『愛』はすべてに打ち克つ! (とかとか)
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《プロローグ》
第1話『一目惚れ』


 純愛初挑戦です。




 ………今まで恋愛の『れ』の字も体験した事が無い私が純愛を書けるんですかねぇ。




 フライパンはまだ出ません。


※2/9 PM6:32 高町家=翠屋ではないとの指摘から変更致しました。御了承ください。


  

 

「結婚とその後を前提として、付き合って下さい!」

 

「え!?……あの、その前に君、誰?……とりあえずよくわからないから……ごめんなさい……」

 

「 」

 

 軽く絶句した海のそばの公園の、6月の下旬の事。

 俺、初恋で失恋しました。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第1話『一目惚れ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 最初の告白は、6月の下旬の事だった。

 俺はその日熱かったから涼みに行くために一人で(・ ・ ・)(←ここ重要)海が見える公園の近くを散歩していたら、たまたま隣のクラスの(俺の最も苦手で天敵と言っても良いほどの奴である)高町と、その近くにいる一人の少女を見つけた。

 その少女を見た瞬間、俺の心臓はどうにかなったんじゃないかってくらいに動機が激しくなったって言うのは、今でも覚えている。

 嗚呼、これが噂に聞く一目惚れって奴なのか。

 昔から惚れた腫れたとは無関係だった俺だが、まさかこんな事になるなんて夢にでも思う訳がないさ。

 だって、あの少女を見てみてよ。

 風に靡く、ツインテールにした長い金の髪の毛に、柔和な微笑みと少し潤んだ赤い瞳。

 更には半袖から覗くすらりとした両手と両足。

 ……ここだけ見たら、俺は完全に変態だ。

 でも、本当におかしくなったんじゃないかってくらいにはその子を見てたのかも知れない。

 だから高町が少しの間その場を離れた瞬間に少し近付き、あんな、上記に記したような告白をしたんだろう。

 で、結果は言わなくても分かるように見事に振られる訳で。

 でも、諦められる訳がないんだよなぁ……。

 

「ぐ、うぅ……。そ、そりゃそうですよ。こんな名前も知らないような逸般人が近付いて来て、いきなり告白するなんて、おかしいですよねぇ……」

 

「えっと……君の言ってる事はよく分からないんだけど……。あ、そうだ!じゃあ、私と自己紹介しようよ!……それで、お互いの名前で呼び会うんだ。そしたら友達になれるんだって私の友達が教えてくれたから……」

 

 なん……だと!?

 神はまだ俺にチャンスを残しておいてくれた。つまり、友達から始めろって事ですね神様。

 

『ちゃうねん』

 

 なんか聞こえたが無視する。とにかく恐らく、これが人生最後になるだろうけど……すがっておくに越したことはない。ありがてぇ、ありがてぇよぉ……。

 ……………ってまてまて。よくよく冷静に考えてみたら、名前を呼んだら友達って……高町理論じゃないか。

 ……昔から、幾度となく俺の邪魔やらなんやら攻撃してきた今では隣のクラスの高町 なのは。……なんだよ、なんだってんだよ名前の響きが似てたら高町にとっては攻撃対象なのかよ(昔のトラウマ発動中)。

 ……だがまぁ、今はその高町のお陰でこの子と友達になる事が出来る。ありがとよぉ!高町ぃ!高町理論を教えといてくれてぇ!ここだけは本当に感謝だ。

 

「あ、えっと、俺は盾街(たてまち) あおなって言います。この町に……海鳴町に住むただの小学3年生です」

 

 本当にただの小学3年生です。

 強いて違う所をあげるとすれば、『愛』って言葉がとっても好きって所カナ。

 ……それと、暴君(高町なのは)と名前が少し似てるって所カナ……。

 

「そうなんだ……あおな?……って言うの?可愛い名前だね!」

 

 うん!ありがとう!言われると思ってたその可愛いって言葉!

 いつもなら凹む所だが、なんでだろう。この子に言われたら胸の奥底がきゅんきゅんする。

 ……そうか……これが"恋"……なのか……。

 

「私はね?フェイト・テスタロッサって、言うんだ。よろしくね?」

 

「はい!よろしくお願いします!フェイトさん!」

 

 ……フェイトさん……フェイトさん、か……。いやぁ……いい名前だなぁ……。うん。恋は盲目って言うらしいけど、どうやら本当だったらしい。もうこの子以外見れない。だから後ろの大魔王に気付けない。

 

「………あ・お・なくぅぅ~ん。なんでここにいるのかな?」

 

 気付いた時には既に後ろに立っていた。

 俺は顔面の冷や汗を全力で阻止しつつ後ろを振り向く。……これは本格的に俺の後ろに立つんじゃねぇ殺法を学んだ方がいいんじゃなかろうか。

 

「……おやおや。高町さんじゃないですか。お久しぶりって言うか、こんなところ(・ ・ ・ ・ ・ ・)で会うなんて奇遇ですねぇ……」

 

 とにかく威嚇MAXで高町の方へ目をみやる。

 かなり長い茶髪をどうやったらそんなツインテールになるんだって頭と、見た目凄い美少女って顔に深い影を落としながら……より詳しく言うなれば『ヤンデレが好きな人の浮気現場を見た(ver.目にハイライトがある)』状態って顔でこちらの顔を見ていた。

 確実に人一人殺してるって目だよこれ。

 

「こんなところって……普通はこないよ?」

 

「そちらこそ……どうしたんです?こんな休みの日、貴女も普通なら家でゴロゴロしている時間帯でしょう?」

 

 ちなみに、俺の家は高町家の隣にあったりする。

 だからなのか、近所付き合いがあったりする。かなり深い所まで。

 それに理由と付け、更に説明を付け加えるなら高町家は商店街で、家族+アルバイトで洋菓子店『翠屋』を営んでて、うちは本屋『千科辞典』を父さん+アルバイトが営んでる。こちらも隣同士。

 本屋の帰りに翠屋へ行く、そんな付き合いだ。より詳しく言うとすれば、本屋に寄ったら翠屋で割引、翠屋で買い物したら本屋で割引。そんなwin-winな感じで親たちは仲良くさせてもらってます。俺は高町のなのはさん以外と仲良くさせてもらってます。

 

「いや、今日はフェイトちゃんの見送りに来たんだよ」

 

「え……フェイトさん、どこかに行っちゃうんですか?」

 

 おう高町。その謎のどや顔やめろ。

 

「うん……。ちょっとの間だけど、この町を離れなきゃいけなくなっちゃって……」

 

 あぁ……こんな((´・ω・`))顔になったフェイトさんも可愛い……。

 ちなみに高町はその言葉を聞いて謎のどや顔からフェイトさんと同じようなしょぼん顔になっていた。俺にとっては高町のなんぞ需要の欠片も無いね。

 

「……だ、だったら俺と携帯のアドレス交換しましょうよ!」

 

 そこで取り出したるはスマートな携帯。これならフェイトさんが県外だろうが海外だろうがどこにいたって連絡が取れる。流石に圏外は無理だが。

 

「あ……えっと……私携帯電話は持ってなくて……」

 

「  」

 

 再び台詞に空白が入る俺。だが、諦める訳にはいかない。もしここで諦めたらこの"繋がり"は切れ、二度と会えない。そんな気がする。

 

「じゃあ、俺の携帯の電話番号を渡します」

 

 俺は懐からペンとメモ帳(店番してる時に何時なんどきうちの本屋への予約が入るか分からないからだいたいいつも持ち歩いてる物)を出し、電話番号を書く。

 そしてそれをフェイトさんに渡す。

 

「ありがとう」

 

 その時の笑顔は頭から二度と離れないと思う。

 

「でも、離れる所はかなり遠い所だから電話も出来ないよ?」

 

 そこで高町の茶々が入るが勿論気にしない。

 

「そんなの、関係ないですよ。愛の前に、障害は付き物ですからねぇ。しかも、それが距離なんてそんな些細なもの」

 

「……そこは次元が違うんだけど」

 

 高町の漏らした言葉の意味が一瞬理解できなかったが、どうせ想像の絶する"程度"の距離なんだろうと解釈した。

 

「…………本当の意味で次元が違うんだけどなぁ………」

 

 どうやら、高町はまだまだ理解してないようだった。これは本格的に教えなくちゃならないかもしれない。勿論、その理由を問われたら断るけど。

 

「高町さん。貴女は全然分かってない」

 

「はぁ?」

 

 だからそんな分かってない高町に言ってやった。

 

 

 

「愛は次元を越えるけど、次元は愛を越えるものじゃないんですよ」

 

 

 ってね。

 その後、高町はやっぱり分かってないのか、疑問符を頭に浮かべてそうな顔をしながら俺を港から追いやった。解せぬ。

 とにかく、フェイトさんにお別れの言葉を三時間ほど言おうとしたんだけど、その前に追いやられたんだもの。

 たったの一言の『またね』とツーショットの写真しか撮れなかった。




~その後のなのはさんの心境~


(あうぅ……なんであおな君がこんな所にいるの……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


 後悔があるとすればクリスマスにあげたかった……ただそれだけです(リア充に恨みがましい視線を向けながら)。

 感想、質問、批評、誤字報告待ってます。
 次回もよろしくお願いいたします。


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第一章《愛って?》
第2話『愛、それはユニヴァース』


 連続投稿です!(深夜のテンション)


 …………書き貯めしてたなんて言えない。


 フライパンはまだです。




※今回どこかで聞いたようなお店の名前がありますが、現実のお店とは一切関係はありません。


 フェイトさんと別れ、だいたい半年が過ぎた。

 結局、フェイトさんから連絡は一切こず、その代わりに高町からの呼び出しが多くなった気がするが、全て無視して逃走しているので知らない。

 

 だからなのか、今、屋上にて縄で簀巻きにされたあげく、三人娘の前に転がっているんだ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第2話『愛、それはユニヴァース』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、本当にどうした事だろう。

 しかも時期が時期なだけに恐ろしく肌寒い。

 今日は家に帰ったらフェイトさんとのツーショット写真を見ながらずっとニヤニヤしようとしていた矢先にこれだ。これはもう訴訟していいレベルだと思うんだけど……どうかな?

 

「帰っていいですか?」

 

「ダ~メ♪」

 

 そうやってほんわかと拒否の言葉を話すのは月村 すずかさん。紫の長い髪の毛に、紫色の瞳。そして醸し出すほんわかお嬢様のオーラと、そのオーラに惑わされてはいけないほどの運動神経を持つ、聖祥大学附属小学校男子人気No.1を争う美少女。

 俺はこの子に追い掛けられて捕まった。

 

「何で帰っちゃ駄目なんです?」

 

「なのはちゃんが貴方に用事があるって言ってたから」

 

 残念だが、俺にはそんなものは欠片も見当たらない。正直、他を当たって欲しいくらいだ。

 だけど、なんで窓から飛び降りたのにいつの間にか屋上に連れてこられたんだろうか。

 その辺を割りと聞きたい今日この矛盾。

 

「って言うか、そもそも誰なのよ貴方!」

 

「あ、俺、盾街 あおなって言います」

 

 そしてそんな俺にキツイ言葉を浴びせてくるこの少女はアリサ・バニングスさん。長い金髪、キツイ緑目(ちなみに緑は嫉妬の色らしい)、更にはお嬢様の上、学年1位を楽々さらっていく才色兼備の体現と言ってもいい程の美少女。ちなみに俺のランクは上と下の同時から数えた方が早い。

 

「そんなんは知ってるわ!」

 

 なんで知られて……。そっか、家が隣だからか。

 つか、知ってるんなら何故聞いたし。

 

「そうじゃなくって、なんでアンタの為にアタシ達の大切な時間を削らなくちゃいけないのって事よ!」

 

 それはこちらもなんですがそれは?

 

「しかも毎日毎日毎日毎日なのはの口から『あおな君がまた逃げたあおな君がまた逃げたあおな君がまた逃げた……』ってボソボソ聞かされるのよ!?こっちの身にもなって貰いたいわ!」

 

 知らんがな。

 俺だって高町なんかに時間は割きたくないから逃げたんだ。だからこうなったんだろうけどそれは俺の預かり知る所じゃ断じてない。

 だが、それが俺の所為である可能性が欠片でも存在するって話ならバニングスさんや月村さんに迷惑を掛けたんだから謝った方がいいのかも知れない。

 もしかしたらそれで逃げれる……もとい帰れるかも知れないから。

 幸い、高町はまたどっかに行っている。早く逃げないと凶器を持ってこられる可能性が出てくる。

 俺もこの年で死にたくない。

 

「そうだったんですか……。なんていうか、本当にすいません……」

 

 心から(笑)の謝りだが、バニングスさんにはどう写るか!

 

「……ぅ、わ、分かればいいのよ」

 

 結果、縄を解いては───くれなかった……。

 ただ赤くなっただけで終わりやがった。こんなんじゃ抜け出せねぇ。

 縄脱けを使おうにもこれは手足なんかじゃなく、身体に縄を両腕ごとぐるぐる巻きだ。

 畜生……。

 このままじゃ、高町が帰って来ちゃう。……どうしよう。

 そんな時だ。

 

『ゆあーしょっーく』

 

 俺の携帯が鳴る。

 しめた。これならもしかしたら急用が入っただなんだで帰れそうだ。

 

「あ、すいません。携帯に連絡が入ったみたいなので取ってくれません?」

 

 この状態じゃ電話が取れない。

 だから取ってもらう。

 

「ん?あぁ、仕方ないわね」

 

 意外にも、バニングスさんが取ってくれた。これは俺の中では高ポイントやでぇ。

 

「ありがとうございます。……では」

 

 耳に当たった冷たい俺の携帯。

 そこから聞こえてくる声は………。

 

『げ、元気にしてた?久しぶり……だね』

 

 フェイトさんだった。

 

「フェっフェフェフェフェフェフェイトさん!?お、お久しぶりです!今どこですか!今すぐそこに行きますから場所を教えてくださいお願いします!」

 

 あかん。テンションがおかしい事になってる。

 仕方ないか。

 

『あ、うん。えっとね?……君と……あおなと初めてあった場所にいるよ』

 

 あの港か。

 

「少しの間だけ、待っててください!すぐ行きますから!」

 

『うん。待ってる』

 

 そうして、電話は切れる。

 ………ふ、ふふふ。会える。会えるんだ。フェイトさんに……ふふふふ。

 

「ちょっと、盾街?大丈夫?」

 

「いくら盾街君のテンションが上がったとしても、逃がさないよ?なのはちゃんから言われてるんだし」

 

 そんなこと、知ったこっちゃない。

 

 

「フリーダム&ユニヴァァァァァァス!!」

 

 

「「と、飛んだ!?」」

 

 気付いたら、俺は縄を引き千切って屋上から飛び降りていた。

 ちゃんと鞄を持って。

 そんで地面には衝撃を逃がしながら着地した後、靴箱へ直行。靴を履き替えると、港へと走り出す。

 こうなった俺を止める事なんてもう不可能さ。

 車よりも、電車よりも、飛行機よりも、風よりも、情報の伝達力よりも、早く──。

 ただ、フェイトさんに会いたい。それだけが頭でぐるぐると黄金長方形の回転をしている。

 

 俺は……光になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

 ……ここは、どこだ?……海?……みな、と?

 

「あ……あおなだ。おーい」

 

 我に返った頃には既に港に着いていた。何が起こったかはこの際はもうどうだっていい。フェイトさんが俺を呼んでいるんだ。行かなくちゃ。

 

「久しぶり……だね。あおな」

 

「はい!フェイトさん!」

 

 あぁ、癒される……浄化されるって言うのは、こんな気持ちなんだろうな……。

 心の奥底からの安心感。なんていうか、救われる。そんな気分。

 

「あおな?」

 

「はぅあ!あ、すいません。少し自分の世界に入ってました」

 

「ふふふ…。あおなって、面白いね」

 

 笑ってるフェイトさんは可愛い……。

 

「そうだ。あおなに言うことがあるんだけど、私、今日からこの町に、海鳴に住むことになったんだ」

 

 フェ!?よっしゃぁぁぁって言いたい気持ちをなんとか抑え込む。

 

「そうなんですか?じゃあ、これからもよろs「その上で」……はい?」

 

 と、そんななんとか喜びの雄叫びを押さえ込んだ上で出した形式上のような挨拶を言おうとした瞬間にフェイトさんに遮られた。

 他の人ならイラッてくる所だが、そんなのが全然ない。これが恋か。

 

「その上で、さ……えっと……その……」

 

 あぁ、もじもじしてるフェイトさん可愛い……。

 

「一緒に……()にいかない?」

 

「はい?」

 

 フェイトさんの声は、俺の耳の性能が悪い所為か聞こえなかった。性能の悪いこの耳を地獄耳を持っている高町のと取り替えたい。

 

「あ、えっとね?……あおなと一緒に……その、携帯を買いたいなって……思って……」

 

「はい!俺は勿論OKです!」

 

 フェイトさん が 買い物 に 誘う▼

 俺 に 拒否権 など 存在 しない!▼

 選択肢?そんなもの、今、過去、未来のどの俺にもある訳がない。

 

「どこにします?ギルガメッシュ愉悦店ですか?それともドコカにしますか?それとも固い金庫店にしますか?あ、ちなみに俺のはギルガメッシュ愉悦店です」

 

 これは巷で言う買い物デートになりはしないだろうか。そうであったら俺としては限りなくありがたい限りなんだが。

 

「じゃあ、ギルガメッシュ愉悦店にする」

 

「はい!分かりました!」

 

 これで俺との連絡では、通信料やらなんやらを度外視することが出来る。

 え?高町に教える?なんでそんなことをしなくちゃいけないのやら。

 ちなみに、高町家はドコカで、バニングスさんと月村さんもドコカらしい。固い金庫店?あぁ、高町のお兄さんが利用してる。誰かと連絡する度に『お金が大変な事になってる』って毎月嘆く事になってる。

 

「じゃあ、早速行きましょうか!」

 

「うん!」

 

 港から歩いて携帯を買いに……。この間の時間はとても短く、だけどすごく濃密に感じられた。

 そして──

 

「これでいいんだよね?」

 

「はい!」

 

 ──俺の名前がフェイトさんの電話帳の初めてを飾ることになった。

 

「じゃあ、今日はありがとね」

 

 そして、別れの時が来た。

 フェイトさんが『またね~』って言いながらこちらに手を振ってくれている。

 ……そうだ。

 

「フェイトさん。言い忘れてた事がありますが……」

 

「ん?何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──おかえりなさい、フェイトさん」

 

「ぁ……うん!ただいま!……あおな」

 

 夕焼けに染まりながら笑うフェイトさんを見て、家に帰りほっこりしていた俺は、その翌日、高町の手により、夕日よりも赤く染まった。




~その後のなのはさんの心境~

(あ~あ……。またあおな君に逃げられた……。なんでこうやって暴力的な面でしかあおな君に話せないんだろう)

 その後、フェイトの携帯の機種が違うことを知り、更に落ち込むなのはであった。


◆◇◆◇◆◇◆


 もしこの店名が駄目なら変えます。

 感想、質問、批評、誤字報告待ってます。
 次回もよろしくお願いいたします。


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第3話『あおな、暁に沈む』

 好きな人に作って貰ったモノって例えなんであろうと大事にしますよね。



 それと、フライパンの出番はまだです。




 今回(恐らく)フェイトさんに独自設定っぽいのが付きます。


 ……地面に、崩れ落ちる。この()()は明らかに普通じゃない。それどころか、どこか異界化してるんじゃないかってレベルだ。

 鼻に付くような刺激臭が思考回路を狂わせる。

 なんで、なんでこんな事に……。

 あの高町どころか、バニングスさん、月村さんまで倒れている。……こんな事があって、いいのだろうか……。

 ……恐らくそれは……ちっぽけな俺には永遠に分からないだろう。

 

 

 

 

 

 だが、食してみせる。

  これは、フェイトさんの手料理なのだから。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第3話『あおな、暁に沈む』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 フェイトさんが聖祥大学付属小学校に転校してきて、2~3日経ったある日の事だ。何時ものように高町に追いかけ回されている俺が廊下の壁紙で見つけたそれ(・ ・)は、俺と高町の足を止めるのに十分だった。

 

 『二クラス合同調理実習』

 

 調理実習──。それは、数多の少年少女達のある意味での初めての手料理。これこれを作って誰々にあげるんだ……などと言ったそんな家族以外の誰かの為に作る料理だ。

 それを見たと同時に俺はフェイトさんの手料理が食べれると思い、テンションが鰻が天駆ける龍に成るが如く最高にハイになった。

 だが……調理実習の当日。予想外の事実と現実が俺の……いや、俺達の目の前に叩き付けられる。

 

「えっと……胡椒を少々?……胡椒って、これかな?」

 

 フェイトさん。それは胡椒じゃなくて黒糖です。

 

「紅生姜……あ、それなら分かる。これだ!」

 

 それは紅生姜とちゃうねん。豆板醤やねん。

 

「後は……そうだ!困ったらオリーブオイル、だったっけ……」

 

 おのれオリーブオイル、こんな所まで侵食してきおったか。後、それオリーブオイルじゃなくて酢ですよフェイトさん。

 ちなみに言うが、作ろうとしているモノはカレーだ。

 だが、フェイトさんの作っているカレーは明らかに色がSAN値を削る色をしているし、匂いもかなり強烈だが、そんな些細な事を気にしてはいけないだろう。

 有志によるフェイトさん説得隊が即席で結成されたが、フェイトさんの『任せて(ニッコリ)』には勝てず、任せてしまう事になった。その結果がこれである。

 

「出来た!……じゃあ、これをなのはと……あおなに……」

 

 えへへーって言いながらもじもじとこちらにカレーとスプーンを渡してくるフェイトさん。やっぱり可愛い。

 

「あ……うん。ありがとうフェイトちゃん……」

 

「ありがとう……ございます!フェイトさん!」

 

 見て分かる位にテンションがただ下がりの高町と違い、俺は無理矢理にでもテンションを上げる。

 ほら、料理は愛情って言うじゃないか。

 見てごらんよ。フェイトさんのカレー。色合いがちょっとアレなだけできっと美味しいよ。

 

「「いただきます」」

 

 俺と高町はほぼ同時にカレーにスプーンを突っ込み、掬い、口へと運ぶ。

 あぁ、美味しいじゃないか……。なんだ、ただ見た目が悪いだけで美味しいんじゃないか……。この天にも昇りそう気持ちになる味は素晴らしい……。

 もっと食べたいって思った。……だけど、腕が動かないし、視点もどこか高い。ふと、下に目をやると、床に倒れている俺を見付ける。どうやら幽体離脱して今まさに昇天する所だったらしい。

 

「……ハッ!」

 

 なんとか身体に戻れた。危なかった……。今の一瞬、フェイトさんに似た少女っぽい人がこちらにおいでと手を振っていた気がしたが、なんとか戻れた。

 よかった良かっ「ひぐっ……あぅ……ごめん……ごめんなさい……あおな、なのは……」……。

 前言の即時撤回を求める。こんなの、全くと言っていいほど良いわけがない。フェイトさんが泣いているんだ。

 

 

 ──男なら、好きな人の作った手料理をなんとする?

 勿論、食べる。

 

 

 ──例えそれが、想像を絶する、この世のものではないほどの不味さでも?

 当たり前だ。

 

 

 俺は、立ち上がる。

 そして、泣いているフェイトさんに向かって、サムズアップをする。

 

「大丈夫ですよ、フェイトさん。ちゃんと食べれますから」

 

「え……あおな……でも、倒れ……」

 

「誰にだってこんな事はあります。俺だって、最初はそうでしたから……。だけど、フェイトさんの料理は大丈夫です。絶対に上達します。そんな味が、しましたから……」

 

「あおな……」

 

 自分でも何を言っているのかがさっぱり理解出来なくなっているが、それはきっと愛情のスパイスが強すぎた結果だと脳に上書きする。

 さぁ、食べようじゃないか。行くぞ、フェイトさんの料理よ──食べられる準備は充分か?

 

「さて……もう一度。いただきます!」

 

 スプーンを振るう。ただ、笑顔を守るために。

 男がスプーンを振るう理由なんてたった1つ。

 好きな人の涙も一緒に掬いたいから、だ。

 

「はぐはぐもぎゅもぎゅあむあむぅぅっっ!」

 

 ただ、食べる。口とか食道とかからジュンジュワーって音が聞こえるが、そんなものは無視する。今の俺はリスクを度外視して最高のリターンを得ようと頑張っている。

 これ食べきれたら好感度UPじゃね?そんな事を考えながら。

 そう、下心が満載だったからこそこんな事が出来るんだ。

 これもひとえに愛。そう思いながら。

 

 

 

 気付くと、皿は空になってたうえ、鍋にあった分も食してしまったらしい。

 周りから拍手が巻き起こる。

 いや、それは俺の幻覚なのか幻聴なのかどうなのかは知らない。不自然に視界がぼやけ、聴覚は綿を詰めたかのようにくぐもって聞こえる。更に味覚は痺れ嗅覚は完全に破壊されている気がする。

 だけど………

 

「あおな……ありがとう!」

 

 フェイトさんの手の温もりは理解できる。触覚だけはどうやら生き残っていたみたいで俺の手をフェイトさんが握っているのが分かる。

 俺も、『どういたしまして』と『ごちそうさまでした』を言おうとしたのだが、残念ながら呂律どころか喉が仕事を休んだ所為で声が出ない。

 

「私……絶対に料理うまくなるから!」

 

 だけど、フェイトさんのその声は聞こえる。俺の言葉は出てこない。だけど、幾ら耳の機能がやられてもフェイトさんの声はハッキリと聞こえる。

 

「だから…………その時はまた食べてくれる?」

 

 ──────だから、その言葉には頷く事が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、俺はその後倒れてしまったらしい。

 らしい、って言うのは倒れたその瞬間の記憶がないから。ただ、覚えているのはフェイトさんの手料理がまた食べれるヤッターって事ぐらいだ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 さて、俺が保健室で目を覚ます頃には既に五時頃を回っていた訳だが。夏ならこの時間帯でも明るい。だけど今は12月。よって空は夕闇と宵闇の中間というよくわからないくらいの暗さだった。

 とにかく、家に帰ろう。そしてフェイトさんとのツーショット写真を見るかメールで話そう。

 

 ──そう考えていた矢先の事。

 

 俺の目の前が歪む。そして、その歪みが元に戻ったと思ったら、そこの空気はどこか、重苦しかった。

 ふと空を見ると、空はどす黒い紫色だった。

 ………明らかにこれはおかしい。

 とりあえず、今日フェイトさんの作ったカレーの色程じゃないが、おかしい。いや、フェイトさんの料理はどこもおかしくない。OK?OK(ズドン)。

 そうやって思案に暮れていると、後ろから声を掛けられた。

 

「お前の魔力、もらい受ける」

 

 『おい、デュエルしろよ』ばりの自然な流れで魔力を要求してくる、既に抜剣している高身長で、ピンクの長いポニーテール、更には刃そのものなんじゃないかと思えるくらいに鋭い瞳を持った女性がそこにいた。

 なんとなく、なんとなくだけど自分が今ピンチに立たされているんだって事は分かった。だけどどうしようも無いんだよなぁこれが。

 

「はて、なんのことやら……」

 

 ともかく、今はすっとぼけて時間を稼ぐくらいしか出来ない。

 

「ふざけるな。そんな強大………………でもないが、そこそこの魔力を持っているのに何故とぼける必要がある」

 

 ……これは、ドッキリかなんかなのか?

 魔力とか、訳が分からないよ。あれか?厨ニの人なのか?

 そうでもないと説明が付かない。

 

「あの……恐らく人違いだと思われますが……」

 

「ふむ……。そうか……」

 

 どうやら分かって貰えたようだ。いやぁ……話の分かる厨ニの人で良かっt「だがその魔力は貰っていく」……What?

 今、なんて言った?

 そんな、呆けているような、隙がありまくりの俺を目掛けて、その女性は持っている剣を──振り下ろす。




~その後のなのはさん~

(ごめん……フェイトちゃん。お姉ちゃんの料理を食べて鍛えられてる筈の私でも……半分が、限、か……い)


◆◇◆◇◆◇


 フェイトさんって料理得意なんですかね?
 その辺が分からなかったのでこうなった訳ですが。

 感想、質問、批評、誤字報告待ってます。
 次回もよろしくお願いいたします。


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第4話『フライパンが空を飛ぶ訳がないだろ!』

 これで書き貯め分は終了です。


 その女性の一撃は俺を割り箸を綺麗に割るかのように真っ二つに────する事はなく、止まっていた。いや、止められていた。ちなみに、髪の毛の数本は犠牲になりました。

 

「お前……なんだ?それは……」

 

 女性の剣撃を止めたそれは、今俺の目の前で浮いている。

 こちらから見たら()()が横一の形で末広がり(四角い)、女性の剣が縦一、つまり十字っぽくなってる訳だが……。あ、女性が距離を取った。

 ……と、言うわけで改めて俺を守ってくれている()()を見て、そして左手で握る。

 ()()は灰色で、主に料理で使われる筈の物。先端はスプーンを四角く広げた感じで、その反対側は持ちやすくなっている&火傷しないように太くなっている。

 その扱いに長けた者であるならば、()()の作るべきモノである卵を溢さずに扱う事が出来る物。

 ──その名は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────フライパン(卵焼き専用)……!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第4話『フライパンが空を飛ぶ訳がないだろ!』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「…………貴様、なんだそれは」

 

 それはこちらの台詞なんだが。

 何で唐突なピンチを救ってくれたのがヒーローもといヒロインではなくこんな卵焼きにしか使えない(偏見)フライパンなんですかねぇ……?

 とにかくなにかしら返事を返しとかないとなんか駄目な気がしたので一言だけを返しておく。

 あれだよ。所謂虫の知らせって奴だ。

 

「知らないんですか?これは卵焼きを作るときにかなり重宝するフライパンですよ?」

 

「……そんな事は、知っている!」

 

 デスヨネー。

 

「私が聞きたいのは、何でフライパンが貴様の元に飛んできたのか、と言う話だ!」

 

 そんなの、俺も知るわけが無い。

 

「……だが、まぁいい。それでお前は得物を得たわけだ」

 

 う~ん。フライパンを武器として扱うことは出来ないカナー。

 だってこれ、料理する為の物だし。

 と、言うよりあの女性の目が恐ろしく輝いている気がするんだが。

 

「まさか、怖いのか?少年。まぁ、当然だ。ベルカの騎士であるこの私に勝てる訳がない」

 

 おっとぉ?こんな露骨な挑発、ハハッ笑っちゃうね。

 こんなのに引っ掛かる訳がない。

 そんな見え見えの見え透いた罠に引っ掛かる馬鹿なんている訳がない。

 

「試してみますか?俺も元は弓道を少々習ってましたからね」

 

 ………無意識なんです。許してやってつかーさい。

 つか、弓道が欠片も関係ない件について。

 まぁ、確かに習うように誘われた時もあったさ。高町の家が古武術の…………なんってたっけ、確か正式名称が永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術(略して御神流)だったような気がする。

 だけどそんなの今はどうだっていい。

 

「ほう……お前、弓をやっていたのか。道理で少し鍛えられた身体だと思ったぞ」

 

 戦の前の塩は基本。

 精神攻撃じゃないだけありがたい。

 

「さて、少年よ。そのフライパンに名前はあるのか?」

 

 知らん。そんなことは俺の管轄外だ。

 

「いえ、知りませんが……」

 

 逆に聞きたい。フライパンに名前がいるのか?

 あぁいや、ちゃんとした銘があるんだろうが、こんな百均で適当に買ったフライパンに名前がある訳がない。

 だが、少し見栄を張るためにちょっとかっこよく言ってみる。

 

「ふふ……。ただ知っているのはこのフライパンとは様々な地獄を共にして来た……。ただそれだけです」

 

「ほほう……!それはそれは……。私としても期待せざるをえない」

 

 言ってから後悔。

 これが後の祭りか。

 ただ、地獄ってのは本当だ。

 油を挽き忘れて卵が焦げて大変だったり、まだ熱いのにフライパンを触ってしまい火傷したり、フライパンを洗って乾かしてからそれを仕舞う時に手が滑って右足の小指の付け根部分にダイレクトアタックしてくれやがったり………………ほんに地獄の日々やったでぇ……。

 

「とにかく、余り俺を嘗めない方がいいですよ?」

 

 顔では何とも無いような顔をしているけど内心はビクビク。

 あらやだ、この女性には俺のハッタリが効果がないみたい。

 例えるなら高町が大切に取っておいた高町母お手製のシュークリームを知らずに食べてしまい、それを知った後のような感じ。

 ……あの時は本気で死ぬかと思いました。はい。

 

「嘗めてはないさ。少なくとも、敵を見た目だけで判断するほど私は慢心してはいない」

 

 してください。

 

「とりあえず……始めるとしようか」

 

 うわぁ……。完全に殺る気満々じゃないですかーヤダー。

 こんなんじゃ、俺、生きる気なくしちまうよ……。

 

「いざ、尋常に」

 

 でも、やるっきゃない。

 俺はとりあえずフライパンを牙突の構えにしておく。ちゃんと、原作通りに左手だ。

 

「ほう……それがお前の構えか。…………こうしてみるとお前は突きに特化しているように見えるが……なるほど……おもしろい」

 

 女性がなんか色々と考えているが、残念ながら俺には何の考えもない。

 とりあえずこうしときゃなんとかなるさって隣のじっちゃが言ってた。

 あぁ、こんなことになるんなら高町家の御神流を習っときゃよかった……。

 

「行くぞ!…………っとと。なんだ!」

 

 女性が地面を思いっきり蹴りあげてこちらに飛んできた。それで『あはは、俺死んだ』って思ってたらいきなり女性がピタリと止まった。

 その際になんだ!と大声で問われたがそんなの分かる訳が無い。

 それにしても、すごいなぁ……。ちゃんとブレーキが積んである車よりもピタリと止まりやがったよ。

 

「……そうか。分かったすぐにそちらに向かおう」

 

 女性がいきなり一人言を話し始めたが……やっぱり電波な厨二病患者なのかも知れない。

 そんで、頭の中のオペレーターっぽいのからなんか要請が来たから今からそちらに向かうとか?……そんな感じに見える。

 …………なんて言うか、この年齢の人でも未だに卒業出来ない人とかいるんだなぁ、って痛感する今日この頃。

 

「それでは。……すまないが、お前との決着はまた今度になりそうだ」

 

 決着もなにもまだ一合も打ち合って無いんですがそれは。

 

「えっと……なにかあったんですか?」

 

「いやなに……。私の仲間達がお前よりも量の多い……丁度いい量の魔力を持った少女を見つけてな」

 

 もう魔力だなんだを俺は気にしない。さっき俺の事をちょいとフォローするように言ったんだろうが、流石の俺も脳内の設定にまで口を出す気は無い。

 そんな俺に出来る事はただ1つだけ。

 

「そう……ですか。頑張ってください」

 

「あ、あぁ……。ありが、とう?(なんでコイツは笑顔なんだろう)」

 

 笑顔でニッコリ送り出すだけだ。

 

「ちなみに1つ聞いてもいいですか?」

 

「なんだ?」

 

 とりあえず少しだけこの人の脳内世界に付き合うために聞いてみる。

 こうして置くことで『コイツもか……ふふ』とか思わせて、もう絡まれても適当に返す事が出来るからだ。

 

「その少女達の特徴だけでも聞かせて貰えますか?」

 

「ふむ……何故だ?」

 

「いえ、もし仮にその少女達が俺の知り合いだとしたら……少しでも慰める事が出来るかも知れない………そう、思いまして」

 

 まぁ、どうせこの世にいない人物なんだろうがね。

 

「……ふむ……まぁいいか。瞳が少し紫がかっていて、茶髪のツインテールの少女と……」

 

 ふんふん。…………………ってあるぇ?おっかしいぞぉ?

 俺、その子知ってる気がする。

 やだ、物凄い嫌な予感がする。

 

 

 

 

 

「金髪で赤目のツインテールの少女だ」

 

 

 

 

 

 携帯を取り出しフェイトさんのGPSをすぐさま確認(いつでもお互いの場所を知れるようにってフェイトさんが……むふふ)。

 そしてクラウチングをセッツ&スタート。

 幸いフェイトさんの場所はここからたったの3㎞先だった。

 この距離ならバリアは張れない(錯乱)。

 とりあえず片手にフライパンを握り、自分で最短距離だと思う道を障害物を破壊しながら走る。

 

 

 

 待ってて下さいフェイトさん。今行きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――これで別人だったら俺は死ねる。




~その後のシグナ……女性さん~

(急ぎの用でもあったのだろうか……。まぁいいヴィータと合流するか)


◆◇◆◇◆◇


 フライパンは市販のモノです。

 感想、質問、批評、誤字報告待ってます。
 次回もよろしくお願いいたします。


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第5話『理由?あぁ、好きだから』

 純愛……したいです……。
 出来てたら、いいなぁ……。


「テメェ……ナニモンだぁ?」

 

 目の前の赤い少女が、杵の先が尖っていて杵の柄が短い武器をこちらに向けながら聞いてきた。

 ……その質問は、半年前の私だったら答えられていなかった。……だけど、今なら自信を持って答えられる!

 

「この子の………なのはの友達だ!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第5話『理由?あぁ、好きだから』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 携帯のGPSを信じて走って来てみたらビルに穴があいていたうえに煙がもっくもく。

 ……なにが起きているのかがさっぱり分からない。だが、とにかく俺のすることは決まっている。

 とりあえずはあの穴があいているビルに突っ込もう。話はそっからだ。

 あそこにフェイトさんがいる(確信)。

 さぁいざゆかんって思っていたその矢先に、そのビルの穴から二人の少女が飛び出した。

 その姿は俺が間違える筈の無い姿。

 ゆらりと揺れる二つの黄金に輝くツインテール。儚げに揺れる二つの赤い双眸。見ているだけで俺の心がペンデュラムになる物憂げなその表情。まるで触れれば壊れてしまいそうな程の身体。

 その姿は紛うことなきフェイトさん。

 ……すごいなぁ。フェイトさん、空飛んでるよ。やっぱりフェイトさんは天使だったんだ。

 黒ずくめにマントをはためかせるその姿は正に戦うヒロインそのもの。

 で、格好いい戦うヒロインのフェイトさんと戦っている手に物騒な短い柄付き杵を持っている赤い少女は一体何者だ?

 それにしても、麗しきフェイトさんの姿と赤い少女の姿がこんなにも綺麗に見えるとは思わなかった。

 …………もしかして目がよくなったのかな?ヤムチャしてた頃の俺じゃきっと、美しきフェイトさんと赤い少女の戦いは流星のような金色のラインと赤い線にしか見えなかっただろうし。

 ……って、フェイトさんの後ろにものごっつ(いか)つい男が!守らなければ!

 俺は地面を思いっきり蹴り、ビルの壁に足を付け、より詳しく言うならビルの窓枠に足を引っ掛け、ビルの壁を走る。重力から逃げるように走ったら屋上に着いたから、そこからフェイトさんの方に向かってジャンプ。

 

「ハァァァァッ!!!」

 

 青っぽいチャイナ服を来た頭に犬耳が生えている男が拳を振るう。そしてその拳がフェイトさんに当たるかどうかの所をすんでの所でフライパンで受け止める。

 

「なにっ!?」

 

「フェイトさんは……やらせません!」

 

「って、なんであおながここに!?」

 

 おっと……フェイトさんを驚かしてしまうとは、悪い事をしてしまった。

 だけど驚いた顔も可愛い。

 くそう。驚かしてしまった罪悪感とフェイトさんの驚いた顔が可愛いと思う気持ちで俺の心は板挟みで辛い。

 結局この板挟みは俺が悪いって事でケッチャコ。

 ちなみに、この時俺は空を飛んでいますが、全く頭に入っておりません。フェイトさんの事で頭がいっぱいだっからね。

 

「驚かしてしまい、申し訳ありません。……ですが、俺はフェイトさんが危機に晒された場合や、危険に晒されそうになった時はすぐに現れますんで」

 

 ちょいとキザに言ってみた。

 

「……でも、あおなって戦えるの?」

 

 てっきり引かれるんじゃないかと思ってたら心配された。うわ、マジでフェイトさんは天使だ。

 

「そこら辺はご心配ありません。俺、フェイトさんを守るためならどこまでだって強く(なれる気に)なれますから」

 

「あおな………」

 

「フェイトさん………」

 

「なんでそんなに私の為にしてくれるのかは分からないけど……」

 

 それでも伝わらないこの気持ちの向く先は八つ当たり。

 近くにいた犬耳チャイナ服(モドキ)男にフライパンをぶつける事で発散。

 その際犬耳チャイナ服(モドキ)男は吹っ飛び、それを赤い少女が『ザフィーラっ!』とか叫びながら追い掛けていった。

 これで少しは安心出来る。

 

「ありがとう」

 

 とりあえず、フェイトさんのこの笑顔だけで後6年は戦える。

 

「テメェら!そこで……しかも戦闘中なのにイチャイチャすんじゃねぇ!」

 

 遠くから……より詳しく言えば下の方のビルから少女の声が聞こえた。

 そんな……イチャイチャだなんて……照れるじゃないか。

 

「そんな事はしてないよ!」

 

 フェイトさんに真顔で否定されたのが悲しい。

 

「とりあえずあおな…………今ここはあおなにとってすごく危険な所だから……その、助けてくれたのは嬉しかったけど……たけど、あおなを危険に巻き込みたくない。だから、ここから逃げて」

 

 うはぁ……フェイトさんに心配されるって凄い嬉しい気持ちになる。

 それと同時にホイホイと従いそうになってしまう。フェイトさんは素敵だもんね、仕方ないね。

 

「確かに……俺はこんな状況に巻き込まれるのは嫌です。……元々、俺は平々凡々で平和に暮らしたかったですからね……」

 

「なら……「ですが………」……あおな?」

 

 この時のフェイトさんの上げて落とされた感じの顔を見て俺の良心がまるで市中引き回しの上斬首の刑になったかのように痛む。……だけどここは男として、いや(おとこ)として引くわけにはいかない。

 

「その話、断らせていただきます」

 

「…………なん、で……」

 

「理由ですか?……フェイトさんが好きだから、ですよ」

 

 その際フェイトさんが複雑な顔をしていた。

 …………フェイトさんにこんな顔をさせるなんて、俺は男失格なのかも知れない。でも、ここは心を鬼にでもしないといけない。

 

「フェイトさんは、大切な人が危険に巻き込まれたらどうします?見捨てます?」

 

「そんな訳が無いよ!」

 

「それと同じです。フェイトさんは俺にとって大切な人なんですよ。だからそばにいて、助けたくって、守りたくって、支えていたい人なんです。……確かに、フェイトさんは俺よりも何倍も強いかも知れない。ですが、だからと言ってフェイトさんをこんな所で見捨てる訳にはいかないんですよ」

 

「あおな………」

 

 ここで深呼吸。

 

「俺はフェイトさんを愛しています」

 

「………っ!?」

 

 あぁ、赤面してるフェイトさん可愛い。

 

「だから、じゃあ、駄目ですか?」

 

 先程言った台詞が色々と台無しになっているかも知れないけど、

 

「………うん。分かったよ。あおな」

 

 その言葉はフェイトさんに届いたみたいで良かった。

 

「でも、危なくなったら逃げるんだよ?」

 

「それは、フェイトさんもですよ。俺はフェイトさんが危険になりそうな時は全力で守りますんで」

 

「……うん。じゃあ、私もあおなが危なくなったら守るから」

 

 これじゃあ、逃げるって選択肢が無くなったじゃないか。だがまぁ、いいか。

 ちょうど、先程叩き落とした犬耳改め恐らくザフィーラとやらと赤い少女が上がって……もとい浮いてきた。

 

「じゃあフェイトさん。俺はあっちの青い方を担当します」

 

「じゃあ、私はこっちを」

 

 これが初めての共同作業って奴か。……燃えるじゃねぇか。

 

「君は私と」

 

「上等じゃねぇか!」

 

 フェイトさんと赤い少女が向き合って遠くに飛んでいった。

 ………さて

 

「こちらも始めましょうか」

 

「そうだな。……先程は不覚を取られたが、今度はそうはいかん」

 

 ザフィーラ(予定)が構えを取る……前に、とりあえず初動が大事と思い、全力で突っ込む。

 ここら辺で自分が空を飛んでいることに気付いたが、『(操作が出来るから)構わん。行け』の状態だったから特にキニシナーイキニシナーイ。

 そんでもって後ろを取ることに全霊を掛ける。

 

「な!?速い、だと!?」

 

 何やら驚いているが、ガン無視。で、後ろに回る際に発生した遠心力をフライパンに込め、まるでバットで素振りをするかのように振り抜く。

 これでザフィーラ(予定)は再び吹っ飛ぶかと思われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――なのに、俺のフライパンは受け止められていた。どこかで見たことがある、剣によって。

 

 

 

「………また、会ったな少年。こんなにも早く会えるとは、思ってもみなかったぞ」

 

 

 

 それは、ピンクポニテの厨ニ病女性剣士だった。

 よりにもよって、こんなタイミングで。




~その頃のなのはさん~

(おかしいな……あおな君の声が聞こえる。私、幻聴を聞いちゃうほどあおな君の事が……?)


◆◇◆◇◆◇


 次回フライパン無双が出来たらいいなと思う、今日この頃。

 感想、質問、批評、誤字報告待ってます。
 次回もよろしくお願いいたします。


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第6話『ああ!それってハネク(ry』

あと、もう少しでお正月ですね(遠い昔のクリスマスから目を背けながら)


「う……」

 

 ゆっくりと、重い瞼を開ける。

 ……周りに瓦礫がある。それが腕を擦って少し痛い。

 あれ?そう言えば私、なんでこんな所に寝てるんだろう……。少しずつ、思い出してくる、今日の事。

 調理実習でフェイトちゃんの料理が以外と酷かった事、あおな君がフェイトちゃんの為に一肌脱いだこと……そして、あの赤い子に……。

 ――そうだ、私、あの子に負けたんだ………。

 起こす身体に力は入らず、瓦礫の上に寝転んだまま。

 ―――痛い。涙が次から次に溢れてくる。

 負けたから。……その所為で、また誰かが傷付き、傷付けられる。その事に、心が痛くて、涙が溢れる。

 

 

 

 

 

 私、何も出来なかった。……ただ、一方的にボコボコにされるだけだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第6話『ああ!それってハネク(ry』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、ただ今絶賛大(die)ピンチな訳だ。だが、この状況をフェイトさんに知らせる訳にはいかない。

 あんな目の前で大見得切った以上、有言実行にしなくちゃフェイトさんに嫌われてしまう。

 逃げる?現実では『しかし まわりこまれてしまった▼』の表示しか出ないから却下。

 ならここは覚悟を決めるしかないのか……?

 …………いや、待て。まだ策はある。そういやあのピンクポニテの厨ニ病全盛期の女性剣士は初めて会った時、俺に露骨な挑発として『まさか、怖いのか?少年。まぁ、当然だ。ベルカの騎士であるこの私に勝てる訳がない』と言った。

 この文章中の『騎士』って単語。これがこの戦いの鍵になる筈。

 ……試してみる価値はある。

 

「あの……もしかして俺一人相手に2体1で来るつもりですか?」

 

「まさか…………我々は騎士だ。そんな卑怯な事をする訳が無い」

 

 なんだ。ただの俺の杞憂だったんじゃないか。

 

「えっと……でしたら俺は最初はどちらからお相手をすればいいんでしょうか……」

 

 ホッと一安心からのポロっと漏れた一言に目の前の二人が反応し、お互いがお互いと向き合った。

 

「ここは私が行く」

 

「何を言うザフィーラ。ここは私が行く」

 

 なにやら険悪な雰囲気になっている。お、口喧嘩を始めた。

 ……それにしても、なんだ?俺は修羅場にでも遭遇したのか?いや、この二人は俺を巡って争ってるんだった。つまりこの原因を作ったのは……俺?

 ………やめて二人供!俺の為に争わな……いや、この場合は争った方がいいのか?

 じゃあ路線を変更して、争え……もっと争え……。

 そう念を送っていたらピタリと止まった。なにこれ怖い。

 

「……ザフィーラよ。ふと気付いたのだが」

 

「……そうだな。シグナム。私も今気付いた」

 

 何に気付いたんだろう………。それとザフィーラ(確定)さんって一人称『私』なんだね。文章的にどっちがどっちか分からないから見辛いぜ。

 あとピンクポニテ(ryさんってシグナムって言う名前なんだ。……外人さんなのかな?

 

「我々は今ここでこんな事に時間を使っている暇は無いんだったな」

 

「あぁそうだ。こうしている間にも主が………」

 

 どうしたんだろ……。シグナムさんもザフィーラ(確定)さんも俯いているが、腹痛にでも襲われたか?それともコンタクトレンズを落としたか?後者だと確実に残念な結果しか残ってないが。

 

「その為には、致し方あるまいか」

 

「………うむ。騎士の信条を曲げてしまうが、これも全て主の為」

 

 あれ?もしかしてこれって俺にとっては最大で最高で最後の不意打ちチャンスじゃね?

 だとしたら、まだ俯いている今がチャンス。

 

「………すまないが、お前は私達二人で討つ」

 

 おういきなり顔を上げるのはやめろよ。心臓に悪いだろうが。………………………って、ん?今、なんて言った?

 

「もう一度、言って貰えます?……最近、耳の感覚が鈍くなっているような気がしているので、よく聞こえない(気がする)んですよ(※ただしフェイトさんの声は除く)」

 

 聞き間違いじゃなかったら……どうしよう。

 

「お前を私達二人で「あぁもういいです分かりました」

 

 騎士の信条はどこに行ったんだ?あれか?もうそろそろ冬休みだからそれを利用して長期休暇にでも出掛けたか、それか実家にでも帰ったのか?

 なんにせよ、2体1……か……。こういうのはラノベの主人公とかだったら一辺に相手に出来るんだろうが、残念ながら俺はただの逸般人。どうする事も出来ない。

 ――でもまぁ、

 

「……足掻くだけ、足掻いてみる価値はあります、か」

 

 フライパンを構え直す。……正直、フライパン一枚じゃあ安心出来ないし、そもそもの話でフライパンで戦える訳が無い。……まぁ、ザフィーラ(確定)さんを吹き飛ばしたりはしたが。

 ……つか、このフライパンがザフィーラ(確定)さんを吹き飛ばした時に折れなかったのはビックリした。それに加え、確かシグナムさんの剣がこのフライパンを受け止めた時も傷一つ付かなかった。……なんだこのフライパンは……。空は飛ぶし、人(?)は吹き飛ばす。剣で受け止められても傷付かない!これ本当にフライパンか!?

 お次は2体1だがどこまでいけることやら。

 

「……では行くぞ!」

 

 つか、この人達の目的は何なんだ?なんで襲ってくるんだろう。……そういやシグナムさんは最初、俺に『魔力を寄越せ』とかなんとか言ってた。で、シグナムさんとザフィーラさんは恐らく協力関係かそれに準じるなにか。…………と、そこまで考えてふと気が付いた時には目の前にシグナムさんの剣が。

 

「……ってうぉ!」

 

 急いで弾く。フライパン越しに鈍いものを弾いた時特有の痺れるような感覚が腕を登ってくる。

 ……流石に、こんなんじゃ長期戦は無理っぽい。シグナムさんの方を向き直すと、そこにはザフィーラさんがいない。そこで周りを目だけ動かしてキョロキョロするタイムラグが発生。それにより後ろからの重圧を感じる事が遅れた。

 振り向いた時には、既に拳を放っているザフィーラさんがいた。

 

「先程の仕返し、と言った所だ!」

 

 中途半端に振り向いた所為で、ザフィーラさんの拳がまるで漫画みたいに渦を巻き、俺の横っ腹にダイレクトで突き刺さる。

 

「…ぶぁほっ……」

 

 しかも威力がでかすぎて内臓がどっか潰れたんじゃないかって感覚すら覚えた。

 これ、確実に人間の出せる力じゃ無い。少なくとも、昔一度だけ車に轢かれた事があるが、こらはその比じゃない。確実にトラックが小さくなってぶち当たったレベルだ。

 だと言うのに。

 

「ゲホっ……ケホっ……」

 

 咳、もとい呼吸が多少苦しくなっただけですんだ。

 ……それにしても、おかしい。俺はここまで頑丈じゃ無かった筈だ。

 

「……お前どうしてバリアジャケットも付けずそんなにも頑丈なんだ?」

 

 バリアジャケット?なにそれ美味しいの?少なくとも名前からして食べる気にはなれないが。

 

「……それに、魔力量も上がって来ている。最初出会った時にはそれなりだった筈なのだが、いつの間にかあの少女達とあまり遜色ないように見受けられる」

 

 覚醒?普通の人間が超人的な力を得るとか……そんなバカな話があるか……。

 いや、待て。ここで少し厨二病と言う条件を加えて考える。……確か覚醒の条件って言うのは、伝説の武器を手に入れたり、何か得体の知れないモノを投与されたり……とかだろ?

 ……流石に伝説の武器を手に入れたりってのはあり得ないし、仮にフライパン(卵焼き専用)が伝説の武器とかだったりしたら全国の勇者に憧れてる人やアーサー王が涙を流す。

 何か得体の知れないモノを投与されたりってのは………………………あれ?おかしいぞ?……心では全否定してるってのに頭の方から猛烈に無理矢理フェイトさんの手作りカレーが押し付けられる。

 流石にあり得ないと信じたい。

 もっと深く考えたかったが、そんな暇を相手が与えてくれるわけもなく(ちなみにここまでのシンキングタイムコンマ1秒。流石厨二病の俺)――

 

「だが、人間だろうとそうでなかろうと関係ない!」

 

 再びシグナムさんが剣を降り下ろす。しかも後ろからはザフィーラさんがまたまた拳を前に突きだそうとしている。

 アカン……詰んだ……。前門のシグナムさんに後門のザフィーラさん。……これがオセロだったら俺、あの人達の味方になってんだろうな…………ん?オセロ?あ、いいこと思い付いた。

 

「行くぞ!」

 

「うぉぉぉぉ!」

 

 俺を挟んだ二人が叫びながら突撃。それなら俺のとる行動はただ一つ。

 下にー下にーだっぴゃ。ただ下に少しスィーっと降りる。

 

「んなっ!?」

 

「ぉお!?」

 

 どうやらお二人さんは焦ってた所為で目の前がお先真っ暗見えてなかったみたいだ。

 拳で肉を叩いたかのような鈍い音が聞こえた時には、二人が真正面からおでことおでこで全力のお見合いをしていた時だった。…うわ、痛そう。

 まぁ、直前に気付いてブレーキを全力で掛けたっぽいけど間に合わずって所かな?

 

「………くっ……貴様……」

 

 片や額を押さえているシグナムさん。

 

「……ぐ、ぬぬぅ……」

 

 片やこちらは……あ、前言を撤回する。おでことおでこ、じゃなくておでこと鼻だった。

 赤くなって更に赤い液体を出している鼻を押さえているザフィーラさん。

 この光景を見ていて謎の罪悪感を感じそうになったが、悪いのは俺じゃないから。だが謝っておく。

 

「…………えっと、その……」

 

 この際、疑問系にして地味に相手を挑発するのも忘れずに。

 だけど、これは失敗だったと気付く。……いやぁ、俺ってなんで一段落ついた瞬間に油断しちゃうんだろ。もう癖の領域だよこれ。

 ――だから、気付けなかった。

 

「なんかすいま……う"っ!?」

 

 ――俺の背後の()()人物に。

 

 

 

 

 

「えっと、なんかごめんね?」

 

 

 

 

 

 ――もう一人の伏兵(影の薄い緑の騎士)の存在に。




~その頃のフェイトさん~

(確かにこの子は強い……。だけど、あおなの目の前であんな事を言ったんだ……。だから、あの子なんかに絶対に負けない!)

 ※負けました


◆◇◆◇◆◇

 好きな人の手料理って凄いですよね(小並感)。

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第7話『愛ゆえに致し方無し』

なんとか年明けまでには間に合わせました。


 彼の魔力を蒐集して、気付いた事がある。

 どれだけ蒐集しても、魔力が全く減らない。それどころか逆に増えている感覚があった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第7話『愛ゆえに致し方無し』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、俺こと、盾街 あおなはただ今自分の胸から出てきた謎の球体を掴まれ、更にその謎の球体に詰まっているであろうなにかしらの力を厨二心を(くすぐ)られる本に吸われております。

 ……なんか、思ってたのと違うんだよなぁ、これ。

 だってほら、ドレイン系の技ってあるじゃん?ドラ○エ然り○物語シリーズ然り、それらとはまた違うんだろうけど、少なくとも俺が知ってる限りだと、ドレイン系の技はあんまり痛そうなイメージは無かった。精々気力が削がれるとか、やる気が出なくなるとかその程度にしか考えてなかった。

 だけど、今俺を襲ってるこの激痛は凄まじい。例えるなら鳩尾を無言で雑巾絞りの状態。

 ……分かりにくいか。えっと……運動不足で脇腹が唐突に痛くなる奴が身体全体に拡がったようなそんな感じ。

 

「………なぁ、シャマル。まだ終わらないのか?」

 

 そんな言葉をシグナムさんが漏らすが……。うん。それ俺も思った。いつまでこんなに痛い思いをしなくちゃならん事やら。

 

「……あの……なんて言っていいのか分からないんだけど……この子、魔力を蒐集しても蒐集しても全く減らないの……。逆にドンドン増えてる……」

 

「「え」」

 

 減ると増えます。そんなキャッチコピーが頭に浮かんだ。

 

「……それは……無限に魔力が湧き続ける、と言う事か?」

 

「いや、今は魔力の増加は止まってそれほどでも無いけど………」

 

 つまり減る一方と?……こんな痛いの我慢は長引かないから、もう、抵抗してもいいよね?

 

「……くっ……」

 

「……お前、こんな状況でも動こうとするのか」

 

 哀れみの言葉を掛けられた後、腕と足に紫色のリングが現れた。それがガッチリ俺の両腕と両足を掴む。

 おいおい、俺にはSMの趣味なんか無いぞ?

 そんな事を考えながら再び抵抗を試みようとするが、動けない。一体何が起こっているんだ……。ちなみにフライパンはザフィーラさんに没収されました。

 

「おぉーい!シグナムぅ!ザフィーラぁ!シャマルぅ!」

 

 まだ出来る事はある筈だとか思いながら頑張って動かせる所は動かしてみようとか考えていると、向こうから赤い少女がやって来た。……もしかして、フェイトさんと和解したのかな?……それにしては、傷が多いけど。

 …………物凄く、嫌な予感がする。

 

「ヴィータじゃないか。そっちは片付いたのか?」

 

 ……………………あ?

 

「あぁ。吹っ飛ばして、魔力を奪ってきた」

 

 …………………………おい。コイツは、コイツらは今、なんつった?何を、片付けて、何を奪ってきたって?

 

「アイツ、中々強かったが、アタシ程じゃ、無かったな」

 

「そうか」

 

「そういや、アタシが倒した後『あおな、なのは……ごめん』とか言ってたが青菜と菜の花がどうしたんだろうな」

 

「知らん。そんなのは私が預かり知る所ではない」

 

 …………………フェイトさん、最後まで……。

 

「………っ!?な、なにこの魔力量……。闇の書が蒐集するよりも早く回復を……!?」

 

「それならもっと蒐集スピードを早くすれば……」

 

 俺、堪忍袋の緒が切れた。

 

「……だめ!このままじゃ、私の旅の鏡で押さえられるキャパシティがオーバーしちゃう……」

 

 これは……なんだ?

 身体を満たすこの力は……。

 ……嗚呼、そうか。これは"怒り"なのかも知れない。

 あれだけいっちょまえに大口叩いて、その結果フェイトさんも守れず、フェイトさんを傷付けられた……。

 ……フェイトさんを思えば想うほど、強くなれる、そんな気がした。なら、俺にはまだ足りなかったんだろう。覚悟も、勇気も、誓いも…………そして、何より圧倒的に『愛』が、足りなかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――フェイトさぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、叫んだ途端に身体の奥底から力が湧いてきた。

 それと同時に俺を縛っていた紫色のリングが弾け飛び、俺の近くにいた四人組も吹っ飛んだ。

 

「な、なんだコイツ!?化け物かよ!」

 

 そんな事を言われるなんて心外だ。

 だけど、気にしている暇は俺には存在しない。一刻も早くフェイトさんの元に向かい、手当や介抱をしなくちゃいけない。

 

「すいませんが……今は貴方方に構っている暇はありません。……ですので、ここで俺は去ります!」

 

 俺はその場から飛び去る。その際、シグナムさんが『待て!止まれ!うわぁぁぁ!』とか言っていたが、気にしたら負けだ。

 

 

 

 

 

 …………暫くして、フェイトさんが気絶しているであろう場所に着いた。その場所は、至る所がボロボロにされており、それだけでどれだけここで激しい戦いが行われていたのかが伺える。

 その場所に留まり、周りをキョロキョロと、見逃しが無いように慎重に、されどフェイトさんを助ける為に全力でキョロキョロする。――見つけた!

 フェイトさんは、どこぞの公園の噴水の中で水を被っていた。……って、ヤバイ!このままじゃ風邪を引くどころの話じゃ無くなる!

 

「フェイトさん!フェイトさん!しっかりしてください!」

 

 地面に降りた後、すぐさまフェイトさんの近くに駆け寄り、安否を確認する。

 幸い、傷らしい傷は見当たらず、傷という傷は二の腕辺りの擦り傷と太股辺りの内出血による青いあざが出来、少し気絶しているだけのようだった。

 それで一安心は出来たが………激しい怒りが胸の中に渦巻く。

 絶対に許さねぇ……。あの騎士共……(特にヴィータ)。

 次会ったら絶対に泣かせてやる(特にヴィータ)。

 そんな事を考えていると、後ろから声を掛けられる。……誰だ?今の俺は気が立っているからかなりご立腹だぞ?

 

「おい!お前、フェイトに何をした!」

 

 それは女性だった。オレンジの長髪にワイルドな格好。女らしさはデカさ(どこがとは口が裂けても言えない)と髪の毛と顔立ちと体つきだけのような女性は剣幕を顔に浮かべ、俺を睨む。

 俺も負けじと睨み返す。

 

「……貴女こそ、誰ですか?俺は今フェイトさんの応急手当で忙しいんですよ。邪魔をしないで貰えますか?もしかして貴女はあの騎士共の仲間ですか?もしそうだとするなら決して容赦することなく骨の5、6本は折ることになりますがそれでもいいですよね?さて、貴女は誰ですか?」

 

 多少ヤンデレが入っているが、怒っているもの。仕方ない。人は怒ると早口になる、言葉に詰まりながら喋る、ゆっくり喋るようになる、無言の腹パン、などといった行動に別れる。

 俺の場合は早口になる。

 

「あ、なんだ……よく見ればフェイトが言ってた男友達と容姿が似ているが……もしかしてあんたがあの『盾街 あおな』なのか?」

 

 俺がフェイトさんの応急手当をしている、と言った瞬間にその女性の顔から一瞬で剣幕が消え、そして俺の名前を口に出してきた。驚ろき過ぎてザフィーラさんの所にフライパンを忘れた事を思い出してしまったじゃないか。どうしてくれるんだ……マジでどうしよう。

 ………さて、その女性をよくよく見てみるとその女性の頭からは髪の毛と同じ色の耳と、お尻の当たりから申し訳なさそうな感じで垂れているこれまた髪の毛と同じ色の尻尾がある。

 もしかして、最近こういったコスプレが趣味の人が多いのかな……(ザフィーラさんを思い出しながら)。

 

「あ、はい。確かにその盾街 あおなは俺で合ってますよ。……で、貴女は誰なんですか?」

 

 フェイトさんとはなにかしらの関係があるとしても、流石にそれだけで信用できる程俺はだだ甘じゃない。

 

「あぁ、ゴメン。あたしはアルフ。その子の……フェイトの、使い魔だよ」

 

 …………TUKAIMA?

 

「……あの、その、使い魔ってその……」

 

「あー……。恐らくあんたが想像してる通りの事でだいたい合ってるよ」

 

「えっと……主人の目的の為だけに作り出され、維持するのが大変だから目的を終わらしたら消される、あの?」

 

「…………凄いなあんた。プレシアが言った通りの事を言いやがった……」

 

 …………もし、その通りだとしても、俺は絶対にフェイトさんを嫌いにはならない。きっと、何か理由があるはずだ。

 

「あ、何か勘違いしているようだから言っておくけど、フェイトはあたしをそんな『使い捨ての道具』みたいに使った事は一回も無いよ?………どちらかと言えば、フェイトはあたしよりも重荷を背負っちゃう子だったし」

 

「え?じゃあ、フェイトさんは貴女を、使い魔と言うよりは姉妹みたいな関係で接している、と?」

 

「うん」

 

 あぁ、やっぱりフェイトさんはフェイトさんだった。もう辞書の慈愛の欄にフェイトさんって入れてもいい程だと思えるくらい、やっぱりフェイトさんはフェイトさんだった。

 

「あ、そうだ。フェイトの応急手当、手伝うよ」

 

「ありがとうございます。……正直に言えば、俺だと触れない所とかあるので、治療はどうしようと思ってました」

 

 特に二の腕とか太股とか。

 マジで俺の煩悩死すべし。慈悲はない。

 

「あはは……。仕方ないな」

 

 そう言い、アルフさんは掌をフェイトさんの少し傷がある所に(かざ)すと謎の光線が出てきて、フェイトさんの傷を癒す。

 ………いやぁ、良かった良かった。一時はどうやる事かと……ん?

 …………………どうして、掌を翳しただけで傷が治るんだ?

 ふと、思ったが、俺はいつの間にファンタジーの世界に足を踏み入れてしまったんだ?

 

 気付いた時には後の祭である。




~その後の仮面の男達~

((出番ェ……))


◆◇◆◇◆◇

 あおなが覚醒(w)と、ここで初めてプレシアさんの名前が出ました。
 後、最後の方が駆け足気味になり、申し訳ございません。もし私が思う所があれば直します。

 感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
 次回もよろしくお願いいたします。

 では、良いお年を。


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第8話『危険が危ない危機を呼ぶ』

明けましておめでとうございます。

とりあえず、年が明けてもこれからも相も変わらずこのノリでやって行きたいと思います。


 あのガキ(見た目はアタシの方がガキだけど)を逃がした原因の一端を、多分だけど、アタシは担いでいる。

 アタシがあの管理局の魔導士の言葉を伝えたばっかりに、アイツが隠し持っていただろう魔力を解放したかなにかして、逃げちまった。

 幸い、アイツが行った方向と場所は分かってるから、すぐにでも急行できる。

 ━━━首を洗って、待っていやがれ!

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第8話『危険が危ない危機を呼ぶ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、フェイトさんの治療を無事終えた俺とアルフさんは、どうやってこの場所(アルフさん曰く結界って言うらしい)から抜け出すかを話し合っていた。

 まぁ、それはアルフさんの他に来ているユーノっていうどっかで聞いたことがあるような無いような名前の人と力を合わせればなんとかなるとの事なので、時間もある(かも知れない)からフェイトさんと姉妹関係であるアルフさんに、俺はフェイトさんに失礼かな、と思いながらも好奇心には勝てず、つい興味本意でフェイトさんの家庭事情を聞いてしまう。

 もしこれでフェイトさんに嫌われたら俺、舌を噛みきろうかと思うんだが……どうかな?

 

「フェイトの……家庭事情?」

 

「……あー……やっぱり、駄目、ですよね……」

 

「………それは……」

 

 やはり、駄目か。と、言うよりこんな事を考えてしまい、更には口に出すなんて、俺は完全にストーカーそのモノじゃないか。やはり俺は死ぬしか無いじゃない!

 

 

「……………だぃ、じょうぶ、だよ……」

 

 

 そんな時だ。側に寝かしておいた(ちゃんと枕を敷いておいた。えっ?どこから取ってきたって?気にするな)フェイトさんが薄く、だけど目を開け、こちらを見ている。その姿は今にも消え入りそうな、そんな表情だったけれど、

 

「……でも、フェイト……」

 

「いい。あおなには、知ってて貰いたいから………」

 

 その顔に浮かんでいる微笑みは確実に誰かを安心させる為に無理している笑顔だった。

 

「………フェイトさん。すいません」

 

「……え?」

 

「言い出して置いて、何ですが……。本当に辛いなら……」

 

「ううん。大丈夫。……私は、大丈夫だから」

 

 フェイトさん………。うわぁ……俺って本当に最低な奴だ……。

 軽々しくただの興味本意で人様の、それもフェイトさんの恐らく触れてはならない禁断の場所に土足で足を踏み入れるなんて……。

 

「……あおな」

 

「………はい」

 

 そんな俺にフェイトさんが優しく語りかける。

 

「あおなってさ………えっと…その……私の事、好き……なんだよね?」

 

「はい」

 

 それだけは、例えこの世の摂理がどうなったとしても不変の事実。

 ……不覚にも少し言い淀んでいたフェイトさんに萌えてしまった不謹慎な俺はもう死んだ方がいいんじゃないのか?

 

「なら、さ……。えっと、あおなは私と初めて会った時に、『結婚とその後を前提として、付き合って下さい!』って、言ったよね?」

 

「はい。言いました」

 

 フェイトさんとの会話は全て俺の中では永久保存してある。

 フェイトさんと交わした一言一言が俺にとってはまばゆい思い出。

 

「……あの後、あおなと別れた後、色々とその事について、調べてみたんだけど……その……結婚ってずっと一緒にいるって事……なんだよね?」

 

 ……まぁ、多少意味は違……いや。意味はこれであってるんだ。そうだよ。結婚はずっと一緒にいるって事じゃないか。うん。そうだ。そうだった筈だ(無理矢理な納得)。

 

「はい……。そうですけど……」

 

「じゃあ、お互いの事をちゃんと知っとかないといけない……だよね?」

 

「いや、あの……言いたく無いことがあるなら言わなくていいんですが…………って、え?」

 

 あれ?ちょっと待て。少し冷静に考えてみろ俺。

 

「…………もしかして、俺の告白を……」

 

「えっ………あ。あわわ……」

 

 フェイトさんの顔が一気に真っ赤になる。目に見えて焦ってると分かる。可愛い。

 

「え、えっと………その、わ、わたひのこひゃえは」

 

「ちょっ!か、噛みまくりだよ!フェイト!」

 

 あぁ……焦りすぎて呂律が回ってないフェイトさんも可愛い。何て言うか、守ってあげたくなる。保護欲が物凄く掻き立てられる。

 

「こ、ゴホン。………えっと、私の答えはその、まだ心の準備が出来てないから……待ってて、くれる?」

 

 上目遣い、赤面、少し潤んだ瞳、フェイトさん、今にも泣きそうな顔、プルプル震えている唇。あかん。鼻から赤い液体が出そう。ぶほっ。あ、ちょっと出た。

 

「わ、分かりました」

 

「…………(ニコッ)」

 

 うお……。凄い嬉しそうな笑顔だ。……いかん。吐血しそう。

 

「そ、それで……その……」

 

「あ、うん。それで、話は元に戻すけど……本当にずっと一緒にいようって事なら、私の事をもっと知っておいてくれた方がいいんじゃないのかな?って思って、ね」

 

 恐らく、ここから先はフェイトさんにとっても本当に辛いんだろう。だけど、フェイトさんの瞳にはある種の覚悟があった。自分の過去ともう一度向き合うという、そんな覚悟が……。

 

「私ね?実は、クローン人間なんだ……」

 

「クローン……ですか?」

 

「うん。…………母さんの、目的の為だけに生み出された、姉さんの……アリシア・テスタロッサのクローン」

 

 フェイトさんにお姉さんがいたのか……。

 どんな人、だったんだろう。

 ━━━だが、

 

「……………(チッ)

 

「ん?あおな、いきなりどうしたの?」

 

「いえ、少しフェイトさんの母親の事が気になりまして」

 

「……あおな?本当にどうしたの?顔が怖いよ?」

 

 フェイトさんは、何も思って無い、のか。

 

「あぁ、話の腰を折ってしまい申し訳ございません」

 

 つい、フェイトさんの母親に本格的にイラッと来たが、なんとか抑え込む。

 

「えっとね?母さんは、元々研究者で、ある実験をしていたの。………だけど上層部が母さんの忠告もなにも聞き入れず、無理矢理実験を進めて……暴走して……」

 

 フェイトさんの顔が憎しみの方面で歪む。やはり、それだけの恨みを込めるのは当たり前、か。……だけど、俺にはどうすることも出来ない。

 

「アリシアが死んで…………母さんが狂って…………私が生まれて…………アリシアを生き返らせる為に…………ジュエルシードを集めて…………でも、母さんは数が足りない内に発動させて、暴走させて…………」

 

「フェイト、さん……」

 

「私と、なのは達で止めに行ったんだけど間に合わなくて…………目の前で……母さんが…………母さんがぁ…あ、あぅ………」

 

 フェイトさんの顔がみるみる今度は悲しみに歪んでいく。瞳には先程の赤面なんか比じゃないくらいに。

 

「もう……いいです!フェイトさん!」

 

 フェイトさんの涙が溢れた瞬間、俺は強く優しく抱き締める。後でどれだけボロクソ言われようと構いやしない。ただ、今はフェイトさんを支えていたい。

 

「あお、な……。う、うあ、あぁ……う、うぅ……うわあああああぁぁぁぁぁ…………母さん……かあ、さん!」

 

 そうか……フェイトさんの母親はある意味、被害者でもある訳だ。…………そして、どれだけ酷かったとしても、フェイトさんにとっては、母親はその人だけ。

 どれだけ辛い思いをしたとしても、嫌いになる訳が無い……。

 それに、フェイトさんは一見大人びて見えるけど、実際にはまだまだ小学3年生の女の子。……そんな女の子が救えた筈の母親に手が届かず……死別。

 ………そんなの、普通じゃ耐えられる訳が無い。

 

「あおなぁ………あおなぁ……」

 

「俺は、ここにいますよ」

 

「うっく………ひぐぅ……」

 

 優しく、頭を撫でる。……柔らかい髪の毛の感触とフェイトさんが確かにそこにいる。

 

「大丈夫です。………それと、すいませんでした。俺が無責任なばかりに、フェイトさんの辛い思い出を思い出させてしまい」

 

「ううん……私こそ、ごめん。……あはは。自分でも、心の整理が出来ていたって、思ってたんだけどね……」

 

「ゆっくりで、いいんですよ。……俺もどこまで出来るかは分かりませんが、手伝いますから」

 

「ありがとう……あおな」

 

 本当に悪い事、したな……。

 だけど、フェイトさんには悪いかも知れないけど、お陰でもっとフェイトさんを支えようって気持ちが強くなった。

 ---そんな時だ。

 

「見付けたぞ!テメェ!」

 

 上から、赤い少女の声が聞こえた。

 

「フェイトさん。少し待っててください」

 

「あおな?」

 

 武器は…………あ、なんか向こう側から飛んで来てる。まぁいいや。

 で、身体の調子は……万全っと。

 

「大丈夫ですよ、フェイトさん」

 

 俺は立ち上がり、フェイトさんの方を向く。

 絶対に守るって決めたから。

 

「すぐに、終わらせます」

 

 そして、飛んで来たフライパン(玉子焼き専用)を右手でしっかりと掴む。

 

「さて、料理を開始しましょう」




~その頃のザフィーラ~

(フライパンが……自らの意思で飛んでいった……だと!?)


◆◇◆◇◆◇


今回、フェイトさんの感情の揺れ幅がペンデュラムだったのは、トラウマを刺激されたからです

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。

次回もよろしくお願いいたします。


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第9話『交渉と決裂とくっころと』

皆大好きなのはさんの登場です。


やったね!


 

 --俺、決めたんだ。

 

 次にヴィータに出会ったら、手加減なんて言葉を知らない子供のように、フルボッコにしてやるって。

 そして、それは今だ。

 フライパンを構える。ヴィータも柄が短い尖った杵を構える。

 俺は、絶対に殺しはしない。……そんなこと、出来ないし。フェイトさんの前でそんな事をする訳が無い。

 --だが、

 

「絶対に貴女を泣かします」

 

 --泣かしはする。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第9話『交渉と決裂とくっころと』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 フライパン……正直、なんでこんなもんが手元にあるかは知らないし、飛んできたのかは知らないが今は丁度いい。ヴィータはこのフライパンがどれだけ猛威を振るったかを目の当たりにしている。

 ……だから、少しは警戒してくれているとありがたい。

 

「--先手必勝っ!」

 

 あぁ、警戒した結果先制攻撃なのね。

 

「『ラケーテン・ハンマー』!」

 

 目の前でヴィータ持っている柄が短い尖った杵からロケットの噴射口のようなモノが出てきて火を吹き始めた。と、思ったら勢い突けてこちらにやって来た。

 ………んー……。これ、身体にぶつかったら確実に"く"の文字になるだけじゃ済まないよね絶対。

 

「食材が!暴れるのはまな板の上と取れ立てだけで充分なんですよ!」

 

 なので、俺は咄嗟にフライパンの裏面(火が当たる面)で防御する。

 感覚としては左腰に付けた鞘から刀を居合い風に右手で抜く感じ。

 

「んなっ!?」

 

「重っ……」

 

 弾けたって思ったら拮抗し、俺のフライパンとヴィータの持つ柄の短い先の尖った杵……この呼び方面倒臭いな……よし、もう杵って事でいいや。

 気を取り直してもう一度、俺のフライパンとヴィータの杵が同時にぶつかり、微動だにしない。

 よくよく見れば火花も散ってる。なんだよその杵、金属製だったのか。もしあれなら正月にでも使おうと思ってんだが……臼が壊れちまうからやめとこう。……臼を金属製にするという手もあるか。

 まぁそんな事はどうだっていいんだ。今は重要な事じゃない。……霧が出てきたな……。

 

「っ……」

 

 ヴィータが杵を引き、距離を取る。その結果、俺のフライパンが支えるモノを失い、身体を引き連れて前のめりになる。

 

「貰った!」

 

 その隙を狙ったヴィータによるまるで瓦割りのような縦の杵の降り下ろし。だが--

 

「あげません!」

 

 身体を思い切り、ネジ切れるんじゃないかって程に捻る事によりフライパンで杵を打ち上げる。で、そのままの勢いを利用してその場で一回転からの開いた左手での顎を狙った裏拳。

 

「あぐぇ……」

 

 ヴィータがふらつき、足が地面についたかと思えば、ドサリと地面に崩れ落ちた。で、また立とうとする訳だが足元がぐらついて地面にペタンと座り込む。脳震盪キタコレ。

 

「ちっ……くしょう……立て、ねぇ……」

 

 悔しいでしょうねぇ……。

 勝てるんじゃねって気持ちを与えられ、それをまんまと奪われたあげく反撃にあう。その瞬間こそ相手は一番泣きそうな顔をする。それを実行するってのが、俺の今の目標だったのさ。

 そして、それは達成された。ヴィータは目にいっぱいの涙を浮かべている。

 そこはかとなく漂う犯罪臭だが、おれまだじゅっさいだからはんざいとかわからないや!……最近は捕まるらしいが。

 

「さて……」

 

 そんなヴィータに俺はゆらりと近付く。

 

「く、来るなら来やがれ!相手になってやらぁ!」

 

 普通ならここで降伏するはずでしょう?ですがそれを騎士はしない。何故かって?誇りがあるからだ。

 だからこそ、

 

「口が、悪いようですねぇ……」

 

 まずはその騎士の誇りの一部である武器を蹴り飛ばす。小さな掌でなけなしの力を振り絞っているかはどうかは知らないが、確かに握っていた得物を蹴り飛ばされたその顔は正に今の俺にとってはお笑い草。

 これで、後はフェイトさんがやられた事をやって仕返しは終了…………な、訳なんだが。

 

「ひっ……」

 

 ……確かに、ここであれそれして終了は終了なんだが、幾らフェイトさんを傷付けたとしても、フェイトさんの前でこんな女の子を粛正していいのだろうか……。

 チラリとフェイトさんの顔を伺って見ると、怯えたような顔をしていた。(アカン)。やりすぎた。

 どうしよう………。あ、そうだ。こうしよう。交渉しよう。……駄洒落なんかじゃ、無いんだからね!

 

「…………さて、ヴィータちゃん」

 

「な……なんだってんだよ!あ、アタシに何か用でもあるかってんだ!」

 

 相も変わらず牙を剥く。まるで初めて出会った5日後の高町みたいだ。……あの時はビビったなぁ……。いきなり『わたし、あおなくんのことがだいきらい!』だもん。……あの時は本気で俺なんかしたっけ?状態だったし、その日から高町の暴力が始まったんだよなぁ……。

 おっと、話は戻る。

 

「用?用なら掃いて捨ててまた再利用するほどありますよ。…………そうですねぇ、まず、貴女達の目的を教えて下さい」

 

「あぁ?なんでアタシがお前なんかに「あ"?……おっと失礼」…………ナンデモナイデス」

 

「いえ、言いたくないんならいいですよ。……ただ、自分から仕掛けておいてこんなザマになる人にそんな拒否権が存在するとは思えませんし」

 

「ぐっ……」

 

 まぁ、くっころ状態にならないだけましだ。舌を噛み千切ろうとするような行動も見えないし……。恐らくだが、ヴィータの上司……いや、主だっけか?その主ってのはきっとド○クエとかなら全員『いのちだいじに』を選択する人なのかも知れない。

 だったら多分その人とは仲良く出来ないだろう。俺は『いろいろやろうぜ』を選ぶ人だし。

 

「さぁ、早く貴女達の理由目的志……そのどれからでもいいんで、教えて下さい」

 

「…………」

 

 ほほう……無言を貫くか。だが口を割ってもらわなくちゃいけない。俺は本来なら無関係で巻き込まれる筈じゃ無かった訳だからね。………まぁ、こうして巻き込まれたからこそ、フェイトさんを助ける事が出来…………てないじゃないか。

 俺のやった事はザフィーラさんのフェイトさんへの攻撃を防いだだけ。全然守れてない。悔しい、死にたい。

 

「言わないなら言わないでいいです。……どうせ、貴女が帰ってこないと分かった他の騎士の皆さんがこちらに来るでしょうし」

 

 つまりヴィータには大きな大きな釣り針になって貰うって訳だ。

 来たときにヴィータでも人質に再び交渉すればいい。

 

「………ぐっ…………ッ……!」

 

 唇を悔しさで噛み締めてるヴィータ。端からみたら通報もんだな。大人だったらだけど。ただ、いじめてるようには見えるのは確かな訳だ。

 イジメテナイヨータダジョウホウヲシリタイダケダヨー。

 ……つか、この場面、理由を知らない奴が見たら誤解するだろうな。

 

 

 

「あお、なくん?」

 

 

 

 そんな少し悦に入っている俺を呼ぶのは誰?

 そこには金髪少年(?)に肩を貸してもらっている高町の姿が。ザm……なんでもない。

 ………あ、一番見られたら駄目な奴が来た。とにかく一応返事しとこう。

 

「あれ?奇遇ですね。……どうしたんです?高町さん。………しかもそんなボロボロの格好で」

 

 どうしたんだろ……まるで浦島太郎の亀か花咲か爺さんの犬レベルでボロボロにされてるぞ?しかも手には先っぽに重そうな宝石を付けたヘンテコな杖っぽいモノを持ってるし。

 少なくとも、今は俺の知る高町を見ている気にはなれない。

 

「どうして、あおなくんが、ここに?」

 

 質問に質問で返すなぁぁぁっ!と、言いたい所だが。

 

「それはこちらの質m「いや、違う。そうじゃない」……え?」

 

 あれ?本当に大丈夫なのか?高町は。頭でもぶつけたのか?割りと深刻なレベルで。

 

「……あ、あの……高町さーん」

 

「あおな君もしかしてフェイトちゃんだけじゃなくてヴィータちゃんにまで手を出したの?駄目だなぁそれは駄目だよぉ流石の私でもそれは駄目だと思うんだけどただでさえフェイトちゃんだけでも必死に頑張って耐えてるんだけど流石に二人目は駄目だなぁ」

 

 ………あの、高町さん?目に光が灯ってない気がするんですが……。それと流石の俺もヴィータに手は出さないっつの。

 チラリとヴィータの方を向くも、ヴィータがいない。……あのガキ逃げやがった!?

 

「だから……」

 

 あれ?おかしいなぁ……高町の服、ボロボロだった筈なのにみるみる直ってくよ……。後その杖的な奴こっち向けんな怖い怖い。ピカピカ光ってるから。

 

「粛正、しないとね♪」

 

 虚ろな目で首を傾げる高町さん。……ちなみに近くにいた金髪の少年(?)はどっかに吹き飛ばされた。少年(?)ェ。

 それで、高町さんにそう言われた当の俺は、

 

「えっ」

 

 間の抜けたような反応しか出来ない。

 ………割りと初めて高町の事が本気で心配になりました。




~その頃のフェイトさん~

(あ、なのはだ。……あれ?どうしてあおなにレイジングハート向けてるんだろう……。もしかして、模擬戦かな?……いいなぁ、私も混ざりたいなぁ……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


恐らくヤンデレのタグを付けます。


キャラ崩壊……いえ、知らない子ですね(汗)。


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第10話『君の心はオーバーディレイ』

ふえぇ……夜のヤッターマン面白いよぅ……。


 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……?

 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……?

 

 なんであおな君は私だけを見てくれないんだろう。

 

 どうしてあおな君は私から逃げるんだろう。

 

 

 --捕まえて、O★HA★NA★SIを聞かなくちゃ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第10話『君の心はオーバーディレイ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 いかん危ない危ない危ない……。高町から俺が今この時までに生きてきた中で最も濃い殺気を感じる……。

 ラブコメじゃなく、殺意の波動を感じるッッッ!

 

「落ち着いて下さいよ……高町さん……。そう、クールにCOOLになるんです」

 

「い や だ」

 

 拒否られても困るんだよなこれが。

 

「そもそもの話……俺はヴィータちゃんに手を出したりはしませんってば。俺はロリコンじゃあるまいし……」

 

 ……いや待て。10歳でロリコン云々ってのはおかしくないか?あれか?精神年齢さえそれ相応いってりゃロリコンなのか?まさかそんな訳があるか。

 ……フェイトさんは10歳。俺も10歳。なんだ、ロリコンじゃないじゃないか。

 

「あのねぇ……。フェイトちゃんはまだ良いんだよ。確かにフェイトちゃんは私よりも頭もよくて運動も出来てその上可愛くて(料理以外)完璧だっていうのは分かってるよ……。でも、流石の私でもさっき会ったばっかりのヴィータちゃんを口説くなんてめちゃ許せないっていうか……」

 

 あー……やっぱり誤解してやがったよこんちくしょう悪魔め。それどころか俺の話すら聞いていやがらねぇ。

 --つか、

 

「流石の俺も二股なんていう最低で下劣な行為はしませんって。何故なら俺は、フェイトさん一途ですからね」

 

 なんでそんなフェイトさんを裏切るような事や悲しませるような事をやらにゃいかんのだ。

 少なくとも、俺はこの世でn股と浮気とストーカーは断固として許せない。

 …………俺はストーカー、と言うよりどちらかと言えばフェイトさんに呼ばれたらホイホイと行っちゃう感じ。例えるなら蜜に誘われる蜂のようなそんなの。

 つまり、俺は絶対にフェイトさんを悲しませたり困らせたりはしない。……まぁ先程はフェイトさんを守る為(守れてなかったけど)にフェイトさんにキツい言葉を浴びせた(告白も込み)けれど。

 

「…………あおな君って私の事、どう思ってるの?」

 

 高町から突然の一言。………どう答えろと?

 ……仮に、『うん。大好きさ☆』なんて答えてみろ。フェイトさんに誤解させるだけじゃなく、俺自身が拒否反応拒絶反応で爆発四散する可能性が微粒子レベルで這い出てくる。だが、逆に総統閣下よろしく『大っ嫌いだ!』なんて言ってみろ。フェイトさんにドン引きされる所の話じゃない。ただでさえフェイトさんはあの高町の親友だとかなんとか。つまり拒否ったら確実にBAD ENDを迎えてデレデレデェェェンからのドゥゥゥゥゥゥゥゥンで終わりだ。テンプレなんて言ってる暇すらない。

 そこでどうにもならないから選択肢を出す。これなら多分、多少はなんとかなる筈だ。

 

①『ちょっと苦手な幼馴染みSA☆』と、少しキザ風に言う。

 

②『友達思いの優しい子だよ』と、頭を撫でる。

 

③『質問に質問で返すが……お前は?』と、訝しげな表情で高町を見る。

 

④ちくわ大明神。

 

 ………ここは、選択肢ミスったら死ぬぞ、俺。まぁ、妥当なのは恐らく③か④……なんだが……。ふむ……どうするべきか。

 そんな事を考えていると、なんか将来オッドアイのロリッ子と同じような声を出しそう(小並感)な声が聞こえてきた。………少年(?)だよね?

 

「なのは!そんな事をしている場合じゃないだろう!」

 

 確か……ユー・ゴスラビア君……だったかな?アルフさんの話では。

 で、そのゴスラビア君はどうやら高町の身体の事を心配しているように見える。

 …………なんでだろう。

 

「ただでさえ君は今さっき無理矢理なけなしの魔力を強引に引き出して身体とデバイスの治癒を行ったんだ!」

 

 へぇー魔力を使えばどんな傷も()るんだー。

 …………便利だな、それ(魔力)

 

「ユーノ君には、関係無いでしょ」

 

「そんな事は無い!」

 

 あぁ、名前ユーノって言うんだ。じゃあ名前はユーノ・ゴスラビアってのか。かなりゴツそうな名前してやがんな。

 

「………僕は、僕は未だに後悔しているんだよ……。君をこんな危険がいっぱいの魔法の世界に引き摺りこんだ事を……。やっぱり、あの時は例え死ぬことになろうとも………ごほん。……無理をしてでも僕一人でやるべきだったんだ。……そうすれば、あんなにボロボロになることは無かったのに……」

 

 ボロボロ…………?あぁ、さっきまでの状態か。まぁ、高町はパッと見だと、なよっとしてて弱そう(確信)な感じだが、こう見えて割りと頑丈だったりする。

 だってあの(・ ・)高町家の次女だよ?戦闘民族の一人だよ?高町のお姉さんの料理食べても無事な人だよ?更に言うなれば2~3年前に高町&盾街合同家族旅行の温泉ツアーに行った時にバスジャックされてトンネルに入った瞬間トンネルが崩れて生き埋めになった時だってなんとか外に脱出して助けを求めに行けるくらいの頑丈さを持つんだよ?そんな人が無理をしない訳がない。

 まぁ、この話は追々するとして……。

 高町がゴスラビア君の方を向いて怒りが有頂天で周りが見えてない時を狙い、

 

「当て………身ッ!」

 

 と言いつつ首を……主に言えば頸動脈を狙って締める。これはある意味高町の頑丈さを信頼している行動でもある。

 まぁ、当然やられた方はたまったもんじゃないから暴れるは暴れるが大体3秒後。

 

「あきゅぅ……」

 

 高町は大人しくなっ(させ)た。この手に限る。

 ………別に首筋を狙った全力の無言の手刀でも良かったんだが……あれ、危険なのよさ。だからやらない。高町の士郎さんと父さんに死ぬほど教え込まれたし。

 

「き、君は……」

 

「盾街 あおなです」

 

「君が!?」

 

 何を驚いてんだか。

 俺はゴスラビア君とは面識はない筈だぞ。ゴスラビア君と同じ名前のユーノって鼬……いやフェレットなら知ってるが。…………そういや、アイツどこいったんだろ。

 

「と、とにかくリンディさんやクロノに報告するために、いったんアースラに行こう」

 

 どこだよそこ。

 とりあえず『着替えいいか』と聞くと『いいよ』と言われたから、俺は一先ず家に一時帰宅。着替えて出発。とりあえず行き先は未来って言って外出。いつ帰るの?って聞かれたから明後日らへんと答える。

 

 

 

 さて、やってきましたアースラ。

 ………スゴイナーキンミライテキダナー。すまんな、俺の語彙力は5.3だ。とりあえず分かるように説明を頑張るとすれば、ホワイトベースっぽい。

 と、まぁそんな事はいい。今はさほど重要じゃない。フェイトさんは何処にいるんだろう。

 あ、あんな所に緑の髪のお姉さんがいる。聞こう。

 

「ええっと……とりあえずなのはさんとフェイトさんは医務室でちゃんとした治療を受けてもらう事になってます。………それで、その治療が終わったので、今は医務室で休息中です」

 

 よろしい。ならばお見舞いだ(フェイトさんの)。

 

「その前にちょっと待ってください」

 

「嫌です」

 

「貴方も『闇の書』に魔力を吸われた筈ですよね。(なのになんで)…………」

 

 なんか話してたが……なんのことやら。

 おっ。ここがフェイトさんの病室か。

 うぉぉ……緊張してきた。だが、ここで引き下がる俺じゃない!

 俺は、扉を全力で開け放--

 

 

 

 

「話を………聞かせろぉ!」

 

 

 

 

 --つ事は出来ず、首根っこ掴まれて黒い服を着た少年に連れていかれた。

 なにこの扱い……。




~その頃のアルフ~

(なのはの目があんな殺気に満ちてるの初めて見たよ……)


◆◇◆◇◆◇

次回は過去の話少しをやってみようと思います。

やらなかったらすいません。


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第11話『話をしよう。あれは5年前のこと』

早めに書き終われました。

それと、今回『これ高町のなのはさんじゃなくね?』って場面があるかも知れませんが、子供だもの仕方がないという目で見てくださったらありがたいです。


………フェイトさん出したいけど出せない。
これも全部クロノが悪いんです。


「--じゃあ、君はあのなのはの幼馴染みって事でいいのか?」

 

「ええ、まぁ。じゃあそれでいいですか?早くフェイトさんの所に「駄目だ。まだ君の魔力もといリンカーコアの検査をしなくちゃならない」

 

「  」

 

 HAHAHA!面白い冗談を言う奴だなぁ、クロノ君(さっき引き摺っている時に自己紹介された)は……。個性、無くしてやろうか……?

 クロノの事情聴取が面倒臭かったから軽く聞き流しつつ、ふと、過去の事を思い出していた。……なんでこんな時って唐突な自分語りを始めるんだろうね。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第11話『話をしよう』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 あれは、今から5年前の事--

 

 俺は両親と共に隣の『翠屋』へと足を運んでいた。そう、お互いが得するための交渉をするために。

 何故こうなったのかって?それは引っ越したから+うちが本屋だから+隣の高町家に人がいなかったから。まぁ、洋菓子店や和菓子店じゃないだけましなんだが。

 俺と両親は元々海鳴市中丘町に住んでいて、今回父さんが『そうだ『翠屋』の近くに引っ越そう』なんて言い出すもんだから海鳴市中丘町から海鳴市藤見町へとお引っ越し。……中丘町にいた時に隣に住んでたアイツは涙を流しながら俺の事を放送禁止用語も交えて捲し立ててたが、親が決めたから仕方がないって無理矢理宥めた(丸め込んだとも言う)。だけど、『また会った時には美味しいケーキをたくさん奢れ』って言われた。

 だから俺もソイツの料理の不味さを思い出しながら言ってやった。『また会う時までに俺が参ったって言うほど料理うまくなっとけ』って。それでソイツとは別れたんだよ。

 ……で、話は戻るんだけど、今俺は『翠屋』の目の前にいる。ここからは、大人と大人のお互いの腹のまさぐりあいが始まるんだなって五歳ながらの本能で察知した俺は無言で外に出ようとするも、親に肩をがっしりと掴まれ逃げる事が出来なかった。

 だが、それで諦める俺は俺じゃない。

 すぐさましゃがみ親の足を払う。これで親は前のめり&足払いで転け、俺が逃げる時間を稼げた。

 ……これで逃げれたって思ったんだけど……親は二人だ。俺が転ばしたのが父。逃げようと思った俺は母に首を決め(ヘッドロックをかけ)られ、意識が暗闇に落ちると共に『翠屋』に引き摺られる形で入店……。

 そっから先は目が覚めるまで覚えてない。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 その日、私はお店のお手伝いをしていました。

 すると、つい先日にお隣に引っ越してきた………えっと……あ、盾街さん夫婦だった……が『翠屋』に挨拶をしに来ました。男の人と女の人、それと………気絶してる子。

 私のお父さんとお母さんは盾街さん夫婦と話があるって言って、私と気絶してる子を隣の部屋に移動させ、その際にお母さんが『その子、あおな君って言うんだって。なのは、お母さんは今から盾街さんとお話ししなくちゃいけないからなのはは私達のお話が終わるまであおな君と一緒にいてくれる?』って聞いてきたから私は勿論二つ返事で返して、あおな君と二人きりになりました。

 ………その間、ずっとあおな君の顔を観察してました。

 自分でも、なんでこんな事をしているか分からないけど、すごく気になるんです。……なんて言うか、あおな君の顔を見ていると心がトクントクンするって言うか……もやもやするって言うか……。

 その感覚が心地いいようで、心地悪いようで……その、初めての感覚だったから、どうやって反応していいかが分からなくて……。

 分からないからずっとあおな君のほっぺたをツンツンしてました。

 あ、柔らかい。

 なんだろう……お母さんの焼いてくれたホカホカのホットケーキみたい……。

 ………………そう考えてると、お腹が空いてきました。

 うぅ……お腹減ったよぅ……。お昼御飯の時間なのに……まだ話が終わらないのかなぁ……。

 お母さんには『ここにいてね』って言われたから動けないし…………。そこで視界に入るあおな君。……あおな君が何か食べ物でも持ってない、かな……。

 ………………そういえば、確か眠り姫って王子さまのキスで目が覚めるって話を読んだ事がある。

 ……でも、キスって好きな人とやるもの……だし……。

 でも、このまま一人でポツンといるのは……さみしいし。

 ………ほっぺ、なら大丈夫かな……。

 そっと、顔をあおな君のほっぺに近付けて、唇を少し尖らせる。……あうぅ、なんだろう……あおな君の顔が近くなれば近くなるほど胸がドキドキする。

 近付け、少し唇をつんってほっぺにキスしたら、ほっぺのふよんって感覚が返って来て気持ちよかったのは、私の感想。

 

「んんぅぅ……」

 

 ふぇふゎ!?あ、あおな君が起きた!

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 目を覚ます。知らない天井だ。←ここまでテンプレ

 ……つか、ここ本当にどこだ?確か、俺は母さんにヘッドロックかけられて『あおな は めのまえがまっくらになった!▼』って所までは覚えてるんだが………んむぅ?近くに人の気配がする。

 のっそりと起き上がり、周りを見渡すとそこには茶髪の少女がいた。年齢は……同じくらいかな?

 

「え、えっと……あなたは、盾街 あおな君……だよね?」

 

 ……確か、高町のなのはさん……だったっけ。つか、何でこんなに顔が真っ赤になってんだろう……。

 

「そういう君はなのは=高町」

 

「えっ?」

 

「えっ」

 

 ネタが通じないこのもどかしさと言ったらもう酷いもんさ。

 

「あ、あおな君、起きたのね。話が纏まったからこっちにいらっしゃい」

 

 高町のなのはさんとのファーストコンタクトを取っていると、突然扉が開き、どうみても高町のなのはさんのお姉さんですね分かりますって人が出てきた。……でも後で知ったんだがこの人って、高町のお母さんなんだぜ?綺麗過ぎるだろ……。まぁうちの母さんもパッと見16歳だが。

 さて、扉をくぐる。すると途端に鼻に入り込んできた甘いスウィートな香り。……やだ、おなか空いてきちゃったよぅ……。ちなみに床に倒れている父さんと高町の士郎さんは無視の方向で。

 そっからは本当にただお菓子食べて契約の内容確認して少し高町のお兄さんとお手合わせして挨拶して帰ったって所だね。

 まぁ、その日から高町のなのはさんとの関係は始まったんだよ。あの日が来るまでは仲良く公園で遊んでたんだよ。

 高町のなのはさんはどことなく赤くなりながらだが。あれか?少し運動するとお熱になっちゃう体質だとか?子供だもんね仕方ないね。

 

 

 --そして、事件は出会って5日後に起きる。

 

 

 あれは公園のブランコで遊ぼうとした時の事だ。

 

「ここで、遊びたいんだが……」

 

「はあ?なにいってんの?おまえ。ここはおれたちがよやくしてたところだし!」

 

 いつからの予約やねん。

 

「いや、どう見てもお前らが後に来たと思うんだが」

 

「なんじなんぷんなんじゅうびょう!ちきゅうがなんかいまわったとき?」

 

 よくある質問どーも。つか、先程の予約に関して俺がこう質問すべきだったのか?

 

「午後3時28分地球が大体46億+α回ったくらい」

 

「えぇー……」

 

 そこ。引くな高町。

 --とまぁ、そんな風にブランコ争奪戦(口喧嘩)を繰り広げてた訳ですが。それがドゥンドゥン激しくなってくの。で、それが原因で--

 

「おい高町!おまえ、こいつのことが好きなのか?」

 

「そ、そんなわけないの!わたし、あおなくんのことがだいきらい!」

 

 --そんな事を口に出す高町。その言葉にハッとした表情を少し見せるも、すぐに俺の事を睨み、

 

「もともと、きみがわるいんだから!」

 

 だなんて矛先を俺にシフト。おいおい悪いのは俺ぇ?

 まぁ、とりあえず完 全 論 破をして泣かせましたがね。

 とにかく、そっからだった。高町の俺に対する風当たりが強くなったのは。

 足は引っ掻けるは爪で引っ掻くは……。会う度会う度喧嘩ばっかり。これには親も心配するかと思ったが『喧嘩……いいじゃない。嫌いじゃないわ!』とのコメントを母さんがぽつり。

 そんなこんなで今にまで至る。勿論俺もやられっぱなしじゃ終わらない。ちゃんとキチンとしっかりと、やられた分は耳を揃えてちゃんと返しておいた。

 

 

 

 

 

 ----さて、過去の高町との馴れ初めを思い出しきった訳だが……

 

「……君、どうしてリンカーコアが消えているんだ?ちゃんとあった、という形跡はあるのに……」

 

 知るかそんなもの。つか、リンカーコなんとかってなんだよ。




~あの頃のなのはさんの心境~

(なんで好きって言えなかったんだろう……。わたしのばかばかばか!)


◆◇◆◇◆◇


あおな君は昔はまだ敬語じゃ無かったです。

……もう何時何分何十秒って、古いんですかねぇ……。


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
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第12話『恋と不整脈の違いはあまりないらしい』

フライパンは家でお留守番してます。


「……おかしい……。いくら調べても君からはリンカーコアの反応が検出されない。確かに闇の書に蒐集されていた筈なのに……」

 

「……もういいですか?あの、そろそろ本気で怒りますよ?命に関わる右ストレートをぶっぱしちゃいそうになってますよ?」

 

「も、もう少し待ってくれ」

 

 何回目だよそれ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第12話『恋と不整脈の違いはあまりないらしい』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 もう我慢の限界だ!俺はフェイトさんの所に行ってやる!

 

「ぐぅっ……」

 

 俺は無言でクロノに腹パンし、部屋を出ようとした。ちなみに腹パンは完全にストレス発s……もといそこにクロノがいたからだ。山的なノリ。

 クロノがうずくまっている間に扉の前に立つと扉が自動で開いた。

 よっしゃこれでフェイトさんの所にいけるでぇ!とか思ってたんだよ……。

 だけど、目の前にいつぞやの緑の髪のお姉さんがいた。しかも謎の不適な笑みを浮かべている。くっ……ここは、どうすれば……。だが、迷っている時間なんて、ある訳が無い。だから俺は、そのお姉さんを華麗に、まるでそこに邪魔なモノがあったから避けるかのようにスルーし、部屋を出る。これが……これがきっと最善の策に違いない。

 ちなみにそのお姉さん、少しどや顔をして俺に向かって『ふっ駄目よ』とか言ってたが俺が無視した所為か、顔が真っ赤になってる。

 少し、可哀想になってきた。

 ……だが、ここはあえて心を鬼にして無視をする。

 そう……ここであえて俺が無視するということであのお姉さんはきっと精神的に成長する。そんな気がする。あのお姉さんは今回で知る事が出来ただろう。自分の痛々しさを……だから、きっと次に会うときは今よりももっと精神的に成長して、ちゃんとしたおしとやかな女性になっている事だろう。ふふふ………また会った時が楽しみだ。どれだけ成長しているのか、それを期待しておこう。

 そして、俺はそっとその場を後にし、フェイトさんのいるであろう病室へと足を向けた。

 --良いことをしたなぁって、そう考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやだから逃がさないと何度言えば」

 

 ちくせう。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ふと、ベッドの上で考える。

 ……あおなは、どうしてあんなに私の事を気にかけてくれるんだろう。

 今、私はアースラの医務室で横になっている。傷はアルフとあおなが治してくれたからなんとかなってるけど、リンカーコアから魔力を抜かれたから身体に力が入らない状態だ。ちなみに、隣には気絶して『う~ん……う~ん……』って唸ってるなのはがいる。

 さて、話は元に戻るんだけど……。あおなは本当にどうしてあんなに私の事を守ろうとしてるんだろう。いや、確かにあおなは私に『好きだ』とか、『愛してる』とか言ってた。

 だけど、それは母さんも………母さんも言ってた言葉。

 ……母さんが最後に私に言ってくれた、『フェイト……今まで、ごめんなさいね。ふふふ……こう言っても、もう遅いかもしれない……薬に頭をやられてた、なんて言葉も言い訳に聞こえるのかも知れない。だけど、でも、これだけは言いたいの。私は、貴女の事が大好きで、私にとっては愛しい愛娘よ』って言葉に少し似てるって思った。

 つまり、あおなの『好き』や、『愛してる』って私の事を家族として好きって意味なのかなって思った。でも、私とあおなは家族じゃない。ならなんなのかって辿り着いた先は親友。

 それならなんとなく理解は出来たし、私もあおなの事は友達以上だって思ってる。

 ……でも、あの時あおなが私に向かってはっきりと『愛してる』って言った時は胸がドキッてした。……あれって、なんだったんだろう。まるで胸を思いっきり貫かれたような感覚だった。

 その時はそんなに運動もしてなかったから、胸が苦しくなるほどの感覚は無かった筈だし……。

 それに、最近あおなが私以外と一緒にいる時とかはなぜか胸がモヤモヤしたりするし……。なんなんだろう、この気持ち。

 あおなを思う度に胸の鼓動が早くなる事もあれば……頭がボーッとする時もある。唐突に息切れになったりするし、目眩も起きる。

 もしかして、あおなが原因の病気?でも、あおなと初めて会った時とかはそんな事はなかったし……。

 ……う~ん。最近検査を受けた時には何も異常は無かった筈なんだけどなぁ……。

 ………もしかして……これって新種の病気、なのかなぁ………。

 でも、私はこれに似てる病気の症状を1つだけだけど、知ってる。流石にこれは無いって思ってるんだけど……。もう、これしかない。

 --そう。これは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不整脈……なのかな……」

 

「ん?どうしたんだい?フェイト」

 

 本当にそうだとしたら……どうしよう。

 だって、動悸の不安定、頭がボーッとする、息切れ、目眩……。これ、完全に当てはまってるよ……。

 うぅ……。死にたくない。死にたくないよぅ……。

 

「……アルフ……私、どうしたらいいのかな……」

 

「いやだから、一体どうしたってんだい?フェイト……。って、な、なんでそんなに涙を目に溜めてるんだよ!も、もしかして傷が痛むのかい?」

 

 うぅ……知らず知らずの内だけど……涙が……。

 

「あるふ……あるふぅ……わたし、ふせいみゃくかも知れない……」

 

「えっ」

 

 こんなんじゃ……こんなんじゃ私、あおなやなのはと一緒にいられないよぅ……。

 

「(…………あおなって、可哀想だな……)」

 

 あぁ!なんかアルフに可哀想な子を見る目で見られた!

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 毎度お馴染みクロノと緑の髪のお姉さんに捕まり強制的に座らされた。しかも今度は背凭れを巻き込んで光ってる縄で拘束もされてる。

 ………ははぁん?もしかしたら、クロノ君ってばSM両方イケる口だったり?だが残念ながら俺はフェイトさん以外に興味は無い。元々SMにはさほど興味は無かったし。

 で、しかもそんな粗末な状態で話を聞けって?こんなの、妄想の世界に逃げ込まざるをえない。

 

「……と、言うわけで僕達が使ってる魔法と言うのは許可がないと違う世界では使っちゃいけないんだよ。……さて、これで一通りの説明は終わったけど……君からなにか質問はあるかい?」

 

 ……あぁ、やっぱりフェイトさんは可愛い……。あ、話聞いてなかった。

 ここは適当に誤魔化さなくては。

 

「……知ってますか?セピア色のセピアって、イカ墨って意味なんですって」

 

「えっ?そ、そうだったのか……………って今はそんな事はどうでもいいんだよ!」

 

 チッ、やはり駄目だったか。

 

「(いや、実を言えば全然聞いてなかったんですけど)……つまり、魔法は機密事項って事ですか?」

 

「あぁそうだ」

 

 やっぱり相手の言った結論を返すだけってのは楽でいい。

 

「で、それが俺になにか関係あるんですか?」

 

「あぁ。君に1つだけ聞きたい事があってね。……君は闇の書の守護騎士に拘束され、魔力を蒐集された筈だ。だと言うのにその際に爆発的な魔力を発してた。……あれは、なんだ」

 

 ……見てたんなら助けろやゴルァおっと危ない。

 ふむ。あの身体に込み上げる力は魔力だったのか。……俺も30歳を待たずに魔法使いか。

 とりあえずこの質問にははっきりと答えられるから答えておこう。1つだけって言ってたからこれが終わればフェイトさんの所に行けるって事だし。

 

「あれですか?あれは--"愛"……です」

 

「「……」」

 

 ふふふ、怖いか。だろうな。

 

「あれは俺がフェイトさんに対する足りないものを考えた時に気付いたもの。それが形になった結果です。それが愛。魔力なんてちゃちなモンでは断じてない。正真正銘の愛の力の結晶です」

 

「………君、頭は大丈夫か?」

 

「少なくともいきなり魔法の事を説明する貴殿方よりはマシだと思いますが?」

 

「…………とりあえずまだ検査は続けよう。君にはまだ色々と聞きたい」

 

 まだ解放されないんかい。あぁフェイトさん……。すいません……。




~その後のクロノの心境~

(愛で力が沸くわけないだろ……。馬鹿馬鹿しい)


◆◇◆◇◆◇◆◇


遅れてしまい、すいませんでした。

少し用事が忙しくなりまして。

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第13話『ぶっちっかまっせ♪』

勘違い、すれ違い。

恋愛モノではよくある事です。


 やっとクロノから解放された。

 ……本当に、なんて、なんて長い検査だったんだ。

 しかもその結論が『分からない』とかマジでふざけんなよちくしょう。燃やすぞ。どこをとは言わないが。

 まぁ、それはともあれ面倒臭い検査もクロノの話も全て終わった訳だからもうこれでフェイトさんに会えるんだ!

 ひゃっはー。(テンションが有頂天)

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第13話『ぶっちっかまっせ♪』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 俺は、今一度フェイトさんのいる(であろう)扉の前にいる。

 ……あぁ^~心がぴょんぴょん違うそうじゃない。

 ……心臓が口からfry awayしそうなくらい暴れまくってる。暴れんなよ……暴れんなよ……。うぉ……凄い緊張してきた。

 もし、この病室に入った時にフェイトさんが着替え中だったらどうしよう。切腹しよう。1873年に廃止されてるけど、このアースラは日本じゃないからいいや。逆治外法権って奴さ。

 まぁ、死にはしないけどね。フェイトさんも悲しむかも知れないし。

 兎にも角にもとりあえず入る前に聞き耳をしておこう。もし本当に着替えてたら大変だし、俺は変態にはなりたくない。扉に耳をそっと当てる。冷たい。

 周りは静かだから中の音がよく聞こえる。

 すると、中から泣き声が聞こえてきた。

 

『--うぅ……ぐすっひっく……ごめん。ごめん。あおな……』

 

 フェイトさんが………泣いてる!?

 

「フェイトさん!大丈夫ですか!」

 

 そんな声を聞いたとあっちゃあ俺は止まれる訳がねぇ!構わねぇ!突入だ!

 病室の扉を開き、フェイトさんを発見!

 

「フェイトさん!どうかいたしましたか!もしかしてどこか痛い所とかがあるんですか?」

 

 フェイトさんを見ると、フェイトさんは自分の身体を抱き締め泣いていた。

 まさか、あの騎士どもにやられた傷が痛むとか?治した筈なんだけど、やっぱり精神面に……。

 ………あの騎士ども……絶対に許さんぞ………特にヴィータ!

 

「あ……あおな……。私、私ぃ……う、うぅ……どうしよう……」

 

「フェイトさん…………」

 

 …………これは、早急に不安の種を取り除かなくちゃいけない。何故なら、フェイトさんの顔には抑えようとしたけど、出てしまう……いや、(こぼ)れてしまったと考えた方が正しい涙がフェイトさんの顔を覆う両手から(あふ)れているからだ。

 こんなの見せられて黙っていられる訳がない。

 

「…………フェイトさん、少し、待っててください。俺が全部終わらせて来ます」

 

「……あお、な?」

 

「大丈夫です。ただ、不安の種を始末(殲滅)してくるだけ、ですから」

 

「えっ?あおな、何を言って……」

 

「アルフさんも、待っててください。すぐに帰って来ますから」

 

 ゆっくりと扉をくぐる。覚悟なんてモノ、とっくの昔に完了している。後は実行するだけの簡単なお仕事だ。

 ……首根っこ洗って待っていやがれ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

~その頃のアースラ指令室~

 

「か、艦長!アースラ内にて膨大な魔力を確認!」

 

「な、なんですって!?」

 

「映像、来ます!」

 

「!?………そんな、なんで……。彼には、盾街あおなには、魔力は無かったんじゃ…………」

 

「しかも、こんな空間を歪ませるような……」

 

「あの……クロノ執務官。これ、空間が歪んでるんじゃなくて、湯気です」

 

「えっ」

 

「でも魔力は本物です」

 

「えっ」

 

「あ、盾街あおなが転移しました」

 

「えっ」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 気付いたら地上にいた。いやマジで。

 フェイトさんの病室から出て沸き上がる怒りを表しにて憎き騎士どもの顔を思い浮かべていたらいつのまにか見知らぬ……いや少しだけ見知った土地に着いた。……どこだっけ、ここ。

 

「せやからな?一人で行けるって言っとるやろ?」

 

「し、しかし主……私は貴女の守護騎士として……」

 

「いや、確かに心配なんは分かるで?そやけど、私だってずっと一人で暮らして来たんやし、ポストに葉書落とすだけやから大丈夫」

 

 俺がその場で思い出そうと躍起になっていると、向こうからほのぼのとした会話が聞こえてくる。うむ。ここは平和だねぇ。だけどここではゆっくりとは出来ない。

 ……それにしても……あれ?この二人の声、どこかで聞いた事があるような……。

 うぅむ……片や昔に聞いた声。それは車椅子に乗っている少女。片や最近聞いた声。目立つピンクのポニーテール……って……あれは確かシグムントさんだったっけ?

 ならば丁度いい。

 片方の昔に聞いた声の事は一先ず置いておく。

 そんでダッシュで近付き一言。

 

「お前も守護騎士か?守護騎士ならば俺とデュエル(手合わせ)しろ!」

 

「「……………」」

 

 ……(アカン)。やるんじゃなかった。シーンどころかチーンすら鳴らない酷さだよこれ。

 

「………あっ……き、貴様はまさかあの時の!」

 

 復活早いなシグムントさん。

 

「そうです!あの時はよくもやってくれやがりましたね!シグムントさん!」

 

「私はシグナムだ!どうして1日も経っていないのに忘れるんだ!」

 

「あ、そうだったんですか?それはすいませんでしたねぇ……」

 

 駄目だ。面白くって自然と口角が上がっちまう。

 面白がっている暇なんざないのに。

 

「それはさておき、答えはどうなんですか?俺と手合わせするんですか?それとも惨めったらしく尻尾振ってお家にgoするんですか?」

 

「貴様……!」

 

 そっとフライパンを構えると、シグナムさんもガチャンと剣を構えた。

 端から見たら恐ろしい程シュールなのかも知れないが、俺と、相対しているシグナムさんは至って真面目だ。真面目だったら真面目だ。

 

「ちょっ、ちょっと待ちぃ!い、いったいどうなっとんのや!私の目の前で何が起きようとしとんねん!」

 

「大惨事対戦、ですかね」

 

「違うそうやない。私が聞きたいのはそれやない」

 

 じゃあ何だって言うんだ。シグナムさんもそれが気になっているのか俺に攻撃しようとして来ないし。

 ……チャンスかな?

 

「ふぅ……。とりあえず聞きたい事があんのやけど」

 

「はい?」

 

「二人の関係は?」

 

「俺は魔力を取られた側です」

 

「  」

 

 質問には答えず、顔に縦線を入れるという漫画の技術を使う高度な技を使うシグナムさん。

 あれ?ちょっと痩せてる……?

 

「……なぁ、シグナム」

 

「…………」

 

「答えんかい」

 

「彼とその他大勢の魔力を蒐集してしまいました!」

 

 ……車椅子の少女って、あんなに気迫あったんだ。……なんだろう。凄いデシャヴュを感じる。

 

「はぁ………あのな?蒐集したらあかんって言うたやろ?」

 

 ……この声……麻雀してそう(小並感)って違くて、どっかで聞いた事があるんだよ……。

 

「他所の人様に迷惑掛けるから駄目やって言うたのに……」

 

 ……どこだったっけ……『また会うた時には美味しいケーキをたくさん奢るんやで!』…………あ。

 

「もしかして……八神さん?八神はやてさん、ですか?」

 

 会話に割り込む形になったが、それは致し方ない犠牲だ。所謂コラテラル・ダメージという奴だよ。

 

「……ぇ?」

 

 八神?何故八神がここに……。引っ越したのか?自力で隣街へ?

 ………って、ここよく見たら海鳴市中丘町じゃないか。道理でどっか見たことがあると思ったよ。全くもう。俺の記憶力って頼りないなぁ。……ぐぬぬ。

 ……にしても、そうか。俺が飛ばされたのか。なんで?あれか?守護騎士を思い浮かべたから、なのかな?

 

「……えっと……どちらさんで?新手のナンパならノーセンキューやで?」

 

「あの……盾街、盾街あおなと言う名前に聞き覚えがあったりは…………」

 

「………………えっ!?あ、あんた……ほんまにあおななん?……それにしては身長も伸びとるし喋り方も変わっとるし……。……ほんまにあおななん?」

 

 身長は5年もすれば伸びるさ。喋り方は仕方ない。

 ………やっぱり、まだ疑うか。そりゃそうか。それとさっきからシグナムさんが空気に……まぁ、気にする事じゃあないか。

 さて、そんな事より証拠証拠。

 あ、とっておきのがあった。

 

「……5歳の時、八神さんの家に泊まった時に八神さんがおねs「あ、ああんたはあおなや!確実にあおなや!その手加減を知らんトラウマのほじくり方をする奴を私は他には知らん!」

 

 ………酷い言われようだ。まぁ、信じて貰えて良かった訳だけど。




~その頃の八神 はやて~

(な、なんでコイツがここにおるんや……。あぅ……。シグナムに、知られてもうた……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ハーレム?私はハーレムなんか狙ってませんよ?
私、ハーレムはどちらかと言えば苦手ですし。


……まぁ、流れ次第ではどうなるか分かりませんが(小声)


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第14話『ラスト1頁』

…………M・HEROダーク・ロウ絶対に許さない。


 八神はやて……。

 昔の八神を一言で表すとしたらヤンチャな奴だった。

 だが、今の八神を見てみよう。

 

「シグナム!ヴィータ!シャマル!ザフィーラ!そこに座り!」

 

 これなんて母親?

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第14話『ラスト1頁』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 今、(ワタクシ)こと盾街あおなは久々の八神家にお邪魔しております。

 理由?八神が夕飯を作ってくれるってさ。ちなみにオムライス。

 --それで、

 

「今俺の目の前で土下座してるこの守護騎士達をどうにかしてくれませんか?」

 

「駄目や。幾ら昔馴染みの勝手知ったるあおな君が相手やったとしても、これはある種のケジメを付けなくちゃあかんのや」

 

 前言の即座撤回。やはり八神は昔から変わってない。

 

「ち、ちくしょう……なんでアタシ達がこんな事を……」

 

「ヴィータのアイス無しな」

 

「は、はやてぇ……そりゃ無いよぅ……」

 

 うん。やっぱり八神だ。全然変わってない。特に理不尽な所とか。……まぁ、本当に昔と変わってないってならヴィータが本気で反省したならちゃんとアイスをあげるだろう。

 

「まぁもういいでしょう。……だいぶ反省しているように見えますし。俺も胸の中の『粛清してやるうううう!!』って気持ちも収まりましたし」

 

「…………あおなは許してくれた。せやけど、他の多くの人に迷惑掛けたんや。それはどないすれば……」

 

 ……ふむ。

 

「……あの、守護騎士の皆さん。聞きたい事があるんですが……」

 

「……なんだ?」

 

「そもそも、なんで魔力を蒐集する必要があったんです?」

 

 大体集めたって何に使うのかがさっぱり分からん。あれか?幻想の郷の半人半霊の人みたいに春を集めて桜を咲かすんだー的な事をやろうとしてんのか?

 

「………それは、我が主を見れば分かる」

 

 分かるかんなもん。見ただけで分かるって……俺はそんなに八神と付き合い長い訳じゃ無いんだよ。

 ……あれ?八神の足になんか違和感が……。

 

「……八神さんって、車椅子……でしたっけ?」

 

「気付くのおそないか?」

 

 ……どういう……ことだ……。

 俺がそんな困惑した顔をしていた為か、シグナムさんが優しく教えてくれた。

 ……さっさと教えてくれれば良かったのに。

 

「……闇の書が未完成な事による影響だ」

 

 ……ん?

 

「……裏守備にする奴ですか?」

 

 あれはあれでもう完成してるような。

 だって速効魔法だし。

 

「それは月の書だ」

 

「じゃあ表側「太陽でも皆既日食でも、ましてや生者でもない!」

 

 なんでシグナムさんそんなに詳しいのん?

 

「……闇の書による蒐集を行ってない所為か、主のリンカーコアが侵食され、足が動かなくなってしまい、更には命にまで危険に……」

 

「えっ……なにそれ聞いてない」

 

「えっ」

 

「私が聞いたんは魔力を集めたらなんでも願いが叶うーとかその程度なんやけど」

 

 さて……情報の食い違いが出てきた訳ですが。

 

「い、言ってませんでしたっけ?」

 

「聞いてへん。…………まぁ、例え命が危なくなったとしても、蒐集は永遠に行わへんけどな」

 

 ……あぁ、こんな奴だったよ。

 コイツは昔から誰かが傷付くのが大嫌いだったもんね。誰かが傷付くくらいなら自分が全部ライフで受けるって奴だったからね。

 

「とりあえずその辺の話は後々するとして…………つまり、貴女方はその闇の書が完成すれば八神さんの足が治り、命の危険が無くなる……そう考えているからこそこんな行動に移した、と」

 

 俺のその言葉に頷く騎士の皆さま。

 ……ふむ。お互いがお互いを大切に想いあってるからこそ、こんな行動になる、か……。

 それにしても、その感情の所為で今回は食い違いがあったが。

 

「で、貴女方は今までどんなのから魔力を蒐集しているか、覚えていますか」

 

「えっと……その星々で「ヴィータちゃんには聞いてないです」……ぐぬぬ」

 

 いつから許したと錯覚していた。あぁん?

 俺は今もきっとこれからもこの先も永遠にヴィータちゃんを許すことは無いだろう。なぜならフェイトさんを傷付けたからね。仕方ないね。

 

「……で?どうなんです?」

 

「えっとね……」

 

 こっちをまるで般若のような形相で睨んでいるヴィータを完全に無視し、話を振ると近所の優しそうなおばちゃんっぽい人が話し掛けて来た。

 …………えーっと……マジで誰だっけこの人。

 ……し、し、し……まぁおばちゃんでいいや。

 

「……魔力を蒐集する対象はね、その星々にとって有害と言われている生物だけに絞ってるの。……そう言った生物ってのは、大体魔力を少しだけだけど、保有してるから……」

 

 前回の大勢って有害な生物って意味だったのかい。

 

「しかも、初めて人の魔力を蒐集したのはお前達だけだったからな。誇っていいぞ」

 

 怒ってはいるんだよなぁ……。ついさっきのシグナムさんのこの言葉の所為で俺の怒りが有頂天。怒りの臨界点を突破。

 

「……シグナム、これから3日間ご飯抜きな」

 

「……あ……」

 

 言ってからしまったってパラガス顔をしても遅いんだよ。ザマァ。

 っとと、こんな事をしてたら話がどんどん脇道に逸れる。

 

「えっと……詰まる所、話を纏めると八神さんの足を元に戻す&命の危険を無くす為に魔力を蒐集していて、それで今まで蒐集していた魔力は有害な生物のみ。人間からは俺達だけ、という事ですね?つまり、八神さん。貴女が謝るのはどうやら俺を含めて三人だけですよ。良かったですね」

 

「こんなとき、どんな顔してええか分からへん……」

 

 複雑な顔をすればいいと思うよ。

 

「あぁそうだ。それと……」

 

 突然、シグナムさんが思い出したかのようにコチラを向く。

 ……なんだ?仲間なんかにはしないぞ?

 

「どうしたんです?」

 

「魔力の事なんだが……」

 

 あれ?もしかしたらまだまだ魔力が必要なのかな?

 なら適任がいるんだよ。二人(クロノとリンディさん)、ね。

 やっべぇニヤケてくる。あの二人に長時間フェイトさんと会えなかったこの憎しみをぶつけられると思ったら心の底から笑えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「実は、お前の魔力を蒐集し終えた時点で後1頁蒐集すれば終わる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………え?

 

「闇の書って魔力を紙にするんですか!?」

 

「あおな君!驚く所はそこじゃないと思うんだけど!?」

 

 いや、だって魔力を紙にするんだよ?

 エニグマとかそんな感じで質量保存の法則ガン無視とか超COOLだぜ。

 

「あぁ、いや、元々闇の書には666頁分の余白があってだな……。そこにリンカーコアから吸収した魔力を溜めておけるんだ」

 

 ……って事は。

 

「魔力を文字にする事が出来る……って事、ですか」

 

 あれかな?綴るのかな?

 

「うん、だから驚く所が違うかな?」

 

 じゃあどこに驚けってんだよ!

 俺もう大概の事じゃ驚けないぞ!闇の書には実は人格がありましたーとかじゃない限り俺はもう絶対に驚けないからな!

 

「……まさか、お前の魔力だけで闇の書が一気に500頁近く集まるとは思わなかった」

 

 こんなのないよ(俺の魔力量)。ありえない(俺のクロノ達への復讐計画)。

 ……クロノに復讐出来ないとかふざけんな。

 

「…………それに、お前の魔力を吸収した所為なのかどうかは知らないが、少しだけこの闇の書がおかしい」

 

 知らん。そんな事は俺の管轄外だ。

 ……にしても、マジか……。クロノ達は俺にリンカーコなんとかが無いとか抜かしてたが……なにか関係あるんだろうか。

 ま、関係していようが無かろうがどうでもいいんだが。

 俺としてはフェイトさんに危害が無ければそれでいいんだよ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「…………なぁ、聞いた?アリア」

 

「…………うん。聞いたよ。ロッテ」

 

 八神家の近くの塀に乗っている二匹の猫が顔を向かい合わせ、溜め息をつく。

 そして一言。

 

「「…………こんなの絶対おかしいよ」」




~その頃のフェイトさん~

(強く……ならなきゃ。その為にもあの守護騎士達が使ってたカートリッジシステムって言うのを早く理解しないと……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


シグナムさんってネタキャラですよね(暴走)。

ちなみに、私のエースは銀河眼の光子竜です。

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第15話『Heat & Heart』

今回、『やめろぉ!こんなのシリアスじゃない!俺の知ってるシリアスは……皆を深刻に……』な部分がありますが、気にしないでください。(訳:文章があやふや)


 ……私達は、強くならないといけない。

 世界を……そしてなにより、大切な人を守らなくちゃいけないから……。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第15話『Heat & Heart』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、結果論を言うならば俺は帰路についた。

 いや、別にアースラに戻ろうとはしたんだよ。だけど行き方分からないし、それにシャマルさん(あのおばちゃんの名前)に魔力を調べて貰ったらまた無くなってるとかで……。

 一応、賭けでフェイトさんに連絡はしたんだけど……一向に繋がりやしない。くそう。電波すら俺の恋路を邪魔するか。

 で、その帰り道に見たことが無い猫が二匹、寒そうに身体を寄せあってるのを見付けたんだ。

 パッと見薄汚い野良猫なのかな?って思ったけど、割りといい毛並みをした猫だった。……品種はなんなんだろう。

 ちなみに、性別はメス。二匹とも。……にしても、なんで性別を確認しようとしたら手を引っ掻かれるのか。

 まぁ、そんなの些細な事だと考え、家に着く。

 …………うはぁ、気まずい。明後日には帰ってくるとかなんとか言ってたのに結局すぐ帰る事になっちまった。

 

「……た、ただいま」

 

「あら……あおな。おかえり」

 

 蚊の鳴くような声で挨拶すると、奥から母さんが顔だけ出して返事を返してきた。

 ………あれ?父さんの気配を感じない。

 

「あれ?父さんは?」

 

「あぁ、父さんなら高町さん所の士郎さんと力比べしてるわよ」

 

 あぁ、道理でさっきからジョジョみたいな擬音が見えて聞こえる訳だ。

 

「……ん?あおな、どうしたの?その猫's」

 

 なんでもかんでも複数形にするのは良くないと僕は思うの。

 

「寒そうにしてたので、つい、拾っちゃいました」

 

「あら、あおなもなの?実は、私も--」

 

 そう言って奥から出てきた母さんの腕に抱かれていたのは--

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えっと…………お、お邪魔してます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 --どう見ても本物の猫耳を生やした薄い茶色っぽい髪色の幼い少女だった。

 

「……どこから誘拐してきたんです?」

 

「ん~……。どちらかと言えば森に熊を獲りに行った時に次いでに拾ったって感じかしらね。ちなみに、名前はリニスって言うらしいわ」

 

 ……ふむ。今日は熊肉料理か。いや違う、そっちじゃない。

 

「私が拾った時にはかなり衰弱してたわ。……もしかしたら、虐待されてたのかも知れないって思ってる」

 

 …………うん。なら仕方ない。

 

「……まぁ、事情は理解しました」

 

「さて、じゃあリニスちゃん。お皿運ぶの手伝ってくれる?今日はご馳走よ?」

 

「あ、は、はい!がんばります!」

 

 凄い健気な娘だなぁ……。こんな健気で普通(耳と尻尾から目を逸らしながら)の娘を虐待するとか、この娘の親って頭いかれてんのかな?

 …………あぁ、それと俺が拾って来た猫だけど、しっかりとお風呂に入れて洗ってやりました。隅から隅まで。

 気持ちよさげに『んにゃ~んゴロゴロゴロ』なんて鳴くわけだから可愛くて仕方ない。……まぁ、熊肉の件の時には震えてたけど。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「で?最後の1頁はどうすんねん」

 

「どうしましょうか……」

 

「そう、よね……」

 

 とりあえず、あおながオムライスを食べ、帰った所から私達の家族会議は始まる。

 議題は勿論闇の書について。

 

「……そのまま覚醒ーってんならまだ、苦労は無かったんやろうなぁ……」

 

「……うん。後1頁ってのが曲者なんだよなぁ……」

 

 なんでも、シグナム達の話だと闇の書の1頁溜めるのに魔王0.2人分だとかなんとか。

 ……なら、あおなは魔王約100人分なんか……たまげたなぁ……。

 まぁ、そもそもの魔王の魔力量が分からへんけれども。

 

「…………先程、家の外に魔力を持った生物がいたが、どこかに連れ去られてしまった」

 

「……まさか、強引に捕まえようとかそんな事は考えてへんよなぁ……」

 

「………………(コクコクコクコクコクコク)わ、分かってます。分かってますからその45度の首の角度やめてください」

 

 本当に分かってんのかなぁ………。

 話は元に戻るけども、なんでも闇の書が蒐集出来るリンカーコアは1人につき1度だけ。……贅沢過ぎる。私もそんなに贅沢はせんで。

 …………ふむぅ。ここら辺に蒐集したらいい人はおらんし……私のを使って、なんてでも言えば皆黙ってへんやろうし……。ううむ……リンカーコア、リンカーコア。

 …………って、あれ?

 

「…………そういえば、シグナム達って、自分のは蒐集したん?」

 

「「「「……………………あ……」」」」

 

 ……………。

 

「さ、さぁて!急いで私達のも闇の書に入れよう!なぁ、ヴィータ!」

 

「あ、え!?あ、あぁ!!そうだな!なぁ、シャマル!」

 

「え!?……え、えぇ、そうね!ザフィーラ!」

 

「………お、おう」

 

 ふぅ……。全く……。

 

「はよう、せいや」

 

「「「「あ、はい」」」」

 

 

 

 ~4時間後~

 

 

 

 ……闇の書による蒐集って、えらい時間かかるんやなぁ……。

 

「お、終わり……ました」

 

「お?本当か?シグナム………って、闇の書の様子、おかしく……」

 

 ……あれ?闇の書って、あんなに正に負ですとでも言わんばかりのオーラ、出しとったっけ?

 少なくとも、私の知ってる闇の書はあんなに殺気を放出していない。

 

「シグナム……それ……」

 

「?……どうか、なさいましたか?主」

 

 まさか気付いてない?……あかん。なんやろう、この寒気は……このままじゃ、シグナムが危ない。これが、虫の報せって奴なんか?

 

「シグナム!早くその闇の書をこっち渡し!」

 

「えっ?」

 

 私は、車椅子のハンドリムを握り、全力で回す。そしてシグナムに近付きシグナムの手から闇の書を引ったくる。

 

「これは……」

 

 そのままの勢いで外に投げようとするも、闇の書から謎の触手が飛び出して私の右腕に絡み付いて来た。

 そのヌメッとした感覚に真っ先に出てきたのは、不快感。その次に安心感。こんなん絶対におかしい。

 …………でも、なんやろう。この、暖かさは……。

 ……………あれ?これは、お父さんとお母さんの、温もり?

 ……………ゆ、め?

 ……あぁ、皆……そんな叫ばんでも、聞こえとるって……。

 ……あれ?どんどん、視界が暗転してきた。

 …………あぁ、私、寝不足、だったんかな……。

 ……なんやのん……この、ぶっつけ本番感……。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 いやぁ、熊肉は美味しい。俺としては猪肉の方が好きなんだけど。

 リニスちゃんも猫二匹(片方のみ)も美味しそうに食べていた。

 …………食べてはいたんだけど……母さん、どこ行ったんだろう。突然目の前から消えて、びっくりしたんだが。

 つか、なんでついていた筈のテレビも消えてんのさ。

 ……いや、分かってはいるんだよ。つい最近こんな感じになったからさぁ。

 でもさぁ、せめて晩御飯くらいはゆっくり食べさせてくれてもいいんじゃないかなぁ。

 突然周りが紫色っぽくなって、俺が口に含もうとした熊肉が無くなり口を閉じたから歯がカチンってなっわ。しかもそんときに舌噛んだし。痛い痛い。

 しかもリニスちゃんは突然立ち上がって、

 

「もしかして、これは……結界!?」

 

 なんて言い出すし。リニスちゃん、猫耳生えてるし、もしかしたら獣人種(ワービースト)だったりするのかな?だからいきなり血壊なんて言い出したりして。

 

「……あおなさんは、なんでここに?」

 

「…………いや、ここは俺の家ですし」

 

「違う!そうじゃありません!」

 

 ……どう答えろと?

 

「ここは、魔力を持った者、又はこの結界を維持する者が選択した者、又は例外しか入れない結界なんですよ?」

 

 うはぁ、その例外って凄い気になる。あれかな?幻想殺し(イマジンブレイカー)とか持ってたり魂の形が銃になったりするのかな?いや、あれは特別(エクセプション)か。




~その頃のリーゼロッテ~

結界in前
(熊肉うめぇ……)
結界in後
(クマーぁぁぁぁぁ!)

~その頃のリーゼアリア~

結界in前
(食べて……いいのかな……)
結界in後
(よし食べ……あぁぁぁぁぁ!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

文才が無い私にシリアスはまだ無理でした。

後、リニスさんをロリ化した事に関しては少しも反sすいませんでした。

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第16話『フライパンの可能性』

これが私の……全力全開のシリアスです。


後、リニスさんですが、幼い幼いと言っても大体10歳くらい。つまり、あおな達と同じぐらいの身長として考えて貰えればありがたいです。




お気に入り件数が200件超えてて暫く口が魚の状態でした。皆々様、本当にありがとうございます。



……ちゃっかり日間ランキングにランクインしてて驚いたのは内緒です。
なお今(AM2:20現在)は乗ってないもよう。


※2/4 AM11:52
屈託→嘱託
に修正しました。


「とにかく、行きますよ!」

 

 行くってどこにさ…………。

 外は寒いよ?まだまだ冬真っ盛りだし、しかも雪が降るかもとか言ってたし……。

 こんな時にどこへ行こうと言うのだね。

 幾らその結界?ってのが張られてたとしても、行くわけが

 

「もしかしたら……フェイトが……!」

 

「さぁ行きましょう。俺の準備は充分です」

 

「えっ」

 

 全く。リニスちゃんってば、準備が遅いんだから。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第16話『フライパンの可能性』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 っ!?この魔力反応は……結界?

 ……そんな……バカな……。それに、なんでこんなに強大な魔力が……。

 ……まさか、まさかだとは思うが……闇の書が覚醒した、のか?

 盾街あおなはどこかに行ったし……。今このアースラにいる戦闘員……しかも、あの闇の書と渡り合える程の人物と言えば、やはりなのはとフェイト、後アルフとあのフェレット……もといユーノしかいないだろう。

 

「少し、邪魔するぞ」

 

 丁度、なのはもフェイトも復帰しており、今は訓練の真っ只中のはz

 

「小太刀二刀御神流裏奥技之参……--射抜ッ!」

 

「ふぅ……--千ノ落涙ッ!」

 

 …………おいおい。幾らアースラの訓練室が丈夫でも、それだけの攻防には耐えられないと思うんだが。

 なのはは目にも止まらぬ(突き……かな?あれは)連続突き。しかもレイジング・ハートを二刀にするという暴挙というオマケ付き。更に出血大サービスなのかどうなのかはさておき、カートリッジも付いてきている。

 …………フェイトに至っては、異世界の技じゃないか。

 本来なら青い筈だが、フェイトの場合は黄色くなっているフェイトの腕の長さくらいはある剣を周りに大量展開して射出……。

 いやまぁ、確かにあの世界には連れて行ったには連れて行ったよ。嘱託魔導士として。

 それにしては、習得するの早すぎやしないかい?

 

「「はぁぁぁッッッッ!/うぉぉぉッッッッ!」」

 

 っとと。止めなくちゃ。

 

「ストップ!ストォォォップ二人とも!」

 

「………って、あれ?クロノ君?」

 

「………あ、クロノ。どうしたの?」

 

 ……さっきまでの鬼すら生温い形相はどこへやら。すぐさま年齢相応の顔になる二人の少女。

 ……いや、本当にどこに行ったんだ?あの殺気は。

 盾街あおなと違って、素直に僕の話を聞いてくれるようで、安心したよ。

 とにかくこれで説明は出来るし、この二人ならきっと、大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 最近、チタン製のフライパンがあるらしい。重さは鉄のフライパンの3分の1という優れもの。

 さて、なんで突然こんな話をするのかと聞かれれば、特にそれと言った理由は無い。

 ただ、チタンってスゲー!ってのを知ってて欲しかっただけだ。

 --で、

 

「なに……これ……」

 

 あぁ、そうだね。本当になぁにこれぇだね。プロテインじゃあ決してないよ。

 とりあえずここまでの話の説明をするなら、俺はリニスちゃんが指差す方向にリニスちゃんをおぶって走って来た。そんで、着いた所は八神ハウス。…………の、筈なんだが、リニスちゃんが驚いているのも、仕方ないと思えるほど無惨に木っ端微塵の廃屋がそこにはあった。

 家が二階から半分に吹き飛んでるってあんた。しかも屋根の破片はあちらこちらに散らばってるし……周りの家屋も巻き込んで……。塀なんてまるでハナガサイタヨ状態。こりゃ、直すのは無理だねぇ。

 

「そんな……闇の書が、もう覚醒したなんて!?」

 

「バカな……早すぎる!」

 

 …………あれ?誰だこの声。ふと後ろを振り向くと、二人の女性が立っていた。

 ……おかしいなぁ……。俺の後ろには二匹の猫しかいなかった筈だが。どっかに逃げたのかな?牛頭(ごず)(仮)と馬頭(めず)(仮)。

 

「我は……うぅ……闇の書のあ、るじなり……この手、に、力を……封印……開、放……」

 

 すると、近くから女性の声が聞こえる。ふむ……この感じ、かーなーり厨二病入ってる。痛がってる描写もリアルにしようとして失敗した感もパネェ。しかも一人称我ってハハッマジワロス。

 そんなの聞かされたら気にならない訳が無い。そちらの方へ目を向けると銀髪のナイスバディの、背中に6枚羽根を生やし、左腕に触手付きパイルバンカーを装備したお姉さんが浮いていた。

 --周りに

 

 

 

 

 

「……また、か……。また、全てが終わってしまったのか。……いったい、幾たびもこんな悲しみを私は繰り返さなくてはいけないのか…………。まぁ、少し身体に違和感を感じるが………些細な事だろう。……さて、どう思う。愛の少年よ。今から滅ぼされる気持ちは。……教えてくれ」

 

 

 

 

 

 --守護騎士を磔状態にした十字架を侍らせながら。

 

「……は?」

 

 こんなの、まともに返せる訳が無い。

 …………おいおいこんなのって、ありかよ。俺、今さっきまで日常で生活してたんだぞ?それを突然こんなのに引き摺り込まれたとあっちゃあおめぇ………。ふざけんなよ、マジで。

 

「…………や、がみ」

 

「ん?なんだ?」

 

「八神さんは、どこに……」

 

 そもそもの話、アイツら(守護騎士達)がいながらにして八神に手を出せるとは思えない。……八神だけを逃がした?いや、それこそありえない。どこかの紅白巫女が周りに金銭をばら蒔くレベルでありえない。

 俺は、八神程家族を大切に見ている奴を知らない。

 ……更には、あの守護騎士達は、八神を守る事に誇りを抱いていた。八神を守る為なら騎士の信念を曲げる事すらいとわなかった。

 ……そんな奴等を放って置いて、八神だけ逃げると思えるか?いや……多分無い。

 

「あぁ。我が主か。我が主なら今私の中で眠っているよ。決して目覚めない。決して邪魔されない。決して誰も干渉されない夢の中で……」

 

 ……おいおい。ますますファンタスティックにファンタジーの世界に入って来ちまってるよ。これ。

 あはは……。俺、SAN値チェックした方がいいかも知れないな……。夕方ら辺からこんな非日常な世界に足を突っ込んだ訳だが……。流石にこれは許容範囲外だよ。ちくしょう……。

 …………銀髪さんが俺に、掌を向ける。あぁ、これは死刑宣告のようなモノだと自己解釈。さぁってと……俺はリニスちゃんを地面に下ろし、無言でフライパンを構える。その際、リニスちゃんが結界をうんたらかんたらと言っていたが、俺にはそんなモノ張れる訳が無い。

 …………ふぅ……。

 

「俺にだって……守りたい人(フェイトさん)がいるんですよ……。こんな所で死ぬ訳には、いかないじゃないですか」

 

「そうか。ならば、その理想を抱いたまま、滅びろ」

 

 ……へっへへ。ただじゃ死なねぇよ。

 覚悟は充分だ。フライパンの強度は多分充分だ。

 

「デアボリック--」

 

 …………って……あれ?なんか、あの銀髪さんを中心に魔力を溜めて……これ、もしかしてアカン奴じゃ……。

 

「リニスちゃん!早く逃げ--

 

 

 

 

 

 

 

 

「----エミッション」

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発。

 恐らくそれは魔力なんだろうけど、爆発。全ての魔力を解き放ちでもしない限り見れないだろう爆発。

 ……くそっ。銀髪さんの魔法は化け物かっ!

 目の前には爆風。……だけど残念ながらこんなんで諦めて簡単に滅ぼされる程俺は人間が出来てないんでね。

 心に思い浮かべるのは……フェイトさん。俺の、最愛の人。フェイトさんを想うだけで、力が沸いてくる。

 

「ぶっ飛べぇぇぇぇッッッ!」

 

 フライパンを思い切り振り抜く。さながら、いつぞやのザフィーラさんを吹っ飛ばそうとした時みたいに。

 

「なん……だと!?」

 

 ……ははは。やっぱりこのフライパン、普通のフライパンじゃない。

 あの銀髪さんの放った魔法を俺達のいる場所だけ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)守れるなんて……。

 やっぱり、チタン製は違うや。




~その頃のフェイトさん~

(なにか……嫌な予感がする!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ちなみにリイn……もとい銀髪さんは自暴自棄になっているだけです。


……無理矢理シリアスを捻り出した結果がこれです。

…………お気に入り登録してくださってる方々に申し訳ないです。


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第17話『愛とは……?』

人が誰かを愛する時、少なからずその人に依存してしまう。
なら、その愛する人を、なにも出来ずに失ったら、どうなってしまうだろうか。








※前回のシリアスモドキの失敗点を生かした結果、突然話が重くなる現象(出来ているかどうか分からない)が発生する場合があります。

そういったモノを好まれない方はブラウザバックを。


 ……私達は、とんでもないモノを目撃する事になった。

 場所は海鳴市中丘町の上空。

 本来ならここは確か図書館とかある……ってなのはが言ってた。だと言うのに、一人の女性が浮いている周囲一帯は一部(・ ・)を除いて、まるで綺麗に整地でもされたんじゃないかと言うほどの、クレーターになっていた。

 ……そして、その一部(・ ・)には、私が良く知っている人が、立ってて……更には後ろにこれまた良く知っている人に良く似た人がいた。

 …………でも、そんな訳が無い。リニスは……もう、いない筈、なのに……。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第17話『愛とは……?』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ……ふぅ……。いやはや、もしかしたら、これが俺の限界点、なのかねぇ……。

 足はがっくがくだし、視界もぼやけてるっぽい。

 ……だけど、まだ倒れる訳にはいかないんだよなぁ、これが。

 

「お前は……何故そこまでして滅びを拒む」

 

「……--………」

 

 ありゃま、駄目だこれ。全然声が出ない。

 金魚よろしく口を開け閉めしてるだけじゃないかこれじゃあ。

 --しかも、

 

「……なるほど。答える事すら拒むか。……ならば、更に強い力でもってお前を絶命させる他ない」

 

 --駄目な方向に誤解されちゃってるし。

 こんなの普通じゃ考えられない。……つか、こんな時に常識なんて言葉が通用すんのかな……。いや、しないだろうな。確実に話し合いで解決出来るとは思えない。

 それこそ本当にあ"ぁ"り"え"な"い"ぃ……。

 

「せめてもの情けだ。痛みを知らずに逝くがよい……。『彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け……』」

 

 おいおい。本気で殺しに来てるんじゃねぇか。

 銀髪さんの周りにはファンネルじゃないの?それ、と聞きたくなるくらいの黒だよ…真っ黒ぉ!な球が真ん中に1つと、その周りを囲むこれまた真っ黒な球が6つの合計7つが俺の方に照準を合わせてた。

 ……リニスちゃんは……よし、逃げてる。

 少なくとも後ろをチラッと見た限りじゃいない。

 

「『石化の槍、--ミストルティン!』」

 

 ミストルティンって……槍なのか。少なくとも俺が知ってるのはチェーンソーだったりキック(じゃなかったり)するんだけどな……。

 この攻撃、避けたい。……でも、避ける為の力が出ない。

 ……ごめんなさい、フェイトさん。せめて、最後に貴女の最高の微笑みを見たかった。

 

 

 

 

 

「…………あ、あおなぁぁぁぁぁッッッ!」

 

 

 

 

 

 ………………………えっ?この声、フェイトさん?

 声にホイホイ釣られて上を見る。

 ……嗚呼、フェイトさんだ。

 大体600mくらい上空にいるけど、あの美しさ可愛さ……確実にフェイトさんだ。

 

「さらばだ。愛の少年」

 

 ……フェイトさんが、来てる。……なら、死ねる訳が無いじゃない!

 放たれたミストルティンに注目!一本目は真ん中から。それを首を左に曲げる事により回避。

 お次はその左半身を狙っての3つ同時射出。思い切り左足で地面を蹴り、身体を少し地面と平行にし、回避。少しかすって服の一部が石化したので千切っておく。

 後の残りはフライパンで弾く。……その際周りが石化したが、仕方ない。

 ……あらら、流石のこのフライパンも、石化には勝てないか……。とりあえず石化現象がフライパンを伝って登ってくるから、フライパンを地面に叩き付ける。そしたらフライパンに付いてた石が剥げた。

 …………ちょっとこのフライパンお祓いして来た方がいいんじゃないかしら。

 

「……なっ!?馬鹿な!……お前、さっきまであんなにフラフラだったのに……何故……」

 

 フラフラァ?なにそれぇ俺、超☆元☆気。

 ………全く。これだけでどれだけ自分が現金な奴で、自分がどれだけフェイトさんの事が好きなのかが分かる。

 

「何言ってるんですか?俺、こんなにピンピンしてますよ?」

 

「……それに……なんだ。その魔力量。先程まで無かったのに」

 

 もう、ね。俺の魔力の出現の条件が分からない。ただ分かるのはフェイトさんが関係してるって事だけ。

 

「別に、それは貴女方が気にする事じゃない。……さて、続けましょうか。第2ラウンドですよ」

 

 地面に落としたフライパンを拾い、銀髪さんに向けて一言。

 

 

 

「貴方の絶望と俺の"愛"。どちらが強いか、白黒付けようじゃありませんか」

 

 

 

 こう見えて、俺かなり怒ってます。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「愛………ぐぅっ………」

 

 ……いったい、何だって言うんだ。この胸の痛みは……。私が覚醒した時には既に痛みがあったがなんとか魔力で無理矢理抑え込む事は出来た。…………先程のこの少年の言葉を聞くまでは。

 少年の言葉を聞いた瞬間、まるで胸を撃ち抜かれたかのような痛みが襲ってきた。それこそ、心臓が破裂したんじゃないかとすら錯覚する痛みだった。

 

「さて、始めましょうよ。銀髪さん。俺の愛、示してやりますから」

 

 胸の痛みを押し殺していると、ふと少年の言葉が聞こえた。その言葉に私は思わず笑いが込み上げてきてしまう事になる。

 

「……愛?……ふふふ………」

 

「……?……何がおかしいんです?」

 

「そんなモノが何になると言うんだ?」

 

「……なんですと?」

 

 ……愛……愛、か。確かに我が主である八神はやては守護騎士であるヴォルケンリッターに家族同然の愛情を与えていた。だが、その所為で私が目覚める原因となる。

 

「そもそも、愛とはなんだ」

 

「……えっ」

 

「それほどまでにお前が大切に想うフェイト・テスタロッサに抱く感情だと言うのは知っている」

 

「………なんでそれを知って……」

 

「リンカーコアを吸収する際にその持ち主の強い思念が稀に流れ込んで来る時があるのでな…………。それで、お前が抱くその愛とはなんだ。お前のはただの下心、つまりただの劣情なんじゃないのか?」

 

「…………そんなの、10歳かそこらの人間にする話じゃ無いと思うんですが」

 

「それは、そうだな」

 

 ふむ。

 この程度だと、この少年と私の言葉は平行線のままか。

 

「……ならば、お前はフェイト・テスタロッサが危機に陥った場合、どうするんだ?」

 

「勿論全力で守ります」

 

「そうか。--なら」

 

 私は闇の書を開き、空中に浮いてこちらを不安げに伺っているフェイト・テスタロッサに向ける。

 

「…………えっ?何をするつm「--この場合は?」

 

Absorption(吸収)

 

 闇の書が黒く、鈍く光る。

 まさしく奈落とでも主張したいがごとく。

 

「--ッ!?フェイトさん!逃げぼっ!?」

 

「無駄だよ。無駄無駄」

 

 幾らこの少年が叫んでも、無意味だ。……だが、念には念を入れておくに越した事は無い。保険として、少年の腹に拳を捩じ込む。……おっと、強くし過ぎたかな?吐血してしまってるじゃないか。

 さて、(くだん)のフェイト・テスタロッサは真っ直ぐこちらに向かって来ている。

 しかも、その顔に憤怒の形相を張り付け、鎌を振り上げて。

 --今からその身に起きる事すら知らずに。

 

「あおなから……離れろォォォォ!」

 

 降り下ろした鎌が闇の書に当たる。そこから闇の書による吸収……もとい、闇の書への転送が始まる。

 幾ら相手がそれ相応の実力を持っていたとしても、鋼の精神を持っていなければ脱出が不可能な、牢獄。

 それが闇の書による吸収。

 

「なっ……離せ!やめて!」

 

 未来永劫闇の書の中で幸せな夢を見れるんだ。ならミルクティーでも飲んでリラックスするレベルでゆっくりしていけばいいのに。

 

「……あ、う……フェイト……さん……」

 

「……これは驚いた。吐血しながらも最愛の人物の名前を呼ぶか。……これは少し、興味が沸いた」

 

「……あぉ……()………」

 

 さて、ここからが見物だ。愛する人を失った人物が、どうなるのか、が。

 滅ぼす前に、少し調べておこう。次にこんな事があった時に、対処がしやすくなるだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………あぁ………ふぇ、ふ、フェイトさん?…………フェイトさぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」




~その頃の---~

(こうして歴史は繰り返す。何度も何度も何度も……。こうしてまた、闇の書の闇と業は深く、厚くなってゆく。無限に、永遠に積み重なる。故にその闇は、決して砕かれる事は無く、大きくなり続けるだろう)


◆◇◆◇◆◇◆◇


…………やり過ぎました。


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第18話『フライパンの覚醒』

前回のシリアスから急転換します。


あと、フライパンが進化します(白目)。







※2/8 AM1:08 流石にタイトルが駄目だと思ったので変更しました。


 ……ここは、どこ?

 ……周りは真っ暗闇。上や下どころか、右や左の感覚も分からない空間。

 ……確か、私はアースラから飛び降りて……それで、闇の書の管制人格(だったかな?)にやられそうになっているあおなを助ける為に飛び出して……。……あぁ、そうだ。私、闇の書に吸収……されたんだった……。

 …………私って、まだまだ弱い。なのはやあおなと違って、力になろうとしても、逆に負けちゃったりする……。

 こんなに非力なんじゃ、私誰も守れやしない。母さんの時だってそうだった。今さっきのあおなの時も……。

 こんなんじゃ、私がいる意味が分からなくなってくる………。

 

 

 

 

 

--そんな事は無いよ。フェイト

 

 

 

 

 

 声がした方向を向くと、そこに姉さん(アリシア)がいた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第18話『フライパンの覚醒』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 …………あ、あぁ…………そんな……嘘だ……。俺の所為だ……。俺が、こんなに不甲斐ないから……フェイトさんが……。

 

「……やはり、どれだけ意外性のあるお前も人間か。心の拠り所を失えば、戦う力も出ない。……案外、つまらない結果になった事を残念に思う」

 

 …………取り返さなくちゃいけない。

 

「さて、今ならば楽に逝けるだろう。喜べ、少年。お前は死ぬが、彼女は生き残る。--永遠に闇の書の中でな」

 

 …………奪われたのなら力付くで、取り返なくちゃいけない……。

 

「せめて最後は最愛の人物の魔法で逝け。『フォトンランサー・ジェノサイドシフト』」

 

 フェイトさんが俺の所為であんな目にあったんだ。

 ……なら、いや、だからこそ、俺が責任取らないとフェイトさんや、フェイトさんの家族に合わす顔がない。

 

「……まだだ」

 

「…………何か、言ったか?」

 

 周囲一帯に展開される真っ黒な小さな(と言っても腕一本分の長さはある)槍が上右左真正面、後恐らく真後ろから俺と言う一点を狙って目の前が真っ暗になるくらい出てくる。……つか、フェイトさん、こんな魔法使ってたんだ。

 

「まだ、あの世なんかに逝く予定なんて無いって言ったんですよ。そもそもの話、このままで終われる訳が無い。それくらい、分かってください」

 

「ほう……なら、この状況から--」

 

 展開されていた真っ黒な槍達が一斉に震えだす。

 言うなれば『ひゃあ!我慢できねぇ!早く射出させてくれよぉ!ご主人!』とでと言いたげに。

 

「抜け出してみろ。少年」

 

 その一言で射出。

 まぁ、このままなら『「針串刺しの刑」の刑だッ!』って感じに身体中に穴が開く。

 ………………でも避ける手段が無ぇ。あれ?これ、詰んでね?

 ……さて、ここで厨二的高速思考を発動!

 流石の俺もスタンドなんて出せないし、こんなフライパンだけじゃオラオララッシュどころか柔らかくする事すら出来やしない。ならば逃げよと誰かが言うが、逃げ道なんて無い。

 マンホール?あぁ、そんなものはない。下は完全にコンクリートだ。このコンクリートをぶち破れってぇ?無理無理。

 ……本当、どうしよう。こんな所で死んだらフェイトさんを助ける事なんて夢のまた夢。ただの戯れ言になってしまう。

 

《困っておるようじゃのう。手を貸そう》

 

 ちくしょう。こんな厨二的高速思考だとしても何も思い付かないこの頭が恨めしい。

 ……あ、さっきの『デアボリッなんとかかんとか』を吹き飛ばしたようにしてみるとか?

 ……いや、あれは一方向だけだ。全方向は無理だ。腕が吹き飛ぶ。……いや、フェイトさんの為なら腕の一本や十本、大したこと無い。腕はたった2本しか無いけど、フェイトさんの為ならどこまでも伸ばせる!……気がする。

 

《…………あれ?聞いておらぬのか?》

 

 あぁくそ……。だんだん思考が元の世界に戻り始めやがった。……やるか。

 腕が吹き飛んでもいいと言う覚悟。

 

《無視をするな!》

 

 俺は、右手でフライパンを肩に担ぐ。

 ……ヌンチャクを使った事が無いからどうなるかは分からんが、少なくとも俺が知ってる全方向に対する処方はこれしか知らない。

 まぁ、フライパンをヌンチャクみたく扱えるかどうから知らないが。

 

《……せめて、せめて話だけでも……》

 

 何か聞こえるがきっと高町とゴスラビア君が会話してるんだろう。特に手元から聞こえてくるけどなんだろう。

 

「………とりあえずやれるだけ、やってみますか……。これは完全に賭け、ですが」

 

 ここで時は元の早さになる。……と言うか、思考速度が元に戻る。……これで身体を動かせれたらいいんだろうけどねぇ……。

 さて、そんな事を考えてる暇なんて無い。

 まずは縦に一閃。……あれ、消えない。

 ……もう一発……ってやってる(時間)が無い。

 

《えぇい!お主が話を聞かんからこうなったんじゃ!》

 

 すると突然フライパンが浮かび上がる。そしたら、フライパンが赤くなり、変形を始めた。……もう驚かないし驚けない。

 そしたらフライパンが鍋になる。いやまぁ、フライパンも鍋なんだが、それがよく炊き出しで使われる寸胴鍋になり、それがこちらに被さった。

 …………お陰で俺には一本も刺さらなかった。うるさかったけど。

 寸胴鍋が俺から離れると、元のフライパン(卵焼き専用)に戻り、銀髪さんを吹き飛ばし、こちらに戻ってくる。

 こんな便利な(変形する)機能があるんならいつもそうなればって違う今はそんな事はどうでもいい。

 いったい何が……。

 

《儂がやったんじゃよ。見れば分かるであろう?》

 

 だけど、ちょうどいい。今の内に守護騎士を助け《話を聞けぇぇぇぇぇっ!》

 

 うおっ!うるせぇっ!

 

「話を聞けって……どこにもいないじゃないですか」

 

《ここにおるぞ!》

 

「ここって…………はぁ?まさか、このフライパンが?」

 

《そうじゃよ。この戯けが》

 

「……………………き、きき……」

 

《どうした?今更驚いた、とか言わせんぞ?》

 

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」

 

《そっち!?》

 

「マタシャベッタァアアァアァァアアァァァアァァ!!!」

 

 こんなん驚かない方が無理だっつの。

 ……つか、え?マジで?なんで喋れるの?

 

《……落ち着くの早いのう》

 

 ……しかも可愛い声だし。フライパンだけど。

 

《まぁ、理由を言うなれば儂は人間達で言う付喪神と言った所でのう》

 

 って事は……さっきの俺の厨二的シンキングタイム中に聞こえてた声ってこのフライパンから、だったのか。

 つまり、ちゃっかり俺の心読んでんじゃないかこのフライパン。俺のプライバシーは消えた、永遠に。……こうなったら、消すしか無いのか、このフライパンを。

 

《…………お主はまぬけか?ここで儂を手放すとあの娘を助けれんぞ?》

 

 ……まぁ、確かに。あんなチート染みた化けもん(銀髪さん)に勝つにはこのフライパンが必要っちゃ必要なんだが……。さっきの声が震えていたのは置いておくとしても。

 

「……でも、なんで今更出てきたんです?」

 

《……いや、その……。今までは動くだけしか出来んかったんじゃが……。お主があの『であぼりっくなんとか』を吹き飛ばした時に、面妖な力を儂に流し込んだじゃろう?その時から意識を表面に出せるようになったんじゃよ》

 

 ……面妖なって、俺、そんなの注いだ記憶が無いんだが。

 

《その時からかのう。儂自身も変形出来る、と》

 

 こんなの付喪神じゃないわ!原子操作(モーフィングパワー)を持った古代の戦士(アルティメットフォーム)よ!

 

《だったら儂に従えばいいじゃろう!》

 

 だが断る。

 

《即答!?仮にも神様じゃぞ!敬おうと言う気持ちは無いのか!》

 

 ……いや、神様と言うよりは、精霊とかそんな風に感じるんだが。




~その頃の銀髪さん(名前はまだない)~

(……いきなりフライパンが飛んで来ると思ったら、吹き飛ばされた……だと?しかも角だったから地味に痛い……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


インテリジェントデバイス……?いえ、付喪神です。

お陰で出そう出そうと思っていた鍋を出せました。


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第19話『力が欲しいか?』

今回は、フェイトさんのターン!ドrなんでもありません。



※この物語にジャバウォックは関係ありません


 さってと……。

 

「行きますか」

 

 俺は、フライパンをそっと構える。

 見る人が見ればきっとピッチャーミタイダナァくらいには思えるかも知れない。

 

《……お主、何をする気じゃ?》

 

 気にすんな。

 ただ、向こうから銀髪さんが歩いて来てるからその対処をしようとしているだけだ。

 

「少年……お前は、どうやってあの中から」

 

 ピッチャー第一球……振りかぶって--

 

「何をするかって?……勿論、投げるんですよ」

 

 --投げたぁぁ!

 

《己ぇぇぇぇ!》

 

 あわれフライパンは光になった。ちなみに銀髪さんは無言でフライパンを避けた。……いやまぁ、確かにあのフライパンが無いとあの銀髪さんから闇の書を取り上げる事は出来ないかも知れない。

 ……だけど、投げて少しでもダメージを与えたかった。どうせ、あのフライパン帰って来るし。

 --さて、こっからが本番だ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第19話『力が欲しいか?』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

--久しぶり、だね。フェイト

 

 姉さん……。

 ……って、あれ?声が出ない。

 

--あぁ、それなら別に気にしなくてもいいよ。思った事が声に出るし

 

 あ、そうなんだ。……なんか、念話を習った最初みたいだな……。

 

--うん。大体そんな感じ

 

 それで、姉さんはなんでこんな所に?

 

--いやぁ……。さっきまでちょっと彼岸の方にいてね、男の子がそこに来たからちょっとこっちくんなって手を振ってたんだけど……。まぁ、次いででフェイトを見守っておこうかなって思ってね

 

 ひがんって、なんだろう。まぁいいや。そんなに重要な事でも無さそうだし。

 …………あれ?そういえば気になってたけど、姉さんってもう死んでる筈……なんだよね。だったら母さんはどこに……。

 

--ママ?ママなら生きてるよ?

 

 ……………………えっ?

 

--いやあの時さぁ、私と一緒に虚数空間に落ちたじゃん?その時にアルハザードに行くって願って、たまたまジュエル・シードが発動してね

 

 でも、ジュエル・シードって願いを曲がった方向に叶えるんじゃ無かったっけ?

 

--うん。それが面白い所でね。ジュエル・シードによって願いが曲がる→それが違うジュエル・シードによってまた曲がる……そんなのを繰り返してたらちゃんとした願いになったの。つまり、母さんは今はアルハザードにいるよ

 

 ……なぁにそれぇ。

 え?って事は……つまり集めるのって二つで良かったんじゃ……。

 

--まぁ、そうなるね

 

 なんだろう。このやりきれない感覚。

 

--……気にしなくてもいいと思うよ。私もママの所に行ってみたらママが『どうしてこうなったし……』って言いながら頭抱えてたし

 

 ……母さん……。

 

--それで、本題に入るんだけどさ

 

 姉さんは、そこで一度区切り、私を見る。まるで私を品定めするみたいに。

 

--フェイトって、皆の力に成る為に強くなりたいの?それとも、強くなる為に皆を守りたいの?

 

 ……姉さんの言っている言葉の意味が分からない。

 

--そう……。まぁ、言うなれば鶏と卵な訳なんだけど、その辺は置いておこう。つまり、簡単に言うならフェイトは誰かと肩を並べる為に強くなりたいの?……それとも、人って誰かを守るためならどこまでだって強くなれる。だからその効果を利用して自分が強くなる事を狙って(・ ・ ・)強くなりたいの?

 

 ………そんな……。私はそんな事を、考えてなんか……。

 でも、一概に否定は出来ない……。

 

--……なんて、冗談だよ、冗談。そんなに考え込む事は無いって

 

 ……もしかして、私を試したの?姉さん。

 

--あー……。ごめんね?フェイト……

 

 別に、大丈夫だよ。……私がやらなくちゃいけない事を再確認出来たし。

 

--……うん。それなら良かった。……それで、さ。フェイトって力が欲しかったりする?

 

 …………うん。欲しい。

 

--……それって、どんな力が?

 

 皆を、守れる力が……詳しく言うなら、優しい力が欲しい。

 

--もしかして、見返りとか狙ってる?

 

 ……逆に聞くけど、なんで誰かを守るのに見返りとかいるの?

 

--フェイトのそれは、偽善じゃないの?

 

 …………力があって、守れて、助けれて良かった、とは思える。確かに、これは私の自己満足かも知れない。…………でも、力があるのに誰も助けれず、見てみぬ振りなんて……そんなんじゃ、私、満足出来ない……。

 

--フェイトが満足するため、か……。たはは……何、その理由。……でも、嫌いじゃないよ。少なくとも、私は

 

 だから、私は誰かを守るのに力が欲しい。

 

--……かつて、誰かが言ったんだけど、優しさは心の強さらしいよ。……だけど、行き過ぎた優しさはただの偽善になる。それを覚えておいてね。フェイト

 

 ……うん。

 

--まぁ、そんだけ心が強く保てればこの世界からは出られるよ。……あの管制人格に勝てる、とは言わないけど

 

 あぅ……どうしよう。

 

--と、言うわけでお姉ちゃん、良いことを考えましたー!

 

 ……なんだろう。嫌な予感が背筋を走る。……これ、なんて言うんだっけ。日本の諺で……確か、虫の報せだっけ?

 

--先ずはこの世に魂なんてオカルトチックなモノがあると仮定するよ?

 

 あ、はい。

 

--それで、一人の人間には一つの魂。これは当たり前。……たまに憑依されたりする人がいるけど。……話は戻るけど、私、昔『銀魂』の23巻を読んだんだ。そこで気付いたんだよ。……スタンドって強くね?じゃなくて、"スタンド使いになれ(憑依されれ)ば"人は強くなる。つまり、一人に二つの魂が入り込めばその人によるけど、凄い力が出るって

 

 ……えっと、え?どういう事?

 

--そう言った事例は色々とあるよ。例えばさっき言った『銀魂』だってそうだし、『遊戯王』の遊戯と王様とか、その続編の『遊戯王GX』の十代がユベルと魂の超融合した事例だってある

 

 でも、それってアニメの話でしょ?

 流石にそれは私も信じられないよ……。確かに今、姉さんが出てきている事ははっきりと感じれるけどさぁ……。

 

--う~ん……。フェイトが何を勘違いしてるかは分からないけど、アニメや漫画や小説の世界って基本私達のいる世界の平行世界だよ?フェイトがこの前使ってた『千ノ落涙』だって本来ならこの世界には存在しないし

 

 ……あれれ?私がおかしい、のかな?

 

--この世界だって、実際は違う歴史を辿っていた可能性も高いんだよ?本来ならフェイトがおらずに変わりに狐っ子がなのはちゃんの親友だったり、フェイトがここで見るのは本当は幸せな夢だったり、更にはあおな君とは違う人がいて、フェイトがその人にホの字になってたのかも知れない。……つまり、こんな歴史を送ってるのはかなりの低い確率って訳だよ

 

 ……うーん……。よく分かんない。

 

--まぁ、とりあえずやってみるだけ価値はあると思うんだけど………どうかな?

 

 …………うん。分かった。何が起きるか分かんないけど、やるだけやってみるよ。

 

--うん。その返事を待ってた。……じゃあ、今からフェイトの魂と私の魂をシンクロさせるよ?

 

 うん!

 

--ちょっと時間掛かるけど……我慢、できる?

 

 …………私、そんなに幼くないもん。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 目を開ける。周りを見る。なんだろう。宝石っぽい。

 

「ここ、どこやねん」

 

 えっと……確か、あおなが帰って……『闇の書』を完成させて……取り込まれたんやった……。つまり、ここは『闇の書』の中って事かいな?

 ……あの触手の?うわぁ……そう考えたら一気に気持ち悪ぅなったわ……。

 

「初めまして、我が主…………って、どうしたんです?顔が真っ青ですが……」

 

「ばべばべん(訳:誰やねん)」

 

 ……あかん。一気に胃から食べたモンが逆流しようとがんばっとる。

 

「申し遅れました。……私は、この『闇の書』の管制人格です」

 

 ……っておい!普通に返すんかい!




~その頃のプレシアさん~

(会いたい……。私の愛娘達に……会いたいぃぃぃ!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


アニメや漫画や小説の世界は平行世界。そう考えたい今日この頃です。と、言うよりそうであって欲しい(切実)

さて、次回は皆大好き八神はやてさんのターンです。
……ちょっとアニメと映画をまた見直して来ます。

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第20話『人の見る夢の儚さ』

さて、今回は前回予告した通り、はやて回ですが…………なんか……グダッてます。

もしあれなら、書き直しが入る可能性があるので、あしからず。






ランクインしてたのを見て咳き込んで鉄の味がしたのは内緒です。


 …………そう言えば、高町はどこに行ったんだろう。

 

《……そのタカマチとやらは、彼処で杖のようなモノを構えておる少女かのぅ?》

 

 あそこ?どこだよ。

 

《……この身体では指を指す事も出来んから使いづらい……。まぁ、方向を言うならお主の丁度真後ろじゃ》

 

 後ろを振り向くと今まさに砲撃をしようとする高町がいた。これが本当の後ろの大魔王かって違くて。

 

「……あおな君、早く逃げないと巻き込まれちゃうよ?……『スターライトォォォ……」

 

 あ、これ、あかん奴や。高町の目からハイライトが消えてたように見えたし。

 ……でも逃げるってどこに?あの高町、今にもまるで漫画やアニメの最終技を繰り出そうとしてるように見えるんだけど。

 

《お主!はよう、逃げぃ!あれは儂でも分かる。あれは危険じゃと……》

 

 逃げるったって、どこに……。まぁ、俺ならあの程度避けれそうな気g

 

 

 

「----ブレイカァァァァァァ』ッッッッ!」

 

 

 

 ふぅん。なんなんだ?このなまっちょろい砲撃。そんなモノ、受けるとでも

 

「ンアァァァァァーッ!!」

 

《喰らうんかぃぃぃぃ!》

 

 銀髪さんと共に、俺はピンク色の中で、文字通り光になった。

 光の中、アッタカイナリィ……。

 

「オゲェェェ……」

 

 おい。銀髪さんから聞こえちゃいけない音が聞こえたぞ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第20話『人の見る夢の儚さ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 あ~ぁ……。さっきまで健やかーに眠ろうとしとったのに、触手を思い出して吐きそうになったから眠気が一気に吹き飛んでもうた……。

 ……それにしても、私、なんでこないなけったいな所で寝ようとしとったんやろ……しかも、車椅子乗りながら、不思議やわ。このままやったら身体が寝違えて大変な事になっとったわ。起きて良かった。

 

「主……本当に大丈夫ですか?」

 

「え?……あぁ、まぁ、大丈夫や。なんか、スッキリしたし」

 

 なんとなく、なんとなくやけど、今さっき吐いたような気がする。まぁ、それは置いておく。

 

「……で、その管制人格さんとやらは、私になにさせようって魂胆なん?」

 

「あの……いえ、そういうんじゃなくて……私は貴女にここで寝て欲しい。……ただ、それだけです」

 

 ……………。

 

「大声で返事をしたる。断る!」

 

「こ、困るんですが!?」

 

「あんな?理由も説明せんと無理矢理眠れって……。例えばの話をするで?これは、ある人の話や」

 

「あ、はい」

 

「修学旅行中で、バスん中で眠らなあかんようになった。時間帯は夜中の2時。せやけど先生は無理矢理眠るように言ってくる。その結果、その人は二時間しか眠れへんかった」

 

 これは、近所のお兄さんの話やった。まぁ、そのお兄さんは引っ越したんやけどね。

 

「つまり、眠りとは強要するもんでも、強要されるもんでも無い。……その上で、そない私に強要するって言うんなら理由を言いんさい」

 

 すると、私の目の前に(ひざまず)き、顔をこちらに向けていた管制人格さんは、頭を垂れ、少し考える素振りを見せる。その際に少し可愛いって思ったのは私の秘密やで。

 

「…………私は、今、貴女と融合し、この世界を滅ぼそうとしております。……その内、私は"私"を御しきれなくなり、貴女を殺してしまう。……私は今まで『闇の書』の奥深くにいました。しかし、私の心は、常に夜天の守護騎士達と深く繋がっていました。だから私も、貴女の事を、とても大切に想っています。だから私は貴女を殺したくない……。だから……こそ……私は…………。…………こうなってしまった以上、私にはどうする事も、出来ません」

 

「……………………だから私に眠れって?」

 

 許せへん……。

 

「…………」

 

 こんなの、絶対に許せる訳があらへん。

 

「眠れば痛みを感じずに死ねるから眠れって?…………あんた……」

 

 …………本当に。

 

 

 

 

 

「アホちゃうか?」

 

 

 

 

 

「………………え……?」

 

 全く……。

 

「なら、その胸で光輝いてる暖かい光はなんやっちゅうねん」

 

 私が指差したのは、管制人格さんの胸の辺りにある、小さく、せやけど強く光を放っている光の球。

 

「えっ?………はっ?な、なんだこれは!?……こんなの、『闇の書』のプログラムにも無い。………本当に、なんなんだ……これは……。……だが暖かい」

 

 気付いてへんかったんかい。

 これがホンマの灯台下暗しって奴やんな。まぁ、今回は下暗しの方が明るいんやけど。

 

「それは、多分愛の光や」

 

「……?」

 

「ちょいと臭くなるかもしれへんけど、言ったる。管制人格さん。あんた、"愛"って、言葉、知っとる?」

 

「あ、い……?いえ、そんな言葉は私のプログラムには……」

 

「あんたは、守護騎士達や私の事をどう思ってるん?」

 

「…………心の底から大切に想っています」

 

 …………これだけ言ってもまだ気付かんって……こら、筋金入りやな。

 誰かに意図的に消されたか、それとも事故か。この場合は確実に前者、やろう。

 

「それこそまさしく"愛"や。誰かを大切に想う。それは言い換えればその人を愛しく想う。誰かを絶対に守りたい、傷付けたくない。それもまた、まさしく"愛"や!」

 

「…………これが……"愛"?」

 

「……あんたは、少し臆病過ぎる……。守ろう、守ろうって思ってばかりやと、一歩も前には進むことは出来んのんやで?」

 

 そっと、管制人格さんの頭を抱く。ふんわりとした髪の柔らかさ。……全く。身体はでかくても、心は小さくて弱いんやね……。

 

「勇気を持って大きく一歩を踏み出してみるんや。そしたら、世界はまた違って見える。管制人格さんには皆がついとる。何も心配する事はないんやで……。私だって、そない簡単に死ぬつもりは無い」

 

「あるじ………」

 

 泣き虫さんなんやなぁ、この子は……。だからこそ、私は支えたい、いや、守りたいって思えるんやろう……。

 

「……管制人格さん………んー…いつまでも、こんな呼び方はダメやな。よし、新しい名前を付けたげる」

 

 こんな、呪いみたい戒めから解放してあげな、可哀想過ぎる。

 --どんな、名前がええかな。

 ……よし決めた。

 

「新たなる夜天の主の名の元に、汝に新たな名を贈らん。……汝の歩む道に幸運の追い風あれ、汝の進む方角に祝福のエールあれ、汝が辿る時間に勇気あれ──汝の新たな名は、リインフォース。…………これから、よろしゅうな♪リイン」

 

「はい………あるじぃぃぃ………」

 

 ………ん?あれ?なんだろ、この違和感。……リインに名前を付けた瞬間に……この空間全部を把握出来たって言うか……理解出来たって言うか……なんやよう分からん。

 

「……これは……。恐らく、『闇の書』……いえ、『夜天の書』のシステムも貴女を主として認めたのでしょう」

 

 へぇ……こうやって認められるんだ……。

 って事は、もう外出れるんかな?

 

「いえ、まだ出られないかと」

 

「え?なんでなん?」

 

「いや、そのちょっとバグってる防衛プログラムの『ナハトヴァール』がどうやらまだ主を認めていないようでして……その所為でまだ表に出られそうにないです」

 

 ……そんなん内側から、どないせいっちゅうねん。

 

「こればっかりは表にいる人達に頼るしかありませんね」

 

 ……リインにもどうにも出来ないんならそれは仕方ない。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 …………なんだろう。何か頼られた気がした。

 まぁ、そんなのはどうだっていいんだ。高町にジュッてされた事よりも重要な事じゃない。

 だがそれ(高町にジュッされた事)さえもここで気にしているようじゃあ、フェイトさんを助ける事なんて出来そうにない。

 とりあえず俺が今やるべき事を再確認しよう。

 

①ありとあらゆる手段を使って銀髪さんに『闇の書』を持たす

 

②どんな手を使ってでもその本を奪い取る

 

③フェイトさんを助ける

 

 これでよし。

 

《……なぁ、それ、具体的な手段が書いておらぬのだが……》

 

 俺の寿命が終わるまで黙ってくれ。

 

《何故じゃ!?》

 

 うるさいからだよ………。言わせんな恥ずかしい。




~その頃のリニスさん~

(思わず逃げちゃった……。でも、私のこんな状態じゃ何をしても、魔力が無いからあんまり意味がない……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


次回からあおなのターンに戻ります。


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次回もよろしくお願いいたします。










クリフォオシリスク組んでみたら意外に回って楽しかった(現実逃避)。


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第21話『たっぽい』

……信じられますか?
3話からまだ半日も経って無いんですよ?
なのにほぼ最終戦って……。


 さってと……さっきから銀髪さんの挙動がかぁなぁり不自然だが、別に気にする事でも無いか。

 

「う、うぐ……あ、あ────────ッ!?」

 

 前言撤回。

 なにあの犬歯、今まで生えてなかったよね?

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第21話『たっぽい』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 オーイエイエイエ……。ふざけんな、こんなのアリかよ……。

 あれか?もしかして『八重歯だやぽーん』ってのを狙ってんのか?だとしたら残念だったな。完全に外れてる気がするぞ?

 

「────」

 

 こっちみんな。絶対に、絶対に仲間なんかに、しないんだからね!

 …………にしても、なんて因果な話だよ。俺はただ、フェイトさんとキャッキャウフフな生活を送りたいだけだってのに。つい四~五時間程前にシグナムさんと出会ってこんな事に巻き込まれるなんて……。

 ま、この程度、フェイトさんに出会えた事と比べれば、本当に些細な事なんだけどね。それほどまでにフェイトさんとの出会いは強烈だったって事さ。

 だからこそ、俺はフェイトさんを助けるためならどんな事だってやるさ。それが俺の『愛』だ。

 ……って……あれ?よくよく考えてみれば今のこの状況ってフェイトさんは囚われのお姫様。俺はフェイトさんを助ける為に来た………流石に王子様ってのは無いだろうから……ヒーロー?……ハハッワロス。

 ……でも、つまり、まるで絵本のお伽噺みたいな状態な訳で……。あれ?これってフェイトさん助けれたらかなりかっこよくね?

 ……おぉ、俄然やる気出てきた。

 ヤッテヤルデス。

 

《…………お主、不純だのう……》

 

「……まぁ、このくらいの見返りはあってもいいとは思うんですがねぇ……」

 

 とにもかくにも、その為にはフェイトさんを救うことが一番だ。とりあえず性格的にモード反転して裏コードからの『ザ・ビースト』みたいになってる銀髪さんに走って近付く事から始めよう。この件が終われば距離を取らせて貰うが。

 

「アァァァァァァァァッッッッ!」

 

 銀髪さんに近付いた瞬間に銀髪さんが左手をこちらに向け、パイルバンカーを射出。勿論それはフライパンで逸らし、そのままこちらも返す刀って事で左手で腹パン。

 

「ブルァァァァァァッッッッ!」

 

 おいアナゴさんと最強の中ボスが混ざったような声を出さなくてもいい。そんな声出さなくても効いてないって分かったから!

 おう、その怒りに任せた右手での本気の腹パンを返すんじゃねぇよ。(それはいら)ないです。

 これはとにかく垂直に飛んで回避。

 ……落ちながら戦えたら、また変わるんだろうなぁ。

 

「……あはは。まるで、効いてないですねぇ……」

 

 悔しいでしょうねぇ………。くっそ悔しいじゃねぇか、ちくしょう。

 だが諦める訳にはいかない。この程度、俺のフェイトさんと出会えなかった半年間よりはましだ。

 

「もう一発!」

 

 今度はフライパンのターン!フライパンを両手で持ち、兜割りの要領で頭から叩き込む。

 

「ごぶぅっ!?」

 

 奴さん、まともに喰らいやがった。これは勝ったな(確信)。

 

「ぐるぁぁぁぁッッッッ!」

 

 しかしそれでは許さないと銀髪さんは俺の足首を掴む。……え?リーチが足りなくねって?ほら、パイルバンカーについてた触手、あれを伸ばしたんだよ。……しかも意外と締め付ける力が強いのなんの。

 そのまま地面に叩き付けられた。

 なんとか受け身は取れたけど……。いや、これは受け身って言うよりは腕を犠牲に、ダメージを最小限にしたって言った方が正しいかも知れん。

 つか、腕の骨が折れた……。しかも利き腕が……。

 

《人間には215本の骨があるのであろう?その一本が折れたくらいで何を弱音を吐いとる!はよぅ逃げ出さぬかっ!》

 

 最近のフライパン、キツイや……。

 いや、俺としても逃げたいのはヤマヤマなんだが……。コイツ、まだ触手を離さないんだぜ?……執念深すぎるだろ……。

 

《お主が言うでない》

 

 ……結構、ドライなんだな、このフライパン。言ってる事が矛盾してるかどうかは置いておくとして。

 触手に掴まれ宙ぶらりん。更にはパイルバンカーでロックオン。……おいおい、俺ぁリョナはNGだぜ?

 ……つか、こりゃ駄目かも分からんね。

 

 

 

 

 

「あおな君を……離せぇぇぇぇぇ!」

 

 

 

 

 

 そんな時に後ろから聞こえてくる救い(?)の声。……この声って……よっしゃ来た!メイン高町来た!これで逃げれる!(厚い手のひら返し)

 今この銀髪さんから目を逸らすのは危険かも知れないが、本能が今の高町から目を逸らすなっていったから無理矢理にでも顔を後ろに向けると、高町がこちらに杖を向けて浮いていた。

 …………あれ?なんでこっちに向けんの?この銀髪さんの後ろに回ってファイヤってするんじゃないの?普通は。

 

《A.C.S,stand by》

 

「アクセルチャージャー起動!ストライクフレーム!」

 

 …………って、あの、なのは=さん。その杖が変形してるのはまだ許容出来るんですが……。その杖の先っぽから出てる赤い突起物はなぁに?

 

《Open》

 

「エクセリオンバスターA.C.S!」

 

 ……あぁ、そういう名前なのね。

 

《良かったのぅ。ちゃんと答えてくれたぞ?》

 

 違う。そういう問題じゃない。

 

《……にしても、儂もあんなふうにがしょんってやってみたいのぅ……》

 

 やれるもんならやってみやがれ。

 

「ドライブ!」

 

 おっと。そんな事を考えてたら高町が突撃してきた。

 …………………とつげき?

 ってうぉい!それあかん奴や!多分それ刺さる奴や!

 こうなったら俺の全力全開の腹筋みせてやらぁ!つか、当たれば(恐らく)一撃死かも知れないから死ぬ気だぞおるぁ!

 

「ふんぬっ!」

 

 これが俺の……全力全開!

 身体を持ち上げた瞬間に、俺の尻の下を高町が通る。この瞬間に少し尻をかすってズボンが少し破れたが……命が助かっただけでも儲けものだよ。

 

「ぐるぉっ!?」

 

 どうやら、高町の一撃は銀髪さんにジャストミートしてくれたみたいだ。良かった良かった。

 ふふん。銀髪さんは吹っ飛ばされるっ!

 …………で、なんで触手は外れないんですかねぇ!

 

「ああぁぁ(ああぁぁぁぁぁ)…………」

 

 俺も銀髪さんと一緒に吹っ飛ばされる。と、言うよりは引っ張られる。

 やだ……この触手、全然外れてくれな……外れろやごるぁ!

 とにかく掴まれてないほうの足で蹴るしかない。

 …………お、外れた。なんだ!頑張れば外れるじゃないか。

 ……あ、あれ?なんだろう。身体が突然軽くなっ

 

「あぶっ!?」

 

 気付いた時には民家に頭から突っ込んでた。

 

「いたた……。良かった。死んだかと思いましたよ……」

 

《とんでもないわい。生きとるよ》

 

 ……身体にそれほど目立つ怪我は……無しっと。

 強いて言えば右腕が肩からぷらーんってしてて応答しないんだが…………まぁ、ここら辺はフェイトさんを助ける為の致し方ない犠牲、所謂コラテラルダメージって奴だな。

 

《お主、好きじゃのう。その、こらてらるだめーじって言葉》

 

「お気に入りの1つですよ」

 

 この家の持ち主に表面上だけ謝り、再び路上へ。

 ……あれ?気配を感じない。どこ行ったんだろう。

 そしたら港の方から音がした。そちらに目を向けたら、高町が海の上空で銀髪さんと戦っていた。

 …………つか、こんな所まで吹っ飛ばされたのかよ……。

 

「さて、どうしましょうか…………。俺、さっき(第5話参照)はどうやって飛んだんでしたっけ……」

 

 ……いや、さ。さっきは無我夢中だっからいつの間にか飛んでたんだけど……。そんな無我夢中の時の感覚なんて覚えてる訳が無い。

 ……あ、銀髪さんが『闇の書』を出した。

 

『今です!』(幻聴)

 

 はい!孔明先生!

 

「伸びろフライパン!」

 

 まぁ、こんな事したってフライパンが伸びる訳が

 

《任せろ!》

 

 伸びたぁぁぁぁぁぁ!




~その頃の高町さん~
あおなが触手に捕まっていた時の事

(あ、あおな君が捕まってる。……あれ?これってもしかして助けれたらあおな君にかっこいい所、見せれるかも知れないの!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


フライパン
 伸ばしてみたよ
  やりすぎた

とにかく四月のVIVIDが楽しみな今日この頃


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第22話『プランB』

プランAなんて無かった。いいね?


 防衛プログラム--通称、ナハトヴァールは焦っていた。

 夜天の主が目覚めたから自分は必要なくなる。

 つまり、急がなくては、自分が消される。そう誤解し、その結果、理性のタガを外す狂行にでる。

 だが、待っていたのはどう考えても人間では無い二人による容赦の無い攻撃。

 焦ったナハトヴァールは、海にて白い少女と相対した時に『闇の書』を広げてしまう。

 ナハトヴァールとしては、白い少女を取り込み、少年と一対一であるなら勝てると踏み、この行動に出たのだが、結果は『闇の書』を奪われてしまうという、情けないモノになってしまった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第22話『プランB』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 フライパンがまるでお玉のように曲がり銀髪さんの手から『闇の書』を奪って戻ってきた。何を言ってるか以下略。今はこんな事をしている暇じゃない。

 …………で、これをどうすればフェイトさんを助けれるんだろう。

 先程、フライパンが伸びてこの『闇の書』を奪ったのはいいんだが……。一応、一応だけど、立ててたプランの①と②は消化した。後はフェイトさんを助けるだけ……。その助ける手段ェ……。

 ……あ、もしかしたら。

 

《……おい。お主はなんで儂を開いた『闇の書』に押し付ける》

 

「あぁ、いや、気にしないで、入って、どうぞ」

 

《入る訳がっ……!?》

 

 入るじゃないか。そうそう。そのまま、ゆっくりと入っていってね!

 ……見える……俺にもフライパンを通して見えるっ!

 なんだろう。すっげぇ泥々してんな、この本の中。こんなふざけたぐらい胸糞悪くなりそうな所に長い間フェイトさんを……。絶対に許さねぇ。

 あ、フェイトさんがいた。よし……このフライパンで……そっとフェイトさんを掬って(救 っ て)っと……。

 よし。行ける。このまま邪魔がこなければ……。

 フェイトさんがその麗しい姿を表す。あぁ、やっぱりフェイトさんは可愛い。

 

「ふぅ……。これで、フェイトさんの救出は終了っと……」

 

 俺は、フライパンに乗っているフェイトさんを左手と、折れている右手(※強引に動かしています)でゆっくりとフライパンからお姫様抱っこからの地面にそっと寝かせる。

 そんで、外に出るときに寒いかもって着てきた今はもうボロ雑巾にしか見えないジャンパーをそっと掛けておく。……すいませんフェイトさん。こんな粗末なモノで……。

 

「ギャルぁぁぁぁぁぁッッッッ!」

 

 ……さってと……。

 地面で開いたままになってる『闇の書』を拾ってっと。……この際に右手が再起不能になったのは秘密。

 『闇の書』をちゃんと閉じてってと……。

 フライパンに乗っけてっと……。

 

「投げますか」

 

 射出!

 おら、返してやるぞその『闇の書』。大事なモンなんだろう?顔面で受け取りやがれ。

 

「らぶぇっ!?」

 

 流石俺のフライパン。ちゃんと当ててくれやがった。

 とにもかくにもまずは空を飛ばなくちゃ、あの銀髪さんに対処出来ないのが辛い。

 ただでさえ地上戦でも不利だってのに相手はそらをとぶを覚えてる、とくりゃあ、本格的に不利でしかない。……いや、まぁ、フェイトさんをこんな所に一人にしておくってのも心情的に辛いモノがある。だけど、もし仮に、まだフェイトさんが寝ている間に俺がここで待ちガイルよろしく待っててあの銀髪さんが突撃でもしてみろ……。恐ろしい事になりかねない。

 ……あ、そうだ。

 

「あの……」

 

《……なんじゃ?今度は何をさせるつもりじゃ?》

 

 そんな疑わなくても………。ただ、重大な任務を与えるだけだっての。

 

「一応、貴女は神様なんですよね?(疑わしいけど)」

 

《おおぅ?ようやっと認めたか》

 

「なら、擬人化とか、普通に出来るんですよね?」

 

《出来るに決まっておろう》

 

「じゃあやってみてくださいよ」

 

《何故じゃ?何故儂がそんな事を今せねばならん》

 

 ふむ。ここまでは予想通りっと……。

 

「へぇ~……」

 

《……なんじゃその目は》

 

「いえ別に~?」

 

《で、出来る!出来るぞ!じゃからそんな目で儂を見るな!………見ておれよ!これが儂の人間体じゃ!》

 

 そう言うが早いか、フライパンが突然輝き出す。

 そこには、俺と同じくらいの大きさの白い球体があった。お前はウルトラマンにでもなりたいのかって突っ込みをなんとか飲み干して事の成り行きを見ていると、その白い球体から一人の少女が表れた。

 身長は俺とおんなじくらい。瞳は鋼色。髪の毛は灰色で長い(小並感)。ちゃっかり顔立ちが整ってるのがイラつく。なんとなく高飛車っぽい匂いがする。

 

「どうじゃ!これが儂の人間体じゃ!」

 

「…………あ、はい」

 

「なんじゃその適当感溢れる返事は!ほら、もっと誉めるとかあるじゃろう?ほれほれ」

 

「本当に凄いなら……人の一人や二人、簡単に守れますよね~」

 

「当たり前であろう?その程度が出来ず、何が神か。……ほれ、ここは儂に任せて、お主はあやつをしばいてこい」

 

 ……やはりこのフライパンはちょろい。

 …………ん?なんで擬人化させたかって?いや、だってフェイトさんが目を覚ました時にフライパンが浮いてたらびっくりするでしょ?それでフェイトさんにもしもの事があったら俺は高層ビルで頭から落下しなくちゃいけなくなる。だからやってみた。……まぁ、出来なかったら出来なかったで違う案も用意してあったんだが……とりあえず、あのフライパンなら確実にフェイトさんを守ってくれる。そう信じて俺はフライパンをフェイトさんの近くに置いておく。

 --さて、どうやって空を飛ぼう。

 問題はそこなんだよなぁ……。もうこのままフェイトさんの近くにいていい気がしてきた。……んだが、高町が割りと危ない。これ、放っといたらこっちにも来そう……。

 ……あの時は、どうやって飛んだっけ……確か、走ってて……あぁ、そうだ。重力から逃げるように走るんだ。

 そうと決まればモノはとにかく試しだ。何事も試さなくちゃ。……少し後ろに下がってっと。助走はこれくらいで、いいか。

 後は……恨みを込めて走る!

 

「うぉぉぉぉあぁぁぁぁッッッッ!」

 

 あいきゃんふらぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!

 

「……………………そんな、バカな」

 

 マジで飛べるとは思ってなかった。まぁ、なんて言うか今の状態は人間魚雷だが。

 

「ぐげっ」

 

 あ、なんか蛙の潰れたような音が聞こえたと思ったら銀髪さんにヘッドバッドしてしまった。その際に俺の首からもゴキュッて嫌な音がしたが、きっと気のせいだろう。

 ちなみに、銀髪さんは再び吹っ飛ぶ。

 

「あ、あおな君!?」

 

「どーも、高町さん。一応、加勢に来ました」

 

「あおな君………(えへへ。あ、ありがとう)

 

「ん?なにか言いましたか?」

 

「な、何も言ってないよ!大丈夫だから!」

 

 どう見ても大丈夫じゃないんだよなぁ……。顔を耳まで真っ赤に染めて……。怒ってるのかな?

 

「まぁ、とりあえずさっさと終わらせて帰りましょう。……まだ、ご飯食べ終わってませんし」

 

 

 

「ぐるるるぁ………」

 

 

 

 全く……。なんなんだよこの銀髪さん。本当に獣なんじゃないかってくらい唸ってる。おこなこ?もしかして激おこなの?……いや、そりゃまぁ、色んな事をしたよ?

 ……フライパン飛ばして当てたり、兜割りしたし、腹パンしたし、『闇の書』ぶんどったし…………。いったいどこに怒る要素があるってんだ!ふざけんな!

 

「俺は……貴女みたいな愛を知らない奴に負ける訳にはいかないんですよ………愛の重みを知らない愚かな銀髪さんは、愛の深さに溺れて沈んでいってください!」

 

 だから俺は高町の静止聞かず、と言うより聞くわけがなく、左拳を握って突撃。効かないとかもうどうだっていい。とにかく八つ当たりじゃないけど、殴らなくちゃ気がすまない。

 そんな俺の降り下ろした拳は--

 

 

 

 

 

 

「『愛』を知らない…………か」

 

 

 

 

 

 

 --何故か理性を取り戻している銀髪さんの手によって防がれていた。

 …………え?なんで?




~その頃の高町さん~

(あ、あおな君が私を、助けてくれた!?こ、これはもう私、私ィ……。ひゃっほぉぉぉ!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

……なんか、急ぎ過ぎた感が出てしまいました。すいません。

あと、銀髪さん、もといリインさんがちゃんと目覚めた理由、次回にちゃんと説明出来れば、と考えています。


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第23話『愛と勇気のモノガタリ』

本編に入る前に二つ。




百合は好きかい?(ボ○ガ博士風)




あと、私はロリコンじゃないです(多分)


 ──貴方の好きな人は、誰ですか?

 

 

「俺は、フェイト・テスタロッサが大好きです!」

 

 

「私は主である八神 はやてが大好きだ!」

 

 

 ──どんな所が好きですか?

 

 

「普段は天然が入ってるけどふとした時に見せて……いや魅せてくれるその心からの笑顔。それに誰かを守るって決めたときの凛とした覚悟を決めた顔が大好きです!」

 

 

「家族を誰一人として失いたくないという気高く誇りだかいその覚悟と勇気、そしてそれをなし得るだけの力に美貌に心構えを持っている所が大好きだ!」

 

 

 ──もしも貴方の好きな人が危険に陥ったら?

 

 

「「迷わず全力で駆け付ける!!!」」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第23話『愛と勇気のモノガタリ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 銀髪さんが俺の拳を受け止めた瞬間、いきなり脱皮をし始める。脱皮……いや、卵の孵化に近いのか?……いや、これは脱皮だ。

 で、そこから出てきた銀髪さんからは、悪い憑きモノが取れたようなそんな感じがあった。しかも、さっきまでナイスボディだったのにロリ化(俺達と同じくらいの年齢みたいな外見)に変わるという離れ業までやるというね。

 その顔には、まだ『ザ・ビースト』になる前の絶望し、諦め、闇落ちしたかのような影を落とした顔じゃなく、どこか吹っ切れたかのような顔で、腕に付いていたパイルバンカーのようなモノは無くなってるし、髪の毛もどこか光輝いているように見える。いや、実際に光っている。

 そして、俺の左拳を受け止めていない方の腕には、八神を抱えていた。……どうやら、意識を失っているみたいだ。

 

「……お前。さっき私に向かって『愛の重みを知らぬ者よ。愛の深さに溺れて沈め』、と言ったな?」

 

「………あぁ、はい。言いましたが……それがなにか?」

 

 銀髪ロリさんは、先程の恨みつらみをたっぷり込めたような叫び声を『何処へやったんだ?離してやった』とでも言わんばかりに180度変えた声色だ。

 

「やっと……やっと分かったのだ……。『愛』とはなにか……誰かを想うとは……なんたるか、を」

 

「そうですか。それで?例えそれが分かったとしても、俺の怒りは消えることはありません」

 

 

「私のこの気持ち……。そうこれこそまさしく『愛』だ!」

 

 

 ふふふ……。話を聞いてくれません。

 

「そこの白い少女よ!」

 

「あ、ひゃ、っひゃい!?」

 

「主を……頼む」

 

 そう言って、八神を高町に渡す銀髪ロリさん。ちなみに、『闇の書』は八神の腕の中に抱かれてた。闇の炎に抱かれtなんでもない。

 ……いやはや、本当に、誰だ?この銀髪ロリさん。

 

「……私は、ようやく気付けたのだ。私に何が足りなかったのか。私には、何が必要だったのか、が」

 

 聞いてもいないのにつらつらと話始める。

 

「それは『勇気』だ。……どうやら『愛』は知らぬ間に既に知っていたらしくてな……」

 

 笑って鼻の下を擦る銀髪ロリさん。……これ、俺行動してもいいのよね?

 ……いやまぁ、銀髪ロリさんが言ってる事、分からなくは無いけどさぁ……。

 確かに、誰かに『愛』を伝える為には一歩踏み出す為の『勇気』が必要だ。……だが、幾ら『勇気』があっても、そこに『愛』が無ければ『愛』とは言えない何かになる。

 

「……私は、主に出会いそれに気付かされた。……だが、ナハトヴァールは私達を中々外に出してはくれなくてな……。今の今まで必死にハッキングを繰り返していたのだが……。お前の、『愛を知らない』、との言葉にピクリと反応してしまい、強引に、ナハトヴァールを押し退けてここ()に出てきたと言うわけだ」

 

「……なるほど。……それで、その握ってる拳はなんですか?……まさか、とは思いますが……」

 

 うん。その……なんて言うか……俺としては、別に今から殴り愛(誤字にあらず)をしてもいいんだよ?どっちの『愛』がツヨイカーとか、そんなの。

 ……でも、俺、腕が折れてる。完全に不利だ。こんな状況で、当たって欲しく無いな……この予想。

 

「あぁ!そのまさかだ!」

 

 あぁんひどぅい。

 

「……私はどうやら、今まで知っていた筈の『愛』から目を背けていたようだ。……だが、それは私に『勇気』が無かったから。……主はそう、教えてくれた」

 

 とにかく、距離を取りたい。話はそこからだ。

 

「……つまり、私が言いたいのは、どんな行動をするにも、一歩踏み出す為の『勇気』が必要だ、と言うこと。そうそれこそ、『愛』する為にも、守る為にも、だ」

 

「…………それは、なんですか?……『勇気』があるから『愛』がある、そういう事ですか?」

 

「あぁそうだ」

 

 ………違う。その理屈は、間違っている!

 

「……何を言ってるんですか?『愛』があるから『勇気』を振り絞れるんですよ。……どれだけ『勇気』があっても、『愛』する事が出来なければ、何も始まらない……。俺だって、初めてフェイトさんに出会った時、一目で恋に落ちました……。だから、『勇気』を振り絞って声を掛ける事が出来たんですよ……」

 

 俺は、『愛』があるから『勇気』がある。

 銀髪ロリさんは『勇気』があるから『愛』がある。

 俺達二人の意見は、どうやら真っ直ぐ平行線のようだ。『正義』の反対はもう1つの『正義』、とは多分この為にあるんだろう。

 銀髪ロリさんは、しばらく俺の顔をじー……と見て、なにかを思い付いたかのように頷く。そして--

 

 

 

「…………ふむ。こうなったら、お前の『愛』と、私の『勇気』。どちらが強いのか、白黒付けようじゃないか!」

 

 

 

 --元気に決闘の申し込みのようだ。

 俺としては、断る理由は欠片も無い。俺の、フェイトさんへの『愛』を……『愛』がどれだけのモノなのかをこの銀髪ロリさんに教えてあげる必要がある。

 

「上等です。受けてたちますよ。そのお誘い」

 

「それは良かった。だがその前に」

 

 いきなり、銀髪ロリさんが俺の右腕に触れた。その瞬間、右腕からゴキゴキィッって嫌な音がした。……しまった、完全に油断してた……。もう手遅れって思いながら右腕を見ると、治ってた。……まさか治してくれたのかな?

 

「片腕が使えんというのは、フェアでは無いだろう。……私は、万全のお前と白黒付けたいのでな」

 

 ……なんだ、銀髪ロリさんっていい奴じゃん。

 ……じゃあ、あの悪堕ち状態とか『ザ・ビースト』は、ただ、はっちゃけてただけ、なのかな?

 まぁ、そんなの、今となっては些細な事だ。別段気にする程の事でも無いか。

 

「……ふふふ。見える私にも見えるぞ。お前の中で燃え広がっている『愛』の炎がっ!」

 

 俺としては、そんな熱血展開はご勘弁したい所なんだが、

 

「……分かりますよ……。俺にも、貴女のその闘気(オーラ)が分かります……」

 

 見えてるもんは仕方ない。

 

「お互い、全力を尽くそうじゃないか」

 

「勿論です」

 

 シン……って空気が静かにはりつめる。まぁ、下の海は荒れてるが。

 お互いに一呼吸。……あぁもう焦れったい。

 

 

 

 

 

「「いざ尋常に!」」

 

 こうして、『愛』と『勇気』の絶対に譲れないぶつかりあいが始まった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ……女の子を『闇の書』さんから渡されたんだけど……どうしよう。……まぁ、まずは地面に降ろそう。

 ……でも、降ろしたら降ろしたでやる事が無くなりそうなの……。だって、あおな君が『闇の書』さんとなんか戦うって事になっちゃってるし……邪魔をするなって感じだし……。

 あぁ、それにしても、あんな真剣な表情をしてるあおな君、格好いいなぁ……。

 さて、地面に着いたっと。ゆっくりと、この子をフェイトちゃんの隣に降ろそう。

 

「う、うぅん……。……あれ?ここ、どこやねん……」

 

 あ、起きちゃった。

 

「ここ?ここは、海鳴市の港だよ?」

 

「……あっ………あ、貴女は、誰です?」

 

 私が答えると、その子は目をパッと開けてどこか頬を染めて私の顔を見る。……もしかして、人見知りの激しい子、なのかな?

 ……この子、ちょっと関西訛りしてる。けれどそんなの、気にする必要はないか。

 

「私?私は高町 なのは。……あなたは?」

 

「あ、……えっと……私、八神 はやてって言います……。その……高町、さん……」

 

「なのはでいいよ♪私もはやてちゃんって呼ぶから」

 

「は、はひゅ~………」

 

 あ、あれ?気絶しちゃった?……人見知りが激しすぎたらこんなになるんだ……。




~その頃のフェイトさん(アリシア)~

(あっちゃ~……出るに出れないよ。こんな状況、見てるしかないや……。あ~ぁ……暇だ)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


えっと……つまりリインさんが目覚める事が出来た、もとい表に来れたのははっきり言ってあおなの一言が原因です。

……あ、あと脱皮の後の皮はパイルバンカーも含めてちゃんと着水しましたよ(露骨なフラグ建て)。


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第24話『なぐりあい宇宙』

遅くなった理由はただひとつです。

無限ループです。

……書いても書いても同じ結末(鬱)にしかならなくって……。


 ……えー……(わたくし)こと、八神 はやては、女の子に恋愛感情を抱いちゃったかも知れへん。

 だって、ズギューンって来たんよ?こんなの、もう一目惚れ以外になんと形容していいことやら……。

 ……昔、あおなに一回冗談でプロポーズ紛いの事をやったのを思い出したわ……。子供だった時にようやる『大きくなったら結婚しよう』って奴。……まぁ、私もそんな子供やったさかいあおなに一回言うてみたんよ。……そしたらあおな何て言うたと思う?『……駄目だ』って言ったんよ?……で、その理由が『はやてが本当の"好き"って奴が分かって無いから』って。……まだ5才の子供がなにゆうてんのって話やけど。

 ……でも、あおなはその後に付け加えてこう言った。『なんて言うんだろうなぁ……"恋"ってのは、一目見た瞬間にこうズギューンって来る奴の事だよ』ってな。

 …………それで、その私の"恋"は、どうやらなのはちゃんやったみたいや。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第24話『なぐりあい宇宙』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 お互いに、それこそ本当に同時に前に進み、これまた同じタイミングで右拳を突き出し、拳同士がかすりあい、お互いの顔面に、それも鼻っ面に拳がぶつかる。

 当然俺は人間だから鼻に鈍い痛みが走り、鼻血を噴き出す訳なんだが、銀髪ロリさんはやっぱり人間じゃないらしく、俺の拳がまだ顔面にあるのにも関わらず無理矢理軌道を変えて前に踏み出す。……これ、普通だったら鼻が折れて大惨事になってる筈なんだが……。

 

「お前の『愛』などやはりその程度のモノだ!」

 

 このやろう……。

 こちらが動けないのをいい事に再び拳を振るって来る。……残念だけど俺の『愛』はこの程度じゃ終われない。

 

「これが私の『勇気』だ!」

 

 俺の顔面を狙って放たれた2度目の拳を俺から見て顔面を右に思いきり曲げる事で回避。その際耳がビリビリしたり首から嫌な音が聞こえたけど、そんなのどうだっていい。

 

「……なら、俺からも言わせて貰いましょう。貴女の『勇気』もその程度だ!とねぇ!」

 

 右足でもってまるで踏みつけるように銀髪ロリさんの腹を蹴る。(※この物語の人物はだいたい特殊です。実際にやらないようお願いします)

 

「なんぐがっ……」

 

 これで、少しは銀髪ロリさんとの距離は稼げた訳だけど……。この程度、どうやら銀髪ロリさんにとっては些細な事だったらしい。少しもダメージが入って無いように見えないように見える。……じゃあさっきのうめき声じみた痛々しそうな声はなんだったのかと声を大にして小一時間説教も込めて聞きたいんだが……。ま、それは終わってからにしよう。

 

「……そう言えば、お前の名前を聞くのを忘れていた」

 

 ……えぇー……。今それ聞くの?

 

「私はリインフォース。……どうだ?主が付けてくれたんだ。素晴らしい名前だろう?」

 

「あ、そうですね……。あと、俺の名前は盾街 あo「盾街か」……あ、はい。もうそれでいいです」

 

 なんでこうして話を聞かない奴が多いんだろう。

 

「……さて、休憩も終わった事だし再開しようか」

 

 あ、やっぱりさっきの痛かったのね。腹さすってるし。……今、楽にしてやろうか(GUESS顔)。

 ……これだけで許された、とか思ってもらっちゃあ困るんだよなぁ。銀髪ロリさんもといリインフォースさんがフェイトさんを吸収した事に関して、俺はまだ怒ってるんでね。……まぁ、俺はこんな性格だから、怒ってるかどうかは分からないって母さん言ってたけど。

 

「悪いが、こここら先は全力で行かせて貰う」

 

 確かにあれで全力でってんならあの『ザ・ビースト』はなんなんだって話だけど。

 

「『光り輝けし貫くものよ、我が五指に宿り、今勝利をもたらせ』」

 

 ……あれ?なんか、デジャヴュ……。

 いや、そうじゃなくて、こちとらまだまだ魔力なんてものに触ったのは今日が初めてな訳で……使えるのは空を飛ぶっぽい魔法だけなんだが……。

 

「『稲妻となりて敵を指し貫け!ブリューナク!』」

 

 そんな初心者相手にその禁止っぽい技はやめてくれない?

 ……リインフォースさんは右拳に謎の指貫きグローブを装備。ただの指貫きグローブだと思ったら大間違い。これね?ビリビリしてんの。殴られたら絶対にスタン効果ありそう(小並感)。これがミキプルーンの苗木だったらどれだけ良かった事やら。そんな泣き言を言ってたらいつのまにか亡き言になりそうだから口をつぐんどくとして、……さて、本当にどうしよう。

 絶縁体なんて持ってきてねぇぞ。

 ……なんだ、避ければいいのか。

 

「氏ね!」

 

 おいそれ絶対に字が間違ってる、いい方向に?……どうだろう。

 幸い、頬はかすらなかったよ。だけど痛みが半端ない。……なんて言うんだろう、ほら、百円ライターの電子着火装置ってあるじゃん?あれを直接、じゃなくて地味に放した距離でバチってやられた感覚に近い。……少なくとも静電気よりも痛い。

 ……これが直撃した日にはきっとアニメや漫画みたいなレントゲン効果があるって感じじゃ、無さそうだな……。

 ただでさえ隣をちょっと失礼しますね感覚で通りすぎただけでもひっぱたかれたレベルで痛かったのに。

 ……あれ?これ詰んでね?

 

「……やはり、まだまだ、か」

 

 ……確か、雷打たれても平気な(オーガ)がいたよな……。まぁ、それはどうでもいいとして。

 とにかく、攻略する方法はあるっちゃあるんだ。……ただ、その時間を相手が許してくれるかどうか。ヒントは俺の下にあるものはな~んだ。

 

「……そんな事を言われても、俺としては初めてでここまでやってるんですから、多少は手加減してくれても……」

 

「手加減?なんだそれは」

 

 おうふざけるんじゃねぇ。

 

「こうなったら……」

 

 魔力を右の掌に溜める。気分は孫の悟った空さんみたいだ。元気な球を撃てそう。

 

「……やはり、その魔力量は異常じゃないか?」

 

「それだけ、俺のフェイトさんに対する『愛』が強いって事ですよ」

 

「…………お前、まさか魔力の即事回復と言ったチャチなモノじゃあなく、感情変換資質……?……まさか、そんな事は……」

 

 ……とにかく、リインフォースさんがなんか悩んでる。俺としてはとてもありがたい。

 

「……まぁ、考えるのは後でいいか」

 

 ……もう少し、考えてもいいのよ?

 ……まぁ、だいたいは溜まったから良かったけど。

 

「お前はその多量の魔力、どうするつもりだ?……まさか、私に放つとでも?」

 

「まさか。そんなの避けられて終わりじゃないですか。それこそ本当の意味でチェックメイトなんで」

 

「その通りだ。だから今から止めを刺すのだろう?」

 

 そう言ってリインフォースさんは拳を振りかぶって突っ込んでくる。

 よっしゃ、多分なんとかなる。

 

「だから、ちょいと『科学の第一分野』を使わして貰うだけですよ」

 

 魔力を思いっきり放つ。リインフォースさんは確実に論外。ならどこに?……勿論、下一面に広がる大海原(・ ・ ・)に。

 ……そしたら、海が俺を中心に円形に、まるで隕石が落ちたんじゃね?って感じでうち上がった。それにリインフォースさんも巻き込まれ、よくよく目を凝らすと拳の『ブリューナク』は霧散してってる。

 ……いやぁ、ジョジョの四部にも乗ってたけど、塩水って、本当に電気をよく流すんだね。お陰さまで助かったよ。

 ……でも、あれ?……なんだろう。すごく寒い。

 

「………『海より集え水神の槍』」

 

 ……あるぇ?おっかしいぞぉ?打ち上げた海柱が氷っていってる気がするんだけど……。

 

「『彼方より来たれ銀雪、逆巻き連なり天に座せ』」

 

 ……気のせいじゃ無いな。やばい。助けてきのこる先生。俺、この先生きのこる気が全くしない。

 

「『ヘイムダル』」

 

 ……なんで、ここだけ氷河期に突入してんだよ(現実逃避)。




~その頃の高町なのはさん~

(……なんではやてちゃん、気絶してるんだろう……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


……あかん。このままじゃ、A'sが終わらない……。
動かさなくちゃ……例え、無理矢理にでも……。

と、言うわけで次回は多分物語が動きます(そろそろ動かさないと本格的にネタががが)。

後、『ブリューナク』は『『クラウソラス』もある訳なんだから……あってもよくね?』と思い、『ミストルティン』の詠唱と偉大なるwiki先生の力を借りた結果です。
……グングニールとトリシューラも、いつか出したいですね……(遠い目)。

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第25話『阿修羅すら凌駕する存在』

クリアウィングェ……。
当たりませんでした……。


 ……どうしよう。

 ……あおな君、今圧倒的にピンチだ……。ここは、やっぱり助太刀に行くべきなのかな……。……あぁでも、あんなに焦ってるあおな君の顔も……いい……って私は何を考えて!?

 でも、本当にあおな君が危ない。このまま放っておいといて、あおな君にもしもの事があったらと思うと……背筋に寒いモノが……。

 さっき、あおな君が海を打ち上げてリインフォースさん……だったかな?の拳についてた雷を霧散させた所までは見てたんだけど……打ち上げた海がいつのまにか凍ってて、多分あおな君があの海柱に閉じ込められてるように見えた。……ここは、やっぱり助けに言った方が……。

 そうやって、あおな君の所に行こうとすると

 

「待って、なのはちゃん(・ ・ ・)

 

 この言葉と同時にバリアジャケットを掴まれ、キャンセルされた。

 ……私があおな君の所に行こうとするのを、止めたのは誰?その人によってはユルサナイ。絶対に。

 振り向くと、そこにら身体を上体だけ起こしたフェイトちゃんがいた。何故か私のバリアジャケットを掴んでない方の手にはフライパンを握ってたけど。

 ………………あれ?そういえば、フェイトちゃんって、私の事、ちゃん付け(・ ・ ・ ・ ・)で、呼ぶっけ?

 

「なにか、おかしいよ」

 

 だけど、そんな事を考えようとした時に、フェイトちゃんが指を指す。私はフェイトちゃんの指を指す動きに釣られてそちらに目を向けた。

 そしたら、そこには--

 

 

 

 

 

 --かつて、リインフォースさんの腕に付いていた触手が、(うごめ)きながら、なんとか人の形をとろうとしながら、浮いていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第25話『阿修羅すら凌駕する存在』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ……いや、本当にどうすんだこの状況。周りは氷の壁な訳で……。

 ……一応、『ブリューナク』は止めた訳だがこうなるとは思ってなかったよ。完全に相手の力量を見誤った。相手の手札の枚数を勝手に決めてた俺の落ち度だ……。

 そう考えりゃ、確かあのリインフォースさんの元々の本体はあの『闇の書』なんだっけ?……で、確かあの本のページ数は666ページなんだっけ?……おいおい、108式より絶望的じゃないか。

 まぁ、1ページに1魔法だったら俺達の絶望はこれからだ!次回の(ryENDだったのかも知れんが、恐らく5ページで1魔法もあるかも知れない。だからまだ大丈夫だろう。多分。

 ……1ページが3魔法とか、そんな展開もありそうだから困るんだけど。

 

「邪魔、するぞ?」

 

「……邪魔もなにも、ここはある意味では貴女が造ったフィールドみたいなモノじゃないですか」

 

 いや、本当にどうしよう。考えも纏まって無いから邪魔するならカエレ!出ていけぇ!とも言えずに普通の返ししか出来なかった。

 ……つか、リインフォースさんはあれか?俺にジョニーよろしくタスクact4みたいなトラウマを与えようとしてんのか?まさにこのリインフォースさんこそD4Cだと思ったよ。

 くそ……策が無い。まさに万策尽きたって奴。

 

「……ふむ。その様子だと、本当にこれで終わりみたいだな……。ならば、最後の一撃と行こうか」

 

 やめろ、そんな切なく言うんじゃねぇ。

 ……どうすれば、こんな状況で、いったいどうすればいいんだ……。

 

--……ぉ……

 

 逃げようにもどこにも逃げ道は無い。

 俺の手札はそもそも無い。

 

--……ぁ……く…

 

「やはり、最後は愛する者の魔法の方がいいだろう。これが、私がお前に送る感謝、だ」

 

 そんな感謝、返品したいんだが。それでその分の代金返してくれ。

 

「『撃ち抜け、轟雷!』」

 

 リインフォースさんの掌に魔法陣ができ、そこに雷がたまっていく。……今度は真っ黒じゃなく、ちゃんと黄色い……。

 もしこれがフェイトさんにやられるってんなら喜んで受けるんだけどリインフォースさんじゃあなぁ……。

 

--あおな君!

 

 うわっ!?だ、誰だ!?

 周りを見渡してもリインフォースさんと氷の壁しかない。……もしかして:幻聴?

 

--聞こえる?あおな君!

 

 ……おれ?この声って……フェイトさん?……いや、でもフェイトさんは俺の事を呼び捨てにしているような……。

 それになんか口調がフェイトさんとも違うような……。これ、もしかして嫌われたのか?

 

--出来れば今から言うことをリインフォースにも伝えてくれると嬉しいんだけど……

 

 ……これって、もしかして念話とかそんなの、かな?

 ……念じるだけでフェイトさんと話が出来るとか最高じゃないか。いや、その前にこれ、どうやって返事するんだろう。

 

--……って、あれ?もしかして聞こえて無いのかな?……もしもーし!もしもーし!

 

 ……いやその聞こえてるには聞こえてるんですけど返事の仕方が分からないだけなんです。……これでガチ嫌われしたらどうしよう……。

 

--……まぁいいや。とにかく!一か八かだけど、聞こえてたら今から私が言う事をリインフォースさんに伝えて!

 

 ……本当にこの声はフェイトさんなのかな?

 ……でも、なにか急用みたいだし、伝えてから確認しても遅くは無いだろう。

 

--外に『ナハトヴァール』が出てきてる。これだけで、いいから。それじゃ!

 

 ……えっ?

 ……いや、そもそも『ナハトヴァール』ってなんだろう。何語だ?俺、日本語くらいしか上手く操れないんだが。

 ……それは置いとくとして、折角のフェイトさん(?)からのご忠告兼お願い、伝えない訳にはいかない。

 まぁ、リインフォースさんは今にも射出しようとしてる訳だが。

 

「あの……リインフォースさん」

 

「……なんだ?」

 

 目に見えてイラッてしてるよあの顔。『今から手品やるよー見ててー』『ちょっと待って五時間くらい』みたいな感じの時の顔とおんなじだ……。だけどここで退いて媚びて省みてたら大変な事になるかも知れないし、なによりフェイトさん(?)からの信頼に反する事になる。だからあえて無視する。…………決して、フェイトさんに嫌われる事とリインフォースさんにしばかれる事を比べたら勿論前者が怖いとか嫌だとかそんな理由なんかじゃ……。

 

「……えっと、『ナハトヴァール』って危険なモノですか?」

 

「あぁそうだ。……む?……妙だな。私はお前に『ナハトヴァール』を教えた覚えが無いのだが」

 

「……それはそれとして、その『ナハトヴァール』ってのはどのくらい危険なんです?」

 

 フェイトさん(?)の言葉を疑う訳じゃない。でも、『ナハトヴァール』なんて新しい単語をホイホイ信じるほど俺は……。でも……。

 俺は信じたい。フェイトさんを……。例えそれが嘘だったとしても……。

 

 

 

 

 

 

 

「世界の1つ2つが軽く滅ぶレベルだが?」

 

「今すぐ殲滅しましょう外にいるらしいので」

 

 

 

 

 

 

 

 そんな危ないモンがあるなら早く潰さなくちゃ(使命感)。少しでもフェイトさんが危険になる事は減らさないと。

 

「…………待て。お前今先程なんと言った?外にいる?『ナハトヴァール』がか?」

 

 リインフォースさんはどうやら俺の言葉を信じてくれたみたいだ。……それか、それだけその『ナハトヴァール』ってのは危ない奴なんだろうなぁ。……だとしてもその魔法陣は降ろさないのね。

 

「はい、言いましたよ」

 

「……そんな馬鹿な……。……あれ?お前に聞くが、『私』が出てきた時にこの左腕に付いていた触手チックなモノはどこに行ったか、覚えているか?」

 

 左腕……触手……。

 

「……あぁ、それなら海にダイレクト不法投棄で池ならぬ海ポチャしてましたよ」

 

「馬鹿者っ!それが『ナハトヴァール』だっ!」

 

 リインフォースさんが魔法陣消して腹パンしてきた。……何故に?

 

「何故見逃した!」

 

「分かる訳が無いでしょうが!そんなもの!」

 

 俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!

 ……つか、どうして分かると?俺だってフェイトさん(?)からの念話で初めて知ったのに!

 こんなに理不尽な事でキレられたら俺だってキレる。

 だから--

 

 

 

 

 

 

『邪魔、しても?』

 

 

 

 

 

 

 --こうして、いつの間にか現れた人物に対しても

 

「「邪魔を……」」

 

『え?』

 

 

 

 

 

 

「「するな!/しないでください!」」

 

『ぶごっ!?』

 

 リインフォースさんと一緒に蹴りを入れたりする。




~その頃のフェイトさん(アリシア)~

(あ…『ナハトヴァール』が人の形になって氷の壁に入っちゃった……。……あれ!?蹴り出されてる!?)


◆◇◆◇◆◇◆◇

少し解説とお詫びを……

『ナハトヴァール』が人の形を取った訳
--あおなの魔力の取りすぎ

『ブリューナク』について
--……まさかG.O.Dで、はやてさんが使う魔法だとは思いませんでした。……出来れば、ここではリインフォースさんが使った場合、と言うことでお願いします。

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次回もよろしくお願いいたします。


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第26話『そうだ、処そう』

わぁい!
やっと『闇の書』との"戦闘は"終わるよー!


 ありえない。私はどうしてこの姿になったのか。

 考えられない。この身体の奥底から湧き出る力。

 信じられない。全く負ける気がしないこの気持ち。

 分からない。どうして、吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第26話『そうだ、処そう』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ……ついカッとなって吹っ飛ばしてしまったが。

 ふと冷静になって考えてみればあれは恐らく『ナハトヴァール』的なもの。

 

「……あれが『ナハトヴァール』でいいんですか?」

 

「……あぁ、恐らくそうだろう。……何故魔力を感じれなかったのは分からないが」

 

 やっぱり。

 で、『ナハトヴァール』=危険+それが外に=フェイトさんが危険に晒される。つまり『ナハトヴァール』=フェイトさんが危険になる。

 ……と、言うことはやっちゃった。

 

「……なら、一時休戦して潰しません?お互いの大好きな人の為にも、ガチで」

 

「……それも、そうだな。主はやても安らかに睡眠しておられるようだし。……お前とはどうせ後で決着がつけれるだろうし」

 

 遠回しに雑魚発言されたのは置いておく。

 ……さて、どこに行ったかな?『ナハトヴァール』さんは。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あ!見て、フェイトちゃん!さっきあの氷の壁に入った『ナハトヴァール』が!」

 

「……あー……うん。ここからでもよく見える……」

 

 ……あれ?なんでこうなったんだろう……。あ、ちなみに今は(アリシア)が表に出てきて、フェイトは……なんて言うんだろう。精神体かな?……例えるなら映画館かな?たまに映画を見る役と映画を演じる役が変わるって感覚かな?

 まぁいいや。

 

--……お姉ちゃん。これって……

 

 ……うん。あの『ナハトヴァール』の顔面についてる足跡から察するに、あおな君とリインフォースさんで蹴ってるよ、あれは。

 

--違う。私が聞きたいのはそれじゃない。なんでお姉ちゃんが表に出てきてるのかって事なんだけど……

 

 だって、現実に戻ってきた時にフェイト寝てたんだもん。

 

--もどして

 

 嫌だ。

 

--…………

 

 そんな((´・ω・`))しても駄目だよ。

 

--お姉ちゃんのケチ

 

 心配しなくてもあおな君はちゃんと私が寝取ってあげるから。

 

--ねとるってなに?

 

 ごめんなんでもない。

 ……さて、切り替えるとして、ここからどうするか。

 あ、あおな君とリインフォースさんが氷の壁ぶちやぶって出てきた。

 

「なのはちゃん。どうする?混ざる?」

 

「あおな君………………はっ!?な、なんでもないよ?……で、えっと、なんだっけ?」

 

 ……駄目だこの子、早くなんとかしないと。

 

--ん?なのはが、どうかしたの?

 

 ……キニシナイデイイヨー。

 

「混ざるか、それとも見ているか」

 

「………………混ざりたい。だけど……ここであおな君を見てるのも……。……あ、リインフォースさんそこどいて!あおな君が見えない!……あぁもうあったま来た!」

 

 そう言って飛んでいくなのはちゃん。メンタル振り子過ぎるよ……。

 ……あー……フェイト。

 

--どしたの?

 

 ………変わって。

 

--え?あ、うん。いいけど……どしたの?

 

 ……私には、このなのはちゃんの相手は無理だって事が分かったから。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 とりあえずあれが『ナハトヴァール』……長いな、ナハトでいいや。

 あれがナハトって分かったらやることは1つ。デストロイ&デストロイ。サーチはしないよ?もう見つけてるし。

 

「盾街。お前は右から回ってくれ。私は上下から攻める」

 

「分かりました!」

 

 壁を蹴って推進。水泳で言うならば蹴伸び。狙うはナハトの顔面ただ1つ。

 ナハトの顔が俺に少し似てる女の子だとしても気にせず突っ込む。気にしないったら気にしない。

 

「おいやめろ!」

 

「やめろと言われてやめるとでも?」

 

「違う!お前じゃない!後ろの元管制人格だ!」

 

 …………ゑ?

 言われてリインフォースさんを見るとリインフォースさんの周りに真っ黒で小さな固そう(個人の感想です)なクナイちっくやモノが……。大量展開してる……。

 それこそ、『俺自身が元気玉になる事だ』とでも言わんばかりに。

 

「『刃以て、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー』……盾街よ。休戦と言ったな?……あれは嘘だ」

 

 まさか、一斉射出しようとしてるの?……HAHAHA。

 ふざけやがってぇぇぇぇぇ!

 とっさに近くにいるナハトの肩を掴み、俺はナハトの後ろに隠れる。

 

「ちょっ!?おま!?何故私を盾にする!」

 

「だってあれホーミングしそうですからねぇ!」

 

 案の定沢山のクナイはナハト……と言うより俺を狙ってる。

 

「くそっ……ここは『集いし星が「貴女は黙って肉盾ですっ!」ごぶっ!?…………け、けっか…い」

 

 なにか言おうとしてたから背中に腹パンかましてやる。背中なのに腹パンって、もう訳が分からないよ。

 ナハトは憐れ気絶……って、あれ?もしかして結界を張ろうとしてたとか?まぁいいや。

 

「よし」

 

 おいリインフォースさんめっちゃいい笑顔でガッツポーズしてるぞ。って事はこれ結界を張ろうとしてたって事じゃねぇか。

 ……くそ……もう、助かる方法は無いって事かよ……。

 ………………あれ?なんか、視界の左端からピンクと黄色の光が………。

 なんか、デジャビュ……。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「なのは!待って!」

 

「止めないで!フェイトちゃん!」

 

「よく見て!なのは!あおなが『ナハトヴァール』を押さえてる!」

 

「……え?……っ!……そんな……。あおな君。もしかして身を呈して『ナハトヴァール』を……?」

 

「……うん。あおなは私達の事を信じてあんなふうにしてくれてる。……だから、あおなの意思を無駄にしちゃ、いけない。しかも、あおなの目の前には黒い魔力溜まり……あれを放って置いたら……」

 

「…………うん。分かったよ。……じゃあ、一緒にやろ?フェイトちゃん!」

 

「うん!」

 

 やっぱり、お姉ちゃんの言った通りになった。

 ……あおなは、自分が痛い目にあってまであんな危険な事をしてくれている……だから、絶対に無駄にはしない!

 

 

 

--……ごめんね?あおな君♪

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ……あれ?なんでフェイトさんと高町は俺に銃口を向けてんだ?いやその前にフェイトさんが無事に目を覚ます事が出来て良かったと喜ぼう。……ふぅ。

 で、なんでこちらに銃口を?

 ……しかもリインフォースさんは自分の周りが光ってる所為でフェイトさん達が見えてないし……。

 ……あぁ、そうか、そう言う事だったのか。

 あれが発射されたら逃げろって事ね?流石はフェイトさんだ!

 そんな時に入ってくるのはフェイトさんからの念話。

 

--あおな!ちょっとだけ痛いの、我慢してね!

 

 ……んー……これ逃げれないやつじゃ?これ完全に俺ラディッツ戦の悟空ポジじゃ?……まぁでも痛いだけって事は死なないで済むのかな?

 ……フェイトさんだから信じれ……いや待て高町がいる。……あれ?これってもしかして高町がフェイトさんをそそのかして俺にこうやって砲撃を仕向けた……?

 そんな……そうだよ……なんで気付かなかったんだ……。向こうに高町を置いといた事を……。

 おい、やめろ高町……それだけはヤメロォ!

 だが現実は非常であるかのようだ。

 

「全力全開っ!」「疾風迅雷っ!」

 

 二人は杖に魔力を溜める。しかもガッションガッションも七~八回してる。……しかも、よく見たらフェイトさん、俺のフライパンを持ってる。更に俺のフライパンからフェイトさんと高町になんか魔力っぽいなにかが流れてる。

 あのフライパン、俺を殺す気が満々じゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ブラスト・シューートッッッッッ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この距離だと、バリアどころか湯葉すら張れないみたいだ。

 俺、リインフォースさん、ナハトは三人纏めて綺麗に巻き込まれました、とさ。




~その頃のクロノ~

(……なにが……どうなって……?)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


……もう、ゴールしてもいいですよね?
私、頑張りましたよね?

……まぁ、後は少し事後処理をするだけです。
次々回には……終わってるといいな……A's。

それと……今回駆け足過ぎてすいませんでした。

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第27話『素振りは基本』

GE2レイジバースト面白いです。
…………鎌の特殊攻撃のモーションが格好いい。
でも私はショートソード派。


 ふと、目を覚ます。知らない……と言うよりどちらかと言えば病院の天井に近いものがそこにあった。つまりここは病室って事だ。……それにしては、どこかメカメカしいけど。

 ……確か、フェイトさんと高町による鰹と昆布の合わせ出汁のような見事なコンビネーションでリインフォースさんとナハト共々吹き飛ばされたんだったっけ……。全く……あれぐらいで気を失うなんて、俺ってばだらしねぇな。

 ……ふぅ。さってと。

 

 

 

 

 

 フェイトさんを探そう。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第27話『素振りは基本』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 探そうと意気揚々にベッドを降りた。そして扉の前に立ち、開けようとする。だが、どうやらこの扉は反抗期らしく、開きやしない。

 ならどうするか。

 

①ぶち破る

 

②蹴破る

 

③最後のガラスをぶち破る

 

④くらってくたばれ『怪焔王(かいえんのう)』の流法(モード)

 

 答えは……。

 

「①ぃっ!」

 

 早くフェイトさんに会いたい!ただそれだけなんだ。

 俺のこの気持ちを邪魔する奴は扉だろうがなんだろうが容赦しない。

 ……べ、別にフェイトさんに労って欲しいとか、そんなんじゃないんだからねっ!

 ……思ったより自分のツンデレが気持ち悪い。今後はやめよう。

 扉は拳でぶち破る。俺の貧弱な拳に耐え切れなかったひ弱な扉は回転しながら向かい側の壁にめり込む。

 ……なんだ、壁も老朽化が進んでんのか。危ないなぁ……。

 

「さて、フェイトさんはどこにいるんでしょうか……」

 

 そこで取り出したるは携帯!いやぁ、便利だよね。今の世の中ってさ。

 確か、ズボンの後ろポケットに入れてた筈……。あれ?なんだろう、この配線みたいなさわり心地。

 ……………………ガラパゴスよりひでぇや。くそ……フェイトさんの……メアドが……電話番号が……写真が……。

 リインフォースさん……ナハト……。

 

「許しません……絶対に、絶対にです!」

 

 ……おっと、おちけつ、俺。これでフェイトさんを探す手段は無くなった訳だけど、見つからないって訳じゃあない。まだまだ方法はある、と思う。

 ここが病院なら本格的に終わっていた。だが、ここは少し見覚えがある。確か……宇宙戦艦アーカムとかそんなのだった筈。

 だから、適当に歩いていたらきっとどこかに辿り着くだろ(希望的観測)。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 やはり、主の隣はいいものだ。心の底から安らげると言うのは本当に……ありがたい。

 

「あの、えっと……なのはさっ……なのはちゃんって何が好きなん?」

 

「食べ物?」

 

「うん!」

 

 ……例え主が誰の事を好いていたとしても、だ。悔しくないと言えば嘘になるかも知れない。だが、隣にいるというだけでも私にとってはとても意味のあるものだから……。

 

「……あ、そう言えばリインフォース」

 

「はい!どうかいたしましたか?主はやて」

 

 ……私は、沢山の人達に迷惑を掛けてきた。それこそ、両手両足の指の本数を合わせたくらいでは足りない程の人達を……。それと同じくらい、多くの私の主となってくれた人々を文字通り喰らってきた。

 ……だからこそ、こうして手に入れる事が出来た幸せを手放したくない。

 

「あの防衛プログラムって致命的なバグがあったんやろ?」

 

「……なぜそれをご存じで?」

 

「そりゃ私はあの『闇の……もとい『夜天の書』のマスターや!分からん事があるとでも、思っとるん?」

 

「流石です……」

 

 そんな、幸せを願う人達を喰らってきた私が今更ながら幸せを願うと言うのも、ちゃんちゃらおかしな話になる。……本来ならば私は幸せを願ってはいけない。一人で自滅自壊をしなくてはならない存在だ。小さな目ではなく大きな眼で見れば私はこの世を滅ぼしかねない存在だったのだから。

 

「……で、今さっきリインフォースを調べたんやけど……そのバグが全く見付からへん。……どこにやったん?」

 

「はい!バグなんてものは、主はやてを守りたいと強く願った私の守護プログラムが免疫プログラムを活性化させ、熱く燃え盛る『勇気』が私の中に溢れるバグを焼き尽くしたのです!」

 

「え、あ、そ、そうなんか……」

 

 しかし、今の私には、そんな危険なモノは無くなっている。もうこの世を滅ぼすモノは私の身体のどこを探してもリンカーコアぐらいしか見付からない。……確かに、被害者達への償いはしなくてはならないかも知れない。

 理由はどうであれ、私が殺してしまった事は確かなのだから。……その人物に本来あった幸せ、生活、日々……。それを消し去ってしまったのは、他でもない私、なのだから。

 

「なら、もう危険は無いっちゅう事で、ええの?」

 

「……はい!」

 

 ……だから私は、フェイト・テスタロッサが言ってくれた言葉を……あの(ブラストカラミティを撃たれた)後に言われた言葉をけっして忘れない。

 

 

 

 

 

『リインフォースさんは罪の十字架を背負ってる。だから、毎日その幸せに心を痛ませながら楽しく生活する。それが貴女に贈る最も辛い償いだよ。……どう?我ながらかなり酷い刑罰を与えてみた♪』

 

 

 

 

 

 ……全く。私には辛すぎる刑罰だよ。

 あの少女の変貌には少し驚いたが……まぁ、この世界では普通なんだろう。

 

「どしたん?リインフォース。そないにやにやして……」

 

「あ、いえ、守護騎士達ももうそろそろこちらに来るかと思いまして……少しわくわくしているだけです!」

 

「あぁ、そっか。リインフォースは……」

 

「はい。……酷い事もしましたし」

 

 なら、私は--

 

「ま、あの子達なら許してくれるから、安心しい、な?」

 

「はい!」

 

 --苦しみながら、この世界を楽しもう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば……ナハトは?」

 

「……あれ?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ……完全に迷ったぞ。どこだろう、ここ。

 どうしよう。フェイトさんに会う前にこんな場所で餓死とか本気で嫌だぞ俺。

 

「お?」

 

「む?」

 

 …………なんでここにナハトが?もしかして、コイツも迷った、とかか?

 

「なぁ盾街ここは、どこだ?」

 

 なんでコイツこんなに馴れ馴れしいんだ?しかも地味に顔が似てるってのもイラッてくるし。……いや、よく考えろ、俺。コイツが俺に似てるって事は……身代わりに使えるって事か。まぁ今はそれはいいや。

 そんな事よりも重大な事がある。右拳を握りーの。振りかぶりーの。放ちーの。顔面に当たりーの。

 

「痛っ……いきなりなにをする!」

 

「悪いのは……そっちですよ!よくも俺の携帯を壊してくれやがりましたよねぇ!」

 

「いや全くもって身に覚えが無いんだが……」

 

「とぼけるんじゃないですよ!……貴女は確かあの触手付きパイルバンカーなんですよね?だったら地面に叩き付けたのも貴女って事です!」

 

 野郎・of・クラッシャー……と行きたい所だが。

 恨み辛みは溜まりに溜まりまくっているが、ここはこの拳一発で溜飲を下げる。

 

「……ま、でもこれ()でチャラにしといてあげましょう」

 

「なに?……それだと、私の殴られ損にならないか?」

 

「……腕1本折ったあげく携帯壊された恨みを拳一発でチャラにしてあげると言う俺の寛大な心を理解しないんですか?」

 

「……すまないが、あれ(『ザ・ビースト』)は理性が無かったと考えてはくれないか?」

 

「嫌です」

 

 ……本来ならマウントからの顔面にオラオララッシュだったんだが、まぁ、生きてるし別にいいやとかそんな感じだ。

 なんだかんだ言って、今回は俺の携帯以外皆生きてる訳だし。……もうちょい、強く殴っとけば良かったかな?

 

「……所で、話は戻るが主はやてはどこだろう」

 

 なんだ?コイツもリインフォースさん……やっぱ長いな。リインさんでいいか。リインさんと同じような考えを持ってんのか?

 

「……八神さんの魔力とか感じれないんですか?」

 

「……あ、その手があった」

 

 …………この子、アホの子なん?

 まぁいい。俺はフェイトさんを探すだけだ。

 

 

 

 

 

 ……そう言えば、家で飯食ってた最中だったからか、腹減って来た。




~その頃のフェイトさん~

(……あおな、大丈夫かな……。……あれ?あそこに見えるのって…………ちっちゃいけど、リニス?)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


おかしいなぁ……まだA'sが終わらない……。

次回こそは終わらせて、日常に行きたいです。


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第28話『また会えて』

いつもの事ですが、文章がわやくちゃです。

……その人物人物の心の中として考えて貰えればありがたいです。


 ……あぁ、やっちゃったな……。まさか、管理局員に保護されるなんて思ってなかったから……。

 ……あおなさんの所から逃げた後、私はただ見てる事しか出来なかった。……無力、だったから。私じゃ、なにをしたって無意味、だったから……。でも、なにか出来るかもとか考えて、結局行くか行かないかを考えていたらいつのまにか保護されていた……。本当に、ダメだな……私は。プレシアの時だって止めれなかった……。

 ……あおなさん……無事だといいんだけど……。

 考える事に霧中になっていた私は、近付く足跡と匂いに気付けなかった。鼻が詰まってたって言うのもある。

 

「もしかして…………リニス?」

 

「……え?」

 

 ふと、懐かしい声がして、そちらに目を向けると、私と別れた時と見違える程大きくなったフェイトとアルフが、そこにいた。

 ……フェイトがなんでフライパンを持ってるのかは、分からないけど。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第28『また会えて』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「……フェイト……アルフ……。……久し振り、ですね」

 

「うん。……リニス……」

 

「……リニス?……本当に?本当にリニス、なのかい?」

 

「……はい。そうですよ……アルフ……」

 

 もしかしてリニスかな?って思っていたら本当にリニスだった。ちょっと、ちっちゃくなってるけど。

 ……ある日突然いなくなったリニス。その理由が知りたくて、アルフと一緒に母さんに詰め寄ったのは今でも記憶に新しい……。でも、母さんは全然教えてくれなかった。……だけど、少しして……なのはと出会って、お姉ちゃんの事を知って、気付いた。

 そう言えば、リニスは使い魔だったって。……使い魔は、主人の目的のためだけに作り出された命……。維持するのが主人の負担になるから目的を終えたら消される命……。

 私とアルフの関係は家族としての関係で違うけど、あの頃の母さんはリニスを……言いたく無いけど……目的のためだけの道具として、生み出したんだと思う。

 リニスは、私の魔法の先生であり、身の回りの世話をしてくれる母さんの作った使い魔だった。優しくて、だけどたまに厳しくて……暖かくて。

 今でもよく夢に見る。

 あの日々は絶対に忘れる事は出来ない、私の大切な思い出。

 ……でも、私は知った。リニスは、私を『一流の魔導師に育て上げる』為に母さんが作ったんだって。……私が、頑張り過ぎたから…………リニスは、いなくなった。

 ……だから、こうして出会えた事が、とっても嬉しくって。

 

「フェイト……その……ちゃんと復習、してますか?」

 

「うん。してるよ……ちゃんと、リニスに教わった事、何回も何回も復習してるよ……」

 

 たくさんたくさん話したい事があって。……でも、何から話していいのかが分からなくって。

 

「アルフも……。ふふ……なに泣いてるんですか?」

 

「そ、そう言うリニスだって……目にいっぱい、涙……溜めてるじゃん……」

 

 昔とはちょっと違うけど、昔のような光景を見て胸の奥が苦しくなってくる。なんて言うんだろう。ギュッて握られたような熱くて苦しくて……でも、心地よくて。

 不意に、目の前が突然歪んでくる。目を擦ると、湿ってて、擦った手が濡れてた。

 ……駄目だ。やっぱり涙が止まらないや。

 

「リニ…(ひぐっ)…ス……」

 

 こうやって……名前を呼ぶだけでも、嗚咽で声がうまく出せないや……。

 

「はい。……なんですか?フェイト……」

 

 名前を呼べば、返事が返ってくる。ちゃんと、そこにリニスはいてくれている。

 

「あらあら……どうしたんですか?昔みたいに泣き虫さんはあやした方がいいんですか?」

 

「……う、うぅ……リニスぅぅ!」

 

 そのあとはひたすら泣いたって事しか覚えてない。リニスの胸の中でアルフと一緒になって泣いてた。

 昔よりもちっちゃかったけどリニスはやっぱりリニスで……昔と変わらず優しく頭を撫でてくれて……。

 

 

 また会えて、良かった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「……おや?あそこにいるのはもしかしてフェイトさん?良かった……。これで俺はようやくフェイトさんと話すことが出来っ…………はっ!?」

 

 私は主を探して、盾街はフェイト・テスタロッサという少女を探して一緒にこの艦内を歩き回っていた。……すると目の前に抱き締め合っている三人の女性を発見。それと同時に盾街が声を出し、目的の少女の名前を出した為、どうやら無事見付けられたようだ……と思ったらいきなり回れ右をしてそこから遠ざかり始める。

 

「……どうしたんだ?盾街」

 

 理解が出来ず、盾街の肩を掴み話を聞こうとすると、盾街は無言で肩に掴んだ私の腕を掴み、引っ張ってその場から離れる。しかも全力疾走で。

 

「痛い、痛いぞ、盾街……いったい、どうしたと言うんだ?」

 

 しばらく走っていると、突然立ち止まる。……突然立ち止まった訳だからブレーキなんてそう簡単にかかる訳がなく、私と盾街は見事に床に転けた。

 

「……本当に、どうしたんだ?お前」

 

 意識はしていなくとも、自然と盾街を見る目に恨みがこもってしまうのは仕方のない事だ。

 少しの間があった後、盾街は口を開いた。さっさと開けば良かったのに。

 

「………………フェイトさん、泣いてたのに、笑ってたんですよ」

 

 ……何故、それだけの理由であの場を離れたのか、それが私の心に引っ掛かる。

 

「……それが……どうかしたのか?」

 

「…………ああやって、泣いているのに笑っているって時は嬉しくて、感極まってるんだって俺は思ってます。……恐らくは久し振りに会えた家族とか、なんでしょうね。……リニスちゃんがフェイトさんの名前を出した時には驚きましたけど……」

 

「……それで、盾街はなんであの場を離れた?」

 

「…………邪魔をしたくなかったから、です」

 

「…………」

 

「…………俺は、フェイトさんの事が好きです。愛していると言っても過言じゃありません。……ですが、俺はまだフェイトさんの家庭の事情を少し知った程度の部外者です。……俺にはあの場所に入る権利も覚悟も無い……。……俺には、恐らく、久し振りに会えたであろう家族との再開を邪魔するような無粋なマネをする事が出来ません。…………好きだから。フェイトさんの事が大好きだからこそ、その人の大切な時間を穢すようなマネは俺には出来ない!だから!……だから……」

 

 ……私には、盾街の言っている言葉の意味が分からない。誰かの為に何かをする……それは分かる。だか、盾街は好きな人の為に、その人を想うが為にあの場を離れたと言った。

 ……私が見た限り、あの少女達は泣いていた。ボロボロとボロボロと。涙とは、悲しい時に流すものじゃないのか?悲しい時には、人は寄り添うモノでは、ないのか?……嬉しい時に流す涙とは、いったい、なんなんだ……?

 分からない。

 

「……自分でも、なにを言ってるのかは分からなくなってきましたが…………まぁ、例え部外者じゃなくなったとしても、俺は絶対にあの場には加わる事は出来ませんけどね」

 

 虚しさを漂わせて喋る盾街の言葉が、嫌に耳に残った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ……つい、感情的になってしまった。これじゃ、ただの八つ当たりじゃないか。

 ……つくづくこんな自分が嫌になる。

 ……あぁ、ナハトに悪いことしちゃったかも知れない。後で謝っておこう。

 ……だけど……いや、別に自分を正当化しようだとか、そんな事を考える訳じゃないけど……俺はあの時どうすれば良かったのかが分からなかった。

 ……フェイトさんは大切な人だ。だからこそ、悲しませる事はしたくないし、そんな目に合わせたくない。

 

 

 だから俺は分からない。こうやって離れた事が最善の手だったのか、それとも、普通の事だったのか、が。




~その頃のクロノ~

(まさか、管理局の上層部があおなを欲しがるとは、な……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


……一応、一応はこれでA'sは終わり……です、かね?

……すいません。こんな文章になったのは全部私の脳ミソが悪いんです……。
本当に申し訳ございません……。

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第29話『翌日』

これで……本当にA'sは終わりです。


 ……俺はその後、ナハトに『あとはよろしく』とだけ伝え、職員に転移ゲートとやらの位置を聞き、クロノとリンディさんの制止する声を無視し帰路につく。

 ……まぁ、理由としてはこんな顔をフェイトさんに見られなくなかったってのが一番だったんだけど。

 ボーッと歩いてたら家の前に着いてた。いつもだったら、普通だったら無駄にテンションをあげて『ただいま』って言うんだけど今回はそんな事をするような気分じゃない。だから無言で扉を開け、

 

「……ただいま」

 

 と、ローテンションになってしまった訳だ。

 

「あら、あおな、今までどこ行ってたの?……事と場合によってはこってりと絞……どうしたの?その顔。あ、後リニスちゃんとエボニーとアイボリー知らない?」

 

 ……母さん、なんであの猫達の名前がデビルハンターの愛用してる銃の名前なんだよ……。

 

「リニスちゃんなら、親御さんが見付かったのでもう心配する必要はありませんよ。……あと猫二匹については俺も全く知りません。…………それと食欲無いんでもう寝ます」

 

 そうやってのそのそと二階の俺の部屋に行こうとすると、母さんが俺の肩を掴む。しかも、かなり強い力で。

 

「待ちなさい」

 

「母さん……。俺、今日は色々と疲れてるんでもう眠りた……あの、母さん?指が俺の右肩にめり込んでてかなり痛いんですが……」

 

「……あのね。あんたに何があったのかは分からない。……でも、でもね?」

 

 そこから俺の肩を引っ張る。当然そんな事を考えてなかった俺は階段から足が離れ、床に後頭部を打ち付ける。痛いとかそんなちゃちなもんじゃだんじてねぇ。もっと気絶しそうな衝撃を味わったぜ。

 痛みで悶絶しそうになっている所にだめ押しとばかりに左腕を腕ひしぎ十字固めでプリィーズ……ってnot please!

 

「母さん腕がビキビキ言ってますって!これじゃ腕が逝っちゃいますぅぅぅぅ!」

 

 腕が人類の新たなる夜明けの方向に曲がりそうなその時、母さんはニッコリと笑いを張り付けた顔をこちらに向ける。

 

 

 

 

「飯残すな、後風呂入れ。OK?」

 

「ア、ハイ」

 

 OK(ズドン)がOK(ドワォ)にならない内に飯全部(リニスちゃんと猫二匹の残したモノも含む)平らげて風呂入って腕と肩を慰めながら寝ました。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第29話『翌日』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 目を覚ます。起き上がる。おぅさみぃ。

 結局、昨日は色々あったな程度で済むように俺の脳みそは勝手に処理したらしく、あんまり重荷には感じない。……フェイトさんの事以外は。

 とまぁ、とりあえず布団から起き上がり、着替える。学校に行かなくちゃいけないし。……正直、はっきり言って休みたい。でも休んだら休んだで母さんに無言の手刀のグォレンダァされたあげく一日中店番をしなくちゃならなくなる。鬼か。

 ってな訳でゆっくりと一階に降りる。ほのかに香るいい匂い。今日はパンか。

 

「あら、あおな。おはよう。……うん。昨日は何があったのかは分からないけど、もう大丈夫そうね」

 

 リビングの暖簾(のれん)っぽいのをくぐると、母さんが暴れるフランスパンを押さえ付け、握り潰していた所だった。アイム・ノット・パン。

 

「……おはようございます。まぁ、一応は吹っ切れた、と言った感じですかね」

 

「それなら良かった」

 

 俺もフランスパンとの戦闘に参加し、辛くも勝利。

 最近はフライパンも動くしフランスパンも動くんだな、と勝手に解釈し、フランスパンをカイシャクしてやった。

 

フランスパン

  鈍器としても

    使えます

 

 実際にそんな事件があったらしいけど、俺には関係のない話だ。

 

 

 

 ……さて、時刻が丁度7時半になったので、家を出る。

 

「あーあおなー今日は店番お願いできるー?」

 

「……お願い、されました。とりあえず、いってきます」

 

「ん。いってらっしゃーい」

 

 あー……放課後は携帯を……と思ってたんだがまぁ、仕方ないか。

 家を出て、高町家の前を通りかかる。そしたら――

 

「………あ」

 

「…………」

 

 今日はどうやら、厄日になるのかも知れない。……おかしいなぁ、俺、今年が厄年?いや、フェイトさんに会えた時点でそれは無いか。じゃあ厄日か。

 なぜかって?なのは=高町さんが出現したからだよ。

 ……こうなるんなら今日は休んだ方が良かった。

 …………いや待て。

 

ここに高町がいる→つまり昨日のあれそれはきっとケッチャコ…→つまりフェイトさんに会える

 

 ……なんだ。こう考えると高町も役に立ったんじゃ無いか。でも学校に行ってフェイトさんに会えた時のサプライズ感も欲しかったなーってあおなはあおなは思ってみたり?

 

「……おはようございます。高町さん」

 

「……うん。おはよ、あおな君」

 

 ……そういや、俺のフライパンどこいったんだろ……。擬人化さした筈だから勝手に帰ってくるモンだとばかり思ってたけど……ま、いっか。

 さてさて、しばらく高町と無言で歩いていたらバス停に着きました。

 今思うと、聖祥大付属小学校ってすごいよなぁ……だってバスの送り迎えに加えて普通の小学校じゃ習わない事までやる始末。坊っちゃんお嬢様とか周りを見るだけでそこにいたりするもんなぁ……。

 ほら、少し見回しただけで一番後ろの座席にはバニングスとか月村とかが手を振っているし。そしてなにより、フェイトさんもいる!

 そうと分かれば話は早い。

 

「おはようございます!フェイトさん!………それとバニングスさんと月村さん」

 

「おはよ、あおな」

 

 …………なんだ、学校に行くまでもなくフェイトさんに会えるなんて……。今日はいい日になりそうだ。

 

「……盾街のあの態度が気に入らないんだけど……」

 

「そ、それは仕方ないんじゃないかな?アリサちゃん」

 

「…………あおな君……」

 

 あぁ、やっぱりフェイトさんは可愛い。見てて心が満たされるって言うか……なんて言うか。もうこれだけでお腹いっぱい大満足。

 そう、これだよ。これこれ。

 フェイトさんに挨拶して、フェイトさんと他愛ない会話して、フェイトさんと昼御飯食べて……。

 こんな日々だよ。俺が欲しかったのは。

 そんな事をしみじみと考えていたらフェイトさんが通学鞄から丁寧に梱包されたモノを取り出してた。

 

「あ、そうだ。あおな、はいこれ」

 

 唐突にフェイトさんはそれを俺に手渡してくれる。

 …………誕生日?いや、俺の誕生日はもうちょい後だし、クリスマス……も早いか。

 ま、なんにせよ、フェイトさんからの贈り物は嬉しい。

 

「あ、あの……開けていいですか?」

 

「え?うん。勿論」

 

 うわぁ……何が入ってるんだろう。凄い楽しみだ。

 丁寧に、丁寧に袋を優しく、破らないように開くと……そこから出てきたのは、なんと!

 

 

 俺の、フライパンだった。

 

 

 ……そうかぁ……フェイトさんが持っててくれたのか……。迷惑、掛けちゃったな……。

 

「フェイトさん……わざわざ持ってきて下さるなんて……ありがとうございます!」

 

「いや、その……そんなにかしこまらなくても……」

 

 ……うぅっ……やっぱりフェイトさんは本当に最高の人だよ……。眩しくて直視できないくらいだ……。

 女神だ……やっぱりフェイトさんは、女神だったんだ……。

 

 

 

 

「えっと……あおな?もう着いたよ?」

 

 ………………はぅあっ!?

 いかんいかん……フェイトさんを見てるだけで時間の事なんてすっかり忘れてしまった……。

 フェイトさんがバスを降りるのに着いていく。目の前には聖祥大付属。……毎回思うが、やっぱりデカイ。

 靴箱で靴を履き替え、教室がある階まで階段を昇る。

 教室の手前でフェイトさんと涙の別れをし、教室に入る。……来年こそは……来年こそはフェイトさんと同じクラスに!

 ……だが、その為には色々と工作しなくちゃいけないな……。うむむ……。

 

「おはよ、盾街。……なによその顔。やっぱり昨日食べたテスタロッサさんの料理がいけなかったの?もしなにかあるんだったら、この私になんでも相談しなさい!」

 

 教室に入ると、高町バニングス月村三人娘に次ぐ人気を持つ徳三(とくみ)四姉妹の長女が俺を迎えてくれた。どうしてここで出てきたのは何故なのかは分からない。

 長い黒髪を靡かせながら強気な目で、それでいて本気で心配してくれている、それでいて誰にでも別け隔てなく接する、そんな優しい人だから四姉妹の中でもとりわけ人気があるんだろう。

 

「別になんでもないですよ、徳三さん。だいたい、俺はフェイトさんの料理を食べれて満足してますし」

 

「なら……いいのかし……ら?」

 

 そう思えば、昨日は本当に色々あったな……。

 フェイトさんの手料理食べて、シグナムさんにケンカ売られて、クロノに説教みたいなのされて、八神の料理食べて、猫拾って、リインさんにフルボッコにされて、最終的にはリインさんやナハトと共にジュッてされて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………あれ?俺って食べてフルボッコにされただけのお荷物じゃね?

 ……そんな事は無いって思いたいけど……。そうとしか思えない不思議。




~その頃のなのはさん~

(あおな君は、フェイトちゃんが好きなんだ……。でも、だとしても、フェイトちゃんには、絶対に負けないんだから!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


最後の方に出てきた新しい子(徳三さん)はきっと分かる人は分かると思います。

…………勝手な期待を押し付けるような感じで申し訳ないですけれど……。

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第二章《伝説上の伝説の木の下で》
第30話『クリスマスにはまだ早い』


……クリスマスの話題を3月にやるって……うごご。


 

 

 キング・クリムゾン!時は消し飛びお昼頃。

 

 

 ……なんて、出来る訳が無く、俺はぐでぇっと授業を受けていた。本当に時飛ばしが出来たなら、俺は今頃『オレのそばに近寄るなー!』って無限ループに入ってる状態な訳だし。

 

「……じゃあ、この270ページを……盾街君。読んでください」

 

 だがやっぱり学校の授業は授業な訳で、問答無用に指名してくる。

 ……面倒臭いが、幸いこの教科書のこの部分は暗記してたからなんとか行ける。

 

「『なにもオレは最初から……徐倫と結婚できるなんて思っちゃあいない…オレの殺人罪は事実だし徐倫がオレの事を好きになってくれるわけがない事も知っている…』」

 

 ふぅん。ジョジョという人生の参考書の暗記は基本。

 

「盾街君。それ、269ページですよ~」

 

 マジかよ承太郎。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第30話『クリスマスにはまだ早い』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 まさかのおおポカをしでかしてしまったその授業後、休憩時間中に隣のクラスのフェイトさんを見に行こうとすると、徳三四姉妹の三女(学級委員長)が突然立ち上がり、教卓の前に立ち一言。

 

「クリスマスパーティーしましょ!」

 

 ……本当に突然だから困る。それこそなにも脈絡は無かった筈なんだけどなぁ……。

 

「……突然どうしたんだい?」

 

 やはり姉妹間でも唐突の事だったんだろう。徳三四姉妹の二女も疑問に思う+αで硬直時間があったのか少しの間をいれて聞いてた。

 周りも何事か、と野次馬精神フルドライブイグニッションで耳を傾け始めてる。

 つい俺も気になってしまい、出るに出られなくなる。

 

「私、気付いちゃったのよ。12月と言えばクリスマス。クリスマスと言えば楽しい事。楽しい事と言えばパーティー……。つまり、クリスマスと言えばパーティー!だから皆でクリスマスパーティーしましょう!」

 

 ……クリスマスパーティー……咲かない桜……和菓子……ウッ頭が……。ってなる人はきっと俺と仲良くなれるかも知れない。

 それはさておき、クリスマスパーティーか……。クリスマスには出来れば……で・き・れ・ばフェイトさんと一緒に過ごしたい。だが、クラスでクリスマスパーティーとくれば、フェイトさんと過ごす事が出来なくなる。どうすれば……いったい、どうすればいいってんだ……。

 別に、断ったっていい。だが断るにも、クラスの雰囲気は既にクリスマスパーティーしようぜ!の空気が蔓延していてこれで断れば『なんだコイツ』って目で見られてしまう事になる。それだけは避けたい。

 ……本当に、どうしたらいいんだ。

 そんな時である。俺のいた教室の出入り口である扉が思い切り開かれたのは。

 

 

 

「その話、乗らせてもらいマース」

 

 

 

 ……校長先生ぇ……。

 いきなり入って来ないでくださいますか?俺の心臓がヘソから出てきそうになっちまったじゃないか。

 しかも周りも石化してるみたく硬直してるし。

 

「……え?あ、校長先生、どういう事なのです?」

 

 いち早く硬直から解けた徳三四姉妹の四女が先生に質問した。いかん。俺も早く硬直を解かねば。

 

「面白そうだからデース。クリスマスパーティー……まさにワンダフー。……ここは学年を、いや、学校をあげてやるべきだと思いマース。それに、子供達の楽しむ姿は私の一番の喜び……。ですから、乗らせて貰うと言ったのデース……」

 

 ……最後だけを聞けば、ショタロリコンだと思う人もいると思うが、この人は本当に俺達子供の事を大切に思っている人だったりする。

 例えば、ここら辺で不審者が出てきたとしよう。不審者の種類はなんだっていい。すると、この校長先生は自らその不審者を探しだし、どんな手段を使ってるのかは分からないけど見付け出し、粛正する。なんと言うか、もうここまで来ると鉄の強さと鋼の意思を感じる。

 ちなみに、その不審者の姿はその後、誰も見ることは無くなったとかなんとか。

 

 

 

 

 いつの間にか、授業を使ってクリスマスパーティーの事を話していたらお昼時までなってしまった。教室の面々はつやつやしている徳三四姉妹と校長先生を除けば、俺を含めて死屍累々。黒板にはなんともカオスな事が書かれていたりするが、それを読んだら読んだでSAN値が吹き飛びそうな予感がしたからあえて読まない。

 結局、フェイトさんを見に行く事は出来ず、俺のテンションは悪いもん食べた時のお腹の調子みたいに下っていった。

 さて、そんな事はさておくとして、ようやくお昼時でさぁ。これで……これでやっと……本当にフェイトさんに会うことが出来る。

 弁当持って……くるのは忘れた。あっちゃぁ……作るの忘れてた。己……フランスパンめぇ……。

 仕方がないので購買でパンを買い(狩り)、屋上へ。

 扉開けたとたん(※扉です)、見知らぬ世界へと(※よく知ってます)。

 屋上には、ちらほらと他の生徒もいたような気がするが、俺にとってはフェイトさんしか目に入らない。あとオマケのバニングスと月村と高町。

 

「ふぁ、あおなだ。お~い!」

 

 フェイトさんがお握りを頬張りながら手を振ってる。可愛い。

 よくよく見れば、ほっぺにお米が付いてる。……よぉしパパ頑張ってフェイトさんのほっぺのお米取っちゃうぞぉ!

 

「フェイトちゃん。ほっぺにお米が付いてるよ?とってあげる」

 

「え?ほんと?ありがとうなのは」

 

「気にしないでいいよ♪」

 

 ……高町……やはり奴は俺にとっての天敵。いや、宿敵だ。くそぅ……折角フェイトさんとラーブラーブな事が出来ると……思っていたのにぃ!

 ちなみに天敵はリインさんになりました。だって強いもん。

 

「……あれ?あおな、お弁当は?」

 

 ふと、フェイトさんが俺の両手に掴まれている今日の狩りの成果を目にする。結局、パンは二つしか捕れなかった。

 うぉぉ……。フェイトさんの少し心配するような目線……やばい、癖になりそう。

 

「今日の朝、少しバタバタしてまして、作るのを忘れちゃったんです」

 

 しかしこんな事で癖になったりしたら色んな意味でoutになりそうなので必死に鎮める。静まれ沈まれ、俺の変態的な部分。※NGワード:手遅れ

 

「そうなんだ……。じゃあはい、これ」

 

 そんな時に手渡されるは小さな……と言っても成人から見たらだけど、お弁当。

 

「……これは?」

 

「えっとね?作って、みたんだ。……あおなと、なのはに美味しい料理を食べて欲しくって……」

 

 ……そう言えば、かすかにだけど、覚えてる。

 

「リニスに聞いたんだけど、料理が上手くなるコツって経験を詰む事と、ひたすらにレシピ通りにするって言ってた。だから練習で作ってたんだけど……」

 

 そう言ってフェイトさんは鞄を探り、更に弁当箱を四つ取り出す。……おいおい、これは俺に対するご褒美なのか?嬉しいじゃないの。

 

「作り過ぎちゃったんだ……」

 

 ……俺は、自然とフェイトさんに対して頭を下げていた。そう、それはまさに無意識の行動だった。頭が、身体が、心から動いた。

 

「ありがとう………ございます。フェイトさん……。本当に、ありがとうございます……」

 

 目頭が熱くなる。涙が、溢れてくる。

 

「ちょ!盾街、あんたなに泣いてんのよ!」

 

「ふふふ……。バニングスさん、貴女には分からないでしょう。俺の、この気持ちが」

 

「……一気に分かりたく無くなったわ……」

 

 バニングスの冷ややかな視線に負けじと俺はフェイトさんにお礼を言った後、お弁当を開く。

 そこには、なんと綺麗な彩りのお弁当がそこにあった。

 俺と、高町は同時にお弁当を口にした。

 なんというか、心が満たされた気分だ。

 …………味?……あぁ、まだ発展途上なんだよきっと。

 

 

 その後、俺はフェイトさんにはしっかりと、それ以外にはちゃっかりと『もしかしたら学校をあげてクリスマスパーティーをやるかもワカンネ』とだけいい、フェイトさんには別れを告げてその場を去った。

 

 

 

 

 

 ……謎の腹痛に苦しみながらも受ける午後の授業はこれがフェイトさんの愛の重さなんだと勝手に解釈し、なんとか耐えた、と言うことだけ最後に記しておく。




~その後のなのはさん~

(う~ん……。フェイトちゃんの料理、前よりはましになったの……かな?…………ベロが痺れたけど)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


はてさて、校長先生は誰なんでしょうかねぇ~(紅茶を飲みながらデュエルしつつ)。

ちなみに、前回の徳三さんのヒントですが、徳→特、三→Ⅲ、ですかね。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第31話『進化の光』

大層なタイトルですが、いつもの様に詐欺ってる可能性が大きいです。


 腹痛に腹を押さえながらもフェイトさん達と途中まで一緒に下校。

 その後家に着くと同時に着替えてすぐさま本屋『千科辞典』へと向かう。……そういや、今日は新しい本を入荷するって話をこの前ちょろっと聞いた。……なんか、毎回毎回こういう時に限って、狙って店番やらせられる気がする。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第31話『進化の光』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「こ、これは……」

 

 …………そん、な……。

 俺が店に着いた時には、既に沢山のダンボールが空になっており、その中身であるだろう本が乱雑に棚に並べられていた。

 まるで、荒らされたかのような後。

 ……母さん、なんで……。

 そう言えば、今日は母さんが店にいる筈だった。しかし、店には母さんの姿はない。

 まさかと思い、レジの中を見ると万札が何枚か消えていて、変わりに紙が一枚あった。その紙を見て、だいたいの事は悟った。

 ……くそっ。やられた。

 置いてある紙には、

 

 

 

『本届いたから棚に詰めといたよ~。あ、あと買い物行ってくるから』

 

 

 

 ――と、書いてあった。

 帰るのが、遅すぎた。……くそぅ。なんでこんなに無茶苦茶な本棚を俺が揃えなくちゃならないんだよ……。

 ……パッと見、荒らされたかのように見えるけど、実際はそうじゃない。実は、俺の母さんは几帳面な性格じゃあない。……それも結構酷いレベルで、だからこうやって俺か父さんがいないと、届いた本を無茶苦茶に入れる。事実、家にいたってそうだ。洗濯物を畳むのもかなりくちゃってしてたりするものぐさな人だ。

 ……だけど、母さんはそんな事を有無とは言わせない実力がある。………なんの実力があるかって?

 …………そんなの、普通の人間が理解しちゃいけないと思うんだよ。……理解しようとしたら俺の頭の容量じゃ足りなくて、ねぇ……。全く……父さんはすげぇよ。

 さて、本棚をきちんと整理し、レジのお金を整え、カウンターの椅子に座る。俺の店番は、これからだ!

 

 

 

 

 

 ……暇なんだよなぁ……。あれから10分。ただただ扉の外の道路を見るだけの簡単なお仕事になりつつある今。

 頭の中では、フェイトさんに対する様々な告白シュミレーションと平行して『なんでうちの店は自動ドアに変えないのかな?』って考えるくらいしかやることがない。

 ……いやはや、本格的にやることも無いし、諸手をあげて背伸びをする。……あ、背中がパキッていった。やっぱりぐでぇってしてたからだろう。

 そんな時、扉の鈴が聞こえる。

 

「頼もう」

 

 ……おっと、お客さんかな?しゃんとしなくては。

 

「いらっしゃいませ。どんな本でもだいたい揃う『千科辞典』へ、ようこそ。はてさて、あなたはどんな本をご所望で?」

 

 ……言ってて恥ずかしくなんか、無いんだからね!ごめん嘘、かなり恥ずかしい。

 

「…………って、貴女はシグナムさんじゃ無いですか。……どうしたんです?剣道の本でも買いに来たんですか?それとも、俺を狩りに来たんですか?」

 

 身構える。だがフライパンを持ってくるのを忘れた。まぁ飛んでくるだろうし別にいっか。

 

「む?なんだ。ここはお前の店だったのか」

 

「少し語弊がありますね。詳しくは俺の両親の店、です。……それで、シグナムさんはなにしに来たんです?」

 

「いやなに、我が主が頼んでいた本が届いた……との通知があるとの事で、御使いとして私が行くことになってな」

 

 ……頼む?あぁ、取り寄せてたのか。

 うちは、ネットで取り寄せが出来るシステムがある。まぁ、特別な理由(身体的、精神的、その他諸々)がない限り、郵送はしないので、うちに取りに来るしか無いんだけど。……つか、

 

「八神さんが、うちを利用していたとは……」

 

 こんなところで接点があった……だと!?

 何故気付かなか……いや、八神って姓は多々あるし、仕方ないか。

 

「さて、話は戻りますが、どの本ですか?」

 

「あ、あぁ。……えっと……『結城友奈は勇者である』……だったかな?」

 

 ……八神……きっと将来化ける気がする。だっていい趣味してやがるぞ、アイツ。

 

「じゃあ少し待っててください……えっと……あ、あった。料金は先払いなんで、もう持ってって貰っても大丈夫ですよ。ありがとうございました。またのご利用をお待ちしておりm「待ってくれ!」……す?」

 

 シグナムさんが勢いよく俺を制止すると、いそいそとお金を取り出し始めた。……あれれぇ↑?おっかしいぞぉ↑?おれ、さきばらいって言ったよなぁ?

 

「……他になにか、ご用でも?」

 

 明らかに俺の『面倒臭いぞてめぇ』って視線を感じている筈なのに無視してやがる。……騎士ってすごいなぁ。まさかこんな所でそう思うとは思わなかったが。

 当の騎士であるシグナムさんはおもむろに財布を取り出すと、二千円札を取り出し俺に渡す。二千円札、殺されたんじゃ!?

 

「…………なんですか?このお金」

 

「ここは、だいたいの本が……いや、書物が揃っているのだろう?」

 

 おい、会話しろよ。いや、ちゃんと聞かれた事には答えるけども。

 

「えぇ……。まぁそうですが」

 

「『マスターガイド3』……これだけで、通じるな?」

 

 ……なるほど。そういう事か。

 俺はその二千円札を受け取り、奥からその本を取り出し、シグナムさんに渡す。

 ……話は269度変わるが、海鳴市は都会っぽく見えるが田舎だったりする。まぁ簡単に言えば、田舎過ぎず都会過ぎず、と言った所である。なので、多すぎず少な過ぎず、が丁度良かったりする………のだが、そんな海鳴市でもたまにネオエクスデスがグランドクロスを撃つ直前のように需要と供給のバランスが乱れる時がある。

 そう言ったのは、だいたい人気商品やカードゲームの付録が着いた書籍などが当てはまる。

 ……そう言った商品や書籍はまるで台風が一気に全部をかっさらって行くかの如く、すぐに棚々を綺麗に掃除していく。……後には、戦い(多々買い)に敗北した者達とレジへの行列が残るとかなんとか。

 さて、今回シグナムさんに渡したのはカードゲームの方の書籍だ。この書籍、どうやら発売30分で売り切れたらしい。

 そういった本を揃えるのも、うちの仕事だったりする。

 

「ありがとう……ありがとう……。釣りは、いらない」

 

 うわぉ……シグナムさんがめっちゃ感謝してる。しかも釣り銭キャンセルって……それ、割りと困るんだよなぁ……。

 

「ありがとう。盾街。これで私はシャマルに勝てる」

 

 ……シャマルさん……いったい何者なんだ?……あと、いくらソイツが強くても出せなかったら意味ないからね?あと、出せても冷静に対処されたら意味ないからね?

 ……シグナムさんが出ていくと、その二分後クロノがやって来た。

 

「…………いらっしゃいませ。お帰りはまわれ右して、どうぞ」

 

「……はぁ……。単刀直入に言おう。管理局に入らないかい?」

 

「ライフルとショットガン、どちらをご所望で?」

 

「えぇ……」

 

 俺は無言でライフル(電動)とショットガン(電動)を取り出す。……これは一応強盗相手に護身用を、であって本来は人に向かって撃つもんじゃない。ちなみに弾丸は塩だ。傷口にはクリティカルダメージが入る。

 

「まぁ、君はそう言うとは思ってはいたが……。……って、む?」

 

 ……とりあえずライフルとショットガンを仕舞い、こんどは飛び出すスタンガン(父作)を出そうとすると、クロノが何かに気付く。……つか、お前さっきから本棚をチラチラ見てただろ?

 

「な、なんでこんな所にロストロギアが沢山あるんだ!……だ、駄目だ……見たら、頭がっ!?」

 

 …………ロストロギアって、なに?

 とりあえず、ロサンゼルス!トロトロサーモン!メタルギア!ってのだけは思い付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんでクロノは無名祭祀書程度で狼狽してんだろう。




~その後のシグナムさん~

(どうしてクェーサーはシューティングスターを突破出来ないんだろう……)※敗北しました


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


盾街母は強い(どの方面にも)。
それを落とす盾街父とはいったい……?

……あと、なにやらまた物語がぐだりそうです……。
なんとか動かさなくては……。

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。










…………クェーサーの効果で相手を止めるタイミングが分かりません。だって止めても止めても突破されるんだもん。


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第32話『ここに、魔道書があるじゃろ?』

さて今回、様々な魔道書や魔道具が出てきますが、皆様はいくつお分かりになるでしょうか。
もし差し支えなければ、数えてみてください。

ちなみに、前回の無名祭祀書を含めると、私が数えた限りだと、13になりました。


「いや待ておかしいだろ!なんでこんなに危険物が大量にあるんだ!」

 

「……お客(クロノ)さん、もしかしてクレーマーかなにかですか?そんな事を言っても無料(タダ)で譲るなんて事はありませんからね?」

 

「違う!そうじゃない!」

 

 いったい何が目的なんだってばよ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第32話『ここに、魔道書があるじゃろ?』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「これは危ないモノなんだぞ!宇宙が何個あっても足りない!」

 

 宇宙って個数で数えるのか(困惑)。いや、そんな事はどうだっていい。今は、クロノが必死にうちの店の本を値切ろうとしているって事だ。許さんからな。絶対にうちじゃあ値切りはさせんぞ。

 

「しかもこんな……『妖蛆の秘密』に『カルナマゴスの遺言』に『エイボンの書』……。『レメゲトン』、『ソロモンの大いなる鍵』、『フサンの七秘聖典』まで……。……って、よくみたら棚の上に『輝くトラペゾヘドロン』があるじゃないか!……どうしてこんなにポンポンポンポンS級ロストロギアが出てくるんだ……」

 

 クロノが次々と魔道書ゾーンをあさってる……。それ、片付けるのメチャクチャ面倒臭かったり重かったりするんだからやめろよぉ!……と言いたいが、まぁ、アイツに片付けさせよう。それにしても、懐かしいモンがぞろぞろ出てくる……。そういや、2mの銀の鍵どこにしまったっけ……。

 あそこの本達、英和辞典とその他諸外国語辞典片手に解読したらよく分からん事が書いてあってなんとなくしか意味を理解出来なかったから本棚に入れたんだっけ……。

 ……あ、あれって確かヨグなんちゃらの拳だっけ?この間ふざけて使ったんだけど制御が出来なくて大変だったっけ……。高町の士郎さんに俺の父さんが力を合わせてなんとか押さえ込んだ所に、高町の姉である美由紀さんの名状しがたき物体X(料理)がかかって溶けたんだよなぁ……確か。本人は物体X(料理)がぐちゃぁってなって泣いてたけど高町家は安心してたんだっけ……。それと、俺もくっそ怒られた。

 

「……これは、石板?……ッ!?いや違う!これは『セラエノ断章』か!?くそっ……読んでしまったから頭が……ぐぅ……。早く来てくれ……ユーノ……」

 

 割ってくれるなよ?それも一応売り物なんだから。

 

「……君は、なんで君はこんな魔道書が沢山あるのに平気でいられるんだ!」

 

「…………はぁ?」

 

 どういうことだ?まるでクロノの言っている言葉の意味が分からんぞ?

 まったくなにをふざけた事を言ってんだ?このまっくろくろすけは寒くて頭のギアが凍っちまったか?

 

「その『なにをふざけた事を言ってんだ』って顔を止めてくれ」

 

「なら、ちゃんとした説明を要求します」

 

「…………分かった」

 

 そうして、クロノは語る。どれだけその本達が危険なのか。まぁ、要約すればクトゥルフ神話関連だから危ないよーって感じかな?途中寝てて聞いてなかったし。

 それ以前に聞く気が皆無だし。クロノの説明の最後の方にはちゃんと起きたけどフェイトさんとの会話のシュミレーションしてたからあんま聞いてなかった。

 興味なんて欠片も無いからね。仕方ないね。

 

「――つまり、これらは人間には危険なモノなんだ。だから僕達が厳重に管理しているんだ」

 

「……で?」

 

「……君は、僕の話を聞いてなかったのか?」

 

「はい。そうですが?」

 

「だから……!」

 

「だからこの本を……タダ(・ ・)で持っていく。――そう言っているって事ですよね?」

 

「あ、あぁいや、別にタダって訳じゃ……」

 

 敵意とほんの少しの殺意を混ぜてクロノに睨みをきかせてあげたら、どうやらクロノはタダで持っていく気は無いみたいだ。良かった。これでクロノから定価よりも高い値を……ゴホン、これでクロノからぼったくれる。

 ……まぁ、一応中古だし、その価格+税でいっか。これは。それくらいしても別に恨まれたりはしないだろう。

 

「……それで、いくらなんだ?」

 

「えっと……だいたい一冊安く見積もっても八千万くらいですね。で、それに消費税六百四十万を+して、八千六百四十万です。……約五冊ご購入で四億三千二百万くらいですが……どうみてもお手持ちが無いみたいですよ?大丈夫ですか?なんなら考え直す時間くらいはありますよ?」

 

「  なんだ?その法外すれすれな値段は……」

 

 なんだ?今の間。

 

「いえ、偽者だったらもっと安いんでしょうが……どうやら本物らしくって……。で、それを特別に中古価格で売ってやる……もとい売って差し上げるんですから……だいぶ優しい方だと思うんですよ。で、お答えは?」

 

 確かに、本一冊が八千万ってふざけんなちくしょうがレベルだとは思うが……仕入れ主の父さんのメモに書いてあるし、よく本をタダで譲ってくれたフェイトさん程じゃないけど、かなり美しくて迫力のある真っ赤っかの女の人が懇切丁寧に本物って言ってたんだから仕方ないったら仕方ない。

 そういや、読んだらグールになるんじゃね?って本があるって聞いたんだが、それっぽいのを読んでもグールにならなかった、訴訟。ちなみにその本を持ってきてくれた人からは腐乱臭がした。

 

「…………」

 

 ふむ。この顔は必死に悩んでる顔だ。クロノの額に流れる汗と連動してかしてないかは知らないが、そこに置いてある本も汗をかきはじめてるし……。ん?あれ?外を見たら雨降ってんじゃんか。まぁいいや。

 はてさて、クロノの答えやいかに。

 クロノが口を開く。だがその瞬間うちの店の扉が思い切り開かれた。

 

「ごめん!クロノ!遅くなった!」

 

 そこには、元気なユーノ・ゴスラビア君が……。おっと、一応お客さんに当たる訳だから挨拶"は"しておかなくちゃ。

 

「いらっしゃいませ。どんな本でもだいたい揃う『千科辞典』へ、ようこそ。はてさて、あなたはどんな本をご所望で?」

 

 もはや俺の中ではテンプレと化している。……やっぱりアレンジ加えた方がいいのかな?……カツとカレーしかり、クリフォートにスキルドレイン又はオシリスしかり…………俺がメイドっぽくなってみるとか?

 ……駄目だ、吐き気がする。……むむ?ふと思い付いたが、もしもフェイトさんがメイド服を着てくれたら…………あぁ^~。

 

「ユーノ!よく来てくれた!」

 

「ど、どうしたんだい?クロノ。そんな剣幕で……」

 

「見てくれ!このロストロギアの数!……これをどうすればいいかが、分からなくて……買おうにも僕じゃなにしたって届かない額で……」

 

「………ねぇクロノ。あおなを勧誘しに来たこと、もしかして忘れてる?」

 

「…………あ"」

 

「……あと、ここのロストロギアは何故か謎の安定性を保っているから、変に刺激しない方が得策だと思うけど?」

 

「そ、そうなのか?」

 

 ……やっぱり、メイド服はフェイトさんに似合う。……いや、フェイトさんに似合わない服なんてこの世にあるわけが無い。……いや、閻魔大王の格好をしたフェイトさんも……いいじゃないか。……って事は、フェイトさんに似合わない服なんてそれこそこの世にもあの世にも無いって事だ。

 さっすがフェイトさんだ!

 

「…………ゴホン。さて、盾街あおな。君に再三問い掛けるが、管理局に入らないかい?」

 

 ……似合わない服は無い。……そういや、高町のバリアジャケット……だっけ?もしあれをフェイトさんが着たらどうなるんだろう。……高町が着ると大魔王だが、フェイトさんが着ると、熾天使を天元突破する女神になると思う。

 

「……盾街?」

 

「あぁすいません。で、なんの話でしたっけ?」

 

「……管理局に入らないか、という話なんだが?」

 

「先程お断りした筈ですが……。もしや鳥頭だったりするんですか?」

 

「いやそう言う訳じゃ…………。……仕方ない。言いたくは無かったが高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやてとその守護騎士と元管制人格は管理局に入っている」

 

「…………それが、なにか?」

 

「彼女達はこの地球の中学校を卒業すると、ミッドチルダに移住するんだが……」

 

 …………え?

 いや、それ以前にミッドチルダってなんだ?俺、そんな国も地名も地区も知らないぞ?

 

「……そもそもの話なんですが、ミッドチルダとは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もしかして聞いて無かったのか?……ミッドチルダは僕と母さん、そしてフェイトの母親とアルフとリニスの故郷であり…………時空管理局の発祥の地だ」




~その頃のはやてさん~

(今ごろ……なのはちゃんなにしとんのやろう。リハビリ、面倒臭いなぁ……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


書いてて気付いたんですが、今までミッドチルダって単語出てきてませんでしたね(汗)。

それにしても、VIVID楽しみですね(自動車学校から目を逸らしながら)。

感想、質問、批評、誤字脱字待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。







さて……もうそろそろG.O.Dの準備でもしときましょうか。


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第33話『異変は突然に』

いつものように文章があやふやなのはどう考えても私の頭が悪い所為です。
文章力が欲しい……。


「つまり、中学を卒業する……この世界では義務教育、まったかな?……それを終えると同時に彼女達はミッドチルダに移住する。会えなくなることは無いが……確実に会えない日が長くなるだろう」

 

「ぐぬぬ…………」

 

 彼は……盾街あおなは悩んでいるように見える。

 ……だけど彼にはなんとしてでも管理局に入って貰わなくちゃいけない。その為に僕は来たんだ。

 信じられない話かも知れないが、彼はもしかしたら……僕達の……いや、人類が進化をする為に必要になるかも知れない、と管理局の上層部が発言したからだ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第33話『異変は突然に』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 僕が彼について知ったのは、昨日の事だった。

 色々と話をしている中で、コイツは頭がどうかしてるんじゃないか、と思う所もあったりはした。検査をしたって魔力は無いし、アースラの機材が壊れたのかな?とすら思っていた。いや、今でも思いたい。

 ……だけど、彼は僕達の行動と思想の常に二歩先を進んでいるように動いているんじゃないかってくらいに予想外な行動をとる。

 今回のように、闇の書の管制人格相手に躊躇なく挑み、そして死ぬことなく、なんの犠牲も出さず、帰ってきた上に闇の書の呪縛を解く。……そんな荒業をやってのけた人物を管理局が放って置くわけがない。

 ……更に言えば、彼はどうやらレアスキル持ちだと言うことが分かった。リインフォース曰く、

 

『……盾街か。アイツはレアスキルを持っている。それもかなり人間らしい、な』

 

 と言っていた。リインフォースもそれに似たようなのを持ってしまったらしいが、教えてはくれなかった。

 それで話を続けるうちに、どうやらナハトヴァールも劣化らしいが彼と同じレアスキルになってしまったらしい、そこで話をすると、ようやく答えを得ることが出来た。彼女は

 

『んぁ?盾街と同じレアスキル?あぁ。確かにそうだな。……無理矢理防御プログラムを改竄もとい奴の『愛』とやらに汚染されたようなものだからか、劣化したんだが』

 

 ……どうやら、今のナハトヴァールはリインフォースと盾街あおなの両者の力を劣化して受け継いでしまった為、非常に弱々しくなっており、なにもしない限り無害な存在になってしまっている。

 ……さて、盾街あおなのレアスキルだが、彼は『感情変換資質魔力』と言うのを保持しているらしい。…………そんな馬鹿な。正直にそう思ったよ。

 だけど、彼の爆発的に増える魔力、そして守護騎士や元管制人格、元防御プログラムの証言を聞き、嘘では無いと発覚。

 ……そして、更に驚く事に、どうやら盾街あおなのそのレアスキルには『感化能力』も付属してついてきているらしい。

 なのはがリンカーコアの魔力を蒐集されたすぐ後だと言うのに、突然発生した魔力によってバリアジャケットの復元に回復魔法を使ったと言う。ユーノ曰く、

 

『その時のなのはは、なんと言うか……怒っていた(・ ・ ・ ・ ・)。……なのはのレアスキルは『魔力収束』だけの筈なのに……あれはいったいなんだったんだ?』

 

 と、語っている。

 ……本当に、いったいなにが起こっているんだ?

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ……今日の晩飯なに作ろう。いや今はそんな事はどうでもいいのか。

 ……管理局に入れ、クロノはそう言った。正直に言えば入りたくない。なんていうか、色々と面倒臭そうってのが本音だ。そんな面倒臭そうな所で俺は働くのは嫌だ。…………でも、フェイトさんと別れるのはもっと嫌だ。

 ここで断ると多分会える会える詐欺に会いそうな気がするし……それに、俺はフェイトさんを守るって、支えるって、誓ったんだ。なら、どこだろうと着いていかなくちゃいけない。……流石にストーカーレベルって訳じゃ無いけど。

 ……フェイトさんの為だフェイトさんの為だフェイトさんの為だフェイトさんの為だフェイトさんの為だ!

 必死に反対する俺の理性を説得(洗脳)し、俺は覚悟を決めてクロノに告げる。

 

 

 

「……俺は、管理局に入r「お邪魔します」……」

 

 なのに店内に入る音とお邪魔しますって言葉に邪魔された。

 邪魔した奴に恨みましましの目線を向ける。そして声を大にして言ってやるんだ。邪魔すんならカエレ!って。

 その人は少しくすんだショートの茶髪。深い蒼の瞳。そこはかとなく落ち着いた雰囲気(変換できた)。なんとなく感じる大人びたオーラ。

 ……あれ?なんかこの人どっかで見たことがあるような……。とてつもない既視感がビンビン。

 

「……あ、いらっしゃいませ。だいたいなんでも揃う『千科書店』へようこそ。貴女はなにをご所望で?」

 

 とわいえ挨拶を怠る訳にはいかない。

 

「でしたら貴方を……『盾街あおな』を下さい」

 

「あぁすいません……。俺は既に在庫切れでして、再入荷の予定は無いので諦めて可及的速やかに頭痛薬を飲むか精神科で頭の治療をしてもらうか豆乳の絞りかすのおからに頭を突っ込んで理想を抱いたまま溺死してください」

 

 ……なんだ。ただの頭のおかしい人か。

 

「そうですか……なら、貴方の心だけでも」

 

「……残念ですが……それも半年前に在庫が切れてしまいまして」

 

「むぅ……」

 

 ……なんでだろう。何処と無く高町みたいな雰囲気を感じる。やっぱりどっちも頭がおかしいからなのかな?

 

「ならば仕方ありません。……でしたら『システムU-D』は置いてませんか?」

 

「……U-Dとは?」

 

 システムキッチンとシステムベッドとトランザムシステムならあるんだが。

 

「アンブレイカブル・ダークを略したモノです」

 

 直訳すると闇は砕けないって所かな?

 ……まさか、コイツは敵のスタンド使い!?そういうのは四部でやって欲しいのだけど……。

 するってぇと、アンブレイカブル・ダークってのはこの人のスタンド?いや、この人はそれを探しているって話……。いや、まさか鼠のスタンドみたいに同じのが複数あるとか?そうなったらハンティングをしなくてはならない。まぁ、俺にかかればそんなこと飴をかじりながらだって出来る。俺は本気だす本気だす詐欺はしない。

 ……それと、クロノとゴスラビア君は見てないで助けろや。

 

「……ちなみに、貴女のお名前は?」

 

 とりあえず、情報もないのにここで暴れられたら(魔道書的な意味で)困るので、少しでも情報は仕入れときたい。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、申し遅れました。私は『タカマチナノハ』を素体とした『闇の書』の破片より生まれし理のマテリアル、『星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)』こと、シュテルです」

 

 

 

 

 

 

 

 …………うわぁなんてかっこいい名前なんだろうすごいなーあこがれちゃうなー(現実逃避)。

 ……つか、道理でなんか見覚えがあると思ったよ。

 高町を素材にしてんのか……ってそれ、アカン奴と違う?

 

「貴方には私のことを愛称のしゅてるんと呼んで頂きたい」

 

 わけがわからないよ。そんなキラキラしてる目でこちらを見られても反応に困るよ。

 

「……『闇の書』の破片……だと!?」

 

 うぉーい復活が遅いぞぉー。

 

「『闇の書』は『愛』とか訳の分からない力に浄化された筈なのに……何故!」

 

 ……俺、クロノにランスロプライムワンキルを叩き込んでやる。兄さん(No.23)無二(No.62)の攻撃を絶対に食らわしてやる……。いや、ノータイムヨグ拳でもいいかも知れない。何故愛が分からないんだ。

 ……クロノの事はさておき、しゅてるんの話だ。……そういやふと思い出したんだが、リインさんはナハトを脱皮した時にナハトをまるで卵の殻をぶちまけるかのように海にばら蒔いていたような……。まさか……。

 

「はい。今あなたが考えている通り、あの時にばら蒔かれた破片がこうして形になっております」

 

 俺の頭の中と言う最高で最後のプライベートェ。

 

《もとから無いわそんなもの》

 

 昨日ぶりにフライパンの声が聞こえたと思ったら酷いこと言われた。

 ……つか、さっきのしゅてるんの『あなた』って完全に夫婦のそれだったような気がしたんだが……。




~その頃のプレシアさん~

※現在時空移動中
(このネクロノミコンすごいよぉぉぉ!流石アルハザードの魔・道・書!……これなら、すぐにでもフェイトに会えるッ!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


前回アル・アジフこと、ネクロノミコン(アル・アジフ=ネクロノミコンで合ってますよね?違ってたらごめんなさい)が出てこなかった理由です。


……あと、つい勢いで主人公のレアスキル書いちゃいましたけど、とりあえずここで詳しく……今の所の決定事項ですが……

『感情変換資質魔力』
・ある一定を超えた感情を魔力へと変換する
・限界値はその人の耐久力
・感情が萎えてしばらくするとその魔力は完全に消滅する
・たまに伝染する(本作では感化)
・脳波コントロールは出来ない

……今の所ではこんな所ですかね。
多分後々増やしたくないですが増えるかもしれませんが……。


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第34話『良妻兼ボッ』

とりあえず復習としてvivid買って読んでたり、真紅眼強化で喜んでたり、エルシャドール・ネフェリムが禁止に逝って嘆いていたら五日経ってました。


 私がソレを知ったのは本体から切り離されてからでした。

 ですが、初めはソレがなんだったのかが分かりませんでした。……ただ、心が満たされる。ソレはそんな気分になる存在でした。

 ソレを感じ、少しほんわかしていると、私と同じく本体から切り離されたようなモノ(恐らくリンカーコアの魔力)だと思われるピンク色と紫色の球が同時に私の中へと入り、私と同化していき、いつの間にか私は今の私の姿へと変わっていました。それと同時に名前と役割も頭の中に浮かんで来たのです。それに驚きニヤリとするのですが……上空では戦闘が行われておりましたので、私は『王』と『力を司るマテリアル』と共に、私達のオリジナルにバレないようこっそりとそこから離脱しました。

 

 

 

「――とまぁ、離脱したにはしたんですが……離脱した瞬間に私の中にまだ知らない『貴方という存在』への愛しいという想いが生まれまして。で、今はそれを確かめる為にここに来ています」

 

「…………とりあえず、しゅてるんは早すぎた厨二病だと言うのだけが理解できました」

 

 解せません。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第34話『良妻兼ボッ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「…………何故です?」

 

「いや、そんなトンボみたいに目の前で指をくるくる回されたあとみたいに首を傾げないでください」

 

「貴方の手で空から降ってくる雪や散り行く桜の花びらのようにくるくる踊らされるのでしたら何も言いませんが」

 

 駄目だコイツ早くなんとかしないと。

 ……いやまて。よくよく考えてみたらなんで高町を素材にしたのに俺にこんなに好意を寄せてるんだ?高町は俺を毛嫌いしている筈……だと言うのになんでこんな風な性格のしゅてるんが出てきたんだ?

 流石に俺はラノベやギャルゲやエロゲの主人公みたく鈍感じゃない。だから気付ける訳で……気付いた所で謎は深まるばかりで……。

 

《どの口が言うとる》

 

 喋ってないからどの口とは言えない。

 

「………では、踊りましょうか」

 

「唐突に変な事を言わないでください。残念ですが、ダンスは…苦手なんです」

 

 唯一踊れるのはフェイトさんへの求愛ダンスぐらいだ。だが確実にフェイトさんにwhite eye(白 い 目)で見られるからやらないけど。

 

「そうなんですか……」

 

 悲しそうな顔をしているが、俺に罪悪感は生まれない。生まれてくるのはフェイトさんに会いたい気持ちとしゅてるんに対する疑心暗鬼だけだ。

 

「……話は戻るが……」

 

 あ、クロノいたの?存在が薄かったから忘れてたよ。

 ……あれ?ゴスラビア君は…………っておいゴスラビア君後ろで魔道書読んで発狂してるじゃねぇか。それを無視するんじゃねぇよクロノ。

 あとで精神分析(物理)でもやっといてあげよう。

 

「……君の……いや、君達の目的はなんなんだ?」

 

「盾街あおなを手に入れr……ゴホン。システムU-Dを手に入れ、私達がそれぞれ各個とした『個』を手に入れる……今はそんな所でしょうか」

 

 なんだろう……。それ絶対に建前だよね?って突っ込みたくなった。

 つか、こんなのがあと二人もいるのかよ……。もう勘弁してくれ……。

 

「……最後に聞かせてくれ。まさかとは思うが、君達も盾街あおなと同じようなレアスキルを持っているのか?」

 

 ……れあすきる?なんだそりゃ、俺それ聞いてねぇぞ?

 俺としてはレアよりはミディアムが好きなんだが……。

 

「そうですね……。では、これだけ答えて置きましょう。"『闇の書』に付属していたモノ全てを『愛』が感化した"……。私が言えるのはこんな所です」

 

「……なっ!」

 

 おい、説明しろよ。説明責任を果たせよ!

 

《詰まる所、お主の力が周りの者に伝染すると言う事じゃよ》

 

 お前が説明するのかよ。つか、俺の力ってなんだよ。話はそこからなんだが。

 

「では、とりあえず私はここで失礼します。次に貴方達会えるのは恐らく一週間後でしょう。……それでは」

 

 そのまましゅてるんは扉から出ていった。結局、何がしたかったんだろうか。

 後には、唇を噛み締めて俯いているクロノと、訳が分からなくてボーッとしている俺、そして発狂してぬとねの区別がつかなくなっているゴスラビア君が残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あぁ、そういえば、管理局に入るかどうかの話なんだが」

 

「仕方ないですが、フェイトさんの為に入ります……。後、今日はもう疲れたんでそこのお荷物(ゴスラビア君)連れて帰ってください」

 

「……そうか。なら……」

 

「……出来れば、そう言ったのは今度の土日にしてくれません?……あと、俺のその、れあすきる?ってなんです?」

 

「じゃあ、その事も含めて今度の土日にでも説明しよう」

 

 ……その後何度も何度もしつこく聞いたが、クロノは『コンドノドニチ・コンドノドニチ・コンドノドニチ』とまるで新しい言葉を覚えたてのインコみたいになってたので、作画崩壊パンチ(=腹パン)を喰らわしておいた。

 あと、とりあえずゴスラビア君には45度チョップをした後、クロノと共に本を片付けさせ帰ってもらった。もう二度と来ないで欲しい。

 

 

 

 

 

 

 さて……6時だし店を閉めるとしよう。

 うちの本屋は朝8時に開き、6時に閉まる。理由を聞いたら父親曰く『適当』だそうだ。……本当に大丈夫なのだろうか?まぁ、どうせそんな事は店員兼息子の俺が考えても分かる事じゃないから考えなくてもいいか。

 とりあえず店内の掃除と……道具の点検だけして帰るとしよう。……明日も学校だし。

 そんなこんなで店じまいをしっかりとし、外へ。やっぱり12月だし、肌寒い。……こんな時にフェイトさんがいてくれたら俺の心はほっかほかになるんだろうなぁ……。あぁいや、こんな寒い中にフェイトさんを俺の私利私欲の為だけに晒すなんてダメだ。

 ならどうしようか……。今度から使い捨てカイロでも持っていこう。

 そんな事を考えつつ、帰路につく。太陽は既に沈み、辺りは家に帰る人達の喧騒に包まれている。この商店街ではいつもと変わらないそんな風景の、筈なのに。

 ……視線を感じる。いや、俺は別にこんな時にまで厨二病を発動させる程暇って訳じゃない。そんなこと(厨二病を発動)させるよりはフェイトさんの事を考えた方が有益だ。

 ふとその視線の方向を振り向くも誰もいない。

 そのままだるまさんが転んだの要領で何度もしつこく振り向くが、見付けられない。……誰だろう。

 

 

 家に着いてもその視線は途切れる事なく俺をつけ回していた。……ちくしょう。ストレスで円形脱毛症になったらどう責任を取ってくれるってんだ。

 

「……ただいま帰りました」

 

 その視線は家の扉を開くと同時にまるで一発屋芸人みたいにパッと消えた。本当になんだったんだろう。最近は色んな事が起きすぎて俺の頭の容量じゃ『フェイトさんは最高』だと言うことしか理解できない。

 

「あーお帰りー」

「お帰りなさいませ」

 

 …………ん?

 奥から女性の声が二つ。片や母さんというのは分かった。しかしもう片方てめぇは誰だ。父さんはそんな声じゃない。そんな高町の声を少し丁寧口調にしたような……………あれ?今日聞いたような。

 

「……しゅてるん、何故しゅてるんがここに」

 

「両親への挨拶は基本、そう聞きました」

 

 あぁ……理のマテリアルってこういう意味か。

 根回しって意味かな?

 

「あおな~。どこでこんな可愛くていい子見つけたよの~。お母さん、こんな子ならあんたを心配なく託せるわよ?」

 

 oh外堀埋められてやんの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……いや、それ以前に

 

「しゅてるんはあの時『次に貴方達会えるのは一週間後』、とか言ってませんでしたか?」

 

「あぁ、それはあくまであなたを除いた『貴方達』という意味です」

 

 どういうことなの……。




~その頃の王様~

(シュテルに単独行動の許可を出したのは我だが……。あの時の少し狂気じみた瞳、大丈夫であろうか……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


未来組……誰を出しましょうかねぇ……(今後の展開を考えながら)

あぁ、後、今回のリミットレギュレーション、どうでしたか?
私としてはユニゾンビが逃れてくれて嬉しい限りでしたが、シャドールとクリフォの構成を考え直すのが少し辛いって所ですかね……。


さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第35話『感情変換資質魔力』

主人公のレアスキルは条件さえ満たせば、誰でも会得出来ます。


 俺は今、ミッドチルダなんて所にいる。な、なにを言ってるか以下略。

 そんで、訓練場とか言う所で両手にゴツいグーロブを付け、拳を構えたお姉さんと対峙している。名前はクイント・ナカジマって言うらしい。異世界で日本人ちっくな名前の人に会うとは予想guyデース。

 ……いや、まさかクロノの『コンドノドニチ』が明日(今日)だとは思わなかった。これは罠だ!……と言いたいが

 

「あおな!頑張って!」

 

 こうやってフェイトさんが応援してくれるんだから全力で頑張っちゃう。

 ちなみにしゅてるんは家に置いてきた。ハッキリ言って、この先の戦いには着いてこれそうにない……もとい着いてくる気は無いらしく、俺の部屋でゲームをするらしい。……物凄く嫌な予感がするが、フェイトさんに応援されるだけでそんな些細な事は頭から吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第35話『感情変換資質魔力』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、事の発端だが土曜日だから家でだらだらごろゴローニャってしてたら、いきなりクロノがフェイトさんとアルフさんと八神と守護騎士達にリインさんにナハトにゴスラビア君、ついでに高町を引き連れやって来て、『みんな黙って俺に着いてこい イェア!』とでも言わんばかりに俺を引っ張るもんだからついイラッて来て……無言で鳩尾の辺りを裏拳で全力で小突いてあげた。ちゃんと踏み込みはいれてあるから心配はしなくていい。

 で、クロノがえづいている間に俺は母さんにちょいと出てくるとだけ伝え、クロノを引き摺りアースラって所に行く事にした。

 クロノの案内により、フェイトさんと初めて出会った思い出の場所である港に着くと、そこにはいつぞや(一昨日)のホワイトベースモドキが浮いていた。

 ……これがアースラ、だと?ひょ~……デケェ。つか、よくこんなのを港に止める事が出来たよなぁ……。

 そのまま鳩尾をさすっているクロノの案内のもと、アースラへ。

 中は相変わらずメカメカしかったけど、クロノに案内されるまま突き進むと、そこには立派(笑)な日本庭園があった。

 そこにはニッコリとこちらを見ているリンディさんがいた。こっちみんな。こっちくんな。

 

「待ってました。では、座っててください。しばらくすればミッドチルダに着きますから」

 

 そう言うリンディさんの顔は見ていて怒ってるって印象がある顔だった。なんで怒ってるんだろう。

 あ……おい、その抹茶こっちに近づけんじゃねぇ。あからさまに砂糖を親の仇よろしくいれてたのにそれをこっちに押し付けんじゃねぇ。この年で糖尿病マッハとか嫌なんだよ。

 

 

 

 

 しばらくすると、どうやらミッドチルダに着いたとの報告が。やっと外に出られる。

 外の光景を目にし、驚きを隠せない。だって……車が宙に浮いてるんだぜ?……なんて近未来チックなんだ……。……まぁ、それ以外はビルが高い程度だったが。

 ちなみに、フェイトさん達はフェイトさん達で用事があるらしく、俺とは別行動のようで、俺の案内はリンディさんがするそうだ。つまりリンディさんと二人きりって事だ。……フェイトさんと一緒にいられないとかふざけんな。

 

「さぁ、こちらですよ」

 

 そんなリンディさんの言葉を右から左に受け流しながら聞いてたら人とぶつかってしまった。

 体格差がある所為で俺は吹っ飛ばされる。

 

「あ!ご、ごめん!大丈夫かい?怪我とかは……」

 

 どうやら俺を吹っ飛ばした人はいい人らしい。普通なら罵声のひとつも飛び出るようなもんなんだが、それがないって事は多分いい人だ。

 

「……いえ、俺がボーッとしていたのが悪いので……すいません」

 

「いや、僕も余所見をしててね……。本当に大丈夫?」

 

 まさかこんなに心配されるとは思わなかった。

 

「盾街くん?なにしてるの?……って、あら、ティーダ・ランスター一等空尉じゃないですか。どうしたんです?」

 

「ご無沙汰してます。リンディ・ハラオウン提督。今日は非番なのでちょっと妹と買い物に出かけてました」

 

 ふと、ティーダさんの後ろを見ると、オレンジのツインテールの小さな7歳くらいの少女がいた。

 ……この子が妹さんかな?

 そんな事を考えていると、ティーダさんとリンディさんの会話は終わったみたいだ。

 

「では、僕はこれで」

 

 ……なんだろう、なにか嫌な予感が胸に引っ掛かるんだよなぁ、この人。俺の嫌な予感が当たる確率は3割だべ。なんていうか3年後に死にそう(小並感)な気がするんだよ。いてもたってもいられないから一声掛けておくとしよう。

 ……まぁ、俺がなにを言ったとしても変わらないかもしれないだろうけど、なにもしないよりはマシだと思ったんだ。詰まる所、俺のただの自己満足って奴だね。

 

「あの、ティーダさん」

 

「うん?どうしたの?」

 

「もし、危なくなったとしても、決して諦めず、危険な時こそ大切な人の顔を思い浮かべて頑張って下さい」

 

「え?……あ……うん。分かった。肝に命じておくよ。……じゃあ、行こうかティアナ」

 

 これでいい。……のかどうかは分からないけど、なんとなく、なんとなく大丈夫な気がする。俺はこれで満足したぜ。だからリンディさん、引っ張るのはやめてくれ、服が伸びる。

 

 

 

 リンディさんに引っ張られ、連れてこらたのはまるでエヴァ零号機がいたような、真っ白で四角い部屋だった。ふと上を見たら窓があってそこにはフェイトさん達がいた。

 あ、フェイトさんが手を振ってくれた。……やっぱり可愛いなぁ……。

 

「さて、ここで今から貴方の力量を測りたいと思います。……本来なら試験官なんですが、手が空いている者が見付かりませんでした。ですので、今回はたまたま手の空いていたクイント・ナカジマ准陸将に頼むことにしましたので」

 

 ……なんだって?

 

「すいません。話聞いてませんでした」

 

「じゃあ、頑張ってください」

 

 あ、リンディさん無視しやがった。

 もっとも、聞く気は皆無だったが。

 

「えっと……君が盾街くん……であってるんだよね?」

 

「ア、ハイ。そうですが」

 

「さっきも説明があったと思うけど、クイント・ナカジマって言うの!よろしくね!」

 

 両手をホールド。上下にシェイク。(やっこ)さん手につけたグローブの事忘れてやがる。

 まぁ、何が言いたいのかと聞かれたら一言、手首ェ。

 

「じゃ、始めよっか。お互い、全力を尽くそう!」

 

 そう言って紫のポニーテールを靡かせながら後ろを振り向き、6歩前へ、そして再びこちらに振り向き拳を構えた。

 

 それがさっきまでのお話。

 

 今?腹部を殴られて壁にメリィしてますよ。なにあの威力。フライパンが(次元を超えて)飛んで来なかったら即死だった。

 いや、だって目の前でいきなり消えたぁっ!?って思ったら次の瞬間には腹部に近付く右拳。

 あ、これ死んだって思ったが唐突に召喚されたフライパンの火の当たる部分で拳を防御するも勢いを殺せずそのまま後ろに全速後退からの壁に。本当にこのフライパンってなんなんだ。

 

「どうしたの?これで終わり?」

 

 いやぁ、俺の動体視力落ちたのかな……?いや、フェイトさんじゃないからこそ見る気が起きないんだ。

 終わってほしい……心の底からそう思う、が、フェイトさんが応援してくれたんだ。ここで負ける?ハハッふざけんじゃねぇ。

 

「そんな馬鹿n「そりゃあ良かった」

 

 唐突なアッパー。おい、立ち上がる最中に顎狙うってそんなの、ズルじゃん!そもそもの話で舌噛んだらどうすんだ。

 う~ん……。打ち上げ花火ってこんな気分なのかな……。

 とりあえず天井付近まで近付いたので、落ちないようにフライパンの柄を天井にぶっ刺す。

 さて、問題はこれからだ……。




~その頃のなんだかんだであおなを評価しているヴィータ~

(おいやめろ!そこでお前が負けたらアタシが弱いって事になっちまうじゃねぇか!)


◆◇◆◇◆◇◆◇


本当はここで出すつもりじゃなかったんですが……ここで出して置かないと出す時が無くなると思ったので一応ティーダ・ランスターさん登場です。
この後、どうなるかはティーダさん次第。


クイントさんのキャラが思った以上に掴みづらかったです……。まぁ、その辺はなのはイノセントとかで補完して行こうと思ってますので、もし少しでも変な所があったとしても、出来れば気にしないで頂けたらありがたいです。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第36話『DSAAって?』

予想以上にクイントさんの情報が少なすぎてこんな事になってしまいました。


 ……やっぱり、僕は彼が分からない。

 闇の書の管制人格……もといリインフォースと戦い、暴走体とも戦い、生き残った。……だと言うのに、これだけ見れば弱いと思える。

 元々身体能力は低く、運良くたまたまその時だけレアスキルが発動していたのか、それともかなり格上でないと発動しないレアスキルなのかはまだ分からない。そう言えば……彼にレアスキルの事を説明するのを忘れていたが……まぁ、後でいいだろう。

 ……そんな時、ふと気付いた。

 

「母さ……リンディ提督、彼、デバイス持たずにバリアジャケット無しで生身で戦ってますが……これは……?」

 

「え?……あ"っ……」

 

 ……やっぱり彼は僕の予想を容易くいい意味でも悪い意味でも超えてくれる存在だと確信した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第36話『DSAAって?』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 俺達の問題はこれからだ!

 ……なんて事を考えても特に意味は無い。本当になにも出来ないから困る。

 ふと下に目をやると、下ではクイントさんが伸脚してた。

 余裕じゃねぇか、まぁそりゃそうだろうて。

 つか、こんないたいけな十歳児をフルボッコにしてリンディさんは楽しいのかねぇ?楽しいからこんな事をしてんだろうけどね。

 さてさて、こんな事をしても状況は変わらないし、もう行くか。

 天井に刺さってるフライパンを抜いt……抜い……あれ?抜けない。

 

《お主が強く叩き付けるように刺したからじゃろうが……。儂の体半分(柄の部分)が刺さっとるんじゃぞ?……そう簡単には抜けんわ》

 

 おうっふ。じゃあなにか?素手でクイントさんと殴り会えって?ふざけんな、いやマジで。

 つかお前、変形出来た筈だろ?

 

《すまんのう。次元を超えるのにちと力を使いすぎた》

 

 てめぇ!……いやまぁ、助けてくれたのには感謝してるけども……。

 その後も何度か左右ぅん、前後ぉんとグリグリしてみたが、微動だにする程度。

 ……仕方ない。あとで抜いてもらおう。

 とにかくその場から飛び降り、足を捻挫しかけながらも着地。

 

「あれ?フライパンはどうしたの?」

 

「上に置いてきました」

 

 そう言って人差し指を上に向ける。それと同時にクイントさんも上を見上げる。

 

「……もしかして、元々素手だった?」

 

 それだったら苦労はしてないよ多分。

 ……一応、まだ攻撃手段は残ってたりするんだが……流石にヨグ拳はフェイトさんを巻き込む可能性があるから却下するとして……。他に……他に……おかしいなぁ、思い付かない。

 ……あれ?俺ってばもしかして非力?

 

「あの!すいません!」

 

 そんな時、リンディさんの声がした。

 

「どうしたんです?リンディ提督」

 

「いえ、あの……実は彼、デバイス持ってなくて……このままだと大怪我をする可能性がありまして……」

 

 デバイスってなんだよ。電子回路を構成する基本素子?……字から考えるとしたら……出刃椅子?包丁なら知ってはいるが、椅子もあるのは知らなかった。もしかしてミッドチルダには他にも出刃シリーズがあるのだろうか。凄いなぁミッドチルダは(呆れ)。

 

「そこで、これを使ってもらえればいいかと思いまして」

 

 手渡されたのは首からかけるタイプのドッグタグだった。……おいおい、俺は兵士になる気は無いぞ?

 

「これは、『D(ディメンション) S(スポーツ) A(アクティビティ) A(アソシエイション)』で使われる公式試合用の管理タグです」

 

 D4Cとかなら知ってるがそれは知らない。

 

「つまり、DSAA公式ルールでやるって事ですか?」

 

「はい。お願いします」

 

 それだけ言ってリンディさんは出ていった。おいルール説明しろよ。

 ……とりあえず、ちょいと弄ってみよう……。ふむふむ。英語はさっぱり分からんが、とりあえずライフってのは分かった。

 ……ライフ12000って多くない?8000で慣れてる身からすれば、なんとなく違和感がある。

 

「懐かしいなぁ……。あ、えっと盾街くんは知らないだろうけど、私昔出てたんだよ?」

 

 そんなどうでもいい情報はいらないのでルールを下さい。

 

「とりあえずルール説明するけど、基本は1R(ラウンド)4分で、規定のラウンドを戦うんだよ。……この場合は……1Rでいっか。で、戦闘はこんな風にライフ制で、双方ともに初期数値は固定。どちらかの攻撃がヒットした際にはダメージが出てきて、そのライフが0になった方が負けになる。……所謂、リアル格ゲーって所かな?」

 

「でもそれって危なくないですか?」

 

 怪我とか、怪我とか…………怪我とか?

 

「それも心配ないよ。それがある間は攻撃によるダメージは全部魔力ダメージになるって話だし。……まぁ、『クラッシュエミュレート』ってのがあるけど、これは経験してみれば分かるか」

 

 なにその不穏な単語。聞いた瞬間背筋がゾクッてしたんだが。

 

「じゃ、再開しよう!」

 

 えっ待って。……つまりこれから4分間あの人と戦えって事だろ?……ってあれ?なんかクラッと来たんだけど……。

 

あおな:12000→10000

 クラッシュエミュレート:脳震盪

 

 なんか2000くらいゴリッと減ったと思ったら脳震盪も付与って…………なんだこれ。

 ……あぁなるほど、これが『クラッシュエミュレート』……直訳で破壊模倣って所か?どっちかってぇと再現に近い気がするけど。

 ……つか、さっきのダメージいらないんだけどなぁ……。

 何て言うか、脳震盪感あるよなってのが無かった筈なんだけど……。あれか?普通の人ならって事か?なんだろう、理不尽さを感じる。

 とりあえずルールは理解した。

 

「余所見してていいの?」

 

 理解した瞬間これだよ。とりあえず顔面を狙った右拳は顔を右に傾ける形で回避。からの返す刀で左手でカウンター腹パン。

 

「ぅ……。いいもん持ってるね」

 

クイント:12000→11600

 

 うそん。400って……基準が分からんからなんとも言えんが。

 

「じゃあ、お返しに……」

 

 えっ待って。なんかクイントさんの左拳に付いてるグローブの歯車が回転を始めたんだけど!?なにこれ、黄金長方形?無限の回転?

 待ってそれ多分冗談にならないダメージになりそうな気がするんですけど!?

 とにかく後ろに避難だ避難!

 

「『リボルバーシュート』!」

 

 ちょっ!?衝撃波が飛んできただとぅ!

 こうなりゃ、しゃがんで回避するしかねぇ!足を折り曲げ蛙の格好に。衝撃波は俺の髪の毛を連れて上を通過。プチっプチって地味に痛い。

 

あおな:10000→9999→9998→9997

 

 再現細かいなおい。

 ……とりあえず、髪の毛1本が1ダメージと考えるとしたら俺の拳は髪の毛400本一気抜きしたようなモンって逆算出来る訳か。そら確かに痛いわな。

 うぉ、ふと後ろを振り向いたら壁が粉砕してたよ。……当たってたら怪我しちゃったテヘペロじゃ済まないよな絶対に。

 なんにせよ、いつまでも蛙の格好じゃあれなんで衝撃波が止まると同時に床を蹴る。その推進力を生かしたままクイントさんの両足にタックルする。

 クイントさんはそんな事を想定してなかったらしく、バランスを崩し倒れた。

 

 前のめりに。

 

 その所為か、俺は潰された蛙のような声を出してしまう始末。

 なお、クイントさんが倒れた際に、俺の身長が低かった為、俺の(かかと)がクイントさんの鳩尾にダイレクトアタックするという奇跡が起きた模様。

 

クイント:11600→11500

 

あおな:9997→9987

 

 それでもダメージは地味って言うね。

 

「いったた……。度胸あるね、盾街くんって」

 

 う~ん。狙ってやった訳じゃないんだけどね。

 さて、ここからどうするなんだけど……動けないのよね。

 だっていくら女性って言っても立派な大人な訳だ。それが十歳児の上に乗ってるんだぜ?……身動き取れねぇ。

 いやぁ無様だなぁ俺、格好悪い……。

 

《あぁ、主よ。そこから動くでないぞ?》

 

 動きたくても動けねぇっつってんだろ。

 

「ぶふっ!?」

 

 突然クイントさんが吹き出したような声を出したが何事!?

 

クイント:11500→1100

 クラッシュエミュレート:頭蓋骨陥没

 

 ……なんか、頭蓋骨陥没って表示されてるんだけど……生きてるよね?この人。……気絶してる?いったい何が……。

 なんとかクイントさんの下から這い出る。すると、クイントさんの頭には、フライパンが……。あぁなるほどさっきの衝撃波で壁に衝撃が行って、そのお陰で天井から抜けた、と。

 奇跡は起こすモノではなく起きるモノとはよく言うが、この場合はどうなんだろう。




~その頃のリンディさん~

(フライパンが落ちてきた時、彼はクイントさんの動きを止めていた……。まさか、彼はあらかじめクイントさんの行動を読んでいた、と言うこと?)


◆◇◆◇◆◇◆◇


ありのまま起こった事。
BOAとGODを合体改変したモノを書こうとする→そう言えば管理局のフラグを回収して無かった→クイントさんとのバトル→早く終わらせよう→予想以上に長引く→どうしてこうなった……。
次回にはちゃんと終わらせてBOAとGODをくっつけたようななにかを始めます。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。








DSAAルールって分かりにくい。


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第37話『少しずつ変わる恐怖(ポジティブ)』

クリアウィング(ウルトラ)が単品で700円くらいで売ってあったので、とりあえずの意味を込めて買ったんですが、後日CROSを6パック買ったらクリアウィング(ホロ)が出ました。
箱買いでは出なかったのに……。


 とりあえず、気絶してるクイントさんを突っつく。

 ……返事はない。ただのクイントさんみたいだ。

 

「うっ……」

 

 コイツ……動くぞ!

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第37話『少しずつ変わる恐怖(ポジティブ)』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「あ……れ?……私」

 

 何て言うのか、生きてて良かったと言うべきか、ここでトドメを刺しておくべきと言うか、どうしようか。

 ……ふと思ったんだけど結局俺ってばただ避けてただけだった訳だし、ここで攻勢に出た方がいい……かも知れないけどやっぱりそれって端からみたら完全に悪役でイケメンがやればそこそこいいんだろうが、俺みたいなのがやっても格好悪いだけだよな。

 ならどうしろと?

 

「そ、そこまでです!」

 

 そんな時、息を切らせたリンディさんがやって来た。ソコマデデス?なんで来たんだ?

 

「って言うか、なにしに来たんです?まだライフは残ってますよ?」

 

「いえ、10秒以上ダウンしていたので」

 

 そんなルールがあるなんて知らなんだ。ルールは大事。古事記にもそう書かれている筈なんだが……俺それ聞いてない。

 

「あれ?……もしかして、私、負けた?」

 

 あ、クイントさんが起き上がった。

 とりあえずそうなんやで(ニッコリ)とだけした顔だけ向けておこう。クイントさんの顔がぐぬぬってなった。

 

「じゃあ、えっと……後は筆記試験だけですね」

 

 よし、逃げよう。

 後ろを向いて出口と言う名前の明日にダッシュ。だってここ(ミッドチルダ)の言葉って英語みたいなものやん?分かる訳わかめやん?逃げるしかないやん。

 しかし心配そうな顔をしているフェイトさんがこの部屋に入ってきた瞬間に俺の動きは止まる。

 

「あ!あおな!……大丈夫だった?」

 

 俺を不安げな瞳で見つめるフェイトさん。その瞳にはうっすらと光るモノが見え、頬もどこか紅潮しているように思えた。

 

「……もしかしてフェイトさん、俺の事を心配して……?」

 

「当たり前だよ!」

 

 フェイトさんの本気の剣幕に気圧される。……心配されてるって事は……嫌われてないって事でいいんだよね?

 

「だって……だってあおなは私にとって大切な……(……逹、なんだから……)

 

 んん!?

 ……今、フェイトさんはなんて言ったんだ?駄目だ。本格的にフェイトさんとこの耳の為にも補聴器を買った方がいいかも知れない。

 フェイトさんの声を聞き逃すとかwww。…………俺ってば最低ね!

 とにかくここは恥を忍んで、と言うよりは嫌われるかも知れない可能性を孕んでいるが、聞き返した方がいいだろう。『俺の耳が不甲斐ないばかりに……フェイトさんごめんなさい』……そんな事を心の中で謝罪しながら。

 

「えっと……今、なんて?」

 

「え!?……いや……えっと……あ、あおなは、ね?私にとって……その……大切な"友達"……だからって言ったんだけど……」

 

 え?……いや、待って。本当にフェイトさんが可愛すぎて辛い。この際友達って言われた事も嬉しいんだけど、友達の前に"大切な"って……あかん。ちょっと頭がぽっぽしてきた。なんだろう、今なら背中から『光の翼』を放出出来そうなくらい顔が熱い。

 フェイトさんもフェイトさんで恥ずかしかったのか顔を俯かせ、頬を赤くし、口をまるで幼子のように尖らせて……そんな姿もまた可愛い。

 

「……あ、えっと……アリガトウゴザイマス……」

 

 恥ずかしすぎてつい早口&カタコトになってしまった。

 

「あっ……うぅ……じ、じゃあ、筆記試験頑張ってね!……はぅ……」

 

 フェイトさんは顔を真っ赤にしたまま俺に激励を送ると駆け足でその場から去ってしまう。

 追い掛けようとするも、アルフさんに『ここは男は追わないモンだよ。……まぁ、あたしに任せといてくれ』と言われ、手持ちぶさたになってしまった。

 

「……さて、盾街あおな。あそこまで応援されたら、どうするかは、分かるよな?」

 

 クロノのその言葉にハッと我に返り、ニッコリ笑いサムズアップ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果だけ記すならギリギリ『合格』したとだけ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 あおなから逃げるように部屋を出て、少しした所で私は立ち止まる。

 私は……いや、私の心臓は本当にどうしちゃったんだろう。それどころか顔や耳まで熱くなってくる気がする。

 ……確かに、あおなの事が心配で涙は出かけた。でも、あおなが無事って分かって、ひと安心して、あおなの事をはっきり"友達"って言った瞬間に胸に溢れた暖かな気持ちとズキッとした痛み……これはなんなんだろう。

 最近、本当に私はおかしい気がする。一昨日も不整脈かなって審査しても、結局なんとも無かった訳だし……。

 あおなと話すと何故かこうなる。

 あおなのフライパンを持ってた時にも……フライパンを見ながら溜め息がいっぱい出たし、教室で授業受けてる時もたまに、だけどあおなの事を考えてたりして、それが満足だったり……。

 

 この気持ちが分からない。……分からないから、怖い。

 

 こんなのに怖いの、ジュエルシードをアルフと別々に探していた時にも感じた事は無かったのに……。

 お姉ちゃんに聞こうにも、お姉ちゃんは今は眠ってるし……。

 それに最近、なんとなくだけどなのはのスキンシップも積極的になって来てるような気もするし……もしかしておかしいのって私だけじゃ無いのかな。いったい何が起きてるんだろう。

 

「おぅい!フェイトぉ!」

 

「あ、アルフ……。どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたもあるかい。それはこっちの台詞だよ?……フェイトこそどうしたんだい。いきなり走り出して……顔、真っ赤だよ?」

 

 ……ここはやっぱり、素直に打ち明けるべき、なのかな……。いや、でも……。

 

「……はぁ。やっぱり、か」

 

「……?……やっぱりって、何が?」

 

「やっぱりフェイトって、鋭いのに鈍感だよなって話だよ」

 

 …………?

 それって矛盾してるんじゃ……。

 

「まどろっこしい事は嫌いだから単刀直入に聞くけどフェイトってさ、誰かを好きって思った事あるかい?……あぁ、皆好きって意味じゃあなくて……なんて言うのかなぁ……。ふと気付いたらその人の事を考えてたり、その人と友達でいるのに満足出来ない……そんな特別な感情を持ったことあるかい?」

 

「!?」

 

 その時の私は多分目が点になってたんだと思う。だって何も言ってないのに、アルフは私が打ち明けようとしてた事をはっきりと言ったから……。

 

「……う~ん。……やっぱりか。まぁ、ずっと魔法の勉強にあの鬼b……もといプレシアの下でずっと手伝いさせられてたんだから、知らなくっても仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど……」

 

「……ねぇ、アルフ。……それっていったいなんなの?」

 

 

「それはきっと、『恋』って感情だよ」

 

 

 ……『恋』?

 知識では知ってる。……でも、なんなのかは分からない。

 『恋』って、なんだろう。いつ分かるものなんだろう。

 

「う~ん理解できないって顔をしてるねぇ。……まぁ、こればっかりは経験するしか無いよ。……走って滑って見事に転んで自分で分かっていくしか無いよ」

 

「そう……なんだ……」

 

 ……私は、あおなに『恋』をしてるのかな……。

 私はもっと知りたい。『恋』の本当の意味を……。そして、あおなの事を……。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、筆記試験も終わり、地球に帰ることになった。本格的な管理局勤めになるのは義務教育を終えてかららしい。

 で、帰る最中のアースラ艦内にて、フェイトさんがなにやら思い詰めたようでいて、何かを決心したような顔をしていたので、悩みでもあるんだろうかと聞きに行こうとしたらアルフさんに腹パンされて地球に帰るまで気絶していた。解せぬ。

 地球に着いて、フェイトさん達と別れて家に帰ると、俺のアルバムを持ったしゅてるんがいい笑顔で俺を出迎えてくれやがった。

 まだフェイトさんにも見せて無いのに……。




~その後のフェイトさん~

(よし!まずは辞書を引いて調べてみよう!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


フェイトさんが『恋』を知りました。

さて、ようやくBOA(未プレイ)とGOD(プレイ済み)を混ぜたような何か(オリジナルワンチャン?)を始める事が出来ます。

さて、感想、質問、批評、誤字、脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。









もうそろそろライバル(恋敵)ポジ出すべきでしょうかねぇ?


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第38話『オマエノシワザダタノカ』

日常って書きにくいですね(白目)。


 私は手に入れなくちゃならない。

 私達の故郷、エルトリアを救う為にも、『永遠結晶エグザミア』を。

 例え、どんな手段を用いたとしても。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第38話『オマエノシワザダタノカ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さってと、気持ちのいい朝だ!…………隣にしゅてるんがいる事を除けば。

 きっと、こんな日はいい事が起こるんだろうなぁ!…………こちらを見てくるしゅてるんから目を逸らしながら。

 ……もう、限界だよ……。しゅてるんがうちに来てから五日経ったけどもう無理だよ……。

 だからなのか、なにを血迷ったのか俺はいつのまにかこの事を高町に相談したんだけど高町は『え!?わ、わたひにしょっくりな人ぉ!?……(えへへぇあおな君ってば)(私の幻覚を見たんだ)……(嬉しいな)♪』、なんて、噛みながら驚いたかと思ったらいきなり嬉しがってて、そんなに俺に苦行を与えたいのかと怒りのデコピンをおでこにやってあげた。

 まぁ、それだけならフェイトさんを見るだけでなんとかなるんだが、それだけで済まないのが人生と言うもの。学校に来たら来たで年がら年中桜の咲いている島の如く『クリスマスパーティーしようず』ムードが漂う始末。……ここ、小学校だよね?との突っ込みも許されない。

 校長の『クリスマスには皆でパーティーするのデース』との掛け声により、クリスマスパーティーが終わるまで準備となり、普通の授業は中止となった。これで大丈夫なのか聖祥大付属小学校。

 うちのクラスでは徳三四姉妹を中心に色んな準備が行われる。ちなみにうちのクラスは喫茶店を行うらしい。俺は厨房の担当になった。

 ……とまぁ、そんな事が立て続けに起こっている訳だから、俺に訪れる休息の時間っつったら本当にフェイトさんに会って喋るくらいしか無くなったって訳だ。

 会うだけで俺の疲れた心を癒してくれるとは……やはりフェイトさんは女神を超えた絶対神だとでも言うのだろうか。

 さて、もうそろそろ布団の上でボーッとしている俺をしゅてるんが穴が開きそうになるほど見つめてきそうなので、立ち上がる。しゅてるんを部屋から追い出し、着替え、下に降りる。

 その際、開いた扉がしゅてるんの頭に直撃したようだけど、そんな所にいたしゅてるんが悪いと思ったのでスルーしておく。

 

「あおな~。私、今日はいい天気だから父さんと密売人をコロコロしに行ってくるから~」

 

 たまに母さんはこんな物騒な発言をするが、いつもの事みたいなモノなので普通に対処は出来る。

 

「何週間です?」

 

「二週間くらい」

 

 ただ、たまに半年とかあったりする為、俺が本格的に一人じゃ駄目になった場合、高町(がいる)家に居候するかも知れなくなるので、ちゃんと日数だけは聞いておく。

 ……二週間か……。二週間ならギリギリあの家に行かなくても大丈夫だろう(既に同居状態のしゅてるんから目を逸らしながら)。

 本屋の方は……バイトの八売(はちうり) 礼治(れいじ)さんにでも頼んどこう。バイト代は……本二冊でいいか。あの人本好きだから喜ぶだろうし。

 これで懸念は消えた!よし!学校に行こう!

 

 

 

 

「あら盾街、遅かったじゃない!来るのは貴方が最後よ!」

 

 学校に来ると、徳三四姉妹長女が俺を迎えてくれた。

 遅いって……信じられるか?これでもまだ6時なんだぜ?こんな時間だが、全員集合……。おいおい、今時8時でもこんなに集合はしないと思うんだが。

 

「遅かったって……。いや、これでも急いで来たんですけど……」

 

 そう言いながら入る教室はほとんど原型を留めていなかった。机は全て撤去済み。窓は締め切り、たまに最低限の換気をするくらい。教室内は可愛らしい丸っこい字で書かれた厨房ゾーン。……書いたのは……きっと四女だろう。

 

「みんな!注目!」

 

 俺がそんな所に目を付けていた時、徳三家の長女が号令をかけ、皆の視線を集めた。

 

「さて、全員揃った所で指示を出すわ!」

 

 全員揃った、の部分で皆の恨みがましそうな視線が俺を見詰めた。やめろぉ!そんな目で俺を見るなぁ!

 ……ここでこう見てくるって事は、皆もっと早い時間帯に来てたって事だよな……。

 

「A班は材料の調達と組み立て!B班は色塗り!C班は食べ物の試作料理の完成を急ぐ!D班はそれぞれ猫の手が足りない所への手助け!それじゃあ、始めるわよ!」

 

 ちなみに、徳三家の四姉妹がA=長女、B=次女、C=三女、D=四女と、分担して班長を務めている。

 長女の指示により、それぞれ皆が自分のやるべき所へバラける。

 俺は調理という役割型C班に所属し、料理の事なら何でもござれの三女の右腕となって動く事を強いられた。

 ……俺、料理は下手なんだけどなぁ……。それこそ、ふわふわなオムライスとかしか作れないし。

 この前もビーフシチューを作ろうと思ったらいつのまにか肉じゃがになってたし、そうかと思えば肉じゃがを作ろうとしてたら今度はビーフシチューになってたし。どういうことなの……。

 まぁ、それはさておくとして、三女と俺を含めた10人(うちのクラスは40人)でクリスマスパーティーに作る料理についての会議が開かれた。

 今の所候補に上がってるのが

①:『翠屋』に練習しにいく事になるが、シュークリーム

②:クリスマスらしくケーキ

③:ヨージキ(挽肉、野菜、米をこねたミートボール)(次女考案)

 ……の3つ。ヨージキってなんだよと調べたらロシアの料理らしい。作ってみたら旨かった。

 さて何を作ろうとの話だが

 

「これ、シュークリーム以外なら作れるからもっと追加しましょう!」

 

 三女が更に唐揚げ、フライドポテトなどを追加してきた。

 

「あぁそうよ!そういえば盾街君って高町さんの隣に住んでるのよね?なら、シュークリームの作り方を教えておいて貰えないかしら……。無理だったら無理、でいいけど」

 

 更にそこへ俺への追い討ち。やめてくれよ(絶望)。

 いや、別にシュークリームの事はいいんだよ。でも高町家に幾度に士郎さんや恭也さんに睨まれるのは嫌なんだよ。

 しかし、そんな俺の絶望した顔なんて気にせず、皆は賛成。即作成(三女に作り方を教えて貰いながら)。

 ちなみに家庭科室で、だ。

 教室でやると美味しそうな匂いで集中できなくなる、と長女が(お腹を鳴らしながら)言ったからである。

 さて家庭科室だが、聖祥大付属小学校の家庭科室は大きい(広い?)らしく、普通の学校であるような場所取りや予約合戦のような争奪戦は行われていない。

 その為、とても有意義な料理をする事が出来る。――勿論、それが俺達だけだったら、の話だが。

 案の定他のクラスの人達もいた。その中には上級生もいた。

 そこからはお互いの手の内を晒さないように手元を隠しながらの料理が始まった。

 

 

 

 さて、時刻は回り5時頃。俺は今、あの高町(がいる)家の前にいる。

 理由はただ一つ、三女に『シュークリームの事、お願いね♪』と言われたからである。

 くそう……折角いかなくても(泊まらなくても)いいかもしれないって思ってたのに来る事になるとは思わなかった。

 ……自然と汗が背中を流れ落ちるのを感じる。

 まぁ、馴れた動作で呼び鈴を押すんですけどね。

 この時間帯……恐らく高町は帰って来ていない。ならばもうなにも怖くない。それならば安心して桃子さんに会うことが出来る。

 一気に軽くなった心で呼び鈴に指を置いた。

 

「あぁ!見つけたよ!」

 

 そんな時、後ろからどこか聞き慣れた(・ ・ ・ ・ ・)声がした。それがどうしても気になってしまい、後ろを振り向くとそこには――

 

 

 

「盾街 あおなを発見!」

 

 

 

 ――フェイトさんが、髪の毛を水色に染めて(?)そこにいた。

 

「……フェイト、さん?……なんで、……こんな所に……」

 

 俺は俺の記憶を信じられなかった。

 何故ならフェイトさんはまだ自分の教室にいたからだ。帰る前にしっかりと確認&先に帰りますと伝えたからこれは確かな筈なのに……。フェイトさんはにっこり笑って『分かった。また明日ね、あおな♪』って、言ってたのに……。

 ……なら、目の前のフェイトさん似の人は……?

 すると、目の前の彼女もにっこりと――フェイトさんによく似た笑顔で――言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイト~?誰それ?ボク、レヴィ。……にっぶいなぁ。ボクが力のマテリアル、雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)だよ。今日は王様が『しゅてるんがうつつを抜かす男がどれ程のモノかお主が試して参れ!』、との事で参上したまでの事さ!」

 

 そう言うと、彼女……いや、レヴィはこれまたフェイトさんの持っているような武器を構え、俺に斬りかかって来たのだった。




~その頃のしゅてるん~

(むむっ!この反応は……レヴィ!?……まさか)


◆◇◆◇◆◇◆◇


レヴィちゃんの登場だよ!
……はい、分かってます。
いや、どうしても言わしたかったんですよ、あの台詞。
実際、この作品のレヴィちゃんはフェイトさんにまだ出会ってませんし……。

あと、書いてて分かりましたが私って日常が書けなくなっている気がします。……精進せねば。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告書待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第39話『星光対雷刃』

大学ェ……。


 レヴィの水色の斧っぽいナニカが目前に迫る。……その瞬間、溢れ出すフェイトさんとの思い出の数々……。俺……死ぬのかな?俺、このまま安い割り箸みたいに不吉に唐竹割り……されちゃうのかな……。

 真剣白刃取りをしようにも既にタイミングを逃しました以前にスペルスピードが遅いって言われたようなモンだし、ここから超スピード!?って動こうにもどう足掻いても五体が満足しなくなる結果になっちまう。

 ……いや、フェイトさんに会えなくなるくらいならそれもありかもしれないと本気で考え、避けようとした瞬間、目の前にしゅてるん(救世主)が片膝立ちで地面に着地、そして高町の持っているような杖の色違いでレヴィの降り下ろした斧を受け止め、一言。

 

 

 

 

 

「――怪我は、ありませんでしたか?」

 

 

 

 

 

 正直に言おう。かっこいい。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第39話『星光対雷刃』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 私がレヴィのソレ(・ ・)を感じたのは、あおなのカードホルダーを漁っていた時の事でした。

 私はあおなの部屋の窓を開け、バリアジャケットを羽織りつつ、結界でこの辺り一帯を覆いながらダイブします。

 ……おおよそ、我が王があおなの事を試すとか言ったのでしょう。

 えぇ、確かにこれが言葉通り『試す』ならば少し手合わせする程度に済み、それならばあおなでもなんとかなるでしょう。ですが、レヴィから感じ取れたのは単純な『殺意(遊び心)』。

 更に都合の悪い事に、レヴィに襲い掛かられたあおなに現れた感情は『迷い』と、それによって生まれた油断。

 ……幾ら別人だと分かっていても同じ顔を持った、しかも想い人に似た人物に攻撃される、その一瞬の心の隙があおなに出てきた。……この油断はそんな所でしょう。

 このままだとあおなはレヴィによって真っ二つにされてしまいます、が――

 

「――――そんなこと、させるとお思いで?レヴィ」

 

「ッ!?……しゅてるん!」

 

 あおなを殺す(試す)つもりで降り下ろしたレヴィの『バルニフィカス』は、私の『ルシフェリオン』によって遮られたのでした。

 

「あおな、怪我はありませんでしたか?」

 

「え、あ、はい……」

 

 呆然となっていますが、まぁ、これは普通の反応でしょう。さて、問題は目の前のレヴィですが……。

 

「ぶぅ……。どうしてボクの邪魔するの?」

 

「当たり前です。もし貴女の攻撃であおなが死んだりしたら私はきっと怒る所の話では無くなってしまいますよ?」

 

「王様に試してこいって言われたから来たのに……」

 

「試すならば殺す気で行ってはいけません。もう少し手加減を加えて殺さないようにしなければ」

 

 ……それにしても、やはり王でしたか。全く……。つくづく思いますが、王の過保護っぷりが最近激しくなっているような気がします。もしかすればこれは親心、と言うべきモノなのかも知れません。

 とりあえず、それは置いておきましょう。

 

「……で、レヴィはどうするんですか?このままなにもせず帰りますか?」

 

「嫌だ。そんな事したらボク、王様に叱られちゃうもん。叱られるの大っ嫌いだもん」

 

 そうだとしても、ここは譲れません。……最悪、私のこの手を真っ赤に燃やし、(あおなの)愛を掴めと轟き叫びながらレヴィに掌を向けて突貫しなければなりませんかね?

 

「んー……あっ!ボク、いい事思い付いちゃった!ボクとしゅてるんが戦って、勝った方が負けた方の言うことを聞く!……この場合はボクが勝てばしゅてるんが退いて、しゅてるんが勝ったらボクは王様に叱られに行く。……これでどう?」

 

「それでしたら私は別にそれで構いませんよ。あおなに危険が及ばないならば私はそれで大丈夫です。……それと、貴女は恐らくただ私と戦いたかっただけでは?」

 

「あれ?バレちゃった?」

 

「まぁ、私達が生まれて来てからは一度も殺り合った事はありませんでしたし……貴女の気持ち、分からないでもありませんよ」

 

 ただ、今じゃなければもっと良かったんですけどね。

 

「力のマテリアル、雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)ことレヴィ!」

 

「理のマテリアル、星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)ことシュテル」

 

「「いざ尋常に決闘(デュエル)!」」

 

 口上の終了と共に、私はまずレヴィの左足と『バルニフィカス』を持つ右腕のみバインドで拘束し、『ルシフェリオン』を構える。

 

「『屠れ、灼熱の尖角ブラストファイア』!」

 

 私の『ルシフェリオン』が吐き出した収束砲撃はレヴィと目の前の民家を一気に吹き飛ばし、砲撃が終わっている頃には視界が多少(・ ・)広くなっているだけでした。

 ……ふむ。

 

「……あの、しゅてるん?」

 

 そんな時、あおなが私に語りかけてくれました。

 謎の嬉しさと達成感が胸の奥底から沸いてきて、私はあおなの方へ顔を向けます。

 

「大丈夫ですよ。ちゃんと結界は張っています」

 

「いや、そうではなく、レヴィちゃんは仲間なんじゃ……」

 

「私とあおなの恋路を邪魔する奴は問答無用で魂すら焼きます」

 

 例えそれが時天空であろうと、ね。

 

「えぇ……」

 

「それに――」

 

 私は『ルシフェリオン』を左に構え、『パイロシューター』――タカマチナノハの魔法で言えば『アクセルシューター』に似ている――を用意、射出。

 

「――レヴィはあの程度、軽く避けれますし」

 

「………えっ」

 

 右手で左を指し示すと、それにつられてあおながそちらの方向へと目を向けました。そこでは、私の『パイロシューター』を必死に切り落としているレヴィの姿が……。

 

「レヴィは私がバインドで縛った時(あの瞬間)には既に移動をしていました。恐らく、レヴィの移動が速すぎた為、空気がその場に固定されたかでもしたのでしょうね。……つまり、私は残像を掴まされたと言う事ですよ」

 

「……リアル質量を持った残像なんて初めて見ましたよ」

 

「奇遇ですね。私もです」

 

「……あれ?ならなんで反応が…………?」

 

「バインドの感触で判断したまでです」

 

 最初、バインドで縛った時にいつもの感触が感じられませんでした。その事から私はレヴィが移動した、と結論付けただけです。……まぁ、これはバインドが使える人ならば誰だって分かる事なので(あおなを除けば)説明をしなくても分かるでしょう。

 

「……あれ?それって勝てないんじゃ……」

 

「いえ、変わりに防御力をかなり削いだらしく一撃でも当たれば沈みますよ」

 

「それなんてオワタ式ですか?」

 

「……まぁ、強化したのはあなたなんですけどね」

 

「えっ」

 

 実際、この事に関しては原因はあおなにあったとしても関係はあまり無いんですけどね。ゲームで例えるなら強化に使える経験値を貰えたとして、それを筋力なり耐久なりと、その人の好きな所に振れると言った感じでしょうかね。レヴィの場合、単純に強くなりたい、との気持ちが強く純粋に現れたんでしょうね。

 ……あおなのお陰でレヴィどころか私も、王も、そして恐らく『システムU-D』も、強化されたんでしょうし感謝と愛情を注ぎこそすれ、恨むなんて筋違いもはだはだしいです。

 だから、あおなをここで殺させる訳にはいきません。

 

「むぅ……。しゅてるん、また『パイロシューター』の精度と速度と数、上がった?速くなったボクを捉えるなんておかしくない?」

 

「えぇ、まぁ。それぐらい成長している、と言うことですよ」

 

 ですが、大切な人を護るためにはまだまだ力が足りませんがね。

 もっと、強くならなくては……。

 

「ぐぬぬ……。なら、もっと速くなってやる!どっかの偉い人は言ったんだよ!『赤ければ通常の3倍速くなる』って!……と、言うわけで……」

 

 レヴィがまるで陸上の選手のようにクラウチングスタートに構えました。その瞬間、レヴィから緑色の粒子のようなモノがチラリ、とだけ見えましたが……そんなまさか……。

 ……ならば、ここで攻撃をした方が良いのでは?、そんな結論に辿り着き、私は『ルシフェリオン』を構え――

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いよ?」

 

 

 

 

 ――目の前から消えたレヴィにより、あおなと共に高町家の塀に叩き付けられました。




~その頃のなのはさん~

(なんだろう……。あおなくんが危険な気がする!)


◆◇◆◇◆◇◆◇


敵のパワーアップフラグって絶望的ですよね(ニッコリ)。

一応、私なりのレヴィちゃんやってみましたが……まだまだキャラが固まってませんねぇ……。固めねば(天然ドSになりそうなのは秘密)。


さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第40話『男のロマン』

遅くなり、すいません。

大学→帰って溜まってたアニメ見る→展開を考える→消して一から→寝る→大学……

のループにちょっとはまってまして……。


 私がそれを感じたのは、あおなを見送ってしばらくして、なのはとアリサとすずか達と一緒に『クリスマスパーティー』の準備をしていた時だった。

 突然、あおなとなのはの家の方から結界が張られたって反応を感じた。

 ……そう言えば、あおなは今日はなのはの家に行く用事があるって隣の教室から話していた筈……。

 確か、あおなは結界を張れなかった筈だし、あの場所(高町家付近)でそんな魔力反応がするって事は……。

 最悪な考えが頭を巡った瞬間、私はいてもたってもいられずに『ごめん早退する』とだけ残し、教室を出てなのはの家に急いだ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第40話『男のロマン』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ……それは本当に一瞬の出来事でした。

 目の前からレヴィが消え、その姿が現れた時には既にあおなと共に塀に叩き付けられていました。

 不覚を取った?……いえ、単純に私がレヴィの速さに着いて行く事が出来なかっただけでしょうね……。

 全く……。あおなの見ている前で格好悪い所を見せてしまいました。その本人(あおな)は咳き込みながら『初めてですよ……。赤くなる赤くなる詐欺なんて』と言ってますし、どうやら無事で済んだようです。

 

「あれ?しゅてるん、もう終わり?」

 

 そう言ったレヴィの顔には嘲りが少々。普通の人ならば激昂して突っ込んでバラバラにされるのがオチでしょう。ですが私はそんな訳には行きません。だいたい、あおなの目の前でそんな姿を見せる訳にもいきませんし。

 それに、ここで諦めたらあおなが死んでしまう事になる。ここで終わる訳が無いじゃないですか。

 えぇ、ここで諦める訳がありませんとも。

 

「そんな事、ある訳がないでしょう」

 

 再び『ルシフェリオン』を構える。はてさて……本当にどうしましょうか。

 (私の心の)救いを求める為、後ろのあおなにチラリと視線を向けると、あおなは何を察したのかこくりと頷きました。

 ですが、なにか嫌な予感がしたので、私が首を横に振ると、あおなは少しギョッとしたのち、小さく頷きました。……とにもかくにも、私は戦闘に集中するとしましょうか。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ……赤いってなんだろう。俺はさっきからそんな考えが頭をぐるぐると回っていた。……いや、レヴィちゃんの言った赤くなれば3倍も分かるんだけど……。レヴィちゃんの場合は確実に使ったらまずいって奴だったものなぁ……。

 まぁ、そんな事を考えてたいたらしゅてるんと一緒に壁に激突したんですよ。めっちゃ痛かった。

 でもそんな些細な痛みよりもフェイトさんに対する想いと『赤ってなんだ』って考えの方が強すぎて咳き込むくらいで終わった。

 

「初めてですよ……。赤くなる赤くなる詐欺なんて……ゴボッ」

 

 なんか赤くてベチャッてしたのが口から飛び出したがそれこそ些細な事だ。

 赤くなる……ねぇ……。もしもフェイトさんが通常の3倍速くなったとしたら……。絶対に誰にも負けないだろうなぁ……。あのリインさんだろうがナハトだろうが大魔王高町だろうが勝っちゃうんだろうなぁ……。それでいて美しさも兼ね備えているとは……。

 …………ふと思ったんだが、絶対に思っちゃいけないことなんだろうけど、俺ってフェイトさんと不釣り合いな気がする。ぐぬぬ……頑張ってフェイトさんと釣り合えるような(おとこ)にならなければ。

 まずは生身と布でMS(モビルスーツ)撃破とBETA のハイブ攻略から始めよう。

 

「………………」

 

 …………ん?しゅてるんが辛そうな顔でこっちを見ている……?

 あ、もしかして逃げろって事かな?だったらお言葉に甘えるべきなのか?いや、でもここで退くとか男としてどうなん?ってなる。……だが、もしかしたらしゅてるんとしては全力が出せないから離れろって事なのかな?もし本当にそうだとしたらこの場から全力ダッシュで逃下させて貰おう。

 とりあえず肯定の意味で頷いて返したら首を振られた。

 ……逃げるなって事かいな。

 ……あぁつまり『見てないでオドレも動かんかい蜂の巣にすっぞゴラァ』って所かな?……好意を抱かれてるんだなって思ってたら脅されたでござるの巻。

 いやまぁ助けてもらったし、多少はね?でもあんなにガン飛ばすのは僕、どうかと思うの。

 いやまぁやりますよ?やりますけども。

 とりあえずちゃんと、あまり気乗りはしないけども、頷き返してはおく。

 そんでしゅてるんは謎の納得したような顔(無表情だったからそう見えた)をレヴィちゃんの方向に向けた。

 ……さて、仕事、始めよっか。

 しゅてるんは基本砲撃型だ。詰まる所固定砲台がお好き。結構、なら俺は対ラデイッツ戦の悟空になってやらぁ。……痛くしないでよね?

 とにかくレヴィちゃんに切迫し、(何故か驚いたような顔をしていたしゅてるんを傍目に)無言で眉間に拳をねじ込………………めない!

 ならば今度は足技!脛を狙って踏みつ…………けれるわけがない!

 いや、幾ら別人だって分かっててもね?無理だよ。

 フェイトさんとそっくりな人を殴るの?殴らないの?って聞かれたら首吊って死ぬと笑顔で即答できるくらい無理だ。

 

「あおな………貴方という人は……」

 

 oh……幻滅サレテーラ。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 …………まさか、予想外でした。あおなが、私のために(・ ・ ・ ・ ・)自分から身体を張って囮になってくれるとは……。

 ……こうなれば、私もあおなの為に全力を出す他ありませんね。

 大丈夫、イメージはしっかりと装填されてます。……始めてみたあおなの顔……始めて出会ったあおなの匂い……あおなの昔のアルバム……そして、あおなのこの思い!

 

「『ルシフェリオン』!カートリッジロード!」

 

 この思いを……無駄になんて出来る訳が無い!

 既にあおなから頂いたレアスキル(感情変換資質魔力)の条件は全て整いました!

 今なら……撃てます!

 

 

 

 

 

 

「モード『V.Chanon』!」

 

Shift to VECTOR CHANON Mode(ベクターキャノンモードへ移行)

 

 

 

 

 

 私の『ルシフェリオン』に砲台が追加されました。あぁ……あおなに見せたい。私のこの姿を……。

 

All energy luns connected(エネルギーライン全弾直結)

 

 『ルシフェリオン』に現れたエネルギーゲージに魔力……いえ、違いますねこの場合いは、『あおなへの愛』が装填されて行きます。

 

Landing gear and climbing irons locked(ライディングギア アイゼン ロック)

 

 更に、『ルシフェリオン』より、まるでカメラを固定するような足が延び、地面へと突き刺さりました。

 

Inner chamber pressure rising normally(チャンバー内 正常加圧中)

 

 目の前に五つの丸い球体が出現しました。

 それに+して、本来なら必要はありませんが、スコープが出現しました。……ほほう。これはあおなに当てないように努力しろ、との挑戦と受け取りましたよ。

 

Life-ring has started revolving(ライフリング 回転開始)

 

 五つの丸い球体が回転を始め、もうそろそろ撃てそうな所まで来ましたね。

 スコープを覗き、狙うはレヴィ一人のみ。

 砲台が回転を始め、『ルシフェリオン』全体に熱が込もって来たように感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ready to fire(撃てます)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶちかます!」

 

 私は、『あおなへの愛』を込めて引き金を引く。

 それと同時に、光の波が直線上に射出され、あおなに集中しており、こちらに全く注意を向けていなかったレヴィに直撃しました。ちなみに、あおなは紙一重で避けていました。

 流石に、この攻撃が直撃したのです。レヴィはただでさえ装甲が薄いため、また再構成のし直しでしょうねぇ。

 まぁ、例えレヴィであろうとなかろうと、この砲撃は全てをぶち抜きますから。

 

 

 そう、慢心していた時の事です。唐突に首根っこを掴まれ、まるで母ライオンにくわえられている子ライオンみたいになりました。

 何事かと、そちらに目を向けると、

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュテル………。ちと、やり過ぎぞ?」

 

 

 小脇にレヴィを抱えた我らが王(ロード・ディアーチェ)が、そこにいました。




~その頃の王様~

(シュテルの奴……。あんな砲撃を……。流石の我も死ぬかと思ったぞ…………)


◆◇◆◇◆◇◆◇


出典は『ANUBIS Z.O.E』より、『ベクターキャノン』です。
いや、レヴィちゃんはコジマ(感想欄より)ですし、どうしよっかな……って友人の手も借りつつ悩んだ結果がこれです。
ちなみに、王様はもう決まってたり。

原作のモノとは威力、その他諸々が違いますが、この作品の中でのものなので、余り気にしないでいただければありがたいです。
そもそも、原作みたいなロマンを一個人が出せるとは思えませんし。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第41話『威厳(?)ありし王』

糖分が足りない(ブドウ糖的な意味で)


 それは一瞬の事だった。

 しゅてるんの放ったベクターキャノン(男のロマン砲)に気付き、更には幾ら別人だって分かっててもレヴィちゃんを助けようって手を伸ばした瞬間だった。

 俺よりも先に、舞い降りて、ベクターキャノンに本を当て、消した(・ ・ ・)後、レヴィちゃんの手を掴んで行ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 黒い羽根を羽ばたかせた少女(ヤガミモドキ)が。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第41話『威厳(?)ありし王』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 そのヤガミモドキは、これまた一瞬の内に艦隊をコレクションするゲームだったら大破進軍しているくらい慢心していたしゅてるんの背後に周り、首筋を掴み、レヴィちゃん共々正座させていた。余談だが、その時の二人の表情はしゅてるんはこんな顔((´・ω・`))でレヴィちゃんがこんな顔((;・ω・))でお笑い草だった。

 

「……さて、まずはレヴィよ」

 

「……は、はい」

 

 名指しで呼ばれたレヴィさん。まるで母親に叱られてる子供のようで少し和んだのは秘密。ってか、結局怒られたくないだのなんだの言ってたが、結果は変わらず叱られる。知らなかったのか?運命と(高町ではない方の)大魔王からは逃れられない。

 

「……一応、我は王として、命令を下した者として一部始終を見ておったが、あれ(殺る気満々)のどこが"試す"なのか、ちょっと我に分りやすく(・ ・ ・ ・ ・)説明してはくれぬか?」

 

 見てたんなら助けんかいこのダラズ。おっとつい思った事が口に出そうになってしまった。

 色々と癪だったので右手でサムズアッブ&リバース。

 

「……いや、その、えっと……。つ、強さを確かめるには全力で行った方がいいかなって思って……」

 

 

 

「こんの……馬鹿者!」

 

 

 

 自称 王 の 一括!▼

 レヴィ は ふるえあがってうごけない!▼

 ついで に 俺 も▼

 

「それで殺してしまっては元も子も無いであろうが!大体、お主は血の気が多すぎるぞ?」

 

「うぅ……。ごめんなさい……」

 

「謝るくらいならするな、と言う話だが………。…………今回は外に出る事が出来、尚且つ久方ぶりに暴れられる機会を与えてしまったようなモノ。つまり我にも責任が無いとは言えない。……だから我が言えるのは次は気を付けるようにとだけだ」

 

「王様……」

 

 あれれぇ?甘過ぎやしませんかねぇ?俺殺されかけたんですが……。いやまぁ目の前で『オマエ 命令 マモラナカッタ コロコロする』ってのをやられても困る訳なんだけども。

 

「次は……シュテルだ」

 

「………ほわぁ………っ!あっ……はい……」

 

 当のしゅてるんはと言うと、何故か俺のアルバムを持ってほんわかしていた。おい、どこからそれを持ってきたし。

 しかしそのアルバムはヤガミモドキによって没収され、しゅてるんは深い悲しみを負った。

 アルバムは道端に捨てられるというね。まぁ、別に怒りはしないが、後で校舎裏とだけ伝えて置こう。

 

「シュテル。お主は何故、あれ(ベクターキャノン)を放った?」

 

「レヴィを仕留める為でした」

 

 おおう。悪気もない一言だ。

 その光景にヤガミモドキも思わず溜め息。

 

「……ハァ……。あのなぁシュテル。お主のあの砲撃はあの程度の結界なぞ軽くぶち破る代物ぞ?結界に当たらなかったからどうと言う事は無かったが……もし結界に当たっていれば、大惨事では済まない事になっておったのだぞ?」

 

「…………。私はしっかりとレヴィを狙っていましたので……」

 

 う~ん。あの砲撃を見る限り大惨事程度じゃ済まない気がするんだけど……。

 そんな悪びれる気が全くないしゅてるんの様子を見ていたヤガミモドキの額には漫画でよく見る怒りマークが……。

 ……だいぶ、苦労してんだな、あのヤガミモドキ。だってあんなに髪の毛が灰色に近くなって……。まぁ、あんな問題児二人の保護者的なポジションなんだろうから仕方ないっつたらそれまでなんだろうけど。

 

「……貴様は、自身の仕出かした事の重大さに、まだ気付いておらんのだな」

 

「……?」

 

「あれは結界をぶち破った後、外の民家に直撃するコースを辿っていたのだぞ?」

 

「なっ!?」

 

 珍しいなぁしゅてるんの驚いた顔。……つか、俺、もう帰ってもいいんじゃないかな?

 間接的には関係あるかも知れんが、直接的には無い気がする。

 

「……もし、我が受け止めていなければ今頃はどうなっていた事やら……」

 

「そ、それじゃあ、私は……とんでも無いことを……やろうと……し、て……」

 

「……シュテルよ。色恋事に集中するな、とは言わん。だが、もう少し冷静に周りを見よ。さもなければ集中のしすぎで見えぬモノも出てくる。まさに『恋は盲目』と言うが、限度を超えれば今回のような事になりかねん」

 

 …………なんだろう。このヤガミモドキの話、俺にもぐさりと来るんだが。

 

「……なぁ、シュテル。今日は何も起きずに終わったが、次はどうなるか分からぬ。だから、次は気を付けるように、な?……我から言えるのはこれだけだ」

 

「……はい。王の言葉、しかと心に刻みました」

 

 あ、なんかいい感じに纏まった。

 ならもう争う必要は無さそうだし…………この結界、出口どこだろう。

 

「これでよしと。……さて次だ。そこで出口を探そうとしておる盾街 あおな!」

 

 やめろ……やめてくれ……。俺に話を降るんじゃない。

 

「……なんですか?俺に、なにかご用でも?」

 

「元はと言えば、貴様の所為でシュテルが惑わされてしまったのだぞ!その責任を取って貰わねば気がすまぬ!」

 

 なにかと思えば責任を擦り付けられる。

 

「惑わされたってのはそちらが勝手に陥った事だと思うんですよ。…………いやまぁその感情を否定する気はないのでその涙目をやめてくださいしゅてるん。……とにかく、俺が言いたいのは『愛』も『恋』も自分自身の感情"程度"じゃテレビのリモコンみたくそう簡単にコントロール出来るもんじゃ無いと思うんですよ」

 

 そんな事が簡単に出来るような奴はきっと石仮面でも被って人間止めた奴か、そもそも心が無いっていう本末転倒な奴くらいだろう。

 俺だってフェイトさんが危険な目にあったのを見たり聞いたり感じたりしたら種割れする勢いで全力出す。それこそ、次の日が筋肉痛で動けなくなったりしたとしても、だ。

 

「王たる者ならば、臣下の気持ちはしっかりと理解しとくべきだと俺は思うんです。で、その上で相談する方がいいのでは?」

 

 今のヤガミモドキはなんて言うか、娘を嫁に出したくないお父さんに見える。

 

「ぐぬぬ……。確かに、確かに貴様が言っている事は分かる。……だが、シュテルに話し掛けても『今はあおなの観察に忙しいのでまたいずれ』と言われ突っぱねられていて(寂っ)…………(悲っ)…………憤慨しておったのだぞ!」

 

「……いや、あの……えっと……。きっとしゅてるんは思春期なんですよ。……だから余り気にしなくても……」

 

 いつのまにか目にいっぱい涙ためてるし。……なんだろう、飲み屋で酔っ払った父親の愚痴を聞かされてる気分になった。

 

「…………」

 

 うわぁ……親の仇を討とうとしてる目だよあれ。討たれちゃうよあのまま放っておくと。まだ年末じゃないのに忠臣蔵を体験したくは無いなぁ……。

 

 

 

 

「あおなぁ!」

 

 

 

 

 そんな時に俺を助け出してくれたのは天使フェイトさん。

 

 息切らせ

  心配顔に

   頬紅潮

       あおな、吐血しながらの川柳。

 

 わぁいフェイトさんだぁ!ぼくフェイトさんだぁい好き!

 

「あおな、大丈夫だった?」

 

「はい!俺は大丈夫です!」

 

「えっと……怪我、無い?」

 

「また髪のはn大丈夫です!怪我なんてありませんよ!」

 

 ※ただし内側は除く

 ……いやぁ、ネタを言おうとしたらいつの間にか打ち消されてたよ。

 

「…………ところで、そこにいる私達によく似た人達は?」

 

 ニコニコと(恐らく)気持ち悪い微笑みでフェイトさんと会話していた俺は、ずっと放置していた三人を思い出す。

 

「あぁ、えっと……………あれ?」

 

 ……しまった。なんて言えばいいんだろう。

 居候人のご家族って言えばいいのか?

 いや、それだと『なんで紹介してくれなかったの?………そっか。あおなにとって、私ってその程度だったんだね』ってフェイトさんに幻々滅々されるかもしれない。

 ……ここは、一世一代の賭けになる(確信)。

 俺が心を決め、口を開いた瞬間を狙ってか狙わずか、とにかくその瞬間、レヴィちゃんが口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむぅ!ボクのニセモノ!?」

 

 割りと本気で殺意が沸き掛けた。




~その頃のキリ……桃色頭さん~

(ようやく見つけた!エグザミアを手に入れる為の、『鍵』を!!)


◆◇◆◇◆◇◆◇


イメージ:保護者みたいな王様
……正直、出来てたかどうか不安ですが、謎のやりきった感が私を襲ってます。

あと、ふと最近思ったのですが、もうそろそろフライパンにきちんとした名前を付けるべきだと思いました(小並感)。
そんなアンケート的な何かをするかも知れませんので、その時はご協力いただければありがたいです。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。










二箱買って相生とオベリオンが出なかった……(´;ω;`)


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第42話『本物ト偽物と』

皆様、GWは楽しめましたか?
私はバイトと自動車学校で楽しめました(白目)。


 レヴィちゃんの『ニセモノ』発言の効果発動!

 俺を対象に、俺の堪忍袋の緒が切断(強制)される!

 その瞬間、俺の怒りが大爆発。

 

「絶許レヴィちゃん」訳:絶対に許さねぇレヴィちゃん!!

 

 怒りのお陰か呂律が回らない。だが構うものか。

 1歩ずつゆっくりとレヴィちゃんの方へと歩を進める。多分その時の俺の顔って範馬の家に伝わる鬼が背中から顔に移ったようなそんな顔をしているんだと思われ。

 

「待ってあおな」

 

 しかしそんな俺を(ぎょ)せたのはやっぱりフェイトさんしかいないわけで。俺は見事にぴたりと止まった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第42話『本物ト偽物と』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 そんなフェイトさんの横顔を見ると、やっぱり麗しいのは常識だとして、感情の揺らぎなどが見てとれなかった。……怒って無いのかな、フェイトさんは。

 

「……認める。確かに私は……君の偽物じゃないけど……事故が無ければ生きていた筈のアリシアの……お姉ちゃんのニセモノ(クローン)だよ」

 

 はっきりと、前を向いて話すフェイトさんにはなにか憑き物が落ちたかのようなそんな雰囲気があった。

 続けてフェイトさんは口を開く。

 

「……でもね?私はアリシアじゃないって教えてくれた人達がいてね……。まぁ、その人達は口頭では言わなかったんだけど、私は私だって教えてくれた」

 

「なら、君は一体何者なんだ!」

 

 なんでレヴィちゃんがビビってるんですかねぇ……。

 前に俺にフェイトさんの身の上話を話した時は身体が震えだす程だったのに、今のフェイトさんはそれを乗り越えたような強さが見てとれる。

 ……やっぱり、フェイトさんは凄いや。凄いってチープな言葉しか出ないほど凄い。

 

 

 

 

 

「私はフェイト。フェイト・テスタロッサ!」

 

 

 

 

 

 はっきりと、自分の存在をそこ(・ ・)に刻み付けるかのように強く威圧感も込めて叫ぶ。

 ……おぉ、これが覇王色の覇気か。フェイトさんの圧倒的な覇気を前に尻餅をついたのは俺だけだったのは少しだけ誇らしかった。

 

「へいと……。うん!ボクの相手にとって不足は無い!」

 

 おいゴルァ!テメェさっきフェイトさんの名前間違えず言えたじゃねぇか!

 なのになんで、ここでフェイトさんの名前間違えやがんだ!なぶりコロコロしてやろうかあ"ぁ"ん?

 

「あおな、あおな」

 

 そんな殺意の波動に飲まれそうな俺を現実に引き戻したのはしゅてるんだった。

 

「……なんですか?しゅてるん」

 

 ただ今、怒りと憤怒でオーバーレイネットワーク構築しちゃってるからかなり不機嫌です。

 

「レヴィがああなっているのは『仕方がない』と考えてもらえませんか?」

 

 何をバカな事をおっしゃってるんですかねぇこの人は。俺にはどんな時も『仕方ないね』って言える兄貴のような寛大な心は無いんだぜ?フェイトさんが全てだもの。そのフェイトさんの名前が間違えられたとあっちゃあ、ねぇ?

 チラリと(くだん)のフェイトさんの方へ目を向けたら相も変わらずレヴィちゃんはまるで瞬間移動よろしく移動してるしフェイトさんは……あれ?ツインテがポニテになってるし……赤くなってる?顔がって意味じゃなく、身体全体で赤くなってる……だと!?

 しかも、レヴィちゃんのスピードに対応してる……。これ完全にアーアアーってなってる奴だ!凄いや凄い!流石フェイトさんだ!

 

「……で、なんで『仕方ない』で済まそうと?」

 

 フェイトさんの変化を見た途端に先程までの胸につっかえてた不機嫌さは無限の彼方へ吹き飛び、一気に落ち着けた。

 ……俺にとってフェイトさんが強くなってくれる事が一番だし、それにフェイトさんも余り気にしてないみたいだし、俺が気にしてたらフェイトさんに気を使わせてしまう可能性が出てくるし……。

 

「私の話を聞いてくださる事に感謝します。……私も、王もレヴィもそうなのですが、私達はまだ、生まれてから、それほどの時間……いえ、この場合は時を過ごしていません」

 

 ちなみに、ヤガミモドキ本人はレヴィちゃんの応援に忙しそうだ。

 

「私達はまだ何も知りません。この世界の常識も、この世界のバランスも、この世界の可能性も」

 

「つまり、貴女方は『生まれたばかりの赤子だから許してください』、とでも?」

 

「そう聞こえたのであれば謝ります。……ですが、実際その通りです。私はまだ『理』のマテリアルでしたから『私』はここにいる、と早期に解決出来ました。しかし、レヴィはまだ自分が何者なのかが理解出来ていません」

 

 それフェストゥムに出会ったら最悪なパターンな奴じゃないか。

 

「今のレヴィは自分の存在を『強さ』と『王の為に働く』という事でしか縛り付けられていません。ですから、純粋だったからこそ、あれ(感情変換資質)が発動出来たのでしょう」

 

 なにかに……誰かに頼らなくちゃ自分が何者なのかが分からないって……。なんだよそれ……。

 

「……それで、俺にどうしろと?」

 

「あなたはここから動かずただ見ていてください。もしかしたら、レヴィはこの戦いで『自分』を手に入れる事が出来るかも知れませんから……」

 

 見ているも何も、俺にそれだけの力が……フェイトさんみたいな力があるんだったらとっくの昔にフェイトさんの手助けをしてたさ。でも、今の俺があの中に入ったらフェイトさんの邪魔になる。

 ……やっぱり、俺はまだフェイトさんの力になる事が出来ない。

 ……俺は、フェイトさんを守る為の壁になる事なら出来る。だけど、肩を並べる事は出来ない。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

~新暦79年 ある日の昼下がり~

 

 

 ん~……。やっと掃除が終わった……。

 さて、今日はこのあとは公民館に行って、ストライクアーツの練習をして、シャマル先生の所に行って精神分析をしてもらって……寝るだけかな。

 リオもコロナも先に行っててって言ったからいないし……。

 よし。ここから軽く身体を温めるって意味も込めてジョギングでもしながら行こうかな?

 クラウチングスタートセッツ!

 

「ヴィヴィオさ~ん!」

 

 そんな時、私の名前を呼ぶ声がしたので、そちらに目を向けたら、そこには私の先輩のアインハルト・ストラトスさんがいた。

 私はすぐさま立ち上がり、挨拶を返す。

 

「あ、こんにちは、アインハルトさん!」

 

「あ、はい、こんにちはヴィヴィオさん。えっと……今から公民館、ですか?」

 

「はい!今日もストライクアーツの練習をしようってノーヴェ……さんが」

 

 んぅ……やっぱりノーヴェにさんって付けるのなれないな……。ノーヴェは『そんなの(敬語なんて)いらない』って言ってたけど……やっぱり必要かなって。

 フェイトママも、なのはママも、お兄s……あおなパパも耳にタコが出来るくらい言ってたし。

 

「あの、ヴィヴィオさん。私もご一緒してよろしいでしょうか?」

 

「あ、はい!勿論です!」

 

 あっ……言ってから気付いたけど、私、リオ、コロナ、ノーヴェさん、そしてアインハルトさん……。これ、誰かが一人がぼっちになる奴だ。

 ま、いっか。私が一人で壁を相手に組手をすればいいだけだし。

 

「じゃあ今から、ここから公民館まで競争しません?」

 

「それはいい考えですね!」

 

「それでは、行きますよ?位置について……」

 

 そう言って地面に手を付けた瞬間の事だった。

 

「………………あれ?」

 

 地面が、ありませんでした。

 ……………訳が分からないよ。クラウチングスタートしようとして地面に手を付けようとして、地面が無いだなんて……

 

「こんなんじゃ、クラウチングスタート出来ないよぉぉぉぉ!」

 

「ヴィヴィオさん!?気にするのは確実にそちらではありませんよ!?今私達は完全にこんな夜空に放り出されてるんですよ!?何が起こったのかちゃんと整理してください!」

 

 ア、ハイ。アインハルトさんにそうさとされ、周りを見て落ち着く事にする。

 あ、綺麗な夜景だ。……あれ?もしかしてここ、海鳴市の上空?

 

「ヴィヴィオさぁん!ここで落ち着いてたら地面に叩き付けられますって!」

 

 アインハルトさんには悪いって思ってるけど、たまにはパラシュート無しダイビングもいいもんだって思いました。




~その頃のプレシアさん~

(見つけたわッッッあの姿、まさしくフェイトぉぉぉ!)


◆◇◆◇◆◇◆◇


繋ぎ回ってなんだかスッキリ出来ません。

私としても、何故最後にヴィヴィオちゃんの生活(的なモノを少しだけ)突っ込んだのかが分からなくなってます……ぐぬぬ。
自分の事が自分で理解できないって怖いですね。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第43話『おかあさま』

お気に入り数が1000件突破してるのを見て涙が出てきました。
何て言うか、ありがたいって気持ちとかで混乱しちゃいまして……うれしくてうるっときちゃいまして……。
皆様、本当にありがとうございます!


 とりあえず、このままだと地面にぶつけたトマトになる。流石にそれはうら若き乙女としてはどうかと思ったから懐からゆっくりとデバイスであるクリスを取り出す。

 

「クリス、浮遊制御お願い。私とアインハルトさんの落下防止で」

 

「」ビシィッ!

 

 クリスが敬礼した格好になると同時に、だんだんと私達が落ちるスピードが緩んで来た。

 

「ティオ、クリスさんの手伝いをお願いします」

 

「にゃ!」

 

 アインハルトさんのデバイスであるティオの手伝いもあり、私の楽しいパラシュート無しのスカイダイビングは終わりを告げた。

 

「ふぅ……なんとか、なりました……」

 

 ふわふわゆらゆら、ゆっくりと、下に~下に~降りて行く。多分これ、下からパンツ丸見えだろうな……とかそんな事を考えながら下を見たら……あれ?見覚えがある人がいる。

 ……あれは、フェイトママとおn…あおなパパ?(※視力は決闘者並)

 こんなの、我慢出来る訳が無い。ちょっと小さいかもだけど、どうせまた小さくなったとかなんだろうし。

 

「わぁい!フェイトママとお兄さんだぁ!!」

 

「ちょっ!ヴィヴィオさん!?頭から落ちていったら速度が!」

 

 パラシュート無しダイビングの次は頭からダイビング。このままだと、『道路に咲く花』ってタイトルになってボツになるかもだけど、きっとクリスがなんとかしてくれるって信じてる。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第43話『おかあさま』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 フェイトさんが、まるで舞うように戦う。レヴィちゃんも解せないけれどもフェイトさんの速度についていっている。フェイトさんがデバイス――確か『バルディッシュ』だったかな――を縦に振るえばレヴィちゃんは横凪ぎに払いのけ、レヴィちゃんがデバイスで突けばフェイトさんはそれをデバイスで絡め取り、上に放り投げる。

 それをレヴィちゃんはまるでフォースを使うかの如く……ここから見てたらビデオの逆再生を見てるかのようにレヴィちゃんのデバイスが手元に戻ってくる。

 その戻す勢いのままフェイトさんに降り下ろす。やはり当然っちゃ当然としてフェイトさんは受け止める。

 ちなみにしゅてるんは視力が悪いのか目が追い付いていないみたいだった。だらしねぇな。

 

「あの……あおな?何故あの速度を……その……目で追えるんですか?」

 

「逆に何故しゅてるんは目で追えないんですか?」

 

 しゅてるんの話を聞きながらもフェイトさんを目で追い続ける。上上下下左右左右BAと動くフェイトさんをただ単に、一心不乱に追い続ける。ほんの少しだってフェイトさんの素晴らしい姿を逃して後悔すんのは嫌なんだ。

 

「いえ、そもそもの話、普通の人間があんなに気持ち悪いくらい目が動かせる訳が無いじゃないですか」

 

「……あれ?しゅてるんって普通の人間でしたっけ?」

 

「いえ、私は人間ではありませんよ?まだ受肉の方法は分かりませんし。今の私達は言うなれば0と1の羅列に質量がくっついただけのようなものですね」

 

 なんだそれ。ただの夢の技術じゃないか。

 

「そんな私ですら出来ない事を平然と出切るようになるとは……やはり、この能力(感情変換資質)の本家は違いますね」

 

 だからその能力がなんなのかは俺は全く知らない訳なんだが……。まぁ、今は"そ ん な こ と(能力だなんだの話)"よりもフェイトさんだよ。

 上方向、俺としゅてるんの後ろ、ヤガミモドキの後ろから謎の奇声と圧力と桃色を感じるが気にしてはいけないだろう。……上方向からは『ママァァァァァ』と『ヴィヴィオサン!?』って声、後ろからは『ブェ"イ"ドォ"ォ"ォ"』って聞こえるけどこれ絶対気にしたら振り返っちゃいけない所で振り返って魂持ってかれるレベルでヤバイと思う。

 だがしかし俺よ、よく考えてみよう。

 

 奇声を発する→危険(どこがとは言わない)→っょぃ=フェイトさんが危ない

 

 つまり、フェイトさんが危機に陥る可能性が出てくるって事だ。

 フェイトさんは今、レヴィちゃんと戦っている。そんな状況でもし不意討ち紛いに攻撃を受けたらレヴィちゃんの攻撃を受け止める事が出来ず、俺が内臓から爆発しなくてはならない事になる。

 ならばどうするか、露払いをするしか、無いじゃない!

 フェイトさんを守るため、覚悟を決めて後ろを振り向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし時既に遅かった。俺が後ろを振り向いた、丁度その瞬間、俺の頭上を紫色のナニカが通り抜けようとしている所だった。その姿はまるで女s……いや女性。長い黒髪に張りのある肌、所々露出が激しいドレスっぽい服を着ている顔芸(シューティングスタードラゴンの最後の攻撃をしている遊星ver.)さえなければ美人だと分かる顔だった。その顔から分かるのは狂気と狂喜。確実に何かに執着しているって顔だ。確実にフェイトさんに近付けるのはあかんやつや。

 でも、ソイツ(謎の飛行体)は既にソイツの腹の部分まで俺を通り過ぎようとしていた。――だが、しかし、それで諦める訳が無いんだよねぇ!!

 

 

 

 咄嗟に地面を蹴りあげソイツ(謎の飛行体)の腹……もとい足を掴む。指がギリギリで引っ掛かったのに安堵し、どうやって地面に叩き付けようかと思考する。

 しかし現実は卑怯だった。何故かって?ソイツの加速が止まらないんだ。俺の身体はつい最近リイン(暴走)さんの時に味わった引っ張られる感覚を再び味わう事になった。

 身体を必死にパラシュートの布の部分にしようと曲げようにも速すぎて身体が動かねぇ。

 ……ちくしょう。こんな時に覇王色の覇気とかフルコーンが第三形態になる時のオーラとかあれば良かったのに……。俺が、俺が弱いk今はそんな事はどうだっていい。フェイトさんだ。フェイトさんにどれだけ危機が及ばないようにするか、だ。チラリとフェイトさんとレヴィちゃんの方へ目を向けると激しい打ち合いで宙に浮いていってる。

 チラリついでにふと、指が千切れそうな感覚を味わいながらも苦し紛れに上を見ると、上から金髪の流星みたいなモノが落ちてきている最中で、更に目の前から高速で移動してくるピンクの物体を目視で発見。

 

 良いこと思い付いた。

 

 俺はコイツの加速を信じ、手を放し地面へと自由落下。

 どう降りようか。そうだ、猫のように降りよう。華麗に着地すればきっとフェイトさんもトゥンクくらいらしてくれるだろう。と、用意はする。だがそんな俺の考えは裏切られ、まるで抱き抱えられるように受け止められた。

 …………まさか、フェイトさんが!

 そんな淡い期待はしゅてるんのどや顔に消えた。

 解せぬ。

 

「あおな……。あなたは結局何をしたんです?」

 

 しゅてるんがどや顔から困り顔、そして思案顔にシフトしていく。おいおい、俺、しゅてるんのシフトレバーそんなに動かしてねぇぞ。

 

「しゅてるんに何かしてもらうために降りてきたんです」

 

「はぁ……。……まぁ、あおなの頼みでしたら何でも聞きますが」

 

 ん?今何でもって…………しゅてるんの場合本当に何でもしそうだから怖くて何もお願い出来なくなる気がする。

 

「じゃあ、今からフェイトさんとレヴィちゃんに『Ⅲ、Ⅱ、Ⅰ、Ⅳォォ!で下に降りて』って念話をお願い出来ますか?」

 

「お安い御用ですが…………所で、何故ローマ数字を?」

 

「もしかしてロシア数字の方が好みでしたか?」

 

「未来を見据えるのでしたらイタリア数字の方が好ましいです」

 

 未来ってなんだ。

 

「……ともかく、出来るのでしたらお願いします」

 

「あ、はい………」

 

 さて、こっからが見物だ。

 しゅてるんが目を閉じる。すると、フェイトさんとレヴィちゃんがこちら(主にしゅてるん)に目をやり、小さく頷く。

 ……なんか邪魔してご免なさい感が半端ないが、二人を守るためだと思えばこんなもの…………全然些細じゃない。

 そんな事を考えてたらしゅてるんがこちらに顔を向け、頷いた。……って事は準備は万端って事だ。

 それではカウントを始めよう。

 

 

 Ⅲ

 謎の三つの飛行物体はフェイトさん、レヴィちゃんを未だ補足中。

 

 

 Ⅱ

 フェイトさんとレヴィちゃんはお互いに頷き合い、どうやらタイミングを合わせようとしている模様。……失敗したらどうしよう。責任とってコンクリ100%のドラム缶風呂に入って海にダイブしよう。

 

 

 Ⅰ

 未確定飛行物体は既にフェイトさん、レヴィちゃんの二人にも補足される。……そういえば、桃色の人はヤガミモドキ狙ってた筈なのにどうしてこっち(フェイトさんのいる所)に来たんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 Ⅳォォォォォ!

 

 

 運命の時、来たれり。フェイトさんとレヴィちゃんが一気に下に降りその場から避難する。フェイトさんは俺の所まで後退、レヴィちゃんはヤガミモドキの場所まで後退。

 それを見届けた後、上から……もっと言えば今さっきまでフェイトさん達がいた所から呻き声が上がった。

 一人目は俺が掴んだ紫の人。二人目は金髪オッドアイロリ、三人目は桃色ロング。

 ……見事に顔面からいっちゃってて、痛そう(小並感)。

 感想を聞こうとフェイトさんの方に顔を向けるとフェイトさんの視線は紫の人に釘付けになってた。

 

「母さん!?」

 

 ……俺は、紫の人、もといフェイトさんのお義母さんに土下座した。




~その頃のディアーチェ~

(ぬぉあ!?な、なんだあの三人は!……ビビっておる訳では断じてないが、流石に少し驚いたぞ……。ビビっておる訳では無いがな!)(強がり&涙目)


◆◇◆◇◆◇◆◇


お気に入りが1000件突破しましたので、記念に何かしようとしてもなにも浮かばないこんな私の脳みそを恨みたい今日この頃です。

……なにも浮かばないのでフライパンの名前決めか、オマケのエクストラで違うルートでも考えるかをしようかなって思ってたり。
またいずれ連絡します。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。








本当にありがとうございます。


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第44話『知らない子』

無理矢理感が半端ないですが……出来れば深夜のテンションだと言うことで許していただければ……。


 頭からの落下。そこまではいい。しかし気付いた時には目の前に、プレシアさんの顔が。な、何を(ry)と思ったその瞬間、更に目の前にピンク色が毛の生え際をしっかりと見せるように私の目の前にぶつかってきた。流石にここまで来たら解せない。

 更に、避けようにも避ける事が出来ない距離。出来たとしても顔面を強化する事しか私には出来なかった。その為、プレシアさんの顔とピンク色の頭を顔面で受け、鼻から噴き出す赤き生命の液体の軌跡を描きつつ、地面に着地する。

 鼻からぼたぼた止まらない液体を流しつつもしっかりとその原因を探して仕返しをしようとしてる私は完全にお兄さん(あおなパパ)の影響を受けてるって感じる。

 私はクリスを掴み、その二つの耳を止血の為鼻に突っ込んでおく。粘膜を傷付けるとかヒロインとしてどうなんだと言われても気にしない。……鼻の穴が拡がるのはちょっと気になるけど。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第44話『知らない子』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「いった~い……。あら?王様は……?」

 

 これが、あんな激突で無傷な人のファーストワードである。……信じられるか?ぶつかってた時、確実に首が普通の人なら死んでる角度まで曲がった上に伸びたんだぜ?……私の周りには、人間やめた奴か人間じゃない奴が多過ぎる。勿論フェイトさんは人間だけどね!……いや、天使で女神だから……どうなんだろ。あ、この場合は天使や女神のようなお方だって事でいいのか。

 ちなみに、金髪のオッドアイズロリは鼻から何か噴射しながら遠くに吹っ飛ばされてたいった。だから今はどうでもいい。

 

「……あ、見付けた!」

 

 ピンク頭さんがヤガミモドキをロックオン。何をしようとするのかが気になる。

 だがここではあえて放置しよう。もう目を逸らす事なんて出来ない。

 

「母さん……。良かった……怪我は無いみたい」

 

 そう、お義母さんだ。

 まさかこんなタイミングでフェイトさんの母親に挨拶できるとは思ってもみなかった。……しかし、フェイトさんの母親…………えっと、名前、なんてったっけ?

 ……いかんやばいやばい、そういや俺フェイトさんの母親の名前聞いてなかったじゃん。別にフェイトさんを責める訳じゃ無いけどフェイトさんとアルフさんの話ちゃんと聞いときゃ良かった。……あぁんもう俺のお馬鹿さん……。

 

「ただ気絶してるみたいですが……」

 

 こんな時でも冷静なしゅてるんに敬意を払いそうになった。

 

「ん~……。あ、そうだ!ここからはあおなの家が近いし、一旦あおなの家に母さんを運び込んでもいい?」

 

 勿論ですよ!

 おっと思考の先走り。

 

「勿論ですよ!」

 

「…………ぐぬぬ」

 

 しゅてるんが何故顔をしかめたのか理解できないしたくない。

 

ふぁ()ふぁほぉ(あの)!」

 

 そんな時、ふと肩を叩かれる感覚あり。条件反射でその腕を掴み、そのまま背負い投げの要領で地面に叩き付ける。しかし相手はよっぽどの手練れなのか叩き付けられる直前に地面に着地、その姿はまるで銃弾を身体を仰け反らせて避けるような体勢だった。更にその瞬間、目の前に兎(何故か両耳が赤くなってる)が舞う。それに気を取られていた瞬間に叩き付けられる前に着地したソイツが立ち上がり、俺の片腕を掴んだまま(・ ・ ・ ・ ・)俺の後ろに回り込む。

 そんな事をされたら腕を決められて肉体的に痛い状況になるので、足を軸にまるでコンパスのように周りをぐるぐると回って貰うことにした。

 しかし、その瞬間に伏兵(しゅてるん)は動く。そっと足元に『ルシフェリオン』を伸ばし、ソイツの足を絡め、転ばせることに成功。ついでに俺も転んだがそこはまぁ、怒るところでも無いので割愛。

 さて、ここで俺を襲った犯人の顔が分かった訳だけど、ソイツはなんと先程ぶつかっていた三人組の一人で吹っ飛んでいった金髪のオッドアイズロリだった。

 

「……やっぱりだ。やっぱりお兄sあおなパパだ!」

 

 どっちやねんとの言葉を飲み込み、さてここから事情聴取を始めるとしよう。ちょいとあかん単語が聞こえた。パパとかパパとか……パパとか。

 

What is your name?(貴女の名前はなんでせう?)

 

My name is Vivio!(わっちの名前はヴィヴィオでさぁ!)

 

 ……コイツ、出来る!

 まぁそれはともかくとして

 

「本当に貴女は誰なんですか?どうして俺の事を父親と?自慢じゃ無いですが、俺はこの年で子供作りたいって盛った事はありませんからね?そもそも、何故俺の名前を」

 

「うん。それが普通だと思うよ?パパ」

 

 だからパパって言うのやめぇや。

 あと俺の名前は……あぁ、確かフェイトさんとしゅてるんが呼んでたね。

 

「あぅ……パパって呼ばれたくない、か……。じゃあ、お兄ぃさんッ。……これで、いい?」

 

 上目使いでこちらを見てくるのは素直に可愛いとは思うよ?フェイトさんには到底叶わないけど。本気で頼んでるって言うのはなんとなくわかる。

 だけど何故そこで御大将っぽく言ったのかが今の僕には理解できない。

 

「いいも何も俺は貴女の事は名前の苗字しか知りませんが?」

 

「いや、その、そっち(ヴィヴィオ)は名前なんだけど……」

 

 あれ?そうなの?

 

「じゃあ貴女の苗j「おい!シュテル!『砕け得ぬ闇』が見つかるかもしれんぞ!だから今日は我らの元に帰ってこい!」……」

 

 オノレヤガミモドキ。なんでこんなタイミングで話を持ち出すのかな。

 しかもこっちに来やがったよ。引っ張られてるピンク頭さんの方も気にしてあげてよ。地面にばんばん打ち付けられてるから。端から見たらかなり残虐に見えて精神削られるから止めたげてよぉ!

 

「本当ですか!?」

 

「あぁ!この桃色の情報でな!この辺りに潜んでいるらしいぞ!」

 

「それでは、今すぐにでも!」

 

「うむ!」

 

 そう言ってしゅてるん、レヴィちゃん、ヤガミモドキ、ピンク頭さん達は空へと飛んでいった。ちなみに、レヴィちゃんだけは思い出したようにこちらに帰ってきて、フェイトさんと再戦の約束をして再び飛んでいった。

 ………………にしても、なんなんだろう、この虚しいって言うか、裏切られた?って気持ちは。しゅてるんが『砕け得ぬ闇』を優先したから?まぁいっか。俺にはフェイトさんが一番だから。

 あ、結界が消えた。

 

「……とりあえず、フェイトさんのお義母さん、運びましょうか」

 

「う、うん。そうだね」

 

「あと、ヴィヴィオちゃんは俺の家に来てください。色々と話がありますし」

 

「あ、はい」

 

 あ、シュークリームのレシピ………また明日でもいいか。

 あと、家に入る前に聞こえた『待ってください!私も……』ってのは誰だったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 フェイトさんの母親を我が家に運び、(母さんの)布団を敷き、そこに寝かせておく。ちなみに、今は居間にいる(ダジャレですか?いいえ、ケフィアです)。

 ……そう言えば、フェイトさんが家に来るのなんて初めてだなぁ……。顔がにやけてきた。

 

「で、それで君は?」

 

 そんな俺のにやけ顔を無視し、フェイトさんはヴィヴィオちゃんの方へ顔を向け、話を開始する。

 うん、分かってた。なんとなく分かってたけど、なんか虚しい。

 

「あ、はい。フェイトマm……フェイトさん」

 

 むむ?……何故フェイトさんの名前を知ってるんだろう。確かフェイトさんの名前は誰も口に出してない筈だけど。……もしかして読心能力をお持ちの人かしら。

 それならそれで俺の甘い甘いフェイトさんへの告白訓練妄想を垂れ流して顔真っ赤にしてやるまでの話だけど。

 

「あの、私……ヴィヴィオって言います」

 

 それはさっきも聞いt……あぁ、フェイトさんへの自己紹介か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、ヴィヴィオ。ヴィヴィオ・テスタロッサって言います」

 

 

 

「「えっ?」」

 

 この一言は俺の思考を停止させ、フェイトさんの顔を驚かせる事に充分以上に貢献しましたとさ。




~その頃のアインハ……緑髪の人~

(ヴィヴィオさんに追い付きましょう!……閉め出された!?……馬鹿な……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


ヴィヴィオちゃんにテスタロッサ姓をつけてみました!



………………。

ゆ、許してください!これも全部深夜のテンションが悪いんです!

か、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします……。


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第45話『汝は未来人なりや』

書く→なんか違う→書きなおす
で遅くなりました。


今回、ヴィヴィオちゃんに謎のdisりがありますが、自分で未来人って言ってる人に対する私個人の返し方ですので、石は投げず構えるだけにしていただけますようお願いします……。


 ……ヴィヴィオ・テスタロッサ……?

 ……どういう……ことだ……?思考が固まって頭が働くことに関してストライキを起こしてやがる。あとでちゃんと報酬(ブドウ糖)やっから今は働いてください。

 ……さて、ここでヴィヴィオちゃんが出したヒントは幾つかある。

 

①俺の事をパパと呼ぶ

②フェイトさんの事を知っている

③金髪のオッドアイズロリータ

 

 ……この事から導き出される結論はたった1つ!

 

「ヴィヴィオちゃんは極度の妄想癖を持ったストーカーだった……?」

 

「なんの根拠があってそんな酷い事を!?」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第45話『汝は未来人なりや』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「根拠、根拠ですか?それならありますよ。たっぷりとね!」

 

 根拠を聞かれたのなら答えるしかあるまい。

 

 多分オッドアイにしたのは『愛しのフェイトさんに近付きたいけどカラコンが片方しか無かった』ってオチだろう。……何故フェイトさんのストーカーだって思ったかだって?……フェイトさんの瞳は美しいルビーのようだもの。金髪なのはこれもやっぱりフェイトさんに近付きたいから、と考えていいだろう。

 しかしフェイトさんの近くには多分、たまたま、度々見るたびに俺がいたんだろう。だから俺が障害となった。ならその障害()をどうするか。

 ……ヴィヴィオちゃんは思ったんだろう『アイツの事をパパって呼びゃあフェイトさんがアイツの事を引いて離れてくんじゃね?』、と。

 

 とりあえずその旨をフェイトさん含め話しておいた。

 

「どうです?これが答えですよ。ストーカーさん」

 

「…………」

 

 ふふ、悔しそうに拳を握り締めて……。

 

「……お兄さんはやっぱりお兄さんだったよ」

 

「なんですか?何か言いたい事があるならはっきりと仰ってください!」

 

「~~~~ッ!……ハァ……。なんかもう怒るのを通り越して呆れすら超越し疲れましたからちゃんとした真実を明かしますが、私は今この時間から約13年後の未来から来た人間です」

 

 ………………。

 

「……あの、なんでお兄さんは電話に手を掛けてるんです?あと、もう駄目みたいですねって感じの顔は止めてください」

 

 受話器を取り、ある番号を入力する。

 

『もしもし』

 

「あ、もしもし、あの海鳴大学病院のお方ですか?」

 

「ちょっ!?止めてくださいよ!なんで病院に連絡するんですか!私は正常です!」

 

 あ、手が叩き落とされて電話が切られた。

 それこそ止めろよぅ。そういうのは相手方に迷惑が掛かるだろうが。それしちまうと今度からかけづらくなるから大変なんだって。……ふと思ったんだが、よく漫画やアニメや小説の登場人物ってかけてた電話を強制終了するけど、よくなんの恥ずかしげもなく悪びれる様子もなくまたかけては切るやるけど、信用とかは大丈夫なんだろうか。

 

「じゃあ、どう反応したらいいんですか!」

 

「あぁんもう!どうやったら信じてくれるんですか!」

 

 今日の天気は口での言い合いのち拳の語り合いになるでしょう。所によっては血の雨が降るので傘、又はカメラと警察に連絡するための携帯電話を持っていく事をお薦めします。

 

「……証拠を出せばいいんじゃ……」

 

「「………!」」

 

 口での言い合いがデッドヒートし、拳の『こ』が出そうな時、フェイトさんによる鶴の一声……いや、『神の一手』が示された。……そうだよ。確かに証拠がなによりだ。論より証拠って言うもんね。流石はフェイトさんだ。俺なんかじゃ多分世界が一巡しないと気付かない答えだ。

 

「証拠……証拠なら、ありまぁす!」

 

 そう言い、ヴィヴィオちゃんは背負っていた鞄をフェイトさんと俺の前に『ドンッ!』と効果音が付きそうなくらい豪快に置き、開く。そしてその中から可愛らしい財布のようなモノを取り出し、開きディスティニードロー。

 

「私は手札から『生徒証明書』を召喚します!」

 

 つい2000LP払って『神の警告』を発動したかったが、我慢する。

 さて、ヴィヴィオちゃんの持参したお宝を鑑定するとしよう。……なになに?名前は『ヴィヴィオ・テスタロッサ』と誕生日は……ふむふむ。それで通ってる学校は……『St(ザンクト).ヒルデ魔法学院』……?知らない名前だな……。で、入学した年が新暦75年で今現在は四年生、と……。………しんれきってなんだ?

 

「……やっぱり偽物じゃないですか!俺、こんな学校知りませんよ!」

 

 つまりヴィヴィオちゃんは更に厨二病まで持ってるって事だぁ!との同意を込め、フェイトさんの方へ顔を向ける。きっとこの瞬間の俺の顔面は笑顔で溢れていた事だろう。

 

「あおな、あおな、その学校はミッドチルダの学校だよ?……あと、新暦の所で疑問符が出てたから答えるけど、その新暦はミッドチルダの年号で、今新暦は66年の筈なんだけど……」

 

「……あるぇ?」

 

 しかしそれは俺の頭の知識が足りないと言うことを晒しただけの一人舞台だった。……おうヴィヴィオちゃんその為の右手してんじゃねぇぞ。一角獣のテーマなんか流れてねぇんだから。

 だがそこで諦める俺じゃない。

 

「でもそれって根本的な解決にはなってませんよね?……このくらいなら幾らでも偽造する事が出来ると思うんですが……」

 

「あ、あぅ……えと、えと……」

 

 勝ったな(慢心)。未来人なんてそんなSFじゃねぇんだから(魔法から目を逸らしながら)。

 そんなに信じて欲しいなら他にも超能力者とか宇宙人とか異世界人とか出してみろよ!

 ……あれおかしいな。この街に住んでたら割りと普通な気がして来た。……HGSとかクロノとかリンディさんとか……。やだ、自分の言った言葉の柱がガッタガタになってる。

 

「……うぅ………ん?………あ!」

 

 そんな自分の言葉に不安を抱いていた俺に止めをさすかのようにヴィヴィオちゃんが鞄からナニかを見付けた。

 

「これ………。ありがとう、あおなパパ」

 

 ……なんで俺が感謝されたんだろう。

 

「お兄さん……。これが、これが私の証拠だよ!」

 

 そう言ってヴィヴィオちゃんが俺の目の前で見せ付けたのは――

 

 

 

 

 

 

 

「『銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光子竜(フォトンドラゴン)』!」

 

 

 

 

 

 

 

 ――俺の、相棒(パートナー)だった。

 

「こ、これは……。そう、ですか。そういう事ですか。分かりました。俺は貴女の事を未来人だと信じます」

 

 そう言いつつ俺は自分の部屋からデッキを持ってくる。そして、相棒を取り出す。

 ……あぁ。これではっきりと分かった。ヴィヴィオちゃんの持ってる『銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光子竜(フォトンドラゴン)』は本物だ。

 傷の位置、カードの角のちょっとした開き具合。全部一致した。

 この世に『銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光子竜(フォトンドラゴン)』は数あれど、俺の相棒はこの世に三枚しかいない。……どれだけ同じカードがあろうとも、俺の相棒は探し出す事が出来る自信はある。つまり、相棒を持ってるって事は否応なしに信じるしかないって事だ。

 

「信じて、くれるんですか?」

 

「はい。信じましょう。貴女は未来人です」

 

 こうして俺とヴィヴィオちゃんは固い握手をした。

 

 

 

 

 

「あっさりし過ぎてるような……」

 

 フェイトさん、それは言っちゃ駄目ですよ。

 

 

 

 

 さて、ヴィヴィオちゃんが未来人だと言うことは分かった。

 それじゃあヴィヴィオちゃんはフェイトさんの娘って事になるのかな?

 ヴィヴィオちゃんの年齢が10歳らしい。……それに加えて今から13年後の未来からやって来た。……え?って事は今から3年後?

 更に俺が父親?……俺ってばただのクズじゃねぇか。

 ……………死のう。




~その頃の未来のノーヴェさん~

(ヴィヴィオもアインハルトも遅いなぁ……。何やってんだろ)


◆◇◆◇◆◇◆◇


なんか……信じた理由がご都合主義っぽくなってますが……これが多分私の脳みその限界です。

柔軟に考えねば……。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第46話『KNGRG?』

ちょっとだけ暴走した結果がこちらになります。


 間違いを起こしてからでは遅い。だから死のうと包丁片手に風呂にお湯をいっぱい溜め、さぁリスカと踏み込んだ所にヴィヴィオちゃんによる説明が入った。

 で、そのヴィヴィオちゃんの説明を纏めると、どうやらヴィヴィオちゃんは元々孤児らしく、そのヴィヴィオちゃんを引き取り、保護責任者になったのがフェイトさん。更にフェイトさんの保護の後見人になったのが俺と高町って訳か。納得できた。つまり俺はフェイトさんに失礼な事はしていないって事だ。

 ……それにしても、あの高町が後見人をした、だと?

 まぁ、それはさておき、保護責任者やら後見人やらその他諸々で未来の俺にかなりの興味を抱いた。まぁ、未来人がいるんだ。気にならない方がおかしい。しかもヴィヴィオちゃんは10歳でチョr話をしっかりと聞いてくれそうだ。

 俺はフェイトさんがお花を摘みに行ってる間、ヴィヴィオちゃんにコソーリと近付き聞いてみた。

 

「……あ、あの、ヴィヴィオちゃん」

 

「はい?」

 

「……フェイトさんと俺の関係はどうなってますか?」

 

「えっ?」

 

 ……分かってる。ここで聞くのはとっても卑怯だってのは分かってるんだけどもどうしても聞きたくなっちゃう。

 タイムパラドックスとかバタフライエフェクトだとかはフェイトさんに危機が及ばなければどうでもいい。

 

「………まぁ、その、知ってるには知ってるんですけど……」

 

「けど……?」

 

 ヴィヴィオちゃんが少し渋るような言い方をする。なんだ?やっぱり言いたくない?それとも………悲惨な結果だったから言いたくないとか?なんだろう物凄い早さで聞く気ががが。

 

「あの、玄関で閉め出されている私の先輩もこの家に入れていただければ……」

 

 そう言ってヴィヴィオちゃんが指差した先にいたのは海鳴商店街の名物料理を口一杯に含み、家に入れず涙を目にいっぱいためた緑髪のオッドアイズツインテールだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第46話『KRNGRG(これなんてギャルゲ)?』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 アインハルト・ストラトスさんは、私からしてみれば先輩である。ご先祖様(記憶)から受け継いだ覇王流(カイザーアーツ)の使い手で頭も良くそして天然な先輩だ。天然な先輩だ(←ここテストに出る)。その天然さはフェイトママにも通じる所があったりする。

 だからこうして口一杯に食べ物を詰め込んで『ふぁほふぁほ』しながらバリムシャメリムシャキラキラバシューンってなってるんだと思う。

 

――ヴィヴィオさん。どうやらここは私達がいた時代よりも過去みたいです

 

 あ、はい。一応それはもうちっちゃいフェイトママとお兄さんに言ってるからもう大丈夫ですよ?あと、口に物が詰まってるからって念話で話さないでください。お行儀が悪いです。ですから食べるか話す(念話)かどちらか一方に集中してください。

 

――………

 

 あ、食べる事に集中した。

 

「あの……それで、ヴィヴィオちゃん?」

 

「え?あー……あの、えっと……」

 

 ……どうしよう。ここは真面目に答えた方がいいんだろうか。いやまぁ確かに私達の時代のお兄さんとフェイトママの関係は知ってる。……知ってるけど、ここで言うべきなんだろうか……。

 

「……ふぅ……。あれ?どうしたの?あおなもヴィヴィオも見詰めあっちゃって」

 

 そんな時に救いの手としてちっちゃいフェイトママが来てくれた。……ありがたや、ありがたや。

 

「い、いえ……なんでも無いです」

 

「そうなんだ……」

 

 ……あれ?フェイトママちょっとムッとしてる?もしかしてこの頃から既にお兄さんを……?

 ……でもお兄さん、全然気付いてない。この頃のお兄さんって鈍感だったんだなぁ……。

 

「あ、そうだ。ねぇ、あおな」

 

「はい!なんですか?フェイトさん!」

 

 うん。ここは全然変わらない。(未来)(現在)も変わってない。なんだろう。完全に脊髄反射どころの反射速度じゃない気がする。

 

「えっと、あの……あおなの家に、泊まってってもいいかな?」

 

£ § ◎ ヰ Γ ヱ Ρ Ξ Ε Σ(は い 、 大 丈 夫 で す よ ?)

 

「お、お兄さん!日本語が意味する事を放棄してますよ!?」

 

Π η α ι γ π β ι λ ζ Ο Ψ(は は は 何 を 馬 鹿 な 事 を)……ゲブッゴボフッゲハッ……ふぅ。……改めまして、はい、大丈夫ですが……えっと……どのくらいの期間家にいてくださいますか?」

 

「う~ん……。長くてこの事件が終わるまでで、短くても2週間くらいかな?」

 

 唐突にブレイクダンスを踊り出したお兄さんは放っておくとして、

 

「えっと……フェイトマmフェイトさんはなんで泊まる事にしたんですか?」

 

「えっとね、今さっきトイレに行ってた時にアルフから念話があったんだけど……私達が住んでたマンションが火事で燃えちゃってね……」

 

 そう答えたちっちゃいフェイトママの顔には深い悲しみが刻まれていた。……あー、だからフェイトママは私に『火遊びしたら絶対許さないからね!』って言ったんだろうなぁ……。謎が解けて良かった。

 

「ねぇあおな、アルフも来るけど、いい?」

 

 ブレイクダンスも佳境に入り、何故か空中に浮きかけていた(これが本当の天にも昇るって奴?)お兄さんはピタリと止まり、どしりと床に叩き付けられたのち立ち上がり、

 

「大丈夫です!問題なんてあるわけがない!」

 

 はっきりとそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、私達もしばらくの間、泊まってっいいですか?」

 

「………………………………えぇ……。まぁ、別にいいですけど」

 

 ちっちゃいフェイトママの時とはうって変わってまるで蛇足を見るような目で私達を見たお兄さんにイラッて来たのは、私達の時代まで持っていく事にしよう。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

―時は少し巻き戻る―

 

 

――なんかね?下の階の奴が飼ってた『リオなんとかの雛』が原因らしくてマンションが燃えた。と、言うわけでアタシ達は宿無しになったんだけど、どうしよう

 

 ……えっ?どういう……事?

 私は今、アルフからとんでもない衝撃の真実を明かされている。夢であってくれたら、そうなんども思う。しかし現実は非情で無情、更に酷だった。

 

――うん。フェイトが思考停止になるのは分かるよ?でもまぁ燃えちゃったもんは仕方ない

 

 ……燃えたって、全部?なのはとの思い出のあれ(写真)それ(ビデオテープ)も?

 

――あぁ、それなら心配ないよ。家具とかは駄目だったけど、フェイトの思い出の品と金品、あと学校関連とその他必要なモノは無事確保しておいたから大丈夫

 

 え?どうやって?……まさか燃えた中に飛び込んだんじゃ……。

 

――そのまさか、だよ。フェイトの為だもん。あぁ、怪我はしてないから安心して、ただ尻尾がヒトカゲみたいになりかけただけだから

 

 ……それは大丈夫って言わないんじゃ……。

 

――まぁまぁ、今はそんな事より住む所、だよ。……どうする?無難にリンディ提督に頼んでみる?それともなのはに訳を話て少しの間居候さして貰う?それかはやてに頼む?あおなん家に永住する?

 

 ……なんか、最後のがおかしい気がするけど……。あ、今一応あおなの家にいるけど、駄目元で頼んでみようかな……。

 

――(駄目な訳が無いんだけど……)うん。OKだったら連絡して

 

 うん。分かった。

 アルフとの念話を終了し、ここで一度、頭の中を整理してみると、『リオなんとかの雛』の所為で私達の家が燃えた。それで今からあおなの家に泊まれるかどうかを交渉する……。

 ……姉さんが寝てて良かった……。絶対にうるさかっただろうし。

 私は用を済ませ、あおなの所に戻る。するとあおなはヴィヴィオと目と目で見詰めあってた。

 

「……。あ、あれ?どうしたの?あおなもヴィヴィオも見詰めあっちゃって」

 

「い、いえ……なんでも無いです」

 

「そうなんだ……」

 

 ……なんだろう。何か私今とっても最悪な事やってるんじゃないかな……。でも、あおながヴィヴィオと見詰めあってた事を思い出すと……幾らヴィヴィオが私の未来の(養子)だとしても胸の奥底がむしゃくしゃして仕方がない。

 ………でもここはとりあえず、とりあえず置いておこう。先に泊まれるかどうかを聞いておこっと。

 ……………このむしゃくしゃは後からでも充分考える事が出来るし。

 

「あ、そうだ。ねぇ、あおな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……この、『泊まれたらいいな♪』って気持ちは胸の深くに大事に閉まっておこっと。




~その頃のなのはさん~

(なんだろう。猛烈で鮮烈で激烈に嫌な予感がする……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


強引に話を進めるにはどうしたらいいか、と思いながら書いてたらこうなりました。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。








次回は隅っこで泣き出し始めてたシリアス要素を少しぶっこもうと考えてます。


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第47話『夢を見た』

少しでもシリアス成分ぶちこまないとバッドエンドにしたくなる病にかかってしまったのでほんのちょっとだけシリアス成分ぶちこみました。

まぁ、今はまだ全然ですが。


 

 

 周りは酷い火事だった。

 

 

 目の前には動かなくなったクロノや高町やアイツ(・ ・ ・)がそこにあった。

 

 

 目の前には愛しのフェイトさんが倒れていた。どうやら、ギリギリ事切れていないようだ。

 

 

 オレ(・ ・)はゆっくりと、その首に手を掛け、力を込めた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第47話『夢を見た』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 そこで、目が覚めた。……12月だってのに嫌なくらい背中が汗でグッショリだ。正直、どんな夢を見たか、なんて覚えてない。……ただ、覚えているのはとっても胸糞が悪くなった事と掌に残る細くて温かい筒を握ったような感触のみだった。

 ……嫌な感触だった。柔らかくて、だけど一部は固くて……。……最悪だ、本当に最悪だ。例えるならフェイトさんとニコニコお出掛け最中に高町が横槍(物理)を入れてくる上にクロノが+αで着いてくるぐらいの最悪の目覚めだ。

 ……本当になんだったんだ?……まぁ、覚えてないって事はそれほど重要な夢じゃなかったって事だ。

 さて、そんな事よりもっと大事な事がある。そう。それはフェイトさんだ。結局昨日はフェイトさんとアルフさんとリニスちゃんはお義母さんと同じ部屋で寝てた。

 何故お義母さんがまだ目を覚まさないのは知らないが……リニスちゃんによれば長旅で疲れたとかなんとか。…………異世界からでも渡航して来たって聞いても驚かないようにするくらいの覚悟くらいは必要だろう。

 そんな覚悟を完了したのち、俺は俺の布団に潜り込んで来やがってるヴィヴィオちゃんを蹴りだし、起き上がる。

 とりあえず制服に着替え、布団をヴィヴィオちゃんを巻き込み畳む。……緑髪さん?緑髪さんならソファの上で寝るってさ。……結局名前は教えて貰えなかった。

 それはそれとして、部屋を出て一階へと降り、フェイトさん達が寝ているであろう襖の前に立つ。……開けるべきだろうか。それとも否か。よし、開けようと襖に右手をかけたその瞬間襖が開き、よっぽどの力だったのか俺はキッチンの方まで吹き飛ばされたのでした。……その際頭を椅子の足にぶつけた。超いてぇ。

 

「う~ん!今日もいい朝、だね!」

 

 ……あれ?なんだろう、フェイトさんの雰囲気が違う気がする……。

 でもなぁ……深夜のテンションとか早朝のテンションとかあるし、聞いたら駄目な気がするんだけど……。どうするべきか。

 ……非常に悩ましい、が。

 

「あ、あの……フェイト、さん?」

 

 そんなの気になって聞くに決まってるじゃないか。……一つだけ悔しいと思える事は俺は好奇心に負けてしまった、と言う事だけだ。悔しい……涙出てきた。

 

「ん?どうしたの?あおな君」

 

 ……最近、こんな状況と同じようのを体験したような……。確か、リインさんと限界バトルしてた時だったかな?フェイトさん(?)からの念話を送られて来たんだっけ。……今のフェイトさんはまさにその、なんて言うかフェイトさんだけどフェイトさんじゃない状態だ。

 なにか嫌な予感がするが、ここは退かずに聞かねばならぬぅ!

 

「貴女は……本当にフェイトさん、ですか?」

 

「………んん……。ふふ……」

 

 目の前のフェイトさん(?)がにやりと笑う。その姿も美しいが、フェイトさんにはその笑い方は似合わない。

 

「フェイトじゃなかったら………どうする?」

 

「なっ!?」

 

 なん……フェイトさんじゃない……だと?

 ……もしかしてフェイトさんがからかってるとか?それだったら嬉しいし、幾らからかわれても構へん構へんで済ませるが……。

 

「この姿が、()の本当の姿だったとしたら、キミ(あおな君)はどうする?」

 

 ……これは、本格的な奴かもしれん。幽霊的ななにかが取り憑いたとも考えられるし、多重人格なのかとも思える。だがそんな事を考える前に――

 

「……それでも、俺のフェイトさんへの『愛』は変わりませんよ。俺はフェイトさんの全てに惚れたんですから。心に~だとか顔に~だとか体に~だとかじゃなく、全てに惚れたんです。ですから、例えフェイトさんの本当の姿がなんであれ、フェイトさんが何を抱えていようとも、フェイトさんが俺の事をどう考えていたとしても……俺のこの『愛』はフェイトさんにしか向いてません」

 

 ――俺の口は自然とフェイトさんへの『愛』を語る。まるでそれが普通だとでも言わんばかりに。

 ……これで断られたり拒絶されたり、『他に好きな人が出来たよ』って言われたりすれば俺は素直に身を引く。だってそれがフェイトさんの為だから。『愛する』って事はそういうことだって……大切で大好きで支えあって行くことだって俺は思ってる。

 

「……そう。ならそれでいい。あおな君の想いははっきりと分かった。これでお姉ちゃん(・ ・ ・ ・ ・)は安心したよ。じゃあ、不甲斐ない妹だけど、フェイトをよろしくね?」

 

「――――はい!」

 

 そう言うと、フェイトさん(お義姉さん?)は壁に寄り掛かるように倒れていった。……お姉さん、か。……フェイトさんが心配で憑いてるのかな。……今回で俺は、お姉さんに認められたのだろうか。そうだといいな。そんな事を考えながら俺はフェイトさんをお義母さん達がいらっしゃる布団へと戻すのであった。

 もう既に憑依という事実に驚く事すら麻痺するくらい魔法(非日常)に近付いていたんだな、って考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、それと私アリシア・テスタロッサって言うの。よろしくね♪」

 

「ドーモ アリシア=サン。あおな=盾街です」

 

 寝かし付けた瞬間に目を開けての自己紹介にはビビった。

 

 

 

 

 

 さて、時間はもうそろそろ5時半になるのでフェイトさんをそっと起こす。そして朝食へ……。今日の朝ごはんは所謂『ラピュタパン』って奴だ。食いづらいって話だが、俺はそれをチーズという名の接着剤で強力接着してあるから無問題。どうやったかは謎。多分奇跡が起きたんだろう。更に栄養を考えて生野菜のサラダも作っておいた。レタスとキャベツを全力で水洗い→水を切ってお皿に盛るだけの簡単なお仕事。ちょっとしたアクセントにトメイトゥを乗せておくのも忘れずに。

 とにかくフェイトさんと向かい合っての朝ごはん。フェイトさんの顔がどことなく赤かったのはなんでだろう。……低血圧?さっぱり分からねぇ。あとで聞いてみるとしようか。

 朝食後、皿を洗い食洗機にかけ、アルフさん又はリニスちゃんへの書き置きをしておきフェイトさんと共に家を出る。

 

「「いってきます」」

 

 フェイトさんと『いってきます』が出来て俺満足。

 家出た瞬間に高町に出会って俺不満足。

 

「おはよ!あおなk………フェイトちゃん!?」

 

 高町が目を丸くした。ただでさえ大きな目が更に大きくなってた。

 

「おはようございます。高町さん」

 

「あ、おはよ、なのは」

 

「あ……うん。おはよ、フェイトちゃん……じゃなくて!どうしてあおな君とフェイトちゃんが同じ家から出てくるの!」

 

「……泊まったからだけど?」

 

 そんなさも当然とでも言わんばかりのフェイトさんには痺れを通り越して憧れを感じちゃうね。もうこれ以上無いんじゃないかってくらい。いや、まだまだありそうだけど。

 

「そ、そんな『当然だけどなに?』って感じで言わないでよぅ……。そ、そもそもなんであおな君の家に泊まったの?」

 

「えっと……私が住んでたマンションが火事で燃えちゃって……」

 

「そ、そうだったんだ……。で、でもそれならなおのこと私の家とかはやてちゃん家とかリンディさん家とかあったのに……なんであおな君の家に……(私だって泊まりたいのに……)

 

「いや、えっと……その報せが入ってきた時に丁度あおなの家にいたから……」

 

「そんなぁ……」

 

 高町が絶望した顔でフェイトさんの顔を見ている。……ダメだ。笑っちゃダメだ。ここで笑ったらダメだ……。

 笑いを堪えつつ、学校へと……詳しく言えばバス停へと俺達は歩を進めたのであった。




~その頃のナハト~

(私も主と共に学校に行ってみたいが……守護騎士とリインは許してくれるだろうか……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


……なんと言うか、もうそろそろ主人公強化しないとなぁ……って考えてます。
今のところ、主人公が純粋に勝利したのなんて少ないですし……。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。







気付いたらUAが十万超えてて驚きました。


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第48話『ナハトヴァール』

前回から入れている最初のシリアス(?)な部分があるかどうかでこれからの展開の考えやすさが変わるんです……。
ご了承いただければ幸いです……。
最後にはちゃんと答えあわせ的なモノもしますので。


ちなみに今回あおな君の出番は名前だけとなっております。


 

 

 彼女は『嫌だ』、『やめて』とオレ(・ ・)の腕を掴む。

 

 

 構うものかと両の腕に更に力を込める。

 

 

 彼女はオレ(・ ・)の腕に爪を食い込ませ、拒絶する。

 

 

 そのうち、彼女の瞳からは大粒の涙と、口からは『ごめんなさい』が溢れ始めた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第48話『ナハトヴァール』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 八神家の、朝は早い。

 

「ふぁ……ふ……」

 

「………」

 

 一番に目が覚めるのは『烈火の将』シグナムと『盾の守護獣』ザフィーラ(獣形態)。この二人(一人と一匹)は毎日決まった時間……5時頃に目を覚まし、顔を洗った後、日課のジョギングと散歩へと繰り出す。

 そして朝御飯の時間である6時までその二人(一人と一匹)の姿を誰一人として家の者は誰も見ることは無い。

 二番目に目を覚ますのは主で、僅差で三番目に『祝福の風』リインフォースが目を覚ます。時刻は5時20分……この点で私が怖いと思ったのが、主が目を覚ましたその五秒後には必ず目を覚ます、と言うこと。……二人とも、部屋が違う筈なのに、目覚ましも無いのに、だ。

 ……まぁ、それはいいか。リインは起きるとすぐに主の部屋へ行き、主の着替えの手伝いをする。主は『そんなんええねんて』と言いつつもリインの手伝いを拒みはしない。流石は主と言ったところか。

 着替え終わると、主はリハビリも兼ね、手すりに掴まりながらキッチンへとやって来る。サポートには勿論リイン。

 無事キッチンに着いたのを確認すると、リインは自分の服を着替える為に部屋へ戻る。

 その戻ったのを確認し、主は料理を開始する。

 

「……なぁ、ナハト。なにさっきからカリカリ書きよん?」

 

「人間で言うところの『観察日記』。小学生で言うところの『私と家族の一日』と言う作文のようなモノだ。別に気にしないでくれ」

 

「さよか」

 

 ちなみに、私は夜は眠らずに起きたままだ。人間や守護騎士達とは違い、夜に眠る必要性を感じない。確かに眠る事は出来るけど、『出来るだけ』であって眠ったとしても私になんのメリットもない。

 ……それでも主にはガミガミガミガミ耳にタコが出来ても言われるけどね。

 さて、話が脱線したが、四番目に起きてくるのは『鉄槌の騎士』ヴィータだ。眠そうに目を擦り――――そのままソファーに轟沈する。その腕には彼女の大好きな『のろいうさぎ』のぬいぐるみがしっかりと抱き締められている。

 

「こら~ヴィータ。そないなとこで寝たら風邪引くで~?」

 

「んにゃぁ~……」

 

 どこか間の抜けた声で主が注意するが、ヴィータは既に2度目の眠りにつこうとしている。そこで私の出番だ。

 私はヴィータの『のろいうさぎ』を取り上げ、『のろいうさぎ』を探すように手を伸ばすヴィータの手を掴み、耳元で主には聞こえないように――

 

「……(お前の『のろいうさぎ』、燃やすぞ?)

 

 ――と囁きかけてやる。するとヴィータはゼンマイをしっかりと巻いたチョロQのように動く。これは見ていて私も面白い。勿論『のろいうさぎ』はしっかりと返してやる。

 

「おふぁよ~はやてちゃん……」

 

 最後に目を覚ますのは『湖の騎士』シャマルだ。……今日の寝癖は海星型……ふむ。シャマルのメンタルを砕くナニかが起きると言うことか。

 シャマルの寝癖は日によって変わる。海星型、海月型、蟹型、海老型、トマト型の5つ。その寝癖によって今日のシャマルの運勢を占う事が出来るのだ。私達はこの占いをそのまま『シャマルの寝癖占い』と呼んでいる。ちなみに、シャマル本人はその事を知らない。

 

「みんな、ごはん出来たで~」

 

 シャマルが着替え終わり、シグナムとザフィーラが帰ってくるのを見計らうかのように、主が朝食を出す。

 私達は誰一人と逆らうことなく、欠ける事なく各々の席へ座り朝食を取り始めようと準備する。

 

「こら、ナハト!今からごはん食べようって時に作文書くのはお行儀悪いで!」

 

「分かった。ならば魔法で浮かせて書かせていただく」

 

「そういう、問題と、ちゃうんや」

 

「…………わ、わかった。分かりましたからそうやって私の顔面を掴むのをやめてくdいだだだだだだ」

 

 ……主にバレないようこっそりと下で足を使って書いていたのは秘密だ。

 

「……さて、ナハトがちゃんと分かってくれた所で……ほな、みんな、食べよか」

 

 私を含む7人が一斉に手を合わせるのには謎の清々しさを感じる。

 

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

 

 ……まさか、この私が守護騎士やリインと食卓を囲むとは思わなかったし、今でもまだ信じられない節がある。だが、これは私が今現在経験している事で、夢ではない。その事に暖かさを感じながら主の作ってくれた朝食を口に運ぶ。……やはり、美味しい。

 多分、これが『家族』の暖かさだろう。

 今日は取り合えずこの辺で筆を置いておこう。なんだか、書くのも面倒臭くなってきたし、それに――

 

 

 

「書くな言うたやろ」

 

「あだだだだだだだだだだ!?」

 

 

 

 ――私は食べる事に集中したい。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「……なんやて?学校に行きたい?」

 

「あぁそうだ。……この時代を生きていくのにこの時代の常識や知識は必要だ。それに、私のこの格好なら通うのに問題は無いと思うが……?」

 

 それは私が皆が食べたあとのお皿の片付けをしとった時やった。唐突にナハトが私に近付いてきて言うたんや。『私も学校に通ってみたい』って。

 確かにナハトは身長もあおなと同じくらいやし、通うのには構へんと思う。私としても別に通ってもええし、グレアムおじさんの許可さえ出てくれればすぐにでも……なんやけど……。……それを是としないのが一人。

 

「その意見、反対させて貰う!」

 

 それはリインやった。

 

「何故だリインフォース。私は純粋に『学びたい』という気持ちから学校に通いたいと思っているのだが」

 

「違うそうじゃない。……何故お前が通えて私が通えないのだ!」

 

「おい論点がズレッズレだぞ!そもそもまだ行けるかどうかすら決まっていない!更にお前が通えない理由としてはその大き過ぎる(シグナムと同じくらいの)身長を挙げておこう!」

 

「私も主と一緒に通いたい!」

 

「私の話を聞けぇ!」

 

 あれよあれよとしとる間に、口論(?)が始まってしもうた。……そう言えば、前にリインに聞いたんやけど、リインが小さくなった(ロリ化)のはやっぱりあおなの所為らしく、更には小さくなる為にはどうやら本気を出す必要があるらしい。……なんちゅうか、面倒臭い体質になってもぉたなぁ……。

 

「何故小さくならない!」

 

「あれは私の力を圧縮した結果だ!ほら言うだろう?『水鉄砲は穴が小さい方がよく飛ぶ』、と。あの道理だ!」

 

「じゃあ、あれか?小さくなってしまうと手加減出来なくなると言うことか!」

 

「その通り!だから困っている!」

 

 ……うぅん……どんどん激しくなって来とるなぁ……。止めようにもザフィーラは井戸端ならぬ犬猫会議行っとるし……ヴィータはゲートボール……シャマルは料理をしようとしてシグナムに止められて決闘(デュエル)中……。

 ……どないしよう。……あっ、閃いた。

 

「なぁ、二人とも」

 

「はい!なんですか?主はやて」

「なんだ?」

 

「二人がユニゾンしたら、どうなるん?」

 

 その言葉に二人はハッと気付いたように向き合った。まぁ、元々一つやったんやし、これはワンチャンあるんやないかなーっと淡い希望のせて言ってみたんやけど……。ま、流石にやらへんやろなぁ。さっきまで口論しとったし。

 

「よし!やろう!ナハト!」

 

「あぁ!そうと決まれば行くぞ!リイン!」

 

 …………あるぇ?なしてこないに二人はやる気満々なん?

 

 

 

「「『祝福の風と、夜の闇!今ここに一つにならん』」」

 

 

 

 あれこれ割りとガチな奴とちゃうか?

 リインとナハトが手を繋ぎ、呪文を唱えると魔法陣(ベルカ式)が足元に浮かび上がり、魔力が立ち込める。

 

 

 

「「『我らの力は主の(つるぎ)。我らの知恵は主の繁栄の為。我らの技は主の栄光を世に知らしめる為に!ここに今、力を示す!ユニゾン、イン!』」」

 

 

 

 その魔力が最高潮に達した時、二人の体が眩しく光輝いた。

 煙が晴れ、そこにおったのは……

 

「……成功、した?」

 

 髪の毛が灰色で、肌の色は真っ白。瞳の色は真っ黒なリインを私達とおんなじくらいにした少女やった。

 

「や、やった!これで主と学校に通うことが出来る!」

 

 その者の名は『リヒト』。ドイツ語とベルカ語で光を意味する……らしい。……正直、最終決戦で出すようなフォームのようなモンがこんな日常の一ページで出てくるとは思わんかった……。




~その頃のしゅてるん~

(……システムU-D……まだですか……。あおなに会いたいです……。……さみしい)


◆◇◆◇◆◇◆◇


ナハトの性格が固まらなくて苦労しました。
……リインさんのファンの方々には悪いことをしたと思ってます。

それと、最初のシリアス部分のヒントを挙げるとすれば……大統領、ですかね?
恐らくこれでピンと来ている方が大多数出てこられると思いますが、出来れば何も言わずにいただければありがたいです。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。







それと、6月15日の午前9時頃から活動報告欄にて(初めての)アンケートを取ろうと考えています。締め切りはその時にまた。
アンケートの内容は常々考えていた『フライパンの名前』について、です。
参加していただければ……ありがたいです。


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第49話『魔王城』

寝起きのテンションで書きました。


 

 

 強く、強く絞める。

 

 

 今までの関係を無かった事にするために。

 

 

 しかし、『やめろぉ!』と声がした瞬間にオレ(・ ・)の体に何かしらの衝撃がぶち当たり、吹き飛ばされた。

 

 

 そこには、ボロボロになっていたアイツ(・ ・ ・)がゆっくりと立ち上がろうとしていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第49話『魔王城』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 学校に着く直前には、俺の精神面は既に疲弊しきっていた。

 ……何故かって?高町がね?うるさいの。更にそれに月村とバニングスが加わって、絶望的だった。バニングスも月村も、そういや高町も学校来るの早いねって言葉も飲み込むくらいには。

 やれ『男は(ケダモノ)』だのやれ『フェイトちゃんは羊だから狼は危険』だのやれ『ヲヤスミ、ケダモノ』だの……酷い事を言いやがる。

 その所為でいらない精神まですり減らし、最後は涙が滲み始めた。十歳だもの、俺、強くないもの……。いじめいくない。

 だがしかし、俺の精神は学校に着いた途端に完全に持ち直す事が出来たのである。理由は安心と信頼と完全にフェイトさんだ。フェイトさんは一言『あおなはそんなことしない』とぴしゃり。

 それだけ俺を信頼してくれているんだって事で俺の涙はひゅっと引っ込んだよ。流石フェイトさん。

 それと同時に高町もバニングスも月村も何も言えなくなっていた。完全勝利だ。右手をあげてもいい。

 

「まぁ、フェイトがそれでいいんなら別にアタシは何も言わないけど……だけど……」

 

 全力で顔芸(悔しいでしょうねぇ)をしてやるとバニングスの拳が震え始める。局地的大地震かな(すっとぼけ)?としていると顔面崩壊(手動)を食らいそうなのでこの辺で止めておく。引き際はしっかりとしとかないと酷い目に合う事は今までの経験上理解している。

 だが、しかし――止まれない。

 俺は、俺自身を抑える事が出来ない。

 

 ――キガツクト オレハ バニングスヲ チョウハツシテイタ

 

「ふん!」

 

 しかし顔芸をした瞬間、バニングスの右拳がうねりをあげつつ、ムチで空気を打ったら鳴るような音を鳴らしながら俺の顔面の一部になろうとめり込んできた。

 俺はその誘いを丁重に断り、そのままの勢いを殺さぬよう、切りもみ回転をしながら校門を突破。その際俺の抜けそうだった左上乳犬歯が抜けた。流石にここでペって吐くのはフェイトさんへの好感度の精神衛生上よろしく無いのでしばらく口に含み、元の位置に戻しておくことにする。

 

「あ、アリサ?……幾らなんでもやり過ぎなんじゃ……」

 

「アイツはあの程度じゃ死にはしないから安心しても大丈夫よ。ねぇ、すずか」

 

「う、うん。それは、そうなんだけど……」

 

 ……まさか月村もバニングスに同意するとは思わなんだ。多分高町がリインさんとの戦闘を話したのかなにかしたんだろう。だが今はそんな事より顔面の痛みにのたうち回らなくちゃいけなくなっている。何も得たものは無いと思っていたのだが、バニングスがジャイロストレートを所有しているという事は分かった。これで球技大会の時に要注意対象を月村+αのαの部分にバニングスを突っ込む事が出来る。そうほくそ笑もうとするも顔面が痛い所為でなんも言えねぇ出来ねぇ。

 殴られた左ほほを撫でながら右ほほはフェイトさんに差し出そうと考えていると唐突に襟首を掴まれた。

 何者かと顔を後ろに振り向こうとするとその前に俺の耳にその人物の声が聞こえた。

 

「やぁ盾街君おはよう。今日は来るのが早かったんだね。……それじゃあ、パーティーの準備をするために教室まで行こうか」

 

 なんとそれは徳三四姉妹の二女だった。二女はその声にあまり感情を乗せずに俺を引き摺る。

 

「それではフェイトさん、またお昼に」

 

 俺に出来たのはフェイトさんにそう伝える事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 引き摺られ、教室に着くその入口付近にて、そこで謎の威圧感が俺を襲う。……なんと言うか、殺気に近いなにかを感じる。

 扉が開かれると同時にそこから徳三四姉妹三女が飛び出して来た。

 

「もうそろそろ盾街君が来るとは思ってた!」

 

 なんだコイツレーダーでも乗っけてんのか?

 

「……で、シュークリームはどうだった?」

 

「…………えっと、昨日は用事がありまして、今日聞きに行こうかなって思ってまして」

 

「……そうなの?それならそれでいいわ。じゃあ、よろしくね?」

 

 ……なんだろう。こう、何て言うか、良心につけこんで悪いことをしてる感じがある。うん。罪悪感で心が痛い。

 

「……はい」

 

 だから俺はこんな悄気たような返事しか出来なかった。……まさか、こんな所で徳三四姉妹三女が学級委員長に選ばれた人徳が分かるとは思わなかった。そう、なんて言うのかな『お母さんを悲しませる訳には、いかないんだよぉぉ』とでも言うような、そんな感覚があった。

 ……あぁ、そう言う事か。三女が一部から『お母さん』とか『母上』とか『カーチャン』って呼ばれてる理由がようやく分かったよ……。俺の母さんよりも母さんらしい母さんだったからこんな慕われてるのな。

 

「じゃあ、今日は盾街君には視察に行って貰おうかしら」

 

「視察ですか?」

 

「うん。簡単に言えば、スパイかしら?」

 

 簡単に言い過ぎてあっさりと理解出来た上で覚悟を決めさせる高等なテクニックを今ここで垣間見た気がしなくもない。

 

「分かりました、やりましょう。……それで、主にどこを見に行けばいいですか?」

 

「そうねぇ……。ウチのクラスみたいに料理系の模擬店をするクラスを主に、次点でお化け屋敷みたいなアトラクション系のクラスを視察して来てくれる?」

 

「任されました」

 

「ただ、今の時間から行くのは多分速すぎるから昼前頃にお願いできるかしら……?」

 

「それなら、俺は先にシュークリームの件を終わらせ、また登校し『学校を見回(パトロー)る』という名目でそれぞれ見て回った後に、また昼前に目星を付けたクラスを視察しに行く、と言う案を出します」

 

 この方法ならシュークリームも終わらせられる上に視察も出来るから一石二鳥だと思い、提案してみたまでだが…………判定や如何に。

 

「その案、採用だわ!」

 

 見事採用された方の中から抽選でなにか貰えるなら俺は『暇』が欲しかったが、とにかく今は採用された事に満足して、『行ってきます』と教室からダッシュして『翠屋』へ直行するという返事しか俺には出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、気付けばただ今『翠屋(魔窟)』の目の前まで来ました。……ちらちらと覗いてみたが、まだ朝早いからかお客さんの気配は感じられない。これなら、突入してもいいんじゃないか。……ステンバーイステンバーイゴーゴーゴー。

 

「おはようございます!」

 

「……ん?あら、おはようあおな君。……どうしたの?こんな朝早くに……しかもそんなに汗だくで」

 

 ダッシュで来た。

 店内に入ると、高町の士朗さんはおらず、高町の母親である桃子さんがいた。

 

「汗に関しては何も気にしなくて大丈夫です。……えっと、実は桃子さんに折り入って頼みがあるんですけど……」

 

「あらあら……なにかしら?あおな君の頼みなら私、出来るだけ頑張っちゃうけど……」

 

「えっと……『翠屋』特製シュークリーム、あるじゃないですか。……実はクリスマスパーティーの模擬店で出そうかなって考えておりまして、教えていただければありがたいな、と頼みに来たまでにございます」

 

「……そっか。う~ん……。私としてはいいんだけど、一応シュークリームはウチの看板メニューだったりするからなぁ……」

 

 とりあえずガッカリした、という素振りだけを見せておく。

 ……まぁ、なんとなくこうなる事は読めてた。でもワンチャンありそうだからって理由でやってみたが、無理だった。……さて、結果を報告するか、とお礼を言い、踵返し学校に戻ろうとした時、桃子さんが俺を止める。

 

「あ、シュークリームは無理だけど、エクレアなら教える事が出来るわ」

 

 ……希望はまだ消えてなかった、という事ですね分かります。




~その頃のバニングスさん~

(盾街の奴ってなんであんなにアホなんだろ……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


最近、眠っても眠っても眠いです。
……気付いたらスヤァってなってる気がします。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第50話『視察』

車校で遅れました。


 

 

 邪魔をするな、とオレ(・ ・)ソイツ(・ ・ ・)を押し倒し、馬乗りに。

 

 

 そのまま拳を振り上げて殴る。

 

 

 顔面、胸、腹、肩……どこだろうと、例え拳を地面に打ち付けたとしても殴る。

 

 

 殴って、殴って、殴って、殴って殴って殴って殴って殴って殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る、反応が無くなったと確認し、また、殴る。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第50話『視察(スパイ)

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 桃子さん の 『エクレアレシピ』 を 手に入れた!▼

 ……目的のモノ(シュークリームのレシピ)とは大幅に違うが、桃子さん印だし三女も許してくれるだろうに違いない。許されなかった場合はトゥギャザで土下座。……なに言ってんだろ俺……。

 まぁいいや。兎にも角にも早速学校に帰ろうじゃありませんか。

 と、言う訳で特に何事もなく学校に帰れたのでその描写はカット。

 強いてなにかをあげるとすれば、途中で上空から『キャロォォォォォ!?』とか『エリオくぅぅぅぅん!?』とか『ハルトォォォォォオォォ!!!』って聞こえてきたぐらい。…………やべぇ。まじに幻聴聞こえてきたんじゃなかろうか。今度病院に行くべきだろうか。……まぁそれは幻覚でも見てからにしよう。

 さて、学校に着き、靴箱を経て教室まで辿り着きました。そんで教室の扉を開けた瞬間に教室から何かしらの……大きさにして大体ドッジボールくらいの何かが俺の腹部(の主に鳩尾の部分)めがけて飛んできたんですよ。

 口から桃子さんが実験として作って俺に食べさせてくれた試作型ケーキ三号(美味しかった)が出てきそうになったが、何とか喉元で押さえることに成功した。

 

「ごぶぅ!?んぶっふ!?」

 

 あ、鼻にケーキが入った。めっさ痛ぇ……それこそ涙が滲んでくるほどに……。その痛み分の憎しみをマシマシにその飛んできたモノに目を向けると、そいつは三女だった。……どうして三女が飛んできたんだろうと謎に思ったのも束の間に三女が顔をあげ俺の顔を見る。ちなみにその時の俺の顔は鼻から白いもの(多分クリームとケーキのスポンジが混ざった奴)を目に涙を溜めながら流しかけていた顔だったらしい。どんな顔やねん。

 

「あ、盾街君。おかえり!で、どうだったの?」

 

「ぶ、ふぇ……。あ、えっとシュークリームのレシピは無理でしたけど、エクレアのレシピは手に入れました」

 

「エクレア!本当に?」

 

「はい。どうぞ」

 

 と、メモを三女にそっと渡しておく。まぁなんにせよ三女も喜んでいる訳だし、土下座をしなくてよかったよ……。

 

「あ、じゃあ視察に……って言っても時間的に早すぎるし……」

 

「それなら視察に行くまで……昼前まで手伝いますよ」

 

「ありがと!」

 

 ……その後、四女の部隊で靴や雑巾よりもこき使われる俺の姿があったそうな。あれかな?初日に遅れたのが原因だったりするのかな……。

 

 

 

 

 さて、昼前になったんでただ今フェイトさん達のクラスの扉の前にいます。そう、視察。なんか風の便りと虫の知らせを足して二で割った噂でどうやらここで和風喫茶をやるとかやらないとか。更に今日はその衣装を試着するとか。それを聞いたら黙っておられず視察のためもとい俺はフェイトさんの和服を見たいが為に、それ以外のバニングスとか月村とか高町を見ようとしてたうちのクラスの他の視察団もここに来たがっていたがその方々はジャンケン(物理)で蹴落とし今ここにいる訳です。だって一人一クラスだったからね。仕方ないね。

 それで教室の中を見ようとしているんだけど、中からね、そう、聞こえるのだよ。何て言うんだろうかその、ね。『わぁ!フェイトちゃんその格好似合ってる!』とか『そう……かな。でも、なのはの方が可愛いと思うんだけど……』とか『アリサちゃん、今度はこの猫耳とか、どう?』とか『アタシ、猫耳よりも犬耳だわ』とか聞こえて来たら、ね。突入なんて出来る訳がない。

 しかも周りをよく見てみるとフェイトさんのクラスの男子達も外に追い出されていると言う状況。

 ………………えっ?なに?もしかしてここでフェイトさんが着替えてんの?

 ………………………………。

 っ!駄目だ駄目だ駄目だ!妄想も想像もしたら駄目だ!そんな事したら……あぁ……駄目だ……。鼻血がタラリ……。

 

「終わったわよ男子達。もう入ってきても大丈夫よ」

 

 鼻から出てきた赤き液体を再び身体の内に戻そうと上を向いているとバニングスが扉を開き男子の入室を許していた。……さて、鼻血もちゃんと危険だけど飲み込んだし(吐き気や腹痛が起きるらしいから駄目なんだと)……突撃、しますか。中から『なんでバナナ味だけバナージなのよ!』って声が聞こえるが気にしてなるものか。

 いざぁ……扉を開く!

 扉の向こう側には各々それぞれの和服や着物を着た少女達がいたが、その中でも一際俺の視線が釘付けにされた女性(ヒト)がいる。

 

「きゃ!な、なに……。え!?あおな!?」

 

 そう、フェイトさんだ。

 

「…………フフ。ゴブォ……ぶふっ」

 

 くそ……。まさか、吐血してしまうとは思わなかった……。だが床にぶちまける前に口を閉じたからただ口を膨らましただけの俺の姿がそこにあるだけだ。……まぁ、口の端からチョロッと流れてるが……本当にぶちまけ無かっただけマシだ。ゴクリと再び飲み込み、さてここいらでもう一度フェイトさんの姿を見てみよう。

 髪型はポニテと二つ結びを合わせたモノだった。表情は俺の出現により驚いている……かつて俺が罪悪感で板挟みになった表情だったが、今はその表情が美しい……。そして服装だが、巫女服だった。そう、上が白、下が赤、の巫女服だった。

 フェイトさんのまるで光輝く太陽のような金髪に巫女服の白い部分が完全にマッチしていると言わざるを得ない……。

 

「う……」

 

「う……?」

 

「麗し過ぎますよ……。フェイトさん……」

 

「う、うるわしい……?」

 

 こんなの、崇めるしか無いじゃないか。ちなみに高町が祟るような目でこちらを見てきているが、気にしない事にした。ちなみに高町だが、高町は桃色の浴衣に、おろした長い髪の毛を右に結った髪型、つまりサイドテールって奴にしてた。……案外似合っててビックリしたってのは墓場まで持って行く事にしよう。さて、次に月村だが…………うん。青を基調とした着物、更には腰の部分に立派な帯があるから振り袖って事は理解出来たが、その頭に乗っかってる黒猫耳はいったいなんなんだ……。最後にバニングスだが、割烹着だった。圧倒的なまでの白さを誇る割烹着だった。……いや、似合ってるからいいとは思うけども。割烹着はどうなんだろ……。

 

「その前にどうしてアンタがいるのよ!」

 

「俺も、男子ですから。バニングスさんのおっしゃった『達』の中に含まれるのかと思い馳せ参じました」

 

「んな訳がないでしょうが……。頭痛くなってきた……」

 

 ならちゃんと『うちの』って付けなくちゃ……。そうしなかったから、ほら、他の視察に来ている方々も入って来ちゃってる事になってるよ。

 

「なら言わせて頂くけど、アタシ達のクラスの人間じゃない奴は即刻出て行きなさい!!」

 

「断固として辞退します!」

 

「ここから出て行けぇ!」

 

「ウボァ!?」

 

 バニングスによるアッパーにも似た腹パンが先程三女の突撃によりダメージをおっていた鳩尾に綺麗にストライク。

 俺が審判だったらこのまま次の投球へって行くんだろうが、今の俺はさながらデッドボールが当たったバッターだ。それも、かなりアカン所にボールが当たったような、ね。

 その為、そのまま教室を退場し、腹部を押さえながら、先程飲み込んだ血液の胃からの逆流を抑えながら、自分のクラスへと戻って行くのであった……。

 

 でもフェイトさんの巫女姿が見れてそれだけで俺は満足……出来たぜ……。(大満足状態)




~その頃のフェイトさん~

(あ、あおなに見られた……?で、でもなんでだろう。恥ずかしいって気持ちもあるのに、嬉しいって気持ちもある……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


フェイトさんに巫女装束を着て欲しかった……。
ただそれだけの理由です。
反省も一片の悔いもありません。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第51話『赤桃竜と茶白黒とたまに闇』

純粋に、強引に物語を進める回です。


 

 

 ソイツ(・ ・ ・)がもう完全に息を引き取ったと確認し、クルリとフェイトさんの方へと目を向ける。

 

 

 しかし、そこにはフェイトさんの姿はどこにもなく、その代わりにぐちゅり、と、まるでびちゃびちゃの生肉をナイフで突き刺したような音がオレ(・ ・)の身体の内から聞こえて来た。

 

 

 オレ(・ ・)の身体……?

 

 

 腹部の辺りを見てみると、フェイトさんが涙を流しながら『バルデイッシュ』のザンバーフォームを突き刺していた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第51話『赤毛と桃毛とたまに竜』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

~時はかなり進み、少し巻き戻り 新暦75年 ある日の午前~

 

「はーい!今日の教導はここまで!みんな、あとは身体を休めてしっかりとイメトレと復習頑張ってね」

 

「「「「はい!ありがとうございました!」」」」

「キュク!」

 

 これにて今日のなのはさんの教導は終了……。今日は珍しく教導は朝だけで昼からは各自自由行動となっている。……教導を始める前になのはさんが『今日こそあおな君にプロポーズ……』って言っていたのは聞かなかった事にしよう。あと、あおなさんはあおなさんで『今日はフェイトさんと一緒にランチ食べるんだ……』って浮かれてたのはなのはさんには言わないでおこう。二人とも同じことを毎日言うもんだから完全に地球の諺で言う耳にタコって奴になってる気がする。

 

「エリオ君、お疲れ……」

 

「キュクゥ!」

 

 と言うわけで着替えて更衣室を出ると、そこには疲れきった顔のキャロと何故か元気そうなフリードがいた。

 

「あ、キャロ、お疲れ。フリードも」

 

「エリオ君、今日の教導どうだった?」

 

「あー……うん。何て言うか今日のなのはさん、僕達の弱点ばっかり狙って来たよね。僕の場合は『頑張ってねエリオ君!半径20m、アクセルシューター!』とか……。正直、あんなにぎっしりと展開されたら避けられる気がしないよ……」

 

 ……でもあれ(半径20mアクセルシューター)より酷いのをあおなさんは避けたってフェイトさんが言うし……あおなさんって強いのか弱いのか本当によく分からない。

 

「……エリオ君はそれだったんだ。私の場合はね?なのはさんが『ファンネr……ピット!』とか言いながら6つくらいピットが飛んできて、そのピットから飛び出てくる魔法弾を避けながら強化魔法を掛けなくちゃいけなかったの……。あれ、一発でも当たったら掛けてた強制で詠唱が途切れさせられる効果持ってたから避けるのが辛かったよ……」

 

 ……うぅ……なんだかやる気がドンドン無くなってきた……。僕達はいつになったらあの人達みたいになれるんだろう……。

 

「昔のあの人達、見てみたいね……」

 

「そうだね……」

 

 そんな事を呟いた時、ふっと足元が軽くなった感覚があった。

 何て言うか、地球のダルマ落としって遊びのような、下にあったモノが無くなって重力に逆らえなくなった感覚。

 

「「へ?」」

 

 だからこそ反応なんてすぐに出来る訳がなく、僕達の身体は磁石のNとSのように地面に引き寄せられる結果となった。

 ちなみに、フリードはキャロに尻尾を掴まれ、そのままそこにいる。

 

「き、キャロォォォォォ!?」

 

「どうしてぇぇぇぇぇ!?エリオくぅぅぅぅん!?」

 

 地面へと向かっていく速さは落ちる時間と共に加速していく。防御魔法を張っている暇もなく、ただただ、心の中でフェイトさんに先立つ不孝をお許し下さいとしか思うことが出来なかった。

 

 

 

 だけどその直後。

 

 

 

「ハルトォォォォォオォォォォォ!!!」

 

 僕達は背中に羽のようなモノを着けたマヨネーズみたいな頭をした人に落ちている最中に背中を掴まれ、救われた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

~新暦81年 ある休日~

 

「トーマ!トーマ!このフライパン凄くない?すっごい軽いよ!まるでここに無いみたい!」

 

 あるのに無いってどういう事なんだろ……。

 

「……このフライパン……爆破にも対応している……だと!?」

 

 対応しているのは分かったから爆破しようとしないでくれ……アイシス。

 今、俺達は八神司令に(アイシスが頼み込みまくって)もらった休日を利用して何故かなのはさんから勧められた『次元世界のフライパン展示会』と言うのに来ている。……いや、本当になんでなのはさんは俺達に勧めて来たんだろう。

 

「トーマ!これ、あおなさんが持ってるフライパンと同型機だよ!」

 

 そう悩んでいた時にリリィから唐突に声を掛けられる。その声を聞きながら俺はその声の指す方へ目を向けると、そこには立派な四角いフライパンがあった。

 そのフライパンを見ながらふと思う。……あおなさんって今までこんな……言っちゃ悪いけどパッと見ふざけたような得物で数々の事件を解決に導いているんだなって。

 

「これがあおなさんの持ってるフライパン、か……」

 

 ……ってこれ、よくよく見たら『ユニコーン・レプリカ』って書いてある。同型機って言うよりあおなさんの持ってるフライパンの忠実な再現(コピー)って奴かな……。

 でも、どこにでも売ってそうな感じがするし……実際の所は全く分からないけど。

 

「……う~ん。悩んだけどやっぱりこの三角っぽいフライパンにしようっと」

 

「ん?……アイシスはそのフライパンを買うの?」

 

「うん。だって見てよリリィ。このフライパン、第1116管理外世界の鉱石をふんだんに使ったフライパンらしくって、爆破耐性どころか炎熱耐性に冷却、電撃耐性となんでもござれのフライパンだよ?それなのに熱の伝導率もそこそこいいとくればこれはあたしにとっては完全に買い、だよ!」

 

「じゃあ私は……この長丸っぽいのを買う~」

 

「あれ?リリィも買うの?……でもなんでその形(長丸)?」

 

「だって可愛いもん」

 

「可愛いなら仕方ない」

 

 ……二人とも、ちゃっかりフライパンを買おうとしてるけど、それの代金出すの俺だからね?……まぁ、別に構いやしないんだけど。……どうせなら、俺も一つ買って帰ろうかな……。スゥちゃんのお土産にもなるし……だけどスゥちゃんだけにお土産って言うのはナカジマ家の人達が『あれ?私達のは?』って言いながら怒るのが手に取るように分かる……。どうしよう……。

 

《それでしたら、ナカジマ家自体へのお土産とすればいいんじゃないでしょうか》

 

「……そうか、その手があったか!ありがとうスティード!流石は俺のデバイス(相棒)!」

 

《いえいえ、このくらいは》

 

 そうと決まれば善は急げだ!俺は手頃な丸い形のフライパンを手に取り、既に会計を済ませた二人を横目に会計に向かおうとして振り向くと――

 

 

「は?」「え?」「あれ?」《ファッ!?》

 

 

――そこには会計どころか会場すらなく、ミッドチルダとは到底思えないような商店街がそこに拡がっていた。

 

「……どこだ?ここ」

 

 その質問に答えてくれたのは、以外にもスティードだった。

 

《……その質問に簡単に答えるとすれば……新暦66年の第97管理外世界『地球』の海鳴市って所らしいです》

 

 ……なんでそんな所に俺達が……?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 私達はただ今、『システムU-D』のいるであろう丸い玉の前に来ております。……いや、大変でしたよ。

 探しても、追い付いても、捕縛しても逃げるんですから。

 それをようやっと捕まえましたよ……。まぁ、この疲れはあおなに癒して貰うとして……さて、それではご開帳と行きますかね?

 

「では桃色。頼めるか?」

 

「もぉ王様ったら私はキリエだって何度言えばいいのかしら……」

 

 そう言いながら『システムU-D』のプログラムを起動しようと小さな画面を出し、ハッキングを仕掛けている女性の名前はキリエ・フローリアンと言うらしく、どうやら目的は私達と同じような『システムU-D』を利用しようとしているらしいですが……その理由は王が知っているらしいので私は別にいい、と考えを放棄しました。

 

「さぁってと……強制起動システム正常。リンクユニットフル稼働。……いつでも目覚めさせる準備はOKよぉ!王様!」

 

「おうともさ!」

 

 ……あれ?ハッキング速すぎません?

 

 

 

 

「さぁ、今こそ蘇り我が手中に収まれ!忌むべき存在として生まれ、誰からも疎まれた無限連環機構、『システムU-D(砕け得ぬ闇)』よ!」




~その頃の未来(新暦75年)のフェイトさん~

(エリオとキャロとフリードと一緒にご飯食べようと思ったのに三人ともいないよぅ……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


さて、遅くなりましたが、フライパンの名前はアンケートの結果、『ユニコーン』に決まりました!

…………『こういう発表ってもうちょっと速くした方が良かったんじゃ』、と思われる方が多数だと思われますし、私自身もその方が良かったんじゃ、と思いましたが、発表するなら実際に出してからの方が良いのでは?と思い、こんな形での発表になりました。
……今では後悔してまいす。もし次にアンケートをやるような事があれば、もうちょっと速く、いや終わった直後に発表するように全力で努力します。

その時はまた、不躾ですが、ご参加していただければありがたいです。


さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第52話『紫天の空』

『U-D』ちゃんって可愛いですよね!


 

 

 痛い、イタイ、いたい。

 

 

 両の拳を振るいフェイトさんの顔面に何度も何度も叩き付ける。

 

 

 しかしフェイトさんは動じず、更に深く、深く、深く痛みから、身体から漏れ出ている血液から分かるように殺傷設定にしてある『バルディッシュ』をオレ(・ ・)に突き刺してくる。

 

 

 そして、フェイトさんがザンバーをオレ(・ ・)に突き刺したまま、真横に、そして縦に振るった時、オレ(・ ・)の身体は四分割され、オレ(・ ・)の生命の幕はゆっくりと閉じられ――

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第52話『紫天の空』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「――――ぁ」

 

 ようやく、ようやく私達の悲願が叶いそうな時ですが、このどんよりとした曇り空の中、あおなはいかがお過ごしでしょうか。出来る事ならば私の為に私の好物を作って待っていてくれれば良いのですが……。

 ……あ、そう言えばあおなに私の好物を教えてませんでした。

 

「――ユニット、起動。無限連環機構動作確認――完了。――動作開始。システム『U(Unbreakable)-()D(dark)』正常作動」

 

 現れたのは長く、足元まであるゆったりとした金髪を携えた、私達よりも少し身長が低いのではないか、と思える少女の姿をしたヒトガタのプログラムでした。

 その姿に(あおなほどではありませんが)心を奪われた私を現実に引き戻したのは桃色さんこと、キリエさんでした。

 

「……ちょっと、王様!システムだのプログラムだのって聞いてたからUSBとまではいかなくとも大容量外付けHDD……は無理だから王様の持ってるその『紫天の書』みたいな形だと思ってたのよ!?でも、全然ちがくて人型じゃない!」

 

「……なぁ桃色よ。我らがヒトの形をしておるのだ。『砕け得ぬ闇』がヒトガタとて何も驚く事は無かろうが。貴様はそこで黙っておれ。――さて、」

 

 流石は私達の王です。一切の動揺を見せてません。それどころか更に威厳を強めるような言い方で痺れましたよ。…………王の右手の震え?なんですかそれは。

 

「――貴様と出会える日をどれだけ待ち望んだことやら……。ようやく出会えた喜びか、この瞬間に発する筈であろう祝いの言葉すら浮かばぬわ……。なぁ、『砕け得ぬ闇』よ」

 

「……あなたは……もしかしてディアーチェですか?」

 

 おぉ、流石は王です。(いくら右腕がぷるぷる震えてたとしても)『砕け得ぬ闇』とのファースト・コンタクトをあんなにもあっさりとしてしまうとは……。こんなにも素晴らしい事が起こっている。……だと言うのに、

 

「……レヴィ。貴女はいつまで拗ねているのですか?」

 

「……だってぇ……。折角ボクの宿敵として事足りる相手に出会ったって言うのにすぐに離ればなれだよ?……悔しいよ……」

 

 ……まぁその気持ち、分からないでもありません。私も初めてあおなに出会ってから別れるのが辛くないと言えば確実に嘘だと言えるくらいには辛いです。

 しかし、『砕け得ぬ闇』が見つかるかも、との話を聞いた瞬間に私の中の本能(システム)刻み込ま(プログラミングさ)れたナニカが身体を勝手に動かしてしまい、あおなの前から去ってしまった……。こればっかりは悔いても悔いても悔やみきれません。

 本当にすみません……あおな……。

 レヴィも……きっと心に

 

 

「だけど、ボク気付いたんだ……へいとに心を奪われたのかも知れないって……!」

 

 

 思ってたのと何か違う答えが返って来ましたが、レヴィが新しい生き甲斐的な何かを見付けたようなので気にしない事にします。

 

「でもボクがこんな気持ちになったんだ。……へいともきっとボクに心を奪われたに違いない……」

 

 この考え方は流石に予想外です。

 

「つまり、ボクとへいとはもう……宿命という間柄に……!」

 

 さて、もうレヴィからは目を逸らすことにします。

 

「……ディアーチェ、何故ディアーチェがここに……解放されたのですか?それとも自力で封印の解除を?ディアーチェ……」

 

「ふふ、我は王ぞ?強靭で無敵で最強の、な……。我に出来ぬ事など無いわ」

 

「本当に……本当にディアーチェなんですね……!」

 

「……あぁそうだ。……もう何も心配する事は無いのだ。『砕け得ぬ闇』よ。貴様はもう一人で孤独の闇にいることは無くなった。……これからは我らと一緒だ」

 

「ディアーチェ……」

 

 ……王はゆっくりと『砕け得ぬ闇』を抱き締め、そっと頭を撫でる。そう言えば、確か『砕け得ぬ闇』はずっと『闇の書』の奥深くにたった一人で長きにも渡り封印されていたのでしたね……。誰にも、それこそ私達以外には、『闇の書』の管制人格も、ヤガミハヤテ(最後の夜天の主)さえも知ることが無かったプログラム――それが『砕け得ぬ闇』。

 その呪縛は今、我が王とキリエ・フローリアンと言う人物によって解き放たれた……。

 

「一緒に……いてもいいんですか?」

 

「あぁ……我らはずっと一緒だ……。シュテルもレヴィもいる。もう決して貴様を、お主を離したりするものか」

 

「ディアーチェ!」

 

 ひしっと抱き付く『砕け得ぬ闇』を見て、不意になにやら目頭が暑くなってきましたよ……。こう見てみると、私達は長い間離れ離れになっていたんですね……。

 元々は『闇の書』を乗っ取る為に作られた筈の私達(プログラム)が今はどうしてか、こうしてちゃんと存在していられる。……これもひとえにやはりあおなのお陰なんでしょうか。感謝すべき相手はあおなだけじゃ、ありませんね。偶然とはいえ、私達を切り離してくれた管制人格にも感謝する事にしましょうか。

 次に会う機会があるとするならば、菓子折りでも持っていくとしましょう。

 ……ただ一つ疑問があるとすれば、先程から周囲の魔力素が濃くなっていっている事ですかね……。

 

「……なぁ、『U-D』。嬉しいのは分かるがいい加減手を離してくれぬか?」

 

「………」

 

「『U-D』?」

 

「……私は貴女を決して離しません。また一人になりたくないですから」

 

「……離れたりはしないぞ?」

 

「それでも、ヤです」

 

 ……魔力素が濃すぎて、少し胸焼けを起こしそうな感覚ですよ。なんなんですか?この状況。もしや『U-D』が起動したから、でしょうか……。

 そんな事を考えていると、周囲の魔力素がごっそりと、それこそ私達の魔力すら持っていっているんじゃないかと錯覚……いや、これは錯覚ではありませんね。現に少し身体全体から力が抜けかけましたし……。レヴィもどこかノイズがうっすらと見えましたし。

 周囲の魔力素どころか私達の魔力を一点に集中させている点へと目を向かさせていただくと、そこには未だ王を抱き締め続けている『U-D』の姿が。

 

「私は――」

 

 ゆっくりと、まるでひまわりの花が咲いているような暖かい微笑みの顔をあげた『U-D』の背中からはドス黒いこの世の恨み辛みを固めたモノが炎の形となって蠢いている翼が噴出していました。

 

「――もう手放さないって――」

 

 その翼が広がったと視認した時には既に遅かったらしく、その時にはもう左足にまず違和感があり、違和感があると感じた瞬間に痛みが走りました。

 『U-D』から目を離し、左足を見ると、脛の部分の丁度真ん中に、翼の色をした釣糸と釣り針が私の足に食い込んでいました。ご丁寧に無理に抜く、もしくは抵抗するとウイルスが注入される返し(プログラム)も付いているのが見え読み取れましたのでここで無理に抗ってあおなに会えなくなるのは嫌なのでここは大人しく従って置くとします。

 ……やはり人間では無いので背中に脂汗は流れませんが、逆に流れる事が無いのでそちらに意識を向ける無駄が無く、今だけはこの肉体に感謝、ですね。

 すると、不意に左足を、まさに釣糸と釣り針を正しく使いましたとでも言わんばかりに強い引きで引っ張られました。

 

「……『U-D』。流石にこれは我でも怒るぞ……」

 

 私とレヴィは『U-D』に引っ張られ、逆さまに吊るされている状態です。レヴィは涙目で抗おうとしてますが、ウイルスが怖いのか、下手に動けず更にぐずってます。

 ……はてさて、何故に『U-D』はこんな事をしたのでしょうか。

 

 

「――決めたんですよ。絶対に、もう、二度と、決して、何が起こってもって。だからこうして――」

 

 

 『U-D』がしたことと言えば簡単です。翼の一部を変化させ、それを私と王とレヴィに突き刺したのです。

 

 

 

 

 

 

「――壊して!吸収して!私と一つになればいいんだって、一人の時に思った(ミツケタ)から!」

 

 システム『U-D』は、その顔に満面の、それこそまるで子供が無邪気に自分の発見を親に見せようとするような笑みを浮かばせながら。




~その頃のなのはさん~

(……あれ?今日は天気冬には珍しい晴れだって聞いてたのに……曇ってる?)


◆◇◆◇◆◇◆◇


GODやり直してました。

やっぱり『U-D』ちゃん可愛いですよね……。
やり直してて思いましたよ。

……でもやっぱり腕が鈍っててなかなか勝てなかったり(涙)。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第53話『されど歯車は回り出す』

遅くなりましたが、ただ用事があってただけです(テスト)。


さて、今回のパックですが、一箱で私が欲しかったオッ雷が2枚(シクとウル)当たった、ですかね。
フュージョンもレモンスカッシュも当たらないとはこれいかに……。


 

 

 ――再び開かれた。

 

 

 そこは、よく見覚えのある海鳴の街が見下ろせる丘だった。

 

 

 ……オレ(・ ・)は今まで夢でも見ていたんじゃないか、そんな事すら感じれるが、先程までの痛みはしっかりと身体に残っている。

 

 

 まぁ夢だろうがなんだろうが構いやしないさ。

 

 

 オレ(・ ・)のやることは決まっているから。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第53話『されど歯車は回り出す』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 とりあえず俺が視察をした後に起こった事をありのまま話そう。

 視察したのち三女に隣のクラスがフェイトさんの可愛さ+βくらいの強さで責めてたって教えてたらいきなり空が変な雲で曇ったと思ったら風が強くなった上で雷アーンド大雨が降ってきたので放送がかかってきて荷物持って体育館に全員集合したら『学校で一時的に待機したのちバスでそれぞれの家に送る』とのことを校長が俺達に緊急で力説した。

 ……流石に一息は疲れるなぁ。

 あの普段は紅茶を飲みながら生徒達と遊んでいるのほほんとした校長が『本気で真剣』と書いてマージマジマジーノと読めるくらいには全力で『責任を持って皆さんを送りマース』と言うくらいだからどれだけ外の天気がヤバイのかは伝わる。実際、体育館の上の方にある窓がガタガタ音が鳴ってる訳だ。……まぁ、今は校長が目にも止まらぬ影分身で窓を補強してるが。

 

「……ほんと、いきなりだったわね」

 

 ポツリと徳三四姉妹の長女が俺の後ろ(出席番号男女混合順)から話し掛けてくる。……どこか眠そうなのは気のせいか。

 

「そうですね。……先程まで、冬にしては珍しい快晴でしたし……」

 

 実際、俺が魔境(高町家)に行ってた時も晴れてた。……やはり俺が魔境に行った(慣れないことをした)所為でこうなったのか?

 

「……あおな君?なにか心当たりでもあるの?」

 

 隣のクラスの列から俺の脳内での(くだん)の高町がこちらに話かけてくる。流石に魔境(高町家)に行ったとは言えないし、だから俺は言い訳を抜けてしまった左上乳犬歯を弄りつつ、他になんか心当たりあるっけ?と考える。

 すると脳内にしゅるしゅるとしゅてるんとかしゅてるんとかしゅてるんとか出てくるけど、んな訳ないよなって勝手に解釈。

 

「……あの、逆に心当たりがあったら怖いと思うんですが」

 

「あ、うん。確かにそうだよね」

 

 ふぅこれでよし、と考えていると右斜め後ろからフェイトさんが俺の肩をつんつんと突いてきた。……何故フェイトさんだって分かるかって?企業秘密さ。

 

「はいなんですか?フェイトさん」

 

 後ろを振り向かなくてもフェイトさんだと分かるが、振り向かないとフェイトさんに対して失礼に当たるので後ろを振り向く。するとそこには峰麗しいフェイトさんがおるじゃろ?心が満たされていくんじゃよ……。

 

「ねぇ、あおな。もしかしたらレヴィ達がなにかしたのかな……」

 

 ……まぁ、高町は知らないだろうが、フェイトさんは既にマテリアルズの事はご存知になってたからやっぱりこうなる。

 でも、フェイトさんには悪いとは思うけど、あのしゅてるんとかレヴィちゃんとかヤガミモドキとピンク頭さんが天候操作出来るとは思えない。

 

「……あ・お・な・くぅん?」

 

 あらま、高町が凄い形相でこちらを睨んできてる。簡単にされど具体的に言うなら歩きタバコからの道端にタバコをポイ捨ての二連続コンボした奴を見るような目だ。

 

「……確かに、フェイトさんの言う通りかも知れませんね……」

 

「ちょっ!あおな君、無視っ!?」

 

 だからとりあえず高町の事は放って置いてフェイトさんの話に同意する。

 

「ですがフェイトさん、何故しゅてるん達はこんな事(台風チックな事)を?」

 

「多分……多分だけど、この状況はもしかしたら副次的なモノ……なのかも」

 

 ……副次的。なるほど、確かにそんな事は思い浮かばなかった。確か……えっと……砕けない……砕けない……。

 ダメだ。『ダイヤモンドは砕けない』しか出てこない。フェイトさんの先程の巫女姿のインパクトが脳内にダイナマイッだったから必要ないって思われた(もしくは感じられた)情報が全部脳内から海外に高飛びしやがったよ。

 まぁ、それほどフェイトさんが美しいって事だからね。しょうがないさ。

 

「名前は確か……『砕け得ぬ闇』……だったよね?」

 

「『砕け得ぬ闇』?フェイトちゃん、それ、なに?」

 

「あっ、えっとね?」

 

 …………あ、そうだ。そんな名前だったなそう言えば。

 思い出した所で顔をあげるとそこではフェイトさんが高町に説明していた所だった。

 何故か高町には教えたくは無かったが、フェイトさんの説明を邪魔する訳にはいかないし、俺は俺でなにか別の事でも考えておこう。

 ……そういや、『砕け得ぬ闇』って他にも『システムU-D』って名前でも呼んでたっけ。意味的には同じ訳だが。

 これがもしも『NT-D』だったとしたらさっさと渡して『可能性に殺されるぞ!そんなもの捨てちまえ!』って言って別れて終わりってな事になってただろうに。

 

「そんな事があったんだ……(だからあおな君は私に似た人って……)(ダレダヨチクチョウガ)

 

 おい高町。顔が本来の姿に戻ってんぞ。

 

「とりあえず……リンディ提督とクロノ、後ははやてに連絡しておくとして……私達はどうしよう……」

 

 止めてくださいフェイトさん。そんな、そんな捨てられた子犬のような不安げな目でこちらを見ないでください……。守りたくなっちゃう(なお既に)。

 

「今この現状は何か危険なモノが入ってるかも知れない箱に対して『箱の中身はなんだろな』ゲームを仕掛けるようなモノです。ですから俺達は待機でいいんじゃないでしょうか」

 

 俺のその言葉にフェイトさんは少し迷う。……あぁ、その悩んで少し下を向いている思案顔も俺の口から溜め息がボフゥと溢れるくらい美しい……。

 

「……うん、そうだね。確かに何も分かってない状況で無闇矢鱈に動くのは危ないし……ここはあおなの言う通り待機してた方がいいね」

 

「私もそれに賛成、かな。……(確かに私に似た人は気になるけど)今はなんにも情報が入って来てない訳だし」

 

 ちなみにここまで長女の話題が無かったが、長女は長女で立ったまま寝るという偉業を成し遂げてます。やっぱり寝てた。

 ……おっと、フェイトさんと(一応高町と)話し込んでいたらどうやら校長の話は終わったようだ。そんで、教室に物を取りに行くのは駄目らしく、体育館で体育座りになった俺達はステージに注目のさせられた。

 するとそこでは校長の娘の四姉妹がバンドを組んだらしく音楽を演奏するとか。なんでも、バスの用意が出来るまで俺達を飽きさせないためにあの校長四姉妹が進んで申し出たらしい。

 ……確か名前は……ヤベェ愛称しか覚えてねぇや。6年の紅茶先輩にこれまた6年のカレー先輩、更には大丈夫さんに姉貴さんだったかな?丸っきり接点が無いから名前が分かんねぇ。

 

『ヘーイ!みんなー!暇してるぅ?』

 

 そんな事を考えてたら紅茶先輩がマイクを持って叫ぶ。皆がそれにノッて『うぉぉぉぉ!』とか『ypaaaaaaaa』とか『ミネバァァァァ』とか騒いでらぁ。

 ……かなり響くなぁ……。ちなみにここから見た感じだとギター、ベース、ドラム、キーボード、と見えるが……正直バンドとかには詳しくないので説明は出来ない。

 

『今日は暇なみんなの為に、時間が許す限り歌っていくヨー!まずは一曲目――』

 

 曲が始まると同時に、全然ノリにノレてなかった俺もフェイトさんに釣られノッていき――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そこから先はバスが来るまで俺も覚えていない。ただ、喉が死滅しかけてるって事から結構声出したんだなってのは分かる。




~その頃のはやてさん~

(あ、天気悪ぅなっとる。早めに洗濯物しまわなあかんな~……)


◆◇◆◇◆◇◆◇

実はこの物語、最初は高町さんとあおな君は超が付くほど仲を悪くしようかなって考えてたり、stsから開始してあおな君はフェイトさんのボディーガードとなり、それでフェイトさんに惚れるって設定にしようかなって考えてましたが、私の妄想が色々と膨らんだ結果が今の状態となってます。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第54話『大狂を引く』

そう言えば、もう54話なんですね……。


あと、最初のシリアスチックな所は別枠として色んな視点を少しずつ入れながら、もう少し続きます。


 僕達を救ってくれたマヨネーズっぽい頭の人は『弟に似ていたから救ったまでの事』とだけ言い残し、僕達を地面に下ろしたあとまた空に飛んでいっていた。

 ……結局、あの人は誰だったんだろうか。

 感謝はしても仕切れない。

 降ろして貰った所は丘に近い所で、少し遠くに商店街が見える所だった。

 ふと、上の方から知ってる魔力を感じ、そちらに目を向けると、僕達がよく見るあおなさんを小さくしたような人がそこにいた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第54話『大狂を引く』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「……()……ぉな!起きて!あおな!」

 

「うぐぁ……くとぅん……ゆふぅ……ハッ!?」

 

 ……ヤバイ……寝てた。

 確か校長四姉妹のライブ終わってすぐにバスが来て、それに乗って(二人席フェイトさんの隣俺通路側)たら急に、きっとライブではっちゃけたから疲れが出てきて……それでフェイトさんに起こされるまでずっとスヤァしてた訳か。

 

「あおな、もう着いたよ?」

 

 フェイトさんの言葉に従い外を見てみるとそこは俺と高町の家の前だった。

 

「……す、すいませんフェイトさん。ありがとうございます」

 

「……あおな君ってば……どうしたの?何か食べまくる夢でも見てたの?」

 

 そんな事はない。

 ……つか、どうして高町がこの呪文知ってんだ?

 

「とりあえず降りよ?」

 

「あ、はい」

 

 まだ眠いと自己主張する目をフェイトさんとバスの運転手に迷惑だろうがとの意味を込めてこすり、流れるような動作でバスの……バスには珍しい上にある荷物を置く為の棚の部分から俺とフェイトさんの荷物を持ち、バスから降りる。

 

「えっ、ちょっと!あおな、流石に自分の荷物は自分で……え?」

 

 それを直ぐ様家に運び込み、そのままUターンしてバスに戻り膝を付き、手を差し出す。例えるならしゃるうぃだんすって感じだ。

 

「さぁ、フェイトさん……」

 

「……むぅ……大丈夫だよあおな。流石に何回もやってるから私一人でちゃんと降りれるもん!!」

 

 フェイトさんが頬を膨らましてご立腹になってバスを降りてしまった。

 ……どうやら、俺のこの差し出した手を見てフェイトさんは子ども扱いされたと思ってしまったのかもしれない。……悪いこと、しちゃったなぁ……。

 

「あ、あおな君……」

 

 ……そういや、高町は何でさっきから顔を真っ赤っかにしてこちらに手を出して少し振ってるんだろう。……まさか『オラさっさと降りろや後が(つか)えてるんだから!』って怒ってんだろうか。

 それならば顔の赤さにも納得がいくし、手の動きもどことなく野犬を追い払うような『しっしっ』みたいな動きに見えなくもない。まぁ、確かにここで長い間止まってても他の学友達や運転手に悪いし、それに外の天気も先程よりも酷くなってる気がするし……何より高町に攻撃されたくないし、もう降りるとするか。

 

「!?……(あおな君のバカ)

 

 ……何で高町は少しションボリしてるんだろうか。やっぱり俺を殴れなかったから?…………おぉ、くわばらくわばら。

 

 

 

 

 

「…………で、なんで高町さんも家に入ってるんですか?」

 

「い、いや、久し振りに、ね?それにフェイトちゃんがどうなってるのかが気になるし……」

 

 はっきりと嘘だと分かる。何故かって?先程からチラチラと二階へと上がる階段、更にその奥の方にある俺の部屋へとその視線は繋がれている(ような気がする)。

 なので変なフラグを回収しちまわない内に奥の部屋へとご案内する。こんな高町一人奥まで押し出しいっぱい。

 ちなみにフェイトさんはお義母さんの部屋へと向かった。

 さて、高町を押しつつキッチンへと向かう暖簾を潜ると、そこにはどこか見たことのある金髪の姿が。

 

「あ!お兄さん、お帰りなs……ちっちゃいなのはママ!?」

 

 あぁ、そういやヴィヴィオちゃんがいたんだった。

 そのヴィヴィオちゃんだが、何故か黄色い胸当て型のエプロン(母さんの)を纏い、ご丁寧に頭にハンカチの三角巾まで巻いて料理を作っていた。ついでに緑髪さんも同じような格好で同じような事をしている。その前に、おい、名前教えろよ。

 

「……え?なのは……ママ?私が?誰の?貴女の?……(あおな君じゃなくて?)

 

 高町は高町で何故か思考の無限ループっぽいモノに嵌まってるが、俺の部屋から思考を外せたからこれでいいんじゃないかと思ってる。

 そんな事をしていると、唐突に『ピン☆ポーン』とインターホンが鳴る。……父さんと母さんは今は密売人をコロコロしに行ってる訳だし、それにあの二人なら気にせず家に入る筈だ。

 ……まさかこんな天気に宅配便でも来てんのか?すげぇな宅配業者は。

 

『……ぁ……おな……げ…て、………くださ……ぃ……』

 

 ……おかしいなぁ。俺が予想してた声はこんなんじゃないぞ。『チャーッス宅配便デース』って感じなのを期待してたんだが……予想に反して弱々しい声が聞こえたぞ。

 不信感丸出しで扉を開けたら扉の下の方からゴツッって完全にぶつけたよねって音がした。

 音のしたほうを見るとそこには扉が頭に当たっているしゅてるんがいた。

 

「……何してるんです?しゅてるん」

 

 どこか口元がにやけるたような気がしたが、そこは気合いと根性で頑張って抑える。そんでかがんでしゅてるんを起こそうとして、右肩に手をかける。

 …………………………おかしいなぁ。しゅてるんってこんなに肩幅狭かったっけ?

 これは流石におかしいぞ、としゅてるんをよくよく見てみるとしゅてるんの右腕が無かった。

 

 

 

 おっと思考に空白が入っちまった。

 

「どっどどっどうしたんですkか?……こほん。しゅっしゅてるん?」

 

 ダメだこりゃ。(ども)り過ぎて吸血鬼の黄色いカリスマ様に『貴様……動揺しているな』って言われるオチしか見えない。しかしここではしっかりと気を強く持とう。幸いかどうかは知らんが出血の『し』の字もない訳だし。

 

「あ……あお、な……め、です。()、さ……」

 

 とりあえずしゅてるんが何か言ってるが聞き取れないので無視して、仕方ないからしゅてるんの左肩を抱き、両足の膝の下から抱え込むように右手を通し抱き上げる。

 所謂お姫さま抱っこって奴だ。……初めてがしゅてるんになるとは思わなんだがここは仕方あるまいて。

 

「ヴィヴィオちゃぁん!ちょいと手伝って貰えますかぁ!」

 

 この場面で適当に使えそうな人の名前と言えばこの子しかいなかった。フェイトさんを使うなんて事は俺には到底出来ないし、フェイトさん家の皆さま方を使うなんてとんでもないし、緑髪の人は名前すら知らないからだ。高町?誰それ。

 しばらくしてトテトテと音を立てながらヴィヴィオちゃんがやって来る。

 

「はいはーい。なんですかお兄s……ダブルショック!……(シュテルさんってこの時期だったんだ)

 

「……何を驚いてるのかは知りませんが、ちょいとそこの……フェイトさん達がいらっしゃる部屋の隣開けてくれません?」

 

「あ、はーい」

 

 ヴィヴィオちゃんに襖を開けてもらい、畳に布団を敷いてもらい、そこにしゅてるんを寝かす。

 ……正直言ってよく混乱しないで済んだと思ったよ。

 さて、とりあえずまずは――

 

「あおなくん……。この人、だれ?」

 

 ……高町に状況説明すると言う項目が入ったがまずはしゅてるんの治療が先だ。

 

 

 

 

 と、言うわけで選ばれたのは、リニスちゃんでした。

 

「……それで呼ばれたのが私ですか」

 

「はい。リニスちゃんの方がこう言うの(治療とか)に詳しいと前にフェイトさんとアルフさんに聞きましたから」

 

「分かりました。魔力構築生命体は初めてですが、微力ながらも全力を尽くさせて頂きます」

 

 ……しゅてるんの治療はこれでよし、と。高町への説明はフェイトさんがするって言ってくださったから信頼出来るとして……。……あれ、することがなくなったぞ。

 

「あ、おな……て……」

 

 しゅてるんもまだ何か言ってるし。無茶するもんじゃないよ。……全く。近くにいて欲しいってか?

 

「仕方ありませんね。今回だけ、今回だけしゅてるんの近くにいてあげますよ」

 

 そう言って少し照れ臭くなりながらもしゅてるんの側に座る。まぁその、向けてきた好意を無下にするわけにもいかないし、ね。傷らしい傷は見たところ腕が無いくらいだし、リニスちゃんも魔力供給のみと言うことで許してくれた。

 

「ち、が……『結構酷いんですね。君って』」

 

 ファッ!?

 おかしいなぁ……目の錯覚か?それとも幻覚?さっきまでボロボロだったしゅてるんが一瞬で俺の知ってる腕もあるしゅてるんに戻った……?

 リニスちゃんに確認の視線を求めても首を横に降るだけだし、何が起きたんだ。

 ……まさか、あの時(第9話参照)の高町みたいに治っていってる?いや、確かあの時はゆっくりとだった。

 こんな一瞬で、まるで伸ばした輪ゴムが直ぐ様元に戻るって感じじゃなかった。

 これはまさか、フェイトさんみたいに中に誰が違う人がいるのか……?

 

「『まさかこんなの(・ ・ ・ ・)にシュテルが惚れてるとは思いませんでしたよ。こんなシュテルの気持ちも言いたい事も理解してない奴に……』」

 

 しゅてるん(?)はむくりとまるで倒した達磨のように起き上がる。

 

「『君はシュテルには相応しくありません』」

 

 色んな出来事が重なり過ぎて俺の脳みその許容範囲を超えてフェイトさんは美しいという結果にたどり着いた所でそういや色々言われたんだと思い出し腹が立って来た。

 

「そうは言いますけどねぇ、それをアナタが決める事では無いと思いますが?」

 

「『……シュテルは君にずっと"逃げて"と言っていたのですよ?……いやまぁ、確かに私は君を仕留める為、もとい試す為にシュテルを釣り針として利用しましたが……』」

 

「…………」

 

 試す……?もしかしてしゅてるんの中にいるのはあのヤガミモドキなのか?

 

「『残念ですが、君は不合格です。……もし合格ならば一つになってシュテルと一緒に私の中で過ごせたのに……残念でしたね』」

 

 残念も何も俺はフェイトさんと普通の日常の中で一緒に過ごしたいから不合格で有難いと言ってはしゅてるんに失礼になるが……………いや待て。

 今、何て言った?……『シュテルと一緒に私の中で……』……私の中で(・ ・ ・ ・)

 

「あんた……ホントに誰ですか?」

 

「『それは君が知る事はありません。ここで死にますし』」

 

 目の前に写ったのはどす赤黒い禍々しい炎が形つくっているような背中から生えてる2本の腕だった。

 

「……なんです、か?それ……」

 

「『それこそ君が知らなくていい』」

 

 それが2本とも一直線に俺を狙ってやってくる。近くにフライパンも無いし、避けるしかないと考え――

 

「あおなさんッ!」

 

 そんな時にリニスちゃんが謎の杖っぽい奴(少なくとも高町のよりは杖)を召喚ししゅてるん(違)に向けると、いつか見た事のあるようなオレンジ(黄色より)の小さな槍を5本くらい出現させ、射出。

 しかしそれを小蝿をあしらうように片方の腕で払い、リニスちゃんを襲う。すんでの所をリニスちゃんは魔方陣のようなってか、まんま魔方陣で防ぐ。

 ……ん?俺?

 

「『人間ってこんなにも脆いから嫌いです……』」

 

 迫り来る腕を掴んだまでは良かったが、普通に俺の両手を猪突猛進よろしく邪魔な障害物のように関係なしに吹き飛ばしてその5本の爪で俺の身体を縦に貫きやがった。




~その頃のトーマ君~

(あれ?あそこにいるのは……ちっちゃいけどもしかしてエリオ君達……?)


◆◇◆◇◆◇◆◇


……いや、その、長くなった理由は切り所が分からなくなってしまって……その……とりあえずもういいやって思っちゃいまして……その…………すいません。

次回からは元の文章量に戻ると思います。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第55話『早贄』

あーでもないこーでもないと書き直し続けたりドライブ見直していたらかなり時間がかかってました。


 とにかく俺は、リリィとアイシスの手を引っ張り、人込みをなんとか掻き分けながら走る。

 ようやく知ってる人に会えそうなんだ、そんな気持ちを心に持って。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第55話『早贄』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 突然の痛みってのは彼氏とのデートに遅れた彼女みたいなモンなんだと今ハッキリと理解した。

 だってほら、唐突に『ごめ~ん待った~?』なんて事を言いながら俺の身体を雪降った後の犬みたい元気に走り出しやがってるし。……とりあえず痛みに対する俺の返事は血反吐を鼻と口の両方から吐き出すって事しか出来ない。

 ……なんというか、今の気分はさながら百舌鳥の早贄になった感覚だ。まだ生きてるけど。しかもその爪っぽいものを立てるようにしてるから俺の体重の重さで身体がどんどん沈んでって深く刺さってってるんだよ。

 かなりどころか結構辛いが、ゆっくりと顔を上げるとしゅてるんの姿が溶けて中から金髪ウェーブの少女が出てきた。

 …………どういうことなの。

 

「まだ動ける力があるとは驚きです。……が、それが限界でしょう」

 

 勝手に限界を決めんじゃねぇこのジャイオーン擬きがと言おうとするが、カヒューカヒューって音だけで言葉が紡げない。

 

「あおな!」

「あおな君!」

 

 そんな時に唐突に閉められた襖が開き、そこからバリアジャケットを纏ったカッコいいフェイトさんと高町が現れた。

 しかし俺の返事は無い。まるで屍になった気分だ。

 ……くそう……折角フェイトさんが俺の名前を呼んでくれたってのに返事できないなんて……。

 

「……シュテルのオリジナルとようやくオリジナルとなったレヴィのオリジナルですか……。正直、私としては貴女方も殺すべきだと考えてました」

 

 なんだと!?コイツ……フェイトさんを……!

 ちくしょうめぇ!なんだよこれ!身体が全然動きやしねぇ!それどころか意識がだんだん、ぅ、す……()……()……って駄目だ駄目だ何勝手に寝ようとしてんだよ俺は!

 頭ん中じゃこんなに騒がしいのに口はただ血液を出すだけのホースに成り下がっちまってるし……。

 

「ですが、貴女方はシュテルとレヴィの意思を生み出す為に一役買ってくれました。これは最後の夜天の主も然り、です。よって私は貴女方は殺さない」

 

「……で、でも!それならあおな君だって……何か……」

 

「…………何か?……そうですね。彼は何か、との言葉だけでは到底足りない事をしてくれましたよ……」

 

 ……あの、高町さん?その、時間を引き伸ばしてこの金髪娘を留めとくってのは戦術的にはいいんだろうけど……その、もうそろそろ俺の体力ゲージが赤ゲージ(レッドゾーン)からワンフレームまで逝きそうなんですが…………。

 

「彼は!」

 

 金髪娘が叫んだと思ったらいきなり降り下ろされて叩き付けられた。そのお陰で俺は爪からすっぽ抜け、叩き付けられた衝撃でワンバウンドの後フェイトさんの方へと転がる。なんと言うか、ありがたくは無いが意識がはっきりした。

 

「あ、あおな!」

 

 転がる勢いはフェイトさんが止めてくれたのでなんとかなった。ありがとうございますと開かない口でお礼をした後、首だけ動かして金髪娘の方を見ようとすると床(畳)に見事に血液のレッドカーペットが敷かれてた。

 

「彼は!彼のその(レアスキル)が!『闇の書』の管制人格のみならずディアーチェシュテルレヴィそして私を侵食してきた!」

 

 八つ当たりとばかりに振るわれる左爪がこちらに来る。その軌道は完全に俺を狙ってる物だったが、フェイトさんと高町はシールドを展開してそれで受けようとしている。……守られる、なんて情けないって思うけど首ぐらいしか動かせない今じゃ、どうしようもできない……。

 

「その程度の強度で止められるとでもぉぉ!!」

「なっ!?」「えっ!?」

 

 フェイトさんと高町の展開したシールドは冬に水溜まりに張った薄い氷を地面に叩き付けたように粉々になる。

 そのまま左爪が『バルディッシュ』と『レイジングハート』に深々と突き刺さり

 

 

そのまま砕いて薙いだ。

 

 

 いとも容易く、安っぽいプラスチックの玩具を壊したらこうなるんだったっけ、と場違いな感想が頭をよぎった。

 金髪娘は右爪で照準を俺に定めたのか、『バルディッシュ』を折られたが、俺を抱き締めるように庇うフェイトさんごと降り下ろす。

 このままじゃ、フェイトさんが………と、フェイトさんの盾に…………と思うも体が反応しやがらない。無理矢理動かすと新しく開いた穴から赤き生命が活火山の大噴火だが気にしてる暇じゃ断じてない……地面に手をつけて気付く、いや、気付かされた。両手骨折してんじゃんって。

 いやぁ身体が痛すぎて両手の事なんかちっとも痛く無かったから考えてなかったよちくしょうが。

 その一瞬の差の壁を超えられず、爪は真っ直ぐと、フェイトさんと俺を貫くようにやって来る。

 

 俺も、フェイトさんも、避けられない。

 

 ならばせめてフェイトさんだけでも、死なないように、とフェイトさんを致命傷になるであろう位置からなんとかズラす。

 俺が死んでも、フェイトさんが生きてればそれでいいやって覚悟完了し、あとは来るべき()を受け入れるばかりだと思っていたが、目の奥から何か、高速で飛んでくる桃色の物体を捉えた。そして、その桃色の物体は家のガラス戸を割り、その勢いで爪を大剣で切り落とした。

 

「残念だけど、彼らには死んで貰う訳には行かないのよねぇぇ!」

 

 着地し、フェイトさんと俺達を庇うように金髪娘の正面に立つ。よくよくみればこの桃色さん、ヤガミモドキやしゅてるんとどっか行った人と同一人物に見える。……右腕損失、背中に斜めの線(/←こんなの)の切り傷からコードがはみ出ている、右脇腹に横一文字でそこからバチバチ言ってる電流部分からは目を逸らせば、だが。

 

「……ッ!?貴女……何故生きて!?……いえ、ここで止まる訳には行かない。生きているならばもう一度壊すまで!」

 

 金髪娘の明らかな動揺。しかしそれも一瞬で、爪は再生し再び振るわれる。

 ……しかし、その一撃は紫色の亀の甲羅のような防壁が防いだ。

 

 

 

「一瞬。その一瞬があったからこそ、私の魔法が発動出来たわ。今度こそ、ちゃんと娘の命を助ける事が出来て良かった……。……そこの桃色に感謝、ね」

 

 

 

 そこには、少し赤くなった左頬を慰めるようにさするお義母さんがいた。

 その後ろからはひょこっとリニスちゃん。

 

「幾らなんでも、娘の危機に起きないなんて駄目だと思いまして、私が(全力の)ビンタで起こしました」

 

「…………そうね。確かにリニスのビンタで起きれたわ。お陰様でね」

 

 お義母さんは睨むようにリニスちゃんを見ている。……だけど助けて貰えたのにフェイトさん唖然な顔してる。

 

「……まぁ、リニスのビンタの事は置いといて…………さて、後ろの二人、行けるわね?」

 

「「はいっ!」」

 

 お義母さんの後ろから元気な声が聞こえたと思ったら閉じてる方の襖を突き破りどこかヴィヴィオちゃんに似ている大きい娘さんとどこか見たことあるような無いような緑髪の女性が飛び出てきた。

 ……なんか家がどんどん破壊されてる気がするが背に腹は変えれないか……。

 

「アインハルトさん!少しの間、時間稼げます?」

 

「ヴィヴィオさんのおb……プレシアさんが張ってくれた障壁もありますし、暫くはなんとか!私も、この人相手にどれだけやれるか試してみたいですし!やってみます!」

 

 ヴィヴィオさんと呼ばれた人物、アインハルトと呼ばれた人物が桃色さんを押さえて目の前に立ち、構える。

 

 

 

 

 

「それじゃあいっちょ、私の未来のパパとママとママを守るために全力を出させてもらいます!」

 

 そう言った彼女からは虹色と玉虫色の魔力が溢れだしていた。




~その頃の熱血赤髪さん~

(キリエってば……いったいどこに行ったのかしら……)


◆◇◆◇◆◇◆◇


怪我が酷いのに意識を長く保ってるあおな君についてはもう人間やめてんじゃね?感覚で見ていただければ幸いです。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第56話『彼方の者の拳』

デメリットある系の技とか大好きです。


  さて、やることは決まったから、この丘から降りるとしようか。

 ……ふと、下の方から視線を感じる。

 そちらに目を向けると、そこには丁度オレ(・ ・)と同じ年齢っぽい少年と少女そして、……あれは……竜か?

 誰かは分からない、だが、魔力量はオレ(・ ・)よりも多く感じる。

 もしかしたら、オレ(・ ・)のやることの邪魔をしてくる輩なのかも知れないし、そうじゃないかもしれないが、不確定要素はここで(排除)しておいた方がオレ(・ ・)の為にも、なによりフェイトさんの為にもいいかも知れない。いや、その方がいい。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第56話『彼方の者の拳』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 今、私の心は不謹慎にも高揚している。

 それがワクワクなのか、"死"がすぐ目の前にあるからって言うドキドキでアドレナリンがぶっぱなのかは分からないけど、私の心は高揚しています。

 ……何故なら少し小耳に挟む程度で話は聞いていたけど、一度だって戦った事がないあの名前も知らない(聞こうとする度に邪魔が入って聞きそびれてた)あの人の本気で全力で殺意マシマシ200%の状態と()り合えるなんて……こんなの普通じゃ考えられない。

 

「アインハルトさん!少しの間、時間稼げます?」

 

「ヴィヴィオさんのおb……プレシアさんが張ってくれた障壁もありますし、暫くはなんとか!私も、この人相手にどれだけやれるか試してみたいですし!やってみます!」

 

 しかもありがたい事にアインハルトさんも乗り気のようで、これはますます手が抜けないし、勿論抜くわけにも行かない。

 

「それじゃあいっちょ、私の未来のパパとママとママを守るために全力を出させてもらいます!」

 

 私は自分に気合いを入れる為、後ろの傷付いたパパ(お兄さん)ママ(フェイトママ)ママ(なのはママ)に目を向け、ここで守らなくちゃ会えなくなるんだって事実をしっかりと頭に叩き込み、目の前のあの人に目を向ける。

 アインハルトさんもアインハルトさんで、その目はしっかりとあの人を捉えており、既に臨戦態勢(バトルジャンキーモード)で目が血走ってるようにしか見えないけど、意気込んでる。

 

「ヴィヴィオさん」

 

「ん?どうしたんです?アインハルトさん」

 

 

 

 

 

 

「――今から私達の正念場です。……とりあえず、この戦いが終わったらヴィヴィオさんのお母様(フェイトさん)に美味しいサラダでも作って貰いましょう。……約束ですよ?」

 

 

 

 

 

 

「ちょっ!?アインハルトさんその約束はッ――」

 

 二人とも死ぬフラグ……!!

 

「答えは聞いてませんッ!」

 

「アインハルトさん!?」

 

 アインハルトさんは飛び出し、金髪のあの人の懐へと潜り込み、初手から『覇王断空拳』を打ち込む。あの人は少しだけ驚いた表情を見せた後、すぐに親の仇を見るような目でアインハルトさんを睨みその『覇王断空拳』を枯れ枝のような細い腕で、それも片手で受け止めた。

 そのまま翼のような爪でアインハルトさんを縦に裂こうとしたけど、プレシアさんの張った障壁に阻められアインハルトさんには届かない。その隙を逃すまいとアインハルトさんはあの人のアインハルトさんの拳を受け止めている腕に絡み付き、折った。

 

「折れたァ!?」

 

 あの人は辛そうな表情を浮かべアインハルトさんを振り落とし、少し距離をとる。分かりやすく言うなら窓際、つまり縁側の所まで下がった。

 ……っと、こうやって見てる暇は私には無いや。

 とりあえず、あの人に(die)ダメージを与えないとこの場では安心なんて出来ない……。

 

 だから、アレ(・ ・)を使う。

 

 使ったら精神分析とか色々してもらう必要があるけど、この場合じゃ、背に腹は帰られない。……大きさ的に見たら私の胸はペッタンこだけど……って今はそんな事はどうでもいい!

 

「……『我が声に応えよ』」

 

 私から虹色の魔力が溢れだし、私の周りを覆う。

 

「『全にして一、一にして全なる者よ』」

 

 その虹色の光は少しずつ玉虫色へと変わりゆく。

 それに異常を感じたのか、あの人はこちらに爪を向けてくるが、残念ながらその攻撃はまだまだ耐久力のあるプレシアさんの障壁に遮られ、更にアインハルトさんの攻撃により折られた。……あの人のプランプランしてる腕が気になるけど今はこっち(詠唱)に集中だ。

 

「『原初の言葉の外的表れよ!汝の戒め、今この時より解かれん!』」

 

 虹色の魔力光は玉虫色にどんどん侵食されている。さながら貪り食われるかのように。

 

「『我が魔の力を糧に、その力を我に!窮極の門より、その身を表わせ!』」

 

 ついには虹色は完全に玉虫色へとその色を変えた。

 ……多分、この時に鏡でもあれば私の目の色も玉虫色に変わってるって分かるんだろうけど、今この状況じゃあ確かめる手段ないからなぁ……。

 

 

 

 

「『その拳を、眼前の敵に!』………力を貸して!ヨグ=ソトース!」

 

 

 

 ……詠唱は終了した。周りの人は今ごろSAN値チェックでもしてるんだろうけど、今は気にしない。気にする暇すらない。

 ……パパとママ達を守る為とはいえ、またあの玉虫色のシャボン玉祭りみたいなのが見えて、私の頭もクラックラしてるけど……分かる。

 身体全体の総魔力量が増幅して、更にその魔力が全て私の右拳に集中するのが。

 拳を見ると、玉虫色の魔力がコールタールに突っ込んだ後みたいにへばりついているのが分かる。気持ち悪い筈なのに全然気持ち悪くないってのがまた気持ち悪い。

 

 まぁいいや。

 

 今はやるべきことをやるだけだ。

 

「とりあえず………アインハルトさん!準備、完了しましたよぉ!!!」

 

「了解しました!ヴィヴィオさん!」

 

 アインハルトさんは最後にあの人の顎を少しかすらせるように拳を振るい、私よりも後ろに下がる。

 

「くぅ……!待ちな……さ……なっ……!?」

 

 あの人は魔力構築生命体だって聞いたからてっきり脳の概念は無いのかと思ってたけど、あるっぽいね。ちゃんと脳震盪は起こってるみたいだし。

 にしても流石アインハルトさん。最後の最後にとっても嬉しい置き土産を置いてってくれたよ。

 さて、今度は私の番だ。恨みは無いけど……………いや、ある、沢山、たっぷり、これでもかって言うぐらいある。それこそどうしてパパを傷付けたのかとかママ達のデバイス(レイハさんとバルにぃ)を壊してくれたなとかある。……だけどCOOLになれ私。そうだ。怒りに飲み込まれちゃいけない。オチケツ、私。

 …………ふぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱ許せねぇわ。

 

 

 踏み込みを入れ、あの人の顔面――特に頬らへん――目掛けて、右拳を打ち出す。

 

 

「私のパパとママ達の為に、いっちょお空の旅でもしてきてくださいッッッ!!」

 

 

 真っ直ぐと、顔面を捉え、右拳で抉るように振り抜ける。

 まるで3部のDIOが逃走経路に行くためみたいに吹っ飛ぶが、顔をよく見てみると、気を失ってるように見える。

 ……とりあえず……これで、ひとまず決着……かな?

 だけど、まだまだ殴り足りないと思うけど、肉体的にはちょっと我慢の限界みたいだ。身体から力が抜け、床と、ボロボロになってもう原形を留めてない布団の間に顔から倒れた。

 身体中に充満していた魔力が霧散していくような感覚と、人間としてナニカ大切なモノが抜け落ちたような感覚が身体に残っているけど、なんとか、吹き飛ばせてよかった……。えへへ……後でパパとママ達になでなでしてもらおっと……。

 そんな浸りたくない余韻とご褒美(なでなで)が貰えるかもって期待に浸っていると、あの人を吹き飛ばした方向からなにか……そう、まるで肉塊に手を突っ込んだような音が聞こえた。




~その頃のフェイトさん~

(なんか知らない間にサラダを頼まれたのはいいとして……。なに……あの光は……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



まず先に、ヨグ拳の詠唱を考えてくれた友人に感謝を。
そして全然ネタが出てこない私の脳みそに恨みを。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第57話『ナハトの夜天の書講座』

本当に遅れて、お待たせさせすぎてすいません……。
二ヶ月ほど忙しく、更にはネタが固まらずなかなか形になりませんでした……。




※11月22日サブタイトルミスってましたので直しました。


 僕達の目の前に降りてきたあおなさんからはどこか様子が違う感覚があった。

 ……いつもの、フェイトさんと一緒にいる時はまるで子供のようにはしゃいでいて、それでいて僕達に接する時も優しさを見せてくれるあのあおなさんとは全然違う雰囲気を感じられた。

 ……やっぱり目の前にいる奴はあおなさんに似ているけど、あおなさんじゃない。

 その答えに辿り着いた瞬間、あおなさんは僕達に向かって襲い掛かってきた。

 

 

 満面の、笑みで。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第57話『ナハトの夜天の書講座』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、結局学校についてはグレアムおじさんとやらの人物の答えを聞かねばならないとかなんとかだそうで、今のところは保留とする事になった。

 と、言うわけで、外の天気も悪いので洗濯物も早めに取り込み、特にすることもないので家に込もって主のベッドに寝転がりつつあおなの言う『愛』について少し調べる事にした。

 ……にしても、今の世の中とは素晴らしい。特にこのインターネットとやらは少し文字を打ち込みさえすれば後は勝手に調べてくれる。ただカタカタしているだけで時間を忘れる事が出来る。まさに文明の利器と言った所か?

 うっすらと残っている私の記憶の奥底の、私の生まれた時代には、確かこんな便利なモノは無かった。あったとしても辞書のようなものに調べたいものを言って検索する、とかそんな形式というモノで、辞書に載ってないモノは調べられないと言う不便さがあった。

 しかし、これは打てば増えますレベルで出てくるわ出てくるわで実に面白い。

 …………ただまぁ、主に一日一時間と言われているからそれを守らなくては次の日は使えなくなると言うのが厳しいが、それが無いとのめり込んでしまいそうになるので妥当だと考えてはいる。

 さて、あおなの言う『愛』について調べた結果だが……答えとしてはまだ分からない、と言った所だろうか。私としてもある程度は理解できたような気がしないでもないが、やはり知りたいと思った以上全てを理解できないと謎の気持ち悪さが残ってしまう。ただ、『愛』を調べている内に辿り着いた男性同士の絡みという『愛』、女性同士の絡みという『愛』、この二つには軽くだが心が惹かれたよ。

 

「ナハト~。もうそろそろ時間やで~」

 

「了解した。我が主」

 

 私はそっとパソコンをシャットダウンし、ふともうそろそろ晴れただろうかとの期待を込め、窓の外の空を見る。

 しかし雲はどす黒く渦巻き、雷雨が暗雲を走り回る天気でこれだと洗濯物は干せはしない。最悪シグナムがなんとかしてくれるだろう。

 とりあえず、本格的に何もすることがないので主の元に向かうとしよう。主の部屋を出て、階段を降り居間へ向かうと、そこから主の声と……これはフェイト・テスタロッサか?の声がする。どうやら連絡を取っているらしい。フェイト・テスタロッサの方から聞こえてくる環境音から察するに……バスの中っぽいな……。

 だが流石の私も主と主の友人の話を盗み聞きするような無粋な真似はここまでだ。主は友人を大切にするお方だ。邪魔をしてはならないだろう。ここは主に気を使って邪魔をしないよう私は花を摘みに行くとしよう。その後にでも今日の晩ごはんの手伝いでもしよう。

 うんそれがいいと離れようとした瞬間だ。

 

『……それでね?はやて。『砕け得ぬ闇』って聞いたこと……ある?』

 

 すごい不穏な単語が耳にへばりついた。

 

「『砕け得ぬ闇』?……んぅ……聞いたことないけど、どしたん?」

 

『さっきさ、私達(なのはとはやてと私)に似たマテリアル達がいたって言ったよね?それで、どうやら見っけたみたいで………』

 

 …………おいおい。なんの冗談だか……。『砕け得ぬ闇』?……ははは。そんなもの、どうせ『グダ刑事ヤミ金』を聞き間違えたに違いないぞ。……びっくりした所為でチビってしまったじゃないか……。

 

「…………でも、もしもほんとにその『砕け得ぬ闇』が原因で、それでいてあおなが出会ったっちゅうしゅてるんとやらの話が真実なら私達にも責任あるって事やから……」

 

 これは確定じゃねぇか。

 …………うぅむ。ここで本当の事をしっかりと主に教えるべきなのだろうか。確かに主は夜天の主となった。『闇の書』もとい『夜天の書』の事を不透明な部分を含めて知る権利はある。だが主となってまだ日は浅く、ちゃんとした魔法をガンガン使う夜天の主としての姿、所謂巷で言うところの魔法少女としての姿にはなってはいない。

 友人思いの主の事だ。伝えてしまえば自身の危険など省みず『友達が危ういではないか……行こう』の一言で主も動くしそれに連なる形で私達を動くだろう。

 大切な主を危険に晒したくないならここで黙っておくのが最適なんだろうが……そうなると、時既に遅し(U-Dで世界全滅END)状態か主の友人全滅からの主絶望END不可避だし……。

 少しの危険も省みず生き残る可能性に賭けるのがきっとここでの頭の良い選択だろう。

 どちらにせよ、私一人で動くわけにはいかないので主に話を決めさせるとしよう。これが夜天の主としての最初の仕事だ。

 

「じゃあ、またね。フェイトちゃん」

 

『うん。じゃあね、はやて』

 

 丁度終わったみたいなので、ここで話を切り出すか。

 

「主」

 

「ん?ナハトやん。どしたん?」

 

「まずは先程の会話を盗み聞きした事に対する非礼を詫びよう。それでいて、『砕け得ぬ闇』に関する私の知りうる限りの情報を夜天の主となった貴女に伝えようと思うんだが……」

 

「なんやて!?知っとるんか?ナハト!」

 

 ……なんだろうか。魚釣りの入れ食いフィーバーとはこんな気持ちなんだと理解できた。まぁそれは置いておくとして、

 

「その前に、だ。一つだけ確認しておく。……だがまぁ主の事だ。恐らく知ってしまえば危険を省みないだろう。それ事態は構いはしない。だからこそ、しっかりと確認しておく。別に私としては主が拒否してくれる事を強制するわけでも無いし主が"やっぱやめた"と言えばそれでもいいと感じている。だからこそ問おう。『本当にいいのか?(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)』と」

 

 先程までの主はどこかふざけているような感覚があった。そんな状態で決められては主が命を落とす未来が確定で見えてしまう。そうなってしまうと折角手に入れたこの日常(幸せ)を手放してしまう結果となる。

 なので少し強引かも知れないが、主をこちらの世界(非日常)に引きずり込む。

 

「…………分かったで、ナハト。ならその問いに答えるとしたら、『ええで』、や」

 

 主の顔付きが変わった。この顔は一般人である『八神はやて』ではなく、夜天の主としての『八神はやて』の顔だ。……と、言うことは覚悟したのか。

 

「……了解したぞ。我が主。それでは説明させて頂こう。私ことナハトヴァールの知りうる限りの『砕け得ぬ闇』を」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 さて主。元々『夜天の書』とは『次元世界の各地にそんざいするであろう偉大な魔導師の技術を収集し、研究するために作られた収集蓄積型の巨大ストレージデバイス』だ。そして、そのプログラムを今の主を除く歴代のクソッタレ共が改悪し破壊の能力を持ってしまったモノが『闇の書』だ。

 その『闇の書』は主の友人達によって『夜天の書』に戻った訳だが………話は戻るが、『夜天の書』は『闇の書』となった後、元々ある力よりもより強い力という存在……そう、兵器となった。それはそうだろう。元は各地の偉大な魔法を学び、研究する事を目的として造られたデバイスだ。その偉大な魔法の攻撃力、殺傷能力、破壊力を倍増させればそれは立派な殺戮マシーンだ。例えば雨が降らない地に雨を降らす魔法。……砂漠地帯には素晴らしいだろう。だがこの魔法の趣向を少し変えてみればどうだ。大雨を降らせ続け敵の兵糧である作物を育てさせなくしたり、川の近くにある敵拠点を文字通り流したりすることだって出来る。

 ……ここからが本題だが、いつだったか『闇の書』が奪われた事があってな。まぁ、奪った奴はこの『闇の書』を扱えなかったのだが……その時にソイツは"『闇の書』は使えなくても中から乗っ取ればこちらのモノになるのではないのか"とでも考えたのだろうか、『闇の書』にわざと(・ ・ ・)ウィルスを埋め込んだ自身のリンカーコアを収蒐させた。それにより『闇の書』は自身でも……そう、リインや守護騎士、当時意思すら無かった(防衛プログラム)ですら気付かない内にそのシステムを自分からインストールしたのだ。

 

 そのシステムこそ、『U-D(Unbreakable dark)』。

 

 そう、『砕け得ぬ闇』だ。

 『U-D』は誰にも気付かれぬままその触手を伸ばしていき、ついには『闇の書』のデータを全て読み取ってしまった。……守護騎士の力も、リインの力も、私の力も…………。本当であれば私達は既に乗っ取られ今ここで主と出会う事は無いのだろうが、そこで運がいいのか悪いのか、ここでは"いい"の部類に入るのだろうか、『U-D』は意思を持ってしまった。そして『このままここにいればわたしはつよくなる』とでも理解したのだろうか、誰にも感知されぬまま、自身を成長させるため、それを守るための3つの鍵として『闇の書』の内部にて自身を封じ込める『紫天の書』を生み出し、そこで『闇の書』が集めていく魔法をインストールさせつつ深く眠りについたのだろう。

 その封印は恐らく、全ての魔法を学び終えたと自覚したときに解除され、私達もその時に乗っ取られていたのだろうが、私達を『闇の書』としての呪縛から解放してくれた時……そう、つい最近の出来事の時、リインが知ってか知らずか私と守護騎士プログラムを別々のモノとして分離した時に射出させられたのだろう。『未完成』のまま、な。

 

 ……そして、恐らく今のこの異常気象はシステム『U-D』が絡んでいるモノだと思われる。

 理由?理由としてそうだな……。私は『U-D』が生み出した鍵としての存在であるマテリアルの反応は感知出来ない。そもそも、私達から隠れるために産み出されたモノだ。

 だが、外に解き放たれ、私達と同じ種類の系統の力を感じさせられれば嫌でも分かるというものさ。




~その頃のリイン~

(向こうから感じるあの嫌な予感はなんだ!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


次回からこのような事にならないよう気を付けたいと思ってます……。

それと、ナハトの説明した『夜天の書』『闇の書』『紫天の書』に関しては少々捏造した設定などが盛り込まれています。



感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回も、よろしくお願いいたします。


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第58話『ぶっこぬき』

二ヶ月……いや、三ヶ月くらいですかね……。
すいません……内容とかWi-Fiとか免許とか言い訳するつもりはありませんが、とにかくすいません……。


あと完全に後れ馳せながら明けましておめでとうございます……。



それと、今回で冒頭の件は一区切りです。


 掻き分けていた筈の人混みが唐突に消え、目の前から魔法を撃ち込んでいる戦闘音が聞こえる。

 そこにはエリオ君とキャロちゃん、そしてフリードが所々怪我しながらも戦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――真っ黒なフライパンを持ったあおなさんと。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第58話『ぶっこぬき』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「……ほなら、なんなん?今、この瞬間にその『U-D』っちゅうのが……」

 

「あぁ。確実に起動してるだろうな。……それでいて今は……盾街家の付近にいる」

 

「……そんな、なして私は気付けんかったん……」

 

「主は魔導士となってまだ日が浅い。それに周りに化け物級が二人(なのはとフェイト)もいる。更に近くには『U-D』がシステム的にも酷似してしまった私達(私とリイン)がいることもあってか、主の中では無意識に『U-D』を"味方"として捉えてしまったから、だと考察するが……」

 

 こればかりは主を責める訳にもいかない。

 本当に仕方がなかったとしか言いようがない。

 

「………………」

 

 ……このショボくれた顔にしてしまったのは私の所為ではないが責任はある。ただ私は主に問うただけではあるが、それが主の逃げ道を塞いでしまったのだろう。ならばその逃げ道を開かねばならないのもまた私の役目、無かった事にしてくれ、聞かなかった事にしてくれ、とまでは行かないが『私達が行こう(主は行かなくてもいい)』との一言(逃げ道)言え(作れ)る。

 

「……ふむ。なぁ主。別に主は行かn 「ナハト」ひゃう!?」

 

 なにこの気迫。

 

「…………今すぐみんなを呼んでもろうても、ええか?」

 

「え?……あ、あぁ。今すぐにだな?承った」

 

 主のその目は逆らうことを許さない覇気があった。

 

 

 

 ……私が『主が少しご立腹でみんな早く来て』との念話を送ってものの数秒経つか経たないか、全員、私を含めて既に鎧を纏った状態で主の元へと馳せ参じ、膝をついた。

 

「みんな、集まったな?……ほなら、私が今から言うことを聞いてもらいたいんやけど、ええかな?」

 

 主からの問いに何かしらの反応を示さなければならないんだろうが、その覇気は私達を押さえつけるのには充分だったようで、私なんて口すら開けない。

 

「ぉ、仰せのままに」

 

 シグナムがかろうじて返せたか。……まぁ、守護騎士達からしたら覇気よりも驚きの方が勝るだろう。普段のおっとりしている優しい主を知っていれば尚更か。

 

「良かった。……ほんで、用件っちゅうのは今から、あおなん家に行こうと思っとるんよ。あぁ勿論そないな程度の用件でみんなを呼んだんとちゃうで?行くくらいなら一人で行けるしな?……せやけど、ナハトから、『U-D』っちゅうもんを聞いた。それがどれだけ危ないもんなんかってのもひっくるめて聞いた。それは私達の手に入れた日常を壊すもんやってのも」

 

 ぽたり、と主の瞳から落ちた雫が絨毯を濡らす。

 

「……せやから、私は守りたい。恩返しをしたい。助けてもろうて、まるで今までの旧友みたいに接してくれた友達を守りたい……。せやからお願い。私一人じゃ、なにもできないし守れないから……みんなの力を借りてもええか?」

 

 主のその目には既に涙の光と共に覚悟の灯火が輝いていた。口ではなにもできないと言いつつも私達が断れば一人で行くと言わんばかりの意思がそこにある。

 

「……主。私達は主の守護騎士です。主が危険な所に飛び込むのであれば全力で止めますし、主の危機が迫れば死力を持って主を助けようと考えております。……今回は明らかに前者の方ですが、私も彼らに恩を返したいですし……」

 

「シグナム……」

 

 シグナムが立ち上がると同時に、他の騎士達も立ち上がる。

 

「あたしだって……あたしだってあいつらにはやてを助けて貰ったでかい借りがある。……借りっぱなしってのは気持ち悪ぃ……からちゃんと耳を揃えてあいつに返してやる!」

 

「もぅ……シグナムとヴィータちゃんに言いたいこと全部言われたからもう私が言うことは無いわね……。でも私も皆と同じ、はやてちゃんについていくわよ」

 

 ザフィーラは無言の頷きのみ。なんかしゃべれよ。

 

「私のこの身は勿論主と共に!」

 

 リインはもう思考停止してもいいと思う。

 

「皆……。ありがと。……ほなら、いこか!」

 

 主は目元の涙を拭うと魔法陣を展開し、騎士甲冑を纏った。

 はじめて主の甲冑姿を目にしたが……うん。王として、指揮する者としてのオーラが溢れているように感じれる。

 

「シャマル。テレポートお願い」

 

「了解!」

 

 床には大きなベルカの紋章が描かれ、部屋には魔力が充満する。気付くと主の部屋から盾街の家の上にいた。

 ……本当に盾街の家なのかは分からなかったが、私達と似た(システム『U-D』の)気配を感じ取れたので盾町の家だと仮定しておく。

 ここが盾街の家(仮)か……。このような形では来たくなかったが、今はそんな悠長な事は言ってられないな。

 

「シグナム!ヴィータ!二人は結界を張ってこれ以上被害がでぇへんように、それでいて『U-D』を逃がさんように!シャマルは怪我人のとこ行って治療をよろしく!ザフィーラはシャマルの護衛!」

 

「「「了解」しました!」」

 

 結局ザフィーラは何も喋らないままなのか。

 

「リインとナハトは――」

 

 

 指示を出していた主の言葉を遮り、私達の下方から聞き覚えのあるような無いような声が聞こえる。

 

 

――いっちょお空の旅でもしてきてくださいッッッ!!」

 

 それと同時にトラックが壁にぶつかるような轟音と共に下から人影が飛び出した。

 

「なっ、なんや!?」

「下がれ主。あれが私達の目標である『U-D』……」

 

 倒さねばならない存在――と続けようとしたが、その前にリインが早く動いた。

 

「ふんッ」

 

 その光景は主に見せてはならないと肘と肩の関節を犠牲に目隠しをする。

 

「今度は真っ暗になった!?」

 

 主には悪いが流石にリインがモツ抜きをする所は見せられない。それでも『ずぶり』の後の身体から抜き取る『ずちゅり』といった音が響き渡る訳だが。

 

「ふぐ……ぅ……」

 

 ……む?『U-D』が目を開いたか?……いやまぁ、流石に腹部に違和感を感じれば目を開けるか。

 

「ヘァァァァっ!」

 

 しかしそれ以外の行動を許さぬリインの蹴り。が『U-D』の腹部に突き刺さり、『U-D』が吹き飛ばされた。っておい。

 

「リイン、お前なんで蹴り飛ばした」

 

「主に危険が及びそうだったからだ。それに、取るべき物を取るための行動だ」

 

 そう答えるリインの手には三つの光輝く球体が……っておいおい。

 

「お前それ、もしかしてマテリアル達のか?……よく取り込まれてるとわかったな……」

 

「ふふん。吸収や取り込むなどは私の得意分野なのでな」

 

 そこ、威張る所じゃ無いと思うぞ……。

 

「な、なんなん?何が起こっとん?説明してぇな!」

 

「そうだなぁ……なんと言えばいいのか……」

 

 そう辟易していた時の事。

 

――はやてちゃん!盾街君が……盾街君が!

 

 シャマルからの焦ったような念話。ナイスだシャマル。おかげて私が説明する為の時間が稼げ

 

――盾街君が……血が止まらなくて……心臓も、動いてないの!

 

 …………え?




~その頃のなのはさん~

(あおな……君?……あ、あぁ……私のせいだ……。私が守れなかったから……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


なんと言うべきか、本当にお待たせしました……。

もうあまり憂いは無いので執筆速度をあげていきたいと思います!

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。



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第59話『僕と契約して転生してみないかい?』

ここに来てようやくやりたかったネタを出来たような感覚があります。
……まぁ、少し無理矢理ですが。


 瞳を開けると、そこは真っ白な空間だった。

 おかしいなぁ、えっと……あれ?考えてもなにも思い出せない。俺は……どこで、何してたんだっけ……。

 

「やぁ、いらっしゃい。ここは君のような定められた天寿を全う出来なかった人達に再度違う世界でチャンスを与えるための空間だよ」

 

 背後から声がした。

 その声に背筋が鳥肌立てたので仕返しに遠心力を入れて――なにか(・ ・ ・)を握るように――拳を硬めソイツの顔面を狙い、打ち込む。

 ……はて、いったい何を握ろうとしたんだ?

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第59話『僕と契約して転生してみないかい?』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「酷いじゃないか。いきなりそんな事をするなんて」

 

 俺の拳はソイツの顔面に軽くめり込んだ。うわ鼻血ついてら、きたねぇ。……にしても、目の前の奴は漂白剤で髪でも洗ってんのか?白すぎんだろ。そのわりに目は赤いって、アルビノか?つか髪長すぎだろ。

 

「そりゃ後ろから声を掛けられれば誰だってそんな反応しますよ」

 

「それもそうだね。今度からは正面から歩いて出てくる事にするよ」

 

 なんと言うか聞き分けが良すぎる気がする。その、今までこんな事をしたらこれだけじゃすまない事が返って来た事が多々あったような、そんな頭じゃなくて身体で覚えた感覚が違和感を発している。

 

「さて、本題に入ろうか」

 

 鼻血を垂らしながら口を開くアルビノ(男か女か分かんない。ワンピース来てるから多分女の子)さんのその姿には間抜け感満載だった。

 

「さっきも言ったけど、ここは天寿を予定どおり全う出来なかった愚かな人達が来る場所なんだ。……実際自殺しようが他殺されようがそれが天寿で運命なんだけど、君みたいに僕達の決めた運命(スケジュール)を、ガン無視してこちらに来てしまう人達(お馬鹿さん)がいる。そんな人達は大抵輪廻の輪に入れなくてたださ迷うだけになって、その後無となりその存在は抹消されちゃう」

 

 間接的に馬鹿にされた事については何も言及しないであげよう。さっき殴った訳だし。

 次言ったら今度は足で脛を蹴るだけに留めておく。

 

「流石にそれは可哀想だ、と慈悲深い僕達は考えたわけだ。だから僕達はそんな人達にもう一度違う世界で人生を送って貰い、ちゃんと天寿を全うし輪廻の輪にしっかりと乗って次の人生を謳歌してもらおうって事でこんな事をしている」

 

 つまり、俺は死んだ。だけどそれがハヤスギだボケって事で別の世界にgo……簡単に要約したらそういう事か。……でも、なんで死んだんだ?……しかも、思い出せる事も少ないし。

 

「それと、記憶なんかにはちゃんと鍵をかけてある。記憶の消去、なんて脳みそに負担がかかる事をしちゃったらちゃんと生まれ直せないし、その所為でまたここに来ちゃったら本末転倒だからね」

 

 なるほど。混乱してあびゃぁぁぁってしながら死ぬことを防ぐ為か。それなら……いや、だとしても生前の自分がどんなのか分からないってのはなんとも言えない気持ち悪さがある。つか、鍵かけるだけなんだな。途中思い出したらどうすんだ……?

 

「じゃあ、もうそろそろ行ってもらおうか、新しい世界に。願わくば、君の運命のままに死ぬことをここから想ってるよ」

 

 ……運命と言う言葉に胸がずきりとした瞬間、ふっと俺の足下から床が消え、下に引っ張られた。

 って、うぉあっ!?まさかの落下システムだとぉ!?

 くそが!当事者そっちのけで話を勝手に進めて急に転生だってのはどうかと思うんだ。

 ……つぅか……こんなとっかかりのある状態で転生だぁ?そんなの――

 

「満足……できますかってんだ!」

 

 考えろ考えろ……なにか、なにか無いか?……そうだ、運命!運命って聞いたら胸がズキリと痛んだ……。運命って言葉に俺の生前の鍵があったり?……まさかそんな中二病な展開があるわけねぇ。……だけど今はその線を信じて考えるしかねぇ。下の方にちらりと見えた赤ん坊の事は今は捨て置く。

 さぁ、運命。……運命関係にちなんで曲名運命ジャジャジャジャーン!残念無念だ俺ライダーじゃない。

 英語にしたらディスティニー。……パルマフィオキーナ?あんたはいったいなんで出てきたんすか。俺の腕からビームは出ねぇ。……むむむ、なんで俺にはこんな知識がいっぱいあんだか。まぁ今はそれ考えてる場合じゃねぇ、えっと運命がディスティニーじゃないとすると、他の訳し方だとフェイトだっけ、これが何の意味に――って

 

「ぐぉ!?頭痛ぁっ…………!?」

 

 頭に浮かぶは金髪、赤目の美しい女の子。その子は笑ってて、泣いてて、怒ってて、困ってて、照れてて、はにかんでて色んな表情を俺に向けてくれる。名前は、確か…………ふぇいと、さん……?

 俺は、なんで忘れて……。

 更に心に浮かんでくるのは俺の心を光すら嫉妬する早さで撃ち抜いた、フェイトさんとの思い出の数々。

 

「……Holy shit!(くそったれが!)……俺は、なんて事をしようと……。こんな事(転生なんざ)、やっていられますかってんだ!」

 

 必死に空を掴む。しかし空を切る。当たり前だ。何もないから。すると目の端に白く光る束がある。まるで掃除機の吸引力を確かめる為のビラビラ(名前知らない)みたいなのが……。

 これは掴む1択しかない。

 

「いだだだだだだだ!?……んな!わっ私の髪の毛が!?」

 

 あたふたと焦っているアルビノさんの声が聞こえる。おぉ、落下が止まった。

 

「あぁ、すいません。俺、急用思い出したんで帰りたいんですが出口どこですか?」

 

「か、帰る?そんな事させる訳ないし出来る訳ないじゃないか!」

 

 出来る訳が無いと四回までなら言っていい。今の状態じゃあ言った所でどうにもならんが。

 

「いやぁ、愛してる人がいるんですよ。その人の為に戻らないとなぁって」

 

 にしても、俺はなんで今までフェイトさんの事を忘れていたんだ。確かに鍵はかけられたさ。しかしその程度だ。それを乗り越えられなかった自分がふがいなさ過ぎて泣きそうだ。

 

「まさか……思い出したのか!?記憶を!」

 

「さぁ、なんの事でしょうか」

 

 正直な所、思い出したのはフェイトさんの事だけだ。だが、俺が戻るだけの理由はそれだけで充分だ。

 ちなみに他に思い出したのは般若とかだったが、あれはいったいどういう意味なんだろう……。

 

「あっじゃあ、変わりに貴女が転生してくださいよ。俺は勝手に元の世界に帰りますか……ら!」

 

 アルビノさんの髪を伝わって登る。カンダタもこんな気分だったんだろうなぁ……。

 

「それじゃあ意味が無いじゃないか!」

 

 正直、ここでアルビノさんが踏ん張ってくれてよかった。もしもここでアルビノさんが飛び下りてたら俺が先に赤ん坊の所に落ちてたし。

 

「意味って?」

 

君ら(・ ・)は物語の破壊者なんだ!救われない筈の者を救い、降りかかる筈の火の粉を払う!それの皺寄せが来るとも知らずのうのうと暮らしている……」

 

 なんだ、のうのうと暮らしたら駄目なのか。

 

「管理する身にも、なってよ!崩れたバランスを取るためにどれだけ苦労したと思ってるんだ!君達みたいな馬鹿野郎gあ痛!」

 

 次馬鹿にしたら脛を蹴ると思った筈だ。今は脛は蹴れないから二~三本抜きながらスピードアップだ。

 

「……いたったい………なにを……すr「皺寄せが、なんだと言うんですか?」……なんだって?」

 

「救われない人を救う?そりゃ目の前で人が死なれたりすれば寝覚めが悪いんで助けるに決まってるじゃないですか。降りかかる火の粉を払う?そりゃ当たり前ですよ。誰しも度を越した熱さは嫌でしょうが」

 

 もちろん。その根底にはフェイトさんへの何かしらはある。

 

「……火の粉の意味が違「ともかく。その程度で皺寄せが来たとしても、逆に笑うくらいですよ。『なんて心の狭い世界なんだ』って、笑いながら吹き飛ばしてやりますよ」

 

 そのくらいの壁、フェイトさんと幸せになれるんならいくらだってぶち壊してやるさ。

 おっ、ようやく穴の入り口についた。

 

「人の恋路を邪魔したら、馬に蹴られて死にますよ?」

 

 そう言い残し、掌に残ったアルビノさんの髪の毛を払い落とし、出口を探す。

 ……驚きの白さ過ぎて出口も白いってのは流石に無いよね?

 

「…………分かった。なら、君の好きにしたらいい。もう止めないし、もう何も言わない。さっさとここから出ていって精々楽しんで苦しめばいい」

 

 アルビノさんが指を鳴らすと下に出来た穴とは違う、まるで非常口の標識みたいな出口が表れた。

 

「ただし。もう二度と寿命以外でこっち(あの世)に来るな。君の顔は見たくない」

 

「こっちからも願い下げですよ。それじゃ、さよならです」

 

 フェイトさんに心配をかけてしまったんだ。それを、謝らなくちゃとの気持ちを胸に、迷いなく駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ぉな!あおな!起きてよ!ねぇ、あおな!死んだらやだよ!」

 

 一番に聞こえたのは、フェイトさんの嗚咽の混じった声だった。

 

「パパ……起きてよ……起きて、私を撫でててよその手で……お願い……起きて……」

 

「あおな君!死んだら絶対に許さないんだから!今なら眠ってるだけって事で許してあげるから、目を開けてよ!」

 

 その次が高町とヴィヴィオちゃんだった。だからパパってやめろって。

 

「……っぁ、う……」

 

「あおな!」

 

 とにもかくにも、フェイトさんを泣かせている以上、もう寝てられない。早く起き上がって大丈夫だって言わなくちゃ。

 ゆっくりと節々や腹部なんかが痛むが無理矢理……そういや両手が……あれ?治ってる?でも動かせないとはこれいかに……あっ、ザフィーラさんが起き上がるの手伝ってくれた。優しいんだな、見直したよ。

 

「ぉ、れはだいひょう、ふ……」

 

 だがなんてこったい。思った以上に口が休みボケの所為で回りやしねぇ。

 

「あおなぁ!」

 

 なので無理矢理に続けようとしたらフェイトさんが抱きついてきた。

 もう、ね。駄目だよこれは。一瞬脳ミソがパージしたんじゃないかって感じれたくらいには反応出来なかったよ。またあのアルビノさんに会いに行くんじゃないかとすら思った。身体の方は正直者らしく、鼻から愛を垂らそうとしてたけど、血液が足らなかったのか射出出来なかったようで。残念だったな。

 

 しかし俺の記憶はそこで途切れる。どうやら脳ミソではなく意識をパージしたらしい。

 そりゃあフェイトさんにあの愛するフェイトさんに抱きつかれんたんだ。意識をはっきり持てってのが難しい。幸せの中で沈めたよ。

 

 

 

 

 

 最後に一つ。とても柔らかくていい臭いがしました。




~その頃のアインハルトさん~

(この人は……昔からこんなに傷付く人だったんだ……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


いやぁ、温め続けて出す機会が無くなると半分思ってましたが、出せて少し満足してます。

……え?死んで復活は強化フラグ?そんなものありませんよ?

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第60話『問おう。あなたが何を考えてるのかを』

……FGO、能登セイバーが当たったのはいいのですが……うーん……。


 ……あれから、もう3日くらい経ったかな……。

 あの後……あおなが目覚めて気を失ってあと、なのはと私も検査を受けることになって、色々と精密検査を受けた。結果はただ手首を捻挫しただけで、それ以外はなんの外傷も無かった。

 今は、退院してもいいよって言われたから私は『バルディッシュ』と『レイジング・ハート』が修理されてるこの場所に来てる。

 ……そこでヒビ割れている『バルディッシュ』を見るたびに、胸の奥底がギュウって握られてるような悔しさが込み上げてくる。

 

 

 

 

 ……私には、まだまだ力が足りないんだって。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第60話『問おう。あなたが何を考えてるのかを』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、俺が気を失って目覚めた時、個室に閉じ込められていた。突き破ろうとしたが今度の扉は新品らしく突き破れない。今はこんな所に閉じこめられている場合じゃない、気になることがあるのに……特にフェイトさんは無事なのか、とかフェイトさんはもう泣いてないよね?とか。それをクロノに聞いたら懇切丁寧に教えてくれた。

 無事ってね。

 

 だが俺はクロノをそんなに信じてない。

 だからとりあえず早くこの個人用個室……別名牢獄から出してくれやがれやとの事で何度も何度も扉を拳で殴ったら痛いから中身の入った缶ジュースを投げつけてる。それでなんとか扉を凹ませる事は出来たがそれ以上は無理みたいだ。なので今度は壁を突き破ろうと植木鉢で殴ってみたらヒビが入るには入ったが植木鉢が粉砕した。

 どうすりゃいいってんだ……早くフェイトさんに会ってちゃんとこの口で大丈夫だって言いたいのに。

 こうなりゃ自棄だ。タックルでこじ開けてやる。

 部屋の限界まで助走をとり、そのままDASH!

 

「……盾街あおな。とりあえず話を聞きに……ぐぅっ!」

 

 おおっと偶然扉が開いて出てきたクロノ君!吹っ飛ばされたー!

 

「ひっ!?」

 

 と、そんな俺をドン引きしたとでも言わんばかりのニュアンスで悲鳴をあげたのは、クロノが恐らく連れてきたであろうピンクの髪の女の子がいた。

 

「ダリナンデスカアンタタチイッタイ……」

 

 その女の子が俺を見るや否や一歩後ろに下がるとそれに呼応するように赤髪の少年と茶髪の少年……青年が守るように前に出る。後ろでは白い髪の女性とちっp黒髪の少女がピンクの髪の女の子を慰めていた。

 ……その布陣、もしや初対面で引かれる程俺の顔面が酷くなってるって事の証明か?そうじゃなくても深く傷付くレベルだぞ。

 あぁ分かった。オンドゥル語だったからダメだったんだ。ここはグロンギ語じゃないとダメだったのか……。選択ミスっちまったかぁ……。

 

「……貴方は、本当にあおなさんなんですか?」

 

 赤毛の子(恐らく同年代)はどうやら質問に質問で返す子らしい。

 まぁ名を訪ねる時は自分から………って

 

「なんで俺の名前知ってるんです?……自己紹介しましたっけ?」

 

 話を聞くと、彼らもどうやらヴィヴィオちゃんも同じように未来からこちらにやって来たと言う。そこで見たことがない場所で困惑してたら未来の俺を幼くしたような人物を見付けてなんか安堵してたら満面の笑みで襲ってきて、防戦一方だった時に茶髪君がやって来てなんとか持ち直したけれどやっぱり勝てなかったよ……って時にクロノが来て助けてくれたとか。

 ふぅーむ……。

 

「えぇっと……一つ確認してもいいですか?」

 

「……なんですか?」

 

 そんなに警戒しなくても……。

 

「貴方達って未来のフェイトさんに鍛えられてたんですよね?」

 

「あっはい。フェイトさんだけじゃなく、なのはさんとかヴィータ隊長とか、あおなさんに鍛えられてました」

 

 あぁそれなら確実に俺じゃねぇや。

 

「安心してください。それ、俺じゃないです」

 

「…………え?」

 

 おうそこの茶髪ボーイ。文句あるならちゃんと面と向かって言いやがれ。

 ………コホン。

 

「未来で今よりも確実に強く美しくなっているフェイトさんと元から魔王なのに進化して第六天魔王くらいになっている高町さんに鍛えられたって事は未来の俺の事は分かりませんが、貴方達から見たら今の俺は指先一つとまでは行きませんでしょうが、軽く捻り潰せる実力はあると見受けられますよ」

 

 それを聞いて考え込む未来ボーイ&ガールズ。ここまで言って信じられないって……あぁ、まぁ、実際俺が出てきたって話だし……どうなってんだ。

 ……さて、どうするべきか。実際に戦ってみるとか?確実に俺が一人死ぬから却下。

 

「パパを疑うのはそこまでにしてもらおうか!」

 

 そんな時に出てきたのはヴィヴィオちゃん。もうこの際疑いを晴らしてくれるのならどう呼んでも許可する。

 

「えっ……ヴィヴィオちゃん?……僕達が知ってるヴィヴィオちゃんよりも……若干大きい、ような……」

 

「え?小さくない?」

 

 意見の相違?この場合は時間軸の相違?

 

「私はこれから大きくなるから問題は無いもん。……コホン。さて……貴方達がそのあおなパパっぽい人と戦ってたらしき時、パパはずっと私達といたよ?事実、それでパパ死にかけてた……訳だし……」

 

 こらこら、そこで深い影を落とすのをやめなさい。

 

「……でも、俺達が出会ったのは確実にあおなさんだった。だって、あんな真っ黒な(・ ・ ・ ・)フライパン持ってる人って言ったらあおなさんしかいないから……」

 

「………むむむ」

 

 ……えっ?なにそのむむむ。

 

「……でも、もしかしたらそれあおなパパを語った人なんじゃ……」

 

「……僕も、あのあおなさんと戦ってた時に違和感はあった。……けどあのフライパンを見たときにやっぱりあおなさんはあのあおなさんしかいないって……思って……」

 

「そう、だよね……。私達は過去の事は画像でしか知らないし、その画像も載ってたとしてなのはさんとかフェイトさんとか八神部隊長にヴォルケンリッターの方々の活躍ぐらいしか……」

 

 ……ん?あれ?そういやヴィヴィオちゃんに俺のフライパン、見せたっけ?

 つか、黒?……まさかあのフライパン、カメレオンよろしく体色変化の機能まで持ってるんじゃ……?

 

《流石にそんな事はできんぞ。お主は儂をなんだと……》

 

 フライパン。

 

《それはそうじゃが……》

 

「あの…「やっぱり、あおなパパが……?」

 

 おいヴィヴィオちゃん。まさか掌をセットしてたとは思わなかったぞ。それでもリバースするの早すぎだろ。

 

「いや、そうじゃなくて……あの、俺の持ってるフライパン、白……いや、だらしねぇ灰色ですよ?」

 

『え?』

 

 すごい。ここまで大合唱な疑問を初めて聞いた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ここに、いらっしゃいましたか。フェイト・テスタロッサ」

 

 私を呼ぶ、声がした。

 そちらに顔を向けると、なのはによく似てる……確かあおなが呼んでた名前は……

 

「しゅてるん……だっけ?」

 

「……貴女にはそう(しゅてるんと)呼んでもらいたくありません。『理のマテリアル』、『星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)』、『マテリアルS』……もしくは『シュテル』のどれかでお呼びください」

 

 一瞬ムッとした顔をした後に敵意丸出しの声でそんな事を言われた。……簡単に呼んじゃ、ダメだったんだ……。悪いことしちゃった。

 

「えっと、ごめんなさい……。その、悪気があった訳じゃ……」

 

「……そんな泣き出しそうな顔で謝らないでください。……まるで私が悪いみたいじゃないですか」

 

「あっ、そ、そんなつもりじゃ……ごめ「だから謝らないでくださいって」……あ、あぅ……」

 

 しゅてるん……もといシュテルは溜め息を吐き出した。もしかして私、呆れられたのかな……。

 

「……(あおなを渡さないと宣戦布告するつもりがこ)(こまでペースに乗せられるとは)……とんだ、誤算でしたよ」

 

「……え?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

 なんだったんだろう。……よく聞き取れなかった。

 

――ここは聞いたらダメだよフェイト。空気を読めるようにならなくちゃ

 

 あっ、姉さん起きてたんだ。

 

――………フェイトぉ……

 

「さて、改めて。……フェイト・テスタロッサ」

 

「は、はい!」

 

 シュテルが私を強く睨んでくる。……うぅ、さっきの事、やっぱり相当頭に来てるんだ……。

 

「私は、貴女に言っておかなければならないことがあります」

 

 説教、かな。……安易に人のデリケートな所に踏み込んじゃダメだ、とかそういった感じの……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は盾街 あおなを愛していますが……貴女はあおなの事をどう想っているんですか?」

 

「…………え?」

 

 説教が来るって予想していて、油断していたのからかなのかどうかは分からないけど、シュテルのその問いは私の心の中にズキリと突き刺さった。




~その頃フェイトさんとシュテルの話をたまたま聞いてしまったなのはさん~

(えっ……えぇ!?……シュテルが、あおな君を?えぇ?ライバルが増えたぁ!?)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


さて、これで一応出すべき人は全員出しました(赤毛熱血お姉ちゃんから目を逸らしながら)。

………ちゃ、ちゃんと出番はありますよ?(震え声)

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第61話『愛しているんだあなただけ』

今回は難産でした……。


「ほら、見てくださいよこのフライパン。灰色でしょ?汚いでしょ?」

 

 色は確かに赤くなったりはするが、それは赤熱した時ぐらいしか見たことはない。

 

《汚いってやめんか。儂はこの通り綺麗な……》

 

 嘘だ!

 

《最大の否定!?》

 

「……本当に、灰色だ。でも俺が『次元世界のフライパン展示会』で見たときは真っ黒だったのに……」

 

 すげぇな。未来の人ってフライパンを飾りまくって楽しむのか。変わった趣味してんな。

 

「……名前も確か……『ユニコーン』って……」

 

 ……真っ黒でユニコーンって……それ2号機の方じゃ……。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第61話『愛しているんだあなただけ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 シュテルの『貴女はあおなの事をどう想っているんですか?』の一言がズキリと突き刺さったと同時に、胸の奥にもやもやとした、なんというか、とてもとても不快になる気持ちが浮かんできた。

 一瞬……うん、一瞬だったけど、シュテルの事が嫌いになった。

 

「……私は……」

 

 私は、あおなの事を今よりももっと知りたいって思ってる。あおなに会えば嬉しいって気持ちも出てくるし、楽しいって気持ちも出てくる。アルフに言わせてみればそれは恋なんだって事らしいんだけど……。

 ……なら、私はあおなを愛していない、のかな。恋してるって事は、愛していないって事、なのかな。

 

「……私は、あおなの事が……」

 

 あおなといると、胸がドキドキする事がある。あおなといると、不意に顔が熱くなる事がある。

 あおなを大切な友達だって考えると、胸がぎゅっと切なくなって……辛くなって。

 この気持ちはなんだろうって思うことが沢山あった。

 

「私は、あおなの事が好き…………なんだと思う」

 

「……好き、ですか」

 

 今まではずっとあおなに大好きだって言われたり、愛してるって言われてた。けど、あんまり意味がわからずにいた。私だって、あおなは好きだよ。……でも、家族や友達とはまた違う。なんていうか純粋に好き……、なのかな……。

 

「一緒にいると、楽しくて、嬉しくて……」

 

「……それは、つまりタカマチナノハや、夜天の主と一緒にいたら楽しくない。そういうことですか?」

 

「なのはとはやてといたら、勿論楽しいし、とっても嬉しい事だよ。……でも、あおなの事をなのはとはやてと同じって思ったら私の胸が痛いんだ……。まるで違うって言ってるみたいに。確かになのはもはやてもアリサもすずかも、アルフに母さんにリニスにヴォルケンリッターの皆やリインやナハトや管理局の人達、皆大好きだよ。……だけど、あおなだけ、その好きとは違う」

 

 うん。そうだ。やっぱりあおなは、私にとっては特別な好きなんだ。そう認めたら、胸の奥にかかってたもやがすっきりと晴れた気がした。

 ……そっか……。

 

 

 

「私はあおなに恋してる」

 

 

 

 口に出して改めて理解できた。今、自分が誰を本当に好きなのかを。

 ……そう思うと、アルフってすごいなぁ。私のこの気持ちを早めに察知してたんだから。

 

「……そう、ですか。恋を……。ふむ」

 

 ……って、あ。そ、そういえばシュテルはあおなの事を愛して……。うぅ、また胸がもやっと……。

 

「……ふふ」

 

 シュテルに笑われたっ!?

 

「……どうやら、私は余計な事をやらかして最大のライバルを目覚めさせてしまったみたいですね」

 

「ライ……バル?」

 

「えぇ。そうです。これからは私達はあおなを巡るライバルになりますね。……これから、ライバルとしてよろしくお願いします」

 

「え?あっ、はい。……こちらこそ、よろしくお願いします……」

 

 少し焦りながら、だけど、シュテルの差し出した右手をしっかりと握る事は出来た。

 ……それと同時に、改めてシュテルがあおなの事が本当に好きなんだって分かった。

 絶対に、負けないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと、先程の私の呼び方については失礼しました……。少し、ピリピリしてたモノで……」

 

「あっえっと、それは私も配慮が無かったから……その、本当にごめんなさい……」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ……結局、渋々とだが彼ら未来ボーイ&ガールズは納得してくれた。そんでクロノと共にヴィヴィオちゃんを残して部屋を出た。

 ……未来の俺ってそんなにイコールでフライパンなレベルでしか存在してないんだなって理解も出来たいい機会だったと感じておこう。納得は出来ないが。

 

「えへへーパパー頭撫でてー」

 

「嫌です」

 

「そんなぁ……味方したのに……」

 

 確かに俺をフォローして……まぁ、してくれたか。してくれたのはありがたかったが、すぐに掌をリバースオープン仕掛けたのはさすがに許せないというか、なんと言うか。

 ぶっちゃけるとどうしてフェイトさんじゃないのに同世代の頭を撫でなくちゃならんのか。

 ……もし、仮に、フェイトさんが『頭撫でて』って言ってくれたら……。

 

 しかし 俺 の 妄想力(M P) が 足りない!▼

 

 ちくしょう。こうなりゃいつしかフェイトさんを抱き締めた時の感触を思い出して……うわ俺キメェ……。

 

「……なら、どうしたら頭撫でてくれる?」

 

 うーむ。何故ここまで頭を撫でられる事に執着してんだ?それに、俺はついさっきまでベッドでスヤァしてた身だ。その間に勝手に俺の腕使って……あぁそういやボロボロだっからか。

 ……まぁ確かにヴィヴィオちゃんは今回フェイトさんと俺をあの金髪さんから助けてくれたって話らしいし、まぁいいや、撫でてやろう。

 

「……分かりましたよ。じゃあ頭こっちに貸してください」

 

「え!いいの?わぁい!」

 

 そうやってニコニコと近付いて来たヴィヴィオちゃんの頭に左手(・ ・)を乗せようとしたら弾かれた。

 …………ん?

 

「そっちの手は……いい」

 

 なんだァ?テメェ……。

 

「お帰りはあちらなんでさっさと出ていって下さい」

 

「……えっ!?あっ……ご、ごめんなさい!」

 

 なんだよ。撫でろ撫でろ言ってたから撫でようと思って手を伸ばしたら拒否られるって新手のいじめかよふざけんな泣きそう。

 

 

 それからクロノが俺を呼びに来るまでヴィヴィオちゃんは泣いていたと言う。自業自得だ。

 

 

 

「久し振りだね!盾街 あおな!」

 

 クロノに連れられ、泣くヴィヴィオちゃんを背中に背負いながら着いた会議室っぽい所には既に何人か集まっててそこには水色のツインテールを揺らすレヴィちゃんもいた。

 その隣に居心地が悪そうなヤガミモドキもいた。結局こいつはなんて名前なのか……。

 

「良かった……。生きてたのね~?」

 

 ……えっと……あぁ!

 

「傷だらけの桃色さんでしたっけ?」

 

「あっそういえば自己紹介してなかったわね。私の名前はキリエ。キリエ・フローリアンよ。よろしくね~?あおな君」

 

「そして私がキリエのお姉ちゃんであるアミティエ・フローリアンです!よろしくお願いしますね盾街さん!あっ、私の事は、アミタ、とお呼びください」

 

 キリエと名乗る女性の後ろからぬっと赤い髪の女性が現れた。

 俺の名前は既に知られてたようだ。

 

「あっはい。よろしくお願いします。……それと、出来れば説明をお願いしてもらってもいいですか?」

 

「……はい。分かりました」

 

 ……アミタさんから聞いた事を纏めると、アミタさん達がいた所(エルトリアって名前らしい)が『死触』ってので土地とかが死んでってる。

 その『死触』を止めようとしてるのがアミタさんとキリエさんを作ったグランツって博士なんだけど、そのグランツさんも不治の病らしく、先も長くない。だからそのグランツさんが死ぬ前に綺麗になったエルトリアを見せたい。そのためにあの忌まわしき金髪娘の持ってるであろうエグザミアってのが必要なんだとキリエさんが気付き、そんでそれが取れるであろうラストチャンスらしきこの時代に飛んできて、それを止める為にアミタさんも来て、で、それに巻き込まれるようにしてヴィヴィオちゃん達が来ちゃったと……。

 ……ふむ。

 

「……キリエさん。貴女はそのグランツさんのその努力を無駄にしようとしてるんですか?」

 

「…………」

 

 俺がキリエさんに問うと、キリエさんはそんな事は分かってるとでも言いたげに顔を背けた。

 

 

 

 ……なるほど。つまりはもうそれほどまでに追い詰められてるって事か。




~その頃のフェイトさん~

(改めて、そうだって思ったら……。あおなの顔を見るのが恥ずかしいよう……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ようやく、フェイトさんが自覚しました。

あと、やっとまともにアミタさん出せました……。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。

多分ガンダムブレイカー3のせいで遅れ…………ないようにほどほどにしときます。







そういえば、四月から遊戯王は10期ですね……。


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第62話『でもそれって根本的な云々』

蛇足かなって思いましたが、ここでやらなきゃ多分もうあおなの両親の紹介は無くなると思ったので。


 キリエさんの事情は分かった。それに助けてもらったしこれ以上責める必要ないだろう。実際、フェイトさんが被害を受けた訳じゃないし。俺としてはちょいと早めの娘との出会いがあっただけで角辺りの異臭に気を付ければなんとかなるだろう。まぁ見たって訳じゃないから大丈夫……なはず。

 さて、キリエさんの話を聞いてたらフェイトさんがしゅてるんを引き連れやって来た。

 ……流石にレヴィちゃんとかヤガミモドキとかいるから本物だとは思うけど……本当にしゅてるん、だよね?

 

「……(あおな)

 

 疑いの眼差しを向けていたが、しゅてるんがこちらを見てニッコリと笑ったのを見てあぁ本物だと理解できた。と、言うか、フェイトさんと一緒にいる時点でもう信頼出来る。

 なのでフェイトさんの方へ目を向けたんだけど……フェイトさんは俺の顔を見るなり慌てたように目を泳がせ、顔を下に向けた。

 ……なんだろう。こう、胸が辛くなるタイプの目頭が熱くなってくるやつだこれ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第62話『でもそれって根本的な云々』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「……()ち!おい!盾街!聞いているのか!」

 

 おっと、つい俺のどこが悪かったのかを考えてたら話を聞くことすら放棄してたようだ。……結論としてはんー……やっぱり、守れなかった事なのか、それともヴィヴィオちゃんを泣かせた事。大穴狙いで死にかけたもとい死んだ事かなぁ……。

 そんな俺をクロノが完全に呆れてるような口調で話し掛けてくる。

 

「……その顔を見るに君は聞いてなかったようだな」

 

「すいません。まだ意識が戻ったばっかりなんでつい」

 

「そういえばそうだった。……身体の具合はどうだ?」

 

 先程まで眠りこけてたんだ。この手を使わない訳にはいかない。

 

「まぁ大丈夫です。それで、どうしたんです?」

 

「あぁ。今はあのシステム『U-D』についての対策会議を開いてたんだ」

 

 話を聞くところによると、今の所大きな動きは余りないそうだ。……小さな動きとしてはここら一帯の次元世界を有人だろうが無人だろうが関係なしに乗り込んで魔力を奪うだけ奪ってまたどこかへってのを繰り返してるそうだ。前よりもパワーアップしてるとかどうとか。しかも世界を軽く滅ぼせたいつぞやの『ナハトヴァール』よりも強くなってるそうで。

 あとは()の目撃情報があったようだ。どうやら今は昔俺が住んでた中丘町の家にいるそうだ。そこから動かずじっとしている。

 あとついでに徳三四姉妹がぶちギレてるそうだ。知りたくなかったその事実。

 

「……と、こんな所だけど、何か質問は?」

 

「特に」

 

 今はそんな事よりもフェイトさんの事でいっぱいいっぱいだ。……むむぅ。まさか本当に今度こそ嫌われてしまったんだろうか。

 そう思いフェイトさんを目で探すが見つからない。……フェイトさんの事を考えたいたのにフェイトさんから目を離すなんて俺はなんて駄目な奴なんだろうか。

 その代わり、と言うかフェイトさんに代わりはいないけど、お義母(プレシア)さんがいた。……ずっとこっち睨んでる。やだ怖い。

 

「お待たせ。ようやく戻ってこれたわよ……ってあれ?もしかしてもう会議終わってる?」

 

 そんなお義母(プレシア)さんの視線に恐怖してた時にリンディさんが出てきた。……そのお陰もあってか、お義母(プレシア)さんの視線も俺から外れた。

 

「ついさっき終わった所です」

 

「そっか。……まぁ詳しいことはあとで聞きましょう。……さて」

 

 終わったのなら俺もフェイトさんを探すために席をはずそうと立ちかけたらクロノにガッと肩を掴まれ椅子に尻を叩きつけるように座らされた。尾てい骨の辺りがジーンとする……。

 

「まずは生きてて良かった。……久し振りね。プレシア」

 

「……えぇそうね。久し振り、リンディ」

 

 二人はシリアスな顔でお互い向かい合っている。

 つか、

 

「……あの、俺は関係無いんじゃ?」

 

「……いや、僕もあまりよく分からないがプレシア女史が君をご指名だ」

 

 つまりはあれか?リンディさんとの話し合いが終わったら次は俺との個人面談でもするのか?内容はフェイトさんとのお付きあいを考慮に入れた進路相談?

 ……それとも、母親から直にお断り?

 そんな俺の悩みなんて完全に無視して二人のシリアスな表情が氷が溶けるように笑顔になっていって懐かしむようにリンディさんが話始める。

 

「あの時も、こんな感じだったわね」

 

「そうねぇ、ガタノなんとかが出たときもこんな感じだったわね。……あの時はリンディがわたわたしてたっけ」

 

「あっ、あれは、その……私だってあんなのに会ったの初めてだったんだし……」

 

 いったいどう言うことなのか俺にも詳しく聞かせて欲しい。

 ……クロノ曰く二人はPT(プレシア・テスタロッサ)事件(フェイトさんと高町が出会った事件らしい。ちなみに、フェイトさんと俺が初めて出会った時がPT事件が終わって裁判を受けにいく時に高町にしばしのお別れを言いに来てた時だったとか)以前に既に出会っていて関係があったそうだ。ただ、どんな関係なのかはクロノも知らないみたいだ。

 

「……で?貴女がここにいるって事はゆっくり昔話をしに来た訳でも捕まりに来た訳でも無いんでしょう?」

 

 どうやらお義母(プレシア)さんはPT事件の時に死亡扱いになったらしく(虚数空間って所に落ちたらしい)それで捕縛はもうされなくなったとかなんとか。

 虚数空間ってなんだ。

 

「そうね。……まぁ、はっきりと言っちゃえばそこにいる『盾街 あおな』。……確かめたらあの二人の子供だってさ」

 

 唐突にこちらを向いて俺の名前を出すなんて心臓が跳ね上がるくらい驚きますよお義母(プレシア)さん。

 

「知ってるわよ。……知ってる」

 

 そこでなんで肩を落とすのかを小一時間問い詰めたいぞリンディさん。

 

「あ、あの……盾街がどうかしたんですか?」

 

 ここぞとばかりにクロノ君がはっきりと聞いてくれた。ナイスだクロノ君。好感度が高町よりも少し上になったぞ。

 

 

「……彼の父親である盾街 ごくはと母親である六柱 すずむには昔、お世話になったのよ」

 

 

 父さんと母さん、ほんとなにしてんだよ。

 

「……あれは今でも思い出したくないわ。なんで魔法を鉄山靠で打ち消せんのよ……。ごくは君は『極め続けた』とか言ってたけれども、それでも限度があるわ……」

 

 父さん昔はやんちゃしてたって聞くがこれはやんちゃってレベルじゃねぇぞ。

 

「懐かしいわねぇ。プレシアとかよくすずむちゃんに突っ掛かってたじゃない。『どっちが魔法を使えるか勝負だ!』って」

 

「そりゃあんだけ才能を見せられたら黙っていられる訳が無いわよ」

 

 知りたくなかった両親の昔の暴れっぷりを聞きつつ、頭を抱える。

 なんというかこう、身内が恥ずかしいというそんな羞恥心で死にたくなってくる。

 

「……えっと、それをふまえてなんで俺を?まさか昔話を聞かせるためにってのはあり得ないですよね?」

 

 それか父さんか母さんが『もしも子供が産まれたらそいつは管理局には入れちゃ駄目』だとか言ってるとか?

 ……それならまぁ謎の感動が俺の心を覆うわけだが。

 もしかして父さんと母さんは俺の事を……!

 

「そんな事は一言も言ってなかったわ」

 

 今度父さんに出会ったら首締め背負いしてやろう。母さんには俺お手製の食い合わせ料理を一週間作ってあげよう。なに、日頃の感謝(怨み)を込めてだ。

 

「……そうねぇ、あおな。貴方は本気で管理局に入るつもりなの?」

 

「えぇそうですが」

 

 フェイトさんの為なら例え火の中水の中墓穴掘っても堀抜いて、フェイトさんを守れるならば俺の勝ち。

 

「なら、覚悟しときなさい。貴方は才能だけならあるんだから。精々管理局の上に気を付けることね」

 

 覚悟ならフェイトさんに出会う度に何度でも重ねがけされるから問題はない。




~その後のプレシアさん~

(まぁ、その才能もその恋心に一途な所為で変な方向に捻じ曲がっちゃってるけどね)


◆◇◆◇◆◇◆◇


それとあおな君の容姿について質問があったので

あおな君の容姿は決めてません。
強いて言えば黒髪黒目の少年という感じでイメージしてます。

なんでしたら読者の皆様のご想像に……いや、なんでもないです。



さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第63話『取捨選択大同小異』

 満たされない。

 物足りない。

 心にも、体にもポッカリと"穴"が開いた感覚がずっと、あの(管制人格に奪われた)時から違和感が存在する。なんというか、痒いのにどこが痒いのかが分からない感覚……。

 

 どれだけ魔力を蒐集しても、どんなに"穴"を埋めようとしても、埋まらない。埋められない。彼女達の代わりなんて、いない。

 

 いないんだ。いるわけない。いたらおかしいんだ。いちゃいけない。いたらダメだ。

 

 

 取り返さなくちゃ。

 私の 大切な家族を 取り返さなくちゃ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第63話『取捨選択大同小異』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 あやつらとの会議の後、改めて『U-D』の中に取り込まれている時の、あの感情の奔流を思い出した。

 

 一緒、(皆と)、一つに、(家族)、孤独、寂しさ。

 

 歪みに歪んでしまい、かえって真っ直ぐになってしまったその意思。

 確かに、考えてみれば何千年もの間独りぼっちでずっと牢獄のような所におったのだ。……狂っても仕方がない、とまでは言わないが考えるのを止めるレベルまで行くのは確かだろう。

 だが、あの様子を見るに考えるのを止めず、ずっと悲しみや憎しみを圧し殺して耐えに耐えていたに違いない。

 そのタガが、あやつ(盾町 あおな)の特性が干渉したせいか、壊れてしまったのだろう。更には止めようのない感情の波がそのまま増幅し、増幅されたまま力となった結果……。

 ……『U-D』と一つになってしまったからこそわかる。あやつは辛いことや悲しい事があれば、それを隠す事で耐えるタイプなのだと。だからこそ、辛い感情を覆い隠してきた感情を全て力として脱ぎ捨て(解放し)たから、あとには裸の心だけが……『感情変換資質魔力』にとって最も相性のいい純粋な感情だけが残ってしまった。

 もしも、だとか、あぁだったら、などの『もうどうにもならない事』は考えるだけ無駄だ。もう起こってしまった事実には"今"抗う事しか出来ない。

 ……ならば、"今"我がすべき最も正しい行動は『U-D』を抑え我が力とし、更にはその上でシュテルとレヴィを守る事だ。

 

 なんだ。やることは既に分かってるではないか。

 

 ならばあとは実行に移すだけだ。幸い、データは揃った。ここから逆算してワクチンを作ることなど、我にかかれば造作もない。

 

「あっ、王様こないなとこにおったんか。……まさか、食堂におるとは思わんかったで」

 

「……む?なんだ子鴉ではないか。どうした?何か用事か?」

 

「むぅ……用事が無いとあかんの?」

 

 ……なんというか、こやつといると気が狂わされる。ただ、それがいいのかと聞かれれば首は縦にも横にも振れんが。

 

「守護騎士達や管制人格共と戯ればよいだろうに。なんなら、シュテルやレヴィと戯れる事を特別に許すが?」

 

「シュテルはなのはちゃんとなんか言い争いしとるし、レヴィちゃんはフェイトちゃんといちゃいちゃ(力比べ)してる。ヴォルケンの皆やリインは対策で構ってくれへんし、ナハトに至っては『U-D』ちゃんの足取りを追うのに忙しいって言うとるんよ……」

 

 要するに、暇だからブラブラしていたらたまたま我を見つけたから構って欲しいが為に来たということか……。

 あと、盾街の名前とユーノとか言うやつの名前が無かったように感じるが……まぁ、些細な事だろう。

 

「残念だがあいにく、我も用事があるので無理だ」

 

「そっか。……じゃあ、何も言わんから隣座ってもええか?」

 

「……邪魔をしないのであれば、好きにするがよい」

 

「せぇへんよ」

 

 それだけ言うと、子鴉は我の隣の椅子を引き、そこに車椅子で入ってきた。

 ……折角だ。こやつに少し聞いてみるとしよう。

 

「時に子鴉」

 

「んー?なんや?」

 

「貴様は、もしも貴様の家族や友人が危険に目にあっていたらどうする?持てる全ての力でもってその『火種』を消し飛ばす"砲"。それとも持てる全ての力でその『火の粉』を被る"傘"となるか」

 

「……どしたん突然?」

 

 こんな質問をした所為か、まるで頭が可愛そうな子を見るような目で見られて少し、ほんの少しだがムカッ腹が立つ。

 しかしこんな事で憤慨したとあっては器が知れると言うもの。耐えるべし。

 

「いいから、答えよ」

 

「……。私は、両方や」

 

「両方、とな」

 

「私は家族や友人が危険に晒されるっちゅうのは好かん。それでいて、やられっぱなしっちゅうのも嫌や。……せやから、私は両方かな」

 

「……そうか」

 

 その言葉には、嘘も偽りも無く、ただ心の底からの本心が見えた。

 

「それで、王様はこないなこと聞いて、どうしたいん?」

 

「……どうも、しない。……ありがとうな、子鴉」

 

 さぁ、始めるか。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 さてフェイトさんを探すかと会議室を出た瞬間にゴスラビア君に捕まった。それはもう、鼻息荒げてハァハァと。

 

「君を待ってたんだよ。あおな君」

 

 何事かと引いてたら告白されたので丁重に顔面をぶん殴り六歩引いてみる。

 

「い、いきなり何をするんだ!」

 

「いやぁ、流石に鼻息が少しハッスルしている人に近付かれるとつい脊髄反射で拳が出ちゃうと言いますか」

 

 フェイトさんがするならまだしも、いや、そもそもフェイトさんが鼻息荒げる事なんてあるんだろうか。

 ……鼻息を荒げるのはフェイトさんではなく俺の方じゃないか。そう考えるとそんな俺を気持ち悪いとも言わず笑顔で迎えてくれるフェイトさんマジエンジェル。

 なんだろうか、自分がここまで変態チックなのかと少し悲しくなった。

 ……だからだろうか、フェイトさんに視線逸らされたのは。幻滅されたのかな……。死にたい。

 

「……今の一瞬で物凄い百面相をしたね、君。そんな悲しそうな顔をされたら責めるに責められないよ」

 

「それで、ご用事はなんですか?ゴスラビア君」

 

「そうそう。用事なんだけど…………って待って今君僕の名前なんてった?」

 

「ゴスラビア君にゴスラビア君って言ったらダメなんですか?」

 

「僕の名前はユーノ・スクライアだからね?」

 

 似たようなもんだからそれくらい許容してくれてもいいのになぁ……。

 

「それで、用事ってなんです?」

 

「あぁ……それだけど君の持ってるフライパンについてだ」

 

 フライパン?あぁ、あのフライパンの事か。とりあえずユニコーン(仮)としとこう。未来でもそうらしいし。

 

「でも今は持ってませんよ?」

 

「でもそのフライパン、ワープするよね?」

 

「気分によって来るか来ないか分かんないので知らないです」

 

「気分だって!?それはますますすごいじゃないか!」

 

 なんだこいつ。




~その頃のなのはさん~

(問いたださなくちゃあおな君のこと)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ネタに肉付けしてたらなんか曲がってしまったりしてたのでこ削ぎ落としてまたつけ直してました。

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第64話『もう一人の僕!』

とりあえず資料としてACVDを詰みながらやっていたり、FGOのイベント後半のヤル気が無くなりつつもやっていたら遅くなりました。


「フライパン、呼んでも来ませんよ?今は機嫌が悪いそうなんで」

 

 先程から何度か呼び掛けても反応がない。どうやら死兆星に導かれたか、御機嫌の角度が傾いてるかのどちらかだろう。

 

「そのフライパンは本当にロストロギアじゃないんだよね?」

 

 だからロストロギアってなんだよ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第64話『もう一人の僕!』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ロストロギアって言うのは……そうだな、君達で言うところのオーパーツみたいな物なんだけど、多くは現存技術じゃ絶対に無理ってほどの高度な技術で造られた物で、使い方次第で全次元を吹っ飛ばすかも知れない程の危険な物から、果ては無害な虹とか出たりする宝玉みたいな物の総称、かな」

 

 あのユニコーンがロストロギア……。ありえねぇな。ここ最近喋るデバイスとかよく見るし、それと同じ感じだろうさ。フェイトさんの『バルディッシュ』だって喋るし高町の『レイジング・ハート』だって喋る。

 ほら、何も問題ない(ワープ&付喪神であることから目をそらしながら)。

 

「そうだな……。君の近くのロストロギアって言うと、『闇の書』とか、そうだね。あれ、ここ最近までSS級だったし」

 

「そうなんですか。そりゃ魔力を文字に出来るんですから、それはそうですよね」

 

「ねぇ君変なところで納得してない?」

 

 そうかなぁ……。

 

「いやぁ、あんまりピンと来ないんですよね」

 

「あー……そりゃ、あんなロストロギア(魔導書)の宝庫で過ごしてきたんだからそうもなっちゃうか……じゃあ、これとかどうだ!」

 

 さりげなく実家の本屋をバカにされた気がするが、ここはスルーしといてやる。今日の俺が紳士的で良かったな。

 さて、ゴスラビア君もといスクライア君が見せてくれたのは直方体の青い結晶。

 

「素直な名前だけど転移結晶って言うんだ。効果は自分が拠点としている所へのテレポートだね。遺跡で見つかった時は巨大な結晶体でね、それを切り出したものなんだ。何がすごいってこれ、何度使っても無くならないんだ!」

 

「ふーん……」

 

「ふーんって、そんな興味ないの!?君は曖昧な物よりも実用的な物に目が向くって思ったんだけどなぁ……」

 

 正直、そんな話をされてもふーんだけでしかすませられない。フェイトさんの為になるようなロストロギアがあるなら話はまた180度ぐるりと変わるんだが、そんなモノは無さそうだ。

 だが、転移か……。そういや、俺の家、大丈夫かなぁ。本屋の方は八売さんに任せたが……。家はボロボロのままなんじゃ……?家がボロボロ=フェイトさんとの思い出の品が……。

 

「ちょいとその結晶使ってもいいですか?家の事が気になるんです」

 

「え?あぁ、うん。………なんて言うわけ無いからね?これは僕にとっても大切な物なんだk「家のフライパンもしかしたら壊れてるかもだから見に行かないと」……それは大変だ。今すぐに行かなくちゃ」

 

 そうと決まれば話は早い。スクライア君……ええぃ長い!ユーノ君から結晶を引ったくるように受け取り………

 

「あの、これどうやって発動するんですか?」

 

「君がその結晶を持って魔力を込めればそれだけで発動するよ」

 

 魔力を込めろとな?

 ふむ。

 

「僕は君の肩に手を置いとく。そうすれば君と一緒に君の家に転移出来るから。……ところで、なんで君はさっきから力んでいるんだい?」

 

「いやぁ、力を込めれば魔力が出るかなぁって」

 

「そんな事は無いと思……あ、そう言えば君、リンカーコアが無いんだったね。じゃあこうしよう」

 

 ユーノ君が行ったのは、まるでグラサン金髪の目を潰す呪文を唱えるかのような体勢。……フェイトさんとやりたかったんですがねぇ……。

 

「そんなジト目で見ないでくれるかな。仕方ないんだよ。……とりあえず、僕が魔力を込めるから君は君の拠点を思ってくれればいい」

 

 なんだ、それでいいのか。というか早く行って確認しないと。いつまでもユーノ君と手を握った状態だといつ勘違いされてもおかしくない。

 

「それじゃ、行くy「バルス!」

 

 転移結晶が輝くと、周りのメカメカしかった景色が一変しだいたい三日ぶりくらいの我が家が目の前に姿を表した。約72時間ぶりの我が家には傷ひとつなく、あの時(VS金髪娘の時)に誰かが結界を張っていてくれたらしい。

 ……というか、この転移結晶まじですごいな。フェイトさんにプレゼントすれば、喜んでくれるかも。あれならうちの本屋の本をいくらかユーノ君に譲ればこの結晶が貰えるかもしれん。とりあえず頭の片隅にでも置いておこう。

 さぁ家に入ろうと一歩を踏み出すとユーノ君が唐突に手を出して俺の動きを制する。それが運悪く俺の喉辺りにダイレクトヒット。……喉仏が出ていれば即死だった。

 

「……あおな。少し下がってくれるかい?」

 

 おうなんだとコラ。ここは俺の実家だぞオラ。

 唐突にユーノ君にケンカを売られるとは思わなんだ。これはあれか?『ころしてでもうばいとる!』って奴かい?

 

「そんなに額に青筋を浮かべないでくれ。……一つ尋ねるけど、今君の家には誰もいない筈なんだよね?」

 

 ……そうさねぇ。フライパンを除けば、確かに誰もいねぇや。

 

「そうですが……。それがなにか?」

 

「……それなら、良かった」

 

 疑問符を出すと同時に詳しく聞こうと肩を掴むと、我が家の扉がこちら目掛けて吹っ飛んできた。

 不意というか、意表というか、あるわけがない、あるいは有り得ないと思ってたからか、反応が間に合わない。

 だけど

 

「ふんっ!」

 

 ユーノ君は違ったみたいだ。俺よりも半歩前に身を乗り出し緑色で円形の魔法陣を前面に展開した。

 我が家の扉はユーノ君の魔法陣にぶつかり木屑と化す。

 一言二言言ってやりたいが守って貰った手前何も言えない。

 

「大丈夫かい?あおな」

 

「ええ、おかげさまで怪我はありません。ありがとうございます」

 

 にしても、扉が内側から蹴破られるなんて穏やかじゃないな。

 

 

「さっきまで実家にいた筈なんですが……気付けば見知らぬ家にいた……。つまり、あんたらの仕業と考えてもいいんですよね?なぁ」

 

 

 扉の無くなった我が家から出てきたのは毎朝鏡の前でよく見る顔だった。

 

「……って、よく見りゃオレが目の前にいますね。何がなんだか」

 

「それはこちらの質問ですよ。というか、本当に俺ですか?ほら、同じ顔は二つ三つあるといいますし」

 

 だがしかし、見れば見るほど鏡見てる感覚だコレ!って感想しか出ない。……大丈夫かなぁ、ドッペルゲンガーの類いだったら泣くぞおい。

 

「……まぁいいや。例え相手がお前(オレ)だとしても、手は抜きません。殺します」

 

 そして彼が取り出したるはフライパン(黒&普通)。

 やっぱり俺じゃ無いじゃないか!

 

「まさか……転移に巻き込まれた?……そんな事があるなんて……」

 

 ユーノ君はぶつぶつ何か言ってるが、これは突き飛ばしたりしてこの場所から撤退させて応援を読んできて貰うべきだろうか。

 幸い、あいつのターゲットは俺に向いてるっぽいし。

 

「……けっ」

 

 先に動いたのはもう一人の俺だった。顔を(・ ・)こちらに向けたまま(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)、ユーノ君の方へと駆け出す。

 端から見たらすごい気持ち悪い顔の角度だが、そんな感想出してたらユーノ君が危ない。

 

「『ストラグルバインド』!」

 

 ユーノ君をアヴドゥルよろしく殴り飛ばそうとするもその前に俺のような何かが縄で拘束された。

 周りから見れば勘違いされるような光景けど今は気にしないでおこう。……どうかフェイトさんが今ここに来ませんように。

 

 とりあえず、速度は殺せなかったので拳がそのままユーノ君に当たってしまったが、ちゃんと謝ってはおいた。だってそんな魔法があるなんて知らなかったんだもん。




~その頃のクロノ君~

(また盾街が転移しただとぉ!?)


◆◇◆◇◆◇


無理矢理感が多々ありますが、ようやく物語が進みました。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第65話『空白な思考放棄』

携帯の、勝手に再起動(一日に多くて6回)、怖いでしょう……。


そう言えば、FGO六章始まりましたね。
最初はちょっときついかも知れませんが、なんだかんだ言って慣れるもんです。


 とりあえず、一応もう一人の俺はユーノ君が見張っててくれるというので、この家に来た目的であるユニコーンを取りに一旦家に入る。

 家の中は特に何も変わっておらず、彼が言った『突然転移させたれた』ってのもあながち間違いじゃないのかもしれない。……なんというか、自分を信じられないのかって突っ込まれそうな気がするが、内面ならともかく外面にあるあれは信じられそうにない。

 さて、件のフライパンであるユニコーンを見つけるといつものようにフライパンを入れる所にしまってあった。うん、普通に寝てんなこれ。

 なにも言わずユニコーンを手に取り、家から出る。扉が無いのは不便確実不用心きわまりないのでとりあえずトイレの扉を外してつけておく。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第65話『空白な思考放棄』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「お待たせしました。何もないようでしたらいいんですが、なんかありましたか?」

 

「用事、終わったんだね。うん。こっちは何も無かったよ」

 

 そう言えば、俺らしき奴を戒めてるユーノ君のバインドだが、ストラグルバインドって名前らしく、その本人にかかったバフ(強化状態)を解除する効能があるそうだ。魔力で体を構成してるしゅてるんとかにも効果的らしい。

 

「あぁ、とりあえず家の中にお茶入れたコップ置いといたんで飲んできて下さい。あいつの見張り変わります」

 

「ありがとう。あおな」

 

 ユーノ君の言葉を聞いて、縄に縛られ項垂れてる俺擬きの方へ目を向ける。(ちなみに奴さんのフライパンはユーノ君が持ってる)ジョジョ第7部を思い出しながら一定の距離を保ちつつ観察するが、やっぱり見れば見るほど俺と相違ない。

 あれだろうか、ヴィヴィオちゃん達みたく、これもアミタさんやキリエさんの時空移動の所為なのか。

 だけど、あれは未来からこちらに来たって話だし、もしかするとやっぱり平行世界からいらっしゃったとか……?それこそどこかにヴァレンタイン大統領がいて連れてきたとか?

 だが仮に連れてきたとしても需要が無いんだよなぁ……。

 もしも、これがフェイトさんだったらどうなってただろう。

 

「……なぁ、そこのオレに聞きますけど」

 

 フェイトさんが増えたとする。まず嬉しいって感情が出てくる。そこはいい。

 だけど、それは俺の知らないフェイトさんであって俺の愛するフェイトさんじゃない。助けてと言われなくても助けるけれど、俺の愛は俺の愛しているフェイトさんにのみ向けられる。仮に違うフェイトさんが現れても多分それは変わらないと信じたい。

 

「話聞かねぇなぁやっぱ。まぁいいです。そのまま聞いてください」

 

 やっぱ、俺フェイトさん大好きで、愛してる。独り善がりだなんだ言われてもそれは曲げない。フェイトさんに言われれば曲げるかもだけど。

 

こっち(この世界)にも、フェイトさんはいるんですよね?」

 

 ん?なんでフェイトさんを知って?しかもこっちってこたぁ……やっぱり別の世界の俺なんかなぁ。

 というか、別の世界だとしても俺を魅了するフェイトさんマジフェイトさん。

 

「その反応……やっぱいるんだ。なら、教えてくれません?」

 

「何故ですか?必要は無いと思いますが」

 

「ありますよ。あるんですよ。会う必要が。好きだから、大好きだから、恋してるから、愛してるから、心を奪われたから、――――だから、誰とも分からねぇ馬の骨には奪われたくねぇんですよ。例え世界線が違おうがフェイトさんはフェイトさんだ。なにも変わりはありません」

 

 急に饒舌になったことに軽く引くが、恐らく俺も端から見たらこんな感じなんだろう。だが、それがどうした関係ない。愛してるんだから仕方ないとまでは言わないが、フェイトさんの迷惑にならないくらいにしとかないと本気で嫌われる。

 

「フェイトさんは確かにフェイトさんでしょうが、俺ならともかくフェイトさんは貴方を知らないでしょ」

 

「あー……。こっちの俺が正気を保ってるってことは……フェイトさんは、ふむ」

 

 おうこら話無視すんなや。

 

「やっぱり、会う必要が出来ましたよ」

 

 やっぱコイツなんも聞いてねぇや。ただまぁ、フェイトさんの事に対して盲目になるのは仕方ないよ、うん。実際初めてフェイトさんと出会った時だって俺もそうなったんだし。

 

 

「こっちの世界だと、どうやらオレ(盾街 あおな)はそれほど警戒されてないんだ。なら充分フェイトさんを殺sぶぐっ!」

 

 

 言葉が出るより先に足が出てた。しかも脛の部分が歯に当たったから結構痛いが、正直そんなこたどうだっていい。

 奴が吹っ飛んでコンクリの壁に頭を打ったとか、本当にどうでもいい。

 

「……てめぇ。今なんて言いやがりましたか?フェイトさんを、どうすると?」

 

「ぶ、が……。ころすって言ったんですが?なにか」

 

 悪びれなく俺と同じ声で正気を疑うような事をほざきやがった。

 

「ふざけるのはいい加減にしてくださいよ。そもそもあんたはこの世界の人間じゃねぇだろが」

 

 ユーノ君のバインドを引っ張り、こちらへ引き寄せる。

 

「なんで殺す必要があんだよ。おい。てめぇがそれをする意味がわかんねぇよ!」

 

 許せなかった。なによりも自分と同じ顔立ちの奴にそう言われるのが嫌だった。

 

「意味?ありますよ……たっぷりとね!」

 

「ぐぁッ!?」

 

 顔を近付けていたからか、鼻っ面に頭突きを食らう。目の前が一瞬真っ暗になり、その後鈍い痛みが顔面に広がり鼻から暖かい液体が流れる。

 

「好きだからこそ、だ!好きだからこそずっと手元に置いておきたいんだよ!オレの想いを知りながらアイツを選んだフェイトさんをオレは絶対に許せないんですよ!だからそのままのフェイトさんと一生一緒に過ごす為にやるんだ!」

 

 それだけ叫ぶとそいつは簡単にバインドを破り、右手を上に突き出した。すると家の中からナニかをぶつけるような音が響く。

 乱雑に開けられた扉の中から黒いフライパンが出てきた。必死にそれを抑えようとしているユーノ君と共に。

 

「邪魔です」

 

 ユーノ君に加勢しようにもフライパンが飛び回る所為か狙いがつけられない……!

 だが、フライパンは奴を通り過ぎる。と同時に奴がフライパンの柄を握るユーノ君の土手っ腹にアッパーを叩き込んだ。鈍い音と共にユーノ君が吹っ飛ぶ。

 俺はユニコーンを叩き起こし、ユーノ君の方に投げる。ユニコーンは軽くえづくユーノ君を優しくキャッチ。ひとまず安心。

 安心、は出来たが、はてさてどうやって奴を倒すか。

 倒さないとフェイトさんが危ないから確実に倒さなくちゃいけない。奴の実力がどの程度かは知らないが、やらなきゃフェイトさんも、俺も殺られる。

 その意図を知ってか知らずか、目の前の(盾街 あおな)はフライパンを赤熱させながら、

 

 

「さぁってと、第二ラウンドですよ。オレ(盾街 あおな)

 

 こちらを睨んできた。




~その頃の徳三四姉妹次女~

(盾街君、まだ学校来ないのかな……。姉さんぶちギレてるけど)


◆◇◆◇◆◇◆◇


とりあえずD-HEROの強化が嬉しい今日この頃です。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第66話『王と盟主』

とりあえず、お久し振りです……。
実に4ヶ月ぶり、くらいですかね……。

携帯買い換えたりしてました……。


 ……あぁ、やはり慣れない事はやるもんじゃない。

 身体への負担が激しすぎる。隠せるが、流石に掌に走るノイズを見られでもすれば言い逃れは出来ん。

 もしこのノイズがレヴィやシュテルはおろか、あやつら(子鴉ども)にバレでもすれば、我がこうした意味が無くなる。……だが、もしもバレれば。

 ……止めてくれるだろうか。殴ってでも、しがみついてでも、止めてくれるだろうか。

 正直、行きたくない。死にたくない。やりたくない。止めてほしい。だが、誰かがやらねばならぬこと。

 なれば我が行くのは当然のこと。

 

 王であるからな!

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第66話『王と盟主』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 『U-D』はすぐに見つかった。

 白かった部分はどす黒い赤に染まっていたが、『U-D』に相違なかった。

 一度取り込まれたおかげか、再び一つになったおかげか、居場所は簡単に割り出せた。

 次いでにレヴィやシュテルめらがこちらに来ないようにとジャミングも掛けておいた。だから今はこやつと我との一騎打ち、シュテル曰くタイマンというやつよ。

 

「久方ぶり、という訳ではあらぬが、あえて言うならば3日ぶりと言うところか。また会ったな『U-D』よ」

 

 まるで胎児のように丸まっている『U-D』に向かって声と杖を向けた。

 盟主であろうがなんだろうが関係ない。

 

「……でぃあーちぇ?本当にでぃあーちぇですか?……なにやらそんな気配がするのに、何故かそうでないような気がしますが……」

 

 『U-D』はゆっくりとした動作で起き上がる。

 ……なめられたものだ。どうやら、本当に我は敵として見なされてはいないらしい。

 

「我は我だ。他の誰でもないぞ!」

 

「すいません。……少し目が霞んでて、顔が見えないんですよ」

 

 よく見ればその姿に少しノイズが走っているように見える。ノイズと共に周囲の空間も歪む程の吐き気をも催す禍々しい魔力があるのも分かる。

 だが引かない。我は王だ。例え慕う者が二人だとしても王だ。

 

「そうか。それはそうだろうよ『U-D』。それだけの魔力を吸収したのだ。消化不良を起こしても仕方あるまいて」

 

「そうなんですね。じゃあこれからは少しずつ吸うことにします。……で、ディアーチェは何し(・ ・)に来たんですか?」

 

 来た……?違う。

 

「何を言う。来た、ではない。貴様を我が物とするために再び立ちはだかっただけのことよ!『アロンダイト』!」

 

 先手必勝とばかりに砲撃する。

 

「私が?貴女のモノに?貴女が私のモノになるのではなく?」

 

 やはり軽く弾かれる。ただでさえ、威力が下がって(・ ・ ・ ・)いるのだ。ここまでは予想通りだ。

 我がやる事はただ一つだ。近付いてワクチンを打ち込む。それだけでいい。それ以上の事はやらないし、元より出来ない。

 砲撃は弾かれた。なれば次だ!

 

「貫け『ドゥーム・ブリンガー』!」

 

 目の前に5本ほど漆黒の剣を展開し、一斉射出。

 こちらももちろんかき消される。が、この攻撃は元よりダメージを与える為のモノにあらず。当たれば煙幕、外れても爆風の身を隠し近づく為の攻撃。

 煙が『U-D』を囲んだ隙に死角に飛び込み背中に向かってワクチンをたっぷり込めたこの一撃を――!

 

 

 

「ご……がふ……」

 

 

 

 されど、虎の子の一撃は通らなかった。

 

「でぃあーちぇじゃ、無いんですね貴方。だってでぃあーちぇとは違う感覚があります」

 

 理由はすぐに明確に表された。

 いつぞやか、シュテル達を繋ぎ止めた釣り針が勢いを殺すように突き刺さり、更には腹部に深々と翼のような深紅の爪が貫通している。

 もし、我が人であったのなら、今頃血塗れであろう。

 

「我は……我だ。闇統べる王(ロード・ディアーチェ)だ……!」

 

 身体から力が抜けて行く。魔力が根こそぎ吸い取られていく。視力が霞み、『U-D』の顔がぼやける。

 だが、そんな状況でも口許には笑みが浮かぶ。

 

「偽物は消えなくちゃダメなんです。このまま、私の中に取り込まれて消えてく…………がっ!?あ、ぐ……なん、ですか、これは……」

 

 我ではなく、圧倒的な立場にあるはずの『U-D』の顔が苦痛に歪んで行く。

 それを見て、今、ようやく報われたような気がした。

 

「それはな、干渉制御ワクチンよ。貴様を滅ぼし救う為の手段だ。……全く、ようやく……効いてきおったか……。ククク、どうよ、我のリソースのほとんどを……ワクチンに……したこの一手!」

 

「そん……な……」

 

 砲撃も剣も、魔力が込もっていないのは当たり前だ。何故ならこの特攻をするために大部分をワクチンで絞め、魔力は絞りカスしか持ってきておらぬのだから。

 

()が欲しいか?……残念だったな。()は既にほとんどをシュテルとレヴィに与えてある!貴様が吸収するのは貴様にとって毒である(ワクチン)のみ!これが勝利の為の一手よ!」

 

 恨むような視線がこちらに向き、まるで熱いヤカンを触れたかのように我を振り落とす。

 頭から海へと落ちて行くが、不思議と……いや、当然の如く敗北感はない。あるのは圧倒的に勝利したのだという高揚感だ。

 これで、やるべきことはやった。……もう、目が見えない。予想はしていたが、消耗が激しすぎる。一度、シャットダウンするとしよう。後は……頼むぞシュテル、レヴィ(我が臣下)……。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 落ちてきた我らが王をレヴィと共にそっと受け止める。

 全く……王は本当に水臭い。少しは私達を頼ってくれても良かったのに。

 私達は貴女が思っている程弱くはありませんよ。

 

 一番最初に気付いたのは、以外にもレヴィでした。

 唐突に『何か嫌な予感がする!』と叫ぶと真っ先にアースラの管制室へと向かい、王が抜け出し危険だと言うことをアースラ全員に大声で放送しました。

 探してみれば本当に王はどこにもおらず、見つかったのは"探せない"という妙な空間のみ。

 レヴィを先頭に私の恋敵(フェイト・テスタロッサ)達と急いで行ってみれば、我が王がまっ逆さまに海へと落ちている最中でした。

 

 受け止めた王の身体(魔力)は既に尽きかけている状態ですが、一命はヴォルケンリッターのシャマルさんのおかげでなんとか取り留める事が出来ました。

 だとしても、理のマテリアルとして、貴女の臣下として不甲斐ない私をお許し下さい、我が王よ。

 

 見上げた先には苦しみ悶えるシステム『U-D』(砕け得ぬ闇)

 

 

 

「さぁ、『砕け得ぬ闇』よ。砕かれる準備は充分ですか?」

 

 さて、王が作ってくれたこの好機。決して逃してたまるものですか。




~その頃のフェイトさん~

(私、この戦いが終わったらあおなにちゃんと答えるんだ!!)


◆◇◆◇◆◇◆◇


携帯買い換えてようやく再起動の恐怖に怯えずに生活できます……!


感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第67話『亡霊は暗黒にハウス』

話が交互しててすいません。


 そも赤熱させるってのはなんだか単語や言葉がおかしい気がするが、事実真っ赤になってるフライパンが目の前にあるんだから仕方ない。

 落ちてきた木の欠片(俺の家の欠片)が燃えてる所からやっぱ熱いんだなとは思った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第67話『亡霊は暗黒にハウス』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、俺はユニコーンを構え奴の方を向く。

 今まで自分より強い奴には何回か出会ってるし、だいたい戦ってなんだかんだ勝ったりしてるから自信はあるにはある。

 しかも今回は相手が俺と同じ顔の同じ声だってんだからまず最初に慢心してしまうのが俺の駄目な所だったんだと思う。

 未来から来たあいつらの言葉をすっかり忘れて対峙した時点で既に俺は負けてたんだ。

 

「るぁぁぁぁ!」

 

 初手から全力でぶちかませば何とかなるだろうと、そう思ってユニコーンを振りかぶっていたら、いつの間にか地面が目の前にあった。

 

「ぁ?」

 

 地面との熱烈なベーゼ。普段から思ってたが、地面は俺と接吻する時は緊張するみたいだ。証拠にくっそ硬い。

 

「これが、オレぇ?……冗談はよしてくださいよ。こんな簡単に膝つくとか」

 

 上から煽りが聞こえてくる。

 この時になってようやくチーム未来達がギリギリだったってのを思い出す。

 これは、逃げて援軍を呼ぶ方が得策なんだろうが、フェイトさんに危害が加わる可能性があるので悪即斬の名の元に即却下。

 とりあえず、直ぐ様立ち上がって距離を取り、土手っ腹アッパーで絶賛気絶中のユーノ君の元へ。ユーノ君の頬を五~六回ほどひっぱたいて起こす。

 

「ユーノ君!とりあえず俺が前線に出ますから後衛からのバフ+援軍の要請を頼めますか?……あ、呼ぶのは未来組をお願いしますね。フェイトさんはどうやらアイツに狙われてるようなんで呼ばないでいただければありがたいです」

 

「いてて……。それは構わないけど……本当に大丈夫なのかい?」

 

 何に対してかは知らんが、頭は大丈夫だと答えとく。

 

「まぁ何とかします」

 

 する、じゃない。しなきゃならない。

 

「とりあえず、五層の防御術式はかけておくけど、無茶はしないでよ?」

 

「分かってます……よ!」

 

 会話の途中に攻撃するのは卑怯だからやめようね!

 ユーノ君との会話の最中に目の前に唐突に現れて、現れた瞬間にはフライパンを振り下ろしてるんだもん。ビビるなって言われても無理だ。

 

「こそこそと、作戦会議は終わりましたか?」

 

「たっぷり出来ましたよ。お陰さまでね」

 

 にしても、こいつなんて馬鹿力なんだ。足がコンクリの地面にめり込んでるぜ。

 ユーノ君の防御術式が無ければ骨折だった。

 

「ふん!」

 

 おぉっと!盾街君、蹴られて吹っ飛ばされたぁ!

 二転三転でんぐり返しの逆バージョン。くるりと立ち上がれば胸に違和感肋骨骨折。

 ユーノ君の術式が脆いって訳じゃあ無いだろうから……純粋火力が高いって事か。ふむ、防御術式の上からこれとは……NO防御なら死んでたな今の。

 ……なんかこれ、リインさんの時とは違うヤバさを感じる。

 マジで殺しに来てるぞこれ……。

 

「何ですか?その顔。今ようやくこれが一方的な殺戮だって理解したような顔ですが」

 

 向こうからゆっくりとした足取りでこちらに向かってくる()。その様は余裕そのものだ。

 さて、本当にどうするか。策は一応ある。けれど、

 

《やるぞ。主》

 

 そうだそういやこのユニコーン考えてること分かるんだっけか。

 ……本当にいいのか?やっても。

 

《構わん。ここで死ぬるよりはマシじゃよ》

 

 おし。ならやるぞ。

 再び構え、先程と同じようにフライパンを振りかぶって走りだし、奴にあと少しって所で

 

 

 

 

 

 振りかぶっていたユニコーンを上に放り投げる。

 

 

 

 

 

「!?」

 

 やっぱり、唯一といっていい武器(?)を手放すことが予想外なのか、奴さん面食らった顔をしながら俺から目を離した。

 そりゃそうだろうよ。だってこのフライパンが無ければどうやってあいつの攻撃から俺の身を守るのかってな。

 ユーノ君の防御術式は抜かれるわ俺の回避速度だって間に合わないわ。たった一つの防御手段、フライパンの異常なまでの防御速度、硬度を捨てたんだ。そりゃ目を疑うし俺の脳みそだって疑うさ。

 ただなにが悲しいってここまでしないと隙が作れねぇってのがなぁ。俺ってばほんと弱すぎだ。

 今度高町の士郎さんにでも頼んで鍛えて貰おうかしら。

 ――さて

 

「おらよぉ!」

 

 左拳でもって顔面狙い一方通行!通らば満足避けられりゃ次ぃ!

 

「ぐっ!」

 

 攻撃に気付かれて真っ黒なフライパンで防御体制を取られる……が、ここまでは予想通り。

 左手はそのままにフライパンへ突撃、このままなら防がれる、ので、右足で踏み込んで右拳で腹部へアッパーだおらぁ!

 

「読めないとでも思ったかよ、オレ(盾街あおな)!」

 

 奴はとっさに左腕で俺の拳を受けようとしてる。が、

 

「それもまた読んでるんですよねぇ!頼むぜユニコォォォン!」

 

《任せろ!》

 

 空から降ってくるのは赤熱したフライパン(ユニコーン)

 

「なっ!?」

 

 そのままユニコーンの赤熱した面に向かって拳を突き進ます。拳の面とユニコーンの面がぶつかった瞬間、肉の焼けるような音がした。

 痛みがあった。それ以上に熱かった。

 だが、その程度だ。関係ないね。

 

「おらぁぁ!」

 

 拳に赤熱したユニコーンを纏ったまま腹部に突撃する。

 

「――!!??」

 

 声にならない悲鳴が聞こえた。

 俺と同じ声だったからもしかしたら、それは俺のだったのかも知れないが、ただこれだけは言える。

 俺は今、赤熱したフライパンを腕に纏って奴の胃袋を括弧物理で掴んでるって。

 

「何を……してやがる!お前は腕がいらないのか!」

 

「再起不能になる程度で何をガタガタうるせぇ事を言ってるんですかねぇ!こちとらそんな覚悟はもうできてるんですよ!」

 

 思考の4分1は痛い熱いと考える中、ふといつまで胃袋を掴んでいればいいのかと頭に浮かんだ。ちなみに4分の2はフェイトさん愛してるなのであしからず。

 考えてた策はここまでだ。あとはどうしようかと4分の1。

 このままコイツと一緒にこの世をさよならばいばいするってのはご遠慮したい。俺はウルトラマンタロウみたく不死身じゃないのであっさりあの世へ逝くことになるだろう。

 だからと言ってこのままの状態も良くない。

 チラリともう一人の俺の顔をみる。口から吐き出す血も残ってないように見受けられるし、手に握っていたフライパンを落とすほど。これなら、後でくる未来組と囲んで殴れば勝てそうだ。

 今、俺の右腕はどうなってるか分からない。焦げて炭になってるのかも知れないし、溶けて無くなってるのかも知れない。

 

 だから、なんだ。

 

 フェイトさんを守るための名誉の負傷だ。受け入れるさ。

 そうして俺は最後の力を込めて奴を蹴る。

 それと同時に奴の身体は後ろに吹っ飛び、俺は仰向けに倒れた。ユーノ君が身体能力を強化しといてくれたおかげなんんろうか、力は出た。

 

「あはは……。これ、すごい事になってますね……」

 

 どうなってるかと右腕みれば、そこには肘から先がユニコーンの柄と融合してる姿だった。

 

《……あの高熱の中じゃ。すまんかった》

 

 どうってこたぁない。生きてるんだし。

 

《お主は前向きなんじゃな……》

 

 生きてればフェイトさんに会えるんだ。死ななければ安いもんだ。

 

「あおな!未来組の半分が来れ……って大丈夫かい!?」

 

「あぁ、来てくれるんですね、よかったです……」

 

 さってと。ユーノ君に肩をかしてもらいつつ、立ち上がる。どうやら応援に来れるのは未来組の半分らしいが、まぁ、来てくれるだけいいや。

 

 

 そして、奴を見る。

 身体に空いた穴から煙を上げながら膝をつく()を。




~その頃のヴィヴィオちゃん~

(まさか……パパの腕ってこの時に……!?)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


よかれと思って右腕を飛ばしました!
…………すいません。
いやその、構想自体はかなり前からありまして……。
多分、強化にはなると思いますので……。

あと、要望があれば真っ黒なフライパンを持ってきた方のあおな君の話も書こうかなとは思ってます。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。


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第68話『とてもだいすきなひと』

ちょっとくらい、投稿してもバレへんやろ……。





いや、その……久々過ぎて文章が大変な事になってまして……。
その……。はい。すいません……。


「パパ!その腕どうしたの!?大丈夫!?」

 

 パパと呼ぶなとゆうたのに。

 どうやら援軍というのはヴィヴィオちゃんと緑さんのようだ。結局名前はなんなの?アインハルト(仮)って事にしてるけど。

 視界が霞んで頭がふらふらして片手がぶっ飛んでバランスが取れないのを一般的には大丈夫とは言わず大惨事だと言うと思うんだけど。まぁでも、来てくれてありがたい。

 こっち()あっち(向こうの俺)も満身創痍でボロボロだ。

 今の内にトドメさしたいけどなぁ……。

 

「……あぁ、まじかよ……」

 

 そんな考えしてたら奴は再び立ち上がりやがった。

 足元はおぼついてないけども。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第68話『とてもだいすきなひと』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 正直な話、お互い部位破壊成功してる訳だし、それに向こうの方が被害でかく見えるから俺としてはもう二度と立ち上がって欲しくなかったんだけども、奴はその瞳に殺意を込めてその二本の足で立つ。

 

「……ははは。びっくりしたよ。おかしいなぁ。オレ、さ。頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って訓練したのによぉ!フェイトさんの隣に立つためにさぁ!」

 

 乾いた笑いが響いたかと思いきや砕けた地面の石ころを蹴飛ばして来た。

 文面にすればかわいいもんだけど、速度がね?速すぎる。

 

「ふっ!」

 

 それをヴィヴィオちゃんが弾いた。

 ……素手で。うーんそれ絶対いたいよね?

 

「……ハァ……ハァ……。ちくしょう……ちくしょうが!なんでオレには振り向いてくれないんだよ!あいつにばっかり微笑みかけるんだよ!」

 

 目の前の俺はわめき散らす。欲しいもんが買って貰えない子供、とまでは行かないが、その目にたっぷりの涙を浮かべて。

 

「何が違うってんだ!オレとあいつは!オレとお前は!一体どこが違うんだよ!お前に至ってはフェイトさんを愛してる所も顔も性格も声も同じなのに!同じ筈なのにィ!」

 

 同じ、かぁ……。そっかぁ……。同じかぁ……。

 俺はユーノ君に一言ありがとうと告げ、"俺"の目の前までふらふらと歩く。

 

「……なんだよ。お前、オレを笑いに来たのかよ」

 

 どうやらもう反撃とかそんな余裕は無さそうだ。まぁありゃここで俺殺されてるし?

 丁度いい。

 まず左手で拳を作ります。そんでそれを振りかぶります。

 後は振り下ろして殴るだけ。

 

「ぶぇ……」

 

 鈍い音が響き、目の前の"俺"は倒れた。卑怯とか罵られるかも知れないが、こうでもしないと怒りが収まらない。それに(こいつ)は話を聞かないから落ち着かせないといけないしな。

 

 

 

「まず一つあなたに言わないといけない事があります。

 

 

 

 ……お前俺の癖になんでフェイトさんの幸せを願ってねぇんだよ」

 

 

 

 こいつと殺りあってて一番に疑問に思ったのがこれだった。

 なぜ俺なのに自分の事しか考えてない行動をするのだろうか、何故こんなにも独りよがりなのか、と。

 

「フェイトさんがお前以外の奴を好きになったってそれはフェイトさんの意思で、自由なんだ。それを害していい権利なんざねぇだろうが!」

 

 久々に、まぁ最近はかなりの確率で頭に来る事が多いが、今回ばかりはマジで許せない事なので、口調が乱れに乱れる。

 

「……尽くして、来たんだぞオレは。フェイトさんの為に!」

 

「だから?選ばれなかったから殺そうとしたってか?バカじゃねぇか?それをフェイトさんが望んだってのか?『選ばなくてごめんなさい殺してください』って望んだのか?望むわけねぇだろうが!」

 

 俺だってフェイトさんの全部を知ってる訳じゃない。一面だけ知ってて、それを全てと思い込んでいるのかも知れない。

 だけど、だけども、俺はフェイトさんの優しさを知っている。はにかむような笑顔も、誰かの為に流す涙も、……自分を抑えすぎてる所も。

 

「俺とお前は決定的に違うんだよ!お前は自分の幸せしか望んでねぇんだよ!俺は、フェイトさんの事が全面的に大好きなんだ!だから例え俺はフェイトさんにフラれたとしても、拒絶されたとしても、……それこそ、殺されたとしても!フェイトさんの幸せを何よりも誰よりも願ってんだよ!」

 

 本当に、心から愛しているんだ。

 嫌いな部分なんて無い。無いけども、仮にあってもそこを含めて愛する。それが俺なんだ。

 

「……俺は、フェイトさんが好きなんですよ。この世の中の誰よりも。そんな好きな人が幸せそうに笑ってくれるのが、特に嬉しいんですよ……。だから、俺はそれをぶち壊そうとするお前が許せないんだ」

 

 いかん。一気に怒った所為か、頭がふらっふらする。

 ただここまで思いをぶちまけたんだ。流石に少しは答えてくれるといいんだが。

 

「は、ははは。ははははは……。そう、か。オレは……。足りて、無かったんだ……。愛が……一方通行、だったのか……まじかぁ……」

 

 空虚な笑いが出て、なにかを悟ったような顔……。言い過ぎたか?でもま、俺も頭の中纏まって無いのを思うまま吐き出して更にフェイトさんが愛しい気持ちが高まったよ。

 

「あーぁ。負けだ。完敗だよ。もう立つための力も無いですよ……」

 

 倒れた姿のまま仰向けに寝転がった。どうや、本当に大丈夫そうだ。

 そう思うと俺も力が抜けたのか、足が力を手放してへにゃへにゃと地面にうつ伏せで崩れ落ちる。

 

「俺も……もう動けないですよ……」

 

「ははは……お前もですかぁ……」

 

 憑き物の取れたような声出しやがって。

 実際の所、俺がどれだけ気持ち悪いかを熱弁してたようなもんだし、それで憑き物が取れたってのはなんか釈然としないでもない。

 

「……一つ」

 

「ふぁひ?」

 

 まぁた口が仕事ほっぽってるよ。

 

「なんですかその返事……。まぁいいか。一つだけ約束してください」

 

 あ、もう金魚みたいにしか口動かせねぇ。ついに仕事放棄しやがった。

 

「……。ちゃんと、貴方が口にしたこと、守って下さいね。オレは守れなかった人を、ちゃんと大事にしてください」

 

 そんなこと、言われるまでも無いっての。

 俺はあの、海のそばの公園でフェイトさんに一目惚れしたその日から、全身全霊で幸せにするって心に決めてたんだからよ。

 

「その顔、自分の顔ながら腹立ちますけど、安心……しまし……た」

 

 その時、俺はどんな顔をしていたのだろうか。

 気になりはする、するけども、今はとてつもなく眠い。

 地面に倒れた時からもう割りと限界だった。右腕いてぇし体ズキズキするし、で、俺の意識は吸い込まれるように落ちた。

 

 

 

 

 

 一一その傍らに、主人の消えた真っ黒なフライパンを置いて。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 その日、ヴィヴィオ・テスタロッサは知った。

 自分の父親になる少年が、どうして右腕を失ったのか。

 

 その日、ユーノ・スクライアは知った。

 彼が選択を、感情をしくじればこうなる可能性があることを。

 

 その日、フェイト・テスタロッサ達はまだ知らない。

 大切な友人がひっそりと再び傷ついている事を。




~その頃の『U-D』~

(あ、あぁぁぁ。崩れる。私が、ワタシが、崩れる。駄目だ。ここで死んだら、また、また離ればなれになる……)


◆◇◆◇◆◇


超お久しぶりです。
生きてます。
死んでないです。
卒論がね……強敵なんですよ……。
就活がね……難敵なんです……。

前の携帯のリチウムイオン君がパンパンになっちゃいましてね……。
いや、本当に申し訳ないです……。


……感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回も出来ればよろしくお願いいたします……。


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