俺の妹はかぐや姫なのかもしれない (ジョク・カノサ)
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月からの手紙

 俺には妹が一人が居る。名前は静夜(しずよ)。妹と言っても多分血は繋がってない。俺が六歳ぐらいの時に突然父親が新しい家族だと言ってどこからか連れて来て以来、静夜は俺の妹だ。

 

「お兄ちゃん、先週みたいにジャンプ買ってくるの忘れないでよ。ネタバレ踏む前に読みたいんだから」

 

 静夜は学校に通っていない。おかしな事ではあるのだろうが俺も家族もそれになんとなく納得している。

 

 そもそも静夜はこの家に住み始めてから頑として外に出たがらず、一度無理矢理連れ出そうとした際には大泣きされて半日は口を聞いてもらえなかった。

 

 そうなると必然、買いたい物や欲しい物が出来た際には俺が使い走りをする事になる。毎回感謝もクソもない頼み文句で行かされるが、それほど苦でもない。

 

「ねえ、ホントに学校にヤンキーって居るの? こんな危険人種が集団生活に混じってるなんてある?」

 

 学校にも行かず、話し相手も基本俺しか居ない静夜の世界は狭い。ゲーム、小説、漫画、インターネット。部屋の中から触れられるモノが静夜の全てだ。たまに外に出てみろと俺が言うと決まって静夜は。

 

「月が怖い」

 

 だとか電波な事を言って部屋から出るのを拒んだ。夜だけじゃなくお天道様が出張って来てる昼だとしても月が怖いんだと。

 

 頑なに外に出たがらない静夜の態度にそれじゃダメだろうと思う反面、それでも良いかと思ったりもした。いくら引き籠り生活を続けようとも静夜はまるで変わらない。

 

 生意気な態度も、どこか浮世離れした雰囲気と見た目と言動も。普通はずっと家の中に居たらおかしくもなりそうなもんだが、歪みもしないし現状の生活にストレスを抱えているようにも見えない。

 

 そんなこんなで十数年。

 

「私、月に帰らないといけないみたい」

 

 部活から帰って来た俺に、静夜は見た事も無いほどに真剣な表情でそう言った。エアコンの効いた八月の初めの頃だった。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「月から手紙が来たの」

 

 切り揃えられた黒髪を小さく揺らし、静夜はその紙きれを俺に差し出す。やけにツルツルとしたその表面にはミミズが交尾してるような線がうじゃうじゃと羅列されていた。

 

「どういう冗談だよ。どういうツッコミを求められてんの俺。部活帰りで疲れてんだぞ」

 

「あら、信じてない」

 

「そらそうだろ。月に郵便ポストってあったか」

 

「書き留めで送られてきたわ」

 

「郵便局はあるんだな」

 

 紙を押し返すと静夜は真剣な表情を一瞬で崩し、何がおかしいのかクスクスと笑った。

 

「そもそも帰らないといけないってあれか、お前は月から来たかぐや姫かって?」

 

「そうなるね」

 

「今更竹取物語でも読んだのか。というか、昔から良く言ってる月が怖いってのもそれが元ネタか?」

 

 そう言うと静夜は部屋の隅に置かれたベッドに移動し、クシャクシャに丸めたさっきの紙をゴミ箱に投擲する。

 

 そして枕元に置いてあった読みかけなのだろう小説の栞を取り読み始めた。俺は部活用の鞄を降ろし中から空になった水筒と湿ったタオルを取り出す。

 

「ねえ」

 

「なんだよ」

 

「なんで月人がかぐや姫を地球に送り込んだのか知ってる?」

 

「あー……なんかの罪を犯したから、だっけか」

 

「へえ、ちゃんと覚えてる」

 

「具体的に何をしたかは覚えてないけどな」

 

「それは元から書いてない。書かれてるのはただ罪を犯して、その罰で月と違って汚らしい地上に送り込んだって事だけ。つまりは流刑ね」

 

「へー」

 

「天から地に、一時的にでも堕とされる程の罪。一体何をしたのかしら」

 

「さあな。お前はどう解釈してるんだ」

 

「その美貌で月人の半数を虜にしてしまった美しすぎる罪だと睨んでる」

 

「ギャグ漫画かよ」

 

「それか罪を犯した云々は嘘っぱちで、養育費をケチる為に人の良さそうな老夫婦に育てさせたとか」

 

「話のスケールが下がりすぎだろ」

 

「ふふっ」

 

 満足したのか静夜は小説を読むのに戻っていた。ちらりと見た表紙には『暮れ』というタイトルが書いてある。

 

 俺はバッグから取り出した物とタンスから取り出した着替え一式を手に立ち上がる。窓から射し込む光の色はオレンジ色で、近場の公園でまだ遊んでいるのだろう子供達の声が薄っすらと聞こえてきた。

 

「風呂入って来る。お先」

 

 そう言い残し俺は部屋を出ようとすると、静夜はまた話しかけてきた。

 

「そうそう、私は地上への流刑自体は罰の本質だとは思わない」

 

「あん?」

 

「地上で得た物、大事に思ってる物、生きる意味だと感じた物。地上でかぐや姫にそういうのを与えた上で、自分達が迎えに行く事によってそれを奪う。別離と喪失こそが彼女が味わうべき苦しみであり、罰なの。そしてその苦しみさえも月人に天の羽衣を着せられて忘れ去ってしまう。それもまた罰」

 

「なるほど。思い出も奪って終いか。でもそうだとしたら、残される側の事は何も考えてないのが無慈悲だな」

 

「それもそう。月人にとって人間は眼中に無いのか、それとも、罰を受けたのは忘れる事の出来ない喪失を味わった人間側の方だったのか。罰を受け入れたかぐや姫は残された人間達に何を思っていたのか」

 

「続くなら風呂あがってからにしてくれー」

 

 扉の閉まり際、僅かな隙間から静夜の声が聞こえて来る。同時に少し見えた妹は読んでいた本から手を離し、俺と目線を合わせてきた。

 

「お兄ちゃんはさ、私が月に帰っちゃったら、どう思う?」

 

「……さあな」

 

 扉が閉まった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 今から七、八年くらい前の夏の話だ。何に影響されたか、俺より一回り小さかった静夜は突然こんな事を言いだした。

 

『プールに入りたい。何とかして』

 

 これが難題だった。じゃあ近場の市民プールに行こうと言うと例の如く外に出たくないと一刀両断され、風呂に水を溜めて入ろうと提案すればそれは水風呂だと(すね)を蹴られ、庭にビニールプールを置こうと絞り出した意見もやはり外に出たくないと一蹴された。

 

 結果、幼い俺の頭が絞り出した結論は極々単純なものだった。

 

『凄い凄い! これがプールなのね!』

 

 倉庫から引っ張り出して部屋の真ん中に置かれたビニールプール。ホースで一階から引いて来た水がしっかりと張ったそこに静夜は何の躊躇も無く飛び込んだ。フローリングに繁吹きが舞う。

 

『ほら、お兄ちゃんも!』

 

 そこに俺も引きずりこまれる。中に入った途端、傍目から見ればデカかったプールが一気に縮こまったように感じた。

 

 事前にエアコンを切っていた部屋の中は蒸し暑く、水は震えるくらいに冷たい。足から伝わるビニールの感触が心地好かった。

 

 いつしか部屋の中だという事も忘れ、俺達は水を飛ばし合い始めた。静夜の長い髪と水玉模様の水着が濡れて、窓から射し込んだ日に輝いていた。

 

 ──そんなこんなで遊び呆けた結果、このプール騒ぎは最悪の結果になる。途中でビニールが破れたのだ。

 

 容赦無く溢れ出す大量の水、一階への雨漏れ、親からの大目玉、後始末。特に主犯の俺に対する親の怒気と後始末の大変さに関しては今でも夢に見る。

 

 対して静夜は叱られてもあっけらかんとしていたが、俺にとってこの思い出はどちらかというと苦い思い出の分類だろう。

 

 ただ、それでもやらなければ良かったと思った事は一度も無い。

 

『何コレ! あはははっ!! 部屋がプールになっちゃった!』

 

 慌てる俺を尻目に水浸しになった部屋の中を、それまでに見た事もないような笑顔で駆け回る静夜。

 

 それで十分だった。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「あっちい」

 

 夜、光源の少ない住宅街の隙間は日光の有無に関わらず蒸し暑く、絶え間なく聞こえて来る虫の鳴き声が鬱陶しい。

 

「部活帰りに頼んでくれりゃ良いのに」

 

 目的地は近場のコンビニ。要件は静夜の使い走りだ。頼まれたのは仏敵チョコ、枝グミ、()(から)チップス、珠玉ガム、干し貝柱。

 

 全部今食いたいらしく、太るし肌も荒れるぞと言ったら鼻を()がれかけた。

 

 まあ、どうってことじゃない。コンビニくらいならラクなもんで、前にあった閉店ギリギリの家電量販店まで行かされるとかよりはマシだ。ただ暑いもんは暑いからさっさと済ませようと思い、俺は足を速める。

 

 ──ふと、何の気なしに空を見上げた。雲が厚いのか星は全く見えない。ただ月だけはその姿を映している。

 

「すげえな」

 

 見えるのは半分だけ。それも定規で線を引いたようなキッチリとした半月だ。

 

「上弦? 下弦? ……上弦か」

 

 スマホで調べると今日、八月七日は丁度上弦。満月になるのは十五日らしい。

 

「てか、なんかデカくね?」

 

 月をまじまじと見たのが久しぶりだったからか、ギャルのような感想が口に出る。星は全く見えないのに月はそこに張り付いてるかのようにクッキリと見える事もあって、妙に目に留まる。

 

『私、月に帰らないといけないみたい』

 

 夕方にした静夜との一連の会話を思い出す。あの会話のせいで月が異様に見えるのか、それとも異様に見えたから思い出したのか。

 

 静夜がああいう突拍子の無い話をするのは珍しくもないし、そのほとんどに大した意味は無い。アイツにとっては目的もなくやる手遊びみたいなものだろう。

 

『お兄ちゃんはさ、私が月に帰っちゃったら、どう思う?』

 

 ただ、扉を閉める際に見えたあの表情。笑ってるような笑ってないような、いつも以上に掴めない表情が頭に残っている。

 

 そうしてぼんやりと月を眺めているとスマホが鳴った。画面を見ると、まだ? と静夜からメッセージが届いている。続いて送られてきたのは頬の膨らんだ顔文字だ。

 

「……何やってんだ俺」

 

 これ以上遅れたら脛を蹴られる。俺はお姫様の機嫌をこれ以上損ねないように、小走りでコンビニへと向かい始めた。



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満ちゆく月

「なあ、静夜が見知らぬ誰かに連れ去られる、ってなったらどうする?」

 

「そいつぶッ殺すけど」

 

 俺の隣に座っている石上は即答した。予想通り気合の入った答えだった。

 

「お前はそう言うよなあ」

 

「たりめえだろ。何の為にこの髪拵えてると思ってんだあ?」

 

 そう言って石上は眉を(ひそ)め自分の髪、中心に集めワックスで固めてボリュームを増大させたそれをゆっくりと手で撫でた。その腕から汗がぽたりと落ちる。

 

「俺のアイドル静夜ちゃんに手ぇ出したらこれもんよ」

 

 石上は俺の同級生で部活仲間だ。この時代、しかも大して荒れてもない普通の高校に通い運動部にも入りながらツッパリを自称するヤバイ奴であり、静夜の存在を知っている数少ない人間でもある。

 

「衰えないな。お前の静夜信仰」

 

「そりゃそうさ。あんなマブい子はテレビでだって見た事ねえ。一生推すぜ! ……なあ、新しい写真ねえの?」

 

「残念。前も言っただろ、静夜(アイツ)は基本写真を撮りたがらないんだ。ありゃ気まぐれ」

 

 発端は静夜がいきなり自撮りをメッセージで送りつけてきた事だ。丁度昼休みで一緒に居た石上の目に留まり、それ以来コイツは静夜のファンを名乗っている。

 

「もったいなすぎんぜ。あの美しさは様々な角度とシチュエーションから8TB(テラバイト)分ぐらいには保存して後世に残さなきゃいけねえ」

 

「写真を撮りたくないのは魂が抜かれそうだからだと」

 

「ネタが古い! でも奥ゆかしい! 何者なんだ静夜ちゃーん!!」

 

 石上は自称ツッパリで多少頭はおかしいがバカじゃない。コイツがここまでおかしくなるのは静夜に関してだけだ。

 

「大げさなんだよ。あの写真一枚で良くそこまで熱を上げられるな」

 

「そりゃおかしいのはお前の方だぜ。あの子はやべえって」

 

「ハイハイ」

 

 バカじゃないといってもやっぱり自称ツッパリだ。確かに静夜は俺から見ても上等な顔立ちと独特の雰囲気を持ってると思うが、流石に言いすぎでコイツが常人とは離れた感性なのは言うまでもない。

 

「ボトル取ってくれ」

 

「ん」

 

 石上から渡された水筒の中身を喉に流し込む。冷えた麦茶が水分を失った身体に染みる。

 

「で、何だよ」

 

「何だよって、何がだよ」

 

「静夜ちゃんが連れ去られたらって話だよ。ただの冗談には聞こえねーぞ?」

 

 真剣な表情で石上は俺を見つめる。眼力のある視線だった。

 

「冗談だよ」

 

「いーや、含みのある声音だったね」

 

「何も無いって。ただ……」

 

 引っかかる。静夜の言動。昨日見たあの異様な月。喉に小骨が刺さったような気持ち悪さが残ってる。

 

「ストーカーか?」

 

「そういうんじゃない。まあ、ただ俺が気にしてるだけだよ。聞いたら暑さで頭がやられたと感じると思うぞ」

 

「連れ去られるって事は誰かが静夜ちゃんに目ぇ付けたって事だろ。俺みたいに偶然知った奴が粘着しててもおかしくねえ。静夜ちゃんにはそれだけ──」

 

「マジでそういうんじゃないんだって」

 

 漠然とした不安。これはそうとしか言えないし、何故そう感じてるのかも分からない。被害妄想じみた考えは流石に口に出せない。

 

「……そう言うんならもう何も言わねえけどよ。なんか有ったらすぐ言え。チーム全員で行くからよ」

 

「お前含めて三人しか居ないのに?」

 

「バカ、ここぞという時に大事なのは数じゃねえだろ」

 

「休憩終わり! もうワンセット行くぞ!」

 

 キャプテンの声が届く。俺達はベンチから立ち上がった。

 

「石上」

 

「ああ?」

 

「なんでそこまで信じるんだ」

 

「お前が静夜ちゃんを一番見てるからに決まってんだろ。ソイツがなんか危ねえって感じたんならなんかある。そう思っただけだ。おら行くぞ!」

 

 石上は再度髪の毛を撫で立たせた後、グラウンドに向かって走り出した。俺もその後を追う。

 

 季節は夏で時間は昼過ぎ。上には自重してほしいくらいの青空が広がっていて、殺人的な光線を放つ太陽がこれでもかと主張している。

 

 そして、同じ空には薄っすらと浮かぶあの月が居た。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 静夜は本音を隠さない。暑ければ暑い寒ければ寒いつまらなければつまらない、忖度も無ければ誤魔化しもしない。対象に思い入れがあろうが基本的には己の感性が絶対的な基準。

 

 だがそれを煩わしく思った事はあまりない。俺自身がそういう気遣いよりも率直な物言いを好むからだろうか。

 

『旅行に行きたいわ』

 

 俺が中一の時だった。押し入れでホコリを被っていた旅行雑誌を見たらしく、相変わらずのふてぶてしさでそう要望してきた。

 

『場所はどこでもいいの』

 

 かなりの難題だ。問題点はプールと同じ、要は家の中で完結させなければならない。プールの場合は力技で突破出来たが、テーマは旅行だ。

 

 俺はその要望から構想を練り、一週間をかけて色々と準備を施した。

 そして当日、事前に見計らった親が家に居ない状況で最後の準備を施し、俺は静夜を部屋から連れ出した。向かう先は一階。

 

『わ』

 

 閉め切ったリビングの中、春の終わり頃にしては低い温度に驚いたのか静夜は小さく声を上げる。見慣れたリビングは一面の銀世界。足元には雪が積もり、どこからか白い冷気が漂っている。

 

 ……ぶっちゃけ、温度はエアコンで限界まで下げただけだ。雪はおもちゃ屋で大量に買った水で作れる人工雪、冷気はドライアイス。

 

 俺達の住んでいる地域は雪が滅多に降らない。静夜は雪が積もった様子を生で見た事が無い。そこからコンセプトを雪国、具体的に言えば北海道を目指した。

 

 白っぽいカラーフィルターを被せた照明、机の上に置いた友人の親の伝手を使って用意した特産物や土産物、辺り一面に広がるラベンダー畑……の壁紙。とにかく色々と用意した。リビング以外にも。観光名所の歴史やらも頭に詰め込んだ。

 

『……へえ』

 

 静夜は足元の人口雪を手で掬う。当たり前だが本物の触感じゃない。体温で解ける事もない。

 

 ──この準備をしてる途中、何度も中止しようかと迷った。この頃の静夜はもう、ある程度は子供っぽさが抜けて今と大して変わらない不透明さと思考を持っていた。対する俺も中学生、自分が出したアイデアの安っぽさをバカにする自分が居る。

 

 プールの時とは訳が違う。子供騙しならやらずに大人しく要望を突っぱねて機嫌を損ねられた方がマシ。何度もそう思った。

 

『ねえ、お兄ちゃん(ガイドさん)

 

 静夜は雪を宙に投げる。そうして背後で偽物が舞う中で手を差し出す。

 

『案内してくれる?』

 

 静かな声と、少しだけ頬の緩んだ無垢さの無い笑顔。俺はああともうんとも取れないような返事でその手を取った。

 

 静夜は本音を隠さない。つまらなければつまらないと、退屈であれば退屈だと言葉と態度で示す。

 

 一方で、俺が静夜を完璧に理解出来ている訳でもない。十数年間近で過ごそうとも分からない事だってある。

 

 暇つぶしか、何かを試したのか、どういう意図だったのか。期待に応えられたのか、期待外れだったが俺の働きを気遣ったのか、あの声音と表情は何を思っていたのか。それは今になっても分からない。

 

『寒いから、手は離さないように』

 

 ただ、握った手が暖かかったのは確かだった。



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十五夜

 八月十三日の夜、俺達は風呂場の中に居た。

 

「何年ぶりだっけ? 一緒に入るの」

 

 後ろ姿の静夜の声が薄く響く。俺はその長い髪をシャワーで良く濡らし、シャンプーを手に取り泡立て始める。

 

 今回の要望は一緒に風呂に入れ。少し抵抗はあったが、特に断る必要も無かった。

 

「五年生? 六年生? それくらいで入ってくれなくなっちゃったのよね」

 

「思春期ってやつだろ。それくらいになると誰もがそうなる」

 

「私は別に良かったけど? 昔から今までずーっとね。男には色々あるってヤツかしら」

 

「そりゃお前が変なんだよ。女にだって色々あるだろうが」

 

 泡は増えていくが、如何せん髪が長い。背中がほとんど見えないくらいだ。

 

「髪切らないのか」

 

「後ろはね。似合うでしょ?」

 

「まあな」

 

 湯に濡れて艶やかに光る黒髪を泡で侵略していく。これで大したケアはしてないと言うんだから驚きだ。

 

 しばらくわしゃわしゃと音を響かせた後、泡を流す。正面の鏡に映った静夜の顔は気持ちよさそうに緩んでいた。

 

「あー……誰かに頭を洗ってもらうのってこんなに良かったのね」

 

「何か至らなかった点は」

 

「苦しゅうない。今後とも精進せよ」

 

「恐悦至極。んじゃ先に身体洗って浸かれよ」

 

「はぁ?」

 

 小馬鹿にしたような声と首を傾げる仕草。シャワーで濡れたタオルに隠されていない背中とうなじが見えた。

 

「まさか髪を洗って終わりじゃないでしょうね。お兄ちゃんの忠義心はその程度だったの?」

 

「馬鹿言ってないではよ洗え。水にするぞ」

 

「ふぅん……じゃあ先に私がお兄ちゃんの髪を洗うから、その後でお互いに洗いっこしましょうか」

 

「何がじゃあなんだよ。悪化してんじゃねえか」

 

「文句ばっかり。まあ良いわ、とりあえず次はお兄ちゃん」

 

 結局、言われるがままに位置を交換し髪を洗われた。細い指と優しい感触が気持ちいいというよりくすぐったかった。

 

 その後はお互いに自分で身体を洗う。そして、洗い終わった辺りで静夜が何を企んでいたのかを理解する事になる。

 

「狭い」

 

「狭いね」

 

 多分一般的な広さの湯船の中、膝を曲げて向かい合う形で浸かる俺と静夜。先に洗って先に浸かれという指示を無視したのは俺と同時に入る為だったらしい。

 

「一緒に入ってた頃はこうしてたでしょ。あの頃はもっと広かったのに」

 

 静夜が湯船に浮かぶアヒルを指で弾く。身じろぎの際に動かした足が静夜の足に触れた。

 

「それ、どこにあったんだ」

 

「押し入れ。他にも何匹かあった筈なんだけど一匹しか無かったの。家出でもしたのかしら」

 

「そうなんじゃないか。普通何年も閉じ込められたら外に出たくもなるだろ」

 

「それ皮肉? ……でも、そうだとしたら他の子達は薄情ね。貴方、置いて行かれたの? 思わず共感しちゃう」

 

「お前は自主的に外に出てないだけだろ。共感されても困るってよ」

 

「ぐわぁぐわぁ」

 

 大して似てないアヒルの物真似を披露した後、静夜は煩わしそうに湯船の外に出している後ろ髪を撫でた。

 

「ねえ、タオル取って良い?」

 

「取ったら俺はすぐに出るからな」

 

「湯船でタオルってなんか凄い窮屈。お風呂に入ってるって気がしないわ」

 

「無理矢理二人で入ってる時点で窮屈だ」

 

「うーん……じゃあ、これで手を打とうかな」

 

 そうして静夜が出した要望。気乗りはしなかったが、まあやってやる事にした。といっても俺は別に快適になった訳でもない。

 

「んー、やっぱり足が伸びないとリラックス出来ない」

 

「その快適さは俺の犠牲の上で成り立ってんだぞ」

 

「役得でしょ? 好きなだけ感触を楽しんでも良いし、ちょっとぐらいなら触っても怒らないけど」

 

「……」

 

「……」

 

「ねえ」

 

「何だ」

 

「お願いがあるの」

 

「言ってみろ」

 

「美味しいご飯が食べたい」

 

「いつ」

 

「十五日の夜」

 

「分かった。要望はそれだけか」

 

「うん」

 

「……そろそろ上がるか」

 

「のぼせた?」

 

「全く」

 

「見栄っ張り」

 

 悪戯っぽくそう言いながら、尻目に俺を見る静夜の白い頬には薄い赤がさしていた。

 

 その先の空白の湯船にはぷかぷかとアヒルが泳いでいる。

 

「楽しみにしてるからね、お兄ちゃん」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 美味しいご飯、その要望を聞いた時点で何を用意しようかはすぐに思いついた。

 

 石上、竹下、日宮、坂下……俺の友人や知り合い達に連絡を取り、予定を確認する。折角だから少しでも賑やかな方が良い。

 

 石上に関してはこの前の話の件だと勘違いしたのか、アイツがリーダーであるチームのメンバーを引き連れて来るらしい。まあアイツが追加で二人来るようなものだろうから無害だろう、多分。

 

 準備する時間はそこまでかからない。友人が持っていた道具一式を有難く貸してもらい、食材や消耗品を買っておくだけ。場所は家の庭。無駄に広いのが役に立った。

 

 そう、俺が用意したのはバーベキューだ。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「へえ、二人は先輩後輩なんだな」

 

「それ私達もじゃないですか。……えっと、あの人達は乱入してきたヤンキーさんって訳じゃないんですよね?」

 

「よい君、あの人達には近づいちゃダメだからね」

 

「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ! 石上先輩とは僕も仲良くさせてもらってますけど、怖いのは見た目だけで──」

 

 食材が焼かれ煙が立つ数台のセットを取り囲む友人達。それぞれが連れてきた恋人? 部活仲間? の子達も含めた男女七人。

 

「ほ、ほ、ほ、ホントに見れるんだな!? 生で静夜ちゃんをッ!」

 

「落ち着いてくださいよリーダー……俺らその人のボディガードで来たんでしょ」

 

「というか何から護るんすか俺ら。ああ……俺も肉食いてえ……」

 

「バカ野郎! 静夜ちゃんが家から出るんだぞ! こんなチャンスはねえ! 厄介なストーカーが来るんだよ!」

 

「それリーダーの事じゃないんすか」

 

 家の入口付近で見張りのように立ってるのが石上含めたチーム三人衆。全員頭を盛ってる上に手作りなのだろう特攻服(トップク)を着てる気合の入り方。そのせいで何人かに白い目を向けられている。

 

「さ、用意したぞ。美味しいご飯とそれに相応しい環境」

 

「……」

 

 玄関からその光景を見る俺達。それが予想外だったのか、隣の静夜はぽかんとしたあまり見ない愛嬌のある顔をしていた。

 

「そろそろ庭ぐらいは外に出てもいいだろ。あと友達も作れ。それとも、月が怖いってか?」

 

 今日は満月らしい。上じゃきっと奇麗な真ん丸が居座ってるんだろう。

 だがそんなものは関係ない。今日は楽しい楽しいバーベキューだ。主旨はお月見じゃない。

 

「集まった奴らに話は通してある。まあ大体は気の良い奴らだから好きに振舞ってみろ」

 

「そう、ね。その通りかも」

 

 静夜は覚悟を決めたようだった。履き慣れてないサンダルに足を通して、恐る恐る、ゆっくりと。

 

 何を思ってるのかは分からない。ただ俺は何故かこうした方が良いと思ったし、静夜はそれに応えるだろうとも思っていた。

 

 ……結局俺は静夜の事を何も理解していないように思える。どこから来たのか、誰の子供なのか、何故外に出なくても良いと納得してしまうのか、何故俺は静夜の要望に応えようとするのか。

 

 そもそも俺達の関係は何なのだろう。本当に兄妹と呼べるのだろうか。本当に俺は兄で静夜は妹なのか。何もかもがあやふやのまま、今日まで来てしまった気がする。

 

「静夜」

 

 その両足ともが扉の溝を渡ろうとした直前、振り返った凪いだ表情の静夜に笑顔を向ける。

 

「楽しめよ」

 

 静夜は微笑みでそれに答え先へ進む。そうして友人達の輪に混じっていく様子を少し眺めた後、俺もそれに続いた。



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フリーフォール・クワイエット

 対策はしているがそれなりに煙は出る。食材が焼ける音と一緒に薄く絶えず立ち上っていく。

 

「……あんま焼けてねえなこれ」

 

 家の壁にもたれ、紙皿に乗せたタマネギを食べる。少し離れたコンロの周辺では我慢が出来なかったのか、見張りをしていた石上チームの二人が美味そうに肉を食っていた。石上は何故か庭に倒れて悶絶している。

 

「ただいま」

 

 そんな光景を見ていると、いつのまにか同じく紙皿を手に持った静夜が横に居た。

 

「楽しんでるか」

 

「うん。面白い人達と友達なのね」

 

「仲良くなれそうか」

 

「それはどうかな。キヨリちゃんもミエちゃんもユイちゃんも、まだ少ししか話してないけど良い人。でもちょっと怖いわ」

 

「怖い?」

 

「気づいてないなら良いんじゃない? ……ふう、やっぱりお兄ちゃんと話すのは楽ね」

 

「光栄だな。石上(アイツ)は?」

 

「さあ? こんばんは、って挨拶したらああなったんだけど、何かまずかった?」

 

「いや、気にしなくて良い」

 

「そう? それにしても本当にヤンキーって居るのね。空想上の生物だと思ってた」

 

「アイツらが変なだけでここら辺じゃ絶滅危惧種だよ」

 

 いつもと変わらない微かに触れ合うような会話。今日を機に静夜は変わっていくのかもしれない。それでも、この感覚だけは無くならないだろう。

 

「花火、混ざらなくて良いのか」

 

 目の前では何人かが花火を付け始めている。カラフルな光が音と火薬の匂いと一緒に届いて来る。

 

「今はいいわ。そうだ、花火といえば覚えてる?」

 

「窓から顔出してやったヤツだろ」

 

「そうそう」

 

「お前がどうしても花火やりたい、それも打ち上げがいいって言うから手に持ってやったんだよな。近所迷惑だわ危ないわでえげつないくらい叱られた。忘れたくても忘れられない」

 

「懐かしい。本当、色々な事を求めてきた。この家の中で」

 

 横目に見ると静夜は俺の方を向いていた。紙皿を横に、薄く生えた草の上で膝を折りたたみ正座していた。

 

「静夜?」

 

「ありがとね、お兄ちゃん。今日まで退屈のしない日々でした」

 

「なんだ、急に改まって」

 

「言ったでしょ。帰らないといけないの」

 

「どこに」

 

「月」

 

 能面のような表情だった。誤魔化しのない冷たい表情に思わず目を逸らす。逸らした先の夜空には、何故か今日一日一度も見ようとしなかった空の上には。

 

 あの月が満ちていた。大きく、眩しく、言いようの無い不安を掻き立てられる光。それが徐々に強くなっている。

 

 気づけば友人達の喧噪は消えていた。全員が地面に倒れ、持ち手を失った花火が小さく光り、コンロのそれと混じった煙がたなびいている。

 

「八月十五日は旧暦の話なんだけどね。向こうも価値観をアップデートしてるのかしら」

 

 静夜が何かを言っている。光が強くなっていく。言葉は聞き取れても理解が出来ない。頭に靄がかかったようだった。

 

「もう行かなきゃいけないみたい」

 

 眩しい。静夜が前に踏み出している。月に向かって、雲のような足場に立つ人影達に向かって、宙を踏んでいる。

 

 全身の感覚が抜け落ちていく。それでも俺は立っていた。前を行く静夜に追い縋る。

 

 ふと、静夜が振り返った。

 

「置き土産」

 

 唇に冷たい感触がした。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 俺は理解していたのかもしれない。静夜が居なくなる事を。

 

 嘘でも、冗談でもない。どれだけ話が荒唐無稽でも手紙を差し出した静夜の表情がそれを物語っていた。それでも表面では認めようとはしなかった癖に、バーベキュー(こんなもの)を用意した。

 

 最後に外へ、俺以外の他人と、未知のひと時を。そう考えて俺は用意をしたのだろうし、静夜もそれを理解していたから外に出た。

 

 これは送別会だったんだ。俺はとっくに別れを受け入れていた。静夜が言う以上はそうなんだろうと。

 

 光が満ちていく中でそんな事を考えながら、俺は意識を──。

 

「根ッッ性ぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 手放さなかった。耳に響く怒号と衝突音。そいつはその特徴的な髪型を直立させ、光の中からこちらへと飛び出して来た。

 

「おま、え」

 

 石上だった。なぜか額から血が流れていた。

 

「てめえも──目ぇ覚ませ!!」

 

 頬を張られた感覚と鈍い痛みが走る。ぼやけた頭が少しクリアになり、間髪入れずに肩を掴まれる。

 

「訳分かんねえけどあれがお前の言ってたストーカー野郎なんだろ!?」

 

 勢いに押されて無意識に首肯する。

 

「だったら早く追いかけろ! 呆けてる暇ねえぞ──深才(みかど)!!」

 

 名前を呼ばれた。また少し意識が鮮明になり、肩を掴む手の力が弱まった。

 

「静夜ちゃんだろ、お前しか居ねえだろ、くそっ……」

 

 前に倒れ込んできた石上の額が頭にぶつかり、視界が揺れる。身体の痺れが解けたような感覚が広がった。

 

 それと同時に、俺は何を考える訳でも無くその場から走り出していた。

 

「跳べ……」

 

 倒れた石上の呟きが微かに聞こえた。俺は光を掻き分けて庭の隅にある倉庫に向かい、扉を開ける。雑多な道具の中でも一際大きい梯子。それを抱えて家の壁に。

 

 また頭が働かなくなってくる。全てを忘れて眠る時のような感覚。立てかけた梯子を上り、屋根を歩きまた上へ。そうして頂上に辿り着いた時、目の前には高度を下げた雲とそこに足を踏み入れた静夜の姿があった。

 

 大きく息を吸い。助走をつけて何も考えずに全力で跳ぶ直前。

 

「お兄ちゃん」

 

 さっきの無表情じゃない、いつもと変わらない静夜の顔が見えた。空を跳ぶ奇妙な感覚。それでも完全には届かない。

 

 雲のような変な足場、そこに腹を打ち付けながら俺は掴まった。

 

 目の前で無数の揺れる人影の前に立つ静夜。いつの間にかサンダルは脱いだのか素足だった。

 

「ダメだよ。私は帰らないといけないの」

 

 突き放されるような冷たい声。そんな感想が不意に出るくらいにはもう頭の中は光でぐずぐずだった。

 

「俺は、お前が月に帰ったら、多分生きるのがイヤになる」

 

 咄嗟に口に出たのはあの時の答え。

 

「だから、帰って来い」

 

 手を伸ばす。届かない。身体を支える力も抜け落ちていく。

 そうして今度こそ意識を失い、俺は足場からずり落ちる。

 

「お兄ちゃん!!」

 

 その時、手の中には確かな感触があった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 今日から家族になる。そう言われて家の玄関で初めて、その子と顔を合わせた。

 

「はじめまして」

 

 丁寧な挨拶だった。奇麗な長い髪、頭の芯まで届くような声、人形のような佇まい。

 

 背丈は俺よりも小さく、顔立ちは幼い。それでも自分よりも年下だとは思っていなかった。学校で、公園で、店で。様々な場面でたまに感じる大人をその子からも感じていた。

 

「私のお兄ちゃんになってくれる?」

 

 その子の最初の要望はそれだった。俺はそれに応えたいと思った。それからは兄としてその子に振舞い始めた。名前は呼び捨てに、口調はぶっきらぼうに、常に前に立つように。

 

「あははっ! 今日からあなたは私のお兄ちゃん!」

 

 そうするとその子は無邪気に笑った。

 

 ああ、そうだ。俺がなんで静夜の願いを聞いてしまうのか、そんなの分かり切ってたじゃないか。

 

 初めて会ったあの日から、その笑顔を見た時から。

 

 俺は静夜を──。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 俺達は宙を浮いていた。いや、ゆっくりと落下しているらしい。奥に見える雲が遠ざかっていく。

 

「あははっ!」

 

 何がおかしいのか静夜は笑っていた。手はしっかりと繋がれて、俺の後を追ってふわふわと落ちて来る。

 

「簡単な事だったんだわ。あの子は自ら帰還を望んでいた。迎えを受け入れた。故郷が寂しかったのかしら」

 

 静夜を中心に俺達は光に包まれているようだった。温度も音も、不思議なほど外部から遮断されている感覚。互いの息遣いと声以外には何も聞こえない。

 

「それでも残りたいのなら。やりたい事が、心残りがあれば飛び降りれば良かった。どうせ罪人なんだから向こうは深追いしてこなかったかもしれない。不浄な地の上を選んだとしてね。それだけの話、諦める必要なんてどこにもなかった」

 

「静夜」

 

「なに、お兄ちゃん?」

 

「俺達なんで浮いてんだ?」

 

「気になる?」

 

「あとアイツらなんだったんだ」

 

「聞きたい?」

 

「……いや、別に良いや」

 

「そうね、気にしなくて良い。そんな事」

 

 一帯を覆っていた光はもう無い。下を見れば倒れたままの友人達。上を見れば奇麗な円を描く小さな満月と、まばらに見える星が夜空にあった。

 

「石上には後で礼を言っとかなきゃな。アイツが居なきゃやばかった。……なあ、まだ月は怖いか」

 

「ううん、ぜーんぜん。私に愛想尽きちゃったみたい。お兄ちゃんのお陰」

 

「そうか。じゃ、これからはどこにでも行けるな」

 

「それもそうね」

 

 結局、俺は静夜を何も理解出来ていないのかもしれない。

 

 もしかしたら、もしかすれば。俺の妹はかぐや姫なのかもしれない。

 

 ただ、そんなのはもうどうだっていい事だ。

 

「どこに行きたい、何がやりたい」

 

 そうしてまた、望みを聞く。俺がなんでそうするのかはもう分かり切ってる。

 

「うーん……色々あるけど、手始めにお兄ちゃんと一緒に──」

 

 静夜は笑う。夜空を背負って、物思いのない無邪気な、俺の好きな顔で。

 

「プールに行きたいわ」



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