この素晴らしい世界にARKサバイバーを! (アイランド南部の引き篭もり)
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ARK:Konosuba Edition
『地球環境の快復を確認。エレメント確認できません。これまでの長い旅路、お疲れ様でした。……思えば、貴方には無茶を頼みすぎましたね。どうか。次があるのなら、貴方の好きに生きてください。…それではさようなら、サバイバーさん』
美しい青い星。かつては人類が繁栄し、エレメントに支配された星。その名を地球。
エレメントに頼り、争い、荒廃した世。せめてもの希望として多種の方舟が打ち上げられ、それぞれのARKを生きた。
絶滅動物の島に始まり、過酷な砂漠。放射能に汚染された地下世界。そして巨人に生存権を追いやられた未来都市。仮想世界に、数多の世界を渡り歩いた挑戦者がいた。
その姿はなんてことのない人間で、唯一他と違うところと言えば、左の手首に埋め込まれた機械的なオブジェクトくらいだろう。
そんな彼の旅路はようやく終焉の時を迎えた。未知を駆け抜け、地球を救った彼に安息の時が訪れたのだ。
後悔はない。こうなることも判っていた。何より、普通のヒトと比べればあまりに長く生きすぎた。外傷で死んだとて蘇り、約束の時が来るまで寿命を終えることもない。これでいいのだ。
ただ、少し心残りがあるとすれば、あの長いようで閃光のように瞬く日々を送れないことだろうか。……郷愁の念に駆られるには、少し物騒過ぎる気がしなくもないが。
そう苦笑し、
―――そして、陽光の元に目が覚めた。
長らく感じていなかった久しき感覚。これは初めてARKの地に降り立った時のようだ。
何故、という困惑と、長いサバイバル生活で培った反射神経は自然と周囲の状況を把握しようとしていた。
前方に広がる広い草原に……背後は森のようだ。ここは何処だ? 似たような地形は思い出せるが、どれも完全には一致しない。森も、ここまで平坦な道ではないものばかりだった。
どういうことだ? 新しいARKプロジェクトか何かでも始まったのか? どうにも、ここに来た理由が分からない。初めてアイランドで目覚めた日のようだ。まるで何をすればいいのか分からないが…。
けれど、それに興奮している自分がいた。アイランド以外のARKには自分で突入した……今回は本当に最初の気持ちを思い起こさせてくれる。
この草原、今のところ動物らしい動物は見えないが、何があるか分かったものではない。アイランドの比較的安全なスポーン地点でもスピノやカルノはいるものだ。用心はしなければいけない。
ので、まずは木を殴ろう。
手癖でツールを呼び出しそうになり、少しして木の伐採を始めた。わらや木。初めから手に入るこれらは最後までお世話になるものだ。石は拾いにくいが、森の入口付近にいくつかあった。これでピッケルは作れるだろう。
どうやらエングラムは今までのままらしい。ふむ、今までの努力の結晶と捉えるか…この世界で取得できるエングラムに集中できないというべきか。まあ、もし失敗したらマインドワイプトニックでいいだろう。
そんな思考をしている間に、初期装備に必要な物資は整った。全て原始的ながら、石のピッケル、石の斧、槍、そして繊維で編んだ服と靴。遠距離武器は文明の利器、弓だ。新天地ではいつもお世話になっている。
最早見かけもしないこの武装らに頼りなさと力強さの両方を覚えるのは私だけではないだろう。
とにかく、懐かしい装備に身を包んだ私は水源を求めて探索を始めた。水源の重要さはスコーチドアースで文字通り死ぬほど思い知った。これまで幾度となく死んできた私だが、水不足のままじりじりと死んでいくのは辛さ的に五本の指に入るだろう。
草原か森かで迷ったが、やはり目立った敵もおらず、見通しのいい草原に決めた。
程なくして草原を流れる川は見つかった。魚もいたが、シーラカンスの最小サイズよりなお小さかった。おかげで魚肉も一匹から一つとかなり効率が悪い。もし仮に肉食生物をテイムしていたら即座に食料は尽きてしまうだろう。
さて、では水場も見つけたことだし、ここに拠点でも建てようか。どのような地であれ、先立つものがなくてはやっていけない。
そんなことを考えていると、少し先の地面が隆起する。
「ゲコッ」
ベールゼブフォ!? 湿地帯でもないのに何故!? と驚いたが、よく観察すれば色々と違う。まずベールゼブフォより遥かに大きい。あちらが人より小さいのに、こちらのカエルは中型生物程度はあるだろうか。そして、速度もベールゼブフォより鈍重だ。
ともなれば完全に違う動物だろう。見た目もこっちのほうが愛嬌がある気もする。
敵対生物だろうか? 本来のカエルは中立だったが……。向かってくるな。敵対生物だ。二匹いるし、丁度いい。一匹は倒してあと一匹はテイムしよう。こんな場所にスポーンするくらいだ。余程特殊な食料などではないだろうと、サバイバーとしての勘が告げていた。
ピンク色と緑色。レベルは見えない為、色で決めよう。敵対生物に近づきすぎるのも自殺行為なのでな。…早く望遠鏡が欲しい物だ。これでは名前も分かりやしない。
離れ、撃ち。離れ、撃つ。ヒットアンドアウェイ。これが出来ないやつはサバイバーとして失格だ。まあ、十分な戦力があったり、作戦次第ではゴリ押しもあるから一概には言えないが。
そうこうしている内に、ピンク色のカエルは死んだ。最大まで引き絞った矢で5発。レベルが分からないため比較は出来ないが、原始的な弓でこれならレベル1のトリケラ相当だろう。
少しこちらまで引き付け、死体から肉を回収する。ジャイアントトードという名前らしい。するとどうだ。手に入ったのはfrog meat、カエル肉だ。私は今までにない衝撃に見舞われた。だって、今まではドードーだろうと虫だろうとワイバーンであっても通常の肉しか落とさないのだから。例外は羊だが、そちらも中々レアだ。
そして、次に驚いたのが量だ。石のピッケルで採取しているというのに、なんと70も採れた。トリケラのおよそ2倍近い量だ。ここら一帯がこいつの生息地なら、当分食料に困ることはなさそうだ。
さて、ではこちらのジャイアントトードをテイムしようか。体力数値がトリケラと同等なら盾役にはなるだろう。懸念としてはトリケラには頭部の85%のダメージカットがある点だが、この際背に腹は代えられない。
それにベールゼブフォのように虫類特攻とセメント精製があるかもしれないと考えると、このチャンスを無碍にするわけにはいかない。予め作っておいた棍棒とパチンコが久しぶりに日の目を浴びる瞬間だ。
―――…
おかしい。明らかに100発以上の石を当てているのに気絶しない。レベル80のトリケラですら70程度で昏睡値は貯まるのに。そう疑問に思いながらも、ここまで来たからには捨て置けない。逃亡時に拾った石も出し尽くす勢いでいこう。
結局ジャイアントトードが気絶したのは200発を越えてからだった。ここまでやって尚体力に余裕があるというのだから恐ろしい。
だがレベルは15、体力は同レベル帯のトリケラより少し低い程度だった。やはりダメージカットが作用していたらしい。…となれば、私の狙いが悪かったのか、はたまた…。
とにかく、時間を使いすぎた。水分も危ういし、焼いた魚肉は直ぐに無くなった。焚き火のある川辺まで行き、補充しておこう。気絶値の回復速度は遅く、その程度の時間はあるだろうと踏んでの行動だった。
「あれ、このジャイアントトード寝てねぇか?」
「ホントだ。冬眠してたのが寝ぼけて這い出てきたとか?」
「何にせよ、ラッキーだな。ダストがいないから俺しか前衛がいなかったからな…」
私が意気揚々とその場に戻ると、カエルは無惨な死体となってそこに転がっていたのだから。
なっ、何をするかぁーっ!!
「うおっ、びっくりした。人? 冒険者…にしては装備がお粗末だが」
弓を装備した軽薄そうな男が弓を向けながら言って来た。
だが、その他の二人は顔を見合わせるような仕草をし、頭に鉢巻を巻いた男のほうが前に出てきた。
「おい、やめろキース。すまない、もしかしてアンタの獲物だったか?」
獲物? まあ、気絶させてから殺す猟法もあるから、それと勘違いしたのか。そうだと頷く。
「おいおい、いい狩り場とかならともかくたかがジャイアントトード一匹だろ? そこまで怒ることかよ。それにそこまで大事ならさっさと仕留めとけば良かったじゃねーか」
仕留めるだって? とんでもない。あれを気絶させるのにどれだけ時間がかかったことか。
「気絶って、まさかそのパチンコでか?」
これまたそうだと頷くと、彼らは一様に顔を見合わせて大笑いをした。確かに見た目は原始的だが、それを笑うなどとサバイバーの鑑にもおけない。
その不機嫌そうな顔に気づいたのか、彼らもそれを納める。
「すまんすまん。悪気はなかったんだ。だが、ジャイアントトード相手にただの服とパチンコって、一体どんな戦い方したらいけるんだと思ってな」
「ホントだよ。ジャイアントトードには打撃は殆ど通じないのに」
なんと、打撃全般に耐性があるのか。それは知らなかったと素直に礼を言う。道理であれほど時間がかかった訳だ。次からは麻酔矢を量産しよう。
「ん? 知らないでやってたのかよ。そりゃある意味凄えな。まぁ、そんだけ頑張ったのを台無しにして悪かったな。ギルドに帰ったら何か埋め合わせでもしてやるからよ」
ギルド? ギルドとは何だ? トライブの一種なのか?
「ギルドは何かって…冒険者ギルドに決まってるだろ。変なこという奴だな」
冒険者ギルド?
「………マジで?」
マジだ。
「アンタ一般人かよ!!?」
「えっえっ、待って。何で冒険者でもないのに戦ってるのこの人!?」
冒険者とは何なのだろうか。サバイバーとはどう違うのだろう。第一、生物を倒すのに冒険者でなければいけないということはないと思うのだが……。
弓持ちの男と女性があたふたとしていると、リーダー格らしき鉢巻の男がこう告げた。
「えーと、外で会った以上はしょうがない。取り敢えず、最寄りの街まで行くから着いてきてくれるか? 二人共、それでいいよな?」
「お、おう。もともと今日はダスト抜きだからあんま長時間はやらないつもりだったしな」
「私も、それでいいと思う。っていうかここで見捨てるなんて出来ないし」
「賛成だな。アンタも、それでいいよな?」
おお、意外と親切だった。冒険者ギルドとやらもそこで分かるのだろう。サバイバーたるもの未知の世界には惹かれるものだ。それに、彼らのことなども気になるからな。答えは当然YESだ。
あ、その前に焚き火の肉を回収しなければ。少し待ってほしい。
「別にいいが、何か持ち物でもあったのか?」
お近づきの印にカエル肉をプレゼントだ。一人15個程度だが、誠意は見せられたと思う。
「あ、これはどうもご丁寧に。包み…?」
「って、ステーキがいっぱい!?」
「お、おおお!! マジでありがとな! これで食費が浮くぜ……! アーチャーは何かと出費が多くてな…。マジありがてぇ…」
何だか分からないが、好感触そうなのでヨシ!
理由もなく人に手をかけない分まともな方
すいません、テイラー鎧じゃなかったですね…
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オベリスク≒祭壇
自らを冒険者と称する三人組に着いていくと、そこには高い外壁で覆い尽くされた、広大な町並みが広がっていた。
同じ様式の家々が立ち並び、街路や水路などもうまく活かした美しい景観をしている。
私がそれに目を奪われていると、横合いから声をかけられた。
「ここがアクセルの街だ。アンタ来たことは?」
案内してもらった冒険者のリーダー、テイラーだ。それに私は否と答える。
いや、ここまで立派な街は見たことがない。私も大型建築をしたことはあるが、それは自分とテイムした生物たちのため。いわば他の生活の場、というより目的に沿った施設という方が相応しいだろう。
即ち、それぞれの家。共用スペースである道や商店などはなかった。
「はは。そりゃ確かにアクセルは始まりの街だけあって栄えてるが、王都なんかはもっと凄いぞ?」
なんと、それは後学のため是非とも一度は拝みたいものだ。あなた達はその王都に行ったことは?
「いや、ない。今のは聞いた話なんだ。いずれ行きたいとは思ってるんだがな…」
テイラーはどこか遠くを見るように言う。行けばいいではないか。
「無理無理、今のわたし達じゃ向こうのレベルに追いつけないし」
「観光にしても行くのは冒険者として行きたいからな」
ふむ。そこは所謂過酷な場所にあるのか。私も雪原や湿地帯には装備やペットが揃うまで近づきたくはなかったからな。分かるとも。
「まあ、そういうことだ。俺達はこのまま冒険者ギルドに行くが、アンタはどうする? あんなことをするくらいだし、冒険者としても活躍できると思うんだが」
おお、早速冒険者ギルドというやつか。確かに気になっていたし、この話に乗らない手はない。よろしく頼むとしよう。
―――…
「あ、いらっしゃいませー。お仕事関係なら奥のカウンターへ、お食事なら空いているお席へどうぞ!」
どことなく薄暗い店内。そして動き回る布の服の女性や、たむろする様々な装備の人間たちがいた。皮の服に鉄の槍を持った者、大きな剣に鉄鎧を装備した者。果てにはただの服に棍棒のような長い棒を手にした者まで様々だ。
その奥に設けられたカウンターに迷わず進むと、そこにいた女性と何やら話を進めていく。
「テイラーさん達、お帰りなさい。クエストの報告ですか?」
「いや、そっちもあるけど、確か期限は明日まででしたよね。 それよりこの人が用事があるみたいで…」
「はい。そちらの方ですね? ご要件を伺いますね」
ああ、私か。私は冒険者になりたいのだが、何も分からなくてな。説明を込みで聞きたいのだが、いいだろうか。
「はあ…。そういうことなら説明しますね。まず、冒険者とは―――
――――という訳です」
ははあ、なるほど。クエストとは、決められた時間以内に指定の条件を達成することでを報酬を得る、ジェネシスのミッションの様なものか。
違いとしてはいつでも受けられるのがミッションで、誰かが困らなければ発生しないのがクエストといったところか。
さらに、職業やレベルアップなんかも私の知っているものとは細部が異なっていた。
レベルアップが経験を得ると自動で行なわれ、ステータスもまた同様に上昇する。サバイバーやペットというよりは野生の生物に近いだろう。
職業やスキルなどの、地球の定義とは外れたそれらの存在も面白い。
「はい。以上になりますが、冒険者登録をされますか?」
勿論だ。私も一端のサバイバー。耐えられる自信はあるとも。
「分かりました。登録料は千エリスとなりますがお持ちでしょうか?」
……登録料? すまないが、私はエリスという通貨は持っていない。ヘキサゴンならジェネシスへ行けばあると思うが……。ヘキサゴンは使えるのか?
「へ、ヘキサゴン…? 申し訳ありませんが、こちらの通貨でお願いします…」
しまったな。それも当然か。このような報酬のやり取りがある組織に所属する以上、対価は必要と考えて然るべきだったな。
すまないが、登録はまた次の機会ということにさせてもらおう。
と、この場を去ろうとしたところに待ったの声がかかる。
「いや、ちょっと待った。千エリスくらいなら俺が出すよ」
テイラーだ。
…いいのか?
「それくらい構わない。むしろ払わせてくれ。獲物を横取りした上、あんなものまで貰っておいて何もなしはバチが当たるからな」
リーンにキースも頷いている。
おお、なんと懐が広いのだ。やはり親しまれやすい行動はするべきだな。ありがとう。
そうして、登録料も出してくれることとなり、私は無事最初の関門を突破出来た。
「確かに千エリスお預かりしました。ではこちらの紙に身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入をお願いします」
身長はいいとして年齢は…。はて、私は何歳なのだろうか。まあ、それっぽいことを書いておけばいいだろう。そして身体的特徴は…と。ホモデウスレコードの件は別にいいだろう。
「はい、【サバイバー】さんですね。それではステータスを測りますね。ええと……はっ!? はああああっ!? 何ですこの数値!? 魔力がかなり低いこと以外、全てのステータスが大幅に平均値を越えてますよ!? 生命力と筋力も尋常じゃないのに、知力と器用度が桁違いに高いですよ!?」
「おいおいマジかよ…!?」
「何そのステータス!?」
まあ、これでも最大レベルだ。恐竜とだろうがマトモに殴り合える性能はしている。
「あ、幸運は平均でしたね。まあ、冒険者に幸運ってあんまり必要ないので……あの、なんで顔を顰めているんですか?」
ギルドの女性が放った一言に思わず渋い顔。高レベルワイバーンの卵。フェニックス。至高の装備にイベカラ150…。幸運に作用される苦行はあらかた行ってきた故の顔だ。せめて幸運が高ければもう少し楽になったのだろうかと考えると涙がこぼれそうだ。
「と、とにかく、高い魔力を必要とされる職業以外は何だってなれますよ! クルセイダーにソードマスター、石工に細工師に………? す、すみません。この器用度ですので生産系が多くなっていますが……どうします?」
なるほど、高い体力と耐性のクルセイダーに、近接攻撃の強いソードマスター。面白い。面白いのだが…、私としては様々なスキルを修得していきたいと考えており、あまり一つのことに特化するのも考えものだ。
何より、エングラムポイントを振り分けるような、無限大の可能性から掴み取りたいというのは私の我が儘だろうか。
「様々なスキルを修得出来る職業…? 一応、全てのスキルを覚えることのできる“冒険者”という職業ならありますが……」
あるのか!?
「え、ええ。ですがスキル習得にはより多くのポイントが必要になり、職業の補正も無いので同じスキルでも本職の効果には及びませんよ…?」
それでいい。むしろそれがいいのだ。サバイバーなら、変に特化するより器用貧乏と言われたほうがまだ生き残れる。既に鍛えられたステータスのバランスを崩すのが阻まれたから。というのもある。
是非! 是非とも冒険者にしてくれ。
「そ、そこまでお望みなら…。では冒険者…っと。ですがあなたのステータスならば他の職業にも引けを取らないと思っております。冒険者ギルドへようこそ【サバイバー】様! 専科百般の活躍を期待しています!」
そう言って、手渡されたカードを受け取る。これが私の冒険者としてのステータス。私の接続できるインベントリとは趣の異なる形式だ。
「すごいじゃん君!!」
「まさか、それほどとは思わなかったな…」
「マジか……」
そんなこんなの一悶着もあり、こうして、私の新天地最初の一歩は踏み出されたのだった。
―――…
フンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッアェアッ!(石を掘る音)
時の流れは早いもので、あれから一年が経過した。あまりに早く感じる人もいるかもしれないが、それらは文字通り瞬く間に過ぎ去っていった。
具体的に言うと、膨大な資材集めや建築に奔走していたのである。
そしてこの一年の間に、私の冒険者生活は豊かなものになっていた……などということはない。
クエストには当然依頼人がいるもので、問題が解決したら当然同じクエストは受けられない。
それをあの人数で奪い合うのだから、所詮美味しいクエストなんかは掲示板に張り付いている人に取られてしまっていることが多いのだ。
よって、普段は資材を集め家を拡張することに力を向け、偶に冒険者ギルドに寄っては資材集めついでにジャイアントトードを狩る。そんな生活をしていた。
家については、この街の管理人に話を聞きに行き、好きに使っても問題ないという土地を頂いた。
どうやらそこは雑草は生えまくり、木々や大きな石など、建築に適した場所ではなく、また撤去しようにも然程重要視されていないから費用が回らない、という理由だった。
当然これらは直ぐに回収し、お馴染み藁の豆腐ハウスを作って一日目を終えたのは記憶に新しい。
木材建築や、生活の基本が整ったところで、私は早速オベリスク探しの旅に出た。お供は途中で捕まえた真っ黒のサーベルタイガーのようなものだ。因みに享年4ヶ月である。レベル80まで育ったが、誤ってマグマに落ちてしまった。
「それで、まだ探しものは見つからないの?」
冒険者ギルド内で項垂れる私に、この一年で知り合った盗賊の少女、クリスが声をかける。知り合った経緯は私の住居に不法侵入していた彼女をボーラで捕まえたことから始まるが…そこは割愛しよう。
そう。そうなのだ。恐ろしいことにオベリスクが見つからないのである。
もとから不思議には思っていた。今までは空を仰げばどこかにオベリスクを視認することは出来ていたのだが、ここにはないのだ。
ここから見えない地にあるのだと信じて遠出もしてみたが、やはり無かった。最早、かつてのあの地を見ることは出来ないのだろうか…。
はあ…。なんだかナーバスになって来た。これは地形にスタックして動けなくなった時や時間をかけて集めた仲間を喪った時レベルだ。ああ、このモチベーションもない状態で食料を消費するのも馬鹿らしい…。死にたい…。死んで生肉の貯蔵を増やしたい…。
「そ、そんなに落ち込まないでよ。そうだ、明日にでもエリス教会に行ってみたら?」
教会? 目の前の少女はエリス教徒だからと適当を言っているのではないだろうか。そう疑る視線を感じたのか、慌てて手を振って否定する。
「いやいや! 流石にそんなことしないって。ただ、ほら。君の探し物もエリス様なら見つけられるかもしれないでしょ? エリス様は下界を見守ることも出来るし、祈れば声が届くかもしれないよ?」
ふむ、そのような存在がいるのなら、確かにあり得るかもしれない。ヘレナも人類から見れば神に等しい。一笑に付すことなど出来ない。
分かった。早速行ってみることにする。ありがとう。
「え、ちょっ、今からはちょっと駄目なんじゃないかなー!? その、エリス様も色々と忙しいと思うし――」
そうと決まれば善は急げだ。最低限の装備は持って向かおう。
そして着いた。思えばこの教会という施設には今まで一度も入ったことがなかった。
内装は質素で、長椅子が並べられ、石造りの壁と上部の色付きグラスがいい味を出している
「おや、冒険者の方ですか? この度はどのようなご要件で?」
プリーストらしき装いの女性が話しかけて来たので、素直に女神エリスへと祈りと相談をしにきたのだという。
「そうでしたか。ではそちらの祭壇へ向けて祈りを捧げになられてください。大丈夫ですよ、エリス様はきっとあなたの悩みもお分かりになられていますから」
祭壇か。もしやこれが女神へと声を届ける何かを備えているのだろうか。……そういえば、オベリスクもある意味では祭壇のような場所だったな。貢物を捧げ、ボスを召喚するという……?
……何か今チラッと見えたな。もしや、もしや…?
跪いた姿勢から突如立ち上がり、祭壇へと向かうことあなたに、女司祭は困惑の表情を浮かべる。
そして、見えた。どういう原理かは分からないが、確かにインベントリがある。ボスの召喚の類は出来ないようだが、転送などの機能は不足なく機能するらしい。
そうと決まれば―――!
「え、消えた…!? テレポート……いえ、一体何が? まさか、エリス様……?」
こうして、謎の勘違いを残したまま、あなたはこの世界から姿を消したのだった。
――――…
死した者のみが辿り着くという、天界。この一面真っ黒の部屋は一人の神によって運営され、その担当世界の死後の行く道を決める場所でもある。
「はぁ…はぁ…! さ、流石にせっかち過ぎです…。さっきだってやっと下りたのに、もう戻ってくるなんて……」
息を切らして疲れた顔を見せる銀髪の女性。特徴的なゆったりとした服装に身を包んだ彼女の名はエリス。幸運を司る女神である。
この世界で最もメジャーな宗教で、ベルゼルグ王国の国教となっていたり、通貨の単位にもなっている。
因みに通貨の単位が神の名になっていると聞き、どこぞの
そして、浮かび上がるようにそこにある椅子の上に身を置き、息を整えるエリス相手であろうが、あなたは躊躇しない。
おや、クリスじゃないか。クリスの言う通り、教会に行ったら見つかったよ。本当に感謝する。
「ほんと? それは良かっ………た……」
投げかけられた見知った声に咄嗟に顔を上げたエリス……否、クリスは顔をピタリと硬直させる。
対面の椅子に座るのは、何を隠そうあなたである。この暗闇を松明で照らしながら見つけた彼女に声をかけたのである。
「だ、誰かと勘違いしていませんか…? 私は死後の世界を案内する女神、エリスと言います。断じてエリス教徒の盗賊の少女とは関係がありませんよ?」
いや、間違いなくクリスだろう。いや、この感じだとクリスの正体が女神エリスだったと言うべきか。
というか名前が見えているのでそのような嘘は通用しない。違う肉体を使っているのなら分からなかったが、その名前とIDから当人で間違いない。
「いえ、私は別人で…」
クリス。
「私は…」
クリス。
「違…」
クリス。
「………はい」
ヨシ!
「って、違いますよ!!」
急に叫び声を上げたエリスに、貴方は驚いた。
まだ言うか、クリス以外にありえないであろう。
「あ、いえ。そっちはもうそれでいいです。はい。…あの、バラさないで下さいね…?」
それは勿論だ。態々名を変えて活動しているのだから秘密にしておきたいのだろうからな。
「ありがとうございます…。あの、何故
ああそうだった。本題を忘れかけていた。探しものは教会の祭壇だったんだ。
「私の教会の祭壇が…?」
…というよりは、探し物と同じ機能を持っていたのが祭壇であったのだ。
では時間も迫っているのでさらばだ。とりあえずこちらに資材やペットを持ち込んでみよう。TEK系列にMEK、ああ、トロペオグナトゥスやメイウィング辺りが便利だったからな…。後は拠点防衛用にプラントも持ってきて―――。
「あの…、ここに来た理由をまだ聞いていないんですけど……」
こちらの世界とはどのような相性になるだろうか。夢が広がるなぁ…!
手始めにアイランドからだな。
そう願うと、あなたの体は粒子状になって消え去っていった。
「あ、消えた。……結局、何だったんでしょう……?」
困惑する女神をその場に残して。
感想の際、ARKで楽しかった思い出、これが苦しかった。これが思い出に残っている。などのことがあったら付け足してもらえると幸いです。自分以外のサバイバーの体験なんかは貴重ですから。そして分かち合いたい
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アクセル拠点と影が薄い方のアレ
満足だ。ああ満足だ。満足だ。
思わず声に出したくなるほどにいい出来の拠点になった。
既に地球に着陸した他ARKから持ってきた恐竜たちもこちらに馴染んだ様だ。こちらの生物との軋轢等もなく、敷地内に遊ばせておくことが出来た。
改めて、この拠点を見て回っていこう。
まず、この世界で建てた拠点はアクセルという街の使われていない土地から広げていったものだ。外壁は景観を重視して石の壁。高さは巨大な石の恐竜用ゲートに合わせ、壁上には歩ける程度のスペースを確保している。
何故ここまで高くしたかと言うと、4マス程度であれば拠点の様子が丸見えになってしまうからだ。立地的に防衛に向いているというわけではない為、警戒くらいはしておくべきだろう。
一度拠点に入れば、そこには恐竜達が整列している地域に差し掛かる。ドードーの群れは自由に放浪し、ユタラプトルやサーベルタイガー、ダイアウルフ等などの素早いペット達。プルモノスコルピウスやアラネオモーフスらの昆虫等様々だ。
分かると思うが、この辺りにはアイランド産の動物を多めに配置している。この世界には私の知らないスキルや魔法というものがあるらしく、未だ全てを知っているわけではないそれらへの警戒として、貴重な生物は置かないようにしている。
拠点近くは特に防衛すべきだと考え、ティラノやTEKティラノ、ギガノトなどの高い戦闘能力を誇る生物らが中立で置いており、夜間はメガロサウルスを数頭配置している。
たまにその日の気分でマグマサウルスやロックドレイク、リーパーキングなどを置いているが、普段はポッドの中で眠っている。
まだまだ配置している生物はいるが、割愛。
敷地内にはいくつかの建物があり、マップごとに纏めた生物達の家や農園、生け簀、倉庫に作業場となっている。
本拠は機能的でありながら生活感を保ち、内部の家具、施設、放し飼いにした小型生物達など、この世界で学んだ建築様式や意図などを意識して造りあげた。かなりの自信作だ。
農園は複数あり、4階建ての全面温室の壁で、一つごとに育てるものは変えている。とはいっても、プラントXやYは拠点防衛に使えるためにこちらにはない。
そしてこれまた驚いたのだが、初級魔法である『クリエイトアース』で造った土を菜園に使用すると効果が上がったのだ。具体的に言うと肥料効果が長続きしやすくなり、野菜の成長速度が10%程度上昇していた。
当然、ロックウェルの触手も問題なく育つことが出来ている。
そして、ここが一番見てほしいのだが、この世界で手に入れた固有の植物も栽培できたのだ。
主にキャベツにサンマなどだ。他にも栽培できる野菜はあったが、どれもわざわざ育てるほどではなかったということだ。
キャベツは育ち切ると動き始め、周囲を漂うのだが、ある一定の期間を超えると、何処かへ旅立とうと壁に体当たりを始めるのだ。
そのため温室の壁では心もとなく、止む無く石建材で覆っている。この世界の植物食生物に対して他の野菜よりも効果的だ。こちらで有効なキブルが分からないうちはこれが最も良かった。
そしてサンマ。どう見ても魚だ。ロックウェルの触手が育てられるので別に気にしないが。
こちらは魚肉目的ではなく魚目的だ。カワウソなどの特殊な手渡しテイムでは安定した供給が出来ている。あとはスタックできる数が魚肉よりも多いことが特徴だ。
作業場と倉庫はそのままで、特に紹介することもないだろう。最後に生け簀だが、こちらはテイムしたシーラカンスやメガピラニア、セイバートゥースサーモン、そしてこちらでテイムしたバナナ何かが泳いでいる地域だ。
こちらは水場に乏しいのでベールゼブフォの産卵場所としても機能している感じだ。
この拠点の大まかな説明は以上だ。一応他にも拠点はあるが、その中でも最も大きく発展しているのがここだ。
それと、当初許可を取った土地よりも遥かに広がってしまっている件に関しては、外壁近くだったために本来の外壁を取り除き、その向こうに壁を広げる形で補った。当然、その分の料金は支払っている。
巷では『一夜要塞』だの『最終防衛ライン』だの言われているが、悪意はないので放っている。
…にしても、拠点のレイアウトやこちらの世界のブリーフィングなどで暫く外に出ていない。かれこれ2ヶ月近く籠もっていたのではないだろうか。
こちらでは正しい地球と同じように時期に応じて気温が変化するのだ。タイタンに支配されていた当時は地球の自転が止まってしまい、時間経過による気候の変化というのは過去のものとなっていた。…つまり、この世界に蔓延る魔王軍とやらはキングタイタンやエレメント程の影響力は持たないのである。
それは置いといて、そろそろ冒険者としての活動を再開してもいいのではないだろうか。懸念だった元の地球にも戻れたことだし、憂いはなくなった。未知のアイテムや冒険、新たな動物のテイムに専念することにしよう。
それと、ペットを誤って攻撃しないように冒険者ギルドにも通達しなければいけないな。
とはいっても、
暫くしてからは私が初心者殺しを従えていても日常として溶け込めていたように、慣れというものが必要だ。
――その時、サバイバーの脳裏に電撃が走る。
逆に考えるんだ。見かけない強力なペットに怯えるのなら、身近な場所に私のペットがいればいいのでは?と。
勿論だがギガノトを放置するようなマネはしない。私は気遣いができるサバイバーなのだ。
いわく、生活へ受け入れやすいものとは、いかにメリットがあるかどうかだと考えている。
これは私の経験だが、過酷な環境であるスコーチドアースやアベレーションなんかは多少の慣れはあれど、何度行っても馴染むものではないが、新しくテイムした便利な生物やアイテムなんかは翌日には無くてはならない存在と化しているのだ。これは人類共通の心理と言えよう。
ならば、ほどほどのサイズで、受け入れられやすい個体とは―――――こいつだ。
久方ぶりの街並みをのし歩く。道の中央を進んでいくと、人々は私を見、次にその背後に視線を移してはギョッとして道を開ける。
ふむ、視覚的に見れば然程怖くはないと思うのだが……。これも馴染み深い現地の生物との違いか。人々の視線を集めながら、私は目的地。冒険者ギルドの門戸を叩く。
「いらっしゃいませー、お仕事関係なら奥のカウンターへどうぞー!」
元気に告げた給仕の顔が、私の背後を見て強張る。昼間のこの時間に集まって話をしていた冒険者集団も、話を止めてこぞっとこちらに視線を向ける。
「あっ、お久しぶりですね【サバイバー】さん。2ヶ月ぶりくらいでしょうか? それで、本日はどのようなご要件でいらっしゃったのですか?」
これまでに何度もクエストの達成をしており、すっかり顔馴染みとなったギルド職員に、本日の要件を伝える。
こいつをこのギルドに置かせてはくれないだろうか。
そして私がどくと、そこには四足歩行のトカゲが巨大化した様な見た目。そして何より目を引くのがその身の丈以上の大きな背びれ。
そう、その正体は歩くエアコンその2こと、ディメトロドンだ。
「あの……、何故そのようなことを?」
うむ。この2ヶ月でペットも増えたので、その報告と、攻撃しないよう慣れてもらうためだ。
「はあ…、確かに不慮の事故の防止というのは分かりますが、その…」
チラッとディメトロドンに目を向ける。
「当ギルドで飼育するには設備もないですし、何よりそれだけの理由で引き受けることは出来ません」
結論を急ぐのはまだ早い。説明不足だったが、ちゃんとそちらにも利益のある話だ。
まず、これから冬に入るだろう? そうなると冒険者も住処から出てこなくなり、金のめぐりも悪くなる。しかし、このディメトロドンがいれば話は別だ。
「こちらのモンスターが、ですか?」
ああ、ディメトロドンには自分の周囲を適切な温度に保つ能力がある。その証拠に、暖かくなった気がしないか。
「あ、確かに程よい気温だな」
「ホントだ。さっきまで肌寒かったのに…」
仕事場であるギルドが暖かければ、やる気も出るのではないだろうか。何なら、外へクエストに行くパーティーにはディメトロドンを貸してもいい。これでも足手まといにはならない程度の強さはあると思う。
そうして稼ぎが出来た冒険者は暖かい空間で食事を取りたいだろうから、自然とここで食事することになるだろう。あなた達ギルド職員も細かい作業などはかじかんだ手では厳しいだろうし、利はあると思うのだが。
「成程、確かにそれならば好意的に捉えられますね…。何か特別な世話などは?」
いや、いらない。元々活発に動くものでもないし、大丈夫だ。それと、餌はこちらで出た肉類の残飯などを食べさせて貰えれば問題ない。ディメトロドンが正しく機能すればそれも困難なものではないだろう。
「確かに、冒険者の皆さまが料理を頼むほど、彼らの餌も増える。といったことでしょうか」
そういうことだ。それで、返事を聞かせてほしいのだが。
「…メリットがあることは理解しましたが、それは私の一存では決められません」
そうか…。
「ですが、他の方々はどう思われますか?」
その問いかけに、冒険者やギルド職員は口々に声を上げた。
「俺は賛成だな。確かに便利だし、害がないってんならいいと思うぜ」
「ぽかぽかしてあったかいし、クエスト中もついてきてくれるならありがたいよね」
「それに、よく見ればちょっと可愛いかも…」
「書類仕事に手の寒さは天敵ですもんね」
おお…、思ったよりも好評だ。
「というわけで、満場一致の賛成となります。ここまで賛成案が出ているのですから、費用もかからない以上は問題ないでしょう。初めての試みということもあり、最初は試験的に、ということになりますが、それでよろしいでしょうか」
ああ、問題ない。私のペットが役立てるのなら不満はない。
その言葉を交わすと、物珍しさと暖かさから、冒険者やギルド職員が10匹のディメトロドンに群がっていた。
「おお、ホントだ。暑すぎず、寒すぎず…丁度よくあったけぇや」
「結構ザラザラしてるのね…」
「まさかギルド内でモンスターを飼うことになるとは思いませんでしたが……これもいいですねぇ…」
早速人気者のようだ。多人数に囲まれているにも関わらず、ディメトロドンは慣れた様子で意にも介さない。…いや、無抵抗にしとくと例え襲われてようと顔色一つ変えないが…。
「ねぇねえ、お肉食べる?」
顔の前で持っていたステーキを揺らし、バクリと食いついた様に「食べたー!」と興奮の声が上がる。
うむ、やはりペットが褒められるのはいい気分だ。私も嬉しくなる。
それでは、久しぶりにクエストでも受けようかとボードを眺めていると、一人の冒険者から質問が投げかけられる。
「なあなあ、こいつら名前は何て言うんだ?」
「あ、それ私も気になる」
名前? 無いぞ。ただ気温調節に役立つから複数捕まえただけだし…。
「「「愛がねえ!!?」」」
全方位からのツッコミが、あなたに一挙に突き刺さった。
――――…
その後、冒険者たちがこぞって名前を投票し、うち一匹の名前が「たむたむ」になったことは、完全に余談だろう。
この話の時系列はアクアやカズマが土木作業をしている間の話になります
カワウソじゃない方の登場。感想、評価などお待ちしております。他にも、自らのARKでいい意味でも悪い意味でも思い出に残ったこと、辛かったこと、楽しかったことなどがあれば教えてくれると幸いです。
因みにこのディメトロドン達は本当に数だけ揃えてあり、下は25、上は48レベルまでの低レベルしかいません。
サバイバーのステータス。マインドワイプトニックで変化できるので常にこれではない。
体力 400(30)
スタミナ 420(32)
酸素 100(0)
食料 100(0)
水分 100(0)
重量 600(60)
近接 275(35)
速度 130(20)
忍耐 104(2)
作製 200(10)
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日常
あと、説明不足な部分が見受けられたので補足です。
エリス様のいるあそこはオベリスク代わりであり、サバイバーがアイテムや生物を送るとあそこで保管されます。
あっ…(ギガノトサウルス
ディメトロドン達の試験的な運用の決まった日、私が引き籠もっている間の出来事をいくつか聞くことが出来た。
なんでも、この周辺に上級悪魔とやらが出現したらしく、その悪魔は魔剣の勇者とかいう人物をも降した強さだったのだとか。結局、その悪魔はついこの前アークウィザードの少女によって倒されたらしいのだが、どうも大変だったようだ。
あなたもいればよかったのに…。と言われたが、私だってその場にいたかった。悪魔とやらはどれも姿が大きく違うし、上級ともなると出会う機会も少ない。折角の剥製チャンスを逃してしまったのはかなり無念なのだ。
それに、この世界のアイテムを使うと品質が向上するものも多いので、その点も消えてしまったということが惜しい。またリスポーンしないだろうか。
その悪魔を討伐したという魔法、『爆裂魔法』にあなたはとても興味が惹かれていた。パワーレベリングにより炸裂魔法、及び爆発魔法は取得しているが(低い魔力ステータスと補正のない冒険者ということもあり本来の威力はない)、その上があるとは初めて聞いたのだ。
弾薬の節約、整地や雑魚処理に使っていた魔法だが、爆裂魔法は全てにおいて上回っているとのこと。
ポイントはまだまだ余っているのでいつか出会うことがあったらご教授願いたいものだ。
そう呟くあなたに受付嬢は微妙な顔を隠そうともしない。曰く、性格に少し難があるらしいが……ロックウェルよりはマシだろう。…というよりアイツ元人間のくせに魔物や魔法などがあるこの世界のものより強かった。多分魔王とやらより強いんじゃないだろうか。ジェネシスの件は許さないからな。
思考が明後日の方向に飛びかけ、それが自宅の農園にまで及びかけたその時、あなたは重要なことを思い出した。
「あの、依頼は受けないんですか?」
すまないが、用事があったことをすっかり忘れていた。今日は
「はい、ではまたのお越しをお待ちしています」
受付嬢に見送られながら、あなたはギルドを後にした。一度拠点へと帰宅し、足を向けるのは人通りの多い主街区から少し逸れた路地にある店だ。
さて、2ヶ月余り放置していた形になるが、相手は怒ってはいないだろうか。場合によってはブリ済のアイスワイバーンを差し出さなければいけないかもしれない。いや、彼女と相性がいいフェンリルやマナガルム、雪フクロウなどの可能性もあるか。何れにせよ、落とし前はつけるつもりだ。
いざ頼もう!
あなたは『ウィズ魔導具店』と書かれた店の門戸を叩いた。
………。反応はない。
ガチャガチャと扉を開けしめして存在を主張するも、何かのアクションを起こす素振りすらない。
…もしやこれはガチギレというやつじゃないだろうか。
しかし、それにビビっていては余計に怒らせるだけだ。あなたも一端のサバイバーならば覚悟を決めろ。恐る恐る扉をくぐり、ポーションや巻物などが陳列された店内に入る。
しかし、それでも何の音も聞こえない。おや? とあなたは疑問に思う。
ここの店主はロクに外出しないはずなのだが……。何か用事でもあったのだろうか。
そうして店内をうろうろと益体もなく彷徨っていると、奥の扉が弱々しく開け放たれる。
いたのか。とそちらに視線を向けるが、そこに臨んだ人物の姿はない。ぐるっとカウンターを周ると、這いつくばった状態で進む女性の姿が。
その緩慢な動きは並のことではない。まさか襲撃でもかけられたのだろうか。とにかく救助しなければと近寄れば、蚊の鳴くような声で彼女はこう言った。
「…た、食べ物を…。お腹に貯まる、固形の食べ物をください………」
心配して損した。
――――…
「ふっ…ふぐっ、ありがとうございます【サバイバー】さん…。あなたがいない間、パンの耳で凌いでいたんですが…、それも一ヶ月くらいしか保たず、それからはずっと砂糖水しか食べていなくて……」
涙ぐみながらあなたの持ってきた食料を口に含む女性。この女性こそがこの魔導具店の店主。ウィズだ。
知り合ったのはとりあえずこの世界の道具を手当たり次第に漁っていたころに立ち寄った店の一つであり、その独特なセンスと見事なまでの見識により駆け出しの街では買うものがいないほどの高価で強力なアイテムか、使い所の分からない珍品ばかりが並ぶこの店を面白がったのがきっかけだ。
その致命的なまでの商才から繁盛、それどころかまともに買い物を行う客をあなたは一度とて見たことがない。
それらの理由により、食料をあなたが援助していたのだが、エリス教会オベリスク事件や拠点改装などによりすっかり忘れていたのだ。
その結果は今しがたウィズが語ったように、筆舌に尽くしがたい。……今度から餌箱を設置しようか。あれなら特に物資も使わず4倍の食料値と大量のえさ…食料を入れておける。
いや、曲がりなりにも友人なのだ。流石にそんなことは……するな。いや、むしろあなたが食料保存庫すら満足に扱えないころにはかなりお世話になった思い出がある。じゃあいいか。
まあそれは最終手段として取っておこう。というか、何故ウィズは自分で食料を取りに行かないのだろう。冒険者ではあるのだからジャイアントトードをサクッと殺して肉を焼けばいいだけだろうに。
「いえ、その…。私は既に引退した身ですので…。稼ぎ元のジャイアントトードを倒してしまっては今の冒険者の方々の生活に差し支えると思いまして…」
成程。初心者エリアを高レベルが乱獲しまくる図になるのか。確かにそれは頂けないが、それであのような状況になるくらいなら非難を覚悟でやったほうが遥かにマシだろう。
「でも私はリッチーですから本来食事の必要はなく…」
この話のとおり、ウィズは人間ではない。いや、人間ではなくなった、というのが正しいか。
元は高名な魔法使いだったらしいが、ある時を境にアンデッドの王とも呼ばれるリッチーへと身を貶した。本人は然程気にしていないのが幸いだろうか。
この話をあなたに打ち明けた時は色々とあったが、
話が逸れたが、友人であり面白い品を掘り出してくる彼女が困っているのを見過ごせないというのは変ではあるまい。
だから定期的に食料を供給しており、悪いという彼女には入用の際に手伝いを頼むということで落ち着いたのだ。
まあ、それを2ヶ月すっぽかしてしまっていたわけだが。ごめんなさい。お詫びといってはなんだが、何か要求はあるだろうか。
「そんな、お詫びだなんて」
いやいや、こういったものほどハッキリしなければ後々の関係に罅が生じるのだ。大体の事はいいぞ。
「そういうことでしたら…。そうですね。でしたら今度マナタイト採掘にご同行させて欲しいですね」
マナタイトとはこの世界にある希少な鉱石の一つで、魔力や魔法の効果を高めると言われている結晶だ。結晶の大小や品質の高低こそあれど、こちらでは高額であり、相応の性能を備えてい る。
あなたは勿論最高品質の品を数多く有している。現物では駄目なのだろうか。
「1ウィザードとしても、魔導具店を営む者としても、高品質のマナタイトを採掘できる場があると聞けば興味も湧きますよ」
そういうものだろうか。魔力の恩恵を受けづらい我が身からするとちょっとした便利アイテム止まりなのだが…。プロフェッショナルたるウィズの言だ。いつか機を見て売りに出すのも一興か。
ともかく、了承した。日時はそちらの空いている日で構わない。ピッケルなどはこちらが貸そうか?
「あ、それならここしばらくは空いているので大丈夫です。ピッケルは自前のがありますのでお気遣いなく」
ここしばらく? いつもの間違いではないだろうか。どうせ今日もあなた以外の客などいないのだろう。
まあ、いい。それらは後で確認するとして、何か商品でも買っていくとしよう。
「それならこちらのスタッフなんかはどうでしょう? こちらの品はなんとプリースト以外でもヒールの魔法を扱えるようになる素晴らしいアイテムなんです!」
……なんか前にも聞いたような効果だ。一見有用そうに聞こえるが、この友人のそちらの面は全く信用していないので話半分に尋ねる。
どうせそのスタッフはプリースト以外には使えない上、魔力消費量も本来より多くなるとか、そういう代物だろう?
「……! すごいです! まさにそれを今から言おうとしてたところです。目利きですね…!」
これを目利きとか言ってるこいつは馬鹿なんじゃないだろうか。
目を輝かせる彼女に心底呆れた目、具体的には勝手にトラップに嵌まったアルゲンを見る目を向け、「買いますか?」とほざくウィズを無視していつもの爆発ポーション一式を買っていった。
「お、久しぶりだな冒険者の兄ちゃん! 見てくれ、アンタに作ってもらった肥料のお陰でウチの野菜がこんなに立派に育ったんだよ!」
「おう、この前鉄鍛冶手伝ってくれてありがとうよ!」
「我が家の改装の件はありがとう。おかげで住み心地がずっと増したよ」
「おいおいアンタまた何か建てたのか? おれら大工が職を失っちまうよ!!」
街ゆくあなたに市民からの声が届けられる。街の景観などを観察している際に困っている人を助け、そこからズルズルと何でも屋のようになっている。おかげで色々と助かる部分もあるから、これが人と人との繋がりというやつだろう。
「なあ兄ちゃん、いい値でネロイド買ってくれるって聞いたんだけどー!」
ネロイドとは、この世界に存在する小型の生物で、まるで炭酸のようなしゅわしゅわとした飲み心地と何か鳴くジョッキに入った不思議生物だ。
この少年がその噂を聞きつけたのも、私がブリーフィング用にネロイドを買い漁っていたからだろう。残念だが、既にその期間は過ぎているのだ。そうケチでもないし、買ってあげよう。
「この中に入れてんだ。ほら、ちょっと色が違うけどちゃんとネロイドだぜ」
使い古して草臥れたカバンから現れたのは―――
Rクリムゾンネロイド
いい値で買おう(クソデカボイス)
次から色々とやろうかな…
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