東方禁初幻譚 (鈴華)
しおりを挟む

序章 カルマの誕生プロローグ
Ep,0 プロローグ


前作からお待たせしました。
今作からでもwelcomeです。
それではどぞ。


広い荒野に彼は佇んでいた。あたりには荒れ狂う穢れたちで埋め尽くされている。彼の金髪がその中で唯一の光であるかのように輝いていた。彼は穢れの大群に右手をかざした。

 

「第16禁忌魔法“テンペスト”。」

 

すると、彼の手からなんの挙動もなく凄まじい光の奔流が放たれた。それは太陽の光と間違えそうな程の―いや、それ以上の光量と規模だ。光に飲まれた穢れは身体を灰へと変えていく。これで大半の穢れが消えた。

 

「があぁぁあぁぁぁぁぁあああ!!」

 

背後から襲ってきた穢れに対し、彼は振り返ることはしない。

 

「第22禁忌魔法“磔十字”。」

 

すると、地面から等身大の十字架が現れた。飛びかかってきた穢れの腹にその先端が叩き込まれた。怯んだ穢れは後ずさるが、彼がそれを許さない。片手で十字架を担ぐと、そのまま汚れの頭に叩きつける。穢れの頭は潰れ、血が彼の服を汚した。

 

「次だ。」

 

彼は十字架を穢れに叩きつけたままにすると、常人では視認できない速度で駆け抜ける。黒い軌跡が通りすぎた後には、穢れが血を吹き出し倒れていった。彼の手は穢れの血で赤黒く染め上げられていた。

 

「つまらん。」

 

手に付いた血を落とすようにひと振りすると、彼は再び残像も残さない程の速さで穢れの間を縫うように駆け抜けていく。軌跡に沿って穢れの血が吹き出し、赤い道を作っていく。

 

「仕上げだ。第16禁忌魔法“テンペスト”。」

 

すると、地面に大規模な魔法陣が浮かび上がった。それは彼と穢れの死体もろとも覆い尽くす大きさだ。

 

「消えろ。」

 

凄まじい光量が地から天に向けて柱となるように放たれた。光が消えると穢れは灰になるように気化していく。その中、彼―カルマは服や顔を血で汚しながら佇んでいた。

 

 

 

“月下巨大都市”。幻想郷が誕生する数億年前に地球上にあった唯一の都市の名前。この都市の科学技術は発達し、そこに暮らす人々は不自由なく生活をしていた。そして、都市の中心には巨大な集会場があった。カルマはその一室の前にやってきていた。

 

―コンコン―

 

「入れ。」

 

中からは威厳のある男性の声が聞こえてきた。カルマは扉を開けると、部屋の奥にある机と椅子に向かう。その椅子に腰掛けているのは、1人の男性だった。彼の名はツクヨミノミコト。後に月の神となる神族の男だ。

 

「カルマ、ただいま戻りました。」

「ご苦労だったな。して、異常か何かはあったか?」

 

ツクヨミはカルマに穢れ殲滅の命令を下さしていた。なんでも最近、穢れの動きが活発化しているらしい。そこでカルマに様子見がてら倒すことを命令したのだ。

 

「結論から言えば、わかりません。ただ―」

「ただ?」

「私の予想が正しければ、近々、今回以上の穢れの大群が押し寄せてくる可能性があります。」

「・・・そうか。わかった。下がっていいぞ。」

「失礼します。」

 

何か考え始めたツクヨミにカルマは一礼すると、部屋から出て行った。

 

「・・・そろそろ“計画”について考えなければいけないな。」

 

 

 

「あーあー。やっぱり折れてるじゃない。」

 

カルマが次に訪れたのは病室だ。―と言っても、彼は行く気がなかったのだが、集会所の通路でばったりある女性に会ってしまい、挙句には一瞬で負傷に気づかれ、病室に連行されるはめになったのだ。

 

「これくらいなんてことないだろ。一度死ねば治るんだから。」

「その死ぬまでの間が長いんじゃない。」

「そう言うがな、永琳。」

「はいはい。口答えしない。」

 

彼を病室に連行したのは八意永琳だった。この巨大都市において彼女を知らない者はおらず、彼女の功績は皆が高く評価している。

 

「これでよしっと。」

「・・・はぁ。」

 

結局、為すがままにされてしまったカルマは左腕にギプスを付けることになってしまった。

 

「で、カルマはこの後どうするの?」

「どうするも何も、部屋に帰るだけだが?」

「なら、気をつけて帰りなさいよ。」

 

彼は永琳に半眼を向ける。明らかに呆れている顔だ。だが、何か言おうと考え、口を開きかけたが、いつものことだと判断し、ため息にとどめることにした。

 

「お前が俺に負い目を感じているのはわかるが、そんな心配されるような筋合いじゃないだろう。俺は俺でこの身体を気に入ってるんだからな。」

 

カルマはそう言って、病室を後にした。残された永琳はそばの机に向かうと頬杖をつき、ため息をついた。

 

「私があなたに負い目、ねぇ。」

 

今から十数年前、カルマは人間から人間でないもの、通称魔人へと替えられた。そこに携わった1人が永琳だ。彼は永琳の薬を使われ、人間を捨てることとなった。永琳自身、上層部からの命令で作らされた薬であって、何に使うのかはわからなかった。それが人間に、しかも彼女にとって幼い頃から一緒に育ってきた弟分に使うと知った時は耳を疑った。最初は反対をしたが、カルマの意思でもあるということを言われ、渋々引き下がることになってしまったのだ。そして、今に至るわけだ。

 

「カルマ・・・。どうしてあなたがそんな選択をしたのか、私にはわからない。でも、それで本当によかったの?」

 

 

 

部屋に戻ったカルマはベッドに横になると、左目に手をかざした。彼の左目の瞳は血のように真っ赤に変色している。これは彼が人間を捨てた時に色が変色したらしい。らしいというのは彼が魔人となって約3日間、目を覚まさなかったからだ。

 

「・・・俺がどこで何をしようが関係ない。ただ・・・誰かを守れる力が手に入ったんだ。」

 

彼はベッドから起き上がると、厳重に保管されている本を本棚から取り出した。本棚には10cm程の厚さの本が並べられていた。数は99冊。この本はカルマ以外が触れることを禁止されている。この本は全て禁忌の魔法が記された本だ。1冊に1つの魔法が記述されている。禁忌魔法、それは常人が使えば、必ずそれ相応の贄―1人分の命が必要となる魔法だ。しかし、カルマはそれを無代償で使うことができる。それが彼の身体だ。

 

「カルマ、帰ってきているの?」

 

扉の向こうから綺麗な女性の声が聞こえてきた。彼は慌てて本を厳重に鍵をし、本棚も戻す。

 

「あぁ、今開ける。」

 

扉を開けるとそこには1人の女性が立っていた。彼女はツクヨミと同じ神族であり、姉でもあるアマテラスオオミカミだ。

 

「アマテラスか。なんのようだ。」

「いえ、帰ってきているならいいの。でも、その腕は?」

「永琳にやられた。」

「彼女らしい。あなたを大切に思っている証拠ね。」

「・・・冷やかしに来たんだったら帰れ。」

「そう邪険に扱わないで。一緒にどこか食べに行こうかと思ったんだけど、その腕じゃ無理そうね。よし、私が何か作ってあげる!」

「・・・はぁ。好きにしろ。」

「じゃあ、早速好きにさせてもらうね。」

 

彼女はカルマの部屋に入るとキッチンを漁り始めた。カルマはもう一度ため息をすると、椅子に腰掛ける。自分がどうあろうと、彼はこんな日々を過ごし、これが続いて欲しいと願っていた。

 

だが、それはそう長続きしないものとなることは誰も知る由もなかった。

 




次話は明日になります。
内容はカルマの設定です。
間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

設定 -カルマ-

カルマの設定です。
それ以上でも以下でもないですはい


カルマ

 

 

【挿絵表示】

 

 

二つ名:魔神カルマ(いつの間にかそう呼ばれることになる。)

 

年齢:「忘れた。」少なくとも永琳より少し年下。

 

身長:173cm

 

体重:61kg

 

誕生日:「それも忘れた。」ま、今の月日で表せられるかわかんないからね。

 

正体:元人間であり魔人。後に魔神と言われる存在となる。

 

能力: 禁忌魔法を扱う程度の能力 ― 禁忌とされる99の魔法を無代償で使うことができる。しかし、自分以外が使うとき、又は利益が相手にくる時は贄が必要とする。要するに、自分が相手のために使う場合は贄を必要とする。

 

好きなもの:魔法研究、読書

 

嫌いなもの:面倒事(なんやかんやで結局了承する。)

 

危険度:強

 

人間友好度:普通

 

住んでいる場所:現在は魔界。それまでは点々としている。

 

昔はどこにでもいる人間だったが、永琳の薬を服用することにより魔人という存在となる。その影響で左目が紅く変色。魔人には彼自身の意思でなったものだが、それについて永琳は負い目を感じている。ちょっとしたフラグだね。

「どういう意味だ?」

知らないよ。自分で考えてくださいな。

面倒事が嫌いでよく嫌そうな顔をするが、誠意を持って頼めば引き受けてくれる。

もしくは気づかれないようにちゃっかりやっていたりする。

所謂、ツンデレ。

「殺すぞコラ。」

おー、怖い怖い。

男にしては少し長い金髪に全体的に黒い服装を来ている。フィンガーレスグローブをつけている。左右非対称のブーツを履いている。

尚、彼の扱う禁忌魔法は出た話毎にあとがきで説明します。

「プロローグのはいいのか?」

あの魔法はまだ何回も使うからいいの。ちなみにカルマはプロローグで4つの禁忌魔法を酷使しています。

「ま、気づかんだろうな。普通。」

禁忌魔法は1つ発動するために1人分の命を代償として扱うことができる魔法。

今のところ彼の禁忌魔法は10個位考えてあります。

流石に99個全部思いつかないよ。

募集しようかな・・・。|ω・`)チラ

「おいこら。」

あ、そうそう、彼は基本ツッコミ要因です。

「は?」

え?ボケたいの?

「いや・・・、いい・・・。」

でしょうねぇ。( ̄∀ ̄)

 

以上が彼の設定ですね。

では、これから彼が歩む波乱万丈な人生をとくとご覧あれ。

「先が思いやらさそうだ。」

 

 

 

おっと言い忘れるところでした。

この“東方禁初幻譚”と“東方歪界譚”、どちらもコラボ募集しています。

歪界譚の方は完結していますが、後日談という形でならコラボできます。

コラボする際は、メッセージか感想でお知らせください。

 




次回から本編です。
いよいよだじぇ。

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1章 月移住計画
Ep,1 蓬莱の薬


早速オリキャラの登場。
古代スタートだからしょうがないね。

では、本編どうぞ。


 

「どうやら完治したようね。」

「俺を誰だと思ってんだ?」

 

2、3日すると、永琳がカルマの家まで足を運んできた。腕の骨折の具合を見るためだ。しかし、カルマはもう人間ではない。驚異的な回復力を持っている。それに永琳の薬もあるおかげで1日経った頃にはほぼ再生していた。

 

「で、今日はなんの用だよ。」

 

永琳は普段、自分に当てられた研究室にいるはずなのだが、今日に至ってはカルマの家に来ている。傷の具合なら別に見なくても完治していることくらい把握できるはずだ。

 

「ちょっと手伝って欲しいことがあってね。」

「手伝い?」

「そうよ。上層部に新しい薬の研究結果を提出しに行くの。」

 

彼女は上層部からの依頼と自分の意欲、みんなの役に立つかで薬を開発している。カルマの時は見事に騙されたために、この3点について、彼女は厳しく判断するようになった。

 

「資料持っていくだけでなんで俺が手伝うことになんだよ。」

「思いのほか多くなっちゃったのよ。しょうがないじゃない。」

「これだから研究者は。」

「医者よ。で、手伝ってくれるんでしょ?」

 

カルマはため息をつくと、腰を上げた。

 

「わかった、行くよ。」

「よろしい。」

 

研究室に向かい、入ってみると、机の上だけでなく、床の上にも研究結果と思われる紙が散らばっていた。

 

「おい・・・。」

「・・・・・・。」

「目をそらすなや。」

「・・・言いたいことはわかるわ。研究に没頭しすぎ、でしょ?」

「これで何回目だと思ってんだ。さっさと片付けるぞ。」

 

2人で永琳の部屋を整理すると、散らばっている紙の全てが同じ研究で用いられた資料だということが分かった。そうなると、紙の量は尋常じゃないわけで―

 

「どうすんだよ、この量。」

「どうしましょう?」

「どうしましょう、じゃねぇよ。」

「そういえば、禁術の―」

「使うわけねぇだろ。」

「ですよねー。」

 

何か乗せて運べるようなものがあれば良いのだが、あいにくここにはそのようなものは置いてない。

 

「しょうがない、分割して運ぶぞ。この量なら日が暮れる前に終われるだろ。」

「そうね、お願い。」

 

2人は手近にある資料を手に外に出た。研究室から上層部まで1kmもないところにあるためそれほど疲れるようなことはない。だが、これだけの研究結果をまとめた資料となると、どういったものなのか、気になってくるものだ。

 

「なぁ、永琳。」

「なに?」

「今度はなんの研究だ?これだけ資料があるのは、俺の時以来だと思うんだが。」

「蓬莱の薬よ。」

「蓬莱・・・?」

 

蓬莱という名はこの都市で知らないものは誰もいない。上層部の1人に蓬莱の名を持つ人物がいるのだ。正しく言うのならば、蓬莱山だが。

 

「それって、蓬莱山影成(ほうらいさんかげなり)党首のことか?」

「そうよ。彼から直々に頼まれたのよ。」

「ふぅーん。」

 

どんな目的があるのかはわからないが、彼は悪巧みするような人ではない。これは都市全員が知っていることだ。

 

「どんな効力を持つんだ?その蓬莱の薬は。」

「不老不死になるわ。」

「何?」

 

不老不死。そのまま老いることも死ぬこともなく生き続けるということだ。これは禁忌の1つだ。そんなものに手を付けるなど正気の沙汰とは思えない。

 

「どういうことだ?説明しろ。」

「1つの親バカってやつよ。姫様のことは知ってるでしょ?」

 

蓬莱山影成の一人娘、蓬莱山輝夜。彼女は生まれつき病弱で、外に出たことがほとんどないらしい。永琳は医者として彼女との面識が既にあるが、カルマは彼女にあったことがない。

 

「なるほど。理由は分かったが、わざわざ不老不死にしなくてもいいだろ?」

「それもそうなんだけど、あんな姫様を見ていれば、いつ死ぬかわかったものじゃないもの。しょうがないわ。」

「・・・・・・。」

 

気がつけば、上層部のある館についていたようだ。永琳は扉を開け、中を進んでいく。カルマもそれに続く。すると、1つの扉の前で足を止めた。

 

「持ってて。」

 

カルマは嫌そうな顔をしたが、ため息で了承。腰を屈めると持っていた資料の上に永琳の持っていた資料を積み上げる。永琳は扉をノックすると、中から男性の声が聞こえてきた。

 

「八意永琳です。薬についての資料の一部を持ってきました。」

「入りなさい。」

 

中は応接間となっているようだ。中央の机を挟むように長い椅子が置かれている。中にはツクヨミとは一人の男性が腰掛けていた。ちなみにカルマは部屋の外で待っている。

 

「薬ができたのかい?」

「理論上は可能ですが、まだ完成には至りません。そのため今日は資料のみを持ってきました。」

「一部というのは?」

「研究していましたら、量が多すぎてしまいまして。そのため、今からカルマと一緒に往復して持ってくるつもりです。」

「不老不死になる薬のことだ。禁忌について研究すればそれだけの量になってもおかしくはない。すまないな。」

「いえ、党首様や姫様のお役に立てるのならば光栄です。」

「そうか。・・・彼を待たせても申し訳ないからな。入ってもらいなさい。」

「ありがとうございます。」

 

永琳は一礼すると扉を開けた。

 

「入っていいって。」

「わかった。失礼します。」

 

カルマも一礼して部屋の中に入る。彼自身、蓬莱山影成と直接会うのは初めてのことだ。

 

「彼がカルマくんだね。ツクヨミ様やアマテラス様、永琳から聞いているよ。」

「それは光栄です。」

「輝夜も君の話を聞いて会いたがっている。この資料を運び終えたら会ってくるといい。」

「そうですか。では明日あたりに永琳とお伺いします。」

「今日でもいいのだが・・・。」

「いえ、永琳の紙束が尋常じゃないので。」

 

カルマの一言に影成は彼の置いた資料に目を向ける。これよりも多いとなるとこの応接間

が覆い尽くされてしまいかねないと、今初めて気づいたのだろう。彼の顔が一瞬引きつったのを2人は見逃さなかった。

 

「そ、そうか。なら明日来るといい。歓迎するよ。」

「ありがとうございます。ではまた来ます。」

「失礼します。」

 

2人は部屋から出て再び資料を運び作業へと専念し始めた。大体4時間で運び終えることが出来た。そのあと、永琳は蓬莱山の薬の調合などの研究。カルマはツクヨミからの穢れ討伐。影成は大量の資料に目を通すことになった。

 

 




無理やりボケツッコミを入れてみました。
なんだが、ギャク系の方が私的にしっくり来ますね。
でも、今作はシリアスが多いです。
次回はニートの登場です。

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,2 幼き夜の輝き

今回は輝夜の登場。
私個人として、過去はこんな感じじゃないと思うんですけどね。
書く手が止まらなかったんです。

では本編どうぞ。


「言っておくけど、失礼のないようにね?」

「何回目だよ、それ。わかってるから。」

 

後日、2人は研究室で待ち合わせ、蓬莱山輝夜のいる場所へと向かっていた。相手は現当主の愛娘。失礼のあるようなことはあってはいけない。

 

「ならいいわ。姫様の部屋はこっちよ。」

 

2人がいるは中央病院。永琳の研究室がある場所のすぐそばにある場所だ。立ち止まると扉のそばにある名札に“蓬莱山輝夜 様”の名前があった。

 

「姫様、永琳です。入ってもいいでしょうか?」

「いいよ。」

 

中は完全に個室ようになっていた。ベッドには親そっくりに黒髪が長く伸びている一人の少女がいた。

 

「今日は診察じゃないと思うんだけど、どうしたの?」

「姫様に会わせたい人を連れてきたの。」

「お父さんから聞いたけど、誰だか教えてくれなかったの。だから、楽しみにしてたわ。」

 

秘密にする必要性がないような気もするが、1つのサプライズというものだろう。

 

「入ってきていいわよ。」

 

カルマは扉を開け、中に入る。ベッドに腰掛けている少女がどうやら目的の人物のようだ。

 

「はじめまして、カルマです。」

「あなたがカルマ・・・。はじめまして、蓬莱山輝夜よ。」

 

彼女が蓬莱山輝夜。後に蓬莱山の薬を飲むことになる少女。

 

「噂は聞いてるわ。ツクヨミ様とアマテラス様のお墨付きって。」

「そんなことはありません。私はただやりたいようにやっているだけです。」

「そうなの?あ、あと、敬語はいいわ。永琳は仕事場だからって敬語外してくれないけど、あなたは違うでしょ?」

「・・・わかった。そうさせてもらう。」

「それじゃあ、私は仕事に戻るわね。姫様、カルマをよろしくお願いします。」

「うん。」

 

永琳は一礼すると病室から出て行った。すると輝夜はベッドに横になった。

 

「ごめんね、こんな形で会うことになって。私がもっと元気だったら。」

「やめておけ。そんな想像をしても虚しいだけだ。」

「・・・随分はっきり言うのね。」

「ないものを強請ってもしょうがないだろ。」

「ふふ、そうね。・・・うっ!?」

 

突然、口を覆う苦しそうに咳き込んだ。手のひらには微量だが、血がついている。なるほど、これなら、彼女の親も禁忌に手を出すに決まっている。

 

「ごめんなさい。こんな状態で。」

「・・・ちょっと待ってろ。」

「なに?」

「第50禁忌魔法“未来視”。」

 

彼は右目を閉じ、赤い瞳で輝夜をジッと見つめる。流石にじっと見つめられたことがない輝夜は恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 

「・・・なるほど。」

「な、なにが?」

「少なくとも、輝夜は長生きする。これは断言できる。」

「・・・ほんと?」

「あぁ、嘘はない。俺が今使った魔法は未来を見ることができる。その未来は必ず訪れるものだ。」

 

蓬莱山輝夜は長生きする。それは間違えようのない事実だ。ただ、彼は詳細について話していない。彼女が長生きするまでに何があり、その時何をしているのかを。

 

「よかった・・・。」

 

しかし、彼女はまだ幼い。その事実を知らせるのは酷だろう。自分が“あの薬”を飲むという大罪を犯すことになるなど。そしてそれに関わった彼女の父親の運命も。

 

「今のが、カルマが使える禁忌の魔法?」

「そうだ。よくわかったな。」

「うん。アマテラス様から聞いたの。」

 

影成の言っていた通り、ある程度は彼のことを聞いていたようだ。しかし、アマテラスはいつ彼女にあったのだろうか。

 

「他に何ができるの?」

「禁忌魔法なら全て使える。」

「そうなんだ、すごいね!」

 

まだ幼いからだろう。彼女は無垢であると同時に無知だ。禁忌の魔法には代償が必要だ。カルマだからからこそ、代償無しに扱うことができる。

 

「輝夜はずっとここにいるのか?」

「そう、物心ついた時からここにいるの。だから、皆みたいに外で遊んでみたいの。」

「そうか。俺で良ければ外の話をするが。」

「ほんと?聞きたい!」

「そうだな。何が聞きたい?」

「んーと、そうねぇ。」

 

このあと、彼は輝夜に外での出来事を話した。最近の遊びやお店、アマテラスのことや永琳の失敗談。たくさんの話を聞かせていた。勿論、穢れとの戦闘の話は省いている。気がついた時には、昼食の時間帯になっていた。

 

「失礼します、姫様。」

 

永琳が昼食を持って病室に入ってきたことで、2人は現在の時間を悟った。

 

「もうこんな時間か。そろそろ行くか。」

「カルマの仕事?」

「そうだ。ツクヨミ様に呼ばれてるんでな。」

「・・・明日も来てくれる?」

「時間があれば来るさ。」

「ありがとう。じゃあまた明日ね?」

「あぁ。」

「気をつけるてね、カルマ。」

「わかってる。」

 

カルマは輝夜の病室をあとにしてツクヨミの元へと向かった。ツクヨミはいつものように椅子に腰掛けているが、何かの資料を読んでいた。

 

「失礼します。」

 

ノックをしてカルマが部屋に入ってきた。ツクヨミは資料を横に置く。

 

「カルマ。穢れを倒しに行く前に確認させてくれ。」

「なんでしょうか?」

「穢れが活発化してきている。そして近々、ここに攻めてくる。これに間違いはないな?」

「はい。ありません。」

「そうか・・・。カルマ、明日、会議室に来てくれ。そこでこれからの事を話す。会議が終わったら残ってくれ。」

「わかりました。」

「以上だ。いつもどおり、穢れを殲滅してくれ。」

「はい。失礼します。」

 

カルマは一礼して、ツクヨミの部屋をあとにした。ツクヨミの読んでいた資料。そこにはこう書いてあった。

 

『月移住計画について』

 

 

 




まさかの病弱設定w
ま、気にしないでください。
では、今回使った禁忌魔法の紹介です。

第50禁忌魔法“未来視” ― 未来を見ることが可能。それは避けられない事実だが、それは使用者が関わっていない条件下のもの。未来を変えたければ、使用者がその時に関わらなければならない。使用者が誰かに話し、話を聞いた誰かであっても、未来を変えることはできない。

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,3 月移住計画

あぁ、ボケツッコミがない・・・。
なんだかな・・・。

本編どうぞ。


カルマは会議室に呼ばれていた。そこにはツクヨミを始め、アマテラス、蓬莱山影成等の上層部のメンバーが集められていた。集まるように連絡を入れていたツクヨミが、早速内容を伝え始める。

 

「まず、皆にとって、穢れの存在は知っていて当たり前だろう。調査によると、昨今奴らの動きが活発化しているらしい。このままではこの都市もいつ落とされるかわからない。そこで私はある計画を企てた。」

「ある計画、ですか?」

「それはなんです?」

「月へ住処を移す、月移住計画だ。」

 

月移住計画。それは今いるこの月下巨大都市を捨て、ロケットという名の方舟に乗り込み、月面上に移住するという計画だ。既に技術班は動き出しており、あとは方舟を量産するのみらしい。しかし、それには長い時間が必要とのことだった。

 

「予定では、あと十数日で人数分できる。何か異論はあるか?」

 

周りを見渡すが、誰も反対する者はいなかった。

 

「では、残りの時間に何があるかわからないが、それまで耐えてくれ。以上だ。」

 

ツクヨミの声に集まっていたメンバーがその場をあとにする。残されたのはツクヨミとカルマの2人だ。

 

「すまない、カルマ。」

「気にしないでください。それで、俺になんのようですか?」

「言いにくいのだが・・・。」

 

辛そうな顔をするツクヨミ。カルマはジッと次の言葉を待つ。2人きりということはそれだけ重要な話か、もしくは誰かに聞かれるとまずい話かのどちらかだ。

 

「方舟に皆が乗り込む間、穢れから防衛して欲しい。」

「・・・なるほど。つまりは置き去りというわけですね。」

 

方舟に皆が乗り込むまで防衛しなければならない。つまりは最後の方舟が飛び立つまでの間、守り続けるということになる。穢れの数は未知数。その相手をするとなると、必然的に置き去りという形になるのだ。

 

「方舟に人が集まれば穢れが必ずよってくる。言い換えれば、奴らにとって絶好の餌場となるだろう。時間ギリギリまで防衛部隊には出てもらう。最後の船に乗り込んだら、飛び立つことになっている。それと同時で爆弾を投下するつもりだ。お前なら死ぬことはないだろう。こんなことを頼むことになってすまないと思っている。だが、お前の力が頼りなんだ。」

「わかっています。そのためのこの力です。この身を何回滅ぼしてでも、必ず死守して見せます。」

「・・・“友人”として、本当にすまない。」

 

そこでカルマは少し驚いた。ツクヨミが彼を友人と言ったのは何年ぶりだろうか。ツクヨミが今の地位について以降、彼を友人と言ったことはない。アマテラスをカルマが呼び捨てにしているのは、その名残だ。幼少期、カルマとツクヨミ、アマテラス、永琳は友達だったのだ。

 

「明日は雪でも降るかもな。」

「そうかもしれんな・・・。それでは・・・。」

「あぁ、任せろ。」

 

 

 

 

「月移住計画?」

「あぁ、そうだ。」

 

ツクヨミと別れ、次に訪れたのは輝夜の病室だった。訪れたのは日が傾き始めている頃だったが。

 

「穢れというのは知ってるか?」

「うん。外にいる化物のことでしょ?」

「その穢れたちが活発化しているんだ。だから、月に住移り住むって計画だ。」

「月に・・・。」

 

窓から外を見ると、ぼんやりだが、白い月が見えていた。

 

「あそこに行くのね・・・。」

「そういうことだ。」

「カルマと一緒の船がいいなぁ。」

「・・・少なくとも永琳とは一緒だろう。」

「ふふ、そうだね。」

 

一瞬、本当のことを話すべきか悩んだが、話さないほうがいいだろう。ここでそんなことを知れば、彼女の精神に異常をきたし、今の病状を悪化させるかもしれない。“未来視”で、彼女が生きていると分かってはいるが、心配であることには変わりないのだ。勿論、永琳にも話すつもりはない。彼女のことだ。必ず止めに入るだろう。だが、これは彼でしか成し遂げられない。

 

「どうしたの?」

「ん?いや、なんでもない。」

 

どうやら少し考え込んでしまったようだ。

 

「今日はどんな話を聞かせてくれるの?」

「そうだな・・・。」

「あ、そうだ!」

「何か聞きたいことでもあるのか?」

「えっとね、カルマがどうして禁忌を使えるようになったか聞きたいの。」

 

これは困ったことになった。彼が魔人になった理由は、ツクヨミとアマテラスくらいしか知らない。誰かに知られればまずいことになるということもないのだが、彼自身は気恥ずかしく思っている。

 

「わかった、話す。だが、永琳にはなにも言わないでくれ。」

「・・・?わかったわ。」

 

カルマは腰掛けていた椅子に深く座り直し、何か思い出すように頭上を見上げた。

 

「そうだな・・・。あれは俺がまだ輝夜くらいの頃だったか。」

 




次回明かされるはカルマの過去。
彼がどうして魔人になったかわかるかと思います。

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

こちら前作「東方歪界譚」の主人公です。
居眠りしてたので、パシャリっと…あ…。
「何…してるのですか?」
あはは…逃げろっ!
「逃がしません!」
ぎゃああああああああ!!?

http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im4293981

開けなかったら、きっとそれはこの娘の悪あがきなんです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,4 追憶

今回はカルマの過去のお話。
ぶっちゃけ、ガチの戦闘を書いていると、いつの間にか時間が無くなります。
不思議ですねぇ。

では、本編どうぞ


数年前、カルマは防衛部隊の一人だった。それも副隊長という地位についていた。この時には、既にツクヨミと永琳は今の地位を獲得していた。

 

「よぉ、カルマ。おはようさん。」

「おはよう。」

 

カルマに話しかけてきたのは防衛部隊の隊長―如月風真(きさらぎかざま)という男性だ。彼は持ち前の気安さで人気があり、それと同時に仲間を思いやる心も兼ね備えている。

 

「相変わらず、カルマは冷たいねぇ。」

「悪かったな。」

「悪いなんて言ってないぞ。そうだ、今日の仕事が終わったら、飲み行こうや。」

「はぁ?」

「みんなでパァーッとやろうぜ。八意さんも呼んで、な?」

「勝手にしろ。」

「クールだねぇ。そんなんだから、ぼっちなんでしゅよー?」

「あぁ、もう!わかったから、さっさと行け!」

「へーへー。そんじゃま、おさきー。」

 

こんな感じに接してくる毎日。彼はあれで人気なのだ。

 

「遅刻すんなよー。」

「わかってる。」

 

今日はいつもと同じ、穢れからの防衛だ。だが、近々強力な反応を感知したらしい。その為、様子見という形で出撃することになっている。また、状況次第では速やかに殲滅するよう命令がでている。

 

「おぉおぉ、結構いるな。」

「いつものことだろ。」

「ごもっともで。そんじゃ、皆。準備はいいか!行くぞ!」

『オオオオオオ!!!』

 

カルマの得物は大鎌だ。彼は先端に重りがついた武器の扱いを得意としている。簡潔に言うならば、遠心力を利用した戦闘法だ。一直線に穢れの群れへと突っ込んでいく。斜め下に鎌を振り抜き、一刀両断。そのまま地面に刺さると、勢いそのまま飛び越える。カルマに掛かるベクトルにより、鎌が地面から抜けた。空中で担ぎなおし、再び振り下ろす。穢れを両断し、血しぶきが飛ぶ。構うことなく、横なぎに回転。自分の周りにいた穢れを切り捨てる。鎌を持ち替え、駆け抜ける。刃に引っかかる穢れを次々に両断していく。振り抜きざまに背後から来ていた穢れを切る。また、勢いのままに地面に鎌が突き刺さり、浮く身体。そこでカルマは目にした。一瞬とはいえ、遠くに見える何か。こちらを傍観していることがわかる。おそらく、あれが報告にあった強力な反応だろう。

 

「狩り取るッ!」

 

カルマはそれに向けて走り出した。どうやら相手もこちらに気づいたようだ。腕組を解いた。穢れにしては珍しく人型のようだ。そして近づくにつれてわかってきた。身体の型は女性、頭に角が2本ある。

 

「よく気づいた、人の子。」

 

驚いたことに言葉も話せるらしい。目の前までくると、カルマは鎌を振り下ろす。しかし、横に一歩ずれるだけで、容易く躱されてしまった。そのまま乱舞へとつなげるが、簡単に躱されてしまう。

 

「貴様、誰だ。穢れか?」

「妾をあんな下等と一緒にするな。妾は鬼子母神じゃ。」

「鬼子母神だと?」

 

鬼子母神。神の名を持つものが何故こんな場所にいるのか。

 

「お主、中々の身のこなしじゃの。」

「ふん。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

だが、カルマの猛攻は当たらない。鬼子母神は軽い動きで躱していく。これでは埒が明かない。仕方ないが、カルマは戦闘方法を変更した。大鎌を振るのでは、僅かながらタイムラグが生じる。なら、そのタイムラグを無くすために、鎌を生き物のように振るう。腕や胴体を主軸として、鎌の柄がカルマに巻きつくように動き、回転し切り裂く。先程よりもかなり速度が増した。

 

「おっおっ?」

 

鬼子母神の服に切れ目が入った。それだけでなく、小さいが体のあちこちに切り傷は生まれている。

 

「これはまずいかもしれんの。」

 

鬼子母神はここで動きを変えた。鎌を止めたのだ。それも刃の部分を片手で。軌道が読めなければできないことをやってのけた。

 

―バキッ―

 

「なっ!」

 

おまけに刃も軽々と折られてしまった。

 

「それっ。」

 

鬼子母神は鎌だったものの柄を持つと、カルマごと放り投げた。すぐに空中で立て直そうとするが、鬼子母神の方がそれよりもはるかに速い。体勢を立て直す前に追いつかれた。そこへ凄まじい威力の蹴りが放たれる。

 

「グハッ!?」

 

蹴りは腹にめり込んだ。骨の折れる音が聞こえる。おそらく内蔵に刺さっているだろう。蹴り飛ばされたカルマ。穢れの群れまで飛ばされ、地面を跳ね、都市を囲む障壁にぶつかることで、やっと止まった。

 

「おい、カルマ!!?」

 

彼の元に如月が駆けつける。

 

「ガフッ!」

「これはひどいな。骨が数本やられてる。」

「聞け、人の子等よ!」

 

鬼子母神の声が辺りに響き渡る。

 

「妾は鬼子母神。鬼の親じゃ。穢れごときに手こずる人の子等よ。妾は、後にそこの都市を潰しに来る。特に、そこの鎌使いの若者。妾は主が気に入った。もっと強くなれ。時が満ちた時、妾との闘争を楽しもうではないか。」

 

そう言い残し、彼女は何処かへ行ってしまった。

 

「鬼子母神・・・、あいつは一体・・・。」

「―ッ!」

「あ、おい。カルマ!しっかりしろ!」

 

だが、そこで彼の意識は途切れてしまった。

 

 

 

気がついたとき、カルマは病室にいた。生きていることは確かのようだ。

 

「カルマ・・・?」

 

声の方に視線を向けると、アマテラスが椅子に座っていた。

 

「大丈夫?」

「・・・問題ない。」

「よかった。今、永琳を呼んでくるね?」

「分かった。」

 

アマテラスが病室から出て行った。カルマは身体を起こそうとするが、痛みでまともに動くことができない。

 

「ちっ・・・。」

 

大人しく横になり、鬼子母神について考え始めた。彼女はまた来ると言っていた。それも、この都市をつぶしに来ると。それまでに強くならなければならない。今よりもはるかに・・・もっと・・・。

 

「カルマッ!」

 

永琳が息を切らせながら入ってきた。それだけ心配してくれていたのだろう。だが、病院で走るのは控えて欲しいものだ。

 

「大丈夫よね?」

「問題ないが、まだ完治とまでは行ってないか。」

「そう・・・、良かったわ・・・。本当に・・・。」

「駄目だよ、永琳。病院で走っちゃ。」

 

アマテラスが遅れて病室に入ってきた。

 

「心配だったのはわかるけどねぇ。」

「永琳。」

「何かしら?」

「アマテラスと2人にしてくれ。」

「・・・?わかったわ。でも何かあったら呼びなさいよ。」

「あぁ。」

 

永琳が出て行くとアマテラスが椅子に腰掛けた。

 

「私に話って何?」

「鬼子母神って名前に聞き覚えは?」

 

神のことは、同じ神に聞くのが一番だろう。カルマの考えはどうやら当たっていたようだ。

 

「知ってるわ。貴方の怪我からすると、彼女が出てきたのね。」

「あぁ。あいつはこの都市を潰すって言っていた。」

「なんですって!?」

「それで折り入って頼みがある。」

「・・・何かしら?」

 

まだカルマが今よりも幼い時のこと、アマテラスとツクヨミは生まれつき神力を手にしていた。そのためか、早い段階でカルマには違う力があることがわかった。後にそれは魔力と言われる。

 

「俺には昔から神力と違う力があると言ってたな。」

「うん。」

「その力を使いこなしたい。」

「禁忌を犯すことになるわ。いいのね?」

「かまわない。」

「わかったわ。ツクヨミに連絡してみる。」

 

それからの時間の流れは早かった。ツクヨミがどんな形であれ、こうなることを知っていたらしい。薬は完成していた。カルマが薬を服用しようとするのを、永琳が止めようとする。彼女が作ったものだ。それがどれだけ危険なものか分かっていたのだろう。だが、彼を止めることはできなかった。そして、今のカルマが誕生した。鬼子母神と戦うため、この都市と皆を守るために。

 

 

 

 

「そんなことがあったのね。」

 

輝夜は静かに聞いていた。カルマは腰をあげる。そろそろ帰る時間だ。

 

「その鬼子母神に負けないでよ、カルマ。」

「当たり前だ。負けるつもりもない。」

 

カルマは病室をあとにした。

 

 

 

 

 

「あやつはどれ程強くなったか、楽しみじゃ。今行くぞ、待っておれ。クハハ、ハハハハ!!」

 




今回登場したには鬼子母神でした。
個人的にデザインしましたが、簡単に言えば、萃香と勇儀を混ぜてみて、そこにオリジナルをぶち込んだだけのものです。
要望があれば全身図も描こうかと思います。
それからカルマの鎌の戦闘法はどこぞの漫画を参考にしちゃいました。
わかるかな?

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,5 禁忌と別れ

今回、戦闘回のため、禁忌魔法の登場が多いです。
そこ注意ですね。
それから・・・。

別れ。
それは何時如何なる時でも訪れるもの。

では、本編どうぞ。


方舟が完成した。それと同時に穢れの群れも押し寄せてきた。住民が我先にと避難を始める。そんな中、防衛部隊は穢れと戦うために外壁の外にいた。そこにはカルマの姿もある。

 

「よっす、カルマ。お前が俺たちといるのは何年ぶりだったかね?」

「知るか。」

 

如月が話しかけてきた。カルマは魔人となって以降、防衛部隊から抜け、一人で戦ってきたのだ。

 

「それより、前に集中しろ。来るぞ。」

「そうだなぁ。ぞろぞろと奴さんが来なすったねぇ。」

 

目の前には数万、いや数億にも達する程の穢れの群れが押し寄せていた。どれだけ時間を稼げるだろうか。

 

「行くぞ、皆!最後の防衛だ、張り切っていくぞ!」

『オオオオオオオオオオ!!!』

 

とうとう始まった。全員が群れに向けて駆けていく。

 

「そんじゃま、カルマ。先行くぞ!」

 

如月も愛用の長剣を手に駆け出した。カルマも遅れるわけにはいかない。

 

「第47禁忌魔法“堕天”!」

 

禁忌の魔法を発動する。そして風のように駆け抜け、如月を追い越した。

 

「おぉ、はえぇな。ありゃ。」

 

今の彼を視認することは通常なら不可能だ。カルマは穢れの間を縫うようにして走り抜ける。通り抜けざまに、手刀で穢れを切り裂いていく。あっという間に、彼の両手は血に染め上げられていく。だが、それはもののついででしかない。彼の目当てはその奥だ。

 

「見つけたぞ、鬼子母神!」

「主から来てくれるとは、思わなかったわ!」

 

彼の左目は第47禁忌魔法“堕天”の発動と同時に、彼女の存在を捕らえていた。ぶつかり合う拳と拳。

 

「むっ!?」

 

彼は初めて手合わせした時よりも、威力が尋常ではない。そのことを理解すると同時に、嬉しく思う鬼子母神。

 

「いいぞ!」

「はぁ!」

 

反動を利用し、お互いが距離を置く。

 

「随分と力をつけたのう。それにまとっているものも違うようじゃな。」

「あの時と同じと思うなよ。俺はもう人間じゃない。」

「そういえば、鎌をどうしたのだ?」

「あるにはある。が、魂を狩り取る即死のおまけ付きでな。」

「それは怖いの。」

 

駆け出す2人。鬼子母神が殴りにかかる。カルマはそれを横に受け流し、膝蹴りを繰り出す。蹴りは彼女の腹に食い込んだ。

 

「うぐっ!?」

「借りは返した。」

 

更に力をこめ、脚を振り抜く。鬼子母神は吹き飛ばされたが、地面に手をあて、バネのように飛び上がると、そのまま着地。どうやらそこまで威力がなかったようだ。

 

「しかと受け取ったぞ。さぁ、続けるぞ!」

「はっ!」

 

再びぶつかり合う拳と拳。殴っては防がれ、防いでは殴る。その繰り返しだ。

 

「そこじゃ!」

 

鬼子母神の拳が左肩に当たる。

 

「くっ!」

 

当たった勢いを利用し、回転。鬼子母神の顔に向けて裏拳打ちを放つ。

 

「ちぃっ!?」

 

しかし、腰を屈めることで回避されてしまう。だが、片方の角を折ることに成功した。さらに追撃を加えようと、蹴りを放つ。しかし、鬼子母神はその場から飛び退き、角に触れる。

 

「よく折れたものじゃな。」

「そりゃどうも。意外に固くて驚きはしたがな。」

 

『カルマ!』

 

そこでカルマの耳につけていた通信機に連絡が入った。声の主は如月だ。

 

「どうした?」

『こっちはもう避難できる状態だ!早く戻って来い!』

「わかった。すぐ行く。」

 

通信を切ると、鬼子母神は律儀に待ってくれていたようだ。

 

「話は終わったかの?なら続きと行こうではないか。」

「悪いが、それは無理かもな。もうすぐしたらここは焼け野原になる。助かりたければ、ここから離れることだな。」

「ふむぅ・・・、しょうがない。決着は後々つけようぞ。」

「はぁ。」

 

カルマは急いで方舟のある場所へと向かう。そこには最後の一隻となった方舟があった。

 

「カルマ、急げ!」

「わかっている!」

 

扉のそばに如月が立っていた。すぐに追いつくと、彼の隣で足を止める。

 

「ん?どうし―」

「悪いな。」

 

カルマは如月の腕を掴むと、方舟の中へと放り投げた。

 

「なっ!?」

 

中に入ったことを確認すると、カルマは扉を蹴り占めると同時に禁忌魔法を発動する。

 

「第1禁忌魔法“拒絶”」

 

すると、中にいる人たちは扉に近づけなくなった。

 

「――ッ!!――ッ!?」

 

窓から如月が何か言っているようだが、外まで聞こえてこない。カルマは発射のスイッチを押した。

 

「さようならだな。」

 

どんどん小さくなっていく方舟。カルマは手を振った。またいつか会えるかもしれない。そんな淡い思いとともに。

 

「・・・すぅ・・・はぁ・・・。」

 

振り返ると穢れが既に都市内部へと押し寄せてきていた。

 

「来いよ、ド低脳共がッ!!!」

 

再び堕天を発動し、穢れの中へと突っ込んでいく。倒しても倒してもキリがない。そんな中、穢れが空に向かっていくのが見えた。

 

「行かせねぇよ!第16禁忌魔法“テンペスト”!」

 

カルマの右手から光が放たれた。それは空の穢れを飲み込み、消失させる。左手を穢れの群れに向け、そちらにも放つ。一気に減る穢れ。そこで風切り音のような音が聞こえてきた。見上げると、空から爆弾が降ってきていた。どうやら無事、投下したらしい。

 

「ここまで、だな。」

 

 

 

爆弾が地面に触れた。その時、凄まじい熱量と光量、衝撃がカルマもろとも辺りを包み込んだ。爆発が収まった時、そこには誰の形も影もいなくなっていた。

 

 

 

場所は移り、方舟内部。ツクヨミの胸ぐらを永琳が掴んでいた。

 

「カルマはいない?どういうことよ!」

 

きっかけは輝夜の些細なつぶやき。カルマはどこにいるのか、というものだ。永琳もそれは思っていた。だから、最高幹部であるツクヨミに聞いた。その答えがカルマはいない、というものだった。

 

「カルマは最後まで私たちを守った。それだけだ。」

「アンタね!それでも私たちの親友なの!?」

「永琳、落ち着いて、ね?」

「―ッ。」

 

アマテラスに止められ、永琳はツクヨミの胸ぐらから手を離した。

 

「私だって辛かったさ。だが、それなら最後まで誰が全員を守る?押し寄せている穢れの、それもあんな数に対抗できるのはカルマしかいない。そう考えたのが、この結果なんだ。」

「・・・。」

「それに・・・。」

「・・・?」

「アイツがそう易々とやられるような奴じゃない。それにアイツは死なない。死んだとしても死ぬことはない。」

「そうよ、永琳。また会えるわ。」

「また・・・会えるかしら?」

「いずれ、私たちが地上に行く時がくる。その時に会える。」

「そう・・・よね。カルマ・・・。」

 

 

 

舞台は再び地上へと移る。カルマの姿はどこにもなかった。一陣の風が吹いた。それは一点に塵のようなものが集中している。すると、それは少しずつ形となっていく。

 

―第7禁忌魔法“黄泉還り”―

 

「―ハァッ!くっ・・・。はぁ・・・はぁ・・・。」

 

カルマへと形を変えた。

 

「流石に力を使いすぎたな・・・。」

 

彼はその場から離れると、森の中に入った。その奥に洞窟を見つける。

 

「ここいらでいいか。第1禁忌魔法“拒絶”。応用“拒絶結界”。」

 

洞窟の入口に魔法をかける。これで、ここには誰も近づけなくなった。

 

「しばらく、寝るか。力が・・・回復す、るまで・・・。」

 

そして、カルマは永い永い眠りへと落ちていった。

 




地上に残ることを隠しながら、戦うカルマ。
そして別れ。
どういう形であれ、別れとは必然的に訪れるものです。
みなさんも今の時間を大切にしてくださいね。
(柄にもないこと言ってるな、私。はずかしっ///)

そうだった。言い忘れてた。
カルマの口癖は「ド低脳」です。

今回、カルマが使った禁忌魔法の説明です。

第1禁忌魔法“拒絶” ― 森羅万象すべてものから拒絶させる。近づこうという意思はあっても体は拒絶し、触れることはできない。
応用“拒絶結界” ― 空間から一定の範囲を拒絶させることで、空間を分離する。
第7禁忌魔法“黄泉還り” ― 死んだ者を生前の状態に甦らせる。
第16禁忌魔法“テンペスト” ― 光線を放ち、触れた物は生き物や無機質関係なく、光に触れた場所から少しずつ気化していく。
第47禁忌魔法“堕天” ― 身体能力を異常なまでに上昇させる。視力は平地なら地平線まで見渡すことができる。速度は軌跡が残る程度の速さ。

次回から諏訪大戦編へと突入します。こうご期待ください。
それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました

私の大学友達が前作‟東方歪界譚”のEXボスを描いてくれました。

【挿絵表示】

なにこの画力。ぱるぱるぱる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2章 諏訪大戦
Ep,1 魔界誕生秘話


今回はそこそこギャグが入ります。
やっぱりこういうのがしっくりきますね。

では、本編どうぞ。


「やだ!やだやだやだやだあああああああ!!!」・゜・(>Д<)・゜・

「・・・・・・。」

 

今、カルマの目の前には地面に寝っ転がりながら暴れている女の子がいた。何故このようなことになったのか。それは数時間前に遡る。

 

 

 

月移住計画による爆弾投下から、どれだけの年月が過ぎたのだろうか。既に辺りには自然が戻り、都市も穢れも痕跡が残っていなかった。そしてある日のこと。カルマが眠る洞窟に1人の少女が近づいてきていた。赤い服に身を包み、白い髪にはぴゅんとアホ毛ができている。

 

「ここら辺のはずなんだけどなー。」

 

何かを探しているようだ。辺りをキョロキョロ見渡している。

 

「あ、あそこだ!」

 

どうやら目的のものが見つかったらしい。彼女は洞窟に近づいていく。

 

「やっぱりこの奥からだね。すごい魔力を感じる・・・。これは・・・結界?でも、随分壊れやすくなってきてる。」

 

少女は洞窟の入口に触れようか触れないか迷ったが、意を決っして触れてみた。すると、結界は容易く壊れる。

 

「弱っ!?」

 

だが、それと同時に中から禍々しく濃密な魔力が漏れ出てきた。

 

「な、なにこれ・・・?奥に何があるの?」

 

少女が洞窟に足を踏み入れる。少し進むと、誰かが寝ているのが見えてきた。魔力はそこから溢れ出ている。

 

「男の人?なんでこんなところに・・・。起こして大丈夫かな?」

「残念だったな。今起きた。」

「きゃあっ!?」

 

少女は驚き、飛び退く。男性はゆっくり起き上がると体を伸ばした。

 

「あー、よく寝た。」

「あ、あなた・・・誰?」

「それはこっちの台詞なんだが。」

「私は神綺っていうの。」

「そうか。俺はカルマだ。」

 

少女―神綺をカルマは見つめている。彼の知る限り、このような子を見たことがない。それに結界を壊されたことから、それなりに長い時間が経過しているのだろう。

 

「どうして、ここで寝てたの?」

「ん?ただ力の回復をしていただけだ。さて、お前は俺になんのようだ?」

 

ここにいる以上、彼女は何か用があってきたのだろう。

 

「う、うん。すごい魔力を感じたから、それをたどってきたの。」

「魔力・・・?・・・なるほど。」

 

カルマの持つ力が“魔力”と呼ばれているようだ。それを初めて理解する。それから神綺の話を聞くと、彼女は家出をしてきたらしい。そして、行く宛もなく歩いていたところでカルマの漏れ出る魔力を感じ取ったようだ。

 

「それでね、お願いがあるの。」

「なんだよ。」

「私の世界を作って欲しいの!」(`・ω・´)

「断る。」

「即答!?」Σ(゚д゚lll)

 

神綺は、まさか即答されると思わなかったのだろう。カルマ自身は何故断られないと思ったのかわからないようだ。

 

「どうして俺がお前の世界を作らなきゃならないんだ。」

「だって、カルマの魔力ならできると思ったんだもん。そのためにここまで来たのに・・・。」

「他にあたれ。」

「やだ!」

「今度は、お前が即答か。」

 

そして、現在に至るわけだ。何故、ここまで自分の世界を作ることに断るのかわからないが、それ相応の理由でもあるのだろうか。

 

「何故、そこまでして自分の世界を作りたいんだ?」

「んーとね、皆が私から離れていくの。」

「離れる・・・?」

「うん。」

 

彼女曰く、神綺は魔力に恵まれた家系に生まれたらしい。だが、彼女自身はカルマ程ではないが、膨大な魔力を持っていた。そんな彼女を家族は大切に育てたのだが、いつからか、それは畏怖のようなものを感じるようになった。彼女の魔法は普通と違う。それだけで、周りからは疎遠に扱われてきたのだ。

 

「だから、私は家出してきたの。」

「・・・・・・。」

「皆が私を“否定”するなら、私は“肯定”してくれる世界を作るの。だから、お願い!力を貸して!」

 

確かに、彼の使える禁忌魔法の中には、世界を分断できるものが存在する。彼女は優しいが故に、自分がこの世界を変えるのでなく、自分をこの世界から切り離すという選択を取ったのだろう。

 

「仮にだ。お前が作った世界でも、お前が恐怖の対象にされたらどうする?」

「大丈夫!私が新世界の神になる!」(`・ω・´)

「・・・頭、大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない!」(`・ω・´)b

 

こんな子供に世界を託して大丈夫なのか、カルマは頭を抑えた。だが、物は試しだろう。

 

「分かった。明日、ここに来い。別世界を作っておく。」

「やったー!」(((o(*゚▽゚*)o)))

「だが、その次の日次第では、その世界を消す。わかったな。」

「はーい♪」(^o^)/

 

本当に大丈夫だろうか・・・。

 

 

 

 

後日、神綺がカルマの元に訪れると、洞窟の入口に別次元へとつながるであろう、空間ができていた。

 

「もう行っていい?」

「はえぇよ。」

「えー。」(´・_・`)

「はぁ・・・、よく聞け。ここから先は別の世界に繋がっている。だが、その世界には何もない。お前が全てを創造しろ。神になると言い出したのはお前自身だ。それでも行くか?」

「行く。私がカルマの作った世界を―魔界を私色に塗り替える。」

「魔界?」

「うん。ここから先にすごい量の魔力を感じるの。だから、魔力の世界、魔界ってね。」

「わかった。まぁ、頑張れよ。」

「うん!」

 

神綺が魔界への入口に向かう。入る前にふと足を止め、カルマに振り返った。

 

「なんだ?」

「ありがとね。私なんかのために、こんなわがまま聞いてくれて。」

 

まさか、感謝を述べられるとは思わなかった。カルマは顔をしかめる。

 

「いいから、さっさと行け。」

「うん。ばいばい。」

 

そう言って、神綺は魔界へと足を踏み入れた。そして、少女は成長し、本当に魔界の神となった。だが、2人は知らない。後に、魔界の存在は多くの人々に認知されることとなる。それが、“あの女性”の封印先になることを・・・。

 




私の中では神綺はボケキャラです。
なんでだろ・・・。
そんなわけで、魔界の誕生でした。

ちなみにちょっと裏設定。
カルマを金髪金眼にした理由は、夢子とアリスにあります。
彼の血、というより魔力をモチーフにして造られたのが、この二人という設定です。
そして、カルマの紅い瞳ですが、これは前作で夢子が使ったスぺカの時に発現しています。
―ということはもう一人も・・・?

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



前作主人公さんに酔ってもらいました。
http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im4328882
流石やで(`・ω・´)b
「ありゅいでしゅよ~。」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,2 諏訪の国

お待たせしました。
今回はあの神様とあの巫女の先祖の登場です。

それでは、本編どうぞ。


カルマはどことなく足を進めていた。神綺に魔界を与え、翌日に様子を見に行くと、どうやら気に入ったらしい。そのため、魔界を消すようなことをしなかった。神綺に別れを告げ、旅に出ることにしたのだ。

 

「しかし、あの都市の痕跡が全くないな。あいつら、月に無事着いたのか。・・・今の俺には関係ないか。」

 

―イヤアアア!!―

 

突然、響き渡る悲鳴。おそらくここから近い。方角は西南。カルマは様子を見るために、駆け出した。木々の影から覗くと、10代後半辺りの女の子が妖怪に襲われていた。

 

「こ、来ないでください!」

「キャシャアアアアア!!」

「ひっ!」

 

少女は後退る。胸にはなにかを抱え込んでいるようだ。このままでは彼女の命がないだろう。カルマ自身はここでなにもせずに去るということも考えたが、後味が悪いと判断した。

 

―第22禁忌魔法“磔十字”―

 

無演唱による魔法の発動。突如、妖怪の背後の地面から大きな十字架が生えてきた。そこから飛び出す鎖が妖怪の手足に絡みつく。そして、妖怪は十字架に磔にされた。

 

「い、一体何が・・・。」

「さっさと立ち去れ。」

 

カルマが影から姿を現す。少女は彼の存在に気づいた。

 

「あ、あれは貴方が?」

「そうだ。」

「あ、ありがとうございます!」

「・・・いいからさっさと行け。」

「はい!」

 

彼女はもう一度頭を下げ、お礼を言うと駆けていってしまった。少女の姿が見えなくなると、彼は磔にされている妖怪に視線を向ける。妖怪は脱出しようと暴れるが、それも弱いものへと変わっていく。

 

「貴様、話せるだろ?生きるか死ぬか、選べ。」

「・・・生キタ、イ。」

「ふん。」

 

十字架から開放すると、妖怪は力なくそこに倒れ込んだ。彼はその妖怪から視線を外すと、その場を去っていった。

 

 

 

気がつけば、もう日は傾いてきていた。カルマは、これは野宿せざるを終えないだろうと、思い始めたとき、大きな道へと出た。そして、その道なりに進むと大きな集落が見えてきた。

 

「止まれ!」

 

入口となる場所に2人の男が立っていた。門番だろう。どちらも槍を持ち、それをカルマに向けている。もう日が暮れるという時間帯に訪ねてきては、誰もが怪しむだろう。

 

「ただの旅人だ。1日過ごせる場所を探している。」

「旅人だと?」

「1日だけでいい。泊めてもらえないか?」

「・・・・・・。」

 

どうやら警戒しているようだ。このままでは埒が明かない。とその時だ。

 

「あ、あー!貴方はあの時の!」

 

門の向こうから女の子の声が聞こえてきた。青を中心とした巫女服に緑色の髪、そして蛙と蛇の髪飾りの女の子。間違いない。彼女は先刻、カルマが助けた少女だ。

 

「こ、東風谷さま?どうしてここに?」

「買い物でここの近くまで来たんですよ。そしたらこちらが騒がしいので。」

「し、失礼しました。」

「あと、その人を通してあげてください。私の命の恩人です。」

「そうだんったんですか?ならいいでしょう。」

「通っていいぞ。」

 

入る許可が降りたようだ。通されたカルマに東風谷と呼ばれた少女は話しかける。

 

「あの時はありがとうございます。おかげで助かりました。」

「気にするな。ただの気まぐれだ。」

「でも、助けてもらったのは事実です。ありがとうございます。」

「・・・ふん。」

「私は東風谷水咲(こちやみさき)と言います。貴方は?」

「カルマだ。」

「カルマさん。お礼として私の神社に招待しますね。」

「お、おい?」

 

いきなり手を引かれ、付いて行くことになった。到着したのは一つの神社だ。

 

「諏訪子さまー!ただいまでーす!」

「おかえりーって、あれ?」

 

奥から現れたのは、大きな帽子をかぶった金髪の女の子。だが、ただの女の子ではない。カルマはツクヨミたちと暮らしてきたのだ。彼女から彼ら程ではないが、神力を感じることができる。

 

「水咲ー。私は買い物を頼んだのに、男を連れてこいなんて言ってないんだけどー。」

「あー!忘れてました!今から行ってきます!」

「・・・・・・。」

 

先も言っていたが、彼女は買い物をしていたようだ。そこにカルマが来たことで忘れてしまっていたらしい。取り残された2人の間に気まずい空気が流れる。

 

「え、えーっと。上がってくかな?」

「そうさせてもらおう。」

 

神社の中は至って普通のようだ。ただ、通常のものよりも小さいような気もする。

 

「そこで待ってて。お茶出すから。」

 

本来あの巫女がやることなのだろうが、あいにくと水咲はここにいない。少女が戻ってくると、カルマにお茶を出した。

 

「とりあえず、自己紹介しとくね。私は洩矢諏訪子。」

「カルマだ。」

 

自己紹介を済ませ、お茶を啜る。諏訪子は彼をどのような存在なのか、見定めようとしているようだ。じっと見つめている。

 

「聞いてもいいかな?」

「・・・なんだ?」

「ここにはなんの用で来たの?」

「安心しろ。少なくとも、お前の国を荒らすつもりはない。偶然通りがかっただけだ。」

「ならいいんだけど。私の国で何かしたら、容赦しないからね?」

 

諏訪子の神力が膨れ上がる。どうやら歓迎されていないようだ。カルマは涼しげな顔でそれを受け流す。伊達にツクヨミたちと暮らしているわけではないのだ。

 

「ただいま戻りましたー。」

 

しばらくして、水咲が神社に帰ってきていた。両手にはたくさんの食料を抱えている。

 

「そういえば、水咲はどこでカルマと会ったの?」

「ほら、私が薬草を頼まれて取りに行ったじゃないですか。その時、妖怪に襲われそうになったんですけど。カルマさんがそれを助けてくれたんです。」

「そうだったんだね。」

「はい。命の恩人です。」

 

ここまで絶賛されていては、見なかったことにしようとしていたなど、口が避けても言えなくなる。現に、カルマは顔をしかめ、そっぽを向いていた。

 

「そうです!お礼として、カルマさん、ここに泊まりませんか?」

「なに?」

「ほら、さっき泊まるところを探しているとか言ってたじゃないですか。ならここに泊まりましょうよ、そうしましょう。」

 

確かに野宿よりはマシだろう。一応ここの神である諏訪子に視線を向けるが、肩をすくめるだけ。彼女としてはどちらでも構わないようだ。

 

「俺は構わない。」

「じゃあ、お泊まり決定ですね!早速晩ご飯を作りましょう。」

 

かくして、カルマは諏訪の国に暮らすこととなった。

 




うーん、早苗のイメージがそのままって感じがします。
遺伝って怖いw
因みに、今のところ水咲のデザインは早苗とほぼ同じです。
ちょっと変えてみようとは思っています。

次回の更新は遅れます。
理由はカリキュラムが更に本気を出したことと、次回に入れる挿絵を描くためです。
だからデザインの話をしたのよw

今回、カルマが使った禁忌魔法です。
第22禁忌魔法“磔十字” ― 十字架を出現させ、触れた対象を磔にする。徐々に魔力や妖力、霊力といった力を奪い、それが尽きたら生命力を奪う。この能力を抑えることで鈍器のように扱うことが可能。プロローグの戦闘がこれにあたる。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,3 洩矢の巫女

課題が多い・・・。
まぁ、私が悪いんですけどねw
え?なら勉強しろって?
やだ♪

それでは本編どうぞ。


翌日、カルマは屋根の上で日向ぼっこをしていた。彼はこの国に来てから、何をするか考えていた。そこで、水咲のカルマを呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「カルマさーん。どこですかー?」

「なんだ?」

 

屋根から飛び降りると、水咲のところへ行く。水咲の手には竹かごがあった。

 

「今、暇ですよね?」

「・・・そうだな。」

 

何故、そこで「暇ですか?」ではなく「ですよね?」と、確定しているような聞き方なのか。

 

「なら、少し付き合ってくれませんか?」

「買い物か?」

「いえ、ちょっと国の外にある森に。」

 

思い浮かべたのは、2人が初めて会った時のことだ。彼は彼女の護衛ということらしい。彼自身、面倒だと思っている。しかし、ここでそんなことをすれば、彼はこの国から追い出されてしまう。彼女は洩矢の巫女。この国になくてはならない存在なのだ。

 

「わかった。行こう。」

「ありがとうございます!」

 

外に向かう道、カルマはふと思い出した。先日、彼女は薬草を持っていた。水咲は薬師でも医者でもない。ならば、何のために使うのか。

 

「聞いていいか?」

「はい?」

「いや、歩きながらでいい。お前は外で薬草を集めるつもりか?」

「そうです。よくわかりましたね。」

 

彼女は純粋に驚いているようだ。

 

「お前は役職上、薬草は必要ないだろう?何に使うつもりだ?」

「助けるためです。」

「助ける?」

「はい。」

 

水咲の話によると、病にかかった男の子がいたらしい。その家は貧乏で薬を買う金もない。父は働き、母はその子の看病につきっきり。そのため、神頼みをしにきたというわけだ。それを聞いた水咲は自ら薬草を探してくると言い出したらしい。

 

「外には妖怪がいることを忘れていましたけどね。」

 

昨日少し思ったが、彼女は忘れっぽい性格をしているらしい。それも微妙に重要なところを。

 

「なら、さっさと済ませるか。」

「そうですね。ことは急げ、です。」

「ところで、あの薬草をどこで見つけたか、覚えているよな?」

 

念のために聞いてみる。彼女は何かと忘れやすい。まさかと思い、カルマは聞いてみたのだが・・・。

 

「・・・・・・(´・ω・`)」

「・・・おい、・・・まさか。」

「カ、カルマさぁぁぁぁぁん!!」

「だー!泣くな!俺たちが会った場所に行けば、何かしらわかるだろ。さっさと行くぞ。」

「・・・はい!」

 

カルマは足早に歩を進める。水咲は嬉しそうに彼を追いかけていった。それはまるで、懐いた子犬のようだった。

 

 

 

2人は初めて会った場所に無事、着くことができた。何度か水咲が迷子になりそうになったが。しかし、ここは危険な場所だったようだ。いつの間にか妖怪に囲まれている。ただ、まだ水咲は気づいていない。カルマは、薬草を探してしゃがんでいる水咲に、小さい声で話しかける。

 

「(水咲。)」

「は、はひ!?」

 

突然、耳元で囁くように名前を呼ばれ、過剰に驚く水咲。それに構わず、カルマは話を続ける。

 

「(囲まれた。)」

「え?」

「(昨日、妖怪に襲われただろう。ここは奴らの縄張りだったようだな。)」

 

見れば、妖怪の中に水咲を襲おうとしていた妖怪もいる。数は十数体。穢れの群れと戦ってきたカルマにとって、苦ではない。

 

「(警戒しているのでしょうか?)」

「・・・・・・。」

「(カルマさん?)」

「(ここから動くな。いいな?)」

「(・・・はい。)」

 

カルマは立ち上がり、妖怪の潜んでいる方向へと歩き出す。妖怪の間に動揺が走る。だが、見つかってしまったのならば、しょうがない。一斉に襲いかかってきた。

 

「死ネエエエエエエエエエエエエエエエ!!!」

「ガアアアアアアアアアアアアア!!」

 

―第47禁忌魔法“堕天”―

 

瞬間、カルマは消えた。いや、消えたのではない。異常な脚力で踏み込み、駆け出したのだ。妖怪の合間をすり抜けるように走る。

 

「鈍ってないか・・・。」

 

カルマの右手の手には、血がべっとりついていた。妖怪は何が起こったのか分かっていない。腹を抉られた激痛に悶え苦しむ。人間なら出血多量で死に至るが、妖怪は頑丈だ。そう簡単に死ぬわけではない。

 

「まだいるか・・・。」

 

 

水咲に襲い掛かる妖怪。カルマは、音速を超えるような速度で駆け出す。一瞬で間合いを詰められた妖怪は驚く。だが、それは時間差であることにも驚いていた。彼に蹴飛ばされた後だったからだ。

 

「怪我はないか??」

「は、はい。」

「そうか。さて・・・、まだ潜んでいるのはわかるが、殺るか?」

 

血のついた右手を手刀の形にし、妖怪たちに向ける。妖怪は我先にと逃げていってしまった。それを見届けると、手に付いた血を払い、グローブをポケットにしまった。少なくとも、これで手に血はついていないように見えるだろう。

 

「所詮、腰抜けか。水咲、先を急ぐぞ。」

「・・・あの、言いにくいのですが・・・。」

「なんだ?」

「腰が抜けて動けないです・・・。」

 

カルマはため息をつくと、背を水咲に向けて屈む。

 

「おぶってやる。さっさと薬草見つけるぞ。」

「・・・はい!」

 

水咲を背負い、森を進む。それから薬草は2本だが、見つけることができた。帰りは流石に深く潜りすぎたため、堕天を発動し、諏訪の国が見えるように、木の上を跳躍しながら帰っていった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 




水咲の目がつり目ぎみになってしまった。
本当はたれ目の予定だったのですが、直すの面倒なんでこのままにしました。
そんなわけで、好感度アップイベントでした。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

犬っ娘水咲とかかわいいかも・・・。
誰か描いてくれないかな。 |ω・`)ちら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,4 気晴らし

かごめかごめの替え歌
「課題課題」
課題課題♪
課題の中の私は♪
いついつ終わる♪
提出前に♪
先生と私が面談♪
後ろの正面誰もいない♪

本編どうぞ・・・orz


今日も今日とて、カルマは屋根の上に横になっていた。ずっと暗い場所に寝ていたからであろうか。彼はよく屋根の上で日光浴をしている。

 

「んしゃっと。」

 

ボーっと空を見つめていると、屋根に誰か登ってきたようだ。視線を向けると、帽子がひょっこりと見えていた。

 

「なにしてんだ、お前。」

「よっと。」

 

顔を出したのは諏訪子だ。彼女は屋根によじ登ると、カルマの隣に腰かけた。

 

「いつもここにいるよね、カルマって。」

「暇だからな。」

「そうそう。昨日は水咲を守ってくれたみたいだね、ありがとう。」

「……勘違いするな。ここでアイツに死なれると、俺の居心地が悪くなると思っただけだ。」

「あはは。そういうことにしてあげるよ。」

 

どうやら警戒は溶けているようだ。諏訪子もカルマと同じように横になって空を見上げる。

 

「あったかいねぇ…。」

 

カルマ自身、話すようなことがない為、しばらく無言でいると、横から寝息が聞こえてきた。横を見てみると、日向が気持ちよかったか、すやすやと眠っている。

 

「…はぁ。」

 

彼女を起さないように抱き上げると、屋根から飛び降りる。幸い、衝撃を緩和するため、起こすことはなかった。そのまま諏訪子を縁側に寝かせると、カルマはその隣に腰かけた。

 

「…静かだ。」

 

耳を澄ませば、自然の流れを感じる音が聞こえ、住民の賑わう音が聞こえてくる。水咲は買い出しに行っているため、ここにはいない。おそらく賑わいの中にいるのだろう。諏訪子がカルマを警戒した理由もわかる気がする。ふと空を見上げると、ぼんやりだが、白い月が見えてきていた。

 

「月、か…。」

 

思い出すのは彼が永琳たちと過ごした日々。できるのならば、あの頃に戻りたいと思う。禁忌魔法に未来視があるのなら過去に関連するものもある。実際に過去に戻るもの。俗にいうタイムスリップだ。しかし、カルマはこれを使おうとは思わない。何せ、その時間に戻れば、それ以降の未来に影響するからだ。もしかすると、諏訪子や水咲が生まれなかったかもしれない。そういう可能性を危惧しているからだ。

 

「我ながら、執念深いな…。」

「何が?」

 

いつの間にか、諏訪子が起きていたようだ。目を擦りながら軽く欠伸をしている。

 

「いや、なんでもない。」

「…そう。じゃあさ、私と戦ってみない?」

「は?」

 

いきなりの申し出に疑問を抱かずにはいられない。彼女は手を腰にあて、自信満々といった感じだ。

 

「なんか悩んでるみたいだし、話してくれそうにないからさ。身体を動かして発散してみたらってね?」

「なら戦う以外にも方法はあるだろ?」

「私が暇だから。」

「お前…。」

「それに水咲を助けてくれた力を見てみたいってのもあるね。」

 

 

 

場所は洩矢神社の上空。諏訪子はふわふわと浮いているが、カルマは拒絶を使い、空間を拒絶することで空中を踏みつけて立っている。

 

「じゃあ、始めようか?」

「さっさと済ませてるよ。」

 

先に動き出したのはカルマだ。彼は堕天を使用しているため、音速に近い速度で駆け出した。

 

「―ッ!?」

 

流石に予想外だったのか、諏訪子は慌てて回避する。

 

「ちょまっ!?はやっ!?」

 

驚いている暇はない。Uターンし、再び襲い掛かる。諏訪子は鉄輪を取り出すと、カルマの拳を防いだ。

 

「うっぐぅ。」

 

異常な衝撃。腕どころか、全身が痺れるほどだ。カルマはステップで距離を開ける。負けじと鉄輪を投げてけるが、突如として現れた十字架に防がれてしまった。

 

「強いね、カルマって。」

「伊達に長生きしてねぇよ。」

 

この戦闘では殺してはならないというハンデがあるため、彼自身、ほとんどの能力を封じられている。そのため、これでも彼は全力ではないのだ。カルマは十字架を掴むと、諏訪子に投げつけた。等身大の十字架が回転しながら近づいてくる。目にすれば、恐怖し動けないものだが、諏訪子はそれを躱す。

 

「おわりだ。」

「え?」

 

気が付けば、目の前にカルマがいた。目の前まで近づいてきていた十字架がカルマの姿を隠していたのだ。そのまま諏訪子の腕を掴むと地面に向けて投げつけた。

 

「うっあっ!?」

 

カルマの腕力と堕天の上乗せ、重力が合わさり、諏訪子は地面に急降下を始める。さらに威力が強すぎて体勢を整えることができない。そして地面に衝撃が伝わり、砂煙が舞う。

 

「きゅ~……。」

「…はぁ。」

 

そこには諏訪子を抱えたカルマの姿があった。彼女が地面に直撃する寸前に禁忌魔法で瞬間移動をして受け止めたのだ。衝撃を緩和しきれず、彼を中心にクレーターが出来ている。流石に地面にぶつかると思っていた諏訪子は気絶をしてしまった。

 

 

 

 

「どうしたんですかっ!?」

 

何事かと水咲が急いで帰ってきた。流石にその頃には諏訪子も目を覚ましていた。

 

「あー、これはね。かくかくしかじか。」

「それで通じるのか?」

「なるほど。大体のことはわかりました。」

「通じるのかよ…。」

「それで、どっちから始まったんですか?」

「ん。」

 

すると、諏訪子がカルマを指さした。対しカルマは諏訪子を指さした。

 

「元はと言えば、カルマが悩んでいたのが悪い。」

「諏訪子が戦おうとか言い出したのが悪い。」

「はぁ!?カルマでしょ!」

「知るか。お前だろ。」

「ガルルルルッ!」

「……。」

 

最初よりも仲が良くなったようなそうでないようなよく分からず溜息を漏らす水咲だった。

 




諏訪子との仲良しイベントでした。
なんで戦闘になったんだろ・・・。
実はカルマは空を飛ぶ事ができません。
でも場所を空中で維持する方法はいくつか兼ね備えています。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

次はいよいよ始まりますよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,5 再会

課題にひと段落つきました。
でも、まだ終わってない・・・orz
現実逃避にお空でも描いてこよ・・・

では、本編どうぞ。


最初のうちは彼を不審がる人が多かったのだが、洩矢の巫女である水咲の命の恩人であること、洩矢諏訪子に受け入れられたことを知ると、よく接してくれるようになった。そして、ある日のこと―

 

「ふざけないでよっ!」

 

諏訪子の怒った声が神社の中から聞こえてきた。幸い、水咲は外出している。カルマは屋根の上で日向ぼっこをしていた。諏訪子の声に安眠妨害されたが、一応様子を見るために社内の中に入ると、諏訪子が手紙を前に怒りをあらわにしていた。

 

「どうした?外まで声が漏れてんぞ。」

「これ読んでよ!」

「あ?」

 

諏訪子が持っているものは、大和と言われる国からの手紙だった。渡された文面にはこうあった。

 

『諏訪の国、引き渡しを承諾されたし。拒否した時、我らは全力にて攻め落とすのみ。』

「ふぅ~ん・・・。」

 

カルマはこの手紙が一瞬で偽物だと理解できた。何故なら、差し出し人の名前が彼のよく知る名前だったのだ。

 

「諏訪子。ちょっと大和に行ってくる。」

「はぁ!?何言ってんの、カルマ?こんな手紙が来てるんだよ?危険だよ!」

「心配は不要だ。夕暮れまでには帰る。水咲にもそう言っといてくれ。」

「ちょっ!」

 

諏訪子の静止の声も聞かず、カルマは片手を振りながら、諏訪の国を出て行った。道なりに少し歩いてから、立ち止まる。辺りには誰もいないようだ。

 

「第3禁忌魔法“開門”。」

 

手を虚空にかざす。すると、目の前の空間が硝子のように砕け散った。その先には暗闇が広がっている。カルマは迷うことなく、その闇の中へと足を踏み入れた。

 

 

 

場所は大和の国。街は賑わい、今日も平和なようだ。その一角にある大きな神社。洩矢神社よりもはるかに大きい。その中では、神様たちが集まり、諏訪の国をどう“説得”するかの話し合いをしていた。そして異変は起きた。話し合いをしている部屋の空間の一部が硝子のように砕け散ったのだ。

 

「な、なんだ!?」

「なにが・・・!?」

 

状況は混乱している。すると、割れた空間から一人の男が現れた。黒い服に金髪。カルマだ。

 

「突然で悪いな。」

「・・・カルマ!?」

「やはり、生きていたか!」

 

そこにはあのツクヨミとアマテラスがいた。2人はここでの首相といったところだろう。

 

「ツクヨミ様、アマテラス様。彼は一体・・・?」

「カルマ。我々、姉弟の友人だ。」

「なっ!?」

 

あたりがざわめく。2人は今、神の中でも最高位に近しい存在だ。その友人となると、どれほどの人物なのかと思うに決まっている。

 

「久しぶりだね、カルマ。元気だった?」

「お陰様でな。ところで一ついいか、アマテラス?」

「なぁに?」

 

カルマはポケットから諏訪子宛ての手紙を見せた。その手紙には差し出し人の名前は“アマテラス”とある。彼の知る限り、彼女はこんな物騒な文章を書かない。それに字の癖も違う。

 

「これはお前の出した手紙か?」

「・・・・・・。」

 

手紙を受け取り、読んでいく。彼女の答えは“否”。首を横に振った。

 

「私、こんな手紙書かないよ?」

 

カルマが、手紙を全員に見せるようにした事にはわけがあった。

 

「これは貴様が出したものだな?」

 

会議に集まっている者に紛れている神を睨みつける。

 

「な、なにを証拠に!」

「貴様は、俺がこの手紙を出した時、明らかに焦った。」

「そんなことはない。その手紙は私が出したものではない。」

「へぇ・・・。」

 

カルマが怪しく笑みを浮かべる。

 

―第39禁忌魔法“ダウト”―

 

「本当に出していないんだな?」

「私ではnゴハッ!?」

 

突然、その神は血を吐き出した。体勢を崩し、膝をついて咳き込む。いきなりのことに辺りが騒然とする。カルマは血を吐き出した神を蔑むような眼で見つめる。

 

「嘘をつくからそうなる。」

「カルマ。お前、何かしたのか?」

「第39禁忌魔法“ダウト”を使ったんだ。無演唱で。」

「無演唱を使えるようになったのか。」

「まぁな。」

 

ツクヨミは膝をついている神に近づく。

 

「貴様、名を偽り、諏訪の国を脅迫したのだな。」

「ち、違います!私は―」

「第39禁忌魔法“ダウト”。嘘を見抜くだけの魔法だ。無差別にな。それに嘘の大きさによっては命を落とす。つまり、貴様は嘘をついていた。違うか、ド低脳。」

「―ッ!」

 

罵倒された神はカルマを睨みつける。すると、そばにいたもう一人の神がカルマに襲いかかってきた。どうやら、一人での独断ではなく、不満を持つ一派によって企てられたものだったようだ。

 

―第1禁忌魔法“拒絶”―

 

神の拳がカルマから逸れた。連続で殴りかかろうとしても、それはカルマに当たることなく、拳の方から逸れていく。

 

「く、くそっ!」

「やめとけ、当たんねぇよ。」

 

彼の魔力は長い間蓄えられた。それだけでなく、月の方では、皆を救ってくれた英雄として称えられている。そのためか、魔力は異質になり、無演唱も可能となったのだ。異質変化した魔力は下位の神なら凌駕できる程に変わっている。取り敢えず、血を吐いた神とカルマに襲いかかった神は捕らえられた。そして、念のためということもあり、部屋の中にはツクヨミ、アマテラス、カルマ、そして、紫がかった青いセミロングに、背中には複数の紙垂を取り付けた大きな注連縄を輪にしたものをつけている女性が残った。彼女から神力を感じることから、彼女も神なのだろう。

 

「あぁ、紹介がまだだったな。彼女は八坂神奈子。私たちと一緒に大和を築いてきた風雨の神だ。」

「八坂神奈子だ。よろしく。」

「カルマだ。」

「早速で悪いのだが、カルマ。お前がその手紙を持っているということは、お前は諏訪にいるのだな。」

 

脅迫の手紙は諏訪の国宛てに送られたものだ。それを無関係と言えるカルマが持っているとなると、そうとしか思えなかったのだろう。

 

「そうだな。俺は今、諏訪にいる。」

「・・・敵対しちゃうの?」

「俺を住まわせてくれている恩があるからな。仇で返すつもりもない。」

「そっか・・・。」

 

アマテラスが悲しそうな顔をした。2人とって、彼は友人だ。敵対することになることが辛いのだろう。だからといって、それを表に出すほど、カルマとツクヨミは甘くない。

 

「それで、手紙の件以外に何か用があるんじゃないのか?」

「あぁ。それなんだが―」

 




ツクヨミとアマテラスとの再会でしたー。
そんなこともつかの間いよいよ始まる諏訪大戦。
どうなることやら。

それでは今回カルマが使った禁忌魔法の紹介ですよっと。
第3禁忌魔法“開門” ― 空間を硝子のように砕き、空間と空間をつなげる。スキマに似ているがこれは「界」と付く空間ならどこへでも繋げることが可能。例えば、冥界、魔界、そして「平衡世界」、「異世界」など。
第39禁忌魔法“ダウト” ― 嘘を見抜くだけの魔法。だが、無差別のため、発動中に誰が嘘をついても効果が現れる。

それでは、間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

一読者のマツタケ様が前作主人公を描いてくれました。
あざっす(*´▽`*)
http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im4364945
これはお返しを描かなければ・・・(いつとは言ってない


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,6 諏訪大戦 表

諏訪大戦いよいよ始まります。

あとちょっとお知らせがあります。

では、本編どうぞ。


「私が一騎打ち!?」

「そうだ。」

 

大和での話を終え、諏訪の国に帰ってきたカルマは、決定事項を諏訪子離した。それは諏訪と大和で代表者が一騎打ちをするというものだった。ちなみに今、水咲は買い物に出ている。

 

「ど、どうして私なの?カルマでもいいじゃん。」

 

実際、カルマは諏訪子や神奈子よりも強い。だが、カルマは自分が戦うということを論外と考えていた。

 

「ふざけているのか?」

「え?」

「お前はこの国の神だ。その責任を他者である俺に押し付けるのか?なら、さっさとこの国を引渡し、どこかに消えろ。」

「・・・・・・。」

「安心しろ。相手はツクヨミとアマテラスじゃない。八坂神奈子とかいう神だ。相性はお前の方が不利だが、勝算はないこともないだろ?」

「神奈子が相手なの?」

 

諏訪子の眼の色が変わる。カルマに諭されたこともあるだろうが、相手が神奈子ということもあるのだろう。

 

「そうだ。神奈子からお前とは決着をつけたいと伝言もある。」

「やるよ・・・。絶対勝つ!」

「そうか。日程は明後日だ。準備しておけ。」

「うん!」

 

諏訪子を立ち上がり、奥間へと戻っていった。おそらく作戦かなにかを考えているのだろう。カルマは横になり、大和でのツクヨミとアマテラスと交わした会話を思い出す。

 

 

 

一騎打ちの内容も決まり、神奈子が部屋を出て行った。彼女も戦いに向けて準備するようだ。

 

「ところで、カルマ。」

「なんだ?」

「その手紙の件だが。」

 

机の上に置かれているのは、先ほどの脅迫の手紙だ。

 

「おそらくだが、あの2人で済ませられることではないと考えている。」

「他にもいるってこと?」

「そうだろうな。少なくとも、十数人くらいはいるか。」

「そんなに・・・。」

 

アマテラスはショックを受けてしまった。まさか、これほど強行派がいるとは思わなかったのだろう。

 

「我ら2人は、明日大和を発たなければならない。おそらく、その隙に奴らが仕掛けてくるはずだ。」

「一騎打ちは明後日。やるとすれば、諏訪子と神奈子が戦闘で留守にしている時だろう。」

「そうだ。カルマ、悪いが―」

「構わない。任せろ。」

「月移住の時といい、今回といい。すまないな。」

「気にするな。俺はそろそろ帰る。一騎打ちのことを伝えないといけないからな。」

「そうか。またいずれ。」

「カルマ、また会おうね。」

「あぁ。またな。」

 

カルマは立ち上がり、開門で空間に穴を開け、諏訪の国に帰っていった。

 

 

 

そして、時間は過ぎ、一騎打ちの当日となった。大きく開けた平原。諏訪子と神奈子が相反するように立っている。諏訪子から少し離れた後方には、水咲が控えている。

 

「諏訪子、久しぶりだね。」

「そうだね、いつ以来だっけ?」

「いつだったかな。忘れたね。」

「さっさと始めようよ。」

 

諏訪子がいくつか鉄輪を取り出し、両手に持つ。対し、神奈子の後ろに6本の御柱が現れた。

 

「行くよ!」

「来い!」

 

諏訪子が走り出す。そこに御柱がいくつも飛ばされてくる。

 

「地よ!」

 

諏訪子が跳ぶと、地面が変形し、諏訪子の足場となる。諏訪子の能力は“坤を創造する程度の能力”。すなわち、大地関連の自然を創造することができる。彼女はそこから跳ぶと神奈子へと鉄輪を投げつける。神奈子は動くことなく、それを御柱で防ぐ。

 

「甘いね!」

 

神奈子が動き出した。御柱の影から飛び出し、容姿に似合わない速度で駆け出した。諏訪子の能力に対し、神奈子の能力は“乾を創造する程度の能力”。彼女は天に関わるものを創造することが可能だ。神奈子はこの時、追い風を作り出していたのだ。立ち位置上、諏訪子にとっては向かい風となる。飛ばされないようにするが、それが彼女の隙となった。

 

「隙有りだ!」

「あぐっ!?」

 

御柱が諏訪子に直撃。彼女は空中に放り出された。それだけでなく、天から御柱が追い討ちのように降ってきたのだ。

 

「うがっ!?」

 

御柱の衝撃は防いだものの、重量によるダメージは防ぐことができない。諏訪子は勢いよく地面に叩きつけられた。

 

「まだ!」

 

突如として、地面が槍のように神奈子に襲い掛かる。反応に遅れ、御柱で防いだが、そのまま地面に叩きつけられる。

 

「くっ!―ッ!?」

 

身動きが取れない。神奈子は地面に埋め込まれるような形になっていたのだ。

 

「捕縛成功!」

 

上空から諏訪子の鉄輪が襲い掛かる。

 

「舐めるな!」

 

身動きがとれなくても、能力を使うことはできる。御柱が錐のような形を組み上げ、鉄輪を防いだ。その間に地面から抜け出し、距離を取る。

 

「やってくれるじゃないか、諏訪子。」

「神奈子もね・・・。」

 

お互いの間に沈黙の時間が過ぎる。だが、それはすぐに終わった。一瞬、強風が吹き荒れた。だが、それには血の匂いが混ざっていた。2人はまだ大きな傷を負っていない。ならば、何故か。神奈子が目を見開き、硬直している。おそらく何かを見つけたのだろう。その視線の先は諏訪子の後ろ。振り返れば、そこには―

 

 

赤一色に染め上げられた地に倒れる巫女の姿があった。

 




前篇ならぬ、諏訪大戦-表-でした。
なぜ、表なのかと言いますと、カルマのことを覚えている者が少ないっからです。
つまり、カルマは表舞台に出てこないということになります。
お分かりかなw?

そしてお知らせです。
東方歪界譚の番外編を書こうかなって思ってます。
その名も「東方歪界譚番外編‟東方人魚恋譚”」
名前で誰が登場するかわかっちゃいますねw

それでは、間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

またもや大学友達が描いてくれました。
前作主人公さんです。
ぶっちゃけ閲覧注意だと思います。
なんで許可降りたんだろ・・・?

【挿絵表示】


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,7 諏訪大戦 裏

寒くなってきましたねぇ。
寒さに強い私ですが、風邪をひいたみたいです。
みなさんも気を付けてくださいね。

それでは、本編どうぞ。


諏訪の国からある程度離れた場所にカルマはいた。今頃、諏訪子と神奈子の一騎打ちが始まっていることだろう。

 

「ツクヨミの言うとおりだったな。」

 

離れたところに多数の神力を感じた。堕天している赤い左目で見てみると、カルマは押しかけた時、捕縛された神もいる。

 

「待ってたぞ、ド低脳共。」

「ツクヨミ様の縁者かなんだか知らないが、お前一人で俺たちを止められるのか?」

 

笑い声が聞こえる。明らかに見下し、馬鹿にしているのだ。たかが人間と。

 

「造作もない。貴様らド低脳には俺一人で十分だ。」

 

―第25禁忌魔法“ソウルイーター”―

 

彼の手に異質な大鎌が現れた。その鋒を相手に向ける。

 

「面倒なんだよ。さっさと済ましてやる。」

「やってみろ!」

 

一気に走り出す。手始めに、目の前で彼と話していた神を蹴り飛ばした。すると、面白いぐらいに飛ばされ、群れの中に突っ込んだ。辺りが静まり返る。

 

「どうした?来ないならこちらから行くぞ。」

 

カルマの声に我に帰る神たち。雄叫びとともに戦闘が始まる。だが、神速にも及ぶ速度と異常な力量による斬撃に戦場は、カルマの独壇場とかしていく。

 

「な、なんだお前は。本当に人間か!?」

「はっ。面白いことを教えてやる。」

 

カルマと鍔釣り合いになった神が怒鳴る。それに対し、カルマはニタリと笑みを浮かべた。

 

「俺はとうの昔に人間やめてんだよ!」

 

鎌を振り抜き、後ろから襲いかかろうとしていた神ごと切り裂く。彼の持つ鎌“ソウルイーター”は元々は魂を狩り取る能力を持つ。しかし、その能力を抑えることにより、普段の数倍の力量を発揮できる。堕天による身体強化とソールイーターによる異常な斬撃。この2つがあれば、諏訪子と神奈子が同時に来ても余裕で勝つことができる。

 

「どうしたド低脳共!その程度か!」

 

カルマの顔に笑みが生まれる。久々の戦闘で血が騒いでいるのだ。

 

「こいつに構うことはない!諏訪の国に攻め込め!」

 

何人かがカルマを無視し、諏訪の国に駆け出した。だが、カルマは止めることなく、目の前の神たちを切り捨てていく。

 

「行かないのか?諏訪の国が潰れるぞ。」

「無駄なことだ。」

 

既に対策はできている。カルマは、ここに来る前に、民に何があっても国から出ないように伝えている。そして第1禁忌魔法“拒絶”の応用である“拒絶結界”を張った。そう簡単に壊される結界じゃない。案の定、国に向かった神たちが帰ってきた。

 

「貴様、あの国に何をした!」

「結界を張っただけだ。」

 

拒絶結界がある限り、諏訪の国に入ることはおろか、近づくこともできない。

 

「ならば、貴様を倒せば済むことだ!」

「やってみろよ。」

「隙有り!」

 

1人の攻撃を防いでいる隙に、もう1人の神が斬り上げ、大鎌を弾いた。がら空きとなるカルマの身体。堕天しているとはいえ、これではひとたまりもない。

 

「死ね!」

 

―第48禁忌魔法“キマイラ”応用“キメラパーツ・胴”―

 

神の斬撃は通らなかった。逆に剣の方が折れてしまった。カルマの胴体部には化物のような鱗があった。

 

「なっ!?」

「残念だったな。」

 

鎌の柄を腹部にぶつけ、腰が曲がった神の顔面に蹴りを叩き込み、空中に上がったところで鎌を振り抜く。

 

「き、貴様、一体何者なんだ!?」

「しつけぇよ。もういいよな。」

 

すると、彼の足元から全員を覆い尽くす程、巨大な魔法陣が現れた。

 

―第16禁忌魔法“テンペスト”―

 

そして、光が打ち出される。だが、光が消えても全員が残っていた。

 

「は、はは。どうした?痛くも痒くもねぇぞ。」

「あーあ、終わった終わった。さっさと帰るか。」

「おい、無視すんn!?」

 

そこでようやく気づいたようだ。自分の身体の端から気化していくことに。しかも、それに痛みはない。あるのは意味のわからないという恐怖のみ。

 

「な、なんだこれは!?貴様、何をした!?」

「何をしたかって?教えてもいいが、貴様らが理解できる時間もねぇよ。」

 

すると、光に巻き込まれたカルマも気化していることに気づいた。

 

「ははは!!お前も消えていくじゃねぇか!馬鹿か!」

「・・・はぁ。言っておくが、俺は死なねぇよ。」

 

カルマは大鎌を振り上げると自分自身の腹部を貫いた。あまりのことに唖然とする。しかし、変化はすぐに訪れた。倒れこむカルマの身体が修復されていく。起き上がると感覚を確かめるように身体を動かした。

 

「まぁ、こういうわけだ。悪いな、全員消えろ。」

「ク、クソがああああああああああああああああああ!!!!」

 

襲い掛かる神たち。しかし、攻撃は届くことはなかった。彼に届く前に全て消えてしまったのだ。静寂が辺りを包み込む。静かに吹く一陣の風。

 

「・・・風?」

 

それはただの風ではないことはすぐ気づいた。まず、神力を感じる。そして、こんな平地で起こるはずのない乱気流。明らかに自然のものではない。

 

「わぁお。もう終わったのか。ま、いいか。」

 

そこにはいつの間にか1人の男神がいた。肩に一本の長刀を担いでいる。先の奴らとは違う膨大な神力。下手をすれば、ツクヨミとアマテラスに届きそうな力だ。

 

「お前さんがカルマだな。」

「そうだが・・・。」

「オレはスサノオノミコト。スサノオとでも呼んでくれや。」

「それで俺になんのようだ。」

「この強行派をまとめたのはオレだ。そして、オレはツクヨミとアマテラスの弟。2人からお前さんについて色々聞いてる。そんなわけで、オレと戦え!」

 

腰を沈めると、スサノオは一気に踏み込んできた。刀のひと振りを鎌で防ぐ。

 

「無駄だぜ!」

 

効果はすぐに現れた。防いだはずなのに、カルマの身体にいくつもの切り傷ができたのだ。慌てて距離をとる。ただの刀ではないのだろう。あの刀からも神力を感じることができる。

 

「こいつが気になるか?」

「まぁな。どういう仕掛けだ?」

「そうだな。オレの能力は“刃物の隠された能力を引き出す程度の能力”ってところだ。そんで、この刀は“天叢雲剣”って銘でな。こいつは“風を操る程度の能力”があるんだ。」

「・・・なるほど。つまりは、その刀に風を刃として乗せたわけだな。」

「おぅ。今のでそこまでわかるか。驚いたな。」

「禁忌魔法を理解してるんだ。これくらいわかるに決まっている。」

「なら、これならどうだ?」

 

スサノオは楽しそうに笑みを深めると、衝撃的な一言を放った。

 

「洩矢の神は暴走する。」

 




いきなりの登場、素戔嗚尊。
彼との闘争は次回というわけですはい。

今回使った禁忌魔法の紹介コーナー。
第25禁忌魔法“ソウルイーター” ― 大鎌を生み出す。斬られれば魂を刈り取られるが、その能力を抑えると、身体能力が上乗せさせられる。また、これは磔十字も同様の効果がある。

第48禁忌魔法“キマイラ”応用“キメラパーツ”については次回ということで。
なぜかって?次回出るからだけど?(`・ω・´)

それでは、間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,8 諏訪大戦 表裏一体

最近、DMMに登録しました。
言っておきますが、艦これじゃないよ?
かんぱにガールズってやつです。
楽しいでふ(●´ω`●)

それではどうぞ。


「諏訪子が暴走だと?」

「そうさ。」

 

カルマとスサノオの攻防は続く。刀と鎌が打ち付け合い、火花が何度も散っている。叢雲の効果により、風の刃がカルマに襲い掛かる。押されているのはカルマの方だ。しかし、それよりも彼の口にしたことの方が気になる。

 

「どういうことだ?」

「簡単な話だ。ここに来る途中、諏訪の巫女を斬ってきただけさ。」

「……なるほど。」

 

諏訪の国でなくてはならない存在、諏訪の巫女。なくてはならない役職ではあるが、彼女は諏訪子に役職と関係なく、親子のように暮らしていた。居候させてもらっていたカルマだからこそわかることだ。

 

「つまりは、アイツが斬られたことに対する怒り、か。」

「そういうことだ!」

 

叢雲の横一閃。カルマはバックステップで回避するも、風が追いかけてくる。案の定、切り傷が生まれた。これでは防ごうが避けようが、風の刃に襲われてしまう。

 

「どうよ、この叢雲。手に入れるのに結構苦労したんだぜ。」

「はぁ…。めんどくさ…。」

「あ?」

「風の刃が邪魔だと思っただけだ。だから、鎧を着る事にした。」

「?」

「第48禁忌魔法“キマイラ”。」

 

すると、カルマの立つ地面から何か液状のものがあふれてきた。それはカルマを飲み込んでいく。

 

「何する気か知らねぇが、させっかよ!」

 

スサノオは駆け出し、斬りつける。しかし、刃が通らない。カルマを飲み込んだ液体から、猛禽類のような腕が飛び出し、斬撃を止めたのだ。それだけでなく、風の刃も弾いている。スサノオは飛びのくと同時に、液体が弾け飛び、中からカルマが現れる。しかし、いつもの彼ではないことは一目瞭然だ。長めだった髪は更に伸び、黒く変色し、毛先の方には金色が残っている。顔の左半分を黒い仮面のようなものが覆っている。そして身体は黒い鎧のようなもので覆われていた。先ほどと全く違う姿にスサノオは首を傾げた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「なんじゃそりゃ?」

「第48禁忌魔法“キマイラ”。簡単に言えば、自分を化物に変える禁忌の魔法。第47禁忌魔法“堕天”の上位互換だ。」

「へぇ。どうでもいいが、楽しませてくれるんだよな?」

「無理だな。早急に終わらせる。」

「そんなに諏訪の奴らが心配か?」

「別に。俺には関係ない。」

 

一気に駆け出す。しかし、それは常人から見たら瞬間移動に見えるほどの速度だ。堕天はかろうじて軌跡が残るものの、キマイラはもう人間という枠から逸脱している。右腕を振るい、スサノオに襲い掛かる。スサノオはそれを寸前で反応し、叢雲で防いだ。しかし、そんな速度で駆け出せば、当然異常なほどの衝撃と風圧が加わる。スサノオはカルマの腕一振りで遠くに飛ばされてしまった。飛ばされている間、叢雲を地面に突き刺し、速度を和らげようとした。が、そこに追いついたカルマからの殴打が加わり、地面に叩き付けられてしまう。さらにバウンドして跳ね上がったスサノオに蹴りを加え、弾き飛ばす。

 

「くっそ、がああああああああああああ!!!」

 

飛ばされながらも、叢雲を振り、風の刃を飛ばす。しかし、カルマはそれを右腕で切り裂く。全くもって意味がない。

 

「くたばれ、ド低能!」

 

右腕の爪がスサノオに襲い掛かる。叢雲で防ぎ、火花が散る。

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

スサノオは渾身の力でカルマの右腕を弾き飛ばした。勝った、そう確信した瞬間、スサノオは誤りだったと気づく事に遅れた。流石のスサノオでも、今のカルマの力を押し返せるほどの力はない。カルマがわざと力を抜いたのだ。そして、右腕の上がる勢いを利用し、体を回転させる。右足の爪がスサノオの体に裂傷を与え、血が噴き出した。大きな傷を負ったことにより、力が抜け、スサノオは地に伏した。

 

「はぁ…はぁ…。くそぉ、負けたか…。」

「あぁ、貴様の負けだ。」

「そうか…。」

 

決着はついた。そして、カルマがキマイラを解こうとした時だ。遠くから凄まじい衝撃波が襲ってきた。方角からして諏訪子のいるほうだ。そして、そちらを見たとき、大きな白い蛇が現れていた。

 

「言った通りだろ。あれは諏訪の祟り神の本性さ。」

「…ちっ。」

「行けよ。本当は心配なんだろ?」

「…俺には、どうでもいいことだ。」

「姉兄から聞いてんぞ。お前さん、素直じゃないらしいじゃねぇか。本当は行きたくてたまらないんだろ?それにオレはもう動けねぇからね。好きにしろい。」

 

事実、カルマはあちらに行きたくてしょうがなかった。心配でしょうがなかったのだ。彼は再び小さな舌打ちをすると、諏訪子の元へと駈け出していった。

 

 

 

水咲は諏訪子が駆け寄ると安心したように息を引き取った。水咲の身体には幾つもの斬り傷があった。それが致命傷となったのだろう。冷静に考えれば、神奈子がやったことではないことは明らかなのだが、水咲の死を目の当たりにした諏訪子が冷静でいられるはずがない。

 

「神奈子おおおおおおおおおおおオオオオオオオオオアアアアアアア!!!!!!!!!」

 

彼女から神力があふれ、衝撃波のように広がる。そして、辺りが瞬時に荒地へと変わり、地面は剥がれ、さらに荒れはててしまった。

 

「よくもおおおおおおおおお!!!」

「待て、諏訪子!私じゃ―」

「ミジャクジ様!!」

 

諏訪子の神力が集まり、形を成していく。そこには白く輝く大蛇が現れた。

 

「神奈子おおおおおおおおおお!!!」

「くっ!?」

 

蛇が襲い掛かる。神奈子はそれを躱したが、尻尾に地面へと叩き付けられてしまった。

 

「ぐぅ…。諏訪子、落ち着け!」

「うるさあああああああああああああああああああああああああああい!!!!」

 

蛇が大口を開けて襲い掛かる。神奈子は反応に遅れ、ミジャクジ様に喰われそうになってしまった。顎を両手両足で閉じるのを防いでいる状態だ。

 

「―ッ!!」

 

それだけでなく、地面が突き出し、壁を作った。神奈子をそこへぶつけるつもりだ。必至に口から逃れようとするが、ビクともしない。そして、蛇は壁に衝突し、土煙が舞いだす。

 

「はぁ…はぁ…。」

「少しは落ち着いたか?」

 

煙の中から男の声が聞こえてきた。そこには神奈子を抱えたキマイラ状態のカルマが立っていた。神奈子が壁にぶつけられる直前に間に合ったカルマが、通り過ぎざまに神奈子を救い出したのだ。

 

「も、もしかして、カルマか?」

「そうだ。」

 

カルマの変わり果てた姿に目を丸くする神奈子。それよりも今は諏訪子だ。彼女は興奮しきった状態でいる。完全に神奈子しか見えていない状態だ。

 

「神奈子ぉぉ…。」

 

後には横にされた水咲の姿があった。血の量からして致死量、もう死んでいるだろう。彼女からは生気を感じ取ることはできない。

 

「神奈子、下がっていろ。」

「だ、だが―」

「二度も言わん。邪魔だ。」

「―ッ!」

 

神奈子はまだ何か言いそうだったが、口を閉じ、後ろに下がった。それを確認すると、カルマは諏訪子に向かって駆け出した。そして、目の前で地面に右腕を叩き付ける。凄まじい衝撃にクレーターが生じ、瓦礫が襲い掛かる。一瞬の出来事に諏訪子の体勢が崩れた。その一瞬の隙を見逃さず、左腕を諏訪子の腹を思いっきり殴りつけた。

 

「うっ!?……あ。」

 

その衝撃と今まで使っていた神力が引き金となり、彼女は気を失ってしまった。倒れこむ諏訪子を抱き留める。

 

「神奈子。こいつを諏訪まで運んでくれ。俺は水咲を運ぶ。」

「…わかった。」

「そいつが目覚めたら、これからについて後で話し合おう。」

 

そして、諏訪大戦は幕を下ろす事となった。

 




水咲さんはお亡くなりになられました。
皆様、黙祷・・・。人(´・ω・`)
そんなわけでカルマはスサノオに勝利を修めたわけですが、
諏訪大戦の勝敗はあやふやのままです。

今回と前回使った禁忌魔法についての説明コーナー。
第48禁忌魔法“キマイラ” ― 身体をおぞましい化物に変える。堕天の上位互換であり、堕天よりも飛躍的に能力が上昇している。
応用“キメラパーツ・○” ― キマイラを部分的に発動することが可能。○には発動部位の名称が入る。

それでは、間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,9 諏訪の国の姿

今回で諏訪大戦編は完結。
次章どうしようかな。

それでは、本編どうぞ。


 

カルマは第3禁忌魔法“開門”を使い、洩矢神社へと場所を移した。そのついでに“拒絶結界”も解いておく。もう襲われることはないだろう。水咲の亡骸を彼女の部屋に横に置き、神奈子に諏訪子を部屋に寝かせるように指示する。

 

「で、どうするんだ?」

「は?」

 

神奈子は部屋に戻ってくると、カルマの向かいに座り、話しかけてきた。だが、その質問にカルマは疑問を抱く。

 

「いや、これからどうするのかって―」

「知るか。」

「なっ!?」

 

カルマの淡泊な反応に神奈子は絶句する。

 

「そこは俺の管轄外だ。俺はあくまで恩を仇で返すようなことをしたくなかっただけだ。今後の洩矢と大和の関係まで深入りするつもりはない。」

「そ、それは…。」

 

神奈子は一人考えこんでしまった。この二国の関係には、もう一つの国の神である諏訪子の存在が必要不可欠。今は彼女が目を覚ますまで待たなければいけない。カルマは部屋を出ると、諏訪の国の民に現状の説明をしに向かった。

 

二国の関係は洩矢諏訪子が目を覚まさない限り保留であること。

洩矢の巫女である東風谷水咲の死。

 

この二つの報告だ。民はもちろん不安に襲われた。祟り神である諏訪子の信仰が無くなれば、この地が荒れ果て、死んでしまうと。そして、水咲の死。これに対し、新しい巫女を立てるかどうかというものだ。取りあえず、諏訪子が目を覚まさない限り進展しないという旨を伝え、カルマは神社に戻っていった。

 

神社に戻ると、諏訪子は目を覚ましたところだったようだ。興奮は治まっているものの、神奈子に対し、敵対心が剥き出しとなっている。

「少しは落ち着け、諏訪子。」

「カルマッ!でも神奈子は―」

「水咲は神奈子がやったわけじゃない。」

「えっ?」

 

カルマは二人に真実を話した。水咲はスサノオによって斬られ、死んだ。

 

「スサノオが…。」

「そのスサノオは?」

「俺が倒した。今頃、ツクヨミとアマテラスに説教でもされてんじゃねぇのか?」

「そうなんだ…。ごめんね、神奈子。」

「いや。私こそ、スサノオを止められなくてすまない。」

 

諏訪子の誤解は解けたとは言え、表情は暗い。何せ家族とも言える存在を目の前で失ったのだ。当然と言える。

 

「―で、結局勝敗はどうすんだ?」

 

今回の戦いは諏訪の国の取り合い。カルマが止めに入った以上、結果はわからない。

 

「私の負けでいいよ…。」

 

諏訪子が元気のない声で呟いた。神奈子は驚き、カルマは視線を諏訪子に向ける。

 

「す、諏訪子?お前の国なんだぞ?そんなあっさり…。」

「暴走しちゃったからね。皆に顔向けができないんだよ。それに水咲がいないんじゃ、私、やっていけそうにないかな…。」

「…諏訪子。」

 

諏訪子の落ち込み様に、神奈子も暗い気持ちになってしまった。対し、カルマはだんだんイライラしてきているようだ。

 

「諏訪子。」

「何、カルマ?」

「諏訪の奴らはお前に消えてほしくないみたいだぞ。」

「え?」

 

カルマは報告に行った際の様子を彼女に話した。すると、諏訪子は乾いた笑みを浮かべていた。

 

「あはは。ここにきて祟りを気にするあたり、やっぱり欲深いなぁ、人間は…。ちょっと考えてみるよ。」

「そうか…ん?そういえば、カルマ。」

「なんだ?」

 

神奈子は真剣な表情を浮かべ、カルマと向き合う。

 

「ツクヨミ様やアマテラス様から聞いたんだが、お前は禁忌魔法なるものが使えるとか?」

「あぁ、使える。それがどうした?」

「なら、死者を蘇らせるものもあるんじゃないか?」

「えっ!?」

 

逸早く反応した諏訪子はカルマに詰め寄る。明らかに希望に満ちた眼だ。カルマは彼女を押しのけると、話し出す。

 

「あると言えば、ある。」

「なら、水咲を―」

「生贄は?」

「え?」

「生贄は誰だ?二度は言わん。」

 

カルマは二人を鋭く睨み付ける。現状を表すなら、鷲に睨まれた蛇と蛙といったところだろうか。それだけの怒気を彼は放っている。

 

「人の命を粗末に扱うな。生あるものはいずれ死ぬ。この理は覆すことはできない。」

「……。」

「じゃ、じゃあ、水咲は生贄がなければ…。」

「蘇らない。」

 

再び暗い表情となる諏訪子。カルマはため息をつくと、立ち上がる。

 

「無駄だと思うが、民全員に聞いてみるか…。」

「うん。ありがとう。」

 

カルマは小さく舌打ちをすると、外に出た。諏訪子と神奈子もついてきた。とりあえず、諏訪子は全員に負けを宣言した。しかし、それに対し、民全員が不安に追いやられてしまう。ここで水咲を蘇らせることができることを説明。すぐに何人かが、名乗りを上げた。

 

「ふざけるなよ、ド低脳!!」

 

しかし、ここでカルマの堪忍袋の緒が切れる。

 

「貴様らは自分の命をなんだと思ってやがる!お前ら自身はそれでいいかもしれんが、お前らと縁ある者たちはどうなる!縁者が悲しみ、また蘇る。また贄がいる。ただの連鎖だろうがっ!生ある者はいずれ死ぬ。あいつはそれが今日だったってだけの話だ。」

 

カルマの言葉にあたりが静まり返る。そして、結果として、誰も贄となると名乗り上げることはなくなった。

 

 

 

 

 

 

神奈子との話し合いの結果、諏訪の国は大和の中に納まったが、諏訪として名を残すことで民の不安を軽くすることにした。それから数日。カルマは姿を消していた。諏訪子は呆れてどこか旅にでも行ったのだろうと考えていた。彼は最初の頃、寝泊りできる場所を探してここに来た。元は旅人のようなものなのだ。どこで何をしようが、彼の勝手だ。

 

「諏訪子様、朝ですよ。」

 

そう。あの頃もこんな感じに起こしに来てくれ…て?

 

「え?」

「あ、起きましだっ!?」

「いたっ!?」

 

勢いよく起き上がると、額に衝撃を受けた。痛む額を押さえて目の前を向くと、痛みなど感じていられなくなった。

 

「う、うぅ。久々に会ってこれは痛いですよ、諏訪子様ぁ…。」

 

目の前には涙目になって諏訪子と同じように額を抑える少女がいる。見間違えようがない。彼女は正真正銘…。

 

「み、水咲?」

「はい。おはようございます。」

「あ、ああ。うあああああああああああああ!!!!!」

「ちょっ!諏訪子様!?」

 

諏訪子は彼女に飛びつき泣き始めた。最初は驚いた水咲も再会の嬉しさに泣き始めてしまった。

 

 

 

二人を遠くから眺める人物がいた。勿論カルマだ。カルマは神社の中が見える遠くの屋根から眺めていた。再会を確認すると立ち上がり、諏訪の国をあとにする。

 

「カルマ。」

「…なんようだ。」

 

道を進み、少しすると神奈子が現れた。

 

「あの娘を蘇らせると思わなかったよ。あんなに反対していたのに。」

「…ふん。」

「まさか、自分を生贄にして蘇らせるなんてね。」

 

そう。彼は自分を代償に第7禁忌魔法“黄泉還り”発動したのだ。そして、水咲を蘇らせた。カルマ自身は無代償で第7禁忌魔法“黄泉還り”を使い、自身を蘇らせる。そういった仕組みだ。数日前からいなかったのは、第3禁忌魔法“開門”であの世に向かい、水咲自身に蘇る意志があるか。それがどのようなものなのかを説明するためだ。

 

「ただでさえ、蘇るという例外を起したんだ。それだけじゃなく、俺という生贄を使った。アイツ自身か、子孫に何かしら影響が出だろ。」

「それは人間で無くなるということかい?」

「知らん。少なくとも人間では無くなる、」

「そうか…。別れは言わなくていいのかい?」

「…面倒だ。」

「やれやれ…。どこか行くあてでもあるのかい?」

「さぁな。西の大陸とかいうものがあるらしいからそっちに行くつもりだ。」

「そうかい。…私の方からお前のことは諏訪子に言っておくよ。たまには帰ってきなよ?」

「気が向いたらな。」

 

そして、神奈子に見送られる形で、カルマは歩みを進めて行った。目指すは西。西洋の国へと。

 




死んだかと思った?ねぇねぇ死んだかと思った?
残念蘇りましたー!
というわけでね。こういう感じにまとまりました。

次回どうしよう。
西に行ってもいいんですが、ここから天狗の方に向かわせるか悩んでます。
因みに、前者だと‟あの娘”の登場が遅く、後者だと早まります。
そんなわけで、投稿が遅くなります。
悩んでるんだよおぉぉぉぉ><

それでは、間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

番外編読んでくれたかな?
短編として投稿しましたので、続きませんが、良かったら読んでくださいね。
ではでは。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3章 西の大陸
Ep,1 プリズムリバー


遅くなりました。
結論から言うと、西からになります。
まだ投稿ペースは遅いままだと思います。
なぜか?挿絵の描き溜めだよおぉぉぉぉ><

それでは、本編どうぞ。


 

とても暗い森の中。その中を延々と進む足音が聞こえてくる。闇に紛れるような黒の服を着ているカルマは無事、西の大陸へとたどり着いた。そこから気まぐれに旅を続け、今に至る。暫くして、開けた場所に出た。どうやら山道に出たようだ。

 

「宿は…、近くに無さそうだな…。」

 

今まで宿を利用することはあったが、ほとんど野宿だった。また適当にどこかで寝るか、と思い始めたとき、道の向こうに灯りが見えた。目を凝らすとどうやら館のようだ。灯りがあることから誰か住んでいるのだろう。近づくに連れて、その館が大きなものだと分かってきた。しかし、灯りは一室のみに灯っている。そして、異様に静かだ。これ程の館なら賑やかのはずなのだが…。

 

「一人くらいはいるようだな。」

 

大きな扉をノックし、しばらく待つ。これだけ大きければ使用人はいそうなものだが、その生活音すら聞こえてこない。

 

「どちらさまでしょうか?」

 

扉の向こうから聞こえてきたのは物静かそうな少女の声だ。

 

「旅の者だが、泊めてもらえないか?ここへは偶然たどり着いたのだが…。」

「……わかりました。今、開けます。」

 

扉を重そうに開けて出てきたのは、膝まである緑色の髪に青紫の貴族服を着込んだ少女だ。明らかに一人暮らしをするには、早すぎる年齢に見える。

 

「どうぞ。」

「邪魔する。」

 

中を通されると、改めて理解される。この少女はここで一人で暮らしている。その証拠に少しほこりっぽい感じがする。

 

「家族はいないのか?」

「…いません。両親は事故で、姉さんたちは親戚に引き取られていきました。」

「それは…悪いことを聞いた。」

「いえ、もう慣れました。」

 

しかし、彼女の表情は暗いままだ。相当参っているのだろう。

 

「どうぞ、この部屋を使ってください。」

 

案内された部屋は少し大人びた部屋だった。ダブルベッドであることから元々両親の部屋だったのだろう。長い間そのままだったのか、少し埃っぽい気がする。

 

「すみません。こんな汚い部屋で。」

「いや、気にするな。普段から俺みたいな奴はそうそう来ないだろうからな。」

「ありがとうございます。」

 

もう夜も遅いということで、二人は床につくことにした。そして迎える深夜、正確には丑三つ時。何かが割れる音でカルマは目を覚ました。その音は立て続けに起こっていた。さっきの娘が癇癪でも起こしているのだろうか。だが、その考えは打ち消されることとなった。

 

「あの…起きてますか…?」

 

少女が扉を開けて入ってきたのだ。カルマのところに来たというのに、音は鳴りやむことはない。彼女以外がしているとしか思えない。

 

「あぁ、起きている。どうした?」

「実は…。」

 

彼女の話によると、この騒音は家に彼女だけとなった日から起こっていることらしい。そして、その原因を突き止めようとしても、犯人は見つからず、幽霊の仕業なのではないかと考えているとのことだった。

 

「それならこの家から出れば―」

「だめっ!」

 

少女は首を横に振った。それには強い意志が見て取れる。

 

「この家でまたみんなで暮らすために、私はここで待ち続けるの。」

「…わかった。」

 

カルマは立ち上がると廊下へと出る。音はまだ鳴り止んでいない。

 

「あ、あの…?」

「そこまでの意志があるなら犯人捜しに付き合ってやる。」

「あ、ありがとうございます!…あ、名前まだでしたね。私はレイラ・プリズムリバーって言います。」

「カルマだ。」

 

自己紹介も済ませ、二人は音のする部屋と向かう。場所は食堂からだ。

 

「(ここか…。)」

「(そうみたい…。)」

 

少し開いた扉から除くとたくさんの食器が勝手に浮き、床に落とされ割れるという光景が広がっていた。

 

「(や、やっぱり幽霊っ!)」

「(…ここで待ってろ。)」

 

―第47禁忌魔法“堕天”―

 

カルマの左目が赤く輝きだす。堕天を使うことで、彼は身体能力以外にも動体視力、その他諸々が強化されている。そして、左目限定で人には見えないものも見ることができるようになる。レイラを部屋の外に待たせると、カルマは部屋の中に入った。すると、音は鳴り止んでしまった。だが、左目にはしっかりと犯人が映っていた。

 

「逃がさん。」

 

カルマが手を伸ばし、虚空を掴んだ。すると、そこからじたばた暴れる一人の少女が現れた。

 

「は、はなせー!」

「他2人も出てこい。」

 

虚空を睨むとそこから二人の少女が現れた。

 

「妹を離してよ!」

「そーだそーだ!」

 

再び騒がしくなり、顔をしかめる。すると、部屋にレイラが入ってきた。

 

「カルマさん。その子を離してあげてください。」

「……。」

 

カルマは手を離すと、少女は姉であろう二人の元へと駆け寄っていった。

 

「大丈夫だった?」

「へーきだよっ!」

「よかったわね。」

 

妹と心配している霊を見つめるレイラの瞳はなにか懐かしむようだった。

 

「ねぇ、貴方たち。」

 

三人の肩が跳ね上がり、おびえるようにレイラを見つめる。

 

「私の家族にならない?」

「「「えっ?」」」

 

彼女たちは考えさせてほしいと言い残し、姿を消した。翌日、カルマは館を後にすることにした。館前にはレイラが見送りに来ていた。

 

「もう行ってしまうんですか?」

「泊めてもらっただけで十分だからな。」

「そうですか…。」

「ひとついいか?」

「なんでしょうか?」

「なぜ、あの騒霊を家族に迎え入れようなんて言い出したんだ。」

 

彼女は館を見上げ、懐かしむように見つめた。

 

「姉に、似てたんです。」

「……そうか。」

 

あの姉妹は騒霊だ。おそらく、レイラは人間であるが故に苦労するだろう。

 

「そろそろ行く。」

「…わかりました。お元気で。」

「お前もな。」

 

レイラに別れを告げ、カルマはプリズムリバー邸を後にした。

 




アジアの話?知らない子ですね。
はい、というわけで最初はプリズムリバーでした。
騒霊はレイラの魔術で生まれたとよく言われますよね。
この話では、落ち込むレイラに負の力が働いたことで、無意識に誕生したという設定にしています。
それなら別に騒霊でなくてもいいのでは?
と思うかもしれませんが、彼女は家族と『賑やか』に暮らしたかった。
でも、『もういない存在』を求めてもしょうがない。
という二つのキーワードから騒霊が生まれたのです。
・・・・・・たぶん、おそらく(´・ω・`)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,2 吸血鬼

ペンタブ買ったった!
まだ練習中だから、挿絵にするにはまだ先だね。
今回はタイトルにある通り吸血鬼の登場です。

それでは 本編どうぞ。


 

街での噂、吸血鬼の存在。プリズムリバーの館もそうだが、東の国にあった建物とは違ったつくりをしている。そういった建物が並ぶ街に入ってから耳にした噂。それが吸血鬼だ。東では耳にしなかった妖怪の存在。カルマはその噂の元となる場所へと足を踏み入れた。歩を進め、森を抜けた先にあったものは大きな館だった。プリズムリバーのものとは比べ物にもならない大きさだ。

 

「でか…。」

「こんな場所に何の用でしょうか。」

 

門の前にはここに来るまでに立ち寄った国の服をきた少女が立っていた。見た感じ10代後半だろう。少女は警戒するように、こちらを睨み、構えをとった。

 

「吸血鬼ってのはお前か?」

「いいえ、違います。」

 

どうやら違うらしい。確かに噂のものとは姿形が違っている。

 

「吸血鬼は主人のことです。」

 

簡単に情報を手に入ってしまった。まさかそちらから明かすとは思わなかった。

 

「もう一度問います。ここへ何の用でしょうか?」

 

カルマは口を開かず、何も言わないことで、警戒度が増したのだろう。彼女の脚に力が入った。おそらく踏み込むためのものだ。対し、吸血鬼の存在が確定したカルマは、一度会ってみようかと思ったが、まずは目の前の少女をどうするべきか、だろう。彼女はおそらく門番の役割を担っている。構えも様になっているようだが―。

 

「弱いな…。」

「―ッ!」

 

瞬間、少女は飛び出した。放たれる拳にカルマは片手で止める。反動を受け流すように腕をクッションのように引く。カルマは立っていた場所から移動せずに衝撃を殺したのだ。ただ者ではない。そう判断した少女はカルマから距離をとった。

 

「構えも動きも上々。だが、修行不足だな。まだ弱い。」

「確かに私はまだ未熟です。ですが、貴方が何者かわからない以上、警戒させてもらいます。」

「ただの旅人。」

「貴方のような手練れがそんなわけないでしょう。」

 

確かに“ただの”旅人ではないが、そこはご愛嬌。

 

「まさか、貴方、ヴラドの者ですか?」

「ヴラド?」

 

聞いたことのない名前だ。カルマは首をかしげることしかできなかったが、少女はヴラドという名前に対し、構えに一層力が入ったようだ。

 

「何事ですかな、美鈴。」

 

突如として彼女―美鈴の後ろに現れたのは、老紳士の男性だった。執事服を着ていることから、彼もこの館の主に仕える者なのだろう。

 

「深さんっ!」

 

深と言われた男はカルマに視線を向ける。どうやら品定めをしているようだ。

 

「どちら様でしょうか。」

 

気付けば、彼は目の前から消え、ナイフをカルマの首に当てていた。

 

「ただの旅人だ。下町で吸血鬼の噂を聞いて、ここまで来たってだけだ。」

「嘘をついてもいいことはないと思われますが?」

「一応人間を辞めてはいるな。」

「そうでしょうな。貴方からは一般人が持ち得ないはずの量の魔力を感じます故。」

 

なるほど。力量もそうだが、カルマは歩く異常者といったところだろうか。

 

「…嘘は言っていないようですね。」

 

すると、彼はナイフをしまった状態で美鈴のそばに戻っていた。

 

「い、いいんですか、深さん?」

「はい。美鈴が迷惑をかけたようですな。申し訳ありません。」

「いや、いい。」

「もうじき日も暮れます。良ければ、中へお入りください。」

「いいのか?」

「はい。」

 

招待されるがままに、カルマは門をくぐり、館の中へと進んでいく。そして、たどり着いたのは大広間だった。長い机があり、蝋燭台がその上に並べられている。

 

「適当におかけください。今、何か口に合うものをお持ちいたします。」

 

そう言い残し、深は一瞬にして姿を消した。さっきから瞬きのする間もなく移動して見せている。一体どのような能力なのだろうか。カルマは適当な椅子に座り、待っていると深ではなく、一人の女性が現れた。

 

「貴方が客人かしら?」

 

真っ赤なドレスに身を包み、膝まである紫寄りの金髪を伸ばした女性だ。背中には蝙蝠と同じ翼が生えている。彼女はスカートの裾を持ち上げ、頭を下げた。

 

【挿絵表示】

 

「はじめまして、私はマキナ・スカーレットと申します。ここの館の主です。門にいた娘は紅美鈴。案内をしてくれたのが、十六夜深よ。」

「俺はカルマ。適当に旅をしている。」

 

自己紹介を済ませると、彼女はカルマの向かいに腰掛けた。

 

「ここの主ということは、お前が吸血鬼ってことでいいんだな?」

「えぇ、そうよ。私が吸血鬼。予想通りだったかしら?」

「あー、いや…。」

 

カルマは街で聞いた噂を一通り話した。話している最中に深が入室。料理を並べて、退室していった。

 

「ふふ。流石にそれは私じゃないわね。」

「そういうわけだ。それを確かめるためにここにきた。あと、さっきから気になっていたんだが。」

「なにかしら?」

「お前、妊婦か?」

 

彼女が入室したとき、お腹が普通よりも大きく見えていた。それに椅子に座るときにお腹を庇うような座り方をしたからだ。

 

「えぇ、そうよ。二人目になるわ。」

 

マキナは愛おしそうにお腹を撫でながら言った。

 

「…今日はもう遅いわ。ここに泊って行って?」

「いいのか?」

「えぇ。歓迎するわ。」

 

そのあと、深に一室に案内された。

 

「それではゆっくりお休みください。」

 

そう言い残し、深は一瞬にして消えてしまった。カルマもベッドに横になって眠りにつくことにした。

 

 

 

そして、丑三つ時、カルマの心臓は貫かれた。

 




マキナのお腹には第二子がいます。
つまり、あの子はすでに生まれているってことです。
今いる館は紅魔館ではないです。
紅魔館は別荘って感じの設定にしてます。

イラスト描き溜めしようとしたけど、ストーリー書き溜めしないと描けないっていうねw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,3 戦乱状況

あけましておめでとうございます。
本当はクリスマス編とか正月編とか書きたかったんですけどねw
里帰り+バイト+レポートですよ。
おかげでイラストもないです。

それでは、本編どうぞ。


マキナ・スカーレット。彼女は吸血鬼、血を吸う生き物だ。彼女はワイングラスに注がれている血を見つめ、口につけた。

 

「あら…。意外と美味しいわね。」

「ありがとうございます。」

 

彼女が味わっている血液はカルマのものだ。それは深が手に入れたもの。カルマが寝るのを見計らい、彼が殺したのだ。そして手に入れたのが、この血ということである。

 

「あのカルマという客人は?」

「彼なら―」

 

その時、ノックもなく扉が開かれた。美鈴か、もしくはマキナの娘かと思ったが違う。そこにいたのは―。

 

「なっ!?」

「まさか、ナイフ一刺しで起こされるとは思わなかった。」

 

平然としているカルマに二人は驚きを隠せないでいた。深は確実に彼を殺した。念のために、銀のナイフで心臓を貫いた。それはマキナも聞いている。そのため、カルマはすっかり死んでいるものだと思っていたのだ。

 

「んで、俺を刺したのは、お前か?」

 

深は冷や汗を流していた。彼が何者なのか計り知れないからだ。吸血鬼だろうがなんだろうが、心臓を貫けば殺すことは可能。だが、彼は死ななかった。それどころか、今のカルマには傷一つとして見つけることはできない。

 

「何者ですか…貴方は…。」

「さぁな。少なくとも、お前らに危害を加えるつもりはなかったんだが…。」

 

カルマはマキナの向かいに座り、二人を見つめる。

 

「状況の説明を願いたい。」

「えっ?」

「俺を殺しに来たのは、その血を手に入れるためだけじゃないだろう。あの門番が言っていた“ヴラド”って名前。それと関係してるんじゃないのか?」

 

殺されたことに対する恨みのようなものが見て取れない。それどころか、こちらの力になろうとしている。二人はそれが理解できなかった。それを汲み取ったカルマはため息交じりに応えた。

 

「最初は仕返ししようかと思った。だが、ここに来る前にお前の娘に会った。」

「レミィに何をしたの!」

 

娘の名前を出した直後、マキナは立ち上がり、カルマを睨みつける。勢いよく立ったおかげで、グラスは手折れ、血がテーブルクロスを汚した。

 

「早合点するな。会って少し話しただけだ。」

「そう…、よかった。」

 

彼女は安心し、椅子に座り直した。

 

「話を戻すが、そのレミリアに会って言われたんだよ。友達を助けてほしいってな。」

「…パチェのことね。」

「それで気が削がれたから、こうして来たんだよ。」

 

マキナは考えるように俯いたが、すぐに顔を上げた。

 

「…いいわ。話してあげる。」

 

彼女は全て話した。今、吸血鬼のなか紛争状態であること。“ヴラド・ツェペシュ”という者が力を付け、次々と勢力を広げてきていること。もう生き残っているのはここ、スカーレット家しかなく、レミリアの親友である少女―パチュリー・ノーレッジが人質として捕えられていること。

 

「なるほど。そんな時に来客とあれば、警戒するのも無理はない。」

「申し訳ありませんでした。」

「いや、いい。主人を守るためにやったんだろう。気にするな。それで、そのヴラドはどうして人質なんて方法を取った。聞く限りだと、お前らは打つ手なしのように聞こえるが。」

「こっちには代々受け継がれている家宝があるの。」

「家宝?」

「えぇ。“グングニル”と“レーヴァテイン”の二つ。この武具をヴラドは警戒しているのよ。」

「そこであちらはある条件を提示してきました。」

「条件?」

「はい。パチュリー様の解放を条件に二つの武具の譲渡、でございます。」

「なるほど。」

 

それでは意味をなさないことはすぐにわかる。ヴラドはパチュリーと引き換えに二つの武具を手に入れた暁には、その戦力をもってここを攻めてくるに違いないのだ。

 

「要するに、パチュリーとか言う子供さえこっちにいれば良いんだな。」

「そうですな。そうなれば、あちらも脅迫まがいの行為を行うことはできなくなります。」

 

しかし―と深はつけ加えた。

 

「脅迫材料がなくなれば、あちらは攻撃を実行するかと思われます。噂では、あちらも強力な武具を手に入れたようなので。」

「なら、俺が戦力になろう。」

「…いいのかしら?貴方は部外者なのよ?」

「勘違いするな。見てられないだけだ。」

「…ありがとう。」

 

二人の感謝の念を横目でみながら、カルマは溜息をついた。

 

「なら、早速そのパチュリーを救いに行くか。」

「なっ!危険です!あそこに近づいたら、ヴラド伯爵の眷属にされてしまいます。」

「俺を刺殺した奴が何言ってんだ。」

「うっ…。」

「なに、心配するな。外から行くとは言ってないだろ?」

「それは…どういう…?」

 

深の疑問には答えず、背を向ける。すると、突如として空間が砕け散った。カルマは開門を使ったのだ。勿論接続先は―。

 

「すぐ戻る。」

 

そして、カルマは闇の広がる空間へと足を進めた。

 

 

 

場所はヴラドの城。その地下にある牢獄。そこに幼い少女が捕えられていた。少女は部屋の隅で膝を抱え、うずくまっていた。今日も助けは来てくれない。彼女は捕まってどれほどの時間が流れたのかもわからないでいた。地下にいるため、太陽の日も届かないからだ。

 

「……レミィ。何してるのかしら…。」

 

彼女の希望とも言える存在の名前。しかし、それに応える者は誰もいない。

 

―バキッ―

 

その時だ。何かが割れるような音が彼女の耳に届いた。ここの眷属が粗末なご飯でも持ってきたのか、と彼女は思い、顔を上げた。だが、そこには彼女が見たことのない光景があった。

 

「―ッ!?」

 

空間に亀裂が入った。そこからヒビが広がり、砕け散ったのだ。

 

「よっと。」

 

そこから現れたのは黒い服に身を包んだ金髪の男。彼―カルマは目の前に怯えている少女を見つけ、話かけた。

 

「お前がパチュリーか?」

 

彼女―パチュリーは怯えながらも小さく頷いた。

 

「俺はカルマ。スカーレットの使いみたいなもんだ。」

「スカー…レット…。レミィの…?」

「そうだ。お前を助けにきた。」

 

彼女の顔に光が差した。しかし、罠かもしれない。だが、ここで彼女を手に入れても、得にはならない。スカーレットとヴラドを敵に回すだけだ。だが、悩んでいる暇はないようだ。少し奥のほうから扉の開く音が聞こえたからだ。

 

「チッ。」

 

カルマは舌打ちをすると、パチュリーの手を取った。

 

「ちょっ!」

「時間がない。行くぞ。」

 

カルマはパチュリーを引き寄せると、抱え上げた。そして空間の境へと飛び込んでいった。そして二人は、その場から姿を消した。

 




カルマの生きている理由?
黄泉返りです。(´・ω・`)
さて、そろそろ前作のフラグ回収が始まる頃合いです。
どのあたりを回収するかは・・・わかりそうな気がする。(´・ω・`)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,4 night`s conflict

スマブラのゼロスーツサムスが使いやすい件についてw
他にも使えるやついるけど、これが一番使ってて楽しいです。
でも、ぼっち(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ。


「パチェ!」

「レミィ!」

 

親友との再会に喜び合う子供たち。少し離れたところでマキナはカルマに礼を言っていた。

 

「ありがとう、カルマ。パチェを救ってくれて。」

「ただの気紛れだ。だが、ここからだぞ。」

「わかっているわ。ヴラドが攻めてくることでしょう?それで貴方にお願いがあるの。」

「戦力になれっていうんだろ。もとよりそのつもりだ。」

「ありがとう。その他にも言っておくことがあるから、あとで話し合いましょう。」

 

マキナはレミリアを横目に見てから、彼女と入れ替わるように自分の部屋へと戻っていった。

 

「あ、あの…。パチェを助けてくれて、ありがとう。」

「…ただの気まぐれだ。」

 

彼女はまだ幼い。それ故に純粋な気持ちで礼を言ってきたことにカルマはぶっきらぼうに返した。その光景を深は内心で笑みを深めながら見ていた。

 

「その…お兄様って呼んでもいい?」

「おにっ!?…好きにしろ。」

 

レミリアの提案には驚かされたが、彼女の期待に輝く瞳に否定ができなくなった。カルマからの許可を認めた瞬間、彼女の顔に笑顔が生まれた。それからレミリアとパチュリーが飽きるまで相手をさせられた。二人から解放されたのは、かれこれ2時間後だった。

 

「はぁ…。」

「随分と懐かれたものですな。」

「うるさい。」

「見ていて飽きませんでしたぞ。」

「刺し殺すぞ。」

 

カルマは深を睨んだが、彼は小さな笑みを浮かべるだけだった。カルマはため息をついて気を改めた。

 

「マキナの所に行く。案内しろ。」

「かしこまりました。」

 

案内された部屋に入るとマキナが座っていた。そばには美鈴が控えていた。

 

「来たぞ。」

「えぇ。それじゃあ、話しましょう。」

 

カルマが向かいの席に腰かけると、マキナは話し始めた。

 

「今、私達の中で戦えるのは、深くらいなの。他のメイドたちは戦闘に向いてないわ。」

「深だけなのか?」

「はい。私だけです。実は他にも従者はいたのですが、ヴラドの者に殺された。もしくは眷属にされたかのどちらかです。」

 

道理で大きな屋敷の割に人数が少ないわけだ。

 

「私も戦えます!」

 

美鈴は自身の存在を忘れないでほしいとばかりに、声を大きくして主張した。

 

「いや、お前はだめだ。」

「なぜです!」

 

どうやら、美鈴はカルマを毛嫌いしているようだ。確かに弱い宣言されれば嫌いになるのも無理はない。カルマに食って掛かってきた。相手がマキナや深でも少しは反論するだろうが。

 

「お前は門を守る仕事がある。お前が戦場に出たら、誰がここを守るんだ。他に戦えるやつがいないんだろ?」

「ぐぅ…。」

 

もっともな正論に美鈴は引き下がった。

 

「ほんとなら私も戦いたいんだけどね。」

「その腹じゃ無理だろうな。」

 

彼女のお腹には子供がいる。その状態で戦うのは無理があるだろう。

 

「グングニルとレーヴァテインを使えるのは私だけなのに…。不甲斐無いわ。」

 

スカーレット家に伝わるグングニルとレーヴァテイン。これを扱うことができるのは、スカーレットの血をひく者のみ。

 

「俺と深の2人でいいんだな?」

「そうね。正直心配でしょうがないわ。ヴラドの力もそうだけど、あちらには眷属としたたくさんの人達がいるから。」

「ヴラド・ツェペシュ伯爵。彼は『血吸いの絶対眷属』の能力を持っています。明確には『眷属にする程度の能力』ですが。」

 

吸血鬼には吸血することで相手を眷属とする能力がもともと備わっている。しかし、眷属となれど意識は残っているのだ。しかし、ヴラドはそれに能力が上乗せされている。意思など関係なく絶対的な命令権を持っていると言えるだろう。血を吸われれば最後、生きた屍のように、ヴラドの命令を実行するようになるのだ。

 

「さらに、彼の能力は眷属にも伝播するという情報もあります。」

「…なるほど。それは厄介だな。」

 

噛まれた者は眷属となり、その眷属に噛まれれば、その者もヴラドの眷属となる。言わば、感染症といったところだろう。

 

「できれば、眷属にされた私の従者たちも助けたいの。」

「……。」

 

マキナの希望には無理があった。敵となった味方を助けられる程、余裕はない。それはここにいる全員が理解している。

 

「た、大変ですっ!」

 

その時、妖精メイドの一人が駆け込んできた。彼女は息を切らせて、部屋の中に飛び込んできた。

 

「ノックをしなかったことは咎めませんが、何用ですかな?」

「ヴ、ヴラド伯爵が動きましたっ!」

「なっ!?」

 

ヴラドが行動を開始した。いくらなんでも早すぎる。いや、そうでもないのだろうか。パチュリーを救ってから、それなりに時間は経過している。その間に準備を整えさせたのだろう。

 

「まさか、今夜中に来るとは思わなかったわね。」

「方角は?」

「西南南方向ですっ!」

「深、行くぞ。」

「承知しております。」

「気を付けてね。」

 

カルマと深は立ち上がると、深はマキナに一礼、カルマは軽く手を挙げて返事をし、そのまま部屋を飛び出していった。

 

 

 

 




カルマはロリリア(ロリなレミリアの略w)に懐かれました。
このロリコンめっ!
でも、美鈴には嫌われました。
なにこの仕打ちw

ヴラドの能力は意外と強力です。
分かりやすく言えば、・・・狂犬病かなw?
噛まれたら最後、彼のいいなりです。
まぁ、噛まれなければいいだけだけどねw

次回からいよいよ戦いが始まります。
そしてあの人も出るかもw?

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,5 bloody legion

前 書 き の ネ タ が な い !

それでは、本編どうぞ。


満月の夜。虚ろな眼をした人間やそうでない者が列をなして移動していた。それを丘の高台から見下ろす二つの影があった。一人は体躯の良い男性。貴族服を着込み、腰には一本の剣を掛けている。もう一人は金髪の女性。彼女からは闇色の妖気が漏れ出ていた。彼女の妖気が辺りに広がり、黒い霧を生み出している。

 

「まさか今日中に行動するとは思わなかったわ。焦り過ぎじゃないかしら?」

「いや、人質が奴らの手に戻ったとなれば、奴らが動くに決まっている。雑草は早いうちに毟り取っておかねばな。」

「そう。それで、ヴラド伯爵は何か策があるのかしら?」

 

ヴラドはにやりと笑い、月光で光る犬歯を覗かせながら、腰にある剣をなでた。

 

「あちらには『時の術師』がいる。少なくとも、マキナは動けない。それにあちらの戦力は出来うる限り削いだ。動けるのは、あの死にそこないの老人のみだ。」

「そうだといいわね。」

「最悪の場合は、私自身がこの『魔剣バルムンク』をもって排除するだけだ。貴様の出番はないぞ、ルーミア。」

「それは残念ね。それじゃあ、私は帰らせてもらおうかしら。」

「好きにすればいい。」

 

ルーミアは薄く笑いをこぼした。

 

「貴方の今の力がどれだけのものか、見せてもらうわ。魔神さま。」

「何か言ったか?」

「何も。それじゃあ、私は行くわね。」

 

彼女が闇の中に消えていく姿を見送ると、ヴラドは群れをなす眷属を見下ろした。

 

「…さて、どう出る?スカーレット。」

 

 

 

「多いですな…。」

「そうだな。100…いやもっといるか。」

 

樹の枝に乗り、深は小さな望遠鏡で状況を見ていた。カルマも堕天した眼で眺めていた。

 

「あの全員がヴラドの眷属か。」

「そのとおりです。」

「あの中に、お前らの従者だったやつは何人いる?」

「ふむ…。ざっと15人くらいでしょうか?」

 

あの中から15人を救い出さなければならない。しかも、カルマはその者たちの顔を知らない。

 

「幸い、彼らは固まって移動しています。そちらは私がなんとかしましょう。」

「俺はその他諸々を引き受ける。」

「頼みます。」

 

そう言い残し、深は一瞬にして消えた。カルマもそこから跳躍する。黒い服が闇にまぐれ、金色の髪が微かに軌跡を残すように移動する。深とは逆の方向だ。カルマの黒服のおかげで、まだ彼は見つかっていない。―と、その時、敵の動きが慌ただしくなった。どうやら、攻撃を始めたらしい。

 

「…こっちも始めるか。」

 

深のいるであろう方向に移動しようとする集団の前に、突如としてたくさんの十字架が現れた。突然のことに足が止まる。それだけでなく、吸血鬼の弱点である十字架が晒されてはひとたまりもない。その十字架の一つにカルマが着地する。

 

「さぁ、脳すら働かないド低能ども。俺を楽しませろ。」

 

十字架がある以上、あちらの戦力は激減していると言って過言ではない。カルマは磔十字から跳びあがり、生み出したソウルイーターを振り落す。今回は効力を発揮している。鎌に斬られれば最後、魂は殺されることとなる。しかし、今の奴らはヴラドの効果で元々精神―魂が殺されていると言える。そのため、ヴラドの能力を遮断しているようなものだ。斬られた者は姿形を崩すことなく、その場に倒れた。

 

「ハッ!」

 

その倒れた身体を蹴り上げる。それが壁となり、カルマの姿を隠す。その間に移動し、死角にいる敵の魂を狩りとっていく。

 

「やはり、歯ごたえがないな…。」

 

肉体を素通りするため、斬った感覚を感じることができない。粗方片付いてきたところで、不意に背後に近づく気配を感じた。

 

「深…。いや、違うか。」

 

予想はしていた。万が一の可能性で考えてはいたが、まさか本当に予想が当たるとは思わなかった。ここに来る前に、彼の未来を見ておけばよかったかもしれない。

 

「噛まれたか。」

 

そう。今の深はもはやスカーレット家の従者ではない。ヴラドの眷属へと変わってしまったのだ。

 

「―ッ!」

 

振り返る前に接近を許してしまった。カルマと深の距離は0。意識を失いながらでも、能力を使えるようだ。そして、深の犬歯が首筋に接触する。

 

「拒絶!」

 

反射的に魔法を発動。噛みつかれる直前でどうにか止める事が出来た。深を蹴り飛ばし、距離を開ける。

 

「チィッ!厄介だな。」

 

深の能力を未だに理解していないカルマ。考えられるのは瞬間移動なのだが、それならあの時、刺し殺さなくても、違う方法で殺すこともできただろう。それに今のもそうだ。噛む寸前で移動するのでなく、噛んだ状態で移動すればいいだけなのだ。

 

「―クソッ!」

 

まただ。一瞬で移動し、カルマに噛みつこうとしてくる。拒絶を発動しているため、噛まれることはないが、これでは埒が明かない。それにしても、彼ほどの手練れが眷属レベルの敵に噛まれるようなヘマをするようには思えない。ならば、考えられるのは一つだけ。ヴラド自ら出てきたということになる。

 

「磔十字!」

 

深を蹴り飛ばし、十字架に拘束させる。だが、彼は移動しなかった。何はともあれ、今はヴラドだ。奴自身が出てきている今だからこそ、討つに越したことはない。堕天した瞳で眷属を操っている魔力の源を見つける。流れは林の奥から来ていた。

 

「高みの見物とはいい度胸じゃねぇか。」

 

すぐに駆け出し、闇の中を進んでいく。出来うる限り早くことを済ませなければ。

 




―というわけで、ルーミアの登場でした。
多くのSSで諏訪大戦の時に見かけることが多いんですけどねw
私はこの時に出しました。
理由は名前が片仮名であることと、外見がフランに少し似ているということです。
まぁ、このSSではスカーレットとはあまり深い関係ではないんですけどね。

あと、前作に登場した魔剣バルムンクが出てきました。
前作読んでいた人は気づいたかな?

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,6 Vlad Tepes

表現力の欠落が激しいです。(´・ω・`)
イラストも女性が多いのでギャルゲ感がしますし。
なんてこったい\(^o^)/

それでは、本編どうぞ。


カルマは闇の中に一人の男の姿を捉えた。勢いそのままで男の首を掴み、木に押し付けた。男は苦悶の表情を浮かべる。

 

「カハッ!?」

「貴様がヴラド・ツェペツュか?」

「そうだっ!」

「グッ!?」

 

男―ヴラドは返事とともに、カルマの腹を蹴り飛ばし、距離をとった。

 

「私としては君が誰なのかわからないのだがね。」

「知らずで結構。今夜限りの付き合いだ。適当に呼べ。」

「ふむ。そうか…。」

 

ヴラドはカルマをじっと観察し続ける。

 

「それで、君は私に何の用だい?」

「貴様の首だ。」

「それは困った。私としてはここで倒されるわけには行かないのだがね。」

 

悠長な会話をしているようだが、二人はそれぞれ相手の出方を伺っていた。ヴラドは腰に下げている剣に手を沿えている。カルマも大鎌を肩に掛け、いつでも振り下ろせる形をとっていた。

 

「―ッ!」

 

先に動いたのはカルマだった。飛び出し、鎌を振り下ろす。ヴラドはそれを躱し、抜いた剣を振り上げた。それを鎌から離れることで回避する。追撃が来る前に跳躍し距離を取った。

 

「得物が君の手か離れてしまったが、いいのかね?」

「問題ない。」

 

すると、鎌が一瞬にして姿を消し、カルマの手元に戻ってきた。

 

「ただの鎌ではない?」

「そういう貴様の剣もただの物ではないだろ。」

「これか?これの銘は“魔剣バルムンク”。苦労して手に入れた私の愛剣だ。」

 

おそらく彼の持つ魔剣が深の言っていた武具なのだろう。

 

「君の鎌の銘はなんというんだい?」

「…これは魔術で生んだものだ。銘はない。」

「そうか。」

 

ヴラドがバルムンクを横に振った。その軌跡が光線となり、カルマに襲い掛かる。しかし、それを鎌で弾こうとした。そこで異変が起きた。慌ててすぐ飛び退くカルマ。彼の手には柄を二つに分断された大鎌があった。

 

「この魔剣に斬らないものは存在しない。」

「斬れないものはない、ねぇ。」

 

おそらく剣そのものには特殊な効果はないだろう。重要なのは、刀身から放たれる光線だ。あの光が全てを斬り裂くことを可能としているのだろう。

 

「おや?君の得物はこれで使い物にならなくなってしまったな。」

「問題ない。」

 

元々は魔術で生み出したもの。出すも消すも自由だ。

 

「キメラパーツ“両脚”。」

 

鎌を消すとキマイラを発動し、両脚をキメラ化させる。

 

「ふん。」

 

キメラ化した脚は堕天した時よりも力は上を行く。一度の踏み込みでヴラドの距離を0にした。

 

「―ッ!?」

 

鋭い蹴りを紙一重の差で回避。すぐにバルムンクで斬りかかる。それを蹴り飛ばし、更に追撃を加えるが、またも躱されてしまった。距離を取ったヴラドは横一閃に薙ぎ払う。その軌跡が光線となり襲い掛かるが、その攻撃を読んでいたカルマは前方に跳躍し回避する。そのまま踵落としを放つが、バルムンクから更に放たれた光線が再び襲い掛かる。それを空中で無理に身体を捻り回避。着地すると再度距離を取った。

 

「ふぅ、危なかった。」

「…ド低脳が。」

 

まだ奴の眷属がいるかもしれない。その可能性を考えると早くヴラドを討つに限る。だが、どちらも一歩も譲らない攻防が時間を無駄にしていくのみだ。

 

「瞬殺してやる。」

「君にそれが可能なのかい?見たところ、君は妙な魔力を持つ以外はただの人間のようだが?」

「言ってろ。」

 

―第64禁忌魔法“ニブルヘイム”―

 

カルマが禁忌魔法を発動した。すると、彼の身体から冷気が出始めた。それは彼の立っている地面に霜ができるほどである。

 

「うん?なんだか急に冷えてきたな。」

「そうだな。」

 

カルマが一歩踏み出すごとに冷気が広がっている。その事実に気付いたヴラドは冷気を払おうとバルムンクから光線を放つ。しかし、無尽蔵に溢れ出す冷気は留まることなく広がっていく。

 

「一体どんな魔法を使っている?」

「……」

 

返答の代わりにカルマは踏み込み、殴りかかる。ヴラドはそれをバルムンクで受け止めた。

 

「なっ!」

 

剣に触れた瞬間、カルマはヴラドの手首を掴んだ。そして、放り投げる。翼を広げ、空中で体勢を整えると、そこから斬撃の光線を飛ばした。しかし、カルマはそれを滑るように躱していく。そして、それはすぐに起きた。

 

「な、に!?」

 

ヴラドの剣を握る感覚が無くなったのだ。そしてそれは手首から肘へ、肘から肩へと広がっていく。しかも、それだけでなく、感覚の無くなった箇所から動かなくなっていったのだ。

 

「何をした!」

 

しかし、ヴラドの質問にカルマは答えない。まだ感覚の残っている左手で感覚の無くなった右肩を切り落とし、バルムンクを拾い上げる。それで感覚麻痺の進行は止まったが、右腕を無くしたというハンデがついてしまった。攻撃を仕掛けるべくヴラドに接近する。彼は翼を広げ、空中に逃げる。しかし、攻撃範囲外にも関わらず、カルマは薄い笑みを浮かべていた。

 

「何がおかしい?」

「名高い吸血鬼が人間風情に逃げる事しかできねぇと思うとな。」

「貴様…。」

 

右腕を奪われただけでなく、挑発までされてはさすがのヴラドも乗ってしまう。とうとう吸血鬼としての武器である牙を剥いた。翼の力と重力による加速。しかし、カルマは動こうとしない。

 

「―ッ!」

 

そして、牙を剥きカルマの首に噛みつこうとした。無謀に立っている今なら絶好のチャンスだろう。しかし、彼の牙は刺さらない。それどころか、犬歯の先から感覚が無くなっていくではないか。

 

「一体、どんな手品をッ!」

「知ったところでどうすることもできねぇよ、お前は。今の俺に触れただけでなく、噛みつこうとしたんだ。すぐに口の感覚もなくなり、動かなくなる。」

「―ッ!」

 

カルマの言う通り、ヴラドの口は大口を開けた状態で動かなくなっていた。

 

「無理に動かすことは可能だが、砕け散るからな。まぁ、言ったところで聞いてないか。」

 

口が動かなくなった以上、そこから感覚が無くなり、動かなくなっていく。そして、口は頭の一部である以上、どんどん効果は広がり、口から鼻へ、鼻から目へ、そして脳へと伝わる。結果、ヴラドの脳は機能停止してしまった。

 

「活動停止。終わったな。」

 

身体全体まで効果が及んだヴラドは像のように動かなくなった。そして、それに軽く触れた瞬間、ヴラドの身体は硝子細工のように粉々に砕け散ってしまった。

 

「これで終わりか。」

 

丁度、日が上りだし、山の向こうが明るくなってきた時、この戦いは終わった。静かに地面に刺さる魔剣に反射する日の光がそれを物語っていた。

 

【挿絵表示】

 




バルムンクのデザインが厨二臭い・・・(´・ω・`)
そんなわけでヴラドを倒すことができました。
カルマが無双すぎて戦闘がつまらなくなってきてる感があります。
まぁ、今回わかりにくいフラグを入れたけどw

禁忌魔法説明~。
第64禁忌魔法“ニヴルヘイム” ― 万物全てにおいて触れた場所から分子レベルで振動数を0とする魔法。振動数0の物質は触れた(少しの振動)だけで壊せるほど脆くなる。

あるラノベをもとにしています。
分かる人にはわかります。
ヒント、ある意味☆ネギトロ。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,7 小さな悪魔

サブタイで誰が登場するか分かっちゃう。
不思議!

試験がやっと終わりました。
finishじゃないよ?endの方ねw

それでは、本編どうぞ。



ヴラドは死んだ。その事実にカルマはスカーレット当主直々に感謝を述べられた。魔剣バルムンクはそのお礼ということでマキナからカルマに贈られた。ヴラドを倒したことにより能力を解除された深はソウルイーターで斬られなかったが、ずっと十字架に貼り付けにされていたため、かなり衰弱していた。今は自室で安静にしている。その間、眷属とされていたスカーレットの従者たちは休むことなく働いていた。これも深に対するお礼だそうだ。

 

「……。」

 

邪魔になるだろうと判断したカルマは、館の中にある書庫で静かに本を読んでいた。禁忌魔法の魔導書しか読んだことがない彼にとって他の魔法が記された本を読むということは新鮮なことだった。

 

「あ、お兄様みっけ。」

 

すると、車庫の扉を開けて入ってきたのはマキナの娘であるレミリアだった。

 

「どうした?」

 

最初のうちはその呼び名に慣れなかったが、いつの間にか慣れてしまった。読んでいた本を閉じ、レミリアに視線を向ける。

 

「あのね。パチェが探してたから、呼びに来たの。」

「パチュリーが?」

「うん。」

「わかった。」

 

本を棚に戻すと、2人は車庫を後にした。

 

「うー…。」

「あ?」

 

廊下を進んでいこうとすると、カルマはレミリアが唸っていることに気付いた。

 

「なんだ?」

「肩車して!」

「…………はぁ。」

 

一つ溜息をつくと、レミリアの前に腰を屈めた。彼女は笑顔を浮かべ、カルマの肩に乗る。今、深は動くことができず、マキナも出産が近いのかあまり動けなくなってきている。そのため、カルマしかかまってくれそうな人物がいないのだ。

 

「わぁい♪」

 

レミリアは喜んでカルマの肩に乗った。しばらく楽しんでいたようだが、ふと彼女にしては珍しく真剣な声音で口を開いた。

 

「あのね、お兄様。」

「なんだ?」

「最近、よく夢を見るの。」

「夢?」

「うん。お兄様と私が戦ってる夢。」

 

彼女の話だと、その夢をたまに見るようになったようだ。しかも1回ではないらしい。紅い館を背に2人が戦っている夢だそうだ。

 

「……。」

「お兄様?」

「いや、なんでもない。大丈夫だろ、俺はお前に危害を加えるつもりはないからな。」

「うん、ありがと。」

 

レミリアは気にしないことにしたようだ。しかし、カルマは違う。少なくとも今の彼女には戦えるほどの技量も力もない。すると、はるか未来での可能性がある。しかし、子どもの見る夢を真に受けてもしょうがない。あとでマキナに聞いてみるべきだろうか。

 

「ここか。」

「うん。」

 

パチュリーの部屋の前についたので、カルマは彼女を降ろそうとした。しかし、しがみついて離さない。

 

「…おい、レミィ。」

「うー!」

「…わかったよ。」

「やった!」

 

降ろす事を諦め、そのまま部屋に入ると、机に魔導書を広げているパチュリーの姿があった。

 

「パチェ、連れてきたわよ。」

「うん。ありがとう。」

 

まだ幼い子どもにしては不釣り合いな厚い魔導書から顔を上げたパチュリーだったが、目の前の光景に一度固まった。

 

「…な。」

「「な?」」

「なにしてるの、レミィ!」

 

確かに真剣に魔導書を読んでいる彼女の前に、肩車をして入ってくれば、さすがに失礼だろう。

 

「え?何って肩ぐるm」

「私もしてっ!」

「そっちか…。」

 

まさかの返答にあきれるカルマは後ですることを約束させられてしまった。それはさておき、今は彼女が彼を部屋に呼んだ理由についてだ。

 

「―で、何の用だ?」

「そうそう、お兄さんに相談したいことがあって…。」

 

余談だが、彼をレミリアは『お兄様』、パチュリーは『お兄さん』と呼んでいる。

 

「相談?」

「そうなの。」

 

彼女が魔導書を広げていたことから、魔法を使う彼に相談しようと思ったのだろう。しかし、カルマは禁忌魔法しか扱うことができない身体だ。

 

「使い魔を召喚しようと思ってるの。」

「使い魔、ねぇ…。」

 

確かに、現状からして使い魔のような従者が必要と言えるだろう。しかし、使い魔は手懐けることが大変である。自分が相手よりも実力が上でなければならないためだ。

 

「確かにお前には魔力があるが、まだ幼い。使い魔を手懐かせることは難しいぞ。」

「そのためにお兄さんでしょ?」

「私も手伝うわ。」

「……。」

 

彼はどうやら使い魔を手懐かせるために呼ばれたらしい。

 

「それでいいのか?俺に仕えてもパチェには懐かないかもしれんぞ。」

「それじゃあ、パチェ1人でどうにかするしかないの?」

「そうだ。」

「わかった。私1人でやってみる。」

 

どうやら決心できたようだ。彼女の瞳には固い意志が見て取れる。彼女は中庭に移動すると魔法陣を描き始めた。予めマキナからは許可をもらっている。日の光に当たらないようにレミリアは窓からその様子を見ていた。カルマは念のため、パチュリーの後ろに控えていた。

 

「―よし。」

「描けたか?」

「うん。…それじゃあ、始めるね。」

 

深い深呼吸をすると、彼女は魔法陣に触れ、演唱を始めた。

 

「異の門を開きて、我が声を聞き入れよ。して、異なる者を呼び、我が意に従え。」

 

すると、魔法陣が輝きだした。そして、光は魔法陣の中心で形状を成していく。そして光が人の形状になった時、その光は砕け散った。

 

「私を呼んだのは、貴方ですか?」

 

現れたのは小さな女の子。頭と背中に小さな翼を生やし、赤い髪を靡かせている。まだ幼いパチュリーだったため、相手もまだ子供のようだが、彼女がどれほどの強さを持っているのかわからない。

 

「私よ。」

「…そうですか。それでは、私が仕えるほどの力があるのか、確かめさs」

 

そこで彼女は硬直した。彼女の様子にパチュリーは戦闘用に準備していた本を片手に首を傾げた。彼女の視線を追うとカルマに向けられていた。

 

「ま、ままま、ままっまままままままっままままままままっまままままま。」

「あ?」

「魔神様あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」

 

彼女の叫びが館を越えたことは言うまでもない。

 




れみ☆りあ☆うー。
そんなわけですはいw
レミリアの「うー」は出したいなぁって思ってたんですよね。
結論から言えば、書いてて、何この生き物かわいいってなりましたw

小悪魔の登場回でした、はい。
最初のうちは彼女を出そうとは思わなかったんですがね。
ブラド戦の後に、出産がすぐ来ると違和感があるので、なにか挟もうと思ったんです。
それが今回でした。
次回にも続くよっ!

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,8 運命の夢

そろそろこの章も終わりが近づいてきました。
うーん、この後どうしようかな・・・。

それでは、本編どうぞ。


「ななな、なんで魔神ささまがこんんなとここころにぃっ!?」

 

呼び出された女の子はカルマを見て慌てふためいていた。しかし、カルマは彼女に見覚えがあるわけがない。それだけでなく、『魔神』という呼び名にも聞き覚えがない。2人の様子にパチュリーは首を傾げていた。

 

「お兄さんって有名人なの?」

「いや、身に覚えがないんだが…。」

「なにを言ってるんですかっ!魔神さまは神に勝ったお方ですよっ!」

「神?……あぁ。」

 

カルマには思い当たる節があった。それはここに来る前にいた場所で起こった戦いのことだ。そこで彼は幾つもの神を倒している。

 

「なるほど。察したわ。」

 

おそらくツクヨミかアマテラスが付けた呼び名だろう。カルマが魔人であることに因んで、魔神と捩ったのだろう。

 

「しかも、魔界をお作りになったお方でもあるんです!」

 

思い出すのは、だだを捏ねたあの時の少女。彼女から魔界のことが出た以上、上手くやっているのだろう。

 

「ほんとなの?」

「あぁ。そいつの言ってること事実だ。」

「すごいわ!」

 

パチュリーからの信頼が更に増した瞬間である。

 

「それはそうと、使い魔云々はどうすんだ。」

「そうだったわね。早速始めましょう。」

「あのぉ…。」

 

再度本を用意するパチュリーだが、対して召喚された少女は小さく手を挙げた。

 

「その女の子は魔神さまの親戚ですか?」

「いや、助けたってだけだ。別に手加減しなくていい。」

 

それに少女はパチュリーよりも弱いことはすぐに分かったが、今のパチュリーには技量を見分けられるほどの力はない。カルマの言葉に安堵すると、少女は気を引き締めて構えた。

 

「それでは、小悪魔。行きます!」

 

 

 

結論から言えば、パチュリーが勝った。勝利するのにそれほど時間は掛からなかったが、喘息というデメリットが足枷となり、息を切らせていた。

 

「か、勝てた…。」

「はにゃぁ~…。」

 

その相手となった小悪魔と名乗った少女は目を廻して大の字で倒れていた。

 

「むきゅう…。」

「よく頑張ったな。」

「う、うん。ありがとう。」

 

喘息で動けなくなった彼女を背負うとしたが、約束した肩車になってしまった。まだ目を廻している小悪魔を横抱きして室内に移動し、パチュリーの部屋へ移った。小悪魔が起き次第、彼女から色々話すらしい。その間にカルマはマキナの部屋へと向かった。

 

「マキナ。今いいか?」

「えぇ、大丈夫よ。」

 

扉を開けるとベッドに横になっているマキナの姿があった。お腹は見てわかるほどに大きくなってきている。もう少しなのだろう。

 

「レミィのことで話がある。」

 

彼はレミリアの夢の話をした。母親である彼女ならなにか思い当たる節があるのではないかと判断したためだ。

 

「同じ夢を何度も…。それは多分レミィの能力じゃないかしら?」

「あいつの能力?」

「えぇ。私の能力の欠片がレミィに遺伝しちゃったのかもね。」

 

マキナの能力。それをカルマは一度も聞いたことがない。それは深の能力もそうだ。

 

「いい機会だ。お前と深の能力ってのはなんだ?」

「私の能力は『運命を破壊する程度の能力』。そして深が『時間を操る程度の能力』。」

「時間…。なるほど。」

 

これで深の瞬間移動の原理が理解できた。つまり、彼は時間を止めて移動しているということになる。これで今までの戦闘への疑問がすべて解けた。

 

「私の能力は文字通り、相手の運命を破壊することができる。その過程でこれから起こる運命を見ることができるわ。レミィには運命関係の能力が派生したみたいね。」

「そうか…。」

 

そうなると、どんな理由にしろ、カルマとレミリアはいつか戦うことになる未来があるということになるのだろう。

 

「レミィと戦うことは避けたいわ。それで私の能力を使っての提案なんだけど。」

「なんだ?」

「カルマ。貴方、レミィの許嫁にならない?」

 

カルマは一度何を言われたのか理解できなかった。数秒硬直した後に、彼女が何を言ったのか理解することができた。

 

「馬鹿か、お前…。」

「失礼ね。私は歓迎するわよ?レミィも貴方に随分と懐いてるようだし。」

「否定はしねぇが、歳の差が広すぎだろ。」

「吸血鬼は人間と成長が遅いし、長寿なのよ?私だって1000歳超えてるし。」

「残念だったな。俺はお前より年上だ。」

「え?」

 

今度はマキナが硬直する番だった。彼女は目を点にしながら唖然としている。

 

「ただの人間じゃないとは思ってたけど…。ち、ちなみに何歳?」

「さぁ、数えてねぇな。少なくとも、億は行ってるか。」

「億って…。もう神様の領域じゃないかしら?」

「さぁな。」

 

カルマにとっては人間を捨てた以上、身体になにかしら影響が出るとは思っていた。しかし、これほど長生きするとは思ってもいなかったのだ。

 

「ま、まぁ、それはさておき。」

 

マキナは咳払いをして話を戻した。

 

「レミィの許嫁にはならないのね?」

「あぁ。悪いが無いな。」

「そう…。」

「それに俺は旅人だ。いずれはここも出るつもりだったからな。」

「…いつ、発つ予定なの?」

 

やはり別れる事に寂しいという感情が湧いて出たのだろう。彼女の顔に影が差した。

 

「お前の子供が生まれた後に出ようと考えてる。」

「…そう。」

 

彼女の第二子はもう少しで生まれようとしている。マキナはそれまでまともに動く事もできない。それにレミリアやパチュリーもまだ幼い。ここには深や美鈴がいるとは言え、深はまだ回復中、美鈴も技量不足だ。ならば、自分がいる間くらいは守ってやろうと考えたのだ。

 

―そして、その時が訪れた。

 




小悪魔が仲間になった!
やったね、レミリア!家族が増えるよ!
出産でさらに増えるよ!
もう、何も怖くない。

はい。いきなりですが、マキナの能力判明です。
彼女の能力『運命を破壊する程度の能力』は、対象にこれから起こる運命を破壊し、違う運命を植え付けることができます。
運命を破壊するために、どれを破壊するかという選択の過程で、運命を見ることが出来るんです。
そして、深の能力は言わずもがなです。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,9 誕生と出発

今回自分で書いててなに書いてるのかわからなくなりました(´・ω・`)
文章が変だと思います。
ごめんね。

あと最近気づきました。
時系列めちゃくちゃでした(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ。


館の一室。その前にカルマとレミリア、パチュリーに小悪魔がいた。特にレミリアとパチュリーの2人は落ち着かない様子である。それもそのはず、今現在マキナの出産の手術が行われているのだ。手術には信頼できる人間を呼び、そばに深が控えている状態で行われている。

 

「お母様。大丈夫かな…。」

「大丈夫だろ。」

「う、うん…。」

 

カルマは妙に冷静を保っていた。それはマキナの未来を手術前に見ていたからだ。しかし、それを見てから、後悔の念が大きかった。

 

「……。」

「お兄さん?」

「なんだ?」

「なんか変よ?」

 

どうやら表情に出ていたようだ。

 

「大丈夫だ。2人はどうする?このままここで待つか?それなりに時間が掛かるぞ。」

「お兄様が待つなら、私も待つわ。」

「私も同じよ。」

「私はパチュリー様に従います!」

 

小悪魔はすでにここに馴染んでいた。パチュリーの助手兼司書という立ち位置にいる。多くの頻度でドジをすることがたまに傷ではあるが。しかし、予想通り時間は掛かっている。いつの間にかレミリアとパチュリーはうとうとと船を扱きはじめていた。

 

「小悪魔、パチェを部屋に寝かせてこい。俺はレミィを連れていく。」

「わかりました、魔神さま。」

 

彼女はカルマを魔神と呼んでいる。名前でも構わないと言ったが、すごい勢いで首を横に振っていた。

 

「うー。まだここにいるぅ。」

 

なんとか抵抗しようとするが、眠さのせいで抵抗が弱い。おんぶして部屋まで運んでいくと、途中で背中から寝息が聞こえてきた。

 

「やっと静かになったか…。」

 

レミリアを部屋のベッドに寝かせると、マキナの部屋の前に戻ってきた。そこにはすでに小悪魔が待っていた。

 

「早かったな。」

「はい。パチュリー様は喘息持ちなので、すぐ休んでくれました。」

「そうか。…お前はいいのか?」

「私はまだ大丈夫です。」

 

彼女は笑って見せるが、その顔には少し疲れが見えている。彼女も色々無理しているのだろう。

 

「先に休んでていいぞ?」

「いえ、そういうわけにはいきません。」

「……。」

 

数時間後、案の定、彼女も眠そうに目を擦りはじめてきた。

 

「いい加減寝たらどうだ。」

「うぅ。…わかりました。」

 

やはり、睡魔には勝てなかったようだ。彼女は渋々と自室へと戻っていった。残ったカルマは部屋の前で待ち続けることにした。また少し時間が過ぎた時間に、廊下の奥からレミリアが歩いてきた。

 

「なんだ、起きたのか?」

「うー。お兄様、私も待つって言ったじゃん。」

「寝てただろ、お前。」

「それは…そうだけど…。」

 

そのまま二人だけになり、待ち続けていたが、ふとカルマから口を開いた。

 

「レミィ。」

「何?」

「俺はお前の妹が生まれたら、ここを発とうと思っている。」

「えっ!」

 

驚いた表情で彼を見上げる。

 

「…お兄様。出て行っちゃうの?」

「あぁ。」

「やだ!行かないで!」

 

彼女はカルマのコートの裾を掴み、懇願してきた。対し、彼はレミリアに視線を合わせるように腰を屈めた。

 

「よく聞け、レミリア。お前はこのスカーレット家の次期当主になることになる。」

 

しかし、レミリアは小さな涙声で否定しながら、俯いている。

 

「お前の妹は十中八九、危険な子だ。マキナもそう長生きできない。お前が次期当主としてみんなを支えるんだ。」

「…いや、お兄様。…いやだよ。」

「レミリア!」

 

カルマはレミリアの名を呼び、顔を両手で挟み、自分に向けさせる。

 

「お前はマキナ・スカーレットの娘だ。アイツにできることがお前にできないわけがない。お前がしっかりしなければ、生まれてくる妹もいないと同然だ。」

「…お兄、様。」

「妹やパチェ、マキナに深と美鈴のためにもお前が頑張らなければならないんだ。」

「………お兄様。…わかったわ、私頑張る。みんなのためにも、お兄様のためにも。」

「俺?」

「お兄様がいたから、今があるんだよ?お兄様の努力は無駄にしないよ。」

「…そうか。」

 

彼女の瞳には決意の意志が見て取れた。すると、深が部屋から出てきた。

 

「終わりました。無事、産まれましたよ。」

「ほんとっ!」

 

レミリアが部屋へ駈け込んでいった。

 

「何かもめていたようですが、なにかあったのですかな?」

「大したことじゃない。」

「そうですか…。」

 

 

 

「じゃあな、マキナ。残りの時間を大切にしろよ。」

「分かってるわ。」

 

すっかりレミリアも寝てしまい、起きているのが、マキナとカルマ、深だけとなった頃、カルマは出発するために、彼女の部屋に来ていた。彼女の横には宝石のような翼を生やした赤子が寝かされていた。

 

「本当に行ってしまわれるのですか。」

「あぁ。俺は元々旅人だからな。」

「そうですか。またお会いできることを願っています。」

 

2人に挨拶を済ませ、館から外に出た。外は雪が降り始めていた。門のそばには美鈴が立っていた。

 

「行ってしまうんですか?」

「あぁ。」

「一つ、いいですか?」

「なんだ。」

「私と初めて会ったとき、見ただけで弱いと言いましたよね?」

 

彼女が言っているのは、カルマがヴラドの使いだと勘違いした時のことだ。その時、彼は美鈴の構えを見ただけで、弱いと判断したのだ。

 

「言ったな、確かに。」

「なぜ、そう言えるんですか?」

 

彼女は門番として、弱いわけにはいかないのだろう。

 

「そうだな。お前は確かに型が綺麗だ。だが、それだけだ。」

「それだけ?」

「実戦が足りなすぎる。型だけでどうにかなるほど、世の中甘くねぇよ。俺もそうだが、邪道の戦い方をする輩も多くいる。」

「実戦…ですか。」

「まぁ、そこらへんは頑張れ。お前も人ならざる者だ。時間はまだある。実績を積めば、それなりの力も身に付くだろ。」

「わかりました。助言ありがとうございます。」

「じゃあな。」

「はい。お元気で。」

 

そして、カルマは唯一残された吸血鬼の館を後とした。

 

 

 

「ふふ。今行くわ、魔神様。ふふ、うふふふ。」

 




実は今回挿絵を入れようと思ってました。
でも、いざ描いてみると難しくて難しくて。
おかげで内容を最初と変更せざるをえませんでした(´・ω・`)
え?どんなシーンかって?
長椅子にレミリアとパチェ、カルマが座ってね。
そんでカルマを挟む形で2人が寝ちゃって頭を預けるんです。
そして、レミィの頭がずり落ちてカルマの膝上に来るんです。
このシーンをイラストで描きたかったんだよぉ( ;∀;)

あと、マキナが余命が少ないという理由ですが。
これはマキナがカルマの血を飲んでしまったことにあります。
覚えていますか?カルマがスカーレット家に初めてきた辺りの頃です。
この時点でお腹には第2子がいました。
そして、マキナが摂取したカルマの血は栄養分として胎児へと送られるわけです。
禁忌魔法を扱い、魔神である彼の血を得た胎児はどうなるのでしょうね?
おかげであの悪魔の妹が誕生した。
その影響でマキナの余命が削られるわけです。
―と、まぁこういう設定です。

あ、ちなみにこの話でこの章は終わりじゃないよ?
もうちょっと続くんじゃ。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,10 咀嚼する闇

タイトルで誰が(ry
今回イラストを使いまわしてます。
ぶっちゃけ描く暇がなかったもので(´・ω・`)
もともとニコ静画に投稿してたものです。
探せばあるかと。

それでは、本編どうぞ。


とある山道でカルマは一人歩を進めていた。スカーレット家を出て、それなりに時間は経過している。辺りは夜のため、暗闇が広がっている。しかし、その闇は暗視が効かないほど、濃いものだった。

 

「いい加減出てこい。」

 

歩みを止め、怒気の籠った声音でカルマは闇に問いかける。すると、闇の中からクスクスと笑い声が聞こえてきた。

 

「今か今かと、いつ言い出してくるのか、楽しみにしていたわ。」

 

【挿絵表示】

 

闇の中から現れたのは、赤いネクタイをつけた黒い服を着ている金髪を風に靡かせている女性だった。しかし、彼女から漏れ出ている妖気が、彼女が人間でないことを裏付けている。

 

「ヴラドと戦っている時からお前の存在は分かっていたんだが。」

「でしょうね。魔神様があれくらいわからなきゃ。」

 

カルマがヴラドと戦っている時、彼女の妖気は霧状になり、周囲に漂っていたのだ。否応なく彼女の存在には気づかされる。

 

「―で?貴様、何者だ?」

 

見ただけでわかる。彼女はヴラドよりも強い。そして下手をすれば、カルマに及ぶほどの力が彼女には備わっている。

 

「一応、はじめまして、ね。私の名前はルーミア。闇を統べる人食い妖怪ってとこね。」

「その妖怪が俺に何の用だ?」

「貴方を喰らいにきた。」

 

瞬間、彼を取り込もうと闇が襲い掛かっていた。すぐに飛びのき、樹の上に着地する。

 

「随分なご挨拶だな。」

「久々に会う事ができて、『私たち』も気が立ってるのよ。」

「…私、たち?」

 

カルマの疑問に彼女は細く笑みを浮かべるだけ。すると、彼を追うように闇が下方から襲い掛かる。

 

「拒絶結界。」

 

透明な壁に阻まれ、闇は避けていく。しかし、その勢いがすさまじく、結界が悲鳴を上げていた。

 

「開門。」

 

同じ場所に居続けるのは危険だと判断したカルマは開門により、転移し、ルーミアの近くへと移動した。

 

「貴様…、一体何者なんだ。俺はお前を知らない。だが、お前は久々に会ったと言った。それだけでなく、『私たち』という複数を示す単語まで出した。」

「わからないかしら?」

 

再度襲い来る闇を掻い潜りながら、どうにか思考を巡らせる。しかし、何も思いつかない。彼がわかっていないと分かったのだろう。彼女は闇を引っ込め、話し始めた。

 

「分かってないようだし、ヒントをあげるわ。私は貴方に殺され、そして絶滅した者たちの集合体。」

「俺が殺し…まさかっ!」

 

そこで気づいたらしい。彼の表情には驚きが見て取れる。

 

「貴様、穢れかっ!」

「ふふ。正解よ。」

 

ルーミアは彼の答えに満足したように、にやりと笑みを浮かべ、両手を広げた。

 

「そう。私は穢れの集まり。人を喰らうのはその名残り。そしてこの闇はすべて穢れの力。さぁ、あの時の続きをしましょう?」

 

瞬時に闇が波のように覆いかぶさろうとカルマに襲い掛かる。拒絶を発動し、横薙ぎに手を振るった。そして、闇が裂けると同時にカルマは駆けだした。

 

「来い、魔剣バルムンク!」

 

ルーミアに振り下ろした手には、魔剣が握られていた。ルーミアはそれを闇で作った盾で防ぐ。

 

「その魔剣、私が手に入れて、ヴラドに渡したものなのよね。」

「知るか。ありがたく使わせてもらう。」

「そーなのかー。」

 

しかし、剣一本に対し、ルーミアには無尽蔵と言えるほどの闇がある。カルマの左右後方から襲い掛かる。それに気づいたカルマは力任せに回転。その回転を軌跡として円状の光線が放たれる。

 

「随分と使い慣れているようね。」

「だが、流石に使いにくい。」

 

魔剣を消すと、それと入れ替わるように、ソウルイーターが現れる。

 

「ふふ。それじゃあ遠慮なく、喰らわせてもらうわ!」

 

闇の顎が彼を喰らおうと襲い掛かる。しかし、それはカルマに到達する前に斬り刻まれてしまった。それは彼の得意とする遠心力によって振るった大鎌で起こしたものだ。

 

「懐かしいわね。あの頃は私たちをよく鎌で斬ってくれたものね。」

「そうだな。」

 

一気に詰め寄り、鎌を振るう。しかし、またも闇の盾に防がれてしまった。弾かれた反動を利用し、回転。そのまま鎌を向ける。それも防がれるが、それを繰り返し続ける。

 

「いい加減私に食べられなさいよ。」

「お前こそ、いい加減斬られろ。」

「もう斬られるのは散々なの、よっ!」

 

拮抗していた2人だが、先に動いたのはルーミアの方だった。盾にしていた闇が膨張し、爆発する。膨張しだした時点で距離を取ろうとしたカルマだったが、闇が足を捕え動くことが出来ず、そのまま爆発へと巻き込まれる。

 

「くっそ…。ド低能が…。」

 

煙が晴れた時、カルマは距離を取っていたが、鎌を持っていた両手の前腕が完全に無くなっていた。爆発に巻き込まれた上に、闇に喰われたためだ。

 

「あら、まだ残ってたのね。残念。」

「言ってくれる…。」

 

これで彼は手を使う戦闘が出来なくなった。これは致命的とも言える。

 

「もう逃げることしかできないわね。さぁ逃げ惑いなさい。その上でじっくり食べてあげる。」

「冗談。ただで喰われるほど、俺は甘くねぇよ。キメラパーツ“両脚”」

 

カルマは両足をキマイラ化させた。これで足を使った戦闘もできる。両腕から流れる血はニヴルヘイムで応急処置をしている。

 

「しつこい人は嫌われるわよ?」

「その言葉、そのまま返す。」

「妖怪の時点で嫌われてるわ。」

「そうか。」

 

カルマの返答はルーミアのそばで聞こえてきた。キマイラ化した脚で踏み出したため、動体視力が追いつかなかったのだ。そしてそのまま蹴り飛ばす。あまりの速さにルーミアの反応が遅れ、そのまま蹴り飛ばされてしまった。

 

「がっ!」

 

飛ばされるが、闇がクッションとなり、ダメージを半減する。

 

「さぁ、数億年ぶりの殺し合いの再開だ。」

 

 




なんか今回戦闘長引きそう。
―って言っても、次回で終わるけどね。
ルーミア=穢れ説はまぁ王道なのかな?
あまり見ないけど、こういう設定にしました。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,11 禁忌と宵闇

今回でこの章が終わります。
ふぅ、やっとだじぇ(;・∀・)
あとお知らせがあります。

それでは、本編どうぞ。


「……キマイラ。」

 

念のため、全身をキマイラ化させたカルマ。しかし、両腕がないとなると、何かと不自由で仕方ない。

 

「足蹴にすることないじゃない?」

「腕を喰われなければ、蹴ることもなかったんだがな。」

 

ルーミアの周りの闇が増加した。何もかも飲み込んでいくその闇は、触れている木々さえも咀嚼していく。

 

「こんなものじゃなくて、貴方を食べたいわ。」

「喰えるものならな。」

 

瞬間、カルマの姿が消えた。辺りの木々は闇の中へと消えている。移動できる場所限られる。つまり、カルマの移動先として考えられる場所は一か所のみ。

 

「上ね。」

 

ルーミアが闇を空へ向かせようとする。案の定、彼はルーミアの上空にいた。しかし、それもすぐに姿を消した。それもそのはずだ。彼は空中で拒絶を発動し空を蹴ったのだ。脚力にはキマイラも追加されている。空にいたカルマは今、ルーミアの眼前に着陸していた。闇を空へと向けているため、反応ができない。

 

「―っ!」

「チッ!」

 

しかし、彼女の変わりに反応したのは闇自身だった。彼女は言っていた。この闇は穢れの集まり。つまり、この闇にも意志のようなものがあるのだろう。闇がカルマの顔を貫こうと針となり攻撃した。反射的に後方へと飛んだが、顔を覆う仮面に傷がついてしまった。あと少し反応が遅れていれば、顔の右半分が消えていたかもしれない。

 

「あら、惜しかったわね。もう少しで殺せたかもしれないのに。」

「…ド低能が。」

「そうね。でもそんな低能も集まれば有能に近づくってものよ?」

 

確かに、今彼女は一人だが、彼女は数多くの穢れを従えているようなものだ。実質、一対多と差して変わらない。

 

「…あまり使いたくないんだがな。」

「まだ隠し玉があるのね?いいわよ。それすらも闇の中に飲み込んであげる。」

「そうか。なら遠慮はいらんか。第88禁忌魔法“オートマター”。」

 

すると、脱力したかのように首を垂れた。何かの罠かと判断したルーミアは様子を見ようとする。しかし、変化はすぐに起きた。彼の口から生気を感じない声が漏れだした。

 

「目的、敵の殺傷。スタート。」

 

顔を上げた時、彼に大きな違いはなかった。だが、その瞳には感情と言えるものが見て取ることができない。そして、カルマは地を蹴り、ルーミアの懐に入り込む。

 

「何度やっても同じよっ!」

「……。」

 

返事の代わりに鋭い蹴りが放たれた。彼女はそれを闇の盾で防いだ。

 

「拒絶。」

 

拒絶を発動することで、盾ごと蹴り飛ばされてしまった。飛ばされても闇で威力は吸収しようとしたが、カルマが追撃を加えるべく、目の前まで迫ってきていた。闇がその追撃を防ごうとした。その闇にとうとう右腕が肩まで消えてしまった。しかし止まらない。

 

「なっ!」

 

勢いそのままに横蹴りがルーミアの脇腹に入る。

 

「かはっ!このっ!」

 

闇の槍がいくつも現れ、それがカルマに向かって飛んでいく。しかし、カルマはそれを防ごうとしない。キマイラの鎧にいくつもの傷がつくが、彼は止まることなく突っ込んでくるのみ。

 

「そーなのかっ!貴方、今目的しか見えてないのね!」

 

今のカルマにはルーミアを倒すことしか見えていないのだ。それが第88禁忌魔法“オートマター”。この魔法を数億年前に穢れとの戦いで使ったため、傷だらけになったことがある。

 

「なら、遠慮なく飲み込まれなさい!」

 

目的しか見えていない以上、それ以外に関与することはない。つまり、手段を選ばないということだ。それは目の前に迫った大きな闇すらも視界に入らないほどに、だ。そして、カルマは闇の中へと飲まれてしまった。

 

「うふふ。自分から来るなんて、良い鴨だわ。」

 

闇の中から骨を砕く音、肉を噛み千切る音が聞こえてくる。

 

「ふぅ、ごちそうさm―」

 

しかし、すぐにお腹を押さえて苦しみだす。

 

「うっうぅ。ぐえっ!」

 

闇から吐き出されて出てきたのはカルマだった。そして彼の姿にはしっかりと両腕もついている。

 

「まぁ、思い通りだが、いいものじゃねぇな。」

 

カルマの考えは至って簡単。死ぬことで黄泉返りを発動させ、再生させることだ。オートマターを発動したのは、自分が喰われる苦痛を味わないためだ。

 

「ぐぅ。はぁはぁ。」

「よぉ、穢れ。気分はどうだ?」

「…えぇ、最悪よ。」

「そうか。」

 

しかし、カルマは止めを刺そうとしない。

 

「殺さないのかしら?」

「穢れから妖怪になって今でも生きてんだ。もっと生きたいと思うものだろ。」

「私が生き続ければ、多くの命を喰らうのに?」

「それは俺が制御してやる。」

「どういうつもりかしら?」

 

彼の真意が見えない。確かに彼女はまだ生きたいと思っているのは事実だ。

 

「ただの気まぐれだ。」

「…そういうことにしておくわ。それで?どう制御するのかしら?」

「拒絶で人に対する捕食活動を拒絶してやる。」

「そう。ならお願いするわ。」

 

その後、カルマはルーミアに拒絶をかけた。それ以降、彼女は人を食べることはなくなった。こうして、彼女はカルマとともに旅をすることになった。しかし、二人は知らない。拒絶をかけたことであんな悲劇が起きるなどと。

 

 




終わり方雑っ!
本当ごめんね、こんな終わり方で(´・ω・`)

一度死ねば全部再生します。
逆に言えば、死ななければ再生しません。
これが蓬莱人との違いです。
そして、カルマの弱点だったり・・・するのかな?


今回登場した禁忌魔法紹介~。
第88禁忌魔法“オートマター” ― 一切の思考、感情を削除し、特定の目的を遂行する。成功するか失敗することで解除される。
今回はルーミアに食べられたため、失敗ということになる。
この場合、失敗は死ぬことを意味するため、黄泉返りを発動することでリセットされる。

はい、お知らせです。
今日から3月末まで投稿が止まります。
楽しみにしている方(いるのかな?)ごめんなさい。
免許とりに行くんで、勉強に集中しようと思ってますので。
申し訳ないです。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4章 闇の標
Ep,1 闇の始まり


お久しぶりですね。
鈴華ですよ~。

SS書いてる時間が削られて投稿ペースが落ちるかもしれないです。
だって単位が足りないんだもん(´・ω・`)
え?免許?
HAHAHA・・・はぁ(*´Д`)

それでは、本編どうぞ。


森を抜けたところに、大きな道があった。近くに町でもあるのか、沢山の人が行き来していた。その中一段と目を引くのは、男女の二人組だ。どちらの同じ金髪。だが、男の方は金と赤のオッドアイである。言わずもがなカルマとルーミアである。

 

「それで、こんな通りに出てどうするのかしら?」

「別に、宿を探しているだけだ。」

「勿論、一部屋よね?」

「んなわけねぇだろ。」

 

暫く歩いているとそこまで大きくはないが、町を見つけた。早速宿を探してみるが、あったのは一件。そして話してみると一部屋しか空いてないとのことだった。

 

「……。」

「くっ、くく。まさか、言った通りになると思わなかったわ。」

 

案内された部屋でルーミアはお腹を押さえて笑っていた。対し、カルマは頬杖をついてそっぽを向いていた。

 

「それに店員に変に気を使わせたみたいだし。」

「解せん。」

 

そう。店員はなにを思ったのか、二人が来たとき、常時頬をを染め、部屋に案内した時などは「おたのしみください。」などと言っていたのだ。

 

「それで、これからどうするのかしら?」

「あ?適当に旅を続けるだけだ。」

「そう。なら貴方の歩いてきた道をたどってみようかしら。」

 

要するに、彼女はカルマの旅をしてきた場所に行こうと言っているのだ。

 

「好きにしろ。」

「冷たいわね。貴方も来るのよ?」

「分かってる。」

 

今、ルーミアには第1禁忌魔法の“拒絶”が掛かっているため、人間を食べるということはないが、念のため、監視をしているのだ。よって、必然的に二人は行動を共にすることになる。

 

「そういや、お前は今までどこで何をしていたんだ?」

「…?」

「俺の路を辿ろうってんだから、お前の路を聞かせろ。」

 

彼女はきょとんとした顔をしたが、すぐにその顔にはニヤケ顔が張り付いてた。

 

「なぁに?私のことが気になるの?」

「別に。」

「ふふ、いいわ。暇だし、私の過去を話しましょ。」

 

静かに笑いながら、彼女は今までの過去を語り始めた。

 

 

 

月移住計画が成功し、焼き野原が一面に広がっていた。一人の人間が眠りにつき、焼き野原に自然が戻り、爆弾の痕跡が見当たらなくなった頃。長い時間を掛けて、一カ所に黒よりも黒い妖気が収束してきていた。この気配に誰も気づけなかったのは奇跡とも言えるかもしれない。

 

「此処ハ…。」

 

妖気の塊から声が発せられた。

 

「あら、やっとお目覚めかしら?」

「―ッ!?」

 

女性の声のした方向には空間の裂け目があった。その奥にはいくつもの瞳があり、全てがこちらを見ているように見える。

 

「誰ダ…。」

「私?名前はそのうち語るとしましょう。」

 

裂け目から出てきたのは、金髪の先をリボンで結び、卦の萃と太極図が描かれた服を着込み、ナイトキャップを被っている女性が出てきた。

 

「何ノ用ダ。」

「ちょっと説明にね。」

「……。」

 

女性がただの人間ではないのはすぐにわかる。警戒するように黒い妖気がいつでも襲えるように形状を変えた。

 

「警戒しなくてもいいわ。話すだけ話したら姿を消すので。」

「…早ク話セ。」

 

彼女は今までの経緯、月移住計画のその後を説明した。

 

「―それで今に至るというわけよ。」

 

説明の途中で記憶が戻ってきた“それ”は自分が殺されている瞬間を思い出した。しかしそれは一つでなく、いくつもの記憶だった。そこで自分自身が個体でなく、群体であることを理解することができた。その中で多く自身を殺していたのが、金髪の鎌使いであることが印象強く残っていた。

 

「それでは、私は行かせてもらいましょうか。またいづれ会いましょう。」

 

そう言い残し、彼女は裂け目の中へと消え、裂け目も閉じ、消えてしまった。“それ”はまだ実態を持っているわけではない。今はただの妖気の塊でしかないのだ。移動するにしても、この状態では人目に付き、目立ってしまう。

 

「マズハ肉体ガ必要カ…。」

 

すると、妖気は霧状に霧散し、そこには誰もいなくなった。そして、数日に渡り、行方不明となる人間が続出。骨格だけが残るという事象が起こった。そして―

 

「こんなものかしら…。」

 

金髪に金眼、黒い服に赤いネクタイを結んだ女性が山積みになった骨の上に立っていた。彼女を多く殺した者の姿に似せた結果でもある。

 

「そろそろ移動しようかしら。」

「あら。随分と人に似せたものね。」

 

森の影から一人の女性が現れた。彼女に説明をした人物である。

 

「貴方に言われたくないわ。貴方も私と同じ、人間に似た姿の妖怪でしょう?」

「そうね。私も妖怪。」

 

くすくす笑うその姿に底が見えない。

 

「何の用?早く行きたいんだけど。」

「用はすぐに終わるわ。貴女に名前を与えに来たの。」

「名前、ねぇ…。」

「そう、名前。貴女の名前はルーミア。」

「ルーミア…。ありがと。それで貴方の名前は?」

 

彼女の名前をまだ知らされていない。この機会に知ることもできるだろう。

 

「私は八雲紫。人間と妖怪の共存を望んでいるわ。」

「あっそう。私には関係ない望みね。」

「そうね。今の貴女には、ね。」

「どういう意味かしら?」

「さぁ?」

 

計り知れない。紫は感情を表に出さずに、くすくすと笑いながら森の奥へと消えていこうとしたが、何かを思い出し、歩みを止めた。

 

「そうそう。彼、魔神カルマって言ってわかるかしら?」

「知らないわね。誰のことよ。」

「貴女たちをたくさん殺した人。今は人間から神に転じているけど。」

「魔神カルマ…。あの人が…。」

 

ルーミアの反応に気づいているのかいないのか、彼女は話を続ける。

 

「今、彼は西に向かっているわ。もしかしたら会えるかもね。」

 

それだけ言うと、紫はいつの間にか姿を消していた。

 

「魔神カルマ…。」

 

彼女は凶悪な笑みを浮かべると闇の中へと歩みを進めて行った。

 




実はこの話は入れるつもりはありませんでした。
このまま東に戻すつもりだったんですけど、いきなり戻すのもなぁって思ったからです。
そのおかげでまだまだ長引きそうです。
でも、おかげであの娘が早く出せそうです。
え?誰かって?
前s「着火!」
ぎゃああああああああああ!!?

焦げてるナウ・・・。
ルーミアはカルマに似せて身体を構築したって設定です。
妖気だけでは肉体を作ることは不可能に近いので、人間の肉体を得ることで構成しました。
だってほら、ルーミアとカルマって似てるでしょ?
金髪金眼で服装も黒と赤じゃないですか。
性別はカルマが少し髪が長いため、女性だと思ったのだと思います。(汗
「カルマの女装・・・はっ!これは流行る!」

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,2 妖怪の山

最近暖かくなってきましたね。
晴れの日はたまに半袖着てますw

今回はあの人が再登場。

それでは、本編どうぞ。

画力落ちたなぁ・・・(´・ω・`)


ルーミアはぶらぶらとただ西に向かっていた。目的は魔神カルマの捕食である。ただ道中は流石にお腹も減るが、それは適当に目につく生き物を飲み込んでいった。人間や妖怪、家畜関係なく。よって常に周りにいる生き物の気配を探っている状態だったため、“それ”にすぐ気付くことができた。

「山道に入ったあたりね。」

 

今歩いている山道に入った時から、視線を感じていた。それは観察しているというより、警戒している好戦的なものだった。それでも相手から襲ってこないあたり賢明な判断だとも言える。襲ってきたら闇に飲み込まれるだけなのだから。

 

「止まれっ!」

 

一向に進まない緊迫状態に痺れを切らしたのだろう。一人の妖怪が姿を現した。白い髪に犬のような耳を生やしている。彼女はこちらを警戒し、剣を向けていた。しかし、その剣先はわずかながら震えているように見える。対し、ルーミアを余裕とも言える笑みを浮かべていた。

 

「あら?何の用かしら?」

「ここから先は我ら天狗の領域だっ!すぐに引き返せっ!」

 

どうやら知らずに天狗の縄張りに踏み込んでしまったらしい。彼女の声に反応するように木々の影から彼女と同じような容貌の妖怪が姿を現した。

 

「随分と縄張り意識が強いのね。」

「人間なら追い返すか返り討ちにするだけだが、お前のような妖怪なら問答無用だっ!」

「人間、ねぇ…。」

 

彼女が思い浮かべるのはまだ穢れが個々の存在だった頃の事。あの時は人間が一つの都市を縄張りにし、そこを守っていた。

 

「まるであの時の人間たちとそっくり。」

「我々はあのような下等な生き物とは違うっ!」

 

彼女の声に触発されたのか、ルーミアの背後にいた天狗が襲い掛かってきた。しかし、それに視線を向けることなく、彼女から溢れ出た妖気が自動で防いだ。

 

「こ、このっ!」

 

何回も繰り出される剣戟は全て闇に防がれてしまう。やがて体力が無くなってきたあたりを見計らい、闇が得物へと襲い掛かった。慌てて飛び退こうとするが、相手の方が速かった。すぐに捕えられてしまう。

 

「く、くそっ!離せ!」

 

逃れようともがくがびくともしない。

 

「丁度お腹がすいてきたのよ。」

 

ルーミアは舌舐めずりすると、焦らすようにゆっくりと天狗が闇の中へ誘われていく。

 

「離せ、化物!」

 

仲間を危険から救おうと他の天狗が攻撃を仕掛けだした。しかし、全て闇に迎撃されてしまう。

 

「化物なんてひどいわ。私も妖怪なのに。ただ食欲旺盛なだけだけど。」

 

少しずつ少しずつ闇に飲み込まれようとする天狗は恐怖で顔を歪めながらも、諦めることなく足掻き続ける。だが、彼女の妖気はびくともせず、彼女自身も凶悪な笑みを浮かべていた。しかし、その微笑みもすぐに消えてしまった。闇が消え、天狗が地面に落ちる。

 

「ほぅ、これを防ぐか。しかし、すっかり絶滅したと思っておったが、このような形で生き永らえていようとはのう。」

 

【挿絵表示】

 

ルーミアの傍から声が聞こえてきた。声の主が放った拳を闇で防ぐために、天狗を解放した。迎撃のために、闇が槍のように突き出す。声の主は余裕を持って跳躍し、距離をとった。

 

「誰だったかしら、貴女。」

「穢れに名乗ったことないのう。」

 

穢れ。もはやその名を知っているものはごく一部と言えるだろう。それだけの年月が経っているのだ。そして、その名を知っているのならば、あの頃から生きている者ということになる。

 

「して何用か、穢れ?」

「ルーミアよ。穢れなんて人間が勝手に付けた私たちの名前でしょ?」

「クハハ!全くもってその通りじゃ。妾にもして、朱姫(あかひめ)と言う名もある。人間共は鬼子母神と妾を呼ぶがな。」

 

声の主―鬼子母神の朱姫は一際笑い、落ち着くとルーミアに再度問いかける。他の天狗たちは警戒を解かず、緊張していることが分かる。

 

「して何用か、ルーミアとやら。」

「ただ通りがかっただけよ。西に向かってるのよ。」

「西に?」

 

返答に疑問を抱き、朱姫は腕組をしながら首を傾げた。

 

「何故、西に向かうのか?」

「アイツに会うためよ。私たちをたくさん殺した奴。」

「ふむ?あの時代は多くの人間に狩られたであろう。一個人に入れ込むのは…あぁ、あの鎌使いか?」

 

やっと理解したのだろう。朱姫の答えにルーミアは笑みを浮かべる。

 

「えぇ、その鎌使いよ。今は神の領域に足を踏み入れたみたいだけね。」

「クハハ!やはりあやつか!妾とあそこまでやったのだ。神になってもらわなければこちらが困る。して、あやつの名は何というのだ?」

「魔神カルマっていうらしいわよ。」

「なるほどのぉ。近頃聞くようになった名だと思っておったが、あやつがのぉ。」

 

朱姫もカルマのことは噂程度には聞いていたのだろう。うんうん頷いている。その表情は満足気であった。

 

「―で、その魔神さまが西に向かっているって情報があったから、今向かってるところよ。」

「なるほどのぉ、理解した。なら悪いがこの山を迂回して行ってはくれぬか?」

 

この山は丁度ルーミアの進路方向である西の途中にあった。この山を迂回するとなると、それなりに時間がかかる。

 

「理由を聞いてもいいかしら?」

「ほれ、ここにいる天狗がおるじゃろ?」

 

朱姫の問いに何人かの天狗が驚いた表情を浮かべる。

 

「この山はこやつらの領域での。加え、縄張り意識が強い。妾ら、鬼も苦労したんじゃ。いざこざがあると面倒なんでのぉ。これ以上は遠回りしてほしいのだ。」

「あら?それなら私が全員食べちゃえばいいだけじゃない?」

「それを妾が放っておくと思うか?」

 

両者の顔には無表情の仮面が張り付いている。辺りに緊迫した空気が漂い、いつ戦闘になっても可笑しくない。

 

「少しよろしくて?」

 

しかし、その空気も一人の声によって霧散させられてしまった。

 




鬼子母神の再登場でした。
名前は朱姫です。
髪色に合わせました。
え?なんで音読みでなく、訓読みなのかって?
だって、しゅきって連呼すると・・・ねぇ?(;・∀・)

神である鬼子母神の拳を妖怪が止めちゃいましたね。
穢れの集合体である彼女の防御力は53万だ。
嘘ですはいw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,3 狂う村

時は来た!

それでは、本編どうぞ。


「少しよろしくて?」

 

声のした方向に視線を向けると一人の女性が空間にできた裂け目に腰かけ、こちらを見下ろしていた。

 

「八雲…紫…。」

 

そこにいたのは、八雲紫だった彼女は地面に降りるとこちらに近づいてきた。

 

「お主も妖怪か…。しかし奇妙な気配だのう。」

「鬼子母神をお見受けしますわ。少しお話ししませんか?」

「話、だと?今それどころではないのだが…。」

 

今、朱姫の前には穢れであるルーミアがいる。彼女がいる以上警戒を怠ることはない。

 

「ルーミア。変な事しないでね。」

「……。」

 

紫を一睨みしたあと、溜息を吐くと闇を引っ込めた。それを確認すると、朱姫も構えを解く。

 

「して、話とは?」

「えぇ。ここの天狗の長である天魔様という方と話をつけてきたのです。」

「天魔とか…。ふむ…。」

 

天魔という名にわずかに反応した。一応聞いてくれる姿勢になったようだ。

 

「ここの麓近くに狂う村があるらしいですね。」

「あぁ、あるな。」

 

紫の話によると、ここの近くに1つの村があった。「あった」というのは、現在そこは廃村のような状態だからだ。廃村となった理由は、ある日を境にその村に住んでいる人たちが発狂しだしたからだ。ある人は人を殺し、ある人はなんでも食べ、ある人は笑い出すと他にも狂いだす人が出る始末。それを恐れた村人はその村から離れていったのだ。そして、現在もそれは続き、少しでもその村に入ると狂い出すという。

 

「して、その廃村がどうしたのじゃ?」

「天魔さまとの取引をしました。」

「取引だと?」

「はい。」

 

すると、紫はルーミアの側に立ち、彼女の肩に手を置いた。

 

「彼女がこの問題を解決する代わりに、ここを通っても良いという話です。」

「はぁ!?」

 

初耳だった。彼女は早く彼の魔神とあの頃の続きをやりたいのだ、道草を食うつもりなど毛頭ない。ただでさえ、遠回りしなければならない現状なのだ。異を唱えるに決まっている。

 

「ちょっと紫!」

「因みに貴方に拒否権はないわ、ルーミア。」

「ぐっ…。」

 

紫がルーミアを睨みつける。逃げ道を防がれてしまった以上引き下がるほかない。

 

「…理解した。その廃村のことが済んだ時は、ここを通って良い。」

「ありがとうございます。ほら行くわよ、ルーミア。」

「ちょ、ちょっと!」

 

朱姫に一礼すると、紫はルーミアの手を引いて下山を始めた。暫くそうしていたが、ルーミアが彼女の手を振りほどいた。

 

「何のつもりよ、紫。私がどんな存在か、知ってるでしょ!」

「勿論知っているわ。」

 

彼女は妖怪である。それは二人とも当てはまることだ。しかし、妖怪と人間の共存を望んでいる八雲紫に対し、ルーミアは人間を喰らう。明らかに交わらない存在なのだ。

 

「その上で貴方を連れていくのよ。」

「意味が分からないんだけど…。」

「わからなくて結構。そろそろ見えてくるわよ。ほら、あそこよ。」

 

彼女の示した先には廃村のような場所があった。

 

「あそこがその狂うって村なの?」

「そうよ。なんとなくでもわかるんじゃないかしら?」

「…まぁ、ね。」

 

何か異常があるというのは、遠目でもわかる。近づけば、それがより強く感じさせられた。一件ただの廃村だが、本能が異常を察知しているのだ。

 

「これは…。」

「ね?異常でしょう?」

 

唖然とするルーミアを置いて、紫は村へと足を踏み入れる。

 

「ちょ、ちょっと!入って大丈夫なの、これ?」

「私の周囲は問題ないわ。境界を弄ってるから。貴方も私の側にいなさい。」

 

そして、二人は歩みを進める。人間の気配は感じられない廃屋があたりにあるだけだ。

 

『ようこそ、おいでくださいました。』

 

それは突然訪れた。突然声が聞こえてきたからだ。目の前が突如として青白く燃え始め、それは形を作っていく。

 

「…狐?」

 

そう。それは炎でできた狐だった。

 

「紫、こいつがここの原因なの?」

「この子じゃないわ。原因はこの子の宿主。」

 

この村で狂い始めたのはこの炎の主が原因らしい。紫は既に調べ上げていたのだろう。その上で天魔と取引に持ち込んだのだ。

 

『ご案内いたします。』

 

狐は二人をある場所に誘う。見えてきたのは長い階段。その上には鳥居が見える。鳥居の上には名前が刻まれた木板がつけてあったが、文字が掠れている。辛うじて‟博麗”と読めなくもない。階段を上り鳥居をくぐると、そこには如何にも崩れかけてる神社があった。

 

『こちらでございます。』

 

案内されたのは一つの部屋だった。戸は破られ、中が丸見えとなっている。狐の炎に照らされ、部屋の奥に人影があることがわかった。

 

「お帰り…なさい…。…焔(ほむら)。」

 

声は弱弱しく、掠れていた。辛うじて生きていると言えるだろう。焔と呼ばれた炎の狐は声の主の側にいく。

 

「―ッ!」

 

ルーミアは息を飲んだ。そこにいたのはまるで骨だった。正確は限界まで痩せ細った少女だったのだ。それに加え白装束を着ているため、より痛々しく、見ていられない状態だったのだ。

 

「焔…。私の…中へ…。」

 

焔は紫たちに一礼すると姿を消した。おそらく彼女の中へと入り込んだのだろう。

 

「ここに…人が来るのは…何年ぶり…なのでしょう…ね。」

「食糧を出すわ。少し待っていなさい。」

 

そう言うと紫は彼女の側に腰を下ろした。そして空間を開け、中から適当に食糧を取り出し、口へと持っていく。弱弱しく開けた口に食糧を入れると、ゆっくりと噛み始めた。

 

「それで?私はどうすればいいのよ。」

 

ルーミアは全くと言っていいほど興味を示していなかった。確かに彼女の痛々しい姿に息を飲んだが、ただそれだけだ。この狂う村の原因が彼女だというならば、喰らえばいいだけの話なのだ。

 

「簡単な話よ。この娘が能力を制御できるまで、側にいてあげて。」

「どうして私が…。」

「詳しい話は後で。」

 

そこで話を打ち切り、再度少女に食糧と水を与えた。満足したのだろう。少女は紫の膝に頭を置き、眠りについてしまった。その頭をゆっくりと撫でている

 

「それで?なんでなのか理由を話してもらいましょうか。」

「そうね。この娘は私の目的の要になるからよ。」

 

 




前作を読んでくれていた方々。
待たせたなっ!。
あの人の登場ですよ!うはうはw
まぁ、ちょい出し程度ですけどね。
はてさて、このあとどうしましょうかね(*´ω`*)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,4 幻想の基盤

みなさん、ちゃんとパジャマ着て寝てますか?
ちゃんと布団も被らないとお腹を冷やしちゃいますよ。
え?私?
勿論、下着で布団掛けてませんよw

それでは、本編どうぞ。


青白い炎が再び現れ、狐を形作ると眠る少女に寄り添うように伏せた。

 

「最初から説明しましょう。」

 

そして、紫はこの村の歴史を語りだした。

 

「今から数年前、この村にもちゃんと人間たちが暮らしていたわ。そんな中、この娘が生まれた。この子もすくすく成長したのだけど、異変は突如として訪れた。発狂しだしたのはまずこの子の両親が最初だった。そこから伝播するように村人が発狂し始めた。恐れた村人は発狂の原因であるこの子を殺そうと計画したわ。でも失敗。無自覚に能力がそれを防いだのよ。」

「それの能力ってなんなのよ。」

 

人間を食べる対象としてしか見ないルーミアは少女を物のように指名した。それに対し、狐の眉が一瞬ピクリと動いたが、動かない。紫に話を任せているのだ。

 

「狂わす程度の能力かしら?」

「それだけだったら、こんなことにはならなかったんじゃないかしら。」

「違うの?」

「えぇ。この娘の能力は“歪める程度の能力”。物体、精神、空間と言った森羅万象全てを歪めることができる。」

「つまり、ここに住んでいた人間はその能力に充てられて、性格が歪んでしまったってこと?」

「そうよ。そして、村人からの攻撃は空間を歪めることで回避してきたの。」

 

確かに“狂わす程度の能力”なら相手からの攻撃を防ぐことはできないだろう。そこで1つの疑問が頭をよぎった。

 

「…じゃあ、仮に私がそれを食べようとすれば?」

「変わらないわ。空間を歪めて、彼女に闇が触れられない状態になるわね。」

「…ふぅん。」

 

兎にも角にも、食べられないということが分かった。

 

「話を続けるわ。この娘を恐れた村人はこの村から去ることにした。そして、この村は廃村となり、誰も近づかなくなった。この子も自分が原因だってことに気づいてたから、ここから出ようとは考えなかったの。」

「それで、その狐はなんなの?歪めて生まれたってわけじゃないでしょ?」

 

話は青白く辺りを照らす焔へと移った。

 

『私はただの狐の亡霊でございます。ある日、この廃村にいる娘を見つけました。それが今の宿主でございます。私は宿主に憑り付き、彼女を狐憑きという妖怪に変えてしまいました。しかし、端的に言えば、宿主は人間であり、憑いている私は妖怪の部分。』

 

彼女が衰弱しきっているのに生き永らえてきたのは、妖怪としての能力と言えるだろう。

 

「この娘は言わば、後天的な半人半妖と言えるような存在となったの。まるで私の夢を体現したような娘よ。人間と妖怪の共存。素敵だと思わない?」

 

人間を食い物としか見ていなかったルーミアにとってはどうでもいいことだった。しかし、少しながら興味が湧いていた。食べることが出来ない人間というのはどういったものなのだろうか、と。

 

「―で、私は何をすればいいわけ?」

「あら?乗り気になったのね。簡単よ。この娘と暮らして、能力の制御ができるようにして頂戴。貴方が歪められないように、境界も弄っておくわ。対価は魔神の居場所でどうかしら?」

 

思ってもみない収穫だろう。この少女を助けるだけで、仇敵の居場所を知ることができるのだから。それに加え、山の通行も許可されるのだ。

 

「わかったわ。やってやるわよ。それで、私の食べ物はどうなるわけ?人間との共存を望むアンタにとって最もな問題はそこじゃないかしら?」

 

そう。ルーミアは妖怪と言っても人間を食べる人食い妖怪。人間が普段食べるようなもので満足できるほど、出来ているわけではない。

 

「我慢なさい。暫くは人間と同じものを食べなさい。」

「本気で言ってるの?私は人食い妖怪よ?」

「本気よ。」

「罪人でも、死人でもかまわないけど?」

「それでもよ。」

 

暫く睨みあう二人。呆れたように焔は溜息を吐いた。

 

『はぁ。ここまでくると畏まる必要性が感じやがりませんね。そちらの妖怪は食糧を多く用意してください。ただ大食いな住人が増えたと考えやがることにしましょう。』

 

人食いと大食いを同系統と考えるのはいかがなものかと思うが、それが妥協案とも言えるだろう。狐火も先ほどからかなり砕けた口調になっている。

 

「…そうね。そうしましょう。」

「はぁ。わかったわ。それで手を撃つわよ。」

『もう日も暗い。二人ともここに泊まって行きやがってください。』

「そうさせてもらいましょう。具体的な計画は明日話すわね。」

 

紫がそう言うと、空間の裂け目から枕を取り出し、少女の頭を持ち上げ、下に敷く。そして、そのまま裂け目の中へと入ってしまった。焔も姿を消してしまった。ルーミアは空腹のため外出ると、適当に歩みを進める。この村の噂があるため、近くに人間の気配は感じることはできない。

 

「いっそのこと、あの天狗でも食べようかしら…。」

「やめてくれぬか?」

 

姿を現したのは朱姫だった。

 

「あら、様子見かしら?」

「そんなものだ。ほれ、適当に持ってきたぞ。少し付き合え。」

 

彼女の手にはお酒とつまみがあった。どうやら差し入れのようなもののようだ。

 

「数億年ぶりの再会じゃ。話でもしないか?」

「そうね。暇だし、付き合うわ。」

 

その後、二人は飲み明かし、過去話を夜明けまでして

 




最後の朱姫とルーミアのやり取りは無理やり入れました。
反省はしていませんが、後悔はしています(´・ω・`)

んー、この後どうしましょうか。
一気に時間飛ばしてもいいんですけどねぇ・・・。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,5 歪御子

うーん、また番外編投稿しようかな。
―とか思っています。
内容は無いよう。
・・・冗談です。(´・ω・`)
まぁ、実際内容決めていませんが、うどんげでも弄ろうかなって思ってますw
もしくは水咲の方を出そうかな。

それでは、本編どうぞ。


能力を使うにしても体力が必要である。痩せこけている少女にとって、能力を使うことはとても辛いことだ。それに加え、無自覚に村全域を包んでいる歪んだ空間があるのだ。それが少女の身体を蝕んでいる。

 

「そこで貴方の能力よ、ルーミア。」

 

話は至って単純。今いる神社を闇で覆うのだ。言わば、結界の役割である。それなら紫でも大丈夫なのではないかと思えるが、彼女曰く―

 

「この娘の面倒を見ないといけないでしょ。それとも貴女が見てくれるのかしら?」

「あっそ。」

 

確かに食べる専門とも言える彼女にとって、人間の面倒を見ることは面倒極まりないことである。ルーミアは自分の能力―“闇を統べる程度の能力”を使い、神社を覆い、少女の力が漏れないように制御した。

 

「これでいいのよね?」

「ありがとう。当分の間はそれを維持し続けて。」

「はいはい。」

 

闇を解くことができるのは、おそらく少女が能力を抑え込めるようになるまでの間だろう。それまで彼女の体力が持てばの話だが。

 

「能力を制御するにしても、この娘次第。まずは体力をつけないといけないわ。」

 

それから数週間は彼女の体力の回復を促していた。やがて肉もつき、それなりに女性としての形が出来てきた。それほど時間が掛からなかったのは、焔の妖怪としての生命力によるものだろう。たどたどしかった口調もこの頃になると、滑らかなものへとなっていた。

 

「改めて、お礼を言わせてください。私を助けていただきありがとうございます。私は博麗麗夢。この神社の巫女をしていました。村の皆さんからは能力に因んで“歪御子(ゆがみこ)”と呼ばれていました。」

 

少女―博麗麗夢は今まで着ていた白装束から私服へと着変えていた。濃い緑を中心とした服装、薄紫の帯を巻いている。

 

「それにしても、どうしたらあの痩せ細った状態からこうなるのよ。」

「…あはは。」

 

そればかりは愛想笑いするしかない。彼女とて、自分でこのような体格になろうと思ったわけではないのだ。

 

「さて、脂肪も十分付いたことだし、次は筋力をつけましょうか。」

「はい。」

「もっとも、ほとんどの脂肪は胸に行ったみたいだけど。」

「うぅ…。」

 

気持ちを落ち着かせるのに、少しばかり時間が掛かった。落ち着くとまず歩く事から始めることにした。壁に手をつきながら、歩きはじめる。長い間出歩かずに過ごしていたため、筋力が衰えている。脚は生まれたばかりの小鹿のように震えていた。闇の中にいるため、焔の灯りが便りだ。

 

「無理しなくていいわ。少しずつやっていきましょう。」

「はい。」

 

少し動いては休憩を繰り返す。どれほど長い時間が掛かるのだろうか。あの魔神は既に西に到着し、旅を再開しているかもしれない。早く追いついて喰らいたい。

 

「ねぇ紫。」

「何かしら?」

「魔神は今どのあたりにいるの?」

 

ルーミアの目的は魔神の捕食。西に向かっていることは分かっているとはいえ、気になるに決まっている。

 

「そうね。今夜あたり見てくるとしましょう。」

「魔神…?」

 

麗夢にとっては初めて耳にする単語だ。

 

「魔神ってなんですか?」

「魔神は人間から神に昇華した奴の名よ。カルマっていうらしいけど。」

「そうなのですか。その魔神様ってどんな人なんですか?」

「そうね。私は直接会ったわけじゃないから外見ぐらいしかわからないわ。ルーミアは?」

「さぁ?私も外見ぐらいかしら。あと人間の時から結構強かったはずよ。」

「外見だけ、ですか?でもどうしてそんな人の話が出てくるのですか?大して関わりがないように思えるのですが。」

「食べるためよ。」

「えっ?」

 

ルーミアの言葉に疑問を抱く。食べるとはどういう意味なのか。食べるとしてもそれがどういう事なのか。どうしてそういう事になったのか。

 

「簡単に言えば、彼女は魔神様と殺すと言ってるのよ。」

 

ルーミアは妖怪。その妖怪が食べると言ってる意味は、物理的なものだった。

 

「だ、だめですよ!人を簡単に殺したりしては!」

 

何も知らない麗夢にとって、その事実は驚くことだった。現にルーミアは彼女たちと一緒にいる。危害を加えようとする素振りがない以上、紫と同じ志しを持っているものだと思っていたのだ。

 

「あいつは私たちをたくさん殺した。別に不思議なことじゃないわ。私もあいつを殺すのも至極当然でしょ?それに私は人食い妖怪。本来、人間を喰わないといけないのよ。」

「それでもっ!」

「なら、麗夢から食べてあげましょうか?」

 

ルーミアから闇が漏れ出し、蠢く闇が麗夢を狙う。彼女を守るように、焔が唸り、紫が睨みを利かせている。

 

「私を食べたら、魔神様に何もしないというのならいいですよ。」

『麗夢!何考えてやがるですか!』

「貴方が消えてしまっては困るの。」

 

ルーミアは溜息をつくと、闇を引っ込めた。意外と大人しい彼女に紫は不審がる。

 

「やっぱり、私にこの役割は向いてないわ。あとは紫が面倒みて。私は行くわ。」

「そう。ならここから行きなさい。」

 

空間に裂け目ができる。奥の目がルーミア見つめている。

 

「このスキマを通れば、すぐ西につくわ。」

「最初からこうして欲しかったわね。」

 

ルーミアはスキマの中へと臆することなく足を踏み入れる。

 

「ルーミアさん。また会いましょうね!」

 

背後から少し悲しみを含んだ声が別れを告げている。ルーミアは軽く手を振り、歩を進めていた。

 

 

 

スキマを通り抜けると、そこはどこかの山の中だった。

 

「ここが西…。」

 

どうやら西の大陸についたようだ。なんとなくではあるが、雰囲気が今までいた場所と違うのがわかる。ルーミアは深呼吸を幾度かし、最後に大きく吸い込んだ。

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

そして、吠えるとあたりに闇が広がっていく。まだ夕暮れだというのに、そこだけが夜以上に暗くなった。あたりにあるものが全て闇の中へと飲まれていく。無差別に飲み込むと、落ち着いたのか、息を切らせながら座り込んだ。

 

「はぁ…はぁ…。なんでよ…。」

 

彼女は我慢していたのだ、人間の捕食を。何とか堪えてきていたが、限界もすぐ訪れた。それが今。

 

「あんな女、食べてしまえばよかったのに…。」

 

食べてしまえば全て丸く収まったのだ。なのにしなかった。何故か。彼女の能力が闇を防ぐからか。違う。そばにいたあの計り知れない妖怪が恐ろしかったからか。違う。

 

「…忘れましょう。今は魔神を食べることが最優先よ。」

 

彼女は立ち上がると覚束ない足取りで闇の中へと歩みを進めていった。

 




結論、修行風景なんてなかったんや・・・。(遠い目

紫がルーミアを行かせたのは、彼女の‟人間への捕食活動”を抑えられなくなってことを察したからです。
ぶっちゃけ、この禁初幻譚のルーミアはあの感動的な動画のルーミアを元にしてます。
てか、それそのものじゃないかって感じです。
これ著作権的に大丈夫かな?(;・∀・)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,6 元居た地へ

今回はいつもより短めです。
普段なら2000字くらいなんだけど、今回は1500字くらい。
結構短いですね。
その割にフラグを入れてますがw

それでは、本編どうぞ。


「ま、その後なんやかんやあって、魔剣を手に入れて、ヴラドの所で厄介になってたってわけ。」

 

二人は海を越え、東の地へと上陸を果たしていた。最も、ルーミアは飛び、カルマは海上を歩くという異様な光景だったが。

 

「端折ったな。」

「めんどくさくなったのよ。」

 

彼女自身、その博麗麗夢という少女の話が出てきた時から、もやもやし出し話すことを止めたのだ。

 

「なら、お前は今俺を喰らいたくて堪らないってわけか。」

「少なくともヴラドの眷属を分けてもらってたから、堪らないってわけじゃないわ。」

 

ルーミアはヴラドの所にいる間、彼の眷属を食べていたようだ。おそらく、スカーレット家の従者も少人数とは言え、喰われていたかもしれない。あの時助け出した従者が全員でないことは分かっていた。

 

「一度その博麗とかいう女に会ってみるか…。」

「あら、興味ないとばかり思ってたのだけど?」

「その八雲紫とかいう妖怪も気にはなるがな。」

 

カルマは八雲紫なる者にあったことはない。しかし、ルーミアの話を聞く限り、彼女はカルマを知っているようだった。知っている事が情報だけというわけではなく、実際に会っていたような話ぶりだったのだ。

 

「あぁ。紫、ねぇ…。あいつとはあまり関わりたいとは思わないのよね。」

「そうか。」

「それよりも朱姫の方はどうなのよ?」

「鬼子母神だったか?」

「そうよ。あいつ、アンタと再戦する気満々みたいよ。」

 

朱姫と飲み明かした時、彼女はカルマとの再戦を心待ちにしている節を話していたらしい。それを聞いたカルマは嫌な顔をしていた。

 

「正直、アイツとは戦いたいと思わないな。」

「なんで?戦えばいいじゃない。」

「今の俺が全盛期の力がないんだよ。」

 

これはルーミアも感づいていた。カルマが自覚したのはヴラドとの戦闘でのことだった。理由はソウルイーターが斬られたという所だ。諏訪大戦時に神々からの攻撃を耐えしのぐほどの代物が魔剣―魔力を扱う剣に斬られたのだ。魔力は神力よりも強いわけではない。よって、これはカルマの能力が衰えてきていることを意味している。

 

「あの時の戦いでなんとなく分かってたわ。」

「おそらく、能力の使い過ぎが原因だろう。俺のこの力は薬で強制的に生み出されたものだ。薬の効力は永続的なものじゃない。」

「じゃあそのうち、アンタはただの人間に戻るってことなの?」

「いや、強制的にこうなったんだ。器はこのままだろう。力が仕えなくなるのは一時的なもんだと思っている。」

 

所謂魔力切れである。彼の使う禁忌魔法は人間の命を代償とする。つまり、人間一人分の生命力を使う。それを使う以上、燃費が悪く、カルマの魔力も少しずつ削られているのだ。

 

「なんだ。ただの人間に成り下がれば、食べられると思ったのに。」

「ただで喰われるほど、俺は甘くねぇよ。」

 

傍から見れば、仲良く会話をしているようにも見えるが、内容が重い物である。それだけでなく、片や魔神、片や妖怪なのだ。存在自体が異様である。

 

「それは置いとくとしても、朱姫には会うことになりそうね。」

「……。」

 

カルマに顔をしかめる。博麗麗夢のいる村に行くとなると、必然的に彼の者がいる山が近くなるということだ。遅かれ早かれ出会うことになりそうだ。

 

「―にしても、話を聞く限り、お前は随分と丸くなったみたいだな。」

「話逸らしたわね。」

「うるせぇよ。」

「でもそうね。むやみやたらに人間は食べなくなったわ。と言っても、食べるに越したことはないけど。」

 

そう言いつつ、彼女は舌なめずりをしながら、通り過ぎていく人間をチラ見している。もしカルマが彼女を制御していなければ、今通り過ぎた人間は彼女の胃の中だったのかもしれない。

 

「行くぞ、ルーミア。」

「はいはい。今行きますよー。」

 

 

 




本当なら魔剣の話とヴラドとの会合の話を入れるつもりだったんです。
グラムについて調べたら、色々面倒くさくなりましたw。

次回は設定を入れてから、竹取物語に入ります。
勿論、麗夢も登場させるつもりです。
さらに1話目からあの人の再登場です。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

設定 -博麗麗夢- -焔-

設定って言う事ないよね・・・(´・ω・`)
少しばかりネタバレも含みますので、注意です。


博麗麗夢

 

 

【挿絵表示】

 

 

二つ名:歪御子

 

年齢:15歳

 

身長:157cm

 

体重:42kg

 

誕生日:6月8日

 

正体:博麗神社の元巫女。後に狐憑きの妖怪となる。

 

能力:歪める程度の能力 ― 物体や空間を歪めることができる。例えば、林檎をねじることも可能。空間同士を歪め、つなげることもできる。また、彼女自身は使わないが、感情や性格を歪めることも可能。初登場時は制御できず、常時発動状態だった。

 

好きなもの:家事全般、弄りがいのある人

 

嫌いなもの:お酒(飲めないわけではない)、悪いこと

 

危険度:低

 

人間友好度:良

 

住んでいる場所:博麗神社

 

言わずもがな前作の主人公。この物語ではメインヒロイン。

イラストは回復した後の状態。

苔色がメインの短めな浴衣を着ている。紫の帯を巻き、厚底の下駄を履いている。狐火は常時出しているわけではない。ガーターに見えるが実際は短パンを履いており、その端に繋がっている。

「ガーターじゃないですよー。残念でしたね。」

博麗神社に生まれ、巫女として育てられるが、12歳を過ぎたあたりから能力が発現し、周囲の生き物を狂わせることとなる。それを危惧した村人は彼女を残し、去って行った。彼女自身も自分が原因であることを認めているため、村から出ようとは思わなかった。

能力が常時発動し、且つ食糧も尽きたため、衰弱死目前まで追いつめられる。そんな時に狐の亡霊―焔が彼女に憑りつき、妖力を頼りに命を繋ぎ止める事ができた。

ルーミアが去ったあと、紫と焔の3人で能力の制御に成功する。

酒癖が悪く、酔うと狐火が現れ、その火の熱が原因で脱ぎ癖がある。

「だから飲ませないでくださいねっ!」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

二つ名:なし

 

年齢:「覚えてねーです。」

 

体長:107cm

 

体重:「幽体だからねーですよ。」

 

誕生日:「歳然り、覚えてねーです。」

 

正体:狐の亡霊。麗夢の半身。

 

能力: 狐火を操る程度の能力 ― 青白い狐火を自在に操ることができる。しかし、水には弱いため、水気がある場所では麗夢の中にいるか、室内から出ない。

 

好きなもの:麗夢、度数の高いお酒(宿主から離れて飲み、酔いが覚めたら戻る)

 

嫌いなもの:水、

 

危険度:中

 

人間友好度:良

 

住んでいる場所:博麗神社、博麗麗夢の中

 

生前は善狐という存在で仙狐に昇華しかけていた。そのためか、死しても亡霊ながら善良な行いをしてきた。いつものように漂っていると、狂う村の噂を耳にする。最初はその村を悪とし、滅ぼそうとしたが、原因である博麗麗夢の存在と現状に気づき、彼女に憑りついた。名前は麗夢に付けてもらった。憑りついて以降、麗夢の世話をしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここから先はネタバレを少々含みます。」

『最低限に抑えてやがりますが、見たくねー人は見ねーで結構です。』

 

博麗麗夢

幻想郷の基盤となる存在。博麗の巫女なのだが、あくまで元となった人物であるため、初代というわけではない。

ルーミアが去った後、紫に魔神カルマについて教えてもらい、興味を持つ。初対面で一目惚れし、積極的に攻める。その度にツンデレ反応するカルマにニヤニヤしている。

しかし、彼女の存在は幻想郷の歴史に残っていない。理由はいずれ語ることになります。

 

麗夢が自立し、村も回復し始めてきた時を見計らい、彼女に能力を残して、成仏しようと思っていたが、そんな矢先に麗夢を死なせる原因の1つとなる。彼女の死後、心配になり成仏せず、彼女の中で見守ってきた。

霙として生まれてからも見守り続けていたが、幻想郷で起こった“歪界異変(霙が起した異変)”以降は表に出るようになった。(東方歪界譚番外編に登場

 




ネタバレを最低限に抑えたつもりなんですがねw
あと3章くらいで現代編だぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5章 御伽話
Ep,1 巫女の再会


霊感疑惑が浮上した鈴華です。
ほんの少しあるって程度ですが、地元の方で影を計3回見たってだけですがねw

さぁ、今回からラブコメっぽい展開が出てきますよぉ(*´ω`*)
竹取物語はもう少し先になりますけどね。

それでは、本編どうぞ。


とある街道でカルマはある既視感を感じていた。街は賑やかであり、人々も活気にあふれている。ルーミアはというと、過ぎて行く人々を物惜しげに目移りしていた。勘違いすれば、過ぎ去る人々に惚れているように見えるが、実際は食欲によるものだが、誰も気づきはしない。

 

「いい加減にしておけよ、ルーミア。」

「今までこうも人間に溢れてる場所なんて来たことないのよ?しょうがないじゃない。」

 

カルマは溜息をつくと、ルーミアを連れて適当に宿を探す。少し歩くと、街の中央あたりに大きな社が見えてきた。

 

「ゲッ……。」

 

ここに来て、今いる場所が何処だか気付いたらしい。彼の顔が何とも言えない表情になった。そんなカルマを不思議そうに見つめるルーミア。

 

「何?あの社がどうかしたの?」

 

彼女の言葉に反応せずに、今来た道を急ぎ足で引き返そうとする。しかし、返答がないことに不満を感じ、ルーミアは彼の腕を掴んで引き止める。

 

「ちょっと、どうし―」

「カルマさん…?」

 

聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。その声はあの頃よりも大人びている女性らしい声だった。振り返ると、そこには人間にしては珍しい緑がかった髪に蛙と蛇の髪飾り、青を中心とした巫女服に身を包んだ女性がいた。

 

「…カルマさん、ですよね?」

「…あぁ、久しいな。」

 

【挿絵表示】

 

そこにいたのは東風谷水咲だった。最後にあった時よりも成長しており、肉体も女として成長していた。

 

「カルマさんっ!」

 

水咲はそばにいるルーミアに見向きもせず、カルマの胸へと飛び込んできた。街中ということもあり、周りから視線を感じるが、彼女は気にした様子はない。気恥ずかしいカルマは彼女から視線を逸らすが、視線の先にいたルーミアはジト目をこちらに向けていた。そこでカルマは水咲を引きはがす。

 

「大きくなったな、水咲。」

「はいっ!カルマさんは変わってないみたいですけど、お元気そうでよかったですっ!」

 

性格はあまり変わっていないようだ。

 

「ちょっとカルマ、その娘は誰よ?」

 

ルーミアは少し棘のある口調で聞いてくる。その顔は面白くないと言っているようだ。

 

「あぁ、こいつは東風谷水咲。水咲、こいつはルーミアだ。」

「ルーミアさんですね?初めまして、東風谷水咲ですっ!」

 

元気よく挨拶すると、彼女は手を差し伸べてきた。ルーミアは戸惑いながらも握手を交わす。

 

「ルーミアよ。因みに妖怪だからね?」

「えっ!?」

「更に言えば、人食い妖怪だ。」

「えぇっ!?」

 

驚いた水咲は、カルマの背後に隠れて彼女の様子をビクビクしながら伺ってきた。その可愛らしい反応にルーミアは舌なめずりをする。

 

「随分可愛い反応するじゃない。おいしそうね。」

「ふえぇっ!!?」

 

ここだけ聞くと如何わしく聞こえてくるのは何故か。

 

「安心しろ。今のこいつは人間を喰らうことができない。」

「そ、そうなんですか?」

「本当よ。そこの魔神さまに抑え込まれてるのよ。」

「ほへ~。」

 

自分が言ったことだといえ、そう簡単に信じていいのだろうか、と二人は思った。

 

「…魔神さま?」

 

巫女である以上、神の名前くらい聞いたことがあるのだろう。水咲の動きが固まる。

 

「誰が魔神様なんですか?」

「そこにいるじゃない。」

 

反応から誰が魔神なのか分かっているようだが、信じられないようだ。

 

「ここにはカルマさんしかいませんよ?」

「そうよ?」

「……。」

「……。」

 

否定して欲しそうに彼を見上げるが、彼の視線を逸らすという行動が肯定と言っていた。

 

「ええええええええええええええええええええええ!!!!!??」

 

彼女の叫びが大和の国に響き渡ったのは言うまでもない。

 

 

 

「先程は失礼しました、カルマ様。」

 

落ち着いた水咲はカルマへの接し方を改めていた。そこには巫女としての顔ができていた。巫女は神に仕える存在。自分の信仰する神と違っても、神への敬いは必要なのだ。

 

「畏まる必要はない。いつも通りでいい。」

「そういうわけにはいきません。」

 

カルマの知っている水咲とは違う様子に呆れを感じていた。戸惑っているカルマにルーミアは笑みを浮かべながら傍観している。

 

「俺は神として自覚したのも最近なんだ。今更そんな対応されてもこちらが困る。」

「貴方が困ってるところなんて見たことないんだけど。」

「余計なお世話だ。」

「…分かりました。」

 

いまいち釈然としない水咲だったが、カルマの言葉を受け入れることにした。

 

「そういえば、カルマさんは諏訪子様と神奈子様にお会いしましたか?」

「いや、今さっきここに来たばかりだ。会っていない。」

「じゃあ行きましょう!」

 

近くの大きな社に向かう水咲。彼女が来た方向からして、あの社に何か用事があり、その帰りなのだろうが、これでは二度手間になってしまうのではないのだろうか。

 

「カルマさーん!ルーミアさーん!早く行きますよー!」

 

当の彼女はそんなことを気にしていないようだ。やはり変わらない水咲に少し呆れながら、二人は彼女の後に続いた。

 




巫女と言って麗夢だと思った人。
彼女はもう少しなんや(´・ω・`)

水咲は成長しています。
イラストから大人っぽさが感じられないのは何故だ(´・ω・`)
一応成長しているので、衣装も少しばかり変えています。

マツタケ様がカルマ×EXルーミアの愛が爆発したそうですw
http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im4901857
実際にこういう展開がありそうですねw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,2 守矢

ニヤニヤしたら負けっ!
負けたら、正座12時間っ!
痺れた脚を突くと面白いよね。

それでは、本編どうぞ。


水咲の行先には大和の象徴と言える大きな社があった。神社というよりは砦と言えるかもしれない。

 

「私はここで待ってるわ。」

 

ルーミアは鳥居の前で立ち止まった。なんでも、神聖な場所に入ることを彼女の本能が拒んでいるらしい。彼女を置いていくのには不安がある。人間への捕食活動を制御しているとは言え、何かしらやらかすかもしれないのだ。仕方なく、拒絶結界の中へと閉じ込めておく。

 

「いいんですか?閉じ込めて。」

「仕方ないだろ。あいつ、何するかわからないからな。」

 

社の中は木製となっており、所々にある柱が人間一人分の太さはある。かなり頑丈に作られているようだ。

 

「こっちです。諏訪子様~、神奈子様~。」

 

戸を開けるとそこには二柱の神がいた。外見も最後に目にして以降変わっていないようだ。

 

「水咲、どうしたの?」

「忘れ物でもしたのか?」

 

帰ったと思っていた巫女が戻ってきたことに首を傾げる。対し、水咲は笑みを浮かべていた。カルマは扉の影で待っているように言われているだけ。彼女なりに驚かせようとしているのだろう。

 

「ふっふー。会わせたい人がいるんですよ!」

「何?男でもできたの?」

「えっ!」

 

諏訪子の発言に一瞬にして顔を赤らめた。その様子にまさかという思いが二人によぎる。

 

「本当にできたのか?」

「ち、違いますよっ!カルマさんとはそういう関係では―!」

「「カルマ…?」」

 

水咲は慌てて口を両手で押さえた。

 

「水咲。会わせたい人ってまさか…。」

「えっと…。はい、そのまさかです。」

 

カルマは溜息をつくと、影から姿を現した。二人は数年ぶりの再開に驚き、立ち上がる。

 

「カルマ…。」

「戻ってきたのか…?」

 

ある意味で驚かすことに成功した水咲は、場所をカルマに譲り、そのまま退室した。

 

「久しいな。諏訪子、神奈子。ここへは偶然行き着いただけだ。」

「それでも嬉しいよ。」

「あぁ。久々に会えて、私も嬉しいよ。積もる話もあるだろう?そこに座ってくれ。」

 

促されるままに腰掛けると、戻ってきた水咲がカルマにお茶を出し、諏訪子の傍へと移動しようとした。しかし、諏訪子はにやりと笑みを浮かべてそれを制する。

 

「水咲も座っていいよ?カルマの隣とか。」

「ふえっ!?」

「そうだな。水咲も色々話すことがあるだろう。座るといい。カルマの隣とか。」

「ふえぇえっ!?」

 

湯気が出るほど赤面しだす水咲。それを面白がるようににやける二神。その様子はあの頃いがみ合っていた二人とは思えない光景だった。どうやらあの戦い以降うまくやっているようだ。

 

「どうだ、あれから?上手く行ってるようだが。」

 

時を見計らい、カルマから口を開いた。結局水咲はカルマの隣に座ることになり、終始顔を赤らめている。

 

「うん?あぁ、おかげさまでな。そういえば、まだだったな。」

「あ?」

「いや、あの戦いに手を貸してくれてありがとう。」

「そうだね。私を止めてくれてありがとう。それと水咲のこともありがとうね。」

 

二人に頭を下げられ、カルマは気恥ずかしくなり、顔を背ける。

 

「別に…。俺はやりたいようにやっただけだ。」

「…なんだ、カルマ。照れてるのか?」

「―ッ!?」

 

新しい玩具を見つけたように、顔を上げた神奈子の顔が笑みを浮かべている。

 

「うるさい。あの時の話は終わりだ、終わり!」

「照れてるな。」

「照れてるね。」

「照れてますね。」

「くっ…。」

 

それから四人は今までの事を話始めた。諏訪大戦以降、洩矢神社を守矢神社に改名したことには驚かされた。祟り神としてでなく、守るための神社としてありたいと水咲が言い出したらしい。他にも、カルマが魔神であることに驚かされていたようだ。神奈子はツクヨミあたりから聞いていたらしく、半信半疑といった形だったらしい。

 

「…そろそろ行くか。」

 

ルーミアをほったらかしにしているため、そう長くいることは出来ない。

 

「なんだ。もう何処か行ってしまうのか?」

「泊っていけばいいのに。」

「悪いな。連れがいるんだ。」

 

三人に別れを告げ、立ち去ろうとした時、諏訪子が彼を呼び止めた。

 

「ねぇ、カルマ。」

「なんだ?」

「また戻ってきてくれる?」

 

諏訪子の視線が水咲へと向けられる。その目は親が子に向ける慈愛に満ちていた。おそらく、彼女の気持ちに気付いているのだろう。

 

「戻ってくる気があるんだったらさ。水咲をお嫁にしてあげてくれないかな?」

「えええっ!!?」

 

水咲は驚き、赤面しだした。しかし、カルマの答えは否だった。

 

「悪いな。戻ってくるつもりはない。」

 

西での出来事といい、ここといい、許嫁にしようとする者が多いような気がする。

 

「そう…ですか…。」

 

少し悲しげな笑顔を浮かべる水咲になんと言っていいかわからない。

 

「…水咲。」

「はい。なんでしょうか?」

「…いや、なんでもない。」

「……?」

 

水咲に神力を僅かながら感じられることを言おうとしたが、それに気づかないはずがない二神が傍にいるから大丈夫だろうと判断した。二人に別れを告げ、水咲はカルマを社の前まで見送りに来た。結界を解き、ルーミアを外に出す。

 

「お腹減った。」

「第一声がそれか。我慢しろ。」

「はぁい。」

 

二人のやり取りをなんとも言えない気分で見つめる水咲。

 

「じゃあな、水咲。元気でな。」

「はい。お二人もお元気で…。」

 

水咲は離れていく二人をずっと見つめていた。姿が見えなってもずっとその場にいた。気が付くと二人の神様が傍に立っていた。

 

「大丈夫、水咲?」

「…何がですか?」

「泣いてるよ?」

 

いつの間にか涙が頬を伝っていた。水咲は袖で涙を吹くと、空元気で二人に振り返る。

 

「だいじょーぶですっ!」

「…そうか?」

「はいっ!」

「でも…。」

「大丈夫ったら大丈夫なんです。なんたって―」

 

彼女は二人の間を通り過ぎ、そしてまた振り返る。そこには笑顔があった。

 

「常識に囚われてはいけないんですからねっ!」

 

 

 

 




これなんて最終回?(;´・ω・)
新章2話目で最終回みたいになっちゃった。

水咲の初恋は失恋してしまった。
因みにこの後の設定ですが、諏訪大戦編の時に水咲が薬を与えていた子供のことを覚えてますか?
彼女はその子と結ばれます。
産まれる子供は少し神力がある程度です。
水咲は成長するにつれて、神力が高まってきますが、耐え切れず常人より少し早く死去。
それ以降、遺伝子的な問題で少しずつ薄れていきます。
早苗は家系の中で一番神力が高いです。
言わば、先祖返りみたいなものです。
だから、水咲の生き写しみたいな容姿なんです。
よって口癖も同じ感じに・・・。
—という後付け設定でした。

それと番外編投稿しました。
またも前作の番外編です。
だって前作主人公兼今作のメインヒロインを描きたかったんです。
その名も、東方歪界譚番外編【東方アマノジャク・歪】。
その名の通り、東方アマノジャクを元にしています。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,3 八雲紫

最近の困った出来事。
入浴中に鼻血はつらいお(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ。


最近、とある噂が広まっていた。絶美の美女が現れたというものだ。貴族という位の男たちが血眼になって彼女を欲し、求婚してはいるが、彼女は頭を縦に振らないという。

 

「……。」

「美女ならここにもいるわよ?」

「妖怪だがな。」

 

道端にあった茶菓子屋で休憩していると、そんな噂を耳にしたのだ。

 

「何、気になるの?」

「……。」

 

カルマの考えているのは一人の少女のことだ。考えが正しければ、その者が少女である可能性が高い。いや、絶対と言えるかもしれない。ルーミアは勘違いし、カルマも他の男と同じようにその美女と言われる者に会おうとしているのだと考えていた。

 

「会いたいわけ?」

「…確かめたいだけだ。」

「…ふぅ~ん。」

「…なんだよ。」

「べっつに~。」

 

ルーミアはそっぽを向くとカルマのお菓子も含め、残りのお菓子を全て平らげてしまった。

 

「…おい。」

「ほら、行くわよ。今日中に着くんだから。」

 

さっさと行ってしまおうとするルーミア。溜息をつくと、カルマも立ち上がり彼女の後に続いた。ルーミアに追いつき、歩みを進めていたが、突然カルマは立ち止った。

 

「どうしたのよ。」

「……。」

 

ルーミアを無視し、振り返ると数歩歩いて立ち止まる。不思議に思い、彼の傍までいくと、カルマは空間に手を差し込み、こじ開けた。

 

「あ、あら?」

 

空間の割れた所にいたのは、金髪にナイトキャップを被った女性。まさか、干渉されるとは思わなかったのだろう。彼女にしては珍しく冷や汗を流していた。

 

「えっ、紫?」

「なるほど、こいつが八雲紫か…。」

 

先ほどから視線を感じ、気にはなっていた。その正体が彼女だったのだ。

 

「…どうやって私に気づいたのかしら?」

 

動揺しながらも、いつもの調子を取り戻すと、紫は扇子で口元を隠しながら問いかけてきた。

 

「視線を感じた。それだけだ。」

「…いつから?」

「残念ながら、今さっきだ。お前の様子からすると、もっと前だろうがな。」

「よく紫に気づいたわね。私でも気づけないのに。」

 

実際に紫が彼らを見つけたのは、大和を出て少しした時だ。ルーミアから僅かに漏れ出る妖気を感じ取り、様子を見に来たのだ。そこで隣にいるカルマを見つけた。ルーミアの目的は彼の捕食。だが、仲良く二人でいることから不審に思い、スキマから様子を見ていたのだ。

 

「魔神と一緒にいるのはどうしてかしら、ルーミア?貴女の目的は彼の捕食でしょ?」

「その筈だったんだけどね。」

 

ルーミアは自分がカルマに負けたこと。拒絶で捕食本能を抑え込まれていることを話した。それで合点がいったらしい。

 

「でも、紫がここにいるってことは、あの村が近くにあるってことでしょ?」

「えぇ、そうよ。」

 

話を聞く限り、もう廃村ではないらしい。―と言っても小さな村の規模のようだ。

 

「へぇー。よくそこまでできたわね。」

「協力者がいたからよ。」

「協力者?」

「あとで紹介してあげる。」

 

紫に協力するとなると、朱姫あたりだろうか。しかし闘争を楽しむ鬼の種族にそれはありえないだろう。なら、ルーミアがあの場を去った後に出会った者ということになる。

 

「ところで、いつまで私を観察しているのかしら?」

「ん?」

 

カルマはずっと紫を見ていた。ルーミアとの会話に入ってこなかったのも、それが原因でもある。

 

「お前、本当に妖怪か?」

 

八雲紫は妖怪である。それは彼女が自分から言ったことだ。ルーミアは初めてあった妖怪が、彼女だったがためにそれを信じた。しかし、カルマは彼女以外の妖怪にもあっている。確かに彼女から妖気を感じることができる。だが―

 

「私は妖怪よ?現にルーミアと同じ妖気があるじゃない。」

「言い換えれば、穢れとほぼ同じだ。」

「……。」

「妖怪というよりは、人ならざる者と言った方がいいんじゃないか?」

 

とても鋭い洞察力に紫は平静を装うのに苦労していた。まさか、この段階でここまで踏み込んでくるとは思わなかったのだ。スキマ越しの視線といい、紫の正体といい、彼は鋭すぎる。

 

「…そうね。私からは何も言えないわ。でも、鋭い貴方ならいずれ気付くことになると思うわ。」

「…そうか。」

 

僅かな間があったことが肯定を示している。そう判断したカルマはそれ以上踏み込もうとは思わなかった。彼女は一体どこまで視えているのだろうか。

 

「話は終わり。案内するわ。」

 

話を強制的に打ち切ると、紫は二人を廃村だった場所へと案内を始めた。―と言っても、スキマを繋げただけだ。スキマの中へと入っていく紫。一度通っているため、安全と分かっているルーミアも進んで入っていく。初めて入る者としては抵抗がある。スキマの中から覗く身に覚えのある幾つもの視線。カルマはこの時、確信した。

 

彼女―八雲紫は少なからず穢れと関係している。

 




竹取物語要素少ないと思ったので、無理やり話を長くしました。
その結果が紫の再登場です。
—ということは、あの娘も登場するわけですよ、うふふ。
それはさておき、そろそろ竹取物語に入っていきますよ。
さて、どうしましょうかね。

みなさんは八雲紫の存在についてどう思っているのでしょうね。
私の考察はいずれ語られると思います。
2章くらい先ですけどねw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,4 記録者

一週間開いちゃいましたね。
ふ、不定期だから別にいいよね?(;´・ω・)

それでは、本編どうぞ。


スキマを抜けた先にあったのは神社だった。その神社は元々が廃寺のような状態であったとは思えないほど修繕されていたが、所々板が打ち付けられた所が見受けられる。そして、縁側には青白い炎の狐がいた。その狐はこちらに気付くと伏せていた顔を上げた。

 

『また来やがりましたか。…懐かしい顔と見たことない顔がいやがるようですが?』

 

焔はじっとカルマとルーミアを見ていた。

 

「焔、麗夢はいるかしら?」

『なら出かけていやがります。』

 

どうやら留守にしているらしい。

 

「そうね。麗夢が帰ってきたら、紹介するわ。それまで少し出かけてくるから。」

『どちらまででいやがります?』

「阿礼のところよ」

 

3人は鳥居をくぐり、階段を下りていく。人里に向かうが、東洋系の顔立ちの中に、金髪が3人もいると目立つのだろう。奇異や興味の視線が向けられていた。

 

「よくここまで繁栄できたわね。廃村だったとは思えないわ。」

「さっき言ったでしょ?協力者がいたって。今、彼女がいる場所に向かっているの。」

 

着いたのは1つの屋敷だった。それほど大きくないが、人里にあるだけで印象は濃い。門の横にある名札には『稗田』の文字があった。

 

「こんな屋敷あったの?」

「建てたってわけじゃねぇか…。転移させたのか?」

「そうよ。元々ここになかったから移動させたのよ。よく気づいたわね。」

「…土の色が違うからな。」

 

カルマの視線は地面に向いていた。よく見ると、屋敷の壁の真下と里の地面の色がほんの少し違うのだ。まるで境界線があるように。

 

「そうなのかー。キョロキョロしてただけじゃないのね。」

「当たり前だろ。」

「話はそこまでよ。」

 

紫は門を叩き、少しすると1人の使用人が姿を現した。

 

「ようこそいらっしゃいました、八雲さま。」

「阿礼はいるかしら?紹介したい人がいるの。」

「はい、いらっしゃいます。どうぞこちらへ。」

 

使用人に案内されたのは1つの客間だった。

 

「主人をお呼びしますので、しばらくお寛ぎください。」

 

使用人が出ていき少しすると、1人の女性が姿を現した。赤紫がかった黒髪に蓮の花飾りをし、華やかな着物に身を包んだ女性だ。

 

「お待たせしました。」

 

【挿絵表示】

 

彼女は紫の対面に座ると、使用人がお菓子とお茶を置いて退出していく。

 

「突然訪ねて申し訳ないわね。」

「いえ、大丈夫ですよ。こちらも時間がありましたので。それで今日の要件はそこのお二人のことでしょうか?」

「えぇ。折角だから紹介しようと思って。一度説明したことはあるはずよね。ルーミアとカルマよ。」

「はい、覚えています。穢れから生まれた妖怪と人間から神へとなった者ですよね。」

「―で?紫、その人間が例の協力者?」

 

お菓子をあっという間に平らげたルーミアが紫に問う。

 

「そうよ。」

「稗田阿礼です。よろしくお願いします。」

 

1つ1つの動作が彼女の清楚さを表わしている。

 

「よく妖怪の幻想に付き合おうと思ったな。何か取引でもいたのか?」

 

協力者というのだから、メリットとデメリットがあったに違いない。先に出会っていた巫女のように誰もが妖怪を快く思っているわけではないのだ。

 

「取引はしていませんよ。むしろ私からお願いしたんです。」

「…へぇ。」

「私は紫さんの思い描く物を記録し過去に伝えていきたいと思ったんです。ここにはこういう風に考える人がいて、このような生き方をしているって。」

「そういうことよ。阿礼には私たちのことを記録してもらおうと思っているわ。それに過去に記したものが未来で役に立つことだってあるのよ。」

「つまり、どちらにしろ利益しかないということね。」

「はい。強いてあげるのならば、紫さんの思想に反対する人たちがいるということでしょうか。」

 

八雲紫の目的、人間と妖怪の共存。それに反対する者もいないとは限らないのだ。人間は妖怪を畏怖し、妖怪は人間を見下し弄ぶ。お互いがお互いを快く思っているわけではない。そういった因子から攻撃を受けることがあるのだ。

 

「ここに住んでいるのは紫さんの考えを受け入れくれた人たちです。―と言っても、安全な暮らしができるのならそれでもいいと言う人たちばかりですが。」

「一番面倒だったのは、天狗の一派だったわね。」

 

当時の事を思い出しているのだろう。紫は溜息をつき、ルーミアは天狗について思い出していた。

 

「あれだけ縄張り意識が強ければね。確か人間だけでなく、他の妖怪も警戒してたかしら。」

「えぇ、そうよ。だから、むやみやたらに天狗のいる山に入らないって条件で受け入れてもらったわ。」

 

相当疲れる出来事だったらしい。紫は机に頬杖をついて溜息をついた。

 

「そういえば、お二人は紫さんの考えをどう思っているんですか?」

「…そうね。そういえば、聞いてなかったわ。」

 

ここにいる以上、共存関係でいてもらいたい。何かしら問題が起これば、彼女の幻想はそこで終わってしまうのだ。

 

「…難しいわね。人間との共存以前に、私は人食い妖怪。人間は食べ物としか思っていないわ。」

「ルーミア…。」

「でもまぁ、共に生きるのも悪くないんじゃないかしら?ここまでの旅で色々見てきたからね。」

 

ルーミアの答えは是。カルマと旅をして、人間にも色々な者がいるのだと分かった。それが面白いと思え、紫の考えに賛同し、ここまで戻ってきたのだ。

 

「それは良かったわ。それで魔神様はどうするのかしら?」

「…否定はしないが、肯定もしねぇな。」

「どういう意味かしら?」

「害意は潰す。それだけだ。」

「つまり、刃を向けない限りはこちらに危害を加えないってことでいいのね?」

「あぁ、それでいい。」

 

内心で彼は紫の考えに賛同していた。―と言っても、いいのではないか程度で、ほとんど傍観しようと思っている。今はルーミアの監視もある。暫くの間はここにいることになるだろう。

 

 




今回新登場、稗田阿礼です。
実在した人物で、男性です。
男性、ですからね?
ここで女性にしている理由ですが、紫の目的の反乱分子に狙われないように情報操作したってことです。
そのため、歴史上は男となっているわけですはい。
まぁ、おっさん描けないんで(´・ω・`)
何度も言うようですが、実際は男ですからね?
日本史で女性って書いたら間違いですからね?
振りじゃないからね(; ・`д・´)

原作のキャラ初のイラストは八雲紫でした。
カルマも久々に描きましたね。
最後に描いたのは諏訪大戦編だったなぁ。
・・・超久々っ!?( ゚Д゚)
ルーミアの食べてるのは羊羹です。
羊羹ったら羊羹なんですぅ(`3´)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,5 転生輪廻

原作とネタを合わせようとすると、結構思いつくものですね。

また前作の番外編書こうか考えてます。
東方歪界譚番外編【東方霙無双】
—って感じです。
意外と長くなりそうなんですよねぇ(´・ω・`)
投稿するとは言ってないですよ。

それでは、本編どうぞ。


「ところで話は変わりますが、カルマ様は禁術なるものを使われると聞きましたが。」

「あぁ、禁忌魔法を使うことができる。」

 

話はカルマの能力の話になった。突然の話題の変更に不審に思いながらも、隠すようなことではないので肯定した。

 

「その中に転生輪廻なるものはありますか?」

「…まさか、使おうとか思っているわけじゃねぇよな?」

 

確かにカルマの使う禁忌魔法に転生輪廻の類は存在する。それは第7禁忌魔法“黄泉還り”のように、その場にそのまま生き返るというものではなく、時間を越えて新たな人生を歩むものだ。前世の記憶を受け継ぐという事象を稀に見ることができる。しかし、それは偶然引き起こされるもので、必然的に起こす事はできない。

 

「一生の中で記録できるものは限りがあります。それだけでは少ないと思いませんか?」

「……。」

 

彼女の答えは肯定に取れるものだった。

 

「記録のためなんだな?決して悪用せず、広めないと誓えるか?」

「はい。稗田家にのみ伝えることにします。使用人にも一切教えません。」

「…わかった。いずれ教える。」

「今じゃだめなのかしら?」

 

紫の疑問も尤もなものだった。教えるだけなら、今でも教えることができる。それに彼女は絶対的な記憶能力を有している。忘れることは決してない。

 

「まだ未完成なんだ。だから、今の段階で教えることはできない。」

 

禁忌魔法は99個ある。そして、カルマは禁忌魔法から多彩な応用を生み出す事もできる。転生輪廻はその類だ。そして、禁忌魔法の研究は月面移住計画を最後に止まっているのだ。

 

「わかりました。できれば、私の生きている間にお願いします。」

「分かった。できるだけ早く完成させてやる。」

 

禁忌魔法はこの世の理から逸脱した存在。故に理解、研究するとなると、それ相応の時間が掛かってしまう。少なくとも数年はかかるだろう。

 

「他の禁忌魔法について教えてもらう事は出来るでしょうか?」

「……。」

 

半眼で彼女を睨むカルマ。阿礼は慌てて誤解を解こうとする。

 

「あ、悪用なんてしませんよっ!勿論、使おうなんて思っていません。記録のためですっ!」

「その記録を使う輩が出てくるだろうが。却下だ。」

 

彼女の目論見は叶わなかった。がっくりと頭を垂れる姿に紫はクスクスと笑っていた。ルーミアはというと、使用人の追加したお菓子を一人で食べていた。

 

 

 

「じゃあ阿礼。また今度ね。」

 

阿礼に別れを告げ、屋敷を後にする。あの後、記録のために色々聞かれた。勿論、言えない事もあるため、そこは省いた。

 

「八雲紫。」

「何かしら?」

 

屋敷から離れ幾分が経った時、カルマは紫に話しかけた。

 

「用事思い出した。ルーミアのこと頼む。」

「用事?そんなのあったっけ?」

「お前には無くても、俺にはあるんだよ。」

「アンタがいない間に、人間を食べちゃうかもよ?」

「さっきの屋敷で言ったこと忘れんなや、ド低能。」

「…わかったわ。さっき行った神社で待ってるから、用事が済んだら帰っていらっしゃい。」

「わかった。」

 

開門を使い空間を硝子細工のように砕くと、その中へと足を踏み入れる。空間が閉じそうになった時、彼女は言った。

 

「噂は本当。」

「――。」

 

閉じる寸前に振り返ると彼女は扇子で口元を隠し、意味深な視線を向けていた。

 

 

 

とある竹林の中に大きな屋敷があった。夕暮れにも関わらず、その屋敷の門には着飾った男たちが列を作っていた。流石に暗くなると危険であるため、列を成していたいた男たちは屋敷の人間に返され、渋々と帰って行った。

 

「はぁ…。もう嫌になるわね。」

 

そして、一室に一人の女性が溜息をついていた。幸い、部屋には彼女一人しかいない。普段から清楚に振りまいている彼女から打って変わり、今は気怠そうに突っ伏していた。

 

「……ん?」

 

ふと、突っ伏していた机に手紙が置かれていた。封はされておらず、折り畳まれた紙があるのみだった。

 

「なにこれ?」

 

誰が置いていったのだろうか。考えられるのは毎回求婚にくる貴族の男性の誰か。しかし、それは文面に記されている内容によって否定された。

 

『拝啓、蓬莱山輝夜様

堅苦しいのは面倒だから省く。この文を読んでいるということは、男どもの縁談が一通り終わったあたりか。心中は察する。

話を変えよう。俺はお前のことをある程度知っている。月、不老不死、八意永琳、穢れ。これらはお前の周りの誰にも言っていないことだろう。

脅しとかではないから、安心しろ。要はある程度愚痴や相談に乗ってやる。返事があるなら紙に書き、ここの机に置いておけ。

敬具、影』

 

「ふぅ~ん。」

 

確かにこの文面には彼女が周りの人物に言っていないことが多々乗っていた。それに貴族が使いそうな言葉使いがなく、乱暴なものだった。それに“影”という名前も気になる。十中八九偽名だろう。

 

「ま、退屈しのぎにはなるかもね。」

 

彼女は紙と筆をとり、返事を書いた。

 

「輝夜様、お夕食の準備が整いました。」

「分かりました。今行きます。」

 

手紙を書き終えた時、丁度使用人が夕食の報告を告げに来た。彼女は返事をすると、手紙を机の上に置き、部屋を出て行った。

 

 




稗田の家に伝わっている転生の秘術なるものがあるらしいので、カルマに生み出してもらうことにしました。
あ、因みに阿求もカルマと麗夢のことを覚えていません。
記録にもありませんからね。
それはいずれ(*´ω`*)

ラストに登場したのはあのお方です。
え?メインヒロイン?
次回登場じゃっ!

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,6 藤原の少女

メインヒロインをどう出せばいいか悩まされました。
だって一目惚れキャラって描いたことないんだもん(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ、


屋敷の中を歩く女性。その仕草だけでなく、容姿そのものも美女と言って過言ではないものだった。

 

「……」

 

物陰からその様子を見ていたカルマは人気が無くなるのを待ち、時を見計らい塀を飛び越えて外に出た。

 

「…やはり輝夜だったか。」

 

カルマの考えが『少しの確信』から『絶対的な確信』へと変わっていた。彼は輝夜がまだ地上にいた頃に彼女の未来を見ている。その時、地上に落とされるところまで見ていたのだ。故に彼女がここにいる理由も分かっている。

 

「…この後の未来も見ておくべきだったか。いや、やめておこう。」

 

考える事を止め、街道を歩くために視線を上げると―

 

「……。」

「あん?」

 

屋敷を囲う塀を睨みつけている女性がいた。外見で言えば、輝夜と同じくらいだろうか。彼女は溜息をつくと、振り返る。

 

「あ…。」

「……。」

 

まさか人目があると思わなかったのだろう。カルマがこちらを見ていることに今気づいたようだ。

 

「な、何の用だ?」

「別に。」

「…アンタはここの女に興味ないのか?」

「そこに並んでいた男どものことか?俺をあんなド低能と一緒にするな。」

「そうか…。良かったら話を聞いてくれないか?」

「……?」

 

 

 

街の中にあるお店で彼女は団子を注文した。カルマはというとお茶を飲んでいるだけである。

 

「まずは自己紹介しないとな。私は藤原妹紅。アンタは?」

「カルマだ。」

「かるま?姓がないところを見ると平民か?」

「さぁな。好きに捉えろ。」

「まぁいいけどな。」

「それで、お前は―」

「妹紅だ。」

 

名前を訂正されたので、一度お茶を飲み、話を再開する。

 

「妹紅は何故あそこに居たんだ。ただ立っていたってわけじゃないだろ?」

「……。」

 

彼女は食べる手を止め、表情が暗くなった。

 

「私の父―藤原不比等って言うんだけど、父があそこの女に執心してるんだ。」

 

妹紅の口調から感じ取れるように、輝夜に対し恨みのようなものを感じられる。彼女からすれば、父と言う家族を盗られたという事だろう。

 

「しかも、倉持皇子って偽名使ってあの女の所に行ってるし、どれだけ欲しいんだよ…。」

 

輝夜に気がある父にさえも恨みがあるようだ。

 

「なら縁切りすればいいだろ。」

「あぁでも自分の父だからな。切ろうにも切れないんだ。それに私の家はそれなりの家柄の貴族だし。」

「そうか。」

 

輝夜と縁のあるカルマからすれば、妹紅の彼女に対する恨みをあまり良く思えないが、彼女の気持ちも分からなくもない。

 

「ところで、カルマもなんであんな所に居たんだ?あの女に興味がないのに。」

 

流石にこの状況で輝夜との縁を語るわけにもいかない。ただ通り過ぎただけというのも出来すぎな話だ。

 

「…ただの様子見だ。男どもが血眼になって求めている女がどんな奴かって感じだ。」

「それで、どう思ったんだ?」

「そこまで良いとは思えないな。この時代の男は女に飢えているのかと思った。」

「ははは。言えるかもな。」

 

嘘は言っていない。カルマ自身そこまで輝夜に惹かれているわけではなく、それなりに縁があるだけなのだから。

 

「ふぅ…。話を聞いてくれてありがとうな。また話そう。」

「機会があればな。」

 

妹紅は会計を済ませると、自分の屋敷へと帰って行った。

 

「……面倒な繋がりができたな。」

 

今後の事を思い溜息をつくと、お茶を飲み干しその場を後とした。

 

 

 

「あら、お帰りなさい。遅かったわね。」

 

神社に開門を繋げると、ルーミアは畳に寝っ転がっていた。カルマに気づくとその体勢のまま声をかけてきた。

 

「どこ行ってたの?」

「俺の勝手だろ。」

「そうなのかー。……女?」

「知らん。」

 

鋭い指摘に一瞬焦るが表に出さないようにし、縁側に腰掛けた。形的にルーミアに背を向ける姿勢となる。

 

「八雲紫はどうした?」

「スキマでどっか行ったわ。」

「…そうか。」

 

何を考えているかわからない彼女のことだ。その内適当な時に出てくるだろう。

 

「あら?お客さんですか?」

 

ルーミアとも紫とも違う女性の声がした。振り返るとそこには1人の女性がいた。

 

「ほら、さっき言ったでしょ。こいつがカルマよ。」

「貴方がカルマ様でしたか。初めまして、この神社の巫女の博麗麗夢です。」

 

彼女がルーミアの言っていた博麗麗夢。―ということはあの炎の狐は彼女の中にいるのだろうか。

 

「ルーミアからある程度は聞いている。カルマだ。」

「……。」

「……あ?」

「……///」

「おいこら。」

 

無言のため不審に思った矢先、彼女は頬を染めた。対し、ルーミアは面白くなさそうな顔をしている。

 

「麗夢。ご飯は?」

「えっ…あ、い、今出来たところなので、食器を準備をしてもらおうと思ったんですけど。」

「あー、俺の分は無いか?」

「いえ、紫さんにカルマ様が来ることは聞いていたので、人数分あります。」

「そうか。」

 

どうやらカルマの分の夕飯もあるようだ。しかし、大食いの妖怪かそこにいるため、足りないような気がする。結果から言えば、やはり少なかったようだ。何故かカルマの分のご飯を横取りしていた。

 

「ルーミアさん。ちょっとこっちに。」

「んー?」

 

食後、麗夢に呼ばれ、彼女と一緒に隣の部屋へ移動した。

 

「カルマ様、少々お待ちくださいね。」

「あぁ。それと無理に敬う必要はねぇからな。」

「ふふ、わかりました。では。」

 

彼女はカルマの言葉にクスクス笑うとそのまま隣室の戸を閉めた。

 

「いただだだだだっ!!?ちょまっ麗夢!?その関節はそっち曲がらなああああああああああああああああああああああああああああ!!いや熱いって火近い近い!!火傷するからほんと待って!!え?なにその手はちょっと怖いってホント怖いってその手の動き!近づいて来ないでって!いははははははははははははっはははははっひいいいひあはははははははっはあは!!!」

 

我関せず。カルマは食器の台所に下げ、適当に洗うことにした。

 

「カルマ!助けてよおおおおおおおあははははははははははっはははあははははは!!!」

「…平和だ。」

 




吉報、もこたんがヒロイン枠に入りました。
「そんなっ!?」
しょうがないじゃない。
何も考えずに書いてるんだから。

やっと登場させることができました。
いやぁ、長かった(*´▽`*)
そしてこの物語ではボケポジです。
因みに最後の部分、ルーミアに何をしたでしょうか?
「関節技からの火炙りからのくすぐりです。」
えげつねぇ・・・(;´・ω・)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,7 巫女の悪戯

今回書いてて恥ずかしかったです。
後半ね。

GODEATERが新作出すらしいですね。
これは買わなきゃ。
え?聞いてない?
あ、そう・・・(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ。


「よくも飽きずに来るわね…。」

 

屋敷の一室で輝夜は溜息をついていた。不老不死の薬を付与したがために、月から追放され地上へと落ちたが、こんなことになるとは思ってもみなかった。それでも自分をここまで育ててくれた人たちには感謝している。それに今の生活は月にいた時よりも充実したものだ。

 

「……あと少し、ね。」

 

戸を開け、空を見上げれば、月夜に輝く月があった。月は欠けてはいるが、白く輝いていた。ふと物音がして振り返ると、机の上に折りたたまれた紙が置いてあった。

 

「…いつの間に置いていくんだか。」

 

それは輝夜の返事に答える内容のものだった。先の手紙の返事として輝夜は最も積極的に求婚してくる5人の男のことを書いていた。あの貴族たちをどう諦めさせようかという内容だったが、帰ってきた手紙には面白い内容があった。

 

『状況は把握した。

対応策として、求婚を受ける代わりにこの世に存在しないものを持って来いってのは、どうだ?それなら奴らも諦めるだろうし、持ってきたとしてもそれは偽物だろうからな。』

 

要するに騙しをするというものだった。確かにこれならあのしつこい貴族たちも諦めざるを得ないだろう。

 

「中々面白いわね。なら色々考えなくちゃ。」

 

彼女は手紙にその提案を受けることを書き記した。

 

 

 

早朝、カルマは神社の裏手にいた。上着は木に引っかけられ、上半身が露わになっていた。身体には幾つもの傷痕があり、彼がどれほどの修羅場を掻い潜ってきたかが見て取れる。どれだけの時間身体を動かしていたのだろうか。枝に掛けてあったタオルを取り汗を拭う。

 

「……いつまでそこにいる気だ。」

『気にしねーでください。』

 

上着の掛けてある木の傍に焔が伏せてこちらをみていた。

 

「なら見るな。気が散る。」

『…恥ずかしがっていやがるんですか?』

 

タオルを投げつけると、焔はそれをちょいっと躱し、姿を消した。

 

「…ちっ。」

 

地に落ちた布を蹴り上げ、木に引っかける。そのまま再び修行を始めた。最近身体を動かすことが少なかったということもあるが、魔力が無くなり始めているということもあり、鍛えなおしているのだ。

 

「そろそろご飯にしますよ。」

 

突如として声をかけられ振り返ると、冷やしたタオルを抱えている麗夢がいた。

 

「…いつからいた?」

「今さっきですよ。」

 

声をかけられるまで彼女の気配を感じることができなかった。彼女からタオルを受け取り身体の汗を拭う。

 

「朝食の前にお風呂はどうですか?入れてありますよ。」

 

まるで彼がここで修行をしていることを知っていたかのような物言いである。おそらく焔から聞いたのだろう。

 

「わかった。先に入らせてもらう。」

「はい。」

 

上着を肩に掛け、浴室へと向かっていく。それを見送る麗夢は薄い笑みを浮かべていた。

 

 

 

運動の後に入る湯は格別だろう。それに加え、少し冷えている早朝となれば猶の事。カルマは肩まで湯に浸かり、深い息を吐いた。

 

「今日はどうする…。」

 

輝夜のことも気になるが、妹紅のこともある。兎にも角にも、まずは都に行くことになるだろう。行き来するとなると、開門を多く使用しなければならない。そのことを考えると、一時的に都に住んだ方が良いだろう。

 

「お背中流しに来ました。」

「堕天!」

 

堕天を発動し、風呂から飛び出すと、急いで戸に手を掛けて押さえつける。この間1秒にも満たない。

 

「あ、あれ?開きません?カルマ、押さえていませんか!?」

「当たり前だろうが、馬鹿かっ!」

 

戸を開けようとしているが如何せん、麗夢は女性である。男であり魔神であるカルマよりも力は劣っている。

 

「なんで押さえているのですか!開けてください!」

「今は俺が入ってるんだよ!開けるわけねぇだろが!」

「そんな事関係ありません!私はカルマの背中を流しに来たのです!」

「自分でやる!」

「いいえ!私がやるのです!」

 

戸を挟んで言い合っていたが、暫くして麗夢の戸を開けようとする力が緩んだ。

 

「ふぅ、仕方ありませんね。」

 

やっと諦めたのだろう。そう思った瞬間、カルマの背後で空間が歪みだした。

 

「いつもニコニコ貴方の背後に現れる巫女、博麗麗夢でっす。」

「―ッ!?」

 

歪みから飛び出てきた麗夢に背後を取られ、抱き着かれ驚くカルマ。大きく育った果実が背中で潰れ、反射的に顔が赤くなってくる。

 

「―ッ!!?―ッ!?―ッ!?!?」

 

いつも冷静なカルマには珍しくパニックに陥っていた。それもそうだろう。カルマと言っても所詮は男なおだから。

 

「あれあれ~?照れてるのですかぁ?」

「五月蠅いっ!早く離れろっ!」

「いっやでーっす。」

 

更に抱き着く力を強める麗夢。

 

「拒絶っ!」

「あら?」

 

しかし、それよりも早く拒絶を発動し麗夢を剥がすと、急いで浴室から出て行ってしまった。あまりの早業に呆けてしまったが、すぐに彼女はクスクスと笑いだした。

 

「やはり、弄り甲斐のある人みたいですね、焔。」

『程々にしやがってくださいね。』

 

呆れる焔に対し、彼女は一人黒い笑みを浮かべていた。

 




そろそろ竹取物語の本題に入るわけです。
妹紅の方もデレさせなきゃ。(使命感

ちょっとお知らせです。
大学の方で色々ありまして、精神的に疲れてきたってのと、試験期間が近くなってきたので、投稿を一時的に止めようと思います。
楽しみにしていた読者のみなさん。
申し訳ありません。
再開は夏休みに入るあたりにできればなと思います。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,8 魅了の行き先

みなさんはそろそろ夏休みに入る頃でしょうかね?
私はまだテスト終わってないですけど、期間が開きすぎた気がするので投稿。
え?勉強しろ?
息抜きって大事だと思いません・・・?
あ、はいすみません(´・ω・`)

あ、あと諸事情により章の名前を変えました。
理由は次回わかると思います。

それでは、本編どうぞ。


都の中、街道の物陰にカルマの姿はあった。麗夢に頼み、ここまで空間を繋げてもらったのだ。その代わりにある条件を出されたが。

 

「夕暮れにお迎えに来ますので、ここに来てください。」

「あぁ、分かった。…だから手を放せ。」

「お出かけの接吻―」

「放せっ!」

 

麗夢の絡めてくる腕を振りほどき、カルマはその場を後にし、街道に出た。

 

「やれやれ、釣れないですね。」

『当たり前でいやがります。とっとと帰りましょう。』

「おや、妬いているのですか?」

『はぁ…、それでいーですよ、もう。』

 

空間の歪みが消え、そこには誰かがいたという痕跡が無くなった。

 

 

 

輝夜のいる屋敷の近くにある甘味処。前にとある少女と共に話した場所だ。そして、そこには少女―妹紅の姿があった。しかし、彼女の表情には陰りがあった。

 

「どうした、こんなところで。」

「あ、カルマ…。」

 

顔を上げ、カルマを認識しても彼女の表情は暗いままだった。それがきっかけとなったのか、彼女の瞳に涙が見られた。

 

「話、聞いてくれるか?」

 

妹紅の話によると、今日も飽きることなく彼女の父親は輝夜に求婚をしにいったそうだ。すると、輝夜曰く、今からいう物を持ってきたものに付き従うとのことだった。その時いた5人の貴族に出した物はどれも聞いたことのない宝のようなものであり、妹紅の父親である不比等には『蓬莱の球の枝』というものを持ってくるようにと言ったのだ。

 

「それはまた大層なもの注文したな。」

「そんなもの存在しないはずだ。だから父は職人に多額のお金で契約のもと作らせることにしたんだ。だが、いくら私の家が貴族でもあんな大金ない。」

「欲に目が眩んだか…。」

「…なぁ、カルマ。私はどうすればいい?どうすれば、父の目を覚まさせることができる?」

 

それは難しい質問だった。彼女の父親はなんとしても輝夜を手に入れようと躍起になっている。挙句の果てには手段を選んでいない。そんな状態で目を覚まさせるのは苦難とも言えるだろう。

 

「…一度話した方がいいかもしれない。」

「なんでもするから、何とかしてくれ!あんな父は見ていられないんだ!」

 

彼女の案内で案内されたのは輝夜のいる屋敷より少し小さい屋敷だった。使用人に通され、件の人物のいる部屋へと通される。

 

「父上、入ってもいいか?」

「妹紅か、何の用だ?」

 

室内いたのは貴族らしい衣装で着飾った男性がいた。しかし、彼の顔は少し窶れ、何かに取りつかれているように見えた。

 

「うむ?そちらの男は?」

「私の友達だ。前に話しただろ?」

「そういえば、そんな事を言ってたな。確か、カルマと言ったか。」

「あぁ、今日は―」

「率直に言わせてもらう。」

 

カルマは妹紅の話を遮り、割り込んだ。

 

「輝夜の事はあきらめろ。」

「…貴様、何様のつもりだ。」

 

不比等の瞳に殺意が沸いた。貴族に対して失礼な物言いに加え、意中の女性を諦めろというのだ。怒りを覚えて当然だろう。

 

「貴様も輝夜様を狙っているのか?」

「なんで俺がアイツを狙わねぇといけねぇんだよ。興味ないな。それにお前は現状どうなっているのかわからんのか?」

「何…?」

「蓬莱の球の枝だかなんだか知らんが、そんなものを作る金、貴様は持っていないだろうが。」

「…妹紅から聞いたのか?」

「そうだ。ある程度なら聞いている。」

 

不比等の視線が妹紅を射抜く。彼女はそんな父の様子に肩を跳ねるが、彼から視線を外すことはなかった。

 

「輝夜様は私が迎える。誰にも邪魔はさせん。たとえ妹紅でもだ。」

「父上…。」

 

ここまで来ると最早重症とも言えるだろう。彼は完全に『蓬莱山輝夜の容姿』に憑りつかれている。

 

「…もういい、分かった。好きにしろ。」

「カ、カルマ…。」

 

屋敷を妹紅と一緒に出ると、妹紅も彼の後に付いて外に出てきた。

 

「ま、待ってくれ!」

 

足を止め、彼女の声に振り返る。

 

「その…すまない。あんな父で…。」

「聞くより見て会った方が早いと思ったが、あれはもう手遅れだな。」

「…やっぱりそうか。」

 

見てわかる落ち込み様に、居たたまれなくなるカルマは、溜息半ばに話を続ける。

 

「暫くは都内にいるつもりだが、何かあったら話を聞いてやる。」

「暫く?カルマは都に住んでいるわけじゃないのか?」

「まぁな。旅をしていたら、偶然ここに付いただけだからな。」

「旅、か…。」

 

何か思う事があるのだろう。俯き考えている。ある程度何を考えているのかは察することはできるが、それをとやかく言うつもりは彼にない。

 

「どうするかはお前次第だ。」

「…1つ聞いてもいいか?」

「何だ?」

「カルマの旅をする理由はなんだ?」

 

旅をする理由。考えてみれば、当たり前になっていたことだ。理由と言えるようなものはない。強いていえば、住む場所が無くなったためだろうか。

 

「…大した理由はないな。」

「な、ないのか?」

「まぁ、今は1つの場所に落ち着いてはいるが。」

「そうなのか…。」

 

あまり認めたくはないが、現在はあの神社に落ち着いている。彼の妖怪の監視を名目にしてはいるものの、なんだかんだであそこから出ていこうとは今のところは思っていないのだ。

 

「そろそろ行かせてもらうぞ。」

「あぁ。呼び止めてすまない。また話をしような。」

 

二人は別れを告げると、カルマは来た道を引き返して行った。

 

「旅、か…。」

 

彼女のつぶやきは彼の耳に届かず、空気へと溶けて行った。

 




妹紅のお父様の登場でした。
これを俗にいう恋は盲目というものでしょうか?
まぁ、恋は盲目なのはうちの娘ですが・・・。

一読者であるマツタケ様が前作主人公のMMDを作って躍らせてくれました。
小説も書けて、イラストも描けて、ゆっくり実況もできて、MMDもできるなんて、すごい人ですよね!
ね!!
「圧力掛けんな。」
前半がふみふみさん様宅の娘(誤字じゃない)で、中間がうちの娘です。
後半がマツタケ様の娘と上記の3人でBadApple踊っています。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm26763899

上のURLから行けるはずですので、ぜひ視聴してみてくださいな。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,9 帝の后

やっと・・・やっと試験が終わったじぇ・・・。
うへへへ、うひゃひゃひゃ!
Uryyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!
・・・さて、免許の再勉強しなきゃ(白目

それでは、本編どうぞ。


カルマは妹紅と別れ、輝夜のいる屋敷に向かった。相も変わらず、そこには男の列が出来ていた。輝夜の出した難題を受けた5人が来る前に自分のものにしようとしているのだろう。これにはさすがに呆れて物も言えなかった。

 

「…もう何も言うまい。」

 

輝夜の様子を見ようと思ったが、これではいつもと変わらないと思い踵を返すことにした。夕暮れまでにはまだ時間がある。それまで適当に時間を潰すべきだろう。

 

「……?」

 

視線の先に小さな少女がいた。少女は木の傍で飛び跳ねたり、背伸びを繰り返していた。彼女の視線の先には帽子が気に引っ掛かっていた。風にでも飛ばされたのだろう。

 

「あの帽子はお前のか?」

 

話しかけると少女は驚き、彼から距離をとった。こんなところで大人に、それもカルマのような不愛想な男に話しかけられれば、警戒して当然だろう。

 

「う、うん。そうだけど…。」

 

怯えながらもカルマの問いに答えるあたり、少しは肝が据わっていると言えるだろうか。カルマは一回の跳躍で帽子を枝から取り外すと、少女に渡した。

 

「ほら。」

「ありがとうございますっ!」

 

少女は勢いよく頭を下げると、帽子を抱え、人ごみの中へと駆けて行ってしまった。

 

「…まぁいいか。」

 

彼女から少なからず人間でないような気配を感じはしたが、人ごみの中へと消えてしまった以上、追いかけるようなことはしなかった。それに悪意の類も感じることがなかった。

 

「地子様、何処に行っていたんですか?」

「あ、衣玖。帽子取りに行ってたの。」

「ご無事で何よりです。さぁ、行きますよ。」

「うん。」

 

 

 

都を適当に歩いていると、様々な噂を耳にすることができる。情報収集に適したものだ。その中で多く聞こえてくる内容があった。それは―。

 

「玉藻前、ねぇ…。」

 

噂によると、帝は美しい女官と契りを結んで以降、原因不明の病で床に伏してしまっていたらしい。有名所の医師ですら原因がわからず、このままでは危ないとのことだった。しかし、そこに現れた陰陽師―安倍清明により、契りを結んだ女官―九尾の狐である玉藻前が原因だった。正体を見破られた玉藻前はそこから逃亡。清明率いる陰陽師で捜索している、というものだった。

 

「どう思う、スキマ妖怪。」

「いつから?」

「屋敷の近くでだ。」

 

彼の隣、家々の間にある影から紫が姿を現した。輝夜の住んでいる屋敷付近で彼女の存在に気付いたカルマはわざと屋敷の中に入らず、素通りしたのだ。

 

「この際、貴様があそこで何をしていたかはどうでもいい。お前は件の狐をどう思う?」

「それはどういう意味かしら?」

 

人間に危害を加える妖怪。彼女の人間と妖怪の共存、という目的に反している。しかし、着眼点はそこではない。

 

「妖怪が人間と契りを結んでいるんだ。少しくらいは興味がわくと思ったんだがな。」

「…そうね。少なからずとも興味はあるわ。」

 

人間というものは自己中心的で欲深い生き物だ。件の話題も人間により歪められた可能性が高い。

 

「少しの間、ここを離れるわ。あとをよろしくね。」

「わかった。」

「麗夢と一線を越えてもいいから。」

「―ッ!!」

 

カルマは回し蹴りを放つも、紫は瞬時にスキマの中へと消えてしまい彼の脚は空を切るだけだった。

 

 

 

カルマと別れた紫はすぐに行動を起こすことにした。まずは帝から話を聞かなければならない。しかし、陰陽師が見張り番をしているため、近寄りにくい状態だった。おそらく、スキマで中に入っても結界が彼女の妖力に反応するだろう。

 

「まぁ、私には関係ないものだけど。」

 

しかし、八雲紫の能力は『境界を操る程度の能力』。結界の効力も彼女の能力により境界を弄られてしまっては意味をなさない。何の苦も無く、紫は帝のいる部屋へとスキマを開いた。

 

「こんばんは、帝様。」

「な、何奴!?」

「大丈夫よ。何もしないから騒がないで。話を聞きに来ただけだから。」

 

結界の反応もなく部屋に入ってくることができた不気味な女性。警戒しないはずがない。紫は彼から一定の距離を置き、何もしないようにした。彼女にかかれば、距離など関係ないのだが。

 

「話とは、なんだ?」

「あなたの妻について。」

 

帝の表情が変わった。しかしそれは一瞬のことだったが、紫は見逃さなかった。

 

「玉藻のことか?」

「そうよ。正直に答えてね。貴方は彼女が好き?」

「あぁ、好きだ。今でも愛している。」

 

彼の返答に迷いはなかった。表情も真剣そのものだ。彼の話はやはり巷の噂話と違っていた。まず、玉藻は帝と契りを交わす前に自分が妖怪であることを話していた。帝はそれでもいいと言い、二人は契りを結んだ。彼女妖怪である以上、周りの者は反対する。このことは二人の秘密にされた。ある時、帝は病に伏せてしまい、一部の侍女には玉藻が九尾の狐である姿を見られてしまった。そして、呼ばれた安倍清明により正体を見破られ、その場から逃げてしまった。この偶然が重なり、帝は玉藻の妖力により病に伏してしまった、という話が出来上がってしまったのだ。

 

「できれば、玉藻とまた一緒に暮らしたい。だが―」

「周りの人間が許すはずがないってことね。」

「そうだ。私が帝である以上、ここを離れるわけにもいかない。」

 

彼は深いため息をつき、俯いてしまった。帝の話を聞いていた紫は一つの案を思いついた。

 

「…一つ提案があるのだけど、いいかしら?」

 




はい、というわけで、まさかの玉藻前の話追加でした。
これが理由で章名を変えたんです。
それにしても、スキマ内にいる紫の気配すら感じることができるカルマって一体・・・。
自分のオリキャラなのに、チート過ぎた気がする(´・ω・`)

ついでに地子も登場させちゃいました。
彼女は今後登場しませんけどね(`・ω・´)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


そういえば、読者のみなさんは私のオリキャラに声優をつけるとすれば、誰がいいですかね?
因みに私的には・・・
カルマ:櫻井孝宏さん
博麗麗夢(古城霙):水瀬いのりさん
焔:沢木みゆきさん
呪利殺女:悠木碧さん
みたいな感じですw
ついでに・・・
上白沢古河音:阿澄佳奈さん
月詠鈴芽:花澤香菜さん
琴吹未来:釘宮恵理さん
神無悠月:間島淳司さん
霧晴咲妃:伊藤静さん
双花椿希:井口裕香さん
愛識光輝:日笠陽子さん
天宮星哉:江口拓也さん
明星美羽:井上麻里奈さん
綺裂真珠:竹達彩奈さん
紅城楓恋:佐藤聡美さん
黒淵白音:中村悠一さん
勧善和美:喜多村英梨さん
って感じに考えちゃったりしますw






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,10 玉藻御前

免許取ってやったぞおおお・・・。
さて、追試の勉強っと・・・(白目を通り越した何か

それでは、本編どうぞ


「ま、提案の前に前提があるのだけど。」

「前提?」

「そぉ。私は人間と妖怪の共存を望んでいるの。」

「…ほぉ。」

 

紫の幻想に興味を示す帝。それもそうだろう。自分が人間で愛している者は妖怪なのだから。

 

「なるほど、それは面白いな。それで、提案っていうのはなんだ?」

「玉藻御前を私の式にしたいのよ。」

「式…。陰陽の者が使う式神というものか?」

「えぇ、そうよ。でも、私はあそこまで縛るつもりはないわ。」

 

陰陽師の使う式神は主に命令されたことを熟す人形のようなもの。だが、実際は使用者に絶対に逆らわないように、意識を縛りつけるものなのだ。だが、人間はそれを是として行う。自分のやっていることの意味を理解しきれていないのだ。

 

「意志は尊攘するし、ある程度の自由行動も許可するわ。」

「そうか。」

「…貴方がここで『死んだ』ということにすれば、玉藻御前と一緒に居ることができるわよ?」

 

人間の噂の流れは速い。ここで帝が死んだということにすれば、その話は浸透し、噂は事実ということになる。そうしれば、帝は統治を行う必要もなく、玉藻と一緒に居られることになる。が、帝はその考えに首を縦に振らなかった。

 

「確かにそれなら玉藻と一緒にいることができる。しかし、私がいなくなった後、新しい帝が決まるまでが大変だろう。血統で決まっているのならまだしも、今はまだ早い。それに先も言ったが私自身がここを離れるわけにはいかない。」

「そうね、言ってみただけよ。」

 

紫としては玉藻御前のことを好いている帝がいてくれた方が、こちらの支持が増すと考えていたが、そうはいかなかった。人間社会は彼女が思っているよりも複雑なのかもしれない。

 

「それで、玉藻御前を式にするかどうかだけど。」

「私からは何も言えない。それは玉藻が決めることだ。」

「…そう。それなら、そうさせてもらいましょうか。」

 

紫はスキマを開き、帝に別れを告げるとスキマを閉じてしまった。

 

「玉藻御前はどこかしらね。恐らく、陰陽師の人たちに追われて衰弱しているでしょうし。急ぎましょう。」

 

 

 

輝夜は襖の隙間から見える月を見て溜息をついていた。月はまだ満月ではないが、あと2、3日もすれば、満月になるだろう。彼女が地上の人間でなく、月の人間であることは既に育ててくれた人たちに話している。それを聞いた帝は彼女を月に返さないよう、兵を集めることにしたのだ。

 

「私は月に戻ろうとは思っていない。でも、月の皆はそれを許さないでしょうね。それに地上の力じゃ月の技術に対抗できないでしょうし…。」

 

ふと目に留まったのは今まで正体のわからない者とやり取りをしていた文の数。

 

「あの人に相談しようかしら。」

 

もしかしたら、今回も何かしら対策を考えてくれるかもしれない。彼女は筆を走らせ、現在の状況を書き綴った。

 

「これでよしっと。」

 

書き終えたところで丁度夕食の時間になったようだ。女官の彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。輝夜は部屋を後にする。夕食を取り、部屋に戻ってくると紙には新しいものになり文章も変わっていた。

 

「もう来たの。早いわね。」

 

文章にはこう書かれていた。

 

『わかった。月の者たちが来た時に力を貸す。』

 

力を貸すということは何らかの形でこちらに接触するかもしれない。彼女は手紙の主について目星はついていた。

 

「永琳経由だけど、アマテラス様の言っていた、カルマが生きているって話。あれが本当なら…。」

 

カルマが生きていると聞いた時は驚かされた。永琳は嬉し涙を流すほどだった。手紙の文章からも彼の口調に似ているものがある。もし、この手紙の主がカルマなら、心強いし、もしかしたら、彼女の地上に残るという望みを叶えてくれるかもしれない。

 

「寧ろカルマ以外あり得ないわね。もし違ったらどうしてくれようかしら。」

 




今回はいつもより短かめでしたね。
だって思いつかなかったんだもん(´・ω・`)

次回はいよいよ竹物語の終盤。
輝夜の運命は如何に!
―とまではいかないですけどね。
あと、あの人を再登場させる予定です。
一体誰でしょうねw

あと数日でこの禁初幻譚も一周年になります。
いやぁ、早いねぇw
だからと言って特別篇とか番外編は投稿しないのよ。
ごみんね~(*´ω`*)
あ、やめて!殴らないで!

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep.11 竹取物語 表

ま、まさかこれから先登場予定だった娘と東方紺珠伝の新キャラともろ被りするとは思わなかった・・・(´・ω・`)
今後の展開どうしよ(;・∀・)

それでは、本編どうぞ。


あくる日の夜。夜空に輝く星の中、月は上弦を過ぎ、あと2、3日で満月を迎えようとしていた。

 

「それで、ルーミア。お前なにしてんだ?」

 

カルマの目の前にはルーミアがいた。ただし、彼女は若干涙目だった。正座で。

 

「つまみ食いしたのよ。そしたら、止めが効かなくなって…。」

「全部食べてしまった、のか。」

「そうよ。それで今麗夢が買い出しに出かけているわ。あの娘が戻ってきて料理ができるまで正座を強いられたのよ。」

 

かれこれ1時間以上は正座させられているらしい。足が痺れて堪らないようだ。

 

「麗夢のことだから、世間話とかして時間を伸ばしてるのよ。」

「…そうか。」

 

しかし、彼女がいないのであれば、少しくらい姿勢を崩すことも可能なのではないのだろうか。彼女は視線で足元を示した。そこには4枚の札が貼ってあった。

 

「この札のせいでこの姿勢のまま仮封印状態なわけ。おかげで動く事ができないのよ。だから、お願い。カルマ、その札剥がして?」

「剥がしたら、あいつに何されるわからないからな。やらねぇよ。」

「いいじゃないのよ。1枚だけでも剥がせれば、あとは自分でやるから。ね?」

 

更に上目遣いで懇願してくるが、それも無意味に終わった。時を見計らったかのように、丁度麗夢が帰ってきたからだ。

 

「ただいま帰りました。あ、お札は剥がさないでくださいね。」

 

帰ってくるなり、笑顔で言ってしまうあたり、彼女の黒さが分かるというものだろう。この時、2人は絶対タイミングを合わせて登場したのだと確信した。

 

「あ、カルマも手伝ってください。」

「あ、あぁ。わかった。」

 

麗夢に呼ばれ、後についていく。ちらっとルーミアの方を見ると助けを求める子犬のような眼をして、こちらを見ていた。ただし助けられないのが現状である。

 

 

 

台所で2人は料理をしていた。カルマは昔一人暮らしをしていたため、それなりに料理ができる。

 

「そういえば、噂を聞いたのですが。」

「あん?」

「輝夜姫が満月に月に帰るそうですよ。」

 

一瞬カルマの動きが止まったが、すぐに調理を再開し、話の続きを促した。

 

「帝様が彼女の親族の方から彼女を帰すことを防ぐよう依頼を受けたそうなので、兵を向かわせたそうです。」

 

愛する者と別れることは辛いものがある、と帝は遠くを見るような眼で承諾した。もっともこれは当人しか知らないことである。

 

「輝夜はどう思ってるわけなんだ?」

「少なくとも帰りたくないそうですよ。」

「…そうか。」

 

彼は溜息をつくと、何も気にしていない仕草で料理を終わらせると、外に出て月を眺める。

 

「少なくとも明日、明後日の夜か…。」

「ねぇ、自然に素通りしないでよ。足痺れてきてて、泣きそうなんだけど。」

「おぅ、好きなだけ啼け。麗夢の奴が楽しいだけだからな。」

「泣くの意味が違うわよ!」

 

珍しくカルマがボケた瞬間だった。

 

 

そして、時は満ちた。輝夜の屋敷には警護の兵がそこかしこに居り、辺りを警戒している。輝夜は屋敷の奥で待機していた。そして、月の輝きが更に増した時、月からの使者が何人も現れた。月光を浴びた兵たちは身動きが取れなくなる。

 

「輝夜様、お迎えに上がりました。さぁ、穢れた地上から早く立ち去りましょう。」

 

不思議と声が屋敷の中まで木霊する。しかし、屋敷から出てきた輝夜は首を横に振った。

 

「いやよ。月にいても退屈なだけ。ここに居た方が楽しいわ。」

 

輝夜の返答に使者の1人は溜息をついた。

 

「ほら、私の言った通りでしょ?」

「全く、誰に似てしまわれたのでしょうな。」

「因みに私は姫様につくわ。」

「八意様…。」

 

そういうと、使者の1人―八意永琳が輝夜のいる場所へと移動する。

 

「こうなるだろうとは思ってはいましたが、致し方ありません。」

 

すると、他の使者の各々が武器を取り出し、構える。

 

「無理やりにでも連れて行かせてもらいます!」

 

しかし、その言葉通りにはならなかった。突如、輝夜と永琳を囲うように青白い炎が立ち上ったのだ。数秒で火柱が消えた時、そこには2人の姿はなく、黒衣に身を包んだ金髪の男性がいるだけだった。

 

 

 




そういえば、最近挿絵描いてないや・・・。
でもめんどげふんげふん時間ないんだよねぇ。

ルーミアを弄ってみた。
一度彼女視点の章を書いたけど、一緒にいるのに登場してない。
そしたら、この展開を思いついた次第です。

珍しくカルマにボケてもらいました。
故意的なものなのか、聞き違いによるものなのか。
それはご想像にお任せします。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,12 竹取物語 裏

朝起きると寝ていた姿勢と場所はほとんど変わっていないのに、掛け布団だけ引っ繰り返ってるんだけどw
どういう寝相してるの私w

それでは、本編どうぞ。


時間は月からの迎えがくる1日前に遡る。

 

「麗夢、話がある。」

「なんですか?愛の告白ですか?」

「ちげぇよ。」

 

居間でお互い向かい合わせに座る。

 

「輝夜に手を貸そうと考えている。」

「そうですか。」

「それでお前の力を借りたい。」

「―と言いますと?」

「俺は今、力が弱まってきているってのは分かっているよな?開門を使えば、輝夜のいる屋敷に行くことができるが、まだ温存しておきたい。」

 

カルマはここ最近、禁忌魔法を使っていない。今はゆっくりとだが、魔力の回復を行っているのだ。だが、それは雀の涙程度でしかない。このタイミングで膨大な魔力を用いる禁忌魔法を使用すれば、いずれは魔力枯渇で彼自身に危険が及ぶのだ。

 

「今までどおり、私の転移を利用しようってことですね。」

 

博麗麗夢の1つの能力である『歪める程度の能力』で空間を移動する方法を使えば、カルマのデメリットはなくなる。

 

「あぁ、頼めるか?」

「・・・分かりました。でもその代わり、終わったらお願いを聞いてくださいね。」

 

彼女の笑みに何か邪なものがあることは確かなのだが、ここで引き下がるわけにはいかない。別に彼女に頼らず、八雲紫のスキマを使えば良いのだが、彼女は玉藻の噂を聞いて以降、姿を現していない。

 

「分かった。なんでも言うこと聞いてやる。」

「ん?今何でもって―」

「決行は当日だ。転移先は輝夜の屋敷。時を見計らって、輝夜を回収しろ。」

「むぅ。分かりました。」

 

そして当日、2人は屋敷の物陰に転移し、時を見計らっていた。尚、ルーミアは仮封印の状態で留守番をさせられている。

 

「流石にあの姿勢はどうかと思うが・・・。」

「気にしたら負けです。それともカルマがなりますか?」

「やめろバカ。」

 

そして、その時は訪れた。月の輝きが増し、辺りにいた兵の動きが止まる。流石に月の技術を持ってすれば、これくらい容易いものだろう。カルマは麗夢に拒絶を使い、この月光を弾く。

 

「・・・永琳。」

 

物陰から見ていたカルマには懐かしい姿を写っていた。彼女は使者の1人と何か言い合っていると、輝夜のそばに移動した。どうやら彼女は輝夜の味方に付くらしい。

 

「好都合だ。麗夢。」

「2人の転移でしょう?行き先は?」

「神社の近くに竹林があっただろ。あそこなら見つけにくい。転移させたら、お前も行け。」

「わかりました。行きますよ、焔。」

 

焔の青白い炎が輝夜と永琳を取り囲む火柱を生む。2人の姿が炎で隠れると、その下に歪みの穴を開ける。重力に引かれ、2人はそのまま穴の中へと落ちていった。

 

「送りました。次はカルマの番です。」

 

新しく穴を開けるとカルマはその穴に入り込む。行き先は火柱の中だ。それを確認すると、麗夢はまた違う穴を開け、その中へと入って行った。そして火柱が消えると、そこにはカルマがいるというわけだ。

 

「何者だ?」

 

月の使者が問う。それに答えず、辺りを見渡す。そこには身動きが取れない地上の兵たちがいた。

 

「邪魔だな・・・。」

 

都合よく兵の全員がカルマに注目している。

 

―第98禁忌魔法“言霊”―

 

「“地上の者は自分の居場所に帰れ。”」

 

カルマの言葉を聞いた兵たちは虚ろな眼になり、のろのろと屋敷から引き上げていった。この現象に月の使者は驚きを隠せなかった。月光を浴びた以上、数時間は身動きを取ることができないはずだからだ。

 

「・・・邪魔は消えたな。で、ド低脳共は俺を殺るわけか?」

「姫様と八意様を何処へやった?」

「安心しろ。安全な場所だ。」

 

未だに警戒を解こうとしない。カルマのことは月の者なら既知のはず。しかし、その様子が見られない。恐らく、姿形や能力を知っているだけで、実際に会ったことがないため、わからないのだろう。1人を除いて。

 

「止めい。」

 

進み出てきたのは初老の男性だった。但し、老体とは思えぬ鍛え上げられた身体をしている。

 

「し、しかし、総大将殿!」

「いいから。武器を下ろせ。」

 

使者たちは渋々構えを解いた。男はカルマと対面に来るとこちらを観察してくる。しかし、その視線に警戒心はなく、喜びの方が大きい。

 

「久しぶりだのう、カルマ。元気だったか?」

「あん?」

 

気軽に話しかけてくる辺り、面識はあるのだろうが、身に覚えがない。

 

「ん?あぁ、この姿じゃわからぬか。風真じゃよ、如月風真じゃ。」

「・・・あぁ、そうか。俺の外見が変わってないからな。」

 

カルマは神になっている以上、ほとんど外見に変化がない。だが、あの頃から数億年と経っている実感がわかなかったのだ。

 

「ほんに、お主は変わらんのぉ。羨ましい限りじゃ。久々の再会だ。もっと喜んだらどうだ?」

「うるさい。俺には無縁なことだ。」

「はっはっはっ!相変わらずだのぉ、お主は!」

 

風真は豪快に笑いながら、カルマの肩をバシバシ叩く。得体の知れない者に馴れ馴れしく接する総大将に使者の面々は動揺を隠せない。それどころか、自分たちが英雄として崇めている『魔神カルマ』が目の前にいるということが判明し、更にざわつきが増していた。

 

「さて、話を戻すが、輝夜様と八意様のことだが―」

「安心しろ。ちゃんと安全な場所に移している。それに今頃、協力者があいつらに説明しているはずだ。」

「うむ・・・。まぁ、お二人方もお主といた方が本望だろう。」

「なっ!お祖父様!」

 

しかし、風真の言葉に否を申し込む者が現れた。20代後半の女性だったが、カルマはそれ以外に注目する点があった。

 

「おい、風真。あの女・・・。」

「あぁ、儂の孫じゃよ。如月風音というんじゃ。可愛いじゃろ?」

「そっちじゃねぇよ。」

「まぁ、言わんとすることは分かるのぉ。」

 

彼女の手にある得物。それはカルマが昔愛用していた大鎌だったのだ。

 

「お祖父様!今回の任は輝夜様の奪還です!それをカルマ様とはいえ、地上に置いておくなど。」

「そう言われてものぉ。豊姫様や依姫様も納得してくれるとは思うが。」

「ぐぅ・・・。」

「おっと、そうじゃ。カルマよ。」

「なんだ?」

 

風音が納得しきれていない中、話題は再びカルマへ。

 

「明日、この島の一番高い山でお主を待っておるぞ。理由は来れば分かる。」

「・・・まぁ、分かった。」

「よし。皆の者、引き上げるぞ!」

 

風真の号令で使者たちは月へと帰っていった。それと同時に月光も弱まっていく。

 

「・・・帰るか。」

 

屋敷の裏に行くと、麗夢の開けた穴が開きっぱなしになっていた。その穴に入ると、穴は閉じ、何もなかったかのように静まり返っていた。

 




やっぱりこの2人のカップリングは個人的にいいと思うw
まぁ、自分で生み出したオリキャラだからね(*´ω`*)
どんなお願いをするつもりなのかな、あの娘。

―というわけで、数億年ぶりの再会は如月風真が先でした。
まぁ、それなりに年月は経っているので、老体にしようとは考えていました。
でも、数億年経ってるのに、まだ死んでないってどういうことだろ(~ω~;)))
ちなみに彼は薬を飲んでないからね。

さて、次はいよいよ女性陣との再会です。
挿絵を入れる予定だけど、ちょっと難しそうw

1日遅れで説明入れるの忘れてたことに気づきました。
第98禁忌魔法“言霊” ― 全方位において、全感覚(五感)の一つでも自分の言葉を認識した時、その言葉の通りとなる。第88禁忌魔法“オートマター”と違い、多人数向けの禁忌魔法。だが、人数に応じて贄の数が増す。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,13 竹取物語 歪

表裏ときたら、表裏一体とか違うタイトルになるかと思った?
残念、こっちでしたw
まぁ、その頃の麗夢はって感じです。

それでは、本編どうぞ。


「私も行きましょうか。」

 

カルマが麗夢の開けた穴を通り抜けた事を確認すると、彼女は新しく穴を開けた。行き先は輝夜と永琳を送った竹林だ。穴を抜けると、打ちどころが悪かったのか、お尻をさすっている輝夜と永琳がいた。2人は麗夢の存在に気づくと永琳は輝夜を庇うように前に進み出た。

 

「こんばんは。月が綺麗な良い夜ですね。」

「・・・貴女が私達をここに送ったのかしら?」

「えぇ。そうです。ある人の頼みだったもので。」

「ある人・・・?」

 

不審に思う永琳だったが、輝夜は逆に何かに勘付いたようだ。

 

「そちらの女性は気づいたようですね。」

「姫様?」

 

永琳は振り向き、輝夜に問いかける。少し考える素振りを見せるあたり、はっきりとした自信がないのだろうが、思い切って口を開いた。

 

「もしかして、カルマ?」

「正解です。」

 

カルマの名が出たことで永琳が驚きを隠せなかった。

 

「ほ、本当にカルマ、なの?」

「はい。私は彼と相談して貴女たち2人を救うことにしました。」

「今、カルマは?」

「そうですね。カルマなら今頃月の使者と接触しているはずです。もっとも戦っているのか話し合っているのかはわかりませんが。そのうちすぐ来ますよ。それよりも、お2人のこれからのことです。」

 

屋敷から逃げるという形で離れることとなってしまっただけでなく、月の者はあの屋敷の場所を特定している。結果として、あの屋敷に帰ることはもうできない。

 

「貴女たちの住居ですが、この竹林に屋敷を建てておきました。そこを使ってください。」

「あら、気が利くわね。」

「それとこの竹林は迷いの竹林と呼ばれています。ちょっとやそっとや見つかることはないでしょう。」

「私たちが迷わないのかしら?」

「それは自己責任です。頑張ってください。」

 

誰にでも分かる程嫌そうな顔をする2人に笑みを浮かべるだけである。すると、麗夢が何かに気づいた。

 

「そろそろ来るようですね。」

 

彼女の背後の暗闇から1人の男が姿を現した。

 

「おかえりなさい、カルマ。ご苦労様です。」

「あぁ、ただいま。」

 

カルマの姿を確認すると、2人は驚いた表情を浮かべていた。麗夢は空気を読んでカルマの後ろに下がる。3人にとっては数億年越しの感動の再会なのだから。

 

「カルマァッ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

耐え切れなくなった永琳がカルマの胸に飛び込んできた。驚いたが、彼は優しく抱きとめる。

 

「逢いたかったわ、カルマ・・・。本当に、逢いたかった・・・。」

「そうか・・・。」

 

カルマの冷たい反応だが、これが彼の性分であることは一緒に過ごしてきた時間が長い永琳にとっては懐かしくてしょうがない。彼女は嬉しさのあまり涙が溢れてきていた。チラリと輝夜を見ると、彼女は肩をすくめるだけだ。永琳の気持ちを優先しているようだ。

 

「・・・・・・・・・。」

 

自分で空気を読んだ上での行動でカルマを前に出したものの、麗夢の心は穏やかではなかったのは言うまでもない。嬉し泣きを続ける永琳を見かね、その頭を優しく撫でるカルマの様子に嫉妬が更に増していく。

 

『・・・はぁ。大人げないと思いやがらないんですか?』

「恋は戦いです。奪うか奪われるかです。引けを取るつもりはありません。」

『そうでいやがりますか。』

 

しばらくして、落ち着いた永琳を引き剥がすと、今度は輝夜が近づいてきた。

 

「ありがとう、カルマ。私達を助けてくれて。」

「唯の気まぐれだ。」

「そうかしら?私と文通してたのに。」

「文通?俺はんなことしてないが・・・?」

「え?でも確かに・・・。」

 

輝夜は懐から何枚かの手紙を取り出した。永琳も覗き込んでくる。

 

「確かにカルマの言動と同じ感じね。でも、カルマなら手紙なんて使わないでしょ?多分ずっと姫様を様子見してたんじゃない?」

「まぁな。何回か輝夜のことは見ていたのは事実だ。」

「で、でもいつの間にかこの文が机に置かれてるのよ。それならカルマでもできるでしょ?」

 

確かに、開門を使えば容易いことだ。しかし、今のカルマは禁忌魔法の使用を節約している。手紙の文章から彼の言動をよく知り、瞬間移動紛いのことができる人物。そして、それは身近にいる。

 

「麗夢。」

「はい、なんでしょう?」

「お前、俺に輝夜が今日月からの迎えが来るって言ってたよな?」

「えぇ、そうですね。」

「お前がやっていたのか。」

 

もっともなことだ。麗夢なら空間を歪めることで場所と場所をつなげることができる。それに彼女はカルマを好いている。よって彼の口調を真似ることなど容易い。

 

「残念ながら、私ではありません。」

 

だが、答えは否だった。

 

「それに、私の能力では歪めることにそれなりに時間はかかります。一瞬とは言えません。それにここから都まで距離があります。輝夜さんのことを知ったのはカルマが都と行き来するようになってからです。」

 

なら、他にできる人物とすれば―

 

「あ、ちなみに月からの使者については紫さんから聞きました。」

「・・・あの女ぁ。」

 

つまり、輝夜と手紙のやり取りをしていたのは、八雲紫ということになる。思い返してみれば、彼女は輝夜の屋敷の近くにいることがあった。それだけでなく、最初の頃、輝夜の噂が事実であるようなことも口走っていた。

 

「アイツ、最初からこのつもりだったな・・・。今度会ったら、どうしてくれようか・・・。」

「あ、面白そうですね。そのときは私も混ぜてくださいね。」

 




永琳が小さい・・・。
ま、まぁ気にしないでください(^_^;)

驚きの事実。
手紙の相手はあのスキマ妖怪でした!
多分気付かなかった人多かったんじゃないかな?
カルマは手紙なんて面倒な事しませんからね。
それに手紙を書いてたら書いてたで麗夢とルーミアが気づくはずですからw
そしたら修羅場ですよ、うっへっへヽ(*´∀`)ノ
さて、紫はカルマと麗夢に何をされるのか。
・・・本当に何されるんだろう( ̄▽ ̄;)

ところ変わって次は玉藻編に戻ります。
お待ちかねのお狐様です。
また挿絵突っ込もうかな・・・。

PSO2で霙を再現してみましたが、微妙ですた(´・ω・`)

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,14 対面

連休中に頑張って書き溜めするぞー!
あ、PSO2やr(っ・д・)三⊃)゚3゚)'∴:. ガッ
        ↑
        麗夢

竹取物語をやっている頃の紫視点ですたい。

それでは、本編どうぞ


紫は玉藻御前を追う陰陽師の情報を集めていた。まずは彼らが何処にいるのか知らなければならない。

 

「やっぱり伝承とは異なることもあるわね。なら、玉藻御前のいる場所も違うのかしら・・・。」

 

しかし、伝承通り陰陽師は那須野に向かっているという情報を手に入れることができた。

 

「そこは変更ないのね。なら、その辺りを探すことが最善かしら。」

 

そうと決まれば、善は急げ。陰陽師の行き先である那須野へと先回りをする。紫がスキマを開いた場所は黄金色が広がった草原だった。あの伝承ではこのような場所が模写されていたためだ。

 

「それに狐の毛色と重なって隠れやすいでしょうからね。」

 

しかし、同じような場所は数え切れない程存在する。それを血眼に探しだすことは至難の技だ。だが、それは取り越し苦労だったようだ。何故なら、探し物はすぐに見つかったからだ。

 

「こんばんは、狐さん。」

「・・・・・・。」

 

草々の中をかき分けると、少し開けたところにうずくまっている1匹の狐がいた。もっとも見てわかる通り、尾の数は9本であり普通の狐よりも体長が倍近くあった。

 

「そうそう全部知ってるから、黙りこむことはないわ。玉藻御前。」

「・・・なぜここが?」

 

なんと説明するべきなのだろうか。紫はこの場所で彼女がいるということは昔から分かっていたことだ。それを説明すればよいかわからない。

 

「それは秘密。強いて言うならば、貴女の血の匂いが風に乗ってきたからかしら?」

 

玉藻の姿は傷だらけだった。ここまで行き着く間に陰陽師の者と何度か接触し、攻撃を受けたのだろう。

 

「妖怪の貴方が私を捕まえにきたのか?」

 

紫が今身につけている服装は陰陽服だ。見方によっては陰陽師に溶け込んでいる妖怪に見えるだろう。

 

「違うわ。むしろ、貴女の助けになると思うのだけど。」

「・・・・・・?」

 

紫は玉藻御前の噂から帝との取引の話まで全てを話した。終始静かに聞いていた玉藻だったが、彼女の瞳には光るものがあった。

 

「・・・良い男を見つけたわね。」

「・・・えぇ。」

 

少しすると落ち着いたのだろう。紫の提案―彼女の式となることの話になった。

 

「少し、考えさせてくれないか?」

「いいでしょう。―でも、あまり猶予もないと思うわよ。陰陽師がここに近づいてきていると耳にしたわ。」

「それなら、自分でなんとかしよう。考えがある。」

「・・・そう。わかったわ。ならこれを渡しておくわね。」

 

懐から出したのは幾何学模様が描かれた1枚の札だった。

 

「これは?」

「貴女の身に何かあった場合、その札が私に知らせてくれるわ。そしたら、すぐに駆けつけるわね。」

「・・・わかった。有り難く受け取っておこう。」

「それじゃあ、また来るわね。」

 

玉藻に別れを告げると、スキマを開きどこかへと消えてしまった。紫はその足で今まで通りある物語の舞台となった屋敷へと向かった。思った通り、机の上には文字が書かれた紙があった。

 

『月からの迎いがもうそろそろ来るわ。知っている通り、私―蓬莱山輝夜は月の住人。いつか戻る時が来ることは知っていたわ。でも、戻るつもりはないの。あそこに戻れば退屈で仕方なくなる。地上の方がいい。例え、穢れていようが構わないわ。だから、私が地上に残る手助けをしてくれない?』

 

スキマから手を伸ばし、書かれている文章を読んでいく。予想通り、月からの使者が現れる。この文脈からして、時間の猶予はまだあるだろう。

 

「・・・これでよし。」

 

ある男の口調を真似て書いた文を机の上に置くと、すぐにスキマを閉じた。次の行き先は博麗神社だ。

 

「・・・見ない間に変な趣味にでも目覚めたのかしら、ルーミア?」

 

そこには正座の状態で仮封印されているルーミアの姿があった。

 

「そんなわけ無いでしょうが。それよりも、しばらく見ないと思ってたけど、何してたのよ。」

「内緒よ。それより、麗夢かカルマはいるかしら?」

「どっちもいないわ。カルマは都とかいう場所に行ってる。麗夢は買い物よ。」

 

どうやらどちらも留守のようだ。カルマに知らせるとなると面白くないと判断し、麗夢に教えることにした紫は早速彼女が向かったであろう麓の人里へと向かうことにした。

 

「あっ!せめてこの封印解いてから・・・って行っちゃったわね。・・・はぁ、脚の感覚がもうやばいわね、これ。」

 

 

 

麗夢はすぐに見つかった。まだ村に向かう道中だったため、人目を気にしている紫としては好都合だった。

 

「麗夢。」

「わっ!・・・紫さんですか。驚かさないでください。」

「それは悪かったわね。それと少し話があるのだけど、いいかしら?」

「えぇ、構いませんよ。」

 

紫は麗夢に輝夜の存在と月からの迎いが来ることを話した。

 

「カルマのことでしょうから、これを教えたら手を貸しそうですね。」

「そうでなくちゃ困るわ。だから、このことを彼に伝えて欲しいの。頼めるかしら?」

「・・・むぅ。」

 

麗夢にはメリットもデメリットもない話だが、少し渋っているようだ。

 

「ライバルが増える予感がしますね・・・。」

 

小声で呟いたが、紫の耳にはそのつぶやきが届いていた。恋する乙女らしい悩みだ。彼女が好いている彼の知り合いならば、教えてあげたい。しかし、女の勘がそれを否と囁いている。その様子に呆れを通り越して感心するものがあった。

 

「そうね。ならこういうのはどうかしら?」

「―と言いますと?」

「麗夢の能力で転移する代わりに何でも言うことを聞いてもらうって。」

「あ、いいですね。そうしましょう。」

 

本当に乗るとは思わなかった紫は彼女がカルマにどのような願いをするのかを期待することにし、麗夢に言付けを頼むとスキマの中へと消えていった。

 




本当なら玉藻御前を追う陰陽師とひと悶着考えてたんですけどね。
名前忘れたので、書けなかったですw
2人か3人いたのは覚えているんです。
でも、どれが誰だか忘れたんですよぉ( ;∀;)

ちなみに玉藻御前の時間稼ぎですが。
これは追っ手の1人に玉藻御前が取引的なことをしていたことを思い出したので、入れました。
まぁ、上記にある通り、名前がわからないのでその描写はカットすることになりましたがw

次回で玉藻編は完結の予定です~(n‘∀‘)η

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,15 決意

連休をSSに費やしちゃいましたw
取り敢えず、この章分は書き終えました。
なので、この章が終わるまで連日投稿でせう。

そして、今回で玉藻編が完結すると言ったな。
あれは嘘だ。
その場の勢いで書いちゃうんです。
仕方ないんです。

それでは、本編どうぞ。


玉藻御前に札を渡して以降、スキマから様子を見ていた。もっとも札による効果はなく、適当に幾何学模様を描いた紙でしかない。紫はいつでも玉藻をスキマから観察しているだけだった。

 

「・・・来たわね。」

 

時は訪れた。陰陽師が玉藻と攻防を始めた。負傷し消耗している身体に鞭を打ち、玉藻は陰陽師の攻撃に応戦する。だが、分が悪い。明らかに彼女が押されている。

 

「喰らえ!」

「くっ!」

 

刀のひと振りを躱し、妖力で生み出した衝撃波を陰陽師に当てる。彼はそれを腕を交差させることで防ぐと同時に後ろに飛んで衝撃を緩和する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・。」

「なかなかに耐える。流石は帝様を騙した妖怪なだけはある。」

「・・・・・・。」

 

人間側の思い込みにより生まれる善意程、タチが悪いものはない。彼の一言一言が彼女の精神に傷をつけていく。

 

「ハッ!」

「―ッ!?」

 

彼女の隙を突き、もう1人の陰陽師が札を投げつける。躱しきれず、彼女の身体に札が張り付いた。

 

「喝!」

「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

突如、身体を焦がす程の衝撃が走り、膝をついた。辛うじて倒れていないのは彼女なりの意地なのだろうか。だが、もはや虫の息だ。ヒューヒューと呼吸音が彼女の口から漏れている。

 

「そろそろ止めをさそう。」

「そうだな。これ以上帝様を苦しめるわけにもいかない。」

 

彼女の四方に札が展開され、結界が貼られた。

 

「せめて安らかに眠れ、玉藻御前。」

「行くぞ・・・。破!」

 

結界の中が閃光で包まれた。中から玉藻の叫び声が響き渡るが、閃光の迸る音によりかき消されてしまう。光が止むと、そこには大きな岩が転がっていた。

 

「奴の悪あがきか。強力な妖力を岩から感じるな。」

「一応結界を施しておこう。」

「そうだな。そのほうがいい。」

 

陰陽師は岩の周りに結界を張り、異常がないことを確認すると、報告のために都へと帰って行った。

 

 

 

「間一髪ってところかしら。」

 

スキマの中、そこで狐の妖怪が気を失っていた。陰陽師が結界を張り、閃光で溢れている隙を突き、紫は彼女をスキマの中へと引きずり込んだのだ。そして、入れ替わるように妖力を込めた適当な岩を置いておいた。

 

「これで伝承通りになっているはずね。」

 

数日後、玉藻は目を覚ました。

 

「・・・知らない天井。」

 

どこかの神社の一室だろうか。彼女は敷かれた布団に寝かされていた。

 

「気分はどうかしら?」

 

戸が開き、紫が入っていたが、彼女の顔には疲れが見られる。

 

「問題ない。それより貴方の方こそ大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫。」

 

少し遠い目をしながら答える彼女に首を傾げる。ちなみにこの時、カルマと面白半分の麗夢による仕返しから逃げてきたところだった。

 

「今はまだゆっくり休みなさい。回復したらこれからのことを話しましょう。」

 

そう言い残すと、彼女はスキマを開いてどこかへと行ってしまった。そして入れ替わるように彼女と違う妖怪が姿を現した。

 

「アンタが玉藻とかいう狐?」

「あぁ、そうだが・・・。お前は?」

「ルーミアよ。」

 

ルーミアは玉藻の傍に腰掛ける。

 

「紫から話は聞いてるわ。人間と愛を誓ったそうね。」

「・・・何が言いたい?」

「否定するつもりはないわ。でも、人間への愛ってどういうものかわからないの。私は人食い妖怪。人間を食料としか思ってなかったからね。」

 

ルーミアの根本的な思想は変わっていない。人間は捕食の対象。今はその行為が封じられている為、行うことができないでいるだけ。

 

「紫は人間と妖怪の共存する場所を作ろうとしている。それは聞いてる?」

「あぁ、聞いている。」

「アンタが人間を愛しているだろうから、概ね賛同するでしょ?」

「・・・・・・。」

「沈黙は肯定ととるわ。それで、私に人間に対する愛を教えて欲しいの。」

 

玉藻は答えられずにいた。愛とは突拍子もなく生まれるものだ。それが人間だろうが妖怪だろうが関係はない。そのため、教えると言ってもどう言えば良いのかわからないのだ。

 

「愛は何の前触れもなく生まれる。教えようにもどう言えば良いかわからない。」

「はぁ・・・。まぁ、そうよね。邪魔したわ。ゆっくり休みなさい。」

 

望んだ回答を得られなかった、というよりは答えがないことを半ば理解していたルーミアはそのまま部屋をあとにした。

 

 

 

動ける程度には回復した頃、時を見計らい紫が訪ねてきた。

 

「貴女の答えを聞きに来たわ。」

「分かっている。」

 

決意の元、彼女は顔を上げた。

 

「貴方の式になりましょう。」

「それはよかったわ。」

「但し、条件があります。」

「なんでしょう?」

 

玉藻御前が八雲紫の式となる。言い換えれば、玉藻御前としての最後の望みだ。

 

「最後にあの人に合わせてください。」

 




前回辺りでね。
ある読者さんがルーミアがかりちゅま化しているって言ってたのでね。
ちょいシリアスで出してみました。
ルーミアは麗夢の遊び相手なんです。(・ε・)キニシナイ!!

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,16 八雲藍

連日投稿その2!
今回で玉藻編は終わりです。

それでは、本編どうぞ。


「最後にあの人に合わせてください。」

 

それが玉藻御前としての最後の望み。

 

「会えば、別れが惜しくなると思うわよ?」

「問題ありません。決心は付いています。」

「そう・・・。ならいらっしゃい。」

 

スキマを開き、彼女を誘う。スキマの異様な景色に驚かされるが、怖気づく程玉藻の心は弱くない。

 

「先に言っておくけど、時間はそんなに取れないわ。まだ陰陽師やら兵やらが帝の周りを警邏しているから。」

「わかっています。それほど時間を取るつもりはありません。」

 

スキマを開き、帝のいる部屋へと移った。部屋には帝1人で机に向かっていた。

 

「久しぶりですね、帝様。」

「ん、あぁ。いつぞやの妖怪か。」

「報告が受けていると思いますが、玉藻御前が岩へと変化したということになっています。」

「今その書を読んでいた所だ。」

 

彼は机の上にある紙束と指先で叩きながら示した。最愛の人が倒されたというのに、悲しんでいる様子が見られない。

 

「最も私は玉藻が生きていると信じているが。」

 

最愛の者を信じるというものは、愛故にできる所業なのだろう。

 

「えぇ。生きています。そして、彼女は私の式となることを了承しました。」

「そうか。それはよかった。」

「だから、玉藻御前としては死に、私の式として生きることになります。彼女の最後の願いとして貴方に逢いたいそうです。」

「・・・なに?」

 

紫が場を退き、彼女の影から玉藻が姿を現した。

 

「玉藻・・・なのか・・・?」

「あぁ、そうだ。」

「時間の猶予はあまりないから、時間になったら迎いにくるわね。」

 

そう言い残し、スキマを閉じる。

 

「玉藻、すまない。」

「え?」

 

帝はいきなり玉藻に頭を下げた。何のことだかわからず、戸惑ってしまう。

 

「私がもっとしっかりしていれば、お前を苦しめることもなかった。」

 

彼は玉藻を傷つけてしまったことを後悔していた。しかし、それはどうしようもないこと。この時代、人間と妖怪が互いを思いやることは難しい。いるとしてもごく一部だ。

 

「気にしないでくれ。私は貴方が愛してくれるだけで十分だ。」

「玉藻・・・。私を許してくれるか?」

「許すもなにも。怒ってなどいない。」

「・・・ありがとう。」

「それはこっちの台詞だ。最後まで私を愛してくれてありがとう。」

 

愛し合っている2人は抱き締めあった。お互いの瞳には光るものがあった。だが、その抱擁も長くは続かなかった。

 

「お熱いところ悪いけど、時間よ。」

 

紫がスキマを開け、玉藻を迎えに来た。外からも誰かの声が近づいてきていた。

 

「玉藻・・・元気でな。」

「ありがとう。さようなら、あなた・・・。」

 

 

 

スキマの中、玉藻は紫の胸で泣いていた。最愛の者との別れとは想像もできないほど、心に傷を負わせる。紫は優しく彼女の頭を撫でていた。

 

「落ち着いたかしら?」

「・・・はい。」

 

目はまだ少し赤いがもう泣いてはいなかった。

 

「それなら場所を移しましょう。」

 

場所は博麗神社。スキマを開こうとした矢先、勝手に開いた。―というよりはこじ開けられたという方が正解だが。

 

「紫、探したぞ。」

「あ、やば。」

 

カルマは紫の襟を掴み、スキマの中から放り出す。いきなりのことに玉藻は唖然としていた。

 

「麗夢。そっちいったぞ。」

「はーい。いらっしゃいませ、紫さん。」

 

襖が開き、そのまま放り込まれると、すぐに戸が閉じてしまった。

 

「あ、あの・・・。」

「お前が玉藻御前か?」

「は、はい。そうですけど、紫様は・・・。」

 

主として仕える者として、心配なのだろう。

 

「気にするな。式神にする儀式はもう少し待ってろ。すぐ済むからな。」

「は、はぁ。」

 

未だに状況が飲み込めない玉藻。視界の端に見覚えのある妖怪が写り、助けの視線を向けるも、彼女は肩を竦めるだけだった。

 

「気にしないで。いつものことだから。」

「・・・。」

 

紫の消えた部屋から物音1つしないことが彼女の不安を大きくしていた。

 

 

数時間後、襖が開き紫と麗夢が姿を現した。しかし、麗夢は笑顔であるのに対し、紫は疲れた表情をし、カルマを睨みつける。

 

「カルマ。仕返しにも限度というものがあると思うのよ。」

「知らん。それは麗夢次第だ。」

「ごちそうさまでした。」

 

紫はため息を吐き、気を改める。

 

「玉藻御前は?」

「隣だ。」

「ありがとう。麗夢、儀式の準備をお願いね。」

「はい、わかりました。」

 

紫は玉藻を呼び、違う部屋へと案内した。床には複雑な幾何学模様が描かれている。玉藻は陣の中心に立つと深呼吸した。

 

「準備はいいわね?」

「はい。」

「それじゃあ始めるわね。麗夢。」

 

麗夢に合図をする。彼女は頷き、陣に霊力を流し込んでいく。麗夢は今では半妖と変わらないが、元々はこの神社の巫女として育てられていた。霊力の扱いにも長けている。儀式はスムーズに進んだ。本来、式神は強制的なもので手に入れる。抵抗すればするほど、それなりの痛みが訪れる。だが、今回は同意の元で行われているため、苦しむことはない。

 

「終わりました。」

「えぇ、ありがとう、麗夢。気分はどう?」

「問題ないですね。」

 

少し服装が変わっているが、問題はないようだ。

 

「貴方は今から玉藻御前でなくなったわ。これからは八雲藍と名乗りなさい。」

「はい、紫様。よろしくお願いします。」

 

こうして、八雲紫の式神―八雲藍が生まれたのだった。

 




大切な者との別れは泣けるところがありますよねぇ。
ほら、東方3次創作のアレとか・・・(´;ω;`)

八雲藍の式神に麗夢が一枚噛んでるってのは考えてなかったんです。
今回急遽入れました。
だって、妖怪の紫に式神とする霊力があるとは思えなかったのでw

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,17 依り代

場面は変わって、再び竹取物語です。
―と言っても、富士山行くだけだけどw
まぁ、それだけじゃないんだけどね・・・。

それでは、本編どうぞ。


「行ってくる。」

 

輝夜に手を貸し助けたその後日。カルマは風真に言われた通り、指定の場所に行こうとしていた。

 

「送りましょうか?」

「いや、いい。月の奴らのことだ。俺以外の奴がいれば、変に警戒するだろうからな。」

「わかりました。いってらっしゃい。」

 

麗夢に見送られる形で、カルマは開門を使い、指定された場所へと向かう。山の頂きに着くとまだ誰も来ていなかった。

 

「冷えるな・・・。」

 

流石の魔神も標高3500m越えは寒いらしい。彼の吐く息は白くなっている。すると、彼に合わせたかのように3人の人影が姿を現した。1人は如月風真、もう1人は彼の孫である如月風音。だが、彼らを従えている女性は初対面だ。そして極めつけには彼らの背後に2~3m程の柩サイズの箱があった。

 

「お初にお目にかかります、カルマ様。私は綿月豊姫。本日はお越し頂きありがとうございます。」

 

綿月という性にはカルマも聞き覚えがあった。蓬莱山に次ぎ、それなりの権力者だった。

 

「今の月はお前が治めているのか?」

「そうですね。私と妹で行っています。」

「そうか。それで俺になんのようだ?」

「風真、風音、例の物を。」

 

2人は後ろにある箱をカルマの前へと運び出した。大きさから分かるように、相当な大きさだ。

 

「これをカルマ様にお渡しします。」

 

横に置かれた箱を開けるとそこには分解されている得物があった。ほぼ無意識にカルマはそれに手を翳す。それはカルマの魔力に呼応し、彼の手に収まり、元の形状を構築していく。それは人間の身長の2倍はある柄に等身大サイズの刃のついた大鎌だった。

 

「これは・・・。」

「我々が祠にカルマ様の寄り代として祀っていた物です。」

 

試しに軽く降ってみたが、重さを感じることなく不思議と手に馴染んでくる。

 

「八意先生がそろそろカルマ様の力が無くなり始めている頃だろうとのことだったので、いつかお渡ししようと思っていました。」

 

長年の付き合いからくるものだろうか。それとも自分の作った薬だからだろうか。どっちにしろ禁忌魔法を節約しているカルマにとっては助けになるものだ。魔法使いは基本、魔法を魔道書なり杖なり触媒を用いて扱う。カルマはそれがなかったため、多くの魔力を消費する必要があったのだ。言い換えれば、今までのカルマは加工前の原石。この鎌を持ったことで加工後の光り輝く宝石へと変わったのだ。

 

「ふむ。一応例を言っておく。」

「ありがとうございます。我々はこれで帰らせていただきます。」

「あぁ、わかった。」

「姫様のことをよろしくお願いします。」

 

豊姫はそう言い残し、忽然と姿を消した。それを見送りカルマも開門で戻ろうとした矢先、異変が起きた。

 

「―ッ!?」

 

嫌な気配を感じ、振り返る。それと同時に天に向けて紅蓮の炎が立ち上った。炎の出処は今いる場所からそれほど遠くはない。急いで炎の発生源へと向かう。

 

「さっきまでの寒さが嘘みたいだな・・・。」

 

辺りは焼け野原となり、所々飛び火で燃えていた。そして炎の中心には見覚えのある少女がいた。明らかに苦しんでいる。熱でまともに声も出ないようだ。

 

「妹紅!」

 

彼の声に反応し、顔を上げるも目の焦点があっていない。

 

―第51禁忌魔法“過去写”―

 

カルマの紅い瞳が妹紅の過去を写しだした。そこには輝夜に堕ちた父が自害し、復讐に囚われた妹紅の姿があった。そして、炎の原因が輝夜の残した薬によるものだともわかった。

 

「ちっ。復讐に飲まれたか。」

 

復讐は生物が行うことができる簡単が禁忌だ。復讐は復讐を生み、連鎖を作る。だから、誰かがその復讐を止めなければならない。

 

「藤原妹紅、輝夜に復讐したいかっ!」

 

カルマの言葉に反応するように、炎の矛先がカルマに向かう。それを避けることなく、拒絶で炎を躱す。

 

「復讐したいなら、俺に向けろっ!俺は輝夜と知り合いだ。それに関わらず、俺はお前に近づいた!俺がお前の父親を殺したと言っても過言じゃない!」

 

更に炎の威力が増し、じりじりと押され始めた。だが、耐えられない程ではない。

 

「どうした。貴様の怒りはそんなものかっ!」

 

鎌を振り下ろす。風圧だけで炎が揺らぐ。その隙に炎に飛び込み、妹紅に近づく。

 

「悪く思うなよっ!」

 

妹紅の腹を殴りつける。彼女は苦悶の表情を浮かべたが、糸が切れた人形のようにカルマに身体を預けるような形で倒れ込んだ。同時に彼女から溢れていた獄炎も止まった。

 

「はぁ・・・。世話の焼ける・・・。」

 

カルマは彼女を肩に担ぐと、開門を開き中へと足を踏み入れた。

 




綿月の姉の方が登場です。
妹もいづれ登場予定です。
まぁ、こういう場面では豊姫の方が適任だと思ったんだけどね。
いざ調べてみると、豊姫ってのほほんキャラだったのねw
しかも大食いらしいし、完全に幽々子と同じじゃんよぉ(´∀`)

ところ変わって久々のもこたんです。
そして、私の中で妹紅はクール3デレ7のクーデレポジになりました。
今更だよ、まったく(´・ω・)
彼女のデレは現代編までお預けだけどねw

今回の禁忌魔法紹介~。
第51禁忌魔法“過去写” ― 過去を見ることが可能。見た過去には干渉が可能だが、時間軸に大きく影響する。

カルマの新しい大鎌のデザインです。
実際の柄の部分はもっと長いんです。
でもA4の紙に収まらなかった・・・( ;∀;)

【挿絵表示】

実は、ここで風音と稽古しようと思ったんだけどね。
鎌の打ち合いってどうすればいいの?
―ってなわけで入れませんでしたw

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,18 復讐の炎

今回でこの章も終わりです。
そして、連日投稿も終わりです。
次回からいよいよ本腰が入ってきます。

それでは、本編どうぞ。


父親が死んだ。父はあの女を迎え入れようと躍起になっていた。そして、それは起こってしまった。『蓬莱の球の枝』なんて物を要求してきた。だが、そんなものが存在するはずがない。最近できた友人に相談したが、彼も手に負えない程だった。父はそれでもあの女を手に入れる為に多大な借金をしてでも、『蓬莱の球の枝』の偽物を作った。作ってしまった。それを喜々として女の所に持っていったが、目の前で偽物だということが判明してしまった。父はそれを恥じた。挙句の果てには、周囲の人間にも露見し、精神的に追い詰められていった。父はそれに耐えられず、この世を去ってしまった。

 

私はあの女を許さない。

 

女は月に帰っていった。だが、そうは思わない。あの女は絶対地上にいる。確証はないが、そう思わせる何かがある。そして、あの女が残した薬。アイツを育てた老人はそれを受け入れなかった。帝様への進言により、その薬はこの地で最も高い山の頂きで燃やされることとなった。月に帰っていった女に届くように・・・。

 

くだらない。

 

せめてもの復讐にその薬は私がもらう。自分の考えていなかった方向に物語は進んだ。あの女に少しでも復讐したかった。

 

熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。

 

身体が燃えるように熱い。いや、実際に燃えている。炎の熱が喉を枯らし、まともに声もでない。叫ぶこともできない。苦しい。これが復讐の対価か。負けるわけにはいかない。あの女に復讐する。この程度の熱さに負けるわけにはいかない。

 

友人の声が聞こえた。

 

幻聴かと思った。幻覚とも思った。彼の台詞がそれを意識させる。彼があの女の知り合い?彼が父を殺した?

 

ふざけるなっ!

 

お前はそれを知っていて、私に近づいたのかっ!お前は父を見殺しにしたのかっ!炎が私の意思に応えるように、友人へと襲い掛かる。だが、炎の方が彼を避ける。わけがわからない。彼の言葉が私の心に突き刺さる。より一層怒りが増した。もう正気を保っていなかった。

 

熱し焦がし燃やし尽くす。灰と化せえええええええっ!

 

私の怒りに呼応し、炎の勢いが増した。彼が押され始める。そのまま炎に飲まれろっ!そう思った。だが、そうならなかった。どこから取り出したのか。巨大な鎌の振るった風だけで、炎が掻き消えてしまった。溢れる炎もその風で揺らぐ。あまりの威力に私は動揺してしまった。その隙を逃がすことなく、彼は私の懐に潜り込んできた。瞬間、腹に衝撃が襲いかかった。

 

そこで私の意識は途絶えた。

 

 

 

場所は藤原邸。最初は神社に向かおうと思ったが、もしかしたら、永琳か輝夜が訪ねてきている可能性がある。そう判断したカルマは、彼女の家へと運んだ。中は彼女の留守にした時間を物語っているかのように埃が薄く積もっていた。

 

「気がついたか。」

 

妹紅が目を覚ましたことに気づいたカルマは彼女に話しかける。彼女は頭で現状の整理をしていた。その為、彼の存在に気づいていない。理解が及ぶと漸くカルマの存在に気づいた。―ということは、先までの事は現実だったのだろう。

 

「ここは・・・私の屋敷か。」

「あぁ。お前を昏倒させた後、ここに運んだ。」

「あの山からここまで距離があるはずだ。数日ならともかく、日の傾きからして殆ど時間が経っていない。どうやったんだ。」

「さぁな。」

 

思えば、彼女はカルマのことを全然知らない。それほど彼女にも余裕がなかったのだ。

 

「カルマ、教えてくれ。お前は本当にあの女の知り合いなのか?」

「・・・そうだ。俺が輝夜に興味がないというのは、元々知り合いだったからだ。」

 

カルマの言葉を聞き、彼女からまた炎が溢れようとしていた。

 

「復讐に飲まれるな。」

「えっ。」

 

カルマの言葉が彼女の虚を突いた。おかげで炎も止まった。

 

「復讐は復讐を生む。それくらいわかるだろう。輝夜を殺せば、アイツに縁ある者がお前に牙を剥く。」

 

輝夜を殺せば、彼女を育てた老人や惚れ込んだ男が妹紅に矛先を向ける。

 

「私が殺されても、別に構わない。」

「俺が許さない。」

「―――。」

「確かに俺は輝夜と縁があるが、お前とも縁がある。もし、お前が殺されれば、俺が全員を殺すかもしれない。」

 

そして、復讐は連鎖し、止まることはなくなる。復讐で死んだ人が贄となり、新たな復讐を生む。これが人間の簡単に起こすことができる禁忌だ。

 

「視野が狭いぞ。もっと広く見ろ。」

 

彼女は今、自分のことしか考えていなかった。復讐に飲まれ、自分自身を失っていた。正気じゃなかったのは彼に牙を剥いた時でなく、彼女の父が死んだ時だったのかもしれない。もしかしたら、もっと前からかもしれない。

 

「お前は輝夜の置いていった薬について、どれくらい知っている?」

「いや、わからない。どういったものだ?」

 

カルマは戸棚の上に置いてあった鏡をとり、彼女に渡す。不思議に思い、鏡を覗き込むと驚愕が彼女を襲った。

 

「な、なんだこれはっ!?」

 

彼女の綺麗な黒髪が真っ白になっていたのだ。

 

「あの薬は蓬莱山の薬。不老不死となる薬だ。」

「不老・・・不死・・・。」

「聞こえはいいだろうが、それは最初だけだ。地上で不老不死なんて存在に会えば、恐らくお前は人外の者として扱われる。」

「・・・・・・。」

 

これでは、復讐の意味を成さない。彼女の罠に嵌ったとでも言えるかもしれない。

 

「は、はは。私が化物、か・・・。」

 

彼女の言葉が部屋に虚しく響く。父は死に、自分は不老不死の化物となった。

 

「なぁ、カルマ。私はどうすればいい?」

 

今や彼女の支えはカルマという友人だけになってしまった。

 

「さぁな。お前のことはお前が決めろ。」

 

だが、彼は彼女を冷たく引き離す。そこまで面倒を見れる程、彼はお人好しではない。

 

「俺は行く。もしかしたら、何処かで会えるかもしれんな。」

「私が化物になったから、逃げるのか?」

「生憎―」

 

顔を上げると、カルマは背を向けていた。そして、彼が空間を割る瞬間を目撃してしまった。現実味の無さにカルマの存在の異常性を垣間見た気がする。

 

「俺はお前が生まれるよりずっと昔から人間辞めてるんでな。」

 

それだけ言い残し、彼は姿を消した。妹紅はこれからの事を考えた。カルマは恐らく、自分が人間でないことをわざと彼女に見せた。そんな彼が今までしてきたことは何か。

 

「・・・旅、か。」

 

そうと決まれば、話が早い。彼女はすぐに旅支度を始める。―と言っても彼女は不老不死となった。荷物は身体1つだけで十分だ。

 

「さようなら、父上。お世話になりました。」

 

その日の夜。藤原邸の屋敷が炎上した。それが誰によって起こされたことかは分かることはなかった。

 




妹紅の心情で半分くらい行くとは思わなかったw
てか、書いてて楽しかったw
因みにこの後の妹紅の裏設定ですが、こうなります。

旅をしている最中に上白沢慧音と会い、共に旅をすることになる。
妹紅は元人間の蓬莱人、慧音は人間を愛している半妖。
故にお互い思うところがあり同行することになります。
因みに当初の慧音はロリです。←ここ重要w
そして、行き着いた先が幻想郷でした。
そこで輝夜と再会でドンパチやります。
この時既にカルマは魔界にいるため、再会はできません。

以上がこの物語の藤原妹紅+上白沢慧音の裏設定です。

カルマに諭されて、妹紅は落ちました、まる。

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6章 幻想
Ep,1 冥


前半ふざけました。
一度やってみたかったんです。
反省も後悔もしていません(`・∀・´)

それでは、本編どうぞ


輝夜もここでの生活に慣れ、玉藻も八雲藍として紫の補佐にも慣れてきたあくる日。霊夢は神社の縁側に腰掛けていた。そしてカルマが彼女の背後に立つ。

 

「それでは、お願いします。」

「・・・なんで俺が。」

 

呆れ顔の彼に対し、麗夢は笑顔で振り返る。

 

「なんでも言うこと聞くって言ったじゃないですか。」

 

輝夜の一件でそう約束し、彼女が今の生活に慣れる時を見計らい言い出した辺り、忘れていなかったのだろう。カルマとしては麗夢が自分に利あることを忘れるとは思わなかった為、不審には思っていた。

 

「ほら、早くしてください。」

「・・・はぁ。」

 

溜息を漏らすとカルマは『それ』にゆっくりと手を添える。彼は少しぎこちない動作で『それ』をゆっくりと揉んだ。

 

「ん・・・ふぅ・・・。」

 

麗夢の口から吐息が漏れる。目を閉じ、感触を確かめていた。

 

「もう少し、ん、強めで、んふぅ、お願いします、ぅ。」

 

手に加えている力を少し増すと、彼女の『それ』に彼の指が柔らかく食い込んでいく。

 

「こうか?」

「んんぅ、はい・・・。はぁ、いい、感じです・・・ぁぅ。」

「・・・ねぇ。」

 

気持ちよさに麗夢自身の表情が蕩けそうになった時、畳の上で寝転がっていたルーミアが顔を上げ、2人に向ける。

 

「なんで『肩』揉んでるだけで、そんな声出るのよ、麗夢。」

 

肩を揉まれていた麗夢はカルマの手の感触を味わいながら、答えた。

 

「胸が、ん、大きい、ふぅ、と肩が凝るの、うぁ、ですよ。」

 

彼女の胸はそれなりに大きい。まだこの神社の付近が繁栄していなかったあの頃に比べ、かなり成長したとも言える大きさだ。彼女の言葉にルーミアは自分の視線を下に向ける。彼女自身も大きい方だが、如何せん麗夢より一回り小さい。

 

「まぁ、私はあまり肩凝らないからいいけど。カルマはどっちがいい?」

「・・・あ?」

 

肩を揉んでいた手を止め、彼女に振り返る。この問いとしては『どっちの胸がいいか』というものなのだろうが、それは男として答えづらいものだった。

 

「勿論、私ですよね?」

「大きすぎるのもどうかと思うわよ。今みたいに肩凝るし。」

「嫌味ですか?」

「さぁ?」

 

2人の視線の間に火花が散る。

 

「カルマはいるかし・・・。取り込み中だったかしら?」

 

スキマが開き、紫が姿を現した。カルマに用があるようだが、麗夢とルーミアに板挟みにされている様子に若干ながら引いていた。

 

「なんの用だ?」

「え、えぇ。ちょっと手を貸してほしいことがあるの。来てくれるかしら?」

「わかった。すぐ行く。」

 

これ幸いとカルマはスキマの中へと入って行った。彼が消えたことに気づかず、睨み合う2人。

 

「「カルマはどっちが良いの!?」ですか!?」

 

しかし、彼女たちの視線の先にカルマの姿はなかった。

 

「「・・・逃げられた。」」

 

 

 

「いいのかしら?何か取り込み中だったみたいだけど。」

「構わない。」

「そ、そう。」

 

スキマを抜けると、石階段の途中に出た。上にも下にも長々と続く階段を挟むように木々が立ち並んでいる。そして、白い何かが辺りを飛んでいた。

 

「ここは・・・。」

「冥界よ。貴方には縁遠い場所じゃないかしら?」

「いいや。」

 

冥界。それは死者の集う場所。蓬莱人は死なないため無縁の場所だが、カルマは違った。カルマの自動で発動する第7禁忌魔法“黄泉還り”は不死とは違う。死んでやっと発動するものだ。その為、冥界の入口までは来るが、そこで引き返すこととなる。

 

「だが、冥界の中には入ったことはないな。」

「そう。・・・付いて来て。」

 

紫は石階段を登っていく。カルマが彼女の後に続いていく。

 

「紫殿から離れろぉっ!」

 

すると、突然の殺気と共に刀が背後から振り下ろされた。依り代である大鎌を瞬時に取り出し、その一撃を防ぐ。

 

「ぐぬぬ。儂の刀をそれも不意打ちを防ぐとは・・・。」

「おい、紫。」

 

呆れ顔で背後にいる紫に振り返る。彼女は溜息を漏らすと、襲いかかってきた老人に話しかけた。

 

「よしなさい、妖忌。彼は私が連れてきたの。危害を加える人じゃないわ。」

「そ、そうですか。これは失礼しました。」

 

老人は紫の言葉に刀を鞘に収め、頭を下げた。彼は年老いているものの、鍛え上げられた肉体を持ち、刀を振るう速度もかなり速く様になっていた。長く辛い修行からくるものがある。

 

「カルマ。彼は魂魄妖忌よ。ここで庭師兼守人をしているわ。」

「魂魄妖忌でございます、カルマ殿。」

「それはそうと、妖忌。いきなり刀を振り下ろすことはないでしょう?カルマが避けていたら、私に当たっていたわよ?」

「そ、それは・・・。面目次第もございません。紫殿の気配と見知らぬ異様な気配を感じたもので。」

 

どうやら妖忌は2人の気配を感じ取り迎いに来たようだ。最もカルマは妖怪でも霊でもなく、神力と魔力の混ざり合った力を持っている異質さがある。何も知らなければ、警戒して当然だ。

 

「幽々子はいるかしら?」

「はい。主は居間でお待ちしております。」

 

妖忌の先導とし、2人は階段を登っていく。

 




前半はライトノベルでよく見る展開じゃないかな?
主語抜いた感じのやつw
こういうの一度やってみたかったんですよねぇ(´∀`)

ところ変わって、西行妖編です。
早速妖忌の登場でした。
よく見る妖夢みたいに変に真面目なところを表現できたらいいなぁって感じです。
さぁ、次回はあの腹ペコキャラの登場だじぇ( ´艸`)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,2 西行寺幽々子

いやぁ、すっかり秋ですねぇ。
そろそろ衣替えしないと駄目ですよ?
あ、因みに私はまだ夏服ですw
この少し冷える感じがいいんですよねぇ(*´∀`*)

それでは、本編どうぞ。


妖忌に案内されるまま、長く続く石階段を登っていく。

 

「それで、紫。」

「何かしら?」

「俺を呼ぶほどの用ってのはなんだ。」

 

紫自身も一般的な妖怪が持つ妖力以上の力を持っている。そんな彼女がカルマの力を貸してほしいというのだ。唯事ではないのは確か。

 

「そう急かさないで。後で説明するから。」

 

階段を登りきると、そこには大きな屋敷があった。輝夜と永琳に用意された屋敷よりも一回り大きいかもしれない。

 

「こちらにございます。」

 

通されたのは1つの部屋だった。そこには2人の女性がいた。1人は八雲藍だが、彼女は疲れた表情をしている。そんな彼女の前には何皿も重ねられた大皿が積まれ、満足げに横たわる女性がいた。

 

「藍、お疲れ様。下がって大丈夫よ。」

 

彼女は一礼すると、紫の後ろに下がった。しっかりと従者らしさが様になってきていた。

 

「あ、紫。おかえり。」

 

紫の声に反応した女性は横になっている身体を起こす。そして、見かけない姿―カルマを確認すると、彼女は小首を傾げた。

 

「紫のコレ?」

「違うわよっ!」

 

親指を立てる彼女に紫は即答で否定した。紫にしては珍しく感情を表に出している。どうやらそれだけ2人の仲がいいようだ。

 

「そうなの?じゃあ私の―」

「それも違うわよっ!…はぁ。彼はカルマ。ほら、さっき西行妖の話で出したでしょ?」

「あぁ、そうだったわね。」

 

両手を合わせ、納得した様子の彼女はカルマに身体を向ける。

 

「初めまして、西行寺幽々子よ。よろしくね、カルマさん。」

「あぁ。」

 

幽々子の物言いは気の抜けたようで、本腰を悟らせないような感じだった。紫とは似た者同士と言った所だろう。最もそんな彼女に紫が振り回されているようではあるが。

 

「それにしても、相変わらず食べるわねぇ。」

 

そう。幽々子が隠れてしまうのではないかとも思える量の皿が彼女の前に積み上げられていた。

 

「紫の式、えっと…。藍だったかしら?その娘が作るものがおいしくてね。歯止めが利かなくなっちゃったのよ。」

「それもそうでしょ。自慢の式なんだからね。」

「勿体ない言葉です。」

 

少し頬を赤く染めた藍が礼をする。

 

「ねぇ、紫。妖忌あげるから、藍頂戴?」

「んなっ!?」

 

幽々子の言葉に妖忌が驚きを露わにした。

 

「やーよ。藍は私の物よ。」

「ケチー。」

 

しかし、そんな彼に構うことなく、話が進んでしまう。ここでの妖忌の様子に少し親近感の沸いたカルマは同情の眼差しを向けていた。

 

「いい加減本題に入ったらどうだ。」

「そうね。そうしましょう。」

 

コホンと咳払いをすると、紫はカルマの呼んだ理由の説明を始めた。

 

「カルマ、あの丘の頂にある桜の木が見えるかしら?」

 

紫は今し方入るために開けられた襖の奥を示す。そこから見える丘の上に一際大きな気があった。

 

「あの木がどうした?」

「あの桜の木はね。絶対に満開にならないのよ。」

「……。」

 

しかし、彼の桜には点々と花が咲いていることがここからでも見て取れる。

 

「あの桜の名前は西行妖。ここの白玉楼の文献に死を呼ぶ桜と記されているわ。」

「正確には精気を吸う妖怪桜なのよ。そして、それには満開になるまで吸い続けるわ。」

「だが、少し咲いた程度で満開になるってわかったわけじゃないだろ?」

「そうね。でも、近々満開になることは確かよ。」

 

紫の視線は幽々子に向けられる。

 

「カルマさん。私の能力は『死を知らせる程度の能力』なの。そして、もう少しで地上に大量の死期が訪れることが予見されたわ。」

 

カルマや蓬莱人にとって、この知らせは意味を成さない。だが、彼ら以外には大きな問題となってしまう。

 

「なら、あの木を切り落とすなり焼き払うなりすればいいだろ?」

「それが出来れば苦労しないんだけどねぇ・・・。」

「西行妖が今まで吸ってきた精気の量はどれだけかわからないのよ。」

「一度挑んだけど、駄目だったの。それでカルマを呼んだのよ。」

「なるほど。」

 

紫の力に干渉できるほどの力があるカルマの力を借りればなんとかなると思ったのだろう。

 

「お待ちくだされ。」

 

だが、そこで待ったをかける人物がいた。今まで黙って聞いていた妖忌だ。

 

「どうしたの、妖忌?」

「紫殿が西行妖に及ばなかったのは知っております。ですが、その男をそう簡単に信用するのはどうかと思われます。」

「そうは言ってもねぇ、妖忌。彼は紫が連れてきたわけだし、信用に足るとは思うけど?」

「儂が信用していないのです。」

 

幽々子と妖忌とは今回が初対面の為、仕方ないのだが、妖忌は頑固として認めない。幽々子自身がマイペースなため、自分がしっかりしなければいけないと考えているのだろう。

 

「儂は西行妖の満開をこの目でしかと見たことがある。カルマ殿、お主の力を試させてもらってもよろしいだろうか。」

 

妖忌は西行妖の満開を見たことがある。そして、その恐ろしさも知っている。カルマの力が西行妖に対抗できうるのか、自分で体験しなければ、納得できないのだろう。

 

「ちょっと妖忌!」

「いいだろう。」

「なっ!カルマまで何言ってるのよ!」

「こういう奴は何言っても聞かねぇよ。」

 

紫が止めようとするが、2人は止まらない。

 

「そこの庭先でいいよな?」

「構いませぬ。」

 

部屋から出ると、2人はそれぞれの得物を構えた。妖忌は腰に差している刀の1本を抜き、カルマは大鎌を肩に担いだ。

 

「はぁ、もう好きになさい。」

「妖忌がんばってぇ。」

「幽々子まで・・・。はぁ、カルマ分かってると思うけど。」

 

マイペースな幽々子に呆れ、紫は溜息を漏らし、カルマに注意を促す。勿論禁忌魔法の使用の禁止だ。だが、カルマはそれを受け入れなかった。

 

「悪いが使わせてもらう。安心しろ、殺しやしねぇよ。」

 




ラスト、どうしてこうなった・・・(´・ω・`)
いやぁ、妖忌と勝負させるつもりはなかったんですけど。
妖夢が譲り受けた生真面目さを表現しようとしたら、こうなったんです。
ま、まぁ久々のバトル回になると思うんでいいのかな・・・?

幽々子ののほほん感も表現しようとしたら、こうなりました。
こっちは思った通りになってるかな。
幽々子は死亡前後で能力を変えようと思いました。
死後は西行妖の影響を受け、能力が変化したって感じです。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,3 魂魄妖忌

・・・眠い、冬眠したいお(´・ω・`)
・・・すやぁ(:3[____]

それでは、本編どうぞ。


「いざ、参るっ!」

 

刀を上段に構え、カルマへと突っ込んできた。長い修行あってのものだろう。速度も速く、一瞬にして距離を詰めた。だが、カルマも黙っているつもりはない。大鎌の重さを感じさせない動作で一太刀を防いだ。

 

「やはり只者というわけではあるまいな。」

「まぁな。それより腰のもう1本を抜かなくていいのか?」

 

妖忌の腰には2本の刀がある。しかし、今手に持っているのは1本のみ。

 

「まずはこの楼観剣で様子を見ようと思った次第。しかし、この刀を防ぐとは、やはりいい武器をお持ちのようですな。」

「様子見か。その余裕をなくしてやるよ。堕天!」

 

楼観剣を弾き、妖忌の腹に蹴りを入れて距離を取り、堕天を発動させる。妖忌も彼の蹴りに合わせ、後方に飛んでいた為、それ程の衝撃はなかった。再び構えようとする前に、カルマの大鎌が振り下ろされる。

 

「―ッ!?」

 

反射的に横に飛ぶことでそれを避ける。そのままもう1本の刀を抜いた。彼のいた場所には鎌が地面に刺さり、衝撃により地面がへこんでいた。

 

「いい反射速度だ。」

 

鎌を引き抜き、再び肩に担ぎなおす。

 

「いやはや。これ程とは…。」

「二刀流になったな。」

「確かにこれは白楼剣も抜かざるを負えませんな。それに今の力が先程紫殿の言っていた禁忌魔法というものでしょうか?」

「まぁな。だが、これはその中の1つだ。禁忌魔法全部で99個。俺はそれを全て使え、応用させ、さらに数を増やしている。」

 

カルマがその気になれば、妖忌を何の抵抗もなく消すこともできる。それも禁忌魔法の中に存在する。

 

「まぁ、俺が本気になるのは正気を無くした時くらいか?さぁ、話はここまでだ。続きと行こうか。」

「そうですな。これは久方ぶりに血が滾りますなぁ。」

 

妖忌は2本の刀を構え突っ込み、カルマも鎌をいつでも振り下ろせる状態で突っ込んだ。カルマの持つ鎌は彼以外が持てば見た目以上の重みを感じる。それは彼が作ったクレーターが物語っていた。振り下ろされる鎌を白楼剣で受け流し、楼観剣で横薙ぎに振るった。振り下ろした体勢でがら空きの脇腹に刃が迫る。

 

「キメラパーツ。」

 

しかし、その刃は人外の鎧によって防がれてしまう。そこから返しの刃でカルマの蹴りが襲い掛かる。

 

「うっぐ!?」

 

蹴りが入り、体勢を崩しそうになった妖忌に更に蹴りの回転を利用し引き抜かれた大鎌が襲い掛かる。辛うじて2本の刀で防いだが、体勢が悪くそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「磔十字。」

 

妖忌の背中に何かにぶつかった衝撃が襲い掛かる。彼はこの白玉楼の庭の広さを知っている。壁がぶつかるには距離がまだあるはずだった。しかし、背後にあるのは壁ではなく、十字架だった。そして、そこから妖忌を縛り付けようと鎖が伸びる。

 

「させぬわっ!」

 

振り向き様に一閃。十字架が斜めがけに斬り落とされた。

 

「へぇ、磔十字を斬るか・・・。」

「全ての物には斬り易い場所がある。言わば急所ですな。それを見つけるなど、動かない物ならば、容易いものです。」

「なるほど、なっ!」

 

振り返った目の前に大鎌が迫ってきていた。しかし、それはカルマの持っているわけではなく、投げられたものだ。自分の片割れとも言える武器を手元から話すなど、自身を不利にするも同然だ。

 

「ふんぬっ!」

 

それを明後日の方向に弾くと、カルマの元へと突っ込んでいく。対し、カルマはというと、片腕を頭上に向け、振り下ろした。

 

「テンペスト!」

 

何かを感じ、妖忌は脚を急停止させ、後方に飛んだ。すると、先程までいた場所に上から光線が降り注いだ。

 

「ちっ。今のも避けるか。」

「いやはや油断できませんな・・・。」

「ちょっと、カルマ!今のは当たったら危ないでしょうっ!」

 

紫の怒声が届き、妖忌はこちらを警戒しながらも、疑問に思った。それほど危険なものだったのだろうか。

 

「思わず出してしまっただけだ。いいだろ、別に。当たってないんだから。」

「そういう問題じゃないでしょう!はぁ・・・。」

「カルマ殿。今のはそれほど危険な攻撃だったのですかな?」

「まぁな。今のテンペストを受けていれば、お前は今頃空気に同化してる。」

「空気と同化・・・?」

 

想像できない様子だったが、テンペストの当たった場所を指差され、そこを見ると納得できた。抉れた地面があるが、所々塵となり空気に溶け込んでいた。

 

「なるほどのぉ・・・。」

「話は終わりだ。まだ続けるか?」

「・・・それはいいのだが、武器のほうはいいのかな?」

「・・・・・・。」

 

カルマが手を翳すと、何処かへと飛んでいった大鎌が戻ってきた。依り代となっているため、一心同体とも言える。

 

「これ以上続けると、庭が大変なことになるからのぉ。ここで終わるとするかのぉ。」

 

見渡せば、所々が荒らされていた。―と言っても全てがカルマによるものだが。

 

「あー・・・すまん。」

「いや、勝負を申し込んだのは儂じゃ。」

「そうか。俺の力を試すのはもういいのか?」

「しかと見させてもらったからのぉ。それにまだ余力があるじゃろうに。」

「・・・まぁな。」

 

溜息をすると、彼は刀を鞘に戻した。それを確認すると、十字架と大鎌もその姿を消した。

 

「お疲れ様、妖忌。」

「ありがとうございます、幽々子様。」

「あのね、カルマ。下手したら妖忌に殺すところだったのよ?」

「知らん。こう言う奴は手を抜くとキレるからな。それに死んでも甦させればいい。」

「そういう問題じゃないのよ、まったく。」

 




相変わらず、戦闘描写が苦手です。
妄想もとい、想像はできるんですけど。
いざ、それを文章とするとなると・・・。
書籍でそれを出来る人たちが羨ましいです。

新しい禁忌魔法出ると思った?
残念出しませんでした。
いえ、ネタ切れってわけじゃないんですよ。
未登場の魔法は出すとこ決まってるんです。
ただ、あと数個しかない・・・(´・ω・`)

ちょっと宣伝をば。
PSO2にてマツタケ様とちょっと違うけど、共演してきました。
良ければ見てね♪
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27370280

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,4 決行前夜

蜜柑美味しいです。
気つけば、ひと箱分消えてるなんてよくあることです。
むきむきもぐもぐ(´~`)

それでは、本編どうぞ。


場は改めて、白玉楼の客間。

 

「妖忌も納得したことだし、西行妖の対策について説明するわね、藍。」

「はい。」

 

紫は藍から古紙の筒を受けとると、それを机の上に広げた。そこには白玉楼一帯の地図が記されていた。

 

「ここが私たちの今いる場所。そして、こっちが西行妖。」

 

ここから見える丘ということもあり、それなりに距離が開いている。

 

「紫、配置の前に西行妖の対抗手段を説明した方が良いと思うわよ?」

「…それもそうね。対抗手段の鍵は幽々子とカルマよ。」

 

西行妖を止めるために呼ばれた為、対抗手段に組み込まれることは想像していた。

 

「私たちの取る方法は至って簡単。でも、失敗は許されないわ。」

「それで、方法ってのはなんだ?」

「封印よ。」

 

西行妖の力は未知数。倒すよりも封印した方が効率が良い。それに相手は妖怪桜とは言え、植物。封印を解こうにも自分では如何にもできない。

 

「そして、封印にはカルマの力を使うわ。」

「あん?禁忌魔法に封印の類はねぇぞ。手っ取り早く消滅させた方がいいと思うが?」

 

西行妖を恐れているのならば、消してしまえばいい。しかし、カルマの提案は否定された。

 

「それはだめよ。あの木はここに無くてはならない存在。消すわけにはいかないわ。」

「―というわけなの。だから封印するしか方法がないわ。」

「…封印するにしても、お前以上の力を何処から持ってくる気だ。」

 

カルマの疑問も尤もだ。彼の力を使うにしても、封印の類を持ち合わせていない。麗夢ならできるだろうが、彼女では些か力不足だ。

 

「私が術式を組み上げ、それにカルマの魔力を付与させるわ。生贄には幽々子を使う。」

「何…。」

 

幽々子を見るも、彼女の表情は微笑んでいるだけ。既知だったことが伺える。

 

「お前はそれでいいのか?」

「構わないわ。あそこには今まで私と暮らしてきた人たちもいるもの。それに覚悟はできてる。」

「儂もとやかく言うつもりはないのぉ。他にも方法があったかもしれぬが、幽々子様がお決めになったことじゃ。それに儂には孫がおる。寂しいとは思わぬよ。」

「…余計な心配だったな。」

「あれ?カルマが心配するなんて、珍しいこともあるわね。」

 

紫に指摘され、カルマはそっぽを向いてしまった。彼自身、最近自分が甘くなってきていることは自覚している。勿論、その原因にも心当たりはある。

 

「―で、陣形はどうするつもりだ。」

 

今は西行妖の方が最優先だ。手段は分かった。なら次は配置だ。紫は西行妖のある位置を指し示す。

 

「西行妖の傍に術式を置くわ。出来るだけ近い方がいいでしょう。」

「でも、本質は植物とはいえ、妖怪。必ず抵抗してくるわ。」

「私が術式を維持している間、私と幽々子は無防備になるわ。その間、藍と妖忌に守ってもらうわ。頼めるわね。」

 

一度地図から顔を上げ、2人に確認を求める。2人は頷くのを確認すると、再び地図に視線を落とした。

 

「魔力を付与したら、防衛に徹してほしいわ。」

「わかった。余裕があれば、2人に加勢してやる。」

「そうしてくれると助かるわ。」

 

正直、魔力は惜しい。だからと言って、渋るつもりはない。依代がある今だからこそ、惜しむことなく力を振るうことができる。

 

「決行は明日よ。それまでに、力を蓄えておきなさい。」

 

そして、その場を解散となったが、妖忌は満開を見たことがあるとは言え、最悪の場合に備え、白玉楼で1日を過ごすこととなった。カルマに割り振られた部屋から出てみると、ボロボロになった庭を整理している妖忌の姿があった。

 

「どうされた、カルマ殿。」

「気にするな。作業を続けてくれ。」

 

気配で気付いていた妖忌だが、カルマの言葉に作業を再開する。カルマはその様子を観察していた。よく見れば、彼の挙動が洗礼された動きをしていることが分かる。もし、数億年も前に生まれていれば、カルマ以上の存在となっていたかもしれない。

 

「そういえば、カルマ殿。」

「なんだ?」

 

妖忌は作業を続けながら、カルマに問いかけてきた。

 

「カルマ殿は大鎌を得物として扱うのですな。」

「まぁな。慣れれば扱いやすいものだぞ。」

「ほぉ。他にはどのような物を扱われるのですかな?」

「…そうだな。」

 

それはカルマがまだ魔人となる前まで、正確には防衛部隊に入隊して間もない頃に遡らないといけない。

 

「遠心力を利用する武器が得意だったな。」

「遠心力…。振り回すような物ですかな?」

「あぁ、そうだ。昔は槍や鉾、斧に大槌とまぁ、こんなものか。」

「それは、なかなか多彩ですなぁ。時間があれば、もう一度手合せしたいものじゃ。」

 

楽しいそうに笑う妖忌に不安のような物は見受けられない。それだけ、今回の作戦に自信に満ちた確信があるのだろう。従者は主を優先した思考を持つ。それを思ってきたのだが、取り越し苦労だったようだ。これなら何も言う必要はないだろう。

 

 

 

あらゆる生き物が寝静まる夜。彼女はぼーっと月を眺めていた。そして、何かを決心すると、立ち上がり歩みを進めた。数歩歩くと髪を引かれる思いで後ろを振り返る。

 

「………。」

 

だが、すぐに前を向くと、元から誰もいなかったかのように、彼女の姿は闇の中へと溶け込んでいった。

 




禁忌魔法はちょっと違うけど、一撃必殺の物が結構多いんですよねぇ。
テンペストもそうだし、磔十字もそんな感じだしw
殺さず倒すってのは、カルマの苦手な分野なのかもしれないです。
―と思ったけど、カルマと戦って死んじゃったのって、モブ神だけのような気が・・・。
「ヴラドの眷属は元々死んでたようなものだからなぁ。」

次回はいよいよ西行妖との戦闘回です。
意思ある者っていうか、話さない敵なので、描写でどう文字数を稼げふんげふん。
まぁ、頑張りたいと思いますですよ、おほほほほ。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,5 西行妖 前編

先週地元に戻って温泉行ってきました。
肩こりも少し柔らいだし、お肌もスベスベだじぇ(´∀`*)
でも、のぼせた(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ


「……。」

「Zzz…。」

「…紫様、起きてください。」

「んぅ…。Zzz…。」

「…藍。」

「あ、はい。なんでしょう、カルマ様。」

「水持って来い。」

 

 

 

「おはよう、幽々子。」

 

早朝。客間に紫が姿を現した。彼女に続く形でカルマと藍が続く。そして、客間には既に幽々子と妖忌の姿があった。

 

「おはよう、紫。それより、貴女が起きるにしては珍しく早いわね。」

「カルマに起こされたのよ。」

 

彼女はカルマを睨み付けるも、彼はそれを軽く受け流した。

 

「本当なら藍に起こしてもらうつもりだったのだけど…。」

「申し訳ありません、紫様。」

「さっさと起きねぇのが悪ぃんだよ。」

 

中々起きない紫に困り果てていた藍。朝の鍛錬を終え、客間にいたカルマは中々姿を現さない彼女たちの様子を見に来たのだ。取りあえず、紫の寝顔に早朝の気温で冷えた水をぶっ掛けて起こすことになったのだ。

 

「まったく…。二度目よ、こんな起し方をされたの。」

「知るか。」

 

先日にからかわれたことの恨みも含まれていたのは彼のみぞ知る。尚、最初の一度目は麗夢によって起こされたものだ。妖忌と藍の作った朝食を済ませると、少し休憩してから西行妖の元へと向かった。

 

「……なるほど。紫を負かすだけはある、か。」

 

目の前にある桜の巨木。その樹に近づけば近づく程、妖気が重圧として襲い掛かりそうな程だ。そして、ほとんどの枝で桜が咲き、もう少しすれば満開するかもしれない。

 

「時間が惜しいわね。急ぎましょう。」

 

善は急げ。紫はスキマから何枚もの札を取り出し、それを藍と一緒に配置していく。術式が完成すると白装束に着替えた幽々子は陣の中心に立った。

 

「カルマ、お願い。」

「あぁ。」

 

カルマは札の一枚に魔力を流し込む。すると、魔力は札と札を繋いでいき、大きな陣を作り上げた。

 

「紫様!!」

 

だが、そう簡単に事は進まなかった。突如として、地震が起こったかと思えば、地面から大樹の根が鉾となり襲い掛かってきたのだ。

 

「―ッ!!」

 

藍の声掛けにより直ぐに気付いた紫は境界を操り、結界を作り上げた。しかし、それは早急に作り上げたもので、それほど強度はない。鉾が結界に突き刺さり、今にも突破されそうだった。

 

「紫、お前は術を進めろ!藍と妖忌は西行妖の根を切断だ!」

 

紫の築いた結界が早々持たないと把握したカルマはすぐに指示を飛ばした。紫は術の進行を、藍は妖術で根を燃やしていく。妖忌は2本の刀を振るい、切り落としていく。

 

―第1禁忌魔法“拒絶”+ 第22禁忌魔法“磔十字”―

 

「“教会領域”!!」

 

4つの十字架を支点に結界が築き上げられた。それと同時に境界の結界が砕かれる。だが、カルマの作った結界が鉾を通さない。結界を張るとすぐにカルマも飛び出し、大鎌を振るって、根を切り落とす。横薙ぎに襲ってきた根を足場に飛び上り、空中で回転しながら、輪切りにしていく。直地しようとする時に、丁度その地面から根が飛び出してきた。これを無理やりに身体を捻って躱すが、避けきれず、袖を持っていかれ、肩に軽くだが、切り傷が生まれる。だが、傷の心配をする暇もなく、鉾が襲い掛かってきた。

 

「クッ…。」

 

堕天を発動させると、間をすり抜けるように通り過ぎる。カルマのいた場所に突き刺さった根は、いつの間にか細切れにされていた。だが、西行妖も負けてはいない。カルマを囲うように全方位から襲い掛かる。

 

「ド低脳がぁ、二対鎌!」

 

片手に依代となる大鎌、もう片方にソウルイーターの大鎌を生み出し、片っ端から根を切り落としていく。身体よりも二回り大きい大鎌を2本も振り回せるのは、彼だからできることなのだろう。

 

「次、来ますぞっ!」

 

しかし、油断はできない。西行妖から放たれてきたのは桜吹雪の弾幕。根のような大きな標的ならともかく、花びらのように小さな物は対処が難しい。斬ろうとしても、その時に起こる風に乗り、花弁が斬れないのだ。

 

「妖忌は根に集中しろ!藍は花だ!」

 

妖忌はすぐに後方に下がり、結界を襲う根の対処に当たる。藍は出来るだけ、花びらを燃やしていく。

 

「切りがないッ!」

「…チッ。」

 

無尽蔵に襲い掛かる桜吹雪。妖忌も1人で根の対処はきついようだ。背後の守るべき対象がある以上、受け流すことはできない。だからと言って、真正面から受け止めるには衝撃が強すぎる。

 

「紫、まだか!!」

「まだ掛かるわ!もう少し堪えて!」

 

紫の方も焦っていた。カルマの作った結界とは言え、いつまで保つかわからない。今でもみしみしと軋む音が聞こえ、不安を掻き立てる。それに加え、彼の魔力のコントロールが思った以上に難しく、苦戦していた。

 

「テンペストッ!」

 

樹に当たらないように幾つもの魔法陣を配置し、桜吹雪を消滅させていく。しかし、その隙間を掻い潜り、弾幕が襲い掛かる。攻防に徹している3人にも疲れが見え、幾つもの切り傷がつけられていた。嘲笑うかのような攻撃にカルマの怒りも増してきていた。

 

「ドッ低脳、風情がぁッ!!」

 

陣から放たれるテンペストが違う陣へと放たれる。それが連鎖し、さらに大きな魔法陣を生み出した。

 

「レクイエム!!」

 

新たに生み出された巨大な魔法陣からテンペストが放たれた。西行妖と3人との間を分かつように放たれた光線は地面を抉り、桜吹雪を塵へと変えてしまった。

 

 

 




まさか前編になるとは思わなかった。
後編は明日投稿します。
あ、最初のやり取り。
紫を起こす奴は一度入れたかった物なんですよねw

西行妖の攻撃パターンは色々考えたんですけど。
根による突き刺し攻撃と鞭攻撃。
それと、桜の弾幕にしようと思いました。
本当は死者を操って攻撃させようと思ったんですけど。
思うところがあってやめました。
理由は次回です。

今回登場した禁忌魔法~。
―ってよりは応用だねw
“第1禁忌魔法“拒絶”+ 第22禁忌魔法“磔十字”複合“教会領域”―拒絶結界の四点を磔十字で強化し、結界の性能を強化する。
第16禁忌魔法“テンペスト”応用“レクイエム”―テンペストの光線を連鎖させ、さらに大きなテンペストの魔法陣を築き上げ、巨大な光線を放つ。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,6 西行妖 後編

トリックorトリート!
お菓子くれなきゃイタズラするぞ!
え?遅い?・・・(´・ω・`)
トリック&トリート!
お菓子くれてもイタズラするぞ!(´;ω;`)

それでは、本編どうぞ。


第16禁忌魔法“テンペスト”の応用である“レクイエム”を放った後、カルマは息を乱しながら膝をついた。“教会領域”だけでなく、他にも魔法を使えば、流石に息切れもするだろう。だが、現実はそれほど甘くはなかった。

 

「…チッ。」

 

満身創痍となったカルマに向けて、根の鉾が襲い掛かる。ソウルイーターを消し、依代となる鎌を使って地面を押し、バネのように飛び出すことで、攻撃を回避した。いきなり飛び出した為、着地には失敗し転がるが、鎌を杖替わりに起き上がる。

 

「ま、不味い!」

 

妖忌の焦った声が聞こえてきたと同時だった。いきなり西行妖の妖力が膨らんだかと思えば、それが凝縮し始める。

 

「紫殿、急ぎなされよ!満開を迎えてしまう!」

 

想定はしていたが、西行妖の満開がはじまってしまった。紫の額にも汗が流れる。

 

「紫…。」

「待って、幽々子。あと少し、あと少しなのよ…。」

 

見守ることでしかできない幽々子が心配そうに見つめてきた。あと少しで実行されるのは事実だ。しかし、紫の葛藤がそれを阻んでいた。大切な友人を失うか否か。彼女は受け入れてくれた。紫自身も受け入れている。

 

「紫様!」

 

藍の焦った声に視線を上げれば、西行妖の満開が始まってしまっていた。満開となった桜は神々しく、灰色の世界に灯る暖かい光のようだ。だが、それは甘い蜜。今この瞬間、現世では沢山の人間が命を落としているはずだ。

 

「紫、大丈夫よ。」

「幽々子…。」

「私が消えても思い出は残るもの。悲しみだけじゃない。私たちが培ってきた喜びや楽しみがあったじゃない。」

「でも、私は―。」

「私を大事に思ってくれているのは嬉しいし、誇りに思うわ。でも、私たちで決めたことじゃない。今更変えることはできないわ。」

「――ッ」

 

紫は涙を流し、唇を噛んだ。

 

「カルマさん。」

「なんだ。」

 

いつの間にか結界内に入り、紫の傍に来ていたカルマに幽々子が呼びかけた。

 

「紫のことを任せてもいいかしら?」

「気が向いたらな。それより、そういうのはこいつの従者にいうもんだろ。」

「それもそうね。それじゃあ、紫。お願いね。」

 

幽々子の言葉に心を動かされた彼女は手を一杯に振り上げた。一瞬止まったが、意を決し、そのまま振り下ろす。

 

「―ぁぁぁぁぁああああああああああああッッッ!!!」

 

術式が発動し、西行妖の封印が始まった。幾重にも重なった術式が樹を包み込む。西行妖の妖力が解放され、封印に抵抗しだした。紫も負けじと力を込める。

 

「くぅ…。」

「チッ…。」

「…カルマ?」

 

見かねたカルマが術式に触れ、魔力を注ぎ込む。元々が彼の魔力によって発動した術式の為、彼の方がコントロールに適していた。封印の力が増し、西行妖を抑え込む。

 

「カルマ!貴方、魔力が!」

「知るかっ!魔力など数日寝れば、少しくらい回復する!」

 

カルマの魔力はほとんど無くなり始めていた。魔力も寝れば回復するが、それは禁忌魔法を使うカルマにとっては燃費の悪い方法だった。彼にとって魔力の回復は建前でしかない。本当は死ぬ人間の中に『ある女性』がいることに危惧したためだ。

 

「紫様!」

 

封印への抵抗に力を集中しているため、西行妖の攻撃が止んだ。手の空いた藍が紫の元へと駆けつける。妖忌は刀を杖に膝をついていた。息を切らせ、まともに動けないながらも、こちらを見ている。

 

「お手伝い致します!」

 

藍は紫の背に触れ、妖力を流し込んでいく。藍の今の力は紫を経由して得られたものだ。藍から戻ってきた妖力で紫の力も増していく。どれくらい時間がたっただろうか。気が付けば、封印は終わっていた。各々が力を使い果たし、地面に倒れこんでいた。そんな中、幽々子が紫の傍に腰掛けた。

 

「お疲れ様、紫。」

「……ゅ…こ。」

「無理に喋らなくてもいいわよ。」

 

紫の瞳から涙が止めどなく流れてきていた。無理もない。封印の生贄として組み込まれた幽々子は今、身体が薄くなってきていたからだ。

 

「カルマさんも器用なことするわね。私が消えるまでの時間を引き延ばすなんて。」

 

禁忌魔法についてカルマの右に出るものはいない。彼が術式に触れた時、少し弄っていたのだ。驚いた紫はカルマに視線を向けるも、彼は地面に刺した大鎌に背を預け、背をこちらに向けていた。

 

「ありがとう、紫。私の我が儘を聞いてくれて。本来なら、あの西行妖は切り落とされて当然だけど、父や仕えてくれた人たちが眠る場所だと考えると、どうにもそう思えなかったの。」

 

幽々子の父親は西行妖の根本で命を絶った。それに続くように従者たちも同じように絶命していった。聞いてみる限りでは、曰く付きのようにも思えるが、幽々子にとっては、西行妖は家族の墓標のようなものだったのだ。

 

「あら、もう時間が無くなってきちゃったみたいね。」

 

気付けば、彼女の姿はさらに薄くなっていた。少しずつ空気へと溶け込むように消えて行こうとしてる。

 

「幽々子ッ!」

 

【挿絵表示】

 

最後の力を振り絞り起き上がると、紫は彼女を抱きしめた。いきなりのことに幽々子も驚いたが、ゆっくりと彼女の背に手を回す。

 

「幽々子、私のかけがえのない友達。」

「ありがとう。私の友達。」

「今までの事は絶対に忘れないわ。例え貴女が忘れても、私は絶対に忘れない。」

「そうね。私も忘れないわ。覚えていなくても、忘れないわ。」

「ふふ、何よそれ。矛盾してるじゃない。」

「記憶になくても、心が覚えてるってことよ。」

「なるほどね。」

「………。」

「………紫?」

「………ゅ、ゆゅこぉ…。」

「…泣かないで、紫。逝きにくくなっちゃうじゃない。」

「うるざぃ。あ゛なだだって…泣いでるじゃない゛。」

「ふふ。バレちゃったわね。」

「……幽々子。」

「…そろそろ、みたいね。」

「…また、会いましょう。私の…かけがえのない、友達。」

「…えぇ、また会いましょうね。私のかけがえのない、大切な、友達。」

 

 

 

 




飄々としている紫にしては珍しく感情を出した回でした。
まぁ、かけがえのない存在を無くすのは辛いですからねぇ。
・・・あれ?
こういう展開、前にも書いたような気が・・・(;・∀・)

さて、死者を操った攻撃をしない理由ですが。
死人とは言え、幽々子の家族を倒していくわけですからね。
幽々子的に辛いような気がしたんです。

ところ変わってカルマが漸く魔力枯渇になりました。
つまり、今回以降のカルマは休眠状態になります。
これがカルマの弱体化の正体です。
・・・すぐ起きるんだけどねw
「寝込み襲っていいですか?いいですよね?」
「(誰かこいつを止めろおおおおおおおおおおっ!!)」

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,7 貪欲な死

話の順序間違えた(´・ω・`)
本来なら、西行妖の前に色々あったんですけど・・・。
ま、いっか(ポジティブw

それでは、本編どうぞ。


幽々子が消えてから、紫は日が明けるまで泣き続けていた。今はそっとしておくべきだと判断したカルマは部屋に藍を残し、別室に移動していた。その部屋には身支度を整えている妖忌がいた。

 

「動いて大事ないのですかな、カルマ殿。」

「お前に言われたかねぇよ。」

 

幽々子の部屋には手紙が置かれていた。紫、藍、カルマ、そして妖忌当てのものだった。カルマには紫のことをよろしくと書かれていた。

 

「幽々子様の手紙には儂の好きなようにしろと書かれてありました。」

「仕えていた主がいなくなったからな。」

「なので、ここを孫に任せ、修行に出ようと思っております。」

「素直に隠居すると言え。」

「はっはっはっ。素直になれぬお主に言われるとはのぉ。」

 

ひときしり笑うと、妖忌はまとめた荷物を背負い、机に置かれていた2本の刀をカルマに差し出してきた。

 

「この刀を紫殿に渡してくだされ。」

「あ?お前の得物が無くなるだろうが。」

「なぁに、普通の刀でも問題なかろう。それに、この刀は幽々子様からの手紙に書かれていたのでな。」

 

妖忌の手紙には、もし白玉楼を出ていくのならば、楼観剣と白楼剣を孫に渡すように書かれていたらしい。そして、そのことは紫の手紙にも書かれていた。

 

「分かった。なら、渡しておく。」

「感謝しますぞ。最後に良い戦いができた。儂は更に上を目指そうと思っておる。」

 

どうやら隠居しても鍛錬を止めるつもりはないようだ。

 

「まぁ、死なねぇ程度にしろよ。」

「はっはっはっ。まだまだ死なぬよ。…では、達者での。」

 

そして、妖忌は何処かへと行ってしまった。残されたカルマは壁に凭れ掛かり、一気に息を吐いた。

 

「…まさか妖忌に感づかれるとはな。」

 

1日で回復できる魔力量にも限界がある。現にカルマは今立っていることもやっとなのだ。しかし、自分の身体に鞭打ち身体を起こすと、紫の部屋へと向かう。

 

「藍、入っていいか。」

「はい、構いません。」

 

部屋に入ると、寝ている紫の傍に藍がいた。紫は泣きすぎた為、目元が赤く腫れていた。

 

「この刀だが―。」

「はい、知っております。お預かりします。」

 

藍に刀を渡すと、紫の様子を伺う。彼女は穏やかな寝息を立てていた。

 

「感情を露わにする紫様も珍しいですよね。」

「普段からこいつは飄々で神出鬼没だからな。」

「幽々子様は紫様にできた最初の友達だったそうです。」

「そうか…。」

 

最初の友達故に、無くした時の気持ちは大きいだろう。

 

「俺は別室で回復の為に寝てくる。」

「分かりました。」

 

紫の部屋を後にし、自分の部屋へと行くと、彼は死んだかのように眠りについた。

 

 

 

そして、数日後。カルマは起きないため、スキマを使い八意永琳のいる屋敷へと移動させていた。永琳は彼の状態を想定していたらしく、落ち着いた様子で作業を進めた。彼女にカルマを任さ、紫は博麗神社へと移動する。

 

『やっと来やがりましたか。』

 

しかし、神社に麗夢の姿はなく、代わりに焔がいた。

 

「焔?麗夢はどこ―」

『緊急事態でいやがります。』

 

紫の言葉を遮り、焔が立ち上がる。

 

「一体どうしたのよ。」

『あの人食い妖怪が姿を消しやがりました。』

「――ッ!?」

 

人食い妖怪。つまりルーミアのことだ。ルーミアが姿を消した。それが意味するのは何か。

 

「焔。ルーミアが消えたのはいつ?」

『4日前でいやがります。』

 

4日前。それは紫たちが西行妖と戦う前日だ。そして、次の日に西行妖は一時的にとはいえ、満開を迎えた。

 

「藍、すぐに人が大量死した場所を探し出しなさい!」

「畏まりました。」

 

スキマを開け、藍が中に消える。もしも西行妖によって引き起こされた大量死とルーミアの失踪が関係するとすれば、これからも死人は出ることは明らかだ。

 

「こんな時にカルマが起きていれば…。」

 

今のカルマは昏睡状態。無理起こすこともできるが、まだ魔力が回復していない。それに永琳がそれを許さないだろう。

 

「…麗夢?…焔、麗夢は何処?」

 

神社にいるはずの麗夢の姿がなく、焔の姿がある。この狐の霊が冷静である以上、麗夢は死んでいないのは確実だが。

 

『人食い妖怪の行方を探していやがります。夜には戻ってきやがるはずです。』

「取りあえず、無事なのね?」

『はい。』

 

麗夢は生きている。夜までまだ時間はある。その間にルーミアの行方を探した方がいいだろう。

 

「わかったわ。私も探すから、後のことは頼むわね。」

『わかりやがりました。』

 

スキマを開け、紫も神社を後にした。

 

 

 

「ひ、ひぃぃ!!」

 

ごめんなさい。

 

「だ、だずげでぐれぇ!」

 

もう嫌だ。

 

「返して!私の子―」

 

ごめんなさいごめんさい。

 

「あいつの仇だっ!」

 

もう止められないの。

 

「ば、化け物っ!?」

 

我慢できないの。

 

「お、おれたちが何をしたっていうんだっ!」

 

抑えられないの。

 

「大丈夫か!今助けに―」

 

だから逃げて。

 

「くそぉ…」

 

もう誰も…。

 

「ぎゃあああああああ!?」

 

喰らいたくないの。

 




とうとうこの時が来ました。
ルーミアメイン回再開です。
麗夢の登場以降、かりちゅま化してましたがw
西行妖の満開はルーミアによる捕食の伏線でした。

いやぁ、でも・・・。
あの三次創作みたいな展開になっちゃって申し訳ないです(´・ω・`)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,8 凌駕する本能

思うんだけど、不定期更新ってなんなんだろうねw
一週間ごとに更新してる気がする・・・。

それでは、本編どうぞ。


麗夢がルーミアを探し、どれくらい時間がたっただろうか。空間を転移できるとはいえ、この広大な世界からたった1人を見つけることは至難の業だ。

 

「カルマは私の獲物よ(食べる的な意味で)。」

「いいえ。私の獲物です(意味深)。」

「いずれ私が食べるつもりよ(物理的に)。」

「先に私が食べちゃいますよ(意味深)。」

 

2人でくだらない会話をしていたが、麗夢にとってルーミアは最早家族当然の存在だった。そんな彼女の姿が消えた。最初は散歩でもしているのだろうと思った。しかし、どれだけ時間が経っても帰ってこない。

 

「ルーミアさん…。一体どこに行ってしまったんですか…。」

 

彼女に限って攫われることはないはず。だからと言って殺される程弱いわけでもない。

 

「探したわよ、麗夢。」

「…紫さん。」

 

空間が裂け、紫が姿を現した。

 

「ルーミアを見つけたわ。まずは神社にいらっしゃい。」

「本当ですか!?」

「…えぇ。」

 

歯切れの悪い彼女を不信に思ったが、素直に神社に戻る。

 

「あれ?カルマは…。」

「カルマなら今永琳の所―永遠亭にいるわ。今は動けそうにないの。」

「何故です?」

「魔力枯渇で休眠状態に入ったらしいの。暫くすれば起きるから、命に別状はないわね。」

「それはよかったです。」

 

居間には焔と藍が既に待機していた。麗夢が帰ってきたことを確認すると、焔が姿を消し、彼女の中へと戻っていく。

 

「それで、ルーミアさんは?」

「ルーミアはここからとても遠い場所にいるわ。しかも、点々と移動を繰り返してここから遠ざかろうとしているの。」

「えっ?」

 

近づくどころか遠ざかる?いったいどういう事なのだろうか。

 

「麗夢。貴女、ルーミアがどういう妖怪か覚えている?」

「確か人食い妖怪、ですよね?」

「そうよ。そして、ルーミアのいた場所に人骨が山を作っていたわ。」

 

ルーミアのいた場所に積み上げられた人骨。それは彼女が人間を喰らっていることを意味する。

 

「ぐ、偶然じゃないのですか?だってルーミアの捕食活動はカルマの力で封じられているはずじゃ。」

「今のカルマは休眠状態よ。もしかしたら、効果が切れたのかもしれないわ。」

「それはないわ。」

 

すると、他の女性の声が割り込んできた。襖が開き、姿を現したのは永琳だった。

 

「永琳さん?どうしたのですか?」

「カルマからの伝言よ。」

 

休眠状態のはずのカルマからの伝言。起きるにしては早すぎる。

 

「麗夢だったわよね?あの狐火の宿主。」

「はい、そうです。」

「その狐が私たちの所に来て、現状を教えてくれたわ。」

 

焔は紫がルーミアを探すため、神社を出て行った後、永遠亭に訪れていた。そして、カルマにどういうことか聞こうとしたらしい。本来なら安静にしておきたかったが、禁忌魔法について永琳が知っていることはほんの一部。一時的にカルマを起こすことにしたのだ。

 

「今はまた休眠させているわ。尤も無理に動こうとしたから、全身麻酔を使ったけどね。」

「そうだったのですか。焔、ありがとうございます。」

『私は私のやれることをしたまででいいやがります。』

「それで、伝言というのは?」

 

空いている場所に座ると、紫が永琳に話を促した。

 

「拒絶―今ルーミアに掛けている封だけど、あれは一度発動すれば、カルマが許可しない限り解けることはないわ。」

「なら、どうして捕食を繰り返しているのかしら?」

「カルマが言うには、本能が拒絶を上回ったらしいわ。」

「本能…?」

「えぇ、そうよ。」

 

ルーミアは元々が穢れの集合体。意志は『ルーミア』だが、彼女の操る闇は『穢れの集合体』なのだ。本来、彼女1人で抑え込めるものではない。そして長い間、捕食活動という本能を抑え込まれ続けた為、ついに我慢ができなくなったのだ。

 

「確かに、最近かなりの量を食べるようになったとは思っていましたが…。」

 

輝夜を救い出す前にルーミアはつまみ食いをし、麗夢に罰を受けていた。もしかしたら、すでに徴候は見られていたのかもしれない。

 

「…これ以上、犠牲者を出すわけにはいかないわ。ルーミアを倒しましょう。」

「た、倒すですって!?」

「場合によっては殺すわ。」

「なっ!?」

 

紫の言葉に麗夢は驚愕を露わにした。麗夢にとってルーミアは家族当然。そんな存在を倒す。場合によっては殺すと言っているのだ。

 

「そんなことできるわけないじゃないですか!」

「なら、どうしろというのかしら?指を咥えて人間が食べられている所をじっと見ていろというの?」

「そ、それは…。」

 

殺すよりも封印することもできる。しかし、麗夢にとってルーミアに危害を加えることが悩ましかった。普段弄り倒してはいるが、これとそれとでは話が別だ。

 

「…カルマがいれば、どうにかできたでしょうに。」

「今のカルマじゃ、禁忌魔法を1つ使うのにも苦労するわね。生贄って手もあるけど、彼がそれを許さないわ。」

『………。』

 

そんな中、麗夢の中にいる焔だけが、妙に静かだった。

 




最初の会話はいつか入れたかったやり取りですw
ほら、話が噛み合っていそうでいない奴w

西行妖の時の紫もそうだけど、麗夢も甘いですよねぇ。
そして、永琳の再登場w
てか、カルマに全身麻酔刺すって・・・(((゜Д゜;)))

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,9 闇と炎

・・・日常書きたい。
シリアスが多すぎだよ(´・ω・`)

喜べ、挿絵2枚だよ。
へへっ(遠い目

それでは、本編どうぞ。


翌朝、麗夢はいつもよりも重い身体を起こし、朝食をとると、身支度を整えた。ルーミアの場所を探そうと思ったが、先日、紫たちがルーミアのいたであろう場所を地図に指し示している。そこを重点的に探すべきだろうか。

 

「焔ー。出かけてきますねー。」

 

しかし、返事がしない。いつもなら、気怠げながらも返事をしてくれるはずなのだが。

 

「焔~?」

 

もう一度呼びかけても返事がしない。嫌な予感を感じ、神社内と周りを探してみても、彼の狐の姿が見当たらない。

 

「ルーミアさんに続いて、焔まで…。」

「おはよう、麗夢。どうしたのかしら?ふあぁ…。」

 

そこへ紫が欠伸をしながら現れた。彼女は寝起きのようで、髪が少し跳ねている。

 

「おはようございます、紫さん。突然すみませんが、焔を知りませんか?」

「焔?見てないわね。あの子がどうしたの?」

「朝から姿が見えないのですけど…。」

「そこら辺を散歩してるんじゃないかしら?」

「それならいいのですが…。」

 

 

 

博麗神社から数日は掛かる距離。そこに闇で包まれたドーム状の物があった。闇はとても大きく、村1つなら軽々と飲み込める程の大きさがある。

 

『やれやれ。世話が焼けやがりますね。』

 

その傍に一点だけ青白く明るい光が灯った。焔は溜息をすると、突如として炎が大きくなった。そのまま闇へとぶつかり、凄まじい音を響かせた。

 

『―くっ。そう簡単に開きやがりませんか…。』

 

大きな音の響かせたわりに、闇はびくともしない。それどころか、焔の攻撃に対し、反撃を開始し始めた。闇が触手となり、焔に襲い掛かる。

 

『残念ながら、こーいうのは効きやがりませんので。』

 

触手は焔を確実に捕えた。しかし、それは全てすり抜けていく。焔は狐火という妖怪に分類されるが、元々は幽霊と同じだ。物理的な攻撃は一切受け付けない。

 

『そーいうわけでいやがりますので、燃やさせていただきやがります。』

 

焔をすり抜ける触手に青い炎が引火した。すると、闇は苦しむようにのたうち回る。

 

『この時程、幽霊でよかったと思ったことはねーでいやがりますよ、ほんとーに。』

 

苦しみもがく闇が突如として霧散した。おそらく、炎から逃れるために行ったのだろうが、焔はそれを許さず、粒子と化した闇すらも焼き切ってしまった。

 

「誰かと思えば、アンタか…。」

 

闇が割れ、中から女性の声が聞こえてきた。しかし、彼女の姿は焔の知る姿を形が変わっていた。

 

『…見ない間に随分と様変わりしやがりましたね。』

「まぁね。おかげで自我を保つのがやっとよ。」

 

今のルーミアの姿はカルマのキマイラと酷似しているものだった。

 

【挿絵表示】

 

『麗夢が心配していやがります。早く帰りやがりましょう。』

「あのねぇ。この状態で帰れると思うわけ?それにこれを見てもまだそういうこと言える?」

 

今の状態で帰れば、必ず麗夢に襲い掛かる。それに加え、ルーミアは闇の中を焔に見せた。

 

『……。』

 

そこには地面を埋め尽くした人骨が転がっていた。それも積み上げられ、大きな山を作るのではないかと思わせる程の量だ。

 

「これだけの人間を食べても、まだ満たされないの。ねぇ、焔。私はあとどれだけ食べればいいのかしら?」

『あの魔神に言えば―』

「無理よ。今のカルマがどういう状態なのかは知らないけど、魔力がもう底を尽きようとしているのは確かだった。そして、私の中にいる穢れがカルマの拒絶を破った。破ってしまう程の力を蓄えてしまった。」

 

カルマが魔力回復のために節約している間も、ルーミアの穢れたちはなんとか拒絶を解こうと力を貯め込みながら、少しずつ拒絶を削っていた。

 

「今のカルマが全盛期の頃の物なら、私を倒すのも容易だとも思えるけどね。」

『今の魔神は魔力が無くなったそーで、安静にしてもらっていやがります。』

「やっぱり…。私をもう止められる者はいないのね。…それで、アンタはここに何をしに来たの?まさか、私を止めに来たとか言わないわよね?」

『そのとーりでいやがりますよ。』

 

焔の言葉に呆れるが、すぐに睨み付ける。

 

「言ったはずよ?私を止められる者はいない、と。」

『やってみねーと分かりやがりませんよ。』

 

すると、焔の身体を構成する炎が膨張し始めた。あまりの熱量にルーミアは闇で身体を庇う。そして、一気に膨らむと突然爆ぜた。

 

『…麗夢には悪いことをしやがりましたね。』

 

【挿絵表示】

 

姿を現したのは幼少の頃の麗夢を模った焔だった。本来の善狐なら人間へと姿を変えることは出来ない。できるのは天狐と悪に飲まれた妖怪狐のみだ。例外として尾の数が多い者も変化できる。尾が1本で善狐である焔が、ここまで力を出すことができるのは麗夢の力もあるためだ。焔はここへ来る前に寝ている麗夢から無断で力をもらっている。故に麗夢は朝起きた時、身体が重く、紫とほぼ同時刻に起きたのだ。

 

「面白いことするわね、アンタも。」

『褒められても嬉しくねーでやがります。』

 

お互いがにらみ合う中、2人は同時に手を翳した。ルーミアの背後にあった闇が蠢き、焔に襲い掛かる。対し、焔の手から劫火とも思える炎が吐き出された。2つの力はぶつかり合い、大きな衝撃波を生み出した。

 




今回は珍しく焔視点です。
この子はあまり表に出ないですからね。

ぶっちゃけ戦闘回は苦手です。
妄想もとい想像はできるんだけどね。
これを文章にするとなると・・・(´Д`)ハァ…
あれ?これ前にも同じこと言った気がする(´・ω・`)
あぁ、日常もの書きたい・・・。

挿絵らしくないのはご愛嬌ですたい。
元々はイメージ図のつもりだったので。
ところで、焔がなんか色合い的に気持ち悪ぃ・・・(゜д゜)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,10 飲み込む闇と焼切る青き焔

劇場霊・・・。
面白そうですねっ!(*´∀`*)
青鬼と零も見たいなぁ。

それでは、本編どうぞ。


衝撃波により、辺りを土煙が覆い尽くす。先に動いたのはルーミアだった。焔の朧気ながらも見える灯りを頼りに闇が襲い掛かる。

 

「……。」

 

だが、相手は幽体。いくら貫いても手応えがない。

 

『無駄でいやがります。』

 

土煙を炎で吹き飛ばすと、焔は闇の触手を焼き切っていく。

 

「やっぱり物理的な攻撃は効かないのね。」

 

客観的に考えれば、不利なのはルーミアだろう。しかし、実際に不利なのは焔の方だった。麗夢から力をもらったとは言え、焔の持つ妖力には限界がある。対し、ルーミアの背後には大きな闇が蠢いている。ほぼ無尽蔵とも言える妖力だ。

 

『食べる量だけでなく、妖力も底なしでいやがるよーですね。』

 

焔とて、無駄に妖力を使うつもりはない。直接ルーミアを攻撃しようと、火だるまとなり、ルーミアに向けて駈け出した。地面から突き出した闇が彼女の動きを止めようとするが、それすら掻い潜っていく。

 

「そうはさせないわ。」

 

2人の間に闇の壁が現れた。突然の事に止まることができなかった焔は壁にぶつかり、爆発した。壁はびくともせず、そのまま覆いかぶさるように形を変えていく。

 

『―くっ。』

 

直ぐに飛び退き、後方へと逃げるようとするが、背中に衝撃をうけてしまった。地面から生えた闇が壁を作り、こちらも覆いかぶさるように形を変えてきていたのだ。

 

「何も人間だけ喰らうこともないわ。妖力を喰らうこともできるもの。」

 

物理攻撃が効かないなら、彼女の源である妖力を喰らってしまえばいい。焔を包みこんだ闇だが、手応えがない。すると、地面が割れ、溶岩のように炎が噴き出した。反射的に顔を逸らすことで直撃を避けたが、髪が少し燃えてしまっていた。

 

『中々上手く行きやがりませんか。』

「狐が土竜の真似事するんじゃないわよ!」

 

振り上げた掌を闇で覆い炎を斬り裂く。焔の姿が揺らいだが、彼女も負けじと両手を突き出し、炎を放出する。至近距離での攻撃にルーミアは苦悶の表情を浮かべる。このまま行けば勝てると思えたが、そう簡単に行くはずない。

 

『―っ!?』

 

彼女の大きな左腕が闇に覆われると更に大きな巨腕へと変わった。巨腕は焔を掴むと、そのまま投げ飛ばした。あまりの勢いに体勢を整えることができずに地面に叩きつけられてしまった。しかし、実体を持っているわけではないため、一度炎が潰れると、そのまま人型へと形が戻っていく。

 

「……うぐうぅ。」

 

しかし、苦しんでいるのは焔ではなく、ルーミアの方だった。別に焔が何かをしたわけでない。精々、妖力を少し喰われた程度だった。彼女は左腕を押さえていた。少しすると、闇は引っ込み、元に戻っていた。

 

「ふぅ…ふぅ…。」

『なるほど。大体わかりやがりました。』

「…見苦しい所を見せたわね。」

『その姿でよくいいやがりますよ。』

 

姿は変わっているとはいえ、意識がはっきりしているのは彼女なりの抵抗だった。だが、今のように、穢れが飛び出すこともある。

 

「本当はアンタとも戦いたくはないんだけど。そうはいかないのよ。」

『今さっき戦ったばかりでいやがりますよ。』

「『私たち』が私の意識を狩り取ろうとしてるの。戦って一瞬でも気が薄れた瞬間を狙ってね。」

『なら、今までのは…。』

「えぇ。私の意識に介入した『私たち』がやったこと。」

 

ルーミアの意識がはっきりしていたのは、焔が姿を変える時までだ。それ以降は防衛本能のように、朧気ながらもやっていたことだった。

 

「焔。私を殺そうとしては駄目だからね。」

『どーいうことでいやがりますか?』

「私を殺せば、『私たち』が私の身体を乗っ取るわ。だからと言って、このままでも飲み込まれるのは確実。」

 

つまり、殺す以外の方法でルーミアを御さなければならない。

 

『封印することも可能ではいやがりますが、麗夢はしたくないでいやがるようです。』

「そう…。でも、したくないということは、できるということでもあるわ。今すぐ戻って手を考えなさい。」

『わかりやがりました。そー伝えることにしやがります。』

 

すると、焔の姿を炎が包み込み、元の狐に戻るとその場から掻き消えてしまった。残されたルーミアは緊張を解き、その場に座り込む。

 

「あーあ。こんな時、カルマがいてくれたらどれだけ楽だったか…。そう思わない、玉藻?」

「今は八雲藍だ。」

 

木々の影から藍が姿を現した。

 

「ずっと見張ってたんでしょ?意地汚いわね。」

「紫様からは手出し無用と申し付けられているからな。」

 

藍は焔の行方をずっと見ていた。紫も焔の行動に気付いており、すぐに藍を向かわせたのだ。

 

「そっちはどうなってる?」

「カルマ様は動けないのは確かだ。それと封印だが、今の妖力を削り、許容範囲まで無くせばできるだろう。」

「…結局戦うことになりそうね。」

 

意識を保っていようとなかろうと、戦うことにはなるだろう。今この時この瞬間、穢れはルーミアを飲み込もうとしているのだから。

 

「…ルーミア。前に聞いたな。愛とはどういったものなのか、と。」

「そうね。そういえば、聞いたわね。」

「今ならわかるんじゃないか?」

「…えぇ。痛い程わかるわ。全く、突拍子もなく生まれる物ね。」

 

ルーミアが神社から遠ざかる理由。麗夢や彼女の縁者を喰らわないため。何故喰らおうとしないのか。いつからだろうか。大切な存在と思えるようになったのは。

 

「藍、早くここから退きなさい。もう保ちそうにないわ。」

「…わかった。最善を尽くそう。」

 

スキマが開き、藍はその中へと消える。それを確認すると、安心したかのように、彼女は寝転んだ。

 

「…あとは頼んだわよ。」

 

闇が徐々に広がり、ルーミアを飲み込もうと蠢き出した。彼女は底なし沼に沈んでいくように、少しずつ闇に沈んでいく。そして、彼女の姿が完全に消えると、闇は形を変え始めた。村1つは覆う程あった闇が彼女の沈んでいった闇に飛び込んでいく。全てそこに収まると、凝縮し始め、人ひとり入る程の大きさの黒い繭が出来上がった。

 

【挿絵表示】

 




焔の口調、超めんどくせぇ(゜∀。)
まぁ、設定したのは自分だから仕方ないけどw

西行妖編もそうだけど、私泣ける悲劇系はかなり好きです。
なので、そういう展開多いですからね。
因みにこのあとも2・3個あります(`・ω・´)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,11 災禍

遅れてごみんね(´・ω・`)
EXルーミア暴走体を描こうとしてたんだけど、描けなくて・・・。
イメージは出来てるんだけども・・・。
まぁ、あの三次創作と同じと思ってくだちぃ(m´・ω・`)m

それでは、本編どうぞ。


「それで焔。何か言うことはありますか?」

 

現在、居間では麗夢と焔がいた。ルーミアとの戦闘後、無事に帰ることができた焔だったが、黙って抜け出したことに怒っている麗夢と出くわしてしまっていた。遅かれ早かれこうなることはわかっていた焔はそのまま彼女に説教されていた。

 

「藍、ルーミアはどうだった?」

 

そんな2人を横に紫は藍に問いかける。

 

「手遅れのようです。今は闇が繭のような形状になっているため、動きはありません。」

「わかったわ。ありがとう。」

 

繭が孵った時、ルーミアの意思は既に考えた方が良いかもしれない。出来れば繭の孵る前に始末をつけておきたい・・・。

 

「麗夢。焔の尻尾を弄るのやめて、こっち来なさい。」

「あ、はい。」

 

麗夢は紫に呼ばれ、ピクピクしている焔を置き、彼女に対面する形で腰掛けた。

 

「もう時間の猶予はないわ。さっきの焔の報告から、ルーミアはもう自我がないと考えた方がいい。悩んでいる暇はないわよ。」

「・・・・・・。」

 

彼女の言葉に麗夢の顔に影が刺した。麗夢の気持ちも分かる。だが、感情論でどうにかできるほど、現実は甘くない。

 

「…分かりました。術式を作り直すので、少し待ってください。」

「作り直す?今までのものでいいわ。時間もないのよ?」

「構いません。今のカルマができないなら、私がやります。」

 

今のカルマのできない事。それは1つしかない。

 

「まさか、禁忌に触れようと考えているのかしら?させると思う?」

「触れませんよ。カルマがルーミアさんにしようとしていたことをするだけです。それにこれは紫さんにとっても利に叶っていると思います。」

 

彼女は今から作る封印の術式の内容を説明した。それは確かに紫にとってメリットになるが、危険もその分大きいものだった。

 

「でも、やる価値はあるわね…。わかったわ。式は貴女に任せるわ、麗夢。」

「ありがとうございます。では、すぐに―」

「えぇ。取り掛かって頂戴。」

 

麗夢は焔を内に戻すと、新しい術式を作るために部屋を出て行った。

 

「私たちも準備しないといけないわね。藍、行くわよ。」

「はい、紫様。」

 

 

 

翌日、麗夢の術式はなんとか完成した。

 

「準備はいいかしら?」

「はい。問題ありません。」

「・・・行くわよ。」

 

スキマが開き、その中を進んでいく。

 

「――ッ。」

 

通された場所の惨状に麗夢は息を飲んだ。そこかしこに転がっている人骨の数々。それは彼女の予想を遥かに超えたものだった。そして積み上げられた人骨の頂きにそれはあった。

 

「あれがルーミアさん、ですか。」

「えぇ、そうよ。あの中にルーミアがいるわ。」

 

少し離れてはいるものの、その存在が異質であることは素人でもわかるかも知れない。繭が胎動し、その振動が空間を震わせていた。

 

―ミシッ―

 

繭が軋み始めた。一層胎動が大きく早くなり、所々に亀裂が生まれていく。

 

「・・・手遅れだったようですね。」

「構えなさい、麗夢。こうなった以上、戦うしかないわ。」

「分かっています。焔。」

 

麗夢は両手両足に炎を纏うと尾と獣の耳が現れた。炎が激しさを増していく。

 

『いつでも行けやがります。』

 

眉が裂け、そこから禍々しい妖気が血のように吹き出した。

 

「AAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

中から現れたのは先に焔が会っていたルーミアとは程遠い姿だった。人の姿形に酷似はしているが、闇がその体に粘液のように纏わりついている。

 

「Aaaa・・・。」

 

最早人語すら喋れなくなっているようだ。もう既に『ルーミア』の意思はないと思っていいだろう。

 

「・・・行きますよ、焔。“刹月火”!」

 

麗夢の周りに歪んだ空間がいくつも現れた。それと同時に、ルーミアだった物―穢れの周囲にもいくつかの穴が開かれる。そして、炎が吸い込まれるように麗夢の開けた穴を通り、穢れへと襲いかかった。

 

『手応えはありやがりますが・・・。』

「効いていないようですね。」

 

爆炎の煙の隙間から見えるのは無傷の穢れだった。今の攻撃でこちらを注目したのは確実。ここからが戦いとなる。

 

「“刀忠火葬”。」

 

両手に纏っていた炎が膨れ上がり、1mほどの手刀へと姿を変えた。姿勢を低くし、駆け出した。足にある炎が彼女の走る速度を上げていく。そして、振り上げられた炎は穢れに直撃―しなかった。

 

「ガフッ!?」

 

目にも止まらぬ速度で麗夢の目の前に現れた穢れは彼女を殴り飛ばしたのだ。何かしらの行動はしてくるとは思っていたが、対処が出来なかった。力任せに振り抜かれた麗夢はそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「麗夢ッ!」

 

紫はすぐにスキマを開き、彼女を受け止めようとしたが、威力を殺すことができず、二人もろとも飛ばされてしまう。

 

「かっはぁ・・・はぁ・・・。すみません、紫、さん。」

「こっちは、そんなに問題ないわ。それより、貴女はどう、なの?今ので、骨は数本やられたと思うけど・・・。」

 

麗夢は普段から鍛えているわけではない華奢な身体をしている。今の攻撃で数メートルは飛ばされれば、かなりの重症に違いない。

 

「確かに、数本逝ってるみたいですね・・・。幸い肺には刺さってないみたいですけど。」

『麗夢。これは最初から本気の方がいーでいやがります。』

「そうみたいです、ね。」

 

激痛に耐えながら、立ち上がる。ふらつく身体を紫が支えた。

 

「永琳にもらった回復薬よ。即効性だからよく効くはずだわ。」

「ありがとうございます。」

 

紫からもらった小瓶の中を飲み干す。かなりの苦味に苦悶の表情を浮かべるが、一気に流し込んだ。効果はすぐに現れ、痛みが和らいでいく。

 

「ふぅ・・・。では、焔。行きましょうか。」

「わかりやがりました。」

 

深呼吸を1回置くと青い炎が麗夢から吹き出し始めた。焔が人化した時に現れた現象に似ている。

 

「『夢蒼天成!』」

 

炎が爆ぜるとそこにはいつもの麗夢がいた。しかし、いつもと様子が違うのは一目瞭然だろう。尾が炎の尾が9本になり、髪は伸び、白髪へと変わっていた。

 

「カルマには到底及ばないでしょうが、ここからは本気で行きやがるとしましょうか。」

 




獣娘って尻尾弄られるとこんな感じだよね?
あれですw(/ω\*)

今回登場した麗夢の技。
実は“東方霙無双”で使うつもりだったものです。
まぁ、霙無双はお箱入りになりましたので(´・ω・`)
そんなわけで説明~。

“刹月火”―読みは「せつげつか」。空間同士を繋げ、いくつもの開いた空間に向けて炎を撃ち込み、相手を攻撃する技。
“刀忠火葬”―読みは「とうちゅうかそう」。両手を炎の剣を携える技。簡単に言えば、両手にレーヴァテイン?w
“夢蒼天成”については次回にします。
これについては色々考えましたのでw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,12 夢蒼天成

最近、マツタケ様の住居に突貫したい今日この頃。
いざ出陣!エイエイオー!
住所わからないから意味ないけどw

それでは、本編どうぞ。



“夢蒼天成”。これは麗夢が焔を取り込んで以降に作り出された技の中で最も強い技だ。それを発動した以上、意地でも負けるつもりはない。

 

「覚悟しやがってください、ルーミアさん。私たちはもー手を抜きやがりません。」

 

タンッと軽く地面を蹴る。それだけで空気を斬り裂く程の速度に到達した。そのまま炎で殴りつける。穢れはそれを闇で防いだ。

 

「爆!」

 

瞬間、炎が爆発した。その衝撃で穢れがほんの少しだけ、後方に下がった。

 

「まだまだ行きます!」

 

それを見逃さずに更に畳みかけていく。

 

「aaaaAAAAAAAaa。GaAAAaaaaaaAAAAAAaaa!」

 

流石に何回も高威力の爆発を起こされては、ひとたまりもない。穢れが吠え、左右から闇を挟み込むように攻撃をしてきた。

 

「やらせません!」

 

その攻撃を炎の尾によって防いだ。だが、思った以上の怪力に、すぐさま飛び退いた。すると、闇の盾が槍へと姿を変え、追撃を仕掛けてきた。

 

「開きなさい。」

 

その追撃は麗夢に当たることはなかった。彼女の目の前に開かれたスキマの中へと消えて行く。そして、新しいスキマを穢れに向けて開き、槍の攻撃を返した。その攻撃は穢れに当たる前に身体へと溶けて行ったため、ダメージといえるものはなかった。

 

「助かりました、紫さん。」

 

麗夢は空中で身体を翻し、紫の隣に着地した。

 

「大抵の攻撃は私が無効化できるけど、あの娘の力を削ぐのは難しそうね。」

「そーみたいでいやがりますね。まぁ、ただで負けるつもりはありませんが。」

 

2人はその場から横に飛んだ。瞬間、2人のいた場所に闇が突き刺さる。

 

「……Aaaa。」

「随分な構ってちゃんでいやがりますね。そんなに急かさないでください。」

 

麗夢の纏う炎の勢いが増し、穢れに向かって突っ込んでいく。それを迎え撃とうと、闇が蠢きだした。2つの力が衝突し、爆発と衝撃波が辺りを吹き飛ばす。

 

「咢!」

 

纏っていた炎が狐の顔へと姿を変えた。そして、穢れを噛み砕こうと襲い掛かる。闇が動き、炎の牙を受け止めた。

 

「そのまま動かねーでくださいねっ!」

 

狐の口の中にいる麗夢が両手を翳し、そのまま炎を放出する。この熱線に晒されれば、流石の穢れも後退するだろうと思われた。

 

「GUUuuRrrraaAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

しかし、その熱線を闇が押し返し始めた。更に拮抗して横に逃げた闇が麗夢を回り込むように動いたのだ。

 

「くっ、爆!」

 

【挿絵表示】

 

足元を爆発させることで上へと飛び、その攻撃を回避する。そのまま縦に回転し、火だるまとなって、穢れへと襲い掛かった。それ幸いと、闇が大きな口の形となり、彼女を飲み込もうとする。

 

「紫さん!」

 

闇に取り込まれる寸前に隙間が麗夢の前に現れた。重力により、彼女はそのままスキマの中へと飛び込む。そして、がら空きとなっている真横に隙間が開き、そこから飛び出して穢れと衝突した。

 

「爆!」

 

更に爆発を加え、穢れへダメージを与える。衝撃で穢れが吹き飛ばされる。まともな受け身も出来ずに地面を転がるが、ゆっくりと起き上がった。外見では分かりにくいが、今のでそれなりに削ったはず。

 

「…Kaarrrurururuuuuuu。」

 

闇が集束し、巨大な腕へと変わった。その腕が麗夢を捕まえようと襲い掛かる。

 

「変動!」

 

すると、穢れのいる地形が突然うねりだした。突然のことに穢れのバランスが崩れてしまう。そのため、彼女の襲い掛かろうとした腕も検討違いの方向へと軌道がズレてしまった。

 

「羅切。」

 

すぐ横を通り過ぎた闇に手刀と落とす。すると、腕が捻じ切れてしまった。切り取られた闇を灰も残さず焼き切る。

 

「Aa、Aaaaaaaa、Luraaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

捻じ切られた事に対する痛みか怒りかわからないが、穢れは吠えると、更に巨腕を伸ばしてきた。

 

「同じことは―。」

「退きなさい、麗夢!」

 

いつの間に地面を潜っていたのか、巨腕に気を取られた瞬間、地面から闇が飛び出してきた。紫が注意していなければ、今の闇に飲まれていたかもれない。地面から溢れ出た闇と巨腕が飛び退いた麗夢を追いかける。

 

「歪め!」

 

空間を歪めることで逃げ道を確保し、麗夢はそこに飛び込んだ。しかし、闇は穴の中まで追いかけようと、中に入ろうとする。

 

「“百火猟乱”!」

 

今出てきた穴に向け、熱線を放出する。

 

「きゃあ!?」

 

目の前で起きた爆発の衝撃に麗夢の体勢が崩れてしまう。その隙を逃すことなく、闇が彼女に伸び始めた。ただし、その攻撃は空を切ることになった。

 

「しっかりしなさい、麗夢。」

「は、はい。すみません。」

 

すぐに開かれたスキマのおかげで、助かることができた。どうやら体力切れのようだ。肩で息を切らせていると、“夢蒼天成”が解け、いつもの麗夢に戻ってしまった。

 

「まずいわね。あまり削れていないわ。」

「クハハ!なら、妾も混ぜてもらおうかのっ!」

 

独特な笑い声と共に、地面を砕くほどの衝撃が辺りに襲いかかった。

 




前書きでなんであんなことを書いたのかというとですねw
PSO2をゲーム越しでなく、実際に一緒にやってみたいなって思っただけなのw

待たせたな!(某蛇風
技紹介だじぇ。
“爆”―爆発。それ以外になんて言えばいいの?
“咢”―炎で狐の頭を作り出し、攻撃する。
“変動”―地形を歪ませ、歪な地形へと変える。
“羅切”―物を歪ませ、捩じ切る。
“百火猟乱”―1つの歪んだ空間に濃密な炎を放射する。“刹月火”の一点集中バージョン。威力は上だが、燃費が悪い。

“夢蒼天成”―麗夢と焔の完全融合形態。蒼天とは天にいる神のこと、天成は生まれつきのこと、夢はその夢を実現させたことを意味する。この場合、天にいる神は狐の最上位である天狐となる。ただし、天狐は四尾であるため、九尾であるこの状態は天狐以上の存在となる。蒼は焔を示す。神降ろしと基盤は同じのため、依姫と同等位の力を持つ。加え、焔と麗夢の意思があるため、死角をつくのはほとんど不可能。

ラストであの人の登場。
べ、別に忘れてたわけじゃないんだからね!

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,13 闖入者

おふとんからでたくありません(:[____]
でも、げんじつがそうさせてくれません。
もぞもぞ・・・。

それでは、本編どうぞ。


土煙が舞い、視界が悪くなる。そんな中でも攻防の音が聞こえてきた。

 

「今の声って…。」

 

土煙の中から飛び出した影は身軽に2人の前に着地した。

 

「朱姫。なんで貴女がここにいるのよ。」

 

そこにいたのは鬼子母神の朱姫だった。普段の彼女なら天狗が縄張りとする山にいるはずだ。

 

「クハハ。何、懐かしい気配を感じてのぉ。ちぃと様子を見に来たんじゃ。」

 

朱姫もカルマ程ではないが、穢れと関係している。そして、ルーミア以上に濃度が濃い気配が数億年もの昔を思い出させ、不審に思い駆けつけたのだ。

 

「しかし、あれはなんじゃ?」

「見ての通り、穢れよ。」

「穢れは既に絶ったはずじゃ。居てもルーミアとやらじゃろう?」

「そう、あれが元ルーミアよ。」

「ほぉ…。」

 

煙が晴れ、穢れはこちらの様子を見るように動いていなかった。

 

「随分と変わったものじゃな。」

「まったくよ。それで、朱姫。手を貸してくれるかしら?」

「ふむ…。」

 

ここで朱姫が手を貸しても利益はない。だからと言って不利益もない。それに“今の鬼の立場”を考えても、同じことだった。

 

「朱姫様。」

「…なんじゃ、狐付きの小娘。」

 

手を貸してくれそうにない朱姫に見かねた麗夢が割って入った。

 

「魔神カルマについて知りたくないですか?」

「…ほぉ。」

 

彼女の言葉は朱姫の気を引くに十分な物だったようだ。少なからず、カルマと朱姫の関係を紫から聞いたことがあった。基本的に山から出ない朱姫は神社にカルマがいたことを知らない。そこに付け込んだのだ。

 

「手を貸してくれたら、彼のことを教えると約束しましょう。」

 

更に約束するというキーワードを持ち込んだ。鬼は特性上、約束を必ず守ることに拘る。そこを突いたのだ。

 

「クハハ!いいだろう、手を貸してやろう!小娘、約束は必ず果たしてもらうぞ!」

「えぇ、勿論。」

『…悪女がいやがります。』

 

焔の溜息をスルーすると、麗夢は再び“夢蒼天成”を発動するため、力を蓄え始めた。この間の彼女は完全に無防備になってしまう。

 

「では、行くとするかの。」

 

朱姫は限界まで膝を曲げると、バネのように穢れへと飛び出した。

 

「AaaAagYuuuaaaAaaaaaaAAAAAAAAAAAAAA!」

「クハハハハ!」

 

穢れの巨腕が迫りくる。彼女はそれを何の躊躇もなく殴った。すると、巨腕が拉げてしまう。そこで縦に回り、踵を落とした。踵落としを受けた巨腕は水のように弾けてしまった。

 

「おっと。」

 

朱姫は巨腕を足場にしようと思っていたため、バランスを崩してしまう。その隙を狙って、闇の弾丸が襲い掛かった。

 

「クハ、クハハハハハ!!」

 

前のめりになってしまった朱姫だが、飛び出した時の勢いはまだ消えていない。手を地面に付いて、上へ飛び上がり、弾丸を避ける。

 

「温いぞ、穢れ!もっと楽しませろ!」

 

空へと逃げた朱姫に闇の槍が襲い掛かる。それを軽やかに躱すと、それを足場に下へと駈け出した。何か攻撃を仕掛けようとしていると判断した穢れは彼女の進行方向に壁を作る。

 

「クハハ!薄い、薄いぞ!」

 

しかし、それも1回の拳で粉砕させられてしまった。そのまま穢れに拳を叩きこむ。

 

「AaaAaa…。」

「クハハッ。」

 

怯んだ穢れの頭を掴み、追い打ちで勢いよく膝蹴りを叩きこんだ。更に衝撃で浮いたところに回し蹴りを叩きこみ、蹴り飛ばす。地面を何回か跳ね、岩に凹みを作ってやっと止まった。

 

「なんじゃ、手応えもないのぉ。鎌使いなら今の流れで反撃できたであろうに。…うん?」

 

微かに聞こえた不快な音。それは粘液質な液体が泡立つ音だった。音の発生源は蹴り飛ばされた穢れだった。泡立ちは大きくなると、2つに分裂する。

 

「分裂しよるか。…面白い。」

 

分裂した穢れは二手に別れ、朱姫を挟み込もうとした。両側からの挟み撃ち。受け止めることもできるが、躱しても前後が上だ。

 

「…右から潰すかの。」

 

朱姫は右に飛び出し、そちらにいた穢れへと襲い掛かる。だが、それは叶わなかった。飛び出すと同時に、遮るように闇の壁が地面から現れただめだ。

 

「うおっ!?」

 

いきなりのことに踏ん張るが、飛び出すことに力を入れすぎたために止まることはできない。そのままぶつかりそうになった時、目の前の空間が裂けた。

 

「おっと。」

 

そのまま中に入ってしまったが、出てきた場所が紫の隣だった。

 

「猪突猛進するとはよしなさい。穢れとは言え、あっちは集合体。何してくるかわからないのだから。」

「すまぬな。しかし面倒じゃ。弱いには弱いが、耐えるしのぉ。」

「もっと力を削がないと、封印できないわ。」

「やれやれ。骨が折れるのぉ…。」

 

分裂した穢れが1つの塊へと戻っていく。まだ封印できる範囲まで力を削り切っていないのは明らかだ。

 

「仕方ないですね。このまま封印へと移行しやがります。」

 

夢蒼天成状態となった麗夢が袖から1枚の赤い布を取り出した。

 

「出来るのかしら?」

「最初よりは力を削いでいますが、難しいでしょー。紫さんの力で抑え込みやがってください。」

 

境界を操れば、穢れを押し込むことも可能。だが、これだけの力を抑え込むことはできるのだろうか。

 

「クハハッ。中々面白いことを考えるのぉ、小娘。良いぞ、力を貸してやる。」

「まぁ、やってみないことには始まらないわ。やってみましょう。」

「お願いします。」

 




戦闘描写が雑でごめんなさい。
わかりにくくてごめんなさい。
だが、後悔はしない(`・ω・´)

麗夢が腹黒へとレベルアップ。
もう抑えられないw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,14 無相封印

喜べ、ロリコンホイホイだぞっ!
まったく・・・。
小学生は最高だぜ。
いや、私はロリコンじゃないからね( ̄▽ ̄;)

それでは、本編どうぞ。


「…行くぞ。」

 

3人は早急に打ち合わせを済ませると、朱姫が穢れに向けて飛び出した。

 

「KaAAAaaaaaaAa!!」

 

対し、穢れは迎え撃とうと、闇の弾丸を放つ。朱姫は拳でそれを逸らしながら、穢れへと接近していく。もう少しで距離が零になろうとした時、朱姫は拳を振り上げた。

 

「…今じゃ!」

 

拳が当たる瞬間、2人を覆う境界を隔てた結界が生まれた。それだけでは足りないとばかりに、6面と8つの点を更に結界で覆い、更にそれと同じ結界を上から重ね掛けする。

 

「これなら大丈夫のはず…。」

 

朱姫が放った拳を振り抜き、穢れを殴り飛ばす。だが、結界に阻まれ、外まで飛ばされることはない。

 

「―グゥッ」

 

朱姫の拳の威力が想像以上の物だったため、結界が軋み、紫に苦悶の表情が生まれた。今から結界を追加しようにも、少しでも気を緩めれば、結界が壊れてしまう。

 

「歪みやがってください!」

 

それを察し、麗夢は彼女の張った結界に空間の歪みで生み出した結界を重ねる。

 

「ありがとう、麗夢。」

「どーいたしまして。」

 

突然現れた結界を穢れは破壊しようと、闇を爆発させようとする。しかし、それをさせまいと朱姫が襲い掛かる。

 

「クハハッ!どうした、今までの威勢は!!」

「―OoAaaaaAaaA」

 

狭められ制限された空間で穢れは上手く動けないようだ。朱姫の猛攻で消耗してきている。

 

「…そろそろね。朱姫!」

「よし来た!」

 

紫の呼びかけに彼女は穢れの腹を蹴り込んだ。くの字に曲がった穢れはそのまま結界に衝突する。

 

「捕まえたわ!」

「AaAaaaaaaAAA!!GaAAAAaAAAAAAAAAAAA!!」

 

穢れの手腕を境界の狭間に挟み込み、動きを封じた。闇を爆発させ逃れようにも、狭間へと消えて行ってしまうため、脱出することはできない。

 

「朱姫様、後は私がやります。」

 

麗夢は歪めた穴を潜り、朱姫の隣に現れた。

 

「何じゃ、もう終いか。つまらぬのぉ。」

 

ぶつぶつ言いながらも、麗夢の出てきた穴から結界の外へと出ていく朱姫。

 

「さて、始めやがりましょうか。」

 

懐から取り出した赤い布。それを穢れの身体に当てる。

 

「…無相封印。」

 

布に込められた術式が発動する。赤い光が発光し、闇を削ぎ落していく。光により穢れが浄化され消えて行く。

 

「…まったく、よくやってくれたわね。」

 

幾つかの穢れが落ちてきた時、ルーミアの姿が現れた。しかし、その姿には闇が離れまいとこびりついていた。

 

「お疲れ様です、ルーミアさん。」

「そうね。自分の意思で身体を動かしたわけじゃないから、色々疲れたわよ。」

「あれだけ動かされれば疲れるのは当たり前でいやがります。」

「―てか、その姿なんなの?焔も混ざってるみたいけど。」

 

この状態を彼女が見たのはこれが初めてだ。見てわからないのは当たり前だろう。

 

「説明してあげたいのは山々なのでいやがりますが、時間がないので。」

 

封印は発動している。布から伸びた術式が刺青のようにルーミアの身体に刻み込まれていく。

 

「ふーん。ま、いいけど。」

「この後ですが、ルーミアさんは1からやり直すことになりやがります。」

「何それ?」

「後のお楽しみです。」

「…いや、ほんと何それ?少しくらい教えなさいよ。」

 

彼女の問いに麗夢はただ微笑むのみ。ただし、その笑みは慈愛に満ちていた。そして、全身に回った術式が強く光り出す。

 

「ルーミアさん。貴女はこれで自由でいやがります。この世界で生きやがってください。」

「そ、そーなのかー…。」

 

麗夢は一礼すると、歪めていた穴から外に出る。赤い光は結界の外まで届いていた。そして、封印が終わり、結界を解く。

 

「…これは。」

「貴女も変なことするわねぇ、麗夢。」

 

そこには今までのルーミアを子供にしたような娘がいた。頭には封印で使われた赤い布が縛られている。

 

【挿絵表示】

 

「大変だったのですよ、この術式を作り上げるの。」

「いやはや、確かにこれは1からやり直すことになるのぉ。」

 

幼児化させられたルーミアは状況が掴めていないようで、不思議そうにこちらを見つめてくる。

 

「子供ならさっきのよーな戦いはしやがらないと思いましたからね。まぁ、本質は残念ながら変えられませんでしたが。」

 

つまりは今まで通り、ルーミアは人食い妖怪となる。

 

「そこは私がどうにかしましょう。」

 

しかし、ここには境界を操る八雲紫がいる。

 

「私が存在概念の境界を弄って、あまり襲わないようにするわ。」

「えぇ、あとはお任せしやがります。流石に疲れました。」

 

夢蒼天成を解くと、軽く首を回し溜息を吐いた。焔も大きな欠伸をすると、麗夢の中へと溶け込んでいく。

 

「疲れている所悪いがのぉ。約束、忘れてないだろうなぁ。」

「…えぇ、覚えていますよ。帰りながら説明します。」

 

麗夢と朱姫が2人を残し、神社へと帰っていく。

 

「さて、と。ほったらかしにしてごめんなさいね。」

「…わはー?」

 

第一声に少し笑いたくなる。今までが今までだったためだろうか。可愛らしく思えてくる。

 

「はじめまして、私は八雲紫よ。」

「…そーなのかー?」

「ふふ、…ごめんなさいね。そして、貴女の名前はルーミアよ。」

「…るーみゃ?」

 

子供を持ったらこんな気分なのだろうか、と心の中で密かに笑みを浮かべる紫。

 

「さて、貴女はこれで自由よ。好きなように生きなさい。」

「そーなのかー。」

 

去り際にルーミアの境界を弄ることを忘れない。そして、紫はスキマの中へと消えて行った。

 

 

 

「…取り越し苦労だったか。」

「…そーなのかー?」

 




やっと封印終わったぁ・・・orz
意外と長かったなぁ。
いや、書いてるの私だけどw

ほら、幼児退行ルーミアだぞ。
喜べよ。(投げやり
「カルマを子供にして、私を姉として育てたら、どうなるのでしょうね。」
「やめれ。」
カルマには姉のような存在が既にいるけどねw

はい、技紹介~
無相封印 ― 麗夢が作り上げたルーミア専用封印術。穢れを削ぎ落とし、浄化させた後に封印が発動する。尚、浄化できる量と封印できる容量は限られているので、今回できたのは奇跡に近い。

次回でこの章終わりだぁ。
次章がこの物語の重要なところだぜ(= ̄▽ ̄=)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,15 闇晴れ

・・・ふぅ、やりきったぜ(`・ω・´)
今回がこの章のエピローグです。
珍しくギャグ突っ込んだぜ、どやぁ

それでは、本編どうぞ。


永遠亭の1室。そこに3人の姿があった。永琳は仁王立ちで腕組をしている。対し、残りの2人であるカルマと輝夜は、彼女の前で正座させられていた。

 

「ねぇ、カルマ。言ったわよね?私が許可するまで部屋から出ちゃいけないって。」

「……。」

「姫様も姫様です。なんでカルマを行かせるんですかっ!」

「…だって。」

「だって、ではありません!」

 

永琳は怒りに任せて机を叩いた。机の上に置かれていた小瓶が振動で揺れる。その小瓶には“魔力増量剤”と“魔力活性剤”と書かれていた。

 

「この2つの薬はまだ未完成なんですよ?それを姫様は見つけ出して、カルマに飲ませるし。カルマもそれをなんの躊躇もなく飲んじゃうし。」

「別に失敗でも―」

「あ゛ぁ゛?」

「……。」

 

彼女の気迫に流石の魔神も押し黙ってしまった。昔から逆らえない姉貴分の威厳だろうか。

 

「…はぁ。麗夢たちを心配するのは分かるけど。貴方の身に何かあれば、元もこうもないのよ?」

「…分かってる。」

「姫様も無断で薬に手を付けないでくださいよ、まったく。」

「…ごめんなさい。」

 

永琳は近くにあった椅子に腰かけ、溜息を付くと、手元にある小瓶を手に取った。

 

「…上手く行って良かったけどねぇ。」

「ほんとにね。」

 

当事者でありながら、他人事のように言う輝夜を永琳が睨み付ける。

 

「姫様もカルマもまだ正座していなさい。」

「うぅ。そろそろ脚がヤバいんだけど…。」

「駄目です。」

「…チッ。」

「…麗夢呼ぶわよ?」

「それはやめろっ!」

 

カルマの小さな舌打ちを聞き逃さない永琳。この状況で麗夢など来れば、弄りに弄ってくるに違いない。それだけは避けなければならない。

 

「永琳さーん?いませんかー?」

 

ただし、現実は残酷だったようだ。部屋に穴を開け、入ってきた麗夢。彼女は今の状況に一瞬呆けたが、すぐににたぁっと笑みを浮かべた。それに反応し、勢いよく立ち上がるカルマ。

 

「こんにちは。お見舞いに来ましたよ、カルマ。」

「わかったから、こっち来んな!」

「何言っているのですか。私との仲でしょう?」

「どんな仲だ、馬鹿!」

 

尚もにじり寄る麗夢。対し、カルマは後ずさっていく。

 

「おい!お前ら、こいつを抑えろ!」

「さて、薬の調合してこないとね。(棒」

「永琳、私も手伝うわ。(棒」

 

白々しい程の棒読みで出ていく永琳と輝夜。

 

「2人きりになりましたね、カルマ。」

「…クッ。」

「さぁ、大人しくしてくださいねぇ?」

 

とうとう壁際まで追い込まれたカルマは逃げることはできない。ただし、麗夢はカルマを弄ろうとせず、そのまま抱き着いてきた。

 

「…麗夢?」

「少しだけ、このままで…。」

 

沈黙が部屋を支配する。服に濡れた感触があることから、麗夢は泣いているのだろう。肩も小刻みに震えていた。どうすればいいのか分からず、取りあえず軽く頭を撫でることにした。

 

「…私、ルーミアさんを。ルーミアさんに、手を、掛けてしまいました。」

「あぁ、知ってる。」

 

先日、薬で微量ながら回復したと言っても、使える魔法は1つだけ。開門を使い、麗夢たちの所に向かっていたカルマ。そのため、途中からではあるが、最後まで見ていた。状況によっては手を出そうと思っていたが、そういうことはならず最後まで静観していた。

 

「ごめんなさい、ルーミアさん。ごめんなさい…。」

 

麗夢は戦闘中、感情を押し殺していた。今それがカルマを見た安心感から溢れてきてしまったのだろう。

 

「謝ることねぇだろ。ルーミアは怒ってなかったんだから。」

「う、うぅ・・・。」

 

長いこと泣いていたが、漸く泣き止むと麗夢はカルマから離れた。泣いていたため、彼女の目は赤くなっていた。

 

「・・・ふぅ、ありがとうございます。」

「別にいい。それより聞きたいことがある。」

「はい、なんでしょう?」

「鬼子母神のことだが―」

 

カルマが気にしているのは鬼子母神の朱姫のことだ。彼女は麗夢の口車に乗せられていたが、条件がカルマの情報だった。もしかしたら、再戦することになるかもしれない。

 

「あぁ、朱姫様のことですね。大丈夫ですよ。今のカルマの現状を話したら引き下がってくれました。」

「そ、そうか・・・。」

 

戦闘を好む鬼にしては珍しい。どうやら、会っていない間に丸くなっていたらしい。

 

「あ、でも、今度会った時はお酒を一緒に飲みたいって言っていましたね。」

「・・・・・・。」

 

朱姫の伝言を伝えられ、カルマは顔を引きつらせた。

 

「・・・カルマは飲めないのですか?」

「いや、飲める。だが、アイツと飲むとどうなるかわからん。酔った勢いで戦闘を吹っ掛けられそうな気がする。」

「それはぁ・・・ありそうですね。」

 

麗夢もフォロー出来ずに苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 

「お前が付き合ってやればいいだろうが。」

「いえ、付き合わされましたよ、あの後。思い出しただけで、恥ずか死しそうです。」

「・・・あん?」

 

頬を染め、明後日の方向を向く麗夢。何かを隠していることは明白だった。無理に聞こうと思わなかったカルマだったが、そうは問屋が卸さなかった。

 

『麗夢は酔うと脱ぐんでいやがります。』

「あ、こらっ!」

 

焔が突然出てきて、一言だけ言うと麗夢の内に戻ってしまった。部屋をなんとも言えない空気が支配する。

 

「・・・う。」

「う?」

「うにゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」

「うおっ!?暴れんな馬鹿!あぶなっ!?おい、落ち着おわっ!?馬鹿、投げんな!」

「ガルマに知られだああああああああああああ!!」

「だから落ち着け!」

「ガルマを殺じで、私も死んでやるうううううううううう!!」

「洒落になってねぇぞ、馬鹿!炎出してこっち来んな!!」

「うにゃああああああああいやあああああああああああああああああああああ!!!!」

「あぁもう!誰かコイツを止めろ!!」

 




とうとうバレてしまった麗夢の酒癖。
いやぁ、いつか出したいと思っていたんです。
前作読んでくれた人はわかるよね?w
麗夢の設定にも書いてあるけどw

ルーミアとの戦闘中は感情を押し殺してました。
だって、今まで戦うか逡巡してたんだもんね。
いきなりこんな好戦的になれば、何かあるはずだもの。

次章に入るわけですけどね。
ちょっとお知らせです。
次の投稿は来年年明けになると思います。
里帰りするんじゃもん(´・ω・`)
でも、できるだけ書き溜めしておくつもりです。
では、来年会いましょうー(*´∀`*)
メリー苦シミマス・・・( ^∀^)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7章 幻実/現想
Ep,1 計画


遅ればせながら、みなさん。
あけましておめでとうございます。
今年もこの物語と私の子たちをよろしくお願いします。

それでは、本編どうぞ


ルーミアの封印から2ヶ月程の時が流れていた。その間にカルマは永遠亭から退院した。薬のおかげか、魔力の回復の速度が上がっているため、問題はないだろうと永琳が判断したのだ。偶に子供となったルーミアを見かけるが、何か大きな問題を起こしたという情報は聞こえてこない。紫自身も計画である“人間と妖怪の共存”に本腰を入れ始めたため、最近は姿を見かけなくなった。

 

「―で、お前は何をしている?」

 

場所は博麗神社。その寝室で起きたカルマだったが、身動きが取れないでいた。

 

「…すやぁ。」

 

何故なら、麗夢が彼を抱きしめて寝ていたからだ。2人の寝室は別々になっている。一緒に寝るなどということは間違ってもありえない。昔なら堕天するなり拒絶するなりで引きはがせたが、今はそうやすやすと使うこともできない。

 

「寝たふりしてんじゃねぇよ。」

「…何故わかったのです?」

「…馬鹿かお前。」

 

渋々カルマから離れる麗夢。どうも最近彼女からのスキンシップが激しくなってきている。余談だが、麓の里で2人の様子を見た村人たちに夫婦なのかと問われた時、麗夢は嬉々として肯定したが、カルマが頑なに否定していた。

 

「起こしに来ました。朝食の準備ができていますよ。」

「わかった。」

 

身支度を済ませ居間に出ると、既に食器が並べられていた、3人分。

 

「はーい、カルマ。おはよう。」

 

そこには珍しく紫の姿があった。

 

「何故いる?」

「なんで露骨に嫌な顔するのかしら?」

「…はぁ、まぁいい。」

 

溜息を付き、カルマは紫と対面する形で座った。遅れて朝食を持ってきた麗夢も座った。ただし、カルマの隣である。

 

「やっぱり噂通りみたいね。」

「あん?」

「何がですか?」

「小耳に挟んだのよ。2人が夫婦だって話をね。」

「違う!」

 

勢いよく否定するカルマだったが、対して麗夢は両手を頬にあてくねくねしていた。

 

「やっぱりそう見えますか?うふふ、えへへ。」

「…これは予想外だわ。」

 

流石の紫もここまでだとは思わなかったのだろう。恋は盲目とはまさに彼女のことを言うのかもしれない。

 

「よかったわね、カルマ。」

「何がだ。」

「この娘、結構モテるのよ?そんな彼女をここまでさせるなんてね。男冥利に尽きるんじゃない?」

「知らん。」

 

尚、2人の仲を見て撃沈した男は10を軽く超えているのはまた別の話。

 

「それで、お前がここにいるからには何か話があるんだろ?」

「えぇ、そうよ。まぁ、それは食べた後で構わないわ。麗夢も戻ってないからね。」

「えへへ、カルマと夫婦…。えへへ、えへへへへ。」

 

 

麗夢も元に戻り、朝食を済ませたところで、紫は居住まいを正した。

 

「話というのは簡単なことよ。私の望みである“人間と妖怪の共存”を実現させようと思うの。」

「いよいよですか。」

「えぇ、それで話を付けてきてほしい場所があってね。」

「話?」

「話というのは?」

 

紫は2人に自分の計画を話した。ある一定の区域を結界で覆い、隔離された空間を作ることだった。

 

「話を付けてほしい場所がその区域の中にあるってことか。」

「えぇ、そうよ。」

「どこなのですか?」

 

すると、紫は人差し指を下に向けた。カルマはその意図がわからずに訝しむ。しかし、麗夢は分かったようで、嫌な顔をしだした。

 

「地底よ。旧地獄。」

「私は嫌ですよ。」

「私だって嫌よ。」

 

残されたのはカルマだけだった。

 

「あ?地底に何があるんだよ。」

「…これは説明したほうがいいのかしら?」

「説明しなければ、面白そうなのでしょうけど。」

「おい、今なんつった?」

「そうなのよねぇ。面白そうではあるのだけど。」

「お前ら…。」

 

怒りで肩を震わせるカルマ。彼は地下の旧地獄に何があるのか知らない。

 

「冗談よ、冗談。そんなに怒らないで。ちゃんと説明してあげるから。」

「…えっ、冗談だったのですか?」

「麗夢、貴様…。」

「あ、あははは~。」

 

分が悪いと判断した麗夢はそそくさと退室していってしまった。

 

「こほん。それじゃあ説明するわね。」

「あぁ、頼む。」

 

スキマからこの周辺一帯の地図を取り出し、机に広げた。

 

「ここが旧地獄の入り口よ。ここから入ることができるわ。」

「…近いな。」

「えぇ、そうね。そして、旧地獄には人間に嫌われた妖怪が集まっているの。」

 

人間に嫌われた妖怪。紫の望みを受け入れなさそうな存在とも言えるだろう。

 

「説得が難しいだろうな。」

「だから、後回しにしてしまっているのよ。あ、因みに人間に嫌われている妖怪の中に鬼もいるから。」

「何?…まさか。」

「えぇ、鬼子母神の朱姫もいるはずよ。」

 

朱姫の名前が出ると、一瞬だが顔を引き攣らせるカルマ。無理もない。彼と彼女は数億年前に戦いを中断させられているのだ。今は麗夢の話を聞いて、引き下がっているが、今の彼女をカルマはよく知らない。苦手意識があって当然だろう。

 

「ま、鬼は闘いを好むけど、約束は守る種族だから大丈夫でしょう。」

「そうあってほしいがな。」

「それで、ここからが重要。旧地獄を治めている妖怪がいるのよ。」

「ほぉ。」

 

嫌われ者を統治している存在。鬼すらもまとめ上げるとなると、それだけの強さを持つ者なのだろうか。

 

「名は古明地さとり。さとり妖怪よ。」

 

 




なんか自分で作ったオリキャラがおかしいw
麗夢がキャラ崩壊し始めてきちゃった。
まぁ、シナリオ通りだけどね!

さぁ、いよいよ幻想郷が作り上げられようとしています。
そして舞台は地底、旧地獄へと向かいます。
地底のあの妖怪も登場予定です。
一部かわいそうな扱いを受けますがw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,2 旧地獄

・・・何故か最近ゆかりんが可愛く思えてきた。
なんか紫よりも背が少し高い人に頭を撫でられて、頬を膨らませてそっぽを向くみたいな?
飄々としてるけど、たまにそういうことあってもいと思う。
ただし、この物語の中でそういうことはない!(`・ω・´)

それでは、本編どうぞ。


「…暑い。」

『そーでいやがりますね。』

 

麗夢から焔を押し付けられる形で、地底へと訪れたカルマ。彼の回りには何人かの鬼が倒れていた。

 

「闘うことしか考えていないド低脳が…。」

『騒がしいことを好みやがりますからね。根は優しいのでいやがりますが。』

 

地底へと来るなり鬼に喧嘩を売られ、適当にあしらったカルマ。どうも歓迎されていないようだが、紫に頼まれたこともあり、先に進むことにする。

 

「さとり妖怪、ねぇ…。」

 

彼は歩きながら、紫の話を思い出していた。

 

 

 

「さとり妖怪?心を読むんだったか?」

「えぇ、そうよ。だから、カルマが適任だと思うわ。拒絶を使えば、そんなこと関係ないでしょ?」

「…まぁな。」

「こっちの考えていることを先読みされるから、やりづらいのよ。だから、お願いするわね。」

 

 

「まぁ、会ってからでいいか。」

『何か言いやがりましたか?』

「なんでもねぇよ。…あ?」

 

何かが落ちてくる風を切るような音が聞こえてきた。顔を上げれば、桶がカルマ目掛けて落ちてきていた。

 

「行くぞ。」

『そーでいやがりますね。』

 

見なかったことにして歩みを進める。背後で桶が地面に衝突し、女の子が何か言っているようだったが、気にせず進んでいく。

 

『ちょっと失礼しやがります。』

 

カルマの前に出る焔。少し進むと彼女の炎が何かに引火しだした。炎は蜘蛛の巣状に広がっていく。

 

『行きやがりましょー。』

 

炎が服に燃え移って慌てている女の子がいたが、先を進むことにする1人と1匹。暫くすると、賑やう声と明るい灯りが見えてきた。

 

『あれが旧地獄の街道でいやがります。』

「地獄と思えねぇ賑わいだな。いや、地獄ならではか?」

『どーでいやがりますかね。』

 

進むと街道の前に門があり、そこに繋がる大きな橋があった。そしてそこに身長の高い鬼と1人の少女が何か話しているようだった。

 

「―ん?地底に客か?珍しいこともあるもんだねぇ。」

「そうね。地上の人間は暇なのかしら?妬ましい…。」

 

どうやらこちらに気付いたようだ。2人はこちらに身体を向けた。

 

「地上の人間だろ、アンタ。ここはちょいと五月蠅いから引き返した方が身のためだ。」

「悪いがここに用があってここにきた。」

「ちょっと待って。そっちの狐火はともかく、アンタは人間?」

 

流石に近づかないと気付かれなかったようだ。カルマは既に魔神として扱われている。彼からは少なからずとも神気を感じるはずだ。

 

「人間じゃねぇな。神の分類に入るか。」

「アンタが神?まったく妬ましいわね。」

「適当に妬んでろ。俺はこの先に用がある。」

 

だが、彼の前に鬼が立ち塞ぎ、道を阻んだ。

 

「何の真似だ…?」

「いやぁ、悪いね。少なくともただで通すわけにはいかないんだわ。どうだ?あたしと喧嘩しないか?」

「……めんどくせぇ。焔、離れんなよ。拒絶。」

 

出来れば、さとり妖怪と対面した時に使いたかったが、ここから発動させても問題ないだろう。これを地上に戻るまで維持すればいいだけの話だ。

 

「あ、あれ?」

「ちょっと勇儀!?」

 

勇儀と呼ばれた鬼はカルマに道を譲らせさせられてしまった。

 

「どうなってる?」

「いいの、勇儀?行かせて。」

「いや、行かせるつもりはなかったんだけど…。まぁ一応ついて行こうかね。パルスィはどうする?」

「…いいわよ。ここにいるわ。」

「おう。じゃ、行ってくらぁ。」

 

少し離れて焔が付いてくる。拒絶により一定の距離から近づけないのだ。街道に出ていた妖怪たちも自然と彼を避けるように道が開けていく。勇儀は焔に追いつくと、彼女に話しかけてきた。

 

「狐火さんよ。あの男はなにもんなんだい?なんかいきなり近づきたくなくなったんだけど。」

『彼奴は魔神カルマでいやがります。』

「魔神だって!?…そうか、なるほどねぇ。」

 

何か1人に納得している勇儀をほっといて、焔はカルマの後に続いていく。

 

「おーい、魔神さんよー!もう手を出さないから、その近づきたくなくなるやつ消してくれねぇかな?」

 

距離があるため、大声でカルマに語り掛ける勇儀。拒絶をといても構わないが、ここで解けば、残り使える禁忌魔法の魔力は2つ分しかない。だが、ここまで魔法を使わずに来れたのだがら、大丈夫だろう。

 

「…チッ。」

 

軽く舌打ちすると、拒絶を解いた。途端に辺りは元通りになり、先程までの賑わいに戻った。

 

「いやいや、さっきは済まないねぇ。喧嘩を売るような真似しちまって。」

 

肩を叩きながら接してくる勇儀を鬱陶しく感じながらも歩みを進めていく。

 

「そんで、こんな場所に何の用なんだい、魔神さん?」

「さとり妖怪に用がある。」

「うん?なんでまたそんな奴に?」

 

勇儀の疑問に答えることなく進んでいく。焔に聞いても肩をすくめるだけでまともに答えようとしなかった。

 

「ま、細かいことはいいか。それならあたしが案内してやるよ。」

 

実際適当に歩いているだけだった。一応今いる位置からも見える屋敷のような建物に向かって歩いていた。

 

「あそこだろ?」

「お?まぁ、そうだが、ここいらに詳しい奴がいれば安心だろ?あたしはここにいる鬼の中で結構強い。そんなあたしがいれば、周りの鬼も喧嘩売ってこないからね。」

 

彼女は笑いながらそう言った。確かに門を潜って拒絶を解いたが、襲われるようなことはなかった。

 

『なら、案内お願いしやがります。』

「おう。任せなって言っても、入り口までだけどな。あたしもアイツが苦手だからね。ほれ、ついてきな。」

 

カルマと焔は彼女の案内について行った。

 




え?一部不遇な扱い受けてるって?
知らぬな!
あ、ごめんなさい。
好きな娘だったらごめんなさい(;´Д`)

はい、やってまいりました。
地底でございますよ。
焔がいるのは、1人だとつまらないくなりそうだったから!(`・ω・´)
それに、一応動物だし・・・。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,3 さとり妖怪

PSO2のアニメが始まりましたねぇ。
少し期待w
東方のSSなんだから、東方の話しろってねw
幻想万華鏡の新しい話投稿されてたなぁ、そういえばw
妖夢がよかったです(*´▽`*)

それでは、本編どうぞ。


「あたしが案内できるのはここまでだよ。」

 

勇儀に案内され、たどり着いたのは、大きな屋敷の入り口だった。

 

「あたしは戻るから、あとは気を付けろよな。」

 

そう言い残し、彼女は笑いながら去って行ってしまった。

 

『愉快な人でいやがりましたね。』

「鬱陶しいだけだろ。行くぞ。」

 

大きな扉を開けると大きなホールがあった。そして中央に1匹の黒猫が座り、こちらを見つめていた。しかし、尾が二又であることから、ただの猫ではないのだろう。

 

「さとり様がお待ちです。」

 

黒猫の後に続いて案内されたのは、1つの部屋だった。

 

「さとり様、お客様です。」

「分かってるわ、お燐。通してあげて。」

 

中に入ると1人の少女がソファに座り、紅茶を飲んでいた。

 

「好きに座って構わないわよ。」

 

言われるがまま、カルマは少女と対面する形でソファに座り、焔もカルマの隣に座る。こちらが座ったタイミングで、彼女は紅茶を机の上に置いた。

 

「はじめまして、魔神カルマさん。狐火の焔さん。古明地さとりよ。成程、面倒は嫌いなようね。それなら要件をすぐ済ませましょう。」

 

的確にカルマの心を読み、さとりは話を進めようとしている。

 

「えぇ、そうよ。私は心を読める。だから、貴方たちが何を目的でここに来たのかも分かっているわ。」

『わかりやがりましたでしょう。これが麗夢とスキマ妖怪が苦手とする理由でいやがります。』

「心を読むから気味悪がられ、ここに追いやられた。ただそれだけ。」

「……。」

「同情なんてしなくていいわ。されるだけ、虫唾が走る。」

「…拒絶。話を進めるか。」

 

早速、拒絶を発動し、さとりの能力を無力化させた。いきなり心が読めなくなったさとりは、眉を顰め、カルマを見つめる。

 

「…いきなり私の能力を無力化?そちらの狐火の心は読めるから、能力を消されたわけじゃない…。面白いことをするのね、魔神さんは。」

「そりゃどうも。」

 

心を無にするという事は、簡単に出来ることではない。それは生きながら死んでいるようなものと同じなのだから。さとりとしては、今まで心を読めない存在というものにあったことはなかった。そういう点で、彼女はカルマに興味を持ち始めていた。

 

「―で、ここへきた目的だが…。」

「えぇ、スキマ妖怪の計画で、ここが結界内に入るってことでしょう?」

「あぁ、そうだ。」

 

さとり妖怪は人間に嫌われた妖怪。人間との共存など出来るはずがない。ここで切り捨てることもできる。だが、それでは目の前にいる心を読めない存在と折角できた繋がりを断ち切ることになりかねない。

 

「少し考えさせてくれてもいいかしら?」

「構わん。いいだろ、焔?」

『そうでいやがりますね。期日は聞いていやがりませんから。』

「ありがとう。流石に1人で決められる問題じゃないから。」

『後日にまた来やがることにしましょう。』

 

焔に頷き、カルマは立ち上がったが、そこでさとりが待ったを掛けた。

 

「地上とここを行き来するの大変でしょう?そこにある街道に宿もあるから、そこに止まっていくといいわ。」

 

街道というのは、ここまで勇儀が案内してくれた道中の事だろう。確かに見ている限り、たくさんの店があった。

 

「それもそうか…。焔、麗夢たちに知らせてきてくれ。」

『分かりやがりました。』

 

すると、焔は火を吹き消したかのように、ふっと消えてしまった。

 

「さて、まだ少し話さないかしら、魔神さん?」

「…それが狙いか。」

 

紅茶に一口つけると、さとりは微笑んだ。焔が戻ってくるまでの時間潰しだろう。溜息と共に座りなおす。

 

「―で、何を話すつもりだ?」

「何でもいいわよ?心を読めないって私にとっては新鮮で、楽しいから。でも、そうね。地上のことを少し聞きたいかしら。ここにいるとそっちの情報が入ってこないのよ。」

「…そうか。俺に知っている程度なら構わん。」

「えぇ、お願い。」

 

それから2人は焔が戻ってくるまで地上のことを話し合っていた。カルマが話をし、さとりが思ったことを口にし、カルマがまたそれに答えていった。

 

『…お邪魔でいやがりましたか?』

「あらごめんなさい。つい夢中になっちゃったわ。」

『…麗夢に教えても?』

「それはやめろ!」

 

焔の心を読み、カルマと麗夢という女性との関係を知ったさとりは、暖かい笑みを浮かべた。

 

「へぇ…。」

「…何が言いたい。」

「いえいえ、別に。ただ微笑ましいなって。」

「…クソッ。」

「そんなこと言わないで。応援してるから。」

「そんなんじゃねぇよっ!」

 

勢いよく立ち上がると、カルマはズカズカと部屋から出て行ってしまった。

 

「ふふ、面白い人ね。」

『まぁ、2人を見てて飽きやがりませんからね。』

「みたいね。貴方の心からも色々見えるわ。」

『そーでいやがりますか。』

「早く行ってあげた方がいいんじゃないかしら?見失うわよ?」

『そーでいやがりますね。』

「えぇ、明日にでもいらっしゃい。」

 

さとりに頭を下げると、また焔は掻き消えてしまった。すると、入れ替わるように黒猫が部屋に入ってきた。

 

「いいのですか、さとり様?」

「そうね。お燐から見れば、そう見えるかもね。でも、悪い人たちではないと思うわ。」

「でも…。」

「そう、人間と妖怪の共存については別よ。少し話し合う必要があるわ。こいしのためにも…。」

 




・・・どっかのさとりんみたいに弄りたかった(´・ω・`)
どこのかは言わないけど、弄りたかった。
安定のカルマ弄りだよ、ちくせう。

さとりの読心を表現するのってなかなか難しい。
ちゃんとできてるか不安です(´・ω・`)
・・・ていうか、さとりんフラグ建っちゃったかも。
やべぇ、これ以上ヒロイン増やしたら、うちの娘が・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,4 鬼ごっこ

イラスト描いてたら、途中で極細ペンのインクが切れました(´・ω・`)

題名そのままですw
誰が登場するか分かっちゃう不思議!
・・・この言葉デジャヴだな(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ。


街道に響き渡る騒音。誰かが土煙を上げながら勢いよく走っていた。

 

「付いてくるな、鬼子母神!」

「クハッ!そう言うな、鎌使い!」

 

それは魔神であるカルマと鬼子母神である朱姫だった。朱姫はさとりの場所に案内する時に、勇儀がカルマを呼んだ声を聞いていた。そして、勇儀に聞き、カルマの場所を突き詰めたのだ。

 

「そう逃げるな、鎌使い!ただ酒を共に飲むだけだ!」

「テメェと酒なんて飲めば、馬鹿騒ぎするに決まってるだろうが、ド低脳!」

「クハハ、違いない!鬼は騒がしいからな!」

「ド低脳がああああああああっ!」

 

カルマは地面を蹴ると、家屋の屋根を跳び移りながら駆けていく。朱姫も追いかけるために、屋根の上に飛び乗り、走り出した。

 

「いい加減諦めろ!」

「クハッ、お主が諦めろ!」

 

2人はこの逃走劇を始めて、既に半刻ほど経っている。その間、埒の明かない言い合いをしながら走り続けていた。

 

「…チッ。」

「おぅ!?」

 

カルマが急に止まった。だが、反応の遅れた朱姫は急に止まることができない。勢いそのままでカルマの背中にぶつかりそうになった。だが、彼は背を低くし、朱姫を背負う形となった。そして、背に朱姫が乗った瞬間に脚を跳ねあげる。朱姫はそのまま自分の勢いで飛ばされてしまった。

 

「…よし。」

 

カルマは今来た道を引き返し、走り出した。早く朱姫を振り切って、焔と合流しなければならない。

 

「この手は使いたくなかったがのぉ。致し方あるまい。」

 

だが、そうやすやすと諦める朱姫ではなかった。飛ばされながらも、辺りに響き渡る大声で叫んだ。

 

「妾の子たちよ!そこの魔神を捕まえよ!捕まえた者は酒じゃ、宴じゃ!」

 

彼女の声を聞いた鬼たちは雄叫びを上げると、カルマを我先にと追いかけ始めたのだ。

 

「…こんの、クッソド低脳があああっ!」

 

状況は多勢に無勢。明らかにカルマが不利となってしまった。だが、相手は鬼。鬼子母神のような神ではない。ならば、振り切れないほどではない。

 

「やってやるよ、ド低脳風情がっ!」

 

姿勢を低くし、更に速度を上げていく。屋根の瓦が衝撃で飛ぼうが知ったことではない。屋根を蹴り、岩壁を垂直に駆け上っていく。そして、洞窟の天井に足を突き刺した。まるで蝙蝠のようだ。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

流石の鬼でも地面から十数メートル上まではやって来ることはできないだろう。

 

「クハハッ!」

 

ただし、例外はいたようだ。朱姫が空気を蹴るという荒業で、カルマのいる場所へと向かってきていたのだ。カルマも拒絶を使えばできる事だが、それを純粋な力でやってのけるあたり、流石と言えるだろう。

 

「しつけぇんだよ!」

「お主が逃げなければ、良いことじゃ!」

「チッ!」

 

カルマは刺し込んでいた足を引き抜き、急降下を始めた。朱姫も彼を追い、そのまま下へと向かう。カルマの落下地点と思われる場所には鬼が群がってきていた。正に地獄絵図と言えるだろう。

 

「こんなくだらんことに使うつもりはなかったが…。」

 

カルマは落ちていく途中に下に手を翳した。すると、開門が発動し空間が割れた。そのまま中に入ると、すぐに閉じる。

 

「逃げおったか。」

 

地に静かに着地すると、朱姫はやれやれと肩を竦めた。

 

「うむ。まぁ、楽しかったからのぉ。良しとするか。妾の子たちよ!魔神には逃げられたが、ついでじゃ!酒を飲むぞ!」

 

結局、カルマを捕まえることができなかったが、このまま鬼を返すわけにもいかない。なら、このまま騒げばいいだけ。

 

「クハハッ!酒じゃ酒じゃ!」

 

 

 

「…驚きました。大丈夫ですか?」

 

カルマは開門をさとりと対談した部屋に繋げることで、朱姫を撒いた。部屋にはまださとりがおり、紅茶が机に置かれていた。どうやらこちらの提案を考えているところだったようだ。

 

「…悪いな。鬼子母神から逃げていたんだ。」

「鬼子母神、朱姫様のことですか。」

「あぁ。」

 

鬼たちがここにいる以上、カルマと鬼子母神の関係は少しばかり知っている。

 

「あら、まだ心が読めない?」

「まぁな、地底にいる間は発動し続けるつもりだ。また掛け直すのも面倒だからな。」

 

それに魔力がまだ回復しきっていない。勇儀を躱すための拒絶、さとりの能力の拒絶、朱姫から逃れるための開門。ここに来るまでに3つ禁忌魔法を使ってしまった。そして、地底に来る時の魔力は禁忌魔法3回分。永琳の薬を服用している為、一日寝れば1回分は回復できるだろう。

 

「悪いが、この館に空き部屋はあるか?そこで休ませてくれ。」

「少ないけど、ありますね。お燐~?」

「はーい。」

 

器用に扉を開けると、二又の黒猫が姿を現した。すると、ポンッという音と共に人の形へと姿を変えた。

 

「あれ?お兄さん、さっき出て行かなかった?」

「まぁな。」

「朱姫様から逃げてここに来たのよ。それと、この人に空き部屋与えてくれる?」

「分かりました~。ささ、お兄さん。こっちだよ~。」

「あ、あとで部屋に行ってもいい?またお話したいから。」

「別に構わん。俺にできるのはそれくらいだからな。」

「そっ、じゃあ後で行くわね。」

 

さとりの部屋を出ると、空き部屋に案内された。

 

「ここ使っていいからね。」

「あぁ、分かった。」

 

案内を済ませると、彼女は部屋から出て行こうとしたが、カルマが引き止めた。

 

「待った。悪いが、俺と一緒にいた狐火を探してくれないか?」

「狐火?あの青い火の?」

「あぁ、鬼子母神から逃げる時に置いてきてしまったからな。地底のどこかにいると思うが。」

「うん、わかったぁ。じゃあ、探してくるね~。」

 

彼女は黒猫に戻ると、焔を探しに駆けて行ってしまった。カルマは部屋にあった小さな机に暫く寝ることとさとりが来たら起こすことを書置きすると、ベッドに倒れ込み、眠りについた。

 




朱姫再来!
カルマの壁走りもそうだけど、彼女の空気蹴りもどうかと思うw
そして、安定の‟ド低能”でした(*´ω`*)

さぁ、一時的な魔力切れであります。
すぐ復活すると思うから、大丈夫・・・。
だといいなぁ(;・∀・)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,5 条件

なんとなーく、カルマと麗夢、霙、焔のテーマ曲(?)みたいのを東方アレンジから見つけましたw
カルマは幽閉サテライト『漸う夢の如く』。
麗夢はEastNewSound『meteor』。
霙はDiGiTAL WiNG『Three Magic』。
焔はDiGiTAL WiNG『断罪の天秤』
霙の方は禁初幻譚読んでないと分からないかなw
聞いてみると、当てはまる箇所が所々にあったのでw

ついでに・・・。
水咲は幽閉サテライト『ことばにしちゃダメなこと』。

それでは、本編どうぞ。


「ここに金髪のお兄さんいるからね。」

『分かりやがりました。』

「じゃね~。」

 

お燐は地霊殿からそう遠くない場所にいた焔を見つけると、カルマのいる部屋へ案内した。焔は高い場所からカルマと鬼子母神の攻防をボーっと眺めていたのだ。部屋の扉を素通りし中に入ると、カルマがベッドで寝ていた。机には彼の置手紙があった。

 

『魔力切れで暫く寝やがりますか…。さとり…。ここの主でいやがりましたね。』

 

動物とは言え、人語を話すことができる焔にとって、さとりは苦手の対象だった。だが、麗夢と一心同体であるため、それほど苦手というわけではなかった。ただ、自分の言うことを先に言われることが嫌なだけだった。

 

『―とは言え、暇でいやがりますね。』

 

カルマが寝ているため、さとりが来るまでの時間は暇でしかない。ここから出て、街道へと行くこともできるが、書置きで頼まれた以上、待たなければならない。

 

『…はぁ。』

 

溜息を付くと、カルマの寝ているベッドへと歩み寄る。そして、ベッドに飛び乗るとカルマの上に乗っかり、カルマの顔を覗き込んだ。

 

『麗夢が一目惚れした理由がわかりやがりませんね。…直感でいやがりますからね。まぁ、麗夢が良ーのでいやがれば、それで良ーです。』

 

焔はそのままベッドの上で身体を丸めると、目を閉じた。時計の秒針の音が部屋に響き渡る。どれくらい経っただろうか。ノック音の後に扉の隙間からさとりが顔を覗かせてきた。

 

「あら、狐火さんだけ?あぁ、カルマさんは寝ているのね。悪いけど、起こしてもらえないかしら?」

 

焔は立ち上がると、カルマの額に前足を振り下ろした。

 

「プッ、ククッ…。」

 

焔の起こし方がツボに入ったらしい。さとりは吹き出し、お腹を抱え込んだ。普段は麗夢がカルマを起こしに来るか、彼が起きて身体を動かしているかなので、焔は起こし方を知らなかった。

 

「…焔か?」

『そうでいやがります。さっさと起きやがってください。』

「…あぁ、分かった。」

 

ベッドから降りると、軽く身体を伸ばした。そして、さとりの対面に位置する場所に座った。

 

「悪いな。」

「いえいえ。焔さんの心から貴方の状態を視させてもらいました。」

「そうか。まぁ、前よりは回復速度は上がっているから、そう心配することじゃない。」

「みたいですね。さて―」

 

こほんと咳払いと共に、さとりの顔に真剣みが増した。どうやら真面目な話をするようだ。

 

「そちらの要件、“人間と妖怪の共存”ですが、条件次第で飲むことしました。」

「そうか…、その条件次第だな。」

『ちょっと待ちがやってください!』

 

カルマの物言いに流石の焔も慌ててしまう。もし、ここで古明地さとりが紫の計画に賛同しなければ、頓挫してしまうことだって考えられるからだ。

 

「安心なさい、焔さん。貴方の心から読んで、彼なら出来ることだと判断した結果だから。」

「まぁ、条件を聞いておくに越したことはないだろ。」

『…わかりやがりました。』

 

焔は大人しく引き下がった。心が読まれる分、焔の分が悪い。ここは拒絶の使えるカルマに任せた方がいいだろう。

 

「条件は1つ。私の妹を助けてほしいのよ。」

「…妹?」

 

古明地さとりには1人の妹がいる。名は古明地こいし。ただし、彼女は人間の心にある黒い部分を読みすぎてしまい、塞ぎ込んでしまった。挙句の果てには心を閉じてしまい、人形のようになってしまった。

 

「あの娘を助けてあげたいの。助けてくれれば、貴方たちの要求でもなんでも聞いてあげるから。お願いします。妹を、こいしを助けてください。」

「……。」

 

彼女はカルマに向かって、深く頭を下げた。彼女がどれだけ本気なのか、妹の説明だけでも分かってくる。

 

『…どーしやがりますか?』

「……チッ。」

 

カルマは軽く舌打ちすると、ソファから立ち上がった。

 

「その妹の所に案内しろ。」

 

顔を上げたさとりはこちらを見ていないカルマを見上げた。

 

「そ、それではっ!」

「勘違いするな。まだ見てやるだけだ。治せるかはその後だ。」

「は、はいっ!」

 

さとりはカルマと焔を連れて、こいしの部屋の前へと案内した。案内された所は部屋の外とはいえ、黒い何かを感じる場所だった。さとりはノックをすると、扉越しにこいしに話しかけた。

 

「こいし、私よ。入るわね。焔さんはここで待っていてください。カルマさんはついてきてください。」

 

焔を残し、扉を開けて中に入ると、明かりがなく暗い空間だった。

 

【挿絵表示】

 

「…お姉ちゃん?どうしたの?」

 

椅子で膝を抱えている少女がいた。彼女は顔を俯かせているため、カルマに気づいていないのだろう。それに彼の服が黒いために、視覚でも気づきにくい。

 

「…こいし。顔を上げてくれるかしら。」

 

ゆっくりと顔をあげたこいしだったが、瞳に生気を感じられなかった。その瞳のまま、さとりに向ける。そしてカルマの存在に気づくと、悲鳴を上げてべッドに潜りこんでしまった。

 

「なんで人がいるの、お姉ちゃん!もう心なんて視たくないよ!こいしのことは放っておいて!」

「こいし…。」

 

毛布を被って震える妹にどう語り掛ければいいのかわからないさとりは、今にも泣きそうな顔をしていた。すると、カルマは彼女の肩に手を置いた。

 

「カルマさん…?」

「さとり。ここからは俺だけで話させてくれ。」

「…わかりました。どうか妹をお願いします。」

 

さとりは彼にこいしを任せ、退出していく。扉を閉じる前に名残惜しそうに振り向いたが、そのまま扉を閉めてしまった。

 




焔 の 炎のパンチ!
カルマ は 目を覚ました!
ペシペシされて起こされるのは、中々にかわいらしいと思うの(*´▽`*)

体操座りが意外と難しい(´・ω・`)
それを椅子に収めるために膝を抱え込まなきゃいけないから。
なかなかに時間かかりましたw
まぁ、ポーズが描ければ、後は楽なんだけどねw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

仲の良くしてくれている方々のオリキャラに合いそうなアレンジ曲も探してみようかな・・・(ボソッ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,6 mind aberration

久々の英語の題名。
えっ、規則性?
ねぇよ、んなもん(`・ω・´)

猫ランジェリーなるものがあるらしい・・・。

【挿絵表示】

ニコ静画にはカルマ無しで投稿してます。
なんか恥ずかしくて(/ω\)

それでは、本編どうぞ。


さとりが部屋から出て行っても、こいしはベッドから出て来ず、そのまま震えていた。さとりとカルマの会話を聞いていて、彼が残ったことを知っているためだ。

 

「古明地こいし、だったか…。」

「出てって!誰だか知らないけど、出てってよ!」

「断る。こっちにも事情があんだよ。」

「知らないよ!出てってよ!」

「なら読めばいい。俺がここにいる事情を。」

 

さとりが言っていた事。こいしは人間の心にある黒い部分を読みすぎた。今のカルマはさとりの能力を拒絶している。さとりと同じ能力ならば拒絶が発動するはずだ。

 

「嫌だ!もう心なんて視たくない!」

 

だが、彼女はまともに受け答えをしようとしない。このままでは埒が明かない。カルマは溜息を付くと、こいしの潜っているベッドに腰掛けた。

 

「あっち行って!」

「断る。」

「いいから出てってば!」

「断る。」

「こいしの事なんて、ほっといて!」

「何度も言わせんな。」

 

いい加減イライラし始めてきたカルマ。魔力が回復次第、強制的に心を読ませようかとも考え始める始末だ。だが、それでは意味を成さない。自発的にやってこそ意味を成す。

 

「お前は心の黒い部分を読んだそうだな。」

「そうだよ!分かってるなら、出てってよ!」

「…なら、これで最後だ。俺は何故ここに来た?」

「知らないよ!事情ってさっき言ったじゃん!」

「そうだ。その事情ってのはなんだ?」

 

“これで最後”。子供というのは甘い言葉に弱い。こいしを見ている限り、彼女は駄々をこねる子供当然だ。案の定、彼女はゆっくりと顔だけを出してきた。

 

「再度問うぞ。俺の事情ってのはなんだ。」

「……。」

 

こいしは彼をじっと見つめる。いつもなら心を読んですぐに答えが出てくるはずだった。しかし、いくら能力が発動しても、彼の心を読むことができない。

 

「…あ、あれ?」

 

彼女は首を傾げると、ベッドから出て不思議そうにカルマの身体を触り始めた。

 

「…何してんだよ。」

「あ、幻かと思って…。でもなんで読めないの?」

「俺の能力でさとりの能力を無効化してるからな。」

「ほぇ~。…じゃあお兄さん以外だと心が読めちゃうんだ。」

「あぁ、そうだ。」

 

こいしの能力が無くなったわけでも、変わったわけでもない。能力は名前と同じように、そのモノを象徴するものだ。無くなれば消滅し、変われば存在が変化する。そう簡単にどうにかなるものではない

 

「はぁ…。やっぱりそうなんだ…。」

 

彼女はカルマの隣で膝を抱えて座り込んでしまった。

 

「…心を読むのが怖いか?」

「…お兄さんは怖くないの?心を読まれること。」

「そうだな…。俺はこの力があるからどうにでもなるが、良くは思わねぇな。」

「みんなみんなそうだよ。みんなこいしを気味悪がって遠ざかって行っちゃう。お兄さんもその力が無くなれば、こいしから離れて行っちゃう。」

 

彼女の言っていることは尤もなことだ。誰だって好んで気味の悪いモノに近づこうと思う者はいない。こいしの心の傷はかなり深い物のようだ。

 

「…また来る。」

 

取り敢えず、今日の所はここまでと考え立ち上がったカルマだったが、慌ててこいしが彼のコートの端を掴んだ。

 

「あん?」

 

振り返ってこいしを見ると、彼女は涙目で彼を見上げていた。彼女にとって、誰かとのつながりは久々な物。この温もりから離れてたくはなかった。

 

「…い、行かないで。」

「…勘違いするな。俺はお前から離れようとしたわけじゃない。現状を報告しにさとりの所に行くだけだ。」

 

安心させるように、こいしの頭を軽く手を乗せた。すると、彼女は納得したのか、小さく頷き手を離した。

 

「また来る。」

「うん、待ってるからね。絶対来てよ。」

「あぁ。」

 

背中越しに手を振りながら、カルマはこいしの部屋から出て行った。廊下には伏せている焔と心配で落ち着かないさとりがいた。

 

「戻ったぞ。」

「あ、カルマさん!そ、それでこいしは?」

「俺限定だが、なんとか話はできるようになった。」

「…よ、良かったぁ。」

 

相当心配だったのか、彼女はその場に座り込んでしまった。

 

「気が早ぇよ。まだ俺と話すくらいしかできてねぇんだからな。」

「分かっています。でも、少しでも心を開いてくれたんです。それだけで十分です。」

 

さとりの感謝の気持ちにカルマは顔を逸らした。

 

「勘違いするな。交換条件が無ければこんなことしねぇよ。」

「…焔さん、これが例の照れ隠しですか。」

『そーでいやがります。』

「おい、焔。何を言った?」

『話してしやがりません。思っただけでいやがります。』

「それを私が読んだだけですよ。」

 

彼の知らぬ間に焔とさとりは仲が良くなっていた。

 

『話さなくて良い分楽でいやがりますよ。慣れれば、大したことないでいやがります。』

「この能力のおかげで、動物には好かれるのよ。」

「まさか、余計なこと言ってないだろうな。」

『言ってはいやがりませんよ?言っては。』

「思う分には自由ですからね。」

「お、お前ら……。」

 

埒が明かないと判断したカルマはそのまま割り振られた部屋へと戻って行ってしまった。それを見送る焔は肩を竦め、さとりはおかしそうにクスクスと笑っていた。

 




こいしが立った!
こいしフラグが立ったよ!(アルプス的なノリ
えーっと・・・。
ルーミアと水咲、レミリアに妹紅でこいし。
さとりは興味本位で、あの娘(この章で登場)は尊敬の対象。
そんで、麗夢とあの人(次章で登場予定)でしょう。
うへぇ、それなりに多いかもw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

またもや友達が前作EXボス、殺女を描いてくれましたw
霙のお仕置き中のようですw

【挿絵表示】

あの頃は平和だったなぁ・・・(しみじみ
袖は描き忘れたそうですw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,7 歪な暴走

今回の麗夢はぶっ壊れました。
みんな逃げて、超逃げて!

ところでSOUND HOLICの紺珠伝アレンジが良曲すぎて好き(*^▽^*)

それでは、本編どうぞ。


古明地さとりとの交渉で妹である古明地こいしを治すことが条件となった。だが、こいしの心の傷は思ったよりも深く、まだ治ったわけではない。彼女の療養を続けた方がいいだろう。条件が条件であるため、見捨てるわけにもいかない。数日は地底に残る。

 

『―と言ってやがりました。』

 

場所は地上。カルマからの伝言を持って焔が地底から戻ってきていた。今の焔は地上と地底の連絡役として地上と地底を行き来している。

 

「…………がする。」

『…はい?』

 

焔の報告を聞いた麗夢はお札を作る手を止め、何か呟いた。しかし、声が小さく聞こえにくい。

 

「女の匂いがする。」

『……。』

 

静かに素早く立ち上がると、彼女は早足に部屋から出て行こうとした。それを焔は慌てて止めに入る。

 

『ど、何処に行きやがるつもりですか!?』

「何処って?カルマのいる場所に決まってるでしょう?」

 

何処に地雷があったのか、焔にはわからない。それもそのはず、彼女は有りのままに報告しただけなのだから。

 

「退いてください、焔。カルマの場所に行けません。」

『だ、駄目でいやがります!麗夢が地底に行ったら、色々不味いでいやがります!』

「フフフ、カルマァ…。今行きますからねぇ。」

 

焔の直感が告げている。今の麗夢を野放しにしては、大変なことが起こる。現に、麗夢の回りの空間が歪んで、まるで歪んだコートを着ているようにも見える。

 

 

「「――ッ!!?」」

「カ、カルマさん。何か感じました?」

「…あぁ。よくわからんが、何か悪寒が…。」

「私も身の危険を感じました…。」

「「……。」」

 

 

彼女を何とかして行かせまいと、自身の炎を燃え上がらせ、麗夢の行く手を阻む。

 

「何の真似ですか、焔。邪魔しないでください。」

『駄目でいやがります!本当に駄目でいやがりますから!』

「カルマは私の物です。誰にも渡しません。」

『話が噛み合っていやがりません!?』

「斯くなるうえは、空間を歪めて―」

「そこまで。」

「ぁぅ…。」

 

スキマが開き、背後から現れた藍は首元に手刀を落とした。すると、麗夢は気を失い、パタリと倒れ込んでしまった。

 

「まったく、お前が行ったら紫様の計画が丸潰れだろうに…。」

『た、助かりやがりました。』

 

安堵の溜息を付く焔は、麗夢の中に入った。すると、彼女の意思に関わらずに麗夢の身体が起き上る。限定的ではあるが、このように焔が身体の主導権を握ることもできる。そのまま布団を敷き、横になると、焔は麗夢の身体から抜け出した。

 

『はぁ…。どーしてこーなったのでいやがりましょーか…。』

 

焔は麗夢に憑りついた当初のことを思い出した。あの頃は痩せ細っていたとは言え、大人しい性格だった。それは身体が回復した後も変わらず、八雲紫の計画にも一生懸命に参加していた。人当りもよく、近くに住み始めた人たちからも好かれていた。

 

「恋心とはそういうものだ。人を変えるに十分な力を持つ。」

『麗夢らしい歪んだ恋でいやがりますね。』

「…まったくだな。」

 

歪める力を持つ彼女にとってはお似合いな恋なのかもしれない。そう思い、藍は苦笑を浮かべた。

 

『それでは、地底に戻りやがります。何か伝えることはありやがりますか?』

「…それなら、一度地底に行った後、こっちに戻ってきてくれ。麗夢とやってもらいたいことがあるそうだ。」

『…?地底は魔神に任せやがるつもりですか?』

「そうらしい。まぁ、魔神様に任せておけば大丈夫だろう。」

『…わかりやがりました。』

 

藍に一礼すると、焔は地底に戻るために掻き消えてしまった。

 

「いいんですか、紫様。」

「何がかしら?」

 

藍が語り掛けると、スキマが開き、紫が顔を覗かせた。そんな紫を藍は咎めるような視線を向ける。

 

「反乱分子のことです。」

「あぁ、アレのことね。」

 

人間と妖怪の共存に賛成しない存在。それが地底に身を潜めている。この情報はだいぶ前から手に入れていたものだ。

 

「大丈夫よ。だから、わざとカルマを行かせたんだもの。」

「それでも、情報を与えてもよかったのでは?」

「そっちは朱姫に伝えてるから、炙り出してもらうわ。上手い事姿を隠しているみたいだけどね。カルマには交渉の方に集中してもらいたいし。」

 

紫の望みに朱姫は賛成している。―と言っても、その方が面白そうだという理由からだが。ともかく、偶然にも地底にいる朱姫に反乱分子を割り出してもらっている最中だ。カルマとの騒ぎもその為に起こしたものでもある。

 

「心配しなくても大丈夫よ。運が悪くても、地底から追いやることくらい出来るわ。その隙を突くとしましょう。」

「分かりました。」

「あ、それと藍は暫く麗夢の監視お願い。もしかしたら、また暴走して地底に行こうとするかもだから。」

「…分かりました。」

「気が付いたら、知らせて。やってもらいたいことがあるから。」

 

渋々頷く藍を残し、紫はスキマを閉じてしまった。

 

「…う~ん。…カルマァ…えへへ。」

「…これは愛と言っても、狂愛と言った方が正しいのかもしれないな。」

 

どんな夢を見ているのか分からないが、幸せそうな寝顔の麗夢に、藍は溜息をついた。

 




とうとう病んでしまった・・・。
いや、まだ大丈夫。
きっと・・・おそらく・・・多分(;´・ω・)

このまま行くと、こいしが原作のこいしで無くなりそうなんだけどw
何も考えないで書いてるから、どうしようw
ま、まぁどうにかなる・・・かな?(;^ω^)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,8 異界交渉

最近TSものにハマりだした私。
所謂性転換ものですねw
中々に面白いですよ(*^▽^*)

秘封活動記録―月―見ましたよ。
いやぁ、クオリティすっごいわぁw
所で、純狐って外見的にうちの子と似てないw(;・∀・)
―というわけで、ほいっと♪

【挿絵表示】

「カルマよ、見ているか!」
「あー、はいはい。」

それでは、本編どうぞ。


「麗夢、分かったから!私が悪かったからやめろ!」

「……何をしてるのかしら?」

 

博麗神社から聞こえてくるのは、藍の痛がる声だった。その声を聞き、何事かと紫はスキマから顔を覗かせた。

 

「何って?見ての通り、十字固めですけど?」

 

そこには何故か麗夢に腕挫十字固を受けている藍の姿があった。

 

「麗夢、やめてあげなさい。藍が痛がってるじゃない。」

「…もう少しだけ。」

「麗夢…。」

「分かりましたよ。」

 

渋々関節技を解くと、藍は調子を見るように痛む肩を回した。

 

「あぁ、痛かった。」

「…脚も掛けましょうか?」

「やめてくれっ!」

 

悲鳴を上げて、彼女は紫の影に隠れてしまった。その様子に麗夢の嗜虐心が刺激されてしまう。今の彼女はまさに新しい玩具を見つけたような眼をしていた。

 

「麗夢、そこまでにしないさい。それより、なんで藍に十字固めなんて掛けてたのよ。」

「私の邪魔をしたからですけど。」

「…邪魔?」

 

話は少し前に遡る。藍に昏倒された麗夢は少しして目を覚ました。状況を確認するなり、カルマの元へ向かおうとしたのだ。それを傍にいた藍が許すはずがない。何とかして止めようとした。その攻防の結果が麗夢に十字固めされた藍の出来上がりというわけだ。

 

「尤も、藍さんのおかげで満足できましたので、十分ですけど。」

 

明るい笑顔でそう言ってのける麗夢。後に藍は悪魔の笑みに見えたと語っていた。

 

「それなら良いわ。それより貴女にやってもらいたいことがあるの。」

「…はい、分かっています。交渉の件ですね。」

「えぇ、そうよ。」

 

人間と妖怪の共存を目的とした領域に入る場所は地底だけではない。他にも多々存在する。

 

「地底はカルマに任せているから、あとは魔界と天界、仙界。」

「そして、地底以上に厄介な…。」

「夢幻世界…。」

 

妖怪の山は条件付きで了承。永遠亭もカルマがいるということで承諾している。冥界は幽々子亡き今、紫が管理している。魔界は入り口の1つが近くにあるだけだが、元をカルマが作った場所であるため、問題ないだろう。天界は少し厳しいかもしれない。

 

「麗夢には夢幻世界に行ってもらうつもりよ。」

「分かってはいますけど…。」

「言わんとしていることは分かるわ。」

 

夢幻世界には凶悪な者がいることくらい誰だって知っている。ある意味では地底以上に面倒な場所だ。

 

「私は魔界と仙界に行くわ。」

「はい。私も焔が戻り次第夢幻世界、後に魔界へ向かうことにします。」

「えぇ、そうして頂戴。」

 

紫はスキマを開いて神社を後にしようとしたが、何か思い出したのかスキマを閉じた。

 

「…?どうしたのですか?」

「夢幻世界のことで言い忘れてたことを思い出したのよ。」

「…はぁ。」

 

麗夢が向かうことになっている夢幻世界。情報が多いに越したことはない。

 

「あそこにいる2人の悪魔は知ってるわよね?」

「勿論知っていますよ。あの世界を作り上げた張本人ですから。」

「その2人が住んでいる館だけど、あの2人を追い出した奴がいるらしいのよ。」

「えっ!?」

 

あの悪魔を追い出したということは、それ以上の力を持った何かがいるということになる。

 

「…それ、大丈夫なのでしょうか?」

「正直わからないわね。でも、あの娘たちよりは話は通じるでしょうけど…。」

 

2人の悪魔と交渉すると考えていた麗夢だったが、ここで違う相手と交渉することになってしまった。悪魔相手ならば、色々な手を考えていたのだが、相手が変わった以上違う手札を用意しなければならない。

 

「…情報が欲しいですね。」

「えぇ、そうね。だから、今は調べている所よ。」

 

尤も現状は芳しくない。何故なら、相手が館から出てこないのだ。それに加え、門番もいる。そう簡単に行くわけでない。

 

「…仕方ないですね。情報不十分ですが、行くことにしましょう。」

「悪いわね。こっちも最善を尽くしましょう。」

「はい、お願いします。」

「吉報を待っているわ。」

 

今度こそ、紫はスキマを開くとその中に消えて行った。

 

「……誰もいません、よね。よし、カルマの所に―」

『行かせやがりません。』

「……。」(´・ω・`)

『そんな顔しやがらないでください。』

 

タイミング良く焔が戻ってきたことで、麗夢の行動は阻止されてしまった。

 

「焔、夢幻世界に行きますよ。」

『切り替え早いでいやがりますね…。分かりやがりました。』

「情報は移動しながら伝えます。」

 

焔は麗夢の中に入ると、紫からの情報を一通り知らされた。

 

『厄介でいやがりますね。』

「そうですね。あの悪魔を退ける以上、それ以上の手練れなのでしょうけど。」

『戦いになりやがらないといいですね。』

 

着いた場所は神社の裏手にある1つの湖だ。そして、彼女たちの気配を察知したのか、1人の少女が姿を現した。

 

「ハロハロ~?ここに何か用かな?」

 

背丈の割に大きな翼を生やした金髪の少女。彼女は麗夢ににこやかに話しかけてきた。

 

「えぇ、この先の世界に用があるのですけど。」

「行かせないよ?」

 

彼女は大きな翼を広げ、前に立ちはだかった。一瞬彼女の瞳が光ったかと思うと、辺りが赤一色の世界と変貌する。

 

「これは…夢幻世界とは違いますね。」

「そうだよ。ここは現実とは違う現実の赤。さてと…、危険な目に会いたくなかったら引き返した方がいいよ。」

「危険は承知の上で来ているのです。交戦を望みだというのであれば、望んで馳せ参じましょう。」

「…そっか。お姉さんの名前は?」

「麗夢、博麗麗夢です。」

「あぁ、麓の神社のだね。あたしはくるみ。じゃあ始めようかっ。」

 




実はこの物語を書きはじめた頃は夢幻世界を出すつもりはありませんでした。
でも、幻想郷の中には色々異界が混ざってるでしょ?
そしたら、こうなっちゃったw
ぶっちゃけ旧作知らないから、偏見になるけど許してね>△<

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,9 湖の吸血鬼

今回はいつもより短いです。
まぁ原作的には最初の方だし、いいかなw
え?オレンジ?
・・・橙かな?( ̄▽ ̄;)

紺珠伝の中でサグメ様が好きw
GET IN THE RINGの「Breaking the Silence」がめっちゃ良い(*^▽^*)
あ、ヒロイン枠に入れようかな・・・( *´艸`)

それは、本編どうぞ


赤一色の世界に爆発音と砂煙が舞う。くるみの放つ弾幕が炎で迎撃し、麗夢の放つ炎を彼女は躱していく。

 

「中々やるじゃん、巫女さん。」

「そうでしょうか。“刀忠火葬”。」

 

両手に炎剣を携え、地を蹴り飛ばす。くるみは大きな翼を翻して躱し、死角となった空いた背中に弾丸を打ち込んだ。

 

『爆。』

 

しかし、それを焔が爆発させて防いだ。焔は麗夢から出ると、くるみに向かって突進し始めた。

 

「おっとと。」

「隙有りですっ!」

 

突進を躱すにしろ迎え撃つにしろ、焔に意識が向いた瞬間がチャンスとなる。くるみよりも高く飛んだ麗夢は彼女の脳天に踵落としを繰り出した。

 

「―ッ!?ぐっ…。」

 

翼で頭上を多い攻撃を防ごうとしたが、衝撃は脇腹に来た。当たる直前に空間を歪めた麗夢は空間をくるみの脇下につなげ、そこから蹴り込んだのだ。

 

「こんのぉ…。」

「―ッ!」

 

彼女もただでやられるつもりはない。腋に麗夢の脚を抱え込み、投げ飛ばそうとする。それに気づいた麗夢は歪めた穴を自分1人が通れる程の大きさに変えた。

 

「うりゃあああああああ!」

「きゃああ!!?」

 

穴を潜り、そのまま投げられてしまった。翼で遠心力を付けている分、威力が予想以上に大きい。

 

「―クッ、“変動”!」

 

落ちる場所を予測し、その地を歪ませた。すると、着地と同時に衝撃は来ず、地面が撓むような形で麗夢の衝撃を緩和した。

 

「うぅ…結構痛い…。」

「私はあの時よりもそれなりに強くなっていると思っていますが…。」

 

麗夢はルーミアとの闘い以降、今後のために鍛えることにしていた。カルマが回復するまで、人里のある侍のもとで特訓していたのだ。だが、やはり元が人間であり女性である以上、威力も弱い方だろう。

 

「まぁ、負けるつもりはありませんね…。」

 

再度、“刀忠火葬”を発動させると、くるみへと突っ込んでいく。

 

「負ける、もんかぁ!」

 

対し、くるみは両手を翳してこちらに光線を放った。そんな単調な攻撃に当たるつもりはない。麗夢は身を翻して躱し、そのまま直進する。

 

「爆ぜろぉ!」

 

通り過ぎていった光線が弾け、全方位の弾幕となった。焔が麗夢から離脱し、弾幕を全て焼き切る。だが、焔が離れたことにより、“刀忠火葬”は消えてしまった。

 

「―クッ!?」

「私に死角はないと思いなさい!」

 

くるみは咄嗟に翼で防御の体勢に入る。だが、麗夢にそれは通用しない。空間を翼の内側に繋げ、腹を殴りつけた。

 

「ウックゥ…。」

「焔!」

 

くるみが怯んでいる隙に、麗夢は焔が中に戻った事を確認するやいなや今開いた穴に両手を翳した。

 

「“百火猟乱”!」

 

至近距離からの熱線がくるみを襲う。彼女はなんとか逃げようとしたが、先の攻撃の反動で動きが鈍ってしまっていた。爆発が起こり、煙を上げながらくるみは地に落ちた。

 

「はぁ…はぁ…。」

「…まだ続けますか?」

 

麗夢は横たわるくるみの隣に降り立つと、彼女に問いかけた。今のくるみは満身創痍、もう続けられそうにない。

 

「…やめとく。私の負けね。」

 

すると、辺りを覆いつくしていた赤い景色が消え去り、元の山奥にと戻った。

 

「それだけ強ければ大丈夫でしょ。その湖から夢幻世界に行けるよ。」

「えぇ、ありがとうございます。」

 

すると、何を思ったのか、麗夢はくるみを抱え上げた。突然のことに彼女は唖然としていた。

 

「ちょ、ちょっと何するの!?」

「あ、こら!暴れないでください。傷に響きますから!」

 

そのまま空間を歪めて穴を開いた。行き先は竹林。

 

「私の知り合いに腕の良い医者がいるのですよ。その人に治療させてもらおうと思いましてね。」

 

 

 

くるみを永琳に預け、麗夢は再び湖の麓に戻ってきた。

 

「焔、門を抜けるまで絶対に私から出ないでくださいね。」

『分かっていやがります。』

 

耳と尾を模っていた炎が引っ込むと、彼女は湖に足を踏み入れた。水の波紋が広がり始める。水深の深くなっていくこと構うことなく彼女は歩みを進めて行く。腰の高さまで来たところで歩みを止め、両手を広げた。

 

「夢と幻の混同しうる異界へ、いざ往かん。」

 

祝詞と共に手を合わせる。すろと、水面の波紋が反響を始めた。荒々しくなる水面に合わせた両手を振り下ろす。水しぶきを上げた瞬間、水の動きが静止した。文字通り、時間が止まったかのように動きを止めた。すると、水面が光り出し、辺りを包み込むほどの光となった。そして、輝きが止むと麗夢の姿はなく、辺りは戦闘の痕跡だけが残っていた。

 




今回はくるみとの戦闘回でした。
原作動画を少し参考にしたつもりでしたが、そんな場面は全っ然無い(`・ω・´)
麗夢の戦闘はトリッキーな戦い方をしています。
それに加え、死角は焔が見ていますので、死角となりません。
・・・あれ?チートすぎね?(;´・ω・)
・・・今更かぁ(*´ω`*)

あと連絡をば。
3月中は投稿できないと思います。
地元に戻るんでなw
出来うる限り早く戻ってくるつもりです。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,10 鎌使いの門番

待たせたな皆の衆!
花粉に負けて帰ってきたぞ!:;(∩´﹏`∩);:
鼻水がやっばいですw

それでは、本編どうぞ


目を開けると、そこは麗夢のいた湖ではなかった。一帯を白亜の石で敷き詰められた光景が広がっている。

 

「…思ったより何もないですね。」

 

見上げれば、夜空が広がっていた。しかし、ここへ来たのはまだ日が出ている時間帯。どうやら外と中で時間が違うらしい。

 

『建物はありやがりますが、壊されていやがりますね。』

 

辺りには瓦礫の山があちこちにあり、元々ここに何か建物があったと思われる。しかし、今の所は人らしい気配を感じられない。

 

「一先ず進みましょうか。」

 

ここで呆けていても仕方ない。歩みを進めるたびに下駄の音が虚しく辺りに響き渡る。

 

「あれは…。」

 

視線の先で景色が変わっている箇所があった。今まで白一色だったが、途中から青いタイルに変わっているのだ。そして、その更に先には館が建っているのが見える。

 

『あのスキマ妖怪が言っていた夢幻館でいやがりますかね。』

「ここまで殺風景な中に1つだけあれば嫌でも目立ちますからね。そうだとは思いますけど。」

 

更に近づこうと一歩踏み出すと、青いタイルが飛んできた。横に飛んでタイルを躱し、前を見据えると門の隣に1人の少女がいた。門からここまで距離は開けている。まさかあそこから飛ばしてきたのだろうか。

 

「―ッ!」

『咢。』

 

更にタイルが襲い掛かってくる。焔の炎を全身に纏うと、そのまま駆け出した。タイルが炎に当たるも爆ぜてしまい、攻撃にならない。すると、少女は肩にかけていた湾曲した大鎌を投げつけてきた。

 

「よっと…。」

 

それを軽く飛んで躱し、更に距離を詰めていく。

 

『伏せやがってください!』

「キャッ!?」

 

焔がいきなり麗夢の身体の主導権を握ると、姿勢を低くした。すると頭上を先程通り過ぎた大鎌で戻ってきた。そして、少女の手元も戻る。

 

「まるでカルマみたいなことしますね…。」

『関心している場合じゃいやがりませんよ。』

「分かっています。“刀忠火葬”。」

 

全身に纏っていた炎を両手に集めると、距離を詰めるために駆け出した。相手も麗夢に対抗しようと、鎌でタイルを剥がして飛ばしてくる。それを炎剣で捌ききっていく。到頭距離が零となり、鎌と炎剣が衝突する。

 

「アンタ、何者よ!」

「ちょっとした巫女さんですよ!」

「んなわけないでしょ!」

 

力任せに炎剣を弾き、鎌を振るう。麗夢は身を翻してそれを躱した。

 

「1つ聞きます。ここが夢幻館で合っていますか?」

「そうよ。私はここの番をしてるエリー。」

「エリーさん、ですね。ここを通してくれませんか?」

「それはできない相談ね。」

 

エリーは姿勢を低くし、鎌を肩に担いでいつでも振り下ろせる体勢に入った。その構えに麗夢は身に覚えがある。

 

「面白い構え方をしますね。」

「“あのお方”を真似ているけど、私もこの方がやりやすいから。」

「“あのお方”?」

 

彼女の口から出た言葉。それには尊敬の念が込められていることが分かる。そして麗夢の身近に同じ構えをとる人物が存在している。十中八九あの魔神のことだろう。

 

「もしかして、カルマのことですか?」

 

エリーの顔が驚愕に染まった。図星ということだろう。

 

「カ、カルマ様を知っているの!?」

「知っているも何も、一緒に住んでいますよ。」

「マジッすか!?」

「え、えぇ…。」

 

瞳を輝かせるエリーに若干ながら引き気味の麗夢。傍から見れば彼女もそうなのだが、黙っていようと思った焔だった。

 

「いいなぁ。あのカルマ様と一緒に居られるなんて…。羨ましいなぁ…。」

「あ、あのぉ…。」

「…はっ!」

 

コホンと咳払いをすると、エリーは再び構えを取った。

 

「カルマ様の知り合いなのは分かったけど、ここを通すかは別よ。」

「…最近のカルマについて知りたくないですか?」

「知りた…いやいや、乗せられないわよ。」

「カルマに会いたくないですか?」

「会いたぁぁぁああくないわけじゃないけどもっ!?」

 

麗夢の誘いに乗らないよう首を横に振るエリー。彼女の様子を見て、麗夢は笑みを浮かべた。

 

 

 

「上手いこと利用されている気がする…。」

「…お兄さん、どうしたの?」

「いや、何でもない。」

「……?」

 

 

 

「ここを通してくれれば、会わせてあげなくもないですよ?」

「うっ…。そ、そういうわけには―」

「鎌の扱いについて、教えてくれるかもしれませんよ?」

「ぐぬぬ…。」

「手とり足とり指導してくれるかもしれませんよ?」

「ううぅぅぅぅぅぅぅ……。」

 

麗夢の甘い言葉に葛藤するエリー。挙句の果てには頭を抱え込んで唸るばかりだ。

 

『目的を忘れていやがりませんか、麗夢?』

「そんなわけありませんよ。」

 

 




はい、くるみに続いてエリーの登場です。
エリーは鎌持ってたので、カルマと少しつなげようと思ったんです。
だからと言って、サボり魔の死神とはなんのつながりもないですよ?w

最初のうちはちゃんとした戦闘をするつもりだったんだけどねぇw
エリーの「仕方ないじゃない!」ってセリフと麗夢の存在でこうなりましたw
いやぁ、麗夢がいるとなんでこうなるんだろ・・・。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,11 綺麗な薔薇には棘がある

PSO2にばっかりやってて執筆活動がおろそかになる今日この頃。
仕方ないじゃない仕方ないじゃない!
だって楽しいんだもん!

それでは、本編どうぞ。


暫くエリーを弄って遊んでいた麗夢だったが、それも終わりを告げた。館の扉が開き、中から1人の女性が現れた。彼女は日傘を差しこちらに近づいてくると、門を開けた。麗夢に向けられた視線は鋭く刃のようだ。その視線は麗夢からエリーに移る。エリーは彼女の存在に気付いておらず、まだ唸っていた。

 

「エリー。」

 

彼女の呼びかけてもエリーは気付いておらず、しゃがみこんで唸っていた。すると彼女の頬がピクリと動く。それに気づいたのか雰囲気を察したのか、麗夢は2人から少し距離を取った。

 

「…エリー。」

「ぅぅぅ。あーでもこれでも…。しかしでも…。」

「……。」

 

彼女は無言で傘を閉じるとそのままエリーの頭に振り下ろした。

 

「あべしっ!?」

 

奇声と共にエリーは頭を抑えた。相当痛かったのか彼女は涙目になっていた。

 

「…エリー、アンタ何してるわけ?」

「ゆ、幽香様っ!?」

 

ようやく彼女の存在に気付いたエリーはバネ仕掛けのように立ち上がった。

 

「こ、これは…違うんです!」

「何が?」

「え、えっと…。」

 

慌てふためく彼女は麗夢へと助けを求めて視線を向けるが、彼女は我関わらずと明後日の方向を向けていた。

 

「(ちょ、ちょっと巫女!助けて!)」

「すやぁ…。」

「(立ったまま寝たふりしないでえええ!!)」

「えりぃ…?」

「あはいごめんなさいですなんでもないですほんとごめんなさい。」

 

エリーは冷や汗を滝のように流しながら、幽香と呼ばれた女性に平謝りしていた。その女性はというと、閉じた傘でエリーを刺しながら責めていた。

 

「焔、おそらく彼女は夢幻館の新しい主のようですね。」

『そのようでいやがりますね。警戒しやがりましょう。』

「―で?そっちの女と妖怪は何の用?」

 

話の矛先が麗夢に向いたようだ。視線を戻せば傘の矛先もこちらに向いていた。

 

「そう警戒しないでください。ちょっとお話したいことが―」

「嫌よ。」

「……。」

「……。」

 

この瞬間、2人の間に激しい火花が散った。このような受け答えならカルマと何度もしたものだが、それは彼が素直でないだけ(麗夢視点)。しかし彼女は純粋に嫌悪を露わにしていた。

 

「話だけでも。」

「嫌よ。」

「どうしてもですか?」

「しつこいわね。私は眠いの。さっさと帰ってくれる?」

「こっちにも理由があるのですが。」

「知ったこっちゃないわね。私には関係ない。」

「……ちっ。」

 

小さく舌打ちした瞬間、彼女に向けられていた傘から高火力の光線が放出された。辺りの景色を飲み込むほどの光が消えると、そこには無傷の麗夢がいた。

 

「驚いたじゃないですか。」

「……。」

 

ただ空間を歪めて開いた空間に光線を逃しただけなのだが、光量が彼女の穴を隠してしまっていたため、相手からどうなったかわからないだろう。もっとも手応えがないことには気づいているだろうが。

 

「…名前はなんて言うのかしら、アナタ。」

「私ですか?博麗麗夢といいます。」

「そう。一応覚えておくわ。」

 

それだけ言い残し、彼女は小さく欠伸をすると館の中へ戻って行ってしまった。女性が去ったことで安心したのか、エリーは傘で刺された頭を押さえていた。

 

「う、うぅ…まだ頭がジンジンする…。」

「エリーさんエリーさん。」

「あっ!さっきはよくも無視してくれたわね!」

「先程の女性がこの館の主ですか?」

「無視かっ!?…はぁ、そうよ。今の女性が風見幽香様。ここの新しい主。」

「風見、幽香さん…ですか。」

 

どうやら予想以上に難しい相手になってしまったようだ。だが、話が通じるだけマシというものだろう。これがもしあの2人の悪魔なら話など通じるはずもない。

 

「今日は出直すことにしましょう。また来ますと伝えておいてください。」

「もう来んな!」

 

露骨に嫌そうな顔をするエリー。しかし、目的を完遂する以上ここに何度も通うことになるのは必然と言える。夢幻世界から出るために空間に穴をあけて、麗夢は夢幻世界を後にした。

 

 

 

外は既に日が暮れ、月が見え始めていた。足早に神社に戻ると紫がのんびりとお茶を飲みくつろいでいた。

 

「あら、おかえりなさい。随分と時間がかかったようね。」

「はい、おかげさまで。」

 

紫と対面する位置に座ると藍がお茶を置き、紫の後ろに戻っていった。置かれたお茶を一口つけてから現状を報告することにした。

 

「そちらはどうでした?」

「こっちは滞りになく進んでいるわ。天界も仙界も大きな問題はないわね。」

「それは上々です。」

「そっちはどう?」

 

麗夢はお茶を飲み一息つくと、夢幻世界での物事を話した。

 

「風見幽香、ね…。」

「はい。明日もあちらに行くつもりですが、あまり期待はできません。」

「そうね。」

 

紫は顎に手を当て、少し考えてから口を開いた。

 

「夢幻世界にはまた違う時にしましょう。少し対策を立てた方がいいわね。」

「そうします。」

「そうして頂戴。魔界の方は私がやっておくわ。」

「はい。ありがとうございます。」

「今日は疲れたでしょ?ゆっくり休みなさい。」

「そうします。」

 

紫は彼女の言葉に頷き、スキマの中へと戻っていった。麗夢も小さく欠伸をすると、居間を後にし夕食の準備へと取り掛かった。

 




この時の幽香は旧作デザインの幽香です。
要は長髪の方ですね。
旧作はどうかは知らないけど、S気はあるつもりですw

交渉決裂ということで、この後も夢幻世界に行く予定です。
あの悪魔も出てないしねw
次回は再び地底に戻るつもりです。
紫の交渉は書きませんw
天界の総長がどんな人かわからないので(´・ω・`)
仙界には太子いるようですが、めんどkげふんげふん(´Д`;)
魔界はもう少し引っ張りたいので、こっちも無しでw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,12 姉妹

温かくなってきましたねぇ。
関東では桜が咲いて花見してる人もしばしば。

何も考えずに書くからこんな内容になっちゃったw
私も頭が春になっちゃったかな(*´ω`*)

それでは、本編どうぞ。


「何の真似だ…。」

「はい…?」

 

場所は地霊殿の温泉。麗夢と一緒に居ないだけで気が楽であり、ついでに温泉で疲れを取ろうとしたのだ。

 

「何の真似だと言ってんだ、古明地さとり。」

 

カルマが温泉に入り疲れを癒している最中にさとりが入ってきたのだ。焦らないところを見ると、故意にやったことなのだろう。

 

「あら、女の子と一緒に入れるんだからいいじゃない。」

「そういう問題じゃねぇよ。」

 

浴室に乱入されることに慣れ始めている自分に呆れを通り越して関心するほどだ。さとりはカルマから少し距離を開けた場所に腰かける。

 

「ほら、こいし。貴方も来なさい。」

「…は?」

 

言われて戸に視線を向けると、さとり妖怪特有の第3の眼がこちらを覗いていた。

 

「お、お姉ちゃん。やっぱり恥ずかしいって。」

「いいから来なさい。これもこいしの為なんだから。」

「おいこら。」

 

彼は呆れながらさとりの頭に手刀を落とした。彼女は打たれた頭を両手で抑え、カルマを見上げてくる。

 

「何するの?」

「何の真似だと聞いてるんだよ。こいしまで連れ出しやがって。」

「そうだよ、お姉ちゃん。お兄さんに迷惑だよ。」

 

影から顔を覗かせたこいしだったが、しっかりとカルマの身体を見ている限り説得力がないように思える。

 

「それにこれ絶対こいしの為じゃないよね!」

「そんなことないわ。人と接するためにも色々な状況を経験する必要があるの。」

「だったらお姉ちゃんと一緒に入るだけでいいじゃん!」

「私だけじゃ駄目よ。他の人ともやらなきゃ。」

「お燐とかいるもん!」

「ペットでしょ?」

「うぅぅ…。お兄さんっ!」

 

反論を封じられ、どうすればいいか考えたこいしはカルマに助けを求めてきた。

 

「なんだよ…。」

「お兄さんからも何か言ってよ!今日のお姉ちゃん意地悪!」

「―だそうだが、さとり。流石に温泉での場合はねぇと思うが?」

「あら?ここは旧とは言え地獄よ?温泉で誰かと一緒になるなんて、日常茶飯事よ。それに閉じこもってばかりだし体も洗わないと。」

「本音は?」

「こいしとカルマさんの反応が見たかっ―あっ。」

「………。」

「………てへ?」

 

可愛らしく舌を出して小首を傾げたさとり。しかし、それで許されるはずもなく、カルマは彼女の両頬を無言で引っ張ることにした。

 

「い、いらいっ!やめへくらさいっ!」

「………。」

「何かしゃれって!こふぁいから!」

「…はぁ。」

 

容姿が幼子とはいえ、カルマには何処ぞの巫女のような趣味はない。溜息とともにすぐ両手を離した。引っ張られた頬を抑えて、さとりはカルマから少し距離を取った。改めて溜息をすると、視線を感じ顔上げる。すると、こいしが頬を膨らませてこちらを見つめていた。

 

「なんだよ。」

「別に…。お姉ちゃんと仲いいんだね。」

「…はぁ、さっさと入れ。冷えるだろ。」

「う、でも迷惑―」

「いいから来い。冷えてんだろ?」

「う、うん。」

 

影から姿を現したこいしはタオルを体に巻いているだけの姿だった。そんな格好のままでいれば冷えて当然だろう。彼女はお湯を体に掛けてからゆっくりと肩まで浸かり、さとりの隣で気持ちよさそうに息を吐いた。

 

「ふはぁ~。」

 

こいしは最近まで部屋から出ることなく閉じこもっていた。そのため体も清潔ではなかった。

 

「こいし、温まったら体洗ってあげるわね。」

「い、いいよ。1人でできる。」

「そんなこと言っても、ずっとしてなかったでしょ?やってあげるから。」

「…わ、わかったよぉ。」

 

女3人寄れば姦しいとは言うが、2人だけでも十分だろう。幼子に興味がないとは言え、流石のカルマは眼を閉じて聞いていないフリをしていた。

 

「あ、なんだったらカルマさんに洗ってもらう?」

「お姉ちゃん!流石にそれは駄目だよ!」

「冗談よ冗談。そんなにムキにならなくていいじゃない。」

「いいもん!こいしが自分でやるから!」

 

言うが早い。彼女は温泉から上がり、体を洗い始めた。

 

「悪いが俺は出るぞ。」

「もう少し温まって行ったらいいじゃない。」

「…わかって言ってるだろ、お前。」

「なんのことでしょう?」

「ふん…。」

 

さとりとのやりとりは疲れる。彼の巫女を彷彿とさせて、休もうにも休めないのだ。カルマはそのまま温泉から出て行ってしまった。

 

「行っちゃった。」

 

ふぅと息を吐き、体を洗っている妹の方に視線を向ける。カルマが来るまで塞ぎ込んでいた彼女だったが、彼が来てからというもの目に見えて明るくなった。

 

「これもカルマさんのおかげかしらね。」

 

彼のおかげで地霊殿の中だけだが、少し出歩けるようになっていた。

 

「終わったよ、お姉ちゃん。」

「分かったわ。」

「…あれ?お兄さんは?」

「先に出て行っちゃったわよ。」

「そっか…。」

 

こいしはお湯に口まで浸かり、ぶくぶくと泡を浮かべ始めた。

 

「どうしたの、こいし?」

「何でもない…。」

「…やっぱりカルマさんと入りたかった?」

「違うもん!」

 

大声を上げると彼女は温泉に潜ってしまった。拗ねた妹の様子を微笑ましく思いながら体を洗うことにした。

 

 

 

「………ククッ」

 




こいしに少し違和感ある感じだと思います。
ほら、こいしって無邪気なイメージあるじゃない?
この時点でのこいしはまだ心を完全に閉じてるわけじゃないのでねw
ついでに言います。
カルマはロリコンじゃないです!(←ここ重要

なんでここのさとりはこんな性格してるんだろ・・・(´・ω・`)
まぁほっぺむにむにできたからいいかなw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,13 途絶

とうに四月ですが、新生活が始まりますね。
新入生、新社員のみなさん頑張ってください。

それでは、本編どうぞ。


カルマは地霊殿の廊下を歩いていた。

 

「………。」

「あ、魔神さま。」

 

1匹の猫が炎と共に人間の姿に変わって、カルマに話しかけてきた。

 

「燐か。」

 

ここで住ませてもらっている以上、何度か顔を合わせているため、名前も覚えている。

 

「焔を見ていないか?」

「んー?見てないけど…。」

「そうか…。」

「焔がどうしたの?」

「いや、見ていないならいい。」

 

気にするなと彼はお燐に手を振りその場を後にしようとしたが、お燐に呼び止められた。

 

「あっ、さとり様が呼んでたよ。」

「…分かった。」

「場所は分かるよね?」

「初めて来た時に交渉した部屋で合ってるか?」

「合ってるよ。」

「分かった、今行く。」

 

お燐と別れ、さとりのいる部屋へと向かう。だが、部屋の中ではなく外にさとりはいた。

 

「中に入らねぇのか?」

「貴方にお客様よ、カルマさん。」

「客だと?」

「心を読まれるとやるづらいからここにいるの。話がまとまったら教えて。」

 

そう言い残すとさとりは去って行ってしまった。不審に思いながらも扉を開ける。中に居た彼女はノックもなしに入ってきたカルマに驚き、紅茶で咽せてしまった。

 

「…何してんだ、貴様は。」

「けほっけほっ…。ノックくらいしなさいよ、カルマ。」

「知らん。」

 

確かにノックをしなかったのは悪いが、彼女―八雲紫にそんなことしてやる義理はない。そのまま紫の対面に腰かける。

 

「はぁ…ふぅ。さてカルマ、そっちの進み具合はどうかしら?」

「あ?…まぁまだ掛かるか。アイツ、当初よりかは明るくはなったがこの館からまだ出ていないからな。」

「そう、まだまだ時間は掛かりそうね。」

「まぁな。そっちはどうなんだ。」

「そうね…。良い報告と悪い報告、どっちがいいかしら?」

 

指を2本立てて彼女は聞いてきた。対し、カルマは溜息をつくのみ。

 

「どっちでもいいから、早くしろ。」

「釣れないわねぇ。まぁいいわ、良い方から話しましょうか。」

 

紅茶で喉を潤すと彼女はこれまでの報告を始めた。

 

「私の計画の範囲に入る世界の交渉で天界、冥界、魔界、仙界の4界が了承したわ。あとは夢幻世界だけ。」

「他の界があるなど聞いていないが?」

「言ってないもの。」

「テメェ…。」

「対して大きな事態でもないでしょ?」

「魔界に至っては関係があるんだが。」

 

魔界の管理はしていないとはいえ、作ったのはカルマだ。少なからず関係はしてくる。

 

「あちらはカルマがいるからって許可もらったわよ。」

「もう少し考えろよ、あのバカ…。」

「信頼されてるんでしょう?いいことじゃない。」

「…ちっ。で、悪い方はなんだよ。」

 

重要なのは悪い報告の方だ。場合によっては今後の計画を変えなければならない可能性がある。

 

「…私が何故ここにいるか分かるかしら?」

「あ?」

 

今まで地上と地底の連絡係は焔がやっていること。一度地上に戻り、麗夢と夢幻世界にいったようだが、その後も連絡は焔が担当していた。それが今回は紫がやってきた。

 

「焔に何かあったのか?」

「…繋がりが切れたのよ。」

「何?」

 

繋がりが切れた。話の流れから焔との繋がりだということは分かる。

 

「どういうことだ?麗夢はどうした?」

「ふぅ…。麗夢は焔が憑りついた狐憑きってことは知ってるわね?」

「あぁ。」

 

麗夢は餓死しかけていた時に焔が憑りついたことで生き永らえた。それは彼女本人やルーミアから話を聞いている。憑りついている故に狐火の力も使えることも知っている。

 

「以前ルーミアと焔が戦っていた時も麗夢は焔の存在を感じていたわ。」

 

麗夢と焔は繋がっている。場所は分からなくても、その存在を感じることができるのだ。それは勘に近いものだとも言えるだろう。

 

「麗夢が焔の存在を感じられなくなったのよ。」

「…成仏した、にしては急だな。」

「それは私たちも同意見。でも何故かはわからないわ。」

 

あの焔が何の連絡も無しに繋がりを断つとは思えない。何かあったに違いないのだ。

 

「麗夢はどうしてる?」

「あら何?気になるのかしら?」

 

にやりと笑う彼女にカルマは小さく舌打ちをし睨みつける。

 

「半身が消えたも同然だろうが、不安定になったりしてねぇのか?」

「そうね。普段から一緒にいたものだから、かなり不安定になってるわね。」

「…ちっ。紫、スキマ開けて待ってろ。」

 

カルマは紫にスキマを開かせると、そのまま退出する。部屋の外にはさとりが待っていた。

 

「話は終ったの?」

「いや、まだだ。悪いが俺は一度地上に戻る。」

「…どれくらいで戻ってくるのかしら?こいしをあまり待たせないでほしいけど。」

「こいしがどうしたの?」

 

話を聞きつけたのか、こいしが2人の前に現れた。

 

「あぁ、一度地上に戻ろうと―」

「えっ…。」

 

すると、何を思ったのかこいしはカルマに力強く抱き着いてきた。

 

「お、おいっ。」

「行っちゃヤダ!」

「いや…んなこと言われてもな…。」

「うぅ…。」

 

涙目で見上げられ戸惑ってしまったが、カルマは元々地底で住んでいるわけでもなく、ここに永住するわけでもない。いずれはここから離れなければならないのだ。

 

「無理言っちゃだめよ、こいし。カルマさんにも色々あるのよ。」

「うぅ、お姉ちゃん…。」

「悪いなさとり。こいしも安心しろ、出来るだけ早く戻ってくるつもりだ。」

「…分かった。」

 

こいしは姉にも悟られ渋々カルマから離れた。2人はカルマに手を振り別れを言うと、彼は部屋の中に戻る。既に紫がスキマを開いてこちらを待っていた。

 

「随分と慕われるのね。」

「知るか。さっさと済ませるぞ。」

「はいはい。」

 

2人はスキマを通り部屋から出て行ってしまった。




焔がいなくなっちゃいました。
何故かは数話先になるかな。
うーむ、5話くらい先かな?
次回はあの人のあられもない姿が・・・( *´艸`)

なーんかカルマが丸くなってんなぁ・・・。
こいしに甘いような気がする。
いや、まぁ・・・うん・・・。
てか、こいしがデレてきたヤヴァイw
カルマが地底に住むことになったら、絶対ブラコン(?)みたいになるんだろうなぁw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,14 歩みを止めず

まだ四月なのに夏服の用意を始める私。
いや、だって暑いんだもんw
雨降ればそれなりに寒くなるけどさ・・・。

それでは、本編どうぞ


紫のスキマを通して、久々の地上に戻ってきたカルマ。ずっと地底にいたこともあり、太陽の眩しさに手を翳して目を細めた。

 

「麗夢は中にいるわ。私はまだやることがあるから、帰るわね。」

 

紫はカルマを残し、逃げるようにスキマの中へと消えて行ってしまった。彼女が逃げたのも頷ける。何故なら、そこから分かるほどに神社から何か身の危険を感じる気配を感じるためだ。

 

「十中八九、麗夢の奴だろうが…。」

 

溜息をつくと、神社の中へと足を踏み入れる。長いこと戻ってきていなかった故の懐かしさが込み上げてくるが、それは後回しだ。麗夢のいる私室の前で戸に手をかけた所でカルマの動きは止まった。

 

「…酒臭っ。」

 

戸の隙間から濃い酒の匂いが漂ってきたのだ。酒を飲んで焔の件を忘れようとでもしたのだろうか。

 

「おい、麗―」

 

戸を開けた瞬間、彼の身体が硬直した。

 

「ほえぇ?」

 

【挿絵表示】

 

酒瓶に埋もれ、完全に出来上がっている麗夢の姿があった。数秒で硬直を解けたカルマの行動は早かった。すぐさま目をそらし、上着を彼女に投げつけた。

 

「少しくらい隠せよ、馬鹿が!」

 

しかし、酔いの回っている麗夢にそんな判断ができるわけもない。

 

「えへへぇ、カルマがいる~。」

「さっさと着ろ!」

「らってあちゅいんですもーん。」

 

焔がいなくなっても、脱ぎ癖は治っていないようだ。麗夢の酔いが覚めるまで、別室に行こうとしたが、それよりも早く彼女がカルマの脚にしがみついてきたのだ。

 

「うおっ!?」

「かぁるまぁ~。うふふ。」

「くそっ、離せ!」

「いーやでーす、えへえへ。」

「ちぃっ!」

 

―第11禁忌魔法―

 

「“ロスト”!」

「……あれ?」

 

麗夢は体内にあったアルコールを消され、一気に酔いが覚めた。見上げればカルマの目を逸らしている姿。そして自分のあられもない恰好。

 

「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」

 

 

 

乱れた服を着直した麗夢は膝を抱えて部屋の隅に座っていた。そこ場所だけ夜になっているかのように暗い。

 

「うぅ…、もうお嫁にいけない…。」

「…いい加減機嫌直せ。」

「帰ってくるなら来るって教えてくださいよ、もぉ…。」

 

酔っている間のことは記憶しているタイプの麗夢は自分のやってしまったことで恥ずかしさを感じていた。彼女は攻めて行くタイプだが、攻められたりハプニングには弱い一面がある。

 

「…責任、とってください。」

「そういう話をしに来たんじゃねぇよ。」

「むぅ、知ってますよ。焔のことでしょう?」

「そうだ。」

 

ここへ来たのは焔を失った麗夢の様子を見るためだ。彼女が泥酔していたことから、精神的に追い詰められていたのだろう。

 

「話は聞いているでしょうけど、もう焔とは繋がりが切れています。何も感じないのです。」

「そうか…。」

「夢幻世界の件もありますし…。」

「…紫は駄目なのか?」

 

夢幻世界には風見幽香という強力な妖怪が居着いている。彼女はあの高火力の光線を持っている。恐らく他にも何かあるだろう。

 

「紫さんは今境界の結界の術式をくみ上げている最中です。規模が大きいですからね。式をくみ上げては更に手を加えているのですよ。」

「紫にもやることはあるか…。」

「はい、かと言って私は焔がいないので、戦うこともできないようなものですし。」

 

麗夢の戦闘手段は焔の炎が主体で攻撃を行っているものが多い。

 

「止むおえんか。俺が行く。」

「でも地底はどうするのですか?」

「出来るだけ早く済ませれば、問題ない。」

「魔力は大丈夫ですか?さっきだって私に…。」

 

酔っていた時のことを思い出したのか、彼女の顔が赤面になってしまった。

 

「永琳の所に行けば、薬があるだろ。」

「…そうですか。なら、ここで待っててください。私が取ってきます。」

 

少しでも魔力の消費を抑えた方がいい。そう判断した麗夢は空間を歪めて、永遠亭へと向かっていった。

 

「貴方が来てくれて助かったわ。」

 

麗夢がいなくなると、スキマを開いて紫が顔を出してきた。

 

「何がだ。」

「あの娘、酔うと脱ぐは絡むはで大変だったのよ?」

「そうかよ。」

 

先の様子から彼は今後彼女の酒を飲ませないと誓った。酔ったとしても近づかないようにしよう。

 

「―で、俺は永琳の薬を飲んだ後に夢幻世界に向かう。」

「えぇ、聞いていたわ。」

「夢幻世界の情報が欲しい。」

「はいはい。」

 

夢幻世界はこことは違う世界であり、入り口は博麗神社の裏口の湖にある。元々は2人の悪魔が作り上げた世界であり、夢幻館に住んでいた。しかし、今は風見幽香という妖怪が住み着いている。

 

「こんなものかしら。あぁ、あとエリーって娘が門番をしているわね。その娘、鎌を使った戦いをするんだけど、誰かさんを尊敬してるとかで、真似た戦いをするのよ。」

「…俺とか言わんだろうな?」

「残念。貴方のことよ、カルマ。」

 

クスクスと笑う紫に対し、うんざりとした表情をするカルマ。

 

「面倒だな。俺と麗夢の2人で行った方が良いか…。」

「麗夢は交渉、貴方は戦力。意外とスムーズにいきそうね。」

「まぁな。」

「お互いが支え合ういい関け―」

 

最後まで言わせずに、カルマの大鎌が紫の頭上から落ちてきた。すぐに頭を引っ込める紫。その隙にカルマはスキマの傍まで移動する。

 

「あ、危ないじゃないのよ!」

「さっさと帰れ!このド低能!」

 

彼女の頭をスキマの中に押し込むと、彼はスキマを抑え無理やり閉じさせた。

 




際どい所は隠したったぞドヤァ(`・ω・´)
麗夢がいつも通りに見えるのは仕事で現実逃避をしているようなものです。
お酒もそのためにがぶ飲みしてもらいましたw
あ、お酒の飲み過ぎは注意しましょうね。
急性アルコール中毒とかあるから。
私?飲まんよw

焔がいないのに脱いでいるのは、身体に染み付いちゃったようなものです。

禁(ry
第11禁忌魔法“ロスト” ー 今回は麗夢の体内にあるアルコールを消しただけだが、本来は対象をあらゆる記録から存在を抹消するもの。

次はカルマと麗夢で夢幻世界です。
エリーがどうぶっ壊れるのか、私もわかりません( ´艸`)
でもぶっ壊れるのは確実だよw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,15 通り越した尊敬

先々週あたりにマツタケ様以外の動画に出てきましたw
誰かは言わないよ?
ヒントは同じゲームですたい(*´ω`*)
ちゃっかりいるんで探してみようw

尊敬って行きすぎるとヤンデレになるのかな?
うちの子も行きすぎたらヤンデレになるし・・・。
でもロリ枠が一番多いw

それでは、本編どうぞ。


「―というわけで永琳さん、お薬くださいな。」

 

永遠亭にやってくるなり、状況説明を済ませると彼女は永琳に両手を突き出した。

 

「前触れもなく来てそれなのね。」

 

溜息をつくと、彼女は薬を出すことなく椅子に座り直した。薬を出す様子のない彼女に首を傾げる。

 

「悪いけど、薬はないわ。」

「無いのですか?」

「えぇ。別にいじわるとかそういうのじゃないの。材料が足りないのよ。」

 

カルマの魔力は神力と混ざり合った特殊な力。故に材料も特殊なものなのだ。

 

「なら、材料取ってきますよ?どこにあるのですか?」

「残念だけど、もう存在しないわ。」

「存在しない、ですか?」

 

薬の材料が存在しない。材料となるものの時期が過ぎたということならば分かるが、存在しないと来た。

 

「この前まで作ってたものは月から持ち込んでいたもの。故に地上にはもう無いってこと。」

「そんな…。」

 

カルマの薬の材料は月の者たちがまだ地上に居た当時にあったもの。そして月移住の際には爆弾を投下し焼き野原とした。カルマが月に付いて行ってくれると思っていた彼女は材料を出来うる限り月に持ち込んでいたのだ。

 

「ここから先は時間との勝負ね。カルマの魔力がどこまで回復できるかが問題よ。」

「……。」

 

以前の薬の効果で通常よりも回復速度は上がっている。先に“ロスト”を使ってしまったが、まだ彼には2、3つの魔法を使う分の力は残っている。

 

「尤も手は無いわけじゃないわ。」

「それは?」

「カルマを連れてきてくれる?」

「―?分かりました。」

 

方法があるに越したことはない。彼女はすぐさま穴を開くとその中に手を突っ込んだ。

 

「うおっ!?」

 

すると、袖を引っ張られる形でカルマが穴から出てきた。

 

「はい、連れてきました。」

「流石ね。」

「何のことだ?」

「気にしないで。カルマ、悪いけど貴方の血を少しもらえないかしら?」

「血?」

 

棚から小瓶と注射器を取り出し、着々と準備を進めながら永琳は説明を始めた。

 

「今貴方の薬も材料もないの。それで貴方の血から成分を複製して薬を作ろうと思ってね。」

「…なるほど。まぁ構わんが。」

「じゃあ腕出して?」

「あ?別に適当に傷つけてそれを取れば―」

「腕、出して?」

 

なんとも言えない威圧に押され、カルマは素直に腕をだした。動脈のある場所に注射器を刺して血液を採っていく。

 

「なるほど。今の感じで言えばカルマも言う事を聞いてくれるのですね。」

「真似るなよ。」

「適当に傷つけたら空気中のモノも取り込んじゃうでしょ?―っと、これだけあれば十分ね。」

 

注射器を抜き、ガーゼを取り出すと刺していた場所に当て、テープで固定した。

 

「んなもん使わなくても―」

「ん?」

「……。」

 

永琳は血の入った小瓶に蓋をすると、椅子から立ち上がった。

 

「成分調べるのにも時間がかかるから、完成したこっちから行くわね。」

「分かりました。では、一度神社に戻りましょう。」

 

 

 

神社に戻ると、紫と藍が居間で待っていた。

 

「早速行くのかしら?」

「はい。薬がないのは残念でしたが、大丈夫だと思います。」

「別に鎌があれば問題ないだろ。」

「そぉ、分かったわ。私たちもあと少しで式が組みあがるから、合間を見て焔を探してみるわね。」

「…お願いします。」

 

焔の話が出ると麗夢の顔に影が差した。やはり心配なのだろう。

 

「…別に俺一人でも構わんが。」

「貴方が交渉らしい交渉が出来るとは思えないんだけど?」

「それは同感です。」

「お前ら…。ちっ、先行くぞ。」

「あ、待ってください!」

 

溜息にとどめると、紫に背を向けた。それに倣うように麗夢も後を追う。

 

「では紫さん、藍さん!後の事はお任せしますね!」

「えぇ、分かってるわ。いってらっしゃい。」

 

 

 

今度は湖を通ることなく、麗夢の歪めた穴により夢幻世界へとやってきた。

 

「ここが夢幻世界か…。」

「えぇ、そうです。目的地はあっちですね。」

 

2人は夢幻館のある場所へと歩みを進めていく。変わり映えのない風景に飽きたのか、麗夢が話しかけてきた。

 

「…そういえば、初めてですね。」

「何がだ?」

「いえ、今まで忙しかったのであまり考えていなかったのですが、2人だけで出かけることがなかったと思いましてね。」

「…2人で都行っただろ。」

「送迎の時くらいだけでしょう?あとは輝夜さんを助ける時だけです。あれは時間が短いので含まれません。」

 

ふふんと嬉しそうに語る麗夢に、カルマは視線を向けるもすぐに前を見据えた。そんな釣れない反応が彼らしくもあり、クスクスと笑いながら歩みを進めていく。そんなことをしながらあっという間に夢幻館が見えてきた。

 

「あそこですね。カルマはここで待っていてください。」

「あん?…まぁわかった。」

 

カルマを置いて夢幻館の門へと近づくと、例のごとく青いタイルが飛んできた。それを歪めた空間に吸い込みながら、エリーの元へと近づいていく。

 

「こんにちは、エリーさん。」

「また来たの、アンタ?」

「はい、また来ました。幽香さんでしたっけ?彼女はいます?」

「さぁね。それよりさっさと帰ってほしいんだけど。」

 

そういうと鎌の切っ先を彼女に向けた。それに怯える様子もなく、麗夢は笑みを浮かべるのみ。

 

「いいのですか?そんなことして。私はカルマと縁がある人ですよ?」

「あの時はそれで惑わされたけど、虚言の可能性ってこともあるわ。本当になら今すぐ連れてきなさいよ。どうせ嘘なんでしょ?あの方がそう簡単に相手してくれる程の―」

「カルマー!」

「なんだ?」

 

麗夢の言葉を嘘と思い込んでいたエリーの前に現れたカルマ。現れたカルマの姿と保有する特有の魔力を感じ取り、本物と認識するまでコンマ1秒。エリーは自信満々で語っていた姿勢で立ったまま気絶した。

 




空気中には微生物がたくさんいますからねぇ。
病原菌然りね。
みなさんも気を付けましょう。
血液も凝固するからねw

エリー は 凍って動けない!
ここのエリーさんは初心やな( *´艸`)
どこぞの男の娘みたいにツッコミポジじゃないというw
さぁて、次回でどうしようかな(*´ω`*)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,16 夢幻

シリアスが多くてギャグが少ない・・・。
あ、そうだ!
そのうちNG集とかやってみようかなw

それでは、本編どうぞ。


「…あれ?もしもしエリーさーん?」

 

カルマが現れた直後に微動だにしなくなったエリーの前で手をひらひらさせてみる麗夢だったが、それでも反応がない。

 

「気失ってんぞ、そいつ。」

「…みたいですね。」

「どうすんだ?先進むかここで待つか。」

「そうですねぇ…。」

 

ここに焔がいれば判断の幅も広がるのだが、無いものを強請ってもしょうがない。

 

「カルマはここで待っててください。私が中に入ろうと思います。」

「……。」

 

彼は固まっているエリーを一瞥すると溜息をつくと門壁に背中を預けた。万が一に備え、大鎌も傍らに掛けておく。

 

「さっさと行ってこい。」

 

カルマは腕組みをして館を顎で示した。それに頷き、麗夢は重々しい扉を開けて夢幻館の中へと入っていった。

 

 

 

館の中は薄暗い程度で汚れらしい汚れは見受けられなかった。しかし、従者らしい者の気配は一切感じられず人気がない。

 

「曰くつき物件みたいですね…。」

 

下駄の音だけが響く中、麗夢は歩みを進めて行く。外から見て分かるほどの大きさがあり、迷いそうだが彼女は空間を飛ぶことができるため問題ないだろう。外に面した廊下に差し掛かかり、ふと外に見てみるとそこには庭一面を覆う花が広がっていた。

 

「…あ、見つけました。」

 

探し人はその花畑の中に居た。流石に窓から出るわけにいかなず、空間に穴をあけて外にでた。

 

「風見幽香さんでしたっけ?」

 

彼女の呼びかけに幽香は半ば振り返り、日傘の下から除く鋭い目つきでこちらを睨んできた。

 

「…また来たのね。……白菜ライムだったかしら?」

「博麗麗夢、です。は・く・れ・い・れ・い・む!」

「そうだったわね。」

 

幽香はそれだけ言うとこちらに背を向けた。なんとも言えないやりにくさに彼女は溜息をついた。

 

「お話があります。」

「話っていうのは以前来た時と同じことかしら?」

「そうです。」

 

差していた傘を閉じると彼女はその先を麗夢に向ける。以前にも同じことをされていたために対処は簡単だ。すぐに空間を歪める準備を済ませる。

 

「前に言ったでしょうが。聞く気はないわ。」

「そういうわけにはいかないのですよ。」

「つまらないことに協力する気はないわ。」

「つまらなくありません。未来のためです。」

 

一触即発の雰囲気が流れ、辺りの花たちもざわざわと騒ぎ出した。麗夢の周りも歪み、背後の屋敷が歪んだように見えてくる。

 

「…そういえば、エリーはどうしたのかしら?ここに来る以上、門を通るはずだけど。」

 

幽香は警戒を解くことなく、問いかけてきた。

 

「エリーさんならカルマが相手してあげていると思いますよ。」

「……知らないわね。」

 

幽香にとって花以外に興味をほとんど示さないため、カルマのことを知ってはいない。

 

「カルマもあまり既知になりたくはないような節があるので、問題はありませんね。」

 

カルマが初対面の際にすることと言えば、簡潔に自分の名前を教える程度だ。聞かれない限りか話の流れで言う以外に自分の事は口にしない。

 

「そう。ならさっさと帰ってくれる?私はこの子たちに水をやらないといけないんだけど。」

 

彼女の周りには大量の花が咲いている。1本たりとも枯れるような様子が見受けられない。

 

「…よく育てられていますね。」

「当たり前でしょ。だからさっさと帰りなさい。」

 

取り付く島もない彼女に麗夢はだんだんと面倒くさくなってきていた。力で捻じ伏せてしまおうとも考えたが、相手が相手であるために交渉と言えるものではなくなってしまう。

 

「「―――――ッ!?」」

 

それは突然訪れた。いきなりの重圧に2人はバランスを崩しそうになったが、なんとか踏みとどまることができた。

 

「…来やがったわね。」

「この感じ、まさか!」

 

強力な気配はこことは違う場所、門の方から感じられた。しかも1つでなく2つ。麗夢は穴を開けると、すぐに門へと移動した。そこには鎌を構えているエリーと腕組みをしているカルマがいたが、注目すべきはこの2人ではない。

 

「私たちの世界にまたゴミが来てるみたいよ、夢月。」

「そうみたいね、姉さん。ゴミはさっさと掃除しちゃいましょ。」

 

 

 

―時間は少し遡る―

 

麗夢が館の中に入った所を確認すると、カルマは壁に背中を預けたままぼーっと空を眺めていた。

 

「…異界、か。」

 

魔界を作ったとはいえ、一度も行ったことがない。紫の計画に一区切りついたら行ってみるのもいいだろう。

 

「――はっ!?」

 

やっと意識を戻したエリーは慌てて辺りを見渡した。麗夢の姿がないことに気づき、首を傾げる。

 

「あ、あれ?白昼夢?」

「だったらよかったな。」

「ファイッ!?」

 

驚いて声のした方を見ると、カルマが呆れた目線を向けていた。対して憧れの人物がいるという状況にまた気を失うようなことはなかったが、パニックに陥っていた。

 

「あぅわわわあああああうあううううあうううああわわわああ!??」

「落ち着け。」

「おちおちおおおおおお!?」

「……。」

 

溜息をつくと、立てかけていた鎌に手を伸ばす。すると、勢いよく振るってエリーの首元で止まった。

 

「――ッ!?」

「……落ち着いたか?」

「…心臓に悪いです。」

 

パニックから冷や汗というあんまりな方法で冷静にさせられた。他にも方法はあるだろうが、カルマがそんな気遣いができるわけがない。

 

「あの巫女の言ったことは本当だったのね…。」

「あ?何か言ったか?」

「いえっ!なんでもありません!」

 

慌てるようなことはなくなったが、ガチガチに緊張してしまっていた。紫にエリーのことを少しは聞いていたが、対して興味は沸かずまた壁にもたれかかった。エリーはというと、憧れの人に会う事ができ、何か話をしようと思考を巡らせていた。

 

「あ、あの―」

 

その時だった。強大な力を感じ、彼女は慌てて鎌を構えて気配のする方へと身体を向ける。視線の先にいるのは2人。天使のような翼を生やした少女とメイドの服を着込んだ少女。

 

「こいつら…」

 

カルマが2人の観察をし始めた。そのタイミングで麗夢も夢幻館から戻ってくる。

 

「私たちの世界にまたゴミが来てるみたいよ、夢月。」

「そうみたいね、姉さん。ゴミはさっさと掃除しちゃいましょ。」

 




やっと登場させることが出来ました。
最凶最悪の悪魔ですよ。
次回は戦闘を入れるつもりです。
旧作キャラの弾幕調べないとなぁ・・・(´・ω・`)
GW使って調べ上げなくては・・・。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,17 最狂の狂気

幻月と夢月のプレイ動画を見た結果・・・。
⊂⌒~⊃。Д。)⊃わがんねっww
いや、弾幕を文章で表現するのは無理あるよw
分かったのは弾速が速いってことくらい?

それでは、本編どうぞ。


エリーとカルマ、そして麗夢の目の前に降り立った2人の悪魔。2人からは幽香と同等かそれ以上の力を感じることができる。

 

「ゴミは変な色の女と長い髪の男みたいね。」

「姉さんはどっち掃除する?」

「夢月から選んでいいよ。」

「そうねぇ…。男にしようかな。」

「じゃあ私は女ね。」

 

翼の生やした悪魔は麗夢を、メイドの服を着ている悪魔はカルマを標的に定めたようだ。

 

「カルマ様と巫女は逃げてください。ここは私が足止めします。」

「麗夢、アイツらの情報をよこせ。」

「翼のある方が幻月、そうでない方が夢月と言い、悪魔の双子です。」

「ちょ、ちょっと私の話を―」

「2人はこの世界を作った存在であり、2人とも強力な悪魔です。」

「分かった。」

「だから、私の話を―」

 

話を無視して話を進める2人にエリーは焦っていた。麗夢はともかく、尊敬しているカルマにこちらの事情とも言える幻月と夢月の存在に巻き込むわけにはいかない。

 

「エリーさん、貴女の方が下がった方が身のためです。」

「俺だって貴様を守りながら戦える程、悠長なことできねぇからな。」

「で、ですが―」

「そこまでよ、エリー。」

 

幽香が現れ、エリーの肩に手を添え彼女を止める。

 

「貴女じゃ足手まといよ。下がっていなさい。」

 

主の指示に渋々頷くと、幽香と共に門の傍まで下がった。幽香は戦おうとしない。2人の実力を観察するために出てきただけだ。

 

「来ますよ、カルマ。私が幻月をやります。」

「なら、俺は夢月とかいう悪魔か。」

 

こちらに向かってくる姉妹を離すために2人はそれぞれ反対の方向に飛び出した。案の定、幻月が麗夢を追い、夢月がカルマを追っていった。

 

「いい機会だし、貴女の尊敬する人の戦い方でも見ておいたら、エリー。」

「ここからでも見ることはできます。」

「そう…。」

 

 

 

幻月は麗夢を追いながら、速度の速い弾幕を放ってきていた。

 

「逃げても意味はないよ、女!ゴミはゴミらしく掃除されなさい!」

「言ってくれるじゃないですか。」

 

麗夢は彼女に背を向けたまま、目の前に歪みを生んだ。そしてそのまま中に入るとすぐに閉じる。

 

「えぇっ!?逃げる―」

「わけないでしょう?」

「―ッ!?」

 

幻月は反射的に上に飛んだ。すると、さっきまでいた場所に彼女自身の放った弾幕が着弾する。

 

「遊んであげますよ、幻月さん。」

「…ゴミの分際でいい度胸してるじゃない。」

 

彼女は横薙ぎに手を振るとそれに追従するように弾幕が放たれてきた。麗夢はそれを後方に飛んで躱す。麗夢の歪みは円状に広げるもの。線で攻撃されれば、その線を覆うほどの歪みを作らなければならないが、幻月の弾速がそれを許さない。

 

「焔無しでもやってやりますよ!」

 

手を翳して空間を歪め、その空間を圧縮していく。そして圧縮された空間を幻月に向けて解放する。

 

「あはっ、面白いことするのね。」

 

それを軽々と躱し、麗夢に接近しながら弾幕を放っていく。対し、麗夢は後方に歪みを生み、その中に逃げ込んだ。

 

「ちっ、またそれ?」

 

全方位に手当たり次第弾幕を放った。麗夢に移動した場所がどこであれ、これなら当てることができる。

 

「うっ!?」

 

移動した先に弾幕が迫っていたため、反応できずにあたってしまった。麗夢の声のした方向に向けて光線を放つ。幽香のものよりは威力は劣るがやはり速度が上だ。

 

「歪めっ!」

 

光線を歪めることで軌道を逸らした。さらに連続で歪めさせ、幻月に戻ってくるように軌道を変える。

 

「もう1発!」

 

さらに光線を放ち、自分へ向けられた光線にぶつけて相殺する。そして光線の数を増やして麗夢に放った。しかしその光線は歪められた空間の中へと吸い込まれていく。

 

「お返しします!」

「きゃっ!?」

 

幻月の周囲に数多の歪みは生じ、その1つ1つから自分の光線が返されてきた。光線は着弾し、煙を上げる。煙が邪魔で様子が見えないが、その必要はなかった。

 

「こんのおおおおっ!!」

 

翼を広げた時の風圧で煙が吹き飛ばされた。翼にいくつか傷があることから、翼で自分を覆い防御したのだろう。

 

「…ふふ、ふふふ。あはは、あははははははははっ!」

 

自分に傷を負わせされた怒りを深呼吸で鎮めると彼女は小さく笑いだし、そしてそれは発狂ともいうべき笑いへと変わった。

 

「ぶっ殺してやる!」

 

どうやら地雷を踏むどころか踏み抜いてしまったらしい。彼女から更に弾速を上げた弾幕と光線が放たれた。麗夢はそれをまた歪めた穴に入れようと手を翳した。

 

「させない。」

「―んなっ!?」

 

弾幕に気を取られたとはいえ、幻月がいきなり目の前に現れて彼女の腕を掴んだのだ。しかも悪魔らしい怪力で掴まれ、骨が悲鳴を上げている。

 

「離、しな・・・さい!」

「いいよ?」

 

すると腕を掴んだまま麗夢を振り回し、勢いにつけて地面に投げ飛ばした。威力が強く体勢を整えることができない。

 

「うっくぅ…。“変…動”っ!」

 

着地するだろう場所の地面を歪ませ、衝撃を緩和しようとする。しかし、着地する前に幻月がその先に高速で移動してきた。どうやら弾速だけでなく、身体能力の速度も上げているらしい。

 

「死ねっ!」

「――ごはっ!!」

 

横一線の強力な拳が麗夢の脇腹に食い込んだ。吐血を空中に残し、彼女は殴り飛ばされ地面に落ち、数回跳ねた後に轟音と共に土煙を上げて止まった。幻月は手に付いた血を振り落とし、彼女に追撃するために追いかけて行った。

 




幻月と夢月のセリフを見てみると、幻月は少し抜けている感じなのよねぇ。
そして夢月がずるがしこい感じかなw
この物語はその線で行こうと思いますです。
2人で1人とか言ってるみたいだし。
どこの仮面ライダーかな?w

さぁて、次はカルマと夢月の方に行きます。
麗夢と幻月の続きはどうなるのかなぁw

あ、そうそうw
YouTubeの方の実況に出てきましたw
まだ始めたばかりなので、思う所や改善点などをを言ってくれると助かります。
URL?
なんか動画主さんがグダグダで恥ずかしいようなので張りませんw
まだテストプレイなのでw
頑張って探してね?
投稿日は5月4日、さぁ探せ!そこに全てを置いてきた!
本編が始まったら宣伝しまーす(*´ω`*)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,18 鎌威太刀

花粉症再来・・・。
眼かゆいし、鼻もやばいし、頭痛もする・・・。
だが、私は諦めないっ(`・ω・´)
何が?って話w

それでは、本編どうぞ。


姉と離された夢月は一度振り返るもすぐにカルマを追う。カルマは夢幻館から少し離れた所で足を止めた。それに応じて彼女も彼の前に降り立った。

 

「鬼ごっこはおしまい?」

「……。」

 

夢月の問いには答えず、カルマは大鎌を肩に担ぎあげた。

 

「ふん、ゴミが良い気にならないでほしいわね。」

「……ゴミ、か。」

「そうよ。私たちの世界に入り込んでいる以上、ゴミも当然。」

「…そうか、よ!」

 

一瞬にして距離を詰めたカルマが横薙ぎに鎌を振るう。それを夢月は身を倒して躱し、距離をとった。先端の方を斬られた髪が彼女の頭から落ちていった。

 

「…ただのゴミじゃないみたいね。」

「ふん。肩慣らし程度には持ってくれよ?」

 

刃を返し、更に踏み込んで振りぬく。夢月はそれを身を倒すことで躱した。そして零距離から彼女の弾幕が放たれる。横に飛んでそれを躱すが零距離である以上、数発着弾してしまう。

 

「ちっ!」

 

舌打ちをした後に体を回転させる勢いで鎌を振るう。夢月はそれを飛んで躱し、手を振るって弾幕を放った。

 

「それそれっ!」

 

鎌を回転させ弾幕を弾いてくが、手を振るっている分、範囲は広く地面に着弾することで土煙が舞い、視界が悪くなっていく。

 

「……“鎌威太刀”。」

 

―イイイイィィィィィィィィィィィィィィィ―

 

すると小さく何か金属音のような音が聞こえてきた。だがそれは彼女の着弾音で掻き消されて聞こえにくい。

 

「――うん?」

 

様子がおかしいことに気づき、夢月は弾幕を止めた。少しするとカルマを覆っていた土煙が掻き消されてしまった。そこには無傷なカルマがいるだけで、変わったことと言えば持っているはずの大鎌が見当たらないということだけである。

 

「何この音…?」

 

耳障りな音に彼女は顔をしかめた。対しカルマは涼しげな顔で首を回していた。

 

「何してるの?」

「…ふん。」

 

距離を詰めるために再度距離を詰める。しかし鎌を持っておらず、加え徒手格闘のような構えもとっていない。考えなしに突っ込んでくるとは思えず、夢月は彼に向けて弾幕を放った。

 

―バチッ―

 

「――ッ!?」

 

弾幕はカルマに当たることなく、手前で弾け飛んだ。ただし、カルマが何かしたような動きはなく、ただこちらに近づこうとしているだけだ。距離は保ちながら、試しに何発が放ってみたが、全てが彼に当たる前に弾け飛んでいく。

 

「“磔十字”!」

「クッ!」

 

夢月に背後に十字架が出し、彼女の動きを止めようと鎖が飛び出してきた。上に飛び、カルマの背後に回った。鎖は夢月を追うため、必然的に進路上にいるカルマも巻き込む形になる。しかし、鎖も弾幕と同じようにカルマに当たる前に弾け飛んでいく。

 

「どういう仕掛け?」

「よく見ればわかると思うが?」

「……?」

 

聞こえてくるのは耳障りな音のみだ。この音に秘密があるのだろうか。

 

「悠長に考える暇は与えんがな。」

 

先程出現した十字架から再度夢月を捕えようと鎖が飛び出してきた。鎖が腕に絡みつくも、悪魔らしい腕力で鎖を引っ張る。カルマ越しに鎖が飛んできたため、十字架が彼の背後から襲ってくる。カルマにあたった十字架は弾かれるが、夢月が引っ張っているため、またぶつかってくる。

 

「しつけぇな。」

 

足を1歩踏み出すと次に十字架がぶつかった瞬間、細切れにされてしまった。それだけでなく、彼の立っている地面に敷かれたタイルにいくつもの傷跡が生まれ、剥がれたタイルも十字架と同じように細切れにされてしまう。何のことは無い。朱姫との戦いでやってのけたように、自分の四肢と体幹、首を軸として大鎌を回しているのだ。もっとも目で追えない速度で回っているため、相手からすれば、カルマの周囲で何かが起きているということでしか認識できない。得体のしれない以上、近づくとは得策ではない。自分が手も足も出ない状況が続き、夢月はイライラし始めていた。

 

「…力技で行こうかな。」

 

思うが早い。自分を中心に力場を生み出し、並の攻撃は通らないようにすると、カルマに接近を図った。対し、カルマは動く様子はない。

 

「――ッ!」

 

タイルが剥がれた場所に来た瞬間、盾となっている力場に数えきれないほどの斬撃が襲い掛かった。いつ力場が耐えきれなくなるかわからない。すぐに距離を取ろうとしたが、それを許す程カルマも甘くない。

 

「おせぇよっ!」

 

手を上に翳すと大鎌が現れ、そのまま一閃に振り落とした。力場の抵抗で少しの時間差が生まれるも力場は斬られ、消失してしまった。

 

―ドォォォォンッ!!!―

 

焦る夢月に止めを刺そうした瞬間、離れた場所から衝撃音が聞こえてきた。視線を向けてみれば、土煙が上がっていた。場所は麗夢と幻月が向かっていった方向だ。どちらかが大きなダメージを確実だろう。

 

「ちっ。」

「姉さんっ。」

 

姉を心配してそちらに注意を向けたが最後。警戒を解かずに視線だけ煙の舞う方角を見ていたカルマは堕天を発動。彼女の背後に回り込むと夢月の後頭部に鎌の刃が付いていない柄の先で殴りつけた。

 

「うっ……。」

 

脳震盪を起した夢月はそのまま前のめりに倒れてしまった。カルマは倒れる前に腕を掴んで頭を打つことを防ぐと、ゆっくりと寝かせる。

 

「悪く思うなよ。」

 

鎌を肩に担ぎ直すとカルマはその場を後にし、土煙が舞う場所へと駆け出して行った。

 

 

 




今回張り合いがなくて書いてる私もつまらないって思うレベルです(´・ω・`)
だって仕方ないじゃん!
原作キャラに大きな傷つけちゃうと、傷跡残っちゃうでしょ?
この時間軸は旧作よりももっと前だから、そんな傷つけるわけにはいかないのです。
原作にそういう描写があれば、問題ないんだけどなぁ・・・(´・ω・`)

禁忌魔法じゃないけど解説~。
鎌威太刀 — 1章Ep4の時に朱姫にやった攻撃方法。四肢や胴体を軸として、大鎌を振り回す技。わかりやすく言えば、バトンみたいな感じかな?ダンスに使うような奴wあれを視認できない速度で回してるだけ。途中1歩足を前に出したのは、鎌の軌道を変えるため。

↓以前言った実況動画ですたいw
https://www.youtube.com/watch?v=yrbn8Pc9enA
私自身はまだ出てないけど、そのうち出てくるよ(*^▽^*)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,19 2人=1人

遅れてごめんね?
土日と学校で多忙だったもんでw

幻想万華鏡、次は非想天則編ですってw
チルノ溶けるでしょ、あれw

それでは、本編どうぞ。


辺りに漂う土煙で幻月の様子が分からない。麗夢は荒い呼吸をしながら横たわっていた。ここまで殴り飛ばされ、身体はボロボロだ。現に彼女の右腕と右肋骨数本が折れ、服がボロボロに擦れており、そこから露出した肌からは血が滲み出てきていた。ここまで飛ばされる間にあちこちを打ち付け、意識を保っていられるのもやっとの激痛が走っている。

 

「――ッ!」

 

こちらに急速に迫ってきている気配を感じる。幻月だ。彼女は麗夢に休む暇を与えるつもりはないらしい。

 

「はぁ…はぁ…。“歪屈折”。」

 

幻月は風圧で土煙を吹き飛ばし、麗夢の姿を見つけた。瀕死の状態だと分かると、彼女に向けて容赦なく弾幕を放った。爆発音とともに煙が舞うが風圧ですぐ煙を晴らす。

 

「うん…?」

 

しかし、そこには瀕死の麗夢がいるだけで今の攻撃でダメージを負った様子はない。疑問に思うが狂気がそれを上回り、今度は飛び蹴りを放つ。当たる寸前に彼女に薄い笑みが見えたがそんなことは関係ない。

 

―ドゴォォン!!―

 

避けきれる速度と衝撃ではない。確実に捕らえたはず、だった。

 

「感触がない…?」

 

蹴りが直撃し肉を潰し骨をも砕き内臓すらも潰す。その感触が伝わってこないのだ。麗夢もこの場所にいない。少し離れた場所に岩にもたれてやっと立ち上がったところと言ったところだった。

 

「―ちっ。」

 

予想できるのは先の戦いで見せた移動手段。それで回避したのだろう。手を振るい、弾幕を放つ。だが、その弾幕は当たることはなかった。先程思い浮かべた方法で躱したのなら、まだ分かる。弾幕は彼女に当たることなくすり抜けたのだ。

 

「…は?」

 

再度放っても攻撃は当たらず、彼女をすり抜けていく。

 

「どういう、ことか。分からな、いでしょう?」

「喋るな、目障りなのよ!」

 

瀕死の癖に余裕の表情を見せるゴミに苛立ちを覚え、急接近し爪を立てて振り下ろした。しかし、その攻撃すらも彼女をすり抜ける。

 

「クソックソォッ!」

「当たらなくて…当然です。私、はそこに…いません、から。」

 

麗夢の能力は歪められる概念があるものなら、その全てを歪めることができる。今幻月が見ているのは、ただの光の屈折で出来た虚像でなく、光の軌跡を歪めて生まれた虚像。そう簡単に見つけられるものではない。

 

「ふざっけんなっ!」

 

ただそれはその場しのぎ。今のように全方位に弾幕は放たれれば、必ず当たる。

 

「あぁ。やはり…そう、来ますか…。」

 

―“開門”―

 

空間が割れ、麗夢の前に大鎌が飛んできた。鎌は彼女の前で突き刺さり、大きな刃が弾幕から彼女を防ぐ。

 

「…カルマ?」

「なんだ?」

 

遅れて開門からカルマが姿を現した。彼の登場に麗夢は安堵の表情を浮かべる。

 

「遅いです…。」

「悪かったな。お前はひどいありさまだな。」

「…すみません。」

「別に責めてねぇよ。悪いが俺には回復手段がねぇからな。」

「分かっていますよ。」

 

禁忌魔法に回復魔法は存在しない。“黄泉還り”で回復させることができるが、それには一度死ななければならない。加え、カルマの禁忌魔法の使用数にも限度がある。そう易々と使うつもりはない。

 

「夢月さんは…どうしました?」

「昏倒させてある。しばらくは起きねぇだろうよ。」

 

カルマが戻ってきたことに安堵の息を吐き、麗夢は“歪屈折”を解いた。虚像が消え、幻月は麗夢の姿を捕える。しかし、そばには夢月に任せたゴミがそこにいるではないか。

 

「…夢月?」

 

辺りを見回しても妹の姿がない。

 

「夢月を…どうしたあああああああああああああああああっ!!!」

 

彼女は怒りに任せ、標的を麗夢からカルマに変えると猛スピードで突進する。鎌を引き抜き、近づいてくる幻月に振り下ろす。

 

「ゴミがあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

―ピシッ―

 

幻月の掌打が刃にぶつかり拮抗するかと思えたが、刃から微かに音が聞こえてきた。距離を取るべきなのだが、背後には瀕死の麗夢がいる。退くわけにはいかない。

 

「チィッ!」

 

力任せに振りぬき幻月を遠ざけるが、彼女は臆することなく懐に入り込んできた。

 

「死ね!シネシネシネシネシネシエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

「“キマイラ”!!」

 

大鎌を消し、瞬時に怪物の鎧を被る。幻月の拳がカルマの腹に直撃。予想以上の衝撃に彼の身体がほんの少しだけ浮いた。浮いた身体に回し蹴りが襲い掛かる。

 

「舐めるなっ!」

 

右腕で受け止めて衝撃を回転力とし、顎から蹴り上げる。

 

「カフッ!?」

 

打ち上げられ、今度は幻月の身体が宙を舞う。そこへ右腕で殴り飛ばした。空気抵抗をものともせず、彼女の身体が飛んでいき、轟音と共に砂煙が舞った。

 

「…やりましたか?」

「…いや、駄目だな。」

 

麗夢の目は捉えられなかったようだが、カルマはしっかりと目に見えていた。砂煙の中から飛び出してきた幻月を後ろから支える形で夢月の姿があった。カルマの昏倒から復活した夢月は幻月の元へと急ぎ、彼女の背後に回り込んで支えることで衝撃を和らげたのだ。

 

「頑丈だな、悪魔ってのは…。」

 

 




幻月の狂気に妹を無くした怒りで更に暴走。
いやぁ、すごいねっw
なんたってカルマの大鎌から不穏な音が聞こえてきたものねぇ( *´艸`)
そして夢月復活。
この後どうしようか考えてませんっ!(`・ω・´)

麗夢の技解説~。
歪屈折 - 光の軌跡を歪めて虚像を作る技。屈折のように軌跡を反射させるという単純な光の進路でないので、居場所を突き止める事は困難とさせる。

最後になんとなく入れてみた、フラグ的なものw
「やったか?」ってやつよ。
麗夢に言わせました(*´▽`*)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,20 贄ありき術式 夢

この章、めっちゃ長いなぁ・・・。
何話まで行くんだろw

それでは、本編どうぞ。



「姉さん、大丈夫?」

「夢月…、ありがとう。」

「まだ行ける?」

「勿論。」

 

幻月は夢月に支えられながら、地面に降り立った。どちらも目立つほどの傷は負っていない。対し、麗夢は瀕死の状態。カルマは殆ど魔力を消費できない状態だ。どちらが優勢で劣勢か一目瞭然だろう。

 

「どうしましょう、カルマ…。」

「無理に喋るな。休んでろ。」

「ですが…。」

 

麗夢を狙えば手っ取り早くカルマが守り手になる以上、優勢になることくらい分かっているだろう。どうするべきか考えていたその時、濃密な魔力の流れを感じた。麗夢を抱き上げ、その場から飛び退く。

 

「カ、カル―」

「うるせぇっ!舌噛むぞっ!」

 

すぐ目の前を巨大な光線が通り過ぎた。幻月よりも速く強力な魔力の本流。2人の悪魔もその光線を躱した。

 

「時間掛けすぎよ。」

 

カルマの隣に日傘を持った風見幽香が降り立った。傍には申し訳なさそうなエリーもいる。

 

「あぁ、テメーが確かあの2人を負かして館を奪ったんだったか?」

「そうね。そんなこともあったわね。」

 

幻月と夢月に勝った幽香に任せれば、ここは人なきを得るだろう。

 

「私に任せるなら、貴方たちの要求は呑まないってことでいいわね?」

 

傘を悪魔に向けたまま、2人に鋭い眼差しを向ける。

 

「…永琳の薬次第、か。」

「カルマ…?」

 

小さく呟くとカルマは麗夢をエリーに預け、幽香の前に立った。

 

「手出しすんなよ、風見幽香。麗夢とエリーもだ。」

「なっ、カルマ!」

「……。」

 

抗議の声を上げるが、無視する。幽香は彼を一瞥し傘を下ろすと麗夢を背負うエリーと共に館へと戻っていく。

 

「魔神が悪魔風情に負ければ、名折れだろうな。」

 

今、彼の回りには守るべきものがない。

 

「随分雑魚の神様もいたものね。」

「言ってろ。」

 

今のカルマが本気を出しても、現在の魔力は全盛期の程ではない。だが、それでも負けるつもりは毛頭ない。

 

「…すまない。第79禁忌魔法“万世分断”。」

 

この時、カルマは禁忌らしく禁忌に触れることにした。彼から魔力が溢れ出した瞬間、夢幻世界の一部が裂けた。

 

 

 

辺りは黒一色で何もない。空が白く、点々と黒い星が輝いている。

 

「何…これ?」

「何処よ、ここ…。」

 

一瞬で変わった周りの様子に2人は戸惑っていた。

 

「…夢幻の裏、と言った所か。」

 

ここに、いや、この世界にいるのは幻月と夢月、そしてカルマの3人だけ。キマイラ化したまま、カルマを2人との距離を詰める。

 

「姉さん!」

 

すぐに反応した夢月が迎撃の弾幕を放つ。その弾幕はカルマに当たることは無い。鎌威太刀を使っているわけではない。堕天を重ね掛けし、速度を更に上げているだけだ。一瞬にして2人の間に潜り込むと、夢月を殴り飛ばし、幻月を蹴り飛ばした。

 

「夢月ッ!!」

「姉さんッ!!」

 

どちらも防御したが、お互いに距離を離される形となってしまう。確実に1人ずつ仕留める。まずは夢月から潰すために距離を詰める。

 

「させないっ!」

 

吹き飛ばされながらも手を翳して光線を放つ。しかし、一瞬で彼の姿は消えた。

 

「なん―ッ!」

 

【挿絵表示】

 

何かを言う前に頭に強力な衝撃を受けた。カルマが夢月の背後に回り込み、思い切り磔十字を振り下ろしたのだ。そのまま地面に激突する。追撃に十字架を投げつける。更に轟音が響いた。

 

「“未来視”。」

 

― 第65禁忌魔法―

 

「“ムスペルヘイム”。」

 

土煙から飛び出した夢月だったが、すぐに土煙を上げて地面に激突することになる。彼女の先に先回りしたカルマの蹴りが振り下ろされたのだ。

 

「“ニヴルヘイム”。」

 

禁忌魔法を唱えながら、急降下し、拳を振り下ろした。

 

「ガッ!!?」

 

普段の夢月なら避けられただろう。だが、そこには地面に沈み身体を固定された彼女の姿があった。未来視で未来を読み夢月の出てくる場所を読んだカルマは、殴りつけて何処に着地するかをまで読み、着地場所をムスペルヘイムで地面を液体状にしたのだ。その後そこに飛んできた夢月は飛び込み、すぐにニヴルヘイムで固まらせたのだ。

 

「こんの…。」

「随分頑丈だな。」

 

キマイラに堕天を加えた拳をまともに腹に受けてもまだ意識を保っている。スッと腕を上げる。

 

「夢月を放せえええええええええええっ!!!」

 

その腕に幻月の拳が衝突。カルマの未来視はまだ続いている。手首を返して、幻月の腕を掴み、夢月へと叩き付ける。

 

「夢月っ!」

「ね、姉さ―」

「“ムスペルヘイム”。」

 

地面が再び液状になる。これで夢月は逃げられるが、カルマの振り下ろす方が早い。幻月を叩きつけられ、夢月は地面の中に完全に沈められてしまった。

 

「“ニヴルヘイム”。」

 

幻月を投げ捨て、地面を固めた。完全に夢月が地面に生き埋めにされてしまった。

 

「むげ…つ…?」

 

投げ飛ばされながら、夢月の消された姿を見た。幻月が茫然と呟く。消えた妹を思い、幻月が狂化する。

 

「貴様あああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」

 





カルマ無双回再びでした。
今回禁忌魔法を何回も使っていますが、これは生贄を使ってるためです。
誰が贄かと言いますと、ランダムで選ばれた誰かです。
選ばれた人、南無さん(´・人・)
時代背景にも大量死した時代があったと思うんです。
それだと思ってくだちぃ。
黒死病とか戦争とか。

禁(ry
第65禁忌魔法“ムスペルヘイム” ― 触れた場所から分子レベルで振動数を上昇させ、液状に変える。氷が一気に水に変わると同じ。
第79禁忌魔法“万世分断” ― 世界を分断し、もう一つの世界を作り上げる。魔界もこれで作り上げた。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,21 贄ありき術式 幻

最近忙しくて投稿予約時間に間に合わないです(´・ω・`)
もしかしたら、投稿ペースも落ちると思います。

それでは、本編どうぞ。


投げ飛ばされながらも、幻月はカルマに弾幕や光線を放つ。だが、それが決定打になるようなことはない。着弾してもキマイラの外殻に目立つ傷がつくことがなかった。

 

「磔十字。」

 

幻月の真後ろに十字架が現れる。それにぶつかっても十字架は砕けることはなかった。正当な方法で禁忌魔法を使っている以上、そう易々と壊れるものではない。

 

「――ッ!」

 

十字架と錐揉みながら落ちていくが、その状態で鎖に縛られれば絡まってしまう。地面に落ち、貼り付けにされても尚彼女はもがき続ける。

 

「このッ!コノォッ!」

 

なんとか脱出しようと試みるも、十字架が彼女の力を吸い取っていく。それでも暴れ続けるあたり、流石というべきだろう。そして、それもそう続くものではなかった。

 

「磔十字。」

 

再度十字架を生み出すと、カルマはそれを遠く離れた幻月に向けて投げつけた。空気抵抗を軽く無視する程の速度で投げられたそれは貼り付けにされている彼女の腹に食い込んだ。

 

「ガッフッ!?」

 

衝撃で砕けた十字架もろとも後方に飛ばされる―ことはなかった。衝撃を利用し、宙返りをすると彼女は体勢を立て直した。反撃するべく、カルマとの距離を詰めに掛かる。距離が離れているにも関わらず、それを視認したカルマは開門を発動。そこから幻月の足を掴み、引きずり出した。

 

「うわっ!?」

「ふんっ!」

 

そのまま地面に叩きつけようとするが、させまいと腕に絡みつく。

 

「んのおおおおおおおっ!!」

「―チッ!」

 

腕から嫌な音が聞こえてきた。見れば肘の関節があらぬ方向へと曲げられていた。

 

「ザマ見ろっ!」

「舐めるな。」

 

大けがの痛みには既に慣れている。腕から離れた幻月に無事な方の腕を振り下ろした。空中でくるりと回り、それを回避する。

 

「あっかんb―」

 

腕は躱してもその後の攻撃は躱せなかった。カルマに集中していた彼女は頭上から落とされた十字架に気づけなかった。

 

「フンッ!」

 

頭にダメージを受け、怯んだ瞬間にカルマの回し蹴りが襲い掛かる。蹴りに当たるも後方にわざと飛ぶ事で衝撃を緩和した。

 

―第98禁忌魔法“言霊”応用“身体支配権”―

 

「“落ちろ”。」

「ガッ!?」

 

カルマの言葉に従い、幻月は地面に落ちた。意識せずに急に落ちたため、衝撃が彼女を襲う。

 

「ゲホッコホッ!」

「“起き上がるな。這いつくばってろ。”」

「な、んっ!?」

 

自分の身体が言う事を聞かない。今、彼女の身体はカルマの支配下にある。

 

「そのまま地面に埋まってろ。」

 

夢月と同じ“ムスペルヘイム”と“ニヴルヘイム”を使って幻月を地面に生き埋めにする。辺りにはカルマだけが残り、静寂があたりを支配した。

 

 

 

カルマが夢幻世界から消えてどれくらい時間がたっただろうか。彼は開門で夢幻世界へと戻ってきた。両脇には意識を失っている悪魔の2人が抱えられていた。息はしているが、おそらく簡単には目覚めないだろう。

 

「“ロスト”」

 

万世分断で作った世界を一言で存在を消し去ると彼は適当な場所に2人を放り、夢幻館へと戻っていく。

 

「――クッ。」

 

道中ふらつきながらも夢幻館へと向かう。贄を用いて禁忌魔法を使ったが、おそらく彼の魔力はもう殆ど残っていない。

 

「カルマ様っ!」

 

門の外で待っていたエリーがカルマの元へと駆け寄ってきた。ふらつく彼の身体を支え、壁際に座らせた。エリーの華奢な身体では夢幻館まで運ぶのが難しいためだ。

 

「幻月と夢月は…?」

「息はしているが倒した。道中で放ってある。」

「流石ですね。」

 

安堵の溜息を付くと、彼女は幽香を呼びに館へと戻っていく。実際、彼女はカルマを支えたり2人きりだったりと緊張に耐えられなくなったために逃げたようなものたが。精神を集中して魔力の回復に集中していると、幽香が館から出てきた。

 

「随分とお疲れのようね。」

「燃費が悪いだけだ。」

 

魔力回復に集中しながら返答する。夢幻世界には魔力が多く存在するわけではないらしい。外よりも回復量が少ない。

 

「麗夢はどうした?」

「あの女なら貴方を置いて帰って行ったわよ。医師に診てもらうとかなんとか言ってたわね。」

 

麗夢は空間を歪めると、エリーに抱えらながら永琳の場所へと向かっていった。カルマならちゃんと勝って戻ってくると信じて疑わなかったらしい。

 

「…話は変えるけど、そっちの取引だったかしら?」

「あぁ、麗夢から話は聞いてるか?」

「暇だったから、話だけは聞いたわ。共存だったわね。」

 

引き受けるかは別として話くらいは聞いたようだ。もっともカルマが1人で倒してしまった以上、話は飲むという方向になるが。

 

「あー言った以上、飲むわよ。」

「そうか。」

「ただし、私は人間なんて弱い生き物に興味はないから。」

「だろうな。貴様のような奴は傍観するかヒントを与えるくらいしかしねぇだろうからな。」

「…へぇ、よくわかってるじゃない。」

 

彼の側にも同じような妖怪があるため、なんとなくだが分かってしまう。

 

「俺はそろそろ帰らせてもらう。」

「それは助かるわ。あの女、アンタが帰るまで穴を消さないつもりなのよ。さっさと帰ってほしいわね。」

 

用意周到というべきだろう。魔力もほとんどない状態であちらに戻るにも、開門が使えないのであれば戻れない。湖の入り口も祝詞を知らなければ通れないのだ。

 

「そうか。」

 

カルマとしてはこのまま早く地底に戻らなければならない。精神状態が彼に依存してきていることから、できるだけ早く戻らなければどうなるか分からないのだ。壁伝いに館へと入ると、2人別れを告げて穴へと入っていった。

 




これにてカルマ無双終了。
まぁ、夢幻編っていうのかなw
次回から新章に行きます。
―って言っても、本当は一続きの予定だったんだけど、異様に長くなっちゃってw
ここで区切ることにしました。
いよいよ正念場ですぜ、うっひっひ( *´艸`)

(ry
第98禁忌魔法“言霊”応用“身体支配権” - 意識を保たせた状態で身体のみ言霊の対象とする。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8章 正義=悪意
Ep,1 小石


投稿遅くなってすみません。
別にゲームばかりやってたわけじゃないんだからね?( ̄▽ ̄;)

マツタケ様の動画だけでなく、YouTubeの実況にも出てきました。
因みに、他様のYouTubeのライブ放送にもちょいちょい出てきましたw
うへへ(*´∀`*)

それでは、本編どうぞ。


夢幻世界から戻ってきて2日が経った。麗夢は神社に戻ったがまだダメージが大きく、安静にしている。カルマも動ける分には魔力が回復していた。

 

「地底に行く。スキマを開けろ。」

「はいはい。」

 

2日間とは言え、地底に残したこいしが気掛かりでならない。それに胸騒ぎがしていた。紫にスキマを地底に繋いでもらうと中に足を踏み入れる。地霊殿の前へ出ると館の扉を開いた。

 

「・・・・・・?」

 

違和感があるが何かわからない。胸騒ぎが収まらない。そのまま歩みを勧め、さとりの部屋をノックする。予め拒絶を使っておくのを忘れない。

 

「はい?」

「俺だ、カルマだ。」

「入ってください。」

 

中に入ると明らかに疲れた表情をしているさとりがいた。

 

「どうしt―」

「大変なことになりました。」

「あ?」

 

彼女の疲労の様子から只事ではないのでだろう。

 

「こいしが消えました。」

「―何?」

 

こいしが消えた。この館から出ないあのこいしが消えた。

 

「どういうことだ?」

「消えた、というより何と言えばいいんでしょう。気配が希薄というか、見つけにくいというか・・・。」

 

なんと説明すればいいかわからないようだ。端的に姿を消したというわけではないらしい。

 

「落ち着け。事の顛末を教えろ。」

「・・・わかりました。」

 

 

 

カルマが地底を後にして数時間後のことだった。こいしがカルマの帰りを待つ間、彼女は部屋に篭っていた。様子を見る為にこいしの部屋に向かうと部屋から青い炎が出てきた。

 

「あれは確か・・・。」

 

カルマと一緒にいた焔という狐火だったはず。何故ここにいるのか。焔もこちらに気づいたようだが、逃げるように掻き消えてしまった。

 

「・・・なんだったの?」

 

報告か何かだろうか。それならこいしよりもさとりにした方が良いだろう。疑問は残るが妹の様子も気になる。

 

「こいし、入るわよ?」

 

ノックも程々に扉を大きめに開けた。しかし、中には誰もいない。

 

「・・・こいし?」

「出掛けてくるね~。」

「―――ッ!?」

 

妹の声に振り返るが誰もいない。廊下の曲がり角に紫の緑のスカートが見えたような気がしたが、それより部屋の中だ。

 

「何もないわね。まぁいいけど・・・。」

 

何もないなら問題はない。扉を閉めようとして手を止めた。

 

「・・・何もない?」

 

それはおかしい。ここはこいしのいる部屋だ。何もないわけがない。閉まりかけの扉を開けても中には誰もいなかった。

 

 

 

「その日以降、こいしは帰っては来ますが、存在を認識しにくくなったんです。」

「待て。焔を見たのか?」

「え?はい。それがどうしたんですか?」

 

それはおかしい。焔はカルマがここを出る時には既に消息を絶っていた。何の目的でここへ来たのか分からない。

 

「アイツは俺がここを後にした時、既に行方が分からなくなっているんだ。」

「ちょっと変だったけどね。」

「そうね。私から逃げることないわけだし・・・。」

 

この事は紫に話した方がいいだろう。

 

「取り敢えず、こいしのことは任せろ。こっちで探ってみる。」

「分かりました。お願いします。」

 

何かに躓きそうになったが、部屋を出るために扉に手を掛けてようとして動きを止めた。

 

「・・・?どうしました?」

 

既に拒絶を発動しているが、残りの魔力はあと数回使える程度にはある。

 

「“拒絶”。」

 

対象はこの部屋全体でのあらゆる能力。足元にいるこいしを猫のように摘まみ上げる。

 

「何をしている、こいし。」

「あれ?」

 

違和感の正体はこれだった。こいしは地霊殿の前からカルマの後ろにいたのだ。館内に入る時の違和感はこいしが後ろを付けていたから。部屋に入る時も同じだ。

 

「え?こいし、そこにいるの!?」

 

さとりからは彼女が見えないらしい。こいしは笑顔でピースをしていた。

 

「お姉ちゃんには見えてないよ?ブイブイ。」

「なんの能力か知らんが、能力を解け。」

「えー・・・。分かった。」

 

こいしが能力を解くとさとりにも彼女が認識できたようだ。安堵のため息をつくと、椅子に座り直す。

 

「はぁ・・・。お帰りなさい、こいし。」

「うん、ただいま!」

 

猫掴みしていたこいしをソファに放る。受身も取れず顔からぶつかっていった。

 

「へぶっ!?女の子なんだよ!もっと優しくしてよ!」

「・・・知るか。」

「ブーブー!」

 

こいしが手を振り回してくるが、頭に手を当てているため、彼女の攻撃が届かない。

 

「さて、さとり。」

「何でしょうか?」

「こいしがこうなった以上、俺たちの要求は飲むか?」

 

当初の目的はこいしの心を開くこと。しかし今の彼女は恐らく心を閉じている。現に見れば彼女の第3の目は完全に閉じていた。

 

「何の話?」

「こいしには話してなかったわね。」

「人間と妖怪の共存。」

「へー。」

 

こいしは差して興味がないようだ。ソファに座って身体を揺らし始めた。

 

「まぁ地底に人間が忌み嫌う妖怪がいる以上、滅多に近づかんだろうがな。」

「そうですね・・・。」

「こいしは良いと思うよ?さっき地上に行ってきたから。」

「えっ!?」

「・・・・・・。」

 

こいしはカルマに違和感を感じる程度の存在感しか発揮しない。つまり並みの人間や妖怪なら彼女の存在に気づかないということだろう。それでも心を閉ざしかけた理由が人間である以上、よく地上に行ったと言うべきだろう。

 

「・・・こいしがそう言うなら。」

「決まりか。あとで提案者寄越すからそいつと打合せしてくれ。」

 

これで地底も紫の計画に加わった。あとは彼女の術式が組み上がり、実行するのみとなった。

 




今回のタイトルを「恋死」、「故意死」、「小石」のどれにするか悩みましたw
恋死ならヤンデレルート、故意死ならちょい暗い感じでしたw
因みに現時点でこいしの能力は分かっていない状態です。
てか、無意識を書くのむっずいw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,2 焔の謎

ゲームのフレから先生みたいと言われましたw
まぁあっちで解説色々してるので、否定できないけどw

それでは、本編どうぞ。


こいしの能力で分かったことがある。彼女はこちらの認識を掻い潜って行動することができる。そして彼女が意識的に行っているわけではないということ。

 

「やろうと思えば意識してできるけど、殆ど無意識かなぁ?」

 

拒絶を使っているからこそ認識できるが、解けばカルマも認識するのは難しいだろう。

 

「カルマの能力って便利ね。」

「疲れるがな。」

 

今この場には古明地姉妹にカルマ、そして八雲紫がいる。紫と呼んだには計画のことをさとりに説明するためであり、彼女には予め拒絶をかけておいた。粗方話終わり、別室で待機していた2人が部屋に戻っていた。

 

「それでこいし。悪いが俺がここを後にした時に来た焔の様子を聞かせてくれるか?」

「そうね。あの子と途絶してる以上、少しでも情報は欲しいわね。」

「いいよ~。」

 

カルマの膝の上で足を振りながら、彼女は当時のことを語りだした。

 

 

 

カルマが地底を後にしてから、こいしは部屋に戻っていた。やっと出来た関係に依存していたためか、反動が大きい。彼女はベッドに飛び込み、布団に包まった。

 

「あーあ…。早く戻ってこないかな…。」

 

楽しみを待つ時間は長く感じてしまう。布団に包まりながら、ベッドの上をゴロゴロと落ち着きがない。

 

『失礼しやがります。』

「わっ!?」

 

いきなり聞こえた声に驚き、こいしはベッドから転げ落ちてしまった。ぶつけた頭を押さえながら顔を上げると青い炎がそこにあった。

 

「いたた…。えっと…焔、だっけ?」

『……。』

 

炎はゆっくりと狐の形をとり、こいしを眺めていた。拒絶が焔にかかってない以上、心で考えていることを読み取ることができる。

 

「お兄さんの代わりに来たの?」

 

首を振って否定した。知らせることがある。

 

「知らせること?お姉ちゃんにじゃなくて?」

 

焔は頷き、口を開いた。

 

『カルマは戻って来やがりません。』

「…えっ?」

 

何を言われたか分からなかった。言葉を噛み砕いてようやく何を言われたのか理解した。そしてそれは心でも同じことを思っていた。

 

「お兄さんが戻ってこない…?」

 

焔の言葉は彼女の心に罅を入れた。ここで心を読むのを止めるか目を逸らせばよかったのだが、そうはいかなかった。

 

『もう一度言いやがります。戻ってきやがりません。何度でも言いやがります。戻って来やがりません。戻って来やがりません。戻って来やがりません。戻りやがりません。戻りやがりません。戻りやがりません。戻りやがりません。もう来やがりません。ずっと来やがりません。戻って来やがりません。』

 

追い打ちのように焔は戻ってこないと言い続けた。耳を塞いでも、本気でそう思っていることも読めてしまう。

 

「いやっ!いやぁっ!」

 

戻ってくる。カルマは絶対に戻ってくる。焔がカルマと繋がりがあると知っている以上、いくら否定しても焔の言葉は心の罅を大きくしていく。

 

「戻って…くる、もん。…絶対、戻ってくる、もん。」

 

虚ろにつぶやくこいしに焔は止めを刺した。

 

『カルマも面倒くさいから戻らないと言っていやがりました。』

「―――――――――――――――――――――――――――――――――――。」

 

壊れた。塞いでいた耳を力なく降ろし、虚ろになった瞳から涙を零れ落ちた。第三の目がゆっくりと閉じていく。まだ何か言っているようだが、耳に入らない。だが、焔が部屋から出る時の言葉は聞こえた。

 

『自由にしやがってください。縛る鎖は無くなりやがりました。』

 

 

 

「―って感じ?」

 

笑いながら語る彼女だったが、3人は唖然としていた。第一カルマは戻らないと一言も言っていない。

 

「……何を考えているんだ、アイツは。」

「分からないわね。でもそれは本当に焔だったのかしら。」

「間違いないと思います。こいしの部屋から出てきた所は私がしっかりと見てますから。」

 

さとりが焔の姿を見たのはこいしが心閉ざした直後だろう。

 

「…これは宿主の麗夢に聞いてみた方がいいかしら?」

「そうだな。焔のことなら、アイツの方が分かっているだろうからな。」

「私が知らせてくるから、カルマは焔をお願い。可能性は低いけど、まだ地底にいるかもしれないわ。」

「わかった。」

 

紫はスキマを開き、地上へと戻っていった。善は急げ。早速行動に移すべく膝の上のこいしを下ろし、カルマも立ち上がった。

 

「あれ?お兄さんどうしたの?」

「焔を探す。」

「じゃあこいしも行くー!」

 

しかし、こいしにさとりが待ったをかけた。

 

「駄目よ、こいし。危ないし、カルマさんに迷惑が掛かるわ。」

「えー。」

「…いや、こいしは連れて行こうと思う。」

「ちょ、ちょっとカルマさん!?」

「やたーっ!」

 

彼女の能力はまだ分からないが、少なくとも彼女の認識を阻害することができる。ならば、尾行もできるかもしれない。チラッと見ると、無邪気に喜んでいるようにも見える。尾行してくれるとは思えない。

 

「人数は多いに越したことはないだろ。」

「で、でも!」

「安心しろ。危険な目には合わせねぇから。」

「……。」

「大丈夫だよ、お姉ちゃん!こいし強いから。」

 

胸を張る妹の様子に溜息を付くと、カルマに頭を下げた。

 

「妹をお願いします。」

「あぁ。」

「お姉ちゃん、固いぞー。」

 

 




疑問に思っている人も多い(?)と思うので、解説をば。
心を閉ざすと大抵は無表情とか暗いイメージが濃いと思います。
こいしの場合、元から子供らしい性格であるため、心を閉ざすとその性格だけになる。
という感じですかね。

焔に何があったのかねぇw
ヒント、焔は善狐の霊です。
わっかるっかな?w

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ep,3 反乱分子

おおよそ2か月ぶりですね。
はい、すみません(´・ω・`)
大学生活後半となると、忙しくて書く暇ないんです。
開いた時間でゲームやってる人が何言ってんだろうねっ!
はい、ごめんなさい(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ。


地底から戻ってきた紫はこいしから聞いたことを麗夢に報告していた。

 

「そうですか。地底でそんなことが…。」

「麗夢、焔は狐火とはいえ善狐なんでしょう?宿主としてどう思う?」

「……。」

 

こいしとのやりとりを考えると、善狐の行いとは到底思えない。繋がりが切れたことに関係しているのだろうか。

 

「分かりません。さとり妖怪の妹―こいしさんが言っていた焔が違うことを祈ることしかできません。」

「特徴を聞く限り、本人である可能性が十分高いわ。」

「……はい。」

 

こいしとさとりの証言は全て焔と一致している。

 

「正直、私も地底に行きたいです。」

「貴女には地上を任せているわ。地底のことはカルマに任せましょう。」

「はい…。」

 

 

 

地霊殿を出たカルマはこいしを連れ、街道を歩いていた。

 

「探す当てはあるの、お兄さん?」

「無いな。青い狐火の目撃者を探すしかねぇだろ。」

「~♪」

「……。」

 

目を少しでも離せば、いつの間にかこいしはウロウロとして逸れそうになる。溜息を付くと、カルマは彼女を猫を持ち上げるように摘み上げた。

 

「わわっ!」

「逸れるだろうが。」

「えー、私あっち行きたい。」

「知るか。」

 

こいしは頬を膨らませるものの、手足を垂らして大人しくする。

 

「まぁ、当てはないが思う所があるからな。アイツに会ってみるか。」

「…?」

 

カルマは何も考えずに街道を歩いているわけではない。ここは地底であり、鬼がいつも騒いでいる場所だ。

 

―ドドドドドドドドドドドドッ!!―

 

街道の奥から砂煙を上げながら走ってくる影があった。どうやら上手く釣れたらしい。

 

「見つけたぞおおお!!鎌使いいいいいいいいいいい!!!」

「なんか来てるよ、お兄さん?」

「…そうだな。」

 

彼女―朱姫の変わらない様子に呆れるが、今回は争いが目的ではない。朱姫はそんなカルマの雰囲気を感じ取ったのか、速度を緩めて彼に歩み寄る。

 

「なんじゃ、随分と大人しいの?」

「まぁな。」

 

彼女の手を借りるのは癪だが、人手が多いに越したことはない。

 

「話がある。場所を移すぞ。」

「うぬ?」

 

道中で話すには内容が長い。街道にある飲み屋の二階にある客間へと場所を移した。

 

「さて、話とはなんじゃ?」

「あぁ…。早々飲むな。」

「別にいいじゃろ。」

「よくねぇよ。」

 

手に持った酒瓶を渋々脇においた。

 

「最近焔を見ていないか?」

「焔?…巫女の女に憑いとる狐火か?」

「そうだ。」

「見ておらんな。なんじゃ、巫女に憑いとるわけではないのか?」

「いや、憑いているはずだったんだが、繋がりが切れた。」

「…成仏、したわけじゃないようじゃな。」

「まぁな…。こいつが焔を見たと―」

 

こいしの目撃を掻い摘んで話そうと思う、彼女の頭に手を置こうとしたが、空を切った。見れば彼女の姿が何処にも無かった。

 

「どうしんじゃ?」

「連れが…いや、なんでもない。」

 

恐らく朱姫もこいしの能力下にいるのだろう。認識できていないはずだ。こいし抜きで今までの説明を始めた。

 

「消えた狐火が悟り妖怪の所に、のぉ…。」

「話を聞く限りじゃ、焔らしくないからな。何かあったと考えている。」

「ふぅむ…。一応話しておくかの。」

「何か思い当たることでもあるのか?」

「可能性の話じゃ。」

「…いいから酒から手を離せ。」

「ケチじゃのぉ…。」

「うるせぇ。」

 

伸ばした手を引っ込め、朱姫は紫に頼まれていたことをカルマに話した。

 

「なに、スキマ妖怪に依頼をされてのぉ。」

「あ?」

「人間と妖怪の共存じゃったか?まぁ良い。あやつの計画の反乱分子がここに潜んで居るようでな。そやつを炙りだしておる所じゃ。」

「聞いてねぇんだが…。」

「クハハッ。」

 

輝夜の件といい、今回といい。紫はカルマに話していないことが多い。話さない方が利用しやすいというのもあるが、やられる側としては釈然としない。

 

「まぁいい。反乱分子がいることが分かっただけマシだろう。」

 

反乱分子が焔と接触して何かをしたと考えるのが妥当だろう。焔は麗夢と繋がりがあり、麗夢は紫とも繋がりがある。関係していないとは思えない。

 

「俺はそろそろいく。」

「なんじゃ、共に酒を飲もうではないか。」

「時間が惜しいんだよ。」

「釣れんのぉ…。そうじゃ、これをやる。」

 

立ち上がり襖に手をかけたところで、朱姫がカルマに向けて何かを投げ渡した。背中越しのそれを取ると、それは鬼の角だった。しかもただの角ではない。

 

「妾の角じゃ、昔折りよったじゃろ。」

 

朱姫の角は片方が折れている。それは月移住計画の時にカルマが折ったものだ。

 

「これをどうしろっていうんだ。」

「妾が持っていてもくっつくわけでもなかろうて。お主が持っておれ。」

「……。」

 

カルマは適当に角をポケットに押し込むと店を出る。こいしが何時からいなくなったか分からないが、探すしかないだろう。彼女の能力を考えるとそう簡単に見つけられるものではないだろう。

 

「んにしても、反乱分子か…。」

 

朱姫の言い方からそれが何者なのか分かっていないようだった。恐らく紫も分かっていない。焔のことも気になるが、反乱分子を優先した方がいいだろう。焔はその後に探し出せばいい。

 




何も知らせられずに利用される主人公・・・。
騙すにはまず味方からというからいいんですw

いつの間にか消えたこいし。
別にフラグとかじゃないよw
無意識だから仕方ないのです(`・ω・´)
因みに次回、こいしがある人を連れて登場。
多分知ってる人は知ってる人です、ふひひ。

これからの投稿ペースもこんな感じで遅くなります。
忙しいんだもん、仕方ないじゃない(´・ω・`)

それでは、間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

※ネタバレとか色々

まぁ、長いことお待たせしてしまっているようですしね。

 

ちゃんと知らせとこうと思いますです。

 

今大学の方で忙しい時期になっていまして、執筆の余裕がありません。

 

その結果、書く気が出ないというマイナス方向になってしまいました。

 

いやね、ちゃんと頭に最後までの構図があるんですけど。

 

このままだと完結まで投稿できそうにないですはい。

 

ほんとごめんなさいm( _ _ )m

 

そういうわけで、今後の展開をここでネタバレしようと思います。

 

見たくない方は自分の中で妄想するもよし、この続きを勝手に投稿するもよしとします。

 

投稿する時は念のためお知らせください。

 

以下ネタバレとなります

 

 

 

こいしを見つけた時にこいしと河城みとりが一緒に団子を食べている

みとりに焔の情報を聞き、見かけて行った方向を示す→お空のいる溶鉱炉(?)

と、同時にそこで爆音

向かうがいるのはお空のみで焔はいない

お空が気がついた後に焔の情報を得る

焔と誰かがいたと記憶してるが忘れた→流石鳥頭

旧街道で爆音

向かうと朱姫と誰かが交戦し、朱姫が押されている

相手は反乱分子のオリジナルキャラ、忌神政蛇(きじんせいじゃ)

 

政蛇の容姿はルーミアと鬼人正邪を足した感じ→ルーミアとは違う穢れの集合体で邪神に昇華したもの

能力は反転させる程度の能力

 

朱姫が押されるもカルマも参戦し、押し返すが焔が登場し、逃げられる。

焔が敵についている理由は分からず終い。

そのことを紫に話す。

古明地姉妹に別れを告げ、たまに会いに来る約束を交わす

ここで正義=悪意編終了

 

終わりなき幻想編に移行

舞台は秋と冬の間、11月下旬あたり

紫が博麗大結界の術式を完成される

発動準備に取り掛かると同時に各地で妖怪が凶暴化

政蛇の能力で紫の意思に賛同したものを反転し否定させたため

政蛇と焔が襲いかかる

麗夢は焔と、カルマは政蛇と戦闘に入る

紫と藍は術式の維持と襲い来る妖怪のおかげで動けない。

麗夢は悪戦苦闘するも、どうにか焔を正気に戻す

焔を自分の中に戻し、カルマの元へ。

 

焔が政蛇についたのは善狐を反転させられたため

 

政蛇の腰には妖壊刀村正(ようかいがたなむらまさ)を携えられている→壊は誤字じゃない

カルマは政蛇相手に苦戦し、鎌の刃も砕ける→夢月幻月との戦闘で傷が出来ていたため

カルマの隙をついて斬りかかった時、咄嗟に麗夢が飛び出し、斬られる

そのままカルマに抱えられ、死去

カルマは冷静に怒りに飲まれ、第99番禁忌魔法[過ちの禁忌]を発動

 

政蛇は言わずもがな、鬼人正邪の転生前、現在の正邪は記憶を受け継いでいない

 

妖怪が沈静化し、紫がカルマの元に駆けつけると、冷たくなった麗夢を抱えたカルマがいた。

この時、カルマの左目は白い部分も残らず赤く染まり、左目から血の涙を流していた。

完全に神へと昇華

この時に霙が降る

数週間後、博麗大結界は発動し、新しい博麗の巫女が紫の傍にいた

発動する際にはカルマの魔力を用いている

そして、発動時にロストの応用[過重忘却]を組み込んだ

 

過重忘却→指定した万物・事象を忘れさせ、忘れたという事象すらも忘れさせる

 

このおかげで幻想郷全体からカルマと博麗麗夢の記録が消え去った

ただし、紫だけはカルマの事を覚えていた

カルマは過ちの禁忌と過重忘却で魔力が枯渇

魔力の回復と安静のため、魔界に去る

ここで終わりなき幻想編終了

 

魔界編に移行

神綺のいる豪邸に訪れる

夢子が出迎え、神綺と一緒に紅茶を飲む

ここで夢子がカルマ寄りに創られていることを問う

神綺はカルマの作った魔界のゲートから魔力を拝借し、作ったことを告げる

しかし、受け継いだのは戦闘技能のみ

魔力の方はもう1人の方、とここで旧作アリス登場

カルマを父と呼ぶことで神綺を説教&威圧

とりあえず神綺たちの豪邸で住むことになった

夢子に戦闘技能を、アリスの魔術を教えながら暮らす日々

折れた鎌は朱姫からもらった角で打ち直し

 

夢子と旧作アリスの金髪金眼はカルマ由来

アリスはお父さん大好きっ子

 

神綺からサリエルの存在を聞く

離れた場所にある青薔薇の庭園に行くとサリエルと合う

サリエルは死を司るため、誰も近寄らないが、カルマは死ぬことがないため、交流を持つことになる

 

尚、サリエルはヒロインの1人で静かなヤンデレ属性

 

他魔界の旧作キャラと交流をもつ

詳しいイベントは考えていないです

ここで魔界編終了

 

過ぎ去る時間編へ移行

紫が現れ、幻想郷に脅威が現れたため、手を貸してほしいと頼みに来る

最初は断るが、レミリアの名前で反応し、手を貸すことになる→吸血鬼異変

 

西の大陸編でレミリアが幼少の時に見た運命のフラグ回収

 

相手はレミリア、咲夜、パチュリー、小悪魔

紫側はカルマ、ルーミア(封印解除)

カルマとレミリア・咲夜、ルーミアとパチュリー・小悪魔で戦闘

尚、過重忘却は結界発動時に乗せたもので、レミリアたちは掛かっておらず、カルマのことを覚えている

カルマを味方に付けようとするが、拒否

咲夜の時止めも拒絶で相殺し、グングニルも封殺

咲夜が時止めを使ったことで、十六夜のいう苗字と深の後継者であることを知る

余裕で勝利

ルーミアも闇を自在に操り、勝利

ここでフラン登場

カルマのことは覚えていないがレミリアから聞かされていたため知っている

戦闘なるが昏倒させる

紫の要求をのみ、レミリアたちは紅魔館の中へ

このあと、カルマは結界に過重忘却を組み込み、永続的に発動するものとした

 

このおかげで現世で忘れ去られた存在が幻想入りするようになる

 

魔界に戻り、更に時間が経過した頃、再度紫が現れる

現世である2人を助けて欲しいといい、1枚の写真を渡す

写っているのは宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン

2人と紫の関係に何かあると考えたカルマは了承し、現世へ

拒絶で世間の認識を無効し、自由に動いた

2人を発見し、暫く様子を見る

廃寺となっている博麗神社で境界の裂け目を見つけるが、穢れで汚染されている

 

穢れはルーミアが世界を移動していた時にあふれた闇によって世界に広まっている

負の争いが消えないのはそのため

 

境界が2人に襲いかかるが、カルマが介入し、事なきを得る

2人は立ち去り、境界もいつの間にか姿を消していた

紫から感じるルーミアと同じ穢れの気配はこの境界から感じた

紫は2人と今の境界が融合した存在と仮説し、魔界に戻ろうとしたときに懐かしい気配を感じる

その場に移動すると殺女といる占城霙と生まれ変わった麗夢の姿があった

会いにいくことはなく、その場から立ち去るが、焔が先回りし、少し焔と話す

カルマのことは知らせないという形で別れる

今度こそという時に、宇佐美霞子が登場

霙を観察していたようだが、カルマと焔が現れたことで何かあると思い、詰め寄る

ロストで記憶から霙とカルマ関係の記憶を消し、昏倒させて魔界に戻る

 

東方怪綺談の話に入る

アリサが靈夢にやられ、泣きながら帰宅

夢子は幽香、カルマは魅魔と魔梨沙戦

魅魔がカルマを警戒し、魔梨沙を下がらせるがカルマの勝ち

夢子は幽香に倒されるが幽香は興が醒めたことで帰還

ある日アリスが外に行くと言い出す

神綺は渋るがカルマは進める

ただし、カルマは見送りには現れない

外界との門でカルマが待っている

ここでアリスが常に持っている本、グリモワールオブアリスを渡す

 

本の中には禁忌の魔力があり、カルマを元に創られたアリスだから使えるもの

ただし、使用時は疲労が激しく、両目が赤くなる

旧作が金眼から青になったのは魔界から幻想郷に環境が変わったため

 

ここで過ぎ去る時間編終了

 

PH章、歪んだ世界の譚詩編へ

これは前作の続きとなる

オリジナルキャラは全員新衣装

 

霊夢と魔理沙の弾幕勝負、アリスは縁側に座って傍観

ここで異変が発生し、魔界と幻想郷が混合

魔界の地や幻想郷の地が疎らに点在し、所々消失してしまった場所がある

3人が異変に気づくと同時に、霊夢と魔理沙のみ教会領域で閉じ込められる

アリスが現れたカルマに2人を説明し、解放

そのあと各地で魔界の者と幻想郷の者の混乱による争いを止めに回る

紅魔館は残っていたため、現状を藍が説明

霊夢、魔理沙、アリス、レミリア、咲夜、パチュリー、小悪魔、慧音、永琳、うどんげ、さとり、神奈子、諏訪子、霙が集められている

紫は策を考え中

霙は自然にカルマの隣へ

霊夢がカルマを信用できないというが、霙が責任を取ると言い、渋々納得

それと同時に過重忘却を解除することで昔からカルマと面識がある人(ここにはいない人も含む)はカルマのことを思い出した

霙が言うには、これは幻想郷が歪んだためだと説明

しかし、自分にはもう歪める程度の能力はない

原因は分からず終い

アリスがカルマを父と呼んだことで霙発狂

カルマが立ち去るが霊夢と魔理沙が待ったをかける

霙が止めるも、カルマが怪しいということで戦闘に発展

 

カルマの能力は完全に魔神となったことで、禁忌魔法を扱う程度の能力から、禁忌を犯す程度の能力へと変わる→禁忌魔法問わず、あらゆる禁忌を無代償で扱える、ただし、自分が対象のみ

 

しかし、力の差は大きく、カルマの圧勝

そのままカルマが帰るが、戦いの気配を察知して、殺女登場

霊夢と魔理沙が動けないため、アリスが向かい、グリモワールオブアリスを解放

優勢になるがここで別次元の九尾の狐登場

 

この九尾の狐は空亡ノ尊様の番外編に登場していたもの

美羽が使った歪んだ世界の譚詩で封じられたが、殺女と同じ空間に封じられたため、殺女を利用し、脱出

尚、番外で封じられたのは分身体だが、美羽の使った忘却で分身であることを忘れ、自分が本体となろうとしている

 

九尾は殺女を取り込むことで昇華、九尾殺女形態となる→名前考えてない

九尾本体以上の存在となった九尾はそのままアリスを押し退ける

どうにか逃げることに成功

 

異変解決組は今回戦力外通告される

カルマと霙で異世界に助っ人を呼びに行く

空亡ノ尊様の神無悠月、月美と明星美羽、マツタケ様の月詠鈴芽を呼んでくる

ルーミアの封印も解き、戦闘へ

九尾は9体に分身、倒すごとに力は元の自分に戻っていくため、倒されるごとに強化

 

カルマは戦闘前に全員にスペル「昇華」を渡してある

カルマが本体、霙が1体、焔が1体、悠月が1体、月美が1体、美羽が1体、鈴芽が2体

ルーミアが1体

それぞれが苦戦時に昇華を扱う形となる

 

霙が倒した後に焔へ加戦し、夢蒼天成を発動し勝利

悠月が倒した後に月美に加戦し、本来の刀と人という形で勝利

美羽は自分の周囲を舞う剣を扱い、勝利

鈴芽はカルマの禁忌に興味が沸いたが、霙に煽られ、維持となって2体を相手することになる

早速昇華し、1体の記憶を操り、もう1体と同士打ちさせて勝利

ルーミアは闇に飲み込み勝利

カルマはなんやかんやで勝利→考えてない

 

九尾が倒れたことで殺女と分離するも、消失前

殺女の願い「生まれ変わったら、こんな負の遺産でなく、霙と一緒に楽しく行きたかった」

願いを聞いた霙はカルマに転生させるように願うが、生贄が必要

ここで焔が自分がなるという→霙も無事成長したし、思い残すことはない

能力を霙に移し、生贄となった

 

戦いが終わると、幻想郷と魔界は元通りになる

異世界から呼んだ4人を元の世界へと戻した

カルマも魔界に戻ろうとするが、霙に呼び止められ、振り返ると不意をついた霙がキスをする

一瞬硬直するも我に返り、引き離し、別れを告げてお互い帰っていく

ここでPh章終了

 

エピローグ

一緒に生活する霙とカルマの姿があり、過去を語りあう

後に、2人の子供の殺女の転生体、亜止女(あやめ)が登場

 

エンド

 

 

 

以上がこの禁初幻譚の流れです

 

この物語を期待していた読者の皆さん

 

申し訳ありませんでした

 

それと同時にありがとうございました

 

またいつか投稿できればと考えています

 

と言っても、年単位でいつになるかわかりません

 

いままでありがとうございました

 

 

最後にツイッターはじめました

 

良ければフォローしてください

 

ゲームやる余裕はあるのよ・・・(´・ω・`)

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。