絶望の渦中、生きるMessiahは何を見る? (綠月)
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プロローグ ~失われた理解者~

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この世には、二つの意がある。

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その日、私は書物の仕入れに人里に出ていた。書店をやっているわけではない、自分用だ。能力でなら新たな本を取り寄せることができるかもしれないが、それがどこからのものか分からないから問題を起こしたくない身として出来ない。普段どのような本を読んでいるのかというと、他の世界に関するものが多い。もちろん小説などの本もあるが、最近は異世界に関する知識を深めたいのだ。別に賢者になりたいわけではない。とにかく、人里の書店で購入した本を入れた袋を片手に帰路についていた。

 

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善意と悪意だ。自我のある者のほとんどはこの二つに行動を起こす。

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雨が降るかもしれないような、曇天の日だった。魔法の森と呼ばれる瘴気に満ちた森につき、自宅に到着する。玄関前で、私は初めて異変に気づいた。

「・・・この気配、まさか・・・!」

対侵入者撃退トラップがことごとく潰されているのに気づいたのだ。人や妖怪に寄り付かれたくなさに半殺しに出来る程のトラップを玄関先から仕掛けているのだ。それが無効化されていたり、壊されている。目に見えなくとも気で分かるのだ。私は嫌な予感を抱きながら、家の中に入る。頭に思い浮かぶのは同居している一人の女の安否。私の知り合いは少なく、見知らぬ奴が家に来ることは全くない。一瞬、攻撃を無効化する事が出来る能力を持つ知り合いを思い出すが、もし彼女ならば強引に入ろうとせず、外で待機して私に連絡をよこす。金品目当ての下賤な命知らずだろうと仮定し、ある部屋の前まで進む。

 

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しかし、世の中には善意を持たず、悪意しか持たない者がいる。

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ドアを前に一つの気配を感じ取る。しかし、嗅覚が血の匂いを感じ取った。この部屋は同居している女の部屋だ。ここでふと、侵入者は本当に金品が目当てなだけの下賤な命知らずなのかという考えが脳裏によぎる。それだけの目的なら人だろうと妖怪だろうとあの女がどうにかしてくれる。だが、対侵入者撃退トラップが全て潰されていたのだ。並大抵の輩が出来る事ではない。そう考える程私は警備を強くしているからだ。この先にいるのは女と血を流している侵入者か、あるいは…。意を決して、私はドアノブを回す。

 

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これは、悪意しか持たないで生まれた一人の男が引き起こした・・・

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目の前の光景を一瞬疑った。そこにいたのは、体全体がどす黒いオーラに包まれた異形と…頭部と四肢を失い、血を流す同居人、ラムダの姿があった。そこまで認識したところで、私は滅多に出さないだろうと自分でも思う程の怒りと憎悪を異形に向けていた。異形は私を見るだけで何も言わない。何が目的だったのかもうどうでもいい。能力である私のスタンド(このスタンドという存在は手に入れた後に調べて分かったものだ)、『ブレイカー・ソルジャー・レクイエム』(以降B・S・R)を出し、ありったけの鉄球を異形にぶつけた。本当はもっと容赦なく攻撃したかったが、既に亡骸となったラムダの事を考えてそれを抑えた。もちろん殺意は十分に込めたが。異形はやけにあっさりと死んだ。ラムダと戦っていた時に傷があったから弱っていたのかは分からないが、過ぎた事だからどうでもいい。それより、彼女を蘇らせなくては…。彼女の亡骸にBSRの手を触れさせ、蘇るように念じる。BSRの能力はありとあらゆるものの創造、女一人を蘇らせる事ぐらいわけない、そのはずだった。しかし、一向に彼女の体は再生しない。やがて気づいた、彼女の体を謎の呪詛が蝕んでいたのだ。それがBSRの能力を拒絶しているらしい。どうやらあの異形は物理的な力よりこういった呪いの力を専門とするらしい。ならその呪いを払拭すればいい。そう思いBSRの能力を使う…。

「・・・何故だ、何故出来ない!?」

しかし、こちらもまったく効かなかったのだ。私のBSRの力がだ。少しの間、何度も試したが…結局、彼女を蘇らせるのは失敗に終わった。

「・・・・・・ラムダ・・・」

受け入れられない。亡骸を抱きかかえ、静かに涙を流す。私の…私の事を分かってくれる、唯一の理解者だったからだ。

 

一方、とある別の家でも…

「んでだよ・・・なんでなんだよ!何が起きてやがる!」

ラムダを殺した異形と同じ異形に殺された人口兵器、熊野御堂の亡骸を抱える一人の聖女の姿がいた…。

 

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最高に、最悪な物語である。

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YKN.1 ユウ 生存確認。
YKN.4 ストレリア 生存確認。
今回の犠牲は・・・
YKN.20 ラムダ 正体不明の異形の襲撃に遭い、死亡。
YKN.3 熊野御堂聖月 ラムダの時と同様の異形の襲撃に遭い、死亡。
残り・・・159名。

今回タイトルが本当に思いつかなかったので実はまだ仮のタイトルだったり。あと死の描写もっと詳しい方がシリアスっぽいのかしら。


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邂逅編.Ⅰ ~聞こえるは破滅の序曲~

久々に投稿したせいで前回の前書き(にしたつもりだったはず)がシリーズのあらすじみたいになってしまった・・・まぁ割とぽいからいいか(直すのが面倒なだけ)。サブタイだっせぇ・・・あ、始まります。


魔法の森を走る。あの少し感じの悪い吸血鬼に聖月の蘇生を頼むためにだ。あいつは表は冷たいが根は優しいはずだからやってくれるはずだ。もし首を横に振っても無理矢理やらせてやる。あいつの力なら出来ないなんてことはない。聖月を殺したあの化けもんは何なんだ?納得いかねぇ。聖月があいつに殺されるなんて。あたしが倒したときは大して強くもなかった。何があったのか聞かなきゃならねぇ。整理が追いつかないままあの吸血鬼の住む家に着く。

「・・・あん?何か・・・荒らされてねぇか?」

あいつの家には罠が至る所に異常なほど設置されている。侵入者のためとか言っていたか。だが、ドアは開きっぱなしだし以前あたしが引っかかった踏むと宙づりにされる装置は破壊されている。それだけじゃねぇ、他にも教えてもらった罠まで壊されている。

「おい、いるか吸血鬼!あたしだ!聞こえてんなら外に来い!」

かといって中に入るわけにはいかねぇ、家の中までまるでトラップハウスかってぐらいに罠があるから。だから家の中に向け大声であいつを呼び寄せようとする。だが、待っていても帰ってくるのは周囲の木々のざわめきだけだ。どっか外出でもしたのか?不在だと考え思い当たる所に行こうと足を動かすと、ふと視界に見かけないものが映った。それが何か確認しようと近づく。それは石で出来た墓だった。それに”ラムダ”と書いてあった。墓の下を見れば不自然で弄ったって分かるように無造作に動かされて若干盛り上がった土が見える。

「ラムダ・・・まさか、あの吸血鬼も・・!?」

何度か会ったことのある女の吸血鬼が脳裏に浮かぶ。荒らされているらしい家と今までなかった墓。ここで起きたことを察する。だが一つだけ気になる点はある。あの吸血鬼の能力は何でも創造するはず。なのに何故ラムダを蘇らせなかった?

「まさか・・・出来なかった?いや、そんな事あるか・・・?だが、出来るんなら墓なんざ作らねぇよな・・・とにかく、一回あいつに会わねぇと。」

何だろうとあの吸血鬼に会う必要がある。あいつがいると考えられる場所、人里へ。

 

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吸血鬼の家は森の結構奥にある。その距離の中間まで来たところで殺気に近い気配を感じ取る。咄嗟にあたしは後ろに飛び退いた。その1秒後にあたしがいた足場から黒い煙が雷のように上に伸びていった。正体を探そうとすると前方の木陰から黒くて姿がよく見えない異形が姿を出した。そいつを見てあたしは気づく。

「こいつ、あの時の・・・!!」

忘れもしない。あたしの親友を殺したあの異形だ。何か魔導書らしきのを持っている。あたしが殺したはずだが、目の前にいるとなるとこの異形は複数体いるらしい。聖月を殺した異形とは別だろうが、関係ない。鎖のついた棘付き鉄球を握り、異形に突進してそれを振るう。だが、異形は姿を一瞬にして消し、横に姿を出す。

「あの時はあっさり秒殺されたくせに、ざっけんじゃねぇぞ・・・!」

体を動かさず鉄球を異形に振るう。しかし異形が姿を消す方が早い。今度は背後に回ってさっきみたいな黒い煙のような雷っぽいのを幾つも撃ってくる。その時に出た音に反応できないあたしではない。すぐに横に避け、異形の方を向く・・・が、背後に鈍い痛みが走った。短いうめき声をあげ背後を見る。そこには、さっきまで対峙していたのとは違う異形が黒塗りの棍棒を持っていた。それについているのはどう考えてもあたしの血。殴られた部位が無防備だったせいで視界が90度横になる。

「マジかよ、まだいやがったのか・・・クソ、こんな訳分からん奴に・・・!」

こうも簡単に不意をつかれ、一瞬で地に倒される。聖月もこんな風にやられたのか?立ち上がろうにも棍棒を持った異形が既にあたしの息の根を止めるべく頭部に棍棒を振っていた。間に合わない、殺されちまう。無意味な反射神経に目を閉じる。

「させん!異能刀術式奥義、”閃光斬”!」

その次の瞬間、耳に誰かの声と凄まじい金属音が聞こえる。その数秒後にそっと目を開ければ、白いオーラを纏った刀を振り下ろした直後の動きをした青い上着を羽織った白髪の女性の横姿があった。半身だけ起き上がり、女性の視線の先を見れば、粉々になった棍棒と消滅しかけている異形の姿。どうやら間一髪であたしは助けられたらしい。だが、魔導書を持った異形がまだいて、その女性に黒い煙を撃つ。しかし女性はそれを刀で受け流した。異形は立て続けに攻撃を出そうとしたが、足下の雑草が急成長して異形を捕らえた。しかも傍にあった木が引っこ抜かれて宙に浮き、上から異形を潰した。潰された異形は魔導書と共に消滅した。

「・・・そこの方、大丈夫か?すまない、拙者が出向くのが遅かったばかりに・・・。」

刀を持った女性があたしに話しかけてくる。よく見れば女性の背には9本の刀があった。右腰と左腰に3本ずつ、そして背に3本。というか、緑色のオーラを纏った刀に持ち替えている。

「安心しろ、痛くはない。異能刀術式奥義、”刀身癒突”。」

あたしが何をする気か聞く前に背後に回られ、その刀を背中に刺される。抗議しようとするが、何故か全く痛くない。どころか、背中の傷が癒えている気がする。

「あ・・・?何で刺されたのに傷が治って・・・?」

「・・・”刀身癒突”は害を与える術ではない。刀身を刺し、傷を癒やすものだ。すぐに傷を治す術は、あいにくこれしか持っていなくてな。」

刀を鞘にしまいながら女性が答える。いや、どんな術だよそれ。説明もなしにいきなり驚かすようなことしてくるんじゃねぇ。

「問おう、そなたは今起きている事を理解しているか?」

「・・・いや、さっぱり。」

「・・・分かった。戦士、一度人里に戻るぞ。」

女性がそう言うと、気の抜けた返事と共に木の陰からもう一人出てくる。垂れた獣耳に腰まで届く白の長髪をした女性だ。多分、雑草や木を動かしたのはこっちの方なんだろう。

「少し、ついてきてもらえるか。ここで話すには周囲の安全が保証できない。」

「・・・わーったよ。助けてくれた以上、敵じゃねぇみてーだしな。」

 

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時は少し経って、あたしは刀を持った女性と獣人に連れられる形で人里に到着した。更に料理店に通されると、そこには赤い猫耳の少女がいた。

「あっ、おかえりー!その人は?」

「森で例の異形に襲われていたのだ。事情を知らない様子だから、ひとまず戻ってきた。盗賊達は奥か?」

「そうだよ!無事でよかったー!」

「・・・盗賊?」

刀を持った女性と猫耳の少女の会話の中にあった単語につい復唱する。え、ここ盗みに入られてんのか?しかも達ってことは複数いんのか?なのに何で親しそうに話してんだ?疑問符を出してるとこで女性が奥に入っていくからとりあえず後についていくしかない。

 

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奥の部屋には、6人の女達がいた。一人は黒い帽子を被り、青い線の入った黒い服(へそが見えるタイプ)を着た少女。一人は青と赤のオッドアイのドレスを着た女性。一人は、周りに傘の妖怪や提灯の妖怪を引きつけて楽しそうに話してる着物の少女。一人は背中から紫色に光る茨を幾つも伸ばしている女性。一人は青いクリスタルみたいなのを食べてる女性・・・いやまて、何食ってんだ!?思いっきり硬そうな咀嚼音が聞こえてんぞ!しかもその隣に同じもん食ってる中性的な奴がいるし・・・。

「・・・皆の者、無事のようだな。」

「あら、生存者かしら?」

ドレスを着た女性がこっちを見て喋ってくる。

「あぁ、森であの異形に襲われていた。今から何が起きているのか話すところだ。さぁ、こちらに。」

刀を持った女性が丸テーブルのある椅子を引いて座るように促すからとりあえず席につく。

「まず、自己紹介から致そう。拙者のことは侍、とでも呼んでくれ。訳あって拙者は本名を言えぬのだ。周りにいる者達もな。」

「なんだそれ・・・ストレリアだ、とりあえずさっき助けてくれてサンキューな。」

「礼には及ばぬ。それと、あそこで寝始めた獣人は戦士という。」

ホントだ、移動中もあくび以外無言だったあの獣人隅で眠りこけてやがる・・・。後の奴らも次々に自己紹介をする。帽子を被った女が盗賊。ドレスの女は姫。妖怪と話してるのは歴史学者。茨を出してるのは植物選定人。クリスタルみたいなのを食ってるのは鉱山作業人、中性的な奴は捕食者。さっきの猫耳少女は料理人というらしい。・・・こいつら何で職業名を名乗ってんだ?

「さて、ストレリア殿よ・・・話すとしよう。今起きている異変を・・・。」

「異変・・・?これ異変なのかよ?」

「あぁ。実は近頃・・・一人になった能力者や一般人を先ほどのような異形が襲う事例が多発している。」

「・・・一般人は分かるが能力者までもかよ?」

「そうだ。しかも、殺された奴は何かの呪詛に蝕まれて、どのような術でも蘇らせる事は出来ない。」

「そうかよ・・・どーりで墓なんてあったのか。」

「・・・何の話だ?」

「いや、実はな・・・」

 

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「なるほど、そなたの知り合いがあの異形に殺されたから、蘇生を可能とする知人に助けを請おうとしたらその知人の家の外に同居人の墓があったのか。となるとその同居人も異形に殺されたに違いない・・・しかし、その知人もまた異形に襲われていないか気がかりだな。」

「何なんだよあの異形は・・・あたしが一度異形を倒したときはあまり強くなかったってのに。」

「・・・一度の経験だからと相手の力量を見誤ってはならぬ。とはいえ、確かに拙者もそのように感じる事はあるが。」

「いやあんのかよ。というかその言い方だとあたしを助ける前にも異形と戦ってたっぽいな。」

「その事だが・・・あの異形から命を守るには他者と固まるのが得策だと考えている。そうすれば異形も倒しやすくなるのでな。」

なるほど、周りにいる奴らはそういう理由でここに集まっているのか・・・で、あたしもここに連れてこられた訳だ。

「しかし、2,3人の能力者がまとめて殺されている現場にも遭遇した。今この場で戦えるのは拙者と戦士、後は捕食者くらいだ。それでだ・・・そなたも戦えるのであれば、先ほどの拙者達のように、他の一般人や能力者達を探し、ここに集めさせるのに協力していただきたい。出来るだけ多くの者で集まれば異形に襲われても被害を食い止められると拙者は信じている。」

「・・・さっき死にそうになっていたんだぜあたしは?日和ってる訳じゃねぇけどあんたの方が強そうだが・・・」

「そこは拙者達が守ろう。お願いだ、あの異形の出所も突き止めなくてはならない・・・。」

「まぁ拒否できるほど恩知らずじゃねーしなぁ・・・ホントに危ないときは助けてくれよ?」

「もちろんだ。力の及ぶ限り、手助けしよう・・・。」

 




YKN.23 盗賊 生存確認。
YKN.24 料理人 生存確認。
YKN.25 侍 生存確認。
YKN.26 姫 生存確認。
YKN.27 歴史学者 生存確認。
YKN.28 植物選定人 生存確認。
YKN.29 鉱山作業人 生存確認。
YKN.30 捕食者 生存確認。
YKN.33 戦士 生存確認。
今回の犠牲は・・・
無し
残り・・・159名。


地の文とセリフの比率のなさに笑えるぜ☆ というか犠牲者いないのか今回は・・・まぁ次回で誰か死ぬだろう多分(穏やかじゃない)。今回もセリフに名前振らなかったけど誰が喋ってるか分かんないとかないかしら。結構長くなったから誤字ないか怖い・・・というか読んでくれる方々を飽きさせていないだろうか。(ジツハカンソウトカゴジ、アドバイストカホシイナンテイエナイ・・・。)


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邂逅編.Ⅱ ~歯に衣着せずは恐れ知らず?~

台詞マシマシ注意報発令中。()今回は結構酷い駄文だぜ・・・。


時は過ぎ、あたし達は妖怪の山に来ていた。とはいえ、あたしと侍だけだが。あの戦士とか名乗った奴は「眠い」の一言で同行を拒否しやがった。侍が言っていたが、あいつはかなり面倒くさがりらしい。まぁそこはなんとなくあたしも察していたが。そんな訳で戦士は万が一自分たちが不在の時の戦闘要員という理由で人里に残している。

「今のとこ静かだけどほんとに誰かいるのかよ?」

「嵐の前の静けさ・・・という言葉がある。いつ助けの声が聞こえてもおかしくはない。それに、何者かの気配はある。ひとまず、山頂まで向かうとしよう。」

正直あの異形には遭遇しないで誰かしらと合流したいけどな・・・。

~~~~~~~~~~

「何で山頂に着いた瞬間二人も倒れてんのを見つけなきゃならねぇんだよ!?」

そう、山頂に着いた途端二人の女が倒れていたのだ。一人は学生服の人間、もう一人は桃色の角と翼を生やして緑色の液体の入ったドデカい注射器を片手にしてる女。異形の襲撃に遭って倒れているのかと思ったがどっちも外傷は無い。多分普通に気絶しているだけか?

「落ち着け、まずは話を聞くぞ。」

侍が学生服の人間に近づいて揺り起こす。

「んぅ・・・ひっ!?だ、誰ですか今度は!?」

学生服の女は起き上がると青い目を見開いて半腰の姿勢で退く。涙目になっている辺り相当怖い目に遭ったか?

「落ち着け、拙者らに敵意はない。少し話を・・・」

「そ、そういうこと言う人程怪しい人はいないんですよ!信用しませんからね!?今すぐ私から離れてください、半径500キロぐらい!」

いや適当に言ってるんだろうけどやべー事言い出すなこいつ。

「すまない、拙者の今の実力では今すぐとなるとせいぜい半径300キロしか・・・」

「いや何で素直に言うこと聞こうとしてんだよ!?こいつの警戒心が強いだけだろうが!」

つーか今すぐでも半径300キロ離れられるとかこいつ別の意味でやべー奴だな。こいつに喧嘩売るのはやめとこ。

「でだ・・・お前何でここで気絶してたんだよ?」

「そ、それは・・・」

~回想~

「うぅ・・・私の大事な本、どこにいったのぉ?」

いつも大事にしている本を気づいたら無くしてて、探してたんです。そしたら悲鳴が聞こえてきたからビックリして何かと思ったら・・・

「私は美味しくないですううう!!」

羽を生やしてデカい注射器を手にしている女が化け物を引き連れて来て・・・

「イヤアアアアァ!?」

「ピャアアアアァ?!」

~回想終了~

「・・・いや、お前がそれで気絶したのは分かったがこっちの方が気絶したのは何でだよ!?」

まさかこいつの出した悲鳴にビックリしたからか?え、それだけで気絶するのか?

「待て、先程の話ならばこの女を追っていた異形はどうしたのだ?恐らくは例の異形だと思われるが・・・」

「そいつらならウチが適当にあしらっといたっすよ?感謝してほしいっすね♪」

別方向から新たな声が聞こえた。その方を見ると、緑の線の入った黒いボールみたいなのを幾つも浮かしてる緑髪の女がいた。

「そうか・・・感謝する。」

「うーわ、何すかお姉さん。そんな刀何本も持ち運んじゃって。歩きにくそうっすねぇ?それがかっこいいとか思っちゃってるんすかぁ?ウチ的に見たらダサいっすよ?キヒッw」

こいつ結構口悪いな・・・。まああたしはこんな奴に煽られてもキレねぇけど。

「そっちの姉さんはガラ悪そうな癖して聖女気取りっすかぁ?何か裏で愚痴言って見られたら理不尽に襲ってきそうっすねw」

「んだとゴラァ!こっちだって好きでシスター務めてんじゃねぇんだよぶっ飛ばすぞ!」

無理だった。何故か少し前の自分の行動をぴったりと言い当てられて怒りと少しの恥ずかしさに棘付き鉄球の鎖を握りしめて一度ぶつけようとするが侍に止められる。

「落ち着け・・・。今はそのような喧嘩をしている場合ではないだろう。」

「ま、また誰か来た・・・怖いよぉ・・・」

こいついつも怯えてそうだな・・・。つかこんだけ騒いでもあの翼人目覚まさないんだが。いや、こんなにビビりの女の悲鳴一つで気絶出来るんなら起きたら同じくらい面倒くさそうだが。

「で?姉さん達はここで何してるんすか?」

「あぁ、それなのだが・・・」

~~~~~~~~~~

「という訳で、そなたらにも拙者らと共に来て欲しいのだが・・・」

「そ、そんな事言って油断させて連れ込んでから襲ったりしないですよね!?」

学生服の女がさっきより後ろに下がって距離をとる。こいつ警戒心だけは人一倍強いな。

「そのようなつもりはない。拙者はただそなたらの身の安全を保証したいだけなのだ。」

「そう言われても・・・。それに、大事な本だってまだ見つかってないのに・・・」

「先程言っていた事か。ちなみに、どんな本なのだ?」

「緑色で少しぶ厚めの本です。1時間は探してるんですけど見つからなくて・・・でも、亡き祖父に貰った本だから諦めたくないんです。」

そりゃ大事にもするな、誰かに会っただけで逐一気絶しそうなのに1時間ずっと探してるのは意外だが・・・

「・・・物を大事にする気持ちは分かるが、それだけ探して見つからないなら諦めるしかないのではないか?もしかすればここに来た誰かが拾った可能性もあるぞ。」

「た、確かに・・・。でも必ずしもそうと決まった訳では・・・」

「ならば拙者も探すのを手伝おう。拙者らはこの異変の解決のために他の場所も調査に向かう気でいるのでな。そのついでと言ってはなんだが、もしかすればそなたの大事にしている本とやらも見つかるかもしれん。」

「ほ、ほんとうですか?何で、初対面の私にそこまで優しく・・・」

学生服の女はそこまで言って涙目になる。もしかしたら元からかもしれないが。

「見つかるといいっすねぇ?あ、ウチは断っておくっすよ?」

「は?お前あの異形に殺されてもいいってのか?」

「別に見つからなければいいだけっすよね?仮に見つかっても撒けばいいだけっすし。それに・・・ウチは団体で行動するのは好きじゃないんで♪異変の方は姉さん達が解決してくれそうだから気にしなくていいっすよね?安心してくださいっすよ、姉さん達の事は適当に眺めさせて貰うっすから。これから楽しいことが起きそうな気がするっすからね。」

そう言って緑髪の女はどこかへ歩き出した。放っといても大丈夫そうな気はするが・・・。侍は緑髪の女が消えた方を見ていたが、少ししてまだ気絶している翼人を肩に担ぐ。

「・・・行こう。元より会う者全員に話をつけられるとは思ってはいない。」

そしてあたしらはまた人里に戻る事になった。学生服の女はあたしらよりずっと後ろからついてきていた。




YKN.5 ロジカ 生存確認。
YKN.155 カルサイト・バダムスシノーネ 生存確認。
今回の犠牲は・・・
無し
残り・・・159名。



今回全く喋らなかった注射器持ちの翼人は次回喋ります(予定)。騒がしい奴なので喋らせたらただでさえ台詞過多なのに更に増えてしまうので。だったら出さなきゃいいって話だけども何しろYKN全員が出るから1話に1人でも多く出しとかないとこの後の話が長引くんですよ・・・はい、見苦しい言い訳です。


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邂逅編.Ⅲ ~刹那に見えた喪失~

台詞マシマシ注意報継続中。今回は初のYKN以外のα枠が出ます。といっても名前だけですが。後敵役もちょっとだけ。


学生服の女、ロジカをどうにか説得して皆のいる料理店に連れ込む事に成功した。その帰路で本の行方を人々に少し聞いたりはしたが、まぁうまくいくわけがない。おかげで当の本人は皆のいる奥の部屋の隅で涙目で落ち込んでいた。

「どうしたものか・・・本屋に届けられた可能性も考えはしたが実際に行っても見つからなかった。あのまま放っておく訳にはいかないが・・・。」

「そういやあの翼人はどうした?流石にそろそろ起きたんじゃねぇのか?」

そこまで言うとどこかから短い悲鳴が聞こえてきた。というか短いのにかなりうるさい。

「・・・隣の部屋で横にしていたが、起きたようだな。あの者なら何か知っているかもしれない。」

耳元から手を離した侍が隣の部屋とやらに歩き出す。気になるし一応あたしもついていくか。

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「ヒイイイ、誰か来たんですけど!お前は知ってはいけないことを知ってしまった、だから死んでもらおうとか言われるんですか私は!?何か刀いっぱい持ってるし絶対そうだ!何のことか知りませんけど私は秘密とか絶対に守りますから命だけはー!」

あたしらが入った瞬間例の翼人が寝かせられてたであろうベッドの上で早口でまくし立てるかのようにしゃべり出す。案の定こいつもビビりらしい。緑色の液体が入ったデカい注射器をこっちに向けている。しかも今気づいたが尻尾の方は先端が桃色の液体が入ったハート型の容器になってる。あれだけ何か嫌な予感がするのは気のせいか?

「落ち着け、殺す気などない。少し聞きたいのだが・・・緑色で分厚い本を知らないか?そなたが異形に追われていた時に出くわしたあの少女が探しているのだが。」

「何で私が異形に追われている事を・・・いや、その人から多分聞いたんでしょうね。でも私はそんな本は・・・いや、待ってください。」

翼人が何かを思い出そうとし、やがて手を叩く。

「あぁ思い出した!確か・・・あの山を歩いていた時に腰に鞭を下げてて鳥の羽がついたマントを羽織っている女性と出くわしたんですよ。凄い大人びてましたね。で、話しかけられるかと思ったらあの異形をけしかけられて・・・。あの時逃げようと必死でしたがあの時にその人が緑の本を持っていたかもしれないです!」

「・・・間違いなくこの異変に関わっているな。異形をけしかけたとなると首謀者の可能性もなくはない。」

「え、異変って何ですか!?」

こいつも気づいてないタイプだったか・・・まぁ知ってなかったから一人でのうのうと外を出歩いていたんだろうが。とりあえず異形による異変の現時点で分かっていることを話す。

「そんな事が起きてたんですか!?何で過去の私は山に行こうと思ったんですか!おかげで死ぬほど怖い目に遭っちゃったじゃないですかぁ!自分の馬鹿ぁ・・・。」

いや知らないが。被害がどれぐらいなのか知らないがもしかして異変を把握してる奴らってそこまでいなかったりするのか・・・?

「しかし・・・何故その女性がロジカ殿の本を持ち去っていったのか理解できぬな。もしや、普通の本ではないのか・・・?」

「知りませんよそんなの。それより怖いので異変が解決するまではここにひきこもってもいいですか?というか絶対ひきこもります!」

いや、出来れば異変の解決に貢献してほしいんだが・・・。

「無理ですよ、だって私治療しか出来ない戦えないサキュバスのナースなんですから!」

「お前サキュバスだったのかよ・・・。別に治療する術があるだけ無能力者よりはマシだろうが、ヒーラーとして戦いをサポートしてくれたって・・・」

「嫌です!絶対ひきこもりますから!」

そう言ってサキュバスの女は布団にくるまった。どんだけ意地っ張りなんだよ・・・。

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明かりの少ない薄暗い廊下をただ歩く。すると向こう側からとある姿が出てきた。

「おや、ラファリン殿ではないですか。どこかに出かけるんです?」

「貴様は確か・・・あの吸血鬼の取り巻きか。」

「その解釈は間違っていませんな、ですがこんな老いぼれでもウランステルという名前くらいはありますぞ。」

黒いフードを被った老人は自嘲気味に名を名乗る。呼んでやる価値はないがな。

「ふん・・・なに、あの男に頼まれごとをされただけだ。命令されるのは癪だが、妾の望む未来には仕方のない事よ・・・」

「それは儂の主様とて同じじゃろうよ。ところで、件の方はどうなっているんです?」

「有志集めは妾の担当ではない。あの女・・・ルイとかいったか。先程新たな有志を引き連れたと聞いたぞ。」

「あぁ、そうでしたか。失礼、歳には抗えぬものでな・・・。」

吸血鬼が何を言うか。いや、老人になってから吸血鬼になったんだったか。

「もういいだろう。妾は行くぞ。」

そう言い、老人の横を過ぎる。気をつけろみたいな事を言われたが構う事か。

「・・・やれやれ、以前からあの方に服従すると決めたというのに、まだ激務に走らされるとはな。じゃが、あの男の能力ならば・・・この地の強者がどれほど集っても、勝つことは叶うまい。そう確信したからこそ、主様も他の皆も協力しているのだからな。」




YKN.154 シンツィアマンダリン・ロウネ 生存確認。
YKN.65 ウランステル 敵側発覚。
YKN.152 ラファリン 敵側発覚。
今回の犠牲は・・・
無し
残り・・・157名。
討つべき敵は・・・現在2名。



敵役は解決側とは別に分けます。果たしてどれほどの数が敵になるか・・・本当は敵側発覚じゃなくて裏切り発覚にしたいけど何も裏切っていないから出来ない。中々死者が出ませんがご安心を、次回はキャラ視点が変わる予定なので次こそ死者が出るはず。(未来の自分に丸投げしてるだけ)


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邂逅編.Ⅳ ~躍動する赤と白~

タイトルが思いつかなかった・・・()
今回は以下の作品のキャラが登場します。
・アルカナハート
・艦隊これくしょん~艦これ~
・くされ戦記


「ただいま。」

「おかえりなさい。」

帰った時に使う言葉を言いながら私が家の扉を開けると、赤髪ツインテールの女性、シャルラッハロートが反応する。ソファーに座っていたのでその隣に座り込み、話を切り出そうと口を開く。

「シャル、少し話があるのだが・・・」

「あら、どうしたの?」

「先程、気になる話を店の人に聞いてな。その内容なのだが・・・」

~~~~~~~~~~

「毎度あり。しかし・・・お嬢ちゃんはよく一人で出歩けるねぇ?まぁ、人里じゃまだ被害報告は無いから意外と大丈夫なのかな?」

買い足す物の支払いを済ませた時に店の人にそう言われた。

「・・・む?被害・・・とはなんだ?仔細・・・ではなく、詳しい話を聞きたいのだが。」

その言葉が引っかかり、聞き返すと男は少し目を見開いて私を見た。

「なんだ、知らなかったのか?なら話すとしよう。最近、幻想郷中で孤立した能力者や一般人が化け物に襲われて殺される事例があるんだ。さっき言ったように人里ではその化け物は見られていないが・・・まぁ、見たけど誰かに言う前に殺されたというの可能性もあるからやっぱり安心は出来ないのかな。」

~~~~~~~~~~

「恐らく・・・ここ幻想郷に時々あるという異変に違いないと私は思ったのだ。帰る道中に人々に聞いてみれば、里以外の場所での被害はそこそこ多いらしい。一、二件程度の数ならただ殺しが好きな者が日常的に暴れているだけだと思ったが・・・どう思う?」

シャルの見解を聞こうと言葉を切る。すると予想通りと言うべき言葉が少し間を置いて返ってきた。

「間違いなく異変でしょうね。どうするのよ?」

「決まっている。調査に乗り出すまでだ。」

ソファーから腰を上げる。これが異変ならば放っておく訳にはいかない。いつかはこの人里にも大きな被害が出るはずだ。

「私も行くわよ。一人になった所を襲うって話ならソフィーが危ないもの。まぁ、一人増えた所で襲われなくなるなんて話じゃないのは分かっているけど。」

そう言い、シャルもソファーから立つ。

「しかし、家主がいない時に異変だとはな。多くの人手が欲しかったが・・・。」

そう、ここは私達が居候している家なのだ。私達だけではなく他にも居候が何人かいる。そして今、家主のりゅう殿や居候の何人かが里帰りで幻想郷にいないのだ。

「そうね・・・私達が出て行ってもあの姉妹と怠け者がいるし一人になる状況にはならないでしょうから問題ないでしょうし。」

りょう殿、りく殿、綠月殿の事を言っているのだろう。何故か綠月殿は家主とほぼ容姿が似ている。そこで、綠月殿以上に家主と容姿が似ている居候の事を思い出した。

「・・・そういえば、りょく殿がまだ帰ってきていない気がするが・・・。」

りょく殿はりょう殿やりく殿と姉妹関係にある人だ。動く二本の髪が特徴的だと思っている。彼女は知識欲が高く、日中はよく外に出かけて何かしらの調べ事をしている。

「・・・あいついつも遅く帰ってくるけど・・・時々休憩に帰ってきてたわね。けど、今日は朝に出かけてから見ていないし、もしかしたら異形の襲撃に遭ったのかもしれないわね。」

シャルの言葉にそうかもしれないという気持ちとそうあってほしくないという気持ちが相反する。

「・・・そうだとしたらりょく殿が危険だ。まずは彼女を探して、その道中で異変調査を行うぞ。」

「そうね。犠牲になる前に見つけないと・・・」

こうして私達は今、この地で起きている異変の真相を知るべく家を出たのだ。

~~~~~~~~~~

人里の外に出た私達は、里に近い所にある迷いの竹林にへと来ていた。来た者を必ずと言っても良い程迷わせるらしい。天にまで届くのではないかというくらいに長い竹と竹の間を通り、竹林の中心にあるらしい永遠亭を目指す。ただ、異変の調査を兼ねているとはいえ今の目的はりょく殿を探す事。どこにいるか分からないからとしらみつぶしに探すのにこの竹林から探すのは間違いだった。おかげで私達は聞いた話の通りに道に迷ってしまっていた。

「どうするのよこれ・・・上から見ようにも竹が長すぎて何も見えないわ。」

鎖を竹に巻き付けることで上に移動して道を探そうとしていたシャルが地に戻ってくる。

「すまない、私がここから探そうと提案したばかりに・・・」

「ソフィーは悪くないわよ、ここまで竹を放置している住人が悪いでしょ。いっその事、ソフィーの剣でこの竹を切り倒せば道が分かると思わない?」

そんなことをするのはよくない気がする。しかしこのままでは私達が行方不明扱いにされてしまう。どうしたものかと考え込んでいると、ふとどこかから誰かの気配を感じ取った。こちらに向かってきているらしい。シャルも気づいたらしく、気配がある方を向く。

「・・・何だ、兎ではなくただの通行人風情か。」

やがて姿を出したのは、尻尾と角を生やした女性だった。その手にはこの竹林にいるとされる兎と、もう一つの手には何かの荷物を持っていた。中は見えない。

「出会い頭に通行人風情なんて舐めた口をきくわね。」

シャルが少し怒気を含めた声で返す。しかし女性は悪びれる様子もなく。

「ほざけ。妾より遥か下の地位に位置する負け犬が。その態度、正してやりたい所だが・・・今は貴様らを相手にする暇はないのだ。」

「・・・貴方は、一体何の目的でここに来たのだ?」

直感が走った。この女性から溢れる悪の気配は、ただの住人なだけに見えないと。

「何故貴様の質問に答えなければならない。・・・いや、気が変わった。直に始まる出来事の予告程度はしてやろう。」

「その口・・・あんた、異形の襲撃の話に関与しているわね?」

さっきよりも明らかに敵対心を向けたシャルが今にも攻撃しそうな様子で女性に問う。

「異形・・・あぁ、あいつらの事か。その通りだ、とはいえ、妾は関与しているだけだ。だが覚えておくがいい。近いうちにこの幻想郷なる地は終わりを迎える。能力者や一般人のみならず、文明も土地も、全てがな・・・。」

やはり、ただ者ではなかった。待てなくなったのかシャルが手から鎖を伸ばし、女性を襲った。自身も彼女を止めようと赤い剣を出そうとした。しかし・・・

「動くな。」

女性のそのたった一言で、全身が固まった。指先一つも動かせない。シャルの方も同様だった。

「っ、何よこれ・・・!」

「貴様らを相手にする暇はないと言っただろう。しばらくは大人しくしているがいい・・・。」

女性は動けない私達の横を通り過ぎ、消えていった。明らかに強者だと分からされた。幻想郷に来ても鍛錬を欠かしたはずのない私達が相手にされないくらい一方的にされたのだ。

「何なのよあいつ・・・!次会ったら絶対に殺してやる・・・!」

私より闘争心の強いシャルは歯ぎしりしている。私達の体が動かされるようになったのは数分後の事だった。

「・・・彼女の事は気になるが、今はりょく殿を探すのが先だ。恐らく、彼女が来た方向に永遠亭があると思われる。」

彼女は竹林にではなく、永遠亭に用があったに違いない。そう確信し、彼女が来た方向に足を踏み出す。シャルはというと、舌打ちしながら竹に八つ当たりの蹴りを入れてから私の後についてきた。

~~~~~~~~~~

やがて永遠亭にたどり着いた私達は少し言葉を失っていた。そこには永遠亭と思われる建物の残骸が残っていたからだ。明らかに彼女がやったに違いない。それだけでなく、二人の姿もあった。一人は着物姿で角を生やした女性、もう一人は落書きで出来たように見える謎の白い生き物。ひとまず二人に近づいてみる。気づいたようだが敵意はなかった。

「ん?何だお前達は?」

謎の白い生き物が口を開く。いや、口元をみれば開いてはいなかった。

「・・・その、ここに用があって来たのだが。」

「そうなんだー?私、ここの竹でぐるんぐるんしていたら凄い音がしたから来たんだけど、既にこうなっていたんだよねー。」

着物姿の女性も喋った。しかし、見た感じは成人女性のはずなのに、やけに子どものような声帯をしている。

「・・・・・・何こいつら。ちょっとヤバいんじゃないの?」

本人達を前にシャルが思った事を口にする。

「少しは隠す努力をだな・・・。それより、りょく殿・・・赤色の髪でその一部が動いている女を探しているのだが、見ていないか?」

「すまん、知らん!だが人捜しをしているのならば俺も手伝おう!」

「え、じゃあ私もやるー!何か面白そうだし!」

望んでいた答えはなかったが、手伝ってくれるらしい。

「・・・ソフィー、どうすればいいのよこの二人・・・一人は人じゃないでしょうし、もう一人は幼児退行してそうだし。」

「・・・本人達が手伝ってくれると申し出ているのだ。異変調査とて、人手は多い方がいいだろう。」

こうして私達は二人の仲間を加えて竹林を後にするのであった。竹林の出口はあの女性が消えていった方向を歩けば見つかった。




YKN.70 ミルシュカ・クロドヴィラ 生存確認。
YKN.91 独眼ちゃん 生存確認。
YKN.123 シャルラッハロート 生存確認。
YKN.130 ヴァイス 生存確認。
今回の犠牲は・・・
無し
YKNが増員したため+1
残り・・・158名。
討つべき敵は・・・現在2名。



投稿が遅くなったのと展開が急スピードなのと犠牲者を増やすはずがむしろ生存者が増えてしまった事を謝罪します。台詞以外の文を頑張ってみたけどやっぱり駄目だったよ・・・いや、台詞の多さでここまで書けるのはむしろそういう才能があるって事(殴 というかシリアスにぶつけるギャグ要素が少ない気がしてきた。まぁだからってあからさまに増やしたらアレだが。


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邂逅編.Ⅴ ~レジスタンス~

YKN紹介企画の続きでYKN達2、3人の紹介する事がほぼ無くてどうしようか悩んでいる私だ。完成しても駄作確定、いや私の作品全部駄作だったねうん、成長なんてなかった。むしろ劣化まである。


「何ィ!?つまり、連続殺人事件が起きているということか!?」

「さつ・・・じん?何それ?」

無名の丘なる地を進む合間に私達が探しているりょく殿の容姿のついでに今起きている事について話すと、どちらも知らなかったのか驚いていた。いや、一人はピンときていなさそうだが・・・。

「殺人を知らないとかあんた一体いくつなのよ・・・。要は、ここにいられなくなるって事。」

「へぇぇ・・・それは嫌だなぁ。ここって遊び場が多くてずっといたいもん。」

シャルが分かりやすく補足したおかげで理解できたらしいが、結局深く考えていない様子だ。どう見ても大人のはずなのに、喋れば普通の子供。この人の身に何があったのか・・・。

「なら急いでそのりょくとやらを探さなくてはなるまい!何か心辺りはないのか?」

「・・・残念だが、何もないのだ。新たな発見の為ならどこにでも行くような方だからな。」

だからこうして各所を回っているのだが、この捜し方はハッキリ言って時間をかけてしまう。見つける前にりょく殿の命が潰える事になれば・・・考えたくない。しかし、急ぐにしても急げない。一度、家に帰っていないか見に行こうかと楽な事を考えていると、ふと視線を感じた。ここにいる4人以外の何者かの気配もだ。ただ、向けられている視線に敵意は感じない。

「・・・シャル。分かるか?」

「・・・いいえ、ただ隠れている、というよりは姿を消している可能性があるわね。」

謎の気配を探ろうと二人で足を止めて周囲を伺う。咲いた鈴蘭の花の香りが鼻に刺す。微かに魔力の残滓が漂ってくる方を向き、赤い大剣を宙に出す。敵意がないらしいのは分かっているが、姿を見せるようにと無言のメッセージを送っているのだ。効果はあったらしく、気配の正体が一瞬眩しい光を放ちながら出てきた。赤と黒の着物に和傘を差し、表情を隠すための狐のお面という出で立ちは友好的というよりは敵意を持っていそうだった。

「む、何奴!?」

謎の白い生き物・・・本人曰く、伊達正宗と名乗っているが絶対に違う気がする。が、頭につけた三日月型の何かをデカくさせて着物の人物に話しかける。警戒態勢・・・なのだろうか。一方で角を生やした子どもらしい女性は三日月型の何かに興味を示していた。

「そう気を張るでない、隠れるように動向を眺めていたのは詫びようぞ。妾の思うような人材か見極めたかったまでだ。」

「・・・どうするソフィー?一回縛っとく?」

シャルが明らかに攻撃態勢に入っている。制止しなければ今すぐにでもこの素性の知れない人物に危害を与えそうだ。

「待て、まだ敵意を隠しているとは思えない。私達に危害を加えるのが目的なら姿を出さなくても出来る。なのにわざわざ出てきたのだ。信用するかはともかく、話ぐらいは聞いてもいいだろう。」

そう言いつつ私も出した剣を戻してはいない。この者が何を目的に私達に接触してきたというのか。

「無益な争いをする事にならずに済んで助かる。一応弁明の言葉を告げれば、お主らの敵になることは今も今後も無いだろう。お主らが闇に魂を売ることが起きようものなら話は変わるが・・・まぁ深くは言うまい。一方的になるが、用件を話そう。」

謎の人物はそこまで言って、一呼吸置いた。

「そこの二人が探している赤毛の女ならば、今は森にいる。だが、この地に起きている異変の産物に襲われ、このままでは長くは持たないだろうな。」

「・・・何故りょく殿の特徴を知っている?」

「それは言えぬな、この情報を疑うならそれでもよい。探し人を救いたいならば、実際に行って確かめる事だな・・・。」

そう言い終え、謎の人物はまた姿を消した。今度は視線も気配も感じ取れない。私とシャルは警戒する必要がなくなったと判断し、互いの武器をしまう。

「言いたいことだけ言っていなくなってしまった・・・。あのお面の人物は一体何を知っているというのだ・・・?」

「ソフィー・・・どうするの?ハッキリ言ってかなり怪しいのだけど?」

「・・・当てもなく探していたのだ。ここは一つ、騙されたと思って森に行ってみないか?」

あの人物が何なのか分からないままだが、何故かまたどこかで会うことになる気がする。今優先するべきはりょく殿の捜索。シャルとついてきている二人を促して魔法の森へ向かうことにする。

~~~~~~~~~~

ヴァイス達がいなくなった無名の丘。そこにはまたあのお面をつけた人物が佇んでいた。

「・・・これでよい。駒が一つ増えたところで、どうなるかは分からないが・・・少しの足しにはなるだろう。」

その隣に、白銀の髪の女性が影から出てきた。

「綾・・・。こっちは終わった、そっちは?」

お面をつけた人物・・・綾は、白銀髪の女性を向く。

「問題は無い、時にそなたに問うが・・・この度、どうなると見る?」

「・・・さぁ?主にやってくれるのはあいつら、私達はただの助け船。どうなるかなんて誰にも分からないわよ。いいから続きをしましょう。」

「ククク・・・よかろう。期待しようではないか、皆を・・・。」

~~~~~~~~~~

「もう嫌なんですけど・・・!なんなのあいつ・・・!」

ヴァイスが丘にいた時と同時刻。私は謎の化け物に襲われていた。黒い霧に覆われていて姿がよく見えない。とても気になるが接触しようとしたら心臓を狙われたからビームで倒したけど、何故か何度倒しても蘇ってくるからひとまず逃げようと走っている。けれど中々距離が離せそうにない。そんな時、唐突に後ろから爆発音が起きた。それだけでなく爆風も被る。

「な、何・・・?」

振り返ろうとすると、何者かに腕を捕まれる。異形では無く、黒髪で紫の瞳を持った男。

「いきなりですまないが、死にたくないなら離さないでくれよ!」

一方的に掴んでおきながらあたかもこっちの方から触れたみたいな事を言い出したその男はもう片手に毒々しい色の液体が入ったフラスコを地面に叩きつけて割る。すると私とその男は液体に包まれてその場から姿を消していた。

~~~~~~~~~~

包まれた液体が無くなってみえた景色は、森ではなく何かの建物の中だった。大きなテーブルの上には、どれも毒々しい色の液体を入れたフラスコと実験器具の山が出来ている。

「ハハハ!無事に成功したぞ!これでまた僕の望む未来が近づく!」

いきなり私を掴んできた男はテーブルに駆け寄って何か書かれた紙に何かを書き足している。

「あんた・・・誰?」

「あぁ、急にすまないな。礼の一つは欲しいところだったがやはりいい、少し適当な所に座って待っててもらえるか?」

少し辺りを見るが、座れそうな場所なんてどこにもない。仕方なくそこで立って待つことにした。そして約2分後、男が満足げな表情で私の元にきた。

「やはり実戦ほど試験毒を試すに相応しい。いかがかな、僕の作った空気に触れるだけで爆発する毒は?素晴らしかっただろう?」

「・・・逃げるのに必死で見てないし見ようとしたらあんたに腕掴まれたんだけど?というか毒が爆発出来るなんて初耳じゃん。」

そう言う私に男は少し残念そうな顔をしてから笑う。

「毒には無限の可能性があるのだよ。先程の森からここにつれてきたアレも私が作った毒だ。」

一応助けてはくれたんだろうけど善意からの行為には思えない。とりあえず家に帰ろうと出口に行こうとする。

「あー、少し待ちたまえ。今の幻想郷に一人で外に出れば先程の化け物に殺されるぞ?」

「・・・今ここで異変が起きているのは分かってる。さっきは初めて見たから気になって接触しようとしただけ。」

数日前から能力者や一般人が化け物に襲われる事件のことは気づいていた。ただ、どんな化け物かまでは知らなかったから自分も襲われただけ。だって化け物なんてここにはたくさんいてどれが特定の化け物かなんて分かるわけないし。

「冷たくならないでくれ、ここは協力しようではないか。君の目的は知らないが、この異変の解決に乗り出そうとしているんだろう?私もまだ試したい毒が多くてな。悪くないだろう?」

「はぁ・・・異変が起きるとほんとろくな事が起きないじゃん。勝手にしててくれる?」

「それで構わないさ、君の助けにはなってみせようではないか。とりあえず君をなんて呼べばいい?」

まだ信用に値しないから本名を隠すのを考えたが、咄嗟に偽名を作れなかったので普通にりょく、と名乗る。

「オーケー。僕はエイデン・グライリヒ。毒で輝かしい未来を作るのが目的の研究者だよ・・・。」




YKN.17 りょく 生存確認。
YKN.94 綾 生存確認。
YKN.118 エイデン・グライリヒ 生存確認。
今回の犠牲は・・・
無し
YKNが増員したため+3
残り・・・161名。
討つべき敵は・・・現在2名。


またYKN増やしてしまったけどこれ以上増やす気はありません。その気にならなければ(殴   このペースでいつ完結するか、そもそも最後まで書けるか分からん。でも完結させたいなーっていう気持ちはある。最後に一言、これ理不尽な虐殺入れないと犠牲者増やせない気がしてきた。


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邂逅編Ⅵ ~見えず、見せず~

私に・・・私にアニメーションを作る技術があればOPとかEDを作っていたのに・・・()


長い廊下を歩き、一つの大きな扉の前へ足を止める。

「遅ぇよ、やっと来たか。早く中に入れ。」

ノックをしようとする直前に向こう側からあの忌々しい声が聞こえた。その声に内心で舌打ちし、扉を開ける。大広間なのに明かりが少ないせいで全体的に少し薄暗い。まっすぐ進んでいけば、玉座にふんぞり返りながらこちらを見る二つの目の光。辺りが薄暗いせいで全身が見えないが、どうでもいい。その光の前に足を止め、手にしていた荷物を下ろす。

「・・・命令通り、永遠亭を破壊してきました。お望みの品はこちらに。」

誰かに対して敬語を使うという、腹正しく二度としたくないことをする。目の前の光は置いた荷物を見ず、こちらをあざ笑うかのような色を含めた。

「指示の報告以外に顔は出さないって言ったろ?堅苦しい言葉は望んじゃいねぇ。そもそも、お前自体が嫌なんじゃなかったのか?」

こちらを見透かしたかのような言葉に苛立ちが収まらない。今すぐこいつを能力で服従させてやりたいが・・・。

「まぁそんなことはどうでもいいけどな。じゃ、また何か頼み事するかもしれねぇからそれまで引っ込んでろ。」

礼の一つもなしにそう言い捨てられる。せめてものお返しに無視するように引き返してやる。

~~~~~~~~~~

残された二つの光が、置かれた荷物を見る。その次の瞬間、荷物が操られたかのように動いて二つの光の近くにきた。

「・・・あの女、スタイルもいいしぶっちゃけ俺の好みなんだがなぁ・・・プライドが高すぎるんだよなぁ。ま、探せば他にいい女もいるだろうが。で、こいつが蓬莱の玉の枝か。こんな枝きれが月の姫とやらの宝には思えねーんだがな・・・ま、有効活用させてもらうがな。」

フッと荷物が消えた。その後に二つの光は瞬きをしてから薄暗い大広間から消える、最後に一言を残して。

「あいつらのおかげでこの幻想郷とやらの住民もゆっくりとだが減らせている・・・報告によれば抵抗し始めた奴らもいるらしいが、どうせ俺に勝てはしねぇさ。」

~~~~~~~~~~

「・・・駄目ね、どこにも見当たらないわ。」

お面をつけた人物の言っていた森にへと来ていた私達は離れすぎないように手分けしてりょく殿を探していたが、どこにも姿はなかった。あの人物の言っていた事は嘘だったのだろうか。そんな事を考えていると、足下に何かの破片が散らばっているのが見えた。それを手に拾い上げる。

「これは・・・何だ?」

それは透明で、硬い素材で出来ているようだった。注視すれば、その破片の幾つかには紫色の液体がこびりついている。何なのか気になるが、りょく殿とは関係が無さそうなので放っておくことにした。

「シャル、ここは一度家に戻らないか?りょく殿が帰っている可能性もある。」

「ここでずっと探しているよりはいい考えでしょうね、そうしましょうか。」

りょく殿が無事である可能性に賭けて私達は人里に帰ることにした。

~~~~~~~~~~

異形に襲われる事無く家に帰ることは出来たが、りょく殿の姿はそこにもなかった。また虱潰しに探しに行こうとすると、他に居候している人達に呼び止められた。りょく殿の姉妹であるりょう殿とりく殿だ。そういえば異変の事を話していなかったかと思いだし、りょく殿の事も含めて話すと、

「何だと!?じゃあ俺も探しに行くベ!」

「私にも行かせてくれる?りょくが無事でいるかどうか分からない状況で家でゆっくり出来ないからさ・・・。」

こんな感じで同行するのを要求されたが、未だ角の女性達とは一緒にいる。人手が多いのは良いことだが、家にも誰かを残しておきたいという事で話し合った結果、自称伊達政宗と角の女性、シャルを家に残して、りく殿とりょう殿、私の3人で改めてりょく殿の捜索に行くことになった。この時に分かった事だが、自称伊達政宗達は持ち家が無かったらしく、私達の居候先の内装にとても興味を示していた。次に探しに行くことにしたのは霧の湖。吸血鬼が住んでいると言われている紅魔館もその近くにあるので、そこで聞き取りをするのも悪くないという算段のもとだ。シャルも行きたがっていたが、じゃんけんで決まったことなので仕方がない。

~~~~~~~~~~

毒を好いている変な研究者と行動を共にする事になった私は、そいつの要望で愽麗神社にへと来ていた。

「今研究中の試験毒が全て完成しますように、皆にとって毒が身近な存在になれますように・・・」

その研究者は今賽銭箱の前で凄い願掛けをしている。声に出す必要は果たしてあるのだろうか。ちなみに賽銭は入れていない様子。私は早く人里に帰りたいというのに、この男はある毒を作るための素材を集めてからにさせてくれと言う。一人で行動するという選択肢もあったが、森で出くわしたあの異形。次も無事でいられる確証はない。何せここから人里にはあの森を通らないといけないし、森を避けて遠回りするのも山を幾つか越える必要がある。それならまだこの男を引き連れている方がマシだ。最悪勝算の無い敵が出ても囮にして逃げれば良い。そんな事を考えながら男が願掛けを済ますのを待つ。

「・・・ねぇ。」

「っ!?」

ふと背後から声をかけられビクリとする。背後を見るとそこには緑髪の獣人がいた。虚ろな目でこちらを見ている。

「あなたの頭は・・・これで、除夜の鐘と同じくらい叩いても平気?」

獣人はそう言葉を続けて、斧を取り出す。戦うつもりかと警戒する。

「無理に決まってるじゃん。というか何、除夜の鐘と同じ回数って・・・」

「・・・一度、やってみたいの。」

虚ろな目に何かに憧れているかのようなキラキラとした光が数秒入る。これが俗に言うサイコパスとかいう奴なのだろうか・・・。その間に願掛けを済ませた研究者が話に割り込む。

「へぇ、斧で人の頭部を何度も叩きたい願望とは変わっているね。まぁ僕とて一般から見れば同じように思われはするが・・・」

「・・・あなたは、どう?」

獣人に斧の先を向けられた研究者は少し慌てて言葉を続ける。

「まぁ待ちたまえよ、僕でもそれは無理だ。そんな毒は作っていない。だが、それに耐えられるかもしれない奴ならいるぞ。」

そして奴とやらの特徴を言い出すが、どう考えても異変によって現れるようになった異形の事だ。

「君はただ戦いたいんじゃなくて斧で誰かの頭を何度も叩きたいだけなんだろう?あいにく、奴は君を見つければ殺す気でかかってくるだろう。そこでだ・・・僕の手元には少しの間動きを封じられる毒を持っている。それがあれば君の望みも簡単に叶えられるだろう。どうかな、それまでの間、僕たちと行動を共にしてみないか?」

「・・・・・・。分かった、いいよ。」

研究者の誘いに獣人が乗る。

「いや、ちょっと待ってくれる?あんたこのヤバそうな奴を連れて行く気?」

研究者に確認すると、彼はこっちの方を見て笑みを浮かべる。

「一人より二人、二人より三人だ。僕の予測によればこの女は今、ただの夢見る少女状態なだけに過ぎない。こちらに危害を加えるつもりも無さそうだし、ここは戦力を増やすチャンスだ。」

話している私達を見る獣人の目は変わらず虚ろげなまま。何を考えているのか全く分からない。背後から襲われてもおかしくなさそうだが、この男の誘いを受けた分には大丈夫・・・なのかもしれない。彼女がそれでいいならといいかと考えることにした。




YKN.34 りく 生存確認。
YKN.126 りょう 生存確認。
YKN.164 ナディア・グレイ 生存確認。
今回の犠牲は・・・
無し
残り・・・161名。
??? 敵性存在確認。
討つべき敵は・・・3名。




邂逅編いつ終われるかな・・・もう次の○○編のネタ思いついたのに。(早い)このペースだと全YKN出すのに一年以上はかけそう、160体以上は流石に多かったか・・・?しかし減らしたくは無い。仲間外れは・・・寂しいもんな。(殴 とりあえず今年は後2、3話投稿したい。


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邂逅編.Ⅶ ~埋まりだす悪の欠片、散る正義~

お久しぶりのオールスターシリーズ。前回年内に後2、3話投稿したいとかほざいていましたがネタ切れにやる気が落ちに落ちて遅くなりました。これからも自分のペースで投稿することになるのをお許しいただきたい。そして、このYKNオールスターシリーズですが・・・オールスターやめます。(?)キャラ入れたい使いたい欲には勝てず、今や180越え・・・収集なり出番の振り方に悩むので勝手ながら165までとします。後の皆は・・・まぁ、他のシリーズに。(殴 いつもより駄作を極めている気がするけど良かったら読んで笑ってください。そしてようやく(?)更なる犠牲者が・・・?


シャル達と別れ、霧の湖へとやってきた。紅魔館なる場所に寄ったはいいが、寝ていた門番に話を聞いた所、館の主である吸血鬼もまたこの異変の調査に乗り出して今は不在らしい。新しい情報を得られそうになかったので今は湖でりょく殿を探していた。

「・・・しかし、いつ来てもこの霧の濃さには慣れないな。」

私が幻想入りするよりずっと前・・・幻想入りする輩が続出するようになったその前から在る地の一つ。だから何故ここはいつも濃霧状態なのかは知らない。この霧を人力で晴らす方法はあったりするのだろうか。手分けして探す他の二人の姿が見えるか見えないかといった距離の中、ふと見覚えのある黒の学生服の女と出くわした。

「ヴァイス・・・?ヴァイスか?」

「朱鷺宮殿・・・!?」

見間違いではない、幻想郷に来る前に世話になった一人の朱鷺宮神依本人だった。

~~~~~

「・・・すまない、そのような特徴の女は見ていない。」

りょく殿を探している旨とその容姿を伝えてみるが、望んでいた言葉は出なかった。

「そうですか・・・しかし、朱鷺宮殿もここに来ていたとは・・・。」

「私も思わなかった、だが・・・私達だけではない、以前ここでペトラと出会った。その時聞いた事だが、はぁともいるらしい。」

「教官殿やはぁと殿もここに・・・!?」

二人もまた、世話になっている人達だ。今まで会えなかっただけで、いつの間にこの幻想郷に共に来ていたというのか。

「しかし、この状況で出会えてよかった。もしよければ、この異変解決のためにそなたらと行動を共にしたいのだが。」

「こらからも是非お願いしたい。教官殿らとも出来れば会いたいところだな・・・。」

湖で他に発見するものはなかったので、別の場所を探すことにした・・・

~~~~~

同時刻、太陽の畑と呼ばれる場所では鬼ごっこが繰り広げられていた。ただの鬼ごっこと違うとすれば、捕まったら死ぬといった点だろうか。

「ふぅ、ふぅ・・・しつこくないか本当に・・・。」

必死に逃げる自分の後ろには足下に光る怪物やら雷やら剣を飛ばしてくる女性。もちろん面識はない。出会い頭に襲われたからこうして逃げている。周囲はひまわりだらけで自分の伸ばせる腕を絡められる程に丈夫な物がなく、追いつかれるのは時間の問題でしかなかった。近づかれた分、攻撃を避けるのも難しく、背に剣が刺さり、倒れ込む。どうやらここまでのようだ、何というか・・・この幻想郷という場所に来てからろくな目に遭わなかったな。

~~~~~

「・・・これでまた一人。」

死体となった男?を一瞥し、その場を去る。他に単独行動している輩を排除するために。ここの人達もすっかり異変の犠牲を恐れて複数で行動するようになっている。こちらも複数でかかれば早い話だが、指示を受けるまでは一人ずつ幻想郷の住民を排除するのみ。これも、私が聖霊となるために。そのためにはまだ、あの人物に従わねば・・・。

~~~~~

一方こちらも同時刻、迷いの竹林には身体が逆さまになった性別不明の人物と胴が分かれたウエスタン風の男がいた。

「あーあ、死んじゃった。つまんないなぁ・・・。まぁいいや、他の奴殺しに行こっと。」

逆さまの人物はどこかへ浮遊していく。あの男に指示されるのは気にくわないけど、何も気にせず他人が殺せるから別にいい。幻想郷だか何だかどうでもいいけど、実に良い場所だ・・・とか思っていた。

~~~~~

目の前で霧散する異形に目もくれず、また歩みを再開する。どこを歩いてもこの異形ばかり。どこにある、この異変の解明の糸口は・・・ラムダを死なせたあの異形を放っている元凶はどこに・・・。

「あのー、すみません。」

考えているうちに視線が下に向いていたらしい。ふと前から声をかけられ、顔を上げる。白のワイシャツに赤いネクタイというOLらしい女性。

「・・・誰だ?」

名乗ろうが名乗らなかろうがどうでもいいが、言葉を掛けてみる。

「ごめんなさいね、急に話しかけて。まず確認したいのだけど、ユウさん・・・でいいですよね?」

女の言葉を聞き、自然と身構える。私の数少ない友人にこの女性は含まれていない。ならば誰だ?友人の友人か?

「・・・間違いなさそうですね。実は、あなたに話があります。」

~~~~~




YKN.114 朱鷺宮神依 生存確認。
今回の犠牲は・・・
YKN.98 エリクソン ミルドレッド・アヴァロンに背後から剣を刺され、死亡。
YKN.127 アルカンジェロ 逆吊りの殺人鬼に胴を真っ二つにされ、死亡。
残り・・・159名。
YKN.108 ミルドレッド・アヴァロン 敵性存在確認。
YKN.97 逆吊りの殺人鬼 敵性存在確認。
討つべき敵は・・・5名。



あっけなく殺しちゃってるのは気にしないでほしいです。だって痛々しい描写とか書きたくないし・・・()


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邂逅編.Ⅷ ~思い知る闇と紐解けない疑念~

久々にこっちを投稿。今回も台詞多めに仕上がってしまった・・・。


無名の丘、そこに人里へ向かうとする三つの影があった。いや、正確には一つの影に、誰かが”入り込んでいる”。

「ねぇねぇ、ヨシミちゃん。あなたってどこの世界から来たのかしら?」

影に下半身を入れた人物がその後ろを歩く少女・・・伊原木ヨシミに話しかける。

「・・・少なくともここまで殺伐とした場所じゃないわよ。前は帰り道に皆とスイーツを買い食い出来ていたのに、こんなところに・・・。」

「へぇ、甘い物が好きなのね?じゃあ人里についたら甘味処にでも寄りましょうか?私がおごってあげるわよ。」

「・・・少しハ緊張感持つデスよ、追跡者。後イイ加減私ノ影に潜リ込むノモやめろデス。」

先頭を歩いていた女性、死霊術師が自分の影に潜り込んでいる人物、追跡者に声をかける。

「あらあら、私は至って真面目よぉ?ただこの子が怖がっているから落ち着かせようとしているだけじゃない。」

「わ、私は怖がってなんか・・・」

「イヤ、怖がラせたのは多分アンタのせいデス。見つけタ時にアノ異形に襲わレテパニック状態デ銃を乱射してた所二あんたがそいつノ影に入リ込んで声をかけテタじゃないデスカ。」

「あれは私達が助けに来たから落ち着いてって声を掛けようとしただけよ?」

「あんたの能力を知らナイ奴からすれバ普通はビビるんデスよそんな事されタラ・・・。」

「だから怖がってなんかないわよ!そりゃちょっとビックリはしたけど、怖いとは違うんだから・・・。」

「大丈夫よ、もうすぐ里につくから。あ、もし良かったら少しの間私達に付き合ってくれるかしら?」

「う・・・わ、分かったわよ・・・。」

~~~~~~~~~~

やがて人里についた三人が一件の料理店の前にたどり着き、中へと入る。

「ただいま戻ったわよー。」

「とりあえズ一人連れてきたデス。」

「あぁ、死霊術師と追跡者か。こちらも救助を一つ済ませた所だ。」

帰ってきた三人に侍が声を返す。ヨシミの方を少し見てから言葉を続ける。

「先程鉱山作業人から救助した者の中には今の異変の事を知らないという者が少なからずいるから説明も兼ねてここ最近の状況を振り返ろうという話になっているのを聞いてな。二人と、そこの少女も同席してくれないだろうか?」

「あら、オーケーよ。死霊術師ちゃんも同席するわよね?」

「キモいからちゃん付けやめろデス。面倒デスけどまだ面倒な事に巻き込マレそうなんで付き合ッてやるデスよ。」

「私も何が起きてるのか分からないからそうさせてもらうわよ。」

「よかった、では奥の方で集まる事になっているので移るとしよう。」

自分達の同意を聞き、侍が奥の方へと促す。

~~~~~~~~~~

「・・・これが、今ここ幻想郷で起きている異変の全貌よ。この異変での死亡者は、少なくとも幻想郷の住民の2、3割は越えているわ。これほどの犠牲者の出る異変はこれが初めてでしょうね。」

建物内で大きめの部屋の大半を埋める程の人数がいる中で開かれた話し合い。鉱山作業員が異変の内容を話し終え、色んな所から異変に気づかなかったのであろう人らが様々な反応を示す。

「どうやら、ここでも大変な事が起きているみたいですね。兄様。」

「・・・・・・。」

「ヒイィ・・・改めて聞いても恐ろしい話ですよこれ。」

「それはまた中々大変そうですねー♪」

「どうやら神はまた僕に試練を与えたようだね。ふ、ふふふ・・・。」

何故か一人はとても悠長そうにしている。あの追跡者と似た雰囲気があるが・・・いや、もしかしたらそれ以上にマイペースかもしれない。

「要はそいつら全員殺せばいいんだろ?あん時は油断したが次は失敗しねぇ・・・。」

助けられた一人の龍人、フォレルレイ・ウル・ツェペリが爪を立てながら呟くように鉱山作業員に問う。

「それはそうなんだけど、それだけじゃ駄目よ。まだ私達が救助出来ていない上に異変を知らない人々がいる可能性は高いし、異変の首謀者も突き止めないといけないもの。そこのサキュバスが異形をけしかけていたってタレコミもあるから、異形ではない何者かの手によってこの異変が引き起こされているのは確かよ。」

「確か、鞭を下げたマントの女性・・・だったな。しかし、それ以外に何も情報がないとは・・・。」

侍が苦悩したようにため息を吐く。が、そこでヨシミが声をあげる。

「ねぇ・・・もしかしたら私、そのマントの女性と出くわしたかもしれないわ。」

「それは誠か・・・!?であればその時の話を是非聞かせてくれないか?」

侍の懇願に首を縦に振り、話し始める。

「実は・・・私、さっきあの化け物に襲われててそこの二人に助けてもらった訳なんだけど・・・その少し前に、マントの女性を見つけたの。確かに鞭も持っていたわ。その人、コウモリみたいな羽を持ってる男の人に何か話しかけてて、盗み聞きなんてしようと思わなかったから素通りしようと思ったら女性がどこからか化け物を出してきて・・・戦ってる内に、その二人は消えていたの。前に姿を見た人も、化け物を呼ばされたんでしょ?だったら同一人物じゃないのかなって・・・」

「なるほどねぇ・・・。確かに同一人物の可能性は高そうね。しかも、その女が話しかけていたという男、だったかしら?どうやら首謀者一人ではなさそうね。」

「コウモリの羽ヲ持つ男・・・デスカ。他に特徴ガないようナラ恐らくは吸血鬼でしょうカ。」

「ふむ・・・犯人が複数ならば、その二人以外にも共謀者がいる可能性もあるだろうな。完全に異形を絶つ術が分からない以上、今までのように情報収集と拙者らに協力してくれる者達を探すのが最善だろう。」

皆の中で話し合いが終わりそうな中、ストレリアは一つの嫌気を感じていた。

「吸血鬼・・・まさか・・・いや、ありえねぇ。きっと別人のはずだ。」

~~~~~~~~~~

一方、りょく達一行は魔法の森で異形に苦戦を強いられていた。今までの個体より一つ二つも大きい異形だ。それに身体の色も黒では無く青色だ。しかし数は一体、三人もいる分有利に運べるはずだが・・・

「驚きだ、僕の作った毒をどれだけ受けても傷一つつかないとは・・・!」

「悠長に言っている場合じゃないじゃん・・・!」

感心の声を漏らす毒の科学者にツッコむ。そう、三人がどれだけ攻撃しても異形の身体に傷がつくことがないのだ。

「これなら・・・除夜の鐘と同じくらいやれそう・・・!」

「いや、多分やり終わる前にこっちが力尽きるから!」

死んだ目をキラキラさせるナディアについまたツッコむ。一度は逃走も試みたが、駄目だった。このままだと全滅してしまう・・・そんな最悪の事態を考えてしまいながら防戦一方になりかけていると、遠くの方から複数の走る足音が聞こえてきた。

「あれは・・・!」

その足音の方向には、居候先で共に過ごす友人と姉妹の姿があった・・・。




YKN.48 連城瑞花 生存確認。
YKN.136 シェロカルテ・ファレル 生存確認。
YKN.143&144 孔瑞麗/孔濤羅 生存確認。 
YKN.148 フォレルレイ・ウル・ツェペリ 生存確認。
YKN.150 伊原木ヨシミ 生存確認。
今回の犠牲は・・・
無し
残り・・・159名。
討つべき敵は・・・5名。





出演者の数が多い分毎回合流描写を挟むのが面倒になってきたので今回は既に合流したという体にしてみました。まぁ何も邂逅編で全てのYKNを出す予定ではないんだけども。


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