転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます。 (青メッシュ)
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住人名簿
魔国連邦(テンペスト)住人名簿


最近、キャラ紹介が欲しいという感想が多いので現時点での設定をあげておきます


ネコリア=テンペスト

 

種族:猫又→妖魔猫魈

 

容姿(人間時)

毛先の一部が薄桃色の黒髪ストレートロング、褐色肌、金色の瞳

 

姿(猫)

薄桃色の前髪、体毛は黒毛、金色の瞳

 

服装(人間時)

薄桃色のファーコート、黒いチューブブラ、黒いスパッツ、黒いオープンフィンガーグローブ、薄桃色の腰巻き、サンダル

 

外見年齢:12

 

推定年齢:300

 

ジュラ・テンペスト魔国連邦最高幹部兼軍事司令部参謀長。見た目は猫に酷似した外見をしているが特に性別は存在せず、その愛くるしさは正に魔性と呼ぶに相応しい。愛称は「ネコ」又は「ネコちゃん」。一人称は「あたし」

猫を彷彿とさせる身軽さ、小悪魔的な交渉術、転生前に培った様々な経験の三つを活用しながらリムルを手助けしている

その一方で、騒ぎの中心に居たかと思えば、傍観していたりとかなりの自由奔放さを持つ。自分の可愛さに絶対的な自信を持つ自意識過剰な一面もあるが、その可愛さは誰もが理解している

物語当初は猫の姿で生活していたが、仙術の「仙法・変幻」を会得してからは人間体に変化可能となった。人間体は毛先の一部が薄桃色の黒髪ストレートロングに、褐色肌と金色の瞳の美少女。彼女本人は「あたしが可愛いのは当たり前」と思っている為に猫の姿、人間体の両方を気に入っている

リムルの思考を先読みしては「エッチね」、彼の代名詞である「悪いスライムじゃないよ!」を「でも、エッチなスライムよね」と被せたりするがその度に「エッチじゃないやい!」と突っ込まれる

普段は一歩退いた位置から見守っているがリムル同様に配下の魔物たちを家族のように思っており、自分の仲間を傷つける者には容赦しない非情さを垣間見せることもある

転生前の姿は異世界の人間(日本人)である穂川亜結という二十代後半(年齢不詳)のフリーター。色々な職を転々とし、やりたい事を探していたが溺れていた子供を助ける為にカナヅチにも関わらず、飛び込んだ。子供を助ける事には成功したが彼女自身は間に合わず、死亡

事切れる寸前に「次に生まれる時は何者にもに縛られず、自由に生きたい」と願い、猫耳と鍵尻尾を持つ猫又へ転生した。普段は黒猫の姿であるが人前に出る時、戦闘時には人化する

転生後はジュラの大森林の洞窟を根城に生活し、姿や種族は違うが暴風竜ヴェルドラと出会い、彼と三百年の時を過ごし、「ネコ」と呼ばれていた。その友情は深く互いに「親友」と思っている

転生から三百年後、一匹のスライム(リムル)と出会い、会話の流れで無限牢獄を破る為の提案を受け入れたヴェルドラから、「ネコリア」の名を与えられ、再会を約束し、笑顔で別れた

配下にゴブリナのスイヒョウ(水氷)、嵐狼女(テンペストウルフェア)のエンカ(炎火)、ドワーフのカイリン、鬼人のライメイ(雷鳴)、龍人族のソウカ(蒼華)、フウ(風)とクウ(空)を始めとした女性中心の部隊を持つ。その他にガビルの部隊とベスターを始めとした洞窟組の管理も兼任している

 

猫又→ 妖魔猫魈

 

死亡時に来世があるなら、自由に生きることの出来る存在に生まれ変わりたいと考えていた為に「何者にも縛られない」存在の黒猫の妖怪・猫又へ転生。自由、潜伏、仙術の三つの固有スキルを保有する

 

彷徨者(サマヨウモノ)

 

ネコリア所有のユニークスキル

精神干渉系スキルの影響を無効化し、逆に相手を自らの支配下に置くことが可能なスキル

相手が自分よりも高位の存在であったとしてもこのスキルを無効化は不可能

 

 

 

 

 

スイヒョウ(水氷)

 

種族:ゴブリン→ゴブリナ

 

容姿

毛先の一部が水色の編み込み銀髪、水色の瞳

 

服装

水色のコート、薄紫色のチューブブラ、水色のロングスカート、ブーツ

 

ジュラ・テンペスト魔国連邦軍事司令部書記官。元はゴブリンであったがネコリアに名を与えられ、ゴブリナへ進化し、貴賓と美しさを兼ね備えた才色兼備の美女となる

ネコリアの配下の中ではエンカと並ぶ古参。誰よりも彼女を崇拝し、彼女に与えられた名を誇りに思っている。普段は礼儀正しく、仕事の出来る有能さを思わせる雰囲気を感じるが主のネコリアを貶す輩には容姿しない一面も持ち合わせている

エンカ、カイリン、ライメイを始めとした同僚たちとは常に誰がネコリアからの寵愛を受けるかで喧嘩をしているが互いに認め合い、切磋琢磨するライバルとも呼べる存在で嫌っている訳ではない

戦闘では仙術と格闘技を駆使した繊細でしなやかな動きを得意とする

 

 

 

エンカ(炎火)

 

種族:牙狼族→嵐狼女(テンペストウルフェア)

 

容姿(人間時)

赤髪ショートカット、金色の瞳

 

姿(狼)

赤みを帯びた黒毛、金色の瞳

 

服装(人間時)

赤いカーディガン、白のチューブブラ、赤いミニスカート、サンダル

 

ジュラ・テンペスト魔国連邦軍事司令部護衛官。元は牙狼族の姫であり、ランガの妹にあたる。ネコリアに名を与えられ、嵐狼女(テンペストウルフェア)へ進化し、好奇心旺盛で天真爛漫な美少女となる

《擬人化》のスキルを得た事で人間と狼の姿の両方の姿を持ち、自在に姿を変えられる

考えるのが苦手で、難しい話には首を傾げたりもするがネコリアを守るという想いは誰にも負けない自信があり、護衛官の役割に誇りを持つ

ネコリアの配下の中ではスイヒョウと並ぶ古参。誰よりも彼女に懐き、妹の様に可愛がられている。「わふっ!」が口癖で、その用途は返事から驚きなどを始めとした様々な使い道が存在する

スイヒョウ、カイリン、ライメイを始めとした同僚たちとは常に誰がネコリアからの寵愛を受けるかで喧嘩をしているが互いに認め合い、切磋琢磨するライバルとも呼べる存在で嫌っている訳ではない

戦闘では仙術とスピードを駆使した素早い動きを得意とし、兄のランガとのコンビネーションなども得意である

 

 

 

 

ライメイ(雷鳴)

 

種族:大鬼族→鬼人

 

容姿

金髪セミロング、黄色の瞳

 

服装

黄色の羽織、白いサラシ、白いボトムス、下駄

 

ジュラ・テンペスト魔国連邦軍事司令部戦闘総長。元は大鬼族の家臣で、シオンの姉にあたる。ネコリアの配下となり、名を与えられ、鬼人族へ進化を果たし、黄色の瞳に虎目石のような一本角が生え、金色の髪をセミロングにしたスレンダーな体型の巨乳美女となる

落ち着いた雰囲気を感じさせるが、何でも力づくで解決したがる悪癖と畑作りが趣味という変わった一面を持つ

スイヒョウ、エンカ、カイリンを始めとした同僚たちとは常に誰がネコリアからの寵愛を受けるかで喧嘩をしているが互いに認め合い、切磋琢磨するライバルとも呼べる存在で嫌っている訳ではない

戦闘では仙術と怪力を駆使したシンプルな動きを得意とし、妹のシオンとのコンビネーションも抜群である

 

 

 

 

カイリン

 

種族:ドワーフ

 

容姿

茶髪ポニーテール、茶色の肌、黒い瞳

 

服装

ゴーグル、着崩した茶色のツナギ、黒いチューブブラ、黒いブーツ

 

ジュラ・テンペスト魔国連邦軍事司令部専属職人。鍛治職人のカイジンの娘で、荒々しい口調が特徴的な美少女。元はドワルゴン国で父達と鍛冶屋を営んでいたが、ネコリアとの出会いで彼女の役に立ちたいと思い、配下となる

スイヒョウ、エンカ、ライメイを始めとした同僚たちとは常に誰がネコリアからの寵愛を受けるかで喧嘩をしているが互いに認め合い、切磋琢磨するライバルとも呼べる存在で嫌っている訳ではない

父譲りの鍛治能力は高く、ネコリアの配下に属する者たちの装備と武器は彼女の担当である。戦闘スキルも高く、仙術とパワーを生かした豪快な立ち回りを見せる

 

 

 

フウ(風)

 

種族:蜥蜴人族→龍人族

 

容姿

毛先が緑色の黒髪アップバングヘア、緑色の瞳

 

服装

緑色のベスト、黒いチューブトップ、黒いスパッツ、黒いショートブーツ

 

ジュラ・テンペスト魔国連邦軍事司令部戦闘部隊長。元はリザードマン族の姫君で、ガビルとソウカの妹にあたり、クウは双子の妹。ネコリアの配下となり、名を与えられ、龍人族へ進化を果たし、人間寄りの姿に進化する

勝ち気で好奇心旺盛なやんちゃ娘。常に妹のクウと行動を共にしており、遊ぶことが大好きで、ガビルとソウカは勿論ながら、ネコリアとリムル等も遊び相手と認識している

戦闘では仙術とスピードを駆使した素早い動きを得意とする

 

 

 

 

クウ(空)

 

種族:蜥蜴人族→龍人族

 

容姿

毛先が緑色の黒髪ショートポニー、緑色の瞳

 

服装

緑色のジャケット、白いチューブトップ、白いスパッツ、白いショートブーツ

 

ジュラ・テンペスト魔国連邦軍事司令部戦闘部隊長。元はリザードマン族の姫君で、ガビルとソウカの妹にあたり、フウは双子の姉。ネコリアの配下となり、名を与えられ、龍人族へ進化を果たし、人間寄りの姿に進化する

物静かで何を考えているかを悟りにくい。常に姉のフウと行動を共にしており、遊ぶことが大好きで、ガビルとソウカは勿論ながら、ネコリアとリムル等も遊び相手と認識している

戦闘では仙術とスピードを駆使した素早い動きを得意とする

 

 

 

 




現時点での設定はこういう感じですが、絵に関しては作者自身の画力が乏しい為に描くことは不可能です。誰か上手い人いないかなぁ…………


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特別編
バレンタイン特別編 料理教室を開いたけど、最初から匙を投げたくなっちゃった


今回のネコちゃんは、バレンタイン特別編!ネコちゃんからチョコをもらいたい方は集まれ〜

ネコリア「はい、作者ちゃんにもあげるわね」

わーい!ありがと----…………

ネコリア「あら、シオンちゃんのチョコと間違えちゃった♪」←確信犯


「んにゃぁ〜………にゃんて?スイちゃん」

 

今日も今日とて、何時ものように目を覚ましたネコリア。ぴこぴこと耳を動かし、ふりふりと揺れる鍵尻尾は彼女の魅力を最大限に演出している

 

「御寛ぎの所を申し訳ありませんわ、ネコリア様。今日は料理教室の予定が入っております」

 

「料理教室………あー、にゃんかそんな約束をした様な気もするわね……分かったわ」

 

記憶を掘り起こし、うろ覚えながらも一度は口に出した事を取り消すのは流石に参謀長の立場的にも宜しくない。故に乗り気では無いが、体を起こし、手慣れた動作で《変幻》を使用し、人型になり、衣服に袖を通す

 

「で?今日は何を作る予定なの?」

 

「チョコレートですわ。バレンタイン?とかいう宴が近いとかで」

 

「バレンタイン……あー、そんな時期か。ていうか……どっから仕入れたのよ」

 

「リムル様ですわ」

 

「うん、予想はしてわ」

 

魔国連邦(テンペスト)、そもそも異世界であるこの世界に存在するかも疑わしい行事をスイヒョウが口にした理由を問い掛けながらも、其れがリムルが原因にある事は理解していたが故に、ネコリアの顔に苦笑が浮かぶ

 

「ネコリア様!お待ちしておりました!」

 

「ネコリア様!今日はよろしくお願いするわっ!」

 

「チョコレート!よく分からないがウマーな物は大歓迎だぞっ!わーっはっはっはっ!!!」

 

「おぉ〜、ネコリアさま〜……先にいただいてるぜぇ〜」

 

「あっ!ネコリア!こいつらをどうにかしてっ!アタシだけの手には負えな-----ぎゃぁぁぁぁ!!!」

 

皿の上で雄叫びをあげる暗黒物質を手にしたシオン、仁王立ちするステラ、趣旨自体を理解していないミリム、蒸留酒を飲むスフィアという生徒であるかも疑わしい面々に手を拱いていたラミリスがネコリアに駆け寄る。すると彼女は即座に懐から取り出した殺虫剤を吹きかけた

 

「なんなのよっ!?今なんでアタシに殺虫剤を吹きかけたのよさっ!」

 

「にゃんかムカついた♪」

 

「自由気ままにもほどがあるわっ!」

 

「生野菜にチョコを掛ければよくないか?」

 

「姉上は黙っててください」

 

暴論に走るライメイを睨み、シオンは呆れた様に言い放つ。しかしながら、ライメイも負けてはいない

 

「ふっ…妹よ。生野菜に勝る料理など、ネコリア様の料理以外に存在しないぞ」

 

「やれやれ、姉上は知らない様ですから教えておきますが…料理は愛情なんです!あとシオンです」

 

「それよりもまだなのか?私はお腹が空いたのだ!」

 

「ミリムちゃん。リムちゃんが蜂蜜をくれるみたいよ」

 

「なにっ!蜂蜜か!よーしっ!行ってくるのだっ!」

 

蜂蜜と聞いた瞬間、ミリムは調理場を一瞬で飛び出していく。厄介払いを済ませ、スフィアから蒸留酒を取り上げ、「こほん…」と軽く咳払いをした

 

「チョコレートの作り方を教えるわ。先ずは湯煎のやり方だけど、温めたボウルにチョコを入れて、溶かしていく。こんな感じに……さっ、百聞は一見にしかずよ。やってみなさい」

 

ネコリアの指示の下、工程を進めていく一同。湯煎、テンパリング、型への流し込み、冷蔵庫での凝固、全ての工程を終了させ、ネコリアは一息つく

 

「とまあ、以上の工程がチョコ作りの基本よ。にしても……思いもよらなかったわね……人間から猫又に転生しただけでも驚きなのに……この姿になってまで、チョコ作りする事になるなんて……人生?いや、猫生もわかんにゃいもんねぇ…」

 

「そう言えば、ネコリア様は何方に差し上げるんですの?やはりリムル様ですか?」

 

「……秘密♪」

 

「「「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」」」

 

「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるスイヒョウ、ライメイ、偶然にも調理場近くを通りかかったエンカ、カイリン、ソウカは目をハートにしながら悶える

 

「あっ!アタシのチョコにハエが!」

 

「あら、仲間?」

 

「アタシはハエじゃないわよっ!?」

 

「美味い!酒とチョコがこんなに合うなんて!大発見だぜっ!」

 

「フォスとネムにも食べさせなきゃだわ!」

 

自分のチョコにハエが入っていると騒ぐラミリスにネコリアがさらりと暴言を吐くと、彼女は即座に突っ込みを放つ。その隣ではチョコと酒の合わせ具合にスフィアが歓喜の声を挙げ、ステラは親友たちの元に走り出す

 

「わふ?チョコは食べれるのか?アタイ、食べたことないぞ?」

 

「エンカにはウチがケーキを焼いてやるよ」

 

「エンカ。後で串焼きを買ってあげますよ」

 

「わふっ!いいのかっ!?カイリンとソウカは優しいな〜!」

 

チョコに興味を持つエンカ、彼女が口にしては何らかの異常が起きると危惧したカイリンとソウカが別の食べ物を提示すると一瞬でチョコからケーキと串焼きにエンカの興味は移った

 

(まぁ………本当に贈りたい相手に再会出来るのは、まだまだ先かしらね……。早く戻ってきなさいよね、バーカ)

 

待ち人ならぬ待ちドラゴンに再会できる日を願い、ネコリアはチョコを口に運ぶ。これは魔国連邦(テンペスト)のありふれた日常の一日の風景(転ネコ日記より:著者:ネコリア=テンペスト)



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お気に入り600件突破記念 水着で一日を過ごす為に、避暑地にやってきた

今回の見所!ネコちゃんたちの水着を御披露目!ちなみに水着については書いてませんので、個人的な主観で御想像ください!以上!

ネコリア「迷うわね………やっぱりビキニかしら……いや、こっちのスク水も捨てがたいわね……いっそのこと、貝殻?作者ちゃんはどれが良い?」

………………(どくどく)←鼻血で戦闘不能


「青い空!白い砂浜!今日は遊ぶぞーーっ!!」

 

ある日のジュラの森。猛暑を忘れる為に、湖へと足を運んだリムルたちは水着に着替え、力一杯遊ぶ事を宣言する。然し、この場に乗り気ではない者が約一名だけ存在した

 

「んにゃぁ〜………にゃんで泳ぎに来なきゃいけないのよ……水風呂にでも浸かれば、其れで良いじゃにゃい……」

 

その者とは意外にも、何よりも楽しみを優先する自由に生きる事を信条としているネコリア。文句を口にする彼女の表情には代名詞とも呼べる魔性の笑みは無く、何時もはふりふりと揺れている筈の鍵尻尾も彼女の気持ちを代弁する様に下に下がっている

 

「どうしたんだ?ネコちゃん。何時もなら、可愛いあたしの水着姿を見れる事を光栄に思いなさい!にゃーっはっはっはっ!とか言ってるのに、今日はテンションが低いな」

 

「忘れたの?あたしは泳げないのよ……転生前に死んだのも、溺死ってくらいに致命的なまでなカナヅチなのよ……だから昔からプールの授業とか、海水浴の誘いは頑なに拒否してきたのに………にゃんで来ちゃったのかしら……」

 

重いため息を吐く彼女は相棒からの問いに対し、遠い目をしながら答えを返す。自分が泳げない事を一瞬でも忘れ、避暑地探しに同行した事を後悔している様子であるが、正に後悔先に立たずを体言しているのは火を見るよりも明らかである

 

「ネコリア様とお出かけ!私……感動の余りに色々と止まりませんわ……」

 

「わふっ!アタイの水着はどうだ?アニサマ!」

 

「うむ、似合っているぞ。我が妹よ」

 

「姉上!どうです!この水着は!」

 

「防御力が低そうだな、特に腹部がガラ空きではないか。武人ならば何時如何なる時もそれ相応の格好をするのが基本だ。弛んでいるな、妹よ」

 

「頭の中身が常に弛んでいる姉上にだけは言われたくありません。それに私は武人ではなくリムル様の秘書!故に姉上みたいな力だけが取り柄の畑馬鹿と同じにしないでいただきたい!あとシオンです」

 

「アネキの水着姿……!そうか………今日でウチは死ぬんだな………」

 

「大丈夫ですか!?カイリンさん!」

 

「ネコ様。可愛い」

 

「フウ。ネコちゃん様が可愛いのは当たり前」

 

「知ってる」

 

乗り気ではないネコリアを他所に盛り上がるスイヒョウたち。一方でシオンとシュナはリムルの水着姿に不満があるらしく、女物の水着を手に意義を申し立てている

 

「皆の水着はガルム氏とドルド氏が丹精を込めて作ってくれたんですよっ!?それはもう、ねちっこく説明してくれました」

 

「職人の鏡っすね」

 

「……あのオッサン共は……」

 

「すまねぇ、ダンナ。あとでシバいとく」

 

シオンから、水着を仕立てたガルムとドルドの事を聞き、ゴブタは褒め称えるが、リムルは呆れた様に溜め息を吐き、カイリンは身内が招いた案件を正す為に彼等に制裁を与える事を誓う

 

「では!間を取って、シオンさんが着るってのはどうっスか!?」

 

「え?」

 

「いやシオンだと色々とはみ出すからダメだろ」

 

「おっぱいのない人は黙ってて下さいっす!!!」

 

じりじりと詰め寄りながらも目を血走せたゴブタが放った一言はリムルとシオンの怒りを買い、彼に蹴りと拳が叩き込まれ、地平線の彼方に沈んだ

 

「とてもお似合いですわ。やはり、ネコリア様は何を御召しになっても愛らしいです!」

 

「ん〜……普段の服が水着とあんまり変わらないから、新鮮味がにゃいわねぇ……」

 

「だったら、他の水着も試してみるか?こっちのパレオ付きのとかがお勧めだぜ?」

 

「あら、良いわね。でもこっちの競泳水着みたいなのヤツも捨てがたいわね」

 

「であれば、こちらのワンピースタイプはいかがですか?可愛いらしくてネコリア様にお似合いになると思いますわ」

 

「ババアが水着姿ではしゃぐとかホラーっすね」

 

水着選びで盛り上がるネコリア、スイヒョウ、カイリン。その間に姿を見せたゴブタが余計な一言を放ち、木の蔓で拘束され、氷の蹴りと岩の拳が叩き込まれ、地平線よりも遥か彼方に沈んだ

 

「姉者は何してる?」

 

「かくれんぼ?」

 

「い…いや…別にかくれんぼとかじゃなく…二人はネコリア様と遊んで来ると良い…。私は護衛だから……それにこの格好は恥ずかしい…

 

「まあ!初々しい!心配することはありませんよ、とてもお似合いです。アナタはしなやかで素敵ですよ」

 

「とーぜん。だってフウの姉者」

 

「そこ…クウたち(・・)の間違い。姉者は綺麗、自信を持つべき……」

 

「そうっすよ、お尻とか綺麗じゃないっスか。フウさんやクウさんと並ぶと魅惑的な桃尻って感じがするっすね、で?三人とも、尻尾はどうしたんす?」

 

着慣れない水着姿に恥じらうソウカを褒めていたフウとクウ、シュナ。そして三度目の正直と言わんばかりにゴブタがソウカの臀部付近で邪な発言を放ち、龍人族(ドラゴニュート)三姉妹の水と風の拳が叩き込まれ、空の彼方に沈んだ

 

「コレ、尻尾が窮屈だぞ。脱いでいいか?」

 

「良いわけないだろう。犬であるお前は知らんかもしれんが服を着るのは知性がある証だ」

 

「わふ?そうなのか?なら、どーしてゴブタは服着てるんだ?バカなのに」

 

「確かに………何故だ?」

 

「むぅ〜!やっぱり脱ぐ〜!」

 

「ダメだと言っているだろうが!相変わらず、人の話を聞かん犬だなっ!?」

 

「なんだとーーっ!やるかっー!」

 

「エンカさん!是非とも手伝わせてくださいっす!」

 

水着が窮屈であると愚痴をこぼすエンカ、彼女が脱ぎたがるのを止めるライメイ。そして、四度目の邪発言を放つゴブタに、炎の頭突きと雷の体当たりが決まり、遂に彼は空の星となった

 

「準備運動終了!さあ!遊ぶっスよー!」

 

「お前……タフだな……」

 

「流石はリムちゃんが名付け親なだけあるわね………エッチなスライムとエッチなゴブリン、正に類は友を呼ぶを体現してるわ」

 

「エッチじゃないやいっ!」

 

「エロくて何が悪いんすか?男なら……エロに生きるのは当たり前っす!ババアには分かんないっすよ!げふぅ!?」

 

準備運動という名のセクハラを終えたゴブタであったが自らの欲望が仇となり、ネコリアに禁句を放った結果、右ストレート(ネコパンチ)が命中した

 

「そーいえば、ハクロウちゃんは水着じゃないのね」

 

「ほっほっほっ。年寄りに冷や水は酷でしてな…今日はのんびりと水面に釣り糸でも垂らそうと思いましてな。ネコリア様も納得の大物を期待しててくだされ」

 

「そう?なら、お願いしちゃおうかしら」

 

刹那、ネコリアとハクロウの背後を一匹の巨大魚が跳ねた。その瞬間、二人の瞳が一気に鋭さを増す

 

「夕食は期待しててくだされ」

 

「抜かるんじゃないわよ」

 

「ネコちゃんは魚の事になると真剣だな」

 

「リムル様。貝殻見つけた、あげる」

 

「クウもあげる……」

 

「お?ありがとな」

 

相棒の真剣さを垣間見るリムルはフウとクウが砂浜で見つけた貝殻を差し出され、小さい二人からの贈り物を受け止る

 

「わふ?スイカ割りってなんだ?」

 

「スイカ割りとはこの棒でスイカを叩き割る遊技だ」

 

「わふ?なんで叩き割るんだ?」

 

スイカ割りを知らず、首を傾げるエンカ。その隣で棒を片手にライメイが解説するが、その楽しさを理解出来ないエンカの疑問は深まる

 

「あのなぁ、ライメイ。語弊のある言い方すんなよ。スイカ割りは集中力が必要な遊びなんだぜ?武人のお前に適任じゃねぇか」

 

「適任………そうか!ならば、私が………ってゴラァ!妹!何をスイカ割りしてるんだぁ!!」

 

「ふふん!スイカ割りは私の役目!何故ならば、スイカは丸く、リムル様の様な形!つまりは私が行なうに相応しい遊技なのです!あとシオンです。そういえば……スイカは何処に?」

 

カイリンからの指摘もあり、やる気を燃やすライメイであったが彼女よりも先にスイカを割り出したシオン。その姿に異議を唱える姉に対し、彼女は意味不明な理由を提示し、割った筈のスイカの行方を探す

 

「……スイカは爆発四散しましたよ」

 

「…………俺ってスイカに似てる?」

 

「そのスイカがエッチなら、似てるんじゃない?」

 

「エッチなスイカってなにっ!?」

 

スイカの行方はまさかの爆発四散、体中が汁まみれになりながらも自分がスイカに似ているという発言を気にしているリムルに脈絡もないネコリアの発言に突っ込みが入る

 

「ネコリア様、ネコリア様」

 

「どうしたの?エンちゃん」

 

パラソルの下で寛いでいたネコリアは自分を呼ぶ声を聞き、側に居たエンカに視線を向ける

 

「海ってしおからいのか?」

 

「そうねぇ〜……感じ方はそれぞれだけど、塩辛いわね。濡れた髪がべとべとしたりもするわ」

 

「へぇ〜、いつかみんなで行きたいんだぞ。リムル様は溶けちゃうかもだけど」

 

「そうね、何時かは行きたいわね。リムちゃんは溶けるかもしれにゃいけど」

 

「……………なぁ、シュナ。スライムって海水だと溶けるのか?」

 

「あっ、はい。スイカにはお塩ですよね」

 

「いやそうじゃなくて!!」

 

スライムが溶けるという意味深な発言にリムルはシュナに問うが、彼女には伝わらなかったらしく、塩を差し出してきた

 

「上手ね。フウちゃんもクウちゃんも」

 

「フウとクウのお家を再現した」

 

「中に父上もいる」

 

「にゃるほど………ガビルに見習わせたいくらいの芸術性ね」

 

「兄上はあれでも割と芸術には定評があるんですよ。名前を得る前はシス湖でも名の知れた芸術家だったくらいですから」

 

「それは初耳ね」

 

「ネコリア様。勝手な行動は困りますね、リムル様を止める立場にある筈の貴女様まで……」

 

「…………にゃんでいるの?トレイニーちゃん」

 

妹であるソウカの語る芸術家時代のガビルに興味を持つネコリア。然し、その背後に現れた第三者ことトレイニーの出現で興味の対象が彼女に切り替わる

 

「忠告に来たのです。例え、どんなに友好的であろうと貴女方は強大なA級越えの魔物………其れが団体でこの様な場所に自覚がないようですね?これは森の管理者としては見過ごせません」

 

彼女の言い分は最もだ、リムルやネコリアを筆頭に湖に訪れたのはランクの中でも容易にA級を超える多種多様の種族。其れは他種族への威圧である。然し、其れとこれとは別、何故ならば、彼女に説得力が感じられないからである

 

「「…………………本音は?」」

 

「私を除け者にしようとしてもダメですよ!」

 

水着姿で遊ぶ気満々なトレイニーからは森の管理者としての威厳は感じられず、ネコリアは先行きを案じ、ため息を吐いた

 

「ハクロウちゃん!上出来よ!バッチグー!」

 

「ほっほっほっ、ご期待に添えて何よりですじゃ」

 

「バッチグーって今日日聞かないぞ……にしても食べ応えありそうな魚だな」

 

陽も落ち、空を満天の星が彩り始めた頃。釣りに出ていたハクロウが巨大魚を手に戻り、大好物を前に上機嫌のネコリアは鍵尻尾をふりふりと揺らす

 

「それでは!私がお料理を!」

 

剛力丸を片手に調理を申し出たシオン。その姿に全員の心が一つになる

 

「シオンさん!綺麗な貝殻を見つけたっす!」

 

「戦いの話とか聞きたいです!」

 

「フウと遊んで」

 

「クウの見つけた綺麗な石あげる」

 

「タッグ技を研究しようではないか!」

 

「わふっ!毛繕いしてほしいんだぞっ!」

 

「シオンさんはサンドアートをご存知で?」

 

「レモンの蜂蜜漬けを食べないかっ!?」

 

「揚げ芋ありますよ」

 

「ほら、シオンちゃん!星が綺麗よ!」

 

「シオン……俺、お前と湖畔を散歩したいな…」

 

(や、やだ……私ってば大人気!?)

 

真意を知らずは本人だけで、何かが始まる前に必死に引き止める姿は正にチームワークとコンビネーション。そして、シュナが手早く用意した夕飯を前に一息をつき、夜も更け始める

 

「よっ、ネコちゃん」

 

一人で夜空を眺めていたネコリアは自分を呼ぶ相棒の声に振り向き、差し出されたグラスを手に取る

 

「終わったの?トレイニーちゃんたちとの酒盛りは」

 

「ん……まぁな。なぁ、ネコちゃんはこの先も笑える明日が来なかったら、どうする?」

 

唐突な問い、その眼に映るのは自分の姿。この問いが何を意味するかは不明だが彼女は代名詞とも呼べる魔性の笑みを見せる

 

「その時は明後日に倍笑うわよ」

 

「ははっ、やっぱりネコちゃんは分かってるな。流石は相棒!」

 

「当たり前よ♪」

 

これはある日の日常。まだ二人が魔王になる前の平和でありふれた日常を綴った日記の一頁である




次回は普通に本編を………暑さで体調崩さない限りの話ですけど………

ネコちゃんの可愛いさにときめいたら、お気に入り登録お願いしまーす。コラボとかも気軽にメッセージ飛ばしてくれたら、反応しまーす


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お気に入り800件突破記念 インタビュー・ウィズ・ネコリア

今回はお気に入り800件突破記念と題しまして、インタビューを題材にした話を書いちゃいました♪然し……まおりゅうの運営が自分を昇天させに掛かってる……だって、ジョーヌが!あの一番の推しが喋って、動くんだよっ!?これが興奮せずにいられるかっ!

ネコリア「あら、作者ちゃんはあたしよりもジョーヌが好きなの?ちょっと妬けるわね。あたしの方が可愛いでしょ?」←ウィンク

………………(どくどく)←鼻血で戦闘不能


「あら、にゃに?あたしにインタビューしたい?別に構わないけど……何を話せばいいの?」

 

自室のソファに寝そべり、惰眠を貪る黒髪の美少女。全てを見通す金色の瞳は彼女の最大の特徴であると同時に魔性の象徴と呼ぶに相応しい。その彼女の前に相対するは一人の兎人族(ラビットマン)の少女である

 

「ネコリア様の昔話を聞かせていただきたいのです。例えば、リムル様と出会う前は如何なる生活をしていたのかなどをお聞かせしていただいても?」

 

「にゃるほど………そうね、何処から話したらいいかしら…」

 

自分の記憶、其れを誰かに聞かせた経験は転生前を含めても皆無。然も、長年の友であると同時に相棒であるリムルと出会うよりも以前の出来事を聞きたいと言われ、口癖を吐きながらも頷いた彼女は頭の中に残る印象的な出来事を想起させ、記憶の扉を開き始める

 

「先ずはあたしが転生してから、少し経った時期に起きた出来事を話しましょうか。あれは二百年前、まだ名無しの猫又だった頃………ヴェルドラと過ごす日常に物足りなさを感じたくらいだったわ。些細なことで喧嘩をしたあたしは洞窟を飛び出し、ある土地に流れ着いたの……」

 

「あ、ある土地……其れは何処なんですか?」

 

意味深に伏せられた土地の名に興味が湧いたらしく、少女はウサ耳をピンッと張り、恐る恐る問いかける

 

魔導王朝サリオン(・・・・・・・・)よ」

 

「サリオン………って!あのサリオンですかっ!?エルフの国で有名な!」

 

この世界に生きる者ならば、誰もが知る大国の名に少女は驚きを隠せない

 

「そうよ、そのサリオン。流れ着いたあたしはエルフを取り纏める高貴な人物に拾われ、当分の生活を約束する対価に仙術を教えてあげることになったの。正直、最初はエルフが仙術を覚えたいなんて話を鵜呑みにしなかったわ。でも……一人のエルフだけは違った。彼は誰よりも、強くなりたいと願い、あたしの欲を掻き立てた………だから、あたしはあの子を弟子とする事で、自分が持つ仙術の基礎から真髄の全てを叩き込んだの。その果てに彼はサリオン十三王家の中でも筆頭と呼ばれる実力者へと成長した……そのエルフこそがエラルド・グリムワルド(・・・・・・・・・・・)、今の魔導王朝サリオンの大公爵よ」

 

「大公爵様が弟子……!?スケールが大き過ぎる………」

 

鳩が豆鉄砲を食ったような表情を見せる少女、厳密には兎なのだが、この場合は突っ込まないでいただきたい

 

「やがて、エラルドが成人を迎える頃、あたしはひっそりと姿を消した。にゃぜかって?強いて言えば、新しい欲を探したくなったからかしらね。まぁ、そう簡単に次の欲が見つかる筈ないから、当てのない放浪を十年は続けた、〝忘れられた竜の都〟に〝神聖法皇国ルベリオス〟なんかにも行ったことがあるわ。ああ、サリオン繋がりで言えば、海を超えた〝黄金郷エルドラド〟なんかも行ったわね。にゃんか、定期的に核撃魔法が放たれてるとかで、見物には丁度良かったわ。その時に出会いと約束(・・・・・・)をしたんだけど……これを話すのはもう少しだけ、待ってもらえる?時が来たら、話してあげるわ」

 

魔性と呼ぶに相応しい笑みを浮かべ、愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らす彼女は当然であるが如何なる絵画にも描けない程に愛らしく、美しい、正に唯一無二である

 

「それからは洞窟に戻って、ヴェルドラと仲直り。後の百年は知っての通り、リムルに出会うまでは何気ない日々を過ごして、運命の日を迎えた………そう、相棒との出会いという運命の日をね」

 

目を閉じれば、今でも鮮明に思い浮かぶ。一匹のスライムとの出会い、其れは彼女の退屈な毎日に訪れた運命の出会い、忘れられない出会い

 

『我が名は暴風竜“ヴェルドラ”。この世界に4体のみ存在する竜種が一体である』

 

『あたしは猫又、名前は未だ無いけど気軽にネコちゃん♪って呼んでね〜♪』

 

『ど、ドラゴンンンンンッ!!?其れに………ネコちゃん?可愛いな、おい』

 

『とーぜんよ♪よろしくね、エッチなスライムくん』

 

『エッチじゃないやいっ!』

 

懐かしい思い出、あの日が、あの出会いがあるからこそ、今の自分が、手に入れた居場所が、大切な家族が、楽しい毎日がある。其れは彼女だけではない、相棒、配下、親友、仲間たちも例外ではない

 

「わふっ!ネコリア様!そろそろ、リムル様との約束の時間だぞっ!」

 

「お待ちなさいな!エンカ!ネコリア様のスケジュール管理は書記官である私の役目!駄犬は大人しく骨を齧ってなさい!」

 

「あぁ?やるなら、相手になるんだぞ?冷血女」

 

「ふふっ……本当にわふわふとうるさい犬ですわね」

 

「「……………やんのかっ!!」」

 

穏やかに見えながらも、一瞬の沈黙の後に胸倉を掴み合うスイヒョウとエンカ。その姿を側から見ていた渦中の人物基ネコリアは立ち上がる

 

「エンカ、それにスイヒョウ…仲良くしなさいって言ってるでしょ。今日はこの辺りで終わりにしてくれる?参謀長が会議に出席しないのは流石にね」

 

側近たちを咎めながら、二人を従えたネコリアは自室から出て行こうとする前に兎人族の少女に語り掛ける

 

「は、はい!貴重な時間をありがとうございました!ネコリア様!」

 

「暇な時には時間をまた作ってあげるわ。それと……聴きそびれてたけど、今日の記事は星いくつかしら?フラメア(・・・・)

 

フラメア(・・・・)、そう呼ばれた少女は自身の名を知ってもらえていた喜びから、顔を上げ、彼女の問いに応えるべく、満遍の笑みを浮かべる

 

「星三つですっ!」

 




実はもう一人の推しを登場させていた事にお気づきですか?次はお気に入り1000件!目指せ!千件突破!頑張るぞォォォォ!

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夏の夜特別編 相棒の思い付きに、国中が盛り上がっちゃった

今回は特別編!真夏日に負けない為にも頑張っていこう!という思いを込めての夏祭り回!ちなみに浴衣については書いてませんので、個人的な主観で御想像ください!以上!

ネコリア「やっぱり、黒いミニスカ浴衣……でもこっちの白い着流しも………作者ちゃんはどっちが好み?」

………………(どくどく)←鼻血で戦闘不能



「んにゃぁ〜…………夏祭りをやりたいだにゃんて……欲張りにも程があるんじゃにゃい?」

 

何時もと変わらぬ時刻、目を覚ましたネコリアの耳に届くのは活気に満ちた町を行き交う魔物の声。この活気には理由がある、其れは遡ること一週間前に遡る

 

『この季節にまだ足りないものがある。何かわかるか?』

 

『そうね………はっ!もしかして、ネコリア大感謝祭!?』

 

『そう、日々のネコちゃんの働きに感謝するネコリア大感謝………って!ちがーーーうっ!夏祭りだよ!夏祭り!何を当たり前みたいに意味不明な祭りをでっち上げてんのっ!?』

 

『リムちゃん……感謝の心を忘れた時、思いやりの心は死ぬのよ』

 

『屁理屈を言うんじゃありませんっ!兎に角だ!お前たちには夏祭り基夏の宴の準備を進めてもらいたい。期間は一週間だ、出来るか?』

 

『「「「お任せください!!」」」』

 

そして、流れる様に時間は経過し、目標の一週間。見事に再現された夏祭りの風景にネコリアは相棒の欲深さに呆れ顔を見せる

 

「ネコリア様?いかがなさいました?」

 

「ううん、なんでもにゃい。ちょっとやりたい放題な盟主様に呆れてただけよ」

 

顔を覗き込む様に問いかけるのは、彼女を抱いた書記官のスイヒョウ。頼りになる右腕からの問いに呆れ顔のままで答えを返す

 

「リムル様はユニークな御発想の持ち主でいらっしゃいますものね。この前も、味噌?という調味料を考案なさったらしいですわ」

 

「にゃるほど……だから、フウとクウが味噌片手に走り回る姿を見かけるのね」

 

「味噌は何にでもピッタリ」

 

「……おいしい」

 

ちらっと横目で夏祭りの屋台を準備する双子を見れば、彼女たちの手の中には最近のお気に入りである味噌が入った桶が乗っていた

 

「そろそろ、着付けの時間ですわ。ネコリア様にお似合いになる可愛らしい着物を御用意いたしております」

 

「あら、そうにゃの?」

 

着付けの為に、シュナの織物工房に向かう。着せ替え人形となる事は火を見るよりも明らかであるが自分に似合う着物と聞いた瞬間、テンションが上がったらしく、愛らしい鍵尻尾が左右にふりふりと揺れる

 

「ネコちゃんも来たのか」

 

織物工房に足を踏み入れた瞬間、飛び込んできたのは目を疑う光景。男性である筈のリムルが女性物の浴衣に袖を通した姿だった

 

「………………リムちゃん。やっぱり、其方の趣味があったのね」

 

「ん?其方…………違う!違う!これは着せられたんだ!」

 

「大丈夫よ、安心しにゃさい。最近ではそういう趣味も受け入れられてるのよ」

 

「違うと言っとろうが!!」

 

有無を言わせる隙も与えずに放たれる相棒の理解ある発言にリムルは突っ込みを放つ

 

「にしても……メイちゃんとシオンちゃんが着ると新鮮味があるわね。何というか、楚々?として見えるわ」

 

「お褒めの言葉はありがたいのですが………どうも、着慣れない服は苦手です。これではいざという時にネコリア様を御守り出来ません!!そうであろう?妹よ」

 

「姉上の言う通りです!胸にサラシをギュウギュウ巻かれて窮屈です!あとシオンです」

 

「うふふ………知っていますか?大きなお胸は着付けに邪魔なんです」

 

「そうね……胸なんてのは脂肪の塊よ」

 

(…………なんだろう、殺気にも似た邪悪さを感じる……)

 

シュナとネコリアは笑っているかの様に見えたが、瞳の奥からは黒さが感じられ、リムルは心の奥で人知れず思う。然し、彼の心中を見透かした彼女だけはじろりと睨む

 

「にゃに?その眼は」

 

「い、いや………ナンデモアリマセン」

 

此れ以上の踏み込みは地雷を踏み兼ねないと確信し、片言で答えを返した

今回の夏祭りはリムルの思いつきとネコリアの知識から可能な限りまでの再現を行うことを目標としていた。だが、配下たちの頑張りのお陰もあり、完璧な夏祭り会場が再現されていた

 

「ふぅん……情報だけで、よくもまぁ再現出来たわね」

 

「はっはっはっ、ネコリア様にはダメ出しを喰らってばかりでしたが今回は御満足いただけた様ですな」

 

「そりゃあ、ここまでの再現をされたらね。ダメ出しする理由がないわよ」

 

立ち並ぶ屋台、盆踊り会場の櫓と舞台、締めに打ち上げられ花火の準備。事前に打ち合わせていた全てが再現された事に満足気に笑うネコリア、その呟きにリグルドが魔国連邦(テンペスト)建国前の村時代にダメ出しをされていた事を持ち出すと、彼女は呆れた様に肩を竦める

 

「あら………ここはなんの屋台?随分と大盛況だけど」

 

「おっ!来たな!ネコちゃん!俺プロデュースのかき氷だ!かき氷機の刃はクロベエ謹製だ」

 

道を歩きながら、立ち並ぶ屋台を見ていたネコリアは一軒の大盛況な屋台の前で足を止める。すると人混みの奥から相棒に呼び掛けられ、屋台前に向かう

 

「ネコリア様も来たべか。今なら、出来たのリムル様味がおすすめだべ」

 

「そうにゃの?じゃあ、それを…………ん?リムル様味?」

 

屋台の中で、かき氷機で水を砕いていたクロベエにおすすめされた味を注文しようとするが、違和感を覚えた

 

「ブルーハワイを再現したつもりだったんだけどな……ホントは………」

 

「そう………で、エンちゃんたちが食べてる味は?にゃんか黒いけど」

 

「黒蜜だな、あれは」

 

「わふっ!ネコリア様の色だぞっ!」

 

「何と神々しい………そして愛らしい御色!正にネコリア様色ですわ!」

 

「美味い!流石はネコリア様味!」

 

「…………………ねぇ?にゃんか聞き慣れない呼び名をされてるんだけど」

 

「わかる……怖いよな……時々だけど」

 

「…………そうね」

 

色が同じであれば、即座に名前が自分と同じ認識される怖さに怯えるリムルにネコリアも同意を示す

 

「ハクロウちゃんとゴブタは金魚すくいなのね」

 

「これはこれはネコリア様にリムル様。なかなかに集中力のいる遊びですな、この金魚すくいというのは」

 

次に目に入ったのは、ハクロウとゴブタがを営む金魚すくい屋。麦わら帽子を被り、如何にも祭りに馴染んだハクロウは優しく笑う

 

「ふっ、どうだ?ネコちゃん。ここは一つ、音速のポイと呼ばれた俺と勝負するか?」

 

「良いわよ?安値で食費を浮かせるにはちょうどいいものね」

 

「そう、安値で…………えっ?金魚を食べるの?」

 

「唐揚げとか竜田揚げがおすすめよ」

 

勝負を持ち掛けたのも束の間、相棒の口から放たれた衝撃発言にリムルは耳を疑い、当の本人は「素揚げも良いわね〜」と言いながら、鍵尻尾をふりふりと揺らしている

 

「ネコ様。金魚の味付けにお味噌がおすすめ」

 

「お味噌はおいしい」

 

金魚片手に涎を垂らすネコリアに呼び掛けたのは向かい側の屋台で味噌を売るフウとクウ、呼び掛けに気付き、足を運ぶ(注意その1:彼女は特殊な訓練を受けています。金魚は食べないでください)

 

「あら、フウちゃんにクウちゃんはお味噌屋さんなのね」

 

「おすすめはライメイがくれたきゅうりにお味噌を塗ったお味噌きゅうり」

 

「リムル様にもあげる」

 

「ありがとな。クウ」

 

差し出された味噌きゅうりを受け取り、リムルが優しく撫でるとクウは満足そうに笑う

 

「そう言えば、ソウカちゃんは?」

 

「姉者はソウエイと一緒」

 

「仲良し」

 

「ほう………先を越されたな?ネコちゃん」

 

「引きちぎるわよ」

 

「なにをっ!?」

 

謎の文句にリムルは突っ込みを入れ、二人は出店を回る。トレイニーのつたくじ屋、ライメイの野菜直売所、スイヒョウの紙芝居屋、エンカのお散歩屋(注意その2:彼女は屋台の趣旨を理解していない)などがあり、粗方の店を回る頃には盆踊り開始時刻になっていた

 

「兄者が踊ってる」

 

「キレキレ」

 

「何をしてるんだ………あの馬鹿兄は……」

 

舞台上で目立つ様に踊るガビルと配下たち、その姿に次女と三女は尊敬の眼差しを向けるが、長女は頭を抱えていた

 

「ネコリア様!リムル様!如何でしたか!我々の踊りは!」

 

「あら、ガビル。こんなとこにいたの?」

 

「良かったなー!皆と踊れて楽しかったよな」

 

渾身の舞いを主人と盟主は見ていないという事実にガビルは肩を落とし、その後は三日間も不貞寝した事は言うまでもない

 

「わふっ!デカいなー!なんだこれー?」

 

「コイツは神輿って言うんだ。上にあるのはアネキとダンナの張り子、ウチの力作だぜ」

 

「みこし?よくわからないけど、カイリンは上手だなー」

 

「これは!ネコリア様の愛らしさを最大限に再現しておりますわね」

 

「確かに。特にこの尻尾が素晴らしい」

 

「私は耳が素敵だと思います。ネコリア様の御耳を忠実に再現してます」

 

「にゃーっはっはっはっ!あたしの可愛さに一才の澱みはないわっ!」

 

「ネコちゃんはホントに自分大好きだなー」

 

夏の夜に配下から自分の神輿を褒められ、気を良くする相棒の姿にリムルはほっこりとした表情で茶を啜る

 

「よっしゃぁ!打ち上げと行こうぜ!オヤジ!クロベエ!」

 

「ド派手に行くか」

 

「んだべ」

 

祭りを締め括る花火を打ち上げる鍛冶師親子とクロベエ、真夏の空を彩る艶やかな火の花に誰もが空を見上げる

 

「そーいや、たまやって叫ぶけどさ。あれって意味とかあるのか?ネコちゃんは知ってる?」

 

「ん〜確か、花火師の屋号じゃなかったかしら。高校時代に図書館で調べた時にそんな感じのことが書いてたわよ」

 

「なるほど………」

 

「…………今、《大賢者》に聞いたでしょ」

 

「ソンナコトナイヨー」

 

じろりと睨む相棒からの言及にリムルは片言で答え、夜空を見上げる

 

「わふ〜…綺麗だな〜」

 

「そうであるな。我が妹よ」

 

「父上にも見えてるかなぁ」

 

「うむ。きっと、見えている」

 

初めて見る花火に瞳を輝かせるエンカ、妹の様子にランガは満足そうに頷き、突然の言葉にも顔色を変えずに返答する

 

(息子に娘よ。ワシの事を思い出してくれておるのか………生前はあんなにもキツく接したというのに………感謝しよう、スライム殿に猫又殿。我が子たちをよろしく頼んだ)

 

「ん………にゃんか、聞こえなかった?今」

 

「えっ?なにが?」

 

「エッチなスライムには聞こえないのよ。多分だけど」

 

「引っ叩くよ?ネコちゃん」

 

帰れないからこその募りゆく懐かしい気持ち。それでも二人は我が儘を通し、今日も往く。笑える明日を目指し、彼等は騒がしくも楽しい毎日を過ごして往く




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夏の夜特別編2 夏が来たら、風流を感じちゃった

今回の見所!ネコちゃんたちの夏の一日を御披露目!以上!

ネコリア「夏って嫌い……」

同感……

リムル「だらしないな。二人は」

ネコリア/青メッシュ「「エッチなスライムはだまらっしゃい」」

リムル「エッチなスライムちゃうわ!!」


「んにゃぁ〜………じめじめした梅雨が終わったと思ったら、今度は連日の真夏日………折角の睡眠時間が削られていく……」

 

ある日のジュラの森。梅雨明けから数日が経ち、連日の真夏日に不貞腐れた様に呟いたネコリア。何時もはふりふりと揺れている筈の鍵尻尾も彼女の気持ちを代弁する様に下に下がっている

 

「ネコリア様。風鈴をカイリンが作ってくれましたわ、これで少しは涼しくなればとの事です」

 

「あら、風流ね〜」

 

風に揺られ、音を鳴らす風鈴。涼し気な音色に耳を澄ませたネコリアはスイヒョウが用意した麦茶を口に運ぶ

 

「ですが、私の記憶では今までにこの様な暑さの夏は初めてですわ……涼しい夏が来てくれても宜しいですのに……」

 

「ふっ………甘いっすね。スイヒョウさん」

 

「あら、ゴブタ」

 

初体験の真夏日に不満を漏らすスイヒョウ。すると当然と言わんばかりに姿を見せたゴブタはキメ顔を向ける

 

「夏は暑いに限るっす!何故なら!薄着をした女の子がたくさん見られるっすからね!」

 

「ホントにエッチなゴブリンね」

 

「我が一族の恥ですわ」

 

「良い?ココブちゃんたちは見習っちゃダメよ?」

 

「ババアは黙っててくださいっす!!」

 

「エンちゃん。二十四時間散歩の時間よ」

 

「わふっ!いくぞっ!ゴブタっ!おさんぽっ!おさんぽっ!」

 

「んまっ!?ちょっ!あぎゃァァァ!!!」

 

反面教師のゴブタを見習わない様に子どもゴブリンたちを言い聞かせるネコリアは悪口を聞き逃さず、指を軽く鳴らすと呼び掛けに応えたエンカが姿を現し、死のお散歩へとゴブタは旅立った

 

「ネコリア様。今し方、ゴブタとすれ違いましたが……何かあったんですか?」

 

「あら、メイちゃん……その引き摺っているのは……」

 

走り去るエンカとゴブタを見たライメイがネコリアに声を掛けた。その呼び掛けに応えた彼女は視界に、見覚えのある紫色の鬼人を捉える

 

「愚妹です。なんでも暑さを乗り切る為に肌着を身に付けていなかったとかで……説教基稽古をしてやろうかと思いまして…」

 

「何がダメなんですか?スースーして快適じゃないですか!姉上もやりましょう!あとシオンです」

 

「馬鹿者!お前には武人としての意識が足りていない!役職を賜っている自覚が無いのか!!」

 

「役職そっちのけで畑を耕しまくっている姉上にだけは言われたくありません!」

 

「夏ね〜」

 

「ですわねー」

 

最早、開き直りの域に達しているシオンと言い合うライメイ。その姿にネコリアは茶を啜り、スイヒョウも風鈴の音に耳を傾ける

 

「ネコリア様!我輩の舞をご覧あれ!暑さなど吹き飛びますぞっ!」

 

「兄上。ネコリア様の御邪魔になるので、さっさと仕事に戻ってください」

 

「ソウカよ!これはネコリア様を讃える為に作った舞であるぞっ!其れを御本人にお見せしないでどうするっ!」

 

涼しさを満喫していたネコリアの前に、暑苦しさの化身と言っても過言ではないガビルが姿を見せ、独自に考案した舞を披露するが、妹のソウカの瞳は冷ややかだ

 

「ネコリア様。無視してくださって構いません」

 

「これの何処にネコリア様を讃える想いがあるのでしょう……」

 

(にゃぜかしら………どう見てもラジオ体操にしか見えないのは…)

 

無視する様に促すソウカ、スイヒョウは舞の意味が理解出来ずに首を傾げ、ネコリアは見覚えのある動きに近視眼を覚えていた

 

「おーい、ネコちゃんたちもスイカ食べるか〜?」

 

「気が効くわね〜」

 

「ん……ゴブタは?」

 

「お散歩♪」

 

「そうか………惜しい奴を亡くしたな」

 

終わりなき旅に出た配下を思い、二人は夏空の下で手を合わせる

 

「そーいやよ、アネキ」

 

「にゃに?リンちゃん」

 

スイカを頬張り、寛ぐネコリア。カイリンに声を掛けられ、口をもごもごと動かしながら、彼女の方を振り向く

 

「ウチが子どもの頃は川で涼んだりとかしたりしたけどよ。アネキやダンナは何をしてたんだ?」

 

「そうねぇ……縁側で寝てたわ」

 

「ネコちゃんは昔も今も変わらないんだなぁ。俺はそうだな………子供の頃は、よく虫捕りしたな!」

 

今と微塵変わらない生活を送っていたネコリアの姿が目に浮かぶ。そして、リムルは隠す素振りも見せずに自然な流れで、虫取りしていたと語る

 

「ダンナが虫を………シュールだな」

 

「虫は好きじゃない。おいしくない……」

 

「クウは好き。虫さんは可愛い」

 

「おぉ!クウは話せるなっ!あとな?フウ、虫は食べちゃ駄目だ」

 

驚きを見せるカイリン、美味しくないから虫は苦手だと告げるフウを他所に意外にもクウは可愛いから好きだと語る。リムルが優しく頭を撫でると彼女は嬉しそうに頬を緩める

 

「ネコちゃんはどうだ?カブトムシとか育てたりしたか?」

 

「仮にも女の子よ?あたしは。まぁ、夏休みの自由研究でシーモンキーを育てたりはしたわね」

 

(なんでかな………時々、ネコちゃんとの間に格差を感じる……)

 

相棒との間に世代と呼ぶ格差を感じたリムル。然し、口にすれば容赦ない一撃を喰らう事を理解している為に心中で密かに想うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わふ?アニサマ!どうしたんだ?」

 

散歩を楽しんでいたエンカは木陰に見つけた兄に近寄っていく

 

「おお、我が妹。少しばかり考え事をしていた。お前は何をしているのだ?」

 

彼女に気付き、答えを返したランガ。鸚鵡返しの如く、妹に問いを投げかける

 

「おさんぽっ!ネコリア様がゴブタとしてこいって!」

 

「ほう。すまぬな、ゴブタ殿。我が妹が迷惑を掛ける」

 

「いやいや、慣れたっすよ。何を隠そう……おいらたちのコンビネーションは抜群っすよ」

 

律儀に頭を下げるランガに対し、ゴブタはキラーンと効果音が鳴りそうなキメ顔を見せる

 

「わふ………スイヒョウはネコリア様を見詰めて何してるんだ?気持ち悪いぞ」

 

一方でエンカは別の木陰に見つけた見覚えのある女性に声を掛ける

 

「ふっ……これだから駄犬は。ネコリア様の仙術修行の御邪魔にならない為に陰からひっそりと見守っているのですわ」

 

「とか言って…どーせ、べたべたと暑くるいしいから近寄るなって言われただけだろ」

 

「ふふっ……わふわふとうるさい犬ですわね。アナタこそ、最近はネコリア様に遠ざけられているくせに」

 

「「……………やんのかっ!!」」

 

穏やかに見えながらも、一瞬の沈黙の後に胸倉を掴み合うスイヒョウとエンカ。その姿を遠目で見ていた渦中の人物は思っていた

 

(別に何も思ってないんだけど………夏ねぇ……)

 

これはある日の日常。まだ二人が魔王になる前の平和でありふれた日常を綴った日記の一頁である

 

 

 




次回は普通に本編を………暑い日々が続きますが皆様も体調にはお気をつけください

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夏の夜特別編3 貴方に会えたから、今がある

今回の見所!ネコちゃんたちには歴史がある!皆さんの知らない彼女たちの歴史が分かるかもしれない夏の日をご覧あれ!以上!

ネコリア「スライムの歴史……服を溶かす生き物……やっぱりエッチな魔物なのね」

わらびもちはこれをモデルに考案されたと昔の偉い人が言ってた気がする

リムル「二人のそういうところが嫌いだ、俺は」


「今って、時期的に言うとお盆休みなのよぇ。というか……この世界にも先祖を祀る風習ってあるの?」

 

「御神体であるヴェルドラを祀ってるくらいだから、あるんじゃないか?多分だけど」

 

夏も後半に差し掛かる時期、リムルの庵で我が物顔で寛ぐネコリアの疑問に家主であるリムルは自身無さげに答えを返す

 

「御神体ねぇ……あのドラゴンを神扱いする神経を疑うわ…」

 

「あー、ネコちゃんは三百年もヴェルドラと暮らしてたんだもんなぁ。俺よりも彼奴の事には詳しいよな?やっぱり、ケンカとかしたりしたんだろ?彼奴、空気読めないとこありそうだし」

 

親友が御神体という形で祀られている状況に、実体を知るが故に呆れた様に笑うネコリアにリムルは興味本位から問いを投げかける

 

「したわねー、長い時は十年くらいは口を効かなかった時期もあったわ」

 

「十年っ!?何がどうなって、そんなにケンカしてたんだっ!?」

 

「色々とあったのよ。まぁ、そのおかげで面白い出会いもあったりしたんだけど」

 

全てを語ろうとはしないが、彼女には彼女也の歴史が存在し、自分の隣に居てくれる事を自覚する。もしも、あの出会いが無ければ、彼女が居なければ、この他愛もない時間も、御約束のやり取りもなかったのだと再認識し、自然と頬が緩む

 

「………………えっ?にゃに?にやにやして……またエッチな事を考えてんの?わらびもちみたいな也してるくせに、相変わらずエッチなスライムね」

 

「エッチじゃないやいっ!あとわらびもちでもないっ!!」

 

夏の昼に木魂するのはリムルの突っ込み。ジュラの森は今日も今日とて賑やかである

 

「わふ………あ、暑いんだぞ……」

 

毛皮で覆われた体故に暑さが弱点とも言えるエンカは木陰で項垂れ、流れる夏の空を見上げ、微睡んでいた

 

「エンカよ。我が主人が心頭滅却すれば火もまた涼しと言っておられた、お前も誇り高き牙狼族の姫君なのだから、如何なる時も強くある事を忘れるな」

 

同様に毛皮で暑さに弱いランガは妹とは裏腹に汗を掻くことも修行と言わんばかりに行儀良く座している

 

「アニサマ……父上に似てきたんだぞ…」

 

「む?そうであるか?ならば、族長としての貫禄も身に付いたという事だな」

 

「…………というか考え方とか小言が似てきて鬱陶しいんだぞ…」

 

(こ、これが反抗期というモノか!!)

 

((娘も複雑な年頃なのだな………精進するのだ、息子よ))

 

小言を鬱陶しそうにするエンカの反応にランガは心の中で、思い当たる現象に行き着く。その様子を亡き先代族長が見守っていた事を二匹は知らない

 

「……………そう言えば、母上と父上が亡くなったのは今時分の季節だったな」

 

「そうなんですか?私は覚えてません」

 

畑を耕していたライメイは、一息を吐くと夏の空を見上げ、物想いに耽る。妹のシオンは茶を啜り、姉の言葉に疑問符を浮かべる

 

「無理もない、お前が物心ついたばかりの頃だからな。今でも偶に懐かしくなる時がある……父上の作った野菜を母上が美味しく調理してくれてな」

 

「それはうっすらと覚えてます。母上の作る炊き込み野菜はすごく美味しかったです!多分!あ、もしかして姉上が畑馬鹿なのもそれが理由だったりするんですか?」

 

朧気に記憶に残る味を思い出すシオンは姉が畑を耕す理由が此処にあったのでは?と思い、問いかける

 

「誰が畑馬鹿だ。そうだな……畑を耕していると近くに二人が居る様に思えるんだ」

 

「姉上………さては寝惚けてますね?」

 

「妹。ホントにシバくぞ」

 

「シオンです」

 

先祖が居るから、自分が居る。彼等が居たから、一族に歴史が生まれる。何代にも渡り、紡がれ、やがて一つの国となり、家族となった。有り得ない事が現実となった新たな世界の縮図、其れを人知れず舞い戻った彼女は優しく見守っていた

 

(スライムさんとネコさんの作った国……約束通り、観に来たけど……すごい事になってるなぁ………此処は歓楽街か、名前がネコさんの名前になってるんだ)

 

友人たち(・・)の建国した国、生前の約束通りに彼女は訪れていた。共に過ごした時間は少ないが、彼女が出会った中では印象深い存在が彼等だった

 

「リムちゃん。其方の趣味が板に付いてるのは構わないけど、バニーを着るには明る過ぎるわよ」

 

「だから、これは着せられたんだよっ!」

 

街を歩きながら、物想いに耽っていた彼女の視界に飛び込んできたのは自分を模倣した姿の友人と彼をジト目で睨む猫耳の美少女の姿だった

 

「前にも言ったけど、最近ではそういう趣味も受け入れられてるのよ。自信持って♪」

 

「違うと言っとろうが!!」

 

有無を言わせる隙も与えずに放たれる相棒の理解ある発言にリムルは突っ込みを放つ

 

(す、スライムさん……そういう趣味が………やっぱり男の人なんだなぁ………あとネコさんはすごく可愛いくなってる…ふふっ、相変わらずだなぁ)

 

外見は変わっても、内面は自分の知る二人と変わっていない事が嬉しかったのか、彼女は優しく笑う。もしも、生きていたなら、自分も彼等と笑い合えたのかなと思うが、今となっては叶わぬ事であるのは理解している

 

「クウ。何見てる?」

 

「……黒髪のリムル様がいた」

 

「リムル様は其処。そっちは誰もいない」

 

誰よりも純真無垢な心を持つクウ、彼女は見えないものが見える。故に彼女には黒い髪の女性が、井沢静江が見えたのだが双子の姉であるフウに突っ込まれ、再び目線を向けると其処には誰もいなかった

 

義姉さん(・・・・)。井戸水はどうですか?」

 

「ありがとう……ですが、無理をして義姉さんと呼ばなくてもよろしいんですのよ?リグル」

 

水を汲んでいたリグルは目の前を通り掛かったスイヒョウにコップ一杯の水を差し出す。彼女は受け取りながらも、微笑を浮かべ、彼の呼び方を咎める

 

「こればかりはやめろと言われてもやめませんよ。今でも、貴女が兄の婚約者である事には変わりありませんからね」

 

そう笑うリグルの表情の裏には、今は亡き兄の死を悲しむ気持ちが見えた。ネコリアと出会い、名を得る前に死に別れた大切な人、スイヒョウにとっても彼の死は辛いものだった

 

「…………懐かしいですわね。貴方とあの人、ハルナの四人で泥だけになるまで、遊んだ頃が」

 

脳裏に浮かぶのは、幼い妹の手を引き、日暮れ時まで遊び回った子ども時代の情景、常にその側にはリグルと彼が居たのを今でも鮮明に覚えている

 

「ええ、父上には怒られましたけどね」

 

「ネコリア様やリムル様が以前に一族には歴史があって、私たちのいる今が存在するのだと仰っていましたが……あの人が生きていたなら、違う道があったのでしょうと思う時がありますわ」

 

有り得たかも知れない未来を想像し、寂し気に笑う彼女にリグルは口を噤む。然し、彼等は、二人の主人たちである彼等は違った

 

「あら、知らないの?この世に偶然はないのよ?全てが必然だからこそ、今のあたしたちが、この国があるの」

 

「そう考えると面白いよな、誰かと繋がってるってのは」

 

「リムル様………ネコリア様……そうですね、そう言われるとそうなのかもしれません」

 

「御二人は何時もながら、前向きですわね」

 

(ていうか、ハルナとスイヒョウが姉妹なのを知らなかったんだけど……)

 

(だな……リグル兄と婚約者だったのか……スイヒョウは…)

 

意外な関係性を知る夏の夕暮れを感じながら、井戸水を飲むネコリアとリムルであった。やがて、日は落ち、夏の夜に毎度お馴染みの宴が行われ、騒がしくも楽しい夏は過ぎゆく

 

「リムちゃん。線香はなかったけど、似た感じのお香と茄子に胡瓜を持ってきたわ」

 

お盆休み最終日、簡易的に作られた恩人の仏前に手を合わせていたリムルにネコリアが声を掛ける

 

「ありがとな、ネコちゃん。形だけでも……お盆っぽくしないとな」

 

「シズちゃん。まだまだ約束通りの国造りには程遠いし、課題もたくさんだけど、何時かきっと現実にするからね…」

 

「その時は、この姿と能力を受け継いだ御礼をするからな」

 

(充分だよ、私の姿で楽しく生きて、ネコさんと何気ない毎日を送ってくれているなら……終わったはずの人生に、思いもよらない素敵な贈り物…ネコさんといつまで仲良くね……あっ!でも恥ずかしい格好は控え目にしてね!約束だよ?)

 

懐かしくも暖かい何かが触れ、誰かの声が聞こえ、振り返るも其処には誰も居ない

 

「ネコちゃん………夏の昼に怪現象だ!俺の格好を注意する声が聞こえた!」

 

「にゃるほど……其れはきっと、エッチなスライムに聞こえる幻聴よ」

 

「なるほど、だから俺にしか聞こえなかっ…………って!エッチじゃないやいっ!!」

 

これはある日の日常。まだ二人が魔王になる前の平和でありふれた日常を綴った日記の一頁である




次回は普通に本編を………暑い日々が続きますが皆様も体調にはお気をつけください……この台詞も三回目だな

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秋の夜特別編 欲望の秋が来たから、収穫しちゃった

今回は久しぶりに番外編、秋の夜に涼やかで微笑ましい日常回をお届けです♪

ネコリア「久しぶりの更新ね〜、作者ちゃんは秋の味覚だとにゃにが好き?」

カキフライかな、美味しいからね!三食食べても飽きない!

ネコリア「わかるわ!その気持ち!あたしも秋刀魚があるとテンションあがるから♪」

流石はネコちゃん、話せる女だ。しかも可愛い!

ネコリア「ありがと♪」←ウインク

………………(どくどく)←鼻血で戦闘不能



「天高く馬肥ゆる秋………とはよく言ったもんだよな」

 

「仕方にゃいわよ、食欲の秋は代表的な秋の風物詩………馬だけじゃなくて……」

 

「むぐっ?どうしたのだ?ネコ」

 

ある秋の日。庵の縁側で寛いでいたネコリアは耳に入ってきた相棒の何気ない呟きに反応し、猫又の自分よりも怠惰な生活を送るマブダチ(ミリム)に視線を向ける

 

「にゃんでもないわ……テンペスト魔王も肥ゆる」

 

「秋だなぁ」

 

「なのだ」

 

「ネコリア様ー、リムル様ー、ミリム様ー。そろそろ御時間ですわ」

 

茶を啜り、秋空に流れ行く雲を眺めていた二匹と一人にスイヒョウが呼び掛け、其れに気付いた彼等は重い腰を上げる様に彼女の元に向かい、目的地に足を運ぶ

 

「昔から、衣食足りて礼節を知る、とある。腹が満ちれば、心に余裕が生まれ、余計な諍いもなく、良い国となる。テンペスト(ウチ)もそうありたい。秋は実りの季節であると同時に、冬へ備える大事な時期だ。今日は皆で力を合わせ、収穫に臨もう。それではここで我が側近である参謀長からも一言」

 

「こほん………根こそぎ収穫するのよ!目標は食いぱっぐれしないくらいの大収穫!兎に角!可愛いあたしの為に頑張りなさい!にゃっーはっはっはっ!」

 

「季節が変わってもネコちゃんはネコちゃんだな。次はゲスト陣の挨拶だ」

 

「春からずっと……………待っていました…………芋です!今日は芋を沢山掘りましょう!」

 

「皆の者!私にウマーな物を食べさせるのだ!」

 

「ふぅ………女性の時代か」

 

秋の欲望に感化され、己が欲を解放する三人娘?にリムルは一息を吐き、涼やかに晴れ渡る秋空を見上げる

 

「今日のA班の収穫のスケジュールの確認ですが、お昼までに4ブロックの収穫を完了させて、そしてB班は、夕方までにAからBブロックの収穫を完了させる予定です」

 

「リリナは昔から仕事が早く、見習うべき所がありますわ」

 

「姉さんでも見習うことがあるんですか?」

 

「当然でしょう?私はネコリア様の書記官を拝命した身、常に勇往邁進する事を誓っています。ハルナも日々の努力を怠ってはなりませんわよ」

 

「はい!」

 

「仲良しね〜、スイちゃんとハルちゃんは」

 

仲睦まじく会話するスイヒョウとハルナを見ながら、鍵尻尾をふりふりと揺らすネコリア。その手には何時の間にか収穫した大量のサツマイモがあり、自らの火炎系仙術で焼き芋を作り、口に含んでいた

 

「畑となれば!私の独壇場!妹!それにミリム様!今日限りは私の圧勝で終わるのを悪く思わないでもらいたい!」

 

「姉上の様な畑馬鹿に遅れを取るワケにはいきません!何故なら!ジュラの森に知れ渡る伝説の鬼神とは私のことです!!あとシオンです」

 

「大きな口を叩くではないか……金角に紫角の姉妹よ」

 

「ライメイだ」

 

「シオンです」

 

「そうそれ!」

 

「捗るけど………それで良いのか?三人は…」

 

火花を散らし合うのは鬼人姉妹と最古の魔王。戦場と呼ぶには簡素な一面の畑、その光景にリムルは苦笑する

 

「わふっ!ほりほりほりほり!」

 

「ほへぇ〜エンカ様は穴掘りがめちゃんこに上手いんですね〜、見直しました」

 

「わふふふ!当たり前だぞ!アタイはなんたってネコリア様の護衛官だからな!このくらいは牙を磨くよりも簡単だぞっ!」

 

エンカの高速芋掘りに部下のセイテンが感心すると、彼女はふふんと誇らしそうに鼻息を吹き、自慢気に笑う

 

「な、なんと!樹妖精(ドライアド)様が芋掘り!?」

 

「うふふ、大量ですよ?以前に私の主人である高貴な方に聞いたことがあります……我々はジャガイモの精霊なのだと……故に!!芋掘りは私の義務です!揚げ芋になりたいという声が聞こえてくるでしょう?」

 

「姉さん。私には聞こえないんですけど………」

 

「ハルナ?こういう時は暖かい眼差しで見守るのが優しさですのよ」

 

「益々、興味が湧くわね……トレイニーちゃんの主人に……どんな精霊かしら…」

 

芋掘りを心から楽しむトレイニー、それを優しく見守るゴブリナ姉妹の腕に抱かれながらもまだ見ぬ彼女の主人に興味津々なネコリア。その精霊が後に出会う大親友である事を今はまだ彼女も知らない

 

「素晴らしい!!見よっ!妹たちよ!まるでこの光景は金色の絨毯!我が国の豊かさを象徴しているとは思わぬかっ!」

 

「兄者がんばった」

 

「兄者すごい……」

 

「そうだろうそうだろう、流石はフウとクウであるな……ちらり」

 

双子の素直な感想に首を頷かせ、長女の方に視線を向けるガビル。その視線に気付いたソウカは優しく笑い、稲穂に触れる

 

「兄上にしては良い仕事をしましたね。それでは……ネコリア様並びにリムル様の為に刈り取りましょうか」

 

「ソウカよ!それでも誇り高き龍人族(ドラゴニュート)の親衛隊長か!こんなにも美しい光景を前にあまりにも非情ではないかっ!」

 

「…………ウザいです」

 

「‼︎」

 

まさかの直球意見、ガビルが目を剥き、驚愕する。思いの外、響いた言葉は彼の心を容赦なく抉る

 

「ウザいです」

 

「二回言われたーーーっ!!!」

 

追い討ちを掛けるソウカに、ガビルは完全に真っ白な灰のように燃え尽き、地面に崩れ落ちる

 

「ネコちゃん!見ろ!これ!松茸だ!すごいなぁ〜、ネコちゃんはどんなのが好きだ?やっぱり焼き松茸か?」

 

「炊き込みご飯かしらね。あっ、でも土瓶蒸しも捨てがたいわねぇ」

 

散策隊が持ち帰ったキノコの中に松茸を見つけたリムルがはしゃいでいると、前世では手の届かない高級食材にネコリアの鍵尻尾もふりふりと揺れる

 

「えっ?御二人はそんなのが好きなんっすか?変わってるっすね」

 

「あんまり言いたくはありませんが美味しいとは言えませんよ?」

 

「「うんうん」」

 

「……………ぐすん、ネコちゃん。お願いします………」

 

「はぁ……仕方にゃいわね」

 

無知故に松茸の有り難みを知らないゴブタとシオン、それに賛同するライメイたち。その様子に涙ぐむリムルを見兼ねたネコリアはぱちんと指を鳴らし、火炎系仙術で松茸を焼き始める

 

「スイヒョウ。おしょうゆ」

 

「はい、こちらに」

 

「完成よ。松茸のステーキ、食べてみなさい」

 

「「ぱくっ…………う………ウマーーーーー!?」」

 

焼き上がった松茸ステーキを口に含んだ瞬間、全員の口内を旨味と香ばしさが合わさった絶妙な食感が支配し、余りの旨さに興奮が抑えきれないとばからに叫びにも似た歓喜の声を挙げる

 

「娯楽もないし、食に関しての知識も薄い………だからこその無知。其処をしっかりと突けば、松茸の有り難みを認識してあげられるのよ」

 

「さすがはネコちゃんだなー!料理上手で博識!更には可愛いときたもんだ!にくいねっ!」

 

「にゃふふ………にゃっーはっはっはっ!当たり前よ!あたしを誰だと思ってるの?ジュラの大森林にその名を轟かせるネコリア=テンペストとはあたしのことよ♪」

 

「良いかね?この子はすぐに調子に乗るから、褒めすぎてはいけないよ」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「本当に美味いのだ!!あんなに固くて土臭いものが、こんなにも甘くてホクホクに…………!」

 

「確か前に消化酵素βアミラーゼが加熱で糊化した澱粉に作用して、麦芽糖を生成するから美味しくなるみたいなことを聞いたわね」

 

「へー、誰に聞いたんだ?」

 

「バイト先のコンビニの雇われ店長」

 

「飲食店じゃないの!?」

 

焼き芋が美味くなる理由を《大賢者》が語るよりも前に口にする相棒のまさかの知識の出所にリムルは突っ込みを放つ

 

「つーか、ミリム様はどんな食生活してたんだ?ここに来るまでは野菜が美味ぇことも知らなかったみてぇだし」

 

「カイリンよ、誰にも触れてはいけない場所があるんだ。そっとしておいてやろう」

 

「きっと愛の無い環境で育ったんですね…………わかります、私も姉上が栽培した野菜を生で食べた経験がありますから……土臭いですよね」

 

「お前は勝手に畑から泥棒していただけだ。この愚妹」

 

ミリムの食生活に興味を抱くカイリン、それにライメイが触れてやるなと諭しながら、シオンが涙ぐみながらも口走った事に意義を唱える

 

「ネコちゃん。来年も再来年も……その先もこんな風に楽しい秋が来るかな?」

 

「そうね……来るんじゃない?なにせ、四季は必ず巡り、芽吹き、育み、また訪れる………きっとこの先もずっと……それは変わらないわ♪ 盟主様(リムル)

 

「そうだな……きっとまた来るよな!期待してるぞ?参謀長ちゃん(ネコリア)

 

「えぇ、期待されたわ」

 

これはある日の日常。まだ二人が魔王になる前の平和でありふれた日常を綴った日記の一頁である

 




次回は普通に本編を………秋に入りましたが、まだまだ暑い日々が続きますが皆様も体調にはお気をつけください……この台詞も四回目だな

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冬の夜特別編 寒さになんか負けないから、はしゃいじゃった

今回の見所!寒くてもネコちゃんたちは元気に!………あれ?ネコちゃんは?

リムル「寒いから炬燵から出てこないんだよ」

なるほど、ネコちゃんは可愛い猫だから、エロわらびもちと違って、寒さに弱いんだ。ちなみに熱燗が飲みたい今日この頃な作者ちゃんです

ネコリア「そうなのよ。冬は嫌い、でも熱燗はあたしも好きよー」

リムル「水でも呑んでろ、お前らは」



「深々と降り積もる雪が袖を濡らす………って言うけど、流石にこんにゃに積もるとイヤになるわね…寒いのってキライだわ」

 

「ネコちゃんって秋以外に好きな季節無くないか?夏も嫌いなんだろ?確か」

 

ある冬の日。窓から見える一面の白銀の世界を見ながら、ため息を吐く相棒にリムルは彼女が秋以外の季節を嫌っていると横槍を入れる

 

「暑い夏が嫌いなのよ、夏祭りとか海の家なんかは好きよ。あと春も嫌いじゃないわよ?花見酒が楽しめるもの」

 

「食べ物ばっかりじゃねぇか!全く……やっぱり、新雪には飛び込まないとだろ!そーいう訳で!アイキャン・フラーーーイ!!」

 

僅かに考える素振りを見せ、口にした季節に関する単語全てが食べ物一択という彼女らしい、発言に突っ込みを放ち、勢いよく窓を開けたリムルは白銀の世界に飛び立つ。それはもう勢いよく、雪が積もれば、一度は誰もがやる新雪に足跡を付けるを全体で表現する様に、彼は飛び立った

 

「ネコリア様。暖かいお茶が入りましたわ……あら、リムル様はどちらに?」

 

「その辺で冷凍ゼリーになってるわ」

 

スイヒョウの淹れた茶を啜り、相棒の所在を問われたネコリアは呆れた眼差しで彼の飛び立った白銀の世界に視線を落とす

 

「ネコリア様!ウチの愚妹を見ませんでしたかっ!?あのバカ、朝起きて直ぐに寝巻き姿で飛び出していったのですが…!」

 

執務室に飛び込んできたのは、肩で息をするくらいに息を荒くしたライメイ。どうやら、彼女は朝一番に白銀の世界に姿を消した妹の行方を探しているようだ

 

「ライメイ?妹の教育もままならないとは、それでよくもまぁネコリア様の剣を名乗れますわね?ウチのハルナを御覧なさいな、気立ても良く、愛想も良く、更には料理上手……シオンとは雲泥の差ですわ」

 

「確かにハルナは冷血ゴブリナ(スイヒョウ)とは違って、優れた人材だが……私の妹をお前がとやかく言うのは些か無礼ではないか?書記官」

 

「ふふっ……何を言うかと思えば、貴女が礼儀についてを語りますか?使者に対し、無礼を働いた挙げ句の果てに街を消し飛ばす寸前の騒ぎを起こした畑馬鹿鬼人(ライメイ)如きが礼儀を語るだなんて……お笑い種も良いところですわよ?戦闘総隊長」

 

「「……………やんのかっ!!」」

 

穏やかに見えながらも、一瞬の沈黙の後に胸倉を掴み合うスイヒョウとライメイ。その姿を側から見ていネコリアは呆れた表情でため息を吐く。その息が目視出来る程に白く見えるのは季節故の事象である

 

「それにしても積もった雪を見るのは久し振りね。最後に見たのは転生前だから、三百年前になるのね……時の流れは早いわねー」

 

「わふっ!コレが雪かー!白くてフワフワだなー!大自然の脅威ってアニサマは言ってたけど、本当かだぞ?アネサマ」

 

「エンカ、ランガの言う事は大体が犬目線だ。お前には教えておくが……雪は見た目に反し、食べても美味しくない」

 

「わふーーっ!?食べても美味しくないっ!?ネコリア様が調理してもダメなのか?アネサマ!」

 

「ああ、幾ら姉上が可憐で愛らしく料理上手でも雪は調理不可能なんだ。だから食べては駄目だ、分かったな?エンカ」

 

「わかったぞ!」

 

(い、言えない………小さい頃に雪を食べられると思ってたなんて…)

 

雪に興味津々なエンカを諭し、雪についての知識を彼女に享受するムジナ。その様子を見聞きしていたネコリアは、自分が小さい頃に雪を空から降る食べ物的な何かであると勘違いしていたとは言えず、明後日の方向に視線を逸らす

 

「ワーッハッハッハッハッハー!ネコ!久しぶりだなー!来てやったのだ!」

 

高笑いと共に窓から姿を見せたのはミリム、この国に住むネコリアの友人であると同時に十人の魔王の一人である

 

「あら、ミリムちゃん。いらっしゃい」

 

突如、襲来した魔王に驚きもせずに呑気に挨拶を返すネコリア。愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らし、自分を抱き抱えた彼女に笑い掛ける

 

「わふっ!ミリム様!窓から入るのはおぎょーぎよくないんだぞ!」

 

「怪我をされますよ。身軽な姉上ならば造作はありませんが」

 

「魔王は怪我しないのだ!」

 

「お姉さま。何を言っても聞きませぬゆえ、如何なさいましょう?」

 

エンカが行儀作法に付いての注意を呼び掛け、ムジナも姉貴分のネコリアとは異なる種の彼女に怪我をすると伝えるが、当の本人は聞く耳を持たず、冷静なイヅナは意見を求め、ソファに寝転がる姉貴分に問う

 

「別にどうもしないわよ。それにしても珍しいわね?ミリムちゃんがリムちゃんの執務室じゃなく、あたしの部屋に突撃するなんて」

 

「雪なのだぞっ!リムルは雪かきをしていたがネコの姿が見当たらないので、金角に居場所を聞いたら、ここに居ると言われたのだ!」

 

普段、彼女はリムルが居る執務室又は庵に入り浸る事が多く、ネコリアの館に訪れる事は滅多にない。故に意外な来訪者に流石の彼女もアーモンド型の瞳を丸くした

 

「まさか……あたしにも雪かきしろって言うの?この寒い中に放り出すの?」

 

「大丈夫なのだ!ネコは強いからな!寒さなんて、へっちゃらなのだ!ワーッハッハッハッハッハー!」

 

「はいはい……仕方にゃいわね……リンちゃん、冬用の服はー?」

 

根拠もない自信と説得に、何を言っても無駄であると悟ったネコリア。専属職人のカイリンを呼び、冬用の服の所在を尋ねる

 

「冬服?なら、首を冷やさない為のマフラーに猫耳を冷やさないようにビーニー帽があるぜ」

 

「ありがと♪」

 

「「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」」

 

「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるエンカ、イヅナ、ムジナ、カイリンは目をハートにしながら悶える

 

「お?姐御を寒空の下で見掛けるとはな。珍しいこともあるぜ」

 

「あら、ヨウムちゃん。英雄がこんなとこで雪かきにゃんてウケ狙いなら、やめた方が良いわよ」

 

「ハハハ………ウケ狙いなら良かったんだけどな…。こき使われることに慣れちまった自分が情けなくなるぜ…英雄になるって、こういうことなのか?」

 

「僕はネタに困らないので、意外と好きですよ?こういうの」

 

「ロンメルちゃんは創作してるんだっけ?ヨウムちゃんの物語を」

 

「はい。この作品にはリムルさんは勿論ですけど、ネコリアさんも出てきますよ。御二人の役割は英雄に力を与える二人の麗しき乙女です」

 

「まあ、それは良い役割ね」

 

「待て。俺は乙女じゃないぞ、あとネコちゃんも見た目は愛らしいけど実年齢は割と高齢だしな」

 

「そうっすよ。そんなババアをヒロインにするとか気は確かっすか?」

 

「姐御って幾つなんだ……」

 

「エンちゃん。ゴブタと散歩の時間よ」

 

悪口を聞き逃さなかったネコリアが指を軽く鳴らすと、例によって姿を見せたエンカが尻尾をぱたぱたと揺らす

 

「わふっ!いくぞっ!ゴブタっ!おさんぽっ!おさんぽっ!」

 

「んまっ!?ちょっ!あぎゃァァァ!!!」

 

「それからシオンちゃん。リムちゃんが今日から暫くはシオンちゃんの味噌汁を飲みたいみたいよ」

 

「なんと…!頑張りますね!姉上ェェェェ!味噌汁に合う野菜をください!」

 

「やめろォォォォ!!俺の身が持たない!!良い子だからやめようか!シオンさん!」

 

「あと、ヨウムちゃんには不吉な占いをしてあげるわね。あらやだ……これから出会う女の子が悪女って出てるわ、気をつけてね」

 

「不吉な予言をしないでくれるかっ!?」

 

死のお散歩へと旅立つゴブタ、地獄のフルコースを阻止しようとするリムル、自らに下された不吉な発言に血の気が引いていく

 

「見て。クウ、ネコ様の雪像を作った」

 

「フウは手先が器用……クウも…リムル様の作ったけど……上手くない…」

 

「大丈夫。クウも上手、フウの妹が下手なわけない」

 

「おぉ!妹たち!なかなかの芸術センスであるな!流石はシス湖随一の美術家である我が輩の妹たちだ!」

 

「「兄者」」

 

雪遊びに熱中していたフウとクウに呼び掛けたのは、兄のガビル。彼は名を得る前は芸術家として名を馳せていた、故に審美眼に関しては確かなモノがあるのだ

 

「見よ!我が力作!ネコリア様&リムル様だ!」

 

「兄者すごい。流石はフウの兄者」

 

「そこ…クウたち(・・)の間違い。兄者の芸術は魔国連邦(テンペスト)随一」

 

兄の芸術センスの高さに、えへんと胸を張るフウ。その一部分が気に食わなかったクウがすかさず、訂正の突っ込みを放った後に、ガビルを褒める

 

「やだ。私ったら、なんて子供っぽい事を……………ふふっ…」

 

「姉者がソウエイさんの雪像を作ってる」

 

「姉者も上手」

 

「なんと!ソウカよ!流石は我が妹!芸術センスまで似るとは!」

 

「んなっ!!どっから沸いたんですかっ!!兄上!!」

 

「ごふっ!?」

 

突然、姿を見せたかと思えば、芸術センスを褒めたつもりのガビルは衝撃を受けるが、即座にソウカが遥か彼方に吹っ飛ばす

 

「うふふ、そっくり〜」

 

「トレイニーちゃんって、冬は苦手じゃないのね。なんか意外だわ」

 

御機嫌な様子で雪像を作っているトレイニーを見つけたネコリアは、自分と同じように冬が苦手と思っていた彼女が御機嫌な姿に意外なモノを見たかの様に呟く

 

「よく言われるのですが実は違うんですよ。確かに、森の木々は活力を失っているように見えますけど………………葉を落とした木も、今は休んでいるだけなのです。木々だけではありません。地面には植物たちの種子が、地中には同じく根が……」

 

「にゃるほど、つまりは雪に覆われていても、確かな命の息吹を宿し、じっと待っているのね?春の訪れを」

 

「流石はネコリア様。見事な解答です」

 

トレイニーの答えに何かを悟り、ネコリアが話に補足すると、その的を射た発言に彼女は優しく笑う

 

「行き遅れのネコリア様はともかくとして、トレイニーさんの春はいつ来るんすかね!」

 

「仙法・樹縛林(じゅばくりん)

 

言ってはならない禁句、それを聞き逃さなかったネコリアは両手をぱんっ、と打ち鳴らし、出現させた木の蔓で拘束されたゴブタ、同時にトレイニーが出現させた巨木の上に吊るされた

 

「な、なんだ!?急に木が生えたぞっ!?まさかネコちゃんとトレイニーさんの仕業かっ!兎に角!ゴブタを降ろしてあげなさい!」

 

「イヤ♪」

 

「右に同じくです」

 

突如、現れた巨木に驚きながらも天辺のゴブタを降ろすように命じるリムル。然し、その答えは清々しいまでの綺麗な笑顔で拒否された

 

「………で、にゃにこれ?かまくら?」

 

「おう、ミリムやココブたちと一生に作ったんだ。どうだ?ネコちゃんも流石に実物を見るのは初めてだろ!」

 

「子どもの時に飽きるくらいに作ったわよ?あたし、雪国育ちだもん。寒いのはキライだけど」

 

「初耳な情報とそれすらも霞むくらいの怠惰な発言だな。然し、雪国育ちにしては根気がないよなぁ」

 

「引きちぎるわよ」

 

「なにをっ!?」

 

謎の文句にリムルの突っ込みが寒空の下に冴え渡る。またしても降り注ぐ雪を見上げ、ネコリアは優しく笑う

 

「案外……悪くにゃいかもしれないわね。ネコもはしゃぐ銀世界……にゃふふっ」

 

これはある日の日常。まだ二人が魔王になる前の平和でありふれた日常を綴った日記の一頁である

 




次回は普通に本編を………寒い日々が続きますが皆様も体調にはお気をつけください……この台詞も五回目だな

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冬の聖夜特別編 聖なる夜が来たから、大宴会しちゃった

皆様、如何お過ごしですか?聖なる夜の前日たるイブにネコちゃんのクリスマスを覗いてみましょう!

ネコリア「あら、作者ちゃん。どう?似合う?このサンタ服」

………………(どくどく)←鼻血で戦闘不能


「クリスマスかぁ〜………案の定の唐突な思いつきにも忠実な再現をするなんて…もう、呆れを通り越して、素直に尊敬するわね」

 

今日も今日とて、怠惰な眠りに興じていたネコリア。彼女の耳に届くのは活気に満ちた町を行き交う魔物の声。この活気には理由がある、其れは遡ること数日前に遡る

 

『大雪で連日に渡る雪かきの影響で、みんなも疲れているかもしれない……だが!この季節にまだ足りないものがある。何かわかるか?』

 

『そうね………はっ!もしかして、毎シーズン恒例のネコリア大感謝祭!?』

 

『そう、日々のネコちゃんの働きに感謝するネコリア大感謝………って!ちがーーーうっ!クリスマスだよ!クリスマス!しかも御馴染みでも恒例でもないからなっ!?一度も開催したことないだろっ!』

 

『甘いわね……リムちゃん。あたしが前世でバイトしてたフライドチキン店の店長が言ってたわ……ぶっちゃけ、ヤ○ザ○は感謝祭やりすぎだから、ウチも本社に内緒でやってやろうぜ☆って……だからね?こういうのは言ったもの勝ちよっ!』

 

『もうやだっ!この馬鹿ネコ!絶対に押すなって言われたボタンを押すタイプじゃん!!兎に角!!クリスマスをやるからには全力で取り組みたい!!お前たち!やれるな?』

 

『「「「お任せください!!」」」』

 

そして、流れる様に時間は経過し、目標のクリスマス当日。見事に再現されたクリスマスの風景にネコリアは相棒の欲深さに呆れ顔を見せる

 

「ネコリア様、ネコリア様。このツリー?とか言うのが光るのか?」

 

「そうみたいね、リムちゃん曰くド派手に!ゴーカイに!光るらしいわよ」

 

顔を覗き込む様に問いかけるのは、彼女を乗せた護衛官のエンカ。頼りになる脚からの問いに優しく答えを返す

 

「わふっ!キラキラしてそうだぞっ!」

 

「あたぼーよ、なんたってウチの力作だからな!自慢じゃねぇけど、ああいう電飾は得意だぜ?オフクロがガラス工芸の職人だったからな」

 

「そう……良いお母さんだったのね」

 

まだ見ぬ電飾の輝きに瞳を輝かせるエンカ。其れを聞いていたカイリンが笑顔を見せながら、今となっては会えない自分の母の事を話す姿にネコリアは優しく笑い掛ける

 

「カイリンのお母さんは亡くなったのか?」

 

「ああ、彼奴がまだちいせぇ頃にな……あいつの母親…アイリンは俺にはもったいないくらいの出来た嫁だった。カイリンはアイリンの造るガラス工芸が好きでな……よく工房に出入りしてた。でもな、商談の帰り道に魔物に襲われちまってな……カイリンを庇って、自分は死んじまいやがった。叶うなら、見せてやりたかったぜ……このクリスマスツリーをよ」

 

「見てくれてるさ……きっと。なにせ、カイジンとカイリンの合作なんだからな……其れはそうとだ、似合ってるぞ?そのヒゲ」

 

クリスマスツリーを見上げ、染み染みと亡くなった妻を思うカイジンに優しい言葉を掛けるリムル。そして、暗い話題を切り替える為に白く染まったヒゲを話題に持ち上げる

 

「ドワーフがサンタクロース……かなりのハマり役ね」

 

「だろ?実はな、これをガゼル王にも送った」

 

サンタクロースと似た外見のドワーフ族、その姿はかなりの適役であると相棒からの指摘を受け、頷きながらもリムルは更にこの衣装が似合う人物に送ったことを明かす

 

「あら、ガゼルちゃんにも?着てるくれの?」

 

「うむ、問題は其処だ。だから、差し出し人はネコちゃんにしておいた。弟弟子には厳しくても、妹分には甘いからな」

 

「にゃにを人の名前を勝手に使ってるのよ。引っ掻くわよ?」

 

勝手に名を使われていた事を知り、しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立て、瞳の奥が笑っていない笑顔を見せる

 

「まあ、其れはさておくとしてだ。ネコちゃんもクリスマス仕様なんだな」

 

話題転換を図ろうとリムルは変幻により、人型に変化したネコリアの衣服を眺める。ぴこぴこと動く猫耳、ふりふりと揺れる愛らしい鍵尻尾は相変わらずだが、その服装は今日だけ限定と言わんばかりのミニスカサンタ衣装、スカートの裾を引っ張り、リムルに向き直る

 

「リンちゃんが用意してくれたのよ。似合う?其れとも嫌い?こういうのは」

 

「……………嫌いじゃないです」

 

「やっぱりエッチなスライムね」

 

「エッチじゃないやいっ!」

 

御決まりの叫びが木霊する冬の空。相棒の揶揄いに突っ込みながら、執務室に入ると更なる刺客が待ち受けていた

 

「どうです?姉上!私のサンタ姿は!ネコリア様やドワーフの方々(おじさまたち)には負けていられませんっ!」

 

「よくもまぁガツガツとしていられるな。騒がしいだけではないか……私は昔から冬は苦手だ。じゃがいもを収穫しておく方がまだ有意義だ」

 

「ふっ……ライメイ。貴女は一度、自分の姿を確認した方がよろしくてよ?なんですの?その角は」

 

剛力丸を振り回すサンタ衣装のシオン、その様子を見守りながらも呆れた眼差しを向けるライメイの姿に笑いを堪えるスイヒョウ。どうしたのだろうか?と疑問に思いつつ、中に入るとトナカイの衣装を着たライメイがスイヒョウに睨みを効かせていた

 

「………まぁ!ネコリア様!お似合いですわ!」

 

「わふっ!スイヒョウ!ネコリア様にべたべたするなっ!!」

 

「ふふっ……ホントにわふわふとうるさい犬ですわね。アナタこそ、くっつき過ぎてるんじゃなくて?少しは離れなさいな」

 

「学ばない奴等だ……ネコリア様に一番相応しいのは剣足る私だ。お前たちは早々に立ち去れ」

 

「「「……………やんのかっ!!」」」

 

穏やかに見えながらも、一瞬の沈黙の後に胸倉を掴み合うスイヒョウとエンカ、ライメイ。見慣れたやり取りを見ながら、ネコリアは窓辺に腰掛ける

 

「クリスマスねー」

 

「だなー」

 

「はい!クリスマスは初めてですけど……この催しを機に、テンペストの住人がより固い絆で結ばれると良いですね!家族も、友人も、仕事仲間も…………そして、恋人同士もっ!」

 

其れは認めん

 

最初こそは頷いていたリムルであったが恋人同士と聞いた瞬間、叫ぶようにシオンの言葉を遮った。その顔が今までに見た中で一番の渋さを見せていたが、ネコリアは触れようとせずに執務室を後にした

 

「ネコ〜!サンタとやらがプレゼントをくれるのは本当か?楽しみなのだ!リムルと変な格好をした金角と紫角に聞いたぞっ!」

 

廊下を歩いていると、勢いよく駆けてきたミリムが黒猫の姿に戻っていた彼女を抱き抱え、サンタの話を始める

 

「そうにゃの。ミリムちゃんは良い子だから、きっと来てくれるわよ?」

 

「そうか!」

 

「フウも良い子にしてた」

 

「クウも……」

 

「そうね。二人のとこにも来るわよ」

 

自分の所にサンタが来ると信じて疑わないミリムに優しく笑い掛け、その両脇から顔を覗かせたフウとクウの頭を優しく撫でる

 

「ネコリア様。御報告が……兄とベスター殿が喧嘩してるようです」

 

三人と別れた後、装飾を施された歓楽街を歩いていたネコリアの前にソウカが姿を見せ、ガビルとベスターが喧嘩している事を報告する

 

「あら、珍しい…。理由は?」

 

「なんでも音楽性の違いとかで……」

 

「はぁ?まあ、良いわ……研究は疎かにしないように伝えて」

 

聞いても分からないが深くは聞くべきではないと悟り、研究を疎かにしないようにと命令を降す。やがて、陽は傾き、クリスマスツリーの周辺に設けられた会場に住人たちが集まりはじめる

 

「「「メリークリスマス!!」」」

 

高らかな宣言と共に、遂に幕を開けたクリスマスパーティ。並んだ食事を囲み、酒を浴びるように飲み、毎度の恒例の宴が始まる

 

「にゃ〜ん………やっぱり、クリスマスにはお酒よねぇ〜!う〜ん!このカルパッチョさいこ〜!」

 

「姉上。此方のお肉もなかなかです、是非とも召し上がってください」

 

「お姉さま!この厚揚げの天ぷらは自信作ですゆえ!召し上がってくださいませ」

 

「「……………………真似をするなっ!!」」

 

酒と食事に舌鼓を打っていたネコリアに自分たちの好物を献上するムジナ、イヅナの二名。敬愛する姉に対する同じ考えを持つ姉妹分を前に、火花が散りだす

 

「全く……この妹たちは……」

 

「ははっ、ムジナにイヅナか。相変わらず、ネコちゃんの周りは賑やかだな」

 

「ホントだぜ……今でも偶に思うぜ。自分が化かされてるんじゃないかってな」

 

妹分たちの騒がしさに苦笑するネコリア。其れを側から見ていたリムルとヨウムが声を掛ける

 

「悪い魔物じゃないっての!まぁ、ネコちゃんは化かすのが得意だけどな」

 

「あら、にゃに?化かされてるだなんて……なんなら、今日は特別に化かしてあげましょうか?こんな風に♪」

 

化かすという単語に反応し、何時もの御決まりの決まり文句を聞き逃したのか、ネコリアは両手を、ぱんっ、と打ち鳴らす

 

「わふっ!雪だ!」

 

「白くてふわふわ」

 

「ふわふわ……」

 

仙術で生まれたのは、降り注ぐ白銀の雪。彼女也の贈り物に誰もが夜空を見上げ、聖夜の星々と雪が織り成す神秘的な空に胸を馳せる

 

「あっ、そうだ」

 

「どうした?ネコちゃん」

 

空を見上げていると、唐突に隣に居た相棒が何かを思い出した様に自分の方を振り向いたので、リムルは首を傾げる

 

「さっきの話だけど………リムちゃんはエッチなスライムよね♪」

 

「違わいっ!!エッチじゃないやいっ!!」

 

これはある日の日常。まだ二人が魔王になる前の平和でありふれた日常を綴った日記の一頁である

 




今年もあと僅か!皆様の応援に感謝します!この作品は遂にお気に入り800件越えの我が作品の二枚看板となりましてございます!ネコちゃんからも感謝を!

ネコリア「みんな〜、あたしとリムちゃんの活躍を応援してくれてありがと〜♪来年もはっちゃっけぶっちゃっけの益々のがんばりを見せちゃうから、応援よろしくね♪」←ウインク

………………(どくどく)←鼻血で戦闘不能


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コラボ
寛いでたら、知らない魔物に会ったから仲良くなっちゃった


今回の見所!コラボ回!ネコちゃんが知らない魔物に出会い、友情を育む話です!御相手は仮面大佐さんの作品《転生したらキメラだった件》です♪

此方の作品は仮面ライダーをコンセプトにキメラの主人公が戦い抜くバトルアクション要素が強めの作品!熱いバトルをお望みの方は必見!一度読み出すと止まらなる事、間違い無しです。はてさて、今宵のコラボは我が家のギャグテイスト全開で御送りする不思議な一日の話……


「んにゃぁ〜………なんか知らにゃい気配があるわね?なんか色々と混ざり合った複雑な妖気(オーラ)……人間に近い様な……そうでない様な………」

 

「ん〜………うちの国にこんな場所あったか?でも木には見覚えあるしなぁ………ん?誰かいる………猫?」

 

何時もの時間に目を覚ましたネコリア、近付く見覚えのない気配に首を捻っていると聞き覚えのない声と共に、一人の人間?が姿を見せる。その人間はネコリアの姿を見た瞬間、何故こんなとこに猫がいるんだ?的な表情を浮かべている

 

「…………………」

 

「えっと………どうかした?」

 

反応を見せないネコリアに疑問を抱き、人間は問いを投げ掛ける。彼女は真っ直ぐと静かに目の前の変わった生物の姿に興味津々なのか、アーモンド型の瞳を、ぱちぱちと瞬きさせる

 

「あの〜………頭から、なんか刺さってますよ。痛くないんですか?それ」

 

沈黙からの爆弾発言、謎生物の頭に付いた鋭い剣の様な兜を指差し、丁寧な指摘を始めた。この場にリムルが居れば即座に「…………何言ってんのっ!?お前ェェェ!!!」と突っ込みを放たれるレベルの失礼発言である

 

「あっ……ごめん、おしゃれのつもりだったりした?でも頭に剣を刺すのはやめた方がいいわよ、痛いから」

 

「ファッションじゃねーしっ!元からだっ!なんだっ!?お前!」

 

「お前じゃないわよ………可愛いネコちゃんよ!引っ掻くわよ!」

 

「急な逆ギレっ!?」

 

爆弾発言に突っ込みを放つ謎生物に可愛いネコである事を主張するネコリア、その反応に謎生物は驚愕する

 

「それで?アンタはにゃんなの?魔物みたいけど……魔国連邦(テンペスト)では見たことにゃいけど…」

 

「いやいや、俺は魔国連邦(テンペスト)の盟主だ。お前の方こそ、何を言ってるんだ?」

 

「にゃ?盟主?何を言ってるのよ、盟主はリムルだけよ。あたしはアンタを知らにゃい」

 

「俺だって知らないな、お前を。リムルと親しいみたいだけど、アイツとは洞窟で転生してからの付き合いなんだ。つまり、俺の方がリムルを一番知ってる」

 

「……………にゃるほど」

 

謎生物の言葉で何かを理解した後に頷き、全てを察した様に魔性の笑みを浮かべる

 

「な、なんだ?」

 

「アンタ……あたしの知ってるリムル=テンペストとは違うリムル=テンペストが居る世界線から来た迷い人ならぬ迷い魔物ね?」

 

「違う世界………?ここは魔国連邦(テンペスト)じゃないのか?」

 

魔国連邦(テンペスト)よ、でもアンタが知る魔国連邦(テンペスト)じゃないだけ。改めて名乗るわ、あたしはネコリア=テンペスト。ジュラ=テンペスト連邦国が盟主リムル=テンペストの右腕にして、参謀長を任されているわ」

 

「参謀長………えっと、俺はレイト=テンペストだ。種族はキメラ、ジュラ=テンペスト連邦国で盟主の一人をしてる」

 

「レイト……よろしくね♪レイちゃん」

 

「レイちゃんっ!?其れって、まさか俺かっ!?」

 

当たり前のように放たれた愛称に、謎生物基レイトは驚愕する。今までに呼び捨てや種族名、様付けなどはあった様だが愛称は初めてだったらしく、驚きを隠せない様だ

 

「レイトだから、レイちゃん!いやぁ久々だったけど良いネーミングだ」

 

「ネコリアだっけ?楽しそうだな」

 

「気軽にネコちゃんで良いわよ〜。にしても、レイちゃんは強そうな魔物ね♪」

 

「ああ、キメラだからな。そうだ!こんな事も出来るぞ」

 

何かを思いついたレイトは、そう言うと姿を変化させる。リムルの《擬態》や自分の《変幻》を見慣れた彼女にはありふれた光景だが、変化を終えたレイトの姿に唖然とする

 

「これが人間態だ………ん?どうした?ネコちゃん」

 

「えっ………ううん、にゃんでもない………」

 

かつて、救えなかった大事な友人の姿を男性寄りにした姿、その姿に自然とネコリアは涙を流していた。レイトに指摘されるまで、自分の毛が濡れている事に気付かない程、彼女はその姿に釘付けになっていた

 

((ネコさん。泣いてるの?ネコさんに涙は似合わないよ、何時もみたいに笑って欲しいな))

 

「………おかしいわね、お別れはすませたのに。シズちゃんの声が聞こえるにゃんて……」

 

「シズさん………そうか!俺がここに来た理由はコイツ(・・・)かっ!」

 

シズの名を聞いた瞬間、レイトが何かを懐から取り出す。其れはスタンプの様な謎の物体、彼はそのスタンプを見ながら何かを理解した様に頷く

 

「それは?」

 

「これはバイスタンプ、この中にシズさんの魂が入ってるんだ」

 

「シズちゃんの魂……そう、レイちゃんの世界のシズちゃんは助かったのね…良かった」

 

「…………ネコちゃん」

 

救えなかった、救いたいと願い、自分の力で延命させようともした。それでも救えなかった命、その命が別世界で繋がった事にネコリアは優しく笑った

 

「レイちゃんに会わせてくれてありがとう。アナタは多分、あたしを知らないけど、あたしはアナタを知ってる。だからありがとう、それから………ごめんなさい、助けてあげられなくて…」

 

「ネコちゃん。シズさんはきっとネコちゃんに謝って欲しいなんて思ってないぞ?きっと、さっきの声みたいに笑ってて欲しい筈だ」

 

「ふふっ……不思議ね、レイちゃんには説得力があるわ。ありがと♪」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、この場に配下のスイヒョウたちが居たならば御約束の言葉が飛び出すだろう光景にレイトも笑う。刹那、光が彼を包み込む

 

「………ネコちゃん、お別れみたいだ」

 

「みたいね。レイちゃんに会えて良かったわ、もしもいつかまた会えたら今度はあたしの配下を紹介するわね」

 

「ああ、俺の配下にも会ってくれよ。みんな良い奴らだから、ネコちゃんとも直ぐに仲良くなれると思う」

 

「ええ、是非。じゃあまた」

 

「ああ、また」

 

「「いつか会う日まで」」

 

光と共にレイトは姿を消し、ネコリアだけが残される。見慣れた修行場で空を見上げていると、ぴこぴこと猫耳が動く

 

「ネコリア様!おはようございますですわ」

 

「わふっ!お散歩行きたいぞっ!ネコリア様!」

 

「ネコリア様!見てください!新鮮なタマネギが取れました!」

 

「申し訳ありません!ネコリア様!フウとクウがどうしてもと言うものですからっ!」

 

「ネコ様。遊んで」

 

「遊んで…」

 

「ったく…少しは静かに出来ねぇのかよ。邪魔して悪ぃ、アネキ」

 

騒がしくも何時も通りの配下たちに、ネコリアは優しく笑い、口を開く

 

「丁度良かった、あたしの話を聞いてくれる?不思議な不思議なもう一人の盟主の話を」

 

これはネコリア=テンペストが遭遇した不思議な一日の御話。後に彼女は、「あたしのもう一人の友達は相棒と親友とあたし、同じ名を持つキメラ」であると語った




此度はこの物語を彩る素敵なキャラをお貸しいただいた、仮面大佐さんに感謝の意を。ネコリアの唯一の心残りを拭う機会を下さり、誠にありがとうございます。これからも我等がネコちゃん率いる《転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます》と仮面大佐さんの《転生したらキメラだった件》を末永く宜しくお願い致します。ではでは次回は本編でお会いしましょう♪


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出会いは突然に、飲み友達が出来ちゃった

今回の見所!コラボ回!ネコちゃんが知らない魔物に出会い、友情を育む話です!御相手はポンコツNOさんの作品《転生したらデモンズだった件》です♪

此方の作品は仮面ライダーをコンセプトにハラハラドキドキな展開が繰り出されるアクション系の作品!しかし、今宵のコラボは我が家のギャグテイスト全開で御送りしちゃいます♪


「………………にゃんか、知らない気配があるわね。しかも場所は歓楽街の方角………ソウカ。聞こえる?」

 

『はい、聞こえます。どうかされましたか?ネコリア様』

 

何時もと変わず、仙術修行に励んでいたネコリアは感じた事のない気配に気付き、瞳の役目を持つ隠密部隊のソウカに《心理意識》で呼び掛ける

 

「知らない気配がしたんだけど、見覚えのない魔物又は人間はいる?」

 

『見覚えのない魔物………ライメイ様が何者かと交戦中との報告がナンソウから上がっております。如何なされますか?』

 

「直ぐに向かうわ。ソウカはエンカを連れて、援護に廻りなさい」

 

『御意!』

 

直ぐにネコリアは行動を起こした。《変幻》で人形となり、森を駆け抜け、騒ぎの中心である歓楽街・ネコリアに足を急がす

 

「何者かは知らんが、我が国での勝手な振る舞いは許しておけんな。このライメイが相手になろう」

 

「待ってください、ライメイ様。ネコリア様が向かっておられます」

 

「わふ!嗅いだことない匂いだぞっ!」

 

「鬼人に龍人族………それに犬耳の幼女?なんだ……この街は……テンペストだよな?どうなってるんだ?」

 

ライメイ、ソウカ、エンカの三人を前に何かを呟きながら佇むのは赤い髪の青年。テンペストの名を呟くのを見るとこの国を知る者であるのは確かだが、彼女たちは彼を知らない

 

「待たせたわね」

 

緊張感のある空気感が流れる中、その鈴の音の様な透き通る声は響いた。ゆっくりと降り立った彼女は真っ直ぐと青年に視線を向ける

 

「それで?アンタたち(・・)は何者?あたしの(テンペスト)に何の用事かしら?」

 

「お前の(テンペスト)?何を言ってんだ?お前こそ何者だ?人に尋ねる時は自分から名乗るのが筋だろ」

 

「そうね、失念していたわ。あたしはジュラ=テンペスト連邦国軍事司令部参謀長兼最高幹部のネコリア=テンペスト。盟主リムル=テンペストの右腕よ」

 

「テンペスト?どうなってるんだ?コイツは……」

 

『なんか分かんないけど、異世界ってヤツかもな。プロスがいない世界線とかの』

 

「異世界?なんだってそんなことに……」

 

名乗ったネコリアに対し、何か思う所がある様子の青年は一人で呟き始めるが彼女は理解していた。彼の中にもう一人の存在がある事を見抜いていた

 

「異世界……アンタ……あたしの知ってるリムル=テンペストとは違うリムル=テンペストが居る世界線から来た迷い人ならぬ迷い魔物ね?納得したわ」

 

「俺もなんとなくは理解した。でも、ここは確かに魔国連邦(テンペスト)なんだよな?」

 

「そうね、確かに魔国連邦(テンペスト)よ、でもアンタたち(・・)が知る魔国連邦(テンペスト)とは異なる部分もあると思うわ。例えば、この歓楽街はあたしの名前を冠する街だから、アンタたち(・・)の世界には存在していない筈よ」

 

「言われてみれば………見たことない街並みだ。所々に前世でしか見た事ない食べ物があるし……ん?アンタたち(・・)?」

 

『えっ?なに?見えてる感じ?』

 

「勿論、ずっとあたしの《千里眼》には見えてるわよ、アンタの中にいるもう一人が。自己紹介をしてもらえるかしら?」

 

存在を認識されていたもう一人と青年は全てを見透かす瞳に諦めたのか、口を開く

 

「俺はプロス=テンペストだ。よろしくな、ネコリアさん?」

 

「ネコちゃんで良いわよ」

 

『ネコちゃんか!よろしくなー!ネクスだ!』

 

「プロスにネクスね………あだ名はプーちゃんにネっくんね」

 

「プーちゃん!?」

 

『ネっくん……やだ!斬新!』

 

当たり前のように放たれた愛称に、青年基プロスは驚愕するが、ネクスの方は気に入ったらしく、喜んでいる

 

「プーちゃんも魔物なのよね?見た目は人間みたいだけど」

 

「ヒューマンミュータントだ。ネコちゃんはネコなのか?やっぱり」

 

「猫又よ。前世では人間だったんだけどね」

 

「同じだ!実は俺も」

 

其処からのプロスの話を纏めると彼もまた転生者で経緯は違うがリムルと出会い、魔国連邦(テンペスト)を建国し、彼と共に生きているとの事だ

 

「ネコちゃんは三百年も前からいるのか、この世界に」

 

「そうね。其れこそ、ヴェルドラとは長い付き合いだわ、リムルよりも深かった……プーちゃんはいる?そう思える相手が」

 

「あー………うん……まぁ……居ないと言えば嘘になるかな?何時も心配掛けては怒られてばっかりだけど………アイツ(・・・)は俺の……」

 

「ストップ」

 

歯切れ悪く答えようとする彼の中に何かを感じ、ネコリアが口に指を当て、塞ぐ。その顔には魔性の笑みが浮かび、直ぐに優しく笑い掛けた

 

「ネコちゃん?」

 

「其れは本人に言ってあげないとダメよ?あたしは恋の後押しはするけど、結果を聞くつもりはないの。その先をどうするかはアンタ次第………だから、その時が来るまでは自分の胸に仕舞っておきなさい♪」

 

彼女也の配慮、伝えるべき相手に伝えるまでは言葉にするべきではないと諭し、その気持ちを中に仕舞わせる

 

「ああ、そうする。ありがとな、ネコちゃん」

 

『ネコちゃんって姉貴感あるな』

 

「まあねー。あっ、家にお酒があるんだけど飲む?」

 

「良いのか?」

 

『待て待て。プロスは禁酒中だろうに』

 

先程までの姉貴感は何処にと言わんばかりに酒にプロスを誘うネコリア。乗り気なプロスをネクスが止める

 

「お前……酒の誘いを断るのは失礼だろ」

 

「全くよ。ちなみにあたしも禁酒中よ」

 

『余計にダメじゃん!!!』

 

「良いのよ。エッチなスライムにバレなきゃ」

 

「だな。あのエロスライムにバレなきゃ大丈夫だ」

 

「………………誰にバレなきゃ大丈夫だって?」

 

その声は背後から聞こえた。汗が滝の様に流れ、恐る恐る振り返る二人。その先には綺麗な笑顔のスライムが立っていた

 

「あ、あら………リムちゃん……き、奇遇ね……」

 

「は、はじめまして……プロスだ……」

 

「正座しなさい。あと人をエッチなスライム呼ばわりしたことも許さないからな」

 

其処からは地獄、リムルの説教に半日間の拘束を受けたネコリアとプロスは陽が傾く頃に解放されたが既に燃え尽きていた

 

「あのエロスライム………」

 

「あとでシオンちゃんのフルコースを食べさせてやるんだから………あら?プーちゃん、にゃんか光ってるわよ?なにそれ?ハンコ?」

 

リムルの愚痴をこぼしあっているとプロスの手にしていた判子基スタンプが光を放つ

 

「ん………ああ、これが原因だったのか。なんだっけなこのスタンプ……」

 

『キャットだな』

 

「そうそう、キャットだ。コイツを使ったら、ここに飛ばされたんだ」

 

「ふぅん?不思議なスタンプねー、前に見たことある気もするけど」

 

「えっ?マジ?何処で?」

 

「忘れちゃった♪」

 

「『忘れたのかよっ!!!』」

 

意味深な発言から一転、まさかの答えにプロスとネクスが突っ込みを放つと持っていたスタンプを起動させる

 

《キャット!》

 

「今度はネコちゃんが俺の世界に来てくれよな」

 

『そこ、俺たち(・・)の世界の間違いだろー?またなー!ネコちゃん!』

 

「ええ。きっとまた」

 

「「いつか会う日まで」」

 

光と共にプロスは姿を消し、ネクスの気配も消え、ネコリアは夜空を見上げる

 

「次に会う時は恋の顛末を聞かせてもらいたいわね。あたしも何時かは…………待っててね、ヴェルちゃん」

 

これはネコリア=テンペストが遭遇した不思議な一日の御話。後に彼女は、「ヒューマンミュータントは飲み友達」であると語った

 




此度はこの物語を彩る素敵なキャラをお貸しいただいた、ポンコツNOさんに感謝の意を。ネコリアに気の合う飲み友達が出来て、本当に嬉し国思います。これからも我等がネコちゃん率いる《転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます》とポンコツNOさんの《転生したらデモンズだった件》を末永く宜しくお願い致します。ではでは次回は本編でお会いしましょう♪


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第一章 この度、猫又に生まれ変わったスーパーヒロインちゃんです!
第一話 溺れて、死んで、転生したら猫になりました


今日、転スラの映画を見てきて、書きたくなった!故に暖め続けた新たなギャグ作品を投下しまーす!


「う〜む……何処かに良いバイトは転がってないもんかにゃぁ………」

 

茜色に染まる夕焼け空の下、河川敷を歩く一人の女性。猫耳を彷彿とさせる髪型を風に揺らし、手に持つのは求人募集雑誌、何を隠そう彼女は職探し中なのである

 

「接客業、サービス業、営業、受付嬢、アパレル関係、調理関係………駄目だわ。どれもこれも前に極めたヤツしかない……はぁ…」

 

彼女は高校卒業後から二十代後半となる今までに数々の職を経験し、技術を身に付けてきた。然しながら元来の性格が熱しやすく、冷めやすい彼女は如何なる職業も長続きしない、金を貯めれば辞め、無くなれば働くという無限に続くループを何度も経験しているのだ

 

「そう言えば、最近はネット小説が売れる傾向にあるのよね……小説家とかありか?いやいや待て待て、あたしに文才は皆無。国語は毎回最下位だったわ。あっ、でも漫画なら………駄目だ、絵も描けないわ」

 

湧き上がる意欲は即座に自らの持たざる力である為に諦め、再び求人募集雑誌に視線を落とす

 

「ヘルプ!ヘルプ!」

 

「ケンちゃん!?」

 

「大変だ!ケンちゃんが!誰か助けてェェェ!」

 

「ん………何事?」

 

突如、聞こえた騒がしい声。視界を巡らせ、彼女は辺りを見回す。すると川岸で叫ぶ数人の子どもが視界に入る

 

「おいおい、溺れてない?まさかだけど…近くに誰も居ないのかな?うーむ……困りましたな、これは」

 

(誰かを助ける為に理由なんかいらないさ。父さんはレスキュー隊員だからな!)

 

(人を救うのが医者である母さんの役目よ)

 

ふと、浮かぶのは十年前に事故死した両親の言葉。本当は見て見ぬ振りをするつもりだった、他の誰かが助けるだろうと思っていた、なのに。彼女は走り出していた

自分でも理解が追いつかないくらいに、何故かも分からず、無我夢中で走っていた

 

「退きなさい!子どもたちっ!」

 

「「誰っ!?」」

 

騒いでいた子どもたちは、突然現れた女性に驚きを示す

 

「スーパーヒーローよっ!あっ、この場合はスーパーヒロインか?」

 

見た目は御世辞にも助けに来たとは言い難い残念な事を口走る彼女であるが、溺れる子どもには救世主に見えた

 

「ヘルプ!」

 

「捕まれっ!少年!」

 

差し出された手を、子どもが掴み、岸に引き上げようと踏み込んだ時だった。足を滑らせ、彼女は子どもと入れ替わるように川に放り出された

 

「わぷっ!?ちょっ!泳げない!助けてェェェ!ヘルプ!」

 

「「「アンタが溺れるんかィィィ!!!」」」

 

唐突な展開に突っ込みが放たれたのも束の間、彼女は意識が薄れゆくのを感じる。思えば、碌な人生ではなかった

男に振られ続け、動物にも好かれず、友人さえも居ない、花のある人生など送ってこなかった

 

だからこそ、彼女は願った

 

(もしも………来世があるなら……誰にも……ううん……全てに縛られない……自由になりたい……猫とかいいなぁ……)

 

《確認しました。ユニークスキル彷徨者(サマヨウモノ)を獲得》

 

この日、彼女は、穂川(ほがわ)亜結(あむ)は命を落とした。然し、後に彼女が救った少年は語った、「僕の命があるのは、名前も知らないスーパーヒロインのお陰であると」。だが其れを彼女が知ることはなかったのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『起きろ』

 

「ん………日曜くらい、ゆっくりと寝かせてよぉ〜。母さん」

 

自分を呼ぶ声に気付き、彼女は目をゆっくりと開ける。周囲を見回し、その声の主を探す

 

『我は貴様の母ではない。それとニチヨウとは何だ?よく解らんことを言うヤツだ』

 

「いや日曜は日曜でしょ、月火水木金土日の日曜…………って、誰ェェェ!?」

 

『喧しいヤツだ。我が名は暴風竜“ヴェルドラ”。この世界に4体のみ存在する竜種が一体である。貴様は何という?小さき獣よ』

 

ドラゴン、そう名乗ったヴェルドラの言葉に暫くの間、沈黙していた彼女はうん?と首を傾げ、獣という単語が気になった。近くを見回し、僅かに光る水面を見付け、ゆっくりと近付く

 

「あら、可愛いネコちゃん………はい?」

 

水面に映る姿、ぴこぴこと動く猫耳、ふりふりと揺れる鍵尻尾、くりくりと動くアーモンド型の猫目。まごう事なき黒猫が其処には佇んでいた

彼女は、ゆっくりと目を閉じ、息を吸うと、「せーの!」と心の中で呟き、口を開く

 

「何じゃこりゃァァァ!!!」

 

(…………声を掛ける者を間違えたか)




可愛いネコちゃんに転生した亜結さん、彼女は謎の固形物質と出会う

NEXTヒント 喋るゼラチン

えっ?ヒロイン?なんですか、其れは。強いて言えば亜結さんがヒロインですな


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第二話 なんだかんだで、三百年も生きてます。だけど、名前はありません

はい、二話目です。ネコちゃんの可愛さに惚れてくれる人が居たら、嬉しいです


「テンセイ?なによ、それ?新しい妖精の種類?」

 

『転生というのは、命を落とした者が新たな生命に生まれ変わる現象のことだ』

 

「ふぅ〜ん、不思議な現象があるのね」

 

彼女は現在、ヴェルドラに自らの現状についての説明を受けていた。信じ難いが今の自分の身形を見る限りは人間でない事は明白、転生したと言うのは事実なようだ

 

『この世界に来る者は転生者の他に召喚された者などが存在する。こういう者供を我は転移者と呼んでおる』

 

「テンイ……寒さを感じた時に使う単語よね」

 

『其れはサムイだ』

 

「軽量の物を示す単語」

 

『カルイだ』

 

「なにもやりたくな〜〜い」

 

『ダルイ………って!貴様!我をおちょっくっておるのか!』

 

「だって、暇なんだもん。話し相手がヴェルちゃんだけだと」

 

『ヴェルちゃん……?其れは我のことか…?』

 

当たり前のように放たれた愛称に、ヴェルドラは目を点にする。何百年と生きる彼であるが自分を愛称呼びしてきたのは、彼女が初めてだった

 

「ヴェルドラだから、ヴェルちゃん!いやぁ我ながら良いネーミングだ」

 

『グハハハハハハハハ!中々に面白いヤツよ!』

 

「おっ、初めて笑ったわね」

 

自分のネーミングセンスを褒め称える彼女に、ヴェルドラは轟かんばかりの笑い声を挙げる

 

『然し、実に珍しいな。獣でありながらも言葉を理解する知能と膨大な魔素を持つとは………なるほど、理解したぞ。御主の種族は猫又という種族に違いない』

 

「猫又……?なにそれ」

 

会話する中で、彼女が何者であるかを思考していたヴェルドラが答えに行き着くと、聞き慣れない名前に彼女は首を傾げた

 

『猫又、又の名を仙猫(せんびょう)とも呼ばれている。その別名が示すように仙術を扱う猫の魔物だ、異世界風に呼ぶとするならば……ヨウカイだったか?そう呼ばれる種族だ』

 

「妖怪………なんかヨウカイ?なんちゃって♪」

 

『……………』

 

「ちょっ!反応してくれないっ!?流石に無視はキツい!」

 

渾身のギャグに反応しないヴェルドラに異議を申し立てると、暫くの沈黙の後に口を開いた

 

『今、お前の葬り方を考えておるのだが、生で食べられるのと焼いてから食べられるのでは何方が好みだ?』

 

「そうねぇ〜、やっぱり焼いてからの方がオススメかなぁ。あっ、焼き方はウェルダンでお願い。よく焼かないとお腹壊しちゃ----って食うなァァァ!危うく焼き加減の説明しそうになっちゃたじゃない!」

 

突然の食べ方に対する問い、一度は納得したように焼き加減の説明をしていた彼女であったが即座に我に返り、ヴェルドラに突っ込みを放つ

 

「ヴェルちゃんのハゲ!」

 

『ハゲとはなんだ!猫風情が調子に乗るでないわっ!』

 

「なにおうっ!?猫舐めんじゃないわよっ!猫はな、自由気ままなんだぞっ!猫舐めんなコラァ!!!」

 

彼女は軽口を叩き合いながらも、ヴェルドラと過ごす時間を楽しく思っていた。思えば、転生前は友人と呼べる者など存在せず、本来の性格を表に出せないでいたが今は違う。言い合いを出来る友人?が居る、其れが彼女は嬉しくて堪らなかった

其れから何年、何十年、何百年と月日が流れた。他愛もない話を、変わらぬ日常を繰り返す中で、ヴェルドラと過ごす時間は彼女の中で欠かせぬ風景と化していた

 

『ネコよ。お前がこの世界に来て、どのくらいの月日が経つ』

 

「そうねぇ……十年過ぎた辺りから、馬鹿らしくなって数えるのやめたけど、三百年くらいは経ったんじゃない?多分だけど」

 

『まだそのぐらいか。我は四千年は経過したと思っていたが』

 

「いや其れはないわよ、ヴェルちゃん。というか四千年って、あたしが前にした中国四千年の話を引きずってじゃん」

 

『グハハハハハ!バレたか!相変わらず、察しがいいな!ネコは!』

 

ネコ、其れは共に過ごす中でヴェルドラが彼女に付けた愛称だ。この世界に於いて、名を持つ魔物は特別な進化を遂げ、特別なスキルを得ることが出来る。然し、彼女には未だ名は無い、故にヴェルドラは「ネコ」と呼び始めたのだ

 

『お前に聞かされるマンガという聖典の話も中々に興味深いが、新しい話は無いのか?』

 

「無理言わないでくれる?あたしだって、最後まで読めてないのが何百万冊もあんのよ?そう簡単に新しい話があるかっての」

 

『それもそうだ………ん?ほう?これは……ネコよ。楽しめそうなモノが迷い込んだようだ』

 

「うわぁ〜、ヴェルちゃん。すっごい悪いこと考えてない?」

 

漫画についての問答をしていた二匹。ヴェルドラが何かを感じ取り、企むような表情を浮かべると彼女も呆れたようにため息を吐く

 

『うむぅ………やっぱりスライムだよな?これ?いやいや生まれ変わるにしてもスライムって……』

 

近付いてきた何かは水色のぷるぷるした生物?謂わゆるゼラチンの塊にも見える固形物質だ

 

『聞こえるか?小さき者よ』

 

「小さき者っていうかゼラチンのバケモノよ、アレは。ヴェルちゃん」

 

『バカモノ、アレはスライムだ。相変わらず物を知らんヤツだな。ネコは』

 

「もしも〜〜し?聞こえる?お〜〜い、ゼラチンく〜ん?コンコン、お留守ですか〜?」

 

『ゼラチンちゃうわ!というか最後の明らかに有名映画のセリフだよなっ!?』

 

「あっ?知ってる?いやぁ、あたしね。あれ好きなのよ〜」

 

ゼラチン基スライムの発言に、彼女はけらけらと笑う。元ネタを知る者に出会えたことが嬉しくて堪らないようだ

 

『ネコよ。此奴、視界が無いようだ』

 

「あら、そうにゃの?仕方ないわねェ。スライムちゃん」

 

『は、はい?』

 

「今から、あたしの言うようにやってみてくれる?」

 

彼女の言葉にスライムは同意を示し、言われるがままに、“魔力感知”と呼ばれる、周りの魔素を感知するスキルを獲得し、ぱちりと開いた視界を巡らせる

 

『どうだ?』

 

『はいっ、ありがとうございます!今なら何でも視えそうな気がします!』

 

「何でも?うわぁ〜、ちょっとヴェルちゃん。このスライムヤバイわよ。エロに忠実よ、スケベだわ」

 

『エロくないやいっ!』

 

『揶揄うな。ネコよ』

 

「ふふっ、ごめんごめん。それじゃあ、改めて名乗るわね?」

 

スライムを弄り倒していた彼女は、くすくすと笑った後、ヴェルドラと共にスライムを真っ直ぐと見据える

 

『我が名は暴風竜“ヴェルドラ”。この世界に4体のみ存在する竜種が一体である』

 

「あたしは猫又、名前は未だ無いけど気軽にネコちゃん♪って呼んでね〜♪」

 

『ど、ドラゴンンンンンッ!!?其れに………ネコちゃん?可愛いな、おい』

 

「とーぜんよ♪よろしくね、エッチなスライムくん」

 

『エッチじゃないやいっ!』

 

これが後に世界を騒がせるスライムと猫又の出会い。この世界に二つの混沌が生まれた瞬間である、と後に暴風竜は語ったという




スライムとの出会い、其れはヴェルドラとの別れを意味していた。彼が最後にネコへと送るモノとは……?

NEXTヒント 友からのプレゼント


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第三話 親友からの最初で最後の贈り物は名前でした

今回の話はネコちゃんの名前が決まります!果たして、その名前とは!?


『ヴェルドラさんとネコちゃんは、此処に住んでるんですか?』

 

先ずは、スライムが切り出す。自分以外の存在に出会えた喜びからか二匹の事に興味津々な様子だ

 

『うむ、三百年前に勇者に封印されて以来このままよ。ネコはその少し後に転生してきた異世界人よ』

 

『えっ?ネコちゃんも転生者っ!?』

 

「そうよ、元々は日本人の美少女だったわ。其れはもうモテて大変だったんだから」

 

『マジでかっ!?』

 

『ネコよ、嘘を吐くな。お前、我と出会う前は《ぼっち》という枠組みだったと言っておったではないか』

 

「負け犬ならぬ負けドラゴンなヴェルちゃんには言われたくないんですけど〜。知ってる?スライムくん、暴風竜が聞いて呆れるのよ〜、ヴェルちゃんは。勇者の容姿に見惚れた隙に「絶対切断」と「無限牢獄」の二つを叩き込まれて、負けたんだって〜。プークスクス」

 

『ネコよ、今日の夕飯はお前を喰ってやろう。生で食べられるのと焼いてから食べられるのでは何方が好みだ?』

 

「そうねぇ〜、やっぱり焼いてからの方がオススメかなぁ。あっ、焼き方はウェルダンでお願い。よく焼かないとお腹壊しちゃ----って!食わせるかァァァァ!」

 

和やかに会話していたと思えば、突然の喧嘩にスライムは戸惑いを見せる。しかしながら、このやり取りは二匹からすれば、当たり前で恒例とも呼べる鉄板のネタである

 

『なぁ!二人とも、俺と友達にならないか?』

 

『友達だと!?暴風竜である我と友達だと!?』

 

スライムの発言に驚きを示すヴェルドラであったが、彼女は違った。澄ました顔を見せた後、優しく笑った

 

「良いわよ。二人で、《ぼっち》なヴェルちゃんをおちょくりましょう」

 

『抜け駆けは許さんぞっ!ネコよっ!良かろう!仕方ないから、友達になってやろう!ありがたく思うが良い!』

 

『寂しがり屋かっ!!』

 

彼女の友達宣言に、対抗意識を燃やしたヴェルドラもスライムの提案を受け入れる。その様子に暴風竜の本質を見たような気がしたスライムが突っ込みを放つ

 

「それでいてツンデレだったりもするわよ。これが更にツインテールな妹で、ニーハイを履いて、ドジっ子とかなら、全部盛りよ」

 

『ネコちゃんはアニメの見過ぎだ。それで、二人はこっから出ようとは思わないのか?』

 

『我は封印されておるからな。脱出方法、解除方法にも心当たりがない。それにな……実は後100年ほどで我の魔力が底を尽く。魔素が漏れ続けておってな』

 

「あぁ、通りで最近のヴェルちゃん。魔素臭かったのね」

 

『臭いっ!?我は臭かったのかっ!!!ネコよっ!』

 

「超臭いわね」

 

『なんだとォォォ!!!』

 

『ネコちゃん……絶対に好きな子とかいじめちゃうタイプだったでしょ』

 

「あっ?分かる?」

 

ヴェルドラを弄ることを嬉々として楽しむ彼女の姿に、スライムは転生前の彼女が如何なる私生活を過ごしていたのかを理解した

 

『とりあえず、試してみるか。《大賢者》、《捕食者》で《無限牢獄》を捕食しろ』

 

「どう?スライムちゃん」

 

『駄目みたいだ。俺のスキルが可能性を検討してるけど……ネコちゃんはなんかない?』

 

「あるなら、三百年もヴェルちゃんと洞窟暮らししてたりしないわよ」

 

『ごもっともで……あっ、解答がきた。ふむふむ……なるほどな』

 

『ネコよ。今だから言うが、我はお前のことを親友というのか?友達よりも更に上のように思っていた』

 

自らのスキルからの解答に反応を示すスライムの姿に、ヴェルドラは何かを悟ったらしく、長年の友である彼女に秘めたる想いを吐き出す

 

「あら、嬉しいわね。あたしもヴェルちゃん……ヴェルドラをナイスフレンドだって、思ってたわ」

 

『グハハハハハ!相変わらず、面白いヤツだなっ!お前はっ!スライムよ、お前のスキルが導き出した答えを聞かせるが良い!どのような結果であろうと我は受け入れるぞ』

 

『ヴェルドラには俺の胃袋に入ってもらわなきゃならない。絶対にまたネコちゃんと再会させる、だから少しだけで良いから時間をくれるか?』

 

『良かろう、我の全てをお前に委ねる』

 

「あら、即決?流石は天下無双の暴風竜ね」

 

『あっ!ネコちゃん!』

 

「なぁに?スライムちゃん」

 

覚悟を決めたヴェルドラを褒める彼女に、スライムが声を掛ける

 

『ネコちゃんのユニークスキルを少しだけ貸してほしいんだけど、良いかな?』

 

「ユニークスキル……ああ、彷徨者(サマヨウモノ)ね。構わないけど、どうして?」

 

『ネコちゃんのスキルって、支配系を跳ね返す効果があるんだよな?』

 

「そうみたいね、使ったことはないけど」

 

『なにっ!?ネコのユニークスキルにそのような効果があったのかっ!?』

 

「ふふっ、仕方ないわね。他でもない親友を救う為だもんね。良いわ、あたしのユニークスキルを少しだけ貸すわ。この毛に力を集束させるから、待っててね」

 

『ありがとう!ネコちゃん!』

 

長い月日を過ごした親友、彼女の中でヴェルドラは誰よりも大切な存在だった。彼の居ない世界は考えられない、故にスライムからの提案は彼女には願ってもない申し出だった

 

『それじゃあ、今からお前を《捕食者》で食うぞ』

 

『待て。その前に、名前を付けてやろう。無論、我が親友のネコにも』

 

『名前?』

 

「あら、嬉しいわ。最後のプレゼントって訳ね」

 

『そうなるな……同格と云う事を、魂に刻むのだ。そして、お前たちも我に名前を付けろ。人間が言うところのファミリーネーム?というヤツみたいなものだ。我がお前たちに付けるのは、"加護"になる。お前たちはまだ"名無し"だが、これでネームドモンスターを名乗れるぞ!』

 

『ネームドモンスター……いいな!』

 

「可愛い名前にしないと怒るわよ」

 

『う~ん……暴風竜だから…………暴風……嵐?そうだ!テンペスト!《テンペスト》はどうかな!』

 

「すごい安直ねェ」

 

『素晴らしい響きだ!我の名は、今日からヴェルドラ=テンペスト!』

 

「って!気に入っとるっ!!!」

 

安易なネーミングセンスに意を示す彼女とは裏腹に、御満悦気味のヴェルドラは轟かんばかりの咆哮を挙げていた

 

『スライムよ、お前には〝リムル〟の名を授ける。リムル=テンペストを名乗るが良い!そして、我が親友よ、お前に授ける名は、何十、何百、何万と考えたが、長年に渡り呼んできた仮名を含む名を授ける、〝ネコリア〟、ネコリア=テンペストを名乗るが良い』

 

「確かに受け取ったわ、素敵な名前をありがとう。またね、ヴェルちゃん」

 

『うむ、また会う日まで達者でな。ネコリアよ』

 

〝名前〟という最高の贈り物を残し、ヴェルドラはスライム基リムルの《捕食者》によって、胃袋に消えた

 

「さてと……外に出てみる?リムル」

 

『ああ、背中に乗せてくれるか?ネコリア』

 

「今まで通り、ネコちゃんで良いわよ」

 

『そっか、じゃあ行こう!ネコちゃん!』

 

「さぁ……振り切るわよっ!」

 

『何処の警視さんっ!?』

 

こうして、リムル=テンペストとその盟友であるネコリア=テンペストの異世界爆進劇が幕を開けた。この二人が後に世界を騒がせる最強コンビと呼ばれるのは、未だ少しだけ先の話だ




洞窟からの脱出を試みるリムルとネコリア、そんな二匹の前に現れたのは人間……?

NEXTヒント エッチなスライムと可愛いネコちゃん

結局、ネコちゃんやないかいっ!と思った方、だってネコちゃんにネコちゃん以外の名前が相応しい訳ないでしょう?だってネコちゃんですからね!


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第四話 実は似たモノ同士?二匹は我が道を行く

四話目!今回はちょっと短い!でもネコちゃんの可愛いさは相変わらず!


「ねぇ、リムちゃん?」

 

「どうしたんだ?ネコちゃん」

 

ヴェルドラとの別れから数十日。新たな友と名前を得たネコリアは、リムルと洞窟を彷徨っていた

 

「ヴェルちゃんとの別れから何日も経つのに、あたしたちが洞窟に居るのは、どうしてなのかなぁ?」

 

外に出ることを決意したからには直ぐに陽の光を浴びるつもりでいたネコリアは、最もな疑問をリムルに打つける

 

「仕方ないだろ。ネコちゃんは兎も角、俺はまだ生まれたばかりなんだぞ?スキルを出来るだけ、増やしておかないと」

 

「ふぅん?そういうもんなんだ。ってか、リムちゃんさ、普通に喋れたのね」

 

「これもスキルを利用してるんだよ。《超音波》って分かるか?」

 

ネコリアは生まれ変わってから三百年、それなりにスキルを得ているがリムルは違う。生まれ変わってからの日が浅く、自身の戦闘力に関しても低レベルなのだ。故に彼はスキルを得て、強くなる為に洞窟内で修行をしていたのである

 

「超女?なに?リムちゃん、そんな姿になっても女好きな訳ェ?エッチなスライムね、ホントに」

 

「エッチじゃないやいっ!超音波だよ!超音波!蝙蝠とかイルカが使うヤツ!」

 

「ああ、アレか。なるほどね、納得したわ」

 

既に恒例、御約束と化したネコリアのリムル弄りは流れるように行われ、暫くすると洞窟の奥に灯りが差し込んできた

 

「あら、扉。デカいわね」

 

「ネコちゃんが言うと何でも卑猥に聞こえるんだが……」

 

「知らないの?ネコはね、発情期が頻繁に来るのよ。つまりは生まれながらにエッチな生物なのよ」

 

「開き直り過ぎじゃね!?」

 

扉を前に軽く戯れ合う二匹。その姿はゼラチンを遊び道具に戯れる可愛らしいネコそのものであるが、二匹は妖怪と魔物である

 

「ふぅ、やっと開きやしたぜ。鍵穴まで錆びついちまってんだから」

 

「まぁ仕方ないさ。300年も手入れもされず、誰も入ったことないんだろ?」

 

「でも封印の洞窟を調査しろだなんて、ギルドマスターも無茶ぶりよねぇ」

 

刹那、扉が開く。現れたのは二人の中年男性と若い少女、一見すると洞窟には削ぐわない組み合わせだ

 

「ネコちゃん。あれは冒険者か?」

 

「男二人に女の子一人………間違いないわ、援助交際ね。あたしが人間だった頃に何度か経験したお小遣い稼ぎの仕方よ、アレは」

 

「ネコちゃんの人生はどうなってんのっ!?」

 

「大丈夫よ、やってたのは10歳くらいの時だから」

 

「何も大丈夫じゃないぞっ!?」

 

「それではお二人とも、あっしの近くに。隠密技術(アーツ)を発動させやす」

 

鋭いリムルとは裏腹に的外れな解答を返すネコリア。すると三人組の一人であるバンダナの男性が何かを言ったかと思えば、三人は姿を消した

 

「き、消えた?」

 

「なるほど、これから洞窟の奥でしっぽりするのね。邪魔しちゃダメよ?リムちゃん」

 

「ネコちゃんは黙ってなさい。さてとあいつらは何処に………ん?ネコちゃん?」

 

彼等を追おうとスキルを使用し、その行方を探るリムルはスキル《大賢者》とは違うもう一匹の相棒に呼び掛けるが返答が無い。それもその筈だ

 

「うわっ……太陽って眩しいのね」

 

「って!話聞けよっ!?」

 

我が道を行く彼女、ネコリアは既に洞窟の外に出ていた。猫又に転生したが故の性、将又、彼女の持って生まれた自由さであるかの何方かは分からないが、リムルにはこれだけは理解できた

 

(この子とやっていけるんだろうか………)

 

「第一村人はっけ〜〜ん!」

 

考え事をしていたリムルを現実に引き戻したのは、ネコリアの能天気な声。ふと疑問に思い、体の一部でクエスチョンマークを作る

 

「えっ?村人?」

 

「ほら、居るじゃない。あの木のとこに緑色の皮膚をした人が」

 

「緑色…?」

 

視線と前足に誘導され、木の影に視界を動かす。其処にはボロ布の服に、錆びた剣やボロボロの防具の緑色の魔物が立っていた

 

「いやアレ、ゴブリン!!!魔物だよっ!村人じゃないっ!」

 

「ゴブリン?なによそれ、可愛い名前ね。まぁ、あたしの可愛いさには敵わないし、届かないけどっ!」

 

「何を張り合ってんのっ!?」

 

こうして、二匹は第一村人ならぬ第一魔物に出会った。その時のことを後にゴブリンの一体は、こう感じたという

 

(本当ニ強キ者タチ………ナノダロウカ…?)

 

然し、この出会いは後に名を轟かせるある国の始まりの瞬間であったのを今はまだ……誰も知らない




ゴブリンと出会うネコリアとリムル、そして二匹は村に招かれることになるが……

ネコリアの真骨頂 実はエッチなところがある

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第五話 お肌のケアは大事だけど、仁義はもっと大事にしないとね

今回の見所、ネコちゃんが可愛い!以上!


「グガッ……強き者達よ……この先に何か用事がおありですか?」

 

『強き者?俺たちのことかな…ん?ネコちゃん?』

 

ゴブリンの言葉に疑問を抱くリムル、然しながら彼女は違った。ネコリアは一歩を踏み出し、口を開く

 

「強き者ですって……?あたしは可愛いネコちゃんよっ!其処を間違えないで欲しいわねっ!」

 

「ヒィィィィィ!!!」

 

「何してんのォォォ!?お前ェェェ!!!」

 

指摘する所が的外れなネコリアに、ゴブリン達は慄き、リムルは突っ込みを放つ

 

「見て分からない?あたしが如何に可愛いかを教えてあげてるのよ」

 

然し、本人は悪びれた素振りも見せずに平然とした表情である

 

「どんな自己主張!?すまない、俺の友達が……あー、俺はリムルだ。見ての通りのスライムで、こっちの猫は」

 

「可愛いネコちゃんよ」

 

「あーうん、可愛いネコちゃんは猫又のネコリアだ」

 

「気軽にネコちゃんって呼んでね〜♪」

 

自己紹介という名の自己主張の中にも可愛いさを忘れないのはネコリアらしいと言えば、ネコリアらしいがゴブリン達からすれば、其れは二の次だ

 

「あなた様の力は十分にわかりました!それに謝罪など恐れ多い!」

 

「謙虚な子たちね。リムちゃんも見習いなさいよ」

 

「その言葉、そっくりネコちゃんに打ち返すよ」

 

「なら、あたしはそれを更に打ち返すわ」

 

「なにおうっ!だったら、俺はそれを更に打ち返してホームランにしてやるっ!」

 

「それで、ゴブリンちゃんたちは何しに来たの?」

 

「は、はい……強力な魔物の気配がしたので警戒に来た次第です」

 

(あれっ!?無視っ!?)

 

既にリムルとのキャッチボール漫談に飽き、ゴブリンたちと会話していたネコリア。完全に出遅れ、蚊帳の外であるリムルは心中で突っ込みを放つ

 

「強き者って、まさかだけど……あたしとリムちゃんだったりする?」

 

「さ、左様です……そのようなお姿をされておりますが……御二方の妖気(オーラ)は強大です」

 

妖気(オーラ)……なるほど、可愛いって罪ね」

 

「ネコちゃん、お願いだから話を脱線させるのはやめてくれ。すまんな、話を続けてくれ」

 

「は、はい」

 

妖気(オーラ)を可愛さだと解釈するネコリアに軽く釘を指し、リムルはゴブリンに話を続けるように促すと彼等はこの先に自分たちの村があると説明し、二匹を案内する

だが、村と言っても周囲には柵は勿論ながら囲いも存在しない簡素な造り、いわゆる集落と言う呼び方が相応しい場所だ

 

「ようこそおいで下さいました。私はこの村の村長をさせていただいております」

 

中でも、比較的に普通?と呼べなくもない家に案内されると年老いたゴブリンが姿を現す

 

「お肌のケアがなってないわね」

 

「いきなり失礼なことを言わないっ!すいません、村長さん!あとできつく叱っておきますんで!」

 

「いやいや、謝罪などは結構。貴方様方の御力は息子から聞き及んでおります。何とぞ、我らの願いを聞き届けては貰えませんでしょうか」

 

村長からの申し出に、ネコリアも、リムルも、顔を見合わせた後に頷き合うと村長に視線を移す

 

「内容によるな」

 

「言ってみなさい」

 

「我らの神がひと月前にお姿をお隠しになられたのです。そのため近隣の魔物がこの地に目を付けたのです」

 

(…………あれ?なんだろう……俺のせいだったりするのかな……いやいや、ヴェルドラ関係ではないよな、うん)

 

(ヴェルちゃんね。ということはリムちゃんが原因か)

 

神、その存在に身に覚えがある二匹は思考の中に一体の竜が浮かび上がる。その存在が消えた、つまりはリムルの腹の中という現実、其れは必然的にリムルが原因である事を示していた

 

「良いわ。あたしたちが力を貸してあげる」

 

「おぉ!誠ですかっ!」

 

「ちょっ!?ネコちゃん!?」

 

「リムちゃん……リムル、今だから言うけど、あたしはスーパーヒロインになりたかったのよ。誰かに頭を下げられて、助けてなんてお願いされたら……」

 

唐突な相棒の発言に驚きを見せるリムル、然し。ネコリアは何時もとは異なる真剣な表情で、彼を見る

 

「断れないじゃない」

 

「ね、ネコちゃん……うん、そうだな!村長!その喧嘩、俺とネコちゃんが協力してやろう」

 

「ありがとうございます!その見返りに、我々の忠誠を御二方に捧さていただきます!」

 

村長が宣言した、正にその時だった

 

ウォォーーーンン

 

遠吠えが響き渡る。村長の言う村を狙う種族だ、誰かが「牙狼族だーー」と叫び、他のゴブリンたちも逃げ惑う

村長と息子のリーダー格が諌めようとするが、誰も聞く耳を持とうとしない

 

「落ち着きなさい。貴方達には、この可愛いネコちゃんと!」

 

「スライムの俺がいる!」

 

その声に誰もが息を呑み、二匹に視線を向けた。其処にいたのは、ゴブリンよりも小さく、一見すると強そうにも見えない二匹の魔物。一匹は可愛い見た目にふりふりと鍵尻尾を揺らし、もう一匹はぷるぷるとした体を震わせている。しかし、今の彼等には、それが誰よりも強く、逞しく見えた

 

「我が親友の暴風竜ヴェルドラに代わり、この最高に可愛くて!愛くるしい!ネコリア=テンペストが!」

 

「スライムだけど、頑張り屋で!食いしん坊な!リムル=テンペストが!」

 

「「実力を行使するっ!!!」」

 

この日、ゴブリンたちに二匹の守護者が生まれた。一匹は可愛くて情に熱い猫又、もう一匹は突っ込み上手な暴食スライム、後に名を轟かす二匹が最初の民を得た運命の瞬間である




牙狼族を相手に策を練るリムル、そして女性ゴブリンにお肌のケアを教えるネコリア……って!作戦会議はっ!?

ネコリアの真骨頂その2 実は情に熱い

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第六話 一肌脱いじゃう?エッチな意味じゃないよ

今回の見所、ネコちゃんが更に可愛い!以上!



「皆、牙狼族にやられた者です……。出来る限りの手は尽くしたのですが……」

 

リムルが案内されたのは、診療所と呼ぶには簡素な造りをした家屋。床に敷かれた茣蓙の上に寝かされたゴブリン達の傷は深く、中には死が近い者までも居る

 

(ふむ……ちょっと試してみるか。大賢者)

 

『解。ヒポクテ草と魔素を混ぜ合わせ、回復薬を生成可能です。生成しますか?』

 

(答えはイエスだ)

 

体内で回復薬を生成したリムルは横たわる一体のゴブリンを体全体で覆っていく。その突飛な行動に驚く村長であったが、次の瞬間だった

 

「こ……これは……」

 

吐き出されたゴブリンの体から全ての傷が消えていたのだ。順々にゴブリンを捕食しては吐き出し、という行動を続けていくリムル。やがて、治療所の中に居た全てのゴブリンから傷が消え、怪我人は完全にいなくなっていた

 

「さてと……ネコちゃんは上手くやってるかな」

 

「良い?先ずは相手に舐められない事が大切よ。取り敢えず、体に良い物を食べなきゃダメよ。お魚とかに含まれるD……DOSが良いのよ」

 

「さすがはネコリア様!博識ですね」

 

「タメになります!」

 

「………何してるのかな?チミは」

 

治療所を出て、防衛策を検討しているネコリアの元に向かったリムルは女性ゴブリンに囲まれ、ドヤ顔で御満悦気味の親友を見つける

 

「あら、リムちゃん。今ね、この子たちにお魚の有り難みを教えてたのよ、それとDOSの重要性もね」

 

「それを言うならDHAな。というか!頼んどいた防衛策はどうしたんだよっ!」

 

「防衛策………ああ、アレね。終わってるわよ?うん、終わってるわ!多分!」

 

「忘れてたよねっ!?絶対!」

 

「ソンナコトナイワヨー」

 

明らかに目を逸らし、棒読み感が半端ではない相槌を返す彼女に、些かの不安が否めないリムルであったが防衛策の一環を作っている街外れに訪れた彼の前にある物が映り込む

 

「こ、これは……!」

 

「あっ、リムル様。ネコリア様からの御命令で「柵」を作ってみました」

 

「「柵」か、なるほどな。確かに防衛策としては無難だな」

 

「そうでしょ?実はかしこいのよ、あたし。更に可愛い……これはもう、最強よね!」

 

「でも忘れっぽいし、バカじゃん」

 

「エッチなスライムには言われたくない」

 

「エッチじゃないやいっ!………こほん、それじゃあ、一応安全策を施しておくか」

 

そう言うとリムルは体からスキル《粘糸》を生成し、柵全体に張り巡らせる。準備が整った頃、日が沈み、周辺一体を暗闇が支配し、夜の森を照らすのは月明かりのみとなった時間帯。其れは姿を現した

 

「そこで止まれ!このまま引き返すなら何もしないが、引き返さないなら容赦はしないぞ!」

 

「あたしの可愛さの前に平伏しなさいっ!にゃーっはっはっはっ!」

 

「ネコちゃん!大事な場面だから、ふざけるのは良しなさいっ!」

 

「あたしはネコよ、ふざけたい時にふざけるのが仕事なの」

 

「変な屁理屈をこねないっ!」

 

敵を前にしても物怖じしようとしないネコリアのマイペースさにリムルは突っ込みを放つも、そのぶれない姿勢には目を見張る物があるのも事実だ

 

『オヤジ殿っ!あの者たちです、例の……』

 

『お前が見たと言う異様な妖気(オーラ)を纏う魔物とやらか?くだらん!たかだかスライムと我等よりも下等な猫ではないか』

 

「その甘い認識……後悔することになるわよ?」

 

牙狼族の長が息子の戯言を鼻で笑い、村に攻め入ろうと速度を上昇させようとした時だった。目の前に寝そべっていたネコリアの声が頭に響いた

 

『何だ、貴様!我等の意識に直接語り掛けているのかっ!』

 

「そうよ、あたしのスキル《心理意識》でね。まぁ?このまま引き下がるなら、あたしとリムちゃんは手を下さないけど」

 

『ぬかせっ!猫風情がっ!』

 

猫風情、そう相手は一匹の猫と取るに足らないスライム。牙狼族であれば、一瞬で葬り去れる程に弱く脆い下等な種族、自分たちの爪と牙されあれば、と高を括っていた

 

『『ギャンッ!?』』

 

『バカなっ!?一体、何が起こったと……っ!何だ?これはっ!?』

 

叫び声にも似た鳴き声と共に切り刻まれる配下に牙狼族の長が声を上げ、柵の前に何かが張り巡らされている事に気付いた

 

「あの糸はさっきの!?」

 

「あれは「粘糸」だ、柵の前に張り巡らせたのは「鋼糸」と言う別物だ」

 

「さすがはリムちゃんね。抜け目がなくてしっかり者だわ」

 

「そうでしょ、そうでしょ」

 

「エッチだけど」

 

「うんうん……って!エッチじゃないやいっ!」

 

更に正面の柵に気を取られている隙に、ネコリアの策で弓を引き待機していたゴブリンたちが一斉に矢を放つ

 

『…認めぬ、我等は誇り高き牙狼族!下等種に、ましてや猫如きに敗北する等、あり得ん!』

 

「あら、知らないの?あり得ないことはあり得ないのよ。それにね……」

 

ネコリアを目掛け飛び掛かる長であったが、彼女の魔性の笑みは既にその行く末を暗示していた

 

「あたしを猫如きとか言うんじゃないわよ!どっから見ても可愛いネコちゃんでしょうがっ!!!」

 

「いや、怒るポイントおかしくないっ!?まぁ、俺の親友をバカにした報いだ。「粘糸」に囚われて身動きが取れないだろ?じゃあな」

 

御立腹なネコリアに突っ込みを入れつつ、スキル《水刃》で長の首を刎ねるリムル。長を失い、動きを止める牙狼族に二匹は向き直る

 

「牙狼族よ!お前たちのボスは死んだ!選択をさせてやる!服従か死か!」

 

そう宣言するリムルであったが、牙狼族は誰も口を開こうとせず、動く素振りも見せない

 

「リムちゃん…………ドンマイ♪」

 

「励ましいらんわっ!!!」

 

「仕方ないわね、無視されてるリムちゃんに代わってあたしが聞いてあげるわ。親友の為に一肌脱ぐあたし………可愛いわねっ!」

 

「ホントにぶれねぇな!?」

 

「あっ、一肌脱ぐって言うのはエッチな意味じゃないわよ?」

 

「分かっとるわいっ!まぁ……ネコちゃんだけだと心配だし、俺も…アレがいいな」

 

何かをやらかしそうな心配しかないネコリアを案じ、自分にも出来る事がないかと探していたリムルは転がっていた長の亡骸を見つけ、ユニークスキル《捕食者》で喰らい、解析から擬態、流れるように姿を巨大な牙狼族に姿を変化させる

 

「そうねぇ……今回だけ(・・・・)は見逃してあげるわ。でも次はないから……そのつもりでいるのよ」

 

「我が友の慈悲深さをありがたく思うが良い!早々に、この場より立ち去れっ!」

 

優しく情けをかけるネコリアの隣で、彼女を褒め称え高らかに咆哮を上げるリムル。すると、動きを見せなかった牙狼族が動いた

 

「「「我ら一同、貴方様方に従います!」」」

 

かくして、二匹の魔物は牙狼族と言う新たな配下を得たのであった




牙狼族を配下に加えたネコリアとリムル、大所帯となったからには名前が必要で………

ネコリアの真骨頂その3 実は慈悲深い

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第七話 名前付けてあげたら、喜ばれちゃった

今日の見所、ネコちゃんの可愛さが急上昇!以上!


「そう言えば、村長。名前は?」

 

牙狼族が配下に加わり、大所帯となった村。守護者であるリムルは呼び名が無いと不便だと考え、村長に問う

 

「いえ、魔物は名前を持たない事が普通です。名前が無くとも意思の疎通は可能ですからな」

 

「う〜ん、でも無いと不便よね。あたしも最初は名無しだったけど、ヴェルちゃんがネコって呼び出してからは其れが名前みたいになっていって、最後は〝ネコリア〟の名前をくれた………リムちゃん、皆に名前を送ってあげない?」

 

「ネコちゃん、俺もそう言おうと思ってたんだ」

 

「あら、奇遇ね。はーい!それじゃあ並んでちょーだ〜い!授けの儀式を始めるわよー」

 

「儀式って……また大袈裟な……」

 

ネコリアの呼び掛けに、ゴブリンたちと牙狼族がリムルの前に一例の列を作るも、当の本人は苦笑気味である。一方で提案しておきながらも我関せずを貫くネコリア、すると彼女に、二つの影が近付く

 

「あら……アナタたちはさっきのゴブリンちゃん?其れに……小さめの牙狼族。意外な組み合わせね」

 

その影の主は、ネコリアが魚の栄養について熱弁していた女性ゴブリンと他の牙狼族よりも一回りも小さい小柄な牙狼族。二人の視線はネコリアに釘付けである

 

「はい!ネコリア様のお話はすごく勉強になったので、ワタシはネコリア様に名付けていただきたいんです!」

 

「わ、我も……ネコリア様のような愛らしい主人にお仕えさせていただきたいのです……ダメでしょうか?」

 

「ふふっ、見る目があるわね。良いわ、二人にはあたしが名前をあげる」

 

リムルでは無く自分に名付けて欲しいと懇願する二人に、ネコリアは得意気に笑う

 

「そうねぇ………うん、決めたわ♪ゴブリンちゃんには、〝水氷(スイヒョウ)〟の名を、牙狼族ちゃんには〝炎火(エンカ)〟の名を、其々授けるわ」

 

「「光栄です!ネコリア様!」」

 

名付けた瞬間、魔素が消費されるのを感じながらもネコリアは満足そうな表情を浮かべ、リムルの方に視線を向ける

 

「ゴブチ………ゴブツ………ゴブテ………お前はゴブゾウな」

 

「すっごい雑に付け始めたわね……」

 

「ですが名前をいただけるのは最高の喜びです。かく言う私ことスイヒョウも、ネコリア様に名付けていただいた幸せで胸がいっぱいです」

 

「エンカもです!」

 

「気に入ってくれて何よりだわ」

 

「お前は牙狼族の長の息子だな……嵐……牙、うん!嵐の牙で、〝嵐牙(ランガ)〟!お前の名はランガだ!」

 

牙狼族に名を授けた瞬間、リムルの体に異変が生じる。突然の出来事に誰もが慌てふためき、騒ぎ出すがネコリアは冷静だった

 

「落ち着きなさい。リムルは眠っているだけよ」

 

「ネコリア様!眠っていると言うのは……?」

 

「名付けで魔素を消費したのよ。あたしはスイちゃんとエンちゃんにしか名付けをしてないけど、リムルはリグルドを含めたゴブリン族、更にランガにも名付けをした。その魔素の消費量が、あたしよりも激しかったみたいね」

 

「なるほど。皆の者、リムル様を丁重に扱って差し上げるのだ!お目覚めになられるまでは、このリグルドが指揮を取る!」

 

「任せたわよ、リグちゃん」

 

「はっ!」

 

名を得た事により、少しばかり統率力が増した気もしない村長基リグルドに指揮を任せ、ネコリアも眠りに落ちる。思えば、こんな風に安心感を感じる睡眠は何時以来だったか、猫又に転生してからの三百年、ヴェルドラと居た時間は有意義で満ち足りた時間だった、それでも眠れない日もあった。だが今は違う、自分を信頼する配下たち、親友との約束、そして何よりも外に連れ出してくれた相棒が居る。故にネコリアは久方振りに深い眠りに落ちた

 

「にゃぁ〜……よく寝た……」

 

「ネコリア様、おはようございます」

 

「んにゃぁ……おはよ……んんっ……えっと……誰?」

 

目覚めたネコリアを待っていたのは、グラマラス体型の緑色の皮膚の女性。見覚えがあるようで無い彼女に、寝ぼけながらも問う

 

「何をおっしゃってるんですか?スイヒョウですよ」

 

「スイヒョウ……えっ?スイちゃん!?」

 

「はい♪スイヒョウです」

 

その女性はスイヒョウだった。名付けられた影響で進化を遂げた彼女はゴブリンからゴブリナに進化を果たしたようだ

 

「あっ!スイヒョウ!アタイがお世話する番だろっ!」

 

次に姿を見せたのは、小柄な体型に犬耳と尻尾を持った少女。やはり彼女にも見覚えがあるようで無いが、スイヒョウと共にいるとなると必然的に誰かは絞られる

 

「あら、エンカ。寝坊したのはアナタでしょう?」

 

「んなっ!寝坊じゃない!アタイはリムル様にご挨拶してたんだっ!」

 

「スイちゃん。まさか……この子って…」

 

「はい、エンカです。騒がしくて申し訳ありません」

 

スイヒョウの返答により、彼女がエンカであると理解する。やはり、名付けの影響で進化を遂げた彼女も牙狼族から嵐狼女(テンペストウルフェア)となり、人化の能力を得たようだ。進化前のおどおどした雰囲気から一変し、活発なイメージがあるのも進化の影響で自信を身に付けたのだろう

 

「エンちゃん?スイちゃんと仲良くしなきゃダメよ」

 

「うぅ……ごめんなさい……ネコリア様…」

 

「うんうん、素直なエンちゃんは大好きよ〜」

 

「わふぅ……」

 

「むぅ〜……」

 

咎められ、素直に謝罪を述べるエンカの頭をネコリアが撫でると彼女は嬉しそうに目を細め、尻尾をぱたぱたと振る。その様子にスイヒョウは指を咥え、羨まし気な視線を送る

 

「スイちゃんも、あたしのお世話ありがとね」

 

「は、はい!こちらこそありがとうございます!」

 

その視線に気付いたネコリアはスイヒョウの頭を撫でると、何故か彼女の方が礼を述べる。すると、また誰かが入ってきた

 

「スイヒョウ、エンカ。ネコリア様は?」

 

その誰か基、リグルドの姿は名付け前よりも格段に変化を遂げていた。肌のケアがなっていないと言われていた以前とは異なり、筋骨隆々な姿は正にゴブリンと呼ぶに相応しいホブゴブリンに進化を果たしていた

 

「あ、リグルド様。お目覚めになられましたわ」

 

「寝起きでも愛らしいんだ。さすがはネコリア様だ!」

 

「当然ねっ!」

 

「ネコちゃん……本当にブレないな」

 

リグルドの腕の中から、聞き覚えのある声が聞こえ、視界を動かすと、ぷるっとした水色の物体が映る

 

「おはよ♪リムちゃん」

 

「おはよう。朝から美女に囲まれて、御満悦だな」

 

「あら、嫉妬?エッチなスライムね、ホントに」

 

「エッチじゃないやいっ!!」

 

数日振りのやり取りにネコリアもリムルも笑い合う。その後、宴を開くに当たり、広場に移動し、コップを片手に全員が待機する

 

「え〜、それでは皆の進化と戦の終わりを祝しまして……」

 

「生ぬるいわ……杯を乾かすと書いて、乾杯と読むっ!グラスを掲げなさいっ!かんぱーい!!!」

 

「「かんぱーい!!!」」

 

(今度から乾杯はネコちゃんに任せよう)

 

人知れず、自分が宴会の乾杯係を任命されたのをネコリアが知るのはまだ少しだけ先の話である




大所帯となった村にルールが取り決められ、更なる結束を高めるリムルとネコリアたち。次に狙うはドワーフ!

ネコリアの真骨頂その4 実はお寝坊さん

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第八話 役職を決めたら、自分にもとばっちりが来た

今日の見所、ネコちゃんも可愛いし、配下の二人も可愛い!以上!


「皆、広場に集まれ!リムル様より大切なお話がある」

 

「んにゃぁ〜………大切な話ぃ〜?それって、あたしも参加しなきゃダメな感じ?」

 

広場に集まるように呼び掛けるリグルドの声で、目を覚ましたネコリア。縛られるのを嫌う彼女はリムルからの話というのに乗り気ではない様子だ

 

「勿論ですよ、ネコリア様もリムル様と同じく守護者様なのですから」

 

「そうだぞ、ネコリア様が居ない会議なんかお肉のない宴とおんなじだっ!」

 

「むぅ……仕方ないわね」

 

しかし、可愛い配下の説得には抗えないらしく、体を起こすとリムルの隣に移動する。そして、視線を横目に動かすと何処で見つけたのか、付け髭を装着したリムルが居た

 

「……はい、皆が静かになるまで五分も掛かりました」

 

その言葉に誰もが静まり返る。転生前は鉄板であった持ちネタが通じない現状にリムルは驚きを示す

 

「見事にすべったわね。サムいスライムね、リムちゃんは」

 

「サムくないやいっ!」

 

「そうね、エッチなスライムだったわね」

 

「其れも違わいっ!!………こほん。えーでは、気を取り直してと」

 

ネコリアからの鋭い指摘に突っ込みを入れつつ、軽く咳払いをしたリムルはリグルドたちとランガたちの方を見据える

 

「見ての通りだが、俺たちは大所帯になった。そこでだ、トラブルが起きない為にルールを決めようと思う」

 

「一つ、可愛いあたしを毎日崇めること。二つ、あたしの可愛さを近隣の魔物に広めること。三つ、あたしの眠りを妨げない。以上がルールよ♪」

 

「そう、以上が…………って!ちがーーーうっ!何そのネコちゃん限定のルールっ!?」

 

「知らないの?ルールとおばあちゃんの家の障子は破る為にあるのよっ!」

 

「意味分からんわっ!!!すまん、ネコちゃんの言ったルールは無視してくれっ!」

 

「はい!リムル様!」

 

「何かな?スイヒョウ」

 

自分限定のルールを作り上げようとするネコリアに突っ込み、軌道修正を図るリムルにスイヒョウが呼び掛ける

 

「私は今のがルールで問題ありません!」

 

「アタイもっ!ネコリア様が一番だからなっ!」

 

「やかましいわっ!ネコちゃん大好きコンビは黙らっしゃい!では気を取り直して、一つ!仲間内で争わない、二つ!進化して強くなったからと言って他種族を見下さない。そして最後、三つ!人間を襲わない」

 

「四つ!あたしの銅像に雑巾掛けをする」

 

「勝手に増やすなっ!兎に角だ、俺が言った三つは守ってもらいたい」

 

リムルの述べたルール、その中の一つに響めきが生じる。すると代表して、リグルドの息子であるリグルが手を挙げる

 

「宜しいでしょうか?リムル様」

 

「なにかね?リグル君」

 

「何故、人間を襲ってはならないのでしょうか?」

 

「そうですね……リムル様のご意見を聞かせてもらっても?」

 

リグルの問いに、スイヒョウも思う所があるのかリムルに問い掛ける

 

「簡単な理由だ。俺もネコちゃんも人間が大好きだからだ」

 

「なるほど!理解しました!」

 

「ネコリア様のご意志とあらば!」

 

「素直なスイちゃんは大好きよ〜」

 

(軽っ!!!)

 

疑問は何処に消えた?と言わんばかりの理解の速さにネコリアはスイヒョウの頭を撫で、リムルは軽さに心中で突っ込みを放つ。だが、その聞き分けの良さは自分を信頼してくれている証という事を理解している為に、嬉しくもあるのが事実だ

 

「まぁ、理由はそれだけじゃない。人間は集団で生活してるだろ?彼等だって襲われたら抵抗する、しかもだ数で襲われたら敵わない……だからさ、此方からの手出しは禁止だ。仲良くする方が得だからな」

 

「ふぅ〜ん……意外と考えてるのね」

 

「ネコちゃんが考えないからな」

 

「あたしはそういうキャラじゃないのよ、考えてるのって、苦手なのよねェ」

 

「…………じゃあ今後はネコちゃんに参謀役をやってもらおうかな。はーい!ちゅうも〜く!今後はネコちゃんが参謀役を務めるから、作戦立案に関しては彼女に意見を求めるようにっ!」

 

「ネコリア様が参謀役……!素晴らしいですっ!さすがはリムル様!」

 

「おめでとうございます!ネコリア様!」

 

「…………えっ?なに?この空気は…」

 

唐突なリムルからの無茶振り、更にスイヒョウとエンカからの声援。周囲からも〝ネコリアコール〟が挙がり、断れない空気が流れる

 

「はぁ………分かったわよ、やればいいんでしょ…」

 

「物分かり良いネコちゃんは大好きだぞ」

 

「あたしは意地悪なリムちゃんは嫌いよ」

 

「あはは……さて次はリグルド、お前にはゴブリン・ロードの役目を与えようと思う。村を上手く治めてくれ」

 

「はっ!このリグルド、身命を賭してその任を引き受けさせて頂きます!」

 

参謀役、ゴブリン・ロード。新たな役職が決まり、次から次へと村の者たちに役職が振り分けられていく

 

「あの〜、私とエンカはどのように?」

 

「教えてくださいっ!」

 

「二人はネコちゃんの補佐役だ。スイヒョウは書記官、エンカは護衛を担当してくれ」

 

「「はいっ!」」

 

スイヒョウ、エンカは自分の名付け親であり敬愛する主人と共に仕事が出来る喜びから、元気の良い返事を返す

 

「…………う〜ん…ねぇ?リグちゃん」

 

「如何されましたかな?ネコリア様」

 

「これが家……?」

 

「………返す言葉もございません。我々には専門の知識がありません故……」

 

「どうした〜?」

 

役職を振り分け終えたリムルは、一足先に村を見回っていたネコリアと申し訳なさそうに頭を下げるリグルドの姿を見つけ、声を掛ける

 

「ああ、リムちゃん。良いとこに来たわね、これを見てくれる?」

 

「これ……うーむ、確かにこれは酷い深爪だ」

 

「誰があたしの爪を見ろって言ったのよ。家を見なさい、家を」

 

「なんだ、そっちか。確かに家とは呼びにくいな……」

 

何時もの仕返しに軽く冗談を交えるとネコリアから突っ込みが入り、改めてリムルはゴブリンの住まいに視線を向ける

 

「技術者に繋がりはないの?」

 

「ありますよ。何度か取り引きをした技術者が居ます」

 

「あら、ホントに?スイちゃん」

 

「はい♪ドワーフ族です」

 

「ドワーフ………ってなに?」

 

「うん、理解してたよ」

 

異世界知識皆無なネコリアがドワーフを知らないのを察していたリムルは呆れたようにため息を吐き、説明を始める

 

「ネコちゃんはゲームとかしたことあるか?」

 

「そりゃあ、勿論あるわ」

 

「ドワーフって言うのは、いわゆる鍛冶スキルを極めた種族のことだ。建築は勿論ながら、武器の鍛錬なんかも得意としてる」

 

「なるほど……あの有名なヒゲが家を作る的な話ね」

 

「うん、違う」

 

説得を聞いたにも関わらず、勝手な解釈を捩じ込むネコリアにリムルの突っ込みが飛ぶ

 

「ネコリア様!アタイたちなら、ドワーフの王国まで歩くよりも早く着けるぞっ!だよなっ!アニサマ!」

 

「無論だ、妹よ。我が主人、このランガが責任を持って、お連れ致します!」

 

「おう、助かる……ん?アニサマ?ちょっと待て、ランガ。今、エンカにアニサマって呼ばれたか?」

 

エンカ、ランガの提案に感謝しながら、リムルはある事に気付いた。ランガに対するエンカの呼び名だ

 

「はい、エンカは我が妹であり長の娘に当たります。いわゆる牙狼族の姫です」

 

「………な、な、な………」

 

まさかの発言に、リムルの体がわなわなと震え、口をぱくぱくと動かす

 

「なんだってェェェ!!!」

 

「エンちゃん、お姫さまだったのね」

 

「アタイがお姫さまなら、ネコリア様は女神様だなっ!」

 

「エンちゃんは可愛いわねー、あたしの次に」

 

「くっ…やるわね…エンカ」

 

かくして、リムルとネコリアは技術者を求めてドワーフの王国に旅立つ事になったのであった




旅路の果て、ドワーフの王国にたどり着いたリムルとネコリアたち。そして、リムルは職人を探しに……あれ?そんなとこに職人いるの?

ネコリアの真骨頂その5 実は考えてるのが苦手

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第九話 お昼寝してたら、旅行先に着いちゃってた

今日の見所、ネコちゃんも可愛いし、お気に入り登録急上昇中!


「ネコリア様!夕飯の時間だっ!」

 

「あら、そんな時間?……んにゃぁ〜」

 

元気良く名を呼ばれ、目を覚ましたネコリアは夕飯の串肉に齧り付く。現在、彼女は、リムルとリグルたちとドワーフの国に向かっている。リムルはリグルたちと道中で様々な話をしていたが、長旅に慣れていないネコリアは狼姿のエンカの背で静かに寝息を立てており、ようやく話に参加した

 

「ネコちゃん。やっと起きたのか」

 

「ネコは寝るのが仕事なのよ」

 

「だからって、寝過ぎっすよ。出発から今まで寝てたじゃないっすか」

 

「ゴブタ。アンタの朝御飯はあたしが食べるわね」

 

「なんでっすかっ!?」

 

「そういえば、今は何の話をしてたの?」

 

リムルの次に弄りやすいゴブタを軽く弄りつつ、自分が寝ている間の話題が気になり、エンカに問う

 

「ゴブタにドワーフの国のことを教えてもらいました!えっと……どわ……どわ……ドワル?なんだっけ?アニサマ」

 

「ドワルゴンだ、妹よ」

 

「そう!ドワルゴン!」

 

「ドワルゴンは天然の大洞窟を改造した美しい都っすよ。ドワーフだけでなく、エルフや人間も多いことで有名っす」

 

(エルフ……)

 

「考えてることがダダ漏れよ?リムちゃん。エッチなスライムね」

 

「エッチじゃないやいっ!」

 

エルフの単語を聞いた瞬間、何かを想像するリムルの思考を先読みしたネコリアが決まり文句を放つと、これまた決まり文句でリムルが言い返す

 

「でも、ドワルゴンにあたしたちが入って大丈夫なの?あたしは可愛から問題ないけど」

 

「その心配はいりません、ネコリア様。ドワルゴンは中立の自由貿易都市。王国内の争いは、王の名に於いて禁じられています」

 

「なら、大丈夫ね」

 

(エルフ……)

 

「リムちゃんは、まだエッチなことを考えてるのね」

 

「……はっ!聞いてたよっ!?えっと!アレだよなっ!王様がすごいから、争いは禁止って話だよなっ!」

 

「さすがはリムル様。聞いていないように見えましたが聞いておられたんですね」

 

「と、当然じゃないか……リグル君」

 

エルフの事を想像し、話半分であったリムル。しかしながら話の内容は正解だったらしく、安堵感を覚えるがネコリアの視線は冷めていた

 

「ネコリア様?どうしたんですか?リムル様を見つめてますけど」

 

「何でもないわよ〜。エンちゃんは気にしなくていいのよ〜」

 

「はい!ネコリア様が言うなら気にしませんっ!」

 

(ば、バレてるゥゥゥゥ!!!)

 

完全に思考を読まれている事にリムルは心中で叫びを挙げる

 

「にしても王様の力、すごいわね」

 

「噂では、この千年間ドワーフ王が率いる軍は不敗を誇っているとか」

 

「千年…!?ネコちゃん、何歳だっけ?」

 

「三百歳………って!女性に年齢を気安く聞くんじゃないわよっ!」

 

「ご、ごめんなさい!もう言いませんっ!」

 

「へぇ、意外とババアなんっすね。ネコリア様って」

 

「グルちゃん?ゴブタはここに置き去りね」

 

「いやァァァァァァ!オイラが悪かったっす!許してください!ネコリア様ァァァ!!!」

 

年齢を指摘されたネコリアはリムルとゴブタに怒気を向け、その威圧感に二人は謝罪を述べ、彼等は今後、ネコリアの前で年齢の話題は避けるという誓いを立てたのは言うまでもない

 

「楽しみね〜、ドワルゴン」

 

「もうすぐだっ!ネコリア様!」

 

「あらもう?まだ三日よ?」

 

「言っただろ?アタイたちは速いって、このくらいは牙を磨くよりも簡単だぞっ!」

 

「すごいわね、エンちゃんは。言葉の意味はよく分からないけど」

 

村から出発して三日後、ネコリアたちの前に大山脈が姿を現す。そう、彼女達は徒歩で二ヶ月は掛かる距離を三日で走破し、武装国家ドワルゴンに辿り着いたのだ

 

「さて、中に入るメンバーだが……今回は俺と案内役のゴブタだけで行こうと思う」

 

「わ、我々は留守番ですか……?」

 

「仕方ないだろ?悪目立ちすると、何かと動き難いんだから」

 

「エンちゃんはあたしに付いてくるのよ?人型で」

 

「任せろっ!ネコリア様っ!」

 

護衛役のエンカが人型に変化すると、彼女の頭に飛び乗るネコリア。すると意外そうな表情でリムルが彼女を見た

 

「……えっ?ネコちゃんも来るの?」

 

「あら、あたしが行くと不都合でも?リムちゃん」

 

「そ………ソンナコトナイヨー」

 

棒読みで返事を返すリムルの心中をある程度は理解しているネコリアは、くすりと笑い、ふりふりと鍵尻尾を揺らす。その後、入国審査の列に並び、順番を待っていると、ぴこぴことネコリアの耳が動いた

 

「どうしんですか?ネコリア様ー」

 

「ん〜……ちょっと、やっかいごとの気配がね」

 

「やっかいごと……あっ!」

 

ネコリアの言葉で、周辺を見渡していたエンカはある光景を捉えた。其れはもう一匹の主人であるリムルが冒険者に絡まれてれいる姿だ

 

「助けた方がいいですか?あれって」

 

「良い?エンちゃん。こう言う時は見守るのが優しさよ♪」

 

「なるほど…!さすがはネコリア様だなっ!」

 

今から起こるであろう厄介事を避ける為に、リムルとゴブタを斬り捨てるという薄情極まりない行為に及びながらも、あくまでも自分は悪くないという事をネコリアはエンカに刷り込む

 

「あっ、警備隊に連れてかれた」

 

「大変ね」

 

「その割に慌ててないんだけど……ネコリア様……」

 

「気にしない、気にしなーい」

 

騒ぎの中心となったリムルがゴブタと共に警備隊に連行されるのを見送り、国に入ろうとするネコリアだったが、さすがに気にしすぎないのもどうかと思い、警備隊を訪ねる

 

「あら?お出掛けかしら」

 

慌てた様子で出ていく警備隊に、ネコリアが呑気に呟く

 

「くんくん……あの樽から、リムル様の匂いがするっ!」

 

嵐狼女であるエンカの嗅覚は常人の倍以上はある為に僅かな匂いも逃さない。しかし、ネコリアの耳も、決して逃さない

 

「でも気配は中にあるわね。じゃあ、アレは回復薬……リムちゃんはこっちみたいね」

 

中から聞こえた物音に誘われるようにネコリアとエンカは足を踏み入れる

 

「あっ、ネコちゃん!さっきはよくも見捨ててくれたなっ!この年増ネコっ!」

 

「ひどいっすよ!ババアっ!」

 

元気そうな二人が自分たちを見捨てたネコリアに暴言を吐き捨てる

 

「エンちゃん?二人は出たくないみたいだから、鍛冶屋さんを探しに行くわよ」

 

「えっ……は、はい」

 

刹那、にっこりと笑いながらも明らかに怒り心頭のネコリアは戸惑い気味のエンカと牢屋を後にしようとする

 

「「すいませんっ!出してくださいっ!ネコリア様っ!!!」」

 

「解ればよろしい。でも、リムちゃん?出る為の準備は出来てるんじゃない?」

 

「どういうことだ?ネコリア様」

 

「うっ……鋭いな。まあ直ぐに分かるよ」

 

ネコリアの指摘、その意味が分からないエンカは首を傾げる。だが其れは、リムルの言葉通りに直ぐに理解出来た

 

「助かった!ありがとう!!」

 

一時間後、警備隊長のカイドウが数人のドワーフを連れて、戻って来たのだ。理由は不明だがリムルに頭を下げているのを見ると、彼に感謝しているようだ

 

「感謝しなさいよね。これも全てはあたしが可愛いからよっ!」

 

「うんうん、そうだ………って!ネコちゃんは何もしてないだろっ!?」

 

「ケチくさいわねー」

 

「ネコリア様が可愛いのは当たり前だぞっ!」

 

「エンカも黙ってなさいっ!」

 

手柄を横取りしようとするネコリア、揺らがない忠誠心を見せるエンカ、両名にリムルの突っ込みが飛ぶ

 

「俺に出来ることがあるなら、何でも言ってくれ。回復薬をくれた御礼がしたいんだ」

 

「じゃあ、鍛冶屋を紹介してくれないか?」

 

「あたしはお魚屋さんが良いわ」

 

「すまん、カイドウさん。ネコちゃんは無視してくれるとありがたい」

 

「お、おう……」

 

鍛冶屋を紹介してもらう伝を得たリムルは便乗しようとするネコリアを無視するように促し、カイドウも苦笑気味に応じる

 

「ね、ネコが喋ってる………可愛いなぁ……」

 

そして、自由気ままの象徴であるネコリアを見守る少女が一人。物陰に潜む彼女に気付く者は誰もいない

 

「ねェ?今誰か、可愛いって言った?」

 

「言ってない」

 

「アタイは言ってないけど、思ってます!」

 

「エンちゃんはホントに素直ね〜」

 

「でもババアっすよね」

 

「カイドウちゃんだっけ?このゴブリンは二、三日くらい出さなくていいわよ」

 

「すいません!ネコリア様!オイラが悪かったっす!!!」

 

かくして、リムルとネコリアは鍛冶屋を訪ねることになったのであった




遂に職人に会える!あら?でも、一人だけ職人には見えない女の子が……えっ?ネコリアの可愛さの虜になった?当然だよねっ!

ネコリアの真骨頂その5 実は年齢を気にしてる

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第十話 無理難題に答えたら、驚かれちゃった

今回の見所、新キャラ登場!あとネコちゃんが可愛い!


「んにゃぁ〜……なんかピカピカしてるわね」

 

「ネコリア様!おはようございますっ!起こしちゃったか?」

 

「良いのよー、起きようと思ってた頃合いだし」

 

リムル捕縛騒動の翌日、カイドウの案内で一行は鍛冶屋に向かっていた。武器屋に立ち並ぶ煌びやかな装飾の武器の光加減で、エンカの頭で寝息を立てていたネコリアが目を覚ます

 

「ネコの姐さん。着いたぜ」

 

「あらもう?仕事が早いのね、カイドウちゃんは」

 

「ネコちゃんが寝坊助なだけだろ」

 

「寝坊助だなんて失礼ね。まだ朝よ」

 

「昼っすよ!?」

 

「ネコリア様が朝だって言うんだから、朝だぞっ!ゴブタ!」

 

「なんなんっすか!?その暴論はっ!」

 

「賑やかだな……アンタの仲間たち…」

 

「すまん、後できつく言っとく」

 

「ははっ…ああ、ここだよ。腕は保証するぜ」

 

賑やかに騒ぐネコリアたちにリムルがお灸を据えることを約束していると、カイドウは一軒の店の前で止まり、中に招き入れる

 

「兄貴。いるかい?」

 

「カイドウか、悪いが今は手が離せないんだ。用件があるなら……おーい!カイリン!聞こえてんだろ!カイリン!さっさと来やがれ!」

 

カイドウが剣を打っていたドワーフに呼び掛けると、彼は手が離せないらしく、代わりに奥の部屋に居るであろう人物に呼び掛ける

 

「うるせぇな!聞こえてるわっ!何回も呼ぶんじゃねぇよっ!こんのバカオヤジっ!!!」

 

「バカオヤジとはなんだっ!バカ娘っ!今は親方と呼べっ!」

 

「何方でもいいだろっ!誰がバカ娘だ!!!」

 

奥の部屋から慌ただしく現れたのは、茶色の肌にポニーテールの髪型が似合う煤だらけの少女。彼女は親方基カイジンの娘のようだ、名をカイリンと言う

 

「ん………おっ!らっしゃい!オジキ!」

 

「カイリン…お前なぁ、少しは落ち着けよ」

 

「いやははは……面目ない……」

 

「カイドウちゃんの知り合い?」

 

落ち着きのない姪を叱るカイドウ。その様子を見ていたネコリアが問いを投げ掛けると、途端にカイリンの目が輝きを見せる

 

「あっ!昨日の可愛いネコちゃん……!?」

 

「あら?あたしを知ってるのね」

 

昨日、其れは彼女がカイドウに昼御飯を届けに行った時間帯の事だ。見たこともない光景に、その目を奪われた。可愛いさを体現した黒い毛並みの一匹のネコ、その実物が目の前に居る、これが興奮せずにいられるだろうか?いや、無理である

 

「もちろんだよっ!昨日はありがとう!三人を助けてくれたんだろ?」

 

「そうよ、あたしの可愛さがあったから三人が助かったのよ」

 

「人の手柄を横取りしようとすなっ!!娘さん、三人を助けたのは俺だ」

 

「………………喋る雨粒?」

 

「そうそう、俺は喋るあま………って!スライムだよっ!?どう見たらそう見えんのっ!?」

 

「そうよ、エッチなスライムよ」

 

「エッチじゃないやいっ!!」

 

「ウチはカイリンだ。よろしくなっ!エッチなスライムさん!」

 

「エッチなスライムちゃうわっ!」

 

「あたしはネコリア=テンペストよ」

 

「アタイはネコリア様の護衛のエンカだぞっ!」

 

「オイラはゴブタっす」

 

「あら、居たの?ゴブタ」

 

「今更っ!?」

 

普通に名乗るゴブタの存在に、ネコリアは今更ながらに気付いた。彼女の中で彼の存在はかなりの格差があるようだ

 

「すまんな、ひと段落ついたよ。改めて、俺がカイジンだ。昨日は本当にありがとう、コイツらを助けてくれたんだってな」

 

「いやいいよ」

 

「当然のことをしたまでよ」

 

謙遜するリムル、しかしネコリアは違う。謙遜さえもしない、というか当事者とは呼べない彼女に相棒からのジト目が向く

 

「ネコちゃんは何もしてないでしょ」

 

「敢えて言うなら、何もしてないをしてたわ」

 

「すごいなっ!ネコリア様はっ!」

 

「ホントに可愛い……!」

 

「ネコリア様って……女の子にモテるんっすね」

 

「にゃーはっはっはっ!とーぜんよっ!だって、あたしは可愛いものっ!」

 

自分の可愛さを自慢するネコリア、その姿はネコが笑い声を挙げているだけに見えるが忘れてはいけない。彼女は魔物である

 

「自信家な猫だな」

 

「気にしないでくれ。それで?今は何をしてるんだ?」

 

「ん、ああ。今週末までに長剣(ロングソード)を二十本納品しなきゃならないんだが、今はその一本しかない」

 

「魔鋼は貴重なんだ。ウチの店には、ソイツに使っちまったのが最後……簡単に取り行けるモノでもなくてな……すげぇ困ってるんだ。なのにオヤジ……親方が、売り言葉に買い言葉で大臣の口車に乗せられやがったんだ」

 

「うるせぇな、バカ娘は黙ってろ、ガキのくせに一丁前な口を聞くんじゃねぇ」

 

「んだとっ!?バカオヤジっ!その煤だらけの髭むしんぞっ!!!」

 

「兄貴もカイリンもやめろよ、みっともない。客の前だぞ」

 

親子喧嘩を始めるカイジンとカイリンをカイドウがやんわりと咎めるのを見ながら、ネコリアは思考を巡らせていた

 

「ねぇ?リムちゃん。あたしとヴェルちゃんと初めて会った洞窟に転がってた鉱石を覚えてる?」

 

「ああ、アレか。覚えてるけど………はっ!」

 

唐突な問いに、リムルは記憶を思い返し、何かに気付いたように大賢者に問う。その様子にネコリアは企み笑顔を浮かべている

 

「にゃふふ〜……大賢者ちゃんからの解答は来た?」

 

「来たっ!さすがはネコちゃん!頼れる参謀っ!伊達に長生きしてないなっ!」

 

「そうでしょ〜………って!長生きは余計よっ!」

 

答えが見つかり、その立役者であるネコリアを褒めるが最後の一言が気に食わなかったらしく、突っ込みが放たれる

 

「じゃあ、取り敢えず食べるかな」

 

「エンちゃん。リムちゃんの口にありったけの剣を押し込むのよっ!」

 

「分かったぞっ!」

 

「むごごごっ!?ちょっ!エンカっ!優しくしてェェェ!」

 

「ゴブタの口にはこの焼けた石を押し込むわね」

 

「鬼っすかっ!?アンタはっ!」

 

エンカが大量の剣をリムルの口に押し込む隣で、竈門の中で燃える焼石をゴブタの口に押し込むと宣言するネコリアに本人からの突っ込みが飛ぶ

 

「何してんだァァァァ!イヌ耳娘っ!オヤジの力作だぞっ!?それェェェ!」

 

エンカの行動に、カイリンが叫び声を挙げる。彼女なりに父の力作を認めていたらしく、その行動は驚愕しかなかった

 

「ネコリア様がやれって言ったんだ!アタイは悪くないっ!それにネコリア様が考えもなしに、こんな事やらせるわけないだろ!」

 

「さすがはエンちゃんね。あたしのことを理解してくれてて、嬉しいわ」

 

「わふぅ〜…」

 

「こほん、これでどうだ?」

 

ネコリアがエンカを撫でていると、リムルを中心に魔素の渦が形成され、気付いた時は彼の前に二十本の剣が並んでいた

 

「無理強いはしないさ、でも検討してみてくれ」

 

「ご注文の長剣(ロングソード)二十本、完成よ♪」

 




納品を済ませた打ち上げでリムルはとある場所に、それを見ていたネコリアの指摘とは?

ネコリアの真骨頂その6 実は人の手柄を横取りしたりする

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第十一話 エルフに出会ったら、待ち人を思い出しちゃった

今回の見所、ネコちゃんが可愛い!そしてネコちゃんの相手が判明……?そんなっ!ネコちゃーーーん!!!


「んにゃぁ〜………こんな時間に起こして、どうしたの?エンちゃん」

 

「寝てたのにごめんなさいだぞっ!ネコリア様!あのな、リムル様がドワーフのおじさん達とお出掛けしちゃったんだぞ」

 

「おでかけ………ああ、打ち上げとか言ってたわね。帰ってこない……というか、帰りたくない……ホントにあのエロスライムは…」

 

寝息を立てていたネコリア、自分を起こしながらも素直に謝罪を述べるエンカの言葉を聞き、リムルの居場所を検討する

 

「ねぇ?リンちゃん」

 

「ほへ?どうかしたか?ネコの姐御」

 

奥で在庫を整理していたカイリンに呼び掛けると、彼女は間抜けそうな声を挙げ、首を捻る

 

「この辺に、エルフ(・・・)のお店とかない?」

 

「あるぜ?オヤジたちが贔屓してる店が」

 

「連れてってくれる?」

 

「い、良いけど………」

 

笑顔、それはもう爽やかな笑顔のネコリア。しかしながら瞳の奥は笑っておらず、威圧感に押されたカイリンは苦笑気味に承諾する

 

「お供するっす。ネコリア様」

 

「エンちゃん?ゴブタが夜のお散歩に連れてってくれるみたいよ〜」

 

「ホントかっ!いくぞっ!ゴブタっ!おさんぽっ!おさんぽっ!」

 

「んまっ!?ちょっ!あぎゃァァァ!!!」

 

同行を申し出るゴブタをエンカのお散歩という別の用事で、無力化するとカイリンの案内で店に向かう

 

「ここだよ」

 

「ふぅん……エルフのキャバクラ………」

 

辿り着いた店の看板、リムルが何度も反応を示していたエルフの文字にネコリアの笑みが更に黒味を増す

 

「ママさん。さっきの美味しかったから、おかわりもらえる?」

 

「あら、スライムさん。味分かるの?」

 

「美人にお酌してもらえたらなんでも美味しいさ」

 

「ふぅん?じゃあ、あたしがお酌してあげましょうか?エッチなスライムちゃん♪」

 

「あっ、こいつはどうも。いやぁ、気が利くなぁ〜。さすがはネ…………ネコちゃん?」

 

酒を嗜んでいたリムルが、店主におかわりを頼むと隣から聞こえて来たノリの良い可愛らしい声にグラスを差し出した。そして、その先に座り、ふりふりと揺れる鍵尻尾が視界に入り、相棒の名を呼ぶ

 

「そう、可愛いネコちゃんよ〜」

 

「ゔぇぇぇぇ!?なんでいるのっ!?寝てたじゃん!」

 

まさかの伏兵ならぬ伏猫の登場にリムルは声にならない叫びを挙げ、出掛ける前の彼女の状態を想起する

 

「エンちゃんに起こされたのよ、リムちゃんが帰って来ないって」

 

「め、面目ない……」

 

「此方はスライムさんのお知り合い?」

 

「ああ、ネコちゃんだ」

 

「ネコリアよ〜。気楽にネコちゃんって呼んで♪」

 

「「や〜ん!可愛い〜〜〜♪」」

 

「はうっ!?ネコの姐御のウインクっ!!!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに店の女性たちは勿論ながら、既に彼女の虜であるカイリンは目をハートにしていた

 

「そうだわ。ネコちゃんとスライムさん、これやってみない?」

 

ダークエルフの女性が懐から取り出したのは、一つのガラス玉。いわゆる水晶である

 

「あら、水晶?」

 

(水晶だと!?い、一体どんな妙義がっ!)

 

「オネーサン?このエッチなスライムは無視してくれていいわよ」

 

「エッチじゃないやいっ!」

 

体全体を桃色に染め上げ、やましい妄想を巡らせるリムルの思考を読み取り、何時ものを放つと御約束の返事が飛び出す

 

「あはは……ネコちゃんは辛辣なのね。其れで?何を占う?」

 

「そうねぇ……運命の人……」

 

「ほう、ネコちゃんも意外に乙女チックだな」

 

「うるさいわね。まあでも、あたしは良いかな……運命かどうかは分からないけど、約束があるのよ。その子を待っててあげないとね」

 

「待ち人……まさか恋人!?」

 

「う〜ん?人?いや、なんて言えば言いいか……って、あたしのことはどうでもいいのよ。リムちゃんが占ってもらいなさい」

 

そう言うと、ネコリアは窓の外に出て、煌びやかな夜の街を眺める。待ち人、それが人でない事は彼女が誰よりも知っている、長い時を過ごした親友で、誰よりも笑い合った大切な存在、彼との鉄板のやり取りが今は遠い日のように懐かしい。あの日、リムルとの出会いが無ければ、未だに彼と笑い合っていたに違いない。それでも今は悲しくない、彼に送られた〝ネコリア〟の名と、唯一無二の相棒も、自分を慕う配下もいる

 

「………きっと、また会えるわよね?約束を守らないと嫌いになるわよ……ヴェルドラ」

 

名を呼ぶだけで、胸が高鳴る。本人は自覚していないが彼女の中で其れは意味ある感情である事は明白なのだが、其れを彼女が知るのは少しだけ未来の話だ

 

「おいっ!リムルの旦那に何しやがるっ!バカ大臣!」

 

刹那、下が騒がしさを増す。カイリンの荒々しくも甲高い声が響いてきた

 

「おやおや、誰かと思えば……カイリン殿。私に御用かな?」

 

「はんっ!オメェみたいなオッサンに用事なんかあるかっ!其れよりも旦那に謝れっ!」

 

「下等な魔物に水を掛けただけでしょう?」

 

「てめっ!」

 

大臣の言い分にカイリンが殴り掛かろうとした瞬間、彼は盛大に吹き飛んだ。店の奥に叩きつけられるように、かなり盛大にだ

 

「俺のことはどう言おうが構わんがよ。恩人にケチつけんじゃねぇ!」

 

殴ったのはカイジンだった。その表情は怒りに満ち、大臣を睨み付けている

 

「き、貴様………!誰に向かって、その様な口を………!」

 

「ああ?」

 

カイジンが更に睨みを効かせると、大臣は如何にもな台詞を吐き捨て、店から去っていく

 

「ねぇ?リンちゃん。あの人って大臣よね?いいのかにゃぁ〜、こんなことをしたりして〜」

 

「あっ、ウチはネコの姐御に付いていくんで関係ないぜ」

 

「バカ娘が、オメェみたいなへちゃむくれを一人で行かせられるかよ。リムルの旦那、それにネコの姐御、俺たちもアンタらの村に行くぜ」

 

「真似すんなっ!ヒゲオヤジっ!」

 

「んだとっ!?」

 

「うーむ、個性豊かな奴らだ……あれ?エンカとゴブタはどうしたんだ?」

 

職人を仲間に引き入れることに成功したリムルは、ネコリアの側に騒がしい二人が居ない事に気付き、彼女に問う

 

「お散歩よ♪」




遂に王様からの呼び出しが!ちょっと何をしたの!ネコリアさん!

ネコリアの真骨頂その7 実は乙女チックな一面がある

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第十二話 目が覚めたら、仲間が捕まってた

今回の見所!ネコリアに配下が増える!以上!


「んにゃぁ〜………あら、もう朝?随分と静かね」

 

朝陽というか真上にある陽の光が部屋を照らす中、目を覚ましたネコリアは周囲を見回し、違和感を覚えた。其れはリムルたちの姿が無いという違和感だ

 

「ネコリア様!大変だぞっ!リムル様が変な奴等に連れてかれちゃったぞっ!」

 

「変な奴等……まあ、あれだけ暴れたらねぇ。ホントに厄介事に巻き込まれる体質ね、あたしの相棒ちゃんは」

 

軽くため息を吐き、姿を見せない相棒を待つネコリア。然し待てどもリムルは戻る気配もなく、二日が経過する

 

「リムル様。遅いなー」

 

「ん〜……ちょっとヤバいことになってるみたいねぇ」

 

「分かるんですかー?ネコリア様」

 

「あたしの眼に見えない風景は無いのよ?エンちゃん」

 

「さっすがはネコリア様!」

 

スキル《千里眼》、ネコリアの瞳に宿る見たい景色を見せる力。ある一定の条件が必要であるが今はその条件の適用範囲であるが故に、彼女には見えた

帰らないリムルがどの様な状況であるかを理解した

 

「先手を打っておいて正解だったわね」

 

「先手?」

 

「大臣が来た後にカイジンちゃんたちはあたしたちの村に来る事を約束したの。仮にも大臣に危害を咥えたんだから、流石にお咎め無しってことはあり得ないもの」

 

「ほへー、ネコリア様はすっごい先を見てるんだなー」

 

「ふふっ、当たり前じゃない。こー見えても参謀役よ?常に如何なる状況に最適なやり方を立案しておかないとね♪」

 

参謀役、其れは押し付けられる形で強引に引き受けさせられた役割。だが、ネコリアの知能があるからこその信頼は確かである

 

「ネコリア様ー!リムル様が戻って来たっすよー!」

 

名を呼ばれ、振り向くと嵐牙狼族に跨ったゴブタがリムル達と姿を見せる

 

「あら、ゴブタ。ご苦労さまー」

 

「全く人使いが荒いんっすから……これだから、ババアは…」

 

「なんか言った〜?」

 

悪口を聞き逃さなかったネコリアの瞳が、ぎらりと光り、黒い笑みが浮かぶ。その姿にゴブタは高速で頭を振り、否定の意を示す

 

「すまん!ネコちゃん。手間を取らせちゃったな」

 

「別に良いわよ。その為に前もって先手を打っておいたんだもの」

 

「よっ!頼れる参謀役!」

 

「にゃーはっはっはっ!当然ねっ!」

 

リムルからの褒め言葉に気を良くしたネコリアは高らかに笑い、自信に溢れたドヤ顔を披露する

 

「エンカ……アンタ、狼だったのかーーーーっ!?」

 

ランガの隣に並ぶように狼姿に変化するエンカに、カイリンは驚愕を見せる。同時にカイジンたちはあまりの衝撃に呆然状態である

 

「わふぅー!そうだぞっ!アタイは嵐狼女のエンカ!嵐牙狼族の長であるランガの妹だいっ!」

 

「カイリン殿だったな。我が妹が世話を掛けた」

 

「ああ、べ、別に構わねぇよ……(デケェェェェ!!!)」

 

律儀に妹であるエンカの代わりに頭を下げるランガ、其れに気負けしそうになりながらも謙遜するカイリンであったが、内心は驚愕していた

 

「それにしてもネコリア様。リムル様におっしゃっていた先手と言うのは?」

 

「んにゃ?ああ、実はね。カイジンちゃんたちが村に来てくれることになったのよ。色々あって、国から追い出されちゃったみたいなの」

 

「なるほど、スカウトした訳ですか。さすがはネコリア様ですね」

 

「ホントにすごいよなーっ!ネコちゃんは!」

 

「にゃふふ、当たり前よ。あたしを誰だと思ってるの?ジュラの大森林にその名を轟かせるネコリア=テンペストとはあたしのことよ♪」

 

「良いかね?この子はすぐに調子に乗るから、褒めすぎてはいけないよ」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

嵐牙狼の背に跨り、村までの道のりを走る一行。新たな仲間との出会いは、彼等にとって、豊かな生活を送る為の第一歩なのだ

故に広がる世界は無限、この先に何が待ち受けるかと期待に胸を膨らませる

 

「ネコリア様!おかえりなさいませっ!」

 

「ただいま♪スイちゃん」

 

村に到着したネコリアを迎えたのは、書記官のスイヒョウ。久方振りに聞く主人の声に、彼女は花が咲いた様な綺麗な笑顔を見せる

 

「其方がスカウトなさった職人の皆様ですか?」

 

「ええ、鍛治職人のカイジンちゃんと娘のカイリンちゃん。防具職人のガルムちゃんに細工職人のドルドちゃん、最後のミルドちゃんは建築と芸術に詳しいのよ………にしても随分と増えたわね」

 

ネコリアに名を呼ばれると五人は、スイヒョウに会釈し、リムルに追随する様に村の中に入っていく。そして、ネコリアは明らかに出発前よりも大所帯な村の様子に呟く

 

「ネコリア様の御命令通りに近隣中に噂を広めましたところ、庇護を求めて集まって来たのですわ」

 

「にゃるほど。其れで人数は?」

 

目視だけでは視認出来ないが故に、村の現状をリグルドの次に把握しているであろうスイヒョウに問う

 

「そうですわね、500名程でしょうか」

 

「増えたわね、ホントに。名前はリムちゃんに任せときましょうか。其れともスイちゃんがやって見る?」

 

「御冗談を。私の魔素はネコリア様よりも遥かに少ないのですよ?その私が名付けをするなど、笑止千万です」

 

「難しい言葉を知ってるわね……」

 

だが、移住を希望したゴブリンの中には、スイヒョウから聞いた話の流れでネコリアに仕えたいと願う者も少なくない、その大半が女性ゴブリンであり、リムルだけでは荷が重いと感じ、結局はネコリアも何人かに名を与えることになった

 

「ミゾレ、ツララ、ムイカ。セイテンにカスミ、オボロ………こんなもんかしらね」

 

「皆!ネコリア様に与えられた名に恥じぬ働きを見せなさい!」

 

「わふ、スイヒョウは頑張り屋さんだなー」

 

「エンちゃんもよ?」

 

「ホントかー?」

 

「ネコの姐御……いやさ、アネキ!ウチはアネキの専属職人になるぜっ!」

 

「にゃふふ、ありがと♪リンちゃん」

 

「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」

 

「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるスイヒョウ、エンカ、カイリンは目をハートにしながら悶える。名付けをされた面々も、初めて見る可愛さに釘付けである

 

「にゃふふふ……あら?何か近付いてるわね……人間?」

 

猫耳が捉えた気配を、探る為に《千里眼》を使用し、その光景を見たネコリアの瞳に映ったのは、黒い外套(マント)を羽織った白い服の女性、綺麗な黒髪から日本人だと思われる彼女の姿にネコリアの瞳が僅かに細くなる

 

「これは……嵐になりそうね」




ジュラの大森林に現れたのは一人の女性、果たして彼女は……?

ネコリアの真骨頂その8 実は人使いが荒い

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第十三話 人間に出会ったら、まさかの同郷だった

今回の見所!ネコちゃんが修行を頑張る!以上!


「……………」

 

静かに目を閉じ、流れゆく魔素を体内で高める事で猫又が持つスキル《仙術》の力を更なる高みへと昇華させる為にネコリアは、町から離れた森の中で、ひっそりと寝転ぶ

 

「ネコちゃ〜〜ん」

 

「………あら、リムちゃん。どうしたの?」

 

名を呼ばれ、閉じていた眼を開くと相棒のスライムが、ぽよ…っと音を鳴らし、此方に向かって来るのが見えた

 

「お客さんが来たから、ネコちゃんにも会わせたくてさ。シズさん、この子はネコちゃんことネコリア=テンペストだ。俺たちと同郷なんだよ」

 

そう告げるリムルの隣には、確かに見慣れない人物が佇んでいる。だが、ネコリアは彼女を知っていた。それは何故か?数日前に《千里眼》で見た光景に映っていたジュラの森を目指す一行の中でも一際に目立っていた人間だったからである

 

「そうなんだ。初めまして、ネコさん。私はシズ、スライムさんに助けてもらった冒険者だよ。出身は日本……アナタもなんだよね?」

 

「そうよ。転生してから、三百年になるけど……同郷に出会うのは、アナタで二人目になるわね。まあ、そのもう一人が其処のエッチなスライムな訳だけど」

 

「エッチじゃないやいっ!」

 

「仲良しなんだね、スライムさんとネコさんは。二人はどうしてこの世界に?さっき、ネコさんは転生とか言ってたけど、私みたいな召喚とは違うんだよね?」

 

スライムと猫又という奇妙な二匹、その組み合わせにシズと名乗った女性は問い掛ける。人間だった筈の二匹が、この様な姿になった理由が気になっているようだ

 

「前世で刺されちゃってね。その時に色々と考えてたら、今みたいなスライムボディになったんだ」

 

「刺された?なに、下着泥棒をした報い?」

 

「してないっ!」

 

「なら、覗きか」

 

「してないって言っとろうが!!!だいたい……そういうネコちゃんは、この世界に転生したんだ?俺よりも前に死んだんだろ?」

 

「うっ………べ、別にいいじゃない」

 

流れるようにリムルの死因を捏造していたネコリアであったが、自分の死因を聞かれた瞬間に言葉を濁し始める

 

「いや、教えてもらいたいね。シズさんもだよな?」

 

「う、うん…出来れば知りたいかな?」

 

溺れたのよ……

 

外方を向き、呟くネコリア。その声が聞き取れないリムルは彼女に近寄る

 

「えっ?なに?よく聞こえないんだけどー」

 

「だから!溺れたのよ……

 

「なんだってー?」

 

「溺れたのよっ!なにっ!?カナヅチが悪いことっ!?別に良いじゃない!泳げなくても生きていけんのよっ!!!」

 

何度も聞き返されたのが、腹に立ったネコリアは遂に大声を発し、更に開き直ってみせる

 

「どうして、溺れちゃったの?」

 

「子どもを助けたら、逆に投げ出されて、そのまま溺れたのよ……。あたし、昔から筋金入りのカナヅチだっていうのに、正義感が先走っちゃったのよ」

 

「ほう、ネコちゃんが人助けとな。珍しいこともあるんだな」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「シズちゃんだった?アナタは見る限り、召喚者よね。前に聞いたことがあるわ、あたしとかリムちゃんみたいな存在よりも定期的に現れる異世界からの転移者、其れを召喚者って呼ぶ……そうよね?」

 

自分とは異なり、人の姿を持つシズ。其れは彼女が転生者とは異なった存在、即ち召喚者である事を指している

 

「ネコさんは物知りだね。うん、私は召喚者……ずっと昔に、この世界に召喚された。最後に見た光景は辺り一面の炎だった……怖い音が鳴り響く中で、住み慣れた街は紅蓮に染まっていた」

 

「もしかして……空襲か?」

 

「戦争時代の生まれなのね。話から推測するに、きっと東京大空襲のことじゃない?」

 

「多分。私の教え子……その子も日本出身なんだけど歴史の授業で習ったらしいね」

 

「リムちゃん。思念伝達を使えば、記憶にある世界を見せてあげられるわよ」

 

「そうなのか。じゃあ、いっちょ張り切って!」

 

《大賢者》に呼び掛け、スキル《思念伝達》を使用し、自分の記憶にある光景を映し出す

 

「見えるか?」

 

「うん……えっと誰かの部屋かな?」

 

「テレビの前に箱ティッシュがあるわ」

 

「それ違うっ!今の無しっ!見せたいのはこっち!」

 

映し出された部屋は、如何にも男の一人暮らしという雰囲気の場所だ。ネコリアは見覚え無いが、リムルは心当たりがあるらしく、即座に光景を切り替える

 

「これがあの……炎に包まれた町……?」

 

「シズちゃん。確かに人は争い、傷つけ合うこともあるかもしれないわ。でもね?奪うだけが人じゃないの。何かを生み出すのも、人だから成せる事なのよ。だからこそ、あたしとリムちゃんは皆が楽しく暮らせる町を作ろうとしてるの」

 

「目指すは摩天楼っ!町が出来たら、遊びに来てくれよ?同郷のシズさんが第二の故郷って言えるような立派な町を作るからさ」

 

「……ありがとう、その時はお邪魔するね。私の教え子たちと一緒に……」

 

その時だった、シズに違和感が生じたのは。《仙術》の影響で五感が強化されていたネコリアは、その違和感に気付き、素早く距離を取る

 

「どうした?ネコちゃん」

 

「リムちゃん……ヤバいのが来るわ。魔力の量が明らかに増大してる……!!!」

 

「どういうことだっ!?大賢者っ!」

 

『告。個体名ネコリア=テンペストの証言通り、対象の魔力が大幅に増加。警戒してください』

 

そして、シズの体が宙に浮き上がっていく。同時に体からは纏うような火柱が上がり、獲物を狙う獣の如き殺気が溢れ始める

 

「まるで別人じゃないか……」

 

「シズ………聞いたことがあるわ、前に。爆炎の支配者シズエ・イザワ、それが彼女の本当の名前。そして、体内にイフリート、つまりは炎の精霊を宿す最強の精霊使役者(エレメンタラー)でもあるわ」

 

「「「シズさん……っ!!!」」」

 

ネコリアが保有する知識から、彼女の正体をリムルに教授していると火柱に気付いたシズの仲間である三人の冒険者が慌てた様子で姿を見せる

 

「お前たちっ!離れてろ!」

 

「リムルの旦那……悪いが、そんな訳にはいかねぇよ。俺たちは冒険者だ、仲間を放っておける程、甘くはねぇ」

 

「そうでやす。力をお貸しするでやす」

 

「ほっとけないわ!……なにこのネコちゃん!?すっごく可愛い!!!」

 

心強い味方、彼等の決意に押され、共闘を黙認するリムル。一方で金髪少女のエレンも決意を固めるが視界に入ったネコリアの姿に眼を奪われた

 

「あら、見る目あるわね?あとで特別に毛繕いさせてあげるわよ」

 

「お願いしますっ!」

 

「エレンさんっ!?状況を考えてもらえるかなっ!?」

 

「うっさい。バカカバル」

 

「んだとっ!?」

 

状況が二転三転する中で、リムルとネコリアは只管にシズを見据えていた

 

「さて…イフリートだったか?お前の罪を数えろっ!」

 

「アンタの悪運……試してあげちゃう♪」




イフリート、上位精霊を前に二匹は実力を最大限に発揮!果たして、シズを救えるのか!

ネコリアの真骨頂その9 実はカナヅチ

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第十四話 魔人を倒したら、人型になれちゃった

今回の見所!遂に!ネコちゃんが……!以上!


「イフリートだった?アンタの目的はなに?」

 

顕現したイフリートに、会話を試みようとネコリアは目的を問う。すると左手を掲げ、吊られるように視線を動かす

 

「どうやら、話すつもりはないみたいだぞ…ネコちゃん」

 

リムルの言葉通り、イフリートに会話の意志は存在していない。上空に浮かぶ無数の火の玉から感じ取れるのは明確な殺意と破壊衝動のみである

 

「らしいわね。リムちゃんは取り敢えず、ランガちゃんで回避しながら接近しなさい。あの火の玉はあたしが何とかするわ」

 

冷静に思考を巡らせ、状況に適した策を提案するネコリア。その策を実行する為、リムルは自らの影に潜んでいたランガを呼び出し、飛び乗る

 

「頼んだっ!そう言えば、アイツらは……」

 

「あっちぃ!あっつ!?」

 

「カバルの服が燃えてるぅぅぅぅ!?」

 

「大丈夫でやすかーーーーっ!!!」

 

「……ネコちゃん、アイツらは放置な」

 

「そうね…」

 

三人組を心配するも杞憂だったらしく、それなりに立ち回っており、自分たちの策に集中する事に専念しようとリムルは駆け出し、ネコリアは魔素を高める

 

「(先ずは魔素を高めて、其れを形に………出来た!)喰らいなさいっ!仙法・燈燐(ひりん)!!!」

 

「水刃!」

 

撃ち出された無数の火球がイフリートの火球を相殺し、僅かに生じた隙を狙い、リムルが《水刃》を放つも、直撃する前に蒸発してしまい、攻撃が通らない

 

「我が主!ネコリア様!精霊種に爪や牙などの攻撃は通用しません!下位精霊であれば、雨などで弱体化するのですが……」

 

「雨か……ネコちゃん!仙術で雨を降らすことは可能か?」

 

「不可能ね、さっきの火球みたいな水球は大量に作れちゃうけど、流石に雨は無理。仙術は自然エネルギーを体内に取り込み、魔素と組み合わせることで使用可能な魔術に近しいモノなの。自然そのものを操ることなんて、今のあたしの魔素では出来ないわ」

 

「そうか………待てよ?大賢者!」

 

『告。魔法に寄る攻撃は精霊種に有効な攻撃手段に成り得ます』

 

何かを思いついたリムルが《大賢者》に呼び掛けると、その意図を理解したようで的確な返答が返ってくる

 

「そういうことなら……っ!エレンだったか?俺に水系魔法を打ってくれ!」

 

「うえぇっ!?リムルさんに向けてっ!?」

 

「頼むっ!」

 

「わ、分かった!水氷大魔槍(アイシクルランス)!!!」

 

突然の発言に、驚きを隠せないエレンだったがリムルの眼の奥に何かを感じ取り、水系魔法を放った。すると、リムルが魔法を捕食し、いきなりの事に誰もが目を見開く

 

「リムちゃんっ!?」

 

「私の魔法を食べたぁぁぁぁ!?」

 

『告。「水氷大魔槍(アイシクルランス)」の解析および習得に成功しました』

 

「よし!水氷大魔槍(アイシクルランス)!!!」

 

驚くネコリアとエレンを他所に、捕食した魔法を習得したリムルはイフリートに水氷大魔槍(アイシクルランス)を放つ

 

「相変わらず……規格外なことするわね……」

 

「今度、ネコちゃんの仙術も食べていいか?」

 

「イヤよ。まあ、何せよ……邪魔は消えたわね」

 

「ああ、残るはテメーだけだ…イフリート」

 

『………炎化爆獄陣(フレアサークル)

 

イフリートを睨みながら、妖気(オーラ)を放ち、威嚇するも、リムルとネコリアを囲うように陣が発生し、燃え上がる

 

「主!ネコリア様!」

 

(熱いわね……でも丁度いいわ、この炎を逆に利用してやろうじゃない。にゃっふっふっふっ)

 

(あっ……悪いこと考えてる……でも、不思議と熱くないな。なんだろ?はっ!さては焦らしプレイかっ!)

 

『告。「熱変動耐性」の効果により炎の無効化に成功しています』

 

(だからかっ!ネコちゃんにエッチなスライム呼ばわりされないように……すん…すまし顔をしておこう)

 

(今絶対、エッチなことを考えてたわね……このスライム…)

 

意識を共有している訳ではないが、互いの考えを理解しあう関係性にある二匹はその考えが手に取るように理解可能である

 

「仙法・大燐華(だいりんか)!!!」

 

『!!』

 

炎の中からイフリート目掛け飛来したのは巨大な火球。然も陣から発生した炎の渦を取り込むように、その大きさは増していく

 

「悪いわね?イフリート。アンタの炎を逆に利用させてもらったわ」

 

「お前の敗因は一つ、俺……いや、俺たちを敵に廻したことだ。シズさんは返してもらう」

 

その言葉と共にユニークスキル《捕食者》を使用したリムルに呑み込まれたイフリートは、自分の周囲が暗闇に支配された事に気付き、背後に気配を感じ取る

 

『観念せよ、イフリート。貴様にこの空間は破れん。リムルは我の盟友、ネコリアに至っては我と三百年の月日を過ごした親友だ。貴様の敵う相手ではないわ!!』

 

その気配、ヴェルドラは長年の友であるネコリアと盟友のリムルの力量がイフリートよりも上位であると語る。その威厳に気負けしたのか、遂に抵抗を辞めたイフリートは唖然とするしかなかった。一方で、呪縛から解放されたシズは倒れるように落下し、リムルをクッションに倒れる

 

「スライムさん……ネコさん……ありがとう…」

 

感謝の言葉にリムルは優しく笑い、ネコリアもふりふりと鍵尻尾を揺らしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「………リムちゃん、そろそろ交代の時間よ。寝てないでしょ?」

 

「大丈夫だ。ネコちゃんも殆ど寝てないだろ?今日は俺が付いてるから、寝ていいよ」

 

「なら、あたしも一緒に居るわ。寝てる間に目を覚ましたらイヤだし」

 

騒動から一週間、目を覚さないシズを二匹は入れ替わりで見守っていた。リムルは勿論ながら、何時もは睡眠時間の方が長いネコリアまでもが睡眠時間を削り、彼女が目を覚ますのを待ち続けていた

 

『告。イフリートとの同化が彼女を延命させていたようです』

 

「なっ……!?じゃあ、俺のやったことは……」

 

「リムちゃん、其れは違うわ。シズちゃんは気力を消耗してたから、あたしたちが行動しなかったら、イフリートに自我を支配されていたわ。其れをシズちゃんが望んでいたと思う?」

 

「ネコちゃん…」

 

《大賢者》からの申告に自分を責めようとしたリムルであったがネコリアからの説明で、彼女の優しさに触れる

 

「スライムさん…ネコさん…」

 

「シズさん!?」

 

「良かったわ、気がついたのね」

 

自分たちを呼ぶ声に振り向くと、うっすらと眼を開けたシズが居た。彼女が目を覚ましたことにリムルは喜び、ネコリアもふりふりと鍵尻尾を揺らす

 

「ずっと側に居てくれたの……?」

 

「ネコちゃんと入れ替わりだけどな」

 

「スイちゃんに水をもらってくるわ」

 

「ネコさん。必要ないよ……」

 

「え…?」

 

水を貰いに出ようとしたネコリアをシズが呼び止める。そして、その後に続いた言葉に彼女は自らの耳を疑った

 

「必要ないって、何を言ってるの?」

 

「スライムさんは分からないけど、ネコさんは分かってるんじゃない?私の命が…」

 

「うっ……そ、それは……」

 

「どういうことだ?ネコちゃん」

 

確かにリムルは理解していなかったが、ネコリアは知っていた。一週間の間にシズの中にある気力が薄れ始めていたことを、彼女が使用する仙術に必要な自然エネルギーを送り込み、命を繋いでいたが昨晩からその供給が拒まれるようになっていたのだ

 

「ごめんね……あたしの力じゃ……アナタを前みたいに元気にはしてあげられない…」

 

「良いの、ネコさんの優しさに甘えたくないから。其れにね?後悔はしてないの。何十年も前に、こっちに来て、辛いことは沢山あったけど、良いことも同じくらい沢山あった。最後は二人と出会えた、これって奇跡だと思うの。心残りがある訳じゃないけど……私はもう十分に生きたから」

 

次第に衰弱していくシズの体は年齢を重ねていくように皺だらけになり、体力も低下していく

 

「シズさん…俺たちに出来ることはないか?」

 

「心残りがあるなら、言って。何でも手伝うわよ」

 

「頼めないよ……二人の人生の重荷になってしまうもの」

 

「大丈夫よ、重荷くらい、背負ってあげるわ。そうよね?リムちゃん」

 

「ああ……」

 

「やっぱり……優しいね、二人は」

 

そう告げたシズは安らかに、眠るように息を引き取る。リムルはユニークスキル《捕食者》で自らの体内にシズを呑み込む

 

「………ネコちゃん、俺を見てくれ。これからはこの姿で………」

 

「なに?」

 

《人化》のスキルを得たリムルがシズに酷似した銀髪の少女に変化し、ネコリアの方を振り向く。するとそこには見覚えのない少女が佇んでいた。毛先の一部が薄桃色の黒髪ストレートロングに褐色の肌、そして金色の瞳を持つ美少女が其処には居た。彼女の頭上にあるぴこぴこと動く猫耳、臀部の上部分でふりふりと揺れる鍵尻尾、その二つでようやく気付いた

 

「まさか……ネコちゃん?」

 

「どう?人型のあたしも可愛いでしょ♪」

 

『告。個体名ネコリア=テンペストが仙術による人化を会得しました』

 

「仙術万能過ぎやしませんっ!?」

 

「どうでも良いけど、服は着たら?全裸で興奮とか、エッチなスライムね」

 

「エッチなスライムじゃないやいっ!」

 

かくして、人となる力を手にしたネコリアとリムル。二人の姿を見て、配下たちが驚くのはこの直ぐ後である

 

 




人型になったネコリアとリムル、そして其れを知ったエレンたち……果たして、この先に待ち受けるのは?

ネコリアの真骨頂その10 実は強い

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第十五話 装備をあげたら、喜ばれちゃった

今回の見所!ネコちゃんは人型も可愛い!以上!


「「ネコリア様!その御姿はっ!?」」

 

「にゃふっふっ♪仙術を変化に応用した仙法・変幻の効果よ。どう?人型のあたしも可愛いでしょ♪」

 

ネコリアを探しに来たスイヒョウ、エンカの目線の先に立つのは、敬愛する主人が変化した可愛らしくも愛らしい一人の少女。誇らし気に笑う彼女の笑みは、何時もよりも遥かに小悪魔を連想させる

 

「素敵ですわ♪ネコリア様の御可愛い御姿に更なる磨きが掛かっておられます!」

 

「わふぅ!ネコリア様とお揃いだぞー!」

 

「あのぅ、俺も人型になったんだけど?」

 

「存じていますよ?」

 

「リムル様も良かったなー」

 

「反応の差がおかしいっ!!!」

 

ネコリアの姿を褒めちぎるスイヒョウ、エンカ。しかし、同様に人型を会得したリムルに対する反応は冷めていた。其れもその筈、二人の主人はあくまでもネコリアなのだ、リムルは盟主であるが尊敬の対象では無いのである

 

「我が主!妹の非礼を、このランガがお詫び致しますっ!エンカも我が主にお詫びをせんかっ!」

 

「アタイは何も悪くないっ!アニサマのバーカ!」

 

「兄にその態度は何だ!?」

 

「はいはい、エンちゃんもランガちゃんも仲良くしなさい。というか、リムちゃんはさっさとスイちゃんが持ってきた服を着なさい」

 

「おお、そうだった。スイヒョウ」

 

「此方です」

 

兄妹喧嘩を始めようとするランガとエンカを咎め、未だに裸体で佇むリムルに服を着るように促すネコリア。ちなみに彼女は既にスイヒョウが持ってきた衣服を身に纏っている

 

「ネコちゃんの服、露出度が激しくないか?」

 

「これくらいは普通よ。というか、さっきまで全裸だったエッチなスライムに言われたくないわね」

 

「エッチなスライムちゃうわっ!」

 

薄桃色のファーコート、黒のチューブブラ、黒いオープンフィンガーグローブ、薄桃色の腰巻き、スパッツという明らかに際どさが目立つ衣服を身に纏いながらもネコリアは恥じらう素振りも見せず、その可憐な姿で何時もと同じようにリムルを揶揄う

 

「スイヒョウさん。もう入ってもいいかな?」

 

「ネコリア様、リムル様。エレンさん達を御通ししても?」

 

「良いわよ」

 

「ああ、入ってもらってくれ」

 

「畏まりました。どうぞ、中に」

 

外で待たされていたエレン達をスイヒョウは招き入れる。そして、彼女達は自分の目を疑った

 

「よっ、待たせて悪かったな」

 

「三日振りね」

 

「「「…………誰ェェェ!?」」」

 

片手を挙げるリムル、澄ました顔のネコリア。見覚えのない姿の少女二人に三人の声が重なるように木霊する

 

「リムルだよ。訳あって、人型になれるスキルを習得したんだ」

 

「あたしは見ての通り、ネコリアよ。まあ身形に多少の違いはあるかもしれないけど、可愛いことに変わりはないわ」

 

「ふへ〜……」

 

「リムルの旦那もすごいでやんすけど…ネコリアの姐御もすごいでやすねぇ…」

 

「………リムルさん。シズさんを食べたの?イフリートを食べたみたいに…」

 

関心を示すカバルとギドとは裏腹に、エレンだけは瞳にうっすら涙を浮かべ、きゅっと下唇を噛みながら、問いを投げ掛ける。彼女の気持ちは痛い程に分かる、其れでもリムルにはその方法しかなかったのだ

 

「許してくれとは言わない……でも、ネコちゃんの力でもシズさんを延命させるのは、難しかったんだ。でもな、彼女の望み通りにしてあげられるのが……このやり方しかなかったんだ」

 

「仲間のアナタ達に相談しなかったのは、ごめんね。でもね?シズちゃんは最後の旅で三人が一緒に居てくれたのを楽しかったって言ってたわ」

 

「リムルさん……ネコさん……二人が看取ってくれて、シズさんは幸せだったと思うよ」

 

そう言ったエレンの表情は晴れやかで、花が咲いたように綺麗だった。その日、彼女達が経験したシズとの冒険をリムルも、ネコリアも静かに聞いていた。そうするとリムルの中に眠る彼女が笑ったような気がしたから、二人は静かに聞き役に徹していた

 

「さてと、そろそろ御暇するかね。色々と世話になっちまったな」

 

「帰るのか?」

 

日が明け、朝陽が照らすのを切っ掛けにカバルが立ち上がり、その様子にリムルが問う

 

「ああ、ギルマスにこの森の調査報告と……シズさんのことも報告しなきゃならないからな」

 

「ギルマス……?なにそれ」

 

「ネコちゃんに分かりやすいように言うと冒険者の元締めみたいなもんだよ」

 

「リムルさんとネコさんの事も伝えておくね」

 

「御二人も何かあったら頼るといいでやすよ」

 

「その時が来たら、御言葉に甘えるわね」

 

くすっと、笑うネコリア。旅立つ三人を見送ろうとした時だ。カバルが立ち止まり、振り返る

 

「旦那。もう一度、あの姿を見せてくれるか?」

 

「別に構わないぞ」

 

疑問を抱きながらも、人型に変化するリムル。すると三人が彼に頭を下げていた

 

「「「シズさん!ありがとうございました!」」」

 

「あら、シズちゃんってモテモテだったのね」

 

「お姉ちゃんみたいに思ってました……ありがとう……だから、これを期に!これからはネコさんをお姉ちゃんと思って生きていきます」

 

「今の下りが台無しだぞっ!?」

 

「エレンがすまん……」

 

「姐さん……」

 

「なんか女の子にモテるわね……最近」

 

綺麗なやり取りを無駄にするエレンの発言に男性陣が呆れる中、ネコリアだけは自らが同性に好かれることに疑問を抱いていた。しかし、其れが彼女のスキル《女人望(カリスマ)》によるモノだと知るのは先の話である

 

「それはそうと、そんなボロボロな装備で旅立つのは良くないわね」

 

「「「辛辣っ!!!」」」

 

「だから……リンちゃん!」

 

「ほいさっ!アネキ!」

 

ネコリアの呼び掛けに応えるように、素早く姿を見せたカイリンは両手に試作品の装備を抱えていた

 

「ウチのオヤジ……親方たちの力作だっ!是非とももらってくれ!アネキの友達なんだろ?お前ら」

 

「良いのかっ!?」

 

「ありがとう!」

 

「あっ、ついでにコイツもやるよ。ウチが作った装飾装備だ」

 

「ほへ?腕輪……?」

 

「コイツは行った場所を永久的に記憶可能な特殊な腕輪だ」

 

ふふん、と誇らしそうに自らの力作をエレンに渡すカイリン。だが形は違うがリムルとネコリアは其れを知っていた

 

「なんか知ってるぞ……ああいう腕輪…」

 

「奇遇ね…あたしもよ……」

 

「前にリムルの旦那が出してくれたマンガ?とかいう書物に出てきたのを再現したんだ」

 

「犯人はアンタじゃないの」

 

「ふっ……若さって怖いな」

 

新たな装備を得た三人は報告の為に町を後にした。その背を見送るネコリアは空を仰ぎ、遠くに旅立ったシズに想いを馳せる

 

「シズちゃん。今度、会う時はあたしとリムちゃんの想い出話をたくさん聞かせてあげるわね……」

 

((約束だよ?ネコさん))

 

声が聞こえたような気がして、振り返るが其処には誰もいない。其れでもネコリアは理解していた、その声が誰で、その言葉が何を意味するのかを彼女は理解していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前に食事と名をやろう」

 

干上がった荒野で今にも息絶えそうな一体の豚頭族(オーク)に一人の魔物が呼び掛ける

 

「………あなたは?

 

消え入りそうな声で、豚頭族(オーク)が問えば、その魔物は携えた杖を肩に担ぎ、地に膝を付く

 

「ゲルミュッド。俺の事は、父だと思うがいい。そして……お前の名はゲルド、今後はそう名乗れ」

 

名を与えられた豚頭族(オーク)、そして仮面越しに瞳を細めるゲルミュッド。この出会いが後に、リムル=テンペストとネコリア=テンペストの運命を左右する壮大な事件の始まりであるのを、今は誰も知らない

 

「やがて、ジュラの大森林を手中に収め、豚頭魔王(オークディザスター)となる者よ」

 

「その名を頂戴致します……我が父よ…」




発展を遂げる町、其処に現れたのは七人の大鬼族!波乱の展開に、ネコリアは……?

ネコリアの真骨頂その11 実は人型も可愛い

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第二章 この度、盟主になりましたスーパーコンビです!
第十六話 襲撃者はオーガ?でも可愛さに一点の淀みナッシング♪


今回の見所!ネコちゃんは何方の姿も可愛い!以上!


「それにしても、人型のアネキは猫の時と雰囲気が違って見えるな。可愛いのに変わりはねぇんだけどさ」

 

「ネコリア様の御姿の前では、誰もがその愛らしさに言葉を失いますわ。このスイヒョウも、溢れ出る独占欲を抑えるので精一杯ですわ」

 

「どくせんよく……ってなんだ?スイヒョウは相変わらず、難しい言葉を使ってて、回りくどいな。アタイは何方のネコリア様も大好きだぞっ!」

 

「ふふっ、褒めてくれてありがとね♪」

 

配下三人からの褒め言葉に気を良くしたネコリアは、くすりと笑みを溢す。その姿は人型であるが故に猫又の時とは異なった雰囲気があり、遥かに大人びている

 

「もう、猫の姿にはならねぇのか?」

 

「気分次第ね。今後は魔素の消費具合によっては、使い分けたりとかもしていくつもりよ」

 

「其れを聞いて安心しました。まぁ、私は何方のネコリア様もお慕い申し上げていますけどねっ!」

 

「アタイのマネっこするなっ!」

 

「真似?はんっ……エンカ、こういうのは言ったもの勝ちよ」

 

「ウチは人型かなぁ……猫の姿が嫌いって訳じゃねぇんだけどさ。人の姿なら、ウチが作った装備を着てもらえるだろ?」

 

「にゃるほど、一理あるわね。エンちゃんとスイちゃんは仲良くしなさい」

 

カイリンの意見に同意を示しながらも、戯れ合うエンカとスイヒョウを咎める姿は正に主人と呼ぶに相応しい。すると其処に足音が近付くのを、察知したネコリアの耳がぴこぴこと動く

 

「よっ、前にも増して賑やかだな。ネコちゃんの周りは」

 

「リムちゃん………今日は服を着てるのね♪」

 

「俺が何時も裸みたいな言い方はやめてくんないっ!?」

 

ランガに跨り、姿を見せたリムルは服を着ている事をネコリアに指摘されると即座に突っ込みを放つ

 

「それで?どうしたのよ」

 

「ああ、人に擬態出来るようになっただろ?だからさ、今日からは皆と一緒に飯を食おうと思ってさ」

 

「にゃるほどね。スライムの時は味覚が無くても、人の姿なら食べれるものね」

 

疑問に対し、リムルが答えを返すとネコリアは頷くと同時に鋭い指摘を放つ

 

「さっすがはネコちゃん。話が分かるな」

 

「良い女は話せるのよ」

 

「いや、ネコちゃんは猫又だからメスじゃないか?」

 

「引きちぎるわよ」

 

「なにをっ!?」

 

同意からの謎の文句にリムルの突っ込みが冴え渡る。其処に更なる足音が近付く

 

「ネコリア様!其れにリムル様も!」

 

「周辺警備兼食糧調達お疲れさま〜♪グルちゃん。今日からはリムちゃんも食べるみたいだから、とびっきりのをお願いね」

 

「なんとっ!お任せください!」

 

リムルも食べると聞き、リグルは嬉しそうに胸を叩く。するとゴブタが二人の方に近付き、ある部分に視線を落とす

 

「へ〜、リムル様も食べるっすか。今日は」

 

「おうよ!なんせ、この体には味覚があるからな!」

 

「いっぱい食べたら、おっぱいも育つっすかね?ネコリア様みたいなババアは手遅れかもしれないっすけど----げふうっ!?」

 

リムルへのセクハラ?発言とネコリアへの禁句を放った瞬間、両側から蹴りが放たれ、盛大にゴブタは吹っ飛ぶ

 

「スイヒョウ……このバカを捨ててきなさい」

 

「お任せください。牛鹿辺りの餌にしますわ」

 

「スイヒョウさんっ!?ネコリア様!お許しをォォォォォ!!!」

 

「グルちゃん。警戒は怠らないようにね?こっちの方に近付く大きめの妖気(オーラ)が七つある……もしもの時はあたし、もしくはリムちゃんを呼びなさい」

 

「承知しました」

 

森に入るリグルと別れ、ネコリアは洞窟に向かうリムルに誘われるが「用事がある」と断り、仙術の修行の為に定位置である場所で座す

流れゆく自然エネルギーと体内の魔素を組み合わせ、高密度の力に昇華する為の修行。彼女はこの修行を欠かしたことがない、いわば習慣とも呼べる日常の一部である

何時間の時が流れただろう、混ざり合う二つの力が《仙術》に更なる磨きを与えている……と感じ始めた瞬間、《千里眼》が何かを捉えた

 

「森の中みたいね……それにこの気配は…」

 

『ネコリア様!スイヒョウです!リグル達の部隊が襲撃を受けているとの報告がっ!』

 

気配を探るネコリアの頭に、スイヒョウの声が響く。スキル《心理意識》による思念伝達だ、通常は保有者のネコリアが他者に語りかける為のスキルだが彼女が名付けを行なった配下であれば、逆も可能である

 

「分かったわ、あたしも直ぐに向かうから。スイちゃんはリムちゃんに連絡を」

 

『ご安心を!リムル様の元には既にエンカを向かわせております!』

 

「仕事の出来る良い娘ね!」

 

有能さを見せるスイヒョウを労い、気配を感じる方に駆けるネコリア。その速度は猫状態に匹敵する程の速さで、数秒もしない内に目的地まで辿り着く

 

「それで?これはどういう騒ぎかしら?ゴブタがまた何かをやらかしたの?」

 

「オイラがやらかした前提っ!?見てくださいっす!刺されたんっすよっ!!!」

 

「擦り傷よ。塩でも塗れば治るわ」

 

「余計に痛くなるヤツじゃないっすか!!!」

 

「すまん!遅れた。取り敢えず、回復薬だ」

 

ネコリアの冗談にゴブタが突っ込みを入れていると、遅れてきたリムルが傷を負った警備隊の面々に生成した回復薬を掛ける

 

「ネコリア様!リムル様!アニサマからの伝達によると、相手はオーガだっ!」

 

「オーガ………苗字?」

 

「オーガ、漢字だと大鬼だよ。俺の知識あるのとは、随分と雰囲気が違うけどな」

 

「ふぅん?なら、大義名分は揃ってるわね……このあたしの町に手を出した罪は重いわよ」

 

「待て待て、ここは話し合うべきだ」

 

目の前に佇む七人の見慣れない魔物、オーガと呼ばれた種族に明確な敵意を放つネコリアをリムルが咎める

 

「正体を現せ!邪悪な魔人どもめ!」

 

「………は?」

 

「魔人?誰が見ても可愛いネコちゃんでしょうがっ!!!」

 

「そうだ、俺も愛くるしいスライムだ」

 

「エッチなが付くけど」

 

「エッチちゃうわっ!!!」

 

「ふんっ……その様な茶番で、油断を誘おうとしても無駄だ。その溢れ出る妖気(オーラ)が全てを物語っている」

 

((定番のやり取りが茶番扱いされたっ!!!))

 

魔人と呼ばれ、定番のやり取りを交えた挨拶をする二人。しかしオーガに茶番扱いされ、戦慄にも似た衝撃を受ける

 

「エンちゃんはランガちゃんとあの桃色の髪をした女の子をお願い」

 

「分かった!アニサマ!」

 

「おおっ!我が妹よっ!」

 

「リムちゃんは誰と踊る?あたしは個人的にあの一番強そうなのとヤリたいわ」

 

「却下。ネコちゃんは紫髪の女と金髪の女を頼むよ」

 

「むぅ……仕方ないわね」

 

首領格に挑む事を申し出るネコリアだが、リムルに却下され、その背後に佇む二人の女性の前に移動する

 

「下がガラ空きよ♪」

 

(速いっ!!)

 

(いつの間にっ!!!)

 

「仙法・花華乱(かからん)!!!」

 

ぱんっ、と両手を打ち鳴らした瞬間に目眩しの花吹雪が舞う。突然の現象に二人は周囲を見回す

 

「くっ……正々堂々と戦え!卑怯者がっ!」

 

「卑怯?策略と言ってもらいたいわね。仙法・樹縛林(じゅばくりん)!!!」

 

「姉上っ!よくもっ!やはり、魔人は信用出来ないっ!たかが、豚頭族ごときに………我々、オーガが敗れる等、ある筈がない……それも全ては貴様等の!魔人の入れ知恵なのだろうっ!」

 

「はぁ?」

 

金髪の女を木の蔓で拘束した瞬間、紫髪の女が叫ぶように明確な敵意を向けるが、彼女の言い分に身に覚えがないネコリアは、こてん、と首を傾げる

 

「さっきから魔人とか言ってるけど何の話?あたしは見ての通り、猫又よ。あとそっちで巨大な火の玉を出してるのは相棒のエッチなスライムよ」

 

「「火の玉…………デッカッ!?」」

 

「………凄まじいな。悲しいが、我らでは、貴様らには遠く及ばぬようだ。だが、俺には、次期頭領として育てられた誇りがある!無念に散った同胞の無念を晴らさずして、何が頭領か!叶わぬまでも、一矢報いてくれるわ!」

 

「若………。それでは、ワシもお供致しましょうぞ!」

 

「若君!私もお供いたしま………解けぇぇぇぇ!!!」

 

「姉上ェェェ!!!」

 

リムルの炎を前に決意を固める若君と家老的な男、更に同調した金髪の女も参加しようとするが自分の状態を再確認した後に騒ぎ始め、妹らしき紫髪の女が駆け寄る

 

「お待ち下さい、お兄様!この方達は、敵では無いかもしれません!」

 

刹那、リムルと若君の間に割り込むようにランガとエンカを相手にしていた桃髪の少女が割って入る

 

「そこを退け!」

 

「いいえ!」

 

「………何故だ!?里を襲った奴と同じく、仮面をつけた魔人では無いか!お前もそう言っただろう!?」

 

「はい………ですが、これだけの力を持つ魔人様達が、姑息な手段を用いるでしょうか?我らの里を襲撃したオークを率いていた魔人とは明らかに異なります!」

 

「妹ちゃんの方が話せるみたいね?若君クン」

 

「それで?どうする……まだ続けるか」

 

その問いかけを最後に若君は刃を下ろし、リムルも火の玉を《捕食者》で捕食し、会話が出来る雰囲気が流れる

 

「何者なんだ、お前達は?」

 

「さっきから言ってるじゃない。可愛いネコちゃんのネコリアよ♪」

 

「俺はリムル。ただのスライムだ」

 

「エッチなスライムよね」

 

「エッチじゃないやいっ!!!」

 

「なっ……!」

 

《変幻》と《擬態》を解き、元の猫又とスライムの姿に戻る二匹。今までからは想像もつかない姿にオーガ達が驚きを見せる

 

「堅苦しい話は宴を交えながらにしましょうか。勿論、来てくれるわよね?」

 

「良いのか……?勘違いしたとはいえ、俺たちは其方の仲間に危害を咥えたんだぞ?」

 

「堅いことは気にしない、気にしない」

 

「さすがはババア!心が広いっすねー!」

 

「エンちゃん♪」

 

「わふっ!」

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

 

さらりと放たれたゴブタの言葉を聞き逃さなかったネコリアが呼び掛けると、彼の頭にエンカが齧り付く

 

「あのネコさん……怖いな」

 

「ですな……」

 

「だべ……」

 

「……怖い」

 

「怖いと可愛いの共存………あのネコさん、中々のツワモノと見たっ!」

 

「スライム様はモチモチしてますね」

 

「あとひんやりしてます」

 

男性陣がネコリアの怖さを垣間見る中、金髪の女は彼女の二面性に興味を抱き、桃髪の少女と紫髪の女はリムルに興味津々であった




大鬼族を招待し、宴を上げるネコリアとリムル。そして、彼等の事情を聞いた二人は……

ネコリアの真骨頂その12 実は怖い

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第十七話 新たな配下は最強の矛だけど、ちょっとだけ変な娘だった

今回の見所!ネコちゃんは口癖も可愛い!以上!


「はむっ……」

 

「リムル様?お味の方はいかがでしょう」

 

宴会の席、リムルは料理担当のゴブイチが手渡した串焼きを頬張る。その姿に誰もが、ごくっ、と喉を鳴らす

 

「うんっっっまぁぁい!」

 

「わぁ〜、溜めた割に普通の感想ー。ナイワー」

 

「普通で何が悪いんだよ。ありがとな!ゴブイチ!」

 

揶揄うネコリアに突っ込みながらも、ゴブイチを労うリムル。其処からは盛大な宴が幕を開ける

酒を呑み、料理に舌鼓を打ち、騒ぎ、正に宴会と呼ぶに相応しい光景が広がっている

 

「オークがオーガに戦を仕掛けた……?ややこしいわね」

 

ネコリアはオーガの一人である金髪の女から、彼等が自分たちを魔人と呼んだ経緯についての事情を聞いていた

 

「確かに名前はややこしいですが、姿形は異なります。オーガがゴブリンと同じ鬼と呼ばれる種族の系譜であるのに対し、オークは豚が理性を得た種族なのです」

 

「にゃるほど。スイちゃんは説明が上手ね」

 

「でもよ、信じられねぇぜ。オーガとオークじゃ釣り合いが取れてねぇだろ、仮にも格下の種族が戦闘に特化した種族を攻めるなんてのは、魔王に挑むのとおんなじくらいに無茶だ」

 

スイヒョウからの説明に頷くネコリアの隣で、カイリンは半信半疑の様子で意見を述べる

 

「それでも事実、奴らは来た。私たちの里を襲撃し、蹂躙した挙句、私の畑までも食い散らかした……くっ!もう少し、早くに気付いていれば、あのような奴等は焼豚にしてやったというのにっ!」

 

「ネコリア様、ネコリア様。ちょっと変な魔物だぞ?この金髪」

 

「エンちゃん。指を差しちゃダメよ?其れに変なのは、リムちゃんで慣れてるわ」

 

「ネコちゃんにだけは言われたくない」

 

「あら、居たの」

 

「さっきから居ましたけどっ!?」

 

如何なる時でも、相棒弄りを忘れないネコリアと突っ込みを放つリムル。オーガ達はこの二人が先程の妖気(オーラ)の持ち主と同一人物であることに未だに驚きを隠せないでいた

 

「それにしても、お前の妹はすごいな。薬草や香草に詳しくて、あっという間にゴブリナ達と仲良くなった」

 

「うちのゴブリナちゃんたちはスイちゃん以外は割と控えめな子が多いのに、妹ちゃんの側では和気藹々としてるわね」

 

「なんと!お褒めの言葉!恐れ入りますわ、ネコリア様」

 

「褒めてないのよ?スイちゃん。今のは皮肉」

 

「肉があるのかっ!?」

 

「エンちゃん?皮肉は嫌味のことだから、本当のお肉じゃないのよ」

 

矢継ぎ早に安定感ある惚け振りを披露する配下二人にネコリアのやんわりとした突っ込みが飛ぶ

 

「……箱入りだったからな。頼られるのが嬉しいんだろう」

 

「姫様は昔から世話焼きだったからな……おいコラァ!妹ォォォ!私の肉を喰うなァァァ!!!」

 

「ふふんっ!甘いですよっ!姉上!食卓は戦場なのですっ!!!」

 

「すまん、アイツらは放置してくれ」

 

会話の途中に肉の取り合いを始める姉妹を放置し、他の面々は会話を続ける

 

「それで?アナタ達はこれから、どうするの?」

 

「どうする……とは?ネコリア殿」

 

「勿論、今後の方針よ」

 

「そうだな、ネコちゃんの言う通りだ。再起を図るにせよ、他の地に移り住むにせよ、仲間の命運は、お前の采配にかかってるんだろ?」

 

「………知れたこと、力を蓄え、再度挑むまで」

 

「にゃるほど。さては何にも考えてないわね?アンタ」

 

その指摘は正しかったらしく、若君はネコリアから視線を外すように視線を横に動かす

 

「じゃあ、提案だ。お前たち全員、部下になる気はあるか?」

 

「…………は?」

 

唐突な提案に若君は素っ頓狂な声を挙げる。しかし、リムルの瞳に嘘偽りは無く、一点の淀みも無い

 

「部下と言っても、あたし達が対価に支払うのは衣・食・住の保障くらいだけね。それでも何の考えも無しに突っ走るよりは有意義な提案なんじゃない?」

 

「確かにそうだが……それでは、この街を俺たちの復讐に巻き込む事に………」

 

「別にお前たちのためだけって訳じゃないさ。数千の、しかも武装したオークが攻めてきたんだろ?誰が見ても異常事態だ」

 

「その異常事態の対策として、戦力が必要なのは何方も同じ……だったら、この提案に乗っかるのが妥当だと思わない?」

 

「………なるほど、理に適っているな。すまないが、考える時間をくれないか?」

 

「いいわよ〜」

 

軽く手を振り、去っていくネコリアとリムルを見送ると若君は森の中に入り、考え込むように遠くを見詰める

 

「……悪い話ではない。決めるのは、お前自身だ」

 

「私たちの意志は一つだ。若の意見が我等の意志、お前がやりたい様にやればいい」

 

幼馴染である二人の言葉に、若君は受けた屈辱を悔しく思い、歯噛みする。その想いを受け止めてくれる心の広い強き者、彼の心は決まっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「心は決まったみたいね」

 

「聞かせてもらえるか?お前の決意を」

 

翌日、覚悟を決めた若君はリムルの天幕を訪れる。何かを察していたネコリアも同席し、その意志を問う

 

「オーガの一族は戦闘種族だ。人に仕え、戦場を駆ける事に抵抗はない。主が強者なら、尚の事喜んで仕えよう………昨夜の申し出、承りました。御二方の配下に、加わらせて頂きます」

 

膝を付き、新たな主に忠誠を誓う。その意志を確かに受け止めた二匹は其々のスキルで人型に変化する

 

「これより、オーガたちの命は俺たちの預かりとなった。皆を呼べ」

 

「あたしたちの配下になるなら、名前がないと不便でしょう?恒例の授けの儀式を始めるわよー」

 

「勝手に恒例にすんなっ!」

 

恒例と化した名付け、若君の呼び掛けに応えた残りのオーガが集まるとリムルの前に並ぶ。そして言わずもがなであるが我関せずを貫くネコリア、すると彼女に、一つの影が近付く

 

「あら、金髪ちゃん。どうかした?」

 

その影、金髪の女はネコリアの前に跪き、帯刀していた剣を彼女の前に置く

 

「貴女様の仙術の前に私は自分が如何に力を軽んじていたかを知りました。この剣を貴女様の元で磨く許可を戴きたく存じます」

 

その瞳は真っ直ぐとネコリアを見据え、スイヒョウとエンカに名を与えた日の事が頭を過ぎる

 

「にゃっふっふっ、素直な娘は嫌いじゃないわ。良いわ、アナタにあたしの剣になる許可と、〝雷鳴(ライメイ)〟の名を、与えるわ。これからはあたしと町の為に、その剣を振いなさい」

 

「はっ!このライメイ、賜りし名に恥じぬ剣となる事を御約束致します!」




配下となり、名を与えられたオーガ達。すると彼等に進化の兆しが……

ネコリアの真骨頂その13 実は「にゃるほど」が口癖

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第十八話 仙術と料理は紙一重だった?配下に教えを乞われちゃった

今回の見所!ネコちゃんは寝起きがトニカクカワイイ!以上!


「ネコリア様。お目覚めの時間です」

 

「ライメイ?ネコリア様を起こす役目は書記官である私の役目ですわ。新参者のアナタが、出しゃばらないでもらえる?」

 

「朝だぞーっ!ネコリア様ー!」

 

「エンカ!静かにしろっ!すまねぇ!アネキ!」

 

「んにゃぁ〜………朝から賑やかねぇ……」

 

オーガを配下に加えた翌日、寝息を立てていたネコリアの耳に騒がしいやり取りが聞こえ、ゆっくりと瞼を上げる

 

「ネコリア様。おはようございます、今朝も御可愛いですわ」

 

「にゃーっはっはっはっ!当たり前よ♪」

 

「寝所で騒いでしまい、申し訳ありません。お加減はいかがですか?ネコリア様」

 

「お腹が空いてる以外は絶好調〜…………んにゃ?誰?」

 

スイヒョウの褒め言葉に気を良くし、高笑いするネコリア。其処へ、一人の女性に問いを投げ掛けられたので、答えを返すも、見覚えのない彼女に首を傾げる

 

「アナタ様の剣となる命を受けたライメイにございます」

 

「ライメイ……昨日のオーガちゃん?」

 

「左様です。今は進化し、鬼人となりました」

 

そう述べるライメイの体型は筋肉質だった体型が細身になり、すらりとした長身が目立つ穏やかな雰囲気に変化していた

 

「鬼人………リムちゃんが名付けをした子達も同じ進化をしたの?」

 

「はい。若君がベニマル、姫がシュナ、爺がハクロウ、我が愚妹がシオン、そして残る二人がソウエイとクロベエの名を頂戴し、鬼人に進化を遂げました」

 

「くっ……ウチだけ名前をつけてもらってねぇ……!!!」

 

「残念ねぇ?カイリン」

 

「お肉食べるか?カイリン!」

 

「ありがとよ、エンカ。スイヒョウはあとでシバく」

 

「仲良くしなさい」

 

新たな配下を加え、騒がしさを増す周囲に呆れながらも僅かに表情を綻ばせるネコリア。この四人が後に彼女の配下で最も有名になるのは少し先の話である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いた?」

 

「聞いた、聞いた。オークロードが出たんだよね」

 

此処はジュラの大森林の中央に広がるシス湖。その周囲に広がる湿地帯を歩く二匹の魔物、その種族は蜥蜴と人を掛け合わせた姿をした蜥蜴人族(リザードマン)。この付近を支配する種族である

 

「ん……妹たちではないか。どうかしたか」

 

「「兄者」」

 

二匹を呼び止めたのは、彼女たちよりも遥かに大柄な体躯をしたリザードマン。種族の中で唯一のネームドモンスターである彼の名はガビル、次期族長と名高い存在だ

 

「父上が兄者を探してた」

 

「呼んでたよね」

 

「親父殿が?嫌な予感しかせんが、知らせてもらい感謝する。夜も近い、直ぐに帰るのだぞ?」

 

「「分かった」」

 

ガビルを見送り、二匹は帰路に着く。とはいえ向かうのは兄と同じ方向である為にその後ろを追随する形になり、気付いたガビルは歩幅を合わせるように足取りを僅かに遅くする

 

「兄上。中で父上がお待ちです、妹たちは私にお任せください」

 

父である族長の部屋前に来たガビルを待っていたのはもう一人の妹。二匹を彼女に任せ、扉に手を掛ける

 

「うむ」

 

「兄者がんばれ」

 

「また遊んで、兄者」

 

「うむ……ではな」

 

妹たちに見送られ、ガビルは中に入っていく。その後ろ姿を二匹は瞳に焼き付ける、兄であり憧れの男の背を、その小さな眼に焼き付けた

 

「さあ、御夕飯にしましょう」

 

「姉者のご飯」

 

「おかわりある?」

 

「もちろん」

 

この幸せに終わりが来る事をこの時点では誰も予想していなかった。そう、ある出会いがもたらす変革と共に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仙術を習いたい?本気なの?」

 

「「はいっ!」」

 

「わふっ!」

 

「おうよっ!」

 

それは唐突だった。何時ものように寝息を立てていたネコリアの元に配下の中でも其々の役職を与えられた四人が尋ね来たのだ

事情を聞けば、強くなる為に仙術を学びたいというてはないか、流石のネコリアも驚きを隠せない

 

「私は書記官、本来は戦闘に赴くような役職ではありません。しかし、今回のような事態が起きた場合にネコリア様のお役に立てないことの方が私にとっては心の痛み……故に仙術を教授願いたいのですわ」

 

「私は……仙術を学ぶことで未だ見ぬ新たな強さの境地を知りたい……如何なる修行にも耐えます!ですから、御教授くださいませんかっ?!」

 

「アタイはもっともっと強くなりたいんだっ!そしたら、アニサマと一緒にいっぱい頑張れるからなっ!」

 

「ウチは職人だけどよ。素材集めとかで色んな場所に行くだろ?そん時に仙術が使えたら、もっと色んな事が出来るんじゃねぇかと思ったんだ」

 

「にゃるほど……」

 

配下からの其々の理由に、ネコリアは頷きながらも品定めする様に四人を視姦する。そして、優しい笑みを浮かべる

 

「あたしの修行は厳しいわよ?それでもやるなら、教えてあげる」

 

「「「「お願いしますっ!!!」」」」

 

「良い返事ね♪」

 

「「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」」

 

「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるスイヒョウ、エンカ、ライメイ、カイリンは目をハートにしながら悶える

 

「あっ、ネコちゃん」

 

「あら、リムちゃん。何かあった?」

 

ぽよっ、という音が聞こえ、振り向くとスライム姿のリムルが居たので、ネコリアは問いを投げ掛ける

 

「ソウエイからの報告を伝えに来たんだ。リザードマンがコッチに向かってるみたいだ、何か策はないかな?ネコちゃん」

 

「いきなり言われてもね……まあ、考えてはみるわ」

 

「ありがと。そうだ、お昼をシオンが用意してくれたらしいんだがネコちゃんもどうだ?」

 

「………り、リムル様?今なんと……?」

 

仙術の修行の為に、座禅を組んでいたライメイが表情を引き攣らせながら、リムルに問う。その額からは大量の冷や汗が流れている

 

「だから、シオンの手料理だよ」

 

「ネコリア様……悪い事は申し上げません。此処はリムル様に生贄になってもらいましょう」

 

「どしたのよ?メイちゃん。せっかくのお誘い有り難いけど、まだ修行の途中なのよ。また今度ね」

 

「分かった」

 

去り行くリムルの背にライメイは何度も頭を下げ、その行く末を見送る

 

「それで?メイちゃん。シオンちゃんが料理すると何か不味いの?」

 

「不味いだけなら、良かったんですよ……そのあの……えっとですね…何と言いますか……簡潔に言うとですね?…妹の料理は……酷いんです」

 

「酷い……味がよね?それは」

 

「味〝も〟です。何度か亡くなった祖父が手招きする川に行きかけました」

 

遠く見るライメイの瞳には、僅かな涙が浮かぶ。かなりの酷な経験をしたに違いない

 

「メイちゃんは料理できるの?」

 

「出来ませんね。普段は畑の野菜に塩を振って、生で食べてました」

 

しれっ、と真顔で答えるライメイ。彼女の逞しさを垣間見ながらもネコリアは呆れた眼差しを向ける

 

「…………メイちゃんには料理も教えてあげるわね」

 

「ネコリア様の料理!?私も教えてください!」

 

「味見役なら任せとけだぞっ!」

 

「アネキ、ふりふりのエプロンとかいるか?」

 

「あーはいはい、三人にも教えるわよ」

 

かくして、配下達に仙術と料理を教える事になったネコリア。彼女が後に食仙猫と呼ばれるのは少しだけ先の話である




町に攻め込む新たな種族、その名はリザードマン!あら?小さな女の子が二匹……?

ネコリアの真骨頂その14 実は料理上手

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第十九話 失礼な態度を取られたから、書記官をけしかけちゃった

今回の見所!ネコちゃんが優しくて可愛い!以上!


「んにゃぁ〜………なんか、騒がしいわね」

 

今日も今日とて、何時ものように目を覚ましたネコリア。ぴこぴこと耳を動かし、町の入り口付近が騒がしい事に気付く

 

「ネコリア様。御寛ぎの所、申し訳ありません。スイヒョウです」

 

「んにゃ?どうしたの〜」

 

体を起こし、手慣れた動作で《変幻》を使用し、人型になり、衣服に袖を通すネコリアに寝所の扉越しにスイヒョウが呼び掛けてきたので、問う

 

「リザードマンの使者がネコリア様に御目通願いたいとの事です」

 

「リザードマン……ああ〜、前にリムちゃんが言ってた種族ね。直ぐに行くわ」

 

「ネコリア様。私も同行致します」

 

「良いわよ〜」

 

スイヒョウを連れ、目的地に向かう道中で仙術の修行をしていたライメイが駆け寄り、同行を申し出る。それに軽いノリで許可を出し、再び歩き出す

 

「ネコちゃん。おはようさん」

 

目的地に着くと、同様の理由で呼び出されたリムルが立っていた。彼はネコリアに気付くと、軽く手を挙げ、挨拶する

 

「おはよ♪リムちゃん。それで、使者は何処にいるの?」

 

「あそこにいるトカゲみたいなのがそうみたいだ」

 

「にゃるほど………お肌ガサガサね♪」

 

「初対面で失礼な事を言うんじゃありませんっ!」

 

相も変わらず、初対面の者の肌を見ながら失礼な発言を繰り出すネコリアをリムルが母親口調で叱り付ける

すると、リザードマン達が地面に槍を突き立て、二列に別れるように並ぶと、竜の様な生物に跨ったリーダー格らしきリザードマンが姿を見せる

 

「我輩は、蜥蜴人族のガビルである。お前らも配下に加えてやろう。光栄に思うが良い!」

 

「よっ!ガビル様!」

 

「最高!」

 

「かっこいい!」

 

「いかしてる!」

 

「「はぁ?」」

 

ガビルと名乗ったリザードマンの発言に、誰もが素っ頓狂な声を挙げた

 

「我が主君に対し、何という言い種っ!畑の肥やしにしてくれるっ!」

 

「ふっふっ、我々の崇拝すべき偉大なるネコリア様に対しての暴言……許しておけませんわね」

 

「はいはい、メイちゃんもスイちゃんも落ち着きなさい。ガビルちゃんとか言ったわね?その発言の意図を聞かせてもらえるかしら?」

 

主人への失礼な言動に殺気を放つライメイ、スイヒョウを咎めながら、ネコリアはガビルに問いを投げ掛ける

 

「やれやれ、皆まで言わねば分からんか?猫っ娘よ。貴様等も聞いておるだろう?オークの侵攻のことを」

 

「聞いてるわ。オーガの里も蹂躙されたらしいわね」

 

「そこでだっ!このガビルが、貧弱なお前達を、オークの脅威より守ってやろうではないか!貧弱な……貧弱……貧弱………ワオ〜」

 

刹那、ガビルが驚きの声を挙げると同時に固まった。周囲を見回すも何処にも貧弱な者は居らず、ライメイとシオンの胸部とスイヒョウの腰回りに釘付けになる

 

「なんでしょう……今、不快な視線を感じましたわ」

 

「スイヒョウもか?私もだ。偶にリムル様が向ける視線みたいなのを感じた」

 

「にゃるほど。仲間が居たみたいよ?エッチなスライムちゃん」

 

「エッチじゃないやいっ!……と、それはさておき、ガビルだったか?」

 

「ん…なんだ、娘。吾輩に何かようか?」

 

「いや、何でこの町なんだ?」

 

娘、と呼ばれた事に難色を示しながらもリムルはガビルに問う。すると彼は鼻で笑い、呆れたように肩を竦める

 

「知れた事、聞けばここには、牙狼族を飼い慣らした者達が居るそうではないか。しからば!吾輩の配下に加えるのが、その者の未来の為であろう!」

 

「…………ネコリア様?やはり、この無礼な輩を斬る許可をいただきたく思います」

 

「お待ちなさいな、ライメイ。ネコリア様。どうか、此処はスイヒョウに奴を始末する許可を」

 

「ダメに決まってるでしょ。エンちゃん」

 

「わふっ!呼んだか?ネコリア様!」

 

またしても先走るライメイとスイヒョウを咎めつつ、ネコリアが呼び掛けると町の方からエンカが姿を見せる

 

「ランガちゃんを呼んであげて。あの人が話がしたいみたいよ」

 

「はーい!アニサマー!」

 

「呼んだか?我が妹よ」

 

「あのトカゲのオッチャンがアニサマと御話したいみたいだぞっ!」

 

「………オッチャン?吾輩はオッチャンではないぞっ!?」

 

エンカからのオッチャン扱いにガビルは突っ込みを放ち、改めてランガに向き直る

 

「………貴殿が、牙狼族の族長殿か?美しい毛並み。鋭い眼光。流石、威風堂々たる佇まい。しかし………主がスライムと猫とは、些か拍子抜けであるな」

 

「ああん?」

 

「エンちゃん?かじってあげなさい」

 

「え〜……不味そう。代わりにゴブタでもいいか?」

 

「許可♪」

 

「なんでっすか!?」

 

エンカの申し出にネコリアからの許可が出た事で、とばっちりを受けるゴブタが突っ込みを放つ

 

「どうやら、貴殿は騙されておるようだ。よかろう。この我輩が、貴殿を操る不埒者を、倒して見せようではないか!」

 

「ガビル様、かっけ〜!」

 

「見せてやって下さいよ!ガビル様!」

 

「ガビル無双を!」

 

「あっ、そ〜れ!」

 

『ガビル!ガビル!ガビル!ガビル!』

 

湧き上がるガビルコール、その様子に気の長いネコリアも我慢の限界を迎えたのか、軽くため息を吐く

 

「スイヒョウ。許可するわ、早急に対象を始末しなさい」

 

「はっ!ガビル殿でしたわね?貴殿の御相手はネコリア様が書記官、スイヒョウが致しましょう」

 

「私はっ!?」

 

「メイちゃんはスイちゃんの動きを見て、勉強しなさい。アナタの動きには無駄が多いわ」

 

「うぅ………はい……」

 

戦闘許可が下りたスイヒョウとは裏腹に、欠点を咎められたライメイは残念そうに落胆する

 

「ならば、こっちはゴブタ!お前の出番だっ!」

 

「えっ?なんで、オイラ?というか、エンカさん?そろそろ離してくれないっすかね?」

 

「わふぅ〜……仕方ないなぁ」

 

リムルからの指名に疑問を抱きつつも、頭に齧り付いたエンカを宥めたゴブタはスイヒョウと共に、ガビルの前に立つ。余談だが連日のエンカの遊び相手、シオンの手料理という二つの試練を潜り抜けたゴブタは《痛覚耐性》と《毒耐性》のスキルを獲得している

 

「何人でも構いませんぞ。恥は掻きたくないでしょうからな」

 

「スイヒョウ………丁重に扱ってあげなさい」

 

「承りました」

 

「ゴブタ!勝ったら、黒衛兵に頼んで、お前専用の武器を作ってやるよ!」

 

「仕方ないっすね〜、そこまで言われたらやる気出ちゃうっすよ」

 

其々の主人からの激励に二人の雰囲気が変わる。スイヒョウの周りが、ひんやりとした空気に包まれ、ゴブタもめらめらと妖気(オーラ)を燃やす

 

「ふっ……偉大なるドラゴンの末裔である我等、リザードマンが、ホブゴブリンやゴブリナ風情に………」

 

「仙法・氷雪華(ひょうせっか)!!!」

 

「ん………ぬおっ!?な、なんなのだっ!これはっ!?」

 

「余所見は禁物っすよー」

 

二人の実力を侮り、余裕のある態度を見せるガビルであったがスイヒョウの周囲に停滞していた空気が吹雪に変化し、視界を奪われる。その隙を見逃さなかったゴブタが背後に回り込み、短剣を首筋に振り下ろす

 

「おのれ!小癪な!」

 

「仙法・闇羅行(あんらぎょう)!!!」

 

「ぬおっ!?いつの間に日が暮れたっ!?それにホブゴブリンの方は何処に消えたっ!」

 

負け時と反撃に転ずるガビルであったが、スイヒョウがぱんっ、と両手を打ち鳴らした。刹那、視界が暗転し、闇の世界が訪れ、更にゴブタの姿も見失う

 

「視界に頼りすぎっすね。あらよっと!」

 

「ガビーンっ!?」

 

スキル《影移動》で、またしても背後に移動していたゴブタが回し蹴りを放つとガビルは完全に、物理的な意味で落ちた

 

「教えた事を忠実に実行出来てて、偉かったわね〜。スイちゃん」

 

「お褒めの言葉だけでなく、頭を撫でていただけるなんて……!私、感動でなんかもう色々と止まりませんわっ!」

 

「うん、言葉は選びなさいね?」

 

「アタイも撫でてくれだぞっ!」

 

「はいはい……」

 

「わふ〜」

 

「ついでにメイちゃんも」

 

「いえ私は、そんな!あっ……そんな……だ、ダメぇ〜」

 

(な、なんかエッチだ!)

 

(ほう……なかなか)

 

「………エンちゃん?リムちゃんとゴブタが遊んでくれるみたいよ〜」

 

「ホントかっ!」

 

「「…………いやァァァ!!!」」

 

ネコリアからの褒美に悶えるライメイの色香に頬を染め、邪な事を考えていたリムルとゴブタをエンカが追い回す

 

「………兄者。大丈夫?」

 

「痛くない?」

 

「ひ、姫様たちっ!?何故ここにっ!」

 

目を回すガビルの顔を覗き込む二匹のリザードマン、その姿に見覚えのある側近の一人が驚いたように両眼を見開く

 

「兄者を探しにきた」

 

「でも、兄者。おやすみしてる」

 

「今日の所は!このくらいで勘弁しておいてやる!」

 

「然り、これで終わりではないぞ」

 

「さっ、帰ろね〜。姫様たち〜」

 

「うん。兄者も一緒に」

 

「遊んでくれるって約束した。それと、スライムさんとネコちゃん。兄者が迷惑かけてごめんなさい」

 

側近達に連れられたガビルと妹たちは、逃げ帰るように町を退散していく

 

「おおっ……礼儀正しいな」

 

「ほら、言うじゃない。片方がちゃらんぽらんだともう片方がしっかりするって。あたしがそうね、リムちゃんがアンポンタンのスカプラチンキだから」

 

「ああ、なるほ…………って!誰がだっ!!!」

 

礼儀知らずのガビルとは裏腹に、丁寧な態度を見せた妹たちにリムルが関心を示す中、ネコリアからの唐突な罵倒に一度は納得するも即座に突っ込みを放つ

 

「さてさて、会議を始めましょうか?盟主様」

 

「はぁ……本当に喰えないヤツだよ……俺の親友ちゃんは。良い作戦を頼んだぞ?参謀ちゃん」

 

「にゃっふっふっ、任せなさい」




オークの侵攻を前に、ネコリアが立てる策とは…!

ネコリアの真骨頂その15 実は喰えない

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第二十話 会議してたら、正式に依頼されちゃった

今回の見所!真剣なネコちゃんも可愛い!以上!


「聞こうか。ソウエイ」

 

「状況、侵攻具合を詳細に教えてね。ソウエイちゃん」

 

「はっ……20万のオーク。その本隊が、大河に沿って北上しています。そして、本隊と別動隊の動きから予想できる合流地点は…………此処から東に位置する湿地地帯です」

 

偵察に出ていた鬼人の一人、ソウエイの帰還後直ぐに開かれた対策会議。上座に座したリムル、隣に座すネコリアに報告を促され、自分が見た光景を事細やかに語る

 

「東の湿地………確か、あの辺りはリザードマンの支配領域でしたな」

 

「リグルド様の仰る通りですわ。あの付近は、古くからリザードマンが治める領土、最近は族長の子息が名前持ち(ネームド)になったと聞きました。確か……名をガビルとか……聞いた名前ですわね」

 

「スイちゃんとゴブタが倒した子ね」

 

「ああ!あの失礼な輩でしたかっ!余りにもネコリア様に失礼な物言いをする不敬者でした故、忘れておりましたわ」

 

「くっ……名前持ち(ネームド)でありながら、ネコリア様に対する暴言!あの者、次に会う時はシオンの料理を食べさせてから、畑の肥やしにしてくれるわっ!」

 

僅か前の出来事にも関わらず、ガビルの存在を記憶から抹消していたスイヒョウ。一方で、敬愛するネコリアに暴言を吐かれた屈辱から、ライメイは刀を握る手に力を込める

 

「姉上?今なんか言いました?私の料理がなんです?」

 

「…………ベニマル様とハクロウがシオンの料理を食べたがっているという話だ」

 

「なんですって!?仕方ありません!そこまで言うなら、特別に振る舞いましょう!リムル様にもっ!」

 

「「遠慮します」」

 

「ほっほっほっほっ、わしはこの干し柿があります故。此度は遠慮させていただきましょうかの」

 

「…………何故?」

 

流れるように自分の料理を振る舞う事を拒否され、シオンは疑問符を浮かべる

 

「なぁなぁ、アニサマ」

 

「どうした?我が妹よ」

 

「20万って……どのくらいだ?アタイの指じゃ数えられないぞ」

 

「ならば我と同胞の指も使うと良い」

 

「なるほど!アニサマはかしこいなっ!」

 

「エンちゃん、ランガちゃん?20万は指で数えられる数じゃないわよ」

 

「「わふっ!?」」

 

20万、という途方もない軍勢を指で数えられると思っていた狼兄妹にネコリアの突っ込みが飛び、二匹は声を揃え、驚愕する

 

「だけどよ、オークの侵攻に何の意味があんだ?」

 

「オークはそもそも、あまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に、本能以外の目的があるってんなら、何かしら、バックの存在を疑うべきだろうな」

 

「だからそのバックかどんな奴かを聞いてんだろうがっ!話聞いてたかっ!バカオヤジっ!!!」

 

「ああんっ!?何を一丁前に会議に参加してやがんだっ!このバカ娘っ!ささっと工房に戻りやがれっ!」

 

「へっへっ〜ん、残念でしたぁ〜!ウチはアネキの専属だから自分の工房があるんだよ〜」

 

「生意気な口を聞くんじゃねぇ!」

 

「リンちゃん、それにジンちゃんも会議中に親子喧嘩はやめなさい」

 

「「すまねぇな………真似すんなっ!!!」」

 

会議そっちのけで、親子喧嘩を繰り広げるカイリンとカイジン。其れにネコリアが、ぴしゃりと、言い放ち、一度は止まりかけたが直ぐに元の状態に戻り、彼女は軽くため息を吐く

 

「でも、バックとなるとかなりの知能を持つ魔物又は魔人でしょうね。ベニマルちゃん達の里に来たとか言う仮面の魔人が怪しいわ」

 

「ゲルミュッドですか。確かに、ヤツならばオークを裏で操るのは造作もないかと」

 

「確かに……あの者からは、良からぬ妖気(オーラ)を感じた。ネコリア様やリムル様とは異なる凶々しい……まるで……」

 

「「魔王(・・)」」

 

ゲルミュッドを現す言葉をライメイが思案していると、ほぼ同時にその声は聞こえた。振り向けば、ネコリアとリムルが佇んでいた

 

「魔王が絡んでいるかどうかは、分からん。だが………オークの中に豚頭帝(オークロード)が出現した可能性は高い」

 

豚頭帝(オークロード)………リグちゃんにゴブリンキングの役職を与える前の役職も似た名前だったわね」

 

「ああ、ロードは統率者とか支配者的な意味がある。でもリグルドの場合は役職を与えただけ、オークに関しては違う……だよな?ベニマル」

 

「はい。20万の軍勢を統率する数百年に一度、オークの中から生まれる、ユニークモンスターです」

 

「出現の有無は何方にせよ、対策は立てるべきかと思われますわ。ネコリア様」

 

「そうね。となると、今後はオークロードが存在するという仮定で話を進めていきましょうか」

 

スイヒョウの進言に同意を示したネコリアが机を叩き、真剣な表情で会議の方針を決める

 

「暫しお待ちを……」

 

「にゃによ〜……せっかく、やる気になったのに〜」

 

会議が進もうとした瞬間、ソウエイが待ったを掛ける。気合い充分だったネコリアは興が削がれた事で、不貞腐れた様に口を尖らせる

 

「偵察中の分身体に、接触してきた者が居ます。リムル様とネコリア様に取り次いでもらいたいとの事。いかが致しましょう?」

 

「俺たちに?どうする……ネコちゃん」

 

「ガビちゃんみたいに変な子なら、お断りしたいわね」

 

「変………ではありませんが、大変珍しい相手でして。その………樹妖精(ドライアド)なのです」

 

樹妖精(ドライアド)!?」

 

「…………髪を乾かすやつ?」

 

「ドライヤーじゃなくて、樹妖精(ドライアド)だよっ!知らないのっ!?ネコちゃん!」

 

樹妖精(ドライアド)という聞き慣れない名前に、素っ頓狂な発言を繰り出すネコリアにリムルの突っ込みが入る

 

「し、知ってるわよ。あれよね?乾いた目のこと」

 

「ドライアイだろっ!?それはっ!!!」

 

「………お呼びしても?」

 

「ああ、呼んでくれ」

 

「はっ…」

 

知ったか振りをするネコリアに突っ込みながらも、ソウエイからの申し出に許可を下すリムル。すると、会議場の中心に蔦が伸び、固まると、一人の女性が姿を見せる

 

「魔物を統べる者と、長き時を生きる者、及びその従者たる皆様。突然の訪問をご容赦ください。私は、樹妖精のトレイニーと申します。どうぞ、お見知り置き下さい」

 

「これはご丁寧にどうも。俺はリムル=テンペストです、悪いスライムじゃありません」

 

「そうね、エッチなスライムよね。あたしはネコリア=テンペストよ。よろしく〜トレイニーちゃん」

 

「エッチじゃないやいっ!あと初対面の人にちゃん付けしないっ!」

 

「いえ、構いません。私に名前を下さった御方もその様にお呼びになりますので」

 

「ネコちゃん以外にも居るのか、そんなに失礼なヤツが」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「本日は御二方に御願いがあって、参った次第です」

 

「お願い?」

 

「にゃにかしら?」

 

「リムル=テンペスト……魔物を統べる者、ネコリア=テンペスト……長き時を生きる者よ。御二方に、オークロードの討伐を依頼したいのです」

 

かくして、正式な依頼の元、リムルとネコリアのオークロード討伐は始まるのであった




正式な依頼の元、オークロードを迎え撃つ事になったリムルとネコリア。そして、協力を仰ぐ為にネコリアはライメイと共にある領域に足を踏み入れる……

ネコリアの真骨頂その16 実はボケキャラ

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第二十一話 配下の涙に根負けして、本当に引き受けちゃった

今回の見所!ネコちゃんも可愛いし、配下たちも可愛い!以上!


「「だが断るっ!!!」」

 

「そうですか、断っ……………えっ!?引き受けてくれないんですかっ!?」

 

トレイニーからの依頼を聞くや否、速攻で喰い気味に拒否するリムルとネコリア。まさかの返事に冷静な雰囲気は何処へ消えたと言わんばかりに、トレイニーは驚愕する

 

「だって、お母さんが知らない人の言うことは聞いちゃいけませんって言ってたわ」

 

「そうだな。小さい頃から、そういう教育はされてきてるぞ」

 

「…………御二人って母親とか居たんですか……?」

 

「ん……いや、今のは忘れてくれ。冗談だ」

 

「えっ?あたしはホントの話---にゃむぐっ!?」

 

ベニマルからの問いに、我に返ったリムルは、自分とは裏腹に前世の話を語ろうとするネコリアの口を塞ぎ、トレイニーに向き直る

 

「で、トレイニーさんだったか。何故、この町に来たんだ?俺は見ての通りのスライムだし、ネコちゃんは猫又、配下もゴブリンが大半だ。助力を乞うにしても、人選ミスじゃないか?」

 

「確かに、本来であれば強き種族を頼るのが一般的でしょう。然し……既にオーガの里は壊滅、リザードマンも私の意見に耳を貸そうともしません。ならばと、この森で一番の実力者である御二方に御協力を願いに参った次第です」

 

「にゃるほど、筋は通ってるわね。じゃあ、あたしからも質問よ」

 

「はい、なんなりと」

 

リムルの問いに的確な答えを返すトレイニーに対し、ネコリアは同意を示した後に人差し指を立てる

 

「オークの中に豚頭帝(オークロード)が生まれた、って仮説は真実だと捉えてもいいのね?」

 

「勿論ですわ。樹妖精は、この森で起きた事ならば、大抵把握しております……。故に断言致しましょう……豚頭帝(オークロード)は実在致します」

 

「樹妖精様がお認めに………!」

 

「ならば、本当に………」

 

「一大事じゃねぇか!!!どうするっ!アネキ!ダンナ!」

 

「落ち着きなさい、カイリン。返事は保留にさせてもらうわ……現段階で、あたし達の優先事項は鬼人族の援護、自分から死地に赴く程の浅はかな考えは持ってないの。それでも構わない?」

 

「それが意向とあらば……私も会議に参加しても?」

 

「ああ、意見を聞かせてくれ」

 

狼狽える配下たちとは違い、冷静なネコリアはトレイニーの申し出に対する答えを保留にし、リムルは彼女の会議参加を認める

 

「さて会議を続けよう、この中でオークの目的に心当たりがあるヤツはいるか?些細なことでも構わない」

 

「………思い当たることがあります」

 

「言ってみて、シュナちゃん」

 

「はい。ソウエイ、私達の里は調査してきましたか?」

 

「はい…」

 

「その様子では………やはり、無かったのですね。」

 

「はい。同胞、オークの両勢力共にただの一つも、見当たりませんでした」

 

「………まさか」

 

衝撃的な発言に誰もが息を呑む中、ネコリアは最悪の展開を思案し、眉を顰める

 

「ネコリア様の御考え通りかと思われます。オーク共は自らの食糧を賄う為に、襲った種族、同胞の有無に関係無しに(かて)としているモノと思われます」

 

「それこそが……ユニークスキル《飢餓者(ウエルモノ)》」

 

「それは具体的にどういうスキルなんだ?トレイニーさん」

 

ユニークスキルと聞き、興味が湧いたリムルがトレイニーに問い掛けると彼女は机の上にあるポテチを口に運ぶ

 

「世に混乱を齎す災厄の魔物、オークロードが生まれながらにして保有しているスキルで、支配下にある全ての物に影響を及ぼし、イナゴの様に、周囲の物を食べ尽くす。食らった相手の力、更には能力までも取り込み、自分の糧とするのですわ。………アナタ様の捕食者と似ていますわね」

 

「確かに強力なスキルだけど……デメリットが存在するんじゃない?大いなる力には、大いなる責任が伴う……のが、この世の常識(セオリー)。違う?トレイニーちゃん」

 

「流石は長き時を生きる者、ネコリア様。確かに飢餓者には代償が存在します……満たされる事のない飢餓感、果てしない飢えを満たし、力を得る為だけに進む、彼らの王の望みのままに」

 

ネコリアの指摘に的確な答えを返すトレイニー。茶を啜り、「にゃるほど」と呟くと頭に声が響く

 

『ネコちゃん。聞こえるか?』

 

『ええ』

 

『今の話から綜合するとオークの目的は上位種族の壊滅じゃないって考えてるんだけど、ネコちゃんの答えは?』

 

『おんなじよ、話を聞く限りでは力を奪うのが一番の目的でしょうね』

 

脳内会議を終え、薄目を開けたネコリアは自らの配下たちに視線を向ける

 

「力を得る為に………一大事ですわ、それはっ!可愛らしいネコリア様も狙われる可能性があるということになりますわっ!」

 

「わふっ!?た、大変だぞっ!ネコリア様が食べられちゃうぞっ!」

 

「安心しておけ、エンカ!このライメイが居る限りはネコリア様に豚の指一本も触れさせんっ!」

 

「ライメイはバカだから信用出来ないぞっ!」

 

「なにおうっ!?」

 

「いや、お前らも上位種族だろ」

 

「「「……………はっ!!!」」

 

「バカなのかっ!!!根本的にっ!!!」

 

「…………心配するだけ無駄ね」

 

杞憂だったらしく、賑やかに騒ぐ配下たちに呆れたようにネコリアはため息を吐く

 

「リムル=テンペスト様。ネコリア=テンペスト様。改めて、オークロードの討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護する御二方なら、遅れを取ることはないでしょう」

 

「う〜ん………」

 

「厄介ごとはねぇ………」

 

再びの申し出にリムルも、ネコリアも言葉を濁し、考える様に唸りごえを挙げる。その時、二つの影が立ち上がる

 

「「当然ですっ!!」」

 

「うえっ………?」

 

「んにゃ?」

 

「リムル様ならば、オークロード如き、敵ではありません!」

 

「ネコリア様の御力の前ではオークロード等、無力に等しいですわっ!御足元にも及ばなくってよっ!」

 

その影の主はリムルの秘書であるシオン、ネコリアの書記官であるスイヒョウだった。二人は主人の意志関係無しに誇らしげに胸を張る

 

「うわぁ!やはり、そうですよね」

 

「ネコリア様の御力添えに感謝するが良い!」

 

「わふっ!ネコリア様は強いんだぞっ!」

 

「アネキ!戦闘衣装はウチに任せとけっ!」

 

「いや別にやるとは………にゃっ!?」

 

その発言にトレイニーだけではなく、ライメイとエンカ、カイリンまでもが便乗する。然し、配下たちとは裏腹に本人は言葉を濁し、視界を巡らせるとある光景を捉えた

 

「「「「ネコリア様〜…………」」」」

 

「うっ…………あーもうっ!分かったわよっ!引き受ければいいんでしょっ!!!」

 

うるうるとした瞳で、自分を見詰める配下たちに根負けしたネコリアは、投げやり気味ではあるがオークロード討伐を引き受けることを宣言する

 

「流石はネコリア様ですわっ!」

 

「わふっ!カッコいいぞっ!ネコリア様ー!」

 

「御立派ですっ!ネコリア様!私の忠誠は貴女様に一生涯捧げますっ!」

 

「出来る女っ!女の中の女っ!我等がアネキっ!」

 

「にゃ……にゃっーはっはっはっ!!!この可愛さの原初であるネコリア=テンペストに任せなさいっ!」

 

「良いかね?この子はすぐに調子に乗るから、褒めすぎてはいけないよ」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「ネコちゃん。リザードマンと交渉してきてくれないか?」

 

「仕方ないわね、なら護衛にエンカとライメイ、ソウエイを連れて行くわよ。異論はある?」

 

「構わないぞ。頼んだ、ネコリア」

 

「ええ、任されたわ。リムル」

 

かくして、正式にオークロードを討伐を引き受けたリムルとネコリア、二人を待ち受ける最初の試練が幕を上げる




リザードマンの湿地帯を訪れたネコリア、彼女が出会ったのは幼いリザードマンの双子。果たして、彼女たちは………

ネコリアの真骨頂その17 実は配下には弱い

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第二十二話 交渉に赴いたら、通せんぼされちゃった

今回の見所!ネコちゃんは丁寧な物腰でも可愛い!以上!


「失礼するわよ」

 

「何者だっ!」

 

リザードマンの支配する湿地帯、その居住区である洞窟前に辿り着いたネコリアがコートを靡かせ、凛ッ、とした佇まいで見張りに声を掛ける

 

「我が名はネコリア=テンペスト!リザードマンの首領に御目通り願いたいっ!」

 

「無礼なっ!貴様等のような輩を通す訳がなかろうっ!」

 

名乗りを挙げるネコリアに、槍を向ける見張り。ライメイが刀に手を掛け、エンカも唸り声を挙げ、ソウエイも戦闘体制を取った瞬間だった

 

「通しても構わない」

 

「通してあげて」

 

「「ひ、姫様たちっ!?ははっ!」」

 

背後から聞こえた二つの幼い声に、見張りが驚きを示した後にその言葉に従い、道を開ける

 

「父上。客人」

 

「父上に用事がある」

 

「なに……暫し待たれよ、御客人。今、取り込んでおりましてな」

 

娘たちに呼ばれ首領は、ネコリア達に声を掛ける。手が離せない様子で、込み入った事情があるようだ

 

「いえ、お気になさらないでください。(わたくし)はこの度、ジュラの大森林に町を起こした盟主の遣いとして参った者、我等が盟主からの用件を聞いていただきたく存じます」

 

「風の噂で聞いた事がある………。その町は、本当にあるのか?」

 

普段からは想像もつかない丁寧な物腰と温和な物言いのネコリアにエンカとライメイは勿論、ソウエイは誰だ?こいつはと言わんばかりの視線を向けている。だが、当の本人は気にも留めずに話を続ける

 

「存在致します。(わたくし)は盟主として君臨するリムル=テンペストより、参謀の役割を賜りし、ネコリア=テンペスト。此度のオークロード出現に伴い、樹妖精より直々に要請を受け、その討伐を確約させていただきました」

 

「森の管理者が……っ!直接………!?」

 

「我等が盟主は貴公の一族との同盟を御望みです。良き返事をいただければと」

 

驚く首領を他所に、更に話を続けるネコリアは本題を切り出し、逃げ道の存在しない一つの答えに会話を誘う

 

「ふ………ふん!リムルだと?聞いた事もない!どうせ、オークロードを恐れて、我々に泣きついて来たんだろう?素直に助けてくれと言えば、助けてやっても構わないが?それにだ、猫風情を誇り高きリザードマンの使者に送り出すなど」

 

「やめろ!」

 

「えっ?」

 

「口を塞ぐのだ」

 

「しゅ………首領!その様な態度では、舐められ………!」

 

反論を示す部下が更なる反論をしようとした時、眼前を刃先が通り過ぎる

 

「リムル様への暴言だけでは飽きたらず、我が主人であるネコリア様にまで、その様な口を聞くとはっ!無礼な輩めっ!!!」

 

「わふっ!かじっていいか?ライメイ!」

 

「無論だ!エンカ!」

 

「おやめなさい…ライメイ、それにエンカ。我々は同盟を申し出ている立場、無礼を働く事があってはなりませんよ」

 

「「…………はっ!」」

 

敵意を剥き出しにするライメイとエンカに、ぴしゃりと、言い放つネコリア。その毅然とした振る舞いは参謀と呼ぶに相応しい姿だ

 

「失礼致しました、彼女等は(わたくし)直属の配下なのです。主人を慕う気持ちを優先する余りに気持ちが先走る、困った悪癖がありまして……」

 

「いや、今のは、此方に非があった。お気遣い済まない」

 

「寛大な御言葉……感謝致します」

 

「先程の話だが……此方からもお願いしたい」

 

「ホントにっ!?………いえ、誠ですか?」

 

首領からの申し出に、ぴこっ、と両耳が伸び、素の口調に戻るも即座に使者としての口調に切り替え、真意を問う

 

「貴殿の背後に控えるのは、ジュラの大森林南西に暮らすオーガであろう?隣のは牙狼族と見た」

 

「正しくは鬼人だ。私はネコリア様にライメイの名を、こっちはリムル様にソウエイの名を其々が賜り、進化したのだ」

 

「わふっ!アタイもネコリア様にエンカの名前をもらったから、嵐狼女(テンペストウルフェア)に進化してるぞっ!」

 

「なんと……益々、其方等との同盟を御願いしたい。然し、此方からの条件も聞いてもらいたい」

 

「可能な範囲であれば」

 

「盟主であるリムル=テンペスト殿に会わせて貰うことは可能か?」

 

(わたくし)の方から話を通しておきます。準備を終えた後、七日後に合流致しましょう。その折りに御目通り願えればと」

 

「うむ。その時を待つとしよう」

 

条件を呑み、身を翻したネコリアは配下たちとソウエイを連れ、洞窟から出て行こうとする。刹那、足を止めたネコリアが首領に迫り、耳元で口を開く

 

背後には気を付けてね?ちょっと良くない光景が見えたから……。信じるか信じないかはアナタ次第だけど、可愛いあたしからの忠告は素直に聞いておいた方が良いわよ〜」

 

「御忠告を感謝する」

 

洞窟から出ていく背に、得体の知れない何かを感じながらリザードマンたちはネコリアを見送る

 

「父上……使者の方はなんと?」

 

「分からぬ……だが、あの御方には何かが見えていたようだ」

 

「…………あのネコさん、強そうだった」

 

「遊んでくれるかな?」

 

「わかんない。でも、また会いたいね」

 

「うん」

 

かくして、同盟は樹立された。そして、新たにネコリアの持つ力に魅了された者が二匹、この二匹が後にジュラの大森林に名を馳せる魔物となるのは少しだけ未来の話だ




いよいよ迎えるオークロード討伐作戦!しかし、その裏で糸を引く奇しい存在も………

ネコリアの真骨頂その18 実は敬語も使える

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第二十三話 オーク前線接近中?止めてみせよう!我が剣で!

今回の見所!ネコちゃんが可愛い!そして、ライメイの初陣!!!以上!


「んにゃぁ〜………こんなに朝早く出なくてもいいじゃない別に……」

 

寝起きで、焦点の定まらない瞳を、ぱちぱちと瞬きさせ、不満を口にするネコリア。それもその筈、彼女たちは現在、リザードマンの支配する湿地帯へと向かう移動の最中なのだ

 

「ネコリア様。御休みになられていたのに、連れ出してしまい申し訳ありません」

 

「いいのよ〜、首領と約束したのはあたしだもの」

 

「わふっ!おはようございますだぞっ!ネコリア様!」

 

「おはよ〜。此処からは自分で歩くから、エンちゃんも人型になってくれていいわよ」

 

「そうか?じゃあ、そうするぞっ!」

 

エンカの背から、飛び降る時に《変幻》で人型に姿を変え先頭を歩いていたリムルの隣に着地する

 

「おはよ♪」

 

「やっと起きたか……ネコちゃん」

 

「ごめんね〜、睡眠時間は削れないのよ。でも大丈夫よ♪案内はしてあげるから」

 

「そうしてくれ………ん?ソウエイからだ」

 

呆れたような眼差しを向けていたリムルが待ったをかけ、偵察に赴いていたソウエイと《思念伝達》を始める

 

「ソウエイちゃんはなんて?」

 

「リザードマンとオークが交戦してるみたいだ。何でもオークの方は上位個体だとか」

 

「にゃるほど。じゃあ、ソウエイちゃんに伝えてくれる?リザードマンに加勢しなさいって」

 

「分かった。一応、俺たちも行こう」

 

ネコリアの指示をソウエイに伝えた後、リムルは件の場所に向かう事を提案する。その道中で、視界を巡らせるネコリアはある事に気付く

 

「………リムちゃん。後方から二人、知らない妖気(オーラ)を感じるわ」

 

「オークか?」

 

「違うわね、リザードマンよ」

 

「リザードマン?敵意は感じるか?」

 

「そういう雰囲気じゃないのよねぇ……。リムちゃんは先にソウエイちゃんのとこに行ってあげて」

 

「じゃあ、任せた」

 

リムルを先に行かせ、ネコリアはライメイと共にその場に残った。気配を感じる方に近付くと、反応するように、耳がぴこぴこと動く

 

「見つけたわよ」

 

「見つかった」

 

「見つかったね」

 

「………あら、この前のお姫さまちゃんたちじゃないの」

 

その気配の主は、リザードマンの姫君である双子。見覚えのある二匹にネコリアは意外そうに瞳を見開く

 

「あのね、ネコちゃんさんにお願いがあるの」

 

「あるの」

 

「お願い?にゃにかしら?」

 

「「父上を助けて」」

 

その申し出の意味が分からずに、聞いた手前、無碍にも出来ないネコリアは困ったように首を傾げる

 

「どういうこと?首領ちゃんに何かあったの?」

 

「兄者が父上をいじめた。でも……兄者は優しい」

 

「お家に入れない」

 

「う〜ん………メイちゃんは分かる?」

 

「ようやくすると、ガビルというあの輩が父である首領殿を閉じ込めて、他の者を追い出したという感じでしょうか」

 

「…………ベビーシッター歴十五年のあたしよりもすごいわね」

 

「なんです?ベビーシッターって」

 

「あ、うん。知らなくていいわ」

 

理解に苦しむ自分とは違い、一から十を読み解いたライメイに関心を示しながらもネコリアは二匹に目線を合わせるように、屈む

 

「大丈夫よ、二人のお父さんは助けるわ」

 

「「ホント……!?」」

 

「ええ」

 

花が咲いたように、きらきらとした瞳を向ける二匹にネコリアは優しく笑いかける

 

『ネコリア様ー!』

 

「んにゃ?エンちゃん。どうかした?」

 

リムルと先行していたエンカに《心理意識》で呼び掛けられ、ネコリアは疑問符を浮かべながらも返事を返す

 

『今な、リムル様が首領の娘さんと同盟を結んだんだ。何でも、首領のオッチャンは御家騒動?とか言うヤツに巻き込まれてるみたいで、ガビルのオッチャンが捕まえちゃったみたいなんだぞ』

 

「にゃるほど、状況はあたしも把握してるわ。エンちゃんはソウエイちゃんと一緒に首領を救い出すことを優先して」

 

『了解だぞっ!』

 

「さて、あたしは………仙法・猫毛分身!!!」

 

エンカとの会話を終えるや否、自分の毛を抜いたネコリアが、ぱんっ、と両手を打ち鳴らすと毛が一匹の黒猫に姿を変える

 

「お姫さまちゃんたちはこの子の後をついて行きなさい。安全なルートで、お父さんのとこに連れていってくれるわ」

 

「うん、ありがとう。ネコちゃんさん」

 

「ありがとう」

 

「それじゃあお願いね?」

 

「にゃっ!」

 

分身と双子が洞窟の方に向かうのを確認し、ネコリアは《千里眼》を発動させる。此処で説明しておきたい、《千里眼》には二つの力が存在する。その一つが自分の周囲を探る為に使用する《索》、これは知っている妖気(オーラ)を探すことに特化した力だ。もう一つはある一定の条件下で発動可能な《先》、これは魔素の流れと発動者自身が同調してる場合に使用可能な力である

今回の場合は前者、つまりはガビルの妖気(オーラ)に焦点を当てている

 

「メイちゃん………ちょっと走るわよ」

 

「走る?何処にですか?」

 

「いいから、あたしについて来なさいっ!」

 

「はいっ!何処までもっ!!!」

 

走り出すネコリアを追い、ライメイも追随し、暫くすると湿地帯が広がる荒野に出る。其処では既にオークとリザードマンの戦が始まっていたが、雲行きは明らかに劣勢だった

 

「蹂躙せよ。蹂躙せよ。仲間の力を我が物に!奴らの力を我が物に!」

 

「恐れるな!我等、誇り高き蜥蜴人族の力を見せつけてやれ!」

 

「「おぉぉぉぉ!!!」」

 

「ライメイ……暴れなさい」

 

「御意!加勢するぞっ!!!リザードマン!!!」

 

ネコリアの命に従い、渦中に飛び込むライメイ。ガビルに迫る斧を刀で受け止め、弾き返す

 

「き……貴殿は!確か……あの村にいたオーガではないかっ!?何故、ここへっ!?あのゴブリナもいるのかっ!?」

 

「スイヒョウのことか?彼奴は町でリグルド殿と守護に当たっている。それから!私はオーガではない!鬼人族にして、偉大なるネコリア=テンペスト様より剣の役目を賜りし、ライメイ!覚えておけぃ!」

 

「忝いっ!ん………なんか燃えておるぞっ!?」

 

ライメイの助太刀に礼を述べながら、ガビルは異変に気付く。それもその筈、他の場所にいたオークが発火したのだ

 

「なんだ、遅かったな。ベニマル様」

 

「お前………いつの間に来たんだ」

 

「あれ?ガビルさんじゃないっすか。ども」

 

「なんとっ!この前の!何とも心強い!もしや、貴殿等も我々の助太刀に?」

 

「主人からの命令っすからね。あれ?ライメイさん、あのババアはどうしたんっすか?」

 

「ゴブタ……お前、畑の肥やしにするぞ」

 

「すいません!やめてください!」

 

ギロッと、鋭い視線を向けるライメイに全力で土下座をするゴブタ。しかし彼の疑問も最もだ、ネコリアが何処にも姿を見せないのは不思議に思わないのが可笑しい

 

「ネコリア様にはネコリア様の御考えがあるに違いない。私たちは、存分に恨みを晴らそうではないか」

 

「奇遇ですね?姉上。久しぶりに意見が合いました」

 

「道を開けろ豚ども。灰すら残さず消えたくなければな」

 

「我が里の仇は討たせてもらおうぞ」

 

ライメイ、シオン、ベニマル、ハクロウ。四人の鬼人が其々の得物を手に走り出す。怨敵を前に、彼等の戦いは火蓋を切った

 

「クソどもが!役立たずめ!鬼人だと?ゲルドには、大鬼族共の里を襲わせたが、まさか、生き残りが進化したとでも言うのか!?それに、あの獣だ!ジュラの森にあんな化け物が居るなど、聞いてないぞ!」

 

「ふぅん……アンタが黒幕だったのね?ちょっと面、貸しなさいよ」

 

戦の様子を水晶玉で観ていた仮面の魔人、その名をゲルミュッド。彼は想定外の出来事に水晶玉を叩き割った。その直後、背後から聞こえた異様な妖気(オーラ)を感じ、聞こえた可愛らしい声に振り向く

 

「なっ………ネコ……?」

 

其処にいたのは、不敵に笑う一匹の黒猫。ぴこぴこと動く猫耳、ふりふりと揺れる鍵尻尾、その愛らしさは止まりを知らず。彼女の名は、ネコリア=テンペスト、可愛くも強き猫又である




ネコリアとゲルミュッド、ライメイたちとオーク、そしてリムルの前には……!

ネコリアの真骨頂その18 実は分身が出来る

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第二十四話 黒幕と対峙したから、本気を出しちゃった

今回の見所!ネコちゃんは本気を出しても可愛い……?以上!


「何時から其処にっ!?」

 

突然の異端的存在(イレギュラー)にゲルミュッドは驚きを顕にし、彼女に問う

 

「う〜ん……アンタが水晶玉を叩き割る少し前からかしら。でも失礼しちゃうわよねぇ……幾ら、気が動転してたからって、アンタみたいなのと可愛いあたしを一緒くたにするだなんてさ。どう見ても似てないじゃない」

 

僅かに悩む素振りを見せた後、答えを返したかと思えば、直ぐに誰もが虜にならずにはいられない魔性の笑みを浮かべる。然し、其れはゲルミュッドにとっては原初と呼ばれる七柱の悪魔よりも、強大な力を持った魔物の王である十大魔王よりも、恐ろしく見えた

 

「あの獣と鬼人もお前の差し金かっ!?」

 

「正しくはお前たち(・・)の方が適切ね。まぁ?最初にオークをけしかけたのは、アンタの方な訳だから……文句を言える立場じゃないわよね?」

 

「矮小な獣風情がっ!このゲルミュッド様の計画を台無しにしやがって!」

 

「矮小な獣なんて失礼しちゃうわね。あたしは可愛いネコちゃんよ」

 

「もう少しで俺の手足となって動く、新しい魔王が誕生したというのに!」

 

「魔王」、その単語にネコリアの耳が、ぴんっと立つ。何の一貫性も無いと決め付けていたゲルミュッドの目論見には意味があると理解し、彼女の中の興味がより一層に深まる

 

「ふぅん……その目的の為に何人かの魔物に名付けをしていた訳ね?そうねぇ、例えば…リグルって名前に聞き覚えは?」

 

「リグル………ああ、あのゴブリンか。奴は私が名を与えてやったにも関わらず、大した進化もしなかった挙げ句、早々にくたばりやがった。まぁ?生きていれば、オークロードの糧になるくらいの力はあったかもしれんがなっ!!!」

 

「…………はぁ、聞いてる?リムちゃん」

 

ゲルミュッドの並び立てる余りにも小物感が溢れる言い分に呆れるネコリアは《心理意識》と《思念伝達》を繋げた状態のリムルに声を掛ける

 

『ああ、ネコちゃん。でもなぁ……今ちょっと手が離せないんだ。オークロードがかなりの難敵でな』

 

「そっ……なら、あたしが対処するわ。本来の姿は嫌いだけど………本気出すわよ」

 

リムルの助太刀が望めないと理解した瞬間、ネコリアの妖気(オーラ)が急速に昂まり、体全体を覆っていく

 

「な、なんだぁっ!?」

 

「我が名はネコリア=テンペスト。長き時を生きる猫妖怪にして、仙猫(せんびょう)と呼ばれし猫又也。魔に属する者よ、其方の目論見も我が前では無力であると知れ」

 

ゲルミュッドが驚くのも無理はない。先程までの愛らしくも可愛らしい雰囲気は何処へやら、其処には魔獣にも匹敵する体格と二又に分かれた尻尾を持つ巨大な猫が居た

 

「たかが猫風情がなぜ、これほどまでの力を……!?」

 

「言ったであろう、我は仙猫。猫であって猫に在らず。其れすらも理解出来ないとは、魔に属する者が聞いて呆れる」

 

「黙って聞いていれば、魔王幹部の私に向かってその様な口を利きおって〜〜!!!上位魔人の強さを教えてやる!死ね!死者之行進演舞(デスマーチダンス)!」

 

ネコリアの嘲笑う様な言葉の数々に、怒りが頂点に達したゲルミュッド。特大の魔力弾を彼女に向けて放つ

 

「仙法・岩土盾(がんどいん)!!!」

 

だが、ネコリアは其れを前にしても怯む素振りも見せずに前足で軽く近くの岩を小突いた。刹那、岩が周囲の土を巻き込む様に巨大な盾を形造り、ゲルミュッドの技を本人に弾き返す

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」

 

「所詮は魔王の威を借りた小物。我の前に平伏す、その姿………実に欲を唆る」

 

「き………貴様!俺様を……誰だと……!上位魔人だぞっ………!」

 

「………………興が削がれた。貴様如き、生かしておく必要等ない。然し、安ずるが良い。貴様は我の進化の糧に、我が力の贄として、その身を捧げるのだ。覚悟は良いな?上位魔人(ゲルミュッド)よ」

 

「ヒィッ!やめろ!来るなァァァ!!」

 

猫の様に自由気まま極まりないネコリアは、ゲルミュッドの姿に一度は欲を唆られるも、未だに自らを上位魔人である事をひけらかす様に主張した事で興味を無くし、右腕を喰い千切った

 

「…………腕がァァァ!!!俺様の腕がァァァ!!!!」

 

「次は、その首を喰い千切ってくれるわ!!!」

 

「俺を助けろ!オークロード!!!いや………ゲルドよっ!!」

 

ネコリアが飛び掛かろうとする寸前、リムル達と刃を交えていたオークロードの名を呼び、投げやり気味に助けを求めるゲルミュッド。異変に気付いたネコリアは動きを止め、リムル達も身構える

 

「貴様がさっさと魔王に進化しておれば………この屑が。まぁ、構わん!!さぁ!蹂躙せよっ!ゲルド!この俺に歯向かった事を後悔させ………!」

 

その言葉が最後まで続く事はなかった。何故なら、ゲルドの手に握られた巨大包丁がゲルミュッドの首を刈り取ったからだ

 

「…………仕留め損ねたか。あの程度も止められぬとは盟主が聞いて呆れるな」

 

「そう言ってくれるなよ、こっちもやれるだけのことは…………って!どちら様っ!?」

 

その唐突な展開に舌打ちをするネコリア、オークロードを止められなかった事に対する反論を返すリムル。しかし、隣に移動してきた相棒の姿に思わず二度見した後、リムルは叫んだ

 

「滑稽な事を言うではないか?リムルよ。ネコリアに決まっておるだろう」

 

「俺の知ってるネコちゃんと微塵も一致してませんけどっ!?大賢者!」

 

『解。個体名ネコリア=テンペストが抑えていた妖気(オーラ)を解放し、真の姿へと変化した姿です』

 

「つまり……今までのは若作りってことか」

 

「仕方ないっすよ。所詮は長生きしてるだけが取り柄のババアっすから」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん。あとゴブタ?アンタには後でエンカとお散歩してきてもらうわね♪」

 

「…………戻ってる!!!」

 

「ひぃぃぃぃぃ!お散歩だけはっ!それだけはっ!勘弁してくださいっす!!!」

 

「だーめ♪」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった。更に言えば、彼女は先程の姿が嘘の様に人型に戻り、口調も普段と変わらないモノに戻っていた

 

「人の姿を気にしてる場合?見るなら、あっちを見なさい」

 

「あっち……うーむ、確かにこれは酷い深爪だ」

 

「どうして、毎度当たり前の様にあたしの爪を見るのよ。オークロードよ、オークロード」

 

「ああ、そっちか…………いっ!!!」

 

恒例と化したネコリアの爪弄りをした後、彼女に突っ込まれたリムルはオークロードに視線を向け、衝撃を受ける

 

「食べているのか……!?」

 

「名を与えた魔物に喰らわれるとは、哀れな輩だ。ゲルミュッドも」

 

「なにっ!?あの食べられているのはゲルミュッド様だったのか……!!通りで見覚えのある趣味の悪い仮面だと思った……」

 

「ガビルちゃん。さてはアンタ、ものすごいバカでしょ」

 

首を刈り取っただけでは飽き足らず、ゲルドは既に絶命したゲルミュッドの亡骸を喰らい始めていた。その光景にベニマルもリムル同様に戦慄し、ライメイはその最期を嘲笑し、ガビルに至っては今更ながらに食べられたのがゲルミュッドである事に気付き、ネコリアが、ビシッと鋭い突っ込みを放った

 

『確認しました。個体名ゲルドが魔王種への進化を開始します』

 

そして、世界を破滅に誘うその声は響き渡った。新たな魔王の誕生日を祝うかの様に、響いた




同胞、リザードマン、オーガ、更にゲルミュッド……様々な魔物を糧に遂に魔王へと進化を果たしたゲルド。迎え撃つは我等がリムル=テンペストとネコリア=テンペスト、満たされぬ食欲の果てに待ち受けるモノとは……?

ネコリアの真骨頂その19 実は本来の姿は巨大

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第二十五話 魔王と戦ったら、新しい欲を託されちゃった

今回の見所!ネコちゃんがボケ倒す!以上!


『成功しました。個体名ゲルドは、豚頭魔王(オークディザスター)へと進化完了しました』

 

ゲルミュッドという上位魔人を喰らい、力が極限までに昂まったゲルドの種族はオークロードの上位種豚頭魔王(オークディザスター)への進化を遂げた、と『世界の言葉』が告げる

 

「魔王………マジかよ。御伽話の中だけのステキネーミングだけで終わらせて欲しかったのに……直に誕生を目撃する事になるなんて……最悪だ…」

 

「私の畑を荒らした豚が………魔王?ほう………此れは、我が刃の餌食になりたいという解釈をしていいんだな?妹よ」

 

「シオンです。まあ、姉上の畑馬鹿に関しては何も言及するつもり等はありませんが、あの豚には私も恨みが無いわけではありません。協力しましょう」

 

「「くたばれェェェ!!!」」

 

魔王の誕生に頭を抱えるリムルとは裏腹に、血の気と力が有り余った鬼人姉妹が地を蹴り、其々の得物を手に駆け出す

 

「オレの名は、ゲルド。………オークディザスターのゲルドだ」

 

「……………」

 

「ん……どうした?ネコちゃん。さっきから静かだけど」

 

配下たちが豚頭魔王(オークディザスター)に真っ向勝負を挑む中、真っ直ぐと前方を見据える相棒の姿に気付いたリムルは、彼女に問い掛ける

 

「…………あの〜、服破けてますよ」

 

「……………なんだと?」

 

「いやだから、服破けてますよ。寒くないんですか?其れ」

 

「…………何言ってんのっ!?お前ェェェ!!!」

 

沈黙からの爆弾発言、豚頭魔王(オークディザスター)に近付いた彼女は破れた衣服を見て、丁寧に指摘を始めた。まさかの行動に呆気に取られたリムルであったが、即座に鋭い突っ込みを放つ

 

「あっ、もしかしてだけど、オシャレのつもり?其れ。なに?魔王って、露出高くないとなれない感じ?……いや……待てよ?単に……露出癖って可能性も……へ〜……ふぅん、そうなんだ……分かったわ、アンタ!すっごいエッチな豚さんね♪」

 

「………っ、これはあの進化の過程でそうなっただけのこと。別に露出癖などがある訳ではない」

 

「王よ!この様な獣の言葉を聞いてはいけません!」

 

「そうです!似合ってますよ!貴様!王に対して、無礼だぞっ!」

 

正気を疑う様な眼差しを向けるネコリアの言葉に、流石の豚頭魔王(オークディザスター)も恥じらう素振りを見せ、その姿に豚頭将軍たちが物申す

 

「えっ!分かっていながら、似合ってるとか主張してたの?新手の上司弄り?パワハラ待ったなしじゃないの。マジナイワー」

 

「王よ!この身を御身とともに!」

 

「……………………………………うむ」

 

両眼を見開くネコリアを遂には無視し、豚頭将軍は豚頭魔王(オークディザスター)へ自分たちを喰らうことを進言する

 

「いやァァァ!!!誰か医者ァァァ!あの人!急に光出したわっ!!!謎の発光病よ!救急車ァァァァァァ!!!」

 

「…………ネコちゃん?後でハナシがある」

 

「なんで?あたしはリムちゃんにこれと言って話なんかないわよ?」

 

「俺にはあるのっ!!!と・に・か・く!今からちょっと荒っぽいことをするから、ネコちゃんはサポートを頼む!真剣にやってくれよ!!!」

 

「………仕方にゃいわね。今回は特別よ?」

 

巫山戯倒すネコリアを言い聞かせ、目の前の出来事に対処することを頼み、流石にやり過ぎたと思った彼女からの言質(ことじち)を取ることに成功する

 

「ネコちゃんなら、そう言ってくれると思ってたよ。さてと………出番だぞ、大賢者。お前に託す!敵を打ち倒せっ!!!」

 

嫌々には見えるが最後には意志を汲み取るネコリアの優しさに笑いかけた後、リムルに変化が生じる。瞳が赤く染まり、雰囲気が一変したのだ

 

「ふぅん?アレが『大賢者』か。流石にリムルよりもスキルの扱いが上手いわね」

 

「喰らい尽くせっ!!!」

 

「おっと、そうは問屋が下さにゃいわよ」

 

リムルの変化に何かを感じ取り、そのスキル使用の器用さに関心しながらも、豚頭魔王(オークディザスター)の動きを見逃さず、両手を広げ、ぱんっ、と打ち鳴らす

 

「仙法・嵐燐華(らんりんか)!!!」

 

炎を纏った竜巻、リムルに放たれた豚頭魔王(オークディザスター)の攻撃を打ち消す様にその体を呑み込み、体に纏わりつき、再生を妨害する

 

「そろそろ………終わりにしよう。食うのは、お前の専売特許じゃねえんだよ。………お前が俺を食うのが先か、俺がお前を食うのが先か。相手を食い尽くした方が勝ちだ!」

 

「そこ、あたしたち(・・)の間違いでしょ。あたしにもちょっと分けてもらうわよっ!!!呪法(じゅほう)養命樹(ようめいじゅ)!!!」

 

「呪法ってなにっ!?仙術にしては名前が凶々しいんですけどっ!!!」

 

『告。個体名ネコリア=テンペストのスキル仙術に闇系自然エネルギーを高密度で混ぜ合わせたモノを呪法と呼びます』

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

スライム状態のリムルとネコリアの生み出した養命樹が豚頭魔王(オークディザスター)の体を覆い尽くし、その全てを喰らう様に呑み込んだ瞬間、《千里眼》にある光景が映り込む

 

(見渡す限りの荒野………ああ、これがあの子の見てきた景色なのね)

 

枯れた大地、何もない世界にネコリアは気付く。この景色が豚頭魔王(オークディザスター)の実体験であると、腹を空かせ、泣き喚く子どもたちの為に自らの左腕を引き千切り、差し出す。その光景は側から見れば、異常かもしれない。其れでもネコリアは、彼の本質を垣間見る

 

『しっかり食べて、大きくなるのだぞ』

 

(……………ねぇ、リムル。その欲を背負う事はアナタの欲、だけどね……あたしの欲でもあるのよ。少しくらいは一緒に背負ってあげる。だから、安らかに眠りなさい………ゲルド。アナタの欲の続きは、あたしたちが紡いであげる。だから今は……ゆっくりと、休みなさい)

 

((また何時の日か会えたなら、お前たちの欲の続きを聞かせてくれ))

 

あの日と、救いたくても救えなかった人が旅立った日に聞いた空耳、例によって振り返るが其処には誰もいない。其れでもネコリアは理解していた、その声が誰で、その言葉が何を意味するのかを彼女は理解していた

 

「…………勝ち鬨を挙げなさい。今、豚頭魔王(オークディザスター)は我等が盟主リムル=テンペストにより打倒されたっ!!!この戦は我等の勝利だ!!!」

 

「「「「オォォォォォ!!!」」」」

 

リムルを天高くに掲げ、高らかに勝利を宣言するネコリアに誰もが勝ち鬨の声を挙げる。刹那、ライメイが駆け寄り、刀を捧げる様に主人であるネコリアの前に起き、跪く

 

「ネコリア様。此度の御活躍、お見事でした。此れからも私を貴女様の剣として、御側に置いていただきたく御願い申し上げます。無論、無理にとは申しません。不要と在れば、斬り捨てていただいて構いません。全てはネコリア様の御意志のままに」

 

「バカね。名前をあげたのよ?最初から手放すつもりなんかにゃいわよ。あたしはね?欲しいものは何が何でも手に入れる………其れがあたしの欲。だから、これからもあたしの剣として、側に居続けなさい。分かったわね?ライメイ♪」

 

「……………はっ!このライメイ、賜りし名に恥じぬ剣となる事を御約束致します!」

 

かくして、ライメイからの本当の忠誠とリムルの勝利という吉報を持ち、ネコリアたちは帰路に着くのであった




街に戻ったリムルとネコリアたち、そこに来たるはリザードマンとオーク。仕方ないからオークはリムルに任せて………

ネコリアの真骨頂その20 実は相棒からの信頼は厚い

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第三章 この度、国を作ることになりましたので御挨拶に伺います!
第二十六話 結論を話し合ってたら、相棒が盟主になっちゃった


今回の見所!ネコちゃんはやっぱり寝起きが一番可愛い!以上!


「んにゃぁ〜…………にゃによぉ〜……もうちょっと寝かせて欲しいんだけど……」

 

オークとの戦に勝利し、束の間の平和を満喫せんと寝息を立てていたネコリアは、急にその平和を壊された事を不服そうにしながら、体を伸ばす

 

「御疲れの所、申し訳ありません。トレイニー様が事態の収束に向けた会議を行うにあたり、ネコリア様に御同席を願いたいとの事ですわ」

 

「むぅ………面倒だけど、仕方にゃいわね」

 

首を左右に動かし、僅かに眉間に皺を寄せながらも面倒そうな表情を浮かべるも、流石に重大な会議を放り出す訳にもいかず、渋々ではあるが了承する

 

「おっ、ようやく来たか」

 

「なに?まだ始まってなかったの?」

 

会議場所に着くと、既に待機していたリムルがネコリアの姿に気付き、声を掛ける。当の本人は会議が始まってもいない事に呆れた様子を見せる

 

「ネコちゃん待ちに決まってるだろ。なので、遅れた罰にネコちゃんには議長をやってもらう」

 

「…………え〜」

 

「不服そうにしないっ!」

 

強制的に会議の議長に任命され、不服そうな声を挙げるネコリアにリムルの素早い突っ込みが放たれる

 

「では……議長ネコリア=テンペスト、会議を始めてください」

 

「はぁ〜い………えっと、議題は今後のあたしの可愛さを如何に近隣諸国に知らしめるかについてだけど」

 

「そう、ネコちゃんのかわ…………って!ちがーーーうっ!オークの今後についてだよっ!!!」

 

「えっ?じゃあ死刑」

 

「即決すなっ!!!もういいっ!議長は俺がやるからっ!ネコちゃんは見ててっ!」

 

「むぅ……スイちゃん、リムちゃんがいじめる」

 

「御可哀想なネコリア様………あっ、お魚ありますよ?」

 

「あら、朝ごはんね。気が利くじゃない」

 

一瞬で議長解任になり、不貞腐れるネコリアであったがスイヒョウが取り出した魚を前にした瞬間、機嫌が良くなる

その横でリムル主体の会議は進行し、オークの処遇についての議題が持ち上がっていた

 

「俺はオークの罪を問おうとは思わない。勿論、オークのした事は許される事じゃない。だけど、良く考えてもらいたい。コイツらが何故、あんな事をしなければならない状況に陥ったのかを。もしも、同じ立場ならば、リザードマンも同様の判断をしたかもしれない………違うか?首領」

 

「…………確かに一理ある。しかし、それは建前に過ぎない、貴殿の本音を伺いたい。構わぬか?盟主殿」

 

「オークの罪は俺が引き受けた。だから、文句があるなら俺に言え。俺は逃げも隠れもしない、二十四時間三百六十五日、誰からの文句でも受け付ける。異論がある者は前に出ろ」

 

リムルの決意、其れは筋の通った言葉に誰もが納得を示す中、納得のいかない者たちもいた

 

「お…………お待ちいただきたい!いくらなんでも、それでは道理が………!」

 

「無茶で無謀………良いじゃない、道理があるなら我を通す、其れもまた人の上に立つ為には重要な力よ」

 

「そ、それは………そうですが……」

 

待ったを掛けたのは、生き残ったオークの中でも一番の権力を持つ豚頭魔王(オークディザスター)ゲルドの息子である豚頭将軍(オージェネラル)。しかし、その反論を打ち消す様にネコリアの鋭い横槍が入り、彼は言葉を失う

 

「御言葉だが、ネコリア殿。其れは少々狡い御答ではないか?」

 

「そうね、簡単に受け入れられるモノじゃないわ。でも魔物には不変のルールがある筈よ」

 

「確かに。この世は弱肉強食、弱い者は淘汰され、強い者が生き残るが当たり前の世界……立ち向かった時点で覚悟は出来ていた筈だ」

 

「ライメイの言う通りだ。俺たちも里を滅ぼされた事を許すつもりもないが、次があれば、同じ無様は晒さない。そうだな?お前たち」

 

ベニマルの発言に鬼人全員が首を縦に振る。其れはリムルの決定に従うという事を示していた

 

「なるほど………ですが、一つ、どうしても確認させていただきたい。貴殿等はオークをどうなさるおつもりだ?罪を問わぬということは、生き残った彼等全てを、受け入れる………そういう解釈になるが?」

 

「確かに数は減ったがオークは十三万もの大群だ。そこでだ、俺は考えた。ネコちゃん」

 

首領の疑問に頷きながらもリムルは企み笑顔を見せ、隅で会議を傍観していたネコリアに呼び掛ける。すると彼女は指を鳴らし、スイヒョウにある物を配布させる

 

「手元に行き渡ったわね………今後、リザードマンには良質の水資源と魚を。ゴブリンからは住む場所を。あたしたちの町からは、加工品を提供し、その見返りにオークは労働力を提供してもらうものとする。以上が盟主リムル=テンペストからの提案よ」

 

「おおっ……!」

 

「ジュラの大森林の各種族間で、大同盟を結び、相互に協力関係を築く。多種族共生国家とか出来たら、面白いと思わないか?勿論、無理にとは言わない」

 

「わ………我々が………!その………同盟に参加させて貰えると言う事ですか?」

 

「帰る場所も行く宛もないんだろ?居場所は用意してやる。だから其れ相応の成果を上げてみせろ。分かったな?」

 

「ははっ……!」

 

「「はっ!!!」」

 

新たな居場所と仕事、生きる意味を得たオーク達は歓喜の声を挙げる。次にリムルはリザードマン側へと向き直る

 

「リザードマンはどうだ?」

 

「是非、協力させていただきたい」

 

「トレイニーちゃんは?」

 

「宜しいでしょう。私の守護する樹人族からも、森の実りを提供いたしましょう。当面、オーク達の飢えを癒す事は、出来るかと思います」

 

「おおっ………!」

 

リザードマン、森の管理者からの確約も取り付け、話が綺麗に纏まったと思った瞬間だった

 

「では………森の管理者として、私、トレイニーが宣誓します。リムル様を、ジュラの大森林の新たなる盟主として認め-----」

 

「盟主っ!?ちょっと待って!なんで俺っ!?ネコちゃんは!!!」

 

「あっ、参謀役なんで盟主はちょっと。まあ既に何度か自分から名乗ってるし、良いんじゃない?スイちゃん、メイちゃん、エンちゃん、リンちゃん、どう思う?」

 

「ネコリア様の決定に異論などある筈がありませんわ」

 

「ドライアド様からの提案でもありますからね。私も異論はございません」

 

「わふ………盟主ってなんだ?」

 

「あー分かりやすく言うとリムルのダンナがトップになるって意味だな」

 

「わふっ!リムル様がトップかー!すごいな!リムル様!」

 

「えっ……あっ、そう?じゃあ、やろうかな」

 

尊敬の眼差しを向けるエンカに気分を良くしたリムルは胸を張り、盟主を引き受ける事を宣言する

 

「良い?この子を上手く操るには可愛い子からお願いさせるのよ」

 

「やっぱり、ダンナってエッチなスライムだな」

 

「そうね、生まれながらの性分ね」

 

「エッチなスライムちゃうわっ!!!」

 

リムルの上手な操り方講座を開くネコリアと、其れに納得しつつ彼が邪な妄想の根元である事を再確認するカイリンに御決まりの文句が放たれる

 

「オークの者よ、私はお前たちを許した訳ではない。だが、我々は其々が役職を賜った身、勝手に同じ方を盟主と仰ぐ者を始末する事は我が主人であるネコリア様の威に反する行為だ。故に私はお前たちを仲間と認め、提案する。今後はリムル様の崇高な理念実現の為に働け、其れを詫びと受け取ろう」

 

「やれやれ、ライメイのヤツに言いたいことは言われてしまったな」

 

「姉上!シオンは感動しました!まさか畑を耕す事にしか興味がない畑バカな姉上から、その様な言葉が聞ける日が来ようとは!」

 

「ベニマル様の考えは分かりやすいからな。あと、妹は後でシバく」

 

騒ぎながらも、去っていく背中に豚頭将軍(オージェネラル)は頭を下げる

 

「父王、ゲルドの名に誓って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(我輩は死罪であろう。それで良い。そうでなければ、示しがつかん。ただ………心残りがあるとすれば………聞いてみたかった。何故、あの二人は、我輩を助けてくれたのかと。こんな………何の価値もない間抜けを。特にあのネコリアという方は……我輩だけではなく、妹たちも助けてくれたとか……)

 

会議から十日後。謀反を起こしたガビルに判決が下されようとしていた、目の前に鎮座するのは首領であり父であるアビル。その状況で浮かんだのはリムルとネコリアの姿だった

 

「顔を上げい」

 

「ん………」

 

「判決を申し渡す」

 

(せめて、堂々と、死罪を受け入れようぞ)

 

「ガビルを破門し、追放する。二度と蜥蜴人族を名乗る事は許さぬ。即刻、追い払うが良い!」

 

「なん………だと!?」

 

死を覚悟していたにも関わらず、意外な判決にガビルは驚きの声を挙げる。しかし、それも束の間。洞窟の外に追い出されたガビルが途方に暮れる

 

「忘れ物だ」

 

投げ渡されたのは首領の証である水渦槍(ボルテクススピア)と荷物。刹那、ガビルの瞳から涙が溢れ落ちる

 

「あ………ああっ………!」

 

「待ってましたよ、ガビル様!」

 

「ったく、待ちくたびれたぜ」

 

「時は金なり」

 

「な………何をしておるのだ、お前達!我輩は破門になったのだぞ!?」

 

「ガビル様が破門なら、皆、破門ですよ!」

 

「然り!」

 

「バカな奴らだな………仕方がない、お前たちの面倒を見れる者は我輩しかおらんからな!着いてくるが良い!是非とも御支えしたい方がいらっしゃるのだ!」

 

「「「ガビル様となら何処までも!!!」」」

 

そして、ガビルは旅立った。新たな居場所と主人を求め、長い旅へと

 

「準備できた」

 

「兄者と一緒」

 

「行くのか……娘たち」

 

「父上。兄者に会えたら、お手紙書く」

 

「待っておる。親衛隊長!」

 

「はっ!」

 

旅立とうする娘たちの決意を理解し、アビルはもう一人の娘を呼ぶ

 

「お前は何人かの同胞を連れ、二人の護衛をしろ。その道中で彼奴を見かけたら、少しくらいは便りを寄越せと伝えておけ」

 

「…………はい、仰せの通りに。行きましょうか?二人とも」

 

「姉者も一緒?」

 

「兄者に会える?」

 

「きっと会える。私が嘘を吐いたことはないだろう?」

 

「「うん!」」

 

息子に続き、旅立つ三人の娘の背をアビルは何時までも見送っていた。その姿が見えなくるまで、いつまでも、いつまでも




彷徨い続けたガビルがたどり着いたのは、ネコリアの修行場。そして時を同じくして妹たちも………

ネコリアの真骨頂その21 実は用意周到

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第二十七話 修行してたら、次々と訪問者が来ちゃった

今回の見所!ちょっとだけ原作との相違点が生まれる!以上!


「………あれから、三ヶ月。町も随分と賑やかになったわね」

 

オークロード討伐作戦から実に三ヶ月。ゲルドの名を得た豚頭魔王(オークディザスター)の息子を新たな統率者に、オーク達は上位種猪人族(ハイオーク)へと進化を遂げ、カイジン並びにカイリンの指導で急速に技術を身に付け、町の労働力となった

その甲斐もあり、町は整備され、これまでは急拵えに過ぎなかった衣食住の全てが充実し、以前よりも町と呼ぶに相応しい光景へと変化を遂げた

 

「……………大きな気配が近付いてるわね。この気配はドワーフ……?」

 

仙術の修行に身を投じるネコリアは、近付く巨大な気配に薄目を開け、その正体がドワーフである事に気付き、疑問符を浮かべる

 

『アネキ。今ちょっと良いか?』

 

「あら、リンちゃん。どうかした?」

 

《心理意識》で呼び掛けてきたのは、カイリン。彼女の声色から何かを察したネコリアは問い返す

 

『今な、ドワルゴンの国王様がいらっしゃててよ。ダンナだけじゃなくアネキにも会わせろって言うんだ』

 

「ドワルゴン………ああ、リンちゃんたちの故郷ね。分かったわ、直ぐに行くと伝えて」

 

『すまねぇ』

 

念話を終え、即座に《変幻》を使用し、人型に変化したネコリアは気配が集まる場所に向かう。暫くして、辿り着くとペガサスに跨った大男が視界に飛び込んで来た

 

「貴様がカイリンの主人か?」

 

その大男、ガゼル・ドワルゴの姿に何時もの冗談が通じる相手でない事を悟り、ネコリアはゆっくりと傅いた

 

「ええ、御初に御目に掛かります。ジュラの森大同盟盟主の参謀を務めております……名をネコリア=テンペスト、お気軽にネコとお呼びください」

 

「であるか。してネコよ、貴様はリムルの選ぶ未来についてはどう考えておる」

 

「全ての種族が分け隔てなく笑い合う未来………その様な夢物語の方が大好きよ。そして恐らくだけど、アナタがこの町を尋ねた理由はあたしとリムルを見定める以外にもう一つある。違う?」

 

ガゼル王の問いに素を見せたかと思えば、即座に確信を突く一言を放つネコリア。その全てを見透かした彼女の姿に、ガゼル王は息を呑む

 

「………リムルよ。お前の相棒は他者の心を詠めるのか?」

 

「いやこれはネコリア特有の観察眼だよ。人の態度から一から十を読み取るんだ」

 

「にゃっふっふっふっ、もっと褒めてもいいのよ」

 

「良いかね?この子はすぐに調子に乗るから、褒めすぎてはいけないよ」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「単刀直入に言おう、俺と盟約を結ぶつもりはあるか?お前達がもしも、この広大な森を全てを掌中に出来たならば、我が国すらも上回る富と力を手に入れる事が出来よう。その時に、後ろ盾となる国があれば、便利だとは思わんか?」

 

その言葉に、リムルも、ネコリアも戯れ合いを中断させ、顔を見合わせる

 

「良いのか?俺たち的には有り難い申し出だが……」

 

「それだと、あたしたちみたいな魔物の集団を一国として認可するってことよ?」

 

「無論だ、それとこの話は我等にとっても、都合が良い。お互いに利益がある」

 

「「確かに」」と声を揃え頷くリムルとネコリア、国となれば更なる発展と今後の方針等にも拍車が掛かる。故に異論はなかった

 

「それで?この国に名前はあるのか?」

 

「…………な、名前?」

 

「名前だ」

 

「う〜む…………………ジュラ・テンペスト連邦国かな?」

 

「ジュラ・テンペスト連邦国だと……!?」

 

「おおっ!」

 

「さすがはリムル様です!」

 

「では、国の名はジュラ・テンペスト連邦国!町の名前はリムルと致しましょう!」

 

「あたしの考えてたネコリア大帝国の方が可愛いと思うけど」

 

「では歓楽街の名前をネコリア様から戴き、ネコリアと致しましょう。今ちょうどカイリンが主体で開墾を進めておりますわ」

 

「歓楽街ネコリアっ!?なんとも素晴らしい響きだ」

 

「かんらくがい……?」

 

「遊びがいっぱいって意味だ。エンカ」

 

「わふっ!楽しいがいっぱい!いいな!」

 

かくして、此処に首都《リムル》、歓楽街《ネコリア》の二つを有するジュラ・テンペスト連邦国が誕生した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………今度はなに、次から次へと」

 

ガゼル王との会合から二日後。修行に身を投じていたネコリアはまたしても近付く気配に、不機嫌そうに眉を顰める

 

「お久しぶりですなぁ〜!ネコリア殿!」

 

その気配の主はガビル、背後には彼を慕うリザードマンが控えている

 

「………………何してんのよ」

 

「貴様ァァ!ネコリア様の修行の御邪魔をなさるとは………斬られたいようだな?」

 

「ふふっ………ライメイ?アナタの出る幕はありませんわ。この者の始末は私が」

 

「わふっ!ガビルのオッチャンだ!」

 

「ガビル………ああ!あの時のアホそうなリザードマンか!」

 

「……………アホそうでも、オッチャンでもないわっ!」

 

ガビルの存在にジト目を向けるネコリア、戦闘態勢を取るライメイとスイヒョウ。三人とは裏腹に遊び相手の登場に喜ぶエンカ、失礼な発言をするカイリン、其々の反応を示す

 

「我輩は此度の戦で自分が如何に無力であるかを知りました。ですからっ!何卒、我輩達を貴女様の配下に加えていただきくお願い申し上げます」

 

「兄は反省しているのです。今度こそ、妹たちに誇れる兄となるべく貴女様の下で働きたいと」

 

「兄者、見つけた」

 

「あそぼ」

 

配下に加えて欲しいと懇願するガビルの背後から姿を見せたのは、親衛隊長である長女と姫君である双子。まさかの妹たちの登場に、驚いたガビルが振り返る

 

「い、妹たちっ!?何故ここにっ!まさか貴殿等も勘当されたのかっ!!!」

 

「「ちがう」」

 

「兄上と同じにしないでください。父上に姫たちの護衛を申し渡され、見聞を広める為にこの国に送り出されたのです」

 

「な………なん………だと……!?とか言って、我輩を慕ってついて来たのだろう?我が妹よ」

 

「違います」

 

即答され、ショックを受けたガビルは放心状態となり、その場で燃え尽きた様に真っ白に染まっていく

 

「ネコリア様………お手数かと思いますが………我々と兄に名前を付けてはいただけませんか……」

 

燃え尽きた兄に代わり、呆れた様に願い出たのは長女。彼女の体からは苦労人雰囲気が溢れ、ネコリアの欲を唆ったが其れは今は関係ない話だ

 

「名前…………じゃあ、親衛隊長ちゃんは〝蒼華(ソウカ)〟、お姫さまちゃん達は左の子が〝(フウ)〟、右の子が〝(クウ)〟の名を、与えるわ」

 

「ソウカ…………頂戴いたします」

 

「フウ?気に入った」

 

「クウも」

 

「わ、我輩は!」

 

「ガビル」

 

「そ、そのままっ!!!」

 

リザードマンという新たな配下を得た事で、更に騒がしさを増す周囲にネコリアは軽くため息を吐くのであった




発展を遂げる町、だが平穏は一緒で崩れ去る!ゆっくりと修行したいネコリアの前に現れたのは!まさかの………!!!

ネコリアの真骨頂その22 実は修行熱心

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第二十八話 平和も束の間、魔王が来ちゃった

今回の見所!ネコちゃんは今日も可愛い!以上!


「んにゃぁ〜…………随分と賑やかになったわね」

 

何時もと変わらぬ時刻、目を覚ましたネコリアの耳に届くのは活気に満ちた町を行き交う魔物の声。三ヶ月前までは嘘の様な光景に彼女は笑みを浮かべる

 

「ややっ!ネコリア様!ご覧ください!遂にヒポクテ草の栽培に成功しましたぞっ!!」

 

「ガビル殿。其方はネコリア様が育ててらっしゃる植物の鉢で、ヒポクテ草は此方です」

 

家から出たネコリアを待ち構えていたのは、ヒポクテ草の栽培を任されたガビルと彼等が尋ねて来た翌日くらいにガゼル王が半ば強引に連れてきた何時ぞやの大臣基ベスターだ

 

「ベスターちゃん。大変ね………相方がちゃらんぽらんだと」

 

「そうでもありませんよ。意外にもガビル殿は研究熱心ですから………まぁ、歌うのは勘弁していただきですがね……」

 

「何をおっしゃる!ベスター殿!我輩の歌には発育効果があるのですぞっ!それではネコリア様にも一曲披露いた----ぐほっ!?」

 

歌い出そうとしたガビルの頭上に拳骨が落ち、恐る恐る振り返ると仁王立ちする一人の少女基ソウカが佇んでいた。彼女は名を与えられた事により、龍人族(ドラゴニュート)に進化を遂げていた。ガビルも同様の進化を遂げたが然程の変化が見受けられないのに対し、彼女の場合は人間に近い見た目に変化している

 

「兄上、ネコリア様に一族の醜態を晒さないでください。それと!私は今からソウエイ様の下に向かなわければならないので、フウとクウの御世話をお願いします」

 

「う、うぬ………」

 

「兄者だ」

 

「ネコちゃん様もいる」

 

ソウカの背後から姿を見せたのは二人の幼女、ガビルとソウカの妹たちであるフウとクウである。二人も龍人族(ドラゴニュート)への進化を期に人間に近い見た目となった

 

「フウちゃんにクウちゃん。おはよ」

 

「おはよう。ネコ様」

 

「おはよう。ネコちゃん様」

 

「ソウカちゃんは今からお仕事?」

 

「はい。スイヒョウ様が武芸に自信があるなら、ソウエイ様の元で腕を磨いてみては?とおっしゃってくださいましたので」

 

「にゃるほど、がんばってね〜♪」

 

「はいっ!」

 

元気の良い返事を返すとソウカは走り去っていく。残されたフウとクウは、兄のガビルを突きながら遊んでいる

 

「兄者。頭にデカいのある」

 

「いたそう……」

 

「二人はソウカの様な直ぐに手が出る女子になってはいかんぞ……姫君なのだからな」

 

「分かった」

 

「うん」

 

「アンタもさっさと仕事に戻りなさい。フウとクウはあたしが見ておくから」

 

「忝い!ではベスター殿!参りましょうぞ!」

 

「はい。それではネコリア様、これで失礼します」

 

「また成果が出たら教えてね〜」

 

ガビルとベスターも去り、残されたフウとクウが視界を左右に動かすのに気付いたネコリアは《変幻》で人型になり、二人に手を差し出す

 

「お散歩しましょうか」

 

「お散歩好き」

 

「うん」

 

「わふ!お散歩って言ったか?ネコリア様!」

 

「あら、エンちゃん」

 

何処で聞き付けたのか、話に入ってきたのは狼姿のエンカ。その後方には生きる屍と化したゴブタが転がっている

 

「ゴブタがお散歩してたら倒れたんだぞ」

 

「軟弱ね。ハクロウちゃん、鍛えた方が足りないわよ」

 

虫の息であるゴブタに文句を吐き捨てながら、茶屋で茶を啜っていたハクロウに呼び掛ける

 

「いやはや、これは手厳しい。それでは……明日からは二倍に……」

 

「勘弁してくださいっす!!!だいたい!エンカさんのお散歩をさせたのはネコリア様じゃないっすか!!!」

 

「……………ああ!ゴブタ。お散歩役がんばったわね」

 

「忘れてたっすよね!?明らかに!」

 

自分が命令していた事を綺麗さっぱりと忘れていたネコリアが取り繕う様に褒め言葉を投げ掛けると、ゴブタの鋭い突っ込みが飛ぶ

 

「わふっ!ネコリア様!でっかい気配が近付いてるぞ!」

 

「…………ガゼル王の比じゃにゃいわね」

 

『ネコリア様!ソウカです!場所は町の高台方面!既にリムル様はソウエイ様の報告で向かわれました!』

 

「分かったわ。ゴブタ!フウとクウをお願い!エンカ!」

 

「わふっ!」

 

素早い動きでエンカに跨り、フウとクウをゴブタに任したネコリアは報告のあった場所へと急行する。道中で修行中のライメイ、休憩中のスイヒョウを拾い、目的地に辿り着くいた

 

「初めまして。私はただ一人の竜魔人(ドラゴノイド)にして、破壊の暴君(デストロイ)の二つ名を持つ、魔王、ミリム・ナーヴァだぞ!」

 

同時刻、高台付近に着地した一人の少女基ミリムの名乗りを聞いたリムルは驚愕する

 

「魔王だと………!?」

 

「にゃるほど…………その格好寒くない?」

 

驚くリムルを他所に、ネコリアは頷いた後、何時もと変わらない安定の失礼な発言を繰り出す

 

「初対面で失礼な事言わない!!!すいません!ホント!」

 

「寒くないのだ!魔王だからな!」

 

「お前も答えなくていいわっ!!!」

 

然し、ネコリアの失礼な発言をものともせずに能天気な発言を繰り出すミリム、其れに突っ込みを放つリムル。此処に最強の関係性が生まれる、後に此れがジュラ・テンペスト連邦国に伝わる三馬鹿誕生の瞬間である

 

「ネコリア様の御言葉は何時も的確ですわね」

 

「わふっ!?あの魔王さま、アタイと同じ喋り方してるぞっ!?」

 

「ま、魔王………ん?なんだ、あの見覚えのある………妹ォォォ!?どうしたァァ!妹ォォォ!!!」

 

安定のスイヒョウ、自分と似た口調のミリムに驚くエンカ、そして魔王という存在に興味を抱いたライメイであったが、視界に入った見覚えのある何かに気付き、半狂乱気味に叫びながらその何かに駆け寄る

 

「し、シオンです………」

 

「ミリム様に挑んで負けてましたよ」

 

倒れるシオンに呼び掛けるライメイの側に現れたソウカが事の経緯を簡潔に説明すると、彼女の方を振り向く

 

「なにっ!本当かっ!?それは!ソウカ!」

 

「はい、すごい見事に」

 

「妹ォォォ!!!」

 

「し、シオンです……」

 

かくして、ジュラ・テンペスト連邦国に新たなる災厄が訪れた。その名は魔王ミリム、果たして彼女がもたらすのは破滅か?それとも………




魔王襲来!その噂は直ぐに連邦国中に広まり、誰もがおそれ………てない?ミリムと仲良くなったリムルとネコリア、三人はまさかの………!?

ネコリアの真骨頂その23 実はうっかりさん

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第二十九話 魔王に食べ物あげたら、友達になっちゃった

今回の見所!ネコちゃんは何時だって可愛い!以上!


「は…………初めまして。この町の盟主をやってるリムルです。ちなみに悪いスライムじゃないよ!」

 

「あたしはネコリア。このエッチなゼラチンの下で参謀をしてるわ」

 

「そう、俺はエッチなゼラ…………って!エッチでも!ゼラチンでもないやいっ!!!スライムだっ!」

 

「知ってるぞ!夫婦漫才と言うヤツだな!フレイとカリオンがよくやってるヤツなのだ!」

 

「誰だよっ!そいつらっ!」

 

茶番、三文芝居等と日の目当たらない扱いを受けてきた挨拶が遂に周知された事にリムルの突っ込みは何時にも増して冴え渡っていた

 

「でもどっから来たかは知らにゃいけど、よくもまぁこの町を見つけられたわね。割と辺境よ?此処って」

 

「ふふん。その程度、私にとっては、簡単な事なのだ!この目、《竜眼(ミリムアイ)》は、相手の隠している魔素の量まで、測定出来るのだ」

 

「何ですって?あたしの《千里眼》の方がすごいわよ。知ってる魔素を辿れば、あの子の私生活も丸裸なのよ。例えば、其処に居るソウカちゃん」

 

「………えっ?わたしですか?」

 

マウントを取られた様で気に食わなかったのか、ネコリアが自慢気に自分の瞳を指差した後、ソウカを指差す

 

「実は普段はそうでもないくせにお兄ちゃんのガビルに褒められると嬉しそうにしたりすんのよ」

 

「………なっ!?何を言ってるんですかっ!?誰があんなのに褒められて嬉しくするものですかっ!!!」

 

「おお、ソウカではないかっ!何かあったで----ごふっ!?」

 

突然の暴露に反論を返していると騒ぎを聞き付けたガビルが姿を見せ、即座に口封じの為にソウカが遥か彼方に吹っ飛ばす

 

「私の前では、弱者のふりなど出来ぬと思うが良い。ところで、お前達のその姿が本性なのか?ゲルミュッドの奴を圧倒した、あの銀髪の人型や黒髪の人型はなんなのだ?もしや変化の類か?」

 

「なるほどな……手の内は知ってるって訳か」

 

「だったら、見せた方が手っ取り早いわね」

 

問いに応える代わりに《擬態》と《変幻》を使用し、人型に変化し、ミリムの前に降り立つ

 

「おお!やはり、お前たちだったのだな!特にそっちの黒髪の方は大きなネコにもなっていたな!」

 

「まあ、あの姿になるには色々と条件があるから暫くは無理よ。ゲルミュッドの腕と魔王ゲルドの力を食べて進化してはいるけど」

 

「…………えっ!?ネコちゃん、進化してたのっ!?」

 

『告。個体名ネコリア=テンペストは猫又の上位種妖魔(ようま)猫魈(ねこしょう)への進化を果たしています』

 

「にゃーっはっはっはっ!可愛さに益々の磨きが加わったわねっ!」

 

さらりと、放たれた衝撃発言に驚くリムルを他所に当の本人は配下たちに囲まれ、何時もの様に満足そうに高笑いをしている

 

「ネコリア様こそ、可愛さの原初!正に可愛いとはネコリア様の為に存在する言葉ですわっ!」

 

「わふっ!ネコリア様は何時も可愛いぞー」

 

「進化しても自分自身を見失わない……正に武人の鏡です!ネコリア様!」

 

「ネコリア様の可愛さに一点の曇りもありませんっ!」

 

「にゃーはっはっはっ!」

 

スイヒョウ、エンカ、ライメイに加えソウカまでもが自分を褒め称える為に何時も以上に上機嫌のネコリア、その様子を見ていたリムルが彼女を指差す

 

「良いかね?この子はすぐに調子に乗るから、褒めすぎてはいけないよ」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「それで?魔王殿が俺たちに何の用だ?まさかゲルミュッドの復讐にでも来たか」

 

「復讐………どうして、私がそんなことをしなければならないのだ?言っただろう、私はお前たちを見定めに来たのだ!」

 

「そう………だったら、あたしと踊らない?あのヴェルドラの血縁者であるアナタに興味が湧いたわ」

 

「ヴェルドラ………おお!叔父上の知り合いか!」

 

「えっ……ヴェルドラの血縁者!?」

 

魔性の笑みを浮かべ、本日二度目の衝撃発言を繰り出すネコリアとヴェルドラの名を聞き沸き立つミリムにリムルが両眼を見開く

 

「仙法・爆炎狼牙(ばくえんろうが)!!!」

 

「おおっ!さっきの鬼人の炎よりも高火力だな!」

 

「及ばずながら、手助けさせていただきますっ!仙法・雷将波斬(らいしょうはざん)!!!」

 

「雷の斬撃!魔法の類か?」

 

「足元が御留守ですわよ?魔王様。仙法・絶対凍土(ぜったいとうど)!!!」

 

「おおっ!氷か!」

 

「止めよ……仙法・花鳥風月(かちょうふうげつ)!!!」

 

エンカの炎を纏った牙による先制攻撃、ライメイの瞬間的な雷を纏った斬撃、スイヒョウの足止め様の氷を纏った地面、最後にネコリアの花と風を混合させた闇の幻惑がミリムに命中する

 

「アハハハハ………!わぁ!凄いのだ!これほどの攻撃、私以外の魔王なら、無傷では受けられなかったかもしれぬぞ!………だが、私には通用しないのだーー!!」

 

「仙法・岩土盾(がんどいん)!!!」

 

無傷のミリムが動きを見せた瞬間、ネコリアは付近の岩に魔素を送り込み、彼女の力に耐え得る巨大な岩の盾を生成する。付近は既にクレーターを形成する程に原型を留めておらず、ミリムの力が魔王ゲルドの遥かに上をいく事が伺える。故にネコリアはこの世界で生まれて初めて、冷や汗を掻いた

 

「ネコちゃん。まだ時間は稼げるか?」

 

「えっ……まあ、稼げないこともないけど…何するつもり?リムちゃん」

 

「ふっふっふっ、見てからのお楽しみだ」

 

(あっ……悪いこと考えてる)

 

作戦内容を語らないリムルの表情から何かを読み取ったネコリアは両手を広げ、ぱんっ、と音が鳴り響く様に叩き合わせる

 

「仙法・樹縛林(じゅばくりん)!!!」

 

「おっ、今度は拘束か?しかし私には効かないのだ!」

 

「今だっ!くらえェェェ!!!」

 

ミリムが拘束から逃れようとした瞬間、リムルの右手に集まった金色の液体が口の中に突っ込まれる。そう、その液体の名は蜂蜜。糖分の中でも非常に濃厚な味わいを誇る魔性の液体である

 

「な、なんなのだっ!この美味しい食べ物は!?こんな美味しいものは、今までに食べたことないのだ!!」

 

「そうかそうか、なら取り引きしよう」

 

「取り引き……?」

 

「今後、お前はこの町に手を出さないと誓うならこの蜂蜜をお前にやろう。悪い話ではないだろう?」

 

「欲しい………!うう………だがしかし、負けを認めるなど………!」

 

蜂蜜に揺れるミリムの姿に、ネコリアの頭脳が瞬間的に判断を下し、彼女も何かを思い付いた様にリムルと同じ表情を浮かべる

 

「美味しいお魚が取れる場所とか教えてあげても良いんだけどにゃ〜」

 

「魚………ごくん。其処の魚もウマーなのか?」

 

「そうねぇ…………すっごく美味しいわ。生で食べるのは当たり前だけど、焼くと旨味成分が格段に上がって、更に美味しくなるわ」

 

「なんだと………!!」

 

その発言にミリムの中で衝撃が走る。まるで雷に打たれた様に、今までに味わったことのない未知の食事に息を呑む。蜂蜜を手にしたミリムは先程の姿が嘘の様に大人しくなり、舌鼓を打ち始める

 

「う〜ん!美味しい!美味しいのだ〜!こっちの焼き魚もウマーなのだ!」

 

「にゃっふっふっふ。気に入ってもらえて、良かったわ」

 

「そう言えば、二人は魔王にならないのか?」

 

「「何故?」」

 

突然、蜂蜜と魚を頬張っていたミリムが当たり前の様に本日三度目の爆弾発言を投下し、リムルも、ネコリアも首を傾げる

 

「えっ!?だって、魔王だぞ!?かっこいいだろ?憧れたりとかするだろ?」

 

「いや全然」

 

「あたしも魔王はちょっと……響きが可愛くない…。それに魔王にならなくても楽しい事はたくさんあるわよ。昔偉い人が言ってたわ、暮らしの中に修行ありって」

 

「ネコちゃん。それ多分だけど特撮ヒーローの登場人物だから偉い人にはカウントされないぞ」

 

「にゃんですって!?」

 

「ぐぬぬ……さては、お前達、魔王になるより面白いことしているなっ!?」

 

「面白いこと…………ゴブタ弄り!」

 

「お散歩っ!」

 

「ネコリア様への愛のポエム集作り!」

 

「畑の開墾!」

 

「兄上殴り………?」

 

「アネキたちは何時もと変わらねぇにしても、ソウカまで其方側に行くんじゃねぇよ。ウチだけじゃ突っ込み切れねぇよ」

 

ミリムの言う楽しいことから的外れな事を連発するネコリア達に偶々、通り掛かったカイリンの突っ込みが飛ぶ

 

「教えろ!そして、私を仲間に入れるのだ!村に連れて行け〜!」

 

「分かった、分かった。改めて俺はリムル=テンペストだ。よろしくな、ミリム」

 

「お、おう……いきなり呼び捨てか。本当は仲間の魔王達にしか許してないが叔父上の友達だからな………よしっ!特別に許してやるぞっ!リムル!勿論、ネコにもな!」

 

「ありがと♪じゃあ、町に案内するわね。ミリムちゃん」

 

「わぁ〜い!なのだー!」

 

かくして、災厄の根源である魔王と友好関係になったリムルとネコリアの周りは更に騒がしさを増すのであった




ミリムと友達になったリムルとネコリア、しかし彼女の加入で町は更に騒がしさを増し……

ネコリアの真骨頂その24 実はお魚大好き

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第三十話 魔王を案内してたら、部下が失礼な態度を取っちゃった

今回の見所!ネコちゃんは人気者!以上!


「ネコ!あの店はなんだ!?美味しそうなものが並んでるぞっ!ぬおっ!あっちからも良い匂いがするぞっ!」

 

「はいはい、落ち着いて。全く………ヴェルちゃん並の好奇心ね……退屈しないから構わないけど」

 

初めて見る物に身形に相応しい無邪気な反応を見せるミリムの姿に、懐かしい親友の面影が重なり、僅かに表情を綻ぶ

 

「兄者だ」

 

「道で寝てる……」

 

「…………ぬおっ!フウ、クウ!吾輩を突くのをやめんかっ!!!」

 

「あら、ガビル。それにフウちゃんにクウちゃん」

 

「ん?龍人族(ドラゴニュート)か!珍しい種族がいるな!此奴等もネコの配下か?」

 

「そうね。龍人族(ドラゴニュート)は全員があたしの配下よ。ガビルにはヒポクテ草の栽培を、フウとクウはソウカの下で警備隊の仕事を任せてるわ。ほら、挨拶しなさい」

 

「フウ。ネコ様の配下やってる」

 

「クウ……ネコちゃん様の配下」

 

「フウにクウか!私はミリム・ナーヴァだ!」

 

「「ミリム………本物?」」

 

龍人族(ドラゴニュート)よりも高位の存在にある竜魔人(ドラゴノイド)であるミリムに興味津々な双子は、尻尾をふりふりと揺らし、両眼を輝かせる。だが、彼だけは違った

 

「妹たちよ。このちまっこい小娘(・・・・・・・)を知っておるのか?」

 

その発言に、ネコリアは勿論ながら、フウとクウまでもが両眼を見開いた。流石にこの発言は無知では済まされない、何故なら魔王を前に放つにしては無礼極まりない失言。当の本人は其れが失言である事に気付いておらず、彼の目の前には怒りの形相と怒気を含んだ妖気(オーラ)を放つミリムが佇んでいる事も気にすら留めていない

 

「今のは、私に言ったのか?ガビルとやら」

 

「なんだ、馴れ馴れしい。貴様以外に誰が---ふごおっ!?」

 

全てを言い終える前に、ガビルはミリムの拳を叩き込まれ、数軒の家屋を破壊しながら、最終的には地面に減り込む

 

「兄者。魔王様に失礼」

 

「兄者がごめんなさい」

 

減り込んだガビルを引き剥がしたフウとクウがミリムに対し、謝罪を述べると同時に綺麗な角度の御辞儀をする

 

「ミリムちゃん……暴れないって約束はどうしたのかしら?確かにガビルに落ち度があったかもしれないけど、無闇矢鱈に誰かを殴るのは絶対に駄目よ。分かった?」

 

「う、うぬ………仕方ないな、ネコが其処まで言うなら今後は気を付けるのだ」

 

「分かれば良いの。今後は何かあれば、ゴブタに八つ当たりしなさい。ガビルよりは頑丈だから」

 

「人の居ないとこで勝手に生け贄にするのはやめてくれないっすか!?」

 

「居たの?」

 

「存在すら認識されてなかったんっすか!?」

 

ミリムを言い聞かせながらもゴブタという生け贄を捧げようとするネコリア。其処へ偶然にも通りかかった本人からの突っ込みが飛ぶ

 

「ネコ!他にウマーな食べ物はないのか?」

 

「そうねぇ………あー、お魚を油で揚げるフィッシュフライとかはどう?」

 

「ふぃっしゅ………ふらい?よく分からないが美味しそうなのだ!何処にあるのだ!?」

 

「ん〜まだないわね」

 

「なにぃっ!?ないと言われたら余計に食べたくなるではないかっ!!!」

 

「え〜………スイちゃ〜〜ん」

 

「はい、此処に居りますわ」

 

詰め寄るミリムに困惑したネコリアが呼び掛けると、近くの露店で価格調査を行なっていたスイヒョウが呼び掛けに応える

 

「油とかって手に入る?」

 

「油ですか………取り引き次第で手に入らない事もありませんが……」

 

「ふふんっ!油であれば私に任せていただきたいっ!ネコリア様!」

 

「あら、メイちゃん」

 

頭を悩ませるスイヒョウの背後から、話を嗅ぎつけたライメイが姿を見せ、誇らし気な表情を浮かべながら、胸を張る

 

「油が御所望と聞きました。であれば!このライメイにお任せを!私の畑で栽培している植物から抽出した油をお使いください!」

 

「流石はメイちゃんね。褒めてあげる」

 

「あっ……そんな……だ、ダメぇ〜」

 

(お、おう…………)

 

「エンちゃん。お散歩の時間よ」

 

「わふっ!お散歩っ!」

 

「あぎゃぁぁぁぁ!!!」

 

褒美を受け、悶えるライメイの色気溢れる声にゴブタの邪な考えを読み取ったネコリアに呼ばれたエンカが頭に齧り付き、お散歩という名の終わりのない旅に旅立つ

 

「さっ、フィッシュフライを作るわよ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様等ァァ!私の畑を土足で荒らすとは何事だっ!成敗してくれるわっ!」

 

「姉上。どうしたんですか?朝早くに」

 

ミリム来訪の翌日。時刻は早朝、畑を耕していたライメイの怒号が響き渡る

秘書の仕事に向かう為に自宅を出ようとしたシオンが姉の異変に気付き、声を掛ける

 

「妹か。今し方、ネコリア様を馬鹿にした挙げ句の果てに私の畑を荒らした不埒者が居たので、説教をしていた」

 

「シオンです。説教ですか、それは構いませんが………埋めるのはやり過ぎではありませんか?」

 

「そうは言うがな、此奴はリムル様も馬鹿にしていたぞ」

 

「……………前言撤回!成敗してくれるわっ!!!」

 

先程までの温和な秘書は何処に行った、と言いたくなる様な掌返しの早さにライメイも引き気味の表情を見せるが不敬を働いた者への説教を止めようとはしない

 

「んにゃぁ〜………朝からうるさいんだけど……寝れないじゃない」

 

「「ネコリア様っ!?」」

 

鬼姉妹の自宅の屋根で寝息を立てていたネコリアが目を覚まし、不満を口にする。まさかの存在の登場にライメイとシオンが驚愕する中、当の本人は、ひらりと軽い身のこなしで屋根から飛び降り、瞬時に《変幻》の力で人型に姿を変える

 

「それで?獣王国ユーザラニアの三獣士が我が国に如何なる御用件かしら?盟主に代わり、参謀であるあたしが聞いてあげるわ」

 

全てを見透かした様に品定めの視線を向けていたネコリアは、埋まっている中でも一番の妖気(オーラ)を持つ男性の獣人に声を掛けた

 

「参謀………はっ、猫風情がこの黒豹牙のフォビオと対等のつもりか?笑わせる。良いか?この地は今日より魔王カリオン様の支配領域となる!」

 

「……………………さっ、二人とも。仕事に行くわよ」

 

余りにも馬鹿馬鹿しい内容の発言に男性基フォビオに対する興味が失せたネコリアは、ライメイとシオンに呼び掛けその場を後にしようとするが、無視された事に怒りを覚えたフォビオが背後から拳を振り抜く

 

「……………なっ!背後に目でもあるのかっ!?」

 

完全なる不意打ちであるにも関わらず、フォビオの拳を受け止めたネコリア。剥き出しになった妖気(オーラ)は明らかに常識の範疇を超え、並の魔物の魔素量を遥かに凌駕していた

 

「特別にこの町を見て回る許可を、我が盟主に取り付けてやる………だが、もしも今の様な不敬を一度でも働いてみろ、その時は容赦はせんぞ」

 

かくして、魔王の国からの使者を受け入れたジュラ=テンペスト連邦国。此処から物語は更に激動の展開を迎えていくのだが、其れは少しだけ未来の話である




魔王の国からの使者に町の散策を許したネコリア、その件はリムルの耳にも入り………

ネコリアの真骨頂その24 実は失礼な部下がいる

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第三十一話 使者がやらかしたので、取り引きを持ち掛けてみた

今回の見所!ネコちゃんは誰よりも魔性!以上!。関係ないけど、BLEACHの小説を書き始めた、勿論!ギャグ路線!まあ可愛さはネコちゃんの方が上位だけどね!


「ネコちゃん。シオンからの報告だが、事実か?他の国の魔王の使者が視察に来てるってのは」

 

「事実よ。今朝、メイちゃんに埋められてたわ」

 

「そうか、埋めらてれたのかー。…………え?埋められてたっ!?」

 

質問の答えに爆弾発言を軽く投下するネコリア、最初は納得しかけたリムルであったがまさかの衝撃的な告白に二度見する

 

「あたしじゃないわよ。元々はライメイとシオンが始めたのよ………一応、釘は刺しておいたから大丈夫だと思うわよ?うん、大丈夫よ!多分!」

 

「毎回のことだけど、その根拠のない自信はどっから来るんだよっ!?」

 

「知らにゃいの?女の武器は自信と涙と秘密、あとほんのちょっぴりトキメキなのよ」

 

「意味ワカンナイんだけどっ!?」

 

自信満々な表情で女の武器を語る彼女にリムルの突っ込みが冴え渡る。刹那、町の中央つまりは都市リムルの方から騒がしい声が聞こえて来る

 

「………………なぁ、ネコちゃん。気のせいかな?町の方から煙が上がってるんだけど」

 

「あらホント…………キャンプファイヤーかしら」

 

「あー、キャンプファイヤーかぁ…………って!そんな訳あるかぁぁぁぁ!!!明らかにボヤ騒ぎだろうがっ!」

 

「火事の一つくらいで大袈裟ね。あたしが十代の頃に付き合ってた男は家の二、三件は燃やしてたわよ?記念日の度に」

 

「どんなプレゼントっ!?」

 

本日二度目の爆弾発言にリムルは突っ込みながらも、町の方に向かう。数分もすると野次馬が群がる場所に辿り着き、溢れんばかりの妖気(オーラ)を放つミリムの姿を見つける

 

「お前…………私のマブダチをバカにしたそうだな?それに聞いたぞ、町での勝手な振る舞い………ネコが許しても、私は許さんぞ」

 

「わぁ………ミリムかよ…」

 

「まーた派手にやってくれたわねぇ。あのファビオとかいうのも………

にゃ?フォビオだっけ?」

 

「むっ………リムル!それにネコ!どうだ?この服は!可愛いだろう?愛らしいだろう?わっーはっはっはっはっ!」

 

一発で完全敗北したフォビオを蔑んでいたかと思えば、リムルとネコリアの姿を見付けたミリムは二人の方に駆け寄り、新しい服を満足気に披露する

 

「可愛いわね〜、あたしの次くらいに!にゃっーはっはっはっ!!!」

 

「なにおうっ!?私の可愛さは十大魔王随一なのだぞっ!」

 

「三百年の間、可愛さだけを追求したあたしには敵わないわねっ!なんたって、可愛いはあたしの為だけに存在する言葉なのよっ!」

 

「ぐぬぬ………ならば!可愛さ三本勝負なのだ!」

 

「受けて立つわ!何方が可愛いかをはっきりとさせましょ!」

 

「させんでいいっ!!!」

 

フォビオの事など既に眼中に無く、何方が可愛いをはっきりとさせる為に一触即発する二人の間に入ったリムルが突っ込みを放つ

 

「それでだ、ミリム。お前は何をやってるんだ?騒ぎは起こすなって念を押したよなぁ?何度も」

 

「……………てへっ♪」

 

「可愛いくしてもアウトだよっ!」

 

「そうよっ!可愛いのはあたしよっ!」

 

「張り合わんでいいっ!!!」

 

あざとさ全開の笑いで誤魔化すミリムに説教をしていると、可愛いという単語に反応したネコリアが割り込む。其れにリムルは間髪入れずに突っ込みを放ち、ため息を吐く

 

「はぁ〜…………取り敢えずだ、場所を移そう。此奴からは話を聞かないとだからな」

 

気絶しているフォビオに完全回復薬(フルポーション)を掛け、回復させた後に場所を執務室に移し、会議の場を設ける

 

「それでだ、フォビオだったか?ネコリアの許可で視察は許したが私闘に関しての許可は出していない筈だ。聞いた話ではリグルドとスイヒョウに手をあげようとしたらしいな」

 

「私の腰回りを舐め回す様に見ていましたわ、特に臀部を」

 

「わふ?スイヒョウのおしりを見ても何も面白くないぞ?おいしくないし」

 

「…………お黙りなさいな、駄犬」

 

「わふっ!?駄犬じゃないぞっ!アタイはネコリア様の護衛だぞっ!この前なんかよく分からないけど、忠犬って褒められたんだいっ!」

 

「忠犬がなんだ、私は剣!言わばネコリア様の腹心にして信頼を一番に得ていると自負しているっ!」

 

「ライメイ?アナタとは話をしておりませんわ」

 

「ふんっ……醜いな、嫉妬か?」

 

「畑馬鹿はお黙りなさいな」

 

「ああんっ?畑馬鹿だと?妹よ、私が誰かを教えてやれ」

 

「何を今更、姉上が畑馬鹿である事は周知の事実でしょう?あと私はシオンです」

 

「あ、あの……落ち着いてください」

 

「ほっとけよ、ソウカ」

 

会議など関係無しに言い合いを繰り広げる配下たちを無視し、会議は続行される。余談だがこの騒ぎに参加していないフウとクウはネコリアの膝の上に座り、会議を傍聴している

 

「正式な手順を踏まえた上での使者か?お前たちは」

 

「無論だ、カリオン様はこの国との取り引きを望んでおいでだ。だがまぁ?この程度の魔物ましてやスライムが治める国との国交は我が国の品格が疑われる。どうだ?カリオン様の支配に降る気はあるか?あるなら、俺が直々に………っ!?」

 

自信満々に力による支配へと会話を誘導し、話の主導権を握っていたフォビオだったが其れは否である。彼は殺気立つ雰囲気に息を呑み、恐る恐る顔を上げる

 

「あたしの忠告を忘れたの?不敬を一度でも働けば、容赦はしない………そう言った筈だ。それとも貴様は、其れすらも理解出来ん程の愚鈍であったか?黒豹牙よ。今一度、出直し、貴国の王に伝えよ。正式な手順を踏み、日時を改め、話の通じる者を寄越せと………分かったな?」

 

「…………っ!後悔する事になるぞっ!!」

 

威圧感全開のネコリアからの二度目の忠告に捨て台詞を吐き捨て、会議室から立ち去っていく

 

「ネコちゃん………余計に焚き付けて、どうするんだよ」

 

「なるようになるわよ」

 

「すんげぇ暴論!!!」

 

「そんな事よりもミリムちゃん。聞いてもいい?」

 

「うん?どうしたのだ?」

 

「あれっ!?俺は無視ですかっ!?」

 

自分に突っ込むリムルを無視し、ネコリアはジュースを飲むミリムに話し掛ける

 

「魔王カリオンについての情報を教えてくれる?」

 

「駄目だ。魔王は互いに秘密を守り合うという約束をしている、いくらネコからの頼みでも教えてやる事は…………ネコ、その美味しそうな物はなんなのだ?」

 

ネコリアからの頼みを断ろうとしたミリムは、眼前に差し出された香ばしい匂いに息を呑む

 

「試しに作ってみた天ぷらよ。食べたい?」

 

「食べたいのだっ!」

 

「えぇ〜、どうしようかにゃ〜。新作だから食べたいって人はたーくさんいるのよねぇ〜。でも?ミリムちゃんが他の魔王の情報をくれたら、一番に食べさせてあげてもいいかなぁ〜………とか言ってみたりして、独り言だから、気にしなくても良いのよ〜」

 

(やだっ!この子、策士だわっ!俺の相棒ちゃんマジパネェ!!!)

 

未知の料理という甘い誘惑を武器に、取り引きを持ち掛けるネコリア。その姿にリムルは心の中で感心していた

 

「リンちゃん。確か武器作りを始めたのよね?」

 

「お、おう。そうだけど、どうかしたのか?」

 

「ミリムちゃん♪武器とか欲しい?」

 

「武器…………欲しいのだ!」

 

「じゃあ、知ってること教えてくれる?あたしとミリムちゃんって……マブダチでしょ?」

 

「ま、マブダチ………!そうだな!私とネコ、それにリムルはマブダチだ!教えてやるぞっ!何でも聞いてくれ!」

 

「俺もマブダチ認定されてるっ!?」

 

かくして、ミリムから魔王達の情報を聞き出す事になったリムルとネコリア。しかし新たな災厄が迫りつつある事を今はまだ誰も知らない




ミリムから聞き出した魔王の情報、それは何とある事件との繋がりが……!

ネコリアの真骨頂その25 実は取り引き上手

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第三十二話 嘘泣きしたら、英雄を見つけちゃった

新年明けましておめでとうございます、今年の一発目はネコちゃん!可愛さNo.1のネコちゃんですよ!今年もギャグ全開!満載!ネコちゃん達の馬鹿騒ぎを頑張って投稿していきます!!

では、新年の挨拶をこの人にしてもらいましょう!

ネコリア「新年明けましておめでとう♪今年もよろしくね〜。昨年はあたしの可愛さ溢れる異世界生活を見てもらったけど、今年もより一層にがんばっちゃうから、応援よろしく♪」


「んにゃぁ〜…………またなのぉ?」

 

何時もと変わらぬ時刻、目を覚ましたネコリアの耳に届くのは聞き慣れた声と聞き慣れない幾つかの声。気配から察するに魔物とは異なった種族、つまりは人間である

 

「ネコリア様。ブルムンド王国並びにファルムス王国からの御客様方が御到着なさいました、ネコリア様並びにリムル様に御目通り願いたいとの事ですわ」

 

「ブルムンド………分かったわ、直ぐに準備を済ませると伝えて」

 

「かしこまりました」

 

扉越しにスイヒョウとの会話を終え、猫の姿の状態で部屋の一角に設けたある場所に移動し、《変幻》で人型になると一糸纏わぬ姿で軽く両手を打ち鳴らす

 

「仙法・雨天振(うてんしん)………にゃあ〜ん、やっぱり身だしなみを整えるには朝風呂よねぇ〜………石鹸とか欲しいわね………作ろうかしら……いや、その前に水回りもきちんと………」

 

簡易的なシャワーを浴び、身だしなみを整えながらもこの世界には存在しない石鹸の製造に着手しようと考えつつ、衣服に袖を通した後、会議場所へと向かう

 

「待たせたわね」

 

「ネコちゃん待ちだよ。スイヒョウに呼びに行かせてから、一時間は経ってるぞ……何してたんだ」

 

「女の子の身支度には時間が掛かるのよ」

 

「女の子…………?」

 

ネコリアの言葉に違和感を抱いたリムルが疑問符を浮かべ、体の一部でクエスチョンマークを作る

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「……失礼。発言よろしいか?」

 

「ああ、すまん。許可する」

 

「私はフューズ。ブルムンド王国の自由組合支部長(ギルドマスター)をしております。今日はジュラ・テンペスト連邦国の盟主であるリムル=テンペスト殿並びに参謀であるネコリア=テンペスト殿、御二方に御会いする為に訪問させていただきました」

 

「俺とネコちゃんに会いに?」

 

「可愛いって罪ね………異国にまで、名前が知られてる。正にあたしが可愛いって事ね!」

 

会いに来た事を他国に自分の可愛さが知れ渡ったと解釈するネコリアの言葉に、空間が静寂と化す

 

「…………この馬鹿猫は無視してくれ」

 

「馬鹿猫っ!?」

 

「はぁ………話を戻しますが、今から十月ほど前に森の調査を依頼した此奴等からの報告を受けました。先ずは、ギルドの英雄を丁重に弔ってくれた事に感謝を……御礼が遅くなり申し訳ない」

 

ギルドの英雄、その言葉が差す人物をリムルは知っていた。彼とネコリアが看取り、国を創る事を宣言した同郷の女性、シズエ・イザワの事を示しているのだと、この話題はネコリアが話題に出さない禁句の一つでリムルもあの日以降、触れていなかった。それでもフューズは彼女の上司として、礼を伝えなければと思い、この場で正式に感謝の意を示した

 

「御丁寧にどうも。この話題はなるべく、ネコちゃん………ネコリアにはしたくなくてね。俺も報告を怠っていた。本来は、生きながらえたかもしれない命を、俺は奪った。それでもネコリアはその命を少しでも長く繋げる為に自分のスキルで延命させようとしたんだが…………」

 

「駄目だったわ」

 

「聞いてたのか……ネコちゃん」

 

用意された茶菓子に舌鼓を打つエレン達と談笑していたネコリアが会話に参加した事に気付き、彼女の方に視線を向けると、寂し気な瞳をしていた

 

「でもね、シズちゃんは幸せだったと思う。それだけは覚えておいて」

 

「ええ、記憶しておきます」

 

「それで?本当の用件を教えてもらえるか?わざわざ、其れを伝える為だけに自由組合支部長(ギルドマスター)自らが出向くとは思えない。本題を聞こう」

 

リムルの問い掛けに、フューズの目付きが鋭くなり、一気に空気が変化する。和気藹々としていた場は真剣な会議の場となり、ネコリアも静かに耳を傾ける

 

「数ヶ月前の事です。ブルムンド王国の自由組合(ギルド)の中で、豚頭帝(オークロード)出現の噂が流れました。そして調査の結果、その噂が事実であると判明したのです。対策に追われ、浮き足立っていた時に執務室に其処の龍人(ドラゴニュート)の姉妹が現れました」

 

龍人(ドラゴニュート)の姉妹とはフウとクウである。彼女達はソウカの下で、隠密の任に就くと同時に戦闘部隊長の立場を与えられ、二足の草鞋を履く頼もしい存在となっている

 

「にゃるほど、ドワルゴンのガゼル王が来た時と同じ目的なのね」

 

「ドワーフ王…………が来たのですか?」

 

「ええ、あたし達を見極めるとか言ってね。その後は仲良くなって、盟約を結んだのよ」

 

「はい………?盟約………!?」

 

聞き間違いだろうか?と言わんばかりの表情で、フューズはネコリアの言葉に疑問を抱く。刹那、扉を叩く音が響き、一人の男性が入ってくる

 

「失礼します。ネコリア様、例の回復薬の売り方についての御相談を…………あっ、来客中でしたか、失敬」

 

「ごめんね、ベスターちゃん。後で聞かせてもらえる?」

 

「いえいえ、後ほど」

 

「ベスター…………………ん?ベスター?ドワルゴンの大臣のベスターか!?」

 

「そうだよ、元大臣だけどな。今はカイジンとカイリンに匹敵するウチの優秀な研究者兼技術者だ」

 

(あの伝説鍛治師親子まで!?)

 

次々と飛び出す名前にフューズの脳内処理が追い付かず、遂に彼は固まった。回復までに暫くの時間が必要と判断し、次にもう一組の来客に視線を映す

 

「で?其方の子たちは誰よ。エレンちゃん達の知り合い?」

 

「………………ううん、知らない人だよ。ネコ姐さん」

 

「君らもブルムンドの自由組合(ギルド)に所属している冒険者か?」

 

「あ、いえ私達は………」

 

「………その前に聞かせてくれ。なんでスライムが喋ってんだよ」

 

誰もが気にも留めず、触れようとしなかった核心をリーダー格であろう男が突く。その発言に空間が凍り付いた

 

「だっておかしいだろ!?スライムだぞっ!後ろの強そうな奴等を差し置いて、こんなぷるぷるした奴が偉そうにしてんだよ」

 

「確かに………なんで、こんなエッチなスライムが偉そうにしてんの?今更だけど」

 

「ネコちゃんが拒否ったからだろ!」

 

「しくしく……酷いわ……あたしのせいにするなんて……ちらっ……しくしく…」

 

「嘘泣きやめいっ!!!」

 

嘘泣きを始めるネコリアに突っ込みを放ち、会話の軌道修正を図っていると男の言い分が気に入らなかったシオンとライメイが立ち上がる

 

「だいたい失礼ですよ、リムル様に向かって」

 

「全くだな。礼儀を知らんのか」

 

「うるせぇ!オッパイどもは黙ってろ!おぐっ!?」

 

瞬間的に放った言葉にシオンは愛刀の剛力丸を、ライメイも雷切を振り下ろす。無論、騒ぎは起こさない配慮として鞘に納刀した状態で振り下ろしている

 

「ごめんね、この二人は忍耐力に欠陥があるのよ」

 

「欠陥などありません!ネコリア様!妹と同じにしないでください!」

 

「全くです!姉上と同じにされるなんて心外です!あとシオンです」

 

悪癖を咎められた事を反論する鬼人姉妹を諭し、比較的に話が通じそうな眼鏡の青年に視線を向ける

 

「私たちはファルムス王国から来た調査団で、私はお目付役のロンメル、此方は団長のヨウム。此方に御邪魔したのは成り行きですが、調査対象の豚頭帝(オークロード)が既に居ないと知れたのはラッキーでした」

 

ロンメルと名乗った青年の話では、自分たちは強欲な領主に金で雇われた寄せ集め集団で正規に組まれた調査団ではない。更に言えば目付け役を命じられたロンメルは対象を強制的に従わせる魔法で彼等の裏切りを防止していた、事もあっさりと漏らす

 

「にゃるほど………じゃあ取り引きをしない?」

 

「取り引き……どういう意味だ?ネコ耳のネーチャン」

 

話を聞いていたネコリアの企み笑顔に、ヨウムは問い掛けなおす。すると彼女は指を、ぱちんと鳴らし、不敵に笑う

 

「ヨウムちゃん。アンタ、英雄(・・)になりなさい」

 

「……………………はい?」




英雄にならないか?と提案されたヨウム、彼が出す答えは……?

ネコリアの真骨頂その25 実は嘘泣きが得意

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第三十三話 英雄に成り得る器が、町に滞在することになっちゃった

今回の見所!ネコちゃんは昼夜問わずに可愛い!以上!


英雄(・・)…………いやいや待て待て、何を言ってんだよ、アンタは………」

 

ネコリアの発言に、ヨウムは驚きながらも頭を掻き乱し、問い掛ける。すると彼女は軽く欠伸をした後、魔性の笑みを浮かべる

 

「何をって、そのままの意味よ。豚頭帝(オークロード)を倒したのが魔物じゃ、脅威が去ったって人間は思わないでしょう?だ・か・ら、ヨウムちゃんたちにはその代役をお願いしたいの。引き受けてもらえる?」

 

「はぁ………!?」

 

「…………その計画、ブルムンド王国も協力出来るかもしれません。知り合いの大臣に掛け合えば、周辺諸国への噂を流す事は出来るかと……その程度で申し訳ないが構いませんか?」

 

「助かるわ、今は正に猫の手も借りたい状況……噂一つでも有益な武器になるわ」

 

素っ頓狂な声を挙げるヨウムとは裏腹に、フューズが状況を冷静に見定め、提案を持ち掛けるとネコリアも其れを快諾し、使える手札が増える事に満足気に笑う

 

「何を考えてんだっ!?アンタは!魔物だぞっ!その提案を呑むなんて正気かよっ!!!」

 

「ヨウムだったか?君の言い分にも同意しない訳ではないし、困惑に関しても理解出来ない訳でもない。だが、彼等との友誼は人心の混乱を避ける以上の意味がある」

 

「どういうことだよ」

 

魔物、その提案を呑むリスクを恐れるヨウムはフューズの意見に難色を示し、反論するが彼には思惑があるようで今回の件の重要性を語り出す

 

「我々が知り得た情報を教えておこう。この国の国民は総勢で一万を超える、その種族の中に名無しは存在しない」

 

「は…………?」

 

名持ちの魔物(ネームドモンスター)なんだよ、全ての国民が。彼等が本気を出せば、この場にいる我々は勿論、国の一つを滅ぼす事も造作もないだろう」

 

「…………」

 

本来、魔物は名前を持たない。しかし名持ち(ネームド)となれば話は大きく変わって来る。ヨウムは其れ以上の反論をすることをせず、会議は続く

 

「先程の計画、私としては前向きに検討したい。勿論、御二方が人間の敵ではない事が大前提ですがね」

 

計画に乗り気なフューズはリムル、ネコリアの両名が敵対する存在でない事を明白にする為、威圧気味に質問を投げ掛ける

 

「其れは保証する。俺たちは人間と敵対するつもりはない」

 

「相手を知るには先ずは、その考えを汲み取る事が大前提よ。そうね………此処に滞在してみたら?この国を知ってもらうには丁度いい機会だわ」

 

「それは助かります」

 

「ヨウムちゃんもね。さっきも言ったけど、この計画にはアンタの力が必要不可欠。良い返事を期待してるわ」

 

「…………ガラじゃねぇよ、そういうのは。勇者にでもなれってか?」

 

「駄目だぞ」

 

計画を再度、持ちかけるネコリアに頭を抱えながらも勇者と口にしたヨウムに、沈黙を貫いていた人物が待ったを掛けた。そう、十大魔王が一人、ミリム・ナーヴァである

 

「勇者は魔王と同じで特別な存在なのだ。勇者を自称すれば因果が巡る。長生きしたければ、英雄を名乗る事をオススメするぞ」

 

「なんだ?ガキ。大人の会話に口を----おごっ!?」

 

「ミリム様!?流石に暴力は良くないかと……」

 

「姉上の仰る通りですよ。話し合いの場で、其れは如何なモノかと……」

 

全てを言い終える前に、ミリムの物理的制裁を受けたヨウムは倒れ、同様の理由で物理的制裁を行ったライメイとシオンが彼女を咎める

 

「ち、違うのだ!今のは!あいつがガキとか言ったから……っ!ネコ!リムル!私は悪くないのだ!」

 

「いや駄目だから。ネコちゃん、判決を」

 

「う〜ん…………おやつ抜き♪」

 

「……………」

 

有罪判決を受けたミリムは燃え尽きた様に真っ白な灰となり、ヨウムの怪我を回復させ、リムルは呆れた様にため息を吐きつつ、彼に向き直る

 

「ちょっと考えてみてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな時間に夜回り?男の子なら、興味があるのは構わないけど、まだ刺激が必要な年頃には見えないわよ」

 

町を見て周り、住民に追いかけ回されたヨウムが辿り着いたのは首都リムルの隣に位置する歓楽街ネコリア、もう一人の重要人物の名を冠する町に彼女は居た

 

「ネコ耳の………いや、ネコリアさんだったか。さっき、リムルさんにも話してきたんだがアンタからの提案を受け入れようと思う」

 

「そう……考えは纏まったのね。嬉しいわ」

 

自分が出した提案を彼が受け入れた事を嬉しく思ったネコリアは優しく微笑む

 

「俺は学もねぇし、権力もねぇ………それでも人を見る目はあるつもりだ」

 

「そうね、アンタの仲間を見てたら分かるわ。誰もヨウムちゃんを嫌ってない。それで?その目で見たあたしたちはどう映った?」

 

問いを投げ掛けられながらも、真っ直ぐと自分を見据える金色の瞳に吸い込まれそうになりながらもヨウムは答えを返す

 

「この国にアンタとリムルさんを嫌う奴は誰もいない、仲間に慕われる奴の言葉には力がある。俺はアンタ等を信用することにした。英雄でもなんでもなってやろうじゃねぇか」

 

「ふふっ………御眼鏡に適ったのなら、嬉しいわ。これからも仲良くしましょうね?ヨウムちゃん」

 

魔性の笑みは月明かりに照らされ、昼間よりも妖艶さに溢れ、彼女の魅力を更に引き立てる。この日を境に、ヨウムという英雄の名が歴史に登場していく、その中に彼の慕う、二人の人物にはテンペストの姓が記されていた。しかし、これは遥か未来の話である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クレイマン!クレイマン!」

 

傀儡国ジスターヴ。この国を治めるのは魔王クレイマン。優雅に佇む彼は、自分の名を呼ぶ声に振り向く

 

「おや、ティア。随分と早かったですね」

 

「そりゃね!アタイだって、中庸道化連(ちゅうようどうけれん)の一員なんだから!」

 

「そうでしたね、これは失礼。それで?収穫の方は?」

 

ティア、そう呼ばれた彼女が、ぷんすかと頬を膨らませる姿に謝罪し、頼んでいた仕事に関する情報を問い掛ける

 

「うんとね!フレイはね、ジュラの森に関わる気はないみたい。何かを警戒している様子だったよ。それでね、詳しく調べたら、なんとビックリ!あの暴風大妖渦(カリュブディス)が復活するってさ!」

 

「ほう………それは……」

 

「あっ!クレイマンってば、悪いこと考えてる〜!」

 

「おや……分かりますか?」

 

「とーぜん!長い付き合いだも〜ん、クレイマンの考えなんかお見通しだよ〜」

 

何かを企むクレイマンの意図を読み取ったティアが嬉しそうに答えを返すと、彼は水晶を彼女の目の前に置く

 

「どうです?ぴったりだと思いませんか………暴風大妖渦(カリュブディス)の依代に」




動き出す新たな陰謀、しかしネコリアがその接近に気付いていない筈などなく………

ネコリアの真骨頂その26 実は妖艶

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第三十四話 厄災が来たから、迎撃体制に入ります

今回の見所!ネコちゃんは真面目な時でも可愛い!以上!


「……………ちょっと厄介な気配がするわね。でも僅かに知ってる妖気(オーラ)……ふむ…どうしたもんかしらね」

 

英雄化計画より数週間、ハクロウの手で英雄と呼ぶに相応しい身形に仕上がった彼等は旅立ち、束の間ではあるが慌ただしくも騒がしい中で訪れた平和を満喫していたネコリア。修行中に微量な妖気(オーラ)を感じ取り、近付く気配を探り、その大きさに眼を細める

 

「ネコリア様。リムル様より伝言がございます、発言を許可していただけますか?」

 

「許可するわ」

 

木陰から姿を見せたソウカに発言を許し、彼女の方に向き直ると真剣な眼差しを向ける

 

樹妖精(ドライアド)のトライア様が御報告したい事があるらしく、盟主リムル様並びに参謀ネコリア様に御眼通り願いたいとの事にございます」

 

「分かったわ。直ぐに行くと伝えて」

 

「御意」

 

主人からのの返事を逸早く伝える為に、ソウカが姿を消す。その直後に起き上がったネコリアは会議場所へと向かう

 

「ネコちゃん。せっかくの修行中に呼び出して悪かったな」

 

「構わないわ。それで?トライアちゃんだった?報告したい事って、にゃにかしら」

 

何時になく真剣なネコリアはトライアに視線を向け、問いを投げ掛ける。その姿は正に参謀と呼ぶに相応しく、下手をすればリムルよりも遥かに盟主に相応しいのだが今は関係ない話である

 

暴風大妖禍(カリュブディス)が復活致しました。大妖はこの地を目指しております。我が姉トレイニーが足止めを行っておりますが、あまり長くは保ちません……至急、防衛態勢を整えていただきたく御伝えに参りました」

 

「にゃるほど……あの気配は暴風大妖禍(カリュブディス)が原因だったのね。納得だわ、ヴェルドラから漏れ出した魔素溜まりから発生した魔物………厄介なヤツを残してくれたわね………」

 

「えっ?なに?俺だけが知らない感じ……?なにこの疎外感っ!」

 

暴風大妖禍(カリュブディス)の名に聞き覚えがあるのか、その正体までも語るネコリアに反し、話の流れを理解出来ないリムルは疎外感を覚え、驚きを隠せない

 

「後で《大賢者》ちゃんに教えてもらいなさい。今はそれよりも暴風大妖禍(カリュブディス)を相手にどうするかを考えるべきよ。狙われてるのは間違いなく、この町………というかアンタの中にいるヴェルドラよ」

 

「マジでかっ!だとすれば、取るべき対策は一つだ。倒すぞ……ネコリア」

 

「仰せのままに……。聞いたわね?スイヒョウ!今直ぐに国民を広場に集めなさい!」

 

「かしこまりました!」

 

リムルの決断からの動きは迅速だった。ネコリアの指示を受けたスイヒョウを主導に、国民全員が広場に集められ、中央に設けられた舞台に誰もが注目する

 

「既に気配を感じ取っている者もいると思うが、敵が急速接近中だ。だからと言って、怯える必要はない。参謀長(ネコリア)の指示を仰ぎながら、侍大将(ベニマル)が迎撃体制を整えている。非戦闘員はリグルの指示に従い、森の中に避難するように。以上!慌てず騒がず行動開始!」

 

リムルの決断に抗う者は存在せず、その威厳ある立ち振る舞いに誰もが歓声を挙げ、指示通りに森の方へ避難を開始する

 

「ベスター。ガゼル王へ連絡を頼む」

 

「はっ、お任せを」

 

壇上から降り、ベスターに指示を降すリムルの側に休暇を満喫していたフューズが姿を見せ、真っ直ぐと視線を向ける

 

「………何故、逃げないのですか。仮にも相手は災厄級魔物(カラミティモンスター)、脅威だけで言えば災禍級魔物(ディザスターモンスター)以上と考えられています。其れでも魔王(ディザスター)に認定されない理由は「知恵ある行動を取らない」………その一点のみです。貴方は………いえ、御二人は魔王を相手にしようというのですか?」

 

その問いにはフューズの真意が籠っていた、リムルを相手に人称を改めたのは、彼の決断を汲み取ったネコリアも同じ覚悟がある事を悟ったが故、其れでも決意が変わる事はなかった

 

「ネコリアを先に行かせたのは、アイツが現時点で俺を上回るからだ。だが俺も参加しない訳じゃない、戦いは敗者を決めて終わるんじゃない。勝者を決めて、終わるんだよ」

 

一陣の風が吹き、リムルの体がスライムから人型に変化する。フューズはその姿を知っていた、自らが支部長(マスター)を務める自由組合(ギルド)でも有名な冒険者、彼女の姿を受け継いだ白銀の髪を靡かせた美少女が佇んでいた

 

「その姿は………」

 

「俺とネコリアはシズさんと同郷でね、彼女の意志を継いだんだ。思う所はあるかもしれないが信じて欲しい、俺たちの勝利を」

 

「……………なるほど、信じられそうです。貴方と貴方が認めたあの人ならば」

 

「君なら、そう言ってくれると思ってたよ。そこでだ……一つ頼まれてくれないか?」

 

「………聞きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴風大妖禍(カリュブディス)討伐基迎撃の舞台に選ばれたのは、テンペストとドワルゴンを結ぶ交易路となる予定地、リムルを先頭に参謀長ネコリア、各部隊が終結する中にミリムもいた

 

「わっーはっはっはっ!私が居るのを忘れてはいないか?デカいだけの魚など、私の敵ではないのだっ!」

 

「却下よ」

 

「なぜなのだっ!?」

 

やる気満々なミリムの申し出を食い気味に却下したのは、ネコリアだった。マブダチである彼女からの即答に思わず眼を見開いたミリムは疑問を投げ掛ける

 

「良い?此れはあたしたちの問題よ。最初からミリムちゃんが出たりしたら、この町は直ぐに魔王に頼る駄目な魔物の集まりだと、風潮され、その在り方自体を軽んじられるわ」

 

「むぅ…………」

 

「でも、いざって時には助けてね♪」

 

「「「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」」」

 

「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるスイヒョウ、エンカ、ライメイ、カイリン、ソウカは目をハートにしながら悶える

 

「おい、ネコちゃん……ミリムがいれば明らかに戦力拡大に繋がるのに断るとか正気か?」

 

「何を言うかと思えば、呆れたスライムね。だからエッチなのよ」

 

「エッチは関係ないだろっ!?というかエッチじゃないやいっ!」

 

ミリムの作戦参加に賛成の様子のリムルに話し掛けられ、呆れた眼差しで罵倒するネコリアに対し、御決まりの突っ込みを返される

 

「仕方ない………今回ばかりは自分たちだけで片付けるか。でも危ない時は助けてもらっても………」

 

「はぁ……今だけは前に集中しなさい。敵の御到着よ」

 

「…………やるだけ、やってみるか。対策は既に打ってあるしな………いって!」

 

事前に対策を立てた事を宣言するリムルの額をネコリアが軽く小突き、ジト目を向ける

 

「あたしよりも先に先手を打つとか生意気よ」

 

「うっ………そ、そんな事より!今は目の前の敵に集中しよう!ん?なんか周りに鮫みたいなのが大量にいるな」

 

「アレは空泳巨大鮫(メガロドン)暴風大妖禍(カリュブディス)が異界より召喚した従魔であるとの報告を受けております。確か両方とも「魔力妨害」のスキルを持っているそうですわ」

 

情報に存在しない個体をリムルが観察していると、背後からスイヒョウがトライアから聞き出した情報を報告する

 

「なぁ………ネコちゃん。やっぱり………」

 

「却下♪」

 

「デスヨネー」

 

全てを言い切る前に、綺麗な笑顔で却下され、棒読み感溢れる事を返すリムル。かくして、災厄級魔物と魔物たちの戦いが火蓋を切って落とした




厄災と呼ばれる魔物を相手に、ネコリアが取るべき策とは……

ネコリアの真骨頂その27 実は役割を理解している

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第三十五話 緊急指令!迎え撃て!テンペストの精鋭!

今回の見所!ネコちゃんは強くて可愛い!以上!


黒炎獄(ヘルフレア)!!!」

 

開戦の狼煙を上げたのは、ベニマル。黒い炎が暴風大妖禍(カリュブディス)を起点に円形状に広がり、空泳巨大鮫(メガロドン)を呑み込む。然し、『魔力妨害』の影響下にある暴風大妖禍(カリュブディス)への被害は皆無、本来は塵一つも残さずに焼き尽くす威力の黒炎獄(ヘルフレア)。その力を持っても、焼き焦げたのは、空泳巨大鮫(メガロドン)一匹程度で未だに状況は変わらない

 

「お供が焦げただけか。聞きしに勝る厄介さだな」

 

「ええ、それに範囲内に捉えた筈の本命は痛痒を感じていないようです」

 

「リムちゃん。暴風大妖禍(カリュブディス)は任せてくれる?」

 

「勝算はあるのか?ネコちゃん」

 

暴風大妖禍(カリュブディス)を見上げ、自分に任せてて欲しいと告げる相棒の姿は相変わらずだった。猫耳をぴこぴこと動かし、ふりふりと揺れる鍵尻尾、愛らしくも頼もしい彼女は其処に佇んでいた

 

「魔法が効かないなら、あたしの仙術の方が有利に立ち回れるわ」

 

「確かに。なら、俺はネコちゃんをサポートする」

 

「オークの時とは逆ね」

 

「信頼してるよ、参謀長」

 

「任せなさい……盟主様っ!」

 

ネコリアの意志を汲み取ったリムルが笑う。その姿に配下たちも触発され、空泳巨大鮫(メガロドン)に狙いを定め、侍大将であるベニマルが動く

 

「俺たちは空泳巨大鮫(メガロドン)を殲滅する!各隊で一体ずつ、相手にしろっ!」

 

「各隊………言わずもがなですけど、見知った顔しかいませんわね」

 

「わふっ!それはアタイの台詞だぞっ!」

 

「この国に立ち入る事は許さんっ!我が刃の前に沈めっ!」

 

「てかよ、ウチも非戦闘員だろ。ここに連れてきた理由はなんだよ」

 

「カイリンさんも仙術が使えるんですよね?ネコリア様から聞いてますよ」

 

「はあ………ソウカ、てめぇの差金か。仕方ねぇな………暴れるぜっ!!!」

 

各隊、ベニマルのその言葉に反応したスイヒョウたちは息の合っていない様に見えながらも空泳巨大鮫(メガロドン)を見据え、カイリンの号令を皮切りに真っ直ぐと駆け出した

 

「仙法・岩土掌(がんどしょう)!!!」

 

「まだまだですわね?カイリン。仙法・縛氷結(ばくひょうけつ)!!!」

 

「わふっ!寒くしてどうするんだぞっ!やっぱり熱くしないとだぞっ!仙法・炎牙狼(えんがろう)!!!」

 

「私を忘れてもらっては困るなっ!万物悉く斬り刻め!仙法・轟雷斬波(ごうらいざんぱ)!!!」

 

「仙術…………教えてもらおうかな」

 

カイリンが両手を打ち鳴らすと巨大な掌を形作った岩が空泳巨大鮫(メガロドン)を締め上げ、反対側から飛来した空泳巨大鮫(メガロドン)をスイヒョウが氷漬けにし、其れに火焔を纏ったエンカが体当たりする。カイリンが締め上げている一体を、ライメイが雷を纏った斬撃で斬り伏せる。先輩たちの圧倒的なまでの力を見せ付けられたソウカは、仙術を学ぼうかと思っていた

 

「ネコちゃん。今、ハクロウが仕留めた空泳巨大鮫(メガロドン)で最後だ」

 

「ええ…………待って!音が変わった!」

 

「なんだ、この不快な音は……!」

 

暴風大妖禍(カリュブディス)を見据えていたネコリアの耳が逸早く捉えた音、それに気付いたリムルも不快感極まりない音に表情が一変する

 

「リムル。あたし、振り返らないわよ」

 

「振り返る必要があるのかよ?ネコリア」

 

「にゃっふっふっふっ………そういう所、大好きよっ!!!」

 

不快な音と共に降り注ぐ鱗の雨、一瞬の油断が隙を生じる中を真っ直ぐにネコリアは駆け出した。仙術を利用した空中歩行、《空歩(くうほ)》を使用する事で氷上を滑るかの様に駆ける姿は、普段の彼女からは想像も付かない程に勇ましく美しい、正に戦うヒロインという言葉が似合う

 

「《暴食者(グラトニー)》」

 

一瞬だった。絶え間なく降り注いでいた暴風大妖禍(カリュブディス)の鱗はリムルが新たに会得したスキル《暴食者(グラトニー)》の効果で、《捕食》と《腐食》の二つが重なり合った力は圧倒的にして規格外。無数に降り注いでいた鱗は一瞬で消え去る

 

「そろそろ………終わりにするわね。親友が残した厄介事を片付けるのは親友であるあたしの役目………仙法・大燐華(だいりんか)!!!」

 

「そこ、俺たち(・・)の間違いだろ。俺だって、ヴェルドラの友達なんだからなっ!!!喰らい尽くせっ!!!」

 

魔素を極限までに高めたネコリアが放った巨大な火球は暴風大妖禍(カリュブディス)の表面を焦がし、リムルの《暴食者(グラトニー)》は喰らい尽くす事はなかったが一部を《腐食》させる

 

「ありゃ、焼き加減はレアってとこか。ウェルダンまではいかなかったか……もうちょっと火力調整が必要ね」

 

「俺も流石に本体は喰えなかった」

 

「《腐食》が効いただけでも上出来よ」

 

「次の作戦はあるか?」

 

「作戦………総攻撃♪」

 

「匙投げたよなっ!?」

 

流石に大技でも傷付けることしか出来ないと理解した瞬間、先程までの頼もしさは何処にと言いたくなる主体性に欠ける作戦を提案する相棒にリムルは突っ込みを放つ。其処からは、樹妖精(ドライアド)三姉妹が合流し、ドワーフの天翔騎士団(ペガサスナイツ)による援軍で、十分以上に戦力を増強した総攻撃で無事に撃退する事に成功した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃ〜んて………思ってた十時間前の自分を殴りたいわね……仕切り直した方がいいかしら……これは…」

 

優勢と思われた戦況は明らかに劣勢を極めていた。暴風大妖禍(カリュブディス)にも消耗は見えるが、テンペスト側の被害も深刻で、回復薬(ポーション)が尽きかけている為に怪我人の治療も満足に出来ない状況に、仕切り直す事も視野に入れ始めるネコリア。その時だった、彼女の猫耳が、ぴこっと動いた

 

「どうした?ネコちゃん」

 

「…………にゃるほど。ミリムちゃん、()えてる?」

 

リムルの問い掛けに応える代わりに、ネコリアは妖しく笑い、側に居たミリムに声を掛けた

 

「うむ、覚えがあるのだ。確か前に来たフォビオだったか?そやつの気配を感じるぞ」

 

「やっぱり、最初に感じた気配はフォビオが原因だったのね。《千里眼》で近付くのが察知出来た訳ね」

 

竜眼(ミリムアイ)》で確認すると、暴風大妖禍(カリュブディス)の体内にフォビオの反応があり、最初に感じた気配に見覚えがあった理由にネコリアは納得したらしく、ちらりとミリムの方に視線を向ける

 

「ネコ!あいつ、私の名前を言ってないか?という事は私の客と考えてもいいか?いいよな?」

 

「そうみたいね」

 

「頼めるか?ミリム」

 

「任せるのだっ!」

 

「あと一つだけ言っておくけど、手加減はしてね?フォビオに話を聞きたいから」

 

「分かったのだ!ネコ!最近は手加減を覚えたし、丁度いいのだ」

 

((覚えた………?))

 

自分絡みと理解した瞬間に、暴風大妖禍(カリュブディス)に向かっていくミリム。ネコリアからの手加減要請を快諾し、手加減を覚えたと口にする彼女に、リムルも、ネコリアも違和感を覚える

 

「これが………手加減というものだ。竜星拡散爆(ドラゴ・バスター)!!!」

 

その言葉と共に放たれた青白い光を纏った無数の気弾は暴風大妖禍(カリュブディス)を撃墜し、十時間も苦戦した怪物が僅か一瞬で塵芥と化す。解放された事で落下してくるフォビオを回収し、上空で勝利のサインを送るミリムを見上げ、リムルとネコリアは大きく息を吸う

 

「「何処が手加減っ!?」」

 

これが後に手加減とは手を抜く事に在らずと言わしめた伝説の始まりである




厄災を撃退し、フォビオを救い出したリムルとネコリアたち。彼に町を襲わせた黒幕とは………

ネコリアの真骨頂その28 実は相棒遣いが荒い

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第四章 この度、国交を結んだので国を発展していこうと思います!
第三十六話 騒動終結!押忍!二人目の魔王は体育会系!


今回の見所!ネコちゃんはボケてる時が一番可愛い!以上!


「本当にすみませんでした!」

 

体に融合していた暴風大妖禍(カリュブディス)をリムルのスキルで分離してもらい、一命を取り留めたフォビオは目を覚ますと同時に、伝説の謝罪礼法である土下座を繰り出す

 

「すみません?あれだけの被害を出しておいて、土下座の一つですむと思ってるの?今すぐに切腹しなさい」

 

「介錯は私めにお任せください!一瞬で楽にしてやろう」

 

「この命で許してもらえるなら……一思いにやってくれ…」

 

「いや、別に命を差し出す必要はない。それよりも質問に答えてくれ」

 

国を土足で踏み荒らされた事に怒りが頂点に達しているネコリアはフォビオに命を差し出す様に要求し、ライメイが介錯に立候補し、本人も覚悟を決めるがリムルが待ったを掛けた

 

「何故、暴風大妖禍(カリュブディス)の封印場所を知っていたのですか?あれは勇者から託された我ら樹妖精(ドライアド)しか知らぬ場所、偶然見つけたとは言わせません」

 

フォビオに問いを投げ掛けたのは、トレイニー。彼女達也の責任感があるらしく、暴風大妖禍(カリュブディス)の封印場所を知っていた事を問い詰める

 

「………教えられた、仮面を被った二人組の道化に」

 

「仮面の道化?それはもしや、こんな仮面でしたか?」

 

仮面の道化、聞き覚えがあるのかトレイニーは地面に笑った仮面の絵を描き、再び問う

 

「いや……俺の前に現れたのは、涙目の仮面の少女と怒った仮面の太った男だ」

 

「怒りの面の太った男だと……?」

 

「確か、私の畑を荒らしてくれた輩がその様な面を被っていた。なぁ?妹よ」

 

「そうでした?仮面なんか全部が同じに見えますよ。あとシオンです」

 

怒りの面に見覚えがあるのか、ベニマルとライメイが反応を示す隣で、シオンは疑問符を浮かべている

 

「俺も聞き覚えがある。名はフットマン、ゲルミュッドの使者を名乗る上位魔人で中庸なんとかと言う組織の者だとか…」

 

「中庸道化連だ、何でも屋だと言っていた」

 

ゲルドが記憶から捻り出した名と組織名、其れにフォビオが補足する。その中でトレイニーの絵を見ていたガビルが思い出した様に手を叩く

 

「トレイニー様の図柄に見覚えがありますぞ」

 

「ホントに?ガビル」

 

「誠ですとも、ネコリア様。ゲルミュッドからの使者でラプラスと名乗った道化が…。補足すれば、頭には頭巾を被っておりましたな」

 

「ラプラス…………まさか!」

 

図柄の正体がラプラスという名前だと告げるガビル。其れに反応を示したリムルの様子に、ネコリアがジト目を向ける

 

「リムちゃんが思ってるのとは違うわよ?あの有名アニメに出てくるモンスターは関係無いわよ」

 

「や、やだなぁ………(バレてる!渾身のボケを繰り出す前に潰された!まさかボケ殺しっ!?)」

 

『告。ボケ殺しとは遥か昔に存在したあらゆるおふざけも許さない種族です』

 

(解説いらんわっ!!!)

 

繰り出す前に潰された渾身のギャグを嘆きつつ、必要皆無な解説を繰り出す《大賢者》にリムルは突っ込みを放つ

 

「んー………」

 

「どうしたの?ミリムちゃん」

 

「ゲルミュッドがオークロード計画を仕切っていたのは知っているが中庸道化連だったか?そんな連中は知らないのだ。そんな面白そうな奴等がいたなら、会ってみたかったのだ」

 

「面白そうというよりは愉快に暴れ回ってそうよね。迷子になったり、ピーナッツバターばっかり食べてたりしてそうだわ」

 

話を聞いていたネコリアが頷き、思い当たる節があるらしく、やけに具体的な例を挙げた

 

「ネコちゃん。誰の話をしてるんだ?」

 

「……………あたしは誰の話をしてたの?」

 

「知らずに言ってたんかいっ!!!」

 

自分の発言に該当する存在が記憶に存在していない事に気付き、逆に問い掛け直してきたネコリアに突っ込みが放たれる

 

「もしかしたら、クレイマンのヤツが何かを企んでいたのかもしれぬ」

 

「クレイマン?誰だそれ」

 

「魔王の一人だぞ、ヤツはそういう企みが大好きなのだ」

 

「ネコちゃんみたいなヤツがいるんだな」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「じゃ、フォビオも気をつけて帰れよ」

 

「…………はぁっ!?いやいや!俺は許さないだろ!」

 

「ギャーギャー喚くんじゃないわよ。許してあげるって言ってんだから、素直に甘えなさいよ。なんなの?発情期なの?」

 

「こらこら、仮にも女の子?のネコちゃんがそんな口を聞いちゃ駄目だろ」

 

「そうね………ちょっと待ちなさい、今なんか疑問系にしたでしょ」

 

「ソンナコトナイヨー」

 

処置に異議を申し立てるフォビオを罵るネコリアの口調を咎めながらも彼女を小馬鹿にするリムルは相棒からの追及を棒読みで返す

 

「ミリムちゃんはどうしたい?」

 

「リムルの意見に賛成なのだ!まぁ、軽く1発くらい殴ってやろうかと思っていたがな!私は大人だからな!今日は許してるぞっ!」

 

((誰かこの娘に大人の意味を教えてあげて!))

 

カリオン(・・・・)もそれでいいだろう?」

 

背後に呼び掛けたミリムの視線を追い掛け、視線を動かした先にがっしりとした体格の男性が姿を見せる

 

「よう、そいつを殺さずに助けてくれたんだってな?礼を言うぜ」

 

「カリオン様……!」

 

「ほう、魔王自らが出向いてくれるなんてな。俺はリムル=テンペスト、この森の魔物たちで作った魔国連邦(テンペスト)の盟主だ。こっちの猫はネコリア、参謀長をしてもらっている相棒だ」

 

「よろしく〜」

 

「なるほどな、ゲルミュッドを()ったのはお前だな?んでスライムの方は豚頭帝(オークロード)を喰った…………なるほどな!ミリムが気に入るわけだ!悪かったな、今回の件は俺の監督不行届だ。今後、何かあれば、俺様を頼ってくれ」

 

「案外話せるわね。どうする?盟主様」

 

話の分かるカリオンの言葉に何かを思い付いたネコリアは、ちらっとリムルに視線を向ける

 

「どうするもこうするも、取るべき策は一つ。俺たちの国と不可侵協定を結んでくれるか?互いに利益にもなるだろうからな」

 

「良かろう、獅子王(ビーストマスター)カリオンの名にかけて誓ってやる。獣王国(ユーザラニア)魔国連邦(テンペスト)に牙を剥かんとな。おら、帰んぞ」

 

「ちょっ!カリオン様!腕はそっちに曲がらないっ!あだだだだだっ!」

 

「あら楽しそう。そうだ、ガビル〜、もしくはゴブタ〜、どっちかで試していい?」

 

「「良いわけないでしょうっ!!!」」

 

フォビオの腕を圧し折る勢いで曲げるカリオンの姿に、ガビルとゴブタという遊び道具で試そうとするネコリアに本人たちからの突っ込みが飛ぶ

 

「改めて、使者を派遣する。また会おう、リムルにネコリア」

 

かくして、一連の騒動はひと段落した。魔国連邦(テンペスト)に平和が訪れた




束の間の平和を満喫するネコリア、其処に新たなる来訪者が来たる……

ネコリアの真骨頂その28 実はボケ殺し

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第三十七話 使節団を送り出したら、娯楽が欲しくなっちゃった

今回の見所!ネコちゃんには服装のこだわりがあって可愛い!以上!


「んにゃぁ〜…………珍しいわね、此処に一人で来るのは初めてじゃない?」

 

仙術修行を身を投じていたネコリアは、近付く気配に薄目を開け、その妖気(オーラ)の持ち主に疑問を投げかける

 

「今から仕事に行ってくるのだ。リムルには挨拶しておいたが、ネコは町にいなかったからな。あの畑にいる一本角に聞いたら、此処にいると教えてくれたのだ」

 

その主、ミリムは私服ではない魔王としての衣装を着込み、仕事に行くと宣言する彼女は普段の子どもらしく振る舞う姿とは正反対、最古の魔王と呼ぶに相応しく、威風堂々と佇んでいた

 

「一本角……ライメイね。それで?仕事って、にゃに?」

 

「といっても、他の魔王に会いに行くだけだかな。心配するな!終わったら帰ってくるのだ」

 

「そう……騙されないようにね」

 

強引に約束を取り付け、ネコリアの言葉に「リムルとおんなじ事を言うのだな」と笑いかけた後、彼女は飛び去った。騒がしい空気から一変、久方ぶりに訪れた静かな時間。今までが賑やか過ぎたが故に忘れていたが、独りとは孤独で寂しい時間だ

前世の頃は一人で過ごすことが当たり前で、日常だった。誰もいない家、一人きりの食卓、それが当たり前だった

 

「此方にいらっしゃったのですわね、ネコリア様。獣王国(ユーザラニア)に旅立つ使節団を見送る式典に御召しいただく衣装の採寸をしたいと、シュナ殿が申しております」

 

「分かった、今から行くわ」

 

重い腰を上げるようにスイヒョウの胸に抱かれながら、シュナの待つ織物工房に向かう。着せ替え人形にされる事は目に見えているのだが、娯楽の充実していない世界で、衣服の普及は唯一の楽しみと呼べなくもはい。故にネコリアもこの時間が嫌いではなかった

 

「まぁ、ネコリア様!先程までリムル様もいらっしゃたのですよ。どのような御召し物にいたしましょう?」

 

「今後は魔王の国との付き合いが始まるから、今までみたいに露出度に極振りした格好は控えようと思うのよ」

 

「何故ですのっ!?」

 

「そうです!ネコリア様にお肌を隠すような衣服は似合いませんよ!」

 

「スイちゃんはともかく、シュナちゃんも其方側なのね………」

 

普段着に露出度の高さを取り入れているネコリアは既に町の顔、いわゆるファッションリーダー的な存在となっており、彼女の服装を真似る女性たちが増え始めている。かくいうスイヒョウも最近は水色のコートの下に薄紫色のチューブブラを着用した露出度の高い服装を身に纏っている

 

「そうですわ、此方の袖無しの服はいかがでしょう」

 

「まあまあ、それでは下は此方のフリフリのスカートがよろしいかと」

 

「どうあっても、あたしに露出度の高い格好をさせたいみたいね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日。準備期間はあっという間に過ぎ、遂に使節団出立の日を迎える

 

「諸君、是非とも頑張ってくれたまえ!」

 

壇上に上がり、挨拶をするリムル。しかし、湧き立っていた筈の民衆は一瞬で沈黙する。見覚えのある光景にため息を吐くネコリアは、ジト目を向けた後、口を開く

 

「相変わらずの滑り芸ね。だからサムいスライムなのよ、リムちゃんは」

 

「サムくないやいっ!」

 

「そうね、エッチなスライムだったわね」

 

「其れも違わいっ!!………こほん。えーでは、気を取り直してと」

 

ネコリアからの助け船で、鎮まっていた場が直ぐに笑い声に包まれた事を確認すると軽く咳払いしたリムルは使節団であるベニマル達に視線を向けた

 

「今回の目的は、相手と今後とも付き合っていけるかを見極めることだ。我慢しながらじゃないと付き合えそうもない関係なら必要ない。お前達の後ろには俺、ネコリア、それに仲間達がいる。恐れずに自分たちの意思はきっちりと伝え、その眼で友誼を結べるか否かを判断してくれ。頼んだぞ!」

 

「「うぉぉぉぉ!!!」」

 

一斉に湧き立つ国民達、その様子を見るだけで如何にリムルが信頼されているかが理解出来る。その様子を見守っていたネコリアの側に近付く影が一つ、気配に気付き、振り返るとベニマルが立っていた

 

「カリオンが信頼できる人物かを見極めてきます」

 

「任せたわよ」

 

優しく笑い掛けるネコリアに、使節団は返事を返し、星狼族(スターウルフ)の引く馬車?に乗り込み、見聞を広める為に獣王国(ユーザラニア)に旅立っていた

 

「ネコちゃん。今更だけど、今日はやけに露出度高くない?」

 

壇上から降りてきたリムルは、目の前に佇む相棒の服装に愚痴をこぼす。当の本人はノースリーブを引っ張り、リムルに向き直る

 

「…………あら、嫌い?こういうのは」

 

「……………嫌いじゃないです」

 

「やっぱりエッチなスライムね」

 

「エッチじゃないやいっ!」

 

決まり文句が木霊し、魔国連邦(テンペスト)の平和な日常が、今日も始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に日は流れ、町中は獣王国からの使節団を迎える準備を始めていた。主に滞在するのは、首都リムルであるが歓楽街ネコリアにも足を運ばないとは言い切れない

 

「娯楽が欲しいわね」

 

「娯楽……ですか?」

 

呟く様に放った言葉を拾ったスイヒョウが復唱する様に聞き返す。ソファーに寝転ぶ彼女の主人は何時もと変わらず、愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らしている

 

「今回の取り引きが上手くいけば、海産物が充実してくるわ。お魚は好きよ?でもね、それだけじゃダメなのよ。あたしの欲は満たされないの」

 

「なるほど。ネコリア様のお考えになっている娯楽とは具体的にどの様なモノなのでしょう?もしかしたら、実現することも出来るかもしれませんわ」

 

「そうね………歌かしら?やっぱり。魔国連邦(テンペスト)の魅力を知ってもらう為に歌を作るとか」

 

「歌ですか……それはネコリア様が歌われるのですわよね?勿論」

 

「んにゃ……あたしが?」

 

適当に考えついた意見を話していただけだったがスイヒョウからの突然の問い、予想もしていなかった出来事にネコリアは瞳を丸くする

 

「ネコリア様の歌だと………!素晴らしい!魔国連邦(テンペスト)の宣伝にもなるだけではなく、ネコリア様の偉大さを世間に知らしめす絶好の機会ではないか、うんうん」

 

「わふっ!ネコリア様の歌か〜、綺麗な歌声なんだろうなぁ〜」

 

「ネコリア様、くれぐれも兄上達に勘付かれないようになさってください。後ろで踊りかねないので………」

 

「ネコ様が歌う?聞きたい」

 

「聞きたい」

 

「アネキは色々と思いつくんだな。よっしゃ!ウチも全力でサポートするぜっ!」

 

盛り上がりを見せる配下達を前に後に引けないネコリア。苦笑しながらも彼女達を見守りながら、ある想いを抱いていた

 

(あたし………歌苦手なんだけど……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、獣王国ユーザラニア。魔王カリオンの治める地、その王宮に一人の獣人族(ライカンスロープ)が呼び出されていた

 

「フォス!お前に任務を与える。いち獣人族(ライカンスロープ)として魔国連邦(テンペスト)を探って来い」

 

玉座に座るカリオンが呼びかける先に跪くのは、獣人族(ライカンスロープ)の少女。彼女の名はフォス、獣王戦士団の候補生である

 

「任せるです!カリオン様!フォスはその使命を必ず果たしてみせるです!」

 

「あとネコリア=テンペストには気をつけろ。奴はリムル=テンペスト以上に底知れない欲の持ち主だ」

 

「了解したです!」




遂に来る使節団を迎えるリムルとネコリアたち、しかし一触即発な雰囲気に……

スイヒョウの真骨頂その1 実はネコリア第一主義

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第三十八話 使節団を迎えたら、手合わせすることになっちゃった

今回の見所!ネコちゃんは御約束を絶対に忘れない!以上


「んにゃぁ〜…………この気配は……見覚えがないわね?でも、何処となくあたしに近い雰囲気………にゃるほど、獣人族(ライカンスロープ)か」

 

何時もの時間に目を覚ましたネコリア、近付く気配が獣人族(ライカンスロープ)である事に気付き、町の玄関口に足を向ける。ベニマル率いる使節団が旅立ってからの数日、町は更に発展を遂げた。来るべき使者を迎える為の宿泊施設、食事処、温泉、更に国中に届く放送施設などを増築し、始まりが簡素な村であったとは思えない程に右肩上がりの発展を遂げていた

 

「ふぅん……獣人族(ライカンスロープ)らしいわね。馬車ならぬ虎車なんて、面白いじゃない♪」

 

「ネコちゃん。頼むから、くれぐれも失礼が無いようにな」

 

「にゃによ、あたしが何時も失礼みたいな言い方は」

 

「心当たりがないことに驚きなんだが」

 

数え切れない実例があるにも関わらず、当の本人は不満気にしているがリムルは理解していた。如何なる者が相手でも彼女が失礼な発言を口にしない筈がないと、彼女はそれだけの実例が存在するのだ

 

「御初に御目にかかります、ジュラの大森林の盟主様並びに参謀長様。私はカリオン様の三獣士が一人、“黄蛇角”のアルビスと申します」

 

虎車から降りてきたのは一人の女性、杖を片手に長い髪を触る彼女はアルビス、フォビオと並ぶ獣王国(ユーザラニア)の幹部格である

 

「これは御丁寧に。俺はリムル=テンペスト、見ての通りスライムだ」

 

「そうね。エッチなスライムよね」

 

「エッチじゃないやいっ!」

 

「あたしはネコリア=テンペスト、見た目的は獣人族(ライカンスロープ)寄りかもしれにゃいけど、実際には異なる種族よ」

 

自己紹介と定番のやり取りを繰り広げるリムルとネコリア。その時、別の虎車の扉が乱暴に蹴り開けられた

 

「オレ達に近しい種族にも関わらず、弱小なスライムを盟主に仰ぐだと?馬鹿にしてんのかっ!?その上、矮小で小賢しく卑怯な人間どもとつるむなんざ、魔物の風上にも置けねえな!」

 

「スフィア。カリオン様の顔に泥を塗るつもりですか?失礼な言動は控えなさい」

 

「はんっ!オレに命令するな。お前はうるさいんだよ、アルビス」

 

スフィア、そう呼ばれた女性は獣人族(ライカンスロープ)の特徴が色濃く現れており、人型状態のネコリアに近しい姿をしている

 

「随分と上からね?其処にいるヨウムは我等が盟主並びにドワルゴンの国王を兄弟子に持つ今話題の英雄よ。文句があるとでも?」

 

彼女の言い分に異議を唱えたのはネコリア、友人のヨウムだけで飽き足らず、相棒のリムルまでも馬鹿にされた事で彼女の中に苛立ちが生まれていた

 

「文句だぁ?それ以前の問題だ、人間如きと同門ってことは、盟主殿の実力も高が知れてるぜ」

 

「にゃっふっふっふっ」

 

更なる飛び火、其れにネコリアの苛立ちが頂点を迎え、何かが音を立ててるように切れた。普段は他者を揶揄う側である彼女だが、自分とは異なる者が相手を揶揄う事を嫌う彼女にとって、スフィアの言葉は地雷だった

 

「ヨウムちゃん。軽く捻ってあげなさい」

 

「はぁ!?」

 

「ネコちゃん!?俺、失礼な事は控える様に言ったよねぇ!?」

 

「何を言ってるのよ?リムちゃん。先にケチをつけて来たのは彼方側なんだから、売られた喧嘩は買ってあげるのが筋じゃないの」

 

「なにそのヤンキー的な発想は!?前世は女番長(スケバン)かなにかなのっ!?」

 

「…………えっとこれ、拒否権とかねぇ感じか?まさかだけど。まぁ仕方ねぇか……姐御は一度、言い出したら聞く耳持たねぇもんな……やってやるよ」

 

売り言葉に買い言葉、(とばっち)りを受けたヨウムは軽くため息を吐きながらも、剣を構え、スフィアの前に立つ

 

「ちょっと待ったァ!!!」

 

「にゃ?」

 

「ん?」

 

スフィアとヨウムの一騎打ちが始まろうとした瞬間、声が響き渡る。その声にネコリアも、リムルも辺りを見回し、その声の主を見つける

 

「先程から聞いていれば、リムル様だけで飽き足らず………我が主人であるネコリア様に暴言を吐くとは、不敬にも程がある!恥を知れ!!!貴様の相手は私だ!」

 

愛刀・雷切を手に真っ直ぐとスフィアを見据え、啖呵を切った人物、其れはライメイだった。彼女は元々、ネコリアを悪く言う者に対しての当たりが強く、忍耐力にも酷評がある程の短気な性格、故にスフィアの言葉に怒りが頂点を迎えたようだ

 

「面白い。其処まで言うからには其れ相応に実力を持っているんだろうな?このオレが直に確かめてやる!」

 

スフィアも彼女の妖気(オーラ)に触発されたのか、その言葉を開戦の合図に地を蹴り、速攻性のある鋭い爪で襲い掛かる。しかし、ライメイも負けてはいない、紙一重で爪撃を躱わすと納刀状態の雷切での打撃を繰り出す

 

「ははっ!なかなかの反応速度だ!」

 

「当たり前だ、私はネコリア様の剣………主人の前で無様な姿を晒す訳にはいかん」

 

「あ〜もう………またメイちゃんの悪い癖が……」

 

「いかがなさいますか?ネコリア様。止めに入れと命じていただければ、直ぐにでも止めますが…」

 

「う〜ん……もうちょっと様子を見ましょう」

 

「かしこまりました」

 

激化する手合わせを止めようと進言するスイヒョウに待ったを掛け、事の顛末を見守ることにしたネコリア。ちらっと、ヨウムに視線を向ければ、手持ち無沙汰となった彼は虎車の手綱を握っていた別の獣人族(ライカンスロープ)を相手にしていた

 

「アルビスちゃんだった?」

 

「はい」

 

「この手合わせはカリオンちゃんの差し金と考えていいのよね?」

 

「察しがよろしいのですね」

 

「伊達に三百年は生きてないわ。さてと……そろそろね。スイヒョウ!」

 

「はっ!」

 

アルビスと会話しながらも、手合わせを見ていたネコリアは更に激化するであろう状況を止める為にスイヒョウに呼び掛けた

 

「仙法・絶対凍土(ぜったいとうど)!!!」

 

「スイヒョウ!何故、止める!」

 

「ネコリア様の御命令ですわ。全く……貴女の悪癖はどうにかなりませんの?」

 

「余計なお世話だ」

 

「仙術………なるほどな、噂に聞いたことはあるがオレを止めるだけの力を持っているとは驚きだ」

 

止めに入ったスイヒョウにライメイは文句を吐くが、スフィアは冷静だった。自分を止めた未知の実力者に興味を抱き、満足気に笑う

 

「スフィア……貴女、徐々に本気になってませんでした?」

 

「まあな、其処の鬼人がなかなかの手練れだったからな。何はともあれ、堪能させてもらった」

 

徐々に本気を出し始めていた事を認めながらも、手合わせの結果に満足したのか、彼女は拳を高らかに突き上げる

 

「見たかっ!彼らは強く度胸もある!我らが友誼を結ぶに値する素晴らしい相手だ!彼らとその友人達を軽んじることはカリオン様に対する不敬と思えっ!わかったな!!」

 

スフィアの宣言に使節団の使者たちも同意し、ヨウムと剣を交えていた獣人族(ライカンスロープ)基グルーシスも彼と固い握手を交わしていた

 

「で、メイちゃん?その巨大な迸る球体はにゃにかなぁ〜?」

 

その近くで、巨大な黄色の魔力弾を前に小刻みに震えるライメイを見ながら、ネコリアは苦笑する

 

「えっ………いや……ネコリア様の火の玉を真似しようとしたら……止められなくて………どうしましょう……」

 

「はぁ………ホントに考えなしね」

 

「ネコちゃんにそっくりだよな」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

部下の不始末は上司の不始末、軽くため息を吐きながらも《変幻》で人型に姿を変えたネコリアはリムルの冗談に突っ込み、魔力弾の前に立つ

 

「あたしに撃ちなさい」

 

「は……はいっ!」

 

呪法(じゅほう)養命樹(ようめいじゅ)!!!」

 

ライメイの放った魔力弾は、真っ直ぐとネコリアに突撃していく。そして、両手を広げ、勢いよく打ち鳴らすと地面から急速に生えた木が禍々しい養命樹に姿を変え、魔力弾を喰らう。僅か一瞬の出来事に獣人族(ライカンスロープ)達は呆気に取られ、ざわつき始める

 

「どうだ?すごいだろ、うちの参謀長ちゃんは」

 

「流石はカリオン様に認められし御方とその右腕……御二方とこの国に縁が出来た事に感謝を」

 

「こちらこそ、ありがたいよ」

 

「改めて歓迎するわ」

 

「「ようこそ魔国連邦(テンペスト)へ」」

 

かくして、獣王国(ユーザラニア)からの使者を迎え入れた魔国連邦(テンペスト)。此処から始まる新たな一歩は、後に来る魔物が統べる新たな国の大きな一歩となるのは少し先の話だ




使節団を迎え入れ、迎賓館に招き、宴の席を設けるリムルとネコリア。しかし、その飲酒量は半端ではなく………

スイヒョウの真骨頂その2 実はネコリアからの信頼が一番に高い

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第三十九話 酒は飲んでも呑まれるな!でも、泥酔しちゃったから仕方ないよね

今回の見所!ネコちゃんは酔っ払うと更に可愛い!以上!


「ああ……幸せ…」

 

「おかわり!」

 

使節団を迎え入れた夜、歓楽街ネコリアに新築された迎賓館では宴の席が設けられていた。当所は首都リムルに建てられる予定だった迎賓館だが、娯楽が充実している歓楽街の方が良いのでは?という声が持ち上がり、この歓楽街ネコリアに新築された

 

「二人とも、イケる口ね♪スイちゃん!樽ごと持ってきて〜」

 

「かしこまりました」

 

「まぁ!樽ごとだなんて、よろしいんですの?」

 

「ネコ様は器がデケェな!」

 

「にゃーっはっはっはっ!!!もっと褒めても良いわよ!」

 

魔国連邦(テンペスト)屈指の酒豪と呼ばれるネコリアと同等の量を流し込んでいくアルビスとスフィア、今までに自分と対等に飲み比べの出来る者たちが存在しなかったネコリアは気を良くした様で、スイヒョウに酒蔵から樽酒を持ってくる様に命じる。尚、アルビスは蛇の下半身で器用に樽を持ち上げ、スフィアはスキル《獣身化》で白い毛並みの虎に姿を変えて盃に注がれた酒を舐めている

 

「どうだ〜?楽しんで………って!樽ごと呑んでるっ!!!誰だ!ネコちゃんに樽ごと酒を出したのはっ!」

 

遅れて現れたリムルは樽ごと酒を呑む三匹の獣の姿に、ぎょっと両眼を見開く。相棒が酒豪である事は理解していたが彼女には樽酒禁止令を出していた筈、であるにも関わらず目の前には酒の風呂に浸かってんの?と言いたくなる様な体制のネコリアが居た。猫の姿で頭から樽に突っ込み、器用に呑む彼女の頬は紅く染まり、完全に酒乱状態だ

 

「にゃ〜ん………おしゃけ〜……」

 

「全く……泥酔するまで呑むなんて、気が緩み過ぎだろ…スイヒョウ、明日から暫く、ネコちゃんは禁酒決定だ。絶対にお酒をあげるなよ、分かったな?」

 

「は、はい。それにしても……見事に空ですわね……りんごのブランデーが…」

 

酒の海で泳ぎ、完全に泥酔してしまったネコリアに毛布を掛けながら彼女に酒禁止令を与える様にスイヒョウに命じる。彼女は其れに苦笑気味に応じながら、部屋の中に散乱する空樽に目を向け、またしても苦笑する

 

「だな、客に振る舞うのがメインだから気にしてなかったが……森の恵みに頼るのも限界があるか…」

 

「なら、良い考えがございます。我が国の果物を此方に回す手配を致しましょう」

 

「えっ!良いのかっ?」

 

願ってもない提案に、彼女の方に視線を向ければ、其処には此方を見詰めるアルビスとスフィアがいた。言わなくても理解してるよな?と言わんばかりの視線は「酒を獣王国(ユーザラニア)にも提供しろ」と主張していた

 

「にゃあ……にゃりゅにゃい…」

 

「そうだな、割り合いはどうしたらいい?」

 

寝惚けながらも会話を聞いていたネコリアが囁くのを聞き、代弁する様にリムルは問い掛ける

 

「細かいことは任せる!オレは美味い酒が飲めればそれでいい」

 

「分かった。スイヒョウ、商人詰め所まで代表を呼びにいってくれ」

 

「かしこまりました」

 

取り引きの場は酒の席で、勢いから決まるのが相場。新たに始まる他国との交流にリムルは満足気に頷いていた。そして、宴会は盛り上がり、明け方まで続き、お開きとなる頃には陽が差し込み、朝を告げる

 

「…………リムちゃん……頭がガンガンする……」

 

「禁酒して反省しなさい。暫くはお酒を呑ませないからな」

 

「そんにゃぁ〜………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たです!魔国連邦(テンペスト)!首都リムル!」

 

使節団到着から数日、アルビスとスフィアは帰ったが彼女等の配下たちは魔国連邦(テンペスト)の技術を学ぶ為に首都リムルや歓楽街ネコリアに滞在を続けている。そして、使節団とは別件で魔国連邦(テンペスト)調査を命じられたフォスは、見慣れない街並みに周囲を見回す

 

「ふぁー!道がスーッと真っ直ぐです!」

 

「わふっー!お散歩!お散歩!」

 

「ぬおおっ!?待たれよっ!エンカ殿っ!吾輩を引きずっております!ちょっ!痛いっ!」

 

「エンカが暴走してる」

 

「兄者……痛そう…」

 

「な、なんです……あれは……」

 

舗装された道を盛大に走り抜けるエンカと、その後方で傷だらけのガビル、異色の二人組にフォスは表情を引き攣らせる

 

「スイちゃん。この後の予定だけど」

 

「カイリンが歌唱施設の設計図が完全したので、ネコリア様に確認してもらいたいとの事ですわ。リムル様は御出立に向けての準備が忙しく、工事関係はネコリア様に一任するとおっしゃっておられました」

 

「はぁ…人遣いならぬ猫遣いが荒いわね」

 

「ネコ様だ」

 

「ネコちゃん様。おでかけ?」

 

「あら、フウちゃんにクウちゃん。にゃにしてるの?」

 

予定を話し合いながら、相棒の猫遣いの荒さにため息を吐いていると、フウとクウが駆け寄る

 

「さっき、兄者がエンカとお散歩してたから見てた」

 

「兄者、痛そうだった」

 

「あ〜今日はゴブタが仕事だから、ガビルに頼んだのを忘れてたわ。スイちゃん、後でガビルに回復薬(ポーション)をあげる様にベスターちゃんに伝えといて」

 

「かしこまりました」

 

颯爽と立ち去る背中、頭の猫耳、ふりふりと揺れる鍵尻尾。自分と近しい容姿ながら、愛らしくも妖艶さを併せ持ったネコリアにフォスは自然と見惚れていた

 

「だ、誰です?あの人は」

 

「狐さん、この国は初めて?」

 

近くにいたフウに問い掛けると、彼女は両眼を瞬きさせた後、問いを投げ返す

 

「は、はいです」

 

「あの人はネコリア様。フウとクウたちの御主人様で魔国連邦(テンペスト)の参謀長をしてる」

 

「盟主のリムル様と仲良し」

 

(あ、あれがカリオン様の言ってたネコリア=テンペスト様!盟主と同じ姓を持つ魔物……油断できないです!)

 

フォスがカリオンからの忠告に決意を固めている頃、当の本人はカイリンの工房に向かっていた

 

「にゃっくちゅ!」

 

「ネコリア様!お風邪ですの!?一大事ですわ!」

 

「大丈夫だから気にしないで………誰かに噂でもされてんのかしら…可愛いって罪ね」

 

相変わらずの自分大好きであったことは言うまでもない




リムルが式典に参加する為にドワルゴン王国に出立し、ネコリアは国のNo.2として朝から大奮闘!その中、彼方此方で騒ぎが発生し………

スイヒョウの真骨頂その3 実はリムルにも従う時がある

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第四十話 盟主代行も楽じゃない、次から次へと問題発生!

今回の見所!ネコちゃんはやる時はやる!だって可愛いから!以上!


「…………ベニマルちゃん、カリオンに喧嘩を売ったって聞いたけど?」

 

「ああ、もうネコリア様の耳にも入っていましたか。コテンパンにされましたよ、いやぁ……魔王は伊達じゃないですね」

 

今日のネコリアは一味違っていた、朝早くに起床し、執務室でリムルの代わりに盟主代行を務め、帰還した使節団の団長であるベニマルから報告を受けていた。尚、リムルが不在の理由はドワルゴンとの正式な国交樹立の式典に出席する為に出立したからに他ならない。故に彼の次に地位を持つネコリアが盟主代行を命じられ、現在に至る

 

「あのねぇ〜、友好関係を結ぼうって相手に喧嘩を売る?普通」

 

「何事も初見が肝心ですからね。次回からはリグル殿を団長に指名してもらおうと思います」

 

「グルちゃんに?まあ、経験はあった方が良いかもしれないわね」

 

「そう言えば、シオンの姿が見えませんね。ライメイと畑にでも行ってるんですか?」

 

「……………まぁ、色々とあったのよ」

 

シオンの名が出た途端、窓の向こうを見ながら遠い目をするネコリア。何があったのかは分からないが長年の付き合いがあるベニマルは何かを察し、苦笑する

 

「暴れたんですね………」

 

「大変だったわ……リムちゃんがシュナちゃんと出掛けると知った途端に、歓楽街の半分くらいを破壊してくれたわ………お陰様で徹夜作業よ………」

 

「御迷惑をかけます………」

 

眼の下に隈を作り、連日の徹夜作業の過酷さを物語っていた。報告を終えたベニマルが去ると、入れ替わる様に書記官のスイヒョウが部屋に入って来る

 

「ネコリア様。お耳に入れたことが」

 

「にゃに?スイちゃん」

 

紙の代わりである木簡を抱えたスイヒョウに問いを投げ掛け、頭の中で良い話であって欲しいと願うが、その幻想は直ぐに砕け散る

 

「首都リムルの商業地区と歓楽街ネコリアの迎賓地区で騒ぎがあったとの報告が警備隊の方から上がって来まして………如何なさいましょう?」

 

「はぁ………現場に向かうわよ」

 

問題の対処は警備隊に一任しているが、何かがあってからでは遅いと判断したネコリアは重い腰を上げ、迎賓地区に向かう

 

「わふ?ネコリア様!ソウカ!ネコリア様だぞっ!」

 

「本当だ………今朝は執務室にいらっしゃったのでは?」

 

現場に着くと、散歩中だったエンカとソウカが主の登場に其々の反応を返す

 

「この付近で騒ぎがあったって聞いたのよ。で?元凶は誰?」

 

「そう言えば………少し前に狐の獣人族(ライカンスロープ)と竜を祀る民の女子(おなご)が揉めていましたね。でも少しだけ拳を交えた後にミリム様の食べた料理を食べに行くとかで、商業地区の方に行きましたよ」

 

「狐の獣人族(ライカンスロープ)はカリオンの国から来た子よね?竜を祀る民って?」

 

「竜を祀る民はミリム様の国で神官を務める民ですわ。しかし、この時期に魔国連邦(テンペスト)に来るとなると裏がありそうですわね」

 

「何にしても騒ぎが起こってないなら、にゃんでも良いわ………にゃ?」

 

騒ぎが起きていない事に安堵し、執務室を戻ろうと歩き出そうとした時だった。トレードマークの鍵尻尾に違和感を感じ、歩みを止める

 

「ネコリア様?」

 

「スイちゃん、あたしの尻尾に触ってる?」

 

「ネコリア様の御尻尾に触れるなんて、恐れ多いですわっ!」

 

「だとしたら…………誰?」

 

スイヒョウではないと理解し、背後を振り向き、その触れている人物に視線を向けた。其処に居たのは、今までに出会った事も無ければ、配下でもない魔物の少女だった

 

「もふもふしてるのぉ」

 

「…………背中のはハネ?スイちゃん、この子の種族は?」

 

有翼族(ハーピィ)ですわね。天翼国(フルブロジア)に暮らす種族だと聞いています…………って!そこの有翼族(ハーピィ)!ネコリア様から離れなさいっ!」

 

「イヤなのぉ、もふもふするのぉ」

 

「離れなさいっ!エンカ!見てないで!手伝いなさいな!」

 

「わふっ!ダメだぞっ!お散歩中だからなっ!」

 

「散歩とネコリア様の何方が大事なのですかっ!?」

 

「喧嘩してる場合ですかっ!?」

 

「…………仙法・猫毛分身」

 

喧嘩を始めるエンカ、スイヒョウを止めに入るソウカ、状況の収束が見えない事を悟ったネコリアは自分の毛を抜き、ぱんっ、と両手を打ち鳴らす。刹那、毛が一匹の黒猫に姿を変える

 

「悪いんだけど、これで我慢して」

 

「にゃー」

 

「お……お猫様………」

 

「にゃ?」

 

「ネムは新しい寝床を探しに行くのぉ〜!!!」

 

分身を見た瞬間、ネムと名乗った少女は一目散に飛び去っていく。残されたネコリアたちは唖然とするしかなかった

 

((なんだったんだ……!!!))

 

「にゃー、にゃーにゃにゃ」

 

「わふ?ネコリア様の分身は良いこと言うなー!」

 

突っ込みを放つネコリアたちを他所に、マイペースなエンカはネコリアの分身体と世間話で盛り上がっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「うぅ………なんで、おいらまで……」

 

ドワルゴン王国から帰国したリムルとゴブタは、ある事が原因でシオン特製朝御飯を頂いていた。盟主代行を終えたネコリアは何時もの時間に目を覚まし、リムルの庵に顔を出す

 

「朝から御馳走ね♪」

 

「ネコリア様の分もありますよっ!」

 

「いらにゃい♪」

 

差し出された朝御飯を笑顔で断り、鍵尻尾をふりふりと振りながら町の方に向かう。起きたばかりであるが故に朝食を食べようと商業地区を歩いていると、国民から声を掛けられるので返事を返し、前足を振る

 

「ゴブイチさん!皮が剥けたわっ!」

 

馴染みのあるゴブイチの店の前を通りかかった時だった。中から元気の良い声が響き渡る

 

「うん、上手く剥けてる。ステラは筋がいいね」

 

「当然よっ!」

 

「イッチーが弟子を取った話はホントだったのね」

 

「ね、ネコリア様っ!?」

 

「えっ!リムル様の右腕って言われてる魔物のっ!?」

 

「にゃっはろ〜」

 

空いていた窓から入り、声を掛ければ、気付いたゴブイチとツインテールの少女が声を挙げる

 

「今朝はどうされたんですか?」

 

「朝御飯を探してるのよ………にゃ?丁度いい所にフライドポテト見っけ〜、いただきます♪」

 

「へっ!?ちょっ!それっ!」

 

「しっ!ステラ、落ち着いて」

 

厨房にあったフライドポテトを食べ始めるネコリア、少女基ステラが止めようとするがゴブイチが待ったを掛ける

 

「塩加減……揚げ具合……うん!問題ないわ」

 

「へっ……?」

 

「このフライドポテトを最初に調理なさったのがネコリア様でね。後にリムル様が正式に売り出す事を決めたんだ」

 

「そうなのっ!?」

 

「ステラちゃんだった?」

 

「は、はい!」

 

不意に名を呼ばれ、ステラは緊張で裏返った返事を返す。するとネコリアは《変幻》で人型になり、店の扉に手を掛け、魔性の笑みを浮かべる

 

「これからも頑張りなさい、新しい料理が知りたい時は教えてあげるから」

 

「ありがとうございます!!!」

 

後にステラは、「リムル様、それにネコリア様はミリム様と同じくらいに尊敬出来る方だわっ!」と語った

 

「えっ!ネコリア様に会ったですか!?ステラも、ネムも!」

 

「えぇ!素晴らしい方だったわ!時間がある時に料理を教えてくれる約束までしてくれたのよっ!」

 

「ネムは苦手なのぉ〜………お猫様だからぁ……」

 

(うぅ……ネコリア様……話を聞く限りは良い魔物みたいですけど……まだまだ油断ならないです…!)




会議室に集められたリムルの口から放たれたのは衝撃の一言、其れに対するネコリアの反応は………

スイヒョウの真骨頂その4 実はエンカと喧嘩友達

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第四十一話 俺はこいつと旅に出る!黒猫がにゃん♪と鳴く

今日の見所!ネコちゃんが突っ込み役に回る!以上!


「んにゃぁ〜……こんな朝早くに…にゃによぉ〜……」

 

欠伸をしながら、会議室に向かうネコリア。朝が苦手な彼女にとって早朝会議は何よりも厄介な難敵と言える、しかし盟主であるリムルの呼び出しに「No.2」である自分が応じない訳にもいかず、船を漕ぎながらも歩みを進める

 

「ネコちゃん。相変わらずの重役出勤だな」

 

「重役………可愛くない響きね、もうちょっと可愛いくしにゃさいよ」

 

「可愛いく……?具体的な例をあげてくれ」

 

「可愛い重役」

 

「可愛い付けただけじゃん!!!」

 

今日も自らの可愛さに自信満々なネコリアにリムルは突っ込みを放つも、当の本人は気にせずに会議室内を見回す

 

「幹部全員集合だなんて、穏やかじゃないわね。何を企んでるの?リムル」

 

何時もの軽い言動とは正反対の参謀長としての視線と口調で相棒を見るネコリア。その瞳は全てを見透かし、彼の考えも見通しているかの様にも見える

 

「俺は人間の国に行こうと思う。でも、ドワルゴンとは違って、魔物を受け入れてくれるとは限らない。今回は人間に化けて潜入するつもりだ」

 

「お話は分かりましたが……リムル様御一人で旅立たれるというのは……」

 

「左様じゃな、万が一のことがあればジュラの大同盟も根底から崩壊するやも知れぬ」

 

不安を露わにするリグルド、冷静ではあるがリムルの身を案じるハクロウ。すると彼は口を開く

 

「なーに、ランガは連れて行くし、ソウエイの分身を連絡役に回してもらうから一人旅って訳じゃない。ネコちゃんの分身も同行してくれるしな」

 

「は?にゃによ、それ?あたし、聞いてない」

 

「今さっき思いついた」

 

何時の間にか計画に巻き込まれていた事に、驚きながらもリムルの適当さを誰よりも理解しているネコリアは、軽くため息を吐く

 

「はぁ………分かったわよ。その代わり!一つだけ約束して!」

 

「お、おう…」

 

ピン、と指を立て、念を押す様にネコリアはリムルに真っ直ぐと視線を向ける

 

「あたしの協力が必要な時は絶対に呼んで。分かったわね?」

 

「おう、約束だ」

 

相棒からの約束に笑顔で応じるリムル。その後、案内役には冒険者三人組を据えるという形で会議は終了し、静まり返った会議室でネコリアは軽くため息を吐いた

 

(ブルムンド王国………人間の国でありシズちゃんが生きた国………あたしみたいな魔物が足を踏み入れちゃいけない場所……あそこには人間しかいない……人間は魔物を嫌う………ダメねぇ〜……元は人間なのに……魔物の方が好きになってきてるみたい……)

 

心中に浮かぶのは、人間だった前世の頃には存在しなかった感情。スーパーヒロインを目指した穂川亜結とは掛け離れた姿、今の彼女を前世を知る者が見て、誰が彼女だと思うだろう。それでも彼女はこの姿が、自分を慕う配下が、頼ってくる国民が、笑い合える相棒と過ごすネコとしての生活を気に入り始めていた、人間だった頃には存在しなかった感情を愛おしいと思い始めていたのだ

 

「ホント………呆れるくらいに…人間臭いスライムね……リムルは…」

 

「わふ?人間ってくさいのか?」

 

「エンカ、ネコリア様の思案の邪魔ですわよ。アナタは骨でも齧っていなさいな」

 

「なにおうっ!」

 

素っ頓狂な発言を繰り出すエンカに空かさず突っ込みを放つスイヒョウ、それに反応したエンカが頬を膨らませる姿にネコリアは優しく二人の頭を撫でる

 

「仲良くしなさい」

 

「「はい!」」

 

「…………はっ!会議はどうなった!?妹!」

 

「とっくに終わりましたよ、まさか寝てたんですか?姉上。あとシオンです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!じゃあ留守は頼んだぞ」

 

会議から数時間後、案内役である三人の休憩も挟み、最初に中継地点となるブルムンド王国に旅立たとうするリムルを一目見送ろうと幹部陣と国民が見送る為に町の入り口に集まっていた

 

「リムちゃん。約束を忘れないでね」

 

「分かってるさ。なっ?ネコツーちゃん」

 

「にゃー」

 

「人の分身に勝手に名付けしないでくれる?自我を持たせるつもりなの?アンタは」

 

「にゃ?にゃにゃにゃん」

 

「はぁ…あたしはうれしーじゃないのよ、全く。良い?最初に言っとくけど、渡してある仙術ポーション以外は与えないでね、絶対に!」

 

「分かってるって。じゃあ行ってくる!」

 

リムルの背が見えなくなるまで手を振り続ける国民たち、その姿に呆れながらもネコリアは思い出していた。三百年前に転生し、ヴェルドラと出会い、共に長い時を過ごしたある日、彼女の前にスライムが現れた。その出会いから始まった建国譚、月日は一瞬、瞬く間に二年の時が過ぎ、気付けば一つの国を治める立場、不思議とネコリアの頬が綻ぶ

 

「ねぇ、リグル」

 

「どうされました?ネコリア様」

 

「あの日、アンタがあたしとリムルを見つけたのは必然だったんじゃないかなって思うの。世界がそうする様にあたし達を繋いだんじゃないかって……」

 

「かもしれませんね」

 

そう言ったネコリアの横顔は嬉しそうだった。リグルも当時を思い出したのか、優しく笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?にゃんですって?」

 

旅立ちから数日後。盟主代行を任されたネコリアはイングラシア王国に到着したリムルから近況報告を受け、耳を疑った

 

『だから、教師になったんだよ』

 

「ごめん……話が全く呑み込めない……」

 

『えっとだな』

 

リムルからの報告はこうだ、イングラシア王国で自由組合総帥(グランドマスター)の神楽坂優樹と会い、五人の子どもたちの近況についての話を進めて行く中で、彼等と分かり合うには教師が相応しいという事になり、現在に至るとの事である

 

「で?あたしに何をしろって言うのよ」

 

『精霊の棲家を調べてくれないか?上位精霊が其処に居るらしいんだ』

 

「え〜………にゃんで……あたしが……」

 

『やってあげるにゃー、本体(ネコリア)

 

「そうは言うけどね、分身…………はい?」

 

リムルからの依頼に不服そうにするネコリアに呼び掛ける一匹の黒猫、一度は答えを返し掛けたが直ぐに違和感に気付き、水晶玉を二度見する

 

「ちょっと待って!にゃんで、分身が自我を持ってんのよっ!?まさか名付けした訳っ!?」

 

そう、その言葉を発した黒猫とはリムルに同行させていたネコリアの分身体だったのだ。本来は鳴き声しか発さない筈の分身が言葉を発したという事は自我を持ったという事を意味する。魔物の進化に伴う過程は名付け、つまり分身体にリムルが名を付けたという解答に行き着くのが適当だ

 

『あ〜………いや…生徒に名前を聞かれた時に……』

 

『分身改めネコツーにゃん!ツーちゃんって呼ぶにゃ♪』

 

「………………リムちゃん?次に会った時にオハナシがあるわ♪」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった。かくして、ネコリアは盟主代行と精霊の棲家の入り口探しという大役を任される事になった




盟主代行も板につき、暇を持て余すネコリアはハクロウの訓練に顔を出す。そこに居たのは一人の狐耳少女……

スイヒョウの真骨頂その5 実はエンカと仲良し

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第四十二話 鈍った体には修行が一番!久しぶりに連絡した親友は慕われていた

今回の見所!ネコツーも可愛いけど、ネコちゃんに勝る可愛いさは有り得ない!以上!


「にゃぁ…………や、やっと終わった…」

 

「御苦労様です。ネコリア様」

 

リムルの旅立ちから一ヶ月、書類整理に追われていたネコリア。全ての書類に目を通し、地獄の日々から解放された事に安堵感を覚え、机に項垂れるネコリアを労い、スイヒョウが御茶を差し出す

 

「ありがと〜。スイちゃん」

 

「いえ、私にはこのくらいしか出来ませんから」

 

「にしても……一ヶ月も経つのね、リムちゃんが旅立ってから」

 

「長い旅ですわね。何時もは長くても一週間程度ですのに」

 

「それだけ……やらなきゃいけないことなのよ。そうよね?ネコツー」

 

長く留守にする盟主の姿を思い出しながら、スイヒョウと会話をしていたネコリアは唐突に机の端に置かれた水晶に呼び掛ける

 

『シズちゃんがやり残した大事な案件だって、リムル様は言ってたにゃ』

 

水晶から、問いに答えたのは自我を得た分身体基ネコツー。その喋りは一ヶ月前よりも流暢になっており、名付け親であるリムルに敬称付けをする程までに陶酔していた

 

「アンタ……だいぶ喋りが流暢になったわね…」

 

『みんなが色々と教えてくれるんだにゃー。ネコリア様にも会わせてあげたいにゃ』

 

「普通に呼びなさいよ……自分に様付けされると、にゃんか変な気分ににゃってくるわ…」

 

名付け親であるリムルが主人ならば、本体であるネコリアも彼女にとっては従うべき存在。故に敬称を付けたが、当の本人は引き気味の表情を浮かべる

 

『そう言えば、精霊の棲家探しはどんな感じにゃ?』

 

「フウとクウが集めた情報では、ウルグレイシア共和国の自然公園に入り口があるみたいよ。探すのに色々と苦労したんだから………しっかりと聞いてんの?リムちゃん」

 

ネコツーからの問いに応え、一ヶ月で調べ上げた情報を説明し、水晶の向こう側に居るであろう相棒に呼び掛けると、彼は顔を覗かせる

 

『ごめんごめん、でもさすがはネコちゃんだよなー!面倒そうにしてても、しっかりと仕事をこなすんだから!よっ!出来る女っ!』

 

「にゃふふ………にゃっーはっはっはっ!当たり前よ!あたしを誰だと思ってるの?ジュラの大森林にその名を轟かせるネコリア=テンペストとはあたしのことよ♪」

 

『良いかね?この子はすぐに調子に乗るから、褒めすぎてはいけないよ』

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

『ネコちゃん。俺も最近、その情報を知り合った人から聞いたところだったんだ。何でも親切なネコの魔人に大量の回復薬を卸してもらった商人だとかでな、ソイツが見つけてきた人……ていうかエルフさんがネコちゃんのと同じ情報をくれたよ。覚えてないか?ドワルゴンにいたダークエルフのオネーサンだよ』

 

「にゃるほど。それにしても偶然か、必然か………この広い世界で商人に会えるなんて、強運ね。その親切で可愛いネコの魔人に感謝しにゃさいよ」

 

『可愛いは言ってない。でも………ありがとな、俺たちの生徒(アイツら)の為に親身になってくれて』

 

『先生!なにしてるんですか?』

 

『また誰かと話してる!彼女よ!絶対!』

 

『先生に彼女だって!ケンちゃん!』

 

『なにっ!先生!彼女いんのかっ!?』

 

『彼女さんの話、聞かせて欲しい』

 

『すまん!ネコちゃん!後でまた連絡するから!人の会話を盗み聞きするなっ!』

 

『またね〜、ネコリア様〜』

 

通話が終わり、水晶からリムルの姿が消えるとネコリアは窓の外に流れる雲を眺めながら、軽くため息を吐いた

 

俺たちの生徒(アイツら)か………ふふっ、しっかりと教師してるみたいで安心したわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハクロウちゃ〜ん」

 

「おや、これはこれはネコリア様。如何なされましたかの?」

 

盟主代行の仕事が落ち着き、鈍った体を動かそうと訓練場を訪れたネコリアは剣術指南役のハクロウを見つけ、声を掛ける

 

「ちょっと体が鈍ったから、久しぶりに鍛えてくれない?」

 

「ほっほっほっ。ネコリア様が鍛えて欲しいとは御珍しい………加減は致しませんが、よろしいか?」

 

「当たり前よ!」

 

地を蹴り走り出したネコリアは、ハクロウの流れる様な動きに追随するかの様に、軽い身のこなしで拳撃を、蹴りを、叩き込む。その姿に誰もが見惚れていた、まるで踊る様に動き回る彼女は、誰よりも可憐で美しく、妖艶である

 

「師匠のしごきにあそこまで追随出来るのなんて、ネコリア様くらいすよ……やっぱり年寄り同士通じるものがあるんすかねー」

 

「エンちゃん。散歩の時間よ」

 

「わふっ!いくぞっ!ゴブタっ!おさんぽっ!おさんぽっ!」

 

「んまっ!?ちょっ!あぎゃァァァ!!!」

 

修行風景を見守っていたゴブタの呟きを、聞き逃さなかったネコリアが指を軽く鳴らすと呼び掛けに応えたエンカが姿を現し、死のお散歩へとゴブタは旅立った

 

「ほっほっほっ、ネコリア様は相変わらず気闘法の扱いが上手いですな」

 

「思えば、ハクロウに教わったんだったわね」

 

「元々のセンスが高かったのでしょうな。《魔力感知》を持っておりましたし………どうされました?ネコリア様」

 

「ん………ねぇ、あそこに居るのって……ステラよね?確か」

 

訓練を終え、ネコリアと雑談していたハクロウは彼女の視線が木陰に向いている事に気付き、声を掛ける。すると木陰に座るツインテールの少女基ステラを指差し、問いを投げ掛けてきた

 

「知り合いでしたか。差し入れを届けにきたついでに訓練に参加させてほしいと言われましてな、先程まで鍛えておったんですじゃ」

 

「にゃるほど……じゃあ、あの狐耳の子も?」

 

続いて、興味を示したのはステラの隣に座る狐耳の少女。その風貌から、カリオンが治める獣王国(ユーザラニア)の住人である獣人族(ライカンスロープ)である事は理解出来るが、ネコリアは彼女に見覚えが無かった

 

「確か、警備隊に所属しておるフォスでしたかの。ゴブエモンの下で励んでおると聞きましたぞ」

 

「ふぅん………ねぇ、アンタ。あたしと戦ってみる気はある?」

 

「ふぁっ!?ね、ネコリア様!?」

 

にやっと笑い、一戦交えようと提案するネコリアにフォスは面を喰らった様に驚き、彼女の名を呼ぶ

 

「なんですって!?ネコリア様!また料理教えてください!」

 

「分かってるわよ。………で?どうする?」

 

ネコリアの登場に反応するステラ、彼女の申し出に反応を示し、フォスに二度目の問いを投げ掛ける

 

「よろしく頼むです!」

 

「良い返事ね♪ステラと二人でかかってきなさい、あたしは片手で相手してあげる」

 

(片手……いくらなんでも舐めすぎですっ!)

 

(ネコリア様と模擬戦!?願ってもない話だわ!)

 

「さぁ、踊りましょう?あたしと」

 

その魔性の笑みは、時に美しく、時に妖艶で、まるで小悪魔の様だと後に彼女を誰よりも知る者は語った




フォス、ステラと模擬戦を行うネコリア。果たして勝負の行方は…!

エンカの真骨頂その1 実はネコリアが呼べば即参上

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第四十三話 いざ、親友との再会に向けて!旅立ちの日!

今回の見所!ネコちゃんは強くても可愛い!以上!


「最初から全力です!」

 

その言葉と共にフォスの雰囲気が一変。獣人族(ライカンスロープ)の特徴が色濃く現れた姿に変化し、右手にナイフを構える

 

「にゃるほど。噂に聞く《獣身化》ね」

 

神経を研ぎ澄ませ、軽く足踏みをするネコリアの動きを要注意深く観察し、持てる五感を総動員させ、彼女に追随しようと地を蹴った

 

(今ですっ………へっ?)

 

ナイフを突きつけようとした瞬間、フォスは自身が宙に放り出された事に気付く。添える様に彼女の手からナイフを取り上げ、力入らずの投げ技を披露し、魔性の笑みを見せる

 

「素直過ぎるわね」

 

「ネコリア様!覚悟!」

 

「力任せも構わないけど、少しは周りにも視野を広げるのも大切よ?」

 

「へ?それって----ぎにゃっ!?」

 

「ぐぅぅ……頭が痛いですっ……」

 

背後からネコリアを狙ったステラの頭上にフォスが落下し、盛大に頭をぶつけ合う。ハクロウの手合わせの時とは異なる動きに翻弄され、思う様に立ち回れず、痛む頭を抑えながら、顔を上げる

 

「フォス。どうだ?ネコリア様は」

 

「あっ!グルーシス様!情けないです……手も足も出なかったです…」

 

「無理ないっすよ。何せ、ネコリア様は三百歳越えのババアっすからねぇ」

 

「エンちゃん。二回目の散歩に連れて行ってくれるみたいよ」

 

「わふっ!?二回目かっ!よーし!いくぞっ!ゴブタっ!おさんぽっ!おさんぽっ!」

 

「んまっ!?ちょっ!あぎゃァァァ!!!」

 

散歩から解放されたのも束の間、余計な一言を口走ったが為にゴブタは再び旅立った。叫び声を挙げる彼を他所にネコリアは優しく笑う

 

「フォスちゃん。偶にあたしの配下も鍛えに来たりするから、相手をしてもらいなさい」

 

「ネコリア様の配下の方々………って!そんな人たちに修行をつけてもらってもいいですかっ!?」

 

「大丈夫よ。まだまだ、あの子たちも未熟な所があったりするから、良い刺激にもなるわ」

 

「ありがとうございます!!!」

 

ふりふりと鍵尻尾を揺らし、去りゆく背中にフォスは御辞儀をしながら元気の良い礼を述べる。鈍った体を動かした事で、余韻の残っているネコリアは仙術の修行をしようと何時もの森に向かおうと歩いていた

 

「ややっ!ネコリア様!」

 

「あら、ガビル。こんなとこでにゃに…………なんか見覚えのある鳥ちゃんね」

 

名を呼ばれ、崖下を見ると突き出した岩場に鎮座していたガビルが視界に入った。そして、彼の翼に守られる様に寝息を立てる何時かの有翼族の少女基ネムが居た

 

「いやはや、睡眠を邪魔してしまったお詫びにと思いましてな」

 

「ふぅ〜ん………ちゃんと仕事しにゃさいよ?ヒポクテ草の栽培の捗り次第では、幹部にしてあげるから」

 

意外と面倒見の良いガビルに優しく笑い掛け、彼の仕事振りに対する其れ相応の対価を約束する

 

「おお!誠ですか!それは頑張らねばなりませんな!して、ネコリア様はこれからどちらに?」

 

「修行よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?にゃんで、あたしも行かなきゃならないのよ?」

 

定期連絡を受けていたネコリアは気怠るそうに、水晶の向こう側に問いを投げ掛けた。その先に居る彼は罰が悪そうに頭を掻く

 

『頼むよ。ああいう場所では何があるか分からない、ネコちゃんの力を貸してくれ』

 

「ホント……リムちゃんのそういう所が嫌いよ」

 

『とか言って、来てくれるんだろ?いやぁ!持つべきは頼りになる相棒ちゃんだよなぁ!じゃあ!現地で会おう!』

 

伝えるだけ伝え、定期連絡を終了させたリムル。残されたネコリアは近くにあった書類に手を置く

 

「………………にゃに!切ってんのよ!?要件スライム!!!」

 

「ネコリア様!?八つ当たりはいけませんわっ!」

 

怒りと共に投げ捨てた書類が空を舞い、スイヒョウが慌てて彼女を制止する。それでも彼女自身、心に残った唯一の痼りを捨て去る事が出来ず、ため息を吐く

 

「スイヒョウ。大至急、幹部たちを集めてくれる?」

 

「はい、直ちに」

 

ネコリアの呼び掛けに伴い、幹部陣と彼女の配下の各部隊長が会議室に呼び出された。本来は幹部と盟主、参謀長以外の者は参加権は与えられていないが今回は例外、ネコリアが主体であるが故に彼女の配下も参加を許された

 

「ネコリア様。それで話というのは?」

 

切り出したのはリグルド、この国一番の古株であり行政大臣の立場となった彼は、現時点で「No.3」の地位を持つ

 

「ちょっと急なんだけど、リムルの手伝いに行かなきゃいけなくなったの」

 

「なんと!リムル様の!」

 

「ずるいです!ネコリア様だけ、リムル様の所に遊びに行くだなんて!」

 

「ちょっとだけ黙ってろ、妹。ネコリア様が決めたことなら構いませんが、どちらに行かれるのですか?」

 

騒ぎ出すシオンを咎めたライメイは、主人であるネコリアの意思に従う事を表明すると同時に目的地を問う

 

「ウルグレイシア共和国の最北に位置する、ウルグ自然公園よ」

 

「確か………あの場所には精霊の棲家がありましたわ」

 

「精霊の棲家……何故、その様な場所に?」

 

ウルグ自然公園の名を聞き、その場所にある遺跡の名をスイヒョウが口にすると反覆させた後にベニマルが問う

 

「ちょっとした野暮用よ。安心しにゃさい、用事を済ませたら直ぐにリムルと帰るわ」

 

「盛大な宴を準備をしてお待ちしております!」

 

「じゃあ行ってくるわね」

 

「「えっ………今からぁ!?」」

 

何時もの様に魔性の笑みを見せたネコリアの唐突な言葉に、会議に参加していた全員が声を挙げた

 

「わふっ!出発か!ネコリア様!」

 

既に町の入り口で待機していたエンカは、現れた主人の姿に尻尾を、ぱたぱたとさせながら彼女に駆け寄る

 

「ええ、お願い出来る?エンカ」

 

「任せろだぞっ!」

 

「良いですわね?エンカ。くれぐれもネコリア様の御迷惑にならない様にするんですわよ」

 

「スイヒョウに言われなくても分かってるやいっ!」

 

「どうでしょうか。所詮は駄犬ですし」

 

「なにおうっ!」

 

「ネコリア様、こちらを。私が栽培した野菜を盛大に詰め込んだ弁当です!是非ともリムル様たちに差し上げてくださいな!」

 

「アネキ。新しいコートだ」

 

「ネコリア様の御帰りをお待ちしています。ほら、フウとクウも挨拶しないか」

 

「いってらっしゃい」

 

「らっしゃい…」

 

相変わらずの言い合いをするスイヒョウとエンカ、弁当箱を差し出すライメイ、新作の装備を着せるカイリン、深々と頭を下げるソウカと彼女の背後から見送りの言葉を掛けるフウ、クウ。配下たちにネコリアは振り返る

 

「町を守ってね♪」

 

「「「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」」」

 

「「可愛い」」

 

「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるスイヒョウ、エンカ、ライメイ、カイリン、ソウカは目をハートにしながら悶える。フウとクウは表情に変化はないが僅かに頬が紅潮していた

 

「エンカ!」

 

「わふっ!任せるんだぞっ!」

 

かくして、ネコリアは旅立つ。一ヶ月振りに再会する相棒との再会の地に向け、彼女とエンカは走り出した。その先に待つ災禍の足音がゆっくりと近付いているとも知らずに…




ウルグ自然公園に着いたネコリアは、遂にリムルと再会する!そして二人の前に現れたのは………

エンカの真骨頂その2 実はおバカ

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第四十四話 迷宮に妖精が居たから、殺虫剤を吹きかけちゃった

今回の見所!ネコちゃんはファッション抜群!以上!


「お〜い!」

 

「んにゃ……やっと来たわね」

 

精霊の棲家付近で、微睡んでいたネコリアは聞き覚えのある声に薄目を開き、その声の主である相棒に呆れた視線を向ける

 

「久しぶりだな!ネコちゃん。今日も何時も通り眠そうで安心したよ」

 

「エッチなスライムには言われたくないわよ」

 

「エッチなスライムちゃうわっ!!!」

 

「わふっ!アニサマ!」

 

「おお!我が妹!」

 

定番の発言を繰り出すネコリアに対し、リムルも決まり文句で突っ込む。その隣で久方振りに兄に再会したエンカが嬉しそうに尻尾を、ぱたぱたとさせている

 

「先生!誰よ!?その美人!」

 

「恋人さんですか?」

 

「先生の恋人……」

 

「くそっ!先生なんか嫌いだぁ〜〜〜!」

 

「ケンちゃん!落ち着いて!」

 

リムルの背後から姿を見せた五人の少年少女、初めて会うネコリアがリムルと如何なる関係なのかに興味津々な様子。担任というよりも友達的な感覚で慕われている相棒に、じと〜、とした視線を向ける

 

「アンタ………どんな慕われ方をしてんのよ…」

 

「あはは……オッホン!紹介しよう!この人はネコリア=テンペスト!俺の相棒でお姉さんみたいな人だ」

 

「えぇ〜………こんなエッチな弟はいらにゃいんだけど」

 

「エッチじゃないやいっ!ちなみにネコツーの飼い主でもある」

 

「飼い主にゃー」

 

「飼い主じゃなくて本体………はぁ、なんでもいいわ」

 

突っ込みを放棄し、呆れた様にため息を吐くネコリア。その姿は悩める美女を思わせる程に妖艶である。頭の猫耳を隠す為に猫耳型帽子を被り、特徴である尻尾も腰にベルトの様に巻きつけるという何処ぞの戦闘民族を彷彿させる隠し方をしているが故に、彼女を魔人であると思う者は誰もいなかった。桃色のファーコートにチューブブラ、ショートパンツから覗く生脚は、彼女の色気を最大限に発揮する魔性の武器と化している

 

「ツーちゃんの飼い主なのっ!?どうやったら喋る猫を呼び出せるのか教えて!」

 

「それは先生に聞きなさい。あたしのとこに居た時は喋らなかったわ」

 

「先生はすごい」

 

「なんでクロっちが誇らし気なの?」

 

「結局、ネコリアさんは先生の彼女じゃないのか」

 

「イヤよ、こんなエッチなのが恋人とか」

 

「俺も願い下げだ。こんな寝ることしか頭にない怠惰の権化みたいなのが恋人とか」

 

「引きちぎるわよ」

 

「なにをっ!?」

 

謎の文句にリムルの突っ込みが冴え渡り、自分たちを導く存在である彼を手玉に取る様に扱うネコリアの存在は子どもたちにとって、新鮮だった

 

「さてと……行きますか」

 

「だな」

 

掴み的な交流を済ませ、当初の目的である精霊の棲家へと足を踏み入れる。中は、のんびりとした雰囲気の一本道が続き、歩き続けているとネコリアが足を止めた

 

「どうした?ネコちゃん」

 

「………気配がするわ。にゃんか居るわね」

 

「精霊の気配か。お出ましみたいだな」

 

「みたいね。此方側に敵意はないわ、用を済ませたら直ぐに立ち去る事を約束するから、上位精霊の居る場所を教えてくれるかしら?」

 

精霊の気配を感じる方向に、ネコリアは目的である上位精霊の場所を教える様に交渉を持ち掛ける

 

『あはは、おもしろい。良いよ、教えてあげても………ただし!試練に打ち勝ったらね』

 

精霊が呼び掛けに応えたのも束の間、試練と口にした瞬間。二体の魔人形(ゴーレム)が姿を現す

 

「「ゴ……魔人形(ゴーレム)っ!?」」

 

「ネコちゃん。一体は任せていいか?」

 

「イヤよ」

 

「即答っ!?」

 

「まあ、冗談だけど。丁度いいウォーミングアップにはなりそうね」

 

魔性の笑みを浮かべ、にやりと笑う彼女は軽口を叩きながらも魔人形(ゴーレム)の大振りな拳を軽やかに躱す姿は正に猫そのもの、リムルも背後でランガとエンカに守られる子どもたちを庇いながら魔人形(ゴーレム)の拳を避ける

 

「ネコツー!子どもたちを守りなさい!」

 

「了解したにゃ!仙法・岩土盾(がんどいん)!!!」

 

本体(ネコリア)からの指示を受け、ネコツーは子どもたちを守る為に付近の岩に魔素を送り込み、巨大な岩の盾を生成する

 

「ネコちゃん!」

 

「はいはい……ホントに猫遣いが荒い相棒ね!仙法・花華乱(かからん)!!!」

 

ぱんっ、と両手を打ち鳴らした瞬間に目眩しの花吹雪が舞い、死角から魔人形(ゴーレム)にリムルの放った黒炎が命中し、消滅する

 

『う、うそ!?アタシの聖霊の守護巨像(エレメンタルコロッサス)聖霊の剛力巨像(エレメンタルコロッセオ)が!たった一撃で……!?』

 

声の主は、自らの力作が消滅した事に驚きを隠せず、驚愕する

 

「先生すげぇ!」

 

「ホント!ネコリアさんもスゴい!あの花が舞うヤツはなにっ!?すっごい綺麗だった!」

 

「魔法とは違うんですか?あれって」

 

「そっ、仙術よ」

 

「仙術………興味深い」

 

「ネコツーもありがとう。僕たちを守ってくれて」

 

「当たり前にゃ」

 

「さて………そろそろ、出てきなさいよ。居るんでしょ?」

 

和気藹々と盛り上がっている面々、するとネコリアが声の主が居るであろう方向に呼び掛ける

 

「出てこてないと燃やし尽くす」

 

「リムちゃん……アンタ、暫く見ない間に物騒なことを口走る様になったわね」

 

「はいはいはいはい!たった今、恥ずかしながら、呼ばれてやって参りました!我こそは偉大なる----ぎゃぁぁぁぁ!!!ちょっと!何すんのよっ!?アンタは!!!」

 

空間が歪み、姿を見せた黄色い光の中から姿を見せた小さな妖精が自己紹介しようとした瞬間、ネコリアが懐から取り出した缶スプレーを吹きかけた

 

「ハエが出たから殺虫剤を吹きかけたのよ」

 

ラベルを見せ、缶スプレーが殺虫剤である事を妖精に教える。如何やら、彼女は妖精をハエだと判断した様で、左手に殺虫剤、右手にはハエ叩きを持っている

 

「ハエじゃないわよ!我こそは偉大なる十大魔王が一柱!迷宮妖精(ラビリンス)のラミリスである!」

 

「魔王?ハエの?」

 

「ハエじゃないわよ!どっから見ても可愛い妖精ちゃんでしょうが!」

 

「ああ、妖精か。で?なんのハエ?見た目的に北陸地方にいる種類?」

 

「ハエから離れなさいよっ!!!というか北陸地方って何処なのよさっ!?」

 

ラミリスと名乗った妖精をハエ呼ばわりするネコリア、その嬉々とした後ろ姿にリムルは思った

 

(あの帽子の中で、絶対に猫耳がぴこぴこしてるんだろうなぁ………ネコちゃんに出会ったのが運の尽きだな……同情するよ、ラミリス)

 

「リムちゃん。今なんか失礼なことを思わなかった?」

 

「ソンナコトナイヨー」




ラミリスと出会った一行、彼女とある約束を交わしたリムルとネコリアは上位精霊と出会う為にある場所へと案内されて………

ネコリアの真骨頂その29 実はファッションセンス抜群

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第四十五話 魔王との出会いから始まる新たな未来

今回の見所!ネコちゃんの可愛さに上限無し!以上


「え〜……こほんこほん、改めて自己紹介をさせてもらうのよさ。我こそは偉大なる十大魔王が一柱!迷宮妖精(ラビリンス)のラミリスである!さあ跪くがいい!」

 

(…………ガビルみたいなハエね)

 

(初めて会った時のガビルみたいだな)

 

ネコリアに邪魔されたのが気に食わなかったのか、三度自己紹介をするラミリス。その自信満々な姿に自らの配下のある人物が、脳裏に浮かぶ二人。未だにネコリアは彼女をハエだと誤認したままである

 

「お前が十大魔王の一柱?もっとマシな嘘吐けよ」

 

「はーーーーっ!?いるのよねー、よく知らないから取り敢えず否定するヤツぅー!」

 

「気を付けた方がいいわよ。あの子、すごいエッチだから」

 

「おいコラ。なんで其方側に回ってるんだ」

 

ラミリスが魔王であると疑いの眼差しを向けるリムルを指差し、定番の発言を繰り出す相棒に間髪入れずに突っ込みを放つ

 

「うわっ!最低ねっ!というかアンタはいつからアタシの側に居たの?」

 

「細かいことは気にしちゃダメよ」

 

「確かにそうね!気に入ったわ!アンタの名前は?」

 

「ネコリア。であっちのはリムル」

 

「ネコリアにリムルね!アタシはラミリ…………ん?ネコリア?リムル?アンタたち、まさかだけど………友達にミリムとか居たりする…?」

 

気に入られ、名前を聞かれたのも束の間。ネコリアが自己紹介とリムルを紹介した瞬間、ラミリスの表情が一変した

 

「ミリムちゃんとはマブダチよ」

 

「だな。この前まで俺たちの国に住んでた」

 

「なっ………!?て、て、て、てことは!アンタたちが魔国連邦(テンペスト)だかいう国を興したスライムと猫又だったりすんの……?」

 

「「そうですけど、なにか?」」

 

「前言撤回!誰がアンタたちを気に入るもんかっ!バカバカバカバカ!この大バ----ぎゃぁぁぁぁ!!!」

 

ミリムの友人だと分かった瞬間、態度を一変させたラミリスが罵倒を吐き捨てるが即座にネコリアが殺虫剤を噴射し、リムルがハエ叩きで引っ叩く

 

「何故かは分からないけど、無性にイラつく。何かのスキルみたいだけど………あっ、解除された」

 

「同感だ。ネコちゃんの普段の失礼な振る舞いを見てる時みたいな気持ちになってくる」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

無性に苛つきながらも、自らの代名詞である支配系スキルを無効化するユニークスキル《彷徨者(サマヨウモノ)》の効果で落ち着きを取り戻したネコリアは、リムルの発言を聞き逃しておらず、しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立て、瞳の奥が笑っていない笑顔を見せる

 

『告。個体名ラミリスの《精神支配》に抵抗(レジスト)している影響です』

 

「《精神支配》………?」

 

「にゃるほど。だから自覚した瞬間に解除されたのね」

 

《大賢者》からの返答を聞き、自分のユニークスキルが効果を弾いたことを再確認したネコリアは頷く。その隣ではラミリスが両眼を明後日の方向に向け、下手な口笛を吹いている

 

「ラミリスだったか?取り敢えず、オハナシしよう。俺たちを魔人形で殺そうとしたよな?」

 

「いやぁぁぁぁ!ごめんなさい!マジで許してェェェ!!妖精の可愛いイタズラだからぁぁぁぁ!!!」

 

きりきり、と音を立てるのはリムルが逃亡を防ぐ為に巻き付けた魔鋼糸。その状況で弁解するラミリスの可愛いという単語にネコリアが、顔を上げた

 

「あたしよりも可愛いヤツがいるわけないでしょ!」

 

「そう、ネコちゃんよりも可愛いヤツ…………って!着眼点は其処じゃない!!!精霊の棲家を目指して、帰って来た者はいないって聞いたが?」

 

一度はネコリアの素っ頓狂な発言に流され掛けるも、即座に軌道修正を図り、ラミリスに問いを投げ掛ける

 

「知らないわよ、迷子にでもなってんじゃないの?遠い異国の地に放り出したりしてるから。そもそも!アタシばっかり責めてるけど、アンタたちも悪いのよ?勝手に人の作った最高傑作二体を破壊してくれちゃったんだし!」

 

「うっ………」

 

「あたしは売られた喧嘩を買っただけよ」

 

「ネコちゃん。今は大事な話をしてる途中だから、あっちで生徒たちとお弁当を食べてなさい」

 

「え〜………」

 

真剣な話を別方向に持っていこうとするネコリアを諭し、背後で弁当箱を突く生徒たちの面倒を見る様に言い聞かせる

 

「あれ?ネコリアさん。話は終わったの?」

 

「あとはアンタたちの先生の管轄よ。あたしはお弁当を食べるわ」

 

「とか言って………仲間外れにされたんだろ?ネコリアさんって、ちょっと空気読めなさそうだしな」

 

「ケンヤくんだった?あとでウチのエンカとお散歩してみる?きっと楽しいわよ〜」

 

「…………え、遠慮します………なんか分からないけど……」

 

「そう、残念ね」

 

含みのある言い方に何かを感じ取ったケンヤ、直ぐにネコリアを揶揄うのを止め、大人しく弁当箱を突きに戻る

 

「おーい、ネコちゃ〜ん。ラミリスが条件を満たしてくれたら、頼み事を聞いてくれるみたいだぞ」

 

「ふぅん……条件ねぇ。察するにリムちゃんが燃やした魔人形(ゴーレム)の代わりを用意するとか言ったんでしょ」

 

条件と聞き、リムルが話し始めるよりも前にその心中を言い当てるネコリア。彼は察しが良過ぎる相棒の呆れ顔に、苦笑を浮かべる

 

「……………なんで分かったんだ?」

 

「伊達に二年間も相棒してないわよ。アンタが何を対価に話を進めるかは御見通しよ、《千里眼》を使うまでもないわ」

 

「やっぱり……敵わないなぁ……ネコちゃんには…。それで、引き受けてくれるか?」

 

恐る恐る問い掛けながらも、自分が拒否しない事を理解している彼にネコリアは呆れた眼差しを向けていた。長年の付き合いで彼の性格は手に取る様に理解している、何かを対価に何かを得る、それが彼のやり方。己の底知れない食欲を満たす為ならば、只管に貪欲となり得る者、其れがリムル=テンペストという魔物だ。故にネコリアも彼の相棒を名乗る以上、妥協はしない、使えるモノは使う、己が強欲を満たす為に彼女は笑う

 

「引き受けるわ。アナタの欲はあたしの欲、全ては我が盟主の御心のままに」

 

傅き、(こうべ)を垂れる彼女の瞳に映る者は数多の魔物を束ねる一匹の盟主。彼との出会いが、全てを変えた。故に彼の望みは彼女の欲望、その先に待ち受ける覇道を見届ける為に、彼女は彼に従う

 

「これからも期待してるぜ?参謀長」

 

「精々、寝首を掻かれないようにね♪盟主様」

 

「まさかの犯行予告っ!!まぁでも………ネコちゃんらしいや」

 

彼もまた笑う。自分を信じ、付き従う相棒に。その欲を背負うと約束してくれた最高の友に、彼は笑顔で応える

 

「引きちぎるわよ」

 

「なにをっ!?」

 

謎の文句にリムルの突っ込みが冴え渡るのであった




遂に上位精霊と出会う一行、果たして子どもたちの未来は………

ネコリアの真骨頂その30 実は相棒の欲望には忠実

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第四十六話 精霊女王は堕落していたけど、威厳?はあるみたいだった

今回の見所!ネコちゃんにお友達が出来ちゃいます!以上!


「上位精霊に協力してもらうには、精霊女王に会う必要がある。ラミリスは精霊に詳しいんだろ?会ったこととかないか?」

 

「会うも何も、精霊女王(エレメント)ってアタシのことだよ?」

 

リムルからの問いに、ラミリスはきょとんとした表情で答えを返す。その発言に聞いた本人であるリムルは勿論、ネコリアも疑いの眼差しを向ける

 

「ハエのくせに?」

 

「ハエじゃない!!!こほん!」

 

さらりと放たれた悪口を聞き逃さないラミリスは間髪入れずに突っ込みを放ち、咳払いする

 

「精霊の女王が堕落して魔王になっちゃったんですー!!よくあることじゃないの!」

 

「確かにありふれた話よね。仕事するのとか面倒だし…」

 

「ありふれてねぇよ!というかネコちゃん!さらりと職務放棄しようとしてませんっ!?」

 

ラミリスの言い分に同意を示す相棒の発言に違和感を感じたリムルが突っ込みを放つと、彼女が振り向き、泪ぐみ始める

 

「あたし…可愛いくて、非力だから、お箸よりも重たい物は持てないの。木の板とか以ての外ね」

 

「ウソはやめなさい。この前、巨大な魔鉱石を片手で持ち上げてたくせに」

 

「女心の分からないリムちゃんにはシオンちゃんの料理フルコースの刑よ」

 

「すいません、マジで勘弁してください」

 

「どうしよっかにゃ〜」

 

シオンの料理と聞いた瞬間に、先程までの威厳に溢れた姿は何処に?と言いたくなる綺麗な土下座を繰り出すリムル、その姿にネコリアは小悪魔の様な魔性の笑みを浮かべる

 

「ラミリス様、主人と本体に代わってお願いするにゃ。協力してくれるかにゃ?」

 

「……精霊女王(エレメント)は聖なる者の導き手。勇者に精霊の加護を授ける役目も担っているんだよ………いいよ、召喚に協力してあげる。精々、凄い精霊を呼び出すといいさ」

 

「ムカつくわね。殺虫していい?」

 

「後にしなさい」

 

「ちぇー」

 

「後でも駄目に決まってんでしょうが!!」

 

ふふん、と誇らしげに胸を張るラミリスに殺虫剤を向けようとするネコリアであったがリムルに咎められ、つまらそうな表情で懐に殺虫剤を仕舞い込む。ラミリスは蚊帳の外で繰り広げられる自分の扱い方に突っ込みを放つ

 

「うっそーっ!トレイニーちゃんたちを知ってんの!?樹妖精(ドライアド)になっちゃったのねぇ〜、アタシが堕落した影響かな?昔は小さくて可愛い精霊だったんだよ」

 

「にゃるほど、トレイニーちゃんが前に言ってた名前をくれた人ってアンタね?ラミリスちゃん」

 

「そう言えば言ってたな。そんな失礼なヤツが居るって………ぎゃぁぁぁぁ!!!目に沁みるぅぅぅぅ!!!」

 

「ありがと♪ネコ」

 

「どういたしまして♪リスちゃん」

 

「いつの間にか互いに愛称を呼び合う程に仲良くなっとる!!!」

 

知らぬ間にラミリスと意気投合していたネコリアは互いに愛称で呼び合うまでに打ち解け、リムルに悪戯を仕掛ける姿は正に姉妹の様に見えなくもない

 

「ラミリス様の本来の姿はもっと威厳のある御姿なのよ」

 

「わふっ!ネコリア様も実はすっごくカッコいい姿なんだぞっ!」

 

ラミリスの配下妖精が自慢気に彼女を語る姿に対抗意識を燃やしたエンカは、自らの主人であるネコリアの本来の姿についての話を持ち出す

 

「ラミリス様は深い叡智を讃えられ御方なのよ!」

 

「ネコリア様も物知りだぞっ!」

 

「年寄りは叡智に溢れてるのか………」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「着いたわよ、ここが迷宮の最深部。精霊の棲家よ」

 

「リムちゃん。滑り台があるわ」

 

「いや違うからな?どう見ても」

 

精霊の棲家を前に素っ頓狂な発言を繰り出すネコリアにやんわりと突っ込みを放つも、此れで懲りないのが彼女の真骨頂であるのは言わずもがなだ

 

「あら、フリークライミングも出来るみたいね………はっ!もしかして精霊の棲家は公園っ

!?」

 

「「違うわっ!!馬鹿猫!!!」」

 

更なる素っ頓狂発言を繰り出すネコリアに、リムル、ラミリスからのダブル突っ込みが飛ぶ。精霊の棲家の頂上に向かう子どもたち、彼等が生きたいと願う想いは誰よりも強い。その願いに応える為にリムルはサポートしていく

 

「あの……ネコリアさん……」

 

「ん?どうかした?クロエちゃん」

 

ゲイル、アリス、ケンヤ、リョウタが次々とリムルのサポートで上位精霊又は擬似上位精霊を授かっていく中、クロエはネコリアに呼び掛けた

 

「大丈夫かな……」

 

「…………大丈夫、リムルを信じなさい。あたしの相棒ちゃんは頼りになるのをクロエも知ってるでしょ?なんたって、アナタたちの先生なんだから♪」

 

「……うん!行ってきます!」

 

優しく頭を撫で、笑い掛けるネコリアに気を許したクロエも笑顔を向け、リムルの待つ回廊の麓に駆け寄っていき、頂上に辿り着くと手を合わせ祈りを捧げる。刹那、ネコリアの猫耳が帽子の中で、ぴこっと動いた

 

「気配が変わった……!」

 

「なにっ!?この感じっ!」

 

「精霊なのか……?」

 

「リムル!其れは精霊じゃないわ!さっさとクロエから引き離してっ!」

 

「なっ!?わかっ---あぐ……….えっ?」

 

気配の正体、白いローブを纏った女性をクロエから引き離そうとしたリムルの口に何かが触れる。其れが唇と唇の触れ合い、いわゆるキスであることに自覚するのには時間が掛からなかった。気付いた時には、女性はクロエの中に溶ける様に消え、圧倒的な存在感が薄れていく

 

「ラミリス………あれって、ヤバいんじゃない?なんかすごい気配がしてたわよ」

 

「多分アレは未来から来た存在よ。その子に宿った事で、目的を果たした様にも見えたけど……油断は出来ないわっ!とにかく!大きな力には大きな代償が伴うのを忘れないでっ!今は魔素が安定してるけど、油断しないのよっ!分かった?いいわねっ!」

 

「はいはい、そこまで。今は全員が助かったことを喜ぶ方が先よ………後そこのエッチな仮面男はいつまでも惚けてないで帰ってきなさい」

 

「誰がエッチな仮面男だっ!!!こほん!何はともあれ、みんなが助かって安心した!ほら、ラミリスに御礼を言いな」

 

惚けていたリムルはネコリアの声で我に返り、ラミリスに御礼を述べる様にクロエたちに促す

 

「「ありがとうございましたっ!」」

 

「ふふんっ!もっと感謝しなさい!」

 

「ふむ……調子に乗りやすいとこもそっくりだ」

 

「切り裂くわよ」

 

「引きちぎるがレベルアップしてるっ!?」

 




義理を果たしたラミリス、次はリムルとネコリアの出番!新たな魔人形を作り出す為に二人が用意したのは………

ネコリアの真骨頂その31 実は誰とでも直ぐに打ち解ける

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第四十七話 新しい分身を呼び出したから、魂を憑依させちゃった

今回の見所!ネコちゃんに娘がっ!以上!あと今日はネコの日………はっ!ネコちゃんの誕生日か!?

ネコちゃん「違うわよ?別に」

エンカ「誕生日か!おめでとう!ネコリア様!」

ネコちゃん「だから違うわよ」


「ネコ!其れにリムル!約束は守ってもらうわよっ!」

 

心配事も解決し、帰宅準備を始めていたネコリアとリムルに待ったを掛けたラミリス。約束という言葉に二人は顔を見合わせる

 

「約束………にゃんだっけ?リムちゃん」

 

「うーむ……なんだっけな……この辺までは出ているんだけど、思い出せないな。また明日でもいいか?」

 

「ナイスアイデア♪リフレッシュは大事よねー」

 

身に覚えのない約束、二人は首を傾げ、一旦持ち帰る事を提案するも、ラミリスは其れを良しとしなかった

 

「良くないわよっ!?何を一旦リフレッシュしようとしてんのよさっ!魔人形(ゴーレム)の代わりを用意してくれる約束でしょうが!何とかしなさいよっ!」

 

「「ああ、あれねー。オボエテタヨー」」

 

「棒読みで言うなっ!」

 

既に忘却の彼方に消し去っていた約束を思い出し、口裏を合わせた様に息の揃った棒読みの同意を示す二人にラミリスの突っ込みが飛ぶ

 

「んじゃま、サクッとやりますか」

 

「サクッとって……今日日聞かにゃいわよ、リムちゃん。素体は………これで良いか、仙法・猫毛分身!!!」

 

リムルに突っ込みを入れながら、自分の毛を抜いたネコリアが、ぱんっ、と両手を打ち鳴らすと毛が一匹の黒猫に姿を変え、リムルも自らの魔素と魔鋼で作り出した素体を胃袋から取り出す

 

「んなっ!?今、どっから出したのよ…!?………いや、もういいわ…」

 

見たことない現象に両目を見開いたラミリスであったが、直ぐに諦めた様に口を閉ざした。リムルが両手を広げ、呪文を唱え始める横でネコリアは「にゃ〜」と鳴き声を挙げる分身体を見詰めていた

 

「ん〜………悪魔だと芸がないわねぇ……かと言って、ネコツーみたいに名付けをするのも味がない………」

 

「にゃんか、失礼だにゃ」

 

「…………あっ、そうだ。アレを試してみるか」

 

「「アレ……?」」

 

『アレ』という単語に誰もが首を傾げる中、リムルの方に動きがあった。構築された魔法陣から何かが姿を見せたのだ

 

「お呼びで御座いますか、召喚主(マスター)よ」

 

「君にこの魔王の守護者になってもらいたい。頼めるか?無論、其れ相応の対価は支払う、俺の魔素と魔鋼で作った依り代……期間は百年、其れ以降も依り代は好きにしてくれて構わない」

 

「願ってもない寛大な御心に感謝を」

 

「よし……では、お前に〝ベレッタ〟の名を授ける」

 

リムルの名付けと同時に〝ベレッタ〟が進化を始める。光を放ち、依り代と溶け合う様に融合していき、収まった光の中から、長い髪を靡かせた仮面の人形が姿を見せる

 

「我が名は〝 魔将人形(アークドール)〟ベレッタ。ラミリス様の守護者として、頂戴した命令を遂行する者です」

 

「お、おう!お任せするよ、頼んだわね!で、ネコの方はどうなってるの?」

 

ベレッタの忠誠に精一杯の威厳で応じたラミリスは、次にネコリアの方に視線を移した。彼女の方は自らの分身体を依り代にしていた、故に猫又の流れを組んだ魔人形(ゴーレム)が用意されている筈だ

 

「対価は我が魂、血となり、肉となり、今ここに、その姿を示せ………呪法・分霊魂(ぶんれいこん)!!!」

 

刹那、一筋の雷光が迸った。ネコリアの姿が僅かに揺らぎ、分身体の中に彼女から別離した浮遊体が憑依し、溶け合う様に中に消えていき、分身体が変化を始める。黒い体毛は白く、瞳は金色から白銀へと、まるで初雪を思わせる姿に誰もが見惚れ、息をすることを忘れていた

 

我が母(ネコリア)よ、アナタ様の御魂を確かに頂戴させていただきました。なんなりと御命令を」

 

「ベレッタと共にラミリスの守護者となり、矛となり、盾となり、その身が朽ち果て、我が元に戻りし時迄、その命を完遂せよ、其れが汝に下す我が勅命。アンタに授ける名は、〝銀麗(ギンレイ)〟よ」

 

「ありがたく頂戴します。ラミリス様、このギンレイが貴女様の矛となり、盾となる事を御約束致します。どうぞよしなに」

 

「あっ、はい!よろしく!ちょっ!ネコと違って礼儀正しいじゃないの!」

 

「ほら言うだろ?片方がちゃらんぽらんだと、片方はきちんとするってさ」

 

「引きちぎるわよ」

 

「「何をっ!?」」

 

御決まりの謎文句にリムルとラミリスが声を揃え、驚きを見せる。その中でネコツーは何か思うことがあるのか、じと〜っとした視線をネコリアに向けている

 

「にゃによ」

 

「ネコツーも名前が欲しいにゃ」

 

視線に気付いたネコリアが問う。すると唐突にネコツーが身も蓋も無い事を口にする。一瞬、驚きはしたが直ぐに我に返ったネコリアは呆れた様に口を開く

 

「アンタは必要ないわよ」

 

「ずるいにゃ!分身贔屓だにゃ!霊魂分けるとか!名前つけるとか!ずるいにゃ!」

 

「…………バカね。アンタには居場所があるじゃないの」

 

駄々を捏ねるネコツーの姿に、軽くため息を吐いた後にネコリアは彼女を抱き抱え、寝息を立てるクロエの隣に座らせる

 

「ツーちゃん………むにゃ………むにゃ……」

 

「えへへ……もふもふ……」

 

「ううん……ネコツー………はやいぞぉ〜……」

 

「ネコツー…………またお腹空いてたんですか……」

 

「ふわふわ………してる……」

 

名を呼び、自分を必要としてくれる居場所。当たり前だと思っていた光景が当たり前ではないと気付いたネコツーはネコリアの顔を見上げる。彼女は猫耳をぴこぴこと動かし、鍵尻尾をふりふりさせながら、笑っていた

 

「名前を呼んでくれる相手がいるんだから、アンタは自分の居場所を守りなさい。〝 ネコツー〟がアンタの名前、だからアンタはこの世に一匹しかいない魔物よ。分かったわね?ネコツー」

 

「……………にゃ!ネコツーにお任せにゃ♪」

 

ネコツーの返事に優しく笑い、夜空を見上げるネコリア。その瞳には帰りを待つスイヒョウたちの姿が浮かび、彼女は故郷に想いを馳せるのであった




無事に解決した大事な約束、そして別れの時は訪れる………其れはテンペストに待つスイヒョウたちも例外ではなく………

次回からは少しの間、スイヒョウ又はライメイが軸になっていきます

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第四十八話 我々は元気です、故に御心配には及びませんわ

今回の見所!ギンレイはネコちゃんと同じで料理上手!以上!


「じゃあ、ベレッタにギンレイ。此奴のお守り大変だろうけど」

 

「しっかりと頼むわね♪」

 

「どういうイミよっ!?」

 

問題が解決し、学園に戻るリムルたちを見送りに来ていたラミリスは自分の扱いが雑である事に難色を示す

 

「はっ……この体に誓い、お役に立って御覧に入れます」

 

「御期待に添える活躍を御約束致します」

 

召喚主(リムル)本体(ネコリア)からの命令に従う、ベレッタとギンレイはラミリスを守ることを確約する。扱いの不遇さに未だに不満気味な表情を見せるラミリス、すると彼女はクロエたちと話し込むリムル、ネコリアに視線を向ける

 

「リムル!それにネコ!ど〜〜〜しても可憐なアタシに会いたくなったら、また来てもいいわよ?」

 

「ふっ……可愛さなら、あたしの方が上よ。三百年の間、可愛さだけを追求した可愛さの化身こそがあたしよ、可愛いはあたしの為だけに存在する言葉なのよっ!」

 

「なっ……言うじゃない!だったら可愛さ三本勝負なのよさっ!」

 

「にゃっーはっはっはっ!!!受けて立とうじゃない!あたしの可愛さを思い知らせてやるわっ!」

 

「知らさんでいいっ!!!」

 

売り言葉に買い言葉、何方が可愛いをはっきりとさせる為に一触即発する二人の間に入ったリムルが突っ込みを放つ

 

「まぁ………迷宮から出る時は何時でも魔国連邦(テンペスト)に顔を出して。その時は歓迎してあげるわ」

 

「ネコちゃんの言う通りだ。俺たちは大歓迎だ、気軽に遊びに来てくれ」

 

「じゃあね、リスちゃん」

 

「世話になった」

 

『告。疑似上位精霊「空」の作成時に「空間属性」を「解析鑑定」……統合の結果「影移動」が「空間移動」に進化。影を経由せず既知の場所への瞬間移動が可能となりました』

 

リムルが習得した《空間移動》でイングラシア王国に帰還していく一行。賑やかさから一変し、寂しそうにするラミリスの変化は誰が見ても理解出来た

 

「……ラミリス様?」

 

「如何なさいましたか?」

 

「なんでもないわ。これで静かになったわね!ベレッタ、お茶淹れて!ギンレイはなんかお茶菓子を用意して!」

 

「お茶ですか?」

 

「お茶菓子………それではクッキーなどはいかがでしょう?」

 

「いいわねっ!クッキー!ほら!ベレッタも行くわよ!」

 

「御意」

 

ラミリスからの最初の命を疑問に思うベレッタであったが、相方のギンレイが意外にも乗り気だった為に自分の名を呼ばれ、その後を追いかけていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしが居ない二日間に変わったことはなかった?」

 

『ええ、ございませんわ。皆変わりありませんし、これと言った問題も起きていませんわ』

 

連絡用水晶でネコリアと話すのは彼女の書記官であるスイヒョウ、盟主並びに参謀長が不在の間はリグルドと共に仕事を一任されている頼もしい存在だ

そして現在、ネコリアが居るのはイングラシア王国の三つ星ホテル最上階部屋。本来は直ぐに帰還するつもりだったがリムルを連れての帰還という約束をしてしまったが故に彼の滞在期間終了までは帰るに帰れないという事で、自由組合総帥(グランドマスター)が用意した部屋に彼女は滞在していた

 

『そう言えば、少し前にヨウム殿一行が街に顔を出してくださいましたよ。ネコリア様に会えない事を悔しがっていましたわ』

 

「にゃはは…悪いことしちゃったわね。ヨウムちゃんたちはまだ街に?」

 

態々、自分に会おうとしてくれた友人に悪いことをしてしまったと反省しながら、彼の所在を尋ねる

 

『はい、ハクロウ殿に手解きを受けております。あぁ……それと新しい顔が増えておりましたわ。直接、顔を合わせた訳ではないのですけれど、確か魔術師(ウィザード)で軍事顧問を任される程の有能さを持っていると聞いております』

 

「ふ〜ん………名前は?」

 

『ミュウランと名乗っていましたわ』

 

ミュウラン、初めて聞く名にネコリアは空を見上げる。着時に迫る厄災の足音に気付かず、彼女は猫耳をぴこっと動かし、静かに空を見上げていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした?もう終わりか?」

 

修練場で、地面に倒れた三人の少女の前に刀を帯刀した一人の鬼人が仁王立ちしていた。その鬼人はライメイ、魔国連邦(テンペスト)参謀長の剣の役割を与えられた幹部である

 

「うぅ………つ、強いです……」

 

「流石はネコリア様の剣であるライメイ様ね!張り合いがあるわっ!」

 

「うぅ……痛いのぉ〜……」

 

「なんだ、だらしがない。ミュウランとやらに負けた自分を鍛え直したいと言うから付き合ってやっているのに。もう終わりか?」

 

肩で息をするフォス、傷だらけになりながらも闘志を燃やすステラ、痛みを訴えるネム。彼女達は先刻、ヨウムが連れてきたミュウランと模擬戦を行ったのだが敗北し、偶然にも居合わせたライメイに鍛練を依頼したのだが彼女の力は想像を超えていた。その主人であるネコリアには劣るが、彼女はベニマルとハクロウと並ぶ幹部格でも高い実力者なのだ。故に加減を知らない

 

「まだまだです!お願いします!」

 

「その心意気や良し……では行くぞ!」

 

気合いを入れなおしたフォスが走り出し、ライメイが迎え討つ為に刀に手を掛けた時だった。修練場に声が響いた

 

「ライメイ様!至急、執務室に御戻りを!ネコリア様からのご連絡がありました!」

 

「なにっ!?本当か!オボロ!すまないが私は急用を思い出した」

 

オボロ、そう呼ばれたのはネコリアが名付けたゴブリナの一人でライメイの副官に当てがわれた戦闘に長けた魔物である。そして、彼女の口から飛び出した主人の名にライメイは稽古を中断し、執務室がある方に走り去っていった

 

「誠ですかっ!ネコリア様!」

 

執務室に着いたライメイを待っていたのは、主人からの嬉しい報せだった。彼女は興奮気味に身を乗り出す

 

『ええ、二ヶ月後に帰るわ。子どもたちの魔素も安定してきたし』

 

「盛大に迎えねぇとな!祭の準備は任せてくれっ!」

 

「お待ちしています。ネコリア様」

 

「フウも待ってる」

 

「クウも……」

 

胸を叩くカイリン、微笑むソウカと嬉しそうに笑うフウとクウ。そしてその背後にはガビルの姿もあった

 

「ふっ……それではこのガビル!ネコリア様とリムル様を御迎えする為に一曲!」

 

『あっ、其れはいらにゃい』

 

「何故っ!?」

 

『元気出すんだぞっ!ガビル!』

 

食い気味に却下され、思わず水晶を二度見するガビルをエンカが慰める

 

「じゃあ、帰りを待っててね♪」

 

「「「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」」」

 

「「可愛い」」

 

「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるスイヒョウ、エンカ、ライメイ、カイリン、ソウカは目をハートにしながら悶える。フウとクウは表情に変化はないが僅かに頬が紅潮していた

 

「よしっ!お前たち!ネコリア様を満足させる歌を作るぞっ!」

 

「はーい!ガビルさまー!」

 

「仕方ねぇな。付き合うぜ」

 

「御意」

 

「兄上……仕事をしてください。さもないと殴りますよ」

 

「反抗期っ!?」




遂にリムルとネコリアが帰ってくる、然しその裏で魔国連邦を快く思わない者たちの企みが動き始めていた………

ライメイの真骨頂その1 実は指折りの実力者

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第四十九話 帰国しようとしたら、絡まれたから迎え打っちゃった

今回の見所!ネコちゃんのサービスシーンが!なんて魅惑的!エッチだ!!!

ネコちゃん「あら、お嫌い?」

な、ナイスハレンチ………


「子どもたちは大丈夫だ。万が一を考えて、ひと月以上は様子を見たが魔素はかなり安定している」

 

「そのようですね。其れにしてもリムルさんはスゴいです。一体どうやったんです?他の教師たちも驚いてましたよ」

 

「ふっふっ……企業秘密だ」

 

現在、リムルが相対するのは自由組合総帥(グランドマスター)にしてシズの教え子の一人であるユウキ・カグラザカ。内容はクロエたちの魔素安定についての説明だ

情報を必要以上に与えないのは、目の前に居る彼を信用していないというのも有るが大事な教え子たちが他人の利己に振り回されない為にするリムル也の配慮である

 

「流石はリムルさん。シズ先生も浮かばれますね」

 

「まっ、俺は俺のやりたいようにやるだけさ。其れにだ……ウチの相棒ちゃん(ネコリア)もだいぶ自由にさせてもらってるからな」

 

「ああ、ネコリアさんと言えば………これが」

 

「ん?なんだこれ………リムル=テンペスト宛…………んむ?」

 

ユウキが手渡したのは大量の紙束、其処に記載されたのは確かに自分の名前であるが見覚えのない数字の羅列が大量にあり、書かれた内容にも見覚えがない

 

「ネコリアさんが豪遊した請求書です。リムルさんの給料から天引きしておきますね」

 

「………………何してくれてんのっ!?あの馬鹿猫はっ!!!」

 

リムルの悲痛な叫びが木霊する。長い付き合いの中で紡いだ筈の絆は何処に、と言いたくなる彼女の遣り口に物申す為に彼女が泊まる部屋に向かう

 

「よぉ………ネコちゃ----って服はっ!?」

 

勢いよく扉を開け、中に居る相棒に呼び掛けながら彼は前方を睨み付けた。然し、直ぐに彼女の一糸纏わぬ姿に、両眼を見開く

 

「あら、リムちゃん。女の子の部屋にノックも無しに入るのはマナー違反よ」

 

猫耳をぴこぴこさせ、鍵尻尾をふりふりと揺らす彼女基ネコリア。その姿は長い黒髪から滴る水滴が鎖骨のラインをなぞる様に流れ落ち、健康的で慎ましい彼女の美しくも可憐な姿を魅惑的に彩っていた。正にその愛らしさは傾国、国一つを傾かせるかの如く、魔性の一言が似合う

 

「服を着なさい!」

 

「なによ、今更。じっくりと見ておいて……ホントにエッチなスライムね」

 

「エッチじゃないやいっ!というか!お前!俺の給料で豪遊しすぎだろ!目玉飛び出るかと思ったわ!」

 

相変わらずの決まり文句に突っ込みで返しながら、持参した請求書の束を眼前に突き付けると彼女が視線を横に逸らす

 

「リムちゃん………あたし、強欲なのよ。欲しい物は絶対に手に入れる。つまりね?リムちゃんの物はあたしの物、あたしの物はあたしの物なのよ。分かる?この意味」

 

「微塵も理解出来んわっ!なんだその有名アニメに出てきそうな暴君的な発想はっ!?」

 

「…………悪かったわよ、埋め合わせはするわ」

 

服に袖を通し、ソファに座った彼女は申し訳無さそうに眉を下げ、埋め合わせの約束をする。リムルは対面にあるソファに腰掛け、優しく笑う

 

「約束だからな。で?どうだ、何か分かったか?ユウキ・カグラザカについて」

 

「これと言った情報は無いわね。だけど……収穫がなかった訳じゃないわ、この国を知ってる?ファルムス王国」

 

そう告げ、胸元から取り出したのは一枚の地図。いわゆるこの世界の世界地図だ、その指先を追うと示されたのはジュラ・テンペスト連邦国から少し離れた先にあるファルムス王国。この世界の地理に疎いリムルは首を傾げた

 

「聞いたことない国だな。この国がどうしたんだ?」

 

「この国は魔国連邦(テンペスト)が生まれるまで、世界経済の中心地だったのよ。其れが今では膨大な損失を抱えてる………この意味が分かる?」

 

魔国連邦(テンペスト)は言わば凡ゆる種族が行き交う新たな世界の縮図。然し、其れを良く思わない者たちも存在する。其れがファルムス王国、ネコリアが独自に仕入れた情報では明らかに不穏な動きを見せたのが、その国だった

 

「…………狙われてるのか。俺の国(テンペスト)が」

 

「そこ、あたしたちの国(・・・・)の間違いでしょ。表向きはリムちゃんの部下だけど、立場的にあたしはアンタと対等って事を忘れないでもらいたいわね」

 

「分かってる……。明後日にはこの国を出る、準備は怠るなよ」

 

「かしこまりました」

 

傅き、(こうべ)を垂れる彼女の瞳に映る者は数多の魔物を束ねる一匹の盟主。対等を主張しながらも、立てる時は立てる其れがネコリア也の彼の扱い方でありNo.2を名乗るが故の配慮である事は明白だ

 

「アナタの欲はあたしの欲、全ては我が盟主の御心のままに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生……ネコリアさん……行っちゃうの?」

 

出立の日、イングラシア王国の門前には子どもたちが見送りの為に付き添っていた。中でもリムルに懐いていたクロエは寂しそうに問い掛ける

 

「クロっち…………二人を引き止めるのはダメだよ…………!」

 

「そうよ!さっさと行きなさいよ!」

 

優しくクロエをリョウタが咎める隣で、素直になれないアリスはぷいっ、と外方を向く。だが別れに寂しい気持ちは付き物、その姿に不思議とリムルは愛用の仮面に手を掛けた

 

「ほら、これをやるから元気出せ」

 

「あーっ!ずるい!あたしも欲しかったのにぃ!」

 

「だめー、私がもらったのー」

 

頭に置かれた仮面はリムルの匂いに混じって懐かしい匂いがする不思議と安心感のあるモノ。余韻に浸っているクロエに駆け寄ったアリスが叫び、抗議するも当の本人は嬉しそうに仮面を抱き締め、拒否する

 

「仮面くらい良いだろ、別に」

 

「ネコリアさんが俺たちに新しい服をくれたじゃないか」

 

「似合ってるよ。アリスちゃん」

 

「当然よ。その服はうちの国の巫女姫(かんなぎ)とあたしの専属職人が手掛けた一級品なのよ。ちなみにアリスのだけは袖にレースをあしらってあるアリスだけの服よ」

 

「え……じゃあいいわ。ネコリアさん!ありがとう!」

 

自分だけが特別に御洒落要素が含まれていると知り、満足したアリスは抗議を諦め、ふふんっ、と満足そうに腕を組む

 

「じゃあ俺たちは行くよ」

 

「ネコツー。あとはお願いするわね、この子たちをしっかりと導くのよ」

 

「お任せにゃ♪」

 

クロエに抱かれたネコツーが得意気に笑うのを確認すると、リムルはランガに、ネコリアはエンカに跨り、その身を翻す

 

「またな!」

 

「またね♪」

 

出会いがあれば別れもある。だが其れは二度と会えない訳ではない、誰かが言った一度きりの人生に出会いは一度しかないと、ならばその出会い一つ一つに意味があるのだと。故にリムルは走る、相棒とともに。この世界を生き抜く為に彼は走り続ける

 

「ネコちゃん………なんか可笑しいと思わないか?妙な気配がする」

 

「気付いた?さっきから、妙な結界に閉じ込められてるわ。魔素が安定してない」

 

「大賢者!」

 

『告。広範囲結界に囚われました。結界外への空間干渉系のスキルは封じられました』

 

「結界!?なんだって、そんなことにっ!」

 

「リ……リムル様!ネコリア様…!」

 

驚くリムルの前に傷だらけのソウエイが姿を見せる。分身体である彼が傷付くほどの出来事、何か不安が過ぎるリムルは相棒に声を掛けようと背後を振り返る。すると彼女は金色の双眸を真っ直ぐと前方に向けていた

 

「リムル」

 

名を呼ばれ、彼女が何をしようとしているか理解した。大抵の場合は渾名で呼ぶ彼女が普通に呼ぶ時は何かを決めた時、故にリムルは何も聞かずにランガに跨る

 

「大賢者!結界を抵抗(レジスト)!大至急だ!」

 

「そうはさせないわよ」

 

大賢者に呼び掛け、結界を無効化しようとするリムルの耳に女性の声が聞こえた。其処には白い外套(コート)に鎧を着込んだ女性が佇んでいた

 

「初めましてかな、もうすぐサヨナラだけど」

 

「リムル……突っ走って。此処はあたしが引き受ける。ファルムス王国の差金よ、恐らくは」

 

「すまん!任せた!ネコリア!!!行くぞっ!ランガっ!」

 

「はっ!我が主人!」

 

影から飛び出したランガに跨り、リムルは魔国連邦(テンペスト)に走り出す。その胸に過ぎる最悪の予感を感じながらも彼は只管に走る、後ろを振り返らずに相棒を信じ、彼は走っていくのであった

 

「盟主を逃したのは懸命な判断ね……でも直ぐに追い付くわ。貴女は確かスライムの部下の中でも最上位の筆頭幹部である参謀長のネコリア=テンペストね」

 

剣を手にネコリアを睨み付ける女性の瞳は冷酷で強烈な殺気を纏い、完全に自分が魔物に染まりきっていた事を改めて自覚する

 

「あら、知ってもらえて光栄だわ。神聖法皇国ルベリオスで神の右手とも称される法皇直属近衛師団筆頭騎士の聖騎士団長……ヒナタ・サカグチ。唯ね、一つ間違いを訂正させてくれる?」

 

「何?聞くだけ聞いてあげる、其れが遺言になるだけだと思うけど」

 

ヒナタ、そう呼ばれた女性はネコリアの言う間違いを聞く為に軽くため息を吐きながらも、そう吐き捨てるのは彼女也の自信の現れである事は明白。其れでも訂正せずにはいられない、此れが遺言になるとしても訂正するべき事が彼女にはあった

 

「あたしはリムルの配下じゃないわ。対等の位置にある唯一無二の相棒であり親友にして筆頭幹部兼参謀長………我が前に平伏せ、人間の小娘よ」

 

「本性を暴いてやるわ、魔物の猫女」

 

かくして、相対する事になった最凶と最強。この戦いは後に災禍の幕開けとして歴史的な一戦であったと伝えられる




リムルとネコリアの帰国に沸き立つ魔国連邦、然しその騒がしい街に迫る災禍を前に彼等は何も知らず………

ネコリアの真骨頂その32 実は脱いだらスゴい

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第五十話 ウソでしょ!?またまた死んじゃった!

今回の見所!ネコちゃんが……!以上!


「君を葬った後はあの忌々しいスライムにも死んでもらわないとね」

 

「させると思う?そんなこと。此処から先は通行止めよ」

 

「…………其れは大人しく死んでくれるという意味で捉えていいのかな?」

 

冷酷な瞳、溢れ出る魔素、その愛くるしい見た目と共存する魔性の笑み。彼女の言葉に、ヒナタは刺々しい疑問を投げ掛ける

 

まさか……アンタを此処で叩き潰すって意味に決まってんじゃない、小娘!!!

 

彼女から返ってきたのは予想もしていなかった反応。魔物とは思えない感情を見せ、冷酷な瞳は鋭く殺気を帯びていく

 

「君の本性は魔物………其れもあのスライムよりも遥かに凶悪みたいね。やはり……死んでもらうわ」

 

ヒナタもまた殺気を放ち、構えた剣を真っ直ぐと前方に突き出す。正確な突きは確実に心臓部を狙った、然し、身軽な体格を活かしたネコリアの動きに油断は感じられない。次々と打ち込まれる斬撃を紙一重で躱し、的確な判断で攻撃を予想する

 

「へぇ……やるじゃない。この結界(・・・・)の中で其れだけの動きが出来るのは君くらいじゃないかな」

 

この結界(・・・・)ねぇ……やっぱり、対魔結界を仕掛けたのもアンタのようね。その口振りから察するに」

 

「そう、西方聖教会が誇る究極の対魔結界……この聖浄化結界(ホーリーフィールド)からは何人たりとも逃れる事は不可能。この範囲内では魔素が浄化され、存在維持に力の大半を割り振ることしか出来ない魔物は簡単に消滅するわ。なのに……どうして、君は動けるの?」

 

「良い質問ね、結界の事を教えてくれた御礼に教えてあげるわ。確かにあたしは魔物で魔素を主な活動源にしているわ。でもね、あたしみたいに仙術を扱う魔物はその代わりになる活動源(エネルギー)を外部から取り込む事で生命維持に当てる魔素を極僅かに収縮出来るのよ。だからって、その手段を断とうしても無駄よ?《自然エネルギー》は世界に芽吹く数多の生命から力を分け与えてもらって成立するスキル。あたしを完全に葬らない限りは断つ事は不可能よ」

 

ふふっ、と不敵に微笑んだ彼女(ネコリア)。結界の影響を受けず、軽やかな足取りで怒涛の剣撃を躱し、拳撃を、蹴りを、叩き込む。まるで踊る様に動き回る彼女は、誰よりも可憐で美しく、妖艶である

 

「あのスライムが人の姿を模倣していたけど………あれは明らかに、シズ先生(・・・・)だった。どうやら、君たちがシズ先生と関わりがある事は事実みたいね。そして………その命を奪ったって話も信憑性が出てきたわね」

 

「………っ!」

 

ヒナタの口から放たれた「シズ先生」という名に、ネコリアの表情が僅かに変化を見せた。余裕綽々に見えた動きにも油断が生まれ、ヒナタの斬撃が精神体(スピリチュアルボディー)に直接的な痛覚(ダメージ)を与える

 

「三撃……あと四回で確実な死をもたらす」

 

「三撃と四回………七回の刺突で精神体(スピリチュアルボディー)に終焉を与える技ね」

 

「そう、此れが七彩終焉刺突撃(デッドエンドレインボー)。君の推測通り、七回の刺突がその命を奪う。流石はシズ先生を殺しただけはあるのかもね」

 

またしても表情が歪む。シズの死はネコリアにとっても受け入れ難い過去、其れを指摘される度に魂を(えぐ)る様に、体内を痛みにも似た何かが駆け巡る。その間もヒナタの手は止まらず、反応の鈍ったネコリアに二撃を叩き込む

 

「あと二回。本来は私が出向く必要のない仕事なの、でも私にはどうしても出向かなければならない理由があった。其れは………

 

 

 

 

 

自分の手で君たちを殺したかったから

 

 

そう告げるヒナタの斬撃がネコリアの命を削り取る様に二回叩き込まれる。悪足掻きする暇すらも与えずに彼女は蓄積された精神体(スピリチュアルボディー)への痛覚(ダメージ)が臨界点を迎え、跡形も残らずにネコリアは姿を消した

 

「さよなら……先生」

 

短い関係であったが唯一の師と崇めた彼女に別れを告げ、ヒナタは風の様に去っていく

 

「はぁ………し、死ぬかと思った。まぁ、一回は確実に前世で死んでる訳だけど」

 

ヒナタが去った数秒後、完全に気配が消えた事を確認すると叢から一匹の黒猫が姿を見せる。先程、ヒナタが仕留めたのはネコリアが仙術で生み出した分身、言わば名付けや霊魂を分け与える前の簡易的な分身体である。中の魔素量は半減するが強敵を油断させる為の策として、彼女は会話の隙を狙い、入れ替わっていたのだ

 

「わふっ!ネコリア様!無事かっ!」

 

主人(ネコリア)の安否を確認する様に木陰から姿を見せたエンカは尻尾を、ぱたぱたと振りながら彼女に駆け寄る

 

「にゃんとかね。エンちゃん、リムちゃんの匂いは分かる?」

 

「任せろだぞっ!」

 

はぁ……と軽く息を吐き、エンカにリムルの匂いを追う様に指示すると誇らし気に顔を上げた彼女は自分の鼻を指差す

 

「じゃ、行くわよ」

 

「わふっ………あれ?でも、リムル様の空間魔法?ってヤツで迎えにきてもらえばいいんじゃないか?」

 

返事を返そうとしたのも束の間、違和感に気付いたエンカが的確な疑問を投げ掛けた

 

「そうしようとしてるんだけど……にゃんか可笑しいのよ。さっきから全然、応答が無いのよ」

 

「うーん、取り敢えずガビルの居る洞窟に行ってみるってのはどうだ?あそこなら魔国連邦(テンペスト)に向かうよりも時間は掛からない筈だぞ」

 

「…………にゃんか、嫌な予感はあるけど……仕方ないわね。お願い出来る?エンカ」

 

「わふっ!任せるんだぞっ!」

 

かくして、ネコリアは帰還を急ぐ。彼女の中に過ぎる予感が現実という名の災禍が訪れているとは知らずに……




ネコリアがヒナタと相対している頃、スイヒョウたちの身にも異変が起きていて……

ネコリアの真骨頂その33 実は動揺しやすい

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第五章 この度、時が来たので大出世します!
第五十一話 鳴り響く鐘の音は導きの声


今回の見所!日常パートから一気にシリアスに!戦闘模写はおあずけです……何故かって?だって苦手なんだもん!!!

ネコリア「作者ちゃんが開き直ってるわ」

リムル「豆腐みたいなメンタルだな」

エッチなスライムには言われたくない

ネコリア「同感ね」

リムル「エッチなスライムちゃうわ!!!」


「ほう……模擬戦とな?」

 

ヒナタがネコリアと対峙する数日前。修練場に居たハクロウは突然の模擬戦の申し込みに疑問符を浮かべる。彼の前にはゴブタ、ヨウム、グルーシス、更にミュウランが立っている

 

「今日という今日は、イヤンと言わせてやるっすよ!覚悟はいいっすか!?ジ……師匠!」

 

(挑発にしてはキレがなさすぎだろ………)

 

「その意気やよし!久々に、実践に即した稽古をつけてやろう!」

 

歯切れの悪いゴブタの挑発にヨウムが心中で突っ込みを放つ中、ハクロウは《剣鬼》と呼ばれる自らのもう一つの顔を見せる

 

「ハクロウを相手にあの自信……ゴブタも言うようになったな」

 

「ですわね。まあ、先程も失言しかけていましたが………それにしても、ライメイ?いい加減に降参しては?往生際が悪いですわよ」

 

「ぬかせっ!お前こそ限界なのではないか?スイヒョウ!」

 

「……………何をやってんだ、お前らは」

 

ハクロウと弟子三人衆が模擬戦を行う隣で、火花を散らし合うスイヒョウとライメイ。力比べの腕相撲を行いながら、歪み合う二人に呆れた表情のカイリンが突っ込みを放つ

 

「ハクロウ殿はネコリア様とリムル様も『師』と仰ぐ程の手練れ………ゴブタでは敵わないでしょうね」

 

「ソウカに至ってはゴブタに辛辣だな」

 

「だって、ネコリア様に失礼な事しか言わないんですよ?」

 

「……………ソイツはよくねぇな。ハクロウ〜!そのミニチュアモヒカンを徹底的にやってくれ〜!」

 

「特にアゴです!アゴを重点的に!」

 

「カイリンさんとソウカさんはオイラに何の恨みがっ!?」

 

傍観者から一変、野次に周るカイリンとソウカ。まさかの味方からの激励とは反対の罵倒に流石のゴブタも衝撃を受けた

 

「ソウカ様!報告が!」

 

「トウカか……なんだ」

 

トウカ、そう呼ばれたのはソウカの配下である龍人族(ドラゴニュート)。彼女が指揮するネコリア直属の隠密部隊に所属し、魔国連邦(テンペスト)に害ある存在の排除等を任としている

 

「警備隊との巡回中に怪しげな一団を確認しました……武装していますが人間であると思われます……どの様に対処いたしましょう?」

 

「手は出すな。ネコリア様からの御命令だ」

 

「承知!」

 

指示を受け、影に消えゆくトウカ。その姿を見送り、ソウカはスイヒョウに向き直る

 

「スイヒョウ様………ネコリア様に報告した方がよろしいかと」

 

「既に報告したわ、手を出さない範囲での警戒を怠るな……それが御命令よ。特にライメイ!シオン!二人は大人しくしていろとのことです!」

 

「「名指しっ!?」」

 

常に主人を思い、先走る傾向の強い鬼人姉妹は名指しされ、びくっと肩を振るわせる。ネコリア程ではないが使者に数々の無礼を働いた前科のある彼女等は一番の危険因子なのだ、故にネコリアは釘を刺したのだろうと誰もが瞬間的に理解した

 

((町を守ってね♪))

 

「ネコリア様………このスイヒョウ。もしもの時は…………命を賭ける所存にございます…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガビル………状況説明並びに被害報告を」

 

暴風竜の洞窟。ネコリアが友と過ごした想い出の場所にして、ガビルたちにあてがわれた居住区でもある。そして、普段は歌と踊りで騒がしい場に真剣な空気が漂う、その中心に座すは魔国連邦(テンペスト)参謀長であるネコリア=テンペスト。彼女の瞳には配下の一人であるガビルが映る

 

「はっ!トウカからの報告に寄れば、ある人物たちからの襲撃の末に………多大なる犠牲を……スイヒョウ殿も……フウとクウ(・・・・・)までもが…!!!……このガビル!一生の不覚!!!申し訳ありませぬっ!!!」

 

「兄上………ネコリア様!兄上はかつての自分を恥じ、変わる為に努力を重ね、同じ過ちを繰り返さぬ為に!」

 

「ソウカ……黙れ」

 

「しかし!」

 

「黙れと言っている!!!」

 

怒号にも似たガビルの声が響き渡る。その瞳には涙が滴り、奥歯をぎりっと噛み締め、自分を責めている事は明白だ

 

『ネコちゃん。聞こえるか?結界の中に入れそうだ』

 

『分かった………今から行くわ』

 

リムルからの念話に応え、ネコリアは鎮座していた岩から降り、洞窟の出口に向かっていく。その背後でガビルは壁を殴り、自らの不甲斐なさを悔しんでいる

 

「ガビル。その涙は大事にしなさい、アンタの気持ちは誰もが理解してる………でもね、泣いてるだけじゃ前には進めないの。だから…」

 

振り返らず、彼女は名を呼ぶ。視線を上げれば、その背中は哀愁が漂い、彼女の中で何かが起こっているのは誰が見ても理解できた

 

「しっかりと見ておきなさい」

 

一陣の夜風に舞う、その瞳は正に魔物。誰も知らないネコリアの姿が其処にはあった。大事な場所が、大事な人たちが、確かに存在した筈の全てが消えた、間に合わなかった。涙も流れない、何とも無慈悲なんだろう、穂川亜結が目指した理想とは掛け離れた自分、その全てを否定したくなる

 

(スーパーヒロインが聞いて呆れるねぇ〜?ネコリア)

 

暗闇に浮かぶもう一人の自分、其れはかつての自分。生前の姿のままで彼女は其処に立っていた

 

(亜結…………アンタの夢は終わったのよ、今はあたしのターン。アンタが出る幕はないわ)

 

(いやいや終わってませんけど?だって、あたしはアンタだもん。アンタが終わらない限り、あたしも終わらないよ。だからさ………なっちゃいなよ、スーパーヒロインに!!!)

 

不敵に笑う彼女が差し出した手、その先に待つのは魔王(スーパーヒロイン)としての新たな道。故にネコリアはその手を取る

 

「リムル……話があるの」

 

「待ってたよ………ネコリア。俺もだ、お前に話がある」

 

真夜中を告げる月明かりが照らす下、二匹の魔物が互いの配下たちの亡骸の間で会合を果たした。其れは後に世界を震撼させた、二匹の魔王種誕生の始まりの鐘が鳴り響いた日であった

 

「エレン………詳しい話をきかせてもらえるか?」

 

「可能性に賭けてみたいのよ」




エレンが語る御伽噺、その内容はまさかのアイツ!?果たしてリムルとネコリアが出した決断とは!!!

*死者ネコリア陣営 スイヒョウ フウとクウ スイヒョウの配下の100人 フウとクウの配下90人 


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第五十二話 失意の果てに、配下にも発想が伝染しちゃった

今回の見所!シリアス!そして安定の端折り!だって、色々と書きすぎると疲れちゃうんだもの


「ライメイ………此処だったか、やはり」

 

大鬼族(オーガ)の同胞たちが眠る場所、彼等が手にしていた武器を墓標代わりにした其処に彼女は居た。手に持つのは愛刀である半身、その枯れ果てた瞳からは涙の一滴も出ない

 

「若…………私は弱いな。ネコリア様との約束を守れなかった……それに……妹を……シオンを………」

 

主人との約束、妹の命、一瞬の間に起きた出来事は彼女から全てを奪った。愛刀を握る手に力を込める

 

「お前とシオンには昔から手を妬かされたな……何度、父上に叱られたか………なぁ、ライメイ。今のお前を見たら、兄者(・・)は何て言うだろうな」

 

「兄者か…………懐かしい話を持ち出してくるんだな。そうだな…………今の私など、拳骨だろうな……あの人は落ち込んでる者に対しても容赦がなかったからな…」

 

記憶の中で自分と仲間たちに時に厳しく、時に優しく接してくれた一人の大鬼族(オーガ)。今となっては生死も分からない彼の姿に苦笑し、軽く溜め息を吐く

 

「それとな……リムル様とネコリア様がお戻りになられた。リムル様はしばらくは独りにしてくれと言っておられたが……ネコリア様は洞窟の方にいらっしゃる筈だ。話をしてきたらどうだ?」

 

「そうか……だが、剣としての御役目を賜ったにも関わらず、碌な成果………いや、その御役目を果たせなかった私に彼の方に会う資格がある訳がない……違うか?若」

 

資格、その言葉が意味するのは彼女也の自責の念。今更、どの面で主人の前に顔を見せろと言うのだ。約束を守れなかった自分にその資格がある筈ない、彼女はそう考えた

 

「資格か……其れを言うなら、俺たちにもその資格がないことになる。ネコリア様は俺たち全員に町を守ってくれ、と仰った」

 

私はその役割を果たせなかった!!結界の弱体化さえなければ……!!!……いや、今のは苦言だったな。言い訳にもならん……」

 

「そうだな、結界の弱体化等は理由にはならない……だが、其れはお前だけじゃない、俺たち(・・)にも言える事だ。お前だけが背負うことじゃない………違うか?獣鬼(・・)

 

獣鬼(・・)、その名はネコリアから名を与えられるまでにライメイが呼ばれていた通り名。暴れる獣の如き姿に、何時からか彼女は、その名で呼ばれていた。久方振りに聞くもう一つの名に彼女は何かを決意した様に立ち上がる

 

「若。妹が居る場所まで案内してもらえるか?彼奴に借りて置きたいモノがあるんだ」

 

「借りたいモノ?よく分からんが案内はしてやる、こっちだ」

 

暗い夜道、ライメイはベニマルの後を追い、市街地に足を進める。その先に待つ最愛の妹との再会に向けて、彼女はゆっくりと歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

「わふぅ…………カイリン。スイヒョウはいつになったら起きるんだぞ?」

 

「……………大丈夫さ、何時もみてぇに直ぐに騒ぎ出す………だからよ、泣くな。エンカ」

 

広場に安置された一角、スイヒョウの遺体の前で親友でありライバルでもある彼女が指一つ動かない姿にエンカは裾を濡らす程に涙を流していた。優しく彼女を慰めながらも、カイリンも涙を流していた。付き合いの長い二人からすれば、それ程までに大切な存在であった事は言うまでない

 

「エンカ、カイリン。ネコリア様からの招集命令よ。今直ぐに会議室に集まりなさい」

 

風景に溶け込んでいたソウカが姿を見せ、主人の名を口にした瞬間、エンカとカイリンの瞳からは涙が消える

 

「…………スイヒョウ。待っててくれだぞ、後でいっーぱい自慢話を聞いてもらうからな」

 

「ちょっくら、アネキとダンナの結論を聞いてくるぜ……だから、お前はちょっと休んでろよ」

 

「うん?なんだ、スイヒョウ。お前も寝ていたのか……全く仕方ないヤツだな」

 

「フウ、クウ。直ぐに戻るわ…だから今はゆっくりとお眠りなさい…」

 

エンカは親友の頭を軽く叩き、カイリンは何時もと変わらない煤だらけの頬を拭い、悪態にも似た軽口を吐くライメイの肩には巨大な刀剣が担がれ、ソウカは妹たちの頭を優しく撫で、眠る様に目を閉じる彼女たちに背を向け、四人は会議室に向かい、一歩を踏み出す

 

「「「「売られた喧嘩は買うのが流儀だ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上がエレンから聞いた話だ…途方もないし………確率も低い………それでも俺は、その可能性に賭けたい。どうだ?ネコリア」

 

魔導王朝サリオンに連なる家系に生まれたエレンの語った御伽話。其れは側から見れば、絵空事に夢を見る様な滑稽な話、それでも目の前に立つ彼は、その可能性に賭ける事を決めた。この結論に行き着くまでに彼の中でも色々な気持ちが芽生えたに違いない、それでも自分と同じ結論に行き着いた事に彼女は妖しく笑う

 

「それがリムルの答えなら、あたしは何も言わないわ。あたしも決めたから、自分がやるべき事を。手順とか理由は違うかもしれない、それでも根本的には変わらないわ。自分の国を、部下を、傷付けられて黙ってるあたしじゃない。だからね?リムル」

 

傅き、(こうべ)を垂れる彼女の瞳に映る者は数多の魔物を束ねる一匹の盟主。彼女の答えは既に決まっていた

 

「このネコリア=テンペスト、我が友から賜りまし、名の下に御約束致します。その覇道に何処までも付き従いましょう……全ては我が盟主の御心のままに」

 

「お前なら、そう言ってくれると思っていた。会議を開く、直ぐに動ける者全員を会議室に集めろ!結界外部の者には《思念伝達》または《心理意識》を繋げ!」

 

「かしこまりました」

 

この日、長い夜が妖しく笑う二匹の魔物を照らしていた。その二匹はスライムとネコ、後に十大魔王を揺るがす大事件を引き起こす台風の目………否、暴風(テンペスト)である

 




全員が集まる前に幽閉したミュウランに会うネコリア、参謀長である彼女が降す決断とは……!!

ネコリアの真骨頂その34 実は彼女の発想は伝染する

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第五十三話 黒幕の配下がいたから、心臓を貫いちゃった

もういくつ寝ると〜ゴールデンウィーク〜

ネコリア「あらご機嫌ね。作者ちゃん」

だってゴールデンウィークだよ?仕事から解放されて自由な時間がたーくさんのゴールデンウィーク!いっぱいネコちゃんの魅力を皆様に伝えないと!

ネコリア「期待してるわ♪」

はうっ!!か、可愛い…………←昇天


「リムル様、ネコリア様。スイヒョウ様並びにシオン様が不在の為、書記官代理をミゾレが務めさせていただきます」

 

会議が始まるまでの待機時間、暇を持て余しいたネコリアの前に姿を見せたのは、書記官であるスイヒョウの部下の中で唯一生き残ったゴブリナのミゾレ。彼女は普段、歓楽街ネコリアに設立された図書館で司書を務めている、スイヒョウが妹の様に可愛がる部下だ

 

「ええ。それで?捕えた魔導師(ウィザード)は?話を聞きたいわ」

 

「こちらに。リムル様も」

 

「ああ」

 

ミゾレに案内され、今回の件の発端を創り出した存在の一人であるミュウランの元に足を運ぶ。その道中、リムルも、ネコリアも、その視線は極寒の氷の様に冷徹で、口を開こうともしない。其れだけ、二人にとって存在した筈の平和な日常が壊された事は怒りを表していた

 

「旦那!それに姐御!頼む!ミュウランを見逃してくれっ!!」

 

部屋に入った二人を待っていたのは、頭を下げるヨウムの姿。開口一番に予想もしなかった言葉を放たれ、言葉を失う二人の前に褐色肌の男性が歩み寄る

 

「待てよ、ヨウム。先ずは話を聞いてもらうのが先だろ?リムル様、ネコリア様。俺は獣王騎士団末席のグルーシスと申します。此度の件についての経緯(いきさつ)を御話させていただく許可を貰えませんか?」

 

「グルーシス………確か、アルビスとスフィアが来た時に虎車を引いていたわね。良いわ、その礼儀に敬意を表し、発言を許可します。リムル()もそれで構いませんか?」

 

「ああ、聞こう」

 

グルーシスからの申し出を受け入れ、発言を許可したネコリアは自らの背後に佇んでいたリムルに問いを投げかけた。彼は冷静に頷き、ミュウランを見据えていた

 

「改めまして………私は魔王(・・)クレイマンが配下、《五本指》の一人。薬指(やくし)のミュウランです。私に与えられた任務は魔国蓮舫(テンペスト)の内偵………ヨウムはその為の隠れ蓑に利用したのです」

 

「にゃるほど。クレイマンが裏で糸を引いていたのね……《人形傀儡師(マリオネットマスター)》の二つ名が表す通り、配下を自分の操り人形みたいに扱い、配下に下ったが最後……壊れるか、用済みとなる時まで使い古し、最後は躊躇うことなく斬り捨てる……まるで使い捨ての消耗品を捨てるようにね」

 

「ふむ……ミュウランだったか?其れをアンタは理解していた筈なのに、何故、ヤツの配下に下ったんだ?従うメリットはない筈だろ」

 

ミュウランの語ったクレイマンの名に聞き覚えのあるネコリアが、頭の中にある彼に関する全ての知識を説明するとリムルはミュウランに問う

 

「そうですね……私は其れでも、あの男に従うしかなかった…。人々からの迫害を受け、家族も、友もなく、孤独に生きる私には………あの男からの誘いは甘い誘惑のように聞こえました……尽きることのない永遠の時と老いを知らない若い肉体、その二つを与える対価に忠誠という名の逃れられない鎖で、私を配下に引き入れました……」

 

「その話を聞く限りは、報告にあるアナタの本性とは差異があるわね。人間の魔女(・・・・・)にしては魔術が偏りすぎてる」

 

「御察しの通り……私は、クレイマンの秘術《支配の心臓(マリオネットハート)》に寄り、人から魔人に至った人でも、魔物でもない存在……言うなれば半端者。本物の心臓はクレイマンの掌、私は自由を失い、あの男には逆らえない…」

 

全てを語ったミュウランに対するリムル、ネコリアの視線は今にも突き刺ささらんとする刃物の如き鋭さで、その瞳に映る光は冷酷を絵に描いたように凍てつく氷の様だ

 

「アナタが自らの命を人質に取られていた事は理解したわ」

 

「あ……姐御!それじゃあ!」

 

「でもね、対価の釣り合わない等価交換に意味なんかないのよ。あたしたち(・・)の国にあれだけの被害を招いて、お咎め無しって訳にもいかない……悪いけど……」

 

彼女は軽くため息を吐き、その表情を変える。その足はゆっくりと彼女に歩み寄り、氷の瞳は彼女を見下ろす

 

死んでもらうわ(・・・・・・・)

 

非情な一言。彼女から放たれた慈悲の欠片もない答えに、ヨウムは耳を疑った

 

「………!姐御!?何を言って!旦那も何か言ってくれよ!」

 

「悪いがヨウム。俺もネコリアに賛成だ、敵の幹部を生かしておく訳にはいかない」

 

待ったを掛け、リムルに彼女を止めるように懇願するも、帰ってきたのは非情な返答。今この場にミュウランの味方は自分しかいない事を悟り、ヨウムは身構える

 

「くっ……!」

 

「無駄だ。諦めろ、ヨウム」

 

「グルーシス!?」

 

ミュウランを庇う様に立っていたヨウムの前にグルーシスが割って入る。その姿はスキルの《獣身化》で獣人族(ライカンスロープ)の色濃く現れた姿に変化し、牙を向く獣のそのものである

 

「なにしてる!ヨウム!!ミュウランを連れてさっさと逃げやがれ!!」

 

「すまねぇ…!ミュウラン!こっちだ!」

 

果敢にも、ネコリアに向かうグルーシス。彼に申し訳ない気持ちを抱きながらもヨウムはミュウランの肩に手を置く。刹那、彼の唇に柔らかい何かが触れた、その何かが彼女の唇である事に気付いた時には既に離れ、優しくも儚い笑みの彼女が佇んでいた

 

「好きだったわ、ヨウム……。私が生きてきた中で、初めて惚れた人。さようなら……今度は悪い女に騙されないようにね」

 

「その覚悟……潔し…さようなら、哀れな魔術師」

 

ミュウランの覚悟を聞き、ネコリアはグルーシスを床に叩きつけ、彼女の方に真っ直と一歩ずつ迫る。その姿にヨウムは駆け寄り、彼女に刃を向ける

 

「何の真似?ヨウム」

 

「アンタを斬る!!ミュウランを守る為なら!俺はなんだってやってやる!一生を賭けて、アンタに忠誠を誓ってやる!!だから……だから……!」

 

その覚悟も虚しく、無情にもネコリアの右手は彼女の胸を貫く。僅か一瞬で惚れた女性は命を落とし、彼の中に何とも言えない悲しみが駆け巡る。尊敬していた彼女も所詮は魔物、人である自分とは相容れない存在であった事を再認識し、頬を涙が伝う

 

「これで良いのよね?リムちゃん」

 

「おう、成功だ。流石はネコちゃんだな」

 

「…………え………生きてる……?」

 

悲しみも束の間、予想していなかった出来事に誰もが驚きを隠せない。当事者であるミュウランも確かに貫かれた筈の胸元を確認しながら、疑問に思っている

 

「ああ、死んだよ?三秒くらいだけど」

 

「さ、三秒…?」

 

そう告げるリムルに、ミュウランは呆気に取られた様子で聞き返す。その戸惑いを隠せない雰囲気にネコリアは自分の掌に握られた水晶体を見せる

 

「死んでた時間よ、正確に言うとミュウランに与えられていた仮初の心臓を破壊したの。にゃんか盗聴されてたみたいよ、これがその現物」

 

「盗聴…!?」

 

まさかの発言にミュウランが驚きを見せる。こればかりは彼女も知らなかったらしく、今の様な反応を見せたのだろう。然し、彼女は違和感を感じ、自らの胸に手を当てる

 

「あの………だとすると……この胸の鼓動は……」

 

「仮初の心臓を参考に作った擬似心臓だよ。ネコリアが貴女を貫く時にその手に持たせたんだ。勿論、盗聴機能は外してある」

 

「《支配の心臓(マリオネットハート)》は存在しない……これでアナタは自由よ。好きに生きなさい♪」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさは誰が見ても可憐にして魔性。この場に彼女の配下である幹部たちがいたならば、目をハートにしながら悶えている姿が目に浮かぶ

 

「やったじゃねぇか!ミュウラン!もう、お前を縛るもんは何もなくなったってことだ!信じてたぜ!姐御!」

 

「いやアンタ、あたしに剣を向けてたわよね?一瞬でも疑ったわよね?」

 

「へ?あ〜いや〜………すまん!そしてありがとう!!」

 

「はぁ……許してあげるわよ。さてと行くわよ〜」

 

「ああ」

 

ヨウムを揶揄っていたのも束の間、彼からの謝罪と礼にネコリアは優しく微笑み、興味を失ったかのようにリムルと共に身を翻す。そして、何かを思い付き、立ち止まる。その表情は正に魔性の一言が相応しい可憐な笑み、視線はミュウランを見据えている

 

『ミュウラン。人間の一生は短い、それでも人間の一生分くらいの束縛を望むなら、きちんと想いは伝えなさい』

 

「はい………ありがとうございます……ネコリア様…」

 

誰にも聞かれない様に彼女の中に秘めた想いを《心理意識》で後押しするとネコリアは部屋を後にする

 

「アフターケアとは優しいんだな。ネコちゃんは」

 

「乙女の会話を盗み聞きしてたの?ホントにエッチなスライムね」

 

「エッチじゃないやいっ!」

 

相変わらずの決まり文句と突っ込みが何時になく静かな魔国蓮舫(テンペスト)の空に木霊するのであった




幹部たち、ヨウム一行とミュウランを交えての会議。遂にリムルとネコリアは自らの答えを彼等に告げる……

ネコリアの真骨頂その35 実は恋する乙女には優しい

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第五十四話 難しい議題の会議でも掴みは大事だから、定番のネタをやっちゃった

今回の見所!ネコちゃんの可愛いさとお惚けが大爆発!!以上!


「心配かけた、これより会議を行う。ネコリア、議題を」

 

「はぁ〜い………えっと、議題は益々の磨きを見せるあたしの可愛さを如何に人間たちに思い知らせるかだけど」

 

「そう、ネコちゃんのかわ…………って!ちがーーーうっ!何を当たり前のように何時も通りのボケを放り込んでくれてんのっ!?」

 

「どんな集まりにも掴みは大切なのを知らにゃいの?全くこれだからエッチなスライムは…」

 

「エッチなスライムちゃうわっ!!というか今それは関係ないだろっ!はぁ……ホントにこの馬鹿猫は……」

 

真面目に論議するつもりがあるのかも理解し難い何時もと変わらない平常運転の相棒に突っ込みながらも、呆れた表情のリムルは改めて集まった幹部たちに視線を向ける

 

「既にリグルドから通達されていると思うが、議題は今後の人間に対する振る舞いと殺された者たちの蘇生についてだ。この二つの議題の前提として、お前たちに伝えておくことが一点ある」

 

誰もが息を呑む、その視線が注がれるには、一匹のスライムが鎮座する。盟主である彼の言葉を待ち、周辺一帯は静寂が支配し、その決意という名の答えを待つ

 

「俺は魔王(・・)になる」

 

その発言は、一気に空気を変えた。ある者は息を呑み、ある者は呼吸する事を忘れ、ある者は響めき、ある者は眼を見開いた。だが彼女だけは違った。その金色に染まった双眸で彼を見詰め、口を開く

 

「そこ、あたしたち(・・)の間違いでしょ。まぁ………色々と思うことはあるかもしれないけど、あたしとリムルは人間の全てを憎んでる訳じゃない。アンタたちもでしょ?」

 

彼女の発言は最もだ。確かに人間は略奪者として、凡ゆるモノを魔国蓮舫(テンペスト)から奪い去った。それでも彼等には人間を嫌えない理由があるのも事実、現にこの場に居る面子の中にヨウム一行を始めとした気を許した人間たちも彼等と同じ種族である

 

「………ネコリア様の言う通りっす。確かにゴブゾウ達を殺したファルムス王国の騎士達はキライっすけど、ヨウムさんや部下の人達は、同じ師匠の下で同じ釜の飯を食った仲間っす。あいつらとは違うって断言できるっす」

 

「ゴブタ…………にゃにを真面目に語ってんのよ、ムカつくわね」

 

「なんで罵倒されたんっすか!?オイラ!」

 

自分で聞いておきながらも、遊び道具的な存在と認識しているゴブタが真面目に語る姿に顰め面を見せるネコリア。突っ込まれた本人は驚き、両眼を見開く

 

「ですが…ゴブタの言う事には一理あります。現にカバル殿たちは我々の身を案じ、駆け付けてくれた……信頼できる友だと俺は思います」

 

「確かに……リグルの言う通りだぜ、アネキ。現にミョルマイルのおやっさんは迎撃の時に助力を申し出てくれたんだ、《人間》って枠組みで一括りにしちまうのは、結論を急ぎ過ぎてんじゃねぇかとウチは思う。勿論、スイヒョウたちを殺したのは人間だ、それでもヨウムたちやミョルマイルのおやっさん、エレンたちみてぇにウチ等を対等に扱ってくれる人間が居るのも事実だからな」

 

「カイリン……オメェも言うようになったじゃねぇか。姐御、俺は娘の意見に賛成だ……人間との共存をアンタらが望むなら、俺たちはその意志に従うぜ」

 

《魔物》と《人間》、本来ならば相容れない種族間の共存に各々の意見を出し合う部下たちの姿にリムルは感銘を受ける。彼は前世では人を深く愛したことのない人生を送ってきた、それでも目の前に居る彼等は彼にとって《仲間》であり《家族》と呼べる大切な存在で、今の彼の生きる理由。故に自らの抱える秘密を明らかにする、決心が付いた。相棒に目配せをすれば、彼女は「好きにしなさい」と言わんばかりに優しく微笑んでいた

 

「皆。実は……言わなきゃならない事がある、俺とネコリアは転生者だ。いわゆる異世界人、そう呼ばれる者たちと同じ世界に生きた人間だった」

 

「死んだ時期、転生した時期は違うあたしたちはこの世界で出会い、互いを補い合いながら生きてきた。そして………皆に、家族に出会い、アナタたちが頼ってくれる日々に目標を見出した。そうすれば、自分の中の前世の自分が笑った気がしたから……進化した姿が人間に近くなったのは、その願望が影響したんだと思うわ」

 

「「人間を襲わない」というルールもそういう理由で作った。人間を好きだと言ったのも元は俺たちが人間だったからだ。今更、後悔しても、何を言ってるんだと思うだろう……でもな、そのルールでお前たちが傷付く事は俺の……俺たちの本意じゃなかった」

 

「………だから人間の街に居る事を優先しちゃった……あたしたちのエゴで皆を振り回してしまった……」

 

唐突な告白、誰もが耳を疑いながらも、二匹の話に耳を傾けていた。反論する者は居らず、その話に只管に聞き入っていた

 

「すまなかった」

 

「ごめんなさい」

 

最初に作り出した不可侵のルール、其れは自分たちが人間であったが故に生み出した欲望という名の決まり事。だからこそ彼等は素直に詫びた。勿論、其れで罪が正当化され訳ではない、其れでも誠意は見せなければと彼等は頭を下げたのだ

 

「いいえ……其れは違います。どうか、頭を御上げになってくださいませ、リムル様にネコリア様」

 

「シュナ様の仰る通りです、御二人に詫びていただく必要等はありません。此度の件は私たちの御二人の庇護下にあるという甘えがあった故に招いた結果が此度の惨劇……この問題は私たち(・・)全員が抱えるべきことだと私は思っております」

 

「シュナ……ライメイ……」

 

強者を盟主と仰ぐが故に起きた惨劇、其れは常に自分たちは誰かに守られているという甘えがあった故に起きた惨劇。その甘えから生じた問題を詫びる必要がないとシュナは諭し、ライメイも冷静に原因を言及する

 

「妹だけならまだしも、暴れるだけが生き甲斐とも言えるライメイにも先に言われるとは情けない限りだ。結界で外からの干渉を、リムル様とネコリア様との繋がりが絶たれた時、常にあった万能感が消え去り、胸中に広がったのは寄り処を失った動揺……留守を預かっていたにも関わらず、我々は心の何処かで御二人を頼ってしまっていた…」

 

「町を守れ、そう言われた時は剣としての御役目を遂行すると息巻いていたにも関わらず…此度の失態…私には貴女様の剣を名乗る資格が御座いませぬ…」

 

ベニマル、ライメイが自らの失態を嘆き出すと会議に参加していた幹部たちが次々と自らの失態を告白し、議題は脱線を始める。その様子に何も言及出来ないリムルとネコリアであったが、ある声が響いた

 

「リムル様、ネコリア様」

 

その声の主、ハクロウは徐に立ち上がると真っ直ぐとした威厳ある瞳で会議に参加している全員を見据える

 

「御二人が御自分の思いを優先したからといって、何も問題はございませんぞ。今回の件は全員の油断と弱さが原因……あの様な不埒者どもに好き放題されてしまったのは、ワシ等の怠慢に他ならぬ………

 

 

 

 

 

違うか、皆の者!

 

 

その声、正に鬼の一喝で全員の身が引き締まる。裏切り者と罵られ、町から追い出される事も覚悟していた二人にとって、その反応は予想外だった

 

「リムル様、ネコリア様。御二人の身勝手を咎める者等居りますまい……御二方は何があろうと我々が従うべき絶対的な主、その立場は不動なのです」

 

「わふっ!そうだぞ!人間が好きでも、魔王様になってもネコリア様はネコリア様で、リムル様はリムル様だぞ!」

 

「元が人間だとしても、私と妹たちが、そして兄上が御慕い申し上げているのは何時もの御可愛いネコリア様です。その覇道に我等は何処までも付き従います」

 

「ホントに………欲張りな子たちね……でもありがとう、大好きよ♪」

 

「「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」」」

 

「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」

 

「ネコ姐さんのウインク……これだけで、御飯三杯はいけちゃう!」

 

ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるエンカ、ライメイ、カイリン、ソウカ、エレンは目をハートにしながら悶える

 

「あれ?リムル様。溶けてないっすか?」

 

「いやァァァ!!!誰か医者ァァァ!あの人!急に溶け出したわっ!!!謎の融解病よ!救急車ァァァァァァ!!!」

 

「引っ叩くよ?ネコちゃん」




絶望からの希望、その先に待ち受ける新たな対応策とは……

ネコリアの真骨頂その36 実は如何なる時も掴みを忘れない

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第五十五話 作戦には名前が大切だから、最強の名前を考えちゃった

今回の見所!ネコちゃんは天才!そして可愛い!!以上!


「それで、聞きたいんだが……今後の人間への対応は、どうするつもりだ?旦那に姐御」

 

会議を軌道修正しようとカイジンが斬り込んだ疑問を投げ掛ける。その最もな意見にリムルは冷静に答えを吟味し、口を開く

 

「……うむ、今回の件は今までの状況を見直さざるを得ない出来事だ。かと言って、人間の全てを敵と断じることは出来ない。ヨウムであったり、カバル等の様に俺たちを信用してくれている人間たちがいるのも事実だ」

 

「でもね?其れとこれは別の話よ。この国は現段階ではドワルゴンとブルムンドの国交相手という不安定な知名度しか持たない箱庭()よ。侵攻中の連合軍を退けても、その先に待つのは、今回よりも大きな被害を生む最悪の未来………だから、あたしたちは同じ轍を踏まない為に何が最適で最高の策かを考えた。そして行き着いた答えが…」

 

「俺たちの存在を世に知らしめ、無視出来ない存在としての地位の確立………そう、「魔王」になることだ」

 

空気が引き締まり、誰もが二匹の魔物に視線を注ぐ。「魔王」になるという事は、それだけの意味があり、誰もが簡単に口にできる事ではない。然し、この二匹は其れを平然と言ってのけた、だからだろうか、ベニマルは、否、誰もが、その意志に、彼等が君臨する未来に、命を賭ける事を躊躇おうとは思わなかった

 

「なるほど。その為に「魔王」の箔を利用するということか……」

 

「流石はネコリア様!素晴らしい御考えです!」

 

「わふっ!やっぱりネコリア様はすごいなー!」

 

「ネコリア様こそ主人の鏡です!」

 

「ねぇ?俺のアイデアでもあるんだけど?」

 

「存じていますよ?」

 

「リムル様もすごいなー」

 

「頑張ってくださいね」

 

「反応の差がおかしいっ!!!」

 

ネコリアを褒めちぎるライメイ、エンカ、ソウカ。然し、同様の意見を提示した筈のリムルに対する反応は冷めていた。其れもその筈、三人の主人はあくまでもネコリアなのだ、リムルは盟主であるが尊敬の対象では無いのである

 

「他の魔王に対する牽制も行えば、人類にとっての盾とも成り得る。聡い者は敵対よりも共存を選ぶでしょうな」

 

「そうだ。友好的な者とは手を取り合い、害意ある接触を図る者には相応の報いを受けてもらう」

 

「目には目を、歯には歯を……全てはあたしたちの覇道の先にある甘美な理想論を掴み取る為の策略。相手に対して、鏡の様に接する事で長い時間を掛けて、しっぽりと友好的な関係を築くのよ」

 

「そう……しっぽりと……って!何を卑猥な言い方してんのっ!?」

 

「細かいボケも見逃さないにゃんて!流石はリムちゃんね!」

 

「…………この馬鹿猫は無視してくれ」

 

「馬鹿猫っ!?」

 

流れる様に繰り出した些細なボケ混じりの発言を悪びれもしないネコリア。流石のリムルも突っ込みを放棄し、会議の軌道修正を図る

 

「それにしても、アネキとダンナの考えそうな理想論だな。でも嫌いじゃねぇぜ?ウチとオヤジが惚れた二人らしいからな」

 

「ふふっ。ありがと」

 

「だが、西方聖教会の当たりは強くなるだろうな。其れについてはどう考えてるんだ?姐御」

 

「う〜ん……まだ策を練ってる途中ね。良い案が浮かぶと良いんだけど」

 

「ネコちゃんに任せるよ、その件に関しては。問題は侵攻中の連合軍に対する布陣だ、これは俺とネコリアが対処する」

 

来るべき新たなる強敵への対処に思考を巡らせるネコリア。するとリムルは彼女に良い案を提示することを一任し、当面の問題である連合軍の対処を任せて欲しいと口にする

 

「なんでっすか?リムル様」

 

「理由としては殺された者たちの蘇生に俺たちが魔王になるという絶対条件があるからだ。侵略者供には、その為の儀式(プロセス)に必要な贄となってもらう。ネコリア!今直ぐに弱体化の原因である複合結界の解除に向かう者たちの人選を行え!」

 

「にゃっふっふっふっ………あたしを誰だと思ってるの?ミゾレ!」

 

待ってましたと言わんばかりにリムルの呼び掛けに応じたネコリアが彼女は指を鳴らし、ミゾレにある物を配布させる

 

「はっ!此方が会議前にネコリア様が行った人選になっております。目を通してくださいませ」

 

「手元に行き渡ったわね……人選としては東側をベニマルに、西側の異世界人たちはライメイとソウカ、ハクロウに、南側はガビルとリグル、ゲルド。北側はソウエイ、結界の破壊はゴブタとエンカ。以上が侵略者を迎え撃つ為の布陣よ」

 

行き渡った資料を目に通す配下たちを前に、的確な人選を発表していく姿は正に参謀長としての地位、誰もが尊敬するNo.2の地位に最も相応しい人物であった

 

「ネコリア様!吾輩たちに機会を与えていただき感謝致します!このガビル!必ずや御期待に応えて御覧にいれましょう!」

 

「ガビル様かっこいい!」

 

「へんっ…ガビル様らしいぜ」

 

「然り!」

 

「ソウカよ。フウとクウを手にかけた者どもに目に物を見せてやるのだ」

 

「兄上に言われずとも……奴等は妹たちだけではなく、私たちの友(スイヒョウ様)の命までも奪った許されざる怨敵。ライメイ様……背中は任せましたよ?」

 

「同じ妹を持つ姉同士……その言葉をしかと受け入れよう。異世界人風情等……斬り伏せてくるわっ!我等の剣で!」

 

「ほっほっほっ、まだまだ若いもんには負けんよ。ワシもリベンジしなくてはならん者が居りますからのぅ………ゴブタよ。お前だけで結界は破壊できるな?」

 

「任せてくださいっす!さぁ!エンカさん!久しぶりにお散歩っすよ!」

 

「わふっ!お散歩か!よーし!結界をどかーんと破壊してやるんだぞっ!」

 

「ガビル殿にゲルド殿。よろしくお願いしますね」

 

「はっはっはっ!泥舟に乗ったつもりで居ると良いぞ!リグル殿!」

 

「其れは沈むのでは?ガビル殿」

 

「ふっ……俺とお前は一人か。相変わらずの無理難題を言ってくれるな……ネコリア様は」

 

「ああ」

 

「でもな…売られた喧嘩は買うのが俺たちだ」

 

「……ああ」

 

「……シオンの敵を討つぞ」

 

「ああ」

 

この日、世界に二つの嵐が起こった。空からは雷鳴が降り注ぎ、蒼き華に風が芽吹き、爆炎を纏う破裂音にも似た轟音が響き、凍てつくかの如き鋭くも冷たい雨が叩きつけられる、その中心に佇むは二匹の魔物。一匹は底知れぬ食欲を持つスライム、その片割れは満たされぬ欲望を求める強欲なるネコ、その果てに待ち受ける暴風(テンペスト)。これはその数時間前の会話である

 

「さぁ………出撃だ!」

 

「作戦名は(テンペスト)………今日、あたしたちは革命(暴風)を起こす。皆の者!!我等が盟主に続くのだっ!!!!」

 

「「全ては我等が盟主の御心のままに!!」」」




遂に迎える侵略者たちとの戦、彼等は知らなかった。自分たちが喧嘩を売った者たちが最強の魔物たちであることを。彼等は知らなかった、スライムとネコの最強コンビの圧倒的な力を

ネコリアの真骨頂その37 実は作戦には名前をつけたがる

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第五十六話 神の怒りを知る時、樹海に陽は沈む

今回の見所!ライメイが大活躍!そして、何気に奴らも名コンビ振りを発揮する!そしてネコちゃんは最強!!以上!


「……………お前も馬鹿にされたままでは終われないだろう……なぁ?剛力丸()よ」

 

「…私たちの可愛い妹たちを殺した報いを受けてもらおう…」

 

「若造に剣鬼の本気を見せてやろうかのぅ」

 

「手筈通りに頼むっすよ。ホントはオイラもやりたいっすけど、今日は皆さんに譲るっす……エンカさん!!」

 

「わふっ!」

 

西側陣営に姿を見せた五人の魔物。一人は身の丈以上はある大刀を肩に担ぎ、一人は二対のクナイを握り締め、一人は静かに佇み、一人は紅蓮の毛並みの狼に跨っている

側から見れば、戦力差は火を見るよりも明らかであるが、この場合は逆である

 

「お前だな?我が妹を手に掛けた異世界人は……」

 

「ああ?なんだ、お前。ガタガタ言ってねぇで、さっさと来いよ!」

 

「弱い犬は良く吠えると言うが……貴様はその足元にも及ばないな。私の友人にもきゃんきゃんと吠える駄犬が居るが、貴様よりも遥かに強いぞ」

 

『わふっ!?誰が駄犬だっ!畑馬鹿には言われたくないやいっ!!』

 

異世界人の一人である田口省吾を前に、自らの同胞を引き合いに出す金色の鬼人。彼女の頭に《心理意識》で会話を聞いていた件の本人が反論を返すと、鬼人は「すまん」と謝罪を返し、肩に担いだ大刀を地面に突き刺す

 

「なんのつもりだ!てめぇ!」

 

「見ての通りだ…私は生憎と大刀の扱いには慣れていなくてな。如何にも扱うには体力を消耗する。故に賭けをしよう、貴様が一度でも私に触れる事が出来たならば、私は貴様を見逃す」

 

「舐めやがって………上等だっ!!吠え面かきやがれっ!!!」

 

彼女の持ち掛けた賭けに乗った省吾は地を蹴り、顔面目掛け、拳を振り抜く。然し、直ぐに彼は自分の目を疑った。それは何故?簡単である、其処には突き刺さった大刀だけを残し、確実に捉えたと思っていた彼女の姿はなかったからだ

 

「どうした?私はこっちだぞ」

 

「なっ……!いつの間に!?これならどうだっ!!!」

 

背後から聞こえた声に振り返り、一瞬は驚きを見せるが即座に切り替え、彼女に殴打の嵐を叩き込む。だが、彼女はその全てを軽やかな動きで躱し、踊る様に動き回る

 

「卑怯なマネしやがって!!ちょろちょろと動き回るんじゃねぇ!!」

 

「卑怯?面白いことを言うんだな、貴様は。自分がした行いを棚に上げて、物を言うとは……思いあがるんじゃねぇよ(・・・・・・)!!!」

 

刹那、彼女の雰囲気が一変。厳しいながらも穏やかな口調は形を潜め、荒々しい口調に高圧的で鋭さを増した目付きは、省吾の体に恐怖を呼ぶ。初めての感覚に彼は拳を止め、今迄に感じた事の無い畏怖の感情を抱かせる

 

「お前と私の技を一つに……行くぞっ!!シオン(・・・)!!!」

 

「あっ………な、なんだ………なんだ……なんなんだよっ!!お前ェェェェ!!!」

 

知らない感情に、気が狂った様に突進してくる省吾。その姿に彼女は呆れた様にため息を吐き、突き刺さった大刀を引き抜き、空高く飛び上がる

 

鬼刃落雷(きじんなるかみ)!!!!」

 

雷鳴が轟くかの様な轟音と共に振り下ろされた大刀は地面を抉り、地形を変えるか如く巨大な大穴(クレーター)を生み出す

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!いてぇ……いてぇよぉ……やめてくれよ……頼むから!!」

 

「なんだ、頑丈な肉体だな。普通の人間ならば、今ので塵一つ残らないくらいに消し飛んでいると言うのに」

 

「力の込め方に(むら)があるからじゃよ。本来は速切りに特化した御主が大刀を扱うのは畑違いじゃからの」

 

「御師匠。小言を言いに来たのか?」

 

背後から姿を見せたハクロウに、呆れた眼差しを向ける彼女基ライメイ。担いだ大刀を肩に担ぎ直し、彼からの小言に悪態にも似た問いを投げかける

 

「なっ……ジジイ!?テメェ!ここで何してやがるっ!キョウヤは何処だっ!!!」

 

「御主の友達なら……ここじゃよ」

 

省吾の問いに応える代わりにハクロウが投げたのは、人間の生首。その首には見覚えがあった

 

「なっ…………!?あっ、ああ…………!」

 

自分の友人である橘恭弥の変わり果てた姿に、彼は怯える様に走り出す。拠点であるテントがある方向に逃げ、その息は次第に荒くなっていく

 

「ちきしょう!クソが!なんで……なんで…!俺が、こんな目に!はぁ…………!このままじゃ殺られる!」

 

何か思惑があるのか、テントの中に居るであろう三人目の仲間である水谷希星を目指し、彼女の居るテントを開けるが、彼の視界に衝撃的な光景が飛び込んできた

 

「あがっ………なんで………」

 

「妹たちを殺したというから、如何なる手練れかと思いましたが………期待外れでしたね」

 

体中に無数のクナイが刺さり、夥しいまでの血に塗れた変わり果てた希星の姿。その側には涼しい顔のソウカが佇んでいる

 

「ソウカも御師匠も仕事が早いな」

 

「御主が遅いだけじゃ」

 

「な、なんなんだよっ!!お前らっ!!!くそっ!!おい!俺の為に死んでくれよ!」

 

云い知れない恐怖を振り払い、彼は近くに居た兵士の首を締め上げ、その力を我が身に取り込む。仲間を仲間と思わない所業にライメイたちの表情が凍りつく

 

「…御師匠、剛力丸を預かってくれ……ソウカ。私の刀は持ってきたか?」

 

「此方に」

 

「感謝する…………雷鳴とともに散れ、武人の面汚しめ」

 

肩に担いだ大刀をハクロウに預け、ソウカに愛刀・雷切を渡されたライメイの表情が一瞬で変化する。剛力丸を力任せに振り回していた先程までの姿とは裏腹に、隙だらけの無防備な構え、明らかに殺してくださいと言わんばかりの姿は格好の的である

 

「面汚し?ハハハハハッ!攻撃に特化した乱暴者(アバレモノ)と防御に特化した生存者(イキルモノ)の二つを手に入れた俺は無敵だ!骨を砕かれても、頭を斬り落とされても、直ぐに修復される!どうだっ!怖気付いたかっ!」

 

「………話は終わったか?」

 

「………………あ?」

 

叫ぶ様に自らの持つスキルを説明した省吾の耳に飛び込んできたのは的外れな解答。まさかの返答に彼は自分の耳を疑った

 

「聞こえなかったのか?話は終わったかと聞いたんだ。聞いてもいないのに、長々と喋っていたのは貴様だ。そろそろ……体の痛みにも気付くと思ったが、鈍いヤツだ」

 

「へ…………ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!いてぇ!いでぇよ!なんだよ、これェェェェ!!」

 

呆れた眼差しとため息、其れと同時に刀が鞘に戻る音が響く。その時だった、省吾の体に身に覚えのない痛み(・・)が駆け巡った

 

「仙法・朧雷獣(おぼろらいじゅう)………私の朧流剣術に仙術を合わせた複合技だ。付け焼き刃だったが、上手くいったな」

 

「…………やべで、やべでください……………冗談だったんですぅ……本気じゃなくて……」

 

体中を駆け巡る雷を彷彿とさせる激痛、その痛みに震え、戦意を失った省吾がそう言うも、ライメイの瞳から怒りの焔は消えない。妹を失った悲しみは、友を失った悲しみは、仲間たちを失った悲しみは癒えない、言葉だけの反省は彼女の中で意味を成さない

 

「わふっ!ライメイ!こっちは終わりだぞっ!」

 

「ふふん、流石はオイラのお散歩術っすね」

 

「苦痛からの解放、貴様に与えるのは………地獄への片道切符だ!!仙法・氷雷爆刃(ひょうらいばくじん)!!!」

 

「ひ……ひぃぃぃぃぃっ!!!」

 

氷、雷、炎、三位一体の力を纏った刃が迫り、恐怖に耐えきれない省吾は逃げ出すも、容赦無く振り下ろされた刃に妙な手応えを感じる

 

「ふむ……生き残ったのはショウゴのみか。儂とした事が、魔物共の力を見誤っておった様じゃな」

 

「ら……ラーゼンさん!俺を助けに!」

 

その妙な手応え、ラーゼンと呼ばれた男性は値踏みする様に周囲を見渡す

 

「ふむ…………なるほどのう。鬼人族に龍人族…………なるほど……ショウゴ達では勝てぬ訳じゃ。一度、退くとするかのぅ」

 

その言葉と共に省吾と共に退散しようとするラーゼンを追随する様に二つの影がハクロウの両脇から飛び出す

 

「させると思うか?仙法・雷球(らいきゅう)!!」

 

「及ばずながら………仙法・水槍撃(すいそうげき)!!」

 

「止まれ!ライメイ!ソウカ!」

 

「エンカさん!二人を助けるっすよ!」

 

「わふっ!!」

 

仙術を放とうとしたライメイ、ソウカに待ったを掛けたハクロウの判断にゴブタが即座に対応し、二人をエンカが体当たりで吹き飛ばす。刹那、怒号にも似た爆音が響き渡り、爆風が巻き起こる

 

「助かった……ゴブタ、エンカ」

 

「感謝します」

 

「師匠の事は誰よりも理解してるっすからね」

 

「わふっ!すごいぞっ!ゴブタ!」

 

「タダの狸かと思うたが、化かすのは下手じゃわい。ワシの知っておる方であれば、もっと高度な化かし方をしよる」

 

「カカカッ!言うではないか、鬼人よ。強さで見れば、そちらの者たちよりも御主の方がかなりの武人と見た……じゃが、残念だ。ワシはコレ(・・)を助けに来ただけに過ぎん……生きておれば、戦場でまた会えるやも……………」

 

「それはない」

 

その場を去ろうとしたラーゼンの耳に、ハクロウの怒気の籠った声が突き刺さる。聞き間違いと思い、振り返ると彼は静かに佇んでいた

 

「貴様が向かう戦場には……我々の主人たち(・・)が向かわれた。あの方々は自らの欲に横槍を入れる輩には一切の慈悲も持たん。後悔しても遅いとは正にこの事じゃ………激怒させてしもうた、決して怒らせてはならぬ方々をな。ゆめゆめ、楽に死ねんじゃろうて……」

 

「カカカッ!つまらんハッタリよ。一応は、忠告としてこの耳に留めておこうぞ。では、さらばじゃ!」

 

そう言い残すと、ラーゼンは転移魔法で姿を消す。残されたライメイたちは遥か彼方に居るであろう二人の主人を思い浮かべる

 

「エンカ。報告はすんだのか?ネコリア様とリムル様に」

 

「わふっ!とっくの昔に終わったんだぞ!」

 

「後は待つだけっすね。エンカさんはネコリア様の所に行くんすか?」

 

「そうだぞ、街に帰る時に連れて帰らないとだからなっ!行ってくるんだぞっ!」

 

エンカはライメイたちと話し終えると主人が待つファルムス王国本陣に駆け出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネコリア。準備はできたか?」

 

「誰に言ってんのよ……とっくに準備完了してるわよ」

 

ファルムス王国本陣上空には、悪魔の如き翼を携えた仮面の魔人、猫耳をぴこぴこと動かし、愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らす魔性の美少女が佇んでいた

 

「死ね。神の怒りに焼き貫かれて……」

 

「一瞬よ。我が欲の糧となれ…」

 

空中に浮かぶ無数の水玉、更に地面から前触れも無しに姿を見せた無数の苗に兵士達は首を左右に捻る。其れが自分たちの命を狩り取る死神の鎌であると知らずに、安易に近寄っていく

 

神之怒(メギド)!!!」

 

「呪法・樹壊燐(じゅかいりん)!!!」

 




降り注ぐ雨、生い茂る木々。その二つは人々を恐怖に陥れる………

ネコリアの真骨頂その38 実は準備は直ぐに終わらせる

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第五十七話 欲望が齎すは新たな魔の誕生

今回の見所!ネコちゃんの隠された秘密が明らかに!!以上!

ネコリア「丸裸ね♪エッチな意味じゃないのよ?」


神之怒(メギド)!!!」

 

「呪法・樹壊燐(じゅかいりん)!!!」

 

天から降り注ぐは神の怒り()、大地から生まれ出るは命を喰らう樹海(処刑台)。余りにも唐突で、前例も、感じたことも、是迄に彼等が体験した出来事の何にも該当しない悪夢。一瞬にして、長く短い悪夢は正に天災。老若男女問わず、等しく命を奪う姿は魔物と呼ぶには神々しく、神と呼ぶには恐ろしく、その名は天災……又の名を魔王と呼んだ

 

「レ、レ、レイヒム……………!何だこれは……………!?どうする!?どうすれば良い!?」

 

「お、落ち着きましょうぞ!王よ……!!!取り敢えず、時間を巻き戻しましょう!私は異世界人たちの言っていた《たいむましん》とやらを探します!」

 

「お前が落ち着けぇェェェェ!!」

 

吹き荒れる天災に慌てふためくファルムス王国国王であるエドマリスに対し、西方聖教会大司教のレイヒムは異世界人に聞いた《タイムマシン》を探そうと近くの木箱に頭を突っ込む

 

「エドマリス王はご無事か!?」

 

「レイヒム!?お前は何をしているんだっ!?」

 

錯乱状態のレイヒムの前に騎士団の指揮者であるフォルゲンが姿を見せ、その背後に控えたショウゴがレイヒムの醜態に突っ込を放つ

 

「フォ……………フォルゲン!…早くこの場から逃げようぞ!国に戻り、態勢を立て直すのじゃ!」

 

「左様ですぞ。何が起きているのか分からん。早く去らねば、我らも巻き添えになってしまいまする」

 

何時になく冷静で落ち着いた口調のショウゴ、その姿に違和感を感じたエドマリスは首を傾げる

 

「ショウゴ………?」

 

「ラーゼンに御座います、我が王よ。憑依転生(ポゼッション)を使用し、ショウゴの体に自らの魂を転移させたのです」

 

「なんと……!よくぞ!よくぞ戻った!さあ早う、早う帰ろうぞ!お主の転移魔法で……………!」

 

「御言葉を返す様ですが……我が王。私の魔法は使用不可……。然し!安心召されよ!生き残っておる者を強制的に集め、その者どもを肉の盾として、お二人を御守り致します。故に御自身の足で逃げていただきたく存じます…フォルゲン!」

 

「任されよ!」

 

「おっ、おお!流石、流石じゃ!フォルゲン!」

 

「頼もしきはフォルゲン殿よ!」

 

ショウゴ基ラーゼンの命に応じたフォルゲンは外へ踏み出す。その背中に頼もしさを見たエドマリス、レイヒムは賞賛の声を送るも、希望は一瞬で恐怖に変貌した

 

「ひいいい!ひぃぃ……………!死ぬっ……………!皆、死んでしまう……………!!」

 

「そっ、そんなバカな……………!一体、何が起きておるというのだ!?」

 

「ふふふっ…………良いわ、その恐怖に慄く悲鳴……あたしの欲を掻き立てる………もっと、聞かせてくれる?」

 

絶望が現実味を帯びた時、その鈴の音の様な透き通る声は背後から問い掛けてきた。そして、目の前に一人の仮面姿の魔人が降り立つ

 

「その顔立ちは日本人だな?街を襲撃した異世界人か?」

 

「ガワだけだがな……貴殿等は魔物の国の主人たち(・・)と御見受けす……」

 

「どーだっていいわよ、ムカつく形をしている以上は敵よ」

 

全てを言い終える前にラーゼンは生き絶える。その背に突き刺さる枝が命を喰らい、彼を一瞬で絶命させたのだ。その姿にエドマリスは気付く、前門の魔人、後門の魔人、この二人が魔物を統べる統率者である事に、彼は気付いた

 

「き……………貴様等が魔物の国の主達だな!余はエドマリス!ファルムス王国の王である!伏して控えよ!貴様等に話があるのだ!」

 

「…………………誰に口を聞いてる、小童

 

王としての威厳を保つ為、上から目線で二人に会話を求めるエドマリス。然し、其れは間違いであった。鈴の音は鈍く重い声色に変化し、背後から殺気を感じ、振り返る

 

「な、な…なんだ!?この化け物は……!!」

 

「化け物………笑わせてくれる。我等が領域に侵攻し、配下たちを歯牙にかけたのは貴様等であろう?其れを化け物と言わずして、なんと言う………違うか?小童」

 

巨躯なる体格、二又に分かれた尻尾を持つ仙猫。真の姿を晒す迄に彼女の怒りは頂点に達していた、化け物と呼ばれても彼女の中にあるのは自分よりも遥かに欲深き人間の心理、その所業は正に化け物と呼ぶに値する。故に彼女は逆に問いかけたのである

 

「ご、ご……………誤解なのじゃよ!」

 

「何が?」

 

「よ…………余は、友誼を結びに来ただけなのじゃ!西方聖教会が魔物を敵視しておったので、本当に友誼を結ぶのに値するのか、確かめようとしただけなんじゃよ!宣戦布告も、異世界人が勝手に暴走しただけじゃ!わ…………分かった!余の国と国交を結んでやろうぞ!良い話であろう?光栄であろうが!その方も鼻が高いであろう?まっ、まあ、今回の我が軍の損害については……………」

 

「小童。貴様は他人の領域を尋ねる時の礼儀を知らぬらしいな………呪法・空裂風斬(くうれつふうざん)

 

エドマリスの言い分に彼女は興味を失った様に、両腕を風の刃で斬り裂く。魔素量を消費する姿と呪法の使用で魔素の大半を消費し、元の姿に戻っていく

 

「リムル………後はお願い………あたしは……先に……寝る………」

 

「ああ、おやすみ。ネコリア」

 

意識を手放し行く相棒を抱き抱え、背後から迫る気配に気付き、その気配の正体に向き直る

 

「わふっ!ネコリア様を迎えに来たんだぞっ!」

 

「先に戻っててくれるか?エンカ」

 

「わふっ!」

 

元気よく現れたエンカの背に彼女を乗せ、リムルはエドマリスとレイヒムに向き直る。彼等の更なる苦痛が再び、幕を開ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『告。進化条件、種の発芽に必要な養分、人間の魂を確認します。……………認識しました。規定条件が満たされました。これより、魔王への進化(ハーベストフェスティバル)が開始されます』

 

世界の言葉が響く。起きているのか、眠っているのかも自覚出来ない不思議な感覚。彼女は漂う意識の中で見た。命を落とした配下たちが振り向き、自分の手を取る姿を。生前に自分が目指した存在とは対極に位置する存在に到達した彼女は、その手を握り返す

 

『告。魔王への進化(ハーベストフェスティバル)に寄り、個体名ネコリア=テンペストの変化が開始されます。種族: 妖魔(ようま)猫魈(ねこしょう)から妖霊仙猫(ようれいせんびょう)への超進化……………成功しました。全ての身体能力が大幅に上昇しました。続けて、旧個体にて既得の各種スキル及び、耐性を再取得。成功しました。新規固有スキル、無限治癒、魔王覇気、分割思考を獲得。成功しました。ユニークスキル彷徨者(サマヨウモノ)の進化を受諾、分割思考を統合(イケニエ)に。ユニークスキル彷徨者(サマヨウモノ)は、究極能力(アルティメットスキル)解放之女王(リバティア)

に進化しました』

 

世界の言葉による進化終了に伴い、玉座に眠っていたネコリアの姿が変化する。その姿は美しく、神々しく、可憐な華の如き、慈愛に溢れた女神。系譜に連なる魔物たちが薄れ行く意識の中で見たのは正に女神と呼ぶに値する彼女の姿であった

 

「少しだけ手を貸してあげるわ、我が娘(ネコリア)。蘇りなさい……神法(しんほう)神聖樹(しんせいじゅ)……我が名の下に、ヴェルリア(・・・・・)が命ずる。その命を再び…巻き戻せと…」

 

ヴェルリア(・・・・・)、そう名乗った誰かを今は誰も知らない。然し、其れはある種族と深い関わりを持つ存在であることを知る者がこの世に数人であるが存在した

 

『今のは……そうか、そうであったか…なまじ気が合うと思ってはいたが……お前だったとはな…我が妻(ヴェルリア)よ』

 

黒き暴風は確かに感じた、死に別れた妻の姿を。友の中に感じたのである




目を覚ましたネコリアの耳に届くは騒がしくも賑やかな配下たちの声、戻ってきた日常に彼女は優しく笑う

ネコリアの真骨頂その39 実は秘密がある

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第五十八話 おかえり!帰ってきた日常♪

今回の見所!ネコちゃんが益々の可愛さを!更に彼女たちも復活!そして、今回はなんとサプライズにスピンオフからあの子も登場!以上!


「………にゃあ………んんっ………にゃあ………」

 

揺籠で眠る様に、寝息を立てる姿は正に可憐な猫。鍵尻尾はふりふりと揺れ、猫耳はぴこぴこと動き、覚えのある優しい声が耳に入る

 

「おはようございます……御目覚めになるのをお待ち申し上げておりました。ネコリア様」

 

顔を覗き込む様に、優しく笑い掛けたのは彼女の腹心であるスイヒョウ。命を取り戻した彼女の姿に、主人である彼女も優しく笑う

 

「やっぱり、朝はスイヒョウの声で起きるのが一番ね……おかえりなさい」

 

慣れ親しんだ声、この声を聞くと朝が来たのだと実感が湧く。何度も聞いた声である筈なのに、その声を最後に聞いたのは遠い昔の様に感じられるのは何故だろうか。その疑問を胸に仕舞い、腹心の声に彼女は労いの言葉を投げかける

 

「フウもいる」

 

「クウも…」

 

「二人もおかえり」

 

「ネコリア様………私たちが蘇れたのは、彼方様のお陰ですわ。故に!」

 

彼女をソファに座らせるとスイヒョウはフウとクウ、配下たちと共に傅き、(こうべ)を垂れる。その瞳に映る敬愛すべき自らの主人に復活の喜びを伝える為に、彼女を見据える

 

「我々の忠誠をお受け取りくださいませ。我が主人よ」

 

「わふ……相変わらず、スイヒョウは堅苦しいんだぞ……」

 

「あら……居たのですか?エンカ。小さくて気付きませんでしたわ」

 

「あぁ?死んでた影響で眼も悪くなったのかだぞ?どー見ても標準サイズだろうが」

 

「エンカもスイヒョウ様も落ち着いてください。全く……」

 

「何時もの二人らしいじゃねぇか。そーいや、ライメイはシオンに会ったのか?」

 

「無論だ、目を覚まして直ぐに殴っておいた」

 

「何をしてるんですかっ!?」

 

騒がしくも、賑やかで、聞き慣れたやり取り。彼女が見慣れた日常が其処にあった、欲していた確かな光景を見れた喜びからか、彼女は目を閉じ、その声に耳を傾ける

 

「ふふっ………騒がしいわね、ホントに」

 

「ネコリア様。リグルド殿から宴の準備が整ったとのことですわ」

 

「あら、良いじゃない。早速だけど樽酒を持ってきなさい!今夜は呑むわよっ!にゃーっはっはっはっ!」

 

宴と聞き、禁止されていた筈の樽酒を勝手に解禁した彼女は早速と言わんばかりに会場に走り出す。道中ではリムルの魔王化で復活した彼の配下たち並びに彼女の魔王化で復活した配下たちが手を振る

 

「あっ!ネコリア様!味見していただけませんか?」

 

走っていた彼女基ネコリアを呼び止めたのは、一人のホブゴブリン。見覚えのある姿に足を止め、近付く

 

「にゃ?あら……ペコ(・・)!久しぶりね!良いわよ!今日はにゃに?」

 

「前にネコリア様が教えてくださった炊き込みご飯というのを作ってみたんですが……」

 

ペコと呼ばれたホブゴブリンはネコリアに炊き込みご飯の盛られた茶碗を差し出す。彼から受け取った茶碗の中身を口に運び、暫くの沈黙が周囲を支配する

 

「………にゃるほど…………うん!美味しいわ!しっかりと出汁が効いてるし、具材も炊き込まれてる…………これはキノコ出汁ね?流石はペコね!」

 

「ありがとうございます!」

 

「んっ……ステラは?イッチー」

 

彼女が舌で感じた感想を伝えるとペコは感謝の意を示す。口をもごもごと動かしながらり彼女は見慣れたもう一人が居ない事に気付き、料理長のゴブイチに問う

 

「ステラは急用で暫くは休みです」

 

「ふ〜ん、じゃあ串焼きもらってくわよ〜」

 

串焼きを口に含みながら、彼女はまた歩き出す。テンペスト復活祭と称された宴が始まり、次第に街は何事もなかったかの様に騒ぎ、喜び、笑い合う姿に自然と今日何度目かも忘れた笑顔が溢れる

 

「にゃ〜ん……楽しんでるぅ〜?リムちゃん」

 

「当たり前だろ?ネコちゃん。というかいつの間に呑んだんだよ………まぁ、今日は咎めないけど、ほどほどにしとけよ?」

 

「わかってるわよ。そーいえば、リムちゃんの《擬態》が大人な感じになってるわね」

 

「其れはネコちゃんもだろ?胸の方は前と変わらずに寂しいけど」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった。然し、その姿は以前よりも大人の雰囲気を感じさせる細身の体に、艶やかな黒髪をシニョンヘアに結え、魔性の笑みを浮かべる傾国の美少女が佇んでいた

 

「我が君並びに参謀長閣下、魔王と成られました事、心よりお祝い申し上げます」

 

不意に聞こえた知らない声、ネコリアは両眼を瞬きさせ、リムルも彼を見ながら沈黙する

 

「………………誰だ?お前」

 

「やだ、ちょっとナンパ?相手は選んだ方が良いわよ。こんな形してるけど、このゼラチンはおっさんよ」

 

「引っ叩くよ?ネコちゃん。すまんが、何方さんで?」

 

見覚えのない男に疑問符を並べる二人、敬愛する者たちからの言葉に男は戦慄するかの様に、目に見えての精神的苦痛を感じた

 

「……ご、ご冗談を……………悪魔の私が、心格(ココロ)にダメージを受けました……」

 

「我が主よ。この者は、ファルムスの兵士どもを生贄に召喚した悪魔のうちの一体です」

 

「アンタ……人が寝てる間に悪魔を呼んだの?流石にやり過ぎじゃない?まぁ別に構わないけど…」

 

「ランガ殿!参謀長閣下!」

 

その男が悪魔だと判明し、呆れた眼差しを向けるネコリア。其れでも自分の存在を認める者が居る事に歓喜した悪魔は彼等の名を呼ぶ

 

「なるほど……色々と手伝ってもらったって聞いてるよ!ありがとな!助かったよ!長々と引き止めてしまって悪かったね。もう帰っていいよ!」

 

「はい、かしこま…………え?今なんと?」

 

悪魔は自らの耳を疑う、彼が願っていた結果と違いがあるらしく、思わずリムルを二度見した

 

「うん?だから帰っていいって言ったんだ、お疲れ!」

 

「リムちゃん。あの子を見なさいよ」

 

「あの子……うーむ、確かにこれは酷い深爪だ」

 

「あのねぇ……毎度毎度、あたしの爪を見ないでくれる?あの悪魔を見なさい、悪魔を」

 

「なんだ、そっちか。なんか泣きそうだな………仕方ないか………分かったよ、お前を仲間にするよ。其れが望みなんだろ?」

 

定番のやり取りの後に悪魔との約束を叶えるリムル、その言葉に彼の瞳から涙が消え、喜びが顔に現れた

 

「おおお!感謝いたします!我が君!参謀長閣下!」

 

「我が君はやめろ、普通にリムルでいいよ」

 

「あたしも閣下にゃんて大層な柄じゃないから、普通にネコリアでいいわ」

 

「リムル………ネコリア………甘美な響きです。それでは、今後はリムル様、ネコリア様と」

 

((また変なヤツが…………))

 

変な悪魔基新たな仲間である彼はリムルに〝ディアブロ〟の名を与えられ、上位悪魔よりも更に上の悪魔公に進化を果たした

 

「ネコちゃんも興味あるか?」

 

「にゃいわね、今の所は。其れで?ベニマル、何か用があるんじゃないの?」

 

リムルの問いに応えながら、彼女は背後に立つ気配に呼び掛ける

 

「気付いてたんですか………ですが、ネコリア様も一緒なら丁度良かったです。ユーラザニアの三獣士。彼らの話を聞いてあげて下さい。魔王ミリム様対魔王カリオン様。その戦いの顛末を……」

 

これは二つの嵐が吹き荒れた裏で動いていたもう一つの天災の話。其れを語るは獣王が治めし大地の騎士団幹部三獣士である

 

「家に来い。話を聞かせてもらおう」




語られるもう一つの天災、その顛末は如何なるモノであったのか……!

ネコリアの真骨頂その40 実は進化後は女子高生並みのスタイルを手に入れた(胸は慎ましやかです)

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第五十九話 嵐の裏では別の天災が蠢いていたみたいだから、話を聞いちゃった

今回の見所!ネコちゃんが久しぶりに真面目爆発!でもでも遂に彼女に嬉しい報告があったりして……以上!ちなみに作者は現在、喘息気味で死にかけている為に更新が滞る可能性がありますがご理解の程よろしくお願いします


「魔王への進化、誠におめでとうございます。リムル様並びにネコリア様」

 

自らの自宅である庵に三獣士を通し、会談の場を設ける。全ての顛末を語る前に魔王となった盟主(リムル)参謀長(ネコリア)の両名を讃え、深々と頭を下げる

 

「避難民の事に関しては聞いているわ。大変な時に力になれなくて申し訳なかったわね………色々と込み入った事情があったのよ」

 

「其れでもアナタ方が無事でよかった」

 

「ありがとう存じます……その御言葉だけで、御二方の優しさが身に染みます」

 

自らの国が大変な事態に巻き込まれていたにも関わらず、他国を労う姿勢を見せる二人に三獣士は感謝の意を示す

 

「それじゃあ……聞かせてくれる?獣王国(ユーザラニア)で何が起きたのかを…」

 

「僭越ながら、此処からはこの黒豹牙のフォビオが話せていただく。一週間と少し前、獣王国(ユーザラニア)は魔王ミリムより宣戦布告を受けました……」

 

ネコリアが促すと、フォビオは事の顛末を語り出す。突然の宣戦布告から始まった魔王同士の戦、其れはカリオン優勢の状態で進み、大技で勝利を掴んだかに見えた。然し、ミリムの実力は彼の想像していたよりも圧倒的なまでの差が存在した。戦闘態勢を取ったミリムの放った竜星爆炎覇(とっておき)獣王国(ユーザラニア)の都市を消し飛ばし、畏怖する程の力に、流石のカリオンも顔色を変えた。そして、その戦いの最中に第三者(彼女)は現れた、天空女王(スカイクイーン)の名を持つフレイがカリオンを連れ去ったのだと、フォビオは話を終えると所在不明の主人を思い、瞳を閉じた

 

天空女王(スカイクイーン)ですって?そう言えば……彼女の配下を前に見たわね…ソウカ!」

 

「はっ!ここにっ!」

 

全ての話を聞き、何か思い当たる節があったネコリアが呼ぶと天井裏に潜んでいたソウカが姿を見せる

 

天空女王(スカイクイーン)フレイの配下がシュナの工房で働いてたわね?連れてきなさい」

 

「既に妹たちを向かわせております………フウ、クウ。状況は?」

 

待ってましたと言わんばかりにソウカは《心理意識》で情報収集に出ていたフウとクウに呼び掛ける

 

『暫く前に休暇届を出して、国に帰ったってドルドさんたちが教えてくれた』

 

『ゴブイチさん所にいたステラもいない』

 

「ネコリア様。ネム並びにステラはこの国には不在との事です」

 

「そう……引き続き、ソウカたちはソウエイと合流して、彼女たちの捜索をお願い」

 

「はっ!直ちに!」

 

的確な指示と対応、正に頭脳(ネコリア)(ソウカ)の呼吸は阿吽。彼女の指示を出す姿は参謀長としての役割を充分に果たしている

 

「………どうしたの?リムちゃん」

 

相棒に視線を向ければ、彼は何か思うことがあるらしく、考え込む様に顎を手に置いていた。疑問に思ったネコリアは彼に問う

 

「んっ………ああ、ちょっとミリムらしくないなと思ってな。彼奴ってさ、一対一(タイマン)に横槍が入るのを嫌がる性格だろ?なのに、他の魔王の介入を許すのが腑に落ちないなと思ったんだ」

 

「確かに……言われてみると、色々と腑に落ちない点があるわね。第一にあのミリムちゃんがリムちゃんの言うように自分の楽しみに他人の介入を許すのは妙だし、第二にフレイが事の顛末を見届けたフォビオを見逃した理由も不明、そして第三に疑問視するのが連れ去られたカリオンの所在。問題に挙げるべきはこの三点だと思うわ」

 

「ネコ様の言う通りだぜ。有翼族(ハーピィ)は高度から獲物を狙撃出来るほどの視力を持ってる、相手は況してや天空女王(スカイクイーン)と呼ばれている有翼族(ハーピィ)の女王だ。気が付かなかったってのは妙だ」

 

「なるほどな………ネコリアはどう見る?この状況を」

 

ネコリアが挙げた三つの問題点、其れにスフィアが同意すれば、リムルは頷きながらも疑問に感じたらしく、参謀長としての相棒の意見を問う

 

「確か、ミリムの話では豚頭魔王(オークディザスター)の計画に加担していた魔王は彼女を含め、四人。獣王(カリオン)天空女王(フレイ)破壊暴君(ミリム)…………最後に傀儡支配人(クレイマン)。何かあるとすれば…………なるほどね、そういうこと(・・・・・・)か」

 

「何か分かったのか?」

 

「ん?いや別に?」

 

「じゃあ今のなるほどはなんだったんだよっ!?」

 

思わせ振りな態度を見せたかと思えば、結局は何時も通りに我が道を行く彼女に振り回され、突っ込みを放ったリムルは呆れた様に眉を顰める

 

「兎に角だ。シオン、ミュウランを連れてきてくれ。スイヒョウは地図を」

 

「はい!」

 

「お任せを」

 

リムルの呼び掛けに応え、シオンはミュウランを呼びに、スイヒョウは地図を取りに行く為に庵を出ていく

 

(………………まぁ、リムルには誤魔化したけど、カリオンをフレイが連れ去ったのには理由がある筈……これはミリムが計画した一種の狂言と見た方が良いわね。クレイマンは自分の理解が及ばない所で、自分の仕組んだ事が原因で踊らされている事を知らずにいると考えるべきね………正に道化(ピエロ)の呼び名が相応しいわね。此処で全部を明かしても構わないけど、邪魔者を排除するには良い機会だわ。利用(・・)させてもらおうじゃない……にゃっふっふっ)

 

(あー…………なんか悪いこと考えてるな…。今は優先すべき事があるからな、こっちは後回しにしよう)

 

会議に参加したミュウランの情報と地図でのフレイの進路を判断材料に此度の件にクレイマンが関わっている可能性が高いと判明する中、静かに会議を傍聴していたネコリアの表情に何かを感じたリムルは彼女の真意を見抜くが今は触れずに後回しにしようと判断を下す

 

『告。間もなく《無限牢獄》の解析鑑定が終了します。この解放を行えば西側諸国への牽制効果が十分に見込めるでしょう』

 

「………ネコちゃん。遂に会えるぞ、アイツ(・・・)に」

 

《大賢者》改め《智慧之王(ラファエル)》からの申告で遂に《無限牢獄》の解析鑑定が終了直前に迫った事をリムルが彼女に知らせれば、何時もの魔性の笑みが僅かに緩んだ

 

「………そう、随分と短いお別れだったわね。ねぇ……ヴェルちゃん」

 

三百年来の親友との再会に、彼女は優しく笑う。その笑顔は本当に心の底から湧き出た喜びに満ち溢れていたと、後にリムルは語った




遂に来た、再会の時。久方振りに会う親友に彼女は何を思う…?

ネコリアの真骨頂その40 実は配下たちには其々の役目を与えている

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第六十話 待ちわびた再会、久しぶりに会う親友は相変わらずだった

今回の見所!遂に復活を果たすアイツ!そしてネコちゃんの気持ちはいかに!今回はちょっと長いかもしれないけど、呼んでくると作者的には嬉しい。あと今日で六十話、更にお気に入りもたくさん増えてきてる事に嬉しい気持ちが抑えられない今日この頃だったりします


「さて………諸君。今後の事を語る前に言っておきたい事がある」

 

会議の翌日。庵に集められた最高幹部のネコリアを筆頭とした幹部陣を前に、リムルは真剣な面持ちで口を開く

 

「俺は名実共に魔王になることにした」

 

唐突な言葉に誰もが首を傾げ、顔を見合わせる中で彼女だけは違った。その金色に染まった双眸で彼を見詰め、口を開く

 

「そこ、あたしたち(・・)の間違いでしょ。というか既にあたしもアンタも〝真なる魔王〟になってるじゃない、何を言ってるの?今更」

 

「うん?あー違う、違う。外に向けての宣言をするって意味だ」

 

「外への宣言……つまりは十大魔王に名乗りを挙げるということですかな?」

 

相棒からの指摘にリムルが否定からの補足説明をすると、逸早く察したハクロウが問いを投げかける

 

「流石はハクロウだ」

 

「何故……と聞くのも野暮でしょうけど、理由を伺っても?」

 

「ちょっと喧嘩を売りたい魔王がいてな。其奴を叩くには確かな地位が必要だ。その布石に俺たち(・・)は名実共に魔王を名乗る。異論はあるか?」

 

「ないわ」

 

傅き、(こうべ)を垂れる彼女の瞳に映る者は数多の魔物を束ねる一匹の盟主。その背後には幹部陣が続き、その意思に従うことを約束する

 

「「全ては我等が盟主の御心のままに」」

 

「ソウカ。状況は?」

 

リムルの決意を聞き、ネコリアは調査に出ているソウカに《心理意識》で呼び掛け、近況報告を求める

 

『既にソウエイ様が動いておられます。私は引き続き、ネムの捜索を続けます』

 

「お願いね。聞いてた?リムル」

 

「ああ、本格的な会議は諜報部の調査次第にしよう。三獣士の諸君、アナタ方にも協力をお願いしたい」

 

近況報告により、今後の方針が決まるとリムルが声を掛けたのは三獣士の面々。彼女たちの意志を尊重しての提案を持ち掛けた

 

「願ってもない事ですわ。ジュラの森の盟主様並びに参謀長様」

 

「避難民を受け入れてくれた恩は忘れねぇ。オレたちはアンタたちを信頼している」

 

「獣人は信頼には信頼で、恩には命を以って報いる。獣人全体としても、俺個人としても、リムル様とネコリア様には、返しきれぬ恩を得た。好きなように使ってください。俺たちはこの命を以って、御二方に報いましょう」

 

其々の答えと共に、傅き、(こうべ)を垂れる三獣士。(カリオン)とは異なる別の国の盟主(リムル)参謀長(ネコリア)に命を預けると誓う事は、主人を裏切るも同じ。然し、彼等は(カリオン)を救うと約束してくれた彼等を信じ、その命を忠誠という形で預ける事を決めたのだ

 

「その命、カリオンに返す時まで確かに預かった。今は休んで、来るべき決戦に向けて、英気を養ってくれ」

 

「「ははーッ!」」

 

仮初であるが従うべき存在の命令に従い、三獣士は彼等に忠誠を誓う。会議が終わると幹部陣は其々の役目を果たす為、方々に散っていく

 

「さて………待たせたな。行こうか?ネコちゃん」

 

「ええ……待ち草臥れたわ。ささっとすませるわよ」

 

「ささっとって今日日聞かないんだが……シュナ、お前はディアブロに街を案内してやってくれるか?俺とネコリアは個人的な用がある」

 

「承知しました」

 

「スイヒョウも付き添ってあげなさい。歓楽街の方はアナタの方が詳しいんだからね」

 

「お任せくださいませ」

 

「心遣い感謝致します」

 

個人的用事を済ませる為、リムルとネコリアは封印の洞窟へと向かう。出会いと別れが紡がれた場所はガビルを筆頭とした開発部門の居住区兼職場となっており、二人に気付いたガビルが迎える

 

「ネコリア様!リムル様!」

 

「ガビル。丁度良かったわ、会議の内容は聞いてたわね?」

 

「はい、《心理意識》にて受け取りました」

 

「開発部門は今日を以て、新しい幹部を筆頭とした新体制に生まれ変わるわ。この時を持ち、ガビル。アンタを幹部に任命し、この先の会議には出席を命じる。以上よ」

 

「やっ………………!」

 

「やった〜!ガビル様が昇進だーーーーーっ!!」

 

敬愛する主人(ネコリア)からの幹部昇進の通達、喜びに溢れたガビルが感情を表に出そうとした瞬間、背後から部下のヤシチ等が姿を見せ、リーダーであるガビルの昇進に歓喜の声を挙げる

 

「こらこら!はしゃぐなお前達!こういうのは、粛々と厳かに受け取る物であるぞ!」

 

「え〜でも、ガビル様さっき、『やったーー』って言いそうになってたよね?」

 

「んなっ……………!聞かれてた!?」

 

「良い部下に恵まれたわね」

 

「何を言うかと思えば……ガビルを見出したのはネコちゃんだろ?此れは正当な評価だよ」

 

和気藹々と盛り上がるガビルたちの姿に優しく笑うネコリア、その呟きを聞いていたリムルは彼女の確かな観察眼を褒める。元より、彼はガビルを配下に加えるつもりはなかった、だが彼女は自らの考えで逸れ者となったガビルを迎え入れ、開発部門に身を置かせた。その采配は確かだったのだろう、唯一の名持ちであった時よりも彼は与えられた名に恥じぬ強さを持つ武人へと成長を果たし、幹部にまで登り詰めた。その心中は正に子を思う母の様である

 

「じゃあ、ガビルに最初の仕事を与えるわ。洞窟の奥に誰も近付けないでくれる?」

 

「承知致しました!猫の毛一本も見逃しませんぞっ!」

 

「任せたわ」

 

「ガビルとネコちゃんって似てるよなぁ」

 

「引きちぎるわよ」

 

「なにをっ!?」

 

染み染みと語るリムルに、ネコリアの謎の文句が放たれ、間髪入れずに突っ込みが入る。洞窟最深部に向かいながらも定番のやり取りを欠かさないのは二人のありふれた光景であり日常、二年間で何度も行われた定番の風景である

 

「さて………いよいよ、復活の時だ」

 

洞窟最深部に辿り着き、リムルの周囲から膨大な魔素が溢れ始める。二年前、この場所で彼は転生し、二匹の生物に出会った。その片割れは悪戯好きで、小悪魔で、可愛いくて、誰よりも優しい一匹の猫又。そしてもう一匹は彼女と三百年の時を過ごし、自分に色々な教えと名を与えてくれた竜。長くて短い別れ、その時に終止符を打つ運命の日。刹那、辺り一体に(ひび)割れが生じる程に荒々しくも、優しい強風が発生する

 

『ククク………………!クハハハ…………!クァーハハハハハ!』

 

懐かしい笑い声、威圧感のある感覚、忘れたくても忘れられない存在が其処に居た。待ち望んでいた者との再会に彼女は柔らかい笑顔で、彼を見据える

 

『俺様、復活!』

 

「よっ、久しぶり。元気だった?」

 

『………………せっかく復活したのに、我の扱い軽くないか?』

 

その存在、〝ヴェルドラ〟は久方振りに再会した盟友からの一言に物申す。一瞬でも面倒な部分があるとリムルは思うが口には出さずにいたが、彼女は違った

 

「清々しいまでに面倒くさいわね。だから、封印されんのよ」

 

『なっ……!久しぶりに会う我に対しての最初に掛ける言葉が其れかっ!?貴様は!』

 

「うっさいわねー……ハゲドラゴンのクセに」

 

『ネコよ、今日の夕飯はお前を喰ってやろう。生で食べられるのと焼いてから食べられるのでは何方が好みだ?』

 

「そうねぇ〜、やっぱり焼いてからの方がオススメかなぁ。あっ、焼き方はウェルダンでお願い。よく焼かないとお腹壊しちゃ----って!食わせるかァァァァ!」

 

懐かしい鉄板ネタにノリツッコミ、二年間も離れていたとは思えない程に安定の関係にリムルは自然と笑顔になる

 

「やっぱり、二人はこうでないとな」

 

「あらやだ、ヴェルちゃん。リムちゃんが笑ってるわよ。きっとまたエッチな事を考えてるのよ」

 

『仕方なかろう。彼奴は欲望に忠実なエッチなスライムだからな』

 

「引っ叩くよ?お前等」

 

三人よれば(かしま)しいとは正にこの事、二年越しでも変わらない関係性。出会った頃を彷彿とさせる雰囲気に三匹は自然と笑い合っていた

 

「それで?あたしたち(・・)が魔王に、然も《覚醒魔王》になった事に対しての驚きが薄いことに関しての説明をお願いできるわよね?勿論」

 

『………へ?あっ!イヤッ!別に覗き見なんてしとらんからなっ!?我は!』

 

「してたのね」

 

『……………然し、2年やそこらで覚醒魔王か。お前たち(・・)の成長速度は凄まじいな』

 

((このオッサン……話を逸らしやがったな))

 

ネコリアの圧力にも似た雰囲気に呑まれそうになりながらも、話題転換を図るヴェルドラ。その素振りに粗方の事情を察した二匹は心中で突っ込みを放つ

 

『だいたいだな、リムルよ。お前は安易に名付けを行いすぎだ。足りない分の魔素を我から、奪いおって……』

 

「あり?そうだったの?俺が天才だったからじゃないの?」

 

「リムちゃん。天才の字が違うわ、こう書くのよ」

 

壁にネコリアが書いた文字は同じ読み方でも意味が異なる《天災》の文字。悪びれる素振りも見せずに素で彼女がリムルを何の様に考えているのかが理解できる

 

「ネコちゃんのそういう所が嫌いだ」

 

「あたしは揶揄われて、拗ねるリムちゃんが好きよー。其れで?系譜の魔物には祝福(ギフト)が送られてる筈だけど、ヴェルちゃんにはにゃんか届いたの?」

 

『ん……お、おおお!我のユニークスキル《究明者(シリタガリ)》が、究極能力(アルティメットスキル)究明之王(ファウスト)》になったぞ!我の飽くなき探究心が願う、究極の真理へ至る力だな!』

 

「鈍感過ぎると驚きを通り越して、呆れるわね…………」

 

「だな……」

 

「何だ?もっと褒め称えてくれても良いのだぞ?」

 

「「はいはい。凄い、凄い」」

 

褒める事を要求するヴェルドラに、投げやり気味な労いを送り、ため息にも似た息を吐き、困り顔を見せる

 

「さてと、何時迄も此処にいる訳にはいかないな。そろそろ、移動するか」

 

「……………そうだな。では、我の肉体をどうするかだが……………」

 

「心配しなくていいわよ、準備はしてるから」

 

《肉体》、其れは今のヴェルドラの状況に関係している。今の彼は思念体基魂だけが具現化した存在であり肉体を持たない。其れは竜種だけには限らず、精神世界に存在する精霊、悪魔等の精神生命体が物質界に顕現するには、依代に受肉させる必要があるのだ

 

コレ(・・)をあげるわ」

 

コレ(・・)》と呼んだ何かを指差したネコリアの背後には桃色の髪をしたリムルの分身が佇んでいた

 

『ほう………リムルの《強化分身》にネコリアの仙術の流れが見えるな……』

 

「あたしが魔王に覚醒してから、最初に生み出した《分身体》をリムルの《強化分身》に混ぜたのよ。だから、自然エネルギーを力に還元できるわ」

 

「…………………良い依り代だ。リムル、ネコリアよ………お前たち(・・)は本当に王になったんだな」

 

「まぁね」

 

「正しくは王と参謀長にゃんだけど……まぁ、いいか。それはそうと早く受肉しなさいよ」

 

『うむ!ありがたく頂戴するとしよう!我が友たち(・・)よっ!!』

 

その宣言と共にヴェルドラと分身が一つとなり、その体を魔素量に合わせ、調整するかの如く、変化を始める

 

「クアハハハハハハ!我、暴風竜ヴェルドラ=テンペスト!完・全・復・活!究極の力を手に入れたぞ!逆らう者は、皆殺しだぁぁぁぁ!」

 

「ネコちゃんの男版みたいなノリだな」

 

「ガワはアンタでしょ。というか、今の台詞に聞き覚えあるんだけど………」

 

「うむ。実はな、退屈だったんで、リムルの記憶を解析して、漫画とやらを読み込んでおったのだ!」

 

「引っ叩くぞ?オッサン」

 

「はぁ…………本当にこのバカドラゴンは………仕方にゃいわね……」

 

二年越しに重なった三人の糸は絡み合い、あの頃と変わらない雰囲気のままで。彼等の再会は続いた

 

『我が名は暴風竜“ヴェルドラ”。この世界に4体のみ存在する竜種が一体である』

 

『あたしは猫又、名前は未だ無いけど気軽にネコちゃん♪って呼んでね〜♪』

 

『ど、ドラゴンンンンンッ!!?其れに………ネコちゃん?可愛いな、おい』

 

『とーぜんよ♪よろしくね、エッチなスライムくん』

 

『エッチじゃないやいっ!』

 

一方で巨大な気配に街が大混乱を起こしていた事を、この時は知る由もなかったのは言うまでもない

 




暴風竜の復活に混乱に陥る街。その間、其れを知らないリムルとネコリアは自らのスキルを確認したりしていて………

ネコリアの真骨頂その41 実はツンデレ

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第六章 この度、大々的に名乗りを上げちゃいます!
第六十一話 過去との対話で、出生の秘密を知っちゃった


今回の見所!ネコちゃんの秘密が明らかに!以上!


(……………其れで?亜結。色々と聞きたい事があるんだけど………先ずは教えてもらえる?誰よ、その人は)

 

内に存在するもう一人の人格でもある、かつての自分に語り掛けるネコリア。その視線の先には見覚えのない女性が佇んでいる

 

(ん?ああー、この人?いやぁ、あたしも詳しくは知らないんだけど。なんか、あたし等の関係者みたいだよ?)

 

(関係者?う〜ん?見覚えにゃいわよ?)

 

(……………ふふっ。ならば、自己紹介をしておこうか、これからは共に生活していく訳だしね)

 

能天気な亜結の発言にネコリアが頭を悩ませていると、彼女は口を開いた。その不敵な笑みは優しく、美しさを纏うモノに変化し、桜色の髪を掻き上げる

 

(私の名はヴェルリア(・・・・)。暴風竜の妻よ)

 

((はい……………?))

 

唐突に放たれた爆弾発言。まさかの事態にネコリアと亜結の声が重なる

 

(だから、ヴェルドラ=テンペストの妻よ。私は)

 

(なっ!?ヴェルちゃんの妻ァ!?あたし、聞いてない!!ネコリアもだよね!?ってアレ?ネコリア?)

 

聞き返しに対し、真顔で二度目の答えを告げる。動揺を見せながらも亜結は主人格(ネコリア)に同意を求めるが反応が無く、彼女の方に視線を向ける

 

(……………ああ、ごめんね?よく聞こえなかった。其れで?奥多摩湖がにゃんだって?)

 

(コイツ!認めないつもりだ!あくまでも!)

 

(いや、そんな話はしてない。私がヴェルドラと仲睦まじい夫婦だっていう話をしてるのよ)

 

(ふうふ?ちょっと聞いたことない言葉ね)

 

(無理ある!無理あるよ!その屁理屈!)

 

ヴェルリアの爆弾発言を是が非でも認めようとしないネコリアの言い分に亜結は突っ込み続ける

 

(まあ、正しくはキミたち(・・)は私が事切れる時に分裂した魂の片割れだから、私もキミたち(・・)と同じなんだけど)

 

(分裂……なにそれ?裂けるチーズ的な?)

 

(亜結はホントに肝心な時にポンコツねー。分裂ってことは元々はあたしたち(・・)は其処のヴェルリアの一部だったってことよ)

 

(マジでっ!?)

 

頭脳の回転に長けたネコリアは直ぐにヴェルリアの発言の意図を汲み取るが、亜結は本気で驚いたらしく、両目を見開く

 

(キミたち(・・)は私の中に存在した怠惰と強欲と正義を元に形成された存在。穂川亜結は正義が主人格となり、正義の為ならば突き進む強欲さを持ったスーパーヒロイン)

 

(ああー、確かに正義感が先走りがちだったかも………両親にもよく叱られたなぁ……特にお母さんにはもうめっちゃ叱られた……)

 

(ああ………怖かったわよね……アレは……)

 

(ネコリア=テンペストは怠惰が主人格となり、自らの欲を満たす為ならば手を汚すことも躊躇わない強欲さを持った魔王(スーパーヒロイン))

 

(確かに、ネコリアは我が儘で欲深いよねぇ?今も自分の好きな人?に奥さんが居たことを認めてないくらいだし)

 

(うるさいわね、ダメ男に惹かれるアンタには分からないわよ。高校時代に付き合ってた彼氏が連続放火魔ってなによ、趣味悪すぎよ)

 

(知らなかったんだから仕方ないじゃん!というか!アンタもあたしなんだから、アンタの彼氏でもあったんですけど!?)

 

(過去は振り返らない主義なの)

 

自分たち(・・)が元は一つであった事を知り、反応を伺っていたヴェルリアは気に留めようともしないネコリアと亜結を前に唖然とする

 

(意外だったわ、もう少し驚くと思ったのに)

 

(驚いてるわよ?一応は。でもアンタなんでしょ?スイヒョウたちを救ってくれたのは)

 

(気付いてたの?)

 

声を掛ければ、当の本人は魔性の笑みを浮かべる。そして、内に秘めていたと思われる疑問を叩きつけるように問う

 

(魔王への進化(ハーベストフェスティバル)が開始された瞬間にあたしは眠りに落ちた。其れは亜結も例外じゃない、でも一つだけ妙な違和感を感じていた。自分じゃない誰かが体を動かすっていう違和感を、其れがアンタでしょ)

 

(大正解。本当に鋭い観察眼を持ってるのね?キミは)

 

(ふふーん!ネコリアはすごいでしょー!)

 

(にゃんで……アンタが自慢気なのよ……でもまぁ、これからはしっかりと知恵を貸してもらうわね?お母さん(ヴェルリア)♪)

 

(なんか上手く言いくるめられた様な気もするけど………何時でも頼りなさい。我が娘(ネコリア)よ)

 

(亜結さんも知恵貸してあげるよー!)

 

(アンタは頼りない)

 

(辛辣っ!!!)

 

別人格との対話を終え、薄目を開け、相棒と親友に視線を向ける。リムルはスキルの統廃合等を行い、ヴェルドラは妖気(オーラ)を制御する特訓中である

 

「ん………おっ、ネコちゃん。スキルの確認は出来たのか?」

 

「出来たわよ。特にこの究極能力(アルティメットスキル)解放之女王(リバティア) は使えそうよ。彷徨者(サマヨウモノ)の進化系なんだけど、以前は自分に対する支配系の力を無効化しか出来なかったでしょ?」

 

「そうだな。あれ?でもヴェルドラの《無限牢獄》を解除する為に力を貸してくれなかったか?」

 

「《無限牢獄(アレ)》は毛に力を収束させただけよ。でもね、解放之女王(リバティア) の場合は自分以外にも有効なのよ。例えば、対象が精神支配系の術を受けたりしていた場合はその術から対象を切り離してあげられるの」

 

「なるほど、確かに使えそうだな。良いスキルを手に入れたな。さすがはネコちゃん!よっ!出来る女っ!」

 

「にゃふふ………にゃっーはっはっはっ!当たり前よ!あたしを誰だと思ってるの?ジュラの大森林にその名を轟かせるネコリア=テンペストとはあたしのことよ♪」

 

「良いかね?この子はすぐに調子に乗るから、褒めすぎてはいけないよ」

 

「引っ掻かれたいの?リムちゃん」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「なんだなんだ、我の知らぬ所で随分と楽しそうではないか」

 

「あら、ヴェルちゃん。匂いがしなかったから気付かなかったわ、さっきまであんなに魔素臭かったのに」

 

「臭いっ!?我は臭かったのかっ!!!ネコよっ!」

 

「超臭いわね。リムちゃんもそう思ったわよね?」

 

「確かに……一週間くらい風呂に入ってない感じの匂いだったかも……」

 

「リムル!?お前もかっ!!」

 

ヴェルドラを弄ることを嬉々として楽しむネコリア、更にはリムルまでもが参加するという状況に突っ込みが放たれる

 

「其処を退いてくれっ!!」

 

刹那、洞窟前から言い争う様な声が聞こえ、ネコリアは瞳を細める

 

「わふ!其れは出来ないんだぞっ!何かあってもネコリア様が居るから大丈夫だ!」

 

「エンカ殿の言う通りであるぞ!獣王国(ユーザラニア)の方々!我輩は、ネコリア様より誰も近づけないように命じられたのである。故に今は我輩を信じていただきたい!」

 

「だが、もう3日だぜ!?あの伝説の暴風竜が復活したんだろ!?主たちが危険かも知れねぇってのに、手をこまねいてるつもりかよ!?」

 

「洞窟に篭っておられるのも、何か御考え故です。私たちは信じて待つのみですわ」

 

「スイヒョウ殿の言われた通りです。口を慎まなければ、潰しますよ。ネコ風情が」

 

「「「おい、今なんつった?」」」

 

リムルとネコリアの安否を心配するスフィアたちに対し、エンカとガビルが頑なに道を譲らない姿にスイヒョウも主人を信じて待つ事を告げる。然し、仲裁に入ろうとしたディアブロは彼女を前に高圧的な態度を示す。そして、魔国連邦(テンペスト)では口にしてはならない禁句、詰まりはネコを軽んじる発言をしてしまった。その発言を聞き逃さなかったのは、誰よりもその名を持つ存在を敬愛する七人の魔人。彼女たちの意見は一つ、「コイツは嫌い」という見解に至ったのは言うまでもない

 

「………全く、困った子たちね。仲良くしなさいって言ってるでしょ?」

 

「「「ね、ネコリア様!!」」」

 

「心配かけたな」

 

「「「リムル様!」」」

 

「うむ、人気だな。お前たちは」

 

「「「……………誰ェェェェ!?」」」

 

洞窟から姿を見せた、参謀長(ネコリア)盟主(リムル)。その傷一つない姿に安堵を感じる一同であったが直ぐに見慣れない存在が居る事に気付き、驚愕する

 

「と、取り敢えず……ご無事で安心致しましたわ。何せ、あの暴風竜ヴェルドラの気配が復活したのです。一体、何があったのかと………」

 

「そうですわ。三日もネコリア様の御姿を拝見出来ないなんて……私……また死ぬかと思いました」

 

「いや会えないくらいで死なないでもらえる?う〜んまぁ、心配かけたのは悪かったわよ。それもこれもこのヴェルドラが原因なんだけど……」

 

「なっ!?ネコよっ!我を原因扱いするとは何事だっ!だいたい貴様は何時も何時も!」

 

「にゃによ!文句あるのっ!?ヴェルちゃんのハゲっ!!」

 

「ネコよ、今日の夕飯はお前を喰ってやろう。生で食べられるのと焼いてから食べられるのでは何方が好みだ?」

 

「そうねぇ〜、やっぱり焼いてからの方がオススメかなぁ。あっ、焼き方はウェルダンでお願い。よく焼かないとお腹壊しちゃ----って!食わせるかァァァァ!」

 

唐突な紹介からの夫婦漫才、畳み掛ける様に始まった展開に空間が唖然とした空気に包まれる

 

「兎に角だ。自己紹介はしとけ、半信半疑だからさ」

 

「体臭がしないから気付かないのよ」

 

「おい、妖気(オーラ)を体臭とか言うな。我が臭いみたいだろう」

 

「実際、鼻曲がりそうにゃんだけど」

 

「どれだけ臭いのだっ!?我は!まぁ……オホン!」

 

さらりと放たれたネコリアの罵倒に突っ込みを放った後、ヴェルドラは咳払いし、口を開く

 

「我は暴風竜、ヴェルドラ=テンペストである!我が貴様たちの主のリムルとネコリアとどういう関係なのか気になっておる事だろう!知りたいか!?知りたいであろう!」

 

「わふっ!知りたい!」

 

「「わくわく」」

 

勿体付けるヴェルドラの言葉にエンカが興奮気味に答え、フウとクウは好奇心満々の瞳で胸を躍らせている

 

「特別に教えてやろう!!友達だ!」

 

「な、なんと……!」

 

「…………なぁ、ソウカ。暴風竜と友達ってアネキは何処を目指してんだ?」

 

「さ、さぁ?ネコリア様の考えは私たちにはちょっと………あっ!ネコリア様!御報告が!」

 

主人の交友関係に引き気味のカイリンに答えを返した後、何かを思い出した様にソウカはネコリアに呼び掛ける

 

「ネムの動向についてですが……天翼国(フルブロジア)に帰還後、魔王フレイとの接触を確認しました。それから………」

 

「…………そう、其れは良い情報ね。あと……もう一つの報告はどうなってるの?」

 

「其方は未だ調査中です」

 

「分かったわ」

 

ソウカからの報告を聞き、彼女は金色の双眸で流れ行く雲を見詰める。これから待ち受ける新たな時代を見守る様に、唯只管に彼女は空を見上げていた

 

(忙しくなるわね……これから)

 

「なんだネコちゃん、珍しいな。真剣な顔して」

 

「引きちぎるわよ」

 

「なにをっ!?」

 

謎の文句にリムルの突っ込みが冴え渡るのであった




牢獄に繋がれたファルムス王、その前に味噌を片手にフウとクウが姿を見せる……えっ?味噌?ちょっと待って!味噌で何をするつもり!?いやぁぁぁ!味噌だけはやめてェェェェ!

ネコリアの真骨頂その42 実はやきもち焼き

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第六十二話 尋問を頼んだら、捕虜が悲惨なことになっちゃった

今回の見所!スイヒョウとシオンが怖い!フウとクウが暴走!そして、ネコちゃんはやっぱり可愛い!以上!


(……こ……こ………は…………余は一体…………?)

 

魔国連邦(テンペスト)首都リムルの牢獄。捕虜という形で生かされた男、ファルムス王国国王のエドマリスは目を覚ます。右腕に繋がれた錠、決して手厚い歓迎とは言えない状況に彼は周囲を見渡す

 

「目が覚めましたか?」

 

「良い目覚めと呼ぶには余りにも簡素な寝床である事は認めます。ですが……謝罪の念は御座いません」

 

「こ、ここはどこだ!?ヌシは誰じゃ!?余が誰か分かっておるのか!?余は大国、ファルムスが王、エドマリス----」

 

「知っています」

 

「存じております」

 

牢獄の向こう側から聞こえたのは、二人の女性の声。片方は紫の髪にスーツ姿の鬼人、もう片方は毛先の一部が水色の銀髪を靡かせる露出度の高い服装のゴブリナ。見覚えのない二人、エドマリスは彼女等に名乗ろとするが、喰い気味に答えを返される

 

「此処はジュラ・テンペスト連邦国の地下牢の一つです。私は盟主リムル様の第一秘書シオンと申します」

 

「私は軍事司令部参謀長ネコリア様の書記官スイヒョウ。我々が仰せつかったのは、捕虜の尋問。手荒い真似は正直に言えば、好ましくはありません。然しながら、ネコリア様並びにリムル様の命を無碍にする事は私の意に反します。故に貴方にはファルムス王国の内情についての全てを話してもらいます」

 

「殺さなければ如何なる手段も問わないと……お許しはいただいております」

 

「……な、何を言って………捕虜だと……?」

 

目の前に立つ魔人たちが何を言ってるか理解出来ず、エドマリスは捻り出した様に問う

 

「貴方は我等が主人様たち(・・)を前に大敗を喫した事を御忘れですか?戦の末に貴方は捕虜となり、この国(テンペスト)へと連行されたのです」

 

「先程も、スイヒョウ殿が言いましたが貴方にはファルムス王国の内情についての全てを話してもらいます。………ですが、我々個人としては御二方の御配慮に少しばかりの申し訳なさも否めません……この気持ちは、貴方の国が招いた惨劇の果てに自分が殺された事への怒りではありません……」

 

「今回の件に限っては私たち(・・)全員の弱さ故に起きてしまった誤ちと捉えるのが筋かと思っております。この身に二度目の命を戴き、我々の主人たち(・・)に、また(・・)仕えられる喜びは計り知れません」

 

二度目の命というスイヒョウの言葉に、エドマリスは呆然となるが彼女たちの話は続けられる

 

「御存知ですか?リムル様並びにネコリア様は人間がお好きです。我々たち配下の魔物が無闇に人間を傷つける事をよしとはしないでしょう」

 

「そ、そうか!では!穏便に話そうぞ!余も主らに協力するのはやぶさかではないぞっ!」

 

「ふふっ………落ち着いてください。我々の話はまだ途中です。確かにネコリア様も、リムル様も人間に対しては有効的に接する事を命じられました。それでも(・・・・)

 

「やはり許せない事もあるのです」

 

冷たく凍てつく氷の瞳を向けるスイヒョウ、種族が示す通りに鬼の形相を浮かべるシオン。この時、エドマリスは理解した。人間は魔物を狩る側だと思っていた。其れは否、人間は魔物に狩られる側であったのだと理解した

 

「貴方の決断がリムル様に人間を殺させた………千に刻んでも尚足りない!!」

 

「ネコリア様の愛らしくも暖かく綺麗な御手を人間の血で汚させた……氷漬けにしても私たち(・・)の敬愛する主人たち(・・)の気持ちを土足で踏み躙った怒りだけは溶けないっ!!!故に!!」

 

「「この世に生を受けた事を、未来永劫、後悔させて差し上げましょう!!」」

 

其処からは悲惨の一言、牢獄に響き渡る断末魔にも似た絶叫にレイヒムは怯え、肉塊と化したラーゼンを前に震え上がることしか出来なかった

 

「フウ………お味噌が足りない」

 

「もう一つあるから大丈夫。フウは用意周到だから」

 

「さすがはフウ。クウは良いお姉ちゃんを持った…」

 

「ひぃぃぃぃぃ!味噌だけは!味噌だけはやめてくだされっ!!!」

 

「ソウカ………さん。貴女の妹さんたちは何を考えてるの?」

 

「分かりません………」

 

味噌片手にレイヒムに近寄る妹たちを前にソウカは呆れた様な表情でミュウランの問いに答えるしかなかった。其れから、何時間が過ぎただろうか、傷付き、凍傷で息をするのも限界なエドマリスは近付いてくる足音に気付いた

 

(この足音は…………あの二人ではない!)

 

先程までとは異なる二つの足音、片方は普通の足音、もう片方は軽やかに踊る様な軽い足音。恐ろしさを忘れた頃に響いた音、救世主が現れた様に感じたのだろう、エドマリスは鉄格子の向こう側に手を、ある筈もない左腕を伸ばす

 

「……た……………助けてくれ。そこの………娘たち(・・)…頼む……ここから、出してくれ…………余が間違っていた。其方等の主殿たちに釈明したい………お願いじゃ…………面会の許可を………余は、ファルムスが国王----」

 

「「知ってるよ/わ」」

 

助けを求めた筈、喰い気味に放たれた声に恐る恐る彼は見上げた。その声の主たち(・・)を。佇んでいたのは仮面の魔人と猫耳をぴこぴこと動かし、愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らす魔性の美少女。片方は見覚えないが魔人の方を彼は知っていた

 

「俺の声をもう忘れたのか?」

 

「そこ、あたしたち(・・)の間違いでしょ。あたしはあの時、別の姿だったから見覚えはないかもだけど……声は覚えてるわよね?小童」

 

「………………っ!!」

 

忘れていた、忘れたかった、忘れようとした。然し、内と外の両方に一瞬で刻まれた恐怖を拭う事は不可能だ。彼女の声を聞いた瞬間、恐怖が蘇り、恐れ慄く

 

「ひぃぃぃぃ!!た、たす…………助け…………っ!」

 

「国王が聞いて呆れるわね。自国の国民に釈明するよりも、あたしに命乞いとか、笑えない冗談にも程があるわ」

 

「そこ、俺たち(・・)の間違いだろ。捕虜をどうするかについては今後の会議次第だ、それまでにじっくりと考えておくんだな」

 

「そうね。だって、これはあたしたち(・・)とアンタが背負っていく業にゃんだから」

 

そう告げると、盟主のリムル=テンペストは参謀長のネコリア=テンペストと共に去り行く。自らが背負うべき業という名の鎖と共に……




対策を練る為に参謀長としての真価を発揮させるネコリア。然し、近付く無数の気配に気付き……

ネコリアの真骨頂その43 実は足音が軽快

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第六十三話 訪問者が来たと思ったら、弟子と再会しちゃった

今回の見所!ネコちゃんに弟子が存在した!以上!


「ネコリア。その情報は確かなんだな?」

 

執務室の机に広げられた地図を前に、リムルはソファに寝そべる相棒に問う。彼女は金色の双眸を静かに細め、ゆっくりと近付きながら口を開く

 

「紛れもない真実よ。クレイマンは軍を動かし、ある場所(・・・・)を目指しているわ。其処は十大魔王が一柱にして最古の魔王であるミリム・ナーヴァが治める忘れられた竜の都……勢力は三万。どうする?盟主………いえ、魔王陛下(・・・・)

 

その呼ばれ方で、自分は盟主から魔王となった事を自覚する。同様に魔王種へと至った彼女に魔王を名乗るつもりがない事は理解していた。盟主の役割を正式に受けた時も拒否したくらいに彼女は参謀である事を望んだ。故に、彼は笑う

 

「どうするもこうするもない。俺は何時もと同じことをするだけだ、欲望のままにな」

 

「了解しました、全ては陛下の御心のままに。このネコリア=テンペストは付き従いましょう」

 

傅き、(こうべ)を垂れる彼女の瞳に映る者は数多の魔物を束ねる魔王。対等を主張しながらも、自らの立場を弁え、彼女は眼前の青年を見据える

 

『ネコリア様、スイヒョウです。ブルムンド王国から使者の方が参られております』

 

「…………そう、分かったわ」

 

《心理意識》でスイヒョウから連絡を受け、彼女は眉を顰め、リムルに向き直る

 

「なんだって?」

 

「ブルムンド王国からの使者らしいわ。今更感が否めないけど、理由は言わずもがなだと思うわ。どうする?」

 

「………直接、話をするしかないだろうなぁ…これは…」

 

相棒からの全てを見透かした様な問い、リムルは罰が悪そうに頭を掻き、重たい息を吐く。友好関係にある他国からの使者という事はファルムス王国との戦に対する助力と考えるのが正解だろう、然しながら今となっては其れさえも過去の話。頭を悩ませながらもリムルは使者の元に向かう

 

「リムル殿!お久しぶりです」

 

その使者とは、ブルムンド王国自由組合支部長(ギルドマスター)のフューズ。気の知れた友人にリムルの脳裏から悩みは、すっかりと消えた

 

「やぁ、フューズ君。今日はどうしたんだ?自由組合支部長(ギルドマスター)の君が来るなんて、余程の用件があってのこと………」

 

「何を仰る。我々は魔国連邦(テンペスト)と安全保障条約に従い、ファルムス軍と敵対する。安心してくれ、寝首を掻くつもりは無い」

 

普通に話し掛ければ、返ってきたのは忘れていた悩みを一気に想起させる。当の本人は揺るがぬ意志の元に駆け付けてくれた様だが、既に終息した事を何の様に伝えたものかとリムルは表情を顰める

 

「………………いや、あのだな?フューズ君。実はな……」

 

「どうしたんですか?まさか!我が国(ブルムンド)の戦力を疑っているんですかっ!確かに!魔国連邦(テンペスト)に比べれば、戦力は乏しいかもしれませんが………ブルムンドは冒険者たちの集う国の一つ!いずれも手練れである事は火を見るよりも明らかです!」

 

話を切り出せば、闘争心故に聞く耳を持たないフューズ。戦力差に圧倒的な格差あれども、自国の軍が如何に優れているかを熱弁する彼にリムルは結果を伝えるタイミングを失う。然し、彼女は違った

 

終わったわよ(・・・・・・)?」

 

「……………………は?い、今なんと………?」

 

突然の発言にフューズは耳を疑い、リムルの隣に佇む黒髪の美少女に問う。彼女は特徴的な鍵尻尾をふりふりと揺らし、その口を開く

 

「だから、終わったのよ(・・・・・・)

 

「…………………い、いつ………」

 

「三日前」

 

時期を問えば、帰ってきたのは二度目の耳を疑う発言。フューズの問いに答えた彼女、ネコリアはフードに空いた穴から飛び出した猫耳をぴこぴこと動かし、真顔を崩さない

 

「ミョルマイルたちの話と明らかに矛盾があるじゃないですかっ!?」

 

「スイヒョウ。使者は送ったのよね?」

 

「はい。エンカの率いる護衛部隊の中でも足の速さには定評のあるセイテンを向かわせました」

 

「だったら……にゃぜ?」

 

「恐らくですが、セイテンが出発したタイミングでフューズ殿が出発し、行き違いになってしまったのではないかと……」

 

「にゃるほど。それよ、リグルド」

 

使者を送ったにも関わらず、現状を知らないフューズを前に疑問符を浮かべるネコリアにリグルドが言及すれば、彼女は納得したらしく、自己完結気味に頷く

 

「セイテン。今どこ?」

 

『えっ……うわぁ!?ね、ネコリア様!?びっくりしたぁ!いきなり呼び掛けんといてくれますっ!?心臓が止まるか思いましたよっ!いやまぁ実際には止まっとらへんのですけど、こういうのには順序があるんですから』

 

《心理意識》を飛ばし、渦中の元凶であるセイテンに呼び掛ければ、彼女は関西弁にも似た口調で捲し立てる様に意識を飛ばして来た

 

「さっさと質問に答えて」

 

『あっ、はい。今はブルムンド王国付近の街道です。それでなんかあったんですか?ネコリア様がわたしに連絡やなんて、今までになかったのに』

 

「アンタよりも早くにブルムンド王国側の使者が来たわ。よって、今回は帰って来なさい」

 

『……………え?い、今から?』

 

目が点になるくらいの無茶振りにセイテンは自分が聞き間違えたのだろうかと頭を悩ませる

 

「そうね………………それとも、にゃに?あたしの命令が聞けない?」

 

『い、今すぐに帰ります!真っ直ぐと!』

 

然し、主人からの凄みを感じる一言には抗えず、言い訳は通用しないと瞬間的に理解したセイテンは魔国連邦(テンペスト)に向かい、走り出す

 

『告。30騎の接近を確認、先頭はガゼル・ドワルゴです』

 

「ベスター……」

 

天翔騎士団(ペガサスナイツ)を率いるのは見覚えのある屈強な体格の男性、その姿にネコリアは二度目の《心理意識》で男性の関係者に語り掛ける

 

『報告したのですが、ガゼル王は弟弟子と妹分が魔王になったのを直に確かめると聞く耳を持たなかったもので………』

 

「状況を理解してるなら、説明を省けるわね。今後の方針についての対策会議の途中だったんけど、ガゼルちゃんも参加する?」

 

「ほう……聞きたいことは山ほどあるが、一先ずは会議に参加しよう。それにしてもネコよ、俺をちゃん付けで呼ぶのはお前くらいだぞ」

 

「別に良いじゃない。妹が兄をなんて呼ぶかは其々の主観次第な訳だし…」

 

「であるか。仕方あるまい、公共の場では今まで通りにガゼル王と呼ぶのだぞ?」

 

「分かってるわよ」

 

伝説に名高いドワーフの王でも、魔性の笑みには逆らえない。言葉巧みに言い包められ、最終的には公式の場以外では呼び名を許可するに至り、視線を横に切り替えれば、わなわなと震えるフューズが視界に入る

 

「ま、魔王………気のせいですかね?ネコリア殿………今、ガゼル王が魔王と言った様な気がしたんですが……聞き間違いですよね?」

 

「事実よ?」

 

「…………………一体どうなってるんですっ!?聞き捨てなりませんよっ!何がどう転べば魔王になるって答えに行き着くんですかっ!!」

 

「必要だったのよ。あたしたち(・・)には、魔王にならなければならない退っ引きならない事情があった、それだけの事よ」

 

「退っ引きならないって今日日聞かないけど………そういう事だから、納得してくれるか?フューズ」

 

「………………分かりました。御二人にも退けない理由があった事は認めましょう……ですが!事の顛末については話していただきたい」

 

多くは語ろうとしない二人の瞳から何かを感じ取ったフューズ。それでも駆け付けた手前、事の顛末をブルムンド国王に報告しない訳にもいかず、彼は内側に踏み込む

 

「そうだな。俺も聞かせてもらいたいものだ、進軍中であった筈のファルムス王国軍が行方不明(・・・・)になった理由をな」

 

「「……………はい?」」

 

流石にこの発言には、リムルも、ネコリアも自らの耳を疑った。行方不明(・・・・)ではなく殲滅である筈のファルムス軍の扱い、聞き間違いであろうかと思うがネコリアの脳内に声が響く

 

(どうやら、キミとスライムくんの虐殺を隠蔽しようとしてくれてるみたいよ。頭の良いキミなら、どうやって答えを返すべきかは言わずもがなじゃない?)

 

(えっ?リアねーさんは分かるの?あたし、よくわかってないんだけど)

 

(亜結は可愛いわね)

 

(えっ?そう?いやぁ、そうでしょ!何せあたしはネコリアの前世だからね!)

 

「…………………はぁ、遠回しにバカにされてる事にも気付かないとは………という訳で、フューズちゃん。ファルムス軍は行方不明よ♪」

 

脳内に響く声たち(・・)に呆れながらも、ヴェルリアの助言通りに苦し紛れにも聞こえる言い訳を捻り出し、アーモンド型の猫目をウインクさせる

 

「………………はぁ〜〜、どうやら強行軍で疲れている所為か幻聴が聞こえたようだ。ファルムス軍の件は了解した。その代わり……対策会議には俺の席も用意してもらいますよ。リムル殿とネコリア殿を疑うつもりはありませんが、立場的にも傍観は出来ませんからね」

 

「勿論だ。ネコリアも構わないよな?」

 

「ええ…それがリムル()の御意志とあらば、異論はありません」

 

「だそうだ…………それでだ、ガゼル王。其方の方は知り合いか?」

 

納得した様で頭を悩ませるフューズの会議参加を了承したリムルは、兄弟子の隣に姿を見せた団体(・・)に視線を向ける

 

「娘から見目麗しい猫の魔物と知り合ったと聞き、もしやとは思いましたが………貴女でしたか。私を覚えておいでですかな?仙猫(・・)様」

 

「………………二百年振りね?エラルド(・・・・)。今は魔導王朝サリオンの大公爵らしいじゃないの。偉くなったわねぇ?アンタが来たって事は………にゃるほど、彼女(・・)は元気にしてるみたいね」

 

団体の中でも中核を担うであろう男性エルフのエラルドと呼ばれた魔導士と対等に会話を交わすネコリア。その姿にリムルは勿論、ガゼルさえも驚きを隠せない

 

「ぱ、パパとネコ姐さんが知り合い!?」

 

「えっ…!あの人がエレンの親父さん!?なんでネコちゃんと知り合いなんだ!?」

 

「そう言えば……彼奴、以前に喋る猫の魔物に仙術を叩き込まれたとか言っておったな。まさかそれがネコとは思わんかったが」

 

「エルフにまでパイプを御造りになっていらっしゃるとは、流石はネコリア様ですわ!」

 

「えっ!?わたしがおらん間に人が増えてる!?どないなってんの!?エンカ様!」

 

「わふっ!おかえりだぞ!セイテン!」

 

「あっ、ただいまです………って!質問の答えになってませんけどっ!?」

 

本日、何度目かになるかも不明な衝撃事実に対策会議の参加者は、更に増加する事になるのだが、其れは数時間後の話である




遂に揃った重役たちとの対策会議が幕を開ける………と思いきや、其処に登場したのはあの三人!殺虫剤を忘れずにね!

今回のハイライト ネコリアの服装:穴空きフード付きの桃色パーカー(萌え袖)、黒のチューブブラ、赤いミニスカート、黒のスパッツ、桃色と白の縞模様ニーハイ、黒のショートブーツ


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第六十四話 来賓客が錚々たるメンバーだったから、威厳ある態度を見せちゃいます

今回の見所!ネコちゃんのボケが大量発生!そして彼奴らがカムバック!以上!


「それで?どうして、他国の大公爵殿がお前と知り合いなんだ。説明はあるよな?」

 

エルフの中でも中核を担う存在と相棒が顔見知りであるという事実に落ち着きを取り戻したリムルは、渦中の一人である彼女に問う

 

「説明も何も…ガゼルちゃんが言った通り、二百年前に仙術を教えた弟子ってだけよ。それ以上の深い関わりはないわ」

 

「いや、彼女は元気?とか言ってただろ」

 

「乙女の秘密を知りたがるのは良くないわ。これだから……エッチなスライムは…」

 

「エッチなスライムちゃうわ!……ごほん!改めて、リムル=テンペストです。うちの馬鹿猫の御弟子さんなんですね」

 

過去の経緯を語ろうとしない彼女に突っ込みを放ちながらも、エラルドに自己紹介を交えた問いを投げかける

 

「御噂は予々……魔導王朝サリオンの大公爵エラルド・グリムワルドと申します。うちのエレンにも良くしていただき有り難く存じます」

 

「彼女は恩人の仲間ですし、俺個人の友人でもある……当然の扱いですよ」

 

「…………如何やら、貴女様と同様にハッタリが通じる相手ではない様ですな?我が師よ」

 

リムルの全てを見透かす瞳、その表情に覚えがあるエラルドは自らの師である彼女に視線を向ける。その先で彼女はふりふりと鍵尻尾を揺らし、魔性の笑みを浮かべていた

 

「当然よ、誰が選んだ〝王〟だと思ってるの。にしても………あのエラルド(・・・・)が父親ねぇ?月日は百代の過客とは言ったもんね」

 

「貴女様の中の私は未だに小童でしょうが、昔とは違います。その証拠に私は娘からも尊敬される立派な父親なのが見て分かりませぬか?」

 

「ご無沙汰しています。ガゼル王」

 

エリューン(・・・・・)か?見違えたぞ」

 

「貴様ァ!エレンちゃんに手を出す事は許さんぞっ!げふぅ!?」

 

娘を思う余り、親馬鹿発言を繰り出すエラルドがガゼルに牙を向く姿にエレンが白けた視線を送ると同時に師であるネコリアの右ストレート(ネコパンチ)が命中する

 

「兎に角……アンタも会議に参加しなさい。というか、そのつもりで来たんでしょ」

 

「流石は我が師。既に私の目的も御見通しという事ですか……相変わらずの御慧眼で何よりです」

 

「そういう訳だから、リムちゃん。この馬鹿弟子も同席するけど、構わない?」

 

「ああ…ネコちゃんが構わないなら、俺は何も言わないさ」

 

「感謝します…それにしても、ネコちゃんですか……いやぁ…随分とまぁ……」

 

「にゃに?また殴られたいの?馬鹿弟子」

 

「リムル、それにネコリアよ。何やら大所帯だが我を仲間外れにするとは何事だ?」

 

親友からの贈り物である名前に文句を付けられそうになり、ギロリとネコリアがエラルドを睨み付ける。刹那、背後から聞こえた緊張感を壊す能天気な声に視線が集まる

 

「あーはいはい、後で相手してあげるから。お煎餅でも齧ってなさい」

 

「む、煎餅だと?流石に食べ飽きたわ」

 

「悪いな。来客中なんだ、今は」

 

「リムルにネコよ。其奴は何者だ?新たな配下か?」

 

「近所の半裸野朗よ」

 

「誰が半裸野朗だ!貴様の服装も殆ど痴女であろう!下着にコートを羽織っとるだけではないかっ!!」

 

「下着じゃないわよっ!あれはあれで列記とした服なのが分かんないのっ!?時代に遅れすぎなんじゃないの?まぁ?所詮はオッサンだし、仕方ないかぁ〜。プークスクス」

 

「ネコよ、今日の夕飯はお前を喰ってやろう。生で食べられるのと焼いてから食べられるのでは何方が好みだ?」

 

「そうねぇ〜、やっぱり焼いてからの方がオススメかなぁ。あっ、焼き方はウェルダンでお願い。よく焼かないとお腹壊しちゃ----って!食わせるかァァァァ!」

 

当然の様に展開する夫婦漫才、空間が静寂を支配する中で誰もが唖然とする。唯一人、光景を見慣れたリムルは軽くため息を吐く

 

「………ええと、盟友のヴェルドラ君だ。ネコリアとは三百年来の親友でもある」

 

「ヴェルドラである!暴風竜と呼んでも良いぞ!」

 

「若しくはハゲドラゴンでも可よ」

 

「ハゲとらんわっ!!」

 

「「「…………暴風竜ヴェルドラ!?」」」

 

予想外の存在の登場にガゼルとエラルドは声を揃えながら驚き、フューズに至っては情報量の過多で脳の処理限界を超えたらしく、意識を手放した

 

「あら、フューズちゃんが倒れたわ」

 

「きっとネコリア様の愛らしさに気を失ったに違いありませんわ」

 

「わふっ!そうなのか!フューズは見る目があるんだなー」

 

「…………気絶しただけでは?」

 

「ソウカ。突っ込むだけ無駄だ」

 

フューズの気絶を主人の愛らしさが引き起こしたと語るスイヒョウに賛同するエンカ、その様子に疑問を抱くソウカが呟けば、呆れた様にカイリンが彼女を咎める

大所帯となった事で、流石に会議室では全員が出席するのは難しいとのリグルドの助言もあり、歓楽街の迎賓区画に設けられた迎賓館の庭園を会場を会議場として使用する事になった

 

「其れでは……各国の代表者の皆様を御紹介させて頂きます。武装国家ドワルゴンより国王陛下ガゼル・ドワルゴ様。獣王国ユーラザニアより三獣士が筆頭アルビス様。ブルムンド王国よりギルドマスター兼情報局統括補佐フューズ様。魔導王朝サリオンより大公爵エラルド・グリムワルド様。最後にジュラ・テンペスト連邦国より盟主改め魔王陛下リムル=テンペスト様並びに軍事司令部参謀長兼最高幹部ネコリア=テンペスト様。以上が此度の会議における代表者の皆様となっております」

 

来たる来賓の紹介が行われる中で、錚々たる顔触れに場違いな雰囲気を否めないフューズ、一方で顧問という形で参加したヴェルドラは場を混乱させるという理由から聖典(マンガ)を与えられ、無力化されていた

 

「では……始めようか」

 

此れが後に人魔会談と呼ばれる世界を揺るがす会議の始まりである

 

 

 

 

 

 

「行くわよっ!アンタたち!直ぐに彼奴等に伝えないとチョベリバな事になるわっ!!」

 

精霊の棲家で、羽音を響かせ、そう告げるのは十大魔王が一角にしてネコリアの親友である〝迷宮妖精(ラビリンス)〟のラミリスその人である

 

「失礼ながら、ラミリス様。チョベリバとは今日日聞かないかと」

 

「ギンレイ。突っ込むべきは其処ではありませんよ」

 

そして、彼女に言及する銀色に毛並みを持つ猫のギンレイを〝魔将人形(アークドール)〟のベレッタが咎める

 

「早くこの事を伝えないと………魔国連邦(テンペスト)は滅亡する!!!」

 

「手土産はクッキーにしましょう。ネコリア様もお好きだと良いのですが」

 

(…………真面なのって……我だけ…?)

 

人知れず、迫る魔王と配下たち。自分たちの知り得ない所で、秘密裏に始まる動きを魔王(リムル)参謀長(ネコリア)は未だ知らない




会議が進み、対策を話し合う中で響くのは騒がしい羽音。遂に彼奴が登場なのよさっ!

ネコリアの真骨頂その44 実は弟子に厳しい

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第六十五話 人と魔が紡ぐ未来、行き着く先が気になっちゃう

今回の見所!ネコちゃんの十八番ボケが炸裂!以上


「ネコリア。議題を」

 

「はいはい、ホントに猫遣いが荒いわねぇ……えっと、議題は覚醒魔王になった事で如何なる魔王も足元に及ばないあたしの可愛さを如何に世界に発信していくかだけど」

 

「そう、ネコちゃんのかわ…………って!ちがーーーうっ!人間と魔物の今後に関わる大事な会議だぞっ!?何を当たり前の様に何時も通りのボケを放り込んでくれてんのっ!?」

 

「そうです、我が師よ。会議に横槍を入れるのは良くありませんぞ。此処は私の可愛いエレンちゃんについての議題に決まっています」

 

「パパ。うるさい」

 

「反抗期っ!?」

 

今日も今日とて、何時もと変わらない平常運転の相棒と娘第一主義の親馬鹿、二人が師弟であるという事を誰もが納得する中、呆れた様子のリムルは代表者たちに視線を向ける

 

「御二人は以前にシズさんと同郷だと仰られておりましたが…」

 

「ああ、俺とネコリアは異世界からの転生者で元は人間だった」

 

「御師匠様が転生者……初耳ですな」

 

フューズからの問いに答えを返したリムルの言葉にエラルドが反応を示し、師と仰ぐ彼女に視線を向けた

 

「あら、にゃに?人間だと不都合があるの?エラルド」

 

「いえ、貴女様が何者であろと私の御師匠様である事は変わりませんよ。貴女様は貴女様だ」

 

問い掛けながらも、彼が如何なる答えを返すのかを理解している様に彼女は笑う。愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らし、彼を見据えていた

 

「外遊先で法皇直属近衛師団筆頭騎士の聖騎士団長ヒナタ・サカグチからの襲撃を受けたが、ネコリアの迅速な対応で退ける事が出来た……だけど、間に合わなかった(・・・・・・・・)

 

「命一つ分の対価を支払ってまで退けた御褒美がまさかの国崩し………だから、あたしたち(・・)は魔王にならなければならなかった。その対価に犠牲になったのがファルムス王国軍………でもね?事実と理想は釣り合わないのが自然の摂理なのよ」

 

「でだ、俺たち(・・)は考えた。この血で染まった手をどうすれば取ってもらえるかを………公にする筋書きは大きく変えようと思う」

 

その発言は周囲に(どよ)めきを生んだ、如何なる理由に変えようと事実が覆る事は有り得ない。然し、リムルとネコリアが掲げる理想にはその筋書きが必要なのである

 

「〝暴風竜〟の仕業にしようという魂胆か。其れならば、受け入れる以外の選択肢はないな、その存在は伝説であり紛う事なき〝天災〟だ」

 

「ふっ……天才(・・)か」

 

(良い方向に解釈してるわね…このバカドラゴンは…)

 

(黙ってくれないかな……このオッサン)

 

世間の認知を良き方向に自己解釈するヴェルドラを呆れた眼差しで見るネコリアとリムルは彼の呑気さに呆れ果てていた

 

「なるほど、確かにそういう筋書きならば我が娘に降りかかる火の粉は防げますな。魔王の誕生による暴風竜との交渉が可能になったと世間に認知させる方が都合は良いですからね」

 

「パパ………それってなんか姑息ぅ」

 

魔王化を促した元凶である愛娘(エレン)を庇った筈が、容赦無い一撃がエラルドの親心を抉る。流石のネコリアも弟子の哀愁漂う背中に苦笑を浮かべるしかなく、慰めの声を掛けられない

 

「反対意見があるなら言ってくれて構わない。特にヴェルドラには、俺の罪をかぶってもらうことになるが…」

 

「そこ、あたしたち(・・)の間違いでしょ。というか、その程度の事で異議を唱える器の小さいドラゴンじゃないわよ。そうよね?親友(ヴェルドラ)

 

心配するのも杞憂と言わんばかりに、彼女はその金色に染まった双眸で彼を見詰め、問う

 

「当たり前であろう?我はお前たち(・・)の友なのだぞ。親友たちの(カルマ)は我の(カルマ)だ、共に背負うのは必然に他ならん。〝暴風竜〟の威を存分に使うがよい」

 

「流石はヴェルちゃん♪ドラゴンが出来てるわねー」

 

「クアハハハハハハ!当然であろう!我は天下無双の暴風竜ヴェルドラ=テンペストなのだからな!」

 

(扱いやすいわー、ホント)

 

(絶対に意地悪な事を考えてるな……この馬鹿猫は)

 

意識を共有している訳ではないが、互いの考えを理解しあう関係性にある二人はその考えが手に取るように理解可能である。故にリムルはふりふりと鍵尻尾を揺らす彼女が何を思っているかを即座に見抜いていた

 

「ところでだ、リムルにネコリアよ。捕虜はどうするのかを考えておるのか?其奴等の口から今の筋書きが語られるとは限らんぞ」

 

「……ああ、その件に関しては対策済みだ。ネコリア」

 

ガゼルからの疑問に頷きながらもリムルは企み笑顔を見せ、ネコリアに呼び掛ける。すると彼女は指を鳴らし、スイヒョウにある物を配布させる

 

「今、配ったのは今回の件に関する筋書きの台本みたいなモノよ。先ず、ファルムス王国には滅んでもらうわ(・・・・・・・)

 

「ほう……これはまた貴女様らしくもない直接的な結論ですな。戦争を仕掛けるおつもりか?」

 

師であるネコリアの言葉に彼女の思慮深さを知るエラルドは問う

 

「半分正解だけど半分不正解……この戦争に用いるのは武力よりも知力よ」

 

「知力ですか……?」

 

言葉尻に含みを感じたフューズが聞き返すと、彼女は魔性の笑みで応える

 

「そう、投獄している現王に魔国連邦(テンペスト)への賠償を行わせるのよ」

 

「然し、あの国は一部の貴族を除いて腐っています。賠償に応じるでしょうか?」

 

「其れが狙いだよ、フューズ君。賠償問題は切っ掛けに過ぎない、本当の目的はファルムス王国内に内戦を起こさせることだ。だから俺たち(・・)は考えた」

 

にやりと笑うリムルの姿に全員の視線が集まる。そして、彼の視線の先に座る一人の男が立ち上がる

 

「彼は英雄ヨウム、ガゼル王と我等が陛下の弟弟子よ。その彼を新たなる王に据える事で新しい国を建国し、人間と魔物双方の架け橋となってもらう。以上が魔王リムル=テンペストの御考えよ」

 

「ほう……リムルの他にも弟弟子がおったか。して、小僧よ?お前の決意を聞かせてもらおうか……!」

 

刹那、ガゼルの放った覇気を前にヨウムは無謀と理解していながらも堪え、ぎりっと奥歯を喰いしばる

 

「リムルのダンナ並びにネコリアの姐御には返しきれない大恩がある。俺はこの二人に利用される事に既に腹を括ってる、あの日、英雄になれと言われた日から、二人の結論が俺の歩む道標……だから!信じてくれる二人のためにも!惚れた女のためにも!俺は全力でやるだけだぜっ!」

 

「ば、バカ…」

 

「ドワーフの王よ、此奴は馬鹿だが恩義に報いる男だ。貴方の様に〝英雄王〟と呼ばれる時まで、このグルーシスが見届ける事を御約束します」

 

「……であるか。ならば俺からは何も言わん、何時でも頼るが良い」

 

決意の固いヨウムを前に、その顛末を見届けると確約するグルーシス。その姿に弟弟子と妹分と対話した日の会話を想起し、ガゼルは彼を認めると発言する

 

「プハハハハ! これは愉快だ!警戒している私の方が滑稽ですな…では、私なりの結論を答える前に、リムル殿並びに我が師よ。一つだけ伺いたい」

 

「ちょっとぉパパ!勿体ぶらずに、さっさと答えてよぉ!」

 

「ちょっ!お嬢様!今は不味いですって!」

 

勿体つけるエラルドに対し、相も変わらずなエレンが異議を唱えるがカバルが咎め、当の本人は娘を言い聞かせる

 

「それで……なんだって?聞こうかエラルド」

 

「発言を許可する。申せ我が弟子よ」

 

放たれた〝魔王覇気〟を前にエラルドは手を差し出す

 

「魔王リムル並びに我が師ネコリアよ、貴殿たち(・・)は、魔王としての力を如何様に扱うおつもりかを御聞かせ願いたい」

 

エラルドの問い、その先に待つ二人の答え。其れに誰もが息を呑む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!魔国連邦(テンペスト)は何処なのよさっ!」

 

迷宮妖精(ラビリンス)〟のラミリスの叫びが木魂するジュラの森。現在、彼女は魔国連邦(テンペスト)に向かう道中で迷子になっていた

 

「ラミリス様……ですから地図を見てくださいと言いましたでしょう…」

 

「地図なんか何処にあるのよっ!ギンレイが持ってるのはどう見てもチーズじゃないのよさっ!」

 

「うっかりとしていました、私としたことが」

 

「うっかりですむかっ!!」

 

(……………何時になったら……辿り着くのだろうか……)

 

人知れず、迫る魔王と配下たち。その道中は長く、途方もない道のりである事を魔王(リムル)参謀長(ネコリア)は未だ知らない




彼等が導き出す答えの先にあるのは新たな未来か?将又、破滅か?そして三度目の正直!遂に彼奴が登場なのよさっ!

ネコリアの真骨頂その45 実は弟子に甘い部分もある

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第六十六話 会談に殴り込みを掛けてきた妖精に、殺虫剤を吹きかけちゃった

今回の見所!ネコちゃんの可愛さが大爆発!更に遂にアイツが登場!以上!

ネコリア「作者ちゃん、最近ちょっと更新が遅いわよ」

新しい作品を書いてるからね、主人公はヤバい科学者だよ♪

ネコリア「まぁ、怖い。相棒はエッチなわらびもちかしら」

リムル「誰がわらびもちだ!!」


「魔王リムル並びに我が師ネコリアよ、貴殿たち(・・)は、魔王としての力を如何様に扱うおつもりかを御聞かせ願いたい」

 

《魔王》、其れは世界で最も恐怖される魔族の最高位に君臨する存在。その力を手にした魔物が二匹、真意を問わずして、引き下がれない。故にエラルドは問う、魔王としての真意を問うたのだ

 

「なんだ……そんなことか。俺は俺が望むままに暮らしやすい世界を創りたい、出来るだけ皆が笑って暮らせる豊かな国をな」

 

「そこ、あたしたち(・・)の間違いでしょ。其れは実現するかもしれないし、しないかもしれない机上の空論、でもね……あたしたち(・・)は欲望を前に妥協するつもりはないわ」

 

「その様な夢物語を本気で実現させるというのですかっ……!」

 

耳を疑う答えに声を荒げたエラルドは、二匹の魔物を相手に、閉じていた瞳を向ける。其処に佇むは美しい銀髪を靡かせる魔人と特徴的な鍵尻尾をふりふりと揺らす師の姿、彼等は不敵に笑っていた

 

その為の力(・・・・・)よ。力のない理想は光を生まない、理想のない力は闇を生む………だからこそ、あたしは力を得た。理想と力を手にする為に魔王の力を振るうのよ」

 

「そこ、俺たち(・・)の間違いだろ。そう言う事だ、満足してもらえたかな?エラルド大公爵殿」

 

「なるほど………やはり、今も昔も貴女様は貴女様だ……其れにリムル殿も愉快な御方だ。御二人が覚醒出来た理由が理解出来ました。改めて、お聞きいただきたい……魔導王朝サリオンよりの使者として、貴国ジュラ・テンペスト連邦国との国交樹立を希望致します」

 

「願ってもない話だ。それにだ、貴方は我が国の参謀長の弟子でもある。俺個人としても善き関係を築きたいと思っていた」

 

正式な国交樹立に幹部陣が歓喜の声を挙げ、来賓者たちは底知れぬ欲を見せる彼に笑みを浮かべる。そして、誰よりも彼に寄り添う彼女は呆れた様に苦笑しているが鍵尻尾はふりふりと揺れている

 

「相も変わらず、人を化かすのが得意だな。まるで狐の様だ」

 

「狐ではない、こういうやり方は()から教わった。今も昔も彼の方が我が師である事は変わらんからな」

 

「エラルドのくせに生意気よ」

 

「パパの師匠がネコ姐さんとか聞いてない!だから今度、教えてよね!仙術!」

 

「エレンちゃんが私に教えを!?今日は良い日だ!我が師よ!祝杯をあげましょう!」

 

「あら、良いわね。スイヒョウ!お酒を取って来なさい!」

 

「禁酒中なので許可出来ませんわ」

 

「反抗期だわっ!あのにゃんでも言うことを聞いてくれたスイちゃんは何処にっ!」

 

常に自分の意見に賛同していたスイヒョウからのまさかの返答に驚きを示すネコリア、その姿は年頃の娘を持つ母親に見えなくもない

 

「気を取り直して、西方聖教会との今後についてを話していこう。先ずはヒナタについての対処だが、これは……」

 

「クフフフフフッ……………!では、私が出向き、始末して参りましょう」

 

「ディアブロでは役不足でしょう、ここはリムル様の第一秘書であるシオンにお任せを!」

 

「甘い、甘いぞ!妹よ!強敵と戦うは武人の誉!故にネコリア様の剣である私!軍事司令部戦闘総長のライメイが拝命するのが筋であろう!」

 

「姉上は畑でも耕してればいいじゃないですか!あとシオンです」

 

「これはこれは、シオン殿にライメイ殿。シオン殿には秘書の心得を教わった恩があるので、言いたくはありませんが……………残念ながら、貴女方では、ヒナタとやらには勝てぬでしょう」

 

「なに?貴様如きが私よりも強いと?実に滑稽だ……なぁ?妹よ」

 

「全くです。私も随分と下に見られたものです………あとシオンです」

 

「我々の誰が剣としての役割に相応しいかを今ここではっきりとさせてやろうではないかっ!!」

 

「させんでよろしいっ!」

 

売り言葉に買い言葉、誰が強いかをはっきりとさせる為に一触即発する三人の間に入ったリムルが突っ込みを放つ

 

「…………ヴェルちゃん?まさかだけど、混ざろうとしてなかった?」

 

「ソンナコトハナイゾー」

 

「棒読みになってるわよ」

 

最強という言葉に反応したヴェルドラが動きを見せていた事に気付いたネコリアは彼をジト目で見詰め、問い詰めるが本人は動揺を隠そうと棒読み感が溢れた返答を返す

 

「兎に角だ、ヒナタ及び、西方聖教会については相手の出方次第で、争う事になるかもしれないが今はまだ様子見段階だ」

 

「策も練らない内に喧嘩を売るのは賢いやり方とは言えないわ。スイヒョウ、早急に西方聖教会に関する情報を集めなさい」

 

「かしこまりました」

 

策を練るには相手を知ることから始める、其れがネコリアの得意とする戦い方。肉弾戦よりも頭脳戦を好む彼女は数多の情報を得る事で、最高の策を導き出すのである

 

「話は聞かせてもらったわ!この国(テンペスト)は滅亡す------ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!ちょっと!何すんのよっ!?アンタは!!!」

 

突如、会話に割り込んできた黄色い光から姿を現した見覚えのある妖精。彼女基ラミリスが何かを言い切る前に素早い動きでネコリアは胸元から取り出した缶スプレーを吹きかけた

 

「会議の邪魔しにきたハエに殺虫剤を吹きかけたのよ」

 

「誰がハエよっ!?毎度毎度、アンタはアタシをなんだと思ってんのよさっ!!どっから見ても可愛い妖精ちゃんでしょうが!」

 

「あら、相変わらずの口の減らない妖精ね?リスちゃんは。前にも言ったけど、可愛さなら、あたしの方が上よ。三百年の間、可愛さだけを追求し、更に魔王種に覚醒したことで更なる飛躍を遂げた可愛さの化身であるあたしを差し置いて、その言葉を使うのは許されないこと……そう、可愛いはあたしの為だけに存在する言葉なのよっ!」

 

「ふっ……流石はアタシの宿敵(親友)なのよさ……良いわ。可愛さ三本勝負なのよさっ!ネコ!」

 

「にゃっーはっはっはっ!!!受けて立とうじゃない!あたしの可愛さを思い知らせてやるわっ!」

 

「やめんかっ!!!」

 

売り言葉に買い言葉、何方が可愛いをはっきりとさせる為に一触即発する二人の間に入ったリムルが物理的な突っ込みという名の拳骨を放つ

 

「リムちゃんが殴った!」

 

「酷い!可愛いアタシたちをなぐるなんて!外道なのよさっ!」

 

「そうよっ!エッチよ!」

 

「黙らっしゃい!あとエッチは関係ないだろっ!!」

 

抗議するネコリアとラミリスを叱り付け、彼女たちの喧嘩をやめさせる姿は元教師であった頃を思い出す懐かしさもあるが、生徒たちよりも問題児である相棒と友人に頭を悩ませる

 

「わふっ!ギンレイとベレッタはラミリス様の配下なんだぞっ!」

 

「ギンレイ殿はネコリア様の分身ですわね?恐らく」

 

唯一、ギンレイとベレッタに面識のあるエンカが彼女たちを紹介するとスイヒョウは即座に主人と酷似した姿のギンレイが如何なる存在であるかを見抜く

 

「はい。こちらつまらないモノですがお土産です、中身は手作りクッキーです」

 

「いやギンレイ?今すべきはお土産を渡すことではありませんよ?」

 

「あっ、そうですね。うっかりとしていました………直ぐにお茶を淹れます!」

 

「そこでもありません」

 

遂に姿を見せた〝迷宮妖精(ラビリンス)〟のラミリスと二人の配下、彼女たちが訪れた真相を魔王(リムル)参謀長(ネコリア)は未だ知らない




ラミリスを迎え、会談は更に進む。リムルが語る今後の方針とは?そして、ネコリアが導き出す最良の策とは……

ネコリアの真骨頂その46 実はちょっと反抗期には弱い

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第六十七話 会議が踊り出したから、気合いを入れてふざけちゃった

今回の見所!ネコちゃんとリスちゃんの女流漫才!以上!


「申し訳ない。其処の馬鹿二人にはキツいお灸を据えておいたから、会談を再開しよう」

 

「砂かけちゃえ!」

 

「バーカバーカ!リムルのバーカ!」

 

「スイヒョウ、ベレッタ。二人を摘み出せ」

 

気を取り直し、会談を再開させようとするリムルは背後で砂をかける相棒と来訪者。その様子に振り返る素振りも見せずに彼女たちの副官である配下たちに命を降す

 

「ネコリア様?お魚ありますよ」

 

「朝御飯とお昼が一緒のブランチってヤツね。流石は気配り上手なスイちゃんだわ」

 

「ラミリス様。ギンレイがクッキーを持ってきてますから、少しだけリムル様のご迷惑にならないように致しましょう」

 

「し、仕方ないわね!少しだけ待ってあげるのよさっ!」

 

会談が進む中、ネコリアは大好物を口に含みながら様子を見守る。右隣には親友のドラゴンが漫画片手に寝そべり、左隣にはこれまた親友がクッキーを頬張り会談が終わるのを今か今かと待ち望んでいる

 

「勝てるのだろうな?リムルよ」

 

会話の流れから、魔王を相手に事を構えると宣言したリムル。其れに兄弟子であるガゼルが問いを投げかけると同時に彼の意志を問う

 

勝つ、彼奴は俺を怒らせた

 

その発言に誰もが息を呑む中、彼女だけは違った。その金色に染まった双眸で彼を見詰め、口を開く

 

「そこ、あたしたち(・・)の間違いでしょ」

 

「ですが我が師よ。何の策も無しに懐に飛び込むのは軽率では?相手は数多の魔人を配下に有するクレイマン……油断は禁物かと」

 

「エラルド……だから、アンタは何時まで経ってもエラルドなのよ」

 

「私の名を悪口に使わないでいただきたい」

 

何時もの決まり文句を放つ彼女に対し、弟子であるエラルドが判断の軽率さを咎めるが返ってきたのは自分の名を悪口に使われた文句と呆れた眼差しだった

 

「此れは戦争よ。先に仕掛けたのは向こうな訳だし、言わば正当防衛とも呼ぶべき行為………まぁでも安心しなさい。出兵するのは、魔国連邦(テンペスト)獣王国(ユーラザニア)の戦士団が主だから、他国に迷惑を掛けたりはしないわ。その代わりに西方聖教会からの追求に関しては自力で策を練ってもらう事になるけど、些細な問題よね」

 

「些細ではないが………これ以上の言及は無駄と理解しました」

 

「そう言えば……ラミリスは何しに来たんだ?」

 

「さぁ?お茶会でもしにきたんじゃないの?手土産持ってきてたし」

 

「あー、なるほど。お茶会かぁ…………って!そんな訳あるかっ!!」

 

師であるネコリアの捲し立てる様な話術に此れ以上の発言は失言と成りうる事を理解したエラルドが呆れた様にため息を吐く。一方でリムルは大人しくクッキーを食べるラミリスが現れた事に疑問を抱き、相棒に問うが彼女は何時も通りに的外れな答えを返す

 

「ラミリス様。書物に夢中になりながら、クッキーを頬張っている場合ではございません。早くリムル様とネコリア様にあの事をお知らせしないと……」

 

「ウルサイわね!今ちょうど良い所なのよ!」

 

「ネコリア様。私、ラミリス様が可愛いくて甘やかしてしまうんですが子育てって難しいですね」

 

「ギンレイちゃんはリスちゃんのお母さんじゃないでしょ」

 

クッキーの食べかすを溢しながら、漫画を読み耽るラミリスにベレッタが世話を妬く隣でギンレイは本体のネコリアに人生相談ならぬ猫生相談をしているが悩みが明らかに的外れである

 

「良い?私はこの漫画を読むので忙しいのよ!ミコノス島で、かつての想い人を助ける為に戦おうとする執事くんに金髪ツインテールのお嬢様が道を示してあげるって言う名シーンよ!これは見逃せないわ!」

 

「リスちゃん……その先がどうなるかのネタバレしてもいい?」

 

「なっ!ダメよ!」

 

「だったら、ささっと来た目的を言え」

 

「はい!」

 

執事バトルコメディ漫画を読んでいたラミリスはネコリアが先の展開を話そうとするのを止め、其れを拒否するならば目的を話せとリムルに強要され、元気の良い返事と共に彼に近寄る

 

「もう一度言うわ!この国は滅亡する!!」

 

「二回も言うからには意味がある……そういうことね?リスちゃん」

 

「流石はネコ………そう、二回言ったのには意味がある!なんと…なんとね……魔王クレイマンが!アレ(・・)を発動させたのよっ!」

 

「にゃ……にゃんですって!アレ(・・)ですって!?」

 

「ネコちゃんは知ってるのか?」

 

「ううん、知らない」

 

「「今の驚きはなんなんだよっ!!馬鹿猫!!」」

 

ラミリスの言葉に何かを知っている様に驚きの声を挙げるネコリアであったが結局は何も理解していないと分かり、リムルとラミリスから突っ込みが飛ぶ

 

「アンタたちは知ってる?〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟!その名が示す通りに全ての魔王が集う特別な会合よ」

 

「あー、にゃんか前に聞いたことあるわね………魔王のお茶会だっけ?確か」

 

惚けていたにも関わらず、本当に知識にあった〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟の事をネコリアが口にする

 

「お茶会?古い文献には、こう記されてありましたが?〝魔王が集い、大戦が起きた〟と……」

 

「人間の主観でしょ?其れは。確か……魔王が集まってお茶を飲みながら、近況報告や面白い話題を話し合う場だった筈よ」

 

「そうなのよさ。だいたい、私だって暇じゃないし、戦争なんて面倒な真似したくないのよさ」

 

自分の知識にある情報とは異なる〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟の本質に驚愕するエラルドであったが、ネコリアは話を続け、ラミリスは戦争は面倒だと開き直る

 

「いやいや、お茶会がきっかけで魔国連邦(ウチ)が滅亡するとか有り得ないだろ。何がどう転べば、そんな話になるんだよ」

 

「無知も度が過ぎると呆れるわね。これだから、エッチなスライムは……原因は十中八九、言わずもがなであたしたち(・・)が魔王に覚醒して、アンタが〝魔王(・・)〟を名乗ったからよ」

 

「つまりは俺への制裁ってことか……でも後悔はしてないぞ?今回はそうする必要があったんだ」

 

「分かってるわよ。まぁ……ラミリスが来たのには、もう一つの理由があるからなんじゃない?」

 

「何時もながらに優れた観察眼ね。流石は参謀長を名乗るだけはあるわ………そうよ、アタシが来たのにはもう一つの理由があるのよ」

 

先程までのふざけた雰囲気は前座、真剣な雰囲気により、空気が一変する。張り詰められた糸の様にぴりぴりとした空気が支配する

 

「クレイマンの奴が軍事行動を起こしたのよ!このままだとアンタたちは………魔国連邦(テンペスト)は滅亡する!!」

 

「…………ほう、どうする?参謀長(ネコリア)

 

ラミリスが口にしたもう一つの理由にリムルはにやりと笑い、隣で愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らす相棒に問う

 

「決まってるじゃない……裏方に飽きた演者は舞台から早急に降りてもらうのよ。さぁ、始めましょう?陛下(リムル)……あたしたち(・・)戦争(・・)を……!」

 

高らかに、全ての意志を汲み取るかの様に彼女は宣言する。故に彼女は配下全員と共に、彼の前に傅く

 

「如何なる命令にも我等は従います。全ては陛下の御心のままに……」

 

傅き、(こうべ)を垂れる彼女の瞳に映る者は数多の魔物を束ねる魔王。対等を主張しながらも、自らの立場を弁え、彼女は眼前の青年を見据える

 

「…………あっ!そう言えば、さっき俺のことをどさくさに紛れてエッチなスライム呼ばわりしただろ!」

 

「今更?相変わらずの締まりのなさね。だから、リムちゃんは何時まで経ってもエッチなスライムなのよ。そんなことでは一万年と二千年経っても愛してくれる人が現れないわよ?」

 

「何処の創世の時代の物語だ!!」

 

(ヤバい………アタシ、頼る相手を間違えたかも……)

 

「ベレッタ!大変です!茶柱が!」

 

「ギンレイ?少し黙ってください」




会議が進む中、空腹感に打ちひしがれる面々。ならばと会議は中断!お風呂にごちそう!更にはサービスシーンまで……!

ネコリアの真骨頂その47 実はどさくさに紛れに毒舌を吐く

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第六十八話 休憩を挟んだら、お風呂に御馳走を大盤振る舞いしちゃった

今回の見所!ネコちゃんたちのサービスシーンが!以上!(内容はご想像にお任せします)


「ふぅ………やっぱり、お風呂は大浴場に限るわねぇ〜…」

 

予期せぬ来訪者からの情報で会談は長丁場になると予感したネコリア。彼女の提案もあり、会議は休憩時間を挟む事になり、疲れを癒す為に湯に浸かっていた

 

「アハ〜っ!アハハハ…………!くすぐったい…………!コラ〜!アハッ……………アハハハッ!自分で出来るって!」

 

「ラミリス様、遠慮なさらずに」

 

「ええ!是非とも、私たちに洗わせてください」

 

ちらっと視線を移せば、トレイニーと彼女の妹たちに体を隅々まで現れるラミリスの姿があった。自分の配下も割と過保護な面が目立つと思っていたが樹妖精(ドライアド)たちは遥かに其れを上回る過保護さである

 

「ネコリア様とお風呂!私……感動の余りに色々と止まりませんわ……」

 

「わふぅ〜……気持ちいいんだぞぉ〜……」

 

「あぁ〜……五臓六腑に染み渡るなぁ〜…」

 

「カイリンさん……オッサン臭いですよ?ですが…偶には湯船に浸かるのも悪くありませんね」

 

「同感だ、偶畑仕事で疲れた体が癒されていく……」

 

「お風呂気持ちいい」

 

「裸の付き合いも悪くない」

 

一息を吐く様に寛ぐネコリアの周囲で盛り上がるスイヒョウたち。落ち着きながらも男湯で繰り広げられる会話に聞き耳を立てる姿は彼女の専売特許と言っても過言ではない

 

(ネコちゃん。エラルドが街道を作ってくれとか言ってるが、如何する?)

 

会話の内容を聞いていた事が知られたのか、リムルが《思念伝達》と《心理意識》を繋げ、問い掛けてきた

 

(そうね……街道を作るにしても、一概にも二つ返事では了承出来ないわね。街道上の警備及び宿屋の運営に関しては此方側で引き受けて、経費に関しても通行税を含めた相応の額を要求するべきよ。当然、何年かに一度の交渉権が欲しいとか言うはずだから、其れに関しては認めてあげなさい)

 

(お、おう………すごいな、直接的に会話した訳じゃないのに、手に取る様に分かるんだな。流石はお師匠様…)

 

(あの馬鹿弟子の考えそうな事なんて、粗方の見当は付くわよ。要件はそれだけ?なら、ゆっくりとお風呂に浸からせてもらうわよ……言っておくけど、覗いたりしたら……分かってるわよね?)

 

(わ、分かってるよ………)

 

的確な要求を提示し、腹芸が不得意な相棒の頭脳役となる姿は正に参謀長の呼び名が相応しい。其れに踏まえ、覗きに関する釘を指すのは彼の邪な考えを見透すが故の注意である事は言わずもがなである

 

「気持ちいいですねぇ〜……」

 

「そうねぇ〜……というか、アンタ………錆びないの?」

 

「御心配には及びません」

 

湯船に浸かっていたラミリスはギンレイに同意を示しながら、もう一人の配下であるベレッタが錆びないのかを気にするが当の本人は気にせずにと告げる

 

「揃ったな」

 

「ねぇちょっと……リムちゃん?にゃんで、あたしの前にはお酒がないの?」

 

風呂から上がると迎賓館の大部屋には食事の用意がされていた。然し、自分の目の前の御膳を見ていたネコリアは酒が無いことに不満気に相棒に問う

 

「禁酒中だからだ。酔っ払うと樽酒に頭からダイブするだろ」

 

「しくしく………リムちゃんがいじめる……ちらっ…」

 

「嘘泣きはやめなさい。兎に角だ、今は食事を楽しもう」

 

未だに解禁とならない禁酒令に涙を流すネコリアであるが、その涙が演技である事を長い付き合いで見抜いているリムルは軽く遇らうと目の前に食事に目を向ける

 

「ちょっと待ちなさい!どういう事!?一体これはどういう事なのさ!?」

 

「にゃにが?」

 

食事を口に運ぼうとした瞬間、ラミリスが待ったを掛けた。其れに逸早く反応を見せたネコリアは不貞腐れながらも問い掛ける

 

「この子達が私をすっごくちやほやしてくれてんのよ!どういう事よ!?」

 

「良かったじゃないか、構ってちゃんのお前からしたら役得だろ。それとも何か不満があるのか?」

 

トレイニーたちからの扱いに驚きを隠せないラミリスが興奮気味に口を開けば呆れた様にリムルは肩を竦めた

 

「良かったよ。最高だったわよ……………!だから!リムル!それにネコ!私もここに住む事にしたってわけ!どう?嬉しいでしょ!嬉しいわよね?」

 

「却下♪」

 

「なんでなのよさっ!」

 

至れり尽くせりな状況を気に入ったラミリスの提案をネコリアが食い気味に却下すると、くわっと目を見開いた妖精が吠える

 

「トレイニーさんたちは仮にもジュラの大森林の管理者なんだ。お前ばかりに構っていられる時間はない……よって、却下だ」

 

「ケチ!ケチ!ケ〜チ!良いじゃん!何かあっても、この最強のラミリスさんが手伝ってあげるからさぁ〜。ねっ?お願〜い!ネコ!」

 

「そうねぇ〜……あたしたち(・・)に迷惑を掛けない事を前提に利益になる事には全力で協力するんなら、考えてあげないこともないわ」

 

「ホント!さっすがはネコ!何処かのすけべゼリーよりも話せるじゃない!」

 

「誰がすけべゼリーだ。まぁ、街の発展に関してはネコちゃんに任せてばかりだからな……その話題に関しての積もる話は前向きに検討しておく」

 

「誠ですか!リムル様!」

 

「ラミリス様の御世話が出来る喜びにどうにかしてしまいそうです…」

 

「良かったですね、お姉さまたち」

 

ネコリアの助言もありリムルが前向きに検討すると答えると樹妖精(ドライアド)三姉妹が歓喜の声を挙げた。元々がラミリスの配下であるが故に主人である彼女と過ごせるのは最高の喜びなのだろう、三人はラミリスの世話をしながらも喜びを噛み締める

 

「さて、難しい話は腹を満たしてからだ。遠慮せずに食べてくれ」

 

「ほう…これは」

 

「絶品ですな」

 

御膳に並ぶ料理をリムルが食べる様に促すと、未だかつてない未知の料理に来賓者たちは舌鼓を打つ

 

「当然であろう!何せ、この国の料理を監修しておるのは他ならぬ我が親友のネコリアだからな!此奴は甘味から何まで網羅しておるのだ!」

 

「御師匠様が料理……ですと?まさかあの焼くと煮るの調理法しか知らなかった我が師が!?」

 

その美味さに目を見開く来賓たち、其れに気付いたヴェルドラは親友である彼女が料理の功労者である事を告げた。すると、彼女の料理している姿を知るエラルドは衝撃の事実に戦慄する。正に空いた口が塞がらないとはこの事である

 

「ヴェルちゃんが誇らし気な事も腑に落ちないけど、エラルドの反応も気に触るわね………嫌なら食べなくてもいいのよ?」

 

「滅相もない!御師匠様が考案なされた料理を食せるとは、このエラルド…感激に御座います」

 

「そう?なら良いわ」

 

親友が誇らし気に語る姿に呆れた眼差しを向けながらも、弟子の発言を聞き逃さなかった彼女が睨みを効かせると発言した張本人は取り繕う様に彼女を宥めた

 

「それでだ。シオンとスイヒョウ、其れにフウとクウに聞きたいんだが捕虜からの情報はどうなってるんだ?」

 

「はい!勿論ですとも!先ずはエド……………エドノヨル?エド……………」

 

「エドマリス王ですわよ。何でも、ファルムス王国に出入りしている商人が我が国の絹織物等を持ち込み、王の欲を刺激したのだとか……それで、今後の流通の主流を我が国に移る事を危惧した果てに今回の件に至ったとのことですわ」

 

捕虜からの尋問結果をリムルに聞かれ、シオンは自信満々に答えようとするが捕虜の名前さえも記憶しておらず、スイヒョウが助け船を出すと共に暗記していた情報を口にする

 

「それで?ソウカとソウエイに聞くけど、商人の正体についての情報は?」

 

「申し訳ありませんがネコリア様。其方に関しての詳しい情報は掴めておりません」

 

「此方も同じく。その者はかなりの切れ者だと思われます」

 

ネコリアが商人の正体についての問いを投げかけると、控えていたソウカとソウエイが情報が未だに掴めていない事を告げる。次に彼女はフウとクウに視線を向けた

 

「フウたちが尋問したのは西方聖教会の大司祭。ニコラウス・シュペルタス枢機卿から“神に対する明確な敵対国として討伐する予定”とか言われて、討伐に同行してたみたい」

 

「それで大司祭は神敵討伐の栄誉を以て、中央に対する評価を得ようとか思ってたみたい」

 

「そう……それで?王に司祭が居たのは確認しているけど、後は誰がいたの?」

 

双子からの情報を聞き、次に彼女が興味を持ったのは三人目の捕虜。事の顛末を最後まで見ていない彼女は国王と大司祭以外に誰が生け取りにされているかを知らないのだ

 

「確か……酷く怯えておりましたわ。何をされたかは見当が付きませんが余程の恐ろしい目にあったと思われます」

 

「生き残っていた最後の男……察するに騎士団長フォルゲン辺りか?」

 

「多分だけど違うわ。ガワだけは異世界人とか言ってたから、魔法使いの類いだと思うわ」

 

「魔法使い………確か、そんな感じの事を言ってたヤツがいたな……名前は聞き出せたのか?シオン」

 

「はい!ラーメンです!」

 

「「…………ラーメン?」」

 

三人目の名を問えば、返ってきた妙に慣れ親しんだ名前にリムルとネコリアは目が点になる。周りの来賓者たち、配下たちは聞き慣れない名に真剣に頭を悩ませる

 

「著名な兵士の名は常にチェックしていますが、初めて聞く名前ですね」

 

「私も知りません。ファルムスで強力な魔法使いというと王宮魔術師のラーゼンがいましたね」

 

「英雄ラーゼン………忘れてはならぬ男よ」

 

「その名は獣王国(ユーザラニア)にも轟いております。大国ファルムスの守護者にして、叡智の魔人と呼ばれる翁だと聞き及んでおります」

 

「………え?」

 

「スイヒョウ……まさかだけど、その捕虜の名前はラーゼンなんじゃない?」

 

「そのまさかですわ」

 

シオンの記憶とは違う名が飛び交う様子に、ネコリアが呆れた様に右腕(スイヒョウ)に問えば、彼女も呆れた様に苦笑してみせる

 

「申し訳ありません。妹の記憶力が曖昧なばかりに……」

 

「姉上にだけは言われたくありません。あとシオンです」

 

「兎に角…ヨウムには捕虜三人とファルムスに戻ってもらうわ。その時にディアブロも同行しなさい」

 

「えっ………左遷…………!?」

 

「あ、ああ……それは心強いが…………大丈夫なのか?分かりやすくショック受けてるけど。その人」

 

不甲斐ない妹と言い合うライメイに軽くため息を吐きながらも、ネコリアは最善策とも言える提案をヨウムに持ち掛けるが巻き込まれたディアブロは衝撃を受けていた

 

「リムルからの提案なんだけど……イヤなの?」

 

「なんと…!であれば、このディアブロ……早急に事を終わらせると御約束致します」

 

「ああ、期待してるぞ」

 

「ははっ…!」

 

「じゃあ次はクレイマンの動きに関しての議題を纏めていくわよ」

 

かくして、会議は新たなる議題を据え、後半戦に差し掛かろうとしていた




次なる議題は魔王クレイマン!果たして、参謀長が出す最強の策とは!

ネコリアの真骨頂その48 実は料理の知識が幅広い

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第六十九話 新たな仲間は懐かしのあの子だったから、意気投合しちゃった

遂に六十九話……サクサク進んでるように見えて、実はまだまだ原作では序盤あたりなんだよなぁ

今回のハイライト ネコリアの服装:桃色のファーコート、黒のチューブブラ、黒のスパッツ、桃色と白の縞模様ニーハイ、黒のショートブーツ


「クレイマン云々の話よりもだ。ミリムに関しての情報はないのか?」

 

「にゃいわね。でも、気になってる事が一つ………多分だけど、ミリムちゃんは操られてないんじゃないかしら」

 

「どうして、そう思うんだ?ネコちゃん」

 

会談終了後、執務室で今後のクレイマンの動きついての更なる情報交換をしようとしていると、リムルにふりふりと鍵尻尾を揺らす相棒が疑問に感じている事を口に出す。彼女の意味深な答えに何かを感じたリムルは問いを投げかける

 

「ネムの行方を探していたソウカの部下のナンソウを通して、《千里眼》で観察してたのよ。其れで、理解したわ……獣王(カリオン)生きてる(・・・・)

 

「なんだって!?本当か?それは!」

 

「本当よ。あたしの《千里眼》は魔王化の影響で配下の誰かと視界を共有可能になったの。だから、この瞳に映し出される光景に嘘偽りはあり得ない、全てが揺るがないまごうことなき真実……故にあたしに知らない事は存在しないわ」

 

魔性の笑みを見せ、意味深な事を口にする相棒。彼女の鍵尻尾がふりふりと揺れ、これから降り掛かる何かを予期している様に感じられる

 

「問題は会合に誰を連れて行くかだが………ネコリアにはクレイマン軍の対処を命じる。お前の策ならば問題ない筈だ。やってくれるか?参謀長(ネコリア)

 

「お任せください、魔王陛下(リムル様)。必ずや役目を全うし、貴方様に勝利の二文字を御伝えすることを、このネコリア=テンペスト、拝命した軍事司令部参謀長兼最高幹部の御役目の名に御約束させていただきます。全ては陛下の御心のままに………」

 

傅き、(こうべ)を垂れる彼女の瞳に映る者は数多の魔物を束ねる魔王。対等を主張しながらも、自らの立場を弁え、彼女は眼前の青年を見据える

 

「次に〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟に連れて行く従者だが………」

 

「其れは三人(・・)までだよ!ネコは作戦指揮があるから、不参加として………誰を連れて行くの?」

 

「其れに関しては安心してくれ。二人(・・・)は既に決めてる。残りの一人をどうするかを決めかねていてな……」

 

「クフフフフ、では私がお供を」

 

「アンタは駄目。ファルムス王国攻略の役目を完遂しなさい」

 

「はい……」

 

残り一人の従者についてを決めかねているリムルに名乗りを挙げたのはディアブロ。然し、即座にネコリアが彼を咎め、己が役目を果たす事を命じると、分かりやすく落ち込みながらも覇気のない返事を返す

 

「残りの一人だけど、あたしに決めさせてくれない?候補がいるのよ」

 

「ほう?ネコちゃんにそこまで言わせるほどの人材か……興味があるな。是非ともお願いするよ」

 

「安心しにゃさい。アンタも知ってる娘よ?入りなさい」

 

優しく笑い、扉の向こう側に呼び掛けたネコリア。その声に導かれ、扉が開き、黒髪の少女が姿を見せる

 

「お久しぶりです…リムル様。ネコリア様の命により、此度の会談のお供を務めさせていただきます」

 

「あっ……いやこれはご丁寧に…(だ、誰だ!?この美少女は!?ちょっ!智慧之王(ラファエル)先生!誰だ!?)」

 

『是。マスターの記憶から該当する人物を検索………。該当人物が判明しました、その者は個体名ネコツー(・・・・)、マスターにより名付けられた個体名ネコリア=テンペストの分身体です』

 

「えっ………ネコツー(・・・・)………って!あのネコツー(・・・・)かっ!?」

 

丁寧な御辞儀と挨拶を述べる美少女。その姿に見覚えがないリムルは《智慧之王(ラファエル)》に解答を求め、返ってきた意外な名に目を丸くした

 

「にゃふふ〜、ネコリア様の言う通りにマジで驚いてるぅ〜。超絶ウケる〜」

 

「驚いた?」

 

「驚いた………というか、前までのネコツーって完全に猫だったよな?語尾ににゃーとか付けてたし…」

 

けらけらと笑い、先程までの丁寧な態度は何処にと言わんばかりの小馬鹿にした態度を見せる美少女基ネコツー。その隣で魔性の笑みを浮かべるネコリア、分身と本体という元々が同一人物の関係性にあるだけに反応は近しいものがある

 

「ネコリア様とリムル様が魔王になった影響を受けたのよ。其れでネコツー基わたしが《恩恵(ギフト)》でスキル《人化》を獲得。力的にはそうだなぁ……ライメイさんくらいかな?諜報能力はソウカさんとスイヒョウさんくらい、脚力はエンカの下位互換くらいかな」

 

「なるほどな……で、口調が変わってるのはどうしてなんだ?」

 

「えっ?あれは単なるキャラ作り(・・・・・)だよ?ネコリア様とキャラが被るとダメだからね」

 

「流石はネコツー。配慮のできる子ねー」

 

「ふっふ〜ん、もっと褒めてほしいにゃ〜」

 

口調が変わった理由を聞かれた瞬間、今までの方がキャラ作りであるという爆弾発言を投下するネコツー。まさかの発言にリムルは開いた口が塞がらないが、ネコリアは彼女の頭を優しく撫でている

 

「あら?誰かと思えばネコツーさん。お久しぶりです」

 

「うみゅ?あーっ!ギンレイちゃん!久しぶりー!」

 

明確には異なるが元が分身同士であるギンレイに呼び掛けられると、ネコツーは彼女を抱き上げる

 

「ネコちゃんの分身って実力的にはかなりの強さだけど……自由だよな…」

 

「ギンレイちゃんは甲斐甲斐しいわよ!なんたってアタシの配下だからねっ!」

 

「ラミリス様にお仕えできるのが私の喜びですから」

 

自由過ぎる相棒の分身たちにリムルは諦めた表情でため息を吐くが、ラミリスはネコツーに抱き抱えられたギンレイの喉を撫でる

 

「てな訳だから、リムルの事は任せたわよ?ネコツー。生徒たちには伝えてあるんでしょ?」

 

「当たり前じゃん?というか……リムル様に会いに行くことを伝えたら、連れて行けって騒がれたくらいだよ…」

 

「あ〜あ……なんか目に浮かぶ………」

 

「ありがたい話よね、アンタみたいなエッチなスライムを慕ってくれてるんだから」

 

「そうだなぁ……俺みたいなエッチなスライムを………って!誰がエッチなスライムだ!肯定しかけただろ!」

 

「最近ちょっと油断してんじゃにゃい?突っ込みに遅れがあるわよ?」

 

「ぐぬぬ……この仕返しは必ず……あれ?そういえば、ヴェルドラは?随分と大人しいけど…」

 

相棒からの決まり文句に突っ込みを放ちながらも、油断があると言及され、固く復讐を誓うリムル。そして、ふと気付いた誰よりも騒がしい親友の姿を探す

 

「ああ、そういえば静かね。体臭がしなかったから気付かなかったわ」

 

「おい、妖気(オーラ)を体臭とか言うな。我が臭いみたいだろう」

 

「実際、鼻曲がりそうにゃんだけど」

 

「なんだと!痴女みたいな服装をしているクセに!なんだその服は!殆ど下着と変わらないではないかっ!!」

 

「半裸のヤツに服装のことを言われたくないわよっ!だいたい、これは下着じゃないって何度も説明してるでしょ!?あっ、そうか?オッサンには理解できないわよねぇ?ごめんね〜」

 

「ネコよ、今日の夕飯はお前を喰ってやろう。生で食べられるのと焼いてから食べられるのでは何方が好みだ?」

 

「そうねぇ〜、やっぱり焼いてからの方がオススメかなぁ。あっ、焼き方はウェルダンでお願い。よく焼かないとお腹壊しちゃ----って!食わせるかァァァァ!」

 

当然の様に展開する夫婦漫才。騒がしく言い合いを繰り広げる二人の間には誰も入ろうとしない、寧ろ入ることさえ躊躇われる。然し、其れは約一名を除いての話だ

 

「ネコちゃんもヴェルドラも落ち着けよ。全く二人は……」

 

「あらやだ、ヴェルちゃん。リムちゃんが笑ってるわよ。きっとまたエッチな事を考えてるのよ」

 

「仕方なかろう。彼奴は欲望に忠実なエッチなスライムだからな」

 

「引っ叩くよ?お前たち。まぁ、良い。ヴェルドラくんに頼みたいことがあるんだ」

 

にやりと笑うリムル、更に彼がネコリア以外の誰かに敬称付けで呼ぶ時は何か理由があると知るヴェルドラはジト目を向ける

 

「リムルよ………まさかだが……我に何かをさせようとしてはいまいか?〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟とは別の何かをさせようとしておるだろう!」

 

「なんだ、そこまで理解してるなら話は早いな。お前には街の防衛を任せたいんだ、頼めるか?親友(・・)

 

「ぐぬぬ………仕方あるまい……特別だからな!」

 

「うわぁ……オッサンのツンデレとか需要にゃいわよ?なに?《TS(性転換)》でもするの?ツインテールにして、ニーハイを履いて、ドジっ子な全部盛りの妹になるの?」

 

頼まれたら断れない性格故に結局はリムルからの頼みを受け入れるヴェルドラを見ながら、呆れた眼差しを向けたネコリアは突っ込みを放ちながらも嬉々として、親友を弄り始めた

 

「ネコちゃんはアニメの見過ぎだ。というか……相変わらずだな、その好きな子とかいじめちゃう感じ…」

 

「………別に好きじゃないわよ」

 

「ほほう……」

 

「にゃによ……その目は」

 

相変わらずなネコリアの性格を咎めたリムルは彼女が外方を向く姿に何かを感じ取り、にやにやと笑う

 

「いんやぁ〜?別に〜」

 

「リムちゃんのそういう所が嫌いよ」

 

「俺は好きな人を前にちょっと照れるネコちゃんが好きだけどなー」

 

「むぅ……知らにゃい…」

 




魔王達の宴(ワルプルギス)〟に向かう為にラミリスが三人目に指名したのはまさかのトレイニー!そして、ネコリアは戦いの準備を進める為に白い狐と黒い狸を呼び出す……果たして、彼女たちの正体は!

ネコリアの真骨頂その49 実は好きな人をいじめちゃう

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第七十話 準備万端、配下とともに我が威を示しちゃった

今回の見所!ネコちゃんはやっぱり可愛い!以上


「先ずは突然の召集にも関わらず、応じてくれた事に感謝を。ありがとう」

 

「「勿体なき御言葉にございます…」」

 

魔国連邦(テンペスト)〟歓楽街ネコリア。この国の参謀長である彼女の名を冠する娯楽地区中央に位置する屋敷。その最上階に設けられた執務室のソファに寝転び、愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らす彼女の視線の先には九つの尾を持つ白き狐(・・・)、毛並み豊かな尾を持つ黒き狸(・・・)の姿。彼女等は己が主人の前に傅き、頭を垂れる

 

「敬愛すべきお姉さま(・・・・)の命とあらば、このイヅナ(・・・)は何処にいようとも馳せ参じますゆえ。何処かのバカダヌキとは違い!お姉さまからの命は我が生きる活力でありますゆえ」

 

白き狐基イヅナは姿を白銀の髪を靡かせた美少女に変え、目の前に鎮座する彼女を姉と呼び、隣に並び立つ黒き狸を横目で見る

 

「ふんっ……姉上(・・)が傷心に暮れていた時に喃々(のうのう)と眠りこけていたお前になんと言われようが痛みもしない。姉上、此度の件においての魔王への進化を心からの御祝を申し上げます。誠におめでとうございます、このムジナ(・・・)、姉上の妹であることを誇らしく思っております」

 

一方で黒き狸基ムジナは黒髪ショートが似合う活発な少女に姿を変えると、見下された態度を取られたにも関わらず、イヅナを鼻で笑うと姉同然に慕う彼女に讃美の言葉を贈る

 

「ぐっ…先を越された……。お姉さまの魔王進化は言わば、覇道に通ずる第一歩!数多の魔を統べるお姉さまであるからこそ成し得た多大なる功績に心からの敬意と忠誠を献上させていただき存じます、お姉さま」

 

先を越された事に僅かに表情を歪めたイヅナは、負け時と彼女への讃美の言葉を贈ると同時に己が忠誠心を捧げる

 

「相変わらずの仲の悪さね……イヅナにムジナ」

 

「私がお慕い申し上げておりますのはお姉さまだけであるゆえ……他の者と馴れ合う意味がありませぬ」

 

「同じく、ボクが感謝しているのは、名と生きる意味を与えてくれた姉上にだけです。他種族と懇意に接する事が理に適っているとは思えません」

 

「そう…まあ、それは別に構わないわ。今回の件についての説明は既にスイヒョウから通達されているわね?」

 

「「聞き及んでおります」」

 

配下の中でも付き合いの長いスイヒョウたちとは違う意味で、自分への忠誠心が高い二人に苦笑を浮かべながらも、呼び出した理由を確認する為に問う。その問いに彼女たちは、傅いたままで、返答を返す

 

「お姉さまと(あに)さまに喧嘩を売った魔王クレイマンを排除する為に力を貸せとの御命令……私などの力で宜しければ、謹んで御協力させていただきますゆえ」

 

「姉上と兄上からの命令に背く訳がありません。ボクの全身全霊をかけて、助力させていただきます」

 

「感謝するわ。我が妹たち(・・・・・)

 

優しく微笑み、傅く妹たち(・・)に感謝の意を示す。イヅナ、ムジナがネコリアを姉と呼ぶには理由がある。〝魔国連邦(テンペスト)〟が国となる前に九尾の姫、隠神刑部の姫である両名はリムルの配下に降ろうと一族を従え、村を訪問した。その際に多忙を極めていたリムルに代わり、応対したネコリアの優しくも愛らしい姿の虜となった両名は彼女のことを姉と慕うようになり、名を与えられ、その配下となった。当然ながら、元がリムルの配下に降るためであったが故に、姉と慕うネコリアの相棒である(リムル)もまた兄の様な存在なのだ

 

『ネコリア。聞こえるか?』

 

「えぇ…聞こえるわよ、リムル」

 

刹那、耳に届いたのは〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟に向かう為の準備を整えていたリムルの声。名を呼ばれ、彼女はゆっくりと口を開く

 

『俺は今から〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟に向かう。クレイマンの方は手筈通りにお前に一任する。軍事司令部全並びに〝巫女姫(かんなぎ)〟のシュナを加えた我が国の全勢力を持って、我が前に〝勝利(・・)〟の二文字を差し出せ』

 

「全ては陛下の御心のままに………」

 

相棒である盟主からの命に従い、彼女は魔性の笑みを見せる。其れ即ち、彼が待つのは朗報たる〝勝利(・・)〟の報告のみである事を意味する

 

「スイヒョウ!国を警備する指揮はアンタに一任するわ、敵対意志を持つ者は早急に始末。それでも尚、侵攻する勢力には威を示しなさい」

 

「お任せくださいませ。同じ轍を二度も踏むスイヒョウではありませんわ、ネコリア参謀長閣下並びにリムル魔王陛下の凱旋を心よりお待ち申し上げております」

 

「えぇ……期待してなさい。さぁ……行くわよ」

 

深々と頭を下げる右腕に笑い掛け、彼女は身を翻す。響き渡る足音、歩く度に揺れる桃色のファーコート、ふりふりと揺れる鍵尻尾、その後ろに付き従うはスイヒョウとカイリンを除いた九幹部の七人、其々の得物を手に前を歩く主人に付き従う姿は正に百鬼夜行。其れを束ねし者の名はネコリア=テンペスト、魔王種妖霊仙猫(ようれいせんびょう)の猫耳美少女。自由に生きるネコの魔人である

 

「誰かと思えば……まさか、貴様たちまで呼ばれていたとはな」

 

「これはこれは……戦闘総隊長のライメイ。相も変わらず、バカの一つ覚えのように剣を名乗っているのか?おっと……つい思った事を…失礼したゆえ」

 

「ふんっ…貴様に何と言われようが我が剣はネコリア様の為にあるだけだ」

 

火花を散らし合うライメイとイヅナ、武人である二人は互いに切磋琢磨しながらも歪み合う宿敵とも呼べる間柄である。故にこの歪み合いも、彼女たち也の馴れ合いとされる

 

「わふっ!アネサマ!久しぶりだぞっ!」

 

「エンカ。元気そうで何よりだ、お前は本当に可愛いな」

 

きらきらとした瞳で、ムジナを見上げるエンカ。ぱたぱたと揺れる尻尾が示す様に彼女はムジナを実姉の様に慕い、懐き、妹同然に可愛がられている

 

「普段は余程の事態にも一族の守護に徹する為に呼び出されないイヅナさんとムジナさんも召集されたのを見ると此度の戦にネコリア様が如何に本気であるかが手に取るように解ります。見事な御采配です」

 

「フウが一番がんばる」

 

「クウも負けない。がんばるとリムル様が褒めてくれる」

 

主人の采配に感心の意を示すソウカ。その両脇に控えたフウとクウは拳を握り締め、やる気に満ち溢れている

 

「お待ちしてましたよ、ネコリア様。侍大将ベニマルと我が軍勢〝紅炎衆(クレナイ)〟。御身の前に」

 

「同じく!ゴブタ率いる〝狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)〟!馳せ参じったっす!感謝するっすよ!ババア!---おごっ!?」

 

「ぬんっ……ゲルドと我が軍勢〝黄色軍団(イエローナンバーズ)〟。御身の前に」

 

「此度は我が主人たるネコリア様に御貢献できる事に大変な喜びを感じております!それでは…我が軍勢〝 飛竜衆(ヒリュウ)〟と共に賛美の歌を-----ごふっ!?」

 

屋敷から出たネコリアの前に集う配下たち、失礼極まりないゴブタの頭上に踵落としを叩き込み、歌を披露しようとするガビルをソウカに無力化させ、彼女は魔性の笑みを浮かべる

 

「目的地は〝忘れられた竜の都〟……お前たちの命、このネコリア=テンペストが預かる!いざっ………出陣!!」

 

「「「我等の命は参謀長閣下とともに!」」」

 




忘られた竜の都に降り立つは一匹の黒き猫、彼女の前に集う配下たち。さぁ、始めようか…もう一つの戦いを!

ネコリアの真骨頂その50 実は狐と狸の妹がいる

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第七章 この度、魔王となりました新参者ですがどうぞよろしく
第七十一話 我が威を示す為に、本気を出しちゃった


お久しぶりです♪今日の0時に配信されたコリウスの夢で推しが出てきて大興奮な所に、まさかの更なる推しが二人も登場したことにキャパと魂が爆発気味な自分……それにまおりゅうでもヴィオレを引き換え入手!もう今日が命日でもいいと思う今日この頃ですが生きてますぜ!


「布石は充分………始めなさい、ゲルド」

 

『承知』

 

〝忘れられた竜の都〟周辺の高台。闇夜に浮かび上がる金色の瞳が見据える先にはゲルドの率いる〝黄色軍団(イエローナンバーズ)〟、参謀長からの一言に彼は《心理意識》と《思念伝達》を繋げ、淡白ながらも確かな返事を返す

 

「な、なぜ急に距離を………まさか!罠か!?動くな!この場に待機---!?」

 

司令塔であろう魔人が何かを言い掛けた瞬間、ゲルドのエクストラスキル《土操作》が発動し、大地を瞬く間に陥没させ、巨大な穴を形成する

 

「うわっ!なんだこれ!足を取られる……!!」

 

「あ、危なかった!飛翔出来る者がいなければ我が隊は全滅だったぞ…!」

 

足を取られ、這いあがろうにも這いあがれない魔人たち。然し、飛翔可能な魔人たちは早々に退避していたが彼女は其れを見逃す筈は無い……否、ある筈がなかった

 

「ガビル……ソウカ、フウ、クウ。打ち落としなさい」

 

「「「「お任せを。我等が主人様!」」」」」

 

次に呼び掛けたのは〝 龍人族(ドラゴニュート)〟四兄妹。空を独壇場とする彼等にとって、飛翔可能な魔人は格好の的。敬愛すべき主人の呼び掛けに応え、飛び上がってきた魔人を殴り付け、穴の中にたたき落とす

 

「何時もながら、我々の主人様の御慧眼には惚れ惚れするのである。なぁ?妹たち(・・)

 

「当然です。愛らしさと叡智を兼ね備え、千里先の状況を創り出すのが我等が主人様ですよ」

 

「すごい。流石はフウの主人様」

 

「そこ…クウたち(・・)の間違い。主人様がすごいのは当たり前。だって、クウたち(・・)の主人様……」

 

軽口を叩き合いながらもたたき落とす手を止めないガビルたち。その様子を見守る彼等の主人である彼女は愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らし、跨る自らの脚である紅の狼の背を撫でる

 

「ふふっ……敵意の喪失も時間の問題ね。我等が陛下(・・)に献上出来そうね、期待通りの二文字(・・・)を…」

 

「わふっ!これもネコリア様の作戦があってこそだぞっ!さっすがは参謀長様だな!」

 

「ふふっ…ありがとう。エンカ」

 

優しく笑い、エンカの頭を撫でる。眼下に広がる戦場を前に彼女は、期待通りの報告を出来ると歓喜に満ちていた

 

「姉上。アルビス殿たちが指揮権を姉上に委ね、総大将としての指示を仰ぎたいと申しております」

 

「必要ないわ。あたしはあたしのやりたい様にやる、指揮権はベニマルに委ねなさい。其れが陛下からの御指示よ」

 

影より姿を見せたムジナからの進言に対し、ネコリアは黒髪を掻き上げ、魔王たる相棒からの指示を告げる

 

「ではその様に……黒天衆!」

 

「「「姫様のお呼びとあらば!黒天衆揃いましてございます…!」」」

 

姉であるネコリアからの指示ならば、疑うことはあり得ない。故にムジナは自らの配下にして同胞である隠神刑部族の〝 黒天衆(コクテン)〟を呼び寄せる

 

「姉上………ネコリア参謀長閣下からの指示を戦場全体に通達!全軍の指揮は侍大将ベニマルに委託!」

 

「「「心得ましてございます…!」」」

 

指示を通達された〝 黒天衆(コクテン)〟は戦場に散り散りとなり、各大将格に指示を告げに向かう。その様子を見ていたネコリアは魔性の笑みを浮かべ、鍵尻尾をふりふりと揺らす

 

「さて………次はあたしたちの出番よ。我が配下たる九幹部に告げる!戦場を駆け、暴れ、その威を示せ……!!全ては偉大なる魔王が一角!リムル=テンペスト陛下の名の下に!!」

 

「「「「「「「「我等の命は参謀長閣下とともに!」」」」」」」

 

参謀長からの指示、其れ即ち彼女直属の配下には優先すべき勅命。紅の狼は大地を駆け、黄の武人は大地を穿ち、蒼き華は風と空を従え、白き狐と黒き狸は火花を散らし合いながらも敵を薙ぎ払う。そして、彼女らの主人である参謀長も魔性の笑みとともに、戦場に降り立つ

 

「気に食わない気配があるわね………ムジナ!イヅナ!一緒に来なさい!」

 

「姉上とならば何処までも!」

 

「お姉さまの向かう先が私の向かう先ゆえ!」

 

身に覚えのある気配に気付き、ネコリアは大地を蹴り、瞬く間に戦場の中でも激戦区と呼べる場所まで移動する。その側に控えたムジナ、イヅナも同等の速度で彼女に追随し、同様の場所に辿り着く

 

「…………あら、妙に気に食わないと思えば……記憶の片隅に残っているかも疑わしいレベルの小者(・・)じゃないの。幻滅しちゃった……でも、試すには良い機会かもしれないわね……〝 覚醒魔王〟としてのあたしの力を見せてあげるわ」

 

にやりと笑う彼女の前に浮かぶのは二体の大妖、その名を〝 暴風大妖渦(カリブディス)〟。かつて、彼女の国である〝 魔国連邦(テンペスト)〟に飛来した強大な力を持つ魔物、あの時は苦戦を強いられたが今の彼女には欲を満たすだけの力がある。故に彼女はかつての強敵を前に笑う、可笑しい訳でも、楽しい訳でもない、彼女は嬉しかった。かつての自分が成し得なかった事を実現可能な今の力が嬉しかったのだ

 

「塵芥と消えなさい……仙法・炎天燐火(えんてんりんか)!!」

 

極限まで高めなければ、繰り出す事が出来なかった火球は僅かな魔素で発生可能となり、かつてと同程度の魔素を送り込めば、赤き火球は大妖を呑み込み、瞬きもしない間に〝 暴風大妖渦(カリブディス)〟を消滅させた

 

「………ネコリア様。俺に指揮権を委託したのは此れをやりたかったからですね?全く……」

 

「ごめんね?ベニマル。消化不良は彼方の神官さんで発散してもらえる?まぁ……彼方に戦う意思があるならだけど…」

 

魔性の笑みを浮かべながらも、騒ぎを聞き付けたであろうミリムの配下である神官たちを束ねる神官長を指差す

 

「ほう、貴殿が指揮官殿か。ガビル殿並びにソウカ殿の主人という……なるほど、確かにミリム様と同格の魔素を感じる……是非とも手合わせを願いたいものだ」

 

「イヤよ。ベニマル、相手をしてやんなさい」

 

「…………手合わせしたいのは確かですが俺に飛び火させんでもらえますか?ネコリア様」

 

「え〜………あら、面白い気配がするわね。出てきなさい、フォスにネム…ステラ」

 

弄りがいのないベニマルにジト目を向けていると、更なる気配を感じたネコリアは物陰に呼び掛けた。名を呼ばれ、三人娘は体を震わせる

 

「………ネコリア様…」

 

「うぅ〜……見つかったのぉ〜…」

 

「流石はネコリア様ね!やっぱり隠れるだけ無駄だったわ!あっ!ミッドレイ様!」

 

「む、誰かと思えばステラではないか。何をしておるのだ」

 

「何もしてないわ!」

 

「そうなのぉ〜。別に聞き耳とか立ててないのぉ」

 

「わっー!ネムは余計なことを言わなくていいのです!何も聞いてませんです!はい!」

 

「わふ、賑やかだなー」

 

「変な魔物だ………おっと、つい思ったことを…」

 

「態とだろ…バカキツネ」

 

「なに?バカタヌキ、やるなら相手になるゆえ。歯を食いしばりなさい」

 

「何はともあれ、あとはリムル様の御帰還を待つだけですね。ネコリア様」

 

「う〜ん……そうね。あら……こっちにも動きが……ミリムに妖狐と人形、あとは雄牛とクレイマン……展開的には此方も興味深いわね……聞こえる?ネコツー」

 

剣であるライメイからの進言に納得しながらも、《千里眼》で視界共有していたもう一人の配下であるネコツーに呼び掛ける

 

『聞こえるよー。ちょいヤバな感じだけど、わたしとギンレイちゃんには手助けは流石に無理だから……例のヤツをやっちゃう?ネコリア様』

 

「ええ…お願いするわ。じゃあ、任せたわよ?ベニマル」

 

「はい、大将としての責務を完遂致します。参謀長閣下もお気を付けくださいませ」

 

「「「「いってらっしゃいませ、参謀長閣下」」」」

 

配下たちに見送られ、彼女は笑う。魔性の笑みを浮かべ、鍵尻尾をふりふりと揺らし、猫耳をぴこぴこと動かし、身を翻し、両手を打ち鳴らす

 

「仙法・眠子寝入り!!」

 

『仙法・逆口寄せ!!』

 

二つの仙術が二つの場所で重なり、本来ならば招かれなければ到達不可能な場所に彼女は顕現する為に姿を消す。その行く末が、行き先が魔王となった相棒のいる場所であることは明白、故に配下たちは彼女を見送ったのである

 

「「「「「「「「御武運を我等が主人様…」」」」」」」




呼び出されたネコリア、十大魔王を前に彼女は相棒とともに友を救い出す為に威を示す!!

NEXTヒント さぁ、お前の罪を数えろ

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第七十二話 魔王の宴にカチコミしようとしたら、親友も付いてきちゃった

今回は〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟に途中参加するまでの道中の話、割と頑張りましたよ!


(にゃるほど………亜空間に会場があるのね……通りで《千里眼》の正確性に欠ける訳だわ)

 

(てかさぁ〜大丈夫なん?いくら超絶可愛いネコリアでも、流石に魔王が集う宴にアポ無しははヤバいんじゃないの?リアねーさんも思うよね?)

 

(いや、私は行くべきだと思うよ。少しばかり……懐かしい気配(・・・・・・)を感じるのよ)

 

目的地である本来ならば招かれなければ到達不可能な場所基〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟の会場に向かう途中、頭に響く別人格たちの声に耳を傾けていた彼女は猫耳をぴこぴこと動かす

 

(リアねーさんがそういう時は大抵が悪いニュースだったりするのよね………にゃ?ねぇ、気のせい?にゃんかあそこに見覚えのある半裸マントがいるんだけど……)

 

(半裸マント………わわっ!何故にヴェルちゃんがいんの!?)

 

亜空間に見覚えのある影を見た彼女の声に反応した前世の人格である亜結が慣れ親しんだ親友の名を叫びながら、驚愕する

 

(私たち(・・)とは別の手段で移動しているみたいね。ネコ、声を掛けてあげれば?)

 

(…………仕方にゃいわね)

 

その一方で、前世よりも前の人格で彼の妻という立場にあるヴェルリアは優しく主人格の気持ちを後押しするように、声を掛ける様に促す。すると、彼女は一瞬の沈黙の後に鍵尻尾をふりふりと揺らし、彼に近寄っていく

 

「ヴェルちゃん。こんなとこで、にゃにやってんのよ?あたしは確か、御留守番してる様に言ったわよねぇ?」

 

我が親友(ネコリア)よ。我も最初は参謀長にして古くからの友である貴様との信頼関係から言い渡された申し出を了承した………しかし!どうしても、我は奴に!リムルに言わねばならぬことがあるのだ!」

 

出していた筈の指示とは異なる行動をしている親友にネコリアはジトっとした視線を送りながら、問いを投げ掛けると其れに答えたヴェルドラは真剣な表情でもう一人の友であるスライムに言わなければならないことがあると告げる

 

「どーせまたロクでもないことでしょ」

 

思っていたよりも小さな理由に興味を失くし、ため息を吐くネコリア。その様子が気に障ったのか今度はヴェルドラが仕掛ける

 

「なにおうっ!?そういう貴様も〝忘れられた竜の都〟での戦はどうしたのだ!?まさか負けたか!」

 

「はぁ!?負ける訳ないでしょ!とーぜん勝ったわよ!なんだったら、勝利どころか大勝利にゃんですけど?えっ?なに?もしかしてだけど、柄にもなく心配とかしちゃってんのぉ〜?プークスクス」

 

「ネコよ、今日の夕飯はお前を喰ってやろう。生で食べられるのと焼いてから食べられるのでは何方が好みだ?」

 

「そうねぇ〜、やっぱり焼いてからの方がオススメかなぁ。あっ、焼き方はウェルダンでお願い。よく焼かないとお腹壊しちゃ----って!食わせるかァァァァ!」

 

当然の様に展開する夫婦漫才、今はリムルというブレーキがいない為に二人は火花を散らし合う。かつては当たり前の様に感じていた時間、其れが今では沢山の仲間たちに囲まれた中で行われているのだが、この空間にはかつての様に二人だけの時間があった

 

「兎に角!リムちゃんに用件があるのは同じみたいね。ねぇ?ヴェルドラ……ちょっとツラ貸しなさいよ」

 

「良かろう。我が友の企みにこのヴェルドラ=テンペストが力を貸してやろうではないか!ネコリアよ!」

 

正に最強にして最大、この二人だからこそ分かり合える世界がある。〝覚醒魔王〟と〝暴風竜〟であるが故に手を組めば、向かう所に敵無しという言葉が似合うのは火を見るよりも明らかだ

 

「さて………着くわよ」

 

「漸くか……ならば、登場は派手に行かなくてはなっ!」

 

「派手に………あっ!だったらさ、こんなのはどう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ミリムが相手だとやり難いな………ネコちゃんの話では操られてない筈なのに……明らかにヤバい展開だろ!くそっ!何か手はないのか!《智慧之王(ラファエル)》さん!)

 

魔王達の宴(ワルプルギス)〟の会場では現在、新生魔王のリムル=テンペストを試す為にクレイマン一派との激戦の真っ最中であった。中でも大切な友人(マブダチ)であるミリムを救いたいと願いながらも、圧倒的な力の前に為す術がなく、防戦一方なリムルは《智慧之王(ラファエル)》に助力を願った

 

《解。亜空間から接近する二つの膨大な妖気(オーラ)を測定しました》

 

(妖気(オーラ)……しかも二つ?まさか新手かっ!?)

 

《否。妖気(オーラ)の持ち主は何方もマスターと深い繋がりのある魔物(・・・・・・・・・・)、つまりは味方です》

 

まさかの解答に新手に出現を予期するリムル。然し、それは杞憂だった。其れもその筈、深い繋がりのある魔物(・・・・・・・・・・)、その言葉が意味する者たちは彼の知る限りでは二人しか存在しない。何時如何なる時も愛らしいさと狡賢さを兼ね備える相棒、そして天災が形を成した生きる伝説と謳われる親友。其れを理解した瞬間に不思議と彼は笑みが浮かんだ

 

「ん………なんだ?この気配は………へぇ?懐かしい(・・・・)気配だ」

 

(…………随分と馴染みのある気配じゃな……片方は忌々しいトカゲか………もう一つは……なんじゃと?あり得ぬ………この気配は!間違いない!些細な違いがあるにせよ、この気配は!!あの者が連れていた使い魔(ヴェルリア)の気配…よもや、転生しておったのか!?)

 

近付く二つの妖気(オーラ)に気付いたのは《智慧之王(ラファエル)》だけではない、〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟に参加していた魔王全員が感じ取った。その中でも二人の者が反応を示した。一人が赤い髪が印象的な魔王、その者はギィ・クリムゾン、最古にして最初の魔王と呼ばれる悪魔である

もう一人はメイド服の銀髪の女性、素性は不明だが彼女もまた気配に馴染みがあるようだ

 

「にゃーっはっはっはっ!」

 

「クァーハハハハハ!」

 

「その魅力は右肩上がりの爆上がり!我が可愛さの前には誰もが傅き、頭を垂れる!」

 

「我等が覇道の前に立ち塞がるモノはなんであろうと捻り潰す!今こそ我が威を示す時なり!」

 

「あたしたち(・・)!」

 

「我たち(・・)!」

 

「「主役の出番だ!!」」

 

亜空間の廻廊を突き破り、姿を見せたのは猫耳をぴこぴこと動かし、愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らす魔性の美少女。そして、黒いマントが印象的な金髪の男性の二名、突然の異分子に誰もが呆然とするが、彼だけは違った。その金色に染まった双眸で彼女たち(・・)を見詰め、口を開く

 

「待ちくたびれたぞ………まぁでもナイスタイミングだったよ。サンキューな、ネコリアにヴェルドラ」

 

「あら、やけに素直ね?まあその素直さに免じて今回はあたしを呼び出す事態に陥っていた事は言及しないあげるわね。でも二度目はないから、そのつもりでいるのよ」

 

「助けに来てくれたのに辛辣過ぎませんっ!?ネコちゃんのそういう所が嫌いだ」

 

「にゃふふ、あたしは好きよ?リムちゃんのちょっぴり拗ねやすい所とか」

 

「我はリムルに文句を言い来ただけだ………しかし、今は其れどころではないようだな」

 

頼もしい助っ人である相棒と親友の登場にリムルが礼を述べれば、二人は其々の反応を見せながら、状況を冷静に判断する

 

「ああ、ちょっと立て込んでるんだ。二人の力を貸してくれるか?」

 

「仕方にゃいわね。売られたケンカは買わなきゃよね」

 

「クァーハハハハハ!其れでこそネコだ!流石は我が親友!」

 

「そうと決まればだ………おい、クレイマン」

 

即座に申し出を受け入れた二人を両脇に侍らせ、リムルは件の相手であるクレイマンを呼ぶ。其れに気付き、シオンと戦っていた彼の動きが止まり、視線が動いた

 

「「「さぁ、お前の罪を数えろ」」」




ネコリアと妖狐、ヴェルドラとミリム、ベレッタと傀儡人形、ギンレイと雄牛……そして二人の魔王が遂に激突!!

NEXTヒント 解放之女王(リバティア)

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第七十三話 ケンカにはトラブルが付きものだから、大立ち回りを繰り広げちゃった

今回の見所!ネコちゃんが頑張る姿はトニカクカワイイ!!以上!


「「「さぁ、お前の罪を数えろ」」」

 

猫耳をぴこぴこと動かし、愛らしい鍵尻尾をふりふりと揺らす魔性の美少女、筋骨隆々な体格の褐色男性を両脇に侍らせた銀髪の青年は真っ直ぐと傀儡の魔王(クレイマン)を見据える

 

「ふむ…ならば、我は我が兄の一粒種(ミリム)の相手をするとしよう。ネコよ!お前はその狐を相手にしろ!獣の扱いには慣れておるだろう」

 

「あのねぇ……人をベテラン飼育員みたいに言わないでもらえる?向き不向きってモノがあるのを知らないの?」

 

「ふんっ……その向き不向きを容易く簡単にしてしまうのが貴様だろう?我が友(ネコリア)よ」

 

親友からの提案に呆れた様に苦笑しながらも、彼女は「そうね」と告げ、ランガと対峙していた狐の元に向かう。姿形から見れば、彼女が妹と呼ぶ白き狐と大差は無いが、精神年齢には僅かな幼さが垣間見える

 

「ランガ!あの狐についての情報をもらえる?全部じゃなくていいわ、理解してる範囲で構わないの」

 

「あの狐は自らの尻尾を従魔に変化させ、使役する事が出来るらしいのですが……何やら、先程から怯えているようでして…ネコリア様ならば、何かの策があると我が主人が仰っておられました」

 

「にゃるほど…支配されてるみたいね。あの子の気持ちが不安な色に染まっているのが見えるわ…《千里眼》改め《妖霊真眼》は《千里眼》と《視界共有》の他に他者の気持ちを可視化(・・・)させる事が出来る…不安なのね、貴女は。可哀想に……知らない場所で、無益な争いを強いられて……直ぐに解放するわ。ランガは従魔の相手をしなさい!仙術は前に教えたわね?」

 

「はっ!お任せください!仙法・黒雷嵐(こくらいらん)!!」

 

駆け出す彼女の呼び掛けに応えたランガは、高らかに返事を返し、瞬時に戦闘体制を取り、体内の魔素と空間に循環する自然エネルギーを組み合わせた雷の嵐を放ち、猿と兎の従魔を相手に素早い立ち回りを見せる

その隙を見逃さない彼女は従魔の間を潜り抜け、狐の眼前に迫る

 

「キュウ……」

 

「怯えなくていいわ。直ぐに解放してあげる………《解放之女王(リバティア)》」

 

怯え、震える狐の額に優しく触れたネコリアは操られた精神を解放する為に自らのユニークスキルである《解放之女王(リバティア)》を発動させた。その能力は元々は自分だけに有効であったが魔王への進化(ハーベストフェスティバル)を機に自分のみならず、他者への精神干渉系スキルの影響を無効化する事が可能となった。そして、このスキルにはもう一つの力があるのだが今は割愛させていただく

 

「名前は?」

 

「わっちは………九頭獣(ナインヘッド)でありんす。名前はまだありんせん」

 

優しく問い掛られ、一度は言葉に詰まるが直ぐに自らの種族名と名前が無い事を告げた

 

九頭獣(ナインヘッド)……もしかして……九尾の姫の片割れだったりする?白い狐のお姉さんとかいたり……」

 

「姉者を知ってるでありんすか!?」

 

九頭獣(ナインヘッド)、九尾の狐と呼ばれる種族に覚えがあるネコリアが妹分の存在を仄めかせば、狐が食い付く様に興味を示した

 

「にゃるほど……イヅナが探してた妹は貴女だったのね。良いわ、今日から貴女はあたしの配下よ……名は〝九魔羅(クマラ)〟」

 

刹那、名を与えられた狐基九魔羅(クマラ)に変化が現れる。体内にある魔素を大量に持っていかれ、クマラの尻尾は四本から九本に増え、名は体を表すの意味合い通りに九尾の狐に進化を遂げる

 

「ありがとうございます!ネコリア様!戴いた名に恥じぬように頑張るでありんす!」

 

「期待してるわよ?クマラ」

 

「流石はネコリア様!我が妹の主人に不可能はありませんな!」

 

「褒めすぎよ。それで……ギンレイはどうしてるかしら…」

 

自らの戦闘を終えたネコリアは分身であるギンレイが如何に立ち回るのかが気になり、視線を動かす

 

「何故だ……何故!猫如きに勝てない!!俺は牛だぞっ!?」

 

「猫を過小評価しないでいただきたい。私はギンレイ、妖霊仙猫にして〝覚醒魔王〟ネコリア=テンペスト様の御霊を分け与えられた分身体にして、我こそは〝迷宮妖精(ラビリンス)〟に仕えし、万物を貫く鉾也……牛風情に遅れは取りませんよ。仙法・変幻!」

 

雄牛の魔物を前に啖呵を切る姿は何時もの天然全開な姿とは掛け離れたギンレイ。本体にも似た魔性の笑みを浮かべ、両手をぱんっ、と打ち鳴らす。刹那、白銀の毛並みが特徴的なネコの姿が変化を遂げ、銀髪の髪を靡かせる美少女が姿を見せる

 

「ギンレイちゃんが変化したっ!!ちょっと!何があったのよさっ!」

 

「いやぁ〜…流石にわたしも驚きだ。同じ分身なのに仙法・変幻を使えるなんて…!わたしなんか《人化》のスキル便りなのに!贔屓だ!贔屓!」

 

「クマラ。あの二人を黙らせなさい、最初の仕事よ」

 

「分かったでありんす!狐火!」

 

「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!体が燃えるぅぅぅぅ!!」」

 

ギンレイの変化に主人のラミリス、同じ分身のネコツーが騒ぎ出すがネコリアに命令を下されたクマラの素早い対応により、彼女たちは体に火が点き、床を転げ回る

 

「光栄に思いなさいな、この姿を見せるのは貴方が初めてです。とは言え……直ぐに消えるので、見た事にはならないのですが……仙法・光弓(こうきゅう)!!」

 

僅か一瞬、その素早さは正に弓だけに光陰矢の如し。月日が瞬く間に過ぎ行くように雄牛の体を貫いた光の矢は静かに霧散していく

 

「な……何がどうなって…九頭獣(ナインヘッド)だけじゃなく、魔牛(バッファロー)まで……くっ!ビオーラ!ささっと来い!」

 

矢継ぎ早に減少していく戦力にクレイマンは底知れない恐怖を抱きながらも、残りの戦力である傀儡人形に呼び掛ける

 

ビオーラ(・・・・)?……ああ、コレの名前でしたか。中々の強さでしたし、多彩な攻撃手段には目を見張るモノがありました……それだけに残念でなりません。その(いずれ)が我の足元にも及ばなかったことが……この剣は戦利品に戴きます。ギンレイは興味深い素材を採取出来ましたか?」

 

「勿論ですとも、ベレッタさん。この角は武器に毛皮はラミリス様専用のコートもしくはマフラーにしようかと思います!」

 

「…………頑張ってください」

 

「はい!」

 

戦闘を終えるや否、何時もの安定した天然思考に戻った同僚にベレッタは諦めた様に労いの言葉を掛けた

 

「あの従者たち(・・)変な奴等だな、お前に似て」

 

「研究熱心なだけよ!あとギンレイちゃんは家庭的なのよさっ!」

 

外野で繰り広げられる会話等、クレイマンの耳には入らない。それは何故?戦況を見れば火を見るよりも明らかだ、連れてきた配下が一瞬の間に無力化されたのだ。此れを驚くなと言う方が無理な話だ

 

「これで手詰まりか?生憎と、俺の相棒たち(・・)に生半可な戦力を宛てがっても無駄だ。お前の計略は参謀長(ネコリア)の足元にすら及ばない……今度こそ、お前自身が戦うか?魔王クレイマン」

 

その言葉と共に、クレイマンの中にある枷が外れた。忘れていた、魔王としての在るべき姿を、上品に?優雅に?否、違う。魔王とは畏怖され、恐怖される魔の王。故に彼は思い出した

 

「我が名は魔王----否!〝喜狂の道化(クレイジーピエロ)〟クレイマン!」

 

名を名乗り、魔素に覆われた体は正に異形。そして、その顔に冠った仮面は正に〝喜狂の道化(クレイジーピエロ)〟、道化の魔王が其処には立っていた

 

「敬意を表し、俺も……いや…俺たち(・・)も名乗ろう。〝魔国連邦(テンペスト)国主〟リムル=テンペスト!」

 

「同じく〝魔国連邦(テンペスト)軍事司令部参謀長兼最高幹部〟ネコリア=テンペスト♪」

 

背中合わせで、佇む二人の魔人。その姿は正に二人で一人、誰もが認める二匹の魔物が魔王としての地位に登り詰めた事を示していた

 

「「ここからがハイライトだ」」




リムルとネコリア、クレイマン。激戦を繰り広げる三つ巴の勝負の先に待つのは破滅か?それとも……

NEXTヒント イヤなのだ

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第七十四話 マブダチを信じたら、次から次へと秘密が明るみになっちゃった

暫く振りです、更新再開は今日と決めていました!何故かって?一年前の今日にも言いましたが猫の日だからですよ!

エンカ「わふっ!またネコリア様の誕生日か!」

スイヒョウ「感動ですわ!ネコリア様の御生誕を御祝いできるだなんて!」

ネコリア「だから、別に誕生日じゃにゃいわよ」


「「ここからがハイライトだ」」

 

二人で一人の魔王、片方は叡智と強さを兼ね備えた妖を束ねる若き王。その美しいまでの銀髪と黄金の眼は彼を語る上では欠かせない特徴の一つだ。そして、その片割れとも呼ぶべきが見目麗しく、可憐な美少女。艶やかな黒髪と美しくも煌びやかな黄金の眼は彼女を語る中でも代表的なモノであるが、何よりも特徴的なのが、ぴこぴこと動く猫耳、愛らしいの一言が似合うふりふりと揺れる鍵尻尾。その二つこそが彼女のアイデンティティにして、最大の魅力である

 

「久しく……忘れていたよ……この感情を……自らの手で敵を捻り潰したいという高揚感をな!!」

 

「いいわ……その欲望に溢れた瞳……あたしはそれが見たかったのよ!!さあ、死合いましょう!クレイマン!アンタの欲望の果てを見せてみなさい!にゃーっはっはっはっ!!」

 

地を蹴り、背中から生えた無数の腕に持った武器を握り締めたクレイマンを前に果てのない欲望を感じた彼女は高笑いと共に誰よりも早くに飛び出した。まるで、水を得た魚のように…否、自由を得た野良猫のように彼女は心からの喜びを言葉にし、声に出す

 

「クレイマン。俺の相棒(ネコリア)とダンスに興じてくれている所に水を差すようで悪いが、〝コレ(・・)〟が何かを理解出来るか?」

 

優雅に立ち回る相棒と攻防戦を繰り広げるクレイマンにリムルが水晶を手に声を掛けた。無論、其れが何か等は彼に皆目見当が付く筈が無い。其れでも確認したのには理由がある、其処に映し出される映像が彼に関係することである事に他ならないからである

 

「この水晶はある筋を使い、入手した記録媒体だ。ネコリア本人又は部下たちが見聞きした全てが映し出される。見せてやるよ……裏で画策していたつもりのお前が踊り狂う哀れな姿をな」

 

「我が実力を前にハッタリで切り抜けるつもりか?なんと、愚かな……世迷言はよしてもらおう。私が画策?それに踊り狂うだと?何を言っているかは分からないが、なかなかどうして、スライムらしい小賢しい手だ!その紛い物の記録媒体も其処の如何にも小狡いネコが用意した偽物(フェイク)だろう………これで終わりだ」

 

映し出された映像を前にしても、クレイマンは顔色を変えようとしない。理解していないのだろう、将又、その逆かは彼のみぞ知る事は火を見るよりも明らかだ。傀儡とする為に彼は放つ、黒き糸を、自分を前に優越感に浸る魔人を操るのは、如何なる感情にも変え難い筈……彼は、彼だけは、そう思っていた

 

「なぁ〜んだ……折角の魔王にゃんてステキネーミングに期待してたのに……期待外れ(・・・・)だったわね」

 

「全くだな。俺たち(・・)を葬りたいなら、軍隊の一つでも連れて来るんだったな」

 

黒い糸繭から姿を見せたのは無傷(・・)の若き王と彼の右腕。動きを封じた筈の魔人たち(・・)、傀儡となる筈だった者たち(・・)が其処には立っていた

 

「…………な、何故だ!?太古の魔王さえも抗えなかった究極の呪法だぞっ!?なのに、何故!!貴様等には効かないっ!!!」

 

状況を理解出来ないクレイマンは有り得ない光景に驚きを隠せない。知らない、知らなかった、聞いたこともなければ、感じたこともない。そして、彼は第二の驚きを与えられる

 

「かーめー……ドー……ラー………波ーーーーーーーーーーッ!!!」

 

「おお!アレは!某有名漫画の代表必殺!!流石はヴェルドラだ、分かってるじゃないか」

 

「ネコリア様。どうして、男はああいうのが好きなの?」

 

「バカだからよ」

 

某有名漫画の代表技を放つヴェルドラに瞳を輝かせるリムル。其れとは裏腹に冷ややかな視線のネコツーが問い掛ければ、これまた冷淡なネコリアも冷ややかな答えを放つ

 

「な、何者だ!?なんなのだ!あの桁外れの力は……!」

 

知らない誰か、最強を前にクレイマンは両眼を見開く。未だかつてない桁外れの生物を前に彼の驚きは頂点に達していた

 

「なんだ、出てきた瞬間を見てなかったのか?そりゃあもう盛大にネコリアと登場したのに…」

 

「あたしの三百年来の親友にして、リムルの友だち………ヴェルドラ(・・・・・)よ」

 

告げられた名は、《天災》と揶揄される程に現存する生物の中でも伝説と謳われるこの世界に四体のみ存在する竜種の一角、〝暴風竜〟の名。しかしながら、彼には秘策があった

 

「……ミリムよ!〝狂化暴走(スタンピード)〟しなさい!!この場にいる者全員を殺しつくすのです!!」

 

秘策、其れは竜種と対等に渡り合える存在。〝破壊の暴君(ミリム・ナーヴァ)〟を無差別攻撃状態にする〝狂化暴走(スタンピード)〟を発動させることだ。だが、彼女だけは知っていた。その金色に染まった双眸で彼を見詰め、口を開く

 

「ミリムちゃん。御芝居は終わりよ(・・・・・・・・)

 

「わーっはっはっは!やはり、ネコにはバレていたか!流石はわたしのマブダチだな!リムルは気付いていなかったようだがな!」

 

ネコリアの魔性の笑みに、全てを明るみに出す時が来たと言わんばかりにミリムは高らかに笑う

 

「えっ……何を言う!俺も気付いてたぞ!ああ!気付いてましたよ!そりゃあもうバッチリと!」

 

自分だけが除け者にされていた事に苛立ったリムルは捲し立てるように早口で取り繕うが、ジト目のネコリアはミリムに視線を向ける

 

「ネコ。リムルはわたしよりもフレイに気を取られたぞ」

 

「ふぅん?大事な作戦中にまーたやらしいことを考えてたんだぁ?にゃんか、言い訳は?エッチなスライムくん」

 

「嘘です、すみません。気付いてませんでした」

 

確かな筋(ミリム)からの情報に相棒の爪がしゃきんと音を立てた。刹那、変わり身の速いリムルは伝家の宝刀(土下座)を繰り出す

 

「な、何がどうなって………確かに私の支配下にあった筈だ!何故!?どうやって、支配の宝珠(オーブオブドミネイト)を破ったというのだ!!」

 

「〝コレ(・・)〟のことか?呪法が成功したように見せねば用心深いお前は信用しないだろう?だから、態と受けたのだ」

 

「それにアンタは随分と前から化かされてたのよ?気付かない?此処にアンタの味方なんか居ないわ」

 

有り得ない、操る力の高さには誰よりも定評のあった自分に操れない力が在るなど考えたこともなかった。何よりも、黒い猫の魔人が放った衝撃の一言、化かされていた、確かに彼女はその様に口にしたのだ

 

「全く……驚きだよなぁ?ネコリアの策略には…流石に()も肝を冷やしたぜ。なぁ……クレイマンよ」

 

「ば、バカな……!何故だ!何故、お前が!?生きている(・・・・・)……!!〝獅子王(カリオン)〟!!」

 

驚きは留まらない、其処に居ない筈の第三者。死んだと聞かされていたカリオンの姿が其処にあったのだ。聞いていた報告と、噛み合わない現実にクレイマンは驚きを隠せずにフレイに視線を向けた。最後の希望である彼女に助けを求めた

 

「私は貴方の味方になったつもりはないわよ?何を勘違いしてるのかは知らないけど、ミリムの頼みを優先しただけよ。預かってたモノを返すわ」

 

「ありがとうなのだ!フレイ!やっぱり、わたしはコレが一番なのだ!」

 

希望は容易く打ち砕かれ、ミリムに何かを手渡すフレイ。味方等は存在しない、踊らされていたのは自分だったとクレイマンは今しがた気付いた

 

「てか……ミリムちゃんの演技に物申したいんだけど……ネコツーを通して見てたけど、ガッツポーズはにゃいわよ」

 

「ネコリアの言う通りね。クレイマンに見られていたらどうするつもりだったの?」

 

「しょうがなかろう?リムルがわたしのために怒っているのがわかって嬉しかったのだ」

 

「あら、愛さてるわね?リムちゃんは。で?何人くらいが気付いたの?リスちゃんは有り得ないけど」

 

「ちょっと!ネコ!何気にアタシをディスるんじゃないのよさっ!!」

 

「にゃに?気付いてすらなかったクセにあたしに意見するの?可愛いあたしに」

 

「上等よ!……可愛さ三本勝負なのよさっ!ネコ!」

 

「可愛さ三本勝負だと…!わたしとフレイも混ぜるのだっ!」

 

「私はパス」

 

「にゃっーはっはっはっ!!!受けて立とうじゃない!あたしの可愛さを思い知らせてやるわっ!あたしが可愛さNo.1よ!!」

 

「やめんかっ!!!」

 

売り言葉に買い言葉、何方が可愛いをはっきりとさせる為に一触即発する三人の間に入ったリムルが物理的な突っ込みという名の拳骨を放つ

 

「リムちゃんが殴った!」

 

「暴力反対!」

 

「痛いのだ!」

 

「おだまり!大事な時にアホなことすんな!」

 

抗議するネコリアとラミリス、ミリムを叱り付け、彼女たちの喧嘩をやめさせるが三人寄れば姦しいを体現した彼女等は抗議を始める

 

「全く……無事で安心したよ、カリオン。貴方の配下は一時的に俺の管轄下にあるが彼等は貴方の帰還を心待ちにしている」

 

「砂かけちゃえ!」

 

「バーカバーカ!リムルのバーカ!」

 

「エッチなのだ!」

 

「ネコツー、ギンレイ、ベレッタ。三人を摘み出せ」

 

気を取り直し、カリオンに話しかけたリムルは背後で砂をかける相棒と親友たち。その様子に振り返る素振りも見せずに彼女たちの副官である配下たちと分身に命を降す

 

「大人しくしよっか?ネコリア様。スイヒョウちゃんから、お魚を預かってるよ」

 

「出来るわね……ネコツー。流石はあたしの分身!」

 

「ミリム様にはクッキーをあげますね」

 

「おお!ウマーなモノは大歓迎だ!ありがとうなのだ!ギンレイ!」

 

「ラミリス様、ほらこの武器とか素晴らしいですよ」

 

「観る目があるわね!流石はベレッタちゃん!」

 

その光景にクレイマンは全てを悟った。自らの過ちを、失敗を、友に言われたことを聞いていればと素直に後悔していた。それでも彼には退けない理由があった

 

(…目標はあの方と出会った時から決まっていた。君たちから信頼されて任された魔王という役目なのに、私は力に拘りすぎた。自分に足りないものを埋めねばならないと思っていた。真なる魔王など覚醒しなくてもいい、今だけでいい。ラプラス、フットマン、ティア、カザリーム様……私に力を………!!)

 

刹那、世界の言葉が響き渡る。そして、クレイマンを中心に渦巻いた魔素は彼を呑み込み、その姿を更に異形に変化させていく、其れ即ち真の魔王、〝覚醒魔王〟也

 

参謀長(ネコリア)。最後の仕事だ」

 

「お任せを……魔王陛下(リムル様)。このネコリア=テンペストが幕を降ろしてあげるわ、覚悟しなさい」

 




真なる魔王に覚醒を果たしたクレイマン、それを迎え討つは我らが可愛い参謀長!!そして、全てが終わりを告げる時、世界は新時代を迎える!!

NEXTヒント 八人の魔王

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第七十五話 相棒と一緒に魔王を倒したら、魔王の一角に勧誘されちゃった

今回の見所!ネコちゃんはお知り合いがたくさんいらっしゃっる!以上!


参謀長(ネコリア)。最後の仕事だ」

 

名を呼ばれた瞬間、先程までの巫山戯た態度が嘘の様に彼女の纏う空気が一変した

 

「お任せを……魔王陛下(リムル様)。このネコリア=テンペストが幕を降ろしてあげるわ、覚悟しなさい」

 

魔性の笑みを浮かべ、美しくも艶やかな黒髪を掻き上げた彼女は相棒にして主君でもある魔王(リムル)の命に従い、眼前の新たなる〝覚醒魔王〟足るクレイマンに視線を向け、啖呵を切る

 

「見よっ!私は……私は遂に!力を手に入れたぞっ!!ハハハハハハハッ!ハアーッハハハハハハ!」

 

「終わった?」

 

「……………は?」

 

捲し立てるかの様に一方的に口を開くクレイマン。しかし、返ってきたのは予想外の反応、その魔性の笑みで笑い掛ける彼女は軽く欠伸をしてみせる

 

「聞こえてなかったなら、もう一度だけ言ってあげる……百済ない話(・・・・・)は終わったって聞いたのよ」

 

「百済ないだと?私の話が百済ない?今そう言ったのか?お前は」

 

「あら、気を悪くさせたかしら?でもね……戦いに言葉は要らない……違う?クレイマン」

 

「良いだろう……ならば、小細工は無しだ…喰らうがいい……この私の最強の奥義を!龍脈破壊砲(デモンブラスター)!!!」

 

眼前の敵を瞬間的に倒すべき存在であると認識したクレイマンは彼女目掛け魔力砲を撃ち出す。最強奥義と呼ぶだけに威力は計り知れず、形を龍に変えた魔力砲を前に彼女は魔性の笑みを崩さない

 

呪法(じゅほう)養命樹(ようめいじゅ)!!!」

 

魔力砲を前には、ネコリアが両手を広げ、勢いよく打ち鳴らすと地面から急速に生えた木が禍々しい養命樹に姿を変え、魔力砲を喰らう

 

「これでも……勝てないというのか!!なんだ!なんなんだ……お前は!!」

 

「なにって言われても何処にでもいる可愛いネコに決まってんじゃないの。見てわかんにゃい?」

 

「ちょっとおバカだけどな」

 

「それから自意識過剰なのだ」

 

「それと寝坊助なのよさ」

 

「極めつけにセンスが皆無である」

 

「引っ掻かれたいの?四馬鹿」

 

話の腰を折り出す四人の友人たちにしゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった

 

「さてとクレイマン。お前の最強奥義は俺の強くて可愛い相棒ちゃんには通じないのを理解してもらえたか?そうそう、俺に同じ技を撃っても無駄だからな?ネコリアに出来る事は俺にも出来る。それを踏まえた上で今一度だけ問おう……お前の知り得る情報全てを話せ。素直に話せば苦痛を与えずに()にしてやると約束してやる」

 

「まぁ怖いわねー」

 

「ネコリアがな」

 

「あたし任せかいっ!!!」

 

脅しを掛けるリムルが放ったまさかの落ち発言にネコリアはくわっと両眼を見開きながら、吠えた

 

「ふふふふふっ!私は妖死族(デスマン)!!例え、殺されようとも何度でも復活するっ!貴様たち(・・)は永劫、この私に怯えて暮ら---」

 

クレイマンが言葉を最後まで言い切る事はなかった。それは何故か?リムルに顔面を殴られ、極め付けにはネコリアの踵落としが頭上に振り下ろされたのである

 

(ほう……思考加速を施すと同時に自然エネルギーでクレイマンを縛り付けたか…やるなぁ?彼奴等)

 

その様子を傍観していた赤髪の青年は二人の魔人を観察しながら、意味深に笑う。彼の名は〝ギィ・クリムゾン〟、十大魔王が一人にして最凶の魔王である

 

「クレイマン…之が最後(・・)よ」

 

「黒幕は誰だ?」

 

「わ………私が仲間を………………ましてや、依頼人たちを裏切ることなどない。それが……それだけが!中庸道化連の絶対のルールなのだ!!」

 

最後の問い即ち最期の忠告。其れに対する解答は求めていたモノではなかった。失ったモノは数あれど、同じ志を抱く仲間に対する情だけは失っていないクレイマンは守り通すべき絶対的な決まりを高らかに叫ぶ

 

「さて……此処からは選手交代だ。魔王を名乗る以上、自分の席は自分で用意しないとだからな。だから、ネコリア。俺に譲ってくれるか?」

 

「逆に断るにゃんて選択肢があるの?リムル。アンタの欲はあたしの欲、アンタの業はあたしの業、アンタのモノはあたしのモノ……何時もそうやって、アンタとあたし(二人)は災厄を退け、自らの手で全てを薙ぎ払ってきた………好きしなさい、リムルのやりたいように(何時も通りに)ね」

 

「感謝する……流石は俺の相棒ちゃんだな」

 

金色の双眸が重なり合い、笑い合う二人の魔人(リムルとネコリア)。長いようで短くもある二年の月日を過ごした彼等の間に最早、会話等は必要皆無。視線を合わせるだけで、互いの思考は伝わる。故に彼女(ネコリア)は代名詞である魔性の笑みで(リムル)に笑い掛けた

 

「さて……相棒(ネコリア)に成り代わり、俺は今からクレイマンを処刑するけど、反対の人はいるのかな?」

 

「好きにしろ」

 

新たなる魔王(リムル)からの問いに最古の魔王(赤き悪魔)は無慈悲な答えを返す。彼からすれば、誰が魔王になろうとも関係無ければ、咎める理由等も有りはしない。其れ即ち〝喜狂の道化(クレイマン)〟の味方は存在しないという意味である

 

(大丈夫です………必ず戻ります………暫しのお待ちを……我が王(カザリーム様)……)

 

「忘れてたけど……アンタが復活するのは不可能よ?」

 

「…………は?」

 

思惑があったクレイマンの思考は見目麗しい猫耳美少女の一言で打ち砕かれた。何を言われたかも理解出来ずに素っ頓狂な声を挙げた道化(クレイマン)を前に、彼女(ネコリア)は魔性の笑みを浮かべていた

 

「お前の考えは既に把握していた。俺は死者蘇生を可能にする凡ゆる可能性を検索したんだ、何度も何度もな」

 

「そこ、あたしたち(・・)の間違いでしょ。アンタの計略に奪われたモノを取り戻す為にあたしたち(・・)は魔王になったの。その報いを受けなさい……クレイマン」

 

「終わりだ……暴食之王(ベルゼビュート)

 

〝覚醒魔王〟に至る過程で、リムルが新たに会得したユニークスキル《暴食之王(ベルゼビュート)》。其れは彼の専売特許が進化を果たした最強の力。成す術も無く呑まれ逝くクレイマン、彼は何を間違え、何処で道を踏み外したのだろう。今となっては、其れは誰にも理解不能である

 

(……………ラプラス、キミの忠告通り……大人しくしていれば良かったよ……本当に………キミはいつも正しいな…………)

 

「次に会う時は後悔しない道を選ぶのね……永遠に眠りなさい…〝喜狂の道化(クレイマン)〟」

 

永遠の眠り()〟に誘われる魂の声に耳を傾けながら、ゆっくりと瞳を閉じたネコリアは目の前に来たる死を受け入れ、慈悲深い言葉を紡ぐ。彼女也の強敵と認めた上での送る言葉、その〝永遠の眠り()〟が誰からも望まれず、知られていないモノであっても強敵を前に彼女は言葉を紡いだ

 

「見事だ、お前が今日から魔王を名乗る事を許そう。それでだ……お前は如何する?お前の働きも評価に値する、故に望めべば魔王を名乗る事を許そう」

 

リムルの働きに満足したギィは彼に賞賛を送りながら、もう一人の魔人に問う。すると、彼女は優しく笑う

 

「素敵な御誘いはありがたいけど……あたしは魔王を名乗るつもりはないわ。ギィ・クリムゾン……いえ、こう呼ぶべき?〝原初の赤(ルージュ)〟」

 

「転生を繰り返しても相変わらずの怠惰なネコだな?お前は……ヴェルリア……いや、今はネコリアだったか。良いだろう、お前の好きにしろ」

 

「ありがと」

 

「ゔぇっ!?ネコがヴェルリア!?ちょっとちょっと!それ聞いてないのよさっ!アタシ!!」

 

「なんか有名人?」

 

「聞いたことがある……興味は無かったがな」

 

「確か…三百年以上前に名を馳せた黒い猫の魔獣がそのような名前だったな」

 

〝ヴェルリア〟、前世よりも遥か昔に彼女が生きていていた頃の名前。その名を知るギィが昔を懐かしむのに対し、ラミリスは驚愕し、魔王の一角であるディーノ並びにレオン、ダグリュールは其々の反応を見せる

 

「な……なにぃ!?ヴェルリア!?ヴェルリアだと!まさかネコがヴェルリアだったのかっ!!」

 

「クァーハハハハハ!!サプライズは大成功であるな!ネコよっ!皆、お前がヴェルリアの転生体であるとは気付いておらなかったようだぞっ!」

 

「あら、ヴェルちゃん。体臭がしないから気付かなかったわ」

 

「おい、妖気(オーラ)を体臭とか言うな。我が臭いみたいだろう」

 

「実際、鼻曲がりそうにゃんだけど」

 

「どれだけ臭いのだっ!!我はっ!?」

 

「確かに臭いのだ!ヴェルドラ!さては風呂に入ってないのではないか?ダメだぞ!」

 

「師匠……流石にお風呂は入らないとダメだと思うのよさ」

 

「お前たちまでもかっ!!」

 

息の良さを披露するネコリア、ミリム、ラミリスの三人娘。最早、彼女たちが集まれば姦しいというよりも喧しいの間違いである

 

(ネコリア……記憶の共有があるとはいえ、私の存在を明かすのはやり過ぎよ)

 

(そうは言ってもね、リアねーさん。隠すだけ無駄よ)

 

(そうだよー、今更じゃん?それに見覚えある人がいるよー!ほら!アソコに!)

 

頭に響く別人格たちの声に耳を傾けていた彼女は猫耳をぴこぴこと動かし、前世の人格である亜結が興味を示した方向に視線を向ける

 

「私に何か御用ですか?私は魔王ヴァレンタイン様の忠実なる侍女に過ぎませんが」

 

「そうね…」

 

視線に気付いた銀髪のメイドの言葉に、ネコリアは苦笑気味に返事を返す。何やら理由がある様だが今は言及するべきではないと悟ったようだ

 

「おいミルスよ!久方振りに会う我が友基ヴェルリアの転生体であるネコを前にその態度は無いのでないか?見てみろ、我が友の尻尾が下に下がっておるではないか」

 

「おい!ダメだぞ!ヴェルドラ!〝 バレンタイン(・・・・・・)〟は、メイドに化けて正体を隠しているつもりなのだ!」

 

「なにぃ!?」

 

「はぁ……バカ二人がごめんね?〝 ルミナス(・・・・)〟…」

 

メイドに呼び掛けるヴェルドラ、更に追い討ちを掛けるミリムの発言にメイドは青筋を浮かべ、呆れるネコリアに目配せする

 

「貴様が謝る必要等はない……全てはその忌々しい邪竜が悪い……久方振りじゃな、ヴェルリア……いや、今はネコリアか。お前に会う日を待ち侘びておったわ、このバカモノめが」

 

名を呼ばれた瞬間、メイド基〝 ルミナス(・・・・)〟の服が給仕服から黒いシックなドレスに変化し、双色の眼がぎらりと光る

 

「ホントに……この女だけは…三百年以上振りに会う相手にも容赦ないわねぇ……」

 

「ネコちゃんってマジでおいくつ?」

 

「引きちぎるわよ」

 

「なにをっ!?」

 

今日も今日とて、謎の文句にリムルの突っ込みが冴え渡るのであった

 




集いし、八人の魔王。後にその名を馳せる彼等は新たな呼び名と共に動き出す。各々の相棒並びに配下たちと共に!

NEXTヒント 八つの星

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