邪悪を清める叛逆の王 (ガンダムラザーニャ)
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プロローグ

今回も新しく転生者シリーズの話を書かせていただきました。

なるべく長く書けれるように精進しますので、読者の皆様方どうぞ生暖かい目でこの作品を見てくだされば幸いです。


転生者、それは死した人の魂が別の世界で別の存在として生まれ変わる存在。

 

その際、中には特典と呼ばれる特殊な力を与えられる存在もいる。

 

だがその特典を与えることで、その魂と精神を汚染し、その世界を我が物にせんとする存在がいる。

 

その存在によって汚染された転生者はその世界で様々な事件や災害を引き起こしてしまう。

 

当然、その中に含まれる犠牲者は数しれない。

 

そしてある世界では今、転生者による侵略によって、人々が恐怖に陥れられようとしていた。

 

怪物を率いて、小さな国を支配しようと進軍する転生者。

 

その様子を、5人の少年少女が見ていた。

 

その手には、クワガタ、トンボ、カマキリ、パピヨン、ハチの意匠が入った鍔を持つ剣を手にしている。

 

「ふーん…、あれが転生者か」

 

「いじり甲斐がありそうな気配がしますわね」

 

「…あのさ、やっぱりこれ行っちゃう感じ?

 

俺そろそろビビってチビりそうなんだけど」

 

「相手が何であれ、外道なれば地獄への道行を案内するまで」

 

「はっ、前置きなんざ必要ねぇよ。

 

とにかくあのクソどもを殺せればなぁ!!」

 

男勝りな金髪の少女が剣を肩に担ぎながらそう言うと、他の皆の静止を振り払って飛び出すのでついていく。

 

「あ~もう! 勝手に行くなって!」

 

「まあまあ、私達も行きませんこと?」

 

「仕方がありません。

 

もう少し動向を探りたかったのですが……」

 

「…ったく、仕方ねぇやつだな」

 

4人も少女の後を追うように飛び出した。

 

5人はそれぞれ剣を抜き放ち、転生者とそれを取り巻くサナギの怪物たちの前に立つ。

 

「何お前?そこ邪魔なんだけど?」

 

「はっ、お前らこそ、あの国目掛けてそんな大所帯でどうするつもりだ?あぁ?」

 

「どうするって、そんなの決まってんじゃん?

 

国にいる連中を皆殺しにして、俺だけの国を築き上げてやるんだよ」

 

「はっ、てめぇらみてぇな三下にあの国が落とせるかよ。

 

何故なら、オレたちがいるからな」

 

「あっそ、じゃあ死んでよ」

 

転生者が親指を下に向けると、背後にいたサナギ達が一斉に襲い掛かる。

 

それに対して5人は臆することなく立ち向かい、剣を構えそれぞれ操作していく。

 

【クワガタ!】

 

【トンボ!】

 

【カマキリ!】

 

【パピヨン!】 

 

【ハチ!】

 

『王鎧武装!』

 

【You are the KING, You are the You are the KING!】

 

【クワガタオージャー!】

 

【トンボオージャー!】

 

【カマキリオージャー!】

 

【パピヨンオージャー!】

 

【ハチオージャー!】

 

5人はその体を結晶化させ、どこからともなく現れたクワガタ、トンボ、カマキリ、パピヨン、ハチの姿をしたオーラが突撃する。

 

結晶が砕けたと同時に5人の姿も変わり、5人にはそれぞれ赤、青、黄、紫、黒の鎧を纏い、左肩にはマントを靡かせている。

 

その姿はまるで、昆虫の王を思わせる姿だった。

 

「おい三下、よく聞け。

 

我らはキングオージャー!

 

テメェらみたいな理不尽なクソどもに叛逆する王だ。

 

冥土の土産に覚えときな!」

 

「まぁ、俺はこいつがどう思おうが知らねぇし関係ねぇけど、お前らみたいなダセェ生き方してるやつが気に食わねぇからな」

 

「どれもこれも、わたくしがあるべき姿に治してさしあげますわよ。

 

相手が何であれ、わたくしからすれば皆患者ですから」

 

「ここから立ち去るならば見逃そう。

 

しかし攻め入れようならば、ここで処するまで」

 

「うわ~、皆気合入っちゃってる。

 

…はぁ、しょーがねぇ~なぁ!!

 

こうなったらもう自棄だ!

 

死にたいやつだけ来い!!」

 

戦士たちは剣を両手に持ち、それを交差させて構える。

 

すると、彼の周囲にいたサナギが一斉に襲いかかってきた。

 

「はっ!上等だオラァ!!」

 

最初に斬り込んだのは赤い装甲を身に着けた少女。

 

その獰猛な食らいつきでサナギを切り払っていく。

 

「ふっ、はっ!!」

 

次に青い装甲を身に着けた少年が剣で軽く薙ぎ払ってからの強い蹴りを叩きつける。

 

「せいっ」

 

黄色の装甲を身に着けた少女が正確にサナギの急所を剣で突き刺していく。

 

「地獄の釜の湯加減なれば!!」

 

紫の装甲を身に着けた少女は居合の構えから一閃を放ち、それにより数体のサナギが切り裂かれた。

 

「おぉおおおおおおっ!!!」

 

黒の装甲を身に着けた少年は他の皆と違って素人丸出しの動きで切り結んでは武器を奪って投げ捨てたり、殴り飛ばしたりしている。

 

だが、その動きにはどこか戦い慣れているような雰囲気があった。

 

「へぇ〜、やるじゃん。

 

まっ、こいつらがザコだからってのもあるんだろうけど」

 

それを見ていた転生者はサイの模様が入ったデッキケースを手に取ると手鏡にそれを翳した。

 

その瞬間、ベルトが腰に巻かれ、握り拳でガッツポーズを取る。

 

「変身!」

 

デッキケースをベルトに挿入すると、鎧を纏った銀色のサイを思わせる姿をした戦士へと変わった。

 

「俺は仮面ライダーガイ。

 

お前ら全員ぶっ殺して、この国も俺の物にしてやるよ」

 

「仮面ライダーガイの特典を持つ転生者か。

 

良いぜ、なら命乞いがしたくなるくらいまでブチのめしてやるよ!」

 

クワガタの少女が剣を大きく振りかざしながら斬り掛かろうとすると。

 

【ストライクベント】

 

ガイがデッキケースからカードを取り出してそれを左肩の挿入口に投げ入れることでザイの長い角を模した武器が装着されて、少女の剣を防ぐ。

 

そのまま鍔迫り合いに持ち込む。

 

しかし。

 

「ふんっ!!」

 

「あがっ!?」

 

トンボの少年の強烈な蹴りがガイの側頭部を捉え、地面に叩きつけられる。

 

「おい、クワガタだけでなく俺ともやろうぜ?」

 

「…いってぇな。

 

お前はこいつと遊んでろ」

 

【アドベント】

 

ガイはカードからサイのモンスターを召喚してそれとトンボの少年を戦わせようとするが、カマキリの少女が飛ばした針によって動けなくなってしまう。

 

「ふふっ、乱暴はいけませんわよ患者様?

 

しっかりと治療して差し上げますから、大人しくしてくださいませ?」

 

「これなる生き物も特典の一部。

 

ならばこの場で斬り伏せるまで!」

 

続くパピヨンの少女の一線により、モンスターは斬り伏せられ、倒れてしまう。

 

「メタルゲラスが!?

 

くそっ、契約が!!」

 

銀色の鎧が灰色にくすんでしまい、力も弱くなるガイだが、それでも武器を振り上げて攻撃しようとすると。

 

「スティールッ!!」

 

「なっ!?」

 

手にあった武器が、ハチの少年に奪われてしまう。

 

「今だ!!早くトドメを刺せ!!」

 

「はっ、オレに命令してんじゃねぇ!!」

 

【オージャチャージ!!

 

オージャフィニッシュ!!】

 

剣のトリガーを引き、クワガタの部分を3回引くことで必殺技を発動させ、強力な一撃を放つ。

 

「がっあっ、あああああ!!」

 

それによって、ガイは爆散した。

 

それに伴い、サナギも消滅した。

 

「おーっし!

 

戦闘終了だ!!」

 

「あ~、汗かいちまったなぁ」

 

「やはり、この剣でトドメを指すと、死体も残らないのですね。

 

臓器と血液を保存して、ドナーと輸血に利用しようと思っていましたが……」

 

「地獄への道行きは、無事に済んだようですね。

 

刑はこれにて終了」

 

「はぁ〜疲れた〜!

 

早く戻って楽になりてぇよ〜」

 

こうして、彼らは勝利を収め、一つの国の危機を救った。

 

彼らの名は王様戦隊キングオージャー。

 

魂を汚された転生者を滅し、その魂を清める王様たちだ。



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壊されたはじまりの街

遅くなりましたが2話目投稿になります。

活動報告リクエスト募集もしてますので、皆様のリクエストをお待ちしております。


アクセル。

 

そこは駆け出し冒険者の街にして、はじまりの街。

 

ひょんなことからこの世界に転生した高校生・カズマはこの街ででこぼこなパーティーと一緒に冒険者生活を送っていた。

 

しかし、ある存在によってその生活は崩壊した。

 

アクセルや他の街や国がその存在によって、壊滅状態に陥ってしまった。

 

それも魔王軍も同じ状況らしい。

 

しかもカズマのパーティーも、その存在に連れ去られてしまい、自身も一度死んでしまった。

 

アクアがいなくなってしまったので、本来ならまた別の世界で別の存在として転生させられるはずが、エリスから世界を立て直して欲しいと頼まれ、あるものと新たな4人の仲間たちと共に復活させられた。

 

全員カズマと同じく一度この世界に転生し、この騒動で死んでしまった存在だ。

 

ちなみに全員カズマと同じ屋敷で暮らしてる。

 

そして現在。

 

「…」

 

「…てなわけだからよ、今から一緒にクエストに、ってお前話聞いてたのか?」

 

「あ、すみません。

 

おっぱいに目が行ってました」

 

「ハァ!?テメェあれ程言ったのにオレのこと女として見てたってのか、あぁん!?」

 

ギルドで男勝りな金髪の少女に胸倉を掴まれていた。

 

「ひいっ!?ごめんなさいごめんなさい!

 

だって仕方ねぇじゃん!?そんな男物の癖に露出度高い服着て、平らだけどしっかりとある胸とか見たら誰だって女だって思うじゃん!?」

 

「テメェぶっ殺すぞコラ!!

 

…チッ、まぁいい。

 

それよりもクエスト行くぞクエスト」

 

「はいはい分かりましたよっと……。

 

そういえば今日は何すんだ?まだ何も決めてないけど」

 

「決まってんだろ?

 

ジャイアントトードの討伐だ。

 

最近大量発生してるからな、駆除しておかないと安心出来ねえんだよ」

 

「あーはいはい。

 

んじゃ早速行こうぜモードレッド」

 

「おうっ!」

 

二人はそのままギルドを出ていった。

 

モードレッドと呼ばれた金髪の少女は、カズマと同じく転生者で、新しい仲間だ。

 

元々はある国に仕えた女騎士だったらしいが、その国は滅ぼされ自身も死んだ。

 

だから国を滅ぼした存在に叛逆するために、カズマと行動を共にしている。

 

見た目通りどこからどう見ても男装した少女なのだが、女だと見下されるから自分を女扱いするな、でも男扱いはそれはそれで何か嫌だからするなと、とにかく性別に関してはあまり触れないで欲しいということだ。

 

その割には男装で動きやすいからと露出度の高い服を着てるのでスケベでクズなカズマからはいやらしい目で見られては締め上げるのが日常である。

 

ちなみに男口調も男装もこうして復活してからするようになった。

 

ちなみに職業はクルセイダー。

 

元々与えられた特典はFateのモードレッドの能力。

 

カズマたちは確かに世界を立て直すためにもう一度復活したが、別に職業が王様になったわけでもないので今は復興が進んでるアクセルで冒険者をやってるというわけだ。

 

「オラァッ!!」

 

ジャイアントトードを蹴散らしていくモードレッド。

 

彼女の実力はかなり高く、ジャイアントトードなど敵ではない。

 

(うわぁ…、同じクルセイダーでも、ここまで違うのかよ…)

 

自分も苦戦しながらモードレッドの戦いぶりを見てかつてのパーティーの一人だったダクネスを思い出していた。

 

クルセイダーなのに剣の腕は全然で当たらない、しかも本人はダメージを喰らう度に喜びを抱くドM、ステータスも剣術ではなく防御や囮に振って、攻撃系のスキルを一つも入れる気もない徹底振りで、パーティーの中ではタンクを担っていた。

 

それに対してモードレッドはクルセイダーだが荒々しく、剣術に喧嘩上等のステゴロ混じりだ。

 

剣を投げつけてそのまま抉るように引き抜くこともよくやってる。

 

「おっしゃあっ!こんなもんか?」

 

「ああ、十分だろ」

 

「じゃあ帰ろうぜ」

 

「そうだな」

 

ジャイアントトードの討伐クエストが終わったことを報告するため、街へ戻ろうとしたその時。

 

「……ん?」

 

「これは」

 

二人は服の中に首にかけてあるお守りを取り出した。

 

エリス教の紋章が入ったお守りだ。

 

生き返った時に、盗賊のクリスが『危険が迫ってるのを知らせてくれるから使って』と渡されたものだ。

 

ちなみにその危険というのは。

 

「…へっ、こいつは丁度いいぜ。

 

カエル共じゃ物足りねぇって思ってたからな」

 

「くそっ、こんな時に奴らが来んのかよ!

 

バグナラクッ!!」

 

バグナラク、それはこの世界を壊滅状態に陥らせ、カズマのパーティーを奪った存在。

 

バグナラクもまた人間の魂を転生させる存在だが、こちらの場合は特典の付与と共に魂と精神を汚染し、手駒にしている。

 

カズマたちのこのお守りは、そのバグナラクの転生者が近付いてることを指していた。

 

「一人で来るとは良い度胸してんじゃねぇか」

 

近付いてくる影に剣を向けるモードレッド。

 

「いやぁ俺もね、バグナラクさんには助けてもらってるし、ここは媚び売ってどんどん昇格したいんだよ」

 

近づくに連れて、その姿がはっきりとする。

 

鹿を思わせる角や毛皮を鎧として身に纏った男だ。

 

右足には、鹿型の足甲がある。

 

「…仮面ライダーインペラーか」

 

「まっ、そういうとこ!

 

んじゃあまっ、さくっと倒してお前らの首をバグナラクさんに渡して媚び売るとすっかね!」

 

「ふっ、上等だてめぇ。

 

まっ、首が飛ぶのは、てめぇの方だろうがな!」

 

「悪いがアクセルには踏み込ませないからな!」

 

【オージャカリバー!】

 

モードレッドとカズマは5体の昆虫の意匠が入った剣・オージャカリバーを構える。

 

【クワガタ!】

 

【ハチ!】

 

それぞれで、クワガタの顎のレバー、ハチの腹のボタンを操作し、続いてトンボの腹のハンドル、カマキリのカマのリング、パピヨンの羽のボタン、ハチの腹のボタンを押し、最後にクワガタの顎のレバーを引く。

 

『王鎧武装!』

 

【You are the KING, You are the You are the KING!】

 

【クワガタオージャー!】

 

【ハチオージャー!】

 

二人の体がそれぞれ赤と黒の結晶に覆われ、どこからかクワガタとハチのオーラが飛んできて結晶に激突。

 

結晶が砕け、二人の姿も変わった。

 

モードレッドは赤い鎧にクワガタのバイザーを、カズマは黒い鎧にハチのバイザーを纏い、左肩にはモードレッドは赤の、カズマは黒のマントを靡かせている。

 

「へぇ、それが噂に聞く転生者殺しの王様の姿ってやつか」

 

「えっ、やだ。

 

合ってるけどすっごい不穏な響きなんですけど」

 

「はっ、転生者殺しの王様ねぇ。

 

そいつはちげぇな」

 

ケラケラ笑いながら、モードレッドはオージャカリバーの剣先をインペラーに突きつける。

 

「聞けっ!!

 

我らの名はキングオージャー!!

 

そして我が名はモードレッド!

 

テメェらのような理不尽な蛮族を屠る叛逆の王だ!!

 

オレの名を、そしてオレたちの存在を手向けとして受け取れ!」

 

「あ~もうそういうのはとっくに受け取ってるから、早く行くぞ」

 

カズマはそう言ってモードレッドを促し、二人は走り出した。

 

「ちぃっ、舐めた口利いてんじゃねぇよ!!」

 

「ハッハァッ!!」

 

モードレッドは剣を振り回しながら駆け、カズマは空中で旋回しながら跳び、蹴りを叩き込む。

 

「うおっ!?」

 

「オラァッ!!」

 

怯んだ隙にモードレッドの剣が振り下ろすも。

 

「とうっ!」 

 

「あ?いでっ!?」

 

インペラーは高くジャンプし、そのまま落下した勢いを乗せた踵落としをモードレッドの脳天に喰らわせる。

 

「この野郎……っ!」

 

「はい残念、それじゃまだ遅いな」

 

「ぐあっ!」

 

続けて繰り出された蹴りの乱打を喰らい、吹き飛ばされた。

 

「モードレッド!」

 

「俺の仮面ライダーインペラーはジャンプ力が売りなんだよ。

 

それともう一つ」

 

【アドベント!】

 

腰のバックルからカードを取り出して、膝の召喚機に装填すると水溜りの表面から大量の鹿の角を生やした怪物がジャンプしながらやってきた。

 

「な、なんだそりゃ?」

 

「俺の特典の仮面ライダーインペラー。

 

そいつの契約してるモンスターがどんなのか知ってるだろ?」

 

「まさか、ギガゼール!

 

やつの能力でゼール系のミラーモンスターを呼び寄せやがったな!」

 

「正解、んじゃま、さっさとやられてくれよ」

 

インペラーが親指を下に向けたと同時に、モンスターが飛び掛かる。

 

「うわっ!」

 

「ちっ、くそっ!」

 

「ほれほれどうしたよ」

 

モードレッドとカズマが必死に戦う中、インペラーは余裕綽々と言わんばかりに煽って、そこから更にカードを一枚取り出して装填した。

 

【スピンベント!】

 

「とう!」

 

2つの巨大なドリルがついた手甲を召喚し、大きく振り被りながら二人に襲い掛かる。

 

「やべぇっ!」

 

「モードレッド!」

 

カズマはモードレッドを抱えてそのまま転がる。

 

「おい、大丈夫か!」

 

「ああ、なんとかな。

 

だが数が多いぜ。

 

…そうだ、良いこと思いついたぜ。

 

おい、お前はそこでガタガタ震えながら伏せてろ」

 

「おいマジかよ!」

 

カズマは何か焦った様子でその場に頭を伏せると。

 

「赤雷よ!!」

 

天高く掲げたモードレッドのオージャカリバーに魔力が集まり、赤雷となって激しく降り注ぐ。

 

「うおおおぉぉっ!!!」

 

その威力たるや凄まじく、インペラーのモンスターたちを一掃する。

 

「うげっ、マジかよ…」

 

「終わりだバグナラクの転生者!

 

今のうちに好きなだけ命乞いをしな!

 

首を跳ねられりゃ、悲鳴をあげられなくなるってもんだ!」

 

「くっ、くそっ!」

 

「あっ、待て!」

 

インペラーも流石に分が悪いと思ったからか、素早くジャンプしながら逃走しようとする。

 

「待ちやがれ!」

 

モードレッドが追いかける中で、カズマは金色の盾を取り出す。

 

オージャカリバーと共に渡された武器であるキングズウエポンだ。

 

それを銃のように持って、飛び跳ねるインペラーに狙いを定め。

 

「狙撃っ!!」

 

イケメンボイスと共に銃弾を射出。

 

それは見事にインペラーに命中し、地面に叩き落とした。

 

「いてぇっ!! な、なにしやがん……」

 

「さっきモンスターで俺らのこと甚振ってくれたんだ!これくらいの仕返しは当然だろ!」

 

「ハッハァッ!! そういうことだ!! テメェの命はここで終いだぁっ!!」

 

「チィッ!」

 

最後の悪足掻きとばかりにバックルからカードを取り出すと、カズマはそれを待ってたとばかりに手を翳し。

 

「スティールッ!!」

 

「なっ」

 

「やれぇっ、モードレッド!!」

 

インペラーからカードを奪い取り、モードレッドに向かって叫ぶ。

 

「おうよっ!!」

 

【オージャチャージ!】

 

オージャカリバーのトリガーを引き、すぐさまクワガタの顎のレバーを3回引きながらその剣にエネルギーを溜め込む。

 

「喰らえっ!!」

 

【オージャフィニッシュ!!】

 

「がぁっ!!」

 

大きな袈裟斬りにより、インペラーの体は斬り裂かれ、同時に爆散した。

 

インペラーの撃破と同時に、カズマが奪ったカードも消滅する。

 

「よーっし!勝った勝ったぁ!!

 

さぁ凱旋だぁー!!」

 

「いやいやもう帰ろ帰ろー!」

 

テンションが上がりまくっているモードレッドとは逆に、カズマは疲れ果てた表情で呟いた。

 

「何だよつまんねぇなぁ〜」

 

「もうクエストも終わったし転生者も倒したから、もう限界なんだよ!」

 

「仕方ねぇやつだな。

 

まぁ確かに汗かいちまって気持ち悪ぃし、とっとと帰るとするか。

 

舌噛むなよ?」

 

「お、おい何で俺を担いでってぎゃあああああ!!!???」

 

二人は変身を解除し、カズマを担いだモードレッドはそのままアクセルへと突っ走る。

 

そして屋敷に着くと。

 

「ふぅ、着いたぜ」

 

「あ、ありがとう。

 

助かったよ」

 

「な〜に、気にすんな。

 

オレたちは仲間だろ?」

 

「……あ、うん」

 

「なんだよ、ノリわりぃな」

 

そう言いながらも、カズマの前のパーティーのことを思い出してるのを察してか、モードレッドはため息混じりに言う。

 

「てめぇが連れ去られたってパーティーのことを思い出して気になるってんなら、オレは別にどうでもいいと思ってる。

 

だがな、お前がそいつらを連れ戻したいってんなら、こんなクソみたいな世界に叛逆しろ。

 

オレもお前も、他の連中も、それぞれ理由は別だが奴らに叛逆するためにキングオージャーとして生き返ったようなもんだからよ」

 

「…そうだな」

 

カズマは改めてオージャカリバーを見る。

 

これはエリスから与えられた世直しの剣にしてバグナラクに襲撃され続ける世界に叛逆する王剣だ。

 

文字通り、叛逆の心が強ければ強いほど、切れ味が増し、変身者の力を強める。

 

それでカズマはふと思った。

 

「なぁモードレッド」

 

「何だよ」

 

「お前の叛逆したい理由ってなんだ?」

 

「あ?そんなこと聞いてどうするんだよ?

 

…まぁ、強いて言うならバグナラクの連中に誇りを奪われた挙げ句、屈辱を与えられたからってところだな。

 

それらの礼を、きっちりとしてやりてぇってことだよ。

 

だからオレは女を捨てた。

 

エリスにこれを貰ったときにいっそのこと性別を変えてもらおうかお願いしたがそれは無理だったがな。

 

…チッ、あの上げ底女神が」 

 

「あー…」

 

詳しい理由はわからないけど、モードレッドにとっては女でいることには複雑な事情があるらしい。

 

「じゃあオレ先に浴びてくるから覗くなよ?」

 

「あっ、そこはちゃんと女の子なんだ」

 

「てめぇぶっ殺すぞ!?」

 

顔を真っ赤にして、モードレッドはそのまま脱衣場のドアを締めたので、カズマはモードレッドが上がるまで待たなくてはいけなくなった。



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死と病への叛逆者

はっぴーでぃすとぴあさんからのリクエストの転生者を書かせていただきました。


「ケイネ先生、こちらです!」

 

「こちらもお願いします!」

 

アクセルには転生者にやられたりして負傷する冒険者も少なからずやってくる。

 

その中で、長い金髪で白衣を少女が不敵な笑みを浮かべながら患者が眠るベッドを歩く。

 

彼女の名はケイネ、医者だ。

 

「はい、全てわたくしにお任せくださいまし。

 

ここにいる方々は皆、わたくしが治して差し上げますわ」

 

ジャグリングするかのように次々と医療道具を使いながら治療を行っていく。

 

それも一人ひとり的確に、誤診など一切ない。

 

彼女が今いるのはアクセルにある冒険者ギルドに併設された救護室である。

 

本来なら専属の治癒魔法持ちの冒険者が治療をするのだが、他の国でもバグナラクによる負傷者が続出してることもあって病院でも溢れ返るので、転送魔法でアクセルに運び込まれるので、その助っ人としてケイネがいる。

 

ケイネはキングオージャーとして復活する前は魔王軍と戦う冒険者たちの前線の野外病院で来る日も来る日も負傷者の治療を行っていた。

 

その腕前は魔法を使わず、ただ純粋に自身の医療技術によるもので、むしろ治癒魔法を使うよりも彼女に治療してもらったほうが早いと評判だった。

 

彼女も転生者ではあるが、転生者としての特典で求めたのは武器や特殊能力でもない、ただこの世界における病気の知識だ。

 

何故なら彼女にとっての戦場は他でもない、怪我や病気で苦しむ患者たちがいるところなのだから。

 

「ふぅ……これでひとまず終わりましたわね」

 

そう言いつつ最後の一人の傷口に包帯を巻き終えたところで一息つく。

 

「先生、こちら手伝ってください!

 

痛みで暴れて、拘束もままなりません!」

 

悲鳴を上げながらベッドの上で暴れる患者を見て、やれやれといった感じで微笑む。

 

「あらあら、それだけ暴れられるなら大丈夫そうですわね。

 

ですが、この状態だと治療ができませんわね」

 

そう言うと首元に針を刺し、その瞬間に患者はそのままぐったりと動かなくなった。

 

「針でエンドルフィンを操作して、彼に麻酔を掛けましたわ。

 

時間にしてざっと8時間、あとは皆様の手でいけますわね?」

 

「お、おぉ…すごい!」

 

「あと、亡くなられた方の遺体の回収もお願いします。

 

輸血用の血液と臓器が欲しいので」

 

「えぇっ!?そういうの大丈夫ですか!?

 

その、倫理的に」

 

「倫理?

 

そんなものよりも、わたくしのほうが多くの命を救えますわよ。

 

…では軽症の方々にも麻酔を掛けていきますので、あとの処置は皆様にお任せします」

 

そんな頭のネジがぶっ飛んだことを言いながらも鼻歌感覚で患者に麻酔を掛けるケイネ。

 

あとは他の冒険者に任せ、自身は一人救護室を出て、他の怪我人の治療に向かおうとすると、一人の少年にぶつかりそうになる。

 

「あらごめんなさい。

 

大丈夫でしたの?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。

 

それじゃ」

 

「ちょっとお待ちになって?

 

あなたに質問してもよろしくて」

 

「な、何ですか?」

 

ケイネは少年の顔を見据え、問いかける。

 

僅かな違和感を見逃さないとばかりに。

 

「あなた、見たところ怪我はないみたいですわね?

 

だけど怪我人がいる部屋から出てきましたわね」

 

「そ、それは、お見舞いに」

 

「違いますわね。

 

あなたからは、夥しい血の匂いがしますわ」

 

「ッ!!」

 

次の瞬間、少年の姿が掻き消え、いつの間にか背後に回り込んでいた。

 

だがケイネはそれを冷静に見抜き、後ろ回し蹴りを放つ。

 

「やはり転生者ですわね。

 

それもバグナラクの……。

 

お守りで確認するまでもありませんわね」

 

「…バレてしまっては仕方ない。

 

ここで始末する」

 

「始末?

 

いいえ、あなたはここで良い子になりますのよ?」

 

白衣からオージャカリバーを取り出し、逆手持ちしながらカマキリの鎌のリングに手を掛ける。

 

【カマキリ!】

 

続けてトンボ、カマキリ、パピヨン、ハチ、クワガタの順番に操作する。

 

「王鎧武装!」

 

【You are the KING, You are the You are the KING!】

 

【カマキリオージャー!!】

 

ケイネの体は黄色の結晶に覆われると同時にカマキリのオーラが激突、砕けて姿が変わった。

 

黄色の鎧に、カマキリを思わせるバイザー、そして左肩には黄色のマントを靡かせる。

 

その出で立ちはまさに、気品溢れる女王のそれだ。

 

「お前がキングオージャーの一人か。

 

ならば、その首を貰い受けるまで」

 

「先に聞きたいのですが、あなたが先程いた病棟にいた怪我人はどうなさいましたの」

 

「もう手遅れだ。

 

俺がさっき全員殺した」

 

鞘に収まった刀を居合の構えで殺気を放つ。

 

「まぁ!

 

つい先程ですの」

 

「…何が可笑しい?

 

もしかして怒りと悲しみのあまりに気でも触れたか」

 

怪我人を殺したというのに、何だそんなことかとばかりに肩を竦めるケイネに怪しむように睨みつける。

 

「いえいえ。

 

まだそんなに時間が経っていませんのでしたら、あなたを良い子にしてからわたくしが皆さんを蘇生してあげるから、そこまで気にしておりませんのよ?」

 

「正気か?

 

それとも蘇生魔法でも使うのか。

 

まぁいい、この街のやつらを皆殺しにすることが俺の役目だが、ここでお前を殺す」

 

『シィィィィー…』という呼吸音と共に刀を構える少年。

 

その瞬間にまるで雷が落ちた音と共に消え、ケイネも何か来ると察してオージャカリバーを構える。

 

するとガキン!!と音がしてオージャカリバーが弾かれるも何とか持ち直した。

 

「…っと、速いですわね」

 

「チィッ!!」

 

「あらあら、女の子相手に随分な舌打ちですわね」

 

いつの間にか背後に回った少年はもう一度刀を構えて攻撃を仕掛ける。

 

「雷の呼吸 弐の型 稲魂!!」

 

「あらあら」

 

ケイネは、まるでどこを斬られるのかわかってるかのようにオージャカリバーの剣の腹で受け止めていく。

 

「くっ、なぜ当たらない!」

 

「わたくしは医者ですのよ?

 

あなたの特典は雷の呼吸、つまりは速度を重視した居合。

 

素早く斬って死なせるのなら、出血しやすいところを狙ってくるのは目に見えてますの」

 

オージャカリバーで、斬りかかる少年をいなしつつ、どうして当たらないのかを説明するケイネ。

 

少年が攻撃するたびにケイネはオージャカリバーで防ぎ、少年の攻撃が当たる直前にオージャカリバーで弾き返すといった攻防が続く。

 

「遠雷!聚蚊成雷!熱界雷!

 

くっ!」

 

攻撃が当たらないことに焦って、少年は息を切らし始める。

 

「いくら速くても、攻撃する場所がわかってるならそれに合わせて防ぐまで。

 

やるならば、それ以上の速さで攻撃するしか、あなたがわたくしに勝つ方法はありませんわよ?」

 

「舐めるな!」

 

少年はケイネから距離を取り、居合の構えを取る。

 

「雷の呼吸 壱の型…」

 

キンッ!と、指で鞘から刀を引き抜き。

 

「霹靂一閃」

 

雷が鳴り響く勢いで加速した。

 

「あらあら」

 

少年の最速技を前にしてもケイネは余裕そうに微笑んでいる。

 

「う、嘘だろ? これを避けるなんて……」

 

「えぇ、確かに速いですわ。

 

ですが、わたくしの聞いた雷の呼吸とは少し見劣りしてましたので」

 

「何だと」

 

「確か、鬼滅の刃、というものでしたかしら?

 

そこには鬼になった人間を、元に戻そうと頑張る人たちがありましたので少しばかり読んだことがありましたの。

 

その中でも、雷の呼吸と呼ばれる技を極めた者たちがいらしてましたわ。

 

一人は今のあなたが放った技だけを極限まで鍛え上げて、様々な応用の効く技にしたり、一人は先程の遠雷や熱界雷といった牽制向きの技にデバフが掛かる能力を追加した方もいらしてましたの。

 

…ですが、これは経験不足でしょうか?

 

どうも見劣りがして、拍子抜けしてしまいますわね」

 

「くっ、だったら今度はより早く!

 

霹靂一閃!!」

 

「ふふっ」

 

キングズウエポンの側面の刃を展開し、鎌のように持ち、間合いを詰めた少年の刀を絡め取り、そのまま宙へと放り投げた。

 

「しまっ…!?

 

馬鹿な、か、片足が、動かない…!?」

 

「あら失礼しましたわ。

 

さっきの攻撃のときに、足に麻酔針を打たせてもらいましたの。

 

さて、わたくしは優しいですから、悪い子なあなたを良い子に治して差し上げますわ」

 

「…片足の感覚が失くなったところで見くびるな!」

 

感覚がある方の片足に力を込めて、凄まじい速さで掴みかかろうとする少年。

 

しかし。

 

【オージャチャージ!

 

オージャフィニッシュ!!】

 

自然な仕草でオージャカリバーを操作した上で、少年を斬り伏せた。

 

「がっ……ば、かな……」

 

「おしまい、ですわね」

 

少年はそのまま地面に倒れ伏して消えた。

 

「…あら、いけませんわ。

 

良い子にするつもりが、殺してしまいました」

 

医者は人を殺す職業じゃないのにと、軽く肩を竦めるケイネ。

 

「でも、これもキングオージャーの宿命なのかもしれませんわね。

 

…さて、早いところあの子が殺した怪我人の皆さんを蘇生してあげませんと」

 

ポンポンと白衣を軽く叩きながら、少年が皆殺しにしたという病棟の怪我人たちの元へと急ぎ、無事全員を蘇生した。

 

本来ならば一生に一度しか使えないであろう蘇生魔法が必要だが、ケイネの医療技術があれば、そんなものを使わなくてもそんなに時間が経ってないのであれば3分で蘇生させられる。

 

同じキングオージャーの一人のカズマからはそのスタイルの良さからいやらしい目で見られることはあるものの、その異常な医療技術と破綻した倫理観から『頭のネジがぶっ飛んだ医者』とも呼ばれている。

 

だがそれでも命を救おうという医者としての矜持が、彼女をキングオージャーにしたのも事実である。

 

何故なら彼女にとって医者というのは、死と病への叛逆者なのだから。



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叛逆の暴走族

黒い幻想さんからのリクエストで二人のキャラを出させてもらいました。


「いや待って!?

 

これめっちゃ速いって、元の世界なら法定速度余裕で超えてるって!!」

 

「いいじゃん当たらなきゃさ」

 

バイクのような装飾の着けた牛が草原を爆走していた。

 

牛に載ってるカズマは涙目になりながら、必死にしがみついている。

 

牛を操縦するこの男は金髪で暴走族の特攻服を肩に羽織った小柄な少年だ。

 

名前はマイキー、カズマと同じくキングオージャーの一人だ。

 

職業は冒険者で、特典は生き物をバイクみたいに乗りこなす技術(バイクがなかったから)。

 

キングオージャーとして復活する前はならず者たちと一緒に暴走族(この世界にバイクはないのでバイクみたいな装飾を取り付けた馬か牛に乗ってた)をしていたが、カッコいい暴走族を目指してたので、魔王軍と戦うこともあり、ある国の自警団もしていた。

 

ならず者たちの集まりだったから、すぐに手が出る連中ではあったものの、マイキーからすれば掛け替えのない友達(ダチ)でもあり、仲は良かったとのことだ。

 

だがある日、バグナラクの進軍により、マイキーたち暴走族は壊滅、仲間は連れ去られ自身は死んだ。

 

キングオージャーとして復活したのも、ダチを攫ったダサい連中をブチのめすという理由からである。

 

「ふぅ…、良い運動になったなカズマっち」

 

「あ''〜っ、もうダメ吐きそう…うぷっ」

 

「ちょっと休憩するか」

 

近くの丘で降りた二人はその場に座って休むことにした。

 

「ほらカズマっち、水だよ」

 

「ありがどう……」

 

「…なぁカズマっち、お前は連れ去られた仲間のこと、どう思ってる?」

 

「えっ、何だよ急に」

 

「別に?ただお前がどう思ってるのか聞いてみただけだよ」

 

マイキーはカズマの方を見ずに前を見て答える。

 

カズマはそれを聞いて少し考える。

 

アクア、めぐみん、ダクネス。

 

彼女たちは、それぞれ致命的な欠点を持ってたが、それでも共に冒険者生活をしていく中で何だかんだ大切な仲間になっていったと思ってる。

 

「確かに助けてやりてーけど、あいつらがいるのは多分バグナラクだ。

 

どこにいるのかわかんねぇし、転生者も倒したら消えちまうから、手がかりも掴めねぇからどうしたら良いかわかんねぇよ」

 

「だったらやっちまう前に聞けばいい。

 

どこにいるのかをな」

 

「それができたら苦労しないんだよ。

 

それに仮に聞くことができたとしてもどうやって聞き出すつもりだよ。

 

相手はバグナラクだぞ」

 

マイキーの提案にカズマは否定的な考えを持つ。

 

だがその時にエリス教のお守りが光りだした。

 

「これは!」

 

「どうやら探す手間が省けたみたいだな。

 

来てんじゃねぇか、バグナラクの転生者が」

 

転生者を探してしばらくすると小さな村が見えた。

 

だがその村は奇妙なことに、建物は全て破壊され、人形やおもちゃが散乱して、その上に二人の人影が見えてきた。

 

一人は博物館の館長みたいな服を着た少年。

 

もう一人は踊り子みたいな服を着た褐色の少女だ。

 

少年の方はカズマたちを見ると少女に声をかけた。

 

「おいアピト、奴らが例のキングオージャーだ。

 

行くぞ」

 

「うん、土山くん。

 

待っててくださいね。

 

私の人形コレクションに入れてあげますから♪」

 

「…おいおいあれってまさかだけどよ」

 

「どうもきな臭ぇなあの人形。

 

あいつらの仕業か。

 

…カズマっち、行くぞ」

 

「わ、わかった!」 

 

【ハチ!】 

 

【トンボ!】

 

カズマはオージャカリバーを取り出して操作するのに対して、マイキーは腰の後ろに帯刀した状態でトンボのハンドルを回してからカマキリ、パピヨン、クワガタ、ハチの順番で操作し、二人でクワガタのレバーを引く。

 

『王鎧武装!』

 

【You are the KING, You are the You are the KING!】

 

【ハチオージャー!】

 

【トンボオージャー!】

 

カズマはハチオージャーに、マイキーは青い鎧にトンボのバイザーそして左肩に青いマントを靡かせトンボオージャーに変身した。

 

「なぁそこのあんたら、もしかしてこれやったの、あんたらなの?」

 

「おぉキングオージャーとやらですか、わざわざ僕たちに殺されに来るなんてご苦労様です」

 

「私たちに会いたかったんでしょ?なら、会わせてあげるから感謝しなさいよね」

 

その瞬間、マイキーは勢いよくオージャカリバーを地面に叩きつけた。

 

「…質問に答えろよ。

 

ここの人形、全部人間なんだろ?

 

人間を人形に変えるなんてダサいことしたの、あんたらかって聞いてんだよ」

 

「うふふ、さっきも言ったでしょ。

 

私は人形に変えてコレクションにするの。

 

この世界に来て、バグナラクから私に素晴らしい力を貰ったんです。

 

だからこの力で人形にしてあげたんですよね」

 

「応じないやつは私が全て建物から引きずり出して、そこにいるナビアの前に差し出したのさ。

 

こんな風になってな」

 

【岩石王ゴーレム!】

 

掌に収まるサイズの小さな本を開くと、少年の体がゴーレムを思わせる体になる。

 

「このゴーレムメギドの姿になると、建物がまるで砂のお城みたいに脆い。

 

瓦礫や建物に隠れようと無意味なのさ」

 

「土山くん、あまりはしゃぎ過ぎて、壊しちゃだめですよ。

 

壊れたおもちゃなんてつまらないもの」

 

「わかってるよナビア」

 

まるで仲のいいカップルのような会話で、マイキーとカズマをどうやって潰そうか考える二人に冷たい目で見下ろすマイキー。

 

「なぁカズマっち、わかってると思うけど、あの女、多分ワンピのホビホビの実の特典持ってる。

 

スケベなお前でも、触られたら一瞬でおもちゃにされてお陀仏だからな」

 

「あ、あぁ」

 

「話は終わったか?

 

じゃあ行かせてもらうぞ」

 

「さぁ私のかわいい人形さんたち?

 

あの人たちをとっ捕まえちゃってね?」

 

土山がズンズンと歩き、ナビアは倒れてるおもちゃや人形に命令させて二人に襲い掛かる。

 

「来るぞカズマっち!」

 

「くそっ!こうなったらやるしかねぇな。

 

あの人形たちは俺が惹きつけるからな!」

 

そう言ってカズマは人形をバカにしながら逃げ回る。

 

「黒い奴め、私が相手を「おいおい」…?」

 

土山の前にマイキーがオージャカリバーを肩で構えて立ち塞がる。

 

「お前の相手は俺だろ?」

 

「ふんっ、いいだろう。

 

今すぐ叩きのめ──」

 

言葉が、続かなかった。

 

理由はなんてことはない、マイキーが一瞬で近付いて、側頭部を蹴りつけたからだ。

 

それも、かなり重い蹴りを。

 

まるで、直接ミサイルを撃ち込まれた感覚を、土山は覚えた。

 

「うぐぅ!?」

 

「ゴーレムって言う割には、意外と簡単に倒れるんだな」

 

「くっ、舐めるなぁ!!」

 

土山は巨大化し、踏みつけようと足を持ち上げる。

 

「あら土山くんったら張り切っちゃって。

 

でも、そんな土山くんも素敵なだわ「スティールッ!!」…え?」

 

楽しそうに笑ってるナビアだが、つい先程まで逃げ回っていたカズマが現れ、ナビアから何かを奪って手に持っていた。

 

それは。

 

「あ~!私のパンツ返して〜!」

 

「わっはははは!パンツ奪ってやったぜ!」

 

カズマはその手握りしめた可愛らしいパンツを振り回しながら逃げる。

 

「おいおい、何やってんだよあいつ。

 

…まぁ、あいつが変態なのは知ってたがな」

 

マイキーはため息を吐きながら呆れていた。

 

「よくもやってくれましたね!

 

人形さんたち、早くその野蛮な男からパンツを取り返して!」

 

「おっとそうはいかねぇな!」

 

そう言ってカズマが取り出したのは、追い掛けてたはずの人形たちで、全て袋に詰め込んでいた。

 

「な、何で人形さんたちが」

 

「俺は逃げると見せ掛けて誘い込んだのさ。

 

それで待ち伏せして一網打尽にしてやったってことだよ」

 

ギチギチに袋に詰め込まれた人形、これではもう操ることはできない。

 

「くっ、私のパンツと人形さんたちを返しなさいっ!!」

 

「返してほしけりゃ自分で来るんだな!」

 

「こらーっ、待ちなさーい!!」

 

そう言い残し、カズマは再び逃げ出し、それを追い掛けるナビア。

 

踊り子という、かなり露出度の高い服を着てるせいで、しかもパンツを奪われたのもあって大事なところが見えないように隠しながら走るのに必死だ。

 

「うわぁ…、あいつに任せた俺も大概だけど、改めて見たらやっぱ変態じゃねぇか」

 

その光景を見てドン引きするマイキーだった。

 

「余所見してる余裕があるのか?」

 

「おっと!」

 

土山が頭から飛ばした手を、マイキーは軽々しく避ける。

 

「デケェ図体をその手で補ってるのか」

 

銃モードにしたキングズウエポンを手に、マイキーは駆け回る。

 

「オラァ!」

 

飛ばした手を撃って弾きながら接近するマイキー。

 

「ふんっ!」

 

「とぉっ」

 

隕石を思わせるその巨大な拳をジャンプして避ける。

 

そしてそのまま、オージャカリバーを操作し、手放すと同時に土山の頭に目掛けて蹴り飛ばした。

 

【オージャチャージ!

 

オージャフィニッシュ!!】

 

ズガーーーーーンッ!!と、まるで爆撃のような轟音が響き渡る。

 

「うごぁぁぁぁぁぁ…!!」

 

「…ほら、終わった」

 

巨大な頭部に、クレーターを作ったオージャカリバーが突き立てられ、土山はそのまま爆散する。

 

「つ、土山くーーん!!」

 

「そら隙有り!!」

 

【オージャチャージ!

 

オージャフィニッシュ!!】

 

「あだっ!?」

 

カズマに逃げられながら何度もスティールを食らってほぼ全裸にされたナビアは、カズマのオージャカリバーの腹で思い切り頭を叩かれて消えた。

 

「はぁ、はぁ、何とか倒したな」

 

「そうだな。

 

けど仲間たちのこと、聞きそびれちまったな」

 

マイキーとカズマは疲れ果てながらも、パーティーや仲間たちの情報を聞き出せなかった事を悔やんでいた。

 

「まぁでも、転生者を倒したってことはもうすぐ人形にされた皆も元に戻るってわけだな」

 

「そうだな。

 

…それなら早いところ袋から出してやったらどうだ?

 

ギチギチに詰め込まれてる状態で元に戻ったら、色々の悲惨だぞ?」

 

「……それもそうだな」

 

カズマは人形にされた人達を全員袋から出した。

 

そのまま帰ろうとしたときに、マイキーがカズマがナビアから奪った下着や服を大事そうに持って家宝にすると言ってたので、鳩尾を蹴りつけて捨てさせた。



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女将にして処刑人

烈 勇士さんからのリクエストの転生者の話を書かせていただきました。


「はーいこちらが男湯でこちらが女湯でちよ!

 

あっ、このミルクはいかがでちか?」

 

アクセルの大浴場で、一人の小柄な少女が切り盛りしていた。

 

名前はベニ、カズマたちと同じく、キングオージャーとして復活した転生者だ。

 

ちなみに特典として求めたのは審議を見極める洞察力。

 

復活する前はある国の最高裁判長にして処刑人をやっており、自身も徹底的に詳しく調べるので冤罪などはほぼ無いと言っていい程で、処刑場に立たされた時には彼女直々の手で葬られる。

 

それ故に罪人からも恐れられ、指名手配犯も彼女に目をつけられたらもう終わりだとただ怯えるしかないとまで言われていた。

 

だがその一方で裁判長としての仕事がないときは自ら囚人や死刑囚に食事を作ってあげることもあるので、中には快く死刑を受け入れたり納得の行かない罪状であろうとしっかり励んで罪を償おうと考える輩も少なくなかった。

 

だがある時、十分な証拠や証言があるにも関わらず、自分は悪くない、この手が悪いんだと叫ぶ囚人が暴走し、他の囚人や看守を次々と殺害し、止めに入った自身も殺されてしまった。

 

自身たちだけでなく、罪を償ってる罪人を殺したその囚人を、この手で裁くために、復活に応じた。

 

復讐心からではなく、裁判長にして処刑人としての責務で、だ。

 

ちなみに復活してから大浴場で女将として切り盛りしてるのは、元々温泉の女将に憧れていたからで、本当は副業でも良いからアルカンレティアで女将として温泉宿を開きたいと考えていたが、アクシズ教の執拗な勧誘に嫌気がさしたので断念した経緯がある。

 

その為、キングオージャーとして復活した今は、アクシズ教徒による執拗な勧誘がないアクセルの大浴場で女将として働いている。

 

そんな彼女が働く大浴場は人気であり、今日も盛況だった。

 

「ふぅ…今日も大盛況でち。

 

冒険者の皆様方!クエストで流した汗をちゃんと流すでちよー!」

 

そう言って大浴場に向かう冒険者たちに元気よく挨拶をするベニ。

 

すると彼女が首に掛けてるエリス教のお守りが光った。

 

「…どうやら招かれざる客が、アクセルに近付いてるようでちね」

 

せっかくの女将の仕事を台無しにされたとばかりにため息を吐いて、ギルドのルナにバグナラクが近付いてるから自分が出たらアクセルの門を閉めるように言って、アクセルの外に出る。

 

腰に革で作った鞘に収められたキングオージャーを構え、今から来る敵を見据える。

 

その様は見た目こそ変わらないものの、先程の幼子とは思えないくらい大人びた雰囲気を醸し出し、その目つきも純粋な少女ではなく、処刑台に登る罪人を待つ処刑人の目だ。

 

なだらかな地平線の先を睨みつけ、ベニはその時を待った。

 

地平線の彼方からやってきたのは、軍服を着た黒髪の青年だ。

 

「一人で待ち構えているとはキングオージャーも随分余裕だな」

 

「そういう貴様はバグナラクの転生者か?

 

だとしたら何故この地に現れた?」

 

青年に向けて放ったベニの口調も声色も冷徹そのものだ。

 

先程までの舌っ足らずな言葉遣いから、処刑台の上で罪人を問い詰める裁判長を思わせるような口調と、声色だ。

 

しかし、青年は臆することなく答えた。

 

「バグナラクは正義だからだ。

 

あの国こそ正義、俺の信じる正しい世界、それを否定するお前たちを俺は許さない。

 

お前たちのような転生者は全て、この手で排除する。

 

それが俺の使命なんだからな!!」

 

叫びながら鎧を身に纏う。

 

漆黒の戦国時代の鎧を纏い、手には呪われた雰囲気のある刀が握られていた。

 

「…この感じ、2つの特典を与えられてるのか。

 

となると精神の汚染具合もより酷いものですね」

 

青年の放つ禍々しい気配を感じ取り、冷静に分析しながらベニは、オージャカリバーを鞘から引き抜く。

 

「この精神汚染の度合いとその夥しい血の匂い、さぞや多くの罪なき人々を殺めてきたのですね。

 

その正義のために、一体どれだけの人々を、民を屠ったのですか」

 

淡々と話す彼女に、青年の表情が憤怒に染まる。

 

だが、それは一瞬で元の無表情に戻り、次の瞬間にはニヤリと口元に笑みを浮かべる。

 

「何を言っている? 俺が殺したのは人間じゃない、悪だ。

 

悪であるお前たち転生者を排除するのが俺の役目だ。

 

そこに善悪の区別はない。

 

悪は滅ぼす。それこそが悪を滅ぼして正しき道を作る事に繋がるのだからな。

 

そしてそれを邪魔する者も全て粛清対象、すなわち悪なのだ。

 

ならば貴様もここで死ね、キングオージャー!!」

 

そう言って青年は刀を振るう。

 

だがベニはその動きをしっかり見極め、後ろに飛んで避ける。

 

「貴方がやっている事は、ただの虐殺です。

 

それを正義などとは、何たる非人道的かつ悪質な。

 

精神汚染されてるとはいえ、その罪は重いですよ。

 

だから……私の手で裁きます。

 

それが、私が下した審判の結末です」

 

オージャカリバーを引き抜き、パピヨンのボタンを押す。

 

【パピヨン!】

 

剣先を地面に突きつけ、トンボ、カマキリ、パピヨン、ハチの順番で操作する。

 

「王鎧武装」

 

【You are the KING, You are the You are the KING!】

 

【パピヨンオージャー!】

 

クワガタのレバーを引くと同時にベニの体が紫の結晶に覆われ、そこに巨大なパピヨンのオーラが突撃すると同時に砕け、ベニの姿も変わる。

 

紫の鎧を纏い、パピヨンを思わせるバイザーを頭に装着し、左肩には紫のマントを靡かせる。

 

その出で立ちはまさに、悪という罪人を葬る処刑人だ。

 

「これなる間合いは我が処刑場、悔いるというのならばこのまま王国にて刑を受けよ。

 

刑を受けぬのであれば処するまで」

 

「黙れ! 俺は貴様らのような外道を断じて許さん!! 貴様を処刑し、正義を行うのだ!!」

 

青年はそう叫ぶと、刀を構えながら突っ込む。

 

それに対しベニは左手にオージャカリバーの柄を持ち、居合いの構えを取る。

 

「ならば、ここで処刑するまで。

 

我が刃は、転生者をも殺す」

 

そのまま腰を落とし、抜き放つ。

 

居合は見事に命中し、青年の胴体が切り裂かれる。

 

「グハァッ!?」

 

「この刃は、正義に仇なす敵を討つ処刑人。

 

その刃の前には、如何なるものも防ぐ事叶わず」

 

オージャカリバーを腰のホルダーに収めると、青年の体からは血が噴き出す。

 

「おの、れぇ……こんな所で、俺、は……」

 

青年は血を吐きながらも膝を着く。

 

それでもまだ息はある。

 

その瞬間、青年の体が再生し始めた。

 

「む?」

 

「まだ、終わってたまるかぁ!!」

 

体が再生したことにより一瞬眉を潜めたベニだが、すぐに青年に向き直る。

 

「なるほど、その刀が貴様の体を再生させる呪いの類か」

 

「そうだ…!

 

俺がこいつを持ってる限り、お前がどれだけ素早く攻撃しようと、俺の体は斬られたそばから再生してダメージはゼロになる!」

 

「ほう、それで? それがどうしたというのですか?

 

傷を治せるからといって、痛みがないわけではないでしょう?

 

斬られるたびに苦痛に耐え、戦い続ける。

 

それは地獄のような苦しみなのでは?

 

そのような状態で戦えるとでも? 私なら耐えられませんね。

 

それに……その刀は所詮借り物の力でしょう?

 

いくら優れた力だろうと、貴様自身がそれを使いこなしているようには見えなかった。

 

その刀もまた、悪の力に染められている」

 

「黙れ! これは正義のための力だ! 悪である貴様に何が分かる!!」

 

「何も。

 

ですがその正義とは最早悪事を働く己への言い訳に他らならない。

 

ならば、尚更この場で斬り伏せるのみ」

 

「舐めるな小娘が! これがある限り、俺に敗北はない!!」

 

そう叫びながら青年は刀を構えると、再び再生した肉体で突撃してくる。

 

ベニはそれを冷静に見据えつつ、冷静に対処していく。

 

間合いに入った青年の腕を、刀ごと斬り飛ばした。

 

斬り飛ばした腕と刀は、鮮血を撒き散らしながらベニたちから少し遠くに突き立てられる。

 

「ぐぁあ…!

 

だが、こんなことをしても…!?

 

何故だ、何故再生しない…!?」

 

「それは貴様が刀を今手に持ってないからだ。

 

あの刀が所有者に不死の呪いを掛ける。

 

ならば簡単な話、手放させればよいだけのこと」

 

「くっ…!」

 

一歩、また一歩と近付くベニに、青年は一歩後ろに下がってしまう。

 

「お、おい待て!

 

お前らはそうやって俺たちを殺してきたんだろ!?

 

俺たちは確かにバグナラクの転生者だ、だがそれでも元は人間だ!

 

大勢の人間を殺して、何も感じないのか!?

 

良心が傷まないのか!?」

 

必死の形相で青年は説得を試みるが、ベニは全く動じずに青年を見つめる。

 

「ふむ、確かに痛みもしよう、涙を流そう。

 

しかしそれだけだ。

 

私が為すべきことはただ一つ。

 

貴様らという悪を処刑する。

 

そこに、一切の私情などなし」

 

「……ッ!! 貴様ァァァァァァァァァッ!!!」

 

雄叫びを上げながら、青年は最後の足掻とばかりに襲い掛かる。

 

それを見てもベニは冷徹に構えるだけ。

 

その目はどこまでも冷え切っていた。

 

「俺にはもう後がない……ここで死ぬわけにはいかない! せめて一矢だけでも報いてやる!!」

 

「往生際が悪い。

 

これで終わりだ」

 

【オージャチャージ!

 

オージャフィニッシュ!!】

 

ホルダーに収められたオージャカリバーのパピヨンのボタンを3回押した瞬間に抜き放ち、青年の首が宙を舞う。

 

首のない青年の体は、力なく地面に倒れ伏す。

 

「成敗。

 

処刑はこれにて閉廷…、でち」

 

静かにそう呟いたベニは、青年の首と体が消えていくのを見てからその場を後にし、門番に連絡して門を開けてもらいアクセルへと戻る。

 

アクセルに戻ったベニは、大浴場に戻る前に教会にて祈りを捧げていた。

 

「…エリス様、此度もまたバグナラクの転生者を処刑しましたでち。

 

どうか、この悪を断罪せんとする私をお許しください……でち」

 

そう言って深く頭を下げるベニ。

 

しばらく祈りを捧げてから、ベニは立ち上がる。

 

そして、いつものように笑顔を浮かべながら、童女のようにパタパタと大浴場へと向かうのだった。




ベニは普段の見た目はFateの紅閻魔ですが、戦う時の見た目(というか雰囲気)が紅閻魔オルタみたいに見えるように錯覚します。
理由としては闘志みたいなものです。


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