人間「奴隷を買ったwww」 (榊 樹)
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魔獣族1

取り敢えず魔獣族から。


奴隷を買おうと、袋一杯に詰まった金貨をジャラジャラ鳴らし、奴隷市場へと向かった。

 

喧騒で騒がしい大通り。そこから脇に外れた路地を潜り、歩くこと数分。

 

人気(ひとけ)のない不気味な雰囲気が漂う裏路地に不安になりながらも、目的の人物を探してキョロキョロと辺りを見回す。

 

そうして、ようやく見付けたその人は、暗闇が広がる道の奥。

昼間にも関わらず辺りが夜中の闇のような路地裏で、フードを被った人物が静かに立っていた。

 

 

「ようこそ、おいで下さいました。どうぞ、こちらへ」

 

 

男か女かも分からぬ、不思議な声。

そんな声の主の手招きに従い駆け寄ると、フードの裾が何倍にも広がり、抵抗する間もなく僕を包み込む。

 

僅かにあった陽の光さえも遮る暗いフードの中、誰かに抱き寄せられるような感覚に、甘い香りと柔らかな感触と共に浮遊感が全身を襲ったかと思えば、はらりと僕を包んでいたフードが開く。

 

突然の明かりに少し目を擦って。

もう一度開けてみると、僕は思わず息を呑んだ。

 

 

「・・・ッ!?」

 

 

先の路地裏ほどでは無いにしろ、暗い部屋。

そこへ、一生掛けてもお目にかかれないような美女の数々、しかもそのどれもが希少な魔族の女達。

そんな彼女達が、硝子なんかよりも頑丈そうで透明な壁を隔てて、こちらを凝視していた。

 

 

「・・・ッ」

 

 

息を呑んだ。

 

恐怖を、感じた。

 

ただ、見られてるだけなのに。

あちらから危害を加えることは出来ないのに。

 

何故だか、檻にいるのは自分の方で、静かにこちらを見詰める美女達が恐ろしい肉食獣のように見えて・・・僕は、僕は・・・。

 

 

「お客様、どうされましたか?」

「ッ!?」

 

 

耳元で囁かれる中性的な声に、背筋がゾクゾクとした。

振り返るまでもなく、それはフードの人で。

僕はなんでもない風を装って、必死に愛想笑いをして誤魔化した。

 

そうだ、何を恐れる必要がある。

魔族。例え、彼女たちが個人で軍隊に匹敵するほどの力を持っていたとしても、所詮は奴隷。その首と両手足、そして下腹部に刻まれた刻印が、彼女達の自由を奪う。

 

どれだけ強くとも、どれだけ凶暴であろうとも、彼女らは最早牙を折られたペット。お金で買えてしまう、高級な玩具に他ならない。

 

僕はもう一度、彼女達に目を向けた。

翼のある者、人間に近しい姿の者、色が緑色の者、不定形のナニカ。

 

彼女ら一人一人をじっくり舐め回すように見て、吟味しながら部屋の中を歩いていく。

 

魔族というものは、誰もが傲慢でプライドが高い上位種と聞く。

事実、人間よりも優れた膂力、強力な魔力、長い寿命に、不死の如き生命力。それら全ては人間という種を生物として大きく上回り、見下すに足る要素となる。

 

しかし、そんな魔族様が、今こうして下等生物と見下すちっぽけな人間に品定めをされているのだ。

買われるのも屈辱、買われぬのも屈辱。

抵抗など出来ないから、どっちに転んでもいい事なんて無い。

 

だからか、せめてもの抵抗とばかりに誰もが僕のことを凄い目で睨んでくる。睨んでくるが・・・それだけだ。中には低く這うような唸り声を上げる者も居たし、歯茎を剥き出しすぎて涎を垂らしてる者まで居た。

 

けれど、それだけ。その鋭利な牙で噛み付くことも、その剛腕で殴り飛ばすことも出来ない。

 

こうして見ると、どれだけ美しくとも獣となんら変わらないように見える。

檻に入れられ、言葉を話せず、自由意志もなく、枷から逃れることも出来ない。

 

なんだか少しだけ憐れに思えてきて、全員買ってしまおうかと思った。けれどもお金には限りがあると思い直して、もう一度よく見て回る。

 

・・・いや、見れば見るほどに本当に美女しかいない。

少々人間の姿から離れた者も居るが、それでも感じさせる美しさ、そしてエロスが、僕の股間をムズムズさせる。

 

ちょっと前屈みになりながらも、一つ一つ丁寧に見て回っていると、部屋の奥。 にあった檻のひとつ。他と変わらぬ透明な壁の向こうに、その人は居た。

 

簡素なボロ布一枚に覆われた隙間から顕になる、古傷が目立つ鋼鉄のような肉体。

両手足は獣のような毛皮に覆われ、頭部には僕の顔くらいある大きな獣耳に、腰部(ようぶ)には僕の身体を簡単に包めてしまいそうな大きくてふさふさな尻尾。

 

魔獣族と、そう呼ばれる彼女も他と同じ。体を横にして顔だけ起こして、視線で人を殺せそうなほど、僕のことをジッと睨んでいた。

 

けれど、他と違ったのは彼女が血塗れだったこと。

痛々しいまでに目立つ、既に完治しているであろう古傷が全身に刻まれているにも関わらず。一体、何処から出ているのか不思議な程に、彼女は血塗れのまま、そこに横たわっていた。

 

 

「・・・この人にします」

 

 

気付けば、そう口に出していた。

 

瞬間、全方位から感じる無数の視線の重圧が、何倍にも増した気がした。

・・・恐らく、これが殺気という奴なのだろう。見なくても分かる。視線が質量を持ったと言われても納得してしまう程の重圧が、部屋中から全身に重く伸し掛かる(のしかかる)。

 

 

「よろしいのですね?」

 

 

でも、それも一瞬のこと。

フードの人の声が聞こえると、その重みはフッと消え、僕は酸素を求めるように大きく息を吸った。

 

 

「はぁーっ・・・ぁッ・・・・・・は、はひぃ・・・」

 

 

・・・我ながら、かなり情けない感じになったと言うか、もう周りを見るのも恐ろしくて。

振り絞った声で返事をしつつも、せめて、自分が買うと決めた子からは目を逸らさないようにしようと顔を上げれば、目の前に巨人が居た。

 

 

「ぴぃッ!!?」

 

 

あまりの恐怖に、今度こそ悲鳴を上げてしまった。

いや、よく見れば巨人ではなく、血塗れの、僕が買うと決めた魔獣族の人だった。

 

その人が、瀕死というにはあまりにしっかりとその両足で床を踏み締め、僕の倍以上もある巨躯でこちらをジィーッと見下ろしていた。

 

 

「それでは、こちらの部屋へどうぞ。契約の手続きを行いますので」

「ぇ・・・ぁ、ぁ・・・」

 

 

やっぱチェンジで、と断ろうとして。

けれども、あまりの恐怖と、一度買うと宣言してしまったが故の罪悪感で声が出なくて、そのままあれよあれよと奥の部屋に通される。

 

部屋に入ると、フードの人はいつの間にか姿を消してて。

振り向くと、そこに既に通って来た扉は無く、平坦な壁だけがあった。

 

驚いて壁に近寄り、ペタペタと触ってみるが隠し扉のように開く訳でも無い。

何がどうなってるんだと不思議に思うも、どうすることも出来ないので、手持ち無沙汰になって部屋の中にあった高級そうなソファに大人しく座っていた。

 

すると、いつの間にか出現していた別の扉からフードの人と、さっきとはまるで別人のようになった魔獣族の人が入って来た。

 

血もなければ新しい傷も無い。

古傷だらけのその身体と、それに相応しい磨き抜かれた肉体。そして、何者にも屈しない百戦錬磨の王者としての佇まいは、容姿とはまた別の生物の在り方としての美しさをヒシヒシと感じさせた。

 

そんな魔獣族の人に見惚れていると言うか、圧倒されていたと言うか。

この人の主人に今からなるのだと言うことすら忘れて、呆然としていると、フードの人からまた心配されてしまった。

 

正気に戻って机に向かい合って座り、フードの人から契約内容を聞かされていく。

 

その間、魔獣族の人がどうしていたかと言うと、僕の隣に座っていた。

隣と言うか、真横と言うか。ほぼ同一座標に居るのではと思ってしまう程、ミチミチに全身を密着させて、ちょっと押し潰されそうになりながらも、フードの人はまるで気にせず、淡々と説明をしていく。

 

その内容が頭に入ったかと言われると、九割くらい全く入っていないのが事実だった。

だって、全人類を見渡してもまずお目にかかれないような鍛え抜かれた肉体が僕にこれでもかと密着してて、さぞかし固くてゴツゴツしてるんだろうなって思ったら、きちんと柔らかい部分は柔らかいままで。

 

赤面して、縮こまってる間にどうやら説明は一段落したみたいで、指を出して欲しいと言われ、奴隷との正式な契約を結ぶことになった。

 

ナイフの刃先でほんのちょっぴり指先を切ろうとする僕の横で、自身の手首を手刀で半分くらいまで豪快にぶった斬る魔獣族の人。

色々と勢いが良過ぎる光景に度肝を抜かれていると、いくらなんでも出し過ぎだとフードの人に普通に注意されていた。

 

治療をしなければとアタフタする僕を他所に、涼しい顔の魔獣族の人は、ギュッと拳を握り込むと丸太のような腕がさらに膨張し、傷口を筋肉で封じ込めて血を止めた。

 

 

「・・・どのくらいだ」

「一滴で十分です」

「それでは足りんだろう。なんなら今から抜き取った心臓を搾り取って・・・」

「一滴で十分です」

 

 

さも当然のように行われた人智を超えた所業に呆然としていると、何やら言い合っていた二人が不思議そうな顔でこちらを向いた。

まるで、そう言えばなんで騒いでいたんだ? とでも言いたげな様子で。

 

・・・え、これ僕がおかしいの?

 

 

「ささ、早く契約をしてしまいましょう。こちらの契約書の魔法陣の中へ、血を垂らして下さい」

 

 

何事も無かったかのように進められるものだから、不承不承と言った感じで、改めて指へとナイフを当てる。

つー、と染み出てきた赤い液体を見て、指を紙の上へと差し出す。

 

魔獣族の人も僕の指を見て・・・見て・・・見続けて。

微動だにしない彼女に、どうしたのかと目を向けると、何やら、グルルルル・・・♡ と低く唸るような声が聞こえて来た。

 

困惑している僕を他所に、フードの人に声を掛けられ正気に戻ったのか、魔獣族の人は僕が持ってたナイフを手に取ると、それで自身の指を切り、同じように紙の上へと差し出した。

 

 

「―――わわっ!?」

 

 

赤い液体が二滴落ちて、紙から光が発せられる。

光が止んだ時、既にそこに紙はなく、フードの人が鏡を持って立っており、そこには僕の背中と思われる景色が映っていた。

 

正面に鏡があるのに背中が見えるとはどういう事だと首を傾げるが、今更そんな事で驚かなくなった僕は、フードの人の脱いで見てくださいという言葉に従って服を脱いだ。

 

すると、鏡に映る自身の背中には何やら古代文字のような、見たこともない文字の羅列が刻まれていた。

 

 

「どうやら無事に契約は成立のようですね。おめでとうございます。今日から貴方がご主人様です」

 

 

フードの人がそう言うや否や、僕の視界が反転した。

 

背中に感じる柔らかな感触。眼前に広がる、呼吸を荒らげてこちらを見下ろす魔獣族の人。

どうやら僕は、この人にソファに押し倒されたらしい。

 

一拍遅れて奴隷に反逆されてしまっていることに気付いた僕は、慌てて抵抗を試みようとして、その前に魔獣族の人が口を開いた。

 

 

「主の怪我を心配するのは、奴隷として当然だ。だから、な? ほら、早く、指を出せ。治療、私が治療してやる」

 

 

こちらの返事も待たず、気付けば僕の指は食べられていた。いや、指だけじゃなく、腕を丸ごとパックリと。

 

歯は立ててないけど、口をしっかり閉じて、引き抜こうとしてもビクともしない。

中が見えないけど、何やら生暖かい空気に、ザラザラでヌメヌメとした何か・・・きっと、魔獣属の人の舌が僕の手を舐め回していた。

 

 

「ひぅ、ぃや・・・ぁ・・・」

 

 

正直、マジで喰われると思って怯えていたのと、傷口に当たるぺろぺろとした愛撫で、痛みと妙な感じになっちゃって、感情がぐちゃぐちゃになった僕は抵抗しようとする意思すらも持てなかった。

ただひたすらに、骨付き肉にしゃぶり着くように、丹念に隅から隅へと舐め上げられ、そして・・・。

 

 

「んっ・・・ぷはぁ、これで・・・・・・ぃ゛イッ ゛ぃ゛ィぎぁ゛ッ っ゛♡♡♡♡」

「あ、作動しましたね」

 

 

仰け反った。あの、魔獣族の人が。

目にも止まらぬ速さでソファの上から床の下まで体を反対方向に折り曲げて、頭を付けたままビックんビックンと痙攣しだした。

 

状況が二転三転し過ぎててまるで追い付けていない僕を他所に、静観していたフードの人が良かった良かったとまるで他人事のように零していた。

 

 

「奴隷の本心に関わらず、主人への危害を加えたと判断された場合、このように強制的に罰が与えられ、奴隷は暫くの間、碌に立つことも出来なくなります。また、主人であれば、任意で罰を与えることも可能ですので、躾の際は存分にご活用下さい」

「ぇ・・・ぁ、はい・・・」

「それでは、本日はこれで手続きを終了とさせていただきます。またのご来店を、お待ちしております」

 

 

仰け反ったまま戻らない魔獣族の人。

まだ頭の中を処理し切れていない僕。

そして、商談が成立して何処か満足そうなフードの人が、着ていたフードを翻し、その布が部屋全体を覆って光を遮ると、そのまま僕の意識は闇に落ちていった。




掲示板については、世界観の説明も含めた魔族視点で行う予定です。
なので、基本的に小説形式となります。


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魔獣族2

暫く人間視点の予定。


朝、外から聞こえる足音に目を覚ました。

廊下ではなく、窓の外からドスン、ドスンと。まるで巨人のような足音が近付いてくる。

 

ベッドから出て、身支度とこれから行う大仕事の準備をする。汚れても良い作業着に、当たった宝くじの残りのお金で買った刀みたいな包丁。

 

それを持って家を出ると、そこには見上げるほどの黒い影が。

 

 

「お疲れ様。相変わらず、凄い大きいね」

「・・・」

 

 

既に絶命しているが、それでも威圧感が半端じゃない化け物みたいに巨大な猪を、片手で軽々と持ち上げている魔獣族の人━━━先日、僕が購入した奴隷は、特に反応を示すことなくこちらをジッと見詰めてくる。

 

反応が無い、あるいは反応が薄いのはいつもの事なので、鞘に納まった刀みたいな包丁を抜いて作業に取り掛かっていく。

 

 

こうして捌くのも慣れたもので。僕が奴隷を購入して、早一ヶ月が過ぎようとしていた。

あの時、僕が彼女を購入してフードに包まれた後、そこは見知った我が家の中だった。

 

どうやって運んだのか、どうして家を知ってるのか。

そういうのが気にならない程度には、あのフードの人が僕の想像の埒外の存在であることは嫌という程分かってたので、取り敢えず魔獣族の人をベッドまで頑張って運・・・ぼうとして体格差的に普通に無理だったので、シーツを掛けて家の確認を行うことにした。

 

いくらそういうモノだと思っても、やはり不安にはなる訳で。本当に我が家なのかを確認して回って、戻って来た頃には既に魔獣族の人は目覚めていた。

 

目覚めて、シーツにくるまり、お尻だけ出して尻尾をフリフリ。フリフリと言うか、ブンブンと勢い良く。

 

あの、と声を掛けると尻尾がビクンッ!!? てなったかと思うと、僕は気付けば天井を向いていた。

何をされたのか全く認識出来なかったが、似たようなことを直前にやられてたので押し倒されたことだけは分かった。

 

いや、そうだ。僕は彼女のご主人様。彼女は僕の奴隷になったのだ。殺したいと思うほどに憎まれていても不思議ではなかった。

そんな当たり前のことに気付いてももう手遅れ。せめて衝撃に備えようと身構えて・・・けれど、目を瞑っても想像していたような衝撃は終ぞやって来なかった。

代わりに、耳へと響く獣のような嬌声。

 

その声を聞いて、そう言えばフードの人が危害を加ようとするとどうたらこうたらと言っていたな、と思い出した僕は目を開けると、そこには身体の紋様を怪しく光らせ、ついさっきと同じ体勢で仰け反る魔獣族の人が居た。

 

・・・で、その後も同じようなやり取りを丸一日程やって。

漸く収まりが着いたのか、或いは自身の境遇を受け入れたのか。

魔獣族の人は目を覚ましても僕へ襲いかかって来ることはせず、喉をグルルルルと鳴らしながらも、漸く落ち着いて話し合うことが出来るようになった。

 

話し合うって言っても、魔獣族の人は相槌すら打たず、こちらを捕食者のような目で睨み続け、僕がチビりながらも頑張って現状説明とこれからのことを一方的に話しただけなのだが。

 

そんな話の中で、呼び名の話題になった。

魔獣族の人では不便だし、しかし名前で呼ぼうにもどうやら魔獣族の人にはそもそも名前が無いらしく、ならばとご主人様となった僕が決める事となった。

 

考えて、考えて・・・考え抜いた結果、ポチで決まった。

いや、一応他にも色々と考えはしたものの、そもそも名付けの経験が無く、しかも初めてがこんな美女とか下手な名前をつける訳にもいかず。

ポチ、ポチ・・・他には・・・、みたいな感じで呟いてたら、なんか気に入られたので、これで決まってしまった。

 

まぁ、呼びやすいし、僕と彼女の関係性は主人とペットみたいなものだから別に良いかと切り替える。

 

そんな訳で、僕とポチとの共同生活が始まった訳だけど・・・。

やはり根本的に種族が違い過ぎるからか。奴隷とは言え、魔族との生活は、僕に多大なカルチャーショックを与えた。

 

中でも一番ショックを受けたというか、普通にビックリしたのが今解体しているこの猪もといポチの餌。

実はこれ、ポチの一日分の食事である。最初、朝起きて居なかったから慌てたが、朝日をバックにこれと共に帰ってきた時は腰を抜かせてしまったものだ。

 

しかも、特に何かしらの処理を施す訳でもなく、そのままカブり付いていたので、もう血とか臭いとかで大変なことに。

どうやらこれは魔獣族全般に言えることらしく、種族柄その辺をあまり頓着しない性格なのだそうな。

 

だからと言って、はいそうですか、と受け入れられる訳もなく。解体作業をした事がないポチの代わりに、こうして僕が捌くことになった。

ポチの餌なんだから、最初はポチも率先して手伝おうとしたけど、生憎とかなり不器用というか、余計に散らかしてしまうし、何より解体して調理した料理が大層気に入ったのか、こうして僕が解体してる傍で何をするでもなく、ジッと眺めるようになった。お腹と喉をグルルルルと鳴らして。

 

 

「待ってね、もう少し掛かるから」

 

 

サイズがサイズだから血抜きをするにも一苦労。

一時間くらい掛かるので、その間に昨日処理を終えて保存していた分で朝食を作ることにする。

その間、ポチには狩りで汚れてるだろうからお風呂に・・・と行きたい所だが、どうやら魔獣族にはそういう文化もあまり馴染みが無いらしく、強いて言えば池や川に軽く潜って洗い流す程度。

 

お風呂と言うより水遊びみたいな事になってしまうので、奴隷の身嗜みを整えるのもご主人様の責務ということで一緒にお風呂へと入ることに。

 

最初の頃はポチがシーツを脱ぐのを嫌がったり、濡れないように僕が自分の袖を腕捲りしてたところを襲って来たりと何かと大変だったが、念じれば起動する紋様で躾けることで、今では割と大人しくお風呂に入ってくれるようになった。

まぁ、頑なに自分で洗おうとはしないから、こうして僕が洗ってあげないといけないのは今でも変わらないけどね。

全裸の長身美女というのは色々と目に毒だから、出来れば身体も自分で洗って欲しいのだが。

 

それでも暖かいお風呂というのを気に入ってくれたのか、身体を洗い終え、大人しく湯に浸かるポチを置いて、僕は浴室を出て朝食の準備に取り掛かる。

 

ある程度出来上がると同時に、匂いに気付いたポチがずぶ濡れで上がってくるので、すかさずタオルで拭きまくる。

そして新品の服・・・は嫌がるので、昨夜僕が使ったシーツを渡して身体に巻かせる。

 

テーブルにポチが着き、僕も椅子に座る・・・なんてことはせず、ポチにエプロンを付けて料理が乗ったお皿を手にポチの横に座る。

そして、匂いに釣られて尻尾をブンブンさせるポチへとあーんをすると大口を開けて一口でパクリといった。

 

出来れば自分で食べて欲しいのだが、これまた魔獣族にはテーブルマナー的なものが無いらしく。まぁ、獲物を丸かじりの時点で大体察してはいたのだが、箸やスプーンが上手く使えず、食器を握り潰したり、食器ごと食べてしまったりと破壊活動が重なり、最終的に僕が食べさせることになった。

 

別に奴隷なのだから犬猫のように食べさせればいいじゃない、と最初は思ったものの、見た目はほぼ人なのだから、本当に犬のように食べさせるのも気が引けた。

 

そんな訳で次から次へと吸い込んでいくポチにご飯をやり、ヘトヘトになりながらも自分の分を食べて、それから食器を洗って、猪の解体作業を再開する。

そのままぶっ通しで夕方までこれを続け、その間ポチは邪魔にならない所でずっと僕のことを見続けている。

 

何が楽しいのか全く分からないが、正直構ってやる暇が無いので有難かった。

 

そうして一日を解体作業に費やし、次に晩御飯の準備を始める。

 

朝よりも夜の方が多く食べるので、あっちの調理をしながらこっちの調理を、と。変わらず邪魔にならないところで見詰めてくるポチの視線を背に、全ての工程を同時並行で行い、忙しなくキッチンを駆け回る。

 

そうして出来上がったのは、明日の朝食用以外の全ての部位をふんだんに使った猪肉のフルコース。

疲れた・・・凄く疲れた・・・。

 

でも残念、まだ終わった訳じゃない。

これから全ての料理をポチへと食べさせながら、テーブルに乗り切らないお皿と随時交換し、そして食べさせ続けなければならない。

 

ヘロヘロではあるが、これもまたご主人様としての責務。

無表情ながらも尻尾をブンブンして次から次へとパクパク食べるポチに癒されつつ、料理を口に運んでいく。

 

そうして漸く食べ終わると、次はお風呂である。なんか同じことしかしてない気もするが、だからと言って今日一日の汚れを落とさない訳にもいかない。

一緒に入ってしまいたいが、そうすると襲われるので朝と同じようにポチを先に洗い、お湯に浸かってる間に皿洗いを済ませ、上がって来た所で僕もお風呂に入る。

 

僕が入ってる時、ポチはいつも脱衣所の所で待機してる。

それにどういった意図があるかは不明だし、出来れば先に寝てて欲しいのだが、まぁ暴れる訳でも、何かを壊す訳でも無いので容認している。

 

強いて言えば、僕がお風呂に入ってる間に、いつも脱衣所で僕が脱いだ後の服に悪戯をするのはやめて欲しい。

例えすぐに洗濯するとしても、ポチ程の美女の唾液とかは色々とクるものがあるから。

 

でもこればっかりは、あまり強く言えないんだよな。

紋様での躾は、僕は体験したことはないけど、傍から見るだけでも相当辛そうだから、基本的にやらないようにしてる。

襲って来て被害が出るとか、服を破ってるとかならまだしも、それで紋様を使うのはちょっとやり過ぎな気がするし。

 

だから体罰ではなく、言葉で諭そうと思ってるんだけど・・・これが中々上手くいかない。

 

案の定、今日も悪戯していたポチにメッてして、全く口から離す気が無いのか微動だにしないポチから服を引っこ抜こうと暫く格闘して、漸く離してくれたと同時に襲いかかって来てそのまま紋様が反応して悶絶するポチを放置して寝巻きに着替える。

 

着替えて、ポチが復活するのを待って、それからポチのベッドに向かう。

後は寝るだけなのだが、これまた一苦労あるのが我が家の大型犬ポチである。

 

ポチは、驚く程に寝付きが悪い。いや寝付きというと僅か語弊がある。やはり、今でも奴隷という立場が許せないのか、毎晩のように寝込みを襲って来るのだ。

ただ襲ってくるだけなら紋様が発動するので問題は無いのだが。

 

寝ている僕に覆い被さり、紋様が発動し悶絶して、その声と倒れて来た巨体に起こされ、そのまま巨体を動かすことも出来ず、半強制的に添い寝になってしまうのだ。

 

しかし、慣れない肉体労働の日々に、これでは流石に体が持たない訳で。

だから、こと寝ることに置いては少々強引にいくことにした。

 

 

「ポチ、おいで」

 

 

枕元で正座し、ポンポンと膝を叩くと、太腿の谷間にポチが吸い込まれるようにうつ伏せで頭を置く。股辺りに鼻を押し付けて来るから擽ったいが、それを我慢して頭を撫でる。

 

撫でつつ、そのピコピコ動く獣耳をフニフニとマッサージしてやれば、次第に地を這うようなグルルルルという唸り声が大きくなっていく。

この唸り声は、基本的にポチのイラつき度だと思ってもらえればいい。この音が大きくなるほど、ポチが襲ってくる確率が高くなり、ある一定の大きさまで行くと我慢出来ずに襲ってくるようになる。

 

 

「よーしよーし」

「グルルルッッ゛ッ・・・!! グルルルルァァ゛ッ・・・!!」

 

 

ほら、段々とヤバい感じの声になって来た。

 

うつ伏せで寝るような体勢だったポチの、大きなお尻と筋肉に包まれた腰が徐々に浮き、四つん這いのまま顔だけはしっかり太腿に埋もれて。大きな尻尾が苛立つように何度もベッドに叩き付けられ。

 

唸り声もいつの間にか咆哮のように荒々しいものへと代わり、遂に我慢の限界を迎えたポチが僕へと襲いかかろうとして、紋様の効果が発動し、勢い良く反り返った。

まるで海老のように、普段とは比べ物にならないくらい、それはもう勢い良く。

 

と言うのも、どうやらこの紋様、対象の反骨心が強い程に効果を増すらしく、こうしてポチのプライドを刺激してイラつかせることで、いつも以上に深い気絶もとい眠りに着かせることができるのだ。

そこへさらに駄目押しの手動による紋様の追撃を行い、これで夜のお仕事は完了。

 

お腹を下に海老反りしてるポチに申し訳程度のお布団をかけて、僕は自分の寝室へと向かい、布団の中へと入る。

 

 

夢にまで見た美女奴隷との共同生活。

 

なんか、思ってたのと違うな、なんて。そんなことを思いながらも、僕は誰に聞かせるまでもなく、おやすみと一言残して、夢の世界へと落ちていった。

 




この世界の上位存在(奴隷)にはきちんと首輪が着いております。


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魔獣族3

次回辺りに掲示板かも。


ポチは、いつも不機嫌そうに喉を鳴らしている。

低く、唸るような。まるで狼が威嚇しているように。

少なくとも、僕が見ている間は、四六時中ずっと。

 

いや、その身が奴隷となり、人間という下等種族のペットにされているのだから、それも仕方の無いことか。

それに、僕がポチを買った理由は・・・その、そういう・・・アレ目的だ。

ポチにその事を伝えてはいないけれど、薄々勘づいてはいるのだろう。

 

だって、あんなにも綺麗で、おっぱいも大きくて、お尻も、太腿だって、何処を見ても魅力的なんだ。

文化が違うとは言え・・・いや、魔獣族の文化が野性的だからこそ、弱肉強食。敗者がどういう扱いを受けるかなんて、僕なんかよりよっぽど分かってる筈だ。

 

だから、ずっと反抗的だし、ずっと威嚇し続けているんだろう。ポチを買ってもう一ヶ月以上が過ぎようとして、それでも尚僕が手を出していなかったとしても。もう僕に、ポチに手を出す気が無かったとしても。ポチが威嚇をやめることはなかった。

 

最初は、確かにそういう目的だった。

山も谷も無い人生だった。刺激も無ければ、彩りも無い。

女の人と、全く縁のない人生だったから。偶々目に付いた宝くじを買って、それがどういう訳か当たっちゃって。

 

舞い上がっちゃって、でもいきなり過ぎて使い道に困ってた所に、宝くじを売ってたローブの人に奴隷を勧められた。魔族の美女との、やけに鮮明な妄想が頭に過ぎって、その勢いのまま購入しちゃって。

 

それで、牢屋の中で傷だらけになってたポチを見て、正気に戻った。

血だらけになって、人間を圧倒する力強さなんて見る影も無くて。それでもこちらを睨み、気高くあろうとするその姿に、僕は自分の浅ましさに胸を締め付けられた。

 

・・・まぁ、その後、怪我なんて無かったかのように振る舞うポチにアタフタしたり、自分で自分にもっと凄い傷を付けたり、それをアッサリ治したりと、幻覚を疑うような現実が色々あったけど。

 

それでも、未だに主従の関係を続けているのは、単なる醜い独占欲だった。

だって、魔獣族の、それも飛びっきりの美人さんだ。

人間ではまずお目にかかれないような絶世の美女だ。世の男共が羨むほどの恵まれた肢体の持ち主だ。

 

それが、今や、僕のモノなんだ。

手放したくなんて無かった。

ずっと、僕の手元に置いて、そして、出来ることなら自分色に染め上げたかった。

 

そんな、男の醜い欲望が、汚い感情が、ポチを縛り付ける。

それが一層、胸を掻き毟りたくなるような自己嫌悪に陥らせた。

 

 

「・・・はぁ、やっぱり・・・手放すべき、だよね・・・」

 

 

湯船に浸かって、頭の中を整理して、やっぱり最後にはその結論に落ち着いた。

脱衣所に居るポチには・・・多分、聞こえてないだろう。ゴソゴソと物音がしてるから、多分また僕の服に悪戯をしてるんだろうな。

 

湯船から出て、腰にタオルを巻いてから脱衣所に出れば、ほらやっぱり。

いつもの様に僕の服を咥えて、こちらを凝視したまま微動だにしないポチが居た。頑張って服を引き抜こうとして、再起動して襲いかかろうとして来たポチが紋様の効果で悶絶する。

 

毎日やってる光景。いつも襲いかかって来ては、海老反りとか言うちょっと絵面が面白い事になってるのを見ると、もしかしてポチってアホの子なんじゃないかな、なんて思ったりして。

ポチがこうして襲うのは、僕が憎いからだからってのに、勝手に親近感とか感じちゃって。

 

 

「・・・あーぁ、惨めだなぁ・・・」

 

 

そうして、いつものようにポチを無理矢理寝かせた後、一人ベッドの中でそう呟いた。

呟いて・・・涙が出そうになって・・・。

でもやっぱり、ポチとずっと一緒がいいから。

全部忘れたフリをして、今日も僕は夢の中に落ちて行った。

 

 

 

 

真っ白な、空間だった。

酷く曖昧で、フワフワとした感覚だった。

 

立っているのか、座っているのか。目を開けているのか、閉じているのか。それすらも分からないほどにあやふやで。けれど、目の前に佇むその人物だけはやけにハッキリと認識できた。

 

 

「こんばんは」

 

 

なんて事無い風に。

宝くじを買った時と同じように、一言挨拶をされた。

 

何が何だか分からない筈なのに、何も疑問に持つことは出来なくて。フワフワとした意識のまま、目の前のフードの人は淡々と話を進める。

 

 

「こうして会うのは五回目ですね。さて、前置きはこのくらいにして。本日はどうされましたか?」

 

 

少し首を傾げるフードの人に、何故だか既視感を感じた。

初めてな気がするけど、前にも似たようなことがあったような・・・無かったような・・・。

 

でもそんな疑問は無意識の内に綺麗に洗い流され、上手く考えがまとまらない想いだけが、頭の中を駆け巡った。

 

 

「ふむ、ふむ・・・なるほ、ど? ・・・え、ん? あー・・・そうなっちゃうのか。・・・・・・え、なんで?」

 

 

いつも飄々とした態度で、こちらの悩みを的確にアッサリ見抜く筈なのに。初めて見せる困惑した雰囲気に、少し戸惑ってしまう。

 

・・・ん、いつも? あれ、おかしいな。これが、初めての筈なのに・・・。あ、いや、前にもこんな事があったような・・・いや、これが初めて・・・?

 

まぁ、どっちでもいいか。

 

 

「んー・・・はい、はい。なるほど、把握しました。把握しましたが・・・対等な立場になりたいから淫紋を消して欲しいとか。・・・えー、なんでそうなるのかなぁ。これどう見ても求愛じゃん。威嚇ってお前・・・ふふ、ウケる」

 

 

対等・・・対等? あぁ、はい。そうです。対等な立場。

あ、いえ。ちょっと違くて。ポチには自由になって、出来れば故郷とか。自分の行きたい場所で、好きなように生きて欲しいと言うか。

 

 

「・・・分かりました。しかし、淫紋を消すことはオススメ出来ませんし、こちらにも色々とルールがあります。ですので、淫紋の自動発動機能を外しておきましょう」

 

 

ありがとうございます。いつも、何から何まで。

 

 

「ふふ、おかしな事を言いますね。私と貴方が出会ったのは、これが初めてですよ」

 

 

あれ・・・あぁ、そうでした。はい、そうですね。

 

 

「では、私はこれで。またのご来店をお待ちしております。・・・・・・はぁ、早く帰ってイチャイチャしたい」

 

 

はい、はい・・・ありがとうございま・・・す・・・。

 

ん、あれ。僕は、今まで何を・・・。

 

 

 

 

朝、普通に目が覚めた。

いつもの大きな足音は聞こえない。

珍しい、今日は狩りに行ってないのだろうか。

 

なんだか、妙な夢を見てたような気がするけど・・・なんだったかなぁ。まぁ、覚えてないってことはそんなに大した事じゃないんだろう。

 

ポチが寝てるはずの寝床を見に行けば、やはり居た。

こちらに背を向けて、シーツを抱き締めて、規則正しく寝息を立てていた。

 

思えば、眠ってる姿を見るのはこれが初めてだ。

ずっと、警戒されっ放しだったし。流石に一ヶ月以上も警戒し続けるのは疲れたのかな。

 

 

「気持ち良さそうに寝てるなぁ・・・」

 

 

傍にしゃがんで頭を撫でれば、獣耳をピクンとさせて、むず痒そうに身動ぎをした。

起こしてしまったのか、眠そうなポチが何度も瞬きをして。それから僕の方を見て、固まった。

 

 

「・・・・・・」

「お、おはよ、ポチ。朝だよ」

 

 

動かない。微動だにしない。

気まずくなって、別のことに意識を逸らそうと頭を撫でるのを再開する。

 

なでなで、なでなで。

 

 

「・・・・・・ぅゥ゛」

「ぁ、ご、ごめっ・・・わっ!?」

 

 

状況を理解出来始めたのか、次第に唸り声を上げ始めたポチに謝ろうとして、それより先に身体を衝撃が襲った。

懐かしい衝撃だった。ちょうど一ヶ月くらい前にも似たようなことがあった。

 

そうだ、押し倒されたのだ。誰って、もちろんポチに。

 

 

「グルルルッ・・・!」

「ぁ、いゃ・・・あの、えっと・・・・・・あ、あはは・・・」

 

 

四肢を押さえ付けられ、身動き一つ出来ない。

飢えた肉食獣のように歯茎を剥き出しにして、今にも喰われてしまいそうだ。端正な顔が歪んで、その顔は正に悪鬼のようだったけど・・・。

 

それでも不思議と恐怖を抱かなかったのは、何処かこれでいいんだと納得する自分が居たから。

 

多分、僕はこれから殺される。もう彼女を縛る枷は無くなったのだから。

僕も、あの紋様の効果を使うつもりは毛頭無い。

 

・・・って、あれ? なんで紋様の効果がもう切れたって知ってるんだっけ?

 

 

「グルルル・・・ッ!? ッ? ッ??」

 

 

妙な感覚に首を傾げていたら、ポチが何かを思い出したのか、咄嗟に身構えた。

 

いや、あれは身体が覚えてるんだ。一ヶ月もほぼ四六時中、身体を蝕み続けて来た紋様の効果を。ご主人様を傷付けようとすると、その身に降り掛かると。

それなのに、何も起きない。だから困惑しているんだ。

 

でも大丈夫。僕はもう君のご主人様じゃなくなったから。

その鎖はもう、断ち切られた。

 

 

「ポチ」

「・・・ッ?」

「ねぇ、ポチ。聞いて」

「・・・・・・」

 

 

押し倒されたまま、格好は付かないけど。

 

 

「僕はもう、君のご主人様じゃない」

「・・・・・・ぇ」

「その紋様は、もう効力を失ってる。君を傷付けることは、もう無い」

「・・・?」

「これから君は自由だ。今ここで僕を食べるのもいい。故郷に帰って、家族と再会するのもいい。何をするにも自由だ。君を縛り付けるものはもう、何も無いんだ」

「・・・・・・、・・・・・・」

「・・・へ? ちょ、ポチ、何して・・・」

 

 

僕の言葉が本当か、確かめようとしてるのだろう。

いきなり顔を近付けられて、美人の顔がドアップにあってめちゃくちゃドキドキしたけど。

 

顔を寄せて、スンスンと鼻を鳴らし、ペロリとひと舐め。身構えても、予想した紋様の衝撃は来ない。

紋様が刻まれた下腹部を不思議そうに撫でて、それから状況を把握したのか、ギロリとこちらを睨み付けて来た。

 

あぁ・・・うん。まぁ、そうだよね。

許せないよね。殺したくて堪らないよね。

 

どうなるんだろう。

どうされるんだろう。

 

食べられちゃうのかな。それともただグチャグチャに殺されるのかな。

もしかして、生きたまま食べられちゃったりとか。

あぁ、でも出来れば痛みは極力感じないやり方だと嬉しいなぁ・・・なんて。

 

全てを観念して、僕は大人しく目を瞑る。

 

 

口の中に、何かが入って来た。

 

 

「んぶっ!?」

「んー・・・♡」

 

 

なんっ・・・ぇ、これっ・・・んんっ!?

どっ・・・えっ、ちょ・・・んん?

 

 

「んー♡ はむ♡ はぁーむ♡」

「ちょ、ぇ、待っ・・・んんっ!?」

 

 

訳が分からないまま口の中を粘ついた何かが蠢いて、隅から隅まで堪能された。

 

え、ぁ・・・なに・・・? どういう・・・えぇ?

だ、ダメだ。状況が全く理解出来ない。

 

え、キスを・・・キスを、された?

時間は、分からない。分からないけれど、窒息しそうになるほど長く、濃厚なキスを・・・。

 

 

「ぇぁ・・・? ぽ、ぽひぃ・・・? ない、ひてぇ・・・」

「・・・♡」

 

 

横抱きに、抱き抱えられた。ブンブンと聞き慣れた尻尾を振る音が聞こえる。

ベッドに連れて運ばれたのか? ポチがいつも使ってるキングサイズの・・・ぁ、良い匂い。野性的で、でも甘くて・・・脳が、痺れる・・・。

 

 

「・・・愛してるぞ、ご主人様♡」

 

 

囁かれた、情熱的な愛の言葉。

 

その日、僕が覚えていたのは、その甘く蕩けるようなポチの声と。

何処までも轟く、狼のように力強く、逞しい遠吠えだった。

 




後日談とかはその内。
魔獣族編はこれで一旦一区切り。


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魔獣族専用スレ part1

魔獣族視点。
想定より長くなったので何話かに分けます。


1:ご主人様のペット

辛いんだが・・・

 

 

2:名無しの魔獣族

む、これが掲示板、とか言う奴か

 

 

3:名無しの魔獣族

予告はされていたが、いきなり頭の中に出て来てビックリした

 

 

4:名無しの魔獣族

不思議な感じだな

 

 

5:名無しの魔獣族

して、>>1は何が辛いんだ

 

 

6:名無しの魔獣族

この掲示板を始められるということは、人間界へ行った強者・・・で合っているか?

 

 

7:名無しの魔獣族

確か、ランキングで殿堂入りする必要があるんだったか

 

 

8:名無しの魔獣族

つまり、>>1は2位から10位までと同時に手合わせして勝ったのか

 

 

9:名無しの魔獣族

凄いな、今度手合わせ願いたい

 

 

10:ご主人様のペット

いつでもいいが、まず悩みを聞いてくれるか

非常事態なんだ

 

 

11:名無しの魔獣族

む、そう言えばそうだった

 

 

12:名無しの魔獣族

殿堂入りする程の貴殿がそこまで追い詰められるとは、一体どんな強敵と戦っているのだ

 

 

13:ご主人様のペット

あぁ、実はな・・・

 

 

14:名無しの魔獣族

・・・ごくり

 

 

15:ご主人様のペット

実は・・・人間が可愛い過ぎて、辛いんだ・・・

 

 

16:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

17:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

18:名無しの魔獣族

・・・なるほど

これが惚気け、というものか

 

 

19:名無しの魔獣族

噂には聞いていたが・・・

 

 

20:名無しの魔獣族

存外、ムカッと来るものだな

 

 

21:名無しの魔獣族

それじゃ、もう悩みも解決したという事で

 

 

22:ご主人様のペット

待て、まだ何も話していないぞ

 

 

23:名無しの魔獣族

これ以上何を話すんだ

 

 

24:名無しの魔獣族

今ちょうど山を三十ほど割る鍛錬をやろうとしてた所なんだ

出来れば手短に頼む

 

 

25:名無しの魔獣族

私も、近々ポセイドンと戦うから海割りの練習を

 

 

26:ご主人様のペット

ご主人様の可愛いエピソードだ

 

 

27:名無しの魔獣族

可愛い?

 

 

28:名無しの魔獣族

何故それを話したいのか

 

 

29:名無しの魔獣族

それがどれ程魅力的かは知らんが

 

 

30:名無しの魔獣族

山を更地にしてきたから

 

 

31:名無しの魔獣族

海を飲み干してきたから

 

 

32:名無しの魔獣族

さぁ話せ

 

 

33:ご主人様のペット

・・・まぁ、いいが

その前に、これまでの経緯を話さねばならん

 

 

34:名無しの魔獣族

何故だ

 

 

35:ご主人様のペット

人間界への理解を深めるためだとかで情報提供をせねばならんのだ

魔王様との取り決めだ、許せ

 

 

36:名無しの魔獣族

む、魔王と言うと・・・あの御伽噺に出て来る

 

 

37:名無しの魔獣族

我ら魔獣族と片っ端から殴りあったという

 

 

38:名無しの魔獣族

あの魔王か?

 

 

39:名無しの魔獣族

実在したのだな

 

 

40:ご主人様のペット

あぁ、普段はローブと認識阻害の魔法をしていて姿が曖昧だがな

匂いで凄まじい強者だと分かった

 

 

41:名無しの魔獣族

手合わせはしたのか?

 

 

42:ご主人様のペット

いや、していない

なにせ大恩人であるからな

迂闊な真似は出来ん

 

 

43:名無しの魔獣族

恩人・・・あまり馴染みのない言葉だ

 

 

44:名無しの魔獣族

なんだ、>>1は魔王とやらに対戦相手でも用意してもらったのか?

 

 

45:ご主人様のペット

そんな所だ

 

人間界へと赴くには、各種族の長がそれぞれ決めた条件をクリアしなければならないのは知ってるな

 

 

46:名無しの魔獣族

あぁ、真の強者にしか許されない特権だな

 

 

47:名無しの魔獣族

憧れるな

 

 

48:名無しの魔獣族

人間界、果たしてどのような強敵が待ち受けているというのか

 

 

49:ご主人様のペット

人間界の場所自体は極秘扱いだ

条件をクリアした者は魔王様の手によって、意識を奪われた状態で人間界へと送られる

 

 

50:名無しの魔獣族

精神に作用する魔法を使われたのか

 

 

51:名無しの魔獣族

気合いでなんとかならんのか?

 

 

52:ご主人様のペット

普段なら気を強く持てばなんともないが

あの方のは全く抵抗出来なかったな

 

 

53:名無しの魔獣族

ほう・・・

 

 

54:名無しの魔獣族

>>1でも抵抗すら出来ないとは

 

 

55:名無しの魔獣族

血が沸き立つな

 

 

56:ご主人様のペット

そして、気付けば人間界の大地へと足を踏み締めていた

そこはなんと言うか・・・想像していた強さとは無縁の穏やかな場所だった

 

 

57:名無しの魔獣族

穏やか?

 

 

58:ご主人様のペット

あぁ、地面が襲って来ないと言えば分かるか?

 

 

59:名無しの魔獣族

む、屈服させずにか

 

 

60:名無しの魔獣族

随分と大人しい大地だな

 

 

61:名無しの魔獣族

いや、もしや威圧だけで屈服させたのか

 

 

62:名無しの魔獣族

なるほど、流石は殿堂入りしただけのことはあるな

 

 

63:ご主人様のペット

いや、何もしていない

そもそも、こちらの大地には意思が無い

地割れが起きることも無ければ、剣山のように山を作ることもないんだ

 

 

64:名無しの魔獣族

それは・・・

 

 

65:名無しの魔獣族

俄には信じ難いな

 

 

66:名無しの魔獣族

だがそのような環境で強き者が育つとも思えんが

 

 

67:名無しの魔獣族

人間、一体どれほどの強者なのか

 

 

68:ご主人様のペット

何も襲って来ないので手持ち無沙汰でな

取り敢えず、良い匂いがする方へと向かうことにしたんだ

 

 

69:名無しの魔獣族

良い匂い?

 

 

70:ご主人様のペット

あぁ、闘争心以外の何か

今思えば、あれが獣欲とやらなのか

それをくすぐるような甘美な匂いだった

 

 

71:名無しの魔獣族

ふむ、絡め手が得意な相手だろうか

 

 

72:ご主人様のペット

それから森の中を少し歩いた

本当に静かな場所だった

周囲の植物は毒を撒き散らすことも無ければ、道に迷わせることも無い

静か過ぎて、逆に居心地が悪かったくらいだ

 

 

73:名無しの魔獣族

制圧しなくとも襲わない森か

 

 

74:名無しの魔獣族

想像出来んな

 

 

75:ご主人様のペット

そして匂いが次第に強くなり、森が開けた所に建物がいくつもあった

非常に良く出来た建物だった

どうやらアレが人間たちの住処らしくてな

随分と手の込んだ、木で出来た住処だった

 

 

76:名無しの魔獣族

木で?

 

 

77:名無しの魔獣族

凄いな

いくら切っても、木片になっても襲ってくるような奴らだぞ

 

 

78:名無しの魔獣族

それを住処にするとは、想像以上だ

 

 

79:ご主人様のペット

いや、こちらの木は襲って来ない

擬態してるとかではなく、元から動かないんだ

 

 

80:名無しの魔獣族

・・・そう言えば、大地が襲って来ないような世界だったな

 

 

81:ご主人様のペット

そして、その住処から出入りしていた人間は、なんと言うか・・・

小さかったな

 

 

82:名無しの魔獣族

小柄な種族なのか

 

 

83:ご主人様のペット

いや、小柄なんてものじゃない

ドワーフ達よりももっと小さい

そうだな、ちょうど胸の下あたりくらいだ

 

 

84:名無しの魔獣族

胸の下・・・

 

 

85:名無しの魔獣族

まぁ、子供ならそんなものだろう

 

 

86:ご主人様のペット

いや、大人でそれだ

因みに子供は膝くらいしかない

 

 

87:名無しの魔獣族

それは・・・なんと言うか・・・

 

 

88:名無しの魔獣族

小さいな

 

 

89:ご主人様のペット

あぁ、小さかった

それに大きな耳や尻尾のような、種族特有の部位も無かった

一番近いので魔猿族辺りか

いや、奴らほど大きくはなかったがな

踏み潰してしまわないかと気が気で無かったが・・・

どうやらそんな心配はいらなかった

 

 

90:名無しの魔獣族

ほう、見かけによらず、と言う奴か

 

 

91:名無しの魔獣族

魔猿族、確か元は我らと同じ魔獣族だったか

 

 

92:名無しの魔獣族

だが我らと違い、技術に重きを置いている種族だ

 

 

93:名無しの魔獣族

パワーはそれ程でもないが、こちらの攻撃を全て流す技術は目を見張るものがあるぞ

 

 

94:名無しの魔獣族

しかし小さいと言うのなら、やはり速さを生かした戦法か

 

 

95:名無しの魔獣族

それとも体格差をものともしない力の持ち主か

 

 

96:ご主人様のペット

いや、逃げられた

 

 

97:名無しの魔獣族

・・・ん?

 

 

98:名無しの魔獣族

逃げる・・・身を隠しての奇襲が得意ということか?

 

 

99:ご主人様のペット

いや、そういう戦法がどうのという意味ではなく

普通に逃げられた

悲鳴をあげて

 

 

100:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

101:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

102:ご主人様のペット

皆、薄々勘づいているとは思うが、人間界というのは強者が住まう修羅の地などではない

吹けば飛ぶような、撫でれば折れてしまうような

そんなか弱い未知の生物、人間が静かに暮らす秘境の地なのだ

 

 

103:名無しの魔獣族

そう、なのか・・・

 

 

104:名無しの魔獣族

か弱い、のか・・・

 

 

105:名無しの魔獣族

ん、いや待て

であれば、>>1は何が辛いと言うんだ

 

 

106:名無しの魔獣族

そう言えば、そういう話だったな

 

 

107:名無しの魔獣族

可愛い、だったか

 

 

108:名無しの魔獣族

可愛いからなんだと言うのだ

 

 

109:ご主人様のペット

いや、お前達の言いたいことはよく分かる

私も、人間界へ来るまではそういうのと無縁だったからな

だが人間の可愛さはそういう次元ではなかった

あれは・・・そうだな、一種のデバフのようなものだ

 

 

110:名無しの魔獣族

デバフ・・・?

 

 

111:ご主人様のペット

あぁ、そうだ

別に何かしらの精神魔法を掛けられた訳では無い

だがあの可愛さはこちらの闘争本能の一切を消し去り、どうしようも無い愛おしさを抱かせるのだ

 

 

112:名無しの魔獣族

防御不能の精神攻撃か

 

 

113:名無しの魔獣族

厄介だな

 

 

114:名無しの魔獣族

>>1ほどの存在が言うのだ

気を強く持つ、とかでは当然無理だろうな

 

 

115:ご主人様のペット

無理だな、なんなら魔王様の精神魔法よりもヤバかった

なんせ、抵抗しようという気すら起こせないのだ

胸の奥に溢れ出る愛おしさが、ただただ心地好い

 

 

116:名無しの魔獣族

強制的に無抵抗にさせられるのか

 

 

117:名無しの魔獣族

聞いた感じだと防御にも影響しそうだな

 

 

118:ご主人様のペット

あぁ、その通りだ

だがその辺は問題無い

 

 

119:名無しの魔獣族

ほう・・・?

 

 

120:ご主人様のペット

人間たちが逃げた後、少しして武器を持った人間たちが現れたのだ

 

 

121:名無しの魔獣族

武器?

 

 

122:名無しの魔獣族

なるほど、足りない戦闘力を武器で補うということか

 

 

123:ご主人様のペット

あれは・・・仕組みは全く分からないが、何やら石のようなものを撃ち出す武器だった

よく出来た代物だった

それを持った人間が何人も出て来て、いつの間にか囲まれてな

 

 

124:名無しの魔獣族

もしや、機械族が扱う銃のことか?

 

 

125:ご主人様のペット

いや、似てはいたがあまりに威力が弱いから違うと思う

溶岩のような熱線も出なければ、厄介な魔弾が出てくることもない

小石のようなものが、こう・・・パラパラと出てくる感じだ

 

 

126:名無しの魔獣族

・・・・・・ん? 武器では無いのか?

 

 

127:名無しの魔獣族

>>1の話を聞く限り、武器と言うにはあまりにも・・・

 

 

128:ご主人様のペット

いや、いや武器だ、武器なのだ

我々の・・・あー、なんだ

投擲、はちょっと強過ぎるな

拳圧、も語弊がある

・・・・・・そうだな、デコピンと同じくらいの威力だ

 

 

129:名無しの魔獣族

デコピン・・・

 

 

130:名無しの魔獣族

デコピンか・・・

 

 

131:ご主人様のペット

いや、正確にはそれよりも弱いのだが・・・

すまない、良い例えが浮かばない

なんせ衣服すら破れなかったのだから

 

 

132:名無しの魔獣族

武器、なのだな・・・?

 

 

133:ご主人様のペット

あぁ、武器だ、間違いない

いや、私自身、武器だと気付いたのはだいぶ後なのだがな

 

それから最初に逃げられた、と言っただろう

その事実に気付くのにもかなりの時間が掛かった

なんせ我ら魔獣族は鼻が利く、姿は見えずともその姿は丸見えな訳だ

 

 

134:名無しの魔獣族

そうだな

瞬間移動や空間跳躍をしない限り、何処までも追い続けられるな

 

 

135:名無しの魔獣族

狙った獲物は地の果てまで追い掛けるぞ

 

 

136:名無しの魔獣族

・・・いや待て、まさか

 

 

137:ご主人様のペット

ふむ、短い時間だが人間のか弱さがある程度伝わってるようだな

なるほど、魔王様はこれを狙っていたのか

 

あぁ、そうだ

>>130が想像した通りだ

人間は瞬間移動や空間跳躍も出来なければ、分身を作って撹乱することも出来ない

なんなら、トコトコ走って物陰に隠れて、それで逃げられたと思ってる程だ

 

 

138:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

139:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

140:名無しの魔獣族

・・・・・・ンッ゛

 

 

141:名無しの魔獣族

・・・一応、尋ねる

人間の特殊能力である可愛さ、とは言葉伝いに感染するものか?

 

 

142:ご主人様のペット

・・・どうやら、そのようだな

こうして誰かに話すのは初めてだからな、私も少し驚いている

 

 

143:名無しの魔獣族

これは、想像以上に厄介だな

 

 

144:名無しの魔獣族

気が抜けると言うか、なんと言うか・・・

 

 

145:名無しの魔獣族

得も言えぬ多幸感が、全身をフワフワと包むような・・・

 

 

146:ご主人様のペット

ふむ、私は下腹部にズキューンと来たが・・・まぁ、言葉伝いではこんなものか

 

さて、幸せになってる所悪いが皆覚えているか

私は最初に辛い、と言ったことを

 

 

147:名無しの魔獣族

あぁ、人間が可愛過ぎて辛いと言う話だったな

 

 

148:名無しの魔獣族

なんだ、これ以上にまだ何かあるのか

 

 

149:ご主人様のペット

いや、そういう事ではない

実は、辛いと言ったのは別の意味でもあるのだ

 

いいか

人間たちが逃げたのは、純粋な恐怖からだ

人間たちが玩具みたいな、けれども人間同士を傷付けるには十分過ぎる武器を私に向けたのは、私を恐れたからだ

何故恐れられていたのか、理由は分からないが・・・

 

想像してみて欲しい

今も身体を覆う多幸感

それを無限に与えてくれる愛い生き物達が、顔を歪めて逃げ惑うのだ

武器を構えて、敵意を示してくるのだ

 

 

150:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

151:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

152:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

153:ご主人様のペット

・・・まぁ、そういう事だ

 

膝を屈して、地面に這いつくばったのは、初めての経験だったよ・・・

 

 

154:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

155:名無しの魔獣族

・・・・・・。

 

 

156:名無しの魔獣族

・・・・・・辛いんだが。

 

 

 




次回も掲示板。


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