東方饅頭拾転録 【本編完結】 (みずしろオルカ)
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海原参護の日記 〇月

 日記形式って難しい。

 アルコール入ってるだけに余計に……。

 主人公は最強じゃありません。

 一般人よりは強いけど、原作キャラ相手だと分が悪いです。
 低級妖怪等はサシで戦える程度。

 一年間幻想郷で生活していましたが、原作キャラとの絡みは非常に少なく、知識がある主人公としては珍しいです。


○月×日

 

 初めましてだ。俺の名前は『海原 参護』

 今日この日から日記なるものを書いていこうと思う。

 それというのも、俺は今『東方project』という作品の世界にいる。

 幻想入りというやつだ。やりつくされている感じもあるが、俺の場合はそんなことは関係ない。

 

 俺は弱い。

 

 いや、こっちに来てから相当に鍛えたのと、元々親父が人外じみて強かったから俺も少し戦いの心得はあるけど、それにしたってここの世界の妖怪たちには敵わない。

 そんな俺がなんやかんやあってこの世界に来たわけだ。

 

 最初こそ混乱したが、今は下級妖怪なら一対一で勝てる程度の戦闘能力を利用して護衛をしたり、湖や川で魚を取ったり、無縁塚から物を取ってきたりして生活している。

 

 原作キャラ?

 慧音先生と薬売りに来る鈴仙さんぐらいしか交流ありませんよ。

 しかも、人里の会合での決まり事を知らせに来る時と、置き薬補充に来るぐらい。

 見事なくらいにビジネスライクだね。

 

 さて、なぜ今になって日記なんて始めようかと思ったかというと……。

 

 生首拾ったわ……。

 

 

 

○月△日

 

 昨日は端折りすぎた。

 正確には、川魚を取った帰りに、森の中で生首を見つけた。

 

 この世界じゃ珍しくない。

 妖怪に食い殺された人間の生首が転がってるなんて割と頻繁に有るからたちが悪い。

 この時も俺は埋葬しようと穴を掘り、埋めてあげようとした。

 

 顔を確認しようと持ち上げて、顔を確認した。

 

 目が合った。

 

 あの時の悲鳴は下手すれば周囲の妖怪も呼び寄せてしまうかもしれない。

 でも、仕方がないと思うんだ。死んでると思った生首と目が合って、なおかつ『ゆっくりしていってね!』などと叫ばれては、むしろ放り投げたり取り落としたりしなかったのは褒めてほしいぐらいだ。

 

 その後、この生首饅頭はれっきとした生物であり、人懐っこい性格であることが分かった。

 

 つか、森から自宅まで付いて来た。

 

 どうやら懐かれてしまったようで、俺の足元で犬や猫の様に体をこすり付けては、甘えるようにこちらを見るのだ。

 

 正直、こちらに来てからと言うもの、ビジネスライクな人付き合いしかなかったから、ついつい癒されて家に上げてしまった。

 

 今膝の上でスヤスヤと寝ている。

 

 東方projectの知識の中で、この容姿に当てはまるのはパチュリー・ノーレッジさんだ。

 しかし、原作の中でも上級の実力がある彼女があんな下級妖怪しかいないような森でこんな姿でいるはずもない。第一、彼女は紅魔館の大図書館から出ることはほとんど無いのだから。

 

 そこで別の知識だ。

 某動画投稿サイトではやっている存在。

 

 ゆっくりだ。

 

 この場合、ゆっくりパチュリーという事になるのだろう。

 何気に好きなキャラだったので嬉しいのだが、同時になんでゆっくりがいるのかが分からない。

 

 とりあえず、この子の生態を知らないといけない。

 明日にでも阿求様の所にお伺いに行こう。

 

 

 

○月□日

 

 今日は阿求様の所にこの『ゆっくりパチュリー』を連れて生態を調べてもらった。

 

 結果は微妙なところ。

 

 まんじゅう族ゆっくり妖怪

 

 という事しか分からない非常に珍しい妖怪の類なのだそうだ。

 害が無いようならそのまま一緒にいて生態を調査して報告してほしいと頼まれてしまった。

 

 今のところ、懐いてくれているようなので了解して、そのまま自宅へ戻った。

 

 しかし、次に気になるのが食事だ。

 

 この子は何を食べるのか?

 妖怪なら人間の血肉かとも思ったが、本人? は否定するように首を振る。

 

 いろいろ与えてみたが、結局人間とさほど変わらない食事をするようだ。

 量は茶碗半分ぐらいで十分らしい。

 

 食べた後はなぜか俺の布団の横で眠ってしまった。

 

 明日はさすがに仕事に行かないとまずい。

 

 

 

○月◇日

 

 今日は川魚と木の実の採取だ。

 下級妖怪に襲われたら守り切れる自信が無いので、ゆっくりは家に置いていくことにした。

 

 話したら、「留守は任せて!」って感じで鳴いていた。「むきゅー」だって、かわいいな。

 

 収穫としては上々。川魚は海の無い幻想郷では唯一の魚なのだが、なにぶん人里の外は戦闘力が無いと出歩くのは危険だ。

 

 だから俺の様なちょっと戦える一般ピーポーも稼いでいけるのだ。

 

 昨日のお礼に阿求様の家に魚をおすそ分けして、自分用のモノ以外は店に売る。

 上々の稼ぎになったが、これからは居候が増えたのでいろいろと入用になるだろう。

 

 明日はこれを使って居候の日用品を買わないといけない。

 

 幸い、ゆっくりパチュリーはオリジナルのパチュリーに近い思考をしているようで、留守の間家から出た気配もなく、本が大量に開かれていた。

 どうやってページをめくったりしていたか気になったが、一緒に暮らしていればそのうち分かるだろう。

 

 

 

○月☆日

 

 ゆっくりパチュリーは、どうやら警戒心があまりないのかもしれない。

 

 拾ってから今日で五日目だけど、懐き方が半端じゃない。

 

 胡坐をかいて書き物をしていると足に乗ってくるし、寝転がっていると近くまで来て体をすり寄せてくる。

 

 猫を飼うとこんな感じなのだろうか?

 

 今日は阿求様が訪ねてきてくれた。どうやらゆっくりパチュリーの状況が気になって見に来てくれたようだ。

 

 そういえば阿求様は妖怪や重要人物などのステータスや説明などを記録する仕事をされているようだ。

 

 だからゆっくりパチュリーという珍しい妖怪のデータが欲しいのだろう。今わかっているのは、人間が食べるものと同じものを食べられる、おそらく元の人物の性格にある程度似ていること、人懐っこいというか警戒心が非常に低く心配になるレベルであることを伝えた。

 

 阿求様はうれしそうに報告したことをメモして、上機嫌で帰って行った。

 

 どうやら依頼という形であったらしく、少しだけ依頼料を貰った。

 

 明日はこれでゆっくりパチュリーの小物を買いに行かなくちゃな。

 

 

 

○月И日

 

 ゆっくりパチュリーと書くと長いので、Yパチュリーとしようと思う。

 書く分の手間省きだ。

 

 今日はYパチュリーのための生活道具を買いに行った。

 

 と言っても、寝床のために小さめの布団セットを購入して、呉服店から厚めの生地を購入して裁縫で彼女に合わせた掛布団を作っただけ。

 他は家にある分で事足りる。

 

 後、地味な発見。

 Yパチュリーのさわり心地が非常にいい。

 

 手に吸い付くようなもっちりとした肌と、上質なクッションのような弾力。

 くすぐったいのか触れていると、プルプルと震える感触がたまらんのです。

 

 抱っこするのがひそかな楽しみです。

 

 

 

○月∀日

 

 やはり、Yパチュリーはパチュリー・ノーレッジの性格や能力を持っているようだ。

 

 今日、水瓶に井戸から運んだ水を溜めていると、水系の魔法を使って水瓶を満タンにしてくれた。

 

 『火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力』だったか? 他にも、炎系の魔法を使って釜戸に火を灯してくれたり、なぜか薪用の枯れ木を置いていた場所に木が増えていたりと、その力を俺の生活を助けるために使ってくれている。

 

 言葉で意思疎通はできないけど、行動で示してくれている。

 だけど、言葉は理解しているようで、俺が一方的に話しかけている図になるのだが、理解をして反応している。

 

 まぁ、一方的に話しかけている+揉みしだいている状況だ。

 

 昨日、水瓶の中身が少ないから汲みに行かなくてはならない、めんどくさいっと愚痴った為にYパチュリーが助けてくれたのだと思う。

 

 拾ってから今までの状況を読み直すと、

 

1.人語を理解するが、意思を伝えるのはジェスチャーか行動しかない。

2.食事は人とほぼ同じものを食べる。量は少ない。

3.その容姿の元となった人物の性格や能力を持っている。

4.非常に人懐っこく、警戒心が薄い。

5.触り心地がよく、触られることを好んでいるようだ。

6.移動はボールの様に弾んだり、ホバーしているように見えるが、魔法で飛んでいることもある。

 

 以上となる。

 

 阿求様に報告する内容としては十分だろう。

 

 

 




 主人公は阿求に様付けをします。

 これは、人里で名家であることと、主人公が里の外れとはいえ住居を構える事ができたのが彼女のおかげだからです。

 慧音は、里の外れに住んでいる主人公へ、村で決まったことを知らせることのできる数少ない人であることがきっかけで交流が少しある。

 鈴仙は、何でも屋の関係上怪我が多く、一人暮らしなので病気をしたら危険なため、主人公が置き薬を契約しているため、定期的に家に来ます。

 二人とも今回は登場しません。


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稗田阿求の日記 〇月

 勢いで同月同日別視点

 あっきゅんの日記です。



○月×日

 

 幻想郷縁起の編纂(へんさん)も今日の所は一段落ついた。

 家の者の話だと、今日は森の方からものすごい悲鳴が上がったらしい。

 

 男性のものだと言っていたが、里の誰かが妖怪に襲われたのだろうか?

 だとすれば、悲鳴を上げた本人は無事なのだろうか?

 

 今のところ行方不明の者の話は来ていないが、里の外れに住んでいる彼のこともある。

 一人暮らしをしている人たちへの確認をしなくては……。

 

 

○月△日

 

 今日、里の外れに住んでいる『海原 参護』さんが八百屋で目撃されたと報告を受けた。

 正直安堵している。

 

 彼は私が頼んで里の外れに住んでもらった経緯がある。

 慧音さん以外で妖怪に対応できる数少ない戦力でもあるし、村の周辺への警戒をしてもらうためにも彼を里外れに住まわせたのだ。

 

 里の警備という面での心配もあるけど、それ以上に無邪気にお礼を言っていた彼が死んでしまうということは心苦しいものがある。

 

 近いうちに、何かお礼をした方がいいのだろうか?

 

 

 

○月□日

 

 今日は参護さんが家を訪ねて来てくれた。

 

 珍しい妖怪を拾ったので、害が無いか・生態はどのようなものかを知りたかったらしい。

 だけど、残念ながら私の知識の中にも、過去の幻想郷縁起にも、『まんじゅう族ゆっくり妖怪』という記述のみで、生態も危険度も何も記されていなかった。

 

 非常に珍しい妖怪だ。

 

 彼が言うには二日程、家で生活を共にしたが人懐っこくて害が無いと思われるそうだ。

 昨日のお礼の件もあったので、正式にゆっくり妖怪の生態調査を依頼した。

 

 彼は快く引き受けてくれた。

 少しの罪悪感。

 

 彼を妖怪への壁のような扱いをしたのだから当然かもしれない。

 だというのに、私に様付けで敬ってくれるし、時々魚などの食材もおすそ分けしてくれる。

 

 ……うん、依頼料は多めに出してあげよう。

 

 

 

○月◇日

 

 今日、参護さんが川魚を持ってきてくれた。

 

 幻想郷で魚は川と湖にしかおらず、妖怪の脅威も相まって非常に高価だ。

 

 まだ、里の中で飼育できる家畜たちの方が値段が良心的だ。

 

 それをおすそ分けしてくれるのだ。本人はどうやら住む場所を提供してくれたことを感謝してくれているようだけど、私はそんな善意で彼を住まわせたわけじゃないから罪悪感がある。

 

 彼が来てから一年ぐらい経つけど、私の想像以上に里は平和になった。

 

 そもそも、人里へ来る妖怪は八雲紫が決めたルールを理解しない低級妖怪だ。それでも、戦闘力を持たない一般人には十分に脅威。

 彼があそこに住んでくれてから、妖怪の被害は目に見えて少なくなったのだから里の人間も感謝しているようだ。

 

 今は何でも屋と称して活動しているみたいだけど、キチンと暮らせているようで安心する。

 

 やっぱり、謝罪の意味も含めてしっかりとした対応をしなくてはならないだろう。

 

 明日、参護さんの家に行こう。

 

 

 

○月☆日

 

 参護さんの家に行ってきた。

 

 少々広い物件で、普通なら家族が住むような家に一人暮らし。

 それでも、縄を編んだり、障子の紙を張り替えたり、草履や下駄を作ったりと戦い以外でも仕事をしているようで、空いている部屋にはそれらの道具が置いてあった。

 

 私がお邪魔するとにこやかに応対してくれた。

 同居しているゆっくり妖怪も私に対して警戒することなく、座っている膝に体を()り寄せて来る。

 

 参護さんが言うには、食べるものは人間と同じで、元となった人物(この場合は紅魔館の魔女だが)に性格や行動が似ていること、心配になるぐらい警戒心が低いことが分かったことなのだそうだ。

 

 それをメモしながら、それとなく聞いてみた。

 雑談のようにして、罪悪感に痛む質問をしてみた。

 

「里の外れで妖怪の襲来もある場所に住まわされて恨んでいませんか?」

 

 その質問に、参護さんは

 

「いいえ、来たばかりの人間に住居を用意してくれたばかりか、里を守ることで住人から信用が得られやすいので助かっています。恨むなんてことはありませんよ」

 

 雑談の中での事だったので彼が覚えているかどうかわからないけど、少しだけ私の中の罪悪感が和らいでくれた、そんな気がした。

 

 この回答のうれしさと、珍しいゆっくり妖怪の情報が得られたので、少々奮発して依頼料を置いてきた。

 

 彼が良い人で良かった。

 

 

 

○月И日

 

 昨日のおかげか、今日一日気分がよかった。

 

 里の人たちにも、機嫌がいいと指摘されるぐらいだった。

 少し恥ずかしい。

 

 今日は、慧音さんの所に参護さんへ依頼をしていることとその内容を伝えました。

 

 里の中でも上位の実力者である彼女には、彼がしている妖怪の調査は私からの直々の依頼であること、すでに数日暮らしているが、犬猫よりも安全だと思われることを話した。

 

 慧音さんも理解を示してくれた。

 

 私の仕事である幻想郷縁起を完成させる一環と理解してくれたようだ。

 

 慧音さんはどうやら参護さんと少しばかり交流があるようで、彼なら大丈夫だろうと信頼しているようだった。

 

 この一年で彼も里に溶け込めているようで安心した。

 

 

 

○月∀日

 

 先日の情報をもとに、幻想郷縁起を編纂していた。

 

 ゆっくり妖怪の情報は随分と長い間追記されていなかったようで、編纂をする身としてはこれからここの部分が編纂することができるのはうれしい。

 

 定期的に参護さんの所に行って情報を貰うのと、私自身の目でゆっくり妖怪を観察させて貰おう。

 

 あの人懐っこいゆっくり妖怪と遊ぶのも悪くないと思う。

 

 ずっと、編纂していたので気晴らしに外に出る事も必要だ。

 

 明日にでも伺ってみようと思う。

 




 いかがだったでしょうか?

 かなり短くまとまっちゃいましたね。

 次はもっと文字数多く書きたいものです。


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海原参護の日記 △月

 今回は主人公の日記です。

 ちょっと、主人公の家族の設定と能力の設定を出しました。

 タグの追加をしておきますね。


△月×日

 

 今日も阿求様が来てくれた。

 

 前にまとめたゆっくり妖怪の特徴を渡した後、少しの間に阿求様と懇談(こんだん)をした。

 

 元々生活するのに余裕ある収入があって、最近は阿求様からいろいろお金を貰っているので、仕事の頻度も下げられる。

 家でやるタイプは続けているから、溜り気味の内職を消化するいい機会でもある。

 

 Yパチュリーを拾ってから阿求様とも友好な関係を築けていると思う。

 元々、原作知識はあっても、戦闘能力やら接点やら、挙句の果てには生活のために奔走してて中々原作キャラ達の友好度を上げられていなかった。

 

 仲良くなりたいと思いつつも、生き残るために里の人と交流して、住居を手に入れ、自分の持つ能力をフルに使ってお金と信頼を集めまくって今がある。

 

 その過程で阿求様にお世話になり、今も敬意は持っている。

 

 そういえば前に、危険な場所に住まわせたことを恨んでないか? という趣旨の話があった。

 俺としても思う所がなかったわけじゃなかったが、それでも家と信頼を得るための戦闘能力を示すことが彼女の判断で早まったのだ。

 

 誰が何と言おうと、俺は阿求様には感謝してもしきれないのだ。

 現代よりも、幻想郷の方が信用・信頼が生活にダイレクトに直結する。信用が無いと仕事が取れなくなるし、物も売ってもらえなくなる。

 もっとひどいと、里の敷地にすら居られなくなる可能性があるのだ。

 

 住居と里の人間の信用・信頼を手にするきっかけをくれた阿求様を恨むはずなどない。

 ありがとう、この言葉しか見つからない。

 

 

 

△月○日

 

 昨日の今日で、今度は慧音さんが来た。

 

 阿求様から連絡が行っていたようで、件のゆっくり妖怪を目で見て確認したいと言っていた。

 

 当人はお客さんに興味があったのか、玄関まで出てきてから土間に落ちていた。

 涙目になって、プルプル震えて、「むきゅー」って鳴いている姿に慧音さんも毒気が抜かれたような顔をしていた。

 

 まぁ、可愛いよね。あれ。

 

 危険性が無いか、凶暴性が無いか、里への脅威にならないかを探りに来たんだろうけど、おそらく食物連鎖的に下の方にいる妖怪なのだろう。

 

 正直な所、パンダ、コアラ、ナマケモノ。パッと思いつくのがこういう癒し系の動物だしね。

 

 慧音さんも、安心したようで少し談笑してから戻っていった。

 

 どうやら、定期的に危険性が無いか見に来ると言っていたけど、たぶんちょっとYパチュリーが気に入ったのかもしれない。

 

 彼女的には藤原妹紅さんのゆっくり妖怪がいれば引き取りたいと言い出しそうだ。

 まぁ、今の所Yパチュリーしかいないみたいだし、それとなく護衛依頼中にも探したりしているが、同族がいる様子が無い。

 

 本当に珍しいと阿求様が言っていたのは間違いじゃないようだ。

 

 

 

△月□日

 

 どうも、Yパチュリーは読書が好きなようだ。

 元のパチュリー・ノーレッジも『動かない大図書館』なんて呼ばれるぐらい、読書を好んでいる設定のはずだ。

 だけど、本人に会ったことが無いから断言はできない。

 

 それはさておき、今日はYパチュリーの読む本を揃えた。

 俺自身も本は読む方だけど、Yパチュリーも読むとなると、仕入れておきたかったのだ。

 

 仕入れはとりあえず十冊。

 

 ついでに内職の完成品を依頼人に渡して報酬を貰った。

 

 最近思うが、少々金運というか、全体的な運気が上がっている気がする。

 今まで疎遠気味だった原作キャラと接点が増えて、仕事も順調。一人暮らしにパートナーが増えて、さみしさがだいぶ和らいだ。

 

 Yパチュリーにあげていた飲み物の中では、紅茶が好きのようだ。なので茶葉から入れられるように一式そろえてみた。

 ……今度誰かに入れ方教えてもらおう。

 

 

 

△月×日

 

 今日は久々に長距離の護衛依頼が来た。

 

 いつもは里周辺の森や川が多いのだけど、今日は無縁塚までの護衛だった。

 どうやら、無縁塚に流れてくる外の道具が欲しいようだ。

 

 俺自身も片手間に探索と、ゆっくり妖怪の捜索をしてきた。

 

 結果としては、道具として頑丈な棒を一本手に入れた。

 俺は杖術を使って戦うので頑丈な棒はうれしい。

 

「突けば槍 払えば薙刀 持たば太刀 杖はかくにも 外れざりけり」

 

 という言葉が杖術の中にある。

 器用貧乏と親父や兄貴に言われたことがきっかけだったが、俺に一番合う武器に出会えた。

 

 今までは拾った棒切れを杖術の長さの120センチに加工して使っていたけど、何度も折れるし、全力で振るっても壊れてしまう。

 

 今回手に入れた棒は杖術用の規格をクリアしているモノの上、金属を複数編みこんでいる物のようで全力で振るうのも妖怪の一撃を避けるのも可能な丈夫さだ。

 

 帰りに妖怪に襲われたが、これのおかげで終始余裕をもって立ち回れた。

 俺の呼吸の仕方は特殊らしく、波紋という力を使える。

 それでも親父よりは弱いし、兄貴は天才クラスらしく、親父が言うには一族最強らしい。

 

 それはさておき、一匹の下級妖怪。

 帰り道で襲われたが、何とか撃退できた。

 

 おかげで、村からの護衛信頼性が上がったので良かった。

 

 

 

△月∀日

 

 今日朝起きたら、拾ってきた棒にYパチュリーが何やら術の様なものをかけていた。

 いたずらかと思ったが、どうやら強化してくれているようだった。

 

 頑丈でなおかつ打点にかかる圧力が上がるらしく威力も上がっている。

 

 昨日の護衛した人からお礼にと食料をたくさんもらった。

 

 話によると、昨日の下級妖怪は中級に片足突っ込んだような相手だったらしく、近々博麗の巫女に討伐を依頼する予定だったらしい。

 それを撃退できたということで、感謝してくれているそうだ。

 

 それを聞きつけて、阿求様と慧音さんが突撃してきた。

 

 なんでそんな無茶をしたのかとか、危険な所はできるだけ避けてくれとか、心配してくれているようだった。

 

 Yパチュリーも心配されて当然だとばかりに(うなず)いている。

 

 俺が悪いのだろうか?

 

 

 

△月☆日

 

 今日は阿求様と慧音さんからしっかり休むように言われて、強制的に自宅療養中。

 

 ダメージ自体はあったから仕方ないけど、強制療養はひどい。

 

 なぜか、鈴仙さんにまで話が行ったようで、今日は里に来る時と帰る時に一回ずつ看病していってくれた。

 なんというか、置き薬見に来るだけの家の人間の看病なんて逆に申し訳なかった。

 

 しっかりと謝ったら、気にしないで下さいと笑顔で言ってくれた。

 お仕事とはいえ、きれいな対応をしてくれる鈴仙さんに不覚にもキュンと来た。

 

 帰る時にお裾分けを渡して感謝の意を示した。

 

 Yパチュリーは張り切って家事をしてくれてた。

 魔法連発して調理とかびっくりした。

 

 卵粥おいしかったです。

 




 どうでしたでしょうか?

 別視点日記の予定は阿求・慧音の予定です。

 鈴仙は登場はしましたけど、まだ日記を書くには早いかなっと。

 書くときに抜粋して△月☆日の部分は入れたいと思っています。


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稗田阿求の日記 △月

 阿求の日記

 基本になる海原参護の日記が完成すれば早めに投稿できるんだけどなぁ。

 というわけでどうぞ。

 主人公の家族とか力が少し出てきます。


△月×日

 

 今日も参護さんの所にお邪魔した。

 

 ゆっくり妖怪のさらなる情報が手に入って、少し参護さんとお話をした。

 

 参護さんのご家族のこと、下級とはいえ妖怪を相手に戦える力のこと。

 道理でと、納得できるような部分と、驚きで思考停止しそうな部分と様々だった。

 

 参護さんのお父上は歴史の浅い魔術師で、その家の三番目の子供として生まれたそうだ。

 魔術師としての稼業は長男が継ぎ、次男は守り・支えたい人物が居るのだと旅立ったらしい。

 

 彼はそんな家族の中で育ち、特に次男の方は強さの桁が違うらしく、彼に鍛えられていたため今のような戦闘力を手に入れたのだそうだ。

 

 彼曰く、今の兄なら上級妖怪すら相手取れるはずだ。とのこと。

 少し大げさかと思ったけど、彼の持っている特殊な呼吸法から生まれる力。

 波紋の呼吸と本人は言っていたけど、その才能も桁が違うのだそうだ。

 

 元々、呼吸法で自然治癒力を増やし、傷を治して痛みを和らげるという技術がある。

 それを、戦いに特化させた人が波紋戦士というらしい。

 

 彼もまた波紋戦士の端くれなのだとか。

 

 幻想郷には無かった力だ。

 紅魔館の門番が気を操れるけど、それとも似て非なる力。

 

 少しだけ、その力を私の身体に流してもらったけど、暖かくてとても優しい気持ちになった。

 

 他人よりも身体の弱い私だけど不思議なことに疲労感や倦怠感が取れ、清々しい気分になれる。

 

 これは、また参護さんの家にお邪魔する理由が増えちゃいましたね。

 

 

 

△月○日

 

 昨日、参護さんが私に使ってくれた波紋の力が未だに身体の中に残ってくれている。

 

 身体の調子がとても良く、まるで羽があちこちに生えているかのような感覚。

 

 うっかり、編纂中に指先を切ってしまったのだけれど、数分もしないうちに傷がふさがって、気付いたら治っていた。

 

 波紋の力とはここまですごい力なのかと今日一日驚きっぱなしだった。

 

 試しに派手に動いてみたいと思ったけど、参護さんに調子がいいのは力が効いている間だけで、効果が切れれば過剰な負荷は筋肉痛になって返ってくると助言を受けた。

 

 うん、今日一日はおとなしく過ごすとしよう。

 

 

 

△月□日

 

 今日も気分爽快だった。

 

 だけど、波紋の力自体は効果が切れているようで、いつもの感覚だった。

 

 筋肉痛も無く、普通に気分爽快な一日だった。

 

 気分が良かったので街に出て散歩を楽しんでいたら、参護さんを見かけた。

 

 内職の完成品を店に卸して、本屋で何冊か本を購入していた。

 確か、ゆっくり妖怪は紅魔館の魔女の姿をしていた。だとすれば、あのゆっくり妖怪が好むのは本であると考えられる。

 近々、家から何冊か貸してあげようかな?

 

 参護さん自身も本は嫌いではないようだった。何度かお邪魔して、本棚に多くの本がおさめられているのを見ている。

 

 私も幻想郷縁起を編纂するにあたって多くの書物を読んでいるから、本の量はかなりのものがある。

 

 何冊か持っていくことにして、それはそうと里で見かけた参護さんは一年間でかなり馴染んでいると思う。

 

 彼はそれを私のおかげだと言ってくれたけど、そんなことはない。

 あの光景は彼の人徳だと思うし、彼じゃなかったらこんな風にならなかったと思う。だから、私のおかげではなく、彼の働きの結果だ。

 

 紅茶用のティーポット一式を購入したのを見て少し気になったが、紅茶が好きなのだろうか?

 

 

 

△月×日

 

 今日の私は少し機嫌が悪い。

 

 無縁塚まで物資の調達に出た人間が、最近この辺りで暴れまわっている妖怪に鉢合わせたと、夕方頃に家の者から報告を受けた。

 

 評価としては下級妖怪になるのだが、最近人間を襲っては凶暴化して、ほぼ中級妖怪と言ってもいいほどになってしまっていた。

 

 近々、霊夢さんに頼んで討伐してもらう予定だっただけに余計に驚いた。

 しかも、この商人の護衛に行っていたのが、参護さんだったというのだから二重に驚きだ。

 

 商人曰く、帰りに件の妖怪に出会い、護衛である参護さんが杖術で撃退。かなり、戦いが長引いて今の時間帯になったということだった。

 

 彼の戦闘を見ていた商人から戦闘の様子を一部始終報告を受けた。

 

 杖術を巧みに操り、先日教えてもらった波紋の力で身体を強化。

 壁や木々を足場にして飛び回りながら一撃を叩き込んでいたそうだ。

 

 彼は自分を弱いと謙遜(けんそん)していたが、肉弾戦では確実に上位に入る実力者だろう。

 

 しかし、何度も地面に叩きつけられたり、尻尾で吹き飛ばされたりしていて正直聞いていて血の気が引く想いだった。

 

 これは明日、慧音さんを伴って彼に説教をしに行くことにしよう。

 しっかりと休んでもらわなければ駄目だ。

 

 

 

△月∀日

 

 今日は朝一で慧音さんの所へ行き、その後二人で参護さんの所へ行ってきた。

 

 笑ってしまうことに参護さんは朝一で行った私たちより先に起きていて、あろうことか新しい武器とやらの素振りをしていた。

 上半身をはだけるぐらいに汗だくになりながら、華麗な舞踏をしているかのような動き。

 

 正直、見惚れてしまってもおかしくない光景だったけど、それ以上に彼への怒りが爆発してしまった。

 

 二人で彼を説教した後に、今日と明日は十分以上に休むように念を押した。

 

 ほぼ中級妖怪相手に大立ち回りをしておいて、しかもボロボロになって帰ってきて、次の日の朝には武器の素振りをするその自己愛の薄さに呆れが出てくる。

 

 慧音さんと二人で食事を用意して、部屋を軽く掃除してから解散となった。

 

 よくよく考えると、異性のために食事を作ったり、掃除したりと通い妻のようだと思い、ちょっと恥ずかしい気分になった。

 慧音さんも一緒だったし、そんな噂が立つこともないだろう。

 

 ゆっくり妖怪も心配だったのだろうか?

 私たちが説教している中、しきりに頷いていたのが印象的だった。

 

 

 

△月☆日

 

 今日は私も慧音さんも参護さんの家に行くことはできないので、事情を話して里に薬を売りに来る月の兎である鈴仙さんに里に来るついでと、帰るついでに様子を見てくれるように頼んだ。

 

 もし、無茶をしているようなら少々強引な手を使っても休ませてくれと念を押しておいた。

 苦笑気味だったのが印象的だった。

 

 彼のおかげで問題の妖怪を撃退し、里の安全が守られたことは喜ばしいのだけれど、霊夢さんや魔理沙さんの様に、妖怪退治が専門というわけじゃないのだから。

 

 どうか、彼が無茶をしていませんように。

 

 




 いかがだったでしょうか?

 慧音日記は後日にします。

 それでは、読んでいただきありがとうございました!


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上白沢慧音の日記 △月

 慧音の日記です。

 視点的には里の側から参護を見ているという感じです。

 書いては消し、書いては消しで気づけば深夜二時。

 別に同じ月の別視点日記は、全員はやりません。
 たぶん、その月にかかわりの深い人物二、三人って感じだと思います。


 

△月×日

 

 先日、阿求殿から珍しい妖怪の生態調査を里の外れに住んでいる海原殿に頼んでいるという話を聞いたが、この妖怪は非常に安全な部類であると阿求殿は言っている。

 

 里の有力者で、幻想郷縁起の編纂者である彼女の言葉を信用してはいるが、生態調査を依頼するほど調査がされていない妖怪は思わぬ凶暴性を持っている可能性があると思う。

 

 そのことを指摘したが、阿求殿は

「あれが人間を襲う妖怪なら、幻想郷縁起の妖怪評価を一から見直す必要があると思うわ」

 そう言って笑っていた。

 

 海原殿は里の外れ、里と外の丁度境界付近に住んでいる。

 里の会合結果を教えに行く時は、里の外れだから多少危険があるので、私が直接行くことにしている。

 危険ということもあるが、外来人ということで監視の意味合いもあったのだ。

 

 この一年間、様子を見ての評価は好印象といった所だと思う。

 

 不慮の事故で幻想郷に来たとのことだったが、現状把握と行動の優先順位を決めるなど、迅速な対応。

 この里で暮らす上で自身の力を全力で使う行動力など、高評価に値する。

 

 阿求殿が外から妖怪が襲ってくる時のために彼をあの外れの家に住まわせたのだろうが、それに文句も言わず、ずっと暮らしている。

 

 明日にでも海原殿の所にいる妖怪をこの目で確かめ、危険が無いか判断するとしよう。

 

 今後、里の防衛力の一人として期待できる立場だ。

 少しだけ、談笑しながら彼の人となりを再確認したい。

 

 

 

△月○日

 

 今日は、海原殿の所に行って件のゆっくり妖怪を見てきた。

 

 彼は、私が来たことに少々驚いていたが、すぐにもてなしてくれた。

 玄関で少し会話をしてから、居間の方で雑談を続けた。

 

 例の妖怪は、私が来たことを察知して玄関先に出てきたのだが、勢い余って土間に顔面? から落ちていた。

 見た目は、紅魔館の魔女のものだろう。

 性格はあまり似ていないようだ。本人は他人にあまり興味が無く、ずっと閉じこもって本を読み漁るのが生活習慣だと聞く。

 

 海原殿の話だと、性格よりは趣味趣向が似ている部分だと言っていた。

 パチュリー殿を知っているのかという疑問はあったが、考えてみれば阿求殿も生態観察をしているのだから、彼女から特徴を聞いていても不思議ではない。

 

 パチュリー殿は、顔面から土間に突っ込んで、涙を目に溜めながら、プルプルと震えつつ、「むきゅー」っと鳴く、などということはないと思う。

 あの様子はかなり保護欲をかきたてられた。

 

 海原殿が個人的に予測していたが、幻想郷の実力者たちのゆっくり妖怪がいてもおかしくないと考えているようだった。

 なぜ、パチュリー殿だけがゆっくり妖怪に模倣されているのか? ここを考えれば、この考えに辿り着くものだと言っていた。

 

 確かに、現在発見されているゆっくり妖怪はパチュリー殿の模倣をしているこの子だけだ。

 

 彼は、仕事の傍らに同族を探してみているそうなのだが、今の所見つけていないとのことだ。

 

 実力的に、私のゆっくり妖怪もいるかもしれないと、彼が笑いながら言っていた。

 少々複雑な気分になる。

 

 実力者という事なら、妹紅とかもいる可能性があるのかな?

 彼女のゆっくり妖怪がもしいるのなら、ぜひ引き取りたい。そう思ってしまった。

 

 

 

△月□日

 

 最近、下級妖怪から中級妖怪になりそうなぐらい大暴れしている妖怪がいる。

 知性の方は下級であることは間違いないのだが、力は確実に中級である妖怪が人里周辺を荒らしまわっている。

 

 里の外に出る人間達には注意するように、不必要には出ないように通達をしておいた。

 

 もちろん、まったく出ないということは不可能なので、出る際は周囲にきちんと知らせることと、対抗策や護衛をつけるように里の会合で決定した。

 

 会合に出ない人間もいたので、私が直接伝えた。

 道中に出会った海原殿にも、危険であることを伝えたが、彼の仕事の中に里の外へ出る人間への護衛も含まれていたはずだ。

 彼も、仕事以外では自重します、と答えていた。

 

 仕事ならば仕方がない。

 最近はゆっくり妖怪のためにいろいろと入用なのか、買い物を良くしている姿を見る。

 

 今日は数冊の本と、なぜか紅茶用のティーセット。

 

 紅茶が好きなのだろうか?

 

 

 

△月×日

 

 集団には良くも悪くも他者を出し抜こうとする輩がいる。

 

 今日の騒動もそういう輩が起こしたものだった。

 

 件の妖怪を退治するまでの簡易的な里の外への外出自粛。

 つまり、他者が取るはずだった取り分すら自分の取り分にできるということだ。

 

 里の中でも評判の良くない商人が、護衛を雇って無縁塚に出かけたそうだ。

 

 その護衛は、この里に来て一年目の新人だ。実力があっても里の人間関係は未だに手さぐりだろう。

 特に件の商人は擬態がうまい。

 何でも屋という仕事と、自分の評判をあまり知らないであろう彼を護衛に雇うのは商人にとっては当然の選択と言える。

 

 しかし、今回は時期が悪かった。

 

 当然の如く、帰り道に妖怪に襲われたのだそうだ。

 

 しかも、彼を置いて逃げようとして、なんども妖怪に先回りされて、その度に彼に助けられる。

 それを繰り返して、最終的に彼が妖怪を撃退して、無事戻ってきた。

 

 これが今回の概要なのだそうだ。

 

 海原殿が戦闘で使うのは杖術と呼ばれる技、確か四尺前後の棒を使う技だったはずだ。

 それ以外が棒術と呼ばれている。

 

 件の商人を呼び出し、状況確認と下手をしたら里そのものを危険にさらす可能性のあった行動に対して制裁を加えた。

 その時に聞いた状況が、かなり海原殿の戦闘能力を上方修正する必要がある情報だった。

 

 金属の杖を自在に操り、不思議な力を身体に纏い、木々や土手を利用して縦横無尽に立ち回って撃退したそうだ。

 

 その際に妖怪の片腕を折るまでの活躍を見せたそうだ。

 

 話に出ていた不思議な力。

 これは詳しいことを明日にでも聞きに行かなくてはならないだろう。

 

 阿求殿も訪ねてきて、明日海原殿に事情を聞きに行こうと息巻いていた。

 

 確かに、戦闘で相当危ない目に遭っているという話だし、常人ならしばらく立つことも難しい状態になっているはずだ。

 

 見舞いも兼ねて明日尋ねに行こう。

 

 

 

 

△月∀日

 

 朝一で阿求殿と一緒に海原殿の家を訪ねた。

 

 早朝だというのに上半身をはだけ、ゆっくりとした動作で杖術を、何かをなぞる様に型を反復し、何度か繰り返した後、今までの動きが嘘のように高速で縦横無尽に動き回っていた。

 

 彼が纏っているのは、気でも霊力でもない。気に似ているが、それとも違う力だ。

 

 海原殿の使うのは、波紋の呼吸という技術らしい。

 特殊な呼吸法から生まれる力を戦いに応用しているのだそうだ。

 

 特殊な力はわかったが、もう一つの無茶な戦いをして、我々に心配をかけたことに対する説教は手加減なく、しっかりと二人で行った。

 

 ゆっくり妖怪が、しきりに怒られて当然だというように頷いていたのが印象的だった。

 

 彼女? も海原殿が心配なのだろう。

 

 実に人間らしい感情を持っている。そう思えた。

 

 

 

△月☆日

 

 海原殿を強制療養させ、私は寺子屋の講義をした。

 

 昨日の厄介な妖怪を撃退、その上片腕を折るという大金星を挙げた彼のおかげで里はある程度平穏を取り戻しつつある。

 

 博麗の巫女も腕を折ったのなら、再び活動すれば処分対象、活動しないなら人間にも強者がいると理解し、過度な活動はしないはずだと言っていた。

 

 鈴仙殿に里への行帰りに海原殿の様子を見てくれるように頼んだし、もし無茶をしているようなら能力を使ってでも寝かせてくれと頼んである。

 

 なにしろ、常人なら重傷となるであろう攻撃を数発受けているのに、次の日に普通に朝稽古をするような神経の持ち主だ。

 

 少々強引にいかないと休まないだろう。

 

 彼は、里の防衛においても重要な役割を持っている。

 しっかりと休んで、身体を治してほしいものだ。

 




 本当はチラシ裏予定だったんですが、設定間違えて今の状況です。

 感想も頂いてますし、このままでいいかとww

 チラシ裏には別小説もあります。
 気が向いたら読んでみてください。


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海原参護の日記 ☆月

 お待たせしました。

 今回は新キャラ登場。

 可愛さ成分追加で行きます。


☆月○日

 

 今日も今日とてYパチュリーを揉みながら、癒されていた。

 

 ここ数日、ゆっくり妖怪の仲間を探してみたが、珍しいというだけあって、まったく見つからない。

 

 Yパチュリー相手にいろいろと語り掛けというか、愚痴を言いながら晩酌をするような形になってしまった。

 

 正直、同族が居ないというのはさみしいものだと思う。

 

 Yパチュリーも、ある程度懐いてくれているとはいえ、同族のいない他種族のコミュニティは心細いだろう。

 

 そう聞くと、小首をかしげるような仕草をされたが、さみしくはないのだろうか?

 

 Yパチュリー以外のゆっくり妖怪は是非とも見てみたい。

 首をかしげるようなしぐさのYパチュリーに今日も癒されました。

 

 

 

☆月□日

 

 ええっと、何をどう言えばいいのか?

 結論から言うと、同居人が増えました。

 

 しかも、昨日の愚痴をYパチュリーが聞き届けた形になるのだろうか?

 

 仕事から帰ってきて、居間に入るとゆっくり妖怪がもう一匹いる状態に、思考が止まった。

 

 ゆっくりレミリア、となるのだろう。

 うー、うー言ってた。

 

 Yレミリア。

 レミリアさんの特徴を備えてて、蝙蝠のような羽でパタパタと飛び回る。

 

 普段、「ゆっくりして行ってね!」というセリフが初めて会った時に「ゆっくりして行くね!」と言われて、住み着く気なのだと理解した。

 

 一日、相手をしてみて感じたのが、Yパチュリーよりも幼い。

 行動もそうだが、表情が常にニコニコしてて「うーうー」と鳴いている。

 

 Yパチュリーが子供だとしたら、Yレミリアは幼児っぽい印象を受ける。

 

 レミリアさん本人に会ったことが無いけど、Yレミリアに似ている部分は外見ぐらいしか見えない。

 

 勝手な妄想だが、レミリアさんが表に出さない幼さを凝縮したような、そんなイメージだ。

 

 いや、猫が子猫連れてきたって感じで非常に癒されるものだ。

 

 レミリアさんの特徴上、吸血するのか試した。

 指先の傷を舐めるだけで満足だったようだ。

 

 あとは普通にYパチュリーと同じで少量の食事で満腹になる。

 オリジナルの人物と同様に二人とも仲が良く、一緒に遊んでいる。

 

 これは阿求様と慧音さんに報告した方がいいだろう。

 

 

 

☆月×日

 

 朝起きたらゆっくり達が追いかけっこをしていた。

 

 無害とはいえ、里の中に妖怪を連れてはいけないので、二匹に留守番を頼んで、阿求様と慧音さんに報告しに行く。

 

 まぁ、報告と言っても、仕事から帰ったらゆっくり妖怪が増えていましたっていう反応しづらい報告になるのだけど。

 

 二人とも後日見に行くと言ってくれた。

 

 YパチュリーがYレミリアを呼んだなら、Yレミリアが呼ぶのは誰になるのだろうか?

 イメージとしては紅魔館勢から来るだろうが、誰が来るか非常に興味がある。

 

 ゆっくり妖怪は少食だし、無害だしで、非常に飼いやすい。

 

 Yパチュリーが俺は信用できると踏んで呼んだのか、俺の愚痴に反応して呼んだのか?

 

 どちらにしても、結構いろいろ探し回っているのにもかかわらず、見つけられないのは個体数が少ない以外に、外敵から身を隠していると仮定できる。

 

 ゆえに、一度信用した人間に対しては無防備になると夢想したのだが、これは阿求様が幻想郷縁起に書かれる内容なので、観察者の意見程度に報告することにする。

 

 ゆっくり妖怪が一匹増えたせいか、賑やかになったものだ。

 

 Yパチュリーが膝にすり寄ってくるのに対して、Yレミリアはフヨフヨ飛びながら肩や頭に乗って得意げにうーうー鳴く。

 

 いかん、Yパチュリーだけでも癒されてたのに、Yレミリアも可愛いぜ。

 

 

 

☆月∀日

 

 今日は阿求様が新しいゆっくり妖怪を見に来られた。

 

 Yレミリアも新しい客が珍しいのか、今回もフヨフヨと飛んで来て、阿求様の周りを回った後に俺の頭の上に乗ってくる。

 Yパチュリーは慣れたもの……なのだろうか? 普通に阿求様をもてなしていた。俺より早く阿求様にお茶を出していたのは驚いたが。

 

 あれだ、今に思えば新しい住人であるYレミリアにお姉さんぶりたかったのだろうか?

 

 オリジナルが友人同士であるのも理由だろうが、この二人は仲が良い。

 

 Yパチュリーも少々幼げだったが、Yレミリアはそれに輪をかけて幼い。

 自然と、Yパチュリーがフォローというか一緒にいるようにしているイメージだ。

 

 阿求様も、ゆっくり妖怪のコミュニティが見られると喜んでいた。

 

 

 

☆月Д日

 

 昨日の今日で慧音さんが来た。

 

 そして今日もYパチュリーが俺よりも先にお茶を出していた。

 慧音さんが驚いた顔をしていた。阿求様も目を丸くしていたが、すぐにお礼を言っていた。

 

 慧音さんは受け取った形で固まっていた。

 まさか、もてなされると思っていなかったのだろう。

 

 阿求様と慧音さん、どちらも頭の良い方々だが慧音さんの方が突発的なことが苦手とみえる。

 勘違いがタマにあるのもこの辺りが起因しているのかもしれない。

 

 Yレミリアは、昨日と同じように慧音さんの周りをフヨフヨ、うーうーと飛び回って再び俺の頭に着地する。

 

 ここ数日で慣れたが、Yレミリアは俺の頭の上がお気に入りのようだ。

 慧音さんも微笑ましそうに、Yパチュリーの用意したお茶を飲んでいた。

 

 

 

☆月ш日

 

 ふと、ゆっくり妖怪とオリジナルが出会ったらどうなるのか?

 という疑問が生まれた。

 

 前々から考えていたのだが、今回は内職しながら本格的に考えてしまった。

 出会って影響がある現象かそうでないか?

 

 影響がない場合、自分に似た生き物が、むきゅー☆とか、うーうー☆とか鳴いているのを見てしまってはいい気分はしないだろう。

 

 影響がある場合、双方の消滅かそもそもどう足掻いても出会えないか、だろう。

 

 そういう意味では、俺の所に紅魔館のゆっくり妖怪が集まるのは運がいいのかなんなのか?

 

 最近でこそ原作キャラたちと交流が少しずつできているが、もしゆっくり妖怪とオリジナルが出会えない運命なのであれば、俺はもう紅魔館勢と会うことができないということだ。

 

 あくまで予想だ。

 

 オリジナルの影響を受けているとはいえ、ゆっくり妖怪はオリジナルと異なる個性がある。

 あとは、一つ一つ検証していくしかないだろう。

 

 

 

☆月И日

 

 里の外れに住むということは外部からの襲撃者を迎撃する、もしくは慧音さんや博麗の巫女が来るまで時間を稼ぐ、というのが役目になる。

 

 前回、商人を護衛した時に襲ってきた妖怪が人里に手を出そうとしてきた。

 

 腕を折ってやったのに懲りずにやってくるのだから頭が悪いのかもしれない。

 

 今回は念入りに、両腕を折ってやった。

 Yパチュリーの強化したこの杖は戦闘をかなり楽にしてくれた。

 

 波紋で強化した力、打撃力を上げる魔術が付与された杖、そして俺自身確実に弱っているであろう所を見つけては一撃を叩き込む。

 

 前は、波紋での身体強化と俺自身の技術。この二つで妖怪を撃退したのだが、さらにこれに魔術の付与された武器が加われば、戦闘能力は格段に上がる。

 

 ゲームで例えるなら、初期装備で順調にレベルアップしていき、ある日ランクの高い武器に装備替えした時の心境だ。

 ある種の無敵感を味わえる。

 

 まぁ、同じ敵だったこともあるし、慧音さんと比べれば肉弾戦だけでも楽に負ける。

 上ランクの実力者はまだまだ遠いと改めて思わされた日だった。

 

 




 いかがだったでしょうか?

 ゆっくり妖怪は可愛く書きたいと思います。

 うー☆うー☆ っていうの正直可愛いと思うんだ。


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稗田阿求の日記 ☆月

 UAが飛躍的に上がって正直ビクビクものの私です。

 本当に何があったし?

 さて、阿求視点のちょっとバトル描写。

 阿求視点では主人公の度量はかなり広いらしい。


 3/22 ☆月×日のYパチュリーとの省略表記を使う理由を追加しました。


☆月○日

 

 世代を跨いでもほとんど謎であったゆっくり妖怪の記述がここ数日で驚くほどに増えた。

 

 参護さんの家に住んでいる実物が良い情報を提供してくれる。

 

 この前、海原さんに撃退されていた件の妖怪は最近めっきりと話を聞かなくなった。

 なんでも、戦いの中で参護さんに折られた腕が中々治らず、暴れることができなくなっているのだそうだ。

 

 私も参護さんも人間だ。

 ただ、私は転生を繰り返して幻想郷縁起を編纂することが目的で、転生を意図して繰り返せるという点で人の枠からずれてきている。

 

 参護さんの実力は人間の中でも特筆すべきところがある。

 私の中で特筆するべき人間。

 博麗の巫女 博麗霊夢

 普通の魔法使い 霧雨魔理沙

 

 この二名は人間の中でも別格だ。

 

 その別格に入れるかもしれない人間。

 

 一度、参護さんの戦闘場面をこの目で確かめてみたい。

 特殊な力と言っていた、波紋の呼吸法。

 

 参護さんが異変解決を行えるぐらいに強いのかどうか。

 弾幕ごっこはできないようだが、本人の才覚は二人と近い所にいる、と私は考えている。

 

 

 

☆月□日

 

 先日、参護さんを出汁にして無縁塚まで護衛をさせていた商人。彼は今回の件で参護さんに世話になっている他の商人や小売店からの評価を落としていた。

 

 家の者からの報告だが、自身で集めた商品を購入してもらうことはできるのだが、商人同士の集まりからは弾かれ、小売店や消費者からも白い目で見られるようになったとのことだ。

 

 数少ない顧客もこの商人特有の物を買いに来るだけだ。

 

 まぁ、騙された本人が先日大量の茶葉、紅茶から緑茶、中国の烏龍茶まで様々購入して行っていたので、参護さん自身は気にしてもいないようだ。

 

 私の時もそうだったが、彼は自分に向けられる悪意や害意を飲み込んだ上で許す。

 人間性ができていると評価されるのも頷ける。

 

 徳が高いと言えるそのあり方。

 

 かといって、宗教家のような雰囲気も持っていない。

 

 本当に珍しい人間だと思う。

 

 海原参護。

 彼が里に馴染んでいることを私はうれしく思います。

 

 

 

☆月×日

 

 今日、慧音さんと談笑している所に参護さんが訪ねてきた。

 

 なんでも、ゆっくり妖怪が増えたらしい。

 

 昨日、仕事から帰ってきたら、ゆっくりパチュリーと(参護さんから毎回貰っている報告書で表記する際によくYパチュリーとしていたので私もこれに習おうと思う、なんでもYとは『ゆっくり』という言葉の頭文字を別の国の文字で表したものらしい……、居間にYパチュリーと一緒に新しいゆっくり妖怪である) Yレミリアが居たのだそうだ。

 

 しかも、住み着く気のようで、今は里に妖怪を連れて歩くと里の人がおびえる可能性があるから留守番させているとのことだった。

 

 参護さんは前日に、一人ではさびしくないか? という疑問を投げかけ、友達は多い方がいいぞ、とも言ったそうだ。

 

 その次の日にYレミリアが現れた。

 

 偶然ではないだろう。Yパチュリーは参護さんの言葉を理解して、心配ないという意思と仲間が安全だという確信に似た何かをもってYレミリアを連れてきたのだろう。

 

 参護さんがいうにはかなり幼い性格をしているようだ。

 レミリアさん本人は、館の主であるという事実に恥じない人だ。外見と精神年齢が一致しない妖怪によくある傾向を強く持つのが彼女だ。

 

 吸血という特性も持ち合わせているようだが、指先を切った時に出る少量の血で十分らしい。

 

 あとは、Yパチュリーと同様、人間と同じ食料を少量食べる。

 

 これは後日、改めてYレミリアを見せてもらいにお邪魔するしかないと思う。

 

 私としては明日にでもお邪魔したい。

 

 

 

 

☆月∀日

 

 今日、参護さんの所にYレミリアを見に行ってきた。

 

 今日は本当に実りのある日だった。

 

 Yレミリアは、本当に幼い性格のようで、終始ニコニコと部屋を飛び回り、参護さんの頭の上に乗ってご満悦の表情をしていた。

 私の周りをフヨフヨと飛び回って、観察しているように感じた。

 

 そして何より、Yパチュリーだ。

 この前は、ただ参護さんに甘えるような仕草が目立っていたが、今日は私にお茶を出してきたのだ。

 

 参護さんに甘えるのは変わらないが、Yレミリアの面倒を見ている、そう受け取れる。

 

 これは、ゆっくり妖怪の中の生活関係が見れる。

 ゆっくり妖怪同士のやり取りは、新たな生態を知ることに繋がる。

 

 妹ができて張り切るお姉ちゃんという印象で、とても微笑ましかった。

 

 

 

☆月Д日

 

 今日は慧音さんが、参護さんの所に行ってきたはずだ。

 

 本当は一緒に行けばよかったのだろうけど、昨日は慧音さんが一日里の有力者と会合があった。

 

 私としては、一日でも早くゆっくり妖怪を見たいという気持ちがあった。

 

 なので、申し訳ないとは思ったけど、別々の日に伺わせてもらった。

 

 今日一日、ゆっくり妖怪に関する編纂が充実して行えてとても気分がよかった。

 

 夕方に、慧音さんが訪ねてきて、Yパチュリーにお茶を出されたことに戸惑っていた。

 

 まぁ、確かに奇妙な光景ではあると思いますけど、背伸びしているお姉ちゃんみたいで可愛かったと思いますよ?

 お礼を言えば、笑顔で返してくれますしね。

 

 

 

☆月ш日

 

 最近、参護さんに負けた例の妖怪が活動を開始したと報告を受けた。

 

 かなりの被害が出たらしい。

 

 里の外で妖怪に襲われるのは自業自得という部分がある。

 

 スキマ妖怪の八雲紫も人里とそれ以外の場所で明確に取り決めている。

 人里で人を襲うべからず、里の外で襲われても自己責任。

 

 しかし、今回は人里の近くだ。ギリギリ外だったので処罰対象にはならなかったが、近いうちに必ず人里に攻めてくるだろう。

 

 そうなれば、確実に参護さんが危ない。

 一度勝利しているとはいえ、あれからさらに力をつけていることは間違いない。

 

 今日明日と、里に厳戒態勢を敷き、博麗の巫女に頼みに行くしかないだろう。

 

 

 

☆月И日

 

 今日、参護さんの戦闘を生で見ることができた。

 

 弾幕勝負に慣れた私たちだが、それに頼らない戦いが無くなったわけではない。

 

 参護さんの戦いは素人の私から見ても、速さ重視だ。

 

 変わった呼吸から、電気の様な力を纏い、人とは思えない速度で妖怪に挑んでいく。

 

 電気と書いたが、波紋は強力に練ると電気の様な反応をするらしい。

 

 つまり、電気とは別物であるということだ。

 

 見た目は蘇我屠自古という亡霊の能力に似ている。

 

 しかし、そこから相当な速さで走り回り、例の妖怪に戦いを挑むのは本当に実力者であると断言できる。

 

 Yパチュリーの魔法で強化された杖と波紋で強化された身体能力。

 その状態で参護さんの決め技というべき、杖を槍のように持って突きを連続で放つ技。

 

 妖怪は両腕の骨を折られて撤退した。

 

 いや、骨を折られたなどと生ぬるいものではない。

 あれはかろうじて繋がっているだけで回復は無理だ。

 

 しかも全身に波紋の力を流し込まれて痺れて鈍くなっている動きで、これ以上生きてはいけないだろう。

 

 ある種の報いであり、残酷な最後だ。

 

 海原参護。

 彼は本当に強く、私やあの商人を許すほど優しく、ゆっくり妖怪が懐いて住み着くような不思議な魅力を持つ人だ。

 

 




 いかがだったでしょうか?

 この部分だけ読むと結構強めですが、そもそも参護の兄の設定がぶっ飛んでいるので、本人は弱い、もしくは上には上が居るということをしっかりと自覚しています。

 日記形式なので派手さが無いのはすいません。

 それでは、ご意見ご感想、誤字の指摘などありましたら、お気軽にどうぞ。


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上白沢慧音の日記 ☆月

 デイリーランキング2位です! ありがとうございます!

 いや、えっと・・・どういう事なのでしょう?

 お気に入りやらUAやらまさに跳ね上がるほどで、ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル 状態です。

 ☆月はこれにて終了です。




☆月○日

 

 最近、海原殿を危険な状況の中で無縁塚に護衛で連れ出した商人が、人里で白い目で見られている。

 明確な処罰はない、ということになってはいるが、海原殿を慕っている人たちからすれば、警戒や軽蔑対象になっているのも仕方がない。

 

 村八分状態になっていないだけ、珍しいが理性的な周囲だと思う。

 

 この人里に、幻想郷に住んで一年近く、海原殿の友人や彼に恩義を感じている人は増えている。

 

 何でも屋という職業柄というのもあるだろうが、彼は非常に面倒見がいい。

 三人兄弟の末っ子だというが、長男だと思ってしまうぐらいしっかりしているし、頭も良い。

 

 最初は人手の足りない農家が、次に商人、最終的に里全体に彼は優しく頼りになる存在として認められている。

 

 そんな彼を危険な目に遭わせた、それだけなら本人も公言しているが仕事だから気にするなというやつで、しぶしぶ納得できた人たちもいたのかもしれない。

 しかし、その商人は彼を見捨てて何度も逃げようとしていたのだ。あまつさえ、生贄にしようとした節すらある。

 

 あまりに仁義に欠ける話だ。

 しかも本人はしっかりとそんな商人の護衛をこなして人里に帰還したのだから、護衛としても、人間としても評価は上がった。

 

 結果的に商人の一人負け、といった所だろう。

 

 しかも、思わず笑ってしまったのだが、海原殿が何食わぬ顔で件の商人から物を購入していた。

 

 もしかしたら、この行動が商人を村八分にしていない理由なのかもしれない。

 

 村全体の雰囲気を和やかにしてくれている。

 

 ゆっくり妖怪を家に置くようになってからは更に機嫌が良さそうに買い物をする姿をみんな見ている。

 癒しとはやはり大事なのだと感じた。

 

 

 

 

☆月□日

 

 今日は久々に妹紅が訪ねて来た。

 

 お互いの近況を交換して、今日は泊まっていくことになった。

 明日は朝一で迷いの竹林の案内に行くそうなので、少し残念だ。

 

 竹林では大きな変化も無く、小さいトラブルにため息をつきながら対応しているそうだ。

 

 一応、海原殿が撃退してくれたが、注意は必要だと件の妖怪の注意を促した。

 

 妹紅は撃退した人間に対して興味を持っていたが、海原殿に会ったことは無かっただろうか?

 

 本人は会ったことは無いと言っていたからそうなのだろうが、一応里の外れで出入り口を守る様に居を構える海原殿に会ったことが無いのは珍しい。

 

 妹紅は良く人里に来るし、その際彼の家のあたりを通るはずなのだが。

 

 そう思ったが、よくよく考えてみれば私たちは飛べるのだからわざわざ徒歩で帰る必要もなかった。

 

 妹紅には機会があったら紹介することにしよう。

 

 

 

☆月×日

 

 ここ最近の商人と里の人間との確執について阿求殿に相談に来ていたのだが、その時に海原殿が訪ねてきた。

 

 驚いたことに、ゆっくり妖怪が仲間を呼んだらしい。

 

 前日に仕事終わりで居間の扉を開けたら、ゆっくりパチュリーとゆっくりレミリアが一緒にいたそうだ。

 

 海原殿が言うにはゆっくりレミリアも面倒見るというので、ゆっくり妖怪は2匹彼の家にいることになる。

 

 2匹とも里の中に見知らぬ妖怪を入れると混乱する可能性があるので留守番させているらしい。彼の配慮は助かる。私自身、実際に接してみて初めてゆっくり妖怪の危険度が低いことを信じられたが、知らない人たちはそうはいかない。

 人間と妖怪はどうしても力に差がある。能力に差がある。

 強い種族は恐怖されやすい。

 

 だから、皆にゆっくり妖怪の安全性が証明されるまで、人里に入れないのは大事なことだ。

 

 海原殿は、安全な妖怪だと分かっていても、おそらく人々の集団心理を考えて慎重に行動してくれている。

 一応、阿求殿と私で里の有力者にゆっくり妖怪の生態観察を海原殿の家でやることを知らせてある。里の門番なんて里の人から言われているぐらい信頼されている海原殿であることと、彼の家が人里の外れの方であることが納得させる要因になったようだ。

 

 だけど、まだ里の中で正体のわからない妖怪を行動させるのは不安がある。

 

 それを考慮し、余計な不安を里の人に与えないのは、思慮深い行動だ。

 

 明日は里の有力者との会合がある。

 そこで、里の理解を得られるように話をしてみよう。

 

 ここまで考えてくれたのだから、私も行動しなくては。

 

 

 

 

☆月∀日

 

 阿求殿がゆっくり妖怪を見に行っているはずだ。

 

 私も一緒に行きたかったが、里の有力者との会合で今後の里の方針を決めなくてはならない。

 ついでに、海原殿のゆっくり妖怪の生態調査に対して少しでも環境を整えてやれないかどうかも話し合った。

 

 ここは、今日中に決まることは考えていない。

 少しずつでいいから変えていき、海原殿の負担を減らすのが大事だ。

 

 今はダメでも、根気よく続けることにしよう。

 

 

 

☆月Д日

 

 今日は衝撃的なことが起こり過ぎていろいろ混乱している。

 

 海原殿の所で新しいゆっくり妖怪を見てきた。

 

 容姿は紅魔館の吸血鬼のレミリア殿のようだ。

 性格は全く違うようだが。

 

 うーうーと鳴いていて、小さい蝙蝠の羽でフラフラとだが飛び回っていた。

 あれは歓迎の飛行か何かだろうか?

 その後に、海原殿の頭に降りては自慢げにうーうー鳴いていた。

 

 可愛かったのだが、ゆっくりパチュリーにもてなしの茶を出されたときは情けないことに固まってしまった。

 

 お茶を出されて、礼を言おうと顔を向けたらゆっくり妖怪が居て、「ゆっくりしていってね!」と言われては固まろうというものだ。

 

 しかし、阿求殿はすぐに対応できたらしい。

 

 可愛いは可愛いのだが、予想外の行動で情けないところを見せてしまったことが少しばかり心残りだった。

 

 阿求殿の所に立ち寄って報告した時、この戸惑いを話したが

 

「背伸びしている姉妹のお姉ちゃんみたいでかわいいじゃないですか」

 

 と言われた。

 

 なるほど、そういう見方もあるのか。

 

 

 

 

☆月ш日

 

 海原殿が撃退した妖怪が再び活動を開始した。

 襲撃を受けた場所が徐々に人里に向かってきている。

 

 博麗の巫女の言う通り、この時点で処分対象になったのだろう。

 

 今回の件で人間を襲うのを自粛していれば、程よく人間に畏れを与える妖怪になっただろう。

 しかし、人間に復讐するため暴れ始めたのなら、これは畏れを駆逐する人間と妖怪の共通の敵というものに成り下がった。

 

 今日と明日は里に厳戒態勢を敷いて、博麗の巫女に退治を頼むのが最善だろう。

 

 もう博麗神社に使いは向かわせている。

 

 あとは、博麗の巫女が動いてくれるのを待ちつつ、里を守るのが最善だろう。

 

 海原殿が一番最初に妖怪に会うだろう。海原殿をだまして連れて行った商人の言っていた戦いが、もしかしたら見れるかもしれない。

 

 海原殿の全力戦闘。

 不謹慎かもしれないが、少し見てみたいと思ってしまった。

 

 

 

☆月И日

 

 海原殿の戦闘。

 今日はそれを見れたのだが、あれは人としての領域ギリギリまで鍛えたのだろうか?

 彼は、規格外の強さを見せてくれた。

 

 波紋の呼吸法と彼は言っていたが、歴史の中では仙道の奥義だったはずだ。

 

 歴史の中でたった二回、三国志時代において波紋使いの親子がいたという歴史があった。

 それより古い波紋の歴史は確認していない。

 

 そこに記されていた波紋と海原殿が使う波紋は同じものなのだろう。

 

 三国時代の仙道は何名かの弟子に継承されて各地に散らばっている。

 

 彼もその弟子の子孫なのだろう。

 

 速さを中心とした戦闘技法。

 強化した身体と兄弟に叩き込まれたという技術。

 

 人間故に威力が無い。しかし、ゆっくりパチュリーの魔法で強化されているという杖が十分以上に海原殿の戦いを支えている。

 

 足を狙い、機動力を奪った後に一度骨折させたという腕を執拗に狙い、両腕を骨折にまで追い込んだこの戦いは人間と妖怪の戦いとはとても思えなかった。

 

 骨折させた妖怪の腕はおそらく治ることは無い。

 

 逃げていく妖怪の両腕は力無く垂れ下がり、腕は変色し、腫れ上がっていた。

 

 おそらく、適切な治療をしなければ壊死するだろう。そして、あの妖怪は適切な治療をする術がない。

 

 人間からも妖怪からも外れた存在はこうして消えていく。

 

 あえて止めを刺さずに、人里には襲えば返り討ちにされるぐらいの戦力があると他の妖怪に喧伝する。そうすることで、今回の様な人里を襲うという愚行をさせないための行動だ。

 

 今回の戦いで海原殿は三度地面に叩きつけられ、二度木々に弾き飛ばされていた。

 

 阿求殿と相談して少々高額な報酬を渡してしっかりと休んでもらうようにしなければならない。

 

 いくら波紋が身体の活性化を行う技法だとしてもダメージは残るのだから。

 

 海原参護。

 彼は冷静で、人里を守る行動をしてくれる優しさと、妖怪を見せしめに使うほどの強かな行動力がある、それでいて一緒にいて安心できる春の風を思わせる青年だ。

 




 いかがでしたでしょうか?

 いろいろと温かい感想いただきまして、うれしい限りです。

 参護の日記が他の日記の基本になるので、ちょっと時間がかかると思います。


 三国時代の歴史に実際波紋の使い手がいた記述はありませんのでご注意ください。

 海原の家が存在するに当たり、その血筋だと思っていただければと思います。



 次回をお楽しみに!


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海原参護の日記 □月

 今回は日にちの方を顔文字にしてみました。

 基本土日が執筆活動ができる日程なのですが、平日は不安定で一日おきに仕事場に泊まることになったり、一週間定時上がりできたり、不安定な時間なので更新速度も不安定になります。

 ご了承ください。

 ちょいちょい参護の兄や父が出ないかとメッセージで聞かれますが、本人登場は無理です。
 さとりに協力をお願いすればワンちゃんですかね?

 あ、新しいゆっくり妖怪でるよ~


□月(´・ω・`)日

 

 先日、里を襲った妖怪を撃退したため、かなり高額な報酬を貰った。

 

 その代わりと言っていいのだろうが、阿求様と慧音さんから十数日確実に休むように言い渡された。

 

 しかも、永遠亭に連絡して鈴仙さんを休む期間の間、里に来る時と帰る時に看病という名の見張りにつけられてしまった。

 

 鈴仙さん自身は少々人間が苦手な様子だったので、休憩所のように使ってくれてかまいませんと言っておいた。

 

 どう思っているかわからないが、行きと帰りの二回訪問、もしくはどちらかの一回訪問の契約らしいのだが、二回訪問してくれることが多く、その際にいろいろと食べ物を持ってきてはくつろいでいる。

 

 知識としては、苦労人と気弱なイメージのキャラクターだったが、交流してみると薄幸というか小動物をイメージさせられる。ま、ウサギなんだけどね。

 

 前にYパチュリーと出会った時は平然と対応していたし、今回Yレミリアに出会った時も

 

「増えたんですね~」

 

 の一言で済んでしまった。

 

 知識として、彼女は相手の波長を見ることができると聞いたことがある。

 しかし、知識として知っているのと、彼女に聞けるのかという点では全く違う。

 

 ストーカーと思われたらたまらない。

 単純にゲーム二次創作をかなりやり込み、読み込んでいるだけで……。

 

 十分ダメだな。

 知識として活用するのはいいかもしれないが、表に出すのは避けるようにしよう。

 

 

 

□月(-.-)日

 

 波紋のおかげでだいぶ軽減されているので、怪我としてはやられ方ほど酷い怪我ではない。

 

 痛いことは痛かったが、骨も折れた部分は治ったし、内臓のダメージもだいぶ軽減されている。固形物ギリギリ食べられるしね!

 

 ただ、鈴仙さんには重傷に見える……いや、一般的に十分重傷か。

 

 その鈴仙さんは里に行く前にYパチュリーと一緒におかゆを作ってくれた。

 その間にYレミリアは俺の周りでうーうー言いながらすり寄っていた。

 

 元気付けようとしてくれているのか、単純にすり寄っているのか不明だが、癒される。

 

 おかゆは美味しかった。

 

 夕方の永遠亭へ帰る前に寄ってくれて洗い物をしてくれる。

 

 阿求様も慧音様も撃退した妖怪の調査と里のまとめをやっていて、ここしばらく訪ねて来ていない。

 

 アバラの包帯も換えてくれたのはちょっとドキドキした。

 

 水の魔法で桶の水を冷やしてくれたり、風の魔法で掃除してくれたり、Yパチュリーの家政婦というかメイド化が一気に進んでいる気がする。

 

 Yレミリアは無邪気に遊んでいる。

 彼女としては仕事に行かないで相手をしてくれる、一緒にいてくれる期間みたいな認識なのかもしれない。

 

 

 

□月(^_^;)日

 

 今日はなぜか、藤原妹紅が訪ねてきた。

 

 本当になぜ?

 

 慧音さんと仲がいいのは知っているけど、妹紅さんと俺は一切関わっていないはずだ。

 

 どうやら、見舞いついでに俺を見に来たようだが、見る価値のあるような人間じゃないのでどうか帰ってくれませんかね?

 

 つか、怪我で寝込んでる状態なのであまり見せたくない。

 

 妹紅さんもゆっくり妖怪たちが気に入ったようで、特にYパチュリーを揉んで遊んでいた。

 

 Yレミリアも揉んでみたが、どうやら個体ごとに揉み心地が違うようで、個人的にはYパチュリーの揉み心地が好みだ。

 

 Yレミリアは、スベスベした肌と少し弾力の強い揉み心地が良かった。

 ちょっと揉むとスルッと手の中から滑り出る感覚がちょっと癖になる。

 

 ちょっと他のゆっくり妖怪の感触が気になったのは内緒だ。

 

 

 

□月(._.)日

 

 妹紅さんは面倒見がいいようだ。

 

 鈴仙さんが朝と夕方、妹紅さんが昼に来てくれる。

 

 慧音さんにも頼まれているようで、起き上がろうとしたら枕元を燃やされた……。

 笑顔で

「寝・て・て・ね?」

 と言われたときは冷や汗がドッと出た。

 

 あ、二次創作で男性言葉の設定が多い妹紅さんだが、女性の口調だった。

 女性の優しい口調で凄まれた時は正直冷や汗の量が増えていると思う。

 

 包帯を換える際に鈴仙さんが

「汗すごいですけど、暑かったですか?」

 と聞かれた時、ちょっと恥ずかしかった。

 

 包帯は水の魔法と風の魔法でYパチュリーが洗濯してくれる。

 いや、Yパチュリー万能やね。

 

 Yレミリアも包帯を巻くのを手伝っていた。

 いや、冷静に考えて観察対象の子たちにお世話されるってちょっと恥ずかしいものだ。

 

 

 

□月(T_T)日

 

 どういう事なのだろう?

 

 Y咲夜が来た。

 

 YレミリアかYパチュリーが呼んだのだろうが、俺の部屋の掃除や看病などをしてくれた。

 

 鈴仙さんや妹紅さんは驚いていたが、すぐに慣れたようで普通に意思疎通をしていた。

 

 礼儀正しく、あいさつも「ゆっくりして行きますね」だった。

 

 いや、こんな感想が出てくるあたり結構毒されているのかもしれないが……。

 

 鈴仙さんと妹紅さんに、阿求様と慧音さんにゆっくり妖怪が増えたことを伝えてもらう。

 

 本当なら俺が行くべきなのだろうが、今行くと強制療養が追加で入りそうなので彼女らに頼んだ。

 

 Y咲夜はオリジナルがメイドだからかすぐに家じゅうの家事を済ませ、俺の看病に移行した。

 

 Yパチュリーは家事の手伝いをして、俺につきっきりで額の濡れタオルを頻繁に変えてくれる。

 

 YレミリアはY咲夜の上に乗って楽しそうにうーうー言っている。

 

 だいぶ体調は回復したが、それでも波紋の呼吸をしながらでこの治癒速度なのは思った以上に重傷だったのだろう。

 そうつぶやいたのを鈴仙さんに聞かれたらしく、

 

 「普通の人間なら全治三か月ですよ」って言われた。

 

 死に掛けじゃないか。

 

 

 

□月∑(゚д゚; )ガーン日

 

 どうやら、Y咲夜はヘッドドレスを取ると犬耳が生えているようだ。

 

 お礼をしようにも動けないので頭を撫でてあげたら、ピコッと犬耳が生えてきたのだ。

 

 どうやら、感情が高ぶると犬耳が出てくるようだ。

 

 肌触りはモフモフの耳だった。普段は出していないので、出てきた時はちょっと得した気分になる。

 

 ちなみに揉み心地は、モフモフした耳と肌がちょっと柔らかい水風船のようにスベスベで、ぬいぐるみの様なフカフカした揉み心地だった。

 

 三匹のゆっくり妖怪に共通して揉まれるのが好きなのか、一日のどこかで一回は揉まれに来る。

 書いてみてちょっといやらしく思った俺は心が穢れていると感じてしまった。

 

 Y咲夜はやはり、よくYレミリアを世話している。Yレミリアが着地する場所は俺の頭かY咲夜の頭かだ。

 

 Yレミリアは現在俺が寝たきりほどではないが寝ていることが多いので、何を思ったのか顔の上に乗る。

 

 額から鼻にかけて乗るのだが、なぜかヒンヤリしている。

 

 妹紅さんに聞いたら、Yレミリアは別に普通の生き物と変わらない体温だそうだ。

 つまり、俺の体温が上がっていて冷たく感じているのだろう。

 

 昨日の日記じゃないが、死に掛けじゃないか。

 

 

 

□月ズサーッε=ε=ε=c⌒っ゚Д゚)っ日

 

 波紋の呼吸を繰り返すことで、だいぶ怪我が治ってきた。

 

 ダメージ回復のため、熱が出たり、力が出なかったりしたが、ようやく完全復活が見えてきた。

 

 身体を慣らすために起き上がって行動したら、鈴仙さんに人差し指を後頭部に押し当てられて

「まだ、寝てないとだめですよ?」

 と言われた。

 

 銃を押し当てられるシーンを思い出し、そそくさと布団に戻った。

 

 昼なら大丈夫だろうと動いていたら家の前にクレーターができた。

 家の前で薪割をしようとしたら、ドーンって音と砂利が飛んできたもんだからびっくりした。

 

 あれだ、高温の火球は弾丸そのものだが、周囲にまき散らす熱風が恐ろしい。

 危うく火傷で再び布団に送り返されるかと思った。

 

「慧音に頼まれてるからさ。完治するまで……寝ててね?」

 

 寝ててね? の部分で手に炎を展開されたらおとなしく引っ込むしかない。

 

 ゆっくり妖怪が寝てろと言わんばかりに俺を布団に引っ張り込む。

 Yレミリアも飛びながら布団の方へ押していた。

 顔を擦り寄せているようにしか見えなかったが、寝てろという事だろう。

 

 台所に妹紅さんや鈴仙さんが立つ中で、Y咲夜が調理を手伝っていたのはこれから慣れる必要があるんだろうな。

 

 貯金も余裕があるし、完治するまでおとなしくしてますかね。

 




 いかがだったでしょうか?

 Y咲夜、彼女は可愛いと瀟洒をなんとか両立させたいキャラです。
 まぁ、難しいですが……。

 Y咲夜はYレミリアの世話をしてほしいとYパチュリーが呼びました。
 Y咲夜自身、Yレミリアの世話ができることと、参護自身の世話ができることは楽しいので主人公にも好意的に行動します。

 ゆっくり妖怪の共通生態その一
・やさしく揉まれるのが好き
 です。

 もちろん独自設定ですので矛盾点や他作品との差異があると思いますが、独自設定だと広い心で許していただければ助かります。


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鈴仙・優曇華院・イナバの日記 □月

 鈴仙の日記になります。

 改めて、名前が長いと思った。

 メッセージで度々聞かれるのですが、当小説内にスタンドは出てきません。

 波紋をメインにしています。

 別に嫌いじゃないんです。
 スタンド大好きですよ。スティッキー・フィンガーズが一番好きです。

 最近だと、ペイズリー・パークが好き。
 単純だけど、故に強力だよね。

 


□月(´・ω・`)日

 

 ここ数日、里の稗田さんの依頼で海原参護さんという患者の訪問診察をしている。

 

 里へ薬の販売をする行きか帰りの時に、彼の家へ立ち寄って診察と介護をするというものだ。

 話に聞いた怪我の状況と本人の病状が一致しないから少し混乱しているけど、どうやら波紋の呼吸法という特別な呼吸の方法で治癒能力を高めているらしい。

 

 それでも状況だけ聞いても全治三か月。

 現状でも一か月は安静にしておいてもらう必要があると思う。

 

 師匠に薬を調合してもらえればまだ早く治る可能性があるけど、参護さんが波紋で治癒力を高めているから薬の種類によっては逆効果になりえるからダメなのだそうだ。

 

 単純に体温の上昇が一番危ない。

 骨折や打撲などの外傷は早くに治ってきていたのだけど、内臓系のダメージは治癒速度が遅い。

 私見だけど、外傷を急速に治す過程で発熱していて、それが異様な体温の上昇につながっているのだろう。

 

 本人にも言ったが、周囲にいるゆっくり妖怪。

 最初に会った時は異様な姿に驚いたけど、彼女たちの波長がとても落ち着いていて、私を前にしても喜びの波長を見せるだけで、敵意の波長が見えなかったのでそのまま可愛がってしまった。

 

 今回、久々に参護さんの家にお邪魔したけど、新しい子が増えていた。

 彼がゆっくりレミリアと呼んでいたので、あの紅魔館の吸血鬼を思い浮かべたが、目の前の子は近い名前を持っているとは思えないほど幼く、可愛かった。

 

 ゆっくり妖怪たちを可愛がっていると、参護さんから

「看病してもらっていますので、家を休憩所代わりに使ってもらって構いませんよ」

 と許可を貰えた。

 

 どうやら、私が人里が得意ではないことに気づいていたようだ。

 彼にも初対面で非常に警戒していた記憶があるけど、ゆっくり妖怪たちのおかげで、今はそれほど苦手だと感じない。

 

 それならと、申し出を受けて休憩させてもらうことにしたのだ。

 

 最近はちょっとした食料も置かせてもらっているので、これ以上入り浸りにならないように注意したい。

 

 

 

□月(-.-)日

 

 やっぱり、参護さんの怪我は内臓系が深刻なようだ。

 

 おかゆを食べている間、ずっと表情が硬かった。

 ギリギリで飲み込んでいたと思う。

 

 朝夕の二回訪問しているけど、それで十分に世話ができているのは彼とずっと一緒にいるゆっくりパチュリーちゃんが色々と動いているからね。

 

 魔法で水瓶の水を補充したり、洗濯物を水・風・日の魔法でこなしていたり、本人は参護さんの世話をするのは楽しいのか、進んでいろいろやっていた。

 

 ゆっくり妖怪には、ここでしか会ったことは無いけど、ゆっくりパチュリーとゆっくりレミリア……この二人は共通して参護さんと接している時の波長が非常に落ち着いている。楽しんでいるともいえると思う。

 

 それに対して参護さんは、怪我のせいだろうけど、弱々しい。

 

 弱っている彼を見てゆっくり妖怪たちは悲しそうにしているのだ。

 きちんと体を治して、ゆっくり妖怪たちと楽しく暮らしてほしいものだ。

 

 

 

□月(^_^;)日

 

 夕方に参護さんの家に行った時に、妹紅さんがお昼に訪ねてきたことを知った。

 

 それは別にいいのだが、参護さんがゆっくりレミリアを揉んでいた。

 

 なんでも、こうして揉んであげると喜ぶのだそうだ。

 

 私もやってみたけど、ゆっくりパチュリーちゃんとゆっくりレミリアちゃんの揉み心地が違うことに少しばかり驚いた。

 

 ゆっくりレミリアちゃんはいつも笑顔だったけど、揉まれている時の笑顔は一段と輝いていた。

 

 こんな表情をされれば答えてあげたくなるものだ。

 

 永遠亭に帰るのが少し遅れて師匠と姫様に心配されてしまった。

 

 てゐはてゐで、男かとか、お赤飯とか言い出すし……。

 

 明日から絶対に遅れないようにしよう。

 

 

 

 

□月(._.)日

 

 今日も夕方に参護さんの家に向かっていると、妹紅さんに会った。

 なんでも、朝夕に私が参護さんの看病を、お昼に妹紅さんが看病をすることにしたらしい。

 

 姫様と犬猿の仲とはいえ、私やてゐには普通に接してくれるのは助かる。

 

 そのことを了解して参護さんの家に行くと、枕元が焦げていた。

 おそらく、妹紅さんの仕業なのだろうけど、その身体で無茶はいけませんよ。

 

 ゆっくり妖怪たちも、あなたを心配しているのですから、しっかりと治してあの子たちを安心させてほしいものです。

 

 そういえば、今日は参護さんが汗だくで包帯もびっしょり濡れていた。

 どうせ、運動している所を妹紅さんに見つかったのだろう。

 だから枕元を焦がされるのだ。

 

 それにしても、やっぱりゆっくりパチュリーちゃんは万能だった。

 魔法で家事をこなすなんて器用なものだ。

 

 それだけ、参護さんがゆっくりパチュリーちゃんやゆっくりレミリアちゃんに好かれているという事なのだろう。

 

 でも、ゆっくりレミリアちゃんは手伝いができないし、一人では大変だろう。

 

 ゆっくりパチュリーちゃんに

「大丈夫? 家事が大変ならちゃんと誰かにお手伝い頼まなきゃダメよ?」

 と、言ってみたが、小首をかしげる仕草をしていた。

 多分わかってない。

 

 

 

 

□月(T_T)日

 

 朝、参護さんの家に行くと、ゆっくり妖怪が増えていた。ゆっくり咲夜ちゃんと呼べばいいだろうか?

 

 紅魔館の吸血鬼のメイド。彼女の姿を模したゆっくり妖怪だ。

 

 彼女はメイドなだけあって、家事が万能だった。

 あの姿でテキパキと掃除・洗濯をこなしていく姿は、私も唖然とした。

 

 稗田さんと上白沢さんへゆっくり妖怪が増えた事を報告してほしいと、頼まれた。

 なんでも、ゆっくり妖怪の生態調査を頼まれているそうで、こういうことは報告しなければならないのだそうだ。

 

 稗田さんに報告すると、とてもうれしそうにしていた。

 それが、ゆっくり妖怪が増えたことによる生態調査が進むことへなのか、参護さんが確実に元気になっていることへなのか?

 

 波長では喜んでいることしかわからない。

 

 夕方には、治りが遅いことに参護さんが不思議そうにしていた。

 そりゃそうだ、普通の人間で全治三か月、参護さんの治りの速さを考えても全治一か月の傷なのだ。

 

 そんな怪我で、早朝訓練しようとする人は、妹紅さんに脅されても仕方ないと思います。

 

 

 

□月∑(゚д゚; )ガーン日

 

 夕方のことだった。

 

 包帯を変えようと部屋に入ると、ゆっくりレミリアちゃんが参護さんの丁度額と目のあたりに乗っかっていた。

 

 なんでもヒンヤリしていて気持ちいいのだそうだ。

 

 だけど、ゆっくりレミリアちゃんは普通の動物と変わらない体温だ。

 つまり、参護さんの熱が上がっているのだろう。

 

 妹紅さんにも指摘されていたようなので、私は対処だけすることにした。

 

 冷たい水を満たした桶と手拭いで出来るだけ熱を冷ますように、寝汗をかくだろうから水分補給と着替えは小まめにするようにとゆっくりパチュリーちゃんとゆっくり咲夜ちゃんに頼んだ。

 

 なぜか、ゆっくり咲夜ちゃんの頭には犬耳が生えていた。

 今日一日の疲れをゆっくり咲夜ちゃんで癒すと、最後に参護さんの波長を見てみた。

 

 高熱が出ているのに、波長は落ち着いていて、しっかりとしていた。

 

 完治が近いのだろう。

 

 しかし、治りかけると絶対に参護さんは無茶をするから少々強引でも抑えてほしいと稗田さんと妹紅さんに頼まれたのだ。

 

 少々強引でも無茶させないようにしないと。

 

 

 

 

□月ズサーッε=ε=ε=c⌒っ゚Д゚)っ日

 

 朝一で参護さんの家に着くと、布団にいなかった。

 

 まさかと思い、家の中を探していると裏庭へ出る扉の近くに立っていた。

 

 何をしようとしているのかは、明白だ。

 治りかけであるが、無茶をすればまだ危ないのだ。

 

 弾幕を作る様に指先に弾を込めると後頭部に押し当てた。

 ホールドアップというやつだ。

 

 波紋の呼吸を繰り返すことでかなり治癒力が上がるようで、全治一か月の診断よりも少しだけ早く治りそうだ。

 

 だけど、ゆっくりちゃん達を心配させるのはダメでしょ?

 

 夕方にも行ってみたが、玄関先にクレーターが出来てたぐらいで参護さんはしっかりと眠っていた。

 

 どうせ、妹紅さんに見つかって威嚇射撃でも受けたのだろう。

 威嚇にしては少々威力が高く思えるが、完治したなら好きなだけ運動できますから、今は休んでほしい。

 

 ゆっくり妖怪たちは、参護さんを一生懸命看病している。

 

 ゆっくり咲夜ちゃんには料理まで手伝ってもらった。

 そういう風に包丁を持つんだなって今考えても感心する。

 

 あと、料理の手際が良かったのも驚きだ。

 

 ゆっくりパチュリーちゃんとゆっくりレミリアちゃんは参護さんの看病に付きっきりで、三人とも参護さんを大切に思っているのがよくわかる。

 

 ゆっくりパチュリーちゃんを拾ったのがきっかけと聞いたけど、その後彼女たちに優しく接していなければこんな風に親身になってくれないだろう。

 

 ……完治した後もたまに休憩に寄らせてもらおうかな?

 

 里の入り口付近って絶対通るし、程よく人が来ないから休憩するのに最適の立地なのよね。

 




 いかがでしたでしょうか?

 鈴仙は、ゆっくり達に非常に好意的な立ち位置です。

 波長が見える彼女はゆっくり達が無害であると逸早く知ることができたので、色々と興味もある模様です。


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外伝 海原参護 妖怪との戦闘

 趣向を変えて、日記形式じゃない東方饅頭拾転録です。

 シリアスというか戦闘メインです。

 普段のほのぼのじゃないのはちょっと……という方はスルーすることをお勧めします。


東方饅頭拾転録  妖怪撃退シーン

 

 夕暮れ時…逢魔時とも言われるが、総じて人ならざる者たちの力が増す時間帯と言われている。

 

 一月ほど前、海原参護は一体の妖怪を撃退、同時に片腕の骨を砕いて、護衛任務を無事成功させた。

 最近、人里を騒がせていた獣のような妖怪だ。しかし幻想郷では人と妖怪のバランスを保つために必要以上に妖怪を殺すことも、逆に必要以上に人間を殺すことも禁じられている。

 

 その中でも、討伐対象とされるほどに人間を殺し続けた妖怪。

 人と妖怪のバランスを崩すと見なされた、怪物だ。

 

 いかなる理由があろうとも妖怪は人里を襲うべからず。

 それを破れば人間はおろか妖怪すら敵に回す。明らかな愚行である。妖怪は人の畏れで生きている。畏れられる対象を失うことはすなわち死を意味する。

 

 破れば、博麗の巫女、妖怪の賢者、果ては時を止めるメイドなんかが漏れなく殺しにやってくる。

 

 しかし、この妖怪はそんな冷静な判断をできる状態ではなかった。

 

 復讐。

 

 妖怪退治の専門家である博麗の巫女ならまだわかる。

 妖怪の賢者と呼ばれるスキマ妖怪も十分すぎるほど理解できる。

 

 しかし、この妖怪はただの人間に負けた上に、片腕を砕かれたのだ。

 ただの商人の護衛であり、特別な存在でもないこの男に。

 

 眼前には人里の境界。

 それを背にして、長身の男が棒切れを担ぐようにして立っていた。

 

 視界に入れた瞬間、妖怪の憎悪は一気に膨れ上がる。

 冷静な判断ができないながらに理性を働かせていたが、その理性も憎悪に流されそうになってしまっている。

 

 ニクイ……ニクイ……。

 

 妖怪として、ただの人間に負けるなど恥以外の何物でもない。

 砕かれた腕はしばらくの時間を要して再生させ問題なく動かせるようになっているが、この男を思い出すたびに腕が疼く。

 

 コロス……コロス……。

 

 完治しているはずの腕が、再生してさらに強固になっているはずの腕が、痛み・疼き・圧迫される。

 

 この男が生きている限り、自分は一生この腕の疼きに悩まされ続けるのだ。

 断じて御免だ。

 この身は下級妖怪と称され、人間を殺して肉を、魂を食らい続けることで中級と呼ばれるまでに進化した。

 

 そんな妖怪の中でも成長し続けている自分が、人間なんかにつけられた傷で一生悩むのは御免だ。

 

 そう思い、妖怪は人里を襲おうとしたのだ。

 

 体長は三メートルにもなるだろう。

 二足歩行の獣を思わせる姿に、獰猛な牙と爪を持つ。

 

 その牙は容易に人を噛み砕き、その爪は人間を切り刻むことができる。

 

 しかし、その男は動かない。

 

 初めて対峙した時のように、杖と呼ばれる武器を構えたまま、ただジッと妖怪を見据えている。

 その表情に恐怖や焦りはない。

 あるのは、ただただ冷静な瞳と里には一歩たりとも入れないという鋼の様な意思。

 

 杖に片腕を砕かれた妖怪は、その杖に奇妙は紋様が刻まれていることに気付く。

 しかし、気付いたところで人間が扱う武器だと侮り、目の前の男への憎悪がその奇妙な差異を埋め尽くしてしまう。

 

「グルルルルルルゥゥゥゥゥ……!」

 

「うるさいよ。ゆっくり達や阿求様と慧音さんに聞こえたらこっちに来ちゃうじゃないか」

 

 獣が発する威嚇の唸り、憎しみと殺意の籠ったその声を男は事も無げに切って捨てた。

 

 男の言葉が腹に据えかねたのか、妖怪は唸りではなく吼えることで更に相手に自覚させようとする。

 貴様がケンカを売ったのは妖怪なのだということを、人間ごときが立ち向かえる相手ではないのだと、大きく息を吸い込み、男へ発するその前に

 

 ズドンッ!

 

 すさまじい衝撃が首、正確には喉元を襲った。

 

 男は一瞬の間に、息を吸い込んで顎を上げ、咆哮を飛ばす姿勢の無防備になった喉元を、鋼の杖で貫いただけだ。

 

 容赦の無い一撃。

 喉を潰され、吼えるために吸い込んだ空気が情けなく喉の穴から漏れてしまっている。

 

 一度ならず、二度までも自分の身体に傷をつけた。

 

 妖怪はわずかに残っていた理性を放棄した。

 喉を潰すために、飛び上がって杖を喉に突き刺す、故に男は空中で無防備だ。

 

 手加減なく、慈悲も無く、羽虫を払うように男に裏拳をぶつけ、大木に幹に叩きつける。

 幹は大きく抉れ、男がぶつかった箇所はクレーターのように成形されてしまった。

 

 その状態で男は再び地面に降りると、妖怪へ向かって駆け出す。

 ダメージが無い訳ではない、今の一撃で男はアバラと内臓にダメージを負ってしまった。

 

 しかし、男の攻撃は緩まない。

 

 姿勢を低く、停止からトップスピードに変化したようにジグザグな軌道で妖怪へ近づいて行った。

 喉は生物にとって弱点たり得る部分だ。

 

 そこを真っ先に狙ってきたということは次は心臓か脳天。

 妖怪は男の攻撃を受けた後、その牙で噛み砕いてやろうと防御の姿勢を取った途端だ。

 

 激痛。

 

 男は喉を潰した後、心臓でも脳天でもない。妖怪の足を攻撃した。

 

 上半身に意識が逸れていたから、片足は容易に砕かれた。

 これで、簡単には男の速さについていけなくなった。

 

 だが、妖怪も黙って足を砕かれたわけではない。

 砕かれた足を振り上げ、男を蹴り飛ばした。

 

 これには男も吹き飛ばされ、二度三度と地面に叩きつけられながら転がっていく。

 

「グッ……!!」

 

 しかしコォォォォ!という、不思議な呼吸音を発しながら男は立ち上がると、再びジグザグな軌道で妖怪に近づいていく。

 

 しかし、妖怪も一度見た攻撃だ。

 喉を狙おうが足を狙おうが、打ち込んだ瞬間、確実に爪で八つ裂きにしてやろうと構えた。

 

「ヒューォアァァァァ!!」

 

 飛び上がるには近すぎる、確実に下だという確信が生まれる。

 潰され、穴の開いた喉から空気が漏れるが、妖怪が男に向けて爪を振り抜く。

 

 だが、妖怪の爪に望んだ手応えは無かった。

 あるのは自慢の爪が地面を削った感触のみ。

 

 一瞬、己の視界から男が消え、混乱した妖怪は五感を研ぎ澄ます。

 

 彼の者の身は妖怪。それも、獣を主体とした五感と野生で戦う存在だ。

 わずかな物音に振り返り、飛び上がったのをその目で見てしまった。

 

 瞬間、妖怪の片目は光を失った。

 

 五感の一部を削られ、混乱し、みっともなく喉元の穴から空気を漏らしながら慌てるように足をふらつかせる。

 

 

 

 

 男、海原参護は波紋使いである。

 

 呼吸法により、得られるエネルギーは治癒能力を活性化させ、強力な波紋を相手にぶつけることで太陽に焼かれるような傷を負わせることができる力だ。

 

 参護は波紋の力で五感を研ぎ澄ませ、思考速度を強化し、その思考速度に対応できるように肉体も活性化させた。

 

 そうすることで何が起きるか?

 

 研ぎ澄まされた五感は時の流れを緩やかに感じさせ、強化された思考速度はその緩やかな流れの中で通常の思考となんら変わらない速度で考え、通常では走馬灯でも見るような世界で出来ない行動を活性化された肉体が可能にする。

 

 当然、五感にも脳にも肉体にも多大な負荷をかける行動だ。

 

 故に、この技にかけられた制限は十秒のみ。

 

 それを超えると五感・脳・肉体のいずれかに多大なダメージを負う。

 

 だが、大抵の相手には十秒でも多いと思えるほどに、この技は常軌を逸している。

 

 ジグザグな軌道で妖怪へ向かって行く。

 研ぎ澄まされた五感で妖怪の狙いを感じた、感じ取った妖怪の狙いをどうするか。

 

 実に簡単な話だった。

 スライディングで妖怪の股を抜け、先ほど自分が強かに叩きつけられた大木まで走ると、幹を蹴って空中へ飛び出す。

 

 おもわず、本能的に目で参護を追ってしまった妖怪の負けである。

 

 妖怪が彼を視界に収めたときには、避けられない一撃が妖怪の目に叩き込まれていたのだから。

 

 妖怪が怯んだスキに距離を取ると、一息つく。

 

 五感に変化はないが、頭痛があり、体を重く感じている。

 

 たった二、三秒単位で使ってこの始末だ。

 十秒しっかり使い切った場合、五感にも影響が出るほどにダメージを負う。

 

 そして、その十秒の世界を参護は発動させた。

 

 妖怪の至る所に杖で打撃を与えていく。

 

 三秒

 

 脳天に叩きつけ、腹を杖で打撃を貫通させる。

 

 五秒

 

 全身に波紋を巡らせ、杖に集めていく。

 

銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)!!」

 

 ここから、参護は全力で行動する。

 

 六秒

 

 妖怪の右腕に一撃、左腕に一撃。

 

 七秒

 

 同じように両腕に一撃ずつ。

 

 八秒

 

 そして三発目で両腕が砕ける音と感触。

 

 九秒

 

 すぐさま距離を取り、相手に向いたまま杖を構える。

 

 十秒

 

 たった十秒の間に、妖怪は全身を打ちのめされ、脳天を割られ、内臓を衝撃でボロボロにされ、両腕を折られた上に、波紋を流されて肉が爛れるほどのダメージを負った。

 

 この時点で妖怪は誇りも自尊心も砕かれ、痛む足を引きずりながら人里から退散していった。

 

 それを見届けた参護も、ボロボロの身体で家に戻っていく。

 

 

 

 村の入り口で起こった戦闘。

 

 それを途中からとはいえ見ていた二人。

 

 稗田阿求と上白沢慧音。

 

 二人は目を見開き唖然としていた。

 

 当然だろう。

 最後の十秒、参護の命を削る技を見ていたのだから。

 

 加速した参護の視点では一撃一撃を叩き込んでいるように見えただろう。

 

 しかし、通常の時間の流れにいる彼女たちには、風が何度も妖怪を殴りつけ、最後には銀の(やじり)が左右に三本ずつ、次々に展開され、ほぼ同時に妖怪の腕を破壊した光景が見えていたのだから。

 

「慧音さん、最後のあの技は……」

 

「阿求殿、私にもわかりません。ただ、海原殿をただの人間だとはもう言えないほどの光景を見た。そうとしか言えません」

 

 しかし、最後の十秒の印象もあるが、同時に二人は心配していた。

 大木に叩きつけられ、地面に何度も叩きつけられながら転がっている。最後のあの技も、明らかに人間の限界を超えている技だ。

 

「最後の技。あれは人間には辛い技だと思います。肉体強化の最高峰。いくら波紋の力を使ったとしても無傷なわけがありません」

 

「なるほど、では阿求殿。海原殿の様子を見ましょう。ゆっくり妖怪たちだけでは看病も難しい」

 

 そう言うと、二人は参護の家へ向かっていった。

 

 




 いかがだったでしょうか?

 最後の十秒。参護の使った技はそのまんま、仮面ライダー555のアクセルフォームから繰り出されるクリムゾンスマッシュです。

 あれを人の身で再現しようとしているから反動は相当でかいです。

 ちなみに、兄貴直伝であり、兄は参護より負担が少なく使用できます。


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藤原妹紅の日記 □月

 おまたせしました。

 言ってみましょう。

 もこたんインしたお!

 もこたんは、二次とかでそれぞれのイメージが固まっているのが強いキャラなのでちょっと不安ですww


□月(´・ω・`)日

 

 前から慧音に捜索を頼まれていた、人里を襲った妖怪を見つけた。

 

 死後、数日といった所だろうか?

 不死の私から見て、他者の死は何とも言えない感慨深いものを感じてしまう。

 

 それはそれとして、その妖怪はひどい状態だった。

 片目は潰れ、喉元には突き破られたような穴、全身に打撃の跡、片足は足の甲を潰されていた。

 明るい場所でしっかり確認したが、的確に視力を奪い、吼えるための喉を潰し、急所を突き、動き回る機動力を奪っている。

 

 何より酷い部分が両腕だった。

 

 腐敗が進んでいたけど、両腕とも肘の関節付近の骨を砕かれている。

 その上、腕全体に焼け爛れたような火傷の跡が広がっていた。

 

 これをやったのはかなりの実力者だろう。実力者なのだろうけど、あれは霊夢やスキマ妖怪がやったような跡じゃない。

 そもそも、彼女たちぐらいになれば急所どうこうじゃなく、数手で命を絶つ。

 

 私だって、上半身消し炭ぐらいできるし、こんな風に相手の手札を一枚一枚剥ぐような戦い方はしない。

 

 慧音が言っていた海原参護とかいう男の実力。

 私の見立てだと、人間以上妖怪未満……いや、人間以上上級妖怪未満かな?

 

 霊夢やスキマ妖怪のように瞬殺できるほどじゃないけど、中級妖怪を倒せる実力者ということだ。

 

 慧音に言われてた妖怪の死体も見つけたことだし、さっそく明日報告に行こう。

 

 しばらく慧音、事後処理に追われるだろうな。

 里を騒がせた妖怪だったんだし、仕様が無いと思うけどね。

 

 

 

□月(-.-)日

 

 慧音に報告した結果、人里を襲った妖怪に間違いないということで、妖怪死亡ということで処理していくことになるらしい。

 

 慧音へ報告に行ったらそう言われた。

 一応、霊夢にも報告するそうだが、スキマ妖怪の方は連絡手段が無い。

 霊夢に会った時に報告を頼むか、そもそも全部見ているのではないかとも思う。

 

 前にも慧音に教えてもらったけど、里の入り口付近に住んでいる男があの妖怪を撃退したそうだ。

 

 普段は飛んで里に入っているから気にしていなかったけど、空から見た時に外れに一軒家があった。

 あれが海原参護という男の家なのだろう。

 

 幻想入りして一年。

 

 外の人間がそれだけ生きていられるのも結構珍しいと思う。

 何でも屋をしていて、里の仕事や外に出る時の護衛、幅広くやっているのもめずらしい。

 

 相応の実力があるからこそできることだろう。

 

 それに関して、慧音が心配していた。

 どうも、あの妖怪を撃退した際に重傷を負っていたらしく、しばらく絶対安静なのだそうだ。

 

 妖怪の状態から見て、激闘だったのだろう。

 下級妖怪から中級妖怪に進化した獣型の妖怪。

 速さや力も相当なものだったはずだ。

 

 だから、ああいう結果になったのだろうけど。

 

 慧音がしきりに彼の心配をしていた

 なんでも、色々と無茶しがちな男らしい。

 怪我した次の日に早朝鍛錬してた位、自分を放置しがちな性格なのだそうだ。

 

 そこから慧音に頼まれて昼に様子を見に行くことになった。

 

 朝夕のどちらかは鈴仙が薬売りの途中で寄るそうだから、私は昼に行くことにした。

 

 なんでも、ゆっくり妖怪という珍しい妖怪の生態調査もしているそうで、害はないらしい。

 ちょっと楽しみだ。

 

 

 

□月(^_^;)日

 

 昼にいきなり海原の奴の家に行ったら、ポカンとしてた。

 

 そりゃいきなり見ず知らずの女性が家に入ってきたら驚くよね。

 

 そして、初めて見たゆっくり妖怪。

 この子は紅魔館の魔女かな?

 私にお茶を出してくれて、ゆっくりしていってねっと言ってくれた。

 

 非常に可愛げのある妖怪じゃないか。

 

 海原がゆっくり妖怪は揉まれることが好きだと言っていたので、ゆっくりパチュリーちゃんを揉んでみた。なんというか、癖になる揉み心地だった。

 

 揉んであげると、プルプルと震えながら楽しそうにしてるのは正直可愛いと思う。

 

 思わずギュッと抱きしめてしまった。

 

 海原に見られたけど、仕方がないと思う。こんなに可愛いのが悪い。

 

 

 

□月(._.)日

 

 お昼に海原の家に行く途中、鈴仙に会った。

 お昼は私が看病するという旨を伝えて別れた。

 

 輝夜の奴の部下とはいえ、私の相手は輝夜だけで部下は普通に接しても問題ないと思ってる。

 

 それはさておき、慧音が心配するのがよくわかる。

 海原が重傷にも拘らず起き上がろうとしていたので、厳しくして良いという慧音の許可のもとに、枕元を少々焦がしてあげた。

 

 冷や汗流しながら布団に戻ったけど、しっかりと休んでいるなら私だって何もしないのにね。

 

 しかし、見れば見るほどあの妖怪を殺した人間には見えない。

 怪我のせいでグッタリしているのもあるのだろうけど、人柄的にも戦いを得意にするように見えない。

 

 人は見た目に寄らないと言うけど、その通りだと思う。

 

 だって、慈愛に満ちた顔でゆっくりレミリアちゃんと遊んでいる彼からはちょっと想像できない。

 

 

 

 

□月(T_T)日

 

 今日のお昼は飽きただろうけどお粥だ。

 鈴仙は雑炊も作っているらしいけど、私はひたすらお粥。

 飽きたのなら、安静にして早く治す努力をするのが良いと思う。

 

 それと、ゆっくり妖怪が増えていた。

 ゆっくり咲夜ちゃんと呼べばいいのかな?

 

 さすが、メイドである彼女のゆっくり妖怪。

 朝からいたようだけど、部屋の掃除が綺麗にされていた。

 

 洗濯も炊事もしっかりされていて、どうやってその体型でやったのか知りたくなった。

 

 包丁は見たけど、やっぱり不思議な妖怪だと思う。

 

 ゆっくりレミリアちゃんはずっと、海原の所でうーうーと楽しそうに鳴いていた。

 傍にいるのがうれしいのだろうか?

 

 普段仕事でこの時間は空けているだろうし、ゆっくりレミリアちゃん的にはうれしい状況なのかもしれない。

 

 

 

□月∑(゚д゚; )ガーン日

 

 やはり、十分重傷だと思う。

 

 海原の家に行ったら、顔面にゆっくりレミリアちゃんを乗せて眠っていた。

 

 なんでもヒンヤリとしてて気持ちいいのだそうだ。

 しかし、ゆっくりレミリアちゃんは普通の妖怪や動物の体温と変わらない。

 おかしいと思って海原の額に手を当てると驚くほど熱かった。

 

 体温が高いのだから、あの反応は仕方ない。

 とりあえずタライの水を換えておいたが、これだけでは不安だ。

 

 いろいろ考えたが、結局ゆっくりレミリアちゃんを額に乗せてきた。

 

 いや、ゆっくりレミリアちゃんが楽しそうだったのと海原が良く眠れるであろう配慮というものだ。

 

 決して、いたずらじゃない。

 

 鈴仙の反応が見れないのはちょっと残念かな。

 

 

 

 

□月ズサーッε=ε=ε=c⌒っ゚Д゚)っ日

 

 お昼に海原の家に向かうと、玄関先で薪割でもしようとしていたんだろう。

 薪持ってたし、斧を傍に置いてたし。

 

 昨日、ちょっと危険なレベルの熱出しておいて、こんな無茶するの?

 そう考えたらカッと来て、彼の家の前に穴開けちゃった。

 

 その時にちょっとした演出を加えてみたけど、効果はてきめんだったようだ。

 

 ゆっくり妖怪たちも寝ててほしかったようで、三人で海原を引っ張って布団に押し込んでいた。

 

 いやぁ、可愛いね。

 

 不老不死になっちゃったけど、輝夜の奴と殺し合う以外に、ちょっとした癒しが見つかったのは運が良かった。

 

 ゆっくり妖怪は可愛い子が多いし、ゆっくり咲夜ちゃんは料理も手伝ってくれた。

 その姿を唖然とした顔で見てた海原がちょっと面白かった。

 

 この家は面白い。

 

 暇を見つけたらゆっくり妖怪たちと遊びに来てもいいかもしれない。

 




 いかがだったでしょうか?

 次はまた、参護の日記になりますが、誰絡ませようかな?

 阿求は決まってるけど、あと一人。

 決まり次第、投稿しますね。


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海原参護の日記 ∀月

 ども、今回は海原参護の日記です。

 新キャラも新ゆっくりも登場しますので、お楽しみに。

 章分けは外しました。

 投稿しにくいというのと、読者が最新話に飛びにくいという意見をいただいたからです。

 ご意見ご感想、誤字脱字指摘、ありましたら遠慮なくお願いします。


∀月キタ━━(゚∀゚)━━!!日

 

 完全復活!

 

 随分と療養をしていたが、鈴仙さんより完治の診断を貰った。

 

 鈴仙さん、妹紅さんの二人は今後たまに遊びに来るそうだ。

 ま、ゆっくり妖怪を愛でに来るのだろう。彼女たちの遊び相手が来てくれるのは正直ありがたい。

 

 朝の鍛錬も久々だったけど、予想通り全身が鈍くなっていた。

 これは数日、貯金に物を言わせて鍛錬して元の勘を取り戻す必要がありそうだ。

 

 太極拳の応用で、理想の型を想像してそこに自分の身体や杖を乗せる訓練で、自身のイメージよりかなり遅れてしまっていた。

 その上、無呼吸での連撃もすぐに息が上がる。

 

 息が上がるということは波紋の練りが甘くなるという事。

 やっぱり早急に戻す必要があるな。

 

 あと、阿求さんと慧音さんが完治祝いに来てくれた。

 

 二人ともY咲夜達と遊んでいた。

 新しいゆっくり妖怪を見るのも予定の一つなのだろうし、みんなで色々と楽しんでいた。

 

 いや、トランプで遊んだのはいいんだけど、ゆっくり達のカードの持ち方は何度見ても慣れない。

 

 Yパチュリーはカードを自分の前に一枚ずつ浮かせていたけど、他は独特だった。

 

 

 

∀月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 今日裏庭で鍛錬を繰り返していると、空から風と共に天狗が舞い降りた。

 

 舞い降りたなんて優しい言い方じゃないな、風と共に着弾したがイメージに合う。

 

 初対面だが、知識として知っている。

 

 烏天狗の射命丸文。

 

 色々と人物像が錯綜する人だけど、俺のイメージに合う人だった。

 

 どうやら、俺が中級妖怪に勝利したことが流れ流れて彼女の元に届いたようだ。

 様々なインタビューを受けた。

 

 なんだよ必殺技って。

 ご丁寧にポージングまで決めていた。仮面ライダーっぽかったのがちょっとうれしかった。

 

 色々と取材されていたが、波紋の事は話したが、十秒制限の加速技は伏せておいた。

 さすがに切り札を新聞に載せられてはたまらない。

 

 ゆっくり妖怪に関しては、珍しいので生態調査もあり、むやみに人が来られると困ると話すと、記事にすることは控えてくれた。

 おそらく、俺の方が記事としてはネタになると考えたからだろう。

 

 あと、純粋にゆっくり妖怪たちと遊ぶのが気に入っていたのもあるだろう。

 特にYレミリアが文さんを気に入っていた。

 

 頭に降り立っては、うれしそうにしていた。

 さすがに、毒気を抜かれたのか苦笑気味にされるがままになっている文さんもちょっと照れ気味な所が可愛いと思った。

 

 新聞は定期購読を依頼。

 新聞の広告欄に『何でも屋 サンゴ』として広告を出してもらう契約をした。

 

 内容は『人間も妖怪もお仕事手伝います。護衛から扉の障子貼り、ゲームのレベルアップも手伝います。何でも屋 サンゴをよろしく!』

 

 というものだ。

 ロゴやら体裁やらは文さんに任せたが、しっかりやってくれるそうなので助かる。

 

 阿求様にも報告しないといけないな。

 

 

 

∀月(´Д`)ハァ…日

 

 阿求様に報告も兼ねて、久々に人里に行ってきた。

 

 文々。新聞に広告を打ってきたこと、他の妖怪からゆっくり妖怪の知識が得られるかもしれないから妖怪相手の商売もすることを報告した。

 

 最初は驚いていたが、阿求様も他の妖怪の知恵や書物を借りられるようならそうしてほしいと頼まれた。

 

 どうせ、数日は元の戦闘能力になるまでリハビリになるんだ。

 寝込んでいてできなかった内職を全部終わらせてしまうのも手だな。

 

 後、報告としてゆっくり妖怪は元になった人物の交友関係も元とするようである、と報告した。

 つまり、レミリアさんとパチュリーさんが友人同士であること、レミリアさんと咲夜さんが主従であること、それらと同じようにゆっくり妖怪たちも友人同士であり、主従であるということだ。

 まあ、やはり多少の差が出ているだろうとも思う。

 

 YパチュリーとYレミリアは友人というより姉妹に近い関係に見えるし、YレミリアとY咲夜も主従は主従なのだろうが、こちらは失礼かもしれないがベビーシッターとも感じてしまった。

 

 Yレミリアが幼いというのもあると思うが、微妙な性格の差異が関係にも影響していると考えられる。

 

 パチュリーさんは、知識ではあまり他者に興味を示さず、読書を好む性格だとなっているが、Yパチュリーは読書こそ好きだが、他人への興味が強い。阿求様や慧音さんにお茶出しをしていたのも交友を図りたいという気持ちの表れだろう。

 

 Y咲夜はYレミリアに忠誠を誓っているという部分が、娘を守る母親にも見えてくる。

 実際、タンスの角にYレミリアがぶつかった際に、一瞬で治療に駆け寄り、家中の角という角にスポンジのような衝撃吸収材を配置した過去がある。

 

 しかも、Yレミリアが農具にぶつかれば農具をしまう道具が出来て、皿を割ってしまえば、食器棚が頑丈になる。

 

 時を操ってある程度作業しているのだろうが、家がどんどん安全になっていくのを見ると何とも言えない気分になる。

 

 報告に一応あげておいたが、阿求様も困ったように笑っていた。

 そりゃ、困るわな。

 

 

 

∀月(ヽ´ω`)フゥ-3日

 

 今日も今日とて取材に来た文さんと縁側で駄弁る。

 

 Y咲夜とYパチュリーがお茶出しをしてくれたので、まったりと取材と会話を楽しめた。

 

 なんというか、ノリが良いというかこっちの会話の内容をきちんと拾ってくれる。

 こっちに合わせてくれるような人だ。

 

 対人戦の練習にも付き合ってくれた。

 俺の実力を見たいという打算もあるのだろうが、素直にうれしく思う。

 

 そして、幻想郷最速は伊達じゃないと思った。

 

 波紋で強化して、なお届かなかった。

 おそらく、十秒加速の世界でようやく届くほどの速度。

 

 驚いたと言ってくれたが、やはり世辞に感じてしまう。

 

 程よく今日も鍛えられた。

 やっぱり、一人で練習していてもダメだ。

 誰かと戦ってこそ技は磨かれる。

 

 毎日文さんに頼むのも迷惑だろうし、対戦相手になってくれるような奇特な里の人間も知らない。

 

 対戦相手が欲しい。

 

 おもわず、つぶやいてしまっていたのが聞こえたのか、Yパチュリーが首をかしげていた。

 

 ごめんよ、対戦相手なんて難しいよね。

 

 

 

∀月( ゚д゚)日

 

 同居人が増えました。

 

 いい加減学習しろ俺!!

 

 Y美鈴(メイリン)

 

 紅魔館の門番である彼女の特性を持ったゆっくり妖怪だ。

 

 第一声が「ゆっくり居させてください」だった。

 苦労人ならぬ、苦労饅頭なのだろうか?

 

 昨日のつぶやきをYパチュリーが聞き届けてくれたのだとしたら、Y美鈴は対戦相手としての役割ができるということだ。

 紅美鈴(ホン・メイリン)、紅魔館の門番にして気を操る妖怪だったと記憶している。

 それがゆっくり妖怪にも受け継がれているのだとしたら、彼女はとても頼りになる存在になる。

 

 そして、実際その通りだった。

 

 波紋で強化した俺の身体能力で振るう杖をヒラリヒラリとかわし、挙句の果てに未熟者めとばかりに頭に乗る。

 

 的が小さいのもあるが、強いというか上手い。

 

 おかげで、今日一日充実した鍛錬ができた。

 

 お礼に揉んであげると、なんというか弾力があり、スルッと掌を滑る手触り、マイクロファイバータオルとか似ている気がする。なんとも面白いさわり心地だった。

 

 本人も動けるせいなのか凝りやすいらしい。

 揉むというよりマッサージみたいな方が好みらしい。

 

 しかし、明日は阿求様に報告が必要だろう。

 

 あと、文々。新聞が届いた。

 しっかりと何でも屋サンゴの広告が掲載されていて非常にうれしい。

 有名人にでもなった気分だ。

 

 記事の方は、人里を守った人間の戦士として紹介されていて、その記事に付随するようにそこでも何でも屋の宣伝がされていた。

 

 これは、里に出た時にでもお礼に菓子折りでも買っておくのが礼儀だろう。

 

 思った以上に宣伝してくれる彼女に感謝だ。

 

 

 

∀月φ(゚Д゚ )フムフム日

 

 Y美鈴はなぜか、玄関付近にて寝床を構えた。

 これも彼女の影響なのだろうか?

 

 今日は阿求様に報告と、文さんへの菓子折りを買いに行った。

 

 阿求様も文々。新聞を購読しているようで、宣伝されていたことを自分のことのように喜んでくれた。

 

 Y美鈴が我が家に合流、合計四名のゆっくり妖怪が居ることになる。

 

 二回目の自分の発言でのゆっくり妖怪の参加だ。今後言動には気を付けていきたい。

 

 なぜか、どうにかなる気がしないけどね。

 

 阿求様は明日にでも見に来てくれるとのことだったので、そこで別れて文さんへの菓子折りを買いに行った。

 

 文々。新聞の広告で妖怪からの仕事も受け持つことに関して、里の人間から石を投げられるぐらいの覚悟はしていたのだが、友好的な妖怪は人里に出入りどころか、買い物すらして行くのだそうだ。

 

 ならばと、烏天狗の好みそうな菓子、で聞いて回ったら予想以上にいろいろなお菓子を紹介された。

 

 ちょっと色々買い込みすぎたかもしれないが、渡しきれなかったら、俺たちで食べればいい話だしね。

 

 

 

∀月アワワヽ(´Д`;≡;´Д`)ノアワワ日

 

 阿求様と文さんが訪ねてきた。

 

 阿求様はY美鈴を観察して、他のゆっくり妖怪とのコミュニケーションも観察していた。

 というか、コミュニケーションに巻き込まれていた。

 Y咲夜にお茶を貰って、頭にYレミリアが乗り、Yパチュリーが昨日購入した菓子折りの残りを出して、Y美鈴が阿求様に気を流して体調を整えていた。

 

 なんだろうか、あの空間はゆっくりパラダイスとでも呼ぼうか?

 

 文さんは菓子折りを貰ってなんだか恐縮していた。

 なんでも、取材に協力してもらって、広告まで契約してもらえたのだからあれくらいのサービスは普通なのだそうだ。

 

 しかし、取材内容と広告を上手く繋いで記事を書く手間を考えると、やはりお礼はするべきだと思う。

 

 今日は三人とゆっくり妖怪たちで遊びまくった。

 トランプやUNOがあったのはびっくりだが、TRPGをYパチュリーが取り出した時は、思わずどうやってトークプレイするんだ!? と突っ込みを入れそうになった。

 

 いや、入手経路も気になると言えば気になるのだが……。

 

 感想としては、総合ビリという称号を授与されたのが、くやしいです。

 というか、Yパチュリーが次々にボードゲームやらTRPGやらカードゲームやら、どっから出してくるのかわからないが、遊具を大量に持っていることが今日判明した。

 

 割とどうでもいい。




 いかがだったでしょうか?

 そろそろ、ゆっくりたちが増えてきて把握が大変になってきた。

 もう少しで紅魔館勢(ゆっくり)が全員そろいます。

 ちょっとしたサプライズもありますので、全員集合をお楽しみに!


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稗田阿求の日記 ∀月

 ちょっとシリアスを描こうとして失敗している気がする今回。

 更新時間が深夜帯なのは、書きあがるのが大体この時間だからです。

 アルコール入っている場合が多いので、無駄にテンションが高いことも多い。

 酒は好きだけど、付き合いと彼の飲み会は苦手。
 気の合う仲間とバカ話とかしながら、楽しみたいものです。


∀月キタ━━(゚∀゚)━━!!日

 

 今日、参護さんが完治の診断を受けたということで、慧音さんを連れてお祝いに行った。

 

 Y咲夜を一目見て置きたかったという目的がありましたが、やはり里のために重傷を負って倒れた人間の完治を祝わずして、里の顔役はやれません。

 

 会ってみると、たまに人里で本人を見かけますが、似ています。

 

 ゆっくり妖怪特有の警戒心の無さと人懐っこさがありますが、あれはYレミリアを溺愛している母親のようでした。

 

 しかし、集まったところで結局することも無かったので、参護さんが持ってきていたトランプで遊んだ。

 

 色々なゲームを参護さんから教えてもらったが、ゆっくり妖怪たちも全員参加。

 当然、彼女たちもカードを持つ。

 

 器用にカードを扇状に広げているYレミリアやY咲夜の姿が非常に印象に強かった。

 

 しかも、結構強かったですし。

 

 Yパチュリーは魔力で目の前に並べるように浮かべていた。

 

 ゆっくり妖怪はこういう遊戯は強いのだと理解した。

 

 

 

 

∀月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 今日は慧音さんと一緒に、里を襲った妖怪の一件で、里全体から出てきた要望をまとめて対応できるものとそうでないものに分けていた。

 

 私や慧音さんだけじゃなく、里の有力者が集まって集計しているので当然、個人の思惑が見え隠れする。

 

 今日話し合われていたのは、『海原参護を里主導で管理する』という案件だ。

 

 私や慧音さん、他にも参護さんと面識がある人たちはそれを世迷言だと切って捨てる。

 

 だけど、一部の有力者は本気でこれをするべきだと私たちに向かって熱弁していた。

 

 そもそも、個人の戦闘力でいえば、慧音さんの方がずっと強い。

 同じことを慧音さんに言ってこないところを考えると、体のいい捨石が欲しいだけなのだろう。

 

 それがわかってしまうから、私たち側は非常に不機嫌なのだ。

 海原参護さんという人間を里の捨て駒にするなど、最初の頃に私がしたことと同じだ。

 この苛立ちは私の中で罪悪感も含んだものなのだと思う。

 

 第一、慧音さんが反対側に回っている時点で、彼らに参護さんを捕らえることはできない。

 妖怪に勝てる人間が、一般人相手に後れを取るなんてことは万に一つぐらいの可能性しかない。

 

 英雄と一般人と怪物の相関図があるが、それが成り立つのは英雄側が一般人を攻撃しないと仮定した時の相関図だ。

 

 しかも、一般人側にも英雄側につく人間が多くいる現状、相手側は成す術無しだろう。

 後は彼らの動向に注意しなければならない。

 

 人間は自分の理想を追い求める際にどうしても他者の望みを踏みにじりがちだ。

 

 過去の私がそうであったように。

 

 考えてみれば参護さんは妖怪に嫌悪感が無い。

 襲われれば返り討ちにするし、遊びに来れば遊んで帰す。

 

 要は彼らは参護さんに外敵から自分たちを守らせたいのだ。

 ならば、次に会った時にでも『妖怪側の何でも屋の依頼』を受けてみるように勧めるだけだ。

 

 里に妖怪が来ることは珍しいことじゃない。

 

 彼らの依頼を受けて、『里以外の依頼でも動く』事を自覚させたい。

 彼の意思があり、彼に敵対すると相応のしっぺ返しがあると。

 

 騒いだところで彼の人柄を知っている人たちの方が多いのだ。

 

 この意見をひっこめるしかなくなるだろう。

 

 

 

 

∀月(´Д`)ハァ…日

 

 参護さんが家を訪ねてくれた。

 

 今里では天狗の新聞で騒然となっている。

 

 『人間も妖怪もお仕事手伝います。護衛から扉の障子貼り、ゲームのレベルアップも手伝います。何でも屋 サンゴをよろしく!』

 

 昨日私が考えていた対応策そのままの事をやってのけてくれた。

 しかも、『人間も』と付けているあたり、余計な批判を防ぐ布石にもなっている。

 

 妖怪の中には知識をため込んでいる紅魔館の魔女の様な者もいる。

 彼女ほどではないにしても、妖怪からゆっくり妖怪の知識を得るという新しいこともできるようになれば心強い。

 

 そのゆっくり妖怪の報告が今日もあったが、内容がなんと言っていいかわからない。

 

 本人たちの交友関係とゆっくり妖怪たちの交友関係の違い。

 

 後、Y咲夜はYレミリアに対してかなり過保護だという報告を受けた。

 扱いが幼児にやるような対応だと思う。

 

 

 

 

∀月(ヽ´ω`)フゥ-3日

 

 里のいわゆる強硬派とも呼べる人たちが、土下座で参護さんへの取り次ぎを申し出てきた。

 

 そりゃそうだ。

 

 自分たちの横暴な言動やら行動で里の守りを失いかねない状態になったのだから。

 

 参護さんが文々。新聞に広告を出したという噂はすぐに広まった。

 というのも、先日射命丸さんが私や慧音さんの前で、堂々と

 

「今回、海原参護さんからうちの新聞に広告を出したいと依頼を受けまして」

 

 という風に挨拶というか報告に来ていた。

 それは道端だったので里中の人間に広まったと考えてもいいと思う。

 

 まだ、新聞すら届いていないというのに性急なことだと思う。

 

 私たちに取り次ぎを申し込んできたのも、自分たちが直接行って彼の機嫌を損ねることを恐れたからだろう。

 だけど、参護さんには妖怪側への繋がりも必要だろうと思う。

 

 残念ながら、彼は人間側だけで収まるべき人物じゃない。

 

 それに、妖怪側からの依頼を受けたからと言って人里に被害を加えるような人じゃない。

 

 やはり、実際に会ってみないと人柄というものは分からないものだと思う。

 

 強硬派の人達には、丁重にお帰り願った。

 

 参護さんの意思を無視しようなどと、助けてもらっている人間のすることじゃない。

 里の大半は参護さんに仕事を依頼して彼への心証を良くしている人たちだ。

 その人たちは、今回の話に何の心配もしていないのだ。

 

 少し不安になっていてもらおう。

 自業自得というものです。

 

 

 

 

∀月( ゚д゚)日

 

 文々。新聞が届いた。

 

 あの烏天狗の新聞なので内容に不安があったが、非常に好意的な内容で書かれていた。

 

 広告収入と記事の内容が非常に丁寧だったことを考えると、参護さんは彼女の取材に対して紳士的に対応したのだと思う。

 

 広告もさることながら、記事の内容もさりげなく記事から広告へ誘導される。

 広告欄も目新しい広告が入ると目が行くものだ。

 そういう意味では、新しい広告が入ることは金銭的にも新聞的にも良いことなのかもしれない。

 

 里の方は、何でも屋としての参護さんを知ったことと、記事の内容は先日の妖怪撃退の記事だったこともあり、参護さんの評価は上がっていると言ってもいい。

 

 強硬派はすっかり息をひそめてしまった。

 

 参護さんが里全体で評価を上げている今、下手なことを言えば里の有力者としての権限どころか、里自体に居れるかどうかという状態になりかねないからだ。

 

 これから、参護さんの所には人間も妖怪も集まるようになるだろう。

 

 きっとあの家は今まで以上に賑やかになる。

 今から少し楽しみだ。

 

 

 

 

∀月φ(゚Д゚ )フムフム日

 

 彼はもしかしたらゆっくり妖怪が好む何かを持っているのかもしれない。

 

 Y美鈴が昨日彼の家に住み着いたと報告を受けた。

 

 非常に戦いに特化しているようで、彼と戦闘訓練をすることができるらしい。

 

 明日にでもどういう娘なのか、会いに行こうと思う。

 

 昨日の新聞は本人から見てもやはり好意的に書かれているようで、参護さんが感謝していた。

 菓子折りを渡したいと言っていたので、彼女が好きそうなお菓子を何件か勧めておいた。

 

 彼の帰り際に、私も菓子折りを貰った。

 私の好きな和菓子の詰め合わせで、このような詰め合わせは初めて見た。

 

 聞いてみると、私の好きなお菓子を聞いて回って、店の人達に詰め合わせを作ってもらったのだそうだ。

 

 私のために色々と気を使ってくれてとてもありがたい。

 大好物のどら焼きが多めに入っていたことも高評価だ。

 

 いつ私がどら焼きが好きだと知ったのだろうか?

 

 

 

 

∀月アワワヽ(´Д`;≡;´Д`)ノアワワ日

 

 参護さんの家に行くと、射命丸さんが来ていた。

 

 なんでも、取材とネタ探しに立ち寄ることがあるという。

 しかも、参護さんは彼女を邪険にしたりしないし、取材なども紳士的に答えていくから彼女としてもやり易いのだと思う。

 

 目的の一つだったY美鈴に会えたのは良かったが、なぜかゆっくり妖怪たちに包囲されてもてなしを受けた。

 

 お茶に菓子折り、頭にYレミリアが乗って、Y美鈴は気の力で私の身体を活性化させて疲労やらを取り除いてくれている。

 波紋とはまた違った感覚だった。

 

 しかし、Y美鈴は戦闘能力だけではなく、気の力も使えるのがすごい。

 

 Yパチュリーは多くの遊具を持っていることが分かった。

 

 将棋や囲碁はもちろん絵札遊戯もあって、みんなで楽しく過ごすことができた。

 

 参護さんは、こういう遊びになると途端に運が無くなる。

 普段はかなりの強運だと思うのだけど。

 




 いかがだったでしょうか?

 阿求は参護に対して、利用しようとした後ろめたさが強く残っている。

 参護は阿求に対して、利用しようとしたことだろうとそれが結果的に自分を救った。恩人として、彼女を助けたい。

 阿求は考え過ぎな気がしますね。
 参護は非常に彼女と彼女が居る里を大切にしています。

 だから、里の番人的な立場を受け入れているのです。


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射命丸文の日記 ∀月

 仕事の配置換えでバタバタしてます。

 平日の更新は、努力しますが遅くなるかもしれません。

 さて、あややは基本的に彼の行く末を見守る人物です。

 それではどぞ!


∀月キタ━━(゚∀゚)━━!!日

 

 ここ最近、我が文々。新聞を賑わせてくれている人間がいる。

 

 海原参護。

 

 一年ほど前に幻想入りして、里の境界線付近に居を構えながら、何でも屋を営み、生計を立てている。

 

 これと言って特徴らしい特徴も無く、新聞のネタにならないと関わっていなかったのですが、どうやらここ数か月は大波乱と言っていいほど、活躍している。

 

 原因は彼が目立つようになる数か月前から暴れだしていた下級妖怪。

 人間を食らい続けて、中級妖怪と呼べるぐらいまでに進化した妖獣だ。

 

 そいつを杖と呼ばれる武器のみで撃退した。

 

 そこから私の取材は始まった。

 

 どうやらゆっくり妖怪という珍しい妖怪を育てているようで、その子を拾ったあたりから彼の周囲は劇的に変化を始めている。

 

 極めつけが、先日の復讐に燃える中級妖怪を撃退したあの夜だ。

 

 中級妖怪を見張っていたのですが、あの夜彼は妖怪を人間業とは思えない戦い方で撃退した。

 

 たった十秒間だけの圧倒的加速。

 そして、銀の鏃に砕かれる妖獣の腕。

 

 この時私は確信しました。

 新聞記者として最高のネタを掴んだと!

 

 残念ながら、今日まで重傷を負って慧音さんや妹紅さん、鈴仙さんに看病されていましたが、今日完治したようです。

 

 明日、さっそく彼に取材を申し込みましょう。

 

 普段朝は鍛錬をしているはずですから、朝一に突撃取材です。

 

 

 

 

∀月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 朝一で様子を見に行ったら、案の定元気になった途端に早朝訓練を始めていた。

 

 頃合いを見て、彼の前に降り立つと取材を申し込む。

 

 さすがに、いきなり空から美少女が降り立てば驚くのも無理はありませんが、困惑の表情のままちょっと固まってしまうのはさすがに失礼ではありませんか?

 

 そう言いつつも、復活も早かったので取材を申し込むと、悩む時間も無く許可が下りた。

 

 正直、意外でした。

 

 人里では天狗の記者は煙たがられることが多く、新聞を取ってくれていても取材には乗ってくれることが少ない。

 

 一年近くも人里で暮らしているので、てっきり拒否から始まって説得するのに時間を使うものだと思っていたので、意外でしたね。

 

 ゆっくり妖怪に関しては、珍しい妖怪であることと生態調査の途中であることから広く知られたくないからと記事にしないでと頼まれた。

 

 いつもならそこでも説得から入るのだけど、取材に協力的だったことと新聞に広告を載せたいという申し出があったので、広告主の意向もある程度取り入れないとね。

 

 あと、件のゆっくり妖怪と触れ合った。

 

 ゆっくり妖怪たちはとても警戒心が低く、私にも遊ぼうとばかりに寄ってきた。

 

 特にゆっくり妖怪のレミリアさんはゆっくり妖怪の中でも飛びぬけて警戒心が薄いようだ。

 私の頭に乗って、楽しそうに鳴いていた。

 

 ここまで警戒心の無い接触はなかったので、少々照れくさかった。

 知り合いに似ているというのも、微妙に意識してしまう要因だろう。

 

 さて、明日は参護さんの広告の文字割や書体を考えなくてはいけませんね。

 『人間も妖怪もお仕事手伝います。護衛から扉の障子貼り、ゲームのレベルアップも手伝います。何でも屋 サンゴをよろしく!』

 このうたい文句をどうやって、広告として新聞に掲載するか。

 久しぶりの広告主ですので、張り切りましょう!

 

 

 

 

∀月(´Д`)ハァ…日

 

 下調べでは、里の中では稗田阿求と上白沢慧音との交友が一番頻度が高い。

 

 特に稗田阿求にはある種の忠誠に近い想いを抱いているのを調べている。

 恩義があり、その恩義に報いるために行動している。

 

 彼女にはあらかじめ、新聞の件は情報を流しておいた方が良いだろう。

 噂レベルで彼女の周囲に情報を流した。

 

 後は明日にでも直接報告することにして、参護さんの家にいるゆっくり妖怪たち。

 彼女たちの原型となったであろう紅魔館の人達の様子を見に行くことも検討する必要がありそうですね。

 

 新聞の印刷の手続きも必要なので、準備をして寝ることにしよう。

 

 

 

∀月(ヽ´ω`)フゥ-3日

 

 今日改めて阿求さんに参護さんから広告依頼を受けたことを伝えた。

 

 里は参護さんを便利に使おうとする輩がいるみたいです。

 私としては人間がどう行動しようと関係ないですが、取材対象をいいようにしようなんて気に入りませんね。

 

 ちょっと動いてみましょうか。

 

 阿求さんや慧音さんとか、彼に親しい人たちに優先的に新聞の情報を与えて、逆に縁遠い人たちには記事には妖怪からの仕事も受けるという事のみを知らせる。

 

 いい感じに不安を煽れるだろう。

 

 不安を感じても参護さんに会いに行かずに、阿求さんにとりなしを頼もうとするのも自分たちに負い目があることを自覚している証拠。

 

 いやはや、善人も悪人も中道を行く人も等しく里にいるのだから面白い。

 

 明日には広告入りの新聞を配れるだろう。

 

 今回の目玉は永遠亭のウサギに男の影が?

 って記事と、参護さんの妖怪撃退の記事がメイン。

 

 今回は特に気合の入った新聞になる。

 配った後が楽しみね。

 

 そして、新聞に書くのだから自身で参護さんの実力を測ってきた。

 

 正直驚いたと言ってもいい。

 

 速さは確かに人間にしては相当速く、杖を繰り出す速さも、身体を動かす速さも、判断する速さも一級品だと太鼓判を押せた。

 

 天狗である私には叶いませんでしたが、相当にうまい動きをしていた。

 

 当たらないなら、躱される前提で動きを誘導して、上手く追い詰めようとしていた。

 私の風で飛ばした飛礫を砕くのではなく弾くように躱していたのは、砕いても破片が飛んでくるほどの風で操っていたから。

 

 あの一瞬で弾く判断をしたこと、戦いながら当たらないなら誘導すると思考を切り替えたこと。

 人間としては異常な戦闘能力。

 

 波紋と言っていた呼吸法での戦闘力向上。

 

 いいですね。

 人間にしておくのがもったいないぐらいに才能に恵まれています。

 

 話によるとご兄弟共々、参護さん以上の人が居るみたいですし、いつか彼の兄弟も取材したいものですね。

 

 純粋にすごいと思って褒めたが、本人は微妙な顔をしていた。

 彼自身まだ隠し玉を持っていただろうが、それを出していないところを考えると、切り札なのかもしれない。

 

 その切り札だったらあるいは、私に届くかもしれない。

 

 ただ、隠しているのなら制限があるのだろう。あの加速技なのだろうか。

 

 それを間近で見ることも今後の取材の目的としておきましょう。

 

 

 

 

∀月( ゚д゚)日

 

 最新の文々。新聞を配達して回った。

 

 紅魔館への配達ついでに様子を見て見たが、あの場にいたゆっくり妖怪たちの大本の人達は何も変わった様子が無く、生活していた。

 

 地下の魔女には会えませんでしたが、レミリアさんと咲夜さんには会う事が出来ました。

 二人とも特に違和感も無く生活してて、ゆっくり妖怪との繋がりも無いと考えるのが妥当だと結論になりました。

 

 門番の美鈴さんと少し歓談。

 

 結構古参の妖怪の様なのでゆっくり妖怪について聞いてみましたが、その存在のみの知識で生態に関してはあまり知らないそうだ。

 

 これは本当にレアものの妖怪のようだ。

 

 正式に許可を貰って早急に記事にしなくちゃ。

 

 評価の方は後日改めて聞くことにしよう。

 

 

 

 

∀月φ(゚Д゚ )フムフム日

 

 あちらこちらで新聞の評価を貰ったが、やはり新しく広告に追加された参護さんの何でも屋が注目を集めているようでした。

 

 すくなくとも、これで多くの幻想郷の勢力に彼を知らせることができたと思う。

 

 今まで人里からの依頼のみで生計を立てていたのが、各勢力からの依頼も受ける可能性があるのだ。

 里の人間達がやるような思惑なんて可愛く感じるほどに、勢力同士の捨て駒に利用される可能性が高い。

 

 それでも彼はどこまで何でも屋を続けることができるのでしょうかね?

 

 ネタは尽きない幻想郷ですが、最高のネタの一つがこうして私に協力を申し出ている。

 これは一緒に近くで彼の行く末を見極めるのが吉というもの。

 

 海原参護という人間の歴史を私が形にして後世まで残してみることに決めました。

 

 彼ほど人間らしくも人間離れした存在も珍しい。

 

 やっぱり、彼の最期まで私は彼をネタにし続けることにしましょう。

 

 

 

 

∀月アワワヽ(´Д`;≡;´Д`)ノアワワ日

 

 参護さんの家に行くと阿求さんが途中で来た。

 

 参護さんからいきなり菓子折りを渡されてしまった。

 なんでも、新聞の出来がとてもよかったからお礼をしたいのだそうだ。

 

 新聞を書いてきてここまで感謝されたことはあまりなかった。

 だからだろうか、少しだけ取り乱してしまった。

 

 驚いたことに、私の好物ばかりが詰め込まれたお菓子だった。

 色々調べて買ってきたのだと思うと、やはり恥ずかしいものがある。

 

 ジャーナリストが逆に調べられるというのはやはり奇妙な感覚があるものだ。

 

 その後は、お菓子を食べながら色々な遊戯を楽しんだ。

 

 人生ゲームが一番盛り上がったかもしれない。

 

 結論から言えば、参護さんは普段の強運は見る影も無く、遊びではみんなを楽しませる体質になるということが分かった。

 

 これは楽しいですね。

 




 なんかもう、UAとかお気に入りとか想像してた数字の桁が違う状況になってます。

 感想もたくさんもらってるし、すごいね。

 俺の好きな作者さんたちは俺の倍以上のプレッシャーの中で書いてるんだから。

 次回は、参護の日記です。

 次回で紅魔館メンバーそろい踏み。

 さてさて、どうなることやらお楽しみに。


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海原参護の日記 ※月

 参護の日記になります。

 今回で紅魔館勢全員そろいました。

 次の参護日記では、ランダムゆっくりになりますのでお楽しみに。

 それではどうぞ。


※月( ´Д`)=3 フゥ日

 

 入浴は生きていくうえで大事な行為だ。

 

 家の風呂は、俗に言う五右衛門風呂なのだが、ゆっくり妖怪たち専用の桶も用意している。

 

 五右衛門風呂からお湯を取ってその桶に汲むことで、ゆっくり妖怪たちも風呂に入れるという寸法だ。

 

 お風呂の好みは個々によって違う。

 たとえば、Yパチュリーは風呂好きで、Yレミリアは風呂嫌い……というよりは、風呂に入っている時間すら遊びたいらしい。

 

 四人とも同時に入れることはできないので、一人一人入れてあげているのだけど、Y美鈴の入浴時間が長い。

 

 よく運動するからなのか、じっくりと疲れを取っているような形だ。

 二人ずつ入れてあげているのだが、Y美鈴が長風呂のせいで他のYパチュリーやYレミリア、Y咲夜が放置され気味になってしまう。

 

 理想としては2:2:1の組み合わせで、Y美鈴を最後にすることでバランスを取りたい。

 

 まぁ、こういう考えを小さい黒板に書きながら悩んでいたのだが、気付いたら後ろからYパチュリーが見ていて、目が合うと首をかしげていた。

 

 うん、奇妙な既視感が溢れるわ。

 

 明日はバタバタしそうだ。

 

 

 

※月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 予想大当たり。

 

 言葉にしなくても呼んで来るとか、Yパチュリーさんマジ敏感だね!

 

 予想はしていたが、ゆっくりフランドール、Yフランと呼ぶとして、これで紅魔館の人達のゆっくり妖怪が揃ったのだろうか?

 

 明日にはまた阿求様に報告しなくてはいけないなぁと考えていると、Yパチュリーが空き部屋に呼んだのだ。

 

 そこには五つの座布団が円になる様に配置されていて、俺はそこから少し離れたところの座布団に座った。

 

 円に配置された座布団の真ん中にも座布団が配置されていて、ゆっくり達はその周囲の座布団に次々に座っていく。

 そして、一斉に歌い出した。

 

「ゆー……、ゆー……」

 

 とまるでUFOでも呼んでいるかのような光景。

 

 あれはゆっくり達の儀式だ。

 

 緊張しつつも黙って成り行きを見守っていると、光の粒子が……まるで弾幕の弾の様な物が中央の座布団に集まって、光が少しずつ大きくなって行き、形を成していく。

 

 光が収まり、そこにいたのは、ゆっくり小悪魔。

 Y小悪魔。

 

 ゆっくり妖怪の赤ん坊だ。

 

 YレミリアやYフランよりも小さく、自力で動くこともできないようで、座布団の上でプルプルと震えていた。

 

 ゆっくり達は一仕事終えたぜ、みたいな表情でこっちを見ていた。

 

 いや、俺にゆっくり誕生秘話の様な光景を見せられましても……。

 

 色々ありすぎて疲れた。

 

 とりあえず、ゆっくり達の反応を見ながら、タオルやら子守に必要そうなものをそろえた後に眠った。

 

 明日が大変とかそんなレベルじゃないだろうなぁ。

 一気に二人増えただけでもびっくりなのに、ゆっくり妖怪誕生の瞬間を見るってもしかして人間として初かもしれない。

 

 ああ、現実逃避したい。

 

 

 

※月クッ……ヤラ( ゚∀゚ )レタ!!!日

 

 朝起きて一番にしたことは、そっとY小悪魔の様子を見る事だった。

 いや、起こしたらかわいそうだしね。

 

 YパチュリーとY咲夜が食事を与えていた。

 

 見ると離乳食の様な物を冷ましたものだった。

 

 ここまで、観察していると阿求様が訪ねて来てくれた。

 正直、家に行く間に何かあったらと思うと行き辛かったので、来てくれて助かった。

 

 阿求様に昨日の出来事を報告すると非常にうれしそうにY小悪魔を観察していた。

 

 YフランとYレミリアは昨日の真剣な儀式の姿が間違いだったのだろうか?と思えるぐらいに元気いっぱいだった。

 

 Yレミリアが幼子の行動だとするなら、Yフランは初めて行動範囲が広がった幼子の行動だ。

 元気いっぱいにあちらこちらを飛び回り、色々なものに興味を示しては突撃を繰り返す、小さな破壊神だった。

 

 Yレミリアは止めようとしているのか追いかけまわしているし、壁ギリギリでYフランが方向転換して、止まりきれずに壁にぶつかり、涙目になってうーうーと泣いていた。

 

 思わず駆け寄ろうとしたら、Yフランに後頭部に突撃をかけられて目の前がブラックアウトしそうになったりもした。

 

 Yレミリアを肩に乗せて休んでいると、Yフランも反対側に乗って、ステレオで姉妹の歌を聞いた。

 

 うん、痛みを忘れる可愛さをありがとう。

 

 その後に、阿求様を見に行ったらすごい勢いでY小悪魔の詳細を記入していた。

 今まで一行のみしか幻想郷縁起に記載されていなかったのだから、書くことをまとめる為にも多くの特徴を書いていかなくてはならないのだろう。

 

 俺はY小悪魔の頬を下の方から指に頬の肉を乗せるように触れてみると、非常に柔らかく、下手に力を加えると壊れてしまいそうなほどに儚げな感触だった。

 

 その感触を楽しんでいると、プルプルとしながら俺の指を咥えてきた。

 

 うん、正直この瞬間が一番やばかった。

 

 可愛過ぎて、危険だ。

 

 阿求様はどうやら、泊まり込みでYフランとY小悪魔を観察するようだ。

 

 急いで来客用の布団と部屋を用意しなくてはな。

 

 

 

※月(@_@;)日

 

 朝一で俺は阿求様の朝食の用意を始める。

 

 Y咲夜とYパチュリーが手伝ってくれたのですぐに用意は完了した。

 

 様子を見に行くとメモの途中で眠ってしまったのか、紙が散らばり、昨日の服装のままだった。

 

 女性の寝姿を見てしまうのは申し訳ないが、揺すり起こし食事の用意が出来ていることを伝えると、その足で風呂場へお湯を張りに行った。

 さすがに昨日夜遅くまで熱くなりながら生態調査をしていたのだろう。

 少々汗のにおいがしていたので、自分が入るためだという方便で湯を沸かして、先に入ってもらうことにする。

 

 用意をしていると、Yパチュリーが火をおこしつつ、水の魔法で浴槽を満たし、火の勢いを風の魔法で調節してくれた。

 

 うん、最近Yパチュリーに助けてもらってばかりだ。

 

 今日一日、じっくりと揉んであげよう。

 

 ちなみに、阿求様は今日も泊まられるようだ。

 

 二度目の風呂を沸かすと、再び先に入ってもらい。その間に、自分の洗い立ての服を用意してから阿求様の服を洗う。

 

 着物系の洗いは特殊なので、手順を間違わない様に丁寧に洗うとしっかりと干す。

 

 阿求様に現代風の格好をしてもらうことになったが、それはそれで眼福だったので良しとしよう。

 

 ジーンズの裾を折って、大きめのワイシャツ。

 うん、可愛いね!

 

 Y小悪魔はまだ自立歩行できないようで、足……じゃなくて地面に接している部分を拭いてあげたり、かるく体を拭いてあげたりして清潔を保つようにした。

 

 しかし、万国共通で子供というのは可愛いものだ。

 

 

 

※月(^_^)v日

 

 今日はさすがに阿求様も帰って行った。

 

 家で今日までメモしていた記述をまとめるのだろう。

 

 お付の人が山の様なメモ用紙を持って行ったが、数日がかりになるかもしれないな。

 

 さて、ゆっくり妖怪たちは揉まれることを好むと前に書いたが、一度に揉まれに来ることもある。

 

 そういう時は、お手玉をしている。

 どうやら相当お気に入りのようで、Y小悪魔以外全員が今日は集まって、お手玉をねだってきた。

 

 比較的大人びているY咲夜やYパチュリーもこれは相当楽しみなようで、わくわくといった感情を隠しきれていない。キラキラ光る瞳で見つめてくるのだからやってあげるしかない。

 

 Yフランも相手をしてあげている間は大人しいので、ちょくちょく相手をしてあげないと家の障子や壁が穴だらけになるのだ。

 

 なぜか放置が過ぎると、YレミリアとYフランとでドックファイトが始まるので本気で満足させてあげなくてはならない。

 

 そういえば、今週に入って里に出ていない。

 

 仕事も内職が多いので余計にそう感じる。

 

 明日は里に行くことにしよう。

 

 

 

※月( ´ー`)フゥー...日

 

 里に出て最初にしたことは、菓子折りを持って阿求様の所に行くことだった。

 

 予想通り、編纂でクタクタになっていたので甘いものの差し入れは喜んでもらえた。

 

 やはり、女性の寝姿を見てしまったのは失礼だったかもしれない。

 いつもと阿求様の対応が違ったのを感じてしまった。

 

 早めにお暇して、Y小悪魔用に色々な雑貨を買い集める。

 

 後日改めて、阿求様にお詫びをした方が良いだろう。

 

 今は双方落ち着くのを待った方が良さそうだ。

 

 

※月ε-(´∀`*)ホッ日

 

 Yフランがいい感じに暴走しそうだったので、捕まえて揉みほぐしてやった。

 

 Yレミリアのようにサラッとした触り心地と、手の中で動こうとするので指の隙間からスルッと逃げていくように出ていくのでそれを逆の手で捕まえて揉む。

 この応酬がお気に入りのようで、逃げたのを放置すると機嫌が悪くなる。

 

 構えば構うほど、非常にべったりと甘えてくる。

 

 おそらく、元気に飛び回っているのは俺や他のゆっくり達に構ってほしいのだろう。

 

 じっくりと遊んであげるとどうなるのか?

 簡単だ。

 

 今日一日肩に乗ったまま離れなかった。

 

 スリスリとたまに身体をすり寄せては満足そうな目で俺を見てくる。

 

 やばい、可愛すぎる……。

 

 これに対抗して、Yレミリアも反対側に乗っては体を摺り寄せてくる。

 

 両肩に吸血鬼のゆっくり妖怪を乗せて歩く奇妙な姿になった。

 

 今日一日中離れないので俺の部屋にゆっくり達を集めて団らんしながら眠りにつくことにしよう。

 

 家族っぽくて心が温まる。




 いかがでしたでしょうか?

 今回関わったのは阿求さんだけですが、いつも通り二人の視点日記を投稿予定です。

 お楽しみに!

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 アンケート実施中です。
 活動報告にて、やってます。
 よかったら、投票願います!


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稗田阿求の日記 ※月

 投稿が少々遅れました。

 UA60000、お気に入り1700突破となりました。
 ありがとうございます。
 ペース早過ぎね!?

 ちょっと、バタバタ気味なのでこれからは、遅れる可能性もあるということを承知願います。

 アンケートありがとうございました。

 ゆっくりメインで行きつつ、次のゆっくりを決める資料にしたいと思います。

 活動報告でまだ、ゆっくりの希望だけは取ってますので、一体ずつ書き込んでくだされば次の登場の参考にさせていただきます。

 それではお楽しみください。


※月( ´Д`)=3 フゥ日

 

 今日は、前に参護さんが教えてくれたどら焼き屋に行ってきましたが、あの味であの値段。

 参護さんはいい感性を持っていると思う。

 

 この所、参護さんの所にゆっくり妖怪たちが集まってきているが、個々の詳細な情報以外は縁起で更新できる情報が少なくなってきているのが悩みどころだ。

 

 個々の情報はいくらでも出てくるけど、生態としては今の所情報として手に入る部分はすべて編纂したと考えられる。

 

 逆に言えば、何らかの情報が手に入れば、そこからまだまだ情報が増えていくことになる。

 

 Y美鈴ちゃんが参護さんの家に来てから結構経つ。

 

 そろそろ新しい娘が彼の家に来てもおかしくない時期。

 

 一人でさみしくないか? という質問にYレミリアちゃんが来て、鍛錬相手が欲しいというつぶやきにY美鈴が現れた。

 

 Y咲夜ちゃんの来た理由がわからないが、時期的に妹紅さんか鈴仙さんがY咲夜ちゃんを呼び出す言葉をYパチュリーちゃんにつぶやいたのかもしれない。

 

 ゆっくり妖怪の生態について何らかの進歩が欲しいな。

 

 

 

 

※月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 今日は、慧音さんと一緒に里の方針を決定していた。

 

 慧音さんは最近よく妹紅さんが遊びに来てくれるようになったようで、機嫌が良かった。

 

 里の方針を決めた後、慧音さんと里の甘味処巡りをして、帰る頃には日が暮れていた。

 

 ふと、参護さんの家の方を見ると、夕日の光だろうか? 光の粒子が集まっているように見えた。

 

 よく慧音さんや妹紅さんがしているような、弾幕の光にも見える。

 

 もしかしたら、参護さんの所で何かあるのかもしれない。

 

 明日に行ってみよう。

 

 そうだ、菓子折りでも持っていこう。

 普段おいしい店を教えてもらっているお返しに。

 

 

 

 

※月クッ……ヤラ( ゚∀゚ )レタ!!!日

 

 参護さんの家に行くと、衝撃的なことが分かった。

 

 ゆっくり妖怪が子供を産んだのだ。

 

 昨日、あの光景を見てすぐに彼の家に行かなかったのが悔やまれる。

 

 しっかり日記は持ってきているあたり、もしかしたら泊まり込みになることを予想していたのかもしれない。

 

 YフランとY小悪魔。

 

 彼女たちが新しく参護さんの家に来たゆっくり達だ。

 

 YフランちゃんはYレミリアちゃんよりも元気な子供といった印象で、非常に元気に飛び回っていた。

 

 Y小悪魔ちゃんは本当に生まれたての赤ちゃんのようで、自分で移動ができない。

 参護さんは、床擦れが起きない様に定期的に彼女を持ち上げては体を拭いてあげたり、フワフワした手拭いを敷き直したりしていた。

 

 その姿がお父さんのようで少しおかしかった。

 後姿だったので気づいていないと思うけど、きれいな手拭いを敷き直している姿にちょっと所帯染みた空気を感じてしまった。

 

 それからほぼ一日、Y小悪魔ちゃんの生態を記録していた。

 

 何度か参護さんが来てくれて、お茶とお菓子を置いて行ってくれた。

 先ほどはY小悪魔ちゃんの頬をそっと触れて感触を確かめていたが、その指を甘噛みされて、プルプルと震えていた。

 その気持ちは分かります。

 

 古今東西、子供というのは可愛いものです。

 

 今は、Yパチュリーちゃんが手元を照らすぐらいの光源を持つ棒を置いていってくれた。

 どうやら魔法が使われているようで、Y小悪魔ちゃんの眠りを妨げずに調査資料を書くことができる。

 

 この日記を書き終わったらまた生態記録を書かなくてなくてはならない。

 

 

 

※月(@_@;)日

 

 ああああああああ!!!

 恥ずかしすぎます!!

 

 昨夜は興奮しすぎて編纂作業中のまま眠りこけてしまったようで、朝方に参護さんに起こされてしまいました。

 当然着替えてなかったわけで、昨日一日中着ていたのと興奮して生態調査していたため少し汗をかいていたこと、着物で寝てしまっていたので寝姿を乱してしまったこと、上げていくとキリがありません!

 

 しかも、朝からお風呂に湯を張ってもらってしまいました。

 

 汗の匂いがバレてしまったのでしょう。

 確かに参護さんも朝の鍛錬をしているようですし、汗もかいているのでしょうけど、私を先に入れてくれたのはきっとそういう事です。

 

 ああ、何度思い出しても恥ずかしい。

 

 しかも、服まで洗ってもらってしまった。

 さすがに下着とかはY咲夜ちゃんが持って行ってくれたが、それでも恥ずかしい。

 

 着替えは参護さんの着替えを借りた。

 かなり大きかったので、裾を折ったり、袖を捲ったりして調整した。

 妹紅さんが着ているような服だったけど、かなり着やすくて驚いた。

 

 下着の方はY咲夜ちゃんがササッと簡単なものを作ってくれた。

 本当に感謝です。

 

 洗ってもらった着物が乾くまで今日も海原邸に泊まることとなった。

 

 しかし、着物の洗い方は結構複雑なのに参護さんはさすが何でも屋といった所だろう。

 

 丁寧に手洗いして、染み抜きまでやってくれた。

 

 日陰干しできっちりと干しているあたり、本当に仕事で身に着けた技術なのだろう。

 

 足袋も帯もそれぞれ洗い方が違うのにしっかりと対応していた。

 

 こうして考えると、殿方に自分の衣服を洗ってもらうのって寝姿見られる並みに恥ずかしいものがありますね。

 下着をY咲夜ちゃんが洗ってくれたのは本当に助かりました。

 そうでなければ今日も泊まり込むのは難しかったでしょうから。

 

 二度目のお風呂を用意してくれましたがどうやらYパチュリーちゃんが手伝ってくれているようで、少ない薪と労力は魔力以外に無い水で沸いているのだそうだ。

 

 お昼ご飯と夕ご飯、それぞれ作ってもらいましたが、非常においしかった。

 なんでも、食事を作るという依頼もあるそうで、腕は相当なものだと思う。

 しかも、外の世界の知識も持っているので作れる品目が非常に多いのも魅力だ。

 

 特に白身魚を油で両面カリッと焼いたモノに白いソースがかかっているあの料理。

 白身魚のムニエルと彼は言っていた。

 

 また食べたいと思えるほど、おいしかった。

 

 彼の料理の品目を是非とも制覇してみたい。

 

 

 

※月(^_^)v日

 

 今日はさすがに家に戻ってきました。

 

 少々多くなり過ぎたゆっくり妖怪の生態調査のメモ書きをまとめなくてはなりません。

 

 昨日参護さんが洗ってくださった着物を着て帰ってきたのですが、非常に着心地が良くなってました。

 

 炊事、洗濯、掃除、彼の一日を間近で見てきて感じたのは、優良物件ではなかろうか? という事でした。

 

 内職仕事が多いと言っていたので裁縫もお手の物でしょうし、怪我が多いとはいえ里でも人気の何でも屋。仕事の技術も多く持っているでしょうし、人望も厚い。

 

 実力もさることながら、人格も紳士的であり、収入も多く、人脈も多岐に渡ると、優良物件どころか人気が出る理由がわかりますね。

 

 さて、しばらくは忙しくなりそうですね。

 なにしろ、人に持って来てもらわなくてはならないほどの量がある記録です。

 

 まとめるのに結構時間がとられる事でしょう。

 

 それでも楽しみで仕方ないのは、今までゆっくり妖怪に関する記述が少なかったのに、私の代で大幅に記載できる内容を増やせることが大きいと思う。

 

 書き終わったら編纂作業に移ろう。

 今まで編纂者が居なかった分、私が完璧に仕上げたいものです。

 

 

 

 

※月( ´ー`)フゥー...日

 

 今日、参護さんがどら焼きを持って来てくれた。

 

 昨日からずっと編纂作業を続けていたからだいぶ疲れていたので、甘いものは助かる。

 

 最近ずっと思っていましたが、参護さんは気遣いがすごくうまい。

 

 どら焼きもいつも持って来てくれる店のではなく、甘さが少し強い店の物を持って来てくれていましたし、紫いもや紫キャベツを持って来てくれた。

 

 なんでも、紫色の食べ物は目に良いらしい。

 

 編纂作業で目に負担をかけている私にはありがたい心遣いだ。

 

 しかし、今日は失礼な態度を取ってしまったのではないだろうか?

 先日の失態を思い出してしまって、参護さんの顔をまともに見れなかった。

 

 一応普段通りを意識して頑張ってみましたが、違和感があったかもしれません。

 

 嫌われてなければいいのですが。

 

 

 

 

※月ε-(´∀`*)ホッ日

 

 情報をまとめることで、編纂作業の時に手間取らなくて済むようになる。

 そのための作業で手間取るという矛盾気味なことをしていました。

 

 参護さんの持って来てくれたどら焼きも今日で食べ切ってしまいましたし、後日改めて昨日の失礼と私のこの羞恥から来る反応の悪さを何とかしたい。

 

 参護さんに失礼ですし、会えなくなるのは悲しいですしね。

 

 目に良いということで、ホウレン草や卵なども結構な量を置いて行ってくれたので食材はかなり良いものが揃ってきた。

 

 家の料理人に色々なレシピを教えて行ったようで、彼らの技術が上がっていた。

 

 お礼をしなくてはならない。

 参護さんは本当にいい人だ。

 

 最近、人里で私と参護さんの関係がうわさされていると慧音さんに聞かされた。

 

 先日の宿泊が原因だと思うけど、やっぱりみなさん噂が好きですね。

 

 参護さんの恋愛話ですから、気になるのも分かりますけど。

 

 




 いかがだったでしょうか?

 ゆっくりだけではなく、阿求も可愛く書きたいです。

 つか、キャラはみんな可愛く書きたいのですが、技量不足です。

 ヒロイン力あげていきたいね!

 次はバレバレでも名前を伏せていくスタイルでいきますww


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?? ?の考察

 本編難しかったので、ちょっと外伝チックなとある人の考察です。

 飛ばしても問題ありません。

 いつも通りの形式じゃないなら興味ないという方は飛ばしても問題ありません。

 4/12のUAが4666となりました。

 多いのか少ないのかわかりませんが、個人的には過去最高記録です。

 一日でこんなに読んでくださって本当にありがとうございます!


 あの子を引き入れて一年以上経つ。

 

 引き入れておいて放置だったけど、最近は見ていて飽きないぐらいに周りがバタバタしている。

 

 彼の血筋だから引き入れてみたけど、一年間何もなかった。

 

 だから血も薄まったと思っていたけど、父親と兄弟の実力は異常なほど。

 

 ならば彼も強くなると踏んで引き入れたけど、こうしてみると当たりだったわね。

 

 ゆっくり妖怪は今数を大きく減らしている妖怪。

 畏れが必要な妖怪が多い中、そうではない妖怪もいる。

 ゆっくりがその代表的妖怪なのだけど、その警戒心の薄さと、元々誕生条件が厳しいのが相まって、絶滅の危機にまでなってしまった。

 他に畏れの必要ない妖怪だと、脛擦りなどが居る。

 

 そんな彼らの生きる糧はもっぱら認識してもらう事であることが多い。

 信じられ、認識され、触れられる。

 

 ゆっくり妖怪が彼を好むのはそういう部分が大きい。

 

 ゆっくりパチュリーが彼と初めて会った時は消えかけだった。それは確実。

 

 それを彼は拾い上げて、驚いた時にも放り出さずに彼女をしっかりと離さなかった。

 

 結果、ゆっくりパチュリーは消えることなく、海原参護という認識してくれる人間と出会えた。

 

 あの娘が海原参護を全力で助けているのはそういう事だ。

 

 認識してくれる人間であり、触れてくれる人間であること。

 

 だからこそ、全力で彼を助ける。

 

 そうしている中で、彼女は自身の全力が出せるまでに回復したことを機に、彼や周囲の意見を取り入れるように仲間を呼び出した。

 

 彼女も仲間が生き難い世界であることも、危ない状態であろうことも理解しているだろう。

 それでも、助かる可能性を信じて他のゆっくりたちを呼んだのだろう。

 

 そして、その賭けは成功したと言える。

 

 彼は他のゆっくり妖怪を受け入れ、その存在を確かなものにしていった。

 

 そして、先日のゆっくり妖怪誕生の儀式だ。

 

 これを行う所なんてここ数百年無かったことだ。

 

 ゆっくり小悪魔。

 

 彼女も幻想郷にいたゆっくり妖怪だったが、すでに消滅してしまっていた。

 

 ゆっくり妖怪は、その存在を形作る情報の多くを外の魔力や霊力、妖力などに頼った形で誕生する。

 

 ゆっくり小悪魔が生まれる時に見えた光はその魔力・霊力・妖力などが形となったから見えた光だ。

 弾幕ごっこが流行りだしてから、本当はゆっくり妖怪が生まれる可能性は上がっている。

 

 彼女たちが放つ弾幕。

 これもゆっくり妖怪たちを生むために必要な魔力などの塊なのだから。

 

 察しのいい人ならわかるだろうが、生まれる時に使われる力によってそのゆっくり妖怪は姿を変えるのだ。

 今回、あの紅魔館の小悪魔の放つ弾幕や魔力を多く取り込んだ。というか、彼女たちが意図して多く集めて生んだのがゆっくり小悪魔ということになる。

 

 ゆっくり妖怪はその姿になるために、その大元となる人物の魔力などを身体を作る時に多く取り入れる必要がある。

 

 だからこそ、弾幕ごっこをしている実力者のゆっくりは軒並み存在すると考えていい。

 

 私のも居るだろう。確認はしていないが……。

 

 それぞれの人物の魔力などが身体に宿っているからこそ、その人物の能力を使える。

 

 そして存在を保つためには、誰かに認識されていること、触れられていることなどが重要だが、誰かに大切にされているかどうかが何よりもその存在を保つのに必要だ。

 

 海原参護はその条件を見事以上に満たしている。

 

 ゆっくり妖怪を一人の存在として認めて、一緒に生きて、一緒に笑い、一緒に暮らしている。

 

 里の人間だと難しいことだけど、外から来た彼だからこそ妖怪を受け入れ、人間と同じように接する。

 

 人を襲う妖怪に対して容赦がなく、人と接する妖怪とは共に過ごす。

 

 矛盾している行動原理だけど、彼の行動原理はもっと根底から常人とは違う。

 

 護る対象にとって害であるかどうか。

 

 彼の護る対象は人里、もっと言えば稗田阿求ということになる。

 歪んだ価値観であると言えるが、稗田阿求に敵対しない限り、人里に害をなそうとしない限り、彼は友好的な態度で接してくれる。

 

 彼をこちらに引き込んだ私に対しても、警戒こそしていたが、それでも決定的な亀裂になるような態度を取らなかった。

 普通なら怒りに身を任せて罵詈雑言を浴びせてくるものなのだけれど、彼の第一声は未だに覚えている。

 

「俺を引っ張ってきてどうする気だ? 兄貴や親父と間違えてないか?」

 

 もしこういう事があるなら、自分ではなく兄弟や父親であると考えている。

 自身を低く見積もっているのだろう。

 

 あの父親や兄弟を見たら仕方ないと思いますが……。

 何なのかしらね、父親は英雄を身に宿すとか、上の兄は魔術師として封印指定の代行者とかいう役割をこなしている。

 何よりも二番目の兄だ。

 あれは、人の身で龍を超える実力を持っている。私のスキマに反応できている時点で人じゃない。

 

 そんな人外じみた家族に囲まれていれば、自己評価が低くなるのも頷けるというものだ。

 

 そして家族全員が何かしら護るものを持っている。

 

 参護の場合は、それが稗田阿求、もしくは彼女が暮らす里という事なのだろう。

 

 彼女や里を護る為なら、どのように傷つこうとも護り通す。

 

 あの、妖怪を撃退した波紋の力とその力で得られる究極の加速。

 

 人の身で得られる速度を超越しているあの技は、彼の切り札だろう。

 

 こんな人間がゆっくり妖怪を匿い、育て、そして新しいゆっくり妖怪が生まれた。

 

 ゆっくりパチュリーは海原参護に対して絶対の信頼を置いている。海原参護もゆっくりパチュリー、そしてゆっくり妖怪たちへも信頼を寄せていて、たぶん護る対象にもなっていると思う。

 

 一年間ほとんど動かなかった彼の幻想郷での生き方だけど、ゆっくりパチュリーと出会ってから大きく彼の生き方は変わった。

 

 ゆっくり妖怪を拾って彼の人生は転機を迎えたのだ。

 

 ここからは、彼の動きを注視して行こう。

 

 なにしろ、彼を連れてきたことで私の目的は終了した。

 後から彼の生活を覗き見ているのは、単なる暇つぶし。だけど、暇も潰せないほど平々凡々の生活だった。

 

 それがゆっくり妖怪を拾った途端に、一日でも目を離せばもったいないと思えるぐらいに面白い生活になっているのだ。

 

 もしかしたら、海原参護の人生にはゆっくり妖怪が必要だったのかもしれない。

 

 これからも目が離せないわね。

 




 いかがだったでしょうか?

 月曜は会社泊まりなので、投稿出来ないです。

 次の更新をお楽しみにしてください。

 一応予定は、参護の日記の予定です。


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海原参護の日記 Å月

 お待たせしました。

 空き時間にネタを詰めて、一気に書き上げました。

 この場を借りて、推薦をしてくださった『クーマン』さん。
 本当にありがとうございます!

 感想貰っただけでもニヤニヤが止まらないのに、推薦までしてくださって小躍りしたい気分です!

 それでは、本編どうぞ!

 今回は、アンケートから取り入れましたゆっくり妖怪の登場です。



Å月((((;゚Д゚))))ガクガク日

 

 広告を出してから、初の妖怪がらみの依頼が来た。

 

 とある妖怪に花の種を届けてほしいというもの。

 非常に珍しい品種の種が手に入ったらしく、その商人は届け先の妖怪にこういう珍しい種が手に入ったら届けるように頼まれていたのだそうだ。

 

 しかし、依頼内容と届け先を聞いて、知識から当てはまる妖怪を検索するとあっという間にヒットした。

 

 四季のフラワーマスター、風見幽香。

 

 あれ? 死亡フラグビンビンで悲しくなってくる。

 

 風見幽香と言えば、太陽の畑に住んでいる古参妖怪の一人だったはずだ。

 その強さは上級妖怪の中でも最強クラスな上に、八雲紫とも交友がある。

 俺の様な中級になりたての妖怪に辛くも勝利する程度の実力では埃を払うようにやられるだろう。

 

 人格は会ってみないことにはわからないが、人里の花屋さんと交流があるならば少しは交流が持てるかもしれない。

 

 妖怪と交流があるとすれば、射命丸文ぐらいだろうか?

 ベクトルが違い過ぎて泣けてくる。

 

 明日が配達日なのだが、受け取ったのは小さい袋に入った植物の種。

 依頼人からの注意事項は、機嫌を損ねない様に、彼女の目の前で花を傷つけない。

 

 注意事項が必要な届け先か。

 風見幽香の危険度は知識と噂で十分知っている。

 

 後は、対応を間違わない様にしなくては……。

 

 

 

Å月( 0w0)ノ ウェーイ日

 

 無事に配達完了。

 

 噂と知識だけじゃ、その人の人柄は分からんね。

 

 礼儀と花を傷つけないように接していれば、不意打ちを一回される程度で済んだ。

 

 種子を渡して、証明にと彼女が小さい花を渡してくれた時に、おそらくかなり手加減していただろうが横っ面に貫手を放たれた。

 

 あらかじめ弱めの波紋を動体視力に回していたのが良かった。

 

 上体を反らすことで、どうにか一撃を躱すことができた。鼻先を少し削られたが、彼女の貫手を受けてその程度で済んだのなら御の字だろう。

 

 幽香さんが言うには、珍しい力を持っていたから試してみたくなったと言っていた。

 

 完全に自業自得じゃないですかー、ヤダー……。

 

 鼻先から出血したまま家に戻ると、YレミリアとYフランが代わる代わるに鼻先をチューチューと吸ってくれた。

 

 満足してくれたようで二人とも上機嫌だった。

 

 依頼は無事成功。

 お客さんも満足してくれたようでよかった。

 

 

 

Å月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 朝にY美鈴と稽古をしていると、風見幽香が現れた。

 

 うん、何を言っているのかわからないと思うが、風見幽香だった。

 

 ゆっくり妖怪を知っているようで、

「こんなに、ゆっくり妖怪がいるなんて珍しいわね」

 と言っていた。

 

 そして裏庭の一角をいきなり畑と花壇に変えて、数種類の種を植えて行った。

 

 きちんと育てて見せろという事か?

 

 Y美鈴なんてさっそくジョウロで水をあげているが、俺自身ガーデニングの知識は無い。

 里の花屋さんにアドバイスを貰ったとしても、常時家にいるわけでも無い訳で、早出して日付をまたいで帰ってくることも多い。

 

「幽香さんみたいな知識があれば、きちんと育てられるんだろうけどなぁ」

 

 思わずつぶやいてしまった後で、慌てて周囲を確認した。

 

 Yパチュリーどころか、他のゆっくり妖怪もいない!

 

 よし、不用意な発言だったが、誰も聞いていないのなら問題ないだろう。

 

 

 

Å月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 ゆっくりには……勝てなかったよ……。

 

 新しい居候、ゆっくり幽香ちゃんこと、Y幽香ちゃんだ!

 

 ちくせう。

 

 増える分には構わないが、俺の不用意な発言に応える様に増えていくのはいかがなものか……。

 

 出会って最初の言葉が、「ゆっくりしていくよ!」だった。

 

 どこで聞いていたのか?

 それとも、俺のせいじゃないのか?

 

 理由は分からないが、恒例の阿求様に報告に行った後、彼女の寝床などの細かいものを買いに行った。

 

 帰り道に文さんに会って、軽く取材を受けた。

 

 幽香さんのくだりで笑顔が引きつっていたが、俺だって良く生きてたと思うよ?

 

 鼻先を削られる程度で済んで運が良かったのは確かだし、相手がかなり手加減してくれていたのがわかるから、その手加減状態で避けるしかできなかった自分に涙が出る。

 

 だって、その後で本気の貫手を岩で見せてもらったが、動体視力強化してようやく初動を視認出来た位だ。何もしない状態だと気付いたら岩に穴が開いている状態なのだから、冷や汗でシャツがグッショリにもなる。

 

 文さんも彼女の恐ろしさを説明してくれたが、身を持って味わった。

 知識じゃなくて体験は本当に重要だ。

 百聞は一見に如かず、とはよく言ったものだと思うね。

 

 家に帰るとY幽香がY美鈴と一緒に植物の世話をしていた。

 

 そういえば、紅魔館の庭の手入れは彼女の仕事だったか?

 

 Y小悪魔はYパチュリーとY咲夜が世話をしていた。

 

 YレミリアとYフランはY小悪魔の隣で子守唄でも歌うように、ウーウーと言っていた。

 

 今日も我が家は平和です。

 

 

 

Å月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 今日も朝からY美鈴と組手をしていたが、屋根の上で文さんがニコニコしながらその様子を見ていた。

 

 何が面白いのか尋ねてみても、取材だから気にしないでと言うばかり。

 

 そしてなぜか屋根の上にまでお茶を届けるY咲夜ちゃん。

 家の接客担当の地位に君臨する彼女はうちの家事全般もこなす瀟洒(しょうしゃ)なメイドだ。

 

 揉まれている時は幸せそうだから、ゆっくり妖怪としての特性の方が強いのだろうか?

 

 Y幽香の揉み心地は、なんというかフワッとした揉み心地とサラッとした肌触り、そしてほのかに香る花の香りが素晴らしい。

 揉まれている時のY幽香は幸せそうなのだが、やめると恥ずかしそうに逃げてしまう。

 それでも揉まれに来るあたり、ツンデレなのだろう。

 本人がそうだとは言えないので、彼女の特性はゆっくり妖怪として取り込んだ際のオリジナリティだと思うことにする。

 

 さすがに、風見幽香本人にツンデレですか? などと聞くほど自殺志願者ではない。

 

 ちなみに、Y幽香ちゃんを見た文さんは再び口元を引きつらせていた。

 

 分かるけどね?

 Y幽香ちゃん、優しいよ?

 

 

 

Å月φ(゚Д゚ )フムフム日

 

 俺の家にいつの間にか、電話の様な物が設置されたらしい。

 

 朝、庭で組手をしていたら、突然に幽香さんの声がしたので周囲を探していると、畑と花壇の間に一輪の花が咲いていた。

 

 声はそこから聞こえてくる。

 

 呼び出されましたぜイェイ!

 

 気分は校舎裏か使われていないトイレに行く気分かな?

 

 いや、幽香さんとっても礼儀正しかったよ?

 でもね、どんなに礼儀正しくても、人の横っ面に貫手を繰り出した時点で若干苦手っす。

 

 手加減してたのは理解してるけど、鼻の頭削られて、逃げ出しそうなのを必死にこらえた記憶があるから逃げ腰になってしまう。

 

 おかげでほぼ一日中、YレミリアとYフランに鼻の頭を吸われ続けるという謎の状態を味わったわけですがね。

 

 呼び出しに急いで向かうと、野菜やら果物やらの種をいっぱいもらった。

 

「私のゆっくり妖怪に世話を手伝ってもらいなさい」

 

 と言っていたので、自分のゆっくり妖怪がいることを理解している模様。

 花の世話の仕方を一日ずっとレクチャーされた。

 

 どうやら、俺に育て方を教えることで俺の家の裏庭を花で埋めるつもりらしい。

 

 まぁ、組手は裏庭じゃなくてもできるからいいのだが、裏庭の使い道が半分ほど決まってしまったのは、どうしてこうなった? 状態だった。

 

 どうやら彼女は、普段は花が咲いている場所から場所へ移動しているらしい。

 

 つまりどういう事か?

 家を中間地点にでもする気だろう。

 

 溜り場になりつつある我が家だけど、鈴仙さんから薬や薬草を、妹紅さんからタケノコや焼き鳥を頻繁にもらえるのでむしろ我が家の家計的に助かっている。

 家に帰るとゆっくり妖怪以外誰かしら居ることが多くなってきている気もするがな!

 

 

 

Å月アワ((゚゚дд゚゚ ))ワワ!!日

 

 模擬戦という名の一方的な虐殺を味わったぜ。

 

 幽香さんが来て、人里の外で模擬戦をさせてもらった。

 

 文さん以外では初めての上級妖怪との模擬戦だったが、一方的に何もできずにボコボコにされるって模擬戦じゃなく、虐殺と言わないだろうか?

 

 最終的に、威力を絞ったであろうマスタースパークで黒焦げにされた。

 

 家にまで連れて来てもらい、ゆっくりたちの敷いた布団に寝かせてくれたあたり優しいのだが、模擬戦中の空中コンボで体力九割持っていくとか鬼畜ですか。

 落下時にマスパ合わせてくるあたり徹底している。

 

 幽香さんが帰った後に、文さんが来て心配してくれた。

 

 まぁ、人間がオモチャのように空中で舞う姿は心配もしたくなるだろう。

 トドメに落下と同時のガード不可マスパを撃ち込まれている所を見れば、本気で生きているか確認したくもなるだろう。

 

 とりあえず、Y幽香ちゃんと一緒に畑に貰った野菜や果物の種を植えた。

 

 おいしく育つといいな。




 いかがだったでしょうか?

 誤字脱字の指摘、ありましたらよろしくお願いします。

 何気に重要ポジの風見幽香さん。

 ゆっくり妖怪の存在を知っている数少ない人の一人です。

 どう物語に絡むのかは今後のお楽しみという事で!


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風見幽香の日記 Å月

 どうも、毎度ありがとうございます。

 UA 88000
 お気に入り 2000

 を超えました。

 本当にありがとうございます。
 日間もUAも5000超えしましたし、推薦も書いていただいて、メッセージでなぜかゆっくりの伝道師なんて呼ばれるし……。

 楽しいので一向に構いませんがね(`・д・´)キリッ


Å月((((;゚Д゚))))ガクガク日

 

 近々、里の花屋の娘から珍しい花の種を送ってもらえることになっている。

 

 花から花へと移動をしているから私自身が見つける場合も多いけど、里の外で物を集めている商人が拾ってくる種は外の世界の物が多く、珍しい。

 

 だから、珍しい種を見つけたら私にくれる様に約束している。

 私も幻想郷の珍しい種や花を渡したりしているから、取引としては成り立っている。

 

 最近は花屋の娘が贔屓にしている何でも屋が活躍しているらしいが、どんな人間なのか興味がある。

 

 彼女には少々無理を言って、その男に依頼を出してもらった。

 

 噂には中級の妖獣を倒すほどの実力者らしいし、幻想郷の実力者との交流もあるらしい。

 

 どんな人物なのか?

 

 興味がある。

 来る日を楽しみにしていよう。

 

 

 

Å月( 0w0)ノ ウェーイ日

 

 昨日日記に書いていた人物が種を届けに来た。

 

 第一印象としては、礼儀正しいのと、たぶん私のことを花屋の娘に聞いたのだろう。

 植物への気配りを感じる対応をする人間だ。

 歩き方も素人ではない。体幹がずれることなく、それでいて間隔も一定。

 

 次に感じたのが、その身体から滲み出る力だ。

 呼吸音が特殊だったから、おそらく呼吸法から来る氣の練成なのだろうが、初めて見るタイプの技だった。

 

 好奇心のあまり、種を受け取った後に不意打ちで貫手を顔に放ってみた。

 

 完全に相手に意識の外から、加減してといえど中級なら仕留められる程度の貫手を躱された。

 

 正確には、相手の鼻先の肉を爪の先で少し削ぎ落した程度。

 

 その時、指先に少しだけど電気が走るような痺れる感覚があった。

 

 多分、あの力が彼の持つ力なのでしょうね。

 

 それにしても、海原参護君。

 参護君か。

 

 鼻の頭を削がれて逃げ出すかと思ったが、踏みとどまって理由を問いただすとか、なかなかできる事じゃない。

 

 面白そうだし、聞けば彼の家は里の外れにあるとのこと。

 

 花から花へと移動する私だけど、里の近くに中間地点の様な休憩できる場所が欲しいと思っていたところだ。

 明日お邪魔することにしよう。

 

 

 

Å月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 朝一で彼の家を訪ねた。

 

 家の位置は花が教えてくれたので、すぐに見つかった。

 本当に辺鄙(へんぴ)なところに住んでいる。

 

 家に行くと、珍しいことにゆっくり妖怪がたくさん住み着いていた。

 懐かしい。ほとんど残っていないと思っていたけど、まだこんなに残っていたのね。

 

 メイドのゆっくり妖怪に案内されて、裏庭に行く。

 その途中で生まれたてのゆっくり妖怪も見つけた。

 

 重ねて珍しい。

 ゆっくり妖怪は警戒心が薄いが、誕生とそのすぐあとはなかなか見られない。

 

 本当にゆっくり妖怪に信用されている証拠だろう。

 ますます、彼は当たりの気がする。

 

 裏庭に着くと、門番のゆっくり妖怪と組手をしていた。

 

 元々があの門番だ。

 組手の相手にするには、このゆっくり妖怪の中では一番だ。

 

 唖然としている彼をしり目に、裏庭の一角を借りて花壇と畑を作る。

 作るだけなので、すぐ終わった。

 

 手持ちの花と作物の種を植えてあげる。

 

 あとは、彼がどう育てるかだ。

 

 ここまでして思い出したが、彼は何でも屋の仕事をしているから世話をしている時間も少ないはずだ。

 

 だったらと、私は近くにいた魔女のゆっくり妖怪に頼んだのだ。

 

「私のゆっくり妖怪、まだどこかで生き残ってるはずだから、彼女に花壇の世話をさせてね?」

 

 魔女のゆっくり妖怪は小首をかしげていたが、明日には私のゆっくり妖怪がここに住み着くだろう。

 

 あの娘はあの娘で可愛いから、すぐに気に入ってくれるでしょう。

 

 

 

 

Å月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 さて、私のゆっくり妖怪が無事に向こうに着いたらしい。

 花が教えてくれたが、いろいろ楽しく暮らしているらしい。

 

 私としては参護君にしっかりと育ててほしいものなのだけど、彼の生活サイクルでは難しいのだから仕方がない。

 

 あの、鼻先を指がかすめた瞬間、指に走った電気の様な感覚。

 

 呼吸を基盤とする気功に近い技。

 

 そうね、こういう事に詳しそうなのは紅魔館の門番か、仙人ということになる。

 

 聞いてみるのもいいかもしれない。

 

 花から花へ移動する妖怪である私にはいけない場所の方が少ない。

 

 門の前に居ることが多い、門番から聞いてみるのもいいかもしれない。

 

 

 

 

Å月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 紅魔館の門番の所へ行ってきた。

 

 彼女に呼吸から練れる、気功に似た力を知っているかと尋ねた。

 

 そしたら彼女は知っていた。

 

 なんでも、中国の初期。

 三つの国が争っていた時代に現れた仙人が使っていた技がそれに当たるという。

 

 名前を波紋。

 

 その仙人は波紋を多くの武将に教えていたらしいが、年代を重ねると共にその使い手の数も減っていき、今ではほとんど居ないのだそうだ。

 

 彼女自身は使えるかと聞いてみたが、話に聞いただけで使えないらしい。

 

 使い手がいるならぜひ教えてほしいとも言っていた。

 

 すでにほぼ失われている技術なのだろう。

 

 その使い手がこの幻想郷にいる。

 忘れられたから入ってきたのか、紫の奴に連れてこられたのか?

 

 多分後者だろう。

 参護君は忘れられるような人柄はしていないと思うし。

 

 機会があったら門番に紹介してあげようか。

 あの門番も会いたがっていたようだし、面白くなりそうな時期を見定めて紹介してあげよう。

 

 

 

Å月φ(゚Д゚ )フムフム日

 

 参護君の庭に植えてきた通信用の花が咲いたようだ。

 

 いくつか食べられる植物の種をまとめたので、呼び出して渡すことにする。

 

 意外とすぐに来てくれた。

 うんうん、呼び出しにすぐ応じてくれるのは高評価だ。

 

 野菜の種を渡してあげると、嬉しそうにお礼を言ってくれた。

 

 うん、ちょっと嬉しく感じてしまう。

 やっぱり、参護君の家を移動の中間地点にすることにしよう。

 

 渡した時に、私のゆっくり妖怪に手伝ってもらいながら育てる様に助言をした。

 

 あの家にはかなりの実力者が集まるけど、それと同時に食べ物もなぜか集まっているようなので、私も食料を分ける代わりに休憩所にさせてもらおう。

 

 うんうん、いい計画だと思う。

 

 

 

 

Å月アワ((゚゚дд゚゚ ))ワワ!!日

 

 模擬戦を頼まれた。

 

 さすがに人里では戦えないので少し離れた草原で戦ったけど、ちょっとやりすぎたかもしれない。

 

 一撃一撃を叩き込むたびに拳に彼の電気の様な痺れが走るから、ついつい力が入ってしまった。

 

 最初はガードすらできなかったが、後半はガードの反応が間に合っていたのには驚いた。

 

 中級の妖獣を倒せたのはさすがに伊達じゃない。

 

 強い人間は一度、敗北を味わって成長することが多いが、彼は敗北を多く経験しているようだった。

 

 しかし、一度妖怪を退治したからここら辺で、妖怪の強さを再確認してもらった。

 

 正直やりすぎたと反省している。

 

 最後のマスタースパークは必要なかったかしら?

 

 さすがに可哀想だったから家まで運んで布団に寝かせてきた。

 土埃が大変だったから魔女のゆっくり妖怪に掃除してもらって、私のゆっくり妖怪に薬草を持って来てもらって傷の手当てをしてから戻った。

 

 帰り際に烏天狗が彼の家に向かって行ったけど、たぶん彼と交流のある妖怪でしょうね。

 

 天狗の新聞を拾って読んだけど、広告で妖怪との交流も考えている。

 

 ますます気に入った。

 次は果物でも持って行ってあげようか。

 




 いかがだったでしょうか?

 次は予想はついてると思いますが、射命丸文の日記です。

 今回はゆっくり分が足りない……。

 射命丸パートでは必ず……。


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射命丸文の日記 Å月

 お待たせしました。

 あややの日記でございます。

 あややは妖怪側として参護を評価しています。

 阿求は人間側として。

 幽香は戦闘者として参護を評価しています。

 では、紅魔館のメンバーはどういう風に彼を評価するのだろうか?



Å月((((;゚Д゚))))ガクガク日

 

 参護さんの広告を入れてから新聞の配布率が上がった。

 

 時折、参護さんの記事を載せるようになったというのも理由になるだろうか?

 

 人里において、参護さんの人気はかなり高いのがわかる。

 彼の動向を里の人に聞くとすぐに答えてくれる。

 私が、新聞で良く彼を記事にしているから信用があるのだろう。

 

 なんか私の信頼まで便乗みたいに上がっていますね。

 

 さて、私の予想ではここ数日中に妖怪関連の依頼が来るはずだ。

 

 各勢力に無料で届けてから数日。

 各勢力の人達の目に入るなり、人里で元々妖怪関連の仕事している人間が依頼するだろう。

 

 私としては密着取材をしておきたいのですが、今日は新しい新聞の編集作業があるので、明日にでも家に行ってみましょう。

 

 

 

Å月( 0w0)ノ ウェーイ日

 

 朝一で参護さんの家にお邪魔しましたが、どうやら何でも屋の仕事で太陽の畑に行ったようだ。

 

 太陽の畑と言えば、風見幽香が居ることの多い場所だったはずだ。

 

 本当なら追いかけて取材に取り掛かるのですが、彼女のいる場所に行くのは自殺行為ですしね。

 

 今日は参護さんの家でゆっくり妖怪たちと戯れていました。

 しかし、この家にはいろいろな人たちが来ますね。

 

 永遠亭の月兎、迷いの竹林の案内人、寺子屋の教師に、天狗のブン屋。

 

 こうして書き起こしてみると、混沌とした客層だと思う。

 

 月兎に蓬莱人、半人半獣、天狗。

 

 参護さんは何かを目指している訳では無いでしょうが、傍から見れば戦争でも起こすのか? という具合に戦力過剰な家です。

 

 風見幽香さんの所に参護さんが行ったということは、彼女もここに来るようになるのでしょうかね?

 彼女が来るだけでこの家の戦力が跳ね上がる。

 

 参護さんは人間、妖怪の垣根を越えて人を集めてくる。

 記事のネタ云々以前に、見ていて飽きない。

 

 こうして家に行くとゆっくり妖怪からの歓迎を受ける。

 お茶に、お菓子、大人数で歓迎してくれる。

 

 ゆっくりレミリアさんとゆっくりフランさんが周りを跳ね回っていて、見ていて癒されました。

 奥の部屋ではゆっくり小悪魔ちゃんが、スゥスゥと気持ちよさそうに寝ていた。

 

 なんでも、一日のほとんどを寝て過ごしているそうで、いつ動くようになるかはわからないのだそうだ。

 

 ゆっくり妖怪育成コラムとか、参護さんに頼んだら書いてくれますかね?

 

 

 

Å月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 文々。新聞を各地に配ってきた。

 

 人里はもちろん、紅魔館や永遠亭、命蓮寺に守矢神社、博麗神社に、地底にもひとまとめにした新聞を配ってきました。

 

 ぐるっと一回りして人里に戻ってきた時に、阿求さんに会いました。

 

 なんでも、幽香さんに出会って無事に帰ってきたらしいですが、鼻の頭から出血していたそうです。

 

 やり合ってそれだけの傷で済むはずもないので、不意打ちでもくらってギリギリで避けたとかでしょうか?

 

 彼女は戦いが好きですから、それだけで帰ってこれた参護さんには敬意を表したい。

 

 

 

Å月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 里で買い物をしていると、参護さんに会いました。

 

 さっそく取材をしましたが、今回の依頼は修羅場だったと言わざるを得ない。

 

 依頼達成直後に顔面に手刀を放たれ、間一髪で躱したそうだ。

 代償が鼻先の肉を削がれたこと。

 

 良く生きていたと思います。

 

 彼女は弾幕ゲームのルールの中でようやく相手ができるぐらいの人だ。

 上級妖怪の中の上級。

 

 むしろ手加減されてたとはいえ、彼女の不意打ちを避けて見せた彼を人間かどうか疑いたくなる、そんな存在が風見幽香という妖怪なのです。

 

 彼には懇切丁寧に彼女の恐ろしさを教えてあげましたが、一度彼女の攻撃を受けたのですから否応なく理解はしていると思います。

 

 殺気も、敵意も無いままに、確実に死に至る一撃を放てる彼女。

 

 それでも、彼は交流を断とうとはしない。

 

 ある意味、彼も人間の中では外れた人物なのでしょう。

 

 価値観がズレているように感じました。

 

 

 

 

Å月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 今日は朝から参護さんに密着取材を試みました。

 

 屋根の上からゆっくり美鈴さんと戦っているのをゆっくり咲夜さんの入れてくれたお茶を飲みながら、鑑賞する。

 お茶を一口飲んでから、ふと気づく。

 随分とゆっくり妖怪にも慣れたな。

 

 まぁ、いつの間にかゆっくり幽香さんが彼の家に住み着いていたのに驚きつつも、それもいつもの光景なような気がしています。

 

 お茶を飲みながら、空いた手でゆっくり咲夜さんを揉む。

 

 この揉み心地が癖になる。

 この上質な羽を何枚も重ねて触っているような感覚はウットリとしてしまう。

 

 ゆっくり咲夜さんも別段、嫌がる様子も無く、むしろ喜んでくれているようなのでついつい揉んでしまう。

 

 ゆっくり美鈴さんの動きを見ると、参護さんの攻撃に対して常に紙一重で避け続けている。

 

 以前に彼から模擬戦を頼まれて戦ってみましたが、彼のウリは速度と人間離れした持久力。

 速度も私たち天狗のように最高速度がどれだけ速いかではなく、停止から最高速度まで一気に駆け上がれる加速度だ。

 

 最高速は天狗に比べるまでも無く、それどころか他の妖怪に勝てるかどうか。

 だけど、緩急織り交ぜた攻撃が一番の曲者。

 

 吸って、吐く。これだけの間に五連撃。

 

 かつての天才剣士が一呼吸で三度の突きを放ったといいますが、彼はそれを上回っている。

 

 鬼が人間の戦士と戦いを楽しんでいたという有名な話がありますが、もしかしたら彼は人間としての強者ですから、気に入られるかもしれません。

 

 まぁ鬼に気に入られれば大抵は戦いになるので、彼には優しくない出会いなのかもしれませんがね。

 

 

 

Å月φ(゚Д゚ )フムフム日

 

 やはり、参護さんの周りだけに取材していては記事の内容も詰まってしまいます。

 

 ここら辺で他の人達に、海原参護という男について取材することにしました。

 

 最初はやはり、里の有力者の一人、稗田阿求さん。

「参護さんですか? 何でも屋をやる中で、ゆっくり妖怪の生態調査をしてくれているとても優しい人ですね。できれば、自身の身体は大事にしてほしいものです。この前だって……」

 延々と愚痴になったので、この辺で。

 

 次は里の守護者であり、寺子屋の指導者でもある上白沢慧音さん。

「参護殿か? なかなかに根性のある男だと思うぞ。何でも屋は中々に厳しい依頼もあるだろうに、それを何の文句も言わず達成するのだからな」

 なかなかの高評価ですね。

 

 三人目は永遠亭の月兎、鈴仙さんです。

「参護さんですか? いつもお世話になってます。里へ行く前と永遠亭に戻る前に立ち寄らせてもらってますが、ゆっくりちゃん達がお出迎えしてくれて、とっても癒されてます」

 参護さんというよりは、ゆっくり達の方の感想ですね。

 

 四人目は迷いの竹林の案内人、藤原妹紅さんです。

「海原? そうね、変な奴ね。自分の序列が1位じゃないのよ。あいつは、絶対に何かの為に死ねる人種よ。歪んでるとまでは言わないけど、変な奴。この一言で全部表してるわね」

 なかなかに厳しい評価です。

 

 最後は、たまたま里に買い物をしに来ていたアリスさん。

「誰よ、海原って? 最近売出し中の何でも屋? 知らないわよ。……ああ、そういえば新聞の広告にあったわね。なに? そんなに使えるの? 今度手伝わせてみようかしら?」

 知らなかったようですが、見事宣伝に成功しました。

 魔法の森は人間には少々危険ですが、参護さんなので何とかなるでしょう。

 

 さて、この取材結果をどう記事にしましょうか?

 

 

 

Å月アワ((゚゚дд゚゚ ))ワワ!!日

 

 参護さんへの取材に行ってみれば、幽香さんと里から外れた野原に向かっていた。

 

 興味本位でばれない様について行ってみれば、模擬戦という名の蹂躙劇が待っていた。

 

 傘で空中に打ち上げられた後は、連打連撃の嵐。

 

 だけど、彼は徐々に防御の速度が追い付いてきていた。

 一撃一撃を貰うごとに防御の腕をもっと確実に防げる場所に調整していた。

 

 だけど、最終的には負けてしまった。

 

 踵落としの要領で地面に叩きつけられて、跳ね返って少し浮き上がったところにマスタースパークで再び地面に叩きつけられていた。

 

 さすがに放置せずに、彼の家まで運ぶと治療までしていっていた。

 

 彼女なりに参護さんを心配しての行動なのだろうが、その前が恐ろしすぎて冷や汗が止まらなかった。

 

 家を訪ねてみると、意識はしっかりしていたので一安心。

 

 一通り彼の世話をした後に、鈴仙さんに治療を頼みました。

 いくら回復が常人よりも早いからと、放置していい怪我でもありません。

 

 明日にでも見舞い品を持って押しかけることにしましょう。

 




 いかがでしたか?

 次は参護の日記になるかと思います。

 もしくは、外伝に逃げるかww

 それでは、読んでいただきありがとうございました。


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海原参護の日記 ω月

 なんとか、書き終わりました。

 後半に色々ブチ込みすぎました。

 新キャラの登場と新ゆっくりの登場、両方やらなくちゃいけないのが作者のつらいところだな。

 というわけで、どうぞ。


 

ω月ヽ(´ー`)ノ日

 

 幽香さんがうちに来るようになってから、朝はY美鈴との組手と、Y幽香との植物への水やりと世話をすることが日課になっている。

 

 随分とY小悪魔も成長して、少しだけではあるが動き回るようになった。

 

 今日は三歩も動けていたので、もうすぐ他のゆっくりたちと同じように歩けるようになるだろう。

 

 少し動くと疲れてしまうようで、部屋で疲れているY小悪魔を拾い上げて食卓まで運ぶのも日課になっている。

 

 人里からの依頼も妖怪からの依頼も最近は順調で、本当に文さんには感謝しかない。

 彼女の新聞に広告を出していなければ人里からの依頼しか来なかっただろうから、ゆっくり妖怪たちの食事代が稼げなかったかもしれない。

 

 ちなみに、Yパチュリー・Yレミリア・Y咲夜・Y美鈴・Yフラン・Y小悪魔・Y幽香。

 以上、七人で大体食費が二人と赤ん坊分ぐらいになる。

 

 成長したゆっくり妖怪が成人男性の三分の一ほどだから、あながち間違った計算でもない。

 

 さすがに、合計三人+赤ん坊分の生活費を稼ぐのは難しいものがある。

 

 食費自体はたまに鈴仙さんがタケノコを、妹紅さんが鶏肉や魚を、幽香さんも野菜や果物を持って来てくれるから助かっている。

 

 タケノコなんて刺身でいけるぐらい新鮮だから、調理も楽だ。

 刺身と言っても軽く茹でる。

 普通のタケノコに比べればかなり楽な調理だし、醤油と生姜で食べるのがお気に入りだ。

 

 といっても、最近なぜか家事が当番制になって、俺・Yパチュリー・Y咲夜・Y幽香で家事を回している。Y美鈴は俺たちが家事をしている間、YレミリアとYフランの相手をしている。

 Y小悪魔は当番以外の人が面倒を見ている。

 

 なんというか、家族がどんどん増えていっているみたいだ。

 

 

 

ω月( ´_ゝ`)フーン日

 

 今日は鈴仙さんが依頼を持ってきた。

 

「依頼なんですが、姫様のお相手をしてください」

 

 なんのお相手かをきちんとしゃべろうか?

 

 なんでも、暇を持て余している彼女の主人が、文々。新聞の広告記事を読んだそうだ。

 

 そしたら、

「何でも屋なら、私の暇の相手もしてくれるわよね?」

 と言い出して、止めようとした彼女の上司も最終的に折れてしまったそうだ。

 

 いや、いいんですがね?

 

 依頼料を見たけどとんでもない値段だったし、食費が浮いているとはいえ、生活費は稼いでおきたい。

 

 それに、姫様こと蓬莱山輝夜さんにも会ってみたい。

 怪我をすることが多いが、入院よりも自宅療養が多いから永遠亭に行ったことが無い。

 

 いつも鈴仙さんから八意印の薬を怪我をするたびに持って来てもらっているから、これを機会にきちんとお礼をしておくべきだろう。

 

 ほぼ一日がかりの仕事になるはずだ。

 

 そうだな、暇つぶしなら家のトランプやらボードゲーム持っていくことにしよう。

 TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)なら一日かがりでも問題ないだろう。

 

 

 

ω月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 今日は永遠亭での初お仕事でした。

 

 八意永琳さんに仕事前にあいさつと、これまで怪我をした時に調合してくれていた薬のお礼をした。

 

 そしてさっそく仕事相手の蓬莱山輝夜さんの部屋にお邪魔した。

 

 どうも、本当に暇を持て余していたようで、知らない人間に会うだけでもかなり喜んでいた。

 

 彼女は囲碁や将棋、チェスやオセロなんかがかなり強く、やりこんでいる感じがあった。

 当然俺は負けたのだけれど、負け続けると彼女自身が退屈するかもしれない。

 

 だからこそそこで提案したのは、TRPGだ。

 

 いや、結構馬鹿にできないのだ。

 多人数での話し合いながらのプレイであり、GM(ゲームマスター)の性格次第で若干判定に揺らぎが出るのがまた面白い。

 

 輝夜さんもTRPGの魅力にすっかりハマってくれたようで、次までにオリジナルシナリオを作るんだと張り切っていた。

 

 ルールブックはクトゥルフとサタスペを置いてきたが、サタスペがお気に入りのようだった。

 なんでも、やりたい放題できるのが楽しい、のだそうだ。

 

 メンバー集めるからと外出まで計画していた。

 

 そのことに関して永琳さんから感謝された。

 

 なんでも、永遠を生きる蓬莱人の天敵の一つに『暇』があるのだという。

 

 最近は色々な遊びも飽きてしまっていたようで、鬱々としていたそうだ。

 妹紅さんとの殺し合いの時にそれが爆発するのか、鬱々としていた度合いで被害が拡大するのだという。

 

 後始末は永琳さん達なので、被害が少ないことに越したことは無い、といった所だろう。

 

 家に帰ると、YパチュリーがソードワールドとダブルクロスのTRPGのルールブックを棚に飾っていた。

 本当にどこから持って来てるんだろうか?

 

 

 

ω月(((( ;゚Д゚))))ガクブル日

 

 Yパチュリーは読書好きである。

 

 だから定期的に新しい本を仕入れているが、そろそろ本棚が危なくなってきた。

 

 阿求様に相談すると、友人に貸本屋をやっている人がいるらしい。

 

 名前を本居小鈴さんといい、鈴奈庵という店名で活動しているそうだ。

 

 一年以上住んでいるが気付かなかったのは、生きているのに精いっぱいだったからということにしておきたい。

 

 本を読む暇も無かったし、一人暮らしに慣れるのも大変だった。

 

 今は人の生活を助けるぐらいにまで生活スキルは上がったと思う。

 

 さて、貸本屋『鈴奈庵』だが、阿求様が紹介状を書いてくれたこともあり、すんなりと受け入れてくれた。

 

 ある程度、文々。新聞で俺のことを知っていたようで、ニコニコと受け入れてくれた。

 

 いくつか借りる本を選び出して、借りる手続きをする。

 

 借りる際にポロッとYパチュリー用の本があることをしゃべってしまったら、今度読みに行くと言われてしまった。

 本の返却時に持ってくると言っても、私の読みたい本は私が選ぶの! と言われてしまえば是非も無い。

 

 家に来るならと、ゆっくり妖怪について説明した。

 

 ちょっと楽しみだと言っていたから興味が出たのだと思う。

 

 最後に「本を汚したらオシオキです」とクギを刺された。

 

 怖えよ。

 

 

 

ω月( ゚д゚)日

 

 本居小鈴さんが家に来た。

 

 それと同時に輝夜さんも家に来た。

 

 見事なバッティングである。

 

 ちなみに、輝夜さんは鈴仙さんとてゐさんを連れて来ていた。

 

 ああ、TRPGやるんだなと直感で分かったが、そこで小鈴さんが居たのは運が悪かったと言える。

 

 俺、小鈴さん、輝夜さん、鈴仙さん、てゐさん。

 

 一人がGMとして、プレイヤー四人は中々に丁度いい人数だ。

 

 結果、輝夜さんの依頼という形でシナリオ終了まで拘束されることになった。

 

 寝る前の日記を書く時間だけど、なぜか隣の部屋に四人分の布団が用意されていて、明日の朝ごはんの下ごしらえも済ませている状態だ。

 つまり、朝早く朝食を作り、食べた後で続きをプレイする予定なのだ。

 

 一つのシナリオをクリアするならここまで時間もかからないだろうが、なにせ周回前提のTRPGだ。

 ある程度周回ボーナスが手に入った状態でこそ面白さが発揮される。

 

 それを味わいたいのだろう。

 

 あ、ちなみにGMは鈴仙さんだ。

 

 なんでも徹夜でルールを覚えさせられたのだとか。

 同情してしまった。

 

 

 

ω月(´ぅω・`)ネムイ日

 

 朝一で準備してTRPGのセッティングをした。

 

 ゆっくり達もパタパタとセッティングを手伝ってくれた。

 

 朝ごはんは俺が作ったが、昼ごはんと晩ごはんはYパチュリーとY咲夜が作って配膳してくれた。

 

 プレイしながら膝の上に乗っかってきて、揉まれたそうに鳴きながら体を擦り付けてくるゆっくりたちの要望に応えていると、輝夜さんも興味が湧いたのかY美鈴を揉んでいた。

 

 おお~っと声を漏らしながら目を光らせていたので、気に入ったのだろう。

 

 TRPGの休憩と称して、他のゆっくり妖怪たちを揉みまくっていたから外れてはいないはずだ。

 

 しかし、Yパチュリー達に料理を作ってもらって感じたことだが、冷蔵庫が無いのは少々手間がかかる。

 

 出来合いのものを作っておいてもすぐに悪くなってしまうので、その都度作らないといけないのだ。

 

 昔の氷を使った冷蔵庫の仕組みを知っているから後は氷を手に入れるだけだが、幻想郷で製氷技術なんてあるわけもない。

 

「ごめんな、冷蔵庫があれば少しは楽ができるんだけどな~」

 

 気を付けているつもりだったが、TRPGのせいで気が緩んでいた。

 

 首をかしげていたYパチュリーを見て、

 

 あ、やっちまったな

 

 と思った。

 

 そうそう、輝夜さん達と小鈴さんはプレイ後にそれぞれ帰って行った。

 小鈴さんは数冊の本を持って、輝夜さんはプレイした結果が満足いったのかホクホクで帰って行った。

 

 

 

ω月(`・д・´)キリッ日

 

 予測通り、家に来たのはゆっくりチルノ。

 Yチルノ。

 

 作っておいた氷冷蔵箱の上の段が寝床になったのだが、彼女自身も気に入ったようで喜んでいた。

 

 氷を入れるよりもずっと食品が長持ちするので冷蔵庫並みになった。

 

 ありがたいけど、Yチルノに申し訳ない。

 

 お詫びにと揉んであげた。

 

 ヒンヤリした弾力のあるスライムという感じの手触り、触られること自体が好きなのか、手を触れるとよく感じようと頬を摺り寄せてくる。

 

 大きさはYパチュリーと同じぐらいだが、遊ぶのが好きなようでYレミリアとYフランと遊んでいる。

 Y小悪魔への世話も進んでやっている所を見ると、面倒見のいいガキ大将という感じだろうか?

 

 ゆっくりたちのおかげで生活がどんどん豊かになっていく。

 食費は増えたがそれ以上にもらい物が多く手に入るし、ゆっくり達のおかげで家事や鍛錬も助かっている。

 

 仕事が増えたおかげで収入も良くなったし、仕事関連で色々と交流が増えたのもありがたい。

 

 考えてみれば、恩しかない気がする。

 

 ゆっくり妖怪。

 

 彼女たちは本当に俺をいい方向に導いてくれた。

 

 だったら、俺は彼女達を護ることを誓おう。

 特にYパチュリー、彼女との出会いで今の俺があるのだ。

 

 お礼と言っても、念入りに揉んであげるしかできないのが歯がゆいのだが。




 いかがだったでしょうか?

 本居小鈴と蓬莱山輝夜、Yチルノの登場になります。

 二人はたまに出てくるのでいろいろと主人公の家が大変なことになります。

 特にTRPGにハマった輝夜が色々と引っ張ってくる予定ですので……。


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外伝 本編でやれないネタ

 注意:一日に二話投稿しました。参護の日記 ω月を見ていない方はそっちが本編です。

 どうも、通算UA11万 お気に入り2千2百 となりました。

 ありがとうございます!

 本当は別視点日記を投稿するべきなのでしょうが、諸事情で本編に入れられなかったネタを投稿します。

 存在しなかったり、別次元の話だったり、過去話だったりですので、興味がなければ飛ばしてもらっても全く問題ありませんので!

 ではどうぞ!


01.ジョジョの存在しない世界なんです……

 

 Yパチュリーをそっと抱きしめると、壁に寄り掛かる様に座り込む。

 

「パチェ……君の言うように、僕らはやはり二人で一人だったのかもしれないな。奇妙な友情すら感じるよ……。今、二人の運命は完全にひとつになった…。そして…船の爆発で消える…」

 

「ゆ!?(参護…!? こ…こいつ……死んでいる……!)」

 

 少しの沈黙の後に、二人は勢いよく体を起こすと

 

「イェーイ!」

 

「ゆーー!」

 

 ハイタッチの要領で手とYパチュリーの髪を合わせる。

 

 ゆっくりと暮らしているうちにふと、あの名シーンを再現したくなったのだと参護は語る。

 

 ゆっくり妖怪もJOJOの漫画を読んでから非常にノリノリで再現に協力してくれた。

 

 しかし、ノリノリが過ぎて、全ゆっくり達とこのシーンをするハメになったのは別の話だ。

 

 

 

02.喋れないんだよなぁ……

 

 Y小悪魔もだいぶ成長してきた。

 

 ほんの少しだが、モノを認識してるようで、お菓子を与えてみると

 

「おかち!」

 

 と嬉しそうにしゃべるし、分からないものは首をかしげている。

 

「……」

 

 俺をじっと見てどうした?

 

「おとーちゃん!」

 

 ぐはぁ!?

 なんと……いう……破壊力だ……!!

 

 

 

03.ライダー好きなんです

 

 以前に片腕を砕かれた恨みを持つ妖怪は、人里へ復讐にやってきた。

 

 入り口で目的の男が立っていた。

 その姿はまるで気負うことなく、畏れることなく、こちらを倒すべき敵と認識している目だ。

 

 屈辱に他ならない。たかが人間に腕を砕かれたばかりか、勝てると思われていることが何よりも許せなかった。

 

 その怒りが彼が腰に付けている奇妙な銀色のベルトと手に持っている小箱の様な物体に気づくことをさせなかった。

 

「親父に感謝だな。魔術と科学の融合、その試作機がこいつだ」

 

 参護はポケットから折り畳み式の携帯電話を取り出すと開いて構える。

 

 『5・5・5……Standing By』

 

「変身!」

 

 携帯電話をベルトに縦に差し込むとそのまま横に倒す。

 

 『Complete』

 

 その音声と共に、男の身体にベルトから赤いラインが伸びて鎧のような形を作っていく。

 

 完成した時にはその姿は、仮面ライダー555となっていた。

 

「悪いが、速攻だ。あまり長引くと、ゆっくり達や阿求様と慧音さんが起きてきちゃうからな」

 

 バックルについている携帯電話の表面。カード状になっている部品を外すと、腕に付いていた似たようなカード、色が違うものに差し替える。

 

 その途端、全身が赤と黒とシルバー、目が黄色の姿からシルバーと黒、目が赤い姿に変わる。

 

「十秒だ……!」

 

 腕のタイマーの様な装備のスイッチを入れた瞬間、世界が変わる。

 

 『Start up』

 

 音が鈍り、妖怪の動きが遅くなり、自身はその中でいつも以上に速く動ける。

 

 足にポインターと呼ばれる装備を付けるとすぐさま駆け出しながら、腹、足、顔面と幾度も無くその拳や蹴りを叩き込んでいく。

 ある程度ダメージを与えられたと感じた参護は、複数の紅い鏃を展開。

 

 無慈悲に幾度となく、クリムゾンスマッシュと呼ばれる飛び蹴りを何度も妖怪に打ち込んだ。

 

 その腕は一撃でヒビが入った。

 

『3』

 

 二撃目で完全に砕け、皮膚が破れる。

 

『2』

 

 三撃目で肉が裂け、皮のみが腕をつなげているような状態になる。

 

『1……Time Out』

 

 その音声とともに、加速した世界は元の世界に戻る。

 

 目の前には両腕を砕かれ、フォトンブラットの毒で少しずつ体が灰になっていく妖怪がいるのみ。

 

 妖怪はすぐに里に背を向けると逃げ出した。

 

 最期ぐらいは妖怪らしく、屍を人間にさらすなんて無様を晒すわけにはいかない。

 

 特にこの男の前では。

 

 妖怪は最後の力を振り絞り、森の中へと消えて行った。

 

 

 

04.兄貴の登場予定は無いからね、仕方ないね。

 

 海原曹護。

 

 海原参護の兄であり、参護が知る中で最強の人間だ。

 

 寡黙で不良のように振る舞い、190㎝を超える身長とガッチリとした体格は初対面では確実に恐怖を与える。

 

 しかしのその実、その寡黙さの中に思慮深さが、不良のような振る舞いの中に兄弟や仲間への面倒見の良さが隠れている。

 参護はその彼の優しさに救われたのだ。

 

 参護の持つ『十秒の加速世界』は、曹護の使っていた技だ。

 彼の場合は波紋と気、霊力と魔力と参護よりも多くの力を組み合わせているため、加速世界とは言えないほどの速度になる。

 時間の概念を一つ飛び越えている感じだろう。

 

 しかし、参護がその力を手に入れたおかげで、その後に妖怪を撃退できたし、その力の応用である程度妖怪にあらがう術が出来たのだ。

 

 

「参護。テメェ、加速の世界は十秒だと言っただろう! テメェの身体と感覚がまだその技に付いて行けねぇんだ」

 

「だって、こうしないと曹兄に勝てねぇし……」

 

「同じ土俵に立ったところで勝たせねぇよ。俺はな、最強の龍の隣に立つんだ。ここで負けるようじゃ笑い話にもならねぇからな」

 

 曹護は幼少のある日を境に、このような目標を掲げ、常に鍛え続けてきた。

 最近だって修業で世界を回って帰ってきたばかりなのだ。

 

「それに、オメェはオメェの物語があるらしいぜ?」

 

 そう言った兄は俺の後ろ、何もない空間を睨んでいた。

 

 どう見ても道場の屋根しか見えない。

 

「何もないよ?」

 

「いや、近々オメェも旅立つかもしれねぇだろ? その時がオメェの、海原参護の物語だ。……そうだな、今一度体験しておけ。『加速世界』は成長で時間が伸びるだろう、今のうちに俺が鍛えてやる」

 

 やばい、組手コースだ……。

 

「構えな。十秒間だけの、濃厚な組手の時間だぜ!!」

 

 言葉と同時に『加速世界』を発動させる。

 

 その世界の中で曹護はまるで水を得た魚の様なスピードで迫ってくる。

 

 通常の組手でさえ勝てたためしが無い。

 

 それなのに、加速の世界での戦いだ。

 十秒の間に効率よく加速できる方が先手を取れる。

 

「ウラァ!!」

 

 曹護の拳が俺を数センチ後ろに下げる。

 

 負けられない。

 

 その一心で構え直すと、何度も曹護に殴り掛かる。

 

「ほぅ、悪くないな。次だ! ウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラ……ウラァ!!」

 

 反則である。

 

 ラッシュと曹護は言っているが、これを防げた(ためし)がない。

 

 最終的には、ボロボロになって地面に転がることになった。

 

 八秒

 

 すぐに立ち上がると、波紋を全力で練り上げる。

 残り少しなのだ。

 全力で行かなくては笑いものになるだけだ。

 

 九秒

 

「「山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!!」」

 

 全身全霊の波紋を込めた拳。

 その拳に曹護の拳が合わさる。

 当然強い方の波紋の力が相手に流れる。

 

 十秒

 

「うわぁぁ!!」

 

 電気の様な痺れを全身に味わい、床に転がった。

 

 完膚なきまでに負けだ。

 

 いつもの事過ぎて悔しさしかわかない。

 

「……」

 

 曹護はぶつけ合った方の手をじっと見つめている。

 

「なるほど、成長したな参護。オメェはこれで一人前だ」

 

 その言葉を聞いた途端、俺の意識は途絶えた。

 

 

 ********************

 

 

「助けないのね?」

 

「助かりたいなら参護自身が足掻いて助かるべきだ。あいつは一人前なんだからな」

 

「少し厳しくないかしら?」

 

「いや、一人前になったんだ。テメェの面倒はテメェで見るのが筋だろ」

 

「弟が可愛くないのかしら?」

 

「かわいいぜ? だからこそ、あいつは自分で探す時なんだよ」

 

「……何をかしら?」

 

「自分が命を懸けても護りたいものだ」

 

「貴方にもあるのかしら?」

 

「ああ、おそらく世界一有名なドラゴンだよ」

 

「無限龍オーフィスかしら?」

 

「さすがだな」

 

「人間には無理よ」

 

「その無理を通すために修行してるんだ」

 

「そう。じゃあ彼は幻想郷に責任を持って送り届けるわ。そこから先は自己責任よ」

 

「ああ、あいつが死ぬならそれまでだ。だがな、あいつが何かを護りたいって言うのを邪魔したら、結界ぶち破ってでもそこに行ってテメェをぶん殴ってやるからな?」

 

「……ッ。了解よ」

 

 




 いかがでしたでしょうか。

 ゆっくり達をしゃべられるように設定しなかった事に少しだけ後悔。

 ライダーはネタですね。

 父親がデルタギア、長男がカイザギアを所持してます。次男は無くても強いという反則です。もし与えるならカブトゼクターかな?

 最後のは参護が幻想入りした時と、その後の会話です。

 曹護は霊光波動拳の継承者だったり、幽助から手ほどきを受けてたりする裏設定がありますが、それは曹護主人公の小説を書くことが出来たらですかね?

 ゆっくりの方は、きつね様というゆっくりキャラクターの素材を作っていらっしゃる方のイラストから引用させていただきました。

 彼のイラストは私の原点ともいえるほどの破壊力がありますよ。


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蓬莱山輝夜の日記 ω月

 いつもありがとうございます。

 感想返しとかで色々と言っていますが、私はゆっくりを可愛く書きたいと思ったきっかけである、『きつね』さんという方がいます。

 今回、その方から感想をいただけました。

 本気で嬉しいです。

 これからも、いきいきぷにぷにとゆっくり達を書かせていただます。


ω月ヽ(´ー`)ノ日

 

 暇である。

 毎日毎日、似たようなことの繰り返しで飽きてしまう。

 

 外に出ても似たような人間達が似たような暮らしをしているだけ。

 

 この日記だって変化を求めて初めてみたが、いくら読み返しても似たような事柄ばかり。

 

 妹紅と殺し合いをしている時が数少ない生を実感できる時間だ。

 

 しかし、今日は違う。

 

 興味を引く新聞の広告を見つけたのだ。

 

 『人間も妖怪もお仕事手伝います。護衛から扉の障子貼り、ゲームのレベルアップも手伝います。何でも屋 サンゴをよろしく!』

 

 ゲームというのは遊戯の外来語だということは知っている。

 

 つまり、この人間は人の娯楽にも付き合いますと言っているのだ。

 

 私の暇を潰させる。

 

 いい考えだと思う。

 どうにもならないほどの暇をこの人間がどう潰してくれるのか?

 

 明日にでもイナバに予約を取らせよう。

 この人間が生きているのはせいぜい七・八十年といった所だろう。

 

 その間の暇つぶしができるならかけてみよう。

 

 どうせ、この考えも暇つぶしなのだし。

 

 

 

ω月( ´_ゝ`)フーン日

 

 イナバに頼んでいた依頼は了承されたようだ。

 明日にでもこの永遠亭に来るらしい。

 

 道案内にイナバをつければ問題ないだろう。

 

 永琳に話したら反対されたけど、最終的には折れてくれた。

 

 話を聞くと、良く怪我をしてうちの薬で自宅療養をすることが多いらしい。

 

 なんとも人間らしい。

 

 死ぬ可能性があるにもかかわらず何かに真剣になれるのは、命限られた者の特権だ。

 

 彼はどんな娯楽を私に提供してくれるのだろうか?

 

 

 

ω月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 今日はまるで世界に色が着いたような、清々しい気分だ。

 

 娯楽など、誰かが作ったものをなぞらえるのが関の山だと思っていた。

 用意された戦いのルールに則り、その中で戦うしかできないものだと考えていた。

 

 しかし、彼の持ってきたTRPGは、確かに誰かが作ったものだった。用意されたルールの中での役割を演じるだけのゲームのはずだった。

 

 だが、役割を持った人が複数集まり、自分の目的のために行動する。

 そこに共通の目的を持ってくることで、役割同士が接し合う。

 

 これは、遊戯と同時に物語を作るものだ。

 

 同じ台本でもその時の役割と役者が違えば星の数ほどの道筋ができる。

 

 飽きない、とは思えない。

 

 だけど、一つのシナリオに飽きるのにも長くかかりそうなのだ。

 これで誰かが作ったシナリオを遊ぶならまだまだ長く遊べる。

 

 しかも、この遊戯は一つのルールだけじゃなかった。

 

 いくつものルールがあり、そのどれもが面白いと思えた。

 

 最高だ。

 

 海原参護。

 

 面白いものを紹介してもらった。

 

 これは、さっそくオリジナルシナリオととやらを創ってみんなで集まって遊ぶのも楽しそうだ。

 

 ちなみに、GMは参護。プレイヤーは私・イナバ・てゐ。

 

 プレイしたのは、クトゥルフ神話TRPGとサタスペというタイトルだった。

 

 同じTRPGというタイトルを持っているのに内容も世界観も別物だった。

 

 次は彼が居なくても、この環境を整えられるようにしましょう。

 

 イナバにGMができるようルールブックを覚えてもらって、私はオリジナルのシナリオを作るようにしましょう。

 

 ああ、楽しみだわ。

 

 

 

ω月(((( ;゚Д゚))))ガクブル日

 

 昨日に続いて、今日も朝から清々しい。

 

 永琳はうれしそうだったし、何かいいことでもあったのかしら?

 

 イナバはイナバで、真っ白になってたし。

 ルールブックは覚えてくれたようなので、私も後はシナリオを作ることにしよう。

 

 明日はイナバに頼んで参護の家に行くことにした。

 妹紅もたまに行くらしいが、知ったことじゃない。

 

 参護は本当に面白い男だった。

 

 妹紅のために彼との交流をあきらめる義理は無いのだから。

 

 そうね。

 別に、妹紅と殺し合いが永遠に続くのなら、参護との交流も続けられるようにすればいいのかもしれない。

 

 参護の蓬莱人化計画。

 まぁ、無いでしょうけどその気になったらお土産に薬でも盛ることにしましょう。

 

 

 

ω月( ゚д゚)日

 

 完成したシナリオを持って参護の家に来た。

 

 その時丁度人里の貸本屋の娘が来ていたが、丁度良かった。

 

 参護は依頼という形で巻き込めるけど、この貸本屋の娘は参加させるのに苦労した。

 

 最終的に参護に説得してもらったからよかった。

 

 しかし、この家は初めて見る妖怪が多く住んでいる。

 ゆっくり妖怪と紹介されたが、月では見たことが無かったし、幻想郷に来てからも見たことは無かった。

 

 私自身あまり外に出ないというのもあるのでしょうけど、それにしたって見たことの無い妖怪がこうもたくさん住んでいると、驚くものだ。

 

 この光景だけでも暇は潰せたかもしれない。

 

 この子たち、私達がTRPGをしている最中、適切な時にお茶やお菓子を持って来てくれるし、紫色の娘なんて魔術で部屋を快適な状態に整えてくれていた。

 

 なんというか、この家は彼女たちが頑張っていて、彼も頑張っているからこういう形で落ち着いているんだと思う。

 

 この光景を見るのもいい暇つぶしになるかもしれない。

 

 イナバがここによく通う意味がよくわかる。

 

 癒されるのだ。

 

 参護が笑顔をゆっくり妖怪たちに向けるたびに、彼女たちは張り切って彼や私たちに尽くしてくれる。

 

 まるで、彼の喜びが自分たちの喜びであると言うかの如く、あの手この手で尽くしてくれている。

 

 いい空間ねここは。

 

 

 

ω月(´ぅω・`)ネムイ日

 

 昨日に引き続き、TRPGをした。

 

 見事にエンディングにまでたどり着いて、個人的に満足だった。

 

 しかし、あのゆっくり妖怪はとてもかわいらしいと思う。

 参護の膝の上に乗って何かをねだるようにしている姿も、参護に揉まれて満足そうな表情をしている姿も、可愛いという言葉がよくあてはまる。

 

 興味が出たので参護に確認したら、許可が出たので近くにいた緑の帽子に星の飾りのついたゆっくり妖怪を揉んでみた。

 

 あれは座布団だとか枕だとかそんなものとは比べ物にならない。

 月にいた頃だってこんな上質な肌触りと揉み心地のモノは触ったことが無い。

 

 しかも、揉んでいることが嫌じゃないようでうれしそうにプルプルと震えている姿が非常にかわいらしい。

 

 これは、イナバが通うわけだし、悔しいが妹紅が通うわけだと思う。

 

 今日はさすがに永琳が心配するので永遠亭に帰ったが、あのさわり心地が忘れられない。

 

 参護が言うには、ゆっくり妖怪ごとに感触が全部違うという事だったので、次に行く時は他の娘も是非に触ってみたいものね。

 

 

 

ω月(`・д・´)キリッ日

 

 今日も今日とて永琳の機嫌が良かった。

 何かいいことでもあったのかしらね?

 

 鼻歌なんか歌いながらカルテを整理している姿はここ数百年ほど見ていない気がする。

 

 イナバとてゐは疲れているようだが、TRPGを楽しいと言ってまたやりたいと言ってくれた。

 

 私の作ったシナリオでだ。

 

 こんなにうれしいと思わなかった。

 

 聞けばTRPGはまだまだ種類があるし、二つのルールを合わせて遊ぶなんてこともできるらしい。

 

 しばらくは暇をつぶせそうだ。

 

 海原参護。

 

 あの男の周りには面白いものも、癒されるものもある。

 

 本気で蓬莱人にしたくなってしまう。

 

 本当に明日が楽しみなんていつ以来だろう?

 




 いかがだったでしょうか?

 ちょっと輝夜を暴走させすぎましたかね?

 そして、何気に参護呼び捨てキャラ第一号です。


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本居小鈴の日記 ω月

 ども、更新になります。

 タイトル通り、本居小鈴の日記になります。

 彼女の詳細調べてたけど、やっぱり資料少な目。
 まぁ、霊夢とか魔理沙に比べるとって注釈がつきますが、それでもちょっち大変でした。

 たった七日だけの日記形式ですが、あこがれた日記形式の作者様のあの量はまねできない……。

 それでいて、別視点の日記も作ってるんだからすごいぜ……。


ω月ヽ(´ー`)ノ日

 

 最近、天狗の新聞に新しい広告が掲示された。

 

 海原参護さんのやっている何でも屋の広告だ。

 

 広告掲載料はそれなりの値段だったと記憶していましたが、それを払えるだけ儲かっていると考えていいのでしょうか?

 

 最近は阿求からの話も参護さんの事が多くなっている。

 この前なんて、彼の家に泊まったと聞いた。

 

 さすがに貞操は無事みたいだった。

 

 からかったらボロが出たから間違いない。

 

 だけど、阿求が編纂作業以外で興味を持つ人がどんな人なのか? 興味がある。

 

 近いうちに、家を紹介してくれるように頼んだ。

 参護さんも本をよく購入しているようだから紹介しやすいと言っていたし、近々会えるかもね。

 

 

 

 

ω月( ´_ゝ`)フーン日

 

 今日もなぜか阿求の愚痴を聞かされた。

 

 参護さんはどうやらかなりの無茶をする人間のようで、散々阿求の愚痴に付き合った。

 いや、あんなに阿求が一人の人間に対してモノを言うのは初めてだったはずだ。

 

 これはこれで面白い展開になりそうで、わくわくしている。

 

 良く恋愛系の小説にも出ている、恋心に気づかない女の子って感じがしていた。

 

 もしかしたら、参護さんはものすごい罪作りな人なのかもしれない。

 

 会ってもいないのに、結構ひどい印象だけど、間違ってもいないと思う。

 

 なにしろ、一時間以上聞かされた男の印象だ。

 いい方向に偏るのも難しい。

 

 今日の収穫は、阿求に男の影が?

 ってところかしらね?

 

 

 

 

ω月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 聞くところによると、るーるぶっくなる読み物が存在するらしい。

 

 魔導書やら魔力のこもった本なんかにも手を出していた私ですが、これは人間が普通の読み物として書いている書物であるという事です。

 

 阿求が件の彼から仕入れてきた情報らしい。

 

 興味がわきます。

 

 なにしろ、読んだことの無い本だ。

 もしかしたら、彼は私の読んだことの無い本をたくさん持っているかもしれませんね。

 

 今日は永遠亭へ仕事に行っているそうなので、明日以降にでも適当な理由を見つけて家に行って面白そうな本があるか探してみるのもいいかもしれない。

 

 それにしても、阿求の彼への愚痴は尽きることが無いのかしら?

 だんだん惚気に聞こえてきて、少し腹立たしく感じている私が居るのだけど……。

 

 

 

 

ω月(((( ;゚Д゚))))ガクブル日

 

 ようやく(くだん)の男性。

 海原参護さんがうちの店にやってきた。

 

 阿求から聞いてたイメージ通りとはまだわからなかったけど、物腰自体は柔らかめで、対応も紳士的。

 

 本を読んでいるときも変に折れたりしない様に気を遣ってくれているのが分かった。

 なるほど、こういう所なんだろう。

 

 阿求や、話に聞く他の妖怪たちが彼の近くにいるようになっているのは。

 

 そして、彼の家にも本があるということを本人の口から聞き出した。

 

 思わぬ誤算だ。

 サラッと聞くつもりだったが、参護さんが口を滑らせて話してくれたのだから。

 

 さっそく後日借りに行くと話したが、今日借りる本を返す時に持ってくると言っていた。

 だけど、それじゃ私が読みたい本を持ってくるかわからない。

 だから丁重に断って彼の家に行くことにした。

 

 その際に、彼の家にはゆっくり妖怪という人に害のない妖怪が住んでいて、阿求の依頼で生態調査をしているらしい。

 

 借りて行く本もその中に一人に読ませたいから借りるという部分が大きい。

 

 彼の本の取り扱いは信用できると今日一日見て理解はしているが、その妖怪が扱うとなると話は別だ。

 

 キチンと本は汚さない様にとクギを刺しておいた。

 

 微妙に頬が引きつっていたが、これぐらい言わないと汚す人間はいるのだ。

 

 

 

 

ω月( ゚д゚)日

 

 参護さんの家に本を借りに行ったら、永遠亭の姫に会った。

 

 正直、やらかしたと思ったけど、なぜか私を含めて卓上遊戯なんかを始めることになっていた。

 

 日記帳を持って来ていなかったので、参護さんから紙を借りて書いている。

 後日、日記に貼り付けることにする。

 

 数冊面白そうな本を選んだあたりで、TRPGのるーるぶっく? という本を持った永遠亭の姫が来て、卓上遊戯をした。

 というか、今もしている。

 

 明日の朝一で再び続きをやることになるので、今日は参護さんの家に泊まることになった。

 

 しっかりと布団の準備や風呂の支度が済んでいるのは、件のゆっくり妖怪たちの功績だ。

 

 彼女たちは私たちが卓上遊戯をしている最中も、飲み物やお菓子などを適時差し入れてくれて、メモしておきたいことがあるとスッと紙と筆を用意してくれる気遣いぶり。

 

 言葉こそしゃべれない。というか、「ゆっくりして行ってね!」に近い言葉しかしゃべれないようだ。

 そんな彼女たちも私たちの言葉はしっかりと理解しているようで、私の膝にいたとある吸血鬼に似たゆっくり妖怪は私の言葉に反応して首を縦に振ったり、横に振ったりしていた。

 

 なるほど、これは可愛い。

 

 特に、とある吸血鬼姉妹に似たゆっくり妖怪は他のゆっくりたちに比べて一回りほど小さく、ニコニコと笑っていることが多いので、余計にそう思えるのかもしれない。

 

 今日はもう寝ることにする。

 明日も続きがあるのだし。

 

 

 

 

ω月(´ぅω・`)ネムイ日

 

 朝目が覚めて、朝食をとったが非常においしかった。

 外来人で、外の調理方法もある程度理解があるらしい。

 

 それは美味しい訳だ。

 

 そして、昨日の続きをしているとお昼になり、ゆっくり妖怪たちがご飯を運んできてくれた。

 参護さんはずっと私達と一緒にいたから、彼女たちが食事を作ってくれたことになる。

 

 あの体格でどのように鍋や食材を扱ったのかわからないが、味は間違いなくおいしかった。

 参護さんの味に近い気がするので、ゆっくり達も彼の料理を基準に作っているのだろう。

 

 若干の差異は彼女達なりの独自性を出した結果なのかもしれない。

 

 問題なく卓上遊戯も終わって、参護さんの家から戻ってくることができた。

 

 参護さんから借りてきた本は合計八冊。

 

 そのうち一冊が、昨日今日と私が遊んだTRPGという遊戯のルールブックらしい。

 

 それを読んで、私も阿求と参護さんを呼んで遊んでみるのも悪くない。

 

 それに彼が持っていた、漫画? とかいう書物も興味深い。

 

 独特の絵柄で文字と一緒に描かれている。

 

 題名は……「生徒会○員共」

 

 十冊以上あったので、その内五冊ほど借りてきたが、今まで私が呼んだどの書物とも趣が違っていた。

 いや、なんというか本当になんなのだろう?

 

 彼は漫画だと言っていたが、その中でも四コマという種類らしい。

 

 起承転結を一コマずつで表現するという面白い形態で、これは興味深い。

 

 後々、残りも借りてくることにしよう。

 

 

 

ω月(`・д・´)キリッ日

 

 今日は阿求がうちに来て、参護さんの家に泊まってきたことについて根掘り葉掘り聞かれた。

 

 話を逸らそうと、

「根っこは掘れるけど、葉っぱは掘れないよね?」

 などと、ちょっとした疑問を投げかけてみたけど

「秋口に山に行けば好きなだけ掘れますよ」

 と、返されてしまった。

 

 なるほど、落ち葉か……。

 

 と、私の小さな疑問が解消されたが阿求の追及は止まらなかった。

 

 いやぁ、参護さんに対して最初こそ騙したみたいにして里の門番みたいな役割を押し付けたことを後悔してたけど、今はそれ以上に彼を気にかけている。

 傍から見てると本当に面白い。

 

 指摘してあげようかとも思ったが、まだ早い気がする。

 

 もう少しその気持ちを育ててから指摘した方が面白い展開になりそうな気がする。

 

 だから、もうちょっとだけ、そのモヤモヤとした感情について悩んでね?

 

 親友として私も協力する。

 まぁ、もう少し経った後だけどね。

 

 ……半日ほど質問攻めにあうのはこれっきりにしてほしいが……。

 




 いかがだったでしょうか?

 次は、海原参護の日記になります。

 個人的にはそろそろかな? っと考えてます。
 なにがとは言いませんが。

 新規参入のゆっくりも考えないといけませんしね。
 紅魔館はそろいましたが、紅魔郷勢はまだなんですよね。

 大妖精とルーミア。

 悩まないといけません。


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海原参護の日記 Ю月

 最近、色々な所で自分の作品を話題にしていただいているらしいです。

 大変ありがたいです。

 評価のコメントも最近知りましたし、まだまだ意見を参考にして頑張っていきたいと思います。

 Юはロシア文字の『ユー』といいます。


Ю月ъ(`・ω・´)グッ日

 

 毎朝のY美鈴との組手でも徐々に相手の行動が理解できつつあるので、そろそろ新しい組手相手が欲しい所ではある。

 何事も同じことを繰り返すと組手として成立しなくなる。

 

 Y美鈴の行動が読めるようになり、先んじて行動を潰すような立ち回りをすることができるようになる。

 しかし、それは別の相手には通用しない。

 

 だから定期的に新しい組手相手が必要なのだけど……。

 

 文さんは難しいし、幽香さんはそもそも組手にならない。もう空中コンボは嫌なのです。

 

 妹紅さんはめんどくさがるし、鈴仙さんは薬売りの仕事前にさせるようなことじゃない。

 

 だから、誰か探さなくてはならない。

 

 心当たりはあるのだ。

 知識として知っているだけで、会ったこともないし、彼女が引き受けてくれるかどうかも分からない。

 

 紅美鈴(ホン・メイリン)

 

 彼女なら組手ができる上に、勝手なイメージだが様々な武術に精通していそうな感じだ。ぜひ一度組手をしておきたい。

 

 Y美鈴を連れて一度行ってみたいと思う。

 

 YパチュリーやY咲夜は家で留守をしていてほしい。

 

 特にYパチュリーは一番長い付き合いだ。

 守ってくれるという信頼感もある。

 

 明日、朝一で紅魔館の正門前に行こう。

 

 

 

Ю月(・∀・)ニヤ日

 

 朝一でY美鈴を護衛代わりに連れて紅魔館へ行ってきた。

 

 美鈴さんは門の前に立っていた。

 組手の頼みごとをしたら、あっさりとOKが出た。

 

 新聞や文さんの話で興味があったらしい。

 

 あと、Y美鈴と初めて会ったらしく、彼女を持った状態で少しの間見つめ合っていた。

 心なしか、口元がヒク付いていた。

 

 そりゃ、自分に似た饅頭型妖怪が居たらこうもなるか。

 

「この……娘は?」

 

「ゆっくり妖怪のゆっくり美鈴さんです」

 

「ゆっくりよろしくね!」

 

 この流れだと、頭の中整理するために止まるだろうな。

 

 組手は驚くほどにためになった。

 

 杖の技術も持っていたようで、俺の技術をしっかりと指導してもらえた。

 

 武器を使う人間は無手の訓練も必要だと、無手の立ち会いも見てもらえた。

 

 評価は

「人間にしては恐ろしいほど鍛えてますね。三国時代の英雄にすら匹敵します」

 とのことだった。

 

 心当たりがちょっとだけあったが、それよりも彼女は三国時代の英雄を目にするだけ生きているのか? という疑問が先に立っていた。

 

 美鈴さんから気功の教えを貰った代わりに、彼女に波紋の呼吸法を教えることになった。

 

 波紋の力は知ってはいたが、使えるわけではなかったそうだ。

 

 俺としても気は使いたかったので、技術交換ということで教え合う約束をした。

 

 

 

Ю月∑(゚Д゚)ガーン日

 

 幽香さんは突然やってくる。

 

 朝起きて組手をしようと裏庭に出たら、幽香さんが切り株に座っていた。

 

 俺が住み着く前からある切り株だけど、なかなか大きくて大木だったと予想できる。

 そこに座っていた幽香さんは、日傘をしながら組んでいた足を組み直して、こう言った。

 

「紅魔館の門番に師事しているようね? 順調に強くなるのよ」

 

 ああ、つまり実力が上がってからまた戦いたいという事ですね。

 

 勘弁してください。

 

 Y幽香と何やら会話していたが、何を会話していたのかはわからなかった。

 どうやら、元々自分のゆっくり妖怪と面識があったらしく親しげな対応だった。

 

 美鈴さんは面識が無かったようなので、一概に本人と面識があるというわけではないだろう。

 

 花壇の花も順調に育っているので、彼女も満足そうにしていた。

 

 明日は美鈴さんに師事しよう。

 

 連れて行くのはYパチュリーにして、Y美鈴には留守を頼むことにする。

 

 

 

Ю月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 今日の美鈴さんはYパチュリーを見て再び固まっていた。

 

「パチュリー様のも居るんですね」

 

「紅魔館全員いますよ?」

 

「本当ですか!?」

 

 こんな会話があったのが懐かしい。

 

 今日は美鈴さんに波紋の呼吸を教える。

 

 さすがに、実家で使っていた呼吸矯正マスクなんて持っていない。

 

 なので、実際に目の前でやって見せてから、肺を打撃して呼吸法を覚えてもらう必要がある。

 

 ……不意打ちでやれる自信が無かったので、口頭で説明してからやった。

 

 情けなかったな。

 

 気功の練習は美鈴さんから身体に気を流してもらって気の流れを覚える作業を繰り返した。

 

 美鈴さんに触れてもらっている時は、暖かい流れがわかるのだが、離すと途端にわからなくなる。

 まだまだ、修行が足りないという事だろう。

 

 

 

Ю月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 幽香さんに修行の進捗状況を見るため模擬戦に叩き込まれた。

 

 波紋で強化してもダメだった。

 気功の基礎を学んだ状態でもあまり変わらなかった。

 

 空中コンボの後に岩壁に叩きつけられて終わった。

 

 帰り際に傷や打ち身に効く薬草をたくさん置いて行ってくれたので、Y幽香に調合してもらって全身に塗った。

 

 全身に塗っていたら、ゆっくり達が身体に薬を塗って体を押し付けてきた。

 おかげできちんと薬が全身に行き渡ったが、ゆっくり達の身体を濡れタオルでしっかりと拭いてあげた。

 

 Y小悪魔も少しずつ歩き回れるようになってきた。

 まだ飛べないが、歩いているとピョンピョンと隣の部屋に行く姿をよく見るようになった。

 

 しかし、まだ子供なのか疲れて眠ってしまう。

 

 それを抱き上げて、寝床に運ぶのも日課になりつつある。

 

 ただ、扉の死角に眠られると踏んでしまいそうになる。

 

 最近気を付けるようにしている。

 

 

 

Ю月( 0w0)日

 

 美鈴さんに波紋を教えていたのだが、視界の端にチラッと何かが見えたので探してみると、ゆっくり妖怪がいた。

 

 Y大妖精。

 

 プルプル震えていた。

 

 Yパチュリーを見たが、首を横に振っていた。

 

 どうやら、彼女が意図したゆっくり妖怪ではないようだった。

 

 涙目でプルプルとおびえている様子だったので、一旦離れてYパチュリーに任せて修行に戻る。

 

 おそらく、気を高めている姿がおびえさせてしまった原因のようだ。

 

 美鈴さんは波紋の呼吸に良く馴染んでいた。

 気功と波紋を同時に扱うことはまだできていないが、波紋だけならそろそろ十分と言えるほどの使いこなし方をしていた。

 

 それに対して、俺は自分の身体の中の気の流れを感じて、操作するまでは何とかなるようになった。

 体外に出すにはまだ修行が足りない。

 

 帰る時にYパチュリーとY大妖精が付いて来た。

 

 どうやら、うちに来ることで一致したようだ。

 

 まだ若干おびえているが、何とかついてきてくれている。

 

 

 

Ю月(((( ;゚Д゚))))ブルブル日

 

 どうやら、Y大妖精はYチルノと仲が良かった……というか、一緒に行動していたのかもしれない。

 

 家に行ったら、Yチルノの傍らから離れなくなった。

 他のゆっくり妖怪に対してもビクビクしていたので、内気な性格なのかもしれない。

 

 揉んであげようと思ったが、さすがに怯えている相手を揉みしだくなんてことはできない。

 

 Y大妖精はどうやら花壇に興味があるらしく、俺やY幽香が水をあげているのを興味深そうに見ていた。

 

 幽香さんが今日も来ていた。

 どうやら野菜を持って来てくれたようだが、うちの縁側でくつろいでいるのはどうなのだろうか?

 

 別にいいのだが、縁側で寝ている回数は確実に俺よりも幽香さんや鈴仙さんの方が多い気がする。

 

 Y大妖精が物陰からちらちらとこちらを見ている。

 

 近寄りたいが怖いって感じだろうか?

 

 Yチルノが大丈夫だよって感じで話しかけている。

 

 それでも踏ん切りがつかないって感じか。

 

 こればかりは、Y大妖精の方で来てくれないとだめだ。

 なにしろ、俺から行けば怖がらせてしまうのだから。

 

 幽香さん夕食食べていくのだろうか?

 

 用意しておこう。

 




 いかがだったでしょうか?

 ここの美鈴は三国時代の英雄すら目にすることができるぐらい長生きですし、各種戦闘技術に精通している強キャラです。

 いろいろ意見があると思いますが、個人的に好みの設定なのでこちらで行きたいと思います。

 別視点の日記で彼女のゆっくり妖怪への印象が書かれると思います。


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風見幽香の日記 Ю月

 ども、ゆっくり要素まだ足りないなぁ。

 魔改造計画。
 主人公じゃなくて、元々チートな人w

 太陽のエネルギーって時点でいろいろ考えてましたが、こうなると手が付けられないなぁ。


 

Ю月ъ(`・ω・´)グッ日

 

 花から花へ。

 太陽の畑を起点にして、幻想郷各地へ渡り歩くことが私の趣味の様なものだ。

 

 幻想郷各地に咲き誇る花を愛でる事で、私はある種の安心を得ることができる。

 

 人里へは珍しい花の種が入ってきたり、良い花が咲いた時に立ち寄る程度だった。

 

 位置的には丁度いい位置にあるので、幻想郷各地へ行く際の休憩所にもってこいだったのだが、私も妖怪だ。

 自分でもわかっているけど、戦闘狂である自覚はあるし、気に入らない輩が居れば手が出てしまうだろうという予想もできる。

 

 だから人里にはあまり訪れずにいたのだけど、最近は海原参護の家が丁度良い休憩所になっている。

 

 人里と外の丁度境界にある立地。

 妖怪達が頻繁に立ち寄るほどに染みついている濃い妖力の残滓。

 

 彼の家は人と妖怪の双方の気配が強く残っている。

 

 だからだろうか?

 妖怪である私でも非常に居心地がよくて、おそらく人間も居心地の良い家になっている。

 

 どちらかに傾けばどちらかがダメになるものだが、彼の家は絶妙な匙加減で成り立っている。

 

 多分だけど、ゆっくり妖怪たちの効果もあるはずだ。

 

 彼女たちは幻想郷に散らばる魔力や妖力、霊力を集めて形になった妖怪だ。

 

 誰の力が多く取り込まれているかで姿が変化する。

 

 だけど、私のゆっくり妖怪が妖力しか持っていないかと言えばそうではない。

 

 彼女たちを構成する力の通り、魔力も妖力も霊力も持っているのだ。

 

 そして、認識されることで存在を保ち、人間と同じ食事をして、妖怪たちと同じように魔力や妖力を吸収して生きている。

 

 彼女たちがこの絶妙なバランスを意図して保っているのだろう。

 

 彼女たちにそこまでさせる参護君は、本当に面白い人間だ。

 

 

 

 

Ю月(・∀・)ニヤ日

 

 今日は参護君の家に行ってきたのだけど、今日はどうやら紅魔館へ出かけているようだ。

 

 私のゆっくり妖怪が言うには、朝一で紅魔館の門番の所に行ったらしい。

 

 ということは、組手にでも行ったのかしら?

 言ってくれれば私が相手してあげたのに、残念ね。

 

 この前の組手はとても良かった。

 大抵の相手はあれだけ空中で攻撃を受け続ければすぐにでも戦意が消失して、無抵抗になる。

 

 強者は別だが、参護君は強者に属せるほどの実力はまだ無い。

 良くて中級かしらね?

 

 しかも、中級に上りたての新人ってところかしら?

 

 そんな人間が、上級の中でも別格である私の組手に気を失うまで決してあきらめず、なおかつ成長を続けていた。防御が的確になり、私の隙を探そうとして目を見開いて観察をやめない。

 

 そういうやつは成長する。

 

 前回はちょっと手加減を間違えたけど、次はもう少し相手に合わせてあげることにしよう。

 

 そういえば、門番のゆっくり妖怪が見えなかったが、もしかしたら連れて行ったのだろうか?

 

 だとしたらあの門番の反応が見たかったわね。

 

 私も初めて私のゆっくり妖怪と会った時は取り乱してしまったし、彼女はどのような反応をするのか、後日本人か参護君にでも聞いてみましょう。

 

 

 

Ю月∑(゚Д゚)ガーン日

 

 朝一で彼の家に行ってきたけど、あの反応は笑えたわね。

 

 私を見てポカンとしてて、目が点になるというのはああいう事を言うのでしょう。

 

 花壇の花たちも順調に成長しているし、花たちが言うには彼がくれる水には不思議な力が込められているそうだ。

 

 波紋という力だろう。

 自然の力を活性化させる力だから、花たちの毒にはならない。

 

 それに、急速に成長を促す量の波紋は込めていないようだ。

 あくまで花たちの免疫力を高めて、病気や害虫に負けない様にしている。

 

 中々に精密な波紋の操作力だ。

 仮に波紋を妖力と置き換えて考えてみると、それだけの精密操作は私でも難しい。

 

 もちろん、波紋という技術が妖力の操作難易度と同じかはわからない。

 だけど、最大出力だとおそらく花の方が破裂するほどの力が出せるはずだ。

 

 それを免疫力などを高める程度まで弱めて出すことは相当難しいはずだ。

 

 着実に強くなる参護君はやっぱり、面白い。

 

 私のゆっくり妖怪と情報交換をしてきたが、彼は日常的に波紋の呼吸を続けていて、昨日から気功の修行を行っているという情報ももらった。

 

 気功を覚えたあたりでもう一度模擬戦をしてあげようかしら?

 

 その時期は私のゆっくり妖怪に任せよう。

 

 

 

 

Ю月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 昨日に引き続き、参護君の花壇の花と私のゆっくり妖怪と雑談をしながら過ごした。

 

 彼が常時波紋を練りながら生活しているせいで、この家の周囲の植物が元気になっている。

 

 普通に生活している時の波紋は滅多に漏れていないが、模擬戦や訓練で漏れた波紋が周囲に良い影響を与えているようだ。

 

 波紋自体は生き物に害がない、むしろ有益な力だったはずだ。

 

 波紋は仙道の奥義だったはずだから、もしかしたらこの空間は仙人が修行する空間に近い空間になりつつあるのかもしれない。

 

 妖怪も人間も居心地の良い空間。

 

 ゆっくり達だけでこの空間を良くしていると思ったけど、彼自身もこの空間を無意識とはいえ作る行動をしているようだ。

 

 やっぱり、この家に花を植えた私は間違っていなかったわね。

 

 居心地の良い空間も、見どころのある相手も居るんだから、当たりだと思う。

 

 

 

 

Ю月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 私のゆっくり妖怪から、参護君が気功の基礎を学んだと報告があった。

 

 実践に勝る訓練なし。

 

 さっそく、彼と模擬戦を楽しんだ。

 

 波紋の操作も向上していたが、学んだばかりの気功も僅かだが展開していた。

 参護君は気付いていないけど、無意識に利用しているなら扱う才覚も十分と考えられる。

 

 でも、今回は前回よりもマシになったけどまだまだだった。

 

 不屈の意思は健在だったが、まだ実力不足だ。

 

 次はもっと楽しめるといいわね。

 

 

 

Ю月( 0w0)日

 

 昨日から参護君の呼吸法を真似てみているが、やはり仙道の奥義と言われるだけある。

 

 見ただけでは真似はできそうにない。

 

 でも、あの力を私が使えるようになれば、まだまだ私は強くなれる。

 

 太陽の力に似た力が出るなら、吸血鬼には危険な力だが、他の妖怪にはあまり意味の無い力だ。

 

 後は、闇の力を操るあの妖怪ぐらいかしら?

 

 だけど、私は花の妖怪。

 

 太陽の力は私にとって最高の力だ。

 

 教えてもらうのは最後の手段として、いずれ盗めるなら盗みたいわね。

 

 なら、参護君が波紋を使う所を存分に観察させてもらいましょう。

 

 

 

Ю月(((( ;゚Д゚))))ブルブル日

 

 参護君の家の縁側は太陽が良く当たって心地いい。

 

 波紋の呼吸の観察も一旦休んで、ゆっくり妖怪たちと共にお昼寝をしていた。

 

 良い野菜を持ってきたのだけど、私のゆっくり妖怪と雑談していると魔女のゆっくり妖怪とメイドのゆっくり妖怪が縁側で眠り始めたので、つられて眠ってしまった。

 

 日焼けはしないのだけれど、参護君が気を利かせてくれたのか、すだれを下して直射日光が顔にかからない様にしてくれていた。

 

 私のゆっくり妖怪からも何度か聞いているけど、女性が眠っているのにスケベ心を出さずに布団をかけたり、すだれを下したりする。

 

 大妖精のゆっくり妖怪がいつの間にやら住み着いていたけど、彼女は自然の化身だし、花壇の花たちにも良い影響が期待できる。

 

 しかし、まだ慣れていないのかビクビクしながら参護君の事を遠くから観察していた。

 

 元々大妖精が少々気弱な所があったはずだが、ゆっくり妖怪はそれに輪をかけて気弱のようね。

 

 氷妖精のゆっくり妖怪と一緒に行動していたから、そのうち馴染むかしら?

 

 今日の晩御飯は野菜中心でおいしい料理だった。

 

 まだまだ、彼の波紋を見る必要がある。

 またここに来た時に観察させてもらうことにしよう。

 




 いかがだったでしょうか?

 幽香は基本的に参護が強くなることを望んでいます。

 自分が戦って楽しいという部分が強いですが、それ以外に幻想郷で自力で強者と渡り合えるぐらいには強くなってほしいという思いがあります。

 参護の家はとっくの昔に人外魔境に近い状態になってます。


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紅 美鈴の日記 Ю月

 (´ぅω・`)ネムイ

 アクセス履歴を見ているとやっぱり、参護の日記の人気は高いようですね。

 まぁ、ゆっくりが可愛くかける場所でもあることですし、人気になってくれるのはうれしいものです。


Ю月ъ(`・ω・´)グッ日

 

 波紋の戦士の話を幽香さんから聞いてから少し経った。

 

 大陸が三つの国で争っていた頃に何度か見たことのある技。

 波紋の呼吸法。

 

 のちに仙人の奥義として語られるようになったが、その実あれは気功によく似た力だ。

 

 気功は強化・破壊に比重が置かれているけど、波紋は逆に回復・活性に比重がある。

 双方とも気功のできることは波紋でも、波紋でできることは気功でやることは可能だったはずだ。

 

 気功と波紋を使いこなしていた将が言っていたことだから間違いはないだろう。

 

 だけど、波紋の継承者は少ない。

 

 それは習得が難しいことも挙げられるが、仙人がその技法を隠匿しているからだ。

 

 もちろん仙人以外にも習得者はいたが、習得が難しい技だったので今の時代にほとんど残っていないと聞いていた。

 

 しかし、この前の幽香さんの話だと、幻想郷に波紋の使い手が入ってきたという事だ。

 

 気功だけしか身に付けていないが、波紋も身に付けることができるかもしれない。

 

 昔に師事していた気功の師、彼女から波紋を習えなかったが、今ならば習えるかもしれない。

 

 その使い手殿がどのような人物か、興味もある。

 

 近いうちにお嬢様にお願いして人里まで足を伸ばしてみようか?

 

 昔をいろいろ思い出した。

 懐かしいと感じるのも、波紋の使い手殿の情報を聞いたおかげかもしれない。

 

 

 

 

Ю月(・∀・)ニヤ日

 

 今日、波紋使いの男が徒歩で紅魔館まで来た。

 

 ここまでの道のりは決して楽な物ではなかったはずだ。湖には多くの妖精が住んでいる。

 妖精に後れを取るとは思わないが、あそこには大妖精と氷妖精チルノの縄張りだ。

 

 気になって聞いてみると、

「ああ、良く釣りで一緒になるあの二人ですか?」

 と言っていた。

 

 第一印象は強者の風格と一般人の雰囲気が共存する不思議な男。

 

 その次に感じたのが、三国時代の英雄を思い出させる程の鍛え抜かれた戦士の気だ。

 

 思わず気を練ってしまったほどだ。

 

 それともう一つ私を驚かせたのが、ゆっくり妖怪という珍しい妖怪だった。

 

 見た目は生首だが、しっかりと意思があり、生きていた。

 

 そして、その姿は私だった。

 

 いや、私に擬態しているのか?

 

 参護さんが言うには、生まれる時に私の妖力や気を多く取り込んだから、私の姿になったのだと言っていた。

 

 思わず彼女を持った状態で固まってしまった。

 見つめ合うような形になったが、こうする以外に何かあっただろうか?

 

「ゆっくりよろしくね!」

 

 などと叫ばれては笑うしかない。

 

 未だに混乱気味なのだ。なにしろ、自分に似た娘が目の前の男性に犬猫のように懐いている姿を見るとかなり気恥ずかしい気分になる。

 

 犬猫が体をこすり付けてくる姿を、自分のゆっくり妖怪がするのを見るというのは、本当に恥ずかしかった。

 

 しかし、参護さんは紳士的だった。

 

 色々と雑談をして、波紋の呼吸法を教えてくれる代わりに、気功を教えることになった。

 

 等価交換。

 

 千年越しの希望が叶うというのも、予想外だったがこれも縁だ。

 

 次に彼が来るのが楽しみだ。

 

 

 

 

Ю月∑(゚Д゚)ガーン日

 

 波紋の呼吸法。

 

 昨日、波紋の力を私の身体に流してもらった。

 

 もちろん、害にならない様に調整されていたが、その調整が絶妙なものだった。

 

 昨日帰り際に波紋を流してもらって、今も全身に波紋が行き渡り、全身が活力にあふれている。

 

 気功でも同じことができるが、それよりも強く・心地よい力の奔流を感じる。

 

 気功との相性を確かめるために、気を練ってみるが、喧嘩するどころかうまく混ざり合い、今までにないほどの活力と力強さを感じた。

 

 強化で負ってしまう負荷が波紋で和らぎ、活性で不足する出力を強化で底上げしている。

 

 相性がいいというのは間違いない。

 

 参護さんの波紋でこれなのだ。自身で練った波紋ならどれだけ相性が良いのか?

 

 非常に楽しみだ。

 

 早く自分で使ってみたいものです。

 

 

 

 

Ю月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 今日は私のゆっくり妖怪ではなく、パチュリー様のゆっくり妖怪を連れてきた。

 

 話を聞くと、紅魔館の全員が彼の家にいるらしい。

 驚きを通り越して、固まってしまった。

 

 あのゆっくり妖怪。私のゆっくり妖怪に比べて、全身の気が充実していた。

 いや、充実していたというよりは、自身の容量の上限が増えているという感じだ。

 

 そして、今日は波紋の呼吸法を教えてくれた。

 

 私の肺を打撃して、空気を絞り出し、横隔膜を刺激して私の呼吸法を調整してくれた。

 

 そうすることで、私の呼吸で練る波紋を発生させることができた。

 

 後はこの時の呼吸法に近づけるように訓練を繰り返すだけ。

 

 お礼に参護さんへの気功の練習をした。

 

 彼の身体に触れて、私の気を送り込む。

 そうすることで自身の気の流れをつかみ、覚えてもらうことが目的だ。

 

 流すのをやめるとすぐに感じられなくなっていたが、徐々にその時間も伸びていっていた。

 

 才覚はかなりある方だ。

 

 弟子であり師匠であるなんて、面白い関係になったものですね。

 

 

 

 

Ю月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 波紋の呼吸は非常に難しい。

 慣れれば睡眠中ですら練ることが可能だと言っていたが、わずかに練るだけですごい集中力が必要だった。

 

 あれだけの複雑な呼吸をあれだけ自然にこなすことが出来ている。

 

 どれだけの長い期間修行したのだろうか?

 

 組手にしたって、技量が見事に積まれている。

 

 武器だけに頼らず、徒手空拳も駆使して私にくらいついてきていた。

 

 波紋の師だが、気功や体術に関しては私の方が師匠にあたる。

 

 これほどの逸材を眠らせるのは惜しい。

 

 しっかりと育てれば、まだまだ彼は強くなれるはずなのだから。

 

 

 

 

Ю月( 0w0)日

 

 参護さんから許しを得て、パチュリー様のゆっくり妖怪を揉んでみた。

 

 あれは癖になる。

 

 なんというか、こう……。

 

 揉んでいると、緊張で張りつめていた私の精神を癒してくれる気がするのだ。

 

 修行中に参護さんが新しいゆっくり妖怪を見つけていたが、何気に珍しいことらしい。

 

 パチュリー様のゆっくり妖怪が新しいゆっくり妖怪の相手をしていた。

 

 見ていて癒される光景だが、修行をおろそかにはできない。

 

 気功を練ると波紋が、波紋を練ると気功がおろそかになってしまう。

 独立して展開するなら少しはマシになってきただろうか?

 

 参護さんは体の中の気の巡りを理解し始めていた。

 

 その流れから察するに、効率よく流れを促しているようだったので、操作の段階も良い方向に行っているようだ。

 

 操作が完全にできる様になれば、放出と圧縮もすぐだ。

 

 楽しみだな。

 

 

 

Ю月(((( ;゚Д゚))))ブルブル日

 

 波紋を練っていると不思議と眠気が無く、それでいて体の調子が良くなる。

 

 咲夜さんに驚かれた。(失礼な!)

 

 波紋を練りながら太極拳を行うと、全身へ波紋を巡らせつつ、深い呼吸ができるようになる。

 

 しかし、まだ気功との同時展開が難しい段階。

 可能であると聞いているが、自分がやろうとすると思わぬ難易度になる。

 

 太陽の力を身に宿すと言っていた。

 それが本当なら、お嬢様や妹様には使えないが、咲夜さんやパチュリー様に使うことで、疲れや持病が癒されるかもしれない。

 

 なら、一刻も早く習得してお二人の身体を癒せるようになりたいものです。

 




 いかがでしたか?

 美鈴の設定は独自設定・独自解釈によるものです。

 つじつまが合わない、私の知っている二次創作と違う。などと思う事もあるでしょうが、この小説では美鈴は三国時代にはもう生きていた長寿な人です。

 この三国時代にも裏設定があるのですが、そっちは私の別小説が進んだら出るかもです。


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海原参護の日記 Д月

 どもども、参護の日記更新になります。

 ちなみにДは『でー』ロシア字

 になります。

 ちょくちょく感想やメッセージで聞かれてた方々の出番です。

 それではどぞ。


Д月(゚Д゚)エッ日

 

 今の何でも屋の依頼は大まかに種族で分けるなら、人間の依頼と妖怪の依頼がある。

 

 文さんは天狗という妖怪だし、阿求様は人里の代表的な人間だ。

 慧音さんの様なハーフも居るので例外もあるが、基本的にはそういう風に分けられる。

 

 そして、人間側の依頼は護衛や内職などの比較的危険度の少ない依頼が多い。

 妖怪側は、前回の輝夜さんの様なほのぼのした依頼もあるが、基本的に危険度が高くて難易度がまちまちなものが多い。

 

 そして、会ったことは無いけど、アリス・マーガトロイドは元人間の魔法使いだ。

 

 彼女からの依頼内容が『霧雨魔理沙が持って行った魔術書を取り返して』だった。

 

 THE 無茶ぶり♪

 

 まず、彼女たちが住んでいる魔法の森は確か、人間には危険なキノコの胞子が充満していたはずだ。

 

 そのせいで、人間はおろか妖怪も近づかないと聞く。

 

 そこに行けと?

 ちなみに、本の特徴や冊数を教えてくれなかったので、絶対にアリスさんには会いに行かなくてはならない。

 

 家の位置は入り口近くに香霖堂があったはずだから、そこで聞けば何とかなりそうだが。

 

 波紋で胞子を防げないものか?

 

 植物に詳しそうなY幽香に聞いてみると

「ゆっくりしていけるよ!」

 という返事をもらった。

 

 いや、ゆっくりしていく気はないが、波紋で免疫力を高めておけば何とか活動ができると解釈してもいいだろう。

 

 香霖堂でアリスさんの家の場所を聞いて、目的の魔導書の情報を貰って、魔理沙さんの家に行って、返してもらえるように交渉する。

 

 明日の仕事はかなりの難易度というか手順が大変だな。

 

 

 

Д月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 補助役としてYパチュリーを連れてきた。

 

 植物に詳しいという理由でY幽香と迷ったが、Yパチュリーの魔術に期待することにした。

 

 香霖堂はすぐに見つかったが、教えてもらったアリスさんの家への道順には苦労した。

 

 妖怪もおらず、人間もいない。

 精々妖精が居るぐらいなのだが、おかげ様で飛べない人間にとって悪戯されれば方向感覚が狂うわけだ。

 

 アリスさんの家にたどり着いたのが、結局夕方だった。その際に何度か林に影を見たが、それよりも依頼である。

 

 さすがに、彼女の家に泊まるわけにもいかないので、必要な情報を聞いたらすぐに出発しようとしたのだが、ドアを開けた瞬間に糸に絡め取られた。

 

 人形使いだと聞いているが、蜘蛛系の妖怪だと言われても納得できるほどの糸の使い方だった。

 

「今から森に出るのは自殺行為よ? 一部屋用意してあげるからそこで寝なさい。あと、その珍しい妖怪について説明もね?」

 

 ゆっくり妖怪への興味のついでに、俺の心配ってところか?

 

 色々とゆっくり妖怪の説明や波紋の説明をして過ごした。

 

 用意してくれた部屋は客間だったのを本棚が侵食していた感じの部屋だった。

 

 長期の仕事だと思っていたが、これは慧音さんや鈴仙さんに家を頼んでいて正解だったか。

 

 とりあえず、寝る前に波紋の力を高めて、残ってる胞子を何とか除去しよう。

 

 

 

Д月o(゚Д゚)oウン!!日

 

 朝一でアリス邸を出ると、アリスさんの指示通りの道順を辿って見事午前中に魔理沙さんの家に到着できた。

 

 周囲にキノコが多く生えているが、魔理沙さんの家は普通の民家といった感じの外観だ。

 

 ドアをノックすると気の抜けた声と共に薄着の女の子が出てきた。

 

 彼女が霧雨魔理沙か。

 

 じっとこちらを見た後に急に扉を閉めてドタバタと音をさせた後に、出てきたのは完全に魔女スタイルの彼女だった。

 

 どうやら、ここに来るのはアリスさんぐらいなのだろう。

 ドアを開けた時に、「何だよアリス、朝っぱらから……」って言っていたからな。

 

 それはそうとして、交渉に入る。

 

 どうも彼女は渋っていた。

 当然だな。言われて返すぐらいなら、アリスさんも俺に依頼なんてしてこないだろう。

 

 つまり、魔導書を返してもいいと思えるぐらいの利益を彼女に提供する必要があるわけだ。

 

 交渉を続けるうちに魔理沙さんがYパチュリーに興味を持ち始めた。

 

 正確にはゆっくり妖怪を家に大量においている状況に、だが。

 

 後は、知り合いのゆっくり妖怪だからだろう、遠慮が無い。

 

 一応は俺に触ってもいいか? と聞いてくるあたり、常識はあるようだが。

 

 揉んだり、つついたり、全身をくまなく観察している。

 Yパチュリーが目を回していたが、少し楽しそうだったので良しとする。

 

 しかし、そんなに珍しいのだろうか?

 

 昨日と今日で見つけたものを、魔理沙さんに見せるためにYパチュリーに頼むと、すぐにつれて来てくれた。

 

「ゆっくりこんにちわ!」

「ゆっくりひさしぶりね!」

 

 アリスさんの家の近くにいたYアリスと、魔理沙さんの家の近くにいたY魔理沙だ。

 

 家の近くに住んでいるみたいですよ? と教えると、

「……気づかなかった」

 と呟いて、頭を抱えてしまった。

 

 魔法を使うゆっくりが三人そろったからなのか、三人で談笑? していた。

 

 終始和やかな雰囲気だったが、何を言っているのかわからない俺や魔理沙さんからすれば、三人集まって「ゆっ、ゆっ!」っと言いながらプルプル震えているだけだ。

 

 可愛い。

 

 最近、野生? のゆっくり達を目にする。

 今回は問題なく暮らしているようだったので、声もかけなかったのだが、このままだとYパチュリーをくれと言われそうだったので、連れてきたのだ。

 

 さすがに自分のゆっくり妖怪は微妙な気分になるそうなので、Yアリスを家に置くようだ。

 一緒に暮らすうえで必要なことを教えて、ゆっくり妖怪の情報を教えた見返りに魔導書を返してもらった。

 

 帰ろうとしたら、再びアリスさんと同じ理由で一泊させてもらった。

 ありがたかったが、Yパチュリーの魔法で色々と研究をしていた。

 

 ちゃっかりしてやがる。

 

 

 

Д月(`・ω・´)ノヨロシク日

 

 朝起きて、魔理沙さんとYアリスに見送られてアリスさんの家に行った。

 

 一応、ゆっくり妖怪で困ったことがあったらウチに来るようにと、魔理沙さんには家の位置と出入りしている人たちを教えて置いた。

 

 さすがに、家の近くで弾幕ごっこなんてされたらたまったものじゃない。

 

 アリスさんの家で依頼の品と事の顛末を説明すると、自分のゆっくり妖怪がいることとそれがこんなに近くにいたことに驚いていた。

 

 なぜか付いてきていた、Y魔理沙を見せるとやっぱり驚いていた。

 

 まぁ、自分の生活圏に思いっきり住み着いていたわけだし、ショックはショックだよな。

 

 Yアリスも魔理沙さんに引き取られたようなので、一緒に住んでみては? と提案すると、興味があったのか好い返事がもらえた。

 ただし、彼女が生涯をかけている研究があるので、もしかしたら面倒を見きれなくなる可能性があると言われた。

 

 その時は俺の所に連れて来てくれれば面倒見ますと返答。

 実際、魔理沙さんにも同じこと言ってきたので、問題ない。

 

 その場で注意点や能力に関してなどの説明をして、Yパチュリーに実演してもらった。

 

 彼女の魔法を見て、納得したように頷いていた。

 確かにパチュリーの魔法理論ね、とか言っていたので、パチュリー・ノーレッジ特有の魔法理論とやらをYパチュリーも使っているのだろう。

 

 正直、分からないが。

 

 Y魔理沙もアリスさんの所が気に入ったのか、上海人形と楽しそうに遊んでいた。

 なんか、上海人形にコロコロと転がされているのは見ていて和んだ。

 

 抵抗しないんだもんな。

 

 今日もありがたいことに宿泊の許可が出た。

 正直、帰ってくるとは思ってなかったらしく、これぐらいのサービスはしてくれるらしい。

 

 YパチュリーとY魔理沙とでお手玉して遊んだ。

 思った以上にあの帽子がキャッチし辛いことが分かった。

 

 

 

Д月ヾ(゚Д゚ )ォィォィ日

 

 アリスさんに別れを告げると、香霖堂に寄ってお礼を言ってから、戻ってきた。

 

 戻ると、縁側で鈴仙さんが眠っていた。

 

 夕方だし、薬を売った帰りなのだろう。

 疲れているだろうし、疲れを取りやすいメニューでもてなした。

 

 Y小悪魔が順調に成長している。

 元々、羽がある姿をしていたが、今日それを使って飛んで見せたのだ。

 地面から一センチぐらいをフラフラと一メートルほどだ。

 

 だいぶ疲れたようなので、今日一日はゆっくりさせてあげた。

 

 

 

Д月(´ε`;)ウーン…日

 

 朝一で魔理沙さんが来た。

 

 とりあえず、勢い余って吹き飛ばした縁側の(ふすま)を直させてから話を聞いた。

 

 Yアリスの姿が変わったらしい。

 いや、変わったというか追加されていた。

 

 Yアリスの頭の上に上海人形? が鎮座していた。

 

 分離は可能。だけど、手を放すとフヨフヨとYアリスの頭の上に戻っていく。

 

 上海人形のゆっくり? いや、そもそも上海人形はアリスさんの魔力で動いていたはずだから、ゆっくり達が身体を作る際に上海人形から魔力を多く持って行ったとしても、それはアリスさんの魔力だから、Yアリスになるはずだ。

 

 そうなると、Yアリスが作った人形という可能性が出てくる。

 

 よく見ればアリスさんの家で見た上海人形に比べてデフォルメされている。

 アリスさんの能力である『人形を扱う程度の能力』を、Yアリスが持っているとすれば、その能力を発揮するための人形が必要になる。

 

 だから、こうして作り上げて自分の一部のように常に頭に乗せているのだろう。

 

 魔理沙さんにこのことを説明すると、ホッとしていた。

 その反応から、二日程度しか経っていないが、Yアリスは大事にされているのだと確認できた。

 

 Yアリスはなぜか、魔理沙さんの帽子の中がお気に入りのようで、魔理沙さんが帰る際はその中に進んで入って行っていた。

 

 うん、ホッコリとした表情で帽子の中に入っていくYアリスの姿が可愛かった。

 

 

 

Д月(・∀・)ニヤニヤ日

 

 昨日の魔理沙さんのダイナミックお邪魔しますの後だからか、普通に玄関から『お邪魔します』と言って入ってきたアリスさんに心底ほっとした。

 

 思わず、良い紅茶とお菓子でもてなしてしまった。

 いや、別にいいのだが。

 

 彼女の要件は、Y魔理沙の遊び相手がいっぱいいるであろう俺の家に来たという感じだ。

 

 Yパチュリー達にY魔理沙の相手を頼むと、Y小悪魔を紹介していた。

 

 新しく生まれた娘です!

 って言っているようにも見えるのだから、俺も慣れたものだ。

 

 ゆっくり達を遊ばせている間に、俺はアリスさんと雑談を繰り返す。

 気分は幼稚園児を公園で遊ばせて、ママ友同士で雑談する主婦といった所か?

 

 裏庭が見える様に襖を開けているのだが、鬼ごっこだろうか?

 そこを集団で走っていくゆっくり達が何度も見ることができた。

 

 アリスさんはどうやら、魔理沙さんから魔導書を取り返したことに対して相当感謝しているようで、これからもご贔屓にしてくれると約束までしてくれた。

 

 時たま、こうしてゆっくり達との交流を図りつつ、雑談をしに来たいとも言っていた。

 

 こうやって、ウチに来る強者がまた増えた。

 

 別にいいのだが、他の人達にアリスさんが来るようになりましたと報告しないと、バッタリ出会って弾幕ごっこ開始とかシャレにならん事になる。

 

 そうでなくても強い人たちばかりウチに来るのだから。

 総員で喧嘩にでもなったら、この辺り一帯の地形が変わるだろう。

 誇張でもなんでもなく……。

 

 だって、妹紅さんだけでもうちの前にクレーター作るほどの威力の技を持っているのだ。

 幽香さんや、魔理沙さんのマスパなんて、地面が抉れる。

 

 細心の注意を払って、我が家での約束事なんて作る必要があるかもしれない。

 

 ルール作りは必須だな。

 




 いかがだったでしょうか?

 参護日記は文字数も多くなりますが、閲覧してくれる方も多いようです。

 ありがたいことですね。

 参護家のルール作りがそろそろ本格的にはじめないと、マジでやばい頃合いです。


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アリス・マーガトロイドの日記 Д月

 ちょっと遅くなってすいません。

 デイリー    8位
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 の結果が残せました。

 本当にありがとうございます。
 ゆっくり妖怪を三段重ねている姿は絵になると思う。


Д月(゚Д゚)エッ日

 

 以前に、天狗から教えてもらった『何でも屋』に依頼を出してきた。

 

 人里で話題になっていることと、天狗に言われて改めて新聞の広告欄を確認したら、妖怪からの依頼も請け負うという話だ。

 

 試しに雇ってみようと考えたまではいいけど、実力がわからないのに大切な仕事は任せられない。

 

 人形関連の仕事は特にそうだ。中途半端な仕事をされて、大事な人形たちの完成度に支障をきたしてはダメだ。

 

 実力は新聞を読んだり、里の人達のうわさを聞いたりした限りでは、中級妖怪に辛勝できるレベル。

 人柄は、里でも評判のいい青年という話だった。

 

 では、知識……というより、智略に近い方向の依頼を出すことにした。

 

『魔理沙から私の本を回収する』という依頼を出しておいた。

 

 魔理沙はちょっとやそっとじゃ、本は手放さないわよ?

 

 どう対処してくれるのか楽しみね。

 

 

 

 

Д月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 夕方頃に、参護さんが来た。

 

 珍しい妖怪を連れて来ていたので、時間帯も時間帯だったので一部屋を貸して観察してみた。

 

 ゆっくり妖怪という種類の妖怪で、パチュリーの姿に擬態していた。

 

 参護さんに懐いているようで、何も無い時はベッタリと傍に付いていた。

 

 丁度、日暮れ近くに来たのがいい説得材料になったようだ。

 

 寝るまでの雑談としてゆっくり妖怪の生態についての説明を受けた。

 

 驚いたことに、彼の家には他にもたくさんのゆっくり妖怪が住んでいて、共同生活をしているらしい。

 

 他には魔理沙がどんな娘なのかいろいろ聞いてきた。

 

 確かに、これから本の返却交渉をする相手の情報は欲しいだろう。

 

 外来人で、家族が戦える人間だから自分もそれなりに心得があるとか、家に強い人たちが良く来るようになったとか。

 

 人柄はいい方だと思う。

 実力は実際に見て見ないことには何とも言えないが、思慮は深い方だ。

 

 親切心だけで泊めたわけではないと理解していたみたいだしね。

 

 

 

 

Д月o(゚Д゚)oウン!!日

 

 朝一で彼は出て行ったのだが、その際に朝食を用意して行った。

 

 私の印象から洋食風にしたようだが、大正解だ。

 ベーコンと卵、サラダとトースト。

 コンソメスープという基本的なものだったが、非常においしかった。

 

 魔法使いになってから、食事や睡眠はとらなくても問題ないのだが、習慣としてついつい食べたり、眠ったりしている。

 

 自分で作る食事よりも、他人に作ってもらった方がおいしく感じる。と、よく言われているが、実感した。

 

 取り続けていた人間の頃の習慣が、こうして与えられて気づいた。

 

 安心感。

 

 これを感じたかったのかもしれない。

 

 それだけじゃない。

 味付けも丁度良い塩梅で、私の味の好みを知っているかのような感じだった。

 

 昨日泊めた際に振る舞った晩ごはんから、私の好みを予想したと考えるのが妥当かしら?

 

 おいしい朝食を食べたおかげか、今日一日気分が良かった。

 

 私の気分が良いと、シャンハイ達の動きも良くなる。

 一日中、元気よく動いていたので、私の気分も一日中良かった、そう考えるのが妥当なのだろう。

 

 

 

 

Д月(`・ω・´)ノヨロシク日

 

 今日もまた参護さんがうちに来た。

 

 たった一日で、魔理沙から指定していた本を全部取り返してきてくれた。

 

 そしてゆっくり妖怪が増えていた。

 その娘は、魔理沙に擬態していた。

 

 なんでも、魔理沙は私に擬態したゆっくり妖怪を引き取って育てるようだ。

 

 参護さんは私に魔理沙に擬態しているゆっくり妖怪を育ててみないか? と言っていた。

 

 育てるのは構わないのだが、私には生涯をかけて研究しているものがある。

 もし、研究でこの娘と暮らせなくなったら参護さんの家に頼むことを了承してもらった。

 

 面倒を見きれなくなって捨ててしまうわけにはいかない。

 万が一も考えて、きちんとこの娘が暮らせるようにしないとね。

 

 その後は参護さんのゆっくり妖怪講習を受けた後に、パチュリーに擬態したゆっくり妖怪が操る魔法を間近で見た。

 ゆっくり妖怪は、周囲から魔力・霊力・妖力・気などを一か所に集中させた結果生まれる妖怪で、その際に最も取り込んだ力の多い人の形に擬態する習性がある。

 

 そして、その人の力を多く取り込んでいるので、その人の持つ力も使えるというわけらしい。

 

 パチュリーの魔法の理論が使われている魔法陣が展開されていた。

 『火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力』、まさにこの能力にふさわしい魔法だった。

 

 彼女の魔法理論を教えてもらったことがあるけど、その理論にしっかりと則った魔法の行使方法。

 そのうえ、同時展開するときの魔法陣の展開順序すら彼女と同じだった。

 

 本能でやっているのでしょうけど、随分とすごいことだ。

 私のゆっくり妖怪や魔理沙のゆっくり妖怪も、魔法の理論や能力をなぞることができるだろう。

 

 理論ではなく本能で操るのだから、私の技術や魔理沙の技術、パチュリーの技術が他に漏れることは無い。

 そもそも、魔法を操る上で魔法陣の展開は特に文字の配列や展開方法などで技術が図られやすい。

 

 だから、あまり魔法陣を多用する魔法使いはいない。

 

 強くなればなるほど、その技術は他者に読み取られ辛くなる。

 その最たる者が、パチュリーだ。

 

 彼女は技術を盗まれるとかそういう次元じゃない。

 普通なら展開されている魔法陣を見て、解読できる者がどれだけいるのだろう。

 

 それほど高度な技術の塊なのだ。

 

 それほどの技術を持った彼女に擬態したゆっくり妖怪が……。

 

「ゆー……」

 

「シャンハーイ」

 

 シャンハイに転がされて満足そうにしている姿は気が緩んでしまう光景だった。

 

 魔理沙に擬態したゆっくり妖怪も楽しそうに転がされている。

 

 シャンハイもホウライも何してるのよ……。

 二人とも気に入ったみたいだからいいけどね。

 

 正直、本が返ってくることは期待していなかったので、嬉しい誤算というやつだ。

 

 お礼と言っては何だが、今日も一泊してもらうことにした。

 

 彼の料理はおいしいし、シャンハイもホウライも妙に懐いていた。

 おそらく彼の身体から漏れている奇妙な力のせいだろう。

 

 波紋とか言っていたが、あれは気功の強化ではなく、活性化だ。

 

 その活性化の力を貰って二人とも今まで以上に動きが良くなった。

 これは後々しっかりと研究する必要があるだろう。

 

 あと、参護さんはお手玉が非常にうまいということが分かった。

 

 毎日やっているのだという。

 

 

 

Д月ヾ(゚Д゚ )ォィォィ日

 

 朝一で今日も、参護さんは出て行った。

 

 朝食はしっかりと用意して行った。

 まさに洋の朝食といった感じで、ベーコンエッグとサラダ、サラダには特製ドレッシングがかかっていてさっぱり食べられた。

 

 ゆっくり魔理沙は、キノコのソテーが気に入ったようでもぐもぐと食べている。

 そういえば、魔理沙もキノコ好きだったわね。

 

 研究の一環で集めてたはずだから食用も詳しい。

 たまに私でも食べられるキノコをお裾分けしてもらえるし、貴重なキノコももらえる。

 

 後、お菓子が好きなようで、ゆっくり妖怪たちが好むお菓子を売っている店を一覧にしておいていってくれた。

 

 洋菓子を好むことが多いようで、チョコやクッキーの受けがいいそうだ。

 一番ダメなのが、作られてから時間の経ったイチゴ大福だった。

 理由は書いていない。

 

 私もこの娘の好むお菓子を見つけてあげたいものだ。

 

 

 

Д月(´ε`;)ウーン…日

 

 まだ早朝だというのに、魔理沙が訪ねて来て、シャンハイを見せてくれと言ってきた。

 

 彼女が持ってきたのは、私に擬態しているゆっくり妖怪。

 その頭の上にシャンハイっぽい人形が鎮座していた。

 

 シャンハイを呼ぶと奥からきちんと出て来ていた。

 

 ということは、このデフォルメされた人形は、ゆっくり妖怪が調達した人形という事だろうか?

 

 しかし、初めて自分のゆっくり妖怪を見たが、なんというか微妙な気分だ。

 魔理沙の手の中で満足そうにホッコリした表情をしているのも微妙に恥ずかしい。

 

 それは魔理沙も一緒だったようで、

「うわ、私がアリスに懐いてるぜ……」

 と呟いていた。

 

 懐き方が犬猫みたいだものね。

 

 あと、なぜかシャンハイ達に転がされても無抵抗どころか微妙に楽しんでいるようだし。

 

 魔理沙はすぐに専門家? の参護に相談に行った。

 

 ああ、なるほどゆっくり妖怪関連で家を訪ねればいいのか。

 

 明日はそうすることにしよう。

 

 

 

 

Д月(・∀・)ニヤニヤ日

 

 今日、参護さんの家にお邪魔したらなぜか感動されて、歓迎された。

 

 昨日、魔理沙が箒で突入したので、普通に来た私がありがたかったらしい。

 

 とりあえずはゆっくり魔理沙も遊び相手が欲しいだろうと、参護さんの家に来た。

 ゆっくりパチュリーは新しく生まれたらしいゆっくり妖怪を紹介していた。

 

 参護さんは誕生の瞬間に立ち会ったらしい。

 やっぱり専門家で間違いないのかもしれない。

 

 本当にたくさんのゆっくり妖怪が居て、あちらこちらを飛び回っていた。

 

 あの氷妖精といつもそばにいる大妖精のゆっくりも居たが、完全に姉妹のようで、みんなで鬼ごっこだろうか、家の中を走り回っていた。

 

 参護さんとの雑談中に何度も廊下を行ったり来たりしていたから仲が良くなったのだろう。

 

 参護さんの事もたくさん知ることができたし、今日は大収穫といった所だろう。

 

 また来たいと言ったら、よく出入りしている人たちのことを教えてくれた。

 

 永遠亭の人はほとんどが来るらしいし、烏天狗はもちろん、あの風見幽香も来ているらしい。

 たぶん、喧嘩しない様にという配慮なのだろうが、一度ルールを決めた方が早いだろう。

 

 そして、目的の一つである参護さんの料理をごちそうになった。

 

 晩ごはんは持ってきた大きなキノコと大根のステーキと、オニオンスープにベーコンを混ぜたもの。

 サラダも新鮮な野菜が使われていて、トマトとチーズのサラダは本当においしかった。

 

 これはあれだ、参護さんはここに料理屋を始めてもいいと思う。

 こんなにおいしいのだから、繁盛間違いなしだと思う。

 

 今度はきちんと別の食材も持ってお邪魔しなくては!

 




 いかがだったでしょうか?

 実は上海人形や蓬莱人形が結構好きです。

 いや、東方キャラで嫌いなキャラっていないんですが、その中で好きになるキャラって自分の趣味が出てきますよね。

 パチュリー、美鈴、椛、橙、お燐、お空、にとり、射命丸、魔理沙、萃香、うどんげ、てゐ等々、獣娘が多いな。

 まぁ、モンスター娘のいる日常とか好きだし、当然と言えば当然か。


追記:アリスがキノコに関して書いている部分。
おいしいキノコ→私でも食べられるキノコ に修正しました。


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霧雨魔理沙の日記 Д月

 どもです。

 なんかもう、魔理沙っぽく無くなったかもしれない魔理沙日記です。

 先に謝っておきます。

 すいませんでした。


 

 

Д月(゚Д゚)エッ日

 

 少し前にアリスから借りてきた魔導書も読み終わったので、パチュリーからたくさん借りてきている積み魔導書を崩していくことにするんだぜ。

 

 文の奴が最近配っている新聞に新しい記述が増えた。

 

 香霖堂に置いてある新聞をよく読んでいるが、広告欄に新しい広告が増えていた。

 広告を出す奴なんて珍しいから、新しい広告が出ればすぐに目につく。

 

 こーりんはその広告主に仕事を依頼したこともあるらしいけど、私は会ったことが無い。

 

 人里で生活している上に、住んでいる場所が外れの部分だからか。どうも妖怪と共に住んでいるという話らしい。

 

 こーりんの話を聞いて、少しだけ興味が湧いたが、すぐに行かなくてはならない程の興味はない。

 それに一年以上、もしくは二年近く生き残っているのだから黙っていれば会えるだろう。

 

 新聞に広告を出せるぐらいだから、それなりに稼いでいるはずだ。

 仕事ができる奴と考えていいだろう。

 

 気が向いたら研究を手伝わせようかな。

 

 

 

 

Д月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 今日は珍しいキノコと薬草が手に入ったから頓挫(とんざ)していた研究が進められた。

 

 キリのいいところまで進めていたら、夜更かししすぎてしまったようだ。

 

 今日は早々に日記も切り上げて、寝ることにする。

 

 明日も採集にでも行くことにしよう。

 

 

 

 

Д月o(゚Д゚)oウン!!日

 

 今日は本当に恥ずかしい思いをした。

 

 昨日夜遅くまで研究をしていたから寝坊してしまったのもあるが、朝一に訪ねてきた人相手に寝間着姿のだらしない恰好で応対してしまった。

 

 更に悪いことに、お腹なんかを掻き鳴らして応対なんて、女として最低な場面なんだぜ……。

 

 いや、こんな辺鄙(へんぴ)なところに来るなんて、アリスや霊夢ぐらいなものだし、こーりんは昼過ぎじゃないとなかなか来ることが無い。

 昨日夜更かししすぎたのも悪かった。

 

 だからって、ほぼ半裸で男に応対したってのは最悪すぎるぜ。

 

 しかも、表情に出さないで、先ほどの事を無かったことのように応対していたあいつの優しさがむしろ辛かった。

 

 海原参護と名乗った男は、先日こーりんの店で読んだ新聞の広告主だ。

 

 アリスの依頼で本を取り返しに来たらしい。

 恨むぜ、アリス……。

 

 当然私は拒否したが、さっきからチラチラと視界に移っていたパチュリーの生首が気になっていた。

 参護から説明されたが、どうやら珍しい妖怪らしい。

 

 研究できれば更なる魔法の研究ができるかもしれない。

 

 そう思って参護にこのゆっくり妖怪なる妖怪が欲しいと提案したが、どうやら家の周囲にいるらしい。

 

 ゆっくり妖怪のパチュリーがすぐにつれてきた。私とアリスのゆっくり妖怪だ。

 

 正直、微妙な気持ちになってしまった私は悪くないと思う。

 

 自分に擬態している妖怪が目の前で男にすり寄っている姿は見たくない。

 しかも、先ほど痴態を見せてしまった相手だ。

 

 家の周りで暮らしていたことに気づかなかったことにもショックだったけど、どうも自分を見ているようでそれと同じくらい奇妙な感覚になる。

 

 なので、参護にも勧められたが、ゆっくり妖怪のアリスと一緒に暮らすことにした。

 

 それに伴って、参護からゆっくり妖怪の生態や注意事項などを教えてもらった。

 

 本を返すだけでも足りないだろうから、一泊していってもらうことにした。

 

 ついでにゆっくり妖怪のパチュリーからパチュリーの魔法体系を存分に観察させてもらえた。

 アリスのゆっくり妖怪も頼めば見せてくれるだろう。

 じっくりと仲良くなっていこう。

 

 

 

 

Д月(`・ω・´)ノヨロシク日

 

 朝一でアリスの家に向かった参護を見送ってから気付いたが、男を家に泊めたのは初めてだったことに思い当たった。

 

 参護の奴が居なくてよかったぜ。

 

 恥ずかしさのあまり、部屋で悶絶してたからな。

 

 しかし、アリスのゆっくり妖怪は色々と家の世話をしてくれる。

 

 糸の様な物を使って掃除・洗濯・料理に研究の手伝いなど、なかなかありがたい活躍をしてくれる。

 

 アリスの糸の術は便利そうだと思っていたが、こういう便利さを考えていたわけじゃないんだぜ。

 

 朝起きて山積みにしてた本が、きれいに本棚に収まって床が見えていた時は、知らない部屋に連れ込まれたのかと勘ぐってしまった。

 

 なんというか、研究以外でもゆっくりアリスを引き取って正解だったと感じた。

 

 

 

 

Д月ヾ(゚Д゚ )ォィォィ日

 

 昼ごろにこーりんの所に行ってきたが、参護もこーりんの所に立ち寄ったらしい。

 

 なんでも、アリスの家の場所の情報提供のお礼をしに来てくれたらしい。

 

 何というか、紳士過ぎて逆に疑わしくなってきた。

 最初は同性愛者を疑ったが、奴の自宅はなんでもハーレム染みた状況らしいと聞いたのでその線は消えた。

 

 もしかしたら、内面ですごいものを隠し持っているに違いないと考えた。

 人間は表裏でバランスを取っているものだと、どこかの誰かが言っていた気がする。

 

 その理論で行けば、参護は表側があれだけの紳士だったんだ。

 裏側はきっとドロドロに違いない!

 

 というわけで明日調べに行くぜ!

 

 

 

 

Д月(´ε`;)ウーン…日

 

 朝起きたら、ゆっくりアリスの頭の上にアリスの上海人形が乗っかっていた。

 

 慌ててアリスに上海人形の事を聞きに行ったらきちんと家にいた。

 

 つまり、このシャンハイ人形はゆっくりアリスが自分の能力をきちんと発揮するため用意したものか?

 

 とりあえずは、専門家である参護のところに行くことにした。

 元々行く予定だったし、いい機会だ。

 

 参護の家では勢い余って襖を数枚吹き飛ばしたが、無事到着だ。

 

 参護の話だとやはり、ゆっくりアリスが自身の能力を使うために用意した人形である可能性が高い。

 

 問題なく、説明通りに接していればいいと言われた。

 

 ここでも紳士だったな。

 襖数枚吹き飛ばしたのに、ちょっと怒って直させて終わりだった。

 

 軽く家探しもしてみたが、なにも無かった。

 

 余計なお世話かもしれないが、男として心配になってきたぜ。

 

 

 

Д月(・∀・)ニヤニヤ日

 

 今日は夜にアリスが訪ねてきた。

 

 なんでも、参護の家で晩御飯をごちそうになってきたらしい。

 

 料亭並みの腕前だとアリスが若干興奮気味に話していた。

 

 そこまで褒められると、ぜひ一度味わってみたくなるぜ。

 

 朝食を食べたことがあるが、昼飯晩飯はまた違った味わいがあるはずだ。

 

 アリスが食材を持って訪ねると意気込んでいたので、私もおいしいキノコでも持っていくことにしよう。

 

 ゆっくりアリスの料理は美味しいが、それとこれとは話は別だ。

 ゆっくりアリスもすぐに私に拾われたから、参護の料理は食べたことは無いはずだ。

 

 ゆっくりアリス共々、食事をたかりに行くことに決めた。

 

 




 いかがだったでしょうか?

 魔理沙じゃなくね? 的な突っ込みは不要でお願いします。

 押せ押せに見せて、ちょっとピュアっぽい形に書きたかったのに、どうしてこうなったんでしょうね?


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海原参護の日記 Я月

 投稿です。

 Яは「ヤー」と読む、ロシアの文字らしいです。

 今回は新規参入のゆっくりはいません。
 そろそろ自重しないと大変なことになりそうですし。

 それでは、ゆっくりよんでいってね!


Я月(|||゚Д゚)日

 

 格闘ゲームで壁際のコンボというものがあるのだが、それを味わった。

 

 幽香さんには空中コンボを、美鈴さんには壁際コンボを決められる。

 

 いつから東方は格ゲーになったんだろうな?

 いや、元々格ゲーもあったか……。

 

 紅魔館の壁に当てられて、跳ね返ったところを下からすくい上げられる様に蹴り上げられて、地面に着地する前に再び壁にぶつけられる。

 いや、安直な攻め方をした俺が悪いのは分かるが、周囲にすごい音が響いていた。

 

 なにしろ壁、ヒビ入ってたからなぁ。

 

 それを見た美鈴さんが、

「さ、咲夜さんに怒られる……」

 と震えていた。

 

 だったら加減してくれ……。

 

 波紋と気功で防御力、回復力が相当上がったし、痛みもある程度和らいでいる。

 だけど、上下左右に全身を揺さぶられるなんて、ここ一年以上無かった感覚だ。

 久しぶり、元気してた?

 なんて聞ける状況でもなく、ただひたすらに甘い攻め方をした結果どうなるのか? を文字通り叩き込まれたのだ。

 

 美鈴さんは波紋とも相性が良く、すぐに実戦に使えるほどにまで波紋を習得した。

 それに比べて俺は気功の習得はできた。

 

 だけど、双方の同時展開が出来ていない。

 

 気功は気功、波紋は波紋でしかまだ使えない。

 ただ、美鈴さんも気功と波紋の融合はできていないらしく、右手に気功、左手に波紋なんてこともしていた。

 

 そのおかげでさっきの壁際コンボだったわけだが。

 

 Yパチュリーはやれやれと言った感じで首を横に振っていた。

 

 彼女の中ではダメらしい。

 

 

 

Я月(〃ω〃) ポッ日

 

 ゆっくりお手玉をする機会が増えてきた。

 

 九人も居れば一人一人相手するのが難しいのだから、申し訳ない。

 ただ、YレミリアやYフラン、Yチルノ、Y大妖精、Y小悪魔はこのお手玉が好きらしく、五人まとめてお願いして来ることがある。

 

 一人一人大きさが違うので地味にきついお手玉なのだが、あの楽しそうな顔を見たらついついやってしまう。

 

 Yパチュリー、Y咲夜、Y美鈴、Y幽香は直接揉んでもらうのが好きなようで、単体で揉まれに来る。

 

 たまにブッキングして喧嘩? になる。といっても、転がってぶつかって、転がってぶつかっての繰り返しだ。

 喧嘩というよりは、遊んでいるように見える。

 

 事実、ぶつかっているうちに目的を忘れて遊びになっているからだ。

 

 しかもその確率百パーセント。

 

 なので放置する。

 

 さて、ホットケーキは小麦を幽香さんから貰える立場からすればかなり食卓に上がる確率の高いお菓子なのだが、今日は生クリームと砂糖もたくさん手に入った。

 

 ホットケーキを重ねて、その間に生クリームを挟み込んで、頂上にはクリームと果物でデコレーションしたホットケーキタワーを建設した。

 

 ゆっくり達は感激したようで、タワーの周りに集まっては感激したように体を揺らしている。

 

 可愛い。

 

 ふと、やってみたくなったことをやってみた。

 

 Yパチュリーの上にYフランを、その上にYレミリアを乗せてみた。

 名付けてゆっくりタワー!

 

 Yパチュリーは別段重いとは感じていないようで普通にしていた。

 

 YレミリアとYフランは大喜びで、うーうーと鳴きながら揺れていた。

 

 丁度、ゆっくりタワーとホットケーキタワーの高さが同じぐらいだったのもあって、他の六人も真似をしてタワーを作っては動き回っていた。

 

 まさかここまで気に入られるとは思わなかった。

 

 三人重なって目を輝かせてホットケーキタワーを見ている姿はとても癒された。

 

 

 

Я月ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル日

 

 今日美鈴さんの所を訪ねたら、メイド服を着た女性が美鈴さんに説教していた。

 

 挨拶をすると丁寧にあいさつを返してくれた。

 

 十六夜咲夜さん。

 

 一昨日に壁を小破させてしまったので、俺への謝罪含めて待っていたのだそうだ。美鈴さんに説教しながら。

 

 咲夜さんも組手に加わってくれたのはうれしいが、時間止めないでください泣いてしまいます状態だ。

 

 ちょっと昔のトラウマが顔をちらっと見せたので考えないようにした。

 

 咲夜さんは波紋に興味が無いようで、波紋の練習になると仕事に戻っていった。

 

 相変わらず美鈴さんの波紋を練る速度は速く、多い。

 

 俺は気功を練る速度は遅いが、コントロールは上手いらしい。

 コントロールは波紋でも相当鍛えたから、その名残だろう。

 

 これなら俺の夢が実現するかもしれない。

 

 舞空術!

 

 美鈴さんもできるという話だし、うちに来る人たちは大抵は飛べる。

 阿求様や小鈴さんはできないだろうが、他は全員出来るはずだ。

 

 それに飛べるようになっておけば、ここに来ることも、さらに遠くへ仕事の足を延ばすことも可能になる。

 外の世界には舞空術を使える人間を俺は規格外の兄以外では知らない。

 あの人は人間辞めてると思っているからな。

 

 しかし、舞空術を身に付けられれば、戦闘の幅も広がるし、不安定な体勢からの攻撃も出しやすくなる。

 波紋と併用できれば、さらに俺は強くなれる。

 

 帰り際に、咲夜さんから怪我の手当てをしてもらった。

 

 その際にYパチュリーも手伝っていたが、咲夜さんは表情に出すことなく、普通に応対していた。

 本当に本物のメイドって感じの人だな。

 

 

 

Я月ヘ(゚∀゚ヘ)月

 

 昨日からY咲夜の様子がおかしい。

 

 どうやら、俺の訓練に付いて行きたいようだ。

 

 しかし、美鈴さんは苦笑いで済ましていたが、咲夜さんはY咲夜を見てどんな反応をするのだろうか?

 

 昨日はYパチュリーを見ても頭を撫でるだけで、特に質問などは無かった。

 

 しかし、自分のゆっくり妖怪だ。

 自分だったら、微妙な気持ちになることは間違いないだろう。

 

 駄々を()ねているつもりなのだろうが、コロコロと転がっているだけだ。こっちを見ながら……。

 

 お菓子を出すと、

 目が輝く→ハッと目的を思い出してグヌヌの顔→お菓子を振るとそれに合わせて身体が動く→連れて行くことを約束してお菓子をあげると幸せそうに食べている。

 これは可愛いな。

 

 ちなみに妹紅さんが台所でタケノコの処理をしている。

 本当、みんな家に馴染んでるな……。

 

 

 

Я月(^◇^)日

 

 咲夜さんとY咲夜の出会い。

 

 それは、意外にも何もなかった。

 というか、咲夜さんよりも美鈴さんの方に効果が出ていた。

 

「おお、咲夜さんのゆっくり妖怪ですね! 可愛いなぁ~!」

 

 と言いながら、抱きしめて離さなくなってしまった。

 

 どうやら、美鈴さんはY咲夜がお気に入りになったようだ。

 今日一日中抱きしめっぱなしだったのがいい証拠だ。

 

 咲夜さんは、微妙な表情をしていた。

 そりゃそうだ。

 

 咲夜さんに、こっそりとレミリアさんやフランさんのゆっくり妖怪も居ますよ、と教えると次の人里への買い出しの時にお邪魔しますという言葉を貰った。

 

 やっぱり、レミリアお嬢様に忠義や愛情を持って接しているのだろう。

 

 ゆっくり妖怪たちの好物なんかも聞かれたので答えておいた。

 

 あと、血液はたまに自分のをあげていると教えると少量だったら分けてくれるとのことだ。

 

 わざわざ指先を切ったりしなくてよくなるのはありがたい。

 

 

 

Я月( ^ω^)ワクワク日

 

 子供は好奇心旺盛だと言う。

 

 Y小悪魔もまさにその時期に入ったのだろう。

 

 よく、目に入ったものがなんなのかを、他のゆっくり達に聞いている姿をよく見かけるようになった。

 

 子供は興味を持った者に対してできるだけ触れさせてあげるのが良いと聞く。

 

 なので、色々と体験させてあげたり、実演したりしてY小悪魔の好奇心を満たしていった。

 

 あと、少しずつではあるが、元々の小悪魔さんの性格が見え隠れしているのかもしれない。

 よくYパチュリーの傍にいるし、本を持って来たり読み終わった本を返したりしていた。

 

 お手伝いの様なものだし、そうすることで自立心が芽生えるものだけど、気分は初めてのお使いを見守る親の気分だ。

 

 心配でたまらない。

 

 それは他のゆっくり妖怪たちも同じようで、あちらこちらからY小悪魔を見守っている。

 

 我が家のアイドル、Y小悪魔の誕生である。

 

 

 

Я月(`・д・´)キリッ日

 

 今日は、咲夜さんと美鈴さんが二人でうちに来た。

 

 どうやら、咲夜さんは日中はレミリアさんが眠っているのでその間に用事等々を済ましているそうだ。

 美鈴さんは妖精メイドに門番を交代してお休みらしい。

 

 おもてなしとして、お茶とお菓子を出す。

 給仕はY咲夜。

 彼女の仕事には咲夜さんも満足しているようで、お茶を美味しそうに飲んでいた。

 

 美鈴さんは裏庭の花壇に興味があるようでそっちを見に行った。

 そういえば、紅魔館の花壇の管理は美鈴さんがしているって言っていたな。

 

 咲夜さんはYレミリアやYフランと遊んで大変ご満悦のようだ。

 

 二人とも咲夜さんが気に入ったようでよく懐いていた。

 

 帰り際に二人とも、たまに来たいと言ってくれたので、ここに来る人たちを教えておいた。

 もし喧嘩になったら自宅半壊か全壊が目に見えているからね。

 

 二人とも驚いていたけど、喧嘩っ早い人たちではないので一応は安心だ。

 

 ただ、幽香さんのバトルマニアっぷりはどうにかしないといけないだろう。

 模擬戦に俺が付き合いつつ、守ってほしい約束事を決めなくてはならないだろう。

 

 ほぼ、寮と管理人みたいな状況になっているが、仕方がない。

 無用な争いを避けるにはしっかりとしたルール作りが必須なのだ。

 




 いかがでしたでしょうか?

 ちなみに格ゲーネタちょいちょい入れてますが、作者は格ゲーは強くないです。

 育成ゲーやシミュレーションが好きなまったりプレイヤーです。

 ルーンファクトリー4、めっちゃはまってます。

 それでは、次はどちらの日記にしようかな?

 また読んでくださいね!


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紅 美鈴の日記 Я月

 お待たせしました。

 日曜は仕事ですので早めにUPです。

 美鈴日記になりますので、お楽しみください。



Я月(|||゚Д゚)日

 

 武器を使って戦う人も、素手で戦う人も、総じて無手の技術は必要になる。

 

 戦場において満足な状態で戦えることは少ない。

 剣士が剣を持っていないという事態もある。

 

 だから、無手での戦い方も習得するのだ。

 戦場を知らない人は習得しない人も多いが、戦場を知れば知るほど、生き残れば生き残るほど、無手の戦いが大事であると感じることができる。

 

 参護さんは杖術の使い手だ。

 

 それも、実戦で使って十分に通用するレベルの使い手だ。

 

 三国時代に私に無手を教えてくれた武将の人がいたが、その武将の人達の練度に届きそうなほどの腕前だ。

 

 今の時代、常に戦があるあの時代に比べて実戦の機会が少ない。

 だというのに、有名武将と並んでも大丈夫だと言える。

 

 ただ、妖怪や亡霊を相手にするにはまだ弱い。

 

 杖術使いは多彩な攻撃手段の代わりに適切な攻撃方法をする判断力が要求される。

 太刀のように振るい、槍のように突き、薙刀のように薙ぐ。

 

 だから、今回の組手は適切な攻撃を判断する訓練になる。

 

 安直な攻めをした参護さんには理不尽な連撃を撃ち込んであげた。

 

 ただ、何度も壁に叩きつけたため、ヒビが入ってしまった。

 

 咲夜さんに叱られてしまいます。

 

 それから波紋の練習に入りましたが、波紋だけならきちんと練れるようになった。

 ただ、参護さんが私に流してくれたあの波紋に私の気功を重ねた時の活性と強化の無限螺旋が出来ない。

 

 同時展開が出来なかった。

 

 正確には混ぜ合わせる事が出来なかった。

 なので、右手に気功、左手に波紋を別々に展開してそれぞれの特徴を実戦で確認をしていた。

 

 そのせいで、壁にヒビを入れてしまったのだけど。

 

 参護さんは気功の練りが遅いのだが、その操作力は目を見張るものがある。

 

 時間をかけて練り上げた気功を手の指一本一本の先に集めて弾を作っていた。

 

 本当に教えがいのある生徒だと思う。

 

 

 

Я月(〃ω〃) ポッ日

 

 壁のヒビの件で、咲夜さんとお嬢様にすっごく怒られた。

 

 だけど、内容が壁のヒビに関しては少しだけで、他は人間を壁にひびが入るまで叩きつけたことに関してだった。

 紅魔館の壁はパチュリー様が魔術でかなり強化していて、ヒビとはいえ傷つけるのはかなり難しい。

 

 それを、人間をぶつけてヒビを入れたなんて怒られて当然かもしれない。

 

 波紋で全身を活性化していたし、かなり負荷も軽減していたはずなので、深刻な怪我はしていない。だが咲夜さんやお嬢様は波紋なんて知らないはずなので、気功の親戚みたいなものだと説明した。

 

 あと、太陽の力に似た力であると説明した。

 

 興味がなければ会われることも無いだろうが、それでもお嬢様の天敵の太陽の力だ。

 注意しておくに越したことは無い。

 

 参護さんがお嬢様に害をなすとは思えませんが、彼は常時軽度の波紋を纏っている。

 何らかの間違いでお嬢様が怪我をされたら大変だ。

 

 咲夜さんが直接会って危険性などを検査するそうだ。

 

 咲夜さんなら心配ないだろうが、参護さんが咲夜さんにどう思われるか少し心配ですね。

 

 

 

 

Я月ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル日

 

 朝一で門の前にてヒビの入った壁を見た咲夜さんに再度説教をされた。

 

 入っているヒビがかなり大きく、人間相手になんて力を出しているのかと怒られた。

 

 ヒビと言ってもせいぜい線が走るぐらいと認識していたようで、蜘蛛の巣状に入っているヒビに驚いていた。

 

 そして参護さんが来るまで説教だった。

 

 咲夜さんから模擬戦を申し出て、戦っている所を見ていた。

 

 外側から見ていたからこそ理解できる。

 咲夜さんと時間を止める能力に対して動揺こそあれ、対処ができている。

 目の前から咲夜さんが消えても、牽制しながら周囲を見渡す行動、眼前に現れるナイフを致命傷を避けながら対処する観察力。

 

 おそらく、同じ時を止める対戦相手か極端な加速力を誇る相手が居たのだろう。

 そうでなくては、初見殺しとも言える時を止める相手にそれなりに模擬戦としての形を成しているのが不可解になってしまう。

 

 人間でも若い部類だし、その若さで三国時代の武将並みの武力と経験を持っているのは一体どういう事なのでしょうね?

 

 参護さんに気功でやりたいことは? ときいたら

「舞空術!」

 と元気よく答えられた。

 

 空は人間があこがれる夢の中でも上位に入る夢なのだろう。

 

 博麗の巫女や白黒魔法使いは、その夢はかなっている。

 

 あと、ナイフが刺さった傷は咲夜さんが手当てしていた。

 

 波紋で回復が早いとはいえ、刃物が刺さった傷はきちんと手当てしないといけない。

 

 ただ、その回復力は咲夜さんも驚いていた。

 あれだったら、壁にヒビが入るほど叩きつけられても死なずにいられるわけだ。

 

 

 

 

Я月ヘ(゚∀゚ヘ)月

 

 咲夜さんが参護さんの評価をお嬢様に報告していた。

 

 私も同じく評価を報告したが、お嬢様は面白そうに笑っていた。

 

 あれは興味を持った表情だった。

 だけど、さすがに太陽の力を纏う参護さんに直接会うのは危ないし、もし会うのなら参護さんに頼んで波紋ではなく気功の方を纏ってもらう必要がある。

 

 お嬢様のゆっくり妖怪もいるそうだが、対面させていいものだろうか?

 私の時でさえ、相当衝撃的だった。

 

 自分に似た妖怪が参護さんに懐いている姿は、正直恥ずかしい。

 

 お嬢様が自身に似たゆっくり妖怪と出会った時に、プライドの高い方だから認めない可能性がある。

 

 そうすると、ゆっくり妖怪に攻撃をする可能性があるし、その行為を参護さんが許すわけがない。

 彼はゆっくり妖怪たちを本当に大切にしているのがわかる。

 

 だからこそ、会わせるのは慎重にした方が良い。

 

 私の『気を使う程度の能力』は、こういう気を使う事じゃないんですがね。

 

 

 

 

Я月(^◇^)日

 

 今日、参護さんが咲夜さんのゆっくり妖怪を連れて来てくれた。

 

 正直、可愛くて可愛くて仕方が無かった。

 

 気付いたら一日中だらけて過ごしてしまった。

 

 咲夜さんもちょっと恥ずかしそうにしてましたし、我を忘れすぎましたね。

 

 休みの日にでも参護さんの家に、この娘と戯れさせてもらいに行きたい。

 

 

 

 

Я月( ^ω^)ワクワク日

 

 咲夜さんに昨日の私の失態に付いて注意された。

 

 咲夜さんも恥ずかしかったのだろう。そりゃそうだ、私だって参護さんに懐いているゆっくり妖怪を見た時に恥ずかしかったのだし、咲夜さんもそうなるだろう。

 

 しかも、咲夜さんは私と自分のゆっくり妖怪の戯れを見たのだ、私より恥ずかしいはず。

 

 ちょっと失敗したな。

 

 たしか、参護さんから紅魔館の全員がゆっくり妖怪化としていると聞いているので、お嬢様が眠っている日中に参護さんの家に誘うことにする。

 

 私も咲夜さんのゆっくり妖怪に会いたいし、咲夜さんもお嬢様のゆっくり妖怪に会える。

 

 いい提案だと思います。

 

 

 

 

Я月(`・д・´)キリッ日

 

 参護さんの家にお邪魔してきた。

 

 あの家は楽園でしたね。

 

 たくさんのゆっくり妖怪が楽しそうに暮らしている姿は一種の別世界な気がします。

 

 裏庭の花壇にはいろいろな珍しい花や野菜が植えられていて、手入れが行き届いていた。

 

 風見幽香さんのゆっくり妖怪がお世話をしていたので、ここまできれいな状態になっているのだろう。

 

 見ていると、丁寧な手付き? で枯れている葉っぱや萎れている花のつぼみを取っていた。

 

 思わぬところで花壇の手入れ技術が手に入れられたのが良かった。

 

 ここは本当に楽しい。

 

 参護さんの家に通っている人達が置いていく食材でおいしい食事が出てきますし、座っているだけでも膝や目の前にゆっくり達が集まってきて触れ合えるのは本当にいい。

 

 咲夜さんもお嬢様や妹様のゆっくり妖怪と一緒に戯れていたので、気に入ったと思う。

 

 あの笑顔を見れたのは、私としても良かった。

 

 咲夜さんと話し合い、たまに来てもいいかと聞くと快く了承してくれた参護さん。

 慣れているのだろう。

 

 その際に、ここに来る人たちを全員教えて貰いましたが、これは本当にひどい。

 

 もし、衝突なんかしたらこの辺り全部更地にできるような人もいるのが非常に危ない。

 

 おそらく、ここに来る人たちもここが居心地が良いから来ているはずですし、積極的にここを壊そうとはしないと思う。

 

 後は参護さんに働きかけて、簡単な規則の様な物を作って配る方が良い。

 

 私も咲夜さんもここが無くなるのは惜しいと思いますし。

 




 いかがでしたでしょうか?

 参護の家は一種のパワースポットになりつつありますね。

 美鈴の懸念は当たるのか外れるのか?

 次は十六夜咲夜の日記の予定です。

 お楽しみに!


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外伝 十六夜咲夜との模擬戦

 更新です。

 咲夜さんの日記の前に外伝です。

 といっても、模擬戦風景ですね。

 あと、ゆっくり成分も日記成分もありません。

 それでもいいよという方はゆっくり読んでいってね!

 それではどうぞ!


 最初に彼を見たのは、美鈴と稽古をしている最中の姿だった。

 

 彼女は見た目こそ人間の少女と大差のない容姿をしているが、その実千年単位で生きている妖怪だ。

 気功を操り、おおよそ接近戦における技術は他の追従を許さない実力者。

 

 彼女自身は優しく、気遣いのできる人格なので人里の人間達にも好かれている。

 その上、その腕前でごく稀に人間の実力者から勝負を挑まれている姿を見ることがあるが、その人間達も屋敷に無理に入ろうとしなければ見逃している。

 

 最初に見た時は、いつものように美鈴が挑戦を受けているのだろうと思っていた。

 

 だが、日が経つにつれて美鈴の方も何かを教わっているようだった。

 

 そして、組手の内容が今までの挑戦者と全く違い、美鈴自身もこの組手に積極的で内容もかなり高いレベルであることが窺えた。

 

 何より、彼女の表情が輝いて見えたのだ。

 後から話を聞いた時に理解したが、あれは更なる強さへの展望が見えた事、無手の基礎と気功の基礎を鍛えてくれた三国志時代の恩師を彷彿とさせる実力、鍛えれば鍛えるだけ応えてくれる弟子、と様々な理由で楽しくて、うれしくてたまらなかったのだと話していた。

 

 三国志時代。

 

 大図書館にもその手の書物があり、妹様への暇つぶしになればと本を選んでいる最中に見つけた書物で概要は知っている。

 

 大昔の大陸で起きた戦の記録だ。

 

 魏・呉・蜀の三国で大陸の覇権を争った記録で、最後はどの国も勝者になれなかった話。

 

 彼女の師匠が生きていた時代。

 

 当然、その頃の武将と言えば、多くの戦を潜り抜けてきた本物の戦闘者だ。

 あらゆる事態を経験して、潜り抜けて、命を自分の武力に預けて、そうして生き残ってきた人間達だ。

 

 美鈴の言っていた、三国時代の武将に名を連ねても不思議ではないという評価。

 それは、彼がそれだけの経験をしてきているという事だ。

 

 見た目は若い。

 しかし、それだけの実力があるということは、私はお嬢様の為にこの男を警戒しなくてはならない。

 

 ヴァンパイアハンターは幼い頃から戦闘機械のように育てられる場合も少なくない。

 彼がそうであるならば、相応に対処しなくてはならない。

 

 まずは、人柄や実力を確かめるのが大事だ。

 

 美鈴から両方を聞かされているが、自分の目で確かめた方が確実だ。

 

 

**********

 

 

 実際に会って戦ってみて理解できた。

 

 彼は、本当に単純に幻想入りして生きているだけの人間だと。

 

 そして、その経験は年齢不相応なものがあった。

 

 私の能力は『時間を操る程度の能力』といい、読んで字のごとく、時間を操ることができる。

 

 時間を止めている間に移動して、時間を動かせば相手からは突然消えたように見える。

 実際、時間軸上ではその場所から別の場所まで瞬間移動していることになるから間違ってはいない。

 

 当然、そんなことをされては相手は混乱してポテンシャルが低下し、動きが一気に悪くなる。

 

 だけど、彼はまるで頭の中ですでに対処方法が出来上がっていたかのように、きちんと凌ぎきった。

 

 時を止めてから背後に回り込んで、再び動かした。

 たったそれだけだった。

 

 ちょっとうろたえる姿を見てやろうかという悪戯心。

 

 それが一瞬で吹き飛ばされるような感覚を味わった。

 

 時を動かした途端、私が居ないことに気づいた瞬間の彼の行動は、杖を横に薙ぎながら回転したのだ。

 

 危なく当てられるところだったが、その一回の攻撃で私の位置を正確に把握して向かってきた。

 

 その行動自体は正解だ。

 時を止めて移動された際の対処としては、至近距離に近づかれるのを防ぐことと、位置を素早く把握することだ。

 横に薙いで距離を離して、その回転中に私を探す。

 

 理に(かな)っているが、それを一瞬で理解できるはずがない。

 

 この男は時間を操る相手、もしくは異常に速い相手と戦ったことがある。

 それも一度や二度ではない。

 

 対処方法を確立できる位に何度も闘っている。

 

 少々大人気無いが、時間を止めた間にナイフを配置して終わらせようとしたが、それも回避された。

 

 ナイフを確認した途端に致命傷になりえるナイフを優先的に叩き落としていた。

 肩や頬にナイフが掠っても少し顔をしかめるぐらいで、太ももに刺さったナイフは無造作に抜いて捨てる。

 

 ここまでで私はようやく認識を改めた。

 

 この男は強い……と。

 

 最初に会話した時とは別人のように、戦いの時の彼は冷静で必死だった。

 

 最終的にはナイフを遠近無視の三百六十度全方位配置で勝つことができた。

 

 最初に悪戯心を出さなければもう少し楽に戦えたかもしれないが、そのあたりも含めて隙を逃さない戦い方だった。

 

 彼と話してみると、異様なほどに速い人間と毎日稽古をしてもらっていたそうだ。

 だから、私の能力でも冷静に対処して見せたという事らしい。

 

 彼の言葉の端々から、自分のことを過小評価していることがうかがえた。

 

 確かに、美鈴の様な戦いに特化した妖怪や幻想郷でも実力者と言われる人たちには手も足も出ないでしょうけど、それこそ中級妖怪と戦って勝てるという時点で十分以上に強いのだ。

 

 どうも彼のコンプレックスは、その異常に速い稽古相手がバケモノ染みて強かった事が原因で、無意識に自分のその相手とを比べている。

 

 どんなに強くなろうと、どんなに経験を積もうと、届かないと考えているのだ。

 

 どんな人間なのかと、ゾッとした。

 

 彼は自分を過小評価しても、相手を過小評価したり過大評価したりしない。

 正しく、その時の情報で的確に評価している。

 

 その人間が、苦笑いしながら

「多分、人間としての限界を置き忘れてる」

 と言われてしまっては、その相手の強さが恐ろしくなってしまう。

 

 全身に浅く刺さったナイフを生やしているような状態では、十分彼もバケモノっぽいのだが……。

 

 早々に彼の治療を済ませて、お嬢様に報告することにする。

 




 いかがだったでしょうか?

 ちょっとずつ参護さんも強くなって行っています。

 気功を完全にものにしたとき、戦闘力は跳ね上がります。

 でも、なかなか覚えられないのです。

 ゆっくり成分が無くて申し訳ないです。


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十六夜咲夜の日記 Я月

 ども、更新です。

 咲夜さんの日記です。

 色々な設定が錯綜している彼女ですが、可愛いですよね。


Я月(|||゚Д゚)日

 

 今日は規則的に衝撃音が何度も鳴り響くお昼時。

 

 弾幕ゲームの音じゃないから、無理やり突撃してきた妖怪か美鈴に挑戦に来た人間だろう。

 

 しかし、十回を数えるぐらいまで音が響いているから妖怪かしら?

 

 一方的に叩き潰しているようだし、私は屋敷の仕事に戻るとしましょう。

 

 お嬢様もこの時間ならこの程度の音では起きないぐらい深い眠りに入っているので問題ない。

 

 最近は人里でも雑魚妖怪を相手にできるぐらいの傭兵が現れたらしいが、会ったことは無い。

 

 変わったことと言えば、たまに買い物に行く人里に少々明るさが見えるようになったことだろうか?

 その前はちょっとギスギスしてた雰囲気があったこともあったが、今は良い雰囲気と活気が出てきている。

 

 お嬢様のメイドとして仕えている私が言うのもなんだが、バランスから見れば妖怪側に比重がある状態がちょっと長く続いていたから活気が出てくるのはいいことだ。

 

 心なしか、里の色々な商品が潤沢しているように思える。

 やっぱり、町が明るくなると生産効率も心なしか良くなるのかもしれない。

 

 

 

Я月(〃ω〃) ポッ日

 

 美鈴からの報告で、紅魔館の外壁にヒビを入れてしまったと驚きの話が上がってきた。

 

 パチュリー様に簡単に壊されないよう強化の魔法をかけてもらっていたので、それにヒビを入れられるとは考えていなかった。

 

 これまで壊されたのって、霊夢や魔理沙が突入してきた時に破壊されて以来のはずだ。

 

 妖怪の襲撃にも無傷で耐え切った外壁を壊すとは……。

 

 しかも、相手が最近美鈴が稽古をつけている人間らしい。

 あの重低音の衝撃音がそうなのだとすれば、人間相手になんてことをしているのだろう。

 

 普通なら壁にトマトの様な何かが張り付く事態になる。

 

 波紋という太陽の力に似た力を練り上げて全身に纏う技術のようだ。

 

 よりによって太陽とは、吸血鬼の弱点を露骨に突いている。

 

 美鈴が言うには敵意は無く、温厚で妖怪を育てるなど妖怪側にも理解がある。

 あと、異様な戦闘経験があり、才覚もある。

 

 育てるのが楽しみな人間らしい。

 

 しかし、お嬢様を狙う外界のヴァンパイアハンターの可能性も捨てきれないのだ。

 

 私が直接調べる必要がある。

 

 

 

 

Я月ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル日

 

 早朝に件の彼が来る前に壁に入ったヒビを見に行ったが、想像していた壁の状態じゃなかった。

 

 美鈴、これはヒビとは言わないわ。

 陥没って言うのよ。

 

 中心から蜘蛛の巣状に陥没している。

 

 昨日も書いたが、この壁はパチュリー様の魔法でかなり強化されていて、中級妖怪までなら無傷で耐え切るほどの強度を誇っているはずだ。

 

 もちろん、美鈴やお嬢様、妹様、パチュリー様なんかがその気になれば砕ける程度の強度だけど、モノをぶつけてこの程度の破損をさせようとするなら、たぶん美鈴に岩を全力で数回ぶつけてもらう必要があるだろう。

 

 そんな強度の壁に人間をぶつけて破損させるというのは、美鈴にも殺意があったんじゃないかと疑うぐらいの話になるが、人間の方も人間の方だ。

 

 強度だけなら風見幽香の一撃にも耐えられるかもしれない。

 

 そんな人間に会った時の印象が、人畜無害な人間だった。

 

 この男が常時波紋という力を纏っていること、歩き方からも分かるほどに異常な実力を持っていることが良くわかった。

 

 模擬戦を頼むと彼も色々な相手と戦って経験を積みたいらしく、了承してくれた。

 

 正直驚いたなんてものじゃなかった。

 

 私の時間停止を初見で対処して見せたのは驚きだ。

 

 最終的に、全方位遠近無視のナイフ配置でハリネズミにしてしまった。

 

 加減こそしていたが、まさか一センチも刺さらないのはびっくりだ。

 

 それでも刺さったことに違いは無いので、手当てするために救急箱を持ってくると、一部ではもう出血が止まっていた。

 

 驚くべき回復力だ。

 

 あえて、気にしない様にしていたけど、美鈴の言っていたゆっくり妖怪というのはあの娘かしら?

 

 パチュリー様にそっくりなあの娘は、彼に懐いているのだろう。

 楽しそうにくっついていた。

 

 

 

 

Я月ヘ(゚∀゚ヘ)月

 

 彼、海原参護さんの評価をお嬢様に報告すると、楽しそうに笑っていた。

 

 興味を持ったのだろう。

 運命的に会うことになるのだろうか? 特に連れて来いと言う命令も無く、次来たらもてなしてあげなさいと言われただけだった。

 

 美鈴が言うには紅魔館全員のゆっくり妖怪が彼の家にいるらしい。

 ということは、私やお嬢様のゆっくり妖怪も?

 

 ちょっと行ってみたいと思ってしまった。

 

 

 

Я月(^◇^)日

 

 私のゆっくり妖怪に会った。

 

 犬耳なんかもなぜか付いていた。

 

 確かに、『吸血鬼の狗』なんて呼ばれ方もしていた時期もあったが、その影響なのかしら?

 

 そして美鈴、どうして私のゆっくり妖怪をずっと抱きしめて愛でているのかしら?

 

 結局一日中、美鈴はゆっくり妖怪を抱きしめたまま過ごしていた。

 

 参護さんに家にお嬢様や妹様のゆっくり妖怪も居ますよと情報をいただいた。

 

 ……これは、彼の家の視察も必要でしょう。

 

 妖怪に理解のあるという話が事実かどうか。

 しっかりとこの目で確かめましょう。

 

 

 

 

Я月( ^ω^)ワクワク日

 

 さすがに恥ずかしかったので、美鈴に昨日のあれを注意した。

 

 いくらなんでも私の容姿をした妖怪を一日中抱きしめて頬ずりしたりするのは、本人としては恥ずかしいのと、気まずいのとでやるせない。

 

 すると、美鈴は明日ゆっくり妖怪に会いに参護さんの家に行くそうだ。

 

 それに便乗させてもらえることになった。

 

 彼の家は美鈴が大体の場所を教わっているそうなのでそれに従うとしよう。

 

 人里に買い物に行くこともあるのだから、そのたびにお嬢様や妹様のゆっくり妖怪に会えるかもしれない。

 

 ちょっと楽しみだ。

 

 

 

 

Я月(`・д・´)キリッ日

 

 参護さんは人里の外れの廃墟だった家を修繕して住んでいた。

 

 家に入ると玄関に美鈴のゆっくり妖怪がいた。

 すよすよと眠っている姿は、少し前の美鈴を思わせる。

 

 参護さんが言うには、彼女はここが落ち着くのか眠るのは玄関なのだそうだ。

 

 居間に着くと、お茶とお茶菓子で歓迎された。

 

 茶葉は良いものを使っていますし、素人ながらに丁寧に淹れられたそのお茶は美味しいと思えるほどにしっかりとお茶の味わいがあった。

 

 美鈴は裏庭にある花壇を見に行ったみたいだし、私は私でお嬢様と妹様のゆっくり妖怪が懐いてきてくれた。

 

 他のゆっくり妖怪よりも小さいが、子供らしく悪戯盛りだと苦笑しながら言っていた。

 

 両肩に乗って頬を摺り寄せてきたときは正直和んだ。

 

 これはまた来たい。

 

 そう伝えた時、参護さんからここに出入りしている人達を知った。

 

 色々すぎる。

 蓬莱人や妖怪なんかも出入りしているし、あのフラワーマスターも花壇の花を見に時折訪れるらしい。

 

 喧嘩しないでくれという話なんだろう。

 

 とりあえず、お嬢様たちが来るまでにきちんとルールを作って私達を楽しませてほしい。

 




 いかがだったでしょうか?

 明日は泊まり込みなので更新できません。

 参護日記か外伝の更新になると思いますので、ゆっくり待って行ってね!


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海原参護の日記 Ш月

 更新です。

 UAが21万
 お気に入り2700件突破です。

 21万なんて来年までに行けば御の字だと考えていただけに感無量でございます。

 それではどぞ!


Ш月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 現状、我が家は危険度が恐ろしいぐらい高い。

 

 魔理沙さんがこの前うちに来た時、

「お前の家って状況は混沌としてるのに、規則も何も無いんだよな? よく今まで無事だったと思うぜ」

 という言葉をいただいた。

 

 前々から気づいてはいたが、目を逸らし気味だったことをズバリ言ってくれるな。

 

 そして、魔理沙さんは例の一件以来頻繁に家に来るようになった。

 

 それこそ、回数的な意味合いでは、阿求様に並ぶほど来ている。

 阿求様はYパチュリーがうちに来てから良く遊びに来てくれるようになった。その阿求様に並ぶってほぼ毎日来てるのではなかろうか?

 

 そんな状況ではまずいということで、相談しながら七か条を決めることにした。

 

1.海原家とその周囲で争わないこと。(弾幕ゲーム・肉弾戦・能力戦問わず)

 

2.ゆっくり妖怪たちに危害を加えないこと。

 

3.家にある食材はきちんと許可を得てから使用する事。(参護・Yパチュリー・Y咲夜・Y美鈴・Y幽香のいずれかの許可を得る事)

 

4.客間の数は限られているので私物を置く際は指定されているスペースからはみ出さないこと。

 

5.他の人の私物に手を出さないこと。

 

6.酒盛りを行う際は後片付けは確実に行うこと。

 

7.洗濯の際は自分で行うこと。特に下着は確実に自分で洗濯すること。

 

 上記を基本にして、追加と削除を行っていこうと思う。

 

 七番目の項目が魔理沙さんは興味を持ったらしい。

 そんなやつがいるのか? と聞いてきたが、いるんですよ……。

 

 妖怪は基本的に種族が違うから人間相手に羞恥とか恋心とかが芽生えにくいようだ。

 

 文さんとか幽香さんとかてゐさんなんかが該当する。

 そりゃ、全裸を見られて平気なんてことは無いが、羞恥心に違和感を感じるのだ。

 

 彼女たちは妖怪であり、人間とは感覚がズレているのだろう。

 何度か洗濯している時に、いきなり女性ものの下着が出てきた時は固まってしまった。

 傍から見たら女性ものの下着を握りしめて固まる男の完成だ。

 

 そんなことが無いように、七か条に盛り込んだのだ。

 二度とあんなことをしてやるものか!

 

 このルールを書いた紙をYパチュリーとY咲夜が量産して家のあちこちに貼っていた。

 

 

 

Ш月(゜.゜)日

 

 今日は仕事から帰ってきたら、魔理沙さんと阿求様が将棋をしていた。

 

 もう、誰が来ても驚かないが、その隣でYパチュリーとY幽香がオセロをしていた。

 むしろオセロをしている二人が接戦で、周囲に他のゆっくり妖怪たちも集まってきていた。

 

 この状況に慣れてしまっている自分が怖いな。

 

 Y小悪魔が魔理沙さんが連れてきたYアリスとじゃれ合っていた。

 シャンハイ人形を操りつつ、Y小悪魔をあやしているあたり、かなりお姉さんっぽい立ち位置のゆっくり妖怪なのかもしれない。

 

 家に来る回数が多いツートップの二人なわけだが、中々に仲も良かった。

 人間同士という事もあるだろうが、ここは阿求様の資料や蔵書が無い場所だから、普段蔵書を盗まれないか心配していた阿求様にとって、警戒しなくていい場所のはずだ。

 

 将棋を指しながら、この家の事とかを話している二人。

 

 珍しく三人分の食事を用意することになったが、三人でゆっくりたちを交えてのゲーム大会は中々に白熱したひと時だった。

 

 

 

Ш月ヽ(д`ヽ)オロオロ(ノ´д)ノ日

 

 増築しないか?

 ということを阿求様から打診された。

 

 なんでも、魔理沙さんと話し合った結果だとか。

 私物を置いている人達の荷物置き場がもういっぱいいっぱいで、私物置き場を増やしてほしいという要望が阿求様に届いているらしい。

 

 なぜ、俺に届けないし?

 

 え?

 阿求様、いつの間にかサポート役に回ってるの?

 

 魔理沙さんはいつの間に増設計画なんか作ってるんだ?

 

 なんで二人の私室の増設が盛り込まれてるんだ?

 

 元々、周囲には他の家もないし、増築は現実的なのだが、なぜに俺の知らないところで話が進んでいるのだろうか?

 

 まぁ、七か条に抵触してないし別にいいのだが、おかしいな? なんで寝心地の良いベッドの相談してるんだろうな?

 

 今日の日記は、?マークが多いな。

 

 それだけ、大変な事態が起こっているんだがね。

 

 

 

Ш月(´・ω・`)日

 

 阿求様がYパチュリーに家の図面を見せながら説明していた。

 

 増設予定図は裏の花壇を壊したり、日当たりを悪くしたりしない様に気を遣って図面が作られている。

 

 Yパチュリーがなにか色々メモをして意見をしているようだ。

 思えば、長い間この娘と暮らしている。

 

 増築も彼女の意見を取り入れるべきだろう。

 なにしろ、俺と同じぐらいこの家に住んでいるんだからね。

 

 増築内容としては、阿求様・魔理沙さん・鈴仙さん・美鈴さんの個人部屋と客間二部屋。

 ゆっくり達が移動しやすいようにゆっくり妖怪用出入り口を追加。

 TRPG用に大部屋と簡易的な台所も併設。

 酒蔵庫を追加。

 

 見事に住み着く気なのではなかろうか? と言える程の増築内容だった。

 どうやら、阿求様たちは二つの家を状況によって使い分けるらしい。

 

 今までもそう変わらなかったし、問題は無いだろう。

 お客様用の布団を敷かない方が珍しかった日々だ。

 

 俺の部屋にはゆっくり達が出入りしやすいように小さいドアを追加して、Yレミリアたちのように元気に飛び回る娘たちの保護の為、角にスポンジを追加。

 

 色々と俺の家が寮とか下宿みたいなことになっている。

 

 阿求様曰く、参護さんは支配人、Yパチュリーは管理人だそうだ。

 

 的確じゃないか!

 

 

 

Ш月(ノ∀\*)日

 

 魔理沙さん……いや、もう呼び捨てでいいか。

 魔理沙が、大量に私物を持ち込んできた。

 

 この時のツッコミ祭りで、呼び捨てになったのだが、本人は気にしていなかったな。

 むしろ、さん付けで呼ばれることに違和感があったらしく、こっちの方が良いらしい。

 

 自分の家で収納しきれなくなった本とか、実験道具を持ち込んできたのだ。

 

 Yアリスも人形制作用の小道具を持ち込んでいたし、飼い主に似るというのはこういう事か?

 

 YパチュリーとY咲夜は手作りのネームプレートを製作していた。あの、部屋のドアに付けるやつだ。

 

 つか、受け入れてるのねお前たち……。

 

 木の板をチマチマと削りながら、完成したのを嬉しそうに俺に見せてくる。

『見て見て~。こんなに綺麗にできたよ~』

 と言っているようだ。

 

 ああ、癒されるぜ。

 

 

 

Ш月(・∀・)日

 

 阿求様が里の大工や、魔理沙が知り合いの鬼に増築を頼むらしい。

 

 今日は阿求様が、ゆっくり達と戯れていた。

 居間でYレミリアとYフランと楽しそうに、寝転がりながら語りかけていた。

 

 なんというか、ドラマとか漫画でヒロインがぬいぐるみ抱いてゴロゴロしているシーンがあるが、まさにあんな感じだ。

 

 あの姿は女性にとって見られたくないであろう姿のはずだ。

 

 気を使って立ち去ろうとして、Yフランに捕まってしまい、見つかってしまった。

 

 羞恥心で真っ赤になっている阿求様を見て、不覚にも可愛いと思ってしまった。

 恥らう姿を可愛いと思ってしまうなど不敬だが、そう思ってしまったのは仕方がないだろう。

 

 顔どころか耳まで真っ赤な阿求様が、プルプルと震えながら、消え入りそうな声で弁明する姿……。

 

 可愛いと思うと同時に、やっぱり彼女を護ってあげたいという庇護欲が湧いてくる。

 

 それにはもっと強くならないとな……。

 

 

 

Ш月☆-(ノ゚Д゚)人(゚Д゚ )ノ日

 

 魔理沙の奴が昼食を作った。

 

 イメージ的に苦手そうな感じだったが、一人暮らしのおかげか、それなりに美味しいものが出てきた。

 

 それでも、見た目がちょっと独特だったのと、作り方がワイルドだった。

 

 オール目分量でここまで美味しく作れるなら、相応に知識と経験を身に付ければ、相当おいしいものを作れる人間になるはずだ。

 

 その上、料理は大雑把な作り方のくせに、お菓子作りはプロ並みと来た。

 

 見た目、味、香り、どれをとっても一級品。

 

 どうして料理とお菓子作りとここまで違うのか聞いてみると、

「お菓子は乙女の燃料だぜ!」

 という言葉を貰った。

 

 ああ、女の人って甘いもの好きな人多いもんな。

 

 俺も好きだが、ここまでのお菓子作りの腕は無い。

 

 素直に魔理沙のお菓子を褒め称えようではないか。

 

 ゆっくり達もケーキやクッキーを小さい口でモムモムと食べている姿は非常に可愛い。

 生クリームが気に入ったのか、食べた後に余韻に浸っている姿が、癒される。

 

 俺もお菓子作りの腕上げないとなぁ……。

 ゆっくり達にはおいしいものを食ってもらいたいしな。




 いかがでしたか?

 参護宅、増築計画発動です。

 つか、増築にかこつけて居場所を確保している人達は逞しすぎる。

 あと、七か条制定。
 すぐに追加予定。

 だって同居人が増えるからルール追加しないとね!


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外伝 海原参護の忙しい一日

 更新です。

 今回は外伝になります。

 本当は阿求か魔理沙の日記なのですが、ちょっと書きたくなってしまいまして、書いちゃいました。

 時系列的に、Ш月前です。


 今日は休みである。

 

 自営業なんだから意図すれば休みぐらいは作れるが、今回は意図しないでできた休みだ。

 明日には護衛の依頼が入っているが、今日は何もない。

 こういう日は内職の仕事を終わらせるのだが、昨日の内に全部終わらせて納品済みと来た。

 

 自営業をやっているとこういう意図しない休みは不安になるものだが、今回は偶発的なものだろう。

 

 その証拠に明日からまた依頼がたくさん入っている。

 

 ならば、今日はゆっくり休むのが吉だろう。

 

 そうだ、Yパチュリー達と遊ぶことにしよう。

 こういう時に家族サービスはするものだ。

 

 連日の仕事でたしかに疲れているが、幻想郷は夜遅くまで起きていると燃料代が高く付く。

 基本的に日の出と共に起きて、日の入りと共に寝る。

 

 これだと睡眠時間が確保できるうえに、身体の調子も良いのだ。

 

 現代社会の弊害というやつを、まさか幻想郷で感じることになるとは思わなかったが……。

 

 居間に行けば誰かしら居るだろうと思い、足を向けると。

 

「あややや! おはようございます、参護さん! 清く! 正しい! 射命丸ですよ!」

 

「……おはようございます。この際、家主が起きるより早く居間でくつろいでいることは置いておきましょう。なぜに朝食を用意して食べている?」

 

 くつろいでいる文さんの前には卵焼きと白米、豆腐と油揚げの味噌汁、白菜のお浸し、キュウリの酢の物とオカラがしっかりと用意されていた。

 

 俺が作っていないなら、YパチュリーやY咲夜なのだが、二人とも首を横に振っている。

 

 つまり、文さんが自分で作ったのだ。

 

「あやや、大丈夫ですとも参護さん! 悪くなりそうなものを優先的に使用してますし、皆さんの分も用意させていただきましたとも!」

 

 そう言って促された方向には、人数分の食事が用意されていた。

 

 メニューもみんな同じ。

 ゆっくり達の分が彼女達用に量が調整されていたあたり、気配りができている。

 

 なんだろう。見た目美少女なだけに、手作りの朝食なんて男が喜ぶシチュエーションなのだが、この素直に喜べない感覚。

 

 ああ、そうか。

 これが、諦めの境地か。

 

 朝食は薄味だったが、おいしかった。

 

 

**********

 

 

 朝食を食べてすぐに文さんは取材に出掛けて行った。

 本当に朝食を食べに来ただけなのか。

 

 しかし、文さんが傷みそうなものを先に処分してくれたおかげで食材を無駄にしないで済んだ。

 となると、冷蔵庫に若干の空きができた訳だ。

 

 日々、鈴仙さんや妹紅さん、魔理沙さんや最近はアリスさんも色々な食材を持って来てくれる。しかし主食となる米や、加工品である豆腐や油揚げ、農作物である野菜なんかは人里に買いに行く必要がある。

 

「なら買い出しに行ってくるか……。ちょっと出かけてくるよ」

 

「ゆっくり買って来てね!」

 

 Yパチュリーに見送られ人里に繰り出す。

 

 天気は雲一つ無い快晴。

 風もそよ風が心地よいレベルの強さなので、歩いているだけで心がリラックスしていくのがわかる。

 

 のんびりしたひと時というのもいいものだ。

 

「おや、海原殿。人里に用事か?」

 

 ふと、後ろから声をかけられた。

 振り返ると、丁度空から着地した慧音さんが居た。

 

「おはようございます、慧音さん。ちょっと食料の買い出しに。慧音さんは里の外へ用事ですか?」

 

「ああ、妹紅の奴がせっかく作った弁当を忘れて帰ってしまってな。届けに行く途中だ」

 

 そう答えた慧音さんはふと何かを思い出したようで、

 

「おお、そういえば海原殿。食料の買い出し前に阿求の家に寄ってこれを渡してくれないか?」

 

 そう言って渡されたのは、紙束を紐で結んだもの。

 

「里の寄合の時に使う資料なんだが、妹紅の所に行く前に届けようと思って失念していた。すまないが、頼まれてくれないか?」

 

 特に断る理由も無い。

 慧音さんには何でも屋の駆け出しの頃に何度も利用してくれたお得意様でもある。

 このぐらいはやって当然だろう。

 

「いいですよ。阿求様の家に届ければいいんですね?」

 

「ああ、それでいい。では、頼んだぞ!」

 

 そう言うと、慧音さんは妹紅さんの家の方向に飛んで行った。

 

「さて、阿求様の家に行きますかね~」

 

 

**********

 

 

 結果から言うと、阿求様は不在だった。

 家の人間に渡すという方法もあったが、直接渡したほうが確実だし、阿求様に会いたいという下心も少しあった。

 

 仕方がないので、先に買い出しを済ませながら、阿求様を探すことにする。

 

 人里で阿求様のことを聞きながら歩き回る。

 

 さすがは人里の有力者だ。

 どこで見た、何の店で買い物をしていた。

 などなど、情報がすぐ入る。

 

「あ、参護さん! 偶然ですね!」

 

 見ると、ウサギの耳にブレザーっぽい服装とミニスカート、鈴仙・優曇華院・イナバさんだ。

 里で回診中だろうか?

 

「丁度良かったです。夕方に伺おうと思ってタケノコたくさん持ってきました!」

 

 ドサッと背負っている籠にいっぱいのタケノコを渡された。

 

 今!?

 

「私、まだまだ回診中ですので、先にお渡ししておきます! それでは急ぎますので~」

 

 そう言うとさっさと次の家に向かっていってしまった。

 

「大体十キロ前後かな?」

 

 背負ってみると結構重量がある。

 しかも、これに買い出しした品を担いで家に戻るのだ。

 

 意図しない訓練が追加されたな……。

 

「あれ? 参護さんじゃないですか。本でも借りていきますか?」

 

「小鈴さんですか、見ての通り食材を運ぶことになってますので、今借りると汚れてしまいます。後日借りに来ますよ」

 

 さすがにタケノコを背負った状態で本なんて借りたら、泥をつけたり落としたりしてしまいそうだ。

 それは、小鈴さんに申し訳ない。

 

「そういえば、小鈴さん。阿求様を見ませんでしたか?」

 

「阿求? 朝からいろいろ買い物をして貴方の家に行ったけど……」

 

 だったら入れ違いになったのだろう。

 

 これは急いで買い物を済ませて、向かう必要がありそうだ。

 

 しかし、タケノコも結構重いが、コメを買う予定なのだ。

 

 米俵一つ。

 

 大体一つが六十キロ前後だったはずだから、タケノコが大体十キロとして七十キロ……。

 

 いい訓練ができると考えよう。

 

 

**********

 

 

 七十キロを背負って担いで家に戻ってきた。

 

 鍛えているとはいえ、七十キロは辛い。

 

 休みなのに仕事以上に疲れるってどうなんだろうな?

 

 家に帰ると阿求様とアリスさん、魔理沙さんがお茶を飲んでいた。

 

「た……ただいま……」

 

「おー、お帰り! 遅かったな? 先にお茶、頂いてるぜ!」

 

「あら、買い出しに行ってたのね? せっかくだからお昼、ごちそうになろうかしら?」

 

「参護さん!? 米俵一俵って一人で持つ重さじゃないですよ!?」

 

 誰がどのセリフかは察してくれってやつだが、先の二人は脳天に米俵ぶつけてやろうか!?

 

「とりあえず、台所に置いてきます。お昼は三人追加でいいか?」

 

 今日の食事当番は俺だから、三人追加の労力は俺持ちという事だ。

 

「ゆっくりパチュリー。ゆっくり咲夜と一緒に三人の相手を頼むわ」

 

「ゆっくりしていくよ!」

 

 さて、タケノコの下ごしらえから始めよう。

 

 参護さんのお料理教室だ!

 

 タケノコをよく洗ってから、頭を斜めに切る。そこから縦に切り込みを入れて鍋に投入。

 

 米の研ぎ汁をたっぷり注いでから少量の米を入れ、唐辛子を投入して日持ちするようにする。

 

 一握り程度の糠を入れて、沸騰させてから火を弱めて四十分ぐらい煮る。

 

 この時灰汁が大量に出るが、皮のまま煮ているので灰汁取りは必要ない。

 

 竹串が簡単に刺さる様になれば煮る作業は終わり。

 

 あとは、自然に冷めるのを待つ。

 この時にYチルノに頼んで冷やすと、エグミが出てしまう。

 自然に冷めるのを待つ。

 

 冷めたら、煮る前に縦に入れた切り込みから丁寧に皮を剥いで完成。

 

 長持ちさせるなら水に浸しておくと二、三日持つから、重宝する。

 

 以上、参護さんのお料理教室でした。

 

「さすがね。さらに日持ちさせるなら塩を溶かした水に浸す事ね。更に持たせるならそれに酢をコップ半分ぐらい入れてあげるともっと日持ちするわよ?」

 

「……いつからいらっしゃいましたか?」

 

 後ろには感心したようにこちらを見るメイドさんがいた。

 

「たしか、参護さんのお料理教室だ! のあたりかしら?」

 

 最初からじゃないですかー、ヤダー!

 

「……お昼、食べていきます?」

 

「そうね、美鈴も来ているから二人分追加でね?」

 

 合計五人分ですか。

 今下ごしらえしたタケノコ使えば十分間に合うかな?

 

「それはそうと、料理できるのね。さすが何でも屋といった所かしら?」

 

「一年以上も一人暮らししてれば覚えますよ。それより、館のお嬢様はいいんですか?」

 

「お昼はお嬢様も眠られてるからね。館の掃除や料理の下ごしらえも終わってるから、今は自由時間なのよ。たまには他の人が作った料理でも食べたいと思って来たの」

 

 選んでくれてありがとうとでも言うべきか?

 

 まぁ、選んでもらえて嬉しいと思ったし、腕によりをかけて作らせてもらうことにしよう。

 

 

**********

 

 

 今日のメニューはタケノコの炊き込みご飯、タケノコと油揚げの味噌汁、ニンジンとタケノコの味噌きんぴら、そしてメインにタケノコのステーキを出した。

 

 すごい量のタケノコを貰ったのと、今日は人数が多いからたくさんあるタケノコが自然と大量消費される献立になった。

 

「すっごい旨いな! タケノコばかりなのに全然飽きないぜ!」

 

「ホントね。いつもおいしいと思ってたけど、今日のは格別ね」

 

「相変わらず、おいしいですね。今度、私の屋敷でも作ってくださいますか?」

 

「これは……、お嬢様にお出ししても大丈夫な品ですね。今度作って差し上げましょう」

 

「おいしいですね! 全身に力が(みなぎ)るようです!」

 

 (おおむ)ね良い評価を貰えて達成感を感じている。

 ゆっくり達も嬉しそうだ。

 

「「「「「「「「「ゆっくり味わっていくね!!」」」」」」」」」

 

 満足そうにみんなで食事をしている姿は、非常に癒される。

 

 天ぷらを作っても良かったが、それはまた別の機会にする。

 

 お昼を食べ終わって、食休みで全員ダラーっと座り込んで話していると、

 

「たのもー! 参護! TRPGしましょう! シナリオ作ってきたし、難易度も調整したからすぐに遊べるから!」

 

 輝夜さんと鈴仙さんが訪ねてきた。

 

 その手に持っているのは、ルールブックだ。

 ああ、この人数巻き込まれたな……。

 

 合計八名。

 

 GMとサブマスも考えても六名。

 

 随分とバタバタしそうな人数だ。

 

 今日中に終わればいいな……。

 

 

**********

 

 

 TRPGは何とか、今日中に終わった。

 

 白熱したのだ。

 輝夜さんが、今日のはログを取っているから書にすると、張り切って流れを書いた大量の紙を持って帰っていった。

 

 その後、みんな帰っていったが、とんでもなく疲れた。

 

 仕事が入っている日の方がまだ疲れてないってどうだろう?

 

 七十キロの荷物を運んで、五人分追加した食事を作って、日が落ちるまでTRPGプレイして、阿求様を屋敷に送って、明日の準備をして、ようやく床に就いた。

 

 花から花へ移動している幽香さん、慧音さんと一緒にいる妹紅さん、竹林からあまり出ているところを見ないてゐさん以外、ウチに来る人たちみんなに会った気がする。

 

 今日はもうゆっくり寝よう。

 

「おやすみ、みんな」

 

「ゆっくり、おやすみなさい!」

 

 Yパチュリーがそう言うと、部屋の脇に寝床を敷いて眠る。

 

 最近はずっと俺の部屋で眠ってくれる。

 

 寝る前と寝起きで彼女の顔が見れるのは、正直役得だと思う。

 

 明日も頑張るとしよう。




 いかがだったでしょうか?

 忙しいというか、疲れる一日でしたね。

 時系列的なことをよく感想で聞かれますので、あらすじに追加しておきます。


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稗田阿求の日記 Ш月

 お待たせしました。

 久しぶりの阿求日記です。

 気づけば三十以上、話数を投稿しているのだと気付きましたね。

 まだ二か月ぐらいなのですが、一話一話が三千字前後なのでこんなものなのでしょう。

 それでは、どぞー。


Ш月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 最近、参護さんの家には色々な人たちが出入りしている。

 

 中には敵対している人達が居たりしているので、間違えれば大惨事になる。

 

 参護さんが少し前に、決まり事を作るって言っていたので、近々できると思う。

 

 この間は、魔理沙さんとアリスさんがゆっくり妖怪を飼い始めたということを参護さんから聞いた。

 

 これは、参護さん以外と長く過ごしたゆっくり妖怪を観察できる。

 何故ゆっくり妖怪たちが、ああまで人間に対して無防備なのか?

 この疑問が、参護さんに原因があるとすれば、容易に解決できる。

 

 参護さん自身が、妖怪に対して何らかの影響力を持っているという仮説だ。

 

 ああまで、ゆっくり妖怪だけでなく、文さんや幽香さんと仲が良くなるのは彼の人徳もあるのかもしれませんが、そういう能力があってもおかしくないという考えから生まれた仮説です。

 

 可能性は無いに等しいですが、ゆっくり妖怪たちの詳細を知れるいい機会に恵まれました。

 

 

 

 

Ш月(゜.゜)日

 

 今日は参護さんを訪ねたら、魔理沙さんとバッティングしてしまいました。

 

 家に行くと、例の参護さんの家での規則が貼り出されていた。

 

 七番目の項目に参護さんの苦労を垣間見ることができる。

 冗談で魔理沙さんに、「女性なのですから、下着ぐらいは自分で洗われては?」と、言ったら慌てて否定していた。

 大丈夫です。

 妖怪の方々だと分かっていますから。

 

 魔理沙さんは、Yアリスを連れていて、Yパチュリーと遊んでいた。

 

 しばらく二人を眺めていたが、手持無沙汰になった私たちは将棋盤を出して、対戦を始めた。

 

 終始私が優勢だったが、魔理沙さんも侮れない。

 徐々に強く、的確になっていくのだから油断ならない相手でした。

 

 やっぱり、彼女は努力の人ですね。

 決してそういう姿を人に見せないように行動していますが、一度だけ見たことがあります。

 

 魔理沙さんと参護さんは似ている部分が多いと思います。

 

 二人ともひたすら努力を重ねて今の力を手に入れて、届かぬと知りながら高みを目指し続けるその直向きさが。だから二人は気が合うか、逆に反発すると思っていましたが、予想は大当たりでしたね。

 

 正確には、魔理沙さんの破天荒さを参護さんが受け止めて、参護さんのオーバーワークを魔理沙さんが指摘して効率よいものに変える。

 

 理想の関係だと思う。

 

 そう考えると、ちょっと切ない気持ちになる。

 やっぱり、参護さんと共にいることが当たり前になりつつあるのでしょう。

 

 いつか、この心もしっかりと定めないといけませんね。

 

 

 

 

Ш月ヽ(д`ヽ)オロオロ(ノ´д)ノ日

 

 昨日の帰りに魔理沙さんから何人かの私物置き場が溢れていることを教えられた。

 

 確かに、最近は彼の家に通う人達も多い。

 着替えや荷物なんかを置いておく部屋も、個人の領域を決めているが、一部はそこからはみ出てしまっている。

 

 衣装箪笥もひき出しに名前を書いた札をかけて、個人の私物を置いておくようになっている。

 

 だが、使っていない人もいるため、私物の多い人は持ち主に相談して借りたりしている。

 

 輝夜さんなんかは使っていないので、代わりに鈴仙さんが使用したりしていた。

 

 それでも、だんだん増える私物たちに部屋が物置のようになってしまっている。

 

 かろうじて歩く領域が確保されているが、このままではこの道も危ない。

 

 だったら、私物の多い人たちに部屋を持たせることが出来れば現状をどうにかすることができる。

 

 そう考えた結果、今回の増築案だった。

 

 他にも、何人かからもどうにかしてほしいという相談があった。

 

 本当なら、外にでも倉庫を作っておくのが手っ取り早いのですが、これからも増える可能性も高いですし、個人的に別荘みたいな感覚で私室を持ちたいという欲もあります。

 

 もちろん増築にあたって、参護さんとゆっくり妖怪たちの意見も取り入れたいですね。

 

 特にYパチュリーはいわゆるこの家の古株だ。

 他のゆっくり達には無い参護さんへの本物の信頼と好意を感じられる。どうすれば参護さんが楽になるか、どうすれば役に立てるか。

 

 ゆっくり妖怪はみんな触れ合ってくれる人たちにはよく懐きますが、Yパチュリーの姿はこの家の誰よりも参護さんありきの行動が多い。

 

 魔法で家事を手伝ったり、彼のつぶやきから求める同族を呼び出す行動力も、参護さんの為だ。

 

 参護さんも分かっているのか、Yパチュリーといる時間が一番多い。

 

 他のゆっくり妖怪も二人の間にだけは入らない。

 特別な関係。

 

 ちょっとうらやましいですね。

 

 

 

Ш月(´・ω・`)日

 

 増築するとなると、土地も重要になってくる。

 

 特に裏庭には幽香さん監修の花壇や畑がある。

 日当たりや、建築中に誤って畑を壊したりしない様に気を遣う必要がある。

 

 そこを含めても、Yパチュリーに図面を見せながら相談しつつ予定や意見を取り入れていく。

 

 Yパチュリーが要望したのは、ゆっくり妖怪たちが遊ぶ大部屋だった。

 

 確かに、Y小悪魔やYレミリア、Yフラン達子供組が元気よく遊ぶ場所も必要だし、基本的にゆっくり妖怪自体が幼い思考を持っている場合が多いので、こういう遊び場は重要だ。

 

 離れに酒蔵庫を作ったので、お酒好きな人たちにも受けが良くなるだろう。

 

 長屋を思わせるが、何でも屋なんて危ないことをさせているよりも、こうして集合住宅の管理人……はイメージが合わないから、支配人かしら?

 そういう事をしてもらえれば、心配しないで済むのだけどね?

 

 Yパチュリーに話すと何度もうなずいていた。

 同じ気持ちを共有できる仲間がいるのはうれしい。

 

 

 

 

Ш月(ノ∀\*)日

 

 参護さんの家の増築にあたり、準備をしていますが、その前に彼の家に来る人たちに知らせておかなくてはならない。

 

 しかし、どうしても捕まらない人もいる。

 幽香さんは特に花から花へ移動する人だから余計に捕まりづらい。

 大抵は太陽の畑か参護さんの家にいるのだけど、いなかった場合お手上げなのだ。

 

 今度、文さんに会ったら伝言を頼むことにしましょう。

 

 文さんは頻繁に取材で人里に現れますし、結構目を引く方なので見つけるのも簡単です。

 

 明日は職人の方の予定を詰めることにしましょう。

 

 

 

Ш月(・∀・)日

 

 失態です……。

 

 今日はYレミリアとYフランと遊んでいた。

 ただ、ちょっと興が乗ってしまい、ゴロゴロと寝転がりながら、赤ちゃんに話しかけるような口調で話していた。

 

 そこを、参護さんに見られてしまった。

 

 参護さんは気を遣って立ち去ろうとしてくれてたみたいですが、Yフランちゃんに捕まってました。

 

 そこからは、恥ずかしくて逃げだしたい気持ちを堪えて、弁明に時間を割きました。

 

 女性としてあまりに無防備でだらしの無い姿です。

 正直、今すぐにでも部屋にこもってしまいたい気持ちなのですが、私がそんなだらしの無い女性だと思われるのは我慢できませんでした。

 

 それでも、顔をまっすぐ見ることができませんでしたし、顔は真っ赤、声も張れずにボソボソ喋るだけになってしまいました。

 

 いくら落ち着く場所とはいえ、居間でだらしの無い恰好でくつろぐのは良くありませんね。

 

 次からは私室でこういう事をするようにしましょう。

 

 参護さんは紳士ですから、女性の部屋には進んで入ってこないでしょうし、見られることは無いでしょう。

 

 参護さんはもうちょっと女性に対して積極的でもいいと思うのですが、これは私のわがままですね。

 

 

 

 

Ш月☆-(ノ゚Д゚)人(゚Д゚ )ノ日

 

 やはり、人里から大工の人達を雇うのは良くありませんね。

 

 ゆっくり妖怪の観察研究のために、参護さんが自宅に受け入れている旨は、里の有力者の会合で話していることですので問題は無いのですが、さすがに一般人が妖怪に近寄られて怯え無い訳がないですからね。

 

 ここは、魔理沙さんの言っていた鬼の力を借りることになるでしょう。

 

 萃香さんなら妖怪に対しては問題ないでしょう。

 

 ただ、鬼の習性で強者との戦いに飢えている部分がある。

 参護さんは幻想郷でも急成長中の有望株と言っていい実力を持っている。

 

 会わせて大丈夫だろうか?

 

 鬼は強者に対して友好的だ。戦って生き残れればの話だが……。

 

 参護さんは騙し討ちをするような性格ではないので、余計に気に入られそうな気がする。

 どんな強者に対しても、搦め手を使ったとしても騙し討ちや闇討ちを好まない。

 

 そのあたりは彼の兄上の教育なのでしょうが、幽香さんや美鈴さん相手に正面から挑むその姿勢は無謀とも取れる。

 

 それで全身傷だらけになってしまうのだからタチが悪い。

 

 怪我をして、心配する身にもなってほしいものだ。

 

 波紋の影響で常人よりも高い回復力があるとしても、呼吸法である以上は肺へのダメージは致命的なのだから、絶対じゃない。

 

 喉だって危険なのだ。

 

 それなのにホイホイと強者と模擬戦模擬戦と、私を大事にしてくれているのはうれしいのですが、自身を顧みてほしい。そんなに日常的に怪我などされていては、私の心労が絶えないのです。

 

 ああ、でも強さを求める理由が人里や私を護る為だと明言されては文句も言えません。

 

 苦言位は受け止めてくださいね。

 

 こんなにも私を心配させるあなたが悪いのですからね。

 




 いかがでしたか?

 活動報告にて、趣味の合いそうな方のリクエストを受けています。

 ターコンさん、さっそくのリクエストありがとうございます。
 ゼロ使は短編になるでしょうが、少々お待ちください。

 アニメで妄想力をかきたてることにします。


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霧雨魔理沙の日記 Ш月

 ちょっと早い、魔理沙日記です。

 短めだけど、参護さんのピンチがありますとも。

 それではどうぞ。


Ш月(´゚ω゚`;)ズーン日

 

 最近、人里の外れにある参護の家によく行く。

 

 ゆっくりアリスにも同族と遊んでほしいという考えがあってなのだが、不思議と居心地のいい空間についつい長居してしまう。

 

 しかし、何度来てもこの家は魔窟だな。

 これで、明確な決まりごとが無いのは恐ろしい。

 

 指摘してやったら、どうやら作ることにしたらしい。

 結構サラッと作ったところを見ると、前々から考えてはいたようだ。

 

 完成した決まり事七か条。

 

 七項目目が女性としてどうかとも思ったが、妖怪なら人間と羞恥の基準にズレがあると言われて納得してしまった。

 

 ということは、参護は女の下着を洗ったことがあるのか。

 

 七か条に盛り込むぐらいだから、ダメージはでかかったんだろうな。

 

 人間同士なら双方しばらく立ち直れないと思う。

 

 少なくとも私なら部屋に引きこもる。

 

 

 

 

Ш月(゜.゜)日

 

 参護の家に行ったら、仕事に行っているらしく留守だった。

 後から阿求の奴も来たので、暇つぶしに将棋を打つことになったが、強すぎだろ阿求の奴。

 

 何度かやって彼女の指し方を覚えてきたが、やっぱり勝てない。

 

 七項目を阿求が初めて見た訳だが、その第一声が「女性なのですから、下着ぐらいは自分で洗われては?」というやつだった。

 

 いやいや、私だって女を捨てている訳じゃないぜ?

 年の近い男に自分の下着を洗わせるなんて、そんな痴女じみた真似はしない。

 

 冗談で言っているのだろうが、否定しないと本格的にそういう方面にさせられそうだ。

 

 そこからは、冗談と弁明の応酬だった。

 一度守勢に回ってしまったから、これは甘んじて受け入れるしかない。

 

 参護が帰ってきたからそこで終わったが、もう少し続けていればもっと覚えられたんだが、残念だ。

 

 ゆっくり小悪魔は生まれたばかりのようで、ゆっくりアリスがあやしていた。

 シャンハイ人形を使いながら自身も加わって一人二役をやってのけている。

 もしかしたら、子守経験者なのだろうか?

 

 もしかしたら、アリスの方が経験している可能性もあるな。

 今度聞いてみよう。

 

 阿求と一緒に晩御飯をごちそうになったが、これは美味しい。

 自分で作るよりも他人に作ってもらった方がおいしく感じるとアリスの奴が言っていたが、なるほどの納得感が出る。

 

 何度も足を運びたい気持ちもよくわかる。

 

 そうなると、私物置き場がゴチャゴチャしてきているのも問題だろう。

 

 この家は一人暮らしにはかなり大きな部類の家だが、今みたいに私物を置いたり寝泊りする人間が毎度のごとくいる家にしては小さい。

 

 阿求にも相談して増築の話を案として話し合った。

 

 やっぱり、これを機会にして頻繁に家に来る人達の私室ぐらいは作っておくべきだ。

 

 別荘みたいな感じでちょっとわくわくするな。

 

 

 

 

Ш月ヽ(д`ヽ)オロオロ(ノ´д)ノ日

 

 増築と言えば、萃香の奴だ。

 霊夢の所か、天子の所にいる事が多い。

 

 霊夢の所に行けば大抵いるから、話だけでも通しておこう。

 

 そう考えて萃香に会いに行った。

 

 霊夢はいなかったが萃香が鳥居の上で眠りこけていた。

 

 酒の匂いがここまでする事を考えると飲みながら寝たのか。

 

 見た目幼女のくせして、下手な妖怪よりも酒に強いんだから始末が悪い。

 

 話を通すと言っても、要は近々里から外れて民家を増築する予定だからその時は頼むぜ。

 ということを言うだけなのだ。

 

 萃香は承諾してくれたが、どうも他の目的があるようだ。

 

 おそらく参護の奴の噂を聞いていたんだろう。

 自分から行くのは霊夢か紫あたりに止められてたかな?

 

 だとすれば、すまん参護。

 

 もしかしたらひと波乱あるかも……。

 

 

 

 

Ш月(´・ω・`)日

 

 昨日萃香の奴に参護の家の増築を依頼したことを霊夢に話したら、軽く頭を抱えていた。

 

 どうやら、噂が流れているあたりから止めていたのだが、こちら側から接触してきたから止められないという事らしい。

 

 確かに鬼は強者を好むし、卑怯な手を好まない。

 参護の戦い方は鬼が好む戦い方であり、あいつ自身が強いこともあって、鬼の大好物ともいえる奴になっている。

 

 前に幽香との模擬戦を見たことがあったが、あれは模擬戦と言えるのか?

 重力を無視して滞空時間がおかしなことになっている一方的な虐殺を見せられた。

 

 マスパが地面を走る様にあいつを引きずる姿は二度と見なくていいと思う。

 

 あいつはそんな状態であきらめずに向かっていった奴だ。

 

 鬼好みなのは言うまでもないはずだ。

 

 それで会いに行こうとしていた所を霊夢が止めていたらしい。

 

 あー、まずったな。

 

 まぁ、人誑しのあいつだし、たぶんおそらく大丈夫だろう。

 

 たぶん。

 

 

 

 

Ш月(ノ∀\*)日

 

 今日は大量の私物を持ち込んだら、参護とちょっと言い合いになった。

 

 まぁ、参護のツッコミが中々面白かったから、ついついやりすぎた感じはある。

 だけど、そのおかげで呼び捨てで呼ばれるようになった。

 

 さん付けなんて、私のキャラじゃないからな。

 訂正してくれたなら御の字だ。

 

 ゆっくりアリスも人形制作用の裁縫道具を持ち込んでいたし、住むにもいい環境にしないとな。

 

 私室を作る名簿にも私は記入しているし、阿求の奴も記入している。

 

 名簿の人数+二、三部屋の客室を作ることが理想だろうな。

 

 しかし、萃香の奴が会うのが楽しみなのか、まだかまだかと何度も催促して来る。

 

 まだ図面すらきちんと決まってないのだから待てよ……。

 

 

 

 

Ш月(・∀・)日

 

 今日は本気で参護に謝りたくなった。

 

 霊夢の所に行ったら、萃香がワクワクした顔をしながら拳の素振りをしていた。

 

 あれを見た瞬間、参護に無性に謝りたくなった。

 

 音を置いていく拳というやつを見ることになるとは……。

 

 しかも、萃香の奴、笑っていた。

 

 いや、嗤っていた。

 

 ごめん、参護。

 

 本当にゴメン……。

 

 

 

 

Ш月☆-(ノ゚Д゚)人(゚Д゚ )ノ日

 

 昨日の罪悪感から、ついつい参護の家で昼食を作った。

 そりゃもう腕によりをかけた。全力の料理だ。

 

 ついでにお菓子も大量に作ってきた。

 

 ゆっくり妖怪達とおいしそうに食べていたし、感謝もされたけど、どう控えめに考えても幽香以上の惨劇が予想される。

 

 許してくれ参護。

 この程度じゃ罪滅ぼしにはならないけど、絶対に他の何かで返すぜ。

 

 だから、生き延びてくれ!!

 




 いかがだったでしょうか?

 参護ピンチ!

 そして次は参護日記。

 はたして参護君は生き延びることができるのでしょうか?


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海原参護の日記 Φ月

 お待たせしました。

 今回は少し短め。

 とはいうものの、参護さん動けなくなっちゃったしね。
 しかたないね。

 今回は外伝ありきの物語になってます。

 それではどうぞ。


Φ月:(;゙゚'ω゚'):日

 

 増築の段取りが本人置き去りのまま進んでいる件について。

 

 阿求様から予定の図面を渡されて、確認したら新築にするのとほぼ変わらないぐらいの範囲を建て替える予定らしい。

 

 職人は鬼に頼むということで、おそらく伊吹萃香ではないかと予想。

 

 出会ったことは無いが、意識して博麗神社には行ってなかったし、当然と言えば当然なのかもしれない。

 なぜ今まで神社に行かなかったかと言えば、大した理由ではないが、何でも屋の仕事は妖怪退治も含まれるから彼女の仕事とバッティングしているのだ。

 これは、商売敵として潰されるのでは?

 という考えからだ。

 

 まぁ、よく考えれば俺と彼女の相手をする妖怪のレベルが違うから存外相手にされないだろうと結論が出ていた。

 

 被ることがあるとすれば、中級妖怪を相手にしている時だろうが、上級に片足突っ込んでいるようなレベルの妖怪なんて相手にしたら死ぬ。

 

 幽香さんの模擬戦で空中コンボがデフォルトになりつつあるが、あのレベルなのだろう、上級は。

 

 図面を見れば、現実の感覚だと数か月単位の工事だが、幻想郷だと数日らしい。

 

 改めて幻想郷の感覚がわからないな。

 

 

 

Φ月(´;ω;`)日

 

 魔理沙の奴が、職人を明日連れて来てくれるそうだ。

 

 挨拶しておきたかったから丁度いい。

 

 だけど、魔理沙は本当に申し訳なさそうに何度も何度も謝っていた。

 

 え? 俺何時の間に謝られるようなことしたっけ?

 

 生きて帰ってきてくれとか、戻ったら旨いモノご馳走するからとか、そんなやばいの俺?

 

 鬼は戦いが好きな種族だということは知っている。

 

 だけど、その対象が俺に向くなんて考えてなかった。

 

 元々人間相手に戦いを楽しんでいたというイメージだ。

 正々堂々を好み、嘘や卑怯な行為を嫌う。

 

 特に妖怪を相手にできる人間なんかは彼女たちの絶好の獲物だろう。

 

 うん、これは標的待ったなしだわ。

 

 よくよく考えてみても、むしろ突撃してこなかったことの方が不思議なレベルだ。

 どうやら、博麗霊夢さんが抑えていてくれたようだ。

 

 今度、食材を届けに行こう。

 

 足向けて寝れないレベルの恩だ。

 

 Yパチュリーも潤んだ目でこちらを見ている。

 

 いや、そんな死にゆく人を見る目で見ないで!?

 たぶん大丈夫だから! 彼女も手加減してくれるよ……たぶん。

 

 

 

Φ月(ヽ´ω`)日

 

 きょうはつかれた

 

 ねる

 

 しぬ

 

 

 

Φ月('A`)日

 

 昨日は日記を書く気力すらなかった。

 

 今日も結構しんどい。

 

 結果から言えば、魔法の森の一角と玄武の沢の岩肌をだいぶ削って地形を少し変えてしまった。

 

 現在、YパチュリーとY咲夜が全身の包帯を換えながら、Y美鈴が気功を流して治癒力を底上げしている状態だ。

 

 ベットから出れない。

 

 いやぁ、右手だけ無事だったから日記も書けるけど、それ以外ボロボロだ。

 

 波紋で活性化、気功で強化してこの状態だから、生身だったら死んでいた。

 

 YレミリアとYフランが全身に薬草を塗って、包帯を取った俺の身体を這い回り薬を塗り広げていた。

 そのついでとばかりに、俺の身体の上でスケートをするのは目をつぶろう。

 

 だって、Yパチュリーに二人とも怒られてたからな。

 

 Yフランがトリプルアクセルを決めた時は拍手をしたかったが、あいにく左手は動かせない。

 着地時に、情けない声をあげてしまったのは仕方がないと思う。

 

 横では土下座している魔理沙と、笑いながら酒を飲んでいる萃香。

 

 うん、カオスだね!

 

 

 

Φ月<丶´Д`>ゲッソリ日

 

 まだまだ、怪我が治らない。

 

 波紋使ってこれって、重傷だ。

 

 鈴仙さんは顔を真っ青にしながら、永遠亭から持ち込んだ医療器具を部屋に次々と配置していった。

 永琳さんは何やら永遠亭から離れられないらしく、鈴仙さんと魔理沙の二人で看病されている。

 

 さすがに自分のせいだと考えている魔理沙は進んで看病しに来てくれる。

 

 ミイラ人間化なんて漫画だけだと思ってたよ。

 

 排泄物はYパチュリーとY咲夜が全部処理してくれる。

 むちゃくちゃ恥ずかしかったが、まさか鈴仙さんや魔理沙にさせるわけにはいかない。

 

 魔理沙は自分がやると張り切っていたが、こればかりは羞恥心の方が勝った。

 

 ゆっくりたちに頼むのも正直辛いのだが、仕方がない。

 

 萃香はまだ隣で酒飲んで笑ってる。

 もう帰れよお前。

 

 

 

Φ月(;´Д`)ゲロゲロ日

 

 戦った後から、ずっと萃香が家から、というか部屋から出て行かない。

 

 ずっと、酒飲んでゆっくり達と遊んで、俺と話して寝る。

 

 いや、増築の仕事はしてるらしいが、部屋から出れないのでよくわからない。

 

 なんでも、人間があそこまでもったのは久々だとか、あんなに血が騒いだのは初めてだとか、とても楽しそうに言っていた。

 

 渇きを潤したのはいつ振りだろうか、っと懐かしむような目をしながら酒を飲む見た目幼女。

 

 どうやら俺の戦いで、その渇きとやらは潤せた模様。

 

 あと一人、バトルマニアの鬼が居る気がするが、二度とやらん。

 

 なにしろ、全身打撲やら裂傷、骨折もあちこちにできてるし、血を流し過ぎて貧血気味。

 食事はペースト状のモノしか食べれらないから、内臓にもダメージが入っているだろう。

 

 どうやら俺のことを気に入ってくれたようだが、二度と戦わん。

 

 二度と戦わん。

 

 

 

Φ月(-.-#)日

 

 萃香の奴は増築しながらどうして俺の部屋から出ないで済むのか?

 

 どうやら彼女には部下がいるらしく、そいつらが昼に増築、夜に俺が寝ている最中に萃香が参加して増築しているらしい。

 

 もう目処は立っているそうで、数日中にできるそうだ。

 

 本当に幻想郷の常識はぶっ飛んでるね。

 

 今日はゆっくり達の部屋が増築対象らしく、全員部屋に集まっていた。

 

 萃香もY幽香を持ち上げて、ゲラゲラ笑っていた。

 知り合いだから、こんな状態になってるの見るのが面白いんだろうな。

 

 Y幽香も気にしていないようで、なすがままだ。

 

 今日は布団の周りをゆっくり達に囲まれて眠ることにする。

 ちょっと幸せな気分になれた。

 

 萃香も一緒だった。

 

 いや、女の子が一緒の部屋って。

 全身打撲で何もできないだろうけど、酒飲んで腹()きながら寝るなよ。

 

 幼女の皮被ったおっさんじゃねぇか。




 いかがでしたでしょうか?

 参護は耐久性能だけは一級品です。

 一応、参護自身レベルアップはしているのにこのダメージ。

 鬼の恐ろしさが良くわかりますね。


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外伝 海原参護VS伊吹萃香

 お待たせしました。

 外伝ですが、楽しんでいただけると幸いです。

 それにしても、萃……香?
 ってなる可能性が高いですね。

 かなりやりすぎた感があります。

 伊吹萃香が俺の嫁的な方はブラウザバック推奨です。

 あと、キャラに対してこうでなければならないという思いを持っている人も注意です。

 それでは、どうぞ!!


 魔法の森と玄武の沢の間。

 

 木々と岩が乱立する広い土地がある。

 妖怪がほとんどおらず、貴重な動植物が生息していない土地だ。

 

 どう考えても周囲が無事じゃ済まないから広くて害のない地域を選択したって感じだ。

 

 周囲には俺を連れてきた魔理沙と話を聞きつけてきた幽香さんが居る。

 

 目の前では萃香さんが準備運動をしている。

 表情は笑顔。

 

 幼い容姿だから正直微笑ましい気持ちにもなるのだが、この現状と周囲の人たちの反応がそんな気持ちも吹き飛ばしてくれる。

 

 魔理沙は青い顔で祈るようにこちらを見ているし、幽香さんは(わら)っている。

 これで逃げ出したくならない人は、勇者だと思う。

 

「さぁ、早くやろう! 参護とやり合うのすごい楽しみにしてたんだ! 私もう我慢できないよ!」

 

 こいつワザとじゃないだろうな?

 

 卑猥に聞こえたら負けって感じだろうな。

 

「私が、審判役を務めるわ。死にそうになったら止めてあげるから、存分にやりなさい」

 

 あれか、死にそうになったら止めるが、結果的に死んでなきゃ大丈夫的な匙加減で助けられそうな気がする。

 

「よーし! そんじゃさっそく!」

 

 ドンッ!

 

 という音が聞こえたと同時に、萃香さんが……いやもう萃香でいいか。

 彼女が眼前までワンステップで接近してきた。

 

 空を飛んだとか、能力で近づいたとかそんな複雑な話じゃない。

 単純に彼女自身の力だ。

 

 大体、野球のピッチャーとキャッチャー程度の距離がたったの一歩で眼前にまで距離を詰めてきた。元々彼女が立っていた場所は、足元がひび割れて陥没していた。

 

 単純に力のみで今の行動をしたのだ。

 

 慌てて杖でガードすると、ものすごい力で吹き飛ばされ、一本の樹に当たってその幹を削ってしまう。

 

 なんて威力だよ。

 だが、見た目派手な一撃だったけど、実は大したダメージは無い。

 彼女なりの開始合図といった所か。

 

 痛いは痛いが……。

 

 

**********

 

 

 初手で大木に叩きつけられた参護だったが、何事も無かったように立ち上がった。

 幽香は当然だと言わんばかりにうなずき、萃香は思った以上にダメージが少なそうな参護を見てさらに笑みが深くなる。

 

 萃香なりの開戦の合図。

 

 そして参護なりの、受けて立つ構え。

 

 呼吸と共にその身体から湧き上がる波紋の力。

 気功と混ぜて使うことはまだできないが、それでも二つ使えるというのは十分な強みになる。

 

(ようやく兄貴に一歩だけ近づけたのか)

 

 参護が考えるのは兄である男。

 彼は波紋、気功、魔力、霊力を同時に混合させながら戦うことができた。

 

 現状を考えると、とんでもないことだと知らされる。

 

 二種類だけでもこれだけ大変なのだ、四種類など雲の上の話だろう。

 

 杖を太刀の上段で構える。

 波紋で武器を、気功で全身を強化したその姿はまさに戦士のそれだ。

 

 ゾクゾクと萃香の全身が喜びで震える。

 長い年月を通して、気功の使い手にも波紋の使い手にもそれぞれ出会った経験がある。

 今思い出しても最高の戦いだった。

 戦いへの渇きを感じる間もないぐらいに何度も何度も闘えていた時代。

 その中で色濃く記憶に残っている戦士たちと同じ力を持ち、それ以上の強さを持っているであろう人間が目の前にいる。

 

 開戦のあいさつにも全くダメージの気配が無い。

 

 それを感じた萃香はここ数百年で最も楽しい時間が来ることを確信した。

 

 すると眼前に参護が杖を構えたまま近づいていた。

 予備動作も無い、音も無い。

 

 そして振り下ろされる一撃を、萃香は頭突きをするように額で受け止めた。

 

「……へへ、いい一撃じゃん。双方開戦の一撃を見舞ったんだ。楽しませてよ!!」

 

 言葉と同時に、身体を参護の懐まで潜らせて、懐からのショートアッパー。

 

 踏み込みが強烈過ぎて地面が陥没するほどの威力を参護は胸に受けて吹き飛ばされる。

 

 追撃に飛び上がり、がら空きになった顎めがけて拳を放つ。

 

 次の瞬間、あっという間に体勢を立て直した参護が脇腹に杖を突き立て、地面へと送り返す。

 

「グッ!?」

 

 叩きつけられた萃香は思わず唸るが、そこでは終わらない。

 

銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)!!」

 

 銀の雨が、萃香の上から降り注ぐ。

 それは地面を抉り、萃香の全身を杖でメッタ突きにした。

 

 着地すると同時に後ろに下がり、構え直す。

 

「フツ―、追撃する場面じゃない?」

 

 パンパンと服に付いた埃を払うようにして萃香が土煙の中から現れる。

 

 その姿は多少服が破れ、土埃を被っているがダメージは少ないだろう。

 

 今の攻撃など効いていない。

 そう思わせるのに十分な姿だ。

 

「あの連撃の後半、ほとんど地面の感触しか無かった。効いていると考えるはずもない」

 

 密と疎を操る程度の能力、数発を受けた後は能力を使ってすべてを回避していた。

 霧のようになれば、その突きは風を切る様に何にも当たらず、ただ地面に穴を開けるだけしかできなかった。

 

「効いてないって訳でもないんだけどね?」

 

 そう言うと両手を見える様に前に出す。

 右手は通常の手であるが、左手が異常だった。

 霧のように散った状態で、手の形を成していない。

 

 何度か戻そうとしているが、霧状になった小さな粒同士が反発しているように弾かれている。

 

「どういうことだい? 左手は密にし辛いし、右は逆に疎にできない。固められてるみたいにね」

 

「……波紋には二種類ある。対象をはじく正の波紋と、くっつく負の波紋だ。その波紋の効果だよ」

 

 左手には正の波紋が流れ、密にしようとすると粒同士が弾き合って元に戻せない。

 右手には負の波紋が流れ、疎にしようとすると粒同士がガッチリとくっ付いて離れない。

 

「へー、面白いね。そんな方法で私の能力が封じられるとは思わなかったよ! でもさ……」

 

 一瞬だった。

 

 ほんの一瞬、膨大な妖力が彼女から吹き出し、すぐに収まる。

 

 その一瞬で両手の波紋はきれいに押し流されていた。

 

「こうしちゃえば、元に戻るよね?」

 

 完全に力技だった。

 

 見ていた魔理沙は完全に顔を青くして、幽香は笑いをこらえていた。

 

 あまり上等な手段ではないが、一瞬の開放で吹き飛ばされる自身の波紋に口元がヒクついてしまっている参護。

 

「無茶苦茶やるなぁ」

 

「鬼だからねー。さて、面白いもの見せてくれたお礼だよ? 受け取れ!」

 

 参護の胴体を薙ぎ払うように蹴る。

 中段大廻し蹴りだ。

 

 それを鬼の力でやるとどうなるか?

 

 参護は真横に吹き飛び、木々を数本巻き込みながら、大岩の上半分を粉砕するような形でようやく止まった。

 

 いくら硬気功や波紋で防御や回復を底上げしていても、間に合わないほどの威力だった。

 

「すごいすごい! 今のなら上半身と下半身分かれててもおかしくないのに! 最高! 最高だよ参護!! もっとやろう! もっと私の渇きを潤して!!」

 

 表情は新しいおもちゃを貰った子供のようだった。

 

 伊吹萃香は戦いが好きだ。

 正々堂々と全力で殴り合うような単純かつ明快な戦いが好きだ。

 

 妖怪と戦うのも、強くてすごく良いと彼女は言うが、何よりも彼女は人間の強者を好んだ。

 

 妖怪よりも弱いのにどうして?

 それは、彼女が妖怪だからだ。

 

 強い人間を倒せば多くの畏れが手に入る。

 しかしそれ以上に、戦う人間が持つ様々な感情が彼女の身体を満たし、畏れのみを糧にしている頃よりもずっと日々が充足していて、酒がおいしかった。

 

 そして気づけば、酒呑童子などと呼ばれるほどに力をつけていた。

 

 強者との戦いが、人間との戦いが、自分を高めてくれる。

 あの満たされた日々をくれるのだ。

 

 そんな人間が目の前にいる。

 感情が高ぶらない方がおかしいだろう。

 

「銀色の!!」

 

 参護は形が変わってしまった岩から立ち上がると、まっすぐに、萃香に向かって駆けていく。

 その手には、あれだけの攻撃をガードして、あれだけの木々や岩に叩きつけられても折れることも曲がることも無い最高の武器が握られている。

 

 ゆっくりパチュリーのかけた強化術式。

 それはこうして参護を守り、彼の支えになっていた。

 

「波紋疾走!!」

 

 放たれた突きは、萃香の右腕に突き刺さり、彼女を吹き飛ばす。

 

 そして再び感じる波紋の胎動。

 

「負の波紋に切り替えたね? 疎になる前に固めてダメージを与えるか。いいねいいね! 強いよ強いよ参護!! 全身が震えるよ! ゾクゾクする!! 全部頂戴! 全部私のモノだ!」

 

 興奮して徐々にテンションがおかしくなっている萃香。

 そして悲劇が起きた。

 

 パァン!!

 

 何かが破裂するような音と、その音よりも先にものすごい勢いで先ほどの岩に突っ込み、クレーターを作る参護。

 明らかに今までの彼女の拳の威力ではなかった。

 

 音を置き去りにする拳。

 

 音速を超えたその拳は参護の全身を破壊して地面に叩きつけたのだ。

 

「萃香!!」

 

 そう叫んだのは審判だと言いながら見学していた幽香だった。

 

 今のはまずい一撃だったと判断したのだ。

 彼の実力ではこの威力は強すぎる。

 

 これは妖怪同士が戦う時の威力だし、完全に興奮していた萃香が威力を調整していたとも思えなかった。

 

「参護!!」

 

 ただただ顔を青くしていた魔理沙はこの光景を見てさらに顔色を悪くする。

 

 今までだって人間の戦いだとは思えなかった。

 それなのに、それを超える一撃が参護を襲ったのだ。

 

 ガキィン……

 

 金属音に振り返った魔理沙は更に言葉を失う。

 

 飛んできたのは参護の使っていた杖。

 

 どんな戦いでも手放さなかった武器を手放している。

 最悪の予想がこの場の全員によぎった。

 

 

**********

 

 

 痛てぇなぁ。

 

 硬気功で防御あげて、波紋で回復力あげてたのに、今の一撃で左腕が動かなくなった。

 

 杖でガードしたが打点が左に近かったのだろう、武器ごと左腕を砕かれた。

 

 全身がだるいし、呼吸も苦しい。

 

 ここで呼吸を乱せば死ぬかもしれないと、無理やりでも波紋の呼吸を続ける。

 

 ああ、死ぬかもしれないな。

 

 兄貴にやられた時よりひどいもんなコレ。

 

 左腕、千切れ飛ばなかっただけ運が良いのかね?

 

 全身ボロボロ。

 

 結局兄貴がやっていた、別の力を混ぜ合わせるなんてできなかったな。

 

 波紋と気功。

 

 ああ、コーヒーにミルクを混ぜるみたいにいかないものかね?

 

 こう……波紋と気功を回しながら……?

 

 今、混ざった?

 

 回して、回して……

 

 

**********

 

 

 変化に気づいたのは、ずっと対峙していた萃香だった。

 

 陥没している地面の中央から、倍々に膨れ上がる力を感じたのだ。

 虫の息程度の小さなものが今は、人間一人分の力まで膨れ上がっている。

 

 倍に、倍に……。

 

 そして、ついにその力は動き出した。

 

 左腕は赤黒く変色し、両足も腫れ上がっている。

 しかし、その足取りはしっかりとしていて、むしろ万全の彼を思わせた。

 気が全身に満ちていて、波紋が気を取り囲むように弾けている。

 

 その姿は、全身から溢れる力はまるで銀色の波動。

 気も波紋も銀色に輝いていた。

 

「!?」

 

 一瞬。

 

 奇しくも最初に萃香自身がやった初手の一撃と同じ構図。

 

 何の技も無い、ただのパンチだ。

 

 しかし、その拳に萃香は吹き飛ばされた。

 

 多くの木々を巻き込みながら、地面を派手に削りながら、大岩に当たり、その大半を吹き飛ばしたところでようやく止まった。

 

 全身が痛かった。

 妖怪同士の殺し合いだったら普通に放たれる一撃だ。

 

 それを人間が放った。

 

 別に致命傷には程遠いし、何発食らっても闘うのに支障はない。

 

 だけど、酒呑童子である伊吹萃香は人間に吹き飛ばされ、大空を見上げていた。

 

「すごい……」

 

 それを実感した時、自然と出た呟き。

 

 そして、全身を駆け巡る歓喜の感情。

 

 妖怪同士の戦いのように、人間と戦える。

 

 そう考えただけで、萃香は震えていた。

 

(海原参護。まだまだ強くなるよね? もっと強くなったら、もっと楽しいかな? あの力で強化されてただけで、技も力も万全じゃない。あの状態でこれだけの威力なんだもん。万全でやり合えれば、もっと楽しい!)

 

 何百年と乾き続けた彼女は、久々にその渇きを存分に潤せた。

 しかし、何百年ぶりの潤いが、極上すぎた。

 

(海原参護、欲しくなっちゃうな)

 

 チロリと無意識に唇を舐める。

 

 その極上の潤いに依存していくのがわかるが、萃香はそれに抗う気が無い。

 

(しっかりと身体治しなよ? またやろうね!)

 

 視界には、前のめりに倒れている参護を映していた。

 

 その頬は戦いの後からか紅く染まり、その瞳は感激からか潤んでいた。




 いかがだったでしょうか?

 いや、本当にすいませんm(__)m

 ほのぼのの反動なのか、外伝は過激っぽくなります。


 え? 萃香のセリフが卑猥に感じる?

 気のせいじゃないかな?(すっとぼけ)


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伊吹萃香の心境 Φ月

 お待たせしました。

 投稿時間が遅れました。

 外伝の影響で、萃香ちゃんが色気?担当になっちゃてます。

 外伝の萃香を不快に思われた方や、エロ担当の萃香は嫌だという方は回避推奨です。

 本当に回避推奨です。


 

Φ月:(;゙゚'ω゚'):日

 

 増築の依頼が来てから数週間経った。

 

 私が海原参護という男の噂を聞いてから早半年以上か。

 

 魔理沙に話を通して、明後日参護と会うことになっている。

 

 海原参護の噂話や、活躍が新聞に載るたびに会いに行きたくて仕方が無かった。

 その度に、霊夢や紫に止められてしまった。

 

 だけど、止められて我慢するたびに、私の中の血が騒いでくる。

 

 倒されたと言われる中級になりたての妖怪。

 あれを私も見たことがある。

 

 疎になることで、妖怪が暴れている姿を見た。

 あれは確かに、放置しておけば上級にも至る可能性を持った妖怪だっただろう。

 

 身体能力だけなら十分に中級を名乗れるぐらいに強かったし、秘めていた妖力も徐々に上がっていた。

 

 強くなったら私が戦おうと思っていた妖怪だったが、あの海原参護に倒されてしまった。

 

 その件に関しては、気にしていない。

 

 なにしろ、あの妖怪が致命傷を負ったあの戦いを私は見ていた。

 

 最初は人間に腕の骨を折られたという話を聞いて様子を見たが、前に見た時よりもその妖怪は強くなり、その目に憎しみを宿していた。

 よほど手ひどいしっぺ返しを食らったようだ。

 その時私はそうとしか思っていなかった。

 

 その妖怪が復讐に出向き、見事に返り討ちに遭う姿を見るまでは。

 

 あの超高速移動、銀の鏃を複数妖怪に叩き込んだ技。

 

 あれを見た時から、あの男と戦うのを夢にまで見るようになってしまった。

 

 だけど、霊夢に止められている。

 だから、お酒で我慢するのさ。

 

 霊夢もお酒で我慢しているのを知っているからか、お酒で注意することは無くなったな。

 

 それも、明後日で終わる。

 

 参護って奴が、私の満足いく相手なのかどうか。どっちに転んでも私は楽しみを無くすことになるのかな?

 

 満足いったとしても、倒してしまえばもう会えないし、満足いかないなら、またあの渇きを耐える日々か。

 

 できれば、満足いく相手でありますように。

 

 

 

 

Φ月(´;ω;`)日

 

 久々に幽香の奴が訪ねてきた。

 

 明日は彼との戦いの審判をしてくれるそうだ。

 特に殺しそうになったら止めるがそれ以外は好きにしていいと言っていたので、存分に戦えるというものだ。

 

 ここ数日、ずっと拳の素振りをしてばかりだったから早く戦いたくて仕方がない。

 

 幽香に彼の話をよく聞いた。

 

 回復力を高める波紋を使い、最近は紅魔館の門番から気功も習っている。

 とても打たれ強くて、どんなに劣勢でも決してあきらめない不屈の精神があるっと。

 

 話だけ聞くならもう疼いてくる。

 

 波紋の使い手も、気功の使い手も、昔に戦った経験がある。

 どちらも、今思い出しても最高な戦いだった。

 

 それを両方持つ戦士。

 

 期待せざるを得ないね!

 

 

 

 

Φ月(ヽ´ω`)日

 

 もう今日は最高!

 ああ、鬼子母神に感謝するよ。

 

 今の時代にもういないと思っていた、あんなに正々堂々と鬼と戦おうとする奴を!

 今の時代にもういないと思っていた、あんなに劣勢でも目の光を失わず、戦い続ける漢を!

 

 そして何より、最後のあの一撃!

 

 今思い出しても芯から震える。

 

 妖怪同士でしか感じられないような、衝撃が全身を駆ける一撃。

 

 あの最後の一撃は、おそらく波紋と気功を混ぜることであの効力が得られるのだろう。

 

 銀色の闘気。

 

 とてもきれいだった。

 

 波紋でも気功でもあの色は見たことが無い。

 

 もっと戦いたい。もっとあの不屈の目を見ていたい。もっとあの心地いい場所にいたい。

 

 欲しいなぁ。

 

 そうだ、増築で私室が用意されていたし……。

 

 私の部屋を作っても問題ないよね?

 

 だって、私や私の子分たちが作るんだし、製作者特権ってやつだよね!

 

 

 

 

Φ月('A`)日

 

 参護が寝ている部屋を訪ねると、全身包帯まみれの参護がいた。

 

 ゆっくり妖怪と共に暮らしている様子は中々に面白い。

 

 特にあの紅魔館の吸血鬼の姉妹のゆっくり妖怪は、本人に見せられないような性格をしていた。

 

 無邪気が一番よく似合う。

 

 薬草を全身に塗って参護の体を滑って遊んでいるのは、正直笑っちゃったね。

 

 滑りながら空中で三回転していた姿はある意味器用だと思う。

 

 あと、魔理沙の奴がずっと参護に土下座していた。

 気にし過ぎだって、そう思うだろ?

 

 

 

 

Φ月<丶´Д`>ゲッソリ日

 

 私がやりすぎたとはいえ、治りが遅い。

 

 波紋使いは驚異的な回復力を持つものだが、それで持ってこの治りの速度だと、正直申し訳ない。

 

 永遠亭の兎が色々な設備をこの部屋に用意していく。

 あの兎も参護の空気を好む人の一人かな?

 

 参護が常時波紋を身体で作っている後遺症というか、副産物がこの居心地の良さなんだろうな。

 

 聞けば、参護はこの家に二年近く住んでいるらしい。

 

 肥沃な大地、などとよく言うが、この土地はまさに肥沃な大地と言える。

 

 二年以上、彼の強力な波紋をずっとこの大地は受け止め続けていたのだろう。

 地面の植物たちが活力を得て、地面の中にいる生き物も活力を貰い大地が非常に元気だ。

 

 この空間も参護の波紋……いや、その名残かな?

 気功も混ざって居心地がとてもいい。

 

 気功が使えるようになったのは最近のようだし、それ以前からここに通っている奴らもこの居心地だけでいる訳じゃないだろう。

 

 ここで飲む酒はとても旨い。

 

 もしかしたら、こういうそれぞれで何か居心地のいいものがあったからこうして集まっているのだろう。

 

 魔理沙は私に仕事を頼んだことでこの大怪我をさせてしまったと、責任を感じてずっと看病に来ている。

 

 里の稗田の娘も頻繁に看病に来ている。

 

 私も正座で説教されたしね~。

 いやぁ、悪いことしたって自覚があるから、申し訳ない気持ちが先立って、ガラでもなく最後までしっかり聞いてしまった。

 

 涙ながらに説教されたら申し訳ない気持ちでいっぱいになっちゃう。

 

 この時間だけは酒も飲まずに正座……。

 

 私も涙出ちゃったよね。

 

 

 

 

Φ月(;´Д`)ゲロゲロ日

 

 いやぁ、居心地が良すぎるよここ。

 

 参護と話して、ゆっくり妖怪と遊んで、お酒を飲んで寝る!

 

 最高の時間だ。

 

 夜には増築の作業をしてるけど、日中にこうしてゆっくりできる。

 

 ちょっとした発見なんだけど、薬を塗るために直接参護の胸板に触れたけど、波紋を全身に巡らせているのか触れた時に非常に心地よかった。

 

 ゆっくり妖怪たちが触れたがるのも分かるな。

 

 寝ている間にちょっと触れていたけど、これはクセになるなぁ。

 

 戦ってよし、触れ合ってよしって最高じゃないか。

 

 本当に欲しいなぁ。

 

 いたずら心で舌でも這わせたかったが、さすがにゆっくり妖怪達や魔理沙が来たのでやめた。

 

 いつか存分にやりたいなぁ。

 

 フフフ……。

 

 

 

 

Φ月(-.-#)日

 

 増築の目処は立ってきたし、数日中に完成だ。

 

 今日はゆっくり妖怪達の部屋を増築するので参護の部屋に全部連れてきたが、ここで初めてゆっくり妖怪の幽香を見つけた。

 

 昔馴染みとはいえ、初めてゆっくり妖怪として出会った。

 

 思いっきり笑ってしまった。

 いや、知り合いでしかも気難しい性格の知り合いが、ゆっくり妖怪になっていたら笑っても仕方がないと思う。

 

 参護が寝ている周りをゆっくり妖怪たちがおしくら饅頭みたいに寄り添って眠っている。

 これは非常に癒された。

 

 参護は寝ている間にも波紋の呼吸を続けているようで、彼に触れていると波紋の力にあやかれるのだろう。

 

 この参護とゆっくり妖怪たちの姿を肴に、酒を飲もうかね。

 

 いい肴だよ本当にね。

 

 昨日考えていたことを実行しようかとも考えたけど、この光景を壊すのは無粋だね。

 

 いやぁ、いい空間だよね。

 

 眠くなってきたなぁ。

 

 横に失礼して……っと。

 

 そんじゃ、おやすみ~。

 




 いかがでしたか?

 本当に回避推奨というだけあると思います。

 外伝の勢いに引きずられた感じです。

 本当にすいませんでした。


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霧雨魔理沙の日記 Φ月

 投稿です。

 デイリーランキングに乗っていたらしいです。

 おかげ様でたくさんの人に読んでもらえて、非常にうれしいです。

 それでは魔理沙の日記をどうぞ。


Φ月:(;゙゚'ω゚'):日

 

 図面もできて、萃香が参護に出会うのももう避けられないところまで来た。

 

 どうも、参護は博麗神社にはこの二年で一度も足を運んだことが無いらしい。

 

 そのおかげで萃香とも出会う機会も無かっただろう。

 

 霊夢も萃香が参護に会いに行くのを防いでいたらしいし、ほんとに私余計なことをしたよなぁ。

 

 あの音を置き去りにする拳。

 

 弾幕ごっこで感覚がマヒしていたが、萃香は鬼だ。

 最強クラスの妖怪で、その鬼の中でもさらに強い鬼だ。

 

 弾幕ごっこでもある程度満足できるらしいけど、実戦の満足度は全然違うらしい。

 

 霊夢も肉弾戦もできるが、弾幕ごっこの方が強いし、肉弾戦で萃香を満足させられる相手なんて妖怪ぐらいしかいないだろう。

 

 だから、あんなにも楽しみにしている。

 

 ああ、罪悪感が……。

 

 

 

 

Φ月(´;ω;`)日

 

 明日ついに、萃香と参護が戦うことになってしまう。

 

 何度も言い出そうとも考えたが、じゃあ萃香の奴が抱えているあの飢えにも似た感情は一生閉じ込めておかなければならないのか? そう考えてしまうと、私は言い出せなかった。

 

 ただただ、参護に謝って、生きて帰ってきてくれと懇願するだけしかできなかった。

 

 参護自身もう気づいているだろう。

 

 なにしろ、生身で中級妖怪を倒すような実力を持った男だ。

 

 戦い好きの鬼が放っておくわけがないと。

 

 ここ数日、罪悪感で胃が痛い……。

 

 

 

 

Φ月(ヽ´ω`)日

 

 見ていて悲鳴をあげそうだった。

 

 いや、もしかしたらあげていたのかもしれない。

 

 本人は天才を知っているから、努力しないと置いて行かれる、とよく話していた。

 

 努力して努力して、人間が生身で妖怪と渡り合える程に鍛え上げた。

 

 だけど、たった一発の拳で、終わらせられてしまう。

 今思えば、私は参護に自分を重ねていたのかもしれない。

 

 私だって今の実力を持つのにそれなりに修行してきたし、努力が報われないこともあるが、努力の結果は必ず私のモノになると信じて今まで来た。

 

 参護自身がそれを体現してくれていた。

 

 努力を重ねれば、鬼とだって渡り合える、そう感じさせてくれたのだから。

 

 だから、あの拳で終わろうとした瞬間。

 私の努力も一緒に否定されたみたいで、ガラにもなく参護の名前を叫んでしまった。

 色々な感情がこもった叫びだったと今なら振り返れるが、強いて言うなら私たちの生き方を否定しないでって所か?

 

 その後のあの銀色の闘気。

 その時参護は、長い間試行錯誤したものが、カチッとハマった時の顔をしていた。

 

 あれが参護の努力の成果なんだろう。

 

 倒れた参護を助けに行く時の私の気持ちはきっと、参護が倒れたというのに不謹慎だけど、草原に吹く風のように爽やかなものだったな。

 

 やっぱり、参護は最高のダチだぜ!

 

 

 

 

Φ月('A`)日

 

 昨日のウチに呼んできた鈴仙に怒られた後に、ただひたすらに医療器具を運んだ。

 

 鈴仙が言うには意識があるのが信じられないレベルの重傷らしい。

 両足の骨は折れているし、アバラも数本、左腕に至っては骨が見えてしまうレベルの損傷らしい。

 

 この状況で右だけが無事なのが逆に不気味なのだそうだ。

 

 それでももう回復を始めている参護の波紋の効果には閉口してしまう。

 

 しかし、この重傷は私の責任。

 

 もうこの日は許すと言われてもひたすら土下座で謝り倒した。

 

 後は私のできる看病を鈴仙に教えて貰ってひたすら実践。

 

 今日一日で包帯の巻き方を完璧にマスターしたぜ!

 

 

 

Φ月<丶´Д`>ゲッソリ日

 

 今日も参護の世話をしていた。

 

 波紋は骨折ぐらいなら本人の治癒力の範囲ですぐに治してしまうほどの治癒力が生まれるものらしい。

 

 それなのにこうして何日も寝込んでいるということは、本人の体力や回復力が波紋を使わない状態だとかなり危険な状態であるという事なのだそうだ。

 

 鈴仙は症状に合った器具や薬を永遠亭から運んできて部屋に配置していた。

 

 本来なら永遠亭に運ぶのが一番いいのだろう。しかし、戦いの場所からこの家と永遠亭どちらに運ぶのかを考えた場合、地上ルート・空中ルートどちらだとしてもこの家に運ぶのが一番良かった。

 

 永遠亭は距離的に遠いのと、この土地はなぜか魔力や地脈共々非常に活性化していて参護の回復に役立つからだ。

 

 現在、それに加えて私の治癒魔法を断続的にかけ続けている。それでもこの治癒の遅さ。

 

 やっぱり罪悪感が……。

 

 そして、世話をするにあたって避けられないのが排泄だった。

 

 さすがに、友人とはいえ男のモノを……というのは難易度が高い。

 鈴仙なら仕事柄慣れていそうだけど、ここはゆっくり妖怪たちがやってくれた。

 

 ここでもやっぱり、ゆっくりパチュリーが一番動いていた。

 

 このゆっくりだけは、他とはちょっと違う気がするぜ。

 

 

 

 

Φ月(;´Д`)ゲロゲロ日

 

 今日は萃香が参護相手に昔を語っていた。

 

 そりゃそうだ、長い時を生きた鬼だ。見た目が幼女だが。

 

 戦った人間達の中には、萃香が好むような戦いができた人間も多かっただろう。

 その時の記憶を反芻(はんすう)するようにして、今まで誤魔化してきたんだろう。

 

 昔を懐かしむように語る萃香はどこか晴れ晴れとしていて、解放してある窓から吹き込む風に髪が流れて、まるで一枚の絵の様な、そんな儚くも力強い目をしていた。

 

 きっと、過去の戦士たちを思って、そして今の参護を報告していたのかもしれない。

 

 こんな姿を見せられると、やっぱり長い時を生きてきた鬼なんだなっと感じる。

 

 ただ、その後に参護の寝ている間に、胸板を舐めようとするなよ。

 誤魔化したつもりかもしれないけど、ばっちり見えちゃったよ。

 

 お前がやると犯罪的な絵になるんだよ。

 

 

 

 

Φ月(-.-#)日

 

 とりあえず今日は、参護の家で世話をした後に、霊夢の所に行ってきた。

 

 萃香の事を報告するためだ。

 

 霊夢は萃香の表情や言動を伝えたら、「ふーん」っとそっけなく答えていたが、その頬がわずかに緩んでいたのを見逃さなかった。

 

 やっぱり、萃香の苦しみを知っていて、一番安心しているのが霊夢なのかもしれない。

 

 たしかに萃香が参護に会いに行くのを止めていたけど、その間は酒をがぶ飲みするのを黙認していたらしいし、素直じゃない奴め。

 

 重傷の参護の事を話したら、霊夢の奴が治癒の札を渡してくれたのがいい証拠だろうな。

 

 あいつがただ働きなんて、幻想郷に槍が降るぜ。

 

 家に戻ると参護の横に萃香が寄り添うように寝ていた。

 いや、本当に犯罪みたいだからやめろ。

 

 しばらく見ていたが、腹をボリボリ掻きながら寝るなよ。

 

 おっさんみたいな幼女?

 幼女みたいなおっさん?

 

 まぁ、どっちも近いだろう。

 

 それに、萃香の寝顔を見たら何も言えなくなってしまったし。

 

 見た目相応の、無邪気な寝顔しやがって……。

 




 いかがだったでしょうか?

 短めですが、楽しんでいただけましたか?

 魔理沙は親友ポジに落ち着きそう。

 可愛く書ければいいですが、難しいです。

 そして、萃香自重できず……。

 もうね、参護よりも独り歩きするキャラってどうなん……?


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海原参護の日記 Χ月

 お待たせしました。

 参護の日記です。

 今回は療養パート。

 それではどうぞ!

 今回の文字は「Χ」です。
 エックスではなく、カイと読みます。
 ギリシャ文字の大文字ですね。


Χ月Σ(゚д゚lll)ガーン日

 

 あの戦いから早一か月。

 

 左腕が未だに治らない。

 鈴仙さんが言うには、一番損傷が激しい部位で、普通だったら切除が妥当なレベルだったらしい。

 

 波紋の力のおかげで今ではギブスで固定しておけば、ベットから起きられるぐらい位には回復している。

 

 両足の骨折はもう治りかけだが、まだ立てない。

 

 おかげで気功の鍛錬のための瞑想や、波紋の呼吸の鍛錬一秒間に十回の呼吸、十分間吸い続けて十分間吐き続ける訓練が(はかど)る。

 

 回復速度も上がるし、一挙両得というやつだ。

 

 随分と増築した家にも慣れてきたし……と言いたいところだが、怪我のせいで自室から出れないから慣れようがない。

 

 多分治ってから部屋を出たら、知らない廊下が通ってそうだ。

 

 どうやら阿求様たちの荷物の運び込みも終わったようで、ちょくちょく一日中ウチにいる人たちも増えた。

 

 私室は五部屋。

 阿求様、魔理沙、鈴仙さん、美鈴さん、萃香。

 

 客間が二部屋で、それぞれの部屋にはゆっくりたちが出入りしやすいようにドアにもう一つ小さいドアが付いている。

 

 布団ではなくベッドを採用してベッドの下の空間に収納スペースを確保。

 

 中々いい増築になったようである。

 

 まだ、見たことないがね。

 

 

 

Χ月(;^ν^)ぐぬぬ…日

 

 今日も療養していると、霊夢さんが訪ねてきた。

 

 いわゆるリクライニングベッドというやつで、上半身を起こした状態で応対することができた。

 永遠亭の技術力半端ねぇ……。

 

 色々と回りくどい言い方だったが、どうやら萃香の戦いの渇きを潤してくれたことに対してお礼を言ってくれた。

 

 数百年もの間、弾幕ごっこで満たすしかない欲求を、俺は満たしてやったようだ。

 

 正直、俺は戦いに渇いたことは無い。

 

 あのバケモノ染みて強い兄貴も、目的のために鍛えているだけであって、戦いの為ではないらしい。

 基本的にうちの家系は護る為に剣を取るタイプが多い。

 だから、戦いは手段であって、目的じゃない。

 

 そんな俺の戦いでも萃香は満足したようだ。

 

 元々萃香は博麗神社と天界の一部に住み着いていて、出身は地底らしい。

 どこにでもいるなぁっとか考えていたが、よくよく考えれば俺の家もその住み着いている場所なんだよな。

 

 ここで、Yパチュリーが食事を持ってきた。

 霊夢の分もあるのが、さすがといった所だ。

 

 ゆっくり妖怪は霊夢さんも初めて見たらしく、珍しい妖怪ねっと遠慮なくYパチュリーを持ち上げると色々と触っていた。

 

 揉まれることはゆっくり妖怪にはいいことだから黙認していると、Yパチュリーの髪艶が良くなった気がする。

 

 今思えば、霊夢さんはすごい量の霊力を内包している。

 Yパチュリーに触れている時に、無意識に与えていたのだろう。

 

 すぐに見た目に影響を与えるほどの霊力とは恐れ入る。

 

 あと、霊夢さんには萃香のセクハラ被害を報告しておいた。

 

 エターナルロリが、布団にもぐりこんだり、起きたら指を甘噛みしていたり、日がな一日中臭いを嗅がれたこともあった。

 セクハラって男が訴えてもいいよな?

 

 それを聞いた霊夢さんが、「あの幼女姿のおっさんが!」っと言いながら部屋を出て行った。

 多分萃香の所だろうな。

 

 萃香の悲鳴が聞こえたのはそれから少ししてからだった。

 

 

 

Χ月ヽ(´ー`)ノマターリ日

 

 阿求様は幻想郷縁起をこちらでも編纂できるような環境を私室に揃えたようだ。

 

 朝一で俺を見舞いに来てくれた。

 

 阿求様は魔理沙と一緒にずっと俺を看病し続けてくれた人だ。

 

 鈴仙さんは永遠亭から機材や資材を持って来ていて、看病というよりは道具をそろえたり、最低限の看病の仕方をレクチャーしてくれた存在だ。

 

 そのおかげで俺はこうして治療に集中できる。

 

 阿求様と出会って二年になるが、最初の一年がほとんど交流が無かった。

 

 交流するようになったのは、Yパチュリーを拾った時からだ。

 ゆっくり妖怪は珍しく、縁起にも記述はほとんどなかったらしい。

 

 それを拾ってきた俺が阿求様に相談することで、こうして交流を持てた。

 

 阿求様は俺を騙すように危険な里の境界近くに住まわせたことを気に病んでいたらしいが、むしろ里の番人として早く里に馴染めた上に、いわゆるグレーゾーンの場所だから妖怪が出入りしても住み着いても大きな問題にはならない。

 

 だからこうして、人も妖怪も寄り合ってワイワイやっていられるのだ。

 

 まぁ、時たま死に掛けるのはどうしようもないのだろう。

 

 左腕以外は順調に回復しているが、左は本当に治りが遅い。

 阿求様も気にしていたが、一度立って歩けるようになったら、永遠亭に直接足を運ぶことにしよう。

 切除も考えられていたほどの怪我だ。放置しておいていいはずもないし、治りが遅いのも気になる。

 

 左手が使えないせいで、阿求様に身体を拭いてもらうことになった。

 恥ずかしそうな表情をしていたが、上半身だけとはいえ男の裸体を恥ずかしがるのはある意味当然か。

 

 最近は萃香の奴のせいで女性像が壊れつつあるな。

 

 

 

Χ月( ´_ゝ`)σ)Д`)ツンツン日

 

 ゆっくり達の介護スキルも相当上がったな。

 

 Yフランなんて、包帯の端を咥えて、回転しながら胴体の周りを回る。

 俺の包帯を全身に巻きつけたまま、どこか誇らしそうに部屋を出ていく。

 そうして、Yレミリアが全身に巻きつけた包帯を逆の手順で胴体に巻きつけていく。

 

 すべて終わった後の、この姉妹の満足そうな表情が可愛い。

 

 どんなもんだ!

 

 とでも言っているようだ。

 

 撫でてやると、満足そうに鳴いてから外に出ていく。

 

 入れ替わる様に霊夢さんが訪ねてきた。

 

 どうやら、治療用の札の貼り直しに来たようだ。

 強力な治療結界らしいのだが、その分持続力に難があるらしい。

 

 それでも半日以上持つのは彼女の優秀さゆえか?

 

 どうも、萃香の件で想像以上に彼女が恩を感じているらしい。

 気にしないでいいとも言ったが、「別に気にしてないわよ。めんどい雑魚をアンタに任せた方が私も楽だしね」っと言って続ける予定のようだ。

 

 度々萃香がセクハラに来て霊夢に怒られている様子は恒例の流れの様な物になっている。

 

 一種の漫才みたいな流れなのは面白かった。

 

 

 

Χ月☆-(ノ´∀`)人(´∀`*)ノイエーイ日

 

 阿求様が洗った包帯を丁寧に巻き取ってくれていた。

 

 固定するための支えを固縛するのが目的の包帯だけど、どうやっても汗や垢で汚れる。

 

 だから、しっかりと毎日交換しないと不衛生なのだ。

 YレミリアやYフランが巻き取った包帯をY咲夜が洗濯して、阿求様が丁寧に巻き取ってくれたモノをYレミリアが巻く。

 

 Yパチュリーが排泄物だったり着替えだったりを手伝ったり、痛み止めが切れた時にスグに対応できるように同室で泊まったり……。

 何気に一番働いてくれているな。

 

 今度なんかやってあげないとなぁ。

 

 他のゆっくり達は掃除だったり家事だったりを分担してこなしてくれているらしい。

 

 他のゆっくり妖怪たちの話は阿求様に聞いたが、本当に二年前に比べれば雲泥の差だ。

 あの頃は周りに誰もいなかったし、怪我しても病気しても誰も居なかった。

 

 一人暮らしの風邪で、親のありがたみがわかると言うが、本当に一人でやらなきゃならなかったのは辛かった。

 

 今はこうしてたくさんの人たちに囲まれて、いやはや恵まれてるよ俺。

 

 

 

Χ月(´ε` )日

 

 今日も霊夢さんが札を交換しに来た。

 

 いくらなんでも申し訳ないので、前回来た時はYパチュリーに言ってたくさんの食材を渡したのだ。

 なにしろ、幻想郷の各方面から集まる食材たちだ。

 

 見舞いついでに、またお礼に来てくれたのだ。

 

 霊夢さんを見ていると、どうも兄貴に似ていると感じる。

 めんどくさがりで、目的が無いなら行動もしない。

 自分の才能に少しばかりうんざりしている所なんかが良く似ている。

 

 兄貴の場合は早くから目的が出来たから努力をしていたが、基本的にそんな感じの性格だ。

 

 それをつぶやいたのを聞かれたらしく、「アンタは魔理沙に似てるわよ?」なんて言われた。

 

 彼女が言うには、努力のみで今の位置にいる所とか、どんなに辛くても人の前じゃ笑顔でいる所とか、届かないと分かっているのに手を伸ばすことに躊躇いが無い所が似ているのだそうだ。

 

 気恥ずかしくなるが、おおむね当たっているな。

 

 だから、意外と早く打ち解けたのはこの辺りが関係しているのかもな。

 

 そこからは兄の話を根掘り葉掘り聞かれた。

 

 似てると言われたことで気になったのかもしれない。

 

 天才同士感じるものがあるのかね?

 

 

 

Χ月( ;・`д・´)ナ、ナンダッテー!!日

 

 今日はあ…ありのまま 今日起こった事を書くぜ!

 

「おれは 自室で眠っていたと思ったら、いつのまにか阿求様と萃香の説教中に起きてしまった」

 

 な… 何を言っているのか わからねーと思うが 

 

 おれも 何をされたのか わからなかった…

 

 頭がどうにかなりそうだった… タイミングだとか間の悪さだとか

 

 そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

 

 もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…。

 

 

 なんでも、萃香がまた俺にセクハラしようとして阿求様に見つかったらしい。

 

 というか、胸辺りが濡れているし、セクハラは事後っぽいな。

 

 Yパチュリーが胸を拭いてくれたが、まだ阿求様は説教中。

 

 その間も驚いたことに萃香は正座の姿勢のまま逆らうことなく聞いていた。

 

 ただ、たった一言で阿求様をヒートアップさせた。

 

「阿求もやりなよ?」

 

 そりゃ怒るってお前……。

 

 その言葉を聞いた瞬間、怒りマークを頭に付けて萃香の腕を掴んで別の部屋に連れて行ってしまった。

 

 夜に萃香に会ったが、フラフラだった。

 どんな説教を!?




 いかがだったでしょうか?

 波紋も気功も使えるのにこうも治りが遅いのは重症であるのも理由の一つです。

 もっとゆっくりを可愛く書きたいなぁ。

 反動でバトルパートが過剰になりそうですが。

 それでは、また読んでくださいね!


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稗田阿求の日記 Χ月

 どうも、更新です。

 明日はお仕事ゆえ、更新できません。
 ご了承ください。

 阿求日記です。

 徐々に距離が近づいてます。
 それに伴ってYパチュリーも目立って来てますね。

 それがどうなるかは、今後のお楽しみです。

 それでは、どうぞ。


Χ月Σ(゚д゚lll)ガーン日

 

 あの人が瀕死の重傷を負ってから一か月経った。

 

 今思い出しても血の気が引く思いをしてしまう。

 

 そして一か月が経ったにも関わらず、参護さんはベッドから起き上がれていない。

 

 両足やアバラの骨折は順調に回復していると鈴仙さんが言っていましたが、左腕だけは回復が遅い。

 

 そりゃ、一か月程度で両足の骨折とアバラの骨折が治るのがおかしいのは理解しているけど、波紋という力でもその程度の回復速度であるなら、ほとんどダメな状態だったのでは?

 これほど遅いのは、死んでいく部分と治る部分があって、結果的に治る部分が勝っている状態というだけではないのだろうか?

 

 そう考えると不安になる。

 

 参護さんの家にできた私の部屋で、Yパチュリーちゃんに不安をただただ漏らしてしまった。

 

 彼女は任せて置けとばかりに、精力的に参護さんの世話をしている。

 

 私も世話をしているが、やはりどうしても屋敷の方でやらなきゃならないことも多い。

 

 どうか、参護さんが一日でも早く治ってくれますように。

 

 

 

 

Χ月(;^ν^)ぐぬぬ…日

 

 霊夢さんが訪ねてきた。

 

 どうやら、萃香さんの件のお礼らしい。

 

 治癒結界を張ってくれるらしく、扉やベットなど色々な所にお札を貼っていた。

 

 効果が持続するものではないらしいですけど、効果はかなり高いものという事でした。

 

 定期的に貼り換えに来られるとのことで、正直ホッとしました。

 

 呼吸法や気功だけで今の状態を保っていくのは不安でしたし、何らかの事情で波紋や気功が練れなくなった時、この治療結界が命綱になってくれる。

 

 そうしてしばらくすると、霊夢さんが出てきて、萃香さんの場所を聞いてきた。

 

 先ほど居間でゴロゴロしているのを伝えると、そのまま直行して萃香さんにお札を貼った拳骨を落としていた。

 

 セクハラするなとお説教が入っていた。

 

 なにしたんですか萃香さん。

 

 

 

 

Χ月ヽ(´ー`)ノマターリ日

 

 朝一で参護さんの看病に行ってきた。

 

 だいぶ良くなってきているが、やはり長い間入浴もできない状態では身体によくない。

 

 少なくとも汗や垢はある程度落としておかないと別の病気になってしまう。

 

 なので、参護さんの上半身を拭いて、垢や汗もしっかりと取ってきた。

 

 正直な話、恥ずかしかった。

 

 自分でもわかるくらいに顔や耳が熱くなっているのがわかったし、意識してしまったらもう駄目だった。

 

 最初は普通に腕とかを拭いていたのだけど、最終的に体の方の順番になった。

 こうして書いてても思い出してしまう。

 

 一か月も訓練が出来ていないというのに、きれいな胸板と割れている腹筋。

 よく見るとあちこちにうっすらと傷跡が見えるが、それも恥ずかしいっと感じてしまう。

 

 くすぐったくないかと聞いた時に、大丈夫です、ありがとうございます。っと返された時は、心臓が爆発したかと思った。

 だって、目と目が合ってしまった。

 

 片手が胸板に触れていることに気づいてさらに固まってしまう。

 

 手から伝わってくる参護さんの息遣いと、鍛えられている胸板。

 

 失礼かとも思ったけど、この辺りで逃げるように退散してしまった。

 

 頭の中がグルグルと先ほどの感触を何度も何度も思い出してしまう。

 

 今回ばかりは私の能力を複雑に感じたことは無い。

 

 早く落ち着きたいのに、鮮明に思い出してしまう。

 

 ちょっと、今日は落ち着いた方が良いかもしれない。

 

 

 

 

Χ月( ´_ゝ`)σ)Д`)ツンツン日

 

 昨日のことでまだ少し動揺が収まらない。

 

 落ち着こうとしていると、霊夢さんが札の交換に来てくれた。

 

 参護さんのその後の経過も順調で、左腕も治る速度も良くなってきているようだ。

 

 そして、霊夢さんが来るたびに萃香さんが怒られている。

 

 毎回セクハラを繰り返して霊夢さんに怒られているのだから、そろそろ学習してほしい。

 

 今日はYフランちゃんが体中を包帯だらけにしてきた。

 

 どうやら、参護さんの包帯を身体に巻きつけながら外してきたらしい。

 様子をうかがうと、Yレミリアちゃんが包帯だらけの状態から参護さんに包帯を巻いていた。

 

 面白い巻き方だと思う。

 

 固定するために軽く引っ張りながらきつめに巻くのだが、そのあたりもきちんとしていた。

 

 見た目は円規(えんき)で円を描いているような感じだろうか?

 それとも紐で繋がれた犬?

 

 そんな印象を持てばいいと思う。

 

 巻き終わるとYレミリアちゃんはフラフラだ。

 

 Yフランちゃんは平気だったけど、彼女は苦手らしい。

 それでも、きちんとできて、二人で褒められている姿はとても誇らしそうだった。

 

 今日も萃香さんが霊夢さんに怒られていた。

 

 霊夢さんの目の前で参護さんの指を甘噛みしていたらしい。

 それは確かに怒られます。

 

 そして少しだけうらやましいですね。

 

 顔が赤くなっているのがわかるので、今日はこの辺にしておきましょう。

 

 

 

 

Χ月☆-(ノ´∀`)人(´∀`*)ノイエーイ日

 

 包帯は消耗品と言いますが、きちんと洗って巻き直せば再び使えます。

 使う人間が複数人だったら新しい方が良いのかもしれませんが、この場合は参護さんだけに使うのですからしっかり洗えば使うのに問題は無いでしょう。

 

 Yパチュリーちゃんは、あの紅魔館の魔女の力を持つゆっくり妖怪だ。

 

 パチュリー・ノーレッジがどう思うかはわからないけど、Yパチュリーちゃんはこの家の為に色々なことをしてくれている。参護さんの療養を一番手伝っていて、新しい家の掃除などは彼女が魔術をかけた布が拭き取ってくれている。

 制御が完璧ではないのか、時たまY咲夜ちゃんが乗っかっているが、その姿もかわいらしかった。

 

 だって、眠っていた。

 

 暇なのはわかるけど、寝ちゃダメでしょ。

 

 癒されましたが……。

 

 

 

 

Χ月(´ε` )日

 

 今日はいつも札を交換に来てくれる霊夢さんに、家の食材から色々とお裾分けをしました。

 

 寝込んだという話を聞いた里の人や永遠亭の人からもたくさんのお見舞い品が届いていますが、さすがに全部使いきれないので有効活用といった所でしょう。

 

 今日もY咲夜ちゃんを乗せた掃除用具は家の床を磨いている。

 Y咲夜ちゃんは相変わらず眠っている。どうやら、乗ることでちょどよい重さになり床磨きに良い重さになるようだ。

 操作が不安定になったらY咲夜ちゃんが止める。

 

 だけどそれ以外にやることが無いようで上に乗ったままで眠っているのだ。

 

 ほぼ毎日彼女が眠りながら廊下や部屋を流れているのが見れるのだ。

 参護さんもこの光景は見たことが無いだろう。

 

 日々の癒しの一つだったりする。

 

 裏庭の植物たちにお水をあげて、家にいる人たちの分の食事を作る。

 

 今日は私の当番ですからね。

 

 参護さんの居ないうちにどんどん当番とか掃除とかが変わっていく。

 

 だからできるだけお話して、参護さんの印象と現実の状況の差異が無いようにしてあげたい。

 きっと、微妙な気持ちになると思うから。

 

 

 

 

Χ月( ;・`д・´)ナ、ナンダッテー!!日

 

 少し、頭に血が上ってしまいましたね。

 

 参護さんの部屋にお世話しに行ったのですが、扉を開けると眠っている参護さんの胸に顔をうずめる様にして萃香さんが舌を這わせていた。

 

 目が合いましたよ、ええ。

 

 萃香さんの、やばいって表情がしっかりと見えていました。

 

 そこからは、萃香さんを正座させてずっとお説教です。

 霊夢さんが来ない日ですから余計にですね。

 

 この感情は良くわかります。

 嫉妬。

 そうですね。みっともないかもしれませんが、私は参護さんの胸に顔をうずめている萃香さんが羨ましかった。

 

 だけど、それと怪我人にセクハラをはたらいていた罪は消えない。

 

 分かってもらおうと、言い聞かせるように話していたのですが、彼女の一言が余計に私の怒りを誘う形になってしまった。

 

「阿求もやりなよ?」

 

 今思い出しても、赤面してしまう。

 あの瞬間、私が萃香さんのように、彼の胸板に顔をうずめて舌を這わせている姿を想像してしまったのだ。

 

 この間、参護さんの胸板に触れてしまったのも想像力を引き立ててしまった原因ですね。

 

 ですが、それが出来れば苦労は無いのです。

 

 これ以上は目が覚めてしまった参護さんには体調に支障をきたしてしまいます。

 

 でしたら、別室にてしっかりと理解してもらいましょう。

 

 最終的には萃香さんへの説教は日が傾いたこともあって中止になってしまいました。

 

 まだ、お話ししたりないのに、残念ですね。

 




 いかがだったでしょうか?

 ゆっくりや阿求を可愛く書けていたでしょうか?

 次は霊夢日記です。
 萃香の方は、今回はセクハラしかしていないので別の機会にという形ですかね?


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博麗霊夢の日記 Χ月

 どうも、いつも読んでいただきありがとうございます。

 活動報告にも書きましたが、UA30万とか、恐ろしいです。

 いつもビクビクしてるなって思われるかもしれませんが、自分の予想が外れるだけならまだしも、なんか騒がれているなんて、ビクビクものでしょう。

 それでは、どうぞ!


Χ月Σ(゚д゚lll)ガーン日

 

 萃香が人里の外れの民家を増築し始めて一か月ほどが経過している。

 増築と言っているが、ほぼ建て直しのようなモノだった。

 

 ここひと月近くは、あの萃香を吹き飛ばしたという技の影響がないか、それを調べていた。

 あの魔法の森と玄武の沢の間に位置する木と岩が乱立していた地形が、今は更地だ。

 

 台風だってこうはならないわよ?

 

 色濃く痕跡が残っていたのが、二か所。

 

 魔理沙からの話だと、銀色の闘気を発した場所と吹き飛ばされた萃香が突っ込んだ岩山の二か所だ。

 

 一か月経った今はほとんど残っていないが、代わりに周囲の植物が他と比べて大きく成長していた。

 

 あれが魔理沙の言っていた波紋の効果ね。

 

 しかし、聞いていた効果よりもずっと強い。

 これがあの銀色の闘気と関係しているのだろう。

 

 更地になったというのにあの周辺は生命に溢れていて、空間ごと活性化していた。

 

 結界が得意な私だから気づけた。

 

 悪い影響ではないが、この領域が戦いの副産物であることが驚きね。

 

 

 

 

Χ月(;^ν^)ぐぬぬ…日

 

 さすがにひと月経っているのに見舞いにも行かないのは流石にいけない。

 

 重傷だと聞いているが、どんな状態なのか?

 この目で確認する必要があるだろう。

 

 あれほどの影響を残した技だ。

 反動もある可能性がある。

 

 そう考えていたが、左腕以外は異常なほどの自然治癒力といった所かしら?

 

 左腕は縁のような物が切れかけていた。

 波紋とやらで無理やり繋ぎ止めているみたいだが、それなら治りが遅いはずだ。

 

 といっても、縁だなんだと説明しても信じ辛いだろう。

 

 次に来るまでに縁の方にも効果のある札を作らなければいけないわね。

 縁が切れれば、あの左腕は参護と関係の無いものになってしまう。

 

 萃香の渇きを癒してくれた恩人だ。

 これぐらいしないとね。

 

 そして、噂のゆっくり妖怪を見ることができたけど、パチュリーの奴のゆっくり妖怪が常に参護の近くにいた。

 拾い上げると、私の霊力を受けて髪質が一気に艶々になった。

 何気に便利な体質ね。

 

 その後に、参護から萃香のセクハラの相談をされた。

 

 聞いていて頭痛がしてきた。

 完全におっさんじゃない!

 

 長い渇きを潤してくれた相手が欲しくなるのも、積極的に手を伸ばすのも分からないでもないけど、一日中匂いを嗅ぐって何よ!?

 

 次元が違い過ぎて私には理解できない。

 

 とりあえず、説教は確定ね。

 

 

 

 

Χ月ヽ(´ー`)ノマターリ日

 

 縁とは、読んで字の如くなのだけど、参護の左腕との縁。これは魂の形とも表現されるし、霊体を分解したときに脳や足、聴力などそういった各所の機能を持つ神経の様な繋がりがあるのだが、その繋がりが切れかけている。

 

 手の機能は何といったか忘れたが、脳は理玉、聴力は聴玉、足は肢玉といった名前があったはずだ。

 参護は手の玉を繋ぐモノが千切れかけている。

 

 おそらく、萃香が放ったという音を置き去りにする拳とやらは、かなりの妖力が籠っていたはずだ。

 その余波で左腕の球の繋がりがズタズタになったのだろう。

 

 これを癒すには、肉体的な傷に合わせて幽体の傷を癒す必要がある。

 

 まったく、加減を忘れるほど楽しかったのね。

 

 ま、萃香を助けてくれた恩の分ぐらいは働くことにしましょう。

 

 

 

 

Χ月( ´_ゝ`)σ)Д`)ツンツン日

 

 参護の家は本当にゆっくり妖怪屋敷だ。

 

 部屋に入る前に、スカーレット姉妹のゆっくり妖怪が入れ違いに出て行った。

 なんというか、本人たちが見たら卒倒しそうね。

 

 参護には治療用の結界札と言って部屋に貼ってきたが、正確には肉体と霊体の治癒結界だ。

 霊体の治癒術式を組み込むのに容量を喰われて肉体の方はそれほど効果が無いし、持続時間も短い。それでも、霊体を治すのは波紋や気功では無理だろう。その証拠に、今もこうして傷ついたまま治る気配が無いのだから。

 

 そういえば、札のお礼を言われた。

 

 私としては、恩を返す意味もあるけど、それ以上に参護に中級程度の妖怪退治を任せれば私もだいぶ楽できる。

 異変解決は私の仕事だけど、妖怪退治ぐらい楽をしたいものね。

 

 そして今日も今日とて、萃香は参護へセクハラ三昧だった。

 

 急に布団の中から出てきた時は下世話な想像をしてしまった。

 

 夜までしっかり説教してあげるから覚悟なさい。

 

 

 

 

Χ月☆-(ノ´∀`)人(´∀`*)ノイエーイ日

 

 今日という今日は、萃香のセクハラをやめさせたい。

 

 というわけで、無理矢理連れてきたのだが、全然ダメだった。

 

 参護に溺れている状態というのだろう。

 むしろ、よく我慢している方だ。

 

 鬼なら我慢せずにとっとと食べていてもおかしくない。

 

 おそらく、参護の怪我が罪悪感として萃香が抱えているからでしょうね。

 

 そう考えると、下手に口を出すわけにもいかなくなる。

 罪悪感をもってしても、抑えられないほどの衝動。

 

 禁止すると暴走しそうだし、抑え役に回った方が被害が少ないかしらね?

 

 阿求も参護に気があるみたいだし、互いに抑えあってバランスを取ってくれればしばらくは現状維持になるでしょ。

 

 今は色恋よりも、参護の怪我を治すのが先決だ。

 明日、もう一度お札を貼り直しに行かないと、そろそろ効果が切れる。

 

 

 

 

Χ月(´ε` )日

 

 いやぁ、情けは人の為ならず、ってことわざ。

 

 本当ね。

 

 おかげ様で大量に食材を貰えた。

 しかも、丁寧に下処理されてて、すぐにでも使える状態だ。

 

 参護って料理も上手なのね。

 中々にお買い得物件じゃない。

 

 お札の貼り換えをしている時に、参護がボソッと「霊夢さんって、兄貴に似てるな」っとつぶやいていた。

 

 独り言のつもりだったのだろうが聞こえてしまったなら、反応させてもらおう。

 

 参護と魔理沙は似ている。

 性格ではなく、在り方がだ。

 

 魔理沙も随分と参護と仲が良いみたいだし、努力家同士通じるものがあるのかもしれないわね。

 

 参護の兄……ね。

 

 勘だけど、会わない方が吉って感じね。

 

 たぶん、似た者同士なのでしょうけど、故に反発する。

 参護と魔理沙とは、真逆になるでしょう。

 

 参護からその兄の話を聞いていくうちにそう判断できたのだ。

 

 まあ、目的があるようだし、幻想郷に来ることは無い。

 

 これも私の勘だ。

 

 

 

 

Χ月( ;・`д・´)ナ、ナンダッテー!!日

 

 パチュリーのゆっくり妖怪。

 

 前に会ったことがあったけど、彼女は最初のゆっくり妖怪らしい。

 参護に初めて出会い、それ以来ずっと彼を助けている。

 

 他のゆっくり妖怪達も、参護を大切にしているが、彼女だけは何かが違う。

 

 別に悪い感じはしない。

 放置してても大丈夫、というか放置するべきだという勘が働いている。

 

 どうなるのかしらね?

 

 萃香の一撃を受けても壊れなかった杖。

 

 強化術が施してあるけど、これはパチュリーの術だったはずだ。

 ということは、ゆっくりパチュリーはパチュリーの持っている魔法を使えるということ。

 

 そしてパチュリーが患っている喘息も持っていない。

 

 その気になれば、パチュリーの全力を出した時と同等の魔法が飛んでくるのだ。

 

 ゆっくりパチュリー自身、喘息を持っていないし、魔法を使う分には何の影響もない。

 

 この二人が出会えば、動くんでしょう。

 

 その出会いがいつになるのか?

 

 とりあえず、お札はもっと作っておかないと、どうせ参護は怪我をするのだ。

 先見の明で作っておいて罰は当たらないだろう。

 




 いかがでしたでしょうか?

 ゆっくり成分少ないなぁ。

 もっと、出番を作りたい。


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外伝 『食事処さんご』

 まいど、読んでいただいてありがとうございます。

 比奈名居の付き人さんからのリクエストで、料理屋を営む参護さんとその日常でした。

 何気に、ゆっくり達の能力がハマっている件について……。

 それでは、どうぞ!


 

 幻想郷。

 

 人と妖怪の住む世界で、一人の男がこの世界に連れてこられた。

 

 その男は世にも珍しい妖怪を拾い、人生が大きく転換していく。

 

 これは、海原参護のもう一つの可能性。

 

 

**********

 

 

 幻想郷で飲食店は難しい。

 

 仕入れの問題から調味料の問題などいろいろある。

 

 しかし、俺は多くの恵まれた条件があった。

 

 Yパチュリー、塩の生成、その他調味料の加工担当。

 Y幽香、砂糖・コショウなど植物系調味料・食材生産担当。

 Y咲夜、調理・接客など実務系の担当。

 Y美鈴、会計兼用心棒担当。

 Yチルノ、氷や冷やしを必要とする調理担当。

 Y大妖精、全般業務補助担当。

 Yレミリア・Yフラン・Y小悪魔、店のマスコット。

 

 このような形で経営している。

 だから野菜系が多いが、食べたい料理の材料を持ってくるなら、最高の味で対応する。

 

 それが、俺たちの店『食事処さんご』だ。

 

 最初のお客は阿求様だ。

 

 Y咲夜に導かれるまま席に座ると、参護さんにお任せという注文をいただいた。

 

 見たところ、幻想郷縁起の編纂でかなり疲れているようだ。

 ならば、疲労に良く効く上に少食気味な阿求様でも食べられるクリーミーアスパラスープとデザートに眼精疲労に良く効くフルーツスムージーを出そう。

 

 待っている間、YレミリアとYフランが阿求様と遊んでくれる。

 といっても、お手玉しているだけなのだが。

 

 うちの店はテーブルは三つしか用意していない。

 

 元々外食する人間も少なく、特別な日に食べに来る人が多い。

 当然普段は暇だ。

 

 しかし、こうして阿求様や妖怪のお得意様もいる。

 

 一度に多く店に入れても、俺とY咲夜しか接客が出来ないので店が回らなくなる。

 

 なのでテーブルは三つしかないのだ。

 

 テーブルに一人のゆっくり妖怪マスコットが常駐している。

 

 もちろん、手荒いことをしたらY美鈴の制裁が待っている。

 前は一撃で店の外まで吹き飛ばした戦歴がある。

 修理代は高く付いたが、Yレミリアが虐められたのは許すことができない。

 

 後々、俺も丁寧に修理代と治療代を徴収して丁重におかえり願ったが……。

 

 こうして誰もいない時に来店すると、三人とも独り占めできる。

 

 今、Y小悪魔はYパチュリーに付いて魔法を練習している。

 ゆくゆくはYパチュリーと同じ仕事をしたいようで、暇を見てはこうして練習している。

 

 さて、今回作るクリーミーアスパラスープとフルーツスムージーだ。

 

 まず、玉ねぎをじっくり炒めるのだが、あらかじめ炒めておいたものをYチルノに頼んで凍らせておいたものがある。それを使い、薄くスライスしたアスパラと一緒に炒める。

 この時、アスパラにはしっかりと火を通すのがポイントだ。

 

 火が通ったら鍋に移して、たっぷりの牛乳を入れて加熱しながら滑らかになるまで泡だて器で泡立てる。これが重労働だが、なめらかになったところでコンソメとバターを加えてさらに温める。

 

 塩で味を調えながら、こしょうを加えて仕上げに生クリームを混ぜて完成だ。

 

 ポイントは玉ねぎを炒める際に形を潰しておくと早くなめらかになり、火の通りも良くなる。

 

 この辺りで、Y小悪魔が阿求様の所に合流。

 お手玉が三つになったが、苦も無くお手玉をしている。

 多少ズレてもYレミリアたちが自身で軌道修正するので、やっている本人も楽しくやれているようだ。

 

 Y咲夜からお冷のお代わりが注がれる。

 いつ見ても、あの背伸びしながら一生懸命水を注ぐ姿はかわいい。

 

「お待たせしました。クリーミーアスパラスープです」

 

「ありがとうございます。んー、とてもいい香りですね」

 

 一口、阿求様が口にスープを含んだ。

 口を動かして噛むように味わっている。

 

「あぁ……。とてもおいしいです。クリーミーで優しい味の中にしっかりとしたアスパラの歯ごたえ、玉ねぎの甘みも丁度良くスープに溶けています」

 

 本当に幸せそうに、噛みしめるようにスープを飲む。

 

 こうしておいしそうに食べてくれる阿求様は、常連になる。

 食事が始まるとYレミリア達は、邪魔にならない様に別テーブルでじゃれ合っている。

 

 コロコロと転がるYレミリア達を見ながら、ホッコリしながら食事ができる。

 今は阿求様しかいないので、少し話し相手になっていた。

 

 スープが半分を過ぎた頃に

 

「デザートを用意してきますね」

 

 と言って、デザートの用意の為に厨房にこもる。

 

 フルーツスムージーだ。

 スムージーとは、食材自体を凍らせて作るドリンクだ。

 

 ミキサーの無い幻想郷でどうやって作るか?

 

 まず、カットしたフルーツをYチルノに凍らしてもらう。

 ストロベリー・ラズベリー・ブルーベリーのベリー系、これだけでは甘みが足りない。

 本来ならバナナなどを使用するとエネルギーも増えて良い味になるが、今回はアボカドと蜂蜜で作る。

 アボカドは青臭いという人もいるが、熟成が足りないとそうなってしまう。

 食べごろのアボカドは生でも行けるほどにクセが無くなる。

 

 さて、それぞれの食材を凍らせたら、それを容器に入れて蓋をする。

 

「Yパチュリー、頼む」

 

 風の魔法で高速ミキサーと同じ効果を得られるのだ。

 

「ゆっくりおいしく作ってね!」

 

 容器の中でミキサーの様な音がしてすぐに収まる。

 蓋を開けてみると、完璧なスムージーが出来上がっていた。

 

 名付けて、ハニーベリースムージー~アボカド風味~かな?

 

 アボカドは様々な栄養効果がある上に、蜂蜜も栄養の宝庫。

 ビタミン系統もベリー系が補完してくれる。

 

 阿求様にびったりの一品だ。

 

 彼女はスムージーに舌鼓を打ち、幸せそうにくつろいでいる。

 

 彼女の膝にはYレミリア達が三人まとまってスヤスヤと眠っている。

 三人まとまってお昼寝タイムだと……可愛くて微笑ましくてついつい見てしまう。

 

 饅頭妖怪と呼ばれるだけあって、お月見団子を思わせる寄り合い方が絶妙だな。

 

 うん、阿求様とゆっくり妖怪が一度に視界に入るのは本当にうれしい。

 

 うららかな日差しが窓から入ってくる。

 風はそよ風、香りは花の香り。

 

 この落ち着いた空気は、小洒落た雰囲気のカフェテリア……

 

「参護~! 飯食いに来たぜ!」

 

 バンッと戸を開けて魔理沙が突っ込んで来た。

 

 彼女も常連だが、同時にツケの常習犯だ。

 まぁ、食材を持って来てくれるから仕入れの値段を安く済ませてもらっている。

 

「いらっしゃい、空いてる席へどうぞ」

 

「ホレ、今日の仕入れ分。シイタケとマイタケがたくさん入ってるぜ」

 

 渡された籠にはたくさんの種類のキノコが詰まっていた。

 これは……相変わらずいいモノばかり、特にこのシイタケは肉厚で香りも良い。

 

「おう、阿求も来てたのか。相変わらず毎日いるな」

 

「毎日はいませんよ? 私が居る時に魔理沙さんが来るだけです」

 

「いや、私飯食いに来るし、仕入れに来るしで結構来てるんだが……」

 

 さて、言い争いにならないうちに注文を取ろう。

 今日の彼女はどんな注文かな?

 

「そだな、がっつりしたのが食べたいぜ! あ、持ってきたキノコも使ってくれ!」

 

「了解、好きな所に座って待ってろ」

 

 さて、ガッツリしたキノコ料理と来たか。

 

 では、山の幸天丼とシイタケの肉詰めで行こうじゃないか。

 

 まずは天ぷらだが、用意するのは山の幸。山菜にシイタケとマイタケ、鶏肉を丁度いい形に切り、下味をつけて天ぷらにしていく。

 この時、大葉を使う際は片面だけに衣をつけるのがコツだ。

 熱されて鮮やかな緑色になる大葉は、彩にも最適なのだ。

 

 ここで気を付けるのは、タレの存在だ。

 こちらでかけて出してはいけない。

 食べる人にかけてもらえるように、別に容器を用意して出すのが基本だ。

 

 ここで席の方を見ると、魔理沙がYフランと遊んでいた。

 魔理沙とYフランの相性はとてもいい。

 飛び回るYフランを魔理沙は捕まえることができるし、Yフランが構って欲しいという感情を知ってか知らずか、基本的に猫かわいがりしている。

 

 具体的には、掌に乗せて撫でる、つつく、頬ずりをする。

 これが結構Yフラン的には好みだったようで、魔理沙に懐いている。

 Yレミリアは、なぜか霊夢さんの近くでゆっくり眠るのが好きらしい。

 見事に好みが分かれている姉妹だな。

 

 さて、次はシイタケの肉詰めだ。

 これは、ピーマンの肉詰めと同じ要領で作っていく。

 シイタケの茎を切り取り、裏側に水に溶かした片栗粉を塗って、そこにハンバーグと同じ要領で作ったタネを詰めていく。

 

 この時点でフライパンで両面をカリッと焼いてもいいし、セイロに入れて蒸してやるのもいい。

 照焼き風にタレを絡めてもいいし、衣をつけて揚げてやるのもおいしい。

 

 応用が利くのがこの料理のいいところだ。

 今回はスタンダードに両面を塩コショウで焼いてあげるだけのシンプルな手順で行く。

 素材が上等だからできることだ。

 

「お待ちどう、山の幸天丼とシイタケの肉詰めだ」

 

「おお! さっそくシイタケ使ってくれたか。実に美味しそうだぜ!」

 

 魔理沙はタレを天丼にかけると、ガツガツとかき込んでいく。

 阿求様のように、じっくりと幸せそうに食べてもらえるのも実にうれしいが、魔理沙のように箸が止まらないって感じで食べてくれるのも料理人冥利に尽きるというものだ。

 

「シイタケの天ぷらもサクサクプリプリで、肉詰めなんて肉汁がシイタケに良く絡んで噛む楽しみがあるぜ!」

 

 実に美味しそうに食べてくれる。

 阿求様とは逆の味わい方だが、どちらも自然と笑みがこぼれてしまう。

 

「ごゆっくりどうぞ……いや、ゆっくりしていってね! って感じかな?」

 




 いかがでしたか?

 もしかしたら、続きを書くかもしれません。
 いや、夜の酒屋風経営も書きたいですし。
 萃香出るよ萃香!

 さて、木曜日は仕事場に泊まりなので更新できません。

 感想の返信はできますので、よろしくお願いします。

 いつもは活動報告で書きますが、更新が重なったのでこちらで報告をば。

 ではまた次回もゆっくり読んでいってね!


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海原参護の日記 δ月

 遅くなりました、参護日記です。

 物語を進めなくちゃいけないのに、進めると真面目トーンな話になるこのジレンマ。

 今回はちょっとこの小説のゆっくり妖怪の定義を書いてます。

 それでは、ゆっくり読んでいってね!


δ月(´゚ω゚`;)日

 

 左腕の回復速度が一気に上がった。

 

 急にいつもの波紋による治療のような速度で左腕が治ってきたのだ。

 

 どういう事なのか?

 理由は分からないが、治るのは助かる。

 

 二か月もまともに動いていないのだ。

 

 早々にリハビリに入りたい。

 筋肉も落ちてるし、関節も固まっている。

 特に骨折した部分はそうだろう。

 

 俺の戦いのスタイルの真骨頂は速度にこそある。

 

 加速世界は自分の速度を限界まで底上げした上で、思考速度を高速化している技だ。

 つまり、元々の自分の速度が重要になる。

 

 ましてや、銀色の闘気を習得した今こそ、地力が大事になる。

 

 リハビリと修行が今まで以上に重要になるだろう。

 

 そして、あの萃香の一撃を正面から受け止めて、折れず曲がらず本来の形を保っている杖。

 

 心当たりとしては、Yパチュリーがかけていた強化術式だろう。

 強化とするにもあまりに出来過ぎている。

 

 あの一撃は音速を超えた一撃だったはずだ。

 普通なら全身が衝撃波で粉々の一撃。

 

 硬気功と波紋で強化した杖が無ければこうして生きていなかっただろう。

 

 それでも左腕は壊死寸前、両足も骨折して、全身は打撲と裂傷が無数にできた状態になってしまった。

 

 だけど、そうなってからできた新しい技。

 銀色の闘気。

 

 あれは兄貴が使っていた技そのもの。

 四つの力を合わせられる兄貴にとっては初歩の初歩だったのかもしれないが、初歩であれだけのパワーアップができるのだ。模擬戦を良くしていたが、兄貴に銀色の闘気を出させるには至らなかった。

 

 大体、二つ合わせて銀、三つ合わせて金、四つ全部合わせて白金となる。

 見てきたから間違いない。

 

 魔力は物質に、霊力は空間に対して特性が高いと言っていた。

 

 波紋は活性、気功は強化、魔力は物質、霊力が空間。

 

 これらを混ぜ合わせた白金の闘気。

 

 ……兄貴は神話世界の住人じゃなかろうか?

 

 強くなるにつれて、兄貴との力の差を強く感じられるようになる。

 

 実力差がわかるのが強さの証というが、自信喪失しそうです。

 

 

 

 

δ月ヘ(゚∀゚ヘ)ヘ(゚∀゚ヘ)ヘ(゚∀゚ヘ)日

 

 速いもので、もう固定しているギプスが簡易的なものに変更された。

 後は確実にくっつくのを待つだけらしい。

 

 この異様な回復力に霊夢さんも呆れていたが、未だに回復札を持って来てくれている彼女は本当にいい人だ。

 

 今日もお礼にたくさんの食材を渡す。

 まぁ、家にあっても腐らせてしまいそうなほどの量だし、彼女が食べてくれるならこれほど食材が有効に消費されることも無いだろう。

 

 Yパチュリーが今日も左腕の汚れを一生懸命に落としてくれる。

 ギプスに長い間包まれていた左腕は垢で黒くなっていた。匂いもひどかったし、自分で少しずつやろうかと考えていた時に、彼女が積極的にやってくれた。

 

 波紋を込めて撫でてあげると、心地よさそうに目を細めてウットリと感じてくれる。

 

 こうして、波紋や気功を込めて触れてあげることで彼女たちは、身体を維持しているようだ。

 

 ゆっくり妖怪の誕生を考えると、当然と言えば当然の生態だろう。

 

 彼女たちは空気中を漂う、魔力・妖力・霊力・気功などを一か所に集めて形になる。

 その時に一番多く集まった力の持ち主の姿になる。

 

 だから、Yパチュリーは紅魔館の魔女であるパチュリー・ノーレッジの魔力を多く誕生の瞬間に得ていたことになる。

 

 俺や霊夢さんの波紋や霊力でも十分に生きていられるぐらいの力を得られている。

 ならば、最も多く体を構成している魔力の主、パチュリー・ノーレッジさんの魔力を得ればどうなるのだろうか?

 

 今まで、美鈴さんや幽香さんが自身のゆっくり妖怪に触れていたが、特に変化は無かった。

 

 だが、意図して与えるなら?

 

 などと考えていると、Yパチュリーは仕事が終わったようで肩に乗り、頬ずりをしてきた。

 構えということだな。

 世話になっているんだ、お礼ぐらいしてあげないとだめだろう。

 

 今日はずっとYパチュリーと戯れて過ごした。

 

 

 

δ月( ´∀`)bグッ日

 

 とりあえず、両足のリハビリから始めることになった。

 立ち上がってみると、両足に違和感がある。

 二か月近く動かせなかったのだから当然か。

 

 アリスさんが、糸を俺に取り付けて緩々と動かしてくれる。

 彼女がリハビリ担当で、鈴仙さんからやり方を教わっていた。

 

 Y魔理沙がキノコを煎じて塗り薬を作っていた。

 どういう事かと思ったが、理解した。

 

 無茶苦茶筋肉痛が来る。

 

 Y魔理沙は湿布薬のような物を作っていたのだ。

 

 これがまた良く効くのだ。

 

 アリスさんは加減が絶妙で、俺のギリギリまで酷使してからリハビリを終えるのできついが早く復帰できる。

 

 今は、両足にYレミリアとYフランが塗り薬を塗ってくれている。

 よく滑る薬だからと、遊んでいるようにも見えるが気のせいだろう。

 

 決して、足の上で押し合いっこをしている訳では無いだろう。

 たぶん。

 

 波紋の呼吸や気功で活性と強化を繰り返しても、衰えた筋肉や関節は無理やりにでも駆動させて本調子にしてあげないとだめだ。

 

 なにしろ、鍛錬で何度もやっていることをするだけ。

 

 むしろ、いつもよりも楽になったぐらいだ。

 

 アリスさんにも食事をしていってもらったが、俺の料理が良いらしく。

 治ったら作ってくれと頼まれた。

 

 これは作り甲斐のある人だな。

 

 

 

δ月(´Д`)ハァ…日

 

 霊夢さんがY霊夢を連れてきた。

 

 なんでも、境内の裏で昼寝している所を捕まえたのだそうだ。

 

 いやいや、どんな捕まえ方をしたのだ。

 なんか涙目になって震えてる。

 

 なんでも、日向ぼっこ用に出していたせんべいとお茶を食べられたのだそうだ。

 

 家で暮らしてもらうことになったが、Y霊夢は何というか存在が濃いとでも表したらいいのだろうか?

 

 他のゆっくり妖怪たちは魔力や霊力などで身体を構成しているせいか、儚げな存在感が時折感じられてしまう。

 

 しかし、Y霊夢はそれこそ俺や霊夢の様なしっかりとした存在として感じられる。

 

 もしかしたら、これが構成している魔力や霊力の持ち主の力を得続けることでたどり着ける境地なのかもしれない。

 

 Yパチュリーはその存在感が出会ったころよりもマシになっているが、おそらく家にいるどのゆっくり妖怪よりも薄い。

 

 もしかしたら、本格的にパチュリー・ノーレッジさんに会う必要があるのかもしれない。

 それには、紅魔館に行く必要があるし、紅魔館に行けばレミリア・スカーレットさんに会うことになる。

 

 そこまで考えてから、Yレミリアを見る。

 なぜ見られたのかわからないようで首をかしげる仕草をされたが、紅魔館組を連れて行かないわけにはいかないなぁ。

 

 もし、考えた通り存在感に影響があるなら、彼女達も絶対に本人の力を分けてもらう必要がある。

 

 できることなら、しっかりとした存在として生きて欲しいからね。

 

 不安は、YレミリアとYフラン。

 

 本人にとって多分、認められないんじゃないかなぁ……。

 

 

 

δ月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 今日もアリスさんと一緒にリハビリをした。

 

 たまたま魔理沙も来たので、数日考えていた疑問を解消しようと試みた。

 

 Y魔理沙とYアリスにそれぞれ魔力を分けてもらったのだ。

 

 結果は劇的だった。

 

 見るからに元気になったし、髪の艶が増し、モチモチお肌がさらに触り心地が良くなった。

 そして何よりも、存在感が濃くなった。

 

 今までいくら波紋や気功を注いであげても変化の無かった存在感が一気に濃くなったのだ。

 

 それをどれだけ続けていたのか、Y霊夢の存在感はしっかりとこの世界に根を張っているように見える。

 つまり、続けて行けば消える事の無い存在としてゆっくり達を確定させられる?

 

 普通の動物や妖怪のように生きることができるのか?

 

 だったら、やるしかない。

 

 Yパチュリーは俺の恩人だ。

 

 阿求様とYパチュリーにはできる限りのことをすると誓ったのだ。

 

 万全の調子に戻したら、紅魔館へ行く準備をするべきだな。

 

 

 

δ月(´ε`; )日

 

 霊夢さんが今までの札とは違う、治療効果を高めた札を持って来てくれた。

 

 空間をつくるのではなく、直接患部に貼るタイプの札だった。

 

 霊夢さんには世話になりっぱなしだ。

 

 食材だけではお返しできないかもしれないけど、しっかりとお礼はしないとね。

 

 昨日のゆっくり妖怪たちの生態仮説を説明すると、霊夢さんはレミリアさんにアポイントメントを取ってくれると言ってくれた。

 

 元々、美鈴さんや咲夜さんに頼むのも良かったが、部下からの頼みと自分を負かした相手の言うこと、両方から頼みこむのが良いだろう。

 

 そのあとの問題はあるが、どうにかしてゆっくり達への魔力の供給を頼む。

 

 問題としては、ゆっくり妖怪たちの存在を彼女たちが認めるかどうか。

 

 Y咲夜とY美鈴は受け入れてもらえた。苦笑い気味であったが……。

 

 YレミリアとYフラン、YパチュリーとY小悪魔、彼女たちを受け入れてくれるかどうか。

 ゆっくり妖怪は元となった人物の何かしらの性格を強く表に出している。

 

 Yレミリアは幼さを、Yフランは自由を、それぞれ表に出している状態だ。

 

 それは彼女たちにとって触れてほしくない部分なのではないか?

 

 そう考えてしまう。

 

 こうやって真剣に考えを巡らせているというのに、目の前ではYフランとYレミリアが空中で鬼ごっこをしていた。

 

 しかも、戦闘機もびっくりのドックファイト。

 可愛いが、さすがに壁とかに当たると危ないので受け止めて撫でまくった。

 

 しばらくすると、幸せそうに二人とも眠ってしまった。

 

 ゴッドフィンガーとでも名乗ろうかな?

 なんちゃって。

 

 

 

δ月φ(゚Д゚ )フムフム…日

 

 今日はアリスさんが連れてきたY魔理沙がYパチュリーと一緒になにやら魔法を教え合っていた。

 

 アリスさんが言うには、魔法使い同士だとあまり見ない光景らしい。

 

 魔法とは個人の技術の集大成であり、教えても受け取り手側次第でいかようにも内容が変わってくる。

 だから、知識は教えるが魔法は教えることは無いそうだ。

 

 そもそも、魔理沙とパチュリーさんは魔導書を盗む側と守る側だ。

 そんな光景に出会うことはまずないだろうと言うほどに確率は低いそうだ。

 

 アリスさんも研究をしている身で、パチュリーさんの居る大図書館の蔵書は非常に魅力的な知識の宝庫らしい。

 

 アリスさんが言うには、パチュリーさんはむしろゆっくり妖怪を受け入れてくれるかもしれない人らしい。

 好奇心が強いため、ゆっくり妖怪を調べることに時間をかける。

 

 自身の姿を模していたとしても、それが生体にどう影響するかの方に興味が行くらしい。

 

 つまり問題はレミリアさんだけになる。

 彼女がYレミリアを受け入れてくれるか? 個人的にも不安だ。

 




 いかがでしたか?

 今回は萃香はお休みです。
 どっかに行ってますので、この日記中は留守にしています。

 フラグですガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル

 それでは、次回もよろしくです。


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アリス・マーガトロイドの日記 δ月

 ども、更新です。

 アリスさんの日記です。
 ちょっと彼女の考察なんかも入ってます。

 さて、感想で萃香さんの行動をみなさん考えているようですね。

 いやぁ、大丈夫ですって、旧友と酒飲みに行っただけです。
 酒で口滑らして、参護さんの命の灯が…ゲフンゲフン

 一番怒られると思っていたのに、それ以上に皆さん好きになってくださっているようでうれしい限り。

 萃香さん、がんばってね!

 参護さんもがんばれ!


δ月(´゚ω゚`;)日

 

 最近、参護さんの料理を食べられていない。

 

 当然と言えば当然。

 参護さんは、伊吹萃香の戦闘で重傷を負って療養中なのだ。

 

 私も何度かお見舞いに行ったが、あれはひどい状況だった。

 全身あちらこちらの骨が折れていたようで、包帯だらけのミイラ男みたいな状態だった。

 

 あれでは料理はおろか、生活すらできないだろう。

 しかし今は、左腕以外は順調に回復していて、治りの遅かった左腕も今は回復速度が大幅に上がって、早いうちに完治する予定なのだそうだ。

 

 そこで、リハビリの手伝いをすることになった。

 永遠亭のウサギが、私の糸の魔法を使えば効率よくリハビリができるということで手伝いを頼んできた。

 

 早くリハビリが終われば、私もおいしい料理が食べられるでしょうし、私の魔法を受けてくれる人間はいない。体の自由を奪う魔法でもあるから、敬遠されるのだ。

 それが、治療に役立つというのなら使ってあげたい。

 

 まぁ、滅多にできない人体実験というのも否定しないけどね?

 

 

 

 

δ月ヘ(゚∀゚ヘ)ヘ(゚∀゚ヘ)ヘ(゚∀゚ヘ)日

 

 明日からリハビリの補助をすることになっているので、再度糸の魔法が生体に悪影響が無いか試行を繰り返す。

 

 万が一にでも参護さんに害があれば大変だ。

 

 特に腕は料理をするのに絶対必要な部分。

 失敗するわけにはいかない。

 

 左腕の回復が遅いと聞いているし、回復の術でも最後に流してあげようかしら?

 

 しかし、こうやって魔法を訓練のために行使するなんて何年ぶりかしら?

 最近はもっぱら研究職だし、こうして糸の魔法を行使する機会も人形たちを操る時ぐらいだ。

 

 私の糸の魔法は応用がかなり効く。

 

 切断の術を込めれば、糸は容易く相手を微塵切りにできる。

 

 渦を描くように操れば貫通力が上がり、大木に穴をあけることができる。

 

 落ちそうなものを優しく絡め取ることもできるし、遠くのものを引っ張ってくることもできる。

 

 こうしてみるとかなり応用性の高い魔法なのだが、やはり短所もある。

 

 糸の形を取っているので、相手の魔法によっては切られてしまい、接続を断たれやすい。

 強化しようとも、糸以上に太くしてしまえば柔軟性が失われるし、接続する時に対象を破損させてしまう可能性もある。

 

 だからこうしてできることとできないことの再確認作業をしているのだ。

 

 こういう修行みたいな行動は私自身あまりしてこなかった。

 原因を考えてみるとやっぱり、参護さんだった。

 

 毎日毎日、愚直に自分のできることを確認して、そこよりも一歩でも先に行こうとする。

 

 叩きつける杖の角度でさえ、試行錯誤を繰り返している姿を見たら、私も今のままでいいのか? という思いが湧きあがろうものだ。

 

 それに、今の私の実力を再認識するいい機会だしね。

 

 

 

 

δ月( ´∀`)bグッ日

 

 リハビリのサポートは中々に大変だった。

 

 要は歩く参護さんの足に糸を接続して、倒れそうになったりしたら、魔力を込めて補助をする。

 関節の駆動を手助けしたり、衰えた筋肉の潜在能力を目覚めさせて効率よく訓練ができるようにする。

 

 これが大変だ。

 

 常に参護さんの足に注意を向けなければならないことと、状態を糸を通して把握し続けなければならないこと。

 

 参護さんは限界まで動きたがる。

 十分効果があったにも拘らず、こうすればもう少し自然に歩ける、などと考えて動いている。

 

 さすがに限界を超える前にストップをかけるが、無意識にそれをやっている。

 努力を苦にしない。

 

 意に介さない。

 

 相変わらず、自然体で求道者の様な生き方をしているわね。

 

 リハビリ中は、ゆっくり魔理沙が湿布薬を調合していた。

 

 キノコの研究に特化している魔理沙の知識なら薬草学も十分に持っているから安心できる。

 

 ただ、煎じている最中に庭から草を引っこ抜いて混ぜていたが、あれはいいのだろうか?

 

 いや、魔理沙の薬草やキノコの知識は目を見張るものがあるから大丈夫なはずだ。

 ゆっくり妖怪で魔理沙の姿をしている以上、知識やスキルも魔理沙と同等のモノがあるはずだ。

 

 もしかしたら、庭にたまたま薬草が生えていたのかもしれない。

 

 そうだ、風見幽香も出入りしているし、参護さんの波紋の影響でこの辺り一帯は大地に力が溢れている。

 珍しい薬草があっても不思議じゃない。

 

 そう言い聞かせるようにしよう。

 

 

 

 

δ月(´Д`)ハァ…日

 

 明日の為に、今日も糸の魔法を訓練する。

 

 実際にやってみて、操作の(つたな)さを実感したからだ。

 

 ゆっくり魔理沙は今のうちから薬草を煎じて塗り薬を作っている。

 

 たまに出て行って、色々なキノコや薬草を持って戻ってくるが、昨日の一場面が思い出されてしまう。

 

 いやいや、大丈夫大丈夫。

 

 魔理沙に確認したら、立派な薬草だったし大丈夫!

 

 魔理沙の知識は信頼している。

 ただ、ゆっくり魔理沙はちょっと……ね?

 

 現在進行形で、上海と蓬莱に転がされている姿をどう信用すればいいのか?

 

 というか、上海も蓬莱もゆっくり魔理沙を転がして遊ぶの気に入ったのかしら?

 

 

 

 

 

δ月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 今日は参護さんに実験を頼まれた。

 

 私はゆっくりアリスに、魔理沙はゆっくり魔理沙に、それぞれ自身の魔力を与えてみるというものだった。

 

 なんでも新しく来たゆっくり霊夢の存在感が異様に強く、もしかしたら本人の力を与えることで何か変化があるのでは? という考えからだった。

 

 結果は上々。

 

 ゆっくりアリスもゆっくり魔理沙も魔力を与えた瞬間、まるで今までが幻だったかのようにしっかりとした存在感を発揮したのだ。

 

 考えるなら、私たちの魔力を姿に影響するほど大量に集めて形になった彼女たちにとって、世界にとどまる為の力。

 私達は魂と肉体がある。

 もしかしたら、ゆっくり妖怪たちは魂のみがしっかりとした形として生まれて、肉体が未完成の状態でいるのではないか?

 

 ゆっくり霊夢が本人の霊力を日々浴びてようやく完全な肉体を手にしたように、彼女達も私たちの力を浴びて確固たる肉体を手にする必要があるのでは?

 

 筋は通ってそうだけど、まだ確定情報じゃないわね。

 私の方でも少し調べてみるのもいいかもね。

 

 幸い、魔理沙も同じことを考えているようだし、魔法使い側と人間側で違う視点を持って調べるのも効率が良さそうだ。

 

 

 

 

δ月(´ε`; )日

 

 今日は、ゆっくり妖怪の生態を私なりに調べる……、ではなく、参護さんと稗田阿求から借りた資料をまとめる作業だ。

 一年近く集め続けている資料だから、何気に気が遠くなりそうなほどの量がある。

 

 まとめるとこうだ。

 

・気功・魔力・霊力・妖力が集まり、形を成した妖怪。

・誕生時に最も多く力が集まった者の姿に生まれる。

・姿を借りた者の能力や知識を持っていて、使うこともできる。

・他者に触れることで、微量の力を貰い受け、生きている。

・食事も少量ながらする。

・非常に人懐っこく、警戒心が無い。

・そのため、凶暴な妖怪などに襲われることも多く、個体数が少ない一因と考えられる。

・姿を借りた者の潜在意識が性格に表れることもある。

・自然に誕生する姿は未確認。

・ゆっくり妖怪たちの儀式により、任意に誰かのゆっくり妖怪を生むことはできるようだ。

・生まれたては、非常に柔らかく、自立移動もままならない状態。

 

 そして、これが未確認事項である。

 

・姿を借りた者の力を受けると、未完成である肉体を確固たるものにできる。

 

 この未確認事項を検証するのが、今回の研究ということになる。

 

 魔理沙も参加してくれるみたいだし心強い。

 せめてパチュリーも参加してほしいが、さすがに自分のゆっくり妖怪が参護にあれだけベッタリではどう動くかわからない。

 協力が仰げればラッキーぐらいに考えておこう。

 

 

 

 

δ月φ(゚Д゚ )フムフム…日

 

 参護さんの家にリハビリ補助に行ったのだけど、ゆっくり魔理沙とゆっくりパチュリーが魔法を教え合っていた。

 

 現実じゃまず見れない光景に、思わず苦笑い。

 

 パチュリーは性格が悪い訳じゃないのだけど、排他的というか、本を読むこと以外にあまり興味を持っていない。

 

 排他的という部分は魔法使いの共通項の様なものだ。

 魔理沙も例外のように見えて、切り替えているだけ。

 研究中は魔法使いの顔になる。

 

 ただ、これも魔法使いの共通項だけど、興味を抱けば協力的になる。

 

 そして、ゆっくり妖怪は十分に興味を持つに値することだと考える。

 

 十分パチュリーの協力は現実的だけど、問題は参護さんと暮らしているゆっくり妖怪の数だ。

 

 ゆっくり美鈴・ゆっくり咲夜は、まだ参護さんの家に出入りしている二人だから希望はある。

 

 だけど、ゆっくりレミリア・ゆっくりフラン・ゆっくりパチュリー・ゆっくり小悪魔。

 彼女たちは紅魔館の中に入っていかなければならない。

 

 さらに問題は、ゆっくりレミリアとゆっくりフランの二人だ。

 

 スカーレット姉妹。

 

 彼女達をどう納得させて、どう協力してもらうか……。

 

 友人であるパチュリーでも説得を聞くかどうか……。

 

 なにしろ、本人と真逆なんじゃないかとも思えるゆっくりレミリアの性格。

 会えたとして、戯れで壊してしまいそうなフランドール。

 

 これは、いわゆる詰め将棋というやつか?

 

 こればかりは参護さんの対応力にかかっている。

 

 私達はできるだけサポートしよう。

 




 いかがだったでしょうか?

 最近、本屋に行くと漫画や小説を買いまくってしまう。
 昔から、本関係には財布のひも緩かったけど、最近特にそうだな。

 あ、月曜日は泊まり込みの予定なので、更新できません。

 感想の返信はしますので、気軽に書いて行ってね!

 アニメ、フェイトもジョジョも終わりだなぁ。
 ソーマはもっと見たいね。
 あと、旦那が何を言っているかわからない件、これも好き。漫画も合わせて。


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博麗霊夢の日記 δ月

 お待たせしました。

 霊夢の日記です。
 霊夢は説明というか、そういう感じの話が多いです。

 そういうの良いやって人は、気を付けてくださいね。

 では、どぞ。


δ月(´゚ω゚`;)日

 

 魂の傷。

 霊体の損傷。

 

 それが参護の左腕に起きている現象の名前だ。

 

 霊体の損傷を修復する術を組んだ札で寝床の周りに結界を張った。

 

 参護が手に入れたという、銀色の闘気。

 波紋・気功・魔力・霊力のうち、二つの力を混合して完成する一つの奥義の形だそうだ。

 

 私自身は、主に霊力を使い、霊力で弾幕を作っている。

 

 人間という種族において、波紋・気功・魔力・霊力は手に入れることのできる力だ。

 

 私は霊力を使用する機会にも才能にも恵まれていたから、今こうして戦っている。

 

 じゃあ、私が他の力を持っていた・使えていたのなら?

 

 参護は私を彼の兄に似ていると言っていた。

 

 四つの力をすべて持ち合わせて、すべてを混合して使用する白金の闘気を持つ男。

 

 純粋な戦いという形なら私は勝てないだろう。

 なにしろ、弾幕ごっこに特化した戦い方だし、霊力以外だと気功が無意識で使えているのかもしれないが、そんなものだ。

 

 修行すれば他も操れるようになるのだろうが、めんどくさい。

 

 強くなりたくなったらそうするかもしれないけど、今は十分だ。

 

 参護の兄は何を思って、天才と呼ばれても努力を続けて、さらに強くなっていくのだろう?

 最強の龍の隣に立つと言っていたが、それはその龍以外に彼に並ぶ者はいなくなるという事。

 若い身空で孤独を選ぶのかしらね?

 

 いや、孤独を理解しているから……かしら?

 

 まぁ、そろそろ参護の霊体も完治するだろうし、霊体の回復から肉体の回復に重点を置いた札をそろそろ作った方が良いかもしれない。

 

 

 

 

δ月ヘ(゚∀゚ヘ)ヘ(゚∀゚ヘ)ヘ(゚∀゚ヘ)日

 

 札の交換に行ったら、参護の霊体はかなり回復していた。

 その上、肉体の回復速度もだいぶ上がってきている。

 

 波紋とは本当に呆れるぐらいの速度で回復させるのね。

 

 しかし、回復するということは新陳代謝も活発になるということで、特に波紋は活性の側面が強い力だそうだ。ゆえに、腕は垢で真っ黒になっていた。

 

 恥ずかしそうにしていたが、随分と可愛げのある反応じゃない。

 

 そんなんだから、萃香にセクハラされるのよ。

 

 しかし、Yパチュリー。

 

 彼女が一生懸命に参護の腕を拭いて垢を落としていた。

 

 依存? 恩義? 陰謀? 感謝?

 

 どれも当てはまらない。

 彼女が持っているモノはなんだろう?

 

 

 

 

δ月( ´∀`)bグッ日

 

 ゆっくり妖怪。

 

 海原参護が拾ってくるまでほぼ謎の妖怪。

 

 幻想郷に来て一年しか経っていない人間が偶然見つけた?

 それにしては、後から後から多くのゆっくり妖怪が彼の家に集まり出すし、挙句の果てには魔理沙やアリスの家にも一人ずつ住み着く始末。

 

 その身体を魔力や霊力、気功で作っているタイプの妖怪は核が必ずある。

 そうでなければ、形なんて定まらないのだ。

 

 ゆっくり妖怪はその核が弱いか薄いか。

 だから一番多い力の持ち主の姿に容姿を引っ張られるのだ。

 

 ゆっくり妖怪は、妖怪の名を取ってはいるが、たぶん自然現象に近い存在だ。

 

 何らかの理由で集まった力が形となる妖怪であり、自然現象。妖精や精霊に近い。

 

 自然現象を認識した人がいたから一気に認知され、広まった?

 

 まぁ、害が無いことだし、何をしようと構わない。

 異変を起こしたなら容赦なくいかせてもらうが、それ以外は好きにしたらいい。

 

 ただし、私のおせんべいとお茶に手を付けたのはいただけない。

 

 しかも、呑気に昼寝しているなんて許せないわね。

 

 明日参護に突き出すとして、それまでは私の食べ物に手を付けたこと後悔させてあげましょう。

 

 

 

 

δ月(´Д`)ハァ…日

 

 参護に私のゆっくり妖怪を突き出した。

 

 しかし、あのゆっくり妖怪。

 均衡のとれた、魂魄をしていた。

 

 魂は精神を支える気。

 魄は肉体を支える気。

 

 魂魄とは肉体と精神を支える気の総称だ。

 

 道教だったかしら? そっちの方面の知識のはずだ。

 

 私のゆっくり妖怪は、魂魄の均衡が非常に良く取れていた。

 いや、正確には私のゆっくり妖怪が普通なのだろう。

 

 参護や魔理沙、アリスの所にいるゆっくり妖怪たちは、魂の気ばかりが強く、魄が弱い。

 

 特にパチュリーのゆっくり妖怪は魄が一番弱い。

 死に掛けたみたいに、魂の気でどうにか持たせているようなものだ。

 

 参護も気づいているみたいだし、精々手助けが出来たらしてあげよう位なものだ。

 貰った食料分ぐらいは恩を返すわよ。

 

 

 

 

δ月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 昨日の状態を考えても、参護にはそろそろ治療札の切り替えが必要だ。

 

 霊体は完治した。

 ならば、肉体だろう。

 

 直貼りで治癒箇所を限定しないといけない程に強力なヤツを作ってやろう。

 

 参護もなんだかんだと言っても、ゆっくりパチュリーには相当甘い。

 ゆっくり妖怪自体にも甘いけど、ゆっくりパチュリーには特別だ。

 

 完治し次第、紅魔館に向かってゆっくり妖怪たちに魔力や妖力を注ぐように頼みに行くだろう。

 

 紹介もしてあげましょう。

 

 なにしろ、先日貰った山の幸の詰め合わせは最高だった。

 

 煮物に良し、天ぷらに良し、焼いても良し、参護と仲良くなってから食卓に一品多く彩が増えたのは本当にうれしい。

 

 日々の食事は活力というものね。

 

 その恩がある。

 だから、多少の苦労位は買ってあげましょう。

 

 

 

 

δ月(´ε`; )日

 

 左腕にお札を貼って、さらに包帯で剥がれない様に抑えるように巻く。

 

 今回の札は強力だから、患部以外に貼ると過剰再生になり、壊死してしまう可能性がある。

 

 波紋という活性の技を持っている参護だから、短い効果に設定してあるが、一日観察して剥がすタイミングを見極めなければならない。

 

 雑談しながら観察していると、ゆっくりレミリアとゆっくりフランが遊びに入ってくる。

 

 部屋中を飛び回り、無邪気に参護に甘える。

 

 こうして見ていると、ゆっくりレミリアは無邪気に参護に甘えている。レミリアの奴とは正反対のように見えるけど、おそらくゆっくり妖怪は元となった相手の根本的な部分を表に出すのだろう。

 甚だ気に入らないが、私のゆっくり妖怪と私の差異が殆ど無いというのは、私が根本の性格と表に出している性格に差が無いという事だろう。

 

 フランは魔理沙の方が詳しいだろうけど、自由が彼女の根本なのだろう。

 

 だから、参護はずっと悩んでいたのだろう。

 ゆっくりスカーレット姉妹とスカーレット姉妹。双方が双方に受け入れられるかどうかを。

 

 私からすれば、会わせればいいじゃないって感じなんだけどね。

 

 参護も苦労性ね。

 

 やらなきゃならないなら、やる。問題の対処はやりながらでいいだろう。

 

 予想するのは大事だけど、予想ばかりで尻込みしていては意味はない。

 

 まぁ、取り成しぐらいはしてあげよう。

 昨日も考えていたけど、日頃のお礼だ。

 

 人間、情けは人の為ならずと言うが、こういう事なんでしょう。

 

 

 

 

δ月φ(゚Д゚ )フムフム…日

 

 波紋とは呼吸法。

 特殊な呼吸法から生まれる力を波紋というらしい。

 

 つまり、彼の呼吸法を注視すれば覚えられる可能性は十分にある。

 

 試にやってみたが、指先に少し電気の様な力が見えるだけだった。

 

 やはり、直々に参護や美鈴に教えて貰うか、修行風景を見る必要があるのだろう。

 

 やっぱり高度な技術なんでしょう。

 少ししか波紋を練れなかった。

 

 魔理沙の奴ならきっと努力を重ねて参護に近い領域にまでたどり着くのかもしれない。

 

 しかし、今作れる波紋の強さでは銀色の闘気は作れないようだ。

 

 どうしても私の霊力に波紋の力が流されてしまう。

 

 私の霊力が強すぎるというのが問題か。

 

 今後、私が銀色の闘気、もしかしたらその上を欲したとして、それを手に入れるには私の霊力と同等の力を手に入れなければならない。

 

 霊力の出力を抑えれば可能だろうが、それでは意味が無い。

 霊力だけで全力で戦った方がまだ強い。

 

 ま、そんな機会が来ればの話ね。

 

 私は歴代の巫女の中でも弾幕ゲーム特化と言ってもいい。

 肉弾戦はさほど強くは無い。

 

 精々、参護の全力より少し強いぐらいかしらね?

 実力では妖怪に勝つのはかなり難しい。

 本気で戦ったのはいつだったかしら?

 

 ずっと弾幕ゲームだったし、忘れてしまったわね。

 




 いかがだったでしょうか?

 霊夢は頭もいいですよ。
 勘もいいのでスルッと確信を突いてきます。

 この作品での霊夢は、弾幕ゲーム特化の天才です。

 ガチのバトルでは参護より少し強いぐらい。
 ただし、霊力を無尽蔵に使ってくるので、参護さんは勝てない。

 なにしろ、結界系が専門である彼女はテクニカルな戦いが本当に強いです。

 それでは、次回もお楽しみに。


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外伝 海原参護は幽波紋使い

 どもです。

 今回は、『夜光』さんのリクエストでスタンドの絡むお話という事だったので、参護さんのスタンド戦を書きました。

 本編はもう少しお待ちください。

 それではどぞ。


 

 空が赤く染まり、日はもう落ち、魔が動き出す時間。

 

 幻想郷において、人里は特別な場所だ。

 

 人間と妖怪の均衡を大事にする幻想郷は、人里以外で人間は生きていけない程に過酷な環境だ。

 しかし、だからこそ人里は守られている。

 

 それこそ、人里を襲おうものなら、幻想郷にいる上級妖怪全員を敵に回すほどだ。

 

 妖怪は確かに人の畏れを糧に生きている。

 それこそ、死に際の畏れは極上と言われている。

 

 知能が低い妖怪は、人間が集まる人里を襲うとする。

 しかし、人里で暮らせななれば、人は確実に数を減らしていく。

 

 人が数を減らしていけば、畏れは手に入れられない。

 

 故に守られている。

 

 共存するには相手が居なくては始まらないのだ。

 

 この禁忌を破るのは、知能の低い低級妖怪か、目的がある妖怪だけである。

 

 そしてその目的はたくさんあるのだが、最も多いのが復讐だ。

 

 博麗の巫女に重傷を負わされた妖怪が見せしめに人里を襲うとする。

 当然、霊夢や魔理沙がそれを阻止するのだが、稀に人里に居合わせた上級妖怪に返り討ちにされたりと、襲撃は成功したことは無い。

 

 そして、今回の襲撃者は新しい相手に撃退されることになる。

 

 

**********

 

 

 獣。

 

 その相手は自分に敗北をもたらした人間。

 

 自分は短い期間で中級妖怪にまで登り詰めたのだ。ゆくゆくは上級妖怪へ、最終的には八雲紫を倒して幻想郷に君臨する。

 

 そんな自分がただの人間に敗北した。

 

 この妖怪は復讐に燃えていた。

 

 あの敗北を(すす)ぐには復讐をやり遂げるしかない。

 

 そう考え、人里にやってきた。

 

 里の入り口には、妖怪に敗北をもたらした男が立っていた。

 

 まるで来るのが分かっていたかのように、仁王立ちで妖怪を待ち受けていた。

 

「来たか。悪いけど、ここからは通さないよ。俺と俺のスタンド……」

 

 男の姿がダブる様に揺らぎ、もう一人の影が現れる。

 その姿は、全身に包帯を巻き、目の部分はゴーグルの様なモノをつけて立っていた。

 包帯には呪文のような模様がかき込まれており、握られている拳は包帯が破けて肌が見えてしまっている。

 

「『カーズ・ドライブ』がな!」

 

 妖怪は足を止める。

 こいつに自分は負けたのだと、過去を思い出し、脳内の警鐘が鳴り響く。

 

 この男の後ろに現れる謎の男が妖怪に敗北をもたらした。

 

「セイヤァ!」

 

 殴られた妖怪は後ろに吹き飛ばされ、地面を削り、ようやく止まる。

 

 ダラン……。

 

 感じる腕の違和感。

 妖怪は視線を腕に移すと、ガードした腕が完全に折れていた。

 

 まただ。前に戦った時も、大した威力じゃないのに腕が折られた。

 同じところを同じように。

 

 妖怪の腕を折る力、妖怪同士ですら簡単に骨を折ることは少ない。

 

 ではなぜ?

 

 ブワッと背筋が凍える感覚を覚える。

 

 威力じゃない。

 骨だって弱っていたわけじゃない。

 

 折れる要素が無いのだ。

 

 なのに妖怪の腕は折れたのだ。

 

 意味不明だ。

 近づけるわけにはいかない。

 

 妖怪はそう考えて、近場の岩をもう片方の腕で砕くように相手に飛ばす。

 その様は散弾銃だ。

 

「セイセイセイセイセイィ!!」

 

 拳ですべての飛礫を殴り飛ばす。

 無数の拳が現れたかのように見えるほどの速度。

 

 それはおよそ人間ができる速度ではない。

 ここまで来て、妖怪は包帯だらけの男は人間ではないことに気づく。

 

 しかし、だからどうしたと言うのだっとばかりに、妖怪は参護に襲いかかる。

 元より、彼の妖怪はこれぐらいしかできない。

 

 妖怪の中でも妖獣の類であり、その能力は身体能力や反射神経など野性に特化している。

 妖獣系で能力に開花するのは、中級の半ばから上の位である場合が多い。

 

 もう少しなのだ。

 

 もっと人間を食い殺せば、妖怪として上の次元に行けるというのに、その妖怪は(つまず)いてしまったのだ。

 

 海原参護に。

 

 こいつを殺さないと、二度と進むことができない。

 その衝動に従い、妖怪は参護に襲いかかる。

 しかし、それは悪手だった。

 

 参護は妖怪に向かって踏み込む。

 完全に懐に入った状態で、がら空きの胴体が彼の目の前にある。

 

 結果は言わずもがなだった。

 

「セイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイセイ、セイヤァ!!」

 

 全身を殴られ、吹き飛ばされる。

 

 切り傷、刺し傷、骨折、火傷、喰いちぎられた跡、全身に様々な傷が出来て立ち上がることもままならない。

 

 これこそが、参護のスタンド能力。

 『両こぶしで触れた傷を操作できる』というものだ。

 

 これらの傷はすべて、この妖怪が生涯で負ってきた古傷なのだ。

 完璧に治癒されても、痕が一切残っていなくても、スタンド『カーズ・ドライブ』は、古傷を開き、抉る。

 

 傷を負わずに生きている生物はいない。

 無機物すら風化という傷を負っているのだ。

 

 生物に有効なのは肉体的な傷ではない。

 精神的な傷だ。

 

 妖怪の全身が震えはじめる。

 恐怖・混乱・焦り・思考の単純化。

 トラウマすら開き、抉る。

 

 参護は今まで、負け続けてきた。

 天才の兄に何度も何度も。

 

 だが、すべて糧にして喰らってきた。

 どんな失敗も敗北も参護は受け入れ、古傷を一部にした。

 

 ゆえに生まれたスタンドの能力が傷を操るなどというのは中々に皮肉が効いている。

 

「己が背負っているものを今一度直視しろ」

 

 たった一言。

 

 全身の傷も、苦しめるトラウマも、その妖怪が背負うべき傷だ。

 

 そうして、肉体的にも精神的にもボロボロにされた妖怪は、最後に残っていた理性でその場から逃げた。

 

 それは参護から逃げたのか、罪から逃げたのか、それとも自らの最期を受け入れ、誰もいないところで消える選択をしたのかはわからない。

 

 ただ、妖怪は痛む身体を一切顧みることなく、しっかりとした足取りで参護の視界から消えていった。

 

「相変わらず、エグイ能力だよな」

 

 その呟きは夜風にさらわれ、消えた。




 いかがだったでしょうか?

 『夜光』さんのご期待に応えられたでしょうか?

『カーズ・ドライブ』 本体:海原参護
ステータス
 破壊力  :D
 スピード :C
 射程   :D
 距離   :D
 持続力  :A
 精密   :B
 機動性  :B
 成長性  :C

 ってかんじですかね?


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海原参護の日記 Ж月

 どうも、本編更新です。

 Жは『ジェー』と読みます。
 ロシア文字の大文字です。

 実はずっと登場させたかったパチュリーさん。
 無理やり感がありますが、どうか広い心でお願いいたします。


Ж月(>_<)日

 

 完 全 復 活 !!

 

 っと言うほど回復したわけじゃないが、日常生活は問題なし。

 

 戦闘は左腕の違和感がひどいがそれぐらい。

 両足はだいぶ感覚が戻ってきた。

 

 そして、そろそろYパチュリー達の問題を解決しないといけない。

 

 身体の存在感が薄いということは、病気や寿命の関係が軒並み悪くなる可能性が高い。

 

 すぐにでも、紅魔館の皆さんに協力をしてもらうしかない。

 

 霊夢さんに相談したら、許可を取ってもらえたし、後はこちらの対応と彼女たちの機嫌次第……かな?

 

 YレミリアとYフランは仲良さ気にプニプニと押し合いっこをしている。柔らかそうだ。

 

 魔理沙や霊夢さんの話だと、姉妹の関係はまだギクシャクしているようだし、どうなるか不透明だ。

 

 魔理沙が言うには、フランちゃんは屋敷の中ならある程度自由になっているらしい。狂気自体が安定してきているようで、怒らせなければ大丈夫という話だ。

 

 問題はレミリアさん。

 

 どうするかと悩んでいると、YレミリアとYフランが両肩に乗って頬ずりしてきた。

 慰めてくれるのか……。

 

 俺の胃腸のダメージが深刻だが、当日はもっと大変だろう。霊夢さんも護衛がてら来てくれるようだし、ゆっくり達を死なせない様にしよう。

 

 途中の湖でチルノと大妖精に会えれば、二人にも協力してもらいたい。

 

 大妖精は話せばわかるとして、チルノは大丈夫だろうか……?

 

 うっ、胃が……。

 

 

 

Ж月ε-(´∀`*)ホッ日

 

 結局チルノ達には会えなかった。

 

 そして、紅魔館に着いて最初は美鈴さんにY美鈴へ気を送ってもらった。

 目に見えてY美鈴の存在が濃くなり、髪の艶や肌のハリが良くなった。

 

 美鈴さん自身も驚いていた。

 

 気を使う程度の能力なので、Y美鈴の気が分かるのだろう。

 

 そして、理由を理解してくれたのだろう。

 協力してくれると言ってくれた。

 

 咲夜さんに案内されてレミリアさんと初対面した。

 

 なんというか、圧倒的な存在感だ。

 萃香と対峙した時と似ている。あの強者特有の威圧感。

 すべてを見透かされているかのような眼光。

 

 その上、確か彼女の能力は『運命を操る程度の能力』だったはずだ。

 操るなら運命を見れないといけないわけだし、彼女は運命を見ることができると言う事だ。

 

 俺やゆっくりたちの運命がどういうモノか、興味はあるが聞くのは怖い。

 

 話してみると意外なほどすんなりと了承を貰えた。

 

 デモンストレーションで咲夜さんにY咲夜さん相手に魔力を込めてもらい、毛艶を良くしているのを見て興味津々だった。

 

 いざ自分のゆっくり妖怪を見たら、若干というかかなり頬を引きつらせていたが、

「……まぁ、私の一つの形ね。受け入れるのも器の大きさよ」

 そう言いつつ、魔力を込めていた。

 

「定期的に来なさい。存在感を確固たるものにするなら、もっと多く力を込めてあげないとダメだしね」

 

 小声でボソッと、「ゆっくり妖怪のフラン可愛いし……」と呟いていたのを確認したが、黙っていた。

 咲夜さんも気づいていただろうが、特に触れていなかった。

 

 他の人達もやってもらおうとしたが、夜も遅くなっていて一泊することになった。

 咲夜さんも色々と用意して一室を貸してくれた。

 霊夢さんも別の部屋に泊まって、ホクホクしていた。

 洋食がおいしかったと言っていたので、食事系が霊夢さんの好みのようだな。

 

 明日にはフランちゃんやパチュリーさんや小悪魔さんに、力の供給を頼むのだ。

 

 レミリアさんはフランちゃんを呼んでくれるようだし、少しは気を抜いてもいいだろう。

 

 

 

Ж月((o(´∀`)o))ワクワク日

 

 今日は何というか、いろいろありすぎて疲れた。

 

 フランちゃんは何か異様に楽しそうだった。

 Yフランに魔力を込めた後に、ずっとYレミリアを抱きしめていた。

 気に入ったようだった。

 

 ただ、「お姉様の生首~」とか言うのやめようね?

 

 無邪気にはしゃいでいる姿がちょっとしたグロシーンに見えるから。

 

 地下に行くと最初に小悪魔さんに会った。

 

 彼女の反応も頬がヒク付いていたが、おおむね好印象のようだった。

 どの世界でも赤ん坊というのは可愛いものだ。

 

 そして問題のパチュリーさんだったが、これは驚いた。

 

 本人の反応は単純に学術的興味が強かったようだ。

 色々と生態を聞いて来たのがいい証拠だろう。

 

 しかし、Yパチュリーが謎の魔法陣をパチュリーさんに向けて展開していた。

 

 パチュリーさんが言うには、相互に記憶の表層、伝えたい部分を同期する魔術なのだそうだ。

 

 昔、パチュリーさんが自身の知識を伝える為に作った術らしいが、古い術だったことと別人同士の情報伝達の差異を利用して表層意識だけを同期する形だったらしい? のだが、魔力が同質であることがトラブルに発展してしまったようだった。

 

 ほとんど同一人物の記憶を同期した実験は無かった。

 結果は相性の良すぎる二人の記憶が相互に完全に同期してしまったという事だった。

 

 事故が恥ずかしかったのか、一端帰ってほしいと言われた。

 その前にYパチュリーには魔力を補充してもらってだ。

 

 図書館の壁に魔法陣をあしらったただの扉を設置。

 Yパチュリーに何事か喋って通じたようだった。

 

 この一瞬で同一人物のようになったのだから、大事件だっただろう。

 

 家に帰るとYパチュリーが家の壁に大図書館と同じ扉を設置した。

 

 扉を潜ると大図書館に繋がっていて、いつでも行けるようになっていた。

 

 レミリアさんの命令かとも思ったが、パチュリーさんの判断のようだった。

 

 正直助かった、片道だけでも相当な距離なのだ。

 往復だとさらに大変な時間がかかる。

 

 パチュリーさんにもいつでも来ていいと言われたし、あそこの本は魅力的だ。

 

 明日も行くことにしよう。

 

 

 

Ж月∑(゚Д゚; )ァリャリャ日

 

 今日も今日とて紅魔館に来た。

 来たと言うか、壁が大図書館に繋がっているからどうにも別の家という実感が薄いのはどうするべきか?

 

 全員分の魔力やら気を込めてもらってしばらく自由時間になった。

 

 レミリアさんはYフランを、フランちゃんはYレミリアをそれぞれ愛でていた。

 

 ギクシャクしているが、きっと二人は仲良くなる。

 それぞれのゆっくり達を愛でているのなら、きっとね。

 

 YレミリアやYフランもかなり懐いているようだった。

 

 フランちゃんなんて、ずっと抱えたまま頬ずりしたり、クルクル回ったりしていた。

 

 レミリアさんは、無邪気に懐いてくるYフランを最初こそ指で突くなどのちょっとそっけない態度で接していたが、少しすると頬を緩ませて手に乗せて頬ずりしていた。

 

 小悪魔さんはずっと頭にY小悪魔を乗せたまま仕事をしていた。

 

 そしてパチュリーさんだが、膝に乗せたままYパチュリーに魔力を込めていた。

 

 そして記憶の同期魔術をしていた。

 

 昨日の時点でほぼ同一人物の様なモノになったはずだけど、また同期するのか?

 

 それと、今日はしっかりとパチュリーさんと話をしたが、俺の知識や魔理沙やアリスさんの事前情報とは少し印象が違った。

 

 時々話しかけて来てくれるし、本の好みを聞いてきてお勧めを教えてくれたりと、面倒見がいい。

 

 紅茶を出してくれたりと非常に居心地が良い時間を提供してもらえた。

 

 一冊借りて家で読むことにしよう。

 

 

 

Ж月(・・?日

 

 レミリアさんに呼ばれて、ディナーをご一緒した。

 

 紅魔館の主要人物たちが一堂に会して、中々に壮観だ。

 

 丁度全体が見渡せる位置にレミリアさんが、その両サイドにフランちゃんとパチュリーさんが、俺がパチュリーさんの隣に座って、フランちゃんが座っていた。

 

 咲夜さんと美鈴さんが料理を運んでくれていた。

 

 色々と今後の話などをしたが、みんないい人たちばかりだった。

 

 定期的に力をゆっくり達に与える代わりに、俺がそちらに遊びに行くことが条件らしい。

 

 特に俺が遊びに行くことに積極的だったのが、パチュリーさんだ。

 

 ゆっくり妖怪の研究もしてみたいという話だ。

 

 それをレミリアさんがニヤニヤというか微笑ましいものを見る目で見ていたのは何だろうか?

 

 

 

Ж月(*´ω`*)日

 

 やはり記憶を同期してから、Yパチュリーの様子がおかしい。

 

 さらに色々な魔法を使って家の至る所に強化魔術を施していた。

 どうも、最近パチュリーさんが作った魔法で、持続力が段違いらしい。

 

 パチュリーさんはパチュリーさんで、最近の我が家で起きたことを知っているかのように話すし、本当に記憶が一緒になったのだろう。

 

 そのせいなのか、自分のゆっくり妖怪と仲がいい。

 

 自分のゆっくり妖怪と普通に交流しているのは、小悪魔さんとパチュリーさんだけだ。

 

 確かに自分のゆっくり達とは交流し辛いだろう。

 

 Y小悪魔は子供だし、理解もできるけど、Yパチュリーはおそらく記憶が一緒になったからだろう。

 

 自分に似た妖怪じゃなく、自分自身と変わらない存在らしい。

 

 紅茶を飲みながら聞いたことだけど、Yパチュリーはストローをくわえて紅茶をすすっていた。

 熱かったのか、涙目でプルプルと震えていた。

 

 

 

Ж月(゚д゚)(。_。)ウンウン日

 

 レミリアさんに呼ばれて、部屋に行くとフランちゃんと一緒にゆっくりスカーレット姉妹と戯れていた。

 

 互いが互いの橋渡しをしたようで、仲が良い状態に戻ったようだ。

 咲夜さんが涙目でお礼を言ってきた。

 

 二人を救ってくれてありがとうと。

 

 ゆっくり達も涙ながらに喜んでいた。

 

 パチュリーさんも喜んでいた。

 

 レミリアさん達が夕方にうちに来て、食事をしていった。

 咲夜さんが俺の料理の腕を教えたようで、レミリアさんが食べてみたいと言ってこういう形になったそうだ。

 

 驚いたことにパチュリーさんも来ていた。

 動かない大図書館とまで言われている彼女が、いくら近いとはいえ図書館から出てくるとは思わなかった。

 

 色々と(くつろ)いでから紅魔館に戻っていったが、また来ると言われた。

 

 定期的に力を補給できるようになったからか、みんな元気で飛び回っている。

 

 Yパチュリーは身体の調子を確かめるように、転がったり飛び跳ねたり、俺が揉む際も感想を聞きたそうにキラキラとした目でこちらを見ている。

 

 調子はいいようだし、早くYチルノやY大妖精達にも本人の力を分けてもらえるようにしよう。

 




 いかがだったでしょうか?

 次と次の視点の日記は二人とも新キャラで行きますので、お願いします。

 それでは、次回もよろしくお願いします。


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パチュリー・ノーレッジの日記 Ж月

 更新です。

 パチェさんです。
 書いててすごい楽しかった。

 BGM純愛系のギャルゲーの曲エンドレスにして聞きながら書いたよ!



Ж月(>_<)日

 

 最近、人里の方に美鈴や咲夜が出かけているようだ。

 

 どうも、珍しい妖怪の生態調査をしている男の所に行っているらしい。

 

 理解できないわね。

 

 百年近くの時を生きているけど、色恋というものに関わってこなかった。

 咲夜はレミィ一筋だし、美鈴かしら?

 

 でも、美鈴も書物で見る恋愛の反応とは違う気がする。

 

 本を読んでも分からないことがまだまだあるわね。

 

 こういう時は経験するのが一番だと言うけど、年中地下にいる私にそんな機会があるとも思えないしね。

 

 

 

Ж月ε-(´∀`*)ホッ日

 

 今日はどうやら、昨日の日記で書いたゆっくり妖怪の生態調査をしている男が来ているようだ。

 

 ゆっくり妖怪に関しての新しい情報が入っているということで、私たちに協力を願い出たという事らしい。

 

 レミィも妹様も受け入れているようだし、明日には私の所に来るらしい。

 

 私と小悪魔に用事がある、ということは私と小悪魔のゆっくり妖怪というものが居ると言う事だ。

 

 生まれ方から生態、その成り立ち、私の知識にもこの図書館の本にも載っていない情報だ。

 

 是非とも知りたい。

 

 知らないことを知る。

 私の存在意義と言ってもいい。

 

 明日にはまた、私の知識が深まる。

 こんなに嬉しいことは無い。

 

 

 

 

Ж月((o(´∀`)o))ワクワク日

 

 何という状態なのか。

 

 どの書物にも載っていない状態。

 いや、恋愛小説になら似たような状況があったか?

 

 あのゆっくり妖怪は分かっててやった節がある。

 

 以前、私が開発した記憶を共有する魔法を使用して私との記憶を完全に同期してしまった。

 

 あの魔法は表層意識を同期させて、言葉を使わずに伝えたいことを相互に伝え合う方法だ。

 他人だからこそ表層意識で済む形になっていたのだろう。

 

 ゆっくり妖怪の私と私はほぼ同一の存在であり、記憶もかなり近いものがある。

 彼女の記憶だと、生まれたのは私たちが起こしたあの異変の時だ。

 この幻想郷で初めて私が動いたと言ってもいい異変だ。

 

 あの時、私が戦闘に使った魔力が集まって生まれたらしい。

 となれば、彼女の記憶は紅霧異変までの私の記憶ということだ。

 

 当然記憶の共有魔法も使える。

 

 それを使って私と記憶を完全に同期させる気だったのだろう。

 

 これが色恋に関わる時の感情というものなのか?

 

 今まで普通に見れていた参護さんの顔が見れない。

 同期してすぐに見た参護さんの顔が、日記を書いている今も頭から離れない。

 

 思わず帰してしまったが、その行動を後悔してしまっている。

 ああ、できればもっと話がしたかったと感じてしまうのも相当重症だ。

 

 友愛の情はレミィから変わってないし、興味が本に行っているのも変わらない。

 恋愛感情だけ、私にはその感情を抱いていた相手がいない。

 そこに私のゆっくり妖怪の感情が根付いた可能性が高い。

 

 とりあえず、何時でも来れる様に図書館の壁に扉をつけて空間を繋げておいた。

 

 これならいつでも来てもらえる。

 

 ああ、そんな考えが自然に浮かんでしまうあたり重症だ。

 

 今日はもう寝てしまおう。

 

 あと、小悪魔が可愛く見えるのは、おそらく私のゆっくり妖怪が小悪魔のゆっくり妖怪を面倒見ていたのが原因ね。

 

 小悪魔、お菓子食べるかしら?

 

 

 

 

Ж月∑(゚Д゚; )ァリャリャ日

 

 一日置いてから、私のゆっくり妖怪の記憶を整理する。

 

 そこでも、ある意味あの子の罠のような記憶が出てきて、悶えてしまった。

 確か最近参護さんは、あの鬼の娘と戦って大怪我をしていた。

 当然、全身打撲やら骨折やらをしていて排泄物の世話もあの子がしていた。

 

 脳裏に焼き付いてしまったのよ!

 あの子わかっててやったんじゃないでしょうね!?

 

 私の記憶とあの子の記憶。

 ゴチャゴチャした机の上の様な状態の記憶を私の記憶とあの子の記憶に分けて整理している最中の事だった。

 

 ただでさえ参護さんの事がまともに見れない状況で、さらに畳み掛ける様にあんなもの見せられて、今日も参護さんが来るというのにこの状況でどうしよう……。

 

 来た時にあまりの羞恥心であの子を拾い上げてすぐに魔力を込めながら、お茶を濁してしまった。

 

 そして、またあの子が共有魔法をせがんできた。

 内容は昨日の参護さんとの湯浴みの風景だった。

 

 無言であの子の頭を鷲掴みにしてやった。

 

 だけど、おかげで少し落ち着けた。

 と言うか、あの子を懲らしめたおかげで少し落ち着いた。

 

 そこからは参護さんに色々と話しかけていった。

 紅茶を一緒に飲んだり、また来てくれるように本のお勧めを話して貸してあげたりした。

 

 こうして日記を書くぐらいに落ち着いて考えると、私のキャラじゃないとまた自己嫌悪中だ。

 

 

 

 

Ж月(・・?日

 

 レミィが参護さんをディナーに呼んだ。

 

 私の状況は話しているはずだけど、それを込みで遊んでいる気がする。

 後でお返ししよう。

 

 だって、私の隣に参護さんの席を用意したのは状況的に私と参護さんを並べて反応を楽しみたいのだろう。

 咲夜だって知っているはずなのに、ひどい……。

 

 だけど、定期的にゆっくり妖怪たちに私たちの魔力を分ける代わりに、遊びに来るという提案はうれしい。

 

 ゆっくり妖怪達への研究も一応したいし、いいことが決まった。

 

 ただ、ニヤニヤしながら私や参護さんを見ていたレミィはやっぱりオシオキね。

 

 

 

Ж月(*´ω`*)日

 

 記憶の混乱はもうないぐらいに整理はできた。

 

 そうすると、今度は参護さんの何気ない仕草や、出来事が少しずつ思い出すかのように見れて、なんというか悶えてしまった。

 

 ここ数日、本当に私は何をしているのか?

 

 色恋沙汰なんて興味もほとんどなくて、恋愛小説もほとんど読んでなくて、あの子との記憶共有という一瞬の出来事で、これまでの価値観が崩壊した。

 

 参護さんの事を目で追ってしまうし、少しでも自分の感情に折り合いをつけたいから恋愛小説も読み漁るようになった。

 本当にあの子のせいなのか、おかげなのか。

 

 この気持ちはあの子のモノなんだろうが、その後に生じた感情は私のモノだ。

 

 私は私の為に行動しましょう。

 

 とりあえず、紅茶で舌を火傷しているこの子には感謝しておきましょう。

 

 

 

 

Ж月(゚д゚)(。_。)ウンウン日

 

 レミィと妹様は長い期間すれ違っていたけど、ゆっくり妖怪たちがクッションのようになって少しずつわだかまりが取れてきた。

 

 まだレミィのプライドが高いことと、妹様の狂気気味の部分が残ってはいるが、それもだいぶ和らいでいる。

 

 参護さんがこの館に来てから、皆良い方向に変わっていっている。

 

 美鈴は新たな強さの可能性を示されて鍛錬に力が入っているし、咲夜もレミィに新しい料理を出せるとメニューの開発に最近は熱をあげている。

 レミィも妹様もわだかまりを払拭して仲を修復している。

 

 私は……、どうなんだろう。

 

 この感情はあの子のモノだけど、もう私のモノでもある。

 

 小悪魔は私に優しくされてアワアワとしているが、その姿も可愛いと思えてしまう。

 娘を見ている親はこんな感じだろうか?

 

 夕飯は参護さんの家で食べた。

 

 初めて食べたけど、咲夜がレミィに出したいと言っているのが理解できる位に上手な料理だった。

 

 家が繋がっている訳だし、時々食べたいわね。

 




 いかがでしたでしょうか?

 可愛く書けていたでしょうか?

 明日は会社泊まりなので、感想返信のみになります。

 阿求の話並みに楽しかったです。


 追記:パチュリーの年齢の表記で『数百年』としていたものを『百年近く』に変更しました。


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レミリア・スカーレットの日記 Ж月

 ちょっと、駆け足で更新。

 なんかもう、評価もすごいことになってるけど、このサイト以外のブログみたいなのでも紹介されているらしい。

 メッセで教えてくださった方ありがとうございます。

 色々と恐れ多い評価もありましたが、大変うれしいです。

 それではどぞ。


Ж月(>_<)日

 

 先日から霊夢や美鈴からお願いされている人間に明日会うことになっていたことを思い出した。

 

 咲夜の話だと、美鈴が良く稽古をつけている人間で、その人間の使う技術を美鈴が教わっているらしい。

 

 人間は容姿で判断する者が多い。

 

 私はかなり小さい方だが、その人間がどういう反応をするのかが楽しみだ。

 

 見た目で判断するような愚か者ならば、食料にするのもいいかもしれない。

 

 吸血鬼の館に来るのだから、そのぐらいの覚悟はしていてほしいものだ。

 

 

 

 

Ж月ε-(´∀`*)ホッ日

 

 例の男、海原参護と言ったか。

 

 咲夜に案内されて部屋に入った瞬間、全身を硬くしていた。

 とっさの防御行動ね。

 私も威圧感を部屋全体に放っていたし、ちょっとしたお茶目ってやつ。

 

 だけど、これで海原参護の人間性が見える。

 

 私のような幼い容姿の相手でも、実力を図ろうとしていたし、実力差を理解したのか、礼儀をしっかりとしていた。

 日本風のではなく、西洋風の礼を尽くしたのも高評価ね。

 

 相手によって、礼の尽くし方は変わってくる。

 

 それを理解しているあたり、なかなかの人間だ。

 

 頼まれた内容が、彼と共に暮らすゆっくり妖怪に魔力を与えて欲しいというものだった。

 目の前で咲夜が咲夜のゆっくり妖怪に魔力を与えていた。

 

 目に見えて存在が濃くなった。

 

 なるほど、存在を確たるものにしたい。

 そういう望みか。

 

 私のゆっくり妖怪は、幼かった。

 咲夜のゆっくり妖怪に比べてもずっと小さく、無邪気に飛び回っていた。

 

 理解はできる。

 私のスカーレット家の当主としての責務、プライド、フランと仲良くしたいと言う望み。

 

 そういった本体の望む形を叶えようとしている。

 

 羨望や嫉妬の感情が湧かない訳じゃなかったが、それを受け入れるのも私だ。

 この妖怪が私の叶えられなかった姿をしていると言うなら、私は今まで生きてきた中で選んで叶えた姿で受け入れる。

 

 咲夜に明日はフランを呼んでもらい、魔力を込めるように頼む。

 

 あの子がどういう反応をするかは、海原参護の態度次第ね。

 

 パチェや小悪魔は協力する可能性が高いし、問題はフランだけ。根性見せなさい海原参護。

 

 それにしてもゆっくり妖怪のフランは中々可愛い。

 

 

 

 

Ж月((o(´∀`)o))ワクワク日

 

 フランは癇癪を起こすかとも思ったが、私のゆっくり妖怪と一緒に遊ぶためにゆっくりフランに魔力を分けていた。

 それからはずっと、私のゆっくり妖怪を抱きしめたまま過ごしていた。

 

 正直恥ずかしい。

 

「お姉様~。お姉様~♪」

 

 なんて言いながら私のゆっくり妖怪を抱きしめながらクルクル回っていた。

 恥ずかしい。

 

 私もフランのゆっくり妖怪の相手をしていたけど、無邪気に私に甘えてくる姿に不覚にもキュンときてしまった。

 

 あと、本を借りに図書館に行った時に、パチェが何やら百面相しながら悩んでいた。

 話を聞くと、昔に作った記憶同期の魔法が思わぬ効果を出してしまったらしい。

 パチェのゆっくり妖怪と記憶が完全に同期してしまったらしい。

 

 あの、ずっと海原参護にくっついて離れなかった子か。

 

 そこまで聞いてしまえば理解できる。

 きっかけはどうあれ、友人に春が来たというなら喜ばしいことだ。

 

 生粋の魔女であるパチェはずっと図書館だったり研究室に引きこもってばかりで、恋愛のれの字も見当たらないタイプだったしね。

 

 ただ、パチェが図書館の壁に海原参護の家に繋がるゲートを設置していたのは驚いた。

 

 あの人と関わろうとしないパチェが、自分のテリトリーの図書館の壁に出入り口を作った。

 これは邪推するなという方が難しいだろう。

 

 あの百面相も海原参護を考えていたと言うなら微笑ましい。

 

 ここは友人としてクールにサポートしてあげないとね!

 

 あと、なぜかパチェが小悪魔に優しくなっていた。

 普段も別に厳しかった訳ではなかったのだけど、なんというか娘の世話を焼くお母さん?

 

 恋をして母性も目覚めたのかしら?

 

 

 

 

Ж月∑(゚Д゚; )ァリャリャ日

 

 今日も海原参護がゆっくり妖怪達に魔力を貰いに来た。

 

 そこからはゆっくり妖怪達をそれぞれ遊びたい人たちの所に置いていっている。

 

 フランは相変わらず、私のゆっくり妖怪をずっと抱きしめている。

 少しずつだけど、会話もできたし、歩み寄れている気がする。

 

 海原参護が言っていたが、ゆっくり妖怪は元になった人物の影響を強く受けると言う事だった。

 

 ゆっくりフランがこうして私に懐いてきてくれているのは、すごく嬉しいのだ。

 

 海原参護がパチェの所に行ったので観察しに行くと、パチェのゆっくり妖怪に魔力を込めていた。

 なんか、赤面しながらゆっくり妖怪を強く揉んでいたけど、何かあったのかしらね?

 

 見ていると、拙く会話をしていたり、本の好みを聞いていたり、紅茶を出したり、なんというか百年近く生きている魔女のする反応じゃないわね。

 まぁ、ずっと引きこもってたし仕方ないのかしらね?

 

 海原参護は気付いてないかもしれないが、パチェから視線を外している時の彼女はもう初々しいとかの次元じゃないわね。

 気にしないフリして、横目でずっと海原参護を見ている。

 

 そして、彼が帰った後に何やら頭を抱えていた。

 

 大方、自分のキャラじゃないとか考えてるんでしょうけど。

 

 

 

 

 

Ж月(・・?日

 

 海原参護をディナーに招待した。

 

 咲夜に言ってパチェの隣に海原参護の席を設置するようにした。

 うん、親友の恋路を応援する私はきっと親友の鑑ね!

 

 彼を定期的に紅魔館に来るようにしたし、私の株もうなぎ上り!

 

 っと思っていたけど、パチェにオシオキされた。

 

 照れ隠しにしてもちょっと痛かった……。

 

 乙女のお尻は禁断の部分だと思うの。

 

 

 

 

Ж月(*´ω`*)日

 

 今日も海原参護は家に来る。

 

 今はゆっくり妖怪達の魔力供給の為毎日来るようにしているが、落ち着いてくれば週一とかぐらいになるのかしら?

 

 それにしても、パチェもいい風に変わってきたものね。

 良くも悪くも知識、本を読むことに偏っていたし、研究もしていたがこれも本を読んでいるのとあまり変わらない。

 それがどうだろう、他人を気にすることの無かったパチェが彼を目で追い、恋愛小説を読み漁る様になり、色々な表情をするようになった。

 

 とりあえず、今読んでいる恋愛小説は早く貸してほしい。

 クライマックスの巻を前に止められた私の身になって欲しいわねまったく。気になって仕方がない。

 

 だけど、今日はパチェが妙にしっかりとした顔をしていた。

 おそらく、パチェの中で何か決心がついたのかしらね?

 

 パチェのゆっくり妖怪はストローで紅茶を飲んで火傷をしたみたい。

 ストローは底の方から吸い出すから、一番熱い所が流れてくるのよね……。

 

 

 

 

Ж月(゚д゚)(。_。)ウンウン日

 

 フランと少しずつだけど、話ができるようになってきた。

 こんなにうれしいことは無い。

 

 私のゆっくり妖怪やフランのゆっくり妖怪を通して色々と話したり、遊んだりしているうちに自然と会話ができていた。

 

 ゆっくりだけど、普通の姉妹みたいに会話したのはいつ以来だったかしら?

 

 海原参護には感謝してもしきれない。

 

 今日は彼の家にディナーの招待を受けた。

 

 咲夜の料理も最高だけど、彼の料理も悪くなかった。

 珍しい料理、珍しい調理法。

 

 本当に彼が来てくれてよかった。

 

 霊夢にも美鈴にも感謝だ。

 

 彼の家には多くの妖怪達や魔理沙みたいな実力者が出入りしているらしい。

 

 さらに家にまで繋がって、人里の境界に位置している家とはいえ、人外魔境染みた状況に苦笑しか出ない。

 

 パチェは普段のディナーも魔女なので摂らないことが殆どで、喘息に良いというハーブティーぐらいしか飲食はしないのだけど、咲夜の料理以外に彼の料理も気に入っていたようだ。

 

 食べた時に目を丸くして驚いていたのを私が見逃すはずないわ。

 

 ホント、パチェもそうだけど、みんないい風に変わったわね。

 




 いかがだったでしょうか?

 レミリア日記はパチュリー日記の延長戦みたいな感じになっちゃいました。

 一応、会社がサマータイムになり、三十分前倒しのスケジュールになりました。

 正直朝の三十分って超貴重ですよね?

 では、また読んでくださいね。


 追記:パチュリーの年齢の表記で『数百年』としていたものを『百年近く』に変更しました。


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海原参護の日記 Б月

 お待たせしました。

 ゆっくり成分が足りない回になってしまいました。

 そして、地霊殿ごめんなさい。

 Бは『べー』といい、ロシア字の大文字です。

 それではどうぞ。


Б月∑(゚Д゚)ガーン日

 

 旧地獄とは、その名前の通り昔地獄だった場所らしい。

 

 管理者が地獄を縮小だったかスリム化だったか? を進めるために地獄を別の所に移したらしい。

 その残った土地に鬼が住み着いて、地上に居場所が無くなった他の妖怪が住み着いた結果、今の形になった。

 

 なぜ、このようなことを日記に書いているかというと、我が家に届いた招待状なるものに書いてあった場所。

 

『私の友達の紹介で、あんたを旧地獄に招待する。数々の噂は旧地獄にまで届いている。所詮人間だと考えていたが、先日萃香の奴と一緒に飲みに来た時にあいつがあんたを絶賛していたからね。興味が湧いた。あと、萃香が言っていたが、あんたの所で酒仕込んでるんだろ? それも持って来てくれないかね? 宴会の招待状、なんなら仕事って形にしてもいい。宴会に必要な食い物と酒を届けてくれ。頼んだよ。  星熊勇儀』

 

 本当はもう少し古い言い回しと、達筆な書体で書いたものが届いていた。

 正直現代人の俺には読めない。

 

 当然読んでもらったわけだが、その相手が萃香だった。

 

 届けるついでに返事を聞きに来たらしい。

 

 いや、この状況で断れるわけないよね?

 

 つか、お前が広めたのかよ。

 という気持ちを込めて両手で頭を鷲掴みにしてやった。

 

 それと、Yパチュリー。

 握り潰す勢いで握っているから羨ましそうな顔しないでくれ。

 

 後できちんと揉んであげるからさ。

 

 しかもここまでされて、行かない訳にはいかない。

 何でも屋として仕事の依頼という形にされたら、断れない。

 

 仕込んでいる酒も、持っていく分ぐらいなら十分ある。

 この幻想郷に酒造法が無いから好きに作れる。

 

 その中でもおいしい酒を大量に作る環境がある家が酒屋として店を構えている。

 他にもお酢や麹なども売っているから、酒以外での収入もあるらしい。

 

 とりあえず、久々の長期出張になりそうだ。

 Yパチュリーを連れて行くことにしよう。

 いざという時は、Yパチュリーの魔法で何とかすることにしよう。

 

 

 

Б月┣¨キ┣¨キ(*´д`*)┣¨キ┣¨キ日

 

 今日の夕方にようやく旧地獄の旧都という所に着いて、星熊勇儀さんに出会った。

 

 なんとも快活な人で、笑いながら肩をバンバン叩かれた。

 超痛い。

 

 今日はひたすら飲み会に付き合わされた。

 つか、鬼の速度に付いて行くと人間は死んでしまう。

 波紋で肝臓の働きを活性化させても追いつかないだろう。

 

 なので、飲みながらも給仕に精を出して誤魔化した。

 

 それでもアル中になりそうになったが。

 

 飲み会中、ずっと頭にYパチュリー、背中や前に萃香が抱き着いて離れなかった。

 

 くそう、酒臭いくせに、女性特有のいい香りもしやがる。

 

 ドキドキしてしまったじゃないか。

 

 

 

Б月( ´Д`)-3ハァ…日

 

 朝起きたら、なぜか外で闘技場の様なモノが出来ていた。

 

 そして中央にはいい笑顔の勇儀さんが。

 

 分かっていたさ。

 地底に呼び出された時、もっと言えば萃香の奴が友人の所に飲みに行くって出かけたあたりからこうなると分かっていた。

 

 確実に戦わせられる流れなので、諦めて相手側に立つ。

 

 期待していたハンデも、萃香の事前情報で必要ないと判断されたらしい。

 

 最初っから両手をフリーにしていい笑顔で手招きをしていた。

 

 結果だけでいえば、旧都の一部をぶち抜いて、空中戦をしたのちに地霊殿に突き刺さった。

 

 驚きなのは、銀色の闘気は鬼の一撃でも致命傷には至り辛いらしい。

 

 萃香の時ほど重傷にならなかった。

 

 まぁ、死体運びの猫。

 火車猫お燐だったか?

 

 死体に間違われて運ばれたが、何とか旧都に戻ってこれた。

 

 壁の修理費は鬼に請求するらしい。

 

 とりあえず、戻ってからずっと俺から離れないYパチュリーを揉みつつ、寝よう。

 怪我をしていない訳じゃないからね。

 

 

 

Б月(*゚∀゚*)日

 

 銀色の闘気はまだまだ未知数な力だ。

 兄貴に使い方を聞いておけばよかったと後悔するが、遅いだろう。

 

 波紋だけの時よりもずっと早く怪我が治った。

 そのおかげか、ずっと背中に張り付いている萃香を背負ったまま歩き回っているが、怪我の影響もないし、疲れも無い。

 

 つか、背中に張り付いたまま酒を飲むな。

 酒臭い。

 

 どうやら、お燐ちゃんに運ばれてきた時、死んでしまったものだと思ったらしく、生きていると知った時の彼女は泣いていた。

 そこからずっと俺の背中にくっ付いて離れない。

 

 いや、今回以上の重傷にさせたの萃香だろうに。

 まぁ、心配してくれているなら嬉しいけど。

 

 首筋をクンクンするし、隙を見て舌を這わせるし、何このセクハラ娘。

 勇儀も呆れてたし、こんな萃香は初めて見るらしい。

 

 俺だって初めて見るよ、背中に張り付いて至る所を嗅いだり舐めたりする娘は……。

 

 勇儀は昨日の戦いは楽しかったと言っていた。

 

 俺自身、銀色の闘気を使う上で色々と知ることができたのは大きい。

 無限強化と無限活性。

 常に纏い続けることができるなら、人間の限界を超えられるであろう奥義だ。

 

 しかし、常に纏っているには気功が持たない。

 

 波紋は修練の成果で無意識下でもある程度練ることのできるほど鍛え抜いた技だ。

 だが、気功は訳が違う。

 

 美鈴さんに鍛えてもらった、いわば新しい力。

 慣れるまでにはまだまだ時間がかかるだろう。

 

 銀色の闘気を全力で使えるのは俺の予想では三十分。

 戦闘には十分だし、徐々に力も上がるタイプの闘気なので時間内に倒しきれないのなら、圧倒的すぎる力量差があるからだろう。

 そんな相手と戦っている時点で詰みなのだ。

 

 などと、真面目な考え事をしているというのに、背中でもぞもぞ動くなよ。

 後、臭いも嗅がないでくれ……。

 

 

 

Б月∑(゚Д゚; )マジッ日

 

 戦闘力の向上よりも、防御力回復力の向上の方が俺の銀色の闘気は顕著らしい。

 

 こうして萃香と対峙できるほどに回復した。

 

 いや、回復したけど何で戦うことになったのか?

 

 どうやら、銀色の闘気を使った戦いを勇儀としたことが気に入らないらしい。

 

『私もヤリたい』

 

 と駄々を捏ねた結果がこの状況だ。

 つか、イントネーションに気をつけろっつってんだろ。

 

 模擬戦の結果としては再び地霊殿に突き刺さった俺。

 

 今度はお空ちゃんだっけか?

 彼女に引っこ抜かれて旧都に連れて来てもらった。

 

 今度も請求は鬼へ行くらしい。

 

 なぜか、Yパチュリーを勇儀さんが気に入ったらしくずっと揉んでいた。

 痛くないのかと心配していたが、随分と心地よさそうだった。

 

 どうやら、勇儀さんはYパチュリーが吸収できる力を多く出しているようだ。

 

 とりあえず、今日も旧地獄で一泊。

 

 ゆっくり達の世話を阿求様や魔理沙に頼んできてよかった。

 

 

 

Б月( ;゚∀゚)アララ…日

 

 今日はようやく我が家に帰れる。

 

 勇儀から大量の酒を渡された。

 どうやら、我が家で仕込んでいる酒はまだまだ改良の余地があるらしく、これが美味い酒というものだと渡された。

 

 参考にして酒を仕込めと言う事らしい。

 

 趣味的範囲なんだが……。

 

 こうして、Yパチュリーを頭に乗せて、萃香にいわゆるだいしゅきホールドされながら地底から出るという珍妙な行動をしていた。

 

 そりゃ、橋姫のパルスィさんに妬ましい発言をいただくのは当然の事だろう。

 

 帰ったら、阿求様とパチュリー様が仲良くなってた。

 いったい何があったし?

 

 それと、パチュリーさんのゆっくり達の知識が半端ないことになっていたが、おそらくYパチュリーと記憶を同期した影響だろう。

 そりゃ本人に聞いた方が早いことも多いし。

 本人に聞いても分からないこともあるけど。

 

 そして萃香は、阿求様とパチュリーさんに説教されていた。

 勇儀に俺のことを漏らしたこともそうだが、二度も闘ったこと、セクハラのこと。

 

 別室で正座させられて説教されていた。

 

 あの戦いをやってのける鬼が女性二人に説教される。

 しかも一人は魔女だけど、もう一人は限りなく一般人だ。

 

 世の中って面白いな。

 

 

 

Б月(*´ω`*)ポッ日

 

 銀色の闘気の持続時間を延ばすという目的のために、庭で座禅を組みながらじっくりと練り上げていく。

 

 波紋の呼吸と気功を練る作業をして、全身に渦を巻くように展開させることで銀色の闘気が完成する。

 

 そして、目を開けるとゆっくり達が全身にくっ付いていた。

 寝ている子、頬ずりしている子、みんなが俺の闘気を心地よさそうに受け入れていた。

 

 どうやら、ゆっくり妖怪にとっては非常に心地よいモノだったのだろう。

 全身に纏うたびに深呼吸して少しでも俺から銀色の闘気を味わおうとしている。

 

 俺としてはゆっくり達が集まっていたので、温かくて眠たくなったのと、スローライフみたいな行動をしているゆっくり達が可愛いので癒された。

 

 あくびしていたり、じゃれ合っていたり、コロコロと転がっていたり、思い思いの行動をしていた。

 

 ああ、バトルばかりのこの一週間の疲れが癒されるよ。




 いかがでしたか?

 ゆっくり成分少な目ですいません。

 地霊殿は犠牲になったのです。

 地霊殿訪問フラグも建っちゃったorz

 主人公の再生力が人外になってきてます。
 別にレミリアに吸血鬼化されてませんので安心ください。

 ヴァニラアイスみたいなことにはなってませんよw


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外伝 地底の激戦

 超短編ですが、勇儀戦の外伝です。

 先ほど気づきましたが、UA40万・お気に入り3600件超えとなっておりました。
 ありがとうございます。

 感想も800件となりまして、非常にありがたい限りでございます。

 そんな中でこんな短い外伝で申し訳ありまえん。

 ただ、ちょっと萃香を可愛く書きたかった、それが理由です。


 星熊勇儀は期待感を持ってこの場所に立っていた。

 

 力では彼女が(まさ)ってはいたが、総合力では圧倒的に伊吹萃香が勝っている。

 その萃香が、絶賛した男。

 

 あの、日々の退屈を紛らわすように酒を飲んでいた彼女を、あんなキラキラとした目に変えた男。

 

 期待を抱くなという方が無理だろう。

 

 まぁ、若干依存気味なのは気になったが、あの鬱屈した様子の萃香を見ているよりはずっといい。

 

 対峙している男は、最初こそため息をつきつつも何とかならないかと思案していたが、こうして面と向き合った途端に腹を据えたのか戦士の顔になった。

 

 纏う力は銀色の闘気。

 

 対峙する勇儀は妖力をみなぎらせて相手を睨む。

 いつもならば、杯を片手にして、その中身をこぼすことが出来たら勝ちとかそういうハンデを付けた闘いをしていたが、今回は萃香の話から必要ないと判断した。

 

「この石投げるから、地面に落ちたら開始ね~」

 

 萃香が軽く空中に小石を投げる。

 

 対峙しているだけで勇儀の気分は高揚している。

 萃香が依存している理由が分かる。

 

 波紋使い、気功使い。

 

 この使い手は勇儀の過去の戦闘記憶にも存在した。

 人間の中でも卓越した強さ。

 

 その両方を持っている男が目の前にいる。

 正々堂々、全身を銀色の闘気で輝かせて対峙している。

 

 コツッ。

 

 小石が落ちた音と同時に私の拳と参護の杖がぶつかり合う。

 

 芯に響く良い一撃だ。

 人間が出したとは到底思えない一撃、受けた拳が痺れるような力が流れ込んでくる。

 ビリビリと片手を痺れさせる一撃に、思わず口の端が吊り上る。

 

 波紋でも気功でもない。

 いや、波紋でもあり気功でもあるこの効果。

 

 バチンと、音と共に腕の力を妖力で押し流す。

 

「萃香と同じことを……」

 

「鬼だからね。力任せなのは当然さね」

 

 杖を構えたままこちらを睨みつけている参護。

 

 押し流した方の手をブラブラと振ると、地面を砕くような強さの踏み込みで参護との距離を詰める。

 

 参護は杖で防御し、勇儀は拳で殴り続ける。

 

 正面から受け止めると、萃香の時の二の舞で腕を砕かれる可能性がある。

 なので連撃を右へ左へと逸らしながら耐えていく。

 

 それでも一撃の余波が参護の体を空中へ持ち上げ、勇儀は空中を飛びながら更に参護を追い詰める。

 

 しかし、いきなり参護の軌道が大きく横にずれて勇儀の顔の横に杖が迫る。

 

 上体を反らしてそれを回避すると一端距離を取る。

 

 参護は空中に留まり、その距離を取ろうとする行動を許さない。

 

 すぐに勇儀との距離を縮めて、突きの体勢を取る。

 

「銀色の……いや、銀牙波紋疾走!」

 

 連撃、ただひたすら全力で込められるだけの銀色の闘気を杖に込めて突き続ける。

 

 相手を睨み続けていた参護の目に、いきなり嗤っている勇儀の姿が映った。

 やばい! そう感じた時には参護は強烈な一撃を受けて、宮殿の壁を突き破り、天井を見上げていた。

 

 全身が痛み、関節が軋んでいる、疲労で意識もだいぶ朦朧としていたが、萃香と初めて戦った時のように長期間動けなくなることないだろう。

 

「ありゃりゃ、鬼と戦ってた人間だからザクロになってるかと思ったけど、かなりきれいな状態で残ってるね。こりゃいいコレクションだね!」

 

 死体に間違われた。

 

 まぁ、鬼と戦って壁突き抜けてきた人間が生きてるとは思えないだろう。

 

「生きてますよ。すいませんが、旧都まで……頼めますか?」

 

「驚いた、アンタ生きてんのかい? 旧都って鬼と戦ったんだろ? いいのかい?」

 

「決着はついたので、大丈夫です。疲れたんで、少し眠らせてもらっても……?」

 

「むしろ寝ておきな。人間が壁ぶち破って生きてるなんて奇跡なんだからさ」

 

 その言葉に安心して、参護は眠った。

 

 

 

**********

 

 

「参護!? 起きて! 起きてよ!? 嫌だよ! 死んじゃ嫌だよ!!」

 

 悲鳴にも似た叫びに目を開けると、瞳に涙を溜めた萃香が俺を見ていた。

 

 いつものセクハラをしてくる彼女ではなく、まるで幼子を見ているような印象を受けた。

 

「なにしてるんだ萃香? 疲れてんだから、眠らせてくれよ……」

 

「参護こそ、何言ってるんだよ! 死んだかと思った! 死んだかと思ったよ!! 嫌だよ、参護みたいに戦える人もういないもん! 参護みたいに受け止めてくれる人なんてもういないもん!!」

 

 悲鳴のような独白。

 確かにそうだ。

 兄貴がここに来るわけがないし、受け止める人間となると尚更に少ないだろう。

 その少ない人間が、幻想郷に来るというのも可能性は低いだろう。

 

「大丈夫だよ。かなり疲れたけど、前みたいに寝込むほどのダメージは受けてないからさ」

 

「……うん、……うん!」

 

 俺の服を握りしめて、ひたすら声を殺して泣く彼女を抱き締められないこの身体を少し恨めしく思った。

 

「少し寝るからさ。適当に布団運んでおいてくれ」

 

 そうして俺は本格的に意識を手放した。

 




 いかがだったでしょうか?

 阿求とパチュリーが人気で、萃香がセクハラしかないと思われていたので、気合入れて可愛く書いてみました。

 月曜日は泊まり込みの予定なので、感想返信のみになります。

 それでは、また読んでくださいね。


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伊吹萃香の心境 Б月

 お待たせしました。

 萃香の心境です。

 今回はセクハラの中に少しせつなさや可愛さを混ぜてみましたがどうでしょうか?

 ではどぞ。


Б月∑(゚Д゚)ガーン日

 

 ちょっと罪悪感がある。

 

 勇儀と酒盛りをして、興が乗ってしまい、参護の自慢をしちゃった。

 

 即行で参護へ旧地獄の旧都への招待状を書いて渡してきた。

 

 大丈夫だと思うけど、あの銀色の闘気をきちんと扱える状態で戦うのはずるいなぁ。

 今でも覚えている。

 あの一撃を喰らった時の衝撃。

 

 思い出すだけで身体の芯からゾクゾクと震える。

 

 妖怪からは得られない人間の意思と感情が乗った一撃。

 

 人間と戦わないと得られないもの。

 

 ああ、あの闘気を最初から纏って戦えれば、きっと前よりずっとずっとキモチイイ戦いになるだろう。

 

 そう考えると芯から熱くなる。

 

 勇儀に自慢してしまったのと、先に戦ったという罪悪感があるから、ついつい参護に招待状を渡した。

 

 当然と言うかなんというか、頭を鷲掴みにされ、握力全開でギリギリと握られた。

 ご丁寧に、気功で強化した握力でやられたからとても痛かった。

 

 だけど、最終的には地底へ行くことを決めてくれた参護はやっぱりいい奴だね。

 

 

 

 

Б月┣¨キ┣¨キ(*´д`*)┣¨キ┣¨キ日

 

 地底までの長い道のり、ずっと参護にくっ付いて歩けたのは本当に満足だった。

 

 会った時の勇儀は本当に機嫌が良さそうで、値踏みするように参護を見ていた。

 フフフ、勇儀も感じてるかな?

 人間特有の強さを感じられるほどの波紋と気功。

 

 両方とも生命力が元になっている技のはずだから、あれほどの生命力を持つ生き物は中々いない。

 

 傍にいるだけで妖怪の私達も恩恵がある程の生命力。

 

 セクハラついでに恩恵に与っている身としては、ついニヤニヤしてしまう。

 

 その夜は大宴会!

 

 参護と一緒に飲んで食べて騒いでふざけて……。

 ああ、楽しかった。

 

 本当に、どの宴会より、どの時代より、今が充実しているなぁ。

 ずっと傍に居たい、ずっと触れ合っていたい。

 今がこんなに充実してて幸せなんて怖いぐらいだよ。

 

 ああ、参護がお酒を飲むとお酒の匂いと混ざって最高の匂いになるなぁ。

 ずっと嗅いでいたい。

 

 

 

 

Б月( ´Д`)-3ハァ…日

 

 恥ずかしい……。

 

 勇儀との戦いで参護が地霊殿の壁に突っ込んでから、戻って来た時は死体を運ぶ火車猫に運ばれてきた。

 その時に死んでしまったものだと勘違いして、縋り付いて泣いちゃったよ。

 

 色々と恥ずかしいことも言っちゃったし、顔が赤くなるなんてお酒以外じゃ、ここしばらく無いからね。

 

 やっぱり、欲しいな。

 

 私がずっと傍にいられるなら、やっぱり欲しい。

 

 たぶん、あの稗田の娘は参護に惚れているだろう。

 気づいているかはわからないけど。

 

 私としては独占するよりも囲っちゃいたいんだよね。

 

 参護みたいな人間はフラッとどこかに行っちゃうし、下手したら死んじゃうかもしれない。

 囲っておけば、そういう事も少なくなるし、ずっと一緒にいられる。

 

 うーん、近いうちに稗田の娘を巻き込んじゃおうかな?

 

 でも捕まえられるかどうか。

 

 そこが心配だ。

 

 

 

 

Б月(*゚∀゚*)日

 

 昨日、参護が死んでしまったと勘違いした時に感じた喪失感を埋める様に、ずっと参護にくっ付いていた。

 

 その姿を見て勇儀の奴が苦笑いをしていたけど、参護みたいな奴と出会えば勇儀もきっとわかる。

 触れている時間が幸せなのだ。参護の匂いを感じるだけで全身が溶けそうになる、肌を舐めると上質な酒を飲んだ時みたいに深く蕩けられる。

 

 稗田の娘に怒られることもあるが、こればかりはやめられない。

 悔しいなら稗田の娘もやればいいのだ。

 

 きっと、彼女も深くハマるよね。

 

 前から抱き着いて表情を楽しみながら匂いを嗅ぐのと、後ろから抱き着いて密着度を楽しみながら首筋を舐めるの、どちらも捨てがたいなぁ。

 

 

 

 

Б月∑(゚Д゚; )マジッ日

 

 今日は最高だった!

 

 銀色の闘気を纏った参護と存分に戦えたからね!

 

 最高のひと時だった。

 前に戦った時よりもずっとずっと、反応も良い、威力も良い、防御も良い、思考の速さなんて鬼の私が舌を巻いた。

 

 鬼に勝てるほどじゃないけど、中級妖怪ぐらいなら一人でも十分なぐらいにはもう強くなっている。

 

 条件次第なら上級にも対峙できるかもしれない。

 

 空中でも戦えるようになったらしく、舞空術を操りながら私と戦った。

 

 壁に天井に地面にいくつも穴を作りながら、最終的に地霊殿にまた穴を開けてしまった。

 

 今度は八咫烏の娘に運ばれて戻って来たけど、あまり深い怪我は無い。

 あの程度なら波紋の力で回復可能だ。

 

 戦いが終わった後には心地よい余韻に浸る贅沢。

 

 先ほどの戦いを反芻(はんすう)して楽しみながら、火照った身体を冷ましていく。

 

 熱いまま参護にくっ付いていたら、本格的に襲っちゃいそうだし、自重自重。

 

 

 

 

Б月( ;゚∀゚)アララ…日

 

 今日はようやく家に帰るというので、道中はずっと前から抱き付きながら帰った。

 

 参護は当然徒歩で帰っているので汗などもかく。

 その匂いでついつい興奮してしまったけど、さすがに昨日の今日で襲うわけにもいかない。

 

 家に戻ると稗田の娘と紅魔館の魔女に説教された。

 ああ、紅魔館の魔女も参護に魅かれているのかな?

 彼女は生まれながらの魔女だし、私の考えも理解してくれるかもしれない。

 

 説得するなら彼女が先かもしれない。

 

 参護を好いている人間には是非とも幸せになってもらいたい。

 

 参護は確実に、実力を発揮する理由が自分ではなく、何か・誰かにあるタイプの人間だ。

 

 そういう人間は守護対象になれれば、かなり近付ける。

 

 稗田の娘は守護対象に、私や紅魔館の魔女は更に参護ごと囲えたりすれば、きっとうまくいきそうなんだよね。

 

 細かい部分は他の奴から意見を貰う必要がある。

 

 参護を慕う人間が増えるのはいいが、気に入らない奴までくっ付いてくるのも嫌だ。

 

 適度に虫払いしておこうかな。

 マーキングしておけばそうそう手は出せないだろう。

 

 

 

 

Б月(*´ω`*)ポッ日

 

 今日は勇儀とまた飲み合った。

 

 話の種は当然、参護だ。

 

 あの戦いは勇儀も満足が行くものだったらしい。

 

 銀色の闘気。

 

 あれは、奥義ともいえる人間の技の結晶だろう。

 

 参護の話だと後二つ上の段階があるらしいが、それを知ってしまっては是非とも使ってもらいたい。

 

 難しいのも分かるが、波紋と気功を混ぜて得られるなら、魔力とか霊力とか妖力とかでも行くだろう。

 

 紅魔館の魔女から魔力を、霊夢から霊力を教授してもらえれば、きっとまだまだ参護は上に登れる。

 

 そう考えると私の女としての本能が騒ぎ出す。

 ああ、人間の寿命は短いよね。

 

 今だと精々八十前後生きればいい方だろう。

 

 仙人か蓬莱人とか言うやつになってくれないかな。

 ずっとずっと、一緒に……。

 




 いかがでしたでしょうか?

 萃香の思考がだんだんおかしな方向に。

 参護、囲われそうですw

 まぁ、どうなるかは阿求やパチュリー次第かな?


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星熊勇儀の心境 Б月

 更新遅れてすいません。

 星熊勇儀の日記です。

 今回もゆっくり成分少な目。

 もっと補充しなくては!

 それではどうぞ。


Б月∑(゚Д゚)ガーン日

 

 萃香が強い人間を見つけたらしい。

 

 久々に会って、酒盛りに興じていたのだけど、萃香の奴が以前会った時よりも生き生きしていたから、どうしたのかと聞いたら、強い人間に出会えて、戦えて、その上一緒に生活していると聞かされた。

 

 あの萃香が加減していたとはいえ、殴り合いになり、最後の最後で吹き飛ばされたなど、聞けば聞くほど人間の中でもかなり強い部類の男だ。

 

 波紋と気功を両方使える男は今まで居なかったし、どちらか使えただけでも心躍る戦いを楽しめた。

 是非とも戦いたいねぇ。

 

 萃香に無理を言って地底への招待状を届けてもらうことにした。

 

 ちょっと不満そうだったが、私だって飢えてるんだよ。

 萃香だけ楽しむのはずるいじゃないか。

 

 

 

 

Б月┣¨キ┣¨キ(*´д`*)┣¨キ┣¨キ日

 

 萃香と戦った男が地底に来たが、初見で目を疑っちまった。

 ありゃ、常に波紋を纏っている。気功も練り続けている。

 

 それを理解して高揚感を抑えられなかった。

 

 しかも、宴会でも鬼のペースに付いてこれるだけの酒豪ぶりも気に入った。

 

 本人は波紋で肝臓を活性化させていると言っていたけど、それにしてもだ。

 

 しかも、ツマミや切れそうな酒を補充したりと、中々に気が利く男だった。

 ありゃ、モテるだろうねぇ。

 強くて、気が利いて、顔も悪くない。

 萃香が懸想してるのも分かるねぇ。

 

 今日は本当にいい酒を飲めた。

 

 参護とだったらまた飲みたいねぇ。

 

 

 

 

Б月( ´Д`)-3ハァ…日

 

 朝一で簡単な闘技場をみんなで作り、参護の奴を待った。

 

 昨日の時点で争いを好まない性格だという事も知っているが、同時に戦うべき時に戦う人間だという事もよくわかっている。

 

 なにがあっても手を出しません、みたいな似非平和主義者なんかよりも断然好感が持てるね。

 やる時はやる。

 こういう奴は人間・妖怪問わずに芯の通った奴が多い。

 

 対峙している時の鋭い眼光と、経験から来るであろう隙の無さ。

 そして何よりも、全身を包むような銀色の闘気。

 初めて見たが、あれはいい。

 

 旧都の家屋を数件ぶち抜いて、天井に叩きつけ、壁にぶち込んで、地霊殿の外壁に大穴を開けても立ち上がってきた。

 ダメージこそあるだろうが、あれはまだまだ戦える。

 

 それとその後も面白いモノが見れた。

 

 お燐の奴に運ばれて参護が帰ってきたんだけど、死んでしまったと勘違いした萃香が泣きながら可愛いことを言って縋り付いていた。

 

 昔を知っている私としても驚いた。

 そこまで萃香が入れ込むなんざ、初めて見た。

 

 初恋なんて当の昔に済ませてるんだろうが、ありゃ初心な乙女だねぇ。

 

 伊吹萃香を乙女にする男か。

 

 いやぁ、いい酒の肴が見つかったね。

 

 

 

 

Б月(*゚∀゚*)日

 

 何というか萃香の奴、セクハラしまくっていた。

 

 参護の背中にくっ付いて、頬ずりしたり、匂いを嗅いだり、首筋に舌を這わせていたり……。

 

 ここ最近、萃香の奴の初めて見る顔だったり、珍しい表情をよく見る。

 

 海原参護。

 

 面白い奴だね。

 

 あの銀色の闘気は参護の強さを爆発的に上げる。

 やっぱり、人間に与えられた英知の一端なのだろう。

 

 是非とも、もう一度やりたいものだ。

 

 それにしても萃香が想像以上に参護に依存というか、ベッタリな状態だ。

 萃香は見た目が幼いから傍から見れば、ちょっと危ないのだが、まぁ好き合ってれば問題ないんじゃないかね?

 

 しかもあれだけの力を持ったオスだ。

 人間は理性があるから難しいが、それでも生き物である以上、強い相手の子供を欲する。

 

 萃香の奴、一体何人ライバルがいる事やら。

 

 いや、萃香だったらライバルごと参護の奴を囲ってしまうかもしれない。

 

 それはそれで面白そうだ。

 

 

 

 

Б月∑(゚Д゚; )マジッ日

 

 萃香の奴やっぱり我慢できなかったか。

 

 参護と戦った時から妙に熱のこもった視線を貰っていたが、我慢出来ずに今日戦うことになるとは。

 

 しかし、参護の奴も中々にタフな奴だ。

 この前相当ボロボロにやられて、お燐の奴に運ばれて来たって言うのに、一日でほぼ全快しているのには鬼の私も驚いた。

 

 試合の結論を言うなら、萃香の勝利で終わった。

 

 最終的に参護は地霊殿の壁に突き刺さっていたが、私との戦いで更に銀色の闘気を使いこなす要領を学んだんだろうね。

 萃香の戦いの時での使い方や戦い方が上手くなっていた。

 

 その上、徐々に加速していく戦闘速度に思わず目を見開いたものだ。

 速いというのは、その速さに考える速さが付いて行っているかどうかで、意味が違ってくる。

 

 考える速さが付いて行ってないなら、どんなに速くても怖さは無い。

 だけど、速さに考える速さが付いて行っているなら、それは私達とは違う時間の流れに入れる奴だ。

 

 鬼だって、人間よりも考える速さはずっと速いし、速さだって天狗ほどじゃないが相当速い自負はある。

 

 だけど、参護は動きの速さも考える速さも鍛え抜いた歴代の人間の中でも群を抜いて速い。

 

 しかも、それはまだ成長途中のモノだと分かる。

 前の戦いよりも今の戦いの方が、参護は確実に強くなっている。

 

 失敗したねぇ。

 

 萃香を先に戦わせれば、今の参護と戦えたのは私だったのに。

 残念だ。

 

 残念で思い出したが、このゆっくり妖怪という妖怪は参護と一緒に帰ってしまうんだよな。

 

 なんというか、不思議な触り心地で揉み心地。

 健気に参護を助けようと頑張っている姿。

 いかんな、もうちょっと戯れていたい気持ちになる。

 

 

 

 

Б月( ;゚∀゚)アララ…日

 

 参護の奴が帰っちまった。

 

 上等な酒をいくつか持たせた。これで次に来る時にはもう少し上等な酒が期待できる。あの酒は参護の酒蔵で作る参考になるだろう。

 

 さすがに素人が作っている酒だった。

 酸味もエグミも強くて、その癖それほど強くも無い。

 

 だけど、まだまだ伸びる余地がある。

 使っていた米や芋、麦は丹精込めて育てていたであろうことは分かるから、後はそれを上手に酒にする技だ。

 

 根気が必要な道のりだけど、参護なら平気だろう。

 あの強さを手に入れるのは一朝一夕でどうにかなるものじゃない。

 

 良い師が付いて、本人が決してあきらめずに努力を続けて、いくつも実戦を経験する。

 考えてみると、意外に簡単そうに感じるが、どれか一つでもこなすのは実に難しいのだ。

 

 萃香が言っていたが、参護は自身の為の力を使う人間じゃない。

 誰かのために使う人間で、誰かの為なら限界を超える。

 

 もう少し見ていようかね。

 

 参護の行く末も、萃香の恋路も。

 

 いい酒のツマミさね。

 

 

 

 

Б月(*´ω`*)ポッ日

 

 萃香が飲みに来た。

 

 大勢で騒ぐ飲み方も好きだけど、こうして旧友とじっくりと酒を酌み交わすのもいい経験。

 

 話題になったのは銀色の闘気。

 海原参護の技のことだ。

 

 どうやら、萃香が参護から聞いた話だと銀の上にもう二つの段階があるらしい。

 

 銀であれだけの強さなのだから、さらに上に行けばもっと面白い戦いができる。

 

 是非とも参護にはその二つの力も手に入れてほしい。

 

 萃香が言うには、紅魔館の魔女が参護に対して好意的らしい。彼女から魔力を教わり、霊力を霊夢から教わるという計画を立てていた。

 

 魔理沙に魔力の使い方を教えさせるのも良いんじゃないかね?

 本人の訓練になるし、なによりも方向性が似ている人間同士だ。

 その方がやり易いだろう。

 

 霊力は私も知っている人間の中では、霊夢か守谷の現人神ぐらいかね?

 個人的に霊夢の方が実力は上だろうし、彼女から教わるのが効率がいい。

 

 参護が生きるのは八十か九十ぐらいまでだろう。

 それまで、全力で楽しませてもらうことにしよう。

 

 萃香は長生きさせる方法を考えているようだ。

 確かにあれだけの戦士は今後出会えるかどうかわからんしな。

 

 鬼の飢えを満たせる人間なんて貴重な存在。時代が時代なら軍神や神話の一柱として扱われる人間だ。

 

 とりあえず、参護に関して涙ながらに、いかに一緒に居たいか、いかに萃香の渇きを癒したかを語り出した酔っ払いの相手をしなくては……。

 




 活動報告にて、次回作の意見を聞いております。

 今の所、三候補上がってまして、迷っているので理由を書いてやってほしい順番にコメントをいただけると助かります。

 多いのをやると言うよりは、理由を読んで判断させていただく形になります。

 詳細は活動報告にて!


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稗田阿求の日記 Б月

 お待たせしました。

 阿求日記です。
 視点が増えてすいません。

 ただ、パチュリーと仲良くなるシーンは入れておきたかったとです。

 それでは、どぞ。


Б月∑(゚Д゚)ガーン日

 

 旧地獄。

 

 読んで字の如く、地底にある元々地獄だった場所。今は鬼や他の妖怪たちが住み着いている。

 

 そんな危険な場所にYパチュリーと萃香を連れて向かっていった参護さん。

 心配は尽きないのだけれど、同時に他のゆっくり妖怪達の世話を頼まれている以上、動けないのが悔しい。

 

 あそこには、萃香さんの古い友人という星熊勇儀さんが住んでいたはずだ。

 どうなるかは容易に想像できる。

 

 参護さん自身、銀色の闘気を得て以来、防御も治癒能力も上がったと言っていましたが、それでも怪我をすれば心配なんですよ。

 

 家で仕込みをしていたお酒の第一弾も持っていきましたし、宴会からの模擬戦、もしくは逆の流れが容易に想像できます。

 

 あと、少し前から紅魔館直通の扉が壁に設置されたそうで、案内された。

 見ると和風な参護さんの家には無い、洋風の飾り扉。

 さすがに、一般人である私があの扉を通る勇気はない。

 

 挨拶に行くのが礼儀なのかもしれませんが、さすがに何の自衛手段も無い私が行くのはいささか勇気がいる。

 

 参護さんが居る時にでも、付いて行って挨拶をすることにしましょう。

 

 

 

 

 

Б月┣¨キ┣¨キ(*´д`*)┣¨キ┣¨キ日

 

 今日、例の扉を通って紅魔館の魔女が来た。

 

 正直、ビクビクしながらの応対でしたが、意外にパチュリーさんは優しくて、色々と気遣ってくれました。

 

 あれ? 想像していた人柄と違いますね?

 

 今度大図書館の蔵書を読ませてくれると約束してくれましたし、良い人です。

 

 疑問だった人柄の違いはどうやら、Yパチュリーとの記憶が同期した影響とのことでした。

 

 魔法使いとかの、記憶の同期系統の術が使える者でないとならない現象とのこと。

 つまり、今パチュリーさんは私や参護さんとの触れ合いの記憶があり、どうしても悪い感情を抱けないのだそうだ。

 そういえば、Yパチュリーちゃんを一番可愛がっていたのが参護さんで、その次に私だったからその影響だろうか?

 

 なんというか、警戒気味にはなったけど、卓を囲んで食事やお茶をした。

 

 

 

 

Б月( ´Д`)-3ハァ…日

 

 今日はパチュリーさんが、色々な本を持って家に来た。

 

 さすがにYパチュリーちゃんの記憶があるだけに、私の趣味も全部知っているようだった。

 

 とりあえず、参護さんが今地底に行っていることを伝えると、心配そうにしていた。

 

 ああ、Yパチュリーちゃんの記憶があるのだから、鬼との戦いでどうなったかは知っているはずだ。

 確かに心配だろう。

 

 私もかなり心配だ。

 

 あの時の参護さんは相当ボロボロで、Yパチュリーちゃんと一緒にバタバタと治療したことは今でも覚えている。

 試しに話を振ってみた。

 

「片手と両足骨折でしたから、大変でしたね」

 

「その上、左腕の骨折が治り辛くて心配だったわ。今も若干動きが悪いみたいだし……」

 

 と心底心配そうな反応を返してくれた。

 

 感情も同期気味?

 だとしたら、私と同じ気持ちなのかもね。

 

「あら? もうお試しはいいのかしら?」

 

 気付かれてた。

 紅魔館の魔女相手に心理戦なんて無謀だったかな。

 

「貴女からしたら初対面だし、馴れ馴れしくて警戒するのも分かるわ。それでも、私は貴女に対して恩義にも近い感情を持っているの。それこそ、紅魔館のみんなの次に大切な人って認識があるわ」

 

 驚いた。

 想像以上に高い好感度に目を丸くしてしまった。

 

「これも彼女の記憶の影響だって認識してる。でも、彼女の記憶を探るうちに、貴女を大切な人だと思う感情が芽生えたのも事実。と言うか、参護さんに関して言えば、私自身も貴女と同じ感情を持っているの。心配で心配でたまらないわ……」

 

 心底心配そうに、吐き出すようにつぶやいた。

 

「そうですよね。何でも屋でお金を稼いでますが、参護さんの実力や知り合いの力を借りればまだまだ安全な、それこそ食事屋や内職なんかでも十分な収入が得られる計算なんですよ。それなのに危ない何でも屋なんかで……。本当に心配です……」

 

「なるほどね。何でも屋だから怪我も多いし、怪我が治ってくれば鍛錬鍛錬。全然自分の身体を労わらないんだから、余計に心配になるわよ」

 

 確かにそうだ。

 大怪我をしているのにすぐに鍛錬を始めようとする、あれは本当に自粛してほしい。

 

「そうですパチュリーさん! 昨日も言いましたけど、今回の依頼は地底、と言うことは萃香さんの旧友の鬼が居る場所なんですよ!」

 

「ああ、やっぱりそんな危険な所に行ったのね。萃香さんの伝手か何かで呼び出されたのでしょう? 彼女も悪い娘じゃないんだけど、少し参護さんへの怪我やセクハラが目につくわよね?」

 

「そうなんですよ! この前だって……!!!」

 

 こうして日記で会話を書き出してみたけど、参護さんの愚痴から距離が縮まっているこの現状。

 

 まぁ、いい友達が出来ましたしいいんですがね。

 

 

 

 

Б月(*゚∀゚*)日

 

 今日もパチュリーさんが家に来てたくさんお話をした。

 

 魔理沙さんが来て驚いていたけど、記憶の件を話したら納得したような表情をしていた。

 

 どうやら、似た魔法をアリスさんや魔理沙さんも開発していたらしく、同期しているらしい。

 まぁ、二人の場合はお互いの風呂だったり、ゆっくりたちの前でしてしまった痴態。

 赤ちゃん言葉とか、口に出たギャグとかがバレて苦しい思いをしたらしい。

 

 あ~、ふとした時に思い付いたギャグが口に出たりしますよね。

 そんで、それをアリスさんに知られて恥ずかしいと。

 

 あと、アリスさんの赤ちゃん言葉なんてレアなものを知った魔理沙さんもやり辛いそうだ。

 

 確かに、友人の赤ちゃん言葉なんてそう聞きたいものじゃない。

 

 パチュリーさんは一通り聞いた後につぶやいた。

 

「まだいいじゃない。彼が怪我してた時、下の世話をしてたの誰だと思うの?」

 

 その言葉でその場の空気が固まった。

 

 魔理沙さんが謝っていた。

 

 だけどその後で、興味津々に内容を聞いていた彼女は逞しいと思う。

 

 私も参加したけど……。

 

 

 

 

Б月∑(゚Д゚; )マジッ日

 

 昨日の意図しない暴露じみた話し合いがまだ頭に残っている。

 

 今日もパチュリーさんが家に来ていて、たくさん本を借りた。

 私も持っている本をいくつか貸してあげたけど、随分と気に入っていた。

 私の書いた本も持って行ったから気に入ってくれていると思う。

 

 こうやって、参護さんのことを想っている人物が集まると自然と会話は彼関連になる。

 

 今回は彼女のことだ。

 

「萃香さんってずっと参護さんについてますけど、やっぱりそうなんですかね?」

 

「私は直接見てないけど、彼女の記憶で知っているわ。……間違いないでしょうね」

 

 断言された。

 

 まぁ、私よりもYパチュリーちゃんの方が萃香さんのセクハラを目撃している回数も多いし、間近で見ているでしょうし、色々と分かるものもあるのでしょう。

 

「一度間違えて舐められた記憶があるし……」

 

「……」

 

 一段階上だった。

 どうしよう。

 

「彼女のセクハラもどこか慈しむような感情があったわね。どんなセクハラよって言われたら答えられないけど」

 

 確かにどんなセクハラなのかしら。

 

「彼女なりの愛情表現なんでしょう。私や貴女がする表現と違うだけで、彼女にとって普通の表現」

 

 そう言われてしまうと考えてしまう。

 

 鬼の強者を求める思考。

 惚れた相手への行動。

 

 もしかしたら私の幻想郷縁起にも追加すべき項目があるのかもしれない。

 

「まぁ、羨ましいのと絵的にもマズいからしっかりと怒るけどね」

 

 ごもっともです。

 

 

 

 

 

Б月( ;゚∀゚)アララ…日

 

 参護さんが帰ってきた。

 

 萃香さんに抱き付かれながら。

 

 私とパチュリーさんで別室に連れて行き、しっかりと説教した。人間の恋愛についてと、世間体やらも保つ必要があること、勝手に参護さんを地底に連れて行ったこと、チラッと聞いたけどまた鬼と戦ってきたらしいので、そのことも含めてしっかりと。

 

 終わる頃には夕暮れで、夕飯時だったのでそのまま食事を済ませた。

 

 パチュリーさんは頼もしい。

 理路整然と諭すような話をするので、萃香さんも何も言えない様になっていた。

 

 目指すところはそこね。

 

 

 

 

Б月(*´ω`*)ポッ日

 

 今日一日は家でゆっくりと養生すると言うことで、一日中家にいた参護さん。

 

 家事をしたり、本を読んだりしている中で一番時間を割いていたのが、座禅だった。

 

 波紋と気功をじっくりじっくり練り上げて混ぜ合わせている。

 

 その彼の傍にゆっくり妖怪たちが寄って行って、おしくら饅頭みたいになっていた。

 どうも、銀色の闘気から貰える力が彼女たちにとっていい食事になるらしい。

 パチュリーさんが言っていた。

 

 私としては、参護さんを中心にゆっくり妖怪たちが集まって寄り添うように眠っているあの姿なんて眼福ものだと思う。

 

 偶々いた文さんに頼んで何枚か写真を撮ってもらった。

 

 近々、パチュリーさんや萃香さんにも分けてあげよう。

 

 こういうモノは共有しないとね。

 




 知らず知らずのうちに、シークレット情報を暴露されている参護さん。

 まさか、Yパチュリー経由でばれるとは考えてすらいなかったでしょう。

 というか、可能性を完全に考えてないのでいつ気付くのかそれとも気づかされてしまうのか?

 悶絶ものでしょうw

 活動報告にてアンケートをしていますが、クロス物は難しいですね。

 両方知っている、なおかつその設定で興味を持ってもらえるか。
 難しいです。


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パチュリー・ノーレッジの日記 Б月

 大変お待たせいたしました。

 Б月はこれにて終了です。

 次月にご期待ください。

 初の五人の視点でした。

 最近バタバタとしてて申し訳ないです。

 中々安定しない勤務リズム故、たまにこういう事がありますので、ご了承ください。


Б月∑(゚Д゚)ガーン日

 

 私のゆっくり妖怪の存在が安定してきた辺りで参護さんは仕事を再開した。

 

 それは別にいい。

 むしろ、参護さんが輝いていると言っても良い時なのだから続けてほしい。

 

 ただ、やっぱり寂しいと感じてしまう。

 

 パチュリー・ノーレッジとして、生きてきた中でこれほどまでに恋愛を意識したことは無い。

 

 純粋な魔女として生まれた私は、それこそひたすらに読書と研究に没頭した。

 

 アリスは人間から魔法使いという種族に転生した者、魔理沙は魔法を使う人間だ。

 二人とも私から見ればどうしようもなく人間で、魔法使いとして情報を共有する仲ではあるが、レミィの様な感情を抱けたかと言われれば、答えはNOだった。

 

 私は魔女として生まれ、魔女として生きてきた。

 当然性魔術は知識として知っていたし、その際にやることも知っている。

 

 だけど、恋愛は魔法に、研究に必要ない感情であり事柄だったから、ずっと手付かずで過ごしてきたのだ。

 

 そのツケが今廻ってきているのだろう。

 

 百年近く生きている私が生娘の様な反応をするなんて、恥ずかしいったらない。

 

 

 明日、会いに行ってみようかしら?

 

 

 

 

Б月┣¨キ┣¨キ(*´д`*)┣¨キ┣¨キ日

 

 参護さんの家にお邪魔したのだけど、そこには阿求さんしかいなかった。

 顔を見た途端に嬉しいと言う感情が湧いているのが分かるから笑ってしまう。

 

 あの娘が、どれだけ阿求さんに懐いていたかが分かる。

 

 とは言うものの、私と阿求さんは初対面なのだ。

 しかも私は純粋な魔女。

 それに対して阿求さんは人間だ。それも幻想郷縁起の編纂を生業にしているので、身体も丈夫な方ではないらしい。

 

 警戒して当然なのだ。

 

 だけど、私の感情が寂しいと感じている。

 

 でも、お茶やご飯を出してくれたと言うことは、歩み寄ってくれているという事だ。

 私も頑張って仲良くなれるようにしよう。

 

 

 

 

Б月( ´Д`)-3ハァ…日

 

 本好きだと言う情報が記憶にあったので、彼女の幻想郷縁起にも役立ちそうな本を数冊持って今日も参護さんの家に行ってきた。

 

 昨日は教えてくれなかったけど、参護さんは地底に行っているらしい。

 

 これはしばらく帰れないかしら?

 

 そう考えていたら、阿求さんに探りを入れられるような質問をされた。

 警戒されているのだろう。

 少々寂しいと言う感情もあったけど、仕方ないものだと割り切る。

 

 ああいう場で謀や嘘は警戒心を強めてしまう。

 ただ素直に感情を阿求さんに伝えた。

 

 それが良かったのだろう。

 

 だんだん阿求さんの口調も硬さが無くなって、自然体の様なしゃべり方になってきていた。

 

 あの娘の記憶を頼りに判断しているけど、もし友人のように思っていてくれれば嬉しい。

 

 

 

 

 

Б月(*゚∀゚*)日

 

 今日も参護さんの家にお邪魔したけど、阿求さんの態度は非常に友好的だった。

 

 内容は殆ど参護さんへの愚痴だったけど、気持ちを共有できたのは嬉しい。

 

 途中で魔理沙も参加して、記憶同期魔法の不具合についての話になった。

 

 魔理沙もアリスも犠牲になったらしい。

 

 魔理沙達はお互いのゆっくり妖怪と共同生活をしていたはずだから、お互いの恥ずかしい姿を見られたという所かしら?

 

 一人の時に口に出たギャグとか、赤ちゃん言葉で話しかけている姿とか、私にしたらまだぬるい!

 

 気になっている男性の下の世話をしたことがあるかしら?

 

 一緒に入浴して、身体を洗われた記憶はあるかしら?

 

 全部、あの娘の記憶だと分かっていても、すっごい気まずいのよ!

 

 あの手で全身を絶妙な力加減で揉まれる感覚すら私と同期している。

 彼の顔を見る度にそんな記憶ばかり思い出されて、普通に話ができるようになるまで数日かかってしまった。

 

 しかし、魔理沙?

 その話題に食い付かれても私はどうすればいいのよ?

 

 阿求さんも興味津々だし、結局話しちゃったわよ。

 

 ごめんね、参護さん。

 

 

 

 

Б月∑(゚Д゚; )マジッ日

 

 今日も阿求さんに本を持っていったら、阿求さんから本を渡された。

 珍しい図書もそうだけど、ここ最近人里で流行り出している本や、彼女自身が執筆している本などがまとめてあった。

 

 本当にうれしい。

 

 私が読む本はやっぱりどうしても傾向が偏り気味になる。

 最近ようやく恋愛小説を読み出したし、気功や波紋の資料も探しては読み漁っている。

 それもこれも、参護さんの役に立ちたいと言う想いからなのだけど、やっぱりキャラじゃないなと自己完結している。

 せめて年相応の恋愛に関する落ち着きが欲しい所だ。

 

 今日はおそらく私や阿求さん以外に参護さんに好意を持っているであろう人物。

 

 伊吹萃香の話だった。

 

 彼女は間違いなく参護さんを想っている一人だろう。

 

 あの娘の記憶にも間違えて舐められた記憶があるけど、慈しむような……なんと言うか優しい? 愛のある? とにかく言葉にしにくいのだけど、彼女は参護さんを本気で想っている。これは確実に言える。

 

 鬼の愛情表現なのか、萃香の愛情表現なのかは分からないけど、求めて、求めて、求める。これが彼女の参護さんへのアプローチなのでしょう。

 

 まぁ、絵的にも危ないし、羨ましいしで、きちんと引き剥がすけどね。

 

 

 

 

 

Б月( ;゚∀゚)アララ…日

 

 参護さんが萃香に抱き締められながら帰ってきた。

 

 昨日の今日だし、手加減無しで説教の時間にする。

 

 阿求さんと一緒に心配だったことや、鬼とまた戦ってきたことをしっかりと夜になるまで、それはもうしっかりと語り尽くした。

 

 阿求さんもすごいわね。

 

 鬼である萃香が抵抗する素振りも無く、素直に正座して説教に耳を傾けていた。

 

 阿求さん、何気にすごいのかしら?

 

 

 

 

 

Б月(*´ω`*)ポッ日

 

 参護さんの新しい力、銀色の闘気。

 

 波紋と気功を混ぜて全身に行き渡らせる技術で、波紋と気功の特性を爆発的に強化する。

 

 以上が、参護さんから聞いた内容だ。

 

 そして、ゆっくり妖怪は他者の魔力や霊力、気功や波紋までも吸収して生きている種族だ。

 

 では、銀色の闘気はゆっくり妖怪にとってどういうものになるのか?

 

 あの娘の記憶を持っている私から言わせてもらえれば、あれは極上の贅沢品だ。

 

 あまり食事をしないから、食べ物に例えられないけれど、あの力を分けてもらっている時の全身に(みなぎ)る力と安心感は気功や波紋などでは味わえないものだった。

 

 だから、瞑想しながら銀色の闘気を纏っていると、ゆっくり妖怪たちが集まる。

 

 そして全身からその力を分けてもらうのだ。

 

 傍から見ればとても可愛らしい光景だ。

 

 阿求さんが、今度その光景の写真を分けてくれると言ってくれた。

 

 今度、阿求さんに何かしてあげないとね。

 




 色々なサントラを持っている訳ですが、ゲームや特撮モノのサントラは垂れ流しにしてると執筆が捗ります。

 でもたまに、エロゲ―のサントラになってて内容がエロくなったりすることがたまにあります。
 犠牲者は萃香。

 あと、メッセージでも言われてますが、別にR18の小説を書く予定はありませんのでご了承ください。

 つか、あのレベルのエロではここのR指定の作品たちには敵わないよ!

 というわけで、まだ意見を聞いてます。
 新しい方の活動記録の方に意見を書いてもらえると助かります。

 返信してたら読み返すの大変なくらいに長くなったので。


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外伝 地底の激戦 萃香編

 遅れました。

 考えてたらこの時間です。
 つか、本編考えても出てこなくて、逃げた結果が今回の外伝です。

 外伝ばかりですいません。


 先日、海原参護と星熊勇儀の模擬戦が行われた地底では、再び同様の熱気が支配していた。

 

 星熊勇儀と戦って、勝てずとも生きて帰ってきた男が、今度は伊吹萃香と戦う。

 

 これだけで、地底の妖怪たちは湧き上がった。

 

 元々はぐれ者の多い集まりだったし、先日の勇儀との戦いで、彼は地底全体を震わせるほどの戦いを見せたのだ。

 

 危険な妖怪が多い地底だが、伊吹萃香と戦う人間を寄ってたかって襲うなどという命知らずも居ないようだ。

 

「今回もこの石を投げて、地面に落ちたら開始さね。死なない程度に暴れな!」

 

 軽く放られた小石は放物線を描き、地面に落ちた。

 

 その瞬間に、双方はぶつかり合う。

 拳を突き出した萃香と、その拳に杖の突きを合わせている参護。

 

 衝撃波が周囲に伝わり、家や地面がビリビリと揺れているのが分かる。

 

 参護の全身から溢れ出ている銀色の闘気。

 初めて萃香と戦った時に使った時は爆発のようだった。

 先日、勇儀と戦った時はまだ吹き出すようなレベルの出力。

 そして、現在萃香と対峙している参護の全身から出ている銀色の闘気は、じんわりと陽炎の様な出力に落ち着いていた。

 

(出力が落ちている? いいや、あの暴風の様な量の闘気を効率よく全身に回せているんだ)

 

 萃香の拳から伝わってくる参護の杖の威力。

 それは決して初めて参護が闘気を纏った時の一撃に負けておらず、むしろ余分な力の逃げ道が無くなった分、腕を突き抜けていく衝撃は凄まじかった。

 

 たった一撃で、萃香の口角が吊り上る。

 加減を忘れて参護に怪我をさせてしまった戦い。あれから何か月か経っているが、比べ物にならない一撃を受けた。

 

 成長。

 

 萃香を喜ばせるのはこの一言で十分だった。

 

 参護は萃香のその表情を確認すると飛び上がり、空中に静止する。

 舞空術という気功の技の一つだ。

 

 弾幕ゲームでいつも飛んでいる萃香からすれば特別なことではないが、参護からすれば驚くほどの進歩だ。

 

 勇儀との戦いで披露していたが、自ら空中戦を誘う姿に萃香も乗って飛び上がった。

 

 あっという間に参護との距離を詰めた萃香は、裏拳で参護を吹き飛ばして地底の壁にぶつける。

 そのまま追い立てるように陥没した壁から出てきた参護をひたすら拳の連打で壁に縫い付ける。参護も横に移動しながら逃れようとするが、陥没痕が横に広がるだけだった。

 

 ふと、拳の感覚に違和感を覚えた萃香が手を止めると、そこには参護の姿は無い。

 殴り壊された壁が崩れているだけだ。

 

 萃香は一瞬で理解する。

 随分前に参護に倒された妖怪のトドメ、疎になって見ていたあの十秒だけ高速移動ができる技だ。

 

 それならば、乱打の中を潜り抜けることができる。

 

 しかし、そう理解すると共に萃香は後方を蹴り上げると丁度参護の胸部に当たり、天井へ激突する。

 普通の後方蹴り上げは、精々腰程度までしか足が上がらないものだが、萃香の場合はほぼ足を真上にまで蹴り上げていた。

 

 当然それは鬼の力なので高い威力を持っている。

 

 天井にもクレーターが出来ていたが、参護は天井を蹴って萃香へ肉薄する。

 しかし、素早く足を戻していた萃香は、向かってくる参護に対して斜め下に蹴り落とすような角度で胴回し蹴りを叩き込んだ。

 

 ボロ屋を壊して墜落した参護は、すぐに立ち上がる。

 

 波紋で痛みを和らげ、気功で防御を上げる。

 銀色の闘気を使えるようになる前は、これを同時に行う事が出来なかった。

 

 つまり、痛みを和らげるか、防御を上げるか。

 選択して戦っていたのだ。

 

 しかし、銀色の闘気はそれを必要としない。

 常に痛みを和らげ、防御を上げてくれる。

 

 同時に二つの選択肢を選べるというのは、戦闘においてかなりの有利な点になる。

 

 一手分の余裕が生まれるだけでなく、今回のような痛みの緩和と防御の向上は常に選んでおきたい項目だし、それが一回で双方を補えるというならそれは二手三手以上の価値になる。

 

 故に参護の行動は前回よりもずっと早く、鋭かった。

 

 杖を構えるとそのまま萃香に向かって飛び上がっていく。

 

 舞空術の操作も上達している。

 一瞬で一定の速度まで加速して、萃香の所で急停止と体勢を複雑に変えたりしている。

 

 そしてその姿に萃香は目を輝かせていた。

 

(すごいすごいすごい!! 威力も、速さも、耐久力も、空を飛ぶ練度だって何もかもが前よりもずっとずっと良くなってる。参護を鍛え続ければ、私だってどうなるかわからない。ああ、最高だよ参護!)

 

 打ち合う度に笑みが深まる萃香。

 打ち合う度に練度が上がる参護。

 

 無限に続くかに思えるその戦いに、萃香と長い付き合いの星熊勇儀は悟った。

 

(もうすぐ終わるかな)

 

 一般的に、萃香は鬼の中でも賢い部類の性格をしている。

 幼い仕草や飲んだくれている姿が強い印象だが、日本の伝承にある鬼の中では最強クラスの伝承を持つ彼女。

 

 長い付き合いの勇儀は、萃香が熱くなればなるほど加減を忘れる性格だと知っていた。

 

 力だけならば、勇儀も萃香と張り合えると自負しているが、総合力ではどうしても勝てないと言わざるを得ない。

 日本で最強の鬼は、対等の相手が少なかったが故に、加減をするのが苦手になった。

 

「イィヤッホォォォォ!!!」

 

 そんな楽しそうな声と共に、参護が吹き飛ばされて、また地霊殿に突き刺さった。

 

 テンションが上がりすぎて、加減を忘れて吹き飛ばしたのだろう。

 

「コラ萃香! 私に加減しろって言っておいて自分はそれかい!?」

 

「ごっめーん! アツくなりすぎて、ついヤッちゃった!」

 

「発音気をつけろ!?」

 

 

 

**********

 

 

 

 三日間で二度も地霊殿に突っ込んだ男。

 俺、海原参護です。 

 

 なんだろう?

 地底の喧嘩は地霊殿に相手をぶち込むことで決着とかいう地方ルールがあるのだろうか?

 

「うにゅ? おにーさん、壁から生えて何してるの?」

 

 声がしたので見上げると、長い黒髪とリボンに背中から黒い羽根を生やしている少女が立っていた。

 

「いや、好きで生えてるわけじゃないからね? とりあえず、抜けなくて困ってたんだ。助けてくださいお願いします」

 

「いいよ。おにーさんから温かいもの感じるし、その温かい力を少しちょーだい?」

 

 そう言うと、手を握ってじっと俺を見つめてくる。

 温かい力というと、銀色の闘気のことだろう。

 

 言われた通り、害にならない様に彼女に分けてあげるとどこかホッとしたような表情をしていた。

 

「うにゅぅ……。これ、キモチイイね~」

 

 うん、発音に気を付けようか?

 

 俺の界隈には発音を間違えるのが流行っているのか?

 しかも限定的に。

 

「うにゅ! 約束通り、おにーさんを助けるよ! 旧都まで運んであげる」

 

「ああ、ありがとう。俺は海原参護。君は?」

 

「私? 私は霊烏路空! お空って呼んでね!」

 

 そう言いながら、ズルリと俺を穴から引きずり出すお空ちゃん。

 片手でやっているあたり、さすが妖怪。

 

「旧都まで運ぶから、温かいのもっとちょーだい?」

 

 波紋や気功の類で餌付けって初めて聞いた気がするな。

 

 結局俺はお空ちゃんに運ばれている間、ずっと彼女に銀色の闘気を与え続けたのだった。

 

 無駄に疲れた。




 参護さんって苦労人だと思うけど、そこを苦にしていないあたり、強者だと思う。

 参護さんの人間離れが進んでおりますが、まだギリ人間です。

 参護日記をお楽しみに!


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海原参護の日記 Λ月 (古明地こいしの追記 Λ月)

 お待たせしました。

 参護の日記です。

 あと、新しい試みも入ってます。
 タイトルで分かると思いますが、どうですかね?

 では、どぞ!


Λ月(;^ω^)日

 

 地底から帰ってきてから早一月。

 

 適度に依頼を受けつつ、気功の鍛錬をしている。

 銀色の闘気には波紋と気功のバランスが大事だ。しかし、波紋は日常的に鍛えてたので何時間でも何日でも使い続けられるが、気功は最近覚えたばかりの力でそう簡単にはいかない。

 単独で一時間前後。

 銀色の闘気になると気功の方が三十分程度で限界が来る。

 

 故に、気功の練度を上げることが今の俺がやるべき鍛錬になる。

 美鈴さんも熱心に教えてくれるし、彼女の波紋ならすぐに俺と同じ闘気を持てるだろうから成長次第といった所。

 

 最近、阿求様とパチュリーさん、萃香の三人が頻繁に家で話をするようになっている。

 魔理沙もたまに参加してはいるようだけど、何を話しているのかは教えてくれない。

 

 ゆっくり達もこれに関しては彼女たちの味方のようで、扉の前で五段重ねとかになりながらディフェンスしている。

 その姿がまたかわいいのだが。

 

 霊夢さんから連絡があった。

 

 なんでも明日、訳ありのお客を連れてくるそうだ。

 霊夢さん同伴でなければならないお客とは誰だろうか?

 

 明日になればわかるか。

 

 さて、今日も今日とて晩御飯は阿求様、パチュリーさん、萃香、魔理沙、鈴仙さんの分が追加される。

 いやぁ、もう追加分が無い日は無いな。

 

 

 

 

Λ月( ゚д゚ )ボー日

 

 件のお客さんは地霊殿の方々でした。

 さとりさん、お空ちゃん、お燐ちゃんが家の居間に座っている。 (わたしもいるよー?)

 

 思わず土下座しかけた俺は悪くないと思う。

 だって、二度も壁に穴を開けた人間ですし、挨拶にも行くに行けなかったのだ。 (家に二度も突っ込んで生きてる方が私は奇跡だと思うなー?)

 

 地霊殿の主、古明地さとりさんはサトリ妖怪だ。

 俺の頭には東方projectの知識が有り、彼女達もそこに存在している。 (なにそれおもしろそー!)

 

 それを彼女に知られた場合、どういう行動をとるのか想像が出来なかった。

 故に会うわけにはいかなかったのだが、まさか直接訪ねてくるとは予想外だ。

 

 結局彼女に知られてしまったわけだけど、彼女から

「貴方の知識に関しては他言しないことを約束します」

 と言うありがたい言葉をいただいた。

 一安心と言った所だ。代わりに彼女の頼みを引き受けることになったけど。 (お姉ちゃんは気遣いのできるすっごいお姉ちゃんなんだよ!)

 

 お空ちゃんが拾ってきたゆっくり妖怪達。

 

 Yさとり、Yこいし。 (かわいいよねー。お姉ちゃんのゆっくり妖怪? がすっごく可愛い!)

 

 何でもお空ちゃんが俺を助けた後に拾ったらしい。

 それをなぜか星熊勇儀さんにも相談した時に、彼女の思考から俺の名前を知り、調べたらゆっくり妖怪が集まる家に住む人間だと知ったらしい。

 俺なら育て方を知っているだろうということでここに来たそうだ。

 

 彼女達を育てる知識が欲しいという依頼。

 

 あれだ、最近大きい仕事をこなしたばかりなので感覚がマヒしている。

 簡単で、それだけ? っと思ってしまったのは仕方がないのかもしれない。 (お兄ちゃんの人間離れが顕著だよねー?)

 

 実際、魔理沙やアリスにも指導しているし、教える分には問題ない。

 

 俺の例の知識に関することも黙っていてくれると言うなら御の字だ。

 

 あと、お空ちゃんがなぜかリラックスしてゴロゴロしていた。 (もう、お空ったらはしたないんだから!)

 

 いくら何でも寛ぎ過ぎじゃね?

 

 Y咲夜を捕まえてゴロゴロしてたので、Y咲夜が目を回していたが、大丈夫そうだ。 (その姿も可愛かったねー。お空はもうちょっと慎みを覚えてほしいなー)

 

 

 

 

Λ月(`・д・´)キリッ日

 

 さとりさん達には客室に布団を用意して泊まってもらった。

 

 地底にはしばらく行きたくない。 (えー、なんでなんで? いい所だよ? ちょっとみんな気が荒いけど)

 

 朝、布団を片付けたいたら、三人分出したと思っていたが四人分出ていた。

 ……まさかね? (イエイイエイ! ふかふか布団どもだよ!)

 

 とりあえず、今日は彼女たちの食事と魔力等の摂取について教えた。

 

 普段の食事は少量ながら人が食べるものと同じであること。

 魔力や霊力、気功や波紋、妖力も彼女たちの栄養であることを教える。

 

 そして最近分かった、元になった人物の力を注いであげれば存在感が増し、魔力等々の補給が無くてもしばらくは平気だと言うこと。 (私のゆっくり妖怪に私の妖力をあげると存在感? が上がるのね!)

 

 妖力を込める時は、揉みながらしてあげるとゆっくり達が喜ぶこと。 (揉みながらなんて、お兄ちゃんちょっといやらしいよ!)

 

 最初の講義はこれぐらいにして、後は戯れて慣れることから始めた。

 

 YさとりとYこいしをお手玉のようにして戯れる。

 最初こそさとりさんも心配していたが、ゆっくり達の表情を見て安心していた。

 いや、彼女たちの思考を読んだのかもしれない。 (多分それで正解。お姉ちゃん表情よりも思考読む方が確実だって考えてるし)

 

 そう考えればさとりさんはゆっくり妖怪と意思疎通ができる数少ない人物なんだよな。 (なるほど! さすが私のお姉ちゃん!)

 

 パチュリーさんも記憶の同期を行ってからある程度の意思疎通ができているらしいが、リアルタイムは難しいとのことだった。

 

 その点、さとりさんはリアルタイムでゆっくり妖怪の思考を読めるので俺よりもいい育て主になれるはずだ。

 

 あと、なんかYさとりとYレミリア、YこいしとYフランが仲良くじゃれ合っていた。

 姉と妹で何か通じるものがあるのかね? (私のゆっくり妖怪も楽しそうだったよね!)

 

 リアルだと関わらない方が良さそうだけど。 (えー、なんでなんで? フランちゃんと仲いいよ私?)

 

 二人でくっ付いてコロコロと転がっている姿はお空ちゃんやお燐ちゃんが見ても可愛いと絶賛していた。

 うん、俺もそう思う。 (私もそう思うよ!)

 

 

 

 

Λ月( ̄ー+ ̄)キラーン日

 

 昨日今日で確信した。

 

 古明地こいしちゃんが来てるなコレ。 (大正解ー!)

 

 食事が終わって洗い物をしている時に一枚多い食器。 (お兄ちゃんの料理美味しいよね)

 敷いた覚えがない四枚目の布団。 (昨日もふかふかだったよ!)

 萃香がくっ付いている訳でもないのに重い肩。 (レディに重いとか失礼なお兄ちゃんだ!)

 

 さとりさんが連れてきたのか、付いて来たのか? (付いて来たんだよー?)

 

 別段、困ることも無いからいいのだけど、イタズラは勘弁してほしいな。 (うん、それ無理!)

 日記に落書きと言うか、追加して何を書いてるのか……。

 

 悪戯なのか彼女なりのコミュニケーションなのか?

 

 無意識というのは中々にめんどくさいものだね。 (そう? 私は結構悪戯とかできて楽しいけど?)

 

 さとりさんに相談すると、たぶん付いて来てるんじゃないかと思っていたという言葉をいただいた。

 いや、一言言ってくれれば俺なりにもてなしもできたのに。 (おおー、お兄ちゃん優しいね)

 

 今日教えたのは、ゆっくり妖怪たちは元となった人物の能力を使えるということ。

 

 だから、Yさとりはさとりさんの能力を、Yこいしはこいしちゃんの能力を使うことができる。 (おお、それは便利だね! もしかしたらお空やお燐のゆっくり妖怪も居るかもしれないね)

 

 それを理解した上で、きちんと接することが大事だと説明した。

 

 目の前でYチルノが氷を作って見せたり、Yパチュリーが魔法を使ったりしたのを見せて説明したが、理解してくれて助かったな。

 

 助かったと言えば、萃香の奴が地霊殿組が来てからセクハラをしてこなくなったな。 (セクハラー?)

 

 一応、気を使ってるんだろうか?

 

 我慢できなくなった時が怖いな。 (おー、見るの楽しみだよ!)

 

 

 

Λ月(・3・)アルェー日

 

 昨日はしくじったな。

 

 こいしちゃんが読んでいる日記に書く内容じゃなかった。

 教育に悪い。 (なんでなんで? 私だってそーいう知識ぐらい持ってるよ?)

 

 さとりさんからもやんわりと注意されたし。 (お姉ちゃん、お兄ちゃんの心読んだんだね)

 

 と言うか、日記は他人に読まれる前提で書くものじゃないんだけどなぁ。

 

 今日は、さとりさんやお空ちゃん、お燐ちゃんに家のゆっくり妖怪達と触れ合って慣れてもらうことになった。 (私も見てたよー!)

 

 Yさとり、Yこいし両方ともおとなしいタイプのゆっくり妖怪で、特にYさとりはYレミリア以外のゆっくり妖怪にもビクビクしているようだった。

 珍しいタイプだと思う。 (お姉ちゃんのゆっくり妖怪すっごく可愛い!)

 

 いや、偉そうに考察できるほどゆっくり妖怪を知っている訳じゃないのだけど。 (お兄ちゃんが偉そうにできないなら誰も偉そうにできないよー?)

 

 今日までで大体のことは教えられたし、後は何かあったらその都度家に来るように言った。そうしたら、地底だし簡単に来れないだろうということで、見回りの意味も込めてなぜか俺が定期的に地底に行くことになった。 (やったー、お兄ちゃんとまた一緒に遊べるね!)

 

 定期的に地底なんて命がいくつ必要なんだろうな? (大丈夫、死んじゃってもお燐がコレクションしてくれるし、亡霊になってずっと一緒だよ!)

 

 おかしいな? 地底にしばらく行きたくないって日記にも書いてたのに、定期的に行くことになったこの不思議。

 

 舞空術も習得したし、時間的にそうはかからないのだけど、二度も地霊殿に突き刺さったのは軽くトラウマだったりするんだよな。 (そういえばお兄ちゃん空飛べるんだったよね。霊夢や魔理沙も能力や魔法なのに、お兄ちゃんのびっくり人間~)

 

 明日は朝早くにさとりさん達が帰られるし、ご飯は美味しいものを用意しよう。 (ほんと! わーい、やったー!)

 

 

 

Λ月( ´Д`)ノ~バイバイ日

 

 今朝早くにさとりさん達は地底へ帰って行った。

 

 昨日も日記に追記されていた。

 

 無意識を操るとはいえ、本当に何時書いたのだろう?

 

 Yさとり、Yこいしの二人はお空ちゃんとお燐ちゃんに大事そうに抱えられて帰って行ったので向こうでも幸せに暮らせると思う。

 

 Yこいしちゃんがお空ちゃんの胸に埋もれて若干苦しそうだったが、お燐ちゃんが任せてと言ってたし、大丈夫だろう。たぶん。

 

 無邪気ゆえの残酷さってヤツかな?

 

 いやいや、何を馬鹿なことを書いてるんだ俺は。

 

 さとりさん達には朝ごはんを食べてもらった後、お昼のお弁当も持って行ってもらったから、次行ったら感想聞こうかな。

 

 お空ちゃんなんかは何も言わなくても、

「おいしー、おいしー!」

 って言いながら食べてくれたし、料理を褒められるのはやっぱりうれしいよね。

 

 さて、萃香のセクハラも始まったし、明日も気を付けて行こう。

 

 

 

 

Λ月(*´ω`*)ポッ日

 

 昨日の日記には、こいしちゃんの追記も無かったし、こいしちゃんも帰ったのだろう。

 

 彼女は本当にどこにいるかわからないから、対処のし様が無いからね。

 

 そう言えば、また五段重ねゆっくりディフェンスを見るようになった。

 

 キリッとこちらを見ているけど、バランスを取っているのかフラフラとプルプルとしている姿はすごく可愛い。

 まぁ、女性の話に首を突っ込むような真似はしない。

 

 なにが起こるかわからないからね。

 

 近いうちに地底にまた行くことになる。

 

 一回目は早めに行って、始めの内の小さなトラブルなんかを聞いて対処しようということだ。

 

 そうすれば、だんだん地底に行く周期を長く取って、行く回数を減らせるのでは? という無駄な足掻きだ。

 

 今日も風呂に入っていたら湯気に紛れて萃香が居たし……、そろそろ本格的に貞操がやばい気がしてきた。

 

 正の波紋でくっ付けた後に、阿求様とパチュリーさんの二人に引き渡したが……。

 

 入浴中はゆっくり達を洗わなきゃならないし、あまり時間が無いというのに。

 

 さて、明日は地霊殿へと勇儀さんへのお土産を探さないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(また遊ぼうね。お兄ちゃん)




 難産でした。

 いや、こいしちゃん出すのどうしようって考えてたら、こういう形になりました。

 五段ゆっくりタワーはリアルに見たい私です。

 22日は会社宿泊なので更新できません。
 感想などは返信できますので、よろしくお願いします。


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霊烏路空の心境 Λ月

 お待たせしました。

 彼女も日記って書かないと思うんだ。
 他のキャラは書く可能性が少しぐらいあるけど、お空って日記を書くイメージがどうしても作者の頭には浮かびませんでした。

 ごめんよお空(´・ω・`)


Λ月(;^ω^)日

 

 さとり様とこいし様の首だけ妖怪を拾って、見せたら専門の人を知っていると勇儀さんから紹介された。

 

 あれ? さとり様が心を読んだんだっけ? まあ、いいや。

 

 地上の人間、海原サイゴ? だったっけ?

 

 この前、地霊殿に刺さっていた人間だ。

 

 あの人間はキモチイイ力を持ってるから好きだ。

 

 後、勇儀さん達と戦って生きている人間っていうのも珍しい。

 

 もし死んだらコレクションに欲しいってお燐が言ってたから、きっとお燐もサイゴさんが好きなんだ!

 

 さとり様は会ったことなかったっけ?

 サイゴさんはね、変な力を持ってる人間。

 

 地霊殿に二回も突っ込んできた丈夫な丈夫な人間!

 

 

 

 

Λ月( ゚д゚ )ボー日

 

 サイゴさんじゃなくて、参護さんだった。

 

 参護さんのお家は参護さんの力がいっぱいいっぱいあっちこっちに溢れててとても気持ち良かった。

 

 さとり様もお燐もびっくりしていた。

 こいし様はなぜかずっと参護さんの背中にぶら下がったり、あっちこっち走り回ってたけど。

 いいなぁ、こいし様。

 

 後、生首妖怪たちがいっぱいいた。

 

 ゆっくり妖怪って言うんだって参護さんが教えてくれた。

 

 座っていたら向こうの方からいっぱい寄ってきて、スリスリってしてきた。

 可愛かった!

 

 抱き上げてあげるとプニプニしててスベスベしてて、時々プルプル震えるのが気持ち良くてギュッとしたくなる。

 

 銀色の髪を持っているゆっくり妖怪ちゃんを触っていたら、すっごく触り心地がよくて、ずっとギュってしちゃった。

 

 さとり様とお燐は難しい話してたみたいだけど、私はこの子たちと遊ぶ方が良い!

 

 

 

 

Λ月(`・д・´)キリッ日

 

 お布団ふかふかだった!

 

 地底と違って地上は涼しくて気持ちいい。

 

 朝ごはんもおいしかったし、参護さんはお料理や掃除が得意なんだ!

 

 後、参護さんって結構されるがままだったりする。

 

 私が背中に負ぶさっても、軽く注意しただけで放置だったし!

 おかげであのキモチイイ力をいっぱい貰えた。

 

 あれを貰うと身体の調子が良いし、気分も明るくなるんだ!

 

 それと、今日もいっぱいゆっくり妖怪ちゃん達と遊んだ!

 参護さんはゆっくり妖怪ちゃん達を揉んであげると、私たちの妖力を少しだけ吸ってご飯にするんだって言ってた。

 

 ゆっくり妖怪がたくさん参護さんに集まる理由が分かった! 参護さんがキモチイイ力をいつも纏ってるからだね!

 

 参護さんがゆっくり妖怪のさとり様とこいし様を持って、お手玉をしていた。

 すっごい上手だった。

 

 ゆっくり妖怪のさとり様、すごく人見知りが激しいのに参護さんにはすぐに懐いていた。

 さすが、ゆっくり妖怪の先生だ!

 

 さとり様のゆっくり妖怪は、紫色のゆっくり妖怪が寄って行っても涙目でプルプル震えて、箪笥の陰に隠れちゃう。

 銀色の髪のゆっくり妖怪でも一緒だった。

 さとり様のゆっくり妖怪は、こいし様のゆっくり妖怪と蝙蝠の羽が生えたゆっくり妖怪としか遊ばない。

 

 なんでだろう?

 

 最初に私が近付いた時も、岩陰に隠れて涙目で震えていただけで、こいし様のゆっくり妖怪がずっと離れなかったし、さとり様とちょっと違う気がする。似てるけど……。

 

 参護さんが言うには、元になった人物の影の部分や望んでなれなかった部分がゆっくり妖怪では強く出る、とか言っていた。

 

 良くは分からなかったけど。

 

 さとり様、怖いのかな?

 

 

 

 

 

Λ月( ̄ー+ ̄)キラーン日

 

 こいし様は今日も参護さんの背中や足に抱きついて遊んでいた。

 

 羨ましいな。

 あのあったかい力、きっと分けて貰ってるんだろうなぁ。

 

 今日は参護さんが、ゆっくり妖怪は元となった人物の能力を使えると教えてくれた。

 じゃあさとり様のゆっくり妖怪は心を読めるのかな?

 

 怯えているのはそのせい?

 

 こいし様のゆっくり妖怪は気付いたら頭の上だったり、膝の上だったり、色々な所にいるから無意識を操れているんだと思う。

 

 参護さんが何か考えながら自分の考えを読ませて、恐いって思いをしない様にしている。

 

 氷のゆっくり妖怪は氷を作ってくれて、それを紫のゆっくり妖怪がかき氷にしてくれた。

 

 おいしかった。

 

 ここはいっぱい強い人が出入りしてるっていうから、いろんな人と会えると嬉しいな。

 

 

 

 

 

Λ月(・3・)アルェー日

 

 さとり様が参護さんをゆっくり妖怪の先生って言ってた!

 やっぱり、参護さんは先生なんだ!

 

 参護さんからゆっくり妖怪と遊ぼう! って言われてみんなで遊んだ。

 

 みんな揉んだり、頬ずりしたりして遊んだ。

 私も抱きながらゴロゴロした。

 

 今日の夕飯は何かな?

 毎日ごはん用意してもらってるけど、毎日違う献立でとっても美味しいんだ!

 

 お燐が参護さんが定期的に地底に来てくれるって言ってたから、時々ここのご飯も食べられるんだ!

 ゆっくり妖怪達と遊ぶのも楽しいし、また来たいな。

 

 さとり様とこいし様のゆっくり妖怪を地霊殿に連れて行くらしいから、もっとさとり様のゆっくり妖怪と仲良くなろう!

 いっぱい遊んで、いっぱいスリスリするんだ!

 

 そう考えてたら、さとり様のゆっくり妖怪がウルウルしていた。

 考えてたの読まれたかな?

 

 もっと仲良くなろう!

 

 

 

 

 

Λ月( ´Д`)ノ~バイバイ日

 

 今日は地霊殿に帰る日。

 

 もうちょっと、銀色の髪のゆっくり妖怪と遊びたかったな。

 あの子、すっごく触り心地が良いから、ずっと抱いて歩いてた。

 

 こいし様のゆっくり妖怪を抱きながら地底へ帰る。

 

 お燐に、あまりゆっくり妖怪を胸に埋めると息が出来なくて苦しいって言われて慌てて離した。

 こいし様のゆっくり妖怪が、こころなしかホッとしていた。

 

 ごめんね、苦しい思いさせちゃって。

 

 でもしっかりと捕まえてないとこいし様のゆっくり妖怪はどこに行くかわからないから、ちゃんと捕まえておいてってさとり様からも言われてるんだ。

 

 最後の朝ごはん、おいしかったなぁ。

 お弁当も持たせてくれたし、参護さん本当にいい人だったね!

 

 お燐もいい人だって言ってたし、死んだら死体貰うんでしょ?

 

 私もたまに見せてね!

 

 魂の方は亡霊になればずっと一緒だし!

 

 

 

 

Λ月(*´ω`*)ポッ日

 

 地霊殿に帰ってから、参護さんが突っ込んでいた場所はきれいに直っていた。

 

 でも、ほんの少しだけ力が残っているみたいで、光苔の成長が早いらしい。

 私は見てても分からないけど、ちょっと明るいって気はする。

 

 こいし様のゆっくり妖怪はお燐と一緒にあっちこっちに行って遊んでいる。

 

 さとり様のゆっくり妖怪は物陰に隠れてビクビクしている。

 

 まだ、地霊殿に慣れないのかな?

 参護さんが言うには、無理やり外に出すんじゃなくて、地霊殿から慣らして、少しずつ旧都に行ったりして積極的になるまで根気よく遊ぶんだって教えてくれた。

 

 さとり様も、私のゆっくり妖怪は怖がりだからゆっくり遊んであげてって言ってたし!

 

 後、なんか私の胸が好きみたいで、歩く時はずっと私の胸に埋もれながら移動するのはどうしてだろう?

 あったかいのかな?

 よく寝ちゃうんだよね。

 

 逆にこいし様のゆっくり妖怪は嫌がるんだ。

 帰ってくる途中で苦しい思いさせちゃったからかな?

 嫌われちゃったかな?

 

 悲しい。

 

 さとり様はこいし様のゆっくり妖怪をよく相手している。

 こいし様も気づいたらさとり様のゆっくり妖怪を連れてどこかに行ってしまう。

 

 帰って来た時さとり様のゆっくり妖怪はフラフラだったりすることが多いんだ。

 

 こいし様、無意識にどこに連れて行っているのか、気になるよね。

 




 お空って難しいね。

 単純に簡単に書こうとすると、内容が全く書けないし、複雑に書こうとするとお空らしくなくなるってこのジレンマ!

 あくまで、私のお空像って奴だから、他の人から見れば、日記ぐらい書くだろって言うかもしれませんが、私のお空のイメージですからご了承のほどを。


追求

アンケートの結果を活動報告にて公開しています。

疑問など有りましたら、活動報告にてコメントお願いします。

ご希望に添えない人もたくさん居ましたが、出来るだけ納得できる理由を書いたつもりです。


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火焔猫燐の日記 Λ月

 お待たせしました。

 アンケート結果は活動報告にあります。
 質問や意見等々はそちらへお願いします。
 メッセージだと同じ質問が来ることが多々ありますのでよろしくお願いします。

 あと、UA50万達成!

 びっくりです。

 四か月ぐらいの期間でこんなに読んでもらえるなんて本当に感謝です。

 それではどうぞ!


Λ月(;^ω^)日

 

 お空がさとり様とこいし様の首だけの妖怪を拾って来て、結構時間が経った。

 

 さとり様は自分の姿を模しているせいか、捨てるに捨てられない気持ちなのだろう。

 一応、先月地底に来た人間が連れていた小さい妖怪も同じ種族だと思い、勇儀さんに聞いたところ、地上に海原参護という専門家がいるという話だった。

 

 地霊殿に二回も突き刺さったあの男の人だね。

 

 鬼と拳で戦ってたから絶対に死んだと思ったけど、意外にも二日後にはまた鬼と戦ってた人間をやめてるお兄さんだった。

 

 旧都まで運んだ時に身体を触ったが、全身にバランス良く付いた筋肉と、全身を巡っていた不思議な力がとても印象的だった。

 

 ああいう珍しいタイプの人は、死んだらきっとコレクションにふさわしい死体ができると思う。

 

 家の場所を覚えておけば、死んだ時に死体をお持ち帰りしやすいはずだ。

 

 妖怪だし、人間の寿命よりは確実に長く生きるし、あのお兄さんが死んだら亡霊にして地霊殿で暮らしてもらおう。

 お空も気に入っているみたいだし、明日はせっかくお兄さんの家に行くんだ。

 

 さとり様と一緒に楽しもうかな。

 

 

 

 

Λ月( ゚д゚ )ボー日

 

 お空が昨日からずっとサイゴさんサイゴさんって言ってたから誰かと思ったら、参護さんを勘違いしてたみたい。

 

 お兄さんの家は人里からも離れていて、かと言って妖怪の領域でもない、そんな絶妙な位置にあった。

 

 中に入ったらビックリしたね。

 

 あの時、お兄さんの身体に漲っていた力が家全体から発されていた。

 

 長い時間を要してあの力を土地や家に染み込ませるように毎日毎日使い続けなければこうはならないだろう。

 

 一瞬驚いたけど、家に入って居間に座った辺りからは慣れてしまった。

 

 体調は良くなるし、なぜか妖怪としての満足感? の様な物が満たされる感覚があった。

 

 妖怪としての満足感と言えば、種族としての行動と人間から得られる畏れから得られるモノだ。

 

 それをこの家は居るだけで徐々にではあるけど、満たしてくれる。

 

 さとり様も首を捻っていたし、気付いているのだろう。

 お空は……、気にしないで他のゆっくり妖怪という首だけの妖怪と遊んでいた。

 

 「スベスベしててキモチイイ!」って言ってたけど、そんなに気持ちいいのかしら?

 

 後で検証してみましょう。

 

 

 

 

Λ月(`・д・´)キリッ日

 

 昨日は客間の布団で寝たんだけど、とてもフカフカで日光を吸収しているのかほんのり暖かかった。

 

 地底では地熱やお空の仕事の関係で暑いぐらいだったから、地上は涼しくてやっぱり落ちつかない。

 

 ここで暖かい布団っていうのは本当にありがたい。

 

 気を抜いて猫形態で家を徘徊してたけど、他のゆっくり妖怪達は何というか警戒心が無い。心配になるぐらいだ。

 

 さとり様のゆっくり妖怪はあたい達に慣れるのですら時間がかかったというのに、ここの娘達はあたいが猫の姿で歩いていようと人の姿で歩いていようと、寄ってきてスリスリと頬を摺り寄せてくるのだ。

 

 さとり様のゆっくり妖怪はお兄さん相手には簡単に懐いてしまって微妙に敗北感を感じたけど、さすがはゆっくり妖怪の第一人者とまで呼ばれる人間だ。

 

 ゆっくり妖怪の秘密の様なモノを教えて貰った。

 

 ゆっくり妖怪とは元になった人物の願望や叶えられなかった姿、あり得た可能性の体現らしい。

 

 さとり様のゆっくり妖怪は、他人の心が読めるために他人が怖いという恐怖に支配されているらしい。

 こいし様は問題無いように見えるけど、一度も見失っていないのだ。無意識を操る能力で認識されない事が多いこいし様の望みなのかもしれない。

 

 お兄さんはずっとさとり様のゆっくり妖怪とコミュニケーションを取っていた。

 涙目でプルプル震えながら頑張ってお兄さんと対面しているさとり様のゆっくり妖怪を不覚にも抱きしめたい衝動に駆られたね。

 

 

 

 

 

Λ月( ̄ー+ ̄)キラーン日

 

 お空がなんか羨ましい、羨ましいって言ってたから何のことか聞いたら、こいし様がお兄さんの背中や足にくっ付いていて、羨ましいのだと言っていた。

 

 理解はできるけど、お空は身体が大人なのに思考が子供染みててハラハラする。

 

 お空の体型でそれをやったら、セクハラも良い所だろう。

 無自覚のセクハラ程たちの悪いものも無い。

 

 しかし、こいし様のゆっくり妖怪は無意識を操る程度の能力を自由に使えるらしい。

 

 頭の上に乗られてたり、お昼ご飯を食べられてたり、こいし様よりも自由に使いこなしている様は複雑な気分になった。

 

 小さい方の鬼が物足りなさそうにお兄さんを見ていたけど、もしかしたら抱き着きたいのだろうか?

 

 

 

 

Λ月(・3・)アルェー日

 

 明日には地霊殿に帰る予定だけど、お兄さんは今日もおいしい料理を作ってくれた。

 

 ゆっくり妖怪との遊び方も教えて貰ったけど、お手玉って中々に難しいことを要求する。

 普通のお手玉ならいざ知らず、ゆっくり妖怪達を下手に力入れて握っちゃって怪我させたら大変だ。

 

 何度か触ったり揉んだりしてたけど、とても柔らかくてスベスベモチモチで、ちょっと力加減を間違うと死んじゃいそうで恐い。

 

 さとり様はお手玉しつつ、ゆっくり妖怪達の心を読みながら接していた。

 実はさとり様、ゆっくり妖怪達と相性が良いのかもしれない。

 

 明日帰るのだけど、こいし様は帰ってくるのだろうか?

 いつも自由な方だから、地上にもよく出かけられるし、何日も帰らない時も多いから心配だな。

 

 こいし様のゆっくり妖怪はさとり様から離れることをしないから、行方不明になることは少ないと思うけど。

 

 

 

 

 

Λ月( ´Д`)ノ~バイバイ日

 

 今日で地霊殿に帰ってきたわけだけど、地霊殿に新しいペットが増えたのは嬉しい。

 

 こいし様のゆっくり妖怪はさとり様の部屋から出てこないし、さとり様のゆっくり妖怪は端っこにいるのが落ち着くのか、部屋の隅でまったりしている。

 

 二人とも早く地霊殿に馴染むといいな。

 

 お兄さんが持たせてくれたお弁当はさっき食べたけどおいしかった。

 普通の料理だけじゃなく、お弁当の様な時間が経つことが前提の料理もおいしいのはびっくりだ。

 

 こいし様のゆっくり妖怪をここに連れてくる時、お空の胸で窒息しそうになったのがトラウマなのか、お空から逃げるようになったのは仕方ないのかもしれない。

 

 さとり様のゆっくり妖怪はお空の胸に挟まれるのがお気に入りらしい。

 と言うか、お空に懐いている。

 

 こいし様のゆっくり妖怪はさとり様やあたいとよく一緒に居るから、さとり様とあたいに懐いてるのだと思う。

 

 お空からお兄さんが死んだら死体をコレクションするのかと聞かれたので、そうだと答えたら私にもたまに見せてね! と言われた。

 亡霊になればずっと一緒だからっていい笑顔で言ってたけど、人間からすれば死は忌避するべきことだから、お空はかなりおっかないことを言ってると思う。

 

 それもお空の魅力か。

 

 

 

 

 

Λ月(*´ω`*)ポッ日

 

 順調にゆっくり妖怪達は地霊殿に馴染んでいると思う。

 

 こいし様は一度帰ってきたようで、さとり様のゆっくり妖怪を連れてどこかへ行ってしまった。

 たぶん、お兄さんの所だろうけど。

 

 帰ってきたさとり様のゆっくり妖怪はフラフラだった。

 他人が怖いのに外に連れ出されたから気疲れしちゃったのかな?

 

 数日間、お兄さんの家にお邪魔して、あの暖かい力をもっと欲しいと思っている。

 

 妖怪は種族としての行動と、人間から受ける畏れの念が生きる糧だ。

 参護さんの家にいる間、両方ともしていなかったけど、不思議と充足した数日間だった。

 

 もしかしたら参護さんの力は妖怪達と人間達の関係を変える程のものなのかもしれない。

 

 さとり様も心なしか気分も体調も良さそうで、機嫌も良かった。

 

 こいし様のゆっくり妖怪と一緒に遊ぶのが何気に楽しいのだろう。

 

 あたいも適当に理由をつけてお兄さんの家に行くのもいいかな?っと計画中だ。

 

 さとり様が何も言ってこないという事は賛成なんだろうし、一緒に行けるようにしたいな。

 




 お燐のイメージはこんな感じなのですが、ご期待に添えなかったらごめんなさい。

 ツイッターでも更新をつぶやくようになりました。

 普段はニコ動やヤフーニュースをコメントしたり、診断を垂れ流したりしています。

 もしよろしければフォローしてやってください。

 プロフィールに追加してあります。


追記
 お燐の一人称を「私」から「あたい」に変更しました。
 指摘してくださった方、ありがとうございました。


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古明地さとりの日記 Λ月

 おまたせしました。

 さとりんの日記です。

 50万UAとかデイリーランキング一位とか、色々ありすぎてガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル状態。


Λ月(;^ω^)日

 

 お空が私とこいしの頭だけの生き物を拾ってきた。

 お空もお燐もよく面倒を見ているけど、初めて見る生き物だし、きちんと飼い方とかを知る必要がありますね。

 

 勇儀さんの記憶の中に似たような妖怪を連れている人間を読み取ることができた。

 

 海原参護さん。

 

 お空やお燐の記憶にもあったけど、家の壁に二回も突っ込んで穴を開けた人間という話でした。

 

 驚くべきことは、その二回とも鬼を相手に戦った時のことだという事。

 

 鬼と言えば、妖怪の中でも最強クラスの強さを誇る者たちで、弾幕ゲームが普及した今でもその強さに衰えは見えない。

 

 それを相手にして生きている人間なんて、想像できない。

 弾幕ゲームであれば、人間が勝つこともあるのは分かるし、そういう目的で作られたゲームなのだから当然。

 だけど、純粋な白兵戦で戦って生き延びた人間など、歴史から見ても私は知らない。

 

 騙し討ち不意打ちで勝った人間はいたはずだけど、一対一で正面から殴り合う人間。

 

 昔、大陸の戦国時代に生きた英雄は一騎当千なんて言うほどの実力があったらしいし、その類かしらね?

 

 今の世界でそんな実力を持つ人間が出るのは考えられないけどね。

 

 

 

 

Λ月( ゚д゚ )ボー日

 

 妖怪は人里の近くなんて中々来ることは無い。

 

 人間に害があるとされている妖怪は特にそうだ。

 

 私は覚妖怪なので、相手の思考を読んでしまう。

 それ故に人間からは避けられる対象であり、私が地底に住む理由でもある。

 

 今日会った海原参護さんという人間は、会う前にお空やお燐から人柄を読み取ってはいたし、鬼と殴り合ったという話からも考えて出した結論が、人間と思わないでおこう、だった。

 

 それを正解だと思ったのは、彼の家の前に来た時。

 

 家全体が凄い力を発していた。

 

 土地全体から生命力が溢れていて、家には独特の力がこびりついているような状態。

 肥沃な大地などという言葉があるけど、まさにこの土地のことを言うのかもしれない。

 

 そして出会った海原参護さん。

 

 確かに人間だった。

 だけど、纏っている力は人間とは思えない。

 

 そして、彼の中に面白い記憶があった。

 私達が描かれている書籍や映像だ。

 

 そしてそれを隠そうとしていること、私のことも知識として知っていて、能力でこの知識がバレることを恐れていた。

 

 これから、この妖怪のことを教えて貰う立場として、関係を悪化させるのは得策ではない。

 関係悪化を防ぐためにも、彼の知識は他言しないことを約束した。

 

 それだけで、参護さんは心から安堵したようで、それを恩として考えて私達を精一杯もてなしてくれた。

 

 おいしい料理、おそらくこいしの分も用意されているだろう布団はフカフカでほのかに暖かかった。

 

 実力としては人外だけど、いい人間であると言う事なのだろう。

 

 お空やお燐のこともあるし、これからも仲良くしていきたいものだ。

 

 

 

 

Λ月(`・д・´)キリッ日

 

 眠っている間も参護さんの力が作用しているのだろう。

 目覚めてからの体調も良好だった。

 

 地底が非常に暑い場所だったこともあり、地上はかなり涼しく感じられる。

 おかげで布団の暖かさを味わえたのは良かった。

 

 今日から参護さんのゆっくり妖怪の育成講座が始まったわけだけど、一年以上彼女達と過ごしているそうで、本当に的確な育成方法だった。

 

 私みたいに相手の考えや感情を読めるわけじゃないのに、彼女たちが喜ぶことをしっかりと理解している。

 

 ゆっくり妖怪達の思考は殆ど参護さんのことばかりだし、参護さんに対してすごい恩義を感じていた。

 

 私やこいしのゆっくり妖怪は初対面という事もあり、遠巻きに見ているだけだったけど、一番参護さんと一緒に居ると言うゆっくり妖怪、ゆっくりパチュリーが二人を連れて参護さんに引き合わせていた。

 

 私のゆっくり妖怪も私と同じ能力があり、そのせいで対人恐怖症のような状態になっていた。

 参護さんはわざと自分の思考を読ませて安心させていた。

 

 思考が読めるという相手に対してなかなかできる事ではない。

 考えが読めるのを知っていて、自分に優しくしてくれる相手は私のゆっくり妖怪も初めてだったのでしょう。恐る恐るではあったけど、寄って行って思考を読んではビクビクしていた。

 

 参護さんは参護さんで、思考が読める相手に「家には色んな娘たちが居るから、大丈夫だよ」って考えていたけど、大物なのかバカなのか、ズレている人だ。

 

 だけど、講義はしっかりとしていた。

 

 ゆっくり妖怪達の食事や魔力などの供給、私が私のゆっくり妖怪に妖力を分け与えると存在感が強まり、丈夫に育つのだそうだ。

 

 事実、博麗の巫女のゆっくり妖怪はこの家のどのゆっくり妖怪よりもしっかりとした存在感と、感情や思考の面でもかなりの成長が見られる。

 なんでも、長い間神社に住み着いている内に博麗の巫女の霊力を日々得ていたそうだ。

 

 参護さんは、このぐらいの存在感になってくれれば安心だと言っていたが、確かに内面的な部分でもこのぐらいになってくれれば安心できる。

 

 

 

 

Λ月( ̄ー+ ̄)キラーン日

 

 今日初めて確認したけど、こいしがやっぱり来ていた。

 

 確認したのが参護さんの背中に張り付いている姿だったけど……。

 

 参護さんの背中への意識を逸らしているのね。

 何がしたいかわからないけど、気に入っているのでしょう。

 

 参護さんは肩を回して不思議そうだったけど。

 そりゃ、人一人分の重さが一日中肩にかかっていれば、肩が凝るのも当然ね。

 

 参護さんはずっと、私のゆっくり妖怪が他のゆっくり妖怪と馴染めるように色々と考えている。

 触れるのも怖がるから、少しずつ指先を触れる程度で慣らしてみるか? とか、まずは他のゆっくり妖怪と触れ合わせてみようか? とか、本当にゆっくり妖怪の先生のような人だと思った。

 

 氷の妖精のゆっくり妖怪と、紫の魔女のゆっくり妖怪が自分たちの能力を使ってかき氷を作っていた。

 イチゴのシロップで頂いたけど、このシロップは参護さんのお手製らしい。

 シロップの感想が聞きたかったようで、思考がそわそわしていた。

 

 この時は中々に年相応に見えて可愛らしいと感じた。

 

 

 

 

Λ月(・3・)アルェー日

 

 参護さんの日記にこいしが落書きをしているらしい。

 

 なにやら参護さんから後悔の念があったので覗いてみたら、普段から萃香さんにセクハラされていて、それが最近無いことを日記に書いたらしい。

 それをこいしが落書きする時に読んでしまい、教育上よろしくないなっと後悔しているようだった。

 

 まぁ、あの娘がその程度でどうこうなる娘じゃないのは私がよくわかっているけど、後悔しているなら少し注意してあげるだけで罪悪感は薄れる。

 注意の仕方にもよるけど、上手な注意は罪悪感を軽くしてくれる。

 

 そうして、参護さんはゆっくり妖怪の講師として、すごい成績を収めてくれた。

 

 私のゆっくり妖怪を他のゆっくり妖怪や私以外の人達と接することがどうにかできる位まで回復させてくれた。

 

 悲観の塊みたいな私のゆっくり妖怪をここまで回復させてくれた。やっぱりそれが参護さんはゆっくり妖怪の専門家なんだなと感じた理由だ。

 

 お燐が死体がどうのと言ってたので、死んだら彼女のコレクションに加わるのかしら?

 そうすれば、亡霊になるし地霊殿で過ごしてくれれば助かるわね。

 

 死後の予約でもあれば取っておきたいぐらいね。

 

 

 

 

 

Λ月( ´Д`)ノ~バイバイ日

 

 今日で参護さんの家にお世話になっていた生活とお別れをして、地霊殿に戻る。

 

 対人恐怖症をある程度克服した私のゆっくり妖怪と一緒だったが、道中お燐がずっと世話をしながらだったので楽に帰ることができた。

 

 こうして地霊殿以外で暮らしてみて思う事は、参護さんの料理の腕に関してだ。

 

 結構な期間お世話になったが、最初の二、三食を済ませてから異様な食事レベルの向上が見られた。

 多分私たちの味の好みを計られたのだろう。

 

 お弁当まで持たせてくれて、ある意味本当に先生の様な感じだ。

 面倒見が良くて、優しくて、強い。

 

 優良物件と言う奴だろう。

 

 事実、稗田阿求とパチュリー・ノーレッジ、伊吹萃香の三人は確実に彼を求めている人達だろう。

 

 恋愛事情は心が読める立場としては、かなり見ていて面白い。

 

 下衆と思われるかもしれないが、推理小説を犯人を知りながら読む感覚。

 いや、犯人を知りながら他人に読んでもらっている感覚かしら?

 

 見ていて微笑ましい気持ちが、他人よりも強く感じられるモノだからついつい気になってしまう。

 

 近々参護さんが来てくれるだろうし、その時に近況を読み取ることにしましょうか。

 

 

 

 

 

Λ月(*´ω`*)ポッ日

 

 地霊殿で目覚めて最初に感じたのは、暑いってこと。

 

 地上はやっぱり季節が顕著に出るから、地底の暑さは中々に堪える。

 

 お空もお燐も参護さんの暖かい力が恋しいようで、物思いに耽っていることが多い。

 

 こいしは多分参護さんの家に行っているだろう。

 あの娘は、気に入ったらとことんだし、ずっと参護さんの背中にくっ付いていたのだ、それなりに理由があるのかもしれない。

 

 私のゆっくり妖怪は、こいしに連れて行かれたようでいなかった。

 

 こいしのゆっくり妖怪は、私の部屋から出ようとしない。

 ずっと私にくっ付いている。

 

 参護さんの講義で、ゆっくり妖怪は元になった人物の趣味趣向が強く出ると言っていた。

 そう考えると、こいしは私を憎からず思ってくれているということだ。

 

 正直な話嬉しい。

 

 お空もお燐も参護さんの家に行く計画を立ててるみたいだし、それに乗るのも面白いかもしれない。

 

 妖怪として畏れを受けていないにも関わらず、空腹感を感じることなく過ごせた。

 

 参護さんの力はもしかしたら、妖怪のあり方を変えるかもしれない。

 本人にその気があれば妖怪の指導者的な立ち位置にすら収まれるほどに。

 

 だけど、参護さんはその気はない。

 断言できるけど、彼はどこまで行っても稗田阿求や人里、ゆっくり妖怪を護ることを至上の目的としている。

 

 参護さんはどこまで行っても今の立ち位置を変えることは無いだろう。

 

 それこそ、人間でなくなったとしても。

 




 さとりんは心が読める分、深い所までかけるのが良いな。

 難産だったけどw


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海原参護の日記 ν月

 遅くなりました。

 熱帯夜に続く熱帯夜で調子を崩しておりました。

 クーラーなんて無い家だし、扇風機と冷風機で乗り切ります。

 お気に入りが4000件突破してました。
 ありがとうございます。

 忘れがちですが、ν=にゅーと読みます。
 これはνガン〇ムとかで有名ですね。



ν月(´ε`; )ウーン…日

 

 改めて、最近の定期的な仕事をまとめて考えてみた。

 

 紅魔館・永遠亭・地霊殿。

 

 この三勢力に対して定期的な仕事があり、月に何度か出張に行くのだけど、それぞれ月に三日ずつの訪問を基本としている。

 

 紅魔館はショートカットゲートがあるからそれほど苦にならないけど、永遠亭は仕事という名のTRPGプレイをするだけだ。ただ、永遠亭は舞空術を使わないととんでもなく時間がかかる。

 そして何よりも地霊殿だ。

 

 舞空術を駆使しても仕事内容によっては一泊する可能性が高く、地底の妖怪達は地上よりも気性が荒かったり、能力的に危険なものが多い。

 勇儀さんに見つかればほぼ模擬戦の流れになり、地霊殿に突っ込むことで訪問って形になる時がある。

 

 ただ、三勢力とも苦労に見合う報酬が用意されていて、実はこれだけで十分暮らせるくらいのお金はもらえているのだ。

 

 と言うか、一勢力の報酬でも十分だ。

 

 おかげ様でかなりのお金を持っているのだが、使う機会が無い。

 精々、それぞれの勢力に行く時にお土産を買っていくぐらいか?

 後は食費や光熱費に使われている。

 

 さすがに、仕事で居ない身で資産が溜まりすぎている。

 里に還元しているけど、溜まる一方なのが大変だ。

 

 だから最近は阿求様に資産管理を任せている状態だ。

 

 きちんと収支計算から何にいくら使ったかとかを一覧にして見せてくれる。やっぱり信頼できる人選だと思う。

 

 阿求様は資産管理を、萃香は俺が居ない間ずっと家を守ってくれている。

 パチュリーさんは家などの劣化を防ぐように魔法をかけたり、Yパチュリーと共同で水を補給したり、阿求様や魔理沙が風邪を引いた時に体調管理をしたりしてくれている。

 

 最近は魔法でいわゆるオートロックなるものを考えているらしい。

 

 俺の家だよな?

 

 

 

ν月(´゚д゚`)エー日

 

 波紋とは仙道の奥義である。

 

 兄貴が俺に教えてくれたことだけど、仙道とは即ち仙人の技。

 しかも奥義だ。

 

 幻想郷において仙人とされる人物は、知識として茨木華扇・霍青娥・豊聡耳神子・物部布都がいたはずだ。

 

 そこからさらに、仙人・邪仙・尸解仙と分かれている。

 

 仙人は不老不死と考えられているが正確には何十年かぐらいに一度、死神のお迎えが来る。

 それを退けることで寿命が延びるらしい。

 

 阿求様の受け売りだが、彼女の知識は信頼性の高いものだ。

 

 彼女達も俺と同じく波紋を使えるのか?

 

 この疑問を解決できる事態が今日起きた。

 

 霍青娥さん、会っちゃったよ。

 

 仕事で外に出て、帰る途中に出会ったのだ。

 話を聞くと、何日か前から目を付けられていたらしいが、家は波紋に溢れていて彼女が使役している宮古芳香が浄化される可能性が高く、俺が外に出ている時に声をかけたらしい。

 

 キョンシー。ゾンビのような存在だが、波紋は生物の生命力を活性化する技。

 ゾンビや吸血鬼などの人の命から力を得る存在には致命的な技となる。

 

 青娥さん達仙人はみんな波紋を使えるらしい。

 だけど、鍛錬自体はさほどしていないようで、常時波紋の呼吸をしていると言うと信じられないような顔をされた。

 

 青娥さんが言うには、仙人としてかなりの力を得られる程の力があるから、仙人として生きてみないか? という誘いだった。

 

 芳香さんは俺から離れた位置で待機している。

 完全に姿を消さないのは俺が青娥さんを攻撃しないか見張っていたんだろう。

 

 一応断ったが、しつこそうだったな。

 

 

 

ν月( ´・ω・)y-~ エト…日

 

 しつこかったです。

 

 家には入ってこないので、外出すると決まって声をかけられます。

 

 俺の所に来る時は芳香さんを連れてきているらしく、家には来れないらしい。

 

 閉じ籠ろうかとも考えたが、諦めるまで断り続けるしかない。

 

 波紋を覚えていながら仙人になっていないのは勿体無いとか、今なら下積み無しで即仙人だよ? とか、まるでセールスマンの様な物言いに苦笑いが出てしまった。

 

 仙道の奥義である波紋の呼吸。

 

 これは兄から自分が使う技の源流である道教についての講義があったので知っているのだが、仙人には修行すれば素質ある無しに関わらずなれるものであるとされている。

 

 道教は八極拳や八卦炉などが代表的な宗教で、国の統治に向かない思想の為、戒律や不殺の思想が強い仏教が取り入れられたとされている。

 

 俺は八極や八卦の知識は無いにも関わらず、いきなり奥義が使える人間であり、青娥さん側から見れば魅力的な弟子候補なのだろう。

 

 いかに仙人が素晴らしいか、たくさん説いてくれたが、今のところそのつもりはないのだ。

 

 それに芳香さんを好きにしていいとか、セールストークの決め手扱いにしても酷過ぎやしませんか?

 

 彼女は健康器具に付いてくるレッスンDVDじゃないんだから。

 

 

 

 

ν月(`д´)ケッ日

 

 あの野郎、助っ人を呼んで説得にかかってきやがった。

 

 物部布都さん。

 

 出会うなり、尸解仙の素晴らしさを語ってやろう! っと語り出したので、相手をせずに仕事場に向かった。虚空にずっと語りかけていたので気付かなかったようだ。

 

 五分ぐらいしたら追いついて来てめちゃくちゃ怒られた。

 

 涙目になってたからちょっと可愛かったが、流石にそれで仙人になるわけにもいかない。

 

 波紋の力を使用して、最終的に布都さんを撒くことに成功したけど、逆を言えば波紋を使わなければ撒けなかったのだ。

 

 アホっぽいけど実力は確かだな。

 

 

 

 

ν月( ;゚∀゚)アララ…日

 

 青娥さんが家に来ないのは護衛代わりに連れている芳香さんが波紋の力に弱く、家にすら近寄れないからだ。

 

 では、昨日来た物部布都さんはどうかと言えば、そんな制約は無いので当然訪ねてきた。

 

 また尸解仙の素晴らしさを語るのかと思ったが、ゆっくり妖怪達を見た途端に目を輝かせて一日中遊んでいた。

 

「なんじゃ、この可愛い生き物は!? プニプニしててスベスベしてて気持ちいいのじゃ!!」

 

 とか言いながら戯れていた。

 

 あれは多分目的を忘れているだろう。

 

 存分に堪能した後に、夕飯まで食べて帰っていった。

 

 うん、別にかまわないんだ。

 

 結構毎回こんな感じだし。

 

 ただ、すっごいいい笑顔でまた遊ぼうとゆっくり妖怪達と約束している姿は、完全に目的を忘れているだろう。

 青娥さんが頼んだことのはずなので、帰ったら怒られないだろうか?

 

 大して興味も無いのに布都さんの心配をする必要もないのだろうが、あれだけ気を抜いている姿を見ると、どうしても怒られる姿を想像して罪悪感が……。

 

 

 

 

ν月ヾ(゚Д゚ )ォィォィ日

 

 青娥さんと布都さんが訪ねてきた。

 

 布都さんを連れて来ているから芳香さんはお留守番にしたそうだ。

 その布都さんは半ベソかいてた。さすがに怒られたか……。

 

 邪仙と尸解仙のアピールをされたが、やはりどんな説明をされても仙人になる気にはならなかった。

 

 青娥さんは色仕掛けもしてきたが、萃香のセクハラにさらされ続けたから動じなかった。

 残念そうにしてたが、納得はしてくれただろう。

 

 布都さんは説明が終わると同時にゆっくり達と戯れていた。

 そんなに気に入ったのか。

 

 青娥さんの説明はフリップを多用した親切設計で、分かりやすく健康番組を見ている気分になったが、やっぱり人間としてやれる所までは人間として居たい。

 

 それに現状、阿求様やゆっくり達を護るのに支障が無いので死神に追われるリスクはまだ負いたくないのだ。

 

 

 

ν月(+o+)日

 

 昨日の仙人二人組の勧誘を見ていたYパチュリーから状況を聞いたのだろう。

 

 パチュリーさんが仙人になるのか? と聞いてきた。

 

 そのつもりはないと言うと、長寿を求めるなら魔法使いも捨てがたいものだと勧められた。

 

 なぜみんな俺に人間を辞めさせたがるのか?

 

 先日も永遠亭で輝夜さんが蓬莱人にならない? と聞かれて壺を出された。

 

 油断していたら蓬莱の薬を一服盛られていたかもしれない。

 

 毒を盛られるならよく聞くが、不老不死の妙薬を盛られるなんて前代未聞だぞ。

 

 Yパチュリーは当然のように魔法使い推し。

 

 他のゆっくり妖怪達はそれぞれあるが、基本的に種族を変えた方が良いと考えているようだ。

 

 紙に蓬莱人・魔法使い・仙人と書かれた物を床に置くと、それぞれ希望している所に集まった。

 

 蓬莱人 :Yチルノ・Y大妖精

 魔法使い:Yパチュリー・Y咲夜・Y小悪魔・Y美鈴

 仙人  :Y霊夢・Y幽香

 

 きゅうけつき:Yレミリア・Yフラン

 

 YレミリアとYフランはわざわざ自分で紙を書いて選択肢を作っていた。

 

 なぜ、人間の選択肢が無いのだろうな。

 みんな俺に人間をやめろと言うか。

 

 まぁ、改めて考えれば鬼と三日で二回も闘うのは確かに人間業じゃないかもだが。




 今回は参護さんの岐路。

 スカウトに来た仙人の方々とそれに触発された長寿な方々。

 ゆっくり妖怪達も長生きしてほしいのでしょう。

-追記-

 ν月(´゚д゚`)エー日 にて、霍青娥たち仙人が波紋を使えるかどうかを追記しました。


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霍青娥の日記 ν月

 お待たせしました。

 霍青娥の日記です。

 彼女に限らずに、神霊廟のキャラ達は難しいです。

 キャラの性格は色々と二次側で固まってきているようなのですが、私がまだまだ慣れていないのです。

 新作のキャラが怖いです。

 感想がいつの間にか1000件超えてました。
 ありがとうございます。

 全返信できているのですが、たまに悲鳴あげるほど感想が届くときもあり、返信が大変ですw


ν月(´ε`; )ウーン…日

 

 随分前に仙人にふさわしい人間を見つけた。

 

 だけど、その人間は芳香が苦手とする生命力を活性化する技を使い、家全体が聖域の様な別の空間になっていた。

 

 一瞬仙境かとも見間違えるほどの肥沃な大地と清浄な空気。

 

 原因は分かっている。

 彼が使う仙道の奥義である波紋と紅魔館の門番に師事して覚えた気功、その両方を使い続けているため土地が、建物が、空間が活性化している。

 

 確かに波紋は仙道の奥義で、私だって使える。

 だけど、日常的にするものじゃない。

 

 使える仙人は多いけど、使いこなせる仙人を私は知らない。

 

 元々瞑想しながらする呼吸法であり、彼の様に戦闘中も呼吸を乱さないで波紋を練り続けることはかなり難しい。

 

 私もできるかどうかだ。

 

 近年稀に見る才能だと思う。

 仙道の奥義だけを習得し、それをここまで極めている。

 日々の鍛錬も欠かさず、人当たりも良い。

 

 むしろ、これで仙人じゃないというのが不思議だ。

 幻想入りした人間だという話だったが、勧誘とか来なかったのかしらね?

 

 これだけ仙人に成る為に生まれてきた様な人間はいない。

 

 是非とも仙人になってほしい。

 

 だけど、妖怪を打倒するほどの実力者。

 敵対しなければ平気だろうけど、まかり間違っても鬼と戦える戦士と戦うなんて考えたくない。

 

 だから、護衛役に芳香を連れて行かなきゃならない。

 だけど、芳香は彼の家に近付けない。

 

 だったら外出時に接触しましょう。

 

 観察してると彼の家は多数の実力者が出入りする場所でもあるから、多数に囲まれてしまう可能性もあるのだし、避けておきましょう。

 

 

 

 

 

ν月(´゚д゚`)エー日

 

 外出時を狙って接触した。

 

 名前は海原参護様。

 

 近付いただけでも感じるほどの波紋の奔流。

 

 常時波紋の呼吸をしているなんて普通考えられない。

 私の知っている仙人は全員波紋を習得して使えていると思っていたけど、彼を見てその認識は甘かったと考えを改めた。

 

 この男は強い。

 

 仙人は常に鍛錬を続けていて、百年ぐらいに一度来る死神を追い返す。

 この男はそんな私達仙人の練度に届こうかという程に実力がある。

 

 何で仙人じゃないんだろう?

 

 勧誘は断られたが、簡単にはあきらめない。

 まだまだ勧誘は続けよう。

 

 これほどの逸材を放置しては勿体無い。

 

 

 

 

ν月( ´・ω・)y-~ エト…日

 

 やっぱり、芳香を連れていると家の方に直接行けないのが大変だ。

 

 下積みも無く、心構えを覚えてもらうだけで仙人になれる逸材なんて、宝石の原石どころか裸石を見せられた気分。

 

 どの宗派にも言える事だけど、基本的に奥深くて極めるというのは難しい。

 

 奥義だけを覚えている人間なんてまず居ないはずなのだけど、彼の家族は彼以上の使い手という事だ。

 

 しかし、不思議と魅力を感じない。

 納得がいったのは、なぜこれだけ強いのに鍛錬を真剣に続けられるかだった。

 

 自分以上に強い相手を知っていて、それに向けて努力を続けている。

 

 求道を体現しているのか?

 

 そう思えるぐらいに実力と努力の割合がおかしい人だ。

 

 試しに芳香を自由にしていいよって話してみたけど、逆に説教されてしまった。

 

 いや、ひどいことする人に私の芳香ちゃんを自由にしていいって言うわけがない。

 ちゃんと冗談でも相手は選んでる。

 

 芳香ちゃんも意味分かってないのか、私が説教受けている最中も、?を浮かべながら待機していたし。

 

 うん可愛いわね!

 

 

 

 

 

ν月(`д´)ケッ日

 

 芳香の調子が悪い。

 足の辺りが活性の影響で浄化されかけていた。

 

 今日明日で治してあげないといけない。

 

 偶々近くにいた物部様に勧誘を頼んだのだけれど、話を無視された上に全力で逃げられたらしい。

 

 彼女も波紋を纏って追いかけたのだけど、全力疾走で呼吸を乱さずに木々を縫うように走って、岩場を飛び回り、水の上を走り回り、空を飛んだ時も相当無茶苦茶な軌道を描いて逃げたらしい。

 

 かなり悔しがっていた。

 

 物部様から逃げ切れるなんて、やっぱりかなりの実力者だ。

 

 なんで、あんな人間が野に埋もれていたのか?

 

 とっくの昔に人間から別の存在になっていてもおかしくない。

 

 仙人だけじゃない。

 魔法使い・転生妖怪・転生悪魔・蓬莱人・現人神・鬼人など、人間からなれる他種族は多い。

 

 だというのに、彼はずっと人間だ。

 幻想入りした頃から強かったらしいので、どの種族も放置していた。

 こんな逸材、早々お目にかかれないというのに。

 

 これにどんな理由があるのか?

 

 興味は尽きないわね。

 

 

 

 

 

ν月( ;゚∀゚)アララ…日

 

 昨日、あまりにも悔しそうだったので物部様に海原様の家を教えた。

 

 私は芳香が居るから行けないけど、物部様なら問題無いだろう。

 

 そう考えていたのだけど、帰ってきた彼女は満面の笑みで、

「ゆっくり妖怪達がすっごく可愛かったのじゃ! 抱っこするとプルプル震えて気持良かったのじゃ!」

 なんて言うものだから、目的を忘れてきたなと簡単に想像がついた。

 

 私が芳香ちゃんを治している最中に遊んでいたわけだ。

 

 別室でじっくりとお話をしたのは仕方ありませんわよね?

 

 

 

 

ν月ヾ(゚Д゚ )ォィォィ日

 

 護衛の芳香の代わりに昨日の失態を補わせるためにも物部様を護衛にして、海原様の家に行ってきた。

 

 昨日お話をし過ぎたのか、ずっと涙目だったが役目は果たせるだろう。

 

 色々と仙人の魅力を説明するため、色々と準備してきたけどまったく彼の心は動かなかった。

 

 最終手段で、こういう真面目なタイプは色が苦手な場合が多い。

 私もそれなりに容姿に自信があるから、初心な反応を期待して色仕掛けを試してみたのだけれど、まったくと言っていいほどに反応が無かった。

 

 服をはだけてみたり、胸を押し当ててみたり、艶っぽく囁いてみたり、色々したのだけれど参護さんは笑いながら全スルー。

 

 感触を楽しむとかしているなら、まだ女の魅力的な部分での自信が傷付くことも無かったのだけれど、笑いながら避ける上に、逆に説教されてしまった。

 

 ちょっと落ち込んでしまった。

 

 こうやって私が海原様を勧誘している最中にも、物部様はゆっくり妖怪達と戯れていた。

 と言うか、海原様の説得よりもゆっくり妖怪達と遊んでいる時間の方が長かった。

 

 ……今日もお説教かしらね?

 

 

 

 

 

ν月(+o+)日

 

 昨日はやりすぎてしまったかしらね?

 

 海原様が予想外に手強くて、物部様に八つ当たりの様な事をしてしまった。

 

 しかし、直接的な誘いはダメとなると、まずは仲間を集めることにしましょう。

 

 物部様はゆっくり妖怪達を気に入っているようですし、海原様を勧誘に成功すればその妖怪達と一緒に暮らせると説得して、蘇我様と豊聡耳様は仙人にふさわしい人間がいることを教えましょう。

 

 特に豊聡耳様は面倒見が良い方ですし、海原様の本質を見抜ける人物だ。

 

 その本質から上手く海原様に最適な勧誘方法を考え付くかもしれません。

 

 私の考えなんて承知なのでしょうが、海原様の実力や人柄に関しては一切嘘を言っていない。

 

 ならば、豊聡耳様も興味を持たれるでしょう。

 

 彼女以上に波紋を練れる人間なんて、たぶん幻想郷では海原様ぐらいだ。

 

 お話しすると非常に興味を持たれていたようですし、思惑通りといった所ですわ。

 

 さて、他にも心当たりに説得を依頼しましょうか。

 




 青娥さんマジ黒幕。

 と言う事で、そのイメージで書かせていただきました。

 布都ちゃん中々良いキャラしてますわ。


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物部布都の日記 ν月

 たくさんの感想を毎回いただきまして、ありがとうございます。

 もう五か月目に入るこの東方饅頭拾転録ですが、個人的にここまで続くと考えてなかったもので、びっくりでございます。


 私事ではありますが、明日は会社へ宿泊予定ですので更新はありません。

 感想の返信も遅くなりそうな予定ですが、きちんと読んで返信します。

 それではお楽しみください。


ν月(´ε`; )ウーン…日

 

 最近青娥殿がよく出かけておる。

 

 芳香も一緒に連れて行くから、危ない所にでも行っているのであろうか?

 

 先日も青娥殿が我に仙境に関して聞いてきた。

 

 この辺りに仙境なんてそうは無い。

 

 いくつか覚えておるが、新しい場所なんてそう出来るわけでもなかろう。

 

 下地がある土地もいくつかあったと聞いておるが、それでも仙人がそこに住んでから長い年月が必要になるはずじゃった。

 

 それは青娥殿も理解しておるじゃろう。

 

 どうしたんじゃろうな?

 

 

 

 

 

ν月(´゚д゚`)エー日

 

 青娥殿が帰ってきた時に、少々悔しそうな顔をしておった。

 

 どうやら素質のある人間の勧誘に失敗したとのことじゃった。

 

 青娥殿が勧誘に失敗するのも珍しい。

 

 話を聞くと男と言う事じゃったし、青娥殿は美人じゃから大抵の男はホイホイ付いて来るそうなのじゃがな。

 

 どうも、人里で何度も話を聞いたことのある人間らしい。

 

 妖怪を撃退したとか、鬼と殴り合っているとか、逸話の多い男じゃったが、話には尾ひれが付くものじゃし、意図してそれを流しておるのなら小物も良い所じゃと思い、放置しておったが……。

 

 青娥殿の反応を見ると、噂に偽り無しと言う所じゃろう。

 

 彼女が目を付けたならすぐに仙人の道に来るじゃろう。

 

 先達として我も仙人の基本を教えてやろう。

 

 

 

 

 

ν月( ´・ω・)y-~ エト…日

 

 今日も青娥殿は勧誘に失敗したようじゃった。

 

 昨日から拗ねる青娥殿と言う珍しいものを見ておるのじゃが、今日は芳香を抱きしめながらブツブツと文句を言っておった。

 

 どうも、冗談で芳香をダシにして勧誘したらしいが、逆に説教を受けたようじゃな。

 

 中々に高潔な精神を持っておるな。

 

 結構知っておる者も多いが、仙人は欲を抑える必要がある。

 

 色欲などが代表的じゃな。

 

 じゃが、色欲を抑えられる人間なんぞ、そう居らぬ。

 

 政敵を失脚させるにも美人局というのは有効的じゃった。

 じゃが、それが効かぬ相手は決まって、色欲を超えるほどの欲を持っておった。

 

 決意、もしくはそれに準ずるものじゃな。

 

 その男、若い身空で色欲を超える決意を持つなど並大抵なことではなかろう。

 

 青娥殿から勧誘の助力を頼まれたことじゃし、件の男をこの目で見てくるかの。

 

 

 

 

 

ν月(`д´)ケッ日

 

 あの者の資質はとんでもないのう。

 

 話を無視されて、大人気も無く波紋を使って全力で追いかけてやったわ!

 あの驚く表情は愉快じゃったな!

 

 じゃが、あの男の波紋の呼吸はどうなっておるのか?

 

 不動の姿勢で丸一日呼吸を続けるという修行もあった。じゃがあの男動きながら波紋を変わらず練り続けておった。

 

 我の波紋の倍以上は練っておったし、我以上に長い時間、呼吸を続けていた。

 

 我も尸解仙になったばかりじゃし、青娥殿ほどの波紋は使えぬ。

 しかし、あの男の波紋は異様じゃ。

 

 いや、波紋ではなく波紋の使い方かの。

 

 木の幹から幹へ飛び移り、岩場を縦横無尽に走り回り、湖の上を地上と同じように走り抜ける。

 

 最終的に空中で追いかけっこをしていたのじゃが、あの飛び方は全身に負担がかかるはずじゃ。

 それを意に介さずに飛び回って、平気なんじゃろうな。

 

 波紋で痛みを和らげて、負荷がかかった全身も波紋で癒しておるのじゃろうな。

 

 仙人の技で人間に負けた。

 

 ああ、やっぱりこうして書いているだけでも腹立たしいのじゃ!

 

 

 

 

 

ν月( ;゚∀゚)アララ…日

 

 青娥殿が海原殿の家を教えてくれた。

 

 昨日相当悔しい思いをしておったから、気遣いじゃろうな。

 

 ありがたく家に行ってみると、まさに仙境じゃった。

 

 いや、正確には違うのじゃろうが、何百年も仙人が住んでいる地、そこと同じぐらいの聖域が出来ていた。

 

 随分前に来た時は普通の荒れた家屋があっただけじゃったのにな。

 

 しかし、家に行ったら何とも言えない生き物がおった。

 

 海原殿に許しを得て抱かせてもらったが、あの触り心地はクセになる。

 

 そんな素晴らしい生き物がここにはいっぱいおった!

 

 抱き締めておると他の娘達も擦り寄って来て、我の肩に乗ったり、膝に乗ったりと可愛いことこの上なかった。

 

 しかも、夕飯まで御馳走になってしまい、海原家を堪能して戻ってしまった。

 

 帰った時に青娥殿に説教を食らってしまった。

 

 参護殿の愚痴が大半じゃったが、我が楽しんでいる間に青娥殿は芳香の修復をしておったのじゃし、仕方がないの。

 

 

 

 

ν月ヾ(゚Д゚ )ォィォィ日

 

 昨日の説教を思い出してちょっと涙が出たが、誰にもバレてはおらぬだろう。

 

 仙人の説明をした後、再びゆっくり妖怪なる者達と一緒に戯れた。

 

 青娥殿が直々に色仕掛けをしておったが、海原殿は相手にしておらなかったな。

 

 かなり慣れているのか、上手に躱して説教しておったな。

 

 全部躱されたら、次は紙に絵を描いて置いたモノを順番に見せながら説明し始めた。

 説明を聞いていると思わず我も仙人になりたくなったが、よくよく考えれば我も仙人じゃったな!

 

 しかし、あれだけの色仕掛けと説明を受けても揺るがない決意か。

 

 強敵じゃな。

 

 

 

 

 

ν月(+o+)日

 

 昨日、青娥殿に八つ当たり気味に怒られた。

 

 確かに、我も海原殿を説得せずにずっとゆっくり妖怪と戯れておったが、あれは絶対に八つ当たりじゃった!

 

 確かに、小さい羽の生えたゆっくり妖怪を三人ほど相手にしてずっと戯れておったけど!

 お菓子をあげて、食べる姿を眺めて癒されておったけど!

 

 あんなに怒ることは無いじゃろう!

 

 青娥殿は太子様に助力を乞うらしい。

 

 太子様なら、あの男の本質を読めるじゃろうな。

 

 気になる。

 

 あの色に堕ちぬ決意はどこから来るのか?

 

 こうして考えれば、あの男は下手な仙人よりも仙人らしいのかもしれぬな。

 




 最近、色々な新人さんや好きな作者さんが面白い小説をたくさん上げてくださっていて、個人的にすごくうれしいです。

 東方・ネギま・なのは・ゼロ使の四大転生小説ジャンルなんて言われてた頃が懐かしいですね。

 四ジャンルとも未だにすごい勢いがありますし。

 新しい人気ジャンルもできてて嬉しいですね。


-お知らせ-

 活動記録にてお知らせとアンケートをあげておきました。
 詳しくは活動記録にてお願いします。


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海原参護の日記 Э月

 お待たせしました。

 参護日記です。

 土日は更新は難しいのでそれ以降です。待っていてね!

 後、蒼雲さん。
 推薦をしていただいてありがとうございます!

 しかも中々の高評価だったし、びっくりです。


Э月(;一_一)日

 

 定期的に仙人の勧誘が来るようになっている。

 

 そろそろまた勧誘が来るだろうな。

 

 あれだ、向こうの世界でのセールスマンの様に足繁く通ってくるのだから疲れる。

 

 青娥さんはなんかもう意地の様な感じになってるし、布都さんは来るには来るけど殆どゆっくり妖怪達と遊びに来ているようなものだ。

 

 つまり、仙人への勧誘に一番熱心なのは青娥さんだという事だが、彼女が帰り際に明日は別の人が来ると言っていた。

 

 仙人としての心当たりは二人。

 

 二人の内、一人が青娥さんと比較的仲が良かったはずだ。

 

 彼女のもてなしを考えないとな。

 

 仙人になる気は無いが、ウチに訪ねてくると言うなら話は別だ。

 

 害意が無い限り、お客なのだからおもてなしは必要だ。

 

 

 

 

Э月Σ(゚∀゚ノ)ノキャー日

 

 予想通りの方が来た。

 

 豊聡耳神子さん。

 いや、さん付けでも失礼ではないかと思うが、彼女本人が別にいいと言っていたのでさん付けで呼ぶことにした。

 

 初対面での一言が、「なるほど、青娥でも無理な訳ですね」だった。

 

 青娥さんに頼まれて来たそうだけど、俺を見て仙人に勧誘するのは無理だと考えたようだ。

 

 元々、噂に聞いていた俺を見に来たと言うのが本当の所らしい。

 

 布都さんが俺のことを面白いと伝えていたようで、神子さんもどこか満足そうに頷いていた。

 

 そこからは、神子さんの分かりやすい波紋と気功の使い方講座を聞いていた。

 

 さすがは天才を超えて神格化すらされる人だ。

 

 銀色の闘気を見ただけで再現して見せた。

 展開時間は長くないけど、彼女ならすぐにでも超えていきそうだ。

 

 神子さんはと言うと、新しい力が楽しいらしく、色々と聞いて来たり、改善案を提示してきたりと、テンションが高めになっていた。

 

 神子さんほどの才能があると、一つ新しい力を得れば、他の力との応用が面白いように浮かんで来るらしい。

 

 試したり、検証したり、結構科学者気質な所があるのかもしれない。

 

 

 

 

Э月(゚д゚)(。_。)ウンウン日

 

 今日は布都さんがゆっくり妖怪と遊びに来た。

 最近は勧誘すらしない。

 波紋の呼吸をするとゆっくり達が寄ってくる事を覚えたのか、波紋の呼吸を長時間出来る方法を割と真剣に考えていた。いいのかそれで。

 

 ゆっくり達も布都さんと遊ぶのが楽しいらしく、五目並べをしている姿を見た時は驚いたモノだ。

 

 ちなみに勝者はY幽香。

 

 何気にゆっくり達はゲームに強いのだ。

 

 神子さんが楽しそうでお礼を言われた。

 今は修行して銀色の闘気の活用時間の延長を図っているそうだ。

 

 今の所、波紋の強さ的には俺・神子さん・美鈴さん・青娥さん・布都さんとなる。

 そのうち、神子さんには追い越される気がする。

 

 美鈴さんは元々気功が使える人だったからか、波紋を覚えてからは順調に練度を上げていた。

 

 最近はY美鈴にも波紋を教えてみようと画策中。

 

 布都さんは俺に波紋を使った追いかけっこで負けたのが悔しかったらしく、度々鬼ごっこが勃発する。

 

 殴り合いじゃないので平和なものだ。

 波紋を練ってスタート、追い付くか身体に触れれば終了。

 制限時間いっぱい逃げ切れば俺の勝ちだ。

 

 あれだ、こんな平和な勝負ならいつでも歓迎だ。

 

 

 

 

Э月( ;´Д`)ウッ…日

 

 神子さんはやっぱり天才だと思う。

 

 銀色の闘気を長く使うために波紋と気功をそれぞれ鍛えているが、双方の上達が早い。

 

 布都さんとやっている鬼ごっこの話をしたら、それを銀色の闘気でやりたいと言い出した。

 

 やってみたが、想像以上にきつかった。

 

 今まで萃香や勇儀さん相手に戦い目的でしか使ってこなかった。

 だけど、神子さんと鬼ごっこで使うとなると更に細やかなコントロールが必要になる。

 

 気を抜くと地面が抉れたり、バランスが崩れたりと細やかな操作の粗さを目立たせてくれる。

 

 この鍛錬方法を個人で考え付いたのか。

 

 とりあえず、神子さんと二人で萃香と最初に戦った場所で試しに鬼ごっこをやったけど、穴だらけになった。

 クレーターもできたし、ブレーキをかけたら電車道のような跡が付くし、戦いだと気にも留めなかった色々な甘い部分が見えてきた。

 

 もしかしたら神子さんは俺に足りない部分をこうして鍛えてくれているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

Э月(ΦωΦ)フフフ…日

 

 布都さんは今日もゆっくり達と戯れていた。

 

 ゆっくり達を集めて並べると、細い棒を取り出して振る。

 すると、集められたゆっくりたちは歌い出した。

 

「ゆー、ゆーゆゆー!」

 

 歌うと言うよりコーラスっぽいが、何時の間に仕込んだのやら。

 

 Yパチュリーも知らなかったようで俺の頭の上で驚いていた。

 

 終わった後の布都さんにドヤ顔をされた。

 

 ちょっと、頬を引っ張ってしまった俺は悪くないと思う。

 

 

 

 

 

Э月(`・д・´)キリッ日

 

 神子さんの能力は、相手の本質を見抜くタイプのものだ。

 

 俺の本質の一部を見事に言い当てた。

 

「強すぎる人を身近で見続けて、尊敬と同時に自分と比較して見てしまう。貴方はそれでも腐らずに努力を続けてきた。ここまでの意思を持てる理由は何でしょうか」

 

 俺が兄貴を見て実力差に絶望しながらも、鍛錬を続けられる理由。

 

 簡単だ。

 

 阿求様とゆっくり達を護ること。

 別に永遠の命も、巨万の富もいらない。

 

 神子さんは珍しい欲の形だと言っていた。

 多くの欲をその耳で聞いてきた彼女だからこそ言えることだろう。

 

 俺の欲を全部読んだわけじゃないようだけど、それでも少ない情報でここまで欲望を把握されるなんて、本当に尊敬すべき人だ。

 

 

 

Э月(∩´∀`)∩ワーイ日

 

 珍しいことに、神子さんと布都さんが二人で来た。

 

 布都さんは神子さんにゆっくり妖怪達を紹介していた。

 

 神子さんは首をかしげながら、ゆっくり達に餌をあげていた。

 

 可愛かったからつい、とのことだった。理解はできる、ついついご飯をあげたくなってしまうからね。

 

 神子さんはY美鈴を抱くと、気持ちよさそうに抱き枕の様にしっかりと抱きしめていた。

 

 耳が良すぎるからだろう、雑音のせいで眠りが浅いのかもしれない。

 

 Y霊夢が防音の結界を張っていた。

 眠そうな彼女を放っておけなかったと言う事だろうか?

 

 神子さんから教えて貰ったが、芳香さんが波紋の余波で足元が崩壊しかけていたらしい。

 

 波紋は吸血鬼やゾンビの様な不活性な身体を持つ妖怪や、太陽の力を纏うので太陽が苦手な妖怪には強い。

 

 ゆっくり妖怪達はなぜか、波紋を好むものが多い。

 

 色々な力を吸収するゆっくり妖怪にとっては、お肉の様な物なのだろう。

 腹も膨れて、スタミナもつく。

 ゆっくり妖怪達にとってはそういう食べ物なのだろう。

 

 二人はまだゆっくり妖怪達の魅力を語っていた。

 

 可愛いのは良くわかるけどな。

 

 鬼ごっこが三人に増えたのは驚いた。

 だけど、これも良い鍛錬だ!




 活動報告にも書きましたが、お知らせとちょっとした質問があります。

 興味があったらどうぞ。

 それでは、異様な疲れと眠気を寝ることで解消しに行ってきます。

 また読んでくださいね!


-追記-

Э月(∩´∀`)∩ワーイ日 にて後半、脈絡がない部分がありましたので修正しました。


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豊聡耳神子の日記 Э月

 熱中症って意識の混濁だけではなく、頭痛や手足が攣ったりするんですね。

 超痛い。

 さてさて、Э→えー と言うロシア字です。

 神子さんのキャラがブレブレかもしれませんが、それでも良ければどうぞ。


Э月(;一_一)日

 

 青娥が最近一人の人間相手に苦戦しているらしい。

 

 暇を見つけては通っているようで、布都も同じところに行っている。

 

 青娥の心は喜びと焦り、苛立ちと挑戦心が垣間見えていて、放っておいても大丈夫でしょう。

 だけど、彼女にこういう感情を与えられる相手にも興味がある。

 

 布都の話では、波紋の呼吸は普通の仙人では手も足も出ない程に習熟していると言う話だ。

 

 人間なのに仙人の奥義を使う。

 

 それだけでもとても惹かれる話ですが、鬼やあのフラワーマスター相手に武器一つで戦う事の出来る人間だと言う話を聞けば、是が非でも仙人の道に入ってほしい。

 

 しかし、青娥が誘っても来ないと言う事は何かしらの意思があるという事。

 それが何か、気になりますね。

 

 

 

 

 

Э月Σ(゚∀゚ノ)ノキャー日

 

 海原参護。

 彼の在り方は、ひどく歪だった。

 

 参護の家に行った時に最初に驚いたのが、仙境の様な家とその周囲の空間でした。

 

 日常的に波紋の訓練をしていると聞いていますし、その練る量の多さから考えて、仙境は波紋の訓練を長年続けていた土地に形成されるのではないか? という仮説が立てられる。

 

 次に驚いたのが、彼の内面。

 

 凪いだ海の様な、燃え盛る火柱の様な、金剛石の様な、内面。

 

 自身に与えた護る対象を守り抜く金剛石のような決意、その為に何を犠牲にしようとも構わないという炎の様な決意、そしてそれらをやり抜く凪いだ海の様な心。

 

 なるほど、何を護りたいのかは分かりませんでしたが、これは青娥でも無理でしょう。

 

 そして一番驚いたのが、銀色の闘気。

 

 波紋と気功を練り合わせることで双方の特徴を活かした新たな力になるという事を知ることができた。

 

 少々癖がありましたが、上手く使えたのは僥倖(ぎょうこう)です。

 参護は指摘したらすぐに修正し、想像以上の結果をもたらしてくれる。

 

 これは調べる価値があると思います。

 

 

 

 

 

Э月(゚д゚)(。_。)ウンウン日

 

 少し前から布都は参護と鬼ごっこという名の波紋の練度比べをしている。

 

 布都の練度だと負けて当然ですが、競い合う事で確実に布都の実力は上がっている。

 

 自分の領域を侵されない限りは、紳士的で人当たりも良く、気が利いていて面倒見も良い。

 

 そして、自身の領域を犯した者に対しては全身全霊を持って戦う。

 天狗の新聞によると、里を襲った中級の妖怪を倒したという話だ。

 

 人間が妖怪に勝つには特殊な力を用いる必要がある。

 参護は波紋や気功を持っているし、銀色の闘気がそれにあたるだろう。

 

 しかし、話では銀色の闘気を会得したのは、件の妖怪を倒した後だと言うではないか。

 

 つまり、波紋を使った彼だけの奥義があるはず。

 

 それこそ格上の相手を倒せるほどの逆転の一手になる技が。

 

 戦い自体は好まないようですし、模擬戦でも見せてはくれないでしょう。

 

 そうなれば、純粋に彼が怒った時の戦いになりますが、それも容易にやるわけにはいかない。

 

 参護自身もそうだけど、彼の家に出入りしている者達はみんな高い戦闘能力を持っていたり、参謀とも呼べる頭脳を持っている者が多い。

 

 参護を怒らせ、排除対象として見られた場合、彼を仙人にするどころか我々が幻想郷という世界から追い出される可能性もある。

 

 彼の技。

 

 時期が来るのを待つのが賢明ですね。

 

 あと、布都が負けて悔しそうでした。

 

 いつもギリギリで躱されると言っていたが、勝つにしても度合いを調整しているのだろうか?

 だとすれば彼は師に向いている。

 

 あれだけの強さを持っているのに、無力であることを知っているのは珍しい。

 そういう人間は、誰かを教え導ける。

 

 

 

 

 

 

Э月( ;´Д`)ウッ…日

 

 銀色の闘気の持続時間が停止状態で十分、行動しながらだと五分程しか持たない。

 

 参護は行動しながら三十分は最良の状態を維持し続ける。

 

 こればかりは、普段の波紋の練度でしょう。

 

 布都がやっている鬼ごっこというものを体験してみたくなり、参護に頼んだ。

 しかし、参護は修行と捉えたようで、銀色の闘気を纏った状態で全力の鬼ごっこをやることになった。

 

 呆れたのは参護の出力だ。

 加減を間違えて地面を抉り、ブレた力が噴出すると身体がよろめく程だ。

 あれだけの出力を三十分持たせられるだけの力量。

 

 どれだけの修練を積んだのだろう?

 

 良き師、才能、驕らず続ける努力。

 

 どれが欠けても今の参護はいないだろう。

 

 鬼ごっこ中はずっと間違えては修正を繰り返していたから、自分の癖もかなり習熟しているでしょう。

 

 軽く追い詰めてみたりもしましたが、切り札を使う気配は無し。

 出し惜しみをする人ではないので、負担が大きい技の可能性もありますね。

 

 中々に楽しい時間でした。

 

 

 

 

 

Э月(ΦωΦ)フフフ…日

 

 銀色の闘気。

 中々に応用が利くようですね。

 

 仙人であり、神霊ともなったこの身に無限強化・無限活性を引き起こす力はそうそう無い。

 

 たった五分。

 その間に増幅される力は相当なものだ。

 

 参護はそれを三十分。

 戦いながら加速度的に強くなっていく。

 

 それなら確かに鬼とも戦えるはずね。

 

 彼の言っていた、銀の更に上を目指すためにも、銀色の闘気を早くモノにしたい。

 

 

 

 

Э月(`・д・´)キリッ日

 

 参護の欲の一端。

 

 誰かを、何かを護ること。

 その為なら、何もいらないし、何でも手に入れる。

 

 珍しい。

 いや、誰かを護る人間は確かにいる。

 だけど、彼の行動はそれだけの為に出来る行動でもない。

 

 歪な人間は昔からたくさん居ましたが、参護の歪さは毛色が違いますね。

 

 やっぱり面白い人ですね。

 

 

 

 

Э月(∩´∀`)∩ワーイ日

 

 普段布都が参護の家で何をしているか気になったので、今日は二人で彼の家に行ってきた。

 

 彼の家にいる時に色々とお茶を出してくれたり、お菓子を出してくれたりしていたゆっくり妖怪達を紹介された。

 布都に。

 

 貴女なんでそんなに詳しいのかしら?

 

 最近は色々鍛錬や瞑想なんかをしていたから眠気があり、それを博麗の巫女のゆっくり妖怪と紅魔館の門番のゆっくり妖怪が結界と気功で回復させてくれた。

 

 身体の調子も良いし、この前できなかった、波紋での鬼ごっこをすることにした。

 

 銀色の闘気ではなく、波紋をどう使って逃げるのかを間近で見ることができた。

 

 波紋を練る量もさることながら、特筆すべきはその精密な操作力でしょう。

 

 銀色の闘気はどうしても、不安定になりがち。しかし、彼の波紋は全身での操作が可能で、落ち葉を波紋で固めて足場にしたり、蔦に波紋を流して棒状に固め、高い段差を棒高跳びの要領で飛び越えたり、更には水の上を走りながら滝を登ったり。

 

 水の上に立つだけなら仙人でも可能だ。

 

 だけど、水の上を走ったり、滝を登ったりすることは無い。

 

 人間特有の柔軟な発想。

 

 参護との修行も悪くないかもしれないわね。

 




 最近、聖おにいさんの11巻を買いました。

 あれ面白いよね。

 仏教もキリスト教も知らないと書けない内容だし。

 すごいと言えば、この二人が幻想入りした動画がニコニコにありまして、内容がさらに両方の宗教について深く書かれてる。
 投稿者さんの知識量と話の構成力に憧れます。

 火曜日は会社へ泊りになりますので、感想の返信がメインになると思います。

 あ、ワンパンマン9巻の裏表紙がすごくいい。


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物部布都の日記 Э月

 お待たせしました。

 布都ちゃんです。
 何気に書き方に一手間必要な娘です。

 ゆっくり成分多めです。

 最近収まってたメッセでの遠慮の無いご意見が復活してきてます。

 特に何かした覚えも無いので、?状態です。

 ツイッターとかで更新呟くようになってから多くなりましたが、今回はそんな覚えもなく・・・・。

 愛でる派・虐待派は棲み分けがしっかりとしてるのか、衝突も無く平和です。

 『実は私は』を見始めました。
 これは面白いっすね。


Э月(;一_一)日

 

 野性のゆっくり妖怪というものが居るらしい。

 

 ゆっくり妖怪の専門家が言っておったのじゃから間違いなかろう。

 

 思えば長い付き合いで、参護殿と呼ぶようになったが違和感が無くなったのう。

 

 参護殿が言うには実力者が居る場所にその実力者のゆっくり妖怪が居る可能性があるという事じゃった。

 

 参護殿の家にいる彼女達は皆強者のゆっくり妖怪達。

 特にあのフラワーマスターのゆっくり妖怪など、海原家の中では確実に上位にいるほどの強さじゃろう。

 

 あのフラワーマスターのゆっくり妖怪は、参護殿に預けられるまではフラワーマスター本人が辿る花から花への道を同じ様に辿っていたそうじゃしな。

 

 我もゆっくり妖怪を探すことに決めたのじゃ。

 

 しかし中々見つからぬ。

 

 参護殿も見つけたのは三回だけじゃと言っておったしの。

 

 我の周りにもきっと太子様や青娥殿のゆっくり妖怪が居るかもしれぬ。

 

 我のゆっくり妖怪が居てもいいかもしれぬな。

 

 見つけたいものじゃ。

 

 

 

 

 

Э月Σ(゚∀゚ノ)ノキャー日

 

 今日は太子様が参護殿の家に行ったようじゃ。

 

 戻られた太子様は、とても上機嫌で楽しそうじゃった。

 

 参護殿が使っていた銀色の闘気を太子様も使えていたのは驚いたが、さすが太子様と言った所じゃろう。

 

 非常に強力じゃと評価しておったが、それ故か展開時間が短いらしい。

 

 それを延ばすことと、参護殿との訓練を考えることが今は楽しいようじゃ。

 

 我は我で、拠点周囲を探してゆっくり妖怪が居ないかを確かめたが、やはりそう簡単には見つからなかった。

 

 参護殿の話を聞くとすぐに見つかる気がしておったのじゃが、やはり現実は厳しいのう。

 

 

 

 

 

Э月(゚д゚)(。_。)ウンウン日

 

 今日は参護殿の家に遊びに行った。

 

 しかしあれじゃ。

 毎回毎回、波紋を使った鬼ごっこをしておるが、いつもいつももうちょっとという所で負けてしまう。

 

 我の波紋の呼吸がどれだけ持つのかという事と、運動しながらだとどれ程に持続力が落ちるのかを知りつくされておるようじゃった。

 

 あまりに悔しいので、いつも参護殿の傍に居る魔女のゆっくり妖怪以外の者達に協力を頼んで、ちょっとした『さぷらいず』なるものを用意しようと思う。

 

 皆、参護殿に驚いて貰おうと一生懸命に練習しておった。

 特に小さいゆっくり達は上手く歌えない部分があるようで、他のゆっくり達にアドバイスを受けながら懸命に歌う姿は癒される。

 

 こうしてゆっくり妖怪達と触れ合っておると、昔に政治の世界で色々と汚い手段なんかも使ってきた記憶が思い出される。

 

 当時は特に感じなかったが、こうして癒されておると、あの頃からひどく心が疲れておったのじゃと自覚できる。

 

 張り詰めた糸の様な生き方をしておったなぁ。

 

 今はゆっくり達と一緒に自分に正直に生きられるこの喜び。

 

 素晴らしいのじゃ!

 

 

 

 

Э月( ;´Д`)ウッ…日

 

 今日も拠点の周囲を探してみたが、ゆっくり妖怪を見つけることが出来なかった。

 

 甘いモノが好きなようじゃったし、我のおやつを使って寄ってこないか試しておったがダメじゃった。

 

 残念じゃ。

 

 一人一人ゆっくり妖怪は手触りや揉み心地が違うから、我や太子様、屠自古や青娥殿、もしかしたら芳香のゆっくり妖怪も居るかもしれん。

 

 もし居るのなら、是非とも家で一緒に暮らしたいものじゃ。

 

 流石に参護殿の家に居るゆっくり妖怪達を拾ってくる訳にもいかぬしの。

 

 参護殿に相談してみようかのう。

 もしかしたら良い助言を貰えるかもしれぬ。

 

 太子様が戻られてから、随分と考え事をしておった。

 参護殿を鍛えておるようじゃし、仙人になるならぬに関わらず、交流は続けていくつもりなのじゃろう。

 

 我は参護殿に勝てぬのが腹立たしいが、次の鬼ごっこでは必ず捕まえてみせるわ!

 

 

 

 

Э月(ΦωΦ)フフフ…日

 

 今日は痛快じゃったな!

 

 こっそりと練習していたゆっくり妖怪達の合唱はかなり参護殿を驚かせたようじゃった。

 

 ゆっくり妖怪達を褒めておったので、彼女達もかなり嬉しそうであった。

 

 喜ぶと羽や髪をフワフワピコピコと動かすから見ていて感情が分かり易いのう。

 

 我にはなぜか労いの言葉と一緒に頬を抓られて引っ張られた。

 しかも丁寧なことに、引っ張る際に痛みが和らぐように波紋を流しておったのがタチが悪いのじゃ。

 

 おかげで必要以上に頬をこねくり回されたわ!

 

 しかし、中々に慣れた手付きじゃったな。

 おそらくゆっくり達を日常的に揉んでいるから、これほどの指使いを覚えたのじゃろうな。

 

 しばらく頬のハリが良くなっておったのはびっくりじゃったな。

 

 

 

 

Э月(`・д・´)キリッ日

 

 今日確信した!

 

 我の拠点周囲には確実にゆっくり妖怪が居る!

 しかも、複数居るのは確実。

 

 なにしろ我のおやつを食べられたからな!

 悔しいのじゃ……。

 

 この食い意地が張ったのは誰のゆっくり妖怪じゃろうか?

 屠自古か芳香じゃろうな。

 

 一緒に暮らしたいのう。

 

 

 

 

Э月(∩´∀`)∩ワーイ日

 

 今日は太子様と一緒に参護殿の家に来た。

 

 どうやら太子様はあまりゆっくり妖怪達と接しておらぬようであった。

 そこでは我がしっかりとそれぞれのゆっくり妖怪達の名前と、触り心地・揉み心地を添えて紹介させてもらった。

 

 太子様に彼女たちの魅力を知ってもらいたかった。

 そうすれば、もしゆっくり妖怪を拾った時に一緒に暮らせる可能性が高くなるしのう。

 

 今日の鬼ごっこは太子様も参加されて、一緒に参護殿を追いかけた。

 

 太子様が参加されておるからか、鬼ごっこは一段と白熱しておった。

 

 まさか、滝を駆け上がるというのは我も予想外じゃった。

 

 水は下に落ちる。

 当然の摂理なのじゃが、波紋で駆け上がるにはかなりの量の波紋と針に糸を通すような精密な操作が必要じゃ。

 

 それを息をするようにやってのけるとは、どれ程の波紋を修練すれば辿り着ける境地なのか?

 

 太子様と一緒に修行をする必要があるかもしれぬのう。

 




 迷い所。

 ハイスクールDD全巻そろえるか。
 実は私は を全巻そろえるか……。

 両方結構な巻数出てるので、チビチビ買うのが賢明か。

 明日は会社泊まりの日。
 更新は無いので申し訳。

 高津カリノ先生の漫画を集めているのですが、俺の彼女に何かようかい が面白いですね。
 人外娘フェチな自分と高津先生のゆるーっとした雰囲気が好きな自分がダブルで幸せです。


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海原参護の日記 Π月

 ちょっと短めで、早め投稿。

 今回はシリアス? というか真面目系。

 話を進めるとどうしてもね?

 Π=ぴー と読みます。ギリシャ文字ですね。

 ではどぞ!


-追記-

 60万UAを記録しました。

 本当にありがとうございます。

 なんか紹介をしていただいているようですし、推薦も二人にしていただいて、ここまで恵まれた作品になるとは思いませんでした。

 これからも、ゆっくりよろしくお願いします!


Π月( ´ー`)フゥー...日

 

 銀色の闘気を神子さんと一緒に鍛錬するようになり、だいぶ操作性が向上したと思う。

 

 鍛錬中は座禅を組むこともあるが、その時は必ずゆっくり達が集まってきて身体を寄せてくる。

 

 どうやら銀色の闘気が彼女たちにとっての御馳走のようで、必ず集まってくる。

 

 萃香も抱きついてくる。

 

 最近日記には書いて無かったけど、毎月セクハラは続いているのはここに記しておきたい。

 

 エスカレートしてきている気がするのは気のせいだと思いたい。

 

 ずっと修行やら仙人の勧誘やら殺伐としていた気がするから、こうして阿求様とお茶を飲みながらまったりするのは久しぶりだ。

 

 

 

 

Π月∑(・∀・; )マジデッ日

 

 朝起きると、寝間着が脱げていた。

 

 最初こそ寝相だと思っていたが、最近は犯人が分かっている。

 

 ギリギリまで抱き着いている奴だから、寝室に疎になって漂っている。

 

 くっ付く波紋を部屋に流して無理やり萃めてオシオキをする。

 

 最近は阿求様も理解しているのか、朝一に風呂の準備をしてくれている。

 上半身舐めつくされているから、さすがに風呂に入らないと……。

 

 萃香の奴、オシオキされても若干嬉しそうなんだが……。

 アイアンクローだぞ?

 

 ずっと一緒に暮らしているから、俺も阿求様も萃香も慣れている部分があるな。

 

 ゆっくり達も慣れているのか、俺の着替えを脱衣所に用意していたり、風呂上りにバスタオルを用意してくれたりとさすがの手慣れた対応。

 

 毎日じゃないが、結構朝風呂に入る回数が増えているのは考えさせられるところだ。

 

 阿求様は諦め気味。

 パチュリーさんは楽しんでる節がある。

 

 俺の味方は居ないのか……。

 

 

 

 

Π月( ゚д゚)ウム日

 

 阿求様と萃香から仙人のスカウトの件、それとは別に人から外れることについて話があった。

 

 阿求様としては、俺が望むのなら必要なら仕方がないが、できれば人として生きてほしいと言われた。

 萃香は、できれば寿命の長い種族に転生してほしい、鬼の寿命に付き合って欲しいという話をされた。

 

 その場にはいなかったが、話し合いが終わった後にパチュリー様にも伺ったが、魔法使いになって欲しいと即答された。

 

 阿求様が望むなら、人で居ることに何の問題も無い。

 だけど、もし彼女が危険に晒されたら、俺は人の身を捨てることに迷いは無い。

 

 そういう意味でも手段は手に入れておいた方が良いかもしれない。

 その時になって何もできないのは嫌だ。

 

 ゆっくり妖怪達は、長生きをして欲しいのだろう。

 長寿の種族になることを望んでいるようだった。

 

 阿求様以外は長寿の種族になることを望んでるんだな。

 

 萃香とパチュリーさんが何やら阿求様と部屋で話し合っていた。

 

 なにやら、女性同士の会話だろうか?

 さすがに盗み聞きをするのはマナー違反だろう。

 

 今日はYパチュリーと一緒に寝ることにしよう。

 

 

 

 

 

Π月|゚Д゚)コソーリ日

 

 阿求様が説得されていた。

 

 いや、一日で考えを改めるのもびっくりだけど、理由が恥ずかしすぎる。

 

「これまで生きることが出来て30前後、波紋の呼吸で40ぐらいまでは生きられるでしょうけど、それまでしか生きられないと思います。転生した時に、仲の良い人が生きていることがどんなに安心できるか……」

 

 そんな風に言われたら、俺だって阿求様を護ると誓った身。

 転生後だって護ってみせる。

 

 問題は種族だった。

 

 阿求様は仙人を推していて、萃香は鬼、パチュリーさんは魔法使いと見事に分かれていた。

 

 と言うか、鬼ってどうなるんだ?

 

 それに、妖怪になるなら人里には居られない。

 霊夢さんに殺される。

 

 阿求様の話だと人里で妖怪化した人間を問答無用で成敗した経歴があるらしい。

 

 霊夢さんは天才型だ。

 兄貴を連想するというのと、純粋に勝てる気がしないから妖怪化するならどっかでこっそりやろう。

 

 

 

 

Π月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 人以外の存在になる。

 

 それをこんなに簡単に決意できるとは思わなかった。

 

 兄貴が人のままであの強さを持っているから、意地になって人のままで居ようという気持ちが出てくるかとも思ったけど、そうでもなかった。

 

 いや、幻想郷に来たばかりの頃なら確実にそういう選択をしただろう。

 

 あれだけボコボコにされたのだから、人間のままで超えたいという気持ちがあった。

 今もその気持ちはある。

 

 だけどなんだろう?

 それ以上に阿求様の願いを俺は叶えてあげたくなったのかもしれない。

 

 ゆっくり達も最後まで俺が面倒見てあげたいしな。

 

 そういう考えをYパチュリーに話した。

 

 めっちゃ泣かれた。

 

 

 

 

Π月(*´ω`*)ポッ日

 

 昨日、Yパチュリーに心情を話した結果だろうか?

 

 ゆっくり妖怪達が妙に張り切っていた。

 

 家事はあっという間に終わらせ、風呂もきちんと焚かれている。

 朝起きた時点で着替えが用意されていて、阿求様や萃香の食事や着替えも用意されていた。

 

 こうして日記を書いているが、一日の仕事を全部ゆっくり達が終わらせてしまっていた。

 

 部屋に戻ったら、机にゆっくり妖怪達の字だろう。

『ありがとう』

 といろんな筆跡で書かれていた。

 

 嬉しいって、想ってくれたんだな。

 

 そう感じたら、自然と頬が緩んでしまった。

 

 

 

 

Π月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 話し合いの結果、阿求様が人間のまま看取って欲しいと希望したので、俺の人外化計画なるものはしばらく保留ということになった。

 

 なんと言うか、話し合いの最中は本当に顔から火が出るかと思った。

 

 こんなにも思われているなんて、うれしいやら恥ずかしいやら。

 

 萃香もパチュリーさんもこんなに好意を寄せてくれるなんてね。

 

 だからこそ、阿求様の希望は叶えてあげたい。

 

 ゆっくり達が俺以外で一番懐いていて、萃香を抑えられて、パチュリーと談笑して、この家の母の様な場所にいる。

 

 だから、みんなが世話になり、みんなが大事に思っているからこそ、彼女の希望は叶えてあげたい。

 

 まだ十代だけど、いつか必ずその日は来るんだ。

 

 海原家の家訓。

 誰かを護り、誰かを救える人になれ。

 

 意図していた訳じゃないけど、俺は阿求様を救えるだろうか。

 

 いや、救うんだ。




 別視点日記が今から楽しみです。

 今回はそれほど緩くは無い話なので、嫌いな人もいるかもです。

 ちょっと阿求を主題に置いた回ですね。

 ご意見などありましたら、遠慮なくお願いします。


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稗田阿求の日記 Π月

 投稿でございます。

 R指定で投稿した官能編は、エロくないと言う評価をいただきました。

 うーん、本番が無くてエロと言うならあんな感じだろうと思いますが、やっぱり足りないようですね。

 要望で他の二人分を希望する人もいたので、シレッと追加するかもです。


Π月( ´ー`)フゥー...日

 

 仙人からのスカウトが毎度毎度良く来る。

 人から外れることに対して、参護さんの姿勢はずっと一貫していた。

 

 今必要ない。

 

 つまり、必要があれば人から外れる覚悟があるという事。

 

 萃香もパチュリーさんも長い時を生きる人たちで、参護さんが人から外れて長く生きることに肯定的なのでしょう。

 

 だけど、私は彼が人間を外れる時の理由が分かってしまう。

 

 人里やゆっくり妖怪達が危険になるなら、参護さんは人から外れるだろう。

 そして、私を何よりも大切にしてくれている。

 

 不謹慎かもしれないけど、それがとっても嬉しいのだ。

 

 そして同時に、とてつもなく切ない気持ちになる。

 

 幻想郷縁起を記し続ける使命を帯びている身で、私の寿命は三十年前後。

 

 普通の人達の半分ほどで死んでしまう。

 その代わり、百年ほど経ったら転生し、再び幻想郷縁起を記す。

 

 残りも十数年しかないんですよね。

 

 

 

 

 

Π月∑(・∀・; )マジデッ日

 

 最近は朝と晩にお風呂を沸かすようになっています。

 

 朝一番にお風呂に入れるというのは贅沢ですね。

 

 薪や燃料をどこからかゆっくり達が持ってくるので、困らないのは嬉しい。

 

 竹の炭は節をしっかりと取っていれば暴発することも無く燃料として使える。

 つまり迷いの竹林は燃料の宝庫なのです。

 

 しっかりと乾燥させないといけませんけどね。

 

 今日も参護さんが上半身裸の状態で起きてきた。

 やっぱり上半身を舐められていたようで、そそくさと風呂場に向かっていった。

 

 ここ半年以上これが続いていれば、いい加減説教の内容も尽きるというものだ。

 

 それに彼女の愛情表現だと分かると、それだけ愛が深いのだと分かる。

 

 ゆっくり達に参護さんの着替えやバスタオルを運んでもらい、私は家事に専念できた。

 

 こうしてゆっくり達と暮らすことに慣れてきて、参護さんと一緒に暮らして、やっぱり幸せを感じますね。

 

 

 

 

Π月( ゚д゚)ウム日

 

 理解している。

 参護さんが人から外れる選択をする時は、ゆっくり妖怪達の為か私の為だって。

 

 だから、私は最初に参護さんに話した時には人間でいてほしいと願った。

 

 だけど、萃香とパチュリーさんに私室で話し合った。

 

 私が三十歳前後、波紋を習得したと仮定しても四十前後で死ぬこと、次に私の転生体が生まれるのが大体百年後。

 百年間は彼岸であっちの仕事を手伝いつつ、次の転生の時期を待つことになる。

 

 二人とも大切な友人だ。

 参護さんと出会わなければ、こんな関係になることも無かっただろうけど、それでも私の記憶の中でもこんなに色々な要素を持った友人が居ただろうか?

 

 幻想郷縁起の観察対象で、友人で、恋敵で……。

 

 たぶん、一生以上に長い付き合いになるだろう人達。

 

 そこに参護さんがいてくれたら、どれ程幸せか。

 

 参護さんと一生以上の長い間を過ごすことが出来たら。

 

 二人に説得されて、気付かされた。

 

 自分の勝手で参護さんを人里の盾の様に扱って、その上また私の勝手で彼に人を外れた道を進ませるのか?

 そう考えて、彼には人として生きてほしいと言った。

 

 だけど、友達の説得で目が覚めた。

 

 もっと一緒に居たい。

 

 

 

 

Π月|゚Д゚)コソーリ日

 

 参護さんに私の正直な気持ちを伝えた。

 

 昨日の今日で意見が変わった私を怪訝そうな表情で見てたけど、しばらくすると私が真剣なのを理解したのか、転生後の種族を考えてくれた。

 

 まぁ、そこで私たちの意見は分かれたんだけどね。

 

 私は人間に近い仙人、萃香は同じ種族の鬼、パチュリーさんも同じ種族の魔法使い。

 

 さすがにここはみんな譲れないのか、三人がそれぞれ推している種族の宣伝をして一日が終わった。

 

 参護さんも悩んでいるみたいだし、すぐ出す結論でも無いでしょうからゆっくり待ちましょう。

 

 

 

 

 

Π月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 昨日、罪悪感とか義務感とかそういうものから解放されたからでしょう。

 

 遠くから参護さんを見ているだけで、胸の奥があったかくなるのを感じる。

 前は罪悪感が前に出ていたから、どこかで悲しい気持ちがありました。

 

 でも今は、こんなにも姿を見るだけで、会話するだけで、幸せだ。

 

 ゆっくり達がなにやら一生懸命文字を書いていた。

 

 何を書きたいのか分からないけど、きっとこんなに一生懸命になるのは参護さん絡みですよね。

 

 練習に付き合ってあげましょう。

 

 

 

 

 

Π月(*´ω`*)ポッ日

 

 一日ゆっくり達の字の練習に付き合った。

 

 一番時間がかかったのは、生まれたばかりの小悪魔のゆっくり妖怪で、難なくスラスラと書いて見せたのは霊夢さんのゆっくり妖怪だった。

 

 ゆっくり霊夢は一番存在感が強くて、自我も強いから当然と言えば当然なのでしょう。

 

 夜に紙の束を参護さんの机に置くだけ。

 

 色々な字体で書かれた『ありがとう』。

 

 参護さんが、一生懸命彼女達を護ってきたことへのお礼。

 きっとこれからも護るという誓いを聞いた彼女達のお礼。

 

 私もいつかお礼をしないとね。

 

 

 

 

 

Π月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 私のワガママで参護さんが人外に転生する時を、私が死んだ後にしてもらった。

 

 もしかしたら、初めてわがままを言ったかもしれない。

 

 前までは、罪悪感のせいでそんなことはとんでもないって考えてました。

 でも、それを伝えた時の参護さんは、気のせいでなければホッとしていて、うれしそうで、私も少しうれしいって感じました。

 

 九代目でこんなにも幸せで、こんなにも転生後の不安が少ないなんて、初めてですね。

 

 萃香、パチュリーさん。

 ありがとうございます。

 

 参護さん、救ってくれて、好きにさせてくれて、本当にありがとう。

 

 これからもよろしくお願いします。




 最終回じゃありませんよ?

 いや、書いてて。
(あれ? 最終回かいてたっけ俺?)
 ってなりましたけど、参護日記に続いて、阿求日記もそんな雰囲気。
 萃香でどうなるか……。

 あ、『実は私は』を12巻まで揃えました。

 甘酸っぱいの好きです。

 次は『聖☆おにいさん』揃えたいですね。


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伊吹萃香の心境 Π月

 更新でございます。

 これで一応、Π月分は終了になります。

 終始最終回臭がする月でしたね。

 ここらで時間飛ばして十代目阿求にまで飛んでも誰も怒らないのではなかろうか?


 あ、日曜日会社宿泊予定なので更新は無いです。


Π月( ´ー`)フゥー...日

 

 羨ましいと思う。

 

 嫉妬なんて私には似合わない。

 

 だけど、やっぱり阿求が羨ましいと感じる。

 参護は阿求が望むなら人から外れることも、人を続けることもやってのける程の絶対の覚悟がある。

 

 ゆっくり妖怪達を護ること、阿求を護ること。

 

 それが参護の行動理由だ。

 そりゃ、私は鬼だし護る必要も無いんだろうけど、ちょっと羨ましいと感じてしまうのは仕方ないと思う。

 

 それに、阿求を護ってほしいって私も思ってる。

 多分パチュリーも。

 

 本当にいい娘なんだよ。

 

 だから、この嫉妬とも向き合いたいな。

 

 

 

 

 

Π月∑(・∀・; )マジデッ日

 

 いやぁ、今日は恥ずかしかったね。

 

 いつもの様に参護の部屋で楽しんでいたんだけど、初めて参護は私の気持ちを受け入れるような言葉を言ってくれた。

 

 確かにセクハラを叱るような形ではあったけど、私の行動を迷惑とは思わずに、好意として受け止めていてくれた。

 

 自分でも変な愛情表現だという事は理解している。

 

 それぐらいしか分からなかったし、素直に行動したらこうなっちゃったから、嫌がられてないかって不安は常にあった。

 

 それに、参護は阿求のことばかり見ていると思っていたし、私はくっ付いてくる小娘程度かなって思ってた。

 

 だけど、参護は阿求も私もパチュリーのことだってしっかりと見ていたんだ。

 

 そう考えると、直前まで昂っていたこともあって、下着を取り換えるハメになっちゃった。

 

 うん、反省!

 

 

 

 

 

Π月( ゚д゚)ウム日

 

 阿求も色々と悩みがあったんだね。

 

 参護に人で居てほしいと言っていた彼女。

 

 その後で部屋で私とパチュリーを加えて話し合った。

 

 阿求は転生すると人間関係をやり直さなくてはならない。

 私やパチュリーは人間よりも圧倒的に長く生きる。

 

 だから、私達は阿求が転生して来る時を待っている。

 一人の男に惚れて、それでも敵対する訳でもなく、一緒に和気あいあいと過ごして、三人がそれぞれを親友として見ているという珍しい状態。

 

 密かに惚れた男が悪かったのではないか? なんて考えている。

 

 あんな人間を知らないし、今後も出てくる可能性は無いだろう。

 

 どうして転生した後に会いたいと思わないのか? そう聞いた時に、彼女から出た言葉は懺悔や後悔の感情だった。

 

 この家に参護を住まわせたのは阿求だと言う事は聞いていたし、それが人里を襲おうとする妖怪からの盾のような扱いだったという事も知っていた。

 

 そのことをこんなにも後悔していたのを知った。

 

 許してもらえたという事も知っている。

 だけど、許されても心にずっと残っていたんだろうね。

 

 深い深い後悔を持つ人間は物事に固執しやすくなる。

 それが今の阿求だと思う。

 

 自分の勝手で参護を盾にしていたこと、それをずっと後悔して、好きになったあたりからさらにそれが強くなったと言っていた。

 

 パチュリーが言うには、好きになればなるほど自分のしたことを許せなくなるのはあり得ると言っていた。

 良くわからなかったけど……。

 

 だから、パチュリーと二人で阿求の後悔を解しつつ、本当の気持ちを話させるように頑張った。

 

 そして阿求は言ってくれた。

「生まれ変わっても、一緒に居たい」と。

 

 最終的に三人で泣きながら笑い合った。

 

 これから長く長く生きていくだろうけど、一生忘れない。

 

 それに、ようやく参護と長く生きていけることになったんだ。

 長い長い先で、この四人で笑い合えればいいな。

 

 

 

 

 

Π月|゚Д゚)コソーリ日

 

 人間は早死にする。

 

 たった80年前後しか生きられないのに、阿求はそれよりもずっと短い。

 

 そして次の転生まで100年ほどかかると言うし、一緒に居られる時間は私達の中ではずっと少ない。

 

 だけど、阿求は誰よりも参護を理解している。

 ゆっくり妖怪はパチュリーが理解しているし、私はなんだろう? なんて考えた。

 阿求やパチュリーは居てくれるだけでいい。

 私はこの4人を結びつける大事な位置にいると言ってくれた。

 

 柄にもなく赤面していたかもしれない。

 

 

 

 

Π月∑(゚д゚ノ)ノウワッ日

 

 今日はなんか、阿求がゆっくり達に文字を教えていた。

 

 ゆっくり小悪魔なんて、この中で一番若いからものすっごい苦戦してた。

 

 こういうのって、手で誘導してあげると動きのイメージとか付きやすいんだよね。

 

 ゆっくり小悪魔やゆっくりチルノ、ゆっくりレミリアやゆっくりフランの比較的下手な子達を受け持って、練習を手伝ったけど、モノを教えるって大変だね。

 

 阿求は他の全員を教えていたし、面倒見がすごくいい。

 

 人里でも人間に好かれる理由はこういう所なんだろうな。

 

 

 

 

 

Π月(*´ω`*)ポッ日

 

 今日はなんか、ゆっくり妖怪達が家事とか全部終わらせてしまっていた。

 

 みんな妙に嬉しそうだったし、輝いている。

 

 パチュリーは記憶を同期しているから知ってるかとも思ったけど、嬉し泣きが止まらないからという理由で図書館から出てこないし。

 

 後で知ったけど、ゆっくり妖怪達にとって嬉しいことを参護が言って、そのせいでゆっくり達が元気に仕事をしているということらしかった。

 

 私も、初めて好意を受け入れてくれるような言葉を聞いた時は腰が抜けちゃったし、良くわかる。

 

 みんな、本当にうれしそうで、参護を見る目も信頼を向ける表情から親愛を向ける表情になっている気がする。

 

 変な男だね。

 

 言葉一つで影響が出る事も知らないのに、こんなにもみんなが輝いている。

 

 人間の可能性の綺麗な部分を見れる奴だよ。

 

 

 

 

Π月( ゚д゚ )クワッ!!日

 

 もしかしたら初めてかもしれない。

 

 阿求が私達に向けてワガママを言ったのは。

 

 阿求はいつも遠慮がちだし、参護にもっと抱き着いたり、首筋舐めたり、匂い嗅いだりしても良いのに、それもしない。

 

 やっぱり、罪悪感を持っていたから意見を言わなかったのだろうね。

 元々控えめな性格だったけど、ワガママを一切言わないのは違う。

 

 阿求がワガママを言ったことを参護から笑顔で聞かされた時、不覚にも私もうれし涙を流しちゃったしね。

 

 パチュリーも心底ホッとしていた。

 パチュリーはゆっくりの記憶もあるから、余計に感じる部分があったと思う。

 

 おめでとう、阿求。

 

 これからもよろしくね。

 




 音楽聞きながら書いていると前にも感想だったか後書きだったかで書いたと思いますけど、基本ヘッドフォンなんですよ。

 さすがに近所に流せる曲の内容じゃない部分もあるのでね。

 すると、インターフォン慣らされても気づかないことが多々あります。

 アマゾンで買った品物遅いなと思って玄関に行くと不在通知残ってたり。

 音量下げるとテンションが上がらんし、やれやれですわ。


 そういえば、活動報告って読む人いるんですね。

 アンケートにしか使ってなかったけど、最近ぽつぽつと書きはじめて、よく見たらUAって表示があって、見た人数分かるんだ!?
 ってなりました。

 そう考えると、普通にエロゲ―やら漫画の趣味やら等々と書いてた活動報告が異様に恥ずかしく感じます。

 消すわけにもいかんしねぇ(´ε`;)ウーン…


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外伝 雨の日の過ごし方

 本当にお待たせしてしまって申し訳ありません。

 今回は、HAZAMA さんからリクエストされました。
 雨の日の過ごし方です。

 いつもの日記形式の倍ぐらいの量になってしまいましたが、どうかお楽しみください。


 何でも屋の仕事は、一般的に天候に関係なく仕事があるように思われる。

 

 だが、実際には外での仕事が多く、妖怪退治や里の外に出るための護衛が家に来る仕事としては一番多い。

 

 俺の力を考えると妥当なのだろうが、偏っていると思う。

 

 内職の仕事もあるにはあるのだが、偶然にも今日は内職でできた品を納品したばかりだった。

 

 故に一日暇になったわけだ。

 

「久しぶりに、みんなとゆっくり過ごそうかな」

 

 縁側で屋根から滴る雨水が、今日中にやむ気配が無いのを教えてくれる。

 滴るって言うか、流れてるよなぁ。

 

「台風でも近いのか? とりあえず、花壇と畑は対策しないと!?」

 

 慌てて暴風柵と排水の為に水路を作る。

 風と雨の中でする作業だから少々手こずったが、中々のモノができた。

 

「後は、雨風が止んだら流された土や植物の状態を見ながら肥料をあげてやらないと……」

 

 台風の後の作物のケアは大変なのだ。

 と言うか、何でも屋なんてやっているせいか色んな知識が付いてきているな。

 

「雨の日位居間でゴロゴロしてても、誰も責めませんよ?」

 

 後ろから声をかけてきたのは阿求様だ。

 

 手には紫色の衣服が畳まれているから、パチュリーさんの所に届けに行くところだろうか?

 ちゃっかりその上にYパチュリーが乗っかっているのも見慣れた光景だ。

 

「いや、庭の花壇や畑に対策してきただけだからね。濡れちゃったからお風呂入るけど」

 

「今は鈴仙さんが入ってますよ? この雨の中薬売りの仕事して来たらしくて、風邪ひきそうでしたから……」

 

 なんてこったい。

 とりあえず、着替えないと風邪をひいてしまう。

 

 だが、この状態で家の中を徘徊するのは良くない。

 廊下や畳が傷むし、ただでさえ湿気が酷いのに更にカビさせる原因を家中にばらまくのはダメだ。

 

(現代なら、湿気取りの薬剤やカビの生えた壁や床を掃除する洗剤があるから大丈夫だけど、幻想郷だとその系統は永遠亭の永琳さんに頼む必要があるし、一度永遠亭に行けばTRPGで丸一日は帰って来れないしなぁ)

 

「じゃあ、脱いでください。軽く洗ってからゆっくりパチュリーちゃんに頼んで乾燥させます」

 

 何の抵抗も無く笑顔でこう言ってくる素晴らしい彼女。

 こっちは羞恥心に押し潰されそうです。

 

「え? いや、さすがにパチュリーさんの服を持っている状態でやってもらうわけにはいかないよ。桶に入れて垂らさない様に運ぶしね」

 

「大丈夫です。そっちはもうゆっくりパチュリーちゃんがやってくれてますし、そのままだと風邪ひいちゃいますよ?」

 

 見ると、Yパチュリーがさっきまで阿求様が持っていた畳まれた服を頭に乗せてパチュリーさんの部屋に運んでいた。

 

 ああもう、いい娘だな畜生!?

 

(仕方が無いな。上着だけ渡して下は死守しよう……)

 

 そう考えて、上着に手をかけた。

 

 

******************************

 

 

 手渡された上着は雨水を吸って、若干重くなっていた。

 

 これなら、少し絞ってからゆっくりパチュリーちゃんに頼んで乾燥してもらえば大丈夫だろう。

 

 ふと参護さんの顔を見ると頬が赤くなって顔を逸らしていた。

 

(あれ?)

 

(もしかして、私やってしまいましたか?)

 

 手元には当然さっきまで参護さんが来ていた上着があります。

 ぐっしょりと濡れた上着は雨水で濡れているのにも関わらず、ほんのりと彼の体温が残る上着。

 

 顔を逸らしている彼は、上半身に何も着ていない。

 

 皮膚のすぐ下にある筋肉。

 その形がしっかりと分かる程に参護さんの身体は絞り上げられていた。

 

 皮膚の上を水滴が流れていき、男性特有の匂いと均整のとれた身体が妙に印象に残ってしまう。

 

 ゴクッ。

 

 思わず喉を鳴らしてしまった。

 顔に血が集まるのが分かる。

 

 多分私は今、耳まで真っ赤だろう。

 

「ゆー! ゆー!」

 

 居間から参護さんの着替えを持ったゆっくり咲夜ちゃんが来てくれたおかげで、この妙な空気が何とか解消された。

 

 いけない。

 彼の裸を見て喉を鳴らすなんて、変態じゃないですか。

 はしたない。

 

「き、着替えたら濡れた服をゆっくり咲夜ちゃんに渡してくださいね! 私は先に洗う準備してきますから!」

 

 気まずくて逃げてしまった。

 

 でも目に焼き付いてしまった。

 

 あの腕で抱き締められたら……きっと幸せなんでしょうね。

 

 

******************************

 

 

 耳まで赤くして行ってしまった。

 

 完全に無意識だったなあれ。

 

 そんな反応されると俺も気まずいのだけれど、先に逃げられてはどうしようもない。

 

「ゆー?」

 

 とりあえず、Y咲夜が持ってきた着替えをありがたく使わせてもらおう。

 

「ありがとうな。着替えもタイミング的意味でも」

 

 そういいながら撫でてやると嬉しそうに、俺の掌に頬を擦り付けてくる。

 

「ゆー♪」

 

 着替え終わり、Y咲夜も愛で終わったので立ち上がろうとしたら

 

「うー☆」

 

 後頭部に二連続の衝撃。

 

 声からしてYレミリアとYフランが追いかけっこをしているのだろう。

 

「のぉぉ!? 後頭部はきっつい!!」

 

 しばらくのた打ち回るハメになった。

 

 こっちは結構痛いのにゆっくり達にダメージは見えない。

 硬気功とか教えたかな……?

 

 Y咲夜がYチルノを呼んできて後頭部に乗せてくれる。

 

 ああ、いい感じに冷える。

 

「ゆー!!」

 

 いつの間にかY咲夜が二人を捕まえて説教していた。

 

 もしかして、時を止めた?

 

「ゆーゆー?」

 

 後頭部に乗っているYチルノが不思議そうに声をかけてくる。

 もしかして、どうして呼ばれたか理解してないのこの娘?

 

 とりあえず、Yチルノを乗せたままで痛みが引くのを待っていると、説教が終わったのか二人が俺の前まで来て、謝る様に頭を下げてきた。

 

 二人とも涙目だったので、相当怒られたのだろう。

 

「気を付けるんだよ?」

 

 そう言いながら二人を撫でてやると、涙目の表情から一転してパァァッと音が鳴りそうなぐらいに弾ける笑顔になった。

 くっそ可愛いな。

 

 いつもだったら、外で自由に飛び回るのを見ているのだけど、今日は雨のせいで何もできないな。

 

「なーにしてるのー?」

 

 その言葉と同時に背中に慣れた重みを感じた。

 

 

******************************

 

 

 参護の家に来たら、阿求が顔を真っ赤にしながら参護の上着を持って土間の方へ小走りで向かって行った。

 

 参護の上着を大事そうに抱いていた所を見ると、夜のお供を手に入れたってところかな?

 上着で満足するなんて初心だね。

 

 私は是非とも腰巻が欲しいね!

 

 居間の方には後頭部にゆっくりチルノを乗せた参護がゆっくりレミリアとゆっくりフランを撫でていた。

 

 たぶん、Yフランあたりが頭に突っ込んだんだろうね。

 

 YレミリアとYフランはキラキラした笑顔をしていたから許されたんだろう。

 

 こんな無防備な背中を見せた参護が悪い!

 ということで

 

「なーにしてるのー?」

 

 抱き着いた。

 

 ゆっくりチルノのせいか少し体温が低めかな?

 

「萃香……びっくりするからいきなり抱きつくなよ」

 

「いやだよー。そこに参護の背中があるんだから、抱き着かないと損だってね?」

 

「いや、ね? って言われてもな」

 

 ゆっくりチルノが私と参護に挟まれているけど、なぜか満足そうだ。

 どかして頭を確認するとコブになっていた。

 

「コブになってるねー?」

 

 そのまま、コブの部分を丁寧に舐めていく。

 ツバ付けておけば治るって言うしね?

 

「うを!? 雨に濡れた後なんだから舐めるなよ」

 

「私は気にしないよ? むしろ、参護の匂いが強く感じられてお得感がある」

 

 濡れてから渇きかけると少し匂いが強く感じられる気がするのだ。

 と言うわけで、匂いを堪能しながらコブに舌を這わせ、治療する。

 

「何のお得感だよ?」

 

 花壇や畑を護る為に外で作業したって感じかな?

 相変わらず、優しいね。

 

 セクハラばかりしてて感覚がマヒしてるかもしれないけど、こうして抱き着いているだけでも心地良いんだよね。

 

「濡れたなら、お風呂入らないの?」

 

「無視か……。今風呂は鈴仙さんが使ってるんだよ。空くまでまったりしてるんだよ」

 

 ありゃ、時期が悪かったのね。

 とりあえず、濡れたままだと本格的に風邪をひいちゃうかもしれないし。

 

「ほいっと!」

 

 参護の濡れている部分の水を疎にして乾かす。

 

 身体は冷えてるかもだけど、これ以上冷えることも無い。

 

「ん? 乾かしてくれたのか。ありがとうな萃香」

 

 熱を萃めるってこともできるけど、下手したら参護が焼肉になっちゃうからね。

 

「いいよいいよ。でも、冷えてはいるだろうからお風呂も入ってね? あ、一緒に入る!?」

 

「入らない! 霧になって入ってくるなよ? 前にそれで人の身体に纏わり付いて捕まったんだからな?」

 

 むぅ、残念。

 あの時、素肌に直接触れられたから結構堪能できたんだけどな。

 

「ちぇ、残念。じゃあ、阿求の所行ってるよ」

 

 このまま遊んでても良いけど、風邪ひいたら大変だし、阿求に言って用意できる部分は用意しておこうかな。

 

 波紋で怪我の治りが早いし、代謝が高まるから病気もしにくい。

 でも、人間は死にやすいからね。

 気を付けるに越したことは無いのだ!

 

 

******************************

 

 

 萃香はセクハラして来るけど、俺や阿求、パチュリーさんをよく見ている。

 

 もちろん、ゆっくり妖怪達だって一人一人の性格を把握して気を使っている。

 

 気付かれないようにしているのかもしれないけど、Yパチュリーと記憶を同期しているパチュリーが気付かない訳がないのだ。

 

 だから、パチュリーは繰り返し続ける萃香のセクハラをある程度目を瞑っていると言っていた。

 

 個人的には勘弁してほしいが、彼女の奔放な性格と面倒見の良い性格で俺たちは助かっている。

 

 阿求様は家を回して、俺やゆっくり妖怪達を癒してくれる。

 萃香はそんな阿求様を無理しないように気を遣い、ゆっくり妖怪達が喧嘩したりした時に仲介したりと大変な役割を押し付けてしまっている。

 

 パチュリーさんは俺や阿求様、萃香が逸らしがちな部分を対応してくれる。

 

 俺の人外化の案もパチュリーさんが考えたらしいし、人外化することで起きるであろう人間との軋轢(あつれき)、博麗の巫女である霊夢さんから退治される対象になる可能性、元人間が長い時間を生きる上での死因など、時に厳しいことも言うが、すべて俺や阿求様、萃香やゆっくり妖怪達の為なのだ。

 

 正直な話、俺はこの三人には足を向けて眠れない程の恩がある。

 

 最初の一年は一人で生活して、Yパチュリーを拾ってからは本当にたくさんの人達に助けてもらって、強くもなってきたと思う。

 人間を外れて生きるのはもう決めた事。

 後悔も無いし、むしろ阿求様を護れることに誇りも喜びも感じている。

 

 漠然と決まった人外化の内容を誰よりも考えて、誰よりも良い方向を示そうとしてくれている。

 

 こう考えると本当に色々な人たちに助けられてるな。

 

 ……紅魔館に行ってパチュリーさんにお礼も兼ねて本でもあげよう。

 一応、幻想入りしたばかりの本だし、知らないはず。

 

「あら? おはよう。ちょっと騒がしかったけど、萃香と何かあった?」

 

 居間から大図書館へ行こうと思ったが、すでに居間にはパチュリーさんがお茶を飲みつつ、Y小悪魔と戯れていた。

 

 せんべいを一口サイズまで砕いてから少しずつ与えているので、喉に詰まらせる心配も無い。

 

 しかも、さらにお湯で軽くふやかしてるから喉に詰まらせることの無いという徹底ぶり。

 

 Yパチュリーからゆっくり妖怪達の子供の育て方の知識があるのだろう。

 その知識を彼女なりに応用してこうして育てているのだろう。

 

「いつもの戯れです。パチュリーさんは子育てですか?」

 

 ゆっくり妖怪全員で子育てをしているが、出来る娘と出来ない娘がいる。

 Yパチュリー・Y咲夜・Y美鈴・Y幽香・Y霊夢

 この娘たちは家事や子育てなんかを出来るいわゆる大人のゆっくりだ。

 

「子育てって、私そんな経験ないわよ。まぁ、ゆっくり妖怪の育て方なら私のゆっくり妖怪からの知識で知ってるし、他のゆっくり達も忙しそうだったしね」

 

 Yレミリア・Yフラン・Y小悪魔

 この娘たちは子育てされる側だ。

 

 Yレミリアはあまり手がかからないし、Yフランの面倒を見ようとする。

 だけど、やっぱり子供だから一緒に遊んでしまったり、できないことも多い。

 

 Yフランは遊び盛りだ。

 元気に遊びまわって、放置してるとあちこちに被害が出るから大変だ。

 

 Y小悪魔はまだヨチヨチ歩きの状態。

 あまり一人に出来ないんだよね。

 

「パチュリーさんがY小悪魔の面倒を見てくれるからな。他の仕事もできるんですよ」

 

 Yチルノ・Y大妖精

 

 この娘達は子育てできるほどではないが、されるほど幼くない。

 

 主に子供達の遊び相手になることが多い。

 

 基本的にセットで行動しているから誰かに手間をかけることも無い。

 

 だから、放置しない様にきちんと相手をするのは俺や阿求様、パチュリーさんが多い。

 その影響か、よく俺たち三人と行動するのもこのペアだ。

 

「そう。この娘が一人でいたから相手をしてあげてただけなのだけど」

 

 そう言いつつ、湿らせたせんべいをY小悪魔の口元に持っていく。

 おいしそうにしゃぶる様にして食べていく姿は、すっかり安心している。

 

「そういう事をしてくれているから、安心して生活できるんですよ。お風呂が空くまでここに居てもいいですか?」

 

「あら、雨に濡れたの? いいわよ。ゆっくりしていきなさいな。萃香に乾かしてもらったんでしょ? お茶でも飲んで少しは温まりなさい」

 

 用意されたお茶を飲むと、冷えた身体が少しだけ温まる感覚を得た。

 

 Y小悪魔が嬉しそうに寄って来たので、撫でてあげると満足そうにしていた。

 

「ふぅ、大きくなったな。大人になるのにどれぐらいかかりますか?」

 

「そうね。生まれて一年だし、そろそろ出会った頃のゆっくりレミリアやゆっくりフランぐらいの成長になるわ」

 

 YレミリアもYフランも生まれてそんなに経っていないのか。

 もしかしたら、Yパチュリーが二人の面倒を見ていたのだろうか?

 

 ということは、そろそろY小悪魔もYフランの様にヤンチャな行動力を示すのだろう。

 

「ほら、食べろ」

 

 ふやかしていたせんべいをY小悪魔に与える。

 パアァっと笑顔を広げ、一緒に羽も広げた姿は可愛い。

 

「ゆー!!」

 

 俺の手からおいしそうにふやかしたせんべいを食べるY小悪魔。

 自然と頬が緩んでしまう。

 

 一応お粥のようなものを作ってあげているけど、だんだん硬いものも大丈夫になってきているようだ。

 ふやかしたと言ってもせんべいとしての歯ごたえもある程度残っているし。

 

 

******************************

 

 

 参護さんが人間から外れて生きる決意をした。

 

 それは私達からすればとても喜ばしいことだ。

 

 種族は決まっていないが、仙人になるには百年に一度の死神の襲来を退けなければならない。

 鬼は手段として茨木の百薬枡という酒器で酒を飲み続けることで鬼となるという話だ。

 私の勧める魔法使いは、『捨食や捨虫の魔法』を覚え、使う事で魔法使いになるという事だ。

 

 どの方法にも長所と短所がある。

 

 だけど、魔法使いの欠点は他の二つに比べてそれほど大きいものじゃない。

 

 魔法を使う訓練を行う事。

 つまり、才能が必要なのだ。

 

 その点でいえば海原参護は才能がある。

 

 人間はかなりの種類の力を使える。

 人間独特の力が霊力。

 生き物の特有の力が気功。

 魔法使いや西洋方面の妖怪が持つ魔力。

 呼吸の力で力を得る波紋。

 

 人間が得られる力の代表的な四つの力。

 

 他にも色々あるが、妖力は妖怪特有の力だし、神通力は神かそれに準ずる者のみ、というものがある。

 

 妖力を手に入れるなら霊力は失うし、神通力を得るなら神に準じる者故に魔力を失う。

 

 つまり人間が同時に得られる力は先ほどあげた四つ。

 波紋は参護さんが来て初めて知ったから、それまでは三つだった。

 

 いけないわね。

 魔法使いは要は研究職の様なものだ。

 

 生涯を賭けた目的のために魔法や他の方法を駆使してそれを成し遂げようとする。

 

 私は生涯を本に囲まれて過ごすという目的があるし、アリスは完全な自立人形を完成させるという目的がある。

 

 私の場合は知識に囲まれ、知識を形にする。

 

「おお、うまいか。もう少しすれば、ふやかさなくてもせんべいを食べられるぐらいになるからな」

 

 参護さんは生涯を賭けて到達したいものはあるのだろうか?

 

 阿求を自分の全てを賭けて護ろうという目的は分かる。

 ゆっくり達を護るのもそうだろう。

 

 だけど、それ以外だと参護の目的は無いのではないだろうか?

 

 人を外れるのも、強さを求めるのも。

 

 じゃあ、魔法使いとしての彼の適性は?

 

 研究者としては参護さんは向いていないだろう。

 

「参護さんは……」

 

「ん?」

 

「参護さんは、阿求やゆっくり妖怪達を護る以外で、生涯を賭けてやりたいことってある?」

 

 顔を見れなかったけど、気になっていたことを聞けた。

 

 たぶん、机の対面にはゆっくり小悪魔に餌をあげている参護さんが居るのだろうが、やっぱり気になってしまう。

 

「護る以外で……か」

 

 その声は考えたことが無かったような声色で、この間は何かを考えているのだろう。

 

「阿求様の帰ってくる場所、ゆっくり妖怪達の安寧の地を作りたいかな」

 

 それも阿求やゆっくり妖怪達関連じゃない。

 

 徹底してると思ったけどここまでとはね。

 

 でも、その願いなら。

 仙境や聖域と同じだ。

 阿求の短い寿命を少しは伸ばせる可能性もあるし、ゆっくり妖怪達の様に数が減っている種族たちに良い環境をつくる。

 

 それは完成しない研究だ。

 ゆっくり妖怪だって個体差がある。

 魔力を好む個体、霊力を好む個体、参護にくっ付いて力を得る個体、漂っている力を取り込んでいる個体。

 

 これはもしかするかもしれないわね。

 

「だったら、魔法使いになってその領域を研究したらどうかしら? 幸い参護さんは魔法使いとしての素質はある。波紋・気功・魔力、この三つの力を研究すれば特定の種族や個人に良い領域を作れるかもしれないわよ」

 

 ちょっとずるいかな?

 参護さんの望みに絡めるように魔法使いを進めるなんて。

 

 でも、魔法使いの最大の欠点である才能は現時点でパスしてる。

 その上、生涯を賭けられるだろう研究もある。

 

 他の種族の欠点に比べればだいぶ魅力的な部類のはず。

 

 まぁ、参護さんが悩んでいるのは簡単だ。

 阿求とゆっくり妖怪を護るのに都合の良い種族はどれなのか? だろう。

 

 私や萃香よりもやっぱり阿求の為なんだろうな。

 

 あの娘はいい娘だ。

 話では三十程度しか生きられなくて、参護さんの波紋を使っても四十程度。

 そして百年近く彼岸で仕事をしてから転生する。

 

 圧倒的にこっちにいる時間の方が短い。

 

 それなのに、私達をいっぱい支えてくれて、恋敵だというのに受け入れてくれて、そんなにいい娘が幸せになれないなんて、やっぱり駄目だ。

 

「なるほど、領域の研究か! 家の周囲が仙境のような状態だと言われたこともあるし、これはいい話かもしれないな」

 

 やっぱり、阿求やゆっくり妖怪達に絡めれば、手ごたえがあるのね。

 

「流石パチュリーさんだ。俺たちの考えなきゃいけないことも全部考えてくれる。パチュリーさんだからこそ、信頼して選ぶことができます。俺や阿求様、萃香のことを真剣に考えてくれて、誰よりもパチュリーさんは信頼できます」

 

 ……やばい。

 顔を逸らしたままでよかった。

 

 口元がニヤけて戻らない。

 自分でもわかってしまうのだ。耳が頬が、真っ赤なんだろう。

 

「一歩下がって俺たちを見てますけど、誰よりも俺たちの為に知恵を尽くしてくれる。本当に、ありがとうございます」

 

 やめて!

 私を殺す気なの!?

 

 ダメだ、羞恥心で死んでしまいそうだ。

 

「かまわないわ。私が好きでやっていることよ? それに、私もあの子達もこの子達も大好きなのだから」

 

 今日はもう帰りましょう。

 このままだと、図書館で悶絶する羽目になりそうだし……。




 投稿が遅れてしまいまして本当にすいません。

 本編が書けずに、息抜きのつもりで書いた外伝が思いの他書けてしまいました。

 HAZAMA さんの希望に添えればいいのですが。

 月曜日は泊まりの予定なので更新はありません。

 忘れられてないか心配ですが、一応参護さん。二年以上幻想郷に住んでるので自分である程度できますからね?
 ヒロインたちのヒモじゃないですよ?


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海原参護の日記 Ξ月

 久々に本編を更新です。

 そして、この月分+1話で最終回となります。

 たくさん読んでもらって、ここまで来れて感無量です。

 Ξ→くしー です。

 Ξガンダムとかありましたよね。

 では、どぞ。


Ξ月(*´∀`*)日

 

 Yパチュリーを連れて、この娘に初めて出会った森へ足を運んだ。

 

 つい最近阿求様から聞いたのだが、Yパチュリーを初めて見つけた時の俺の悲鳴は里にまで響いたらしい。

 

 一年越しだが恥ずかしい。

 

 こうして振り返ると、波紋のみの戦闘方法から波紋と気功を使い分けるようになって、さらに混ぜ合わせて銀色の闘気を使えるようになった。

 

 阿求様とも親しくできるようになり、他にもたくさんの人や妖怪達と友好を結ぶことができた。

 

 Yパチュリーを拾い上げた時から、まるで欠けていたパズルのピースを手入れたかのように、俺の世界は形にハマったのだ。

 

 兄貴の言っていた、護るモノが出来れば強くなる、という言葉を実体験で理解できるようになるとは思わなかったな。

 

 俺にとってもYパチュリーにとっても思い出深い場所。

 

 奇跡の様な出会いを、俺は……そうだな。

 

 龍神様に感謝しようかな。

 

 

 

 

Ξ月(`・д・´)キリッ日

 

 どの種族になるべきか、それを考えていた。

 

 どれにもメリットデメリットがあり、即決定できるほどの差が見出せなかった。

 

 しかし、パチュリーさんが先日の雨の日にくれたアドバイス。

 

 あれのおかげでだいぶ固まった。

 

 今日それをみんなに伝えたのだ。

 

 俺は『魔法使い』に転生する。

 

 たぶん魔法使いに転生したら、霊力が使えなくなるだろう。

 

 だけど、それ以上に魔力を使えるようになることが重要だ。

 

 魔法という選択肢も戦いでは相当に重宝する。

 

 魔法使いになるデメリットは才能の有無に左右される事らしいが、パチュリーさんから才能は保障された。

 

 最大のデメリットである霊力の消失だけど、それ以上に魔力や気功などの総量が増える傾向があるというパチュリーさんの研究結果がある。

 

 阿求様とゆっくり妖怪達を、家族を守る上で霊力と全体の力の底上げで悩み、結果的に全体の力の底上げを選んだ。

 

 銀色の闘気の使用時間が増えれば停止時間がさらに長く使えることになる。

 

 護る上でこれほどに必要なスキルも無いだろう。

 

 その使用時間を延ばせるならその選択が一番だ。

 

 兄貴に固執して、目的を見失うのもおかしい話だしね。

 

 

 

 

 

Ξ月(;´∀`)日

 

 魔法使いになる為に捨虫の術をパチュリーさんから教わることになった。

 

 日記に内容を記そうと考えてたけど、内容を書くとこの日記が魔導書化するからやめるように言われた。流石に愛用の日記帳を魔導書にするわけにもいかない。

 

 魔理沙に持って行かれても困るし。

 

 こうしてきちんと技術として魔法を学ぶとパチュリーさんやアリスさん、魔理沙の実力が良くわかる。

 

 属性をいくつも使いこなすことの大変さが、指先に魔力でできた糸を作って人形を操ることの難しさが、八卦炉というアイテムを使用しているけど広域魔力砲を発射するだけの出力と同時に飛行魔法を使える器用さが、どれも恐ろしく高度なものだと理解できた。

 

 パチュリーさんが師匠になるわけだけど、呼び方を変えた方が良いのだろうか?

 

 師匠? マスター? 候補は色々あるけど、悩むな。

 パチュリーさんで慣れているから、新しい呼び方だと違和感が出てしまう。

 

 違和感と言えば、Yパチュリーが講義中に眼鏡をかけていた。

 雰囲気から入るタイプなのかもしれない。

 

 正直、メガネかけても喋れないから教えられないだろうと考えていたのだけど、彼女の図解は予想以上に分かり易かった。

 

 ドヤ顔で図解された魔法の理論はすぐに覚えられる。

 

 優秀すぎるだろう……。

 

 

 

 

Ξ月(=^・^=)日

 

 魔法使いになるという決意を話してからも阿求様は我が家で家事をしてくれる。

 

 望む種族ではなかったけど、来世でも俺と過ごせることが嬉しいのだと言ってくれた。

 

 嬉しいやら恥ずかしいやらで、冷たい水で顔を洗いに行ってしまった。

 

 Yチルノ特製の氷水は気持ちよかった。

 

 Y大妖精の能力を最近まで知らなかったのだけど、どうも植物と意思疎通ができるようだった。

 Y幽香に近いものがあるけど、それ以外にも若干風を使えるようなので、Y幽香と一緒に外での植物の世話を好んでいる。

 

 先日幽香さんが来て、自分のゆっくり妖怪とY大妖精を愛でていた。

 

 その時に幽香さんにも人外への転生を話したら、長く戦えるならそれに越したことは無いと言われた。

 

 転生後も俺の生活は変わりそうにもない。

 

 

 

 

Ξ月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 パチュリーさんは何気に教えるのが上手い。

 

 魔法使いは自身の目的のための研究があるから、普通は他人に教えるなんてことは中々無い。

 

 例外としては、弟子を取っていた場合。

 弟子の才能が研究の助けになると考えた場合、自分の技術を教える代わりに研究を手伝わせる。

 

 今の俺がまさにそういう形なのだろう。

 

 Yパチュリーも図解や魔法陣の講義では大活躍する。

 

 二人とも知識や技能は同じで、最近では同期している感覚も短くなっているようで、同心異体という形になりつつあるようだった。

 

 波紋や気功の操作を見ていて、どうやら俺は力関係の操作が細かくて上手いらしい。

 

 早い上達には出力よりも精密性が問われるらしいので、期待できる弟子だと笑顔で言われた。

 

 確かにうれしい話だけど、なぜアリスさんや魔理沙に自慢したのかな?

 

 そして、どうして三人ともやる気の漲る目でこっちを見ているのかな?

 

 俺の魔法使いとしての道は波乱万丈なようだ。

 

 

 

Ξ月(´;ω;`)日

 

 初めてかもしれないな。

 

 阿求様とYパチュリーと三人で、まったりと過ごしていた。

 

 居間で横になっていたら、阿求様が膝枕をしてくれて、俺の腹の上にYパチュリーが乗っかって、そのまま日が暮れるまでしゃべったり、触れ合ったりして過ごした。

 

 今思えば恥ずかしいけど、一番長くて一番深い付き合いの彼女とこういう時間を過ごせたのは良かった。

 

 今までの事と、これからの事。

 

 たくさんたくさん話した。

 

 不老の存在ではなく、一度死ぬ恐怖と次の転生で確実に友人が居なくなる虚無感。

 

 それらの感情が阿求様から涙と共に語られた。

 

 あの時も言ったけど、ここにも書き記そう。

 

 俺は何度でも阿求様を待つ。

 阿求様が生まれてくるなら、俺は何処にも行かず、貴女の場所を護ろう。

 だから、安心して戻ってきてくれ。

 

 Yパチュリーも一緒だ。

 戻ってきたらゆっくり妖怪達が増えてるんだぜ?

 幻想郷縁起の編纂のやりがいがあるってものだろう?

 

 阿求様の場所はここにある。

 

 

 

Ξ月(´▽`)アリガト日

 

 俺、阿求様、萃香、パチュリーさんの四人でゲーム大会の様な形で遊んだ。

 

 それぞれゆっくり妖怪をパートナーに一人付けて、相談しながら色々なゲームを遊ぶというものだ。

 

 俺はYパチュリー、阿求様はY咲夜、萃香はY霊夢、パチュリーさんはYレミリアをパートナーにしていた。

 

 お酒も入ったせいか、大いに騒いだ。

 

 勝敗は、別として。

 

 いつまで続くのかなんて分からない。

 

 考えるのもバカらしい。

 

 この四人とゆっくり妖怪達で何度でも楽しむ。

 

 幸い、人よりは長生きできる機会に恵まれた。

 護ってあげたい彼女を転生するまで待つだけの寿命なんて、欲しいと思っても得られるモノじゃない。

 

 俺は恵まれている。

 兄貴と一緒に居た頃は弱いと嘆いていたし、誰かを護りたいって考えたことも無かった。

 だって、弱い人間が誰かを護ろうなんて考えない。

 

 でも、この幻想郷に来てからは生きていくのに必死で、気付いたら護りたい対象ができていて、護れるように鍛えて。

 

 もし人生に意味があるとして、きっとその意味を見つけられないまま、気付けないままに過ぎていくのだろう。

 幸いにも俺は見つけられた。

 

 家族を護ろう。

 

 俺は参護という名前だ。

 

 三つ、阿求様もゆっくり妖怪もこの空間も、護ってみせる。




 参護さんは、阿求とゆっくり妖怪だけじゃなく、萃香とパチュリーがいるその家族と言う空間を護ることに決めたようです。

 あまり長く続けても、グダグダするだけだししっかりと終わるべき場所で終わる。

 これは、友人から言われた言葉。

 良い友人を持ちましたよ。

 金曜と土曜がちょっと更新できなさそうなので、お知らせします。


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パチュリー・ノーレッジの日記 Ξ月

 今回は短めでパチェ日記。

 金曜日は会社泊まり、土曜日は仕事に付き更新はありません。

 さて、彼女はどう思っているのでしょうか?


Ξ月(*´∀`*)日

 

 私のゆっくり妖怪と記憶を同期した時に、あの娘と参護が今日行った思い出の場所の記憶が流れ込んできた。

 

 なんてことは無い。

 街道から少し離れた獣道を辿った所。

 

 少し開けた場所があの娘と参護さんが出会った場所だった。

 

 参護さんったら、初めてあの娘に会った時にすごい悲鳴を上げてたわね。

 

 阿求に聞いたら、その時の悲鳴は人里にも届いていたそうだ。

 

 それだけ驚いて、その対象をその手に取っていた状態で、悲鳴を上げただけであの娘を投げ捨てたり、取り落としたりしなかった。

 

 その時、私のゆっくり妖怪は参護さんが優しい人だと確信したのだ。

 

 消えかけていたあの娘の最後の希望。

 

 今じゃこの家で家事全般をこなす、一番元気なゆっくり妖怪だ。

 

 ありがとう、私のゆっくり妖怪。

 参護さんと出会ってくれて、参護さんと出会わせてくれて。

 

 

 

 

 

Ξ月(`・д・´)キリッ日

 

 参護さんが魔法使いになってくれると言ってくれた。

 

 ここまで嬉しいとは思わなかった。

 

 仙人の人達には申し訳ないが、参護さんの魔法の才は目を見張るものがある。

 鍛えれば、確実に私の研究に役立つ活躍をしてくれるだろう。

 

 阿求も萃香も自分の希望が通らなかったのに、喜んでいた。

 

 長く一緒に居られるようになるのだから嬉しいのだろう。

 

 参護さんは私の弟子ということになるのか。

 

 そう考えると、とても教え甲斐がある。

 

 講義の計画を立てておこうかな。

 

 

 

 

 

Ξ月(;´∀`)日

 

 参護さんの魔法講義を今日から始めたのだけど、驚くべき速度で知識を吸収している。

 

 元々勤勉な性格だったし、そこに魔法使いという種族になる目的が出来ればこうもなるか。

 

 魔法の知識は内容を記すだけでその本や紙を魔導書やスクロールに変化させてしまう系統がある。

 

 存在自体が力を持つ魔法なんかがそうなのだけど、捨虫の術はまさにその典型だ。

 存在を変えてしまう術は世界に深く関わる魔法なのだ。

 

 参護さんが毎日日記を付けていることは知っていたけど、さすがにその日記を魔導書にする訳にはいかない。

 

 私の講釈と私のゆっくり妖怪の図解があれば、参護さんも立派な魔法使いになれるだろう。

 

 余談だけど、あの娘が伊達メガネをかけていた。

 

 なるほど、さすが私ね。

 参考にしましょう。

 

 

 

 

 

Ξ月(=^・^=)日

 

 転生。

 阿求が幻想郷縁起を編纂するために行っている。

 

 一度死を体験するというのはどういう事なのだろうか?

 

 そして、百年近くを彼岸で過ごして転生する。

 

 人間関係は最初に戻るだろうし、三十年ぐらいしか生きられない。

 

 参護さんには彼女の帰る場所を作ってあげて欲しい。

 

 私も萃香も、その場所で阿求を迎えられる様にしよう。

 

 だから、阿求。

 

 いつでも帰っておいで。

 

 

 

 

 

Ξ月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 参護さんの長所は波紋の修行で鍛えた精密なコントロールだ。

 

 気功にも応用させていたからもしかしてと思ったけど、魔力の操作もかなり精密で驚く。

 

 模倣にも長けていて、私が見せた簡単な魔法も模倣してみせた。

 

 もしかしたら、破格の才能を弟子に出来たのかもしれない。

 

 魔理沙とアリスにも手を貸してもらいましょう。

 

 彼は一体どれだけの技を得られるのか。

 

 波紋を鍛え続けた努力がこうして実っている。

 

 ならば、最高の環境を用意しましょう。

 

 

 

 

 

Ξ月(´;ω;`)日

 

 今日は魔理沙とアリスに頼んで参護さんの教育の協力を頼んだ。

 

 私は『火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力』のおかげで多様性に優れた魔法を教えられる。

 

 アリスは魔力の糸を使う精密性と特殊な魔法を。

 

 魔理沙はミニ八卦炉というアイテムに頼っているが、高い出力の砲撃と高密度の収束魔法が上手い。

 

 この三人が揃えば、最高の環境だと言えるだろう。

 

 阿求の居場所を護る為に、私は私のできることをしましょう。

 萃香は萃香のできることを。

 

 だから参護?

 

 参護は参護のできることをして? 協力は惜しまないから。

 

 一番阿求が支えて欲しいのは、参護さんなんだから。

 

 

 

 

 

Ξ月(´▽`)アリガト日

 

 初めて四人でゲーム大会を開いた。

 

 日常だった。

 

 本に囲まれて過ごして、知識に埋もれる。

 この目的は絶対に変わらないし、後悔も無い。

 

 だけど、こんな日常を経験できるなんて考えてなかった。

 

 萃香が騒いで、阿求が笑って、参護さんが連敗で拗ねて、私がそれを慰めて……。

 

 この四人での日常がもっと続いて欲しい。

 

 でも、終わりが見えている悲しい願いだと分かっている。

 

 阿求の寿命は人より短い。

 もう半分近く生きているのだ。

 

 数十年で終わるこの日常。

 

 だけど、参護さんは護ってくれると言っていた。

 

 阿求もゆっくり妖怪も、私や萃香の事を家族と言ってくれた。

 

 家族を護ると言ってくれた。

 

 ありがとう参護。

 

 永い永い時を、一緒に家族で過ごしましょう。

 




 短いから早いのです。

 パチェさん、師匠として参護さんを鍛える気満々です。

 参護さんの魔改造計画が進んでます。

 完成系が楽しみですねw


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稗田阿求の日記 Ξ月

 最後の日記形式となります、阿求日記です。

 後は、日記じゃない一話を書きあげれば、本作品は一端終了となります。

 後は外伝だったり、長い時の中のとある一週間みたいな形で投稿していく形になると思います。

 では、どぞ!


Ξ月(*´∀`*)日

 

 参護さんとゆっくりパチュリーが出会った場所。

 

 以前二人に案内されて行ったことがあるけど、街道から外れた雑木林のちょっと開けた場所。

 

 そこに二人で行ったようだ。

 

 あの位置から里にまで声が聞こえたという事は、相当大声で叫んだのだろう。

 

 まぁ、正確には里の近くで作業していた人が森からの叫び声を聞いたと言う報告を受けた、という形なので里まで悲鳴が響いたわけじゃないんですよね。

 

 参護さんが恥ずかしがっている姿が可愛いので、もうちょっとだけこのままにしておきましょう。

 

 それに参護さんは誇りに思うべきです。

 そんなに叫ぶほど驚いたのに、ゆっくりパチュリーちゃんを投げ出さなかったこと。

 加減を誤って彼女を殺してしまわなかったことを。

 

 二人が出会ったことで、こうして私は参護さんと一緒に居られる。

 

 転生への恐怖がこんなにも和らいでいるのは初めてだ。

 

 すべてが儚い夢。

 だけど、次へ続く夢を私は見ることができている。

 

 きっと、これが私の幸せなのでしょう。

 

 参護さんにもゆっくり妖怪にも、萃香にもパチュリーにも感謝します。

 

 今世をよろしく。

 来世でも会いましょうね。

 

 

 

 

 

Ξ月(`・д・´)キリッ日

 

 参護さんが魔法使いになるという決断をした。

 

 仙人にならないのは少し残念だけど、百年に一度来る死神の襲来を警戒しているのでしょうね。

 

 何かを護る上で必要な事の一つは争いに関わらないことという話ですし。

 

 確かに参護さんは相当に強くなった。

 

 それでも、鬼にはもちろん八雲紫や風見幽香には能力を加味しても勝負にならないでしょう。

 

 参護さんの考えは、同じ場所に立てるようになること。

 

 つまり、銀色の闘気の上位互換である金色の闘気というものを目指しているのでしょう。

 

 銀色の闘気での戦闘力の跳ね上がり方は異常な程だと言うし、金色の闘気になったならもしかすれば同じ場所に立てるかもしれないと考えているんだろう。

 

 争いに近付かない、力を欲する。

 矛盾しているけど、護るとはそういう事だと言っていた。

 

 備える事の繰り返しで、考えることの繰り返し。

 

 それを誇らしそうに語った参護さんはとても楽しそうで輝いていた。

 

 生き甲斐。

 

 私を護ることを、ゆっくり達を護ることをそう思ってくれるのは嬉しい。

 

 けど、萃香やパチュリー達と一緒に居ることも楽しんでほしい。

 そう思う。

 

 

 

 

 

Ξ月(;´∀`)日

 

 魔法使いになる為には学習する必要がある。

 

 魔導書や術式が系統として残っているという事は、理論や公式などが多く存在しているという事だし、学ぶことが多いのだろう。

 

 魔法使いになるという事はそういう事を学ばなければならない。

 

 魔法使いになるのは独学か、弟子入りすることで学ぶらしい。

 

 パチュリーもアリスさんも魔理沙さんも独学タイプらしい。

 

 参護さんは珍しい弟子入りタイプになる。

 

 さっき着替えを持って行った時に、楽しそうにゆっくりパチュリーちゃんと一緒に参護さんの教育計画を練っていたのは微笑ましかった。

 

 熱心に適性とか器用だから他の体系も試す価値があるとか、ゆっくりパチュリーちゃんと話してたので温かい紅茶とクッキーを差し入れてあげた。

 

 パチュリーの話だと参護さんはとても魔力の使い方が器用で、それだけでも十分な才能だという事らしい。

 

 才能もある上に、元々外の世界では魔術師という魔法使いの別系統の家系の生まれらしい。

 

 一子相伝の技だから参護さんは波紋や気功の方向に傾倒したらしい。

 

 参護さんのご家族は一体どんな人たちなんでしょう……。

 

 

 

 

 

Ξ月(=^・^=)日

 

 最近はこの家の家事をすることが息抜きになっている気がします。

 

 編纂作業の合間に、掃除したり、洗濯したり、料理を作ったり。

 

 もちろん、一人では編纂作業に支障が出てしまうのでゆっくり妖怪達に手伝ってもらったり、鈴仙さんや魔理沙さんに手伝ってもらっていますが。

 

 参護さんは笑いながら美味しいと言ってくれる。

 萃香は、テンションが上がって笑いながら元気よく食べる。

 パチュリーは変化が分かり辛いけど、口元が緩んで味わうようにゆっくりと咀嚼(そしゃく)する。

 

 こういう風な表情を見るのが楽しい。

 

 前に見れた表情よりも美味しそうにしてくれると、やっぱり嬉しい。

 

 ゆっくり達も美味しいと嬉しそうに鳴いて、食べる速さが上がる。

 

 こうやって試行錯誤して、皆が笑顔で居てくれることを探せる家事が楽しいと思える。

 

 来世もこうしてみんなの台所を預かれれば嬉しいな。

 

 

 

 

 

Ξ月(´ヘ`;)ウーム…日

 

 今日は魔法使いの三人が揃って家に来た。

 

 参護さんの魔法講義が終わってからだから、たぶん次の講義の準備や話し合いなんだろうけど、アリスさんや魔理沙さんを呼ぶという事は、範囲を広げるという事かしら?

 

 とりあえず、六人分のお茶とお菓子を用意した。

 ゆっくり達も連れて来てるから、お菓子も甘めの洋菓子を出した。

 

 パチュリー達は色々と理論やら系統の話をしていて理解できない部分が多かったが、ゆっくり達は図を描いて三人で話し合っているようだった。そっちも理解しづらかったけど、参護さんらしき人型に記号やらを周囲に書き込んでいる。

 

 何かの儀式だろうか?

 

 そういえば、参護さんの普段使っている杖はゆっくりパチュリーちゃんが直々に魔法を編み込んだ特別製だったはずだ。

 その魔法のおかげか、その杖は折れず曲がらず、波紋も気功も銀色の闘気も良く通すという最高級の武器に仕上がったようだ。

 

 もしかしたら、この娘達は参護さんを護る物を作ろうとしているのかもしれない。

 

 参護さんは私のために色々としてくれているけど、ゆっくり達は参護さんの為に色々としているのね。

 

 やっぱり、この家は最高ね。

 

 

 

 

 

Ξ月(´;ω;`)日

 

 今日一日を幸せと言わずに、何を幸せだと言えばいいだろう。

 

 参護さんとゆっくりパチュリーちゃんと一緒に、ひたすらにまったりと過ごした。

 

 最初はお昼ご飯を食べた後に参護さんが居間で昼寝をしていた。

 

 ちょっとした悪戯心で参護さんに膝枕をしてあげたら、ゆっくりパチュリーちゃんが寄ってきて参護さんのお腹の上に乗って眠りだした。

 

 参護さんとゆっくりパチュリーちゃんの寝顔をじっくりと見ることができたし、参護さんが身体を預けてくれている幸福感もあった。

 

 参護さんが目を覚ましてからは、たくさんたくさん話をした。

 

 今までの転生での不安や恐怖感。

 虚無感や孤独感を語った。

 気付いたら涙が流れていた。

 

 そんな私に参護さんは、私の場所はここにある。そう言ってくれた。

 

 重い話も辛い話も、くだらない話も笑い話も、全部全部話せた幸せな一日。

 

 ありがとう参護さん。

 今日の事は死んでも忘れないからね。

 

 

 

 

Ξ月(´▽`)アリガト日

 

 家族。

 

 そう、家族でゲーム大会を開いた。

 

 お酒を飲みながら、ゆっくり妖怪達をパートナーにして、トランプや麻雀、双六やTRPGなんかもやった。

 

 参護さんは相変わらずだったけど、本当に楽しい時間だった。

 

 TRPGで私がGMでやったセッションは参護さんのキャラだけエンディングまでたどり着けなかったし、双六は終始最後尾、トランプと麻雀も呪われてる? と思わせるぐらいにひどい手札と手牌。

 

 それにちょっと拗ねた参護さん。

 

 爆笑する萃香に参護さんを慰めるパチュリー。

 

 これは家族と言っても良いと思う。

 

 血は繋がっていない。

 

 だけど、それぞれがそれぞれの役目の様な物を持って調和して、一緒に居て楽しくて、一緒に居るのが当然の様な気持ちになって、家族と一緒に居られるのは素直に楽しい。

 

 私は後十数年で一端別れるけど、こうしてまたこの世界で生きていきたい。

 そう思えた。

 

 この四人とゆっくり妖怪達と、今世も来世もその先も、一緒に居られるだろう。

 

 なぜか、その確信だけはあった。

 

 ありがとう萃香、私の望みに気付かせてくれて。

 ありがとうパチュリー、私の事をたくさん気遣ってくれて。

 

 ありがとう参護さん、私と出会ってくれて、幻想郷に来てくれて、居場所をくれて。

 

 この家族が、ゆっくり達が、いつまでも幸せでありますように。

 

 大好きです、参護さん。

 




 この作品は、基本骨子がすでに決まっていて、それ以外は皆さんの意見やらを取り入れている部分がかなりある作品です。

 もちろん、応えられない声も多々ありましたが、阿求さんのヒロイン化なんて答えた結果ですしね。

 そのせいで手を広げすぎて、訳が分からなくなってましたがw

 それでは次は最後の一話です。

 お楽しみに!


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最終話 おかえり

 お待たせしました。

 タイトル通り、最終話です。

 皆さまのたくさんの感想と評価が、この作品がここまで来ることのできた要因の一つです。

 本当にありがとうございました。

 それでは、最終話をお楽しみください。

 


 とある日、人里は普段と変わらず、過度な賑わいも無く、かと言ってさびれている訳でもない、絶妙な具合を維持していた。

 

 当時、里を護る為の前線として置かれていた家にも別の人間が住んで、生活を営んでいた。

 

 不思議とその家に住んだ人たちは病気一つせず、子孫も健康に生まれてきた。

 

「先生、なんでお家にいると温かいの?」

 

 年端もいかない子供の純粋な質問。

 件の家の子供だけど、勉学も体育も好成績な将来を密かに期待されている子供だ。

 

「ん? そうだな。一家団欒の空間は温かいモノだぞ? まぁ、お前の家は里の守護者だった人が住んでいた家なんだ」

 

「守護者~? その人はどうしたの?」

 

「百年ぐらい前に引っ越していったよ。この前教えただろう? 森の魔法使い」

 

「あー! 箒の魔法使いと人形の魔法使い! あと、ゆっくり妖怪の魔法使い!!」

 

「そう、そのゆっくり妖怪の魔法使いがその里の守護者だった人さ」

 

 いつもゆっくり妖怪が傍に付いている魔法使い。

 幻想郷縁起にも記述されている。

 

 危険度:高 友好度:高

 非常に温厚で友好的。しかし、彼の傍にいるゆっくり妖怪や彼の周囲の人物を攻撃した場合、その温厚さは無くなり、非常に高い戦闘能力で対象を排除する。

 人間から魔法使いになった為、人間らしい部分が多々ある。

 彼と交友を持ちたいのなら、ゆっくり妖怪と彼の周囲の人物に対して決して危害を加えてはならない。

 

 九代目稗田阿求がその生涯で最後に書き残した一ページ。

 

 彼女が死んだその日に彼は誕生したのだ。

 

「彼が住んでいたお家が、今君が住んでいるお家なんだよ」

 

「へぇー! 有名人の住んでたお家だ!」

 

 当然彼らが引っ越した際に、紅魔館への出入り口は解除されているし、聖域にも似た空間も魔法使いや博麗の巫女などが総がかりで中和した過去がある。

 

(消え切らない聖域の効果があるからな。まぁあの程度は許容範囲だろう)

 

 そう上白沢慧音は考える。

 

 彼が幻想郷に来た当時から彼を知っている身としては、感慨深いものがあった。

 

(もうじき、あれから百年。十代目が現れる頃か……)

 

 今は亡き友人のことを思い、今日も慧音は寺子屋に精を出していた。

 

 

 

********************

 

 

 

「うどんげ、人里の帰りに参護の家に寄るでしょ? TRPGのシナリオ作ったからキャラシとサプリ届けて来てくれない?」

 

「いいですけど……何日コースですか?」

 

「三日よ! いつもより短めかしらね?」

 

 その答えに頭痛を覚える鈴仙。

 

 蓬莱人である姫様は大丈夫だろう。

 魔法使いになった参護さんも、睡眠や食事をとる必要が無い。

 

 私だけ睡眠も食事も必要なんですが!?

 

「……了解しました。届けてきますね」

 

「よろしくね。妹紅は私が誘っておくからね~」

 

 三日である。

 普通なら、三日間の中で数時間をプレイに当てる。

 だが、姫様の言う三日は文字通り三日なのだ。

 

 三日間、貫徹でシナリオをプレイするのだ。

 

 過去最高で一週間という記録を打ち出したことがある。

 さすがに、鈴仙は参加できなかったが。

 

 前までは妹紅との殺し合いでしか暇を潰せなかったようだが、今はとことんTRPG狂という奴だ。

 

 実際、既存の作品では飽き足らず、自作のルールブックを作成中だと言うのだからそのバイタリティは恐ろしいものがある。

 

「あ、でもしばらくは遠慮した方が良いかも……」

 

 ふと思い出す。

 

 そろそろ、あの日から百年だ。

 

 参護さん達の家族が帰ってくる日が近い。

 キャラシとサプリは渡すだけ渡して、しばらく姫様には自重してもらおう。

 

 この日を邪魔するのは、さすがに気が引ける。

 

「ずっと待ってましたよ阿求さん。早く帰ってあげてください」

 

 空を見上げてつい呟いてしまった。

 

 私のつぶやきは風がさらっていき、誰にも届くことは無かった。

 

 

 

********************

 

 

 

「あややや、ビッグニュース……ではあるのですがね」

 

 射命丸文が困ったようにメモ帳を見ていた。

 

 文々。新聞の一面を飾ることのできるネタだと断言できるものを手に入れていた。

 

 しかし、彼女の表情は晴れない。

 

「こればかりは、私が最初に書いちゃダメでしょう」

 

 ビリッとメモ帳から一枚破く。

 

「感動の対面は直接である方が良いに決まってます」

 

 それを空中に放り投げると、能力で作ったカマイタチで粉々に切り裂いて、そのまま風に流してしまう。

 

「清く、正しい、射命丸。お得意様でスポンサー様には最大限のサービスをお届けしますよ!」

 

 流れていく紙片を眺める彼女の表情はとても穏やかで、普段の彼女がしないような慈愛に満ちた表情だった。

 

「久しぶりに、あの空気の家が帰ってくるわけですか。今までの空気も嫌いじゃありませんが、彼女が居ればもっと居心地がよくなります」

 

 そう呟くと、そのままその場に背を向けてどこかへ飛んでいく。

 

 彼女の口元はわずかに緩んでいた。

 

 

 

********************

 

 

 

 博麗神社。

 博麗大結界の要にして、幻想郷の人妖の均衡を保つ役目の巫女が住む神社。

 

「おっす、元気してるか? 霊那」

 

「なによ魔理沙。妙に機嫌が良いじゃない」

 

 博麗霊那。

 魔理沙の友人であった少女の孫に当たる。

 

「日に日に霊夢に似てきてるな? 小生意気な所や気怠そうな所がそっくりだぜ」

 

「それ褒めてないでしょ? それでどうしたのよ?」

 

 霊夢の娘、霊那の母に当たる子は淑やかな大和撫子の様な女性だっただけに、どうしてこうなったと呟きたくなる魔理沙。

 

 性格だけじゃなく、容姿も着ている独特な巫女服も、全部彼女に似ているのだから魔理沙としても他人の気がしないのだ。

 

「いや、久しぶりに親友の嫁さんが帰ってくるらしいからな。嬉しいってだけだぜ」

 

「あんたの親友って、ゆっくり妖怪の魔法使い? お婆様が見逃した、数少ない人から外れた存在」

 

 霊夢と違う所を挙げるなら、霊那はお婆ちゃん娘だという所だろう。

 

「そうそう。帰ってくるならお邪魔虫は空気を読んで、家族水入らずで過ごしてもらうべきだと思ってな」

 

 魔法使いになって、長い時を参護と過ごしてきた彼女だが、やはり彼女なりの線引きがあるのだろう。

 

「いつも無礼なあんたにも空気を読むことができるのね?」

 

「ホント、霊夢に似てきたなお前……」

 

 人間だった頃のやり取りを思い出す。

 神社に来ては今の様なやり取りを霊夢とやっていたものだ。

 

 彼女が帰ってくる上に、昔の友人の生き写しの様な少女も居る。

 

(ホント、百年前に戻ったみたいだぜ……)

 

 参護の奴は未だに料理が上手だ。

 むしろあの頃よりも腕は上がっている。

 

(今度こいつ連れて行って、食わせてみるかな?)

 

 霊夢が通う程の料理の腕前。

 霊那がどういう反応をするか?

 

「今度美味い飯食えるところ教えてやろうか?」

 

「なによいきなり? 気味悪いわね」

 

(本当にそっくりになってるな! ムカつくったらないぜ!)

 

 若干青筋が見える気がする魔理沙。

 

 懐かしいやり取り、これもある意味の再会なのかもしれない。

 

 

 

********************

 

 

 

 紅魔館。

 

 二人の姉妹がティータイムを楽しんでいた。

 

 お茶を入れるのは今も変わらない瀟洒なメイド。

 

「お姉様、今日はお兄様の家に遊びに行きたい!」

 

 喉を潤し、上質なクッキーも味わい、お開きの時間も見えてきた辺りで、フランドール・スカーレットはそう言いだした。

 

 珍しい事ではない。

 

 参護と出会ってから、大図書館の通り道を使って遊びに行くことが多かった。

 

 今日も遊びに行きたいと言い出した。

 いつもの事である。

 

 だけど、姉のレミリア・スカーレットの答えはいつもと違った。

 

「今日はやめておきなさい、フラン」

 

 その言葉にフランドールは驚いた。

 参護の家に行く時、レミリアは止めたことは無かった。

 

「なんで!? 嫌だ嫌だ、遊びに行ーきーたーいー!」

 

 この百年ほどでだいぶ落ち着いているが、彼女の精神は成熟には程遠い。

 癇癪(かんしゃく)を起こす可能性もある。

 

 それを危惧しているメイドは懐中時計を構える。

 

「良いわ、咲夜。きちんと説明するから」

 

 そう言ったレミリアは紅茶のカップを眺めながら

 

「今日は家族で、明日はみんなで宴会だからよ」

 

「どういうこと?」

 

 レミリアは能力の一部として運命を見ることができる。

 故に、言葉を端折る傾向がある。

 彼女自身も勿体ぶる性格なので、理解されないこともある。

 

「今日、帰ってこられるのですか?」

 

 しかし、長年彼女に仕えたメイドは理解した。

 

 参護の家へ行くことを止める理由、運命を見て、彼の家族だけにしようとする理由。

 それに咲夜は覚えがあった。

 

「ええ、だから今日は我慢なさい。明日はみんなで宴会でしょうしね」

 

「……わかった。お兄様が困るなら行かない」

 

 渋々といった様子ではあるが、フランは行かないことを約束した。

 前はこうはいかなかった。

 

 癇癪を起こし、手当たり次第に破壊する。

 

 それがここまで落ち着いたのは、レミリア達の努力もあるだろうが、海原参護が徐々に徐々に彼女の心を動かしてきた結果だった。

 

「いい娘ね。その代わり明日はたくさん遊びましょう。大宴会になるでしょうしね」

 

 そう言ったレミリアの視線は、紅茶の紅い水面を撫でるように眺めていた。

 

 

 

********************

 

 

 

 藤原妹紅は逃げていた。

 

 情けない話だが、殺し合いよりも避けたい拷問がある。

 

「そろそろ輝夜の奴が、新しいシナリオを作る頃だからな」

 

 蓬莱人は死なない。

 欠損しても、破壊されても、元の様に再生する。

 

 だが、精神的な疲労は何気にノーガードだったりする。

 

 ちょっとの間、迷いの竹林から離れていれば、回避できるだろう。

 

「あら? 竹林の焼き鳥屋じゃない。珍しいわね、貴女がこの辺りに来るなんて……」

 

 かけられた声の方向に視線を向けると、背負った籠に人形を使って野草やキノコを入れていく魔法使いの姿があった。

 

 アリス・マーガトロイド。

 

 参護の魔法の師の一人だ。

 

「いや、そろそろ輝夜が暴走しそうでさ……」

 

「ああ、それはご愁傷様ね。でも今日は参護さんの家に行くのはやめておきなさい」

 

 苦笑気味にそう言う彼女は、表情と裏腹に嬉しそうな空気を纏っていた。

 

「そりゃまたどうして?」

 

「百年ぶりの家族勢揃いよ? 邪魔する方が無粋だわ」

 

 家族。

 

 それを聞いて少しだけ身体がこわばるのを感じた妹紅。

 

 それならば、邪魔は出来ない。

 

「確かにそれは邪魔できないわね。それで、何で知ってるの?」

 

 その疑問はすぐに解決した。

 

「この娘が教えてくれたわ」

 

 そう言って前に突き出したのは、魔理沙のゆっくり妖怪。

 

 ゆっくり同士で情報を共有しているらしく、紅魔館の主のゆっくり妖怪が教えてくれたらしい。

 能力的に信頼できそうだが、キャラ的に信頼できるかは悩みどころだろう。

 

「前から思ってたけど、どうしてゆっくり妖怪と出会えるんだ? 私、今まで会ったことないんだけど……」

 

「特別なことはしてないんだけどね? ただ、参護さんが言うには元となった人の近くにいるらしいから、竹林に隠れ住んでるかもね?」

 

 そう考えると、ずっと過ごしてきた竹林が途端に未開の地に思えてくる。

 もし会えるなら会ってみたいものだ。

 

「さて、どうせ暇でしょ? 家でお茶でも飲んで行きなさいな。用事が無ければだけどね?」

 

 当然、輝夜から逃げてきた妹紅に特別な用事は無い。

 強いて言うなら、輝夜に見つからないことだろうか?

 

「うーん、じゃあよろしく頼むわ。人形遣い」

 

「アリスよ、アリス・マーガトロイド。アリスって呼んでくれると嬉しいわね」

 

「わかったわアリス。私は藤原妹紅。妹紅でいいわ」

 

「分かったわ、妹紅」

 

 

 

********************

 

 

 紅魔館の門。

 

 そこには今日も門番が立っている。

 

 ここ最近、彼女こと紅美鈴はかなり実力を上げた。

 

 巷では銀色の闘気を持つ門番なんて言われていたりする。

 

 参護さんと修行することの多かった彼女は、波紋と気功を使いこなせるようになり、銀色の闘気を使えるまでにその練度を上げていた。

 

「……今日は参護さんは来ませんよ? 幽香さん」

 

 そう言ったらすぐに、近くの雑木林から日傘を差した女性が出てくる。

 風見幽香。

 花から花へ渡り歩く妖怪。

 

「それは残念ね。明日の予定は空いてるかしら?」

 

「明日ですか? はい、お嬢様から有給をいただきましたので……」

 

「なるほど、運命を見れる能力は健在というわけね。では明日は参護君の家に行きましょう。きっと盛大な宴があるから」

 

 その言葉に美鈴は眉をひそめる。

 

「なぜわかるんですか?」

 

「貴方の主って運命が読めるはずよね? 彼女のゆっくり妖怪の見た未来が私のゆっくり妖怪経由で花に伝えられて、私に届いたって訳よ」

 

 花のネットワークは広い。

 今の時期は特に草木が茂る命の時期だ。

 

 そして、参護の家には様々な花や作物が植えられていて、主にその世話をしているのが参護本人とゆっくり妖怪の幽香だ。

 

 なので、逐一花経由で参護家の様子が分かるのだ。

 

「久しぶりの家族団欒よ? 明日以降は私達にも声がかかるらしいからそのお誘いと、今日は参護君の家に行けないから貴女と遊ぼうと思ってね」

 

「予想してましたが、やはりですか。波紋を自力で習得したのは驚きですが、次は銀色の闘気も狙っているのですか?」

 

 その言葉に、幽香の身体から電気の様な力が溢れ出す。

 参護や美鈴の修行風景を見て覚えた力。

 

「ちょっと違うわね。貴女や参護君が波紋と気功で作る銀色の闘気じゃなくて、波紋と妖力で同様の効果が得られるか……試してみようって訳よ」

 

「なるほど、私も金色の闘気に至る為に色々と苦心してますからね。その実験にお付き合いしましょう」

 

 スッと拳を前に出し、腰を落として構える。全身から銀色の闘気が溢れ出し、美鈴のこの百年の鍛錬の結果がうかがえる。

 

 対する幽香は日傘を畳み、それをまるで銃の様に美鈴に向ける。

 全身には波紋がみなぎり、妖力も高まっていく。

 

「「まぁ……」」

 

 二人のつぶやきが重なる。

 

「「明日の宴に出れる様に防ぐのね(いでくださいね)」」

 

 二人の妖怪は激突する。

 

 

 

********************

 

 

「なるほどね。勇儀さんにも教えておいた方が良いでしょうね」

 

 先ほど帰ってきた私のゆっくり妖怪。

 こいしに頻繁に地上に連れて行かれているから地上の情勢を知るのにとても助かる。

 

 今回は参護さんの所に行ってきたのだろう。

 彼の家のゆっくり妖怪達が活発に動き回っていたようで、理由を聞くと彼女が帰ってくるらしい。

 

「お燐、お空。外出の準備よ。明日は参護さんの家に遊びに行きましょう」

 

「本当ですかさとり様! わーい、みんなと遊べるー!」

 

「あの、急にどうしたんですか?」

 

「私のゆっくり妖怪が私達を招待するって向こうのゆっくり妖怪達に言われたみたいでね。明日は宴があるわよ」

 

 喜ぶお空と質問するお燐。

 結構二人は相性がいい。お燐の面倒見が良いのもあると思う。

 

「お燐、勇儀さんにも伝えてきて。参護さんと会いたいでしょうし、萃香さんにとっても大事な宴です。参加してもらいましょう」

 

 参護さんと会ってから、相手を(おもんばか)る言葉を選べるようになってきた。

 そのせいか、少しずつ地底の妖怪達と交流が図れるようになってきた。

 

 まぁ、性格自体が合わないからそこまで深く交流はしていませんが。

 

 さぁ、早く準備をしましょう。

 

 なんだかんだと理由を並べても、私も彼女が加わった参護さんの家に行くのが楽しみなのですから。

 

 

 

********************

 

 

 

「吉凶ですか」

 

「ええ、私の占いで何度占っても同じ結果になります」

 

 そう言うと、いくつもの占いの道具を出しては机の上に置いていく。

 

「本日の参護様の家への訪問は凶、明日にズラせば転じて吉となります」

 

「なるほど、彼女が帰ってくるのでしょうね」

 

 二人の頭に浮かぶのは、参護とずっと一緒に居た彼女の事。

 時期的に帰ってくる頃合いだし、青娥の占いでも珍しい出方をしている結果に想像がついた。

 

「……」

 

「あら、貴女なら嬉々として向かうと思ったのですが?」

 

「さすがの私でも、参護様の逆鱗に触れたいとは思いませんわ。それにまだ私は諦めてませんし……」

 

 百年越しでも諦めない青娥の執念は驚くべきものがある。

 

 本人は半ば意地になっているのだろうが、決定的な地雷は決して踏まない。

 もし踏んだら、死神よりも恐ろしいものを相手にすることになる。

 

 巷でこそゆっくり妖怪の魔法使いと呼ばれて親しまれているが、幻想郷の危険分子からは黄金の魔法使いと呼ばれている。

 

 今の彼は上級妖怪の仲間入りを果たしている。

 

 下手に敵対したら返り討ちにされるだろう。

 

「太子様! 見るのじゃ見るのじゃ! 太子様のゆっくり妖怪が居ったぞ! これで全員そろったのじゃ!」

 

 布都が太子のゆっくり妖怪を大事そうに抱えて持ってきた。

 

 一瞬で部屋に立ち込めていた重く複雑な空気は、一瞬で日常に塗り替えられてしまった。

 太子は最近思う。

 

 これもこの娘の能力なのでは? っと。

 

「良く見つけましたね。じゃあ明日、参護のところに連れて行きましょう。専門家に報告をしないといけません」

 

 布都からゆっくり妖怪を受け取ると、じっと見つめる。

 

 自分を元にしているのは分かるが、自分の能力も使える小さな妖怪。

 

 自分の欲や感情を読み取られ、行動されたらどうしようか、などと考えている。

 

 そしてそれを読み取られて、気を遣われている。

 

「いい娘ですね。よろしくね、私のゆっくり妖怪」

 

 結果として良い妖怪だという結論に落ち着いた。

 

(明日は、きっと幻想郷の実力者の多くが彼の家に集まるでしょうね)

 

 自分のゆっくり妖怪を抱きしめたまま空を見上げると、風に乗って色々なものが流れてく。

 

 誰かのつぶやきも、誰かの気遣いも。

 

 

 

 

********************

 

 

 

 風が心地よい。

 

 今日は家族以外は誰も来ない。

 

 奇妙な偶然だ。

 

 いつもいつも誰かしら、何かしらがあるのだけれど、驚くぐらいに普通の日に家族以外が来ないという事は初めてだった。

 

「百年以上も生きてれば、こんな日もあるかな?」

 

「ゆー!」

 

 そうつぶやいていると、ゆっくりパチュリーが何かを知らせる様に飛び跳ねながらこっちにアピールをしている。

 あそこまで嬉しそうでワクワクしている様子のゆっくりパチュリーも珍しい。

 

「どうしたんだ? 何か見せたいものでも……」

 

 連れられるままに、玄関へと行くと彼女が立っていた。

 

 最後に会った時よりも若い。当然だ、生まれ変わっているのだから。

 

 ずっとずっと待っていた。

 彼女を護る為に、鍛錬も学習も欠かしたことは無かった。

 

「……」

 

「……」

 

 双方無言。

 

 いや、俺は待っているのだ。

 

 たった一言、それを待っている。

 

「えっと……た、ただいま、参護さん」

 

 言ってくれた。

 帰る家だと、覚えていてくれた。

 

「おかえり、阿求様」

 

 そう言うと、彼女を抱きしめる。

 

 涙が止まらない。

 嬉しくて止まらない。

 

 阿求様も俺の胸の中で押し殺すように泣いていた。

 

 また一緒に居られる。

 

 また、家族で暮らせる。

 

「おかえり! 阿求!」

 

「おそかったわね。おかえりなさい、阿求」

 

 萃香もパチュリーも、抱き合っている二人をさらに抱きしめる様に抱き着くと、三人で泣いた。

 

 ゆっくり達も集まってきてみんなで嬉しくて泣いた。

 

 心地よい風が四人をゆっくり達を撫でる様に吹いていく。

 

 多くの人の心を乗せたままに。




 これにて、『東方の世界で饅頭妖怪を拾って転機を迎えた男の記録』略して『東方饅頭拾転録』の本編を終了させていただきます。

 今後は新作を投稿しながら、後日談や外伝を追加していく予定ですのでそちらも読んでいただければ幸いです。

 それでは、3月から9月までの半年以上の間、本当にありがとうございました。

 また別の作品出会えることを願っております。


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外伝 海原参護の日記 ?月

 お久しぶりです。オルカです。

 外伝と言う形で、魔法修行中の参護日記です。

 久しぶりなので違和感があるかもですが、楽しんでください。


?月=^_^=日

 

 先日から攻撃魔法をパチュリーさんから教わり始めた。

 

 よく褒められるのは、精密な魔力操作。

 努力が必要なのは、魔力総量だ。

 

 魔力総量は魔理沙が鍛えてくれる予定。

 

 精密操作はアリスさんの太鼓判が押されているし、師匠が三人って珍しいだろうな。

 

 パチュリーさんが言うには、俺は肉弾戦が強い事と、使っている杖を魔法の媒介にすれば戦いながら魔法を放つ恐ろしい形に成長すると言ってくれた。

 

 パチュリーさんから広域魔法を、アリスさんからは糸の魔法を、魔理沙からは収束と砲撃魔法を習っている。

 

 アリスさんの魔法に俺は適性があるらしく、アリスさんは非常に熱心に魔法を教えてくれている。

 

 それと並行して、人形の制作も教わっている。

 

 シャンハイ人形やホウライ人形の様な、戦闘に使える人形を作る為のようだ。

 

 名前どうしよう? シャンハイやホウライが都市名だし、そこから着想を得ようか?

 

 

 

 

?月(゜o゜)日

 

 魔力を上げる方法はいくつかある。要は生命力から効率よく魔力を生成する技術だ。

 それを覚えれば、後は生命力の強さに依存する。

 

 他にも薬草やキノコを調合した薬で効率を上げてみたり、繰り返し魔力を練って使用をしていると、効率的な形を覚えられる。

 こればかりは、人から教えられることではないからね。

 

 魔理沙の調合知識は本当にすごい。

 

 普段は元気な女の子なんだけど、薬草やキノコの名前や効果をすぐに答えられる程の知識が有る。

 

 魔法の森で採集の時も、いくつか間違えて毒草や毒キノコを採集した時も、その見分け方や効果の差を丁寧に講義をしてくれた。

 

 普段の態度や行動とのギャップが凄くて驚いた。

 

 そして、キノコ料理は美味しかった。

 

 

 

 

?月(゚Д゚)エッ日

 

 今日はYパチュリー・Yアリス・Y魔理沙の三人が俺の杖を強化していた。

 

 いや、朝起きたら部屋で魔法陣を展開しながら、糸のような魔力を杖の中に編み込むように流していて、三人の力で出来上がった杖を俺に渡してきた。

 

 その杖は見た目も、重さも、握り心地も以前と変わりない。

 

 気になったのでパチュリーさんに見てもらうと、心底驚いていた。

 

 なんでも、強度は向上していて、魔法の媒介としての機能、魔理沙のミニ八卦炉の様な増幅器としての役割もできるようになっていたと言うのだ。

 

 Yパチュリー達、本気出し過ぎだと思う。

 

 パチュリーさんも、恥ずかしそうに

 

「今の私やゆっくり達ができる最高のマジックアイテムに仕上がっているから、それに見合う実力を身に付ける事ね」

 

 と言っていた。

 

 すごい、プレッシャーです……。

 

 とりあえず、Yパチュリー達にはしっかりとお手玉遊びでお礼をすることにする。

 

 

 

?月;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン日

 

 魔理沙の講義は、基本的に人間視点だから分かり易くて聞きやすい。

 

 努力家であることからも分かるが、多くの魔導書を読み込み、調合の知識を持ち、実践と修正を繰り返して今の彼女の実力がある。

 

 それ故に、正解だけではなく、不正解の研究も彼女は行っている。

 

 これが、教える立場に立つ時に大いに役立つのだと思う。

 

 決まった道を教えるのではなく、危険な道だけをあらかじめ禁止して、それ以外は弟子の発想を見ながら起こりうる効果に対処する。

 

 そうして失敗した時にフォローし、新たに挑戦させるのが彼女の教育スタイルだ。

 

 自由にさせているようで、しっかりと生徒を見ている。

 

 彼女は教育者に向いていると思う。

 

 あと、最近はYアリスを帽子に入れていることが多い。

 

 講義を聞いていると、帽子がせり上がり、中からYアリスが顔を出すことがある。

 

 最初見た時は噴き出してしまったものだ。

 

 大きさの合わない帽子の中でほっこりしているYアリスは可愛かった。

 

 

 

 

?月( ゚д゚ )エー日

 

 アリスさんと魔理沙の講義は実践と修正の繰り返しが多い。

 

 それは、パチュリーさんの講義が座学に特化しているからだ。

 

 大図書館という知識の宝庫でパチュリーさんは一日を知識の収集に当てている。

 

 そんな彼女の講義は非常に理論と公式が飛び交うものだ。

 伊達メガネも似合っている。

 

 Yパチュリーも図解したり、必要な本を持ってきたりと、心強いサポートをしてくれる。

 

 パチュリーさん達はどうやら、俺を三人の特性を同時に使える魔法使いとして完成させたいようだ。

 

 接近戦をしながら、人形を操り、大魔法を使い、収束魔法で大軍を薙ぎ払う。

 

 うん、兄貴みたいなチートになるのだろうか?

 

 魔力の練り込みも最近は上手くいくようになってきた。

 

 もうすぐ、何らかの魔法を使えるだろう。

 

 

 

 

?月ヒィー(((゚Д゚)))日

 

 もうすぐ、魔法が使えるって? 昨日日記にそんなことを書いた俺を殴りたい。

 

 実戦形式での訓練があったのだけど、スペカ乱射しないでください死んでしまいます。

 

 火符「アグニシャイン」を撃たれながら、咒詛「魔彩光の上海人形」に追われ、恋符「マスタースパーク」に薙ぎ払われるという体験をした。

 

 要は見て覚えろという事なのだろうが、ラストのマスパはいらないだろ!?

 幽香さんの元祖「マスタースパーク」何度も喰らってるからね?

 

 こうして考えると良く生きてるよなぁ。

 

 Y幽香は手がかからない娘だけど、きちんと可愛がってあげる。

 

 手がかからないからと言って、放置していい事にはならない。

 手がかからない娘は、手がかかる娘と同じぐらいに手をかけてあげるべきだと言うのが、俺の持論。

 

 たくさん愛でてあげたけど、やっぱりかまってあげると嬉しそうだ。

 

 可愛い娘達だよ、ホント。

 

 

 

 

?月(*´ω`*)日

 

 今日はパチュリーさんとまったりとした時間を過ごした。

 

 紅茶を飲み、本を勧められ、合間に他愛もない質問をされたり、背中合わせで本を読む。

 

 イチャつくと言うのだろう。

 

 Yパチュリーも一緒に居たけど、パチュリーさんが言うにはもう一人の私の様な娘だから、一緒に可愛がって欲しいとのことだったので、一緒にまったりとした。

 

 記憶の共有魔法。

 

 パチュリーさん達だからできる魔法。

 

 限りなく本人に近い存在であるゆっくりだからこそ、正常に機能しない記憶の共有魔法がほぼ全記憶を共有するという離れ業をやってのけた。

 

 最初は二人とも苦労していたようだけど、今では頻繁に同期し合っているようで、ほぼ同一人物状態らしい。

 

 パチュリーさんは、俺達の危険な所ややっておくべきことを指摘してくれる。

 

 彼女ほど信頼できる人物は居ないと、自信を持って言えるだろう。

 

 このまったりとした時間でパチュリーさんが楽しんでくれるなら、俺としても満足だ。

 




 久々でしたが、楽しんでかけました。

 時系列的には、Ξ月の後・最終話のずっと前って感じです。

 メッセージで、日記形式以外書くなとか言われますが、私としても普通の小説形式も頑張りたいですので、これからもがんばります。

 それでは、新作の方もよろしくです。


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外伝 パチュリー・ノーレッジの日記 ?月

 短めで投稿。

 ?月別視点日記です。

 最近寒くなってきて、朝晩が辛い……。

 ファンヒーター出すか……?


?月=^_^=日

 

 参護さんの教育計画は順調に進んでいる。

 

 彼の習得力が低い場合も考えていたが、そんな心配は必要なかった。

 

 参護さんの魔力の精密な操作は、一人前の魔法使いでも適わない者が出るだろう。

 それは常日頃から波紋や気功を完全にコントロールしようと努力していた成果で、糸の魔法を使うアリスが太鼓判を押すほどの才覚だ。

 

 逆に、魔力を一度に作る力がまだ頼りない部分だ。

 

 そこを伸ばすのは魔理沙の役目で、彼女なら調合の知識や技術的な部分でも十分に役立つはず。

 

 私は知識や理論を主軸に教えている。

 

 適性としては、アリスの糸の魔法が一番相性がいい。

 

 人形に接続して操り、本人も闘うスタイルなら確実に上級にも太刀打ちできるだろう。

 

 アリスには人形作りのレクチャーも任せている。

 

 魔法の媒介は杖か、指輪か……。

 

 あの娘が参護さんの杖に強化魔法を施しているからちょっとやそっとじゃ壊れないけど、追加で機能を付けるのは難しいかもしれない。

 

 あの杖に、キャパシティが残っていればいいのだけど……。

 

 

 

 

?月(゜o゜)日

 

 参護さんが魔理沙の家で魔力の変換技術を学んでいるはずだ。

 

 私のゆっくり妖怪がかけた強化魔法は、当時の彼女がかけられる最高の強化魔法。

 

 それだけ強力な魔法だと、後付けの魔法をかけるのが難しくなる。

 

 だから、一度かかっている魔法を解除して、パズルをするように隙間無く魔法を杖に書き込む必要がある。

 

 魔法の解除に、隙間なく書き込む操作、術式を維持し続ける魔力の維持。

 やっぱり、私達三人が必要になる可能性がある。

 

 私のゆっくり妖怪がやってくれるそうだけど、いつやるつもりだろう?

 

 私達のゆっくり達は、拠点がバラバラなのに……。

 

 

 

 

 

?月(゚Д゚)エッ日

 

 今日、参護さんから見せられた杖は、一種のマジックアイテムと化していた。

 

 まず、私のかけられる最高位の強化魔法、魔法の杖としての機能は強化魔法の隙間を縫うように、両方の魔法を強力な集束魔法で集められた魔力で縫い付けられている。

 

 もし、私達三人がやったとしてもこれぐらいのモノになる。

 

 魔法使いの杖としては破格の一本だ。

 

 持ち主の参護さんの実力がまだ追いついていないのが残念だけど、この一本に見合う成長をさせてあげたいモノね。

 

 私のゆっくり妖怪も、張り切り過ぎたと思っているみたいだ。

 

 一応、この幻想郷で五本の指に入る魔法使い三人の共同作品だし、性能は推して知るべし。

 ただ、すぐにあの杖の性能を完全に生かした戦闘が見れないのが残念ね。

 

 そろそろ、参護さんの魔力変換効率も良くなってきたし、魔理沙とアリスに頼んで、実戦形式の訓練をしようかしら?

 

 参護さんの見込みの成長の姿が面白い形になりそうだし、魔理沙とアリスに言えば喜んで手を貸してくれるでしょう。

 

 

 

 

?月;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン日

 

 最初はアリスに話を通した。

 

 彼女の魔法が一番参護さんの性質に合っている。

 

 人形への接続がどうなるか、それにも寄るけど糸の魔法だけでも接近戦を得意とする参護さんにとっては恐ろしいほどの一手になる。

 

 アリスが言うには、参護さんが自分で作った人形ならかなり期待できると言う事なので、人形作りも講義してもらう。

 

 アリスなら糸の魔法だけで岩を小石レベルにまで砕ける、と言うか切り刻める。

 

 もし、それを参護さんが使えるようになったなら……。

 

 近距離の杖、中距離の糸の魔法、遠距離の収束魔法、広域殲滅の私の魔法。

 

 肉体の強化は銀色の闘気があれば十分だし、魔力を使って一段階上に上がれるそうだからまだまだ強くなれるでしょう。

 

 魔法使いとして幻想郷の勢力を塗り替えるほどの、一騎当千の魔法戦士になりそうね。

 

 その成長に関われるなら、面白そうだわ。

 

 

 

 

?月( ゚д゚ )エー日

 

 私のゆっくり妖怪がいつ図を描いているのかと思ったけど、私と記憶を同期しているから講義内容は前もって知っているし、その後すぐに作っているようだ。

 

 私の講義とゆっくりの図解で、参護さんの知識の吸収率が非常に良い。

 

 あれです。教えただけ覚えて、突っ込んだところまで質問が来て、それを応用まで分析して来る生徒なんて教えてて面白くなってしまったのは仕方が無いと思う。

 

 講義が無い日は教えたい魔導書を探してるし、最近は小悪魔も色々と持って来てくれるから本当に助かる。

 

 最近はゆっくり小悪魔を頭に乗せていることが多くなってきている。

 

 魔力を与えているうちに一緒に居るのが楽しくなったのだそうだ。

 

 最近、小悪魔も色々とがんばっているし、ボーナスでもあげようかしら?

 

 

 

 

 

?月ヒィー(((゚Д゚)))日

 

 今日は私、アリス、魔理沙で参護さんと戦った。

 

 接近戦を禁止して、魔法を乱発した。

 

 イジメだと言われるかもだけど、波紋だけでも相当当て辛い速度で動く。

 

 しかも、接近戦がダメなら飛礫を飛ばしてくる。

 

 杖で地面の石を弾いたり、転がった際に拾った石を打ち出したり、本当に器用なものね。

 

 アリスと魔理沙も結構自分の修行的な感覚でスペカを放っていたし、それを避け切る参護さんも全力で抵抗して来るし、双方に利益のある戦いだった。

 

 最終的に、三連スペカで追い詰めることができた。最後の魔理沙のマスタースパークを薙ぎ払う形でようやくノックアウトしたのだ。

 

 魔法使いの強さは使える魔法の種類にも寄るのだけど、参護さんには三人分の魔法を叩き込む予定だし、どんな成長を見せてくれるのか、楽しみね。

 

 

 

 

 

?月(*´ω`*)日

 

 なんと言うか、幸せな一時を味わえた。

 

 言葉をたくさん交わしたわけじゃないけど、ただ背中合わせでまったりと本を読んだ。

 

 小悪魔も空気を読んでくれたのか、紅茶とお菓子を出してくれたら、奥で作業をしていてくれた。

 

 本当にボーナス何にしようか考えないと……。

 

 私のゆっくり妖怪は私と参護さんの間を行ったり来たりして、一緒に楽しんでいた。

 

 本を読んでいると、ふと背中の温かさにホッとしたり、ホコリで咽せたら紅茶を出して背中を擦ってくれたりして、幸せな時間を過ごせた。

 

 こうして日記を書いているだけでも思い出されて、幸せな気持ちになる。

 

 と言うか、参護さんのセリフが殺し文句過ぎる。

 

「パチュリーさん、俺や阿求様、萃香の事を考えてくれてありがとう。パチュリーさん以上に信頼できる人を俺は知らないよ」

 

 なんてことを背中越しに言ってくれたのだ。

 

 背中越しで本当に良かった。

 

 顔が熱くなっているのが自覚できるし、嬉しすぎて喋ると声がうわずってしまいそうだった。

 

 この後は、ただ背中越しに本を読んで、言葉を交わして、眠ってしまった参護さんの寝顔をちょっと眺めていた。

 

 子供みたいな寝顔だったのは本当にドキッとしました。

 




 ファンヒーター出すなら、灯油買ってこないとなぁ。

 去年の灯油は分離して水が出てないか心配……。

 本当は反射式ストーブがお湯も沸かせていいんだけど、今の部屋反射式禁止なんだよなぁ。
 カップラーメンと熱燗の準備が捗るのに。

 しかし、完結してからも感想やUR、お気に入りが増えてて本当に嬉しいです。

 これからも、東方饅頭拾転録をよろしくお願いします。


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外伝 霧雨魔理沙の日記 ?月

 以上にて 外伝?月 は終了となります。

 明日は仕事場泊りになりますので更新は無いです。

 そろそろ、官能の方も更新しないとなぁ……。


?月=^_^=日

 

 参護に魔法を教える立場になった。

 

 私としても、参護に教えるのは別にかまわないのだが、パチュリーやアリスも物凄い張り切っていた。

 

 私必要か?

 

 私は収束魔法の指南と魔力総量の増加を担当することになった。

 

 ちなみに、参護はアリスの糸の魔法に適性があるという事が分かった。

 

 しかし、器用だと思う。

 

 パチュリーの予想だとアリス程の適性は無いけど、私やパチュリーの魔法も使えるそうだ。

 当然、私達ほどの適性は無いけれど。

 

 器用貧乏。

 

 まぁ、それでもタイプの違う魔法を三つ覚えることができる。

 

 究極の器用貧乏になるかもしれないぜ。

 

 

 

 

?月(゜o゜)日

 

 魔力の精製能力を上げる。

 

 書くのは簡単だけど、実行するのってかなり難しい。

 

 体質改善やら知識強化やら、まぁ地味で泥臭い作業が多くなる。

 

 参護は本当に直向きに努力する。

 

 そこが私が尊敬できる部分だ。

 

 努力を苦にせず、届かぬと知ってもそれに近い形を模索する。

 

 本当に、師匠と仰ぎたいぐらいの人格だ。

 

 まぁ、師匠は私の方なんだけどな。

 

 キノコや薬草の採集から始めて、無事に調合ができた。

 

 参護の奴もすごいよな。

 ピンポイントで毒キノコを探し当てる才能はある意味欲しいぐらいだ。

 

 最後に私特製のキノコ料理を作ってやった。

 

 参護の奴が驚いていた姿がちょっと優越感。

 

 さすがは、私の得意料理だぜ!

 

 

 

 

 

?月(゚Д゚)エッ日

 

 今日はゆっくりアリスが、参護の家に朝から出かけて行った。

 

 おそらく、ゆっくりパチュリーと何かやっているのだろう。

 

 ゆっくり達があの杖を強化する算段をしていることをパチュリーが教えて貰っているし、どうなるだろうな?

 

 ゆっくり妖怪は、生まれた時点での元になった人物の記憶や技術を持っているらしい。

 

 いつ、私やアリスのゆっくり妖怪が生まれたのかは分からないけど、私やアリスの技術を持っている。

 

 その上、パチュリーのゆっくり妖怪。

 彼女は私達とは別格だ。

 

 本体と記憶を共有している、ある意味で新しいゆっくり妖怪の形らしい。

 

 常に参護と一緒に居るし、パチュリーの感情とゆっくり妖怪の感情が相乗効果で高め合っている状態なのかもしれない。

 

 この調子でいけば、パチュリーが人前に出れる可能性もあるから楽しみだぜ。

 

 

 

 

?月;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン日

 

 参護の真価は実践と修正を繰り返して、少しずつ理想の形に近付いていくことだと思う。

 

 何度間違えても、失敗しても、それを糧にして別の形を探る。

 

 普通なら途中で挫折するし、別のモノを探す。

 

 だが、参護は失敗すら別の形で生かす。

 

 私の理想とする形でもある。

 

 しかし、参護の奴はめげないね。

 なんと言うか、メンタルがかなり強い。

 

 失敗も挫折もひっくるめて、自分の心で受け止めている。

 

 ああいう奴こそ、自分の姿を他人に見せて導く教育者に向いていると思うんだがね。

 

 後、参護がゆっくりアリスが私の帽子の中に隠れているのを見ながら癒されていた。

 まぁ、可愛いからよくわかるけどな。

 

 

 

 

 

?月( ゚д゚ )エー日

 

 パチュリーから明日、実戦形式での訓練のお誘いが来た。

 

 いやぁ、弾幕ごっこ以外で魔法をぶっ放せるなんてそうそう無いから、楽しみだぜ。

 

 こうして参護に魔法や知識を教えていると、復習の様な形になるからか、研究に役立っている。

 

 当然参護に教えている時間があるから、研究している時間も減っているのにだ。

 

 アリスが、教えることで自身も学ぶものだと言っていたが、こういう事なんだな。

 

 明日は三人で参護を追い詰めるんだし、アリスと二人で上海達や私のミニ八卦炉をメンテナンスした。

 

 微調整しだすと意外と止まらない。

 

 アリスと二人で、意見を出し合って結局参護の講義が終わるいつもの時間に解散になってしまった。

 

 完璧なミニ八卦炉で参護の奴をピチュらせてやるぜ!

 

 

 

 

 

?月ヒィー(((゚Д゚)))日

 

 いやぁ、今日は楽しかったぜ!

 

 参護の奴、さすが接近戦を得意にしているだけあるな。

 

 転げ回りながらだったが、ほとんど被弾しないで避けきっていた。

 

 ま、私のマスパで沈めたがな!

 

 しかし参護の奴、幽香のマスパを何度も喰らっているせいか、地味に対処方法を身に付けていやがった。

 

 これは、ダブルマスパかファイナルマスパを解禁せざるを得ないか?

 

 ブレイジングスターだと、すれ違い様に捕まる未来が見えるからな。

 

 参護の奴は思い付きとかじゃなく、冷静に今までの技や本人の癖を頭で何度もシミュレートしているようだ。故にどんな場面にも対処できる。

 

 アイツの強みは、才能じゃなくて経験だなやっぱり。

 

 

 

 

 

?月(*´ω`*)日

 

 今日は参護の魔法使い講義はお休みだ。

 

 久しぶりに、自分の研究に没頭できたが、参護に教えていた時に色々と質問をされた。

 その質問の内容が、こっちに生かされることが多い。

 

 学びながら教えて、教えながら学ぶ。

 

 なるほど、こうして体験するとよくわかる。

 

 私もたくさん失敗してきたけど、参護は私とは違う失敗をする。

 

 私が予想にもしなかった失敗、予想してたけど回避した失敗、失敗から連鎖的に生まれた失敗。

 

 それを見ることができた。

 

 対処する姿を見られた。

 

 これは、本当に私の研究を……いや、アリスやパチュリーの研究だって進められる。

 

 他者の視点というのが、ここにきてここまで有用に働くものかと感心した。

 

 これは参護に教える以上に私も教えられているようなもんだな。

 




 八冊の官能小説を買っています。

 三冊読み終わりましたが、まだまだ納得のいく描写を会得できない。

 書いて修正を繰り返しています……。

 いやぁ、ハーメルンのR18小説は色々と攻めてる表現ばかりでなんとも(´ε`; )ウーン…

 ファイナルスパークとファイナルマスタースパーク。

 どっちも弾幕ごっこ以外で喰らいたくない。


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外伝 海原参護の日記 いつかの年末年始

 久々にこっちを更新。

 実際の日付で書きました。年末年始の海原家です。

 忙しそうにいちゃついてます。

 羨ましい。


12月29日

 

 もう少しで一年が終わる。

 

 年末年始の準備は着々と整いつつある。

 

 今日は、年末年始に使う物や食料を買ってきた。

 

 月末から少しずつ買い揃えて来ていたが、今日で全部買い揃えたことになる。

 

 掃除用具はこの時期売り切れるので早めに買い揃えておくのがミソだ。

 

 明日にはしめ縄や門松なんかを飾らないといけない。

 

 大体、28日か30日に飾りを出すのが一般的で、今日は29≒二重苦に通じると避けられ、31日は例外もあるらしいけど、一夜飾りと言って葬儀と同じで縁起が悪いと言われているらしい。

 

 家も13日に『松迎え』や『煤払い』、『針供養』は終えている。

 『煤払い』、大掃除なんだけどその時は、ゆっくり達は大活躍してくれた。

 

 Yパチュリーは魔法で、Y咲夜は元々が家事万能、Y幽香やY霊夢は金物磨き、YレミリアやYフランは高所のホコリを落としたり狭い所のホコリを掃除してくれた。

 

 YチルノとY大妖精はY小悪魔の面倒を見ていてくれたし、Y美鈴は玄関方面での清掃を担当してくれた。

 

 みんなテキパキしてて、俺や阿求様なんかが手を出す隙が無かった。

 

 そんな訳だから、料理の分野では負けられない。

 

 美味い年越しそばと、美味いおせち料理を食べさせてあげなくちゃね。

 

 

 

 

 

 

12月30日

 

 門松やしめ縄、鏡餅なんてあっちの世界だと、なんとなくで準備してたし、それで済んでいた。

 

 幻想郷は、神様が居たり、妖怪が居たりするからなのか、現代よりも圧倒的に風習の細かい決まりなどが根強く残っている。

 

 しめ縄は、太い方が右に来るように飾るなんて、俺は知らなかった。

 

 YレミリアとYフランがフラフラと飛びながら玄関先に頑張って飾り付けてくれたのだ。

 

 お疲れ様っと、声をかけてあげたら本当に嬉しそうに両肩に乗ってスリスリと頬を寄せて来てくれた。

 

 門松は俺と萃香で作った。材料提供に鈴仙さんが協力してくれた。

 さすが、迷いの竹林産の竹だ。しっかりとした良い竹を持って来てくれた。

 

 鏡餅は、沢山作った中で成形したものがある。

 ミカンは自家製の奴がある。

 

 萃香が何かを思いついたらしく、俺に内緒で別室に行った。

 

 そして、呼ばれて行ってみると、Y霊夢・Y小悪魔・ミカンと並んで、鏡餅ならぬ鏡ゆっくりが出来ていた。

 

 思わずフイてしまった。

 

 まぁ、ミカンサイズのゆっくり妖怪は今居ないしね。

 Y小悪魔が生まれたばかりの頃は、丁度そのぐらいだったか?

 

 今はYフランに近いぐらいまで大きくなってきている。

 

 こうして見ると、成長を感じられてうれしいものだね。

 

 

 

 

 

 

12月31日

 

 あれだ、一年の終わり。

 年越しそばを下ごしらえして、皆で命蓮寺に鐘を突きに行く。

 

 事前にこういう妖怪を連れて行きますと説明はしていたけど、快く受け入れてくれた。

 さすがに、阿求様には絶対に俺か萃香かパチュリーさんを付ける様にしていたけど。

 

 ゆっくり達は、全員で撞木に乗って突いていた。

 

 衝撃でプルプルと震えていたのが可愛かった。

 

 家に帰って年越しそばをすすり、初詣に向けて出発する。

 

 年越しそばは、諸説あるが切れやすいそばで細く長くすする。

 という部分で縁起を担ぐものであるらしい。

 

 幸い晴れているし、良い朝日が見れそうだ。

 

 博麗神社から見られるらしいから、これから向かおう。

 

 

 

 

 

1月1日

 

 博麗神社の屋根を借りて、日の出を全員で見ることができた。

 

 そのまま、初詣に移行。

 

 キチンと賽銭をして、二拝二拍手一拝で参拝する。

 

 ちなみに、神社の通り道。

 中央は神様の通り道だと言われているが、本来は一番偉い人が通る道であるという話だ。

 

 神様は降りてくるのであって、道を通るわけではないらしい。

 

 守矢神社の様に、神様が普通に顕現(けんげん)している時点でおかしいのだと言う。

 

 一応、新年のあいさつと料理のお裾分けを渡して帰ってきた。

 

 寒かったのか、ゆっくり達は薪ストーブの横で集まって温めあっている。

 

 俺や阿求様、萃香とパチュリーさんでゆっくり達を一人一人抱き締めてあげて、温めてあげる。

 

 YパチュリーとY幽香、Y大妖精を温めてあげる。

 

 Yチルノは寒いのが平気らしく、温まった子達と遊んでいる。

 

 パチュリーさんはYパチュリー相手になにやら揉みしだいていた。

 

 それを見る阿求様と萃香は苦笑気味。

 なんだろう?

 

 

 

 

1月2日

 

 餅は危険である。

 

 子供やお年寄りが食べる時は十分に気を付けなければならない。

 

 飲み込む能力が衰えるかららしいけど、ゆっくり達の子供にも気を付けなくてはならない。

 

 Yレミリア・Yフラン・Y小悪魔。

 彼女達には、一口サイズに切り分けた餅を与えている。

 

 くっ付かない様にきな粉や醤油なんかを付けて食べやすくしている。

 

 口の周りにあんこを付けながら食べている姿は微笑ましいものがあった。

 

 俺が作ったおせちは好評だった。

 海産物が無いから大分代用品になってしまったけど、おいしいと言ってくれたので満足だ。

 

 数の子や昆布、エビなんて幻想郷では手に入らないから山の幸や川と湖の幸で代用した。

 

 見た目や単純においしい料理で代用している。

 

 カマボコは魚の練り物だから、川魚や湖の魚で作ってみた。

 

 形こそ悪かったけど、食紅で二色に出来たのもそれっぽい形になった。

 

 明日は祖父母の家で食べた料理を試してみようかな?

 

 

 

 

1月3日

 

 阿求様も知らないらしい、家の祖父母の所で食べた料理を作った。

 

 あつべ汁。

 

 材料を均等に切り分けた汁物になる。

 

 山の幸がメインで作られているから、幻想郷でも再現は可能だった。

 

 具だくさんで、満足度の高い汁物。

 

 焼いた餅にかけて、具だくさんの雑煮にするのも悪くない一品だ。

 

 阿求様も知らない料理のようで、とても気に入ってくれた。

 

 具材一つ一つも細かく切り揃えているから、子供にも安心だ。

 

 

 

 

1月4日

 

 この幻想郷に来て、何度目の正月だったか?

 

 今回は、飾り付けや料理をがんばった。

 

 飾り付けなんかはきちんと終わったら、神社で燃やしてしまわなくてはならない。

 

 だから毎年手作りなんだけど、やっぱり家族全員で何かをするってすごく楽しい。

 

 しめ縄を編むゆっくり達とか、掃除をがんばるゆっくり達とか、それらが終わった後にきな粉餅を幸せそうに食べている姿とか。

 

 こういう日常から癒しを見つけられるって幸せだなっと思う。

 

 ゆっくり達は可愛いし、阿求様達も笑いながら話している姿は心が温かくなる。

 

 居間でまったりと寝転がっていると、太ももに萃香とパチュリーさんが、右腕を阿求様が枕にして寝転がっていた。

 

 すごくうれしかったのだけど、右腕と両足が痺れてしまい、皆に起き上がれないのをいいことに色々と弄られてしまった。

 

 この寒い時期に、服に手を付けるのは無しだと思うんだ。




 リアル日付です。

 年末年始感があればいいのですが。

 別視点で、阿求・萃香・パチュリーと続きます。
 一人だけ書かないと言うのも悲しいので、参護ラヴァーズは全員書きます!


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外伝 稗田阿求の日記 いつかの年末年始

 さすがに後二人分の日記は今月中の早い時期にあげたいですね。

 年末年始なのに、2月とかさすがに投稿が遅いですって話ですわ。

 一話投稿しただけで、メッセが凄いことになったので急遽、阿求日記です。

 仕事始めで、溜まっている仕事が大変ですわ。

 明日は会社泊まり。
 月曜日も泊まりなので、ご了承ください。


12月29日

 

 参護さんの家で過ごす年末年始。

 

 人里の家で過ごしていた時よりも準備は大変ですが、おいしい料理や仲の良い人たちと過ごせるのはうれしい。

 

 最近は造酒も家で楽しむ分には十分な程の量を作れるようになってきていますし、料理は参護さんが妙に張り切っていて、美味しい物を作ると宣言していました。

 

 参護さんは、幻想郷に来る前に住んでいたところでは年末年始の風習の多くが風化して残っていないものも多いと言っていた。

 

 針供養などは、一部の地域でしか残っていないそうだ。

 

 かなりの部分が便利になった反面、こういう行事ごとは無くなっていっているそうだ。

 

 今も残っているものが多い幻想郷としては、複雑なものだ。

 

 年賀状だって、元は新年のあいさつに伺えないから生まれたモノで、今は別のモノに取って代わられつつあると言っていた。

 

 はるかに進んだ文明なのだろうけど、参護さん曰く「便利にはなっているけど、不自由にもなった」と言っていた。

 

 しがらみが多いのでしょうか?

 

 

 

 

 

12月30日

 

 YレミリアとYフランが玄関のしめ縄を飾る手伝いをしてくれた。

 

 太い側をYレミリアが、細い方をYフランがフラフラとしながらも一生懸命に飾り付けをしてくれた。

 

 参護さんの両肩に乗ってから、両側からスリスリと懐いていた。

 

 ちょっと羨ましいな。

 

 萃香はゆっくり達で、鏡餅を模した一発芸を見せてくれた。

 

 参護さんのツボにはハマったようでしたね。

 お腹を抱えて、顔を伏せてしばらくプルプルしていた。

 

 意外とツボが浅いみたいですね。

 

 笑いを堪えながら、そば粉を引いている姿はちょっと面白いかもしれませんね。

 

 

 

 

 

12月31日

 

 これから命蓮寺へ、除夜の鐘を突きに行ってきます。

 

 昨日、一生懸命引いてきたそば粉は、見事に年越しそばとして今日出てきた。

 

 十割そばではなく二八そばでしたが、そばの風味が生きていて、薄味の出汁と相まって味わい深い年越しそばでした。

 

 ゆっくり達もおいしそうに食べていた。

 

 子供用に小さい器を用意していたりと、準備が良い。

 

 萃香はお酒を飲みながら、パチュリーは知識と照らし合わせる様に味わっていた。

 

 らしい食べ方で、ちょっと安心する私が居る。

 

 やっぱり、皆らしく年を締めくくり、らしく年を開けたいものですね。

 

 

 

 

 

1月1日

 

 初詣は守矢神社ではなく、博麗神社で行いました。

 

 萃香が妖怪の山に入るのは、新年早々大変でしょうし、霊夢さんには何度もお世話になってますから、こちらにしました。

 

 除夜の鐘を突いた時、ゆっくり達はみんな撞木に乗って鐘を突いていた。

 

 振動が伝わって、みんなプルプルと震えていたのがなんともかわいい姿でしたね。

 

 肩とか頭に乗せても微妙に振動を感じるんですよ。

 

 それが楽しいのか、ピョンピョンと跳ね回ったり、ゆっくり達同士で寄り合って互いの振動を確かめたりしていた。

 

 参護さんが、Yパチュリーを温めてあげていたのだけど、直接胸に抱く様に温めていた。

 

 温め終わると、Yパチュリーはパチュリーの下に行って記憶同期をしていた。

 

 そのまま、パチュリーのお仕置きが始まったのだけど、頬が紅いのは絶対に寒いからでも温まったからでもないですね。

 

 パチュリーはこういう所が可愛いって思います。

 

 

 

 

 

1月2日

 

 参護さんの話では、餅は少々危ない食べ物だと言う事でした。

 

 その為か、参護さんはYレミリアちゃん達へお餅を食べさせてあげる際には、丁寧に一口大の大きさまで切り分けていた。

 

 小まめにそういう事をしているので、子育てが様になっている。

 

 餅で餡子を包んでみたり、みたらし団子にしてみたり、醤油を付けて磯辺焼きにしている。

 

 餅をメインにしてたくさんの種類の料理を作っている。

 

 ずんだ餅、くるみ餅、黒ゴマ餅、トマトを使ったソースで「ぴざ」風の餅というのも作っていた。

 

 外の世界からの知識でもって色々と試しているのでしょう。

 

 形が悪いけど、かまぼこなんていうのも自作していた。

 

 結構長く付き合っていますが、参護さんは自力で何とかすることを好む傾向がありますね。

 

 元々、私がこの家を紹介した時には何でも屋をすることも決めていましたし、護衛以外の内職などは障子の紙を貼ったり傘を組み立てたりと、ここでの生活に必要な技術を早く覚えられる様に始めたようですし、独立心というか自立心というか、そういう心ができている。

 

 参護さんの兄上殿の存在が大きいのでしょう。

 

 野営の訓練もしていたらしいし、改めて海原家が規格外なのを理解しましたね。

 

 料理自体は当番制で回していたそうで、七人家族の分を作っていたらしい。

 小さい頃からそうしていたなら、あの独創的な着想と作れる料理の数にも納得がいきます。

 

 明日の料理に気合が入っていたようですし、楽しみです。

 

 

 

 

 

1月3日

 

 あつべ汁という汁物をいただいた。

 

 汁自体は少ないけど、具材が多く、それぞれの具材からおいしい出汁が出てて、全体的に細かく切られている具材が食べやすい。

 

 彼の祖父母の郷土料理だと言っていた。

 

 確かにそういう料理なら私も知らないですね。

 

 地域特有の妖怪などは、私の幻想郷縁起にも書かれる機会は少ないのでしょうが、参護さんからそういう話を聞くのも楽しい。

 

 いつか会ってみたいとも思えます。

 

 餅を入れて具材が餅にくっ付いているのを一緒に食べるのも中々おいしい。

 

 ゆっくり達もおいしそうに食べていた。

 

 具材を小さく切り揃えているのは、良い出汁を出すためだけじゃなく、こうしてゆっくり達が食べやすいように気を使っているのかもしれない。

 

 切り揃え辛い食材も多いですから、労力を惜しまない姿勢がやっぱりすごいですね。

 

 

 

 

 

1月4日

 

 年末年始をこうして参護さんの家で過ごすのはもう恒例になっている。

 

 みんなでしゃべりながら、ゴロゴロしながら料理を食べて、ゆっくり達とイチャイチャする。

 

 萃香が寝ている参護さんの太ももを枕にして、それに釣られてパチュリーが反対側の太ももを枕にした。

 

 みんな幸せそうなのがちょっと羨ましかったので、良いなぁって呟いたら、パチュリーが腕を勧めてくれたので、それに甘えて腕枕を堪能させていただいた。

 

 どうも、萃香もパチュリーも私を立ててくれている。

 きっと、二人とも腕枕の方が良かったでしょうに……。

 

 目が覚めた参護さんは両足と片腕が痺れて、動けない状態になってしまった。

 

 萃香が、ズボッと両手を服の中に入れて、悶えさせていた。

 

 パチュリーも少し嗜虐的な笑みを浮かべて、同じようにズボッと……。

 

 萃香に手を取られて、背中の方に手を突っ込まさせられた。

 

 両手に参護さんの体温が直に伝わってきて、恥ずかしい気持ちになったのは、秘密だ。

 

 寝起きなのか、とても温かかった。

 




 未だに一日の平均UAが500前後も頂いているので、外伝を書く意欲がうなぎ上りです。

 本当にありがたく、モチベーションも上がるというものです。

 眠くて日中辛いと言う、休みボケ発症中。

 それでも、書くのはやめられないです!


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外伝 伊吹萃香の考察 いつかの年末年始

 どうも、オルカです。

 ココの所、饅頭拾転録に更新が集中しているのは、この話を今月中に、しかもできるだけ早く終わらせるためです。

 年末年始なのに、2月更新はさすがにダメだと思いますしね。

 バレンタインデーとかのイベントもありますし。

 と言う訳で萃香日記です。

 あ、明日は会社に泊まりなので更新はありません。


12月29日

 

 そろそろ、酒蔵の酒が良い感じになってきているから、味見をするのが日課になっている。

 

 年々おいしいお酒になっていくから、そのうち銘酒になって幻想郷に広まりそうだね。

 

 参護も阿求もバタバタしてたから、なんだろうと考えたら、年末年始の準備だった。

 

 そういえばそんな時期だったねー。

 

 勇儀の所に飲みに行ったり、天界でゴロゴロしてたから忘れちゃうところだったよ。

 

 参護が言っていたけど、幻想郷は催し物なんかの風習が強く残っているとか言っていた。

 

 節分の時期に玄関先に飾る柊鰯。

 この風習もあって、その時期は鬼は肩身が狭いんだけど、参護は節分自体しない。

 

 私の為に柊鰯を飾ることはしないし、豆まきもしない。

 この時期は豆自体が食卓から姿を消すのだ。

 

 そういう所も参護の魅力だと思う。

 

 うちの家族が帰れなくなるから節分はやらないよ?

 だって!

 

 今思い出しても胸にキュンってくるよ。

 

 

 

 

 

12月30日

 

 しめ縄をゆっくりレミリアとゆっくりフランが一生懸命飾りつけしていた。

 

 見ていたら、フヨフヨプニプニとしている姿が、似ていると思った。

 

 ゆっくり霊夢を下にして、ゆっくり小悪魔を乗せて、その上に小さめのミカンを乗せて完成。

 

 鏡餅ならぬ、鏡ゆっくり。

 

 咄嗟の思い付きだったんだけど、参護が思いの外ツボにはまったようだった。

 

 初めて見た時は、腹を抱えて耐える様にプルプルとうずくまってたし、何とか立ち直った後も思い出したように噴き出すようになった。

 

 ありゃ、今日一日立ち直れないかもしれないね。

 

 そば打ちをしている最中に、阿求やパチュリーに見えない様に、鏡ゆっくりを見せてみたら、また笑いを堪えるように震えながらそばを打っていた。

 

 あっぱれ!

 

 不意打ち鏡ゆっくりを今日一日やり続けた結果。

 

 参護のアイアンクローを食らったけど、後悔はしていない!

 

 

 

 

 

12月31日

 

 参護はあれだね。

 家で一番料理ができるという事実。

 

 年越しそばはとてもおいしかった。

 

 温かいだし汁に風味の効いたそば。

 具材も山菜を主に使って、天ぷらを別皿に置いておくという気遣い。

 

 もし、仮に参護が阿求にではなく、あの吸血鬼とかに出会い、触れ合っていたなら。

 きっと執事服が似合う感じになったのかもしれない。

 

 今度、あのメイドに執事服が無いか聞いてみようかな?

 

 すっごく見たい。

 

 ああいう、しっかりとした服装で、給仕なんかしてる姿はきっと似合うだろうな。

 

 よし、阿求やパチュリーに相談して近いうちに、参護の着せ替え祭りでも開こうかな?

 

 執事服だけじゃない。

 

 あの本だらけの場所ならいろんな服の目録もあるだろう。

 

 それらを内緒で作って、私達で着替えさせて楽しむ。

 

 ……悪くない気がする。

 

 これは本格的に検討の余地ありだね。

 

 

 

 

 

1月1日

 

 初詣は霊夢の神社に全員で行った。

 

 賽銭がたくさん入る日だから霊夢の機嫌も良かった。

 

 まぁ、私が天狗の住む山に入るのは面倒になりそうだという事で、守矢は却下されたんだけどね。

 

 こっそり参護が甘酒を持たせてくれたのはうれしかったな。

 

 なにしろ、初詣に行く前から酔っぱらうのはよろしく無いとお酒取り上げられてたし。

 

 終わってすぐに、見つかっても良い訳の効く甘酒を渡すなんて本当に気が利くね。

 

 やっぱり、パチュリーや阿求に相談して昨日の計画を進めて行こうかな?

 

 絶対執事服似合うと思うんだけどなぁ。

 

 参護は細く見えるけど服の内側は鍛えられている。

 

 鎧の様な筋肉って訳じゃない。

 

 効率の良い付き方。

 自分がどう動くか、大体使う筋肉を知っている上での鍛え方。

 

 若い身空で一人暮らしをして、仕事をして、人里の中で交流を図って、どうすれば信用されるかを考えて実践する。

 

 もしかしたら、参護は頭の方もすごいかもしれないね。

 

 なにしろ、三人の魔女相手の魔法講義を今の所受け切っているのだから。

 

 今年もいい年になりそうだね。

 

 

 

 

 

1月2日

 

 餅が美味い。

 

 餅米を大量に使って、沢山の餅を用意していたんだけど……。

 

 凄い量になっていた。

 

 参護はそれをいろんな料理にしていた。

 

 特に、赤いソースを使ったぴざっていう餅料理は中々おいしかった。

 

 他にも、油を敷いた鍋に餅を置いて、弱火でじっくり両面焼いて、仕上げに醤油を鍋に入れて軽く焦がした一品は好き嫌いが分かれそうだったけど、美味しかった。

 

 油で表面がカリカリになっている部分と、醤油でトロッとしている部分。

 この二つの触感がたまらない。

 

 まぁ、醤油を焦がすから洗い物は大変らしいけどね。

 

 外の世界では二十歳で元服、成人として扱われるらしい。

 

 それを十三歳で一人で生活できるほどの自活力と妖怪と戦える程の実力の両方を持っていた。

 

 本人が言うには、家の方針と兄の特訓があってこそだと言っていた。

 恐ろしく強いが、不器用な兄だと。

 

 阿求が言うには最初は兄の話はしたがらなかったそうだけど、今は結構するようになったと思う。

 参護の心境に何らかの折り合いが付いたのかな?

 

 きっと、気付かなかったことに気付いたんだろうな。

 

 人間は分かり合うのに手間取る種族だからね。

 

 

 

 

 

1月3日

 

 参護の祖父母の家の郷土料理なる物が美味しかった。

 

 細かい具で、お茶漬けを食べている様にズルズルと食べられる。

 

 しかも餅を入れていると、その細かい具を餅が絡め取って餅と具材を一緒に食べられる。

 

 煮干し出汁だねこれは。

 

 いやぁ、お酒に合うねぇ。

 

 参護が料理上手なせいで、ちょっとした味とか工夫とかが分かるようになった。

 

 出汁の味もちょっとなら分かるようになった。

 

 前は食べられればOKみたいな所があったんだけどな。

 

 今は、参護がどんな工夫をしたか。

 それが気になって、ついつい探しちゃうのが困りものだね。

 

 

 

 

 

 

1月4日

 

 年末年始は、参護とこうしてゴロゴロできるのが嬉しいね。

 

 眠っている参護の太ももを枕に横になったけど、それに釣られてパチュリーが反対側の太ももに、阿求が参護の腕枕を堪能した。

 

 ちょっと羨ましいけど、参護に甘えてる阿求を見るのも、実は私の楽しみだったりする。

 

 二人とも可愛いんだよ。

 

 そこにゆっくり達が加わって私得な光景が広がるわけだ。

 

 長時間枕にしていたせいだろうけど、参護の両足と右手が痺れて動けなくなっていた。

 

 こうなったらやる事は一つ。

 

 服の中に手を突っ込んで、人肌の暖を取ろう。

 

 パチュリーも楽しそうだったし、阿求は遠慮していたのでちょっと誘導してあげた。

 

 二人とも満足気な表情をしていたね。

 

 突っ込んだ手を少しウットリと胸に抱いている阿求を見たけど、見て見ぬふりをしてあげた。

 

 ちょっと気持ちわかるしね。

 




 残すは、パチュリー日記だけ!

 参護さんって、ハイスクールDHの時点で高校2年生相当の年齢です。

 なのでハイスクールDHにゲストに行く参護さんは高校2年相当の年齢で登場する予定です。

 チートの片鱗を書ければいいなぁ。


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外伝 パチュリー・ノーレッジの日記 いつかの年末年始

 お待たせしました。

 パチュリーの日記を持って、今回の外伝を終了します。

 次の更新は、おそらくハイスクールDHの参護さんゲスト回ですかね?

 次回からはハイスクールDHの方になります。

 官能編はもうちょっとお待ちください。



 

12月29日

 

 年末年始。

 

 私は特に紅魔館と海原邸の両方に居を構えているから、この時期は忙しい。

 

 参護さんやレミィは気を使ってくれているけど、私だって紅魔館や海原邸の一員だし、やるべきことはしっかりとやりたい。

 

 そういうわけで、紅魔館の手伝いと海原邸の手伝いを両方こなしていた。

 

 とは言っても、紅魔館はレミィや妹様が吸血鬼だから初詣なんかはできないし、そもそも行事ごとをするような趣味も無かった。

 でも、参護さん達と交流が始まってからは、細かい行事なんかを楽しんでいる。

 

 年末の大掃除なんかもその一つ。

 

 ただ、掃除なんかは咲夜と妖精メイドが毎日してくれているので、大掛かりにする必要もないのだ。

 

 気付きにくい部分を掃除してあげる程度で済む。

 

 後は、咲夜が事前に参護さんと共同で行っていた年末年始の料理レシピの開発。

 これで紅魔館は年末年始というイベントを迎える。

 

 レミィは行事って楽しいわねっとワクワクしている様子だったし、咲夜もレミィの楽しそうな姿を見るのが嬉しいらしい。

 

 妹様もイベントごとに参加して、紅魔館内を盛り上げていた。

 姉妹での触れ合いも増えてきているようだし、イベントがきっかけで姉妹仲も良好になっているようだ。

 

 

 

 

 

12月30日

 

 紅魔館の大掃除を手伝った後に、海原邸に行ったのだけど、参護さんが笑いを堪えながら料理をしていた。

 

 大体は普通なのだけど、いきなり思い出したように、笑いを堪える様に肩を震わせ、五分ほど耐えるような仕草をしてから、再び行動に戻る。

 

 それを一日繰り返していた。

 

 阿求に何があったか聞いたところ、鏡ゆっくりという一発芸を萃香とゆっくり達が披露してから、ツボにハマったようだ。

 

 ここまで長引く程に彼のツボにハマったという事にちょっとびっくり。

 

 何度かこっちを見てから、噴き出しているから、たぶん萃香の奴が何かしてるのかしらね?

 

 なにしろ、さっき参護さんからアイアンクローを食らっていた。

 

 結構暴れてたから、相当痛そうだった。

 

 

 

 

 

12月31日

 

 参護さんの作ったそばを紅魔館の皆に届けて、咲夜の料理を海原邸に届けた。

 

 さすが、咲夜の料理は海原邸でも非常に喜ばれた。

 

 咲夜はお世話になっていますからこれぐらいは当然ですっと言っていたが、参護さんの料理知識から外の世界の調理法を吸収しているのが楽しいようだ。

 

 命蓮寺に鐘を突きに行くことになった。

 

 レミィ達は流石に来なかったけど、初日の出前まで屋根の上でまったり過ごすらしい。

 私は参護さん達といるようにした方が良いと言われて海原家で行動している。

 

 結果報告をよろしくって言われたけど。レミィは本当に何を期待しているのかしら……。

 

 命蓮寺は妖怪も多く、除夜の鐘を突きに行く場合は阿求の護衛をしなければ、危険だ。

 

 普通の人間でも危ない状態なのに、阿求はもっと危険ね。

 

 海原家で戦闘能力を持たない彼女は私達の護衛対象。

 参護さんと萃香と交代で護衛する。

 

 まぁ、あの命蓮寺の連中が境内で不祥事を許す訳もないでしょうけど、事前の報告と警戒は当然の行為だろう。

 

 参護さんの代わりが私達には居ない様に、阿求の代わりも私達には居ないのだ。

 彼女を死なせる訳にはいかないのだから。

 

 

 

 

 

 

1月1日

 

 初詣は博麗神社。

 

 皆でお賽銭をしたからか、霊夢の機嫌は異様に良かった。

 

 あと、おみくじも引いた。

 

 私は【中吉】。

 中々悪くない運勢だった。

 

 萃香はいつの間にか、甘酒を上機嫌で飲んでたし、参護さんがこっそり持って来てたのかしらね?

 

 初詣も終わって、家で温まっていた時、ゆっくり妖怪達が結構冷えていたので暖炉や薪ストーブが暖まるまで私達が抱き締めたりして温めていた。

 

 皆暖まったあたりで、私のゆっくり妖怪が記憶同期を求めて来たので、受け入れた……。

 

 あの娘、またしてもやってくれる……。

 

 参護さんの服と素肌の間に入り込んで温まっていたようで、その時の感覚がダイレクトに私と共有してしまった。

 

 参護さんの匂いも、暖かさも、全部今さっき体験したように、鮮明に同期してしまった。

 

 いい匂いだった。

 温かくて安心できる心地だった。

 

 しかし、完全に不意打ちでそんなことをされたのだ。

 

 思わず悲鳴を上げる所だった。

 

 その後はいつも通り、全力で揉みしだいてやった。

 阿求から微笑ましい物を見る目で見られていた。

 

 

 

 

 

1月2日

 

 今日は主に紅魔館でレミィ達と一緒に過ごした。

 

 レミィと妹様がやたらと、参護さんとのコトの進み具合を聞いてくる。

 

 そういえば、レミィも妹様も最近は恋愛小説と一緒に奥にある官能書籍の棚からも何冊か借りて行ってたわね。

 

 知識を得ると今までの日常からもその知識に類する現象を抽出しやすくなる。

 

 病気の知識を得たら、その知識からどの病気かを推測できるようになる。

 

 新しく覚えた漢字を人里なんかで良く発見するような感覚。

 

 たぶん、恋愛小説や官能小説から得た知識と設定が、参護さんと私、阿求や萃香と合致する部分があるから、興味が尽きないのだろう。

 

 私達の仲に興味を持っているのは悪い事じゃないけど、下衆の勘繰りって言うのも面白くは無いわね。

 

 と言う訳で、ちょっと過激な内容を教えておいた。

 

 顔を真っ赤にしながら興味深げに聞いていたレミィ達だけど、さすがに咲夜には止められた。

 行為について詳細に教える前にだ。

 

 顔を真っ赤にして動じている二人を見るのも楽しかったけど、咲夜に怒られてまで続けるものでもないし……ね?

 

 

 

 

 

1月3日

 

 大きな鍋でたくさんの具材を煮込む料理。

 

 参護さんに言われて、レミィ達にお裾分けするために、咲夜を呼んで半分ほど分ける。

 

 和のテイストは紅魔館ではあまり出されない食事だ。

 

 レミィが洋風の食事を好むというのもあるし、名前からわかる様に西洋出身の妖怪が多い。

 咲夜はレミィが付けた名前だけど、彼女も西洋系の容姿をしている。

 

 だから、どうしても洋に偏った献立になる。

 まぁ、洋の料理の種類だけでも相当多いから、特に問題ないのだけど。

 

 それ故か、和の参護さんの料理は物珍しさも手伝ってか、人気が高い。

 

 今回の汁物は咲夜が気に入っていたから、近々レシピ教えて貰いに来るんじゃないかしら?

 

 海原邸は紅魔館と扉を介して次元を繋げているから、出入りは自由。

 むしろ、紅魔館の中に海原邸がある様な状態ね。

 

 なにしろ、最近は海原邸で眠ってたら、小悪魔に起こされる。

 

 紅魔館で本を読んでたら、私のゆっくり妖怪が隣に居た。

 

 なんてことが普通にある様になったわね。

 

 一応、双方の家の住人に許可を得ることが条件になっている。

 

 でも、近いうちに出入り自由になりそうな雰囲気ね。

 

 

 

 

 

1月4日

 

 緩やかな時間。

 参護さんの膝枕を堪能しながら、みんなでまったりとした時間を過ごした。

 

 本を読んでいる時間は私の人生の一部。

 

 参護さんと過ごしている時間はなんだろう?

 食事や睡眠の様な必要な時間かしら?

 

 萃香と私が膝枕を、阿求が腕枕で眠った。

 

 参護さんの胸の上には代わる代わるにゆっくり達が乗っては堪能、乗っては堪能している。

 

 日がすっかり傾く程に堪能した私達。

 

 起き上がった時には、参護さんが両足と片腕を痺れさせていた。

 

 萃香が手を服の中に入れて遊んでいたので、私も便乗。

 

 和服は結構簡単に手を滑り込ませられるからいいと思うわ。

 

 阿求も一緒に楽しめたし、あの娘参護さんの体温を感じた後、嬉しそうに両手を胸に抱いてたしね。

 

 腕枕って結構密着するから、阿求も本当に嬉しそうだったな。

 




 官能編をやたら催促して来る友人にワロタ。

 そして、また真面目なトーンで
「下手にオリキャラとの関係性が純愛染みているからほのぼのしてしまうんだ! お前の長所はそこじゃない! ラブラブでも鬼畜でもいいから、エロさを!!!!」
 と言われました。

 いや、なんでそこまでエロさを求めるのか……。

 官能編は少し待ってくださいね。
 なんか、別にもう一つR指定作品欲しいって言われてるから、構想中です。


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外伝 海原参護の里帰り

 長らくお待たせしております。

 ハイスクールDHの25話前後の参護視点です。

 中々上手に書けなくて申し訳ないです。

 あと、ハイスクールDHよりも饅頭の登場人物の方が書きやすいのは、たぶん意識飛ばしながら書いてた名残なんだろうなぁ。

 ではどうぞ!


 雲一つ無い快晴。

 

 今日も朝一の訓練を我が家の庭先でやっている。

 

 全身に銀色の闘気を纏わせて、仮想の敵を夢想し、杖で闘う。

 仮想の敵は兄貴。

 

 昨日は萃香、その前は幽香さん。

 

 朝の訓練が終わったら、次は魔理沙・パチュリー・アリスの三人による魔法の訓練だ。

 座学から実習、実践までたくさんの勉強をする。

 

 最近は結界魔法とそれに付加できる様々な効果を文字通り叩き込まれた。

 

 想像できるだろうか?

 

 結界で閉じ込められて、内部に炎の効果を付与されたときだ。

 あの時は銀色の闘気を爆発させて内部から結界を吹き飛ばしたが、死ぬかと思った。

 

 その後に、魔理沙から。

「じっくりとお肉をローストする時に便利なんだぜ」

 という言葉をいただいた。

 

 そんなものを人間に使うなと言いたい。

 

 ただ、組み合わせる魔法次第で便利な術式だから、これは覚えておいて損はないのだ。

 

「さて、朝の訓練が終了したので、そろそろ出てきてもいいですよ?」

 

 そう虚空に語り掛けると、空間が裂けて、中から長い金髪と紫色の服が印象的な女性が出てくる。

 口元を扇子で隠しているが、目に若干驚愕の色をのぞかせていた。

 

「驚いたわね。この世界に連れてきたときは気づかなかったのに……」

 

 その言葉に、誰であるかが容易に想像できた。

 霊夢さんや魔理沙がよく話してくれたし、幽香さんや萃香も性格悪い的なことをよく言っていた。

 

「八雲紫さんですか?」

 

「あら、霊夢たちから聞いたのかしら? それとも風見幽香かしら? 伊吹萃香の可能性も高いわねぇ」

 

 その全員です。

 たぶん、知ってて言っているタイプかな?

 

 親父っぽいタイプだ。

 言動で煙に巻くというか、普段色々とコミュニケーションを取ってても、肝心な情報を隠しているような、そしてあえてそれを分かるように行動しているところというか。

 

「まぁいいわ。今日はあなたに頼みがあって来たのよ」

 

「頼みですか?」

 

「ええ、里帰りって興味無いかしら?」

 

 

********************

 

 

 紫さんが言うには、幻想郷の龍神様が、外の世界の龍神から頼まれ事をしたらしい。

 

『海原曹護の弟と曹護を会わせたい』

 

 兄貴の事なのはわかるが、外の世界での龍神と言えば、兄貴自身がよく話してくれた『無限の龍神オーフィス』だろう。

 

 なんともまぁ、規格外の生活を送っているんだろうなぁっと、諦めにも似た感情を持てあましている。

 

「ゆ~?」

 

 縁側でボーっとしていると、Yパチュリーが心配そうに声をかけてきた。

 目が潤んでいるところを見ると、さっきの紫さんとの会話を聞いていたのかもしれない。

 

「大丈夫だよ。俺の家はここだし、必ず帰ってくるから、悲しい顔しないで?」

 

 ヒョイっと抱き上げると、安心させるように長い髪を手櫛で()いていく。

 心地よさそうに、されるがままになっているYパチュリー。

 

 安心してくれたかな?

 

 傍から見れば、縁側で猫を撫でながら日向ぼっこしている老人のようだが、これはこれでいい時間の過ごし方だ。

 

 日がな一日中、こうしてゆっくり達を愛でる一日。

 

 幻想郷こそ、俺が帰る世界であり、大切な人たちが居る世界だ。

 

 考えてみれば、Yパチュリーと出会ってから、たくさんの人たちと出会って、たくさんのゆっくり達にも出会った。

 阿求様の厚意で住む家を得られ、口添えで何でも屋の仕事を得られた。

 

 本人は俺を人里の門番的な事に利用したとずっと気に病んでいたけど、それらを全部ひっくるめて阿求様に感謝と尊敬の念を持っている。

 

 別れの言葉も言えずにこっちに来てしまったのが心残りだったけど、きちんと家族に別れを告げられる。

 そう考えれば、八雲紫さんが持ってきた里帰りの話はいい話ではあるのだ。

 

 魔理沙曰く、八雲紫個人の信用度は低いが龍神様が絡んだ時の彼女の信用度は高い、らしい。

 

 外の世界の龍神は、幻想郷の龍神様と浅からぬ因縁があるらしい。

 それでも、頼みごとをできる間柄であることを考えると険悪な方向の仲ではなさそうだ。

 

 なら、俺はこの幻想郷が大好きで、その管理者と守護神がせっかく持ってきてくれた話だ。

 受けることにしよう。

 

 そして、絶対に帰って来よう。

 

「ちょっと、みんなに話さないといけないことができたから、呼んで来てくれないか?」

 

 そう言うと、Yパチュリーはすべてを理解したように頷き、皆を呼びに行った。

 

「なんかお土産持って行かないとなぁ」

 

 人里の菓子折りでも探しに行こう。

 

 

********************

 

 

「里帰り……ですか?」

 

 家族で食卓を囲んでいる際に出した話題。

 ちょっとコンビニ行ってくるみたいな感覚で切り出したのだけど。

 

「そう。八雲紫さんから今朝話をもらった。兄貴の連れ合いが龍神様と知り合いらしくてな。兄貴と会わせたいと要請があったらしい」

 

 今日の献立は俺の担当。

 山菜と川魚の天ぷらは本日のメインどころ。

 

 幻想郷に手軽な天ぷら粉なんて無いから、色々と手間がかかっている。

 衣は薄め、かき混ぜる際は温度を低めにする。

 油へ投入する時は、放り込むのではなく、具の先端を油に漬け、波紋を立てないイメージで入れていく。

 

 これは、放り込むと薄い衣はすぐに具から分離してしまうからだ。

 

 たくさんの天ぷらにも衣に一工夫を加えて、様々な揚げ物に仕上げている。

 

 シソを細かく切ったものを混ぜてひすい揚げ。

 落花生を砕いたものを混ぜて落花生揚げ。

 生栗を削ったものを衣に付けて丹波揚げ。

 色々なゴマを混ぜて利久揚げ。

 

 どれも天ぷらさえできれば、材料をそろえて混ぜるだけの簡単な工程でできる。

 

 ひすい揚げは竹輪なんかを揚げるときに使うし、落花生揚げや丹波揚げなんかは白身魚を揚げるときに重宝する。利久揚げなんかはゴマの香りが強いのでシイタケでもゴボウでも色々な食材と相性がいい。

 

「紫かぁ。アイツが龍神の名前を出す時は基本的に信用していいよ。長い付き合いだけど、龍神の名前を出した紫は幻想郷の管理者としての顔だからねぇ」

 

 萃香はひすい揚げの竹輪を肴に、上機嫌で瓢箪の酒を飲んでいる。

 彼女の前には、醤油の皿と塩の皿が並んでいて、好みで味を変えているようだ。

 

「ちゃんと帰ってくるんでしょう?」

 

 阿求様が心配そうに聞いてくる。

 その横でYパチュリーも心配そうにこっちを見ていた。

 

 他のゆっくり達も本当に心配そうにこっちを見ていた。

 

「ああ、俺の家はここだからな」

 

 そう答えると、嬉しそうな表情になる。

 紫さんが言うには、きちんと帰ってこれるとのことだったから、萃香の言葉も併せて信用できるとするなら、何も言わずに来てしまったことに関して、家族にしっかりと説明する機会ができるのは嬉しい。

 

「ならいいんじゃないかしら? 私たちは信じて待つだけよ」

 

 パチュリーが何気に男前な気がする。

 

 言葉を紡ぎながらも、Y小悪魔へしっかりと餌付けをしているあたり、Yパチュリーとの同期効果は高そうだ。

 

「そうなると、ゆっくり達が心配ですね」

 

 阿求様が心配そうに、Yパチュリーを撫でていた。

 Yパチュリーは心地よさそうにウトウトしている。

 

 阿求様が撫でているゆっくり達はなぜかみんな心地よさそうに寝てしまう。

 

「紫は何日ぐらいって言ってた?」

 

「紫さんは、四日と言ってたな。四日目の夜に迎えに来るそうだ」

 

 それだけあれば、家族に別れを告げて、最後の時間を過ごせるだろうという配慮なのだろう。

 結構長い期間、幻想郷で暮らしているけど、八雲紫さんと接触したのは今日が初めてだったりする。

 魔理沙や萃香は俺を連れてきたのは紫さんだと予想していた。

 

 あ、会った時に聞いておけばよかったかな。

 

「四日……ですか。それなら、ゆっくり達も大丈夫でしょうね」

 

「だけど、留守にするんだから、しっかりと遊んであげなさいね?」

 

 比較的大人なゆっくり達は大丈夫としても、YレミリアやYフラン、Y小悪魔なんかはさみしい思いをさせてしまうかもしれない。

 

 幼いゆっくり達はよく遊んであげているからか、一日留守にするだけで帰って来た時に、並んで涙目で見つめられるのだ。

 プルプルと震えて、涙目でジッとこちらを見つめてくるものだから、罪悪感がとんでもないことになる。

 

 これでも、仕事は二日以上家を空けないようにしていたからな。

 

「そうだな。ちょっと、長く家を空ける」

 

「私たちは、全員待っています」

 

「だからさ、きちんと帰ってきて、私とまた戦おう!」

 

「魔法の授業だってまだまだ残っているわ。そうね、帰ってきたら魔理沙とアリスとで合同授業と行きましょう」

 

 あれ?

 俺帰って来てから軽く地獄見る気がする。

 

「ああ、必ず帰ってくる。最悪、兄貴の連れ合いに頼んででも帰ってくるからさ」

 

 だから、現世にサヨナラしてくるよ。

 

 

********************

 

 

「いいですか? 四日後の夜にお迎えに上がります」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

 里帰りの日、家の庭から現世へ向けて旅立つ日だ。

 紫さんはどこか真剣な表情をしていて、口元は扇子で隠されている。

 

「あらあら、どうやらあちらは取り込み中ですわね。戦闘準備をしていかれた方がいいかと」

 

「なに?」

 

 その言葉に、開けられた隙間を見ると、どこかの戦場で兄貴と色々な種族が闘っていた。

 見た感じ、兄貴の方が劣勢か?

 あの兄貴が?

 

「やばそうだ。手助けしないと!」

 

「ええ、行ってらっしゃいまし、そして必ず帰っていらしてくださいな。あなたは幻想郷に必要な人ですから」

 

 紫さんの言葉を背に受けて、銀色の闘気を纏いながら未知の戦場へ身を投じたのだった。

 




 長らく待たせてすいませんでした。

 そろそろ、新作に取り掛からないと友人に怒られそうな今日この頃。

 ギャグを書くって初めてなので緊張気味ですが、よろしくお願いします。

 質問などありましたら、遠慮なくどうぞ!


追記

磯部揚げの青ノリが海産物だったので、シソのひすい揚げに表記を変更しました。


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