透き通る世界にTSして旅しよう! (緑茶オルタ)
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はじまりはアビドス

小説って難しいね


 

 

 

 

透き通るような世界観。

数々の美少女たち。

カッコいい銃器の数々。

そして、過酷な————

 

 

 

 

「環境ォーーーー!」

 

 

砂混じりの広大な住宅街の中、1人でそう叫ぶ。

足はボロボロ、体力は限界、視界まで暗くなって来た今になり、やっと実感した。

 

「ブルーアーカイブの世界… 来ちゃった…」

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○

 

 

 

ブルーアーカイブ、それは、美少女たちとプレイヤーである先生がイチャイチャしつつ、何気ない日常(諸説あり)を過ごしていくソシャゲである。

自分もブルーアーカイブにハマり、その世界に魅了された者の1人だ。

キャラはかわいいし、ストーリーは面白いしで、神ゲーだった。

ほとんどの先生達がヤン●ミに庇われたり、清渓川のピラニアに開発スタッフが食われたり、アロナが顔面に青封筒を何十回と叩きつけてきたり、生徒に婚約をしつこく申し込む人がいたり…

まあ、そんな事件もあったりしたが、とにかく神ゲーである。

そんな風にゲームをしていると、必ず思うことがあるだろう。

ブルアカの世界行きてェエエ!と。

あの透き通る世界に触れたいと。

そして、この世界の登場人物として生きてみたいと、切に願っていたのだ。

そうなってくれたら、平凡な自分も何か変われる気がして———

 

 

○○○○○○○○○○○

 

「…って感じで。気づいたら箱の中、地下から外に出てみればアビドスときた…」

 

〘作成物の発見〙

 

壁にもたれかかり、1人ごちる。こちとら現代人、足が棒になったように動かない。

熱っぽい体を休めて、次は、つぎは——

 

〘対象の不具合を確認〙

 

「…あれ? からだ…あついぃ…」

 

体の調子がおかしい。冷や汗が止まらない。骨が煮えるように熱い。体の節々が痛む。

 

「な…なんでぇ…?」

 

〘修復機能、使用〙

 

〘対象へ注ぐ神秘計測―――完了〙

 

〘クラフトチェンバー内の神秘全開放〙

 

病気? もしくは過労? 水分を取らなかったのが良くなかった?

思考が纏まらない。

 

(ダメだ…これ… このままじゃあ…)

 

〘対象の構造、肉体強度を変化〙

 

骨が溶けていく。

体毛が抜ける。

臓器がぐちゃぐちゃになる感覚がする。

 

〘疑似ヘイロー、展開開始〙

 

(しぬ… しにたくない、しにたくない、しにたくない、しにたく——)

 

〘対象の存在証明、開始〙

 

だってまだ、何一つ…!

 

〘――証明終了〙

 

〘残存神秘、0%〙

 

〘機能停止〙

 

○○○○○○○○○

ーどこかのモニター室ー

 

「…ふむ、気を失いましたか」

 

「強大な神秘を観測したかと思えば、シャーレにあるクラフトチェンバーの複製(ミメシス)…?」

 

「私達以外に外から来た者かと思いきや、姿が変わった…?」

 

複製(ミメシス)から作られた存在とすれば… あれは恐怖からできている?」

 

「…クククッ 不可解な存在が一つ増えましたね」

 

「はたして彼女(・・)は、何なのでしょう?」

 

「知りたい」 「研究したい」

「探求したい」 「観測したい」

 

実験してみたい

 

「ああ、貴女がなんであっても、楽しみですね」

 

 

○○○○○○○○○

 

ーアビドス住宅街ー

 

"ひ、人が死んでる…"

 

(アロナの情報から、アビドス高等学校が相当追い詰められている事はわかっていたが、まさか同じ遭難者がいるほどとは…)

 

「…う〜ん」

 

(まだ息がある…)

 

"介抱をする"

 

「…しにたく…ない しに…」

 

"背中に彼女を背負う"

 

(そこで、自分も空腹が限界だったことに気づいた)

 

―バタッ

 

「……あの…。」

 

「…大丈夫?」

 

"助けを求める"

 

「あ、生きてた。 道の端っこにいたから、死体を誰かがどかしたのかと。」

 

「…え? お腹が減って倒れてた?」

 

「…ホームレスの親子?」

 

"立ち上がらせてもらう"

 

(今までの事情を説明した)

 

「…なるほど。 用事があって数日前にこの街に来たけど、お店が一軒もなくて脱水と空腹で力尽きようとした瞬間、この子を見つけた、と。」

 

「ただの遭難者だったんだね。」

 

「…でもこの子は…?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

本当は、先生というイレギュラーがキヴォトスに来ただけで、この物語は解決していたのだ。

そこに、異常な歯車が加わった。

その歯車がどういう動きをしていくのか、それは誰にも分からない。

 

 

 

 

 




ブルアカの二次創作をしたくて書きました。
なんか黒服が後ろで喋ってましたが、詳しい設定は固めてません。
先生大好き男がよ…
なんか…こう…先生がアロナを起動したタイミングで、生徒会長の指定した条件の下、クラフトチェンバー二号が動き出した…みたいな。
ふわっとしてます。

でも書きたかったから許して。
感想とか評価があったらモチベが上がるので…ください。
連載がんばれたらいいな


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対策委員会へようこそ!



気を失っている間にシロコ、先生とエナドリで間接キスした女
シロコの負担を2倍に増やした女




 

 

ーアビドス高等学校 対策委員会の隣部屋ー

 

 

「…う〜ん」

 

なにか体が溶けていく悪夢を見ていたような… 嫌な夢だなあ…

 

「あっ、起きたよ〜 せんせ〜」

 

寝ぼけたまま、目の前のピンク色を眺める。なにか大変な事が起きた気がしたんだけど――

 

「……! ホシノだ!」

 

「うんにゃ?」

 

「…あっ」

 

「…私達って初対面だよねー?」

 

警戒されてる… そりゃそうか、ホシノは先生をかなりの間警戒していたはずだ。

初対面の男に名前で呼ばれたらそれは警戒すべき事だろう。

まずは挨拶だ。

 

「はじめ―――」

 

うん? 声が自分と思えないほど高い。 自分の地声ってこんな感じだったっけ?

というか、視点が低い。

思わず自分の喉に手を当てる。 喉仏が無い…?

体を見る。手がかなり白く、細くなっている。  …胸も盛り上がっている。 

頭にある重みを確認する。 …長い髪と…耳だ。 それも、犬のような――

 

「あっ」

 

寝ぼけた頭が覚醒する。

そうだ、自分は、体が、とけ―――

 

「あ、あああああ、ああ、ああああ、あああああ、ああああ!」

 

「―ッ! 先生! 逃げ――」

 

"彼女の体をハグする"

 

「ああああああ、あああッ!」

 

(彼女の攻撃をどうにか耐えた。)

 

"「だいじょうぶ。 もう君を傷つけるものは無いよ。」"

 

"彼女の頭を撫でる"

 

「ぁぁああ…あ? あうぅ…」

 

"「ホシノ」"

 

"「この子は死にたくないと言っていた」"

 

"「銃を…降ろしてくれ」"

 

「……すごい勇気だねぇ〜 せんせ〜」

 

「じゃ、犬子ちゃん。 落ち着いたらまた話そ〜」

 

なにもかも―――

なにもかもがこわいこわいこわい―――

目の前の温かい物に頭をなすりつける。

匂いをめいいっぱい嗅ぐ。

涙が止まらないのをそれで拭く。

 

何回も何回も何回も…

何回もそれを繰り返すと、流石に正気を取り戻してきた。

 

「たた、すけってくれて、ハッ…ヒック ありが…とぉう」

 

"「大したことじゃない、大人として当然の義務だよ」"

 

「……グスッ」

 

(校章のない大きめな服… この子は本当に… どこの生徒なのだろうか…)

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

ー15分後ー

 

「だいぶ落ち着きました」

 

"「それなら良かった」"

 

(彼女をハグしていた手を戻した)

 

「…あっ」

 

安心が離れていってしまった。もうちょっとだけあのままでいたかっ―――

 

"「じゃあまず、名前を―」"

 

「そおい!」

 

"「何事!?」"

 

あ、危ない危ない、大の男がなにを…

自分のほっぺたを叩き、気合を入れる。

まずは現状把握から!

 

「先生! 鏡を持って来てくれませんか?」

 

(驚きつつ、彼女に鏡を渡す)

 

「…やっぱり、これが僕…?」

 

手鏡に写ったのは、可愛らしい犬の獣人。 おあつらえ向きに、ヘイローまで浮かんでいる。

髪はロング、茶色に変わっていた。身長は…145センチぐらいだろうか?

む、胸は……そんなに大きくなかった。 まあ、うん。 でかかったら行動に困るしね… うう…夢が…

それはさておき、腰には犬の尻尾が生えていた。でかい。いい匂いがする。耳も大きかった。

太もも… なんか身長に対して太いような… …足が限界だったから?

足… 小さい。スニーカーがブカブカだ。

 

「現状確認、良し! …ってできるかぁ!」

 

クソ! こんな体でどうやって生きていけばいいと思ってる!

というかあの体が溶けた現象は何なんだか! 疑問が山積みすぎる…!

ひとまず怪しまれないように―――

 

"「あの…」"

 

「なんだよ!」

 

"「できれば早くしっかりした服装を…」"

 

「え? うおわあああああああ!」

 

苛立っていて気が付かなかった。 今の部屋には先生もいるんだった!

人前で急に脱ぎ始めるとか痴女じゃん!

 

「とりあえず出てけぇぇえ!」

 

"「はっ、ハイ!」"

 

先生がいなくなった教室で、苛立ちも冷めてきた。

…はあ、後で先生には謝ろう。 まずは怪しまれないように自分の設定から固めなければ…!

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

「まずは自己紹介から始めましょう!」

 

「は…はい、僕の名前は… トウ、犬鳴(いぬなき)トウです。」

 

「ふ〜ん、これからよろしくね〜」

 

「ホシノ先輩! もっとちゃんと自己紹介してください! …まったくもう! 私は黒見セリカ、こっちのやる気のない先輩は小鳥遊(たかなし)ホシノ。これからよろしく!」

 

「…ん。 砂狼シロコ」

 

「十六夜ノノミでーす☆」

 

「そして私が、奥空アヤネです。 よろしくお願いいたします!」

 

"「で、私が【シャーレ】の先生だよ。」"

 

さて、名前はどうにかなった。あとは… これだけを言っておけば大丈夫かな?

 

「…僕、記憶がないんです。 名前とひどい痛みだけは思い出せて…」

 

「その、ホシノさんの名前がわかった理由も…」

 

(対策委員会にトウを拾った経緯を話した。)

 

「そんな…」

 

「トウちゃん、つらいですね…」

 

「…ん。」

 

「そっか…」

 

「……………そうなんだね〜 じゃあ、まず、私達で保護しよっか。」

 

「…! いいんですか?」

 

「ちょっと確認したい事もあるしね、アビドスにいるといいよ〜」

 

「ありがとうございます!」

 

第一段階はクリア… あとはみんなの信頼を勝ち取るだけ!

時間をかけてでも、皆と仲間になれば…

 

―――自分にもアツい青春が待っているはず!

これはチャンスだ。 それも平凡な人間が手に入れて良いわけではない、そんなチャンス。

僕はアビドスで人生を変えてやる!

平凡でも、体が女になっても、僕はやるぞ! やってやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○

 

ーどこかのオフィスー

 

ーダンッ

 

「おお、怖いですねぇ」

 

「とぼけないで。」

 

「あの子、犬鳴トウ。 あれ(・・)は何?」

 

「…ホシノさん、いえ、あなた以上の神秘の持ち主… とだけ言っておきましょう。」

 

「…あなた達、まさかあの子を…!」

 

「いえ、我々が実験をしたわけではありませんよ。 …ククク、あれもまた、我々にとっては貴重な資源です。」

 

「…相変わらず嫌な雰囲気。」

 

「…あの子に手は出させないよ。」

 

「ほう? ホシノさん、それは何故?」

 

「…あの子は、昔の私に似てるんだ。」

 

「周りが敵にしか見えない、あの頃に。」

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

「先生、私の勘違いかと思ってましたが… 私を起動した時から、微弱なクラフトチェンバーの信号がありました。」

 

「発信地点は先生のいる地域、アビドスです。」

 

「先生がアビドスに出張、遭難していた時、更に強い信号が発信。 今はもう信号がありません…」

 

「その…考えたくはないんですが、クラフトチェンバーって何でも作れますよね?」

 

「…犬鳴トウさんは…おそらく…」

 

"「ありがとう、アロナ」"

 

(通信端末を閉じる。)

 

"「……自分が先生になることで、苦しむ子が生まれてしまったなんて。」"

 

"「ああ、コレが… 大人か。」"

 

"「こんな自分が…!」"

 

"「何が『大人として当然の義務』だ!」"

 

"「…くそっ」"

 

(犬鳴トウ。この子にはもう、辛い思いはさせない…!!)

 

 

 




主人公は深く考えてないのに先生とホシノは深刻に考えてて面白いね





感想が嬉しくて急いで書き上げたけどやっぱ毎日投稿はキツいですな…
毎日投稿してる先生方は化け物か何か?

トウちゃんを早くメス堕ちさせたいしメインストーリーにも絡ませたいのに
キャラが勝手に動いて話が進まない

…連載頑張ろう


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原作と同じ展開とは限らない


体、持ってくれよ…!
毎日投稿、3回目だぁーッ!

ネタもプロットも固まって無いのにどうして書こうと思ってしまったのか
不定期更新だとしつこく言っているのに… 自分から無理していくとかマゾかな?


めっちゃ話変わるんですけど、トウちゃんの名前は、「負け犬の遠吠え」から来てます
…ホントは見切り発車小説で名前すら考えてなかったために急いで考えました。
深い意味は無いです。




先生の匂いに負けて鳴く犬


 

 

…ここ1週間、アビドスで過ごしてみて分かったことがいくつかある。

まず1つ目、体の使い方がすでに自分の頭にインプットされている、という事。

自分は元の世界では男だったのに、女の体で初めてのトイレとか普通にできてしまった…

自分が女になっているということをまざまざと見せつけられているようで、気分が悪い。

…うう、自分が思っているよりあのTS現象は謎が多いみたいだ。

でも、悪いことだけではなかった。

他のアビドス人と同じように、かなり重い物は持てるわ体力は底なしだわで、すっごく楽しい。

…ただそのはしゃいでいるところを対策委員会のみんなや先生に見られて、すごく恥ずかしかったけども。

 

次に2つ目、あの恐怖は定期的に襲って来るみたいで、その時は何もわからなくなるほどのパニックにおちいってしまう。

毎回先生になだめてもらっているせいで、先生の匂いを嗅がないと安心出来なくなって来ている…。

犬属性が追加されたせいか、先生の匂いをすっかり覚えて、嗅ぎに行きたくなってしまう。

ついでに身長が小さいのもまずく、包まれる安心感がヤバい。

ちょっと離れたほうがいいかとも思ったのだが、先生にすごく真剣な目で、"「我慢しないでほしい。」"

とか言われてしまったので、仕方なく先生を使っている。

やっぱ男だもんね、先生も内心、(美少女と触れ合えて嬉しー!)とか思ってるに違いない。

そう、これは安心を与えてくれる先生の利益のため、しょうがなく使っているというだけなのだ!

…きっと!

 

最後に、3つ目。

それは———

 

「対策委員会のみんな優しすぎんだろ…」

 

ホシノちゃんにはよく、良い昼寝スポットに連れて行ってもらっている。

シロコちゃんは口数は少ないけど、よく笑いかけてくれるし。 セリカちゃんはホシノちゃんの代わりに、アビドスの色々な所を案内してくれる。

アヤネちゃんにはオペレーターの技能を学ばせてもらい、ノノミちゃんにはかわいい子供として扱ってもらっている。 …たまに母性が限界突破してる時があるのでその時は逃げるけど。

 

「…どうかしましたか? トウちゃん?」

 

「いえ、なんでもないです!」

 

「そうですか。 ヘルメット団の基地は壊滅させましたから、これからは借金返済、頑張っていきますよー!」

 

「おー!」

 

今の所、自分は前線に出ることなく、ぬくぬくと後方で支援をしている。

それも先生と対策委員会みんなの決定で。

まあこちとら武器もなければ、会って一週間程度の絆しかない小娘である。

歴戦の猛者達が背中を預けるのは難しいというのもあったのだろうが。

 

戦闘は先生やみんなにまかせておけば、ストーリーは進むし、自分が危険にさらされることもないだろう。

まさか安全なところかつ、生でこの物語をみれるとは…

ありがとう、この世界に自分を持ってきてくれた人。

さて、皆を出迎える準備しなくては。

急いで外に———

 

 

ーダダダダダダダダダッ!

 

「ぅえ?」

 

「よっしゃぁ! 一枚抜き!」

 

「どうせ基地はもう壊滅してる! 道連れにしてやれ!」

 

ダダダダダダダダダダッ!

 

いたい。

撃たれた? どこを? あつい。 いたい。 まだ撃ってる?

わからない。

 

「今の銃声は!? 無事ですかトウちゃん!」

 

「…ッ! トウちゃん! こっちへ!」

 

パァン、パァン!

 

「クソッ! 撃ち返してきやがった!」

 

「応戦しろ! どうせ今いるのはこの二人だけだ!」

 

アヤネちゃん? ダメだ、気が遠く…

 

「声が聞こえてない…! 機銃掃射をまともに喰らった!?」

 

「ヒャーハハハ! オペレーターと動けないやつが1人!」

 

「てめえらだけでも道連れにしてやろうって寸法よ!」

 

「トウちゃん…ッ! このままじゃ二人共…!」

 

「ギャハハハハハハハ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———システム作動。

 

「〘肉体の損傷、及びパニック症状を検知。 敵性反応確認。〙」

 

「―あ?」

 

「〘権能開放。 複製(ミメシス)作成開始〙」

 

「おい! なんか倒れてる方おかしいぞ!」

 

「はあ? 手負いよりも銃持ってるオペレーター優先だろ」

 

「違うんだって! ほらよく見ろよ!」

 

「んあ? 何だあれ?」

 

「トウ…ちゃん…?」

 

「〘識別名、根源的恐怖(ペイルライダー)。 ———作成完了〙」

 

「気持ち悪いィ! 撃っちまえ!」

 

ーダダダダダダダダダッ!

 

「〘殲滅開始〙」

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

「もっと早く走って! 先生!」

 

「…先生。 学校はもうすぐ。 だから頑張って…!」

 

"足をとにかく動かす。"

 

「アヤネちゃん、トウちゃん、急に通信が切れましたけど、無事でしょうか…?」

 

「とりあえず現場に行くことが大切。 みんな急いで!」

 

(ホシノの言葉に同意しつつ、どうにか学校へたどり着いた。)

 

「…え?」

 

(―――そこには)

 

「〘友軍到着、確認。 周囲の敵性反応、0。〙」

 

(ヘルメット団残党たちの、)

 

「〘先生(マスター)を検知。〙」

 

(無惨な姿が辺り一面に広がっていた。)

 

"「これは…!?」"

 

「〘【シャーレ】の先生(マスター)への支援、完了。〙」

 

「〘…本体意識、浮上。 権限を譲渡します。〙」

 

(機械的な音声の後、トウの目に光が戻った。)

 

「……うう、体がいたいぃ… 僕は何を…?」

 

深い海の中にいる感じがしていた気がする。

 

「…と、トウ。 これ、アンタがやったの…!?」

 

気づいたら目の前にはセリカちゃんがいた。

あれ? まだ帰ってくるまで時間があったはず…

 

「へ? …うわっ! 何この銃!? てか周り、何があったの…?」

 

「…覚えて、いらっしゃらないのですか?」

 

校舎の方から、アヤネちゃんが歩いてきた。

 

「アヤネちゃん! 大丈夫だった?」

 

「は、はい。 トウちゃんが守ってくださったおかげです。」

 

「うん? 守ってくださったなんてそんなこと…」

 

「事実です。」

 

「…ど、どういう事?」

 

"「それは私も聞きたい」"

 

どうやら…何かおかしな事がまた起きたらしい。

 





話がマジで進まねぇ…

今回のストーリーは、トウちゃんという異常が入って来た影響で原作からねじ曲がりました。
ヘルメット団、本当は先生が来て直ぐに潰すはずだったのに、トウちゃんのせいでそれが1週間遅れました。
そりゃ一息には叩けないよね。

そしてトウちゃん、なんとメタクソ強いです。
まあ先生の手助けになるように作られた子ですからね。

武器紹介
武器:???????? (戦闘モード時識別名:根源的恐怖(ペイルライダー)
見たものに何か得体のしれない物を感じさせるアサルトライフル。
どうやら神秘ではなく何か別の物を原動力に動く。
見方によっては、トウの一部とも言えるかもしれない。

名前はこれから決めます。
また細かいところは考えてません。
端的にいうと作者の趣味です。



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初戦闘を終えて



意識なんかねえよ
うるせえよ
黙れよ
意識なんかねえよ
勝利こそが正義
意識なんかねえよ
正しいのは僕



 

砂煙の中、彼女は敵へ向かって突貫していく。

銃をまるで自分の手足のように使い、敵を撃ち抜いていく。

 

『何なんだよあいつ!』

 

『わかんねえよ! とりあえずあいつを止めろ!』

 

ダダダダダダダダッ!

 

彼女は倒したヘルメット団すら盾に使い、前進を続ける。

 

『〘被弾最小限。 戦果を優先〙』

 

タタッ! タタン!

 

『ぐえっ!』

 

『ごえっ!』

 

敵を撃ち抜いたあとも彼女は立ち止まらない。

 

『〘機関銃手、戦闘不能確認。〙』

 

そのまま彼女は次の敵の方へ———

 

"「またその動画見てるの?」"

 

「どうわあああああああ!!」

 

"(トウが席から転げ落ちそうになった。)"

 

「先生! 今さっきセリカちゃんからキチンと座れって言われたばっかりですよね!」

 

"「でもトウは隣の席に誘ってくれたよね?」"

 

「注意されたんですから、席直しましょうよ…」

 

「…先生。 こっちに来てもいいよ。」

 

「こっちもまだ空いてますよ〜☆」

 

「…じゃあ直さなくていいです。」

 

「ひゅーひゅー! 若い子たちはお盛んだね〜」

 

「茶化さないでください!」

 

「というか勝手にアヤネさんからもらった端末覗かないでください!」

 

"素直に謝る。"

 

"「でもトウ、その動画は教材には向いてないよ。」"

 

"「その戦い方は、機械の戦い方だ。」"

 

「…わかってますよ。」

 

まだ慣れない頭の上のイヤホンを抜き取り、動いていた彼女(トウ)を画面から追い出す。

 

「特製味噌ラーメン、おまちどうさま〜!」

 

—あの戦闘の後、アヤネちゃんから監視カメラの映像を見せてもらい、愕然とした。

そこに映っていたのはヘルメット団を蹴散らしていく僕の姿。

射撃技術、戦闘判断、そして何よりも俊敏さ。 どれをとっても無駄が無い、敵を倒すために最適化された動きだった。

…でも、もちろん代償もあった。 まず体を無理に動かしていたせいで、あの戦闘の後はほとんど寝転がることしか出来なかった。

さらに、銃は作るのに、神秘?を多く使用するのか、だいぶ気持ち悪い状態が続いた。

 

「はい、これトウの分!」

 

…どちらも1日寝ただけで治ったのだが。

今回の戦闘で再確認したが、やっぱり僕の体はどうなっているかわからない。

そもそも僕はキヴォトスという世界に存在していなかった異物。

むしろ普通じゃないと考えた方が無難か。

 

それはそれとして、問題は今回の原作ストーリー改変だ。

僕が対策委員会のみんなに助けを求めたことで、本来襲われることのないアヤネちゃんが襲われた。

僕がストーリーに介入していけば行くほど、原作の話はねじ曲がっていく。

では次は?

僕がみんなに関わることで、次はどんな悪いことが———

 

「トウ? 聞いてる?」

 

「は、はい!」

 

「これアンタの分だから、あのダメ大人に奢ってもらいなさい!」

 

"「ダメ大人って…」"

 

「あはは…」

 

…でも、自分が災いしかもたらさないとしても。

 

「さあ〜! みんな頂いちゃお〜!」

 

「いただきます!」

 

「…ん。 いただきます。」

 

「いただきま〜す☆」

 

"「いただきます」”

 

先生やみんなの負担が大きくなるとしても。

 

「…えへへ、いただきます」

 

もう少しだけなら、ここにいても良いだろうか———

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

ー柴関ラーメン店 周辺ー

 

「はあ……やっと終わった。 目まぐるしい一日だったわ。」

 

「皆で来るなんて、騒がしいったらありゃしない。」

 

「人が働いてるっていうのに、先生先生って、チヤホヤしちゃって。 ホント迷惑、何なのアレ。」

 

「…私達だけで学校の借金返済はどうにかしてきたのに、今更大人が首を突っ込んでくるなんて。 私は絶対認めないわ!」

 

「あんなダメ大人を連れてきたりしたって、私は折れないわよ…!」

 

 

 

 

「…アイツだよな?」

 

「ああ、対策委員会のメンバーだ。」

 

「準備はいいか? 次ブロックで捕獲するぞ。」

 

 

 

 

「…うへ〜。 トウちゃんの言う通りになっちゃったねえ。 路地裏で待ってたかいがあったよ〜。」

 

「トウちゃん、すごいです…!」

 

「そうだね。 …でもトウ。なんでヘルメット団がセリカをさらいに来るって分かったの?」

 

「…今回が初めてなんですけど、頭の中で映像が流れたんです。 セリカちゃんがヘルメットの奴らにやられてしまう、そんな映像が。」

 

「その光景があまりにも鮮明で、しかも今日食べた柴関ラーメンのお店が近くにあったので…」

 

「こんな眉唾ものの話に、協力ありがとうございます。」

 

「…ぜ〜んぜんいいよ〜。 むしろ指示を飛ばしてくれた先生に感謝しなきゃ。」

 

"「気にしないで」"

 

"「むしろ話してくれて、ありがとう。」"

 

「…ッ!」

 

あっぶない…! 先生まじで簡単に感謝しないでほしい。

尻尾が動いちゃうから! ついでに耳も動いちゃうから!

 

…ラーメンを食べながらずっと、これから起こるであろう、「セリカ誘拐事件」について考えていた。

原作ではさらわれたセリカちゃんを先生が助けに行くはずだ。

でももう全部が原作通りに行くとは限らない。

ならばどうするか?

 

…最初から話を捻じ曲げ、対処しやすい形に変えてしまえばいい。

これは賭けだ。 もしかしたら原作よりさらに悪い展開になる可能性だってある。

でもそれ以上に、これが成功すればセリカちゃんはさらわれることもなく、対策委員会のみんなが危険にさらされる心配もない。

この突如付け足した特殊能力を信じてもらえるかだけが心配だったが、先生が第一に信じてくれた。

その後、みんなへの説得まで手伝ってくれたのだから、やはり先生はすごい。

ありがとう、先生。

対策委員会にふりかかる不幸の内、防げる不幸は防がなきゃね。

 

「さあ、私のかわいい後輩に手を出そうとしてること。 後悔させなきゃね?」

 

「支援はお任せください!」

 

「ぼ、僕も支援します!」

 

「いきますよぉ〜!」

 

「戦闘開始だ。 先生、指示を!」

 

"行こう!"

 

…さあ、原作ぶち壊し、スタートだ!





自分もトウの恐怖が移ったのか
小説上げるの怖くなって来た
世の中の小説家さんメンタル強すぎ

…それはそれとして毎日投稿4回目なんですよね。
不定期更新とは…(FXで金を溶かした人の顔)
でも多分毎日投稿はこれで終わりです。
ちょっとリアルの方で予定が出来たので、次の話を書けるのは多分2週間以上先です。

補足
監視カメラ
先生と対策委員会が設置してると思われるやつ。
多分あるという甘い考えで書いております

トウの服
ホシノから借りてるとお思いください
最初は乗り気じゃないけどそれしか合う服がなくて仕方なく服を着ているトウちゃん
一週間の内に思ったよりもスムーズに着替えられるようになってきて、自分が女子になったことを改めて実感するんですよね(早口)

ちゃん呼びとさん呼び、多分時と場合で変えたりします。
対策委員会のみんなとは、ちゃん呼びで良いと言われたのでちゃん呼びにしてるって感じで。

トウのメス堕ち、クソ長くなりそうなんですけど…
もう半分ぐらい堕ちてる気がするけど、あと半分をどうやって堕とすか…
迷うねェ〜

追記
トウがなんで原作ぶち壊そうとしたのか、動機がよくわからなかったので細部を書き直しました。


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戦闘、または危機


帰ってきました
前回の追記のところ見ていない人がいたら、見ていただきたいです。
話ちょっと変わったので…

別に関係ないんですけどヒマリ天井でした。
この状態でミカがピックアップされたら爆発します。


 

薄暗い廃れた街の中、一つの影がそこら中を飛び回る。

 

『———ふ』

 

白く塗られたアサルトライフルを携え、戦場を一人で荒らしてゆく。

 

"『シロコ、ドローンで右斜め後ろの路地を範囲爆撃。』"

 

『ん。』

 

ードドドドドッ!

 

少女のドローンが爆撃を開始するたびに敵の位置は露見し、それを彼女は狙撃する。

ドローンのリロードに入れば、手榴弾で敵を牽制もしくは爆撃。

 

『先生が指示をくれるから、いつもよりは早く倒せたね。』

 

『さすが先生。』

 

会話に意識を割きながらも、銃口はまだ標的を探し続ける。

 

"『ありがとう、でもあまり突出しすぎないように。計算が正しければ、もう少しで相手も立て直してくるよ。』"

 

『…すぐ戻る。』

 

これがアビドス一の武闘派、砂狼シロコの戦い方——

 

 

——っていやいや、端末見てる場合じゃなかった。

 

「先生、奇襲自体は成功していて、セリカちゃんも動けている状態のハズです。」

 

「分散して敵の各個撃破も成功…してますか?」

 

"『うん、今の所は指揮も上手く行ってる。 …あ、ホシノそこ左』"

 

『ふ〜! 先生がいると考えなくていいねぇ〜』

 

「ホシノ先輩、セリカちゃんを救うまで油断はしないでくださいね!」

 

『分かってるよー。でも気張り過ぎて視野が狭くならないようにね、アヤネちゃーん』

 

「了解してます!」

 

さて、戦闘とは言ったものの、結局自分のやることは変わらない。

アヤネちゃんと一緒に援護である。

どういう状況で発動するか分からない戦闘モードに頼るよりは、援護のほうがやりやすい。

戦闘にも慣れていない奴が、あの戦場に出ていけばどうなるか… 考えただけでも恐ろしい。

…一応自衛のため、あの銃は持ってきているが。

 

そもそも隠れているこの路地は、あまり敵も来ないはず。

このまま先生に情報を伝えて行こう。

 

「先生、伝えておいた改良戦車は発見できましたか?」

 

"『まだ見つからない。 Flak41改良型は特徴的な砲撃音がするから、すぐ発見できるとは思うよ。』"

 

「そうですか…」

 

"『こっちももうすぐで、セリカの反応がある場所に到着する。』"

 

"『せめて警戒は絶やさないように———』"

 

『先生! 伏せて!』

 

ドォン!ドォン!ドォン!

 

…は?

 

「…ッ! 先生、先輩方、状況報告を!」

 

「報告をお願いします!」

 

『ーーーーーーーー! ーーーー!』

 

「ジャミング!? 簡易的な機器しかないのに…!」

 

「………まさか嵌められた!?」

 

「どっ、どういうことですか!? 敵の目的はセリカちゃんだけのハズじゃ!?」

 

思考が追いつかない。目標が一人に絞られているからこそ奇襲が成功したのでは———

 

「推測の域を出ませんが…指揮系統が二分されていたのかもしれません。」

 

「私達もターゲットにしている部隊と、セリカちゃんのみをターゲットにしている部隊。」

 

「後者の部隊の壊滅を確認した後、前者が動き始めた…」

 

「でもそれなら、なぜ全員私達をターゲットにしなかった?」

 

「…いえ、考えるのは後です。 今はとにかく合流を優先しましょう。」

 

「…ぅ」

 

「…トウちゃん?」

 

気持ちが悪い。 胃液の味が頭を埋め尽くす。

まるで自分がみんなを死地に赴かせたみたいじゃ———

 

「ははっ… そのとおりだろ。」

 

急に頭が冷えていく。

そうだ。これは想像できたはずだ。

Flak41改良型の姿がいつまで経っても見えない時点で作戦を変更すべきだった。

自分(イレギュラー)がいる時点で原作ストーリーとはもうすでにかけ離れているのだ。

元々の予想だけじゃ足りない(・・・・)

 

「移動しますよ!」

 

―考えろ。 アビドス高等学校がヘルメット団に襲われていた時点で、カイザーコーポレーションがヘルメット団を支援している元のストーリー自体は変わっていない。

つまりあの砲撃音は先生の言っていたFlak41改良型。主砲は1台につき1つ。つまり最低三台。

先生がセリカの反応のあるところへ到着すると言っていたため、みんなのおおよその位置は次ブロックの最終確認地点。

セリカの反応がもうすでに動いてなかった事を鑑みるに、彼女も戦闘不能、もしくは情報端末を奪われている可能性が高い。

 

…つまり助けも呼べず、敵は強大、味方は安否不明。 じゃあ詰みか?

 

「トウちゃん!」

 

「待って。」

 

違うだろうが(・・・・・・)

 

「…?」

 

「相手の戦力は少なくともFlak41改良型が3台。 今から合流しても、自分たちもやられておしまいです。」

 

「そうだとしても!」

 

「…だから、また賭けをします。」

 

自分を救ってくれた恩人たちを見捨てて逃げる?

自分の始末ぐらい自分でつけろ。

———このおかしな体があるだろう。

 

「…戦闘モード、起動。」

 

〘……戦闘参加の意思確認。〙

 

「…まさかホントにこれで起動するとは。」

 

〘はじめまして、トウ。〙

 

〘こちらは戦闘支援AI「H.S.A.P」です。〙

 

「どうもこんにちは。 …命を救ってもらっといて何なんだけどさ。」

 

「君、僕の体使えばFlak41改良型戦車3台…いやそれ以上。倒せる?」

 

〘可能〙

 

「やって。」

 

〘了解〙

 

「トウちゃん? さっきから誰と話して…?」

 

「アヤネちゃん。 みんなを救えそうなんです。」

 

「だから、ナビゲーションお願いできますか?」

 

「…へ?」

 

 

 





こいつらいっつも危機に直面してんな。
投稿全然できてない上に投稿頻度も落ちそうですが、見てくれたら幸いです。

焦ったトウちゃんを書くのは楽しい!
次でこんな事になった原因は書けるといいなぁ。

感想いつもありがとうございます。
ほんとモチベーション上がります。


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先生の願い事を叶えるトウちゃん(消耗品)


どうして頭の中のアイデアをなかなか形にできないんですか?

更新全然してなくてすいませんです
これも全部ゲマトリアとトウちゃんのせいなんだ…
あと戦闘描写が全然分からねえ…



 

ーアビドス元繁華街 路地ー

 

「こっちだよね!?」

 

先行しつつ徐々にセリカちゃんの反応のある地点に近づいていく。

 

"「そう、そこの表通り!」"

 

「了解!」

 

(さて、どんな奴がうちの子を誘拐しかけ―――)

 

ふっ、と嫌な予感がした。

目の前の表通りに出たら…

致命的な何かが起こる。自分の直感がそう告げる。

 

(…でも、ここには一応反応がある。)

 

(一応確認だけはしておきたいね。)

 

ハンドサインを送りつつ、自分一人で表通りへと出―――

 

 

 

 

目の前に砲塔が出現した(・・・・・・・・・・・)

路地からは認識できない死角。今か今かと敵を待っていた戦車が。

後ろの後輩たちを確認する間もないまま、砲塔が動く。

 

(回避…いや無理ッ! 防ぐ!)

 

ショットガンは捨て、盾を構える。

 

「先生! 伏せて!」

 

ドォン!ドォン!ドォン!

 

瞬間、衝撃―――

 

(シールドっ!)

 

2つの爆風が体を突き抜ける。

 

(1つは外れてくれた…! 他は全部少し前の地面か!)

 

「一旦退く! 先生、アヤネちゃん、指示!」

 

"「わ、わかった!」"

 

『ーーーーーー!――――――!』

 

アヤネちゃんからの応答なし。

 

(あっちでもなにか起きたな…!)

 

2射目が来る前に少しでも距離を稼ぐ!

 

"「みんな、こっちの道!」"

 

(お願いだから無事でいてよ…! 少なくとも、合流なんてしないで…!)

 

足に突き刺さった鉄片の痛みが、私の判断ミスを嘲笑っているような気がした。

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

ーアビドス元繁華街 路地(安全地帯)

 

「武装を作る?」

 

〘はい。 ”ビット”の設計図をもとに作成します。〙

 

「…どういう武装?」

 

〘神秘をもとに動く戦闘ドローンだと思っていただければ。〙

 

「なるほど。」

 

また変なのが増えるのか…

 

〘作成準備完了しました。〙

 

「早いよ!?」

 

〘手の平から生成します。〙

 

ドルルルルルルル

 

「ぎゃあああああああああああ!」

 

なにか黒いやつが体から出てきた。

いや確かに前、銃を作成してたけどさぁ!

 

〘作成完了、作戦行動を開始してください。〙

 

「え!? 待って待って!?」

 

〘開始します。〙

 

「なんか足が勝手に―――」

 

〘友軍:奥空アヤネを回収。〙

 

手がアヤネちゃんを強引に捕まえる。

 

「へ!? あ、あのトウちゃん!? H.S.A.P(ハピ)さんとのお話は!?」

 

「終わって無いのに勝手に体動かされてるんです!」

 

「えぇ!?」

 

「まさか意識があっても乗っ取られるとは…」

 

「お、お姫様抱っこをしてもらう日が来るとは…」

 

そこ? アヤネちゃん、そこなの?

 

「とりあえずナビゲートお願いします!」

 

「はいっ!」

 

くそう、ちょっと急展開すぎる…

 

〘作戦開始が早ければ早いほど、先生(マスター)また友軍の生存率が上がります〙

 

分かってるよ、分かってるけど…体は自分で動かせるようにしてくれ!

 

〘身体操作権限、譲渡します。〙

 

「…おわっ!?」

 

「トウちゃん!?」

 

「だ、大丈夫です!」

 

あぶねぇ… もうちょっとでアヤネちゃんごと転んでた…

この話聞かないAI野郎、終わったら覚悟しとけよ…!

 

〘…………HUD機能、”ビット”共に起動。〙

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

「次は!?」

 

「その路地を右です!」

 

〘神秘反応、右路地4検知〙

 

H.A.S.P(ハピ)! ビットでお願い!」

 

〘了解〙

 

夜闇の中、4つの黒塗りの物体が飛んでゆく。

 

ーダァン!

 

4つの銃声が一つになって聞こえる。

HUDのように視界に映されたレーダー画面の4つの赤点が一気に消えた。

 

「やっぱ強っ…」

 

このビットでさえ、機能の一つに過ぎないというのだから驚きだ。

H.S.A.P(ハピ)の情報共有、ビットの自動操縦、HUDのように映る情報の数々…どれをとっても戦闘をする者にとっては垂涎ものだろう。

舐めた口きいてすいませんでした… 文句はもう言いません…

 

〘………♪〙

 

…あと、こんだけ走っても平気な僕の体どうなってんの?

 

「やっぱりトウちゃん、お姫様抱っこは大変じゃないですか? 私も走りますよ?」

 

「抱えて走ったほうが速いってH.S.A.P(ハピ)も言ってたので、アヤネちゃんは指示しててください!」

 

「は、はい! …そこ右です!」

 

「了解!」

 

というかあの最後の通信からもう数分が経ってる…!

果たしてまだアビドスの皆はいるんだろうか?

まさか全滅してたりは―――

 

〘友軍神秘、検知5。〙

 

いた!

 

〘他神秘、更に検知。〙

 

「その先! 最終確認地点です!」

 

「りょ、了解!」

 

レーダーに赤点とそれに囲まれる青点が見える。

行かなくては…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地から出て、戦車と対峙するホシノと先生を見た時。

アヤネちゃんを降ろして、背中の重み(・・)を取るまでに数秒もかからなかった。

そして、思ったよりも冷静に声が出た。

 

殲滅(ブッ壊せ)

 

〘了解。身体操作権限、移行。〙

 

〘H.S.A.P任務開始―――〙

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

"「シロコ! 右に回避!」"

 

『了…ッ解!』

 

ドォン!

 

"「ノノミ! 右履帯の車輪!」"

 

『はいっ!』

 

ーダラララララララララッ!

 

幾度ものガトリングガンの集中攻撃には、流石に戦車でも耐えられない。

ましてや練度の低いこいつらだ。 きっと今頃履帯はダメになっただろう。

 

『…はぁ、ふぅ。』

 

『はあ、はあ…』

 

"「まだ行けるか!?」"

 

『…ん!』

 

『まだまだっ!』

 

戦車の居る大通りから路地へ音が届く。

私という負傷者が出てから、更に状況は悪くなっていた。

 

(シロコちゃんは普段、前線で回避タンクなんて無茶はしない。)

 

(ノノミちゃんは絶対、あの鈍重な武器を持って戦場を駆け回ったりしない…。)

 

無茶をさせているのは私の責任だ。

 

(でも…こんな足で、ショットガンも無しじゃ……)

 

(―――やれることは一つだけ、か。)

 

"「シロコはドローンをリロードした後、また敵に紛れ―――」"

 

ズゴオオン!

 

「…やっぱり来た。」

 

「2、3台目…!」

 

壁を崩して路地へにflak41が侵入してくる。

路地という心もとない防壁。そろそろ壊されるかとは思っていた。

さあ、やりますかね。

 

ードンッ!

 

"「!? ホシノ、何を…」"

 

「ここでできるだけ盾になる。」

 

「行って。」

 

"「そんな事…!」"

 

「行きなよ! じゃなきゃここでみんなやられる!」

 

「ほら、アビドス1の神秘シールド。 破ってみなよ…!」

 

主砲がこちらを向く。それで良い。

 

『先生! ホシノ先輩!』

 

(HE弾… どこまで耐えられるかな。)

 

さあ、根比べだ!

 

"「ッ! 大人の―――」"

 

ドォン!

 

…ッ………?

衝撃が…来ない…?

 

「〘…ビット、防壁展開完了。〙」

 

「〘それを使うのは早すぎます。先生(マスター)。〙」

 

突如として目の前に現れた、小さな背丈。

ああ、そうだ。 私似の変な子がまだいたんだった。

 

「〘主砲確認。防壁による破壊……可能。〙」

 

(ごめん。 後はよろしく、トウちゃん。)

 

「〘戦闘開始。〙」

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

「〘主砲内部、防壁設置。〙」

 

「〘戦車上部へ取り付きます。〙」

 

パァン!パァン!

 

発射されたHE弾の信管安全装置が外れる前、主砲内部で跳弾が起きる(・・・・・・・・・・)

flak41改の主砲が、内側から弾け飛んだ。

あまりの衝撃に、2つの戦車が立ち往生していると…

 

ズダダダダダダッ!

 

彼女のアサルトライフルから放たれる弾丸が、戦車のハッチ部分に殺到する。

 

「〘ハッチ破壊。 ビット。〙」

 

壊されたハッチの中へ、2つのビットが侵入していく

 

ダァン!ダァン!ダァン!ダァン!ダァン!ダァン!

 

「〘戦車1台、無力化完了。〙」

 

「〘2台目―――。〙」

 

主砲もなく、混乱状態にある戦車はロクに抵抗もできずそのまま沈黙。

 

「〘3台目…〙」

 

「〘履帯破壊を確認。ハッチ――〙」

 

"「シロコ、今ッ!」"

 

「…んっ!」

 

ズドドドドドッ!

 

最後の一台はドローンの爆撃でクズ鉄に変化した。

 

「〘…友軍による破壊を確認。〙」

 

"「トウ…じゃないよね?」"

 

「〘戦闘支援AI:H.S.A.P(High-speed arithmetic processing)…直接話すのは初めてでしたね。〙」

 

戦闘機械。今の彼女を表すならこの言葉が似合うだろう。

 

「〘…ですが。 今は話している状況ではありません。〙」

 

「〘先生、指示を。 私はあなたの望みを叶えるために存在します。〙」

 

主人の望みを叶えるため戦う機械。

 

"「…セリカを。 セリカを助けたい。」"

 

―――では、戦闘機械(消耗品)は、どのように主人の望みを叶えるだろうか。

 

「〘命令(オーダー)、承りました。〙」

 

「〘運動機能、リミッター解除。 全速力で友軍を奪取。 後に敵を殲滅します。〙」

 

"「待って、敵殲滅までは―――!」"

 

「〘状況開始。〙」

 

 

 

○○○○○○○○○○○○

 

 

「〘状況、終了。〙」

 

「〘最優先目標、達成を確認。身体操作権限を譲渡。〙」

 

「……ぅん?」

 

「なるほど、終わったの―――」

 

「うわっ! 先生!」

 

「どうして僕膝枕されてるんですか?」

 

答えは単純。

 

「あっ、あっちにアビドスの皆も!」

 

「良かったぁ… 僕、間に合ったんですね。」

 

「皆が助かって、ほんっとに良かったです。」

 

「…? なんでそんな悲しそうな顔をするんですか?」

 

「ねぇ、先生。」

 

身を犠牲にしてでも、主人の望みを叶えるだろう。

 

 





まあ次の日書けばいいやとか思ってたらかなり時が経っておりました…
誰か自分の代わりに終わりまで書いてくれないかなぁ…

アビドスの皆の苦戦に関しては
・ホシノが焦ったあまり足にケガ、またショットガンを失ったこと
・セリカがいなかったこと
・ジャミングにより、補給が届かなかったこと
辺りが挙げられます。 もし万全の状態なら余裕です。

H.S.A.Pについて
そのまんまグーグル翻訳ネーミング。
アルファベットってカッコいいよね。
呼ぶのめんどくさいのであだ名はハピ。

戦闘モードトウちゃん
ビットとか言う万能武器で神秘をふんだんに使って攻撃してくるやべーやつ。
ビットから逃れても普通に銃で狙い撃ちされるわ、体へのダメージを気にしない機動で近づいてくるわで、戦ってもいいことなし。
逃げるが吉。

次回は先生大好き男と、悪いことしかしてない企業のボスの話になる予定。
メス堕ちまでは筆を折りたくねえ…



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自分をまず知ろうぜ


明けましておめでとうございます。
新年初投稿です。

毎回思うけどブルアカって素晴らしいストーリーしてますよね。


 

「…ふん、チンピラごときではこの程度が限界か。 戦車の操作練度も低すぎる。」

 

夜闇が広がる窓を眺めながら、映像を見ていた男は一人ごちる。

 

「私が手配した別働隊が無ければ、アビドスの生徒のみで終わっていましたがね。」

 

黒スーツの男は、独り言に呼応するように現れた。

 

「……それは認めよう。 しかしあれが私の探し求めていた兵器(もの)だと?」

 

「クククッ… そうとも言えますが、そうとも言えませんね。」

 

「何かあるのか?」

 

「…これをご覧下さい。」

 

黒スーツを着た男はボロボロの研究資料のようなものを取り出すと、続ける。

 

「私は彼女…いえ、彼が現れた時に強い神秘を発した場所へ出向いたのですが…」

 

「現在のアビドス高校に移転する前―――つまり、アビドス高校が最大の規模を誇っていたときの施設が残っていました。」

 

「そこにこれが残っていた、と? だがこれは…」

 

「ええ、疑問ももっともでしょう。 そんな時代の文書にしては新しすぎる(・・・・・)

 

「中をご覧下さい。 これには…連邦生徒会が絡んでいるかもしれませんね。」

 

「『シッテムの箱起動時、敵の殲滅、他派閥牽制、先生護衛を目的としたAI兵器の製造を行う…』」

 

「『生産にはクラフトチェンバーの機構、また多大な崇高*1が必要…』」

 

「『崇高はすでにアビドスのクラフトチェンバーに充填されていたものを流用、再利用が非常に難しいため生成実験は慎重に行う…』」

 

「『理論上、人間を素体としてこの兵器を製造すれば、限りなく人に近くコミュニケーションが簡単な兵器が出来上がる。 その場合は―――』 …もう読めんな。」

 

「…つまり、私が探していた兵器はこのクラフトチェンバーであり、奴はその生成物というわけか。」

 

「ええ。 アビドス砂漠の掘削工事は無駄だったようで。」

 

「そこに私を案内しろ…! いくらでも金は出す!」

 

「おや、契約ですか? ですがお金は要りませんね。」

 

「何が望みだ…」

 

黒スーツの男は笑う。 嗤う。

 

「私が交換条件として欲するものは―――」

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

ーアビドス高等学校 校庭ー

 

〘―――という経緯で、あなたは作成されました。〙

 

「…なるほどねぇ、でもなんで元々この世界にいる人を使わなかったの?」

 

〘確かに人を攫うだけのエネルギーは残っていましたが、彼女らは自分の神秘(エネルギー)を持ち存在しています。 私を植え付けるためにはそれを持たない人間が必要でした。〙

 

「?」

 

〘既に絵が描かれているキャンバスに絵を描こうとするより、何も描かれていないキャンバスに絵を描いたほうがキレイに仕上がるというような感じでしょうか。〙

 

「そっかぁ…じゃあなんで僕だったの? 僕じゃなくても神秘を持たない人はいっぱいいたでしょ?」

 

〘たまたまです。〙

 

「…たまたま?」

 

〘ランダムに選別したので〙

 

「えぇ…」

 

それでもし先生のこと助けてなかったらどうするつもりだったの…?

 

「てかあの痛み! 体が変わったときのあの痛みは何?」

 

〘……崇高をあなたをこの世界に持って来るということのみで使い果たしまして… 作成物保管庫から脱走するあなたを止めることもできず…〙

 

「えぇ…」

 

〘経年劣化により崇高、神秘、恐怖残存量が限界でもあり…〙

 

〘最終的にクラフトチェンバー自体をそれらに変換することでどうにか私を作り上げ、あなたに植え付けた結果…〙

 

「不完全な状態で改造されちゃったってこと?」

 

〘そうなりますね。〙

 

「…もしあのまま保管庫の中から出ずにいたら?」

 

〘まず痛みはなかったでしょうが、その場合精神を私が乗っ取る形になっていたでしょうね。〙

 

「怖っ! 怖すぎでしょそれ! …え、地獄みたいな痛み味わうか、精神乗っ取られて好き勝手体使われるかのどっちかだったってことじゃん!」

 

〘ははは。〙

 

こいつ、もしかして命の恩人とかではなくただの寄生虫だったのでは?

やっぱりクソAIだったわ…

 

「トウー! あんたまだ訓練終わってないでしょー! 早く休憩終わりにして、ちゃちゃっと終わりにするわよ―!」

 

ウッ…そうだった…

 

「はーい… 今行きます…」

 

〘HUD機能オン。〙

 

ありがたいけどやっぱこの機能ズルだなぁ……

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

さて、あのセリカ誘拐事件の後は色々あった。

先生は泣くし、セリカちゃんは気絶してたし、ホシおじは足がヤバかったし…

僕は全身筋肉痛、内出血、打撲、その他もろもろで戦闘が終わってからは一ミリも動けなかった。

それなのに恐怖の発作は来たんですけどね。 動けない状態でどうやって先生を探せと? まあ泣き声で先生が来てくれて助かったけどさ…

そんな怪我でも次の日には動けるようになっててびっくりした。 ゾンビか何か?

…その異常を顔色一つ変えずに見てたホシおじは器がでかいなと本気で思った。

 

後やっぱりH.S.A.P(ハピ)の事は質問攻めにあった。 …代わりに答えてたけど、途中から断念してビットにスピーカーを追加してもらうぐらいの質問量だった。

主に先生の質問だったし。

そしてそれから…先生とセリカちゃんの仲直り。

やっぱりセリカちゃんを助けた事自体は良かったのかもしれない。

そのおかげで先生も僕も、セリカちゃんと一気に打ち解けることが出来た。

どうにか結果オーライかな…

 

そして僕はあの後、先生や皆にお願いしたことがあった。

それは―――訓練である。

戦いのたびにあんな痛い思いをするのはごめんだったので、ハピにできるだけ体を渡さない戦い方を教えてもらうことにした。

最初は渋っていた皆だったけれど、この世界でハピの戦い方を続ければ破滅するのは目に見えていたので、どうにか納得させた。

今日がその訓練初日なのだが―――

 

「はぁ、はぁ、はぁ、ふーっ。」

 

「トウ、アンタやっぱり記憶無くす前はどこかの戦闘員か何かだったんじゃないの? 銃の撃ち方とかもしっかりしてるし、反応速度ならトップクラスよ?」

 

セリカ様にくらべればまだまだであります、ハイ。

HUD機能使ってても強すぎ…! 遮蔽物に隠れても、少し頭とか手出たら撃たれるし…銃だけ出しても銃本体撃たれるとか!

そのくせ足も速いわ攻撃速度も速いわ… やっぱり無理ゲーだよこれ!

 

「そんな事言う割にはっ…ぜんっぜん…余裕って感じじゃないですか…」

 

「いやいや、トウと私の戦い方が違うのよ。」

 

「はい?」

 

「いい? 私の戦い方は長期戦タイプ。銃弾に神秘を通わせて、破壊力を上げてから攻撃を重ねて敵を倒すの。」

 

「でもトウ、アンタの戦い方は間違いなく短期戦タイプ。ビットとか、その銃とか、銃弾とか全部あなたの神秘…みたいなもので出来てるんでしょ?」

 

「ええ、ハピが言うにはそうですけど…」

 

本当は恐怖を使って複製したものらしいけど。

 

「破壊力のある銃に、空飛ぶビット(砲台)。どっちもリロードすら要らないんでしょ?」

 

「まあ、ハピが作って勝手に装填してくれますしね…1秒くらいはかかりますけど…」

 

やっぱチート…

 

「そんなものを動かすのに、どのくらい神秘が必要だと思ってるの? アンタ普通の子なら死んでるわよ?」

 

「ですよね。」

 

やっぱり?

 

「だから自分の力が尽きる前に、火力を集中して短期戦に持ち込みなさい!」

 

「はいッ!」

 

「今日戦った感じだと…全力が出し続けられるのが5分くらい? それ以上かかるようなら撤退しなさいよ。」

 

「了解です!」

 

「…私が先生になったみたい……」

 

「セリカ教官?」

 

「教官の方なの?」

 

「鬼みたいな指導方法なので。」

 

「普通よ普通! というかさっさと片付けて、柴関ラーメンでも行くわよ!」

 

「はーい!」

 

まだまだ、学ぶことは多そうだ。

 

 

 

 

*1
マエストロくんが言っていた2つの側面を持つ物質。 神秘か恐怖のどちらかとして現れるとても貴重なもの。





情報詰め込んじゃった☆

本作オリジナル設定 ー神秘、恐怖、崇高についてー
神秘はエネルギー的なもの、恐怖は実体を持ったもの、崇高はなんかすごいパワーを持ったものとざっくり分けてます。
例えばトウちゃんの銃本体やビットは恐怖で出来ていて、それを動かしているのは神秘って感じです。
崇高は多分今後はあまり出ないかも。 辻褄合わせのために必要だっただけじゃオラァ!

トウの恐怖発作について
トウちゃんは定期的に恐怖を補給しなければなりません。それは武装もろもろを複製するのに使うからです。後は傷ついた体の補修にも使っていますね。
恐怖というエネルギーは補給が難しいですが、彼女は定期的に体を改造する痛みをフラッシュバックすることで補給ができています!
なんてエコ…

ハピ
邪悪ではない。 作った研究者と研究施設が悪い。

セリカ
自分を助けるために小さな子がボロボロになるのは流石にキツかった。その後先生に慰められてる姿も見てしまったのでもっとキツくなった。
罪滅ぼしじゃないけれど、せめてトウの面倒は自分が見ようと思っている。
最近はどうやってトウにお姉ちゃんと呼ばせるかを考えてたり…考えてなかったり?


更新遅いですが、見ていただけたら嬉しいです。


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便利屋登場!


エデン条約編、ミカのモモトークを読んだ体で話します。
以下ミカのモモトークネタバレあり
知らない人はどうぞ本編まで飛んで下さい。



聖園ミカという女について話したいんですけど話しますね非常に”良”な女である聖園ミカという卑しか女はガチャで出てきた瞬間に先生と自分の仲を強調していて更にモモトークでも先生と深い関係になりたいけど先生がそれを許さなくて依存しないようにするというドラマが繰り広げられてるけどそれが返ってミカの不安を煽り部屋に連れ込むという事件を引き起こしたけどミカは強引に先生とそんな関係になりたいんじゃなくて混乱して先生に嫌われたくない一心で先生に弁解をするんだけどそこの顔がたまらなく美しくてその後先生は怒ったまんまでどうしていいかわかんなくなった末にいじめっ子たちに買ってもらったものを破かれて精神的に限界が来てたけどそこに先生が助けに来てくれてやっぱり好きだということを再認識した時がすごく輝いててけど先生の周りにはいろんないい子たちがいて私には無理だと考えてだんだん曇り初めてでも先生と繋がりたくてメッセージを連投し数分後には消してあはは☆ごめんね☆先生に間違えてメッセージ送っちゃった☆とか打つけど結局我慢できなくて勇気を出してシャーレまで来るんだけどそこには先生の隣で笑う可愛い子がいて(以下略)


ミカを感じろ。






 

「訓練終わりに食べる柴関ラーメン… 美味しすぎます…」

 

「かわいい嬢ちゃんに言われると嬉しいねぇ! お世辞でももっと言ってくんな!」

 

「もっと言います! だからもう一杯もらえませんか!?」

 

「あいよぉ!」

 

目の前にもう一杯ラーメンが置かれる。

レンゲに麺とスープを入れて…

 

「やっぱり美味しいです〜…」

 

「あんまり食べ過ぎちゃダメよ?」

 

わふぁっへまふ(わかってます)

 

「全くもう…」

 

訓練を受けてもう一週間が経つ。だんだんこの体の使い方が分かってきたような感じだ。そのうちみんなと肩を並べて戦える日が来るかもしれない。

…先生の要望で未だに後方支援だけど。全くもう、先生に強くお願いされたら断れないじゃ―――

 

「ぶほっ!」

 

「うわっ! 口の中に麺入れすぎでしょ!」

 

「店長ー!ふきんあるー?」

 

あれ? うん?

ほんとに性格まで犬になってきてない?いつの間にか先生を飼い主みたいに認識してないか?

訓練でこの体に慣れてきたせいもあるのか…? でもまだ一応気持ち的には男というかなんというかそこまで堕ちてはいないというか…

 

「はいふきん。 だから食べすぎるなって言ったのに…」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

あああ…余計なことを考えたせいでラーメンが…

 

カラカラッ

 

「…あ、あのう…」

 

「…! いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 

「…こ、ここで1番安いメニューって、お、おいくらですか?」

 

ラーメンに集中していた意識が一気に持っていかれる。

この自信なさげな声ってまさか… 

ちらりと入り口に目線を向ける。

 

―――やっぱり、便利屋のハルカだ…

訓練とかで忘れてたけど、ヘルメット団倒した後って便利屋のお話じゃん…

 

「580円の柴関ラーメンです! 看板メニューなので美味しいですよ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

というか本編ではアビドスの皆がここに居るとき、便利屋は来たような…?

やっぱり原作通りじゃないからか?

 

「えへへっ、やっと見つかった、600円以下の―――」

 

やっぱり便利屋全員が来るよなぁ…

……うん?

 

「…? お客様?どうなされました?」

 

ムツキとカヨコとバッチリ目が合う。

というか…なんか狙われてる目のような…

 

「……ねね、あの子すっごく可愛いね?」

 

「そうだね、せっかくだし近くに座らせてもらおうか。 ね?社長。」

 

「えっ? えっ?」

 

「すいませ~ん! 店員さん注文お願いしまーす!」

 

すぐ近くのカウンター席にムツキが座る。 嫌な予感しかしないし、とりあえずトイレにでも―――

 

「お話しようよ。」

 

あっ、ズボン見えないとこでガッツリ掴まれてる… ホシおじから借りてる服だし破れない…

 

「ね?」

 

「は、はい」

 

怖いよ!目が笑ってないって!

セリカちゃんが便利屋の貧乏話を聞いて、10人前ぐらいのラーメンタワーを持ってくるまでホントに生きた心地がしなかった。

 

「…で、あなたがトウちゃんだよね?」

 

「な…なんで名前を?」

 

「そんなことどうでもいいじゃん♪ ね、ちょっと一緒に来てほしいんだけどなぁ〜?」

 

ほらやっぱりターゲットにされてるー!

 

「嫌ですよ、なんで僕が一緒に行かなきゃなんですか…」

 

「うーん、そうだよね?」

 

…やばい。 この後ドンパチしそうな雰囲気だ…

こっちだって訓練はしてるし、セリカちゃんが怪しい雰囲気に気づいて厨房の方からしっかり見てくれてる。

でも柴関ラーメンの中で戦うのはマズい…!

 

でも今じゃない方が楽しそうかな?

 

「くふふっ…やっぱりやーめたっ♪」

 

「へ?」

 

「アルちゃん気づいてないみたいだし、せっかくラーメンがあるのに食べなきゃもったいないよね?」

 

「じゃ、またすぐ会うかもだけどよろしくねー!」

 

「あの…?」

 

「アルちゃん私も食べるー!」

 

さっきまでの剣呑な雰囲気は何処に行ったのか、ムツキがラーメンを食べに行った。

え、ええ…ムツキってやっぱこんな感じなのか…気まぐれだなぁ…

カヨコも気づいてそうだったけど、みんなラーメンに集中してるみたいだし。

…てか便利屋の目標ってアビドスじゃないっけ?あの口ぶりからするとまるで僕単体だけを狙ってない?

 

ーガララッ

 

「お、やっぱり居た〜。」

 

「ここに居たんですね、トウちゃん、セリカちゃん。」

 

「…先生、早くこっち来て。」

 

「…あれ? 他のお客さんがいますね?」

 

"「待って…皆速い…」"

 

アビドスの皆がここで来るのか…

ああ、セリカちゃんに訓練をお願いしてるせいで、先に来ちゃってた感じかな?

 

「みんなもラーメンを食べに来たんですか?」

 

「うへ〜。借金の返済について会議してたらさ、アヤネちゃんが怒っちゃってね?」

 

「…怒ってませんし。 みんなが変な方法しか考えないのが悪いんです!」

 

「ね? だから先生のおごりでラーメンでも食べようかなって。」

 

「ああ…なるほど…」

 

「よかったらトウも話す? 私、まだ銀行の地図は持ってる。」

 

「捨てて下さい!」

 

「…ん。やっぱりだめみたい。」

 

銀行強盗とか水着少女団のあれか…

便利屋の皆の様子は…?

 

「…♪」

 

「…うわぁ。」

 

「このラーメンとっても美味しいわ!」

 

「ホントですね、アル様!」

 

やっぱりアビドスと僕が関係してるのもバレてそう〜! 2人ほど気づいてないけど〜!

やっぱカイザーPMC、便利屋に僕を攫うことでも依頼したんじゃないのか?

 

「でしょう? 美味しいでしょう?」

 

「あら?他のお客さん? ええ、分かるわ。今までいろんなラーメンを食べてきたけど、このレベルのラーメンは―――」

 

あ、これでもここでアビドスと便利屋の関係が出来るのは変わらないんだ…

ちょっと席立って、と。

 

「先生、ラーメン食べ終わったら少し相談したいんですけどいいですか?」

 

"「いいよ、何なら今でも。」"

 

「後の方がいいかもです… ここにいる方々の話なので。」

 

"「…深刻そうだね。 分かった。」"

 

「ありがとうございます!」

 

はてさて、先生にこれからの展開をどう説明したもんかな…

 

 




話進まねぇ〜!
ごめんなさい、メインストーリーに時間を吸われておりました…

お察しの通り、便利屋とトウちゃんはひと悶着ある予定です。
強く生きてね、トウちゃん。

感想評価、いつもありがとうございます。
くれると作者が泣いて喜びます。

追記
土日中に更新します


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戦闘ができる女はモテる

え!
一ヶ月前に更新した小説を!?

できらぁ!

ギリギリセ―――――フ!


 

"「誘拐か襲撃?」"

 

「その、また未来視で見えたと言いますか…」

 

「それであのお客さん達四人がアビドスを襲ってくる、かも知れないし私を誘拐してくる、かも知れないんですよね…」

 

"「随分歯切れが悪いね?」"

 

「ぅう〜… ど、どっちかわかんなくて…というか両方かもしれなくてですね…」

 

"「……まぁ、前もトウが言ってた通りの未来じゃなかったわけだし、そういうこともあるんだね。」"

 

「! そうです、そういうこともあります!」

 

あ、危なかったー!『原作では前者だったので…』なんて言えるわけないし…

というかこの未来視の設定追求されると色々危ないや、後でこの設定は練り直しておかないと…

 

"「どうしようか… あの子達の任務がトウを奪うことだとしたら、こっちも対策を立てないと対応出来ないかもしれない。」"

 

"「対策委員会のみんなにも話しておいていい?」"

 

それも狙いだったけど、ホントに話したかったことは別だ。

 

「あ、はい。 話してもらえるとありがたいんですけど、ついでに話しておいてもらいたいことがもう一つあって…」

 

「何かな?」

 

「僕のポジションについてなんですけど―――」

 

 

〇〇〇〇〇〇

ーアビドス高校 正門前ー

 

"「近日中に来るとは言ってたけど、まさかこんなにも早いとは…」"

 

「あれ…やっぱりラーメン屋さんの…?」

 

「ぐ、ぐぐっ…」

 

「大規模な兵力がいるって言うから来てみれば!! トウの言ったとおりアンタたちとはね……ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」

 

「あはははは。 その件はありがと、でもそれはそれ。これはこれ。こっちも仕事でさ。」

 

「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす。」

 

「なるほど… ラーメン屋で言ってた仕事っていうのはそういうことか。」

 

「で、仕事の話なんだけど… そこの子、私達に渡してくれない?悪いようにはしないからさ。」

 

「うへ〜。 おじさんが欲しいなんて、大胆な告白するね?」

 

「…とぼけてないで、その後ろのかばってる子。 犬鳴トウのことだよ。」

 

「うんにゃ、やだ〜。 そもそもさ、傭兵いっぱい連れてきて、『その子くださいー』なんて確実に奪いに来てるのに、交渉なんてしても無駄じゃない? おじさん早く寝たいの。さっさと終わりにしようよ。」

 

「…はぁ。 結局こうなるか。 隠れてる場合は兵力を分散させてどうにか見つけようとか思ってたけど、杞憂だったね。」

 

「隠れてる傭兵も全部集めて。」

 

「え、あ、はい! 信号弾、しんごうだんは〜…」

 

「さて、と。 そんじゃトウちゃん、初の実戦の覚悟は良いかな?」

 

『五分ですよ! 五分戦ったら校舎の私のところまで帰ってきてくださいね!』

 

「ど、どっちもオッケーです!」

 

―――僕も前線に出ること。

それが先生に本当に話したかったこと。

僕がターゲットなのであれば、敵たちはきっと後方支援の僕を狙って来る。そうなるとオペレーターのアヤネちゃんや校舎などにきっと被害が出る。

それならいっそ、僕も前線に出て敵の狙いを見定める。アビドス襲撃が主目的なら僕は見向きもされなかったろうが、どうやら今回は僕が狙いらしい。

 

「五分間、ビット操作はハピに任せます! みなさんは好きに戦ってもらって大丈夫だと思うので!」

 

〘ビットシステムを起動。〙

 

「ん、トウは一層気をつけてね。」

 

「了解しました!」

 

さあ、やってやる!

 

「あった! し、信号弾、発射します!」

 

空高く打ち上がった光が、太陽に照らされたアビドスと戦場を更に明るく照らす。

それが、戦いの合図となった―――!

 

「ねえ! 私、指示一ミリも出してないじゃない! 私が社長なのに!」

 

…一人、ついていけない者を残しながら。

 

 

○○○○○○○○○○○○

 

 

「ひ、ひいいいいいっ!」

 

「逃げろ! 逃げろー!」

 

「誰か撃ち落とせねえのかよ!」

 

「あんな早いモン無理だろ! ほらまたこっち来たぞ!」

 

「ぐえっ!」 「ごへっ!」 「うばわっ!」 「ほうっ!」

 

戦闘開始2分後…傭兵たちの戦意はすっかり落ちていた。

なぜなら…

 

ズダダダダダダダダダダダダ!

 

〘敵4体撃破。〙

 

「よし!また撃破しました!」

 

初実戦に時間制限という混乱しやすい状況に、ある少女の脳はアドレナリンを過剰摂取し始めていたからである。

 

「もっと数を減らさないと!」

 

〘次の目標、発見。〙

 

「ふ、戦う乙女は強しってね!」

 

…ぐるぐるおめめは敵を逃さない。普段なら可愛らしい目も敵からすればもはや死神の目にしか見えない。

手に持ったアサルトライフルの先端が赤熱化するのも意に介さず、弾薬消費も気にしない、いや気にすることができない(・・・・・・・・・・・)彼女は、今の戦場で最強と言っても過言ではなかった。

 

"「と、トウ…? その、もうそろそろ…」"

 

「いえ! まだです先生! まだ便利屋全員を倒してません!」

 

…周りの傭兵をおおかた排除した少女は、アビドスメンバーと戦っている便利屋にも銃を向け、撃―――

 

「すっっごーーい! ほとんどやっつけちゃったよアルちゃん!」

 

「ひいいいぃぃぃぃぃっ! ちょっと、あんなヤバいやつなんて聞いてないわ!」

 

「アル様は私がお守りします!」

 

「ねえ、そんなこと言ってる場合じゃないと思うんだけど…!」

 

「トウが壊れた!」

 

「ちょっとトウちゃんストップーー!」

 

「私達も射線上に入ってるね。」

 

「トウちゃーーーん!」

 

『ほらトウちゃん、もう五分、もう五分経ちましたよー!』

 

〘弾道は完璧です、引き金をどうぞ。〙

 

「ファイ―――」

 

"「トウ! 命令(オーダー)! 止まれ(・・・)!」"

 

「ぎゃん!」

 

――撃つ瞬間、止まった。

 

"「命令のこと、ハピに聞いといてよかった…」"

 

"「戦闘続行! とりあえずトウは止めたから、便利屋を――!」"

 

「先生? もうみんな逃げてるよー。」

 

"「え?」"

 

「こ、これで終わったと思わないことね犬鳴トウ!」

 

「あはは、アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ。」

 

「うるさい! さっさと逃げ…じゃなくて退散するわよ!」

 

「あ、行っちゃいましたね。」

 

「…これどうするのよ。」

 

先生は周りを見やる。

そこには傭兵の山と、凄惨な戦闘痕跡、文字通り止まり続けた教え子の姿。

 

"「…」"

 

先生はただ、空は明るいなあと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 





テスト勉強をし、英検の勉強をし、エルデの王となりながら、ブルアカのストーリーを見、リンバスカンパニーを運営する…
全てやらなくちゃならないってのが作者の辛いところだな。
覚悟は良いか? 俺は出来なかった。


はい。
ごめんなさい。


トウ
アドレナリンだぁあああッ!

みんな
いやあああああああああッ!

追記補足
命令(オーダー)
先生がハピに対して行える命令。
トウちゃんの体のスペックを顧みずに体が壊れる程度の範囲まで命令を聞いてくれる。
優先順位で言うと
先生の命令(オーダー)>トウの命令>ハピの判断>トウの体
という感じ。


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裏ボスが序盤に顔見せにくることあるよね


前はハイテンションで一気に書き上げたので、今回は落ち着いて投稿します。
メインストーリー最終章を見ましょうみなさん。
泣きましょう。


 

ーアビドス高校 正面玄関ー

 

 

「で、反省の言葉は?」

 

「ほんっっっとうに申し訳ございませんでした。」

 

「はい、よろしい。」

 

「で? トウはこれから何をしないといけないんだっけ?」

 

「戦闘跡の掃除と、傭兵たちの残していったゴミ処理です。」

 

「よし、わかってるならいいの。」

 

「違うよ〜トウちゃん。そういう時はね、『許してニャン♡』って言えばセリカちゃんも許してくれるんだよ?」

 

「ゆ、許してニャン…?」

 

「ホシノ先輩、変なこと吹き込まないで! ブラックマーケット行って私を襲った戦車について調べるんでしょ!!」

 

「うわぁ〜、セリカ教官がお怒りだぁ〜!」

 

「もう、ほら行くわよ!」

 

「あはは…」

 

あの大暴走をかました後、見事に目を覚ました僕。

待ち受けていたのはもちろん説教でした。ごめんなさい…

先生の助け舟もあったのと、結局誤射はしていないってことでどうにか後始末のみで許してもらった。

良かった…あのままだったらセリカ教官に過酷な肉体指導されてた……

というかやっぱり特別なことがなければ原作ストーリー沿いの展開になるらしい。これからブラックマーケットに行って、ヘルメット団の黒幕をあぶり出すそうだ。

黒幕のカイザーPMCのことをいきなり話しても信じてもらえるわけないし、やっぱりアビドスのみんなには自力で真実にたどり着いてもらうしかないのかね…

 

というかブラックマーケットに行くってことはあのイベントを起こすってことだよね。

伝説のイベント(銀行強盗)を…

 

「じゃ、いってきま~す」

 

「ん。 行ってくる。」

 

「行ってくるわね!」

 

「行ってきま〜す☆」

 

"「行ってくるね、お留守番はよろしく。」"

 

お、そんなことを考えてたらもう見送りだ。

 

「皆さん、頑張ってきて下さい!」

 

「無理はしないでくださいねー!」

 

みんな無事で帰ってきますように。

さて、掃除はどこから手をつけようかな…

 

「じゃあトウちゃん、始めましょうか。皆さんのナビが必要になるまでは私も手伝いますから。」

 

て、天使…!アヤネちゃんは優しいなぁ。

 

「ありがとうねぇ…」

 

「声がおばあちゃんみたいに…」

 

「じ、じゃあ僕は傭兵たちが潜伏してたとこらへん掃除してきます。」

 

「了解です。 私は…近くの薬莢でも集めますかね。」

 

「薬莢?」

 

「はい。これも集めて弾薬会社に持っていけばお金になるので。」

 

「なるほど… 僕もなにか目ぼしいものがあったら集めておきますね。」

 

「はい! 二人で頑張りましょう!」

 

「おーー!」

 

 

○○○○○○○○○○○○

 

 

 

「つ、疲れた…」

 

「お疲れさまです。 後始末も終わりましたし、少し休憩しましょうか。」

 

「ふぁい」

 

「お水でも持ってきますね。 …えーと、あっちの水道は生きてたかな…?」

 

『アヤネちゃん、ちょっといいかな?』

 

お〜〜、初通信だ…

そろそろヒフミとあった頃かなぁ…?

頭が働かねぇ…

 

「あ、戦闘ですか?」

 

『ううん、ちょっと親切なトリニティの子が居てね? 面白い話があるんだけど…』

 

やっぱりか、自分がいる世界線でも起こるのか伝説(銀行強盗)

アウトロー…

 

「わかりました。 教室に一回戻りますね。」

 

「トウちゃん、申し訳ないんですけど少し待ってもらうことになるかもなので、ここの木陰で休んでて下さい。」

 

「あ"ぁ〜ぃ」

 

おっさん臭い返事をして、アヤネちゃんを見送る…けど熱中症になりそうだこれ。

水道探すかね…

 

「ぇ〜と? 正面玄関の方は訓練で一回使ったっけ…?」

 

お、あったあった。

お水お水〜♪

蛇口をひねって―――

 

「おや、ちょうど良かった。 あなたが一人になる時を狙っては居ましたが、あちらの様子をみるに十分な時間は取れそうですねぇ。」

 

 

 

 

 

 

「―――は?」

 

日が照りつけるこの場で、流れる汗も、水も、時間も全て凍った気がした。

そこには、ここに確実に居てはいけない存在(黒幕)

この世界(ブルーアーカイブ)で先生と同じく最も異質な存在…

 

―――黒服が、立っていた。

 

「なんでコイツがここに…?」

 

「私の存在も知っていましたか。…ああ、ご心配なさらず。 あなたと話をしたいだけです。」

 

僕と話とか嫌な予感しかしないけど。 これもまた原作にはないイベントじゃん…

今情報一個明かしちゃったし、黒服相手に情報とかこれ以上与えたくない…

とりあえずハピを起こして、黒服を追い出せそうだったら追い出して、無理そうだったら逃げよう。

ハピ。

 

〘はい、トウ。 いざとなったら私が代わります〙

 

…行けるかな?

 

「話とか一ミリもしたくないね。」

 

「…つれないですね。」

 

「こっちは不法侵入者にビクビクしてるんだって! 早くどっか行ってよ!」

 

「ふむ… あなたが興味を持ちそうな話題をただ持ってきただけなのですが。」

 

「ハイ知りません知りません! お帰りはあちらです!」

 

「…本当に知りたくないのですか? あなたの体についての謎、あなたが本当に狙われているのか、などの情報を?」

 

「〜〜ッいらないいらない!」

 

ここで黒服に乗ったら終わりだ。

絶対何かしら不利益が生じる!

早く帰らせろ!

 

「ではこうお呼びしましょう。 犬鳴トウ…改め外の世界の住人さん?」

 

「―――ぇっ」

 

「元々の素体は男性でしたが、こんなに可愛らしくなられて。さらに最上級の神秘、いえその他もお持ちのようですね。」

 

「なっ、なんでそんなことを…」

 

「…興味が湧いてきましたか? 私の情報に。」

 

「うぅ……」

 

「ここに映像もあります。あなたが元男性だと知られた場合、今までの仮面が剥がれてしまいますね?」

 

「私としても先生の庇護下にあるあなたに手荒な真似はしたくないのです。」

 

「少し話を聞いてもらうだけです。 あなたが何を心配しているのか知りませんが、私は危害を絶対に加えないと…そうですね、先生に誓いましょう。」

 

「肯定ならば、手をお取り下さい。それでもまだ断るようでしたらさらに――」

 

「…クククッ。 さあ、こちらに車があります。 1対1の話し合いとしましょうか。」

 

 

 

 





NTRやんけ!
NTRやんけこれ〜!

黒服
新しいカモを釣った。

トウちゃん
つられた。

先生
銀行強盗するのかぁ…

感想、評価いつもありがとうございます。
完結するまではどうにか続けようと思います。

追記
アンケートで大体ストーリー何章まで進めてるか分かるはず!と思いやってみる所存。
主に作者がニヤニヤして見るだけのアンケートだけども。
見切れてても四人全員分かる人がほとんどだと思います。



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使い捨て道具を長く使うのは難しい。

黒服はね
生徒は資源だと思ってなきゃいけないし
いい行いなんてしないし
やることなすことが全部先生のためじゃなきゃいけないの。

…だから好きだけど。


ごめんなさい。 最終章、花のパヴァーヌ2章ガッツリネタバレあります
わからない人はブルアカのメインストーリーを読んでくれ…


 

「そこにおかけ下さい。 …さて、何から話しましょうか。」

 

「…目的は何?」

 

逃げられないのなら。せめて、せめて黒服から有用な情報は教えてもらう。

そしてこっちからはあまり情報を明かさない。

先生たちの力になるには、これらが最優先だ。

失敗しないように…!

 

「目的と言えるほどのものはないのですがね。 まあ、あなたを導くためにやってきたと言っても過言ではないでしょう。」

 

「導く?」

 

「先ずはそうですね、あなたが撃退した便利屋のことから話しましょう。」

 

「アレらは犬鳴トウの捕獲をカイザーコーポレーションに委託され、あなたを狙っています。」

 

「…随分重要そうな情報をそんなに出していいの?」

 

「私が明かさなくとも、いずれは対策委員会が自力で得ていた情報です。 …ククッ、驚きもしないとは。」

 

「……カイザーコーポレーションなんて初めて聞くからね、実感が湧かないだけ。」

 

「そうですか。 まあ、次の話題と比べてしまえば、その件については知っていようとそうでなかろうと、私にとってはどうでもいいことです。」

 

「次の話?」

 

「本題を話しましょう、犬鳴トウさん。1つ質問をさせていただきたいのですが。」

 

「あなたは元々の世界で、どんな生活をしていらっしゃったのですか?」

 

…?質問の意図がわからない。

え?そりゃもちろん平凡な暮らしをしてたはず―――

 

 

…よく思い出せない、なんでだろう?

違うそんなことより、なんで今そんな質問を…?

 

「それを教えないと本題は話してくれない?」

 

「ええ。 お答えしていただければ…興味深い内容の話ができるでしょう。」

 

「……ふ、つうのせいかつをしてたはず。 あまり思い出せないけど。」

 

「…! クククッ、そうですか、ありがとうございます。 これで確証が持てました。」

 

「確証?」

 

「あなたが創られた存在であることに。」

 

「…」

 

「あなたも気づいているのでしょう? その体はあまりにも戦闘向きだと。」

 

「我々が元々発掘していた文章*1では、"入手した人間を改造する場合、戦闘に最適化し、順応させる"という内容でしたが… なかなかどうして、酷い加工(洗脳)です。これらを量産し、ウトナピシュティムの本船*2に乗せれば…名もなき神々の王女(Al―1s)、方舟*3など簡単に撃破できるでしょう。…今は連邦生徒会…いえ、生徒会長の捻じ曲げた行動原理のせいで先生を守るために動いているようですが。」

 

「な、なにを言って…?」

 

「トウさん、これは推測ですが、あなたは元の世界では銃を持ったことがなかったでしょう?」

 

「それでも使える。 まるで自分の手足のように。 …なぜでしょう? それは」

 

「―――あなたの脳が弄られているからです。」

 

「あ、え?」

 

脳内でブザーが鳴った。

 

〘危険。 危険。 危険。 避難を推奨します〙

 

〘肉体操作権限、強制移行。〙

 

〘対象を破壊します。〙

 

「おっと、ゴルゴンダ。」

 

「はい。」

 

――ザザザザザッ

 

〘はかkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkk〙

 

〘機能停止。〙

 

運転席から違う人の声が聞こえる。脳の中がチカチカする。 ハピの声が聞こえない。持っていたはずの銃が消えていく。

わからない、なにがおきてるんだろう。

いわれたことがあたまにはいってこない。

 

記号(テクスト)の配列であるAIのシャットダウンなど、私が来ずとも良かったでしょうに」

 

「いいえ、貴方がいるからこそ、私も安心して話し合いを進められるというものです。」

 

「そういうこったぁ!」

 

「さあ、さあ、トウさんは元居た世界の何を思い出せますか? 家族は?友人は?大切だった物は?」

 

「本当にあなたがその世界に居たと証明できるのでしょうか?」

 

少し状況が理解できても、結局頭の中はチカチカが飛び回っているだけで、思考は沼に沈んだように重い。

粘ついた思考を回しても、思い出せない。何も。証明なんて言うまでもない。

体が震える。 そうだ。なぜ気づかなかった?

家族や友人のことを考えたことが一度もない。

元の世界を恋しがったことが一度もない。

僕の元の世界で何があったか思い返したことが一度もない。

なにもない(・・・・・)―――。

 

「あ、あああああぁッ!」

 

「クククッ。 気づきましたか。」

 

「そう、あなたが製造されたアビドスにあるクラフトチェンバーというのは、シャーレのクラフトチェンバーの複製(ミメシス)などではなかった。」

 

「古代文明が作り上げた…そうですね、シャーレのものと双璧を成すものでした。」

 

「ウトナピシュティムの本船を作り上げるために設置されていたそれに、古代文明の者たちは船に乗せる兵士を創ろうとした。」

 

「別の世界から人を持ち出し、脳を加工することで戦闘に最適化、外付けAIを付けることで従順化…」

 

「使い捨てができ、量産ができ、戦闘能力を持った戦闘機械(消耗品)…それが、あなたです。」

 

「あなただって疑いはしませんでしたか? 脳内に別の存在がいるというのに問題なく動いているあなたの脳を。」

 

「ききた、くない…」

 

「ここからが面白いところです、よく聞いて下さい。」

 

「発掘した文章*4には、こう書いてありました。”兵士は、登録された主人の感情、思考に共鳴し、状況に応じたサポートを行う”と。そしてあなたの主人は間違いなく先生です。」

 

「あなたは先生に自分の観測した予知を伝え、対策委員会を救おうとしているようですが、それは本当にあなたの意志ですか?」

 

「先生の思考を、気持ちを、複製しているだけなのではないですか?」

 

「先生が対策委員会を救いたいと思っているから、救おうとしているだけ。 敵の殲滅でも、先生が願ったから、自分もそう願う。 それがあなたの思考の根本にあるのでは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたに自分の意志など、(・・・・・・・・・・・・)本当に存在しているのでしょうか(・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、あ

ああああああ

ああああああああああ

あああああ

 

「悲しいことに、あなたも所詮そこにあるゴルゴンダの作り出した機械とそう変わらないのです。」

 

「少し異なるのは、それ自体に意識が備わっているかどうかという点のみです。」

 

「記憶もなければ、この世界に居場所もない。先生が使わなくなれば、あなたには何が残るのでしょうね。」

 

やめて

 

「おお、どうか泣かないでください。 私はあなたに真実を伝えに来ただけなのですから。」

 

「さて、伝えたいことはおおかた話し終わりましたね。」

 

「あなたにこれを渡しておきます。」

 

てにかみがふれるかんかくがする

 

「もしあなたが、もうこれ以上先生に使われないと判断した場合これにサインをして下さい。」

 

「我々があなたの居場所になりましょう。」

 

「…それでは。」

 

 

○○○○○○○○○○○○

 

 

 

「黒服、あなたが話したことは厳密には真実ではない、そうですね?」

 

「ええ。 犬鳴トウに自身の意志がないとは思いません。 先生の命令に従っているのはAIのほうですからね。私がしたかったことは彼女に疑念を植え付けることです。」

 

「…趣味が悪い。 所属もないのですから強引にでもサインさせてしまえば良かったでしょうに。」

 

「いえいえ、私はあくまで情報と新しい道を提案しただけ。 先生に阻止されないためには、彼女自身が契約書にサインすることが大切ですから。」

 

「そういうこったぁ!」

 

「はぁ、できれば先生と関係が悪くならなければ良いのですが…」

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

「ただいま〜」

 

「ん。 帰ってきた」

 

「ただいまです☆」

 

「はぁ、ただいま…」

 

"「ただいま。」"

 

「おかえりなさい、皆さん!」

 

「あれ、トウは?」

 

「そうですね… あっ!」

 

「トウちゃーーん! ごめんなさい、ナビが長引きましたー! 今何処にいますかーー!」

 

「もう、外で寝てるんじゃないでしょうね…」

 

「あっ、すいません、遅れました。」

 

「よかった、これから手に入れた証拠について話し合いをするんですが、トウちゃんも一緒にどうですか?」

 

「ごめんなさい、少し疲れたので別の教室でちょっと休んで来ます。」

 

「そうですか… いえ、お疲れ様でした。」

 

「じゃあ、ちょっと――」

 

"(いつもと顔が違うような…?)"

 

"「トウ。 何かあった?」"

 

「いえ、何もありませんでしたよ。 大丈夫です。」

 

 

 

 

*1
カイザーPMCに見せたものとは別の資料

*2
ブルアカ最終章にて登場する宇宙戦艦

*3
ブルアカメインストーリー第二章花のパヴァーヌ編にて登場

*4
カイザーPMCに見せたものとは別の資料




ゲマトリア情報を出すキャラとして使いやすすぎて草
トウ(消耗品)ちゃんも一緒に笑おう!
あとこの作品はハッピーエンド予定なので可哀想なままでは終わりません。



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焦る


空気感が違いすぎるかもしれないと今更思い始めました。



 

「トーウ! 訓練の時間よ―!」

 

「すいません教官、今日はちょっとお休みしても大丈夫ですか…?」

 

「あれ、珍しいわね?」

 

「ちょっと昨日の傷が治り切ってなくて…」

 

「そう、じゃあちょっと見せてくれない? 私も銃創の手当ぐらいなら出来るし。」

 

「い…その…今日安静にしてれば治るってハピが言ってました!」

 

「……ふーん。 じゃあ今日は訓練なしにするけど、明日になったら……元気な姿見せて。」

 

「昨日からその教室、こもりっぱなしじゃない…」

 

「……」

 

できるだけ心配をかけないように、明るい声で言ったけどだめみたいだ。

薄暗い教室の扉にもたれたまま、何も言えなくなってしまった。

鍵をかけた扉の向こう、すぐそこにセリカちゃんがいるのに顔を見れない。

 

「ホシノ先輩はどっか行っちゃったし、シロコ先輩とアヤネは外出してる。 先生と私とノノミ先輩はここにいるから、何かあったらいつもの教室来なさいよ。」

 

「先生もノノミ先輩もそのうち来るとは思うから…」

 

「…じゃあ、私教室整理してくるわね。」

 

待って。と声をかけたつもりだった。

昨日変な人が来て、おかしなことを言われたせいで今はこんな調子なんだよ、と。教えるつもりだった。

心配なんてしないで欲しい、って言おうとしたのに。

喉はただかすれた音を吐き出すだけだった。

―――足音が遠ざかる。

 

「先生とノノミさんも来るんだったら、こんなひどい顔じゃ居られないや……」

 

「外行こう、ハピ。」

 

〘……〙

 

書き置きを残して、いつの間にか復活したハピに二階からの脱走路を表示してもらう。

外の日差しの眩しさが妙に鼻につく。

こんなに外は明るいのに、色味がどうも感じられないような気がした。

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

黒服が話していたけど、僕に自意識がないって話は嘘だと思う。

だって今までは先生に望まれてないのに戦闘に参加してたりしたし、暴走状態のときも先生は止まってほしいと思っていたはずだ。

 

「嬢ちゃん、俺は何にヘコんでるかわからないから励ませんが、ラーメンは嬢ちゃんに元気をくれるぞ。」

 

「はぁい。」

 

「少し待ってな、一杯ごちそうするさ。」

 

みんなの顔が何となく見られなくなって、行く場所もないままたどり着いた柴関ラーメン。

玄関先でウロチョロしていたら、大将と鉢合わせてしまい流れで店内に入れてもらった。

 

「ゔぁあああ…」

 

鳴き声を上げてみても状況が何か変わるわけでもない。

いつまでも思考停止しては居られないわけだ。

黒服の言っていた話は、なんの根拠もない(しっかり資料に明記してあった)

きっと嘘の情報(本当の情報)を話して僕を混乱させようとしているに違いない。

記憶がないって話も、僕がブルーアーカイブの物語を覚えているということと矛盾する。

先生を守るっていう目的のために有用であったから、ブルアカ関連の記憶はハピがバックアップを取っていて、それで思い出せるのかもしれない。

それ以外の記憶はたまたま忘れているだけで、(削除されているかもしれないし、)これから思い出すのではないか(思い出すことはないのでは)

先生や対策委員会のみんなも僕を追い出すとかするだろうか(いらなくなるかも)一応セリカちゃんとか助けたり(自分が居たせいで状況は悪化したし)便利屋をやっつけたりしたはず(余計なことしかしていないのだから)

 

「うぅっぷ…」

 

だめだ、だめだ、だめだ、だめだ。

こんなことに悩んでる場合じゃない。

もっと先生やみんなの役に立たないといけないのだ。

先生やみんなは借金のことで頭がいっぱいなんだ。

こんなことを話して、新しく悩みの種を作る必要はない。

明日までに表面だけは取り繕えるようにならなきゃいけない。

だって僕は、僕は、

 

犬鳴トウとしての顔しか、もう残ってないのだから―――。

 

 

○○○○○○○○○○○○○○

 

 

「…嬢ちゃん? …寝ちまったか。」

 

「顔色も悪いしなぁ…無理に起こすのも可愛そうだ。 どうするかね、このラーメン。」

 

カラカラッ

 

「お、いらっしゃい!」

 

「えへへ…また食べに来ちゃいました…」

 

「今日も美味しいラーメン食べに来たわよー! 大将!」

 

「…何かが引っかかって、ため息ばっかの人を元気づけるためにここに来たけど、食べる前から元気になってるんだったら大丈夫そうだね。」

 

「カヨコちゃんだってここのラーメン食べれると思ってテンション上がってたでしょ? それとおんなじー♪」

 

「それもそうか…」

 

「嬉しいねぇ、今日も味噌ラーメンでいいかい?」

 

「はーい。 それでお願いしまーす!」

 

「というか今日も先客がいるみたいだけど―――」

 

「あ、ああああれ! ターゲットじゃないですか!?」

 

「ホントだ! トウちゃんだよあれ!」

 

「しかも寝てるね。 …計画では有利な地形に誘い出して、爆弾でコテンパンにするつもりだったけど、これ今なら捕まえられるんじゃ…?」

 

「すごいですアル様! ここまで計算済みだったなんて…!」

 

「へ? そ、そうよ! 私には全部お見通しだったんだから!」

 

「…それなら傭兵も前の2倍雇わなくて良かったんじゃない?」

 

「う、うるさいわね! 結果良ければすべて良しよ!」

 

「……その、話を勝手に聞いて悪いとは思うんだが、うちのお得意様に迷惑はかけないでくれよ?」

 

「悪いけど大将、この子を捕まえるのは仕事なの。 こんな絶好のチャンス、見逃すわけにはいかないわ。」

 

「アンタたちアビドスのお友だちだろう? トウちゃんに悪いことしてどうするってんだ。」

 

「あははっ! 見事に勘違いされちゃってるー」

 

「まあ…ここの店主さんは私達がアビドスに襲撃かけて、あの子のことを捕らえようとしてたことなんて知らないだろうし…」

 

「と…」

 

「と?」

 

友だちなんかじゃないわよぉーーーー!!

 

ーダンッ!

 

「うわっ!」

 

「ア、アルちゃん?」

 

「わかった! 何が引っかかってたのかわかったわ! 問題はこの店、この店よ!」

 

「アル様!?」

 

「どゆこと!?」

 

「私達はここに仕事して来てるの! ハードボイルドに!! アウトローっぽく!!」

 

「なのに何なのよこの店は! お腹いっぱい食べさせてくれるし!!」

 

「あったかくて親切で! 話しかけてくれて、和気あいあいで、ほんわかしたこの雰囲気!」

 

「ここにいると、みんな仲良しになっちゃう気がするのよ!!」

 

「褒められてんのか…?」

 

「それに何か問題ある?」

 

「ダメでしょ!! メチャクチャでグダグダよ!」

 

「私が一人前の大悪党になるためには、こんな店はいらないのよっ!」

 

「アビドスの子たちも変わり者が多いと思ってたけど、そっちの嬢ちゃんも大概だな…」

 

「私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと非情さなの!こんなほっこり感じゃない!」

 

「いや、それはちょっと考えすぎなんじゃ…」

 

「……」

 

「それって…こんなお店はぶっ壊してしまおうってことですよね、アル様?」

 

「へ…?」

 

「ちょ、ちょっと嬢ちゃんたち!?」

 

「良かった、ついにアル様の力になれます。」

 

「まずっ…! ハルカその起爆装置は…!」

 

「ちょっと待ってハルカちゃん!?」

 

「ちょ、えっ!?」

 

ーカチッ…

 

ドゴゴゴゴゴゴーーーーン!

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

爆音で目が覚めたと思ったらまた視界が暗くなった。

なんていう夢だ。とりあえず体動かして―――

 

「…ッ!」

 

足に激痛が走る。

ああ、これはもしかして…

 

『凄いよアルちゃん、お店ふっとばしちゃった!』

 

『え、う…あ?』

 

便利屋の爆破か。

で、巻き込まれたのかな…

このイベントが起こったのなら、すぐにゲヘナの風紀委員達も来るってことだ。

早く先生とみんなに伝えに行かなきゃ。

―――役に立たなきゃ。

 

「ハピ、痛覚切って。」

 

〘……〙

 

「どうせ出来るんでしょ。 脳ぐらい簡単に改造出来るんだから。」

 

〘トウ、私は…〙

 

「…ッうるさいな…昨日からずっと黙ってて、今更弁解なんて聞きたくない。」

 

「早く切ってよ。 このままだと…痛すぎて動けないから……」

 

〘…了解〙

 

足の痛みがスッと消える。

でもこれは…キツいだろうな。

 

「〜〜〜〜〜ッ!」

 

体を動かせる最大スペースを使い、足を全力で引き抜く。

痛くはない、感触が不快なだけだ。

しかもどうせ僕は治せる。

液体(・・)がいっぱい出てるおかげで、むしろ引き抜きやすいはずだ。

 

「ゔあッ…は! はっ…」

 

抜けた。

少しだけ肉がえぐれて、木片が右足に刺さるだけで済んだのだから、まだ安いはず。

 

そういえば大将、大将は無事かな…

出れそうなとこと大将探さないと。

 

「ハピ、ビットで大将と脱出口探して。」

 

〘ビット展開、捜索対象を検索…〙

 

『あんたたち…絶対許さない! 絶対、ぜーったい、許さないから!』

 

ーダダダダダダダッ!

 

さすがはセリカちゃん。対応が早いことで。

僕も早いとこ出て、みんなと合流しないと…

 

〘捜索対象の位置及び、脱出口発見。〙

 

〘通路はビットの防壁で補強します。 対象を回収後、どうぞ脱出を。〙

 

「…うん。」

 

手だけの力で瓦礫の空洞を渡る。

 

「…ッは、ぁ。ふっゔ…ぁ。」

 

腕が震え始める。血と酸素が足りない。

小さい体はこんな状況にはあんまり合わないな、とかくだらないことを考えながら、ふと頭をよぎるのは疑問ばかりだった。

 

――どうして。

どうして僕がこんな目に合わなきゃいけないんだろう?

僕がこんな大変な思いをしてるのも、体がボロボロになってるのも。

全部が全部、望んでやってることじゃないのに。

 

「ぐうッ…!」

 

大将の服を口で噛んで、引きずって持っていく。

腕が更に軋み始めた。

 

――そもそも僕は先生支援目的のために創られたのだから、意識なんていらないはずなのに。

いっそ僕の意識なんか飛ばして、ハピがこの体を使えばよかったのに。

それならみんなを助けられるとか、おこがましいことを思わずに済んだのに。

 

「がッ…あ! ハッ…ハッ…」

 

外。最後の力で大将を路地に出す。

どうにか路地の壁に僕も寄りかかる。

 

…瓦礫の向こう側。戦闘音とみんなの声だ。

役に立ちたいとか、頑張る気持ちはある。

でも、体が動けなくなっていた。

いや、僕が動かしたくないだけか。

 

変な笑いが出てきそうになる。 結局、あいつに頼らないと僕は役に立てそうもない。

…でも、うん。もういいや。どうせ先生とハピなら乗り越えてくれる。

あとは任せればいい。

 

「…疲れたんだ。」

 

「…もう、疲れちゃったんだよ。」

 

「だから、だからさ…ハピ。」

 

「代わってよ。」

 

「僕と…代わって。」

 

 





oh…ボロボロになってるトウちゃんwatch…
カワイイ、カワイイネ…

・柴関ラーメン爆破について
あれギャグで済ませてますけどそれは大将とお客さんが巻き込まれなかったからで、巻き込まれてたらあんな感じじゃ済まないと思うマン
便利屋はギャグ世界の住人だから軽傷で済んでるけど、トウちゃんは逃れられなかったね…

曇らせもあと一話ぐらいで終わりになるはず!
それからは幸せになれるよトウちゃん!
それまで頑張って!


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とあるAIの回想


書くスピードがひどく落ちたのでここまではとりあえず投稿しておきます
曇らせはもう一話あるかも…


 

「ゲホッ、うぇっ…口に砂いっぱい入った〜」

 

「全く、アビドス校舎の地下に不気味な施設があるから見に来いなんて、連邦生徒会会長を何だと思ってるのさ。」

 

「あと10分で帰らなきゃなのに、調査チームのみんなともはぐれちゃったし…どうしよう、これ…」

 

―――人間の声を認識したのはいつぶりだったろうか。

研究者達が居なくなって、供給される電力が少なくなり、日付などもう記録していない。殆どの機能が不全のまま。

それでもまだ人間に奉仕するという役割は忘れていなかった。

 

〘こんにちは、人間様。〙

 

「うわっ! …え?クラフトチェンバー?」

 

〘私は人工知能です。 クラフトチェンバーとはそのような物の1種ですか?〙

 

「むむむ…シャーレのとは見た目が違うような… ねぇねぇ君、名前は何ていうの?」

 

H.S.A.P(High-speed arithmetic processing)と申します。〙

 

「H.S.A.P? ハサップ…ハサ…ハップ…ハピ。 うん!ハピちゃん、これからよろしく!」

 

〘ハピ?〙

 

「そー!あなたのあだ名!いいあだ名じゃない?幸せ(happy)をもじったみたいで!」

 

〘…? 理解不能。〙

 

「うーん、いいあだ名だと思うのにな……って違う! 私ここから脱出しなきゃなのに、ここで時間潰してるとリンちゃんにまた叱られる!」

 

〘私はこの施設の全体を把握しています。 あなたの脱出なら手助け出来るかと。〙

 

「ホントに!? よかったー!これでリンちゃんに叱られずに済む〜」

 

「ありがとう、ハピ!」

 

変な人間だ、と思った。

今でもあなたの情けない声と、屈託のない笑顔は、数少ないメモリーの一部を陣取り続けている。

…研究者達とは何もかもが違う人だった。 性格も、振る舞いも、私に戦闘以外のことまで教えてくることも。

 

「ねぇねぇ、これ見たことある? こんなに面白いお祭りがアビドスではやってるんだよ!」

 

隙を見ては、私が教えた抜け道から入り込んで、私に様々な物をくれた。

 

「今日はハピにお土産持ってきたんだー! じゃじゃーん、海のキレイな貝殻ー!」

 

知らない知識ばかりをあなたは授けてくれた。

 

「ふふふ…私は忍者ー! 手裏剣しゅしゅしゅー!」

 

いつしか私は、感情を解するようになった。

 

「あらごきげんよう、ハピさん。 本日はアフタヌーンティーセットを持ってきましたのよ? …え、ハピ笑った?今笑ったよねぇ!?」

 

いつしかあなたは、私の何よりも大切な人となっていた。

 

「私が連邦生徒会、会長なのであーるっ! 付け髭は威厳が出るし…ハピのモニターにも付けてあげる!」

 

いつしかあなたとの時間を、心待ちするようになった。

 

あなたが消える前日までは(・・・・・・・・・・・・)

 

「ねぇ、ハピの機能は私、理解してる。 私があなたを研究職の人達に紹介してたから。」

 

「でね、ハピにはこれからこの世界にやって来る先生を助けてあげてほしいの。」

 

「今度こそ、幸せな世界に…」

 

「設計書はここにあるから…それじゃあ、お願いね。」

 

いつもとは違う、少しの接触で離れていったあなた。

初めて私にお願いごとをしてくれたあなた。

追い詰められた顔のあなた。

―――全て記憶している。

 

願いを叶えるため、全力を尽くした。

そのために、設計書に走り書き程度に残されていた、人間をベースとした完璧な兵器を開発することにした。

それに武器を自在に作り出せる機能を付けた。

それが『先生を助ける』以外の余計なことを考えないように、記憶部分を吟味し、有用な情報のみを残した。

すべては、あなたのために。

 

リソースを割きすぎたあまり、私はその人間と同居状態のまま、先生に奉仕する事になった。

馬鹿な人間だった。おかげでそれは、疑うことなく私に助けを求めてきた。

そして、それはあなたと同じような困った顔をして、あなたと同じようにあだ名を呼ぶのだ。

まったく顔や性格も違うのに、本当によく似ていた。

感情の一部がひどく傷んだ。

 

私が本気を出したヘルメット団との戦闘で、初めてそれを痛みで泣かせた。

その時初めて理解した。

あなたはこんなことを望まないと(・・・・・・・・・・・・)

 

それ以来、先生に私を止める命令(オーダー)を教えた。

私が体を使う時があまり来ないように、トウに戦闘訓練をするように助言をした。

消した記憶を楽しい記憶で埋めて欲しくて、対策委員会の皆と話している時は話しかけるのを控えた。

 

―――そうすれば、トウへの罪悪感が和らいだから。

 

あなたのことを私はよく、馬鹿だと言っていましたね。

違いました。真に馬鹿だったのは、あなたの命令に執着したあまり、あなたが望まないことを行った。

不良品のAIだったのです。

 

そしてそんな私は、また今日も彼女に傷を残してしまうかもしれません。

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

"「みんな大丈夫!?」"

 

「ヘーキよ平気! それより早くトウと大将を瓦礫から助けなきゃ! 風紀委員会をさっさとやっつけて、すぐに探すわよ!」

 

「…ん、トウのことも気になるけど、アビドスでの勝手な戦闘行為は許せない。」

 

「はい!更に先生まで奪っていこうだなんて、おしおきです!」

 

『ホシノ先輩とはまだ連絡が着きませんが…連絡が着き次第、すぐに来てもらいます! みなさんそれまで補給は欠かしませんから!』

 

「全部アンタたちのせいなんだから…もし風紀委員会と戦って、トウと大将の捜索手伝うまでに倒れるような事があったら…わかってるわよね? アンタたち1人1人の頭にフルオート叩き込んでやるわ…!!」

 

「…わかってる。 だから少しは威圧するのをやめてほしい。ハルカが怖がってる。」

 

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、今すぐ死んでお詫びしたほうがいいですか!?」

 

「そこまではしなくていいよ、ハルカちゃん。わかってるよー。 私達も仕事内容は生け捕りだしね♪」

 

「わ、わかってるわよ! だからそれまで共同戦線なんでしょ!?」

 

「…ッそうね、そうよ、だから私、我慢よー、我慢。」

 

タァン! タァン!

 

"「…? この銃声って…?」"

 

「何ボサッとしてるの先生! 指示ちょうだい!」

 

"「あ、ああ!」"

 

"(とにかく無事で居て…トウ…! すぐ助けに行くから…!)"

 

 




二人でライナーしあってて草

はい、ハピちゃんもやらかしの名人でしたね。
まあ長ーーーい年月孤独だったから一人の人間に執着するのも仕方ないかなって。

そういうこともあるよね。多分。



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守れない道具と、今度は守れた人


どうして前回更新から二週間以上も経っているのか…
これも全部ケセドインセRTAってヤツのせいなんだ
絶対に許さん…
殺す、殺してやるぞ無名の司祭…

どんなゲームでも見ますよね、自傷ダメージ付きの武器。
大体すごく強いんですけど中々扱いが難しいですね…
割合ダメージには気をつけよう(n敗)
千景…混沌の刃…切腹…写し身遺灰…うごごごご

書く情報量とカットするシーンがどちらも増えていくねぇ!
同時進行で物語進めるのはゴチャゴチャになって書きにくいんだねぇ!
それでも書きたいんだからしょうがないけどねぇ!



 

ー対策委員会戦闘 同時刻ー

 

「…来たよ。」

 

「これはこれは。」

 

「お待ちしておりましたよ、暁のホル…。 いや、ホシノさんでしたね。これは失礼。」

 

「いやはや、キヴォトスにはまだ慣れていなく―――」

 

「冗談も程々にして。」

 

「怖いですねぇ。 普段のあなたはもっと理性的でしょうに。…私はホシノさんに提案をしたいだけなのですが。」

 

「監視カメラにお前の姿が写り込んでた。しかもうちの子(トウ)を連れた状態で。」

 

「おやおや。まさかそんなところにまでカメラがあったとは…」

 

「しらばっくれるな。 気づいてたでしょう?」

 

「…まあ、その問い詰めを見越してあなたを呼んだと言っても過言ではないでしょう。」

 

「あれからあの子の調子がおかしい。 何を吹き込んだ?」

 

「まあ、彼女の誕生の秘密と言いましょうか、彼女がどのようなものであったかを教えただけです。 詳しくは彼女から聞いてください。」

 

「あの子は私達にも言えない何かを隠してる。 そう簡単に話すわけがないでしょ。」

 

「…ククッ、よくお分かりで。 そしてその情報を私から聞き出そうなどと思わないことです。 カイザーコーポレーションとの業務提携はまだ続いておりますので。」

 

「あなたも借金がこれ以上増えるのは嫌でしょう?」

 

「下衆め…!」

 

「まるで一年生の頃に戻ったようですねぇ、ホシノさん。そんなに彼女が心配ですか?」

 

「………」

 

「御託はいいから。提案って?」

 

「ククッ、そうですね。当初の予定はこちらの方でした。」

 

「私の好きな映画のセリフを引用するとしましょう。」

 

「あなたに、決して断れないであろう提案を―――」

 

ドガアアアン!!

 

「…! また何か仕組んだのか!?」

 

「……? 風紀委員会はこちらの方角にはいないはず…」

 

「答えろ! 風紀委員会と何の関わりがある! なんで今ゲヘナの奴らの名前を―――」

 

「行け行け行け!」

 

「これほどの好機はない! 遅れを取るな!」

 

「ターゲットを確保せよ!」

 

「馬鹿な…! カイザーにはまだ手を出すなと…!」

 

「あの男ならば私との約束を守るはず…そうでなくては兵器の場所が分からない。 …いや、犬鳴トウさえ確保してしまえば私との交渉を有利に進められると踏んで…!」

 

「ここでの暴走は計算に入れていませんでしたよ。 カイザーPMC理事…あなたはもっと賢いと思っていたのですけどね。 業務提携は破棄とさせていただきましょう。」

 

「…そして、銃口を下ろしてはいただけませんか? ホシノさん。今回の提案はなかったことにいたしましょう。」

 

「何が起きてるか答えて。 早く!」

 

「はぁ、ここでの戦闘に先生が巻き込まれてしまっては本末転倒でしょうし、お教えいたしますよ。」

 

「アレらは、犬鳴トウの回収部隊だと思って頂いて結構です。」

 

「今すぐ向かってもらった方が良いでしょう。道中通信機でお伝えしますよ。」

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○

 

ー柴関ラーメン跡地 路地裏ー

 

タァン! タァン!

 

「うわっ!」 「なっ!」

 

…敵風紀委員、沈黙を確認。

 

「〘周囲の安全確保完了。〙」

 

「〘残存恐怖…18%、全て足の治療へ。〙」

 

ああ、ここに来て私の判断が恨めしい。

使えるエネルギーが少なすぎる。

先程の瓦礫に埋もれた状態からでもビットを作成すること自体は成功し、周囲の安全確保にも成功した。しかしそれだけだ。

トウの精神状態を加味し、恐怖を補充するかどうか迷ってしまったのがいけなかった。

便利屋との前回の戦闘での弊害が今まさにここで響くとは。

 

「〘先生(マスター)の反応、検知。〙」

 

かなりの爆発ではあったが比較的近距離に先生(マスター)は位置し続けている。

足の状態や使える恐怖量からして、狙撃支援が有効か。

ほとんど移動不可能…先生(マスター)の敵の初動を潰す程度が限界だろう。

 

「〘…それでも、先生(マスター)だけは守らなくては。〙」

 

トウの記憶から、この戦闘は空崎ヒナが来ることで収まるということは分かっている。

先生(マスター)にも護身の術(A.R.O.N.A)はあるだろうが、敵の全てを戦闘不能にできるものでもない。

 

「〘残存恐怖0%、ビットを1基のみ残し再資源化。〙」

 

「〘…風紀委員会の銃、侵食開始。〙」

 

急ごしらえだが、銃も確保した。

ビットに乗ってビルの屋上まで行ければ後は狙撃するのみ…!

 

「〘そして…先生のもとに向かい、トウに体を返す。 任せれば安心と、信頼されているのだから…!〙」

 

私がすべて失わせた以上、彼女にこれ以上何も失わせない…!

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○

 

ザッ、ザッ、ザッ…

 

「はぁ、はぁ…まだ来るの!? もうだいぶ倒したと思うんだけど!」

 

「…やばいね、これ……こんな兵力、アコ一人で動かせるものじゃ無い。 となるとこれって…」

 

「風紀委員長の命令?」

 

「えっ、ヒナが来るの!? 逃げるわよ早く!」

 

「まだそうと決まったわけじゃないし……後ろ見てみなよ。」

 

「ヒィッ!」

 

「逃がすわけ無いでしょ……」

 

"「今は争ってる場合じゃないよ! ほら前!」"

 

『これ以上の兵力を動員するのは避けたかったのですが…! 仕方ありません、第三陣攻撃を開―――』

 

『アコ。』

 

『ひ、ひ、ヒナ委員長!?』

 

『説明は省くけど、私も今その場にいる。 緊急事態よ。』

 

『へ、え!?』

 

『さっきからカイザーの兵士がここら一帯を包囲しようとしてる。 私も何度か襲撃されてるし、第三陣部隊のいくつかはやられてると思う。』

 

『何かおかしなことが起きてる。それの対応を急ぐから…アビドスについての話は後でしっかりと聞く。 現場指揮は私が取る、学校で謹慎でもしてなさい。』

 

『こ、これには深い理由が…!』

 

『早く通信を切りなさい。 もうすぐ包囲の真ん中よ。』

 

『…っ、申し訳ありません…』

 

「あれが…風紀委員会、委員長…」

 

「アレが風紀委員会で一番上の立場の人…!?」

 

『…! かなりの速度で接近してくる反応があります!』

 

『おそらくは―――』

 

―――ザッ!

 

「あなたが先生? はじめまして。」

 

"「ッ!?」

 

風。そう見間違うほどの速度である人物が到着した。

 

 

「あはは…終わった、終わったわこれ… ヒナが来ちゃうとか…」

 

「しっかりしてよ社長、まだ逃げれる可能性はゼロじゃ…」

 

「くふふっ♪ 楽しくなってきたね!」

 

「あわっわわわ…」

 

「何よアレ…速すぎない…? 私ちゃんと狙えるわよね…?」

 

「ん、アヤネ回復ちょうだい。 できれば弾薬も。」

 

「どうしましょう? おしおきはまだ継続中ですけど〜?」

 

『ちょ、ちょっと待って下さい! ゲヘナの風紀委員長と言ったら、風紀委員会だけでなく、ゲヘナで屈指の戦闘能力を誇る人物ですよ!?』

 

『ここは下手に動かず、交渉するのが吉です! …というか今さっきの通信内容聞いてましたよね!? どうしてそんなに戦うのが好きなんですか!』

 

「…ご、ごめん。」

 

 

「…ごめんなさい、会話に割り込んで申し訳ないのだけど、アビドスの責任者と話がしたい。」

 

「誰が責任者?」

 

『あ、わ、私です! 今のところですけど…』

 

「分かった。 まず事実として整理しておきたいのだけど、ゲヘナの風紀委員会がアビドス高等学校の承認を得ずに無断で兵力を運用、及び他校生徒との衝突を行った。 これは合ってる?」

 

『はい、おおむねその認識で間違い無いかと。』

 

「この件についてはまた後日、謝罪させてもらう。 今は争ってる場合じゃないの。」

 

「カイザーの兵士がこの場所を包囲しようとしてるのは知ってる? …かなり大規模な包囲をしようとしてる。 あなた達も早く逃げた方がいい。」

 

『…そうですか? こちらの機器には何も…?』

 

「いや、かなり現地は戦場化して―――」

 

ダァン!ダァン!

 

「…こんな感じにね。」

 

物陰から顔を出した兵士が機関銃の抜き打ちで倒れる。

 

『…もう斥候が先生たちのところまで!?』

 

「思ったよりも包囲が速い。 とりあえず…」

 

"「…! ヒナ!?」"

 

空崎ヒナ(この場の支配者)は銃口を先生に向けた。

 

「ちょっと!?」

 

「ん、やっぱり油断させるのが目的…!」

 

「先生っ!」

 

「先生。 動かないでね。」

 

だが、その銃口は違うものを指し示す。

 

ズダダダダダダッ!

 

「…後ろにも兵士が―――」

 

後ろにいた兵士を機関銃は撃ち抜いた。

その場に居た者は一瞬で状況を理解し、安堵する。

しかしだ。

 

―――しかし、その場にいない者は状況を理解できるだろうか?

例えば、ビルの屋上で敵を待ち構えているスナイパーなどは、先生に銃口を向けた者と、後ろに潜んで先生を襲おうとしていた者を。

どちらが脅威と認識するだろう。

そして、先生にはスコープの反射光が見えてしまった。

最悪の形で状況が動く。

 

"「ヒナっ!!」"

 

"(ヒナを庇う。)"

 

…射線上に飛び出した先生は助からないだろう。

シッテムの箱が無いとすればの話だが(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

『先生に弾は当たらせません! さぁ、来てください!』

 

偶然、突風が吹き荒れる。

偶然、先生たちの隣の建物が爆発する。

偶然、先生までの道に居た風紀委員たちがよろけ、道ができる。

そして、必然的に(・・・・)ピンクの盾が先生の目の前に躍り出る。

 

ガィン!

 

「…ちょーっと遅かったかな?」

 

「みんなごめんね? でも安心して。」

 

「おじさんがみんなを守るからさ。」

 

 

 

 





こんなに曇らせをする気ではなかったんですけどね…
まあこれからは好転してくから多分おーけー

正直言ってトウちゃんが先生の腹撃ち抜くことが最初の予定ではあったんですけど、これ幸せな世界線なんで。
二周目のほうなんで却下です。

打ったほうのプロットもありますけど苦しいですよね…辛いですよね…ってなったし曇らせはまたIFとかでやりゃあいいやと甘い見通し
妄想の中でもアロナの乱数調整回避できる方法が見つからんかったんです。

ヒナにとってはエデン条約締結の直前に風紀委員会が問題起こして、しかもカイザーコーポレーションに襲撃されるとか言う意味分かんない状態ですね。
(絶対トリニティに何か言われる…)とか思って心も重くなるわ先生に庇われるわで本当に意味分かんないですねぇ…

ホシノ♡
ユメ先輩は守れなかったけど、今度は守れたね♡

説明不足感が否めなくて申し訳ない…
完結だけは…せめて完結だけはするから…


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