ジューダスがダンまち世界へ (帰ってきた)
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始まり

2作品目になります、誤字脱字の報告や指摘等あれば感想にてお願い致します。


一体どれほどの時間がたったのだろう。時空間の狭間にたった一人漂い、死ぬ事もなく只々無意味に時間だけが過ぎていく。

 

 

(覚悟はしていた、リオン・マグナスではなくジューダスと生きていくと決めた時から。)

 

 

思い出すのはマリアンやスタン、そしてカイルたちと過ごした短くとも劇的な日々。今思い返しても自分の人生というのは本当にロクな事はなかった。

 

 

けれど最後の最後でそのロクでも無い人生に鮮やかな色をつける事が出来た、後悔は無い。だが叶うのであれば。

 

 

(もっとあいつらと色々なことや色々な物を見てみたかったな。)

 

 

二度と訪れることのないそんな日々を思い描きながらジューダスは再び眠りにつくために目を閉じる、しかし・・・。

 

 

(んっ?なんだ?)

 

 

目を閉じていても解るほどの強い光が急に差し込んできた、今までこの時空間の狭間を彷徨い続けたがこんな事は一度もなかった。

 

 

(何が起こっている!この光は一体!?)

 

 

思わず目を開けるも強すぎる光に目を開ける事も叶わずジューダスはそのままその光に呑み込まれていった。

 

 

光が収まった時空間の狭間にはジューダスの姿は無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、ここは・・・?」

 

 

光が収まり視界が回復するとジューダスが目にしたのは石造りの街並みと、武装をしている人々だった。

 

 

初めは別段珍しい光景ではなかった、しかしその中でジューダスの目を引いたのは頭に獣の耳を生やした者がいたことだ。

 

 

(なんだあれは?それにあいつだけじゃない)

 

 

辺りを見ると同じ様に頭に獣耳を生やした人、背が自分より低いが肉付きはコングマンに勝るとも劣らない低身長の男。

 

 

子供と見間違うほどの背丈と体付きであるが纏っている雰囲気は大人のそれである小人。

 

 

それ以外にも耳が尖っている人など目を疑うものばかりであった、しかしそれ以上の驚くものがジューダスの視界に入った。

 

 

「なんだ・・・あれは?」

 

 

それは塔であった、しかし、ただの塔ではなく天高くそびえ立ち見る者を圧倒する程のものであった。

 

 

リオン・マグナス、そしてジューダスとして世界中はおろか過去そして未来の世界に行った事のあるジューダスであったがあんな物は見たことが無かった。

 

 

一体ここは何処なのか、検討もつかなくなってきた。流石のジューダスも途方に暮れるしかなかった。

 

 

そんな時、何処からともなく強い視線を感じたのは。

 

 

(・・・っ!!誰だ!?)

 

 

今まで数多の戦いを乗り越えてきたジューダスであっても先ほど感じた視線は初めてであった、まるで心ではなくもっと根本的なものを覗き見られているような感覚だ。

 

 

しばらくして視線は感じなくなったが今まで感じたことのない視線だった、自分の気のせいではなければその視線は目の前にそびえ立つ塔からであった。

 

 

塔に目を向けるも先程の視線は既に感じられない、気にはなるが今はそんなことを気にしている場合では無い。

 

 

今自分が立たされている状況を理解できていないのだ、情報も何も無い状態で迂闊に動くわけにいかないが、動かなければ何も得れない。

 

 

(先ずは情報を集めるのが先か)

 

 

そう思い立つとジューダスは目に付いた人物に話しかける事にした、周囲を見渡すと。

 

 

「はぁーーーーーーーーっ、なんで誰も僕の眷属になってくれないんだよぉぉぉぉぉぉぉ。」

 

 

小柄な少女が何か喚いていた。周りの人々も少女の叫びを聞きながらも遠巻きに見ているだけだった。

 

 

(喧しいな、それになんだあの服装は?恥ずかしく無いのか?)

 

 

噴水で座り込んでいる少女の服装を見てジューダスは驚きやら呆れやらの表情でその少女を見ていた。まあ。コングマンに至っては常に上半身裸であったが。

 

 

なにやらまだ何か喚いているがジューダスは無視して歩き出そうとした、するとその時ふと気になる話し声が聞こえてきた。

 

 

「あーあ、ヘスティアのやつ惨めだねぇ。大人しく天界の神殿に引き篭もってたら良かったのによ」

 

 

「ホントホント、てかアイツこの前ロキにスゲェ啖呵きってたぜ」

 

 

「おっ、なんだなんだ聞かせろよ」

 

 

「ヘスティアのやつロキよりすごいファミリアになって鼻を明かしてやるって言ったんだぜ!傑作だろ!」

 

 

「アハハハ、そりゃ傑作だ!!オラリオ最強の一角を担うロキファミリア、片や未だに眷属ゼロのヘスティア。始まる前から勝負は決まってるじゃねぇか」

 

 

「まあ、俺たち神は不変の存在だし?何十年、何百年もあればワンチャンあるんじゃねぇか?」

 

 

「いや、ノーチャンだろ」

 

 

そう言って男たちは下品な笑い声をあげていた、会話の内容からすると噴水に腰掛けている少女に対する侮辱にもとれる会話であったがそれよりも気になる単語がジューダスの耳に入っていた。

 

 

(神だと!?今あの男たちは自分を神といったのか!?)

 

 

ジューダスにとって神に対して良い印象は無い、初めて出会った神があのフォルトゥナであるからだ。

 

 

人々の幸福になりたいという願いによって生まれた神、フォルトゥナ。そしてその手先ともいえる存在、エルレイン。この二人に多くの人々が人生を弄ばれ狂わされていた。

 

 

(だが、元を辿れば人間の身勝手な願望によって生まれた彼女たちも、ある種被害者なのかもしれないが。)

 

 

しかし、たとえそれが仮初の神だとしても神は神。ジューダスの神様に対する印象はあまり良く無い。

 

 

先程会話をしていた男たち、会話の内容から察するにあの男たちも神なのだろう。そしてあの噴水の縁で項垂れている彼女も彼らと同様に神なのだろう。

 

 

項垂れている彼女を横目にジューダスはその場を後にした。

 

 

広場を後にしたジューダスは大通りを歩いていた。彼方此方から聞こえてくる声に耳を傾けながら。

 

 

素直に街の人に話を聞く方が早いのだがジューダスの被っている骨の仮面のせいか街の人たちから若干避けられていた。

 

 

それでも人の話は絶えず聞こえてくる、その中で有益な情報もいくらか手に入った。

 

 

この街の名前は『オラリオ』。世界の中心とも言われており、そのオラリオの中心に聳え立つ塔の名は『バベル』。そしてその地下には『ダンジョン』が存在する。

 

 

このオラリオに来る人々の殆どがダンジョンにて富や名声などを手にする為にやって来る、そうだ。

 

 

更にダンジョンに挑むにはオラリオに居る神々から恩恵をもらい、恩恵を与えた神のファミリアに所属する必要があるそうだ。例外もあるらしいが。

 

 

そしてそのファミリアは主神によってファミリアの方針は様々な分野に分かれており、武具の生産や農業、更には医療等多岐にわたる。

 

 

しかし、その中で最も多いのが探索系ファミリア。つまりはダンジョン攻略を主な活動としているファミリアである。

 

 

命の危険は途轍もなく大きい、その上リスクに対してリターンは決して大きくないことの方が多い。

 

 

ダンジョンには常に危険が伴う。故に殆どの探索系ファミリアはある程度強くなると安定を重視して危険な橋は渡らなくなるそうだ。

 

 

そしてそんな探索系ファミリアにおいて有名でオラリオ最強と謳われているファミリアが二つ存在しており、それがロキファミリアとフレイアファミリアだ。

 

 

そんなこんなで街を練り歩き、情報を幾つか入手したところで一つ大きな問題に直面していた。そう、お金が無いのである。

 

 

(1ガルドも無いが・・・可能性も考慮すべきだったな、まさか通貨が違うとはな。)

 

 

そう、ジューダスの世界の通貨はガルドであったが、今この場この世界の通貨はヴァリスであり、仮にジューダスがお金を持っていたとしてもそのお金はここでは使えないのだ。

 

 

 

無一文のジューダス、金が無ければ食事も宿も取れない。流石にヤバい状況に追い込まれたジューダス、最悪適当な神から恩恵をもらいダンジョンでお金を稼ごうかと考えるが。

 

 

(いや、急いで結論を出すのは良くない。)

 

 

そんな考えが頭をよぎった為ジューダスはあと一歩を踏み出すことに躊躇していた、一応大手のロキファミリアの拠点地をチラリと覗いてみたが入団希望者を門前払いしていた。

 

 

その際に希望者にかけた言葉はまあ、酷いものばかりだった。所属しているだけで偉ぶっていた彼らを見てジューダスは回れ右をしその場を後にした。

 

 

どうしたものかと頭を悩ますジューダス、あてもなく歩いていると気が付けば最初にいた噴水広場に戻って来ていた。

 

 

先程よりも人の数が減ってはいるがそれでも多くの人が行き交っていた、そんな中視界に入ったのは。

 

 

「はーはっはっは!!この僕にそう簡単に勝てると思わない事だね!!」

 

 

「え〜またヘスティア様の勝ち?」

 

 

「ちょっとは手加減してよ、大人気ないよ」

 

 

「ええっ〜さっきは手加減なしって言ってたじゃ無いか。仕方ないなぁ〜。」

 

 

先程噴水の縁で落ち込んでいた女神?が子供と遊んでいた。

 

 

その様子をしばらく見ていると、その一団に近づいてくる人たちがいた。全員が女性であったため恐らく子供達の母親だろう。

 

 

「すみませんヘスティア様、子供達の面倒を見ていただいて。」

 

 

「いやいや、大丈夫だよこのくらい。丁度暇してたからね」

 

 

「すみません、この子達落ち着きが無くて。」

 

 

「あはは、子供はあれくらい元気なのが丁度いいんだよ。また何か困った事があれば遠慮なく僕に頼ってくれよ。」

 

 

「はい、ありがとうございますヘスティア様。ほら皆んな帰るわよ。ヘスティア様にお礼を言って。」

 

 

「「「はーい。」」」

 

 

親子たちはヘスティアと呼ばれた神に別れを告げるとその場を後にした。それからしばらく見ていたがあの女神の元には多くの人が訪れていた。

 

 

その誰もがあのヘスティアという女神にとても好意的であった。敬う者、友のように接する者、揶揄う者。その全てがだ。

 

 

どうやら人望はあるようだ。スタンやカイルとは違う人を惹きつける何かがあの女神にはある。そう感じさせる。

 

 

少々不粋だがしばらくヘスティアという女神を観察する事にしたジューダス、そんな中でも彼女を訪ねてくる人々は絶えない。唯一糸目で赤髪の神?がからかいには来て一悶着はあったが。

 

 

それ以外は特に何事も無く時間だけが過ぎていき遂には日も暮れ夕方になっていた、今彼女の周りには人はおらず彼女が一人佇んでいた。

 

 

半日にも満たないが彼女を見てわかったのは悪いやつでは無い、いやむしろ良いやつであるのは見てわかった。

 

 

自身の眷属を募集はしていても無理な勧誘はやってはいない、演技かもしれないと思ったが喜怒哀楽が激しくコロコロと表情や感情が変わる様は何処ぞの親子を彷彿とさせる。その姿は素のものだろうと思われる。

 

 

(彼女なら問題ないだろう、街中にいた他の神やエルレインとは違う。)

 

 

そう結論づけジューダスは一人佇む女神に近付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜、今日も勧誘失敗かぁ〜。一体いつになったら僕は自分のファミリアを起こせるんだぁ〜。」

 

 

下界に降りてはや二ヶ月。最初は神友のヘファイストスの元に厄介になっていたが、自堕落に過ごす僕の姿を見て流石に堪忍袋の緒が切れ追い出されてしまい、その結果僕は眷属集めに精を出す事となった。

 

 

最初は楽勝だと思っていた眷属集め、しかし。現実は非情であった、手当たり次第に子供たちに声をかけるも全部断られる。

 

 

やはり新興ファミリアというのが大きな枷となっているようだ、今のオラリオではあらゆる分野のトップとも言えるファミリアが存在している。

 

 

つまりは新興のファミリアより其方のファミリアに所属した方が多くのメリットを得ることができる為、子供たちは其方に流れていくのは当然の事だった。

 

 

ヘファイストス曰く新興のファミリアにはあらゆる知識が不足している為敬遠されるとの事だった。鍛治なら鍛治の知識、冒険者なら冒険者の知識。

 

 

特に冒険者ならダンジョンの階層の知識、モンスターの情報、大手のファミリアならギルドより詳しくモンスターの情報を持っていたりもするそうだ、フレイアやあの憎っくきロキのとことかが例に上がる。

 

 

あの暇神め、僕が此処で勧誘をしていると知るや否やちょくちょく揶揄いに来ては僕のことを馬鹿にして!!

 

 

(見てろよロキの奴、僕も凄いファミリアを作って絶対見返してやるぅぅぅぅぅぅ!!)

 

 

そう僕は心に誓った、けど僕としてはやっぱりファミリアに迎える子供は誰だって良いんだ。強く無くたって良い、臆病でも良い。

 

 

僕はただ眷属ではなく家族が欲しい、唯本当にそれだけの事なんだ。まあ?ロキを見返したいという気持ちも嘘ではないんだけどね。

 

 

(はあ、日も暮れてきたしそろそろ帰ろう。今日も一人寂しくあの廃教会で眠るんだね。ボクは・・・。)

 

 

流石にいつまでも一人は心細いし寂しい、天界にいた頃はこんな事あまり感じなかったんだけどねえ。

 

 

しかし、出会いというのはいつも突然で不意にそして思いがけないものだった。

 

 

「すまない、少し良いか?」

 

 

「えっ?」

 

 

これが僕の最初の家族であるジューダス君との出会い、へそ曲りで誰であろうとズケズケとものを言う遠慮の無い子でその上無愛想、けど。

 

 

誰よりも仲間を、家族を大事にする優しい子でもある。そんな不器用で優しい子との出会いだった。

 

 

その後彼に恩恵を刻んだ際に僕の頭をおおいに悩ませる事となるのをこの時の僕は知る由もなかった。




文章が安定しない。


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規格外

2話目です、連続投稿です


とある一室、そこで一人の女性がデスクにて書類と向き合っていた。

 

 

彼女の名はヘファイストス、鍛治の神様であり天界きっての名工である。

 

 

ヘファイストスファミリアの主神にして社長、今日も今日とてファミリアと眷属の子どもの為に書類と向き合っている。

 

 

(もう夕方なのね、書類と向き合ってると時間が経つのが早いわね。)

 

 

窓から差し込む夕日を見ながらふと追い出した神友の事を思い出す。

 

 

下界に降りて来たと思えば毎日毎日だらけて過ごしていた為追い出したのだがその翌日にはすぐに泣きついて来た。

 

 

やれ住むとこがないやら働き口がない等泣きついて来た、一応全部の面倒は見てあげたが流石にこれ以上泣きついて来るようなら縁を切るのを考えている。

 

 

(一応眷属集めは頑張っているみたいだけど・・・まあ、そう上手くはいかないわよね。)

 

 

ヘスティアの事はちょくちょく色々な神々や子供たちから話を聞く、勧誘は失敗続きで他の神々からも笑いのネタになっているみたい。

 

 

(まあ、これも下界の洗礼ってやつかしらね、あら?)

 

 

廊下から誰かが走る音が響く、何かあったのかと椅子から立ち上がると。

 

 

「ヘファイストスぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 

私の執務室の扉を力一杯開け放ったのはなんとヘスティアだった、また泣きついて来たと思い自然と目が吊り上がる、そして気がつくヘスティアの手に握られている一枚の紙を、それを見て私は察する。

 

 

「ヘスティア。あなたその手に持ってるのは」

 

 

「あっ・・・そう!!そうなんだよ!!ついに僕に眷属が出来たんだよ!!」

 

 

ヘスティアの表情が笑顔一色になる、経緯はどうあれようやく彼女にも眷属ができて神友としては一安心だ。

 

 

まあ、ヘスティアの事だまた何かに託けて泣きついて来そうだが。

 

 

「はっ・・・!!いやいや今はそんな事を話してる場合じゃ無い!!ヘファイストス、実は君に頼みたい事があるんだ!!」

 

 

「頼み?なあに?お金を貸してくれとかだったら今度こそ縁を切らせて貰うけど?」

 

 

「ち、違うよ!!今回は違うんだ。もう。説明するよりまずはこれを見てほしいんだ。」

 

 

そう言ってヘスティアは子供のステイタスが記されている紙を私に差し出した。

 

 

「それって貴方の眷属のステイタス表でしょう?私が見てもいいの?」

 

 

「むしろ見てほしいんだ、その子のステイタスが今まさに僕の頭を悩ませてるんだから。」

 

 

ヘスティアの言葉を聞き私は考える、ひょっとすると犯罪歴のある子なのかもしれない。天界きっての善神であるヘスティアの事だ、見捨てられず悩んだ結果私に相談して来たのかもしれない。

 

 

そう思い私は折りたたまれていたヘスティアの子のステイタスを見る、そして。

 

 

「はぁ?」

 

 

自分でも驚くほど間の抜けた声が出た、しかしそんな声が思わず出てしまうほどのものがそこに記されていた。

 

 

ジューダス 【リ◇◯・マ<◉ス】

      【●ミリ▽・⬜︎ト▶︎ッ◼︎】

 

Lv.7

 

《基本アビリティ》

 

力:C 642

 

耐久:E 438

 

器用:C 633

 

敏捷:E 411

 

魔力:C 625

 

《発展アビリティ》

 

剣士: D

 

魔剣士: E

 

耐異常: G

 

会心: H

 

《魔法》

 

 

《スキル》

 

【晶術】

自身が使用した事のある晶術を使用する事ができる、精神力の消費量を増やす事によって威力が上昇する。                     

 

【特技】

自身が使用した事のある特技を使用する事ができる。

 

【奥義】

自身が使用した事のある奥義を使用する事ができる。

 

【OVL】

自身がダメージを与える、若しくはダメージを受けると力が蓄積される。蓄積された力を解放すると全ステイタスが上昇する。

 

【秘奥義】

OVL状態時のみ発動可能、奥義を昇華させる。発動後OVL状態を強制解除。

 

【誰も知らない英雄】

彼らの偉業は誰も知らない、けれど世界は憶えている、彼らのその偉業を。強敵との戦闘時階位昇華、ステイタスが大幅に上昇。

 

【五人目の英雄】

存在し得ない歴史、しかし。それでも間違い無く彼はその時その運命の場所にて世界を救った英雄の一人となった。強敵との戦闘時階位昇華、ステイタスが大幅に上昇。

 

【支配からの脱却】

超常的存在からの精神支配無効。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなのこれ?」

 

 

思わずそう呟いてしまう、しかし、誰だってこんなステイタスを見てしまうとこう言わざるをえない。

 

 

特に問題なのは間違い無く後半のスキルだ。【誰も知らない英雄】そして【五人目の英雄】、英雄と記される二つのスキル、そしてしれっと発展アビリティにも見たことも聞いた事のないのがこれまた二つ。

 

 

そんなスキルと発展アビリティに気を取られがちだが冷静になるとレベルも7である事を忘れてしまいそうになる、いやいっその事忘れたいとも思う。

 

 

「なんなのよ、このステイタスとスキルと発展アビリティは・・・。」

 

 

こんな特異的な存在がもし他の娯楽に飢えている神々に知られたら間違い無く面倒な事になるのは火を見るより明らかだ。

 

 

そうなると一番被害を被るのは間違い無くヘスティアとその眷属の子供になるだろう、なにせ新興ファミリアの最初の眷属がレベル7のうえ破格なスキルの持ち主だ。

 

 

神々はこぞってその子供を狙い要らぬちょっかいをかけるだろう、流石のヘスティアもこの事に気付き私に助けを求めて来たのだろう。

 

 

となれば取れる手段は一つ。

 

 

「ウラノスを頼るしかないわね、貸しを作る事にはなるけど。」

 

 

「うーん、やっぱりそうなるかい。」

 

 

「ええ、とりあえず私からウラノス宛に文を出しておくわ・・・。ところでアナタの問題の眷属は何処にいるの?」

 

 

ステイタスの件ですっかり忘れていたが問題の人物の姿を見ていないことを今になって指摘する。

 

 

「ああ、ジューダス君ならここに来る途中で椿君に連れて行かれたよ。なんかちょっと付き合え!!って言ってさ」

 

 

「・・・はぁ。」

 

 

口止めしないといけない子が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ!!ヘスティア様此奴を借りて済まんな。」

 

 

椿の鍛冶場に行くとようやくヘスティアの子を見る事ができた、魔物の骨のような仮面を被り全身黒と紫が混じったような色の装い。

 

 

アーマーや盾といった防具類などは見受けられない、余りにも軽装すぎる出たちだが。

 

 

「うーむ、やはりお前さんの武器はかなりボロボロだな。一体どんな敵と戦えばこんな風になるのだ?」

 

 

椿は手に持っている片手剣をまじまじと見ながらそう言う、確かにかなりボロボロだ。元はなかなかの業物だったのだろうが損傷が激しいうえに金属が摩耗している。

 

 

椿の作業台に置かれている見慣れない短剣も同様だった、刀身には焼け焦げた後も見られる。これこそ彼をレベル7まで押し上げることになった戦いの後なのだろうか。

 

 

「して、お主。どうだ?ワシの打った剣は?中々の物だろう?お主にはちと物足りないかもしれんが。」

 

 

「ああ、悪くない。だがさっきも言った通り僕は無一文だぞ。」

 

 

「はははっ、なあに。お主ならこの剣と短剣を買えるだけの金などすぐ用意できよう。お主手前より強いしな。」

 

 

椿の発言を聞き私は頭に手を当て天を仰いだ、やっぱり気付かれた様だ、特にヘスティアなんかは驚いて声を上げていた。

 

 

その様子を見た椿は豪快に笑っているし、ヘスティアの子は呆れていた。

 

 

「あっははははっ。ヘスティア様、少しは隠す努力はした方がいいぞ。それにお主も迂闊だったぞ。」

 

 

「・・・どういうことだ?」

 

 

「お主に最初に渡したあの戦斧はワシでも持ち上げるのが困難なやつでな、それを軽々と持ち上げている時点でお主はワシよりレベルは上だろうとわかったんじゃ。」

 

 

「その証拠に手前は戦斧を地面に付けながらお主に渡したろう?」

 

 

そう言われてヘスティアの子は初めて表情が変わった、そして。

 

 

「してやられたか・・・。」

 

 

苦笑を浮かべながらそう言った。

 

 

最終的にヘスティアの子、ジューダスは椿の武器を受け取る形となった。けれどもジューダスは。

 

 

『金が貯まったらキチンと料金は払う』

 

 

との事、その点は全く譲る気もなく今度は椿が折れる羽目になった。しかし椿は椿で。

 

 

『次はお主の実力に見合った武器を打とう。その剣と短剣はそれまでの繋ぎだからな。それまで金をたんまり用意しておけよ?』

 

 

売り言葉に買い言葉とはこの事かしら?繋ぎの剣とは言うけどあの剣と短剣も普通に店頭で販売すると片手剣だけでも1223万ヴァリスという業物だ。短剣も負けずの1128万ヴァリス。

 

 

けれどこれでも第一級冒険者の装備としては少し物足りないだろう。

 

 

その後防具や盾といった装備も椿は薦めていたが悉く断られていた、ライトアーマーといった軽装まで断っていた。

 

 

流石にこれには私やヘスティアも難色を示したが・・・。

 

 

『不要だ、いままでこれでやって来たんだ、問題ない。』

 

 

色々突っ込みたい事はあったが一先ずはこのままという事になった。

 

 

その後、私はウラノス宛の文を子供にギルド職員に渡す様に頼み、後は返事を待つばかりとなった。

 

 

その日の夜、執務室にて。

 

 

「ヘファイストス、ありがとう。おかげでなんとかなりそうだよ。」

 

 

「いいわよ、流石にあの子のステイタス。もといあのスキルは娯楽好きの神々からしてみたらねぇ?」

 

 

「うん、碌でもない事になるのは確実だね。全く皆んなもう少しアテナやアルテミスを見習ってほしいものだね。」

 

 

ヘスティアがブツブツと文句を垂れながら言う、まあ。気持ちは分からなくもない。神というのは基本的にはろくでなしばかりだ。

 

 

子供の事を見栄のための道具や自身の娯楽のための玩具として扱う神は存在する、それも多く。子供の意思などを尊重できる神は少数派だ。

 

 

私は勿論の事、ヘスティアもその少数派になるだろう。後はガネーシャやデメテル。タケミカヅチにミアハ。

 

 

そしてロキに私と同じく鍛治の神のゴブニュ。メレンを拠点にしてるニョルズなんかもそうね。フレイヤは・・・なんとも言えないわね。

 

 

私とヘスティアの語らいは夜遅くまで続くのだった。ちなみにだが翌日のウラノスからの呼び出しにヘスティアのみが寝坊するのだった。締まらないわねホントに。




《スキットオブオラトリア》

「素顔」


「ねぇ、ヘスティア貴方あの子の素顔って見たの?」


「えっ?うん流石に恩恵を与えるのに服を脱いでもらわないといけないし脱いでもらったよ」


「そうなの、けどあの子の仮面って不思議よね。あんなにスカスカなのに顔をしっかり認識出来ないなんて。」


「うーん、そうなんだよねぇ。不思議なことにねぇ。」


「あの仮面って特殊な加工でもしてるのかしら?一見ただの骨なんだけど。」


「ヘファイストスに分からないんじゃボクにはお手上げだよ?」


「うーん、気になるわね。そもそもあの骨は・・・。」


「あー、ヘファイストスに火がついちゃったね。」


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苦労者

もう一つの方と並行書いてるけどこっちの進みが早い。


ダンジョン、世界三大秘境とも呼ばれる場所であり、無限の資源を生み出す宝庫とも言われる場所である。

 

 

ダンジョンは下に降りれば降りる程にフロアが広くなりモンスターも強くなる、ダンジョンには安全階層が幾つか存在しておりモンスター自体は生まれないが、他の階層からモンスターがやって来ることもある為完全に安全な場所はダンジョンには無いに等しい。

 

 

ただしダンジョンの壁などを傷付けるとダンジョンは修復を優先しモンスターが一時的に生まれなくなり一時的な安全地域を作ることも可能だ。

 

 

ダンジョンは主に四つの階層に分けられておりそれぞれ上層、中層、下層、そして深層と分けられている。

 

 

そして現在ジューダスはというと。

 

 

「これで依頼された量は集まったか。」

 

 

階層全域が白濁色で天井は視認する事はできないほど高く、植物などが一切ない白の世界。

 

 

ここは37階層白宮殿、深層とされる場所。戦士系のモンスターが多く存在し、中には非常に厄介な毒を使用するモンスターもいる。

 

 

しかし、ジューダスはそんな事はお構いなしに襲い掛かるモンスターを切り捨ては晶術にて吹き飛ばし、何ら問題なく迷宮を進んでいた。

 

 

ジューダスが37階層に居るのはギルドを統括する神ウラノスからの依頼だった。

 

 

ヘファイストスの伝手によりウラノスと対面したジューダスとヘスティア、ジューダスのステイタス表を見たウラノスは普段殆ど変化する事のない表情が驚きに染まっていた。

 

 

新興ファミリアの最初の眷属が都市最強と並ぶレベル7、神々が騒ぐのは目に見えている、そんな彼が天界きっての善神ヘスティアの眷属になったのはギルドとしても幸運だった。

 

 

そんなヘスティアファミリアからギルドへの要望はこうだった。

 

 

・ギルドへの納税の免除(期限付き)

・情報の秘匿

・ダンジョンに関する情報や知識

・ジューダスの情報開示はヘスティアファミリアが組織として十分成長した際には開示する

・上記以外の理由で情報を開示する場合はヘスティア、ヘファイストス、ウラノスの三名の合意が必要。

 

 

 

最後のもの以外はヘスティアファミリアからの要望だった、最後のものはウラノスからの提案だった。

 

 

そんなこんなでギルドに貸しを作る事となったヘスティアファミリア、しかし。ウラノスも自身の部下であるノイマンの性格は把握している。

 

 

あのノイマンが自由にレベル7の冒険者を扱き使えると知れば面倒な事となるのは間違いない、ギルドからすれば都市最強の一角になるジューダスとは良好な関係を築きたい。

 

 

その為ウラノスはヘスティアファミリアの要望を叶えつつ良好な関係を築く為適任者を探した、そして見つけた。

 

 

同僚や先輩からも評判が良く真面目で勤勉であり、ダンジョンについてのレクチャーも行っているハーフエルフの職員が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・。」

 

 

「どうしたのエイナ?溜め息なんかついて」

 

 

「えっ?ああ、ちょっとね?」

 

 

「ふーん?・・・あっ!わかった、あの新人の冒険者君のこと考えてたでしょ?」

 

 

「まあ・・・そんなところかな?」

 

 

同僚のミィシャの問い掛けに曖昧に答えつつ流す、私の悩みの種はミィシャの指摘通りとある新人の冒険者についてである。

 

 

事の始まりはおよそ一ヶ月前、突然ウラノス様から名指しで呼ばれた事が始まりだった。同僚や先輩からは心配され、私は恐る恐るウラノス様がいらっしゃる祈祷の間に行く。

 

 

するとそこには私以外に三人の人物がいた、一人はヘファイストス様で残りの二人は初めて見る人物だった。

 

 

私が到着した事でウラノス様が話しだし、私はその話の内容に只々困惑する事になった。

 

 

曰く目の前の二人は新興ファミリアのヘスティアファミリアの主神であるヘスティアとその最初の眷属であるジューダス。

 

 

そのジューダスはレベル7である。

 

 

ジューダスはレベルこそ都市最強を担っている、だがダンジョンに関する知識は持ち合わせていない為担当する人物が必要になる。

 

 

その人物として私が選ばれたという事。

 

 

ウラノス様の話を聞いても私は理解できなかった、いや、今考えると私は恐らく理解を拒んでいたんだろう。

 

 

だってそうだろう、新しい担当冒険者が都市最強であるレベル7など誰が予想出来ようか。しかも改宗したわけでもなく初めて恩恵を貰ってそれでレベル7とか誰が信じられようか。

 

 

とは言いつつもこれが現実である、私は初めて自分の真面目な性格を呪った。

 

 

だが実際は思ったよりも大変ではなかった、ダンジョンに関する講義も真面目に受けてくれるうえに質問などもよくして教え甲斐のある子だった。

 

 

書類を見ると私より歳下だったけど礼儀もしっかりしているしとても好感が持てる。

 

 

けどやはりそこは都市最強のレベル7、講義を終え翌日からはまさしく破竹の勢いでダンジョンを潜っていく、僅か三日で上層を踏破しそのまま中層に到達し。その二日後には下層までに至り。

 

 

それからまた二日で深層に到達、それからというものジューダス君は下層から深層を主な活動拠点としている。

 

 

その証拠にギルドの換金所にて深層でしか出現しないモンスターのドロップアイテムを持って来たりした。勿論周りからは駆け出し冒険者と思われているジューダス君だ、換金の際も私が担当している。

 

 

しかも装備している武器も態々変えてだ、ジューダス君がメインとして使っている武器はあのヘファイストスファミリア団長である椿・コルブランドの作品だ。

 

 

少しでもバレるリスクを減らす為そういったこともジューダス君は徹底的だ、ギルドから支給された武器も上層で使い使用しているように見せかけている。

 

 

その甲斐あってか一ヶ月経ったいまでもジューダス君のレベルはバレた様子もないし、疑っている人も居ない。

 

 

だがこの一ヶ月の間ヒヤリとする場面は多々あった、それは自分の知り合いかつ母がかつて仕えていたハイエルフの王族であるリヴェリア・リヨス・アールヴ。その人である。

 

 

リヴェリア様はロキファミリアの副団長にしてレベル6。流石にリヴェリア様とジューダス君が鉢合わせするのは不味いだろうし。

 

 

(あっ、そういえば近々ロキファミリアが遠征に行くって話があったはず・・・しばらくジューダス君には深層の探索を控えてもらわないといけないかな?)

 

 

単独で深層に行けるのは第一級冒険者のみだ、万が一にでも鉢合わせてしまえば一発でアウト、今までの努力が水の泡に帰すだろう。

 

 

(ジューダス君が帰って来たら伝えておかないといけないよね。)

 

 

そう考えながら私はギルドの業務に戻る、普通の冒険者より気を使うが存外悪くないと最近の私は思い始めていた。そして願わくば。

 

 

(ジューダス君のファミリアにも早く良い子が入ってくれないかな?)

 

 

そう思いつつ私は今日もギルドの業務に勤しむのだった・・・、しかし、この時の私は思いもしなかった。この後しばらくしてヘスティアファミリアに入団する一人の兎みたいな人間(ヒューマン)の男の子がオラリオにていくつもの偉業を成し遂げるのを。

 

 

この時の私はまだ知る由もなかった。

 




《スキットオブオラトリア》

「甘味」


「そういえばこの前ジューダス君がカフェでお茶してるの見たんだけど、休みの日はあんな風にカフェとかに行ってるの?」


「ああ、武器の手入れを終えたらな。」


「そうなんだ、そういえばテーブルの上の品物全部スイーツばかりだったけどジューダス君は甘い物が好きなの?」


「そうだな。」


「ふーん、あっ。じゃオラリオに来て一番印象に残ってるスイーツって何かな?」


「オラリオには他の街には無い物もたくさんあると思うし。」


「そうだな・・・ならあれだな」


「あれって?」


「ジャガまるの小豆クリーム味だ、塩味と甘味の組み合わせがあそこまで合うとは良い意味で期待を裏切られたな。」


「えっ、ああ。そうなんだ。ヘェ〜。」


「手頃な値段で買えて販売店も多いから何処でも買える利点もあるからな、僕的には有難い。」


(ヴァレンシュタイン氏以外にあれを好んで食べる人初めて見たかも。)


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英雄の卵

四話目です、感想でご指摘していただいた恩恵のシステムですが。手直ししようとしたのですが上手く文章に纏められずこのままで行く事にしました。

ご指摘いただいたのに申し訳ありません。


エイナからロキファミリアの遠征の話を聞き鉢合わせを避ける為、現在僕は上層を主な活動エリアとしていた、稼ぎは格段に減ったが致し方ない。エイナ曰く団長であるフィン・ディムナはかなりのキレ者で親指の疼きで危機を感じ取ったり、相手の力量を察することも出来るそうだ。

 

 

確かに鉢合わせると面倒だ、それに、本人と鉢合わせなくとも他のロキファミリアの団員とも鉢合わせ、僕の事が報告され興味や関心を向けられる可能性もある。

 

 

その為エイナの忠告通り僕はロキファミリアが遠征から帰ってくるまで大人しくする事にした。

 

 

そんな中、ヘスティアファミリアを結成してはや一ヶ月と少し、探索から帰った僕をホームの廃教会で出迎えたのはヘスティアとそして。

 

 

「は、はじめまして!!ベ、ベベべベル・クラネルです!!今日からヘスティアファミリアにお世話になります!!」

 

 

「ジューダス君!!僕らの新しい家族のベル君だ!先輩としてよろしくしてやっておくれ」

 

 

 

見知らぬ少年、いや。ヘスティアが見つけてきた新しい眷属であった。真っ白な髪に赤い瞳は何処か兎を彷彿させる出たちでまだどこか幼さを残しており頼りない印象を受ける。

 

 

しかし、何故かこいつを見た瞬間一瞬だけだが。

 

 

『俺、父さんみたいな英雄になりたいんだ』

 

 

カイルの姿と重なった、何故だかはわからない。全く似ていないのにも関わらずだ。

 

 

(何故カイルと重なる?歳が近いからか?わからない。)

 

 

悶々としたものを抱えつつヘスティア考案の歓迎会が開かれる事になった、しかし、流石にジャガ丸くんのみというのはあれだったので買い出しに行く事になった。

 

 

(明日はベルの冒険者登録をしなくてはならないのか、見た感じ素人、ならダンジョンに関する知識も無いだろう・・・なら。)

 

 

エイナ・チュールに担当アドバイザーを頼むとしよう、歓迎会で詳しい話を聞きつつレクチャーの内容を考えてゆこう。

 

 

なお、歓迎会の料理については僕とベルが作った。ヘスティアは何故か僕が料理を作れる事に酷く驚いていた。

 

 

冒険者になってからほぼダンジョンに篭ってばかりだったから作る機会がなかったとはいえあそこまで驚く事はないだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕、ベル・クラネルはたった一人の家族だったおじいちゃんを亡くして失意の淵にいた。けどそんな僕の背中を押してくれたのも亡くなったおじいちゃんの言葉だった。

 

 

『オラリオに行け』

 

 

昔から僕におじいちゃんが言っていた言葉、幾つもの逸話や伝説を生み出してきた世界最大の都市。僕はその言葉のままに村を出てオラリオを目指した。道中は幸運にも大きなトラブルには遭わずに僕はオラリオに辿り着いた。

 

 

後は冒険者になるだけの筈だった、けど現実は僕が思っていた以上に残酷で厳しいものだった。冒険者になる為にはファミリアに所属する必要がある為僕はギルドが教えてくれたファミリアを幾つもあたった。

 

 

けど結果は散々なものでどこのファミリアにも門前払い、中には鉢合わせた冒険者にビビって逃げちゃった事もあった。

 

 

明日こそは明日こそはと意気込むけど結果は同じ、宿代だけが減っていき遂には路銀がつき宿も出ていく羽目になった。

 

 

宿を出て行く際に店主の人からパンをもらった、そしてその際にこうも言われた。

 

 

『オメェは素直すぎる、もう少し疑う事を覚えねぇとこの街じゃやっていけねぇぞ』

 

 

店主さんなりの気遣いだったんだろう、けど中々僕を入れてくれるファミリアは見つからず時間だけが流れた。

 

 

こんなに街は賑わっているのに僕一人だけが別世界にいるみたいに感じた、おじいちゃんが亡くなった日を何処か彷彿させた。

 

 

このまま僕はどうなってしまうのだろうと不安だけが募っていった、それでもなんとか自分を奮い立たせファミリアを探すが追い出されてしまう。

 

 

(やっぱり、僕なんかじゃ英雄には・・・。)

 

 

おじいちゃんが読み聞かせてくれた英雄譚、そんな英雄たちに憧れ僕もと思ったが僕はスタートにすら立たせてもらえない。

 

 

何もかもに絶望し、諦めかけたその時だった。

 

 

「裏路地は危ないよ?迷子かい?」

 

 

女神様と出会ったのは。

 

 

僕を見つけてくれた女神様、もといヘスティア様は新興ファミリアらしく発足したのは一ヶ月前らしい。団員も一人で、その人の負担を少しでも軽くしたいと思いアルバイトがない日はこうして団員集めをしていたそう。

 

 

そこで暗い顔をした僕を見つけ気になって後をつけてきたそうで、そこで僕が門前払いをされているところを目撃したそう。

 

 

恥ずかしいところを見られて僕的にはあれだったけど、僕は念願だったファミリアに無事所属することができた。

 

 

けど神様は僕に恩恵を刻む際に何か呟いていたみたいだけど僕には聞こえなかった、そして。

 

 

「はい、これが君のステイタスだよベル君。」

 

 

神様から手渡された紙、そこに僕のステイタスが記されていた。

 

 

ベル・クラネル

 

 

Lv1

 

 

《基本アビリティ》

 

 

力: I 0

 

耐久: I 0

 

器用: I 0

 

敏捷: I 0

 

魔力: I 0

 

 

《魔法》

 

《スキル》

 

 

 

まだ何もない真っさらな状態、でも。これが始まりなんだ。僕、ベル・クラネルは英雄の第一歩を今踏み出した。

 

 

尚この翌日担当アドバイザーとなったハーフエルフの女性職員と先輩冒険者であるファミリア団長によるスパルタレクチャーを受ける事になる事をこの時の僕は知る由もなかった。

 

 




《スキットオブオラトリア》

「先輩について」


「あの神様、神様のファミリアには僕以外に眷属の方がいるんですよね?」


「ああ、そうだよ。ジューダス君さ。」


「ジューダスさんですか・・・ええっと、どんな人なんですか?やっぱり怖かったりします?」


「ううん、そんな事ないよ。歳もベル君とそんなに変わらないしね。」


「そ、そうなんですか。ちょっと安心しました。今まで会ってきた冒険者の人って僕と歳もかなり離れてる人ばかりだったんで。」


「うん、歳の近い者どうしきっと仲良くなれるさ。」


「!!はい。ありがとうございます神様、僕頑張ります!!」


「そのいきだよ、頑張るんだよベル君!!」


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ダンジョン

更新です、ダンメモ六周年リヴェリア様を二凸出来ました。完凸目指して石を貯めます。


ベルが入団して一週間が経過した、最初の三日間はダンジョンには一切潜らずひたすらにダンジョンに関する基礎知識をエイナに叩き込んで貰い、残りの四日で戦闘における基礎訓練に明け暮れていた。

 

 

ダンジョンに関する知識については行ける階層が増えるたびにその都度エイナからレクチャーしてもらうという旨を伝えると・・・。

 

 

『へっ?・・・』

 

 

短い言葉と共に泣きそうな目をしていた、技術や知識は身を助ける事になる。そう伝えると渋々ではあるが納得した様だ。

 

 

基礎訓練に関しても文句の一つも言わずに真剣に取り組んでいた、やはりといったところか構えは素人丸出しで僕が攻撃を仕掛けると驚いて直ぐに守りに入ってその場に留まってしまっていた。

 

 

戦闘経験の無いベルには一から教える事に、武器についてはナイフを選んだ。最初は僕と同じ片手剣にしようとしたが・・・。

 

 

『はぁぁぁぁぁああっとっとと?!』

 

 

『振り回されてどうする。』

 

 

『うっ、剣って意外と重いんだね、鍬とかと全然違う』

 

 

『用途が違うからな、重くて当然だ。』

 

 

振り回すどころか振り回されるので軽く扱い易いナイフを使用する事になった、ナイフを使う事で明らかになったがベルは足が速い。

 

 

その様子を見てベルは速さを生かした戦闘が向いている、ナイフを二本使っての二刀流で攻撃の手数を増やしつつ体術で攻撃するのも悪くない。

 

 

だがこれはまだ先の話だろう、素人のコイツに必要なのは基礎を固める事だ。何事も基礎を疎かにしては変な癖がつきかねないからな。

 

 

しかし、僕がベルを鍛えるのに一番の弊害となったのがレベル差であった。初日の訓練ではかなり手加減したのだが一撃でダウンしてしまった。

 

 

幸い大怪我にはならなかったのだが、改めてレベルの差によって生じる力の差というのは理不尽とも思える差が生まれるのだと身をもって知った。

 

 

結局僕はベルの攻撃を受けるという形で訓練をする事となった、攻撃を通じて悪かった点や良かった点などを述べ改善していく。

 

 

ベルも最初は戸惑っていたが、僕に攻撃を何度も防がれるとやはり悔しかったんだろう、遠慮なく攻撃を仕掛けてくる様になった。そういった部分は年相応だったな。

 

 

だが、やはりというか最初はいい様にやられていた。武器を弾いては身体ごと吹き飛び背中から地面に落下したり、攻撃を受け流しては地面や壁に顔から激突したり。

 

 

初日は心身ともにボロボロになって食事も喉を通らなかった、無理やり食べさせたが。食べなければ傷付いた身体を治せないし翌日更に辛くなるだけだと伝え食べさせる。

 

 

流石に見かねたヘスティアが助け舟を出しベルを休ませ、その後はやりすぎだと叱られた。ベルの心が折れてないかヘスティアは心配していた。

 

 

しかし、翌日ベルはヘスティアの心配をよそに僕に果敢に挑んで来た。まだまだ動きは硬いが先日まであった怯えや戸惑いといったものは無くなっていた。

 

 

 

それに考えながら動く様にもなり、荒削りだがフェイントを織り交ぜてきた。少しづつだが確実に動きも良くなっていった。

 

 

そして、四日間の訓練が終わりベルは今日初めてダンジョンに潜る日がやって来た。朝起きた時からガチガチに緊張していたが大丈夫だろう。

 

 

「ここがダンジョン・・・。」

 

 

ベルが周りを見渡しながらそう呟く。

 

 

「そうだ、エイナから教わった事。僕との訓練を思い出せば今のお前でもゴブリン位なら余裕で倒せる。」

 

 

「そ、そうかな?村に住んでた頃に一度だけ遭遇して殺されかけた事があるんだけど。」

 

 

自信なさげにベルが言う、だが。

 

 

「その頃のお前と今のお前どちらが強い?」

 

 

「えっ?それは当然今だけど・・・。」

 

 

「そうだ、知識も戦いの経験のなかったその時のお前よりお前は多くを知っている。」

 

 

「エイナとの講習でモンスターの情報、そして僕との訓練で戦闘での立ち回り、お前は成長している。」

 

 

「だから示してみせろベル、お前はもう何も知らないただの村人では無く、戦う術を持ち困難に立ち向かうことの出来る冒険者だということを」

 

 

少々大袈裟かもしれないが焚き付けるならこれくらいは必要だろう、その証拠に先程まで不安にかられていたベルの様子が一変した。

 

 

目付きも変わった、不安や緊張で強張っていた身体も解され自然体となっていた。これなら大丈夫だろう。

 

 

そして、そんなタイミングを見計らってかダンジョンの壁からゴブリンが現れる。何度もこの光景を目の当たりにしているがまだ慣れないな。ダンジョンの壁からモンスターが出てくる瞬間は。

 

 

「ジューダス、僕やるよ。」

 

 

そう言ってベルはナイフを構える、ゴブリンも僕たちに気付き臨戦態勢を取る。その様子を見て僕はベルから少し離れた場所に待機する、ベルもそれに気付き視線を此方に向けるがすぐに視線をゴブリンに戻した。

 

 

(さて、冒険者としての第一歩だベル。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジューダスが僕から少し離れた位置に立ってる、そして僕の眼前には一匹のゴブリンが居る。

 

 

ジューダスの言葉を聞き僕はハッとなった、僕はもうおじいちゃんに助けられていたあの頃の弱い僕じゃない。

 

 

エイナさんからは知識を、ジューダスからは戦い方を。

 

 

(無知で無力な僕はもういない、僕は冒険者なんだ!!)

 

 

構えたナイフを握る力が自然と強くなる、知識も戦い方も知ったといえ実戦は初めてだ。けれど不思議と緊張はしていないし自分でも驚くくらい落ち着いている。

 

 

僕は武器を構えたままゴブリンとの間合いを図る、闇雲に突っ込んで攻撃が相手に当たらなかった時のカウンターをもらう怖さはジューダスとの訓練で嫌というほど身に染みている。

 

 

(初めての実戦、不安は思ったほど無いけどここは慎重に確実に。)

 

 

僕はゴブリンとの間合いを徐々に詰める、ゴブリンに悟られない様に少しづつ。そして間合いを十分縮めると。

 

 

(今だ!!)

 

 

一気にゴブリン目掛けて飛び掛かる、ゴブリンが慌てた様に両腕を頭を守る様に構える・・・けど。

 

 

(大丈夫・・・やれる!!)

 

 

慌てて防御態勢に入ったから隙だらけで、正面しかカバー出来ていなかった、だから頭の左右の側面と頭上がガラ空きだ。

 

 

(いける!!)

 

 

 

僕の振り上げたナイフはゴブリンの頭頂部に深々と刺さる、ゴブリンが短い断末魔を上げた後ゴブリンの肉体は霧状になって消え失せその場には一つの魔石だけが残された。

 

 

最初は目の前で起きた事が信じられず呆然としていたけど地面に落ちた魔石を拾う、手の平にあるその小さな魔石を見て僕は徐々に実感していく。

 

 

(た、倒したんだゴブリンを!!)

 

 

その事実に思考が追いつき遂には。

 

 

「いやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

僕は嬉しさのあまり大声で叫んでいた、初めてモンスターを倒せた事に僕は舞い上がってしまっていた、それと同時に自分の成長を実感した。僕は強くなったんだと。

 

 

けれど僕は油断していた、いや。喜びのあまり忘れていたんだ。ダンジョン探索をしているのは僕たちだけで無い事を。

 

 

「あっ!ジューダス僕やった・・・よ。」

 

 

ジューダスの方に振り返る、そこで僕は見てしまった。呆れた様な表情をしたジューダス。

 

 

そして、その後方視認できるくらいの距離にいた冒険者のパーティーが。

 

 

そして聴こえてしまった、そのパーティーの会話が。

 

 

「スゲェはしゃいでたなぁ、見た目通り駆け出しの冒険者だな。」

 

 

「俺も初めてモンスター倒せた時は喜んだけどあそこまではなあ。」

 

 

「年相応で可愛かったね。」

 

 

「ダンジョンの中だったのに少しほっこりしましたね。」

 

 

聴こえてきた会話を耳にして僕の思考は止まった、そして理解する。

 

 

僕がゴブリンを倒してはしゃいでいた一部始終を彼らに見られていた事に。その事を理解した瞬間僕は。

 

 

「あっあああ・・・。」

 

 

 

「だあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

見知らぬ人たちに見られたという羞恥心から僕は叫んでいた、そして気がつくと僕はホームの部屋の隅で三角座りをしていた。

 

 

記憶が曖昧だけどおそらく僕はダンジョンから走って帰ってきたのだと思う。

 

 

そして置いて帰ってしまったジューダスからお小言を沢山もらう羽目になった。

 

 

さらにその流れでジューダスから神様に事の顛末を語られる事になり、神様からも揶揄われることとなった。

 

 

こうして僕の初めてのダンジョン探索は決して忘れることの出来ない苦くそして恥ずかしい記憶が残る事になった。




《スキットオブオラトリア》


「待ち神」


「はぁー、今頃ベル君とジューダス君はダンジョンか・・・。」


「うーん、退屈だねぇ。天界にいた頃は神殿で一人でいても全然寂しくなかったのに今じゃ天界の神殿より狭いこの部屋でも広く感じちゃうなんてね。」


「ホント、ベル君やジューダス君には感謝しかないや。こんなボクと家族になってくれてさ。」


「けど、ジューダス君はもう少し素直になってくれると良いんだけどね。ベル君を見習ってさ。」


「ああ、やっぱりボクは今幸せ者なんだろうね。」


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グミ

お久しぶりです。アライズの追加ストーリー発表は胸熱でした。

久々の更新なのにタイトルがこれしか思い浮かばなかったです。


ベルにとっては散々だった最初のダンジョン探索より一週間が経とうとしていた、僕を置いてホームに帰った件については多少の説教で済ませた。

 

 

翌日からのダンジョン探索は順調そのものだった、一対一の状況も何ら問題なく対処出来ていた。特訓の成果出ている様で一先ずは良しとしよう。

 

 

それと複数のゴブリンに囲まれた際の対処も危なげながらも対処出来た、最初は苦戦していたが持ち前の敏捷を生かしてヒットアンドアウェイで翻弄しながら一体一体確実に仕留めていた。

 

 

流石に時間をかけすぎたため終わった後は疲労を隠せていなかったが、今度は持久力を上げる訓練をしようか。

 

 

さて、今日の予定だが今日僕は私用がある為ベルは一人でダンジョン探索に向かった。ヘスティアが心配だ、心配だと少々煩かったがゴブリン程度なら一人で問題ないと伝え納得させた。

 

 

だが少し懸念もある、言い方は悪いがベルが少々調子に乗っている事だ。数日前からもう少し下の階層に行こうと言ってきている。

 

 

その度にベルのステイタスが基準に達していない為無理だと言うが珍しく食い下がってくるのが面倒だ。

 

 

普段素直な分こういう時は厄介だ、そんな中今日一人でダンジョン探索に行かす為事前にエイナに釘を刺す様にお願いしている。

 

 

流石にエイナに言われては大人しくしてくれるだろう、彼女を怒らせると怖いというのはベルも知っているだろうし。

 

 

こうして多少の不安要素はありつつも僕は目的地へと向かった。

 

 

ホームの廃教会を出てオラリオを歩く、人通りの多いメインストリートから外れた道を行くと徐々に人気が少なくなっていく。そしてしばらく歩くと目的地に辿り着く。入り口の扉を開くと。

 

 

「いらっしゃ・・・ああ、ジューダスか。そういえば今日は約束してた日だっけ?」

 

 

「ああ、久しぶりだなナァーザ。早速で悪いが・・・いつものグミの詰め合わせを頼む。」

 

 

僕が訪ねたのは青の薬舗、ヘスティアがファミリアを結成する前から交流があった神ミアハのファミリアの拠点である。

 

 

そしてそんなところを訪ねた理由は初めに言った通り僕の世界にあった回復アイテムであるグミに関してだ。

 

 

僕がこの世界に来てまだ一月経ってなかった頃回復アイテムでポーションがある事を知りそれを購入し使った事があるのだが。

 

 

味が物足りなかった。今まで回復アイテムといえば甘いグミだった為回復アイテム=甘い。その構図が出来ていた僕にとって少しショックな出来事だった。

 

 

なのでその事をヘスティアに告げると。

 

 

『なら、自分で作るってのはどうだい?力を貸してくれそうな神友も居るし。僕から話してみようじゃないか』

 

 

そう言ったが即日ヘスティアファミリアの手狭なホームに二柱の神とその眷属一名ずつがやって来た。

 

 

一柱はオラリオ唯一の農業ファミリアを運営するファミリアの主神である神デメテル。そして薬品製作専門のファミリアの主神である神ミアハだ。

 

 

役者が揃った事でことの次第を説明する、すると両名共々想像以上に良い反応をしてくれた。

 

 

神デメテルとしては新たな食文化の発達のきっかけとして、そして神ミアハの方も良い反応を示してくれた。

 

 

しかし、どちらかと言えば神ミアハではなく眷属のナァーザの方が強く反応していた。

 

 

これは後から知った事だが神ミアハのファミリアはナァーザを助ける為同じく医療系ファミリアのディアンケヒトファミリアに多額の借金をしているそうだ。

 

 

その為少しでも借金を完済する為に今回の話にとても意欲的になっているとの事。

 

 

今までの回復アイテムはポーションやエリクサーや特別なスキルによって製作可能となる回復効果のあるマジックアイテムなどがある。

 

 

しかし、固形の回復アイテムは存在していなかった。それにグミは回復だけでなくお菓子として食べることもできる為冒険者以外の客も狙えるとあって両ファミリアともやる気だ。

 

 

それからはとんとん拍子に話が進みわずか二週間でグミが完成した。

 

 

その後販売の内訳はデメテルファミリアがお菓子としてのグミの販売を、そしてミアハファミリアの方では回復効果のあるグミとお菓子のグミの両方の販売となった。

 

 

それからは速いものだった、デメテルファミリアが主体となって作られた新しいお菓子であるグミは瞬く間にオラリオに広まった。

 

 

グミは予想以上の売れ行きだった。特にオラリオに住んでいる住民たちの反応は良かった。

 

 

ただやはり回復アイテムとしてのグミは中々売れなかった、けれどそこで諦めるナァーザではなかった。

 

 

彼女はかねてより模索していた二属性回復薬『デュアル・ポーション』と同様の効果のあるグミを作ると言い僕に素材確保の依頼を出してきた。

 

 

特に断る理由もなかった為僕はその依頼を受けた、そもそも今まで作れたグミは定番のアップルとオレンジ。それからレモンとパイン、更にはピーチとグレープであり。

 

 

ミックスグミとミラクルグミの二つは何故かお菓子としては作れたが、回復アイテムとしては作る事ができなかった。

 

 

僕としてもグミのバリエーションが増えるのはありがたかったので素材探しに奔走した、結果から話すと一応グミ作りは成功した。

 

 

更に言うとナァーザが作ろうとした二属性回復薬も完成した、しかし。グミの方はミックスグミは出来たがミラクルグミは出来なかった。

 

 

これはナァーザ曰く材料となった二属性回復薬の効果が弱く、僕の理想とするミラクルグミの効果に届いていない為だそうだ。

 

 

この事を受けナァーザは更なる二属性回復薬、高等二属性回復薬の製作に着手した。

 

 

そして残念ながら今現在でも高等二属性回復薬は完成していないがナァーザによると、ディアンケヒトファミリアの主神である神ディアンケヒトが苦虫を噛み潰した様な顔をしながら借金の取り立てに来るようだ。

 

 

どうやらグミの売れ行きやディアンケヒトファミリアでも完成させれなかった二属性回復薬を完成させた件で恨めしいやらなんやらで一方的に僻んでいるようだ。

 

 

「最初はどうなるかと思ったが順調で何よりだな」

 

 

「確かにね、最初は新しいアイデアに思わず食いついちゃって後に引けなくなって少し不安だったけど結果オーライだったよ。」

 

 

「それは何よりだ、ところで・・・」

 

 

「はいはい、わかってるよ。何時ものグミの詰め合わせね。というか最近来る頻度が高くなってるけど」

 

 

「新しくファミリアに入った奴がいてな。そいつがかなりグミに嵌ってな気がつくとほとんど無くなってるんだ。」

 

 

 

「ああ、確かベルって子だっけ?兎みたいな子だって聞いてるけど。はい、何時ものグミの詰め合わせね。」

 

 

会話しながらも商品をテキパキと用意するナァーザ、商品の入った袋を受け取り代金を支払う。

 

 

「はい、丁度ね。これからもご贔屓にね。」

 

 

「ああ、また来る。」

 

 

そうして短い挨拶を交わし僕は青の薬舗を後にする。

 

 

大通りに出ると少し騒がしかった、何かあったようだが僕は気にせずギルドに向かう。するとその最中住民たちの話し声が聞こえて。

 

 

「いやー驚いたねぇ。あの子冒険者だろう?全身血塗れだったけど。」

 

 

「ああ、ありゃ多分返り血だな。じゃなきゃあんな元気に走れないだろう。」

 

 

「けどよ、なんであんな笑顔だったんだ?」

 

 

「さあな。」

 

 

などの会話が聞こえて来た、その会話に妙な胸騒ぎを感じ僕はおそらくその血塗れの冒険者が向かったであろう冒険者ギルドに急足で向かった。

 

 

(嫌な予感がする、まさかな。)

 

 

その嫌な予感があたっていない事を祈りながら。

 

 

しかし、その祈りは儚く潰える事を今の僕は知る由もなかった。




原作と漫画でグミって出てなかったはず。

アプリのメモフレとバトクロで出てない事を祈ります。


《スキットオブオラトリア》

「バクチグミチャレンジ」


「がああぁぁぁぁハズレ味やぁぁぁぁぁ!!」


「うるさいぞロキ、静かに出来ないなら出て行け!!」


「ああぁぁん、そんないけず言わんといてぇなリヴェリアマッマ。ゴーヤ味なんてハズレ引いてんから慰めてぇな。」


「ん?なんだそのグミは?ゴーヤ味のグミなど売ってたか?」


「んあ?リヴェリアマッマ知らん?これバクチグミちゅうて見た目はおんなじやねんけど味がバラバラやねん」


「何でそんな物を買ったんだ、普通のアップルやオレンジで良いだろう。」



「いやいや、リヴェリアマッマ娯楽に飢えたうちら神々を侮ったらあかんで。そこに面白そうな娯楽があったら嬉々として飛び込むんがウチら神っちゅうもんや。」


「理解できんな。」


「リヴェリアマッマも理解できる日が来るで、次は当たりを引くでぇ。ぐうぇぇぇぇぇ、じゃ、じゃが丸くん味やぁ。」


「やれやれだな。」


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憧憬一途《リアリスフレーゼ》

お久しぶりです、またかなり間が空いてしまいました。すみません。

12月にあげるつもりだったんですがアトリエシリーズに手を出しまして。マリーとロロナの全エンディングを回収してたら3月になってました。

FF7もあるのにトトリをやってます。


私、エイナ・チュールは眼前の光景にただ乾いた笑みを浮かべることしか出来なかった。

 

 

ギルドの個室面談の部屋に私を含め三人の人物が居る、二人とも私の担当冒険者で同じファミリア所属である。

 

 

一人はベル・クラネル。新興ファミリアであるヘスティアファミリア所属の新人冒険者である。そしてもう一人はジューダス君。ベル君の所属するファミリアの団長を務めておりまだ公になっていないが現在のオラリオにおいて二人目の、そして世界で三人目となるレベル7の冒険者である。

 

 

そんな二人の今現在はと言うと。

 

 

「・・・。」

 

 

「・・・(ダラダラ)」

 

 

方や床に正座をし滝のように汗を流すベル君、そして方や椅子に脚を組みながら座りベル君を見下ろす形になっている。

 

 

何故このような事になってしまったのか。事の発端はベル君であった。簡潔に言うとベル君は私とジューダス君の言いつけを破りいつもより下の階層を探索していた。

 

 

最初は順調にモンスターを倒していたみたいだけどそこでイレギュラーが起きた、なんと中層にいるはずのミノタウロスと遭遇したというのだ。

 

 

この件に関しては後に遠征から帰還したロキファミリアからの報告で帰還途中で遭遇したミノタウロスたちが戦闘途中でいきなり上層へと逃走したそうで。

 

 

その逃げたミノタウロスと運悪く遭遇してしまったのがベル君だ。

 

 

勿論ベル君はすぐさま逃げ出したけど相手は格上のミノタウロス、引き離すことが出来ずその上ベル君にとって初めて訪れた階層だった為がむしゃらに逃げた挙句スタミナ切れで追い詰められてしまったそう。

 

 

けどベル君は運が良かった、ギリギリのところをミノタウロスを追っていたロキファミリアの冒険者であるアイズ・ヴァレンシュタインに助けられてベル君は窮地を脱したのだ。

 

 

けれどそこで終わらないのがベル君なんだろう、どうやらその一件でヴァレンシュタイン氏に一目惚れしてしまったそう。

 

 

助けてもらったお礼を言わず叫びながらその場から逃げ出してしまったそう、ミノタウロスの返り血を浴びたまま。

 

 

そこで地上に帰る間にベル君はヴァレンシュタイン氏に一目惚れしたと自覚したみたいだ。

 

 

そしてギルドに帰還したベル君は偶然外に出ていた私を見つけてヴァレンシュタイン氏の情報を得ようと私に声をかけて来たのだ。ミノタウロスの返り血を浴びたままの姿で。

 

 

その姿を見て私が叫んでしまったのは致し方のないことだと思う。その後はベル君に血を落としてもらい、ヴァレンシュタイン氏の情報(世間一般で知られる)を教えて少しの会話をしそのまま終了のながれとなったが。ベル君が部屋を出る前に扉が数回ノックされるすると。

 

 

『エイナ〜ちょっと良い?』

 

 

『ミィシャ?どうしたの?』

 

 

ノックの後に扉を少し開けて顔を見せたのは同僚のミィシャだった、しかし何処か様子がおかしい。何かあったのだろうか?

 

 

『え〜っと、新人君に用があるって人がいて、その人を案内して来たんだけど・・・。』

 

 

ミィシャにしては少し歯切れの悪い物言いに私は少し嫌な予感がした、そして気付く。

 

 

ベル君はここに来るまであの返り血を浴びた姿のままギルドにやって来た、それを多くの人に見られたのは言うまでもない。となれば・・・。

 

 

彼の耳にこの話が届かないわけがない。

 

 

『それじゃ、案内したから私はこれで。じゃね。』

 

 

早口に言葉を発しその後すぐにその場を去る足音が聞こえた、どうやら巻き込まれる前に逃げた様だ。

 

 

そして扉がゆっくりと開けられ・・・。

 

 

『ベル、随分愉快な恰好で街を走っていた様だな。説明してくれるよな?』

 

 

『・・・っ!!』

 

 

そこには想像した通りの人物が立っていた、その彼。ジューダス君をみてベル君は絶句し。ジューダス君の表情は無表情ながら何処か凄みを感じる。

 

 

こうして場面は冒頭に戻る。

 

 

いまだに無言を貫くジューダス君に冷や汗を滝の様に流すベル君。しばらく無言で睨んでいたジューダス君だったけど。

 

 

「さて、ベル。一体どういった経緯で血塗れで街中を走る事になったのか僕に詳しく教えてくれるか?」

 

 

「えっ!?えーっとぉ。そ、そう言う事ならエイナさんに聞いた方が良いんじゃないかな?エイナさんにはもう全部説明してるし・・・。」

 

 

そう言ってベル君は私の方を見てくる、その視線は助けを求める子供そのものだった。けれど。

 

 

「いや、ベル。僕はお前の口から直接ことの次第を説明してもらいたいんだ。」

 

 

「えっとぉ〜、でも・・・」

 

 

「ベル?」

 

 

「うっ・・・。」

 

 

「お前の口から『直接』説明してくれるな?」

 

 

「はい、全てお話しします・・・。」

 

 

こうしてジューダス君の圧に敗北したベル君はジューダス君にことの事情を洗いざらい白状する事とになった。

 

 

ことの事情を話している際のベル君の表情は最初から最後まで死んでいたと言っても過言では無かった、程なくして全てを話し終えたベル君。

 

 

その姿はまるで罪状を告げられる時をただ待つばかりの罪人が如くであった。まあ実際見たことはないんだけどね。

 

 

暫しの沈黙の後ジューダス君が口を開き。

 

 

「取り敢えずの事情はわかった、大体はベルが悪いとはいえ今回のミノタウロスの件は予想外も予想外だ。生き残れたのは運が良かったなベル。」

 

 

「えっ・・・あっ。うん。そ、そうだね。助けてくれたアイズさんにはお礼も言わず逃げてきちゃったけど・・・。」

 

 

「・・・機会があればきちんと礼はしておけ。」

 

 

「う、うん。」

 

 

思っていたのと違う、このジューダス君とベル君のやりとりを見て私はそう思った。ベル君も同様なのか信じられないものを見る目をジューダス君に向けていた。

 

 

「なんだ?僕が怒らない事がそんなに意外か?」

 

 

じっと見ていた為やはりジューダス君に気付かれる。

 

 

「えっ?!い、嫌。その・・・うん。ジューダスの事だからてっきり・・・。」

 

 

「お前が普段僕の事をどう見ているのかはわかった、まあ。今回に限っては予想はしていたからな。」

 

 

「あっ、そうなんだ・・・あれ?ひょっとして僕全く信用されてなかったんじゃ?」

 

 

「少なくともエイナに釘刺しを頼むくらいは信用はしているぞ。」

 

 

「それって良い方で信用してくれてるんだよね?!悪い方でって意味じゃないよね!!」

 

 

「想像に任せる。」

 

 

「絶対悪い意味でだよね!!その言い方だと!!」

 

 

二人のやりとりを見て私は少し笑みを浮かべる。

 

 

(上手くやれてるみたいで良かった。ジューダス君もベル君のことしっかり面倒見てくれてるみたいだし。)

 

 

側から見ると仲のいい兄弟のようにも見える、私や同期そして他のギルド職員から見てもベル君はとても冒険者に向いているとは思えなかった。

 

 

ベル君には悪いけどギルド職員数名はベル君がいつ冒険者を辞めるか賭けをするくらいだった。けれどベル君は冒険者を続けている。

 

 

冒険者になってまだまだ日が浅いとはいえジューダス君の指導や特訓によってメキメキと強くなっているベル君。

 

 

ジューダス君やベル君自身の報告からも聞いている限り順調の様だ、因みに賭けをしているギルド職員からたまにベル君の様子を聞かれるが全て質問には順調に成長していると返している。

 

 

「まあ、次は無いからな。その事はしっかりと肝に銘じておけよ。」

 

 

「は、はい。」

 

 

そうこうしているうちにどうやらジューダス君によるベル君に対する注意は終わった様だ、その様子を見て私も個室を出る準備をする。

 

 

お説教によって意気消沈していたベル君だったけど最後に私が言った、

 

 

「強くなればヴァレンシュタイン氏も振り向いてくれるかもよ?」

 

 

言葉を聞き一瞬にして曇っていた表情が笑み一色となり、去り際に「エイナさん大好き!!」と言って走り去っていった。

 

 

不意打ちを喰らい自分でも顔が赤くなっていると自覚する、がしかしすぐさま隣に居る存在に気付き視線を隣に向けると。

 

 

「・・・はぁ。」

 

 

仮面を被り表情は窺えないが怒っているというよりかは呆れ果てている様に見える。

 

 

「え〜っと、ジューダス君・・・その。」

 

 

「いや、みなまで言わなくていい・・・僕も失礼する、ではな。」

 

 

そう言ってジューダス君は去っていった、私は只々ベル君の無事を願うことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、ベル君はダンジョンに夢みがちなんだよ。」

 

 

ホームに戻ってきてベルが今日遭遇した出来事に関してヘルティアに報告し、しっかりと叱られた後ステイタスの更新を行っていた。

 

 

ミノタウロスが上層に登って来た原因が天界の頃からなにかと因縁をつけてきた神ロキの眷属たちと知って更に不機嫌になったがそこはベルがなんとか落ち着かせた。

 

 

ステイタスの更新のなかヘスティアはベルにあれやこれやと話していたがたいした内容では無かったので僕は聞き流していた、すると。

 

 

「んっ?」

 

 

ステイタスの更新をしていたヘスティアが今までとは違う声色で声を出した、ベルが声を掛けると何事もなかったかの様に振る舞うが側から見れば何かあったのだとわかる。そして。

 

 

「はい、ベル君ステイタスの更新終わったよ。」

 

 

ヘスティアからステイタスが記された紙を渡されたベル、するとすぐに。

 

 

「あれ?神様スキルの欄のところが変なんですけどこれは?」

 

 

「ああ、それかい。ちょっと手元が狂ってしまってね。安心したまえベル君。君のスキルはまだ発現してないよ。」

 

 

「神様それは安心していいことじゃ無いですよね・・・。」

 

 

この様なやり取りをしてベルは肩を落としていた。他愛の無いやりとりに見えるがやはりヘスティアの様子がおかしい、理由はおそらくだがおかしなスキル欄、つまり。

 

 

(ベルにスキルが発現したんだな、しかも僕のスキルと同様に厄介なものが。)

 

 

ベルが寝静まったのを見計らってヘスティアに聞くとしよう。

 

 

そうして何事もないまま時間は流れ夜になった。

 

 

「ヘスティア。」

 

 

「ん?なんだいジューダス君。」

 

 

ベルが眠りについたのを確認し、僕はベルの発現したスキルに関してヘスティアに尋ねる事にした。

 

 

回りくどいのは無しにしてストレートに聞く事にする。

 

 

「ベルにスキルが発現したんだな、それも厄介なスキルが。」

 

 

「ぶっ!!な、何のことかな?冒険者になってまだ間もないベル君がスキルを発現させれるわけないじゃないか君じゃあるまいし。」

 

 

「・・・」

 

 

「あっははははは」

 

 

「・・・」

 

 

「あっは・・・ははは・・・。」

 

 

「・・・」

 

 

「ははは・・・はぁ〜何でわかるんだいジューダス君。」

 

 

無言で睨みつけていると観念したのかヘスティアは項垂れながらそう言った。

 

 

「あれくらい勘が良い奴はすぐに気付くだろうな。」

 

 

「むぅ、ベル君は誤魔化せたのに。はぁ。取り敢えずこれがベル君の本来のステイタス表だよ。」

 

 

そう言ってヘスティアはステイタスが記された紙を僕に渡して来た、見てるとそこには予想通りベルにスキルが発現していた。

 

 

ベル・クラネル

 

 

Lv.1

 

 

《基本アビィリティ》

 

力: I 86

 

耐久: I 65

 

器用: H 107

 

敏捷: H 196

 

魔力: I 0

 

《魔法》

 

 

《スキル》

 

【憧憬一途】

・早熟する。

・懸想が続く限り効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「憧憬一途・・・か、レアスキルか」

 

 

「ああ、そうだよ。効果の説明から考えるに恐らくだけど成長促進スキルの可能性がある。」

 

 

「冒険者なら喉から手が出る程欲するスキルだな、発現したばかりで効果の程はまだ不明だが・・・覚悟はしていたほうがいいな。」

 

 

僕がそう言うとヘスティアは深くそして長いため息をつきながら天を仰いだ。

 

 

「ウラノスには相談しておくか?」

 

 

「あ〜。そうだね。もう君の事で世話になったんだ今更厄介事が一つ増えようとも問題無いだろう・・・多分。」

 

 

「報告するにもスキルの効果の程を確認してからでいいだろう、明日のダンジョン探索が終わったらエイナにウラノスと話せないか尋ねておく。」

 

 

「うん、頼んだよジューダス君。」

 

 

こうして明日に備え僕も休む事にした、明日のダンジョン探索を終えた時ベルのステイタスがどうなるのかを考えそして。

 

 

(ヘスティアの予想通り成長促進のスキルなら少し面倒な事になりそうだな。)

 

 

後に訪れるであろう面倒事に少し頭を悩ませながら僕も眠りについた。




ベル君のステイタスを少し強化しています。


《スキットオブオラトリア》

「神様の憂鬱」


「はぁ〜全くベル君までジューダス君みたいなレアスキルを発現させるなんて。しかも発現した理由がロキの眷属だなんてぇぇぇぇぇ。」


「ベル君の浮気ものおぉぉぉぉぉぉぉぉ。」


「身近に僕という者が居るってのにまったくもぉ〜。」


「何で僕に見向きもしないんだぁぁぁぁぁぁ!!」


「五月蝿い、騒ぐな!」


「ご、ごめん。」


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