白い煙を吐き出そうしている。

 

「煙を吸い込まないように!」

 

服部がそう口にした直後、魔法を発動する。

すると榴弾の白い煙は拡散されず、榴弾の周りに収束し、そのまま講堂の外に運び出されて行った。

その服部の魔法を見た達也は賞賛を込めた視線を向けると、服部は不機嫌そうに顔を逸らした。

それを見た真由美はクスッと笑いを漏らしている。

 

摩利が講堂の出入口に手を差し出す。

すると講堂の出入口にいる防毒マスクをつけた侵入者が急に苦しみ出し一斉に倒れてしまった。

 

(MIDフィールド…マスクの中の空気を全部窒素で満たしたか…)

 

達也は摩利の放った魔法をそう分析した。

 

()()()()()()()暴動は、爆発物及び化学兵器という予想以上の過激さだったが、()()()()迅速に鎮圧した。

 

 


 

俺は取り押さえた生徒を摩利さんに預けた。

そして摩利さんにこう伝えた。

 

「摩利さん!達也と一緒に爆発のあった実技棟の様子を見てきます」

 

摩利さんが応える前に深雪が口を挿んだ。

 

「お兄様、悠仁さん。わたしもお供します。」

 

摩利さんは俺達三人を見た後、こう応える。

 

「分かった!気をつけるんだぞ!」

 

「「「ハイ!」」」

 

俺、達也、深雪は講堂を後にした。

 


 

実技棟前でレオを発見した。

電気工事の作業員のような格好をしている怪しい男三人を相手している。

俺が助けに行こうとした直後、隣から深雪が魔法を発動しようとする。

発動された魔法はレオを取り囲んでいた三人の男を一斉に吹き飛ばす。

男三人は空中に3〜4m程飛ばされて受身も取らないまま地面に落下した。

男三人は落下した衝撃で気絶してしまったようだ。

 

「深雪、お見事!」

「ありがとうございます。悠仁さん」

 

俺と深雪が話している間に達也もレオに今の状況を話していた。

 

「レオ、ホウキ!…っと、援軍が到着していたか」

 

事務所の方からエリカが姿を見せる。

俺達の姿を見るとエリカは走ってきた足を緩めた。

 


 

エリカも集まったことで俺は達也達にこれからの行動方針を話そうと思う。

 

「さて、ここは多分囮だろうな…これからどうする?……遅いですよ」

 

俺は達也達に質問している途中、俺の知り合いの気配がしたのでそちらに声をかける。

達也達は急に何言ってんだ?って顔をしていた。

俺は気にせず、待っていると達也達も知っているある人が急に出てきた。

 

「…わたし結構本気で隠れてたんだけど…彼らの狙いは図書館よ」

 

「小野先生?」

 

「主力はそちらにいます。壬生さんもそちらにいるわ」

 

「OKです。ありがとう、遥さん……行くぞ達也」

 

「…後で説明をもらえるんだろうな?悠仁」

 

「そのうちにな?」

 

「待って!司波君、カウンセラー小野遥(おのはるか)としてお願いがあります。壬生さんに機会を与えてほしいの…」

 

「甘いですね」

 

何か色々言っていたが達也は容赦なく切り捨てる。

 

「行くぞ」

「はい」

「ええ」

「了解」

「おい、達也」

 

達也が切り捨てられない友人に向けてアドバイスをする。

 

「余計な情けで怪我するのは、自分だけじゃない」

 

俺達は図書館に向かった。

 


 

図書館前では拮抗した小競り合いが発生していた。

その様子を見た瞬間レオが飛び出す。

レオが硬化魔法を駆使してテロリスト達を制圧していく…

 

レオがここまで戦えるなら大丈夫だな…

 

「レオ!ここは任せた!」

 

「おう!任せとけ!」

 

レオを除いた俺達は図書館の中に入った。

 


 

図書館内は静かだった…

おそらく中の職員は無力化されてしまったのだろう。

 

「二階の特別閲覧室に四人、階段の上り口に二人、階段を上り切った所に二人…だな」

 

達也がそんなことを言っている。

するとエリカが

 

「すごいね。達也くんがいれば待ち伏せの意味無くなっちゃう。実戦では絶対に敵に回したくないね」

 

達也の異能を賞賛していた。

その後達也達がブランシュの目的を推測していたが俺にとってはどうでもいいので話途中の達也達に言ってやった。

 

「そろそろ捕まえに行かないか?敵の目的なんぞ捕まえてから吐かせようぜ?」

 

「なら道中の敵、わたしがも〜らい」

 

エリカがそう言うと一人飛び出す。

音もなく接近し、片手に持っている警棒式CADで一瞬に二人の敵を打ち倒す。

すると二階からもう一人敵が駆け降りていく。

俺はあらかじめ展開していた重力刃(グラビティ・ブレード)をその敵に放った。

敵は俺の魔法に直撃し、吹き飛ばされた。

 

「エリカ!後もう一人、よろしく!」

 

俺は後もう一人の敵をエリカに任せると自身に掛かっている重力を操作する魔法を使い、一階から二階まで飛び上がる。

達也、深雪も俺の後を追うように魔法を使い、二階まで飛び上がった。

俺、達也、深雪は特別閲覧室に向かった。

 


 

二階特別閲覧室…

 

達也は魔法がかけられていた特別閲覧室の扉を破壊した。

次に特別閲覧室にアクセスしていたハッキングツール、記録キューブを破壊した。

 

「産業スパイ、と言って良いかな?お前達の企みはこれで終わりだ」

 

達也は銀色の拳銃形態の特化型CAD を右手に構え、ブランシュメンバーに終わりを告げる。

 

「司波君…」

 

呟いた沙耶香の隣で実弾銃を達也に向けるブランシュメンバーの一人。

引き金を引こうとするも、その男は激痛のあまり床にのた打ち回る。

その男の右手は紫色に腫れあがっていた。

 

俺はこの魔法は深雪の仕業だと分析する。

おそらく男の拳銃と右手を極限にまで冷やして重度の凍傷の状態にさせたのだろう…

えぐいね〜

そんなことを思いながらも話は進んでいく。

何か壬生先輩がヒートアップしてるね〜

ん?どんな話をしてるかだって?

仕方ないね〜説明しよう!

 

→達也が壬生先輩に現実を突きつける。

→壬生はそんな現実認められないと感情的になる。

→壬生先輩「出来のいい妹に比べられて、あなたもわたしと同じように不当な扱いを受けてきたはず!」

→深雪がきれて、お兄様愛を壬生先輩にぶつけた後「可哀想な人」と壬生先輩を蔑む。

 

こんな感じだ…

いい感じになってきたねー

俺は野次馬気分で楽しく見ていたのだが、壬生先輩に標的にされてしまった。

 

「黒岩君、貴方もよ。貴方も二科生で不当な扱いを受けていたはず!どうしてわたしの気持ちが分かってくれないの!」

 

壬生先輩は自分自身の思いをそのまま俺にぶつけてきた。

俺はこの高校生活で素直に思った事を伝える。

 

「ん〜。壬生先輩の気持ちは分かんないです。俺は一科生、二科生の制度自体は結構良いものだと思いますよ?」

 

「どうして!」

 

「実力主義みたいで良いじゃないですか。それよりも壬生先輩は一度でも一科生になってやろうと思ったことはないんですか?」

 

「えっ?」

 

「だって学校の制度を変えるより自分が一科生になった方が楽じゃないですか?貴方は不当な扱いを受けたくないだけですから…それなら貴方が実力を身につけて、一科生になれば不当な扱いを受けなくてすみますよ?」

 

「そんなの…無理よ」

 

「何でですか?たかが、高校入試のテストの結果だけで自分の事を劣等生だと思っているんですか?」

 

「……」

 

「結局、自分自身を劣等生と蔑んでいる事が一番ダメなんだと思いますよ?外野は関係なく、「雑草(ウィード)」と蔑んでいるのは貴方自身だ」

 

壬生先輩は反論出来なくなっていた。

 

「壬生、指輪を使え!」

 

壬生先輩の背中に隠れていた男が叫ぶ。

それと同時に白い煙幕と耳障りなサイオンのノイズ。

キャスト・ジャミングだ。

ブランシュメンバーは煙幕とキャスト・ジャミングでこの場を逃げようとする。

三つの足音が煙の中で聞こえる。

 

俺は煙の中で木刀を突く。

 

すると俺の目の前で一人男が倒れる。

 

「深雪、止せ」

「深雪、待って」

 

俺と達也は同時に深雪を止める。

深雪は構成していた魔法式を、別の物に変える。

 

煙幕の煙を処理し、視界を回復させた。

視界を回復させた部屋には三人の男が横たわっていた。

一人は凍傷の激痛に転げ回っている。

一人は顔面に痣を作って昏倒。

一人は腹部を手で抑えながら(うずくま)っている。

 

「お兄様、悠仁さん。壬生先輩を拘束せずとも良かったのですか?」

 

深雪が不思議そうに訊ねた。

 

「あれはエリカの獲物だからな。横取りすると後でうるさいぞ〜」

 

「エリカが壬生先輩にそこまで熱心になる理由は無いと思いますが…」

 

「俺も詳しくは知らないからな〜」

 

俺は深雪にそう答えた。

 





作者「年内に入学式編終わる予定なのですが…」
悠仁「無理だろ…」
作者「ハイ…でももう少しで冬休み…」
悠仁「だから無理だろ。諦めろ…」
作者「……ハイ」

ということで入学式編完結までもうしばらくお待ち下さいますようお願い致します(土下座)


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入学式編ⅩⅣ

あけましておめでとうございます♪
年が明けて最初の投稿です^_^
今年もこの作品のことよろしくお願いします!



俺は床に転がっているテロリスト共を先生に引き渡しに行った。

達也達はエリカと壬生先輩の様子を見に行っている。

原作だとエリカが壬生を倒した後、達也が壬生先輩を背負って保険室に連れていくはず…

俺はテロリスト共を引き渡した後、急いで保険室に向かった。

 


 

保険室の前に遥さんがいた…

 

「何やってんですか?」

 

「悠仁君!ちょっと静かにしてて!」

 

小声で注意された…

中の様子をこっそり覗くと壬生先輩が達也の胸の中で泣いている…

俺は急いで携帯端末の録画をONにすると中の様子を撮影する。

後で面白おかしく編集してやろうと心に決めた。

…遥さんがゴミを見るような目で俺を見ていた。

 

「…悠仁君、何してるの?」

 

「何って、撮影ですよ?後で編集してみんなに見せようかな〜と思いまして」

 

「控え目に言って最低ね…でも後で私にも見せてね?」

 

「もちろんです!」

 

突然扉が開かれた…

達也が目の前にいた…

 

「「あっ…」」

 

「色々言いたい事があるが取り敢えず中に入れ」

 

俺と遥さんは保険室の中に入った。

 

「ごほん!九重先生秘蔵の弟子から隠れ仰せようなんて、やっぱり、甘かったか…」

 

「そうですね…流石九重先生の弟子ですね!」

 

俺と遥さんで場の空気を変えようとしたが…

 

「いや…二人共隠れる気無かっただろう…後、悠仁!さっきの録画のデータを消せ!」

 

「何のことだ?」

 

「…いいだろう、実力行使でやってやろう」

 

何か達也の目がやべーな…

殺し屋の目をしてるZE★

 

「冗談だよ。消すよ。」

 

俺は達也達の目の前でさっきの録画データを消した。

次はもっとバレないようにやってやる!

俺はそう心に誓った。

 


 

ブランシュの居場所のデータを遥さんに貰った俺達は現在その場所に大型のオフローダーで向かっている。

メンバーは、俺、達也、深雪、エリカ、レオ、十文字先輩に桐原先輩だ。

 

桐原先輩が誰かって?

説明しよう!

 

桐原武明(きりはらたけあき)

一科生で二年生。剣術部に所属。

部活動勧誘の時に達也に取り押さえられた人である。

達也が学校内で有名になったきっかけとなった人だ。

実は壬生先輩の事が好きな男子高校生。

エリカ曰くルックスは達也よりも下らしい。

 


ブランシュアジト前…

 

「今だレオ!」

 

「パンツァァー!」

 

達也が合図を送るとレオは車に硬化魔法を展開する。

そして、アジトの前の門や塀などを壊しながら中に突っ込んだ。

アジト突入に成功すると十文字先輩が達也に言う。

 

「司波、お前が考えた作戦だ。このままお前が指示しろ」

 

「分かりました。レオ、エリカはここで退路の確保。逃げてく奴らは始末してくれ。十文字先輩と桐原先輩は裏から周り込んで敵を追い詰めて下さい。悠仁と俺と深雪は正面から突入します」

 

各々が達也の指示を聞いて行動を始める。

さぁ、ブランシュ潰しを始めよう!

俺と達也、深雪はアジトの中にさらに入り込んだ。

 


 

真っ直ぐ進んでいくとフロア状の場所に出た。

相手も整列して達也達を待っていた。

 

「司波達也君、ようこそブランシュ日本支部へ!そちらのお姫様は妹の深雪君かな?そして、君は…」

「お前がブランシュのリーダー、だな?」

 

「これは失敬。仰せ通り、僕がブランシュ日本支部のリーダー司一(つかさはじめ)だ。」

 

大袈裟なポーズで歓迎している男は達也の問いかけを聞くとすぐに自己紹介をした。

って達也?まだ相手話していたよ?俺の名前聞こうとしたよ?

達也を問い詰めようとも思ったが、俺の精神年齢は大人だ…

ここは空気を読もう…

 

「一応、投降の勧告しておこう。全員武器を捨てて、両手を頭の後ろに組め」

 

「ハハハ、君は魔法が苦手な“ウィード”じゃないのかい?おっと“ウィード”は差別用語だったね。でも、君の自信の源は何だい?魔法が絶対的な力だと思っているのなら大きな間違いだよ?」

 

司がそう言うと周りの敵が銃器を俺達の方に向ける。敵はアサルトライフルやサブマシンガンを持っている。

 

「交渉は対等でなければいけないから、こちらも機会を与えよう。司波達也君、我々の仲間になり給え。君のアンティナイトを使わないキャスト・ジャミングは非常に興味深い技術だ。今回の計画には時間とコストをすごくかけているのだよ。世間知らずの使えない学生を()()するのにとても苦労してね…その計画を台無しにしてしまったのは本当に、本当に忌々しいが君が仲間になるのなら水に流してあげよう!なに、今ここで死んでしまうよりはいいだろう?」

 

司は笑っている。

その笑み、その瞳には狂気が宿っていた。

俺も前世の記憶がなければ怖いと思っていただろう…

今は素直に気持ち悪いとは思っているけどね〜

…本当だよ!?

 

「やはりそれが狙いか。壬生先輩の件とか部活勧誘の襲撃の件も全部キャスト・ジャミングもどきについて探りを入れる為だな?」

 

「ふむ、頭のいい子供は好ましいね…でも所詮は子供だ…こんなところにノコノコきてしまうのだからね!でも子供は強情だ。勝ち目がなくとも絶対に君は仲間にならないだろう」

 

「だったらどうする」

 

「では、こうしよう!」

 

司は突然メガネを放り投げ、髪をかき上げる。

そして、目が光り出すと…

 

「司波達也、我々の同志になるがいい」

 

達也のただでさえ乏かった表情が消え、脱力したようにCADを握っていた右手が下がった。

 

「ハハハハハ!君はもう仲間だ!では手始めに君の妹と学友を始末したまえ!何、君達も我々に殺されるよりも達也君に殺された方が本望だろう!」

 

もう〜司さん?本性出てるよ?

そんなこと思いつつ俺は達也を煽ってみた。

 

「ねえねえ、達也?今どんな気持ち?あのエセインテリの三下野郎に命令されてどんな気持ち?俺は今までそんな目に遭った事ないから是非ともその気持ち聞きたいな!」

 

「最悪な気分だな…それよりもいい加減その猿芝居は止せ。見てるこっちが恥ずかしくなる」

 

「…貴様、何故…」

 

「意識干渉型系統魔法邪眼(イビル・アイ)。と、称しているが、その正体は光信号を相手の網膜に投射する催眠術だ。壬生先輩の記憶もこれですり替えて操っていたのか?」

 

「お兄様、では?」

 

「ああ、壬生先輩には明らかに記憶を操作された痕跡があった」

 

「この下衆ども!」

 

あ〜あ、深雪が切れた〜

俺、知〜らね…

 

そんなこと思っていようが、物語は進んでいく。

達也に魔法のタネを暴かれ、パニックに陥る司。

 

「撃て!撃てぇ!!」

 

威厳もへったくれもないが達也を殺す為、部下達に指示する司。

しかし、達也達を殺す為の弾丸は一発も発射されなかった。

パニックは司のみならず、銃器を持っていた敵にも広がった。

床には、バラバラに分解された、アサルトライフルやサブマシンガン、拳銃が散乱している。

引き金を引く前にバラバラに分解されてしまった。

 

“分解”

達也の魔法である。

達也はこの魔法で物や魔法、人すらも分解できる。

達也が最強チートお兄様主人公と言われる由縁の一つである。

 

そんな達也の魔法を見て司は逃げようとする。

そんな司を見て俺は魔法を発動する。

 

「逃がさないよ…“グラビティ”」

 

すると司を含む敵達は突然重くなった重力に耐え切れず、全員床に叩きつけられる。

達也や深雪は俺の魔法を見て驚いていた。

俺の魔法の発動スピードと言うよりも()()()()()()()()()()魔法を発動させた事に驚いているみたいだった。

 

動作詠唱(モーション・キャスト)

自分で決めた、魔法を発動する為のポーズや行為を行う事で魔法の起動式を省略、直接魔法を発動させる技能である。

今回は魔法名を言う事でCADでは必ず発生する起動式を発動させずに直接魔法を発動させた。

なろう系イメージだと詠唱破棄である。

若干、厨二っぽいが魔法はイメージが全て。

やろうと思ったらできてしまったのである。

 

司や周りにいた敵達も全員床に叩きつけられているが全員意識は残っている。

 

「全員意識残っているかー…うん、ちょっと手荒に行こうかな〜全員動かないでね〜動くと死ぬよ?『穿て“グラビティ・レイ”』」

 

すると、今まで司達に発動していた魔法は一旦解除されたが上から幾つもの黒い光線が司以外の敵達の手や足を貫く。

 

“グラビティ・レイ”

グラビティを極小範囲で発動させる魔法である。

極小範囲に圧力をかけることにより貫通力の増加、魔力消費の低減を見込めるとても省エネで殺傷能力の高い魔法である。

しかし、現在の重力の荷重を大きくすると言う魔法の特性状、魔法発動ポイントから真下にしか攻撃できない。

動き回る相手には攻撃を当て難いと言う弱点もある。

 

「「「「「ぐわぁー」」」」」

 

司以外のブランシュメンバーは手や足に穴が空いて血が流れている。

阿鼻叫喚である。

その光景に恐怖を覚える司

 

「貴様は一体何者なんだ!」

 

「何者って…俺は黒岩悠仁、ただの()()()()()()()()()だよ。それよりも聞きたい事があるんだよね〜拒否権は無いよ?嘘ついたらさっきの魔法、貴方にも浴びせてあげるから覚悟してね?」

 

全力で首を縦に振る司。

俺は笑顔で司に質問する。

 

「あんたらのスポンサーは誰かな?」

 

「…し、知らない」

 

「司さん…嘘はダメだよ?俺、嘘ついているかついていないか分かるんだよね…司さん、死にたいの?」

 

俺はそう言うとブランシュのメンバーからくすねたナイフを司の顔の横に突き刺す。

 

「ひぃー」

 

「ひぃー、じゃないよ。お前如きがここまでの事一人でできるわけないだろう?貴重物資のアンティナイト含めて何処のどいつがスポンサーなの?」

 

「頼む!殺さないでくれ!」

 

あら司さん、怯えちゃった…

 

「どうしよう達也?」

 

「…どうしようとは?」

 

「俺、尋問とかした事ないからどうすればいいか分からなくて…」

 

「…俺もやった事ないが…何聞きたいんだ?」

 

「こいつらのスポンサーが今後も第一高校にちょっかいをかけるどうかを聞きたい」

 

「第一高校にですか?」

 

深雪が疑問に思ったのか聞いてきた。

 

「そう。“第一高校”にだよ。でも俺は正直、深雪達に危害が及ばなければどうでもいいんだよね〜」

 

「私達ですか?」

 

「そう、俺の友達に危害さえなければだよ?俺の平和な高校生活を脅かす奴は排除しないといけない。君は大切な人だからね」

 

「え!」

 

「おい、悠仁。俺の前で深雪を口説くとはいい度胸だな?」

 

「達也、落ち着け!俺はそんなつもりは無い!」

 

そんなこんなしてるうちに桐原先輩と十文字先輩が出てきた。

 

「よぉ、こいつらをやったのはお前達か?」

 

「やったのは悠仁です」

「無力化したのは達也です」

 

桐原先輩の問いかけに俺と達也は同時に答えた。

 

「やるじゃないかお前達。それでこいつは?」

 

「「それがブランシュのリーダーです」」

 

「こいつが壬生を誑かしやがったのはぁ!」

 

「ヒィィー!」

 

司は桐原先輩の怒気にビビったのかアンティナイトを使って、キャスト・ジャミングを放つ。

本来なら、魔法を展開できないほどの強度を持ったキャスト・ジャミングだ。

しかし、桐原先輩の高周波ブレードはそのまま司の腕を切り落とす。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 

その後、十文字先輩が司の腕の断面を焼いて出血を抑える。

司はその肉が焼ける痛みに耐え切れず気絶してしまった。

 

こうして、第一高校襲撃事件はブランシュのリーダーを確保という結果を持って終了した。




もう少しで入学式編終わりますね。
少し閑話を入れてから九校戦始めたいと思います。
どうぞよろしくお願いします!
※ついでにまたアンケートをとるつもりです…


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黒岩悠仁について
事件のその後と久々の再会



皆様お疲れ様です!
作者でーす
入学式編終わりました!
皆様この物語を読んでいただきありがとうございます。
これからも悠仁くんの活躍を見ていただけたら幸いです!

一旦閑話に入ります。
九校戦編はもうしばらくお待ちください。



 

まずは事件のその後について話をしよう。

ブランシュは壊滅。

その後の後始末は十文字先輩がやってくれた。

一応正当防衛のつもりだったがブランシュのメンバーは出血多量で意識不明。

司に限っては片手まで斬られてしまっている。

側から見れば、過剰防衛である。

だが、俺達が警察に捕まる事は無かった…

十文字家が裏で手を回したようだ。

流石は十文字家と言ったところだろうか…

権力怖いな〜

 

「ーーという所ですかね。司本人にも()()()()したんですけど、めぼしい情報は何にも無し。態々危険を冒して行った意味ないですよ…なぁ?エリカ」

 

「『なぁ?』って…そんな事考えていたの?」

 

「当たり前だろ?」

 

事件が解決した数日後、俺は学校ではなくある道場にいた。

ついでに言うとエリカも一緒だ。

 

「あの事件は十文字家が内密に処理してしまったからな…久々に会えたのにいきなりこんな話ですまんな悠仁」

 

「いえ、まさか千葉家の方にも情報が入ってないとは思わなかったですけどね」

 

俺は目の前にいる筋肉ムキムキなおじ様にブランシュ事件の顛末を話していた。

おじ様の名前は千葉丈一郎(じょういちろう)

エリカの父親だ。

そう、俺は現在、千葉家の道場にいるのだ!

 

ちなみに千葉家は陸軍や警察などに魔法師を輩出している家である。

軍や警察の影響力だけで言えば十師族以上とも言われている家だ。

そんな千葉家にも情報を伝えず、十文字家だけで内密に処理してしまうとは…

俺は素直に驚いていた。

 

「それにしても災難だったね…でも摩利からも聞いていたけど元気そうで良かったよ。悠仁」

 

(しゅう)兄も久しぶり!何とか入学出来たよ…そういえば摩利さんにも俺の事、秘密にしてくれてありがとう」

 

今話しかけたのは摩利さんの彼氏でエリカの兄、そしてイケメン。

憎たらしいエリートイケメンの千葉修次(なおつぐ)

モテない男の敵である。

ていうか彼女持ちで性格完璧で魔法も一流って何?

マジで欠点一つぐらいないかな?

そうすれば、好感持てるのに…

でも一つ勘違いしてほしくはないので言わせてもらうが修兄とは仲は良い。

けど、それはそれ、これはこれなのである。

リア充は爆発すべし…

 

「悠仁…俺には挨拶はないのかい?まぁ、それはおいといて、エリカと違ってブランシュの黒幕の情報まで探ろうとは…警察官の才能有ると思うよ?卒業後俺の部下として働かないか?」

 

寿(とし)兄、会って早々スカウトはやめてよ…でも、久しぶり」

 

いきなり俺の事スカウトしてきたのは千葉寿和(としかず)

エリカと修兄の兄である。

千葉家の長男で多分次期当主。

今は警察省の警部として働いている。

修兄と違って彼女いないから親近感を持てる人だ。

ちょっと歳は離れているが仲はいい。

 

「では、改めましてお久しぶりでございます。丈一郎さん。以前はご迷惑をお掛けしました。何とか第一高校に入学出来ました。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので、再び挨拶させて頂きました。」

 

千葉の男共は俺の言った事に納得していたようだが、エリカは動揺してしまった。

 

(勝手に引っ越し?絶縁?何それ…)

 

続けて…

 

「つきましては、改めて千葉の道場に入門させて頂けないでしょうか?以前の私の段位の“皆伝”は返納し、見習いから始めさせて頂きます」

 

俺の話を聞いて丈一郎さんはこう言ってくれた。

 

「悠仁、お前は既に“皆伝”の段位だ。お前の事は除名もした事は無い。入門も何も関係ないんだ。だから段位もそのままだ。お前は昔の様にまたこの道場に来てくれればそれでいい。」

 

丈一郎さんの言葉を聞いて少し泣きそうになった。

続けて寿兄、修兄が…

 

「色々辛かったんだろうが…昔の様に来てくれればいい。お前が居なくなってエリカがたいぶ荒れたからな…」

 

「ちょっと!!」

 

「まぁ、エリカ…ちょっと落ち着いて。僕も兄さんと同じ気持ちだよ。」

 

さらに二人の言葉にもう涙腺が崩壊寸前なんだが一つ千葉の男共に言いたい事がある…

 

「ありがとうございます…でも“皆伝”は要らないです。見習いから始めます」

 

「「「何で?」」」

 

「何でって…俺は()()()()()()()()()使()()()()んですけど…」

 

「は!?」」

 

俺の発言にエリカは動揺していた。

まぁ、そうだよな〜

千葉の剣術が使えないのに千葉流剣術の“皆伝”なんて普通おかしいよなー

俺は素直にそう思っている。

 

すると丈一郎さんが…

 

「大丈夫だ。問題ない!」

 

「問題ないって…」

 

「それに悠仁は()()があるじゃないか」

 

「『あれ』って俺が編み出した剣術ですか?あれ、まだ完成してないんですけど…」

 

「お前のあの剣術は既に千葉の秘剣並みだぞ?」

 

そんな事、丈一郎さんと話していると我慢の限界だと言わんばかりにエリカが叫び出した。

 

「あーもう!意味分かんない!悠仁、ちょっとこっちに来て説明しなさい!」

 

「ちょっと待って!エリカ」

 

エリカは俺の手をいきなり掴むとそのまま道場から連れ出した。

 


 

俺は今、エリカの部屋で正座している…

もちろん床にだ…

俺の目の前にはエリカが膝を組んで椅子に座っている。

何かとても不機嫌そうだ…

エリカが話を切り出した。

 

「さて、悠仁?いい加減教えてくれない?あんたが居なくなった理由を…」

 

「分かった…教えるからまず正座やめてもいい?後、長くなるし、色々と思うところあるかもだけど一旦最後まで話を聞いてくれると嬉しい」

 

「いいわよ。話しなさい」

 

俺は楽な姿勢になった後、一度深呼吸をする。

そして、俺は話を切り出す。

 

「俺が千葉家の道場に行かなくなった理由の前にまず、俺の家族についてから話をするぞ…」

 

そうして俺は俺の過去を語り始めた。

 





皆様!
アンケートのご回答ありがとうございます♪
いや〜まさか深雪が1位をずっと死守するとは…
この結果をどう受け止めますか?悠仁くん?

悠仁「いや…あのブラコン娘が他の男に靡かないだろ…ついでにシスコン兄貴もいるんだ…ギャルゲー的にほぼ攻略は無理だろ…」

なるほど〜不可能な程燃えるタイプなのですね!
分かりました!
次回!『深雪を賭けた決闘!悠仁死す…』(嘘)

悠仁「絶対やめろ!」

次回、『悠仁の過去』です。(本当)
お楽しみに〜

また、今度は九校戦についてアンケートするつもりです。
ご回答の程よろしくお願いします。


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悠仁の過去


お疲れ様です!
悠仁くんの過去回です。
本当は追憶編みたくしたかったんですけど、ちょっと難しいかったです…
細かい所は気にせず読んでもらえると嬉しいです!

ではどうぞ!!


 

「俺の生まれた家は普通の一般家庭なんだ…」

 

「一般家庭?」

 

「そう、一般家庭。俺の家の親戚や血筋に一人も魔法師の才能は無かった中で俺だけが魔法師の才能を持って産まれたんだけど…」

 

「けど?」

 

「俺の家は“魔法”というものを憎んでたんだ。所謂、“人間主義”ってやつだ」

 

“人間主義”って言うのは『人間は人間に許された力だけで生きよう』と主張している反魔法主義団体の人達の総称だ。

まぁ、ブランシュみたいな人達の事だ。

 

「何でそんなに魔法の事を憎んでいたの?」

 

「俺もよくは知らないけど、俺の祖父母の代や親戚達は昔は警察官とかだったんだけど魔法の適正が無いせいで閑職に追いやられたらしい。その恨みがずっと続いているらしい」

 

魔法という物が世の中に広まってからは、警察官や軍などは魔法師である事が絶対になった。

魔法師が増えるにつれ、魔法師ではない警察官や軍は辞職を進められるか閑職に追いやって、安い給料で事務作業をやらせたかの二択だったらしい…

実際この国の対応のせいで反魔法団体が未だに騒いでいる。

 

まぁ、魔法師の才能がある事が珍しいらしいから、魔法師の才能に家族全員が嫉妬していたかも知れないけど…

 

そんな事を思いつつ、話を続ける。

 

「そんな魔法を嫌っている人達の前で、俺はある一件で魔法師としての才能がある事がばれてしまったんだ」

 

「何があったの?」

 

俺はエリカの疑問を聞くと目に魔力を集中させる。

すると俺の目の瞳が不思議な色合いに帯びていく。

エリカが俺の目のを見て息を呑む。

 

「ある親戚の集まりで霊子放射光過敏症が突然発症したんだ。今はある程度制御できる様になったけど、小学生くらいの頃まではこれが制御出来ずにずっと目が今みたいになった。それのせいで親達にバレた。それからは俺が第一高校に入学するまではずっと大変な目に遭った。」

 

「どんな目に遭ったの?」

 

エリカが聞いてきた。

俺は一回深呼吸した後、エリカの質問に答えた。

 

「『もうお前の面倒なんか見たくない。義務教育までの金は出してやるし、月に1万の生活費を中学卒業までは出してやるから私達に関わるな』って言われた。実際その後からは飯も作ってくれないし、服とかも買ってくれない…家は流石に泊まれたけど、それ以外は全部自分一人でやらないといけなくなった」

 

もう完全な育児放棄である。

他にも色々言った。

 

あの人達に遭ってしまったらその都度、殴られてしまっていた事。

反撃したら一ヶ月分の生活費を無しにされて、地獄だった事。

親以外でも目の色のせいで学校とかでイジメられていた事。

それで不登校で家に引きこもっていたら、生活費が五千円にされていた事。

親戚の集まりに無理矢理連れられて、親戚全員のサンドバックになっていた事。

etc…

 

全部話した。

俺でも前世の記憶が無かったら、精神病になるレベルである。

俺、よく死んでいなかったな…

 

俺の親の処遇にエリカも絶句している。

するとエリカが…

 

「何で…何でそんな事出来るのよ!実の息子に!!たかが魔法の才能が有っただけで!」

 

「その“たかが魔法の才能”があの人達にとっては許せなかったんじゃないか?」

 

「悠仁!何でアンタはそんな平然としていられるのよ!」

 

「もう、終わった事だからな。“何で?”とか“どうして”とかもうどうでもいい。あの人達の事考えたくないからな」

 

逆上しているエリカに俺はそう答えた。

そして、エリカにある質問をした。

 

「さて、エリカ。そんな魔法を憎んでいる人達の息子である俺が千葉家の道場に内緒で通っていた。もしそれがあの人達にバレてしまったら?」

 

「まさか…」

 

「そのまさかだよ」

 

「アンタが道場に来なくなった理由って…」

 

「そう。流石に生活費を人質に取られたら辞めざるを得なかった。しかも俺が道場にいた時、突然あの人達が親戚全員を連れて道場に乗り込んで来たからな…あの人達を無視して道場に通い続けたら千葉家に迷惑もかけそうで嫌だったから道場に通うのを辞めた」

 

「悠仁…」

 

「そんな深刻そうな顔するなよ…まぁ、第一高校に入学する金も無かったからそれを貯める為にも辞めた所もあるけどね」

 

エリカが質問してきた。

 

「何で道場に通っている事がバレたの?」

 

「俺の家に千葉家から何か物が送られたらしいね。俺はその物を見れなかったから何か分からないけど、あの人達がそれを受けとったからバレた」

「……それってわたし達のせい?」

 

「……ノーコメントで…」

 

ぶっちゃけ千葉家のせいである…

丈一郎さんには入門する時に家庭の事情を話していたから知っているはずなのに…

 

「「……」」

 

場の空気が悪くなった。

エリカが場の空気を変える為、別の質問をしてきた。

 

「そういえば、どうやって第一高校に入学したの?今の話だとお金どころか入学も認められなさそうなのに…」

 

「入学はあの人達にバレない様に全部勝手にやったよ。親の署名とかは全部俺が偽装してやった」

 

「偽装って…」

 

「エリカ…バレなきゃセーフだ!」

 

「アウトよ。まぁいいわ、それでお金は?中学生ならバイトもできないでしょ?」

 

「ひ・み・つ!」

 

俺はエリカに頭を殴られた…

 

「殴るよ!」

 

「殴ってんじゃねぇか…ちょっとしたお茶目だろ?」

 

「もう一発殴られたくなければ言いなさい」

 

「宝くじ」

 

「は?」

 

「だから宝くじだよ。俺は賭博の神様のご加護があるからな。お金と賭け事に関係する運はめっちゃいいんだよね〜」

 

「冗談でしょ…」

 

「ところがどっこい!全部本当だ。エリカも賭博の神様の神像いる?実物の1/3スケールで素材にこだわって木造の手作り、俺の自信作だ。ご利益あるよ!」

 

そう言って俺は自分の懐から神様の神像をエリカに見せた。

 

「悠仁…」

 

…何かエリカに引かれた。

エリカからすると過酷な環境に耐えきれず、神様という偶像に縋る哀れな人に見えているらしい。

 

(今の悠仁は幸運の壺を簡単に買わせられるぐらいやばい状態ね…)

エリカは悠仁の様子を見てそう思った。

 

「エリカ、可哀想な子を見るような目で見ないでくれるか?全部本当なんだ!!」

 

「悠仁…辛かったんだね…嘘つかなくていいんだよ」

 

お金の件は誠心誠意説明したせいか何とか信じてもらったが、神様の事は一切信じてもらえなかった。

本当の事なのに…

 


 

「ーーまぁ、これが俺が道場を辞めていた理由かな?丈一郎さん達は勿論この事は知っているし、陰で色々手伝ってもらっていたよ」

 

飯くれたり、第一高校の入学に必要な事教えてもらったりとか。

その他にも色々…

 

「悠仁…最後に一個聞いてもいい?」

 

「何?」

 

「魔法の才能の所為で今まで過酷な目に遭ってしまったのにどうして魔法師の道を進もうと思ったの?」

 

「一つは独学で何とかなっているこの目をちゃんと制御出来るようにする為。後は、まぁ…エリカとかに会えるかもと思ったし…」

 

「はぁ!?何言ってるの!冗談はやめてよ…」

 

「冗談じゃないよ。確かに()()()()()()()()で普通の家族の生活は出来なかったけど、()()()()()()()()()でエリカ達に会えたんだ。この世に生まれて初めてのできた友達に会いたいって思うのは不思議なことか?」

 

「た…確かに不思議ではないかとは思うけど…」

 

何かエリカの様子がおかしいが俺はそのまま話を続ける。

 

「俺は正直“魔法師の道”とかはどうでもいいんだ。友達がより出来そうなのがこの高校だったから俺は入学したんだ。今まで出来なかった学生らしい生活、青春時代を過ごしてみたい!」

 

「…そう」

 

エリカの様子を見る限り、取り敢えず納得はしてくれたっぽいな…

重くなり過ぎず、長くなり過ぎず、何とか話せて良かった。うん…

 

俺は話を切り上げて、エリカにある提案をする。

 

「エリカ気分転換に手合わせしないか?昔みたいに…」

 

「…いいわよ!アンタの剣の腕、見てあげる!」

 

「一応、俺、“皆伝”なんだけどな〜」

 

俺とエリカは雑談しながら道場に向かった。

 

 


 

《達也サイド》

 

一方その頃…

達也はある人とテレビ通話をしていた。

 

「ーーでは“黒岩悠仁”の調査をお願いできますでしょうか?」

 

「あぁ、分かった。特尉の報告通りなら“黒岩悠仁”は一般生徒ではない。何かしらの部隊などに秘密裏に所属しているだろう…特尉も気をつける事だ。では失礼する」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

テレビ通話が終わる…

すると席を外していた深雪が達也の所に戻っていった。

 

「お兄様、今のお電話は風間少佐でしょうか?」

 

「あぁ、そうだ。悠仁の事について調べてもらう」

 

「…その事なんですが……叔母上が『“黒岩悠仁”について知っている事はありませんか?』と…」

 

「!!!」

 

達也は深雪の言葉に驚いたが、すぐに冷静になり考えをまとめようとする。

 

(四葉の情報網でも悠仁の情報はまともには無いのか…だが、四葉でも情報を集めているのならば、悠仁は四葉の関係者ではない?ならやはり、悠仁は千葉家の部隊に所属しているんだろうか…それとも、)

 

「あの…お兄様?」

 

「何?深雪」

 

「お兄様は悠仁さんの事どう思っているのでしょうか?」

 

達也が考えをまとめている最中に深雪から質問がきたので答える。

 

「あいつの実力や秘密裏に何かしらの部隊を所属しているかも知れないことを一旦抜きにして何だが…」

 

(そういえば俺は悠仁の事どう思っているんだ?)

 

達也が話の途中に首を傾げて考え込んでしまった。

悠仁の事をそこまで深く考えた事がないからだ…

 

「お兄様?」

 

「あぁ、すまない。多分なんだが、あいつは俺にとって初めて“友達”と言える存在かも知れないな…多少、ムカつく事もあるが基本的に悠仁の性格は好ましいとは思っている。」

 

「!!」

 

「出来れば、あいつとは敵対したくない」

 

深雪はすごく驚いた。

達也はとある魔法実験の後遺症で深雪に関係する以外の感情が希薄になってしまっている。

今までなら『深雪以外はどうでもいい』と言っていた達也が悠仁とは敵対したくないまで言っている。

 

(悠仁さんならもしするとお兄様を!)

 

深雪は悠仁に微かな希望を抱いた。

悠仁ならば達也の感情を取り戻す事ができるかも知れないと…

 

(悠仁さんは何としてでもこちら側に引き込みます!)

 

深雪は覚悟を決めた。

 


 

悠仁の存在はこのブランシュの一件で四葉家や十文字家、軍や警察関係者に知れ渡ってしまった。

ブランシュでの一件で悠仁が監視対象にされてしまったことを悠仁はまだ知らない。

 





次回から九校戦編に入りたいと思います。
悠仁くんの競技どうしよう……

まだアンケートは続けますので回答を頂くと嬉しいです。
これからもこの作品をよろしくお願いします!!!


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九校戦編〜俺の実力が全国に知れ渡る!〜
九校戦編Ⅰ



皆様お疲れ様です!

九校戦編開始しました!!!
最初なので気合い入れたら、なんかいつもよりちょっと長文になりましたけど見ていただけると嬉しいです。




 

拝啓 女神様

お久しぶりでございます。

春が終わりそろそろ夏の季節になりました♪

私は元気です。

しかし、私事ですが、一つ悩みができました。

少し前から帰宅中や家で過ごしている時によく視線を感じます。

これが所謂、ストーカというものなのでしょうか?

次回お手紙を書くまでにはこの問題を解決し、気分が晴れやかな状態で手紙を書きたいと思います。

これからも私の事を見守って下さい。

 

黒岩悠仁

 


 

俺は女神様の神像に手紙とお供え物を置いていつものお祈りをした。

すると手紙とお供え物は目の前から消えてしまった。

おそらく女神様の所に行ったのであろう。

普通はありえない光景なのだが、俺にとってはもう慣れた光景である。

俺は女神様のお祈りが終わるといつもの日課を行う為、外に出る。

そうして今日も一日が始まる。

 


 

九校戦…

皆は知っているのだろうか。

簡単に言えば、九つある魔法科高校の生徒達が己の学校の名誉の為に競う体育祭みたいなものである。

この大会で活躍出来れば魔法師の将来は約束されるとも言われる程、重要な大会だ。

 

「ーー誰に何の説明をしてるの悠仁くん?」

 

「おっと、つい心の中の声が外に漏れていたか…失敬、鋼くん」

 

「別にいいけど…」

 

俺は今、マジック・アーツ部の部室に来ている。

何故かって?

部活動をする為だ…

この部活に入部する為に紆余曲折があったが何とか入部を認めてもらえたのだ。

今は体を動かす前に準備体操をしている。

 

一緒にいるのは十三束鋼(とみつかはがね)くん。

同じ一年生で一科生(ブルーム)である。

体質的な問題で遠距離魔法を使えないが、近接魔法戦闘では無類の強さを発揮する生徒だ。

Range Zero(レンジ・ゼロ)』の異名で魔法師界に知れ渡っている。

 

「そういえば、この前の期末テスト、手応えあった?」

 

俺は鋼くんに問いかける。

 

「そこそこ出来た自信があるよ。悠仁くんは?」

 

「魔法理論は8割ぐらいは出来たよ。実技は…加重系統と収束系統の魔法以外はボロボロ…」

 

「アハハ…」

 

俺の結果を聞いて鋼くんは苦笑いをしていた。

 

「悠仁、鋼、ここにいたのか。そろそろ部活始まるぞ?」

 

ちょうどいいタイミングで二年の先輩である沢木 碧(さわき みどり)先輩が声をかけてくれた。

先輩は風紀委員でもお世話になっているし、この部活に入部するきっかけをくれた人でもある。

ちなみに“碧先輩”って呼ぶと滅茶苦茶キレるから間違っても名前で呼んではいけない…

 

「分かりました。行こう!悠仁くん。今日こそは一本とらせてもらうよ」

 

「鋼くん、世の中はそんな甘くないんだよ…俺から一本とるなんて半年早い!!」

 

「妙に具体的な数字なんだな…」

 

俺と鋼くんのやりとりに沢木先輩が呆れながらツッコミをする。

そんなこんなで今日も一日が過ぎて行った。

 


 

数日後…

期末テストの結果が発表された。

魔法科高校の期末テストは魔法理論の記述テストと魔法の実技テストにより行われる。

魔法理論は、必修である“基礎魔法学”と“魔法工学”、選択科目の”魔法幾何学“・”魔法言語学“・”魔法薬学“・”魔法構造学“の内から二科目、”魔法史学“・”魔法系統学“の内から一科目の合計五科目の点数で順位が決められる。

魔法実技は”処理能力“(魔法式の構築速度)を見るもの、“キャパシティ”(魔法式の規模の大きさ・魔法発動範囲)を見るもの、“干渉力”(事象に付随する情報体(エイドス)を書き換える強さ)を見るもの、この三つを合わせて総合的な魔法力(使うことができる魔法の種類)を見るものの四種類。

成績優秀者は、学内ネットで公表される。

結果はこうだ。

 

総合

一位 一年A組 司波 深雪

二位 一年A組 光井 ほのか

三位 一年A組 北山 雫

四位 一年B組 十三束 鋼

 

である。

この結果に教師達は困っていた。

クラス分けは入試の結果を見て能力が均等になるようA〜Dまで組を振り分けたのにA組の独走状態である。

これはA組と他の組とで明確な格差が出ている証拠だ。

四位にようやくB組の十三束鋼の名前が出て来ている。

ただ、それ以上に問題になっているのは魔法理論の方である。

 

魔法理論

一位 一年E組 司波 達也

二位 一年A組 司波 深雪

同率 一年E組 黒岩 悠仁

四位 一年E組 吉田 幹比古

 

である。

一科生と二科生の区分けには実技の成績が大きな比重を占めているが、普通は実技ができなければ理論も十分に理解できない。

感覚的に分からなければ、理解が難しい概念も存在するからだ。

それなのに、トップの所に二科生が三人もいるのだ。

この結果のせいで悠仁は生徒指導室に呼び出されるハメになった。

 


 

「失礼しました」

 

学校からの呼び出し(尋問)を終えた俺は生徒指導室から外に出た。

ようやく解放されると先に呼び出し(尋問)をされていた達也や俺を心配したクラスメイトのエリカ、レオ、美月がいた。

だが、達也が尋問されていたのに深雪がこの場にいなかった。

聞けば、生徒会の用事でこの場に来れなかったらしい…

代わりというわけではないが、ほのかや雫がこの場に来ていた。

俺の顔を見るとエリカが声をかける。

 

「だいぶ不機嫌そうね…達也くんからも聞いたけど、期末テストの件でしょ?何て言われたの?」

 

話の大筋は達也から聞いているらしい…

俺は一度、ため息を吐いてからエリカの質問に答える。

 

「ハァー、理論の点についてカンニングを疑われたのと実技で手抜きしていたんじゃないかと疑われた…」

 

「達也くん以上に酷い内容ね…」

 

「逆に達也はどんな内容だったんだ?」

 

俺の方が尋問内容が酷かったらしい…

何故だ?

内容が気になったので達也に聞いた。

 

「俺は実技だけだ…」

 

「そういう事ね…」

 

「そういう事ってどういう事?」

 

俺は達也の言葉に納得していたが、俺以外はそうでもないらしい…

雫が俺にどういう事か訊ねてきた。

 

「俺は、入試は理論の方は上位20名の中には入っていたけど、今回の点数までは無かったらしい…急にテストの点数が上がったから理論の方はカンニングしたんじゃないかと疑われた」

 

「そうなんだ…深雪と一緒で二位だもんね。でもどうやってそんな点数まで取れるようになったの?」

 

「そうだなぁ…俺も気になるぜ。言っちゃあ悪いが、悠仁は俺と同じで勉強は苦手だと思っていたぞ?」

 

雫の質問にレオも便乗した。

純粋に俺の勉強方法が気になるらしい。

 

「『どうやって』って言われても教科書を見て覚えただけだが…入試前のほぼ独学状態と違って、教科書の内容をきっちりと頭の中に叩き込んだからなぁ…」

 

「それって先生達に信用してもらえたんですか?」

 

俺の質問の回答に美月がそう聞いてきた。

 

「いや、全然認めてくれなかったよ?だからこんな長くなっちゃったし…証拠不十分だから釈放されたようなもんだよ」

 

皆、俺の事を疑ってはいないかとは思うが、俺がテストの点を上げた秘訣を聞きたいらしい…

俺はみんなにある特技を見せる。

 

「誰か本とかあるか?」

 

「あるけど…」

 

「借りてもいい?後、中身も見るけど…」

 

「ん…いいよ」

 

雫が本を持っていたのでそれを借りる。

皆が困惑する中、俺は本の中身をパラパラと見た。

内容は推理小説のようだ…

 

雫に本を返すと…

 

「雫。適当なページを言ってみて。一言一句間違えずに答えるから」

 

「じゃあ、84ページの最初から…」

 

「OK!◯◯◯◯…」

 

俺はそのページの内容を本を見ずに一言一句間違えずに答えた。

俺のこの特技にみんな、驚いている。

同じような事を二、三回繰り返すと俺は皆に説明する。

 

「こんな感じで教科書の内容を全て覚えた」

 

「それって“瞬間記憶能力”っていうものですか?」

 

「そうだよ」

 

美月が聞いてきたのでそう答える。

俺はレオに少し皮肉めいた感じで話す。

 

「レオ、残念だったな…俺が勉強が苦手じゃなくて〜」

 

「いや…馬鹿にしたわけじゃないぜ?ただ…イメージがなぁ…」

 

その言葉に俺以外の全員が頷く…

 

「ちょっと待て!…え?みんな、俺って頭悪いイメージだったの?嘘だろ?」

 

俺の言葉に達也が反応した。

 

「そうだな…普段の言動からして悠仁が頭脳明晰なイメージはない!」

 

「嘘だろ?」

 

「自業自得よ…」

 

エリカがそう返した。

一応、みんなには身の潔白を証明できた。

ついでにみんなが俺の事どう思っていたかが確認できた。

 

ちなみになんだが、実技の方の尋問の時、教師に…

 

「実技テストで手を抜くメリットって何なんですか?そんな事聞くなんて馬鹿なんですか?」

 

と言ってしまい、一科生、二科生の差別意識が高い教師と一悶着あった事は言わないでおこう…

 

その後は、九校戦の話になった。

雫の九校戦オタクみたいな一面が見れて面白かった。

俺は九校戦で出場するであろう雫、ほのかを応援する。

 

「雫、ほのか。頑張れ!必ず現地まで行って応援するよ!!」

 

「ん…任せて!」

 

「が、頑張ります…」

 

俺の言葉に雫は嬉しそうに、ほのかは照れたような感じでそう答えた。

 


 

学校が終わった後、俺は一度家に帰り制服から私服に着替えると八雲さんの所に向かった。

九重寺に着く前に遥さんに会った。

話をすると遥さんも八雲さんに用事があったようなので一緒に九重寺まで向かった。

そういえば、遥さんについて説明していなかったので軽く説明しよう!

 

小野遥(おのはるか)…第一高校のカウンセラーである先生である。

八雲さんとの関係は八雲さんに教えを受けている弟子みたいな関係だ。

その他にも秘密があるが…まぁ後で話すとしよう。

 

そんなこんなで寺に到着したが先約がいるようだ。

俺は魔力探知を行うと俺の知っている魔力の持ち主の反応が合った。

達也と深雪である。

俺は遥さんにある提案をする。

 

「遥さん、中に達也と深雪がいるようです。魔法で隠れて近づいて、あいつらを驚かしてやりましょう!!」

 

「いいわね!あの二人に見つかったらジュース一本奢りね!」

 

「分かりました!」

 

そういうと遥さんは魔法を発動する。

すると遥さんは目の前から消えた。

いや…目に魔力を通すと遥さんの姿は普通に見えるから()()()()()()()()()()()状態を作り出し、姿を隠したのだろう。

俺も負けていられない。

 

まずは、自分の気配を極限まで薄くする。

自分を無にするイメージだ。

次に“隠密魔法”を発動する。

この魔法は自身に無意識に出ている魔力を意識的に体の中に押し込め、周りに漂っている魔力を自身の体に纏う。

そうする事で限りなく周りの風景に同化することができる魔法だ。

以前、八雲さんと手合わせしている時に使ってきた“纏衣の逃げ水”という幻術を参考にしている。

周りの情報体(魔力)に限りなく偽装しているから恐らく達也の眼も誤魔化せるはず!

俺は達也達の所に忍び足で近づいて行った。

 


 

「誰だ!」

 

突如、達也が警戒心MAXで声を出した。

少なからず殺気も感じる…

だが、俺の事はバレていないらしい…

だって俺の方向いていないんだもん。

 

すると隠れていた遥さんが急に現れた。

よし!遥さん脱落!!

俺は遥さんと達也達が話している間もこっそりと近づく。

すると八雲さんの声がはっきりと聞こえてきた。

 

「達也くんは()()()気づいたわけじゃないよ。僕たちとは、少し違う『眼』をもっているからね、彼は。彼の眼を誤魔化したいなら気配を消すんじゃなくて、気配を偽らなきゃ。遥くん」

 

「なるほど……勉強になりました」

 

「達也くんも少しその眼に頼りすぎだよ。もう少し直感や気配察知を磨かないとダメだね」

 

「師匠…どういう事でしょうか?」

 

八雲さんの突然の指摘に達也がどういう事かと聞き返す。

その答えは俺がするとしよう。

 

「つまりこういう事だよ達也……ですよね?八雲さん」

 

そう言うと俺は達也の隣で“隠密”の魔法を解除する。

急に現れた俺に達也はその場からすぐに離れる。

深雪を守る立ち位置に移動して俺を警戒する。

 

「待って!達也!俺だよ」

 

「…悠仁か、驚かせるな」

 

「ごめんごめん(笑)、それより八雲さん、いつ気づいたんですか?」

 

「少し前だよ。近づいてくるまで僕も気づけなかったよ……それよりも今の魔法…」

 

「前、八雲さんと手合わせした時に使われた幻術をベースに作ってみました!どうですかこの魔法!!中々高い完成度に仕上げる事ができたと思うんですけど」

 

…君は君で恐ろしいね…数回しか見せていないはずなんだけど。術としては良かったよ?ただ気配の断ち方は少し甘かったかな」

 

「そっか…まだ甘かったかー」

 

俺と八雲さんが話し終わると達也が話しかけてきた。

 

「悠仁、今の魔法は…」

 

「ひ・み・つ♪」

 

「(イラッ!)……そうか、魔法の詮索はマナー違反だったな、すまない。それは置いておいて、何しに来たんだ?」 

 

「八雲さんに相談事。大した事じゃないけどね。達也は…深雪の付き添いかな?」

 

「そうだ。よく分かったな」

 

「深雪を見れば、なんとなくね〜多分だけど九校戦関連かな?八雲さんの所で練習になると……“ミラージ・バット”?」

 

深雪はいつも見ている制服姿ではなく、黒色のライダースーツを着ている。

達也は汗一つかいて無いくせに深雪の方はかなりの汗をかいていた為、俺はそう判断した。

 

「正解です。悠仁さん、よく分かりましたね?」

 

「それほどでも〜深雪なら確実に九校戦メンバーだろうし、八雲さんの所で練習ってなると一つしかないよ。それよりも九校戦頑張ってね!応援してるよ!」

 

「ありがとうございます、悠仁さん」

 

「それよりも深雪。九校戦メンバーって全員決まったの?」

 

「実はまだらしいです。二、三年生の競技メンバーは決まっているのですけど、一年生メンバーとエンジニアが決まってないらしいです…」

 

ちなみに深雪の言う“エンジニア”とは競技用CADに魔法式を書き込んだり選手の魔力(サイオン)パターンを計測し、その計測データを元にCADを使えるように調整する“チューニング”という作業をしたりするメンバーの事だ。

 

「へぇ〜そうなんだ。ななみん先輩達も大変だねー」

 

「…他人事ですね?」

 

「だって他人事だもん」

 

これが俺の素直な気持ちだ。

深雪と雑談していると八雲さんが俺達に話しかける。

 

「深雪くん、そろそろ休憩終わり。続きをやろうか…悠仁くんは今日は申し訳ないね…用事とやらはまた今度でもいいかな?」

 

「いいですよ、また今度で…このまま帰るのもアレだし深雪の練習、見学させてもらおうかな?」

 

「分かりました、ぜひご覧下さい!」

 

深雪がそう応えてくれたので俺は達也の横まで退避する。

最後に…

 

「遥さん。約束通りジュース1本買ってきてね!スポドリならなんでもいいです」

 

「ハイハイ、分かりました。約束だものね…」

 

遥さんはスポドリを買いに行った。

 

 


 

深雪の“ミラージ・バット”の練習は終わった。

魔力(サイオン)の制御に関してはCAD任せでちょっと残念だったが、魔法の展開速度や出力を見ると『流石、首席!』って感じだな。

俺は練習終わりの深雪に話しかける。

 

「深雪お疲れ様!ホイッ」

 

「わっ!?…悠仁さんありがとうございます」

 

「何投げたんだ?」

 

「さっき遥さんに買ってきてもらったスポドリ。達也もダメだよ、深雪の練習に付き合うなら用意しておかないと…」

 

「そうだな…スマンな悠仁」

 

「どういたしまして。それよりも達也、遥さんの事は聞いたの?」

 

「そういえば、まだだったな…誰かさんのせいで後回しになってしまった」

 

そんな事を言いながら達也は俺の方を見る。

…俺の事を遠回しに責めてきたので反撃しようと思う。

 

深雪に近づいてわざとらしく密談をする。

達也には一応聞こえるぐらい声でだが。

 

深雪、聞いたか。達也が深雪のせいだって言ってるぞ

 

この密談に深雪もノってくれた。

意外とノリがいいな、この娘…

 

悠仁さん!お兄様きっと怒ってますよね…どうすればいいでしょうか!

 

深雪、こう言えばいいんだ!『許して!お兄ちゃん♡』こう言えば達也はかなr…

 

「二人共いい加減にしろ!適当な事言わないでくれ…」

 

「「えー」」

 

「悠仁はともかく深雪までそんな事言わないでくれ…それはともかく師匠!小野先生の正体を教えて頂きたいのですが…」

 

達也が強引に話の流れを変えやがった。

でも、深雪は意外とノリがいい娘だと判明したのはデカい!

次は深雪と一緒にもっと達也をからかってやる!

俺はそう決意した。

 

「フム…遥クン構わないかな?」

 

「ダメだと言ってもどうせ話しちゃうんでしょう?」

 

「OKという事だね。本人の了承が取れたということで……遥クンは公安の捜査官だよ」

 

この八雲さんの言葉に誰も驚かなかった。

俺?俺は勿論知っていたよ。遥さんの“隠形”の訓練を手伝ったの俺だもん。

後、千葉家の情報網もあるし…

 

「んっ?あまり驚いてないね」

 

八雲さんは遥さんの正体に誰も驚いていなくて面白く無さそうだ…

 

「俺にも少しは自前の情報網がありますから…」

 

「情報網というと彼か。いいのかねぇ……彼の立場上一高校生に情報を漏らしたなんてバレたらただじゃ済まないだろうに…」

 

そんな事を八雲さんと達也で話していた。

達也は自分の正体を隠すつもりはないんだろうか?

俺がすぐそこにいるのにそんな情報をベラベラ話してしまって…

少し達也の事が心配になってしまった。

 

その後は達也と遥さんは協力関係となった。

様々な思惑を秘めて、二人は握手をかわしていた





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ありがとうございます♪

誤字脱字報告や評価(高評価)もありがとうございます♪
これからもよろしくお願いします!!


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九校戦編Ⅱ

今回も前回と同じく長くなってしまいました!
話を分けるべきだったか?
そんなこと思いつきながらも投稿しました。


 

「悠仁、止めろ!」

 

「アイアイサー!」 

 

そう言うと俺は相手のパスをカットする。

 

バシ!

 

俺はすぐに近くの味方にパスをしようとする前に相手が突っ込んできた!

俺はパスをすると見せかけダブルタッチで一人躱す。

 

「達也!」

 

俺はボールを()()()()()()()()()

そのボールは()()()()()()()()()()ゴール前の達也に繋がる。

達也は俺のパスをそのままボレーで打ち込み相手ゴールのネットを突き刺す。

達也のゴールに見学している女子から歓声が上がる。

そして…

 

ピッ、ピッ、ピッー!!10対0でE組の勝ち!!!

 

そうして俺達はF組との試合に勝ったのであった。

えっ?何やっているかだって?

俺達は今までレッグボールをやっていた。

 

レッグボールはフットサルの派生系だ。

コートの外側を透明な箱で囲んでプレーをする競技だ。

ボールは超軽量の反発ボールを使用、天井や側面部にはスプリング機能も備えており、まるでピンボールみたいにボールが跳ね返る為、観る競技としても人気のスポーツなのである。

 

俺のサッカー少年心をくすぐる面白いスポーツである。

ただ、ボールのせいでドリブルはしづらいし、フリーキックみたいなのがないのが残念だ…

フリーキックがあれば、俺の無回転フリーキックをお披露目できたのに〜

そこが本気で残念である。本当に!!

 

「イエーい、完全勝利!レオ!達也!」

 

パチ!

 

俺は二人にハイタッチをした。

 

「おう!お疲れ、悠仁!」

 

「そうだな…お疲れ、悠仁」

 

俺、達也、レオ、そして()()()()が大活躍したおかげで10対0という完全勝利をする事ができた。

俺達は勝利の立役者である()()()()と話がしたいと思い、少し離れた所で座っているもう一人の所へ足を運んだ。

 

「ナイスプレー」

 

達也が話しかける。

 

「そっちもね」

 

その言葉に()()()()がそう返した。

続いてレオが…

 

「やるじゃねえか、“吉田”。こう言っちゃ何だが、予想外だぜ」

 

「幹比古。苗字で呼ばれるのは好きじゃないんだ。僕の事は名前で呼んでくれ」

 

「おう!じゃあ俺の事は“レオ”って呼んでくれ」

 

吉田幹比古(よしだみきひこ)

期末テストの魔法理論で四位を勝ち取った男だ。

古式魔法名門、吉田家の直系である。

精霊魔法という系統外魔法を伝承する家らしく、古い家系だ。

まぁ、魔法事故みたいなものを起こしてしまって現在は二科生なのだが…

 

俺は実を言うと幹比古とは話をしてみたかった。

だって、二科生で魔法理論の成績が四位だよ!?

そりゃあ、話したくもなるでしょ?

しかし、入学してから三ヶ月、クラスメイトを含めた全ての人に壁を作って過ごしていた為、中々話しづらかった。

そんな幹比古が打ち解けた態度をとっている。

やはりスポーツはいい!!

スポーツは世界を平和にする!!!

 

みんな!サッカーやろうぜ!!

 

以上、黒岩悠仁、心の叫びである。

 

…何か、みんなが変な目で俺の事を見ている。

気になったので聞いてみた。

 

「どうかしたか?」

 

「いや、お前の事だからどうせ変な事考えているんだろうと思ってな…レオに続いて俺も幹比古と呼んでもいいか?俺と…ついでにコイツのことも名前で呼んでもらっても構わない」

 

「オーケー、達也、悠仁」

 

…達也さん?何か俺の扱いが雑ではありませんか?

そんな事を思ってちょっと問い詰めようとする前に幹比古が話を続ける。

 

「実を言うと僕は、君達とは話をしてみたいと思っていたんだ」

 

「「奇遇だな。実は俺もだ」」

 

何か達也と同時に同じ事を言ってしまった…

 

「…何となく、疎外感を感じるぜ」

 

幹比古の言う“君達”に自分が入っていないと思ってしまったレオがそう言った。

しかし、幹比古は…

 

「いや、気のせいだよレオ。君にも話をしたいと思っていたんだ。何と言っても、あの“エリカ”にあれだけ根気よく付き合える人は珍しいからね」

 

「……何か釈然としないぜ…」

 

レオは何か不服そうだ…

達也が幹比古に質問をする。

 

「幹比古はエリカと知り合いなのか?」

 

「そうね。いわゆる、幼馴染って奴?」

 

「エリカちゃん、何で疑問系なの?」

 

達也の質問はいきなり現れた当人によって答えられた。

いきなり話に乱入してきたエリカは美月の質問に答える。

 

「知り合ったのは十歳だからね。幼馴染と呼ぶには微妙じゃない?それにここ半年、何か避けられてたし…達也くんはどう思う?」

 

「幼馴染でいいんじゃないか?」

 

話に乱入した割に俺達の事は放置…

美月の質問には答え、達也には別の質問をする。

今日もエリカはマイペースである。

すると突然、幹比古が叫び出す。

 

「エリカ!なんて格好をしているんだ!!」

 

「伝統的な体操服だけど」

 

「どこが!」

 

エリカの格好は上は体操服で下はブルマである。

そう!今や幻となっているブルマである。

この世界のファッションは肌を見せない事が基本になっている。

ミニスカートやタンクトップ、透けているタイツとかも過去の産物となってしまっている。

実に嘆かわしい…

そんな時代の中で素晴らしい格好をしているエリカには賛辞を述べなければ!!

 

「エリカ、似合っているぞ!」

 

「そう?ありがとう。でも、あれね…結構締め付けられるから次回からはスパッツに戻すわ」

 

「そうした方がいいと思うよ!!エリカちゃん!!!」

 

美月がエリカの発言に強めに肯定する。

内心ずっとそう思っていたようだが、なかなか言えなかったらしい。

 

そうか、この光景をもう二度と拝めないのか……

俺は心のアルバムの中にこの光景を焼き付ける。

何か幹比古とエリカが言い争っているが関係ない。

俺はエリカの姿をずっと脳内保存していくのであった。

もちろん、エリカにはバレないようにだが…

 


 

昼休み

俺は生徒会室に呼ばれていた。

ななみん先輩から『お昼、一緒にどう?』だそうだ。

生徒会室に入ると既にななみん先輩、摩利さん、リンちゃん先輩、あーちゃん先輩、達也、深雪がいた。

達也が…

 

「今日はこっちに呼ばれたのか」

 

「うん」

 

達也達はほぼ毎日生徒会室で昼食らしいが、俺は時々、ななみん先輩や摩利さんに呼ばれてここで昼食をする。

もう慣れた様子で弁当箱を開けるとななみん先輩から声がかかる。

 

「悠仁くん、早速、卵焼きちょうだい〜」

 

「毎回、俺のおかずパクっていきますよね…」

 

「だって、おいしいだもん!私のと交換するから〜」

 

「分かりましたよ…」

 

俺は基本、昼食は学食ではなく弁当を作ってきている。

昨日の晩ご飯の残りを中心に詰め込めば、学食より安く済むからである。

一応言っておくが、学食のお金がない訳ではない。

だが、CADとかの魔法師用の道具は基本高額だ。

その為、節約できる所はできるだけ節約しているのだ。

 

最初はここにいる全員に驚かれた…

ななみん先輩曰く『どう見ても弁当作るキャラでは無いじゃない!』だそうだ…

今となっては慣れたものでおかず交換をする程である。

 

いつも通り昼食をしているといつもよりテンションが低いななみん先輩が嘆いていた。

何か九校戦のメンバー選出についてらしい…

 

「問題なのは一年生のメンバーとエンジニアよ…」

 

「まだ数が揃わないのか?」

 

摩利の問いかけに真由美は力無く頷く。

 

「実は一年生のメンバーにはアテがあってね…その子の名前出したら十文字くんも賛成してくれたんだけど…」

 

「なら、決まりじゃないのか?」

 

「前例がないからね…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ん?

何か聞き捨てならない事が聞こえたけど…

何かななみん先輩が獲物を見るような目で俺を見てくる。

俺の直感がこの場からすぐに逃げろと警鐘を鳴らす。

緊急離脱だ!

 

「九校戦のメンバー選出の話を無関係な俺が聞いてはダメですよね…今日はもうかえr…いてぇ!?

 

「どうかしたのか?」

 

達也は心配そうに声をかけているが足を踏んでいるのはコイツだ。

俺を逃すつもりはないようだ…

コイツ…内心楽しんでいるだろ!?

 

達也に構ってしまった結果、ななみん先輩が俺に残酷なお願いをする。

 

「それが悠仁くんにとって関係ない話ではないのよ…ねぇ悠仁くん?九校戦出てみない?」

 

「嫌です!」

 

「メンバーに選ばれるだけでも課題免除に加え、成績がA評価よ?」

「それでも出たくありません!」

 

「何で出てくれないの?」

 

「九校戦で二科生の生徒が抜擢なんて前代未聞ですよ!?それに他の選手が納得する訳ないじゃないですか!ただでさえ、風紀委員で悪目立ちしているのに…」

 

摩利さんが援護射撃してくる。

 

「前例は覆す為にあるんだよ?悠仁」

 

「俺はそんな事無いと思います!」

 

とっとと、諦めろ。悠仁

 

「達也?何か言ったか?」

 

「いや?俺や悠仁が既に“前例のない二科生の風紀委員”だろ?もう一つぐらい前例を覆せ…ククク…」

 

「コイツ…」

 

友人のピンチだと言うのに笑ってやがる…

コイツは後で絶対泣かす!

覚えてろ達也!!

 

ななみん先輩がさらにたたみかける。

 

「生徒会長である私と部活連会頭の十文字くん、そして風紀委員長の摩利も推薦しているのよ?」

 

「……摩利さんが推薦しているとは一言も聞かなかったですけど?」

 

「もちろん、風紀委員長として黒岩悠仁を九校戦のメンバーとして推薦するよ。いい加減諦めろ、悠仁」

 

「そうよ、悠仁くん。拒否権は無いと思いなさい。わたし達の推薦という事で強引にメンバーに捻じ込むわ。わたし達の顔に泥を塗りたくなければ結果で示しなさい!」

 

「それは…もう、脅しでしょ……」

 

「選手になってくれるわね♪」

 

「…………ハイ」

 

俺のその言葉にななみん先輩と摩利さんはハイタッチをしている…

深雪とリンちゃん先輩とあーちゃん先輩は気の毒そうに俺を見ている。

この人達、やっぱ優しいわ…

ちなみに達也の野郎はニヤニヤしながら「気の毒だな…」だ!

お前ふざけるなよ!

俺は達也の復讐方法を考える。

……コイツ、そういえばCADの調整ができたよな。

原作だと九校戦、エンジニアメンバーだったよな!?

……いい事思いついた。

 

俺は流れを変えるべく、ななみん先輩に質問する。

 

「で?エンジニアの方はどうするんですか?」

 

「どうしよう〜」

 

大喜びから一転、ななみん先輩はまた塞ぎ込んだ。

すると達也が席を外そうとする。

今度は戦線離脱し(にげ)ようとする達也の足を踏みつける。

 

「悠仁…痛いんだが?」

 

「さっきのお返しだ。それに何を慌てている?まだ昼休み終了まで時間はあるぞ?」

 

「次の実習の準備をしたいのだが?」

 

達也を引き止めているとあーちゃん先輩が期待していた言葉を発する。

 

「あの、だったら司波くんがいいんじゃないでしょうか?」

 

さすが!あーちゃん先輩!

その言葉を待っていた!!!

 

さらにあーちゃん先輩はたたみかける。

 

「司波さんのCADは司波くんが調整しているそうですよ。一度見せてもいましたが、一流メーカのクラフトマンに勝るとも劣らない仕上がりでした」

 

ななみん先輩が勢いよく身体を起こす。

 

「盲点だったわ…」

 

続いて摩利さんも…

 

「そういえば、委員会備品のCADの調整はコイツが調整していたのだったな…使っているのが、本人だけだから思い至らなかったが…」

 

ここで達也が無駄な抵抗を試みる。

 

「CADエンジニアの重要性は先日、委員長からお聞きしましたが、一年生がチームに加わるのは過去に例がないのでは」

 

先程とは打って変わって、都合の良い事をペラペラ喋りやがっている達也をななみん先輩、摩利さん、俺で追い詰める。

 

「何でも最初は初めてよ」

 

「前例は覆す為にあるんだ」

 

「『いや?俺や悠仁が既に“前例のない二科生の風紀委員”だろ?もう一つぐらい前例を覆せ…ククク…』何だろ?達也〜」

 

馬鹿一人を除いて、()()()()お二人はそうお考えかもしれませんが、他の選手は嫌がるんじゃないですか?一年生の、それも二科生、しかも俺は色々と悪目立ちしていますし…」

 

「俺も同じ立場だけど、選手になっちゃったぞ?(笑)」

 

馬鹿は黙ってろ……CADの調整は、魔法師(ユーザー)との信頼関係が重要です。CADが実際にどの程度の性能を発揮するかは、ユーザーのメンタルに左右されますからね。選手の反発を買うような人選はどうかと思いますが…」

 

もっともらしい事を言う達也。

でも内心は面倒臭いから嫌だ程度にしか考えてないだろう。

どうにか達也をエンジニアとして引きずり込みたい…

作戦を考えていると視線を感じる。

どうやら深雪のようだ…

 

(悠仁さん!お願いします!!!)

(任された!!)

 

一瞬のアイコンタクトで通じ合う。

深雪の許可も出た。

もう何も怖くない。

俺は作戦会議しているななみん先輩、摩利さんに声をかける。

 

「お二人共。達也の扱いがなっちゃいないですね。そんなお願いの仕方じゃあ、あいつは首を縦に振りませんよ…でも、ご安心ください。達也の親友である俺があいつを説得します」

 

「「できるの(か)!?」」

 

「お任せあれ」

 

達也はもの凄く嫌そうな目で俺を見ている。

俺はニコニコしながら達也に話しかける。

 

「達也…なんて目で俺を見るんだ?」

 

「…親友なら分かるだろう?さっさと諦めろ」

 

「俺はお前の為に言っているんだがな〜」

 

「どこがだ!!」

 

達也は取り付く島もない。

だから、まずは交渉の切り札を出す準備をするべく俺は先輩方に質問をする。

一瞬、深雪に目線を向けてから…

 

「先輩方、選手の調整の担当は()()でも受け持つ事はありえますか?」

 

いきなりの質問に全員が困惑する中、リンちゃん先輩が答える。

 

「今の現状だとそうなりますね」

 

「ありがとうございます、リンちゃん先輩。さて、達也?そう言う事らしいぞ?」

 

「…どう言う事だ?」

 

「……お前、本当に気づいていないのか?()()()調()()は誰がやるって話なんだが?」

 

「「「「「「!!!!」」」」」」

 

その言葉に全員が驚く。

さらにたたみかける。

深雪に視線を送り、合図する。

 

(深雪、今だ!!)

(ありがとうございます!!)

 

「あの…お兄様、わたしは九校戦でも、お兄様に調整していただきたいのですが……ダメでしょうか?」

 

これが達也専用切り札“深雪(愛しの妹)のお願い”だ。

この切り札に達也も困惑を隠しきれていない。

…もう一押しだな。

 

「残念ながら、達也は深雪の調整をしたくないようだ…仕方ない、先輩!これでもダメそうです。達也のエンジニアメンバーの加入は諦めてください。達也は深雪の事どうでもいいそうです。()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お兄様……」

 

深雪は悲しそうな目で達也を見つめる。

 

「待て、悠仁!」

 

「なんだい?達也(笑)」

 

「俺は…いえ、自分は第一高校の代表として“九校戦のエンジニアメンバーとして加入します」

 

「その言葉を待っていたよ、達也〜」

 

この達也のエンジニアメンバー加入の言葉に全員が喜ぶ。

 

「悠仁くん、ありがとう!」

 

「悠仁、よくやったな!」

 

「ありがとうございます!悠仁さん!!」

 

ななみん先輩、摩利さん、深雪の順番で俺に感謝している。

 

「これも先輩達の為ですから。決して二科生の九校戦メンバー(道連れ)が欲しかった訳ではありませんよ。なぁ、達也?」

 

「……ああ、そうだな」

 

こうして、九校戦メンバーが決まるのであった。

 




ついに幹比古くんが登場しました!
これで一年生ズが揃いました。
ここまで短かったような長かったような…
これからもこの作品をお願いします!!

後、アンケートの回答ありがとうございます♪
次回、悠仁くんの出場競技が決まります!


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九校戦編Ⅲ

 

 

「ーー考え直してください!!」

「ーー二科生なんか役に立ちません!!」

「会長達はどうして二科生なんかを……」

 

名前もよく分からない先輩達は俺と達也の事を睨みつけながら、ななみん先輩達に抗議している。

現在、俺と達也は“九校戦選定会議”に出席している。

議題の内容は“黒岩悠仁の選手加入について”と“司波達也のエンジニアメンバーの加入について”だ。

それで既にメンバーの内定を貰っている先輩方からありがたい批判の言葉を頂いている状態だ。

だが、先輩達も三大巨頭のななみん先輩、摩利さん、十文字先輩には表立って反対する事が出来ず、消極的かつただの感情論による反対のせいか、会議が長引いてしまっている。

 

早く帰って、夕飯の準備したいな〜

マジで、早く終わらないかな?

 

俺はそう思っていると十文字先輩が話をまとめる。

 

「要するに、お前達はそこの二人の実力が信用出来ないと言っていると理解した。ならこの場で実際に確かめてみるのが一番だろう」

 

そう言ってこの場を収める十文字先輩であった。

 


 

テストは先に達也の方からやるらしい。

達也の調整技術を見る為、俺達は実験棟にいる。

調整相手は桐原先輩だ。

 

俺は達也の調整を見る為、動き始めようとすると、ある先輩から声をかけられた。

 

「悠仁くん、久しぶりだね」

 

(けい)さん!お久しぶりです」

 

声をかけてきたのは五十里啓(いそりけい)先輩だ。

啓さんは一つ上の先輩で二年生の中で魔法理論の成績がトップの秀才だ。

九校戦でもエンジニアメンバーとして内定が決まっている人だ。

この人の家系である五十里家が千葉家と仲が良く、そのつながりで知り合った。

CADの基礎を教えてもらったり、CADの中古品を頂いたりと大変お世話になった先輩だ。

 

「本当にね!一年ぶりぐらいかしら?」

 

「あ!花音(かのん)さん、チース!!」

 

「……わたしには相変わらずよね、悠仁?」

 

「それほどでも〜」

 

「褒めてないわよ!」

 

「まあまあ、花音?それぐらいに…」

 

話に乱入してきた女子生徒は千代田花音(ちよだかのん)

五十里先輩の婚約者である。

 

久々の再会をしている内に達也のテストが始まろうとしていた。

テストの内容は桐原先輩の今使っているCADの設定をそのまま競技用のCADにコピーして即時、魔法を使える状態にする。

ただし魔法の起動式には手を加えないという内容である。

 

そのテスト内容を聞いて達也が…

 

「スペックの違うCADの設定をコピーするのはあまりオススメできないのですが……仕方ありません。安全第一でいきましょう」

 

そして、達也の調整作業が始まった。

俺は啓先輩に話しかける。

 

「ななみん先輩も無茶苦茶言いますよね〜啓さんはどう思います?」

 

「難しいね、僕にも出来なくはないけど……完璧に設定できる自信はないね…」

 

「啓でも難しいって……何がそんなに難しいの?」

 

この課題は実を言うと結構難しいのだ。

少し分かりやすくパソコンを例にして話すのだが、

ななみん先輩はWindows11対応CPU(桐原先輩のCAD)ソフト(設定)をコピー。

Windows10対応のCPU(競技用のCAD)ソフト(設定)を移植してアプリが動く(魔法発動可能)状態に設定しなさい。

ただし、アプリの設定は弄ってはいけない。

みたいな課題になる。

無論、自動変換である程度はWindows10用(競技用CAD)にはなるのだが、元々のスペックが違う為、不具合は残ってしまう。

その不具合を見つけ、Windows10用(競技用CAD)に修正をしなければならないのだ。

 

この課題で必要な能力はCADのソフトウェアにアクセスできる知識や技術。

魔法師の魔力(サイオン)用にCADを設定する為の技術。

調整時やCAD設定時の仕事の確実性や安全性が求められる。

 

こんな感じの話を花音さんに伝えた。

 

「へ〜」

 

…この人、絶対に理解していないな?

まぁ、いいけど…

しかし、ななみん先輩はこんな課題出すなんて鬼畜だよな〜

 

そんなこと思いつつも達也の調整は進んでいく。

桐原先輩の魔力(サイオン)の測定が終了すると達也はCADの設定を始める。

通常ならば競技用のCADをセットして、調整機による自動調整をした後、最後に微調整を行う流れなのだが…

達也はCADをセットしていない。

調整機のディスプレイをよく見ると無数の文字列が並ぶ。

数十秒後、達也は調整機に競技用のCADをセットし、猛然とキーボードを叩き始める。

達也のこの行動に俺は…

 

「完全マニュアル式の調整…アイツ、マジで凄いな……」

 

「そうだね。司波くんの今の行動に何人ぐらい理解できているのだろうね…」

 

啓先輩も俺の言葉に同意する。

達也は今、CAD設定を桐原先輩用に一から作っているのだ。

この方法ならば競技用CADのスペックをフルに使う事が可能だ。

ついでに自動調整で発生する不具合なども無くなる。

 

達也はエンジニアメンバー確定だな!

 

達也の技量を見て俺はそう思った。

 


 

桐原先輩が魔法を発動する。

達也の調整したCADは、桐原先輩愛用のCADと()()()()()()()作動した。

 

「桐原、感触はどうだ」

 

「問題ありませんね。自分の物と比べても、全く違和感ありません」

 

魔法はスムーズに発動する事が確認できた。

だが、達也の高度な調整に対して文句を言う人が現れる。

 

「……それなりに技術はあるようですが、当校の代表するレベルには見えません」

 

「仕上がり時間も、平凡なタイムだ。あまり良い手際とは思えない」

 

「やり方が変則的すぎるね。それなりに意味はあるのでしょうが…」

 

「わたしは司波くんのチーム入りに強く賛成します!!」

 

批判的な意見の中、達也のチーム入りに強く賛成したのはあーちゃん先輩だった。

あーちゃん先輩はそのまま意見を言う。

 

「司波くんが今、わたし達の目の前で見せてくれた技術は、高校生レベルでは考えられない程、高度な技術です。オートアジャストを使わずに全てマニュアルで調整するなんて、少なくてもわたしには真似できません!」

「……それは確かに高度な技術かもしれないけど、出来上がりが平凡だったらあまり意味がないんじゃあ…?」

 

「見掛けは平凡ですけど、中身は違います!あれだけ大きく安全マージンを取りながら、効率を低下させない事は凄い事なんです!!」

 

「中条さん、落ち着いて…不必要に大きな安全マージンを取るより、その分を効率アップに向ける方が適切だと僕は思うけど?」

 

「それは……きっと、いきなりだったから…」

 

あーちゃん先輩が狼狽えてしまった。

反論できる言葉がないのだろう…

するとはんぞー先輩が発言する。

 

「桐原個人が所有しているCADは、競技用の物よりハイスペックな機種です。スペックの違いにも拘らず、使用者に違いを感じさせなかった技術は高く評価されるべきだと思います」

 

はんぞー先輩が助け船を出している。

……意外だ。

 

「会長、私は司波のエンジニア入りを支持します」

 

「はんぞーくん?」

 

はんぞー先輩の言葉に意外そうな顔を隠しきれていないななみん先輩。

はんぞー先輩はそんな、ななみん先輩に構わず、堂々と発言する。

 

「九校戦は、当校の威信を掛けた大会です。肩書きに拘らず、能力的にベストなメンバーを選ぶべきです。エンジニアの仕事は選手が戦いやすいようにサポートする事です。桐原に『全く違和感がない』と言わせた技術は、中条の言う通り非常にレベルが高いものと判断せざるを得ない。候補者を挙げるのにも苦労するほどエンジニアが不足している現状では、一年生とか、前例がないとか、そんな事こだわっている場合ではありません」

 

所々、棘が垣間見えているが、はんぞー先輩の発言はこの場の雰囲気を変えるのには十分なインパクトとなった。

 

「服部の指摘はもっともなものだと俺も思う。司波は、我が校の代表メンバーに相応しい技量を示した。俺も、司波のチーム入りを支持する」

 

反対派が沈黙する中、十文字先輩のこの発言で大勢は決した。

達也はエンジニアメンバー入りを果たすのであった。

 





…悠仁くんの出場競技を発表するつもりでしたけど、長くなりそうなので次回にしました!

それとは別にもうすぐ、ホグワーツ・レガシーが発売!!
この世界とは違う魔法の世界のゲーム…今から楽しみです♪

悠仁「分かっていると思うが来週も話を投稿しろよ?」
作者「………善処する」
悠仁「おい!!」


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九校戦編Ⅳ


皆様、更新遅くなりました。
誠に申し訳ございません。
でもこれは全て、ホグワーツとウマ娘の所為なんです!
まだ、死の呪いは覚えてないし、シービーも出てないけども!!
予め言っておきますけど、来週はアブラ・カタブラする予定なんで更新は難しいかも…
ご了承下さいね!!


悠仁「あいつクズだな…」



 

達也のエンジニアメンバーの加入が決まった。

一件落着だな…

よし!帰r…

 

「次はお前の番だ。黒岩」

 

十文字先輩に声をかけられてしまった。

 

「えっ…もう帰りませんか?」

 

「悪いが、今日中にはメンバーを決めたいのでな。もう少しだけ付き合ってくれ」

 

「……まぁ、分かりました。それで?私の選出理由は何ですか?まだ聞いていなのですが…」

 

「それについてはわたしが出場してもらう予定の競技を含めて説明します」

 

俺の質問にななみん先輩が答える。

 

「悠仁くんには“クラウド・ボール”に出場してもらう予定です。この競技は1日あたりに行う試合数が一番多い競技です。魔法力も重要ですがそれと同じ様に体力等の身体能力が求められます。“クラウド・ボール”の適任者が一科生の一年生の中でいない為、自己加速術式を扱える悠仁くんを選出しました」

 

「あの〜、自分が“自己加速術式”ができるとは一言も言った事ないのですけど…」

 

「摩利やマーシャル・マジック・アーツ部の皆さんに教えて頂きました」

 

ハァー、やっぱりか。

最近、朝でも部活でも道場でも練習してたからな〜

もう少し自重しとけば良かった…

でもアレは、()()()()()()()()()()のだけど……

 

俺の選出理由に予想通りだが、否定的な意見が出てくる。

主にさっき達也のエンジニア加入に否定的だった人達だ。

 

ワーワー、うるせえな。この人達。

さっきも部活連の部屋でやったろ。

俺はさっさと帰って夕飯の買い物に行きたいんだよ!

 

メンバー加入に反対してる先輩達に意見した。

 

「あの、先輩達。さっきも部活連の部屋で同じことをやってたでしょ?俺は早く帰って夕飯の買い物に行きたいんです。だから、俺のメンバー加入にそんなに文句あるなら“クラウド・ボール”で決着をつけましょうよ。正直、()()()()()()なら余裕で勝てると思うので、まとめて相手しますよ?」

 

その俺の言葉で場の空気がピリつく。

そして……

 

「二科生のくせに調子乗るな!!」

「魔法も上手く使えないくせに!!」

「お前に身の程ってやつを思い知らせてやる!!」

 

あら〜、先輩達怒ってる(笑)

 

そんな先輩達を無視してななみん先輩に声をかける。

 

「会長。競技用のラケットとCADを貸してください。それと調整も今ここでやるんであの調整機を使いますね」

 

「それはいいけど…別に今日は悠仁くんのCAD使ってもいいんだけど……」

 

「先輩達負かした時にCADの性能のせいにされたくないんで…」

 

そう言い、俺はラケットと競技用のCADを借りて調整機の方に向かった。

後ろの方はギャーギャー五月蝿かったが無視した。

 

 


 

〜脳内再生〜

テレッテッテッテッテテレレッテッテッテッテテレッテッテテテテテテテッテッテ〜♪

(キ●ーピーちゃんが回ってます♪)

 

さて、始まりました!

黒岩悠仁の三分調整〜(パチパチ)

今回は“クラウド・ボール”で使用する術式を作っていきます〜

ななみん先輩の言っていた高速移動の術式と“テニヌと言ったらコレ!”と言うぐらい有名な技を再現した魔法術式を設定していきます。

ではご覧下さい♪

 

〜術式設定中です。しばらくお待ち下さい〜

 

完成しました!

術式の説明は後程、説明させて頂きます。

“黒岩悠仁の三分調整”のご清聴ありがとうございました!

この番組の後は“黒岩悠仁、先輩のプライドをフルボッコする”をお送りします。

チャンネルはそのままでお願いします。

(終)

 


 

悠仁が頭の中で三分クッキングならぬ、三分調整と変な寸劇をしながらCADを調整している様子を後ろから見ていた達也は困惑していた。

 

(起動式の情報が少ない。それにCADの設定らしい設定もほとんどしていない。これじゃあ魔法を発動出来ない…何しているんだ悠仁…)

 

達也が困惑するのも無理はない。

それほど、悠仁の調整方法が特殊だったからだ。

 

まず、悠仁はCADの設定を可能な限り消去し、CADの設定を終了した。

次に起動式の作成に入ったのだが、二つの魔法の起動式の作成を一から作ったのにもかかわらず、僅か二分で終わらした。

CADの設定消去に一分、起動式の作成に二分だ。

 

本来のCAD設定なら、想子(サイオン)自身のパターンを計測した後、その計測データを元に本人用にCADを設定しなければならない。

その設定をしなければ、CADから起動式の情報を術者に送ることが出来ないはずなのだ。

それなのに悠仁はCADの初期設定データを全部消してしまっている。

というか調整をしていない。

 

起動式の作成については、単純に情報量が足りない。

起動式とは魔法の設計図みたいな物だ。

起動式の情報量は通常、アルファベットで三万文字程度の情報量が詰め込まれている。

でも、悠仁の術式の情報量は一万文字にも満たない。

起動式を読み取る事ができる異能を持つ達也にしか、そのことは分からなかったが、それ故に()()()()では魔法を発動する事が絶対にできない。

 

(何を考えているんだ、悠仁…)

 

達也は悠仁の調整に疑問を抱いていた。

 


 

舞台はクラウド・ボール部の練習場。

そこのコートに俺と先輩Aが立っている。

 

「さて、ルールを説明します。一セット三分で先に三セット先取した人が勝ちと見なします。得点は相手コートにボールを落とした回数がポイントとなります。何か質問は?」

 

「ないです」

 

「特にありません」

 

「では、試合開始!!」

 

ななみん先輩の合図で試合が始まった。

 

まずは、魔法無しでどこまで出来るか確かめてみよう!

 

球が放出された。

先輩Aが球を打ち込む。

打ち込まれた瞬間、俺はボールがコートに落ちる場所に移動する。

そして、全身の力を使ってボールを打ち込み返す。

先輩Aは一歩も動けなかった。

俺が打ち込んだボールは先輩Aのコートに落ちた後、コートを覆っている壁に跳ね返りながら、再び俺のコートにボールが入ってきた。

そのボールを再び打ち返し、得点を重ねた。

 

〜二分後〜

 

流石に九個のボールを落とさずに返すには大変だ〜

けど、どこかのテニヌ界では、一流の選手は十個同時にボールを打ち込みながら、テニヌができるらしい…

なら、魔法を使わなくてもボール九個ぐらいは打ち込めるよね!

エラいけど…

 

因みにだが、テニスではない。

テニヌだ。

ここ重要な所だから間違えないように!!

 

そんな事思いながらもボールを打ち込んだ。

そして…

 

ピィーーーーー

 

三分過ぎたようだ。

結果は、120対0

俺の勝利でワンセット先取した。

休憩タイムになったので俺はベンチに向かった。

 


 

今のゲームを見ていた達也が…

 

「あいつ、魔法使っていない…凄まじい運動神経だな」

 

「お兄様、本当に悠仁さんは魔法を使っていないのですか?」

 

深雪が疑うのも無理は無い。

普通は魔法無しで九個の球を自陣コートに落とさずに打ち込む事は出来ない。

悠仁がおかしいのだ。

そして、一緒にいた雫とほのかが達也と深雪の話に参加する。

 

「でも最後の方、悠仁さんは疲れてたよね、雫?」

 

「うん、次からは流石に魔法を使うんじゃないかな…どう思う?深雪」

 

「多分使うと思うけど…どう思います?お兄様」

 

「どうせあいつのことだ『最初は魔法無しでどこまで出来るかやってみよう!』みたいな考えだったんだろう…最後ら辺はアイツ、エラそうだったからな…次からは魔法使ってくるんじゃ無いか?」

 

達也達はその後、悠仁の使う魔法が何か予想するのであった。

 


 

「では、第二セット開始!」

 

第二セットが始まった。

先輩Aは目の敵のように睨みつけてくる。

俺が魔法を使わずに第一セット先取しちゃったからだろう…

さて、次からは魔法を使おう!

 

「“グラビティ・コントロール”倍率0.9倍」

 

魔法を唱えた直後、魔法陣が足元から出現したが、直ぐに消えてしまった。

しかし、俺の体は羽が生えたかのように軽くなった。

 

加重系統魔法“グラビティ・コントロール”

名前がありきたりなのは許してくれ…

だって分かりやすいもん!

この魔法は名前の通り、重力を制御する魔法だ。

ただし、自分と自分が触れている物限定だが…

魔力操作次第で常時、重力の増減が可能な魔法になっている。

今はCADで、指定した倍率を魔力供給が続く限り一定になるように制御の演算補助をしてもらっている状態だ。

 

この魔法が一応、俺流の“自己加速術式“である。

いや、正式には“()()()自己加重制御術式”というべきか。

さっきよりも速く動ける上に、スタミナ消費も魔法無しの時よりは遥かに抑える事ができる。

自分自身を速くするのではなく、自身に掛かっている重力を軽減しているのだ。

そんな状態で二セット目の試合をしてしまったら結果は明白だ。

 

200対0

 

文字通り圧勝である。

さて、また休憩タイムだし休憩するか〜

俺はベンチに向かった。

 


 

悠仁のゲームの様子を見ていた真由美、摩利、克人が話し合っていた。

 

「あのバカ、最初から魔法を使って試合すれば良かったものを…」

 

「まぁまぁ、摩利。それより何で悠仁君は一セット目は魔法使わなかったのかしら?」

 

「どうせ『魔法無しで最初はやってみよう!』みたいな考えだったんだろう…それより十文字、どう思う?」

 

「予想以上だったな…三分間だけだが、安定して魔法を発動させ続けたように見える…想子(サイオン)(魔力)切れの様子もなさそうだ。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()が気になるが…」

 

「本当にね〜でも、まだ試合の途中だから、もう少し悠仁君の魔法を観察しましょう!」

 

先輩Aには悪いが、残りの一セットも悠仁が取る事を三人は確信していた。

 


 

さて、一応ななみん先輩達の期待には応える事ができたと思う。

けど、俺は期待を斜め上に満足させられる子。

次はここにいる人達を驚かせちゃうぞ!

もう一つの魔法を解禁しようと思う。

 

「三セット目開始!」

 

ななみん先輩の合図で試合が始まった。

 

「エリア設定完了。術式スタート」

 

ボールが自陣コートに落ちようとするが、先程とは打って変わり、コート中央から一歩も動かない。

誰もがボールが落ちると思ったその時、自陣コート全域に魔法陣が出現した。

その直後、ボールはコートに落ちず、俺の方にボールが吸い込まれるように動いていった。

そして、ボールは俺が打ちやすい所に留まった。

そのボールを全力で打ち込んでやった。

 

収束系統魔法“手塚ゾーン”

テニ●の王子様に出てくるアレだ…

『まだまだだね』が口癖の主人公が入っていたテニス部の部長の技だ。

これ以上の説明はいらないだろう。

この“手塚ゾーン”の他に“手塚ファントム”も再現出来るのだが、この競技では使えないのでお披露目は“手塚ゾーン”のみである。

 

この魔法はボールの数が増えても特に影響は無かった。

ボールが自陣コートに入る度に、魔法陣が展開され、俺の方にボールが吸い込まれるように集まっていく。

そして、そのボールを全力で相手コートに打ち込む。

 

結果は…

 

198対0

 

俺はコートから一歩も動かずに完勝した。

 

「まだまだだね!」

 

俺は呆然としている先輩Aにテニヌ界では有名な決め台詞を言ってからコートを立ち去った。

 


 

ななみん先輩達の所に戻ると試合を見ていた人達がまるで珍獣を見ているかのように俺を見てくる。

何となく居心地が悪いのでななみん先輩達に…

 

「会長達のご希望通り力を見せつけました。いい加減、帰りたいので俺は先に帰ります。俺をメンバーに入れるにせよ入れないにせよ会長達で決めてください。それでは失礼します」

 

そう言って、ななみん先輩達の返事を聞かずにこの場を立ち去る。

 

…特売の卵、まだ売っているかな?

ダメ元でも行ってみよう。

 

俺は急いで帰り支度を済ませ、スーパーへ向かうのだった。

 





皆様、アンケートありがとうございました。
悠仁くんの競技は“アイス・ピラーズ・ブレイク”で考えたかったですけど、一条の御曹司に勝てるビジョンが出ませんでした…
“アイス・ピラーズ・ブレイク”で投票していただいた方、ごめんなさい!

後、悠仁くんの魔法発動のプロセスはその内説明する予定です。
ガバガバな理論ですけど生温かい目で見てもらえればいいかと……

では、次回もよろしくお願いします。
とりあえず最初はウマ娘で課金してでもシービー出すところから頑張ります!


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九校戦編Ⅴ


絶賛、社畜してまーす。
作者でーす。
結局、アブラ・カタブラまで行かなかった…
来週は出張だし、一体いつになったらホグワーツレガシーできるんだー

以上、作者、心の叫びでした!
では、続きどうぞ!


 

翌日…

学校に着くと色々な人にジロジロ見られる。

理由は分からないが、まぁ…いいだろう。

そのまま教室に向かい、中に入ると普段喋りもしないクラスメイトに声をかけられた。

 

「黒岩、応援してるぞ!」

「黒岩くん、頑張ってね!!」

 

なんの事だ?

訳が分からないがとりあえず返事を返す。

そのまま席に荷物を置いた後、達也達の所に向かうとレオから声をかけられる。

 

「おっ!もう一人の主役の登場だ」

 

「何の事だ?」

 

「何って…お前、九校戦のメンバーに選ばれたんだろう?」

 

「そうなのか?」

 

「『そうなのか?』って、クラウド・ボール部の主将相手に完全試合をして選手の座をもぎ取ったってそこら中で噂になっているぞ?」

 

「というか、なんで悠仁がそれを知らないのよ?」

 

当然の事のように話に参加してきたエリカの質問に昨日の選手の選考の顛末を話した。

 

「「「「……」」」」

 

事情を知っている達也以外のレオ、エリカ、美月、幹比古は何故か絶句していた。

 

「どうした?」

 

俺の疑問に幹比古が答える。

 

「いや…だって、先輩方に喧嘩を売って、試合でボコボコにした後、卵の特売に間に合わないからって理由で結果も聞かずに先に帰ったって……」

 

「普通はありえないですよね…」

 

美月の一言に俺以外の全員が頷いた。

 

「そんな事言われてもな……正直、九校戦にそんな興味無かったしな……スーパーの特売の方が重要だろ?」

 

「絶対に違うと思うぞ?悠仁」

 

「そうか?でも、達也も言うてそんな興味ないだろ?深雪の()()()が無かったら出なかった訳だし…正直、九校戦よりもCAD弄っている方が達也にとっては重要だろ?」

 

「それは……まぁ、そうだな」

 

俺と達也の会話にエリカが入ってくる。

 

「二人共…今の会話、教室以外では話さないことね。一科の連中、か〜な〜り口惜しがってるみたいよ」

 

「了解、気をつける」

 

「俺はエンジニアなんだがな……」

 

達也の言い分は競技者(悠仁)はともかく、エンジニア(達也)はそこまで目くじら立てなくてもいいんじゃないか?

という事らしい。

しかし、それは選ばれた側の理屈。

選ばれ無かった者からすると嫌味に近い。

無論、達也にその気が無いにしてもだ。

 

「仕方ないですよね。嫉妬は理屈ではありませんから」

 

美月にズバリと指摘され、達也は一言も返せなかった。

 

「大丈夫よ。今度は石も魔法も飛んでこないから」

 

エリカの極端な気休めに俺と達也は苦笑いをしていた。

 


 

四限終了後、俺と達也は講堂の舞台裏に来ていた。

この後、九校戦発足式をするらしい。

深雪にジャケットを渡された。

 

「何これ?」

 

「競技者用のユニフォームです。制服の代わりに着てください。」

 

「分かった」

 

俺は渡されたユニフォームを着た。

 

「お似合いですよ、悠仁さん」

 

「ありがとう、深雪。そっちは着なくていいの?」

 

「わたしは司会・進行をしますのでそのままです」

 

「それは大変だね。頑張ってね!それはそうと、達也の所に行かない?今なら校章入り達也の姿が拝めるぞ?」

 

「もちろん行きます!!」

 

「達也の嫌がらせのたm…んんっ、記念の為に写真撮りたいんだが…」

 

「言い値で買います!!

 閲覧用、保存用、布教用で下さい!!」

 

あら?

このブラコン娘、金を払うつもりだぞ?

いい感じに狂ってんな〜

写真撮って、現像するだけでお金が貰えるなんて美味しすぎだろ!

 

俺の懐事情的にも都合が良かったので、深雪の話に乗っかる。

 

「深雪が協力してくれるなら、そこにツーショット写真も付けよう。現像する写真の大きさや値段等は後日、要相談って事で…」

 

「分かりました!」

 

商談は成立した。

その後、何とか達也のユニフォーム姿の写真を撮る事に成功した。

無論、ツーショット写真もだ。

ただ、深雪以外にもほのか、ななみん先輩も達也とのツーショット写真をご所望だったのでついでに撮った。

 

この、お小遣い稼ぎ程度でしか考えていなかった達也の写真を売り捌く商売が三年間を通して、それなりの金額で売れ続ける事を悠仁はまだ知らない。

 


 

特に問題なく発足式が終わり、本格的に九校戦の練習が始まろうとしていた。

 

俺は呼ばれた教室の隅で待機していた。

何故かって?

教室にいるのが俺以外、全員女子生徒だからだ。

正直、居心地が悪い。

女子生徒の殆どが俺の事警戒しているし…

そんな中でも、俺に声をかけてくれる人もいた。

 

「悠仁!久しぶり〜」

 

「久しぶり、エイミィ。調子はどう?」

 

「絶好調!それより、悠仁は何でここにいるの?男子の所に行かないの?」

 

「あっちに行く予定だったんだけどね…俺のエンジニアの担当が達也だから、こっちに行けと言われちゃって…」

 

「えっ!司波さんのお兄さんは男子の『クラウド・ボール』の担当じゃないよね?」

 

「そうなんだけど……五十里先輩とあーちゃ…中条先輩と達也以外のエンジニア全員に俺の調整をしたくないって言われちゃってね〜先輩方は忙しいから、同じ二科生の達也が俺の担当になりました」

 

「先輩達に嫌われてるね〜」

 

「本当、何でだろ?」

 

「え!自覚ないの?」

 

「冗談だよ…自覚は一応あるつもり」

 

「だよねー」

 

エイミィは表裏関係なく、思った事を素直に言ってくれるから話しやすい。

この教室の中で一人、ポツンといるのもきついから話かけてくれて正直、助かる。

 

エイミィと話をしていると中条先輩が教室に入ってきた。

 

「皆さん!準備ができましたので運動場の方に移動をお願いします。黒岩くんも一緒に移動をお願いします」

 

「分かりました」

 

中条先輩からお呼びがかかったので、俺達は指示通りに運動場へ向かった。

 


 

「一年E組の司波です。九校戦ではCADの調整の他、訓練メニューの作成や作戦の立案を担当します。」

 

達也の自己紹介の補足であーちゃん先輩が説明する。

 

「彼が皆さんをサポートする技術スタッフです」

 

達也の事を知っている深雪達は嬉しそうしているが、達也が担当する事に不満を言う生徒が出てくる。

 

「え〜と、男子?」

「できれば、エンジニアは女の子が良かったな〜」

 

その言葉にムッとしている深雪。

深雪が何か言う前に達也がその言葉を返す。

 

「俺もその方がいいと思っていたのだが、『僕達に二科生のサポートなんか必要ない!』と、まぁ…男子の方は断られちゃってね…」

 

その言葉にエイミィが反応する。

 

「男子って本当、馬鹿だよね〜テストの結果見て分からないかなー」

 

続いて雫が…

 

「二科生で技術スタッフに選ばれるのが異例中の異例。それだけ達也さんが優れているってこと…」

 

そして、ほのかが…

 

「そんな人にサポートしてもらえるなんてラッキーだよね、深雪!」

 

「ええ」

 

最後に美少年と見間違えるくらいのイケメンの女子生徒、

里見(さとみ)スバルが…

 

「男子だろうと二科生だろうと優秀な人材ならばボクは一向に構わないよ」

 

「スバルがそう言うなら〜」

「うん!」

 

そんな感じで達也の担当が認められた。

 

『二科生』って言うだけで色眼鏡で見る男子と違っていいな〜この娘達。

 

そんな事思っていると雫の方から質問がくる。

 

「そういえば、悠仁さん。何で女子の所にいるの?男子の所に行かなくていいの?」

 

「俺も達也と似たような感じだよ。『二科生なんて俺達の仲間じゃない!』って言われて追い出されちゃった…」

 

「………ドンマイ?」

 

「………うん」

 

雫は他に何も言えないようだ。

話を聞いていた女子達も男子達の所業にドン引きしている。

 

気を取り直して、達也とあーちゃん先輩に俺の今後の方針を聞く。

 

「あーちゃん先輩、達也。俺は今後どういう風に練習すればいいんだ?」

 

「悠仁は基本的に放置する予定だ。報告さえくれてば後は好きにしてもらっていい。CADの調整も悠仁でやってくれ。ただ、暇なら俺の手伝いをしてくれ」

 

「了解」

 

「あ!後、黒岩くんは時々、会長と練習試合だけはしてください」

 

「分かりました」

 

俺に一任する感じらしい。

その方がやりやすいので俺の方も助かる。

そんな感じで達也のサポート+時々、ななみん先輩の練習相手をする事になった。

 


 

何だかんだで時間が過ぎた。

 

八月一日

 

いよいよ九校戦の会場へ出発する事になった。

目的地は静岡の富士山の麓の演習場だ。

小樽にある八高や熊本にある九校などの遠方にある学校は一足早く現地入りしているが、東京の西外れに居を構える一高は、例年前々日のギリギリに宿舎入りすることになっている。

戦術的な意味合いはないが、現地の練習場が遠方校に優先割当される為である。

まぁ、本番の会場は当日まで下見すら禁止だからあまり意味はない。

 

「という訳なのだよ」

 

「はぁ……まぁ、分かりやすい説明でしたからいいんですが」

 

「誰に向かって言っているんですか、摩利さん?」

 

摩利さんの講義はさておき、俺、達也、摩利さんは今、炎天下の夏空の下にいる。

勿論、好きでこの場所にいるのではない。

ジリジリと太陽に炙られるこの場所に好き好んでいるので有ればそれはドMと言っても過言ではないだろう。

摩利さんはちゃっかり、日傘の下に避難しているが…

 

「ごめんなさ〜い!」

 

俺達が外で待たされる要因の人が今到着したようだ。

達也は無言でリストにチェックを入れた。

遅刻すること一時間三十分。

ようやく、全員集合。

 

「真由美、遅いぞ」

 

「ごめん、ごめん」

 

咎める言葉も謝罪もそれだけ。

二人は何事も無かったように、大型バスへ乗り込んでいった。

と、思ったら、ななみん先輩だけが手ぶらで戻ってきた。

 

「……何か忘れものですか?」

 

「ううん、そうじゃなくて……ゴメンね、達也くん、悠仁くん。わたし一人の所為で、随分待たせちゃって」

 

「いえ、事情はお聞きしていますので」

 

「大丈夫ですよ」

 

ななみん先輩が遅刻した理由は、寝坊とかではなく、家の事情である。

俺は内心反対していたが、他の生徒達がななみん先輩を待っていると言い出したのでこうなっている。

そのおかげで俺は炎天下の中、長時間待たされる羽目になっている。

ちなみに俺と達也が選ばれた理由は達也が裏方で唯一の一年生である為である。

俺はその付き添いみたいなものだ。

 

「でも、暑かったでしょ?」

 

「ハイ」

 

「大丈夫です。まだ朝の内ですし、この程度の暑さは何ともありません」

 

俺は素直に答えたが、達也はななみん先輩に気を使った感じで答えた。

 

「でもそんなに汗を……って、あら?悠仁くんは結構汗をかいているのに達也くんは汗をかいていないのね?」

 

「いえ、まぁ、流石に汗を乾かす程度の魔法なら使えますので…真夏に汗をかかない程、変態ではないつもりです」

 

「それなら、俺にもその魔法使ってくれないかな、達也?只今、絶賛汗かき中なのだが…」

 

「すまんな、悠仁。これは俺専用だ」

 

「フフッ、二人とも仲が良いのね」

 

ななみん先輩が俺達の会話にクスッと笑みを浮かべる。

それは向日葵のような笑みであったが、直ぐに小悪魔的な笑みで俺達を見るななみん先輩。

 

「それはそうとして、これ、どうかな?」

 

これっていうのはななみん先輩の服装の事だ。

ななみん先輩の服装はサマードレスに幅広の帽子という格好だ。

前にも言ったがこの世界の公の服装のマナーは『肌の露出は抑えるべし』という事らしい。

そんな中でななみん先輩は両腕、両肩が剥き出し。

スカート丈も膝上まで。

素足にヒールの高いサンダル。

現代ルール的にスリーアウトである。

 

「とても良くお似合いです」

 

「似合ってますよ、ななみん先輩」

 

「そう……?アリガト」

 

おどけた口調と少しはにかんだ表情の組み合わせも良く似合う。

 

「でも、二人共、もうちょっと照れながら褒めてくれると言うことなかったんだけどな〜」

 

指を絡めて両手を腰の前へ伸ばし、上目遣いで擦り寄るななみん先輩。

両腕でくっきり谷間を覗かせている。

ここまで来ると、もう狙ってやっているとしか見えなかった。

俺と達也は一瞬のアイコンタクトで答えを導く。

おそらく、家の事情とやらでストレスが溜まっているのだろう。

 

「……お疲れ様です」

 

「えっ?」

 

「大変だったんですね…行きましょう、会長。

バスの中でも少しは休めると思います」

 

「二人共、何か勘違いしていない?」

 

急に労りに満ちた態度とどこか同情を含んだ視線を後輩二人に向けられ、ななみん先輩は目を白黒させた。

 

「そんな事ありません。では行きましょう!ななみん先輩」

 

そう言って俺と達也は()()()()()()()()()に乗り込もうとしている。

 

「二人共、どこ行こうとしてるの?わたしの隣でもう少しお話ししましょ?」

 

ななみん先輩に呼び止められてしまった。

 

「なら、達也がななみん先輩の隣に」

「なら、悠仁が会長の隣に」

 

んっ?

何言っているんだ達也は?

 

「いや…、俺は技術スタッフだからこっちの乗り込まないと行けない。お前は選手だろ?なら選手のバスに乗り込め。では、さらば!」

 

達也は逃げ込むようにバスに乗り込む。

 

「おい、待て!達也!!俺を生贄にするな!!!」

 

「悠仁くーん?」

 

ハッ!!

 

ななみん先輩に肩をつかまれる。

感じる…これは答えを間違えると死ぬ奴だ……

 

「おねーさん悲しいな〜

そんなにわたしの隣にいる事が嫌なのかなぁ〜」

 

小悪魔じゃない、悪魔全開の笑顔で俺を追い詰めるななみん先輩。

 

「ソンナコトナイヨ!!!真由美お姉ちゃんと一緒にお話ししたいナー」

 

「うん!よろしい!!」

 

チクショウ!

何でこんな恥ずかしい思いをしないといけないんだ…

誰か俺を殺してくれ…

 

移動中、ななみん先輩のオモチャになる事が決定した。

 


 

ななみん先輩が俺の隣の席に座っている。通路の反対側はリンちゃん先輩がいる。

ななみん先輩、俺、リンちゃん先輩で会話をしていた。

 

「ホント!人を躁鬱扱いするなんて、失礼しちゃうわ。隣に、って言ったのに、さっさとあっちに逃げちゃうし…」

 

「達也の奴、ホント失礼ですよね!」

 

「悠仁く〜ん、君もよ!!」

 

「ソンナコトナイデスヨ!ななみん先輩、お綺麗ですから、隣にいると緊張してしまいますので…話し相手としては達也の方がいいかと思いまして……」

 

「その割には飄々としていますね。」

 

リンちゃん先輩が生暖かい目を向けながら話してくる。

 

「両手に花となれば、緊張を通り越して冷静にもなりますよ…」

 

「……リンちゃん、どう思う?」

 

「余りにも手慣れ過ぎていますね…」

 

「失敬な…これでも緊張してるんですからね…男子高校生の純情さを舐めて貰っては困ります」

 

「絶対嘘よ!」

「絶対嘘ですね…」

 

二人にそう言い返された。

解せぬ…

 

「それにしても、リンちゃん先輩は制服なのですね…」

 

「ハイ、そうですが?」

 

「どうせなら、リンちゃん先輩の私服姿も見てみたかったですね。スタイルがいいから何着ても似合いそうなのに…」

 

「……黒岩くん、そういう所ですよ」

 

「悠仁くんは将来、女の子の敵になりそうね…おねーさんは悲しいわ」

 

「そんな事にはなりませんよ。こんな台詞、親しい人にしか言わないですよ?」

 

俺の言葉に二人は呆れながら返す。

 

「黒岩くんはその内、背中を刺されそうですね…」

 

「刺されるどころか斬られるんじゃない?『ズシャーー』って…」

 

「………?斬られる前に反撃しますよ?」

 

「「そういう事じゃないわよ(ですよ)」」

 

そんな感じで楽しく?会話を続けるのであった。

 

 





悠仁「なぁ、全然進んでないんじゃないか?」
作者「進んで無いですねー」
悠仁「このペースだと何話まで続くんだ?」
作者「そこは『神のみぞ知る』という事で…」
悠仁「つまり、そこまで考えてないんだな…」
作者「ハイ……許してね♪」
悠仁「次の話次第だな…」
作者「頑張ります!!」
悠仁(あいつ、返事だけはいいんだよな…)


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九校戦編Ⅵ


皆様、お疲れ様です♪
下らない前書きはさっさと終わらせます!

ではどうぞ!



 

ななみん先輩とリンちゃん先輩との会話を楽しんでいたが、少しするとななみん先輩は寝てしまった。

やはり、家の用事とやらで疲れが出てしまっただろう…

 

「寝てしまいましたね、ななみん先輩」

 

「ええ…やはり、疲れが出てしまったのでしょう。ここは寝かせてあげましょう」

 

「ですね」

 

そうして、俺とななみん先輩とリンちゃん先輩との会話は終了した。

その後も深雪の周りに群がる男達を牽制する為に深雪達を十文字先輩と摩利さんの近くの席に強制移動するなどの珍事があったが、バスの中で起きた事と言えばそれくらいだ。

俺も一眠りしていたのだが、急に悪寒を感じたので目を覚ますと、視界が黒く染まっていた。

 

これは……悪意!何処から!!

 

今まで眠っていたのに突然目を覚まし、急に様子を変える俺に声をかけようとするリンちゃん先輩。

 

「黒岩くん、どうかs…」

 

ボン!!!

 

対向車線を近づいてくる大型車が傾いた状態で路面に火花を散らしていた。

それだけなら問題は無かった。

しかし、大型車はスピンし始めてガード壁に激突するとそのまま宙返りしながらガード壁を飛び越え、自分達のバスの方に飛んでくる。

運転手は慌てて急ブレーキをかけた為、直撃は避ける事ができた。

だが、進路上に落ちた車は、炎を纏いながら自分達のバスへ向かって滑ってくる。

 

「吹っ飛べ!」

「消えろ!」

「止まって!」

「っ!」

 

パニックは起こさなかったが、各々の生徒が魔法を発動させた為、事態は悪化してしまった。

瞬間的に、無秩序に発動された魔法が無秩序な事象改変を同一の対象物に働きかけた。

その結果、全ての魔法が相剋を起こし、対象物(この場合、向かってくる車)に魔法を発動させる事ができない。

この状態で魔法を発動させるには先に発動した魔法を圧倒する魔法力が必要となる。

 

「バカ、止めろ!」

 

摩利さんはその事にすぐ気づいた。

魔法の効果が発動する前に全員が魔法キャンセルをすれば、まだ打つ手はあったのだが、全員が摩利さんの指示に従う余裕はない。

 

チッ…

 

俺も正直に言うと余裕はない。

前世で死んでしまったシチュエーションに少し似ているからだ…

前世の時は大型車ではなくトラックだったし、宙に舞ったトラックはそのまま俺に直撃したりと若干違うが……

前世で死んでしまった記憶が蘇り、トラウマを思いっきり刺激する。

 

……落ち着け!今回は死なない!大丈夫。

とりあえず、あの車をどうにかしよう。

 

自分自身で何とか冷静になり、状況を把握する。

摩利さんは十文字先輩に声をかけてはいるが、十文字先輩も焦りの色を出している。

 

それもそのはず、この無秩序に魔法式が重ね掛けされた空間は、キャスト・ジャミングの影響下と似たような状態になっている。

いくら十文字先輩でも、炎と衝突の両方ともを防ぐ事はできないだろう。

 

「わたしが火を!」

 

深雪が火の対処に名乗りを上げた。

既に魔法の発動準備を終えている。

それを見た十文字先輩が、車の衝突を防ぐ魔法式を構築しようとする。

それでも、この状況では、魔法発動は厳しいだろう…

 

「俺は、この状況をどうにかします」

 

「何?オイ、悠仁!」

 

摩利さんの静止も聞かず、既に発動準備を終えていた魔法を発動した。

 

すると、三本の魔力の剣がバスの外に精製される。

その魔力の剣は発動されている魔法陣に突き刺さる。

 

「『爆ぜろ…』」

 

俺が言葉を発した瞬間、剣の形をした魔力が解放され、周りに留まっている魔力諸共、魔法陣を吹き飛ばす。

この結果に誰もが唖然とする。

 

「深雪、十文字先輩!!」

 

名前を呼ばれ、正気になった深雪、十文字先輩は向かってくる車の対処をする。

深雪は、炎上した自動車を常温へ冷却する魔法を使用し、瞬時に消火を果たす。

十文字先輩は、防壁の魔法(設定したエリアに侵入した物体の運動状態を静止状態に改変する移動魔法)で車を止める。

防壁にぶつかり、メキメキと音を鳴らしながら潰れる車を見て、ようやくこの脅威から脱する事を実感するのであった。

 

「フゥ〜」

 

俺は崩れ落ちるように座席に座った。

俺が放った魔法について摩利さんが問い詰めてきた。

 

「悠仁、さっきのは一体…」

 

術式解体(グラム・デモリッション)もどきです」

 

「グラ?…」

 

「これ以上は秘密です。それに今はそんな事話してる場合じゃないですし…」

 

「……ああそうだな」

 

元々、他人の魔法の術式を探ること自体タブーなっている。

俺の回答に納得はしていないだろうが、摩利さんは一端、追及を辞めた。

 

その後…、現場検証等で予定より時間は遅れてしまったが、何とか会場に着く事ができた。

 


 

「さっきのは事故では無かったのですか、お兄様?」

 

「あぁ、自爆攻撃だよ。全部車の中で魔法を発動していた」

 

「下劣な!」

 

達也と深雪は先程の一件について話をしていた。

そして、悠仁について話が変わる。

 

「お兄様、先程の悠仁さんのアレはどう思いますか」

 

『悠仁のアレ』とは複数人の魔法式を弾き飛ばした魔法についてだ。

 

「おそらくだが、術式解体(グラム・デモリッション)の一種だろう…」

 

「でも、何か…剣のようなものが見えたのですが…」

 

「俺も剣のようなものは確認できたが…、よく分からなかった」

 

「お兄様でも分からなかったのですか!?」

 

達也は起動式から魔法の内容を解析し、読み取る能力を持っている。

その能力を駆使しても魔法を解析できなかった事に深雪は驚く。

 

「あぁ、悠仁の魔法は現代魔法とは少し違う…。そもそも、起動式を展開せずに直接、魔法式を展開しているからな…」

 

起動式を展開せず、魔法式を直接展開する技術。

深雪と達也には思い当たる節が一つあった。

だが、それは十師族が一つ、四葉家秘匿の技術である。

深雪は悠仁と四葉の間に関わりがあるのを疑い、達也に聞こうとした。

 

「まさか…、よつb…」

「深雪、周りに人がいる前でそれはダメだ!それに俺は…、できれば悠仁を信じたい…」

 

「お兄様…」

 

人前で四葉の話をしようとする深雪を嗜めた。

四葉の関係を勘繰られる訳にはいかないからだ。

そして、達也と深雪は複雑な心情で悠仁に視線を向けるのであった。

 


 

なんだかんだあって舞台は、パーティ会場。

何故、九校戦の前々日に会場入りしたかと言うと、九校戦開始前に懇親会があるからだ。

それぞれの魔法科高校の生徒達が、これから競い合う相手を見ながら緊張な趣でパーティに参加している。

全員が出席なのは建前なので正直に言うと出たくはなかったのだが、

ななみん先輩から…

 

「わたしも正直出たくないわ……。なので、悠仁くんだけズル休みするのはダメよ?これは会長命令です!絶対に出なさい!」

 

と言う事らしい。

無視したかったのだが、無視すると後で面倒臭そうな事になりそうなので渋々、懇親会に出席している。

今は、俺と達也の二人だけがポツンといる。

他は、一年の男女それぞれでグループを作って、集まっている。

 

「お飲み物はいかがですか?」

 

やけに聞き馴染みのある声で声をかけられたので後ろを振り向くと、

給仕服を着ているエリカがいた。

 

「驚いた……!」

 

「……関係者とはそう言う事か」

 

俺達の反応にエリカは嬉しそうに話す。

 

「達也くんは、深雪に聞いたんだ。ビックリした?けど、悠仁は知らなかったみたいね…。アンタの驚く顔が見れて嬉しいわ」

 

「あぁ、驚いた。それにしてもよく忍び込めたな…。いや、それくらいは当然か…。さすが、千葉家といったところか」

 

「あたり〜!」

 

驚いてる俺を他所に話をしている達也とエリカが話込んでいる。

その会話に割り込む。

 

「俺には一言ぐらいあっても良かったんじゃないか?」

 

ふてくされながら言う俺にエリカは…

 

「ゴメン、ゴメン…。それより悠仁、この格好どう思う?」

 

『ゴメン、ゴメン』で済ませやがった。

まぁ、いいが…

エリカが服装について聞いてきたので素直に答える。

 

「似合っているぞ?可愛らしい格好だしな…。大人っぽいメイクしてるからか、普段の活発な美少女ではなく、大人の余裕のある美女っぽくなってるぞ?」

 

「『っぽく』って何よ、失礼ね!……でも、アリガト」

 

エリカは照れた感じでそう応えた。

話をしていた俺達に席を外していた深雪が会話に入り込む。

 

「ハイ、エリカ。可愛らしい格好してるじゃない。関係者って、こういうことだったのね」

 

「そういうこと。ねっ、可愛いでしょ?達也くんは何も言ってくれなかったけど」

 

体を左右に捻って、丈の短いヴィクトリア調ドレス風の制服を見せながら、エリカは不満げにそう言った。

 

「お兄様にそんなこと求めても無理よ、エリカ」

 

深雪の意外な一言に俺達全員が深雪を意外そうな目で見る。

深雪が達也を庇わず、否定的な発言をしたからだ。

 

「お兄様は女の子の服装なんて表面的なことに囚われたりしないもの。きちんと、わたし達自身を見てくださるから、その場限りのお仕着せの制服などに興味持たれないのよ」

 

「……それなら、エリカの服装を褒めた俺はどうなるんだ?」

 

「別に女の子の服装を褒めた事を非難してる訳じゃないですよ、悠仁さん。女の子を自然に褒める事のできる男の子はモテますよ。お兄様が特殊なだけです。ねぇエリカ?」

 

「そうね…、わたしのこの格好を褒めてくれたのは嬉しかったわよ。あくまで、達也くんはコスプレ姿に興味がないだけで…達也くんが特殊なだけよ…」

 

俺の質問に答える二人。

 

「…これは、褒められているのか、貶されているのかがよく分からないな?」

 

その答えに達也はため息混じりでそう呟いた。

 

「「褒めてるわよ(います)」」

 

二人の返しに達也は苦笑いをするしかなかった。

 

「それにしてもそれコスプレなの?」

 

「男の子から見たらそうみたい」

 

「男の子?西城くんのこと?」

 

「アイツじゃあ、その程度の事も言えないって…。ミキよ、コスプレって口走ったのは。しっかりお仕置きしてやったわ」

 

「ミキ?誰の事?」

 

「そうか…、深雪は知らないんだっけ」

 

何事もなかったかのように会話をする深雪とエリカ。

だが、幹比古の話題が出た時、エリカはその場を立ち去る。

 

「一体、どうしたのでしょう?」

 

「多分、幹比古を呼びに行ったのだろう…」

 

「幹比古?」

 

「吉田幹比古。深雪も知ってるでしょ?」

 

「お兄様と悠仁さんの同じクラスの方ですね」

 

「エリカの幼馴染らしい。エリカはまだ会った事ないから紹介するつもりなんじゃないか?」

 

「多分な…エリカならやりかねん。」

 

そんな会話をしていると雫とほのかがこっちにやってきた。

 

「深雪、ここにいたの」

 

「達也さんと悠仁さんもご一緒だったんですね」

 

「雫、わざわざ探しにきてくれたの?」

 

「雫、ほのか。……君達はいつも一緒なんだな」

 

「友達だもの。別々になる必要はない」

 

「そりゃそうだ」

 

「俺から言わせると達也と深雪もいつも一緒なんだけどな…」

 

「兄妹だからな」

 

「そりゃそ…いや、違うんじゃn…」

 

「違いません!」

 

「えっ?深雪s…」

 

「違いません!!」

 

「アッ…、ハイ。ソウデスネ…」

 

深雪の有無も言わせぬ圧に俺はなす術もなかった。

 

「それにしても他のみんなは?」

 

深雪が雫とほのかに訪ねた。

 

「あそこよ」

 

ほのかが指を差した先に慌てて目を逸らす男子生徒の集団がいた。

一年の女子生徒の集団も一緒のようだ。

 

「深雪に近寄りたくても達也さんがいるから近寄れないんじゃないかな?」

 

「俺達は番犬か何かか?」

 

雫の推測にため息を吐く達也。

 

「オイ、待て達也。『達』とはなんだ。『達』とは……。失礼な…。番犬はお前だけだ…」

 

「悠仁。お前も似たような物だ…。現実を見ろ!」

 

「まぁまぁ、達也さん、悠仁さん。お二人にどう接すればいいかわからないだけですよ」

 

それは…フォローになっているのか?

まぁ、別にどうでもいいが…

それよりも気持ち悪い…。

 

「悠仁、どうしたの?」

 

「悠仁さん、顔色が少し悪いようですが…」

 

俺のいつもと違う様子に心配そうな表情で雫と深雪が声をかけてきた。

(ちなみに雫とは九校戦の練習を付き合う内にいつの間にか呼び捨てで名前を呼ばれるようになった。)

 

「……いや、ちょっと気持ち悪い。……悪いけど、外の空気を吸ってくる。」

 

心配そうに見てくる皆を他所に俺はこの場を立ち去った。

 


 

…気持ち悪い。

敵意を向けてくる一年男子(森崎達)

心配そうに見てくれている友達達。

警戒して見てくる他校の生徒達。

俺の事を見定めようとする人達。

その他、色々。

様々な思惑が渦巻いているパーティ会場。

 

ナメていた。

たかが、高校生の大会のパーティがここまで思いや意志が渦巻くなんて…

たかが、高校生の大会前のパーティに四百、五百人も関わるなんて…

人の意思や感情を司ると言われる霊子(プシオン)

数百人もの思いや意思に活性化された霊子(プシオン)の所為で俺の目は軽い暴走状態となっていた。

霊子放射光過敏症(れいしほうしゃこうかびんしょう)

俺はこの症状に付け加え、人の感情が色となって見える。

普段は、この目を制御しているため問題はない。

だが、狭い所で人が密集しているこの場で様々な思いが交錯してるものならば、この目は暴走してしまう。

 

敵意なら赤。

警戒なら黄色。

他にも緑や青、茶色など…

様々な思い()が混じり合う。

そんな光景なんて…

 

「……気持ち悪い」

 

この小さな声で呟いた気持ちを運悪く聞いてしまったものがいた。

 

「ちょっと、よろしくて?あなた今、なんておっしゃりましたか?」

 

第三高校の制服を着た、金髪の女子生徒が呼び止めてきた。

 

「……何か?」

 

「あなた、わたくしに向かって『気持ち悪い』と言いましたね?」

 

「……別にアンタに向けて言った訳じゃない。」

 

「アンタとは何ですか!貴方、名前は?」

 

「…黒岩悠仁」

 

「『黒岩』…聞いた事ない名前ね」

 

「そりゃあ、一般家庭だったからな。んで、アンタは?」

 

「わたくしを知らないのですか!?」

 

「あぁ…有名なのか?」

 

「あぁ、もう!一色愛梨(いっしきあいり)よ」

 

「よろしく、()()

 

「何故、いきなり名前呼びですの!」

 

叫び出す、愛梨。

何が気に食わないんだ?

色々と余裕のない為、何故相手が怒っているかがよく分からない。

そう思っていると…

 

「貴方、愛梨に馴れ馴れしい」

 

「ワッハッハ!お主面白いな!」

 

「何か増えた…アンタらは?」

 

俺と愛梨の会話に二人の女子生徒が参戦してきた。

三高の生徒のようだ。

 

「増えたとは失礼な!ワシは四十九院沓子(つくしいんとうこ)じゃ!」

 

「…十七夜栞(かのうしおり)

 

「よろしく、四十九院、十七夜」

 

「だから、何故、わたくしだけ名前呼びですの!?」

 

「強いて言うなら……揶揄うと面白そうだから?」

 

「お主、最高じゃな!お主とは気が合いそうじゃ!」

 

「俺もそう思う。四十九院」

 

「沓子でいいぞ!」

 

「なら、俺も悠仁でいい」

 

そんな会話をしていると愛梨が話を戻す。

 

「ああ、もう!それで、さっきの『気持ち悪い』とは?」

 

「さっきも言った通り愛梨に向けて言った訳じゃない。それにしても、三人とも選手なのか?」

 

「ええ、そうですわ。わたくしも栞も沓子も全員が選手ですわ」

 

「そうか…じゃあ頑張れ!では!」

 

「待ちなさい!」

 

逃げようとする俺を愛梨は捕まえる。

戦線離脱に失敗した。

 

「チッ!…なんだ?」

 

「貴方、舌打ちって……」

 

「お主、あの愛梨にその態度とは…面白いのう!」

 

俺の反応に栞、沓子はそう言った。

 

「貴方はどうなのよ?」

 

「俺か?俺はクラウド・ボールに出場するぞ」

 

「なら、貴方は三高の選手に敵わないわね。わたくし達は人の反応できる限界速度を超えたスピードで練習したもの。貴方では三高の選手に勝てないわよ」

 

なんかケンカ売られた。

『貴方じゃ勝てない』?何様のつもりじゃお前…

 

「なぁ、参考までに聞くぞ?そいつらは七草真由美生徒会長よりも強いのか?」

 

「そ、それは…」

 

「少なくとも、そのレベルじゃないと俺には勝てないぞ?」

 

「「「!!!」」」

 

「嘘か本当かは実際に俺の試合を見るんだな…。じゃあな!」

 

俺はその場を立ち去った。

会場を抜ける前にどこぞの高齢者が精神干渉魔法を発動させやがったが気にしない。

俺は会場を抜けて、外のベンチで寝るのであった。

 





どうでしたでしょうか。
シリアスに書くつもりがシリアス?になってしまった気が……

優等生キャラもこんな感じだけど多分大丈夫でしょうか?
多少、違っていても許して下さい!


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九校戦編Ⅶ


お久しぶりです♪
作者でーす。

最近出張ばかりで更新できてませんでしたー。
仕事忙しい…。

また少しずつ更新できればと思います。
では、どうぞ!



 

九校戦、前日の夜。

俺はある作戦を遂行する為を夜の散歩をしている。

皆は覚えているだろうか?

女神様に送った手紙の内容を…

 

ーーーしかし、私事ですが、一つ悩みができました。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

これが所謂、ストーカーというものなのでしょうか?ーーー

 

俺の独自の調査の結果、ストーカーではなかった。

女の子のストーカーだったらちょっと嬉しかったけど…。残念だ。

俺の事を探る為に監視しているらしい。

何らかの組織と繋がりがあるか疑っているのだろう…。

俺は一般人なんだがな…。

何故、そんな事になっているかというと、おそらくだが、ブランシュの件で暴れ回ってしまった為だろう。

 

今も家に帰るとそれなりの数の監視を受けている。

監視の目にいい加減うんざりしている。

これはプライバシーの侵害というやつだ!

しかし、今いる九校戦の会場は軍の施設である。

家で感じていた監視の目がここでは無くなっている。

この隙に監視していた一団体を脅して、他の監視の目をどうにかしてもらおう!

これが俺の作戦『黒岩悠仁、プライバシー保護作戦』である。

 

今は夜の散歩と言っておきながら自作した形代をバレない感じでそこら中に貼り付けている。

形代は既に呪っている。

これにより形代が貼られている場所の会話を盗み聞きできるし、貼られている場所の周囲の状況が分かるようになっている。

 

他にも主人公である達也も改めて呪っている為、達也の場所、会話などは分かるようになっている。

あくまで魔力消費中はだが…

だが、日頃の修練の結果、呪い(弱)を発動してる間の魔力消費量と魔力回復量ががトントンぐらいになっている為、一日中、呪い(弱)が発動できる。

 

「よし…こんなところかな?ん?」

 

施設全体に形代を貼り終わったぐらいで、気になる魔力反応を確認。

後、悪意が見える。

ついでに近くに幹比古らしき魔力反応がある。

 

幹比古、大丈夫かな?

助けに行こう!

 

俺は悪意の発生源に向かった。

 


 

悪意の発生源に向かうと達也が不審者の武器を無力化し、

幹比古が敵を無力化した所だ。

 

「誰だ!」

 

「俺だ、幹比古。ついでに悠仁、お前も隠れてないで出て来い」

 

「隠れたつもりはないぞ?今着いたばかりだ」

 

俺と達也が出てきて呆然とする幹比古を他所に不審者の状態を確認する。

 

「死んではいない。いい腕だな」

 

「だな」

 

「えっ?」

 

「ブラインドポジションから、複数を標的に対して正確な遠隔攻撃。捕獲を目的とした攻撃で、相手に致命傷を与える事なく、一撃で無力化。ベストの戦果だな」

 

「だな」

 

「でも…僕の魔法は、本来ならば間に合ってなかった。達也の援護が無かったら僕は撃たれてた」

 

「それもそうだな」

 

俺は相槌しかしてない。

というか話に入れない。

 

自嘲している幹比古に達也は…

 

「アホか」

 

「……えっ?」

 

「はっ!?」

 

罵倒だった。

達也はそのままたたみかける。

 

「援護が無かったら、というのは仮定に過ぎない。お前の魔法によって賊の捕獲に成功した。これが唯一の事実だ」

 

「それは…まぁ、そうなんだけど」

 

「………」

 

達也の罵声と指摘に面食らう幹比古。

 

「現実に俺の援護があって、お前の魔法が間に合った。本来ならば?幹比古、お前は一体、何が本来の姿だと思っているんだ?」

 

「そ、それは…」

 

「相手が何人いても、どんな手練れが相手でも、誰の援護も受けず、勝利することができる……まさかそんなものを基準にしてるんじゃないんだろうな?」

 

「……」

 

達也の問いかけに何も言えない幹比古。

おそらく図星だろう…

対して、俺はというと…

 

「まぁ…理想だな。目標とするにはいいんじゃないか?」

 

俺の発言にため息をこぼすように達也が指摘する。

 

「悠仁…お前まで阿呆な目標を目指すな。そんな目標は不可能だ」

 

「難しいのは分かってる。でも、それは目指さないといけないものだと俺は思うぞ?もちろん仲間は必要だよ。戦いの中で連携とかできると生存率とか上がると思うし…でも、周りにどれだけ仲間がいようと…

 

そう言うと俺は達也に指を指す。そして…

 

「死ぬ時は独りだよ…」

 

これは俺が自分が一度死んだからこそ分かった事だ。

友達がどれだけいても死ぬ時は一人だし、一瞬だ。

たとえ、それが今より平和な世界であってもだ…

だからこそ、達也の言葉は否定しないといけない。

意味は少し違えど、どんな困難でも一人で対処できるようになる。

俺一人の力で不利な戦況を一変できる力をつける事。

これが俺の目標だからだ。

 

いつもと違う雰囲気を放つ俺に戸惑う二人。

そんな二人の様子を気にせず、話を続ける。

 

「…まぁ、今はそんな事おいておこう。それよりも幹比古。お前にどうしても聞きたい事がある」

 

「……何?」

 

「どうしてお前はそこまで自分を否定するんだ?」

 

俺の疑問に達也も加わる。

 

「それは、俺も同じ事を思っていた。何故それ程、自分を貶める。何がそんなに気に入らないんだ?」

 

「……二人に言っても分からないよ。言っても、どうにもならない事なんだ」

 

「「どうにかなるかもしれんぞ?」」

 

壁を作り、質問に逃げようとする幹比古を俺達は追い詰める。

 

「えっ!?」

 

絶句する幹比古。

達也が話し出す。

 

「幹比古、お前が気にしているのは、魔法の発動スピードじゃないか?」

 

「……エリカに聞いたのかい?」

 

「否」

 

「……じゃあ、何で」

 

「お前の術式には無駄が多すぎる」

 

「……何だって?」

 

「お前自身の能力に問題があるのではなく、お前が使用している術式そのものに問題がある、と言ったんだ。魔法が自分が思うように発動しないのはその所為だ」

 

「何でそんな事が分かるんだよ!」

 

幹比古は激怒した。

そりゃそうだ。達也は幹比古の…否、吉田家が長い年月をかけ、今の現代魔法の成果も取り入れ、改良に改良を重ねた術式を欠陥品だと言っているようなもんだ。

そりゃあ、幹比古も怒るよ…。

 

「俺には分かるんだよ。無理に信じてもらう必要はないがな」

 

「………何だって?」

 

「俺は『視る』だけで魔法の構造が解る。視るだけで起動式の記述内容を読み取り、魔法式を解析する事ができる」

 

幹比古は混乱している…。

 

分かるよ、幹比古。

普通、ありえないよね。

何せ、それができると言うことは、現代魔法が抱える課題の半分くらいは解決できてしまうのだから…

『何言ってんだよ、この達也(ブラコン魔王)は…』って感じだよね〜。

 

達也から視線を感じる。

 

「何、達也?」

 

「何か不本意なこと考えていないか?」

 

「いや?別に…」

 

「そうか…。まあ、いい。この話はここまd…」

 

達也が話を終えようとしている。

というか、待て達也、幹比古。

俺の話も聞け!

 

「ちょっと待った〜!!」

 

「「はっ?」」

 

二人も『何だコイツ?』的な目でこちらを見てくる。

そんな目にも気にせず、俺は話す。

 

「二人共、何話終わったみたいな感じ出してるんだよ?まだ、俺が話してないでしょうが!」

 

「……悠仁。もういいんだよ…正直、もう混乱してるし…」

 

幹比古がげんなりした感じで突き放そうとする。

…が俺は無視する。

 

「いや、良くない。この際、正直に言うが幹比古。お前、勿体無いぞ?」

 

「何がだよ…」

 

「お前には間違いなく才能がある。実際に鍛錬も積んでいるのだろう。発動スピードこそ遅いが術のコントロール自体は出来ているしな…」

 

「悠仁も達也と同じ事が言いたいのか!」

 

「違う。達也のアドバイスは現代魔法的には一理あるかもしれないが、ある意味暴論に近いと俺は思う。お前が足りて無いのは他の事だ」

 

「そこまで言うなら…僕には一体何が足りて無いと言うんだい?」

 

ようやく幹比古が俺の話を聞いてくれそうだ。

俺は幹比古に答える前にある質問をする。

 

「その前に一つ、質問する事がある…が、お前の触れられたく無い話題になると思うがそれでもいいか?」

 

「……ああ」

 

「幹比古。お前は最近に魔法事故みたいな事を起こしてないか?」

 

「!?……誰から聞いたんだい?確かにある儀式を行なって、失敗して、魔法の才能を失った…」

 

幹比古が苦しそうに俺の質問に答える。

 

「幹比古、一つ勘違いをしている。確かに儀式とやらは失敗したんだろう…けどな、お前の魔法の才能は失われて無いぞ?」

 

「……えっ?」

 

「儀式とやらが失敗した時に魔法的な体質が変わったんだ…多分な。さっきもお前の魔法を見たが、幹比古の()()()()()()()の流れが極端に鈍い。魔力を放出後は普通に制御出来ているけどな…お前に足りないのは体内の魔力操作の技術だ」

 

「………」

 

「……どうしてそんな事が分かるんだ?それに魔力?悠仁、説明しろ」

 

幹比古は俺の言葉に混乱して、何も言えないようだ。

代わりに達也が説明を要求した。

 

「あー、『魔力』って言うのは俺が想子(サイオン)霊子(プシオン)をまとめて言っている総称…で、俺はその魔力の流れ…と言うか、魔力そのものを視る事が出来る」

 

「「!!」」

 

その言葉に驚く二人。

驚く二人を他所に俺は語り続ける。

 

「んでだな…その目のお陰か他人の魔法的体質とか魔法の強度とか発生箇所なんかが分かるんだよな〜そして幹比古。お前、多分だが、昔の頃の様に魔法を使いたいと思っているんじゃないか?」

 

「…そうだね。昔の頃の様に魔法を使いたいと思っているよ」

 

「原因はそれだよ、幹比古」

 

「えっ!」

 

「お前の体質が変わったんだ。『昔の頃の様に…』なんてもんを目指しても絶対成長しない。今のお前は、お前の中の魔法の発動イメージと実際の魔法発動の挙動があまりにも合ってないから、そんな事になっているんだ。だからそこの感覚のズレさえ修正したらお前は強くなれる」

 

 

「……でも」

 

俺の話に幹比古は煮え切らない様子を見せる。

その様子に俺は…

 

「……明日の五時三十分。ロビー来い」

 

「えっ?」

 

急な誘いに疑問を浮かべる幹比古。

そんな幹比古に続けて俺は詳細を話す。

 

「俺の日課に参加しろ。そして、今の話が合っていることを証明してやる。まぁ、信じたくないなら来なくてもいいがな…」

 

そう言って話を断ち切った。

微妙な雰囲気が漂う中、達也が話し出す。

 

「とりあえず、今はコイツらの処置だ。俺が見張るから悠仁と幹比古は警備員を呼んできてくれ」

 

「了解。幹比古、俺はこっちを探すから向こうを頼む」

 

「わ、分かった…」

 

俺は幹比古に一言伝えるとこの場を去った。

 


 

俺はそもそも警備員を探すつもりはない。

それよりも作戦の為、呪い(弱)を発動する。

すると、達也とある人物の興味深い会話を盗聴する事に成功した。

 

『随分、容赦のないアドバイスだな』

 

『少佐…』

 

『他人に無関心な特尉には珍しいな』

 

『無関心は言い過ぎでしょう』

 

『身につまされたか?あの少年も貴官と似た悩みを抱えているようだからな』

 

『あの程度の悩みは卒業済みです』

 

『つまり、身に覚えがあるという事だな』

 

…ようやく見つけた。達也の事を特尉と呼び、達也が少佐と呼ぶ人物など一人しかいない。

 

風間 玄信(かざま のぶはる)

達也が秘密裏に所属している軍の部隊の隊長である。

そして、今回の作戦のターゲットだ。

脅してでも味方に引き入れるつもりだ。

 

俺は隠密の魔法をかけながら、先ほどの場所に戻る。

その最中にも二人の会話は続く

 

『そういえば、黒岩悠仁についてだが、これといった情報は集まらなかった』

 

『少佐の方でもダメでしたか』

 

『ただ、師匠から釘を刺された』

 

『師匠からですか?』

 

二人の言う師匠とは八雲さんのことである。

つまり、この二人は兄弟弟子の関係である。

 

『ああ、黒岩悠仁の監視を辞めた方がいいと言われてな』

 

『師匠が少佐の件に口を出すなんて珍しい…』

 

『俺もそう思い、訳を聞いたんだが…』

 

『何と仰ってました?』

 

『『悠仁くんの事を調べても、めぼしい情報は何もないよ。ボクも実際調べても何もなかったしね。それよりも悠仁くんの情報取集能力は君達にとって脅威だよ。これ以上、彼を突っつくと痛いしっぺ返しを受けるよ』と言われたぞ』

 

『『痛いしっぺ返し』…つまり、少佐や俺の秘密が悠仁にバレるということでしょうか?』

 

『おそらくな…とりあえず、黒岩悠仁の監視は一旦終了とする。』

 

『分かりました。自分のわがままを聞いてくださりありがとうございました』

 

『特尉にはいつも助かっているからな…コイツらの処置はこっちでやっておこう。特尉はもう戻りなさい』

 

『ありがとうございます。では、失礼します』

 

達也と風間の会話はここで終わった。

達也がこの場を去ったタイミングで俺が現場に戻った。

すると風間が…

 

「こんな夜更けに誰だね?姿を現しなさい」

 

俺の隠密魔法を見抜く。

観念した俺は姿を現し、話しかける。

 

「さすが、八雲さんのお弟子さんだ。バレてしまうとは思わなかった」

 

「師匠を知っているとは…君は誰かね?」

 

俺の事を知っているのにとぼける風間の質問にこう返す。

 

「随分と俺のことを部隊で監視していたのに、今更自己紹介とか要ります?風間玄信少佐」

 

「……師匠から聞いたのか?」

 

「いや、八雲さんには聞いてないよ」

 

この回答にさらに俺の事を警戒する風間。

そんな風間に話を切り出す。

 

「俺は貴方達に聞きたいこととお願いしたいことがあるんだよね〜」

 

「一応聞こう。何だ?」

 

「まず聞きたいことから…何故俺の事を監視するんだ?」

 

「それは心当たりがあるだろう?ブランシュの件で君が暴れたせいだ」

 

「……それだけ?」

 

「それだけだ」

 

有無を言わせない様子の風間。

これはこちらからカードを切るか…。

 

「ハァー…達也でしょ?俺の事を探るよう依頼を出したのは…」

 

「……何故そう思う?」

 

「元々、貴方と達也に繋がりがあったのは八雲さんの件で分かっていた…が、それ以外にも達也と貴方は意外な所で繋がっていた」

 

「……」

 

「日本の国防軍、国防陸軍第101旅団所属。独立魔装大隊。貴方達はそこの上司と部下の関係だ。」

 

「何のことかさっぱりだ?達也とは八雲師匠の兄妹弟子というだけだ」

 

「“大黒竜也特尉”、“マテリアルバースト”……」

 

「!!!」

 

「なんなら“四葉”の名前も出しましょうか?」

 

悠仁の放つ言葉に驚く風間。

軍の中でも機密とされている達也の秘密。

それを知り得る悠仁に風間は警戒心を最高値まで高める。

 

「君はどこでそれを?誰に聞いたんだね?」

 

「俺の事を調べるなら貴方達も調べられる覚悟はしておかないと…貴方達の情報は割と簡単に集められましたよ♪手段についてはひ・み・つ!」

 

実際は原作知っていたから知っているだけだ。

軍の機密なんて達也関係ぐらいしか分からないのだが…。

まぁ、それっぽく誤魔化そう。

 

「ちなみにお願いしたい事は、他にも俺の監視してる人達がいるじゃないですか?あれどうにかできません?」

 

「……君の為に動けと?」

 

「いや?貴方達の為ですよ。俺がもし捕まって尋問とか受けたらポロッと機密を漏らしてしまうかも…」

 

「分かった。君の監視の方はどうにかしよう。だが…」

 

「四葉の監視はこっちでどうにかします。後、達也にはこの件は秘密にしてくれませんか?」

 

「何故だね?」

 

「四葉が絡むからですよ。それとも四葉の対応も全部してくれるんですか?」

 

言外に『四葉と達也の関係も分かっているぞ?』とアピールする俺に風間は…

 

「いや…分かった。達也には秘密にしよう。」

 

「ありがとうございます。ではこれをどうぞ。」

 

そう言って俺はあるメモ書きを渡す。

 

「それは?」

 

「俺の電話番号です。部隊に共有するなり何なりと好きにしてください。では…」

 

俺はそう言うとこの場を離れる。

 

(…師匠の言う通りになってしまったな…藪蛇を突いてしまったか……。)

 

悠仁の後ろ姿を見て風間はこう思うのであった。

 

 

 





作者「…何か途中、聞き覚えのある台詞があったけど…」
悠仁「気のせいだ…」
作者「いや、あれは呪術の方の五jy…」
悠仁「気のせいだ!俺の中のアニメで見て言ってみたい台詞ランキング上位の台詞だから言った訳では無いぞ!?」
作者「……確信犯だろ。これ……。」


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九校戦編Ⅷ


皆様、お久しぶりです♪
絶賛社畜中の作者です。
皆様はゴールデンウィークはどう過ごされたでしょうか?
私は何故か出張!や仕事!で、結局、普通の一週間を過ごしていました。
私のゴールデンウィークはいつ訪れるのでしょうか?
今週の土曜日も会社から呼びだs…

悠仁「ハイ、社畜の戯言は放っておきましょう!作者に前書き任せると会社の愚痴で20,000字平気で超えるからな…」

オイ!まだ前書きはおわっていn…

悠仁「では、続きどうぞ!」


 

五時三十分。ホテルロビー前…。

 

(悠仁が来いって言った場所はここかな?まだ、来ていないようだけど…。)

 

幹比古は昨日の言葉の真意を知る為、呼び出された場所で悠仁を待っていた。

今の現状を打破できるかもしれないと内心、期待を込めながら…。

 

少しすると幹比古を呼び出した張本人が姿を現す。

 

「おはよう幹比古。待たせたかな?」

 

悠仁は汗だくの状態で幹比古の前に現れた。

 

「待ってないよ。今、来た所。…それより、すごい汗だね。悠仁?」

 

「日課でちょっと前まで走っていたんだ…。じゃあ行くぞ!」

 

悠仁はそう言うと何処かへ連れて行こうとする。

幹比古は何処に連れて行かれるかを悠仁に聞いた。

 

「どこに?それにここは軍の施設だよね?勝手に動けないんじゃあ…」

 

「どこに行くかはお楽しみに♪それに一応、軍の人には許可をとっているから大丈夫だよ」

 

悠仁も一応、千葉家の関係者みたいな扱いになっている。

エリカ程ではないが、コネを使えば、軍の施設でもそれなりに融通が利くのである。

 

悠仁はその事を幹比古にかいつまんで説明しながら、幹比古と一緒に目的地に向かうのであった。

 


 

ホテル屋上

 

「目的地到着!さて、幹比古。まずは一度お前の“精霊魔法”を見せてくれないか?」

 

いきなりそんな事を言う俺に幹比古は…

 

「突然だね…。けど、それで何か分かるのかい?」

 

「ああ…」

 

「…分かった。じゃあ行くよ?」

 

何かすんなり信用するよね?この子…。

もっと疑われると思ったけど…。

 

疑問に思いながらも幹比古の魔法を()()為、魔力を目に集める。

 

「‼︎……やっぱり

 

不思議な色合いに変わった俺の眼を見て、何か幹比古が反応してるが気にしない。

全力で幹比古の魔法の挙動を確認するつもりだ。

 

幹比古は手に持っている呪符を用いて精霊魔法を発動する。

展開には時間がかかったが、精霊が活性化し、人魂のような物が周りに出現した。

その中で()()()()()から水球が出現し、幹比古の周りに浮遊する。

 

俺は幹比古の魔法展開時の魔力の流れを視て、ある仮説が浮かんだ。

その仮説を幹比古に話す。

 

「多分だけど…幹比古の魔法展開のスピードが遅い理由が分かったかも」

 

「本当かい?悠仁‼︎!」

 

俺の一言に幹比古は魔法の制御を止め、問い詰める。

俺の肩を掴み、思いっきり体を揺さぶる。

 

「ああ…。って、落ちつけ。揺らすな。気持ち悪いわ‼︎」

 

体と一緒に頭を揺さぶりやがった幹比古を一旦落ちつかせる。

 

「ああ…、うん…、ゴメン。つい……」

 

「まぁ、いいよ。それよりも幹比古、今度は魔力(サイオン)を全力で込めながら魔法を発動してみて」

 

「えっ?出来なくはないけど、制御が…」

 

「制御出来なくてもいい。さっきの水球ならそこまで危なくないだろ?とにかくやれ!」

 

「う、うん…」

 

有無を言わさぬ様子の俺に戸惑いながらも幹比古は指示通りに魔法を発動した。

 


 

(悠仁は一体何を考えているんだ?でも、柴田さんと同じ眼を持つ悠仁なら…)

 

幹比古は悠仁の指示の意味が全く理解が出来なかった。

それでも、悠仁の指示に従うのは、悠仁が美月と同じ水晶眼の持ち主だと思われるからだ。

 

水晶眼とは、精霊の精霊や力量の違いを視覚的に“色”として見分けられる眼の総称だ。

通常の魔法師は活性化した精霊を何となくだが、知覚する事ができる。

だが、その精霊の性質などを確認する事は出来ない。

『人魂みたいなの(精霊)がここら辺に何か感じる…』みたいな感じでしか知覚できない。

 

精霊魔法の術者も本質的には精霊を視認する事はできない。

精霊の波動を感じ、ざっくりと精霊の性質を理解する程度だ。

だから、術者によっては精霊の性質を誤認してしまうし、精霊の力量等も知覚する事が出来ない。

 

水晶眼の持ち主は幹比古の家系では『神霊(テ●ルズ的に言うと四大精霊的な存在)』を視て、認識して、そのシステムにアクセスするための鍵を見つけることのできる巫女であるとされている。

 

だからこそ、精霊の本質を見る事ができる水晶眼の持ち主は精霊術者にとって喉から手が出る程欲しい人材なのである。

 

幹比古は悠仁の指示通りに魔法を発動しようとした。

 

「え!?」

 

幹比古は驚く。

先程の魔法とは変わって、一瞬で精霊が活性化し始める。

幹比古自身も今までとは違い、呪符に想子(サイオン)を込めるスピードが速くなったのを感じた。

だが…。

 

「ま、まずい…。悠仁、避けて‼︎」

 

大量に放出した想子(サイオン)を幹比古は制御できなかった。

勝手に水球が出現し、悠仁に向かって発射される。

 

「ホイッと」

 

気の抜けた声で悠仁はいつの間にか手に持っていた木刀で発射された水球を斬りつける。

斬りつけられた水球はその場で霧散し、幹比古の魔法は無力化された。

 

「悠仁、今のは…」

 

事象改変された魔法を無効化した悠仁に驚きを隠せない幹比古は問いただす。

 

「ひ・み・つ♪」

 

「ふざけないで悠仁‼︎」

 

「真面目だよ。それに他人の魔法を探る事はマナー違反だ。そんな事より今はお前の事だ」

 

幹比古の追及を逃れる悠仁。

何度も追及はされたが結局、幹比古が折れた。

 

「そんな事って……。分かった。今の事はもう聞かないよ、悠仁…。それじゃあ、僕の事は聞いてもいいかい。急に魔法の発動スピードが速くなった理由を教えてくれないか?」

 


 

幹比古は切実そうな表情で俺に聞いてきた。

ここは、ふざける場面じゃないな…。

仕方ない、真面目に答えるとしよう。

 

「魔法発動する為の魔力(サイオン)が不足してたからだよ」

 

「???…でも、魔法は発動してたよ?」

 

幹比古はピンときていないようだ。

もう少し分かりやすく話してみるか?

 

「あー。説明が悪かった。んーと、少し別の物に例えるぞ?水道にホースを繋いで水を流すだろ。この時、もっと大量の水を流したい時ってどうする?」

 

「えーと、ホースを太くするとか流す水量を多くするとかかい?」

 

突然の質問にも戸惑いながらも答える幹比古。

その答えに満足しながらも俺は話を進める。

 

「そうだな。多分なんだが、幹比古は魔力(サイオン)を流す為のホースが昔のお前の時よりも太くなったんだと思う。だからさっきみたいに大量の魔力(サイオン)を流せたんだよ。その結果、魔法発動のスピードが速くなったんだと思う」

 

「何となく意味は分かったけど…。それなら、何で今まで僕は魔法の発動スピードが遅かったんだい?」

 

「お前が『昔と同じように魔法を使えるようになりたい』なんて考えてたからだろう。魔力(サイオン)が大量に流れやすくなったのにお前自身が魔法を制御しようと魔力(サイオン)の量を無意識に抑えているんだよ。だから水圧?魔圧?まぁなんでもいいが、とにかく魔力(サイオン)を流す力も弱くしてる、流す量も抑えてる。だから魔法の発動スピードが遅いんだろう。多分…」

 

「あれこれ言ったのに最後に多分って…。けど、ありがとう」

 

だって、100%の自信は無いんだもん。

一応、幹比古には釘を刺しておこう。

ついでにアドバイスも…

 

「多分だからな!?期待するなよ?けど、俺の考えが正しいなら、達也を頼るのも手だぞ?」

 

「達也?どうしてなんだい?」

 

「お前の問題って結局の所、魔法を発動する感覚が合っていないんだよ。現代魔法の良い所は魔力(サイオン)や魔法の制御をほぼCADで制御して魔法の発動を高速化する所だからな。達也はCADの調整技術はプロ級だから、アイツに調整してもらって、魔法発動の感覚を改めて覚え直すのも手だと思う」

 

「少し、考えてみるよ。それよりも今はここで練習するよ」

 

俺の推論に幹比古は納得したようだ。

何かとても嬉しそうな表情してるし…。

まぁ、何を思っているか何となくは想像できるんだが…。

 

「俺も日課してるから何か用があったら声かけろよ?」

 

幹比古にそう言い放ち、俺は日課の修練に戻る。

そんなこんなで修練をする悠仁と幹比古であった。

 


 

日課が終わった。

幹比古は修練が終わり、先に休憩していたらしい。

 

「お疲れ、幹比古。ホイッ!」

 

俺は買っておいた水を二つ持ち、片方の水を幹比古に投げ渡す。

 

「おっと、ありがとう。悠仁はいつもこんな事やってるの?」

 

「そうだよ」

 

質問に答えながら、幹比古の隣に座り込む。

そして、真剣な表情で幹比古に問いかけた。

 

「ヨイショっと。そういえば幹比古、一つ聞きたい事がある。大事な話だ」

 

「……なんだい?」

 

「美月の事、どう思う?」

 

俺の質問に幹比古は動揺した。

 

「えっ!?急にどうしたんだい!?」

 

俺の質問に幹比古は顔を赤く染めながらものすごく動揺している。

 

「??何でそんなに動揺してるんだ?それで、どう思ってるんだよ」

 

「……柴田さんはカワイイ女の子だと思うよ。ちょっと天然が入ってそうだけど、エリカと違って性格がおっとりしてるからそこがまたいいって言うか…」

 

大事な話をそう捉えたかwww

ヤバイ、笑いを堪えてられn…

 

クハハハハ!お前最高!!そうだよな、男子高校生の大事な話と言えば恋バナだよな!!!」

 

「な!急に聞いてきたのそっちだろう!?それに、笑いすぎ!!」

 

「悪い悪い。俺の質問が悪かったww。あまりにも予想外の返答だったからなwww。ヤバイ、腹イテェw」

 

ハー、本当に最高だなw

これぞ、普通の男子高校生の日常だよなww

メッチャ面白いww

いきなりボディーブローを受けたぐらい腹痛い…。

ヤバイ、腹痛すぎて死にそうww

 

数分後…

 

「そう拗ねるなよ幹比古。俺が悪かった」

 

俺が笑いすぎた為、幹比古は拗ねてしまっていた。

 

「拗ねてない!……で?柴田さんについてとは?」

 

「美月の眼についてどう思ってるんだよ?」

 

「!!!……誰に聞いたの?」

 

「その反応は美月の眼の事は幹比古は知っているんだな?別に誰かに聞いた訳じゃないよ。けど…」

 

「……けど?」

 

「吉田家というか精霊魔法とかを使う家系にとって俺や美月の眼は喉から手が出る程欲しいだろ?」

 

「…水晶眼を知っているのかい?」

 

「水晶眼って言う単語は知らない。…が、精霊がはっきり視えるこの眼をお前の家に知られるのは不味いと思った。だから、幹比古の家の人が千葉の道場とかに来たりする時は理由をつけて休んでいたんだが…」

 

「だから、僕は悠仁の事知らなかったのか…」

 

「で?お前は俺と美月をどうするつもりなんだ?」

 

「前に美月さんと達也にも言ったけど、俺は君達を家族に報告するつもりはないよ…」

 

「なら、ヨシ!!」

 

「えっ!?そんな簡単に信じてくれるのかい?」

 

「俺も人を見る目はあるつもりだ。信じるよ」

 

「ありがとう」

 

照れくさそうにお礼を言う幹比古。

 

まぁ、俺はともかく、美月をお前の家の騒動に巻き込むつもりなら友達を考え直すけどな…

よし、部屋に戻るか!

 

俺は休憩を終え、その場で立ち上がり、部屋に戻ろうとする。

幹比古も一緒に立ち上がり、部屋に戻るようだ。

部屋に戻りながら会話を続ける。

 

「そういえば、どうして美月が水晶眼?の持ち主だと気付いたんだ?」

 

「あぁ、実は前に…」

 

俺達は楽しくお話しながら自分の部屋に戻るのであった。

 





教えて!悠仁!!

非魔法師と魔法師で精霊の見え方ってどう違うの?

悠仁「説明しよう!簡単に言うと霊感が無い人が一般で霊感がある人が魔法師みたいな感じだ!詳細は下記にまとめてみた。」

非魔法師…全く見えない。何も感じない。
魔法師…何か感じるが、見えない。
精霊術師…精霊がいる事は感じるし、朧げに精霊っぽいのが視える
悠仁や美月…精霊がはっきり視える。

悠仁「こんな感じだ。まぁ、霊感がある人が魔法師と覚えくれればいいぞ!ついでに吉田家の最終目標は、テイ●ズ・オブ・ゼス●ィリア風に言うと“神威化”を目標にしてる。では、以上だ!!」





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九校戦編Ⅸ


皆様お疲れ様です。
6月入ってから昨日まで出張で何一つ執筆もしなかった作者でございます。
今日は体調不良で急遽休みになったので投稿しました!!
まぁ…今朝、病院行ったら食中毒って医者に言われました…。
焼き鳥であたるってどゆこと?
愚痴はともかく久々の投稿です。
どうぞ!!




 

とある腹黒生徒会長の策略に嵌められ、強制参加する事となった九校戦。

七月から練習に取り掛かり、ようやく、やっと、今、始まった。

これから十日間、各魔法科高校生達が優勝を目指し、鎬を削る。

 

一年である俺の出番は、五日目ぐらいになる予定だ。

それまでは暇なので、達也達と一緒に先輩方の活躍を見物している。

今見ているのは“スピード・シューティング”。

簡単に説明すると魔法で行うクレーン射撃の競技だ。

この競技にはななみん先輩が出場する。

見ておかないと後で何言われるか分からないからな…。

 

「ずっと気になってたんだが、なんだそれは?」

 

他校の生徒が競技中、達也が突然聞いてくる。

他の皆も他校の生徒の競技よりも俺の答えの方が気になっているようだ。

 

「えっ?これ?似合う?」

 

俺は普段掛けていない()()を上げる仕草を見せる。

 

「そんなもん知るか。俺に聞くな。その眼鏡はなんだ。」

 

「つまんね〜。感想ぐらい言えよ〜」

 

そんな茶番?をしていると美月が会話に入ってくる。

 

「あの!その眼鏡はもしかして…」

 

「そう。美月と同じ眼鏡だよ」

 

「やっぱりそうですよね!やっぱり悠仁はわたしと同j…」

 

「美月。落ち着いて!周りを見なさい」

 

エリカがヒートアップしていく美月をたしなめる。

周りを見ると美月に視線が集まっていた。

 

「!?ごめんなさい……。

 

顔を赤くしながら謝罪をする美月。

 

…何か微妙な空気になってしまったな。

 

そんな空気を気にせず、雫が話を戻す。

 

「…で、悠仁。その眼鏡は何?オシャレ?」

 

雫とは九校戦の練習を付き合っている内にいつの間にか呼び捨てで呼ばれるようになった。

一応、前より親しくなったという事だろう。

そんな事はさておき…。

 

「違うよ。これは“オーラ・カット・レンズ”の眼鏡だよ。霊子放射光を遮る効果があるんだ。美月と一緒だよ。」

 

全員が一斉に美月の方を見る。

 

「えっ!?あ…うっ……」

 

美月は全員からの視線に動揺し、さらに体を小さくする。

そんな美月を他所に俺はそのまま話を続ける。

 

「実は俺、霊子放射光過敏症(りょうしほうしゃこうかびんしょう)なんだよ。普段はどうにか制御出来ているんだけど、大勢のいる人の所だと、目が暴走しちゃうから眼鏡をつけてるんだ」

 

話を聞いた深雪が質問してきた。

 

「昨日の懇親会で体調が悪そうにしてたのは…」

 

「そう。眼鏡無しで大丈夫だと思ったんだけど…。結局ダメだった。霊子光に当てられて体調崩しちゃった。」

 

昨日の俺の様子に深雪達は納得したようだった。

朝、会った時も心配そうにしていたからな…。

良い娘だ!

何処ぞの生徒会長と風紀委員長に比べるとな!!

 

そんな毒を内心吐いていると、ななみん先輩の番になった。

 

「始まるぞ」

 

達也の一言と同時に先程までうるさかった観客席が静まり返る。

そして、開始のシグナル点った。

ななみん先輩はドライアイスの弾丸を精製。

出てくる標的を一個の取りこぼしもなく個々に撃ち抜く。

結果として、パーフェクト。

“エルフィン・スナイパー”

ななみん先輩の異名に恥じぬ圧巻のプレーを見せるのであった。

 


 

続いては“バトル・ボード”

魔法を使うボートレースみたいな競技だ。

これには摩利さんが出場する。

これも見ておかないと…以下略。

 

「女子にはつらい競技だ。ほのか、体調管理は大丈夫か?」

 

「大丈夫です。達也さんにアドバイスしていただいてから体力トレーニングはずっと続けてきましたし、選手に選ばれてからは睡眠も長めに取るようにしてますから」

 

達也とほのかが話してた。

その会話に深雪も入り込む。

 

「ほのかも随分筋肉が付いてきたんですよ」

「やだ、やめてよ、深雪。私はそんな、マッチョ女になるつもりはないんだから」

 

その会話に思わず、達也は噴き出してしまう。

 

「ほら……達也さんに笑われちゃったじゃない」

 

「笑われたのは、ほのかの言い方がおかしかっただけだよ」

 

「雫まで…。いいわよ、どうせ私は仲間外れだし。二人と違って、達也さんに試合も見てもらえないし…」

 

おーっと、なんだか面白くなってきた!!

さて、達也は何て返すつもりだ!

オラ、ワクワクすっぞ!

 

俺はワクワクしながら達也の返答を待つ。

すると…

 

「……“ミラージ・バット”は、ほのかの調整を担当するんだがな…」

 

あーあ、達也。

アイツ、本当にダメだな……

女心って言うのが分かって無い。

その証拠に…

 

「“バトル・ボード”は担当してもらえないですよね。深雪と雫は、二種目とも担当するのに…」

 

ほのかの機嫌がさらに悪くなる。

逆効果だ。

 

「……その分、練習に付き合ったし、作戦も一緒に考えたし、決して仲間外れにしている訳では…」

 

アイツ、言い訳してるww

そういうこと言ってる訳じゃないのに…。

めっちゃ笑える。

 

「達也さん、ほのかさんはそういうこと言っているんじゃないんですよ?」

 

達也の体たらくに助け船とは少し違う口調で美月が口を挿んだのを皮切りに、

 

「お兄様……少し、鈍感が過ぎますると思いますよ?」

 

と深雪が、

 

「達也くんの意外の弱点発見」

 

とエリカが、

 

「朴念仁?」

 

と雫が責め立てた。

達也は絶句して何も言えない状態だ。

 

ちなみに俺は、何も言わず、達也に向かって満面の笑みでグッドポーズ。

それをした瞬間、達也から殺気のようなものを感じたが、気のせいだろう……。

さて、もう少しで摩利さんの出番だ。

俺は責め立てられる達也を内心、笑いながら競技が始まるのを待つのであった。

 


 

競技が始まった。

結果は、一着でゴールして、予選を通過した。

状況に応じて多彩な魔法を使い分け、他者を圧倒する。

ななみん先輩の高速、高精度の魔法とは違い、臨機応変、多種多彩、芸術のように重ね合わせた魔法。

 

「凄えな…」

 

摩利さんの魔法に素直に賞賛してしまう。

ただ一点、面倒だったのはエリカだ。

とある事情でエリカは、摩利さんのことを嫌っている。

事情の知らない達也達に相手してもらう訳にもいかない。

結局、エリカを宥める俺。

しかし、さっきの俺の摩利さんに対する賞賛を聞いてしまったのかさらに機嫌が悪くなってしまったエリカ。

……機嫌を直してもらうのにだいぶ時間がかかってしまった。

 


 

九校戦三日目

 

二日目?

特に話すことなぞない。

三日目も正直やる事はない。

ずっと見学してるのもつらい…。

先輩の応援を抜け出し、休憩所みたいな所で寝ていたら…

 

「貴方は一体何しているんですか!」

 

誰か怒ってる?

目を開けるとそこには愛梨がいた。

その後ろに栞や沓子もいる。

 

「あー愛梨、栞、沓子。おはよう〜」

 

「うむ、おはようなのじゃ!」

 

「沓子、別に挨拶を返さなくてもいいわ。それに名前呼び…」

 

「『おはよう〜』ではありません!貴方、応援もせずこんな所で寝ているなんて気が抜けているんじゃないかしら?」

 

何か愛梨が怒ってる。

何故だ?

訳が分からないがとりあえず…

 

「あの…栞?何かその、冷たい目線をやめていただけないでしょうか?正直心にくる…」

 

「気にしないでいいわ。それに先輩方が必死で競技をしてるのに応援もせず、こんな所で呑気に寝れる人だもの」

 

何か皮肉めいた感じで問い詰められる俺。

言い訳をどうしたものかと考えると沓子が…。

 

「二人共、少し落ち着くのじゃ。それにしてもその眼鏡はなんじゃ?懇親会では着けていなかったんじゃが…」

 

そう言いがら俺の着けていた眼鏡を強奪する沓子。

悪気が無かったのは分かってる。

だが…

 

「…!ウゥ……」

 

俺の視界は霊子光で埋め尽くされた。

あまりの光量に目に激痛が走る。

その痛みで俺はその場で蹲ってしまった。

 

「え…?ど、どうしたのじゃ!?」

 

その様子を見て狼狽する沓子。

愛梨や栞も心配そうにこっちを見ている。

 

「と、とりあえず眼鏡を返してくれ沓子」

 

眼鏡を返してもらい、眼鏡を掛け直す。

 

数分後…。

 

「あー、まだ目がチカチカする…」

 

俺の様子に沓子が心配そうに様子を伺う。

 

「悠仁、大丈夫かのう?」

 

「とりあえずは…」

 

そこに愛梨が先程の俺の様子について聞いてくる。

 

「先程の貴方の様子について伺うてもよろしいかしら?」

 

「ああ、実は…」

 

愛梨達に俺の体質の事について話した。

ついでに寝起きという事もあって眼の制御が出来ていなかった事。

寝ていたのは決してサボりでは無く、会場の熱気に当てられてやも無く休憩していたというもっともらしい理由も付けて話してやった。

 

「すまなかったのじゃ…」

 

俺の話を聞いて沓子が謝罪してきた。

 

「いや、大丈夫。知らなかったんだから仕方ないよ」

 

そこに栞が話に入り込む。

 

「いや、沓子を甘やかしてはダメ。この子すぐに調子に乗るから…」

 

アハハ…。

どう反応すればいいんだ?

 

反応に困っていると愛梨がいいタイミングで話に割り込んできた。

 

「でも、貴方…そんな体質で試合に出れるの?」

 

まぁ、眼鏡外しただけでああだもんな…。

疑問になるのも当然か…。

 

「多分、大丈夫。競技中はスイッチを入れるから」

 

ほら、スポットライトをいきなり浴びると物凄く眩しいけど、浴びる気でいれば意外と眩しく感じないみたいな感じだ。

 

「そう、ならいいわ。では、私達は応援に戻りますので…」

 

そういうと三人はこの場を立ち去った。

俺は急に大量の霊子光を浴びて体調が悪くなったので自室に向かうのであった。

 


 

夜、達也から連絡を受けた。

内容は摩利さんが“バトル・ボード”中に大怪我した事。

その怪我には第三者の妨害の可能性がある事。

お前も競技中は気をつけろ。

との内容だった。

 

あ…あったな、そういえば。

確か無頭竜(ノーヘッド・ドラゴン)だったけ?

さて、どうしてくれようか…

 

俺は達也に返事を返した後、とある人に連絡するのであった。

 





話が進まない…。
頭の中ではもう新人戦が始まってるんですが…。
オカシナ〜
でももうそろそろ悠仁君の出番が来るはず!
絶対…いや多分、おそらくね…。
もう少しお待ちください。


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九校戦編Ⅹ


お疲れ様です。
話の更新ペースが遅くなってきた今日この頃。
正直、仕事の方休みたい…。
出張さえなければ、もっと早く更新できるのに…。
皆様は本当に仕事を休みたい時どうしてますか?
何か方法あれば教えてくださると助かります。

まぁ、そんな話は置いといて、続きです。
どうぞ!





 

九校戦四日目

 

今日から一旦本線を中断し、一年生のみが参加する新人戦が始まる。

今日は“スピード・シューティング”の予選と決勝。

“バトル・ボード”の予選が行われる。

“スピード・シューティング”には雫とエンジニアの達也。

“バトル・ボード”にはほのかが出場する。

 

雫達を応援する為、客席に向かおうとした時、後ろから声をかけられる。

 

「ハイ、悠仁くん、おはよう♪」

 

振り返るとななみん先輩と大怪我をした摩利さん、リンちゃん先輩がいた。

 

「おはようございます。ななみん先輩、摩利さん、リンちゃん先輩。摩利さんは災難でしたね。体調は…大丈夫そうですね、良かったです」

 

「おはようございます」

 

リンちゃん先輩は淡々と挨拶を返す。

 

「おはよう。悠仁の言う通り体調は大丈夫だが…。もう少し心配してくれてもいいんじゃないか?」

 

摩利も挨拶を返すがこんな事言ってきた。

何か誤解してそうなので弁解しておこう…。

 

「病室のベットに寝てないといけない状況なら素直に寝てますよね?摩利さんは自分の怪我を隠してまでここに来る人ではないと知っているので…。摩利さんのそういう所を信用してるんですよ?俺は」

 

「おお、そうか…」

 

俺の言葉に摩利さんは照れているようだ。

ちょっと顔赤いし…。

 

(あんな台詞をスラスラと…渡辺委員長も照れているようですし…。やはり、黒岩くんは凄腕のジゴロですね)

 

鈴音は悠仁と摩利のやりとりを見てこう思うのであった。

 

摩利さんとのやりとりが終わるとななみん先輩が満面の笑みで話を切り出す。

 

何故だ?

その笑顔に俺の第六感が危険信号を発している…。

 

「今日の新人戦、わたし達と一緒に競技を見ない?」

 

ただの観戦のお誘いだった…。

杞憂だったか?

せっかくのお誘いだし、一緒に見るか……。

 

「いいですよ」

 

「よかった!」

 

ななみん先輩は嬉しいそうだ。

そのまま距離を詰めて俺の背後に回り込み、肩に手を置く。

そして…

 

「そういえばなんだけど、わたしの試合、観に行かなかったらしいじゃない?その事について詳しく聞きたいナー」

 

「!!……誰がそんな事を?」

 

「深雪さんが教えてくれたわ」

 

深雪だと!

あの子、何の恨みがあってそんな事!

とりあえず深雪の事は一旦後だ。

今はこの場を抜け出す方法を…

 

摩利さんに視線で助けを求めた。

摩利さんも俺の視線に気付いたようだ。

何か喋ろうとしてくれる。

助けくd…

 

「悠仁、お前わたしの決勝も観に行かなかったそうじゃないか。わたしもその件について詳しく聞きたいんだが?」

 

oh……。

摩利さん(ブルータス)お前もか!

仕方ない…。

助けて!

リンちゃん先輩!!

 

「自業自得です。さぁ、皆さん行きましょう」

 

……もう誰も信じない。

はなから味方なんていなかったんだ!

 

ななみん先輩達に連行されていくのであった。

 


 

俺達は“女子スピード・シューティング”の予選会場の観客席にいる。

今はななみん先輩達と()()()()ながら競技を観ていた。

詳しい内容は聞かないでくれ…。

俺の精神の安寧の為にも!

そして、今の話の話題はもうすぐ出番である雫の調整を担当している達也についてだ。

 

「さて……考えてみれば、アイツのエンジニアとしての腕を実践で見るのはこれが初めてだな」

 

好奇心をむき出した摩利さんの言葉にななみん先輩も頷いた。

 

「そうね。わたしの時はお手伝い程度だったし、彼が一から調整したCADがどんな性能を見せてくれるのか、楽しみだわ」

 

「北山さんを始めとして、選手からはとても好評のようです。黒岩くんは練習期間も司波くんとよく一緒にいましたよね?どんな印象でしたか?」

 

「一言で言うなら……天才ですね。アイツが調整したCADは他の生徒が調整したCADの一世代先に行っていると言っても過言ではないと思います」

 

この台詞にななみん先輩、摩利さんが固まってしまった。

俺が達也に対してあまりにも高い評価をするとは思っていなかったからだろう…。

数秒してやっとななみん先輩が口を開く。

 

「悠仁くん、随分と高い評価ね…。あまりにもハードル上げすぎじゃない?」

 

「見ればわかりますよ」

 

そう言っていると雫が会場に出てきた。

もう始まるようだ。

応援するとするか…。

 

俺達は静かに雫の試合開始の合図を待つのであった。

雫が構えを取った。

スタートのランプが点り始まる。

ランプが全て点るとクレーが空中に飛び出す。

得点有効エリアに飛び込んだ瞬間、クレーが粉砕された。

次のクレーはエリア中央で砕け散った。

その次はエリアの両端で二つ同時に破砕された。

 

「豪快だな…。市原、北山の魔法について教えてくれ」

 

魔法を見て感想を言った後、摩利さんは雫の魔法を事を知っているリンちゃん先輩に聞いた。

 

「分かりました。この魔法は固形物に振動波を与える魔法でクレーを壊しています。得点エリア内にいくつかの震源を設定して、固形物に振動波を与える仮想的な波動を発生させます。魔法で直接に標的そのものを振動させるのではなく、標的に振動波を与える事象改変領域を作り出しています。震源から球形に広がった波動に標的が触れると、仮想的な振動波が標的内部で現実の振動波となって標的を崩壊させるという仕組みですね」

 

リンちゃん先輩はさらに説明する。

 

「ご存じの通り“スピード・シューティング”の得点有効エリアは、空中に設定された一辺十五メートルの立方体です。司波君の起動式は、一辺十メートルの立方体を設定して、その各頂点と中心の九つのポイントが震源になるように記述されています」

 

一応説明するがリンちゃん先輩がここまで詳しいのは達也から調整プランを見せられているからだ。

 

「各ポイントは番号で管理されていて、展開された起動式に変数としてその番号を入力すると、震源ポイントから球状に仮想波動が広がります。波動の到達距離は六メートル。つまり一度の魔法発動で、震源を中心とする半径六メートルの球状破砕空間が形成される事になります。」

 

「……余計な力を使っているような気がするが…。北山は座標設定が苦手なのか?」

 

「確かに精度より威力が北山さんの持ち味ですが……」

 

摩利さんの問いに答えるリンちゃん先輩。

いつも通りポーカーフェイスでクールなのだが、少し苦笑いしてるようにも見える…。

まぁ、気のせいだろ……。

 

そんな事思いつつも話は進んでいた。

 

「この魔法の狙いは精度を補う事ではなく、精度を犠牲にする代わりに速度を上げる事にあります」

 

「……つまり、その気になればもっとピンポイントな標準も可能と言う事よね?どう言うことかしら?」

 

「この魔法の特徴は、座標が番号で管理されていると言う点です。“スピード・シューティング”は選手の立つ位置と得点有効エリアの距離、方向、エリアの広さが常に同じです。つまり、この魔法で設定する必要がある震源ポイント、その位置決めをする仮想的な立方体と選手の距離、視野角も常に一体という事です。故に、座標を変数として毎回入力する必要は無く、起動式に選択肢の形で組み込んでおいて、発動時にその番号を指定するだけで魔法を発動させる事ができます。この程度の粗い狙いであれば、CADの標準補助システムでその時に最適なポイントを自動的に選び出す事も可能です。」

 

試合が終盤に差し掛かる。

撃ち漏らしはまだ一つも無い。

 

「制御面で神経を使う必要がありませんから、魔法を発動することだけに、演算領域のポテンシャルをフル活用する事ができます。連続発動もマルチキャストも思いのままです」

 

試合が終了した。

結果はパーフェクト。

 

「魔法の固有名称は『能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)』。司波君のオリジナルだそうですよ」

 

そう言ってリンちゃん先輩は雫の魔法の説明を終えた。

 


 

試合終了後、ななみん先輩が聞いてくる。

 

「わたし達は本部に戻るわ。悠仁くんはどうする?」

 

「俺はこのまま客席で試合を観ます。友達もそっちにいますからね」

 

「そう?分かったわ。じゃあね!」

 

そう言ってななみん先輩、摩利さん、リンちゃん先輩は一高本部に向かっていった。

俺はエリカ達の所に向かうとしよう。

先程、幹比古にメールで教えてもらった場所に向かった。

 


 

試合は順調に進んでいるらしく、エリカ達に合流できたのは雫の準決勝の直前であった。

観客席には達也、雫以外のいつものメンバーが揃っていた。

 

「遅い!」

 

「悪い…。ちょっと迷ってた。」

 

エリカの叱責を受けた俺は遅れた理由をエリカ達に話した。

 

「まぁまぁ、エリカ。間に合ったからいいじゃない。それにしてもすごい汗ですね悠仁さん」

 

エリカを宥めながらも深雪が俺に話しかける。

 

「遅れると思って走ってきたんだ。雫と()の試合が事実上の決勝だろう?どうしても観たくてな」

 

実際他の準決勝は終了している。

もう片方はどちらも一高の選手である為、この試合で一高が一位、二位を独占するか三高が上位独占を阻止するか決まる為とても注目度が高い。

それに雫と栞だけが予選ではパーフェクト。

準々決勝でも相手寄せ付けない強さを見せた為、事実上の決勝と言う者も少なくない。

それに()()の実力は拮抗している。

緊迫とした試合展開になると予想されていた。

 

「………ん?()?」

 

美月の一言で場が凍りついた。

先程の俺の発言に引っかかったようだ。

そして、俺が弁明する前に深雪が質問をしてくる。

 

「……栞とは十七夜(かのう)選手のことでしょうか?随分と仲がよろしいようで…」

 

深雪さん?何か圧が強くありませんか?

そんな事思いつつも弁明する。

 

「いや、懇親会で知り合っただけだから」

 

「それにしては名前呼びとは……」

 

こんな感じで試合が始まるまで女性陣から尋問を受けるのであった。

ちなみにレオ、幹比古といった男性陣からの助けはなかった。

 


 

試合開始のブザーが鳴らされた。

この競技は決勝トーナメントからは対戦型で行わられる。

雫は『能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)』を発動。

魔法発動エリア内に入った自分のクレーは振動波で破壊。

又はクレーをエリア中心に収束させてクレー同士をぶつけて破壊していく。

そして、相手のクレーはエリア外に弾き飛ばして妨害する。

一方栞は破壊したクレーの破片をさらに別のクレーにぶつけて破壊し続けるという化け物じみた壊し方をしている。

雫の妨害も計算に入れており、雫に弾かれたクレーも難なく破壊していく。

得点はほぼ互角だが、若干栞が点数を上げている状況だ。

 

「雫…」

 

戦況が少し厳しい雫の様子を見て心配するほのか。

そのほのかの様子を見て深雪が口を出す。

 

「大丈夫よ、ほのか。雫の担当技術者が誰だと思っているの?」

 

俺もすかさず口を挿さむ。

 

「そうだぞ、ほのか。それに前の試合で布石は打っていたし、まぁ、そろそろ戦況が変わるぞ」

 

そう言った矢先、栞の魔法がクレーを外してしまう。

遠くから見ても栞がかなり消耗している事が分かる。

この瞬間、俺は雫がこの試合を勝つことを確信した。

 

一方達也は…

 

(予想通り特化型かと思って作戦を立ててきたか。残念だが、あれは去年にドイツで発表されたばかりの標準器付き汎用型CADだ。特化型CADに格納できる起動式は九種類。だが、汎用型は九十九種類の起動式が格納できる。いくら十七夜選手の演算能力が優れていようと九十九種類の起動式の対策をしていないのであれば、この勝負はもらったな)

 

達也もまた、雫の勝利を確信するのであった。

 

“女子スピード・シューティング”の結果は、

 

一位…北山 雫 (一高)

二位…明智 英美(一高)

三位…滝川 和美(一高)

四位…十七夜 栞(三高)

 

一高が上位独占という結果で終わった。

 


 

さて、次はほのかの“バトル・ボード”の予選だったよな。

エリカ達は先に客席とってくれてるらしいしな…。

向かうとするか。

 

とある野暮用を済ませた後、会場に向かっていると挙動不審なほのかを発見した。

何か手のひらに人の字書いて飲み込んでるな…。

緊張してるのか?

まぁ、聞いてみるか。

 

「ほのか。大丈夫か?」

 

「ハイ!あっ……悠仁さん」

 

声をかけた瞬間、驚いてあたふたしてしまったほのか。

少しして俺に気がついたようだ。

 

それにしても『大丈夫か?』って答えが『ハイ!』って…。

大丈夫じゃないなこの子。

 

「うん。大丈夫じゃないのは分かった。何をそんなに緊張してるんだ?」

 

「えーと。皆さん、凄そうな選手ばかりじゃないですか。もう不安で…。さっきまでは雫の応援で緊張してなかったんですけど…」

 

「ほのかなら一位取れると思うけど…。よし、ほのか。聞きたい事がある」

 

質問しようとすると不安そうな顔でこちらを見てくる。

 

「“バトル・ボード”。ほのかを推薦した人は?」

 

「……達也さんです」

 

「練習メニューを考えたのは?」

 

「…達也さんです」

 

「作戦を考えたのは?」

 

「達也さんです!」

 

「そうだ!全て()()()()()()()()達也が全て考えた」

 

「わたしだけの為に……」

 

「ほのか、本当に勝てないと思うのか?」

 

「思いません!!!」

 

一応言っておくが、これらは全て達也一人が考えたのは訳ではない。

嘘は言ってない。

ちょっと大袈裟に言っているだけだ…。

 

「それに想像してみろ。もし優勝できたら…」

 

「優勝できたら…」

 

ほのかは想像した。

自分が優勝できた後の光景を…。

 

〜ほのかの妄想世界〜

 

『達也さん!わたし達也さんのお陰で優勝出来ました!!』

 

『それは違うぞ。ほのかが俺の為に頑張ってくれたお陰だ。優勝のご褒美と言ってはなんだが、目を閉じてくれるか?』

 

『目を…ですか?』

 

『ああ…』

 

目を瞑ったわたし。

でも少し薄目で達也さん見ると目を閉じて唇をわたしに向けてくる。

わたしは達也さんのキスをそのまま受けいれ…

 

〜fin〜

 

(キャー!!わたしなんて事を…。でも、もしかしたら…)

 

……何か体をクネクネさせながら頰を真っ赤に染めてんな〜

何想像してんだ?

これが恋する乙女ってやつか……。

 

「ほのか?まぁ、とりあえず、負ける未来なんて想像できるか?」

 

「わたしは誰にも負けません!必ず優勝します!!そして……エヘヘ(照)」

 

また、妄想の世界にトリップしてしまった。

何かとんでもない事してしまったのかもしれない…。

まぁ、達也がなんとかするだろう…。

 

俺は心の中で達也に合掌をするのであった。

なお、この瞬間、達也の方はなんとも言えない悪寒を感じたそうだ。

 

ほのかが妄想世界にトリップしている最中に…

 

「おーい、悠仁。何してるのじゃ?」

 

後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

振り向くと…

 

「ん?あっ、沓子か。そういえば沓子は“バトル・ボード”に出場だったな。応援してるぞ〜」

 

「応援してくれるのは嬉しいが…。普通はお主の学校の選手を応援するもんじゃろ」

 

「そっちも応援するぞ?」

 

「……まぁ、良いのじゃ。それよりお主の後ろにいる者は誰じゃ?何故かすごくだらしない顔をしているのじゃが…」

 

「一応、うちの女子“バトル・ボード”のエース。……オイ、ほのか、ほのか。いい加減戻って来い」

 

一向に現実に戻ってこないほのか。

ちょっとイラッときた。

 

ペシッ!

 

「イタッ!?」

 

俺はほのかのおでこにデコピンを喰らわした。

ほのかはその痛みでその場に蹲る。

その様子に沓子は…

 

「……お主の所の選手は大丈夫じゃのか?」

 

「この子も本番になったらまともだから……多分」

 

もういい、紹介する気が失せた。

そんな事(ほのかの紹介)よりも一つ沓子に聞きたい事があった。

 

「なぁ、沓子。栞の体調って大丈夫か?さっきの三位決定戦の時、体調悪そうだったけど」

 

「ッ!!うーん。あー、まぁ、大丈夫じゃろう」

 

「??……何がだ?」

 

「実はな、栞、何じゃが……北山選手に負けて精神的な所がやられてしまってのう。悠仁、悪いんじゃが、栞の事励ましてくれんかのう。ほれ、これが栞の番号じゃ」

 

そう言って、メモ用紙に栞の電話番号を書いて渡す沓子。

 

「別にいいんだけど…勝手に番号渡して大丈夫か?」

 

「大丈夫なのじゃ!」

 

「何で?」

 

「わしの勘なのじゃ!」

 

「勘なら仕方ないな」

 

(勘なら仕方ないの!?)

 

二人のやり取りを見て、正気を取り戻していたほのかはそう思うのであった。

 


 

“バトル・ボード”の結果の話をしよう。

 

一高はほのかのみが予選突破。

三高の沓子も予選を突破していた。

 

沓子の方は精霊魔法を駆使し、水面に渦巻きを作り、他の選手を妨害。

相手が手間取っている時に現代魔法を駆使し、圧倒的な差を作り一位で予選突破。

優勝候補と言われる実力を十分に発揮した。

 

対してほのかはスタートの合図と同時に水面に光学系魔法を仕掛け、目眩し。

相手が視力を回復している隙に圧倒的な差を作り、こちらも一位で予選突破。

目眩し作戦を考えたのは、達也。

達也らしい意地の悪い作戦だ。

 

なお、ほのかが一位ゴールするやいなや、ウェットスーツのまま達也の所へ駆け寄り、泣きながら感謝の気持ちを伝えている様子を遠くから見ていた悠仁は…

 

(南無…)

 

心の中で達也に向けて合掌していた。

 


 

今日の競技が全て終わり、宿舎に帰っていた。

片手には沓子から貰った栞の電話番号のメモ。

俺は番号を入力し、電話をかけるのであった。

 





皆様は一話ごとでどれだけの文字数が一番読みやすいでしょうか?
教えてくださると嬉しいです♪

そして、次こそ悠仁の出番のはず!(多分)
楽しみに待って頂けたら嬉しいです♪
よろしくお願いします!


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九校戦編Ⅺ


お久しぶりでございます!
作者でございまーす!

やっと更新出来ました!
こんなに遅くなったのも全部会社のせいだ……。
お盆休み?
そんなもんねぇよ!
全部出勤だったよ!?
何が悲しくて連休中も会社に行かないといけないんだよ!?
本当にいつになったら代わりの休みをくれるんだ!
第一、日本には働き方改革っていうものが……


悠仁「あ〜。この作者、働きすぎで少々壊れておりまして…。会社の不満なら程度なら20,000字ゆうに超えちゃうんで勝手に始めます。どうぞ!」





 

三高宿舎

 

栞は“スピード・シューティング”が終わった後、すぐに部屋に引きこもってしまっていた。

愛梨はそんな栞をなんとかしようと部屋の前で必死に話しかけていた。

 

「栞、明日の“アイス・ピラーズ・ブレイク”。このままの貴方は出場はさせられない。今まで練習してきたチームメイトに泥を塗るような物だもの。だから代役を立てることになったわ」

 

「……そう」

 

「ーーッ!」

 

栞のどうでもいいと言わんばかりの発言に愛梨は怒りが込み上げる。

だが、なんとか堪えて、引き続き話しかける。

 

これが最後よ!…もし貴方が出場できるというなら、明日の朝六時までに作戦テントに来なさい!」

 

「その必要はない。わたしはもうダメだもの。」

 

「……失望したわ。勝手になさい!」

 

そう言い捨て、愛梨はその場を去った。

どことなく悲しそうに…。

 

 

《栞視点》

 

『……失望したわ。勝手になさい!』

 

これでいい。

愛梨が求めていたのは一色の家に相応しい才能のある仲間。

ゴメン、愛梨。

もう戦えない。

これはわたしの心の問題。

負けてしまったわたしでは、貴方に相応しくない。

結局、わたしはあの親達と一緒。

 

…ppppp

 

電話…。

非通知…。

……誰だろう?

 

普段の栞なら出ない筈の非通知の電話。

だが、その電話に栞は応じた。

 

『おぉ…通じた。もしもし〜』

 

「…あなたはもしかして、黒岩くん?」

 

『正解!黒岩くんこと黒岩悠仁くんです♪』

 

「…どうしてこの番号を?」

 

『沓子が教えてくれた。何か『栞に電話して欲しいのじゃ』って言われたから』

 

「…そう」

 

沓子…。

いや、もうわたしには関係ない。

あの子はわたしと違って才能があるもの。

わたしとは大違いd…

 

『んで、どうしたんだ?何か話したい事があるんじゃないか?』

 

「えっ?」

 

彼に急にそんな事を言われ、動揺してしまった。

というか、貴方が電話をかけてきたのだけど…。

 

「急に何?」

 

『いや、普段の栞なら非通知の電話なんぞ出ないだろ?でも、俺の電話に出たってことは誰でもいいから何かしら話したいって事だろ?』

 

違う。

貴方に話した所で何の意味もない。

 

「勝手な事言わないで。貴方に話す事なんて何も無い」

 

『そうゆうのいいから…。話してしまえよ。栞が溜め込んでいた物を。誰なんて関係ない、話すと案外楽になるもんだよ。これ、俺の実体験だから!』

 

「でも…」

 

『俺に話した所で意味はないよ。でも、別に意味なんてもんは要らないんだよ。栞自身が楽になりたいと思えば、話せばいい』

 

わたしが楽になりたいと思えば……

 

「……わたしは元々数字落ち(エクストラ・ナンバーズ)の家系に生まれた。数字落ちした事で荒んだ家、喧嘩が絶えない両親。何もかもが嫌になって捨ててしまいたいと思ったあの時、愛梨がわたしを光の中に導いた。この時、わたしは決めた。もう二度とあんな両親の所へ戻らない。愛梨の為に勝利に向かって進んでいくと決めた。けど…」

 

『けど?』

 

「わたしは負けてしまった。北山選手よりも才能が劣っていた。愛梨が求めているのは、一色家に相応しい才能のある仲間。わたしは愛梨に相応しくなかった!結局、わたしはあの両親と同じ。せっかくあの両親の縁が切れたのに!十七夜家の養子にもなれた!……けど、もうダメだわ。先程も愛梨に失望されてしまった。もう何の為に…ッ!」

 

少しだけ話すつもりだった。

けど、今はどんどんと言葉が溢れてくる。

涙も止まらない…

 

『うん。栞がこれから何の為に生きるのかは知らない。というか自分で考えろ。逃げんな』

 

そんな言葉に出ていた涙も引っ込んでしまった。

思わず…

 

「…辛辣ね」

 

『そりゃそうだろ。自分の人生を他人を委ねてどうするんだって話だぞ。どんなにつらくても、分からなくても、栞自身が決めないといけない事だからな。…それよりも一つ。栞、間違っている事があるぞ』

 

間違い?

…何かしら?

 

『栞が雫に負けようが負けまいが、栞自身が”あの両親“って奴と同じことにはならない』

 

「貴方に何が分かるの!!」

 

貴方に分かる訳が無い!

貴方みたいな一般の家庭に生まれたような人に!

親に、家に恵まれなかったわたしの気持ちなんて!

 

『栞の気持ち、全部は分からないよ?でも、親に恵まれなかった。その気持ちは分かるよ』

 

「嘘よ!」

 

『だって、俺が魔法科高校に入学した理由は親から逃げる為だったからな』

 

「……え?」

 

『…俺は非魔法師の家庭に生まれた子だ。親戚含め、魔法が使えない。突然変異みたいな感じで俺だけが魔法の才能があった。』

 

「……」

 

『それだけなら良かったんだが俺の家族は親戚含め、人間主義の人達だったんだよ』

 

「人間主義…」

 

確か、魔法師排斥を掲げる人達だったわね。

という事は…

 

『勘が良い栞ならもう分かると思うが、俺の眼の所為で魔法の才能がある事がバレてな…。虐待とか色々されてたんだよ』

 

…知らなかった。

貴方にそんな過去があるなんて…

 

『だからこそ、たかが血が繋がっているというだけで“両親と同じ”と言うのは認めたくない。俺、両親なんて嫌いだし、何ならどっかでくたばれとも思っている。……だからさあ、栞。そんな悲しい事言わないでくれ。お前は俺と違って親を捨てる事もできたし、縁も切れたんだろ?』

 

「でも、わたしは…」

 

『“でも”も“だって”も知らん!俺が言いたい事は………』

 

「言いたいことは?」

 

『親とか関係ない。栞、お前だけの為に生きてみろ。後悔すんな!』

 

「私だけの為に…。でも!」

 

『栞だって、愛梨に出会う前はひたすら自分の為に努力してきたんでしょ?それがどんな理由だとしても…。その結果、栞は愛梨達と出会えたんでしょ?これからも一緒だ。自分の為に生きていけば、それが愛梨の為になると思うぞ。……多分

 

多分って……。

聞こえているのだけど。

 

『ちょっと喋り過ぎたか?まぁいいや…。余計な事考えず、栞が一番手放したくない物を考えて見るんだな。最後にもう一度言うが、後悔すんなよ?じゃあ、おやすみ〜』

 

「え!?ちょっとm…」

 

ブチ!

 

急に切ったわね…。

会ったら文句を言ってやるわ。

それにしても、自分の為に……か。

 

 

こうして、九校戦の四日目は終わった。

 

 


 

 

九校戦五日目

今日は“アイス・ピラーズ・ブレイク”の予選と“クラウド・ボール”の予選〜決勝の予定だ。

 

そう!

ついに俺の出番がやってきた。

やってきたんだが…。

 

「応援がいないな…」

 

予選開始前、俺はもうコートの上に立ち試合の合図を待っていた。

そして、周りの観客席を見ると思わず呟いてしまった。

 

一高の生徒がいない訳ではない。

だが、基本的に俺はは殆どの一高生から嫌われている。

特に同級生の男子から…。

今、観客席にいる一高生は俺以外の生徒を応援している。

それに“アイス・ピラーズ・ブレイク”で深雪や雫が参戦する為、殆どの生徒がそちらに応援に行ってしまっている。

二科生で優勝候補にも上がっていない俺と美少女で優勝候補で華があり、美少女(大事な事なのでもう一回)の深雪と雫。

どちらの応援に行くかは自明の理である。

俺だって見に行くなら野郎よりも美少女の試合見に行くもんな…。

 

「まぁ、決勝まで残れば流石に見にくるだろ……くるよね?

 

そんな事言っていると…

 

『まもなく男子“クラウド・ボール予選”を開始します。観客の皆様はお静かにお願いします』

 

アナウンスが鳴り出した。

 

「よし!じゃあ、やりますか」

 

気合いを入れると試合開始のブザーが鳴るのであった。

 


 

 

ボールが相手コートに排出された。

相手選手はボールがコートに落ちる前にボールを打ち込む。

そしてボールを打ち込んだ瞬間、移動魔法を発動。

ボールは不規則に揺れ動きながら悠仁のコートに向かっていくが…。

 

「エリア設定完了。術式スタート」

 

悠仁は収束系統魔法“手塚ゾーン”を発動。

ボールは地面に落ちず、悠仁に向かって吸い込まれる。

そして…

 

「スネイク!!」

 

悠仁がそう言いながらボールを打ち込む。

ボールは途中で急激に斜めに曲がりながら落ち込み、相手コートに向かっていく。

相手選手はボールの急激な変化に対応できず、ボールはコートに落ちた。

悠仁に一点が加算される。

 

この競技はボールを相手コートに落とした回数を競技。

ボールは低反発ボールを使用。

コートの周りも覆っており、基本ボールが目まぐるしく動き回る競技だ。

 

だが、悠仁の打ち込んだボールは()()()()()()

相手選手はもちろん、試合を見てる人全てが一瞬、理解不能に陥る。

相手選手が混乱している内に次のボールが悠仁側に排出された。

悠仁は隙だらけの相手にボールを叩き込む。

ボールが相手コートに落ちる。

そのボールも()()()()()()

そこでようやく悠仁が魔法を発動している事に相手選手は気付いた。

相手選手もボールを再び持ち上げようと魔法を発動するが、ボールは浮き上がらない。

以前、コートに落ちたままだ。

 

相手選手はボールを持ち上げようと必死になっているうちにボールがどんどん排出される。

ボールが増えようと関係ない。

ボールがコートに落ちる度、ボールは弾まない。

ずっと、コートに()()()()()

 

 9対0

 

悠仁は第一セットを先取するとその調子で第二、第三セットも取っていく。

 

第一セット 9対0

第二セット 9対0

第三セット 9対0

 

”クラウド・ボール“では、普通見る事のない点差で悠仁は予選の初戦を勝ち進んだ。

 

 


 

 

俺はその後、何やかんやで予選を通過した。

本戦は午後からの予定になっているので報告も兼ねて本部に戻っていた。

 

「だから、本線からは俺がお前の調整をするって言っているだろ!」

 

「いや、別にそんな事しなくてもいいのですが…。何故急に?」

 

本部に戻るや否や何故か俺のエンジニアの担当をすると言う先輩が現れた。

急に言われても困るし、俺は他の魔法師の人と違って、魔法の発動方法が少し特殊だ。

逆に面倒臭い事になりそうなので丁重に断ったのだが…。

逆ギレされた。

何故だ?

 

 

一方その頃、達也、深雪、雫も“アイス・ピラーズ・ブレイク”の予選を終えた為、報告の為に本部に戻っていた。

ちなみにもう一人の出場者であったエイミィは寝不足の為、今は自室で寝ている。

達也達は本部に戻ると言い争っている悠仁と先輩を目撃。

状況が分からない為、本部にいた真由美に話を聞く。

 

「会長、お疲れ様です。これは一体?」

 

「あら、達也くん、深雪さん、北山さん、お疲れ様。本戦出場おめでとう」

 

「ありがとうございます、七草会長。…何故、悠仁さんは先輩と言い争いをしているのでしょうか?」

 

「達也くん、深雪さん。それはね、模部くんが悠仁くんのエンジニアの担当するって言っているのだけれど悠仁くんがそれを断っているの」

 

真由美のこの答えに雫が口を挿む。

 

「男子“クラウド・ボール”の担当だとしても、今まで練習どころか本番でも悠仁の調整とかしてない。悠仁が本戦に出場したから急に担当になろうとするとか図々しすぎる……と思います」

 

「北山さんの言う通り。いくら本戦出場者の実績が欲しいからといってこれはあんまりだわ。でも、十文字くんがそろそろ……」

 

真由美がそう言うと、言い争っていた二人に克人が話を割って入り込んだ。

 

「模部、いい加減しろ。確かにお前は一年男子の“クラウド・ボール”担当者だが、今まで黒岩の調整を一回もしていない事は分かっている。そんな者に黒岩の本戦の担当を任せる訳にはいかない」

 

「うっ…」

 

克人の圧にたじろぐ模部。

少して、悠仁を睨みつけるとその場を退散していった。

 

「十文字会頭、ありがとうございます」

 

「当然の事だ。それと黒岩、決勝もその調子で頼む」

 

そう言うと克人も一高の本部から離れていった。

 

 

 

「災難だったな」

 

「ん?」

 

十文字先輩にお礼を言った直後、背後から話しかけられた。

振り向くと達也達がいた。

 

「何だ、達也か…。あ…そういえば、深雪、雫。“アイス・ピラーズ・ブレイク”本戦出場おめでとう」

 

「「ありがとう(ございます)」」

 

「んで、災難とは?」

 

深雪達の本戦出場を祝った後、先ほどの達也の発言を問いかけた。

 

「さっき、エンジニアの先輩と言い争ってただろ?」

 

「あれ、見てたんだ…。何で俺の調整した事ないのに急に担当になりたかったんだろう?」

 

「悠仁…。本当に気付いてない?」

 

「うん」

 

そう言うと雫が、模部先輩が俺の担当になりたがる訳を聞いた。

 

「なるほど〜。実績稼ぎか…」

 

「悠仁、むかつかないの?」

 

「いや、別に?正直、俺の調整しようとしなければ、名前ぐらい貸すのにとは思った。…そんな事より達也達はこの後、どうするんだ?」

 

俺の答えに雫が不機嫌になっていたので慌てて話を変える。

 

「どうするってお前の試合を見る予定だが?」

 

「そう?なら、応援頼んだよ」

 

試合の控え室に向かう為、この場を去る。

というか、さっきまでここで先輩と言い争っていたから視線が痛い…。

俺何にも悪くないのに…。

 


 

何だかんだで時間が進み、九校戦5日目も終盤に差し掛かる。

女子“クラウド・ボール”は全ての試合が終わり結果が決まった。

 

一位 一色 愛梨

二位 里美 スバル

三位 三高 A子

 

ちなみに三位は三高の選手だったが名前は覚えていない。

A子で十分だろう…。

 

男子は悠仁が初戦を勝つとパワプロのごとく、決勝まで快進撃を遂げた。

対戦相手は三高の選手だそうだ。

名前?

三高 B男で十分だ。

悠仁とB男はコートに立ち、試合開始の合図を待っていた。

 

そんな様子を達也達は観客席から見ていた。

深雪が達也に話しかける。

 

「お兄様、悠仁さんが決勝まで勝ち進みましたね。決勝戦もあの戦い方をするのでしょうか?」

 

あの戦い方というのは、ボールを相手コートに叩きつけた後、ボールが弾まないように加重系統の魔法でボールを押し続ける戦法の事だ。

 

「おそらくな…」

 

そこでエリカが口を挿む。

 

「そういえばなんだけど、どうして悠仁は相手の選手の魔法にも負けず、ボールに魔法をかけ続けられているの?普通に考えれば、相手選手よりも魔法の『干渉力』が強いって事だよね?そのぐらい『干渉力』が強いのなら悠仁は一科生にいてもおかしくないと思うのだけど…」

 

「一応悠仁が言うには…」

 

悠仁はボール()()に魔法をかけていない。

ボールにではなく、ボールを含む周りの()()に魔法を発動させている。

実際、これまでの相手選手もボールに魔法を発動する事は成功している。

にも関わらず、ボールが持ち上がらないのは、ボールが持ち上がる力よりもボールが落ちる力が強いからである。

用は、悠仁の魔法の方が威力が上の為、ボールが落ち続けているのだ。

ボールそのものに魔法を発動すると『干渉力』が低い悠仁は相手に魔法を上書きされてしまう。

悠仁は魔法の威力勝負にもっていく為にボールではなく、空間に魔法を発動しているのだ。

 

「……という事らしい。実際、会長と練習試合してた時は、ボールを強引に持ち上げられて悠仁は負けていたからな」

 

「……という事は生徒会長レベルじゃないと相手にならないのね…。なら、今までの悠仁の結果も納得できるわ」

 

達也の説明に納得したエリカは今までの悠仁の結果を思い返しながらそう呟いた。

悠仁はここまでの試合全て、9対0でストレート勝ちしてきている。

そんな悠仁を見ようと観客も相手選手ではなく、悠仁を注目していた。

 

試合開始の合図が鳴った。

ボールは悠仁側のコートに排出された。

 

「スネイク!」

 

悠仁が打ち上げるボールは、相手コートで急激に斜めに落ちる。

だが、B男もボールを正確に見極め、ボールの落下地点に入り込みボールを打ち返す。

 

「達也くん、悠仁の試合を見てずっと思っていたんだけど、悠仁のアレって魔法使ってないよね?」

 

試合の様子を見ていたエリカが達也に解説を求める。

 

「ああ、そうだ。打つ時も魔法を発動させたら、悠仁が想子(サイオン)切れになってしまうからな…」

 

達也のこの発言に達也、エリカを除く全員が驚く。

そして、今度はレオが質問する。

 

「だけどよー。流石に魔法を使わないとあんな軌道のボールになるか?」

 

レオの質問は尤もだろう。

他の全員も同じ事思っていた。

 

「分からん」

 

「「「「「ハァ?」」」」」

 

「あいつに原理は聞いたがよく分からん。一応アイツが言うには…」

 

 

説明しよう!『スネイク』とは!

テニヌ界の青学の『マムシ』こと海● 薫が得意としているショット。

鋭い変化を見せるバギーホイップショットの事である。

身体を固定させた状態でボールを引きつけて上方にこすりつけながら打ち上げるのがコツだぞ!

 

「……だそうだ」

 

「達也さん、そもそも『テニヌ』何?」

 

今度は雫が達也に質問する。

 

「アイツに聞いたが『テニヌはテニヌだろ?テニスと一緒にしてもらっては困る』とか意味分からん事言っていた」

 

「……意味不明」

 

「全くだ」

 

そんな話をしていると悠仁が仕掛ける。

今まで、悠仁は『スネイク』、普通の強打を使い分けていた。

しかし、この決勝では全てのボールが拾われてしまう為、悠仁は別の必殺ショットを使う。

テイクバックの姿勢からボールを打ち込む。

悠仁が打ち込んだボールはB男の目の前でフォークボールのように真下に落ちた。

ボールはB男のコートに落ち、悠仁は一点を先制した。

 

「達也さん今のは?」

 

ほのかが今の悠仁のショットについて解説を求めた。

 

「あれは、『かまいたち』と言うらしい」

 

 

説明しようパート2!かまいたちとは!

テニヌ界の立海の『達人』(マスター)こと柳 ●二が使用する必殺ショット。

テイクバックの姿勢から両手を水平に上げながらボールを打つことにより、打ったボールにもの凄い回転かける高速スライスショットだ。

 

「……だそうだ」

 

「ごめんなさい。意味が分かりません」

 

「同感だ。先に言っておくが悠仁の必殺ショットは他にもある。理解を諦めるのが賢明だ」

 

達也達に不本意な事を言われているとは知らず、悠仁は『スネイク』、『かまいたち』を使い分け、試合を進める。

 

9対0

 

1セット目を悠仁が先取した。

悠仁は休憩中にこんな事思っていた。

 

(ようやく、骨のある奴出てきたな…。練習の成果がやっと見せられるかもしれないな)

 

悠仁はこの一ヶ月間、“クラウド・ボール”の練習としてずっとテニヌの必殺ショットの再現に勤しんでいた。

悠仁が再現できた必殺ショットは四つ。

その四つ全て出せるかもと思いワクワクしていた。

 

一方、三高側は悠仁に恐怖していた。

悠仁がボールを打ち込む時に魔法を使っていないのは分かっている。

なのにボールはカーブボールやフォークボールのように急激に落ちてくる。

しかも原理は不明……。

悠仁はもう、理解不能の『化け物』として扱われていた。

 

そうとは知らず、悠仁はコートに戻る。

少しすると第二セットの試合が始まる。

 

B男は少し、戦い方を変えた。

第一セットは、自信に移動魔法をかける事によりボールがコートに落ちる前にボールを打ち込んでいた。

だが、ボールの急激な変化に対応できず、第一セットを取られてしまった。

第二セットからはボールがコートに入った瞬間にボール直接に魔法を発動し、ボールの動きを強制的に止める。

これによりボールの急激な変化を防いでいた。

 

(いいね。もう対応してきたか…。ならこれは防げるかな?)

 

悠仁はそう思い、別の必殺ショットを繰り出した。

悠仁がボールを打つとボールが複数に分裂した。

分裂するボールに照準を合わせられず、B男は悠仁に一点を取られる。

 

「……あの、達也?流石にこれは魔法を使っているよね?」

 

幹比古が悠仁の分裂する打球について、問いただす。

 

「……悠仁曰く、魔法を使っていないらしい…。嘘であってほしいが…。」

 

「………」

 

「幹比古、気持ちは分かる。一応、悠仁が言うには…」

 

説明しようパート3!『あばれ球』

ラケットのフレーム部分でボールを打ち込む事でボールがブレて、分裂しているように見えるショットだ。

あくまでも、ブレ球なだけで実際に分裂はしていない。

 

「……という事らしい」

 

「達也……」

 

「何だ幹比古?」

 

「…魔法って何だろうね」

 

「幹比古、あれは『テニヌ』だ。魔法ではない。理解しない方がいい」

 

達也がテニヌを理解してきた所で点差は4対0。

依然、悠仁が得点を重ねている。

だが、B男は“あばれ球”にも何だかんだで対応してきた。

もう執念みたいなものも感じる。

そんなB男に最後の必殺ショットを解禁する。

悠仁がボールを打ち込む。

打ち込んだボールはレーザーのようにB男のコートに向かっていく。

残り四発も悠仁は全部打ち込む。

B男は一歩も動けない。

気づいた時にはボールは全部コートに叩きつけられていた。

第二セットの最後はスローモーションカメラでしか確認できないくらいの超高速ショットで決着を決めるのであった。

 

悠仁が第二セットも取った。

にも関わらず、何故かお通夜状態の達也達。

達也は一応、今の悠仁の必殺ショットを説明しようとする。

 

「……あれはだな…」

 

達也の解説にエリカが入り込む。

 

「待って、達也くん。流石にあれは魔法を使ったの。有無は言わせないわよ」

 

「残念だがエリカ、あれも魔法は…」

 

「いや、流石に魔法でしょ!視認出来ない程のショットなんて魔法無しでどう出すの!!」

 

その言葉に達也を除く全員が頷く。

 

「一応、悠仁が言うには…」

 

説明しようパート4!『レーザービーム』

テニヌ界の立海の『紳士』(ジェントルマン)こと柳● 比呂士が使用する必殺ショットである。

このショットは名前の通り、レーザーのような速い球速でコートを打ち抜く超高速パッシング・ショットの事である。

えっ?どうやって打つのかって?

頑張って気合いで振り抜けば出来るぞ!

 

「あーもう!訳わかんない!!」

 

達也の説明にさらに困惑するエリカ。

そこに深雪が…

 

「エリカ。……これがテニヌよ」

 

「深雪!?」

 

「深雪の言う通りだエリカ。これがテニヌだ」

 

「二人共!正気に戻って!!」

 

二人を正気に戻そうと必死なエリカだったが、テニヌに洗脳された二人は元に戻る事は無かった。

 

いつの間にか第三セットも始まっていたが、第一、第二セットで想子(サイオン)を使い果たしてしまったB男は悠仁の必殺ショットに対応出来なくなってしまった。

 

9対0

 

悠仁は全ての試合、9対0のストレート勝ちで優勝を決めるのであった。

なお、この試合で『テニヌ』というか概念が“クラウド・ボール”界で浸透される大きなきっかけとなったのであった。

 

 


 

 

五日目 宿舎

夕食の時間となり、一高生達は食堂に来ていた。

この時間は、ご飯を食べるのは当然だが、それ以上に今日の試合の結果を仲間達と一緒に喜んだり、悔しがったりする時間でもある。

今晩の一年生達の様子は明暗が分かれていた。

明るいのは一年女子。

一年女子の殆どが本戦出場。

達也が担当した選手は負けなしと絶好調の状態だ。

暗いのは一年男子。

入賞ができたのが森崎くんのみ。

他の人はほぼ予選落ち。

しかも仲間外れにしていた俺が一位になるもんだからさらに暗くなっていた。

一年女子のグループの中に達也もちゃっかり入っており、現在、達也は女子達にチヤホヤされていた。

 

べ、別に羨ましいなんて思っていないんだからね!

 

心の中でツンデレながら飯を一人で食べていたらななみん先輩から声がかかった。

リンちゃん先輩も一緒のようだ。

 

「お疲れ様、悠仁くん。優勝おめでとう」

 

「ありがとうございます。ななみん先輩達からの推薦で選手になりましたからね…。このくらい、当然ですよ」

 

「あら、頼もしいわね」

 

「そういえば、今の順位ってどんな感じなんですか?」

 

その質問には隣にいたリンちゃん先輩が答えてくれた。

 

「今の所、総合順位は一位の状態ですが新人戦は三高が一位、我々は二位の状態です。黒岩くんが優勝をしたおかげで点差自体はそこまでないですね」

 

リンちゃん先輩に現在の各校の点数を見せてもらった。

そして…

 

「思ったより三高との差がないですね…。これ、もしかしなくてもこのままじゃ新人戦、負けません?」

 

「そうですね…。予想以上に三高の一年生のレベルが高いですね…。司波くんが担当した競技以外は上位三位の中に必ず三高の選手がいる事が大きいですね。」

 

「もし、女子“アイス・ピラーズ・ブレイク”と“ミラージ・バット”の二つの上位独占という条件でシュミレートしてみたらどうなりますか?」

 

「司波くんが担当する競技ですか?可能性は無くは…ありませんね。少し計算してみます。……“モノリス・コード”の結果次第ですね…」

 

「“モノリス・コード”か…。ヤバいですね。“プリンス”と“カーディナル”の二人がいるとか正直、反則じゃないですか?男子には言いづらいけど、一位はほぼほぼ三高で決まりみたいなもんですね…」

 

俺の本音にななみん先輩が注意する。

 

「こら、悠仁くん。そんな事言ってはダメよ!勝負は何があるか分からないから!」

 

「それは同感ですが、男子の様子を見ると…ね。俺と達也が活躍したから余計に空回りしてる状態ですよ?あれ、何とかしないとアイツら負け癖がついて来年以降が大変ですよ?どうするつもりなんですか?」

 

「そこについては十文字くんが喝を入れると言っていたわ」

 

「なら、大丈夫ですかね」

 

そんな事言っていると森崎君達が怒って食堂を出て行ってしまった。

 

「……今すぐにでも喝を入れないとダメそうですね」

 

「……そのようね。ちょっと十文字くんと相談してくるわ」

 

そう言うとななみん先輩達は十文字先輩の所へ向かっていった。

 

それにしても飯美味いな…。

特にこのローストビーフ。

どんな風に作ってんだろ?

ちょっと伝手を使ってレシピ教えてもらおうかな…。

 

「ねぇ、悠仁」

 

「ん?」

 

ローストビーフに舌鼓を打っていると急に声をかけられた。

振り向くとそこには雫がいた。

何か真剣な表情をしている…。

 

「明日、“アイス・ピラーズ・ブレイク”。勝ち進めば深雪と戦える。悠仁、わたし勝てると思う?」

 

「ん〜。ワンチャン可能性があるかもって感じかな…。勝率は10%ぐらいかな」

 

「そこは、『雫なら勝てるよ』って言う所だと思う」

 

「勝負事で誤魔化すのは嫌いだからな」

 

「けど、0%じゃないだけマシ。明日は絶対、勝ち進んで深雪と戦う。悠仁その時は協力して」

 

「了解、お嬢様」

 

「悠仁…その言い方は辞めて」

 

「事実じゃないか…。もう、ワガママだな〜分かりましたよお嬢様()

 

「……絶対、心の中でお嬢様って言ってるでしょ?」

 

「気の所為だ」

 

雫はジト目になりながら問い詰めるが、俺はそれを軽く受け流す。

それから、雫と少しお話ししたところで食事の時間が終わった。

その後は疲れもあってか、ベットに入るとそのまま寝てしまうのであった。

 

 





何か色々詰め込んだら長くなりました笑
今回オリキャラも登場しました。

モブ共「どうもー」

ただ、一番活躍したB男も含めてモブ共は二度と出る事が出来ません。

モブ共「ハァ!?」

フハハハハ!お前は所詮モブ。お前らなんぞ使わなくても第二、第三のモブが出てくるのだ!
C子とか模部田とかな!

……てな感じで偶に名前付きのモブ共が出現するんで見かけても生暖かい目で見てやって下さい。
これからもよろしくお願いします。


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九校戦編Ⅻ


皆様、お久しぶりです〜。
前回投稿から2ヶ月ぐらいですかね…。
遅くなり申し訳ございませんでした!!

ただ、単純に出張とか休日出勤とかやってたら、こんな時間掛っちゃいました(笑)

投稿期間については不定期になりますが一応、続ける予定です!
これからもよろしくお願いします。



 

 

九校戦六日目

 

午前は“バトル・ボード”の本戦〜決勝だった。

結果を言えば、ほのかが一位、沓子が二位だった。

えっ?

もっと詳しく説明しろ?

レースなんてもんは結局、誰が速かったかそれだけだ。

俺に細かい説明は求めんな。

 

その後は“アイス・ピラーズ・ブレイク”の本戦〜決勝。

何だかんだあって、深雪、雫が決勝進出した。

意外だったのは最後の一高選手のエイミィだ。

準決勝で栞と対戦して接戦の末に負けてしまった。

なお、栞の方も魔法力を使い果たしてしまい棄権している。

んで、今は大会役員からの提案で決勝戦は行わず、同時優勝にしてみてはどうだという提案を受けている所だ。

そして、俺は雫の呼び出しで一高本部にいるのであった…。

 

「悠仁、誰に向かって言っているんだ?」

 

達也から呆れたような顔でツッコミが飛ぶ。

 

「誰って…お茶の間?」

 

「……聞いた俺が馬鹿だった」

 

そこにななみん先輩が口を挿む。

 

「まぁまぁ、いつもの事じゃない。それに今はそんな事よりも決勝についてだわ。深雪さん、北山さん、あなた達はどうしたいですか?」

 

達也にななみん先輩?

馬鹿って何?

いつもの事って何?

俺の事ってどう思ってんですか?

達也達に問い詰めたいが、今はそんな空気ではない。

俺は大人だから空気が読めるのだ!

だから後で問い詰めよう!

 

そんな事思っていると雫が口を開く。

 

「戦いたい、と思います。深雪と本気で競う事ができる機会なんて、この先に何回あるか…。私は、このチャンスを逃したくない、です」

 

強い意志が込められた目でななみん先輩を見つめた。

 

「そうですか……」

 

ななみん先輩は息を一つついた後、深雪に問いかける。

 

「深雪さんはどうしたいのですか?」

 

「北山さんがわたしとの試合を望むのであれば、わたしの方にそれをお断りする理由はありません」

 

まぁ、深雪ならそう言うだろうな…。

 

「分かりました……。ではこのまま決勝戦を行うことにすると大会役員に伝えておきます。決勝は午後一番になるでしょうから、試合の準備を始めた方がいいでしょうね」

 

「分かりました。では、失礼します」

 

達也はそう言い、一礼するとミーティングルームを立ち去る。

俺達もそれに続き、達也の後を追うのであった。

 

 


 

 

女子“アイス・ピラーズ・ブレイク”決勝

 

観客は超満員。

俺と達也は関係者用の観覧席にいた。

なお、ななみん先輩と摩利さんも一緒である。

ななみん先輩はニヤニヤしながら達也にちょっかいをかけ始めた。

 

「達也くんはどっちを応援してるの?」

 

「もちろん深雪ですが?」

 

達也は即答した。

この答えにななみん先輩と摩利はフリーズしてしまった。

少しすると摩利さんが復活したので達也に問いかける。

 

「……達也くん。北山の事は応援しないのか?調整をしたんだろう?」

 

「決勝の調整は俺でなく、悠仁がやっています。だから遠慮なく深雪を応援してます」

 

「「えっ!?」」

 

達也の発言に驚く二人。

 

「どうゆう事なの悠仁くん!」

「どうゆう事だ悠仁?」

 

うわ〜やっぱりこうなった…。

とりあえず説明しておくか…。

 

「……達也とリンちゃん先輩には話を通したんですけど、実は練習期間の時から“打倒!深雪!!”の為に秘密の特訓をしてたんですよ」

 

「だけど、なんで悠仁くんが?」

 

「ん〜、質問を質問で返すのはちょっとアレですけど…。達也も含めてですけど、雫からこの競技の事で相談とか受けませんでした?」

 

俺の質問に達也が答える。

 

「深雪に勝てるかどうかは聞かれたな…」

 

「なんて答えた?」

 

「勝てるか分からないが最善は尽くすみたいな事を言ったぞ?」

 

「俺は九分九厘、深雪に勝てないと言った」

 

また、空気が固まった。

少しして、摩利さんが…

 

「オイ、悠仁…。いくらなんでもそれはないんじゃないか?」

 

「勝負事に関しては嘘は言わないつもりなんで…。まぁ、当然、雫には理由を聞かれたんで勝てない理由と深雪に勝つ為の策を言ってたら何かこうなってました」

 

「そうか…。で、今はどれくらいの勝率なんだ?」

 

「10%ぐらいですね。けど、まぁ、見てて下さいよ。少なくても面白い戦いになりますから」

 

そう言ってるうちに決勝戦が始まった。

 

深雪は振動系統魔法氷炎地獄(インフェルノ)*1を発動。

雫の陣地は灼熱、深雪の陣地は極寒と化す。

対する雫は情報強化*2の魔法により自陣の氷柱が溶けるのを防ぎながら共振破壊*3の魔法で深雪陣地の氷柱を攻撃する。

雫の魔法は深雪の魔法のより封殺される。

一見、どちらも一歩も引かない互角の戦いを見せるが…

 

「深雪さんの方が優勢だわ」

 

試合を見ていたななみん先輩が口を出す。

続いて摩利さんが…

 

「北山の“情報強化”は直接的な加熱は防げているが周りの気温による加熱は防げていないからな…。これはジリ貧になるぞ」

 

「お二人共、勝負はまだこれからですよ?」

 

実際、これは想定内の展開だからな…

 

雫が動きを見せる。

懐から二つ目のCADを取り出した。

それに動揺する深雪。

 

ここまでは原作と同じ展開だ。

ただ、ここからは…

 

雫は振動系統魔法“フォノンメーザー”*4を深雪陣地の氷柱の()()に放った。

 

「フォノンメーザー!?」

 

「けど、外れたぞ!」

 

深雪も雫の魔法が外れて安心しているな…

けど、ここからだぞ?

 

雫の“フォノンメーザー”は深雪陣地の上空に留まる。

そして、新たな魔法陣が出現すると、放たれた“フォノンメーザー”が()()()()()し、それぞれの氷柱に降り注ぐ。

 

「なっ!?」

 

ふふん♪

全員の驚く顔が見れたぜ!

このまま行ったれ!雫!!

 

が…

氷柱が溶ける前に深雪は新たに振動・減速の系統魔法”ニブルヘイム“*5を発動する。

雫の“フォノンメーザー”を熱光線上回る冷気が発生し、雫の魔法を封殺する。

そして再び…

氷炎地獄(インフェルノ)

急激に冷やされ、結露を起こしていた氷柱が再び高温で加熱された。

それにより氷柱の水滴が気化を起こし…

 

ボゴォン!!!

 

雫の陣地の全ての氷柱が爆散。

“新人戦女子アイス・ピラーズ・ブレイク”決勝は深雪の方に軍配が上がった。

 


 

決勝が終わったので、雫に声をかけに行こう!

そう思って雫の所に向かおうと思ったんだが…。

控室でほのかと雫の声が聞こえた。

……何かほのかに任せておいた方がいいな。

俺は空気の読める男!

何も聞かなかったことにするZE!

……とりあえずあのブラコン、シスコンの所に行くか…。

 

少し探すとラウンジで達也と深雪を見つけた。

 

「深雪、優勝おめでとう。達也もお疲れ〜」

 

「ありがとうございます」

 

「ああ、お疲れ。……それにしても悠仁、雫は?」

 

「さっき控室にほのかと二人でいたよ。今はそっとしておいた方がいいと思ってな…」

 

「……意外ですね。悠仁さんにそんな気遣いができるとは」

 

オイ、達也。

お前も頷くな。

俺以上に人の事言えないじゃないか。

 

「……とんでもないこと言うね。冗談だよね?後、達也。お前はふざけんな」

 

「ふふ…。さて、どうでしょう?」

 

「何故に俺だけあたりが強いんだ?」

 

深雪達と話していると雫とほのかがやってきた。

ほのかは何か気まずそうだ。

 

「悠仁…。ちょっといい?」

 

ん?

達也でも深雪でもなく俺?

 

「別にいいが…。達也達と一緒でもいいか?」

 

「うん。達也さん、同席してもいい?」

 

「いいよ。もちろん」

 

雫達が席に座るとウェイトレスを呼び、注文をする。

 

「俺はケーキセット。飲み物はコーヒーで」

 

続けて四人も同じ物を頼む。

少しするとケーキと飲み物が出てきた。

そして達也が雫達に目を向けると…。

 

「優勝と準優勝のお祝いだ。ここは俺がご馳走するよ」

 

「えっ、いいんですか!」

 

「……じゃあ、ここは遠慮なく」

 

「マジで!センキュー達也!」

 

ほのかは戸惑っていたが、雫と俺は遠慮なくご馳走になろうとしたが…。

 

「……オイ、悠仁。お前には言っていない」

 

「………えっ?」

 

「俺はほのかと雫の二人に言ったんだ」

 

「え〜、だって優勝と準優勝のお祝いなんだろ〜。俺も優勝したぞ〜。奢ってよ〜」

 

「……そうだな。お前も優勝してたんだったな…。分かった、奢ろう…。」

 

達也は渋々そう言ってくれた。

そんな達也に満面の笑みで……。

 

「ゴチになりま〜す!」

 

(イラッ!)

悠仁の言動に一瞬怒りを覚える達也。

 

そんな感じで談笑?しているとほのかが…。

 

「あっ、あの!」

 

「うん?」

 

「その、優勝できたのは達也さんのおかげです!ありがとうございました!!」

 

「少しだけどな」

 

ほのかと達也が話をしていたので俺は雫に話しかける。

 

「雫、お疲れ」

 

「……うん」

 

「でも、悪かったな。散々、偉そうな事言っておいて勝たせる事が出来なかった」

 

「あっ、ううん。悠仁は全然悪くないよ。そもそもアレがなかったら、反撃の手段すら無かったんだし」

 

雫は勢いよく頭を下げる。

 

「マスターできなかった私の所為。私の方こそゴメンナサイ。アレを使いこなせていれば、もっといい試合ができたのに。深雪にも、歯応えが無い相手で申し訳無かったと思っている」

 

「そんな事ないわ。あの時は本当にビックリしたのよ。複数CADの同時操作。高等魔法“フォノンメーザー”の発動。外れたと思ったら全ての氷柱にそれが降り注ぐのだもの」

 

深雪は雫に向かって笑顔で首を横に振って見せた後、冗談っぽく俺を睨みつけてきた。

 

「悠仁さん、本気でわたしを負かすおつもりでしたね?」

 

「そりゃあ、勿論だろう」

 

「それに、あの魔法はなんなんですか!」

 

「それは、俺も気になっていた」

 

「わたしもです!」

 

俺達の会話に達也達も参戦する。

 

「何って、“フォノンメーザー”だが…。“フォノンメーザー”の魔法データは達也がくれたじゃないか」

 

「俺はあんなのを渡してないんだが…」

 

「そりゃあ、勝てるようにアレンジしたけど…」

 

「俺達はそれを聞きたいんだ」

 

「……まぁ、いいけど」

 

俺は達也達に魔法の説明をする。

 

「アレは既存の“フォノンメーザー”に条件起動の術式を追加した派生魔法だよ」

 

()()()()()()()?」

 

「そう、条件起動…。起動式に組み込んでおけば、決められた条件になったら自動的に発動する術式。達也も知っているだろ?」

 

「あぁ…」

 

「アレは魔法が氷柱の上空に()()()()()()()ら上空に熱光線を溜め込む条件を加えた」

 

「なら、その後は?」

 

「溜め込んだ熱光線を九つに分裂させて放出する条件で魔法を発動したんだ。この魔法の利点は一つの魔法発動で様々な動きが可能になる事。仮に魔法が外れてしまっても先に条件さえ組み込んでおけば追尾する様な動きなんて事もできる。新たに魔法を発動し直すよりも今、発動している魔法を変化させた方が確実に速く魔法を当てる事ができるからね」

 

「最初の起動式の演算に時間はかかるけど、それができてしまえば、後は術者の決めたタイミングで魔法を変化させながら発動できる。今回は九校戦仕様に合わせたから限定的だったけど、本来は色々な条件を組み込んでおいて、その状況に合わせて“フォノンメーザー”を変化させながら確実に魔法を当てる事をコンセプトにアレンジした魔法」

 

一息入れると少し自慢げに…

 

「“フォノンメーザー・変化型(モード・シフト)”。魔法名にするならこんな名前かな」

 

「どうしてそのような魔法にしたのですか?」

 

「深雪に勝つにはCADの同時操作で動揺させた後、魔法を発動。でもその魔法が外れて深雪に安心させて油断させて後、九つの氷柱を同時に壊す。深雪に勝つにはこの方法しか無いと思ったからだよ。雫は九つの氷柱を同時に壊す魔法なんてなかったしね。唯一、雫が覚えられそうで威力の高い魔法は“フォノンメーザー”しか無かった。ならそれを上手いことアレンジすれば勝てると思って考えた結果がこの魔法」

 

雫もこの話に口を挿む。

 

「実際、悠仁の筋書き通りに進んだ。練習の時は、『鬼、鬼畜、悪魔』とか思ったけど、今となっては感謝してる」

 

「……雫さん?どうしてそう思ったかな?怒らないからお兄さん説明してほしなー」

 

本当にこの娘は…。

なんて事言うんだ…。

皆が誤解するだろう?

 

皆の誤解を解こうとする前に達也達が…。

 

「雫、悪いが悠仁にどんな事されたんだ?」

 

「雫、わたしも気になるわ」

 

「私も!」

 

「ちょっと…」

 

「悠仁は黙って!」

 

その後、雫が俺の秘密の特訓について詳しく話すのであった。

なお、雫の話を聞いて他の三人はドン引きしていた。

 

……解せぬ。

 

*1
対象エリアを二分し一方の振動、運動エネルギーを減速し、その余剰エネルギーをもう一方に逃がす魔法 。

隣接するエリアに灼熱と極寒を同時に発生させる

*2
対象物の現在の状態(エイドス)の一部又は全部を魔法式に複写して投射することによりエイドスの可変性を抑制する対抗魔法。ただ、情報強化で防げる魔法は直接的なものに限られており、間接的な効果は防げない

*3
対象物に無段階で振動数を上げていく魔法を掛け共鳴点を探し、「振動させる」という事象改変に対する抵抗が差異も小さい共鳴点を発見した時点で、対象を振動破壊する。

達也がアレンジした共振破壊は情報強化を避けるために、地面を振動させる間接的なものになっている。

*4
超音波照射による熱で攻撃する魔法。要するにものすごいレーザー光線

*5
領域内の物質を均質に冷却する領域魔法。応用としてダイヤモンドダスト、ドライアイス粒子、液体窒素の霧を含む大規模冷却塊を作り出し、攻撃対象にぶつけるという使用法もあるらしい





ナガトさん
長文のメッセージありがとうございます!
思いついたネタも書いていただきめちゃくちゃ嬉しかったです!
色々と参考にさせていただきます!

他の方々も感想や評価があれば是非お願いします!
その方がモチベが上がるので…。
皆様どうぞよろしくお願いします!!



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九校戦ⅩⅢ


皆様お久しぶりです!
今回はちょっと早く更新出来ましたー。
理由は…
風邪で寝込んで仕事休んでいたからです笑
何かプール熱に罹っちゃいました〜(プールなんて行ってないのに…)
皆様も気を付けて下さいね〜

では、どうぞ!




 

九校戦七日目

 

九校戦、新人戦も終わりが近い。

本日は女子“ミラージ・バット”の予選〜決勝と男子“モノリス・コード”の予選リーグの予定だ。

俺にとっては男子なんぞどうでもいいので、女子“ミラージ・バット”を見に来ていた。

“ミラージ・バット”にはほのかとスバルが出場した。

結果としては二人とも問題なく、決勝に進出した。

 

……ふと、思ったんだが、あの司波兄弟。

四葉との関係を隠す為、基本的に目立たないように高校生活を過ごすつもりだったんだよな?

隠す気あんのか?

誰がどう見てもあの兄弟は特別な何かがある!って思われても仕方ない成績を叩き出しているんだが…。

 

そんな事思いながら自販機で飲み物を買っていたら、後ろから声をかけられた。

 

「ちょっといいかしら?」

 

振り返ると愛梨達がいた。

 

「あ〜、三高の三人娘…」

 

「変な呼び方しないでもらえますか!」

 

「んで、なんか用?」

 

「……まぁ、いいです。まずは黒岩君、優勝おめでとうございます」

 

何か頭を抱えているのだが…。

頭痛かな?

まぁ、とりあえず…

 

「愛梨もね。それに二人も入賞おめでとう」

 

「ん、ありがとう」

 

「ありがとうなのじゃ〜」

 

「立ち話もなんだし、座って話をしようか?ついでに何か飲む?奢るよ」

 

そう言って三人に飲み物を奢った後、近くの休憩スペースに座り込む。

そして最初に愛梨が口を開く。

 

「改めてだけど、まずは謝罪させてもらうわ」

 

「謝罪?」

 

なんかあったけ?

謝ってもらう事無いと思うけど…。

 

「貴方に最初に会った時の話です。『貴方では三高の選手に勝てない』この発言については私が間違っていました。申し訳ございません」

 

「分かりました。私は貴方の謝罪を受け取ります。……これでいい?」

 

「……貴方ねぇ、正式に謝罪しているのだけど…。けど、貴方がいいならそれでいいわ」

 

そこに沓子が口を挿む。

 

「相変わらず、愛梨は律儀だの〜」

 

すかさず俺も…

 

「だよね〜。今の今まで忘れてたよ〜」

 

最後に栞が…

 

「…でもそこが愛梨の良いところ」

 

「〜貴方達、好き勝手言い過ぎですわよ!」

 

赤く顔を染めながら吐き捨てる愛梨に俺達は堪えきれず笑い出してしまうのであった。

 

少しすると…

 

「……悠仁、一ついい?」

 

栞が急に問いかけてきた。

 

「イイよー」

 

「実は貴方にお礼を言いたかったの…」

 

「お礼?」

 

「あの夜(の電話)の事…」

 

「ああ、あれね…」

 

「わたしはあの夜、話を聞いて(優しくして)くれた事、絶対に忘れない」

 

「あんなに泣き叫んでいたのにな…(笑)」

 

「言わないで…。恥ずかしい…」

 

「俺の方こそ、(思った事)ぶちまけちゃったけど大丈夫だったか?」

 

「大丈夫。身も心も曝け出した(気分だ)から気持ちが軽くなった」

 

「本当?栞の過去の話(恥ずかしい所)を突いちゃたけど…」

 

「それは、お互い様。わたしも悠仁の過去の話(恥ずかしい所)を知っちゃったもの」

 

「それならイイけど…」

 

「むしろ、弱っていたわたしにあんな事したのだもの……。悠仁に責任をとって貰おうかしら?」

 

「…勘弁してくれ」

 

「とにかく悠仁、本当にありがとう」

 

俺達の話に愛梨が参戦してきた。

何故か顔が赤いのだが…。

 

「貴方達!わたし達に秘密で何やっていたの!?」

 

……これはプライバシーな話だからな〜

栞の方に目を向けると向こうも同じ事思っているようだ。

ならここは…

 

「「秘密」」

 

「なっ!?」

 

愛梨は愕然としてる。

一方、沓子はケラケラ笑ってやがる。

何故だ?

 

「沓子も詳細は知らないが、一応、俺達の(電話の)事、知っている筈だぞ?きっかけは、沓子からだし…」

 

「なっ!?」

 

「こら、悠仁!ここでワシに振るのでは無い!」

 

……少し整理しよう。

何故、愛梨が赤くなっているのか。

ついでに固まってしまったのか。

そして、沓子は何故笑っているのか。

その答えは俺と栞の先程の会話が理由だと仮定する。

俺の(自称)IQ200の脳が導き出す答えは…。

 

ふっ…。

謎は全て解けた。

じっちゃんの名にかけて真実はいつも一つ!

 

沓子(裁判長)!一色愛梨被告は壮大な勘違いをしていると思われます。これは刑事裁判を開くべきだと思われます」

 

俺の意図に気付いた沓子はとても良い笑みを浮かべながら…

 

悠仁(検察官)の言う通りなのじゃ。では、只今より裁判を開廷するのじゃ!」

 

二人して愛梨をいじりながら、愛梨の誤解を解くのであった。

一応、愛梨の名誉の為にナニを想像していたかは言わないでおこう。

……めっちゃ楽しかった!!

 

 

そんなこんなで話ていたらある事故が起きた。

それは男子“モノリス・コード”予選で起きた。

四高による違反行動で一高の選手が負傷して病院送りになってしまったと言う内容だ。

 

「……これは、ゴメン。状況を確認したい。本部に戻るわ」

 

愛梨達にそう告げ、俺は一高本部に向かうのであった。

 

 


 

一高本部に向かう途中、達也に会った。

本部に向かいながら達也に状況を確認する。

 

「達也、さっきの中継見たか?」

 

「何の話だ?」

 

「その様子だと中継見ていないな?…“モノリス・コード”で事故らしい。しかも、森崎くん達の試合で…」

 

「それは、またどうして?」

 

「詳しくは知らん。何か四高の違反行動をしたらしい」

 

「『らしい』ってことは悠仁も詳しくは知らないんだな?」

 

「ああ、だから本部に向かってる」

 

 

そうこうしてるうちに一高本部に辿り着く。

中に入ると中の空気はとても重い。

うわーって思っていると中にいた深雪が達也を発見する。

 

「お兄様!」

 

深雪が一目散に駆け寄ってきた。

隣には雫の姿もある。

 

「“モノリス・コード”を観戦すると聞いていたが、悠仁が言った通りやはりモノリス・コードで事故があったんだな?」

 

「はい、事故と言いますか……」

 

「深雪、あれは事故じゃないよ」

 

言い淀む深雪の横から雫が強い口調で口を挿む。

 

「故意の過剰攻撃(オーバー・アタック)。明確なルール違反だよ」

 

うわ〜。

雫さん激オコじゃないですか…。

気持ちは分からんでもないけど…。

 

「雫……今の段階であまり滅多なこと言うものじゃないわ。まだ()()の故意によるものという確証は無いんだから」

 

「そうですよ、北山さん」

 

雫達の背後から、ななみん先輩が割り込んできた。

 

「単なる事故とは考えにくい……それは確かですけど、決めつけてはダメ。疑心暗鬼は口にするほどますます膨れ上がって、それがいつの間にか事実として独り歩きしてしまうものだから」

 

ほー。

いかにも()()()って言う正論だな。

普段の姿ではあまり考えられないな〜。

さすが()()()()(笑)?だな〜。

雫も反省しているそうだし…。

 

そんな事思っていたらななみん先輩がジト目でこちらを見てきた。

 

「……何ですか?」

 

「……何か失礼な事考えていない?」

 

「いや?さすが生徒会長って考えていましたよ」

 

 

「そう?……まぁ、いいわ。ねぇ、達也くん、少し相談したいことがあるんだけど…」

 

ななみん先輩は納得はしていなかったがすぐに話を切り上げた。

それどころではないんだろう…。

代わりに達也に話しかていた。

 

「自分ですか?」

 

「チョッと、一緒に来てくれないかな?」

 

「……分かりました」

 

達也とそう言うと二人は天幕の奥に向かっていった。

何かすごい睨みつけている深雪を放っておいて…。

 


 

その後、二人に詳しい話を聞いた。

森崎くん達は四高選手の『破城槌(はじょうつい)*1』を廃ビルの中で受けて瓦礫の下敷きになったこと。

病院送りになってこの後の試合に出場出来ないことなど。

 

「それにしてもほのか、大丈夫かな…」

 

「ええ、この後の決勝に支障が無ければいいのだけれど…」

 

雫も深雪も不安そうだ。

それも仕方ないか…。

同級生が怪我で病院送りになっっちゃったから…。

 

「大丈夫だろう…」

 

「「えっ?」」

 

「何たって達也がいるからな。だから大丈夫。不安だったらアイツの側にいればいいぞ」

 

俺の言葉に雫が少し呆れながらツッコミをする。

 

「……そこは普通、『俺がいるから大丈夫』って言う所じゃない?」

 

「フッ……深雪はどう思う?」

 

「えっ?まぁ、悠仁さんよりお兄様の方が安心感がありますね…」

 

「……雫。これが答えだ」

 

「……何か違う気がするし、悠仁、自分で言って悲しくならない?」

 

……なります。

精神年齢で言えばもう四十歳ぐらいなのに十六歳ぐらいの高校生に安心感で負けるってどうよ?

 

けど、この会話のおかげか、不安そうな二人だったか、少し落ち着きを取り戻すのであった。

 

 


 

 

その後の話をしよう。

午後に行われた“ミラージ・バット”の決勝はほのか、スバルのワン・ツーフィニッシュで幕を閉じた。

俺はほのか達と優勝の喜びを分かち合いたかったが何故かミーティングルームに呼び出された。

 

「失礼します」

 

中に入ると上級生の面々と達也がいた。

部屋の中に入るとななみん先輩が話を切り出す。

 

「悠仁くん、ご苦労様です。改めて、“クラウド・ボール”、優勝おめでとうございます」

 

「ありがとうございます。七草生徒会長の指導のおかげで優勝できました」

 

「……悠仁くんは九校戦では一種目しか出ておりません。そこで悠仁くんは達也くんと一緒に“モノリス・コード”の代役として出場してもらえませんか?」

 

「……色々お聞きしたい事がございますが、おそらく特例でどうにかしたのですよね?では、まず、何故、私に白羽の矢が立ったのでしょうか?」

 

「俺がお前を指名した」

 

俺の質問に達也が答える。

 

「会長達に“モノリス・コード”の代役になる事お願いされ、代役になることを承認した。そして、メンバーは俺が決めていいことになったから俺がお前と幹比古をメンバーに選んだ」

 

「……幹比古には?」

 

「この後、会長達と了承をとる」

 

最初は俺って訳ね…。

とりあえず、まずは点数の確認をしよう。

 

「……今回の新人戦は現在、辛うじて一位。対して三高は二位。“モノリス・コード”を棄権しても新人戦二位以上は確定。ただし、新人戦でも優勝を狙うのであれば、三高の“モノリス・コード”の一位を阻止しなければならない。……合ってますか?七草生徒会長」

 

「ええ」

 

って事は…

 

「つまり、三高に……いや、一条家次期当主の一条将輝(いちじょうまさき)に勝てと言いたいのですね」

 

「はい」

 

「それは学校の為にですか?」

 

「ええ、もちろんです」

 

……念のためもう一度聞こう。

 

「……それだけですか?」

 

「はい、そうですが?」

 

「それだけの為でしたら、私は“モノリス・コード”の代役の件を拒否します」

 

会長達の依頼をはっきりと拒絶した。

上級生の面々と達也はまさか断るとは…という面をしている。

そんな状況の中で…

 

「何故だ?」

 

重々しい声で十文字会頭が聞いてくる。

 

「メリットがありません」

 

「メリット?」

 

「はい。()()()()()()()()()()()一条将輝(クリムゾン・プリンス)”を倒すメリットが無いと言っております」

 

この発言に摩利さんや服部先輩が反応する。

 

「オイ、悠仁!」

 

「黒岩、『たかが、学校の為』ってどういうことだ!」

 

「黙れよ…」

 

殺意すら撒き散らしながら魔力を言葉に乗せ威圧する。

その威圧に当てられ、何も言えない上級生達。

部屋全体が異様な空気に包まれる。

 

「……続けますよ?貴方達は一条の次期当主に勝てと言った。学校の為だけに。確かに素晴らしい事だとは思いますよ?しかし、その後の話は一切しなかった。つまり一条に勝った後は何もしないと…。一条家、敷いては、十師族に目をつけられても放置だと…。デメリットしかないですよね?」

 

まだまだ言うことは沢山ある。

四月の案件の事も含めて鬱憤を晴らすように話をする。

 

()()()()()殿、()()()()()殿。一条家次期当主に勝つという事は魔法師界の政治的な部分に関わってしまいます。『もし、一高が勝ってしまったら』その後、どんな事が起きるか想像しているのでしょうか?」

 

「……」

 

「少なくとも、一条家、いや十師族の方から何らかの通達ぐらいはくるでしょうね。むしろ、それだけならばいいのですが…」

 

「……」

 

ななみん先輩も十文字先輩も何も言えない。

そりゃそうだよね。

だってそんな事考えられるのならこんな事、簡単には言えないだろう。

 

「………仕方ない。条件を一つ付けます。七草殿と十文字殿だけでお話しさせて下さい。それができれば、“モノリス・コード”に出ます」

 

 


 

そもそも、この件を簡単に返事する訳には行かなかった。

何故なら、以前、学校の為にテロリストを排除した後、ずっと付き纏っていた組織の中に、七草家と十文字家もいたのだから。

一条家の次期当主を倒したなんて起きれば、また監視とかするに決まっている。

時々、盗聴器とか勝手に仕込んでくるし、前に家に入られた形跡もあったから正直、怖い。

前までは、知らないフリして耐えていれば、その内どうにかなると思っていたが、これが不味かった。

ある程度、相手に危険と思わせなければ、監視なんてものはなくならない。

この四ヶ月で学んだ教訓がそれだ。

そして、これから二つの家には釘を刺そうと思う。

なんせ、今まで好き勝手監視していたんだ…。

なら、多少脅しになっても仕方ないでしょ?

 

「さて、先輩方、先程はすみませんでした。が、言いたい事は分かりましたよね?」

 

「ああ…」

 

「ええ…」

 

「先輩方はもう情報は入っていると思いますが、俺、千葉家の血筋じゃないけど、千葉を名乗る事を許されているんですよね〜」

 

悠仁は千葉家の段位で“皆伝”を認められている。

個人ではあるが千葉家の剣術を教えられる立場であるという事だ。

 

「だから、十師族ではありませんが、千葉家の名前の力を借ります。そうすれば、()()、政治的には問題は起きないでしょう」

 

あくまで多少だが…。

 

「ですので、“モノリス・コード”で使用する俺の魔法の詮索は絶対にやめて下さい。大会委員に説明を求められても絶対に拒否してください。見せる物によっては千葉家の秘術になります」

 

「ええ、分かったわ」

 

ななみん先輩と十文字先輩はこれで話が終わったと感じていた。

だが…

 

「よし、では本題に入りましょう!」

 

俺の発言に困惑する二人。

そんな二人を無視して、それぞれにA4サイズのファイルを渡す。

そして、神妙な口ぶりで…

 

「お二人共、これは一人で読むように…。そこにはあなた方の家の秘密をそれぞれに書き出しております」

 

「黒岩!」

 

中身を見たのだろう…。

十文字先輩が声を荒げるが…

 

「俺の要望は一つ。……いい加減、監視を止めろ

 

「監視?」

「………」

 

ななみん先輩は知らなそうだが……

反応的に十文字先輩は知ってそうだな?

 

「これ以上の監視を続ける場合、監視者を発見でき次第、()()します。この時に情報の抜き取りも行うつもりです。絶対です」

 

淡々と話す俺に何も言えない二人。

おそらく、二人とも俺の言う()()の意味を理解したのだろう。

 

「内容を読み次第、ファイルごと処理するのをオススメします。…俺は先輩方の人柄については好ましいと思っていますが、先輩方の家については不信感しかありません。ゆめゆめ、愚かな選択をしないようにして下さい。では、千葉家の当主と電話しないといけないので失礼しますね」

 

そう言って、俺はその場を去った。

 

 


 

 

達也の部屋に入るといつもの二科生メンバーが集まっていた。

 

「……来たか」

 

「来たぞ〜。とりあえず、俺も“モノリス・コード”に出ることになったからよろしく〜。んで、今、どんな状況?」

 

「とりあえず、今は先輩方に準備をしてもらっている最中だ。この際に作戦を決めたいと思う」

 

「おお〜」

 

「なんか悠仁、緩くないか?」

 

達也と俺のやりとりに幹比古が口を挿む。

 

「いや?さっきまで超絶真面目モードだったからね〜」

 

「それが答えになっているのかい?」

 

「幹比古、悠仁に構っているだけ無駄だ」

 

無駄って酷くない!?

達也はそのまま話を続けやがった。

 

「まず、フォーメーションだが、悠仁にはディフェンスを頼みたい」

 

「……了解〜。とりあえず、自陣のモノリスに近づく相手を倒せばいいんだろう。ついでにモノリスに魔法を撃ち込まれても硬化魔法で固めておけば、モノリスが崩れる事はないし…」

 

「ああ、そうだな。モノリスが崩れた後、元に戻すのは反則だが、崩れるのを阻止する事を禁止する記載はルールブックには載っていないからな。その認識で頼む」

 

「うわっ!?きったね…」

「悠仁、悪知恵だけは働くのね…」

 

何か、レオとエリカが心外な事言ってくるんだが…。

抗議しないとね。

 

「『きたない』とか『悪知恵』とは失礼な…。エリカもレオも同じような事言うんだな…」

 

「「どういうことだ(よ)」!!!!」

 

いや〜、いい感じで反応してくれるねー

面白い!

 

「ハイハイ、二人共、落ち着いて。今はちゃちゃ入れちゃダメですよー」

 

興奮した二人を宥める美月。

いや、マジで助かる。

 

「……じゃあ、いいか?幹比古には遊撃を頼みたい」

 

今度は幹比古の番のようだ。

達也から話を聞いた幹比古は…

 

「遊撃?」

 

「ああ、オフェンスとディフェンス、両方を側面し支援する役目だ」

 

幹比古に役目を説明した後、達也はそのまま質問する。

 

「この前の雷撃魔法、あの種類の遠隔魔法は他にも持っているんだろう?」

 

「それは、まぁ…」

 

幹比古の歯切れの悪い返事。

まぁ、古式魔法の家系は自分達の持っている魔法を隠したがるからな〜。

しゃあないか…。

 

「あの雷撃魔法は殺傷性ランクCだよな?」

 

「……あれは、あくまで麻痺させることを目的にした魔法だからCランク相当だよ。公開はしていないけど…」

 

「非公開か…。じゃあ、明日使うのはまずいんだろうな?」

 

「いや…構わない。秘密にしているのは魔法そのものじゃなくて発動過程だから。呪符じゃなくてCADで発動すれば大丈夫。……達也」

 

「何だ」

 

「達也は…言ったよね?僕の……吉田家の術式には無駄が多くて、そのせいで僕は魔法が思うように使えないって」

 

「ああ」

 

この発言には俺、達也、幹比古以外の全員が驚く。

エリカなんて凄い目で達也を見てるし…。

 

「あの時には術の正体を隠す偽装の術式が施されていた。でも、多分それが達也が言う無駄ってことなんだろうね」

 

「ああ…。長い呪文を唱えていた頃なら有効だったんだろう。しかし、CADで高速化された現代魔法においては有効ではない」

 

幹比古が小さく吹き出す。

しかし、その笑いには自嘲の色は無かった。

 

「ハハッ、なるほど、威力で勝っているはずの古式魔法が現代魔法に敵わない訳だ」

 

「それは違うぞ、幹比古」

 

「えっ?」

 

「古式魔法と現代魔法に優劣は無い。それぞれに長所と短所がある。単に正面からぶつかり合えば、発動速度が圧倒的に勝っている現代魔法に分があるという訳で、知覚外からの奇襲ならば古式魔法の威力と隠密性に軍配が上がるだろう。要は、使い方だ。九島閣下も仰っていたじゃないか。そして、俺がお前を推薦したのは、お前の持つ魔法の奇襲力が大きな武器になると考えたからだ」

 

「奇襲力ね……そんなこと言われたのは初めてだよ」

 

幹比古は瞼を閉じながらそう呟いた後、迷いを振り払うように目を開く。

 

「分かった。僕が使える術式は、呪符だけじゃなくてCADにも一応プログラムしてあるから、達也が思う通りににアレンジしてよ。僕は、達也を信じることにするから」

 

何か、いい話してるとこ悪いんだが…。

幹比古……俺は?

俺のことすっかり忘れていませんかね?

一応、幹比古の為色々としたと思っていたんだが…。

何か、達也に全部持ってかれた気分だ。

 

そう思いながらも幹比古と達也の会話はまだ続く。

 

「ありがとう、幹比古。信じてくれたついでに、もう一つ、教えて欲しいことがある」

 

「いいよ。必要なことなんだろう?だったら隠すつもりはない。僕をここに送り込んだのは父上なんだから、こういう経緯で秘密が漏れても、家として文句は言えないはずだ」

 

「安心してくれて良い。口は硬い方だ」

 

「あ〜……。俺も口は硬い方だ。ここで聞いたことは他言しないと約束するぜ」

 

「私もです」

 

「あたしが口、硬いの、知っているでしょ?」

 

「俺も俺も〜」

 

今まで黙って聞いていた達也と幹比古以外の俺達は競うように口の硬さをアピールした。

なお、幹比古は何故か、俺とエリカに対して胡散臭そうな目を向けてきやがった。

……エリカはともかく俺もそんな風に思われていたんだ…。

ちょっと傷つく。

 

「じゃあ、手短に訊くぞ。『視覚同調』は使えるか?」

 

「……そんなことまで知っているのかい?九重先生はそんなことまで君に教えているの?」

 

「まあな」

 

「……つくづく君には驚かされるよ、達也。えっと、質問の答えはYESだ。『五感同調』はまだ無理だけど、一度に二つまでなら『感覚同調』を使える」

 

「視覚だけで十分だよ、幹比古。じゃあ、作戦だが……」

 

一応、俺も関わりありそうなので、幹比古と一緒に達也の作戦を聞くのであった。

 

 


 

 

部屋を変えて、今は急ピッチで“モノリス・コード”の準備をしていた。

この部屋には俺達の他に深雪、後、調整のお手伝いにあーちゃん先輩もいる。

そして、達也が自分のと幹比古のCADの調整を終えた後、今度は俺の番になった。

 

「達也、悪いが俺のCADは俺がやる」

 

それに意義を唱えたのは意外にもあーちゃん先輩だった。

 

「待ってください。黒岩君には失礼ですけど、黒岩君のCADも司波君に調整してもらった方がいいのではないでしょうか?」

 

おそらく、先程の幹比古の調整を見てしまったのだろう。

アイツは簡単に魔法式を()()()()なんて言っていたが、実際にやっていたことは古式魔法の改良だ。

それをあーちゃん先輩は理解してしまったのだろう。

だが…。

 

「あーちゃん先輩……。確かに達也はCADの調整に関しては天才です。そこに関しては理解しております。けど、俺のCADの調整に関しては、達也の調整も正直に言って()()です」

 

俺のこの発言に深雪が冷たい眼差しでこちらを見てくる。

…ヤバイ。

 

「俺の魔法は現代魔法ではありません。どちらかといえば古式魔法ベースですかね…。魔法発動過程で必ず、CADが必要な現代魔法は俺には使えません」

 

「えっ?」

 

「つまり、他人にCADの調整をされると、俺は魔法が使えなくなるんですよ。これは、達也に限った話ではありません。例えそれが天才魔法技師()()()()()()()()()だったとしても…。俺は自分自身で魔法を演算しています。CADは単なる魔法制御の補助ユニットみたいな感じでしか使っていません」

 

この発言に俺以外の全員が驚く。

 

「要するに、現代魔法(機械任せの魔法)は俺には使えません。他人の調整したCADなんか、無理矢理魔力(サイオン)が吸い取られる感じがして、気持ち悪くて使えません。なので、俺は自分でCADを調整させていただきます。では!」

 

俺は全員が何か言う前にさっさとCADの調整を行う。

五分ぐらいして、調整を終えたので、未だにポカーンとしているエリカ、レオを捕まえて…

 

「レオ、エリカ。ちょっと調子を確かめる。手伝え」

 

レオとエリカの首根っこを掴んで演習場に向かうのであった。

 

 

*1
破城槌は、加重系の系統魔法である。

対象物の「一つの面」に加重がかかるようにエイドスを書き換える魔法

屋内に人が居るときに使った場合、殺傷性ランクAに相当する魔法





にこにこみさん!
サブタイトルのⅦ、Ⅷ、Ⅸが抜けている件。
ご指摘ありがとうございます。

まさかサブタイトルの数字が抜けていたとは…。
穴があったら入りたい……。
本当にありがとうございました!!

後、次回は秘密兵器悠仁くんの登場です!
悠仁くん意気込みは?

悠仁「敵は全て切り捨てる!!!」

次回、十四話“魔法って頑張れば意外と何とかできるよね?”

悠仁「俺って何かやっちゃいました?」

次回もお楽しみください!!


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九校戦編ⅩⅣ


作者「悠仁よ、わたしが帰ってきたーー!!」
悠仁「約三ヶ月ぶりか?アンタ何やってたの?」
作者「ふっ、仕事さ。大体うちの会社おかしいんd…」
悠仁「ダメだ。仕事の愚痴を言わせたら二万字超えるぞ。さっさと始めるぞ」
作者「おい、まだ会社の愚痴…」
悠仁「では、どうぞ!!」




 

 

九校戦八日目。

九校戦の新人戦も今日で最後だ。

本来なら“モノリス・コード”の本戦の予定だった。

しかし、昨日の悪質な事故により一高の予選リーグの続きから再開する事を特例で認められた。

そして、俺達は今、フィールドに登場いる。

 

「……なんか目立ってる気がするんだけど」

 

そう呟く幹比古。

そんな言葉を達也がバッサリと切り捨てる。

 

「選手が注目されるのは当然の事だと思うぞ」

 

「いや、そう言う事じゃなくて…」

 

その会話に俺も参戦する。

 

「やっぱり、達也のせいじゃないか?担当した競技の上位をほぼ独占したエンジニアが出場するんだからな…」

 

「いや、どう考えても()()のせいだよね?」

 

幹比古の言う“それ”とは俺が持っている()()()()()()のことだろう。

“モノリス・コード”は直接的な攻撃を禁止している。

つまりこの木刀で相手を叩きつける事はできないのだ。

現に大会委員からも四、五回ぐらい木刀についての確認をされた。

 

「でも、俺の魔法にこいつが必要だしな〜。……仕方ない、気にしないようにしようぜ!」

 

「「………はぁ〜」」

 

何故そんな反応をする二人共?

おかしな事一つも言っていないと思うのだが?

何か微妙な空気になったまま試合が始まる。

 


 

最初の対戦相手は八高。

対戦ステージは森林ステージである。

八高は特に野外実習に力を入れている学校であり、下馬評では八高が勝つのではないかと予想されているらしい。

俺の役割はディフェンス。

モノリスのコードを読み取ろうとする敵から守る役割なのだが…

 

「あー、暇だ」

 

そう!

暇なのである。

暇なので魔力探知で戦況を確認してみると達也が八高モノリスの付近で暴れていた。

 

「あ、モノリスを解除した」

 

達也は八高のディフェンダーの一人を戦闘不能にした後、直ぐにモノリスを解除するとその場から撤退する。

 

「あー、流石の達也でも短時間でモノリスのコードを打ち込むのは出来ないか〜」

 

モノリスの勝利条件は二つ。

相手選手全員を戦闘不能にさせるかモノリスに隠された五百十二文字のコードを打ち込み、審判に送信する事だ。

 

「何か、こう、原作を知っている身からすると感慨深いものがあるな…」

 

そうこう言っていると自陣のモノリス付近にようやく相手選手がやってきた。

魔力探知で予め相手の選手の位置は把握していた為、準備自体はもう済んでいる。

 

「よし!じゃあ、やりますか」

 

(只今、悠仁の脳内ではポケットなモンスターのバトルBGMが流れております)

 

悠仁は隠密魔法を使用した。

………

野生の八高選手が現れた。

隠密魔法の効果で目の前の悠仁に気付かない!

悠仁の攻撃!!

八高選手のHPは0になった。

八高選手はめのまえがまっくらになった。

 

所持金…は無かったから代わりにヘルメットを奪っt…獲得した。

八高選手は失格になった。

 

「ふっ…つまらぬものを斬っt……叩いてしまった」

 

……うん。

何か締まらないな〜。

まぁ、いいか。

 

とりあえず、気絶させた八高選手は安全な場所に転がしておいた。

その後は達也と幹比古によって残りの選手も倒され、一高の勝利が決まった。

 

 

続いて二戦目の対戦相手は二高。

対戦ステージは事故が起きてしまった市街地エリアだ。

 

「今回は“とりあえず、天井には気をつけて!”だな…」

 

「悠仁…。少し不謹慎じゃないか?」

 

「そうだよ。達也の言う通りだと思う」

 

「えっ?備えあれば憂なしって言わない?」

 

そんな感じで話していたら試合開始のブザーが鳴る。

ブザーが鳴ると否や…

 

「じゃ、二人共気をつけてね〜」

 

「ああ」

 

「そっちもね」

 

気持ちを切り替えてそれぞれ動き出す。

結果は一高の勝利。

達也はモノリスを解除するとひたすら相手の魔法から逃げ回って相手ディフェンダーを引き付ける。

その隙に幹比古が精霊魔法“視覚同調”*1を駆使して遠くから相手モノリスのコードを確認。

そのままコードを打ち込んで勝利を決めた。

 

…俺?

俺は出会い頭に魔法をぶつけて相手を気絶させただけだよ。

相手を倒した後は試合が終わるまでボーっとしておりました。

だって暇なんだもん…

 

そんな事はさておいて試合終了後、俺だけ何故かななみん先輩に呼び出しされた。

 

「失礼しまーす」

 

中に入るとななみん先輩と十文字先輩がいた。

 

「ご苦労様、悠仁くん。お疲れの所悪いんだけど話があるの…」

 

「ええ、別に構わないですよ」

 

「ありがとう。……実は、大会委員側から通達が来たの…」

 

「通達?」

 

「ええ、悠仁くんは今、ルール違反が疑われているの…」

 

「ルール違反?」

 

なななみん先輩にそう言われたが全く身に覚えがない…。

冤罪だ。

 

「七草、ここからは俺が話そう」

 

言いづらそうにしていたななみん先輩に代わって十文字先輩が詳細を話してくれる。

 

「黒岩、お前は精神干渉系の魔法の使用が疑われている。」

 

精神干渉系魔法。

名前の通り、人間の精神に干渉する魔法だ。

使い方によっては洗脳、廃人化が容易にできてしまう為、“モノリス・コード”云々、法律的に許可なく使用するのは認められていないのだが…。

 

「誰が?」

 

「お前だ」

 

「……何の魔法でしたっけ?」

 

「精神干渉系魔法だ」

 

「実は手の込んだドッキリっt…」

 

「ではない」

 

「デスヨネー」

 

うん、全く身に覚えがない。

一体なぜそんなことになったんだ?

考え込んでいたら…

 

「試合中、黒岩が相手選手に近づくとその選手は気絶してしまった。魔法を発動した形跡が無いにも関わらずだ。だから、相手の精神に直接、魔法を発動しているのではないか?ということになっている」

 

「節穴ですかね?そいつら…」

 

「とりあえず俺達と一緒に大会本部に来てくれるか?」

 

「分かりました」

 

こうして、俺だけ十文字先輩達と一緒に大会本部に行く羽目になった。

 

 


 

 

本部の中に入ると大会委員の他にニ高と八高の生徒がいた。

というかコイツら、俺が気絶させた奴らだな…。

目が合うといきなり…

 

「オイ、よくこの場に出てこれたなこの卑怯者!」

「恥ずかしくないのか」

 

いきなり罵倒かよ。

 

「うるせえ、負け犬共。キャンキャン喚くな。近所迷惑だ」

 

「「なっ!?」」

 

何かさらに言いたげな奴らは無視するとしてとりあえず大会委員に話を聞きたい。

 

「何故、私は違反行為をしたと言う話になっているのでしょうか?」

 

その質問に大会委員は…

 

「黒岩選手の魔法を受けた方から意見をまとめてそう判断しました」

 

「私の意見も聞かず?」

 

「異議があるなら今どうぞ?」

 

何だ?

『どうせ違反行為してるんだろ?』って顔は…

イライラする。

 

「では、具体的にどの場面で違反したのでしょうか?動画付きで私でも分かる様に説明をお願いします」

 

「……何故そんな事を?」

 

「……貴方達はそこの負け犬(二高と八高)の言い分を聞いただけですよね?」

 

「そうですが?」

 

『そうですが?』じゃねぇよ…。

ステイ、ステイ、悠仁。

僕はそう簡単には怒らないぞ!

“冷静に!”だ。

 

「つまり“私が精神干渉系の魔法を使用した”という確固たる証拠は無いですよね?」

 

「だから証言g…」

 

「正直、私がどの場面で違反行動したのか、私自身分からないのです。だから証言だけじゃなくて私が違反行動したシーンを見せてくださいと言っているんです。動画が無いとは言わせませんよ?」

 

「………」

 

「……ダンマリですか?この体たらくでよく大会委員が務まりますね。情けないとは思わないのですか?」

 

「黒岩選手、流石に言い過ぎではありませんか?」

 

何かおかしい事言ったか?

俺は証拠を出せって言っているだけなのに…。

何故その返答になる。

ふざけているのか?

 

「私は証拠を出せと言った。難しい事言いましたか?別にその証拠が間違えていてもいいのです。その誤解を解きに来たんですから」

 

「……」

 

「これでもまだ何も言わないのか?ふざけているのか?」

 

「……」

 

何も言わねえな、コイツ。

……呆れた。

もういいわ。

 

「……ハァー、なら私がルール違反をした証拠が無い。つまり、一高の失格は取り消しということでよろしいですね?」

 

「いや、それは…」

 

後から、ななみん先輩から聞いたのだがこの時に…

俺から堪忍袋が切れた音が確かに聞こえたそうだ。

 

「違反した証拠もない。何も言えない。けど、失格の取り消しは認めない…」

 

魔力を込めながら淡々と状況を確認する。

そして目の前の大会委員の胸ぐら掴んで……

 

「ふざけてるんじゃねえぞ!アンタ、人をおちょくるのもいい加減にしろよ!?それとも、あれか……あの負け犬共から賄賂でも受け取っているのか?ああぁん?」

 

突然、話題に挙げられた負け犬共。

その負け犬共は顔を真っ青にしながら必死に首を横に振っていた。

もちろん目の前の大会委員の男は何も言わない。

いや、言えないのか?

まぁ、でも…

 

「まだダンマリか。もういいわ、責任者に代われ。邪魔だよ」

 

このままやっていても時間の無駄。

とりあえず目の前の男は地面に叩きつけておく。

 

「ぐわ!」

 

「責任者出てこい!」

 

誰一人何も言えない中、外から誰かが入ってきた。

 

「一体どういう状況だね」

 

振り向くと爺さん。

その後ろにも大会委員がオロオロしながらいた。

というかこの爺さん誰だっけ?

でもまぁ、とりあえず状況を説明しておくか。

偉そうだし…。

 

「俺が何故か反則扱いされたんでその理解と証拠を聞いてるんですけどね。何にも言えないんですよコイツら。爺さんがここの責任者です?」

 

「ちょっt…」

「黒いw…」

 

何故かななみん先輩と十文字先輩がもの凄く慌ててる。

凄い人なのか?

まぁいいか。

正義は我にあり!

 

「ホッホッホ。『爺さん』か。久しぶりにその扱いをされたのぅ。まぁ、よかろう。私も彼の試合を見たが反則は行っていないと思うのだがそこのところどうなのだろうか」

 

愉快そうに笑った後、偉そうな爺さんは後ろの大会委員に問いかけた。

 

「いえ、あの〜、黒岩選手が精神干渉系の魔法を使用したという報告を受けまして…」

 

「ふむ、それは何処でだね?」

 

「いえ、それは、あの〜」

 

何か大会委員の人、滝のように汗をかいている。

俺からすれば、とても気分が良い。

ざまぁみろ!ってやつだな。

 

結局のところ大会委員は証拠を出せなかった。

当たり前だ。

精神干渉系の魔法なんて使えないんだから。

 

「黒岩悠仁くん、申し訳なかった」

 

偉そうな爺さんが謝ってきた。

 

「いえ、爺さんのおかげでどうにかなりましたし…」

 

「今後、このような事が起こらないよう大会委員には言い付けておくよ」

 

「ありがとうございます」

 

「それと個人的にだが、君に話を聞きかせたもらいたい」

 

「“モノリス・コード”が終わった後なら…」

 

「では、追って使いを出すよ」

 

そう言うと偉そうな爺さんは去っていった。

後から聞いてみたらその爺さんが魔法師界で一番偉いと言っても過言じゃ無い“九島烈(くどうれつ)”だと知った。

ちなみにななみん先輩達から口の利き方についてもの凄く怒られた。

……以後気を付けます。

 

 


 

 

一方その頃、達也と幹比古は深雪やエリカ達と合流していた。

話の話題はこの場にいない悠仁についてだ。

 

「そういえばお兄様、悠仁さんはいないのですか?」

 

「ああ、七草生徒会長と十文字会頭に呼び出されていた」

 

「何故なのでしょうか?」

 

すると周りの人達からある話声が聞こえる。

 

「聞いた?一高が反則したって話」

「聞いた聞いた!何でもあの黒岩って子が反則したんでしょ?」

 

「「………これはどういうこと(なんだ)?」」

 

周りの人達の話を聞いてあからさまに機嫌が悪くなるエリカとレオ。

 

「落ち着いて二人共」

「吉田くんの言う通り落ち着いて」

 

そんな二人を宥める幹比古と美月。

そんな時、達也のデバイスに着信が入る。

 

「お兄様、鳴りましたよ?」

 

「ああ。……悠仁からのようだな」

 

その一言で全員が達也に注目する。

肝心の内容は…

 

『直談判してきまーす!』

 

その一文と何故かピースサインした自撮り写真を送っていた。

なお悠仁の隣には何故かななみん先輩もノリノリで写真に写っている。

 

「…………」

 

達也は何も言わずメールを全員に見せる

 

「……これはどういう状況?」

 

意味不明な写真を見て何も言えない中、雫だけはそう言葉を漏らした。

なお、雫の問いかけには誰も答えられる者はいなかった。

 

気を取り直して、今度は悠仁の魔法についての話になった。

 

「お兄様、悠仁さんの魔法は何だったのでしょうか?悠仁さんが近づいたら何故か相手選手は倒れてしまっていたのですが…」

 

そんな深雪の質問に達也は答えるのだが…

 

「すまない。よく分からないんだ。アイツの調整はしていないからな…」

 

今度は美月が幹比古に質問する。

 

「吉田くんもですか?」

 

「え!?ああ、うん。僕もよく分からない」

 

「アイツが使ったのは重力刃(グラビティ・ブレード)よ」

 

そんな中、悠仁の魔法について答えたのはエリカだった。

そのエリカの答えに深雪が食いつく。

 

重力刃(グラビティ・ブレード)……確か悠仁さんのオリジナル魔法で、確か……重力を収束させて斬撃波として放つ魔法よね?」

 

「ええ、そうよ」

 

「でも、肝心の斬撃波は見えなかったし、何よりその魔法でどうやって相手を気絶させるの?」

 

「アイツの抜刀が速すぎるだけよ。……実際に見せた方が分かりやすいわね…ちょっと待って」

 

そう言うとエリカはデバイスを取り出して先程の試合の映像を見せる。

エリカが映像を一旦止める。

止まった映像には悠仁が抜刀して木刀から斬撃波を出している様子が写しだされていた。

 

「悠仁は威力限りなく落として重力刃(グラビティ・ブレード)を発動。発動した斬撃波は相手の顎先を的確に撃ち抜いているのよ」

 

「顎先?」

 

「ええ、顎先を撃ち抜いて相手に脳震盪を起こさせる。気絶する理由はコレよ」

 

エリカの解説に今度は雫が質問する。

 

「悠仁は何でこんな難しそうな事を?」

 

この質問には意外にもレオが答える。

 

「昨日、悠仁に聞いたんだけどよ、『近接戦闘のした事がない素人相手ならばこんなのは余裕だよ』って言っていたぞ?」

 

「…へぇ、そうなんだ」

 

雫、苦笑いである。

そんな中、達也がある事に気づいた。

 

「アレは、悠仁じゃないか?」

 

話の話題になっていた悠仁は手を振った後、達也達の元に走り出す。

そして、達也達の近くに行くと懐から紙を取り出し、見せつけた。

 

「皆さん、“勝訴”です。我々は無罪を勝ち取りました!!!」

 

悠仁は“勝訴”と書かれている紙を見せつけて、ハイテンションになっていたが…

 

((((((コイツ何やってんだ?))))))

 

悠仁を除く全員がそう思った。

代表して達也が悠仁に問いかける。

 

「……何してるんだ?」

 

「えっ?不正疑惑とか、うちが失格になるって話だから直談判しに行ったんだよ。とりあえず、本部で怒鳴り散らかしていたら“九島”って爺さんが何とかしてくれてさ。疑惑も晴れたし、無事試合できるぞ〜。これはその結果と喜びを表している(ドヤ!)」

 

((((((お前何してるの!?))))))

 

再び、皆そう思うのであった。

 

「………色々ツッコミたい所はあるんだが、まず、お前の言う“九島”という人は『九島烈』閣下じゃないだろうな?」

 

「そう、そう!その人」

 

「……………」

 

「ん?どしたの、みんな?」

 

各々、悠仁に言いたいことは山ほどあったのだが、呆れたのか疲れたのかそれとも別の理由か、とにかく誰一人、悠仁に問い詰める者はいなかった。

 

 


 

 

その後、一高の反則疑惑も大会本部から正式に説明がなされた。

その説明の後、決勝トーナメントの組み合わせが発表された。

俺達は九高と対戦するらしい。

時間は午後からの予定だ。

先に正午から三高と八高が試合をする為、少し早いが昼食を買いにみんなと別れた。

実のところ、最初は達也達と飯を食おうとしたのだが、深雪やら達也やらが目立ったおかげで飯も落ち着いて食えそうになかった。

 

「悠仁!」

 

ん?妙に聞き覚えがある声が……

まぁ、気のせいだろう。

 

「ちょっと、悠仁!」

 

「ん?あれ、修兄?こんな所で何やってんの?サボり?」

 

振り返ると本来ならこの場に居ないはずの千葉 修次(ちば なおつぐ)が居た。

 

「サボりって…」

 

「だって、タイで魔法指南のお仕事してる筈でしょ?」

 

「ちょっと、色々あってね…。それよりも今は千葉家当主の代理として悠仁に渡す物があるんだ」

 

修兄がそう言うと持っていたアタッシュケースを渡してきた。

 

「マジで!?ありがとう、修兄!……で?実際の所、何でここに?まぁ、何となくは分かってるけど……」

 

荷物を受け取りながら、修兄がここに来た本当の意味を探る。

 

「何のことだい?」

 

アルカイックスマイルを見せる修兄。

…てか、相変わらずイケメンだな…。

まぁ、多分だけど、摩利さんが心配で来た感じだろコレ。

 

「ハァー、まぁ、いいけどさ。エリカには見つからないでよ?宥めるの大変なんだから」

 

「善処するよ」

 

本当に分かってるんだろうかこの人…。

まぁいいや。

 

「お邪魔虫になりそうだからここで退散するよ」

 

いくらイケメンで爆発しろと常日頃、思っていても流石に恋人との時間を邪魔する程、俺は子供じゃないだよな〜

 

修兄と別れると直ぐに…

 

「黒岩悠仁くん」

 

また、後ろから名前を呼ばれた。

振り返ると愛梨がいた。

 

「あれ?他の二人は?」

 

「私も一人でいることぐらいあるのよ」

 

「…そう。んで、何か用?」

 

「ええ。…お礼がしたいの」

 

「お礼?」

 

なんだろう?

愛梨にお礼されることあったか?

 

「栞のことよ…。栞は何も言ってくれなかったけど、貴方と栞の様子を見れば誰でも分かるわ。貴方が栞を立ち直らせたのでしょ?だから、その…ありがとうございます」

 

そう言って深々と頭を下げる愛梨。

俺はこう言う時は素直に礼を受け取ると決めている。

ここで謙遜する奴は『お前の礼など受け取りたくない』と言ってしまっていると俺は思う訳だ。

だから……

 

「どういたしまして」

 

「そう。……そ、それより先程、千葉 修次と一緒にいましたよね。どう言う関係なのですか?」

 

この話はこれでおしまいと言わんばかりに愛梨はわざとらしく話題を変える。

まぁ、俺も少し気恥ずかしいかったので話題を変えてくれるのは助かる。

 

「ん?……あぁ、実は」

 

そんなこんなで愛梨と楽しくお話ししていた。

 

 

だが、この時に気づくべきだった。

この後の原作の展開を…

そして、エリカや深雪が近くにいた事を…

まさか、あんな事になるなんて…

この時の俺はまだ知る由もなかった。

 


 

一方、その頃、達也、深雪、美月はある兄妹喧嘩を隠れて見ていた。

 

「兄上が正式な任務を放棄してこの場におられることは紛れもない事実です!それがこの女の所為であることも!」

 

そう言って怒っている妹は兄の隣にいる女を睨みつける。

そして…

 

「私の考えは変わりません!次兄上は、この女と付き合い始めて堕落しました!」

 

そう言って妹はその場を立ち去る。

そして、その妹がロビーからエレベーターホールに入った所で…

 

「エリちゃん、待って、エリちゃん!」

 

美月の声でようやくエリカは我に返った。

 

「……達也くん。深雪も……もしかして聞かれちゃった?」

 

「すまん…。盗み聞きするつもりはなかったんだが」

 

「達也くん、今度奢りね」

 

「おいっ?まぁ、いいか。あまり高くないもので頼むぞ」

 

「商談成立っと」

 

そうして達也達はお昼を食べる為、場所を変える。

会場の休憩室の所でお昼を食べているとエリカの方から…

 

「さてと、深雪も美月も達也くんも……あたしに何か聞きたいことがあるんじゃない?」

 

「渡辺先輩がお付き合いされている方ってエリカのお兄様だったのね」

 

達也や美月が躊躇している中、深雪だけが話に乗っかった。

 

「そっ。あのバカ兄貴あんな女に誑かされちゃって…。情けないやなんとやら…」

 

「世界的な剣術家でいらっしゃるのでしょう?憎まれ口でも『バカ兄貴』だなんて言うものじゃないわよ?」

 

「あれ……ああ、そっか。達也くんだったら修次兄貴のこと知っていても不思議じゃないね」

 

「エ・リ・カ。わたしたちの前だからといって、呼び方を変える必要はないのよ?修次()()()なのでしょう?」

 

「あ〜っ、それ忘れて!あんなのあたしじゃないって!」

 

エリカはそう言うと頭を抱える。

多分、恥ずかしいのだろう。

 

「まぁまぁ。エリカは修次さんのことが大好きなのよね」

 

「……」

 

深雪が放ったその爆弾発言はエリカのみならず達也や美月までも凍らせる。

 

「チガウ!」

 

エリカは顔を赤くしながら叫んだ。

 

だが、そんな分かりやすい反応にクスクス笑いを溢しながら深雪はさらに爆弾を投下する。

 

「エリカってシスター・コンプレックスだったのね」

 

「なっ…」

 

エリカは絶句してしまった。

そして臨界点も突破してしまった。

 

「アンタだけには言われたくないわよこの超絶ブラコン娘!」

 

エリカもとんでもない爆弾を投下してしまった。

そして再び凍りつく空気。

そんな中、深雪は見たこともない笑顔でエリカに問いかける。

 

「エリカ?聞き間違いかしら?もう一度、何て言ったか教えてくれるかしら?」

 

「何度だって言ってあげるわよ!この超絶ブラコン娘!」

 

「二人とも少し落ち着け」

「そうだよ二人共。ちょっと落ち着こ?」

 

流石に不味いと思ったのか達也と美月が宥めにかかるが…

 

「お兄様、美月。わたしは十分に落ち着いておりますよ?まぁ、エリカはそうじゃないと思いますが…」

 

「深雪の目が節穴なだけじゃない?アタシは十分に落ち着いているわ…」

 

「だが…」

「でも…」

 

二人共、明らかに落ち着いていない為、達也と美月がなんとか宥めようとするが…。

 

「「二人共、黙って(くれるかしら)!!」」

 

二人の剣幕に結局、達也と美月は黙ってしまう。

だが、ここで終わらないのが美月。

エリカと深雪の喧嘩がヒートアップしている最中、お得意の天然が発動してしまう。

 

「あ…、あれって悠仁さんですよね?」

 

全く関係の無い発言。

幸か不幸かその発言に深雪やエリカも反応する。

そして、彼女達の視線の先には悠仁と三高の愛梨が楽しそうに談笑している光景が見えた。

 

「…………」

「…………」

 

さらに凍りつく空気。

そんな中、最初に口を開いたのはエリカだった。

 

「アイツ、何やっているのよ。こんな時に…」

 

続いて深雪が…

 

「ええ、こんな大変な時にナンパだなんて…。お仕置きが必要ですね」

 

「深雪、行くわよ」

 

「もちろんよ、エリカ」

 

(悠仁、骨は拾ってやる…)

 

そんな様子を見ていた達也は悠仁に冥福を祈りながら彼女達の後を追うのであった。

 

 


 

「わたしは応援に戻ります。ここで失礼します」

 

「じゃあ、またね〜」

 

愛梨との話も終わった。

……なんだろう。

寒気がする。

すぐにこの場を立ち去りたいが、立ち去ると酷い目に遭うと俺の直感が囁いている。

でも、ここにいても結局、酷い目に遭う気がする。

なら、今すぐ退散しy…

 

「随分、楽しそうだったわね」

 

振り返るとエリカがいた。

……寒気の原因はエリカだったか。

エリカの顔を普通に笑みを浮かべているように見える。

だが、俺には分かる。

アレは、内心キレている顔だ。

だが、何故だ?

エリカがキレる理由は……あるな。

あの修兄(イケメン野郎)……

もしかしなくても彼女(摩利さん)の相引き中にパッタリとエリカと遭遇しやがったな、コレ。

ブラコン(エリカ)を宥めるの大変なんだぞ…。

とりあえず、落ち着かせるか…。

 

「やぁ、エリカ。何か用かい?」

 

「悠仁さん、わたしもいますよ?」

 

深雪が出てきた。

……何故、深雪が怒っているんだ?

深雪も一見、笑顔だ。

だが、深雪の背後がブリザードの如く魔力が吹き荒れている。

めっちゃ、怖いんですけど…。

 

「もちろん気付いているよ。ご機嫌よう、深雪」

 

「ええ、ご機嫌。ただ、悠仁さん程ではないですけれど…」

 

「本当にそうね。まさか他校の女にナンパを仕掛けていると思わなかったわ」

 

「ナンパじゃないんだが…」

 

深雪のブリザードな魔力で気づくのが遅れたが、達也と美月もいた。

美月の顔色が悪いのも気になるが、とりあえず達也達に事情を聞きたい。

 

(達也、助けて!この二人、なんでこんなことになってんの!?)

 

アイコンタクトで達也達に助けを求めたが…

 

(悠仁、スマン……)

 

アイツ、俺を見捨てやがった…。

でも、美月なら…

 

(……ごめんなさい)

 

ちょっと美月さん!?

あぁ、なんて儚い友情なんだ…

さて、どうしy…

 

「「悠仁(さん)話を聞いてる(ますか)!?」」

 

「えっと、何だっけ?」

 

「やっぱり聞いていない……。改めて聞くわよ、さっきの子とは一体どういう関係なのよ」

 

「ええ、わたしも気になります。()()()教えていただけないでしょうか?」

 

二人共、何故そんなに問い詰めてくるんだ?

訳が分からん。

とりあえず、あまり二人を刺激させないように…

 

「愛梨とは懇親会で知り合っただけ。さっきたまたm」

 

「「()()?」」

 

……なんかやらかしたか?

急に機嫌が悪くなっているのだが。

というか達也、天を仰ぐな。

美月も助けてくれよ…

 

「ただのお知り合いなのにもう名前呼びですか?」

 

「出会って数日なのにね。随分手が早いじゃない?」

 

「気にすんのそこ?」

 

深雪だって、エリカだっていつも名前で呼んでるだろ?

何故に機嫌が悪い?

 

「コレは詳しく()()()する必要があるわね…」

 

「ええ、悠仁さん。覚悟して下さい」

 

「俺、なにかしたーーー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三高の準決勝開始直前

 

「ねえ、悠仁。大丈夫かい?」

 

「燃えたよ…真っ白に…燃え尽きたよ……真っ白な灰に…」

 

「達也、悠仁は一体どうしてしまったんだい?」

 

どこぞのジョーのごとく燃え尽きている悠仁を心配している幹比古は事情を知っていそうな達也に問い詰める。

 

「幹比古、何も聞くな。真実を知るとお前もああなるぞ。なぁ、美月?」

 

「わたしは何も見てません。何も言えません。何も聞いてません」

 

「柴田さん!?」

 

明らかにいつもと違う様子の美月に思わずツッコむ幹比古。

一応、達也がフォローを入れる。

 

「悠仁は理不尽に巻き込まれただけだ。強いて言えb…」

「お兄様?」

「達也くん?」

 

「……何でもない」

 

話はこれで終わった。

幹比古や事情を知らない他の人達も触れてはいけない(アンタッチャブル)な話だと察した。

達也達はこれから始まる三高の試合を見る方に意識を向けた。

……悠仁以外は。

 

 

 

 

*1
自身の影響下に置いた精霊から、イデアを経由したリンクを通じてリアルタイムに視覚情報を取得する魔法





何故か話が長くなりそうなんで一回ここで終わらせます。
次回で新人戦が終わらせるつもりです。


……終わるかな?
終わるといいな〜


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