魔進チェイサー THE STORY (ちょいワルドラゴン)
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破壊神《イレギュラー》編
第1話 笑顔の世界


新作が遊戯王と思った方すいませんねえ。

今度は仮面ライダーです。


『俺は死神だがコアは破壊しない。』

『道を踏み外したロイミュードにやり直すチャンスを与える。』

 

 

 

ハートは言った。

 

 

道を踏み外せば手を差し伸べる。

信じた道を行くのであれば黙って見送ってやる。

それが友だと。

 

 

俺には記憶という記憶がない。

気付いた時にはハート達がいた。

 

 

道を踏み外したロイミュード(友達)をやり直させる、それが死神だと言った。

俺は死神として沢山の友を救った。

 

 

仮面ライダードライブ。

友を殺す悪魔。

そう彼らは言った。

 

俺は奴と戦ううちに自分も仮面ライダーだと知った。

 

ドライブの基礎となった仮面ライダー、『プロトドライブ』、それが俺だ。

 

俺も仮面ライダーだと信じられない。

信じたくなかった。

 

だがもう一人の仮面ライダー、マッハとの戦いで確信した。

奴のバイクと俺のバイクは合体し新たな力となる。

 

俺も仮面ライダーだった。

 

途中メディックにどこかをいじられ記憶が曖昧だった頃もある。

 

わかったことはあの時ドライブに救われた事だけだ。

 

そして俺は執拗に俺につきまとう人間の女、霧子によって再び仮面ライダーとして戦うことになった。

 

可笑しな話だ……。

だが悪くはない。

 

 

ハートを裏切ったことを除けば………。

 

 

 

 

男はマンションの一室で目を覚ました。

目を開いた時一瞬そこが何処だか皆目見当はつかない。

黒を基調とした家具が部屋の隅々に置かれている。部屋には机と椅子、小さなテーブル、本棚、そしてパソコンが置かれていた。

ベッドから起き上がるとまっすぐ鏡の前に向かう。

映ったのはなんの変哲もない自分の人間態、チェイスの姿だ。

紫のマフラー、紫のジャケット、ズボン、

いつもと変わらない格好だった。

窓に向かってカーテンを開けると空には吸い込まれそうな程の青空が広がっていた。

一つ違うことは全く知らない街ということだけ。

見たことのないマンションの最上階の一室、そこから見渡す街は今までのあの場所ではない。

底知れぬ不安により無意識のうちにジャケットの中に手を突っ込む。

そして気づく。

アレがないことに。

 

「ブレイクガンナー……、ブレイクガンナーが無い。」

 

ブレイクガンナーとはチェイスが死神(魔進チェイサー)の装甲を装備する際に必要なロイミュードの銃である。

いつも懐に持っているはずのそれがなくなっていることに焦り出す青年。

狂ったように部屋の隅々をかき回し始める。

布団の裏から机の引き出し、本棚から机の下まで探しまわる。だが探し物は何処にもなかった。

そして最後にクローゼットを開けるとそこにはカバンと制服がかけてあった。

制服にはビニールがかかっておりクリーニング済みと印刷されていた。

バックの中には教科書やノート、筆記用具があり横の小さい収納スペースに学生証が入っていた。

 

「俺の学生証……?

『私立 星見学園高等部……チェイス』。

ここでも俺はチェイスなのか……。」

 

チェイスは部屋を出る。

そして廊下を歩いて行くと大きなリビングに出た。

ソファ、テーブルに大きなテレビ。

キッチンとつながっているらしく料理台の前には簡単なカウンターテーブルがあった。

そして部屋の奥には大きな窓がありそこを開けるとテラスがあった。

目の前には青々と海が広がっていた。

再びリビングに入ると何か違和感を感じた。

冷蔵庫の横のデジタル時計に

『4/2 PM2:13』と表示されていた。

これだけ見れば違和感は無い。

だが西暦が表示されていないのだ。

 

「西暦が無い……。

暦がないのか?

それとも………。」

 

可能な限り自分の中で考えを試みようとはしたが結局納得のいく解釈は出なかった。考えるのをやめて彼は玄関へと向かった。

玄関の靴箱の上には部屋の鍵がなかった。

否、部屋の扉には鍵すら付いていなかった。

何か不気味さを感じつつも外にへと足を踏み出す。

エレベーターで地下一階の共同駐車場に行く。

ブレイクガンナーが無い時点で嫌な予感はしていたがそれは現実のものとなった。

何処にもライドチェイサーがなかった。

 

「この世界……一体何なんだ……。」

 

チェイスはそのまま徒歩で街に向かった。

街の様子には特に不自然に思う節は見当たらないように感じられた。人々は行き交うものに挨拶をし笑顔を振りまく。

一見すれば平和とも言える光景。

しかし、なにか……何かが違う……。

何故……何故全員が全員笑顔なのだ……。

 

おかしい。

 

これだけの人数の人間がいれば泣くもの怒るものがいても自然なはずだ。何故満面の笑みなのだ……。

 

おかしい、普段であれば真顔で歩く。

そんな光景なのに今ここにいる連中は満面の笑みですれ違う者全員に挨拶を繰り返す。

不気味だ……不気味すぎる……。

チェイスは途端に気持ちが悪くなった。

頭の中がぐるぐると回りだし今にも倒れそうになる。

耐えきれなくなり大通りの横にある細い裏道に逃げ込んだ。仰向けで倒れこみ大きく深呼吸をする。

 

5分ほど目を閉じた後ゆっくりと立ち上がった。

 

不気味な世界に不気味な人間達、

この世界がなんなのか?

彼にはわからなかった。

 

 

日が傾き始めたころチェイスは人通りが少なくなりだした商店街を歩いていた。買い物帰りで少し大きな荷物を抱えた者が歩いている。

八百屋の前を通りかかろうとした際前方から歩いてくる少年に目が向いた。

金髪の髪を肩まで伸ばし服をだらしなく着崩す姿が見えた。

 

「さあさあ安いよ安いよ!!

青森県産の絶品りんごなんとたったの48円。」

「もっと安くしてやるよ!!」

 

すると少年は店員の顔に何かのスプレーを吹きかける。

店員は眼の痛みで体勢を崩しその場に倒れこんだ。その姿を見て少年は腹を抱えて笑いだすと一言二言罵倒の言葉を浴びせた後りんごを3個ほど持って歩き出す。

 

「不良だ!!

捕まえてくれ!!」

 

その姿を見たチェイスが少年を捕まえようと歩き出した時何かが起こった。

チェイスの身体の動きが極端に鈍くなったのだ。

 

「これは……重加速!?」

 

いや、重加速ではない。数秒後チェイスの体は自由を取り戻し通常の速さで動けるようになった。

しかし、動けるのは彼だけであり周りの人間の動きは全て止まっていた。

 

「何が起こっている……。

何だあいつらは。」

 

目の前にいた不良少年の前に謎の怪人が2体現れた。

そこにいた怪人はロイミュードではない。

黒い怪人と白い怪人。

見たことのない二人組が少年の顔を抑えると黒いほうが少年の胸に手を突っ込んだ。

するとそこから心臓が取り出される。

心臓が抜かれると残った体はガラスのように割れて消えて無くなった。

今度は取り出された心臓を白い怪人が手に取りそこに数粒種のようなものを植え付けるとそこから植物が生え同じ少年の体が形成される。

だが再び現れた少年は黒く短い髪にしっかりと着こなされた制服を着た先ほどとは真逆の少年であった。しばらくすると時間が巻き戻され再び人々が歩き出す。

 

「さあさあ安いよ安いよ!!

青森県産の絶品りんごなんとたったの48円。」

「こんにちは、りんごひとつください。」

「毎度あり!!」

「なんだと!?

…………一体何が…!?」

 

消された人間、そして真人間に造り直された人物。

 

「着いておいで。」

 

声が聞こえた。

周りをキョロキョロと見渡すとすぐ後ろに白いワンピースを着た少女が立っていた。

チェイスが手を伸ばすと少女は目にも留まらぬ速さで消え去る。だが彼女の去った方向に白い薔薇が道しるべのように落ちていた。

それを一つ一つ拾っていくチェイス。

 

 

気がつくとそこは公園の噴水前だった。

噴水の周りを見渡すと再び彼の横にその少女は立っていた。

 

「ごきげんよう、死神さん。」

「お前、何者だ?」

「あなたの知っている言葉で表すなら

 

 

 

 

 

 

神です。」

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2話 その男死神につき

前回までの魔進チェイサーは
その1:チェイスが謎の街で目覚める
その2:ロイミュードとは全く違う新たな敵と力
その3:神と名乗る謎の少女の登場


「神だと?」

「そうです。

いいえ、違うわ。

そうとしか表現できないのです。」

 

チェイスの目覚めた謎の街。その街には不気味と言わんばかりの謎が溢れかえっていた。機械的とも言える住民の挨拶や笑顔。

周りの人間の動きを止める重加速とは違った謎の力。

そして、不良少年を殺し真人間に作りなおした謎の2種類の怪人。

チェイスには理解できない現象が起こりすぎた。

 

「説明しろ。お前たちは何者だ!!」

「神です。総じて我々は神よりの使徒『デリーター』とでも命名しましょう。」

「神の使者が削除人か。」

「そうです。我々こそ神であり神の代行者なのです。ではご説明致しましょう。」

 

この街は星見市。

次元の間の歪みにできた空間でありそこにはあらゆる次元から連れてこられた人々がいた。そこで彼らは思った。

今自分たちがなそうとしている計画の実験場にしようと。

 

「計画だと?」

「えぇ、プロジェクトPEACE。いい響きでしょう。」

「悪寒がするな。」

 

世界では現在もテロや戦争、紛争が続き先進国でも犯罪が毎日起こっている。

そこで彼らは計画した。

 

 

悪人は作りなおしてしまおうと。

 

 

「悪人を作り直すだと……。」

「その通りです死神さん。

こちらへ来なさい。」

 

そう言って少女が手を振ると再び周りの景色が時間を失う。

飛び散る噴水の水も、羽ばたく鳩の体も全てがそこで失われていた。

そして目の前の少女の横にいたのは先ほど見た黒と白の怪人であった。

 

「紹介しましょう。

こちらの白い子、彼の名前は『創造神(クリエイター)』。

そしてこちらの黒い子は『破壊神(イレギュラー)』です。」

「『クリエイター』と『イレギュラー』。

物騒な奴らだ。」

「あら?

可愛い子たちですよ。いわばこの子達は2種類から成り立つ死神です。」

「なんだと!?」

「あなた達ロイミュードと我々デリーターの違いを教えましょう。」

 

デリーター達のなすことは2つ。生命活動の中心である核、心臓を肉体から切り出すこと。そしてその核情報をもとに元の体をプログラミングしさらにそこから基本情報を書き換えることである。

 

「基本情報の書き換えだと?」

「そうです。あなたとやっていることは同じです。

ですがロイミュードの場合核は生命ではなく記憶。いわば人間でいう脳にあたります。

ロイミュードは記憶を引き継ぐことで別の肉体でも前回の体のように扱うことができます。ですがそれではダメだと我々は気付いたのです。」

「何がだ!!」

「いくらやり直させてもその記憶は過ちを犯した記憶、

どうせまた同じ失敗を繰り返すのです。

ですから我々は再構築させるための生命活動の中心である心臓だけでいいのです。」

「だがそれでは身体の形だけが形成されるだけでそのあとはどうなる!?」

「記憶などは勝手に作ればいいのです。それに別になくともよい。」

 

再構成された人間はコマンダーという抜け殻になる。

彼らは生活しているのではなく反射神経により反射行動をとっているだけなのだ。

 

「彼らに考える力などいりません。普通に日常を生活させ常に笑顔を振りまき、人とすれ違えば挨拶をする。

それだけできれば上出来なのです。」

「…………。」

 

チェイスの動きが止まった。

ミシミシと革手袋が握りこぶしにより擦れる音がなる。そして彼の両肩がブルブルと震えだすのだ。

怒りと悲しみにより彼の感情は今にも限界を超え砕け散りそうになる。

 

「貴様ァア!!」

 

少女に掴みかかろうとした青年を2人の怪人が止めにかかる。チェイスの怒り狂った拳が白い怪人を吹っ飛ばす。

 

「貴様達はそんなことをしてどうなる?

抜け殻が蔓延る世界が本当の平和だとでもいうのか!?」

「では私から平和に一番必要なことは何かをお教えしましょう。」

 

再び押さえつけられたチェイスの耳元に少女の口が近づく。そしてそっと吐息を吹きかけるようにその答えは彼の元に届く。

 

「それは欲望の抑制です。」

「欲望の抑制だと。」

「そうです。欲望が人を盲目にし争いを起こさせます。あなた方ロイミュードもそうでしょう。

人間より勝ると錯覚したそのおごりが欲望のリミッターを破壊し人間に宣戦布告をした。

そして馬鹿の一つ覚えのように無様に散っていった。

それを構成して何が悪いのです!!」

「たとえ間違いを犯しても最後まで支えて更生の道を探させてやる、それが友ということだろう!!」

「馬鹿馬鹿しい、実に馬鹿馬鹿しい!!

友ほど平和に微塵も関係ない不適合なものはない。それを信じ続けるロイミュードも人間もこれほど馬鹿なことはない!!

友など消え去ればいい!!」

 

その言葉がチェイスの何かをズタズタに引き裂いた。

そして彼の脳裏に何かが蘇る。

 

 

 

『友を失うということは、とても悲しいことなんだよ。

理屈でなくな……。』

『お前は……ずっと俺を友と呼んでくれるか?』

 

ハート……。

 

 

『お前は、俺と同じ正義を心に宿した仲間のはずだ!!』

『正直、お前が生きててくれて嬉しかったよ……。』

 

進ノ介……。

 

 

『あなたは、私の命の恩人だから!!』

 

 

 

霧子……。

 

 

 

 

俺には……友がいる。

守るべき友がいる。

 

 

 

「死神さん。ロイミュードと人間によって生まれたあなたならわかるはずです。

さあ、我々デリーターの死神として協力してください。」

「………る。」

「えっ?」

「断る。

俺は死神だ、死神の役目は道を踏み外した友にやり直すチャンスを与えること。

お前たちのように一度失敗した者を消す行為は死神などではない!!」

「ふふふ、では我々はその対となる存在『生き神』と言うことですね……ふふふ、あははははは!!

 

汚らわしい消しなさい!!」

 

チェイスを押さえつけていた怪人は彼の身体を離すと同時にその胸ぐらに同時にパンチを浴びせる。青年はよろけながらも踏ん張るが黒い怪人が一瞬余所見をした彼の頬を殴りつける。

さすがにその攻撃には耐えきれず地面を転がるチェイス。

起き上がって体制を整えた彼に飛び蹴りを食らわせる白い怪人。

仰向けで倒れる青年に白い怪人はまたがりそのまま連続攻撃を食らわせる。

必死に耐えるチェイサー。

拳を防ぐ両腕から血が滴り落ちる。

 

だがその時だった。

 

空中の亀裂が走るとその中から謎の車が飛び出してきた。

車の砲撃を浴びた白い怪人は怯んでチェイスから離れる。

車はチェイスの前で止まると2台のバイクに分離した。

 

「ライドクロッサー!?何故ここに!?」

 

すると白いバイク、ライドマッハーからチェイスに向かって何かが飛んできた。

 

「マッハドライバー!?

俺に変身しろというのか?」

 

マッハドライバーを腰に当てベルトを装着しようかとしたその時、チェイスの動きが止まる。

チェイスはもう一方の黒いバイク、ライドチェイサーに近づくとトランクを開けた。

トランクの中には黒と紫の不気味な色をした小型の銃のようなものがあった。

そう、それこそブレイクガンナー。

それを手に取ると手の中でそれは紫色に輝きだした。

 

《BREAK YOUR BODY》

 

「生き神よ。一つ質問だ。」

「なんでしょう?」

「お前たちにとって、人間の再構成とはなんだ?」

「平和のための『正義』です。」

「そうか、人間の罪を許さずすぐに自由を奪うのが『正義』か。」

 

その瞬間青年は腰に当てたベルトを空中に放り投げた。

そして右手のブレイクガンナーでそれを撃ち抜く。

落ちてくる火花の中を青年はゆっくりと前に歩き出しもう一方の掌を銃口に突き当てる。それと同時にあたりに不気味な重低音の音楽が流れ始める。

 

「お前たちの行為が正義なら………、

俺は友を守るための『悪』となる!!」

 

銃口から手を離し前方に十字架を描いた。

 

《BREAK UP !!》

 

 

つづく

 

 

 

 

 



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第3話 その蹴りに思いを

前回までの魔進チェイサーは
その1:少女たちデリーターの目的は人間を再構成させ平和を作ること
その2:敵は生き神率いる破壊神と創造神
その3:チェイスはあくまで正義ではなく悪として戦うことを決意する。


《BREAK UP!!》

 

不気味なエレキギターの音色と共に紫色の稲妻と光がチェイスの身体を包み込んでいく。その光の中で青年の身体には不気味な鎧と思われるものが装着されていく。

怪人たちは一瞬瞬きをすると目の前にはもうすでに彼の姿はなく煙しか残ってはいなかった。

 

「チェイスはどこ?」

 

少女がキョロキョロと辺りを見回した時噴水の上にその姿はあった。

黒い体に紫色の金属パーツ、所々にツギハギのようにメタリックパーツが光り輝く。その姿はまさしく死神。

それこそチェイスの戦うための姿、魔進チェイサーだ。

黒と白の怪人達はその威圧的な姿に恐怖し戸惑っているように見えた。噴水の上のそれは地面に飛び降りるとゆっくりとブレイクガンナーの銃口を掲げ歩き出す。

すると白い方の怪人が啖呵を切って走り出す。飛びかかった怪人にチェイサーは目にも留まらぬ速さで弾丸を3発、右足の股関節、左胸、首に弾丸を浴びせた。

怪人の身体から黄緑色の血液のようなものが噴き出すと痛みでもがき始める。

 

「何故そいつの弱点がわかったの?」

「先ほど殴られた際に身体情報をスキャンさせてもらった。」

 

すると倒れ込んでもがく白い怪人に続けて銃撃を食らわせる。するとその怪人を助けるかのようにもう一方の黒い怪人も飛びかかってくるがチェイサーはその顔に一発パンチを食らわせる。

するとその顔に亀裂が走り今度は青い色の血液が滴り落ち始めた。

チェイサーはブレイクガンナーに車のようなものをセットする。

 

《TUNE CHASER COBRA !!》

 

その音声と共にチェイサーの背中に武器のようなものが転送されるそしてその武器が彼の右腕に移動するとその先からムチのようなものが出てくる。

 

バイラルコア

ロイミュードのコアに当たるパーツでチェイサーはこれをブレイクガンナーにセットすることで様々な武器を装備することができる。

 

チェイサーはムチのような武器で白い怪人に連続攻撃を浴びせかける。攻撃が当たるたびに血しぶきが飛び破片が飛び散る。

そして最後にムチで白い怪人を締め上げるとそのまま怪人は爆発した。

 

「強すぎる。

さすがはロイミュード000……いいえ、プロトドライブ!!

お前もいきなさい!!」

 

《TUNE CHASRE BAT !!》

 

ムチのような武装が弓のような形に変わっていく。

その一撃が黒い怪人の胸を貫き強靭な一撃を加えた。

そのまま少女の前に倒れこむと怪人はブルブルと痙攣を始める。

 

「どうやらお困りのようだな。」

「お前は!?」

 

少女の横に謎の黒い怪人がもう一体現れた。

その姿は先ほどまでいたもう一体とは異なる。目の前で倒れている怪人はシンプルな人形のような形であるのに対しその怪人は右腕はリボルバー型の拳銃のような形で左腕は巨大な鉤爪のような形になる。体全体は機械的なメタリックブラックである。

 

「マグナムイレギュラー、何故幹部のお前がここに。」

「お前が一人で楽しそうなことをしているんでな、どうやら俺の部下がヘマこいたようだな。」

 

倒れた怪人は震える手で黒いマグナムイレギュラーという怪人に近づく。

 

「あーあ、こんなにボロボロになっちゃって。」

「そいつに進化のキッカケを与えてあげてくれますか?」

「仕方ねえなぁ。

確かお前はえぐるのが得意だったな。

そしたらこいつをやるよ。」

 

マグナムイレギュラーは倒れた黒い怪人の傷口に何か金属のようなものを落とした。

その瞬間倒れた怪人の身体がボコボコと膨らみ出し内部からマグマのような紅蓮の液体が溢れ出す。すると多量の蒸気と共に中の怪人の姿が変わっていく。

銀色の身体、両腕は異様に長くその先は4叉に別れた針のようになっている。

 

「喜べ!!

お前は今日から雑兵から進化したデリーターとなった。

フォークイレギュラー、それがお前だ。」

「ギエエエエエエエエエ!!」

 

フォークイレギュラーは叫びながら両腕を振り回す。

そのフォークは電柱を切り裂きコンクリートをえぐり出す。

その瞬間時間が再び進みだした。

 

「怪物だああああああ!!」

「キャああああああ!!」

 

人々が恐怖で一心不乱に逃げ出した。

混乱する人々が溢れかえる公園でフォークイレギュラーは奇声をあげて暴れまわる。

 

《TUNE CHASRE SPIDER !!》

 

チェイサーが再びバイラルコアをセットすると右腕の弓のような武器が巨大な爪のような形に変形した。それを掲げて銀色の怪人に斬りかかるチェイサー。

だがそれを迎え撃つようにフォークイレギュラーも武器を構え走り出す。

2人は同時にお互いを斬りつけると大量の火花を散らしながら吹っ飛ぶ。だがフォークイレギュラーはすぐに態勢を立て直しチェイサーに追い打ちをかける。

斬り付けられたチェイサーは勢いよく吹っ飛ばされベンチに叩きつけられる。

 

「ぐあああああああ!!」

「結構いいじゃねえかあの野郎。」

「最適進化ということですね。」

 

チェイサーは震える体を叩き起こすと武器を構えて再び走り出す。だがその攻撃も受け止められ今度は噴水に叩きつけられる。

壊れた噴水から大量の水が噴き出し夕日が虹を描く。

 

「くっ……やるしかない。」

 

《TUNE CHASER SPIDER》

《TUNE CHASRE BAT》

《TUNE CHASRE COBRA》

 

3つの武器が合わさり不気味な弓のような武器が完成する。

チェイサーはブレイクガンナーの銃口に手を当てると武器の先に大量のエネルギーが発生し出す。

狙いを定めトリガーを引く。

 

《EXECUTION FULL TUNE》

 

武器の先から強大なエネルギーの塊が発射されるとそれはフォークイレギュラーに命中し大爆発を起こす。

倒したかのように見えただが火炎の中からボロボロのフォークイレギュラーが足を引きずりながら歩いてくる。

 

「くそっ、バイラルコアはもうエネルギーが切れかけているのに……。ん?」

 

チェイサーは大破したマッハドライバーの中に何かが入っていることに気がついた。

それはチェイサー専用のバイラルコアであるが彼の全く知らないものであった。

 

「こいつは……何なんだ一体?」

「ギエエエエエエエエエ!!

アギャギャアアアアアア!!」

「考えている猶予はなさそうだ。力を貸してもらう!!」

 

《TUNE CHASRE SCORPION !!》

 

音声がなるとチェイサーの右足にダーツのようなものが装備される。

彼は向かってくる敵に向かって走り出すと直前で高く飛び上がった。そしてそれと同時にブレイクガンナーの銃口に手をかける。するとダーツの下の部分から鎖のようなものが伸び出しフォークイレギュラーの身体をぐるぐるに巻きつける。

そして態勢を整え蹴りの体制になった瞬間トリガーにを引く。

 

《EXECUTION SCORPION !!》

 

その瞬間チェイサーのスピードは数倍加速しダーツの先の針のようなものが一気に紫色に染まる。

そしてチェイサーの蹴りがフォークイレギュラーの身体を貫くと彼の体は一気に紫色に変色しそしてドロドロに溶けた。

 

敵を倒したことを確認すると日は完全に沈み街灯に明かりが灯った。

そしてチェイサーの変身が解け元の青年の姿に戻る。

 

「ハァッ、ハァッ、次はお前達だ。」

「おっとそれは無理な相談だ。

俺たち夜は戦えないんだ。それじゃあまたな。

ヘッヘッヘ!!」

「次はこう上手くはいきませんからね。

では御機嫌よう。」

 

2人の姿は蜃気楼のように霞んで消えていった。

 

「生き神、デリーター、イレギュラー、クリエイター。

とんでもない敵だ。」

 

チェイサー初めての弱音であった。

 

 

 

つづく

 

 

 

 



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第4話 いざ学び舎へ

前回までの魔進チェイサーは
その1:イレギュラーの幹部マグナムイレギュラーの登場
その2:進化したイレギュラーは強すぎる。
その3:新たなるチューン、スコーピオンの登場。


4月8日 金曜日 AM0:30

春の陽気の近づく中、世間ではゲリラ豪雪が問題となっていた。だがこの日の気温は15℃、少し肌寒いが安眠にはちょうど良い。実に静かな夜であった。

だが、その静けさの中事件は起こった。

けたたましいサイレン、こすれ合う金属音、飛び散る火花。

夜の静けさを吹き飛ばす騒音が一人の男の眠りを妨げる。

 

「うるさいぞ貴様ら!!」

 

チェイスはあまりの騒音にベッドから飛び起きた。

彼の部屋の机の上では数台のシフトカーがブレイクガンナーの改造を行っていた。そしてサイレンの主であるシフトカー『マッドドクター』はバイラルコア達のメンテナンスに勤しんでいた。

 

「お前達、少し寝かせてくれないか?」

 

その言葉を聞くとシフトカーとバイラルコア達は彼の元へ集まり申し訳なさそうに弱々しくクラクションやサイレンを鳴らした。

チェイスはベッドから立ち上がると机の上の生徒手帳を手に取る。

そしてページめくっていくとメモの場所に『4/8 9:00より始業式』と書かれていた。

そしてこの件に関しての説明は4月2日にさかのぼる。

 

4月2日

フォークイレギュラーを撃退したチェイスは一度自分の家に戻ると再び2台のバイクを調べだした。ライドマッハーの中には『マッドドクター』、『フッキングレッガー』、『カラフルコマーシャル』、『マックスフレア』、『ミッドナイトシャドー』の5台が乗っており、ライドチェイサーにはバイラルコアのメンテナンスキッドが一式入っていた。

それから4日ほど彼らは星見市を手分けしてくまなく捜索した。だが生き神達の情報はつかめず途方に暮れていた。だがそんな中公共施設各所を巡っていたミッドナイトシャドーから連絡が入った。

私立星見学園にイレギュラー達が入っていったという情報であった。

そこでチェイスは自分も星見学園の生徒であるらしいという事を利用してイレギュラー達の行動を探ることにした。

だがチェイスは学生というものをよく知らない、いや、覚えていなかったのだ。

そこで図書館からたくさんの文献(主にラブコメや少女漫画)を集め学生については研究したのだ。

 

「曲がり角で女子にぶつかるためにはジャムトーストを加える必要があるらしい。」

「(クラクション音)。」

「……、そうか。俺はバイク通学か……。

これはどうだ、壁ドンをすると次のイベントという場所に行けるそうだ。」

「(サイレンの音)。」

「……、そうか、捕まるのか。

じゃあこのイモケンピをつけてるのを教えてあげるというのは………。」

「(エンジン音)!!」

「ありえないのか………。」

 

そして激しい特訓と猛勉強の末彼は学生という物を理解したのだ。

だが、皆さん御察しの通りちっとも正解の理解ではない。

そして現在に至ると言う事だ。

 

「明日は学校か……。

昼休みに焼きそばパンとやらを買うために行列に挑んでいくイベントと言うのが楽しみだ。」

 

かくして間違った解釈をしてしまってはいるがチェイスは楽しみで全く眠れなかった。

 

 

一方その頃 星見学園理科室

暗い部屋の奥、黒板前の大きくて小汚い机に座る何者かがいた。黒い怪人、破壊神(イレギュラー)だ。

その身体中はゴツゴツと尖っており両腕と頭部には巨大な木刀が生えていた。

その異様な姿は理科室の骸骨を相手に剣道の技をかけていた。しばらくすると教室のドアが開き一人の男が入ってくる

黒いコートに黒い革の手袋、そして口にはヒゲが生えていた。

 

「マグナムであるか。」

「威勢がいいねえ、ブレードちゃん。」

「明日は新学期である。きっと春休み中に羽目を外し過ぎた物や中学生気分の抜けない新入生が多いはずである。」

「忙しそうで悪いが受け取れ。」

 

男は怪人に写真を渡した。

そこに写っているのは人間態のチェイスの姿である。

 

「あいつからの始末命令だ。」

「我が校の生徒である以上は手は出せぬ。

まぁ奴は野蛮なるロイミュード、すぐにボロを出すはずだ。」

「頼むぜ、はっはっは。」

 

 

4月8日 金曜日 AM7:30

チェイスはすでに準備を済ませソファにすわっていた。

彼の座る机の前にはシフトカーとバイラルコアが綺麗に並んで整列していた。

 

「校内に入った時点で各員分散して見張りに入ってくれ。」

 

全員が了解と言うように音を出して合図した。

チェイスは部屋に入るとカバンを肩にかける。そして懐にブレイクガンナーを忍ばせた。

チェイスは桜並木の綺麗な川沿いの国道をバイクで走っていた。あまり目立たないほうがいいだろうとのことで今日はライドマッハーに乗っていた。少し汗ばみそうなほど暖かい陽気ではあったがその分吹く風は心地よく人間にはとても過ごしやすい1日であった。

しばらく走っていると少しずつ歩道に学生が増えてくるのがわかった。

学校への大通りに入るといるのは学生だけでありその光景はチェイスにとっては異様そのものであった。

正門から入ると駐車場の方へ移動する。

駐車場にバイクを止めると一斉にバイラルコア達は飛び出し学園の敷地内に散り散りに飛んで行った。

彼は全員が飛び散るのを見届けると校舎に向かって歩き出した。その途中チェイスは誰かに肩をたたかれて振り向く。そこにいたのは見たこともない女子高生であった。

 

「チェイスくん久しぶり、元気にしてた?」

「あぁ、(馴れ馴れしいな。こいつは一体誰だ?俺のことを知っているようだが……。)

俺は変わらない。

お前はどうだった。」

「高校2年生の春休みだしつまんなかった。

3年だからあとは受験しかないからさ。

ていうかチェイスくんそっちは1年生の校舎だよ。

3年生はこっち。」

 

そう言うと彼女はチェイスの腕を掴んで引っ張っていく。

そして何も調べられないままチェイスは自分の教室へと連れて行かれたのだった。

教室に入ると自分の番号が黒板に書かれておりチェイスは指定された番号の席に静かに腰をかけた。

廊下側の一番前の席だ。

すると隣の席の男が話しかけてきた。

 

「やあ、また同じクラスだな。」

「誰だお前?」

「酷いなぁ、僕だよ。橘 一馬。

チェイス去年もみんなのこと忘れてたよね。」

「すまない。春は変わり目でからな。」

「変なの。まぁいいやよろしく。」

 

二人はがっしりと握手をすると世間話を始めた。

ここしばらくテレビを見ていなかったチェイスにとっては情報収集は大切なことである。

今この辺りではでは急に人が変わるという事件が多発しているらしい。マナーも笑顔もなかった不良少年やヤクザが一瞬のうちに真人間になり笑顔を振りまきまくるというのだ。

 

破壊神(イレギュラー)創造神(クリエイター)……か。」

「え?入れ墨がなんだって?」

「なんでもないから黙っていろ。」

 

しばらくすると先ほどの女生徒が近づいてきた。

 

「どうしたの?何盛り上がってたの?」

「世間話だよ、世間話。」

「世間話かぁ〜。

そういえばこの間の怪人事件のこと知ってる?」

「怪人事件だと?」

「知らないのチェイスくん。

この間星見学園前中央公園に怪人が現れたんだって。」

「怪人は4人いてうちに2人は1匹の怪人がやっつけたらしいぞ。」

「マスコミも総力あげて捜査してるらしいよ。」

「ならば警察も黙ってはいないだろう。」

「え? け……サツ?なんだそれ?」

 

チェイスはその言葉に一瞬耳を疑った。彼の言動から察するに彼自身警察という物を知らなさそうだ。

 

「警察だ。事件が起きれば来るだろう。」

「事件て何さ?」

「人殺しや窃盗などいろいろあるだろう。」

「チェイスくん疲れてるんじゃないの?

そんなのお話の中だけだよ。」

「は?」

「人殺しや泥棒なんていうのは世界中どこにもないんだよ。」

「そうそう、そんなのあったら俺ら死んじまうよ。」

 

チェイスはこの時思った。

犯罪は起こってないわけではない、なかったことになっているのだ。デリーターたちの能力は時間を止めることだけではない。時間を戻すこともできるのだ。そうなれば不自然な点がある。何故自身は時間の支配を受けないのか?

そう考え込んだ時扉が開かれ教師が入ってきた。

 

「おいみんな席に着くんだ。」

「あっ、先生来た。じゃあまた後でね。」

「あぁ、えっと……。」

「私は、 よ。」

「え?」

「私は『霧子』よ。」

 

 

なん……だと……

 

 

つづく

 

 

 



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第5話 能ある教師は真剣を隠す

前回までの魔進チェイサーは
その1:星見学園に謎の影がある
その2:各地のイレギュラーにチェイスの情報が入る。
その3:謎の少女の名は霧子


霧子……、

元の世界でロイミュードの番人であったチェイスに再び仮面ライダーに戻るきっかけを与えた女性。

同じ教室で、同じように過ごしているあの少女も霧子。

顔も性格もほとんど似ていない。

これは偶然であろうか?

いや、偶然とは言い切れない。

この世界にはまだまだ問題が残っていそうだ。

だが、チェイスにとって同じように重要な問題が発生した。

 

「それでは今日の授業はここまでです。

水曜日から通常通り授業となりますので確認しておいてください。」

「なんだと!? 昼休みはないのか!?」

 

チェイスの目的の中に昼休みに焼きそばパンを買うという目的もあった。学生生活を知らない彼にとってそれが今日の楽しみであったが今その目標が音を立てて崩れ去った。

抜け殻のようになったチェイスはイスの上に力なく座り尽くす。抜け殻となったその瞳に輝きはなく涙が溢れていた。

 

「チェイス飯に食いに行こうぜ。」

「焼きそばパンか!?」

「いや、ファミレスに……。」

「なんだそれは?

美味いのか?」

「えっと……どうだろう。いってみればわかるよ。

霧子もいかないか?」

「いいよ、私ドリンクバータダ券持ってるんだ。」

「決まりだ、行くぞチェイス校門に集合だ。」

 

そう言うと霧子と一馬は教室を勢いよく飛び出していった。チェイスは荷物をまとめると駐車場に歩いて向かった。

駐車場には部活勧誘の人間や軽音部の公開ライブで盛り上がっていた。チェイスがバイクにまたがりエンジンをかけると隣にもスクーターに乗る男子生徒がいた。その生徒は棒状の食べ物を食べながらため息をついていた。

 

「どうした?」

「うわぁ!!びっくりした。

同じクラスのチェイスくんだっけ?」

「そうだ。お前は兵藤 祐介だったな。

こんなところでどうした?」

「お昼ご飯だよ。これから用事があって。」

「それが昼飯か?足りるのか?」

「これだけじゃキツいけど栄養はあるから……。

あっ、そろそろ行くね。」

 

そう言うと祐介という生徒は急いでスクーターを走らせた。チェイスもバイクにまたがると校門に向かう。校門には既に2人が待っていて一馬にいたってはカンカンに怒っていた。

 

「おせーぞチェイス!!」

「野暮用だ。」

「そんなことより早くいきましょ。」

 

3人は10分ほど歩く。しばらくすると駅前の通りに入る。そこには平日ではあるが人間が多くバイクを押して歩くには少し狭かった。しばらくして目的地が見えるとチェイスは駐車場にバイクを止めて入り口に向かう。その途中に職員用の入り口と思われる場所に見覚えのあるスクーターが置いてありそれがどうも気になった。だが一馬からしつこくSMSが来るので店内に向かう。

 

「焼きそばパンが無いじゃないか!!」

「ある訳ないだろ。」

「何を頼めばいいんだ?」

「私が選んであげる。」

 

霧子はチェイスからメニューを取り上げると呼び出しボタンを押した。しばらく経つと店員がやってくる。

 

「ナポリタンのサラダセットとオムハヤシ、

それから………。」

「俺はミックスグリルセットね。

あとドリンクバー3つ。」

「オムハヤシとはなんだ?焼きそばパンか?」

「違うだろ、どう考えても。」

「ではカレーパンか?」

「違うって言ってんだろうよ。」

 

待っている間3人は再び世間話に浸った。

彼らの話に嘘は感じられずやはりこの世界には犯罪に対する術などはないようだ。考え込んでいると店員が料理を運んでくる。

 

「何だこれは?見たことのないパンだぞ。」

「パンじゃねえよ。オム『ライス』なんだから米に決まってんだろ。早く食べなさい。」

「パン……。」

「冷めちゃうだろ。食べなさい。」

「やだ。」

「子供かよ、たべちゃいなさい。」

「断る。」

「いいからはやk……。」

「ちょっとだけだぞ。」

「早いな、食いたかったのか?」

「……美味い!!」

 

ガツガツと無我夢中でチェイスはオムハヤシを口の中にかきこむチェイス。彼にとって世の中にあるものの殆どが初めてであり貴重な体験だ。者の数秒でチェイスは大盛りのオムハヤシを食べ終わる。口の周りがベトベトのチェイスはお手拭きで綺麗に顔を拭き取る。

 

「どうでした?」

「焼きそばパンの方が美味いからおかわり。」

「嘘下手くそだな。」

 

そこまでの会話を見ていた霧子が笑い出した。

 

「どうしたんだよ。」

「二人とも仲良いなと思ってさ。」

「そうかな? どう思うよチェイス?」

「おかわり。」

「パフェにしとけ。」

 

30分後食べ終わった3人は会計のためにレジへ向かう。

 

「お待たせしました、お次のお客様どうぞ……ってあれ?」

「あれ?祐介くんここでもバイトしているの?」

「そうだよ……、あっ、チェイス君も。」

「やはり外のスクーターはお前のか。」

「うん、あっ、お会計ちょうどありがとうございました。」

 

3人は会計を終え外に出た。するとチェイスの携帯に通知音がなった。シフトカーからのエマージェンシーだ。場所はファミレスの入り口近くからでありすぐに戻る。

そこにいたのはスーツ姿の中年男性であった。

 

「残念ですねえ、祐介くん。」

「先生……。」

(先生だと……。)

「校則では生徒のアルバイトは週3日までのはずですよ。」

「あの……今日はたまたま入っちゃっただけで……。」

「残念です。ですが喜びなさい、あなたの新たな人生を……。」

 

その瞬間時が止まった。

そして教師の姿が白い人型の怪人になっていく。

 

「さあ、作り変えてあげようか……。」

 

だが白い怪人の腕から銃撃による火花が飛び散る。撃った者は勿論チェイス。

 

「死神か。」

「お前に冥土を拝ませてやろう。」

 

《BREAK UP !!》

 

チェイスの姿は一瞬のうちに変わった。

目にも留まらぬ速さで敵を撃ち抜く。

弾丸が直撃するとその箇所が爆発を起こす。

 

「ぎゃあああああ!!

何だとおおお。」

「ん!?威力が上がっている。」

 

シフトカー達のおかげでブレイクガンナーの威力がアップしていた。これにより目の前の敵は一瞬で粉々になった。

チェイスが一息ついた時足元の床が割れ怪人が飛び出す。そいつは腕の木刀を振り回しチェイサーを追いかける。

その攻撃を受け止めると怪人は数歩後ろに下がった。

 

「貴様がチェイサーであるな。」

「ならどうした?」

「殺す!!」

 

その声とともに怪人が一気に懐に飛び込み。

 

《TUNE CHASER SPIDER !!》

 

蜘蛛の形をイメージした爪状の武器がチェイサーの右腕に装備される。左右の木刀が一定の間隔でチェイサーのボディに攻撃を仕掛ける。だが、それを軽々とよけるとチェイサーは怪人の脇腹に一撃を加える。

すると傷口から火花が飛び散り苦しそうに傷口を抑える。

止めと言わんばかりに振り上げたその時左右と額の木刀をブンブンと振り回し始める。

チェイサーはその木刀全てに強烈な一振りを与えると怪人の武器にヒビが入る。

 

「この我輩の、ブレードイレギュラーの木刀があああああ!!」

「おわりだ!!」

 

チェイサーが飛びかかったその時何か3筋の光が見えた。

それと同時にチェイサーの胸から火花とともに血が吹き出す。

崩れゆく瞬間その光の存在を見た。

ひび割れた木刀の下には真剣の歯があったのだ。

 

「見よ能ある鷹は爪を隠し、能ある教師は真剣を隠すのだ!!」

 

 

つづく



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