なんか、変な奴と暮らしてたら変な組織に人理を救えと言われて連れ去られた件。 (にわかによる妄想劇場)
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プロローグ

「おはようございます、マスター」

「あぁ、おはよう。オルト」

 

 朝日が遮光カーテンの隙間から差し込む中、目覚まし時計のアラームで目を覚ました俺はモゾモゾと動くと同居人でありながら異形種であるオルトが起こしに来た。

 最初に彼女と会った時、なんか人間の常識なんて意に介さないやべー奴が来たなぁと率直に思ったのだが、話してわかったのはただ単に常識を理解していないだけの知的生命体だったので一緒に生活しながら教えていった。

 とは言え、生活をし始めた当初は赤ん坊の様に何も知らなかったので目が離せずに色々と苦労したのだが、それらを乗り越えた今では普通に生活できる程にまで常識を身に付けてくれたので、それまでは独身生活を送っていた俺からすれば大分助かっている。

 

 その為、彼女に起こされた俺はベッドから抜け出して歯磨き等を済ませてから朝食が置かれたテーブルの席に座った後、いただきますの挨拶をしてから食べ始めると彼女から話を切り出した。

 

「それで今日はどうするの?」

「消耗した分の物の買い出しをするだけだがどこか、行きたい所あるかい?」

「だったらこの映画を観に行きたい。予告編で気になってた新作が公開されてるし、その後で近くのゲーセンに行きたい」

「分かった。食べ終わった後で準備しよう」

 

 彼女が来る前だったら、株式や投資によって得た利益で底値で買った田舎の屋敷を改装して日用品や食料を配達してもらう引き篭もりの生活を送っていたが、来た後は教育をするついでに一緒に出歩いたりしていたので週に数回、軽自動車に乗って町に出る様になった。

 その為、日頃の行動範囲の広がりに喜びを感じながらどうやって彼女達との生活を送れるのかを考えていると彼女達が何かを感じ取った様だ。

 

「マスター、変な奴らが来る」

「どう言った連中?」

「なんか、武装してる。物理的に処して良い?」

「そう言う行動に出てからな。それまでは待機だ」

 

 その何かを理解したオルトが、物騒な事を言ってきたので暴走しそうな犬を宥める様に立ち上がった彼女を止めた。

 何しろ、彼女が来てから訳の分からない連中に俺自身が誘拐やら拷問やらを仕掛けられてきた為、少しでも敵意がある輩を探知して排除する行動に出ようとする程に過敏になっている。

 それだけ、彼女に取って俺と言う存在が必要不可欠だと言う事なのだがその理由を聞こうとすると、適当にはぐらかされているので彼女の様な強い奴が俺を必要とする理由が未だに分かっていない。

 

 その為、荒ぶる彼女達を宥めながら来客を待った。




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ORTのイメージ (2)

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第1章 特異点F
第1話 カルデアに来た


かなりのガバガバ設定が出ると思います。


 殺気を出しまくるオルトを宥めつつ、標高6,000メートルの冬山に入り口がある長ったらしい名前の研究所に連れられた俺らは、指紋や声帯を始めとした人間としての情報を徹底的に調べられた後で結果が出るまで2人部屋に居ろとのお達しが来たので大人しく居る事にした。

 オルトは予定を潰された挙句、今の状況に不満げで苛立ちの余りに部屋の中を歩き回っているのだが、俺としては引き篭もり生活を送っていたとは言っても彼女が暴れて周りの人に迷惑をかける方が嫌だったので、彼らが本拠地としている研究所に行く事に素直に従った。

 何しろ、車で自宅にやってきた黒スーツの人達の他に距離はバラバラだった物の何人もの人間が俺達を見張っている事を探知できたので、余計な騒動を起こして大揉めするリスクを考えたらそうするしかなかったしね。

 

 幸い、研究所に持っていける荷物をまとめる時間があったので必要な物をまとめるのと同時に、掃除や食料などの日持ちしない物を積極的に消費したりして当分の間は自宅に戻って来れなくても大丈夫な様にした。

 そして、2人部屋に通されてから暫くすると呼び出しを受けたのでやってきた職員に案内される形で所長室に入ると、10代半ばだと思われる美形の域に入るであろう少女が座っていて、対面する形で置かれた椅子に座る様に促されたのでオルトと共に座った。

 

「初めまして、オルガマリー・アニムスフィアよ。ここ、人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長をしているわ」

「初めまして、新倉 誠です。ただのボンクラからオルト(彼女)のマスター?になりました」

「粗方の事情は報告書で知ってるわ。ある日突然、やってきたって?」

「はい。個人のトレーダーとして稼いでいたんですが、ひょっこり現れまして」

「それで共同生活を始めたと」

 

 研究所(カルデア)の所長と名乗った少女、オルガマリー女史が色々と聞いてきたので正直に答えていくのだが最初に会った時はかなり大変だった。

 何しろ、人型の姿をしていた物のアニメを模したてあろう適当な顔をした球体関節人形だったので、現実における人間の顔を学習させる所から始まって言葉や料理、人体の構造からマナーと言ったありとあらゆる物を宇宙人に教える必要があったので、赤ん坊に付きっきりの母親の気持ちの一端を感じ取れた。

 しかも、彼女は宇宙人の中でもトップクラスの力を有している様で力の加減ができずに振り回した腕の指先が掠っただけで体が壁にめり込んだり、腕の骨やら肋骨やらが折れる事が何度もあり、挙げ句の果てにそれで10回以上は死にかける程の重傷を負ったりもした。

 

 彼女が俺の側に現れて、俺の事を第一に考えて治療に当たってくれなかったら既にくたばっていて墓の下か、大地の肥やしになっていただろうと言う事も含めて話すと、彼女は深くため息を吐いてからある事実を告げてきた。

 

「言っておくけどね。アンタ、そいつの事なんも分かってないわよ」

「あぁ、確かに。深く聞くのを躊躇ってたな」

「よくそれで生きてたわね。そいつ、究極の一(アルテミット・ワン)よ」

「アル………なんだって?」

「アルテミット・ワンよ。唯一最強の一体、原初の一にして単体で属する星の生命体全てを滅ぼす事ができる存在なの」

本気(マジ)で?」

「大真面目に言ってるわ。正直、私だって1人で対面したくないもの」

 

 話の内容はこうだ。

 オルトはローマ字でORTと書き、西暦以前に地球外から南米に飛来した輝ける唯一の存在であり、16世紀には魔術師の中でも最強クラスのパーティを組んで探査に当たったものの1人を残して全滅した挙句、その1人も様子見程度に留めた方が良いと言い残してくたばったらしい。

 しかも、ORTの監視を務める魔術師曰く、ORTに対処できるのは後100年と言う時間が必要な程に強いとの事なのでオルトに聞いてみると事実との事だった。

 

 何度も死にかけたのにも関わらず、人類の手に余る存在であるオルトと5年も同居できたなと思いながら、オルガマリー女史の話を聞くと2つの道を示された。

 1つ目は、監視の目が付きながらもカルデアに来る前の生活に戻る道であり、カルデアがこれから行う仕事とは関係なく、それまでの生活に戻れる保証をしてくれるそうだ。

 2つ目は、それまでの生活から一変するがカルデアが行う仕事である人類社会の存続を目的とした業務の一端を担う役割を与えられ、その間に同居人であるオルトが安全な存在である事を証明する道だ。

 

 正直に言って、元の生活に戻れる道に強く惹かれたのでオルトを見ると能面の様に表情が削ぎ落とされた様な顔をしていたので、1つ目の道を選ぶと速攻で彼女に殺されるだろうなぁと推測して渋々ではあるが2つ目の道を選んだ。

 俺個人としては、一般的な庶民として普通の生活を送れれば問題ないのだが宇宙からの来訪者として、地球の文化を楽しんでいるオルトが絡んでくるとそうも言ってられなくなる。

 何しろ、想像を絶する程の長寿命と高火力を持つ彼女からすれば人間の一生なんてあっという間だろうが、その間はずっと監視の目が付くのは歯牙にも掛けないだろうが目障りなんだろう。

 

 彼女にとって監視とは、休暇中に仕事が立て続けに舞い込んできて休暇が潰れる様なものであり、俺と言うストッパーがいなければこのカルデアすらも破壊し尽くしていたと思う。

 その為、2つ目の道を選ぶと息を吐いてから俺の腕に抱きついて来たので自由に動かせるもう片方の腕で彼女の頭を撫でると何故か、オルガマリー女史が額に青筋を立てながら皮肉を言ってきた。

 

「ど素人なのに良い身分ね」

「生憎、貴女方の様に魔法に精通していない庶民なもんでね。いくら、コイツの危険性を説明されても実感が湧かない」

「今だから言っておくけどね。ソイツは猫を被った化け物なの! だからいつ寝首を掻かれても知らないんだからね!」

「忠告、ありがとうございます」

「ふん!」

 

 どうやら、真面目な話をしているのにイチャつき始めたのが面白く思わなかった様なので、素直に忠告を受け取っておくと顏を背けたのでベタなツンデレ頂きましたと思いながら細々とした話をしてから所長室を出た。

 

「だけど良かったの? 元の生活に戻らなくて」

「可能なら戻りたかったさ。だけど、監視付きの生活なんて君が嫌そうだったからねぇ。安全だと思われる様に行動するまでさ」

「そう。じゃあ、愛し合いましょうか」

「君とヤるとこってり搾られるんだよなぁ。ヤりたいけどさ」

 

 そして、一定の距離を歩いた後でオルトがここで生活する理由を聞いてきたので説明すると彼女は満面の笑みを浮かべながら、俺を割り当てられた部屋に引き摺り始めたので抵抗にならない抵抗をしながら駄弁る事にした。

 5年にも及ぶ同居生活で、オルトが理解の範疇を超えた能力を持っている事は察していたし、何かしらの怪我を負う度に治療と称した肉体改造を彼女から受けていたのでそこそこ強くなっていて、その気になれば並大抵の人間の力ではその場から一歩も動かない様にできる程に強くなった。

 そんな俺の抵抗を、物ともしないオルトの強さに惚れてここまでやってこれたのだが、こんな所でその強さを間近で拝めるとはこの時は少しも考えていなかったのである。



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第2話 火災と爆発

 オルガマリー女史を始めとした魔術師達に請われ、カルデアに来てからはオルトと同居していた事に驚かれた物のそこそこ楽しかった。

 レフ教授からは、魔術に関する基本的な知識を教えてもらい、キリシュタリアって言う金髪ロングの気さくな兄さんとは俺ができる事で話し合い、ベリルって言う胡散臭い眼鏡のあんちゃんとは下世話な話で笑い合い、カドックと言うネガティブ思考な兄さんとは音楽で語り合い、オフェリアと言う眼帯を付けた姉ちゃんとはサーヴァントに関する話を聞かせてもらい、読書好きなお姉さんである芥さんとはおすすめの本を紹介してもらい、オネェなぺぺさんとはカルデアでの生活の仕方を学んだ。

 デイビットさんだけは何故か、俺とは関わらない様にしていたのでちゃんと話せなかった物の「まぁ、がんばれ」との応援は貰えたのでそれでよしとするが。

 

 そんな訳で、カルデアに来てからの3ヶ月は休む暇もないままに慌ただしく過ぎ去ったのだが、人理焼却から未来を守る為に集められた人達への説明会が行われる日は彼らを驚かせない為に非番になっていたのだが異変が発生した。

 

   ? 電気が消えた?」

「ふむ、これはこれで面白くなりそうだぞ?」

「それってどう言う   

 

 通常なら、スイッチを押さなければ消える事のない照明が消えた事によって読んでいた本から目を離して、オルトを見ると彼女は含みを持った笑みを浮かべていたので聞こうとした瞬間にけたたましいサイレンが鳴った。

 それと同時に、緊急のアナウンスが入って中央管制室で火災が発生した事と脱出用のゲートが指定されたので、必要な物を持って中央管制室へと向かった。

 カルデアの職員としては新参者だが、人理を守ると言う仕事の一端を担う人間としてカルデアスの火を消す訳にはいかないので、中央管制室に行けば何かできるかもしれない。

 

「行くよ、オルト」

「逃げなくて良いの?」

「俺はもう、()()()()()じゃねぇからな。できる事なら可能な限り、するつもりさ」

「なら従うわ」

 

 その為、自室から出てから中央管制室に向かうとオルトが面白そうに聞いてきたので走りながら答えると満面の笑みでついて来てくれた。

 

「ロマニ! 状況はどうだ?」

「生存者はいない! 人為的な破壊工作で爆発されたけど、カルデアスは無事だ!」

「動力は?」

「予備電源への切り替えが必要になる。僕はそれをするつもりだ」

「分かった。改めて管制室から生存者がいないかを確認してから一旦、脱出するぞ?」

「分かった!」

 

 中央管制室には、地球を模した巨大な球体があってその変化を見て将来的に発生するであろう人理焼却を回避するのがカルデアの目的なのだが、爆発と火災によって管制室の内部は悲惨な状態になっていた。

 その為、先に来ていた2人以外は生存者はいねぇだろうなぁと思いながらロマニ・アーキマンに状況を聞くと、かなり酷いらしいので動力の切り替えは彼に任せると改めて管制室を見渡すともう1人の方である男が声を上げた。

 

「あっ! あそこ!」

「んっぅおう!? マシュ!?」

 

 彼が指差す方向に目を向けると、爆発に巻き込まれたであろうマシュが倒れた機材の山に仰向けで埋もれていたので、駆け寄ってどこから手を付ければ良いのかを考えると彼女がこちらに気が付いた様でか細い声で話しかけてきた。

 

「ま、こと、さん。せん、ぱい。早く、逃げて、ください」

「馬鹿な事言うんじゃない!」

「そうだよ! 今から助けるから!」

 

 その言葉に、俺らが返すと冷静に考えて手っ取り早く機材を退けるには人の手が足りないのでオルトに協力してもらう事にした。

 

「オルト! 瓦礫の山を退けろ!」

「別に良いけど、こっちは良いのかしら?」

「どれ   っ!?」

 

 それまで、近くに立って黙っていたオルトがカルデアスを指差したのでそっちを見ると普段は水色の輝きを放つカルデアスが、真っ赤になっていてプログラムが動くアナウンスを続けていた。

 そして、それに気を取られていると管制室の扉が閉じてしまい、レイシフトが発動するカウントダウンが始まった。

 

「こうなるんなら、早めに逃げとけば良かったぜ」

「そうしなかった結果がこれでしょう? まぁ、マスターが焼け死なない様に結界を張ってあげるけどね」

「あー、じゃあ彼らの分も頼むよ。目の前で死なねると目覚めが悪い」

「本当に危なくなったらね」

 

 オルトに任せれば、人間が作った建造物なんてすぐに破壊できるのでこの建物が単なる研究所であれば壁を破壊しながら脱出するし、ワープ技術を持っているのですぐに別の場所に行っただろう。

 しかし、カルデアが人類の未来の為に必要な場所である以上は下手に動けないのでレイシフトが終わるまで、その場で待機するとレイシフトが無事に起動した。

 

 

 

 

 

「………また火災かよ」

「なんて日だ!ね」

「笑えねぇ」

 

 レイシフトが発動する直前、オルトが腕を絡ませてきたので手を握ると握り返してきた為、その状態でレイシフトをするとどこかの建物の中にいたので出れる場所を探して出ると街が燃えている状態だった。

 まさか、最初のレイシフト先がここまで酷いとはねと思いながら持ち出した荷物の中で、腰に装備したLEDライト付きの警棒を模した物を両手で持った。

 これはオルトが近くにいない時、敵に襲われた際に使う様にと彼女から渡された物で普通の日常生活を送っている間は使う機会がなかったのだが今、使う羽目になるとは思っていなかったが四の五の言ってられないので鞘の近くにあるボタンを押しながら魔力を込めると、ライトの部分から刃渡が1メートル程の鉈みたいな刀身が現れたので長巻と呼ばれる刀剣の様に扱える。

 

 何故、こんなギミックを使えるのかと言うと死にかける程の重傷を受ける度にオルトから治療と称した強化パッチを何度も施された結果、仮面ライダーの様な改造人間になってしまった。

 改造の範囲は多岐に渡り、少なくとも人間が生み出した通常兵器の攻撃は物ともしない肉体強度にある程度の戦闘スキル、そして魔力路とそれを体全体に流す魔力回路を埋め込まれたので、改造人間みたいだなと思う様になった。

 そして、その事を知ったキリシュタリア達は俺の事をもっと前から知っていたらAチームの一員として迎え入れる事も視野に入れていた、と言われたので平凡な毎日を過ごしたい俺としては複雑な気分になった。

 

 とは言え、そう言った話は今更なので今は離れ離れになったあの男とマシュを探さないといけない。

 男の方はわからないが、マシュに関しては少なくとも昨日まで戦闘に関する能力がなかったと記憶しているので探し出さないと、面倒事に巻き込まれると自力で抜け出せないと判断したからだ。

 

「んじゃまぁ、彼らと合流しますかね」

「戦力として期待できない彼らと合流するの? 足手纏いにならないかしら?」

「だからだよ。行き先が決まった状態でレイシフトしたんだから近くにいる筈だし、あの状況だと1人でも多く生存者を確保したいだろうからね」

「ふぅん。まぁ良いわ、従うわ」

 

 正直、カルデア全体で発生したであろう火災といくつかの爆発によって多数の死傷者が出た筈だし、マスター候補の何人が生き残ったのかも分かった物じゃない。

 その為、あの2人を生きてカルデアに連れ戻す事によって多少は被害を抑えられるんじゃないかと思いつつ、オルトの探知能力でマシュ達と合流する事にした。



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第3話 合流

   ふぅ、ここら辺のエネミーは撃破したな」

「もうすぐよ、マスター」

「別に徒歩でも構わねぇんだが、オルトが俺を抱えてひとっ飛びしても良かったんじゃねぇかなぁと思う」

「折角の機会なんだから自分の実力を知っておいた方がいいわ。どうせ、特異点とかが発生したレイシフトするんだから」

「だな」

 

 街の至る所から、火の手が上がっていてデカい震災の後なんじゃないかと思うぐらいに酷い状況だが、普通の街と違うのは火災が多発しているのに人が一向に姿を現さないのに加えて、こちらとのコミュニケーションが取れない異形の存在が跋扈している事だ。

 その為、移動しながら戦闘経験を得る為に敵性生物と戦ってオルトが行なってくれた強化パッチの程を確かめているとロマニからの通信が入った。

 

『こちら管制室、聞こえるかい!?』

「こちらオルトチーム、感度良好だ」

『状況はどうなってる?』

「レイシフトに成功。先程から、エネミーとの戦闘を行なっているが異常なし。行き先は特異点Fって言ってたからここがそうなんだろうな」

『分かった。さっき、マシュ達と通信ができたから彼女らと合流してほしい。座標は随時送るから』

「分かった。それで合流後はどうすれば良い?」

 

 レイシフトする前、ロマニが予備電源の切り替えをするとかで中央管制室から出ていって、こうやって通信が出来ていると言う事は最悪の状況からは脱したんだろうな。未だ、悪い状況なのは変わりないだろうが。

 その為、一先ずはマシュ達に伝えた合流地点へ向かう事になったのでやや急ぎ足で向かうと女性の悲鳴が聞こえたので、駆け足で聞こえた方向に向かうとレイシフトの適性が皆無なオルガマリー女史がエネミーに襲われかけていた。

 

「どっせい!!」

「きゃあ!?」

 

 なんで所長がここにとか、何故にマシュの服装がエロくなってデカい盾を持っているのかとかの疑問は兎も角、目の前でツンデレ所長がエネミーに殺されるのは目覚めが悪いので持っていた長巻の一突きでエネミーを撃破すると、所長が驚いた拍子に腰を抜かして座り込んでしまった。

 

「驚かせてすみません、所長。要注意人物の誠です」

「お、驚かせるんじゃないわよ! 思わず、転けちゃったじゃない!」

「すみません、所長。立てますか?」

「勿論よ!」

 

 その為、驚かせちまったなと軽く反省しながら所長に挨拶すると安心した様子で俺に怒ってきたので謝りながら、彼女の手を取って立たせたのだがどこも怪我をしていない様に見える。

 まー、レイシフト適性がないのに無傷で居れる方がおかしいので後で詳細を聞くとして問題なのは巻き込まれた男とエロい服装になったマシュの方だろう。

 

「さて、キリキリ説明してもらおうか?」

「あっはい、そうですね。皆さんに聞いてもらいたいです」

 

 俺らが来た事で安心したのか、カッカする所長を片目にマシュへ説明を求めると最初から話をしてくれた。

 そもそも、サーヴァントってのはマスターがいないと存在できないのでカルデアは契約を果たせるマスターとして適性が高い奴を集めていたのだが、今回の破壊工作でどれだけのマスター候補が生き残っているのかがわからない。

 そして彼女自身、レイシフト前の爆発事故で機材の山に潰された事で下半身がダメになっていたらしく、緊急事態も相まって真名不明の英霊と融合して今の服装と共に擬似(デミ・)サーヴァントになり、男と手を握った際に契約を果たしたとの事だった。

 

 これが英霊召喚に似た奴か、と思いながらオルトを見たのだが彼女は関心がなさそうに遠くを見ていた。

 俺の場合、一応は彼女の同居人ではあるもののどちらかと言えば実験動物として彼女から色々と弄くり回されているから、マシュ達とは立場が逆だなぁと思いながら話を進めた。

 

「さて、カルデア側との通信を確立したいからベースキャンプを作りますが、構いませんね? 所長」

「勿論よ。それと、私が指示を出すから勝手に話を進めるんじゃないわよ!」

「おっと、失礼しました。所長」

「白々しく頭を下げるんじゃないわよ!」

 

 幸い、と言うよりは運良くと言って良い程、この場にいる5人はレイシフトをする為の装置に入っていなかったので、特異点Fである冬木市には俺ら以外にレイシフトした人はいないとの判断からベースキャンプを作って通信を確立する事にした。

 オルトがいれば、カルデア側との通信は難なく行えるのだが彼女ありきではいざと言う時に通信が出来なくなる場合がある為、誰でも通信ができる様に霊脈のターミナルにベースキャンプを作る必要がある。

 その為、サーヴァントとなったマシュにベースキャンプを作ってもらうとようやくカルデア側との通信が確立できたのだが、カルデアから来る報告は悲惨と言っても過言ではなかった。

 

 何しろ、カルデアの機能は8割も喪失している上に生き残っているカルデア職員はロマニを含めても20人でしかなく、キリシュタリア達も含めたマスター候補である47人もレイシフトに必要な装置に備わっている冷凍機能によって、延命措置をしないといけないレベルで重傷との事だった。

 

(待てよ? あのキリシュタリア達があんな破壊工作程度の間抜けな事で死にかけるか? カドックなんかは兎も角、魔術師としてトップクラスで優秀な彼らが? 物語だと自分の死を偽装して目的を遂行する、なんて話はよくあるからぜってー彼らもやってるだろ。じゃなきゃ、人理焼却を防ごうなんて話を大真面目にやってないだろ)

 

 たった3ヶ月の期間で、互いに特殊な立ち位置だったのだがそれでもキリシュタリア達とは気心なりを多少、知っていると個人的に思っているのでロマニの話を聞いても信じる事はできなかった。

 とは言え、その事を指摘して優秀な彼らがやろうとしている事を台無しにできる程の度胸は俺にはないので、黙ってオルガマリー女史の話を聞いていると特異点Fの調査をすると言う方針で固まった様だ。

 俺自身、街で暮らしていたであろう人達が居ない代わりにエネミーが跋扈する様な状況に興味があるので、調査する事に賛成してオルガマリー達について行く事にした。

 

 

 

 

「しっかし、君は本当に何も知らないんだな」

「すんません。来たばかりなもので」

「まー、俺も似た様なもんだ。君より、3ヶ月程前に来たばかりで来た当初は先人達に色々と聞きまくった物だ」

「先人達って言うと………」

「今頃、冷凍睡眠の最中だろうけどね」

 

 実地調査を行なっている最中、マシュのマスターとなった男   藤丸 立香と話す機会があったので色々と話したのだが3ヶ月前の同じで、庶民としてごく一般的な生活を送る学生だったのだが適性があるとかで穴埋め要員としてきた結果、今の事件に巻き込まれた状態だった。

 全く、ど素人のペーペーにマスターをやらせる状況とか、戦争における末期前も良い所だと思いながら時折、現れるエネミーを撃破しながら炎上する街と化した原因を探る為に目星をつけた場所への移動中、ロマニからの通信が入った。

 

『サーヴァントが3騎、そっちに向かってる! 用意して!』

「了解した、ロマニ。マシュ、所長と彼を頼むよ」

「かしこまりました」

「オルト、手伝ってくれるかい?」

「相手にもよるわ。マスターで充分そうなら手、貸さないからね」

「………荷が重いぜ」

 

 エネミー相手であればある程度、強さが分かってきたので問題はないのだがサーヴァントともなれば単騎でも戦う事はできても、勝つ方法が思い付かない上に2騎に増えたのなら戦う事すら難しいだろう。

 何しろ、今の俺はエネミー相手に戦って勝てる程度に改造した人間であり、エネミーよりも遥かに格上なサーヴァント相手に戦う様な改造は受けていないからだ。

 とは言え、彼女からのオーダーに応えない訳にはいかないので移動中は刀身を仕舞っていた長巻を取り出して、刀身を展開して待ち構えると本当に2騎のサーヴァントがやってきた。



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第4話 遭遇

アンケートに協力して頂けると作者が泣いて喜びます。


「はぁ………はぁ………」

「どうかしら?」

「いや………キツすぎでしょ」

 

 サーヴァント3騎との戦闘で、俺は大した傷は負っていないものの姿が真っ黒な事からシャドウ・サーヴァントの方も大したダメージを入った様子がないので撃破は難しいんじゃないかと本気で思う様になっていた。

 何しろ、俺の長巻と相手の武器がぶつかり合ったり、躱し合ったりしながらの戦闘をある程度、続けているのだがこっちは疲れて肩で息をしている状態なのに相手は宝具を使わず、呼吸も荒げていないので単独では圧倒的にこっちが不利だ。

 マシュも参戦させても良いが、そうすると所長と藤丸が彼らの攻撃対象になりかねないから参戦させ難いんだよなぁ。

 

「フッ!」

「ぜあっ!」

「ぬぉう!」

 

 そう思っていると、2騎のシャドウ・サーヴァントから仕掛けてきたので彼女?の片手剣と俺の長巻がぶつかり合った瞬間、ゾッと背筋が凍り付く感じを受けたのでサイドステップを踏んで左側に倒れ込む様に避けると、俺の体があった空間に右手を突き出したもう1騎のシャドウ・サーヴァントがいた。

 

(あっぶねぇ! 咄嗟に避けてなかったら死んでたかも!)

 

 そう思いながら、構え直そうとした瞬間に3騎のシャドウ・サーヴァントの体をそれぞれ突き刺す様に、オルトから伸びた棘みたいな物が出てきたのでシャドウ・サーヴァント達はその一撃で消滅する事になった。

 

「ふぅ、助かったでござる」

「シャドウ・サーヴァントってのを学習し終えたからね。計算通りなら大抵のサーヴァントに対抗できると思うわよ」

「なら命を張った甲斐があるもんだ」

 

 彼女の言葉に、息を吐きながら長巻の刀身を収納するとマシュ達が近づいてきた。

 

「凄いです! 誠さんもサーヴァントだったんですか?」

「違う違う。オルトによって仮面ライダーみたいな改造人間になっただけさ。さっきの戦いはかなりギリギリだったし、宝具も出せないしね」

「付いていけるだけでも凄いですよ!」

 

 俺の戦いに、マシュや藤丸は興奮気味だったがオルガマリー女史は冷静にオルトと話し込んでいる様だ。

 

「意外ね。そう言うのに興味ないかと思ってたわ」

「人間は脆い。だから彼だけでも強くしようと思っただけよ」

 

 そんな言葉が聞こえてきたので、興奮するマシュ達を宥めながら目星が付きそうな場所へ向かおうとすると声を掛けてくる存在がいた。

 

「よぉ。随分と面白い体してんな」

「んん? そう言うあんちゃんは話が分かりそうなサーヴァントだな?」

「ああ。遠巻きから見てたが泥を被ったサーヴァント3騎を相手に戦える人間なんて見た事ねぇ」

「死なねぇ様にするだけで精一杯だったさ」

 

 声を掛けてきた存在、長めの青髪を後ろに流してデカい杖を持つ魔導師風の青年が近づいてきたのでマシュと藤丸は警戒心を露わにしたが、真っ黒なシャドウ・サーヴァントと戦った俺からすれば彼らとは違い、色がある青年に敵意は感じられなかったので長巻は展開しなかった。

 

「俺はキャスターのサーヴァント。訳あってヤツラと敵対していた」

「俺は新倉 誠。あっちにいる青髪の姉さんのマスターさ」

「ほぉ、随分とデケェ奴を見つけたもんだな」

「あぁ、色々と大変だが何とかやれてるさ」

「なら良いんだ」

 

 互いに自己紹介をして、軽く会話をするとオルガマリー女史達は話が終わった様なのでロマニも交えた情報交換をする事にした。

 正確には、カルデア側の状況とこの街に来た理由を彼に話すと彼もこの街における聖杯戦争について話してくれたのだが、聖杯の泥を被ったセイバーによって聖杯戦争は現状になったとの事だった。

 その為、彼としてはこの狂った聖杯戦争を終わらせたいし、俺らとしても原因究明と問題解決をしたいと言う事で利害が一致したので目的の場所である大聖堂へ向かう事になった。

 そこには、キャスターとさっき撃破した3騎以外の原因となったセイバーの他にバーサーカーとアーチャーがいるとの事だったのだが、問題なのはマシュの宝具に関してだ。

 

 改造人間の俺とは違い、紛いなりにも擬似サーヴァントである以上は宝具が使えてもおかしくないのだが、真名がわからない英霊が能力を譲渡しただけなので宝具の使い方はおろか、名称すら分かっていない状態だった為、キャスターの彼がマシュに特訓を付けて宝具を使える様にしてから大聖堂へ向かう事にした。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

   地下工房でアーチャーと戦ったのは僥倖だな」

「ああ。あれで嬢ちゃんが戦力として使える上に経験値が上がったんだから一石二鳥だろ」

 

 大聖堂へ向かう道中、地下掘りして作った工房でシャドウ・サーヴァントであるアーチャーに対して、対サーヴァント戦の経験を踏ませると言う事で彼との戦闘はマシュとキャスターに任せて一休みしているとオルトが念話で話しかけてきた。

 

〈マスター、オルガマリーの件なんだけど〉

〈どうだった?〉

〈色んな経路で辿っても肉体を感知できない。恐らく、破壊工作の際に爆発四散している可能性が高いわ〉

〈了解した。その事はまだ誰にも言うな。面倒になりかねない〉

〈分かった〉

 

 内容は、オルガマリー女史の生死に関する事だったのだが生存は絶望的との事でオルトには口止めしたのだが、その理由はカルデアに帰ると言う共通の目的が俺らにはあったので安定したチームワークができているのだ。

 その中で、今ここで彼女は既に死んでいるなんて言った次の瞬間に自分を認識できなくなって蒸発されても困るから、と言うこっちの都合も含まれているのだが事が終わった段階で言うしかないだろう。

 勿論、かなりゴネられるだろうが納得してもらわないと困るのでその際は憎まれ役を買って出るしかない、と思うと少し憂鬱だったりする。改造されたと言っても人間なんだし。

 

 そんな訳で、大聖堂の元に来たのだがそこには日本でも有名なアーサー王物語に出てくるアーサー王を、セイバーと言うクラスのサーヴァントに落とし込んで生まれたのが黒い甲冑を身に纏った少女だ。

 

「妙な気配を感じると思ったら貴様らだったか」

「ちょいと訳ありでね。普通の人間じゃねぇ事は認めるさ」

「まぁ良い。私の目的はこの聖杯戦争を勝つ事なのだからな」

「そーかい」

 

 そして、そんな少女が俺とオルトに目を向けたので平然と答えたのだがサーヴァントとしては破格の魔力を有していたので、俺1人の力だと無理ゲーなのだがオルトが前面に出ると逆にあっという間に終わってしまうので念話でオルトにある要請した。

 

〈戦闘になったら魔力炉のリミッター解除、よろしく〉

〈分かった〉

 

 俺の中に埋め込まれた魔力炉は、全力運転をすればサーヴァントと互角に戦えるのだが俺自身の未熟さもあって上手く使いこなせなかったので、今まではリミッターで出力をかなり絞っていたのだが目の前のサーヴァントの強さもあって、解除キーを持つオルトにリミッターの解除を頼んだ。

 するとある程度、解除してくれた様で体中に力が漲るのを感じたので長巻の刀身を展開するとセイバーが構えたのと同時に、魔力量が増えたので宝具が来ると思った瞬間、2人の声が重なった。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!!」




アンケートを見れば分かると思いますが、ゲームにおけるイベント等に関してです。
本編とは別に、今までゲームとして行われたイベントに本作主人公やオルトを参加する場面を読者の皆さんは見たいのかな?と疑問に思ったので、気軽に投票して頂ければ助かります。(実際に参加するかは別ですが)
因みに、作者としては1番最後の本編をサクサク進めたい派です。


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第5話 事実

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!!」

 

 特異点F、絶賛炎上中の冬木市において2つの宝具がぶつかり合った。

 片方は、大抵の人が聞いた事がある伝説の剣の名前を用いた宝具なのに対し、もう片方はまだまだ使い慣れていない無名の宝具。

 その両方がぶつかり合う結果は、前者に軍配が上がるのも当然と言える。

 

   くっ、これが限界です!」

「なぁに、充分! 後は任せい!」

 

 宝具のぶつかり合いが終わった後、マシュが片膝を付いたので追撃を掛けようとしたセイバーに走り出しながら長巻の刀身を展開して切り掛かったが彼女が持つ剣、エクスカリバーに防がれた。

 

「貴様か。私達の戦いに邪魔する気か?」

「騎士道ってか? 生憎、蛮族じみた庶民にゃ縁遠い話なんでね!」

「それもそうか。期待した私が間違っていた」

「ああ!」

 

 ギリギリと金属が擦れる音と共に、彼女とそんな会話をした後で一度は押し合って距離を取ってから再度、接近して何度も剣で打ち合っていく。

 折角、強化と言う名の改造をした上に武器まで作ったんだから戦えなきゃダメでしょって言うオルトの発言によって、カルデアに来るまでの3年間は彼女による特訓で長巻の他に太刀や薙刀と言った片刃の武器を熟練レベルまで扱える様になった。

 やり方自体はシンプルで、改造した部分から俺の体にオルトがハッキングして剣道などの有段者の中でも師範や師範代クラスの人の動きを強制的に模倣させて体に叩き込んだのだ。

 

 日常生活の中では、殆ど動かす機会がないであろう筋肉を積極的に動かした挙句に動き方を骨の髄まで覚えさせられたので、特訓を始めた当初は筋肉痛や豆ができるのは当たり前な上にこむら返りや肉離れなんてのもしょっちゅうだった。

 途中で辞めたいと何度、考えたかなんて多すぎて覚えてないがこうやって普通に武器を振るえるようになったし、限定的ながらリミッターを解除した事でセイバーと戦って力負けする様な状態になっていない。

 反動でどれぐらい、脱力感や筋肉痛が出るのかが分からないので怖い部分はあるが敵であるセイバーに勝たないと脱出できない以上、全力を出し切って勝つしかないと思って一気に距離を詰めた。

 

「チェストォーッ!」

   ッ!?」

 

 それまで以上の速さで踏み込んだ結果、セイバーの反応は少し遅れた為に長巻の切先が彼女の首に食い込んで頭と胴体を泣き別れにする事ができた。

 本来であれば、最後に1つや2つの会話を挟ませてやりたかったのだがこちらの持久力が持ちそうになかったのでやむを得ず、トドメを指したのだがその直後に金色の粒子となってセイバーは消滅した。

 

「ふぅ、何とか勝てた」

「やったな、坊主。ただ、ここいらでお別れだな」

「どう言う………いや、聖杯戦争だから聖杯が回収されればサーヴァントは消滅するって訳か」

「そう言う事だ。会いたいなら召喚でもしてくれやって伝えてくれるかい?」

「分かった。伝えておくよ」

 

 それと同時に、オルトがどこかから聖杯と思われる金色の容器を持ってきた為、キャスターの体も光の粒子となって霧散し始めたので彼の言葉を聞き届ける事にした。

 そして、戦闘が終わった事を確認して近づいてきた藤丸達にキャスターの言葉を伝えるとやや寂しげだったが、覚悟を持った表情を浮かべていたのでようやくカルデアに帰れるなと言う話になって弛緩した雰囲気になったのだが、そんな雰囲気をぶち壊す声が聞こえた。

 

「まさかここまでやるとはね。計画の想定外。そして私の寛容さの許容外だよ」

「うわ出た。緑ゴキブリ」

「っ!?」

『レフ!? レフ教授なのか!?』

 

 その声に思わず、独り言の様に呟いてしまった一方でオルト以外のメンバーは驚いた様子で、特に長年に渡って仕事仲間として働いていたロマニやオルガマリー女史に至っては信じれない様子だった。

 まぁ、新人の藤丸やマシュは兎も角として俺は前々から妙に胡散臭い奴だなと思っていたし、オルトはオルトで奴の本性に気が付いているので何かしらの行動に出たらすぐに動いてくれるだろうさ。

 

「どいつもこいつも統率の取れていないクズばかり。こうも勝手に動かれると吐き気が止まらないな」

「貴方ほどじゃあないわよ? お馬鹿な魔神柱さん」

「そう! お前さえ、居なければ私の計画は完璧だった! お前さえ、来なければもっと確実に破壊できたのだ!」

「へぇ? 人理を焼却し、自分達の都合の良い世界を作り出す事が良いのかしら? 生憎、私はそう思わないわ」

 

 レフだった存在が、呪詛の様な言葉を吐いたがオルトの挑発に顔を歪ませて大きく叫んだが、彼女はどこ吹く風と言わんばかりに言い返したので彼は額に青筋を立てた。

 オルトにとって、地球に住む生物が身の程を弁えて生活していればどうでも良い存在であり、俺と同居する様になったのは何かしらの手違い程度の誤差でしかないが人類の文明に触れ、共に生活する様になってからは文明に興味を持つ様になったので、少なくとも俺が人間としてくたばるまで一緒に居てくれるとの言質を取ってある。

 その為、そんな生活をぶち壊す様な輩は彼女にとって滅ぼすべき存在なので目の前にいる存在を今すぐにでも殺したい雰囲気を感じる。

 

 とは言え、彼女が発した言葉を聞き捨てならない様子で問いただす奴がいた。

 

「ねぇ? 今、人理を焼却するって言った?」

「えぇ。ここにレイシフトする前、カルデアスだったかしら? 普段は水色に光ってたけど真っ赤になってたわよ」

「ねぇ、本当なの? レフ   いいえ、レフだった存在!」

「ええ、本当だよ。君のために繋げてあげるけど」

 

 オルガマリー女史の質問に、オルトが冷静に答える一方でレフだった存在がカルデアスが見える画面を映し出すと、そこには真っ赤に光るカルデアスが出てきたので彼女は驚きを隠せなかった。

 

「ダメだ! 今のアンタだと帰れなくなる!」

「嘘よ、こうなる為に頑張ってきたんじゃない。だから夢に決まって   

「しっかりしろ! オルガマリー!」

「えっ? あっ、きゃあ!」

 

 その為、光に誘き寄せられる虫の様にフラフラとカルデアスへ近づいたのでそう叫んだものの少し遅かった様で、ふわりと彼女の体が浮かぶと見えない力によってカルデアスに引き寄せられていった。

 なんせ、あのカルデアスは次元の異なる領域でありながら太陽並の質量を持つ高密度の情報体なので、下手に近づくと分子レベルで引きちぎられて生きた状態で無限の死を味わう事になる。

 その事を、カルデアに来た当初に聞かされていたので警戒していたのだがオルガマリー女史は動揺した隙を突かれた形になってしまった。

 

「オルガマリー! 強く願え! この器が叶えてくれるぞ!」

「っ! それは!」

「早くしろ! じゃねぇと苦しむ事になるぞ!」

「えぇっと! えぇっと!」

 

 とは言え、レフだった存在の思惑通りに動かされるのも癪に触るのでオルトから聖杯を引ったくって、オルガマリー女史にも見える様に掲げると何かを察した様に考え込んだ一方で、レフだった存在は再び顔を歪めた。

 

「貴様! どうしてそれを!」

「さあ? オルトにでも聞いてみると良いよ」

「答えは単純。すり替えておいたのよ」

「っ!」

 

 その答えに、彼はポケットなどを探って持ち物を確認すると聖杯だったであろう金メッキの器が出てきたので恐らく、持ってくる直前にすり替えて気付かれない様に調整した魔力で誤認させていたのだろう。オルトは高い学習能力があるし。

 その事に気付いて、悔しそうに顔を歪ませる彼の傍らでオルガマリー女史は自分なりの回答を見つけ出したかの様に言葉にした。

 

「わ、私は   理解してくれそうな人達を残して死にたくないぃぃぃいいい!」

 

 彼女の願いが乗った言葉と共に、聖杯は輝いたのでその願いが叶ったのを確認してからレフだった存在を除いてカルデアに戻れる様に俺からも願うと俺やオルト、藤丸達の周りが光り始めたのでオルトが彼に話しかけた。

 

「下らない見せ物は御破算した様ね、魔神柱(フラウロス)さん?」

「この借り、必ず返させてもらうぞ!」

「あらそう。私はこう見えて結構根に持つタイプなの。だからマスターを危険に晒した事、命を持って精算させてもらうわ」

 

 そんなやり取りの後で、俺達の視界は暗転した。




途中経過ですが、アンケート結果を見てこう思いました。
みなさんの理不尽のせいでランサーが死んだ!この人でなし!(定番ネタ)

まぁ、と言う冗談は兎も角として次回は所長がくたばっていた事が明らかになります。話の途中で突っ込もうとしたら突っ込めなくなってたので。


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第6話 打ち合わせ

   ………?」

「起きたようね、マスター」

「ああ」

 

 意識が浮上して、目が覚めるとカルデアの天井が見えたので何してたっけとぼんやりとする頭で考え込んでいると、オルトが覗き込んできたのでそう言えば特異点Fから帰ってきた直後に失神したんだと思い出した。

 何しろ、本来なら今回の様なレイシフト前にサーヴァントを何体か召喚して彼らと共に俺が持つ能力を使って、実地試験をするつもりだったのにほぼ1人でシャドウ・サーヴァントと戦った挙句にセイバーだったサーヴァントとの一騎打ちで勝ったのだ。

 想定外の環境と戦闘で、予想以上に精神と肉体をすり減らしただろうと推測可能なので四肢を軽く動かして異常がないかを確認した。

 

(右足と、左足は………大丈夫。右腕と左腕も………問題なさそうだ。指も普通に動かす分には違和感はない。後はどれだけ、戦闘で動かせるかだな)

 

「治療はオルトがやってくれたのかい?」

「Dr.ロマニにデータを取ってもらいながらね。私がいれば損傷箇所をすぐに治す事はできるけど、すぐに対応できない場合は彼らに頼る事になるから」

「ああ。て事は特異点Fで起きた事やそれに関する事は全て喋ったのか?」

「えぇ、勿論。必要な範囲で」

 

 どうやら、オルトの独断で色々とやってくれた様なので俺個人でやる事は殆どないだろう。元々、オルトが協力してくれたからこその改造人間だし、俺が認知していない事も彼女なら知っているなんて事もあるだろうからね。

 

「そう言えば、ロマニが起きたら連絡を寄越すに来る様に言われてたわ」

「そうか。頼む」

「ええ」

 

 俺の体に乗っていた掛け布団を脇にやり、起き上がってノソノソと着替えている間にオルトが部屋に備え付けの通話機でロマニに連絡を取ると、暫くしてからロマニの他にダ・ヴィンチちゃんと藤丸、そして所長とマシュが来た。

 

「まさか、全員で来るとは思っていなかったでござる」

「当然でしょ。冷静に考えてサーヴァント相手に唯の人間が単独で撃破できる方がおかしいんだから」

「オルトの治療を計測してみたんだけど、人間相手にやる治療じゃなかったよ。普通なら人体そのものが爆発四散してもおかしくない治療方法だった」

「やっぱり、凄いです。誠さん」

「俺も頑張れば戦えるかな?」

「オルトありきな能力だからなぁ。つーか、やめとけよ藤丸。所長やロマニの反応が正しいからな?」

 

 俺の言葉に、オルガマリー女史が呆れてロマニは唖然とする一方でマシュに至っては目を輝かせながら見てきたので、ボリボリと頭を掻きながら見当違いな努力をしそうな藤丸に釘を刺しておく。

 実際、聖杯の泥を被ったセイバー   黒いアーサー王とタイマンで戦えたのはオルトが前もって改造してくれたお陰であり、普通ならまともに戦えずに宝具を放たれて蒸発してもおかしくなかった。

 そうならなかったのは、オルトによる改造と言うチート級のバフの内の幾らかを解放したからに過ぎず、生粋の人間である藤丸がどんなに努力してもサーヴァントと戦えないので他の所で努力してもらいたいね。

 

「つーかあれだ。所長の生死に関する事なんだが」

「あぁ、それ? オルトから聞いたわ。今回の破壊工作時に肉体は死んだのでしょう?」

「ああ。それにしても冷静だな。もっと動揺してるかと思ってたわ」

「流石に3日も経てば落ち着くわよ。それに、今回の件は完全に私の落ち度なんだし、冷静に考えればもっと他の人の話も聞けば良かったと反省するわよ」

 

 どうやら、オルガマリー女史の肉体がくたばった事に関しては既に納得済みの様なので第三者である俺からは何も言う事はない。

 

「そうそう。肉体繋がりで言うなら誠くんの肉体も変わってるよね。本来なら、サーヴァントとの連戦でどこかしらが壊れてもおかしくないのに全身が筋肉痛と重度の疲労だけで済んだのだから」

「細かい事はオルトから聞いた方が早いな。俺が知っているのは、骨や筋肉などの体を動かす為の部分を重点的に弄られたのと戦いに必要なエネルギーを供給する魔力炉、そして戦い方に関しては通信教育みたいに武術の達人の動きをトレースした特訓を散々やらされたからな」

「それだけ、分かれば充分だよ」

 

 とは言え、その話になると本人や俺らは気にしなくとも藤丸やマシュの雰囲気がやや暗くなったので、ロマニが話題を変えたので俺も答えられる範囲で答えた。

 何しろ、俺自身も改造人間としての自分の実力を完全に把握できていない上に、今回の様なサーヴァントと戦う度に反動で失神する状態は戦力としてかなり不安定だ。

 今回の特異点は、滞在期間が短めで敵も少なかったから何とかなったが別の特異点で月単位の期間を滞在したり、敵がうじゃうじゃといる様な場所だったら中々に苦労する羽目になる。

 

 その為、他の7つの特異点を攻略する為にサーヴァントを召喚して戦力の拡充をしようとの話になって、サーヴァントを召喚する部屋へ向かう事になった。

 

「召喚か。藤丸はどんなサーヴァントを召喚したいんだい?」

「俺? 俺はセイバーかキャスターかなぁ」

「あぁ。特異点Fでの光景が基準になってるのかな? まぁ、悪くはないんじゃないかな」

「そう言う誠さんは良いんですか? オルトさんが居るのに他のサーヴァントを召喚したりして」

「オルトは強すぎるからねぇ。牛刀で鶏を割くっつー言葉が当てはまるレベルで過剰火力だから、逆にサーヴァントが来てくれないと困るのさ」

 

 実際、オルトが行動するだけで大抵の事柄は解決できるだろうがそれはあくまで強大な戦闘力と言う点であり、戦闘訓練や頭を使って論理と根拠を持って解決する事件の様な状況などでは中々にハードルが上がる。

 その為、そう言った穴を埋める意味でもサーヴァントの召喚は藤丸だけじゃなく、俺にとっても必要な事なのでどんなサーヴァントが来てくれるかなと期待しながら召喚する部屋に到着した。




アンケート第二弾です。
本作主人公の召喚に応じたサーヴァントはどんなクラス?と言う物です。
今回の召喚で呼び出す人数は、3騎ですので投票数が多い順からどんなクラスにするかを決めようと思ってます。
アンケートの回答数の関係で、どんなサーヴァントにするかは独断と偏見で決めちゃう事になりますのでご容赦ください。
個人的にお勧めなクラスやサーヴァントがあれば感想欄にどうぞ。


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第7話 召喚

次回投稿で、オルレアンに入るので暫く間が空きます。


「何が出るかな♪ 何が出るかな♪」

「そんな適当な歌詞と音程でサーヴァントが来てくれる訳ないでしょ」

「そうは言いますがね、所長。俺も藤丸も魔法に関しちゃ、ど素人の範疇ですよ。後は精々、エ○スペクト・パト○ーナムって言うぐらいですよ」

「アンタねぇ、そんな知識でよくもあのオルトと同居できたわね。大概の奴なら速攻で死んでたわよ?」

「まぁ、俺だからなぁ。てか、それなら所長が教えてくださいよ。魔術師として一流なんでしょう?」

「機会があれば教えるけど、なんかムカつく!」

 

 召喚を行う部屋に到着し、適当な呪文を言いながら入室するとオルガマリー女史からのツッコミが入ったので会話をしながら、召喚に必要な材料である星晶石と言う物を準備してから召喚する段階に入った。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

 集う星の下もとはフィニス・カルデア。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

  繰り返すつどに五度。ただ満たされる刻ときを破却する。

     告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、人理の轍わだちより応えよ。

 汝、星見の言霊を纏う七天。

 降くだし、降くだし、裁きたまえ、天秤の守り手よ   !」

 

 そして、俺からの進言で藤丸から召喚する事になったのでカンペに則って詠唱を唱えると召喚サークルが光って1人の英霊が召喚された。

 

「影の国よりまかり越した。スカサハだ。マスター、と呼べばいいのかな。お主を?」

「………誰?」

「北欧、いやケルトの伝承か? 詳しくないから何とも言えないが」

 

 そのサーヴァントは、暗めの紫色のタイツを着こなしている均衡の取れたプロポーションの女性であり、スカサハと言う真名を言ったので藤丸はピンと来てないが俺はそう言いながら周囲の反応を窺うとかなりの好感触の様子だ。

 何しろ、日本では馴染みが薄いもののケルトの伝承に登場する人物を英霊として呼び出したのだから、一般人だった彼としてはかなり運が良いと言っても過言ではない。

 その為、彼もスカサハに自己紹介している間に俺も必要な分の星晶石を召喚サークルに置いて詠唱を唱えると、新たなサーヴァントが召喚に応じてくれたのだが召喚し切る前にオルトが俺の前に立って警戒に当たってくれた。

 

 その行動と共に、スカサハみたいなサーヴァントとは違った何かを感じ始めたので俺も警戒心を持ち始めた一方で、オルガマリー女史達はそれまで我関せずの態度だったオルトの行動にざわめき始めていた。

 

「はじめまして、汎人類史のお友達! 私はククルカン。樹海の水と風と大地の守護者にして、えーーと……なんだっけ? ま、いいですよね、細かいことは。これからたくさん、貴方たちの文化を学ばせていただきます♡」

(………そっ、そう言う事かぁ〜)

 

 通常、サーヴァントと言うのは人類史の中で活躍した英雄などが人々によって祀り上げられて英霊となってから、サーヴァントとして魔術師に呼び出されるのだがククルカンと名乗ったサーヴァントはその定義には当てはまらない。

 彼女みたいなのは、オルトの様に外宇宙や別次元から来たサーヴァントで以前、レフだった存在から教えてもらった降臨者(フォーリナー)と言うクラスのサーヴァントなのだろう。

 そして、召喚時に感じたのはフォーリナーとして別格の雰囲気を感じ取ったからでよくよく観察すると、オルトと同じ感じを受けるのでやべー奴を呼び出しちまったと思いながら話しかけた。

 

「召喚したのは俺さ。名前は新倉 誠。ここ、カルデアでマスターをやってます」

「えぇ、よろしくね。マスター!」

 

 そう自己紹介をすると、ククルカンは満面の笑みを浮かべて反応してくれたのだがオルトに目を向けると警戒心を露わにしたのだが数秒間、視線を交差させた後で互いに右手を出してがっしりと握手したので、彼女達の間で何かしらのやり取りがあったんだろうなと察して何も言わなかった。

 

「あっつ!」

「ど、どうしたの!?」

「いや、これは………今になって令呪が使える様になったでござる」

 

 その為、次の召喚を促そうとした瞬間に左の手の甲に熱い物を感じたので反射的に熱い物から手を離す様な感じで、手を振ってから熱を感じた手の甲を見ると令呪の模様が発現していた。

 今までのオルトとの関係は、被検体と研究者と言う立ち位置で彼女の方が圧倒的に優位な状況だったので令呪と言う物がなかったのだが、ククルカンとの契約が成立した事で発現した様だ。

 

「まさか、今までここに来る前の俺と同じだったんですか?」

「あーうん、そうだね。オルトの事を知れば知るほど、サーヴァントとマスターっつー関係に当て嵌められないからなぁ」

「そうだったんですか」

 

 俺の異変に、ククルカンが心配そうに見てきた一方で藤丸が驚いた様子で聞いて来たので、変な誤解が生まれない様に素直に応えておいた。

 何度も言っているが、オルトは人類にとっては強すぎて向こう100年は下手な干渉は避けるべきだと言うのが、事情を知っている魔術師達の見解なのでサーヴァントとして彼女と契約しなくてもとやかくは言われなかった。

 とは言え、俺と彼女の関係は令呪と言う限定された契約で収まらない程に深まっているので例え、最初の契約がククルカンの様なサーヴァントでもオルトは何も言わなかった。

 

「まあ、これからもよろしくだぜ。ククルカン」

「よくわかんないけどよろしくー♪」

 

 そんな訳で、俺の召喚時に些細なゴタゴタはあった物の召喚自体は滞りなく進んで3騎ずつ来てくれたのだが問題はサーヴァントのクラスだ。

 藤丸の召喚に応じたサーヴァントは、ランサーのスカサハ以外にキャスターの不夜城のキャスターとバーサーカーの清姫とある程度、クラスがバラけて来てくれたのに対して俺の場合はフォーリナーのジャック・ド・モレーと謎のヒロインXX来たので、中々の色物だなぁと遠い目をして招き入れた。

 

(普通ならもっとバラけてもおかしくないだろ! ぜってー何かしらの強制力が働いてるって!)

 

 普段から、俺以外の人物に興味をオルトが今回の召喚で来てくれたサーヴァント達で和気藹々としている中で、そんな事を思っているとロマニが肩を叩いてこう言ってきた。

 

「まぁ、どんまい」

「いや、中々にキツいでござるよ〜。もっと他のクラスのサーヴァントが来てもおかしくないんだけどなぁ」

「それだけ、アンタがおかしいってだけでしょ。折角、来てくれたんだからしっかりと働かせないさい」

「うっす、所長」

 

 その言葉に軽くボヤいていると、オルガマリー女史が普段通りの態度で言って来たのでため息を吐きながら、腹を括って答えてからオルト達の会話に参加するのだった。

 

 

 

 オルト side

 

(ふふん。まさか、彼女の奥底にあるこの世界の未来で発生する出来事に別の私が絡むなんて楽しみだわ)

 

 この世界に来て早5年。マスターの改造もひと段落して、その能力も今回の特異点で実証できたから後は経験値を貯めさせて、成熟した頃に美味しく頂く目的が大きく進んだ事に喜びを感じながら彼が召喚する場面に立ち会った。

 私自身、彼の同居人で改造する怪しい研究者と言う圧倒的なポジションに居る以上、召喚に応じなければ顕現する事すら難しいサーヴァント達とは彼との距離感が大幅に違うので誰が来ても特に気にしていなかった。

 だけど、最初に来たのがククルカンと言う女神であり、私と同じ気配を感じたのでよく観察すると別世界の私の心臓だと分かったし、そんな私を見て彼女も私の事を理解した様子だったので固い握手をする事ができた。

 

 ただ、その世界にマスターが居なかった事が気になったのだけど私が干渉した事で今のマスターが居る事から、私の干渉の有無がきっかけのマルチバース的な感じなのだろうと結論付ける事にした。実際、私自身も別世界から来た訳だしね。

 そんな訳で今はまだ、善良なマスターの同居人と言う体で行こうと思いながら今後の方針を決めるミーティングに参加する為、召喚による軽いショックを受けるマスターの背中を摩って慰めながらミーティング室へ向かった。




ど、どう言う事だってばよ(第二弾のアンケート結果を見ながら呆然)
アンケートを作った当初はある程度、偏るだろうなぁと思ってたらフォーリナーがダントツだったでござる(後は2位争いが3つか4つと、それ以外が薄く散らばってる感じ)
なので、早い段階でフォーリナーは本作主人公の元に集まる様に調整しますから今度、召喚のアンケートを取る際はそれ以外で取ろうと思います。
エクストラクラス?すっかり失念していたので、今度からちゃんと入れますから許してください!何でもしますから!


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