タロット会の介入~恋姫無双での一場面~ (みずしろオルカ)
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タロット会の介入~恋姫無双での一場面~

二次創作の設定の一部です。
話の中に出てくるタロット会は中二病時代の設定を引っ張ってきて修正しました。

やっぱ中二って原動力なんだなと思ったこの頃ですわ。

駄文ですので、気に入らない、一定レベル以上でなければ気分を害する、原作主人公が死ぬ物語が嫌いな人、俺の嫁がオリ主とくっつくのが嫌な人は見ないことを強く勧めます。

強く勧めます!!

では、よろしければ感想などいただければ幸いです。


 眼前に広がる海や湖を思わせる大河。

 そしてその大河を埋める炎に包まれた船の一団。

 

 俺は今、三国志を知る者も知らぬ者も聞いたことぐらいはありそうな程に有名な大戦である、赤壁の戦いを見学している。

 といっても、この世界は二次創作の二次創作。

 

 恋姫無双という世界を俺自身で介入し、一人の青年を助けた。

 その彼がたった一人の少女を守る為にこの絶望的な戦いを挑む……、実に物語の主人公らしくて俺も介入したかいが有るというものだ。

 

 俺が立っているのはその戦が見渡せる崖の上。

 その隣にローブに身を包んだ男が歩いてくる。

 

(ストレングス)か、俺の育てた海央(かいおう)が気に入らなかったか?」

 

愚者(フール)か、今回は別件だよ。戦車(チャリオッツ)の野郎が、ここの主人公に憑依させた人格に王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を持たせていてな。……ほら、あのむやみやたらに魏軍を蹴散らしている野郎だ」

 

 (ストレングス)の言う方を見ると確かに一人の青年が一本一本に莫大な魔力が篭った武具を後ろの空間から射出して船を次々に沈めている。

 ああ、ありゃ(ストレングス)の嫌いな力を理解せずに振るう奴の典型だな。

 

 (ストレングス)はその名が示すとおり、力に対して信念を持っている。

 どんなに膨大な力を振るっていても、その力の本質を理解していない奴を嫌う。

 逆に戦車(チャリオッツ)は、どんな形であれ力を与えてその人間の行く末を見ることを好む。そいつが力を使いこなそうと飲み込まれようとそれは奴にとって力を与えた結果。ゲームを与えてプレイさせた結果がゲームオーバーかクリアか程度の差でしかないのだろう。

 

「お前の育てた奴が、止めてくれるなら大丈夫だが……」

 

「おいおい、海央(かいおう)に与えたのは、特殊な刀と波紋(はもん)の力だけだぜ?」

 

 そう、ジョジョの奇妙な冒険で登場した最初の力である波紋(はもん)

 後に出てくるスタンドにお株を奪われた形になったが、それでもその力は十二分に脅威だ。

 それにこの世界には気が存在する。

 波紋はこの世界でも十分にマッチする。そう考え、波紋をあいつに文字通り叩き込んだ。

 それはもう、呼吸強制マスクやら油の流れる柱を登らせたりと……今思えばよく死ななかったものだ。

 

「だが、そいつは力に溺れていない。……いや、むしろ使いこなしていると見るべきかな。この時代の人間なんだろうが、いい素材じゃないか」

 

「だろう? 俺が直接戦い方、守り方、戦術の立て方から、戦略の考え方、そして守りたい人の為の生き方を教えたんだ」

 

 まぁ、文字通り叩き込んだ……だがね。

 

 

***************

 

 

 この赤壁で、我が魏軍は窮地に立たされている。

 数多くの同志が炎に消え、長江の流れの中に沈んでいった。

 

「んだ? テメェ、その力は転生者か!!!」

 

「なんだそれは? 貴様は蜀の天の御使いだな? 天の力でこの戦を納めようというのか」

 

「ああ? ってことはイレギュラーかよ? ったく、完全無欠のオリ主様の快進撃を邪魔しやがってよぉ……」

 

 こいつは何を言っているのだろうか?

 天の人間は皆こうなのか?

 反董卓連合の時は、仁愛というに相応しい優しげな青年だったのだが……人が違ったようになっている。

 

「貴様の性格が変わっていることは後々追求するとして、この場では魏の、風の夢を邪魔させるわけには行かない」

 

 こいつは得体が知れない。

 だったら全力で波紋を全身に巡らせて相手をする。

 

「ん? この呼吸音は……ハハハハハハハ!!! なんだよ、波紋か!? せめてスタンド持って来いよ! スタプラかクレイジーダイヤモンド、キンクリだったらまだ勝負になったかも知れねぇのによ!!」

 

 

****************

 

 

「あ~、駄目だな。力を理解していない。それに比べ、お前のお気に入りは力を理解し、自分のものにしている。これは俺の出る幕はねぇな」

 

 そういうと、笑いながらその場に腰を下ろす。

 

「見学させてもらうかね。力に溺れた弱者が、力を自分の物にした強者にどんな顔をして負けるのか……な」

 

「性格悪いな」

 

「力に関しては当然だ。二次創作を管理する神の集い≪タロット会≫。ソコの(ストレングス)の名を貰ってんだからな」

 

 タロット会。

 読んで字の如く、タロットの大アルカナに例えた神、元々は転生した人間だが、それらを集めた集会の様なものだ。

 

 俺はそのタロット会の創設者にしてゼロ番のアルカナである愚者(フール)

 アルカナの意味と俺自身の気質から割り当てられた役職で、作品への介入傾向も加味して22種類の役職を与えて世界を管理している。

 なかなかに中二病が効いてていい感じだと思うのだがどうだろう?

 悲劇を好む役職、ラブコメを好む役職、アンチヘイトを好む役職、(ストレングス)の様に転生者に与える力にこだわる役職。

 少し挙げただけでも濃い面子がそろっているね。

 

「つーか、そろそろ世界(ワールド)のところに顔だしてやれよ。世界管理なんてやらせておいて、本人は世界渡り歩いて管理世界増やすってどんなイジメだって話だぜ」

 

「あいつは、能力も合わせて最強クラスだけど、性格がきっちりしてるからな。適材適所、俺は世界を創る、あいつは作られた世界を管理する。こうしてうまく世界は回るのさ」

 

「最強クラスってお前ら二人はタロット会最強ツートップだろうに……」

 

 知りませ~ん。

 つーか、タロット会のメンバー全員チートじゃねぇ奴いないっつーの。

 

 

****************

 

 

 呼吸。

 呼吸の拍子を整えること。

 

 それが、波紋を多く、強く、速く練り上げるための条件だ。

 座禅を組み、目を閉じて集中して練り上げるのならばある程度修練を積めばできる。

 

 しかし、こと戦闘においてそれはできない。

 相手に攻撃しなくちゃいけないし、相手の攻撃を避けなくてはならない。

 当然、動けば呼吸は乱れるし、動揺ししても呼吸は浅くも早くもなる。

 

「何が言いたいかっていうとな?」

 

 俺は目の前で腹を押さえて片膝をついている天の御使いを見下ろしながら言葉を続ける。

 

「戦いにおいて呼吸の乱れは戦いの流れを乱れさせる。いくら強大な力を持っていようと、そんなに呼吸を乱して、焦って、感情に身を任せたままじゃあ、弱いままだ」

 

「この、オリ主様が弱いだと!? てめぇ、どんなチートを持ってやがる!! 直死の魔眼か!? アカシックレコードへのアクセス権か!?」

 

 また、分からない単語が飛び出した。

 天の国の言葉なのか知らないが、会話になってはいないだろう。

 

「それが、どんなものか知らないし、興味もない。ただ、テメェは名剣を持っていても腕は素人だった。それだけのことさ」

 

「……クソが!! この恋姫の世界はオレ様がハーレムを築き上げるんだ! ポッと出のモブキャラなんかに……」

 

 そう叫ぶ御使いの背後の空間が歪んで幾つもの武器が切っ先をこちらに向けて鎮座していた。

 その全てが数々の戦で振るわれたであろう名剣、名槍、名器、の類。

 波紋の力を使っているからこそ分かる。その一本一本に込められている膨大な力の奔流。

 それらを惜しみなく、弓矢の様に放つのだから威力が高いし、殺傷能力も跳ね上がっているだろう。

 

「負けるわけねぇだろうが!!!」

 

 醜く歪んだ表情で叫ぶと同時に、自分に向けて放たれる武器達。

 どれもが一撃必殺の威力を持ちながら、数々の逸話を持ちながら、ただの弓矢として扱われる。

 

「放たれた矢は……」

 

 俺の腰に下げられた一振りの刀。

 数々の戦場を共に駆けた相棒であり、自身の手足の一部。

 それを抜き放ち、波紋を流し込み、飛んでくる武器達を逸らす。

 

「横に逸らすだけでいい。その判断は間違いだよ、全力で斬りかかれば武器ごと両断できただろうに」

 

「だったら、逸らしきれねぇぐれぇブッ込むだけだぁぁぁぁ!!!」

 

 

****************

 

 

「あーあ。ここまで戦いに向かない奴も珍しいな」

 

 (ストレングス)のつぶやきが哀れなオリ主(笑)君の末路を漏らす。

 

「得られた力に固執して、それ以外を使おうとしない。ましてや、あの奥義は応用がかなり効くはずの力だ。こりゃ、海央にいいようにやられて終わりかな? かませ犬にしたってもう少し持ち堪えてほしかったな」

 

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)は、それこそ古今東西新旧あらゆる宝具の原典が格納されている宝具だ。

 原作でのギルガメッシュは、それらを射出して攻撃していたが、あの男もそれに習う必要などないのだ。

 数多の武器を持ちながらどれを極めようともしない。

 

「確かに射出はギルガメッシュにとっては最適な攻撃方法だったんだろうけどなぁ。あいつにとっては、そうじゃない」

 

「下手に原作を知っているからそういう『思い込み』で行動することになるんだ。力はそういう思い込みで振るえば必ず破滅を招く。チートだろうが無敵だろうが、間違った力は周囲も自分も破滅させるのさ」

 

 そうつぶやいた(ストレングス)の目にはわずかな哀愁が見て取れる。

 おそらく、転生者として繰り返しの中にいたころに痛い体験をしたのだろう。

 

「見ろ愚者(フール)お前のお気に入りがなんかやろうとしてるぜ」

 

 

****************

 

 

 最高とも言える武器が雨のように、矢のように俺に向かって降り注いでくる。

 波紋で強化した身体能力と強化した視界を全力で使い、全てを避けていく。

 

 射出されている武器自体はほぼ見切っているから当たらないが、量が量だけに近づいて攻撃もできない。

 刀で逸らすことはできても弾き飛ばしたり、叩き落したりはできない。武器自体に込められている力が大き過ぎるから俺の刀のほうが先に折れる。

 

「シネシネシネシネーーーー!!」

 

 完全に子供の腕をぐるぐる回すような無茶苦茶な攻撃を仕掛けている。

 威力は段違いだが……ね。

 あの発射されている剣や槍などはどれも立派な武器だから格好がついているが、やっていることは手当たり次第に物を投げる駄々をこねている子供って所か。

 

「さて……、コォォォォォ!!」

 

 ある程度目が慣れてきたところで俺は波紋を全力で練り上げると、それを全身に巡らせる。溢れる活力、冴えわたる思考、そしてこれからやろうとする事への緊張を和らげてくれる。

 

「……シッ!!」

 

 まるで弓矢のように降り注ぐ神話時代の武器といっても過言ではないだろうそれらの中から一本の剣を狙い、避けると同時にその柄を握る。

 同時に全身の波紋をその剣に流し込む。

 いや、強引に波紋を叩き付けるといった方がいいだろう。

 込められている膨大な力。それを波紋を流すことで一瞬でも俺の物にできればと考えたからだ。

 

「な!? ゼロのバーサーカーと同じ事を!?」

 

 どうやらそれは成功したようで、武器そのものに波紋が行き渡り、山吹色に全体が輝く。

 

「そら、返すぜ!」

 

 剣の威力を殺すためにその場で一回転し、振り向きざまに手元の剣を御使いに投げつけた。

 

 

****************

 

 

 まるで、某四回目の聖杯戦争で見たワンシーンを彷彿とさせる行動だ。

 元ネタを知っているあの憑依している転生者や俺らはすぐにあの発想ができるだろう。

 しかし、この世界でアニメも小説も存在しないこの状況で海央の奴は、バーサーカーの真似事を波紋でやってのけたのだ。

 

「ククク……、ハハハハハハハ!!」

 

 (ストレングス)がそれを見て腹を抱えて笑い出した。

 当然か、こいつは『力』に対してこいつなりの信条と美学を持っている。今の海央のやってのけた事は、こいつの中では最高の賛辞を送るべき行動だったのだ。

 

「ーーーッ! あー、お前のお気に入り最高だ! ここでゼロバーサーカーの真似事を、波紋のみで、スキルを使わずにやってのける! お前のじゃなければ俺が貰って行きたいぐらいだぜ」

 

「おいおい、海央は死後、この世界のキャラごと俺の世界に連れて行くんだから勘弁してくれ~」

 

 俺の世界、いわゆる俺が転生していた時に気に入った奴や、今回のように介入した主人公格の奴らを招待する場所があるのだ。

 北欧神話のヴァルキリーが似たことをしてたと思った。あれに近い。

 

 タロット会のメンバーは全員それを持っている。

 時代背景も世界背景も違う人間たちが一つの世界でどう生きるのか? という部分もあるが、大抵は大陸を分けたり、思想や性格が合いそうなら一つの街に同居させるなどして意外と上手くやってくれている。

 

「わかってるよ。ただ俺好みで最高だって話だ!」

 

 ここまで機嫌のいい(ストレングス)はなかなかにレア度の高い光景だ。

 本当のところ、海央自身への期待度は高くなかった。

 

 海央は次世代への布石。

 精神を、心を伝えるための登場人物としてこの世界に置いた。

 それが、ここまで成長し、ここまで予想以上の働きをしてくれた。彼へ期待していた役割以上の仕事を、動きを、役割を、徹底してやってのけてくれた。

 

世界(ワールド)に頼んで、閲覧できるようにしておくからそれで勘弁な?」

 

「おお、そりゃ楽しみだな。さて、決着も付いた。奴の魂連れて審判にかけますかね」

 

 そういうと、掌に魂を召喚すると光の膜で包んでしまう。

 

「魂縛の術か、重罪人かい?」

 

「おう、運命に無い死人を五百人ほど作った重罪人だ。良くて魂すり潰されるか、悪くて無縁地獄行きだな」

 

 やれやれ、最低なのは力に対してだけじゃなかったわけか。

 あの男の態度見る限り、無縁地獄は確定だろう。

 ただ、白い空間に発狂しては戻され、発狂しては戻されを繰り返す、縁の無い地獄。

 

「そっか、ならとっとと連れて行ってから戦車(チャリオッツ)にでも文句言え。ま、懲りねぇだろうがな」

 

「ああ、そうするぜ。またな~」

 

 

****************

 

 

 雨が降る。

 赤壁の大河を覆う炎を徐々に小さくしていってくれる、救いの雨だ。

 

「……そこに、いる、のは……魏の将軍、か……?」

 

 両刃の直剣、柄は蒼く、刃と柄の間に金色の三日月の様な鍔を備えた簡素でありながらにして、強力な剣。

 その剣を腹部に深々と刺し込み、彼の纏っていた白く煌びやかな服は右半分が破れ散り、左腕から肩にかけてのわずかな布しか残っていない。

 致命傷だ。誰がどう見ても、ただの直剣ですら致命傷として十分すぎる傷だ。それなのに、彼に刺さっているのは彼自身が射出した高名であろう強力な魔剣・霊剣の類。

 

「なんだ。さっきまでの威勢が無くなったな? そうだ、董卓軍討伐の会議以来だな、蜀の御使い」

 

 死に際の言葉なのだろう。弱弱しく、無理やりに喉を鳴らしているような声で、それでも彼は言葉を紡いできた。

 これほどの男ならあんな力がなくても別の形でこの戦いを勝利に導けただろうに。

 

「ハハ……、残念だけど、目が、ほとんど見えてなくて……、久しぶりかもわからないんだ……」

 

「そうか、末期の言葉ぐらい聞いてやるぞ? お前を殺した俺のすべきことだからな」

 

 腹に刺さっている剣から俺の波紋が流れて少しは持つだろうが、それでも致命傷の人間には痛みの緩和とわずかな延命措置しか効果がない。

 ならばせめて、わずかに伸びた命で絞り出される遺言をしっかりと受け取るのが、対峙した者の責務だろう。

 

「あり、がとう。蜀や呉のみんなに……この……」

 

 そういうとわずかに残っていた、彼の象徴である白い服を脱ぐと、自らの血で文字を書きはじめる。

 

「遺言を届けてほしい。一時期から俺の中に別人が……成り代わって、少しずつ乗っ取られてたこと、こうなったことへの謝罪が書かれている」

 

 見ると、俺の知らない言語。漢文で一部描かれているが大半は簡素な形の字だ。

 しかし、一文字一文字しっかりと書かれているのを見ると、その字に文字通り命を懸けているのがわかる。

 

「知らない文字だが、わかった。必ず、蜀の人間に渡そう。だから、安心して眠るがいい」

 

「ああ、直接お別れが言えなかったのが……心残りだなぁ」

 

 弱弱しくつぶやく彼の瞳には涙が伝い、その無念さがうかがえた。

 

「この船は延焼が少ない。その上蜀の船がこちらに向かっている」

 

 言葉通り、蜀の船がこちらに向かっている。おそらく、彼を助けるためだろう。

 

「遺言は燃えて消えない様に落ち着いたら確実に渡す。いまは……」

 

 彼の肩に手を置くと練りこんだ波紋を流し込み、さらに延命措置をする。

 あとは、彼の運と執念次第だろう。

 

「波紋でわずかながら延命措置をした。命が消える前に会えるといいな」

 

「ありがとう。こんな形じゃなかったら……いい友に……慣れてただろうに……な」

 

 そうつぶやく彼に、敬意をこめて礼をすると、風の待っている陣地へと向かった。

 

 

****************

 

 

 




 いかがでしたでしょうか?

 まだまだ、追加していく予定ですが、ストーリーの基本骨子が書けたので投稿でした。

 それでは、次は違うところで会えたならば光栄です。


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