カタナを守る従者 (上腕二十二頭筋)
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プロローグ

どうも〜上腕二十二頭筋です。一度ssを書いてみたい!!と思いコツコツ書き溜め、現在に至ります。読みにくいと思いますが、暖かい目で見守って下さいm(_ _)m

一話目は短めで様子を見て、二話目以降は推敲しながら投稿します。だいたい3000字を目安にしてます。

ではでは、本編どうぞ〜


「なんで俺はこんなことしてるんだろう」

 

 

 

 

少年は一人で呟いた。

彼の自室には彼とコンピュータ、そして大量のダンボール箱。そのダンボール箱の中には菓子や清涼飲料、とある箱には一般人が持っているはずのない部品や拳銃が所狭しと並んでいる。

 

 

 

彼は現在中学3年生。一般的に受験シーズンと呼ばれる時期だ。

だが彼は塾はもちろん、学校にも行かない。

 

 

 

彼はこの世界に来る前、すなわち転生する前の記憶があるため、大学卒業までの大まかな知識はある。

 

だが彼が学校に行かないのはそれだけではない。

 

 

別にコミュ障というわけでもないし、友達は作ろうともしなかったが寂しかったわけでもない。

 

 

 

 

 

 

嫌だったのだ

 

 

何もしなくてもよいということが

 

 

ただ時間を無駄に浪費することが

 

 

 

そう感じた時、彼は学校に行くことを辞めた。

そして彼は時間を浪費しないためにコンピュータで調べ物をしている。

調べている内容は ISだ。

 

 

 

「『ISは女性にしか使えない』…………か」

 

 

彼はチラッと胸元の黒い鍵を見た。

その鍵はどこかの鍵穴に入るような大きさではなく、ただのアクセサリーのための鍵だった。

 

 

知らないはずのない常識、ISが女性にしか使えないことなど。

 

しかし彼にとってはそれが悩みの種だった。すでに何十回と見たこの文章だったが誰か一人でもそれを否定して欲しかった。

そしてハアっと深いため息をつく。

 

 

 

そんな彼でもまだ見ぬ未来に期待はしていた。

彼の夢、それは前世での未練。守ることができなかった主人と同じようにならないよう、今世では一度決めた主人を最後まで守り抜くことだった。

彼自身は理解していた。主人である彼女が好きであったことに。そして彼女も自分に対して好意を抱いていることに。

だからこそ許せなかった。あの時の自分の力の無さ。他の従者が抱く不満に気づけなかった自分の不甲斐なさ。

その全てが嫌だった。

 

 

 

「□□□…………」

ふと気がつくとその女性の名前を呟いていた。

蘇るあの時の思い出、あの時の言葉、あの時の温もり。

 

 

 

溢れ出す感情を抑えきれず、彼の頬を涙が濡らす。

今は亡き過去の記憶。この世界では存在していない事実。

 

 

「あぁ、またか………」

コンピュータの横の機械が赤く点滅した。

それは警察が用いる通信機を盗聴することが可能な機械で、彼はその機械の横のボタンをONにする。

 

 

『△△町………国道○○号沿いの銀こ……立てこもり事件がーーー』「家から………近いな」

 

彼は涙を拭い 帽子を深めにかぶりサングラスをかけると、コンピュータに接続してある先程の盗聴機のコードを引っこ抜き、アンテナを建てる。

 

『▽▽署の警官は……現場に……「あそこからだと……早くて5分か」

 

 

即座に5分で現場に向かい、鎮圧、煙に巻く所までの設計を建てた。

帰りのコンビニで買うお菓子まで決め始めた所で、死亡フラグのような気がして考えるのを止めた。

 

 

「じゃあ、行って来るか」

 

数ヶ月後にほぼ女子校であるIS学園に通う羽目になることを彼ーーーー鳴神(なるかみ) 蒼斗(そうと)はまだ知らない。




最後まで読んだみなさん、ありがとうございました。
二話目以降はこんなにカッコ良く書かないです。(確定)なので一話目が気に入らなくても二話目からは良くなる……かな?

感想、指摘お待ちしてます


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久々の学校……めんどい

どーもー上腕二十二頭筋で〜〜す

投稿してから気づいた。今日からすごい忙しくて暇が中々ないということに…………

書き溜めておいてよかった。



はぁーーめんどくさ

 

 

 

今から起きる日常を考えて、ついこう思ってしまった。

なにしろ、周りはほとんどが女子。

まだ俺はマシな方だが、もう一人の男子の織斑 一夏がいなかったらこの視線は全て俺に向けられていたことだろう。

 

 

少し現実逃避していると、クラスのドアが開いて、山田 麻耶(やまだ まや)とかいう先生が入ってきた。

 

 

 

 

…………本当に先生なのか?

 

 

小さい(背が)割にデカすぎる(胸が)。

 

 

「みなさん、IS学園への入学おめでとうございます。」

 

 

そう、俺が今いる所はIS学園の一年一組の教室。

 

織斑 一夏(どこかの誰かさん)がISを動かした所為で全国の男性を対象としたIS適性検査が行われた。

 

 

 

織斑 一夏がISを動かしたという事実は警察の上層部が隠蔽し、何も知らせずに『○○に来い』という手紙が政府から来ただけだったのでとりあえず行ってみた。

 

 

それが間違いだった。内容を聞かされた後は帰ることが出来なくなっていて、ISを触り、現在にいたるわけである

 

 

終わってからニュースが報道された。俺は変装道具を外すことを必死に拒否してみたら織斑君は顔写真付きで報道されたが、俺は名前だけで済んだ。

 

 

再び現実逃避していると、生徒が自己紹介を始めていた。

 

 

自己紹介か……。あまり苦手ではないが場所が場所だからどうすればいいかわからないな.....。

もうイイや、寝よ。

 

 

 

 

とか思ってる間に織斑君の順番が来たようだ。

折角だから織斑君のは聞こうかな

「えっと......織斑 一夏です。」

 

 

うん、知ってる。

てかあんだけニュース出てて知らない方がおかしい。

さあ、こっからどうする?

 

 

「以上です!!」

あまりに意外な終わり方に、俺やクラスメイト、山田先生までもズッコケたようにしていた。

 

 

 

ちょっとでも期待してた俺がバカだった。

よし、俺の番まで寝とくか!!

そう思いながら、眠りに着くと----

 

ズドンと凄まじい音が響き渡った。

 

 

 

!!!?

何が起きた?事故か?空襲か?

 

 

 

「お前は自己紹介もまともにできんのか」

 

そこには凛々しい世界最強(ブリュンヒルデ)がいた。

 

 

 

「げぇ、関羽!?」

 

ズドンと出席簿が振り下ろされる。

えっ、出席簿?あの音的にはハンマーなのだが......

 

 

 

 

「誰が三国志の英雄だ、馬鹿者が」

 

織斑君。君の犠牲はムダにはしないよ……(注、生きてます)

 

 

 

「あっ、織斑先生。もう会議は終わったのですか?」

「ああ。授業の方を任せてすまなかったな、山田君」

「いえ、副担任としてこれくらいはしないと……」

 

 

副担任?あのちっこい…………いや大きいのか?

あっちが副担任ということは......

 

 

 

 

「さて、諸君私が担任の織斑千冬だ。これから一年間でお前たちを使い物になるようにしてやる。だから私の言う事はよく聞き、よく理解しろ。私の仕事は弱冠十五才から十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

 

 

 

うわっ、なんかやだ。この先生怖い

 

 

 

「キャーー!! 千冬様! 本物の千冬様よ!!」

 

「私、ずっとファンでした!!」

 

「私、お姉さまに憧れてこの学園に入学したんです! 北九州から!!」

 

「私、お姉さまの為なら死ねます!!」

 

「結婚を前提に付き合ってください!!」

 

 

 

え〜と……

まず最後はおかしいよな。うん、間違いない。

まぁ先生の挨拶も危なかったけど……

 

 

「ち、千冬姉!? 何でここに……!?」

 

 

「織斑先生と呼べ、馬鹿者が」

 

 

再び出席簿(ハンマー)が振り下ろされた。

 

危ない!! 織斑君危ない!!

IS学園の鬼教官(織斑先生)にそんなこと言っちゃダメだよ。

 

まぁ兄弟仲が良すぎて、弟を思うが故の愛情表現って奴か。

 

 

急にどこからか殺気を感じて、その方向を見ると織斑先生が睨んでた

 

「鳴神、お前変なこと考えなかったか?」

「そ、そんなわけないじゃないですか」

 

 

 

えっ?心読まれてるの??

 

 

「……まぁいい、ついでにお前も自己紹介しておけ」

 

 

 

 

なんのついでなんだ………

てかどうしよう?ヤバイヤバイヤバイヤバイ………

 

 

織斑 一夏side

 

 

「……まぁいい、ついでにお前も自己紹介しておけ」

 

 

 

そう千冬姉が言うと、アイツは少しためらって立ち上がった。

アイツが立ち上がったとき、後ろで留めてある髪が揺れた。長身でメガネをかけていて、どこか賢そうな印象なアイツは自己紹介を始めた。

 

 

 

 

「鳴神 蒼斗(なるかみ そうと)です。織斑君と同じ男性操縦者です。好きなものは、甘いものと機械いじり、嫌いなものは、薄味な食べ物と調子に乗ってる人です。

ISの事はあまりわからないですがよろしくお願いします。」

 

 

 

す、すごい。

そうかーおれも好きなものとかいえば良かったのか……

よし、次の休みに話しかけてみよう。

すこしクールな感じだけど、同じ男子なんだから仲良くしたいな

 

 

 

鳴神 蒼斗 side

 

 

大丈夫かな?大丈夫だよね?俺こういうの苦手なんだよ……

 

 

 

「フッ まぁいいだろう。」

 

おいコラ、『フッ』ってなんだよ!!人が緊張しながら頑張ってんのに!!

 

 

 

 

 

 

 

クラス全員の自己紹介が終わり、休み時間になった。

すごく居心地が悪い。

おや?織斑君がコッチに来てるよ?

 

 

「鳴神君……だよね?さっきも挨拶したけど、俺は織斑 一夏。同じ男子どうし仲良くしよう」

 

 

 

すごい爽やかな笑顔だなぁ。

 

 

「よろしく、織斑君。俺は鳴神 蒼斗。気軽に蒼斗でいいよ」

「じゃあ俺も一夏でいいよ。こちらこそよろしく」

「よろしく、一夏。ところで……」

「うん?」

 

 

「俺のこと……覚えてるか?」

 

 

 

 

 

織斑 一夏 side

 

 

「俺のこと……覚えてるか?」

 

「えっ?」

 

俺はてっきり初対面だと思ってたんだが..........

蒼斗……ダメだ。わからない。

どこだ?どこで会ったんだ?

 

 

 

 

「いや。覚えてないならいいんだ。」

「ゴメン、蒼斗。どこで会ったのか教えてくれないか?」

「その時も自己紹介は………してないから覚えてなくても仕方ないよ。俺がお前の名前を知ったのは後のことだし」

 

 

なんなんだ?いまの間は………

やっぱり自己紹介したのか?

 

 

「ちょっといいか?」

 

 

俺の幼馴染の箒が、割り込むようにして俺たちに話かけてきた。

 

 

 

鳴神 蒼斗 side

 

「ちょっといいか?」

知らない人が話しかけてきたんだが………

たしか……篠ノ之さんだっけ?

 

 

「一夏を借りていくぞ。」

「おい箒!」

「一夏の知り合いか?」

「知り合いっていうか…幼馴染だな。」

「なら二人で話してきなよ。俺のことはいいからさ」

「……すまない」

 

 

篠ノ之?さんは一夏を連れて教室を出て行った。

でもこの状況は……キビシイ。

 

 

「なるみん、なるみーん」

「うん?」

つい振り返ってしまった。

振り向いた先にはぶかぶかの制服を着た子がいた

 

 

「えーと……布仏さんだっけ?」

「うん、そーだよー。覚えてくれたんだー、エヘヘ」

 

 

自己紹介の時の喋り方といい、服装といい、印象が強かったからな

 

 

「今、俺のこと呼んだ?」

「鳴神だからー、なるみんって呼んだんだー」

 

「そ、そうなんだ。用事はなんだった?」

「私もー甘いものスキだしー、整備科希望だから機械もよくいじるからー、仲良くしたいなーって」

 

「ありがとう、布仏さん」

「本音でいいよー。そんでそんでー、なるみんはどんなお菓子が好きなのー?」

「飴とかグミとか、とにかく甘いモノが好きかな?」

「おー、なるみんは あまあま王子だー」

「ははははは……」

 

 

 

 

 

高校生活は大変だ。




大丈夫かな?大丈夫だよね?一話目と違う感じなのですごく不安です。

近々Twitter始めたいなーと思ってます。
また忙しくなりそうだ


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授業は大体疲れる

ども、上腕二十二頭筋です。


昨日投稿するの忘れてました。
夜でイイかって思ってたら普通に用事がありました。すいません。





織斑 一夏side

 

 

??????

なんだ?この授業は?

わかる単語が一つもない。

 

先生に聞いてもイイが周りの生徒は授業について行けているようだ。

もちろん箒も蒼斗も例外ではない。

 

 

 

「お、織斑くん?」

「ふ、ふぁい?」

 

思わず変な声を出してしまった。

これからどうすればいいんだ…………

 

 

鳴神 蒼斗 side

 

 

 

「ここまでで何かわからない所ありませんか?」

山田先生は、挙動不審な一夏にこう聞いた。

俺でもこんな簡単な単元なら………どうした?一夏

 

 

「じゃ、じゃあ山田先生。ちょっとイイですか?」

「はい。どんな質問でもしてください。」

山田先生は胸を張って答えた。

 

 

 

 

 

「全部わかりません!!」

一夏がそう言うと、山田先生から笑みが消えた。

 

「ぜ、全部ですか?」

「おい、織斑。入学前に渡した参考書は読んだか?」

「あの分厚いやつなら古い電話帳と間違えて捨てました。」

 

!?

伏せろ!!一夏!!

 

 

 

ドンッ

 

ダメだよ。 『ドンッ』はダメだよ。

頭に与えていい衝撃の音ではないな

 

 

 

 

「全く・・・・再発行してやるから一週間で読め。」

「で、でも千冬ねe・・」

 

 

ズドン!!

 

織斑先生。もうやめてあげて…………

 

織斑先生(・・・・)だ。」

 

 

「えっ?織斑君って……」

「織斑先生の弟?」

「いいなー。かわってほしいなー」

 

 

 

いやいやいや、反応するとこってそこ?

俺は効果音がドンからズドンにパワーアップした方にツッコミたい。

 

 

 

「一週間で読め。いいな?」

「……はい」

「ち、ちなみに鳴神君は……」

「えっ?俺は大丈夫ですよ?」

「そ、そうですか。」

 

 

山田先生が少しほっとする。

なんか見てるだけで疲れてきた……

 

 

 

織斑 一夏side

 

 

「いまからクラス代表を決める。クラス代表は……まぁクラス長のようなものだ。自他推薦は問わないが一度決めると一年間変更ができない点は注意しろ。さぁ、誰か意見のある者はいないか?」

 

ちふ……織斑先生は授業が終わる前にクラス代表を決めるらしい。

なんか面倒くさいな……まぁ俺はやらないけど

 

 

「はい、織斑君がいいと思います。」

「じゃあわたしもー」

「まず織斑か…ほかにはいないか?」

 

 

????

「ちょっと待ってよ。ちふ……織斑先生」

「どうした織斑」

「なんで俺がクラス代表にならないといけないんですか?」

「それはお前が他の者に推薦されたからだ」

「ちなみに拒否権は?」

「あると思うか?」

 

 

…………orz

僕になんの恨みが?

不平等だ!!!……まぁ女尊男卑な世の中だけど

 

 

「はいはーい、わたしはー、鳴神君をー推薦しまーす。」

 

袖が長くてダボダボの服を着た女の子が蒼斗を推薦した。

それでも蒼斗は腕を組んで静かにしている。

 

「織斑と鳴神か……この二人だけか?ならば二人の中で代表を「なっとくいきませんわ!!」」

 

 

織斑先生が話している途中に、割り込んで金髪縦ロールが話し始める。勇気あるな〜

 

 

 

「実力から行けばこのわたくし、セシリア・オルコットがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような極東の猿以下の扱いを受けるためにここにきたのではありませんわ。そして・・・・・・

 

 

 

なんだよアイツ。完全に調子乗ってるな。あーいうやつは無視無視。

けどよく考えて見たらクラス長になったことないな……。普通の学校のクラス長でも面倒くさそうなのにIS学園のクラス長は大変そうだな

 

 

 

「………故に、クラス代表はイギリス代表候補生で専用機持ちのわたくし以外にありえませんわ」

 

なんだよ、まだ話してたのかよ。

……いい加減にしてもらいたいものだ

 

「そうだ織斑、お前に専用機が与えられることが決まった。」

 

千冬姉が今の話で思い出したように話し始めた。

 

 

「えー?一年生のこの時期に?」

「いいなー、私も専用機欲しいなー」

 

周りの様子から専用機持ちがすごいということはわかった。

ん?専用機持ちということはつまり……

 

 

「これで俺はメシマズの国から来たお前とほとんど同等の力を手に入れたってことだな」

「あ、あなたは私の国をバカにしますの?」

「先にケンカを売ってきたのはお前だろ」

 

「お、落ち着いて下さい。鳴神君だってあんなに大人しくしてるじゃないですか。」

 

確かに蒼斗は何を言われても腕を組んだままだった。

 

 

「いや、山田先生。これは……」

 

 

そう言うと千冬姉は、蒼斗に近づき、出席簿を振り下ろした

 

 

 

 

鳴神 蒼斗 side

 

!?

突然出現した殺意に思わず受け止めてしまう。

 

 

「イッタ〜〜〜、何するんですか?」

「ほぅ。授業中に居眠りをしていた者にそんなことを言われるとはな」

「………すいません」

「だが私の攻撃(出席簿)を受け止めるとは思わなかったぞ」

「………急に来たからビックリして手が出ました。」

「普通なら反応も出来ずに一撃をうけるのだが?」

「いち……織斑くんのを見ていて、生命の危険を感じたので」

「私の攻撃(出席簿)を受け止めたことに免じて今回はこれで許してやろう。だが次はないぞ」

「はい!ありがとうございます」

 

 

危ない危ない。反応も出来ずにってなんだよ……

ガチで死ぬかと思った(物理的に)。けど、少し怪しまれたかな?

 

 

 

「まったく、男という生き物はみんなこのような人ですの?」

「女という生き物がお前みたいな人ばかりだったら この学校は一瞬で廃校だな」

「っ!? いいですわ。ではどちらが正しいのか決闘で決めましょう」

「いいぜ。わかりやすくていい」

 

 

へー、決闘がんばってーー

 

 

 

 

「話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜日。放課後の第三アリーナで行う。織斑、オルコット、鳴神はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を終わるぞ」

「えっ!?なんで俺が?」

「推薦されたからだ馬鹿者。寝ていなければわかっているはずだ。ちなみに辞退はできんぞ」

 

マジかよ………それで決闘になる理由がわからん。

じゃんけんでよくね?じゃんけんで

 

 

「先生ー。鳴神君のISはどうなるんですか?」

「それなら織斑と違って予備のコアがない。そこで学校から打鉄が貸しだされることが決まった。」

 

 

 

 

貸し出し?

 

「先生。一夏もオルコットさんも専用機で戦うんですか?」

「ああ、そうだが?」

「じゃあなんで俺は専用機ではダメなんですか?」

 

 

 

そう俺が言うと、一瞬の沈黙の後、俺と一夏以外のクラスメイトが笑い出した。

 

「はあ、お前は専用機を持つことがどれだけすごいことかわかっていないようだな」

「別に専用機のすごさは知ってますよ。俺が言いたいのは、決闘におれの(・・・)ISを使ってはダメなのかということです。」

そう言って、俺はいつも首からかけている大きな黒い鍵を見せた。

 

 

 

 

再び沈黙。だがその沈黙はさっきの沈黙とは違いなかなか終わらない。

 

 

 

 

 

 

その沈黙を止めたのはチャイムだった。

「ではこれで授業を終わる。そして鳴神、お前はこの後私と今の話について少し聞かせてもらう」

 

まるで決闘の話などなかったかのように、この授業は終わった。




俺は携帯で遊ぶ時のアカウント名に“上腕二十二頭筋”か、“11-biceps”の名前をよく使ってます。

見かけたら、メッセージ等送ってください。


あ、それと本文で説明が不十分なので、わからない所は感想のところで聞いて下されば答えます。


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取り調べはキツイ

どーもっす、上腕二十二頭筋です。

投稿は明日にしようかなーって思ったけど明日が暇とも限らないんで投稿してみました。



授業が終わって、いま俺は生徒指導室にいる。

ここなら防音とかも大丈夫………らしい

 

机の向こう側には、山田先生と織斑先生がいる。

 

 

 

 

 

「さて、鳴神。いまからお前の専用機についていくつか聞かせてもらう」

「はい」

 

 

俺は悪い事してないはずなのに……

なんだよこの緊張感は

 

 

 

「まず初めにお前の専用機について少し調べさせてもらう。山田先生にお前の(専用機)を渡してくれ」

 

「あ……それなんですけど…………」

「どうした?」

「渡すのはいいですけど、何も調べられませんよ?」

「………どういうことだ」

 

 

 

 

「この機体はなぜか他の機械で調べられないんです。接続できるのはエネルギーのチャージの時くらいで……」

 

 

試しに自前のパソコンに繋いで見たらコードからスパークが走ってパソコンが爆発しました。おかげでアパートの敷金が返って来なかった………

 

 

 

「基本的なデータは後でまとめるのでそれで勘弁してください。」

「………嘘はついていないようだな。それではここで起動して見せろ」

「ここでですか?」

「起動させるだけだ。もし周りに対する衝撃があると言うなら、一度アリーナへ移動するが?」

「いえ、問題ありませんが」

「そうか、それでは起動させてもらおう」

 

 

「こい、『黒炎』‼︎」

 

そう言うと、胸元の鍵が光を放ち黒いISを身につけた俺が出てくる。

 

「それがお前のISか?」

「はい、名前は『黒炎』です」

「確かに黒と赤のカラーリングが名前とピッタリですね」

「一応、本当の名前はドイツの第三世代型IS、シュヴァルツア・フラッメ(黒い炎)。けどその名前は呼びづらいので黒炎にしました」

 

 

「シュヴァルツア・フラッメか……何処かで聞いたような……」

「き、気のせいですよ。織斑先生」

「………いまから質問を始めるぞ。まずお前はそのISをどうやって手に入れた?」

 

 

 

いきなりかよ………

 

「じゃあ道で拾ったということで」

「ほう、教師の前で隠し事など通じるとでも思ってるのか?」

 

 

 

 

 

やばい。どうしよう……『盗難機かっさらいました』なんて言えるわけない。

 

 

「……すいません。俺の口からは言えません。ドイツから許可は得ているんですが、鳴神 真子という名前で」

「偽名で許可をか?」

「はい。このISは結構前に手に入れたんですが、さすがに許可を偽名でしないと男が使ってるとバレるかもしれないじゃないですか」

「結構前とは具体的にいつだ?」

「え〜と……大体4年前かな?」

 

 

 

「4年前………?そんな時期にドイツが第三世代機を作っていたのか?今でもあまりドイツの技術が優れてるとは言えないが……」

「詳しいことは知らないし、機密は守れと言われているので言えません。その辺はドイツに聞いて下さい」

 

 

 

 

一応、黒炎は盗難機だ。

4年前に女尊男卑な世の中でむしゃくしゃしてた俺は、持ち前の格闘術と大人顔負けの技術(スキル)で悪党とかを倒してた。さらに元暗部だったから、警察とかが来るまでの時間なども検討がつく。その前に終わらせ、証拠を消し、トンズラする。まさに主人公、まさに英雄(ヒーロー)、中二病患者やコミュ症の憧れのようなことをしていた。

 

 

そんな時、起きたのが『IS盗難事件』だ。

たしか検査とかいう理由で運ばれたISが襲撃、盗難された。

事件は『パッと見子供、脳は大人』の俺が軽く終わらせた。ここまでは普段と何も変わらない。

 

 

だが興味半分でそのISを触ったのがいけなかった。

突然俺の頭にキンッと金属音が響き、今まで知りもしなかった情報がたくさん頭に流れてきて、ISが装着される。

 

こっからドイツに交渉(脅し)をするのはめんどくさかった。最終的には偽名を使って女と偽っているにもかかわらず『むしろそのISを使ってください』とまで言わせた。

現在の俺はテストパイロット(仮)になっている。

 

 

 

「入学時の模擬戦ではあまりISに慣れていないようだったが?」

「そりゃ男の俺がISを使える機会なんてありませんから。動かしたのは5回だけで合わせて2時間もいきませんよ」

「それではお前はなぜ模擬戦ではその機体を使わなかった」

「使っていい、と言ってくれれば使いましたよ」

 

 

 

 

普通なら専用機を持ってるなんて思わないだろうけど……

一応模擬戦もかるーく負けておいたし

 

 

 

「データとは別にお前のISの動きが知りたい。この後アリーナで黒炎を動かしてもらう」

「ISの動きだけでしたら、今度の決闘の時にしてください。全然この機体を使ってないんできちんと動くか怖いです。決闘までにはメンテナンスしておきます」

 

まぁこれは建前で本当はできるだけこのISを使いたくないというのが本音だ。理由?つかれるから

 

 

「………わかった。ではそのようにしておく」

「ありがとうございます。あとデータの方ですがドイツから資料を送ってもらうのでしばらくかかります」

「催促するつもりはないができるだけ早く送ってもらえ」

「わかりました。これで終わりでしたら教室に戻りたいのですが……」

「もう授業は始まっている。とりあえず授業は自習にさせてあるが、私たちは今の話をまとめて提出しなくてはならない。鳴神は先に戻って勉強していろ。」

「それでは失礼します」

 

 

 

そう俺は一礼して生徒指導室を出る。

あ〜緊張したー

 

 

 

そのあと教室に戻ってドアを開けた。

 

「蒼斗?お前生きてたのか?」

 

戻って一言目がそれかよ。

大げさ………ではないか。あの緊張感はマジで死ぬかと思った。

 

 

 

この後も自習は続いたが、先生はその授業の間に戻ってこなかった。

 

 

 

 

 

放課後、俺と一夏は教室に残ってお互い少ない知識で復習をしていた。

あ、嘘。俺は前世の記憶があるから知識が少ないのはISに関してだけだ。

 

 

「あっ、織斑君に鳴神君。まだいたんですか?」

「先生方もお疲れ様です」

「誰のせいでこんなに遅くなったと思ってるんだ」

「スイマセン!!」

 

いや、マジですいません。

 

 

 

「そういえばどうしたんですか?山田先生」

「あっ、そうでした織斑君。寮の部屋が決まったんですよ」

「えっ?けど一週間は自宅から通うって………」

「お前のような者がもう一人出てきたからな。バラバラに通わせるよりも二人とも寮に入れた方が安全だという判断でこのような形になった。もう既に織斑の荷物は私が用意しておいた。鳴神は下着や寝間着類は準備してある。近いうちに家に戻って郵送しろ」

 

 

 

なんか俺と一夏の扱い違わない?一夏のついでな気が……

さすがブラコn…危ない!!

 

 

「本当に急な攻撃はやめて下さい」

「お前も私の一撃を一度だけでなく二度も受け止めているではないか」

「いやいや、生命の危険を感じれば誰でも止めれますよ」

「この一撃を止めるやつは代表候補生でもなかなかいないのだが?」

「じゃあ男の成せる技ってとこですかね。一夏は……ドンマイ☆」

「おいっ!!『ドンマイ☆』ってなんだよ!!」

「それはそうと寮の話はどうなったんですか?」

「そうでした!これが寮のカギです!!」

 

 

へー、俺の部屋は1050室かー

 

 

「蒼斗も1025室か?」

「いや、俺は1050室だな……二人とも一人部屋ですか?」

「鳴神君は一人部屋ですが、織斑君は二人部屋です」

 

 

えっ?なにそれ?

 

「一夏の部屋が二人部屋ならそこに男二人の方がいろいろいいんじゃないんですか?」

「ええと………」

 

山田先生はそう言って織斑先生をチラッと見る

 

 

あぁ。なんとなくわかった。

俺のことがまだ怪しい上に実力未知数だから貴重な一夏と一緒は危険ってことか………

後は隠しカメラ、盗聴機による情報収集ってとこか?

 

 

「お前たちの言いたいことは分かる。だがしばらくの間はこの部屋割でガマンしろ」

 

 

 

 

 

その後、山田先生から注意事項を聞いてこの日は下校した。

長い一日だった……と思っていたがこの日はもう少し長くなることを俺はまだ知らない




最後まで読んでくださりありがとうございます。


いやー、無事に今日の投稿も終わりました。
次回……ついに……あの人が出ます。(感想で予告はしたけど)


感想や指摘、説明が不十分なところがありましたら感想欄に書いてください。お待ちしてます


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生徒会長、襲来!!

ハロー、アイアム 上腕二十二頭筋。


感想や指摘が来るのは怖いけど、来ないのはもっと怖い今日この頃。
しかし返事を書くような時間も なかなか無いわけで……
少し返事が遅くなりますが、書いてくださった感想には必ず返すようにはします。

今回から投稿日時をちょっとずつ遅らせて行きます。
投稿するばかりで書き溜めておいた最新話の作成が著しく遅れていて……
このままだと追いつくのも時間の問題かもしれないです……




あーめんどい

 

俺たちが帰っている間、ずっとあとをつけている奴がいる。

 

 

「どうした、蒼斗?」

「あぁ、ゴメン。先帰ってて」

 

「なんか忘れたのか?」

「まぁそんなとこだ」

 

「じゃあまた後でな」

「おう、またな」

 

 

 

俺と一夏が別れて、別の道から帰る。

だがそいつは俺の後をつけている。

めんどいなーー……。一回、人がいないとこまでいくか。

 

 

 

 

 

 

夕日が落ちかけた時間、俺は屋上にいた。

ここはあまり人が来ない上に、この時間はほとんどの生徒が寮か食堂にいる。

 

 

 

「そろそろ出てきたらどうです?」

 

俺がそう言うと、一人の女性が水色の髪を揺らしながら出てきた。

IS学園の制服を着ているが、本当にそうかはわからない。

 

前世の時から初対面の相手には警戒してしまう癖が付いてしまっている上に、向こうは俺のことを尾行していた。

 

 

俺の警戒度は一瞬でMAXまで跳ね上がる。

 

 

するとその女生徒?は、急に何かを投げてきた。

 

 

「おおっと」

俺がつい反射的に体を横にずらし、それをキャッチする。

 

 

 

「………扇子?」

飛んできたのは閉じてある扇子だった…………なんで?

 

「おいっ………いないし」

 

さっきあの女がいた所を向くと誰もいなかった。

帰ったか?と思っていたら………

 

 

 

「っ!?」

 

急に後ろから手刀で襲いかかってきた。

俺はそれを扇子を横にしてで受ける………なんかシュールだな……

 

 

「いきなり扇子を投げるとかどういうセンス(・・・)してるんだよ」

「あなたはジョークのセンスがないらしいわね」

 

 

 

 

…………ちょっとヘコむ。

 

「そろそろあなたの名前を教えてもらえませんか?」

「………更識 楯無よ。」

 

 

 

えっ!?この人が?

 

「生徒会長がなにしてるんですか………」

「あらっ。おねーさんのこと知ってたのね。」

「まあ一応は」

 

 

入学前にいろいろ調べておいてよかった。

ん?

 

 

「えっ?更識?」

「そうだけど」

「どこかで聞いたような……」

 

 

 

確かドイツに行った時で……

 

 

「あっ思い出した!!確か日本の暗部の家だ!!」

「………知ってるの?」

「うん、このISのことで色々とドイツに聞きに行った時に少しね。」

「その盗難機を?」

 

 

 

知ってる?このシュバルツア・フラッメのことを

この盗難事件が起きたのは日本だからおかしくはないけど

 

 

「………仕事が早いな、どうせ織斑先生が頼んだんだろ」

「あら、よくわかったね」

「ちょっと考えればわかるさ。それにしてもこんなカワイイ子が暗部なんて世も末だな」

「それって褒めてるの?」

 

「褒めてる、褒めてる。そんで?生徒会長は急に襲ったりして俺をどうしたいの?」

「それはあなたを今からどうしたいかっていう質問?」

「最終的にどうしたいかってこと」

「私の意見としては裏の組織と繋がりがある可能性があるあなたをすぐにでも退学にしたいところね」

 

 

 

 

更識 楯無side

 

「私の意見としては裏の組織と繋がりがある可能性があるあなたをすぐにでも退学にしたいところね」

 

私はアイツにそう言ってやった。

 

 

すると………彼は少し悲しそうな顔をした。

 

 

まるであの子のように…………

たった一人の妹との仲が悪くなったあの日の妹のような顔をした。

 

 

 

 

どうして?

どうしてあなたがそんな顔をするの?

 

 

 

どうしてそんな悲しい目でわたしを見るの?

 

 

「退学にしたいのでしたらいつでもいいですよ、今日は疲れたので失礼します。」

「あっ……」

 

 

 

私は彼の顔を直接見れなかった

 

 

 

 

見たら………負けてしまいそうだったから………………

 

 

 

彼に………謝ってしまいそうだったから………………

 

 

 

 

 

織斑 一夏 side

 

蒼斗と別れた後、部屋に入ったら箒がシャワーに入っていた。

その現場を目撃してしまって、ドアがボロボロになるほどに攻撃された。

 

 

 

一時避難するために蒼斗の部屋に行こうとすると………

 

「あっ!千冬姉」

「織斑先生と……まぁ今はいいか。お前はこんなとこて何をしていた?」

「実は箒といろいろあって………。それで蒼斗の部屋に行くところだったんだけど……道に迷っちゃって」

 

すると千冬姉は顔を少ししかめた

 

 

 

「一夏、お前の姉として言わせてもらう。鳴神とは関わるな」

 

 

 

俺は一瞬、千冬姉がなにを言っているかわからなかった。

 

「どうしてだよ!!千冬姉!!」

「……私には教師という立場がある。だから詳しいことは言えない。だが現時点でのアイツは危険だ」

 

そう言って千冬姉は俺の横を通っていった。

 

 

 

 

 

この後俺は千冬姉の言うことを無視して、蒼斗のとこへ行ったが留守で食堂にもいなかった。

 

 

 

明日は少し蒼斗と話そう

そう思ってその日は部屋に戻った。

 

 

 

だが、次の日の一年一組の教室。

蒼斗の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

鳴神 蒼斗 side

 

「私の意見としては裏の組織と繋がりがある可能性があるあなたをすぐにでも退学にしたいところね」

 

 

この言葉を聞いて、今まで抑えていた負の感情が一気に溢れてきた。

 

 

 

どうして俺は報われないのか

 

 

どうして俺は憎まれるのか

 

 

 

 

なにもわからなくなった

 

 

 

俺が転生した理由も

俺がISを使える理由も

俺がここ(IS学園)にいる理由も

 

 

 

 

-----俺が生きている理由も

 

 

なにもわからなくなった

 

 

「退学にしたいのでしたらいつでもいいですよ、今日は疲れたので失礼します。」

 

 

 

苦し紛れだった。

織斑先生との話も更識先輩との話の時もごまかしたり出来たが、俺は精神的に本当に疲れていた。

 

 

 

気がつくと、1050室の前にいた。

一人部屋と聞いていたのでノックもせずに入る。

そして俺は荷ほどきもせずにベットに崩れ落ちた。

 

 

俺は一人で泣いた。

 

その泣いている姿は、誰にも気づかれず そして盗聴機や監視カメラからも記録されなかった。

 

 

 

 

織斑 一夏 side

 

蒼斗が来なかった一日を終えて、俺は蒼斗の部屋に行った。

昨日の時間はいなかったけど、学校を休んだなら一日中寮にいるはずだ。

 

 

「蒼斗!!いるのか?」

 

俺は少し強めにドアを叩く。

 

 

「俺はお前と話がしたいんだ!!」

 

俺がそう言うと、内側からコンコンっと2回ドアが叩かれた。

それは、『ここにいる』ということを示していた。

 

 

「蒼斗!昨日 何があったんだ!!」

「織斑先生から聞いてないのか?」

 

蒼斗はささやくような声で答えた。

 

 

「千冬姉がお前に何を言ったんだ?」

「織斑先生()なにも言ってない。だがこの学園の意見は聞いた」

「学園の意見?」

「そうだ。怪しい俺は今すぐ退学させたいらしい」

「なんでそうなるんだよ!!」

「当然だ。俺のようなどこのスパイかもわからないような奴はさっさと退学してもらった方がいいに決まってる」

「お前はそれでいいのかよ!!」

「俺は別にいい、だって俺は……………………

 

 

 

 

 

生きる意味がーーーーーわからなくなったんだ。

 

 

「なんで…………そんなことが言えるんだよ」

「俺は小さい時から少し大人のような振る舞いをしていた。その雰囲気が原因で少しいじめを受けていたんだ。

 

 

だがそれは気にしてはいなかった。俺には………夢があった……………」

 

 

そう言った時の蒼斗の声は優しかった。

 

 

 

「俺の夢は誰かを守れるような人になることだ。誰かのために生きて、誰かのために死んでいけるような人になりたかった…………

 

 

 

 

 

…………でもその夢をISが奪っていったんだ

 

 

 

ISは…………俺から夢を奪い、進路も奪い………そしてもうすぐ俺の未来も奪うだろう。もし俺が退学したらおそらく研究所送りだからな…………」

 

 

 

「お前はそれでいいのか?」

「もちろん良くはない。けどこれは俺が招いたことなんだ。悪いのは俺。文句なんか………言えない」

 

 

 

 

 

「じゃあ、なんで泣いてるんだ?」

 

 

 

俺は蒼斗が泣いていることに気づいていた。

 

「っ⁉︎」

「本当は嫌なんだろ?本当は好きなところで好きな事がしたいんだろ?本当は「うるさい!!」」

 

 

そう言うとドアが空き、蒼斗が出てくる。

メガネは外してあり、鋭い目で俺を見る。

 

「ああ、そうだよ!俺は研究所なんか行きたくない!!

遊んだり、ふざけてたり、甘い物を食べていたい!!

 

 

 

…………でも、どうすることも出来ないんだ」

 

 

 

 

「蒼斗…………」

「もう邪魔だ。失せろ」

 

 

そう言うと、蒼斗はドアを閉めてカギをかけた。

 

 

…………でも俺は蒼斗の事がよりわかった気がした。

 

その次の日、俺は千冬姉との話し合いの場を作ってもらえるように頼んだ。

 

 

そしてクラス代表決定戦の2日前、

 

 

 

 

俺は千冬姉に俺の意見をぶつけた

 

 

 




最後まで読んでくださりありがとうございます。

登場しましたね、生徒会長。
出会いは最悪な感じにしてみました。
けどそんなに仲が悪いままだと話が進まないので直ぐにいい感じにすると思います。


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不器用な人間

こんちわっす、上腕二十二頭筋です。

あたまいたーい。熱もありますが頑張っております。


部活が面倒くさすぎる。やっぱ体育会系の部活に入るべきでは無かったと後悔しております。


鳴神 蒼斗 side

 

クラス代表決定戦の一日前、

いま俺は整備室に向かっている。

 

学校はまだ登校してない。

結局、始業式と少しの授業をした初日しか行っていない

 

 

俺が整備室に向かっている理由はメンテナンスだ。

取り調べの時も言ったが、かれこれ一年近く『黒炎』は使ってない(織斑先生の取り調べを除く)から正直怖い。

 

だからと言って『学校に来ないのに整備室には行くのか』みたいな目で見られるのは嫌だ。

 

 

 

そのために寝ているふりをして、監視カメラに見つからないように抜け出し、本来なら授業中のこの時間に整備室でメンテナンスを終わらせてしまおうと言うわけだ。

 

 

「あー、やっと着いたよ。IS学園(ココ)無駄に広いからたい……へ………」

 

 

そこには先客がいた。

しかも生徒会長にそっくり

 

 

「……ども」

 

 

とりあえず挨拶してみる

 

「…………なにしてるの?」

「そう言う君だって授業中にこんなとこでISいじってるじゃないか」

「…………あなたは確か引きこもりの二人目」

 

 

案の定、そういう目で見られる

 

 

 

「それを言うなら、君だって生徒会長の妹だろ?」

「…………知ってるの?」

「うん。生徒会長が入学初日にわざわざ挨拶に来てくれた」

 

 

 

「…………比べたいなら比べればいい」

「は?」

「おねぇちゃんはなんでも出来る、けど私はその人の足下にも及ばない、同じ姉妹なのに」

「それは違うと思う」

「えっ?」

 

「まず誤解を解こう。俺は絶対に生徒会長とお前を比べたりしない。初日に会った時にボロクソ言われた位だからな」

「あなたも?」

「えっ?じゃあ妹さんも?」

「……………妹さんはやめて、私には簪っていう名前がある」

「ゴメン、簪さん」

「『さん 』もいらない」

「じゃあ簪。簪もボロクソ言われたの?」

「ボロクソって……『私が全部してあげるからあなたは無能なままでいなさい』って言われた」

 

「そっか、なんか羨ましいな」

「えっ?」

 

 

「それだけ簪の事を想ってるってことだろ?お前の事が可愛くて仕方がないから。俺なんか『お前みたいな怪しい奴は学園から出て行ってもらいたい』って感じの事を言われたよ」

「………なんで?」

「実は俺、専用機を持ってるんだ」

「⁉︎」

「それも入学前に。しかも他国の機体。だから怪しい、だから出て行けってとこかな?」

 

 

 

「…………………」

「そんな俺と違って簪は楯無さんに心配されて羨ましいと思ったよ」

「私が?」

「うん。……あのさ、簪。簪は楯無さんの事どう思ってる?」

「私は……」

「別に言いたくないなら言わなくてもいいよ。俺は……生徒会長は好きじゃないな」

「っ⁉︎」

「うん、生徒会長(・・・・)は。生徒会長としてのあの人は苦手だ。けど楯無さんのことは好きだよ。」

 

 

「どうして?」

「あの人はここの生徒を守るために一生懸命になれる素敵な人だと思う。もちろん、簪の事も。

きっと……あの人は………

 

 

 

不器用なだけなんだよ」

 

 

「不器用?」

「さっきの話を聞いてて本当にそう思ったよ。言い方が悪かっただけで楯無さんは簪のことを本当に想ってるんだよ。きっとどんな生徒のことより簪のことを一番に想ってると思うよ。」

「お姉ちゃんが……」

「………いつまでそこで隠れてるんですか?」

 

 

 

俺がそう言うと、入り口のドアの近くで俺らの話を聞いていた楯無さんが入ってきた。

 

「⁉︎ お姉ちゃん?」

「さすがね、蒼斗君。こんなとこで何を?」

「本当は、黒炎のメンテナンスで来たんですけど……少し立ち話を。そういうあなたは授業を抜け出して何を?」

「……………あなたに用があって来たの」

 

 

俺に用がある?

 

「俺に?簪にじゃなくてですか?不器用な楯無さん」

「あなたには言われたくないなー」

「は?なんでですか?」

「昨日 一夏くんがあなたのことを不器用って言ってたらしいの」

「えっ?」

 

 

「『自分の生き方に不器用なだけなんだー』って具合に」

「自分の生き方に不器用……か。否定は出来ません」

「人の事言う前に自分の事も考えなさい」

 

 

 

楯無さんの言う通り、転生してからの俺は前世と比べて、より生きにくくなったように思える。

それより今は、目の前の楯無さんが不自然に思えてきた。

 

 

 

「……………」

「あらっ?どうしたの?」

「この前と随分雰囲気が違いますね……何の用ですか?」

「………鋭いね。実は今回は-----

 

 

 

 

 

-----あなたに謝りに来たの」

 

「えっ?俺って謝られるようなことされましたっけ?」

「………そういうところとか変わったわね」

「そうですか?」

「あの日は、もっと皮肉っぽい言い方だったのだけど」

「その時はすいませんでした。ところでどうして謝罪なんか………」

 

 

「実はあなたが今住んでる寮には監視カメラが「知ってます」……そしてその日から今日まで、何をしてきたのか見させてもらったわ」

「はい」

「あの日の一夏くんとのやりとりも見たの」

 

 

 

しまった。あの時は忘れてた

 

「あの日って……………」

「そうよ、あの時私はあなたの本心を見た。あなたの覚悟を見た。そしてあなたがISの犠牲者であることも知った」

「………」

「そして私はあの時の発言を深く反省した。だから謝罪をしに来たの……本当に………本当にゴメンなさい」

 

 

そう言って楯無さんは頭を下げる。

 

「やめてください、楯無さん。顔を上げて下さいよ」

「それともう一つ、あなたに提案があるの」

「提案?」

 

 

 

「私と勝負してみない?」

「勝負?」

 

 

そう言って楯無さんは『挑戦状!!』と書かれた扇子を開いた。

 

 

「ええ、ISを使っての勝負。ただし、私が勝ったら私の質問に答えてもらおうかしら」

「……………俺が勝ったら?」

 

 

 

 

 

 

 

「私の従者として働かない?」

 

 

 

俺は楯無さんが何を言っているのかわからなかった。

 

 

「えっと……それって俺にメリットあります?」

「あなたはあの日にこう言ったわ、『誰かを守れるような人になりたい。誰かのために生き、誰かのために死にたい』とね。

私の従者になれば研究所送りはなくなり、あなたの夢も達成できるってわけ」

「そういうことですか…………」

 

 

そう言った楯無さんの眼は、どこか前世の主と似ていた。

 

「確かに楯無さんのような志を持つ人なら命をかけてもいいかもしれませんね」

「従者が私に惚れちゃダメよ」

「楯無さんみたいな可愛い人に惚れない人がいるなら見てみたいですよ」

「お姉さんをからかわないの。で?どうするの?」

 

「じゃあ、今から言う3つの事を守るなら試合をしてもイイですよ」

「何かしら?」

「1つ目に、俺のメンテナンスが終わってから試合をすること。

2つ目に、完全非公開の試合にすること

 

 

 

最後に、そっちが勝ったら質問を5個していい代わりに、俺が勝ったら一つお願いを聞いてください。」

 

 

楯無さんはわかったと返事をして、俺はメンテナンスに取り掛かった。

 

メンテナンスは簪にも手伝ってもらったおかげで早く終わった

 

アリーナには俺と楯無さん、そしてピットには簪が見ている。

 

俺は黒炎を装着してアリーナ中央に行くと、そこには「霧纏いの淑女」(ミステリアス・レイディ)を着けた楯無さんが待ち構えていた。

 

 

俺はいつも持っている飴を3つ取り出して、口に入れた。

 

飴を噛み砕き、飲み込んでこう言った。

 

 

「さあ、始めようか」




最後まで読んでくださりありがとうございます。

本文で蒼斗君は楯無さんが好きだと言ってますが、loveではなくlikeの方です。

あと、簪にフラグは立ちません。ヒロインは楯無さん一択です。


感想、指摘お待ちしてます。


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VS学園最強

ドモ、上腕二十二頭筋です。


すんません、携帯没収の可能性がありますので早めにストックを使い切りたいです。




更識 楯無side

 

蒼斗君は、試合が始まる前に飴を3つ取り出して食べた。

 

あれはただの飴ではない。

 

 

 

彼の実家から大量に送られてきていたので調べてみると、糖分の量が半端じゃなかった。

 

 

 

 

…………確か家の人に食べさせたら2秒で吐き出してたっけ

 

そんなことを思ってると、彼がこう言った。

 

 

「さあ、始めようか」

 

 

いつもの彼とは違う雰囲気の彼が出てくる

そんな彼に私はこう言った。

 

 

「いつでも来なさい」

 

相手はスペックが謎の盗難機。始めのうちは様子をみた方がいいだろう

 

 

 

「それじゃあ行きます………よ!!」

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

遅い。すごく遅い。

 

「ちょっと?ふざけてるのかしら?」

「ふざけてなんかいませんよ。始めはこの速度が最高です」

 

 

どうやら本気らしい

 

「だから最初は、守りに徹したかったんですが………」

「じゃあおねえさんからも行きましょうか」

 

 

私は瞬間加速(イグニッションブースト)を使って奇襲をかける

 

 

静と動を完全に使い分けた攻撃は並の操縦者なら完全に決まる。

 

だが金属と金属がぶつかる音がするだけで、攻撃は彼に当たらない。

 

 

 

 

気がつくと、彼は大きな鎌を持っていた。

展開速度は 少なくともISを5回しか使ったことのない人には出来ないほどの速さ。

 

 

 

 

「流石ね。」

「いやー、自分でも止められると思いませんでしたよ」

 

 

 

 

 

…………嘘つきがいる。

 

 

 

今の状況は、瞬間加速(イグニッションブースト)を使っての突きを鎌の柄の部分でランス、『蒼流旋』を下に逸らされた状態。

 

 

ISでは、あまり鎌やハンマーは好まれていない。

地に足を着けない空中では重心の取り方が難しく安定しない。

そして、ISの最大の特徴の機動力が落ちるからだ。

 

 

つまり、体勢を崩せば元に戻すのは難しい。

 

 

「なら、コレで!!」

私は『蒼流旋』を上に勢いよく振り上げて、鎌にぶつける。

 

 

 

コレで彼は、鎌を持っている両腕を上に持ち上げ、バンザイをしている状態になる。

 

 

「やあ!!」

そして、体勢の崩れた彼に『蒼流旋』で一撃を与える

 

 

はずだった。

 

「まだまだですね」

「えっ!?」

 

 

すると腹部に強い衝撃を受けた。

 

 

「がはっ!!」

 

思いがけない攻撃に息を全て吐き出してしまう。

 

 

 

その攻撃は一瞬のことだった。

私は確かに鎌ごと彼の体勢を崩した。宙に浮いている状態で体勢を立て直すことは不可能。

 

そう判断した彼は、弾かれた腕が一番上になった瞬間、一瞬で鎌を量子変換した。そしてその後、拡散弾(ショットガン)を両手に一つずつコール、振り上げられた腕を一回転させて、私の腹部に発射。

 

 

高速切替(ラピッドスイッチ)?」

 

彼が使ったのはかなりの高等技術。

そして拡張領域(バススロット)が小さく、武器数が少ない第三世代機には出来ない技術。

 

しかも彼は武器を変え、剣を二本持っている。

 

 

「一体いくつ武器があるの?」

「さぁ?」

 

やはり彼の機体も技術も普通ではない。

 

そう思っていると、彼の方から切りかかってきた。

最初とは明らかに違うスピードで

 

 

なぜ最初とスピードが変わるの?

 

考えに夢中で防御が遅れてしまった。

彼の振り下ろした剣を私は思わずランスで防ぐ

 

 

 

「きゃっ!?」

 

またもや高速切替(ラピッドスイッチ)を使い、剣を鎌に変える。

 

 

剣の刃なら止められる防御も、鎌の曲がった刃なら防御は出来ない。

 

私はすぐに体勢を立て直し、次の攻撃に備えた。

 

 

 

 

その後は一進一退の攻防が続いた。

私がガトリングを打っても、蒼斗君は盾でガードする。

何発かは当たっているが、段々速くなる機体が相手では逆効果だ。

 

私も向こうの攻撃に対して少しずつ対応が出来てきている

 

だがこのままでは負けてしまうだろう。

この状況を打開するためには…………

 

 

 

 

 

清き熱情(クリア・パッション)

 

霧纏いの淑女(ミステリアス・レイディ)の操る起爆性ナノマシンを含んだ水蒸気を爆発させる攻撃。

 

(屋外だと上手くいかないことが多いけど この天気なら……)

 

 

清き熱情(クリア・パッション)は、水蒸気を操るため、風の影響を受けやすい。

 

だがこの日の天気は、晴天で風はほとんど吹いていない。

 

 

そこで、水蒸気を散布しながら、ガトリングでけん制する。

 

 

 

 

 

そして彼の周りに水蒸気を集める。

 

「ねえ?今日暑くない?」

「そうですか?少し寒いと思いますよ?」

 

 

 

こんな時にも皮肉……

 

「不快指数っていうのは湿度に依存するのよ。

----ねえ(・・)今日湿度が高くない(・・・・・・・・・)?」

「っ!?」

 

彼はようやく気付いたのか、飛び出す構えを見せる。

 

彼が飛び出すその前に、私は指を ぱちんっ、と鳴らして清き熱情(クリア・パッション)を発動させる。

 

 

 

----だが清き熱情(クリア・パッション)が発動する前に彼は瞬間加速(イグニッション・ブースト)で突進して来た。

 

否、清き熱情は(クリア・パッション)は発動しなかったのだ。

 

 

「えっ?」

 

反応が少し遅れたが、彼のショットガンが当たる直前に水のヴェールで防ぐことができた。

 

そして防いだと同時に、彼の後ろで清き熱情(クリア・パッション)の爆発が起きる。

 

 

 

「ちょっと、蒼斗君?何をしたの?」

「何かする暇がありましたか?」

 

 

事実、その通りなのだ。

あの一瞬で何かをする余裕はなかったはず。

それでも清き熱情(クリア・パッション)が発動しなかった。

 

(どうして清き熱情(クリア・パッション)の発動がおくれたの………?)

 

 

 

 

 

すると彼の方から私に話しかけて来た。

 

「こんなに長期戦になるとは………思いま……せんでしたよ……」

「なんで息が切れてるの?」

 

 

ISの操縦で息は切れない。

動くのはISであり、人ではない。

 

 

「まぁどちらにせよ先輩のシールドエネルギーも残りわずかじゃないんですか?」

「……………」

「沈黙は肯定ということでいいですか?」

「ハア、わかったわ。次の一撃で決めましょう」

 

そして私は、水を全て『蒼流旋』に集めて力を溜める。

彼も、あの鎌が紅く輝きだし、黒い炎が上がる。

 

 

 

 

「ミステリアス・レイディの最大火力、受けてみなさい」

「この一撃で決める!!!」

 

「ミストルテインの槍、発動!!」

死と闇の(デス)……………(サイズ)!!!」

 

 

更識 簪 side

 

 

正直言って、この対決をするのは無謀だと思った。

 

お姉ちゃんの強さは知っている。

国家代表を相手に戦うなんて………アホ? と思っていた。

 

 

でも、彼の動きはお姉ちゃんに負けていなかった。

 

私も一応 代表候補生だ。

お互いの動きの凄さはなんとなくわかる。

お姉ちゃんは確かに強い。

でもその一手先を読んだ…………えっと…………

 

 

 

 

そういえば名前聞いてない…………

うん、あの人もすごい。

 

 

そして勝負も終盤。

一見、彼の方が有利そうだけど…………次で両方とも決めるつもりだ。

 

お姉ちゃんの『ミストルテインの槍』と

彼の『死と闇の鎌』(デスサイズ)が発動する。

 

まずお姉ちゃんのチャージが終わり、彼に突っ込んで行く。

 

 

でも彼はお姉ちゃんが動き始めたと同時に、右腕を前に出し、黒い球体を作り出す。

 

 

お姉ちゃんのシールド・エネルギーがほとんどなく、水のヴェールも『ミストルテインの槍』にナノマシンを与えているので使えない。

 

 

なのでお姉ちゃんは、その黒い球体を突破してあの人を倒そうとする。彼もその球体に吸い込まれるようにして中へ入ってくる。

 

 

 

そして二人がその球体に入った瞬間、その球体は段々 膨張していく。膨張していった黒い球体は、アリーナの半分くらいの大きさになったところで破裂する。

 

そこからはISを纏っているが、力なく落ちていく楯無(お姉ちゃん)だった。

 

「お、お姉ちゃん!!」

 

 

私は思わず叫んでいた。

 

 

だが、お姉ちゃんが地面にぶつかる前に上から来た黒い機体………黒炎に乗ったあの人がお姫様抱っこで抱きかかえる。

 

 

 

 

「…………一回ピットまで運ぶか」

 

 

 

 

そう言って彼はピットに戻ってきた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

蒼斗さんつえぇ。無双しましたね。

前書きにもありますように完全に没収される可能性(あくまで可能性)がありますので投稿のペース上げます。


感想、指摘お待ちしてます。


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試合後

どもども、上腕二十二頭筋です。

前回も言ったとおり携帯没収の可能性があるのでスピードアップでお送り致します。


予告なく投稿が遅れたら、没収されたか社会的に抹殺されたと思ってください。(比喩ではないっす)


鳴神 蒼斗 side

 

試合を終えた俺は、ピットに戻った。

ピットには簪が待っていてくれた。

 

 

ここまで運んでくる途中で楯無さんのISは解除されていた。

楯無さんを降ろすために、俺はISを解除する。

 

するとISのアームでお姫様抱っこしていた楯無さんを俺の両腕で支えるわけであって………………

 

 

 

考えるな。そして感じるな。

 

 

 

さっきの対戦の疲れで、俺は一瞬よろける。

 

「おぉっと」

「大丈夫?」

 

このままだと危ないと思い一度楯無さんをベンチに寝かせて、飴を5個口に入れて噛み砕いた。

 

 

ーーー疲れた脳に糖分が染みる〜。

 

 

「簪、楯無さんを保健室に運んだ方がいいかな?」

「……うーん、でもここに置いておくのはあんまり良くないと思う」

「そうだよな………」

 

「そういえば………「ん?」まだあなたの名前聞いてない」

 

 

あーー………確かに自己紹介しなかったかも

 

 

 

「そうだったね、俺は鳴神 蒼斗。俺のことも名前で呼んでくれ」

「わかった、蒼斗」

「じゃあ糖分補給したし、楯無さんを保健室まで運ぶか」

 

 

そう言って、楯無さんをおんぶで運ぼうとする。

だが、意識を失っている楯無さんをおんぶしようとしても、安定性がなくて危ない。

これは……………

 

 

「……………お姫様抱っこしかない」

 

 

やめろ!!簪!!俺が思ってたことを口にするな!!!ニヤニヤしながらこっちみるな!!

 

 

「えっ?ガチで?」

「蒼斗が勝ったってことは、お姉ちゃんの従者になったってことじゃないの?従者なら問題ない」

 

 

はっ!忘れてた………。だとしても問題はあるけどな、主に俺のメンタルとか

 

「まあいいや、じゃあ保健室まで運んで来る」

 

そう簪に言って、俺は楯無さんを保健室まで運ぶことにした。

 

って言っても、アリーナに隣接してある簡易保健室だけど。簡易とはいえ、普通の高校の保健室と同じ設備がある。もちろんベッドも

 

 

----医療室にはどんな設備があるんだろう……

 

 

そんなどうでもいいことを考えて気を紛らわしていると、保健室に着いた。

 

楯無さんをベッドに下ろした瞬間、一気に(肉体的にも精神的にも)疲れが来て、そこで意識は途切れた。

 

 

 

 

更識 楯無 side

 

 

彼との試合は完敗と言ってよかった。

彼に致命打は与えられず、最後の『爆発(・・)』も、私の霧纏いの淑女(ミステリアス・レイディ)のダメージレベルがCになるほどの威力だったのに、彼のISには まだシールドエネルギーが残っていた。

 

私はゆっくりと下に落ちていく感覚を感じて、体の疲れに身を任せるように目を閉じた。

 

 

 

 

 

気がついて眼を開けると白い天井。下がベッドだから保健室まで誰かが運んだのだろう。

一回、起きてみよう…………

 

そう思っていると、太ももと腰、腹部に違和感を感じる。

太ももと腰には、下に何かがあるような感覚。腹部には、逆に上に何かがあるような感覚。その感覚に気づいた私は、上体を起こして状況を確認する。 

 

 

「え?」

 

そこにいたのは黒い髪の男の人。

 

 

?????

私の意識が無い間に何が起きたの・・・・?

 

 

よく見てみると、その人は寝ている蒼斗くんだった。

 

…………考えてみたら、この学校の男性は限られていたわね

 

 

彼は私の腰と太ももの下に腕を、私の腹部に頭を乗せている。顔はこちらに向けており、いつもと違う雰囲気の彼にドキッとする。

雰囲気が違うと思っていたら、彼に眼鏡がないことに気づく。彼の眼鏡は私の手の届く位置に落ちていた。私はその眼鏡を拾ってみる。

 

すると眼鏡を取る時の動きに気付いたのか、彼がゆっくりと動き始める。私はとっさに眼鏡を隠した。

すると彼は目をこすってこちらを見る。

 

 

 

 

「お目覚め?」

私がそう言うと、彼は完全にフリーズしたように固まる。

 

数秒経って、ぼんっと音が鳴って、彼の顔は真っ赤になる。

あれっ?彼ってこんな人だっけ?

 

 

「ど、どうしました?楯無さん」

「いや、いつもと雰囲気違うなーって」

 

彼の顔はまだ赤い

 

「雰囲気?……………あ〜〜〜〜〜!!!」

「わっ!ビックリした。どうしたの?」

「眼鏡がないんです………」

「眼鏡?」

 

とりあえず眼鏡を私が隠していることに気付いていないようだ。

 

「蒼斗君の裸眼の視力ってどれくらいなの?」

「………視力は問題ないんです。ただ……」

「ただ?」

 

 

 

「眼鏡で少しキャラが変わるんです………」

「えっ?どういうこと?」

「正確には眼鏡をかけると冷静になれるんです。頭の回転が良くなるというか………。

だから眼鏡をかけないと本心が出たりして……」

 

 

そう言いながら顔を赤らめてうつむく蒼斗君は少し可愛かった。

そんな彼を見て、私はクスッと笑う。

 

 

「ちょっと!!何笑ってるんですか!?」

「ふふっ」

 

彼が生徒会長より、(楯無)の方が好きと言ったように、

私も、眼鏡がある蒼斗君よりも眼鏡のない蒼斗君の方が素直で可愛くて…………好きだなぁと思った。

 

 

 

「お探し物はこれですか?」

 

私は彼の眼鏡を取り出す。

 

「あっ!!楯無さんが持ってたんですか? 返して下さい!!」

 

彼は眼鏡に手をのばす、が

 

「だーめ」

と言って眼鏡をすっと後ろに隠す。

 

 

「私のお願いを一つ聞いてくれればイイわよ」

「………なんですか?」

 

 

これを機に普段の彼なら絶対に断るようなことをしてもらう

 

 

「そうね………この勝負で蒼斗君は私の従者になったのよね?」

「……はい」

「なら私のことを『楯無お嬢様』と呼んでみなさい♪」

 

ビシッ、という音が出る位の勢いで彼を指差す。

 

 

 

「………なんでそうなるんですか?」

更識()の従者の虚ちゃんは、よく私のことを『お嬢様』って言うのよ。それをあなたにしてもらいたいって事よ?」

「なんで疑問形なんですか………」

 

 

「別に公衆の面前で言えってことじゃ無いの、ただ今だけ言ってくれればいいのよ」

「う〜ん………」

 

 

彼は少し悩んでいるようだ。

こんなわかりやすく悩む彼を見るのは始めてだ。

 

 

「わかりました………。じゃあやりますよ………」

 

ついに覚悟を決めたようだ。

 

 

 

 

 

「た、楯無………

おじょ…う……さ………ま……」

 

彼は恥ずかしさを堪えながらも言った。

いつもとのギャップが激しくてつい私の頬も赤くなってしまう。

 

 

 

 

----でも

 

「甘い!!」

「えっ?」

「こんなのじゃダメよ〜〜。もっとはっきり言ってくれ無いとわかんないな〜〜?」

 

 

 

 

----その後楯無から2時間近く『お嬢様』の練習を受けた蒼斗であった




最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回はちょっと短めでした。

一応言っておきますが、楯無さんの好きも現段階ではlikeです。


感想、指摘お待ちしてます。


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試合後2と代表決定戦

ニーハオ、上腕二十二頭筋です。


明後日、中国行ってきまーす。
そのまま天国逝ってきまーす(笑)


なので明後日から数日、投稿がないかもです。
生きて帰って来れたら次回の投稿がある……かも。



鳴神 蒼斗 side

 

 

楯無さんから『お嬢様』で遊ばれて、やっと眼鏡を取り返した。

俺はすぐに眼鏡をかける、するとさっきまでの行動の恥ずかしさを改めて実感する。

 

 

----まあ、顔には出さないけど

あれっ?そういえば………

 

 

「楯無さん」

「んっ?何かな?」

「従者ってそんなにポンポン決めちゃっていいんですか?」

 

前世ではもっといろんなことをしてから従者になれたのだが………

 

 

 

「本当に鋭いね。だから正式に更識家に挨拶に行って、認められるまでは君は一般人扱いだよ。」

「じゃあさっきまでのなんだったんですか⁉︎」

「別に眼鏡がいらなかったならやらなくても良かったけど」

 

 

くそ、ダメだ。勝てない……

この状況を変えるには………そうだ!!

 

 

少しからかってやろう……………

 

 

 

「楯無さん………」

 

そう言って、俺は立っている楯無さんを壁に追い詰めて、彼女の顔の横の壁に手を付ける。

 

 

 

いわゆる『壁ドン』って奴だ。

 

 

「ちょっ⁉︎蒼斗君!?」

 

「試合前に………『俺が勝ったらお願いを一つ聞く』って言う約束したの覚えてますか?」

 

「え、ええ。」

 

 

 

 

 

「じゃあ………。一個、お願い聞いて下さい」

 

そう言って、俺は楯無さんの顎をくいっ、と上げてこちらを向かせる。

 

 

 

「お、お姉さんをからかっちゃダメよ……」

 

楯無さんの顔が赤くなって行く。

 

 

 

「照れてる楯無さんも可愛いですよ。」

 

 

 

二人っきりの保健室でこんなことをされた楯無さんは、こちらを直視できないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が次の手を出そうとした瞬間、保健室のドアが開く。

 

 

 

入ってきたのは----簪だった。

 

 

 

 

 

「か、簪ちゃん?」

 

「お姉ちゃん?蒼斗?何してたの?」

 

 

 

なんだこの修羅場。昼ドラかよ。

 

 

 

 

「ちょっと楯無さんをからかい返しただけだよ、簪。

それと………試合前の約束を守ってもらおうと思ってね」

 

 

「なるほど、わかった」

 

 

 

 

 

 

どうやらわかってくれたらしい----「なら邪魔者は先帰るね。」----前言撤回、わかってなかった。

 

 

 

 

 

「待ってよ、簪。今から言うお願いには簪にも関係あるからさ」

 

「私?」

 

 

「なぜなら俺からのお願い、それは----

 

 

 

 

 

 

 

 

----『楯無さんと簪が二人っきりでいること』だからね」

「「えっ?」」

 

 

すげぇ、ハモった。

 

 

「えっと〜………蒼斗君?これはどういうことかな?」

 

「その言葉通りですよ。二人っきりで一時間くらい一緒にいるだけです。

別に二人で話をしてもいい、何もしなくてもいい、

そして仲直りをしてもいい(・・・・・・・・・)ただそれだけです。」

 

「そんなの急に「あー!!宿題忘れてたーー!!一回退室しまーーーす。」」

 

俺はわざとらしい嘘で逃げ出す。

 

 

 

 

 

----頑張れ、二人とも

 

 

 

 

 

更識 楯無 side

 

 

蒼斗君はまだ午前中で、学校を一週間近くサボっているにもかかわらず、宿題を理由に保健室を出た。

 

ウソにしてもひどすぎる………

 

 

 

彼は『仲直り』を強調して、簪ちゃんとの仲を元に戻そうとしているけど、この状況は気まずい。

 

 

 

とにかく何か話さないと!!

 

 

 

「「あ、あのさっ!!」」

 

こちらが話そうとした時に簪ちゃんも同時に話しかけてきた。

 

 

 

 

「な、何?どうしたの、簪ちゃん?」

 

「お、お姉ちゃんこそ」

 

 

特に話すことはなかったけど話しかけたなんて言えない!

 

そう思いながらも簪ちゃんと譲り合いをしていると、簪ちゃんが急にクスクスと笑い始めた。

 

 

「ど、どうしたの?簪ちゃん?」

 

 

「お姉ちゃんも私も、蒼斗の言うとおり不器用なんだなーって思って」

「えっ?」

 

 

 

 

 

「私はね、本当は話すことなんてなかったんだよ」

 

 

 

「簪ちゃんも?」

「やっぱり、お姉ちゃんも無かったんだよね?

「うっ、」

 

「お姉ちゃんが必死になって、私に話を譲ってたからもしかして……と思ってね」

 

 

 

 

私は驚いた。

昨日まで私との距離を遠ざけていた簪ちゃんが、こんなにも私に話しかけてくれた。

 

これは………やはり…………

 

 

 

----蒼斗君()のおかげなのかな

 

 

 

「お姉ちゃん、ゴメンね。今までお姉ちゃんのこと避けてた」

「ううん。謝るのは私の方。あんな酷いこと言ってゴメンなさい」

 

 

 

 

 

それから私たちは、さっきまで話すことがなかったのが嘘のようにずっと話し続けていた。

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん」

「なに?簪ちゃん」

 

 

 

「私たち………似たもの同士なんだね」

「決まってるでしょ……だって私たち………

 

 

 

 

 

 

 

 

姉妹なんだから

 

 

 

 

 

 

鳴神 蒼斗 side

 

保健室を出てすぐに、あることに気づいた。

 

 

 

なんもすることが無い!!

 

学校サボってる俺に宿題は無いし、さっきの試合の疲れが取れない………

とりあえず、疲れを取るために部屋で寝ることにした。

 

 

 

 

 

俺が起きた時、疲れはほとんど取れていた。

 

 

あー………だいたい1時間半くらい寝てたな。

 

 

 

 

簪と楯無さんだい……じょ………

 

 

しまった。1時間過ぎてるじゃん………

 

 

 

 

俺は急いで、保健室まで戻るために走り出す

これで双方だんまりのままの+30分だったら、半殺しにされる気がする………

 

 

 

 

そんな事を考えていると、保健室に着く。

俺はおそるおそるドアを開けると、楯無さんと簪が仲良く話しているのが見えた。

 

 

 

 

良かった。仲直りできてた。

 

「来るの遅くてすいませんでした」

「あら、蒼斗君。本当に遅かったね」

「蒼斗………寝てたの?」

 

 

 

なぜかバレてる………

 

「………ハイ、寝てました」

「やっぱり」

「なんでわかったの?」

 

 

そう言うと、簪は自分の眼鏡をチョンチョンっと触りだした。

 

ハハハハ、眼鏡ならここに……………

 

 

 

 

ない、眼鏡がない……

 

 

「眼鏡とってきます!!」

 

きっと寝た時に外して、慌ててここに来たから気づかなかったのだと思う。

眼鏡がないといろいろ怖い。主に楯無さんとか楯無さんとか

 

 

俺は保健室から出て行こうとすると………

 

 

 

 

「ストーップ」

 

楯無さんに止められる。

やめて!!いじめないで!!イタズラしないで!!

 

 

 

「………なんですか?」

 

俺はおそるおそる声をかけた。

 

 

「後でお昼ご飯を私と簪ちゃんと一緒に食べない?」

 

 

え?そんなこと?

 

「おれは飴があれば大丈夫だって知ってますよね?」

 

 

そう。俺は学校をサボっている間、食堂にも行かなかった。

朝、昼、晩の三回、飴2個とサプリメントを食べれば大丈夫だから、飯を食べる必要はない。

 

 

 

ちなみにサプリメントより飴の方が大切だ。

 

 

「いいじゃない。大人数で食べるごはんもいいものよ」

「んーー、まあ一回くらいは一緒でもいいかなぁ……」

「じゃあ三十分後に食堂で集合ね。女の子を待たせちゃダメよ。」

 

 

さっき待たせたばかりだから反論出来ない………

とにかく 早く眼鏡を取ってこよう。

 

 

 

 

 

 

俺が眼鏡をかけて、食堂に行こうと1050室から出ようとドアを開けると、織斑先生がいた。

 

「…………なんか用ですか?」

「用件だけを聞く。明日は来るのか?」

「一応行くつもりです。ではこれで失礼します。」

 

 

 

俺は足早に去ろうとする……が

 

「待て、鳴神。」

「なんですか?」

 

 

 

「私は素のお前と話がしたい。そんな堅苦しい話し方はやめろ」

「いいんですか?先生相手の時でも」

「私とお前だけの時ならいいだろう」

 

 

 

 

 

俺はわざと殺気を出し、コイツ(千冬)を睨みつける。

 

 

 

「ほう、それが素のお前か?」

「あぁ。そういえば話がしたいって言ってたな。」

 

 

 

素ではないけどね、悪役モードって感じかな

ちなみに俺はコイツ(織斑千冬)が嫌いだ。

アイツにそっくりなところとかが嫌だ。

思い出しただけでアイツにはイライラさせられる。

 

 

 

「お前は………鳴神蒼斗は何者だ」

今の(・・・)おれはただの生徒って事にしておくよ」

 

 

 

数日後には更識の従者という肩書きもつくけど

 

 

「もしお前が一夏を………この学園の生徒に危害を加えたら生きて返さんぞ」

 

 

いつそんな事するって言ったんだよ、ブラコン。

生きて返さないっていうのは比喩じゃないだろうから怖い

 

 

「黙れ、ブラコン。

まぁ危害を加える気はないが、あいにく不器用な俺は間違って傷つけるかもしれんな」

 

 

別にコイツにどう思われようと俺には関係ない。

疑うなら疑えばいいだろう。

 

 

 

「貴様………あの時の話を聞いていたのか?」

 

「何のことかわかりませんが、人を待たせているので失礼します、織斑先生(・・・・)

 

 

 

そう言って俺は再び食堂に向かって走りだした。

 

 

 

 

正直言って、楯無さんの言っていた時間まであまり時間がない。

 

 

コレで待たせたら………考えるのはやめよう。

俺が食堂に着くとやはり楯無さんがいる。

 

 

「すいません。二回も待たせちゃって」

「いいのよ。今来たばかりだから」

 

良かった。簪もあまり怒ってないみたいだし。

 

 

「じゃあ、行きましょ♪」

 

 

簪と少し上機嫌な楯無さんと俺で券売機に向かった。

 

 

 

「ねえねえ、あれが二人目の男子?」

 

「う〜ん、顔はなかなかだけど引きこもりなんでしょ?」

 

「織斑君と比べると残念ね」

 

 

 

これだからこの学園は…………

正直、寮以外に居心地のいいところがない。

 

 

 

そんな事を思っていると、俺たちの順番になった。

 

楯無さんが日替わりランチのAセット、

簪がかき揚げうどん、

 

 

俺は…………オレンジジュースを買った。

 

 

 

 

「蒼斗くんのお昼ご飯それだけ?」

「はい」

 

オレンジジュースを乗せたトレイに飴玉と、サプリメントを乗せてそう答えた。

 

 

 

 

「そんなちょっとじゃ元気が出ないよ?」

「たくさん食べる意味もないと思いますが………」

「まぁいいわ。それよりさっきの試合の解説してくれない?」

 

「はい?」

「さっきの試合ではわからない事が多過ぎるのよ。

だからその機体のこととか、技術のこととか教えて欲しいなー、と思ってね。」

 

「戦闘技術に関してはなんとも言えません」

 

流石に『前世で暗部やってましたから』なんて言えるわけないし、

 

 

 

高速切替(ラピッドスイッチ)瞬間加速(イグニッションブースト)とかはドイツに送ってもらった基礎知識の本を読んでの独学です。」

 

 

意外とイメトレと少しの練習で出来たけどな。

 

 

 

「機体に関しては、明日の試合を見れば少しはわかると思うので考えてみてください」

「じゃああの技のことだけでいいから」

「あの技って………『死と闇の鎌(デスサイズ)』のことですか?」

「そう!それよ。」

「あぁ、あれは----」

 

 

 

 

 

 

 

それからも俺は楯無さんと簪といろんなことを話した。

二人の仲がよくなっていて、俺まで嬉しくなった。

 

 

 

 

 

今日は代表決定戦だ。

そして久々に一夏に会った。

 

 

「蒼斗!!」

「よぉ、一夏。」

 

 

あんまり話すと、クソ教師(ブラコン)がなんか言いそうだから、ほどほどにしておく。

 

 

「じゃあな、一試合目頑張るわ。」

「おう、お前が負けても、俺があのオルコットを倒して戻ってくるからな」

 

 

 

そう言って別れたが………なぜ死亡フラグじみたことを言った?

 

 

 

 

 

「がんばってね、蒼斗君。」

 

 

楯無さんが俺のピットでそう言って扇子を広げる。

そこには『がんばれ 一年生』と書かれていた。

いいなー、その扇子。なんか欲しい

 

「オルコットとの試合はわざと負けるつもりです。一夏との試合で真剣(ガチ)でやるつもりです」

 

 

そう言って、俺は黒炎を装着してピットを素早く出て行く

 

 

ピットを出ると、オルコットがISを纏って待っていた。

確かオルコットは ブルー……なんとかっていう射撃型のISだったな。

 

「来ましたわね」

「オルコット、俺はお前に勝つつもりはない。だからさっさと決めてくれ」

「っ!?あなた!私をなめていまして?」

「いや、お前を代表候補生と見込んでの頼みだ」

「くっ、いいですわ。ならばあなたを一撃で倒して差し上げますわ」

「あぁ、ぜひそうしてくれ」

 

 

 

試合開始のカウントダウンが始まる。

 

 

 

「あなたのお望み通り、コレでお別れですわ」

 

試合開始のブザーがなると同時にオルコットはライフルの引き金を引く。

 

俺は飛んできたレーザーを腕でガードする。

 

 

 

 

 

 

そして俺がレーザーを受けとめると同時に試合終了のブザー、

「試合終了、勝者セシリア・オルコット」

 

 

 

アリーナにいた全員は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていた。

会場がざわつく。俺はそれを横目にピットに戻った。




最後まで読んでいただきありがとうございます。


本当は2話だったのを結合しました。
なので4500字越えしちゃいました。



元は1500字と3000字だったんだけどね

感想、指摘お待ちしてます。


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VS一夏

はいはーい、上腕二十二頭筋です。

前回、セシリアに蒼斗君が負けたので
楯無<蒼斗<セシリア
という不等式が出来ちゃいますね。笑


鳴神 蒼斗 side

 

俺がピットに戻ると、楯無さんが仁王立ちで待っていた。

 

………怖い

 

 

 

「蒼斗く〜ん?いくらなんでも負けるの早くないかな?」

 

「時間削減って奴ですよ……長期戦はつらいし」

「確かその機体は、長期戦も短期戦も難しいんだっけ」

「はい。最初はスピードが出ないし、後半はこの機体が与える体の負担が大きいんです。まさに欠陥機って感じですね」

 

 

 

第三世代IS特有の武装、イメージインターフェイスを持ちながら、高性能第二世代IS並みの拡張領域(バススロット)を持っている黒炎は、その代償として操縦者の体に大きな負荷がかかる。そのことだけは楯無さんにも教えた。

 

 

そして蒼斗は知らないが その負担が大きすぎるが故に、ドイツの実験で多くの操縦者が挑戦したが その全員が再起不能なほどの重体にまで追い込まれるほどの負荷がかかっている。

 

 

正直、 蒼斗でさえなんとか乗れているようなものだ。

 

 

「欠陥機という表現を使わなければ暴れ馬ってとこですかね。」

 

「けどさっきの試合の時は速く動けてなかった?」

「流石に気づきますか。まぁそれも俺の機体の能力なのでここからは考えておいてください。」

 

 

そう言った時、俺に通信が入る。

 

 

「先生から?」

「おそらくそうですね。もう何発かくらってからやられれば良かったかな?」

 

 

 

ちなみにもう二試合目は始まっている。

 

俺は通信に応答した。

 

 

「はい。鳴神です」

「おい、鳴神。今の試合はどういうことだ」

 

 

はい、出ました。織斑先生(ブラコン)

 

 

 

「いやー、たまたま(・・・・)装甲の一番脆いところに当たって、

たまたま(・・・・)絶対防御が発動するなんてなー」

 

「お前が『ISの動きなら代表決定戦にしてくれ』と言うから今日にしたんだ。本気で試合をしろ。」

 

「いいんですか?あなたの大事な一夏との試合で本気を出して」

「………お前が一夏を殺そうとしたら、その前に私がお前を倒す」

 

 

どっちだよ………ったく

 

「安心してください。俺は次の試合で武器を使うつもりはないんで」

「………ふざけてるのか?」

「いえいえ大マジです。それなら一夏は安全。俺の実力はわからなくても、約束のISの動きならわかるじゃないですか」

 

 

「お前が武器を出さないという保証は?」

「ありませんね。なら俺が武器出した時点で二箇所に配置している計4体のISに止めさせていいですよ」

 

あんなわかりやすいところにIS部隊を配置させるとかアホ丸出しだろ

 

 

 

「………もう今更お前が何を知っていても驚かなくなってきたぞ」

「そりゃどうも。それじゃあ切りますね。」

 

 

俺が返事も聞かずに切ると、楯無さんがこちらをジッと見ている。

 

 

 

「中途半端にごまかすから怪しまれるのよ」

「ははは………すいません。」

 

 

すると試合をしていた一夏のISがミサイルの爆発を受ける。

 

 

 

 

「へー……一次移行(ファーストシフト)か」

 

 

俺がそう言うと、煙の中から一夏が先ほどとは違った姿のISを纏って出てきた

 

 

 

「よくわかったね?」

「さっきの試合でエネルギーが0になった時、約一秒でブザーが鳴ったんですよ。けど今は数秒経ってもブザーがならなかったし、一夏のISが今日届いたらしいので一次移行かなぁと思いまして」

 

 

 

ちょうどその時、一夏がオルコットに切りかかろうとしていた。

 

「おっ!これは本当に倒してくるかもな!!」

 

 

死亡フラグとか思ってゴメン!!

 

 

 

だが一夏の剣がオルコットにあたる前にブザーが鳴った

「試合終了、勝者セシリア・オルコット」

 

 

 

はいっ?何が起きた?

 

 

 

楯無さんに聞いてみると、一夏の武器『雪片弐型』とか言う武器の『バリアー無効化攻撃』ってやつは自分のシールドエネルギーを使うらしく、それを知らなかった一夏は自爆したのだ。

 

 

 

やっぱり死亡フラグでした(笑)

 

 

 

 

 

そして三戦目、俺 対一夏の試合。

 

 

俺は一夏に向かってプライベート・チャネルを開いた。

 

 

 

『一夏、聞こえるか?聞こえるなら手を一回握れ。』

 

 

一夏は左手を一回握った。

 

 

例の調子に乗ってる時の癖を再現して、見てる方の違和感をなくす。ちなみにそのことは向こうのピットの会話を盗聴した。

 

 

『済まないが俺はこの試合でお前に攻撃できない(・・・・・・)。これは疑われている俺が試合できる条件なんだ、わかってくれ』

 

 

 

俺はブラコン先生に『武器を使わない』と言ったが、相手がシールドエネルギーを消費する武器を使ってくるなら『攻撃しない』でも影響はないだろう。

 

 

 

 

 

一瞬、一夏は顔をしかめたがもう一度手を握った。

 

 

 

一夏に礼を言ってプライベート・チャネルを切る。

そして一夏を見てこう言った。

 

 

「さあ、始めようか」

 

 

 

 

織斑 千冬 side

 

 

鳴神と一夏の試合、私は正直言って中止させたかった。

 

だがやると言ったものを途中から覆したりすれば、学校に対して不信感を抱く生徒が出てしまう可能性もある。

 

 

一応念のためにIS部隊を配置してあるが、絶対安全である という保証はない。

 

 

 

「でも本当に鳴神君の技術はすごいですね」

 

 

IS部隊と一緒に待機していた山田先生から連絡が入る。

だが山田先生はもっと危機感を覚えた方が良いと思った。

 

 

「あいつ……遊んでいるな。」

「えっ?」

 

 

 

あいつは武器を出さないと言っていたが、それどころか攻撃もしていない。

確かに相手が『雪片弐型』(一夏)であれば、ダメージの少ない格闘戦よりもエネルギー切れを待った方が断然早く終わるだろう。実際にお互い(・・・)一撃も与えていない。

 

 

だが、私が山田先生に言った『遊ぶ』というのは そういう相手を見下したり、手を抜く意味で言ったのではない。

 

 

 

 

 

 

あいつは-----楽しそうに試合をしていた。

まるで小さい子供がたくさんの友達と遊んでいるかのような純粋な笑顔を見せていた。

 

 

そして-----

 

 

「ほらほら、もっと集中して俺をよく見ろ」

 

「剣の振りが遅い!体の動きに合わせて剣を振るんだ!」

 

「甘い甘い!剣しかないんだから違ったパターンを取り入れないと当たらないぞ」

 

 

 

 

あいつは-----鳴神は、私が指摘しようとしたことと同じ事を指摘していた。

 

 

そしていつもの鋭い目も穏やかに見える。

鳴神の純粋な目を見ていると、私がこの一週間抱いていたあいつに対する不信感がゆっくりと消えていく。

 

 

 

 

そしてふと、一夏が二日前に言っていたことを思い出した。

 

「あいつはどう思ってるのかは知らない。けど俺はあいつの事を仲間だと……友達だと思ってる」

 

お人好しだな、私の弟は。もしかしたらそれも罠かもしれないというのに。

だが不覚にも、今の鳴神を見ていると こんなに楽しそうな顔でISを動かす人間がスパイや傭兵なはずがないと思えてきてしまった。

 

 

 

だが鳴神と一夏が向き合う状態になった時、私は鳴神の異変に気づいた。

 

鳴神は顔を真っ青にして、左胸を押さえていたのだ。

表情から察するに、かなり辛そうだった。

 

 

鳴神は、一夏をチラッと見た後にオープンチャネルを開く。

 

 

 

「織斑先生」

「なんだ?」

 

 

鳴神の様子を見るに、棄権するであろうと予測した。

まだ一夏のシールドエネルギーも1割程度ではあるが、残っている。

 

 

「すみませんが………俺はこの試合を きけ……」

 

 

 

その時、大きな音がアリーナに響き渡る。

 

 

 

 

 

 

土煙の中からは、見たこともない全身装甲のISが三機出てきた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。


無人機戦と代表決定戦をくっつけます。
蒼斗君疲れてるのに……無人機×3は泣けるw


感想・指摘、お待ちしております。


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謎の来訪者

ただいま〜、上腕二十二頭筋でーす。

中国→合宿は無理だな。うん
時差はあんまりないけど気持ち悪かったわー


更識 楯無side

 

私はこの試合を真剣に見ていた。

 

 

蒼斗君はさっきの試合で0になったシールドエネルギーを回復もせずに出て行ったが、手元のモニターを見ると『シールドエネルギー:100%』の文字が見える。

 

 

 

 

(シールドエネルギーを回復できる能力でもあるの?)

 

 

 

だがそうであれば前の試合も負けるはずがない。

そしてその試合も整備科がシールドエネルギーの補給をしていたのを楯無は見ていた。

 

 

 

(セシリアちゃんとの試合では速く動けていたのに……)

 

蒼斗のISのスピードは楯無との模擬戦の時のスピードまで落ちている。

だがそれを機体制御で補っていた。

 

そして蒼斗のスピードが増すにつれて、動きもよりダイナミックなものに変わる。

 

 

アリーナにいる人は、その動きに魅了されていた。

 

ピットにいる楯無も蒼斗の動きに見入っていた。

 

 

 

(眼鏡をかけていても……あんな顔できるじゃないの)

 

いつも眼鏡をかけている時はクールであまり感情を出さないのに、今の彼は精一杯の笑顔を見せている。

 

 

(あれっ?今わたしって彼の顔にドキッとした?)

 

 

 

そんなことはないと、楯無は顔を横にブンブンと振り、試合をちゃんと分析しようとする。

 

 

 

すると、楯無はあることに気づいた。

 

観客席の生徒の大半が寒そうに体を小さくしていたのだ。

 

 

 

 

ISは熱がこもらないように排気をしている。

しかも今は春の午後で天気は快晴、普通なら暑くて汗をかいても疑問に思わない。

 

 

おかしい、そう思った楯無はすぐに現在の気温を表示させる。

 

 

(外気温………9度!?)

 

 

いくらなんでも低すぎる。

先ほどのように、普通なら暑いくらいな条件の中で、9度というのはおかしすぎる。

 

 

 

ここで楯無は、昨日の試合で清き熱情(クリア・パッション)が発動しなかった時のことを思い出す。

 

 

 

ISは一応宇宙に行くためのパワードスーツだ。

宇宙という極寒の中で活動するため、操縦者には気温の変化の影響をなくすために、ISには補助機能が付いている。

すなわち、ISに乗っていると外気の変化に気づきにくい。

 

 

だから楯無は気温の変化に気づかず、清き熱情(クリア・パッション)が発動するまで時間がかかったのだ。

 

 

 

ここで楯無はある仮定をする。

 

(彼はシールドエネルギーだけでなく、スラスターのエネルギーも補給しなかった。もしかして気温を下げた時のエネルギーを動力にしている?)

 

 

だとしたら全ての理由が説明できる。

スラスターのエネルギーは補給しなかったのではなくできなかったと考えれば 段々速くなる機体も、気温を下げてエネルギーを取り込んでいると考えればあり得ない話ではない。

 

 

 

(あとはシールドエネルギーね………)

 

 

そう思って再びモニターの方を見ると、顔を真っ青にして息を切らしている彼の姿が見えた。

 

 

 

(まさか、彼の体が限界に?)

 

ふと、試合前に言っていた、“負担”の事を思い出した。

私は我慢できずに通信をとろうとすると、彼が口を開く。

 

「すみませんが………俺はこの試合を きけ……」

 

 

そこまで言ったところでアリーナに響き渡る轟音。

 

 

私がその方向を確認すると、どんな機体とも似ていない全身装甲のISが三機もいた。

 

 

 

 

鳴神 蒼斗side

 

 

棄権しようと思ったら変なのが来たんだけど。

 

あいにく俺はイライラしている。元々乗り気じゃない試合でこんなに疲れるなんて思ってなかったからな……

 

「織斑せんせー」

「なんだ?鳴神」

 

「武器を出してイイですか?」

「お前………やる気か?」

「はい」

「いまでも相当無理をしているだろう」

 

 

 

へ〜心配してくれてんのか。イイとこあんじゃん。

 

「一撃で決めます」

俺はまっすぐと一夏側のピットを見た。

 

 

「はぁ、まあイイだろう。武器を出してイイぞ」

「ありがとうございます」

 

そう言って俺は鎌、『宵闇』を出す。

 

 

「じゃあ状況を教えてください」

 

「敵機は3、武器は現段階では高出力のレーザーが確認されている。そして……敵のハッキングによって警戒レベルが4まで引き上げられているため、観客の避難もできず、IS部隊もしばらく入って来れないらしい」

「了解です。-----じゃあやるか」

 

 

そう言って俺は一夏に声をかける。

 

「一夏、悪いが手伝ってくれ」

「大丈夫だ。なんでも言ってくれ」

 

「それなら一撃で倒すために敵を中心に集めてくれ。後は俺がやる」

「わかったけど………お前顔色悪くないか?」

 

 

 

……今さらかよ

 

 

「そう思ってんならさっさとやれ!!」

「わ、わかった」

 

 

「蒼斗君、一夏君聞こえるかしら?」

「楯無さん?どうかしたんですか?」

「どなたですか?」

 

 

 

「自己紹介は今度の機会にするわ。今 調べたところ、あのISは無人機である事がわかったの」

「おい、更識。なぜお前がそこにいるかはともかく、その話は本当か?」

「はい、その可能性が極めて高いです」

 

 

マジか…ISは人が乗っていないと動かないはずなのに……

 

 

 

「ありがとうございます。楯無さん」

「蒼斗くん、頑張ってね」

 

 

そう言ってオープン・チャネルを切った。

 

「蒼斗!!だいぶ真ん中に集めたぞ」

「まだだ、そして俺が合図したら一気に離脱しろ!」

「よし、任せろ!!」

 

 

そしてさらに三機の無人機が中心に集まる。

 

 

「今だ!!一夏!」

 

俺がそう言うと、一夏が離脱し俺が三機の中心に行く。

 

 

 

 

俺は中心に向かいながらこう言った。

 

「見せてやるよ。本当の(・・・)死と闇の鎌(デスサイズ)を」

 

 

 

 

 

 

昨日楯無さんに死と闇の鎌(デスサイズ)について聞かれた時のこと、

 

 

「じゃああの技のことだけでいいから」

「あの技って………『死と闇の鎌(デスサイズ)』のことですか?」

「そう!それよ。」

「あぁ、あれは--------

 

 

 

 

 

 

-----失敗しちゃったんですよ」

 

「し、失敗?」

「楯無さんがあの球に入ってくるとは思わなくて……楯無さんが入ったことで二つのエネルギーがぶつかって爆発したんだと思います。」

 

「じゃあ本当のあの技はもっとすごいの?」

「そうですね………一言で表すと---

 

 

 

 

 

 

---『炎の竜巻』ですかね」

 

 

 

俺は単一能力(ワンオフ・アビリティ)『世界を創造する者』(ワールドクリエイター)を使い、右手から黒い球体を作り出す。

 

 

俺は作り出した球体の中に入る。

 

無人機はしばらくはその球体を見ていたが、標的を一夏に変えて振り向いた。

 

 

 

 

だが振り向いた瞬間、黒い球体は膨張して破裂。

 

 

 

破裂した球体から黒い渦が発生する。

そしてそれが段々大きくなり、気がつくと竜巻と呼べる大きさにまでなる。

 

 

無人機は竜巻に絡まれて動けない。

その隙にエネルギーで出来た不気味に光る鎌を使い、無人機を縦に斜めに切りつける。

 

 

 

 

 

「これで………おわりだぁぁああ!!」

 

そして最後に横に一回転して斬りつけると、三機の無人機を全てバラバラになり 爆発する。

 

 

 

そして竜巻が消えると共に体から力が抜けて、ISが解除されてしまった。

 

地面が近づく、この高さから落ちれば死なないとしても重傷だろう。

だが体の節々の痛みと疲れで動けない。

 

 

それがわかった俺は何も抵抗せずに眼を閉じ、重力に身を任せた。

 

 

 

織斑 一夏side

 

蒼斗は黒い竜巻の中から出てきた時、ISが解除された。

 

白式のハイパーセンサー(だっけ?)を使って見ると、気を失っているのか眼を閉じ とても穏やかな顔をしている。

 

 

俺は何も考えずに蒼斗に向かって飛び出した。

あいつを助けたい。それだけを考えて全速力で向かう。

 

しかし自分の想いとは裏腹にスピードが出ない。

まだ飛行に慣れていないのもあって、このままでは間に合わない。

 

 

(もっとだ!もっと速く!!)

 

 

すると少しではあるがスピードが上がる。

だがこの程度のスピードの上昇ではまだ間に合わない

 

 

 

 

「届けぇぇえええ!!」

 

すると白式がそれに応えるように一気に加速する。

 

これは瞬間加速(イグニッションブースト)という初心者では出来ない難易度の技なのだがまだ一夏は知らない。

 

 

 

(よくわからないけどこれなら!!)

 

 

一瞬で落下地点の真下まで来た一夏は、蒼斗をキャッチすると同時に膝を曲げて衝撃を逃がす。

 

 

 

「蒼斗!!大丈夫か?」

 

 

 

俺が叫ぶと、それを遮るように響いた轟音。

俺はその轟音を聞いたことがあった。

音が響いた轟音の方向を向くと、そこには---

 

 

 

 

 

 

 

 

---破壊した無人機と同じ機体が5機もいた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。


蒼斗無双!!。
そして無人機戦は終わっておりません!!


感想、指摘お待ちしております。


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秘密兵器『長弧』

うぃっす。上腕二十二頭筋で〜す。

今回はあまり話が進みません。別に読まなくてもあまり変わらないけど……見ましょう。


???? side

 

この少女はモニターを見ていた。

モニターには二人の男性操縦者が自分の無人機を倒す映像。

 

「へ〜、いっくんの機体の様子を見るつもりだったけど…… この子は気になるな〜」

 

 

視線の先には眼鏡を付けている男性。

だがこの少女が気になると言った『この子』とはこの男性のことでは無い。

 

 

 

「まさか私が始めて作った(・・・・・・・・)第三世代型ISの『α-001』を動かせる人が現れるなんて……私でも思わなかったよー」

 

 

そう、彼の使っている黒い機体はこの少女が作ったものである。

カスタムした第二世代機をベースにしてそれに少しの細工とイメージインターフェイス、単一能力(ワンオフ・アビリティ)を付けただけだったが、予想以上にうまくいかず そのままポイした機体だった。

 

 

 

「じゃあアイツと『α-001』(黒炎)を回収して研究しよーっと」

 

 

そう言って彼女はカタカタっとキーボードを叩いてEnterキーを押した

 

 

 

 

鳴神 蒼斗side

 

 

 

重い目をゆっくりと目を開けると、周りは炎に包まれていた。

 

 

「な………ここは………」

 

 

その景色には見覚えがあった。

 

丁寧に整えられている松の木も、庭の隅にある池も、昔ながらの面影が残っている屋敷も。

 

 

 

 

 

ここは転生する前の暗部の屋敷だ。

 

そう理解した刹那、景色が変わってその家の中に変わる。

 

 

 

 

そこは来客用の和室だった。

だが趣のある空間だったそこは、周囲に広がる炎と崩れ落ちた瓦礫によって面影はほとんどなかった。

そして目の前には瓦礫に足を挟まれて動けない女性。

 

 

「大丈夫か?○○○!!」

 

転生前の俺が入って来た。

 

「私は……大丈夫だから………逃げなさい」

「そんな………従者として……主であるお前を置いてくことなんて出来ない!!」

 

 

そう、瓦礫に挟まれている女性は転生前、俺の主だった人だ。

 

「こーら、年下の男の子は……年上の……おねーさんの言うことを………ちゃんと聞かないと……ダメじゃない」

 

 

彼女は言葉が途切れ途切れになるほど衰弱し、周りの炎でヒューヒューと音を立てて呼吸をしている。

 

 

 

「嫌だ!お前を見殺しにするくらいなら俺もここで死ぬ!」

「死なないわよ……。だって……おねーさんは………不死身なんだから」

「もう喋るな!!」

 

「じゃあ…ここにいて良いから……き、キス………して」

 

 

彼女は恥ずかしそうにそう言った。

 

 

 

さっきまでの無理をしたような言い方ではなく、そこにいたのは年相応の恋する乙女の姿そのものだった。

 

 

そして転生前の俺は彼女の上体を起こしてキスをする。

 

 

 

そのキスは永遠に続くかと思われた。

だが屋敷が崩れ始め、二人はそのまま押しつぶされた。

 

 

 

 

 

俺はゆっくりと目を開く、すると目の前には一夏が見えた。

 

 

 

 

「久々だな………あの夢も……」

「蒼斗?大丈夫か?お前」

「正直 大丈夫じゃない。すまないがピットまで運んでくれないか?」

「それが………また無人機が入って来て戻れないんだ」

「なに?」

 

 

痛む体を起こして周りを確認。すると一夏のピットの方向に先程倒した機体と全く同じ機体が5機もいた。

この感じだとまだロックは解けていないらしい。

 

「マジかよ………」

「どうする?蒼斗」

 

 

 

俺は通信を開く。

 

「楯無さーん」

「なにかしら?」

「楯無さんならシールドを破って出撃できま「それ無理」……なんでですか」

「出来るならとっくにやってるわよ。それに昨日模擬戦をした相手にダメージレベルをCにされちゃったのよ」

「すいませんでした…………」

 

 

 

死と闇の鎌(デスサイズ)に突っ込んで来たのは向こうだけど

 

 

「織斑先生」

「おい、鳴神。更識のダメージレベルをCにした相手というのはお前か?」

「そ、その話はまた今度にでも。それよりIS部隊は出撃出来ないんですか?」

 

「ダメだ。少なくとも後10分はかかる」

「マジっすか………」

 

 

絶対絶命かよ………もう俺動けないかも

 

 

「………『長弧』を使うしかないのか」

「蒼斗?」

 

 

くそ!悩んでる時間なんてない!!

 

俺はオープンチャネルを開き、一つ提案をした。

 

 

 

「一夏、楯無さん、先生方。一個だけ生身でアイツらを全滅できる方法がある」

「本当か?蒼斗。」

 

 

「でもそれを可能にするためには3つの条件がある。」

「なんだ?」

 

 

とっておきの……アレを…………

 

 

「一つ目は休む時間……って言っても3分あればいいや

二つ目はその間の時間稼ぎ

 

そして最後は--------

 

 

 

 

 

 

 

------糖分だ!!」

「「「はっ?」」」

 

この通信を聞いていた織斑一夏と織斑千冬、そして更識楯無は絶句した。

 

 

 

 

「糖分だ!!」

「二回も言わなくていいから!」

 

楯無さんに怒られた………

 

「そういうわけだから、時間稼ぎよろしく〜」

「そういうわけだからって言われても、俺の白式のエネルギーがないんだ」

 

 

 

 

早くね?まぁあの武器使ってればすぐ無くなるか。

そういえば連戦だしな………連戦キツイんだよ俺の機体。

 

 

「おい、一夏。手を出せ」

「お、おう」

 

俺は右手を部分展開し、一夏の手を握る。

 

そして『世界を創造する者』(ワールドクリエイター)を使う。

 

 

「これは?」

「俺の単一能力(ワンオフアビリティー)だ。これで3分持たせろよ」

「わ、わんおふ?」

 

勉強不足だろ。シールドエネルギーとスラスターのエネルギーはそれぞれ半分くらい増やしてやったから3分は持たせて貰わないと困る

 

「こんだけあれば充分だ!行ってくるぜ!!」

 

 

うん、逝ってらっしゃーい。

 

 

 

 

織斑 一夏side

 

 

俺は目の前の無人機と戦っている間、今さらだが蒼斗の言葉が本当なのか疑問に感じていた。

 

 

(このままこの無人機を押し付けたりは………しないよな?)

 

 

そろそろ3分経つかというところで蒼斗が立ち上がる。

 

 

 

「コイツは出来るだけ残しておきたかったが……」

 

 

蒼斗はそう言うと 再び右手を部分展開した。

 

「こい、『長弧』」

 

 

そう言うと、黒い日本刀を呼び出した。

あれがおそらく『長弧』という武器なのだろう。

 

 

微塵も殺気を感じさせない蒼斗と刀特有の"感じ"がないあの刀が不気味に思えた。

そしていきなり上を向き、刀の先端を口の中に入れる。

 

 

「なっ!?」

 

 

 

俺はかなり驚いた。

振り向くと、蒼斗が刀をくわえているのだから。

 

 

そしてバキッと剣先から5センチほどのところで割り、口の中に入れて噛み砕き飲み込む。

 

 

「お、おい。そぅ……」

 

 

 

俺の言葉は無人機からの攻撃に阻まれる。

 

アリーナのシールドを破るような機体の攻撃を受ける訳にはいかない。

 

そうしてる間にも蒼斗は剣をかじっていた。

 

 

 

 

そうして『長弧』の刃の8割がなくなったところで俺を呼んだ。

 

 

「お〜い、一夏。もう大丈夫だ、戻ってこ〜い」

 

 

 

さっきの状況は大丈夫ではなさそうなのだが……

とりあえず蒼斗の元に戻ってきた。そしてさっきの刀を俺に渡して、

 

 

 

「後は俺がやる。そいつはプレゼントだ。」

 

 

 

 

 

ぷ、プレゼントって………

そう思いながらその剣を見ると異変を感じた。

 

 

 

(持ち手と折れた刃の先が溶けている?

さらにこの匂い、これは----)

 

 

 

 

 

 

 

 

「---『長弧』(チョコ)?」

 

 

え〜と……

つまり日本刀だと思っていたのはチョコで、これは蒼斗が言っていた糖分の補給なのだろう。

だとしても……

 

 

「紛らわしいわ!!」

 

 

おそらく先生や楯無さん(苗字?名前?)も俺の言葉に反応して驚いているようだ。だからって俺にこの刀のことを尋ねないで欲しい。俺も聞きたいくらいだ。

 

 

 

半ば怒りを込めた目で蒼斗を見ると、蒼斗は髪をほどいて髪を下ろし、眼鏡を投げ捨てていた。

そしてこの姿勢の良さ、この感じ…………

 

 

俺は……コイツをどこかで………

 

 

 

 

まるで眠っていた記憶が蘇るかのような頭の痛みを受ける。

 

 

「力を貸せっ!黒炎!!」

 

蒼斗が叫んだ瞬間、足から黒い炎があがる。

それは段々勢いを増し、体を覆った。

 

 

 

 

少し経って、炎に切れ目のような物がはしる。

そこから出てきたのは紛れもない 蒼斗だった。

 

 

見た目は何も変わってなく、ISスーツを着て鎌を持っているだけさらにどこにも部分展開している様子はなく、雰囲気は千冬姉に似た不思議な感じ。

 

 

 

 

 

だがこの雰囲気を、前に一度体験している。

 

「お、お前は………」

 

 

その後ろ姿は 第二回モンド・グロッソで誘拐された俺を助けてくれた人と同じ物だった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。


長弧(チョコ)……ネタです。ハイ
原理は知りません。質問されても知りません。


量子変換すれば溶けないのか、賞味期限はどうなってるのか、どうやって日本刀の形で作ったのか。




知りません!!!!(考えてない)

感想、指摘お待ちしています。


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決着、そして尋問

う〜ん。バトル回は何回やっても慣れまへん。


鳴神 蒼斗side

 

この能力だけは使いたくなかった。

けど仕方ない。緊急事態だ

 

 

「そう……と?お前……」

 

 

 

どうした?コイツ。

まぁイイや、『宵闇』を量子変換して戻した俺はこう言い放つ。

 

 

「じゃあサクッと行ってくるわ」

 

 

 

サクッと行けば苦労しないが……問題は反動だな

黒炎使うよりこっちの方が疲れるしな〜

 

 

日本刀(チョコ)なかったら糖分が足りなくて使えないくらい疲れる。あのチョコ作るの大変だったんだぞ

それにしても体力的にさっさと決めないと危ないな……よしっ!

 

 

「じゃあ終わらせるぜ」

 

 

 

俺は足に力を入れて、無人機に向かって駆け出す。

無人機からレーザーが飛んでくるが、全て紙一重で躱す。

生身になったことで面積が小さくなり、動く範囲も狭くて済む。

 

 

 

レーザーが無駄と判断した無人機はガトリングを放つ

正面には銃弾の雨、俺は右足に力を入れて飛び跳ねた。ガトリングを躱し、一番手前にいた無人機に触る。

 

するとその無人機は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。

 

 

 

「後4機!」

 

 

 

止まった無人機を挟むように位置していた機体は同時にナックルをする。

だが前世でも今世でも体術を中心にトレーニングしていた俺はクルッと宙返りをして避ける。

 

 

むしろ触って下さいと言うかのような攻撃。

俺は空を切った2機の腕にパンっとタッチし、停止させる。

 

「後2機!!」

 

 

 

後2機になったところでその2機がお互いに距離を取り、牽制するような攻撃ばかりしてくる。

時間を稼がれるとマズイ俺にとっては一番困る戦法だ。

 

 

 

すかさず俺は右手と左手の人差し指で銃を作った。

そして-----

 

 

 

「くらえ!!」

 

俺がそう言い放つと同時に指からエネルギー弾が飛んでいく。

だが相手も無人機とはいえIS。無人機のシールドにエネルギー弾は消し飛ばされる。

 

 

 

 

 

だがそれが目的。

 

「おい、お前ら。なんか今日暑くないか?」

 

わざと聞こえるように声を出し、指をパチンと鳴らした。

 

 

 

 

その瞬間、残り2機の無人機が黒き炎で燃え始めた。

2機が完全に燃え尽きたところを確認したところで、俺は再び意識を失った。

 

 

 

????side

 

 

「あ、あれは-----」

 

 

 

その少女は驚愕の声をあげた

 

二人目の男の動きが世界最強の親友(ちーちゃん)と全く同じだったからだ。

 

 

 

元々『α-001』はその親友のために作った機体。

あらかじめ親友の能力値をデータ化した物を組み込ませてある。

 

 

だとしてもあの完成度は異常だ。

そしてISを起動させていないにもかかわらず量子変換ができていた。おそらく無人機を停止させたのは単一能力(ワンオフ・アビリティー)の力だろうが、それも部分展開なしでやってみせた。

 

 

「まぁ今回はこのくらいにして置いてあげるよ〜」

 

 

 

使うはずのない予備の機体を使っても捕獲出来なかった。

援軍を送ってもいいのだが調整その他諸々で20分近くかかる。

それにこれ以上証拠が残るのも困る。

 

それに当初の目的である白式(いっくん)の動きもハッキングで充分獲れた

 

 

 

「これで私の理想の世界に一歩近づいた」

 

普段の無邪気な笑みは消え、その顔は不気味そのものだった。

 

 

 

鳴神 蒼斗 side

 

 

「ここ………は?」

 

 

どこかで見たことのある部屋だった。

えぇーと、確か無人機3+5機倒したとこまでは覚えてる。

 

 

 

一回 周りを確認してみた。

 

 

 

「………はいっ?」

 

俺が寝ているベットの隣の椅子に楯無さんがいた。むしろ寝ていた。

 

 

寝顔かわいいな〜なんて思ってると、

 

 

 

「起きたか、鳴神」

 

 

カーテンの奥から深く響くような声、そしてこのプレッシャー……ま、まさか

 

 

「お、織斑先生?」

 

俺がそう言った瞬間、カーテンが開いて織斑先生が入ってくる。

 

 

「ここってどこですか?」

「ここはアリーナ横の保健室だ。医療室でも良かったが気絶しているだけのようだったからな」

 

 

「あと………俺の眼鏡 知りませんか?」

「それなら回収して学校で預かってある。後で取りにこい」

「ありがとうございます………」

「鳴神。お前に幾つか聞きたいことがある。いいな?」

 

 

 

眼鏡無しで織斑先生と話すのは好ましくない。

 

「楯無さんが寝てるので後にしませんか?」

 

これで時間が稼げ「おい、更識。起きろ」……はい?

 

 

「ジャジャーン。楯無お姉さんふっかーつ」

扇子を開いて『ドッキリ大成功☆』……笑えねー

 

 

 

「ちなみに………楯無さんからどのくらい聞いてます?」

「全部だ」

「ごめんね〜、蒼斗くん」

 

 

………orz

2対1のこの状況はダメだろ。なんで学園最強と世界(霊長類)最強が夢のタッグを実現させてんだよ。

 

 

 

「ハァ、答えられる範囲ならイイですよ」

 

もう諦めた。勝ち目がないな

 

 

「けどその前に楯無さん。俺の試合を見てなんかわかりました?」

「う〜ん、わかったことは気温が下がってることだけで、私の推測ではその時のエネルギーを動力にしているということだけよ」

 

「おー、すごいすごい。95%は正解ですね。唯一違ったのは"気温を下げている"のではなく"熱を吸収している"ことくらいですね。動力というかスラスターとかも熱のエネルギーを使ってますし」

「けどその推測だとセシリアちゃんとの試合の時の速さを説明出来ないじゃない?」

 

「そこは黒炎の単一能力(ワンオフ・アビリティー)『世界を創造する者』(ワールドクリエイター)の能力です。

 

 

この能力はエネルギーを変換、譲与、具現化することができます。

 

あの試合はシールドエネルギーのほとんどを熱エネルギーに変えて素早く出て行き、試合が終わったら熱エネルギーをシールドエネルギーに戻す。

『死と闇の鎌』(デスサイズ)も、具現化した熱エネルギーに衝撃を与えて強い上昇気流を発生させる技なんですよ。譲与は一夏にエネルギーを移した時のことを知ってますよね?」

 

 

「吸収や増加は出来ないのか?」

「吸収なら出来なくはないんですけど………そのエネルギーの状態でしか吸収出来ないので熱ならともかく電気エネルギーを吸収したら感電して死にます。」

 

「そういえば蒼斗君。最後のアレって清き熱情(クリア・パッション)の真似?」

「アハハ……あれは正確に言えば時限式で強い熱エネルギーに変化するようにプログラムしたエネルギーを撃って、それを敵のシールドエネルギーに溶け込ませるんですよ。あとは時間に合わせて敵のシールドエネルギーごと熱エネルギーに変えて燃やす技ですね。清き熱情(クリア・パッション)の真似をしたのはノリです。」

 

 

「ではあの生身での強さはなんだ?あの動きはどう考えても常人には出来ない芸当だぞ」

「アレは……できれば織斑先生には言いたくないんですけど……

いや、むしろ織斑先生には知っておいてもらった方がいいのか」

 

「で?なんなんだあの能力は、ISの能力なのか?」

「ええと……一応 能力ですね。織斑先生も名前くらいは知ってるんじゃないかな?あの能力の名前は------

 

 

 

 

 

 

 

----VTシステムって奴です。」

 

 

 

そういった瞬間、楯無さんと織斑先生は深刻そうな顔をして固まった。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。


VTシステムでした〜〜笑
蒼斗君のVTシステムは、たば……謎の少女が組み込ませたちーちゃんなる人物のデータのバグです。

だからラウラみたいに完全にトレースしているわけではなく、蒼斗君の技術も入ってます。


感想、指摘お待ちしてます。


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眼鏡とエプロンと鬼

テスト終わったぁぁああ!!
(二重の意味で)




ストーリーは思いついてもそれを文字に出来ない。

そう、それが上腕二十二頭筋クオリティ


「-----VTシステムって奴です。」

 

 

 

そういった瞬間、楯無さんと織斑先生は深刻そうな顔をして固まった。

やっぱりそういう反応するよなー……

 

 

「お前は……それが禁止されているのを知らないのか?」

「知ってますよ、新聞で見ました。けど知っているからこそ俺がこの機体を持てているんですよ」

 

 

 

「どういうことだ?」

「簡単な話ですよ。俺がこの機体に『VTシステム』を使っている事を他国に言えば必然的に多くの国から何かしらの対処を求められたり脅されたりするでしょう?

だから黙っている代わりにこのISのテストプレイヤーとしてISを預けてくれることと、月ごとにちょっとした小遣いをもらってるだけです」

 

 

 

「結果あなたが脅してるじゃない」

「それでもどっかの国から罰金を求められたり、コアの返還とか言われるよりは安い出費じゃないですか?それにテストプレイヤーなのでちゃんと動かした時にはデータ送ってますよ」

 

 

「いいの?黙ってた事をここで話しちゃって」

「本当はダメですよ。

けどそのことはここでしか喋ってないし、これからも喋るつもりはありませんから広まってたらどちらかが話したということになりますね。俺はここの二人なら黙っていてもらえるかなぁと思ってますけど」

 

 

 

「けど、そのISに盗聴器とか仕掛けられてたら?」

「その可能性はないですね。元々盗難機だったコレにそんなものが付いてるとも思えませんし。一回だけドイツで見てもらった時も怪し気な装置を付ける暇はなかったと思うし」

 

 

 

 

「そう言えば『黒炎』の機体データはどうなってる」

「今更ですね……、もう少しですよ。

あのドイツのクソババアが俺が男だと知ったら女尊男卑の対応丸出しで、それを知った他の偉い方々も慌てまくるしで大変だったんですよ」

 

 

 

 

質問攻めはツライ。しかも嘘もつけない。

帰ったら飴をやけ食いしよ。

 

「それともう一つ、私から言わなくてはならないことがある。」

 

 

 

織斑先生(ブラコン)が言いそうなことなんて『弟を無人機から助けてくれて感謝する』とかだろ

 

 

 

 

 

「一夏を助けてくれて感謝する。私はあの時何も出来なかった」

「いえいえ、無人機は俺がただ倒したかっただけなんで」

「勿論 今回の件も感謝している。だが今の感謝は今回のことではない」

「えっ?」

 

 

 

 

「私が言っているのは-----第2回モンドグロッソの時の話だ」

 

「聞いたんですか?一夏から」

「あぁ、それにしても弟の恩人がまさかこんな近くにいて、あろうことか敵かと疑ってしまった。本当にすまないと思っている」

 

 

 

一瞬ジャックバウアーと思ってしまった俺は悪くない。

それにしても気づかれたか……。

 

 

 

 

 

「別に気にしてませんよ。俺が目の前で誘拐されてるのを見て黙ってられるほど冷酷ではありませんし」

 

 

 

 

まさか織斑千冬の弟だなんて思ってなかったけどな

 

 

「それに俺もその部隊のリーダーを捕まえられませんでした」

「そう自分を責めるな。私たち姉弟にとっては恩人だ。今はそれだけでいい」

 

 

「ありがとうございます」

「礼を言うのはこっちの方だ。それに更識、お前からも言うことがあるのだろう」

 

 

 

えっ?楯無さんから?

どうでもいいけどこの流れからだと言い辛そうだな。

 

 

 

「蒼斗くん。あくまで推測なんだけど……。

貴方はこれまでにモンドグロッソでの誘拐事件やISの強奪事件以外にも事件で犯人を捕獲、または事件の解決に手を貸してなかった?」

 

 

 

自分でも自分の口角がピクッと反応したのがわかった。

 

 

 

「どうしてそんなことを?」

「蒼斗くんが関わった2つの事件から共通点をいくつか見つけたの。その共通点がある事件を探したら、当てはまる事件が何個も見つかったってわけ。

で?そこんとこどうなの?」

 

 

 

 

「ハァ、その通りですよ。やっぱりどうしても家から近いところの事件の解決が多くなっちゃいますからね」

「モンドグロッソの事件はドイツなんだけどね………。でもどうしてここまで気づかれずに事件に関われたの?」

 

 

 

「う〜ん、事件の発生は警察の盗聴とかですね」

「今まで気づかれなかったのは?」

「それも盗聴のおかげですね」

 

楯無さんは織斑先生の方をチラッと見た。

 

「眼鏡のない蒼斗くんのウソなんてバレバレよ♪」

 

 

なんでそんなに楽しそうにこっちをみるんだ……

 

 

 

 

「………すいません。このことは少し言いたくないんで」

 

 

前世での経験から警察がくる時間の平均くらいならわかる。それより早い時間で終わらせて逃げていた。

さすがにこのことは説明できないし……

 

 

 

「あぁ、いいのいいの。これまでの蒼斗くんにはいろいろ助けられてるし、今更そんなことで謝らないで」

「ありがとうごさいます。そろそろ帰ってもいいですか?」

 

「私は言いたいこと言えたからいいわよ。先生はどうですか?」

「私も別に問題無い。」

「じゃあ失礼します」

 

俺はハンガーにかけてあった制服を着て、保健室を出た。

 

「よし、行くか」

 

 

 

 

 

 

眼鏡を取り返すために………

 

 

 

 

こういうのはいじめだと思う……

 

 

まず眼鏡が無いから今どこにいるのか落ち着いて考えることができず、頭の中から地図を引っ張り出すので精一杯だった。

そしてやっとの思いで職員室についた。そうしたら先生たちにさっきの試合のことで質問攻めに遭う(全部笑って誤魔化したが)。

そして眼鏡のことを聞くと

 

「眼鏡なら織斑先生が持って行ったよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラコンがぁぁぁぁああああ!!!!

なぜにさっき言わなかった?!

 

ハイ、引き返しました。無駄に学園が広いから余計めんどくさい

 

 

 

しかも保健室の場所わからないからアリーナの中をグルグル探したし、見つけたけど誰もいないし、一夏に会うし、

 

 

 

「蒼斗!!生きてたんだな!!」

 

「勝手に殺すなよ」

 

 

あれ?デジャヴな気がする

 

 

「心配したんだぞ、本当に」

「あぁ、悪かった悪かった。」

「モンドグロッソの時に……助けてくれたのはお前だったんだな」

「まぁな、べつに礼はいらないよ」

 

 

「それにしても……お前眼鏡はどうしたんだ?」

「あっ!そうだ!お前さ、織斑先生見なかったか?」

 

「千冬姉?そういえば蒼斗に用があるとか言って寮に行くって言ってたぞ?」

「マジ?サンキュー。織斑先生が眼鏡を持って行ったんだ」

「あぁ……大変だな」

 

 

「じゃあな、今度なんかおごれよ」

「ハァ?って逃げんの速っ!?」

 

 

 

なんか一夏を見てたらブラコン思い出してイライラした。

 

 

 

 

 

寮に着きました。

まず寮長室に行く-----いない。

そこで一夏(シスコン)がブラコンさんは俺に用があると言っていたのを思い出した。

 

そして今、俺は自分の部屋の前にいるのだが………部屋の中から異様な気配を感じる。むしろ悪寒がする。

 

とりあえずゆっくりとドアを開けた。

 

 

 

 

「あっ!おかえりなさーい。お風呂にします?ご飯にします?それとも、わ・た・し?」

 

 

 

 

???

状況を整理しよう。

部屋には楯無さん。うん、おかしい

そして裸エプロン。うん、おかしい

 

 

 

もし楯無さんが目の前でこの格好でいたら眼鏡が無く、キャラがブレまくりの俺はここで赤面していただろう。

 

 

 

だがそれは普通なら(・・)の場合である。

目の前に広がる光景、それは-----

 

 

 

 

部屋の真ん中にいる織斑先生の前で楯無さんが正座させられていた。

 

 

なんだこの混沌(カオス)な空間は……

 

 

 

「蒼斗く〜ん、助けて〜〜〜〜〜」

「無理です」

 

 

相手は織斑……もとい鬼斑先生だぜ?

 

「ほらっ、鳴神。眼鏡だ」

「おっと。あざっす」

 

「そういえば蒼斗くん。更識の家に行くの明日になったから準備しておいてね。遺書とか」

「誰が立っていいと言った。まだまだこんなもので終わらんぞ。遺書を用意するのはお前だ、更識」

「えっ?ウソですよね、織斑先生。蒼斗くん?本当に助けてよ」

 

 

 

 

俺はそっとドアを閉めた。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。



○次回予告


更識家、日本の暗部であるその家に向かった蒼斗と楯無。

そこで彼らを待ち受けていたのは前当主、更識 一閃だった。


そして楯無の口から告げられた言葉に蒼斗は驚愕する。


次回、『本当の名前』

この次も、サービス、サービスゥ!!


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本当の名前

いやはや、5日ぶりくらいですね。

更新する日を見計らっていたらバルサ氏から急かされました(笑)


バルサ氏が自宅で「ハリー!ハリー!」と叫んでしまうとご近所様に迷惑がかかるので投稿しました。


バルサさん、叫んじゃダメですよ。


 

今 俺はIS学園の校門近くにいる。

 

理由は待ち合わせだ。

 

 

----------

 

 

 

「よくも私を見殺しにして行ったわね」

 

それは昨日のこと、あの後無事?解放された楯無さん。ちなみに服はまだ裸エプロンのままだ。

眼鏡があってもこれは直視し辛い………

 

 

「明日、更識家に行くんですか?」

 

「ええ、そうよ。明日は一日休みだから9時くらいに校門で集合でどうかな?外出届けは出しておくから」

 

 

そこで俺は思っていた疑問を口にした。

 

「オーケーです。ところで……………」

「うん?」

 

 

 

 

 

「なんで荷物を持ってきてるんですか?」

 

部屋にはダンボール、そして部屋には楯無さんの荷物…いや私物が置いてあった。

 

なんでだろう、この先の展開が読めてきた…………

 

 

 

「今日からここに住むからだけど?」

「なんで疑問形なんですか………ってそれよりここに住む?」

 

 

 

 

「いいでしょ?これからよろしくね」

「監視カメラとかありますよ?」

 

「そんなものとっくに会長権限で全部回収したわ」

 

 

 

ダンボール箱から覗いているコードはおそらくそのカメラ類etcなのだろう。

 

 

くそ、仕事が早い。カメラに裸エプロン姿が残ってたら面白かったのに。

 

 

 

「べつに主従関係だからいいじゃない」

「まだ主従関係ではない。と言っていたのでダメです」

「ふ〜ん、まだ(・・)ねぇ」

 

 

あっ、しまった………

 

「じゃあ今晩は部屋に戻るわ。今晩わ(・・・)、ね。」

 

 

そう言って楯無さんは去って行った。

 

 

 

 

「ちょっと!荷物持って行ってくださいよ!!」

 

 

 

----------

 

ということが起きた。

 

なんでだろう。俺が楯無さんに勝ってからもいいことがなにも起きないのだが…………

 

 

「蒼斗く〜ん」

 

お、楯無さんが来たんだが…………

いつもの制服と違う楯無さんに少し見惚れてしまった。

 

 

楯無さんは見ているだけで涼しげな薄水色のワンピースを着ている。その姿は穏やかな清流のようだった。

 

 

「待った?」

「今、楯無さんを見つけたら待ってる時間なんか全然気になりませんでしたよ」

「もう、上手いんだから」

 

 

 

今俺は眼鏡を着けているからお世辞のように思われたようだ。

素直な気持ちを言ったつもりだったんだが……

 

それと少しだけこの状況に既視感を感じるが……気のせいか。

 

 

「そういう蒼斗君も似合ってるわよ」

「あ〜……、ありがとうございます。」

 

 

 

俺が今着ているジャケットは数少ない外出着の一つだ。

ファッションに関してあんまり細かくないので、結局店員に勧められた上下で外出することが多い。

 

 

 

「う〜ん、もうちょっと服とかアクセサリーとか髪とか工夫すれば絶対かっこ良くなるのになぁ〜」

「ほぼ全部じゃないですか。早く行きましょうよ」

「あはは、わかったわ」

 

 

 

楯無さんの後に続いて歩いていると、昨日の夜から気になっていたことを聞いてみた。

 

「ところでどうやって行くんですか?迎えが来るとか?」

「ブッブー!!ハズレ〜」

 

 

扇子を開くと『残念!!』という文字………ハイハイ

 

 

「全然悔しくないんでさっさと教えてくださいよ」

 

「もう、強がっちゃって♪モノレールで行くのよ」

 

「モノレールで?」

 

「うん、最寄り駅から徒歩五分!!」

 

 

 

どこの不動産屋だよ……あっ、扇子に『良物件』って書いてある。

いつの間に扇子を変えたんだ………

 

 

「それじゃあレッツゴー」

「行きますか」

 

 

 

 

 

 

時は経って更識家の前

 

 

『最寄り駅から徒歩五分』って言うからモノレールの駅かと思ったらやっぱり地下鉄に乗り替えるんですね。

 

目の前には武家屋敷。敷地としては前世より少し大きいくらいだと思う。

 

 

「じゃあ開けるわよ」

 

楯無さんはそう言って、門を開けた。

 

 

 

 

門の中には風情のある庭が広がっていた。

大きめな池や多くの盆栽など、配置は違うが前世を思い出すものがたくさんあった。

 

 

 

「今さらだけど、態度とかには十分気を付けてね」

「わかりました」

 

 

楯無さんは玄関の引き戸に手をかけた。

そして俺は息を深く吐き出し気持ちを切り替える。

 

 

 

「お待ちしておりました」

 

楯無さんが引き戸を開けると、玄関には眼鏡をかけている少し控えめな印象の女性が立っていた

 

 

「ただいま、虚ちゃん」

「始めまして、え〜と虚さん」

「始めまして、楯無お嬢様に仕えている布仏 虚と申します。」

 

 

虚という名前は楯無さんから聞いていたが、苗字は今まで知らなかった。

 

 

「あれっ?布仏って本音の………」

「はい。本音の姉です。本音も簪様の従者としてここに来てますよ」

 

 

 

本音って従者だったんだ………それも簪の。

簪 苦労してそうだな。

 

 

「お嬢様、そして蒼斗さん。先代がお待ちになっております。こちらへ」

 

 

俺と楯無さんは虚さんの案内によって、一際大きな部屋の前で止まった。

 

 

「こちらで先代がお待ちになっております」

 

 

俺は最後になるかもしれない外の景色を縁側から眺め、もう一度深呼吸する。

 

 

「失礼します」

 

俺はその大きな部屋の障子の戸を開けるが、何が襲いかかってくるか わからない。

俺は細心の注意を払っていた。

 

 

 

しかしその考えは杞憂に終わる。

大きな和室には一人の男性が正座をして待っていた。

 

存在感のある甲冑を背に座っているにも関わらず、それ以上の何かを放っているその男性から目が離すことができない。

 

 

 

「急に呼び出してすまなかったね。私は更識 一閃。元当主だ。」

「始めまして。既にご存知と思いますが、鳴神 蒼斗です」

 

「今回は君が楯無の従者になる件でよかったかな?」

「はい、間違いありません」

 

 

一閃さんは俺をジッと凝視しているので、俺も彼から目を離さない。

 

「我々も君がISを動かした時点で君の素性について調べさせてもらった。そしてただの一般人とわかった男を楯無が従者にしたいと言った時はどういうつもりかと思ったが…………なるほど、楯無が従者にしたいという気持ちもわかるな」

「そうですか?ここにはもっと強い人だっているでしょう」

 

 

「やはり資料だけでなく直接会わなくては相手の実力はわからないからね。一度織斑くんにも会ってみたいものだ」

 

 

おそらく彼自身も相当な実力者である事に変わりはないだろう。

 

 

「俺をここに呼んだのは会うためだけですか?」

「いやいや、そんな事はない。更識家に仕えるという事は裏の世界に入るということだからね」

「ですよね。こんな早く帰れるとも思ってませんでしたけど」

 

「私としてはこのまま承認しても何も問題はないのだが……それではここにいるものに示しがつかない。

 

 

そこでなんだが………少し年寄りの運動に付き合ってくれないか?」

 

 

年寄り……か?見た目は30代前半な印象だったが………。確かに16・7歳の娘を持つ30歳の親はいないか。

 

 

「イイですよ。少しでしたら」

「よし、じゃあ場所を変えようか」

 

 

 

 

一閃さんが連れてきたのは道場だった。

 

その道場には、更識の使用人らしき人々や簪と本音がいた。

 

俺は軽くストレッチをしてから上着を脱いで、眼鏡と一緒に楯無さんに預けた。

 

「眼鏡がなくても大丈夫なの?」

「今回は眼鏡がない方がいいかと思いましてね」

 

 

楯無さんは首を傾げた。

 

「どういう意味?」

「う〜ん………。眼鏡があると頭が冴えるというのは言いましたよね?

 

戦闘の場合だと 瞬時に作戦を建てる時は眼鏡を、逆に眼鏡がないと、奇襲や予想外のことも本能的に躱したり対応ができる感じですかね」

「ホント無茶苦茶ね………」

 

 

否定はできないな………

 

 

「蒼斗君?準備はイイかな」

「あぁ、すいません。じゃあ始めましょうか」

 

 

更識 楯無 side

 

 

今から更識 一閃(お父さん)と蒼斗君が勝負をする。

更識家 前当主であるお父さん。実力は一線を退いた今でも、本気を出せばこの中で一番であると予想する。

 

対して二人目の男性操縦者の蒼斗君。底が見えない強さを持っていて、勝つ確率は十分あるだろう。

 

 

「そういえば、試合の勝敗はどうやって決めますか?」

「本当ならば『一回でも私を床に倒せたら君の勝ち』にしたい所だが………「ハハハッ、それじゃあ俺が勝つに決まっちゃってつまらないじゃないですか。

それなら『相手を床に倒せたら勝ち』にしましょうよ」……君が良いのなら私もそれで良い」

 

 

蒼斗君がハンデに対し、『勝つに決まってる』宣言をしたことにより、周りの雰囲気がピリピリし始める。

 

 

「そろそろ始めましょうよ。一閃さんからどうぞ」

「そうだな、じゃあ行くぞ。」

 

 

お父さんはゆっくりと前に歩き始める。

これはお父さんの得意パターン。移動のスピードと攻撃のスピードを微妙にずらすことによって対応を遅らせる戦法。

 

『打ち拍子』によく似たその攻撃方法は、私の得意とする『無拍子』と違って、継続し続けることが出来る。

 

無拍子は空白の一瞬しか効果は無いが、打ち拍子なら相手のリズムを外し続ければ無限に使える。

 

 

言葉にするのは簡単だが、実際に相手にすると相当闘いづらい。遅い拳をガードする前に、横から速い拳が飛んで来ることもあるので処理がなかなか追いつかない。『楯無』を継承した今でも、お父さんには勝ちきれない。

 

 

「おおっと」

 

お父さんは何度も拳を繰り出している。それを蒼斗君は器用にガードし続けている。

片方の拳を追い抜かすような攻撃は、受け止めるのではなく体を捻って躱す。

 

 

そういえば織斑先生がVTシステムを使った蒼斗君の動きはモンド・グロッソの時の先生の動きだけではなく、一部の回避は蒼斗君の独力だと言っていた。

 

そして勝負の決着方法は『相手を床に倒す』。何発相手の攻撃を受けても問題無い。

だが、まだ一度も蒼斗君は攻撃していない。

 

 

「どうした?守ってばかりじゃ勝てないぞ」

「まぁ、攻撃することも出来るんですが……ただーーーー」

「ただ?」

 

 

 

 

 

「一閃さん、足を怪我してますよね?」

 

 

怪我?私は一度もお父さんが怪我したことを聞いたことがなかった。

 

ーーーいや、一度だけあった。確か私が『楯無』を継承する約一ヶ月前、南米の調査へ向かったお父さんは、戦争の爆撃に巻き込まれた。幸い火傷はなく、骨に軽いヒビが入っているとは聞いた。

 

 

 

「なぜそう思うんだい?」

「実は一閃さんの戦い方と似た人と戦ったことがあるんですが……。その人は足払いを効果的に使わないと意味はないって言ってるんですよ。

ですがあなたは足を意識していたにも関わらず、足での攻撃をしなかった。微妙にかばったような仕草も見てました。

それは足を怪我していたからですよね?」

 

 

 

その人には勝ちましたけど、と付け足す。

 

「ここまで来ると流石としか言いようがないな。

確かに、私は一年と2ヶ月前に骨を折っている(・・・・・)

「じゃあ『楯無』を譲ったのも足が原因ですか?」

「そうだ。一応、長女が高校生になるのと女尊男卑が強まっているというのもあったが、一番の理由はそれだ。」

 

 

私はすごく驚いた。まさか『楯無』を継承する裏にこのようなことが隠されているなんて思っても見なかったからだ。

実際にこの中にいる全員が知らなかったようで、周りがざわつき始める。おそらく知っていたのは、今ここにいないお母さんくらいしかいないと思う。

 

 

 

「………もしかして……これ言っちゃいけない奴でした?」

「言ってはいけない訳ではない。ただここにいる皆には知らせなかっただけだ。」

 

 

 

蒼斗君は頭を掻きながら尋ねた。

 

「一閃さん、じゃあこの試合は引き分けとかにして別のもので勝負しませんか?幾ら何でもけが人を攻撃するのは気が引けますよ」

「いや、これは私の負けだ。怪我を見破られた時点で勝敗は決まったも同然だ。」

「一閃さんがイイんでしたらそうしましょう。」

 

 

 

するとお父さんが柄にもなくニヤニヤした。

 

 

「楯無に見合うような強さを持つ男がいて、私も娘の花嫁姿を見れる日は近そうだな」

「ハハハ、じゃあ次にこの家に来るのは結婚の挨拶の時ですかね」

「そうあって欲しいものだ」

 

 

そう言ってお父さんと蒼斗君は笑い合う。

なんだかちょっとだけ不愉快だった。

 

 

「これで楯無さんの従者として認めてもらえますか?」

「あぁ、そうだな。初めて君を見た時から私には結果が見えてはいたが」

 

 

つまりお父さんは負けるとわかっていて勝負を挑んだのだ。

 

「これで……楯無お嬢様とか言わないとダメですか?」

「虚ちゃんの真似かい?君が呼びたいのなら構わないが……

 

 

それより娘の真名を知りたくはないか?」

「ちょっと!お父さん…「あっ!そうか。『楯無』は当主が引き継ぐ名前だから……」」

 

 

 

「そうだ。真名は別にある」

 

 

 

 

鳴神 蒼斗side

 

 

「そうだ。真名は別にある」

 

一閃さんから衝撃の事実!!今までの話の流れから本当の名前が違うことくらいわかるはずなのに、緊張してて気づかなかった

 

 

 

「知りたいです!是非!!」

「ならそれはそこにいる本人から聞くといい」

「ええっ!?」

 

楯無さんが急に話を振られて驚く。

前世の家では襲名制度は無かったな………

楯無さんの本当の名前……気になる。

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ私の名前を……教えるね。」

 

 

俺は数歩だけ楯無さんに歩み寄った。

 

「私の………本当の名前はーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーー刀奈(かたな)

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女がそう告げた瞬間、一瞬で俺の中の世界の音は全て消え去り速くなる鼓動の音だけがステレオのように鳴り響いた。

 

俺の体がガクガクと震え出すのがわかった。体が否定していた、『そんなはずはない』と。

 

 

 

「刀……奈?うそ……だろ?俺だよ、アオトだよ。どうして………」

「何を言ってるの?蒼斗(そうと)君。」

 

 

全身の血の気が引いていく。目の前が白と黒の二色に染まった気がした。

 

 

「これが……俺の運命なのかな………」

「ちょっと?蒼斗君!!」

 

俺は前のめりに倒れこんだ。

遠ざかる意識の中で前世の主人であった彼女と初めて出会ったときの出来事が走馬灯のように浮かんで来た。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「こんにちは、蒼斗(あおと)君」

 

 

 

ちょうど前世の今くらいの年の時、俺と彼女は出会った。

 

 

「私の名前はーーー」

 

彼女はうふふっと軽い微笑みを見せて言った

 

 

 

御門(みかど) 刀奈(かたな)よ。」




最後まで読んでいただきありがとうございます。



前世の主人と楯無さんの真名を一緒にしました。


あ、それとアオトというのは蒼斗君の前世の名前です。

追伸:感想欄で急かしてもこれからはマイペースで行くので悪しからず。


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俺の本当の気持ち

一週間ぶりっす。
書くペースが亀にも負ける鼻くそ作者です。



さてさて、書きたかった場面の続きですが……

留意して貰いたいのは、感想欄で楯無さんは非転生と説明しましたが、まぁ記憶の無い転生なら問題ないし、むしろキャラが上手く動かせるかなぁ〜〜と思って変更しました。


更識 楯無side

 

「私の………本当の名前はーーーー刀奈(かたな)

 

 

 

私は彼に本当の名を告げた。

 

すると彼はわなわなと体を震わせるようにして言った。

 

 

「刀……奈?うそ……だろ?俺だよ、アオトだよ。どうして………」

 

 

 

蒼斗君の豹変ぶりに私は驚いた。目の焦点は合わず、体も震え出している。その様子を見て思わず尋ねた。

 

 

「何を言ってるの?蒼斗(そうと)君。」

「これが……俺の運命なのかな………」

「ちょっと?蒼斗君!!」

 

 

そして蒼斗君はゆっくりと前のめりに倒れた。

 

蒼斗君はまるで私のことを……刀奈を知っているような反応していた。

しかし私は彼を知らない。あらかじめ調べた彼の情報にも私との接点はなかったはず。

 

 

そして気になるのはアオトという名前と『彼の運命』という意味。

 

 

 

私は倒れている蒼斗君を見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

鳴神 蒼斗 side

 

 

やっとわかった気がする。

 

 

 

俺の本当の気持ち。

 

 

 

 

初めて楯無さんと話した時、どこか懐かしいと思った

 

 

簪との仲が良くないと知った時、なんとかしてあげたいと思った。

 

 

楯無さんの声を聞いているだけで心が安らいだ。

 

 

 

 

だがその理由は、俺が何処かで楯無さんを前の主人だった御門(みかど)刀奈(かたな)とを重ね合わせていたのだろう

 

 

いや、もしかしたら俺が再びこの世に生をうけたように、彼女もまた生まれ変わったのかもしれない。

 

 

 

 

きっと俺は…………

 

 

 

 

刀奈のことが、

いや、更識刀奈のことが----

 

 

 

 

----好きなんだ

 

 

 

「ここは…………?」

「あっ!目が覚めた!!」

 

 

楯無さん、いや刀奈が目の前にいてドキッとした。

 

 

「どれくらい寝てました?」

「えーと…10分くらいかな?」

 

 

なんか最近倒れることが多い気がする。

この三日間いつも気絶してるし、

 

 

「具合はどう?」

「大丈夫だよ、刀奈。」

 

 

「刀奈で呼ぶときは呼び捨てなのね」

「あー……なんか刀奈にさん付けは少し抵抗があるかも」

 

 

 

すると刀奈が思い出したように話しかけた。

 

「蒼斗君は私と会ったことあるの?さっきもなんか知ってるような反応をしてたけど……」

 

 

 

俺が起きたことを聞いてか、他の人たちも集まり始める。

 

 

「いや、俺が思ってる刀奈とは人違いでしたね。すいません」

「君にとってその刀奈さんは大切な人なのかい?」

 

 

 

他の人と一緒に来た一閃さんが俺に尋ねた。

 

 

「大切な人………いや、大切だった人ですね。

もう彼女は……………」

「あぁ……、すまないことを聞いてしまったね」

「いえ、大丈夫です。」

 

 

「それとアオトっていう名前は何なの?」

「昔、刀奈が俺を呼んでいた名前です。ほら、蒼斗ってアオトとも読めるじゃないですか。」

 

 

前世の俺は蒼斗と書いてアオトという名前だった。俺は主人のことをカタナと呼び捨てにし、彼女も俺のことをアオトと呼んでいた。

今世でも“蒼斗”という漢字こそ一緒だったものの、読み方はソウトだった。正直言ってちょっと気に入ってたりする。

 

 

「もうだいぶ調子も良くなったんでお(いとま)しますよ」

「その前に昼食はどうかな?こちらで用意するが」

 

「あ、お父さん、蒼斗君は…「本当ですか?頂きます。」」

 

 

刀奈がジト目で睨む。

 

 

「……あなたいつも飴しか食べないじゃない」

「飴しか食べないんじゃ無いです。飴とサプリメントがあれば充分なだけです。」

 

 

食べれる時は食べる。それが俺のポリシーだ。

 

 

「じゃあ行きましょう、一閃さん」

 

 

 

 

 

昼飯を(山ほど)頂いたあと、更識家を後にした。

 

その後住んでいたアパートに戻って(織斑先生が用意してくれなかったから)荷物をまとめるために久々の我が家へ帰る。

 

 

 

「ただいまー………って言っても誰もいないか」

 

 

俺の今世での父と母は他界した。

二度目の小学校入学の少し前に無差別殺人の被害に遭った。

特に思い出はなかったが、小学校まで育ててくれたことは感謝している。それから2年間親戚に預けられたが、もう自立ができると思い、親戚の家も出た。

 

 

「お邪魔します」

 

 

そういえば友達をここに呼ぶのは初めてかもしれない。

 

 

「あー、楯無さん。銃とか精密機械とかもあるんで気をつけてくださいね」

「じ、銃?なんで?」

「ええ、ドイツに頼めば銃の1、2個くらいなんのその」

 

 

 

刀奈が複雑な笑みを浮かべた。

 

 

「ドイツも大変ね……。ところで何をIS学園に送るの、蒼斗君?」

「ええと……このノートパソコンと……小型銃と……あ、そういえば飴が無くなりかけてたな」

 

 

また箱買いしないとなぁ……

 

 

 

「えぇ?あんなにたくさんあったのにもうなくなったの?」

「無くなってません。あと一割を切っただけです」

「まだ一週間しか経ってないのに……虫歯とかにならないの?」

「聞くところ虫歯ですか?まぁ歯磨きもちゃんとしてるんで多分大丈夫です。早くまとめて帰りましょうよ」

 

 

いっそのこと この家の荷物を全部まとめてアパートを出たら?という楯無さんの提案を受け入れ、ゴミと学校に郵送するものとその他に分けた。その他は更識家に郵送してもらい、大家さんにもそのように伝えた。

 

 

 

そして今、俺はIS学園にいる。

心細いが刀奈と別れて、自室に戻った。

 

 

 

 

 

のだが

 

「おかえりなさ〜い。お風呂にします?ご飯にします?それとも、わ・た・し?」

 

 

今回は目の前に裸エプロンの刀奈。

昨日でも目のやり場に困ったのだが、完全に惚れてしまった今となっては余計に直視できない。もちろん眼鏡があっても無駄だということは理解している。

だが顔は赤くならずにすみそうだ。

 

 

「もう二回目なんで大丈夫ですよ」

「ホントにそうかな〜」

 

 

そう言って刀奈は俺の眼鏡を取るために手を伸ばした。

 

何しろ眼鏡を付けている間は反射より思考が優先される。よって眼鏡を外された時の絶望的状況は想像出来ても、それを防ぐための手が伸ばせない。

実際こんなことを考えている間にも楯無さんの手は伸びている訳であって……

 

 

「でりゃ」

「ちょっ、刀奈」

 

眼鏡を奪われてしまっては冷静を保つことができない。

自分の顔がどんどん熱くなるのを感じていた。

 

 

「わー、蒼斗君、顔真っ赤ー。えっちぃなあ」

「べ、別にそういう目で見てるわけじゃ……」

「だったら目を逸らす必要ないじゃない」

 

 

いや、それは色々とまずい。

だって……男の子だもん………

 

 

「あの……刀奈?眼鏡を返して欲しいんですけど……」

「なに?そんなにじっくりおねえさんの体が見たいの?しょうがないなぁ」

「はぁ?……って、何をしてるんですか!?」

 

 

刀奈がエプロンの紐をほどき出した。

それはかなりまずい。俺の年齢的にも作者の年齢的にも……

って作者?はて、なぜそんな言葉が出てきたんだ?

 

 

 

 

「じゃん!水着でした〜」

 

 

どのみち刺激が強いことに変わりはない。

画像で見ればつい拝みたくなるかもしれないが、三次元でみるとぶっ倒れそうだ。

 

「自分の部屋に戻るんじゃなかったんですか……?」

「えっ?従者になったらイイって言ってたじゃない」

 

 

 

あっ……そんなこと言った気も……

 

 

荷ほどきまで終わってるし

 

「荷ほどきなら今朝 蒼斗君が出てからしたのよ」

 

 

 

そう言って刀奈は胸の谷間を見せつける……ぐあ、

 

「失礼します!!」

 

こんな時に選べるコマンドは逃げる一択しかない。

 

 

 

 

外の空気を吸いに行って見ると簪と出会った。

 

「よっ!おかえり」

「蒼斗……ただいま」

「ちょっと後で俺の部屋に一緒に来てくれないかなぁ」

「なんで?」

「実は………」

 

 

 

かくかくしかじか

 

 

 

「へぇ、お姉ちゃんが」

「そうなんだ。なんかそれだけで疲れて」

「疲れた時には……これ」

 

 

 

そう言って簪はどこからか小瓶を取り出した。

 

「私が今開発中のスーパーエナジーゲル二号『よっこらショット』。スプーン一杯で一日の必要栄養素が摂取できる」

 

え?この気持ち悪い蜂蜜みたいなのが?

 

「一回……食べてみて」

「お、おう」

 

 

すでに簪はスプーンですくって手渡している。

食べるしかないのか……

 

 

 

パクッ

 

 

………

…………

……………

 

 

「美味い!!」

「本当?」

 

「あぁ、この甘さは俺が一番理想的だと思うぞ。

それにこの一杯で一日分の必要栄養素が摂れるなんて最高じゃないか」

「ありがとう……」

「いや、ホントにこれ美味いよ!!。めっちゃこれ欲しい!!」

 

 

この後『よっこらショット』を定期的にもらう約束をつけて部屋に戻った。

 

 

「おかえりなさ〜い……って簪ちゃん!?」

 

 

今だ裸エプロンの刀奈に一矢報いて部屋に戻ることに成功した。

ちなみに刀奈に『よっこらショット』を食べさせてみたら(おそらくあまりの美味さに)プルプル震えていた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。



みなさん、これが核心に触れましたか?

こっからタッグマッチまでは暇だなぁ。
無人機も出しちゃったからクラス代表トーナメントはオリジナル展開で進めよっかなーと思ってます。



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束の間の日常

いやはや、前話の後にそのままクラス対抗戦の代わりの話をぶち込もうと思ってたんですが……。

クラス代表ははっきりしておかないと決闘の意味なくね?ということでなんとか急ピッチでまとめました。


我ながらどうでもいい話でまとめてあるので観なくても良いですが。



「それでは、一年一組の代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

 

久々に学校にきたら、HRの時間に山田先生はそんなくだらないジョーク?をかましてきた。

 

 

何がどういいのか、とは聞かない。

聞かないのが俺なりの優しさだ。

 

 

 

「ちょっと待ってくださいよ。俺、負けたんですよ?」

 

 

 

それもそうだ。

一夏はオルコットに負けたはずだから、普通オルコットがすべき仕事だ。

 

 

 

「それは私が辞退したからですわ」

 

 

そう言ったのはもちろんオルコット。

 

「一夏さんは、私が思っている以上に才能あふれる素晴らしい方でした。

そして勇敢に立ち向かう姿を見て、私は感動しました。

 

一夏さんにもっと力を付けて貰いたい。そのために私はクラス代表を辞退して、推薦させて貰ったのですわ」

 

 

 

一夏さん、という呼び方とどう考えても一昨日とは違う口調にいささか違和感を覚えた。

 

 

 

「才能なら蒼斗の方があるだろ、あの動きはなかなか出来ないと思うぜ」

 

 

 

その発言でクラスの中でも「確かにそうだねー」、「あの戦いには萌えたわー」という声が聞こえてきた。

 

 

 

 

『萌えた』の字が違う気もするがあえて突っ込まない。

それも多分優しさだ。

 

 

だが俺がクラス代表になるのも困る。

 

 

「山田先生、織斑先生。ちょっとだけ一夏と話してもイイですか?」

 

「あぁ、構わん」

 

 

織斑先生から許可を取り、一夏を呼び寄せる。

 

 

 

 

「なんでだよ、蒼斗。学校来てなかった分みんなと触れ合うチャンスじゃないか」

 

 

余計なお世話だ。

 

 

 

 

「あのな、一夏。クラス代表はクラス代表で試合があるっていうのは聞いたよな?」

 

「あぁ、……でもその日お前いなかったよな?」

 

「それは現ルームメイトに聞いた」

 

 

 

刀奈から色々と説明を受けて、それなりの情報は持っている。

 

 

「そんなことよりも、お前は俺が最後に倒れた所を見ただろ?俺の機体の事も」

 

「あっ!そっか」

 

 

 

流石に当事者の一夏に黒炎の説明くらいはしてある。

 

 

「そうだ。お前は大会ごとにぶっ倒れろって言いたいのか?」

 

 

ちょっと大げさかもしれないがクラス代表はやりたくないので仕方ない。

 

 

 

「じゃあ訓練機を借りれば……」

 

「クラス代表だぞ?クラス全員の代表。

そいつが実力の全てを出さずに戦うのを見てて楽しいか?

 

俺はおもしろくないね。不愉快」

 

 

 

何度でも言うが、俺はクラス代表なんかしたくない。

 

 

 

 

「わかった。そういうことなら俺がやるよ」

 

「織斑先生ー。クラス代表は一夏で決まりました」

 

 

「よし、クラス代表は織斑で決定とする。

それでは教科書を出せ、授業を始める」

 

 

 

 

 

 

天下のIS学園だけあって 授業はかなり進んでいたが、俺にとっては全く問題なかった。

 

 

 

そして放課の時、オルコットが俺の方へ来た。

 

 

 

「蒼斗さん……少しよろしくて?」

 

 

 

さて、どうしたもんかと考えていると、話を続けてきた。

 

 

「一夏さんとの戦い、そして貴方と無人機との戦い。さらに二人の男性操縦者の戦い。

 

それらを見て、私の男性に対する見方が変わりました。

そして今までの無礼を謝罪させて下さい」

 

 

 

そう言って頭を下げようとしたオルコットを手で制した。

 

 

「別に謝る必要なんかないよ。

それを言うならオルコットさんとの勝負の時にわざと負けるように仕向けちゃったしね」

 

「それは貴方の機体が……」

 

 

 

むむ、オルコットさんまで知っているとは……

 

 

「とにかく!!貴方に対して何かしないと気が済まないのですわ!!」

 

 

 

「じゃあこうしようか、今度俺になんか美味しいお菓子を買ってくれよ。それでチャラでどうかな?」

 

 

「そ、そんなことでいいのですか?」

 

 

「全然イイよ。イギリスの貴族様に謝られても気を使っちゃうし……。じゃ、そういうことでよろしく」

 

 

 

 

オルコットが一礼して去って行く姿を見て、少し肩を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

「「「織斑君、クラス代表就任おめでとー」」」

 

 

 

そしてパパパンッとクラッカーが鳴らされる。

 

 

放課後、食堂にて一夏のクラス代表就任パーティーが催されている。

 

1組全員参加、他クラス参加自由の、別名『ワイワイする会』(命名:俺)だ。

 

 

 

普段、あまり他の人と関わりたくない俺がこんなとこにいる理由。それはーーー

 

 

 

 

 

お菓子を食いあさるためだ

 

もちろん会費は払ったが、元を取りつつ周りから引かれない程度に食べまくるつもりで来た。

 

 

 

 

だが、

 

 

「なんで楯無さんがいるんですか……」

 

「やん♪いつもみたいに呼び捨てで呼んでよー」

 

 

 

 

いつも、というのは刀奈と呼ぶことだが、その名前は外では言わないことになっている。

 

 

 

ではなぜこんなことを刀奈が言ったというと……

 

 

 

 

「ええ!?会長と蒼斗君って……そういう関係!?」

 

「わ、私たちの会長がぁああ!!」

 

「蒼斗君もこっそり狙ってたのにぃいい!!」

 

 

 

 

この通り、場を荒れさせたいのだ。

 

最後の奴は何が言いたいのかわからんがとりあえず無視。

 

 

 

結果的にパーティーの大半がこっちに来るというアクシデント。

 

 

 

「あっ!たっちゃん。来てたんだ」

 

 

おそらく刀奈の同級生らしき人物までこんな所にいる。

 

 

「あ、その子が噂の引きこもり君ね」

 

 

 

女子の情報網は尋常ではないらしい

 

 

「ど、ども」

 

「ちょっと、黛ちゃん。私のお気に入りをいじめ無いでもらえるかなぁ?」

 

 

向こうから一夏が歩いてきた。

 

 

「ほおほお、蒼斗。両手に花だな」

 

「こっちのセリフだ、この野郎。イチャイチャしやがって」

 

 

そういう一夏の右手には篠ノ之さん。左手にはオルコットさんという状況に思い切り突っ込んでやった。

 

 

 

 

「はぁ?なんのことだ?」

 

「お前こそ両手に花だろうが」

 

「いやいや、これはそういうのじゃなくっデッ!?」

 

 

 

左右から同時につねられ、痛そうに飛び上がった。

なんか……いろいろ察した……。

 

 

 

「「ふんっ!!」」

 

 

そして二人は頬を膨らませて歩いて行ってしまった。

 

 

「な、なんだったんだ……」

 

 

おお、これは重症だな

 

 

 

「黛ちゃーん。写真撮ってーー」

 

「はいな」

 

 

刀奈は俺に腕を絡ませ、それを黛氏がパシャパシャ撮影する。

 

 

その時、黛さんのカメラに『新聞部』と書かれたシールが貼ってあるのを見つけ、とある可能性に思い至った。

 

 

 

 

それは、この写真が明日の学園新聞に載ってしまうという可能性だ。

 

 

まだ刀奈との2ショットしか撮られていないので、逃げるなら……今だ。

 

 

「先帰りますねー。それではさようなら」

 

 

 

光の速度で食堂を後にしてから、菓子の誘惑に足を止めさせられたがそのまま部屋に帰った。

 

 

 

 

 

次の日、一夏と 刀奈だけを綺麗に消した俺の写真が学園新聞の表紙を飾ったのは言うまでもない。

 




最後まで見て頂きありがとうございます。

この話が完成したので、ギジーちゃんさんとのコラボ作品を執筆しようかな。

イメージは大体できたのでそれを言葉に出来るよう頑張ります。




◆今作のボツ案

セシリアが謝りに行く場面

セシ「お詫びにと言ってはなんですが、クッキーを焼いて来ましたの」

蒼斗「へえー、じゃあ折角だしもらおうかな」


パクッ
……………
………………………




●ボツ理由
セシリアがラスボス化してしまうから


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特上の女

久しぶりです。

つい先ほど投稿する作品間違えました。
慌てすぎて自分でもわけわかんないです。

この話はクラス代表戦の代わりなので読まなくても良いですが……読んでいただけると嬉しいです。


場所はアメリカ、ニューヨーク。

ここの空港に一人の女性が入国していた。

 

 

「入国の目的は?」

「一応これでも研究者なの。ISの検査の手伝いを任されているわ」

 

「ではこれらの部品も?」

「そうなのよ。日本でもちゃんと言っておいたのに」

「あぁ、そうでしたか。こちらでも日本に問い合わせたところ確認が取れました。呼び止めてすみません。

鳴神 真子さん。」

「じゃあね、ステキなおにいさん。お仕事がんばってね」

 

 

 

やあみんな。俺の名前は鳴神 蒼斗。

現在女装をしてアメリカにいるぜ!!

一応女のフリして変声術で声を変えるとこまではしたことがある。

だが結構ガチのメイクにより美人にされ、周りの男から見られるのは始めてだ。

 

 

さらに先ほどの会話のような良い女性的ことをしなくてはならない。

さっきの会話の『研究者なの』と言った瞬間から吐き気が止まらない。

 

 

なぜこんなことをしているのか。それは一週間前にさかのぼる。

 

 

 

 

「お願い!アオト君。アメリカに行ってくれない?」

 

 

 

The United States?

いかん……おかしくなってる………

 

 

「はあっ?アメリカ?」

「そうなのよ……」

「なぜに?」

「あのね。今アメリカでこのISが開発されてるのよ」

 

そう言ってタブレット端末を俺に渡した。

 

 

 

「アラ……クネ?へえ、こんな形のISもあるんですね」

 

アラクネという機体はぱっと見蜘蛛のような異形のISだった。

 

「それの調査に更識で行かないといけないんだけど、私は今度のクラス対抗戦の準備で忙しくてね」

 

「それなら俺じゃなくてもいいじゃないですか」

 

「更識の従者のほとんどが男じゃない。結構危険になるかもしれないからISがないと……私のISもまだ万全じゃないし……」

 

 

そんなことを言われてショボーンとされると断れないじゃないか……

 

 

「お願いしていい?」

「ハイ、わかりました」

 

 

 

 

こんな感じでアメリカにいます。

さらに承諾してから必要事項を言われた。

 

・女装すること(IS動かすとめんどくさいから)

・一週間帰って来れない

 

 

女装はもちろん、一週間もキツイ。

 

学校に再び通い出してわずか4日。刀奈のお願いを安請け合いしてしまい、それから一週間女装の練習と専門的なIS調整の知識を叩きこむために学校サボる。そしてアメリカで一週間過ごす。

 

 

IS学園に入学してから早一ヶ月。総登校月日、5日。

なんだよ。超不良生徒じゃん。

 

刀奈のお願いを断ることも出来ないが一週間逢えないのはなぁ……

 

 

この後自分の女々しさのために自己嫌悪におちいる蒼斗だった。

 

 

 

場所は変わってアメリカの研究所。

 

やはり『アラクネ』の情報が漏れる可能性のある俺を放っておけないらしく、荷物検査が厳しくてかなりめんどくさい。

 

どのみち完成を発表するんだったらそんなに厳重に隠さなくても良くないっすか?

 

 

まぁ潜入出来た今となっては関係ないけどな

 

 

「おい、そこのスパイもどき!!」

 

スパイもどきまでいるとは、物騒な世界だ。

 

 

「おい、お前だお前。」

 

あ、おれ?

「スパイもどきじゃないですよ……って」

 

肩を掴まれたために振り返ってみると、そこにいたのは………

 

 

「い、イーリス・コーリングさん?」

 

アメリカの国家代表、イーリス・コーリングさん。

専用機:『ファング・クエイク』……とは言っても実験機らしいがそれでもイーリスさんの専用機だ。

 

安定性と稼働効率を重視し、最大の特徴は4つのスラスターによる個別連装瞬時加速(リボルバー・イグニッションブースト)。成功率は40%と低いが、もし成功されたら『黒炎』のシールドエネルギーと熱エネルギーを全て使っても余裕で捕まる。

 

 

「おい、なんだよそのめんどくせーのと会っちまったみたいな顔は」

 

 

だってめんどくさいもん

 

「いえいえ、出会えてとても光栄です。ところで私になんのようですか?」

 

「いや、アラクネの調整に呼ばれた日本人に会ってみようと思ったらな、そいつがどうみても普通の研究者……いや、普通の女じゃないから声をかけただけだ。」

 

 

うっ、バレた!?ええい!どうにでもなれ!!

 

「お前は日本のスパイか?」

「さすがですね、イーリスさん。確かに私は普通の女じゃない……ーーー

 

 

 

 

 

ーーーそう、普通の女じゃなくて特上の女よ。覚えておいてね」

 

 

そう言って普段は留めてある髪を揺らしながら立ち去った。

 

(ヤバイ、吐き気が………)

 

 

立ち去った時の歩きは少しおぼつかなかった。

 

 

 

イーリスさんと別れて、アラクネの調整に入った。

一週間で叩き込まれた技術を使って、なんとか遜色ないくらいだ。

 

一日が終わったころにはクタクタだった。

電波ジャックされる可能性があるので刀奈と連絡もとれない。このもどかしさは初めてこっちの刀奈と会った時には感じることのなかった感情だった。

 

それを抜きにしても女装が嫌だ。あと6日間も続くと思うと嫌気が差す。

 

 

(明日は……胃腸薬を買ってから行こう)

 

この日は胃のムカムカが取れなかった。

 

 

 

なんだかんだで最終日

 

アラクネは良い機体だと思う。

多足なため、従来のISより手数が多く複雑な動きが出来るところとか

 

 

最後の仕事も終えて、あとは帰って資料をまとめるだけだ。資料にまとめるための細工も出来てる。

 

「あ、イーリスさん」

「よっ、日本人(ジャパニーズ)

 

 

 

この一週間なんとなく避けていたため、げんなりする。

 

 

「こんなスパイもどきにお別れの挨拶ですか?」

「そんなとこだ。だがスパイもどきにしては腕が良かったって研究者が言ってたぞ」

「スパイもどきとは言って無いでしょ。変な捏造はやめて下さい」

 

 

実際スパイだから否定は出来ないけど

 

「一回お前と組手の一つでもしてみたいと思ってたんだがなぁ」

「う〜ん……この後用事がなければ別にいいんですけどね……。また別の機会にでも」

 

「アラクネの調査書をまとめなきゃいけないもんな」

「そうだ……って言うのは嘘で……。好きな人に早く会いに行きたいんで」

「へえ、女がいるのか」

 

 

ハイ……と言いそうになって気付いた。性別逆転してるから……

 

「同性愛者じゃないですし……てかイーリスさんってそんなに人をいじるキャラだったんですね」

「そうかもな」

 

 

イーリスさんがそこまで言ったところで警報が鳴った。

 

 

『緊急警報発令中、研究中のアラクネが強奪されました。警戒して犯人確保に動いて下さい』

 

「てめえがやったのか、鳴神 真子!!」

 

 

半ば予想通りではあったがイーリスさんが銃をこちらに向けてきた。

 

「せめて話だけでも「動くなっ!!」」

 

 

せめて黒炎を首から出せればアラクネに仕込んだ細工を使ってアラクネの場所がわかるのだが……

 

 

そうだ!!

 

「こい!黒炎!!」

「動くなって……言ってんだろ!!」

 

 

イーリスさんが発砲するが関係無い。

 

「アラクネの場所は……っと」

「てめえ……専用機持ちだったのか」

 

 

アラクネに仕込んだ細工とは、調整している時に電気エネルギーの集合体を混入させておいたことだ。

回路の中に隠しておけば、あとは黒炎からの遠隔操作で情報を入手できる。手で触れて無いので無人機の時のように熱エネルギーに変換は出来ないが、今回のように機体情報のメモが取れない場合はこれが一番楽だ。

 

 

電気エネルギーと独自の通信を使って位置情報を入手。

 

位置情報が示したのは研究所の中。

くそっ……場所が近いが間に合うか……

 

 

「ほらっ、コッチだ!!イーリス!!」

「待ちやがれ!!!」

 

 

イーリスさんはファング・クエイクを展開するがその時には充分な差が開いていた。

これなら個別連装瞬時加速(リボルバー・イグニッションブースト)でも使われない限り追いつかれる気がしない……

 

 

「ええっ!?」

 

まさか本当に使ってくるとは思わなかった。

あの角を曲がったところにアラクネを盗んだ奴がいるはずなのだが……

 

 

くそ!一か八かだ。

 

俺は単一仕様(ワンオフ・アビリティ)を使って熱エネルギーの一部を光エネルギーに変換、薄い膜にして後ろに向かって具現化。

 

 

と言っても目くらましのために具現化したわけでは無い。色というのは光の反射である。光エネルギーを自由に使えれば、色さえも操ることが出来る。

 

 

その膜の色を周りの壁と同じにする。イーリスさんは思わず急停止をしようとした。おそらく壁を作り出す能力と勘違いでもしたのだろう。

相手のスピードが落ちたところで膜を消し、背負い投げで投げ飛ばす。

 

「でりゃぁぁああ!!」

 

イーリスさんを突き当たりの壁に叩きつけた。

 

 

「イーリスさん、そこにいる人がアラクネを持ってます!!捕まえて!!」

「はぁ?お前、何言って……ってそこのお前も逃げるな!!」

 

 

黒炎を解除して角を曲がると、イーリスさんが銃をそこにいる人に向けていた。

 

「おい、お前。何者だ」

「この前ここに来た鳴神真子ですが……」

「そういう嘘は本人がいないところで言いましょうよ」

「もう一度聞く。お前は何者だ」

 

 

今までずっとうつむいていた人が顔を上げ、その顔を見ると、俺は記憶の中から同一人物を見つけることが出来た。

 

 

「あぁ、誰かと思えばオータムさんでしたか。」

「っ⁉︎てめえ!!」

 

 

 

オータムなる人物とは、一夏が誘拐された時に出会った。本当は黒炎のデータチェックのためにドイツに行き、ついでにモンドグロッソを見ていこうと思っていたら、少年(一夏)がさらわれかけていた。その時の誘拐犯のリーダーがオータムというわけだ。

 

鳴神 真子の代理としてドイツに行ったため女装はしてない。そのためむやみに黒炎を使うのはためらったが、ちょうどVTシステムがあったので、初めて使ってみた。

 

 

「チッ。鳴神真子!お前こそ何者なんだ。俺のことを知ってるとは……普通の研究者というわけでもないだろ」

 

「仕方ないなぁ……教えてあげるわ。私は普通の女じゃなくてーーー

 

 

 

 

ーーー特上の女よ♪」

 

 

もはや胃液が喉元まで来ていた蒼斗であった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

書きたいことは山ほどありますが今から部活の練習試合なのでここまでにしておきます。

余裕があったらあとがきを書き直すかも……



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名誉ある勲章

久しぶりです。

中途半端なところから始まりますので、忘れてしまった人は前話に戻って下さい。


あと今回で一区切りにして、しばらく投稿を抑えて書き溜めます。すみません。


「てめえら、調子に乗るんじゃねえぞ!!」

 

オータムはイーリスが銃を構えているにも関わらずISを展開させる。展開速度に自信があれば悪手ではない。

 

展開するISはもちろんーーーーアラクネ

 

 

「まとめて相手してやるぜ!!」

「やるぞ!イーリス!!」

「お、おう」

 

 

 

いつの間にか口調を戻しちゃってたなー、と思いながらもオータムに二刀、『暗黒』と『漆黒』で斬りかかる。

 

イーリスもナイフで近接戦闘を試みるが、アラクネは和名で『王蜘蛛』。クモを思わせる8本の腕で常にこちらより多い手数で攻めてくる。

 

二刀を高速切替(ラピッドスイッチ)で『宵闇』に変えたところでようやく一撃を与えた。

 

 

「お前!その鎌は……」

 

 

ギクッ!!

しまった。一夏誘拐事件の時にはVTシステムを使って、男として戦ったのだが、宵闇()だけは使わないとめちゃくちゃ怪しいので使った。(使わなくても時間を掛ければ勝てる)

 

「〜〜♪」

「おい!口笛を吹いて誤魔化すな!!」

 

 

だって言い訳できないし……

 

 

「おい、お前実は「yかmgおsk」」

音エネルギーで邪魔をする。

 

 

 

「おい!お前実は男なんだろ?!」

 

オープンチャネルは盲点……ちくせう

それにしても『おい』が多くてウザい

 

 

「ハイハイ、そうですよ。“鳴神"っていう苗字で気づかない方もマヌケだな」

「っ!?つまりてめえが鳴神蒼斗か!!」

 

オータムが食いかかってくる

俺の顔写真が非公開だったこともあって、二人とも驚いていた。

 

今さらではあるが『さっさと無人機みたいにタッチして終わらせろよ!』と思っている人もいるかもしれない。

だが俺の単一仕様(ワンオフアビリティー)、『世界を創造する者(ワールドクリエイター)』には条件がある。

 

 

一つ目に変換、または吸収する対象のエネルギーは、所持しているか五感で認識出来なくてはならない。

 

わかりやすく言えば、エネルギーの存在を確認していないと使えないということだ。

熱や光は周りにほとんどあるが、±0℃になったり、アイマスクなどで不可視の状態になると、そのエネルギーは変換元に使えなくなる。

 

それも変換も吸収も一気にパッ、と出来るわけではなく。触れた範囲からじわじわ効果が発揮する。

 

 

二つ目に譲与、具現化にはそれぞれ一定以上のエネルギーを使用出来ない。

 

無人機の場合は、元々CPUに負荷がかかっていたため、さらに少しの電気エネルギーに様々な命令式を与えて、回路をショートさせた。

 

無人機(IS)の電気エネルギーやシールドエネルギーを適当なエネルギーに変えてもいいのだが、それらは基本的に認識出来ない。

 

アラクネは確かに複雑な操作を必要とするが、動かすのはあくまで人間。ISに負荷をかけても少し反応が遅くなる位でしかない上にずっと触っていないとすぐに反応が戻ってしまう。

 

 

「くそっ、分が悪いか」

 

オータムはあやとりのように粘着式のネットを投げつけてきた。

やはり眼鏡をかけていると状況変化に対応しづらい。避けきることが出来ずに左腕が壁に貼り付けられる。

 

だがもう戦う気は無いのか、振り向いて逃げだした。

 

イーリスさんも貼り付けられていて、追いかけることが出来ない。

 

 

(せめてこれがエネルギーだったら……)

 

可能性は低いが『世界を創造する者』を使ってみる。

 

 

 

「おおっ!?」

 

エネルギーネットだったらしく、普通に熱エネルギーになって消滅した。

俺の仕事はソフトウェアによるハイパーセンサー等々の調整だったからエネルギーネットだということを知らなかった。

 

「さぁ、イーリスさん。あなたに選ばせてあげますよ。」

 

そう言いながら『世界を創造する者』でいつもの球体を具現化させた。

 

 

「この研究所ごとアラクネを吹き飛ばすか、アラクネだけを吹き飛ばすか。さあ、どっち?」

 

「……それ、二択になってねえだろ。研究所ごとってことはアタシとかも吹き飛ぶんだろ?」

 

「いや、その、ええと………。まあ」

 

「まあ、じゃねえよ!!アラクネだけにしとけ」

 

「ハイハイ」

 

 

 

今回は死と闇の鎌(デスサイズ)を使うわけではない。

 

イーリスさんが研究所ごとぶっとばせ!!って言ったら、今出しているエネルギーの塊を吸収しないといけないんだけど……ま、アラクネだけを選ぶに決まってるんだけどね。

 

 

俺は楯無さんとの勝負の時にも使ったショットガン、『虚無』を展開する。

 

そして『虚無』を黒いエネルギーの塊に向けた。

 

名誉ある勲章(グロリアス・グローリー)!!」

 

そして俺はショットガンの引き金を引く。

 

近距離から撃ったショットガンの弾は全て黒いエネルギーの塊に命中した。

そして命中と同時に破裂したそれの中から十数本のレーザーが伸びる。

 

 

名誉ある勲章(グロリアス・グローリー)』と『死と闇の鎌(デスサイズ)』の違い。それは武器だけでなく、それに使うエネルギーも違う。

 

デスサイズは熱エネルギー、そしてグロリアス・グローリーは光エネルギーを使っている。

 

そして光エネルギーは圧縮して撃ち出すとレーザーとなる。グロリアス・グローリーはショットガンの弾丸に光エネルギーをコーティングし、文字通り光の速さでのレーザー攻撃。

 

 

ちなみに他のエネルギーでもほとんどは攻撃ができる。電気エネルギーは言うまでもなく電気の弾丸、『疾風迅雷』。雷の弾丸と言っても、荷電粒子砲みたいなもんだ。

 

あとは音エネルギーでの攻撃、『超音波(ハイパービート)』。これはソニックウェーブで攻撃する。

これを使うと普通にダメージを与えた上に、センサーや操縦系統にノイズが混じって反応を悪くさせることができる。

 

 

話が脱線したが前述した通り、

名誉ある勲章(グロリアス・グローリー)』はレーザーによる攻撃。

光学(レーザー)兵器が無いわけでは無いのだが、この技は脱兎の如く逃げる敵にはとても効果的な能力がある。

 

 

それは『自動追尾能力』。

光の速度で追いかけ、敵が進んだ道を寸分違わず追跡するので、壁に当たって爆破することがない。

回避するには敵も光の速度で逃げるしかない。

 

 

だが『自動追尾能力』も無条件に使えるわけではない。追跡する目印が必要となる。

しかしアラクネには電気エネルギーの集合体を仕込んである。それを追跡対象にすれば、あとは勝手にレーザーが追尾する

 

「いけっ、イーリス!!瞬時加速(イグニッション・ブースト)だ!!」

 

「命令されなくてもしてやるよっ!!」

 

 

イーリスのエネルギーネットを変換させて、自由にした。

 

瞬間、イーリスは壁に突っ込んで行った。

………個別連装瞬時加速(リボルバー・イグニッションブースト)使いやがったな。

 

 

「あのー……イーリスさん?そういうの別にいいんで……」

「……うるせぇ」

 

あらら、いじけちゃった。

 

 

「行きますよ!!イーリスさん。もうさっきのレーザーだってアラクネに当たってますって」

 

半ばイーリスさんを引きずりながら、アラクネを追う。

 

 

 

「ほらっ、イーリスさん!!アレがアラクネですよ。さっさと動いて下さい」

 

壁をぶち破った奥にボロボロになっているアラクネが見えた。それを見て少しイーリスさんも自分から動き出した。

 

「あとは任せますよ?イーリスさん」

「おう、任せとけ」

 

 

俺は黒炎を解除し、イーリスさんを引っ張るのを辞める。

 

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)にしといて下さいよ?危ないですから」

「わかった!!」

 

 

イーリスさんが突撃する---と同時に上空から火球がイーリスさんに命中する……えっ?

 

 

イーリスさん……いつからそんな可哀想キャラになったんだ。

 

 

 

 

「オータム、迎えに来たわよ」

 

上空にはISの知識をそこそこ得た俺でも、どんなISとも似ていない金色の機体がいた。

 

確かにどんな機体とも似ていないが、普通に言葉を発しているので、無人機というわけでもないらしい。

 

 

「スコール、すまない。アラクネの損傷が……」

「いいのよ、別に。

というわけで、ここは見逃してくれないかしら?そこのお姉さん?」

「残念ながらお姉さんじゃなくてお兄さんだ。

もう絶対許さない。誰が何と言おうと絶対に許さない」

 

 

 

ちょっと私情が入ったが、まぁこの意思は変わらない。

 

「あらあら、それは失礼したわ。でもここで戦ってもお互いメリットがないわよ?」

 

「はぁ?メリットが無いのはそっちだけだ」

 

「それはどうかしら。こんな屋外で戦うと目立つわよ。それにもうすぐアメリカのIS部隊も突撃してくるわ」

 

 

男と言った時点で俺が鳴神 蒼斗だと気づいたらしい。

確かに俺がアメリカの研究所にいることがバレると色々と面倒くさそうだ。

 

 

 

「ま、いいや。一つ貸しにしておく。」

「ふふ、借りは返すわよ」

 

 

「おい、お前。名前は?」

 

「スコール・ミューゼルよ」

 

「じゃあな、スコールさん」

 

 

スコールは「じゃあね」と言ってオータムと一緒に飛びたった。

俺もここにいる必要がなくなったので空港に向かって歩き出した。

 

 

 

 

そういえば飛行機に乗ってからイーリスさんのことを思い出したが、無理矢理忘れた。

あの人には変な借りができたなぁ……

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

伏線張っておいてしばらく投稿しないとか……すみません。
白の騎士の方も次くらいで書き溜めるために休止します。


期待している人はいないと思いますが、復帰のために頑張ります。


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