緋弾のアリア ~月を渡る前向きな武偵~ (紫柳)
しおりを挟む

プロローグ

どうも、初めまして紫柳というものです。
こういった作品は初投稿なので、温かい目で見守ってほしいです。
オリジナルを踏まえながらもなるべく原作の最新刊に近付けたいと思っているので早め早めの投稿を目指して頑張ります。
それでは、物語は始まります。



空から女の子が降ってくると思うか。

 

この俺岸波白野はそれも可能性の一つであると思う。

皇帝や、正義の味方、大妖孤、英雄王と共にバトルロワイヤルを

経験した俺はそんなありえないような状況もあり得ると結論づける

ことができた。それに、

 

「その自転車には爆弾がしかけてありやがります」

 

背後からUZIの先端を突き付けられながらも自転車を全力で漕いでいる

今の状態ではどんなことでも信じるにたる現実であった。

 

「速度を落としやがると爆発しやがります。」

 

「ああもう、とっても疲れるんですけどっ!」

 

そう言いながら目の前の交差点を曲がる。

さすがに、今の状況ではジリ貧だ。通信科のあの子に助けを求めようと

携帯を取り出そうとするが…

 

「助けを求めてはいけません。携帯を使用した場合も爆発しやがります」

 

あはは…。了解了解

伸ばした手を止めて俺は悪態をついた。

まずいな。確かに、UZI1体だけならそこまで問題でもない。

しかし、状況が状況自転車をこいでいて撃退をすることは簡単

ではない。と結論付けた。

 

このまま道路を走り続けることはできない。

仕方なしに近くで被害が少なそうな強襲科のグラウンドをまわり

助けでも待つかと自転車をこいだ。

そして、そのグラウンドにはすでにUZIに追われた先客が。

おや。あの後ろ姿は

 

「やあ、キンジさっきぶりだな」

 

色々あっていま同棲をしているルームメイトに話しかける

 

「おう。って白野お前もか!」

 

俺は自転車をキンジの自転車に近付けて話をする。

確かに、さまざまなものから逃走することは前世で

そこそこ経験している。

しかし、ここまで逃げるに逃げれないのは珍しいなと

俺は、思う

 

「白野!この状況をどうにかできないか!」

 

「さすがにこの状態では無理だ!しばらく待って助けが

来るのを待つしかない!」

 

まあ確かに逃げようとすればこの状況から逃げるのは可能

である。しかし、それは前世での話だ。この世界での俺は

色々あっていまとても弱体化している。

可能性の一つの英霊でも呼び出せればこの状況を打破できるだろ

うが、それもできない今はひたすら逃げるしかない。

 

「ハァ…ハァ…」

 

まずいな。俺はいつも特訓をしているが強襲科をやめたキンジは

スタミナが切れかけている。

速く救助が来ないと間に合わない。

くそ。だれかこの友達をだれか助けてくれと思っていると。

おや?強襲科の屋上に誰かいると思うといきなり人影が飛び下りてきた!

 

「そこのバカたち!頭を下げなさい!」

 

その人影、少女の人影である神埼 H アリアがこちらに向かって

ガバメントを狙ってくる。

このような特殊な状況も新しいなと思いながら。

俺は頭を下げる。

 

決して普通とはいえないこの3人の出会い。

これから起こる物語に岸波白野はこの時を渡り歩くのだった。

 




次は、白野のプロフィール紹介を。
感想、意見をお待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1弾 自転車と爆弾と俺

岸波白野 男 現在15歳

装備武器

サバイバルナイフ(校則のために所持しているだけ)

?(もう少ししたら判明します)

?(もう少しとちょっとしたら判明します)

月の聖杯戦争で数々のマスターたちに勝利し、聖杯に接続願いを果たし、最期の時を終えた。5回戦の時、しっかりとcccルートを経験した。すべてのサーバントと出会っているのかは時間が停止した月の世界のそれぞれのパラレルワールドで岸波白野がそれぞれのサーバントで経験をしたから。そしてそのそれぞれで月の聖杯へ接続。その際、すべての岸波白野のデータを聖杯は統合そして、あるバグが起き、岸波白野は世界へ転生する。
聖杯戦争を経験し統合されたため白野自身のマスターレベルは99を超えたが、転生時レベルは1からスタートした。
レベルは下がったが洞察力と観察力は下がることなく受け継がれた。
身体的特徴としては聖杯戦争中の身長と体重とは少し小さめと軽め。(若干、ザビ子と似てるかも)
これも過去に、色々あったからだがそれも物語でお話します。

あと、物語の中でもオリキャラを出していきたいと思うので、その時々に紹介していきたいと思います。
ここでは白野のステータスとプロフィールを掲載します。
ちょっと長くなりましたが、なるべく少なくしたほうです。(すいません…)
前書きにプロフィールを書いたのはなるべく本編も進めなければならないと思ったからです。ですのでこれから本編の投稿を始めたいと思います。


「そこのバカたち!頭を下げなさい!」

 

屋上から飛び降りパラシュートを開いた

カメリア色の髪をした少女の言葉を聞き、

俺たちは頭を下げる。

そして、少女はガバメントを展開、俺たちについてきた

UZIを撃破する。

あの少女なかなかの腕だ。パラシュートという不安定な

状況で見事セグウェイのUZIを破壊したが、

 

「ダメだ!この自転車には、爆弾が仕掛けられている!降りたら爆発するぞ!」

 

となりで、キンジが叫ぶ。

しかし少女は

 

「武偵憲章1条!仲間を信じ仲間を助けよ!」

 

少女はパラシュートに逆さまで乗った。

まさか、俺たち二人を助けるつもりなのか。

確かに、俺も助けてほしいがさすがに2人同時は無理だろう。

だから俺は、

 

「俺は、まだ大丈夫だ!先にこっちを助けてやってくれ!」

 

そう言い、俺は自転車のスピードを上げる。

すれ違った時、少女は何か言った気がしたが気にしてられない。

自転車を降りる以上必ず爆発するだろう。

だから、助かるには遠くに逃げなければならない。

しばらく漕ぐと後ろから爆発音。

うわぁ、めっちゃ爆発するじゃん…

そしてキンジと少女が爆風にふきとばされて体育倉庫に

入っていくのが見えた。

けど助かったのは事実あとは助けてもらうために、もう少し

自転車をこぐだけだ。そう思いながら自転車をこいでいたが

 

「ハァ…ハァ…遅くね」

 

たぶんあれから5分ほど漕いでいたが2人が出てこない。

気絶でもしているのだろうか。さすがにもうそろそろ

助けてほしいのだが。

すると校門から新たなUZIが10台ほど見えた。

さすがにまずいと思ったが、それらは体育倉庫に向っていく。

セグウェイに感づかれないようにと、スピードを落とさない

用にしながら体育倉庫が見えるところに近づくと交戦中と

思われる二人。

何だよ気絶してないじゃん、そう思って交戦場所から離れる。

あの二人は(キンジはちょっと特殊だが)なかなかの腕だ。

すぐに僕を助けてくれると思いもう少し自転車をこぐことにした。

案の定、UZIは沈黙化した。さっきちらっと見えたが、UZI

の銃口に銃弾が入っていくのが見えたんだが。

そんな神技はさすがにあの少女には難しいだろう。

ということは…

 

「キンジ、なっているじゃん」

 

見えたのはいつもと違う感じがする友達。

超人になれるがその条件が残念なためにあまりなりたがらない。

その条件を知る俺は、あの少女でなったのかと少し戦慄した。

キンジと少女が何か話していると思ったがすぐに交戦を開始した。

さすがにバトルのはこの学校だからいいとしても

 

「ちょっと!そこのお二人さん速く助けてくれませんかね!」

 

いまだに爆弾付きの自転車を漕ぎ続ける俺は二人に助けを求める。

いくら特訓しても体力に限界はある。

目の前で必死に逃げている友達を見捨てるのはどうかと思った。

二人はこちらに目を向ける。さすがにまずいと思ったのだろう

二人は交戦をやめた。そしてキンジはこちらに向けて自分の

獲物であるグロッグ向けた。

瞬時に理解した俺はキンジが打ちやすいようにまっすぐ

自転車を進める。

そしてキンジから打たれる弾丸は見事に爆弾を止めていた

金具へと命中。

自転車から落ちる爆弾からできるだけ離れる。

そして爆弾は爆破なんとか爆風に巻き込まれながらも

生きて生還したことに安堵する。

しかし、超人になったキンジはすごいな。まっすぐだとしても

動いている1センチほどの金具にあてるとは。

俺はなかなか漕いだなと思いキンジ達のもとに向かう。

少女はキンジの神技に少し唖然としたがすぐに

こちらに食ってかかる。

 

「確かにアンタがすごいやつと分かってもアタシに強猥した

容疑はきえないんだから!」

 

「キンジお前どんなことしたんだ…」

 

「二人ともそれは悲しい誤解だ」

 

俺達三人は話し合う。

しかしあれだな仕方のないことだとしてもキンジの話かたは

とてもキザイな

少女は顔を真っ赤にしながらこちらに攻撃を仕掛けようとしたが。

 

「わきゃ!?」

 

事前に用意しよていたのか地面に落ちた薬莢を踏み少女は

滑って転んだ。

なかなかの滑りようだが思い出すのもつらいあの料理を

食べたときの吹っ飛びようと比べるとまだまだ甘いな。

あ、思い出すと吐き気が…。

 

「逃げるぞ、白野」

 

キンジはその場を後にするようだ。

 

「ちょっと待ちなうわきゃ!?」

 

少女は立ち上がろうとするとまた転んだ。

さすがにこの状況をどうにかするのは厳しいな

そう思いながら俺もキンジの後を追い逃げだす。

しかしさすがに今日は不幸すぎるな。

このまま何もなく平和に過ごせたらと胸にひめ

キンジとともに学校を目指すのだった。

 




今日はプロフィールと本編一話投稿しました。
白野よりもキンジのほうが活躍してしまいましたね(笑)
ちゃんと白野にも活躍の場がありますのでもうしばらくお待ちください。
キャラ崩壊と駄文には本当に申し訳ありません…
明日もたぶん投稿できると思います。
誤字や脱字、意見や感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2弾 風穴ですねわかります

前回の白野のプロフィールに書き忘れましたが
情報科   Aランク
となっています。
なぜ情報科?とかは物語で書いていきますので早速本編を書き進めたいと思います。



「はぁ…またやってしまった…」

 

「あはは。まあドンマイだねキンジ」

 

クラス分けを行い俺とキンジは2-Aになった。

教室にはいってすぐ机に突っ伏したキンジは悪態を打っていた。

まあ、あの体質を人に見せるのは気にしているしな。

ヒステリア・サヴァン・シンドローム

キンジいわくヒステリアモードは性的興奮をすると脳内に一定以上の恋愛時脳内物質を放出。通常時の約30倍以上の身体能力と判断能力を得る。

これのおかげでさっきのような超人になるのだがいかんせん条件が条件だし、ヒステリアモードになると言動がふつうより砂糖をはきたくなるようなキザイ台詞を吐くからな。

キンジは過去にヒステリアモードでいろいろあったらしくあまり使いたがらない。

ヒステリアモードのときの情報は俺の中の情報になかったので初めて聞いた時には結構驚いたな。けど、俺は人の嫌がることはしないからな!(←人の心を丸裸にした人)

 

「おう、キンジにザビ!お前らもAか!」

 

声のした方向をみると車両科の武藤 剛気が右腕を上げながら近づいてきた。

 

「朝から元気ねえなキンジ。星伽さんと同じクラスになれなかったのが悲しかったのか」

 

「武藤…今の俺に女の話題を振るな…」

 

本気で怒っているのか。声に怒気を含ませながら武藤に話しかける。

白雪さんはキンジの幼馴染で一言で言うならほぼ大和撫子な人だ。

少しだけ残念だが…

うわ、珍しく本気で怒っているのか武藤も一歩引いてるぞ…。

というか

 

「武藤。そのあだ名はやめてくれ。お前の名前を俺の顧客リストから外すぞ」

 

「わ、わりぃってお前の仕事は速いし安いからな」

 

ザビというのは俺の結構不名誉なあだ名だ。

なぜこのあだ名が広まったのかは、俺が一年の頃の入学式後教室の自己紹介をすることになり緊張のせいか自分の番が来た時

 

「お、俺の名前はっ、フランシスコ・ザビッ…」

 

やっちまったー!という感じである。現場にいた人たちからはたまにザビと呼ばれるが大体が自分の顧客なためあまり言わせていない。武藤も俺の顧客のため黙らせることができるのである。キンジはいいやつなのでそこまで喧嘩を売ってこない。やっぱ持つべきなのはいい友達だね。

 

「っと、そういえば白野また頼んでいいか」

 

「またか…いつもなくしすぎだろう。で、今回は何だ」

 

「悪いな。今回は俺の車の鍵だ。たぶん学校内にある。鍵の特徴は…」

 

「わかった。近場と特徴さえわかれば大体10分くらいでわかる」

 

「サンキュー、遺失物の依頼だから二〇〇〇円だな」

 

「いや今回は一〇〇〇〇円だ」

 

「何で!」

 

「さっきのあだ名の件で5倍だ。それにたまにはちょっとおいしいもの食べたいし」

 

「ちっ…わかったよ。けど相変わらず仕事速いよなどうやってんだよ」

 

「企業秘密だよ」

 

そう言いながら金を受け取り俺は教室を出る。

えっと今の時間帯で人がいなさそうなところは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんまり人がいないだろうと思われる屋上に行くとそこには体操座りする髪が少し青みがかりヘッドフォンをした女の子がいた

 

「あ、レキさんおはよう」

 

体操座りをした少女レキは、こちらの声を聞くとこっちを向き軽く頭を下げる。

この女の子はレキ。狙撃科でSランクである。

たまにこの屋上で出会うのでその時にたまに話すようになった。

こちらが一方的に話すように見えるが。

けど、困った。これじゃあ仕事ができないぞ。仕方ない

 

「レキさん。ちょっと悪いけどあっちを向いててくれないかな」

 

とレキさんに話しかける。

というか体操座りのままこちらを向くからパンツ見えるんだよな。すぐに目をそらしたけど。けど何でおれの周りにはパンツを見せてくる人が多いんだろうな恥ずかしいんだが。

ん…パンツ…はかせない…うっ、頭が。

 

レキさんが後ろを向いたので早速仕事にかかる。といっても一分もかからんが。

右手を上げ魔力を集中させるとそこに月で使っていた電子手帳が現れた。

俺はこの世界に転生された後、マスターレベルが1に下がったため魔力量は相当下がったが簡単なコードキャストは特訓により使えるようになった。

俺が、情報科なのはこういった礼装を使かうため信用性抜群のもの探しができるためである。あと電子手帳もムーンセルの情報をもつためこの世界の情報は大体この電子手帳で見れるのである。

そして礼装である遠見の水晶玉を持ちだし「view_map()」とコードキャストを使い武藤の鍵のある場所を探す。そして見つけたので探しに行くためレキさんに話しかける

 

「ごめんねレキさん。仕事が入ったからもういくよ」

 

するとレキさんは、こちらを向いた。だからパンツみえますよ!

 

「白野さん、最近よくない風が吹いています。気を付けてください。」

 

よくない風?確かに俺の不幸スキルは月の世界から引き継がれている。(またいらないものを…)

たまに電波を発するのかな風というのは電子手帳にもただの風としてかかれているし。

なので俺は

 

「ありがとうレキさん。なるべく気をつけて生活するよ」

 

そう言って屋上を後にする。もう少しでHRも始まるだろうし速く見つけないと。

扉を開けて一瞬レキさんの顔を見ると無表情の中に少し心配の色が見えた。

謎に思ったが扉が閉まり目の前はただのコンクリと鉄になる。

レキさんもあんな顔をするんだな。とそのときはそんなにも気にせず鍵を探しに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

鍵を見つけたあと武藤に鍵を渡し自分の机の椅子に座る。

こういったものは普通お金は後払いなのだが俺の顧客たちは信用しているのだろう。いつも先払いで支払ってくれる。

椅子に座ると隣の隣に座るキンジが見えたあいつやっと立ち直ったか。

朝のHRが始まり担任である高天原ゆとり先生の話を聞く。

高天原先生は今はこんなにほんわかとした雰囲気をまとわせているが。過去の話を電子手帳で調べたらとてもすごい戦果をあげていた。(おもにバトル面で)

すると先生が

 

「では、転校してきた生徒を紹介しましょう。とてもかわいい女の子ですよ」

 

と言った。

教室の男子たちは興奮していたが俺はとても嫌な予感がした。

まるで今後の人生に影響を与えるような。

案の定

 

「先生、私あいつらの真ん中に座りたい」

 

そう言って俺たちを指さすのは今日転校してきた

神埼 H アリアである。

だろうな嫌な予感はしていたよなんとなく。

かわいそうにキンジが怯えているよ。

 

「よかったなキンジ、白野。先生俺席変わりますよ」

 

そう言って武藤は席を移動する。そして神埼さんは俺たちに近づくと

 

「キンジ、これ、さっきのベルト」

 

神埼さんはキンジにベルトを渡す。

てか、何で神埼さんはキンジのベルト持ってるんだ?

 

「はい、これアンタのでしょ」

 

そう言って俺の机に俺のサバイバルナイフを置く。

落としていたのか。まあ、このナイフはあんま使わないんだがな。

ありがとうと言って受け取るとそこに大音量の女の子の声が

 

「あ~!理子わかっちゃった!これフラグばっきばきに立ってるよ!」

 

キンジの左に座っていた峰理子がガタンと席を立つ

 

「キー君ベルトしてない!そして、ベルトをツインテールさんが持っていた!そしてしろくんのナイフを持っていた!これ謎でしょ!けど、理子には推理できちゃった!」

 

アリアと背格好が同じくらいのこの子は峰理子。探偵科なのにおつむが少し残念な人である。制服もゴスロリに改造してある。

 

ちなみに、キー君としろくんは理子さんがつけたあだ名だ。

なぜ、しろくんなのかは白野の白からである。まあ、ザビと言われないだけましであるのでこれで通している。

 

「キー君は彼女の前でベルトをとる何らかの行為をしていた!そして、彼女の部屋にベルトを忘れてきた!でも、そこにしろくんが乱入!そこでナイフを忘れたんだよ!つまり3人で3Pしてきたんだよ!」

 

と、とても的外れなことを言い出す。まあこんなこと普通信じる人がいるわけ…

 

「まじかよキンジと白野…いつの間に」「白野はともかくキンジが彼女いたとか」「3Pとか不潔です…」

 

忘れてた。ここは武偵高普通の人たちがいるわけがない

仕方ない、っと言い訳しようと席を立とうとすると

 

ズキュン!ズキュン!

 

と二発の銃弾が教室内に響き渡り生徒たちの声が途絶える。

真っ赤になった神埼さんが打ったのだ。

 

「恋愛なんてくだらない!」

 

真っ赤な顔で恋愛を否定している神埼さん

理子さんは被害が来ないようにすすすと身を引いていた

この学校ではむやみに銃弾を打たないと書いてあるがうつなとは言っていない

そして、神埼さんは銃を全体に向け

 

「全員覚えておきなさい!そんなバカなこという奴には!」

 

そのあと、聞き飽きるほどこの後聞かされる台詞を放つ

 

「風穴あけるわよ!」

 

 

 




アリアのこのセリフを吐かせるために3話もかかりました…
この後、白野君の周りの人々について描くつもりなので1巻が終わるのはもう少しかかりそうです。
まあ、なるべく原作に近付けたいのでほぼ毎日更新を目指しますが。
意見や感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3弾 奴隷ですって冗談じゃないわ!

白野君の周りの人々を描こうと思いましたが、予想以上にやりずらくなったため今回は一人だけ紹介となります。


昼休みになったとたん質問攻めになることは分かっていたため授業が終わると同時に教室を出た。しかし、キンジよりも廊下に近いほうにいてよかった。俺が動き出してからキンジは状況を理解。俺について出ようとしたらそこはさすがに武偵校、一瞬の隙が命取りだ俺はあきらめられたがキンジはつかまっていた。すまんキンジ俺の分まで質問されてくれ。

っといけない。今日は確か依頼品の納品日だ。渡しに行かないと。そう言って俺は通信科の棟に向かった。

 

 

 

 

 

 

「中空知さん、いる?」

 

「ひゃ…!あっ…ちょ、ちょっと待って…ください!」

 

通信科の棟。廊下に専用の機械をよけながら今回の依頼人、中空知美咲さんの専用の教室の前に移動した。通信科は音を専門に扱うから大きな音は厳禁なため、軽くノックをしてから名前を呼び掛ける。なんでも優秀な生徒には専用の部屋があるそうだ。いいなあ。

しばらく待つとドアがあいた。中空知さんは顔を赤くし長めの前髪でうつむいている。中空知さんは対人関係には極度の上がり症のためこういったコミュニケーションはあまり得意ではないらしい。しかも、ちょっとドジっ子なのかな今回の依頼も落し物をしたために届けにきたのだ。本当は当日にでも届けにこれたので渡そうと教室前まで来たのだが、

 

「す、すいません…!きょ、今日は…ちょっと…無、無理です。あ、明日の昼休みで…!」

 

うわぁ。すごい勢いで拒絶された…。軽くへこみがら昨日は帰ったのだ。

しかしそのあとに、「そ、そんな一日に二回も岸波さんの顔が見られると…」とぼそぼそと彼女が呟いていたことは白野は知らなかった。

 

「はい、これでしょ」

 

「あ、ありがっ…とうございます…!」

 

そう言って今回の依頼品をわたす。中空知さんは急いで依頼品をもらうと、一度こっちの顔を見ると、また顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 

「………」

 

「………」

 

………

 

(き、きまずい…)

 

顔を真っ赤にして中空知さんがうつむいてからまるでそこは時が止まったかのように一切動くことはなかった。5分ほど過ぎたころだ。その均衡は予想外なところで崩れ落ちた。

 

く~…

 

あれ、何だ?俺じゃないぞ。まさか…

中空知さんを見るとさらに顔が下がっていた。それなのにかすかに見える顔はすっごく赤かった。あはは、どうやらおなかがすいていたのに引きとめてしまったようだ。

 

「ごめんね。僕はおなかがすいたからもういくよ」

 

さっきのおなかの音については追及しない。さすがにかわいそうだからな。

そうして、廊下を歩こうとすると

 

「あ、あの!…ちょっと待って!」

 

と中空知さんに引きとめられる。どうしたの?と言って振り向く

 

「あ…お昼は食べられてなっ…ないんですか!?」

 

「あ、うん。食べてないけど」

 

中空知さんは何かを言いたげにこちらを見ては顔をうつむかせている。

そして、何かを決意したようにこちらを振り向くが

 

「あ、あの…!い、一緒にお昼…」

 

「おーい!美咲!一緒にご飯食べようぜ!」

 

たぶん通信科の同級生なのだろう。弁当箱を持って中空知さんの部屋に来た。

その子はこちらをみて驚いた顔をした。

たぶん、一緒に食べようとしたのに知らない男がいたから気が動転したのだろう。

だから僕は邪魔にならないように離れることに決めた

 

「それじゃあ、俺はもういくよ」

 

そう言って、中空知さんの部屋を後にした。

そのあと、中空知さんが泣きながら昼を食べているところを、同級生がなだめていることを白野は知る余地もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

その放課後、特に今日はやることもなかったため、キンジと一緒に歩いて帰った。

帰ってから、キンジと一緒にゲームでもしようとテレビをつけると

 

ピンポーン

 

「ん?」

 

俺はチャイムが鳴ったので出ようとしたらキンジに止められた。

どうやら居留守を使うようだ。

どんだけ、出会いたくないんだろうコミュ障なのか。

しかし、

 

ピンポンピンポーンピーンポーン

 

キンジが何かを考える顔をする。

何だろうこの感覚…。過去にもこんな感覚が…。

 

ピポピポピポピピピピピピピピーンポーン

 

キンジよさすがにうるさいんだが。

そう思ってキンジをみるとやっとキンジが動き出す。

ん?そういえばこの感覚これはまるで

 

「遅い!あたしがチャイムを鳴らしたら5秒以内に出ること!」

 

思い出した。これはあきらめの悪い人に追われまくっている感覚だ。

いけないなこんなに感覚が弱っていたなんて。

まあ、鋭くなっても困るのだが。

そう思っていると神埼さんがリビングに入ってきた。

 

「か、神崎!」

 

「アリアでいいわよ」

 

キンジが狼狽しながら神崎さんの名前を呼ぶ。

キンジは白雪さん以外の女性は部屋に入れたことないからな。

簡単に入ってきては困るのだろう。

彼女は、何らかのトランクを置いてトイレに入って行った。

 

「白野、お前何でアリアが来たかわかるか?」

 

「あぁ、なんとなくだが」

 

そう、白野はなんとなくなぜアリアがここへ来たかわかっていた。

それは目だ。今のアリアはポーカーフェイスをしようとしてるのだろうがその眼には少し焦りの色が見えた。きっと今朝のキンジの技術を見て何らかの感情が見えたのだろう。

俺はそういった目を月の世界でいやというほど見せつけられた。

キンジは教えろよと言ってきたがじきにわかるよと言い返した。こういうのはちゃんと自分で考えなければならないと自分は思っているからだ。

そうしてアリアがトイレから出てきた。

 

「あんたたち二人暮らしなの?」

 

アリアは手を拭きながらこちらに尋ねる

 

「まあ、一応」

 

「ふーん。別にいいけど」

 

何がいいのか。

アリアは窓のそばまで行き俺知のほうを向き

 

「キンジ、白野。あんたたちあたしの奴隷になりなさい!」

 

…。

助けを求められるのは分かっていたが

奴隷宣言をされるのは分からなかったな。

 

 

 




今日は結構時間が余ったためもう1話投稿したいと思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4弾 アリアとキンジと白野の話

今日は時間があったため、もう1話投稿します。


キンジよ目が点になっているぞ。

まあ俺も若干驚いているが。奴隷宣言のほうに

 

「ほら!さっさと飲み物ぐらい出しなさいよ!無礼な奴らね!」

 

そういったアリアはぽすっとソファーに座る。

 

「コーヒー!エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ!砂糖はカンナ!1分以内!」

 

そうこちらに宣言をしている。

キンジは何を言っているのかわからないといった顔でこちらを見てくる。

仕方ないな。さすがにそこまではないのだが

 

「さすがに、そこまではないのだが。俺独自のブレンド品でいいなら」

 

「アンタ、コーヒーブレンドできたのね…」

 

「まあ、一応」

 

さすがに全部を俺が考えて作ったわけではないのだが。

月の世界でオカン気質なサーバントに教わった奴を少し自分が変えて作ったものだ。

コーヒーが苦手なキンジでものめるのでちょっと甘めだろうが

 

早速、コーヒーメーカーでこしてからアリアに差し出す。

アリアが一口飲むと

 

「へぇ…これおいしいわね」

 

と言ってくれた。よかった喜んでくれたみたいだ。

俺たちはコーヒーを飲んだ後キンジが言った。

 

「今朝俺たちを助けてくれたことには感謝している。それにその…お前を怒らせるようなことをしてしまったことも謝る。でもなんでだからってここに押し掛けてくる?」

 

キンジよお前本当に何をしたんだ…。

そう葛藤をしていても、話は進む。

アリアは目だけをキンジに向けて

 

「わからないの?」

 

「わかるかよ!」

 

いらだった様子で言うキンジ

今度はこちらに目を向け

 

「アンタは分かる?」

 

「何をしに来たのかは大体わかるよ。後、俺の名前は白野だ。」

 

そう言って席を立つもうそろそろ時間だからな。

 

「あんt…白野。どこへ行くの」

 

「俺はアリアのがなぜここに来たかわかるからな。俺は条件付きでやってもいいよっとだけ言っておく。俺はこれから自主トレだから家を空ける。キンジは分かっていないようだからちゃんと話しておいたほうがいいと思うぞ」

 

そう言って自分の部屋に入り運動用の服に着替え、部屋を出る。

ちゃんと伝えられるのかな。月にいたときの凛のSGを思い出させそうな子だからなあの子。

キンジは朴念仁だからちょっと不安だ。

そう思いながら俺は寮から走り出す。

こうした自主トレは俺が物心ついたときから始めている。

その時から過去のことを覚えていたため魔力や体力が減少していることを知り自主トレを始めているのだ。

月にいたときこれまたオカン気質なサーヴァントからの教えにのっとり走りながらも呼吸を集中させスタミナの減少を抑える走り方をして寮から離れた公園についた。

公園についてからちょっと乱れた呼吸を整えベンチに座る。

今日は体力に余裕があるからいつもより出力を上げてから走るか。

そうして、自分の魔術回路を開く。

魔力も月にいたころより減少しているため出ている量はいつもより少しだけ多めにして走り出した。

少しだけ増やしただけとしてもこの公園から家までの距離を走るのだ。それもなかなかの魔力を消費する。

この方法は、月で正妻(自称)のサーヴァントから学んだものだ。

いつも、ふざけているように見えるのだが魔術関係の時には真剣に教えてくれたいいサーバントだ。

そう考えながら、家に着いたときにはとても疲弊していた。

しかも、いつもよりも少し遅いな。

キンジおなかをすかせているだろう。

今日は何を作ろうかと考え寮の部屋に入って行った。

 

 

 

 

 

「で、何でいるんだアリア?」

 

「キンジが認めないから今日はここに泊るから」

 

おいキンジこうなることも分かっていなかったのか。

そう言ってアリアはももまんをほうばる。

ももまんすきなのかな?

 

「おい白野。こうなることわかっていたのかよ」

 

「アリアがこちらに助けを求めるのは分かったが拒否したらここまでしつこくなるのは分からなかったな」

 

そう言って着替えいつものごとく料理を作る。

今日は遅くなったからキンジの好きなハンバーグを作ろうとしたがやめた。今日はカレーにしよう。

料理はこれも、月にいたとき、オカンなサーヴァントと狐系サーヴァントから教わった。

あの二人ほど上手にできないがそこそこ上手になったのは自覚がある。

赤王と金ぴかからはって?あの二人が戦闘以外何ができると思う?

俺が作り終わるとキンジは待ちきれないのかこちらに皿を持ってきた。

俺はキンジのちょっとした子供っぽい部分にあきれながらもキンジの考えについて一考する。

キンジには一年前武偵のお兄さんがいてその日とある客船の護衛をしていた。

しかし、その船はシージャックされお兄さんは亡くなってしまったのだ。

けど、被害者はお兄さんだけで武偵としては最高の成果を残した。

しかし、社会は彼を非難。シージャックを回避できなかったのは武偵が原因だとキンジのお兄さんを攻め立てたのだ。

そんな社会の不条理、武偵の徳のなさにキンジは武偵を絶望し普通の生活に戻りたいと思っているのだ。

 

そう考えるとキンジがアリアのことを拒絶するのは分かる気がする。

今回の話は武偵を早く辞めたいキンジにとってアリアの話はさらに普通の生活とかけ離れてしまう。

この話を容認してしまうのは難しいのだろう。

 

などと考えている間に夕食を終えた。

キンジが満足しながら食べ終わるなか、アリアは

 

「キンジ、あなたはフロントがいいわ。白野はバックアップね」

 

「だから、俺は受けないって言っているだろう。」

 

「白野は、本当にナイフだけなの?」

 

「へえ。どうしてそう思う?」

 

キンジの話を無視して話を進める俺とアリア

ちょっとかわいそうになってきたな。

 

「白野は、あんなに汗だくになりながらも特訓しているんでしょ。ナイフと情報だけならそんなに特訓しなくてもいいと思ったから」

 

「さあ、どうだろうな」

 

「そういえば、白野は条件付きで受けると言ったわね、どんな条件?」

 

「俺が依頼を受けている時以外か、俺自身の要件がある時以外かな」

 

「そう、手伝ってくれてありがとう、白野」

 

へえ、ちゃんとこういった子でも感謝の言葉を言えるんだな。

さっきのコーヒーの件で外国でも貴族とみた。情報収集は武偵の基本だから後で調べておくかな。

 

「なのに…キンジは受けないのね!」

 

キンジのほうを見てそう声をかける。

 

「当たり前だ!俺は武偵をやめたいからなそんなことやってられるか!」

 

そう言ってまた堂々巡りをするキンジ。キンジよお前が認めなければアリアは帰ることはない。お前にとって女子と部屋に長居することはよくないんじゃないのか。

なら、受けておいたほうがいいだろう。俺個人にとってもキンジには武偵を続けてもらいたい。キンジには武偵の才能があると思っているのだ。自分の才能をつぶす真似はしてほしくないしな。

が、そんな思いをキンジが知ることもなく拒絶したキンジ。それにアリアは

 

「出てけ!」

 

「何でおれが出ていかなきゃならないんだよ!ここはお前の部屋か!」

 

「分からず屋にはお仕置きよ!外で頭を冷やしなさい!しばらく戻ってくるな!」

 

猫のようにフカーと威嚇しながらキンジを部屋からキンジを押し出したアリア。

キンジ本当にかわいそうだな。

そしてアリアはリビングに戻ってくると

 

「何をやっているの白野。あなたも出ていきなさい!」

 

「いや、それはできないアリア。皿を洗わないといけないからな」

 

今日はカレーだったし、時間をおけばカレーの具がこびりつくのだ速めに処理しておきたい

「はあ、ならいいわ。あんたって、料理できたのね見直したわ」

 

「月で教わったんだよ。オカン気質と良妻系サーバントにね」

 

アリアはぽかんとしてたが別に大丈夫だろう。それより

 

「アリア、お前今日ももまんしか食っていないだろう」

 

「うっ、そうだけど…」

 

「バランス良く食べないと大きくなれないぞ」

 

「う、うるさい!もういいお風呂入るから覗かないでね!」

 

「わかってるって。明日からアリアも夕飯参加しろよ」

 

そう言って皿洗いをしながらアリアを送り出す。

ちょっとだけあの子の扱い方がわかった気がしたな。

 

 

 

…。

覗かないのかって?

何だろう覗いたら、空から世界の終わりが降り注ぐような気がするのだ。

なるべく、変な真似をしないようと心に決め皿洗いを終えるのだった。

 




今日は時間があったため2話投稿となりました。
今後も時間があるときにはこういったこともありますので温かく見守ってほしいです。
感想、意見お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5弾 今日は風が騒がしいな…

自分書いていて思いました。
あれ、めっちゃ地の文多いじゃん…
読みずらいと思いますがどうか温かい目で御拝見ください。
では、投稿します。


皿洗いを終えてリビングでしばらくくつろいでいると、キンジが帰ってきた。しばらく、コンビニの前にいて俺を待っていたのにどうして部屋に残っているのかと聞かれたので皿洗いをしていたと答えた。キンジはなるほどと答えていた。どうせキンジは家事という力を得ればアリアを切り抜けられるとでも思っているのだろう。それは、無理だな。お前は家にいるよりも外で遊ぶタイプだろう。逆に家事をやっていてもちらかしそうだからな。

 

アリアは?と聞かれたので。風呂に入っていると答えた。キンジはちょっと顔色が悪くなったので、どうせ女子の後に入ると香りが~とかだろう。っていうか顔に出すぎだろう。将来はギャンブルとかもできそうにないな。

などと考えテレビを見ていると。

 

ピンポーン

 

と、チャイムが鳴った。

ま、まてよ…。この慎ましやかなチャイムは

 

((白雪さん)だ…))

 

俺とキンジは二人目を合わせるだけで意思疎通をした。

女の子がいる(しかも風呂)状況で白雪さんが通常状態でいられるわけがない。

間違いなく黒雪さんとなってしまうだろう。

その状況を俺たちは理解し居留守を使おうとするが。

 

ドンっ!

 

「き、キンちゃん!どうかしたの!」

 

キンジのあほ!動揺しすぎだろう!そんなようじゃストーカーから逃げられないぞ!

しかしまあばれてしまった以上出るしかない。キンジよお前が出ろお前のせいだからな?

マバタキ信号でキンジに指示を出す。キンジはくそと言いながら玄関へと向かう。俺はなんとなくキンジの保険のためにキッチンへと向かう。

キンジは白雪さんとなにか話をしているようだ。影から様子を窺うと何か重箱のようなものをキンジに渡していた。ご飯は基本俺がつくっているため、白雪さんはご飯というアドバンテージを奪われてしまっている。ごめん、白雪さんなるべく忙しいときには作らないから。

キンジはなんとか白雪さんを帰そうと頑張っているがなかなか帰ってくれないようだ。早くしてくれアリアが上がってくるぞと思っていたとき

 

チャポン

 

っと風呂場から音が鳴った。

 

「誰かいるのキンちゃん?」

 

「あ、あ!あれだ!白野が今キッチンにいるから」

 

キンジのやつ俺を売りやがったな…。

まあ、いいよ今回だけ助けてやろう。

保険と思っていてキッチンにいてよかった。

 

「や…やあ、白雪さん。こんばんは」

 

「あ、白野君こんにちは」

 

よかった…一瞬見えた黒雪さんのオーラが消えた。

ヤンデレを相手にするのは難しいからな。

仕方ない。また助け舟を出すか。

 

「ごめん、白雪さん。俺もう風呂に入るから」

 

「あ、うんごめんね白野君。ごめんなさい。キンちゃん私もう帰るね」

 

「あ、ああいつも悪いな白雪」

 

そう言って白雪さんは帰って行った。キンジは安堵したように溜息を洩らすが、それだけで終えられないぞ。アリアがここにいる以上またこのような危険な状況に陥るだろう、それも今回のように隠し通せるのは難しい。それなら、キンジが早く認めてアリアに帰ってもらったほうがいい。だから、キンジには早く認めてほしいのだが。まあ、たとえ見つかったとしても助けないぞ。例のあのオーラにぶち当たられるのはもうこりごりだからな。

 

すると、キンジがなぜか焦った様子で、風呂場に走って入っていった。あれ、まだ中にはアリアが…。

案の定アリアが出てきたのだろう。風穴ァー!と言いながら銃を乱射していた。キンジよもうそろそろ身辺整理をしたほうがいいんじゃないか?

 

 

 

 

 

「バカたち…って白野は?」

 

「あいつは朝も大体自主トレをしている…」

 

何だよアリアもうすこし寝かせて…グハァ!かかと落としはやめてくれ!

攻撃してくるアリアから逃げまくって白野が帰ってくるのを待っていた。

 

朝ご飯をみんなで食べ(アリアは「何これ!普通においしいじゃない」と言ってくれた)一緒に登校した。

そして放課後、そういえばアリアの情報を調べないなと思い、屋上に行き電子手帳を取り出しアリアの情報を調べる。アリアの名前で検索をしたとたん若干ノイズが走ったが気にすることなく調べた。どうやらアリアは海外でも有名な家の貴族のようだ。母親には国からDの称号が与えられているらしい。そして、アリアのセカンドネームHについて調べると、

 

Holmes

 

なるほどな。確かにホームズといえば、俺でも知っている。そういうことか、アリアはあのシャーロックホームズの子孫ということか。でも、何でアリアはあんなに焦っていたのだろう。なんとなく、身辺に何か情報があるのかと思いごめんとおもいながら調べることにした。すると、アリアの母親、神埼かなえさんには多くの罪が重ねられていることを知った。たぶんアリアはこのことで日本にきたのだろうな。けど詳しい状況はさすがにわからない、いつかはアリアに聞かないとな。

その時、携帯に電話がかかってきた。携帯をとるとキンジからだった。キンジはアリアの情報がほしいということだったので、それならコピーでもしてから渡そうと思い、情報科の棟に足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

「ほれ、キンジ約束の品だ。」

 

「あぁ、サンキュ」

 

中庭でさっきコピーしてきたアリアの情報を渡す。キンジから金をもらい。キンジに情報を言う。

 

イギリスでも有名な貴族。母親はDの称号を持つことなどを話してアリアがどこの貴族について言おうとしたら

 

「キーくーん!」

 

と言って、理子さんがキンジに抱きつきという名のタックルをかましていた。まあ、あれくらいなら月でいつも赤王に食らわされていたからな嫉妬にもならない。

するとキンジが持っていた資料は水の中に落ちキンジが踏みつけていた。理子さんはごめんと言っていてキンジは別にいいとか言っていた。

まあ、これについては別に後でもわかることだろう。けど理子はどうしてここに来たんだ?

するとキンジは紙袋を取り出し理子さんに渡していた。様子を見るに、どうやらR-15指定のゲーム、ようするにギャルゲーを買ってきていたようだ。理子さんは背があまり高くないからな。年齢に満たないとでも思われたのだろう。ゲームを渡し理子さんは袋の中を見ると

 

「これはいらない」

 

と一部のゲームを帰してきた。どうしてかとキンジが言うと

 

「こういった2とか3とかいった呼称、私嫌いだから」

 

へえ、続編とか嫌いな人とかいるんだな。

俺は最後までやり進める派だ。最後まで前向きにやりきることが俺のポリシーだからな!

 

すると理子さんが

 

「しろくんは、どうしてここにいるのかな?」

 

ドクンっと、心臓が鳴った気がした。

理子さんは普通に問いただしたと思ったのだが、俺には一瞬殺気が見えたような気がした。

俺はなんとなく気にかけながら返答をした

 

「いや、キンジがある情報について知りたいって言っていたからなだから調べて教えていた」

 

「どんな情報?私も知りたいな!」

 

「ダメだ、個人の情報を勝手に洩らすのは、俺のプライドに触るからな」

 

さっきの情報が書かれたコピーのプリントはもうキンジが踏みつけてもう見れないし、俺の電子手帳はハッキングとかは絶対に効かないようになっている。だから俺の調べた情報が漏れることはない

 

理子さんは残念だなと言い紙袋を持って帰って行った。

さっきの殺気は何だったのだろう。と思ったが気のせいだろうということでその日はキンジと一緒に帰って行った。

金色の髪が白野たちのほうを振り向いていたことを彼らは知らなかった。

 




ちょっと前のサブタイでわかる人がいると思いますが、私は提督業も専任していてもうすぐイベントがあるため書けるかどうかわかりません。
けどなるべく毎日投稿もしたいと思っているので、時間の合間にでも書き進めたいと思います。(大規模イベントなんてきいてないよ…)
意見・感想のほどよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6弾 でもこの風少し泣いています

えーたとえ提督業が忙しくても毎日投稿を目的をしているのでいつも通り投下します。
(イベントがヤヴァイなんて言えない)


キンジと家に帰ってくると先にアリアが帰ってきたようだ。

その目は決意をした目、今日こそは決着をつけるといった目だ。

キンジよ今日はもう何も言わない。お前の正しいと思ったことを言うといい。

 

「キンジ。もう一度アサルトに戻ってきなさい。あんたの実力なら十分に私の力になれる」

 

「いやだ。もう俺はあんな場所には帰りたくない。それに、俺にはそんな実力なんてないんだ」

 

「嘘よ。あんた入学時の成績はSランクだった」

 

「それは…」

 

ほう、今回はアリアもだいぶ調べてきたようだな。確かに、キンジの入学時のランクはSランクだった。通常モードではまずありえないからヒステリアモードで受けたといっていた。何でも、試験の前に白雪が不良に追われていたところをキンジがぶつかってヒステリアモードになりそのまま試験を受けたらしいからな。Sランクというのは特殊部隊一個中隊に匹敵する実力、この学校の2年でも数人しかいない。

キンジは事故のあと、故意でランクを下げているから今のランクはほとんど関係ないのだがな。

そんなことを考えていてもアリアの誘導尋問は進む。

 

「つまり、あれは偶然じゃなかったということよ!あたしの直感に間違いはないわ!」

 

あれは今朝のことを言っているのかな。確かに玉を吐き出すしかない銃口に寸分たがわずこちらの玉を入れるのは神業に等しい。それが出来るのはSランクでも厳しいだろう。

アリアは情報を頼りにキンジを追い詰めている。やっぱり逃げるのは厳しいぞキンジ

するとキンジはやはり動揺しているのだろう。早速墓穴を掘った

 

「と、とにかく今の俺にはそんな実力はない!いい加減帰れ!」

 

「今の?ってことは条件があるのね?言ってみなさいよ協力してあげるから」

 

おおーっとこっちも墓穴を掘ったアリア選手!

確かにキンジがヒステリアモードになるには条件があるから確かに協力は必要だろう。

しかしその条件が性的興奮と来た。アリアはこれまでの生活から感じるにどうもそういったことには疎そうだ。

なのに、協力するって事はキンジを性的に興奮させるということ。それはそれは面白…げふんげふん。それは面白けしからん事態になるな!

キンジもキンジで何を想像したのかとても顔を赤めらせている。

 

「ほら、教えなさいその条件を!奴隷に上げる賄い代わりに手伝ってあげるわ!」

 

はあ、さすがにもう無理だぞキンジ

早く負けを認めて…

 

「…一回だけだ」

 

…はぁ。まったく、キンジもひねくれているな。

 

「一回だけ?」

 

「戻ってやるよアサルトに。ただし組んでやるのは一回だけだ。戻ってから最初に起きた事件をお前と一緒に解決してやる。それが条件だ。」

 

「…。」

 

「だから、転科じゃなくて自由履修としてアサルトの授業をとる。それでいいだろ?」

 

アリアは口を出し反論しようとするが、さすがにこれ以上望めないとわかるとしぶしぶ承認した。

 

「わかったわ。その一件であなたの実力を見極めるわ。」

 

「どんな事件でも一件だからな」

 

「OKよ。その代わりどんな大きな事件でも一件よ」

 

「わかった」

 

「ただし、手抜きしたら風穴開けるわよ。白野も!」

 

…。

 

「白野!わかった!」

 

「あ、あぁ。全力でやるよ」

 

アリアの問いに生返事で返す。確かに俺は全力で手伝おう。しかし、俺にはそのことよりキンジのことで聞きたいことがあったのだ。気になるな…。

 

 

 

 

 

アリアはキンジが一応条件をのんだのでキンジがさっさと追い出した。

俺は自主トレようの服装に着替えてキンジを待っていた。

キンジが少し疲れながらリビングに帰ってきたときさっきまで自分の頭の中に占めていた疑問というより意見をキンジに問いかけた。

 

「キンジ」

 

「ん?どうした」

 

「お前、どっちの本気でやるつもりだ?」

 

その質問でキンジは押し黙る。

そうこれは、本気は本気でも本気の容量の問題だ。

確かにヒステリアモードのときのキンジなら絶対にアリアに認められるだろう。

しかし、それではキンジの希望道理にはならない。たぶんキンジは通常モードの本気でやるつもりだ。

 

「…」

 

実際にキンジは押し黙っていた。

やっぱりな。まあ、キンジのやることに俺がとやかく言うつもりがないがこれだけは言わせてほしい。

 

「キンジ。俺はお前が普通にやろうが特別にやろうがそれがキンジにとって正しいならそれでもいいだろう。しかしな、それは本当に正しいことなのか?」

 

こう聞いてもキンジは押し黙る。

はぁ、もう少し考えさせてやるか

俺は席を立ってリビングを出るとき

キンジのほうを一瞬見やる。

キンジの表情はどうするのか俺でもわからないほど葛藤してた表情だけ見えた。

 

 

 

 

 

次の日、いまだにキンジは悩んでいるようだったがどうするのだろうな。

俺でも、わからないことは分からないキンジよひたすら悩め。俺としてはアサルトに戻ってきてほしいがな。

その日の放課後、おれはキンジにゲーセンでも行こうと誘われたので、簡単な依頼をこなした後校門前で待っていた。

キンジが来ると一緒にアリアも来ていた。

キンジがこちらに気づくいたので

 

「キンジ。アサルトどうだった?」

 

「最悪だ。もう二度とあそこには戻らないと決めたのだがな。」

 

へぇ。そうはいってもキンジお前アサルトにいる時のほうが楽しそうに見えたぞ。

どうやらアリアもそのことについて触れたらしくキンジはまた少しひねくれているようだ。

しかし、アリアはキンジのことについて話すと少し暗い顔をした。

 

「あたしになんかアサルトではだれも寄ってこないからさ、実力差がありすぎてだれも近寄ってこれないのよ…まあ、あたしは「アリア」だからそれでいいんだけど」

 

なるほどね。

アリアはオペラでも独唱の部分。

一人だけ活躍をする。

独唱とは周りがたとえ場を盛り上げても主役が一番を行くことだ。

つまりたとえ、周りが頑張っても同じステージには並んで立てない。

その一緒に並べそうなのがキンジというわけか

けど、俺はそうはアリアを見る限りそうは思っていない。

アリアは今焦っている。焦っては周りを見ることができない。

それは、たとえ自分が周りを見ていたとしても本当にみているとは言えないのだ。

俺の観察眼だとアリアは本当の協調性を持つときっとパーティでもみんなで活躍できると俺は思うのだがな。

しかし、今は目先の問題を解決しなければ。

キンジそれでも、お前は通常モードでやるのか?

 

「それで俺たちを奴隷にして「トリオ」にでもなるつもりか」

 

…。

本当にキンジは分かっていないのか。まあいいよ、本番でちゃんとしてくれればね。

しかし、キンジでも面白いこと言えるんだなちょっと笑ったぞ。

 

「アンタ面白いこと言えるじゃない」

 

「そうか?」

 

「大丈夫だキンジ俺も少し面白かったぞ」

 

「俺にはお前たちの気持ちはわからん…」

 

「キンジ。あなたは本当に面白いわ。もっと早くに出会いたかったくらいに」

 

…。

ほんとこの人たちは、こういったことには感心するな。

案の定キンジは赤面していた

 

「もういい。俺は白野と一緒にゲーセンによっていく、お前はもう帰れ!」

 

「ゲーセン?何それ?」

 

へえ、ゲーセンを知らないのかそういえばイギリスってゲーセンとかなかったな。

キンジはついてくるアリアを走って巻こうとしていた。

アリアたのしそうだな。

俺は二人がパートナーになった姿を想像してクスリと笑った。

それは、いがみあっても一緒に事件を解決する素晴らしい未来でもなればとおもい二人について行くのだった。

 




今回も結構ぐだぐだなってしまい申し訳ありません。
もうすぐバス○ャックですが、その時も白野君は参加しませんかもしれません。
けど、そのあとの事件では活躍しますのでバトル展開をお待ちの皆様もう少しお待ちください。
感想、意見お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7弾 いこう風がやむ前に…

たとえ今日も今日とてイベントがあれども投稿しますよー
結構甲でも簡単に突破できるんだなと思いました。(E-4までですが)


全力で走るキンジ達を追いかけゲーセンについた。

二人とも元気だな。一応アサルトで動き回ったあとなのに。

俺はこのくらい自主トレでやっているからなこのくらい大丈夫だ。

キンジはいまだに呼吸を乱しているな。アサルトをやめるからこういうことになるのだ。

アリアは呼吸を整えて周りを見渡す。するとある一点に目を向けてそこに向かっていった。

そこには何かのストラップタイプのぬいぐるみがあった。

 

「かわいー…」

 

へえアリアはこういったのもがすきなのか。

そう思っているとやっと回復したキンジが

 

「やってみるか?」

 

「できるの?」

 

「やり方教えてやろうか?」

 

本当にお前ら仲いいな。これまで本当に喧嘩していたのか?

キンジがやり方を教えると早速アリアはコインを投入。

何度か挑戦をしたがとることができない。こういうのはコツがいるからな。

 

「あーもう!何でとれないのよ!」

 

「本当に下手糞だなお前、仕方ない俺がとってやるよ」

 

そう言ってアリアをどかす。アリアはグルルと言ってその場をどいた。

キンジよそれでとれなかったらアリアに物理的に食われるぞ。

キンジがコインを投入クレーンを動かし場所を決める。

お、うまいな。クレーンが持ち上がると二つ同時に持ち上がっていた。

そしてそのまま排出口に落ちる時人形がぶつかりもう一体落ちてきた。

キンジは本当変なところは運がいいよな。

そう思っていると排出口から3体の人形を取り出したアリア。

そしてそれらの人形に抱きつく

 

「かぁーわぁいいー!」

 

逃げろ人形たち!爆発するぞ!

 

ひとしきり抱きついて満足したのだろう。

それら三体の人形を見つめると2体俺たちに渡してきた。

 

「これは三人で分けましょう。キンジの手柄だけど白野は私に協力してくれるからその報酬よ」

 

へぇ。報酬とか別にいいのに俺は特に何もしてないから。

そうは思っても口には出さない。ありがたくもらっておこう。

 

そのあとは、だれか一番最初に携帯につけられるか勝負となった。

まあ俺の手先はそこそこ器用だからいちばんにつけられた。

そのあとにアリア最後にキンジとなりこの小さな勝負は終わりを告げた。

 

「まあ、このことは別にいい。それよりも白野今度こそ俺が勝つ!」

 

キンジはそう言って俺に指をさす。

たまに、キンジと一緒に遊びに来た時、ほとんど俺の完勝で終わっている。

まあ、月で英雄王とゲームをする機会が多かったから大体のジャンルのゲームは強くなっているのだ。(それでもすべての娯楽をクリアしたAUO俺が勝つことはなかった)

なので、キンジは俺の目の敵にしている。

 

「いいだろう。ルールはいつも道理な」

 

俺たちが決めたルールでは負けたらおごるルールになっている。

今回も全力で勝ちにいこう。

 

 

 

 

 

案の上俺の完勝で終わった。

ふふふ、何だろうこの幸福感は。

はっ、これが愉悦!俺もついに愉悦部入部かな

 

「キンジ、アンタ本当に弱いわね…」

 

「ぐっ、なぜ勝てない。練習したのに…」

 

甘いな。愉悦を極めたものはこの程度ではないぞ。

そんなこんなで帰るためにゲーセンから出る

アリアは満足したようにキンジと話している。

彼女は事件のことがないとこんな笑顔ができるんだな

キンジ本当に彼女からこの笑顔を奪っていいのか?

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、アリアはもういないのでいつも通りの生活をするといってもやることは同じ今日も今日とて朝連です。

帰ってくると今日はちょっと早いな、いつも通り走ったかと思ったが。といっても少ししか早くないため、いつも通りキンジを起こす。そして、いつも通り学校へ行くだけだ。

 

 

 

 

 

「武藤!乗せてくれ、時間が!」

 

「そうしたいのはやまやまだがもう満員だ!1限目はふけろキンジ、白野!」

 

そんなこんなでバスが動き出す。

なぜだ…。いつも通りの時間に家を出たのに

 

「もうバスが行った以上仕方ないぞキンジ、今日は歩いていくか。授業には遅れるが」

 

「俺は来年普通校に転校するんだ。こんなことで内申点は落としたくない。」

 

そう言って走り出そうとするキンジ。俺の自転車を貸そうとしたんだが学校においてきているから無理なんだよな

俺は走るのも面倒なので遅れると言おうとしたのだが、その時キンジの携帯がなる。

キンジは煩わしそうに携帯を取り出し電話に出る。

 

キンジは誰かと話しているたぶん話し方的にアリアだろう。

まさか。

 

「白野、事件だ」

 

そうかよ、以外に早く来たな。

キンジ最初で最後のアリアとのコンビ

お前がどう判断するのか俺はしっかりと見守ろう。

 




次こそは事件ですが本当に白野君はそこまで活躍しません。いやなるべく活躍させよう。
そして、トールvさん裸エプロン閣下さんご感想ありがとうございます。
今後も、この意見を踏まえ頑張っていきたいと思います。
意見、感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8弾 やはり岸波白野、出番/Zeroである

えっと、白野君をバトらせることはかなわずこのようなことになりました。
次こそは!絶対に!活躍しますから!
あと、タグにはハーレムとありますが、アリアはそこには参加しません。アリアはキンジと一緒であって輝けると思っていますから(決してフラグを立て忘れたわけではありません)


まったく、雨が降ってきたのか、何か不幸なことでもありそうだな。まあ、ハイジャックってだけで幸福というわけではないんだが。

キンジはヒステリアモードになる気はないようだ。それがお前の選択か。俺は何も言わず準備を進めた

俺とキンジはC装備に着替えてアリアからの連絡を受けた俺とキンジは集合場所である女子寮の屋上に出る。

 

そこには、アリアのほかに意外な人物がいた。

 

「レキ、お前もアリアに呼ばれたのか?」

 

「…」

 

レキさん。さすがに反応はしてあげましょうよ。

キンジもさすがに微妙な顔をしているな。

 

そんな二人を見ているとアリアが連絡を終えてこちらに向かってくる。

 

「時間切れね。もう一人ぐらいSランクがほしかったとこだけど他の事件で出払っているみたい」

 

アリアの中では全員Sランクなんだな。

キンジが微妙な顔をしているぞ。

 

そして、俺たちはヘリに乗り目的地へと進む間作戦会議を始めた。

 

「今回はわたしとキンジが突入。レキと白野はバックアップをお願い」

 

「いや、俺も一緒に突入させてもらう」

 

「いや、ダメよ!情報科の白野じゃ逆に邪魔になるだけよ!」

 

うぐっ…。さすがにそこまで言われるときついですアリアさん…

 

「いや俺も突入するのはバスにいる被害者たちの治療機器を持ち込むためだ。」

 

そう言って俺はアリアに治療器具の入ったバッグを見せる。

俺だって情報科のAランクの武偵だ。今回のバスジャックについてもちゃんと調べている。

バスには、多くの乗客がいる。たぶん彼ら全員を人質にするのだとしたら爆弾でも仕掛けられているだろう。さらに情報では、この雨が降る天気なのに天井のあいた無人のスポーツカーがいたという情報がある。それも、マシンガン付きの装備で。しかも、ついさっきバスに攻撃を仕掛けたということである。それならば少なからず、けが人も多いだろう。救護科の生徒もいるだろうがそこまでのいい装備を持っているとは限らない。そのことをアリアに説明した。

 

「頼むアリア俺も突入させてくれ。決してお前たちの邪魔はしない」

 

「…わかった。」

 

アリアからの了承は得られた。ならば突入に向けて精神を集中させるだけだ。

しかし、その集中は意外なものに途絶えさせられた。

 

「いいえ。ダメです。白野さんは行ってはいけない」

 

なんと発言をしたのはレキさんだった。意外だったのか、アリアたちは固まっている。

 

「どうしてなんだレキさん。」

 

「風は言っています。白野さんを行かせてはいけない。行かせるときっと怪我をする。」

 

驚いた。レキから行くなと言われるとは。

しかし、さすがにその命令は聞けない。

 

「それは聞けない命令だよレキさん。俺がもしもここに残ることにしたらバス内にいるけが人が悪化するし、最悪死亡するかもしれない。たとえ事件が解決したとしても俺はこのことを悔やみ続けるだろう」

 

これはただの自分自身に対しての欺瞞にすぎない。あの月の世界で自分が助かるためにたくさんの人たちを犠牲にしてきた。そんな自分が乗客を助けるのは罪から逃げるためだと思われても仕方ない。しかし、俺はその罪から逃げるつもりはない。逆に正面からぶつかっていかなければならない問題と思ってる。そしてその乗客を助けることがその問題を解決していくための一歩なのだ。だから、俺は行かなければならない。

 

「大丈夫。確かに危険ですが俺にはキンジとアリアという素晴らしい仲間がいます。それに、たとえ怪我をするとしても絶対に死にはしません」

 

そう俺にはこの世界でやることがある。その目的をはたすためまだ死ぬことはできない。

そこまで言うとレキさんは考えるように無表情な口をかみしめた。

そして、考え付いたようにすると

 

「わかりました。今回は納得すると風は言っています。」

 

「あはは、ありがとうレキさん」

 

風って本当に何だろうなと思いながら目的地までまた精神を集中させるために瞳を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

「見えました」

 

レキさんの声が俺の耳に響いてくる。

目をあけると台場の町が見える。

しかし、バスが見えない。

 

「どこだレキ!」

 

キンジが叫んだ。俺は懸命に目を凝らすとバス少し見えた。レキさん本当に目がいいんだな俺でも少ししか見えない。魔力を使えば見えるのだがな。

 

近づいていくと、バスに並行してスポーツカーが走っているのが見える。くそ、このままじゃバスに近づいた瞬間蜂の巣にされてしまう。

 

「レキ。あのスポーツカーどうにかできない?」

 

そうアリアが言うとレキはドラグノフ狙撃銃を出し、ヘリの地面にセットする。

そして、

 

「私は一発の銃弾。銃弾は心を持たない。ゆえに、何も考えない」

 

それはまるで、機械のように紡がれた声で発した声の後、狙撃銃を発砲、見事タイヤに当たり転倒炎上した。

 

「ありがとうレキさん。」

 

そう言って俺たちはバスへの降下の準備に入る。

そしてアリア、キンジに続いて俺がバッグを担いで飛び降りようとすると。

 

「気を付けてください白野さん。」

 

後ろからそう言われる。その声に振り向かずわかったと答えヘリから飛び降りた。

 

 

 

 

 

「爆弾を見つけたわ。キンジ、白野バスの下に張り付いていたわ」

 

バスへの降下に成功した後、アリアは爆弾の捜索、キンジは怪我をした運転手の介抱をして武藤がバスの運転をしている。武藤の奴今回減点をされると免停らしいな、まあドンマイだ。

俺は、バスに乗り合わせていた救護科の生徒に医療器具を渡し補助に回っていた。そしてあらかた手当を終えるとき、アリアの声が聞こえた。どうやらバスの下にあったらしい。

よかったひどい損壊もバスだけで大丈夫だと思い周りを見渡す。

すると、あれ?キンジの姿が見当たらない。どこへ行ったんだと思うと、そこにもう一人の同級生不知火亮がいたので質問した。

 

「不知火、キンジを知らないか」

 

「キンジくんならたぶん犯人がつけたと思われる発信機を見つけたらしくて屋上に行ったよ」

 

まじかよキンジ。まだバスの外が安全とは言い切れない。そううろうろとバスの外に出るのは自殺行為だ。そう思ってキンジを呼び戻そうとするが、

 

「もう一台のルノーだ!」

 

誰かがそう叫んだ。

交差点を進む時左車線からもう一台のスポーツカーがこちらを向き走ってきた。

そして、こちらに照準を合わせてくる。まずい!このバスは金属部分はあの機関銃でも貫通はできないが防弾ガラスはいともたやすく打ち壊してくる。それは、右車線側の窓を見るだけでも明らかだ。

そして、左車線の真ん中には乗車する乗り口がある。そこは防弾ガラスなので銃弾が貫通してくる。そして、一番危険なのはその乗車口から見える生徒だ。

どうも結構仲の良い3人組の女子生徒たちのようだ。彼女たちを守るために瞬時に前に出ると機関銃は発砲してくる。さすがにC装備でも防弾ガラスを貫通してくる弾には防ぐことはできないかもしれない。仕方ない、みんなは恐怖でルノーのほうを見るか頭を下げている生徒たちだけだ。見られる危険性は少ない。

俺は瞬時に電子手帳から礼装である守りの護符を出し、「gein_con(16)」と声に出しコードキャストと使う。魔力は下がっていてもたぶん耐えられるだろうと予想し防御力を上昇、そして銃弾の雨を受ける。

 

十数発を受けて狙いはバスの天井へ向かう。キンジ達を狙ったのだろうか。そしてルノーはたぶんレキさんの銃弾を受けたのだろう。ルノーは横転し爆発炎上した。

 

俺はというとコードキャストにより防御力を上昇したおかげか貫通した弾はなかった。しかし、体の節々から鈍痛があるが、事件はまだ続いている。ここで倒れるわけにはいかないと意識を保って後ろを振り返る。

 

「君たち怪我はない?」

 

「えっ…。あっはい!私たちは大丈夫です先輩が守ってくれたから。」

 

よかった。本当に大丈夫なようだ。俺は安堵するがバスは進む。そういえばキンジ達は大丈夫だろうか。何事もなければいいのだが。

 

そう思っているとバスは橋を通過する。まずいぞこのままだと市街地に突入する。その中で爆発をさせてしまえば、莫大な被害は免れない。早く、爆弾を解除するんだと思いキンジ達をまつ。

すると何か銃弾がバスに当たったかと思う音がすると、バスのしたから黒いものが海に落ちて行った。何かと思うとそれが爆発。あれが爆弾だったのか。たぶん狙撃で外したのだろう。ならばできるのはレキさんだ。すごいな動いているバスの爆弾を狙撃するとは。

と思っているとバスは減速今回の事件は無事解決と決着をつけようとすると、レキからの通信が入る。

 

「アリアさんが負傷。速く病院に」

 

なっ!やはりさっきので銃弾を受けてしまったようだ。ならば速く病院に連れて行かないと

 

「白野さん。あなたも銃弾を受けて負傷しています。あなたも病院に」

 

「いや、そんな暇はないアリアを速く病院に…」

 

そこで視界がゆがむ、どうやらさっきの銃弾の極度の緊張による精神疲弊とさっきの銃弾によるダメージのようだ。

 

まだ、これくらいでと思っていても、耐久力を上げていないのが悪かったのだろう。意思に反し体は沈んでいく。

そして岸波白野の意識は途絶えた。

 

 




今回もご覧いただきありがとうございます。
トールVさん、シオウさん、seikouさん感想ありがとうございます。
一話はさんでついに白野君の戦闘方法は明らかに!
感想、意見お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9弾 シリアスって難しいよね

すみません!
書いていたら少し遅くなってしまいました。
その分少し長いのでどうかお楽しみください!


…。

ハッ!知らない天井だ…。

そんな余裕を感じながら俺は目を覚ましベットから出る。

 

ここは武偵病院の一室のようだ。

精神的には特に問題はなかったが、胴体には包帯が巻かれてある。

ふむ、これくらいなら大丈夫だろう。

俺は電子手帳から礼装の鳳凰のマフラーを取り出し「heal(16)」のコードキャストを自分に向けて放つ、しばしの倦怠感の後に体からの違和感が消える。

よし、いつまでもこのままではいられないな。

ベットから身をのりだし、今の状況を思い出す。

そういえば確か銃弾が乗客に向かって飛んできたから体を使って守って…そうだ、アリアがうたれたと聞いたとき意識が閉じたのだ。

アリアは大丈夫なのか。そう思いながら病室から出る。

 

 

 

 

 

 

「あたしに比べれば…アンタが武偵をやめる理由なんて大したことないじゃない!」

 

病院の関係者にアリアの病室がある場所を聞き早速向かうとアリアが騒いでいた。

アリアは叫んだ。「アンタが武偵をやめる理由なんて大したことない」それは相手にもよるがたぶんキンジだろう。キンジならばこの言葉を看過できるほどやさしくはない。

そう思い急いで病室に入る。案の上キンジはアリアにつかみかかろうとしていた。

キンジは俺に気づくとアリアにつかみかかるのをやめ病室を飛び出た。横を通りすぎるとき顔は下がって見えなかったが心境はひどいものだろう。キンジにとってこの問題は自分で引き起こしたものだ。ならば俺から助けることはできない。でも、助けを求められればいつでも助けに行くからなキンジ。

 

「なに、白野。あなたもきたの」

 

アリアはキンジのこともあり少し動揺していたがすぐにいつもの調子をとりもどして俺に話しかける。

 

「アリア。怪我は大丈夫なのか?」

 

「こんな傷大したことないわよ。武偵にとって傷は勲章のようなものよ」

 

そういうがアリアは頭についた包帯に手を伸ばす。

俺にはなんとなくわかった。たぶんあの傷は生涯残るものだと。

俺はアリアの傷を確かめてすぐに病室を出ることにしようと決めたのだが、さっきのキンジとアリアのやり取りでそれはできなくなった。

さすがの俺でも看過できない言葉をアリアは放ったのだ。俺のことではないにしろ友達の気持ちを踏みにじったのだ。

俺は気持ちを切り替えアリアに話しかける。

 

「アリア。さっきキンジと話したことは何だ」

 

「さっきの話って。白野聞いてたの?」

 

「ああ、盗み聞きしていたのは謝る。だけどその時キンジに放った言葉は何だ。」

 

アリアは少し狼狽したが、すぐに気を取り直し怒ったかのように俺に言葉を放つ。

 

「あたしにとってキンジが武偵をやめる理由なんて大したことないわ。それが何だっていうのよ」

 

「それは言ってはいけないことだ。アリア」

 

アリアが少し怒気を含めて言葉を放ったのだ。俺も負けじと怒気を含めて言葉を放つ。

 

「っ!大したことないわよ!お兄さんが亡くなっただけで武偵をやめるなんてひよっこも同然だわ!武偵が亡くなることなんて日常茶飯事!常に危険にさらされる武偵なら亡くなるのも覚悟しているものじゃない!」

 

せきを切ったかのようにしゃべり倒すアリア。その言葉を聞き俺は返す。

 

「確かに部偵は常に危険にさらされる。亡くなることもあるかもしれない。けどキンジにとってお兄さんが亡くなったことはとても大きなダメージなんだよ」

 

その言葉を聞きアリアは少し冷静さを取り戻す。どうやらこちらの話を聞くことを認めたようだ。ならば、と続けて言葉を放つ。

 

「キンジのお兄さんはキンジにとって数少ない家族だ。今まで一緒に生きてきた家族が突然帰らぬ人となったんだ。両親のいないキンジは支えになる人が近くにいない。こんな重みを一人で抱えたんだキンジは。そんなキンジをそんな理由なんて言葉でかたずけさせてはいけない。」

 

俺がそう言葉をまくしたてるとアリアは尚早とした顔をした。しかし、まだ納得はしていないのだろう。目を見るとまだ反抗をすると言った目をした。仕方ない、これはアリアに置き換えて話をしたほうがいいな。

 

人はたとえ他人のことを心配していてもその気持ちはその人の少しにしか満たない。

価値観が違いすぎるのだ。ならば、自分のこととしてとらえさせればいい。

 

「アリア、お前には今服役中のお母さんがいるだろう」

 

その言葉にアリアはさらに驚いたようだ。さすがに調べがつくことは知っていたようだな。

 

「それがなに?」

 

「いいか、お前には確かに大切なお母さんがいるがそれが今後一生会えないのだとしたらどうする。守ることができなかった。会うこともできない。助けることもできない。もう声も聞く事が出来ない。そんな絶望を一人で抱えきることができるのか?普通の人にはそれができるわけがない。でもキンジはそんな絶望を一人で抱えているんだ。そのことをそんな理由でという言葉でかたずけて言い訳がない」

 

アリアは顔を真っ青にさせている。どうやら攻撃しすぎたようだ。かわいそうだと思うがこのことは言わなければならない。月でやったことだもう慣れているさ。

 

「自分の都合を他人と比べてはいけない」

 

その言葉がトドメだった。アリアは驚愕、尚早、そして後悔の顔を一様に表した。

今回のいざこざは価値観の違いが引き起こしたことだ。

他人と自分の価値観を比較し自分のほうがひどいと比べたがる。

そんな人の性質がすれ違いを生む。

 

あの赤王のサーヴァントもそうだった。

国民のためだとと思っても、国民の望んだ希望とはすれ違う。

そのことがあのサーヴァントの望んだ未来にならなかった結末の一つだ。

 

それが今回はキンジとアリア。

二人の価値観がすれ違いを引き起こす。

 

アリアは顔を下げていた。その表情は見えない。無駄な詮索はしないように俺は病室から出ようとした。

 

「待って…白野。」

 

アリアに呼び止められ、俺は脚を止める

 

「本当にごめんなさい…。確かに、キンジにはひどいことをした。でも、あたしにはもうキンジには会うことができない…。明日あたしはイギリスに帰る。もう迷惑はかけられない。だから白野…。キンジにあたしの分を謝って…―」

 

「それはできない。それはアリアがキンジに直接言わないといけないことだ」

 

そう言って俺は病室を出る。

今度は呼び止められなかった。

後は、キンジ。お前にかかっているぞ。

 

 

 

 

 

次の日、俺は退院(主治医に怒られたが、傷が完治しているのを聞くとしぶしぶ承諾した)すると一時、寮に戻る。

キンジはソファで考えていた。

色々言わなければと思っていたがどうやらその必要はないらしい。

一晩考えてどうやら今後の形が定まったようだ。

だから俺が言うことは一つ

 

「キンジ、お前を信じているぞ」

 

キンジの顔を見ず俺の部屋に行き身支度をし、リビングに戻る

すでにキンジはいなくなっていた。

だれもいなくなった部屋を見て俺はその部屋を出た。

 

 

 

 

 

そして向かったのは装備科の棟の一つ。

ひらがあやと書かれた札のついた扉の前にたち

 

「平賀さん。いる?」

 

「あ、は~い!いるのだ!けれど今は手が離せないから入ってきてほしいのだ!」

 

その言葉が聞こえると俺は扉を開くその先には一人の女性徒が作業をしていた。

彼女は平賀文さん。装備科のSランクで俺もたまに依頼のために装備科に訪れ平賀さんとであった。彼女は俺の顧客であるためたまに出会うので今では知れた仲間だ。

 

彼女のもとまでいろいろなものが並んだ場所を歩く、そして彼女の近くまで行くと平賀さんはこちらを向く、

 

「今日はどうしたのだ?」

 

俺は平賀さんにあるものの在庫が残っていないかを話す。

俺も昨日電子手帳で神埼かなえさんの事件を調べていた。そしてある可能性を導き出し今日アリアの飛行機で事件があるかもしれないと思った。

アリアを飛行機に乗せないことはできない。たぶん、今回の事件の犯人は現場に来る。今回は事件が起きるまで黙っていなければならない。武偵としては失格ものだがこれもアリアのためだ。自分を騙し考えを進める。それならば保険をと思い平賀さんのもとにあるものを受け取りに来たのだが…。

 

「うっ…。ごめんなのだ…。今は在庫にないのだ。」

 

在庫にないなら仕方ない。

予約もしていないし平賀さんも作業をしているのだ。

今後もたくさんの依頼があるのだろうし。今回は心もとないがこのままで行こう。

ごめん邪魔したねそう言って立ち去ろうとすると

 

「あっ!待って!」

 

平賀さんから呼び止められる。どうしたのだろうか

 

「それなら今から作るのだ!今から作ればすぐに作れるのだ!」

 

平賀さんは必死にこちらを引きとめた。

 

「けど、それはさすがにまずいし、それだとほかの顧客に迷惑がかかるぞ」

 

「うっ…。だ、大丈夫なのだ!」

 

平賀さんが声を大きく上げる

 

「白野君にはいつもお世話になっているしこれはいつものお礼なのだ!」

 

そう言う平賀さんにさすがに悪いと声をかけようとするがやめた。

せっかく善意でこちらの意向を聞いてくれるのだ。

ならばその発言を受け取ろう。

 

「それなら、よろしく頼もうかな」

 

その言葉を聞くと平賀さんはとてもうれしそうな顔をして顔をうなずかせた。

すぐに終わるというので俺は待つことにした。

平賀さんは作業中ずっとうれしそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

「もうそろそろ行ったほうがいいだろう」

 

平賀さんから依頼品を受け取り、身支度を整えてから俺は空港の中を進む。

ここが正念場だ。そう気合を入れ俺はアリアのいる飛行機へ乗り込むのだった。

 

 




次はやっと白野君が活躍するかも。
蒼矢さん、hiiragiさん、真九郎さん、暗黒の影さん、シオウさん感想ありがとうございます。
感想、意見お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10弾 白野君空をゆく

えーハイジャック編を書いていたら予想以上に長くなったので3話に分割して投稿します。
あと、岸波白野のプロフィールで白野君の年齢が15歳になっていたんですが高校2年生って16歳でしたね感想を言われて気づきました。
今後も間違えることがあると思うのでそういった時には温かな目で見守ってください


アリアの乗る飛行機が見える場所で俺は待っていた。

きっと来る。あいつはそんな奴だ。

そして、ついに飛行機が飛び立とうとするとき

 

「…!来たっ!」

 

遅かったなキンジ。けど来ると信じていたぞ。

もう係員が飛行機へと行くための扉を閉めようとしていたため俺は

 

「すみません武偵です。この飛行機に乗せてください」

 

俺は武偵手帳を見せ扉を閉めるのを止める。

係員はこちらが緊急と判断し乗せてくれるようだ。よかった。

そのまま少しキンジを待っていると

 

「は、白野!何でここに!」

 

「それについては中で話す」

 

キンジと一緒に飛行機に入ると乗務員が寄ってきた。

武偵であることを示す手帳を見せると

 

「武偵だ!今すぐこの飛行機を止め…」

 

「いや、もう無理だぞキンジ」

 

飛行機はもう動き出している。

たぶん、管制塔はこちらの意向を聞き入れないだろう。

ならばこちらは今後のことに対応するだけだ。

そうキンジに説明するとキンジも納得したようだ。

乗務員にアリアのいる部屋の番号を聞くとその部屋に向かった。

 

「白野。お前がいるということは」

 

「ああ、この事件はまだ終わっていない」

 

どうやらキンジも分かっているようだ。

俺たちはもう何を言わない。

互いにやることは分かっている。

アリアの部屋の前に行くと躊躇なくキンジは部屋に入る

 

「な、何!?キンジ!?しかも白野まで!」

 

アリアは驚愕とした顔をした。

けどさっきの言い方だと俺はついで見たいな感じだが…

 

「さすがはリアル貴族様だな。これ片道20万はする奴だろ」

 

「断りもなく部屋に入ってくるなんて失礼よ!」

 

「いやそれお前が言えることではないだろ…」

 

キンジとアリアが言い争っている。

俺は場を見かねて話しかける

 

「武偵憲章2条 依頼人との約束は絶対に守れ」

 

「…?」

 

アリアはこちらを向くときょとんとした

 

「アリア、お前は俺にこう約束した。助けてくれと。ならその約束には最後まで従うつもりだ。」

 

「な、何よ!あなたはなにもしていないのに!」

 

確かに俺はまだアリアに対して守るようなことをしていない。

だから

 

「ああ、まだ俺は何もしていない。けど、あきらめてもいない。アリアが依頼をしてきたときからこれまで依頼を放棄したことはない。だから、これからも俺は依頼を果たす。それが、俺がアリアのためにしてやれることだ。」

 

アリアは顔を真っ赤にした。どうしたのだろうか。

次にキッとこちらを向いた。

 

「う、うるさい!そんな依頼は無効よ!あんたたちのおかげでよくわかった!あたしはやっぱり独奏曲(アリア)だった!パートナーになれる奴なんか世界中のどこにもいないんだわ!だからもうこれからずっと一人で戦うって決めたのよ!」

 

「それならば最初から依頼をしなくて良かっただろ?」

 

キンジはそういうと椅子に腰を下ろした。

俺も椅子に腰を下ろす。

 

「ロンドンに着いたらすぐに帰りなさい!エコノミーのチケットぐらいは手切れ金代わりに買ってあげるから!アンタ達はもう他人!もう構わないで!」

 

「もとから他人だろ?」

 

「うるさい!しゃべるの禁止!」

 

あはは。面白いなアリアをからかうのは。あまりやりすぎると風穴くらいそうだが

そんなことをしているうちに飛行機は東京湾に出る。

俺は、アリアをひたすらからかった後、精神を集中させるため目を閉じる。

今後起きる事態に対応するために。

 

「お客様にお知らせいたします。只今当機は台風における乱気流を迂回するため到着が30分遅れることが予想されます」

 

そういえば台風近いって言っていたな…

 

ガガーン!ピシャーン!

 

うわっ!迂回するって言っていたのに結構近いじゃないか。

大丈夫なのかこれ

 

「こわいのか?」

 

どうしたキンジと思い振り向くと

 

「こ、怖いわけない…ば、バッカみたい。て、いうか話しかけないで」

 

へえ、アリア雷にがてなんだな。

ピシャーン!

また近くでなると

 

「ひゃ!」

 

それも相当苦手らしい。

こんなところは年相応何だなと思っていると。

 

「雷が苦手ならベッドに潜って震えてろよ」

 

「う、うるさい!」

 

「ちびったりしたら一大事だぞ」

 

「ば、ばばバカ馬鹿!」

 

キンジ…。

ここぞとばかりにアリアをいじめるな。

日ごろ俺の見えないところで相当やられているみたいだな。

 

ガガーン!

 

また近くで雷が鳴ると

 

「ひゃう!」

 

ベッドに潜って震えていた。

さすがにキンジもかわいそうにみえたようだな。いじめるのをやめたぞ。

 

ガガーン!

 

「うぅ…。き、キンジィ…」

 

キンジがアリアの近くに行って手を握っている。

それでも怖いのか俺の服をつかんできた。それも皮膚ごと。い、痛いですアリアさん…。

俺が別の意味で震えていると、キンジが気でも紛らわせようとしたのかテレビをつけた。

 

「この桜吹雪見覚えねえとはいわせねえぜ」

 

遠山の金さんみたいだ。

どうもキンジの先祖らしい

この人もヒステリアモードが使えたらしいから相当強かったのかもな。

 

「ほら、これでも見て気を紛らわせろよ」

 

「う、うん」

 

話しかけるなというアリアのルールは消えたらしい。

ぶるぶる震えながら俺とキンジをつかむアリア。あ、やめてアリアさんもうそろそろ痛みがやばい状態に。

俺とアリアが震えていると

 

パァン  パァン

 

銃声が聞こえた

俺はすぐさま立ち上がった

 

「アリア、キンジ先に行く!」

 

急いで廊下に飛び出すと大混乱になっていた。

人並みをかき分けた後そこにいたのは機長と副機長を引きずる乗務員

さっきの案内してくれた人かならばあれが

 

「そこでとまれ!武偵殺し!」

 

予想は当たった。武偵殺しは奴だ。

奴を捕まえればアリアの手助けになる。

そう思ったが

 

「お気を付けくださいでやがります」

 

そう言って何かを投げる

一瞬やばいと思ったがその可能性はないと思いそのまま走り寄る。

煙が広がる前に決着をつける!

そう思って煙の中をかけようとすると

 

「馬鹿!白野速く隠れろ!」

 

キンジが俺を抑えてくる。

ま、待てこの煙はそうじゃない!

そう思ったがそこにアリアも加わり二人が近くの部屋に俺を押し込む

 

「白野!お前毒ガスの中に飛び込もうとしたな!しぬ気か!」

 

「キンジ…。お前あれの正体わからないのか」

 

「は?」

 

「あれは毒ガスじゃない。確かにこの閉鎖空間で毒ガスは有効だろうが、それなら敵自身にも食らう、それならガスマスクをしなくてはならないが奴はしていなかった。それならばあれは毒ガスじゃない」

 

キンジはやってしまったと落胆する。

 

「まあ、この状況で確保できなかったのは仕方ない。後手に回ったならそれなりのまわし方をしないとな」

 

「そう、ならあれはいったい何なの?」

 

「キンジ説明してなかったのか?」

 

「ああ、タイミングがなくてな」

 

仕方ない、煙が広がってしまった以上うかつに動くのは危険だ。

俺たちは情報共有をすることにした。

 

「結論から言おう。やつは武偵殺しだ」

 

「えっ!どうして!」

 

俺はキンジと一緒にこの事件までの一連の事実を述べる

まず武偵殺しは俺たちが遭遇した事件の前にある事件を起こしていた。

バイクジャック、カージャックと来てそのあとシージャックそこである武偵を仕留めた。

それもたぶん直接対決だった。そして今回俺たちが遭遇した事件チャリジャック、バスジャックと来て今回このようなことになっているのだ

 

「…たぶんこのハイジャックでアリアと直接対決しようとしているだろう」

 

悔しそうに歯を食いしばるアリア。

 

「けど、これはチャンスだ。この直接対決に勝利をすれば武偵殺しを逮捕できる」

 

アリアにそういうと彼女は覚悟を決めた顔をした。

そろそろ煙が晴れたころだろう。部屋から出ようとすると

 

ポーン

 

これはベルト着用サインの音だ

なぜ今頃と思い見てみると

点滅している。これは和文モールスの信号だな

 

『オイデ オイデ イ・ウーハテンゴクダヨ オイデ オイデワタシハイッカイノバーニイルヨ』

 

「誘っているみたいだな」

 

「アンタ達は来なくていい。どうせ役に立たないだろうから」

 

ピシャーン!

 

「く、来れば…?」

 

ははは、しまらないな。

そう思いながら俺たちは一階のバーに行った

 

 

 




長くなったので後2話投稿


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11弾 白野君がやっとバトル。よやったね!

ハイジャック編中盤どうぞ


バーに入ると乗務員がカウンターの上に足を組んで座っていた。

ん?あの武偵校の制服しかもふりふりなのは…

 

「今回もきれいに引っかかってくれやがりましたね」

 

乗務員はその顔にかぶせられた薄いマスクみたいなお面をぺりぺりとはがし始めた。

 

「り、理子か!」

 

驚いてキンジが言う

 

「こんばんは」

 

薄いマスクをはがし金髪のツインテールを揺らす理子さん

 

「頭と体で戦う才能ってけっこー遺伝するんだよね。武偵校にもお前たちみたいな遺伝型の天才けっこーいる。でも…お前の一族は特別だよオルメス」

 

オルメス。アリアのセカンドネームはホームズだから違うと思ったが、確かフランスではイニシャルの一文字を外すからHを発音しない。理子さんはフランス出身?

 

「あんた…一体何者?」

 

「峰 理子 リュパン4世 それが理子の本当の名前」

 

リュパンでフランスと来ると、フランスの大怪盗アルセーヌ・リュパンか。

4世となると彼女は

 

「アルセーヌリュパンのひ孫ってわけか」

 

「ピンポンピンポーン!キーくん大正解!」

 

そういうことか。

リュパンはホームズの生来の天敵だったはずだ

それで今回攻撃を?

そこまで考えたとき理子は声を出した

 

「でも家の人間はみんな理子のことを名前で呼んでくれなかった。おっかあさまがつけてくれたこのかわいい名前を、、呼び方がおかしいんだよ」

 

「おかしい?」

 

アリアが聞く

 

「4世4世4世様さぁ!どいつもこいつも使用人まで…理子をそうよんだんだよ。ひどいよねえ」

 

「そ、それがどうしたのよ。4世の何が悪いのよ?」

 

アリアがそう聞くが理子はその言葉に看過されたように怒鳴る

 

「悪いにきまってんだろ!あたしは数字か!ただのDNAかよ!あたしは理子だ!数字じゃない!どいつもこいつもよ!」

 

この怒りは俺たちには向いていない。別のなにか。

しかし俺は気づいた。その怒りの中に含まれる感情を。

けど俺は発言できなかった。この後にきっと話し合うことができるはずだ。

そう思いこの場はアリアたちに任せることにした。

 

「ひいおじい様を越えなければ一生あたしはあたしじゃない!リュパンのひ孫として扱われる!」

 

アリアは真剣な表情で聞いていた

するとキンジが

 

「武偵殺しは全部お前の仕業なのか?」

 

「武偵殺し?あんなものプロローグを兼ねたお遊びだ。本命はオルメス4世お前だ」

 

理子さんの表情が鋭くなる

 

「100年前のひいおじい様同士の対決は引き分けだった。つまり、オルメス4世を倒せばひいおじい様を超えたことを証明できる。キンジ、ちゃんと役割を果たせよ」

 

…。

どうやらここでもいないものとしか扱われないようだな。

まあいいよ、俺も手を出さないし…。

 

「初代オルメスには優秀なパートナーがいたんだ。だから条件を合わせるためにお前らをくっつけてやったんだよ。」

 

俺たちは静かに話を聞いていた。

理子さんには本性があったのだ。それを隠すために今まで性格を変えてきた。

この時のために、俺たちに気づかれないようにずっと…

 

「バスジャックもお前が?」

 

キンジが問いかける

 

「くふ、キンジぃ形ばかりの時計に目をかけていたらだめだよ。狂った時計を見たら遅刻しちゃうぞ」

 

なるほど、あの日時計が少し速かったのは納得がついた。

すべてはこの時の状況のため

 

「何もかもお前の計画通りかよ!」

 

「んーそうでもないよ。予想外のこともあったもん。チャリジャックで出会わせてバスジャックでチームを組ませたかったのにくっつき切らなかったのは予想外だったもの。白野はおまけだったけどキンジがお兄さんの話を出すまで動かなかったのは意外だった。」

 

おまけね…別にいいけどね…

それより、キンジのお兄さん?

それはシージャック出なくなった人では?

 

「くふ、ほらパートナーさんが怒っているよ。一緒に戦ってあげなよ。いいこと教えてあげる。キンジのお兄さんは理子の恋人なの」

 

「いい加減にしろ」

 

まずい!今の発言で頭に血が上っている。

ヒステリアモードでもないのに冷静さを失ったら動けないぞ。

キンジが銃をとりだしたので止めようとしたら、飛行機が揺れる。

キンジは銃を落としばらばらになってしまった。

くそ、キンジは使えない。俺が行くか?

 

「アンタ達さがっていなさい!あいつはあたしを御所望よ!」

 

バンと床を蹴り2丁拳銃を構えてアリアは理子に襲いかかる。

理子はワルサーを展開アリアを迎え撃つ。

武偵の戦いは防弾制服があるため銃は一撃必殺の武器にはなりえない打撃武器になる。

ワルサー一丁とガバメント二丁の装弾数は互角だ。

 

「アリア。二丁拳銃が自分だけだと思ったら間違いだよ」

 

そういうと理子は新たなワルサーをスカートから取り出した。

そして二人だけの演武が始まる

 

「く、この!」

 

「アハハハハハ!」

 

2人は至近距離から互いに銃を撃ち、射撃予測線を避け、迎え打ち、相手の腕を自らはじいて戦う。次の瞬間、弾切れをおこしたアリアは両脇で理子の両手を抑えた。

 

「キンジ!」

 

「終わりだ理子」

 

そう言ってキンジは緋色のバタフライナイフを理子に向ける

しかし、理子は焦っていない。

 

「カドラ―奇遇よねアリア、理子とアリアはいろんな所が似てる。家系、キュートな姿それと二つ名」

「?」

 

「あたしも持ってるのよカドラの理子。でもアリア」

 

違和感

いや、これは危機感か。

得体のしれない感覚が俺を襲う。

何かまずいぞ!

 

「アリアのカドラは本物じゃない。お前はまだ知らないこの力のことを」

 

飛行機が揺れるどうしてだこんな時に!

俺たちがバランスを崩していると理子のツインテールがいきなり動き出す

そして背後に隠していたと思われるナイフをそれぞれに持ちアリアに襲いかかる。

一撃目はなんとかよけたアリアだが反対のナイフがアリアを襲った

 

「うぁ!」

 

反射的に後ろに下がるアリア

く、仕方ない。キンジが使えない以上俺が出るしかない

 

「キンジ、アリアを連れて逃げろ!」

 

そう言って俺は飛行機が揺れたとき流れてきたアイスピックを理子に投げつける

 

「逃げろって…それじゃあお前が!」

 

「いいから速く行け!」

 

そう言って俺はキンジ達の前に立つ。

キンジは頼むと言って客席のほうに引いて行った。

 

「何をしてくれるのかなあ?しろくん?」

 

「今度は俺と踊ってくれよ。理子さん」

 

先ほどのアイスピックをなんなくよけた理子さんはキンジ達が出るのを待ってくれたようだ

 

「もしかして、しろくんあたしと戦う気?」

 

「ああ、もちろんそのつもりだ」

 

理子さんは軽く笑うそれはそうだろう。情報科という武道派ではない奴がたったナイフ一本で逆らおうというのだ笑うのも当然だ

 

「いいよ。少しだけ遊んであげる」

 

「その前に理子さんあなたに聞きたいことがある」

 

理子さんは余裕な顔で俺を見てくる

俺もなるべく平静を装って理子さんに話しかけた

 

「理子さん。あなたはどうしてそんなに怯えた顔をしているの?」

 

その言葉を聞いたとき理子さんの表情が消える

その表情を見てまた言葉を紡ぐ

 

「ごめん、理子さん。今の表情で確信した。あなたは何かに怯えている。それもとても強いものに」

 

「黙れ…。それがなんだ。今は戦いの場だそんなことを聞いて何になる」

 

「これは、俺の推測だがあなたは確かにアリアを殺そうとしているが本当は殺したくないんじゃないか。怯えながら戦う理子さんを見て思ったよアリアさんに勝たなければ何かひどいことがおこるんじゃないかって」

 

理子さんはどんどん怒りに染まった表情をした。

確かにこれ以上言われれば怒るのかもしれないが俺はその言葉を言った。

 

「もしもその怯える何かをどうにかしたいのなら俺たちがなんとかするよ。今はこうして戦うのかもしれないけど、俺たちは仲間なのだから」

 

その言葉で理子さんは切れたようだ

けど逆に冷静である。

 

「お前たちに何ができる…。お前たちじゃ奴を倒せない。無理なんだよあいつに逆らうことは」

 

そう言って理子さんはワルサーを装填し構える。

 

「武器を抜け白野。お前から攻撃してくれても構わない」

 

結局はこうなってしまうのかでもこれも仕方ない。ぶつかりあわなければわからないこともあるのだ

 

「俺は武器を出さない。持っているが使わないからな」

 

「はっ!所詮情報科のお前じゃ武器もなしに私に勝てないのに」

 

「戦いが常に武器だけだと思わないほうがいいよ」

 

そう言って俺は構える。いままで誰にも見せたことないんだだれも知らないだろう。

 

「な、何だその構えは…」

 

そして、俺の飛び出しによる急激な接近で、理子さんは反応が遅れた。

俺は片足を前に出しもう片足を後ろに出して身体を半回転させて最初の足の横に添え、屈んでから突き上げるようにタックルをした。

 

理子さんはなんとか防御をするが衝撃は激しいようだ。少しふらついている。

 

俺はその屈んだ姿勢からひじ打ちを打ち出すがそこに理子さんは銃を打つことにより対応した。俺は技をキャンセルし後ろに跳びさる。

 

距離があき俺たちはにらみ合った。

 

「何だ…。今の攻撃は。それにどうしてお前はそこまで強い!こんなことは資料には乗っていなかったはずだ!」

 

「それはそうだろう。今初めて人にみせたからな」

 

そう言って俺はまた構える

その構えを見て理子さんは何かを思い出したようだ

 

「その構え…。少し違うが…まさか八極拳か!」

 

へえ、よくわかったね。そう、今俺が使っている拳法は八極拳だ。

今の技は最初は鉄山靠、次は裡門頂肘という技だ

どこで習ったかって?それは月の世界にいたとき謎の購買部の店員言峰綺礼に教わったものだ。

旧校舎が侵略された際あのユリウスまで撃退した腕前だ。そのあと言峰に教えてくれとせがみ教えてもらったものだ。

あの店員にはさすがに勝てなかったがあの紅茶のサーヴァントと少しの間戦えるくらいの技量をもったのだ(サーヴァントより強いなんてあの店員何者だ?)

しかし、今はあの時ほどの強さはないが。

どうも一般的な八極拳と少し違うものらしいのでこの拳法はあの店員の流派らしい。

その名もマジカル☆八極拳このことは余計なのでつっこまないようにする。

 

今の攻撃で理子さんの顔から油断が消えた本気でつぶしにかかるらしい

 

「そこまで強いとは知らなかったよ白野。でもあたしも本気でお前をつぶす!」

 

そう言って理子さんは走って近づいてきた。

牽制に打たれたワルサーのたまを転がってよける。

立ち上がると目の前に理子さんは来ていた。は、速い!

俺はしゃがんだ姿勢のまま相手の足を狩るように足を出す。

理子さんはそれを軽くジャンプすることで回避した。

俺は急いでたち俺も軽くジャンプをするように二回ひざ蹴りをする。

これは連環腿という技だ。しかし、理子さんはそれを回避こちらに銃を撃ってくる。

俺は連環腿を打ったとき少し浮いているため身動きが取れないよけられない!

体に力を入れて防弾制服でガードする。

バットで打たれたような衝撃を受けるが根性で耐えそのまま回し蹴りを放つ理子さんもガードをしようとするが衝撃を消しきれず後ろに跳びのいた

互いに息を整える

 

「アハハハ。いいねえ白野そんなに強いとは思っていなかったよ」

 

「…そりゃどうも」

 

ダメだ。このままじゃ相打ち悪ければ、打たれる。

月にいたときよりレベルダウンしているおかげか威力、スピードが遅いのだ。

仕方ない。ここは保険を使うか。

俺は理子さんに見えないように懐からカプセルのようなものを取り出し構える。

 

俺は飛び出すそれも最初の時よりも速く。

さらに速いスピードで動いたおかげか理子さんはさらに驚いた顔をした

そして俺は理子さんのそばまで近づきカプセルを持った手を理子さんの顔に近付け起動させる

 

―!

 

急激な光の量。俺が使ったのは閃光手榴弾(フラッシュグレネード)

それも平賀さん作のカプセル型の小型バージョンだ

それを俺は使った。俺は目をつぶっては気づかれてしまうと思い俺も目を開けて使った。

理子さんも目を開けていたからしっかりと食らっただろう。

俺は記憶を頼りにバーからでてたぶんアリアがいた客室にあいつらはいると思い壁伝いに道を進むのだった。

 

 

 




白野くんが使った技八極拳についてはfate/unlimited codeで言峰綺礼が使った技をモデルにしています。
まあ、同じような人なので購買部の彼に教わったとしました。
あともう一つありますがそれはもう少し後になります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12弾 隠し技は使った瞬間隠し技とは言わない

ハイジャック編後半投稿します


「だ、大丈夫だったの白野!」

 

記憶を頼りにアリアがいた客室に戻ってきたときには視力は回復した。

 

俺もアリアに大丈夫かと聞くとかすっただけよと言って頭の包帯を指さす

俺はさっきまでの状況を報告した。なんとか時間稼ぎをしたが決定力が不足していたため保険である閃光手榴弾を使い理子さんを一時的に失明させこちらに帰ってきたと。

 

「そうか、よく時間稼ぎをしてくれた白野」

 

「いや、倒すことができなくて済まない」

 

と俺は言う。ちゃんと報告はしたが、理子さんの怯えていたことについては言わない。ここで言っても余計な混乱を生むだけだ

というか

 

「キンジ。おまえなっていないか」

 

「そ、そうよ!あれはアタシのはじめてだったのに!」

 

「大丈夫だよ俺も初めてだ」

 

…。

お前ら人が頑張っているときに何をしていたんだ…。

まあいい。キンジがヒステリアモードになってくれたおかげでこっちの戦略の幅が広がった。

 

「それで、どうするの?」

 

「たぶん理子さんは視力を回復したらこちらに向かってくるはずだ。俺もついさっき視力が回復したからもう向かってきているはずだ」

 

「それならば、こちらも迎え撃つか」

 

そういうキンジの発言に俺たちは耳を貸す。

そして俺はキンジの言った作戦に従うため行動に移すのだった。

 

 

 

 

「バットエンドのお時間ですよー くふふ」

 

そう言って理子さんは扉を開けて入ってきた

髪でナイフを握り、両手にワルサーを持って俺たちに向かう

 

「すごかったよしろくん。びっくりしたよ。まさか君がそんなに強かったなんて」

 

「あれはたまたまだ。俺はそんなにつよくないよ」

 

「うそばっかり~ほんとはもっと強いんでしょ?」

 

「さあね。俺はうそつきだからな」

 

「くふふ、アリアとキー君はどこへ行ったのかな?まさか、二人だけで帰ったわけじゃないでしょ?」

 

そう言いながら部屋を見渡している理子さん

二人とも物音をたてるなよ。

 

「まあ、いいや。しろくんを倒せば二人とも出てくるよね!」

 

そう言って飛び出してくる。

それと同時に俺は酸素ボンベと書かれたボンベを投げつける。

本当は、その中の酸素はぬいているんだがとっさの判断でそれが見抜けるやつはいない。

酸素は火花を近付けると急激に爆発する。

それを避けるために理子さんは酸素ボンベをよけると、アリアかキンジでもいると思ったのだろう。備え付けられたバスルームに向かってワルサーを打った。

よし、かかった!

理子さんが発砲した後、天井の荷物入れに隠れていたアリアが飛び出しガバメントを放つ

ガンガン!

そして、見事両方のワルサーを打ち抜く。

動揺した理子さんはアリアの接近を許す。

片方の髪につけられたナイフを切り落とし、反対側のナイフは背後からキンジが飛び出しナイフを吹き飛ばす。

アリアとキンジの見事なコンビネーションで見事理子さんは無力化した。

 

キンジとアリアと俺は理子さんに向けて言い放つ

 

「峰・理子・リュパン四世」「殺人未遂の現行犯で」「逮捕だ」

 

「…そっかあ。ベットかシャワールームにいると思わせて実はどっちもブラフ、本当はアリアの小さい体を生かして、キャビネットの中に隠していたのかー。すごーい。ダブルブラフってよっぽど息が合っていないとできないんだよ。三人とも誇っていいよ。理子、ここまで追い詰められたの初めて」

 

「追い詰めるも何も、もうチェックメイトよ」

 

「ぶわぁーか」

 

また髪が動いている!

まさか!

飛行機がぐらりと揺れた。俺たちはバランスを崩していると一番近くにいたキンジにむかって予備に隠していたのだろう新たなワルサーを取り出しキンジに打ち出す。

それをキンジはバタフライナイフを取り出し銃弾を切るがそこまでだ銃弾の衝撃で体制を崩した。そこに、理子からの銃がキンジの顔に照準を合わせる。

ダメだ、間に合わない!

くっ、仕方ない躊躇している時間はない!

俺は急いで電子手帳を取り出し礼装、空気打ち/一の太刀を取り出す。

この礼装は月の世界にいたエネミーでも倒せるほどの威力を持つそれを手に持つと理子さんが銃弾を打った。

 

間に合え―!

 

俺が放った空気打ち/一の太刀から放たれた衝撃波は見事銃弾に命中。

銃弾を破壊した。

そしてもう一発放つそれも見事理子さんのワルサーに当たり破壊した。

 

この場にいる全員は唖然としていた。していないのは俺だけだろう。

それもそうだろう鉄である弾丸を破壊するほどの衝撃波を放ったのだ。

理子さんは驚愕していたが、すぐに今の状況を理解、客室から飛び出した。

 

「行くぞキンジ!アリアさんはコックピットに向かって!」

 

俺はキンジと一緒に理子さんを追う。アリアさんにはコックピットに向かってもらった。あんな状況で理子さんの有利になるような揺れがおこるはずがないなにか仕掛けがあるはずだ。なので俺たちはわかれそれぞれの目的に向かって進んだ

 

 

 

 

理子さんは俺たちが戦っていたバーの壁に背持たれて立っていた。

周りには爆弾が張り付いている

 

「ご存じの通り私、爆弾使いですから」

 

理子さんはそういうとキンジが

 

「理子お前の負けだ降伏をしたほうがいいぞ」

 

キンジがそう理子さんにいう

 

「そうだねー。今回はあたしのまけだね。まさか、しろくんが超偵とは思わなかったよ。」

 

「いや俺は超偵ではないよ」

 

俺は否定する。超偵とは超能力を使う探偵の略だ。魔術は超能力と似ているかもしれないが少し違う。だから俺は否定するが

 

「またまたー。どうやったら発砲した銃弾を粉々に粉砕できるのかなー?」

 

あはは、魔術という概念が知られていないこの世界じゃ理解されるのは難しいかな

 

俺はこれ以上否定しなかった

そして理子さんは俺たちに向かって言う。

 

「ねえ、二人ともイ・ウーに来ない?二人までならランデブーできるかもしれないし、イ・ウーにはキンジのお兄さんもいるよ?」

 

その言葉をキンジに投げかけるが

 

「これ以上俺を怒らせないでくれ理子。これ以上怒ると俺は突発的に武偵憲章九条を破りかねない」

 

へえ、ヒステリアモードでも怒る時は怒るんだな。

 

「うーん、それならできないな。キンジにはまだ武偵としていてもらわないといけないし」

 

理子さんはそういうと今度はこっちに向かい

 

「しろくんはどう?」

 

「俺も犯罪者の一員にはなりたくないかな」

 

「そうか残念」

 

そういうと理子さんは壁にぴたりとはりつく

 

「なら三人にはイ・ウーからのプレゼントがあるからそれをうけとってね」

 

そういうと、壁に張り付いた爆弾が爆発した

 

室内の空気が飛行機の外に流れ出る。

俺とキンジは近くのものに飛びつきなんとか耐える。

そして壁にあいたあなは天井からの消火剤とシリコンのシートがばらまかれ穴をふさぐ。

ふう、なんとか助かったか。

あ、これ、フラグじゃね?

窓の外を見て理子の行方を見ていたキンジは声を上げる

 

「あ、あれは!」

 

ん?何だと思うと

 

ドオーン!

 

何かが爆発した音で飛行機が揺れる。

何なんだ一体!?

俺は窓の外を見ると飛行機のエンジン二基が破壊されていた。

キンジが言うにミサイルが飛んできて破壊したそうだ。

イ・ウーからのプレゼントってこれかよ…。

げんなりしながら俺は、着陸できるか確かめるために

アリアがいるコックピットにへと向かった。

 




まとめて3話の投稿になりました。
明日には1巻分終わらせるよう頑張ります。
暗黒の影さん、真九郎さん、rassyuさん感想ありがとうございます。
意見、感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13弾 不幸な彼ら。生きる彼ら。

ハイジャック編後半です。
またまた、すみません!
理子さんのときの時計操作では早くしたと言いましたが、それではおかしいことを知りました。本当は遅くしなければいけません。
このことも感想で聞きました本当にありがとうございます。
今日は2話で構成します。


俺たちは今この飛行機を運転しているであろうアリアのもとへ向かうためにコックピットに向かっていた。

 

「あの時はありがとう白野」

 

「あのときって?」

 

「あの銃弾を破壊してくれた時だよ」

 

「ああ、あれね。仲間なら助けるのは当然だろ」

 

「ふ、そうだな。けど、あれはいったいどうしたんだ?」

 

やっぱり聞いてくるか。人前でコードキャストを使ったのは初めて…いや、正式に見せたのは初めてだからな

 

「説明はするが、長くなる。ここから助かったら教えてやるよ」

 

「なら絶対生きて帰らないとな」

 

俺たちは互いにこれからの心境を確かめながらコックピットに入る

 

「遅い!」

 

俺たちにそう怒鳴り散らすと、また運転に集中する。

 

「アリア。飛行機操縦できるのか?」

 

「セスナならね。ジェット機なんて飛ばしたことない」

 

アリアが操縦かんを整えて飛行機を安定させる。

窓の外を見ると海面が見える。

結構低いな。

俺がそう思っていると、キンジはどこからか無線機を引っ張り出してきた。

それを使い羽田に連絡を取る。

管制塔からこちらの状況を聞かれる。

キンジは手短にこちらの状況を伝えると、次の指示を待つように言われた。

その間、俺はコックピットにあった衛星電話を借り操作する。

操作の仕方くらいなら電子手帳にも書いてあるからなそれを見て電話をかけ、スピーカーモードにする。

 

「誰に連絡しているの?」

 

「もう少し待っててすぐにかかる」

 

「もしもし?」

 

「ああ、武藤俺だ。知らない番号からですまない」

 

「は、白野か!そ、それくらいならべつにいいけどよ。けど、それよりも大変なんだ!今アリアの乗る飛行機がハイジャックされた!」

 

「ああ、それならもう解決したよ。犯人には逃げられたがな。俺もその飛行機に乗っているちなみにキンジも一緒だ。それよりもよくこのハイジャックのこと知っているな報道でもされているのか?」

 

「おう、とっくに大ニュースだ!客の誰かが機内電話で通報でもしたんだろ?乗客名簿にアリアの名前があったからな。今、教室に集まっていたところだ」

 

「それと、武藤。こちらの飛行機はエンジン2基が攻撃によって破壊されたが羽田まで持つのか?」

 

「安心しろ白野。その飛行機は最新技術の結晶だ。エンジン二基でも飛べるし悪天候でもその状況は変わらない」

 

よかったと心の中で安堵するがその安心も裏切られる

 

「それよりも白野。破壊されたのは内側の二基だって言っていたな。燃料計の数字を教えろ。場所は―」

 

そう言われ燃料計の場所を武藤の声と電子手帳を使い調べる。

それにしてもすごいな武藤ここにいるわけでもないのに正確に機器の場所を把握している。

さすが車両科Aランク

 

「数字は今540だ。いや待て535になったぞ」

 

「くそったれ!盛大に漏れてるぞ!」

 

その言葉にその場にいた全員が驚愕の声を上げる

 

「燃料漏れ!止める方法を教えなさいよ!」

 

そうアリアが叫ぶ。

 

「方法はない。わかりやすく言うと機体側のエンジンは燃料系のの門も兼ねているんだ。そこを破壊されるとどこを止めても露出は避けられない。」

 

「あ、あとどれくらい持つの?」

 

「残量はともかく露出の速度が速い。言いたかないが後15分といったところだ」

 

「さすが最新技術の結晶だな」

 

そう愚痴るなよキンジ俺だって現実逃避したいんだ。

 

「キンジ、さっきコネクトに聞いたんだがその飛行機は相良湾上空をうろうろ飛んでたらしい。今は浦賀水道上空だ。羽田に向かえ15分あればまにあう」

 

「もとからそのつもりよ」

 

アリアが武藤に言い返す

 

「操縦はどうしているんだ。自動操縦は決して切らないようにしろ!」

 

「自動操縦なんてとっくに破壊されているわ!今はあたしが操縦している!」

 

「ちっ、なら計器をしっかり見て操縦をするんだ。マニュアル道理にすれば誰だって操縦できる」

 

計器をしっかり見ながら操縦するアリア。操縦のほうは心配ないなと思うと。

 

ジィ…ジジィ…

 

ん?何の音だ?

するとボンッというおとで計器が故障する。

まったくどうしてこんなことばっかり!

 

「さっきの音は何だ!キンジ!」

 

「計器が故障した!まずいぞどうすればいい!」

 

「うそだろ!計器が故障すれば高度さえ分からない!打つ手がないぞ!」

 

「いや大丈夫だそのことについては俺がなんとかする」

 

うろたえるキンジ達に俺がそういう。

 

「な、どうにかするなんて計器もないのにどうするんだ!」

 

「ないなら作ればいい。頼む信頼してくれ武藤」

 

「ち、わかったよ。裏切ったらひいてやるからな!」

 

任せろと俺は武藤に言う

 

「けど、本当にどうするんだ?」

 

キンジからそう言われるが大丈夫本当にちゃんと策はある。

俺には現在過去未来をも見通すバックアップがいるんだ。

この飛行機の現在の状況なんてすぐに出てくる。

俺は懸命に操縦するアリアの近くにいくと

 

「アリアこれを見て操縦してくれ」

 

そう言って俺は魔力を練り、電子手帳を作り出す。

いつもの大きさじゃ見えないからなるべく大きめに。

アリアとキンジはこの現象に驚愕し、分けを聞こうとしたが今はこんなことより今の状況をどうにかしなければならないと説得、現在と向き合わせる。

 

(これで何とかなったか…ん?)

 

無線機のほうで声がする

 

「こちらは防衛省。航空管理局だ」

 

な、防衛省だと!

 

「羽田航空の使用は許可しない。空港は現在自衛隊により閉鎖中だ」

 

「何言ってんだ!」

 

武藤は俺の衛星電話から怒鳴った

 

「誰だ?」

 

「俺は武藤剛気!武偵だ!600便は燃料漏れを起こしている!飛べて後10分なんだよ!ダイハードなんてどこでもねえ!羽田しかねえんだよ」

 

「武偵武藤。私に行っても無駄だぞ。これは防衛大臣の決定なのだ。」

 

嫌な予感がして電子手帳のほうを見ると近くに飛行物体が飛んでいるようだ。

外を見ると

F15イーグル

F22を除けば最強クラスの戦闘機が横を飛んでいる。

 

「おい、防衛省。アンタのお友達が横を飛んでいるんだが」

 

「…それは誘導機だ。誘導にしたがい千葉に向かえ。安全な着陸場所を指定する」

 

アリアは誘導に従おうと操縦桿を傾けようとするがキンジが止める

 

「キンジ、無線も一時切ったほうがいい」

 

「そうだな」

 

そう言い無線も切る

 

「海に出るなアリア、あいつらはうそをついている。奴らは俺たちが墜落すると信じている。東京市民と飛行機とで天秤にかけ都民をとったんだ。海に出たとたん追撃するつもりだ。」

 

「な、そんなのできっこないじゃない!」

 

「できるんだよ、奴らは墜落した理由も武偵の失敗というところにしてパニックを抑えるつもりだろう。ならこちらも人質を取る。アリア、地上の上を飛ぶんだ」

 

その策はいいがキンジ防衛省が付きまとう中空港外で着陸しようとしても何かと邪魔をされるぞ

…。

仕方ない。このやり方も好きではないが躊躇してられない。

 

「キンジもう一度無線機をつけてくれ」

 

「どうした白野?」

 

「このまま不時着したら確実に防衛省からの妨害が来る。ならこちらから脅しかける」

 

キンジは不思議に思いながらも無線機をつなげる

 

「こちら600便、防衛省聞こえているか」

 

「こちら防衛省、600便今すぐ誘導に従え」

 

「こちらは空港外で不時着する。今すぐ誘導機を撤退してくれ」

 

「それはだめだ。今すぐ誘導機に従え」

 

どうやら考えを改める気はないようだな。俺はなるべく侮蔑を含めた声で言う

 

「今すぐ誘導機を下げろ。でなければ夏目の家が黙っていないぞ」

 

「なっ!?」

 

よかったうちを知っているようだなならば話は速い

 

「俺は夏目家の関係者だ。もし俺が死ねばお前らは消されるぞ」

 

そこから無線は無言だった。そして外を見ると戦闘機は離れていくさすがにうちの元家だな。国家を下がらせるとは

 

「あ、アンタ防衛省を下がらせるとはいったい何者なのよ…」

 

「そんなことも今はいいだから今は集中だ」

 

そう強制的に会話を切る。まったく今日は俺の秘密がばればれになるなあまり言いたくないのに。SGも抜き取られる時はこんな感じなのかな。

そう考えていても飛行機は進む。しかし、どこに向かっているのかな。

 

「キンジ今どこに向かっているんだ?」

 

「武藤、滑走路にはどれくらい距離が必要だ?」

 

「まあ、約2450メートルくらいだな」

 

「そこの風速はわかるか?」

 

「私の体感では南南東の風。風速41.02です」

 

レキさんいたのか

 

「じゃあ、武藤。風速41メートルに向かい着陸すると滑走距離はどのくらいだ?」

 

「まあ2050ってところだ」

 

「ぎりぎりだな」

 

「おい、キンジまさか」

 

「ああ、そうだ空き孤島を使う」

 

確かに難しい挑戦だな。けど、

 

「信じているぞ、キンジ」

 

俺はこいつを信じている。キンジならどんなに難しいことでも必ず成功させる!

 

「任せろ。必ず生きて帰るぞ」

 

いい顔だなキンジ。武偵をやっているときは本当にいい顔をするな

 

「アンタ達と心中なんてお断りよ」

 

アリアは下をベーとだしこちらを向く

 

そう話をしているともうすぐ空き孤島が近付く。

しかし、まったく見えない。悪天候が災いし滑走路がまったく見えないのだ。

さすがのキンジも冷や汗を流す。くそ、あきらめるしかないのか…。

 

 

 

その時、空き孤島の淵を彩るように光が見えた。

 

それと一緒に俺の手にある衛星電話から声が聞こえる

 

「キンジ見えてるか馬鹿野郎!」

 

「む、武藤!?」

 

「お前が死ぬとしらゆ…いや、泣く人がいるからよ!俺らロジで一番でかいモーターボートぱくっちまったんだぞ!アムドのマグライトも!みんな無許可で持ち出したんだ!後で全員分の反省文をお前らでかけよ!」

 

…。

ありがたい。

誘導灯を作ってくれたおかげで滑走路が見える。

俺はその仲間たちに感謝をし武偵憲章を思い出す

 

仲間を信じ仲間を助けよ

 

みんなからの助けがあったんだ絶対生き残って見せる!

 

600便は強行着陸を断行。

衝撃が機体を襲い、メガフロートを走る

 

「止まれ!止まれ!止まれ!」

 

アリアの声に合わせるように俺の心の中で止まれと命ずるが、

 

(と、止まらない…!)

 

雨だ。雨のせいでタイヤが滑っている!

最後の最後で天に見放されたのか…。

けどキンジはあきらめた目をしていない。

キンジは滑走路を滑ると機体をカーブさせる。

キンジの思惑を悟った時

 

(まったく、キンジにはかなわないな)

 

目の前に迫った風力発電の風車に機体が突っ込んだ。

ドオオン

とすさまじい衝撃に上下に揺らされ俺は意識を失った。

 

 




もう1話で1巻は終わりです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14弾 コレカラ

ちょっと短めですがこれで1巻は終わりです


ハイジャック事件から無事生還して一週間たった。

俺は魔力による精神疲弊と多少の打撲があったがコードキャストも使い1日で回復した。

俺たちはハイジャック事件の事後処理に駆り出されそのあとも奔放とした(そっちのほうが疲れたが)

これからまたキンジとアリアとの騒がしい日々が始まると思っていたがあるメールによりその希望はたたれた

 

『題名 ありがとう

 

本当は直接謝りたかったんだけど…メールにする事にした。

やっぱり、あたしはイギリスに帰ることにしたの。

パートナーを探すために。あなた本当に強かったのね。あの飛行機の乗客があの戦いを見ていたらしいのよね。あの理子を圧倒していたんでしょ。

なら、白野かキンジでもよかったんだけど…これ以上迷惑はかけられないと思った。

けど、もしあなたたちがパートナーになってくれる気があるのなら

また、会いに来て。』

 

そのメールを見たときおれは部屋から飛び出す。

こんなことであきらめてたまるかよ!

するとキンジはリビングのソファに座っていた。

あいつ…いまだにこうなのか…

俺は少しだけ批判の声を出しキンジに問いかける

 

「キンジ、行かないのか」

 

「…」

 

「答えてよキンジ」

 

「俺はいけない…俺はきっとアリアにとって足手まといになる…

アリアはイギリスに行ってそっちでパートナーを…」

 

「あまりふざけるなよキンジ!」

 

俺はキンジにつかみかかっていた。

キンジは動揺した顔をしたそれでも言わなければならない

 

「自分に嘘をつくな!!」

 

「!」

 

今度は驚愕に染まる。

これ以上の言葉はいらないだろう。

それからキンジは頭を下げる。再び上げたときにはもう迷いはない顔になっていた

俺はそれを見やり声を出す

 

「行くぞキンジ。アリアは女子寮の屋上にいる!」

 

俺たちは寮から飛び出す。

俺たちは彼女を助けても何のメリットもない。

でも、彼女は言った助けてと。

なら、最後まで守らせてくれよ。

 

そう思い女子寮を駆け上がり屋上の扉をあける。

ヘリは浮上していた。

俺たちは息もだえながら叫ぶ

 

「「アリアァァァァァァ!!」」

 

そう叫ぶ。それだけでよかった

ヘリの扉が開くそこから一人の女の子が落ちてくる

 

空から女の子が降ってくると思うか

 

きっと降ってくるときはきっと何か物語が始まるのだろう

空から降ってきたアリアを俺とキンジは受け止める。

 

「キンジ!白野!来てくれるって信じていた!」

 

「巻き込まれたんだ、なら最後までしっかり巻き込んでくれよ」

 

キンジが顔を赤めらせて言う。アリアが密着しているからな

 

「アリア、まだ俺はお前の依頼を終えていないぞ」

 

「…!…ありがとう、白野」

 

そう言って俺たちは確認する。

 

ヘリはアリアを連れ戻すためだろう戻ってくる。

 

「あれ、どうするんだアリア?」

 

「もちろん、逃げるわよ!キンジ!白野!」

 

そう言って俺たちは走りだす。

 

本当にこの2人といると面白いな。

そう岸波白野は思った。

 

岸波白野の物語は終わらない。

 

 




1巻終わりました。
白野君はこれからも活躍しますのでお楽しみください。
あとハーレム要員はどんどん出てくるのでそちらもお楽しみください。
Akipashitさん、シオウさん、ガルテガルテさん、暗黒の影さん感想ありがとうございます。
意見、感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15弾 ヤンデレのしつけ方

はあやっと1巻が終わったな

お気に入りに目が行く

お気に入り101件

(*ノ・ω・)ノオオオオォォォォ

えー茶番から始めました。
読者の皆様本当にありがとうございます!
お気に入り件数100件超えました!
これからも皆様の期待にこたえるよう面白く書けるよう頑張りますので今後もよろしくお願いします!

では、原作2巻目始めます


「無理です!こ……では…」

 

「……か、ほう…ない」

 

「それ………しなければ……」

 

「けど、………あえな…」

 

「かれ………生き………」

 

「……しかた………」

 

「そう………なら………」

 

 

 

 

 

 

誰の声かもわからない。

 

 

 

 

 

けど……………とても温かい声だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアとのいざこざも終わり1週間が過ぎた。

 

といってもさして大きな事件もない。

まあ、事件があったとしても情報科としての事件だ。

探しものをしたり、情報を売ったり、ウィルスがはいったパソコンを修理したり、ウィルスを作ったパソコン会社に自作のウィルスを100種類ほど送ったりした。

 

今は学園島の外に出るまで自主連をしている。

理子さんとの戦いで圧倒的に自分の実力が落ちていることに気づきさらに特訓を進めることにした。

特訓しすぎるのもいけないことだがいつまでもできる範囲をしても自分の実力は上がらない。少し無理をしすぎるくらいがいいのだ。

魔力に関しては全然増えないがこれも特訓したほうがいいだろう。

帰りもさらに少し魔力使用量をふやして帰ることにする。

帰った時にはもうボロボロでした。

 

それがいけなかった。

 

「この泥棒猫!」

 

「あ、アンタなんなのよ!」

 

し、白雪さんが黒雪さんにっ…グハァ!

突然飛んできた黒鉄球に頭を揺らされ意識を落とした。

ふ、不幸だ…。

 

 

 

 

 

「大丈夫か白野。」

 

「うぅ…ぬがせないで…ハッ!」

 

危ない。走馬灯が走っていた。

というか走馬灯まで思い出したくないことなんて…。

 

キンジが俺を起こしてくれた。

うわぁ、すっごい荒れている。

この惨状の犯人であるアリアと白雪は髪の毛はぐしゃぐしゃ服はボロボロ汗にまみれて何とも言えない現状になっている。

 

「はあ…はあ…なんて…しぶとい泥棒猫…」

 

なるほど、白雪さんはキンジとアリアが二人一緒に住んでいると思っているらしいな。

誤解を解くのもできるがこれはキンジにやらせるべきだ。というか関わりたくない。月にいたときAUOの機嫌を損ねないようにするくらい難しいからなこの現状を整えるの。

 

「あ、あんたこそ…とっととくたばりないさいよ…はうう…」

 

アリアと白雪さんは互いに床に倒れている。

どうやら引き分けのようだな。

 

「キンちゃん様!」

 

キンジがいたことに気づいたらしい白雪さんが刀を横においてよろよろとその場に正座しなおした。

俺のことは気づいていない…んだろうな。

恋する乙女は周りが見えないものだ。←被害者

 

白雪さんは両手に顔を覆って

 

「し、しんでお詫びします!き、キンちゃん様が私を捨てるならアリアを殺して、わ、私もここで切腹してお詫びします。」

 

待ってくれ白雪さん!アリアを殺すなら依頼が発動して俺が白雪さんと戦わなければならない!ヤンデレと戦うのは月だけで十分体験したから!

 

「あ、あのなー捨てるとか何言ってんだ?」

 

キンジ!お前が朴念仁なのはわかっているからしっかりと説得をしろ!

 

「だ、だってハムスターもオスとメスを同じかごに入れておくと自然に増えちゃうんだよお!」

 

「意味がわからん上に、飛躍しすぎだ!」

 

白雪さんが泣き声を上げる

 

「アリアはキンちゃんのこと遊ぶつもりだよ!絶対にそうだよう!」

 

「ぐえ!く、首を掴むな!」

 

ああ、キンジの顔が蒼白になっていく…。

仕方ない、助けてやるか

 

「ちょっと、白雪さん」

 

「あれ?白野君?」

 

その声で俺に初めて気づいたらしく白雪が俺を見てくる。

別にいいし…NPCにも間違われるくらいだから別にいいし…

 

「アリアとキンジだけが同棲しているわけないだろう。俺がいるし。俺がいる以上そんなことにはならないよ」

 

「本当?嘘ついてない白野君?」

 

「ほ、本当ですよ…」

 

その嘘だったら殺すよ的な雰囲気出さないで!

 

「本当だよ!なあキンジ!」

 

「な、なんなのよアンタ」

 

「き、キンちゃんと恋仲になったからっていい気になるなこの毒婦!」

 

アリア!これ以上選択肢を減らすのはやめてくれ!BADエンドまっしくらにしないでくれ!

 

白雪さんは袖に仕込んでいた鎖鎌をアリアに投げつけた

 

「こ、恋仲!」

 

アリアはガバメントでそれを受けながら鎖の引き合いになる。

 

「ば、馬鹿言わないでよ!あ、あたしは恋愛なんてどうでもいい!」

 

アリアは顔を真っ赤にして否定する。

 

「れ、恋愛なんか…あ、あんなの時間の無駄!したこともないしするつもりもない!あ、憧れたこともないんだから!憧れたこともない!憧れたりしない!」

 

「じゃあ、アリアはキンちゃんの何なの!恋仲じゃないの!」

 

「そういう関係じゃない!」

 

さらに否定するアリア

 

「キンジと白野はあたしの奴隷!奴隷にすぎないわ!」

 

ちょ、俺を巻き込ませるなアリア!

キンジがどうなろうと知ったことではないけど!

 

「ど、奴隷!?」

 

白雪さんは口をあんぐりと開けたと思うと顔を真っ赤にさせる。

 

「そ、そんな行けない遊びまでキンちゃんにやらせるなんて…

あたしなんてその逆なら考えたことあるもん!」

 

まじすか!白雪さん!

 

俺は絶句しているとアリアはキンジをにらみつけている。

 

「このおかしな女がわいたのは100%アンタのせいよ!なんとかしなさい!そうしないと後悔させてやるんだから!」

 

そうだそうだ!キンジ!お前が処理しなければならない問題だ!

 

「えーとだな…おい!白雪!」

 

「はいっ!」

 

呼ばれた白雪はばっと鎖鎌をはずしキンジに正座しなおす。

 

反動でアリアがひっくり返ったがまあいい。

 

「よく聞け。アリアと俺は武偵同士一時的なパーティを組んでいるだけなんだ。白野を含めて3人でな」

 

「…そうなの?」

 

「…そうだぞ白雪。お前、俺のあだ名知っているだろう?言ってみろ」

 

「…女嫌い」

 

「だろ?」

 

「あと、昼行灯」

 

「それは今関係ない」

 

「は、はい」

 

「というわけでお前のよくわからない怒りは誤解であり無意味なんだ。大体俺がこんな小学生みたいなチビ「風穴」とそんな中になったりするわけがないだろ」

 

キンジ言うのはいいが後のことなんて知らないぞ。

 

「で、でもキンちゃん…」

 

「ん?何だ?」

 

「それ」

 

白雪の手がキンジの携帯のストラップを指さし、アリアのポケットから出ているストラップへと指さし

 

「ペアルックしてるぅううううう!」

 

グハァ!また無視された!

俺も同じストラップしているのに!

俺のライフ/Zeroなのにオーバーキルはしないで!

 

「だーかーら!あたしとキンジは1ピコグラムもそんな関係じゃないのよ!」

 

また混沌としてきたこの部屋。

もう俺ここにいる意味ないんじゃないか?

 

「こら白雪!」

 

おおっと、キンジ選手ここで何とかしなければ物理的に食べられるぞ!

さあ、どう答える!

 

「お前、俺の言うことが信用できないのか!」

 

言ったー!

 

「そ、そんなことないよ!信じてます!信じてます!」

 

落ちたー!

キンジ選手見事白雪選手を落としましたー!

 

ふう…茶番はこれくらいにして

ようやく終わりなさったか

しかし、白雪さんはキンジとアリアを見渡して

 

「じ、じゃあ、キンちゃんとアリアはそういうことはしていないのよね?」

 

「そういうことってなんだよ?」

 

「き、キスとか?」

 

「…」

 

「…」

 

マジですか!やっちゃった系ですか!

そう言えば飛行機の中でどうやってヒステリアモードになったか聞いてないもんな!

 

「…し…た…の…ね…?」

 

ふふふ、という声で白雪さんはアリアに近づく。

これは逃げたほうが

 

「そ、そうだ!おい、白野!お前アリアとの依頼ちゃんと守れよ!」

 

おいぃ!キンジ!俺をうるんじゃねえ!

くっそ…自主連の影響で今はへとへとなんだ!

本当に命が亡くなりそうなのを覚悟しながら白雪さんの前へ出ようとすると

 

「そ、そういうことはしたけど…で、でも大丈夫だったのよ!」

 

へ?何が?

 

「昨日分かったことだけど、こ、ここ」

 

こ?

 

「子供はできなかったからあああああ!」

 

衝撃の事実!アリアは考えまで子供だった!?

白雪さんはどてっと後ろに倒れる

 

「おい、アリア!キスで子供ができるかよ!」

 

キンジさすがに知っていたみたいだな。白野君は安心したよ

 

「こ、このバカキンジ!あたしがあれから人知れず悩んだのよ!」

 

「な、何に悩むんだよ」

 

「だ、だってキスしたら子供ができるって子供のころ、お父様が…」

 

おい!ホームズ家!ちゃんと教育をしとけよ!いまどき小学生でも知っているぞ!

 

「あんなことで子供ができるわけないだろ!小学生でも知っているぞ!そんなこと」

 

「な、何よ何よ!じゃあどうやったらできるか教えなさいよ!」

 

「教えるかこの馬鹿!白野にでも教わっとけ!」

 

だから俺を売るな!キンジ!

俺もアリアから教えろとせがまれたが全力で阻止した。

けど、アリアから依頼として教えろとせがまれた。

さすがに教えるのは無理だったので俺の電子手帳を渡して自分で調べてくれといったもちろん依頼金はなしで。

いつの間にか白雪さんもいなくなっていた。気配遮断スキルでも持っているのか…白雪さん。

 

 

 

 

 

しかし、何でだろう。

アリアがたぶん調べている最中ずっと悪寒と冷や汗が止まらなかった。

 




本日はリアルでいろいろあって1話だけの投稿となりました
真九郎さん感想ありがとうございます
意見、感想お待ちしています


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16弾 ボディーガードはいらないです

書いていて思いました。
この作品は緋弾のアリアに沿って物語を進めますがfate/extra成分はあるところまでいかないとあんまり出てこないです。
しかも、そのあるところに行く前にオリジナルを入れたいと思っているので白野君の新しい戦闘方法はまだ出てきません。
なるべく早く書き進めますのでその時までお楽しみください

では投稿いたします。


昨日はいろいろあったなと思い俺は学校へ登校する。

しかし、

 

「眠い…。」

 

そう、今朝は2時起きで情報科の主任にたたき起こされとある会社のサーバーにウィルスが入りこみ早急に駆除を頼まれたのだ。

俺は朝まで眠い中ウィルスの駆除を行っていた。

朝6時に作業が終わり今日の授業はふけようと思ったが、優しいうちの主任がさぼったら単位上げないぞと言われ眠いなか学校へ言っているわけだ。

 

さすがに今日の自主トレはなしだ。

キンジ達にも今日の朝飯は自分たちで食べてくれとメールを入れ学校へ急ぐ。

さすがに少しは学校で眠っておきたいからな。

学校へ着くと意外な人物が先にいた。

 

(あれ、白雪さん…?)

 

何か仕事があるのかな?

その時は眠たさにより頭が回らなかったため特に疑問にも持たず教室に急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

学校で寝てるとみんなが登校結局ちょっとしか寝ていない。(泣きたい)

人間気合を入れて起きようとすれば1日もつものである。俺は午前の授業を気合で受けているとなんとかそのひ午後からは眠気はなくなっていた。

昼休みからは依頼品の納品をしていた。その時白雪さんと出会ったのだがなんだか避けられているようだ。しかも顔も合わせてくれない。(俺何かしたか?)

ほとんどいつも通りに1日が過ぎていく。

しかし、気付かないままに平常は異常に変わっていくのだ。

 

 

 

 

 

「ん、あれは…」

放課後、特に何もやることはなかったんでそのまま帰っているとアリアとキンジを見つけた。何をやっているんだ?俺は彼らに近づくとアリアがキンジの顔面に木刀を打ち込んでいた。

 

「いってええ!」

 

「キンジ!これくらいちゃんととりなさいよ!」

 

分けを聞くとどうやらこれがキンジの特訓みたいだ。

どうやら、アリアはヒステリアモードのことを2重人格と思っているらしい。

残念だなアリアそれは間違いだ。2重人格とヒステリアモードは一緒のようで違うとキンジが言っていた。それをキンジが否定しなかったのはどうやらそのままでとおすようだ。

まあそれはそうだろう。発動条件が性的興奮ということなのでそのことについて触れると殺されるからであろう。俺も特に突っ込まない。

 

「で、どうしたんだその格好」

 

キンジが痛みから解放されるとアリアに話しかける

 

「見てわからないの?チアよ。アンタそんなことも分からないの?」

 

俺は疑問に思った

 

「何でチアの恰好しているんだ?」

 

「あんたもねぇ…」

 

アリアはため息をついてこちらの疑問に答える

もうすぐアドシアードつまり武偵校の大会のようなものがあるからそれのチアをやるらしい。アリアなら選手に選ばれると思ったが辞退したようだ。

まあ、かなえさんこともあるしそんなことをしている暇じゃないと思ったんだろうな。

 

「復活したわねキンジ!またいくわよ!」

 

「まだやるのか!?」

 

まあ…ドンマイだキンジ

俺は余計な被害にあわないようその場を離れ帰路に就くのだった。

 

 

 

 

 

次の日の昼休み久々に何の仕事もなかったため食堂に行こうとすると

 

『生徒呼び出し

   2年A組 情報科 岸波 白野

   2年B組 超能力捜査研究科 星伽 白雪 』

 

あれ、俺なにしたっけ?

 

 

 

 

 

俺が今いるところはこの学園島でも特に危険な場所の一つだ

強襲科(アサルト)は言うまでもなく銃弾がいつも飛び交うような危険地帯

地下倉庫(ジャンクション)はたくさんの火薬などが詰めん込んである危険地帯

そして、今俺がいる教務課(マスターズ)だ。

なぜ、教務課が危険地帯かというとまあわかっていると思うが武偵校は危険な人物の巣窟教師はよりひどいというわけだ。

今俺の目の前にいる教師は綴梅子。

尋問科の教師なのだが年中目がらりっている変人である。

これでも、日本で5本の指に入る尋問の実力の持ち主らしいのだが…

どうやって尋問の実力を測るのだろうか。どれだけしなないように苦しめるのかな。

うん、このことについては深く聞かないようにしよう。

 

俺と白雪さんを呼び出した綴は

 

「星伽ぃ」

 

そう言って煙草をふかしている。

というかあの煙草日本じゃ発売禁止じゃないか?

 

「お前最近急に成績下がっているよなぁ」

 

そうなのか。白雪さんはこのあほしかいない武偵校で常に偏差値オール75を出している。

俺もそこそこ頑張っているのだが白雪さんにはかなわないんだよな

 

「ふー、まあ別に勉強なんてどうでもいいんだけれどな」

 

いいのか!それで!

 

「なーに…何?あ、変化…変化は気になるんだよね」

 

大丈夫なのだろうかこの教師。

変化という単語さえ出てこないのか頭すかすかなのか?

俺は綴の表情から感情を見ようとするがその光のない目は俺でも感情が見えない。

本当に生きているのかこいつ。

 

「なあ、単刀直入に聞くけどさ。星伽、あいつにコンタクトされた?」

 

「デュランダルですか?」

 

デュランダルか…

確かに聞いたことある

確か、超偵ばかり狙う誘拐犯

超能力研究科通称SSRはそう言った超偵を育てる学科である。

そこの優等生である白雪さんは狙われているのか。

 

「それは…ありません。というかデュランダルが存在していたとしても、私なんかじゃなくてもっと大物の超偵を狙うでしょうし」

 

「星伽ぃ、もっと自分に自信を持ちなよ。アンタは武偵校の秘蔵っ子なんだぞ?」

 

「いや、ですけどそれは…」

 

「星伽ィ、何度も言ってたけどいい加減ボディーガードつけろってば。レザドはデュランダルがアンタを狙っている可能性が高いってレポートを出した。SSRだって似たような予言したんだろ?」

 

「でもボディーガードはその…」

 

「なにおぅ?」

 

「私は幼馴染のこの、身の回りにの世話をしたくて…だれかそばにいるとその…」

 

本当にキンジは好かれているな…

まじでキンジ刺されるかもしれないぞ…!

 

「星伽ぃ、うちらはアンタが心配なんだよぉ。もうすぐアドシアードだから、外部の人間もわんかさはいってくる。その期間だけでも誰か有能な武偵をボディーガードにつけな。これは命令だぞー」

 

煙草を吐きながらそういう綴

 

「でも、デュランダルなんて存在しない犯罪者で…」

 

「これは命令だぞー。大事なことなので先生は2回言いました。3度目は怖いぞー」

 

煙草を吸いふーと煙を白雪さんに吐きかける

 

「けほ、は、はいわかりました…」

 

ついにうなづいた白雪さんを見て俺はこの状態を整理してみる

 

いるかもわからない犯罪者に狙われている白雪さんはボディーガードをつけろと言われている。

しかし、キンジとの生活を求めている白雪さんはボディーガードは邪魔になると思われているのだろう。

いるかわからないのならいっそ調べてみたいがたぶんこの情報は電子手帳を調べても出ないかもしれないな。

すると、

 

がしゃん

 

上の通気口から大きな音がしてアリアが飛び出してきた

 

「おい待て!アリア」

 

そしてそのあとについて出てくるキンジ

 

「そのボディーガードあたしがやるわ!」

 

…。

これは…どういう状況なのだろうか。

 

アリアたちが出てくると綴は何を勘違いしたのか一気に距離を詰める。

は、速い!後ろにキンジ達の後ろに回り込みキンジを吹き飛ばす。そして、アリアの顔面をわしづかみにすると今度はこちらに向かってきた。え、何で?

すると綴は俺を蹴り飛ばした。何故に?

 

「んー?何これ?」

 

しゃがみこんで俺たちを見てきた綴

 

「何だぁ。こないだのハイジャックの3人じゃん」

 

ちょっと待て。俺は最初から部屋の中にいたぞ。

顔面を抑えながら話を聞く

 

「これは神埼・ホームズ・アリア。ガバメントの2丁拳銃と小太刀二刀流。双剣双銃(カドラ)欧州で活躍したSランク武偵。でも、書類上ではみんなロンドン武偵局が自らの業績にしちゃったみたいだな。協調性がないせいだまぬけぇ」

 

「い、痛いわよ!それにあたしは間抜けじゃない。貴族は自分の手柄を自慢しない。たとえそれを人が自分の手柄だと風潮しても否定はしないのよ!」

 

「へー。損な御身分だねぇ。あたし平民でよかった。そう言えば欠点…そうそうあんたおよ…」

 

「わぁー!」

 

大声で悲鳴を上げるアリア。

というか、綴の奴生徒全員のデータあの頭の中はいっているのかよ。

すかすかと思っていたが本当変なところは覚えているんだな。

 

「そそ、それは弱点じゃないわ!浮き輪があれば大丈夫だもん!」

 

アリア。それは俗にいう墓穴というんだしっかり覚えておけよ。

 

「それであれは遠山キンジ」

 

まだ埋まっているキンジを指さしながら綴は言う

 

「性格は非社交的、他人から距離を置く傾向あり。しかし、強襲科の生徒には遠山のことを一目置くやつも多く、一種のカリスマ性を備えていると思われる。解決事件は…青海の猫探しとANA600便のハイジャック事件。何でやることなすこと大きいのと小さいことが極端なの?」

 

「俺に聞かないで下さいよ…」

 

そして、立ち上がるキンジ大丈夫かこいつ

 

「そして獲物は違法改造のベレッタM92F」

 

ギクッという擬音が聞こえるほど動揺するキンジ

 

「3点バーストどころかフルオートも可能な、通称キンジモデルってやつだな」

 

「あ、あれはこの前のハイジャックで壊されました。今は米軍の払い下げの安物で間に合わせています。もちろん合法の…」

 

キンジ動揺しすぎだ。それじゃあまだ何か隠していると思われるぞ

 

「へ~、アンタ、アムドに改造の予約しているだろう」

 

ほらなキンジ余計なことするから

そして、キンジの手に根性焼きをする。

 

「そしてあれが…あれがーえーっとなんだっけ?」

 

教師にも忘れられる俺逆に誇れるっす。

 

「俺、綴先生に呼ばれてきたんですけど」

 

「そうだっけ?」

 

そうですよ!白雪さんとの話のときに俺しゃしゃり出ませんでしたけどちゃんといましたよ!

 

「ああ、そう言えばそうだったな」

 

と思い出したかのように話をし出す綴。

 

「お前もだ岸波、アドシアードまでの期間中お前もボディーガードをとれ」

 

「え、何でですか?」

 

これには俺も不思議に思う

 

「お前もレザドからの報告によりデュランダルに狙われているとわかった。情報科のお前がなぜ狙われるかわからんが情報がある以上注意するに越したことはない」

 

と口にする綴。こいつ、表情とかはあれだがちゃんと生徒のこと考えているんだな。

以外にもいい先生じゃないのかと思ったぞ。

たぶん、コードキャストのことだろう。超能力と魔術は違うかけどこの世界じゃ見分けがつかないからな狙われることになったんだろう。けど、俺には必要ないと思うが

 

「いいえ綴先生俺にはいらないですよ。自分の身は自分で守れます」

 

「そうはいかないなぁ。狙われるとわかった以上うちらも黙ってはおけない」

 

うーん。どうしようかな。

ボディーガードがつくなら何かと一緒にいなければならないしそれじゃあ普通の生活に支障が出るからな

 

「だから、そのボディーガードあたしたちがやるわ!」

 

「どういう意味?ボディーガードやるってのは?」

 

「言った通りよ。白雪と白野のボディーガードは24時間体制であたしたちが無償で引き受けるわ!」

 

ふむ、それはいい提案なのかもしれない。

アリアたちなら普段から一緒にいるから気がしれているし。そこまでも邪魔にならんないだろう。しかも無償らしいし。

 

「星伽。なんか知らないけどSランクの武偵が無料で護衛してくれるらしいよ?」

 

「い、嫌です。アリアがいつも一緒なんてけがらわしい」

 

「じゃあどんな条件なら引き受けるのよ!」

 

「どんな条件でもお断りします!」

 

ぐぬぬとアリアと白雪がにらみ合い殺気が高まっていく。

本当この人たちは犬猿の仲だな。

そう思いながらある提案をする。これなら白雪さんも引き受けるだろう。

 

「なら、キンジも白雪の護衛につけるのはどうだ?」

 

お、効いたな。それもこうかはばつぐんだ

白雪さんの顔が輝く

よし、トドメだ

 

「白雪さんがキンジの部屋に来るのがいいんじゃないかな。護衛の件なら俺も別にいいし管理するならまとめて管理したほうがいいでしょ」

 

この提案に全員納得…いやキンジが納得していないな

すまんキンジでも多数決だ。この護衛は通したほうがいいぞ。

さあ、帰ろうと思うと

 

「岸波。ちょっと待て」

 

そう言われ綴に止められる

 

「はい、何ですか?」

 

「自分の身は自分で守れると言ったな。」

 

「そうですが…」

 

何だろう嫌な予感がする。

 

「それなら、ちゃんと自分の身を守れるように特訓したほうがいいだろう。強襲科の自由履修をとれ。しばらく護身術でも磨きな」

 

…。

何で今日は特に危険地帯を2つも回らなければならないんだろうなと思うのだった。

 

 




16弾終わりました。
自分はちゃんと書けているでしょうか?
感想が来ていなかったので少し不安になっていながら書いていました。
何か至らぬ点があればご教授ください。
なるべく、皆さんの期待にこたえて書きたいと思っています。
意見、感想ありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17弾 知らぬ間の…フラグ回収…

自分の作品を見直すと話が薄いような気がしました。
原作に追いつこうとしたら話が薄くなってしまっているようで本当に申し訳ありません。
なるべく、話を厚く面白く書きますのでこれからもお楽しみください。

では、投稿します。


あの後、一生懸命拒否しましたが体に教え込まれました。

そして、今はアリアと一緒に強襲科に向かっています。

 

「はあ、何でおれがこんな目に…」

 

「アンタが本当の実力を隠すからじゃない」

 

そういうものだろう。

武偵は自分の実力は隠すものだ。

犯人に自分の技を見られていると対策をとられるからな。

まあ、そのことは後でいつでもいえるが

 

「デュランダルね…」

 

そうそのデュランダルが本当にいるのかがこの問題の争点である。

本当に誘拐魔がいるのかは分からないし、いなかったらただの肩すかしである。

 

「アンタ、デュランダルがいることを疑っているの?」

 

「アリアはどう思っているんだ?」

 

「質問を質問で返すのね…」

 

アリアは少し考えると

 

「あたしはいると思うわ」

 

「なぜ?」

 

「堪よ!」

 

「そうですか…」

 

ホームズ家なら推理しろよと思ったが口を止める。

前調べたときにはアリアには推理をするというDNAが遺伝しなかったらしい。

そのことで本家といろいろあったとか

 

「けど、行動することに意味があるわ。武偵憲章7条 悲観論で備え、楽観論で行動せよよ。いない場合よりいたことを考えたほうがいい。」

 

「…それもそうだな」

 

「そう言えば、アンタってデュランダルのいる場所とか電子手帳?ってやつで調べられないの?」

 

「え…ああ。そういった人のいる場所とか事件の解決に必要な部分とか大事なところがきれいに入っていないんだよ」

 

そう、電子手帳で調べようとしてもきれいにそこだけ見れないのだ。

まるで何かに邪魔されているみたいに。

 

そう俺は答え見えてきた強襲科の棟を見る。

まあ、空振りでも自分の実力がつけばこれからもいろんな人を守れる。

しっかりと気合を入れ強襲科の棟に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

「ほう…おまえが綴の言っていたやつか」

 

そう言って俺を見るのは強襲科の主任、蘭豹先生だ

なんでも、ホンコンのマフィアの一人娘らしい。

俺よりも高い身長で俺を見降ろしてくる。

少し腰が引けていると

 

「お前…おもしろいやつやな」

 

な、何なんだ一体…?

 

「よし、1年のAランクとBランクの奴ら全員集合や!!」

 

銃弾の飛び交う強襲科の棟にも響き渡る大きな声

いったい何をするんだ?

 

 

 

 

「よし、全員そろったな」

 

そう言って一年生のAランクBランクを集めた。

そう言ってもそのほとんどは態度が悪いものばかりだ。

たぶん自分のランクが高ランクのことで高をくくっているのだろう。

でも、1年のAランクBランクは2年のAランクBランクとはかけ離れたものだ。

経験する場数が違うのだ。

まあ、それでも強襲科でAランクとBランクならそこらの不良とかよりは強いのだが。

しかし、ここまでの人数集めていったい何をするつもりなのだろう。

 

「よし、今から1年全員とこいつとで戦ってもらう」

 

はあ!?

俺は唖然とした。

まさか、こいつらと戦うなんて30人くらいいるんだぞ!

 

「蘭豹先生!ちょっと待ってください!」

 

「ん?なんや、はようはじめんかい」

 

「いやいや、無理でしょう!自分はただの情報科ですよ!それが1年でも強襲科のAランクBランク連中じゃ歯もたたないですよ!」

 

「ごちゃごちゃ言ってないではよはじめや!大丈夫やきっと死なんやろ」

 

大丈夫なのかこの教師!

 

「せんせーい。自分ら何で情報科の先輩と戦わなければならないんすか?」

 

がむを食べながらそういう1年。自分の実力が高いと思っていることがこの自信を生むんだろうな。

 

「いいからはようはじめんかい!はやくせんとお前らのランク一つ下げるぞ!」

 

その声で1年はいやいやながらも準備を始める。

 

「いやいやちょっと待ってくださいよ!俺が勝てるわけ…」

 

「うちが実力はかれんとおもっとるのかい」

 

「え…」

 

「いいからはよういけ!」

 

そう言われて俺は蹴られながらステージに上がるのだった

 

 

 

 

 

「はあ、何でこんなことに」

 

そう言って俺は手首足首をほぐす。まあ、やるからには倒しにかからないとな

 

「ちっ何でこんなことしなければならないんだよ…」

 

そう言ってこちらを見る1年たち

 

「先輩…めんどいんでちゃっちゃと負けてくれませんかね」

 

そううすら笑いを浮かべ俺をみる1年。けど、俺は

 

「それはできない。俺だってやるべき時くらいわかっているからな」

 

これは、自分の実力を上げるための特訓のようなものと思えばいい。

俺は強くならなければならない。大切なものを守れるくらいに。

それならばこれくらいの壁越えられるくらいやらないと

 

「ち、あんま調子に乗ってんじゃないぞ…!」

 

そう言って1年たちは構える。

やるからには勝って見せる!

 

 

 

 

 

 

 

 

えーとなんだろう本当は最初勝てるのかと疑っていました。

結果。完勝してしまいました。

何で何で?と思っているとアリアたちが入ってくる。

 

「白野!アンタ本当に強かったのね!」

 

「え、そうか…?」

 

俺はさっき倒した一年たちを見やる。

それぞれ体を押さえて身をよじらせている。

全員俺が八極拳で倒したのだ。

 

「けど、よかったよ自分の実力がこのくらい強くなっていたなんて」

 

俺はそう安堵した。

1年たちでもAランクの実力者を倒せるくらいには強くなったのだそこは誇れると思う。

 

「へえ、ふうん…そう…」

 

俺が少し愉悦に浸っていると、アリアがこちらを見やってくる。

ああ、なんか嫌な予感

 

「さて、俺は疲れたから休憩でも…」

 

「白野!今度はあたしと戦いなさい!」

 

…。

ほんと今日は何でこんなに唖然としなければならないことが多いのだろうか。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

その言葉を聞いたときあたしは驚いた

 

「お前にはこいつらと戦ってもらう!」

 

そういって白野が1年たちと戦わせようとしているのだ。

いくら白野でも1年上位ランクの奴らを相手にするのはまずいのではないのだろうか。

あたしは白野を蹴ってステージに上げる先生の近くに行く。

 

「先生!これはどういうこと!?」

 

「なんや神埼なんかようか?」

 

「どうして白野をあいつらと戦わせるんですか!?叩き潰されるのがわからないの?」

 

「はあ…神埼。まあいい、この試合みていればあいつの強さがわかるやろ。信じてまっとけ」

 

あたしは、そう先生に言われ仕方なく見守ることしかできなかった。

 

結果、白野は勝った。

それもほとんど完全勝利で。

 

「あいつはああ言っているが相当な実力者や。これまで相当な鍛錬でも積んできたんやろうな。実力ならほとんどSランクにちかいで」

 

そう先生はいう。この先生は一目見ただけで白野の実力を見きったのか。

白野は確かにSランククラスの戦いを見せてきた。

考えてみれば、白野は最初から強かったのだ。

あの理子さえ圧倒したほどの実力。それならSランクに近いのもうなずける。

たぶん白野は全力を出し切っていないだろう。

あたしはどうしても、白野の実力を見たかった。

 

「先生!アタシ白野に勝負を申し込みます!」

 

返事は聞かずステージに入るのだった。

 

 

 

 

 

Side ???

 

あたしはありがとうと言いたかった。

それは2人の友達も一緒だった。

バスジャックのとき体を張って守ってくれた人。

アリア先輩と一緒にいたからその人の名前をアリア先輩が教えてくれた。

 

岸波 白野

 

それがその先輩の名前らしい。

あたしはあかりにたのんでアリア先輩にきいてきてもらった。

あかりは

 

「どうやらその先輩は今忙しかったりするからまたあとで連絡するんだって」

 

あかりも彼に助けてもらったのだ。

後、志乃もいるので3人の都合があって先輩の暇な日が重なるのはまだ時間が空くだろうと思っていた。

 

まさか、2週間後強襲科の棟に先輩のほうから来てくれるとは思わなかったが

 

 

「えっ!」

 

蘭豹先生が1年の高ランクを集めたかと思うと白野先輩と戦えと来たものだ。

1年の不良たちはかなりなめていたが、あたしは一種の恐怖のようなものを感じていた。

情報科という文化系なのに隙がないような…不思議な雰囲気を持っていて…

いや…ダメだ集中しないと!

そして私は今から始まる蹂躙に身を投じるのだった。

 

 

 

 

結果あたしは負けてしまった。

先輩は相当手加減していたようだ。

確かに痛いがそれは立てないくらいに手加減された一撃だった。

今先輩はアリア先輩と話をしている。

本当に不思議な先輩だ。今見てみると全然強くないように見える。

あたしはそんな先輩に怒りは生まれてこなかった。

逆に生まれてきたのは

 

尊敬

 

あの先輩はなんでもできる。

あたしにできないこともきっとできるのだろう。

できることなら…あの人の近くでいろいろなものを学びたい。

あたし…火野ライカはアリア先輩と話す岸波先輩を見てそう思った。

 

 




17弾終わりましたが…ライカさんのヒロイン臭が強かったですね。
まあ、1年生サイドは白野君が頑張って…ゲフンゲフン!もらいますね。
次のアリアとの戦闘では戦闘の様子は詳しく書いていく予定です。
意見、感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18弾 戦妹にしてください!

ぐぁああ!少し遅れてしまった…
すいません!投稿が少し遅れてしまいました。
久しぶりの感想が来て皆様のあたたかい言葉に感激していました。

それでは本編ですが白野君がまじめに最後まで戦ったのはこれが最初です。
まじめに書いていたら遅れてしまって申し訳ございません!
それでは本編を投下します


う、うそだろ…

確かに1年生を蹂躙したし体力にはまだまだ余裕があるがアリアと戦うとは。

 

「白野!早く準備しなさい!」

 

アリアが戦闘場で準備をしている。

仕方ない。なるべく全力で戦おう。

 

「あ、白野!アンタあの超能力みたいなやつ使いなさいよ!」

 

「えぇ!!それはちょっと…」

 

さすがに無理ですよ…。

そんな人前で見せるようなものではないし…

 

「やらなかったら風穴地獄!」

 

よし、使うか。秘密と命なら天秤に掛けるまでもない。

俺は落胆しながら戦闘の準備をするのだった。

 

 

 

 

 

「白野!あの剣みたいなやつ出さなくていいの?」

 

「いや使用回数が限られているからな奥の手ってやつで出すよ」

 

そう言って俺たちはにらみ合う

 

「よーし。じゃあ準備はええな。それじゃあ始め!」

 

蘭豹のその声と銃の轟音がゴングとなりバトルが始まる。

俺はその声を聞くとすぐに飛び出す。

距離が空いてはだめだ。相手が銃を持っている以上中距離では相手が有利。

空気打ち/1の太刀なら届くが今は使い時ではない。

ならば、今は自分の射程に持ち込む!

 

「っ!!」

 

アリアはさっきの戦いで見たことがない俺の瞬発力にたじろぐがすぐに牽制ようの弾丸をガバメントから放つ

俺はアリアの持つガバメントから発砲した場合の弾丸予測線を脳内で割り出す。

どうやら、俺の胸のあたりを狙っているみたいだな。

 

なら!!

 

アリアが発砲したとたん俺は銃弾に向かってスライディング。

弾丸をやり過ごす。そして立って一歩を踏み出せば俺の射程距離!

俺は立ち上がりアリアに向けて鉄山靠を放つ。

アリアはバックステップで回避するが甘い。無理に体制を変えたせいで下がった距離が少ないぞ!

 

俺は前に跳ねながら拳を突き出して攻撃する箭疾歩を放つ。

しかし、アリアは反応体を横に動かす。

アリアよかったな胸のあれがあったら確実に当たってたぞ。

そんな、本人の前で言ったら風穴にされそうなことを考えていると

俺がつきだした手をアリアが掴む。

ま、まずい!!

アリアは俺の手を掴むと俺の体を背負い投げの要領で投げる。

 

「アンタ今余計なことを考えたでしょ!!」

 

いいえ!!かんがえてませんよ!!

 

アリアのなぜかいい勘に少しおののきながら俺は地面に向かって手を突き出す

地面に手がつくと俺は体を少し回してアリアの手を振りほどくと真上に向かって足を突き出す技穿弓腿を放つ。

カウンターのカウンター、アリアはさすがに予測はできなかったようで俺の脚はアリアの肩に入ると思った。

しかし、アリアは動体視力で俺の脚をガードするために手を出す。

ぐっ、よく反応したじゃないか。

アリアは俺の攻撃を手に受けたがなんとか体制を持ち直した。

 

しかし、その影響で俺の脚でアリアの手にあったガバメントは吹き飛ばされた。

アリアは少し後ろに下がると背中から二双の小太刀を取り出し突撃してくる。

俺は、体制を立て直すとアリアの最初の横なぎの一撃をバックステップでかわす。

そして追撃してくるアリアの小太刀を観察する。

 

アリア、さっきの攻撃で少し焦っているな。

 

小太刀の軌道が単調だ。これなら楽にかわせる。

俺が小太刀を振りぬいた後の隙を狙い攻撃しようとするがそのあとアリアがしゃがみ地面を狩るように足を出す。

 

ぐ、しまった。小太刀の動きを見すぎてアリアの全体の動きを見ることができなかった!

アリアの地面を狩る動きに俺は反応できず食らってしまう。

俺が攻撃を食らって体を傾けると追いうちのように横なぎに小太刀が迫ってくる!

俺はわざと倒れ逆立ちの状態になる。そこから手を使って体を1回転。

その遠心力でアリアの小太刀を特殊ブーツで蹴りつける!

 

これは普通は相手の脛に向かって横なぎにローキックを放つ斧刃脚という技なのだがそれの応用。逆立ちの状態から技を放った。

どうやら成功のようだ。俺の予想以上の勢いでアリアの剣を吹き飛ばし壁に当たりどこかの床に刺さったようだ。

俺は急いでバク天し体制を戻す。どうやらアリアはまだ体制を戻し切れていないらしい。

ならここが勝機!

俺は急いで電子手帳から空気打ち/一の太刀を取り出し技を放つ。

さすがにアリアに打つと怪我をさせるからなならねらいどころは…

 

(アリアの足元!)

 

俺がアリアの足元に放った技は見事床をえぐりとりアリアは崩れるように体制を崩す。

 

「これで…俺の勝ちだ!」

 

後はアリアに接近をして一発入れるだけだ!

 

 

 

 

 

 

ん、何だこの違和感…フラグ?

 

 

 

気づくのが少し遅かった。

俺が勢いよく飛び出そうとしたら何かに躓く。

それは俺が蹴り飛ばしたアリアの小太刀だった。

ああ、そう言えばどこかに突き刺さっていたもんな…

 

思いっきり飛び出していた俺は受け身もとることもできず顔面から地面に倒れる。

そこで、岸波白野の意識は遠のいた。

 

 

 

 

 

 

「う、うーん…」

 

俺が意識を戻したときは周りは何も聞こえなかった。

どうやら授業が終わるまで意識を失っていたようだな。

 

「よかった…どうやら意識を取り戻したみたい!」

 

誰かがいるのかな声が消える。

その声に俺は促されるように目を覚ました。

どうやら保健室らしい。白い天井が見えた。

俺はいたむ頭を押さえながら体を起こす。

そこには、3人の少女がいた。

1人はアリアよりも小さい身長ショートの髪を2つに結んでいる少女。2人目は俺と同じくらいの身長の金髪の少女。3人目は黒髪のロングをそのままにし大和撫子のような雰囲気を持つ少女。

俺は少しほうけながら彼女らを見る。

どうやら待たせてしまったようだ。さすがに悪いと思い頭を下げる

 

「ごめんね、待たせてしまって悪かったよ。」

 

「い、いいえ!すいません!本当は私たちのほうが謝らないといけないのに」

 

そう言って俺の顔を立てようとする。

そのあと少しして顔を上げ彼女たちを見やる。

そして頭の中に浮かんだ疑問を質問する

 

「ええっと…あなたたちは1年生だろうけど誰かな?それと、どうして俺なんかを待っていてくれたのかな?」

 

俺の疑問に一人の背が低い少女が前に出る

どうやら少し落胆しているように見えるどうしたのかな?

 

「えっと…私たちは…」

 

「白野!目が覚めたわね!」

 

1年生が答えようとするとアリアが保健室に入ってくる。

 

「アンタあたしよりも強かったなんて思わなかったわよ!それなのに、たった一度こけただけで負けるなんて本当に強いのか弱いのかわからないわねあなた。」

 

「あはは…。あれは俺が気づかなかったのが悪かったんだよ。それにちょうどあそこに小太刀が刺さっていたのは運がいいアリアの能力なんじゃないか?それならその運で俺を上回ったアリアのほうが強いんだよ。結果的に俺は負けたことになっているし」

 

運も実力のうち。

今回は運のよかったアリアが勝ったんだ。

結果がものを語る武偵にとって負けたなら負けなのである。

 

「あんたねえ…まあいい。また今度戦ってもらうわ。」

 

そう溜息を洩らすアリア。

なるべくアリアと戦うことはなしにしてほしいな。

 

「白野。あなたの実力は分かったけど、デュランダルはどんな手を使ってくるかわからない。だから、護衛の件は続行することにした。なるべく周りに人がいたほうがちゃん異常事態に対応できるでしょう」

 

そういうアリアに俺は思考する。

アリアに実力を認めてもらったのはありがたいと思う。それなのにここまでデュランダルを警戒するのはアリアの勘がここまでの警戒を持たせているのだろうな。勘だけなら信頼には足るには乏しいがこれまでのアリアの勘は結構当たっている。それなら俺は信じるだけだ。武偵憲章1条 仲間を信じ仲間を助けよ だ。

 

「わかった。俺はアリアに従うよ」

 

「そう、わかったわ。後、白雪も今回の護衛の件に賛成した。今は白雪の引っ越しとトラップの設置を行っているわ。怪我をしているところ悪いけどこっちを手伝ってもらう」

 

さすが早いなアリア。キンジも痛みと一緒に了承されたのだろう。

俺はアリアに次いでベッドを立とうとすると

 

「あ、あの!ちょっと待ってください!」

 

その声が響いた。

おっと、いけない。本来なら彼女たちの用にこたえるために残っていたのにアリアとの話のせいで脱線してしまったみたいだ。

 

「ご、ごめん!話をそらしてしまって!」

 

「あ、いえ…別に大丈夫です…」

 

そう言って背の小さい子はその小さい体をさらに小さく委縮させる

 

「あかり。あなたまだ言っていなかったの?」

 

あかりと言えば確かアリアの戦妹だったはずだ。

どうやらこの背の小さい子があかりちゃんらしい

 

「す、すいませんアリア先輩…時間をとらせてしまって…」

 

「いいえ。たぶんあたしが邪魔をしたんでしょ?ならあたしが悪かったわ。話を続けて頂戴」

 

そう言ってアリアは一歩下がる。

どうやらこちらの話には入らないみたいだ。

というかアリア。後輩たちに対する態度なにか俺たちと違わないか?

1年生の前ではできる先輩でいたいのかな。

俺はそのことについては触れず。後輩たちの話を聞く。

 

「ええっと…私は1年強襲科の間宮あかりと言います。それでこっちが同じ強襲科の火野ライカ、それでこっちが探偵科の佐々木志乃です。」

 

そう言って先に金髪のほうを紹介しそのあと黒髪さんのほうを紹介する。

1年の仲のいい友達のようだな。

名前を紹介してもらっても思い当たることはない。彼女たちに何かしたかな俺。

俺の反応に佐々木さんは反応したのか話の続きを話す。

 

「私たちは先日のバスジャックの件で白野先輩に守ってもらいました。それで今回はそのお礼ということでまいらせてもらいました。」

 

バスジャックで守ったって…。ああっ!あの時俺が体を張って守った時の3人組か!

たぶん気づいたと思ったのだろう俺の反応を見て佐々木さんは話の続きを話す。

 

「私たちはふだんはバスには乗らないのですが、その時はいろんな偶然が重なって一緒のバスに乗ることになってしまったのです。先輩が私たちを守ってくれたおかげで私たちは無傷で済みましたが先輩が私たちを守って怪我をしたって聞いて…どうにか謝れないかなと…」

 

なるほど、どうやら俺を怪我させたことを気に病んでいるようだ。

武偵にとっては怪我をすることは日常茶飯事なので気にする必要はないのだが

 

「そんな…別に大丈夫だよ。それなら俺だってUZIを破壊するために技を出せばよかったのに出さなかったんだ。それなのに謝ってもらうのはちょっと悪いかな」

 

まあ本当は守るためのコードキャストを使ったのだがそれは俺の判断ミスだ。

最初から破壊するために使えばよかったのに目立つことを気にして守るためのコードキャストを使ったのだ。

そんな俺のために謝ってもらうのはさすがに悪いと思った。

 

「いいえ、守ってくれた白野先輩のおかげで私たちをちゃんと守ってくれました。確かに別の場所に被害は来たでしょうが私たちを無傷で守ってくれたことは私たち自身が感謝をしています。なので、このことはちゃんと謝っておきたいのです」

 

俺はその言葉に反論しようと思ったが…思いとどまった。

彼女たちの目を見てみると本当に申し訳ない気持ちであることが見て取れた。

そんな彼女たちの気持ちを無碍にすることはできなかった。

けど、

 

「謝ってくれるのはありがたいけど、俺は謝罪より聞きたい言葉があるな」

 

彼女たちはきょとんとした顔をしている

すると金髪の少女、火野さんは俺の言ったことには気づいたようだ

一歩前に出て声を出す。

 

「白野先輩!バスジャックの件ではあたしたちを守ってくれてありがとうございました!」

 

そう言って頭を下げる。

後ろの二人も火野さんにつづいて「「ありがとうございました!」」といって頭を下げた。

それに俺は

 

「ありがとう。そう言ってもらって俺も守ってよかったと思うよ」

 

俺は彼女たちにそういう。

顔を上げた彼女たちはとても晴れやかな顔をしていた。

うん、これで今回の問題はおしまいだ

 

「あかり。もういいの?」

 

「はい!アリア先輩今回はありがとうございました!」

 

そう言って間宮さんはアリアに頭を下げていた。

どうやらアリアも今回の件に噛んでいたようだ。後で一言言っておかなければな。

 

「それじゃあ、アリア寮に帰…」

 

「あの!白野先輩!ちょっといいっスか!」

 

そう言って俺に話しかけてきたのは火野ライカさんだ

 

「どうしたの火野さん?」

 

「あ、ライカでいいです。えっと白野さんはどうして情報科なのにあんなに強かったんすか!?」

 

そう言えば火野…いやライカは強襲科だったな。それならあの戦いも見ていたのだろう。そう言えば1年生と戦ったときにライカとも戦ったな。

俺はライカの質問に答える

 

「俺にはやることがある。そのために俺は強くあろうとしている。それが今の実力になっているだけだ。」

 

彼女は真剣に聞いていた。

周りもその空気を見て口を紡いでいる

少しの間があるとライカは決意したように

 

 

 

 

 

「白野先輩!あたしを…」

 

 

 

言った

 

 

 

 

 

「…戦妹にしてください!」

 




18弾終わりました
次からはちゃんと原作通りに進めます。
シオウさん、トールvさん、ガルテガルテさん、ナスカ級さん感想ありがとうございます。
意見、感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19弾 占いの未来

平日だと書く時間が少ししかないからそんなに多く書けませんでした。
明日はなるべく多く書くようにします

それでは投下します。


「…の!白野!聞いているの!?」

 

「あ、ああ。ごめん」

 

俺はアリアと一緒に寮に帰っていたのだが俺は別のことで頭を悩ませていた。

 

「ライカとの戦妹のこと?」

 

「え、うん。本当に俺でいいのかなって」

 

俺はあのライカの戦妹宣言をしたとき俺はすぐには返答できなかった。

俺にはある目的がある。それにはライカに迷惑をかけるかもしれない。

なので、俺は戦妹のことはもう少し待ってくれと返した。

ライカは少し残念がったがまだチャンスとがあると思いそこは引いてくれた。

 

「アンタは本当に強いのよ。あたしを圧倒するくらいなんだから。白野が迷惑するのなら断らないと。こういったことはちゃんと速くに返答しなさいよ。」

 

「…ああ。わかっている。」

 

そう、これは俺のわがままのせいで先送りにした問題だ。

なら、なるべく早く返答をするのが筋である。

俺はなるべくこの問題を表情に出さないようにアリアと寮に帰るのだった。

 

 

 

 

 

俺が家に帰ると引っ越しの準備は終わっていたようで白雪さんが夕御飯を作っていた。

ありがたいな。普段は俺が作っているためこういったほかの人たちの手で食べるのは久しぶりだ。さすがに悪いと思い手伝おうとしたのだが止められてしまった。まあ、大切なキンジのために自分一人で手作りを上げたいのだろう。俺は無理に手伝おうとせず皿の用意を始めるのだった。

 

 

 

 

 

「「いただきます」」

 

俺とキンジがちゃんと挨拶をして、ご飯を食べる。お、この魚の煮つけおいしいな。そう思いながらご飯を食べる。

 

「で?何であたしの席にはこれしかないのかしら?」

 

「アリアはそれだけ」

 

アリアの席にはどんぶりに入ったご飯だけだ。俺は最初から気づいていたがこのことに突っ込むほどの勇気はなかった。

 

「何でこれだけなのよ!」

 

「文句があるならボディーガードは解約します」

 

ここぞとばかりアリアをいじめる白雪。アリアはいらだちの雰囲気を立ち上らせながらご飯を漠々とかきこんでいた。

ああ、白雪さんの味噌汁はうまいなあ…

 

 

 

 

 

アリアとキンジのテレビのチャンネル争いを隣でしているのを感じながら俺は体のストレッチをしている。今日のアリアの戦いで相当筋肉を使ったからな。体の筋肉をほぐして明日に疲れを残さないようにしないと。

するとリビングにタロットのようなものを持って白雪さんが入ってくる。

 

「キンちゃんこれ、巫女占札って言うんだけど…」

 

「巫女占札っていうと…占いか?」

 

「うん。キンちゃんのこと占ってあげるよ。将来のこと気にしていたみたいだから。」

 

「ふーん、じゃあやってもらおうか」

 

白雪さんがキンジのことを占おうとしている。たぶんキンジとの今後のことについて調べたいんだろう。そのことについては特に突っ込まないんだが…俺の今後のことについては興味がある。最近不幸なことが多いからな。何かいいことがあればいいのだが。

 

「白雪さん。俺についても占ってくれないかな」

 

「うん。いいよ」

 

白雪さんはいい笑顔でこちらに答えてくれる。この表情を見たら本当の大和撫子なんだけどなあ。

 

「じゃあキンちゃんはなにがいい?金運とか恋占いとか恋愛運見るとか健康運占うとか恋愛運占いがあるけれど。」

 

ほら、これがこの武双巫女さんの怖いところだ。とてもわかりやすい刷り込み効果で恋愛について占わせようとしている。まあ、見ようによっては一途の少女なのだが

 

「じゃあ数年後の将来俺の進路がどうなっているか占ってくれ」

 

そして、そんな少女の気持ちがわからない朴念仁のキンジさんさすがです。

そのあと小さな声で巫女さんの口から聞こえてはいけない言葉が聞こえたのでここは黙っていた。

 

そのあと天使のような笑顔でカードを並べ何枚かのカードを表に返した。

最後のカードを開いたとき白雪さんの手がぴくっと止まる。

 

「どうした?」

 

俺が尋ねると白雪さんは少し険しい顔をしたあと微笑みを浮かべる。

 

「え、あ、ううん。総運良好です。よかったねキンちゃん。」

 

「おい、それだけか?何か具体的なこととかわからないのか?」

 

「ええっと、黒髪のこと結婚します。なんちゃって」

 

そう言って微笑みを浮かべるが…それは嘘だろう。

白雪さんが迷っている目をしている。きっと何か素直にキンジに言えない占い結果が出たのだろうな。

俺は深く詮索しないようにした。

 

「そ、それじゃあ次は白野君の占いをするよ」

 

「あ、ああ。それじゃあ頼むよ。俺も最近運が悪いからこれからどうなるか占ってくれ」

 

わかったと言って占いを始める白雪さん。

さっきのように札を並べて表に返していく。

そして最後の一枚を引いた…そのカードを見たとたん白雪さんはカードを落とす。

 

「どうしたんだ?」

 

キンジが尋ねかける。白雪さんはとても動揺しているようだ。キンジでもわかるほど動揺の色が見える。

 

「あ、う、うん。ちょっとまだ悪い運が続くから少し驚いただけ」

 

キンジはドンマイだなと俺に言うが…俺はそれだけじゃないだろうと思った。

さらに目が泳いでいる。どうやら白雪さんは嘘を付く時目が泳ぐ様だな、用チェックだ。

 

白雪さんは結果を隠すように札を片づける。

そこにアリアがテレビの予約を終えこちらに近づいてくる。

アリア…録画するならキンジにテレビ譲ってもよかったんじゃないか…?

 

「へえ、白雪面白いことしているじゃない。あたしも占ってよ」

 

「総運ろくでもないの一言に尽きます」

 

即答だった。

本当に二人は仲がいいんだなあ。このまま逃げ出したいよ。

俺を挟んでいるため不用意に逃げだすこともできず二人の喧騒に巻き込まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はその日の深夜、リビングに人の気がしたのを確認するとリビングに出る。

それは白雪だった。占いの結果がどうしても気になり白雪さんに深夜リビングに来てほしいと頼んだのだ。

顔はよく見えないがこちらを見る白雪さん

 

「えっと、白野君どうしたのかな…?」

 

「こんな夜中に呼び出してごめん。けど、どうしてもさっきやった占いに気になったことがあったんだ」

 

「えっと、私の占いが何か悪かったかな?」

 

「い、いや!別にケチをつけようとかじゃないんだ。けど、俺にはあの時白雪さんが俺の占いについて何か隠していることがあるんじゃないかなって思って…」

 

俺の質問に唾を呑む声が聞こえる。どうやら俺の勘は当たったらしい。

何か隠している。

白雪さんはこちらの雰囲気に気づいたのか覚悟を決めたように話し出す。

 

「ごめんなさい白野君。私は白野君に確かに隠し事をしました。」

 

「…。」

 

俺は無言で白雪さんの言葉を聞く

 

「私は白野君に隠し事をしたけど…それは分からなかったからなの」

 

「わからない?」

 

俺はその言葉の意味がわからないと伝える。

 

「ごめんなさい…。白野君は本当に何もない…。無のような占いだったの。まるで真っ黒な絵のような結果だった」

 

「…。」

 

俺は白雪さんからの説明を受けたがそれでもよくわからなかった。

けど、なんとなくわかったのはたぶん幸運なこともあるのかもしれないがとてつもなく不幸な結果もあるかもしれないということかもしれない。

 

白雪さんは本当に困っているような雰囲気をしている。

これ以上困らせるのはいけない感じがする。

 

「ごめん白雪さん。とても言いにくいことだったのに言ってくれてありがとう。」

 

そしてそのあと白雪さんにおやすみと言い部屋に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、白野は気づかなかった。

部屋が暗かったため白雪さんの顔がよく見えなかったのが悪かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい…。白野君。こんなこと言えるわけがない…。」

 

白雪は先ほど仮眠をしていた時予知夢を見た。

予知夢は変えられない未来。そんな未来を変えられるのは神さまのような人物である。

予知夢については本人に伝えてはいけないという掟だが私は個人的にも伝えるべきではないと思った。

それは、近い未来、私とキンちゃん、アリアと何人かの仲間に敵対するように対面に白野君が立っていた。

そしてそのあと血みどろで倒れる白野君が見えたのだ。

 

 

 

 

白雪さんはみんながいる部屋を見つめていた。

 




19弾終わりました。
明日も続けて投下します。
意見、感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20弾 新たな出会い

昨日言った通り今日も投下します。
今回の話では初めてオリキャラが出ます。


次の日の朝俺は自主連のために起きたが今日はもう一人起こす

 

「キンジ。起きろ朝連行くぞ」

 

デュランダルに狙われるかもしれない今朝連に行くだけでも狙われるかもしれないとのことでボディーガードとしてキンジについてこさせることが条件となった

 

「う、ううん…。今日は休みにしてくれないか…。」

 

まあ…キンジは朝が弱いからな。

まあ、休むこともあるが昨日も休んだんだ。今日も休んだならさすがに体力的に下がってしまうだろう。ここはキンジに納得してもらわないと。

 

「すまんなキンジ。こういうことは毎日するからこそ意味があるんだ。頑張って起きてくれ」

 

俺がそういうとキンジはやっと起きてくれた。

キンジも運動するときの服装に着替え俺たちは寮を出る。

 

「ペースはどうする?」

 

「俺は別に白野のペースに合わせていい」

 

キンジがそういうなら俺のペースでいくかな。

いつもの公園に向けて走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「キンジ…大丈夫か…?」

 

「ハァ…ハァ…んぐっ!ハァ…お前…いつもこんなに…速いのかよ…ハァ」

 

キンジは息もだえもだえだった。

そうかないつものペースだけど

 

「ほ…ほとんど…全力で…走っていたんだぞ…お、お前の…ペースが…異常なんだ…」

 

アサルトをやめてから体力が落ちたからだよ。

キンジに強制的に納得させる。

公園のベンチで少し休憩しているとキンジが少し落ち着く。

 

「まったく。アリアにも困ったもんだ。デュランダルなんて本当にいるのか?」

 

キンジはそう俺に質問してくる。

ふむ、俺にもわからないからいるなんて言えないがこうは言っておいたほうがいいだろう。

 

「まあ、俺にもいるかどうかわからないけど、そこはアリアを信じるべきなんじゃないか?それがパートナーってものだろう?」

 

俺の返答にキンジは黙って聞きそして口を開く

 

「確かに、そうかもしれないが…俺はアリアを全面的に信じることができない。あいつは大事なことを隠そうとするからなイ・ウーとか」

 

イ・ウーか…

アリアが追っている組織。アリアの母親かなえさんに罪を着せた組織か。

俺もイ・ウーについて調べてみたが名前とかこれまでの大きな悪行とかだ。組織内部の重大なこととかは書かれていなかった。電子手帳が隠そうとするのだ。何か確信的なことなのかもしれないからか。

たぶんアリアが話そうとしないのはイ・ウーという組織がとてつもなく大きな組織だからだろう。簡単に話すと命の危険にさらされるようなことになるのだろう。

かなえさんの罪も俺でも冤罪が着せられているとわかるほどひどいものだった。

それなのに有罪にさせられるのはやはりイ・ウーという組織が国家に影響を与えるほどなのだろう。

 

俺はイ・ウーのことをかいつまんで説明しようとしたがやめた。

国家に影響を与えるほどの組織のことをキンジに話してしまったらぼろが出たとき普通の生活をしたいと思うキンジに迷惑をかけてしまうだろう。

頭の中に出てきた説明に口を閉じ俺が思ったことを口にする。

 

「イ・ウーについては俺がそこまで知らないから言えないが…アリアのことは信用してもいいんじゃないか」

 

キンジはまた口を閉じ押し黙る。

キンジは一応アリアのことは知っているみたいだな。

考えている目が結構深刻な目をしている。

まあ、悩むならしっかり悩めそれがお前の力となるからな。

 

「よし、休憩終わりだ。帰るぞ」

 

「うげ、またあのペースで走るのか…」

 

キンジが愕然とする

 

「いや、帰りは魔術の訓練をしながら帰るからちょっと遅くなるかな。

それにスタミナも使うから体力的に足りないから後半はさらに遅くなるよ」

 

キンジ少し安堵をする。

さて、そろそろ帰って朝ごはんの準備をしないと

 

 

 

 

 

 

魔術回路を開いていつものように走って帰る。

まあ、後半はめちゃくちゃ遅いって言ったが前半は逆だ。

しかも、魔術を使っているから来る時よりも速く走る。家に着いた時には二人して満身創痍だった。

リビングに入るとキンジはソファに寝転んだ。

まあ、めったに走らないから疲れたんだろうな、しばらく寝かせてやろう。そう思い俺は朝食の準備をするのだった。

 

 

 

 

 

朝には特に何もなく放課後となった。

今日は秋葉原に用がありそちらに向かう。

護衛についてはおいてきた。

アリアには1時間ほどで帰ってくるといった。それでも駄目と言われたが行き先を秋葉原と伝えるとなんとか納得をした。

秋葉原は人がたくさんいるため武偵封じの町と言われるがその人の多さが今回のキーポイントだ。

デュランダルの手口は目標を人の目につかないところに連れて行って1対1でしか戦わないと言われている。それなら人のたくさんいる所ならデュランダルに狙われることはないと伝えなんとか納得させた。

秋葉原で用を済ませると帰路に就く。

速く帰らないとアリアに風穴開けられるからな。

 

「ねえ、君。俺たちとお茶しない?」

 

ん?あそこで何人かの不良が1人の少女に声をかけている。

囲まれているため抜けられないようだな。

少女は迷惑しているが強く出られないようだ。

仕方ない、迷惑しているなら助けないと。

 

「ちょっと君たち。彼女が迷惑しているじゃないか離してやれよ」

 

「ああ~ん?なんだよテメー?」

 

不良の一人がこちらに近づいてくる、うわ、近いって。

俺は少し身を後ずらせるとさらにもう一人不良が出てくる

 

「俺たちはこのこと遊ぶ約束なんだよ~邪魔してんじゃねえぞ」

 

「嘘をつくなその人は迷惑そうな顔をしていたぞ」

 

「ああ~ん?どこが迷惑そうな顔をしているんだ~?」

 

めっちゃしているじゃん。それにアンタはああ~ん?しかしゃべれないのか

俺は彼女を見た。それはとても美しい人だった。

髪は腰まで長い淡い金髪をそのまま、碧眼の端正な顔立ちでちょっと俺より小さい身長、落ち着いた服装をしていた。

そして雰囲気は活発そうななか落ち着いた雰囲気をかもし出している

外国の人だろうか。なれない土地を歩いていたらからまれたのかな。

俺は不良たちをしっかりと向かいあった。

 

「お前たちが迷惑をかけているからほっとけないだけだ」

 

「ああ~ん?武偵でもないような貧弱みてーな奴がしゃしゃり出てんじゃねえぞ」

 

「俺は、武偵だがな」

 

そう言って武偵手帳を出す。

こういった権力を振りかざすのは好きではないんだがな。

武偵だとわからせると身を引くと思ったが不良はこちらに向かってくる

 

「ハッ!お前のような貧弱そうな奴が武偵なわけない。もし武偵だとしても所詮Eランクとかの連中だろ!」

 

そう言って俺に攻撃を仕掛けてきた!

不意打ちだが所詮は不良のスピード、余裕でよける。

後ろに回ると不良は動揺する。まあ、見えないように後ろに回り込んだからな。

後ろから手首をつかみ背後に回り抑え込む。

俺はなるべく軽蔑した声で言った

 

「俺はSランクの武偵だ。あんまり俺の機嫌を損ねないでくれよ。殺したくないからな」

 

ここは別に嘘を交えてもいいだろう。

その声が聞いたのか不良たちはあわてて逃げだした。

ふう、他愛もないな。

 

「えっと、君。大丈夫」

 

「え、あ、はい。大丈夫です」

 

彼女はにこやかにほほ笑む。

とても輝いた笑顔だ。俺は一瞬彼女の笑顔に見惚れてしまった。

 

「助けていただいてありがとうございます。これから人に会う約束をしていたんで困っていたんです」

 

「ああ、いえ大丈夫ですよ」

 

「あの!何かお礼をさせてくれませんか。ご迷惑をおかけしましたし」

 

彼女がそう持ちかけてくる。

普通ならかわいい少女にそう言われたらついていくだろうがアリアを待たせてある。

ついて行ってアリアの機嫌を損ねてしまうと風穴を食らいかねないからな。

 

「いえ、こちらも仕事ですから。人に会う約束があるのでしょう?速く行ってやってください」

 

「あ、そうですね。助けていただいてありがとうございました。それじゃあこれで」

 

そう言って彼女は振り向いて行こうとしたがこちらをまた見る

 

「あの、武偵さん。名前だけでも教えていただけませんか?」

 

彼女がそうこちらに聞いてくる。まあ、名前くらいなら教えてもいいかな

 

「東京武偵校2年の岸波白野です。」

 

「白野さんか…。白野さん今回はありがとうございました。えっと、名乗らせておくのはわるいし私の名前は十六夜(いざよい)彩音(あやね)と言います。母親がイギリス人のハーフだったからクオーターなの。一応白野さんの同い年かな。」

 

そう言って彼女はこちらに話しかける。

その顔はとても輝いていた。

 

「それではこれで」

 

そう言って十六夜さんは人ごみの中に消えていった。

少しほうけていたが、時間が迫っていることに気づき俺はアリアのもとに走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

白野は気づかなかった。

淡い金髪がこちらを向いていたことに

 

 

「白野さん…」

 

 

その眼からは何の感情も見えなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアはゲーセンにいた。

どうやらこの前キンジ達と一緒に来てはまってしまったらしい。

俺は少し遅れてしまったが、ひたすら遊びつくして機嫌がいいアリアからは特に何も言われなかった。

 

機嫌のよい彼女のゲーセンでの話を聞きながら寮にある部屋に向かう。

ドアを開けようとドアノブに手をかけると

 

ドタドタ!

 

何かが暴れるような音が聞こえる。

俺は一瞬何の音かと思ったが、まさかデュランダルが攻めてきたのかと思い気持ちを切り替える。

アリアに中で何かが暴れていると言うとアリアは武装解除をし部屋に突入の準備をさせる。

準備ができ俺とアリアは部屋に突入する!

 

「…っで。これはどんな状況なんだ…?」

 

それはキンジが白雪さんに襲い掛かっている図が見えた。

しかもキンジは上半身裸、白雪さんは服をはだけさせている。

 

「こ、…こんのぉぉぉ…」

 

お隣では怒り狂えるアリアさんが唸っている

 

「アリア…キンジは上半身裸なんだ…さすがに手加減させてやったほうが…」

 

「こんのバカキンジぃいいい!」

 

ああ!俺の話を聞いていない!

思いっきりキンジに向かってガバメントを打つアリア。

キンジは驚いた猫の如く逃げ出す。それを追うライオンの如きアリア。

キンジは急いでベランダを開けると東京湾に向かい跳び出した。

 

「頭を冷やしなさい!浮き輪はあげない!」

 

そう、東京湾に向かい叫ぶアリア。

俺はその光景を見て

 

(風邪をひかないようになキンジ…)

 

さっきの光景については突っ込まない。というか突っ込みたくない

俺は風呂場からバスタオルを持ち出し海で泳いでいるキンジを助けるために部屋を出るのだった。

 

 




20弾終わりました。
ついに20弾まで行きました!これからもがんばって投下いたします!
オリキャラについてはこれからも増やしていきます。
えんとつそうじさん、死神の逆位置さん、シオウさん、rassyuさん感想ありがとうございます。
意見、感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21弾 信じる心

書いていて思いました。
めちゃくちゃアリアが白野に対してヒロインしていることに。
アリアは白野ルートには入らないんですけどね。
それでは投下します。


まあ、手遅れだったのかキンジは風邪をひいた。

しかし珍しい。キンジは病気とかしたところを見たことがないからな。

キンジも普通の薬は効かないとか言っていたし効くのは確かアメ横にしか売っていない大和製菓の『特濃葛根湯』しか効かないとか言っていたから後で買いに行かないとな。

さすがに朝には薬局は開いていないからキンジの看病をして学校へ向かう。

白雪さんは学校を休んで看病すると言っていたがキンジがさすがに困るということで何とか学校へ行かせた。

ふむ、薬を買うなら昼に買いに行ってやるか。

 

 

 

 

 

昼休み俺がアメ横の薬局に行くと先に先客がいた

 

(ん…アリアか?)

 

ほう、さすがに風邪をひかせたことは悪いと思ったのかな。

俺は薬局に入っていくアリアを見て入らず外で待つことにする。

アリアが出てくると俺もアリアに話す。

 

「よう、アリアもしかしてそれってキンジのか?」

 

「は、白野!?何であなたここに!?」

 

「俺はキンジに薬を買いに来たら先客がいたからな待たせてもらった。」

 

俺はここまで言うと寮へ向かうために背中を向ける。

これ以上攻撃したら風穴だからな。アリアの機嫌メーターは見えているものだ。

アリアは小走りで近付いてきて俺の横へ並ぶ

少し怒ったような感じを出しているが、暴れることはないようだ。

俺はアリアに昨日言えなかったことを言う。

 

「キンジのこと…」

 

「…?」

 

「許してやれよ」

 

「…」

 

アリアは俺の発言を聞きうつむく

しかたない。もう一言言ってやるか

 

「キンジがそう簡単にアリアの元から逃げ出さないよ。きっと何か不幸が続いただけさ。」

 

「…わかってる。」

 

そう言ってアリアは少し歩くペースを速める。

まったく、二人とも素直じゃないな。

歩くペースを速めたアリアを追って俺も歩くペースを速めるのだった。

 

 

 

 

 

部屋に入ってキンジを見ると眠っているようだった。

アリアはキンジの横に特濃葛根湯を置くとキンジの額に手を置く。

 

…。

俺…邪魔だな。

アリアに気づかれないように部屋を出るのだった。

 

 

 

 

 

寮を出た後少し道をふらふら歩いていると

 

ぐ~

 

そう言えば、昼飯食っていないからな。近くにいい店がないかと歩いていると

 

「あれ、レキさん?」

 

レキさんを見つけた。

ドラグノフを肩にかけ反対の道から歩いてきた。

どうやらクエストの帰りみたいだな。

レキさんもこちらに気づいたのかこちらに歩いて向かってくる。

そして、俺の前にきたので

 

「こんにちは、レキさん。クエストの帰りかな」

 

こちらの問いに頭をコクっと下げて肯定する。

 

………

 

(…気まずい…。)

 

話して置いて何だがそれ以上話すことなく気まずい雰囲気が場を包む。

俺は、少し冷や汗を流していたが今の状況を考えてある提案をする。

 

「そ、そう言えばクエストの帰りならお昼食べてないんでしょ?」

 

その問いにレキさんはまた首を縦に振り肯定を示す。

 

「それじゃあ、一緒に行かない?俺も食べていないから。おごるよ」

 

またレキさんはまた首を縦に振る。

ふう、よかったなんとか場は保ったようだ。

 

 

 

 

あれ?これってナンパじゃない?

正体不明の悪寒によって俺は気付かされるのだった。

 

 

 

 

 

 

そのあとなぜか不調の電子手帳を駆使してこの付近のおいしい店を調べ中に入る。

何とここの付近に中華料理屋があるとは思わなかったな。

 

「ハッ!これは!」

 

「?」

 

レキさんは首をかしげているがまあそれはそうだろう。

何とそこは『紅洲宴歳館・泰山』それはあの月の世界で外道神父も愛した『激辛麻婆缶』の味のモデルとなったところではないか!

俺は感動して店の前で呆然としていた。

 

「…あの、白野さん。入らないのですか?」

 

「…あ、ああごめん。それじゃあ入ろうか」

 

レキさんの声を聞き店に入る。

そして香る独特の唐辛子のにおい。

ムネアツです。

席に座るとレキさんにメニュー表を渡す。

 

「…白野さんはこれを見ないのですか?」

 

「うん。俺が買うものは決めているからな」

 

「…それなら私もそれを」

 

レキさんがそういうならと俺は店員を呼び出し。激辛麻婆豆腐を頼むいやあ楽しみだな。

しばらく待って運ばれてくる麻婆豆腐をとる。

蓮華を手に取りまず一口。

 

そう、これだ!この味だ!このとてつもない辛さの中に隠されているこのうまみ。

まるで無限の暗闇の中にある光を見つけるような希望をこの麻婆豆腐から感じられる。

一口一口を味わって食べ、それでも決して手を止めず食べ終わった。

ふう、満足した。と思い、レキさんのほうを見ると

 

「な!?もう食べ終わっているだと…!」

 

レキさんはなんでもないように水を飲んでいる。

馬鹿な!この辛さの中俺よりも速く食べ終わるなんて…レキさんなんて人だ…!

 

「…白野さん」

 

「は、はい!」

 

「この前の怪我は大丈夫ですか?」

 

俺はその言葉に眉を寄せて過去を振り返るように見る

あの時は確か打撲だけで済んだけど確かに怪我をした。

レキさんには確かに怪我はするかもしれないけど生きて帰るからと告げて。

そのあとハイジャックとかもあったけど、なんとか生きて帰ってこれた。

俺はレキさんの質問に返す。

 

「うん、大丈夫だよ。ちゃんと言った通りに生きて帰ってこれたでしょ」

 

「…」

 

レキさんは無表情のままこちらを見ている。

いや、よく見てみるといつもとは違った表情をしている。

これは…

 

「…帰りましょう」

 

そう言ってレキさんは席を立つ

俺もレキさんに続けて席を立ちおごると言った手前、ちゃんとお金を払い店を出る。

レキさんは店の外で待っていた。

俺が出ると反対を向き学校へ向かって歩いて行く。

 

先ほどの表情の真意を胸に秘め俺も学校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

その日は特に何もなく次の日を迎えた。

キンジは薬の影響か1日で何とか持ち直したようだ。

その日は朝から依頼品の納品依頼があったので先に学校へ行きいつもの生活をする。

そこまではいつもの日常だった。

その日の昼にも仕事があり昼食が食べられなかったため放課後パンなどを持って屋上に行く。

すると、屋上から銃声が聞こえたかと思うとアリアが飛び出してきた。

な、何事!?と思う暇のなくアリアに首根っこを掴まれ連れて行かれる。

アリアに理由を聞こうとするが

 

(デュランダル 盗聴 危険)

のマバタキ信号があり俺は黙って連れて行かれる

 

そして学校裏へと出るとアリアは首根っこを離す。

 

「デュランダルの盗聴ってどういうことだよアリア」

 

「たぶんもうデュランダルは私たちに接触している」

 

「どういうことだアリア?」

 

俺はアリアに聞くとアリアは少し暗い顔をする

 

「よくわからないけど、なんだかもう迫ってきているというか…そんな感覚がするのよ。お願いあたしを信じて。もう、デュランダルが迫っているかもしれない。だから私に協力して。キンジはもう駄目みたい」

 

ふむ、どうやらアリアの勘をまた信じてやれなかったなキンジ。

アリアは遺伝的に推理の部分が欠落している。だからうまく説明できないから信じてもらえない。

キンジはいまだにアリアを信じ切れていないのか…。

 

俺はアリアを見る。

その表情から読み取る。

俺が答えられるのはただ1つ。

 

「俺はいつでもアリアを信じるよ。それが俺とアリアの約束だ」

 

俺はほほ笑みかける。

アリアは顔を赤くして涙目になりうしろを向く。

 

「ありがとう。白野」

 

「どういたしまして」

 

それだけでよかった。またこちらを向くアリアはいつものアリアだった。

 

「それでこれからどうするんだ?」

 

アリアに聞くと

 

「デュランダルはキンジ達を監視しているみたい。たぶん、あの部屋にもどういうわけか監視の目が入っている。だからあたしたちは遠くから監視をする。」

 

「そうか…。わかった。俺はなるべく気にせずに生活をしているよ」

 

「盗聴器も無駄に探さなくていいわ。私がちゃんと作戦を立てているから」

 

「作戦って?」

 

アリアに問うと逆を向き少し歩くそしてこちらを振り向きながら

 

「内緒よ」

 

…。

まったく、本当にこの貴族様は。

 

「それじゃあ白野たのんだわよ!」

 

わかりましたよアリア様。

そう心の中で答え俺たちはそれぞれの場所へ行くのだった。

 

 




第21弾終わりました。
そして、すいません。
大変私事ですが、今週から自分資格試験がありましてその勉強のために今週一週間はちゃんと投下できないかもしれません。
試験が終わったらしっかりと毎日投稿を再開します。
本当にすいません。
真九郎さん、ナスカ級さん感想ありがとうございます。
意見、感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22弾 暗躍する思い

1週間ぶりの投稿です。
すいません。自分の都合で投稿が遅れてしまい本当に申し訳ありませんでした。
これからも投稿頑張っていきますので応援よろしくお願いします。
それでは投下します。


さて、帰ってきたのはいいもののどうしたらいいのやら。

盗聴器を探していてもし犯人にばれてしまってはアリアの作戦の迷惑になってしまうし、これからは後手に回るしかないかな。

何かあった時の対処用に準備をしておいたほうがいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

俺の懸念もつかの間1週間が過ぎた。

デュランダルの情報も入ってこない。何もないことはいいことだが。

今は放課後の下校中。仕事があったので少し遅れて寮に戻る。

学校を出るとレキさんとあった。

護衛のために残ってくれたらしい。

わざわざ残っていてくれたお礼をレキさんに言うと頭を少し縦に振り寮に戻るために振りむく。

確かに何もないことはいいことだが少し進展があったほうがいいのかもしれないな。

速く解決しないとみんなに迷惑かけるし。

デュランダルのことを気にかけていたが思えばライカとの戦妹のこともあったな。

そろそろ返答したほうがいいかもしれないと思っていると俺の携帯が鳴る。

 

『from キンジ

すまないが今日は白雪と花火大会に行くことにした。

部屋でゆっくりしていてくれ。』

 

ふむ、そう言えば今日は花火大会だったな。

なるべく危険を避けるためにそう言ったところには行かないほうがいいのだがまあ、花火大会なら人もたくさんいるだろうし、護衛も付いているだろうから大丈夫かもしれない。

しかし、俺がなるべく何も起こさないようにじっとしているのにキンジ達は遊びに行くのか…何かいらっときたな。

 

しかしそこでふと思う。

 

「レキさん」

 

俺が声をかけるとレキさんは足を止めこちらを向く。

 

「一緒に花火大会に行こう」

 

レキさんは何事かというように首を傾けていた。

 

 

 

 

 

 

花火会場は人が多いが、まあ狙われにくさをとるなら仕方ないと妥協する。

今、俺はレキさんと一緒に屋台がある通りを歩いている。

キンジ達が遊びに行っているなら俺も護衛付きなら遊びに行ってもいいよなということでレキさんと遊びに来た。

レキさんは小さな花火が飛んでいる空を見ながらこちらについてくる。

しかし、ポーってしているから何かはぐれてしまいそうだな。

俺はレキさんの前まで行き手をとる。

外気が当たって少し冷たいが少し立つと内側から暖かい熱を感じる。

いつもロボットのようなレキさんでもちゃんと人なんだなと改めて知覚する。

 

「もうすぐ花火の本線が始まるから河原のほうまで行こう!」

 

そう言って俺はレキさんを引っ張っていく。

彼女の表情は相変わらず無表情。

それでも雰囲気は…とても和やかに感じられた。

 

 

 

 

 

 

「いやあ、すごかったな」

 

花火の本線が終わりしばらく海を歩いていて近くのベンチに座る。

いつもなら気まずくなる無言の時間もこのような雰囲気なら心地よく感じるものだなと座りながら思う。

ドラグノフを肩からわきのほうに置きベンチに座るレキさんを隣に感じながら空に浮かぶ月を見る。

みんなと戦い勝利した場所。

今あの場所はどうなっているのだろうか。

あの時の仲間たちがいるのだろうか。

もしいたとしたらまた一緒に戦ってくれるのだろうか。

俺はそんな思いを心に持ちあの空を見上げる。

 

「…白野さん?」

 

「…っ。何?レキさん」

 

俺が上の空でいると隣から声が掛けられる。そちらを見るとレキさんはこちらをまっすぐ見る。まるで、こちらの心の内を読んでいるみたいに。

 

「どうかしたのですか?」

 

「…いや。なんでもないよ」

 

そう言って前を見る。暗く揺らめく海は町の明かりできらきらと輝いている。

砂浜の奥のほうで手持ち花火のあかりが見える中もう一度声が聞こえる。

 

「白野さん」

 

もう一度その声が聞こえもう一度彼女の顔を見る。

相変わらずの無表情。

その表情はあの飛行機の中でも見せたような…

 

「…どうして、そんな悲しそうな顔をするのですか?」

 

「え?」

 

俺はそんな顔をしていたのだろうか。

なぜ俺はそんな顔をしているのだろうか。

 

…わからない。

けど、彼女はそんな俺の表情を見た。

余計な不安をかけてしまったみたいだ。

だから俺は返す

 

「なんでもないよ。」

 

俺はなるべく笑顔を浮かべながら返答をする。

レキさんはいまだ不安そうな表情を浮かべるが、なんとか表情を取り戻させる。

と言ってもいつもの無表情だが。

 

「…白野さん。私は風からの命令であなたを守るように命じられている。私はあなたを守ります。命をかけてでも」

 

そんなレキさんの言葉。いや、これは決意か。それはとても固い。

レキさんが命をかけて守るなら俺も守らないといけないな

 

「それなら俺も守るよ。命をかけて守る。けど、そう簡単に命を捨てる気はない。俺にはまだほかにも命をかけて守るべきものがこの世界にはある。みんなを守るためにそう簡単に命は投げうたないよ。だから、レキさん。あなたもそう簡単に命を捨てないで。俺はレキさんがいなくなってしまうのは悲しいから」

 

俺はレキさんに言葉を…今の俺の気持ちを伝える。

レキさんは相変わらず無表情だったが…俺の言葉を聞いたら少しだけ驚いた表情をした。それに少し顔を赤めらせている?どうしたんだろう?

 

ああ、もうすぐ初夏だとしても夜は少し寒いしここは海の近くだ。風邪をひかせてしまうかもしれない。

 

「レキさんもう帰ろうか。」

 

俺はそう提案し席を立ちそしてレキさんに向かい手を差し出す。

 

一瞬の間。

 

いつもの無表情のまま彼女は俺の手をとる。

ドラグノフを肩にかけたレキさんと俺は寮に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ???

 

 

ああ、あの人はあんなに近くに歩いている。

 

 

今いるのは白野たちがいる屋台群から少し離れたホテルのスイートルーム。

人がたくさんいる中彼だけを見ることができる。

彼は私が変な人たちに絡まれているとき助けてくれた。

あんなの簡単に殺すことができたけど他にたくさんの人がいたからそう簡単に殺せなかった。少し困っていると彼が助けてくれた。最初はとてもお節介に思えた。

けど、彼の顔…いや目を見て思った。

 

なんてまっすぐとした眼をしているのだろう。

 

正義に向かって突き進むような前向きの目をしている。

私はその眼…その心に一目ぼれしてしまった。

彼の心の行く末に何があるのかみてみたい。

いっそ彼自身を欲してみたい。

けど、彼はまだまだ輝くことができそうな気がする。

だから私はしばらく傍観者でいようと思う。

これからどんな輝きを見せてくれるのかな。

 

私はそう思っていると

 

コンコンコン

 

もう来てしまったのか。まあいい。

本来の目的はこっちの用事なのだから。

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

入ってきたのは長い茶髪を3つ編みにしたとてもきれいな美女だった。

まあ、美女には風貌だけで性別は違うのだが。

 

「早速本題に入らせてもらうわ」

 

「はあ…まったく少しはトークに花を咲かせてもいいと思うのだけれど」

 

彼女は立ったまま話を進める。

まるでこちらの攻撃に気をつけているように。

まあ、その反応は当たりだけど。あんまりこちらの機嫌を損ねたら軽く殺しかねないし。

 

「こちらは教授の進言でアドシアード当日に行動を起こすことになった。そちらはどうするの?」

 

「ふむ、そうねえ」

 

そして私は一考する。

いつもなら行動しなければならないけど

 

「今回こちらは手を出さないようにする。そちらの行動を見させてもらうから。」

 

彼女は少し驚いたような顔を見せる。

それはそうだろう。大体こういった時には行動を起こすのだけれどたぶんこの件には彼も絡んでくるだろう。

しばらく傍観者の立場でいようと思ったのだから今回は行動しないようにしたのだけれど。

 

「どうしたの?私たちが行動しないのは意外だったかしら?」

 

「…いや。大体あなたたちはこういった時には動こうとするから驚いただけ。あなたの行動は教授の能力でもわからないから。」

 

訝しそうな顔をする彼女に私は微笑み返す。

 

「乙女の気持ちは男の人にはわからないものよ。金一さん」

 

すると彼女は何のこと?といったように少し頭を傾ける。

そう言えば彼が能力を発しているときには男の時のことは忘れるんだっけ?

難儀な能力だねと思いながら私はもう一度窓の外を見る。

 

本線の花火が空を埋め尽くすが私の眼には彼の輝きしか見えなかった。

 




第22弾投稿終わりました。
えっとこれからちょっとオリジナルが多めになってくるのですが、1日で考えつかなくなりそうでしてそういった時には1日遅れで投稿となってしまうかもしれません。
なるべく毎日投稿は目指しますがそういった遅れた時にはどうかご了承ください。
恋姫夢想さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23弾 学園島沈没!?

今回の話は時間がなく区切りのいいところで終ったらあからさまなオリジナル章へのフラグ立てっぽくなってしまいました。
まあ、投稿はしますけど。


特に問題もなくアドシアード当日となった。

今日は校区外の一般人なども入ってくるからたぶん何も問題なくいくと思うけど。

今俺は入場門で半券を切っている。

どの競技にも出ない生徒はこういった関係者の仕事をしなければならないのだ。

キンジは白雪さんの護衛も兼ねているからそちらのほうに行っている。

俺の護衛は今はいないのだが隣では一緒に不知火と仕事をしている。

まあ、護衛とは行かなくても知人といるだけでよっては来なさそうだからな。

俺が暇だから軽く欠伸をしていると

 

「ところで岸波君」

 

「ふぁ~ぁ。どうした?」

 

「いったい誰が本命なの?」

 

「ぐふっ。は、はい?いったい何の話だ?」

 

急に驚くことを言うから少しむせてしまったじゃないか

 

「いや、岸波君って結構フラグ立てるの上手だからね。この前もレキさんと花火大会に行ったんでしょ?ほかにもいろんな人を手籠にしているって情報が流れてきているからね。あ、この情報は武藤君からもらったから」

 

…。

ほう、武藤の奴どうやら俺の機嫌を損ねさせたいようだな。

それに俺は死亡フラグぐらいしか立てたことないのにな。あっ、たぶんこれから誰かに殺されるかの本命ってことなのか…!

そう葛藤していると不知火が交代の時間なのか武藤と変わる。

俺も交代の時間まで武藤に情報のことでお話していると

 

「白野。交代だ」

 

「あれ、キンジ。白雪さんの護衛は?」

 

「今は生徒会の仕事をしている。周りに人とかいるし大丈夫だろう」

 

 

そうか、それならいいのかなと思い俺はキンジと交代をする。

と言っても俺も護衛をされるみだからあまりふらふらできないからな…

まあいい護衛対象同士だけど白雪さんのところに様子を見に行くか。

どういうわけか最近白雪さんの様子がおかしい気がするんだよな

そう思いながら学内に入っていくと携帯にメールが入った

 

「周知メール…っ!」

 

ケースD7

これは事件かもしれないがわからないので連絡は一部のものに行く。むやみに騒いで騒動を大きくしてはいけない。

その内容は 星伽 白雪の失踪

ぐっ!どういうことだ!

白雪さんは大丈夫ではなかったのかキンジ!

そう思い俺は動き出そうとするとまたもや携帯が鳴る。

一体なんだこんな時に!と思い携帯に出ると

 

「白野!今どこにいるの!」

 

アリアの声が聞こえた。どうやらアリアの今回の事件のことも伝わっているらしいな。

 

「今は学校だ!けど白雪さんが失踪した!たぶんデュランダルに何らかの方法で連れ去られたんだ!」

 

俺は早口でまくしたてると

 

「わかっている!けど、今はそれ以上に大変なことが起きているの!白雪のほうはキンジに時間稼ぎをやらせている!あなたは今からあたしの指定した場所に来て!」

 

「ぐっ。わかった…。それでそちらでは一体何が起こっているんだ!」

 

アリアは落ち着くように間を空けて言う

 

「このままじゃ学園島が沈むかもしれない!」

 

 

 

 

 

 

 

俺はアリアに場所を聞き学園島の水門管理室に向かった。

アリアは管理室の扉の前にいる人と口論をしている。

あれは武偵局の人間か?

 

「アリア一体どうしたんだ。もう少し詳しく説明してくれ」

 

俺はアリアに説明をしてもらう

 

「あたしの情報網で学園島の水門管理プログラムにウィルスが入ったと情報が入ったの。もしこのウィルスがばらまかれれば学園島の水門が全部開かれる。そうなると海水が急激に入ってこの学園島が沈んでしまうわ。もしアドシアードのある今そうなったら大量の被害は免れない。白野ならこういった事件には強いんじゃないと思って呼ばせてもらった」

 

なるほど確かに俺の電子手帳を使えばそう言った問題はすぐに解決するが…

 

「今さっきそこにいる人と口論をしていたようだがいったいどうしたんだ?」

 

「どうもイ・ウーが関わっているから一般の武偵は入るなって言ってくるの。こちらもそう言った事情は詳しいって言っているのにのに信用することができないの一点張りで…」

 

なるほど、国がこの事件にかかわっているようだな。

イ・ウーともなれば国が国家機密にするほどの組織。

確かに簡単に関わらせてはいけないものなのだろうが

 

俺は少し離れると電子手帳を取り出し今現在サーバーにアクセスしいるであろうウィルスについて調べる。

このくらいのウィルスならサーバーにさえ接続できれば簡単に駆除できるが…あまりに時間がかかりすぎている。

このままでは間に合わないと思いもう一度アリアの近くに行く

 

「このままでは間に合わない。中に入ってプログラムにアクセスしないと」

 

「だけどあいつが入れてくれないのよ。一体どうすれば…」

 

いてもたってもいられず俺は扉の前に立つ人に話しかける

 

「すいません。こちらも中に入れてください。」

 

「いや、ダメだ。この中でのことは国家機密になっている。そこにいられても邪魔だ。学生の仕事に戻れ」

 

「このままでは間に合わないでしょう!急いで入れてください!自分ならなんとかできます!」

 

「うるさい。一介の高校生の武偵ごときがこの問題を解決できるわけがない。この中で作業をしているのは武偵局でも高実力の人間だ。」

 

それでも間に合っていないということはまずい問題なんだろうが

 

「そこにいられると邪魔だ。お前たちは素直に競技場に戻って武偵ごっこでもしていろ」

 

俺はその言葉にプチンときた

ただの意地だけでたくさんの人を犠牲者にしたいのか。

 

…。

仕方ない。ここでも名前を使わせてもらう。

俺はなるべく威圧を込めた声で言う

 

「俺は夏目の家のものだ。今すぐそこをどけろ」

 

「なっ!!」

 

国の関係者ほどにもなるとさすがに知っているようだな。

俺は続けて言う

 

「あまり俺の機嫌を損ねさせないでくれ。もしもの場合じゃそちらの命の保証はできないぞ」

 

その役人は驚愕と唖然で口を閉じる。

まあ、仕方ないかこちらもトップシークレットの仮家の名前を使っているからな。

役人は携帯を取り出しどこかに連絡をしている。

たぶん国のほうに連絡を取っているのだろう。

ちゃんと信用はできないがもし受け入れなければどうなるかわからないと言ったところの瀬戸際なのだろう。

数分待ち連絡を終えると

 

「…入れ」

 

よしなんとか間に合ったか。

するとアリアが

 

「アンタ…本当に一体何者なの?夏目なんて家どこにも情報ないのに」

 

まあ、そうだろうな夏目は国に使っている仮の名前みたいなものだ。

本家は一応別の名前になる。

はあ、さすがに家の名前を使いすぎたかなそろそろ御呼ばれされるかもしれない。

が今はそんなことに気をかけている暇はない

 

「アリアこっちはすぐにかたをつける。アリアは白雪さんの救出に動き出してくれ。すぐに追いつく」

 

「…わかったわ。情報によると白雪は地下倉庫に入っていくのが見られたらしいそうよ」

 

そう言ってアリアは振り帰り走り出す。

よしこっちはこっちの仕事を終わらせる

管理室の中に入ると数人の役人がなんとかしようとパソコンを打っている

 

「誰だ!勝手に入ってきて来ている奴は!」

 

俺に気づいた役人の一人が俺に怒鳴りつける

画面には赤く『ALERT』と書かれた画面。

複雑なウィルスに悪戦苦闘としていたんだろう。

ほとんどの役人はいらいらとしているようだ。

しかし、気にかけている時間はない。こちらもそちらの邪魔のおかげで時間がないのだ。

 

「すいません。メインサーバーをかります」

 

聞こえてくる愚痴を無視して俺は自分の電子手帳とサーバーをつなぐ。

そして事前に準備しておいたクリーンプログラムを使うと一面赤い画面だったところが正常の青色に代わる。

よかった。なんの異変もなく終わらせたようだ。

ひとまず安堵すると視線を感じ周りを見渡す。

どうやら今まで悪戦苦闘していたウィルスを、1分足らずで何とかした事に驚愕したのだろう。

しかしそのことに気にかけている時間はない。

俺は白雪さんの救出に向かうため地下倉庫を目指すのだった。

 




第23弾終わりました。
明日は時間的に投稿できないかもです。
ガルテガルテさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24弾 岸波君はそろそろ刺されるんじゃないですかね

今回の話というかこれまでの話で岸波君はサブで戦うというかアシストが多かったのですがオリジナル章をはさんだあたりからメインで戦ったりします。



「うわっ!なんだこの音!」

 

俺は今地下倉庫内その梯子を下りている。

なぜかエレベーターが動かないので梯子を下りていると謎の爆発音の後水の流れる音が聞こえる。水門は防いだのに水が流れてくるのはたぶん爆破でもされたのか?

急いで降りると防護扉が氷のようなのもで固まっている。

これはそう簡単に破壊できないな…。

仕方ない。俺は電子手帳を取り出し『空気打ち/1の太刀』を取り出し衝撃波を打ち出す。

銃弾をも破壊できる攻撃を受けた扉は木端微塵に砕け落ちた。

中に入ると薄暗い中古びたコンピュータ機器が散乱している。

俺は敵がいないか用心してその中を突き進むと

 

キィン!キィン!

 

これは剣がぶつかりあう音だ。結構近いな…。

俺は音の出所までゆっくり進む。

それは二人の少女の剣劇だった。

一人は武双巫女と化している白雪さん。

そしてもう一人は西洋の鎧を着た白髪の美しい少女だった。

状況から垣間見るにあれがデュランダルなのか?

白雪さんは炎を纏った剣を振っている。確か白雪さんは超偵だったな。それが炎を使う超能力だったのか。

俺は二人の動きを見ると視界の端にキンジとアリアを見つけ二人に近づく。

 

「おい、二人ともこれはどういうことだ」

 

「「白野!!」」

 

二人から状況の説明を受ける。

今白雪さんが戦っているのはやはりデュランダルだった。

本来は下の階で戦っていたがデュランダルの策略で下の階は水没し、こちらに流されてきたようだ。

そこで白雪に化けたデュランダルがアリアを殺そうとしたが白雪がなんとか状況を打破し今デュランダル…先ほど教えてもらった本来の名前ジャンヌダルクと戦っている。

超偵同士の戦いはとても強力だが持久戦には向かない。

二人が疲労したとたんキンジ達が取り押さえるという作戦も聞いた。

しかし、ジャンヌダルクの子孫か…どこかに初代の英霊でもいそうな感じだな。

まあいい。今は彼女を逮捕するために活動するだけだ。

 

「もうそろそろまずいかもな…」

 

白雪さんのスタミナが切れかけている。

対するジャンヌダルクは疲労感は示しているがまだまだ余裕そうだ。

場数が違うのだろう。力の使い方が上手みたいだな。

するとジャンヌが大きく大剣を振りかぶる。大技が来るのか…!

するとアリアが動き出す。

ジャンヌは少し動揺するが対処をするためにこちらに氷の塊を飛ばしてくる。

それをアリアは近くに落ちていた白雪の袴をそれに打ちつけ軌道をずらす。

しかしジャンヌはしっかり反応しもう一度超能力を使おうとしたので俺は『空気打ち/1の太刀』を取り出す。

ねらいは…!

 

(足元…!)

 

あの時アリアに行ったように足元にあてて体制を崩させる!

うまくかかりジャンヌは体制を崩す

そこにキンジが飛び出し剣を抑え首筋にグロッグを構える。

ふう、なんとか確保したかしかし俺とアリアとキンジのコンビネーションは始めてしたが結構いい感じにできたな。

 

「ふ、本当にこんなことで抑えられるとでも?」

 

な、何?

すると、ジャンヌの持っている剣から凍った冷気が伝ってくる。

ま、まずいぞ剣を抑えている限り凍らせてしまう。もし離したとしてもまたこのように確保まで持っていけないかもしれない。

 

…。

まずいと思ったが一目見ただけでもう大丈夫と思ってしまったな。

スタミナ切れから回復した白雪さんが剣にさらに大きな炎を纏い

 

「キンちゃんに手をだすなぁ!」

 

振り抜く

 

「星伽蒼天流・緋緋星伽神!」

 

振り抜いた剣はジャンヌの持っていた剣を真っ二つに折った。

 

「デュランダル!」

 

剣を折られ放心しているジャンヌにアリアが手錠をかける。

対超能力用の手錠だ。

 

「逮捕よ!」

 

「くっ…」

 

さて、デュランダルも捕まったことだし今回の事件も無事終了だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

今は電源が落とされたエレベーターの回復のために待機している。

キンジとアリアそれと白雪さんはそれぞれ疲れているため俺がジャンヌの監視をしている。

 

「ほ、本当にお前みたいな幸薄そうなのが岸波白野なのか…!」

 

「さ、幸薄そう…」

 

存在と幸の薄さときたら俺に残るのは何だ!ザビエル成分か!

 

っと、そんなことはどうでもよくないがとりあえずわきに置いておくとして

 

「ジャンヌさんは白雪さんと一緒に俺も誘拐するきだったのか?」

 

俺はジャンヌに聞く。

今回の件は、白雪さんには結構接触をしていたようだが俺に関してはほとんど…というか全然接触されなかった。

そのことが気になり話を聞こうとしたが

 

「………」

 

ジャンヌさんは瞼を閉じて黙秘している。

ぐ、教える気はないのか…それか、本当に存在すら忘れられていたのか

あ~気になる!

俺はジャンヌさんの両肩に手を置き正面から見やり

 

「教えてくれないかな。ジャンヌさん」

 

そう真剣な顔と落ち着いた声で言う。

これは月の世界で駄狐のサーヴァントに対して行った技だ。

眼を見て問い詰めれば吐かせることができた。

そのあとなぜかめちゃくちゃ抱きつかれたりしたが拘束されている状態のジャンヌさんなら大丈夫だろう

 

「っ!はっ、離れろっ…!」

 

両肩を掴んだことで眼を見開いてこちらを見てくるジャンヌさんにもう一度問いかける

 

「だめ…かな?」

 

「…っ!わかった!わかったから離れろ!一つだけ答えてやる!」

 

よかった。なんとか聞き出すことができた。

しかし、なぜ顔が赤いのか?風邪でも引いたのか?

 

「…なあ、アリア。あいつってまさか…」

 

「そのまさかかもね…」

 

後ろから何か声が聞こえるがまあいいか。

ジャンヌさんは一つコホンとせき込むと話し出す。

 

「岸波白野。本来はお前も誘拐の対象だった。」

 

やはり情報は本当だったのか。しかし、『本来』とは?

 

「しかし、教授が岸波白野は今回誘拐をとりやめとなったのだ」

 

「は…?なんで?」

 

俺は問い詰める

 

「私には聞かされてないが、教授は彼には何もするなと言われた」

 

「さっきから言っている教授とは誰なんだ?」

 

俺はさっきから気になっていた教授という人物についてきく

 

「これ以上は言えないなお前が聞いてきたのは自分がなぜ狙われたかだけだそれ以上答える気はない」

 

口をかたくこちらに伝えるジャンヌさん。

もう少し情報が聞けたかもしれないがこれは選択肢間違えたな

 

ジャンヌさんが黙秘を貫いたので俺は地面に座り少し休憩する。少し時間がたつと電力が回復したのかエレベーターが下りてきたようで扉が開く。

やっと来たかと思い立とうとすると

 

ガシャン!

 

なんの音だ!と思い振りかえると

ジャンヌさんを拘束していた土台が崩れ大量の荷物が降り注ごうとしている!

さっきの白雪さんと戦っていた時にもろくなったのか!

俺は考えるより先に体が動いていた。

すばやくジャンヌさんの体を抱き抱え脱出する!

 

すばやく動いたおかげで何とか俺とジャンヌさんにも怪我はなく救出できたようだ。

 

「な…!ま、また…お前は…!」

 

「あ、ご、ごめん!」

 

そう言って俺はジャンヌさんを下ろす。

ジャンヌさんが座っていたところを救出したから必然的に持つところは限られてくる。

俺が持ったのはひざの裏と腰に手をまわして持ち上げた。

俗に言うお姫様だっこである。

 

ジャンヌさんは顔をうつむかせながらヘタリと座りこんだ。

たぶんさっきのことがこわかったのかな

 

「…キンジあれを見ていたらあたしさらに疲れたのだけど…」

 

「大丈夫…おれもだよ」

 

何言っているのだろうヒステリアモードのキンジのあきれ顔とかレアじゃないですか。

 

しかし今回も悪寒がするのだがだんだん強くなっているような気がする…

謎の悪寒にさすがに少し戸惑いながらエレベーターに乗り込むのだった。

 

 

 




第24弾終わりました。
夏はいろいろ忙しくて平日は2日に1回の投稿になってしまいそうです。
頑張って書き進めますのでどうか応援よろしくお願いします。
アウフさん、恋姫夢想さん、シオウさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25弾 伝わる思い

投稿を開始して1カ月弱ついにお気に入り登録数200件こえました!
これからもがんばって投稿いたしますのでどうか応援お願いします!


事件の日から数日後、俺はキンジと一緒にアドシアードの閉会式に来ていた。

無事に事件も終わり護衛関係も終了デュランダル…ジャンヌダルクも逮捕し今は尋問科にて絶賛拷問中だろう。

今目の前では武偵校女子によるチアがある。

その中にアリアと白雪さんの姿。

白雪さんはこのまえまでチアに出ることを勧められたが断っていたようだが、事件の後白雪さん自身から出ると言ったようだ。

あの事件、俺が状況で変わったのはデュランダルを捕まえたことだけ。

しかし、今隣にいる友達は一人の少女の心の方向性を変えたようだ。

やっぱりキンジは人を助けることがとても似合っている。

それでも武偵をやめたいと考えているキンジは…たぶんまだ本当の答えを見つけていないだけ。それを見つければきっと誰よりも強くなるのかも知れない。それも俺以上に。

教えるのは簡単。けど、言葉だけでは気付かないこともある。自分で気付かないとその言葉の意味の真意に気づかない。

その意味に気づかせてくれるのはキンジが助けた人々がきっと気づかせてくれるだろう。

この事件を解決したことはキンジの心の成長の一歩でもありたい。

だから、今は俺は見守っていたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閉会式終了後学園島唯一のファミレスであるロキシーに来て打ち上げをしていた。

デュランダルも無事つかまったことでアリアの母のかなえさんの刑期が少し短縮されたことがよかったらしくアリアの機嫌もよくおごってくれるらしい。

毎日機嫌がよければ風穴を食らわされることはないのだがな…。

 

料理を待っているとアリアと白雪さんは互いにそわそわとしている。

 

「「あ、あの」ね」

 

二人の発言が重なり一瞬の間が広がる。

 

「あ、アリアが先でいいよ」

 

「し、白雪がさきでいいよ」

 

またもやハモる。

 

「席を外したほうがいいか?」

 

俺はそう提案し席を立とうとすると

 

「ううん。白野君たちにも聞いてほしいの。私、アリアにどうしても言っておかないことがあるから。」

 

ん?何だろう。

 

「あの。この間キンちゃんが風邪をひいたとき私嘘をついてしまいました。」

 

「嘘?」

 

「うん。あの時キンちゃんが飲んだ薬私が買ってきていないの。あれはアリアが買ってきたものでしょ」

 

キンジが驚いて言う。

 

「あれはアリアだったのか…」

 

「な、なんだ。そんなこと」

 

アリアは平静を装うとしているがうれしさが隠し切れていないのか顔が少し赤い。

 

「別にあそこには白野もいたし。私だけのことじゃない。はあ、まったく、話があると言うからもっと大切なことと思ったじゃない」

 

「いや、俺よりも先にアリアが先に買いに行っていたんだ。アリア結構心配していたんだぞ。」

 

「なんだ。その…すまなかったなアリア」

 

アリアは本当にポーカーフェイスできないな。

うれしさがにじみ出ているぞ。顔の表情筋が緩んでいるぞ。

 

その光景を見て白雪さんが少し微笑むが少しうつむき顔に影が差しながら言う。

 

「嫌な女だよね私。でも嫌な女のままでいたくなかったから…ごめんなさい」

 

白雪さんは頭を下げるがアリアがそれをやめさせる。

 

「別に気にしていないからいいわよ。はい、この話はおしまい今度はあたしの番ね」

 

「う、うん」

 

「コホン」

 

アリアが咳払いをして言う。

 

「白雪!あんたもあたしの奴隷になりなさい!」

 

はあ、アリアその発言はこの公共の場では爆弾を投下するものだぞ。

ほら周りの人たちが変な眼でこっち見ているし。

 

「ありがとうアリア」

 

そして、そのありがとうもおかしいぞ!

 

「デュランダルを逮捕できたのは3割アンタのおかげよ。4割はアタシで2割はレキのおかげ」

 

それは俺とキンジがそれぞれ0.5づつってことでしょうか…。

俺、学園島にいる人全員救ったというのに…。

 

そんな思いも伝わらず話は進む。

 

「あたしたちの勝因は力を合わせたことよ。 今までの敵はあたしは自分と自分の力を引き出すチームがいればいいと思ってた。 でも3人じゃどうしようもない相手もいるわ。超能力を持っている敵には白野がいるけれど、少し不安だからもう一人超能力を使える仲間がほしかった。だから白雪みたいなアタシには持っていない力を持っている人にはね」

 

ほう、どうやらアリアも少しはメンタル面で成長したようだな。

俺が不安であると言われるのは少し癪だが。まあ、別にいいと妥協しよう。

白雪さんとアリアの距離感もいい方向にいっている。

とてもいいことだが、でもキンちゃんの奴隷ならと小さな声で言っている白雪さんちょっと残念です。

 

「というわけで契約は満了したけどあんたもこれからはキンジと一緒に行動すること! 朝から晩までチームで行動してチームワークを作るのよ。 はい、これキンジの部屋の鍵。今後自由に入ってよし」

 

「おおおおおおおい!」

 

キンジもう無理だ。

アリアの持っていたキンジの部屋の偽造キーは白雪さんが高速で懐にしまったように見えた。

俺でさえかすかにしか見えなかった。

ここからキーを取り上げると高速パンチがこちらを吹き飛すぞ。

俺は死にたくないから特に発言しない。

 

「だめだだめだだめだ! そもそもあそこはだんしりょ…」

 

「奴隷1号! 文句あんの!」

 

「アリアさすがにこの場で…」

 

「黙らっしゃい!奴隷二号!」

 

ふ、ここで怒ったら負けだと思っています。

 

アリアとキンジが言い争いしているところを白雪さんと見ている。

白雪さんは今回の事件が終わるとよく笑うようになった。

これが恋する乙女といった本当の姿なのだな

大切な人と離れられずにすむ。それは白雪さんにとってとても至福なことに違いない。

 

「白雪さんよかったね。」

 

俺はそれだけの声をかける。

白雪さんは少しきょとんとした顔をしたがすぐに微笑む

 

「それは白野君のおかげでもあるよ。」

 

「俺は何もしていないよ。助けたのはキンジとアリア。俺は一回攻撃を入れただけだ。」

 

「ううん。キンちゃんたちをあんなに仲良くさせてくれたのは白野君のおかげだよ。あの二人が友達じゃなかったらきっと私は助けられなかった。」

 

「…そうか。ありがとう。」

 

その言葉に俺は感謝の言葉を言う。

白雪さんは本当にいい人だなあ。キンジのあれが無ければ惚れていたかもしれないな。

 

「こっちも本当にありがとう。あと…一つだけお願いしてもいいかな」

 

「ん?なんだ?」

 

「私もアリアみたいに呼び捨てで呼んでくれないかな?」

 

「…うん。わかった。白雪」

 

彼女の真意は分からないが彼女の表情を見るとそれは無駄な詮索だろうと感じ取った。

そのあと料理がきたのでしっかりと打ち上げを終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後、俺は強襲科の棟に行った。

それは今日あの質問に答える時だ。

強襲科の棟に入り目的の人物を探す。

目的の人物…1年生のライカの近くに行く。

ライカは気付いたのかこちらに近づいてくる。

どうやらあかりさんと訓練していたようだな。

 

「あ、岸波先輩!こんにちはです!」

 

そう言って頭を下げてくる。

まあ変に話をそらしても仕方ないから早速本題に入ろう

 

「先日の戦妹契約の件について答えを言いに来たよ。そのために少しだけ質問させてくれないかな」

 

ライカは喉を鳴らす。

どうやら緊張でもしているようだな

ちょっとした質問だから別に尋問とかじゃないけど

 

「俺は自分の目的があったりしてそんなに構ったりできないかもしれないけど別にいいかな」

 

「はい。時間に余裕がある時だけでいいのでその時だけ教えてくれていいです。」

 

即答で答えてくれる。

意思は相当強いようだな。

まあ、質問だとしても後ひとつ聞くだけだ

 

「ライカ。きみは困っている人は絶対助ける?」

 

一瞬の間

 

「はい。絶対に!」

 

その言葉が聞けただけで俺は自分の不安はなくなった

 

「それなら戦妹契約は了承するよ」

 

「な!試験とかはないんですか!?」

 

ライカは驚愕の表情を浮かべる。

まあ、それもそうだろう。戦妹になるには普通試験が必要だがまあ別にそういうことはいらないと思う。

 

「俺は人を助けたいと思う人の力になりたいんだ。そのためだけに試験とかは必要ないと思っている。それが理由じゃだめかな」

 

俺が理由を話すとライカは覚悟を決めたように声を出した。

 

「はい!ぜひこれからもご教授ください!」

 

そしてその日俺の戦妹は決まったのだった。

 

 




第25弾終わりました。
明日は用事で投稿できないかもしれないです。
rassyuさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26弾 狙い狙われる人々

昨日は投稿できなくてすいませんでした。
用事のせいで全身筋肉痛になってしまったのですがさすがに投稿しなければならないと思い頑張って書きました。
それがまさかの過去最高文字数となってしまいましたがしっかり投稿します。
あと、今回の話からはオリジナル章に入ります



 

 

 

「今日から君は私たちの家族だ」

 

 

 

 

 

 

 

その人たちは守るべき大切な人たちだ

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が戦妹を持ってから一週間が過ぎた

この一週間は特に大きな事件もなくいつもの様に簡単な依頼品の納品や情報の提供、また懲りもせずこの前の会社がウィルスを作ったからいつもも様に倍返しでウィルスを送りつけたりした。

そして、その生活の中に戦妹の教育ができた。

まあそうは言ってもライカのCQCを八極拳と少し織り交ぜただけだ。

八極拳の破壊力とCQCの応用力を織り交ぜれば使えるのではと踏んだからだ

まあまだ1週間だし特訓すれば1年でも強くなるだろう。

まあそんなこんなで一週間を過ごした。

そして今は、

 

 

 

 

 

「…ふう、やっぱり風呂はいい」

今は夕方いつものように自主連をしたら予想以上に汗が出たので風呂に入っているのである。

最近は夏に近づいたこともあって夜とかもあついんだよなあ。

 

しかし風呂に入っているとあのサーヴァントをおもいだすな。

 

 

…。

また…会ってみたいな。

 

 

少しだけ灌漑にふけっていると誰かが浴室前の扉をあける音が脱衣所から聞こえた。

キンジかなと思ったが

 

「誰か入っているの?」

 

この声はアリアか。

少しだけ緊張して返答する

 

「アリア俺が入っている。もうすぐ出るからそれまで外で待っていてくれ。」

 

俺がそう言って風呂から出ようと準備しようとすると

 

「そう、ならアタシも一緒に入ろうかしら」

 

ダ、ダニィィィィィ!

じゃない、何事!?

 

「アリア!まて!俺が入っているんだぞ!」

 

「知っているわよ。だから入るのでしょ」

 

なぁにぃそぉれぇ!

そうしている間にもブラインドからアリアが服を脱ぐシルエットが見える。

ま、まずいぞ…

ここは逃げ場がない。

唯一逃げられるのは今アリアがいる脱衣所からしかない。

そしてさっきから背中に悪寒が流れて仕方ない!熱めの風呂に入っているのにめちゃくちゃ寒いんですけど!

 

「入るわよ。白野」

 

少しだけ恥ずかしそうな声で入ってくるアリア

ぐっ!は、速い!俺でも回避できないぞ!

そんな感じで少し動揺してしまいバスタオルを体に巻いたアリアの顔を見てしまう。

その顔を見たとたん俺は敵意を示した声で言う。

 

「誰だ?お前は」

 

その顔はアリアと瓜二つだが、その目から見える心はアリアとは別人に感じた。

まあ、ほとんど感覚だが

 

「何言っているの。アタシはアリアよ」

 

「いや、アリアはそのような目を持っていない。それに」

 

俺はアリア?の胸の位置に指をさすと

 

「アリアがそんなに胸が大きいわけない!」

 

ドンッ!と効果音が聞こえるような声で指摘する。

そのアリア?の姿は本物が持ち合わせていないほど大きな胸をしている。

そんなのはありえないと本人の前で言ったら殺されてしまうくらいの発言をすると

 

「くふふ、やっぱりばれちゃった」

 

そう言って妖艶に笑うアリアの姿をした誰かはパリパリと薄いマスクをはがした。

そこにあった顔は

 

「やっぱり理子さんだったか!」

 

「せいかーい!りこりんでーす!たっだいまー!」

 

そう言って長い金髪を頭を振って整える理子さん

ぐ、仕方ないまた後手に回ってしまったがこっちの射程圏内だ。

俺が攻撃を仕掛けようとすると

 

「ねえ、しろくん。理子を助けて。」

 

そう言ってくる理子さん。

ん?助けてって?

 

「理子がせっかくダブルスクールしていたのにしろくんたちのせいで理子イ・ウーを退学になったんだよ?プンプンがおー!」

 

イ・ウーに退学なんてあるの!?

まるで学校じゃないか

 

「理子ねしろくんにお願いがあるの。しろくんが助けてほしいなら言ってくれって。だから、お母様に教えてくれた男の子の言うことをなんでも言うこと聞いてくれる方法を使ってあげる。しろくんが助けてくれるならあたしもしろくんにしっかりご奉仕しちゃうよ。ここからは先は理子ルートをお楽しみいただきまーす!」

 

そんなルート頼んだ覚えないんですけど!?

理子さんは荒い息を吐きながら近づいてくる。

待って!近付かないで!なんか悪寒がだんだん強力になってきて今や背中に氷の剣でも突き刺されたような痛みになっているから!

 

そう思っていても近付いてくる理子さん

あ、終わった…

 

 

 

 

 

―!

突然の殺気を感じ俺は理子さんをこちらに引きこむと

 

 

ドゴォオオオオオン!

いきなり浴室の扉が破壊した!

そこにいたのは…

 

「理子ぉ!アンタ奴隷2号にも手を出す気!」

 

入ってきたのはアリアだった。

まあ、確かに助かったけど新たな問題発生。

阿修羅と化したアリアをどうにかするのです。

こんなクエストクリアできませぇん!

俺がビビっているとアリアはこの状況を見て

 

「白野!あんた何しているのよ!」

 

「ち、違うんだアリア!これは理子さんが…」

 

手を振って否定してようとするがさっき爆発する前に理子さんをこっちに引きこんだので手を上げられない。というか理子さんがこちらの手を押さえつけている。

やめて!胸に手が当たっているから!

 

「しろくんだってその気だったんだよ。理子がここの位置にいるのが証拠。 これからイベントシーンなのに理子3Pは嫌いなんだよね。 それにしろくんだって理子に溺れる3秒前だったんだから」

 

「お、おぼっ…」

 

ああ…このような状況に弱いアリアは顔を真っ赤にしてぴくぴくと動揺している。

 

「か、風穴開けてやる!」

 

そう言ってこちらにガバメントを向けるアリア

待って!やめてこっち裸だから!

 

「くふ」

 

そう言って懐から何かを取り出し起動する。

 

―!

 

急激な光が俺の目を覆う。

閃光手榴弾(フラッシュグレネード)か!

いつぞやのときに俺が使ったものを逆に利用される。

 

ぐっ!もろに食らったから視力が…

ようやく回復しだして周りを見るとアリアが目を押さえてうずくまっていた。

どうやらアリアも食らったようだ。

アリアも回復したらしく俺とほとんど同じ時間に視力を回復させる。

そしてアリアに阿修羅のような形相でにらまれる。

 

「理子はどこよ!」

 

「た、たぶん外だ。ついさっき扉が開く音が聞こえた。まだ遠くに行っていないと思うぞ」

 

聞くや否やアリアは飛び出していく。

俺はついて行こうとしたが今の自分の姿を見直し体を拭いて着替えてから外に出るのだった。

 

 

 

 

 

 

外に出ると屋上から発砲音が聞こえたので屋上に行く。

 

そこでは理子さんがナイフ、アリアが小太刀を持っていたところをキンジが取り押さえている場面だった。

ふむ、どうやらキンジの奴ヒステリアモードになっているな。

 

「悲しいよ」

 

低く憂いを帯びた声を聞きながら説得はこいつに任せるかと俺は考える。

だって、女の子の扱いはヒステリアの時のキンジの方が俺より上だからな。

 

「き、キンジあんたまた…?」

 

「今はこらえてくれアリア。 それに愛らしい子猫同士の喧嘩を鑑賞するのは俺の趣味じゃない」

 

「…こ、こね、こね、ね…」

 

「―理子」

 

次にキンジは理子さんの説得を始めるが理子は答えない。

 

「本気じゃない恋も、本気じゃない戦いも味気ないものだとは思わないかい?」

 

?どういうことだ?

 

「理子はハイジャックで髪を使った戦いを今していなかった。使ったとしたらアリアを圧倒できたのに使わなかったのは何らかの理由で使えないようになったんだろう」

 

そうなのか。

そして俺は理子さんのほうを見てみるとほんの一瞬だけ寂しそうな目をするとつまらなそうな顔をして後ろに一歩下がるとひょいとその手に持っていたナイフを上空に投げた。

 

「半分外れ。理子はキー君としろ君には本気だもん」

 

理子さんは背中にからっていたランドセルを振ってナイフを入れる。

 

「でも、半分当たり。今の理子は万全じゃない。だから、今はアリアと決着をつけるときじゃないんだよ」

 

「そうかい」

 

そう言ってキンジは体制を戻す。

ああ、なるほどね

 

「アリア理子とはもう戦えない」

 

「白野!? あんた理子に何されたのよ!」

 

俺が寝返ったって思ってるのか?

それは、絶対にない

 

「アリアを犯罪者にしたくないからさ」

 

キンジが補足を入れてくれる。

 

「さすがキーくん、しろくんも分かってくれちゃった?」

 

理子は手をぽんぽんと叩きながら1回転した。

 

「理子とキー君としろくん体だけじゃなくて心も相性ぴったりだね」

 

アリアは俺たちの間に流れる妙な空気に焦りを覚えたようで

 

「犯罪者ってなによ?」

 

ぎろりとカメリアの目を向けてくる。

 

「司法取引だろ理子?」

 

「あったりー! そうでぇーす! 理子4月の事件についてはとっくに司法取引済ませているんですよー」

 

司法取引っていうのは犯罪者が共犯者の情報を渡したり、事件を解決する情報を渡すことで成立する制度だ。

犯罪者を法の外に出すようなこの制度は近年の日本で導入されている。

 

「つまり理子を逮捕したら不当逮捕になっちゃうのでーす」

 

ちっちっちっちと人差し指を左右に振る理子

アリアはそれをぎりぎりと歯を噛みながら小太刀を怒りに震わせる。

 

「嘘よ。 そんな手にあたしが引っかかるとでも?」

 

「嘘かもしれないが本当かもしれない。 俺たちはここでそれを確かめられない」

 

アリア、ここはキンジの言うとおりだ。

理子を捕まえればお前は不当逮捕などの罪で捕まりかねない。

ただでさえ、日本の上層部はおかしなことが多いんだ。

かなえさんの濡れ衣だがあれは正規の捜査だけでなったものではないだろう。

これは明らかに国が絡んでいる。

これまでのイ・ウー関連では国が妨害してきたんだ。

アリアがつかまれば冤罪をかぶせられかねない。

冤罪を証明するため間違っても国の連中とはやり合いたくないからな。

ぐぬぬとアリアは歯ぎしりするがなんとか飛びかかることは避けてくれた。

だが、アリアは小太刀を理子に向ける。

 

「でも、ママの武偵殺しの冤罪をきせたのは別件よ! 理子!その罪は最高裁で証言しなさい!」「いーよ」「嫌というなら力づくで…え?」

 

「証言してあげる」

 

「ほ、ほんと?」

 

疑いの目を向けながらもアリアは嬉しさを隠していない。

基本的にアリアは人のことを疑わない。

悪い男につかまれば落ちるとこまで落ちるだろうな…

そこを含めて守らないと

 

「ママ、アリアもママが好きなんだもんね。 理子はお母様が大好きだからだからわかるよ。 アリアごめんね。 理子は…理子は…」

 

そこまでいうと理子さんは顔を伏せ

 

「お母様…ふぇ…うう…」

 

涙を流し始め

 

「ふぇえええええ」

 

理子が泣き出した。

 

「えっ? え? えええ!」

 

そんな理子さんにアリアはあたしがなかしたのという感じでオロオロしている。

 

「ちょ、ちょっと何泣いてるのよ! ほら、ちゃんと話しなさい」

 

小太刀をしまいながらアリアは理子さんをなだめにかかる。

おいおい、アリアは本当に騙されやすいな…

理子さんの口みたらにやりとしてるのわかるぞ…

その目には少しだけ別の感情がかいまみえたがそれについては後で聞くことにするか

それにしても、なんで理子さんはここに戻ってたんだ?

理子さんは泣きながら語りだした。

 

「理子…理子、アリアとしろくん達のせいでイ・ウー退学になっちゃったの。 しかも、負けたからって、ブラドに理子の宝物取られちゃったんだよぉ」

 

周囲の空気が張り詰める。

見るとアリアが殺気を目に宿らせていた。

 

「ブラド?無限罪のブラド? イ・ウーのナンバー2じゃない!」

 

「そーだよ。理子、ブラドから宝物取り戻したいの。だから、アリア、キー君、しろくん、理子を助けて」

 

「助けろってなにをすればいいんだ?」

 

俺はもともと理子さんを助ける気でいたんだ。理子さんの本来の意図は気になるがそこはぬきでも俺は理子さんに協力する

 

「泣いちゃダメ、理子は本当は強い子、いつでも明るい子、さあ、明るくなろう」

 

などといい夕日を背に

 

「キー君、しろくん、アリア、一緒に…」

 

あ、何か嫌な予感…

それでも話は進む。

理子さんはにやりと笑顔になり

 

「ドロボーやろうよ!」

 

何で俺の周りの人たちはこうも俺が予想もしないことを言うんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武偵少年法により犯罪を起こした武偵の情報の公開は禁止されている。

その情報のやりとりは武偵同士でも禁止されており、知れるのは1部の司法機関や公安0課といった特別な部門のみ。

これは、明らかな悪法なんだが改善されることはないだろう。

罪というのはどの世界でも蔓延する。

それがこの世界では広まりやすいということのようだな。

 

「たっだいまぁっ!」

 

いきなり、ひらひらの改造制服で2-Aに現れた理子に教室はわーっ! と盛り上がった。

どうやら、理子さんは極秘調査でアメリカに行っていたということになっているらしい…

手回しいいよな…

 

「みんな久しぶり! りこりんが帰ってきたよ!」

 

教壇にあがってくるくる回った理子の周りにクラスメイトたちが集まっていく。

どうでもいいが、後でキンジに聞いたところ、理子に駆け寄った順がクラスのアホランキング上位と言うわけだ。

りこりん!りこりん!と腕を振り回している奴らもいる。

ハハハ、まあ理子さんはかわいいから気持ちはわからなくはないんだが…

 

「理子ちゃんおかえり! あ、これなに?」

 

「えへへ、シーズン感とりいれてみました」

 

理子は赤ランドセルの側面にてるてるぼうずを吊り下げている。

女子にはかわいいとおおうけだ。

理子は人気ものだからな…

俺も社交性はキンジよりはいいと思うが理子にはかなわないな…

 

「くふっ、キー君もしろくんもおいでよ!」

 

理子さんが手招きしてきたが俺は気付かないふりをした。

キンジも同様だ。

ばきっと音がしたので隣を見るとアリアが机に突っ伏して鉛筆をへし折っていた。

気持ちはわかるが落ち着くんだアリア!

しかし、本当にあんなに楽しそうに笑う理子さんはあの時怯えた表情をしていたんだな。

それはたぶん昨日言っていた無限罪のブラドが関係するのだろう。

理子さんが言っていた泥棒をするということは何かを盗むということ。

それは俺の予想で理子さんが全力を出せないことに関係すると思われる。

今はまだ準備段階と言っていたが早く取り戻したいのかもしれないな。

それがイ・ウーのナンバー2無限罪のブラドが関係している。

この問題もそう簡単にはいかないだろうと結論付けた。

 

そんな物思いにふけっていると高天原先生が入ってくる。

先生が入っていてもあほな人たちはいまだに騒いでいるせいで先生がおろおろとしている。

そろそろ気付いてやろうよと思っていると

 

 

バリィン! ヅガァン!

 

 

何かが窓を突き破り俺の机に突き刺さった。

何事っ!?と思い何かを見てみるとそれは弓矢だった。

それに紙がくくりつけられている。

急いで外を見ると遠くにあるビルの屋上に誰かいるような影が見えた。

あの位置からこの正確な位置に弓を射ぬける実力と俺の関係者と言ったら。

 

(あの人か…)

 

ついに実家から御呼ばれされたか。

そう思っていると教室が妙に静かだ。

全員の視線は俺に向けられている。

まあ、いきなり教室に攻撃を仕掛けれたのだ。

何事と思うのも仕方ないかもしれない。

 

俺はいたたまれなくなったので弓矢を持って席を立つと

 

「あー先生。狙われているので先に早退させてもらいます」

 

先生がほうけながらはいといった。

よし言質は取った。

俺は急いで教室をでる。

そのあと教室は騒がれたが、俺知らない!

実家の人たちが勝手にしたんだもん!

と現実逃避し廊下を走って出るのであった。

 

 




27弾投稿終わりました。
夏場の平日は2日に1回投稿、祝日は予定がないときは毎日投稿とします。
恋姫夢想さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27弾 いざ奈良へ!

今日お気に入り登録者数を見ていたら、まさかの300越え!
たくさんの良評価を頂いて何事!?と思っていたらまさかのランキング入りしていたのでとても驚いていました。
私の作品を評価していただいた皆様、このような作品を評価していただきとてもありがとうございます!
それでは、投下します。


突然飛んできた矢を掴んで教室を飛び出したが…

先生にももう早退するって言ったしもう寮に戻るか。

 

しかし、いくらなんでも学校に矢を打ちこまんでもいいだろう。

どんだけ、世間を知らないんだ。

と思ったがあの家のことだし仕方ないかと結論付けて寮まで戻る。

 

部屋に入ると一度ソファに座り溜息を洩らす。

そして矢にくくりつけられた紙をほどき広げて読んでみる。

 

『夏目 白野様

本家からお呼びがありました。

早めにお戻りになってください

PS・絶対に帰ってきてください』

 

なんだこの手紙は電話でもいいだろう。

それにあの人が来ているなら近くに…いやそれも問題があるか。

しかし、この手紙…苗字が夏目か。

それもいろいろまずいのだが…のだがなんだか嬉しいな。

少しだけうれしい思いをしながら目をつぶりソファの背もたれに後頭部をつけて目をあけると

 

「へー、しろくん本家の方に御呼ばれされちゃったんだねー」

 

「っ!」

 

めちゃくちゃ驚き頭を急に上げたせいで理子さんとおでこをぶつける。

 

二人して、数分もだえていると

 

「ちょっと白野!何でいきなり帰るのよ!ってなにやっているの…」

 

アリアとキンジが帰ってきた。

帰ってきたら探し人がもだえていたらさすがに驚くよね

しかし、キンジはさぼったら内申点落とすんじゃと質問するとクエストで出てきたと申請したら降りたそうだ。

それも、俺の身辺調査ということで。

それでいいのか武偵校。

 

「けど、いきなり攻撃されたけど一体どうしたのよ?」

 

アリアからそう質問される。

なるべく実家のことは話したくないから嘘でも交えようかと思ったがアリアの嘘をついたら風穴ともいえる雰囲気を前に正直に答える。というか最近こんな脅される展開が多いような気がする…

 

俺はこの攻撃というか手紙をお届けにするために実家から来ていることと、手紙のことで実家から御呼ばれされたと伝えた。

 

「ふ~ん。それで行くの?」

 

その言葉に俺は改めて一考する。

確かに帰れと言われたら帰るのは山々だが俺には実家にいることにはいろいろと問題が発生してしまう。

問題を大きくしてしまうのはあまりしたくないと結論づけて返答する。

 

「いや。自分は帰ることはできないよ。これ以上本家に迷惑かけることはできないs…」

 

パリィン! ズガァン!

 

新たな矢が机に突き刺さる。

また、急いで外を見やると女子寮の屋上に人影が見える。

なんだその距離感は!本当にめんどくさいな!仕方のないことだけど!

そう思ってまた矢を見てみるとまた手紙がくくりつけられていたので見てみると

 

『絶対にきますよね』

 

怖い!怖いよ!というか何でこちらのことをその位置から把握できるんですか!?

そう考えていると天井から気配がしてそちらを見やる。

 

(ああ、なるほど。そちらも来ていたのか…)

 

天井からの気配を感じながら俺は考える。

うん、どうやったって逃げ場はないな。

突然の攻撃に驚いているアリアたちを周りに見ながら俺は溜息をつき天井の気配にも聞こえるように声を出す。

 

「…わかった。明日には実家に帰るよ」

 

その声で天井から感じていた気配が消えたような気がした。

 

「ほんと白野の周りは謎だわ…」

 

「俺もよくわからないよ」

 

そう返答をして深く溜息をつきソファに倒れこむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

次の日俺は武偵校に依頼ということで通してもらった。

そして、俺の実家がある奈良県に向かうため荷物を持ち新幹線に乗るため駅に向かったのだが

 

「何故、ついてきたんだ…」

 

「言ったでしょ白野。あなたは本当に謎が多い。情報収集は武偵の基本よ」

 

「はあ…。まあ、別にいいんだろうけど」

 

そう言ってくるのはアリア。いつぞやのトランクを持って隣を歩いている。

その後ろには理子さんとキンジそしてレキさんが来ていた。しかしよくレキさんがきたよなあ。

 

「そこにいる人たちもそんな理由で?」

 

「そりゃあねー。しろくんの情報も少ししかないし、しろくんのことはなんでもしりたいからねー」

 

…うん。普通ならどきんと来る発言だが、理子さんが言うとあざとく感じる

 

「レキさんも来たんだ」

 

レキさんは首を縦に振る。

だから何故きたのですか…

 

しかし、キンジが来てくれたのはありがたいな。

ただでさえ実家があんな感じだしキンジが来てくれるのはありがたい。

 

奈良に向かうための切符を買いホームのベンチに座る。

しかし視線を感じる。

周りを軽く見るとちらちらとこちらを見ているようだ。

アリアに関してはふらふらしすぎだろう。

 

「どうしたんだ?」

 

アリアは少し躊躇するが話だす。

 

「白野、あんたは実家に帰るのでしょうけど少しだけ話をしてれない?それに、あんたはこの前の攻撃とかだれがやったか知っているんでしょ?」

 

ああ、そのことか。

確かにあの時から実家のこととかいろいろと説明する暇がなかったからな。

少しは話しておいたほうがいいだろう。

そうしていると、ベルが鳴る。

どうやら新幹線がくるようだな。

 

「そのことについては中で話すよ」

 

そう言って俺は席を立ち新幹線の中に入る。

とりあえず窓側に座ると周りのみんなも続けて座る。

荷物を置くと全員がこちらを見る。

どうやら全員俺の話に興味があるらしいな

俺は少しだけ嘆息すると話を進める。

 

「今回俺が呼ばれたのは俺の実家…夏目家となる」

 

アリアは何か言いたそうにしていたが話を進めるために口を紡ぐ。

 

「俺の実家は日本に古くから伝わる家でな俺はそこの養子だったんだ。」

 

「…だった?」

 

アリアは気になったのか自然に口から出たようだ

 

「ああ、高校入学前に問題があってな…それで家からはほとんど勘当のような感じになったんだ。それで俺はあんまり実家からしてはいい存在ではないんだよ。だからなるべく実家に帰るのは渋っていたんだが」

 

一度そこで間をあけると話し出す

 

「ハイジャック事件とデュランダルの事件では俺は実家の名前を使った。俺の実家は日本にも古くから伝わるが、国にも結構顔がきくんだ。それでいろいろと名前を使わせてもらったが結構ヤバかったと言えばいいのか…実家に呼び出されてな。それで今回実家に帰ることになったんだ」

 

俺は一旦そこで話を区切る。

どうやらまだ聞く気はあるみたいだな。

俺は話を続ける。

 

「そして、この前学校を攻撃してきたのは俺の家の関係者だ。多分俺を実家に帰らせるために送りだしたんだろう。俺が実家に帰ると言ったら気配とかもろもろ消えたから先に行ったんだろう。…ほかにもいろいろあるんだが…」

 

俺は言葉を濁す

 

「何よ?どうかしたの?」

 

「いや。このことはどうせ後にはわかるから説明しなくていいか?というかあんまり説明したくないんだ」

 

アリアたちは聞きたそうにしていたがこちらがあまり乗り気でないことを気にして問い詰めないでくれたようだ。

別にしゃべってもいいのだが…あんまり自分から説明したくないんだよな。

まあ、実家に着いたらわかることだし別にいいだろう。

 

長々と話をしたせいでちょっと疲れたよ。

キンジたちは聞きたいことは聞けたのか姿勢を楽にしている。

 

しかし大事なことはこれからのことだ。

俺はもう一度場の空気を緊張させる雰囲気を放つ

どうやら場の空気が張り詰めたことでまた全員気を引き締めている

 

「確かに、これから実家に行って話をするだけだが…俺の実家に行ったらしばらく出ることはできないと思っていたほうがいい」

 

「?どうして?」

 

「それほど…うちの実家がヤバいからだ…なるべく行くのはやめておいたほうがいいぞ」

 

俺は一応忠告する。

そう、多分実家に帰ったら1週間は監禁されるだろう。

目に見えている。

キンジたちは驚いていたがどうやら覚悟の上だったそうで何も言いだそうとはしなかった。

その後無言のまま新幹線に揺らされている。

 

あ、やっぱり帰りたくねぇー

そう思っていても時間は進む。

新幹線は奈良までしっかりと走るのだった。

 

 

 




28弾投下終了しました。
これからもがんばって投下しますのでどうかよろしくお願いします。
恋姫夢想さん、ミジンコドリームズさん、ナスカ級さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28弾 実家に帰ろう!そして出てくる白野の…

この話では奈良県の話が入っているのですが私は奈良県出身ではなくネットで調べながら書いているので本当に合っているかわかりませんが何とか理解しながら自分解釈で書きました。
何か問題があった場合でも温かい目で見守ってください。



俺が話を終えた後は少しだけ緊張の雰囲気が流れていたが、さすがに暇でもしたのか退屈な雰囲気が流れる。

そこで、理子さんは素晴らしいな。遊び道具とかよくもって来たよ。

さすが雰囲気ブレイカーだな。

 

そんなこんなで2~3時間ほどで奈良駅に着く。

ホームを降りて駅から出る。

ああ、懐かしいなこの景色。

東京のようにビルがたくさん建っているわけではないし、車も渋滞が起きるほど多くもない。

少し都会から離れたような空気。本当に懐かしいな。

 

俺が少し灌漑にふけっているとアリアがぎょろぎょろと周りを見渡す。

 

「ど、どうしたんだアリア?」

 

俺が質問をするとアリアは周りを見渡しながら質問を返す。

 

「白野!奈良ってたくさんシカがそこらへんにうようよいるんでしょ!なのにどこにも見当たらないじゃない!」

 

…アリアさすがにこんな交通機関の近くにシカがいるわけないだろ。

それと奈良に来たらそこらへんにいるとか思われるのはどうかと思う。

最近は規制やらなんやらで公園にしかいないんだぞ。たまに脱走するけど。

それも含めてしっかりアリアに説明する。

アリアは最後まで話を聞くと

 

「それなら公園に行くわよ!シカせんべいとか絶対に食べさせるんだから!」

 

アリア動物すきだなぁ。本人が動物的な感じだからか?

さすがに怒られそうだから黙っているが。

 

「アリア。お前動物みた…」

 

キンジ少しは自分の発言を考えろよ。もしこれがあのAUOのサーヴァントなら八つ裂きレベルだぞ。

キンジとアリアがじゃれあっているのを傍に感じながら考えてみる。

まあ、別に今日はまだ時間もあるし公園によってもいいかもしれない…

そこまで考えていると俺たちの目の前に真っ黒のリムジンが止まる。

 

…どうやら公園に行っている暇はないようだな。

アリアたちもこの状況を感じたのか動きを止める。

左座席(外車なのか。というかなんでこういうところは新時代的なのか)から一人の少女が出てくる。

すらっとした顔立ちに少しだけ釣り目気味の黒茶色の瞳。その横を流れるのはセミロングの黒髪。

服装はおしとやかに仲居服を着ているが少しだけ活発な雰囲気が彼女が明るめの子だとわかる。

 

彼女はうやうやしく頭を下げると

 

「白野様。よくぞお戻りになられました。」

 

そこで俺は右手を挙げ頭をかく。

うーん、俺は一応もう実家の人間じゃないからそこまでしなくてもいいんだけどな。

そして頭をあげ俺の後ろ側を向くと

 

「御一行様。よくぞお越しになられました」

 

そういってもう一度頭を下げる。

キンジたちも流れにさらわれたのか軽く頭を下げている。

 

はあ、というかいつまでもこんな感じじゃ俺たちが気疲れするな

 

「ユキ。もう普通の口調とかでもいいぞ。というかそうしてくれ」

 

俺が一言そういうと、ユキは少しだけフレンドリーな雰囲気をまとわせる

 

「本当はそうはいかないんだけどねー。まあ白野君だしいいのかな」

 

ユキの口調が軽くなると場の空気も軽くなる。

一度場を整えるともう一度ユキが話し出す。

 

「えっと、ちゃんと自己紹介したほうがいいよね。私は夏目家の属家に所属している倉橋(くらはし)有希(ゆき)といいます」

 

ユキが軽く自己紹介をするとこちらも軽めに紹介する

 

「それで、ユキ。あんたって、白野の何なの?」

 

アリア。その聞き方はいろいろと誤解を生むぞ。

 

「えっと、私は一応白野君の従者ということになるかな?」

 

「いや、もうそれは違うだろ。俺は実家から消されたようなものだし」

 

俺は軽い口調で言う。

しかし、ユキは表情を曇らせた。

 

「それは…違うでしょ…」

 

雰囲気がまた暗くなる。

コロコロと変わる雰囲気にキンジたちが困惑している。

ユキはまた顔を俯かせるがすぐに元の調子を取り戻す。

 

「…えっと、とりあえず晴海(はるうみ)様がお呼びになられたからそのまま一緒に行くことになるけど…」

 

俺の後ろを見やる。

たぶん、あの家に行くとしばらくは出られないことになるから言っているのだろう。

俺はユキにアリアたちが俺の秘密を知りたいからついてくることを伝える。

 

「わかった。それじゃあすぐに出発するから」

 

「えっ!シカは!公園にシカ見に行かないの!?」

 

アリア…お前はこっちのことはもういいのか

その質問に対しユキは

 

「ああ、シカなら家の近くにたまに降りてくるよ?」

 

アリアはその言葉を聞くとなら早くいくわよ!といい車のあるほうに行く

ユキは苦笑いをしながらそれを見て運転席に向かう。

まあ、シカも降りてくるがたまに熊とかも降りてくると言おうと思ったが…まあ何とかなるだろう。それも実家の力でなんとかなるさ。そう思いながら車に向かおうとすると

 

「ねえ、しーろくん」

 

理子さんに呼び止められる

 

「ん?どうかしたのか」

 

「ユキちゃんって、本当にしろくんのメイドさんなの?」

 

「…まあそうだったが」

 

「本当に~それだけの関係~?」

 

ああ、この目はからかっているときの目だな。

俺は理子さんに軽くチョップを入れて車に押しやる。

はあ、やれやれ実家の人たちでもあれなのにこっちにも問題児確かにいたな。

って、うおぅ!

いつの間にかレキさんが隣に立っている。

レキさんはちらりとこちらを見たがその後車に向かう。

いつもは無表情なのに今日のは少し怖い感じの無表情だったな…。なんでだ?

俺は少しだけ不思議に思ったが特に気にすることもせずキンジが車に乗り込んだのを見て俺も車に乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、白野君にも友達とかちゃんとできたんだね。私はうれしいよ」

 

運転しながらユキはいう。

うるさい、お前は俺の母親か。

そんな談笑をしながら実家までの道のりを進む。

 

「そういえば、この前学校で攻撃してきたよな。それっていったいどんな奴なんだ?」

 

キンジが聞くと

 

「ああ、それはミドリちゃんだよ」

 

「ミドリって誰なの?」

 

アリアが問うと

 

「ミドリちゃんは私の双子の妹なの。ちょっとぶっきらぼうだけど根はやさしい子なんだよ」

 

「へえ。確か弓で正確に白野の机とか打ち抜いていたからとても弓が上手なのね」

 

「ミドリちゃんは超能力も持っているから。それがとても弓と相性がいいんだよね」

 

家族の自慢話ができて満足しているようだ。

上機嫌のまま運転を続けるユキにアリアはまた質問をする

 

「それならあなたも何かできるんでしょ」

 

「えっ…そ、そんなことないよ。ど、どうしてそんなこと思ったの?」

 

「勘よ!」

 

お、でたアリアの勘。

ユキはさすがに言うことをためらい話をそらそうとするがアリアは話をそらそうとせず的確に問いただす。

ふむ、どうやらアリアはこのことにとても興味を示したようだな。

仕方ない助け舟でもだすか

 

「アリア、俺たちが寮にいたときに天井からかすかに気配が感じられなかったか?」

 

「え、うん。特に気にも止めないくらいの気配だったけど…」

 

「あれはユキだよ」

 

その言葉にアリアは驚愕の顔をする。

まあ、そうだろうな。あの時の気配はネズミぐらいだろうと思うくらい小さい気配だった。ふつう人間はそう簡単に気配を消せるものではない。そこまで気配を消せるのは達人級の人物だけ。月の世界でいたあのアサシンのサーヴァントくらいなのかもしれない。ユキはそこまではできないがそれでもすごいくらいの気配遮断スキルを持っている。こんなに元気な子なんだが意外とその行動は隠密系なのだ。

そのことをアリアに説明すると満足したのか問いただすのをやめる

ルームミラー越しに軽く目があったので「これくらいならいいだろう」といった感じに目を動かすとユキは軽く苦笑いする。

ユキも一応超能力を持っているがそれについてはアリアに言わないで置いた。

まあ、自分の能力をそう簡単に知られるのは良くないしな。

 

そんなこんなで山中を車で走ると少しずつ減速し見えてきた門の前で停車。

はあ、もうついてしまったのかと思い俺は座席をたち車を降りる

見えた光景はあの日最後に見たことと同じ。

何一つ変わっていない光景に安堵すると続々とアリアたちが下りてくる。

そして、実家のほうを見ると驚きの声を上げる

 

「は、白野。あんたの家ってこんなに大きかったのね…。」

 

「俺の家じゃないけどな」

 

そういい門に向って歩みだす。

日本でも有名な家であって結構大きいのだ。

理子さんは小声で「それならしろくんを捕まえれば…」とブツブツ言っていたが聞かないようにした。

 

門の前まで行くと扉が開く。

最初はいつもの光景だった。

しかし門が完全に開くとそれは異様な光景に代わる

 

 

「「「お帰りなさいませ。白野様」」」

 

左右に1列で並び本家の入り口にまで伸びる人の列。

それを見ると俺は疲労と一緒にため息を漏らす。

俺はもうこの家の人間じゃないのに

そんな気持ちを目に込めてユキを見やると

 

「あー、本当はやらなくてもいいって言ったんだけど…聞かなくてね」

 

その言葉を聞くと俺はまたため息をもらす。

そんな行動とは裏腹に俺の気持ちは嬉しかった。

家族でもない俺をみんなが受け入れてくれたことがうれしかった。

そんな彼女たちを傍に感じて本家まで歩みを進める。

そこでキンジが俺に近寄ってきた。

 

「白野。ちょっといいか?」

 

「どうした?」

 

キンジは冷汗を流す。どうやら気づいたようだな

 

「白野。ここにいるのはこの家にいる全員なのか?」

 

「ああ、何人かいないが全員だと思うぞ」

 

そしてキンジは核心の質問を放つ

 

「どうして全員女なんだ?」

 

俺はその質問にニッコリ笑顔で答える

 

「それはこの家には女性しかいないからだ」

 

そう、この家には女性しかいない。

HAHAHAありがとうキンジ!確かに実家に帰ってくるのは好ましくなかったが…それ以上に困っていたのはこの家には女性しかいなかったからだ!

あの時の生活は大変だった…女性しかいないこの家でただ一人の男である俺。

だからキンジありがとう!

俺のにっこり笑顔を見たキンジは落胆するかのように頭を下げる。

ふふふ、ヒステリアモードにならないように逃げだそうにもそれはできないぞ。

この家に入ったらそう簡単には出られないからな。

 

俺が笑っているとかすかに懐かしい香りが俺の鼻孔をくすぐる

この香りはと思い本家に続く木の階段を見るとひとりの少女がいた。

すっきりとした顔立ちに黒色の瞳を持ち腰まで伸びる長い黒色の髪を一つにまとめ白を基調とした和服をまとう少女は大和撫子のような雰囲気を醸し出させる。

 

その少女はこちらが気づいたことを見ると涙ながらにこちらに歩み寄る。

そのままその少女は俺の胸に収まり言葉を放つ

 

「よかった…。やっと会うことができた…。」

 

俺は何も言わずにされるがままにされる

俺は何も言えない。

何もしてやれることができない。

してやれることはこれからも出会わないことだと思っていたから。

けど、こうして俺とあって泣いてくれるのはとてもうれしい

俺はこんなにもこの家の人々に愛されていたんだなと改めて感じる。

 

しばらく、彼女は俺に抱きつくと名残惜しそうに離れる

 

「ちょ、ちょっと白野!その女誰よ!」

 

だからそのセリフは結構誤解を生むって!

キンジたちも驚いたようにこっちの様子を見ている。

しかし、何と説明したほうがいいのか…あの言い方はしたくないし…というかもう違うけど

 

しかし、説明したのは俺じゃなく、少し俺から離れ顔を赤目らせた彼女だった

彼女は軽く咳払いをすると話し出す

 

「私は夏目家次期党首である夏目晴雨(はるさめ)と申します」

 

軽く頭を下げ挨拶すると微笑みかける。

あ、キンジが軽く赤くなっているな。白雪さんに見られたらやられそうだな。いろんないみで。

 

「えっと…白野との関係は…」

 

そう言うとまた顔を赤目らせてこちらを見る。

ま、まさかそのまま言うのか!

は、恥ずかしいんですけど!

俺の気持ちは知られず話は進む

覚悟を決めたように晴雨さんは言葉を放つ

 

「婚約者です」

 

 

 

 




28弾投稿終わりました。
実はこの話地味に夏目家の真名についてのヒントが隠されています。
ネタばれになったりしますので知りたくない人は物語感覚でこの話を見てください。
天照光さん、ミジンコドリームズさん、峻獄さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29弾 質疑応答

前書きですが特に書くこともなかったので投稿します。



衝撃的な発表の後はもうひどかった。

理子さんからはいじられるわキンジからはうざい笑顔で詰め寄ってくるわなぜかレキさんはなぜか怒ったような雰囲気でこちらを見てくると言うか睨んでいた。

 

「なるほどねー、つまり養子は養子でも婿養子というわけだったかー」

 

理子さんが残念そうな声で言う。だから俺の家じゃないって言ったじゃん。

そんなこんなで廊下を渡り歩く。

そう言えば

 

「晴雨さん。ミドリさんを送り込んだのはあなたでしょ」

 

晴雨さんは足を止めこちらを見てから言う。

 

「だって、普通に手紙を送っても来てくれないでしょ」

 

「うっ、まあそうだっただろうけど」

 

その言葉に俺は言葉を詰まらせる。

確かにあの方法(脅迫)が無かったらこなかったかもしれないな。

その思いを持ち晴雨さんを見るとにっこりと笑う。

ぐ、なんだか負けた気分だ…。

しかし、晴雨さんは少し悲しそうな顔をすると

 

「けど、晴雨さんなんて堅苦しい言い方しなくて、前みたいにハルちゃんって呼んでほしいものですけどね」

 

「…」

 

それはもう俺には呼べない名だ。

俺はもう実家から勘当された身。

つまりもう俺は晴雨さんの婚約者ではなくなった身なのだ。

だから俺はもう晴雨さんの近くにはいれない。

 

晴雨さんは俺の顔を見ると振りかえりまた歩き出す。

俺の表情から何を読み取ったのかは分からないがあまりいい気分ではないのだろう。

というか、

 

「アリア。さっきから妙に静かだな」

 

アリアはこちらが質問するとこちらを見る

 

「ああ、私にはアンタの気持ちがわかるから」

 

そう言って、また前を向き歩き出す。

わかるって言っているがまさかアリアにも婚約者とかいるのかな。

まあ、この前アリアのことを調べたときには何もなかったからそれはないのだろうと結論づける。

そんな感じで本家の長い廊下を歩いていると前の方の曲がり角から一人の少女が出てくる。

全体的にユキのような雰囲気を纏わせているがセミロングの髪は一つにまとまり、眼鏡をかけた目はユキのように釣り眼気味だが目線は鋭く元気というより冷静さが感じ取れる。

その少女はこちらに近づくと軽く頭を下げる。

 

「おかえりなさいませ。白野様」

 

まるで壁でも作るかのようにしっかりと頭を下げる少女に俺はまた溜息を洩らす。

昔はもう少し素直な感じだったのにな。

まあこれが普通の反応なのだが

 

「はあ、ミドリとりあえずあなたも挨拶しなさい」

 

晴雨さんからそう言われて頭を上げ自己紹介を始める

 

「はい、私は晴雨様の従者、夏目家の属家である倉橋家の一人倉橋 緑(みどり)と申します」

 

また軽く頭を下げる。こちらも軽くの自己紹介をするとミドリは晴雨さんの横に着く。

どうやらついてくるみたいだな。

というか全員こっちにくるのか…。俺はこれから怒られに行くようなものなのになあ

 

そんな感じである障子の前に来る。

ついに来てしまったのか。

俺は気合を入れて障子を開く。

 

中には数人の女性がいる。

その上座にはまるで目を閉じた20代くらいの1人の女性がいる。

彼女は現夏目家当主である夏目晴海。晴雨さんの母親になる。かたで切りそろえられた黒髪で顔はすらっとして黒の和服を着ている。

本当に若々しいな本来の年齢はアラサーに近いというのに。

そうは思ってもここが正念場だ。

気合を入れて正面にある座布団に正座をして座る。

アリアたちが全員座った雰囲気を感じると女性は目を開け話始める。

 

「よくぞ帰ってきました白野。」

 

「はい、これまでご連絡をおろそかにしてしまい申し訳ございませんでした」

 

そう言って頭を下げてしばし

 

「頭をあげなさい」

 

俺が頭を上げるときりっとした目で見られる。

俺はなるべく平静を装い次の言葉を待つ。

 

「今回呼び出された意味は分かっていますね」

 

「はい」

 

「言い分は?」

 

そう問われ俺は一拍間をあけると答える。

 

「今回は勝手に夏目家の名前を利用してしまい申し訳ありませんでした。」

 

その発言をしかと聞く晴海さん

俺はまた一拍間をあけると言葉を放つ

 

「けど、俺は勝手に名前を使ったことに後悔をすることはありません」

 

「…」

 

押し黙っている。

どうやらちゃんと聞く気があるみたいだな

 

「私は勝手にこの名を使ったわけではありません。名前を使ったのは守るべきもののため。

守るために使わせてもらいました」

 

「それが自分の立場を危ぶませるとしても?」

 

その言葉に俺は質問で返す

 

「俺はこんな人間だって知っているでしょう?」

 

それを聞くと晴海さんは右手を頭にあて軽く溜息を洩らす。

そして、もう一度こちらを見ると

 

「わかりました。今回の件は不問とします。けど、なるべく利用は控えるように」

 

その言葉に俺は緊張の糸を緩める。

よかった。なんとか許してもらえたか。

軽く息を吐いていると

 

―!

 

場の空気が変わる。

これは、まずい!

 

「さて、問題の件は片付きました。だから…」

 

晴海さんが席を立とうとしている。

ぐっ!早く逃げ…

 

シュバ!

 

は、速い!

一瞬で目の前まで…!

 

「ようやく白野君をめでられるー!」

 

そう言いながら俺に抱きつかれ何も抵抗できずに組み伏せられる。

 

「まったく、心配したぞー!いきなり国から連絡来たかと思えばハイジャックにあったりとか、めちゃくちゃ心配したんだぞー!」

 

そう言って俺に頬ずりしてくる。

ちらりと見えた後ろ側ではアリアたちが呆然としている。

まあ、それもそうだろうさっきまで威厳がすごかったのにいきなりこんな感じになったのだ。

そう、彼女は

 

「まったく、白野君に何かあったら国を潰していたぞー!」

 

なぜか俺にご執心なのだ。

というか、その発言はまずいですよ!できそうだから!

 

俺がやられていると後ろから声が聞こえてくる

 

「なあ、えっと…夏目」

 

「あ、晴雨でいいですよ。キンジさん」

 

「あ、ああ。あの晴海さんっていつもああなのか?」

 

「お母様は白野がここに来た時からいつもあんな感じですよ。というか、この家の人は全員白野が大好きですよ」

 

「お前…余裕なんだな…」

 

後ろはいったい何の話をしているんだ…。

 

「は、晴海さん!俺、もう明日から東京にかえらな…」

 

「いいや、ダメだ!私は1年も白野と関わっていないんだぞ!しばらくはここから出させないからな!」

 

そう、俺がしばらくはこの家から出られないと言ったのはこの人が家から出させてくれないからだ。

 

「ふむ、早速夕餉まで部屋に戻ってめでるとしますかね…」

 

ゾクッ!

いつもとは別の悪寒が…!

これはいろいろとまずいぞ!

晴海さんに首根っこを持たれて連れて行かれる。

 

「ヘルプ!誰か助けて!」

 

俺が後ろを見て助けを請うが

 

「ねえ、こっち見て!助けてよ!ねえ!」

 

誰一人としてこちらを見ていない!

みんな目をそらしすぎだろ!

いや、一人だけ微笑みを浮かべながらこちらを見ている人がいる。

晴雨さんだ。

よかった。助かったと思ったが彼女の持っていたカンペのようなものを見て絶望する

 

『白野は私にも何も言わずにこの家を出ましたね。しばらくお母様の遊び相手になって反省してください。』

 

うわ、めっちゃ怒ってる!

確かに、何も言わずにここから出て行ったけど、それも仕方ないことだったんだって!

そんな声を出すこともできずにふすまの奥に連れて行かれる。

 

そのあと夜に満足した顔の夏目家現党首と疲労した白野が出てきたのは言うまでもない

 




29弾終わりました。
オリジナルって難しいですね。なるべく早めに書きあげたいです。
虚気さん、恋姫夢想さん、『薄利多売の』湊さん、伊藤要さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30弾 身辺調査

またまたいつの間にかお気に入り数400件超えていてびっくりしました。
お気に入りしてくださった方々本当にありがとうございました。
今回の話は基本キンジ視点となります。


Side キンジ

 

ははは、白野すごい顔しているな。

今は夕食の食事中。白野に騙されて、女だけしかいないこの屋敷に連れてこられた。

まったく、あいつ大事なこと黙っていやがって…

まあ、だからあいつに助けを求められた時にはいい気味だと思った。

しかし、今隣にいる白野は顔がめちゃくちゃやつれている。一体何があったんだ…。

 

この家では夕食は仲居ともども全員で食事をするのが習慣らしく広い和室に全員が集まっていた。

というか女沢山に対して男二人とかあんまりだろ…

しかし、考えてみると1年前までこの部屋には男一人しかいないんだったよな。

なんか、そう考えると白野のことがかわいそうに思えてくる…

 

まわりでは仲居達が談笑しながら食事をしている。

そこで、ふと俺は気付く。

 

「なあ、白野」

 

「…ん?どうした?」

 

疲労した声でこちらに返してくる。なんかすまん。

しかし、質問は続ける

 

「なんかこの家の人たち若いな」

 

白野が驚いた目でこちらを見てくる。

 

「まさか、キンジ…。この家の人に手を出すのか…!」

 

「い、いや!違う違う!ちょっと疑問に思ったんだ!」

 

両手をぶんぶんと振り否定を示す。

 

「はあ?なら一体?」

 

「いや、なんだかこの家の人全員若くないか?若く見えるからかもしれないが俺には全員2,30代にしか見えないんだが…」

 

その発言を聞いた白野は何か確信でも突かれたように目を見開く。

そして一瞬顔をそらしまたこちらを見た白野の表情はさっきまでの表情が見えない。

 

「いや、これは…ちょっとな…」

 

その言葉はまるでそれ以上詮索するなといったような言葉だった。

その目はまるでこれ以上こちらに踏み込むなといった目だった。

これ以上白野からは何も聞けないかもしれない。

 

「いや、悪かったな…深入りしすぎた…」

 

そう言って食事を進める。

白野は悪いと言って食事を進める。

 

しかし、このままでいいのか

俺はなんとなくこの問題を野放しにしてはいけないと感じた。

後でアリアたちに相談してみるかそう思いながら食べものを一口口に入れた。

 

 

 

 

 

 

「へえ、確かにそうだった。気になるねぇ」

 

夕食が終わるとアリアたちに声をかけ談話室に行きさっきまでの話を聞かせる。

白野に関しては夕食が終ると同時に逃げ出そうとしたがそれ以上に早く晴海さんが捕まえて連れて行った。すまん、白野…。

アリアたちに相談をもちかけるとアリアたちもさすがに疑問を持ったようだ。

アリアがううんと上ずった声を上げる。

 

「本当に全員若く見えるだけなんじゃないのー?」

 

理子からそう言われるが

 

「いや、そうは思えない感じなんだよな。それなら白野も全員が若く見えるだけとかいうだろ。けどあいつは返答を拒んだ。そこが不可解なんだよ」

 

俺の発言に理子も考えるようなしぐさをする。

どうせしぐさなだけであの頭の中は何も考えていないのだろうが。

 

あいつは何も言わなかった。

考えてみればいつもそうだった。

あのハイジャックの時も重要なことは何も言わなかった。

ただ助けるために行ったこととだけ。

いつもあいつは自分のことは何も言わなかった。

何故だ。

俺は疑問に思う。

その答えは意外なところから聞こえた。

 

「白野さんは何も言えなかっただけ」

 

レキだ。

さっきまで静観していたレキが声を上げる

俺はつい聞いてしまう。

 

「何故そう思ったんだレキ?」

 

レキはこちらの言葉を聞くと一つ間を置き言葉を紡ぐ

 

「白野さんは何も言えなかった。彼はうそをつくことができないから」

 

…そう言われて見ればそうだったのかもしれない。

嘘をつけない

嘘をつくことが一概に悪いことだけとは限らない。

世の中には優しい嘘などがあると言われるが俺はそれが一種の偽善だと思う。

嘘を吐くと言うことはその人をだますことと変わりない。

その中に優しいもくそもない。結局はその人を苦しめる。

白野は人を苦しめないために嘘をつかない。

だから、何も言えなかったのか

 

「白野さんは優しいですから」

 

その声はまるであいつの本当を知っているかのような声だった。

白野めレキにもフラグ立てていたのか。

まあ、今はそんなことどうでもいい。

あいつについていろいろ考えてみたが結局振り出しに戻っただけだ。

 

「なら、これからどうするんだ?結局振り出しに戻っただけだぞ」

 

俺の発言にアリアが提案する

 

「白野が答えないなら別の人に聞くまでよ。」

 

そう言ってアリアが動き出す。

まあ、本人が答えないならほかの人に聞くだけだな。

俺は席を立ちアリアの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「何故、この家には若い人しかいないのかですか…」

 

俺たちが聞いたのはちょうど道を歩いていた晴雨だった。

晴雨はその言葉を聞くと少し顔を暗くする。

 

「白野に聞いたけど教えてくれなかったのよ。だから晴雨教えてくれない?」

 

「そうですか…白野が…」

 

そこで晴雨は考えるかのように口元に手をあてる。

しかし、仕草仕草が本当に大和撫子だな。身近にも大和撫子な人もいるけど、武装巫女だしなぁ…

いかんいかんと頭を振って切り替える。

しかし、

 

「それなら私が深く答えることはできません」

 

「な、どうしてよ!」

 

「これは白野の過去の話が関わってくるからです」

 

その言葉に俺は息をのむ。

あいつの過去ってことは

 

「もしかしてそれは白野がこの家から追い出されたことと関係があるのか?」

 

「はい」

 

なるほど。あいつが答えたくなかったのは過去が関係したからか。

 

「それなら、あいつの過去に何かあったか教えてくれない?」

 

アリアが問うが

 

「いえ、これは白野自身が答えなければならないものだとお思います。それに勝手に人の過去を話すのはいけないことでしょ」

 

まあ、それもそうか。

勝手に過去を話されるのは白野にとってもいい感じしないだろうし。

俺はその場を去ろうと提案するが

 

「本当はこんなことにはならなかったんですけどね…」

 

「…それは白野が出ていったことがか?」

 

俺の発言に晴雨はこくんと首を縦に振る

これは少しでも情報を集めておいた方がいいのかもしれない。

俺はしっかり考えて質問をする。

 

「どうして白野が勘当されたこととみんなが年若いことが関係するんだ?」

 

晴雨は言いにくいことのように言葉を出す。

 

「それはある人と…呪いがかんけいするんです」

 

「ある人…?呪い…?」

 

それは一体なんだ?それは聞いておきたい。

つい先走り質問してしまう

 

「それは一体どんな…?」

 

それを聞くと

 

「すいません。これ以上説明することはできません」

 

しまった。つい先走ってしまった。

仕方ないか、核心には迫れなかったが大体の状態は分かった。

 

「晴雨様。こちらにいらっしゃいましたか。急いでお耳にしたいことが」

 

そう言って出てきたのはミドリだった。

ミドリは一瞬こちらをみたがすぐに目線は戻り晴雨に耳打ちする

それを聞いた晴雨は少し驚いた顔をして

 

「わかりました。すぐに向かいます」

 

そう言って振りかえり進もうするがもう一度こちらを見て言う

 

「白野は今は言葉を濁すかもしれませんがきっと話してくれると思います。その時はどうか白野のことを嫌いにならないでやってください。私たちは…逆に白野を傷つけるかもしれませんから。」

 

そう言って頭を下げる。

それに答えたのはアリアだ

 

「それは当り前よ。アタシたちは白野の仲間なのだから」

 

その言葉を聞いて頭を上げた晴雨はいい笑顔だった。

まったく。白野もこんないいやつを悲しませるなよ。

そして、また彼女たちは振り向き道を歩いて行く。

 

俺たちはそれを見送った後

 

「…もう今日は遅いし明日にするか」

 

「…それもそうね。それじゃあまた明日」

 

俺の提案に対し賛同を得る。

部屋に戻りながら俺は考えた。

白野はいったいどれほどの思いを背負っているのかと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 晴雨

 

キンジさんたちならきっと白野と向き合えるかもしれない。

その思いを託しほとんどの情報を渡した。

後は、彼ら自身にかかっている。

けど、今はそれにかかりきりになれない

さっきの連絡でまずい事態になったかのかも知れないからだ。

 

「さっきの話は本当ですか?」

 

隣を歩いている私の優秀な従者ミドリに話しかける

 

「はい、先ほど連絡があり今さっき移動をはじめたようです」

 

はあ、ほんとこういったことには速いですね

 

「たぶんつくのは明日の朝でしょう」

 

「それまでには準備を整えます」

 

「準備をしたらしばらくの休憩をして明日に備えなえて置いてください」

 

わかりましたと言い別々の方向に歩きだす。

たぶん奴らの狙いは白野だ。

私がしっかりと守らないと。

そう心に秘めて私は歩き進める。

 

 




30弾終わりました
白野君の過去編はバトルが終わった後くらいになりそうです。
SG1さん、恋姫夢想さん、『薄利多売の』湊さん、アウフさん、働きハッチーさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31弾 侵入する悪意

えー、自分もまさかこんなことになるとは思いませんでした。
まさかの日間ランキング1位になれるとは思いませんでした!
そしてお気に入り登録数も500件突破!
本当に読者の皆様ありがとうございます!
今後も誤字や文の構成がおかしいところがあるかも知れませんが皆様がこの作品を楽しめるように頑張って書きますので応援よろしくお願いします!
後、一文字だけメインタイトルを変更しましたのでご確認ください。


「う、うーん…ハッ!」

 

知っている天井だ…デジャブ?

う、しかし昨日はひどかった…思いだしただけで悪寒が。

布団から上半身を起こすとカーテンの隙間から流れ込む光に手をかざす。

しかし、その光は長く続かず途切れるように見えなくなる。

逆にこちらから隙間を見てみると空には真っ黒な雲が見えた。

それは何か不吉なことが起こるような…何の光をも通さない黒だった。

まあ、今俺の状態が不幸なことみたいな感じだけどな。

そんな思いを持ちながら立ちあがろうと横を向くと

 

「おはようございます♪白野君」

 

おいやめろ。朝から俺をショック死させる気か。

そんなこと言う間もなく驚いた反動で声も出ず後ろにずざざとさがる。

俺が落ち着くと

 

「…朝からどうした?ユキ」

 

俺が訝しそうに質問すると

 

「白野君のかわいい寝顔を見たかったから♪」

 

「…本音は?」

 

「白野君の驚いた顔を見たかったから♪」

 

はあ、まったくこの人は…。

俺があきれた声を出す。そして

 

「で、何かあったのか?」

 

俺がそう問うと今度はユキは真剣な顔で答える。

 

「実は、土御門家が嗅ぎつけたみたいなの」

 

ふむ、さすがに気付かれたか…

しかし、

 

「速いな」

 

「まあ仕方ないよ。あの人たちの狙いは白野君の力なんだから」

 

まあ、そうだろうな。

だから俺は勘当されたし、この家にはなるべく関わらないようにしたのだから。

ここぞという今だからこそなのだろう。

仕方のないことだ。

俺は布団とから立ちあがりながら言う

 

「わかった準備をするから先に出ていてくれ」

 

そう言って布団から出ると

 

「ごめんなさい。本当はあの人のせいなのに…」

 

「…それは言わないことだって言っただろう」

 

そう、これは俺のお節介でなった事態だ。

だから俺にその言葉は言わないでほしい。

俺のその言葉に頭を下げるユキ。

ユキは沈んだ声で言う

 

「白野君がかばう必要はなかった…」

 

「ユキ。いいんだよ。これは俺がお節介でやったことだ」

 

俺がユキの言葉をさえぎるように声を出す。

 

「それよりも今はあの人たちをどうにかしないと」

 

気持ちを切り替えるように提案をする。

 

わかったと聞いて部屋を出るユキを背後に感じながら俺は布団を立ちカーテンを開ける。

空に見える雲はどこまでも広く覆われていた。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、私たちはどうしたらいいの?」

 

準備を終えて部屋を出るとアリアたちとであった。

どうやら騒がしい今の家の現状を見て何かあったか感じ取ったようだ。

今この家に俺がいるのがまずいということが外部にばれその問答のために党首同士の話し合いがあることを伝えた。

そこでアリアたちは自分たちがどうしたらいいのかと俺に聞いてきたというところだ

 

「それなら、ユキたちについて行ってくれ。たぶんあっちに人手がいたほうがいいと思うからな」

 

俺がそういうとわかったというセリフとともにアリアたちが立ち去る。

俺も準備をするために、座敷へと足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side キンジ

「え、白野君がこっちに加勢しろって?」

 

「ええ。それでどうすればいいの?」

 

そう言われたユキは考えるように口元に手をあてると

 

「それなら護衛をお願いできますか?」

 

「護衛って?」

 

アリアが聞く。

それに答えたのは今奥の通路から出てきたミドリだった。

 

「皆さんには夏目家を守ってほしいのです。」

 

「それはどういうこと?」

 

「今から来る土御門家は夏目家とは敵対家の家なのです。場合によっては攻撃されるかもしれないので護衛にいってもらえませんか?」

 

「その土御門家ってどんな家なの?」

 

その質問にミドリは考えるように口元に手をやる

さすが双子というところか。性格は違うのにそう言った仕草はそっくりだな。

そう思っていても話は進む

 

「詳しくは話せませんが…敗走した家といったところでしょうか。私たち夏目家と土御門家はあるものをかけて対決をし私たちが勝ちました。」

 

そこで一旦話を止め、こちらを見る。

どうやらこのまま話を続けてもいいのか探ったようだ。

そして何か決心したように話を進める。

この短い期間で信用してくれたようだ。

 

「そして夏目家は真名とあるものを受け取りました。土御門家はそれを欲している。」

 

「それって一体どんな…?」

 

アリアが上ずった声で聞く。

 

「詳しくは話せませんが…それは世界をすべることができるほどの力だと言われています。それを…」

 

「その土御門家が欲しているわけね…」

 

アリアは深く考えている

そこでミドリは顔をうつむかせる

俺にはその表情を読み取ることはできなかった。

 

「わかったわ。もしも敵が武装解除してきたら応戦しろってことね」

 

俺たちにそう話をしたユキとミドリは本業である白野と晴雨の元に向かった。

それも俺たちのことを信用してくれたのか護衛に関する件を一任していった。

それなら俺たちもそれ相応の働きをしなくてはな。

そんな思いを秘め数人の武装した仲居と共に時間が来るのを待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ???

やっと、やっとだ!

車のリムジンの後部座席ワインを口に含みながら笑みを浮かべる。

先日のハイジャックの件でなんとなく網を張らせておいてよかった。

これでようやく公的に敵家に侵入できる。

黒のリムジンに揺られながら外を流れる奈良の景色を見ながら思う。

これまでの歴史では何度か侵入できたがすべて返り討ちされたらしい。

しかし、今回俺はそんなジジイたちのように無能ではない。

今の俺にはこいつらがいる。

そして俺は今回の協力者を見る。といっても二人だが

そいつらはまるでロボットのように動かない。

12歳ほどの男のガキだがその戦闘力は計り知れなかった。

こいつらなら希望通りの結果になる。

またひとつワインを口に含め今後の輝かしい未来にを思い浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

Side キンジ

 

待つことしばし、遠くの山の間から黒い車が見える。

車が来たのが見えたとき屋敷の方から晴雨とミドリがでてくる

彼女たちはまるでこれから戦闘でもするかのように袖をたくしあげている。

あいつらも戦うのか。

ミドリが戦うのはこの前のでわかっているが晴雨の戦闘方法は何だろう。

よく見てみると彼女の背中に棒のようなものがある。いや、あれは…薙刀か?それなのになぜ刃が無いんだ?

俺は聞こうとしたが彼女の真剣な雰囲気に口を閉じざるを得なかった。

 

そのあとすぐ門の前に黒いリムジンが数十台並ぶ。

場に緊張が流れる。

リムジンの先頭車両から20代ほどの青の和服を着た好青年が出てくる

青の和服を着た男は薄笑いを浮かべながらこちらに近づいてくる

 

「ほうほうほう、なかなかの美人さんになったねえ、晴雨」

 

男は笑みを浮かべるが晴雨は敵意を向けた声で言う

 

「本日はどうなさいましたか?土御門 元明さま?」

 

「ははは、そんなキミも美しいよ」

 

晴雨は何も聞こえていないようにまた質問をする

 

「本日はどうなさいましたか?」

 

そんな晴雨の態度に何が楽しいのか笑みを浮かべたまま返答をする

 

「そちらに禁忌を犯した屑が紛れ込んだんだろ?君のお母様は何を考えているんだろうね。だから私がお話に来たんだよ?」

 

その男がしゃべり終わった時俺は気付いてしまった。

晴雨の手がまるで食い込むかのように握りしめていることに。

まあ、晴雨の気持ちはわかる。

俺も大切な仲間を屑呼ばわりされたからな。

アリアたちも俺と同じ心境のようだ。

しかし、今は出しゃばってはいけない。

ここで暴れてしまっても逆に白野たちに迷惑をかけてしまうだけだ。

白野も後手に回る時はそれなりの回し方をしなければならないと言っていた。

それならしっかりと準備をしなければと心の中で覚悟を決める

 

「晴海さまと白野は中におられます。どうぞこちらに」

 

そう言って振りかえり歩みを進める晴雨。

すると元明と言ったか?そいつが晴雨に近づき彼女の肩に手をかける。

 

「しかし、キミも災難だねぇ。まさか婿養子によんだ奴がとんでもない屑だったとはねえ。私のものになればあんな奴よりいい思いをさせられるよぉ」

 

そんな鳥肌でもするような声が聞こえる。

しかし晴雨は冷静にしかし乱暴に払いのける

 

「そんなことはありません。白野はあなたなんかより数百倍いい人です」

 

そう答え晴雨は元明の手を払いのけ歩みを進める。

元明はやれやれと言った感じにかたをすくめ晴雨の後を追う。

俺はそれを見終わり振りかえると

 

「っ!」

 

び、びっくりしたー。

二人の子供が俺の目の前にいた。

そいつらは俺に気づいていないかのように元明の後を追う。

俺は今だ緊張感に欠けていたのかも知れない。

あいつらが飛んでもないやつだと気付かなかったからだ。

それに気付くのはもう少し後

 




第31弾終わりました。
これからも頑張って投下します。
ミジンコドリームズさん、シオウさん、恋姫夢想さん、『薄利多売の』湊さん、レモンティーさん、真九郎さん、Messiahさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32弾 思いの形

このオリジナル章もやっと次にバトルに突入しそうです。
白野君メインなので若干長めかもです。
後夏目家の真名がちらほらとわかっている人出てきたようですね。
あのサーヴァントと関係は…そうですね頑張らせていただきます…


障子から透けて見える空は黒い。

俺は今この家で一番深い部屋奥の間で待っている。

中には数人の仲居とともに上座には晴海さんが座して待っていた。

 

俺はあいつがあまり得意ではない。というかいけ好かない。

まあ、あいつくらいなら心で何を考えているのかぐらいはわかる。

そして今日の訪問。

この時くらいはしっかりしないとと気持ちを引き締めていると障子から少女の影あれは晴雨さんかそのあとに少し背が高めの影が映りこむ。

来たか。

急に障子があけられ金髪に染め上げられた髪、青の和服に身を包み一見好青年のような風貌の男が見える。

そいつはまるで自意識過剰のように言葉を放つ

 

「ほーう。此度はよき日よな。また夏目家当主と出会える日が来るとは」

 

晴海さんは閉じていた目を開けて言い放つ。

 

「私たちは与太話をするつもりはありません。早く用事を済ませてくれませんか?」

 

その声に肩をすくめる元明

 

「まったく、問題があるから私が来たんじゃないか」

 

「もともと問題はこちらで解決したのですよ。問題を大きくしたのはそちらではないですか」

 

「…わかったわかった。それではさっそく用事を済ませるとしますか。」

 

すると元明は周りを見渡して

 

「今日は私と春海とそこの屑だけで話をさせてくれないかな?」

 

まあ、こいつには昔からそう呼ばれていたのだ。

今更反応するのもつかれるといったもの。つまりなれである。

これくらいのストレス、月の世界でいくらでも体験している。

そういえばあのアチャ男のサーヴァントもいろいろあって髪が白くなったんだけ。

まだ俺は年若いから大丈夫かもしれない。…大丈夫でいたいなぁ

 

と、いかんいかん。今は目先のことに集中しないと

元明の提案で案の定うちの連中がいやな顔をする

 

「大丈夫安心してくれ。何もしないよ。私はちゃんと話し合いをしたいんだ」

 

そう言って腰に下げていた刀をそのついてきた男の子に渡す。

 

「私がいいとするまで外で遊んできなさい」

 

その男の子たちは刀を受け取って外に出る。

その状況に全員が目を合わせる。

どうやらどう判断するか悩んでいるようだ

その停止した空気を破壊したのは春海さんだった

 

「わかりました。こちらには白野もいるのですし大丈夫でしょう」

 

そう回答した春海さん。

それは俺が結構責任重大ですね…。

一応春海さんも超能力を持っているがそれは戦闘向きではない。

まあ、彼女は薙刀も晴雨の師匠だからそう簡単に倒されることもないだろうしな。

 

その提案を受けて不承不承ながら了承する。

そのまま三人だけ残して全員が部屋から出る。

晴雨は部屋を出るとき心配そうな顔をしていたが俺が大丈夫だと目配りする。

そして、三人だけの静寂が場を支配する。

そして、最初に口を開いたのは座布団にどかりと座り込む元明だった。

 

「さて、まずはそこの屑に話を聞かせてもらおうか」

 

「あなたねぇ…!」

 

「いいんだ晴海さん。こいつにかまっていても話は進まないよ」

 

突っかかろうとする晴海さんを俺はなだめる。

こいつの言動にいちいちかまっていても話は進まないだけだ。

 

「それで、一体今日はどうなさいましたか?土御門 元明様?」

 

俺がなるべく下手に出ながらも軽蔑するかのように声を出す。

 

「ほう、ちゃんと下手に出るのだな」

 

「ええ、今の俺はこの家の人間じゃない時点であなた様のような高貴な身分の方に顔が上がらないんですよ」

 

俺は両手をあげやれやれといった感じに首を振る。

元明は舌打ちをするがすぐに話をすすめる。

 

「…まあいい。それでお前の犯した禁忌はわかっているよな」

 

「…ええ、それがどうかしましたか?」

 

「その禁忌…いや禁じられた力はお前が持っているのであろう?」

 

「それはどうしてそう思いになったのですか?」

 

「しらばっくれるな!お前が持っているのはその力だろう!」

 

俺の発言が癪に障ったのか声を荒げて叫ぶ元明

 

「それだからお前は通常の超能力ではない変な力をつかえるのだろう!」

 

こいつが言いたいのはコードキャストのことか。

まあ確かにコードキャストは通常の超能力ではない。

あれは魔術を駆使したプログラムのようなものだ。

普通の超能力とは一線を引いている。

たとえば、もし相手が超能力を無効化するアイテムを持っていたとする。

それがコードキャストならそれは効かない。

この世界に定義されていない異質な力は抑えようがないのだ。

 

しかし、この夏目家に封印されていた力は別物だ。

あれはコードキャストと比べられないほどさらに異質なもの。

しいて言えば『呪い』だ。

 

しかし真実を言えば俺はこの『呪い』を持っていない。

ある事情によりコードキャストを『呪い』をすり替えたのだ。

真実を知っているのはこの家の人間だけ。

 

しかし、こいつはそのことを知らない。

だから俺のコードキャストを奪おうとしているのだ。

 

俺がコードキャストと呪いについて考えている間ずっと何かグチグチといっていたようだ。肩を上下に揺らすほど息を荒げている。

しかし面倒な話の最中は別のことを考えるに限るな。

校長先生とか無駄に長ったらしく話す人の話とか聞かないよね。

 

「…それであなたは散々愚痴をわめき散らしていましたが一体何が言いたいのですか?」

 

おお、晴海さんはちゃんと全部聞いていたのか…!これが大人の余裕…!

しかし晴海さんはさすがにうんざりしたのか少し疲労の糸が見える。

散々わめき散らかした元明は冷静になるために息を整えると話し出す

 

「これは失敬。つまり何が言いたいのかというと、その力を持っているその屑を野放しにしていいのかということだ」

 

「…つまり、白野をこちらに戻らせろと」

 

いや、それは困る。俺はまだ武偵でいたいし果たすべき約束もある。

しかし、元明はその提案を嘲笑し否定する

 

「いやいや。私はその必要はないと思うよ」

 

「それならどうしろと?」

 

困惑したように問う晴海さんに対し微笑を浮かべながら返答する

 

「まず、その力をただの平民。その屑が持っていることがおかしいのではないか?」

 

元明は立ち上がり少しずつ晴海さんのもとに歩みながら話を続ける

 

「これは本家の力なのだろう?なら取り返さなくてはならないのではないか?」

 

そして晴海さんの近くでかがみこむ

 

「…それはいったいどうするのですか」

 

その言葉ににやついた顔で答える

 

「簡単だろう。そいつの体内から力のもとを取り出せばいい」

 

しかし晴海さんは冷静に返答する

 

「それは無理です。確かにこの世界にある時には形はありますが、もし取り込んでしまうとまるで溶け込むかのように形を失うのです。なので取り出すことは不可能…」

 

「それは嘘だろう」

 

晴海さんが動揺の顔を示す

 

「たとえそれをつかんでも形を失わず所有者にまとわりつく。まるで蜘蛛の糸でまとわりつくように」

 

「…なぜそのことを知っているのです!それはうちの書物庫の文献にしか記されていないのに!」

 

彼女は語気を強める

 

「それは、うちに代々伝わる遺言なのだから知っているのは当たり前だろう」

 

嘘だな。その程度の嘘くらいなら目を見なくてもわかる。

どうせ忍か誰かを送り込んだのだろう。

 

「しかし、このままこの家に置いておくのは不安だな」

 

そう言ってまた立ち部屋を見回るように歩く

 

「この家は男が生まれてこないのだろう」

 

「…」

 

そう、この家には男が生まれてこない。

これの呪いの副作用だと思われる。

だからこの家は女性しかいないのだ。

つまりこの家がこの時代まで続いたのは別の場所から婿として婿養子を連れてくるのだ。それが俺がこの家に呼ばれた理由。

俺はただこの家を引き継ぐだけに呼ばれただけなのだ。

 

「それなら土御門家で管理したほうがいいのではないか?常々見知らぬ屑を呼ぶからこういった事態になるのだ。…思いついたぞ。それなら夏目家も土御門家と合併したほうがいいだろう。それなら跡取りの問題も安心だぞ。」

 

そう言ってまた晴海さんの前に出る。

俺には何も言えない。

俺が言ってもこいつは聞く耳を持たない。

だから最終決定は晴海さんの一言になる。

いまだ瞑想する晴海さんに元明は言葉を投げかける。

 

「こんな一般凡人な奴くらい殺して、力の元を取り出せばもとにもどるじゃないか。それが互いにとってのメリットになるぞ」

 

しかし、その提案は一瞬にして彼女の覚悟を決める言葉だった。

 

「わかりました。」

 

「よし、それなら…」

 

「その提案には承諾しません」

 

「…は?」

 

元明の顔は何もわかっていないかのような表情だ。

しかし、晴海さんは淡々と言葉を紡ぐ

 

「そのような提案に応じることはありません。私はそんな提案のために大切な家族を失ったりしない。それに、白野をこの家によんだのはそんなことのためによんだのではありません。」

 

晴海さんは軽蔑した声で言う

 

「そのような提案を受けるほど私は落ちていません。今すぐお引き取りを」

 

そこで言葉を止める。

それが決定打となった。

打ちひしがれたようにわなわなとふるえる元明。

しかし、急にふっとにやけると離れるように歩き口をあける

 

「はあやれやれ。残念だよ。せっかくこちらからわざわざ出向いてまで…そちらのメリットも考えてまで提案してやったのに…」

 

出口近くまでいくとぴたりととまりこちらを見る

 

「まあ、これも想定していたことだ。私が手ぶらで来るとでも思っていたのか?」

 

 

―!

 

 

この感覚は!何かまずいぞ!

俺は立ちあがる

 

「渡さないというなら奪ってやろう」

 

俺は元明を拘束するために駆け出す

しかし、遅かった。

元明は右手を取り出し指をはじく。

 

パチンとした音から数拍後目の前の障子から何かが突き破る。

それはさっきの子供の一人だっただった

その突き破ってきた子供は俺を狙っていると悟り腕を使いガードする。

 

しかしその子供のとび蹴りの攻撃は予想以上に重かった。

両腕に攻撃がのしかかる。

腕からめしめしと音が聞こえそのまま吹き飛ばされる。

逆側の障子を突き破りそのまま外に吹き飛ばされ植え込みに埋まる。

外は雨が降っていた。

遠くから銃声が聞こえてくる。

みんなは戦っている。こんなところで寝ている暇はない。

しかし、そんな思いとは裏腹に俺の意識は遠のいていく。

守らないと…

そのまま意識は閉じて行った。

 

 

 

 




32弾終わりました。
白野君はなんかしにかけですがちゃんとバトルしますから!
ミジンコドリームズさん、恋姫夢想さん、シオウさん、アウフさん、ナスカ級さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第33弾 守るべき戦い

お気に入り登録者数600人突破しました。
本当にみなさんありがとうございます!
ちょっと今回はグロいです。それと若干短いです。


Side キンジ

 

くそ、一体どうなっているんだ?!

 

さっきまでなんの音沙汰もなかったのに急に攻撃され始めたぞ。

今はなんとか保っているがそれもじきにジリ貧になる。

俺たち夏目家の人数に対して土御門家の人数は3倍近くいる。

しかも土御門家は銃こそ使っていないが代わりに刀を使っている。

しかも全員がなかなか強いのでそう簡単に倒すことができずにいる。

なんとか夏目家の人たちと協力して耐えているが決定的に人数が足りない。

俺たちもアリアが頑張っているが量が多すぎてさばき切れていないようだ。

俺もヒステリアモードでない以上戦力にもなれない。

 

現状押されている今どうすることもできない。

一体どうすれば。

 

ヒュン!

 

うおっ!急に目の前に弓矢が!

その弓矢は寸分たがわず土御門家の一人の足に突き刺さる。

 

弓矢が飛んできた方を見ると門の上からミドリが弓を持って援護している。

確かにこの状況で援護はありがたいが混戦しているこの状況じゃ味方にも被害が来るぞ。

俺がそう思っていてもミドリはさらに弓矢を装填狙い撃つ

しかし、ミドリが乱射するように弓を放っても被害が広がるどころかしっかりと相手を沈めている。

最初は狙いがいいのかと思っていたがどうもそうではないようだ。

と思っている間も狙いの直線状に俺がいる。

しかし、弓矢は直線には進まず曲がるかのように進行方向が変わる。

これは…超能力か?

まあ、今はいい。なんとか援護によって状況は変わったようだ。

混戦した状況でしっかりと相手を沈める攻撃は相手にも動揺を生む。

どこかの攻撃かもよくわからない状況が動きを鈍らせているようだ。

逆転するなら今だ。

俺は混乱している敵を一人沈めるためにベレッタから銃弾を一発放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

Side 白野

 

―!

 

「ぐぅあぁ!!」

 

新たな激痛により意識が目覚める。

目を開き激痛ができた足を見ると小刀が俺の太ももに突き刺さっている。

一体何が。

俺がいた場所は外の植え込みではなく奥の部屋にいる。

どうやら連れてこられたようだな。

周りを見ると薙刀を手にした晴海さんが刀を抜いている元明を睨んでいる。

そして俺の太ももに小刀を突き刺したであろう子供。

どうやら状況は最悪のようだな。

元明はにやけた顔をしながらしゃべりだす。

 

「ほうら。お前の大事な家族とやらは刀が突き刺さってもがいているぞ?」

 

「この…外道が…!」

 

「私が命令すればあの子供は小刀を掴んで足から腹に向かって掻っ捌く。そうなったら普通は生きられない。俺はただ例の力がほしいだけだ。それなのにお前の大切な家族が一人ここで失われる。お前たちが渡そうとしないから」

 

晴海さんは心配そうな目で俺を見る。

まさか…言う気なのか!

 

「ダメだ!しゃべってはいけない!」

 

「動けない屑が勝手にしゃべるな!やれ!」

 

その声に子供が反応し俺の足に突き刺さった小刀を掴み少しずつ足を登るように裂いていく。

 

「ぐぅぅうう!」

 

燃えるような激痛。逃げ出そうともがくが子供が力強く抑えているため抜け出せない。

この力普通の子供の力ではないぞ!

俺はもだえる中少年の目を見る。

その目からはロボットのようになんの感情も見えない。

仮にロボット少年と名付ける。

そいつがまるで作業のように人を裂いているのだ。

血が大量に流れる中小刀は俺の股関節へと到着する。

そこで晴海さんが折れた

 

「もうやめて!わかりました!」

 

晴海さんは涙声で制止の声を出す。

その声に満足したのか元明は止めるように手を動かす。

すると子供の動きもピタリと止まり、俺から離れる。

元明は聞こえなかったかのように耳に手をあて聞いてくる

 

「ああん?何だって~?」

 

「…わかりました。しかし…」

 

そしてまた俺を一瞬見る。

その表情はとても穏やかだった。

 

落ち着くために一拍間を挟むと晴海さんは真剣な顔をしてしゃべりだす。

 

「しかし…白野が持っている力それは夏目家に献上された力ではありません」

 

「…は?」

 

元明はなんのことかわからない顔をしている。

しかし晴海さんは真実を喋り続ける。

力を持ち出したのは俺じゃないこと。その力を俺の力とすり替えて話を広めたこと。そしてその力は別の人間が持ち出したこと。

 

そのすべてを聞いた元明は

 

「…は?」

 

いまだ呆然としている。

 

「これが全てです」

 

「…この家には何もないのか」

 

「ありません」

 

「…そいつの力が望んでいる力ではないのか」

 

「違います」

 

「…それでは、私がこの時まで練り上げたこの策は無意味だったのか」

 

その質問に晴海さんは真実を告げる

 

「はい。あなたがやったことはただの無駄足だったのです。」

 

決定打か。

元明は顔をうつむかせている。

しかし、元明はかたを震わせたかと思うと急に笑いだした。

 

「はははははははははは!!!」

 

まるで狂ったのように笑う元明。

いや、たぶん本当に狂っているのだろう。

そして急に笑いを止めると無表情のままこちらを見やる

 

「それならお前たちに用はないな」

 

そう言って手を振りロボット少年に指示を出す。

 

「な?!ここにはお前たちの望んだものはないと言ったではないですか!」

 

「だからこそだ」

 

晴海さんを首をまげて見やり低く声を出す。

 

「お前たちは私を騙した。無駄な労力を支払わせた。その報いはしっかりと受けてもらわないとな」

 

「な、なんて理不尽な…!」

 

その言葉に元明は目を見開き唾を吐き捨てるように大きく口を開け叫ぶ

 

「私はこの時のために今まで待ってきたのだぞ!それをお前たちに潰された!俺は絶対にお前たちを許さないぞ!必ずお前たち全員を殺してやる!」

 

そう言ってロボット少年に指示を出す。

 

おれは元明の目から感じ取れる心をみた。

欲望をむき出しにした真っ黒な心。

 

その心を見て俺は決心する

 

負けられない

 

俺は負けられない。そんな欲望のために家族を失わせたくない。

だから負けられない!

 

俺はロボット少年が離れてから用意していた電子手帳から礼装である『人魚の羽織』を取り出す。

そして俺は折れた腕を強制的に動かし足に突き刺さっていた小刀を抜く。

血が大量に出るがすぐに『heal(32)』のコードキャストを使う。

鳳凰のマフラーではさすがに直しきれないと思いもうひと段階強力なコードキャストを使った。

治ったと思った瞬間俺は後方に下がる。

俺がいた場所はロボット少年がとび蹴りを放っていた。

畳が陥没している。

こいつ本当にただの子供なのか?

俺に突き刺さっていた小刀を牽制代わりに投げる。

ロボット少年は元明の元に飛びのく。

元明は俺の身体状態を見て戦慄する

 

「それなら…それならお前のその能力は何なのだ?!」

 

その問いに俺は八極拳の構えをして力強い声で返答する。

 

「これは俺の守るべき力だ!」

 

そして俺は戦いに身を乗り出す。

守るべきものを守るために

 




33弾終わりました
バトルに関しては次から頑張ります
ガルテガルテさん、ミジンコドリームズさん、虚気さん、トールvさん、恋姫夢想さん、rassyuさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第34弾  新たな不穏

感想でfate/EXTRAはいつから出るの?と聞きますがすいません。まだ濃い感じに出ないんですよね。
詳しく言うなら海の上でとまで答えさせてもらいます。


俺が飛び出すと元明を守るようにロボット少年が前に飛び出してくる。

飛び出した勢いをそのまま鉄山靠を放つ。

しかしその攻撃はがっちりと止られる。

こいつ本当に何者だ?

そう思ったのもつかの間横から俺の顔に向けてなぎ放ってくる足を上半身を屈めることで回避する。

小さな子供が俺の顔をめがけてけり上げたのでその体は軽く宙に浮いている。

確かに子供だがさっき鉄山靠を軽く止めたほどの実力。

俺はあまり手加減をせず連環腿を放つ。

しかしその子供はガードもせず技をもろに食らう。

俺が驚愕したがさらに別のことに驚愕した。

 

(こいつ…全然こたえていない…!)

 

まるで何もなかったかのように無表情のままのロボット少年。

攻撃を受けてもなおその目からは何も伝わってこない。

それが隙となる。

俺が動きを止めているとロボット少年は回し蹴りを放つ。

俺は回避も間に合わずその攻撃を食らってしまう。

脇腹にかかる衝撃。あばら骨が折れる音が聞こえる。

そのまま吹き飛ばされ雨の降る地面にたたきつけられる。

 

「ガハッ!」

 

あばら骨が肺に突き刺さったようだ。

喀血と一緒にせき込む。

やっぱり普通じゃないくらい強いぞ…!

俺は電子手帳から『鳳凰のマフラー』を取り出す。

ひとまず『heal(16)』のコードキャストを使い傷ついた体を治すが

 

「…まずいな」

 

魔力が減ってきた。

さっきの『人魚の羽織』のコードキャストでなかなかの魔力を消費した。

今の俺は魔力量が減ってしまったためあの時ほどコードキャストが使えない。

中威力のコードキャストを使うとかなりまずいのだ。

なるべく節約するように今は軽威力のコードキャストを使ったがそれでも足りなかったようだ。

まだ軽く脇腹がずきずきと痛むが動きには支障はないようだ。

 

しかし、このままではまずい。

敵に攻撃が効かない以上なんとかしなければ。

 

俺が躊躇しているとロボット少年から攻撃が仕掛けられる。

上からかかと落としの攻撃を横へとよけることで回避する。

水と土が飛び散る。

目を守るように腕で顔を覆う。

腕の隙間からのぞき見ると一瞬右腕を振りかぶったような動きが見えた。

これ以上攻撃を食らうのはまずい!

しかし、俺は跳び去ろうとはせず体制を低くして前に踏み込むように足を出し回避する。

頭上に拳が通ったのを確認した後斧刃脚を放つ。

見事にクリーンヒットしロボット少年は前傾姿勢となる。

斧刃脚で振り抜いた後遠心力で回り低い姿勢から肘打ちを繰り出す技裡門頂肘を放つ。

さらに前に倒れるようにしたロボット少年の頭を掴み

 

「おっらぁ!」

 

回して前方へと投げる天頭墜を放つ。

ロボット少年は現在晴海さんと交戦中の元明の元へと投げる

元明は交戦に集中していたのか反応に遅れる。

何とか回避をするがそれが隙を作り晴雨さんの攻撃を受けて外へと吹き飛ばされる。

ロボット少年はそのまま奥の間の壁にぶち当たり瓦礫がつみあがる。

軽く呼吸を整えて瓦礫が崩れたときの土煙が晴れるのを待つ。

 

土煙が少しずつ晴れる。

その中に一人立つ子供の影。

うそだろ…。これでもダメなのか。

無表情のまま立っているロボット少年。

しかし、少年は崩れるように倒れる。

一体どうしたのかと思い注意深く観察する。

が少年は何事もなかったかのように立つ。

しかし、俺は気付いた。

俺が斧刃脚をあてた左足が少しスパークしている。

そこから導き出される答え。

それは

 

「まさか…本当にロボットだったのか!」

 

だったら納得なのかもしれない。

この驚異的な耐久力と攻撃力は人間ではなかったからか。

それなら遠慮なくいける。

 

「くそ!何をしている!あぁ!何故いまだその屑を殺していないんだ!」

 

外から喚き声が聞こえる。

 

「くそ!くそ!くそ!あんな奴からもらったものだから使えないんだ!全然強くないじゃないか!」

 

その言葉にロボット少年はぴくっと反応をする。

ロボットでもこのような言葉に反応するのか。

ロボットでもまるで人間のような反応をする少年。

俺は罪悪感を覚えたがこいつらの目的を改めて思い出すとその気持ちも軽くなる。

こいつらは俺の守るべきものをこわそうとする。

そんなことやらせはしない!

だから俺はこいつらを倒す!

俺は電子手帳から『空気打ち/一の太刀』と『錆びついた古刀』を取り出す。

今まで人間相手にコードキャストをあてることにしぶっていたがロボット相手になら遠慮はいらない。

 

通常コードキャストはサーヴァント相手に使うものだ。

それはサーヴァント自身のステータスを上げること。

そのステータス上昇を人間自身に使う。

それはとても強力な能力向上になるのだ。

 

俺は『錆びついた古刀』から『gain_str(16)』のコードキャストを使う。

するとそこでロボット少年が瓦礫の中から飛び出してくる。

無表情なのにその目から少しだけ俺には感情が見えた。

けど俺はその感情から目をそらさなければならない。

守るべきもののため感情移入してはいけない。

それが心の迷いにつながるから。

 

俺は『空気打ち/一の太刀』を使いなけなしの魔力で衝撃波を放つ。

ロボット少年は両手を使いガードをするが防ぎきれずその両手を吹き飛ばした。

破壊面からチューブや金属のようなものが見える。

しかしその少年は足を止めることはない。

最後の命令を聞こうとしているのだ。

少年は跳びあがりとび蹴りを放つ

俺はその忠誠を壊すかのように全力で箭疾歩を放つ

 

「うおおぉぉぉ!!」

 

拳と足がぶつかる。

勝ったのは拳だった。

足からばきばきと音が聞こえる。

そのまま俺は拳を振り抜く。

その攻撃でロボット少年は完全に砕けた。

地面にはさっきまで少年の姿をしたロボットの部品が転がっている。

俺は勝ったのだ。

ふう、と軽く息を吐き手を下げる。

するとそのあと耳を汚すようにな声が聞こえる

 

「な!こ、こんなに簡単に壊れたのか!くそ!使えない!使えないごみを押しつけられた!これもすべてあいつのせい…」

 

「それは違う!このロボットはお前よりは強かったぞ。それをごみ呼ばわりするな!」

 

俺の怒声に腰を抜かす元明。

しかし、いまだ狂ったように叫ぶ

 

「嘘だ嘘だ嘘だ!そいつが私の足を引っ張ったのだ!私は悪くない!私は悪くない…」

 

その声を止めたのは別の人物

 

「ちょっと、うるさいですよ」

 

そう言って出てきたのはユキだった。

ユキは気配遮断で元明に近づくと手に持っていた長さ20センチほどの鉄針を元明に軽くさす。

 

『物体断裂《スラッシュ》』

 

そう言うと元明は糸が切れたかのように気を失う。

これはユキの超能力か

ユキの超能力それは『ずらす』ことだ。

このことの詳細はじきに話すことにするが…ユキはこの能力を使い元明の脳を支障がないくらいずらし意識を刈り取ったのだ。

 

しかし、こうしてみると改めてえぐい技だと感じる。

ユキは崩れ落ちる元明をゴミでも見るような目で一目見てこちらに向かってくる。

 

「ユキ。ありがとうな。こっちに加勢してくれて」

 

俺の言葉にユキは笑いながら返答をする

 

「本当はあっちに加勢をしていたから疲れたよ」

 

そう言って正門の方に指をさす。

そちらの方から音はきこえない。

どうやらあちらも勝ったようだな。

これで解決かと思い気を緩めると

 

「けど~私もたくさん超能力を使ったから結構疲れたな~」

 

「…おいユキ。まさか…」

 

「うん。お願いしてもいいかな?」

 

まじで…

 

超能力は使うと精神疲労をするが人によってはそれを回復させる手段があるそうだ。

それをユキは行おうとしている。

正直言うとめちゃくちゃ恥ずかしいのだ

 

「いや。けど1日休むと元に戻るんだろ?」

 

「私は今すぐ元気になりたいんだよ。それに白野君の手助けをしたしそのご褒美くらいはほしいかな」

 

そう言って元明がいた方向に指をさすユキ。

ぐ、この従者、主人に褒美をせがむのか。今は違うけど

おれだって魔力が枯渇しているのに

 

「…はあ、わかった」

 

「それなら私も白野のにおいをかぐ!」

 

そう言って出てきたのは晴海さん。

あなたは何故なんだ!

 

「私も頑張ったんだぞ!私も褒美がほしい!」

 

「なら何で俺のにおいをかぎたがるんだ!」

 

「私がそうしたいからだ!」

 

「アラサー近い大人が何言っているんだ!」

 

俺は溜息をついてから一考する

まあ、この事態は俺が作ったものだ。

はあ、ここは妥協するしかないか

 

「けど、俺さっきまで戦っていたからめちゃくちゃ汗かいているぞ。」

 

「いいのいいの。その方がにおいが強いから」

 

そう言ってユキと晴海さんは俺の後ろにつき首元を嗅ぐ。

 

クンカクンカスーハースーハー

 

うわぁ、やっぱりこれめちゃくちゃ恥ずかしいんだが。

 

そう、ユキの超能力回復の材料は匂いだ。

それも男の匂いじゃないとだめだというのがさらにたちが悪い。

晴海さんはただの変態だ。

 

ユキと晴海さんがむさぼるかのように俺の首筋から匂いを嗅いで数分。

やっと離れると満足した表情のユキと目があった。

 

「いや~。ありがとうね白野君」

 

はあ、やっと解放されたか…

そのまま安堵の息を吐こうとしたが

 

―!

 

急に悪寒が。

こ、これは…

 

「白野。これは一体どういうことですか?」

 

振り向くと微笑んではいるがまるで阿修羅のようなオーラを纏わりつかせている晴雨さんの姿。

 

「い、いや、これは…仕方のないことだったんだ」

 

「何がです?」

 

こ、怖い!怖いですよ!

 

「こ、これは、ユキが超能力の回復に男の匂いが必要だろ?ユキにせがまれたから仕方なかったんだ」

 

そう言って晴雨さんはじろりとユキを見るとユキはおどけたようにペロッと舌を出す。

 

「それならなぜお母様も?」

 

「私はただ嗅ぎたかったからだ!」

 

ドンっと効果音が聞こえるほどの声で宣言をする晴海さん。

その姿に晴雨さんは軽く頭を悩ませたようで手で頭を支え溜息を吐く。

 

「わかりました。なら後で私も嗅がせてください」

 

「えっ?」

 

何言ってんだこの人?

俺は反論しようとするが晴雨さんの何とも言えない威圧が俺の意見を抑え込んだ。泣きたい。

それなら私も混ぜろという晴海さんや俺の困る顔を見て笑うユキ、まだ怒ったようなオーラを纏っている晴雨さんを一目見る。

よかった。守ることができたんだ。

しかし、その安堵の気持ちは新たな声で引き締める事態になる

 

「それなら私も白野君を借りたいな」

 

その声で全員が息をのむ。

その声は女の声だった。

その姿はとても美しい姿だった。

その関係はあの事件の元凶。

俺がこの家から勘当された元凶、この家の力を持ち出した人物。

 

「や、みんなひさしぶり!」

 

夏目家元次期当主夏目 晴姫(はるひめ)さんだった。

 




34弾終わりました
もう一人のロボット少年については次に出ます。
あとちょいで過去編です。
恋姫夢想さん、ミジンコドリームズさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第35弾 夏目の真名

今回の話でやっと夏目家の真名が語られます!
そして、すいません。自分体調を崩してしまい頭ボーとした状態で仕上げたのでちょっとひどい感じに仕上がったかもです。なるべく早くなおして頑張って書きあげます。


「や、みんな久しぶり!」

 

微笑みながらこちらに軽く手を振る晴姫さん

それはまるで気さくな年上の女性が話しかけるようだった。

 

しかし、俺たちは警戒を強める。

こいつは例の力を持っているし油断ならないぞ。

 

「おい、白野!大丈夫か!」

 

そこでキンジ達が駆けつけてきた。

よかった。見た感じでは大きな怪我はないようだ。

 

「へえ、そうか白野君しっかり高校でも友達できたんだね」

 

「…ええ。あなたに騙されなければこんなにいい友達はできませんでしたよ」

 

「ふふん!感謝したほうがいいぞ!」

 

はあ、これは嫌味で言ったようなものなのに。

 

「晴姫。何故帰ってきたのですか?」

 

晴海さんが警戒をするように問いただす。

 

「私はこの家の人間だよ?だったら帰ってくるのは当たり前でしょ?」

 

しかし、その言葉を聞いたとき晴海さんは顔を俯かせてかたをわなわなとふるわせている

 

「あなた…本気で言っているの?」

 

怒っている。

晴海さんが珍しく怒っている。

そのまままくしたてるように声を荒げる。

 

「あなたのせいで白野が…!どんな思いで…!」

 

荒げる声。しかしその声は少し涙声になっている

晴姫さんは一瞬別の感情を見せると今度は無表情で返す。

 

「はあ、私には関係のないことだよ」

 

そう言って晴姫さんは振り返り歩き出す。

そこには気絶をしている元明の姿。

 

「私の目的はこいつの回収だからすぐに帰るよ」

 

そう言って元明の元に向かう

 

「いいえ。あなたにそいつを渡すことはできません。私たちにはそいつの協力者が誰か聞かなければならない」

 

そう言って引きとめる晴海さん

確かこいつにはロボット少年を送りつけた協力者がいると言っていたな。

そいつが今回の元凶であるのは確実だろう。

つまりそいつを潰さなければこの家はまだ狙われるということだ。

しかし、晴姫さんは小馬鹿にしたように鼻を鳴らすと

 

「私が何故このタイミングで介入したのかわからないの?私たちもそいつから情報が漏れるのは困るのよ」

 

その言葉に俺たちは唖然とする。

つまり

 

「この事件を引き起こしたのは晴姫さんだったのか?」

 

しかし、晴姫さんは両手を上げ嘆息して答える。

 

「いいや。私はただ回収に協力を要請されただけ。これの首謀者ではないよ」

 

「けど回収に要請されたってことはこいつらの協力者に関係があるってことですよね?」

 

「まあ、そうかな。一応友達の頼みだからね」

 

その言葉で一気に緊張が高まる。

つまり晴姫さんはこちらサイドの人間じゃない。

 

(敵ってことか…)

 

緊張のあまり俺の額から汗をタラりと流れる。

そこで俺の耳に小さな声が聞こえる

 

「ねえ白野。これは一体どういう状況なの?」

 

状況をのみこめていないアリア達はこの状況に混乱しているようだ。

俺は軽く説明をする

 

「俺たちもさっき元明たちをたおしたんだがさらにまずい状況になった。あの人は夏目 晴姫さん。夏目家の長女晴雨さんの姉だ」

 

「それじゃあ何でみんなあいつを敵視しているのよ」

 

俺は一拍間を入れて言葉を出す

 

「前に言っていた俺がある理由で勘当されたって言っただろう」

 

「ええ。それがどうかしたの?」

 

「それはあの人のせいなんだ」

 

アリアはどういうことといった目で聞いてくる。

まあ、これだけじゃわからないよな。

俺は手短に説明を入れる。

 

夏目家の力を持ち出した人物がいたがそれが土御門家のような連中にばれると問題が起きてしまう。なので養子である俺が持ち出したとすれば俺を追いだせば夏目家に傷は及ばない。

それが俺が実家から勘当された理由。

そしてその本来の力を持ち出した人物が

 

「あいつってわけね」

 

「ああ、そうだ」

 

そう言ってもう一度晴姫さんの方を見る。

どうやらこちらの説明を待っていてくれたようだな。

 

「それでどうするの?」

 

晴姫さんがこちらに聞いてくる。

その言葉に晴海さんはしっかりと返答をする。

 

「そいつをあなたに渡すことはできません。今すぐこの場から立ち去りなさい!」

 

しかし

 

「それなら力ずくでも奪わないとなぁ」

 

そう言って挑戦的な態度で返答をする。

 

これは戦うしかないのか…

 

それは少しまずい。

俺はさっきのロボット少年との戦いのせいで魔力をほとんど消費した。

軽威力のコードキャストも使えるのかという状態だ。

ほかのみんなも超能力を使ったりして満身創痍の状態。

この状態で勝つことは…

 

「あれ、もう一人ロボット送り込んだはずなんだが一体どこへ…ってうわっ!」

 

言葉を待たずに薙刀を持って飛び出したのは晴雨さんだ

そのまま追撃するが晴姫さんはその攻撃を軽々とかわし後ろへと跳ぶ

 

「何だよ晴雨~。いきなり攻撃するのはマナー違反だぞ!」

 

「…」

 

無言で返す晴雨さん。

まあ、あの事件の後一番怒っていたの晴雨さんだったからなあ

 

だが、どうやら晴雨さんはかなり体力が残っているようだ。

一人に負担をかけるのは心苦しいが今の俺たちが言っても足手まといになるサポートに集中するか。

 

しかし、さっき晴姫さんが言っていたもう一人のロボット少年は一体どこに…?

もしいたとしたら俺たちが戦わなければならないが。

俺の疑問に答えたのは何と晴姫さんだった

 

「ふむふむなるほど。晴雨アンタが倒していたのか」

 

その言葉に晴雨さんが驚愕の表情を見せる。

これには俺以外のみんながも驚いた。

晴雨さんは何もしゃべっていないから知りえることもできない。

晴雨さんが破壊したロボットの残骸でも見ていれば納得できるものだがさっきまでの様子では今気付いたような感じだ。

 

晴姫さんも超能力を持っているがそれはまた別の力だ。

それならどうやって知りえたのか。

 

みんなは動揺しているようだが…実は俺はこの秘密を知っている。

それが夏目家の盗まれた力の正体ということを

何故知っているのか。

それは俺があの現場にいたから…いいや今は考えている暇はない

 

「はあ、けど全員ちょっと面倒よね。仕方ないあんまり壊されるのは困るけど」

 

そう言って晴海さんは指を鳴らす

するとその場に2体のロボット少年が出てくる。

アリアたちは驚いたがこれが晴姫さん自身の超能力『座標移動《ムーブポイント》』だ。

これについても詳しくは後で話すが、この能力によって2体のロボット少年をこちらに持ってきたようだ。

 

しかしさらにまずいことになったな…

全員が疲弊している状態で新たな援軍それもなかなかの強さだ

 

これはまずいと思い俺も加勢しようと構えるが

 

「はぁああ!!」

 

晴雨さんの薙刀がロボット少年の一人を両断する

 

す、すごいな…

まさか一撃であのロボット少年を倒すとは

思えば晴海さんはめちゃくちゃ強かったのだ。それも俺がコードキャストを使って引き分けるほどに。

晴雨さんは薙刀を晴姫さんに向けて言葉を出す。

 

「私はこの家を…この家族を守ります。だからあなたの思い通りにはさせません」

 

薙刀を構え本来の名を口にする

 

「安倍晴明が子孫17代目 安倍晴雨 まいります!」

 

その声とともに強敵へと戦い出た

 




35弾終わりました。
オリキャラのスキルとかはこの章が終わったときにまとめてお話しします。
恋姫夢想さん、ミジンコドリームズさん、ナスカ級さん、ムッくんさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第36弾 隠された力

昨日は本当に申し訳ありませんでした。
追加と再編集でしっかりと本編を書き終えました。
それでは本来の36弾をどうぞ


金属のぶつかりあう音が聞こえる。

 

今現在晴雨さんと晴姫さんは両方薙刀を持って互いに攻撃をぶつけ合っている。

すごい攻防だ。互いの実力は互角に思える。

一見勝てるのではないかという希望が見えるのかもしれないが

 

(このままでは絶対に勝つことはできない…!)

 

そうこのままでは勝てない。

確かにこの攻防を見れば互角に見えるがそれはあくまで形だけ。

晴姫さんに例の力がある限り絶対に勝てない。

 

「はあ…はあ…。くっ…!」

 

戦いには駆け引きというものが存在する。

その駆け引きには小さくとも勝ちと負けがありその負けが小さくとも隙となる。

それが少しはかすり傷を負うことになる。

しかし晴姫さんにはその隙というものが出ていない。

必ずその駆け引きに勝っているのである。

しかし、晴姫さんは一切晴雨さんに対して傷を負わせていない。

それは手加減をしているということ。

つまり遊ばれている。まるで晴雨さんの行動が読まれているように。

 

晴雨さんもそのことを疑問に思っているみたいだ。

動きが鈍くなっていく。

完全に動きを読まれていることが動揺を生んでいるようだ

 

「あなた…何故私の動きを完全に読んでいるの…?」

 

「ふふふ、あなたは私の妹だからね」

 

「…くっ!ふざけないで!」

 

さらに攻撃の速度を上げるがそれでも攻撃はかすりもしない。

これはまずいな。早く対策を練らないと

 

「ちょっとアンタ達!ぼさっとしていないでアタシたちも加勢に行くわよ!」

 

そこでアリアの声が聞こえる。

アリアたちもこのままではまずいと悟ったのか加勢しようとするが

 

「…!」

 

目の前にロボット少年の一人が立ちふさがる。

ロボット少年の戦闘力は俺がコードキャストを活用しなければ勝つことができないほど強力な存在だ。

さすがにアリアたちでも厳しいと思いそこに俺も加勢しようとするが

 

「いや、白野ここは俺たちに任せてくれ」

 

何とそこにキンジが割り込んでくる

何?!と言おうとするがキンジの状態を見て言いとどまる

 

(キンジ…ヒステリアモードになっているのか…)

 

そう言えばさっきまで妙に静かだったがヒステリアモードだったからか。

しかし

 

「大丈夫か…」

 

それでもロボット少年はなかなかの戦闘力を持っている。

それにあのロボット少年…俺が戦った時のロボット少年よりも強いぞ。

何というかオーラというものが違う。

ヒステリアモードでも勝てるのかと思うが

 

「大丈夫だ。任せてくれ」

 

キンジの俺を諭す言葉が聞こえる

 

「それにお前はあの人の力の正体を知っているんだろう」

 

ああ確かに俺は技の正体を知っている。というかお前もなんとなく正体がわかっているんじゃないか?

 

しかしキンジは少し冷や汗を流して声を出す

 

「俺にはたぶんあの人に触ることもできない。けど白野お前の力があればなんとかできるんじゃないか?」

 

ヒステリアモードのキンジでもこの弱気の発言だ。こいつでもさすがに無理なのか。

 

「こいつは俺たちに任せてくれ」

 

そう言ってキンジは懐からベレッタを取り出し現在ロボット少年と交戦中のアリアの元へと走り出す。

 

いまだに晴姫さんと晴雨さんは戦っている。

いや、状況は変わっていない。

 

仕方ない。

 

俺が行っても状況は変わらないかもしれないがこのまま何もしないままでも何も変わらない。

時間は結構たっているが『錆びついた古刀』の効果はまだ続いている。

 

俺は晴姫さんに感ずかれないように近づき

 

「はぁああ!」

 

全力で斧刃脚を放つ。

 

しかし

 

「甘い甘い!」

 

その攻撃をかがむことで回避をする晴姫さん。

ぐ!やはり読まれた!

俺は隙を生まないように息をつかせないほどの連続攻撃を浴びせるがその攻撃もすべてかわされる。

 

「…っ!ちょこまかと!」

 

俺の攻撃をかわすために後ろへ飛んだ晴姫さんに晴雨さんが追撃を仕掛ける。

その激しい連撃をも軽々とかわし刃を当てて防御をする

その後も俺と晴雨さんの猛攻が続くがそれを完全に防御する晴姫さん

 

そして晴姫さんの薙刀の攻撃が晴雨さんの薙刀の刃に当たると

 

 

パリィン!

 

 

両方の薙刀の刃が粉々に砕けた。

どうやらあまりの猛攻にその刃は耐えきれなかったようだ。

 

晴姫さんは手に持っていた薙刀の手持ち部分を投げ捨て指を鳴らし新たな薙刀を『座標移動《ムーブポイント》』で持ち出す。

 

 

晴姫さんは薙刀を捨てずにまた構えると

 

『物体生成《クリエイト》』

 

その言葉を放つと同時、その先から新たな刃が生成される。

そうこれが晴雨さんの超能力。

端的にいえば『つくる』能力だ。

詳しくはこれも後から話すが…晴雨さんの能力は一定のものを作ることができる。

その能力により新たに刃を作り出したというわけだ。

 

晴雨さんはさらにいくつかの金属片を作り出し牽制代わりに吹き飛ばす。

その攻撃も読まれたかのように弾き飛ばされる

 

「はあ…はあ…な、なんで攻撃が当たらないの…」

 

晴雨さんの口からそう言葉が漏れる

その言葉をどうやら晴姫さんは拾ったようだ

 

「ははは。それはね晴雨の行動がすべて読めているからだよ」

 

「…またそんなことっ…!」

 

「私にはね誰が何を考えているのかわかるのよ」

 

そう言ってこちらに歩み寄ってくる

 

「晴雨が今何を考えているのか。白野が今何を考えているのかすべてわかる」

 

そして晴姫さんはほほ笑む。

しかしそのほほ笑みは俺の見たくない険悪な笑顔だった。

 

「何を考えているかわかるって…けどあの人の超能力は別の…ならいったいどこから…あの人が持っているもの…夏目家の力…っ!まさか!夏目家に封印されていた能力って!」

 

そこで晴雨さんは確信に気付いたようだ。

そう、これが晴姫さんの持つ夏目家の隠された力

 

「あ、あなたは…人の心が読めるのですか…!」

 

「正解正解大正解~。私は夏目家…いや安陪晴明が持っていた力を持っているんだよ」

 

そうこれが夏目家に封印されてきた安陪晴明の能力。

それは心を『読む』能力だ

一見地味に見えて世界を統べる能力には思えない。

しかし、それは対人戦で絶対的な力を持つ。

 

人は行動をするとき絶対に頭の中で考える。

たとえば、人に手を挙げてと命令したとする。

そして右手か左手を無意識に上げる。

その手を挙げるという行為を人はこれまでに何百回何千回と繰り返す。

それがなれにつながり無意識という行為につながる。

しかし、脳内ではその手を挙げるという動作を考えながら手に命令を出している。

それはたとえ意識をしていなくとも無意識の中で考えているということだ。

つまり意識的だとしても無意識だとしても人間は考えるという行為をしている。

晴姫さんはその考えるというものを読めるという力を持っている。

それが夏目家の…安陪晴明の力だ。

 

これでさっきまでの現状がうなづける。

相手の考えていることが読めるなら絶対に駆け引きに勝つことができる。

じゃんけんで言うと後だしじゃんけんだ。

相手の出すじゃんけんがわかるから絶対に勝つことができる。

 

そんなチートを持つ晴姫さんには勝つことはできない。

しかし、負けることも許されない。

今後の俺の守るべき人たちを守るためこの戦いに負けることはできないんだ。

 

考えろ。

 

考えるんだ。どうすれば勝つことができる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その思いも打ちひしがれることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが続くこと数分ついに俺にかかっていたコードキャストが切れた。

強烈な脱力感とともに疲労感が押し寄せる。

俺が気絶していない分かすかには魔力は残っているのだろうがそれもほんのわずか。

軽威力のコードキャストを使った瞬間に意識を落とすだろう。

 

今はまだ晴雨さんが頑張って持たせているがそれもジリ貧だろう。

しかし、さっきまで考えていてこの状態を突破する方法を見つけた。

 

その糸口はズバリ晴姫さん自身だ。

晴姫さんは今はもて遊んでいる。

つまり油断をしているということだ。

確かに晴姫さんは心を読んでいるがそれは俺たちの実力もわかっている。

その心を読む能力と決して私には勝つことができないという慢心がその油断を生んでいる。

そこで俺のわりだした突破口

 

それは晴姫さんも知らないほどの強大な力をぶつけることだ。

 

油断と力から生まれた隠された隙

その隙に莫大な力をぶつけることがこの戦いの突破口。

 

しかし、それは不可能に近い。

今この場にはその晴海さんの知り得ない力を持っている人がいない。

俺がやろうと思えば最高威力のコードキャストでその突破口を貫けただろうが今の俺は魔力も体力もスカスカ状態軽いコードキャストも使えない状態だ。

どうすることもできない。

 

その時俺に絶望的な事態が訪れた

 

 

 

 

 

 

 

 

ズシャア!

 

 

 

 

 

 

服を切り裂く音。

それは晴姫さんの薙いだ薙刀が晴雨さんの肩から切り裂いた音だった。

 

「あ、…そ、そんな…」

 

俺の口からそんな言葉が漏れる。

晴雨さんは長く続いた戦いからの疲労、注意力不足により足元を滑らせたようだ。

完全な心を持たざる物からのイレギュラー

それは晴姫さんでも読むことができないことだった。

 

その場に崩れ落ちる晴雨さん

俺は彼女のそばまで走り寄り抱きかかえる。

俺は電子手帳から『鳳凰のマフラー』を取り出し『heal(16)』のコードキャストを使う。

何とかけがを治すことができたがそこで終わった。

俺もその場に崩れ落ちる。

なけなしの魔力も失い完全に動けない状態だ。

もう晴姫さんを止める者はいない。

俺は守ることができなかった。

元明は連れていかれ謎の首謀者により今後も苦しめられるかもしれない。

 

俺は決死の思いで意識を保ちかすかに見える光景で晴姫さんの表情を見る。

 

その目はまるで何も見ていないかのように残酷な目だった。

 

 

俺はその目を見て思いが強くなる。

 

絶対に負けられない。

 

こんな表情をする奴に負けられない。

こんな奴らに家族を虐げられたくない。

こんな奴らに俺の守るべきものを汚されたくない!

 

俺がそう決心した時

 

 

 

 

 

ドグン!

 

 

 

 

心臓がひとつ大きく鳴った。

 

その音とともに俺の意識が薄れていく。

 

しかしそれはまるで抱擁されるかのように温かく閉ざされるのだった。

 




36弾終わりました。
次回はついにあの人が…!
けど、今週末は用事がありちょっと投稿できないかもです。
蒼矢さん、シオウさん、渡り鳥さん、ミジンコドリームズさん、無名一さん、トキワさん、恋姫夢想さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第37弾 発現する圧倒的力

ちょっと間があいてしまい申し訳ありません。
そして今回ついにあの人が!
それではどうぞ


Side キンジ

 

「これで…終わりだ!」

 

俺のベレッタが少年の形をしたロボットのコアのようなものを破壊する。

戦っている中このパワーには何か秘密があるかも知れないというアリアの言葉を信じコアを探したが本当にあるとは。

しかし、本当にこいつは強かったな。

俺たちが4人でかかっても引けを取らないこの強さ。

サポートに来たミドリたちの援護がなければやばかったかも知れない。

しかし、ミドリとユキの超能力は強力だったな。

ユキの『ずらす』能力とミドリの…あれは…何かを操る能力なのか?それが俺たちの強力な援護となった。

 

俺たちはなんとか早めにロボットを倒した。それは白野たちの加勢に行くためなのだが…本当に行った方がいいのか?

 

先ほどチラッと見たがあいつらの戦いはとても苛烈を極めるものだった。

戦いがすくなかったら加勢にでもいけたが、さっきまでのロボットとの戦いと土御門家の奴らとの戦いのせいで体力を消費しすぎた。

しかも、さっきからヒステリア性の血流が元に戻ってきている。

このままでは数分でヒステリアモードが終わってしまう。

 

しかし俺が戦況を確認しようと白野たちの方を見ると

 

「な…!」

 

晴雨が大怪我を負っている。

しかし、すぐに白野が寄り添うと何か呪文のような言葉を紡ぐと晴雨の傷が治っていく。

これも白野の力なのか。

本当にあいつは何者なのだ。

大怪我をも治せる謎の力、強力な攻撃、本当にあいつには謎が多い。

 

しかし、その怪我が治ったのを見守ったとたん白野は地面に倒れる。

たぶん例の力を使いすぎたのだろうか。

しかし、このままではまずい。

あの晴姫という人物が元明の元に歩みよっている。

このままでは元明が連れて行かれて協力者の正体がつかめない。

それではこの夏目家は正体も知らない謎の敵に追われるかも知れない。

俺が晴姫を止めるために走り出そうとすると

 

「待ってキンジ!白野の様子が何かおかしい!」

 

アリアのその声を聞いて足を止める。

ほとんど気絶状態の白野がどうしたのだと思い見やると

 

「…な、なんだ…あれは」

 

俺が無意識のままそんな声が漏れる。

現在白野は何かきらきらとした光に包まれている。

その光がだんだんと強くなっているのだ。

どうやらその現象に晴姫さんも興味を持ったのか足を止めて白野を見ている。

その光がだんだんと強くなっていくが一定の明るさになると光が霧散する。

 

その光が晴れると白野がしっかりと地面に両足をつけて立っていた。

気絶をする勢いだった白野がなぜかしっかり立っていたのは謎に思ったがそれ以上に謎に感じたことがある。それは白野の今の姿だ

 

 

身長などは変わらないものの髪は長めになった桃色。瞳は琥珀色。

次に目立つのがその頭にぴょこぴょこと生まれた二つの狐耳とお尻の方から生えた一本の尻尾だ。

 

しかし一番驚いたのがそのオーラだ。

ただ姿が少し変わっただけではない。

圧倒的な存在を思い知らされるほどのオーラ。

それはまるで神のような…

 

 

 

あいつは白野じゃない。

姿を見ただけでも違うのは分かるがそれ以上に存在自体が別のものと同化したみたいに見える。

俺では絶対に勝てない。

冷や汗を流し怪訝な顔でその姿を見ているとついにそいつは反応を起こした

 

 

 

 

 

 

 

 

「感度良好!無事ご主人様に憑依成功しました~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

…は?

軽く頭を振って深呼吸をした白野の姿をした誰かは言葉を発すると同時にその神格のようなオーラも消えうせた。

さっきまでの威厳の風格も感じさせないまるで少女のような声が聞こえる。

そしてその誰かは狐耳に両手をあてて何かと通信するように目を閉じる

 

「あー、あー。ご主人様聞こえますかー?…はあ、やっぱりむりでしたか」

 

そして露骨にがっかりする。

 

「確かにあいつにはご主人様が使った魔力パスが弱かったからいろいろ制限がつくと言われましたが、せっかくセイバーさんにもじゃんけんで勝ったのにご主人様とお話できなくて残念です…」

 

まるでシュン…と聞こえるような動作で狐耳も下がる。

本当に何なんだ…

 

しかし気を取り直したように両手を抱き落ち着いた声で話し出す

 

「映像でしか見守れませんでしたが本当に特に怪我もないみたいでよかったです…。けど少しあの時よりも小さいし痩せてしまって…本当に守ってあげられなくて申し訳ないです…」

 

慈愛に満ちた声で誰かは本来の白野への心配の声を向ける。

それは大切な人を本気で気にかけているようだ。

 

「…けど、ご主人様には合えませんでしたがご主人様の体には触れましたし久しぶりに少しはご主人様成分を補充しましょうかね…クンカクンカ…くー!たまんねー!」

 

…は?

その誰かは幸福そうな表情をしながら白野の袖から匂いを嗅いではもだえている。

本当にこの人は何なんだ…。

俺は疑いのまなざしをその誰かに向けていると別の方向から声が聞こえる。

 

「アンタ…一体何者…?」

 

晴姫が声をかける。

その白野の変化は彼女の心を読む能力が別人だと認識しているみたいだな。

注意深く探る晴姫

 

「あ?」

 

―!

その声に強力な殺気を持って返す白野の姿をした何か

強力な殺気が場を包む。

俺はその殺気に当てられ片膝をつく

 

「あ?何ですか?あなたわたくしのご主人様の守るものを壊そうとしていましたよね?私にはご主人様さえいてくれれば他にはどうでもいいですがあの人の大切なものを汚そうとするなら私も容赦しませんよ?」

 

瞳孔が開きにらむように晴姫さんを見る。

そして圧倒的な神格のオーラが感じられる。

そのオーラと殺気をまともにぶつけられる晴姫さんはよく耐えていると思う。

さすがにかわいそうに思えてきたぞ。

 

そこで何か通信が入ったようにまた狐耳を抑える

 

「ああ?!何ですか!私はこれからこいつをのろ…ああ…はいはいわかりましたよ。」

 

そう言って嘆息する。

そして彼女は落ち着いたのか殺気は抑えたように落ち着いた雰囲気で晴姫さんに話し出す。

 

「あなたはそう簡単に許すことはできませんが…あなたの読む力は時期にあなた自身の身を滅ぼしますよ」

 

その言葉に少なからず驚きを浮かべる晴姫さん

しかしその言葉に抵抗するように薙刀を構える

 

「あなた本当に何者?あなたの心はまるでノイズがあるかのように見えにくいのだけど。それに私はこの能力を捨てる気もない」

 

その言葉を聞いた誰かはまた溜息を浮かべ話しかける

 

「はあ、仕方ありませんか。私には今時間があまり残されていませんからね。やるべきことはやらせていただきますよ」

 

そう言ってどこから持ち出したのかその手に何かのお札を取り出す

 

「私は今からあなたになるべく抑制して攻撃を与えます。けど、まともに食らいますと絶対に死にますから絶対によけてくださいね」

 

普通ならこの状況でそんな言葉を出すのはおかしいと思う。

しかし、白野?自身のオーラがその言葉の意味を強制的に理解させる。

 

何かまずい気がする…

そして白野?はその手に持った札を投げる

 

「炎天よ、奔れ!」

 

そして投げられた札から強力な爆炎が立ちあがる!

目も開けないほどの強力な熱と熱風に両手で顔を覆う。

その手と手の間から見える光景。

それはまるで火山が爆発したように炎を10メートルほど上げる。

そして急に炎が収まると何事もなかったかのような光景が広がる。

雨でぬれた体がいやな感じが広がる。

そしてその攻撃を受けたと思われる晴姫さんはその場から消えている。

どうやら元明を連れていく暇もなかったらしくそこらへんに転がっている。

これが…白野の隠された力なのか?

 

俺たちが驚きと呆然とで止まっていると白野?がこちらに振り返り軽く頭を下げる

 

「どうも皆さん始めまして。本当はしっかり事情を説明させていただきたいのですが…あいにく私には時間が残されておらずしばらくは説明できません。ですので、これだけはお願いしてもよろしいですか?」

 

その言葉に俺たちは反応できないでいる。

しかし、白野?は時間が無いらしく俺たちの返答を聞かないで話し続ける

 

「私はもうすぐご主人様から離れなくてはなりません。なるべく早く戻りたいのですが…私が守れない間ご主人様を…白野様をお守りいただけないでしょうか?」

 

その言葉に俺たちは顔を見合わせる。

その言葉は確実に白野ではない誰かが発した言葉であると強制的に理解させる

その誰かは本当に白野を心配しているのだ。

本当に白野はいろんな人に愛されているな

その言葉に返答をしたのはアリアだった

 

「それは当り前よ。だってアタシたちは白野の仲間なのだから」

 

そう言ってアリアは俺たちを見まわす

当然だ。俺はじきに武偵をやめるが…それまでの間は白野の仲間として守っていく

 

「…ええ。私たちも家族として白野を守っていきますよ。それに白野は私の大切な人ですから」

 

そう答えたのは晴雨だ。

どうやら目を覚ましたみたいだな。よかった

 

その言葉に白野?は

 

「いっときますけどね!ご主人様の本来の妻はわたくしですから!そこのところお間違えのないようにしてください!」

 

そしてそのあと白野?の体が光に包まれ光が強くなった途端光が消え白野が元の姿に戻りそのまま気絶したように前に倒れる。

…まったくあの人は一体何者なのだ…。

俺たちは倒れた白野に駆け寄る。

どうやら気を失っただけのようだ。

 

まあ何とか白野のおかげでこの任務は完遂したようだな。

しかし本当にこいつはどんな力を持っているんだ?

ヒステリアモードがちょうど切れた俺には考え付くことはできなかったし今の現象について聞くこともできないが今はしっかりと休ませておくか。

 

さっきまで滴り落ちていた雨はいつのまにか止んでいた。

雲の間から見える光は俺たちの勝利を称賛しているかのようだった。

 

 




37弾終わりました
次の次くらいに過去編です
恋姫夢想さん、初紫シュリさん、rassyuさん、ナスカ級さん、朝比奈悠人さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第38弾 秘密の過去

ついに次回から過去編に入ります!
今回は前置き回
あとがきにはちょっと活動報告があります


 

 

―長い夢を見た。

 

 

 

 

 

長い間空間を漂う俺は過去を振り返っていた。

ここまで歩んでこれたのは大切な仲間たちと犠牲があったから。

 

俺はこれからムーンセルに消される。

しかし後悔はしていない。

 

 

確かに犠牲があったが守るものは守れた。

 

 

 

 

――――…た――――

 

 

 

 

 

だからもう消えてもいいよな

 

 

 

 

――――あ……もる…―――

 

 

 

 

 

この目を閉じてすべてを終わらせる

 

 

 

 

 

―――あなた……ま……―――

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

―――――

 

 

 

――

 

 

 

 

 

 

―――あなたを絶対に守るから―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。

 

五月から六月に入る頃の少し蒸し暑い俺の部屋。

カーテンからは朝日の木漏れ日が流れ込んでくる。

俺はその光に手をかざし目を細める。

 

俺はボーとした頭で何があったのかを思い出す。

確か…晴姫さんと戦っていて…その時に晴雨さんが怪我をしたからコードキャストを使って…それで…それで…

 

 

 

思い出せない…

 

俺は勢いよく布団から飛び出る。

そのあと俺が気絶したことから強引にみると朝日が昇っていることだから1日は経過している。

気絶した後のことは何も分からないからどのような事態に陥っているかもわからない。

場合によっては最悪の事態に。

 

俺が勢い込んで襖を開けると目の前に人影が。

勢いこんで外に出たせいで制止が効かずその人物を巻き込んで倒れこむ。

 

いてて…!

 

俺が痛んだ頭を押さえながら手をついて立ちあがろうとすると

 

 

フニュン

 

 

ん?

こ、この弾力は…

 

「あ、白野…こんな時間にこんなことは…」

 

一緒に倒れこんだのは晴雨さんだった。

場を把握する

一緒に倒れこんだときに少し変に倒れこんだのか晴雨さんがきている着物が少し着崩れている。少し汗ばんだ鎖骨。乱れた髪が顔に少しかかりさらに色っぽさが…って!

 

「ご、ごめん!」

 

俺は手をついたときに触ってしまった晴雨さんの胸から勢いよく手をはなす。

 

―!

 

さ、殺気と悪寒!

 

俺はゆっくり顔を上げると

 

「はぁぁぁくぅぅぅぅのぉぉぉぉ!」

 

鬼がいた。

いやアリアがいた。

しゅるるる!と口から声が漏れる鬼という名のアリア。

俺は言い訳をするように手をぶんぶんと振る

 

「い、いや!違うんだアリア!これはたまたま…!」

 

「問答無用!」

 

アリアのとび蹴りが俺のでこに突き刺さる。

 

っていうか…本来この立場にはキンジだろうが…

その言い訳もしゃべることもできぬまままた謎の悪寒を背中に感じながら俺はまた意識を手放すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「いてて…」

 

今度は数分だけの気絶で終わり俺はまた痛む頭を押さえながら俺たちは廊下を歩く。

一応キンジもあの場にいたみたいだな。隣で一緒に歩いている。なら助けてくれてもいいだろ…

アリアは未だに怒っているが朝飯時には治るだろ。

晴雨さんはニコニコ顔でついてきている。ぐ、まさか確信犯なのか…

さらに痛くなった頭を押さえながら廊下を歩いている。

 

俺が目が覚めたとき俺が気絶した後はどうなったのかを問うとそれはみんながいるところで話しましょうという晴雨さんの言葉を聞き俺たちは広間に向かっている。

 

広間につき障子を開けると中には理子さん、晴海さん、ユキとミドリが座っている。

どうやら仲居達はいないみたいだな。まあ、俺もこの話が終わった後やることがある。

そこで人が多くいるのは少し困るしな。

というかこの場にレキさんが居ないんだが一体どこに…

 

…ってうお!いつの間に隣に!

 

「レキさんいつ来たの?!」

 

「白野さんが部屋で寝ていた時からいましたが?」

 

居たの?!俺の部屋に居たの?!全然気付かなかったんだけど!

レキさんはなんのことかというように首をかしげている。なんだか俺が普通じゃないように見えるんですけど…

 

俺は気を取り直すために軽く咳払いをする。

そしてみんな席に着いたのを確認した後晴海さんがしゃべりだす。

 

「白野。怪我は大丈夫ですか?」

 

「ええ、まあ大丈夫です」

 

体調は意外と平気だ。ぴんぴんしているというくらいには回復している。

それよりも俺は聞きたいことがある

 

「それよりも皆さんは大丈夫なんですか?俺が気絶した後みんなが平気でいるってことは何か激戦でもしたのなら多少は怪我でもしたのでは?」

 

俺の言葉に俺以外の全員が顔を見合わせている。一体どうしたんだ?

俺の言葉に答えたのはアリアだった

 

「アンタ…覚えていないの?」

 

「な、何がだ?」

 

アリアが深刻な顔で俺に質問してくる

何か変なことでも聞いたか?

 

「あの晴姫を追い出したのは私たちではないわ」

 

「じゃあ一体誰が…」

 

「アンタよ」

 

「え?」

 

俺は驚愕のあまり声に詰まる

 

「そ、そんなわけないだろ。俺は晴雨さんを治した後完全に気絶したんだ。それなのに俺が倒せるわけがないだろ」

 

「いいえ。晴姫を倒したのは正真正銘あなたです。この場にいる人全員が見ました」

 

俺の質問に晴海さんが答える。

 

「あなたは気絶した後謎の光に包まれてなぜか変化したのですよ」

 

「変化って…」

 

…。

ダメだ。何故俺が変化したのか分からない。

電子手帳で調べても俺のステータスファイルには何も更新されていなかった。

つまり謎である。

 

「ごめん。俺にも何故変化したのかは分からなかったです」

 

「…そうですか。あなたが変化した後強力な術を使って晴姫を追い出したのですよ」

 

俺は気絶した時のことを少し考えた。

と言っても特に何も思い出せないが…いや少しだけ何か…。

 

しかしそれ以上思い出せなかった。

術といったら狐のサーヴァントを思い出すがそれはあり得ないし…

これ以上考えても仕方ないと思い話を切り替えることにした。

 

「わからないことを考えてもそれ以上進みませんから話を切り替えてもいいですか?」

 

俺は晴海さんに問いかけると首を縦に振っていた。

なので俺は質問を続ける

 

「晴姫さんが去った後どうなったのですか?」

 

「あなたが晴姫を追い出したあとしっかりと元明を回収しましたが…そのあと元明は謎の爆発で死亡したのです」

 

「謎の爆発…?」

 

「ええ。そのあと周りを探索しましたが爆発の原因は何もわかりませんでした。そのあとは特に何もありませんでしたが…協力者の名を聞き出すことはできませんでした」

 

…そうか。

結局任務は失敗か。

俺は少し顔を下げるが続けて晴姫さんが話を続ける

 

「けど私たちは考え方を変えました。確かに元明から情報を聞き出すのは失敗しましたが敵はタイミングを計ったかのように元明を殺した。殺そうと思えば私たちを殺してもよかったはずです。つまり私たちを殺す気は無かったということ。なので私たちが余計なことをしなければ狙われることは無いと言う訳です」

 

「けど、確証は…」

 

「ええ。ありませんが…私にはなんとなくわかるんです」

 

そう言って晴海さんは胸に手を当て言葉を話す

 

「特に今回の件は謎に包まれています。これ以上荒らしては逆に殺されるかも知れません。それに敵はこっちの状況を把握できていますし」

 

…確かにそれなら特に詮索しないほうがいいかもしれない

 

この問題も特に詮索しないようにした。

 

それなら俺も最後の提案をしよう。

俺は口を開けようとするがそれより先に別の人物が声を上げる

 

「なら私も質問をさせてもらっていいかしら」

 

それはアリアだった。

アリアは続けて話をする

 

「私たちがここに来た本当の理由それを今聞きたい。依頼人のプライバシーを詮索するのはマナー違反だけど…私は白野の仲間よ。仲間のことを知るのは仲間として当然のこと。だから白野が何故勘当されたのか教えてくれない?」

 

その質問に晴雨さんたちが息を呑む

 

俺が勘当された理由。

それは晴姫さんのことについても遠まわしに聞いているのか。アリアもきわどい質問をするな。

 

さらには間接的に俺の過去を聞こうとしている。アリアたちがこの家に来た当初の目的も果たす便利な質問だ

 

晴海さんたちの目は俺に向いている。

どうやら俺に一任するみたいだな。

確かにこれを話すことは禁忌とされたが俺はアリアたちを信じている。

無駄に話を広めないだろうし

 

「…わかった。話すよ」

 

その言葉にアリアたちは特に反応を示さない。

なるほどこいつらは俺が話すと知ってて質問をしやがったな。

 

まあ、いいだろういつか話すことだったんだしそれが今日だった話だ。

俺は佇まいをただすと俺は話し始める

 

「俺が勘当された理由。それは俺が武偵高校に入学する前ちょうど中学卒業近くになる」

 




38弾終わりました。
次回から過去編頑張らせていただきます。
なるべく早くオリジナル終わらせてあの章まで行ってあの人たち出したいです…

それと謝罪から入らせてください。
実はこれから1週間ほど後にテストがありそれの勉強で投稿できません。
早く進めたいと言いながら投稿できなくて申し訳ないです。
なるべく勉強の休憩中にちょくちょく書きすすめておきます。
本当に最近安定して投稿できなくてすいません。
夏場は本当に忙しい…
テスト終わったら安定して投稿できそうです。

恋姫夢想さん、ボルメテウスさんさん、赤黄青さん、シオウさん、ミジンコドリームズさん、アウフさん、島田響奏さん、rassyuさん、ナスカ級さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第39弾 語られる過去

木曜
(´・ω・`) テストオワッタ

金曜
(´・ω・`)ツカレタ

土曜
(´-ω-`)zzz

日曜
(´・ω・`)ア、カカナイト


「うーん、さすがに話をめんどくしすぎたかなぁ」

「過去編は一話で纏めたいし削るか」

「なるべくフラグは残しておいて削る削る…」

投稿10分前
「え…何これ酷い(話の展開が)」

一週間ぶりの投稿です
休憩中に書いていたのも少しだけで今日はほとんど全力で書きましたが文書作成能力がさらにひどくなった感覚に襲われました。
本当にすいません。
展開ひどくね?と思ってもどうかお許しを!(次回も酷いかもしれない)
一応この話にはめちゃくちゃ重要なフラグがあります。
お気に入り登録700ありがとうございます。



あの日見た日常…いや非日常か

 

 

 

 

あの世界は壊れていた。

ある日が来ると必ず人が減っていく。

いや、これも誤りか。減るのではない。

殺されていく。

日常の中に組み込まれる非日常。

俺はそんな日常を繰り返していた。

そんな日常。

けど俺はその日常に慣れ…いや、機械的に繰り返した。

 

それならこれも非日常か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すすり泣く声が聞こえる。

 

今この部屋にはこの家にいる人が全員いる。

その全員が泣いているか苦痛の表情を浮かべている。

その原因

それはこの部屋の中心に置かれ布団に寝ている一人の仲居だ。

しかしそれは永遠に目覚めない眠り。

見るからに年若い彼女の顔に布がかけられる。

そのことから考えられる答えは決まっている

この世界に来てもあの時と同じ。

決められたときに人が消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の仲居がこの世を去って3日後

俺は今、動きやすい服装を着た晴雨と一緒に庭を歩いている。

彼女は俺の婚約者。

この家に婿養子に呼ばれて6年近くになる。

この人と結婚するとなると少し恥ずかしい感じだが。

庭を歩きながら俺たちは他愛ない雑談を続けている。

晴雨は微笑んでいるがその表情には少しだけ陰りがある。

最初から俺には記憶があるため人の表情から大体の感情は読み取れる。

彼女は気丈に振舞っているがやっぱり少しだけ表情が曇っている。

 

俺が彼女に…彼女たちにしてやれることは何もない。

これは仕方のないこと。

あまりにも大きいこの家の『呪い』の本質。

 

それはこの家にいる人全員が40代までしか生きていられないことだ。

 

正確には44年4カ月14日しか生きられない。

 

この家の呪いが俺たちの命を吸い取っているみたいだ。

あの狐のサーヴァントがいるならこのことについてなんとかしてくれるかもしれないがそれも無理だ。

電子手帳にも詳細が書かれていないため俺にはどうすることもできない。

どうすることも…

 

「…の?白野?」

 

晴雨がこちらの顔を覗き込んでくる。

 

「ご、ごめん。ちょっと考え事をな…」

 

俺は晴雨から顔をそらして返答をする。

晴雨自体がとても美少女だからその彼女の顔が正面にあると緊張してしまうのだ。

そしてもう一度彼女の顔を見てみると彼女は目に見えて複雑な表情を見せいていた。

 

「すいません…。私のせいで余計な心配を…」

 

どうやら逆に心配をかけてしまったみたいだ。

彼女は俺よりもきっといい人だ。

こんな俺が彼女をこんな顔にさせてしまうのはとても心苦しい。

 

「い、いや…こっちもごめん」

 

そこでその場に沈黙が流れる。

き、気まずい…沈黙が痛いよ。

 

しかし、その表情をするのも当然のことだ。

大切な家族と同等の一人が亡くなってしまったのだ。

確かに人間は必ず死んでしまう。

しかし、それが決められた短い未来ならなおさら苦しい。

俺は許せない。

人の命を吸い取り限りある人生を奪い去ってしまう。

そしてそれは周りの人々へと悲しみを伝染させる。

 

静寂の中立ちつくす俺たち

しかしその静寂を壊す人が来た。というか来ていた

 

「は・く・のくーん!」

 

「うおっ!」

 

そう言って気配もなく俺の背中に飛びついてきたのはユキだ。

俺は倒れないように足を踏ん張ってユキを抱える。

まったくこの人は一応俺の従者なのに。

 

「ちょっとユキ!あなた白野様にまた!」

 

「ええー。別にいいじゃない。白野君も特に何も言ってくれないしー」

 

後からミドリも出てきてユキを止めている。

けど正直助かった。

さっきまでの緊迫した雰囲気を壊してくれたことはありがたい。

俺が呆れながらも微笑んでいると晴雨から声がかかる

 

「白野。何でユキに抱きつかれて喜んでいるんですか?」

 

あ、あれぇ~?何で怒っているの~?

軽く微笑んでいるが今度は目が笑っていない。

 

「い、いやいやいや!こ、これはユキが…!」

 

そのあと襲われたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1か月が過ぎた。

3月中盤の桜舞う春の兆しがまぶしい。

しかしこの部屋の空気は重い。

 

また、一人の仲居が亡くなった。

それもまた呪いによって寿命が短くなり亡くなった一人だ。

また何もできずに人が亡くなっていく。

そこで俺は気付いた。

確かに呪いは許せない。

けどそれ以上に許せないものがある。

 

 

 

守ることもできない。

 

 

 

何もすることができない。

 

 

 

 

それが許せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな自分が許せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はトイレのために部屋から出る。

消沈した気持ちのまま廊下を歩いていると部屋から声が聞こえてくる。

 

盗み聞きするつもりはなかったが何故かその時は聞き耳を立ててしまった。

 

「…母さん!さすがにもう限界!なんとかできないの!」

 

この声は晴姫さんか。

察するに相手は晴海さんだろう。

彼女たちが言い争っているからなんとなく話を聞いていた

 

「…いいえ。ダメです。このことには余計に首を突っ込んではいけませんよ」

 

「よ、余計なことって!大事な家族がまた一人亡くなったのよ!それが余計なことではないでしょ!」

 

中から溜息の声が聞こえる。

どうやら晴姫さんもこの呪いのことでどうにかできないかと聞いているようだ。

確かに謎の呪いなのだろうがこの家の党首ともなれば何か知っているのかも知れない

 

「いいえ、ダメです。このことは党首にしか真実は告げられません。たとえ次期党首のあなたでも教えることはまだ駄目です。」

 

「いや!母さんも…後5年したら…私はみんなを…家族を守りたい…」

 

「…駄目です。これ以上深入りしたら…ん?誰ですか?」

 

―!

まずい!

思ったのもつかの間俺はその場を離れる。

それ以上聞くこともできぬまま俺はその場を去った。

けど、そのまま残って入ればこの問題も起きなかったのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例の話から数日が過ぎた。

その日が運命の日

 

 

 

 

 

その日は妙な曇り空だった。

俺はこの時にはしっかりと続けていたランニング終わりタオルで汗をふきながら廊下を歩いている。

いつもはだれかと走っているのだが今日は一人で走っていた。

ミドリはユキに勉強を教えてもらっていた。

なんでも理系を教えてほしいだとか。

ユキはアホなのになぜか理系はいいんだよな…

晴雨はどうやら晴海さんに呼ばれてどこかへ行ったようだ。

俺は廊下を右に曲がると影となる左側から手を掴まれ引き込まれる。

何事?!と思ったが口を人差し指で防がれる。

俺は動揺したがその人物を見て落ち着きを取り戻す。

その人物は晴姫さんだった。

彼女は俺がこの家に来た時から俺に親しくしてくれた。

そんな彼女が一体と思い冷静になる。

晴姫さんもこちらが落ち着いたのがわかると口に置いた手を離し俺に話しかける。

 

「白野。ちょっと一緒に来てほしいところがあるのだけど」

 

「え?一体どこへ?」

 

彼女が真剣な表情で俺に話してくる。

俺は話について行けずあわてて問いた。

 

「ごめん。詳しくは教えられないけど、とにかくついてきてほしい」

 

表情では冷静に保っていたがその声は緊迫で張り詰めていた。

その声で俺は緊急だと悟った。

 

「…わかりました。」

 

俺の声を聞くとすぐに振り返り大股に歩きだす。

俺の手首をつかんだ手は汗ばみながらもとても冷え込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、こんなところがあったのか…」

 

俺は今山登りをしている。

屋敷から数キロほど離れたさらに山の奥を登っていく。

道なき道の中晴姫さんの背中を追っている。

彼女は何も言わずどんどん道を進んでいく。

不思議に思った。

何が彼女をここまで動かすのだろうと。

俺が知っている晴姫さん。

いつもみんなを元気にするように笑っていてそれにみんなを愛している。

その彼女が今緊迫した表情で歩んでいる。

それなら俺はただ彼女について行くだけだ。

だって家族から助けを求められたら救いに行くものだろ。

 

 

 

 

 

 

森をさらに進むこと数十分開けた場所に出た。

目の前にはこんもりとした土の山があり、その中腹に円形の開き扉がある。

近くまで近づいてみてみると堅甲そうなでかい南京錠で閉じられている。

ここに晴姫さんは連れてきたかったのか?

 

「ここは一体?」

 

「…ここは夏目家の呪いが封印されている場所よ」

 

「そ、それは本当に?!」

 

俺はさらに問いただす

 

「ええ、私はその呪いをなんとかするためにこの場所に来た。けど私にはそれをどうすることもできないのよ」

 

そう言って南京錠を指さす

 

「それは、対超能力(アンチステルス)でできている。だから私の超能力でも破壊できないし強度も高いから物理での破壊もほぼ不可能。だからあなたを呼ばせてもらった。」

 

…なるほどな。

超能力も効かず物理での破壊も不可能そこで魔術の出番というわけか

超能力と魔術は一線が引かれている。

つまり対超能力道具でも相殺されないわけだ。

確かにそこで俺を呼ぶのは当たり前かもしれないが

 

「晴姫さん。確かに俺も呪いを許せません。けど、本当に俺が破壊していいんですか?」

 

「っ!どういうこと?」

 

動揺した声が聞こえるが俺は続けて話し出す

 

「呪いの真実は本来党首にしか伝えられないことなんじゃないですか?」

 

「…どこでそれを?」

 

「…たまたま知ってたんですよ」

 

訝しそうな顔で俺を見てくる。

どうやらあちらも勘づいているようだな。

まあもう別にいいけど

 

「その呪いのことをどうにかしてこいとか晴海さんに言われたりしたならわかりますけど、それなら普通父さんに話すんじゃ…」

 

「私はみんなを助けたい!けど母さんは関わるなというし何も教えてくれない!お願い白野。私に力を貸して…」

 

懇願するかのように俺に詰め寄ってくる。

その目を見ると本当にみんなを助けたいという気持ちが伝わってくる。

俺は少し罪悪感があった。

けど俺でも晴姫さんのように強行を起こしていたかもしれない。

そう考えると俺はその提案を受けたほうがメリットがあると思いその提案を受けることにした。

 

「わかりました。けど、その呪いをどうにかする方法を知っているんですか?」

 

俺の言葉に晴姫さんは後ろを向き返答をする。

 

「うん。それは任せてよ」

 

この時表情が見えなかったのがいけなかった

もしも面と向かっていたらこうはなっていなかった。

 

俺は扉から少し離れ扉を見る。

狙いは南京錠。

俺は電子手帳から『空気打ち/一の太刀』を取り出し衝撃波をぶつける。

南京錠は脆い豆腐のようにボロボロに破壊される。

そして俺たちは鉄の扉をあける。

 

そこは不思議な空間だった。

 

「うわぁ…!」

 

感嘆した。

その中は赤色、橙色、黄色、緑色、水色、青色、紫色の色がカラフルに染色されている。

それは幻想的でとても眩しかった。

俺はそのまま足を踏み入れようとするがそこで晴姫さんの異変に気付いた。

 

怯えている…のか?

 

彼女は顔を俯かせブルブルと震えている。

俺には一体何に怯えているのかわからない。

 

しかし、彼女は一度覚悟を決めるように肩に力を入れると俺の隣から先に中に入っていく。

一言声をかけようとしたが大丈夫なのか?

俺はもう役目を終えたが俺たちを苦しめた呪いがどんなものか一目見たかったので俺もなかへと足を踏み入れるのだった。

 

歩みは進めたがそれはすぐに付いた。

進むと少し開けた場所に出る。

そこには30センチ四方の祭壇

そしてその上に

 

「…あれが」

 

あれが呪いの元凶?

 

それは1センチほどのビー玉サイズの球だった。

しかしその色はこの洞穴の色の元凶だと示すように虹色に輝いている。

あまりに幻想的。

しかし、こんな小さなものがたくさんの人々を殺してきたと思うとやるせない気持ちになる。

 

俺はここからやることはない、後は晴姫さんに任せるだけ。

彼女はわき目もふらず祭壇に近寄る。

 

どうするのかと不思議に感じたがそこで驚愕の行動に出た。

 

「なっ?!」

 

何と晴姫さんはその球を一口に飲みこんだのだ!

あ、あれが対処法なのか?

 

しかし、それはまずいことだと知らしめられる。

飲み込んだことで少し苦しそうにしていたがその後静まる。

 

「…ハハハハハハハハハハハハ!!」

 

そして晴姫さんが突然笑い出した。

そして俺の顔を見る。

 

「…お前…誰だ?」

 

俺は問うた。

これが晴姫さんの心なのか?

それは何も見えない。この部屋を象徴するかのように虹色に染められた感覚が俺を覆う。

 

「何を言っているの白野?私は夏目晴姫よ」

 

「ふざけるな!」

 

「ふざけてなんかいないよ。この場所に来た時からこうしないといけないってこえがきこえた。こうすれば呪いは封印されるって。この扉の前に来た時からね」

 

俺は数分前の自分を殴りたい衝動になった。晴姫さんの表情さえ見れば止めることはできたのだ。

多分さっきこの扉を開けた時から晴姫さんはおかしくなったのだろう。

考えてみたらおかしかったのはこの場所に来た時からだ。

高威力ならわからなくともないが軽威力のコードキャストでもあの南京錠を破壊できたのだ。

この力を欲しがる分家ならどこにでもいる。

俺のコードキャストと同じくらいの爆破くらい起こせただろう。

それなのに今までこの場所にあったならさらに異種の力が抑止力であったということ。

気付けなかった自分が悪い。

しかし今後悔したところで後の祭りだ。

後手に回ったなら後手なりの回し方をしないと

 

俺は先制をとるように先に攻撃を仕掛ける

が、まるで読まれたかのように華麗に回避される。

そのあとも攻撃を仕掛けるがすべて回避される。

 

「…はあ…はあ…何故だ…!」

 

戦いの中晴姫さんの表情を見た。

それは絶対に勝てると言う余裕の表情。

 

なんとなく俺はその正体がわかった。

たぶん晴姫さんは『見ている』

俺の心を見ているのだ。

俺がそう思うと晴姫さんも満足したように笑みを浮かべる

 

駄目だ。勝てない。

 

「白野は本当にいい子だね」

 

かわしながら俺に聞いてくる

 

「こんな汚れた私でも助けようと一生懸命に頑張ってくれる。…だから」

 

そこで俺の耳元に口を近付け

 

「ここは見逃してあげる」

 

刹那

俺の腹に拳が突き刺さる

 

反対側の壁にぶつかり意識が遠くなる

意識を失う瞬間晴姫さんの姿が見える

彼女はこちらを見つめていたがどんどん意識が失われていく俺の姿を見ると外へ向かって歩き出す。

 

そこで岸波白野の意識は途絶えた

 

 

 

 

それから夏目晴姫の姿を見たのは今日までいなかった

 

 

 




39弾終わりました
次でオリジナル章も完結です
ナスカ級さん、悠々白雪丸さん、ミジンコドリームズさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第40弾 首都帰還

ちょっと短めですがこれでオリジナル章終了です。
次回からアリアのほうをしっかりと進めます。



流れる外の景色はこぼれる夕日の中きらきらと輝いている。

今俺たちは東京行の新幹線内にいる。

六人がけの席でいつもの武偵校メンバーが同席している中俺は今日の出来事を瞳を閉じて思い出す。

 

 

 

 

 

 

俺があの後語り終えたときアリアたちは特に何も言わなかった。

まあそれもそうだな。

俺が隠し通そうとしたのはアリアたちから話が漏れることだったことだったが今のこいつらならきっとばらしたりしないだろう。

どうやら俺は丸一日眠りについたため詳しくは知らないがどうやらアリアたちも夏目家に認められたらしく特に暴れてもお咎め無しだったらしい。

晴海さんはこの問題は夏目家の問題なので首を突っ込まないでいいと言われた。

それでは俺が起こしたような問題なのにそれに首を突っ込まなくていいというのはさすがにと思ったがこれは夏目家だけの問題ですと笑顔で断られてしまった。

 

「大丈夫ですよ。それよりも今回の戦闘でお疲れでしょう?しばらくこの家でゆっくりしていきなさい」

 

晴海さんそれは提案じゃなくて脅迫というんですよ。

にこやかにそう提案?してくるがそれは俺を遊び相手にするためでしょう…

 

けど、それはできない。

そこで俺の最後の提案が発言される

 

「いいえ。俺たちは今日のうちにこの家を出ようと思います」

 

俺の言葉に驚きの表情を浮かべる

しかし冷静を保ちながらも話を続ける晴海さん

 

「一体どうしてですか?」

 

「…晴海さんも気付いているんじゃないですか?」

 

俺の言葉に息をのむ。

どうやら晴海さんも一応考え付いているようだ。

 

「俺がこの家にいるのはさすがにもうまずいんじゃないですか?」

 

「そ、それは…」

 

「?…どういうことですか?」

 

ああ、そう言えば晴雨さんは意外と抜けていることも忘れていたな…

まあいい。キンジもよくわかっていないようだし説明しておくか

俺は全員を見まわすように立ち位置を変える

 

「俺たちが今回襲撃されたのはどこかわかるかキンジ」

 

「ああ。土御門家だっけ。」

 

「そうだ。土御門家は一応俺たちと同じ阿倍の子孫。つまり分家となる。けど、安倍の子孫…分家は13あるんだ」

 

一応夏目家には分家が13ある。そのうち3つが夏目家、土御門家、倉橋家となる。

夏目家が安倍の子孫家と言われるゆえんは、安倍清明が直々に指名したらしい。

詳しくは知らないがその時から夏目は安倍後継者と言われている。

しかし、そのことをよく思っていない家もあるわけだ。

今回は土御門家だけだったがそれだけではないということ。

 

俺がそう説明を終えると大体の事情は知りえたようだ。

さらに続けて話を進める

 

「つまり、今回は土御門家だけだったがこれから先俺がここにいると別の家が勘づく恐れがあるわけだ」

 

「それですぐにでもこの家を出たほうがいいと」

 

反応したのは晴雨さんだった。

俺の話は至極正論だろう。

もうこの家に力はないが今後も俺を理由に接近してくる家があるかも知れない。

なら早いうちにこの家を出たほうがいい。

 

「俺はこの家に来ない方がいい」

 

悲しそうな顔が見える。

胸が痛むがこれが最善の方法。

これ以上迷惑はかけられない。

 

多分俺はもうこの家には帰ってこれないだろう。

それが俺の…

 

 

 

 

 

 

そこで閉じた目を開く。

俺が仲居の人たちと出会いたくなかったのはこのため。

あのまま全員に言ったら絶対に引きとめられそうだからな。

晴海さんたちも納得していないようだったが俺の意思を聞き決意を変えることができないと悟ったようで引きさがってくれた。

けどなんとなく嫌な予感がするんだよなぁ。

俺は思考を止め周りを見てみる。

周りは思い思いの行動に出ている。

仮にも家族だった人に何もしてやれなかったが、もう関わらないことが正しき結果だとして自分を納得させる。

俺はこれ以上余計なことは考えないように外の風景を眺めようと窓側に目を向けると

 

「白野君。おはよう!」

 

またおでこに衝撃が走った。

数分もだえるように暴れようやく痛みが引くと話始める。

 

「どうしてここにいるんだ?!ユキ!」

 

俺は声を上げる。

さっきまでなんの気配もなかったのに?!←動揺している

 

「晴海様があなたは白野の従者でしょう?だったら白野について行きなさいとおっしゃられていたから。きちゃった♪」

 

俺は頭を抱えた。

な、なんて問題児を送りつけてきたんだ晴海さん!

この人は結構トラブルメーカーなのに!

しかし、今言っても後の祭りだ。

 

「…よかったな白野。お前もこれから苦労人だ!」

 

うるせえぞキンジ!

しかし、キンジの言葉も全部が全部否定できないのが悔しい。

ユキがみんなと話し始めるのを尻目に俺は外の景色を眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 彩音

 

「…ハァ。」

 

まったく、人間は脆いものね。

漏れそうだった情報も抑え込んだししばらくは何もしないでおこう。

 

「それで、白野君はどうだった?」

 

私は後ろにあるソファに倒れている晴姫に声をかける。

 

「本当白野は変わっていなかったな。というかお前も白野を知っていたのか」

 

「ええ。本当あの人は面白いね。」

 

「…」

 

そんな目で見ないでほしいな。

 

そこで私の部下の一人が入ってくる。

私はベランダへと目を向ける。

そこには私の力に耐えきれなかったロボット少年の残骸が大量に廃棄されている。

 

「アメリカのあれに話しておいて。こんな人形で私の欲は満たされないって」

 

そこまで話すと部下は消えるかのようにその場から立ち去る。

確かにこれは白野の隠された力を知るために役には立ったがそれ以上の成果はなかった。その力が強すぎるのだ。

今はまだ傍観者でいたい。だからこんなのを送ってみたが…どうやらまだ足りないみたいだ。

ロボット自体私の魔力で限界まで注入している。

あまり多く入れすぎるとスクラップとなってしまうのでぎりぎりで。

それでも全然白野のすべてを知りえないということはこれでは無理だ。

もっといい道具を導入しないと。

そこで視線を感じる。それも殺気込みの

ああ、その目本当にいい。思わず殺したくなる。

 

「どうかしましたか?」

 

「…いや…」

 

晴姫はそこで視線を外す。

ふふ、晴姫も結構可愛い性格しているじゃない。

 

 

私は笑みを浮かべ椅子に座る。

外に光る月はらんらんと輝いていた。

 




40弾終わりました。
話を進めると言いましたが次にプロフィールも書きたいので明日投稿できたら投稿します。
虚気さん、恋姫夢想さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロフィール1

今回は白野君たちのプロフィール紹介となります。



岸波(夏目) 白野    16歳 

 

情報科 Aランク

 

戦闘方法

 

サバイバルナイフ(最近影が薄い)

 

マジカル☆八極拳

 

??? ←もうじき判明

 

 

 

みなさんご存じザビ男くん。

月での戦闘後謎の現象により緋弾のアリアの世界に幼児から転生した。理由はのちに説明。

10歳頃に夏目家の養子になるが中学卒業後家から勘当された。

ちなみに武偵校生になったのは高校から。

高校入学時キンジといろいろありその時から仮のパートナーとなった。

2年になってからは一人で活動している。

この世界に転生してからは白野君のマスターレベルが1に下がったので月にいたころの実力は発揮できない。

戦闘方法はマジカル☆八極拳で近接戦はトップクラス、中距離はコードキャストで身の周りは武偵校でも負けなしの存在となった。

そろそろ新しい力が発揮しそう。

最近謎の人物に憑依された。一体何モさんなんだ…!

結構な不幸(女難)体質であり女難の相:EXの特殊スキルを持っている。

しかも最近さらに効力が増え胃にダメージが出てきた。

そろそろ謎の悪寒で凍死しそうで心配なこの頃。

 

 

 

 

 

夏目 晴雨     16歳

 

 

夏目家次期党首となる年若い少女

白野の婚約者であったが白野が勘当されたときにその契約は解除されたと白野は思っている(本人はどうだろう?)

戦闘方法は夏目家の伝統流派の薙刀での攻撃。

保有超能力は『つくる』能力。

詳細は本人の理解している物質原子を脳内に想像しその魔力で原子を作り出す。

つまり作るというのは物質をつくるのではなく原子を作り出しそれを積み重ねて物質としている。

創造物の質量・体積・分子構造に比例し魔力を消費する。

能力の発現ボイスは『物体生成(クリエイト)

魔力の回復方法はいまだわかっていない。

結構計算高い一面もありながら少し天然な部分もある。

言うことを聞かない白野に対しそろそろ色々と仕掛ける予定。

 

 

 

 

 

 

倉橋 有希     16歳

 

 

 

 

夏目家の属家となる倉橋家の長女であり白野の従者であった少女。

緑とは双子の姉の関係。

中々の自由人で白野は従者というより遊び相手?みたいな感じになっている。

白野が勘当されてから暇な日々を過ごしていたが白野が帰ってきてまた出て行ったときに白野達と一緒に東京まで行くことになった。これからは武偵校生になる予定。

戦闘方法は20センチほどの細長い金属針。

保有超能力は『ずらす』能力

詳細は物体で指定した部分をずらすことができる。

能力の発現ボイスは『物体断裂(スラッシュ)

物体の質量・重量に比例し魔力を使用する。

魔力の回復には男の匂いが必要。

だが、夏目家には男が白野しかいないため白野の匂いで回復したりしている。

白野をからかうのが好きで彼と会えない間は結構暇をしていた。

結構な問題児しかもアホで白野の胃にダメージを与えるおもな原因。

なぜか理系の点数がよくそれも独創性にあふれるからかもしれない。

しかし、案外謎な部分も多く白野に対する彼女の評価はいまだ謎である。

 

 

 

 

 

倉橋 緑       16歳

 

 

 

 

夏目家の属家である倉橋家の二女であり晴姫の従者である。

有希とは双子の妹の関係。

冷静沈着であるがたまにおっちょこちょいな面もある。

戦闘方法は弓での遠距離攻撃である。

保有超能力は『金属を操る』能力である。

詳細は金属全般を操ることができる(ほかの人たちとなんか違うとか言わないで…)

能力の発現ボイスは『金属変動(アイアンチェンジ)

金属の質量・体積・速度に比例し魔力を消費する。

魔力の回復方法はいまだわかっていない

白野への評価はいまだによくわからない。

結構影が薄い感じだがしばらく後に大事な改革がある作者の秘密兵器の人。

 

 

 

 

 

 

夏目 晴姫       21歳

 

 

 

 

本来の夏目家の党首だった人。

晴雨の姉に当たる

夏目家の党首となる予定だったが呪いの禁忌に手を出し呪いに心を奪われた。

攻撃方法は夏目家の伝統流派の薙刀での攻撃。

保有超能力は物を『座標移動』させる能力。

詳細は物の座標を任意の座標へと移動させることができる。

能力の発現ボイスは『座標移動(ムーブポイント)

夏目家に封印されていた力、心を読む能力を持つことになる。

相手の心を読むことで相手の行動を事前に知ることができる。

つまり対人戦においてはほとんど最強の人。

呪いに看過される前は家族を守るために奔走していたつまりいい人である。

呪いに心を奪われたと書いてあるが本当に心奪われたかは作者の匙加減である。

 

 

 

 

 

 

夏目 晴海       40歳

 

 

 

 

夏目家現党首である女性。

晴雨たちの母親に当たる。

攻撃方法は夏目家の伝統流派である薙刀での攻撃。

晴姫たちの師匠でもある。

保有超能力は今はまだ謎である。

家族を大切にする基本いい人だが現在夫と喧嘩中である。

家族を大事にしているが特に白野に対しては異常な愛情を示している。

この人も基本アホであるがシリアスとの差が激しい人

 

 

 

 

 

 

土御門 元明    38歳

 

 

 

 

土御門家現党首の男

攻撃方法は腰に携えた刀

保有超能力はない

力を欲したが見事白野達に邪魔をされ爆発した人。

一応奥さんはいたが結構尻に敷かれていたらしい。

力を欲した理由はある意味威厳を示すためだったのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

十六夜 彩音     16歳

 

 

 

 

白野がであった謎の女性

攻撃方法は不明

保有超能力も不明

正体もよくわからないが白野へ執着する人

見事白野君の女難の相が彼女を捉えたのである。

謎の組織に所属しているがそれも不明

作者はちゃんと考えてこの人を出しています。

 

 

 

これからも続々出ます。

 

 

 




今回はプロフィール回でした。
次回からはしっかり本編を進めます。
投稿は明後日にできたらします。
恋姫夢想さん、Allen07さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第41弾 潜入作戦要項

すいません!少し遅れましたが投下します!


 

東京に帰ってきてから数日が過ぎた。

一応分家たちが攻撃仕掛けられるかも知れないということで注意はしておいたがとり越し苦労だったようだ。

 

だがそれ以上の苦労が俺には増えてしまった。

 

「ちょっと白野君!あれ!あれ何!」

 

俺の手を持って引っ張っていくのはユキだ。

ユキはあの屋敷からあまり出たことが無いからな。

結構世間知らずなのである。

今俺たちがいるのは秋葉原。ここは大量に人がいるため銃を抜くことができず別名『武偵封じの町』と言われているが俺はそこまで苦労しない。

コードキャストを封印して八極拳で物理で殴れば被害は防げるからな。

それよりも今は俺を引っ張っていくユキをどうにかしてほしいのだが。

 

「ちょっと白野!待ちなさい!」

 

俺たちの後ろからアリアたちが追ってくる。

一応仕事が入ったからアリアたちとここへ来たのだが…

それもユキが色々やるおかげで遅れているのだ。

と言っても本当にユキはいい笑顔をしている。

…もう少し付き合ってやるか。

俺は後ろについてきているアリアたちにしばらく待っていてくれと伝え俺はしばらくの間付き合わされるために人形になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん。遅れた」

 

「遅い!」

 

キンジ達と別れて30分ほどして俺たちはアリアたちとの待ち合わせ場所というか今回の依頼人理子さんが指定した場所メイド喫茶だ。

何でメイド喫茶?と一瞬思ったが理子さんの趣味だろうと言うことで片付いた。

ユキはというとメイドという従者とは違う存在がどうも気に入ったようでそちらの方に遊びに行っている。

俺は遅れたということでアリアから一発グーパンを入れられ理子さんを待つのだった。

というか、まだ来ていないんだから別にパンチされる理由なくね?

 

 

 

 

 

 

 

「ごめっぇーん!遅刻しちゃったぁ!急ぐぞブゥーン」

 

ゴスロリ制服に縞々タイツ首には鈴を増設した理子さんが走ってくる。

飛行機のように広げた両腕にはフィギアやらゲームの紙袋が…それで遅刻をしたのか。

まあ、俺も特に何も言えないけど

 

「んと、私にはいつものパフェとダーリンたちにはマリアージフレールの春摘ダージリンそこの元気っ子にはリンゴのミルフィーユ。そこのピンクにはモモまん投げつけといて!」

 

理子さんの怒涛のような注文が流れる。手慣れているな。

ここはおごりらしく俺はユキの興奮の相手をしながら待っている。

 

「まさか、リュパン家の人間と同じテーブルにつくことになるとはね…偉大なるシャーロック・ホームズ卿も天国で嘆かれてるわ」

 

そう言いながらアリアは出されたモモまんをモフモフと食べている

理子さんはタワーみたいなパフェをおいしそうに食べている。

本当にこの人たち仲悪いのか?

俺は出されたダージリンを一口口に含む。

あ、うまいなこれ。

何ともいい感じの甘さが口の中に広がっていく。

ふむ、これをモデルにティータイムに使えるかも知れないな。

俺がそう思いながら楽しんでいると

 

「ねえねえ、白野君」

 

「ん?どうした?」

 

ユキから声がかかる。

この質問もこの数時間の間に結構な量をされたのだ。

いまさらどんな質問が来ようとも驚くことは…

 

「それ、食べさせて!」

 

絶句した。

俺の前にはミルフィーユがある。

俺が通路側に座っているため、ちょうど俺の目の前に置かれたがまさかこれをユキに食べさせろと言うのですか!

 

「ダメ?」

 

ああもう、俺も甘いなぁ。

俺はフォークに一口分のケーキをすくい

 

「ほら」

 

その言葉と共にフォークをユキの口に向ける

 

「んっ!」

 

パクッとそれを口に含む。

そのまま手を頬にあててまどろんでいた。

どうやらお気に召したようだな。

そこで視線を感じる。

周りを見るとアリアと理子さんがこちらを見ていた。

い、一体何事…?!

ケーキをそのままユキの手元まで持っていく。どうやら一口で俺の手を借りるのは満足したようでそのあとは一人で食していた。

 

「理子、俺たちは茶を飲みにきたんじゃない。 俺とアリアにした約束はちゃんと守るんだよな?」

 

キンジが質問を理子さんに向ける。

助かった。何かと視線が痛かったんだよな。

 

アリアは神埼かなえの裁判で証言をする

キンジはキンジの兄さんの情報だそうだ。

俺は特に何も望んでいない。まあ、助けるために何も求めるものはないからな

ユキはアホだから今から何が起こるか知らない。理解できるかわからないがきちんと説明はしたが。

 

「もちろんだよダーリン♪」

 

「誰がダーリンだ!」

 

「そ・れ・は、キー君としろ君に決まってるじゃん。私たち彼氏彼女の関係じゃーん」

 

「あ、あれ?!俺もなの?!」

 

「というか何にもやってねえだろそもそも!」

 

俺の驚きとキンジの突っ込みが同時に入る。

うおっ!悪寒が…謎の悪寒が…!

ぶんぶんと首を降って悪寒を振り払う。ダンダンと裁判長みたいに拳銃で机を叩くアリア

 

「そこまで! 風穴開けられたくなければいい加減にミッションを説明しなさい!」

 

「お前が命令するんじゃねえよオルメス」

 

いきなり乱暴な男言葉になり三白眼の目でアリアを射殺すような目で見たので俺も少し引いた。

そしてユキちょっとは空気を読め。頬に粉ついているぞ。

俺は布巾でユキの頬を軽く拭いてやり状況の展開を待っている。

理子は紙袋から取り出したノートパソコンを広げて起動させつつテーブルに放り投げる。

 

「横浜郊外にある『紅鳴館』―ただの洋館に見えてこれが鉄壁の要塞なんだよぉ」

 

表理子に戻ったのを見ながら画面を見ると地下1階、地上3階の見取り図が詳細に記されている。

逃走ルート等などの詳しい作戦概要もきちんと書かれてある。

それも、想定されるケースすべて。

これはすごいな。ここまで詳細な計画表は始めてみた。

今日まで結構作るのに時間がかかったんじゃないか?

 

「これあんたが作ったの?」

 

「うん」

 

「いつから?」

 

「んと先週」

 

それって俺の家に行った時じゃなないか。

そういや、あまり姿を見ていなかったな。

アリアも目を丸くしてるぞ。

これほどのものをこの短期間で作り出したとは俺でもできるかどうかわからんぞ。

 

「どこで作戦立案術を学んだの?」

 

「イ・ウーでジャンヌに習った」

 

ああ、ジャンヌさんか

今はどうしているかと考えていたところ

 

「これはすごいね」

 

「ん?どうしたんだユキ?」

 

「監視カメラの場所も想定して安全の可能性がある部分だけをルート化しているよ」

 

「それってすごいのか?」

 

「うん。それもここまで詳細で安全なルートを作れる人は久しぶりに見たな」

 

うん、めちゃくちゃかっこいいのだが今度はその鼻についた粉が残念だよ。

俺はまた布巾を取り出し鼻を拭いてやる。

 

「キー君、アリア、しろ君、ユキユキ。 理子のお宝はここの地下金庫にあるはずなの。理子でも1人じゃ破れない。 鉄壁の金庫なんだよ。もう、まじマゾゲー。でも息のあったチームと、1人の外部連絡員がいればなんとかなりそうなの」

 

「それでアタシたちをセットで使いたいってわけね」

 

と、アリアはツインテールを揺らして椅子にもたれかかる。

 

「…それで、理子、ブラドはここに住んでるの? 見つけたら逮捕しても構わないわよね?

知ってると思うけどブラドはアンタたちと一緒にママに冤罪を着せた敵の1人でもあるんだからね…」

 

そういうことか。

無限罪のブラド

電子手帳で調べてみたが120年ほど前から生存している吸血鬼。

神を絶対としている吸血鬼でっ…ってこれ別の世界の奴じゃん…

どうやらこれも邪魔されているようだな。

俺は嘆息して電子手帳を直し話の続きを聞くことにする

 

「あー、無理。ブラドはここ何十年もこの屋敷に帰ってきてなくて管理人とハウスキーパーしかいないの。 管理人もほとんど不在で招待をつかめていないんだけどねぇ」

 

アリアはそれならそうと教えときなさいよと口をへの字に曲げる。

やばい、グーパンが飛んできそう。

わ、話題を変えよう…

 

「それで俺たちは何を盗むんだ?」

 

「理子のお母様がくれた十字架」

 

「あんたってどういう神経してるの!」

 

アリアは犬歯を剥き出しにし眉をつりあげ立ち上がった。

沸点が速いってアリア。

理子さんの口調からただ事じゃないってことくらい誰だってわかるぞ。

 

「アタシのママに冤罪を着せといて自分のママからのプレゼントを取り戻せですって? アタシがどんな気持ちか考えてみなさいよ!」

 

「おい、アリア落ち着け! 理子の言うことでいちいち腹を立てていてもきりがないぞ!」

 

キンジがうまくフォローするがアリアは収まらない

 

「頭にもくるわよ!理子はママに会いたければいつでも会える!電話すればすぐに話せる! でも、あたしとママはアクリル板越しに少ししか…」

 

「羨ましいよアリア」

 

「アタシの何が羨ましいのよ!」

 

アリアは等々ガバメントを振り上げるが理子は銃を抜かない。

かわりに寂しそうにぷらぷらと足を揺らす。

 

「アリアのママは生きてるから…」

 

「…っ!」

 

アリアが両目を見開く

 

「理子にはお父様もお母様ももういない。 理子はお二人がお歳をめされてからやっとできた子なの。 お二人とも、理子が8つの時に亡くなってる。」

 

「…」

 

「十字架は理子が5才の頃お母様からもらった物…」

 

アリアのガバメントが下がっていく。

そして、ストンと座席に着いた。

 

「あれは理子にとって大切なものなの。 命の次ぐらいに大切なもの。 でも・・・」

 

理子さんは顔を伏せたと思うと

 

「ブラドの奴、アイツそれを知っててあれを理子から取り上げたんだ。 それをこんな警戒厳重な場所に隠しやがって…ちくしょう…」

 

憎悪に満ちた声でぼそぼそ呟いている。

悔し涙まで浮かべて…

理子さん…あなたはそんなにブラドが憎いのか…

 

「ほ、ほらそんなに泣くんじゃないの。 化粧がくずれてブスがもっとブスになるわよ」

 

そんな理子さんの前にアリアはトランプ柄のハンカチを投げる。

さっきのお詫びを兼ねてかな?

一瞬にやっと笑った気がしたがそこは…うん。変に詮索しないことにしよう

 

「ま、まあそれはともかくその十字架を取り戻せばいいんだな?」

 

キンジの言葉に理子さんはアリアのハンカチで少し目を抑え、涙をすいこませながら頷いた。

 

「泣いちゃダメ、理子はいつでも明るい子。だから、さあ、笑顔になろ!」

 

暗示のような独り言を理子さんが呟いた時、メイドさんが入ってきてお冷をついでまわってくれた。

場が少し和む。

理子さんもいたずらっぽい笑みを浮かべる。

 

「…とはいえこのマップね」

 

バシッと理子はパソコンを閉じながら

 

 

「フツーに侵入する手も考えたんだけど。 それだと失敗しそうなんだよね。 奥深くのデータもないし。 お宝の場所も大体しかわからないの。 トラップもしょっちゅう変えているみたいだからしばらく潜入して内側を探る必要があるんだよ」

 

「せ、潜入?」

 

俺たちが尋ねると理子はばんざーいと言うように宣言した。

 

 

「アリアたちには紅鳴館のメイドと執事になってもらいまーす!そこでしろ君にやってほしいことがあるのでそれをやってもらいまーすよー!」

 

「ん?なんだ?俺に出来ることならなんでもやるよ」

 

俺は気のいい笑みを浮かべ答える。

それがいけなかったんだよなぁ…

 

「それではしろ君にはこれを着てから潜入してもらいましょう!」

 

そしてとりだしたのはさっき理子さんが持ってきたゲームを入れた袋から取り出したメイド服。

ん?メイド服?

 

「しろ君には女装をしてから潜入してもらいます!」

 

一瞬の間があり俺は思い出した

 

「は、はぁああ?!!」

 

問題児…沢山いるんだよなぁ…

ああ、胃が痛い…

 




41弾終わりました。
白野君がメイド服大丈夫なの?と思うかも知れませんが一応原作よりは小さめで童顔のような容姿をしていると想像してください。
何故、小さめなのかはのちの物語でお話しいたします。
Allen07さん、島田響奏さん、rassyuさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第42話 襲来の白狼

1時間以上遅れました。
すいません。
しかしたくさん書けた。
後悔はしていないです。


「い、いやだぁぁぁ!!」

 

俺は何故かメイド服へと着替えさせられそうになっていた。

 

「よいではないかーよいではないかー♪」

 

俺に手をかけるのは従者であるユキ。

昨日理子さんの依頼で横浜にある屋敷に潜入することになったのだが、その時どうしてか俺は女装をすることになったのだ。

確かに俺は月にいた時より背が小さいけどさ!女装はないでしょ!

もちろん全力で昨日は拒否したのだが押し切られたのだ。

その押し切った一人であるユキが今俺の服を引っ張っている。

どうも俺に潜入の際の方法を教えようとしているみたいだが、それも女性としての心得であるからめちゃくちゃ困る。

 

ユキは東京へ来た際実家の援護もあり武偵校へ入学した。

それも俺と同じクラスという何故か転校生が俺たちのクラスへ集うという変な偶然もあったりしたのだが。

そしてユキの専門学科は『諜報科』である。

持ち前の気配遮断などが向いているのだろう。

そして本人自体が従者をしていることもありこうした潜入捜査はユキにとってお手のものらしい。

なので今俺に潜入捜査の際の女性の心得を教えてもらっている。

いや、いらないんだけどね。

 

「は~な~せ~!」

 

全力で逃れるため振り払おうとしている。

さすがに俺の方が力があるのでどんどんとユキの手が離れていく。

そしてユキの手が離れたと思った時!

 

プスッ!

 

俺の手の平に小さな針が少し刺さる。

そして数秒後俺の体から少しずつ力が抜けるように筋肉が動かなくなる。

こ、これは麻痺毒か!

どうやら最近諜報科で学んだそれを俺に打ち込んだらしい。

というか主人に対してこの仕打ちはひどくないですか?

そんな願いが聞かれることもなく俺はユキに引っ張られていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「ううっ…。酷い…。この仕打ちは酷すぎる…」

 

「…」

 

現在俺の恰好は絶賛少女恰好だった。

フリフリのメイド服に足の線を細める黒のタイツそして腰にまで届く長いウィッグを装備している。

うう…めちゃくちゃ恥ずかしい…

って言うかさっきからユキ黙っていないか?

 

「ど、どうした?」

 

「か」

 

「か?」

 

「かわいい~!」

 

そしてそのまま抱きついてくる!

ちょ、ちょっと待てって!いきなりどうしたんだ!

俺はユキと倒れないようにしっかりと抱える。

 

「いやあ。まったく、家にいた時からなんとなくかわいらしい顔をしているなって思っていたけどここまで似合うとは思わなかったよ」

 

「う、嬉しくねぇー…」

 

落胆する。

とても不名誉である。

…しかし、任務は任務なので依頼人の言うことは絶対なのである。

この時ばかりは恨めしく思うぞ武偵憲章2条。

 

「うーん、それじゃあ白野君って呼ぶのはちょっとまずいよね…」

 

確かにそれではまずいのだがもう俺には突っ込む気力はなかった

 

「…別になんでもいい」

 

俺のふてくされた態度にユキはさらにからかうように続ける

 

「確か白野君ってこの学校でザビって呼ばれているらしいね」

 

「うっ!どこでそれを…」

 

こいつ…一体どこでその情報を知った!

 

「えっと…確か武藤君だっけ?」

 

ムトウコロス…

まあ、これは後ででもいいが何か嫌な予感が…

 

「それじゃあ…ザビ子で?」

 

泣きそう

 

「ご、ごめんごめん!悪かったって!」

 

俺の顔を見たとたん謝罪の言葉を連発する。

 

「う、うーん…それじゃあ波岸 白乃(なみきし しろの)でどうかな」

 

色々突っ込みたいがもう別にいいよ…

 

一頻りあったあとはメイドとしての仕草など徹底的に叩き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

これが終わったら俺もう女装はしないんだ。(フラグ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例の秘密の特訓から数日が経った。

俺の心に深く傷を負わせた特訓はこの任務が終わったと同時に心の奥底へと消えてゆくだろう。

ああ、けど俺もう駄目かもしれない。

 

「ですよねー」「うんうんあれはひどいよね」「えー、それめんどいんだけど」「それある!」

 

薄い鉄の扉の向こうには花園がある。

しかし、俺がそこえと向かった瞬間そこは血の花園へと化すだろう。

俺が今いるのはアンビュラス棟一階、第七保健室

俺の携帯に理子さんからメールがあり至急この場所へと来てくれと連絡を受けた。

その時は疑いもなく急いでここへと向かったがここにいたのはキンジだけ。

俺はキンジに何でお前もと聞こうとした瞬間扉の外に気配を感じこの掃除用具のロッカーへと逃げ込んだのだ。

キンジは隣のロッカーへと逃げ込んだ。

入ってきたのは女子生徒だった。アリアや理子たちもいる

その時は何故隠れたのかと自分でも自分の行動に謎が生まれた。

普通に隠れなくても特に何も問題はなかったのに。

俺はすぐに出ようとしたがもう動くことはできなかった。

何と教室に来た女子生徒全員が服を脱ぎ出したのだ。

しかし、この状況はひどくまずい。

とにかく容疑者は理子さんで確定だろう。

そして被害者は俺たち。

けど、それを知らないこの教室にいる生徒は俺たちが被疑者。

確実に有罪判決を受けるだろう。

そしてそのまま…

 

俺は頭の中に浮かんできた最悪の展開を頭を振って思考を止めた。

きっとなんとかする方法はある。それを見つけるんだ!

そして俺はその突破口を探すために扉の隙間から外を見る!

 

「さーて、アリア。先生が来る前にスリーサイズでも測っちゃおうか」

 

「そ、それくらい自分で出来るわよ!」

 

「理子が測りたいんですー」

 

…何をしているんだ俺は。

逃げまどうアリアを追う理子さんに俺は冷静になり自己嫌悪をした。

隣では少しごそごそと音がする。

…多分キンジがヒステリアモードになったな。

かすかに隣のロッカーから感じるカリスマのオーラがそう思わせた。

 

多分キンジも気付いたんだろう。

この部屋に来ている人達の共通点を。

 

その時部屋の扉が開いた

入ってきたのは救護科の臨時教師である小夜鳴先生だった。

彼はこの学校へと臨時で来た一般講師。

甘いルックスと優しい性格で一部の女子生徒に人気のある先生なのだが…俺はあまりあの先生は信用ならない。なんとなくだが。

 

「ふ、服は脱がなくていいんですよ!メールで書いたじゃないですか採血だけだと。はい服を着てください」

 

そして丸椅子へと座りながら彼は何かをつぶやいた。

俺には表情から大体の感情を読むことはできるが読唇はあまり得意ではない。

もう少し勉強をした方がよかったのかも知れない。

 

―!

こ、この悪寒は…!いつもの悪寒じゃない悪寒が俺の心を冷やしている!

仕方なく、俺は外を見ると

 

「…」

 

レキさんがこちらを見ていた。

ま、まさか気付いて…

そのまま俺のロッカーに近づいてきて…

 

バンッ!

 

その勢いのまま俺のロッカーの扉を開ける!

あ、オワタ。

 

「れ、レキさん!こ、これは…!」

 

俺は弁明という名の言い訳をしようとしたがレキさんが俺の胸倉を掴みロッカーから引きずりだす。

めちゃくちゃ怒っていらっしゃる…

これは俺の命も今日まで…

 

パリーン!

 

なんの音だ!

 

ガシャアン!

 

さらに何かがつぶれる音。

音の出所である後ろを見ると

 

「なっ!」

 

何かがぶつかったかのようにロッカーがつぶれている。

一体何がと思いそのぶつかったものを見てみると

 

「あ、あれは…」

 

コーカサス白銀狼

現在この世界で絶滅危惧種として指定されている動物の一匹だったからだ。

まさか、レキさんこのことが分かっていて俺を出したのか。

 

「白野!これは一体どういうことだ!」

 

事態を重く見たらしいキンジと何故武藤が…?まあいい、二人がロッカーから出てきた。

武藤は天井に威嚇射撃として拳銃を一発放つ。

 

「武藤!拳銃を使うな!女子が防弾制服を着ていない!」

 

キンジが警告の声を上げる。

しかし、狼はその轟音にも怯まずこちらを威嚇している。

どうやらあの狼ただの動物ではないな。

 

狼はすばやい動きでキンジ達の隠れていたロッカーに体当たりを決める。

吹っ飛んだロッカーは武藤を巻き込みドシンと倒れた。

 

「くそっ!」

 

俺はすばやく近付き狼に向けて鉄山靠を放つ。

 

ぎゃん!

 

狼はそう声を上げるが

 

「ち、甘く入ったか。」

あの狼中々やるな。体をしっかり使って衝撃を和らげたようだ。

しかし、全部の衝撃は殺しきれなかったようだ。

少しふらふらとしながらまた立ちあがる。

そこでにらみ合いが始まる。

俺はその目から感情を読み取った。

動物相手はほとんど初めてだったが案外うまく読み取れた。

その心は野生の本能である殺意と戦意と…絶対に越えられない恐怖?

 

―!

意識外からの強襲。

下着姿のユキが制服から金属針を取り出し死角から強襲を仕掛ける。

しかし、野生の勘なのかぎりぎりのところでかわされた。

そのかわした先には小夜鳴先生

 

「ああっ!」

 

狼は一発体当たりをかまし窓へと向けて走り出す。

 

「えっ…」

 

しかし、そこには平賀さんの姿が

まずい!

彼女は戦闘向きではない上に防弾制服も着ていない。

もし襲われたらただごとじゃあ済まないぞ!

しかし、今こいつにコードキャストを使うのは憚れる。

使ったら絶対に爆発四散してしまうからだ。

 

考えている暇はない!

俺は急いで狼と平賀さんの直線状に手を差し出す。

 

「ひゃあ!」

 

「ぐっ…!」

 

腕からバキバキという音が聞こえる。

跳びかかった時差し出した手がうまく狼の口に入った。

狼はそのまま腕を噛み千切ろうと力をさらに込める。

 

「あぐぅ…」

 

しかし、俺は無理に振り払おうとはしなかった。

もしここで無理に振り払ったら腕ごと噛みちぎられるからだ。

だから俺は

 

「おい、狼。その口絶対に離すなよ」

 

そう言い俺は重心を低くして

 

「変に動くと変な所に入るからな」

 

全力だが手加減を加えた斧刃脚を放った。

その攻撃は狼の腹部に入り窓の外へと吹き飛ばす。

 

俺は激痛のあまり膝をつく。

しかし、まだ状況は変わっていない。

俺は外を見る。

狼は野生の勘なのか俺にかなわないと悟ったようでふらふらながらも学外へ逃げ出した。

 

「キンジ!これを使え!」

 

武藤の声と同時に鍵を投げ出した。

キンジはそれを受け取ると窓から外へと飛び出す。

しかし、ヒステリアモードのキンジでもあの素早い狼を追うのは至難の業だろう。

 

「レキさん!キンジと一緒にあの狼を追って!」

 

俺の声にレキさんが反応をするが動き出そうとせず俺の方を見ている。

 

多分俺の心配をしているのだろう。

しかし、

 

「大丈夫だよレキさん。これくらいの傷すぐに治る」

 

俺はできるだけ笑顔で声をかける。

もう右手が痛すぎて顔から脂汗が出る。

 

伝わったのだろうか。

レキさんは一度コクっと頭を下げると下着姿のままドラグノフを片手に外へと飛び出した。

素早い狼でもレキさんの目があれば追えるかも知れないからの選択なのだがこれでよかったようだな。

けど、制服だけは着てほしかったよ…

 

少ししてバイクのエンジン音が聞こえ遠ざかっていく。

どうやらちゃんと追えているようだな。

 

俺は安堵と同時に膝から崩れ落ちる。

 

「き、きしなみ君!だいじょうぶなのだ?!」

 

心配の声がかかる。

その目には少し涙が溜まっている。

どうやらかなり怖い思いをさせてしまったようだ。

 

「大丈夫だよ。これくらいすぐに治るから」

 

そう言って逆の手から電子手帳を取り出し『鳳凰のマフラー』の礼装を取り出し

『heal(16)』のコードキャストを使う。

すると俺の右手は光に包まれると同時に綺麗に元に戻っていた。

軽く右手を握ると俺はその場から立ち上がる。

 

「き、きしなみ君?!」

 

「ああ、もう大丈夫だよ。ほら」

 

そう言って俺は右手を握手するように差し出す。

その手を平賀さんは握って俺が大丈夫なのを知ると安心したのか腰を抜かしたようだ。

俺は軽く支えてやり、その場に座らせると俺は立ち上がりもう一人の被害者小夜鳴先生のそばまで近寄る

 

「すいません。小夜鳴先生一体どこを怪我されたんですか?」

 

俺はそう声をかけると小夜鳴先生は右腕を押さえながら答える

 

「運よく右腕だけ折れただけで済みましたよ」

 

「わかりました。それでは右腕を出していただけませんか?」

 

小夜鳴先生は疑いの目を向けながらも右腕を差し出す。

ありえないことだと思いながらも先ほどの俺の腕を直したコードキャストを見て疑いながらも信じているようだ。

俺はまた『heal(16)』のコードキャストを使う。

右手が光に包まれその光がはじけると同時小夜鳴先生は驚いたように右手を握っている。

このように素早く怪我を直す能力はとても珍しい。

それが彼を驚かせている由縁のようだ。

 

「ふう…」

 

俺は脱力をする。

別に事件が終わったから脱力しているわけではない。

絶対この後殺されるからなぁ…どうしようかなぁと悩んでいるからだ。

しかし、俺は気付いてしまった。

小夜鳴先生が俺の方をするどい目線で見られたことに。

そのあとの口の動きさすがの俺でも気付いてしまった。

彼が何を呟いたのか。

 

フィーブッコロス

俺はその言葉の意味がわからなかった。

 




42話終わりました。
進めたい。進めたいが書きたいことが多すぎて進まない。
なるべく早く進めます
明日はちょっと投稿は厳しいかもです。
ナスカ級さん、シオウさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第43弾 過去調査

日曜日は投稿できなくて申し訳ございませんでした。
お気に入り登録数800人ありがとうございます。
では投稿します。



昨晩は見事アリアに海に沈められた。

けど特に酷かったのはユキだ。

ほんとあの時のユキの顔は怖かった。

いや怖かったというかうん、いつもはアホみたいな感じなのにあの時は言葉に表せないほど異形だった。

あの後ユキが満面笑顔で何かを呟いていたが俺は怖くて聞くことができなかった。

ともかく昨日のことは思い出したくないことなので記憶の奥底へと沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ぐうぅぅ…」

 

ユキのとてつもないしごきを受けた後俺は雨降る外へと歩き出した。

傘に雨が当たりぽつぽつと音が聞こえる中外の廊下を歩く。

ユキに関しては何故か体に教え込むかのような教育をしているし。

確かにもう少しで本番の任務があるけどさ、肉体に教え込むのはいかんでしょ。

俺は嘆息する中何か別の音が聞こえる。

綺麗な音だな。

しかし、俺はこの音楽を聞いたことがある。

確か題名は

 

『火刑台のジャンヌダルク』

 

嫌な予感がした。

これは凍える冷気のような音と共に聞こえてくる。

俺は警戒するかのように音の出所である音楽室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「何だ。やっぱりジャンヌさんか」

 

「ほう、今度は岸波か。まあいい。お前にも説明する予定だったからな」

 

ジャンヌは見たことある西洋の鎧ではなくこの武偵校の制服を着ている。

まあ、似合っているけど。

 

「ん?お前は何故私がここにいるのか聞かないのか?」

 

「ああ、どうせ司法取引だろと思ってね」

 

「やっぱりお前はキンジよりも頭が回るみたいだな」

 

「あはは…まあ、キンジはヒステリアモードにならないとちょっと馬鹿だからね」

 

まあ、馬鹿だけであいつを決めることにはできないが。

ノーマルキンジはノーマルキンジでいいところはあるしな。

まあ、この際キンジのことは置いておいて聞きたいことを聞くか

 

「ジャンヌさんはブラドのこと知っているんでしょ。だったら教えてほしい」

 

「…結局はお前もそのことを聞くんだな」

 

別にいいでしょ

 

「まあ、私も結局はそのことを話そうとしていたから何とも言えないがな」

 

微笑を浮かべるジャンヌさん。

そこで音楽室に部活だろうか。部外者が入ってくる。

しかし、今の状況では俺たちが部外者だ。

俺とジャンヌさんはそろって音楽室を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが来たのはこの学園島で唯一のファミレスだ。

一応俺が話を聞く立場なのでおごることになっている。

俺はドリンクバーから二人分のジュースを持ち席に着き反対のテーブルに置く

 

「ああ、ありがとう」

 

ジャンヌさんが一口口に含むと息を軽く吐く。

しかし、こんなクールな人がセーラー服とかなにかギャップが良いな。

可愛らしくていいと思う

 

「その制服にあっていますね」

 

俺がそう一声かけるとジャンヌさんは少し顔を赤くして返す

 

「お前もか。まったくせっかく教えてやろうとしたのに何故そう心にもないことを」

 

「え?本心ですけど?」

 

俺の言葉にさらに顔を赤くさせたジャンヌさんだがそれを紛らわせようと一口ジュースを口に含むと話し始める。

 

「た、確かブラドの話だったな!いいだろう遠山にも聞かれたことだそのまま話そう。だが、岸波。お前も情報科だろう?お前も調べてはいないのか?」

 

「ええ、ですけど俺の情報網では限界があってまったく調べられてないんですよ」

 

「ほう、お前でもわからないことがあるのか。情報科の面子でも頭一つ跳びぬけていて限りなくSランクに近いAランクの岸波が?」

 

そう言うジャンヌさんも専門学科が情報科らしくそれも成績は良かったらしい。

というか年上だと思っていたが同い年だということがさらに驚いた。

 

「まあ、それはいいでしょ。速く情報を教えてください」

 

「わかったわかった。私の知っていることはすべて説明するとしよう」

 

やっとこさ話が始まるので俺は今一度佇まいを正す。

 

「岸波はブラドの情報はほとんど知らないと言ったな」

 

「ああ、ほとんど知らないが吸血鬼だということは知っているよ」

 

「まあ、大体は合ってはいるな。確かにあいつは吸血鬼だ。そして鬼でもある。」

 

「鬼?」

 

鬼…か。

確かにあの月にいた時のあいつは凶暴性などに置いてまるで鬼のような実力を持っていた。その点においては予備知識はあるがこの世界のブラドはあいつと一緒というわけではないだろう。もっと情報がほしい。

 

「他には情報は?」

 

「ない」

 

「は?」

 

「ない」

 

「いやわかってますって」

 

情報が無いってどういうことだ?

 

「直接的にブラドに関する情報が無いだけだ。何にせよブラドはイ・ウーでも謎多き存在だったのだ。情報が無いのも仕方のないことだ」

 

えー来た意味ないじゃないですか

 

「そ、そんな悲しそうな顔をするな…ブラドは120年ほど生存した吸血鬼で、先代のジャンヌダルクがある人物と共闘しても引き分けたほどの奴なんだ」

 

「へー、そーですかー」

 

「ぐっ!…す、済まなかった…」

 

俺は涙目になったジャンヌさんを慰める。

まあ、そうだよね!知らないことだってありますよね!

 

「そ、そうだ!ブラドには理子さんの大切なものを取られたって言っていましたよね!ブラドと理子さんに何か関係があるのですか!」

 

俺の言葉にいつもの調子を取り戻したジャンヌさんが俺の質問に真剣な表情で答える。涙目ながら。

 

「ぐすっ…ああ、理子は過去にブラドに監禁されていたのだ」

 

その言葉に俺は驚愕の表情を浮かべる。

いつもはアホのような調子の理子さんにそんな過去があったなんて…

…なるほど大体わかった。

何故理子さんがあのような表情をしたのか。

 

「ああ、このことは非常時以外アリアには伏せておいてくれ。あいつが嗅ぎつけると絶対に戦うとか言い出すからな。先日狼がそちらに送られてきただろう。あれはブラドの手下だと思ってくれていい」

 

「俺たちの意図に気付いているのか?」

 

「わからないが…それはないだろう。狼は射撃科の生徒に奪われたと聞く。奴の僕は世界中にいて直感的に生存しているからな。帰ってこないとしたら遊びに行っているとでも思われているかもしれない」

 

それでいいのかブラド達。

けど、もしばれた時には戦わないといけない状況へとなるのかも知れない

 

「ああ、戦おうとでも思うなよ。奴には絶対に勝てない」

 

またか。

最近この展開多いな。

 

「一体どうしてだ?」

 

一応聞いておく。

 

「それは奴が不死身だからだ」

 

…おうぅ、不死身ときたか。

確かに不死身なら勝つこともできない。

じゃんけんで言えばどんなカードを出しても絶対に負けないことと同義だ。

戦っても無駄だということ。

しかし、この事実には突破口がある。

まあ、このことは後で考えるとしよう。

それよりも聞きたいことがある

 

「それでそのブラドは現在イ・ウーのトップなのか?」

 

「いや、それは違う。ブラドはイ・ウーのナンバー2でトップは教授と呼ばれる別の人物だ」

 

その言葉に俺はその突破口がつけると思い口元を軽く釣り上げた

 

「なら、ブラドもその教授とやらには敵わないというわけだ」

 

「ま、まさか戦おうとしているのか」

 

「まあ、出会ったならな。負けたとならば不死身でもないということだろ?」

 

「はあ…確かに奴には昔バチカンから送られてきたパラディンの秘術により弱点に消えることのない印をつけられたのだ。教授もそこを突いたのだろう。」

 

「見てなかったのか?」

 

「いや、見ていたが見えなかったというのが正しいか」

 

そう言って一度咳払いをするとまたしゃべりだす。

 

「教授はものの数秒でブラドの弱点を見つけて目に見えぬ速さで倒したのだ。」

 

…その教授ってめちゃくちゃ強いやつなんだな。

まあ、確かに国家機密にされるほどの組織だ。

そのトップともなれば意表を突かれるような奴だろう。

たとえば、世界一有名な名探偵だとか。まあ、あるはずもないか。

 

「まあ、基本は戦う気はないよ。もしもの時の緊急用だと思ってくれていい」

 

「…その方がいいだろう。だが、一応私が見た分の弱点を描いておく。ブラドには弱点が4つあると聞いた。だが、私が知っているのは3つだけだ」

 

そう言ってジャンヌさんはナプキンを一枚手に取り眼鏡をかけペンを走らせる

 

「あれ?眼鏡かけていたっけ?」

 

「ああ、ちょっと乱視なだけだ」

 

すらすらとペンを走らせる。

…んん?

 

「完成だ」

 

「…落書き?」

 

「な、落書きとは失敬な!」

 

だ、だって何でそんなにギザギザしているの?

何か目?みたいな模様が3つほどあるがそれが弱点なのかな?

…まあ、一応もらっておくか。弱点が書かれてあるし役にも立つだろう。

 

「4つ目は私にもわからない。けど、一応これだけは覚えておいてほしい」

 

「…ああ、ありがとうな」

 

俺はポケットにそのブラドが書かれたナプキンを入れる。

けど、これ持ってたら何か不幸なことが起きそうな気がするんだよな。

 

「…ああ、ごめん話がずれたな理子さんのことをもう少し教えてくれませんか」

 

俺はまた話を続けさせる。

理子さんには悪いがあの感情を見せられたなら俺は知っておきたいし

 

「そう言えば理子の話の途中だったな。理子は小さい頃監禁されていた。よほどひどい目にあったのだろう。理子がいまだに小さいのは当時ろくに食べ物を与えられていなかったから。衣服に執着があるのはぼろ布しか纏うことができなかったからだと聞く」

 

「そう言えば何で理子さんは監禁されるような目にあったんだ?リュパン家と言えばかなりの名家なんでしょ?」

 

「リュパン家は没落したのだ。全盛期が切れたのは二代前のリュパンまでだった。当時ブラドとも戦えたほどのな」

 

なるほどな。先代ジャンヌダルクと共闘したってのは先代リュパンだということか。

 

…つながったな。

理子さんが何故そこまでアリアに付き纏い力を求めるのか。

 

ジャンヌさんは氷が解け温くなったジュースに超能力で氷を作り出し冷やしていた。

俺は頭の中にあったブラド攻略への突破口となる手助けを求めることにした。

 

「ジャンヌさんもこの作戦に参加してくれませんか」

 

俺は一声声をかける。

ジャンヌさんは驚いたような表情を浮かべる

 

「ジャンヌさんイ・ウーで理子さんと仲良かったんでしょ?それなら協力を要請してもいいかな?」

 

俺はなるべく下手に出るように提案するがジャンヌさんは消沈した顔をして頭を下げる

 

「私には無理だ。実は今私たち超能力者は力が安定していない。私は氷を操る能力を持っているが今ではこのように冷やすための氷くらいしか作りだせないのだ。今の私がお前たちについて行っても邪魔になるだけだ。だから、済まない」

 

それはそうとも限らないんじゃないか?俺はそう言葉をかけようとしたがジャンヌさんの表情を見た時俺は言葉を呑んだ。

彼女は苦しそうな表情をしている。

本当に自分が役に立てないのが悔しいと思っているのだろう。

もしここでそれは違うとか言っても逆に傷つけるだけだ。

俺は何の言葉を発するかを考え行動へと移した。

 

「わかった。ごめん変なこと言って」

 

そう言って俺は席を立ち伝票を手にする

 

「けど、僕はジャンヌさんはいい人だと思うよ。」

 

驚きの表情を浮かべる

 

「理子さんを本当に大切だと思っているから関わろうとしない。それはとても屈辱的で最も賢い行動。自分の意思を捨ててまで友達を守ろうとするその心はとても清らかで美しいと思う。だから自分を卑下しないでほしいな」

 

俺はそう声をかけてレジへと向かい清算するとファミレスを出る。

一言多かったかなと思ったが俺は気持ちを切り替え町へと繰り出すのだった。

 

 




43弾終わりました
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第44弾 潜入開始準備

時間が足らずちょっと短いです。
次回が多分多いかも


今日はついに潜入捜査の日だ。

 

潜入任務

 

その詳細は現在ブラドが所持している別荘にハウスキーパとして潜入しその本来の目的理子さんの宝物を奪い返すこと。

しかし、今はブラドは別荘に居らずその隙に任務を遂行するということだ。

俺はさんさんと照りつける太陽をさえぎるように手をかざす。

夏場に差し掛かる少し蒸し暑い中俺の手は少し汗ばんでいる。

公共道路をしかと歩く俺はだれにも見向きされず普通に歩みを進めている。

いや、確かに目立ちたくないけどさ見向きされないのもどうよ?

そして俺は目的地である駅のホームまで向かう。

そこにはすでにキンジとアリアが宿泊用の鞄を持ち時間を待っている。

 

ああ、嫌だなあ。出会いたくないなあ。

 

しかし、俺の葛藤をよそに相手の方から俺を目視した。

が、

 

「あれ?」

 

目をそらされた。

というかこちらを認識していない。

俺、そんなに変わったのか…

その場に立つもこのままだと変わらないので俺はキンジ達に話しかけた。

 

「キンジ、アリア待たせたな」

 

俺は声をかける。

しかし、その声はいつもの俺の声ではなく女性特有の高めの声だった。

声をかけた後キンジ達が反応をして振り返る。

しかし、その表情は信じられないものを見ているように驚愕の表情を浮かべている。

…それもそうだろう。

今の俺の容姿は薄手のジーパンに薄緑のカーディガンで身を包んでいる。

胸にはパッドも装備済みだ。

さらに髪も腰まで届くほど長い。

属に言う夏使用だ。女性用の。

 

「あ、アンタまさか…白野なの?」

 

「笑うなよ…」

 

アリアは俺の姿を見ると爆笑された。

ぐうう…変な依頼さえなかったらこんなことなかったのに…

俺はキンジに苦笑いを浮かべると顔を赤くさせていた。

 

あはははは、ぶっ殺すぞキンジ。

 

俺が軽く殺気をぶつけるがキンジは気付いた様子はない。

ノーマルキンジはいいやつなのか?俺は自分の考えに疑問を持ったがもう考えないようにした。

 

ところで俺は時間ぎりぎりに着いたのだが理子さんはまだなのか。

時間が少し過ぎたころ理子さんの声が聞こえた

 

「ヤッホー!お待たせ!」

 

俺は振り返って理子さんを見る。

へえ、確か変装をしてくるって言っていたけどめちゃくちゃ美人さんになってんじゃん。

 

「いやあ、初めてしろ君の女装姿見たけどいいね~」

 

「う、嬉しくねぇー…。…それより理子さんその変装美人だな」

 

俺は理子さんへの感想を述べる。

というか、俺の現状を触れられたくなかったからだが。

そこで俺は異変に気づく。

 

「り、理子…何で、その顔なんだよ…」

 

キンジが理子さんの顔を見て驚きに顔を染めている。

 

「キンジ。知り合いの顔なのか?」

 

「あ、ああ」

 

「くふ、理子ブラドに顔割れちゃっているからね。もし防犯カメラに見つかったら後々面倒だからこの顔に変装したんだよ」

 

まあ、もし戦うとなったら協力はするがな。

しかし、今は別に気になることがある

 

「だったらほかの顔になれ!何でその顔なんだ!」

 

キンジの動揺っぷりだとよほど大切な人物みたいだな…

 

「カナちゃんはあたしの知っている中で一番の美人だから。それに、カナちゃんはキー君の大切な人だもんね。だからこの顔で応援しようと思ったの。怒った?」

 

「一々ガキの悪戯に腹を立てるほどガキじゃない。…さっさと行くぞ」

 

「心の奥じゃ喜んでいるくせにぃ」

 

キンジが無言で改札に歩いていく

 

「な、何?急にどうしたのよキンジ?理子誰なのよそれ!」

 

「まあまあ、アリア。キンジも男なんだから過去に恋人ぐらいいてもおかしくないだろ」

 

「こ、恋!」

 

アリアがぼんと赤くなったのを笑いながら

 

「ま、冗談は置いといて友達だろ多分」

 

俺はカナという人物に心当たりがある。

一応昔にキンジの過去を調べたことがあった。

その時にその名前を聞いたことがある。

が、俺はこれ以上考えるのは無粋だと思い思考を止める。

理子さんがこちらを呼ぶように手を振っている。

ついでに俺は聞きたいことがあったので理子さんの元まで歩みを進める。

 

「理子さんちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

「ん?どうしたの~?」

 

「理子さんあなたは一体…」

 

「あー!早くいかないと電車に遅れるー!急ぐぞー!」

 

そらされたな。

まあ、今後も聞く機会があるだろ

キンジ達を引っ張り改札へと入っていく理子さんを見る。

俺はそのあとに続くように長い髪をかきわけながらついて行くのだった。

ああ、なにか変な癖がつきそうだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

電車に揺られること数十分目的地へと着いた。

改札を通り『紅明館』へと進む。

道の途中でアリアがキンジに理子さんの変装について問いただしていたが俺は特に関わらないようにした。

俺って昔から人に嘘をついたとしても一瞬でばれてしまうし。

キンジからはお前もうカジノとか行くなよとか言われたし…。

俺そんな嘘つくの下手か?確かに変なテンションになるけれど。

そんなこんなで『紅明館』へと着く

 

…これは偶然かな?

この場所へと着いた瞬間天候が悪くなり黒い雲が空を染めている。

しかも屋敷には様々なバラが咲いている。しかし、それは状況も相まってその全てが不気味に咲き乱れている。

そしてその屋敷は俺たちに恐怖を与えるような外観をしている。

ああ、何か不幸なことが起こりそう。

 

そのままインターフォンを押す。

開いた屋敷の扉の人物を見ると

 

(あれ?この潜入任務終わりじゃね?)

 

「い、いやぁ…これは…」

 

その人物は我が部偵校の臨時教師小夜鳴先生だった

 




44弾終わりました。
シオウさん、rassyuさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第45弾 潜入開始

前回のあとがきで今回は長いと言いましたがぶっちゃけいつも通りです。



「は、初めまして…本日面会を予定していたものです。今日からそちらで家事をお手伝いさせていただくハウスキーパー三名を連れてきました。」

 

おいおい、理子さん口が引き攣っているぞ。

まあ、それもそうかも知れない。

というか、これは失敗にはならないのか?

 

「い、いやぁ…これは予想外のことになりましたね…」

 

そう、まさかのこの館の管理人が我が武偵校の臨時講師小夜鳴先生だったのである。

いや…逆に考えれば大丈夫か?小夜鳴先生は一応俺たちとは面識がある。

それならそこまでポカしなければ変に勘付かれないかもしれない。

俺たちは今屋敷の中を歩いて広間へと向かっている。

というか、この家の主相当趣味が悪いな…

館に入ると狼と槍…いや串のような紋様の旗がかけられている。

そのほかにも中々趣味の悪い装飾がなされている。

あのAUOもなかなかだが金ピカだったぶん変に悪いともいいづらい?のか?

まあ、この恐怖を与えるような光景の一番の被害者はアリアだな。

さっきからぶるぶると震えているし

そして広間に着くと

 

「いやぁ、武偵校の生徒さんがバイトとは。まあ、正直な話簡単な仕事しかありませんので誰でもいいとはいえ見知った人物だと少し恥ずかしいですね。」

 

そう言うと右手をかざして席に着くように促してくる。

よかった。右手はしっかりと治っているみたいだな。

アリアたちがソファに着席する

 

「あなたもどうぞ」

 

そう言って俺に語りかけてくる。

そうっすか…レディーファーストっすか…

まあ、これでいいんですけどね…

俺は複雑な心境を隠し営業スマイルで答える

 

「ありがとうございます」

 

そう言って俺は促された席に座る

一応俺はキンジ達とは無関係な設定なので取り繕っておくか

 

「あの…小夜鳴さんはキンジさんたちとはお知り合いなのですか?」

 

いつもの俺の声ではなく女性特有の高めの声で質問をする

 

「ええ、彼女たちは私が武偵校で講師をしている時の生徒なのですよ」

 

「へえ、そうなんですか!き、キンジさんたちはとてもきょ!きょ、教養深い方たちですのでそ、それはあああ、あなたの教育のおかげかもしれませんねっ!」

 

これはユキから学んだ男を喜ばせる方法の一つだ。

まあ、男は褒められて悪い気はしないからな。

どうだ!俺の完璧なポーカーフェイスによってお前たちの評価も上げておいたぞ!

俺はガッツポーズをしながらキンジ達の方を振り向くが

 

「…」

 

な、なんだよ…自然な流れで嘘つけたろ…

 

「そんなことはありませんよ!武偵校の生徒はみんないい子たちですから」

 

ほら~気付いていないでしょ!

俺はドヤ顔で周りを見る。

訝しそうな目で見てくるアリア。

訝しそうな目で見るが少し頬を赤くしているキンジ。

 

キンジまじで締め上げるぞ。

 

アリアは展開を作るかのように話しかける

 

「さ、小夜鳴先生こんなに大きな屋敷に住んでいるのですね。びっくりしました」

 

「本当は私の家じゃないんですけどね。私は時々ここの研究施設を借りることがありましていつのまにか管理人のような立場になってしまっていたんです。ただ、私は研究に没頭してしまう癖がありますからね。その間に不審者に入られたりしたら、後でトラブルになっちゃいますから……むしろ、ハウスキーパーさんが武偵なのは良いことかもしれませんね」

 

「私も驚いております。まさか偶然、学校の先生と生徒だったなんて」

 

さすがの理子さんも想定外か……

まあ、それもそうだろうな。

理子さんがそれに気づいていたらまた別の対策を考えていただろう。

 

「ご主人様がお戻りになられたら、ちょっとした話の種になりますね。まあ、この2人の契約期間中にお戻りになられればの…話ですが」

 

理子さんがさりげなくブラドが帰ってくるのか聞いてくる。

 

「いや、彼は今とても遠くにおりまして。しばらく、帰ってこないみたいなんです」

 

そうか……帰ってこないのか……

安心したようなキンジを横目に俺は逆に残念に思う。

まあ、いないならいないでいいのだがな。

戦うのなら一応策は考えてある。

 

「ご主人は……お忙しい方なのですか?」

 

「それが実は、お恥ずかしながら詳しくは知らないんです。私と彼はとても親密なのですが直接話したことが無いものでして」

 

親密なのに話したことがない?

それは親密と言えるのか?

しかし、小夜鳴先生が嘘をついている表情もしていないし本当のことを話していることは疑いようはないし…

 

「ところで…えっと…」

 

俺の方を向き何かを話そうとしているが何か詰まっている。

ああ、そう言えば俺の名前言っていないな。

 

「あ、私は波岸白乃と申します」

 

「ああ、すいません波岸さん」

 

小夜鳴にいきなり声をかけられても慌てずに穏やかな笑みを浮かべて言った。

ユキ直伝の親しみやすい感覚で話しかける

 

「あなたも武偵高の生徒さんですか?私の授業では見た記憶がないんですが……」

 

「実家の都合で人材派遣会社で働かせて頂いています。私は武偵じゃありませんので警備ではお役にたてませんが家事では精一杯奉公させて頂きたいと思っています」

 

と好印象なんだが……はやく、終われこの生活と心の中で俺は思うのだった。

 

 

 

 

 

 

別動隊の理子がさり、俺達は2階に自分達を部屋をあてがわれた。

 

「すみませんねぇ。この館の伝統といいますかルールで、ハウスキーパーさんは男女共に制服を着ることになってるんです。昔、仕立てられた制服がそれぞれの部屋にあってサイズも色々ありますから、選んで着てくださいね。仕事については前のハウスキーパーさんたちが簡単な資料を台所に置いておきましたから……それを読んで適当にやっちゃってください」

 

あは、と好感度の高い笑顔で小夜鳴先生が言った。

 

「で、申し訳ないのですが私は研究で多忙でして……地下の研究室に引き籠り気味の生活をしてるんです。ですから、みなさんと遊んだりする時間はあまり取れないんです。ほんと、すみませんねぇ」

 

別にそこまで謝らなくても…一応自分の家なんだから

 

「暇な時はそうですねぇー……あ、そこの遊戯室にビリヤード台があるんですよ。それで遊んでていいですよ。誰も使ってないからラシャもほとんど新品なんです。それじゃあ早速ですが、失礼します。夕食の時間になったら教えてくださいね」

 

そう言いながら彼は地下の研究室にとじ込もってしまった。

 

「そんじゃま、働くか」

 

「そ、そうね」

 

「ええ、そうしましょう」

 

念のため女の言葉になりきって俺たちはそれぞれの自室に入る。

 

クローゼットを開くと執事服とメイド服が並んでる。

とりあえず、沢山ある中から古めかしいデザインの露出が少ないメイド服を取り出す。

胸が強調された奴を着たらばれるからな。

胸は小さめのメイド服だがこれは事前につけていたシリコンの胸パッドでいい感じに隠せるようだ。

…速くこれが終われば着ることはないのだが

さわり心地も本物に似てるらしいが試す気はない。

俺は落胆しながら外へと出るのだった。

何故か外ではアリアがキンジにとび蹴りしていたが特に関わりたくもなかったため一人仕事へと取り組むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

よし、今日の仕事は終わりっと。

散々だったが大体の仕事は覚えることができた。

俺達三人は一階から上、二階と庭に至るまで調査はしてきた。

そして理子さんからの依頼物である物はこの屋敷の地下にある。

そこの調査はユキに任せてある。

あいつは潜入のエキスパートなので一番厳重であるユキに調査を頼んだ。

最初は厳重な地下の調査にだけ集中してほしかったので俺たちと一緒に入らなかったが管理人が関係者だったらユキの能力がばれているのでもしもの時には疑われるしな。

まあ、俺は気付かれることもなく潜入できている。

…俺はしっかり嘘をついているのだがキンジたちからは絶対にこれからは嘘をつかないほうがいいと言われた。

まったく…俺の嘘はだれにもばれないというのに…

俺はベットに倒れる。

ああ、なんだか余計に疲れる…

別働隊である理子さんへの連絡もあるしまだ眠ることはできない。

けど、変に気を回しすぎて眠たいな…

俺は自分の意思とは関係なしに眠りに就くのだった。

 




45弾終わりました。
明日は投稿できず月曜日の投稿になりそうです。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第46弾 潜入報告会

ぎりぎり投稿本当すいません。
っていうかアウトですね。



 

 

長い夢を見た

 

 

 

 

 

それはある尋問の光景

 

 

 

 

 

 

巨体の獣人が金髪の少女に暴行をふるっている。

 

 

 

 

 

 

泣きわめく少女の光景

 

 

 

 

 

 

俺はそれを見たことが無いが

 

 

 

 

 

 

 

俺の知っている少女の心の叫び声と似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚める

 

そこは見慣れた天井ではなく古い館の少しさびれた天井が俺の目に映る。

ああ、そう言えば潜入任務の疲れで眠ってしまったのか。

目は覚めるが頭が少し働かない。

だからか

俺の部屋に人が入ってきていることに気づかなかったのは

 

「は~く~の~く~ん?」

 

そこには何故か怒っているユキの姿が

 

あれっ?何で怒っているの?

 

ユキは怒っている理由を示すために時計を指さす。

 

それは深夜でも遅い時間

 

そこで思い出した

 

「あ…報告会…」

 

そう、今日は初日でもあるので報告会があった。

それを忘れていたということは

 

「ああ…怒るのもあたりまえだよなぁ」

 

「はあ…まったく。私は別にいいけど明日はアリアに風穴食らわされるかも知れないからね」

 

ぐっ!…まあ、仕方ないか

 

「一応私が白野君に経過を報告するよう言ってきたから」

 

「す、すまん」

 

ユキは隣にあった椅子に座り佇まいを直すと話し出す。

 

「まずはこの家のことに関する報告。屋敷と庭に関してはキンジ君が軽く調べておいて特に変なところはなかったと」

 

「変な所って…もう少し具体的な報告はないのか…?」

 

「まあ、初日だから仕方ないでしょ」

 

「…それもそうだけど」

 

「それで、次は私からの報告。私は一応地下の全体を調べてきた。理子ちゃんの依頼品がある宝物庫も地下にあるけどそこへと行くだけでも死角がないほどの監視カメラがある。

中には見た限り赤外線センサーと感圧式のセンサーもある。扉に入るだけでも指紋認証がいるし、宝物庫自体も厚さ2メートル近くのコンクリートで囲まれていて静かに潜入することも厳しいよ」

 

「…俺にはそんな正確な情報を一日で調べ上げるユキの方法が最大の謎なのだが」

 

監視カメラが死角もないほど張り巡らされているのに見つかってないのも不思議だ…

 

「そして今この家にいる人は、私たちを除いてただ一人小夜鳴先生。あの時言った通り先生は研究室に引き籠ってほとんど外には出ないけど、宝物庫が研究室に隣接している分昼の潜入は厳しいと思う。行動パターンをもう少し時間をかけて調べればければならない」

 

この家には本当に小夜鳴先生しかいないのか?

まあ、ハウスキーパーぐらいしかこの家に通わないし、ブラドもいないからそれが普通?なのか。

 

「理子ちゃんに今後も報告していつ仕掛けるのか今後も討論していくって言っていた。」

 

なるほどな。

それなら最終日くらいに仕掛けるかもしれないな。

なるべく情報を集めないと。

俺は明日に備えるため眠ろうとするがその時違和感を感じ俺は声をかける

 

「それで、ユキ」

 

「はい?」

 

「ユキはどこで寝るんだ?」

 

「え?ここだけど」

 

「ダメダメ!せめてアリアのところで寝なさい!」

 

「い、いやぁ…それがねえ…」

 

答えづらそうな声で答える

 

「だってアリアはこの家に来た時点でビビっていたし今入って行ったら絶対勘違いして風穴開けられるでしょ。だったら効率的に考えて白野君の部屋で寝たほうがいいだろうって」

 

ここでキンジの名前が出てこなかったことに突っ込んではならない。

 

「それもそうだが……………はあ、わかったよ」

 

俺は諦めの声を出す。

ほかに行かせるところもないしここは妥協しておく

 

「それなら、ほら」

 

俺はベッドを開ける

しかし、ユキは不思議そうな顔をしている。

 

「あれ?どうしたの?」

 

「ユキはこっちのベッドで寝てくれ俺はソファで寝るなりするから」

 

俺の返答に驚き申し訳なさそうにするユキ

 

「そ、それはまずいよ!ただでさえ白野君は私の主人なのに護衛である私にいいところで寝させたりとか!それに今回のメインは白野君たちなんだよ!それなのに私が…」

 

「いいんだよ。もう俺はユキの主人ではないし、たとえ俺たちがメインだとしてもMVPはユキなんだ。俺たちの作戦の要であるユキが体調を崩したりするのは困るしな。それに…」

 

「そ、それに…?」

 

「…いや、何でもない。取りあえずベッドは譲るよ」

 

答えを濁してやり過ごすがユキは気に食わなかったようだ。

その後何かと詰め寄ってくるユキを宥めながらその日を終わらせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日見事にアリアに風穴をあけられそうになるも何とか逃れその後の調査を続けた。

それから数日が経った頃

 

「今日は雷が騒がしいな…」

 

家事を終え一段落した俺は窓の外を見やりそう呟いた。

風雨が吹き荒れる外を見て俺はウィッグである長髪を右手でかきわける。

 

(そう言えばアリアって雷苦手だったよな。)

 

そんな考えのまま俺は遊戯室の前を通ろうとすると少し開いた扉の中から声が聞こえてきた。

俺は一体何なのかと思いながら中を見やると

 

「オイラの遠吠えは雷を遠ざけるんだー!ヴォ―!」

 

「す、すごい!本当に遠ざかって行く!」

 

そこにはビリヤード台の影でこの前ゲーセンで勝ちとった人形を使いまるで人形劇をするように操っているキンジとそれをキラキラとした目で見ているアリアがいた。

き、キンジ…お前の裏声何かかわいいな…

 

しかし、これはいいいじり材料になりそうだ…

アリアがキンジから人形を奪い抱きついている。

ああ、また人形に死刑宣告が…

キンジはアリアが鎮まったことで満足したのか嘆息をして周りを見ると

 

「…」

 

俺に気づいたキンジが固まっている。

俺は少しだけ笑みを浮かべ

 

「オイラの遠吠えは…」

 

「まて白野ー!」

 

キンジが飛び出してくるが俺はすぐさまその場から立ち去る。

そのあと秘密にするために今度飯を奢らせる約束を付けその事件を記憶の奥底へと補完するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからさらに数日が過ぎた。

この潜入も中盤を過ぎ今日は中間報告の日である。

俺はこの日まで一緒に過ごしてきたユキと共に特殊携帯を使い連絡をつなげる。

 

「皆聞こえる?」

 

「ああ、聞こえている」

 

答えるキンジ

 

「聞こえているわ。理子、あなたはどう?」

 

「うっうー!トリプルオッケー!はいっそれじゃあ中間報告ヨロ!」

 

り、理子さんテンション高いな…夜型なのか?

そこから報告会が行われる。

依頼物が情報通り宝物庫の中に厳重に保管されているということ。

小夜鳴先生もいつも研究室にこもっていて取りに行くタイミングが無いということ。

そこで『誘いだし』という技術を使って小夜鳴先生を呼び出しその隙に盗み出すということだった。

そこまで報告すると同時ユキが携帯に顔を近付ける

今俺たちは音漏れを防ぐため毛布を頭にかぶって話をしている。

携帯は俺が持っているためそこにユキが近づいてくるとなると

 

(ち、近い…!)

 

必然的にユキの顔がさらに近くなる。

ただでさえ同じ毛布にいるのでユキの香りが感じられるのにさらに近づいたことでそれはもうすごかった。

潜入するのに邪魔になるからと言って匂いは出さないようにしていると言っていたがその独特に感じられる甘い香りに俺は内心動揺した。

しかし、ユキはそんなことはお構いなしに話を続ける。

 

「あの宝物庫さらに厳重になっているよ。赤外線センサーの量もさらに多くなっていて温度センサーまで付いている。扉も指紋認証のほかに虹彩センサーも取りつけられていたよ」

 

報告を終えるとユキは身を後ずらせる。

俺は動揺を落ち着かせようと一つ深呼吸をすると話を続ける。

 

「正面突破は無理だ。一応例のあれを作って置いて正解だったみたいだ。」

 

その言葉に理子さんは同調をする

 

「そうだねー!このままのペースだったら最終日までには間にあうんでしょ?」

 

「ああ、そうだな。じゃあ手筈通りことを進めるってことで」

 

そして、連絡を終え携帯を閉じる。

 

「誘い出しってことは白野君がするんでしょ?それなら録画でもして保存しておかないとねー」

 

そんな戯言を抜かすユキにチョップを決め俺はソファに倒れる。

 

…先ほどの理子さんの声確かに夜型なのだろうけど俺にはなんとなく焦っているように思えた。

これからは大事な場面になる。

俺は気を引き締めると同時今休めるときに休むため目を閉じ意識を手放すのだった。

 




46弾終わりました。
シオウさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第47弾 潜入作戦実行

これからの話の流れ的にハーレムとは少し行かないかもしれないのでタグを少し改編と追加をしておきました。


 

それから数日が過ぎた。

現在は夜の10時、外には月明りが差し込んでくる。

 

広い食堂に長い机その上座に一人小夜鳴先生だけが席についている。

その後ろには従者のように俺たちが並んで立っている。

まあ、実際に従者としての仕事をしているのだが

 

「山形牛の炭火串焼き、今日は柚子胡椒和えです」

 

キンジが俺のつくった料理を出している。

最初はアリアが作るということだったのだが、どうもアリアが料理を作ると全てが爆発四散するみたいなのだ。

まあ、爆発四散して食べられないくらいいいのだが…あの時は腹の中に入って爆発したようなものだったからなぁ…

しみじみと感じる恐怖を溜息と共に吐きだす。

まあ、一応オムライスだけは食べられるだけにはなったようだがどうやらその必要はなかったみたいだ。

串焼き肉

そう、小夜鳴先生は手ごろな肉料理しか注文してこなかったのである。

調味料も特に制限はせず、にんにくは苦手だからそれだけは使わないでとだけ言われたくらいだ。

それでも料理なのでアリアが作ると爆発四散してしまうので俺が作っている。

もう一人料理ができるユキもこの場に出るわけにはいかないし、キンジはほとんど自炊したことない。

なので、料理に関しては俺がするしかないということだ。

そこら辺は栄養的な感覚で心配になるのだが…

まあ、俺たちはただのバイトなので突っかかりはしないが。

 

小夜鳴先生が選んだレコードの音が夜の空に流れていく。

その音を聞きながら食後のワインを飲んでいる

するとアリアが暇を持て余したのか窓の外を見た。

外には沢山の薔薇が咲き乱れている。

そこでアリアは嘆くように呟いた

 

「フィーブッコロス」

 

ん?

その言葉は前に聞いたことがある。

そう言えば、あの狼の襲撃のときに小夜鳴先生呟いていた言葉だ。

確かに気にはなったけど特に調べてないんだよな。

英語ではなさそうだが…

 

「驚きましたね…語学が得意なのですねアリアさんは」

 

小夜鳴先生が驚いたように声を上げる

 

「昔ヨーロッパで武偵をやっていましたから必要だったんです。先生こそルーマニア語を御存じなのですか?」

 

「この館の主人がルーマニア出身なのですよ。私たちはルーマニア語でやり取りをしているんです」

 

そう言った先生はアリアに興味を持ったように

 

「神埼さんは何ヶ国語を話せるのですか?」

 

「えっと、17ヶ国語です」

 

「フィーブッコロス!素晴らしい!もしや、波岸さんも喋られるのですか?」

 

どうやら俺も何かと知的に見えたようで話を振ってくる

 

「いいえ。私は日本語と英語だけです。すいません、プログラム言語なら大体分かるのですけどね」

 

英語に関してはプログラム関係でほとんど知り尽くしたからな。

文法は少し微妙だけど。

 

「いえいえいえ!それでも素晴らしいですよ!最近は情報科社会ですしプログラムができる人は珍しいですからね。えっと…遠山君は一体どれくらい喋られますか?」

 

 

「日本語だけです…」

 

劣等感を覚えたのか小さな声で答えるキンジ。

キンジ…せめて英語だけでも覚えたほうがいいぞ。

 

「しかし、神埼さんはぴったりですね」

 

「?」

 

「あの庭の薔薇は私が品種改良したもので17種類の薔薇の長所を集めた優良種なのです。まだ名前が無かったのですが…アリアっというのはどうでしょう?」

 

いきなり薔薇に自分の名前を付けられたことにびっくりした様子のアリア

 

「フィーブッコロス。アリア…いい名前です。神崎さんのおかげでいい名前が付けられました。」

 

ワインを飲んでほろ酔い状態なのかふわふわとした調子でしゃべる小夜鳴先生。

おい、キンジ地味に殺気を飛ばしているぞ。

まあ、キンジにとって面白くない状況なんだな。

それよりも俺は小夜鳴先生を観察してみていくつか思うことができた。

彼は何かを隠している。まるで先生の根幹を覆すような何かを。

そして、アリアを見るその目。

まるで欲しているおもちゃを見るような目だ。

俺は何かと警戒を解かない方がいいかもしれないと内心気を引き締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして作戦決行日である潜入最終日となった。

なんとか例のあれも作ることができたし後俺がすることは小夜鳴先生の足止めだけだ。

現在時刻は夕方の五時前。後一時間もすれば俺たちはこの家から出ていくことになる。

その一時間で何とか終わらせるのだ。

 

「キンジ頼んだぞ」

 

「おう、任せとけ」

 

俺は普段通りとは言いたくもないがメイド服をキンジは執事服ではなくまるで強襲するかのような黒の一式装備へと着替えている。

潜入役はキンジ一人だけ俺とアリアは誘い出し役理子さんは俺たちのサポートでユキはキンジのサポートだ。

 

「確かに俺は時間を稼ぐよう頑張るけどあまり時間を稼げないかもしれないぞ。小夜鳴先生を何とか呼び出すことはできたけど先生も結構忙しそうにしているからすぐに戻るのかも知れない」

 

「それなら最大でどれくらいだ?」

 

「稼げて十分から十五分くらいだな」

 

俺の言葉にキンジが苦い顔をする。

すまんが話を伸ばそうにもあの先生は謎すぎる。

趣味も特に知らないし知っていることはせいぜい庭にある薔薇くらいだ。

まあ、呼び出した理由が薔薇の紹介だからそれで何とか話を伸ばせたらいいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。神崎さん、波岸さん」

 

研究室から出てきた小夜鳴先生

ラストミッション最後の気の引き締めどころだ。

 

「いいえ、お忙しいところを大変申し訳ございません。最後の時間はご一緒に過ごせてとてもうれしいです」

 

…うん。これ男が男に言うセリフじゃないなこれ。

まあ、今は女だからここだけでも気があるように見せたほうがいいしな。

 

「構いませんよ。あまり、時間はとれませんがそれまでならば」

 

ちっ、この先生意外と鈍感なのか?まったく、これほどのアタックをしかけながら何の気もないとかキンジくらいだと思っていたが…。

 

そして俺たちは庭に向かって歩き出す。

その瞬間俺の耳につけていた通信機が音を出した

 

「しろ君、アリア。キー君たちが動き出した。」

 

理子さんの声が俺の耳に響いてくる。

キンジは俺たちがいた遊戯室のビリヤード台の下に宝物庫へと通じる穴をつくった。何とあの遊戯室の真下が宝物庫へとつながっていたのである。俺たちは初日の深夜からコツコツその穴を作り今日やっと地下まで通じる道を作った。そしてその宝物庫へと蝙蝠のように潜入しそこからお宝を奪い去るのが今回の作戦である。

今、キンジは理子さんとユキのサポートで作戦を決行しているだろう。

 

「……のように改良したのがこの薔薇。アリアなんです」

 

「素晴らしいです。こんな美しい薔薇をつくられるなんてやっぱり先生は素晴らしいですね」

 

取りあえず褒めまくる。

人間褒められて悪い気はしないからな。

小夜鳴先生が調子に乗れば着々と時間を延ばせるかもしれない。

 

それから数分が経った。

なんとか話を引き延ばしてもう少しで十分くらいか。

これなら後数分は…

 

そこで予想外のことが起きた。

 

「あ…」

 

俺の頬に雨粒が当たる。

何と雨が降ってきたのだ。

今朝からあまりいい天気ではなかったけどここで降ってくるとは。

 

「おや?雨のようですね」

 

小夜鳴先生が空を見上げてそう呟いた。

まずいぞ…

 

「雨も降ってきましたしもうそろそろ戻りましょうか。楽しかったですよ神崎さん、波岸さん」

 

屋敷に戻り始める小夜鳴先生を見て俺たちは焦った。

メイド服にしかけておいた小型の集音器に小声で話しかける。

もちろん通信相手は理子さんだ。

 

『アリア、しろ君。まだ、キー君たちは時間がかかる。もう少し時間を引き延ばして。』

 

理子さんの焦ったような声にアリアも焦った声で

 

「さ、小夜鳴先生」

 

「なんです?」

 

「あ…いえなんでもないですけど…えっと」

 

「…はい?」

 

「いい天気ですね」

 

「…雨降っていますけど」

 

「えっ!あ、え、えっと…アタシ雨好きなんですよ!あはは!」

 

駄目だ。

アリアには任せられない。動揺しすぎだ。

ここは俺のポーカーフェイスに任せろ!

 

『しろ君は駄目。アリアもしろ君も同じ馬鹿正直なんだから疑われるよ。なんとか嘘をつかないくらいで小夜鳴先生を足止めして。私は集中するためにキー君につきっきりになるから』

 

何と!俺がアリアと同レベルだと!

まあ、こんなことアリアの前で言ったら殺されるが。

ぶつっと言う音が鳴り通信機から音が消える。

しかし、そこは依頼人である理子さんからのお願いだ。

そこはうそをつかない方法で何とか足止めしなければ…

 

しかし、どうする?

このままでは確実に小夜鳴先生が戻りこの作戦が失敗になってしまう。

嘘もつかず足止めをする方法…あ、ある。

しかし、その作戦を実行するからには俺の命の危険が付きまとってしまう。

けどこのままでは…

…仕方ない。ここは勝負に出る!

 

俺は電子手帳から礼装である『守り刀』を取り出す。

狙いは

 

(すまん!アリア!)

 

そして『hack(16)』のコードキャストをほとんど魔力を落とした状態でアリアに放った。

威力を落としたので攻撃力はほとんどなくその代わり麻痺の効果はそのままにしておいた。

人間程度であれば数分は痺れているはずだ。

小夜鳴先生に放たなかったのは怪しまれないようにするためである。

案の定アリアに攻撃は当たりその場に不自然な感じで倒れる。

 

「ど、どうしたのですか!アリアさん!」

 

小夜鳴先生が急いで近寄ってくる。

まあ、変な感じに倒れたからな。

アリアは白眼を向いて倒れている。ああ、これは殺されるかもな…

しかし、ここは強制的に武偵憲章10条を発動させてなんとか行動を起こす。

 

「ああ!アリア!い、いつもの持病の痺れが!」

 

いつもではないが痺れてはいる。

一応嘘はついていない。

 

「そ、そうなんですか!」

 

「すいません!先生はアリアを動かさないようにしてください!私は急いで屋敷に戻って薬を持ってきます!」

 

そして俺は急いでその場を立ち去る。

しかし、先生の視界から外れたとたん俺は庭の様子をうかがう。

先生はアリアに声をかけ続けている。

まあ、あの麻痺は数分で解けるから薬を取りに行かなくてもいい。

タイミングを見計らって変に勘くぐられないよう時間をかけて戻るのだ。

そのくらいの時間を稼げばなんとか…

 

それから数分。

先生が心配したように周りを見回している。

そろそろ戻ったほうがよさそうだな。

飛び出ようとしたところで耳につけていた通信機からまた声が聞こえた。

 

『無事に作戦は終了したよ。さすがしろ君!もう戻ってもいいよ!』

 

ほっ…よかった。

けど結構速かったな。キンジがヒステリアモードにでもなったのか?

しかし、今は急いで戻らないと。

俺は止めた足をまた進める。

 

「大丈夫ですか!」

 

俺は小夜鳴先生からアリアを受け取りまるで薬を与えるように口に手を運ぶ。

 

「うっ、ううん…」

 

「よかった…。間に合ったようですね…」

 

小夜鳴先生は本当に心配したように息を吐き出す。

 

「アリア。少しの間目を開けないでおとなしくしてくれ」

 

俺はアリアに聞こえるくらいの小声で話しかける。

アリアも少し驚いたようだが事態を見たうえで乗っかってくれたようだ。

 

「先生。すいませんがこれからアリアの体を温めるためにお風呂に連れて行きますので…」

 

「…ええ、わかりました。」

 

小夜鳴先生も納得したようで俺の申し出を受け取った。

俺は早足で屋敷へと向かう。

俺の部屋へと着いた時にアリアを地面に立たせる。

少しふらふらとしたが無事のようだ。

 

「アリア。濡れたからお風呂に入って温まってきて。私は外に出ているから」

 

そう言って声をかける。

俺は振り返り外へ出ようと歩き出そうと…

 

「ちょっと待ちなさい」

 

絶対零度の声が俺の耳に届く

 

「…えっと、どうかしましたか…?」

 

「アンタでしょ?私を気絶させたの」

 

俺は否定しようとしたが有無を言わせないアリアの表情が俺を威圧した。

俺は逡巡する暇もなく答える。

 

「はい俺がやりました」

 

「風穴ぁー!」

 

「ちょっと待って!俺の話を聞いてー!」

 

ガバメントの連射が俺の背中に飛んでくる。

言い訳をする暇もなくこの屋敷を出るまでアリアに追いまわされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の Side キンジ

 

 

「くそ!間に合わない!」

 

伸ばした針金が揺れている

さっき理子からの通信でもうすぐ小夜鳴が戻ってくると言っていた。

このままでは間に合わない。

俺は内心あきらめたが

 

「キンジ君急いで!」

 

後ろからユキが滑り下りてきた。

俺は少しビビって手元を揺らす。

後少しで赤外線にあたりそうになるがユキが俺の両手を抑えることで揺れを止める。

 

そこで不測の事態が起きた

確かにユキは俺の両手を止めた。

しかし、その止め方は俺の両側から回すように手を出し両手で俺の両手を押さえている。

それはつまり

 

(ちょっ!こ、この体制は…!)

 

これはつまり俺は後ろから抱きつかれたような体制になっている。

さらに体を密着させているので平均サイズのユキの胸が俺の背中に…

 

 

意識が冴える。

ああ、すまんな白野。お前の従者のおかげでなってしまったみたいだ。

しかし、なったおかげであの依頼物…ロザリオまでの道筋は全て見えた。

 

「ありがとうユキ。けどもう大丈夫だ。上に戻ってサポートをよろしく頼む」

 

俺の異様に冷静な声がユキを動かしたようで上へと戻って行く

 

『キー君急いで!しろ君がなんとか時間を稼いで…』

 

「大丈夫だ理子。数秒で終わらす」

 

『キー君まさかなって…』

 

「任せろ」

 

針金を数秒のうちに伸ばしていきロザリオを回収する。

後は、すぐに撤収を…

 

 

そこで俺は衝撃が走った。

衝撃と言っても精神的な衝撃だ。

一体何が…俺は周りを見回す。

そこで俺はある一点に目がとまる。

それはわずか数センチのビー玉のようなもの。

しかし、それは虹色に輝いている。

俺は何故か逡巡しなかった。

そのビー玉も針金を伸ばし数秒ののちそれを取ると針金を片づけ上へと戻るのだった。

そのあと白野の女声がこだましていたが何かあったのだろうか?

 

 




47弾終わりました
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第48弾 潜入の結果

前日は投稿できなくてすいません。
投稿が本当安定しない…
たまにこういったことがありますがその時は本当にすいません。


そのあとキンジとなんとか合流した。

アリアは作戦のためだということでグーパン何回かで納得してくれた。

キンジ達は武偵校の制服俺はワイシャツにスーツのズボンに着替えた。

そのあと小夜鳴先生とのあいさつもそこそこに済ませ俺たちは駅へと向かった。

 

「ところで例のあれはとれたのか?」

 

「ああ、しっかりととれた」

 

そう言って軽く胸を叩くキンジ。

よかった。それでもしとれていなかったら見る目もなかったぞ…

 

潜入作戦も終わり俺たちの集合場所はランドマークタワーの屋上となった。

まあ、盗んだものを渡すから誰かの目につくところはまずいからな。

俺はウィッグだけを外しておく。

服装は仕方ないがせめてウィッグだけでも外しておいておかなければ俺のプライドがズタボロになってしまう。ウィッグを外しただけでも女装ではないと思わないとな…

 

エレベーターで昇って行く。

一応緊急時の対策は考えておいた。俺はそれを…いや、使うことはないと願っておいた方がいいか。

 

屋上へ着く。

扉が開くと夜の屋上から冷たい風が吹き込んでくる。

エレベーターから出るとフェンスで囲まれたヘリポートが頭上すぐに見えた。

ああ、こりゃ落ちたら死ぬな。

取りあえずヘリポートの淵を歩き進む。

角を曲がるとそこに淡い金髪が揺れていた。

 

「きーくぅーん!しーろくーん!こっちこっちー!」

 

理子さんが金髪をはためかせてこちらに走り寄ってきてキンジに抱きついた。

 

「やっぱりキー君たちのチームは最高だよ!理子にできないことを平然とやってのける!そこに痺れる!憧れるぅ!」

 

理子さんは大きな二重の瞳をキラキラさせてキンジを見上げている。

あれ?あんなにでかいリボンしてたっけ?

 

「キンジさっさとあげちゃって。そいつが上機嫌だとなんだかむかつく。」

 

「おーおーアリアンや。チームメイトを取られてジェラシーですかな?わかります。」

 

理子さんはアリアを挑発するかのように流し見ている。

ああ…けど今アリアに騒がれたら抑えるのは俺なんだよなあ…

 

暴れ出したアリアを抑えるとキンジが理子さんをひきはがすとキンジが懐から依頼品であるロザリオを取り出し理子さんへと渡す。

 

「ほら、これだろ」

 

「乙!乙!らんらんるー!」

 

理子さんは跳んだりわしゃわしゃしたりと大忙しのようだ。

素早くロザリオをキンジからもらうとチェーンを首に回してそれを付ける。

おい、理子さんスカートの中見えてますよ!キンジが目をそらしているし!

 

…理子さんは今でも上機嫌にしている。

今がチャンスなのかも知れない。例のあれを聞く

俺が口を開こうと…

 

「理子。喜ぶのはそれくらいにして約束はちゃんと守るのよ」

 

…タイミングを見失った。

アリアが急いでいるように話しかけたことで伝えるタイミングを失った。

 

「アリアはほーんとわかってない!…ねぇ、キー君」

 

抱きついたと思ったら離れてキンジに話しかける理子さん

手を後ろに回してもう一度キンジに近づくと大きなリボンがついた頭をキンジに近付ける

 

「お礼はちゃんとあげる。はい、キー君このリボンとってください」

 

ん?何だ?

キンジがリボンを解く…何とそのまま理子さんはキンジにキスをした!

 

「ふわぁ…!人がキスするところ初めて見たかも!」

 

ユキは的外れに適当なこと言っている。

意外にピュアなユキのことは無視して状況を把握することにする。

理子さんにキスされたことでヒステリアモードになったキンジ。

アリアは顔を真っ赤にしてあわあわとしている。

ああ、納得。

 

「うふっ!」

 

唇を離した理子さんがさらにペロッとキンジの鼻をなめる

 

「り……りりりりり理子おッ!?な、なな、ななな何やってんのよいきなり!」

 

「ごめんねぇーキーくぅーん、しろ君。理子、悪い子なのぉ。この十字架さえ戻ってくれば理子的にはもう欲しいカードは揃っちゃったんだぁ」

 

にい、とあのハイジャックの時俺と戦った時の目で笑った。

 

「もう一度言おう悪い子だ、理子約束は全部ウソだった、って事だね。だけど……俺は理子を許すよ女性のウソは罪にならないものだからね」

 

相変わらずお前、ヒステリアモードの時は背筋かかゆくなるセリフを平然と言うよな……

 

まあ、話は大体わかった。

 

「とはいえ俺のご主人様は理子を許してはくれないだろうけどね」

 

俺はアリアに一言

 

「アリア」

 

その一言でアリアは正気を取り戻したのかハッとして犬歯をむき出しにしてにらむ

 

「ま、まあこうなる予感はしていたけどね!念のため防弾制服を着ておいてよかったわ!キンジ!白野!ユキ!やるわよ!」

 

「くふふっ。そう。それでいいんだよアリア。理子のシナリオにムダはないの。アリア達を使って十字架を取り戻して4人を倒す。キーくんも頑張ってね?せっかく理子が、初めてのキスを使ってまでお膳立てしてあげたんだから」

 

「先に抜いてあげる、オルメスここはシマの外、その方がやりやすいでしょ?」

 

理子さんはスカートからワルサーを2丁取り出した。

 

「へえ、気が利くじゃない。これで正当防衛になるわ」

 

アリアもガバメント2丁を抜く

 

「なあ、理子さん」

 

その間に割り込むように俺は立った。

 

「何?しろ君?最後だから聞いてあげるよ」

 

変なタイミングだが聞くタイミングはこの瞬間しかないと思ったので俺はこのタイミングで聞くことにした。

 

「ジャンヌさんから聞いたんだお前がアリアを狙うのはブラドに成長を証明させるためだろ?」

 

「ジャンヌから聞いたんだ?それで?」

 

「なら、一つ提案がある」

 

俺はにやりと笑いアリアとキンジ、理子を見回しながら

 

「みんなでブラドを逮捕しようぜ」

 

理子が目を見開いた。

だが、すぐに目を落とすと

 

「それは無理だよ」

 

「何故だ?」

 

俺の少し意地悪な質問に理子さんは声のトーンをさらに落として喋る

 

「ブラドには絶対に勝てない」

 

「それはありえない」

 

俺はすぐさま否定する。

まあ、これはジャンヌさんとほとんど同じ切り返しだがまあ言うことは同じだしな

理子さんは驚いたように見上げて俺を見ている。

俺は続けて

 

「ブラドってのはイ・ウーのナンバー2なんだろ?それならナンバー1の奴に勝てなかったってことだ。なら俺たちでも勝つ可能性はあるってことだ」

 

「無理だって!ブラドには私の曾お爺さまでも勝てなかった!それでも無理なら逃げるしかない!」

 

ああ、これは完全に諦めている。

強さにねじ伏せられた弱者は強者に勝つことはできないと考えている。

しかし、それは違う。

弱さを認めることは大切だ。しかし、そこで止まり、逃げることは現状の回避にはならない。せいぜい先延ばし。結局はただのジリ貧になる。

今の理子さんはただ怯えて現実を見ていないだけ。

弱者は一人だけならちっぽけな力かも知れない。

それでもその弱者が束になってかかれば…それでも敵わないなら策をめぐらせれば強者を覆すことができるのだ。

少なくとも、過去の俺はそうやって強者に勝ってきた。

 

理子さんは顔を俯かせて脱力している。

これは…一発入れたほうがいいかも知れない。

これから俺は厳しい言葉を投げかけるがそれは全て真実。

ここは理子さんの強さに賭けるか。

俺は大きく息を吸い

 

「逃げてんじゃねえぞ!理子!!!」

 

俺の大音声が夜の空に響き渡る。

キンジ達は驚いたように俺を見る。

続いて理子さんも驚いたように俺を見つめるが諦めの顔は抜けていない。

 

「お前が諦めているから逃げることしかできない!逃げるだけじゃ何も変えられない。時には立ち向かわないといけない時がある!立ち向かうこともできない理子は本当の弱者だ!」

 

「そ…」

 

有無を言わせない。

俺は続ける

 

「諦めているから勝つこともできない!欲することもできない!一人では無理だと思うから無理なんだ!」

 

「う…」

 

理子さんは涙目になっていく。

確かに厳しい言葉かも知れない。

でも、理子さんを変えるなら今しかない。

 

「でも理子は一人じゃない!」

 

その言葉に理子さんはさらに驚いたように目を見開かせている。

その目はかすかに涙目になっている。

 

「確かに弱者は一人だけなら強者には勝てない!でも協力すれば強者を上回る力になるかもしれない!」

 

「そ、それは…」

 

今理子さんの心はせめぎ合っている。

多分やってみないとわからないことと無理だという感情がせめぎ合っているんだ。

俺は、厳しい声質を一転穏やかな声で

 

「理子さん。生まれ変わるなら今だ」

 

「あ…」

 

俺の声で何かを悟った表情をする理子さん

後一言か?

俺は慎重に言葉を選び投げかける

 

「理子。俺たちを頼ってくれ」

 

「!」

 

さらに俺は息を吸い

 

「信じろ!」

 

しばしの静寂。

聞こえる音は夜の屋上の風のなる音だけだ。

キンジ達はその場の状況を把握しようとしている。

理子さんは顔を俯かせている。金髪の前髪が目を覆いうまく表情が見えない。

俺は彼女を見る。大丈夫きっと立ち直ってくれるはずだ。

 

 

 

彼女が顔を上げた時は裏理子よろしく悪役な表情をしていた

 

「は!わかってんだよ!そんなことは!私だってこんな生活は飽き飽きしてんだ!」

 

…ははっ!

よかった。信じてよかったよ。

 

「お前らが協力するんだ!だったらそれに見合うくらいの実力を見せろ!」

 

またワルサーを持ち上げ挑発してくる理子さん

その行動に状況が動いたのを察したのかアリアたちも構える

 

「ま、まあ!あたしもアンタが協力するってんなら協力してやってもいいけど!」

 

あ、アリアも正直じゃないな…。

まあいい、理子さんもいい顔になった。

ここは絶対に勝って理子さんを自由にしてみせる。

俺は勢い込んで構えるが…

 

 

 

 

バチィ!

 

 

 

小さなだが確実に異様な電撃音がする。

裏理子特有の挑戦的な顔が苦痛に歪められる。

その電撃を発生させた原因

 

「……な……んで…おまえ…が…」

 

その呟きと共にその場に崩れ落ちる。

 

「!」

 

俺はその時知ってしまった。

この物語の黒幕の正体を

 

「な、何で小夜鳴先生が!」

 

その正体は現武偵校臨時講師であり『紅明館』管理人である小夜鳴であった。

 




48弾終わりました
ローレライの歌声さん、とある小説の製作者さん、シオウさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第49弾 屋上での恐怖

今回の話。ブラドはめちゃくちゃ悪い人?ですが…はい白野君の策がどんなものか楽しみにしていてください。


「な、何で小夜鳴先生が!」

 

小夜鳴が大型のスタンガンを手にこちらを見ている。

一体何故…?

一瞬俺は動揺したが先に行動を…

 

「おっと、全員動かないでくださいね」

 

「…っ!」

 

動けなかった。

小夜鳴は手に拳銃を持って照準を理子さんの後頭部に狙いを定めている。

…俺はあまり銃に興味はないがあの銃とても古いモデルだ。

変に刺激をして暴発されたらたまったものではない。

 

ん?

 

小夜鳴の後ろから二匹の犬…いやあれは狼だ。

それも近日俺が見た狼と同類の奴だ。

 

「ああ、前には出ない方がいいですよ。少しでも前に出れば襲うように教えていますから」

 

ちっ…どうやら瞬殺は無理なようだな。

近場ならいけたかもしれないがここからでは少し遠い。

コードキャストも時間がかかるから八方塞だ。

 

「まさか波岸さんが岸波君だったとは意表を突かれましたよ。しかもとても美人だったので困ったら女性として生きて行ったらいいと思いますよ」

 

「…ご意見どうも…」

 

なんだか複雑だ…。

そんなこんなしている家に狼が理子さんのワルサー二丁を器用に咥え屋上から投げ落とした。

 

「動かないでくださいね。この銃は三十年前に造られた粗悪品です。ちょっとした拍子でトリガーを押してしまうかもしれませんからね。私もこんなことでリュパン4世を失っても困るんです」

 

ブラドから聞いたのか?理子さんがリュパン4世ということを知っているのは少ないはず。

なるほど…潜入の前からばれていたのか…これは俺の失態だな、警備が厳重になったことをもっと考慮するべきだった。

 

「どういうこと?何でアンタが理子の本当の名前を知っているのよ!ま、まさか…アンタがブラドだったの!?」

 

「いいえ。私は彼ではありません。彼は今とても遠くにいるのですよ」

 

アリアはそれは本当かわからないと言った表情をしている。

なので俺は答えてやった。

 

「アリア。多分小夜鳴の言っていることは本当だ。あいつの目は嘘を言っている目じゃない。そこは信じてもいいと思う。」

 

「…。わかった。武偵憲章1条、仲間を信じ仲間を助けよ。それにアンタを疑うことはないわよ」

 

それにしてもこの短期間でこれほどまでにアリアに信用されるようになっていたのか。

少し嬉しいが今は気を引き締める。

 

「それにしても、そのブラドから理子のことも聞いて、銃も狼も借りて、そのくせ会ったことがないだなんて半月前はよくも騙してくれたわね」

 

「騙したワケではないんです。私とブラドは会えない運命にあるんですよ」

 

アリアが俺の方を見る。

その行動に対して俺は首を振る。

それに納得したのかアリアはまた小夜鳴の方をみる。

…それにしても俺は嘘発見器か何かか?

 

拳銃はいまだ理子さんの頭に付きつけられている。

なんとか…理子さえ助けたら……

小夜鳴の戦闘力はたいしたことはない。

人質さえいなければ銀狼がいても勝てる。

だが、ブラドがくれば人質と合わせてキンジ達がいても不利だ。

特攻をかける手もあるが…

 

「遠山くん。ここで君に一つ補講をしましょう」

 

は?

 

「補講?」

 

「君がこのリュパン4世と不純な遊びに耽っていて追試になったテストの補講ですよ」

 

おい、キンジお前ら何をしていたんだ…。

俺はそんな質問を息と共に呑みこみ話の続きを聞くことにする。

 

「遺伝子とは気まぐれなものです。父と母、それぞれの長所が遺伝すれば有能な子、それぞれの短所が遺伝すれば無能な子になります。そして……このリュパン4世は、その遺伝の失敗ケースのサンプルと言えます」

 

そこまで言うと、小夜鳴は倒れたままの理子の頭を蹴った。

まるで、汚物を蹴るように

 

「…おい、やめろよ」

 

ぐっと足に力をいれかけるが動けない。

俺が動くより確実にトリガーを引く動作が早いからだ。

動けないことを知ってか小夜鳴が続ける。

 

「10前、私はブラドに依頼されてリュパン4世のDNAを調べた事があります」

 

「お、お前だったのか…ブラドに下らないことを…ふ、吹き込んだのは……」

 

足元で理子がもがきながら男喋りでうめく

 

「リュパン家の血を引きながらこの子には」

 

「い…言、う、な…!お、オルメスたちには…関係…な、い…!」

 

「優秀な能力が、全く遺伝していなかったのです。遺伝学的にこの子は無能な存在だったんですよ。極めて希なことですが、そういうケースもあり得るのも遺伝です」

 

言われてた理子は俺達から顔を背けるように地面に額を押し付けた。

 

本当に聞かれたくない相手にそのことを聞かれた絶望的な表情

 

「…おい」

 

ああ、無意識に声質が低くなっているのがわかる。

不思議と俺は冷静であった。

その冷静な理由もよくわからない。

が、俺の心境はただ事ではないということは察することはできた。

 

「自分の無能さは自分が一番よく知ってるでしょう、4世さん?私はそれを科学的に証明したに過ぎません。あなたには初代リュパンのように一人で何かを盗むことができない。先代のように精鋭を率いたつもりでも…ほら、この通りです。無能とは悲しいですね。ねえ4世さん」

 

無能、4世という言葉を繰り返す小夜鳴の足元で理子は涙を溢していた。

喉の奥から絞り出すように泣いている。

小夜鳴は手元からキンジがすり替えたニセモノの十字架を取り出した。

 

「教育してあげましょう4世さん。人間は遺伝子で決まる。優秀な遺伝子を持たない人間はいくら努力を積んでもすぐ限界を迎えるのです。今のあなたのようにね」

 

小夜鳴はその場に屈み、身動きが取れない理子の胸元から引きちぎるように青い十字架を奪いとった。

そして、ニセモノの十字架を痺れのせいで何の抵抗もできずにいる理子の口に押し込む。

 

「う! んん!」

 

理子が悲鳴をあげてのぞけるが小夜鳴は楽しそうに笑いながら

 

「あなたにはそのガラクタがお似合いでしょう。あなた自身がガラクタなんですからね。ほら。しっかり口に含んでおきなさい。昔、そうしていたんでしょう?」

 

背を伸ばした小夜鳴が、がすッと理子の頭を踏みつける。

 

「うう!」

 

「い、いい加減にしなさいよ!理子をいじめて何の意味があるの!」

 

耐えかねたアリアが叫ぶ。

 

「絶望が必要なんです。彼を呼ぶにはね。彼は絶望の詩を聴いてやってくる。この十字架も、わざわざ本物を盗ませたのはこうやってこの小娘を一度喜ばせてから、より深い絶望にたたき落とすためでしてね。おかげで…いいカンジになりましたよ。遠山くん。よく見ておいてくださいよ?私は人に見られている方が掛かりがいいものでしてね」

 

なんだ?何か小夜鳴の感じが変わっていく。

 

「ウソ…だろ…?」

 

キンジが絶句している。

これは…

 

「そうです、遠山くん。これはヒステリア・サヴァン・シンドローム」

 

やはりか…

キンジ以外の家系にも持ってるやつがいたとはな

 

「ヒステリア…サヴァン?」

 

アリアが眉を寄せているがキンジも俺も何も言わない。

 

「遠山くん。岸波くん。神崎さん。倉橋さん。しばし、お別れの時間です。これで彼を呼べる。ですがその前にイ・ウーについて講義してあげましょう。この4世かジャンヌに聞いているでしょう。イ・ウーは能力を教え合う場所だと。しかしながらそれは彼女たちのように低い階梯の者達による、おままごとです。現代のイ・ウーにはブラドと私が革命を起こしたこのヒステリア・サヴァン・シンドロームのように能力を写す業をもたらしたのです」

 

「聞いたことがあるわ。イ・ウーのやつらは何か新しい方法で人の能力をコピーしてる」

 

アリアの指摘に小夜鳴は首を小さく振る

 

「方法自体は新しいものではありません。ブラドは600年も前から交配ではない方法で他者の遺伝子を写し取って進化させてきたのです……つまり、吸血で。その能力を人工化し、誰からも写し取れるようにしたのが私です。君たち高校生には難しいかもしれないので省略しますが優れた遺伝子を集めることも私の仕事になりました。先日も武偵高で遺伝子を集める予定でしたが遠山くんたちが除いていたおかけで失敗してしまいました。狼に不審な監視者がいれば襲うように教えたのがあだになりました。特にレキさんの遺伝子は惜しかった」

 

なるほどな…あれにはそんな理由が…

アリアがぎりっと歯ぎしりした

 

「ブラド。ルーマニア。吸血…そう、そういうことだったのね。どうして気づかなかったのかしら。キンジ。白野。ナンバー2の正体読めたわドラキュラ伯爵よ」

 

ああ、それは過去の経験からわかっている。

 

「ドラキュラ?それは架空のモンスターの名前じゃなかったのか?」

 

キンジが言う

 

「違うわドラキュラ・ブラドは、ワラキア…今で言うルーマニアに実在した人物の名前よ。ブカレスト武偵高で聞いたことあるの。今も生きてる、って怪談話つきでね」

 

「正解です。よくご存じでしたね。四人ともまもなくそのブラド公に拝謁できるんですよ。楽しみでしょう?」

 

「デタラメだ!そもそも兄さんの力をコピーしたのならどうして理子を苦しめられる!」

 

ヒステリアモードは女性を守るものだ。確かにおかしい

 

「いい質問ですね。講師は生徒の質問に答えるのが仕事です。順を追って説明しましょう…むかーしむかし…」

 

どこまでもふざけやがって…

 

「この世には吸血で自分の遺伝子を上書きして進化する生物吸血鬼がいました。無計画だったらほとんどの吸血鬼は滅びましたが、人間の血を偏食していた一体ブラドは人間の知性を得て、計画的に多様な生物の吸血を行い強固な個体となって存在しました。しかし、ブラドは知性を保つために人間の吸血を継続する必要学生ありました。結果、ブラドには人間の遺伝子が上書きしてされ続けブラドはとうとう私と言う人間の殻に隠されることになりました」

 

ま、まさか…

そ、そうか!だからあいつは嘘をついて…

 

「隠されたブラドは私が激しく興奮したとき、つまり私の脳に神経伝達物質が大量分泌された時に出現するようになっていきました。しかし永い時が流れるうち私はあらゆる刺激になれ激しくは興奮できなくなってしまったのです」

 

なるほど、俺が小夜鳴がブラドではないのかと聞いて違うと言った時嘘をついていなかったということか。

同じ人物でありながら完全に別の人格である。

それならこれまでの質問で嘘を言っているわけではない。

つまり、俺が間違えていたわけではなかったということか。

 

「なるほどな。それでキンジの兄さんのヒステリアか?」

 

にい、と笑った小夜鳴は踏みつけていた理子の頭をもうひとけりした。

 

「……」

 

理子の口からニセモノの十字架が地面に落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ かれ が きたぞ」

 

 

 

 

 

 

圧倒的存在感。

しかし、俺はこいつには負けられない。

こいつはただでさえ守るべきものを汚したのだ。

そんな奴に負けるわけにはいかない!

俺はこの後の戦いのために気を引き締めるのだった。

 

 




49弾終わりました。
パラノイヤ(偽)さん、島田響奏さん、ローレライの歌声さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第50弾 理子救出

あ、暑いですね…
この季節でいやなことは汗でキーボードがヌメッとすることです。


 

「へ、変身っ…!」

 

アリアが絶句した声をあげる。

今や小夜鳴は俺たちの前で洒落たスーツが紙みたいに破け何とその下から出てきた肌は赤褐色に変色し熊のように筋肉が盛り上がっていく。

文字通り変身だ。

その筋肉が纏わりついた巨大な手で理子さんを鷲掴みしている。

が、最後まで待つ必要はない。隙ができたなら行動するまで!

 

「行くぞ!」

 

俺は声をかける。

その声でキンジ達も動き出す

 

「ぐぅおん!」

 

俺たちが動いたため狼が動き出した。

 

「狼は俺に任せてくれ!」

 

キンジが声を上げる

それと同時に狼は襲いかかってきた。

が、しかと反応は出来たので体術で狼を受け流し後をキンジに任せる。

そのまま俺はブラドへと向かう。

その間に電子手帳を展開し礼装である『空気打ち/一の太刀』を取り出す。

しかし、そこで俺はミスをした。

このままブラドに当てたら確実に理子さんにも被害が出る。

しかし、ブラドももう変身を終えるくらいなのか落ち着いてきている。

礼装を変える時間が無い。

 

ならばと俺は戦法を変えた。

なるべく魔力は風圧へと変換をする。

そのためた衝撃波を放った。

 

 

俺の後ろ斜め下に。

コンクリートである地面がへこむ。

だが、風圧へと変えた威力は中々の力を持ち俺を急速に吹き飛ばした。

その先にはブラドの姿が。

俺は威力を高めるため回転を加えそのまま蹴りを放つ!

 

見事理子さんを持っている肘の内側へと俺の左足の蹴りが決まるとゴキッ!バキバキ!と音をたて関節が外れ砕ける。

指に力が入らなくなったのか理子さんから手を離すブラド。

俺は今だ残っているスピードで右足を出しブラドの側等部へとまた右足の蹴りを放つ。

その威力にブラドは押され後ろにある電波塔まで吹き飛ばした。

俺は空中で理子さんを抱え地面へと降り立つ。

 

「ぐっ…!」

 

しかし、そのまま膝をつく。

あまりの風速で飛び出したためブラドの間接を砕くと同時に左足を痛めたようだ。

俺は礼装である『鳳凰のマフラー』を取り出し『heal(16)』のコードキャストを先に理子さんにかける。

理子さんの傷が治ったのを確認した後自分にも使う。

俺の傷が治ったのを確認しキンジ達の方を見る。

狼は全て痙攣し倒れていた。

後で聞くと脊椎と胸椎の間その上部をかすめて瞬間的に圧迫、その作用で麻痺させたらしい。

そんなすごい神技ができるのかと聞くと先にレキさんがやったのを見て真似したようだ。

すごいな…レキさん…

その時電波塔からガラガラと音がした。

ちっ!さすがに効いていないか。

 

「…おい。そこの男今のは痛かったぞ」

 

「…不死身なくせして痛いとか言うなよ…」

 

腕の中で理子さんが恐怖したようで身を縮こまらせている。

 

「初めましてだな」

 

その声は小夜鳴のような優しめの声ではなく獣のような低く轟くような声をしている。

 

「おれたちゃ、頭ん中でやり取りするんでよ…話は小夜鳴から聞いてる。分かるか?ブラドだよ、今の俺は」

 

さらにその目は獲物を睨みつけるような金色だ。

 

「…完全な別人格。さすがに俺も誤算だったよ。同じであって同じじゃない存在だったとはな」

 

「?どういうこと?」

 

「擬態みたいなものだろ?」

 

ヒステリアモードのキンジがアリアにわかりやすいように補足を加える。

 

「ぎたい?」

 

「アリアの好きな動物番組でもたまに出てくるだろう。例えばトラカミキリはハチを装って自然界で有利に生きようとするが、その際は単に姿を真似るだけじゃなく動作までハチそっくりにせわしなく動く」

 

「う、うん。それは見たことある」

 

「ブラド・小夜鳴の変身はそれの吸血鬼・人間バージョンなんだ。あいつは元々、あの姿をした生き物だったんだよ。それが進化の家庭で人間に擬態して生きるようになった。その擬態は高度で、姿だけじゃなく…小夜鳴という人格まで作り出した。厳密には違うようだが二重人格みたいな状態で吸血鬼の姿と人格を内側に隠してたんだ」

 

ヒステリアモードになってるとアリアは気づいたらしくちょっと慌てたようにブラドを見て

 

「人間という役になりきってたのね。まるで人間社会への潜入捜査だわ」

 

「まあ、そんなとことだ」

 

詳しく説明する気はないらしい。

ブラドはその目を俺たち…正確には俺の腕にいる理子を見る。

 

「おぅ4世久しぶりだな。イ・ウー以来か?」

 

理子はぎゅっと俺の服を掴んでくる。

震えている。

 

「4世そういえば、お前は知らなかったんだよな俺が人間の姿になれることを」

 

「ようはお前、最初から理子さんを騙したんだろ?アリアを倒したら理子さんを解放するって約束を」

 

「お前は犬とした約束を守るのか?ゲゥゥウアババババババハハハ!」

 

理子さんが悔し涙を流す。

 

「檻に戻れ繁殖用牝犬。少しは放し飼いにしてみるのも面白ぇかと思ったんだがな。結局お前は自分の無能を証明しただけだった。ホームズには負ける。盗みの手際も悪い。弱ぇ上で馬鹿で救いようがねぇ。パリで闘ったアルセーヌの曾孫とは思えねえほどだ。だが、お前が優良種であることは違いはない。交配しだいでは品種改良されたいい5世が作れてそらいい血がとれるだろうよ。」

 

俺の耳をブラドの品のない笑い声が通って行く。

そこで俺は声を抑えることができなかった。

 

「だからなんだよ」

 

「あ?」

 

「だからなんだって言っているんだ」

 

「ああ?聞こえなかったのか?4世はただのできそこないだ。だから俺がいいものへと…」

 

「人の価値を勝手に決めるんじゃねえよ!」

 

俺の大声が夜の空にこだまする。

 

「人はそんな決められたもので価値が付くものじゃない!そんなもので人の可能性を潰すな!」

 

「はっ!人の価値なんて最初から決められたものだ!可能性なんてあるわけがない!」

 

「可能性ならある!それもこの世にいる全員にだ。もちろん理子さんにだってある。ただそれを見逃しているだけなんだ!確かに人の可能性は低いかもしれない。でも仲間と力を合わせれば無限大の力が広がる!それを信じればたとえ世界を渡った冒険家だろうが中国最強の拳法家だろうが悟りを開いた仙人にだって勝つことができる!」

 

「あ~あ?てめぇ何言ってんだ?」

 

「つまりだな…」

 

俺はまたひとつ息を吸い答えを出す

 

「お前みたいな小さいやつが勝手に人の強さに触るなってことだ!」

 

俺の声の残響が響く

ブラドは俺の叱責を聞いてイラついているようだ。

そうだ、これも言っておくか。まあ奴にはわからんが

 

「お前みたいな小さいやつよりもまだましだった奴がいたよ」

 

ブラドは何だ?といった感じで見上げている

 

「そいつは確かに汚れていた。人としても認められないことをしていた。けどな、そいつはただまっすぐ神を信仰していた。確かに許されないことをしたがただまっすぐに信じるものを付き通していた。それに比べたらお前の方のブラドはただ小さなことしかできない小物だ」

 

「…なんだか知らんがむかつくものいいじゃないか」

 

ブラドの口調は怒っている口調だ。

俺はブラドを無視して腕にいる理子さんに向けて言葉を発する

 

「理子さんはだた自由を求めているだけだ。それをお前が制限するのはおかしい。だから」

 

俺はキンジ、アリア、ユキを見て最後に理子さんを見て

 

「何か言うことがあるんじゃないか?」

 

俺の質問に理子さんは顔を赤くし一度俯く

そして弱々しい声で

 

「アリア…キンジ…ユキ…白野…」

 

「………た…す、け、て」

 

 

 

「「「言うのが遅い!」」」

 

そしてキンジ達が動き出す。

俺はまた理子さんを見て微笑み

 

「任せろ!」

 

そう…言った。

 




50弾終わりました。
シオウさん、パラノイヤ(偽)さん、恋姫夢想さん、rassyuさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第51弾 解放への戦い

ブラド編…今週中に終わらせようとしましたがもうちょっとかかりそうです。
あとブラドの戦闘は原作と大分改変をしました。すまぬブラドよお前はただの前座だ。


キンジ達がブラドに飛び出していく。

俺は少し後ろに下がり理子さんを安全な場所へと下ろす。

 

「し…ろ…君?」

 

「理子さんはそこで見ていて」

 

「しろ君!」

 

俺はまた振り向き飛び出そうとするが理子さんの呼び止める声で足が止まってしまう。

 

「どうかした?」

 

俺は不安を与えないようなるべく笑顔を向けて問い返す

 

「あ…あの…!」

 

心の底から声を出すように声を絞り出す

 

「あ、あり…がとう…」

 

俺は少し驚いた。

理子さんがここまで素直になったのは初めて見たからな

 

「ああ、だけど…その言葉はこの戦いが終わった後にも聞きたいな」

 

「そ、それと!」

 

「ん?どうした理子さん?」

 

「それと…理子さんとか他人行儀じゃなくて…あの時みたいに理子って呼んで」

 

「………わかった」

 

俺は彼女の方をしかと見て

 

「理子」

 

ただ一言告げる。

それを伝えまた俺は振り返り戦闘へと向かう。

 

 

 

戦場は荒んでいた。

ブラドの弱点についてはキンジもジャンヌさんから聞いているはず。

多分アリアにも伝えたのだろう。

放っている弾丸は目の紋様に吸い込まれて行っているが四つ目の弱点が見つからないためその傷はすぐに回復している。

ブラドは鉄塔を破壊しその一部を振るって攻撃を仕掛けているが

 

『物体断裂』

 

ユキの能力がブラドの足へと攻撃しバランスを崩している。

それの影響でこちらにはまだ被害はないが相手が不死身であるが故に攻めても攻めても好転することが無い。

 

これはあの策を使う時が来たか。

そう、俺はもしもブラドが現れた時の四つ目の弱点のいぶりだし方を考えていたのだ。

今こそそれを使う時だ。

 

俺は電子手帳からあるものを取り出す。

それをしっかりと両手で支え

 

「ブラド!こっちを見ろ!」

 

ブラドがこちらを振り向くと同時俺は銃口を向ける。

 

MP98サブマシンガン

 

この世界でもトップクラスの連射性能を持つサブマシンガンの一つを俺はブラドへと向ける。

俺はここに来る前に平賀さんにこの銃を買いそれを魔力化し電子手帳へと収納するという使い方を作り出した。

収納量に制限はあるが一応ロケットランチャーくらいなら入ると思う。

 

「なぁにぃ!」

 

その声はブラドからもキンジ達の方からも聞こえる。

まあ、だれにも言っていないからな。

 

「弱点が見つからないならばまとめて攻撃すればいい話だ!」

 

これから始まる銃撃に備えブラドは両手で顔を覆う。

そして俺はトリガーを引く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、ここで問題だ。

銃なんてほとんど触ったことのない初心者がたとえ反動が少ない銃でもマシンガンを乱射すればどうなるか?

答えは簡単である。

 

「うぉわぁ!」

 

俺は銃の発射の際の反動で銃口が上へと大幅にずれる。

トリガーを離そうにもテンパって指が離れない。

故に銃弾は夜の空に消えていく。

そして数秒。

マガジンに弾がなくなり銃口からは煙だけが出る。

 

そして場に流れる微妙な空気。

全員動くに動けず流れるのは夜の屋上の風だけだ。

 

先に行動を起こしたのはアリアだ

 

「ちょっと白野………」

 

その声に俺はドヤ顔で

 

「計画通り!」

 

 

「嘘つけ!」

 

「いや嘘じゃないって!」

 

「使えないならアタシによこしなさいって!」

 

「い、いやあ…それがねえ…全部うっちゃって…」

 

「…マガジンは?」

 

「…ありません」

 

「「「はぁああ~~~………」」」

 

周りの全員が溜息と共に落胆の態度をとる。

いや、本当に計画通りだけど…

 

しかし、ブラドは俺の行動でさらに機嫌を悪くしたようだ

 

「お前…ふざけてんのか…!」

 

「いや、ふざけては…」

 

「うるさい!お前らもまとめて吹っ飛べ!」

 

そこでブラドは胸をふくらますほど大きく息をする

あ、何か嫌な予感

 

「ワラキアの魔笛に酔え!」

 

「―!全員耳を塞げ!」

 

俺は大声でキンジ達に声をかける。

それと同時響ききわたる悲鳴のような声

 

ピィギャアアアアアィィイイイイイィィィ!!!

 

びりびりと全身が痺れる。

こ、ここまでの大声はさすがに効くぞ…

 

そしてまた場に静寂が流れる。

お、終わったか…

耳から手を離す。

うう…なんだかこの声を聞くと血の気が引くような…

 

血?

 

俺は振り返りキンジを見る。

そこにはカリスマの雰囲気はなく普通のオーラを出すキンジだった。

ヒステリアモードが解けている!

この声にはそのような作用があったのか!

これはまずいことに…

 

「いやぁああぁぁぁ!!」

 

上の方から声が聞こえてくる。

見てみると電波塔からユキが落ちてきていた。

どうも高い位置からブラドの隙を窺っていたようだが先ほどの声でバランスを崩されたようだ。

流れるように落ちてくるユキ。

俺は助けるために走り出すがその下にはキンジがいる。

通常モードでも大丈夫か?あれ。

キンジは落ちてくるユキに気づくが…

 

「うおぁあ!」

 

二人がぶつかり共に倒れる。

が、その倒れ方がまずかったのだ。

キンジが下から受け止めるように抱き締めている。

それでもまずいがさらにユキの胸がキンジの顔面に当たっている。

それが決定打となる。

 

そこでキンジの雰囲気が変わる。

ヒステリアモードになったみたいだ。

というか忙しいなそれ。

ユキはショックにより気絶しているみたいだ。

 

「…おい、キンジ」

 

「そんなに怒らないでくれ。これはたまたまだよ」

 

いや別に怒っていないんだけど。

俺はユキを起こし柱の陰に寝かせる。

まあ、ユキは屋敷の方で頑張ってくれたし後は寝ておかせてもいいだろう。

柱の陰から急いで戻る。

ブラドは先ほどの大声で少し疲れたのか肩で息をしている。

キンジ達はそれに追い打ちをかけるように銃を打っているが意味もないだろう。

だが、先ほどの策のおかげで俺は勝利を確信している。

俺はキンジ達の元へと急いで近寄ると

 

「そのままでいいから聞いてくれ」

 

「な、何よ!」

 

「あいつの倒し方がわかった。だから協力してほしい」

 

「本当にわかったの?!」

 

「ああ、先ほどのマシンガンの件からな」

 

アリアは訝しそうな目で俺を見てくる。

本当にわかったんだって…

けど、キンジは分かってくれたようだ。

 

「ああ、わかった。俺たちはどうしたらいい?」

 

「四つ目は俺が仕掛ける。お前たちは他をお願いしていいか?」

 

「…わかったわよ。けど、それはちょっと厳しいわね」

 

アリアは言動と一緒に厳しそうに声を出す

 

「さっきのブラドの声のせいで銃が一つ壊れた。キンジの銃と合わせても2丁しかないの。このままじゃひとつ足りない」

 

それは確かに困ったぞ…

方法があるのに手段がないこれでは手詰まりだ。

考えろ…!手段なら…

 

「任せて」

 

その声は上から聞こえてきた。

俺たちはヘリポートを見る。

そこには先ほどのような弱々しい表情はなく堂々とした風格の理子がいた。

 

「その一つなら策がある。」

 

一つ跳んでヘリポートから降りた理子にアリアが詰め寄る。

 

「けど、アンタの銃は捨てられたんじゃ…」

 

「うん、けどお母様がいつも隠していたところに一丁隠し持っていたからそれでいける」

 

そう言ってアリアに自分の胸を叩いて主張する。

しかし、これで準備ができた。

方法と手段が整ったのなら勝つことはできる!

俺たちはブラドを見る

 

「最後の話し合いはできたか?」

 

「…お待ちいただきどうも…」

 

どうやらブラドは負けることはないと思って待っていたようだな。

けど、それは好都合。

油断ほど狙いやすい獲物はないのだ。

 

「…最後の勧告をしてやろう。檻に戻れ4世。別にそこの男も一緒に連れてきていいぞ。そいつの能力は使えるし面白いからな。なんならお前らのいいDNAを組み合わせていい5世でも…」

 

「絶対に嫌だ!もうお前に理子の人生を操られてたまるか!」

 

…いい返事だ理子。

そこで俺は飛び出す。

それと同時電子手帳から『錆びついた古刀』と『守りの護符』を取り出し『gain_str(16)』

と『gain_con(16)』のコードキャストを重ねがけする。

魔力を使ったのでちょっと倦怠感が襲うがくらっとするだけだほとんど問題はない。

ブラドが鉄棒を横に振るう。

 

しかし、俺はよけない。

そのまま鉄棒に右足で斧刃脚を放つ。

防御力と攻撃力を上げた俺の右足は折れることなく鉄棒に振るわれる。

鉄棒は俺の足が当たった部分からぐにゃぐにゃに曲がりブラドに隙を作る。

 

「今だ!撃て!」

 

その声の後銃声が聞こえる。

後ろで撃ったのだろう。

俺は隙ができたブラドにさらに近づく。

後1メートルほどでブラドの弱点である目玉模様に全て血が噴き出す。

…すごい命中力だな今度銃の使い方でも教えてもらおうかな。

その考えも一瞬で記憶の奥底へと沈め俺は跳びあがりブラドの狼のような顎の下、そこからアッパーをするように絶招歩法を放つ。

 

 

マジカル☆八極拳はともかく八極拳の本質は内側からの破壊である。

つまりたとえ顎の下から攻撃を仕掛けたとしても内側まで衝撃が伝われば!

 

「ぉぅらぁ!」

 

「…グゥァペッ!…」

 

俺はそのまま腕を振り抜く。

コードキャストで強化された俺の右腕から放たれた衝撃は見事弱点をうちブラドの再生能力を打ち消した。

顎を砕かれたことによって悲鳴を上げることもできぬままブラドは地面に崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

ブラドは起き上がることはなかった。

それはつまり再生能力が聞いていないということ。

ということは

 

「…勝ったの?」

 

「…ああ。勝ったぞ」

 

俺は振り上げた腕を下げ振り返り答える。

 

そこでみんなの緊張は解かれたようだ。

アリアに関しては膝をついている。

俺はキンジ達に近づくと

 

「…ねえ白野。何でブラドの弱点が顔にあるってわかったの?」

 

そうアリアから質問がはいる。

俺は仕方なく説明を入れる

 

「俺が何の考えもなくマシンガンを乱射すると思ったのか?」

 

「え?!本当に考えがあったの!」

 

「お前な…」

 

俺は溜息をつく。

続きを補足するようにキンジからも声がかかる。

 

「マシンガンはおとりだったんだろ?」

 

「おっ!やっぱりキンジは分かってたんだな」

 

「…な、何?どういうこと?」

 

本当にわかっていないのか…

そのあとは俺が説明をするように声を出す

 

「マシンガンなら連射性能で押し通すこともできるからな。それなら全体的に撃てば全部に当たる。それを察したブラドは絶対に隠された部分を隠すことが分かっていたからな。そこで顔を隠したから弱点は顔にあると思ったんだ」

 

「…アンタ本当に考えていたのね」

 

「アリアお前は俺を信じているのか信じていないのかどっちなんだ…」

 

そこで笑い声がこだまする。

そちらを見ると理子が笑っていた。

そう、これで理子は本当の自由を手に入れたのだ。

その笑顔は真の喜びが感じられた。

そして笑い声を止めると理子はこちらを見て

 

「ありがとう」

 

そう言った。

ちゃんとおれのリクエストに応えてくれたみたいだな。

俺たちは苦笑する。

イメージがないからかこんなに素直に言われると困ってしまうんだなこれが

理子はやっぱり恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしてそっぽを向く。

アリアはこれ見よがしに理子に詰め寄るが見事に反撃をくらい何時ものごとく喧嘩を始める。

ああ、これが何時もの現象だなと思いこの戦いを終えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―!

異変を感じた。

俺は振り返る。

そこには理解不能の現象が起きていた。

 




51弾終わりました。
ローレライの歌声さん、ボルメテウスさん、パラノイヤ(偽)さん、朝比奈悠人さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第52弾 戦いの夜明け

時間をかけ話を仕上げましたが…ほんと蛇足感がヤバいかもしれません。
今後の話的に入れなければならない戦いなんですが…文章力がなくて本当申し訳ありません。


 

理解不能

 

いや、正確には何故といった感情が表わされる。

異変を感じて振り返る。

そこには確かにブラドが倒れていた。

 

しかし、そのブラドに異変が起きていた。

 

「グッ…ペッペパカ…!」

 

ブラドから苦しみの声が聞こえる。

その原因、そのブラドの胸が本人の意思とは関係なく大きく揺れ動いているのである。

それはまるでブラドの中に何か別のものがいてその体内で暴れているような…

 

「…ギャペァカァァァ…!!」

 

また一つブラドは苦しみの声を出すとさらに胸の動きが活発になる。

バキバキと音が聞こえる。

その胸の動きは上へと上がって行き喉を通り口もとへと行った。

 

な、何か出てくるのか…?

 

俺たちは動けなかった。

想像もつかない現象を前に動揺している。

 

変化はいきなり起きた。

 

ブラドの口から何か得体のしれないものが急速に飛来してくるではないか。

 

あまりのことに俺は反応できず右腕を突き出す。

それと同時に激痛が走った。

 

「ぐっぅ…!」

 

その何かは俺の腕に噛みついているのだ。

俺は振り払おうとはしなかった。

もし無理やり振り払おうとしたら食いちぎられるからだ。

俺は右腕を地面に下ろし安定させ

 

「キンジ!これを撃ってくれ!」

 

俺は声をかける。

キンジ達は呆然としていたがすぐに気を取り直し俺に近づく。

 

「な、なんだ…これ…」

 

俺にはそれに見覚えがあった。

が、今はこの痛みをどうにかしたかったので何も言わないでいた。

キンジがベレッダを発砲した。

 

が、

 

「なっ!」

 

銃弾が当たらなかった。

キンジは今はヒステリアモードだったはず、外すことはあり得ないぞ。

それにこの距離なら俺でも多分あてられるぞ。

俺は痛む腕を少し横にずらす。

そこにはキンジが放ったであろう弾丸が埋まっていた。

そこから導き出されること

 

「こいつには弾丸が効かない…!」

 

キンジ達は驚いていたが俺はなんとなく察しは付いた。

が、速くこの痛みから逃げ出したい一心だった。

俺は左手を振り全力で拳をぶつけた。

 

見事拳がぶつかりそれは口を開く。

俺はそれを蹴り飛ばす。

 

右手からは大量の血がどくどくとあふれだしている。

電子手帳から礼装である『鳳凰のマフラー』を取り出し『heal(16)』のコードキャストを使う。

血は衣服に付着しているが傷は綺麗に治ったようだ。

別に腕を引きちぎられてもよかったのだがそれでは軽威力のコードキャストでは足りない。せめて中威力を使うしかないのだがあまり魔力は使いたくないからな。

 

俺は蹴り飛ばした先を見る。

何かのタンクに当たったそれはこちらをうかがっているようだ。

冷静になりそれをよく観察してみる。

大きさは1メートルにも満たない四角い物体であるがまるでワニのような口を持っている。

その黒塗りのような姿は『VIPER』月の世界で見たエネミーの姿だった。

それは月の世界でも初期の方に見られたエネミーで慣れれば倒すことも余裕だった敵だった。

しかし、それはサーヴァントがいた状況だけ。

サーヴァントがいない今の状況その敵は真の敵になる。

しかも多分戦えるのは俺しかいない。

さっきのキンジの銃弾が効かず俺の攻撃が効いた。

情報量は少ないが多分月の世界に精通した俺しか攻撃が効かないのかもしれない。

 

俺は構える。

戦えるのは俺しかいない今頑張らないと

 

「皆。下がってて」

 

一つ声をかけるがアリアが食ってかかる

 

「な、何よ!アンタだけ戦う気!」

 

「仕方ないだろ。さっき見ていなかったのか?キンジの攻撃が当たらず俺の攻撃が当たった。つまり俺しか攻撃できる奴しかいないんだよ。…そんなのわからないとか言うんじゃないぞ。俺も多分アリアたちの攻撃は効かないと思っているんだ。一応俺はあれがなんなのかは知っているしな」

 

「白野…あれが何なのか知っているの?」

 

「ああ…ただの敵だよあれは」

 

そう言って俺は飛び出す。

ブラドの時に使ったコードキャストはまだ生きているのでそのまま仕掛けることにした。

エネミーも突撃してくる。

 

大丈夫だこいつはほとんど攻撃一辺倒のような攻撃を仕掛けてくる。

そう言った奴は行動が読みやすい。

そう心の中で思いこみながら攻撃をする。

 

案の上ことはうまく運べた。

攻撃を仕掛けてくるがほとんどわかりやすい攻撃で回避は余裕にできる。

先ほどは動揺してしまい回避は出来なかったが今となってはほとんど余裕ができた。

隙をついては攻撃をあてると言った行動を何度もするが今だ倒すには至っていない。

もともとサーヴァントようのエネミーだ。ただでさえ弱体化した俺の攻撃がどこまで効いているかわからんが何もしないよりはましだ。

この前の実家で俺が謎の力を使ったとか言っていたが発動条件がわからない今それに頼ることもできない。

 

 

もうすぐ十分が過ぎようとしている。

今だ戦いは続いている。途中何度かアリアたちの援護射撃などがあったが攻撃が当たらないことが証明されただけだった。

 

「まずいな…」

 

コードキャストが解けようとしている。

しかし今だ戦いが続いている状況でそれは本当にまずいのである。

魔力が切れそうなのである。

ブラド戦から続けて戦ってきたがもう魔力が切れそうなのか。

付くずく自分は弱くなったものだと感じてしまう。

今だエネミーは行動しているがその動きも鈍くなってきている。

多分もうすぐ倒せると思い勢いこんで飛び出そうと…

 

 

 

できなかった。

何かが俺の足を掴んでいるのだ。

俺は足元を見ると

 

「…グァ…ギィァ…」

 

ブラドが俺の足を掴んでいた。

弱点を全て攻撃されろくに動けないのになんて執念だ…

が俺はまだ強化されているので力を入れその拘束を解くが

 

「うおぅ!」

 

勢いこんで足を離したため少しバランスを崩す。

それが隙となった。

エネミーが死角から襲ってくる!

 

ほとんど無意識だと言っていいだろう。

俺は電子手帳から『空気打ち/二の太刀』を取り出していた。

それを振りかざして…思いっきり突き刺す。

 

開いた口に俺の礼装が突き刺さる。

そして振りかぶり思いっきり振る!

空を舞うエネミーに俺はまた礼装を振るう。

『空気打ち/二の太刀』の中威力の攻撃は見事エネミーにぶつかり木端微塵となった。

というか完全にオーバーキルじゃね…。

俺はコードキャストを振るった姿のまま魔力切れを起こしその場に倒れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side キンジ

 

「まったくこいつは」

 

俺の目の前には先ほどの戦闘で力尽き眠りについた親友がいた。

白野は現在理子の膝枕に寝かされている。

 

「しかし…あいつは何だったんだ?」

 

先ほどの大口を持つモンスターみたいなやつ見たこともない。

俺たちの攻撃も効かないのに白野の攻撃だけ効くとは一体何なのか?

得体もしれない敵なのに白野は多分その正体に気づいている。

 

考えてみれば今までもそうだったんだよな。

今まで見たこともない謎の力を持っていたり、謎の敵とも渡り合う力を持っていたり…

…いつかは話してくれるだろうか?まあ、きっと話してくれるだろうこいつは嘘をつけないからな。

 

理子はその白野を見つめ頭をなでている。

まあ、理子にとって白野は助けてくれたヒーローだからな。

きっと何か思うことでもあるのだろう。

 

理子は白野の頭をゆっくり下ろすと立ち上がり

 

「神埼・ホームズ・アリア、遠山キンジ」

 

その声は裏理子特融の高圧的な声だった。

 

「アタシはもうお前たちを下に見ない。対等なライバルとしてみなす。だから…約束は守る」

 

そう言うとビルの淵まで歩いていき

 

「Au revoiir Mes rivaux。あたし以外の外の人間に殺られたら許さないよ」

 

そう言うとビルから飛び降りた。

そのあと夜の空にパラシュートが展開し闇に消えていく姿が見えた。

 

まさかちゃんと逃走手段があるとはな。さすが理子の逃げ足だ。

 

「やられたな。これで二度目だ」

 

「ええ、まったくよ」

 

「本当にまったくだな」

 

その声は男の声だった。

白野の声ではない。では一体?

 

声の出所を見ると

 

「はあ、まったくまた面倒事を押しつけやがって…」

 

その男は30代後半ほどで黒のスーツを若干着崩している。

さっぱりとした頭髪にすらっとした表情も相まって若々しく見える。

しかし、その男のオーラは歴戦の覇者のオーラだ。

その男は軽く溜息をつくとブラドの方へと近づく。

 

「これが無限罪のブラドか…たく、獣くせぇ…」

 

「あ、アンタ誰よ!」

 

アリアが突っかかる。

 

「あ?」

 

「うっ…!」

 

強烈な殺気をぶつけられ思わず後ずさる。

 

「ああ、お前らが白野のクラスメイトか」

 

「えっ?白野?」

 

そこで予想外の名前が出る。何故白野の名前を?

 

「俺は公安0課の夏目明久。一応白野の父親やっているもんだ」

 

この人が白野の父親?!うわっまったく似てない…。

しかし、公安0ときたのか。本当に白野の周りは恵まれているな。

俺はここで公安0が来たことについて考える。

そこから導き出される答えは

 

「…なるほどな。ブラドを引き取りに来たということか」

 

「はぁ?!せっかくアタシたちが倒したブラドを横から奪う気?!」

 

「そうじゃねえよ。このことはそいつかも頼まれたんだ」

 

そう言って夏目さんは白野を指さす

 

「ブラドを引き取ってほしい。そのあとブラドにアリアの裁判でしゃべらせてくれってな」

 

…白野はこの展開を読んでいたのか?ますますあいつのことがわからんくなったぞ。

けど、それはありがたい。このままブラドをどうするかは色々と手続きがあるだろうしポンポン拍子で進むな。

 

「済まなかったな。ブラドと戦っていた時から見ていたが俺たちは出られなかった。」

 

「い、いやそれは仕方ないですよ。イ・ウーが関わっているならそれぞれ事情があるだろうし」

 

「…そう言ってくれるとありがたい」

 

あまりこういったことは苦手なのだろう。

夏目さんは頭をかきながらブラドの方へ向かう。

扉から武装した大人が数人来てブラドを囲う。

それから数十分、俺たちは端の方でその作業を見る。

夏目さんはまたこちらに近づいてくると

 

「あいつはもう俺たちに任せてくれていい。詳細は後日聞く。そいつらは病院に連れていくからお前らはもう帰れ」

 

そう言ってまた白野とユキの方を指さす。

まあ、やってくれるってならありがたいな。

けど、一応白野たちの症状も気になるしついていくが

 

「ああ、あと…」

 

夏目さんは俺たちを一瞥し

 

「白野のこと頼んだぜ」

 

その笑みは白野と似て人を安心させる笑顔だった。

その質問に対する答えは一つ

 

「任せてください。俺たちは…白野のチームメイトですから」

 

夏目さんはまた一つそうかと答え仕事に戻って行く。

 

俺は空を見上げた。

黒々とした雲は消えそこには満天の星空が浮かんでいた。

 




52弾終わりました。
恋姫夢想さん、シオウさん、ナスカ級さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第53弾 白野の考え

今回の章やっと真実が…!
後、白野君の考えなんですが若干原作と変わっています。
今後の話で何故こうなったかは書きます。
結構この物語に重要なフラグになるのかな?



 

「はあぁぁぁ………疲れた」

 

俺は今秋葉原の町にいる。

まあ、この前の依頼の延長のようなものだ。

けど徹夜は本当に勘弁だぞ…

 

 

ブラドに関する事件から数日が過ぎた。

あの事件の後俺は病院に駆け込まれすぐさま検査された。

まあ、魔力切れで倒れたようなものだしすぐに退院するかと思ったが…

 

それからがしんどかった。

退院直後国のお偉いさん方がきてこの事件のことは一切喋らないという条件の脅迫を受けたり必要書類を書いたりなど散々な日となった。

そのあとも入院していた時に依頼品の話があったのに反応もできなかったりしたので謝罪参りなど動き回ったりしたので疲労感が溜まりに溜まっているのだ。

それに最近はストレスもたまる。

アリアはブラドの裁判で出払っているので特に問題はないがあの日以来ちゃんと学校に来ている理子は何故か無視をする。無視というのも中々精神に来るものだが最近はユキがストレスの元凶だ。入院中もあいつは何かと俺に悪戯ばかりするのだ。何とも理子にしか構っていないから私にも構えーだとか。

確かに潜入期間中は忙しさと女装というなれないことで疲れに疲れたからあまり構ってやれなかったからか入院中に限って構いに構ってきた。

魔力切れの疲労感も相まって日に日に憔悴していったのだ。

そこで俺を助けてくれたのは

 

「おう、お前ら大丈夫k…どうした白野…?」

 

見事明久さんにつかまったユキは何と奈良まで強制送還されたらしい。

どうやら俺の状態を知った晴海さんが呼び出したとか。

…うん。まあ、仕方ないな。

 

唯一の癒しは明久さんが持ってきた俺の好物の一つである餡蜜だけだった。

だがそのあとは謝罪もあり現在もその謝罪参りの帰りである。

俺は夏に近くなり暑くなった空を見上げて思った。

 

癒しがほしい。

 

ああ、ちょっとした癒しでもいいから平穏がほしい…!

 

そんな現実逃避もむなしく時は進む。

俺はかすかに汗をかいた顔を上に向け気持ちを切り替えるために目を閉じて精神統一を…

 

ピタッと俺の頬に涼しくも乾いた布がついた感覚がした。

 

その布をあててきた手を振り払わない程度に素早くその人物を見るとそれは

 

「あ…すいません。ご迷惑でしたか?」

 

その白い手が引っ込められる。

真っ白のワンピースに身を包みその頭には麦わら帽子をかぶっている。

その姿はまるで漫画のように…いやそれ以上にきらびやかで…俺はついこう表現してしまった。

 

「…天使様!」

 

「へぇえっ!」

 

思わずその手を俺は掴んでしまった。

それは俺が唯一癒しだと思える存在だった。

 

「あれ?どうしてここにいるんですか彩音さん?」

 

「あっ、あの!話しますので…」

 

そう言って俺の掴んだ手を見る

 

「あ!ご、ごめん!」

 

俺はつい掴んでしまった手を離す。

って言うかこれは普通にセクハラになる…いや!これは不可抗力だから!

 

「すいません。急に掴んだりして」

 

「い、いえ!こちらも不注意でした」

 

そう言って俺たちは頭を下げあう。そんな感じで数分すると

 

「え…えっとどうしてここに?」

 

このままでは同じことを繰り返すので俺は流れを変えるために質問をする。

 

「あー…実は今日お気に入りの漫画の発売日だったんです。白野さんは?」

 

そう言って書店の袋を見せてくる彩音さん

 

「俺はちょっと仕事で失敗しちゃってその謝罪参りに…」

 

そこで俺はちょっと失敗したと思った。

まあ、久しぶりに会った人が疲れている顔を見せられたらいい顔しないだろう。

 

「えっと…お疲れですか?」

 

心配そうに俺の顔を見上げてくる。

ち、近い!めっちゃいい匂いが…!

俺の動揺を別の意味で勘違いしたのか彩音さんは俺の手を掴み

 

「行きましょう!」

 

「へ?」

 

「遊びに行きましょう!」

 

俺はさらなる動揺の声も出せぬまま彩音さんに引っ張られていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

結論から言おう。

 

めちゃくちゃ恥ずかしい。

 

俺は今現在十六夜彩音さんに手を引かれてどこかに連れていかれている。

彼女の手はひんやりと冷たいけど女の子特有のやわらかさが…ってそうじゃなくて!

 

彩音さんはだれが見ようと美人であると宣言する。

つまり俺が手を引かれている間も道行く人たちも彩音さんを見ているのだ。

その中の男の視線は殺意と恐怖を感じたぞ…

俺はその視線を振り払うように彩音さんに話題を振る

 

「えっと…その格好似合っていますね!」

 

そこで手を離してくれた方が俺の精神衛生上よかったんだが案の定そのまま話し出す彩音さん。いや、まあいいんだけどねやわらかいし。

 

「えへへ…そうですか?こういったのは漫画ぐらいしかしないだろうと思ってコスプレ感覚だったんだけどそう言ってくれてうれしいよ」

 

少し恥ずかしそうに微笑む彼女はまさに俺が求めていた癒しだった。

 

というか久しぶりに悪意のない笑顔を見た。

獣の笑い声や俺にとっての悪意のある笑いだったり本当安心できる笑顔が見られなかった。

しかし、今彼女の笑顔は全く悪意のない善意の笑顔だ。

それだけで救われた感じだがそこで一緒に遊びに行こうと言われ限界突破しそうだ。

 

彼女が連れ込んだのはテラス付きのおしゃれな喫茶店だった。

都会だと言うのに緑で囲まれたその喫茶店はまさに彩音さんの雰囲気にぴったりだ。

俺と彩音さんは互いにいつくか注文しその間他愛もない会話などをしていた。

意外にオタク気質だった彩音さんは俺でも知っているアニメのセリフなどを交えながら注文品が来た後も楽しく会話を進めていた。

そのあとは俺の武偵についての話になった。

何でも俺の相談に付き合ってくれるというのだ。

さすがにそれは迷惑だろうと思ったが話したら楽になるかもよと言われなんとなく話してしまった。

ほとんど俺の愚痴みたいになったが…なんか楽になった。

溜まっていた不満を吐き出すとここまで楽になるのか。

 

「…だったからちょっと精神的に来ちゃってね…」

 

「…そうかぁ…それは大変だったね」

 

そこで彩音さんは一口コーヒーを飲む。

 

「あなたは満足しているの?」

 

「…まあ、しないと言ったら嘘になるな。あいつらは俺の大切な奴らだから。そんな奴らだから迷惑をかけたり掛けられるのは信用できる存在だと思っているんだ」

 

「…そう…か」

 

彩音さんはカップを置くと顔を少し俯かせている。

美しい金髪がさらさらとその相貌を隠している。

髪をかきわけ顔を上げたその顔は確かに微笑んでいた…微笑んでいたが…

 

「私も…白野君にとっての大切な人なのかな?」

 

「それはそうだけど」

 

俺はその質問に即答する。

…さっきまでの考えは考えないようにしよう。きっと何かの間違いだ。

 

「それなら少し意地悪な質問をしよう」

 

人差し指をピンっと立てて質問を続ける。

 

「白野君はある仲間協力して強敵と戦っています。けどその途中でその仲間が一人重傷を負ってしまいました。すぐに病院に連れて行かないと死んでしまいます。そこにある強力な人物がきます。その人は一人でも余裕でその強敵を倒せます。けどその人物が言いました。こいつを倒すには誰か一人の命を犠牲にしなければならない。あなたは一体誰の命を掛けられる?」

 

「そんなことは…」

 

「あ、そんなことにはさせないってのはナシね。絶対に誰か一人を犠牲にしないと助からないとなったら」

 

ふむ、まあ俺ならコードキャストで助けることができるがここは心理的な質問だろうしそこは除外して考えてみる。というか考えることでもないな。

 

「それなら俺の命をかけるな」

 

俺の言葉に驚いた表情を見せる彩音さん。だってそうだろう?

 

「だって大切な仲間が死にかけているんだぞ。助けたいと思うのは当り前じゃないか」

 

「…それがたとえ自分の命を失うことになっても?」

 

その質問に俺はしかと答える

 

「ああ、助けるからには命をかける。けど…」

 

一つ息をため

 

「そう簡単に命を投げ打ちにはしない。たとえ仕方のないことだとしても…なんとか生き残って見せる!」

 

彩音さんは俺の言葉を真剣に受け取っていた。

そして一つ嘆息を放つと

 

「白野君なら確かに助けてくれるだろうね。…まあ、あまり深く考える必要はないと思うよ」

 

そして微笑んでくれたその表情は妖艶でまぶしかった。

 

「…もうこんな時間か」

 

時計を見ると中々の時間が経っていた。

もうそろそろ帰って夕飯の支度をしないと

 

「すいません。もうそろそろ帰らないと…」

 

「あ…そうですか。引きとめてしまってすいません」

 

「い、いえ!楽しい時間でした!ありがとうございます」

 

駅まで送って行こうとしたが彩音さんは待ち合わせがいますのでということなのでそこで別れることにした。

これも何かの縁だということでメアドとか交換はしたが…まあ、たまには掛けさせてもらおうかな。癒しがほしい時に。

そのあとの普通じゃない視線には気づくことなく白野は寮へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 彩音

 

「…ふふっ!」

 

楽しかったなぁ。

話をしていても面白かったし彼特有の人を安心させてくれる笑みも見せてくれた

それに…

 

大切な人だって言ってくれた。

 

私以外にもいるのは少し癪だけどそれはこの際だから今は妥協する。

それに今日は彼の魂のまっすぐさも見れた。

他人のために命をかける。普通はそんな人間はいない。

だが彼の目は嘘をついていないことを決定づけるようなまっすぐな目だった。

 

一体どんなことがあればあそこまでまっすぐで光輝く魂になるのだろうか。

ああ…知りたい。彼の全てを知りたい。

今回もたまたま出会ったが連絡手段を手に入れた。

今後ももっと…

 

「待たせたわね」

 

「…ちっ」

 

おっといけない少し殺気が漏れてしまった。

警戒されるが…これはお前が悪い。なんせ私の妄想の邪魔をしたんだから。

…まあいい。

さっさと終わらせてまた妄想にはびこりたい

 

「…さっさと話して」

 

「…今回からあの子に仕掛けると決まった。その時にあの人も絡むかもしれないけど…その時は手を出さないで頂戴」

 

警戒心丸出しの声で問われるが答えは決まっている

 

「ええ。いいわよ別に」

 

「えっ?」

 

確かに少し前の私…今日彼にあっていなかったら容認してはいなかっただろう。

だが今日彼の価値観を知りまた見守ることにした。

 

「ああ、後今回は海上に出るらしいから見ることはできない…」

 

ヤヴァイまた殺気を…

…仕方ない。今回だけの最大限の譲歩だ。

多分私の予想では教授の思い通りにはいかないと思うし。

そうなれば今後はほとんど抑止力はなくなり自由に動ける。

今後を考えれば今は耐える時だ。

だから

 

「わかったから帰れ。」

 

殺気は出さない。が言葉は冷酷にだ。

相手も私の気持ちを察してかすぐに消え去った。

はあ…まあ今日は彼の思い出だけで我慢しましょう。

 

時間が経っているはずなのに最初に注文したコーヒーは湯気が立っていた。

 




53弾終わりました。
白野君から漂う弱EMIYA臭
後ユキの強制送還は次のオリジナル章への伏線なだけです。
恋姫夢想さん、コッペPANさん、パラノイヤ(偽)さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第54弾 感情の螺旋

暑いですね

すいません。熱中症気味でパソコンにも向かえない状況でした。
明日はちょっと厳しいかもです。



あの後はパソコンの前で寝ているキンジを起こして夕食を食べた後は普通に就寝。

今朝まで特に何もない日々を過ごしていた。

何もなかった。つまり俺の求めていた平穏は今朝『まで』で終わっていた。

まあ…平穏は続かないと言ったことだ。

 

 

 

 

 

 

放課後俺は強襲科の棟へと向かっていた。

今日は特に何もすることもなかったため戦妹であるライカの特訓の指導へと向かおうとしていた。

というのも少し気になっていることがある。

昨晩からキンジの様子がおかしいのだ。

何か思いつめている様子でいるし今朝に関しては自ら一緒に登校しようと話している始末だった。

いや、今考えてみると何かとアリアを見守る視線が多かった気がする。

あの目線は守るための視線だ。これから何かアリアの身に起きるかもしれないという目線が…

俺は何も言われていないがキンジが何か不安なら仲間として守るのは当然である。

なので、キンジが授業で出られない今俺が守るために強襲科へと向かったんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「覚悟ぉぉおおおおおおお!!!」」」」」

 

「な、何で…」

 

現在俺は強襲科1年全員と戦っている。

右から来たナイフをいなして後頭部へ蹴りを放ち周りの一年を巻き込ませながら吹き飛ばす。もちろん手加減を加えてだ。

何でも蘭豹が俺を倒すことができたらランクを上げると言われたらしい。

ただの迷惑である。

だがまあ俺の特訓にもなるので手加減はしないけど

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

ようやく倒し終わり軽く嘆息をつく。

まあ前回の反省を生かしてそこそこ強くなったみたいだがまだまだ連携が甘いようだな。

そのあたりは今後頑張ってもらいたいところだ。

 

「あ、白野先輩お疲れ様です」

 

そう言って俺の戦妹であるライカがタオルを持ってくる

俺は一言礼を言って受け取る

 

「あれ?そう言えばライカってさっき戦っていたっけ?」

 

「いや。戦っていないッスけど…」

 

そこでライカは考え込むように顎に手をやると

 

「最近先輩ここに来なかったじゃないですか。だから、アタシは一人で訓練していたんッスよね」

 

「う…ごめん」

 

「あ!いえ!先輩を非難しているわけじゃないッスよ!ほんと先輩には感謝しているッス!」

 

俺は先輩としての自覚のなさに少し鬱になったがライカが止めてくれた。

ほんと…いい子だなぁ…

 

「けど…アタシはまだ先輩には遠く及ばないってわかっています。だけど」

 

そこで息を大きく溜め自信を込めた表情で発声する。

 

「アタシは先輩とサシで勝負したいんです!絶対に一発入れて勝って見せます!だからその時まで戦う気はありません!」

 

…へえ。言うようになったじゃないか

俺は苦笑しながらもなら俺ももっと頑張らないとなと返答をする。

確かにライカにはセンスがある。俺よりも強くなるかもしれない。

けど俺は見たい。未来のこの子たちは一体どのように成長していくのかを。

そのために今は成長させる時だ。

今は俺の目の届く範囲で頑張ってほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこまでは普通の日常だった。

それから少しずつまた非日常へと変わる

 

「あれ?誰だ?」

 

強襲科の誰かがそう声を上げる。

俺たちも特訓の手を止めそちらを見ると

 

高めの身長ですらっとした体系。制服は札幌武偵校の制服を着ている。

ながい茶髪をみつあみにまとめその相貌は多分トップクラスの美少女であろう。

見た目はね。

なんだか違和感があるんだよなぁ…あの人。

その人はまっすぐアリアの方へと歩み寄る。

俺は一応警戒はしておく。

 

アリアたちは何か話をしているようだ。ここからでは話を聞きとれない。

いや…話し合いから喧嘩のようになっているのだが…

しかも仕掛けているのはアリアのようだ。

 

「あんたには負けない!絶対に勝ってやる!」

 

ほらぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

現在アリアは札幌武偵校の生徒と戦っている。

いや…蹂躙されていると言った方がいいかもしれない。

まずアリアの攻撃は一切当たらない。

札幌の生徒が余裕でよけているのだ。

その生徒もまた手加減しているのか攻撃は急所を外している。

それでも急所を外しているだけだから攻撃はあてている。

それが蓄積されアリアも満身創痍と言った状態だ。

まあ、見ようによっては殺されると思うだろうな。

 

「せ、先輩!アリア先輩を助けに行かなくていいんッスか?!」

 

ライカが俺に駆け寄ってくるが…

 

「けど…どうしたものかね…」

 

俺は推測を立てていた。

確かに最初は助けに入ろうとしたが札幌の生徒の目を見るとまったく殺す気のない目をしている。せいぜい見極めていると言ったぐらいだ。

まあ、もしそんな輩が出たら先に蘭豹が止めていただろう。

そして次にあの生徒の正体。

まず最初に感じた違和感の正体がわかった。

女性ではない。

結論はこれだ。

そこへ至ったのはその生徒の雰囲気だった。

俺はその雰囲気を別の人物で見たことがある。

それはキンジだ。

正確にはヒステリアモードのキンジに。

ヒステリアモードは遠山家にだけ伝わる遺伝だと聞いている。

つまりその生徒はキンジの関係者だとわかる。

その生徒は見た目は20代も行かないことが見て取れ、キンジにそこまで親戚がいないことを垣間見るとおのずとその正体がわかる。

キンジの数少ない家族の一人、金一さんだということが。

何故女装であるかは多分ヒステリアモードの特性であるからだと思う。

キンジのヒステリアモードが性的興奮であるかのように人によってその作用の仕方が違うと言ったことなのだろう。

時代劇に出ていた遠山の金さんがその例だ。

キンジが言うにあの人は肌を露出することでヒステリアモードになっていたとか。

何故女装?かと思ったが謎の悪寒により俺は一時思考を停止した。

多分キンジは昨日金一さんに出会ったのだろう。

そこで何かを言われ今朝はここまで警戒をしていたということか。

 

アリアは懸命ながら戦いを挑み続けているが逆に焦っているためおしいという攻撃すらない。

何がアリアを駆り立てるかわからないがさすがにそろそろ出たほうがいいのか?

 

そこで俺の後ろから強襲科棟の扉が開かれる音が聞こえた。

俺はその音に振りかえり見る

 

来たのはキンジだ。

キンジは俺に気づかずそのままアリアが戦っている競技場の扉を開け戦闘へと参加する。

キンジは女性徒と何かを話しているようだが戦闘の音と競技場を隔てる壁によりうまく聞こえない。

そしてアリアも諦めず攻撃を仕掛けるが逆に反撃を食らう。

さすがにアリアも満身創痍かという時に

 

「こらー!今すぐ戦闘をやめなさーい!」

 

どこからか出てきた制服の女性警察官が競技場の扉を開けそう声を出す

 

アリアが警官に突っかかるがそれを無視し

 

「これ以上続けるなら逮捕!逮捕です!」

 

そう言う警官の目は警戒と笑みが含まれていた。

というかあんな笑みをする目は理子か。

変装をして助けに来たっと行ったところか。

軽くこちらを見てウインクしたし。

 

女性徒は理子の登場で白けたのか欠伸をしながら競技場を後にしようとする。

アリアは逃げるの!と声を出すが女性徒は無視し歩みを進める。

キンジもまた声をかける。

 

「ちょっと待てよ!カナ!」

 

へえ、女装モードの時はカナって言うのか。

カナさんはキンジの声に振りかえらずそのまま強襲科棟を出るために扉へと進む。

まっすぐ外へと向かっていたため俺の目の前に来る。

カナさんも俺に最初から気づいていたのかアイコンタクトである感情を伝えてくる。

その目に俺は軽く首を縦に振り肯定を示すとカナさんはそのまま外へと向かう。

カナさんが軽く外へと歩みを進めるのを見届けまた競技場を見るとアリアが失神したところをキンジが支えていた。

蘭豹がそのキンジにカナさんが殺す意思がなかったことを説明すると複雑な表情をする。

 

「あの…白野先輩はあの人が殺す意思がなかったこと…わかっていたんですか?」

 

人ごみの中から出てきた子供ほどの身長の武偵は間宮あかりさんだった。

どうやらこの子も殺気などを察することができるようだな。

 

「一応ね…けど」

 

そこで一つ考えるように間を開けると

 

「人の殺意なんてすぐにあふれるものさ」

 

その言葉にあかりさんは呆然と俺を見上げていた

 




54弾終わりました。
パラノイヤ(偽)さん、恋姫夢想さん、ベクセルmk.5さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第55弾 逢引連絡

相変わらず遅れてしまい申し訳ないです。



あの事件の後キンジはさらに悩んだようにしている。

アリアとの関係も何か変な感じになっているが…あまりかかわらない方がいいだろう。

 

 

 

 

 

今は水泳の授業中である。

水泳の授業では女子と男子が分かれもちろん俺は男子の方で泳いでいるのだが…

周りの男子生徒は各々自由に遊んだりしている。

水泳の授業の担任である綴が二日酔いで自習となったからである。

それでいいのか教師と思ったが武偵校だからと妥協というより思いこむ。

まあ、俺も泳がずプールの脇の方でボーとしているのだが。

いや、まあ泳げるんだけどね…水に潜るとなんだか過去を思い出すというか…うん、考えないようにしよう。

そんな感じで葛藤しているとキンジが近寄ってきた

 

「白野。ちょっといいか?」

 

「ん?どうした?」

 

「ああ…実は」

 

何とキンジは単位をとれていなかったらしい。

まあ、キンジは武偵をやめるためにクエストはほとんどやっていないし単位もぎりぎりだから…それに最近は極秘任務ばかりあるから単位にも反映されていないしな。

ということで夏休みのクエストで俺に協力を仰いだみたいだ。

その職務はカジノ警備。それさえやれば単位を確保できるとか。

それには最低四人いるらしく後一人いなかったようだ。

ちなみに誰が出るのか聞いたがアリアも行くらしい。

まあ、このことは関係がこじれる前に話していたらしく来てくれるかに関しては問題ないらしい。

アリアは一度受けた依頼は取り消さないからな。

キンジは俺に助けを求めに来た。なら協力するだけだ!まあ、キンジが悪いんだけど。

俺が協力することを伝えるとキンジも安心したようだ。

そのあとは色々雑談をする。

すると

 

「ん?何だあれ?」

 

車両科の変人である武藤が何か鉄の模型を抱えプールに入って行った。

 

「おい!不知火!ちょっと出ていてくれ!」

 

自習となってもまじめに泳いでいた不知火を押し出す武藤。

しかし不知火はそのことを怒ることもなくこちらに歩いてきた。

大人だな…不知火

 

武藤がその鉄の何かをプールに浮かべると何人かの男子が近寄って行った。

さらに近づくのがもう一人

 

「むとーくん!すぐに準備をすすめるのだ!」

 

別の教室で水泳の授業を受けているはずの平賀さんが何かのコントローラを持って男子のプールへと入ってきたのだ。

というか何故入ってきているんだ…

そして何かの作業を終えるとプールから出て平賀さんがリモコンから電源を入れる。

するとプールに浮かべていたものが動き出した。

それは何とラジコンだったのである。

授業中になんてものつくってんだと思ったがそれも中々の高クオリティだったので俺まで見入ってしまった。

また平賀さんが何らかのボタンを押すとラジコンのハッチが開きそこからロケット花火が飛び出していく。

男子の何人かが「おおっ!」と声を出していた。

その反応を満足そうに見た武藤は俺たちの方へと早足で来る。

 

「どうだ!キンジ!ザビ!」

 

「興味ない」

 

「興味はあるが個人的に武藤をぶっ飛ばしたくなった」

 

俺の軽い殺気を武藤は宥めながら嘆息を漏らす。

 

「しっかしキンジはまだまだだなぁ。俺たちがせっかく現代によみがえらせた潜水艦を興味がないなんて」

 

武藤はそこで咳をきったように喋り出す

 

「この超アクラ級原子力潜水艦『ボストーク』は悲劇の潜水艦なんだぜ!空前絶後の巨大原潜だったんだが1979年進水直後に事故で行方不明になっちまうんだ………」

 

…うん。ここから先は覚えてないや。

ほとんどボーとして話を聞いている。

 

「………であるからこの俺と平賀の手を持って現代によみがえらせ…どうした白野?」

 

「い、いや…なんでもない」

 

ほんと乗り物馬鹿にはついていけないと改めて思ったぞ…

俺は適当に聞いていたが不知火はまじめに武藤の話を聞いていたようだ。

さすができる男。

 

そこで武藤は平賀さんに呼ばれて潜水艦の方へと向かった。

俺はやっとまた平穏が来たと思い溜息をつく。

不知火はそんな俺を見て白い歯をきらっと見せて

 

「雑談してもいいかな?遠山君。岸波君」

 

「別に許可なんてとらなくていいって」

 

とキンジ

 

「ちょっと良くない話なんだけど聞く?」

 

「良くない話?何だよそれ。まあ、話したきゃ話せよ」

 

気になるし

 

「さっき、2時間目休講だったじゃない」

 

「ああ」

 

「その時僕、ちょっとアサルトに顔を出したんだけどさ、神崎さんも来てたんだよね」

 

「アリアに何かあったのか?」

 

「ははっ。そんな怖い目をしなくていいよ。そういうことじゃないから」

 

「神崎さんって彼氏いるの?」

 

「聞いたことないけどな」

 

俺が言うと不知火はキンジを見ながら

 

「遠山君ライバルいるかもしれないよ」

 

「なんだそれ?」

 

ん?

 

「神崎さんが武偵手帳にメモ取ってる時、偶然見えちゃったんだけど……手帳に男の人の写真が入ってたんだよね。細かくは見なかったけど遠山君や岸波君じゃなかった」

 

…何故俺の名前が出てくるかわからんがな

 

「……そんなこと俺に関係ないだろ」

 

「はは、いま一瞬、きみ、黙った」

 

「そんな下らないことに一々報告する不知火に呆れて黙ったんだ」

 

「気を付けた方がいいよ遠山君。神崎さんって一部の男子にけっこう人気あるからねぇ。ぼやぼやしてたらとられちゃう。ポピュラーな言い方だけど夏は男女の仲が大きく進展する季節なんだよ?」

 

アリアが他の男と付き合う……

 

 

「……」

 

 

想像できねぇー。

意外とキンジとお似合いだがまだ関係が修復されていないしな。

 

「ん?どうしたの?岸波君」

 

「い、いや。なんでもない」

 

「そう言えば岸波君はレキさんだよね」

 

へ?何でそこでレキさんの名前が?

 

「ああ…岸波君は知らないんだ」

 

そこで不知火はタオルから携帯を取り出し一部操作をすると俺に見せてくる。

 

「こ、これは…」

 

これは過去に俺がレキさんと一緒に食事に行った帰りの写真ではないか!

い、一体いつ撮ったんだ…?

 

「この写真結構広まっているよ。まあ男子の中だけだけど。撮った人物もよくわからないけどこれほど精巧だったら偽造はあり得ないし」

 

ぐっ!確かに嘘ではないから否定しずらい!

 

「そ、それは過去レキさんにご飯を奢ったにすぎない!だから決してやましいことは…」

 

「けど、これが出回った瞬間レキさんのファンクラブからは激情の声が出ていたらしいよ」

 

なんだか知らないところで命の危機が!

 

「まあ、命を狙われる心配はないと思うよ」

 

へ?何で?

 

「なんだかその写真が出回った後そのファンクラブ壊滅的ダメージを受けたららしいんだ」

 

「一体誰に?」

 

「いや、よくわからないけど見えない敵に狙撃されたとか」

 

…うん。深く考えないようにしよう。

 

「それで…どうなの?」

 

「…いや、本当にご飯を奢っただけであって別にやましい気持ちは…」

 

そこで不知火は、はあっと溜息をつく。

あ、何か嫌な予感

 

「遠山君と岸波君は夏休みにカジノ警備やるんだよね?レキさんは誘わないの?」

 

「いや、よくわからないけど」

 

俺もキンジから誘われたようなものだし多分レキさんにも声をかけるのかな?

 

「じゃあ、混雑地の警備訓練ってことで、一緒に緋川神社の夏祭りに行ったらどう?うん、そうしよう!あそこは縁結びの神社ってことでポピュラーだし、ねえ武藤君」

 

不知火は、ぽーん、とプールサイドに座っていた武藤にいつの間にかある俺達の携帯を投げてしまう。

はあ!何やってくれちゃってんの!

 

「おう!そいつはいいアイデアだ!お誘いメールオレが書いてやるよ」

 

「この!」

 

俺とキンジは携帯を取り替えそうと動いたが焦ったため俺は不知火に足を引っかけられてプールに落下し、キンジは不知火に羽交い締めにされた。

く!足元がおろそかになるとは何たる不覚!

 

「いやー二人を見てると焦れったくてさぁ。遠山君は写真の男、つまりライバルもいるみたいだし背中を押してあげよう!って事になったんだよね、さっき武藤君と。あ、あと僕午後は仕事で校外に出ちゃうんだよね。クレームは武藤君までよろしく」

 

「よし、白野は終わりと、次はキンジだな。あれ、神崎じゃなくてアリアでメアド登録してんのかよ。やらしーなキンジ」

 

まあ、俺の場合レキはレキだからな…突っ込みようがないんだろう

 

「親愛なるアリアへ。カジノ警備の練習がてら、二人で七夕祭りに行かないか?七日七時上野駅ジャイアントパンダ前で待ち合わせだ。かわいい浴衣着てこいよ?っとこんなもんでいいですかね遠山先生」

 

「いいわけないだろ!」

 

だが、キンジは間に合わず送信ボタンは押されてしまった。

この後、激怒した俺とキンジは不知火をプールに投げ飛ばし、特に武藤は悲劇の原潜ボストーク号にぶつけて真っ二つに折れた原潜もろとも撃沈したがメールは消えない。

武藤が内容を言わなかったので送信メールを確認してみる。

 

題名 親愛なるレキへ

『本文: 以前に行った祭り楽しかったな。七月七日に七夕祭りがあるんだけどまた、遊びに行こう。

待ち合わせの時間は午後7時に上野駅改札口に。

ちょっと話したいこともあるし。

可愛い浴衣期待してるよ』

 

 

なんてメール送ってくれるんだ不知火!武藤!

俺はこの後、再び二人に飛びかかり二人が逃げるまで追跡を続け二手に別れたため武藤に八極拳フルコースを決めたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

From レキ

To 白野

 

『本文:はい』

 

どうしよこれ(´・ω・`)

 

 




55弾終わりました。
ブレイカ―925さん、パラノイヤ(偽)さん、渡り鳥さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第56弾 祭りの真意

何故投稿が早いのか。
明日はちょっと投稿は厳しいかもと思い頑張っていい感じの長さに仕上げました。


 

放課後

 

軽いクエストをこなして武偵校を後にしようとすると前にアリアがいた。

しょぼーんと頭を俯かせながら。

どうやらキンジと喧嘩したことをかなり後悔しているみたいだな。

それなのに祭りに誘われてちょっと混乱していると言ったところか。

 

…ふむ、少し話をしてやるか。

 

俺は小走りでアリアに気づかれないように近づくと

 

「よっ!アリア」

 

そう言ってその俯いた頭を軽くはたいてやる。

アリアは少し動揺した表情をするが頭をはたかれたことが気に障ったのかぴょんと跳んで俺の頭を叩こうとする。

が、俺もそう来ることは予想がついていたから横にかわしてその両脇を抱え

 

「ほーら、高い高―い!」

 

軽く高い高いしてやると下ろしなさいよー!とアリアが暴れたのでゆっくり下ろしてやる。

アリアはさらに馬鹿にされたと思ったのかまた攻撃を仕掛けようとするが俺に敵わないとアリアは思っているのか攻撃する手を下げる

 

「元気でた?」

 

「これは元気とは言わない!」

 

ぷんすか!といった雰囲気を纏わせながらそっぽを向くアリア。

その頭に向かって俺は話しだす

 

「キンジのことどうするんだ?祭りに誘われたんだろ?」

 

「…」

 

俺の言葉にアリアは怒った雰囲気を押しとどめ黙っている。

…はあ、こりゃちょっと話したほうがいいな。

 

「行ってあげたらどうだ?」

 

「…何でよ」

 

「別にキンジが悪いってわけじゃないんだろ?」

 

「…そうだけど」

 

「あんまり意地になるんじゃないぞ。時には素直になれ」

 

「…」

 

ありゃりゃ、ふてくされてしまった。

ぷくっと頬をふくらませてまたそっぽを向いてしまった。

さらに追いうちをかけるように声をかける

 

「あの時と一緒だな」

 

「…どの時の?」

 

「俺たちと初めて出会ったときとだ」

 

「…少し違わない?」

 

「けど、カナさんに関係しているんだろ?キンジの気になる相手だからやきもちやいているんじゃないか?」

 

「ちっ!違うわよ!」

 

いや、同じだ。

言っちゃえば両方とも意地になっているだけ。

最初と同じだ。

互いが意地になっているからすれ違う。

やっぱり一言言った方がいいな。

 

「大丈夫だって」

 

「だ、だからっ…!」

 

「キンジがアリアから離れるわけないだろ。前にそう言われたんだろ」

 

俺の言葉に思い出したのかまた顔を俯かせるアリア

 

「キンジを信じてやれよ。もうあの時とは違うんだから」

 

「~!あーもう!わかったわよ!」

 

さらに顔を赤くしたアリアはウガー!と叫びながら走りだしていった。

やれやれ本当に不器用な奴らだと内心苦笑しながらもアリアを追い帰路に就くのだった。

 

 

というか俺も人のこと言えなかったな…。

どうしよ、お祭り…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後六時五十分、こういう日に限って臨時クエストがあり仕方なく制服で来ることになった。

軽く息を整えて待っていると七時ちょうどにレキさんがやってきた。

武偵校制服姿で。

いや、俺は別に制服でも構わないのだが女の子が祭りに制服というのはいささか華が無い。

…うん。行くか。

 

俺はレキさんの手を掴むと

 

「浴衣買いに行きますよ」

 

有無を言わせず引っ張って行く。

レキさん結構強情だからな。いいと言われるだろうから引っ張って行くのは正解だろう。

もうすぐ祭りも始まることから俺たちは早足で進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「これはいかがですか?」

 

デパートで捕まえた店員のお姉さんにセールをやっていたのでレキの浴衣を選んでもらっている。

俺じゃわからないからな。

 

「…」

 

シャッとカーテンが開くとピンクと赤を基調とした金魚柄の浴衣だがレキさんのイメージとはなんか違う…いや、似合わないわけじゃないけど…

 

「駄目ですか…では次を」

 

シャッとカーテンが再びしまる。

中でごそごそレキが着替える音が聞こえるが落ち着かない…周り、カップルだらけだし

カップルじゃない組み合わせなんて俺とレキさんぐらいしか…

 

シャッとカーテンが開くと店員がどや顔をしてきた。

いかがでございますか?

 

「……」

 

ちょっと言葉を失う黒を基調とした浴衣で帯は紫色、柄は桜か?なんかレキによく似合ってる…というか…

 

「いいと思う…」

 

思わず口から出てしまったが店員がにやりとする

 

「彼氏さんこれがお気に入りだそうですよ彼女さん」

 

「ではこれにします」

 

はっ!いかん彼氏彼女を完全にスルーするとこだった。

 

「い、いや!別に彼氏彼女って関係じゃ…!」

 

「九万五千八百円になります」

 

そして案外高い!

どうやらブランド物だったみたいだ。

まあ、一応クエストの報酬で十万稼いだから足りるが…

 

まあ、たまにはこういったおごりを加えてもいいだろうかな。

俺は財布から十万を取り出し店員に払う。

 

外へ出ると生温かい夜風が頬をくすぐる。

隣をついてくるレキさんは新しい浴衣をはためかせてついてくる。

まあ、それだけならかわいいものだがその背中にドラグノフを抱えているから違和感は半端ない。

が、浴衣選びに少し時間がかかってしまった。

このままじゃすぐ祭りが始まってしまう。

俺が走り出そうとするとレキさんが俺の袖を掴み

 

「白野さん、これ」

 

そう言って十万円を差し出してくる。

…ああ、多分レキさんは悪いと思っているんだろうな。

これはただのおごりだから別にかまわないのだが、理由がないとレキさんは納得しないだろうし…

 

「まあ、これは俺の頼みだと思ってくれていいよ」

 

「…頼み?」

 

「そう。借りではなくて頼み。俺に買わせてくれって意味での頼みだ。それなら理由になっているだろ?」

 

それでもレキさんは納得していないのか少し不機嫌なようだ。

無表情の中に攻めるような視線が織り交ざっている

 

…祭り…始まるな…

 

「レキさん急いで行きましょう!」

 

俺はレキさんの手のひらを掴み軽く走り出す。

これは逃げるが勝ちだ!

パタパタと下駄の音をはためかせてついてくるレキさんは無表情の中に何か別の感情が見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、やっぱり始まっていたか」

 

会場に着くともう祭りは始まっていた。

露店を見て回る。

ドラグノフを持つレキさんは人とぶつかるためつないだ手を離さないでいる。

ここではぐれたが見つけるのは面倒だからな。

けど、本当にレキさんの手は柔らかいな…それに軽く冷えていてそれがいい感じに…ってまたいかがわしいことを!

煩悩を傍に捨て置きまた露店を回る。

射的場でレキさんが景品を六発で取ったりしていたがそれ以外はほとんど普通に露店を回っていた。

その間レキさんもほとんど無言だったが雰囲気的にいい感じのオーラが見えたのでよしとしておく。

カジノ警備を手伝ってくれるか話そうかと思ったが多分キンジからも話は通っているだろう。あいつ友達少ないし。

そう言えば、アリアたちも回っているんだよな仲直りしていればいいのだが。

そんなことも考えながらまた新しい露店を回ろうと…

 

 

 

 

 

 

 

―!

 

小さな殺気を感じた。

俺は後方を見る。

まただ。小さいが…前に来た花火大会と同じ殺気を感じた。

けど…もう感じない。

これは一体どこから来たのか。

後方から来たのは分かるが詳しい範囲がわからない。

 

…追うか?

けどこういった時は深追いは禁物だ。

これは過去の経験からも明らかだし…ここは無視を決めたほうがいい。

 

「どうかしましたか?」

 

レキさんからもそう声がかかる。

どうやら俺にだけ伝わる殺気だったようだ。

…ここで不安を与えない方がいいのかもしれないな。

 

「…ああ、うん行こう」

 

そう言ってレキさんの手を引っ張りながら足を進めていく。

まるで殺気から距離を取るように。

 

 

 




56弾終わりました。
銀羽織さん、パラノイヤ(偽)さん、ベクセルmk.5さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第57弾 非日常への転換

今回は少なめ。



祭りも無事?に終了させそれから数日が経った。

今日はキンジから頼まれたカジノ警備の日である。

どうやらキンジからレキさんにちゃんと話しは通していたらしく最終的には5人での参加となった。

四人だけだけど…まあ、大丈夫だろう。

 

カジノがある台場についた。

というかその警備が船の上だということは驚きだ。

キンジめ…言うの忘れてたな…知らなかったぞ…。

まあ、そこは別にいいと妥協してもだ、なのに…

 

「どうしてこうなったものかねぇ…」

 

俺は今警備室のプログラムの修復作業を行っている。

何とも先日別の場所でハッキングを受けたらしくその修復作業をどうしようかと悩んでいた時に俺が舞い込んだと言ったところらしい。

…まあ、臨時収入として入ってくるけど。

作業中どこからかマシンガンが乱射する音が聞こえたが…俺知らない、何も知らないから関わらない!なんか嫌な予感がするから!

船が動き出してからも黙々と作業をすること数時間。

 

「よし、終わったか…」

 

作業を終わらせ緊張の糸を緩めるため息を吐き出す。

…おかしいな。

夢中になって作業をしていたから気付かなかったが俺がここまで作業するとは思わなかった。

直し始めた当初を思い出してみるとプログラムもかなりずたずただったように思われる。

…何か変な予兆は感じたが考え付かないからそこで思考を止めることにした。

 

そのあとは警備室から映像で監視カメラからの映像を見る。

まあ、もともと監視の役割を与えられたらしいからちょうどよかったらしいけど…まあ、臨時収入出しよしとしよう。

 

映像を一通り見るとキンジがチップを交換しようとしているところが見えた。

俺はなんとなく音声も聞きたくなったので監視カメラ備え付けのマイクのスイッチを付けると

 

『両替を頼みたい。今日は青いカナリアが窓から入ってきたんだ。きっとツイてる。』

 

こいつ、おもしれぇー!

キンジも少し恥ずかしかったのだろう軽く顔を赤くしている。

俺は警備室で噴き出してしまったが監視だけでは少し暇だし今後面白いことになりそうなキンジの映像を追うことにした。

チップを受け取ったキンジを追うとバニーガールの姿をしたアリアとであったキンジ。

二人して何かを話していたが二人の目線が別の場所を向くとアリアがキンジに殺気を飛ばしていた。

俺がその二人の目線の先にあるものを見るため映像を切り替えるとそこにはアリアと同じバニーガールの姿をした白雪がたくさんの男に囲まれている。

ああ、理解した。

確かバニーガールって胸が無いとバランスが悪くなって変に見えるとか。

キンジも多分そのことを思い出しアリアを見たのだろう。

そこで勘がいいアリアが殺気を飛ばしているというわけか。

まあ、アリアは結構ちいさ…

 

俺はここで考えを止めるしかなかった。

ごくりと唾と一緒に息をのむ。

獲物に狙われた時のプレッシャー。

冷や汗が流れる。

これは…殺気!

その殺気の流れどころである映像を見る。

そこにはアリアが俺が見ている映像の監視カメラを見てマバタキ信号を送っている。

それを解読してみると

 

『イツカコロス』

 

俺は無言で監視カメラの映像を変える。

適当に変えたがそこで知り合いを見た。

レキさんが男装をしてディーラーをしている。

一人の男がレキさんと話している。

…なんとなく気になったので音声オンで聞いてみた。

 

『…ああ、だが配当金はいらない。勝ったらキミをもらう』

 

…何言ってんだこいつ。

多分こいつは負け続けたのだろう。

レキさん目当てで勝負を仕掛けたようだが負けてばかりでなんとか繋ごうとしているようだ。

けど、それは多分不可能に近いだろう。

狙撃手は読む。

遠距離から獲物を狙い撃つために風や障害物を考慮して全てを読み攻撃をあてる。

それをルーレットに応用しているのだろう。

回転の速度、ボールの摩擦、流れを読んで狙った数字へと滑りこませる。

それほどの神技ならなんかレキさんでもできそうだしな。

 

レキさんはそのままボールを流す。

カラカラと流れるボールは少しずつスピードを落とし結果落ちたのは赤

掛けをした男はさらにうなだれる。

どうやら黒に掛けていたみたいだな。

 

『ははは……7千万円の負けか。さすがに痛いよ。でも、こんなに金を落としてやったんだ。可憐なディーラさんせめて君の携帯番号だけでも教えてくれないか?』

 

こいつ…アホなのか?

それくらいではレキさんはなびかないことは分かっているのだろうに。

予想通りレキさんはその声を無視している。

そこで間を開けるがレキさんが何かを感じたようにその男に声をかける

 

『よくない風がふいています。今すぐここを離れてください』

 

俺はよくわからなかったがそのあとの現象を知り察することができた。

ばんとレキの背後に並べられた動物の剥製の間から疾風のようにレキさんが手なずけた狼が飛び出す。

何事かと思ったがすぐにそれも察した。

いつの間にか謎のいきものが現われていたのだ。

全身に黒いペンキを塗ったかのようなそいうは上半身裸で腰に茶色の短い布を巻いているだけの姿。

異様なのは頭部でジャッカルという動物の頭に体は人間という姿だった。

手には半月型の斧がある。

 

…はあ、最近は本当に不幸だな。

普通に仕事もできないとは思わなかったぞ…

俺は意識を戦闘モードへと切り替えるため一つ深呼吸をすると警備室を飛び出すのだった。

 




57弾終わりました。
シオウさん、ローレライの歌声さん、パラノイヤ(偽)さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第58弾 揺れる凶弾

本当に遅れてしまい申し訳ないです。
けど、夏の間遅れてしまいそうなのでそこら辺は先に謝罪させてもらいます。




俺は警備室を飛び出した。

謎の敵が現れたのだ。

まるでジャッカルのような体格を持つ怪物だ。

カジノ会場に現れた現在キンジ達が交戦中なため俺が向かっているというわけだが…

 

向かっている最中少し違和感を感じた。

いや、あのジャッカルの戦闘について違和感を感じ始めたのだ。

ただ、戦っているだけなのに…何か作為を感じると言うか…

いいや、今はすぐに向かわなければ!

 

カジノ会場の扉を開け交戦状況を把握する。

キンジと白雪が協力し敵と戦っている。

どうやらジャッカルも数体かいるようだ。

白雪が何か札を投げつけ呪文のようなものを唱えるとそこから爆炎が広がった。

わあ…あれ見ようによってはキャスターの技とかぶるな…

 

「あ、白野君!戦うのならあいつに触っちゃだめ!」

 

そう白雪から声がかかったため俺は電子手帳から『空気打ち/一の太刀』を取り出し衝撃波をぶつける。

敵は武器を手にガードをするが武器もろとも破壊し敵をえぐる。

それと同時ジャッカルは灰のようにすすけ消え去った。

確かに人間ではないことは知っていたが灰になって消えるのは予想外だ。

しかし、さらに予想外の事態を知った。

コードキャストを使ったが疲労感がほとんど伝わらなかったのだ。

それはつまり魔力の総量が上がっているということ。

どうして今になってと思い出してみると、この前ビルの屋上でエネミーと戦ったことを思い出した。

エネミーと戦った方が経験値が取りやすい?

そう思ったが物陰からジャッカルが出てきたため防御すると同時思考を止める。

 

つばぜり合いになる

 

が、少しずつ押されてしまう。

人外の生物相手に勝てるわけないのだ

 

「ぐ…、せめてコードキャストでも使っとけば…!」

 

筋力強化のコードキャストさえ使えればこのくらい跳ね返せるのだが…!

 

パンパンと大口径銃特有の発砲音が聞こえた。

それと同時ジャッカルはウッ!という声と共に体制をそりかえらせる。

そのまま灰になり消え去った。

銃を撃ったと思われる方を見るとアリアがガバメントを手に立っていた。

 

すぐアリアは後ろを向き駈け出して行く。

…さすがだなアリア。けどバニーガールの姿で少し残念に見えるよ…。

アリアは噴水の端を踏み台にして跳び上がりその上につるされているシャンデリアに飛び乗り

 

「レキ!」

 

そのアリアの言葉をレキさんは理解したらしくシャンデリアの支柱の鎖を撃つ。

シャンデリアはレキさんの銃の勢いを受け大きく回りだした。

その動きを見て大量のジャッカルがアリアの方に近づいてきた。

そのまわりだしたシャンデリアの上でアリアは銃を乱射する。

弾丸が数体のジャッカルに当たり灰に代わっていく。

撃ち洩らした数体は俺とレキさんが処理を行った。

しかし、本当にこれほどのコードキャストを使っても疲労感が少ない。

本当に魔力の総量が上がっているようだな。

俺は自分が着実に強くなっていることが嬉しかった。

そのまま戦い続けること数分、俺は地上にいる最後の敵を弾き飛ばした。

 

「ふう…」

 

静まり返ったカジノ会場。

しかしその会場にいるのは俺とレキさんだけだった。

 

「あれ?アリアたちは」

 

俺の声にこたえたのは同じく居合わせているレキさんだ

 

「アリアさんたちは逃げ出した敵を追いに船外へと出て行きました」

 

き、気付かなかった…。

どうやら俺は相当集中して戦っていたようだな。

レキさんを連れ俺たちは船外へと向かい歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそれを見ると大きく後悔した。

何故俺はアリアについて行ってやらなかったのかと。

そうすればこうならなかったのかもしれないのに。

俺が見た光景それは海上を漂うモーターボートに倒れるアリアの姿だった。

 

海上にはキンジの乗っているモーターボートのほかにピラミッドのようなものを乗せた船が一緒に浮いている。

その上に誰か人がいるが…ここからじゃよく見えないな…。

俺が目に魔力を集中するとその人の人物がよく見えた。

ちょっとした千里眼もどきだ。

船上にはまるでエジプトの王族が着るような金ぴかの衣服を着ている少女がいた。

まあ、金ピカ成分は見慣れているし…

その少女はキンジを見下ろしている。

あの人が…アリアを撃ったのか?

そう思ったが物陰からカナさんが出てきた。

三人で何か話をしているようだがもちろんここから聞きとれるわけではない。

けど…あれは少しまずいかもしれない。

あの場でまた戦闘が始まればキンジ対カナさんと謎の少女となる。

カナさんはよくわからんがこれまでの行動でほとんど敵対してきた。

あまり好印象はないだろう。

それにキンジは現在ヒステリアモードではない。

謎の少女の戦闘力がわからない今キンジだけではあの場は持たないだろう。

 

「レキさんはここからキンジの援護をお願いします。俺は今すぐモーターボートに乗ってキンジの援護に向かいます」

 

ここからならレキさんの射程範囲だし援護してもらえればすぐに迎えるだろう。

俺は振りかえりモーターボートがある倉庫へと進もうとするが…

 

「な…なんだよこれ…」

 

そこには俺たちがカジノ会場で戦っていたジャッカルがいたのだ。

それもたくさんいる。四、五十体ほどいるぞ。

着々と距離を詰めてくるジャッカル。

駄目だ多すぎる。倒すことはできるだろうが時間がかかるぞ。

敵に触ることができないからコードキャストでしか攻撃をぶつけることができない。

それに魔力の総量が上がったからと言ってこの量をさばき切れるとは言えないぞ。

けど、後ろにはレキさんがいる。

ここが突破されるわけにはいかない。

そうしている間にジャッカルが一体飛び込んできた。

俺は反撃するためにコードキャストを…

 

ジャッカルは横に吹き飛んで行った。

それと同時に響き渡る銃声。

そちらを見るとレキさんがこちらを向き銃口をこちらに見せている。

どうやら撃ったのはレキさんのようだ。

けど、それじゃあキンジは…!

 

「いいえ白野さん。確かにキンジさんの援護はしなければなりませんがこちらの方が優先順位が上です。白野さんの技が連発できない今こちらの援護が大事だと判断しました」

 

…ばれていたか。

けど、レキさんの援護があるおかげでこちらはなんとかできそうだ。

 

「…わかりました。援護をお願いします。なるべく早く終わらせてキンジの援護に回りましょう」

 

俺は返答と同時に飛び出した。

 

 

 

 

けど、現実は残酷に過ぎ去った。

 

「ふう…、やっと倒したか」

 

なんとか全部倒し終えた。

なるべく早く全てを倒したため魔力を大量に消費したがレキさんの助力もありそこそこの魔力も残っている。

俺はキンジの状態を見るため振りかえったが

 

「えっ…」

 

キンジがフラッとしたと思ったらそのまま海に落ちて行った。

ま、間に合わなかったのか!

カナさんの腕にはアリアがいる。

くそ!キンジの不安は当たっていたということか!

カナさんと謎の少女が乗った船は役目を終えたように海に沈んでいった。

今の状態ではアリアを助けにはいけないだろう。

俺はキンジを助けるために走り出した。

人間は気絶したまま海に投げ込まれると絶対に溺れてしまう。

人間が故意に潜るのと突発的に潜るのは違うのだ。

それに海中に潜ってすぐ気絶から目覚めるならいいのだがそのまま気絶した状態だとそのまま呼吸をしてしまう。

海水を大量に飲んでしまったらそれこそ助からない。

急いで助けに行かないと!

船底の倉庫にあるモーターボートの一つを拝借し海に飛び出す。

キンジ、無事でいてくれよ!

心の中でそう願い俺はモーターボートを走らせるのだった。

 




58弾終わりました。
全然進まなくて申し訳ないです。
こちらとしても早く出したい人を出したいなあ。
ベクセルmk.5さん、パラノイヤ(偽)さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第59弾 向かうべき場所


FGOリセマラ中…

私「タマモキャット来いやぁぁぁぁ!!」

マルタ(CV 早○ 沙織)

私「…ぐっ!」(リセマラ数十回目にしてようやく☆4が出たがタマモキャットではないことに少し萎えるけどcvがはやみんでリセマラランキングでもそこそこ高い順位を持っているからガチで悩んでいる図)


~数時間後~

私「まあ、今回は妥協してやろう」


というか召喚詳細で赤セイバーとかタマモとかブラドとかの名前がなかったけどこれってストーリー進めなければ当たらないんでしょうかと思いながらリセマラしていました。


キンジは助けることができた。

すぐに助けに行ったこともあり海水もそこまですっていなかったみたいだ。

しかし、意識は深いところまで落ちたらしくそう簡単に目覚めることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

現在俺たちは武偵校近くの港で待っていた。

待っていたと言っても色々ある。

まずはキンジの回復である。

こちらはアリアとカナさんの問題を解決しなければならないため連れて行かなければならない。

まあ、そっちは白雪とレキさんに任せているから多分大丈夫だろう。

二つは行動手段だ。

アリアが連れ去られた今完全に敵の位置が不明になっている。

けどそこら辺は理子のおかげで何とかなった。

理子は何とアリアに発信機を仕掛けていたらしいのだ。

何でもこうなるかもしれないと予測できていたらしい。

そのことについて言及したかったが理子の表情を見ると止るしかなかった。

このことは三つ目の理由にもなるので後に回しておく。

その発信機からの情報でアリアたちは東経43度19分、北緯155度03分、太平洋、ウルップ島沖の公海にいることが分かった。

居場所が分かったのなら船とかですぐに向かえばいいだろうが並みの船では時間が足りないみたいなのだ。

それが三つめの問題である。

それは敵の正体だ。

どうも敵はまたイ・ウーの幹部らしい。

名をパトラ、それもクレオパトラの子孫らしかった。

多分カジノ会場から見た謎の少女の正体がパトラだったのだろう。

パトラは呪い関係に精通しているらしく何らかの目的でアリアを殺そうとしているらしい。

それであの場所でアリアに呪いを撃ったというわけだ。

実際にその呪いが理子にもかかったらしくその相貌の右目にはハートマークの眼帯が付けられていた。

そしてその呪いが二十四時間後に作用してアリアを殺そうとしていることを俺は知った。

多分アリアが撃たれたのが俺たちがカジノ会場から外に出たくらい。

そこから今の時間まで逆算してみると後20時間といったところだ。

それまでになんとか間に合わせなければならない。

しかし、移動手段がないのだ。

ヘリコプターでは無理だ。

ヘリでは海のど真ん中である目的地に着くまでに燃料が足りない。

道中にも中継ポイントが無いから空からの移動は無理だ。

船も不可能に近い。

海上というのもほとんどスピードが出ないのだ。

たとえ道中燃料を入れながら最速スピードで行ったとしても間に合わないだろう。

というかそのスピードが出るボートはこの港に用意されていないという現状だ。

空は駄目海上は駄目ときたら他はどこか。

 

それは海中である。

この港に潜水艦のような高級品があるのかと問われたら実際にあるのである。

すぐ近くにあると言うので実際に取りに行ってもらっているから待っているということなのだが…

 

「…!来た!」

 

大型のトラックが港に入ってくる。

俺たちの近くに止まると運転席と助手席の扉がほとんど一緒に開き人が出てくる

 

「あったぞ白野!これは大収穫だ!」

 

そう言って運転席から出てきたのは武藤。

こいつはその潜水艦となる物を運んでもらうため連絡を付けた。

一応俺たちの事情は伝えていないためほとんど無関係に近いがもう一人の助っ人がちゃんと説得してくれたのだろうか?

そう思っていたらその助っ人であり潜水艦の持ち主であるその人が助手席から声を上げる

 

「武藤!いいからさっさとオルクスを…おっと…」

 

そう言って助手席から降りようとしているのはジャンヌさんだ。

この人がその移動手段を持ってきた人なのだが…

ジャンヌさんはトラックから降りづらそうにしている。

結構大きなトラックな故に地面までにそこそこな高さがあるのだ。

そこを降りづらくしているのは…ああ、なるほど。

 

俺は急いでジャンヌさんに近づき

 

「大丈夫ですか?」

 

手を差し出す。

予想通りジャンヌさんの右足は包帯が巻かれていた。

それで降りづらそうにしていたため俺は肩を貸しに来たのだが

 

「………」

 

俺の手を見つめて動こうとしないジャンヌさん。

顔まで赤くしてどうしたのだろう?

 

「?急いでいるんでしょジャンヌさん。ほら」

 

そう言ってまた俺が手を前に出すと不承不承というように俺の手を取り体重を預けてくる。

体重を預けてくると言ってもジャンヌさん自身とても体重が軽いためそこまで苦労したわけではないが。

ゆっくり地面にまで下ろすとジャンヌさんは佇まいを正しトラックの中から松葉杖を取り出す。

 

「…ああ、その…助かった」

 

「どういたしまして」

 

俺が感謝の言葉を述べるがそれをおざなりにしてジャンヌさんはトラック後方へと歩みを進める。

…俺って嫌われているのか?

 

「…もてる男ってこういうところを言うんだね」

 

「?何言っているんだ?不知火」

 

俺は助手席を前に倒してやり武藤の助っ人である不知火に声をかける。

どうやら武藤も一人では手が回らないようで不知火を連れてきたらしい。

 

俺たちはトラックの後部へと移動すると武藤は後部扉を開く。

そこにはまるで魚雷の姿をした…というかこれって魚雷なんじゃないか?

しかしこれが潜水艦というのなら潜水艦なんだろうな

俺が不思議に思っていることに気づいたのかジャンヌさんから説明が入る

 

「この魚雷の形をしたものがオルクスだ。魚雷のような姿に見えるのも実際に魚雷から火薬などの弾頭を切り取ったものだからだ。この形がスピードを出すために最良の形であるためこのような形になったのだ。だから………」

 

…うん。そこから先はよく覚えていないです。

けど、嬉しそうに自慢するジャンヌさんはとてもかわいかったです。はい。

説明が終わったかと思うと武藤が動き出す。

どこからかクレーンを持ってきてオルクスを海面に下ろす。

どうもこれから色々と細工しなければならないらしいからまだ待たないといけないらしいが…

 

完全に手持ち沙汰である。

武藤と不知火は早速作業に取り掛かっており出払っている。

作業の邪魔をするのもいけないので待っているのだが何もしないというのは少し申し訳ない。

だから少しでも手助けをできればと思ったのだが

 

「岸波。お前は少し休んでいろ」

 

そう声をかけてきたのはジャンヌさんだ。

俺が動き出そうとするのを止めるように声をかけてくる

 

「いや、けどそうも言っていられないよ。これは俺たちの問題だ。なのに作業を人に任せて自分だけ休むのも筋違いだろうから」

 

しかし俺の言葉を聞いたジャンヌさんは溜息をついたと思うとまた喋り出す

 

「いや、本当はこれは私たちの問題だったのだ。問題児であった奴を野放しにしお前たちを巻き込んだ。言うなればお前たちはただの犠牲者にすぎなかったのだ。本来なら私たちが動かなければならないのに動きを封じられた。お前たちは私たちの尻拭いをさせているようなものなのだぞ。だから、せめてこういう時くらい働かせてくれ」

 

そう言ってジャンヌさんは頭を下げる。

…参ったなこりゃ。

俺が返答に困っているとオルクスの中から武藤が出てくる

 

「白野。俺たちにも任せてくれよ。お前たちが苦労していることは最初から知っていたんだ」

 

俺はその武藤の言葉に驚愕した。

こいつらにはイ・ウーのことに関しては何も喋っていないのだ。

ただでさえ国家機密であるイ・ウーのことをこいつらは察しているのかと考えたがさすがにそれはないだろう。

それならもうすでにイ・ウーに関して何らかのことが話されているはずなのだ。

ただ、こいつはアホでも察しはいいみたいだ。

 

「俺たちを巻き込みたくないのならそれでもいい。けど、俺たちを頼ってくれてもいいんじゃないか?」

 

そう言ってニッと笑うこいつは本当に何でもてないんだろうなと思った。

俺は少し納得いかなかったものの妥協しキンジ達のいる休憩所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽く仮眠をとっていると軽く叩かれまどろみから目覚める。

薄く目を開けると俺を起こしたのはレキさんのようだ。

俺は上体を起こし軽く伸びをする。

なんとなくキンジ達のいる部屋に入りたくなかったから硬い地面で寝ていたので少し体が固まっていたようだ。

体を少し揺らして筋肉を緩める動きをすると少し軽くなった気がする。

けど、これから狭い場所でながい間待たなければならないんだよなぁと思いながら腕を柔軟させているがレキさんがじーとこちらを見ている。

なんとなく気まずかったので話しかけてみることにした

 

「え、えっと…キンジはどうなっていましたか?」

 

「キンジさんは白野さんが目覚める三十分前に目覚めました。今は武藤さんたちによる説明を受けている途中です。もうすぐ終わるころだと言うので白野さんを起こしに来ました」

 

そうかキンジが先に起きたか。

時計を見るとアリアの残り時間が半分をきっていた。

 

「もう準備はできているのか?」

 

俺は少し早い口調で問いただす

 

「はい、説明も終わり間近なので白野さんを呼びに来ました」

 

そうか。ならば急がねば

俺はわかったと言葉をつなぎ早足で歩きだす。

今回オルクスで連れて行けるのは3人だと言われた。

本当は詰め込み機材などで2人までの予定だったが俺の電子手帳に限界までつぎ込んでなんとか3人で迎えるようにしてもらった。

それに乗るのは俺とキンジと白雪だ。

白雪なのはパトラが呪術関係の技を使うということなのでその道のエキスパートである白雪にお呼びがかかったのだ。

今回レキさんは連れていけない。

戦場の会場が船上だから狙撃手はデメリットが多すぎるからだ。

 

レキさんは黙々と俺のすぐ後ろをついてくる。

というかなんとなくレキさんが何か感情を見せているような気がする。

俺は少し首を後ろに傾けレキさんを見るとああ、と納得した。

そう言えばレキさんの前でこういった戦地に行くのは二回目だな。

その時俺に向けられた感情が今この時も向けられている。

俺は前を向き早足で歩きながら言葉を口にする

 

「絶対に俺は生きて帰ってくるから…安心してくれ」

 

ちょっと短すぎたかな?

そう思ったがレキさんも察してくれたようだった。

後ろから受ける思いも少し軽くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ行ってくるよ」

 

「おう、気をつけてな」

 

武藤は俺たちが行くところは伝えていないが一応戦地へ向かうことはなんとなく察しているみたいだな。

機材などを積み本来は二人乗りになる予定だったオルクスはその追加機材が俺の電子手帳に入った今ちゃんと三人乗りとなっている。

前方に白雪、中盤にキンジ、後方に俺を置き出発の準備を進める。

前の席でキンジがポケットから砂時計を取り出した。

先ほどキンジから聞いたのだがこの砂時計がアリアの命の残り時間を指示していて全部の砂が落ちてしまうとその時は…

 

…砂は残り半分ほど残っている。なんとか間に合えばいいのだが…

キンジが砂時計をポケットに戻すと同時にオルクスのハッチが閉まる。

それと同時オルクスに主電源がつき皆が皆それぞれの準備に取り掛かる。

全ての準備が終わると同時海中に沈みながらオルクスはスピードを上げていく。

俺が船内で思ったことは絶対に間にあってくれよその一つだった。

 




59弾終わりました。
あの人たちは後3話ほどお待ちください!
ローレライの歌声さん、パラノイヤ(偽)さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第60弾 救いへの分かれ道

パトラ戦の後は皆さんも知っての通りあの人との戦いです。
原作でもそうですがこの物語の序章も一緒くらいですね。
とりあえず早くあの人たちを出したいぜぇ…

自分のFGOもやっと二章終盤にやってきました。
赤セイバーを取りにガチャ引くのもいいですが…個人的にはまとめて引きたい人なのでキャス狐の出る三章以降から引きたい…。
一応無課金なんで召喚石は最初だけ使ってそれ以降は使ってはいませんので大量にあるのですが(これで全部礼装だったらキレそう)


俺たちがオルクスに乗り、学園島から出航してから数時間が経った。

 

「キンちゃん、白野君。ジャンヌに聞いたんだけど、パトラのGは推定25。世界最強の魔女の一人らしいの。しかもピラミッド型の建物がそばにあれば、無尽蔵に魔力を使えるんだよ。パトラはピラミッドを『無限魔力』の立体魔法陣として使ってる。『無限魔力』は日本でも古墳とかを造って研究されてたんだけど、強力過ぎるから禁じられた術なの」

 

黄緑色の片眼鏡のようなMHD(ヘッドマウンドディスプレイ)をつけたままの白雪が高部座席の俺たちに話しかけてくる。

それに反応したのはキンジだ。

 

「そう言えば、パトラも似たようなことを言ってたな。ピラミッドさえあれば自分は無限の力使えるとか」

 

「例えるなら、白雪やジャンヌは普通の銃で、パトラは砲弾無限の戦車みたいなものか。俺のコードキャストも魔力が切れたら使えないし。」

 

「そう。白野君の言う通りだよ。あの魔女はそう言う存在なの。」

 

「そんな奴から取り戻せるのかよ…アリアを」

 

気弱に呟くキンジから、白雪は目を背けるように前を向く。

 

「キンちゃんは…アリアが心配なんだね」

 

白雪の言葉にキンジは何も言わなかった。

 

「なんとなく分かるよ。アリアはキンちゃんにとって、すごく意味の深い子。だから、私も守りたい。それに、アリアとこんな形で決着したくないし」

 

「…決着?」

 

「あ、う、えっと、それにパトラは、スカラベを星伽にも侵入させてたのイロカネアヤメを盗んだのも、たぶんあの女。パトラは星伽の敵でもあるの」

 

そう言えば白雪がいつも持っていた刀持っていないな。

それが盗まれたということは今回の白雪の参戦も予想されていたということか。

パトラってのはそんなに頭がいいのか?

いささか謎だが俺自身パトラをじかに見たことが無いので特に何も言わないでいた。

白雪はごまかすように早口でいい、決着に関してはキンジに触れさせないようにした。

 

その後、船内にあったホワイトチョコみたいな栄養食と飲料水で空腹を満たしながら太平洋を北東へと進む。

 

そして、タイムリミットまで後一時間という所で、アリアが居ると思われる海域に到着した。

速度を落とし、超音波探信儀で辺りを探る。

すると、周囲に巨大な物体の反応が無数にあり、デジタル潜望鏡で確認するとそれは大量のシロナガスクジラだった。

クジラの群れを掻き分けて進み、俺たちはそこにあった建造物に驚いた。

 

「…あ…アンベリール号…!」

 

キンジがそう呟いた。

アリンベリール号。

なんだっけか…どこかで聞いたことが…

…あ、そう言えばキンジの身辺調査をしたときにそんな名前を見たような気がする。

素早く電子手帳で調べるとそれは去年の冬、浦賀沖で沈没しキンジの兄さんの金一さんが失踪した客船だった。

俺は一度キンジを見た。

一度死んだと思われた金一さんが生きていた。

キンジがそれをどう思っているかは目を見ればわかる。

けど、俺はその感情について深く読み取ろうとしなかった。

それが親友としてのできる境地だと思ったからだ。

俺は何も言わずに行く末を見つめた。

ところどころ錆びており幽霊船の様に見える。

かなり改装もされてるみたいだ。

喫水線は沈みそうなほど低く、甲板には巨大なピラミッドがあった。

あれが、『無限魔力』の魔法陣か。

 

…破壊できるか?

俺は電子手帳の礼装である『空気打ち/三の太刀』を見たがすぐに直した。

これを撃てる魔力も復活し実際に振るうこともできるがそのまま撃つとどこにいるかわからないアリアも傷つけてしまうかもしれない。

不確定要素が多い現状、内部調査が必要だと考えたからだ。

 

「分かる、分かるよ。あの中にアリアと、パトラが…」

 

白雪はピラミッドの頂点を見て眉を吊り上げる。

頂点はガラス製で、その中を陽光にキラキラと輝いている。

燃料が切れたオルクスを漂着させるように、アンベリール号の前方に砂で出来たような陸に接舷させる。

陸には十メートルほどはあるパトラ像が左右に二体ずつそびえていた。

 

「かなりアレンジされているけど、古代エジプトのアブシンベル神殿を模してるよ。すごい…全部、魔力で造ってある」

 

これを全て魔力で造っているのか。

無限魔力…どうやら今回の相手も一筋縄ではいかなそうだな。

そう思いながら俺たちは、パトラ像を潜り、ピラミッドの入口のトンネルに入る。

 

中は迷路のように複雑な構造になっていたが、ほとんど足止めを食らわずに奥に進むことができた。

しかし、順調なその足取りも止めるしかない事態が目の前で起きた。

 

「わかれ道か…」

 

そのまままっすぐに進む道と上へと続く階段が俺たちの目の前に現れた。

俺たちは顔を見合わせどうするかを話し合った結果

 

「二手に分かれよう。上にはキンジと白雪が向かってくれ。俺はこのまままっすぐに進む」

 

「ああ…けど大丈夫か?白野。一人にしてしまって」

 

「けどこれが最善の選択だしな」

 

キンジは今ヒステリアモードではない。

キンジには悪いがさすがに一人でパトラ相手はとてもじゃないが荷が重いだろう。

それに白雪はキンジと一緒の方が最大限力を発揮できるしな。

 

「…それじゃあ時間もないし行くとするか」

 

「気をつけてね白野君」

 

「うん。白雪さんも気をつけて」

 

俺たちはそう言葉を紡ぎ合い足を進める。

進む方向は違ってもみんなの気持ちは一つだ。

俺たちは気を引き締めそれぞれの道を進むのだった。

 

 




60弾終わりました。
パラノイヤ(偽)さん、阿刀さん、昆布さん、島田響奏さん、感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。
タマモキャット持っている人許すまじ(涙目)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第61弾 緋色覚醒

今回でパトラ戦最終話ですが…はい、白野君がちょっと…では、投稿します。

十連ガチャ中に三章来てほしいぜぇ…
タマモほしいぜぇ…(禁断症状)


「うん、騙されたな。これは」

 

俺は真っすぐ進んだ道の先はただの砂があるだけの部屋だった。

あ、これ間違い部屋だわと思い引き返そうとしたら大量の砂が入口に落ちて戻ることができなくなったのである。

これは困った、どうしようと思っていたころ多分上に向かったキンジ達が戦っているのだろう戦闘音が響いてきたのだ。

急いで加勢しようかと思い電子手帳から礼装である『空気打ち/一の太刀』を取り出そうとしたら何と砂の中から砂でできた犬頭が出てきたのだ。

なんだなんだと静観していたらどんどんとその犬頭は胴体を作っていき最終的にはアヌビス型の砂の銅像が出来上がった。十メートルほどの。

それが動き出し俺を襲ってきたのだ。

砂のアヌビスの攻撃は確かに強かった。

けど、結局はそれ止まりである。

人間ではないならコードキャストも使うことに躊躇いなんてない。

先ほど取り出そうとした礼装である『空気打ち/一の太刀』を取り出し衝撃波を放つ。

たとえ軽威力のコードキャストでもそれなりの威力があるこのコードキャストは見事砂のアヌビスを無力化するほどの威力を放った。

さらに砂のアヌビスが出るかと思ったがそれ以上出ることはなく今に至るわけだが…

 

「これは上に行った方がいいのか?」

 

さっきから戦闘音が過激になってきたような気がする。

これは急いで上に上がらないと…

また『空気打ち/一の太刀』を入口を塞いでいる砂に放とうとするとまた後ろから音が聞こえてきた。

また敵か?そう思い後ろを振り返ると

 

「き、キンジ?!」

 

何と砂の中からキンジが出てきた。

それもアリアを連れて。

アリアは何か古代人のような衣装をしていて眠っている。

 

「キンジ!アリアは大丈夫なのか?!」

 

俺がキンジ達に駆け寄りながらそう声をかける。

というかこいつヒステリアモードになっているじゃん。

多分アリアの衣装に興奮したんだろう。

何かアリアのこの衣装露出高いし

 

「あ、ああ。一応大丈夫だと思うが…」

 

「今すぐアリアを返してもらうぞ」

 

その声は俺の後ろからかかってきた。

急いで振り返るとアリアと同じ感じの衣装を着た少女がいた。

その少女はあの時海上で見かけた少女と似ている感じがする。

 

「っ!パトラ!」

 

キンジがそう叫んだ。

つまりあいつがアリアに呪いをかけたパトラだと思うが…

 

「…うっ!…き、キンジ?」

 

どうやらアリアも目を覚ましたようだ。

ちらっと見えた感じでは顔色なども悪いというわけではない。

どうやら本当に大丈夫のようだな。

俺が安堵の息を吐く。

しかし、それが隙となった。

 

「邪魔な奴らも多いのう」

 

そう言ったのはパトラだ。

パトラが何らかの言葉を言うと俺の足元の砂が纏わりつき動きを封じる。

 

「ぐっ!」

 

逃げ出そうと足を思いっきり動かすが動く気配すらない。

仕方ないので電子手帳から『錆びついた古刀』を取り出し『gain_con(16)』のコードキャストを使い足をひきぬく。

コードキャストにより筋力が強化された俺の体は簡単に砂から抜け出すことができた。

しかし、それはあまりにも大きなタイムロスだ。

俺が足をひきぬくと同時キンジがパトラに向けてベレッタを放つ。

しかしパトラはよけようとはせずその体で銃弾を受けたのだ。

俺たちは衝撃を受けるがすぐに動揺へと変わる。

何とパトラは砂となって消え去ったのである。

 

「フェイクか!」

 

なら本物はどこに!

 

「こっちじゃ」

 

その声はまた後ろから聞こえた。

急いで振り返るとパトラは古銃を構え狙いを付けている。

照準はアリア

 

「キンジ!」

 

「わかっている!」

 

俺の声にキンジはいち早く反応しアリアをかばうように身を投げ出す。

しかしパトラは照準をアリアに合わせない。

その照準はキンジだった。

 

「さらばじゃトオヤマキンジ」

 

こいつ!最初からキンジを狙っていたのか!

俺は仕方なく『空気打ち/一の太刀』を構える。

威力がとか言ってられないぞ!

しかし俺の照準線上にはキンジ達がいる。

このまま撃ったら確実にキンジ達に当たる。

俺はそこで躊躇してしまった。

この躊躇がまた事態を悪くしてしまう。

アリアをかばったことで対処ができないキンジにパトラは銃弾を打ち出す。

それはキンジの頭部に当たった。

キンジは弾丸を受けたと同時血を噴き出して後ろに倒れた

 

「キンジ!」

 

アリアがキンジに駆け寄る。

その目には涙が溜まっていた。

 

「っ!こいつ!」

 

俺はその時冷静になれていなかった。

威力のことを全く考えず『空気打ち/一の太刀』をパトラに打ち込む。

しかしそのパトラも幻影にすぎず俺のコードキャストを受けたとたん砂に変わり地面に落ちていく。

今すぐパトラを追いたいのは山々だが先にキンジの方へと向かう。

すぐに回復のコードキャストを撃てばまだ間に合うかもしれない!

 

俺は倒れているキンジに駆け寄る

 

「キンジ!目を開けるんだ!」

 

俺はキンジの肩を揺さぶる。

あれ?

キンジは確かに頭部に弾丸を受けて出血しているはずだ。

しかしその頭部には弾痕らしきものはない。

出ている血は鼻血だ。

あれ?何かおかしくないか?

 

「―!ごほっ!ごほ!ふっ…よかったなんとかなったようだな…」

 

目を覚ましたキンジは軽く咳こんだ後何かを吐き出す。

それは弾丸だった。

 

まさかこいつ

 

「お前…弾丸を噛んで止めたのか?」

 

「ああ」

 

こいつアホだろ。

弾丸の初速度は六百キロほどだと言う。

それはたとえ古銃だとしても相当の速度だろう。

それを噛んで止めたのか…。

弾丸を止めたが衝撃波までは止めることはできずそれが鼻の毛細血管を傷つけさらに意識を飛ばしたという。

というかそれだけで済むとかヒステリアモードのキンジ…侮れん…

 

「…な、なんぢゃ…あれは…!」

 

その声を発したのはパトラだった。

また別の場所に現れたパトラは驚愕の表情を示している。

それと同時この部屋の入り口の砂が吹き飛んだ。

そこから出てきたのはカナさんと白雪だ。

俺はまた新たな敵がと思ったが白雪と一緒にいる時点で俺たちと敵対しているというわけではないようだ。

多分カナさんもアリアを殺すことを本来はよしとしていなかったのだろう。

その二人も部屋に入ってきたと同時に驚愕の表情を示した。

隣にいるキンジも驚いている。

つまりこの場にいる全員があるものを見て驚いている。

まあ、俺も驚いているんだが。

その注目の中心にいるのは何とアリアだった

 

「…なんだ…あれ…」

 

それは威光、威圧、神聖なものが感じられた。

アリアは無表情のまま中に浮いていた。

それもほのかに赤い…緋色と言ったところか、その光を全身から放っている。

俺はその光景を見たことがある。

それはあの月の世界で見たことがある…

 

俺の思考途中アリアが行動を起こす。

アリアは指をパトラに向ける。

 

「避けなさいパトラ!!」

 

緋色の光がアリアの指先から飛び出してきた瞬間、カナが叫んだ。

パトラは慌てて腰布を翻して黄金の床に尻をつき浮かび上がった盾の下から滑り台を滑るようにして間一髪で光を避ける。

緋色に輝く光の弾は砲弾のように黄金の大盾を紙のように貫通し、さっきパトラがいた場所を通過して大爆発をおこし緋色の光が室内の全員に降り注ぐ。

それは全てを塗りつぶす閃光

バシュウウウウウウと異音を聞きながら目を開けると青い空が見えた。

今のアリアが放った一撃がピラミッドの上部をゴッソリもぎ取っていったのだ。

音もなく。熱もなく。何の衝撃もなく消滅させた。

室内には壊れたピラミッドの建材、ガラスや破片が降り注ぐ。

唖然として破壊されたピラミッドを見上げていたパトラの黄金の衣装が砂金に戻っていく。

 

「う……っ!」

 

ピラミッドの無限の力に頼ってたから自分の中の力で魔法使えなくなったらしいな

 

「あ、あ、ああっ!」

 

とうとうただの水着姿になってしまったパトラが慌てて両腕で体を隠す

回りの像や装飾品が次々と砂に戻っていく。

アリアの装飾品も砂金に戻りながらアリアがぐらりと無表情のまま倒れるのをキンジがお姫様だっこする。

なんとかなった?ということでいいのか?

するとパトラはさすがにまずいと思ったのか逃げ出そうともがいている。

 

「そーれ♪」

 

その逃げ出そうとしているパトラをカナさんは楽しそうに片手でアリアが入っていた柩を持ち上げるとボーリングのように砂の上を滑らせてパトラの足に当てた。

 

「うあ!」

 

ただの人間に戻ったパトラが柩の中に、ひっくり返る。

ああ、把握。

俺は『空気打ち/一の太刀』を放つ

もちろん狙いは柩だ

 

「こ、こら!何しおるか!わ、妾は覇お……」

 

挟まれては適わないので手足を慌てて引っ込めたパトラの柩にゴオオオオオンと重なった。

白雪に魔力封じのお札をべたべた貼られた黄金柩の中でパトラは出せ出せと暴れていたが

 

「パトラ、おやすみ。ご先祖様と同じ柩の中でね」

 

とカナさんに言われてようやく大人しくなった。

ふぅ……これで今回の護衛おしまい……ああ、疲れた……と俺は地面にどかりと座り込んだ。

あれ?俺ほとんど何もしてなくね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアを抱きしめるキンジを白雪が日本刀で尻をつんつんとついているのを苦笑しながら見ている

まったくこいつらはどこへ行ってもこんな感じなんだな…

俺があきれながらそれを見ていると海を見ていたカナさんがいきなり動揺したかと思うとこちらに走って駆け寄ってくる。

 

「逃げるのよキンジ!急いでここから撤退しなさい!」

 

あのカナさんが取り乱している?!

一体…

辺りは静寂だ鳥も魚の気配すらない。

海が盛り上がる。

 

「あそこよ!」

 

アリアが海面を指差した。

盛り上がり海上に出てきた三百メートルはあるそれは……

白く書かれた『伊』『U』の文字

イ・ウー

 

そして、この潜水艦は武藤達が作っていた模型の原型……ボストーク号

 

「見て、しまったのね」

 

カナが、アンベリール号の甲板に突っ伏しながら言う

 

「そう。これはかつてボストークと呼ばれていた戦略ミサイル搭載型原子力潜水艦。ボストークは沈んだのではないわ盗まれたのよ。史上最高の頭脳を持つプロフェシオンに……」

 

ターンを終えて停止した原潜の艦橋に立っていた男を見て

 

「教授!やめて下さい!この子たちと戦わないで!」

 

カナさんが何がイ・ウーの船橋に向かって叫んでいる。

何も見えないが誰かいるのか?

 

パパ!

 

カナさんが見えざる手に殴られたように跳ね返され真後ろに倒れるのをキンジが受け止める。

発砲は2だ。

 

「おい!」

 

「くっ…!」

 

カナさんは心臓付近から出血していた。

 

「今の……」

 

まったく、発砲の瞬間が見えなかった。

水蒸気が晴れイ・ウーの船橋にいる人物が見える。

 

ひょろ長い痩せた体。

鷲鼻に角張った顎。

右手に持った古風なパイプと左手にはステッキをついている。

イ・ウーのリーダー……いや……

 

「……曾おじいさま……」

 

アリアがかすれ声で言う。

 

そう、奴はシャーロックホームズ1世だった。

その姿は電子手帳で見たことがあった。

その時は二十代ほどの年齢の人物であったはずなのに俺の目に見えるそいつは全く同じ姿をしていた。

こいつ本当に百年以上生きているのか?

まあ、数千年単位で生きている狐とか見たことあるけど…

世界最強の探偵の圧倒的な威圧感を感じながら冷や汗を流す。

これは…本当にまずいかもな…

俺は強大な敵の前で緊張の息をのむのだった。

 

 




60弾終わりました。
はい、白野君はほとんど活躍しませんでした。
次はやっとシャーロック戦ですがその時例のあの力を使いません。
話の流れで宣戦会議のときに眷属側にあの力を見せたくないんですよねぇ…
まあ、しっかり今回の章であの人たちは出しますが
阿刀さん、パラノイヤ(偽)さん、ブレイカ―925さん、rassyuさん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。

自分また新しく連載を始めました。
もちろんメインはこっちなんで更新にはほとんど影響はありませんがもう一つのほうも見ていただくとうれしいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第62弾 武偵の接敵

投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
次回は早めに投稿したいのですがまだ安定しないかも。



「カナ!おい、カナ!」

 

キンジがカナさんに駆け寄る。

カナさんは先ほどシャーロックの狙撃銃で撃たれ胸からどくどくと血があふれだしている。

 

「トオヤマキンイチ!」

 

何とパトラは白雪に封印されていたはずの棺から飛び出してきた。

パトラはあわあわとしながらもキンジからカナさんを受け取り傷の部分に手を当て何か喋り出すとそれと同時パトラの手から光がでてきた。

多分傷を直す呪文だとか何かだろう。

 

俺はそのカナさんに近づいていく。

そしてキンジの隣に付くと

 

「キンジ、ここは俺に任せてくれ。お前は…」

 

そこで俺は敵の姿を見る。

シャーロックは余裕の表情でパイプをぷかぷかとふいている。

…余裕の表情が何かと癪に障るが、ここはキンジに任せるか。

そこで俺の耳にかすかに声が聞こえる。

カナさんが何かキンジに耳打ちしたのだ。

その言葉を聞いたキンジは決心を固めたようでこの場から離れた。

 

俺はカナさんの隣に付き電子手帳を取り出す。

このくらいならコードキャストを使えば一発でなおすことができる。

しかし、それを抑えたのはカナさんだった。

 

「…!駄目だっ!岸波。お前の…それをしたら…完全に治るんだろう?」

 

「それはそうですけど…」

 

「なら俺を完全に直さないでくれ。パトラ頼む」

 

俺の電子手帳を持つ手を抑えるカナさんにボクは動揺した。

今でもどくどくと血があふれだしているのだ。

 

「大丈夫だ。これがヒステリアサヴァンシンドロームの特異点につながる!」

 

これがヒステリアモードの?

そう言えばさっきからカナさんの口調じゃない。

ヒステリアモードが切れているのか。

多量の出血でヒステリア性の血流が途切れているのか。

確か金一さんのヒステリアモードのきっかけは女装…

 

ああ…なるほどね。

つまりヒステリアモードになるには方法と種類があるってことか。

その一つが多分出血による命の危険とかなのだろう。

シャーロックは多分普通のヒステリアモードでは勝てないと言ったところか。

 

―!

うおっ!

船が揺れたぞ!

それと同時に船のちょうど側面の海水が吹きあがった。

これは魚雷か!

それと同時イ・ウーがアリンベール号に接舷する。

…こいつむちゃくちゃかよ!

 

どんどん海水が入り込んでくるアリンベール号にパキパキと音がしてくる。

それはまるで水が凍るような音で…

 

音の示す通り海水が凍っていた。

シャーロックが海面を凍らせそのうえを歩いてアリンベール号に近づいてきている。

氷の超能力…ジャンヌさんの超能力なのか?

そう言えばイ・ウーってのは互いに切磋琢磨し合って成長していくと聞いた。

多分シャーロックがジャンヌさんの能力をコピーしたと言ったところか。

それがイ・ウーの頂点に立つ男なら部下の能力を全部使えるとかな。

そこまで考えたところでシャーロックは氷の道からアリンベール号船上へと足を踏み入れた

 

「もう会えるころだと推理していたよ」

 

ただの言葉。

ただの言葉なのに俺にはこの男がとんでもない力を持っていることが理解できてしまった。

これが人類最強の探偵…

 

 

…ってだからなんだ!

俺はローマの華の皇帝や人類最高の執事、世界最強レベルの大妖孤や英雄の中の英雄王とも知り合う奴だろ!

それと比べたら人類最強の探偵がなんだ!

この程度乗り越えられなければあいつらに合わせる顔が無い。

俺は金一さんのことはパトラに任せることにして隣から立つ。

そして歩き出す。

俺の親友の元に。

たとえシャーロックのような探偵でもこれまでの悪行だ。

電子手帳でも書かれていないような悪行も多々行われていたことだろう。

それがたとえ人命を落とすことだとしても。

ならそのトップであるシャーロックはその行為を容認していたということだ。

たとえ自分の手で行われていないことでもそのようなエゴを容認することはできない。

シャーロックはさばかなければならない。

これが俺の結論だ。

ま、最終的な決定権はこいつが持っているんだがな。

俺は親友の隣に立つ。

…キンジの奴珍しくいい顔になっているじゃないか。

 

俺はシャーロックをしっかりと観察する。

そして気付いたことが一つある。

それは何故このタイミングでシャーロックが現れたということだ。

それにはさかのぼると一つの現象が結びつけられた。

その原因を俺は目で見た。

未だそのピンク色のツインテール頭はわなわなとふるえている。

まあ、何しろ今まで目標としてきた憧憬が目の前に現れたのだからな。

動揺するのは当然だろう。

そのアリアは覚えてはいないが先ほどパトラ戦の時に見せたあの緋色の光。

それが関係していることは明らかだ。

これまでにあんな光は見たことない。

予想だがこれはシャーロックが何か行った結果なのだと思う。

シャーロックも何か知っているような目をしているし。

というかあの目…少し違和感がある…

いいや、今は集中しないと。

敵の狙いがアリアにあることが分かったなら少し気にかけておかなければ

 

「卓越した推理は予知に近づいていく。僕はそれを『条理予知』と呼んでいるがね。つまり僕はこれを全て予め知っていたのだ。だからカナ君……いや、遠山金一君。君の胸の内も僕には推理できていた。」

 

『条理予知』ね。

未来予知とまではいかないが未来想像といったところか。

けど、それでもほとんど合っているからそこは探偵なんだなと思う。

すると、シャーロックがそこまで言った後俺の方を見る。

…?何なんだ?一体?

 

「アリア君」

 

はっとして見るとシャーロックがアリアを呼んで目があう

 

「時代は移っていくけど君はいつまでも同じだ。ホームズ家の淑女に伝わる髪型を君はきちんと守ってくれているんだね。されは初め、僕が君の曾お婆さんに命じたのだ。いつか君が現れることを推理していたからね」

 

アリアのツインテールを見ながらシャーロックが近づいていく。

 

「っ!」

 

「待て、キンジ。まだ動けない」

 

俺がキンジに制止の声をかける。

仕方のないことだ。

シャーロックには全く隙がない。

あるとすればもう少し待った後だ。それでもいけるかどうかはわからんが。

 

「アリア君。君は美しい。そして、強い。ホームズ一族で最も優れた才能を秘めた、天与の少女、それが君だ。なのにホームズ家の落ちこぼれ、欠陥品と呼ばれその能力を一族に認められない日々は、さぞかし辛いものだっただろうね。だが、僕は君の名誉を挽回させることができる。僕は君を僕の後継者として迎えにきたんだ」

 

「……ぁ……」

 

完全に言葉を失っていたアリアが小さく声をあげた。

 

「おいで、アリア君。君の都合さうよければおいで。悪くてもおいで、おいで。そうすれば君の母親は助かる」

 

アリアがカメリアの瞳を見開く。

まずい、アリアにその言葉は……

 

「さあ、アリア君」

 

シャーロックがアリアに手をかけようとしたその時

 

「今っ!」

 

俺は飛び出した。

少し違和感があるがこのタイミングがシャーロックにかすかに隙ができるタイミングだ。

ほとんどアリアに注意が行っていたからな。

俺は勢いよく飛び出し絶招歩法を放つ。

しかし、シャーロックは反応した。

俺の拳をシャーロックは掌で外側にずらす。

俺の拳の軌道はまっすぐから曲線へと変わりその拳は空を切った。

 

しかし、俺はそのままでは止まらない。

俺は右の拳を出しそれを左に逸らされた。

つまり、俺の力の向きは左側に向けられた。

そこで俺は勢いをそのまま流し今度は左肘をシャーロックにぶつける。

ほぼ攻撃の二倍の威力を俺の肘から放つ。

 

しかし、その攻撃はシャーロックに軽々と止められる。

が、まあ俺もそこで止められるのはほとんど予想していた。

俺の目標はシャーロックに手で防御をさせることだ。

シャーロックは俺の左ひじの防御に右手を使った。

つまりシャーロックは左手を出したため体制は少し右向きなのだ。

俺の肘打ちの威力を上げたのは普通のままじゃ体制を変ええることすらかなわなかっただろうからな。

完全に俺の肘打ちを止められたので俺も完全に止まった状態になる。

それにより新たな方向への動きがしやすくなった。

 

俺は左足を使い震脚を放つ。

しかしシャーロックはそれをステップするかのように回避する。

っち!こいつ!

しかしここで焦ってはいけない。

相手に乗せられて攻撃を単調にしてはいけない。

俺は斧刃脚を右足で放つ。

シャーロックは俺の右足を縄跳びを飛ぶようにして片足ずつ跳びそれを避ける。

しかし、ここで緩めてはいけない。

たとえ片足ずつでも少しは跳んでいるのだ。

さすがに少しは回避に支障はあるだろう。

そして俺は両膝で連環腿を放つが、それもシャーロックはポンポンと回避し俺にまるでサッカーボールを上にけり上げるように蹴りを放ってくる。

 

俺は避けるか迷ったが利用することにした。

俺も連環腿の技を放った後で少し宙に跳んでいる。

シャーロックのけり上げる蹴りを俺は足の裏で受ける。

そのシャーロックのけり上げた力は俺の足を駆使しそれを俺の前の方に剃るようにして力を受け流す。

それにより俺はバク天をするかのように空中で後方回転をしその威力でシャーロックを沈めようとして…

 

 

 

…それをやめざる終えなかった。

何と俺がシャーロックに少し背を向けた間に何とシャーロックは近くにいたアリアを引き寄せ盾にしていたのだ。

俺の攻撃はアリアに当たろうとしていたのだ。

俺は動揺してしまい空中で体制を崩した。

それと同時俺の回転スピードは落ち地面に落ちる。

俺は手を出し足を出して地面に立ちバックステップで距離を取った。

 

アリアを盾に取られていては攻撃しづらい。

そう考えての後退だった。

 

アリアの隣に立ち俺は夏場の海上で汗ばんだ滴る汗をぬぐう。

これは一筋縄では足りなさすぎる。

威力など考えないでコードキャストを使わなければならないのかもしれないな。

 

沈みゆく船の上で敵同士見合う高校生達は戦況の苛烈さを改めて認識するのだった。

 

 




62弾終わりました。
ちょっと中途半端ですがここで終了。
前回がちょっと白野君の戦闘が少なかったので緊急処置回でした。
阿刀さん、パラノイヤ(偽)さん、三の丸さん感想ありがとうございます。
意見・感想おまちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第63弾 予想外

投稿が遅れてしまい申し訳ない。
今日からは多分安定して投稿できそう。


ようやくfgo二章クリアしたのですが、思い返してみるとエリザがあいつに及ばないけどとかたまに夢見るあいつとか言っていた気がしたのですがそれってまさかあの人ですかねぇ…
三章でキャス狐とエリザが出会ったらなんかすごいことなりそう。
まあ、キャス狐が白野と出会っていたらの話ですが


「…ははっ」

 

大きく下がった俺はアリアを右手で抑えているシャーロックを睨みつける。

隙のない動きに正確な反撃。

まったくこれは本当に英霊クラスのサーヴァント級じゃないのか?

俺は自傷気味に苦笑いを洩らす。

 

「岸波白野君」

 

シャーロックが俺の名前を呼ぶ。

その声はいかにも楽しそうでまるで子供が面白いおもちゃでも見つけたような、そんな声

 

「君はとても面白いね。出生時から壮絶な人生を歩み利用され続けても決して自分を見失わず正しい道を選び進んでいる。」

 

なっ!

こいつ…俺の過去を知っているのか?

いや、それはあり得ないぞ…あそこは…生き物が認識することすら放棄された場所なのに…

どこからか嗅ぎ付けたのか?

そんな俺の疑問をよそにシャーロックはまた面白そうに話を進める。

 

「それは普通の人間には到底なしえないことだ。それなのに笑顔を忘れず仲間と共に今最大の壁を越えようとしている。はずなのだが…」

 

そこでシャーロックは逆に興味心身な顔で俺の顔を見る。

 

「君は達観しすぎている。まるでこの程度の壁くらいいくらでも乗り越えてきた顔だ。君の類稀なる観察眼、度胸、冷静さは君の年齢では到底なしえないほど出来すぎている」

 

…さすがだな。

これが世界最強の探偵シャーロック・ホームズ。

月の世界を知らないから完全には知りえないことなのだろうがきっかけが掴めないところまでお見通しというわけか…

が、シャーロックは声根を一つ下げて言う。

 

「なのに、わからないのだよ」

 

何を言っているんだ?

 

「君は分からない。僕が『条理予知』という能力を持っていることはさっき話したろう?」

 

「…」

 

俺は無言で肯定を示す。

 

「それなのに君に関してはまったく予知できない。…いや、読もうとしたのだが何もないのだよ。しいて言えば真っ白な空間だ。君の謎の力にしてもそう。君はコードキャスト?と言っているようだが超能力でも無ければ技量というわけでもない。君は僕でもわかりえない真っ白な謎なのだよ」

 

「っ!」

 

こいつでも俺の思考は読めないと言うのか?

…なんだか考えようによっては俺、何も考えていない馬鹿のように聞こえるのだが…そういう意味ではないだろう…いや、ないと信じたい。

思考が読めない…この上ではとてもありがたいのだが、一つ聞きたいことができた。

 

「シャーロック。お前は俺以外に予知ができない人間とであったことがあるか?」

 

これは一種の確認要素にすぎない。

シャーロックは基本誰でもその予知が効く。

それで俺に効かない。

何が違うのか。

それは俺がこの世界の人間ではないからだと思う。

理解の範疇を超える人間の予知はできないと言ったところか。

俺が月の世界から来た住人。

その前提を知りえないと予知できないのかもしれない。

それならほかにも読めない人間がいたらその人は月の関係者かもしれない。

それがわかれば俺が知りたかった真実、俺が何故この世界に来たのかわかるかも知れない。

俺は期待を込めた眼差しでシャーロックを見つめる。

が…

 

「…」

 

シャーロックは瞳を閉じて閉口している。

いや、答えづらそうにしている?

しかし、少しの間を置きシャーロックは喋り出した。

 

「…ああ、一人だけ知っている」

 

「っ!ならそれを!」

 

「…っと、これ以上はいけないな。あいにく私も時間が無いものでね」

 

こいつ…わざとはぐらかしたな。

シャーロックはこれ以上話すことはないというようにアリアのツインテールを梳いている。

 

…まあいい。話さないなら逮捕した後に聞き出すだけだ。

 

「…話しは済んだか?」

 

「金一さん!」

 

金一さんは添えるように腹部に手を置いている。

出血は…そこまで多くないようだがそこまで長く戦闘は出来そうにないな。

しかし、さらに驚いたのは金一さんのオーラだ。

金一さんの素顔は童顔だがそこから感じられる覇気、オーラが完全に違う。

これがヒステリアモードの強化版か。

 

「どうやらこっちも出来上がったようだな」

 

そう言って金一さんは流し眼で後ろを見る。

俺もつられて後ろを見るとそこにはキンジの姿が…?

 

こいつも変化している?

いつものヒステリアモードの雰囲気ではない。

少し…怒っている…?

 

キンジがヒステリアモードになると基本キザになる。

それが怒っているなんて普通じゃないぞ。

 

「キンジ。これがヒステリアモード・ベルゼ。通常のヒステリアモードはヒステリア・ノルマ―レという。そちらは女を守るために引き起こされるヒステリアモードだがお前のそれは女を奪われたときに発現されるヒステリアモードだ。女を奪い返すために力が発揮される。ノルマーレよりも効果はより強いが…」

 

ああ、なるほどな。

確かにそのヒステリアモード・ベルゼは余裕を感じられない。

しかし、それがあまりにのめり込みすぎている気がするのだ。

つまり周りを見きれていない。

自由にさせ過ぎたらアリアにまで被害が出そうだな。

隣に来たキンジに俺は冷静さを忘れさせないようにさせる

 

「キンジ。あまり熱くなりすぎるな。少し冷静になれ」

 

「わかっている。冷静になりながらも常にホットにだろ」

 

うん。口調はやっぱりヒステリアモードだな。

一応大丈夫なのかもしれないがサポートはさせてもらうぞ。

 

「いいか。目標はまずアリアの奪還。シャーロックの逮捕はその次だ」

 

「わかってるよ!」

 

そう言うとキンジは跳び出す。

こいつ本当に冷静になりきれてないな!

キンジはベレッダを撃つ。

 

が、シャーロックは懐から銃を取り出しそれを発砲する。

するとキンジとシャーロックの空間の間から金属音がしたかと思うと鉛玉が地面に落ちる。こいつ、銃弾に銃弾をぶつけて止めたのか!

キンジはそれを気にせず銃弾を放ち続ける。

その全てを止めたり弾いたりあまや弾丸を押し返したりしている。

しかし、このままでは均衡状態。

いや、シャーロックの方に分があるか。

未だ余裕の表情を崩していない。

 

そこで金一さんから声がかかってくる

 

「白野君。君はあのシャーロックになんとか一発決める方法はあるか?」

 

「え?」

 

「多分俺があの中に入ってもシャーロックは押し切れない。奴には『条理予知』がある。見切られるのも必須だ。」

 

「…そこで俺の出番と」

 

「ああ。シャーロックの『条理予知』が効かない君なら、勝利への道が開けるかもしれない」

 

確かにあいつのチートスキルをなんとかできるのはこの場に俺しかいない。

それに俺は奴に見せていない技を持っている。

完全なる予想外、予定外で崩すしかない!

 

「わかりました。タイミングはお任せします」

 

俺がそう声をかけると金一さんは銃弾荒れる戦場へと走り出す。

俺は対抗策を持っている。

コードキャストの最終版、つまり高威力のコードキャストだ。

『空気打ち/三の太刀』これならいけるかもしれない。

誰にも見せたことないし使えるようになったのはつい最近だ。

つまりこの技なら完全な予想外。

勝利への道だ。

 

後は待つだけ。

俺は目の前の銃弾戦を見守るのだった。

 

しばしの弾丸の交錯。

 

というかこの人たち銃の扱い上手過ぎませんかね。

銃なんてほとんど触ったことないから今度習ってみたいものだ。

 

銃弾を撃ちあっているともちろん弾切れを起こす。

まあ、リロードしなくてはならないのだがこいつら速すぎだろ…

ほとんど手元が見えないぞ…

 

しかし、その動きが少し変わったのが見えた。

リロードの前動作で今まで触っていなかった右ポケットに手を入れたのだ。

そして何かを取り出したかと思うとそれをマガジンに込める。

あれが金一さんが用意した…

 

俺はいつでもコードキャストが使えるように電子手帳から礼装である『空気打ち/三の太刀』を取り出す。

大丈夫だ。一発くらいなら放てる魔力はある!

 

金一さんがマガジンをセットした銃をシャーロックに向け、撃った。

 

シャーロックはそれを当り前のように銃弾を当て止めようと…

 

が、銃弾はただ止まることはなかった。

 

 

ドオオォォォン!

 

 

爆発した?!

 

あれは武偵弾か!

武偵弾とは普通の銃弾とは違い特殊な力を持つ銃弾である。

しかし、その構造は複雑で造るには職人が手作りで造られるためとても高級品だとか。

その武偵弾をこのタイミングで使った。

なら今放つしかないだろ!

 

魔力を集中する。

俺の体内に渦巻く魔力を術式という形で放出する!

 

そして『空気打ち/三の太刀』をシャーロックに向けて撃ちだした。

炸裂弾の爆発の煙幕が俺のコードキャストの衝撃波が四方に押し流す。

その前にはシャーロックが。

完全に予想外の攻撃。反応できるはずがない。

その衝撃波がシャーロックに当たろうとした途端!

 

「ふっ!」

 

何とどこからか出したのか杖を取り出し俺のコードキャストを受け流そうとしている!

しかし、そこは最高威力級のコードキャストだ。

すぐに杖からはバキバキと音がして折れそうになるが…

 

「なっ!」

 

俺は驚愕した。

何とシャーロックは俺の衝撃波を受け流したのだ。

外れた俺のコードキャストは海面にぶつかる。

海水が数十メートルにわたって撃ちあがる。

パラパラと海水が水滴となって俺たちに降り注いでくる。

 

「な!何で反応が…!」

 

シャーロックは俺の予知はできないのではないのか!

そんな俺の反応を面白そうに見て解説をし始めた

 

「そうだよ。僕は君に予知をすることはできない。だが…」

 

シャーロックは手に持っていた杖を突きだした。

俺は杖かと思っていたがなんとその中には剣がついていた。

 

「君たちの予知はできるんだよ」

 

その剣先を向けられたのは金一さんとキンジ?

…そういうことか

 

「ちっ!つまり俺らから予知をして白野の行動を読んだということか…!」

 

つまり俺の行動を予知することは出来なくとも周りから予知をすることができるってことか!

 

しかし、これはまずい。

完全に手の内がばれてしまった。

これはそう簡単に勝つことも…

 

「けど、作戦は上手だったよ。まさかジョーカーとなる白野君を最後まで使わず決定的瞬間だけ使い誰も知らない技を使って僕を倒す。僕も君と一対一だったら負けていただろう。そんな君には僕からプレゼントを上げよう。」

 

するとシャーロックは杖というか剣を腰に回す。

それはまるで鞘に納めずに居合切りを放つかのような格好だ

 

「君の技は普通の技ではないから概念から似せることはできないが、似たような技は出来るようになったんだよ。」

 

シャーロックの雰囲気が変わる。

 

「君は面白いが同時に僕の計画の最大の壁だと言ってもいい。だから…」

 

シャーロックが動き出す

 

「眠っていてくれ」

 

その剣は居合切りの要領で剣を振る。

 

―っ!

 

反応ができなかった。

振り抜いた剣からは衝撃波が跳び出しそれが俺の方へと飛んできた。

それはまるで俺のコードキャストのようで…驚いてしまい反応が遅れた。

 

「ぶっ!」

 

衝撃波は軌道を描き、俺の顎にぶつかった。

顎から衝撃が伝い頭が揺さぶられる。

 

あれ…意識が…

頭が揺らされたときに脳に衝撃が入った。

それにより軽く脳震盪を起こしてしまった。

 

揺れる意識の中キンジ達を見る。

 

ごめん…。頼んだ。

 

声に出たのかは分からない。

けど伝わりはしただろう。

そして俺は意識を落とした。

 




63弾終わりました。
とある小説の制作者さん、スライバさん、シオウさん、パラノイヤ(偽)さん、阿刀さん、三の丸さん、恋姫夢想さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第64弾 情熱の救済

最初に考えていた構想が何か違うなと修正していたら時間がかかってしまった…

けど、今回ようやくあの赤の皇帝が…!


 

『―回路を確保しました』

 

 

 

 

 

 

 

『―魔力情報更新終了しました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―新術式インストール中…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―終了まで残り10分』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キンちゃん!」

 

「グハァァ!」

 

は、腹に衝撃が…!

俺の腹に衝撃を与えた人物である白雪は

痛みと共に目を覚ますと俺の耳に轟音が響いてきた。

何の音かと見てみるとそこには炎の本流。

目の前でロケットが飛んで行こうとしている。

 

「ICBM…!」

 

大陸間弾道ミサイルだと…!

けど、あんな形だっけ?

なんかだいぶ軽量化されたような形だけど。

さらによく見てみるとICBMの側面には

 

「キンジ?!それにアリアまで!」

 

あいつら何やってんだ?!

あいつら側面に何かを突き立てて上って行っている。

上に何かあるのか?

 

「白雪どうしてキンジ達はあそこに?」

 

聞いた所によるとどうやらキンジは連れ去られたアリアを助け、そのあとシャーロックが出てきたかと思うとアリアの秘密を話したらしい。

それは先ほどパトラ戦の時にアリアが使ったあの光について。

詳しい話は省かれたが緋弾と言うものらしい。

シャーロックは特にキンジに詳しく話していたらしいから後から聞くとするか。

するとシャーロックがアリアを緋弾の所持者にした原因を受けたことによりキンジがきれて一騎打ちを仕掛けたとか。

押されていたかと思ったらキンジの機転により何と勝利を収めたらしいのだ。

しかし、シャーロックを捕らえるには至らずあのICBMに乗ってどこかへ行こうとした所アリアもそれについて行きあのような状態になったらしい。

 

…うん。超展開過ぎてよくわからんがキンジ達は多分大丈夫だろう。

 

「それでね!それでね!キンちゃんが…!キンちゃんが…!」

 

「はいはい、どうどう。抑えて白雪」

 

焦り暴れる白雪を抑え俺は上空を見る。

そうこうしている間にもICBMは空へと上って行く。

もう雲を突き抜けそうな距離だ。

が、俺はそう心配するような心情にはならなかった。

それはなんとなく勘であって決定的なことではないけど何となくあいつらなら大丈夫なような気がするんだよなぁ…

 

「大丈夫だって白雪。キンジ達なら絶対生きて帰ってくるさ」

 

「…本当?」

 

涙目+上目使いで俺を見上げてくる。

…うん、それ一男にはちょっと刺激が強いんでやめてほしいんすよ。

せめてキンジにしてくれと思いながら俺は返答をする。

 

「あのキンジが白雪を残して先に逝くと思うか?」

 

「…そうだよね!キンちゃんが私を置いてどこかに行くことなんてないもんね!」

 

…重いデス。

けど、白雪はそこで信じて待つよ!と言って落ち着いたからよしとしておこう。

また上を見てみるともう小さな光が見えるだけで細かなところは何も見えない。

というかもう大気圏くらいまで行ったと思うぞ。

…うん。さすがに少し心配になってきた。

 

「白雪、どこかに小型ボートみたいなものないか?」

 

もうあれくらいの高さになったら降りるなり落ちるなりしてくるだろう。

しかし、ここは海の真ん中だ。

必然的に海上に落ちることになるから救出に行かなければならない。

アリアは泳げないしキンジも戦いで疲弊しているだろうからせめて落ちてきたときに救出に向かおうと思い提案したのだが、答えたのは別の方向からだった。

 

「…イ・ウーに何隻か救助用のボートがあったはずだ。それで向かうといい」

 

そう答えたのは金一さんだった。

胸の撃たれた傷は出血が止まっている。

どうやらパトラの治療がうまくいったみたいだ。

しかし、その言葉からしてみるとどうも金一さんはキンジの救出に向かわないみたいだ。

どうやら金一さんも俺の疑問に勘づいたらしく返答をしてきた

 

「ああ、俺らは戻らない。やらなくてはならないことがあるからな」

 

「それって…」

 

「聞くな。それは無粋ってものだ」

 

だろうな。

金一さんの表情は完全に将来を見据えていた。

これから何か大切な事態が起こるような表情だ。

今そういうことになっているならそれを引き起こしたのはシャーロックが負けたという事態が関係しているだろう。

つまりシャーロックに勝ったキンジに何らかの事態が起こるということ。

金一さんは多分結構お兄ちゃん気質だからキンジのために走り回ることになるだろう。

まったく、キンジもいいお兄さん持ったな。

 

俺は金一さんに頭を下げる。

たとえお兄さんでも俺の親友を助けてくれる人だからな。

頭を下げるのも当たり前だろう。

 

金一さんはそんな俺を苦笑気味に見てからイ・ウーへと歩みを進める。

あ、そう言えば沈みかけているんだっけ?

アリンベール号はほとんど沈み足がつく足場ももうそろそろなくなるだろう。

 

「そろそろ行きますか」

 

そう言って俺が白雪に声をかけ駄出ボートへと向かおうとしたところ―

 

 

ズドォォォォオオオン!

 

 

「…?!何の音だ!」

 

その音は沈んでいるアリンベール号の下から響いてくる。

しかし、その音は魚雷のような爆発音ではなく、まるで叩きつけるような、殴りつけるような鈍い音だ。

 

またもや揺れる船上。

 

「白野君!早く離れないと!」

 

白雪から声がかかる。

確かに沈みかけの船に攻撃を仕掛けてくるからには速く離れたほうがいいかもしれない。

異常を察知したのは金一さんたちも同じだった。

未だ残っているイ・ウーへと向かおうとしてまたこちらに戻ってきた。

 

「これはどういうことなんだ?!」

 

金一さんたちでも不測の事態に動揺している。

俺は警戒しながら海面へと近づいていく。

足元はすでに水に濡れ、踝まで水が入ってくる。

海水面を覗き込むと、海中は崩壊しているアリンベール号の破片と数匹の魚しか見えない―!

 

何かいた。

それは大型魚のような形でもなかったしアリンベール号の破片のような無機物の動きではない。

これは…

 

 

 

…こっちに来る!

 

「皆離れて!」

 

俺は叫び急いで船上の中心側へと足を進める。

俺の焦りの声が伝わったのか皆俺に付いて船上の中心へと寄る。

 

数秒の沈黙

 

 

―!

 

 

それは爆発するようなものではなく、海水面から何かが出てくるような水の持ち上がりだった。

見えたのは筋肉質で防御が強そうな青の装甲。

その腕はどんな障壁でも破壊するかのような剛腕。

その顔はまるで悪魔のような全てに恐怖を与えるような凶顔。

 

「こ、こいつは!」

 

月の聖杯戦争の時あるキャスターのサーヴァントが俺たちの妨害をするかのように作り出したエネミーであった。

しかし、その体格は月の世界での2メートルほどの大きさには収まらない。

 

「こんなにでかかったか?!」

 

それはあの月の世界の大きさより一回り大きい体格をしていた。

 

出てきた疑問は数知れない。

何故、このタイミングで出てきたのか?

何故、俺たちの前に出てくるのか?

 

 

 

何故…勝てるわけがない相手がこの場に出てくるのか?

 

 

 

あの時倒したエネミーはサーヴァントの力を持ってしても苦戦を強いられ勝利した。

言うなれば英霊と大差ないのである。

 

ぶっちゃけ言えば勝てない。

勝てるわけがない。

ランドマークタワーの上で少しは経験値がもらえたがそれもあの時ほど力が戻ったわけでもない。

ダメージを与えることすらままならない状態なのだ。

だから諦めて逃げるか。

それは出来ない相談である。

 

あのエネミー、見た目に反して意外と動けるのである。

まあ、英霊と戦えるだけあってその敏捷性が高いのは当然なのだが。

つまり逃げようと思っても原潜のスピードでは撒けない。海上の孤島となっているのだ。

 

「あれは一体何なんだ?!」

 

金一さんが驚愕の声をあげる。

まずいな…

この前戦ってみてわかった通り月のエネミーにはこの世界の住人の攻撃は当たらない。

言っては悪いが攻撃が当たらないなら邪魔になる。

呼び込んだのは悪いがまた離れてもらおう。

 

「金一さん。今すぐ皆を連れてイ・ウーで離れてください。こいつは俺が足止めします。今すぐ離れて」

 

「馬鹿を言うな!あいつ…今までにない曰くさを感じる。俺も加勢するぞ」

 

「だからですよ。俺はあいつの正体は知っています。あいつには普通の攻撃は当たらないんですよ」

 

「それこそどういうことだ。…白野の言うからにはお前の攻撃しか当たらないみたいな言い方だな」

 

「ええ。詳しくは長くなるんで話せないんですけど…ここは俺に任せてくれませんか?」

 

金一さんは俺の目を見る。

多分俺の言ったことが本当かどうか俺の目を見て判断したのだろう。

一つ間を開けると金一さんが一歩後ろに下がった。

攻撃が当たらないなら邪魔になるだけ。それは金一さんも分かっているはずだ。

理解はしていないけど納得はしたようなものかな。

金一さんは振りかえりイ・ウーへと向かおうとする。

 

「…油断するなよ」

 

「…ええ」

 

俺は電子手帳から礼装である『錆びついた古刀』と『守りの護符』を取りだし『gain_str(16)』と『gain_con(16)』のコードキャストを実行する。

この二つ共に軽威力のコードキャストであるがこれには理由がある。

まず、俺自身の魔力量の問題だ。

先ほどのシャーロック戦の時高威力のコードキャストが予想以上に魔力を消費したのだ。

多分連戦の魔力使用により俺の予想より魔力が回復しなかったのだろう。

 

それともう一つ。

それは完全に意味がないからである。

たとえ高威力のコードキャストで身体能力を強化しても俺自身の元の力量の低さで上がったともいえない上昇量なのだ。

 

つまり勝つことができない戦いである。

俺はただ時間稼ぎをするだけだ。

イ・ウーが完全に離れたら俺も何とかして脱出をする。

方法は考えていない。戦いながら考えるだけだ。

 

拳を構える。

目の前のエネミーは荒い息を吐いている。

 

膠着状態の場で唯一する音は波風の音だけだ。

拳が震え額から汗が出てくる。

防御系のコードキャストを使ったとしてもそれはただの気休め。

一発食らっただけでもアウトだ。

 

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

―――!

 

 

飛び出す。

エネミーは待ちかまえ突進してくる俺に拳を出してくる。

しかし予想通りだ。

聞こえるのは風を凪ぐ音。

その音の先にあるのは俺の頭だ。

それをしゃがむことで避け…足でけり上げる!

俺の蹴りはエネミーの腹に当たり一歩後ろに歩かせた。

しかしダメージが入った感覚はない。

エネミーも俺のひ弱な打撃を受け笑っているように見える。

 

むかつくが…今は、時間稼ぎの時だ。

俺はまた打撃を与えるために拳を突き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ時間が過ぎたかわからない。

俺の感覚では膠着状態で数時間時間が経った感覚だがさっきちらっとイ・ウーが見えた時ここからぎりぎり見えるくらいだった。

 

もうそろそろいいだろう。

実はついさっきこの場から退避するための方法を思いついたのだ。

これもさっき見えたのだが海上に俺たちが乗ってきたオルクスが見えたのだ。

すでに燃料切れなのだが実は緊急事態用に俺の電子手帳に一リットルほどガソリンを入れているのだ。

それだけでは日本に帰るとまではいかないがこの場を離れることくらいはできる。

そのあとは救助を待っていればなんとかなるだろう。

 

後はこいつをどうにかして隙を作るだけだ。

この広い海の真ん中だ。

地上で悪さをするどころか地上まで行くこともないだろう。

 

俺は電子手帳から『古びた神刀』を取り出し『gain_str(32)』のコードキャストを使う。

それにより筋力が大幅に上がるがもうすでに魔力は空っぽだ。

ここで決める!

 

 

エネミーが拳を突き出してくる。

目で追えないほど速いその拳圧はほとんど勘で避ける。

 

「はぁああ!」

 

箭疾歩を放つ。

エネミーは数歩下がる。

追いうちをかけるように鉄山靠を放つ。

またエネミーは数歩下がる。

エネミーはカウンターで裏拳を放つがそれをジャンプすることでかわし斧刃脚を放つ。

またまたエネミーは数歩下がる。

 

打つ打つ打つ。

下がる下がる下がる。

 

なんとか連撃を仕掛けエネミーを後退させる。

後数メートルで海面に出る。

 

こいつを何とか落とすのだ。

それなら少しは時間もできオルクスの燃料補給もできる。

オルクスのスピードならなんとか逃げ切れるかも知れない。

 

もう何度打撃を与えただろう。

だが海水面はもう目の前だ。

これで、決める!

 

 

 

 

 

 

 

 

―!

 

声は出なかった。

ただ感じるのは無力感と激痛。

俺が大きく突き出した絶招歩法は敵エネミーが完全に掴んで止めていた。

俺はなんてミスを犯してしまったんだ…。

敵を押し出さなければならないと焦り攻撃が単調になってしまったのだ。

エネミーも強敵になると頭が回る。

完全に読まれてしまった。

腕を掴まれたことで右腕はもう感覚は無かった。

そのあと感じる腹部の衝撃。

 

ただ殴られたのだ。

それだけで腹部は穴が開く。

衝撃と共に吹き飛ばされ俺は反対側の海に落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が遠ざかって行く。

 

 

体がうまく動かない。

どんどん沈んで行っているようだ。

 

 

 

 

俺は…このまま死ぬのか。

 

 

 

 

 

『――――――!』

 

 

 

考えてみればこれが当たり前のことだ。

勝てるはずもない相手に時間稼ぎをし、仲間を助けたのだ。

それで俺の命一つで救えたのならそれも幸運だ。

 

 

 

 

 

『―――奏――!』

 

 

 

 

 

だからもう眠ってもいいよな。

頑張ったのだ。

 

このまま眠って…全てを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『目を覚ますのだ!奏者よ!』

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえた。

何もないこの海の底で声が聞こえるわけがない。

きっと幻覚、幻聴だ。

ただ、目を閉じて終わりを待つだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待つだけ。

 

 

 

なのに、どうして俺は手を伸ばす?

 

鈍い思考で考える。

…俺はまだ生きようとしているのか?

 

 

 

 

勝てるわけがない/それは当り前だ俺は弱いから

 

もう役目は終わった/何を勝手に終わらせている

 

もう何も考えられない/考えるくらいなら行動を起こせ

 

 

 

 

 

 

 

 

それは一体誰に教わった?

 

 

 

 

 

 

死にかけだ。

それなのに笑いが出る。

 

少し前の俺はバカだった。

勝手に達成感を作り出し役目を終えただと抜かしてしまった。

 

それは違う!

この世界にはまだまだやるべきことがいっぱいある!

仲間ともっと生きたい!

 

まだ諦めるわけにはいかない!

 

 

 

 

 

俺は手を伸ばす。

一人でできるなんて思っていない。

助けてくれるのはあの日の仲間。

 

 

 

 

―ありがとう。

 

 

 

 

 

手を伸ばし―――叫ぶ!

 

 

 

 

 

「来い!セイバーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

『うむ!そなたの思い、しかと受け取ったぞ!』

 

感じるのは暖かな温もり。

俺はその温もりに身を任せるのだった。

 

 

 




64弾終わりました。
確かシャーロックが逃げ出すまでが宣戦会議に出る人たちは見ていたと思うのでこのタイミングで白野君覚醒としました。
どうしても白野君の重要性を宣戦会議まで出したくなかったのでこの処置になりました。
次は説明回になりそう。
ローレライの歌声さん、阿刀さん、シオウさん、パラノイヤ(偽)さん、三の丸さん、ベクセルmk.5さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第65弾 数十年ぶりの再会

まずは謝罪を。
投稿までに間があいたのはちょっとした事故に会い右手の指を突き指してしまい痛みで執筆できませんでした。
完治にも数週間かかるといわれそれが治るまで投稿が遅れそうです。
本当はセイバーの戦闘シーンを書こうと思いましたが話を進めるために割愛せざる負えませんでした。(本当セイバーファンの皆様すいません…)
今回で説明部分を全部書こうと思いましたが少し分けることにしました。
言い訳がましくてすいませんが本当にすみませんでした。

では投稿します。


「…う…ん?」

 

 

頭がボーっとする。

体がいろんな所に引っ張られたかのように鈍い痛みも付きまとってくる。

 

 

俺どうなったんだっけ?

確かあの時、月の使者であるエネミーが現れて…みんなを逃がすために俺が一人船上に残って…そして…

 

 

頭が働かない。

取りあえず今はこの重く閉ざされた瞼を開かねば。

 

聞こえるのは水のせせらぎ。

体に付くのははらはらと舞い散る桜の花びら。

そして見えたのは目の前に浮いている四角い物体。

 

 

 

ここは俺たちが望みのために戦った場所。

 

短い時間でいろんな運命を受けた場所。

 

 

「ここは、SE.RA.PHか!」

 

それにムーンセルまであるということはここは中枢なのか?!

 

それと同時に俺の頭の中にこれまでの状況が蘇ってきた。

そうだ、俺はエネミーと戦ってそれで負けてしまったんだ。

それで吹き飛ばされた俺は海に落ちて終わったかと思った時声が聞こえた。

一度諦めかけたがあの時一緒に戦ったあの仲間が俺を鼓舞してくれた。

そして思い出すその名前。

 

「っ!セイバー?!」

 

空間に響く俺の声。

しかし帰ってくる声は無い。

 

「………」

 

これは夢なのだろうか…

俺が死にかけだから聞こえただけの走馬灯のようなものなのか。

どちらにしろ、それを決めつけるに足る事実だった。

夢ならもう覚めてくれ。

そう願い俺がまた瞼を閉じようとした時

 

「お待ちください!ご主人様ぁ~!」

 

「え?ぐはぁあ?!」

 

聞いたことがある声が耳に響き顔をあげてみると急な衝撃と共に後ろに尻もちをつく。

俺の胸に誰かが抱きついたのだ。

見えたのは黒の大きなリボンで結われている桃色の髪にぴょこぴょこと動いている狐耳。

青色の導師服のお尻の部分からはモフモフの尻尾がフリフリしている。

これは…まさか…?!

 

「キャスター?」

 

「はい!いつでもどこでも駆けつける良妻狐。タマモでございます♪」

 

そう言って顔を上げたその顔は月で共に戦った仲間であるキャスターの顔だった。

 

キャスター

真名を玉藻の前

日本三大化生の一人にして白面金毛九尾の狐だ。

過去に色々と悪さをしたようだが現在は足を洗っている。

本人が良妻だと言うように実際にいい子なのだがたまに行き過ぎた行動をとるのでそこら辺が残念だったりする子だ。

 

笑顔で俺を見つめてくるキャスターに俺は疑問があふれだしてくる。

 

「キャスター。これってどういう…」

 

「奏者よー!」

 

「ぐぁはぁあ!!」

 

今度は俺の中に衝撃が入ってくる。

また来た衝撃の正体を見るために背中を見てみると結われている金髪の髪に赤い礼装。

本人が男装と言わなければちょっと誤解しそうな服を身にまとっているのは

 

「セイバー?!」

 

「うむ!久しぶりだな!奏者よ!」

 

元気よく返答をしてきた声は間違いなくセイバーの声だ。

 

セイバー

真名をネロ・クラウディウス

ローマ帝国の皇帝でありその政策を自分の思うがままに国民のために行使したが最後まで全ての臣民に理解されなかった少女。

挙句の果てには唯一信頼していた人にも裏切られ最後の時もただ一人に孤独にその生涯をとじた。

けど、これまで一緒に過ごしてきて見た本当の彼女の姿はただの少女だった。

愛する者のためだけに行動ができる心優しい女の子だ。

 

…ちょっと待て。

セイバー、キャスターがいるってことは…!

 

「ようやく目が覚めたか。マスター」

 

「アーチャーまで!」

 

赤い外套を身に纏っている白髪の人物はアーチャー。

こちらも俺の記憶にある共に戦った仲間だ。

 

アーチャー

真名を無銘

まあ、実際はあるらしいのだが本人が正義の味方としかなのならいから真名を知ることは無かった。

あまり過去のことは話したがらなかったからよくは知らないがまあ、過去に色々あったらしい。

とても皮肉屋であるがまあ、いい人だ、紅茶とか美味しいし、家事とか上手いし。

内心目指している男性でもある。

 

俺はこれまでの感覚で身構えるが

 

「…マスター。私は別に抱きつきに行かないぞ。」

 

「あ、そう。」

 

いや、流れて気に来るのかなと思ってね?

 

しかし、この三人が一緒にいるとはどういうことだろう。

確かに俺はこの三人全員に会っている。

 

「マスターよ」

 

けどそれは一人ずつだ。

 

「…おい、マスター」

 

というか同じ時間でどうして俺は三つの記憶を持っているのだろうか?

俺はそれを聞こうと三人の方を見るため顔を上げると

 

「ええい、聞こえておるだろう!白野よ!」

 

光の閃光が一瞬見えたと思ったら俺の頬に一筋の血が流れる。

正面には金ぴかの鎧を身につけ、これまた金ぴかの椅子に座り、はたまた金ぴかな髪を上げている青年が俺を睨みつけていた。

 

ギルガメッシュ

本人自体が真名を名乗っているくらいの慢心王であるがその慢心に見合うほどの実力を持つ王だ。

全ての英雄の伝説の原典はギルガメッシュに繋がると言われており英雄王とも言われている。

最初は殺気もビンビンで選択を間違えると殺すほどの勢いだったがある事がありその態度は急変、マスターである俺を認めさせる事が出来た。

まあ…気分屋だし態度も酷いが多分いい人である…多分。

 

「…あー…英雄王ギルガメッシュ…お久しぶりです」

 

「そのような前置きはいい!何故無視をした!」

 

おおっとここで選択肢。

もちろん、ここで間違えれば命は危ういが…

俺は少し涙目になりながら語気を強め

 

「実は…あまりの衝撃に現実が受け止められず周りが見えなくなって…」

 

まあ、実際本当に衝撃が強すぎて周りが見えなかった。

しかし、見えていたことは見えていたのだ。

が、それはセイバー、アーチャー、キャスターだけだった。

だってねギルさんあなた僕の間後ろの方向にいるんだもん。

見えなかったから気づくわけないですよ。

嘘は言っていない、喋っていないだけだ。

ギルガメッシュはそんな俺を見て

 

「ほう…。そんなに我に会えないことが寂しかったのか…。よい、ならば許そう」

 

ちょろい

 

「何言ってんですかこの金ピカはー!ご主人様は私に会いたかったんですよね!」

 

しかし、俺がとった選択肢は別ルートで面倒臭くなった。

キャスターがさらに詰め寄ってくる。

 

「そ、奏者は余と会えなくて寂しくなかったのか?」

 

反対には必死に涙を流しまいとしながらも涙目ながらこちらを上目使いに見上げてくるセイバー。

前後からそう詰め寄られ俺は

 

「…あ、ちょ、ちょっと離れて…!」

 

動けずにいた。

や、ちょっとね、十数年合わなかったことがどうやら来るらしく…つまり、そうやって迫られるととても緊張します。

 

助けを求めるようにアーチャーに目を向けるがアーチャーの目はこの現状を楽しめというかのようににこやかであった。

後ついでに親指を立てられて頑張れとかの意味合いを受けた。(いや、助けてよ)

 

俺のチキンメンタルに追い打ちをかけるかのように詰め寄ってくる二人にあたふたしていると思わぬところから救いの手が差し伸べられた。

 

「あ、あの。皆さんその辺で…。白野さんも困っていますし」

 

声の出所を目で見るとそこには紫色に輝くとても長い髪に白の白衣、その中には俺が買った黒の旧校舎制服を着ている桜が目の前にいた。

 

「さ、桜?!」

 

「はい、先輩。」

 

桜のいつもの返事に少し返答がどもる。

 

俺が聖杯戦争に勝利した時確かNPCたちは役割を終えるとムーンセルに一度データを全てリセットされるのでは…?

 

多分俺の疑問を桜も悟ったのだろう。

顔をしかめた俺の顔を覗き込んでくる。

 

「先輩の疑問はごもっともです。ですからこのあと全てをお話いたします。」

 

そう言ってにっこり笑う桜に俺は安堵感を覚える。

月の世界に来て特に仲が良くなったNPCは桜だ。

それもいろんな手助けをしてくれた。

聖杯戦争終了後もたとえほかの存在として生まれ変わってしまったとしても殺してしまったと同義に扱ってしまい後悔したりした。

けどこうして俺の目の前で微笑んでくれるのは本当にありがたい。

それだけで救われた気がするのだ。

 

「ちょっとご主人様ぁ~!私にもその笑顔を分けてくださいまし~!」

 

…ハァ。

キャスターの呼び声で思考が現実に呼び戻される。

けど、この皆と語り合える時間は…とても懐かしく感じた。

…今だけはもう少しこの時間を味わいたい。

それから短くも長い時間をかつての仲間と語り合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、マスターよ。どうやら話し合いはこれから本題に入るようだ」

 

俺たちが楽しく話しているとアーチャーから声がかかる。

確かに長い間話していた気がするがどうやらこれから本題に入るようだ。

 

それは知りたいことが多い。

何故あのような世界にいきついたのか?

何故俺はまだ生きているのか?

何故今になって彼らが俺と接触してきたのか?

 

 

どうやらアーチャーの言い方的に誰かが来るから話しが進められると言った口調だ。

それにどうやら俺を助けるために色々と働いてくれたみたいだしなるべく敬意を持って接したほうがいいだろう。

 

 

 

 

しかし、空間に現れた人物は俺の予想を超えた人物であり唖然とした。

 

「はい、お久しぶりです先輩!いつでも、どこでも、消されても、駆けつける!最強後輩系ヒロインBBちゃんです♪」

 

黒の法衣を身に纏い、銀色の教師鞭を突き付けてくる過去の敵BBであった。

 




65弾終わりました。
ボルメテウスさん、パラノイヤ(偽)さん、ローレライの歌声さん、恋姫夢想さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第66弾 生存の道 前編

投稿遅れてしまい申し訳ありませんでした。
色々とありますが一先ず本編からどうぞ
※今回はオリ設定などが含まれますのでその点は暖かく見守ってください…


「ビ、BB…!な、なんでここに…?!」

 

「はい、先輩♡まさか、永遠のヒロインである私の顔を見忘れたのですか?」

 

信じられない。

今俺の心の中にはその言葉が反芻している。

 

BB

彼女は俺が月の聖杯戦争の準決勝後、とある方法で俺たちマスターと何人かのサーヴァントを月の裏側に閉じ込めた張本人。外見が桜と瓜二つなのは彼女と同型機であるのだが…

今はこのことはどうでもいい。

問題は…

 

「なんでおまえがここに存在していられるんだ…?」

 

そう、俺がここに存在できているということは月の裏側から脱出、その際このムーンセルに異常が伝わりその原因であるBBは1メモリも残らず消されたはずなのだ。

なのになぜこの場所に存在しているのは…

 

「そんなの先輩がお呼びになったから地獄から復活したからで…」

 

「黙りなさいBB。あなたは余計なことはできないはずよ」

 

「…。この性悪ブスが…」

 

「…」

 

そのBBを制したのはなんと桜であった。

月の裏側では桜の言葉で制されることがなかったあのBBが桜の言葉を聞いた…?

これも一体…?

 

「これに関しても今から説明しよう。マスター」

 

アーチャーから落ち着かされるように声がかかる。

俺は一度深呼吸をして話を聞き入れるようにする。

 

「よし、マスターも落ちつき、役者もそろったところで私から説明をしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず俺がどうしてこうして現存できているんだ…?」

 

そう、まず俺が最初に気になった話を聞くことにする。

俺が月の聖杯戦争その決勝を勝利、聖杯の真の支配者にも勝利し、俺の願いが成就されその際、イレギュラーな存在である俺は月の中枢で分解されるのを待つだけだったのだ。

だが、なぜか俺が意識した時にはあの武偵がはびこる世界に存在していたのだ。

それがなぜなのか。

俺は赤簑の弓兵に聞いた。

 

「ふむ…。そこを話すには最終戦勝利後から話さなければならないようだな」

 

アーチャーは一度咳払いをすると話し始めた

 

「まず、私とマスターが最終戦勝利後、マスターが『ムーンセルを完全な観測装置とする』という願いを叶えたのは知っているな?」

 

そう、俺の願いはもう聖杯戦争のような殺し合いをしないために聖杯戦争を起こさない観測装置として存在させるという願いを叶えた。

願いを叶えるためムーンセルとの接続を開始し消されるのを待つばかり出会ったのだが…

 

「そのようなそぐわぬこと、我が受容するわけがなかろう」

 

声を上げたのはギルガメッシュであった。

そ、それはどういう…

 

「この我が手をつけて育て上げたマスターを消すなど、許されると思うか?」

 

「…むう。その金ぴかと意見がかぶるのはちょっと癪でありますが、ご主人様を消されるというのは私も許容しかねます!」

 

ギルガメッシュに賛同するようにキャスターも声を上げる

 

「うむ、そこで余たちが新たに願ったのは…」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ…!」

 

俺が理解を追いつかせるために待ったをかける。

突飛過ぎるのもあるが一つ気になったことがある

 

「なんでみんなは…いや、俺もみんなのことを知っているんだ…?」

 

そう、月の世界では行われた聖杯戦争はただの一つだけ。

つまり従えられるのは一人のサーヴァントだけなのだ。

たとえこの中の一人のサーヴァントを従えていても四人全員と知り合うことができないのだ。

それはどう叶えられるのか

 

「先輩、その問題を解決するには平行世界の可能性を考えなければなりません」

 

「平行世界?」

 

桜から声がかかる。

平行世界とは一体…

 

「はい!では無知な先輩のために説明してあげましょう♡」

 

BBが教鞭を振るうとボンッという音とともにホワイトボードが出てくる

 

「まずここに駄狐とのサーヴァントと決勝を勝ちぬき聖杯をとった未来があるとします。

が、また敗北した未来もあるかもしれない。先輩が予選で負けている未来もあれば、月の裏側で私と先輩がハネムーンをしている未来もあるかもしれない。それが平行世界の概念です。」

 

ふむ、なるほど。

一言何か変なこと言っていたかもしれないが平行世界の概念はだいたいわかった。

が、それがこの四人のサーヴァントを呼び出した結果を持ち出したのは…

 

「まったく、こんなに言ってもわからないとは…先輩は平和な世界に当てられてぼけてしまわれたのでしょうか♡」

 

…むう。久々にBBの毒舌をその身に感じる。

 

「先輩を挑発するのはやめてくださいBB。すみません先輩…ちゃんと先輩にお話は通しておきますから…」

 

「あ…うん…」

 

この関係性も今は気になるがとりあえず話を進めてもらおう。

 

「で、平行世界が一体…っ!」

 

「ほう、大体は感づいたみたいだな」

 

なるほど…動揺をなくしたら大体は察しをつけることはできた。

 

「平行世界…それぞれの可能性の世界で勝ち抜いたみんなが何かを願ったのか…?」

 

それぞれの平行世界でみんなが何かを願って終結した集合体が俺ってことか。

だから、俺がみんなを知ってみんなも俺を知っている。

そういうことか…

けど、一体どうやってこの未来に集結したのか…

 

「マスター、ムーンセルは万能の聖杯だ。叶えられる願いは数多に数えられる」

 

…ってことは

 

「余たちが奏者を理不尽に消されることを望むはずはなかろう」

 

つまり…

 

「「「「マスターを消させる未来を変える」」」」

 

なるほど…ほんといい英霊たちと知り合えてよかった。

世間一般で反英霊と言われ続けても現実はこんなにもいい仲間たちだ。

 

「が、正しくは聞き入られなかったことも真実」

 

「…どういう…」

 

「ムーンセルは異分子を許容しない。つまりその異分子を存在させる未来をムーンセルは望まなかったということだ」

 

アーチャーの口から放たれる声は重いものだった。

 

「聖杯戦争後はNPCは分解される。さらにそのNPCが聖杯戦争の勝利者となるというイレギュラーにムーンセルは危険と判断し、私たちの願いは成就されなかった」

 

なるほどな…

確かに完全なイレギュラーが最強のマスターなど普通は受容されないのかもしれない。

 

「が、その程度で諦めるなど余たちが望むはずもない。諦めぬことの大切さを教えてくれたのも奏者であるからな!」

 

セイバーからそのような声がかかる。

…俺の言葉が英霊にも響くなんて…ここまでうれしいこともあるのだと俺は心で嬉々をした。

 

「ああ、そこで俺たちは別の願いを叶えることにした…それは、マスターを助けられる可能性を叶えてくれというものだ」

 

…それは一体どういう?

 

「直接的にマスターを助けられる可能性を切り捨てられた。それを別の方向性から助けるためにそれを願ったのだ。例え、可能性が天文学的に低くとも…な…」

 

なるほど…

ムーンセルのシステム潜入はほぼ不可能に近い。

BBのようなイレギュラーならともかくただの英霊たちがシステムの突破をできるはずがないと思ったのだろう…その終着点がおそらく…

 

「その願いをそれぞれの英霊が願ったことによって私たち、四人の英霊が集ったのだ」

 

助けられる可能性…それが四人の英霊の集合ね…

トップクラスの英霊が四体、確かに助けてくれる可能性のある願いかもしれないが…

ムーンセルの防壁を貫くには限りなく可能性は少ないかもしれない。

 

「…私も願いに頼るなど…過去でもなかったのだがな…」

 

アーチャーのつぶやくような声が聞こえる。

…アーチャーは多く過去を語ってはくれなかったが、そのつぶやきからはいろんなものが感じられた気がする…

 

「しかしご主人様!それぞれ願ったことは大体一緒ですけど、その金ぴかだけは願ってなかったんですよ!」

 

キャスターがギルガメッシュを指さすが、ギルガメッシュは鼻で一蹴すると

 

「ふんっ!我の力を持ってすれば貴様らの力を借りずともマスターを拾い出すことなど容易よ」

 

…確かに、一応ギルガメッシュ月の裏側で封印指定食らってたもんな…

まあ、それでも四人の英霊が集ったことはわかった…

しかし、

 

「確かにみんなの力が強力なのはわかる…けど、それでも防壁を破るのには厳しいのでは…?」

 

それほどムーンセルの力は強力だ。

BBの反則級の力を持ってしても時間がかかったほどだ…それが例えこの英霊たちでも…

 

「ほう…マスター…貴様は我の力を疑っているのか…?我の本気の『天地乖離す開闢の星』を使えばあの程度造作もないわ!」

 

「…本当なのか?」

 

この英雄王が…慢心王が防壁を破るためということにあの剣を使っただと…!

それでもかなりの驚きだがそれ以上に嬉しく思う…だってあの英雄王が本気だよ?確かに最終戦で使ってくれたけどさ…

 

「ふむ、マスターの態度が気に入らぬが…ムーンセルの妨害があり我が力を行使しようと破壊がかなわぬのであってな」

 

そうなのか…。

ギルガメッシュの宝具、それは最高威力の宝具でもある。

…ムーンセルが妨害を仕掛けてきたとしても、あの何度見ても絶望としか表現できない宝具で壊れないとは…

それを持ってしても破れぬとは…

 

「ちょっと金ぴか!私たちの助力をあったことを忘れたとは言わせませんからね!ご主人様の株を一人掻っ攫うなど許しません!」

 

「はっ!たわけめ!貴様らの力などなくともあれくらい我一人で突破できたわ!」

 

さすがにギルガメッシュ一人では突破は無理だったようでキャスターたちの助力もあったと告げられる

 

「奏者よ!奏者よ!余も精一杯頑張ったぞ!いざ撫でることを許そう!」

 

「えっ…?あ、うん」

 

セイバーからのお願いについ無意識に撫でてしまう

 

 

 

ピシッ…

 

 

 

 

何かが壊れたかのような…はじけた音が聞こえた気がした…

なんとなくやめないといけない気がしたからやめたが…この悪寒…過去に何回も浴びたような…

手を離したことによってセイバーから不満の声が聞こえるが引いてくれた

 

「そのちんけな尾一本だけの貴様など助力にもならないわ!いざ尾を増やしたかと思えば壁を壊したとたんちぎっていきおって…!誰も貴様の巨体など興味もないわ!」

 

「むっきー!何ですかこの金ぴかは?!乙女心のおの字もわからないのですか!」

 

…なにやら騒がしいがみんながみんな協力して俺を助けてくれたことはわかる。

 

「んん…!では話を戻そう。ムーンセルのセキュリティを突破し、マスターのデータを探ったのだが…すでに手遅れに近かったのだ」

 

…それは一体…

 

「…奏者の体は大部分がなくなっていてどうすればよいのかわからぬままだったのだ…」

 

「ああ。そしてムーンセルは私たちの侵入を感知したことによって気が触れたようだ。マスターの消失を早めようとしてきたのだ。」

 

ムーンセルの危惧が皆無と思われたことをやってのけたことで本腰を入れたということだろうか。

そこでギルガメッシュと言い争っていたキャスターが近寄ってきた。

 

「ご主人様の体は私たちがどのような手を持ってしても守り切ることができませんでした…。」

 

「…そうか。いや、本当にみんなありがとう。みんなの助力があってこそ俺がここにいるってことを実感できて…本当にありがとう」

 

そう言っておれは頭を下げる。

頭を下げることでみんな間に穏やかな空気が流れる。

 

「けど、俺はここにいる。ってことはどうにかなったのか…一体どういう…」

 

「全く、そこで私の名前が出てこないなんて、先輩は一度ゾウリムシからやり直した方がいいと思います!」

 

そこで今まで黙っていたBBが声をあげた。

 

「今にも消されかけている先輩をムーンセルのNPCロールから抜け出させて別メモリに先輩を移した私を崇めてください♡」

 

「ということは俺を救い出したのはBBってことなのか?」

 

BBの毒舌は相変わらずだがBBの本来の目的は俺を消滅の未来から救い出すということだ。

本当はとても優しいということは知っている。

 

「まあ、真に助け出したのはBBではなく桜なのだがね。月の裏側というムーンセルの監視外に送り込んだBBだ。もう無くなっているとはいえ別の方法を探すという点においてはBBの協力が必要だと思い立った」

 

「けど、BBはあのとき1メモリに至るまで消されたはずでは…」

 

「はい、ですのでNPCの削除ロールから私が引き抜かれて協力を要請されました。アーチャーさんからの助言で一応BBと同型機である私を引き抜いたと聞いています」

 

「ムーンセルの中枢で多少は融通が効いたようでな、桜には何の問題も無く呼び出すことができたのだ」

 

「そのBBには管理者である私が管理しているので反抗をすることはないので安心してください」

 

「…本当にうざいですね…。その性格ブスなところ同型機としてもわかりたくもありません」

 

BBと桜の間でバチバチと火花が散っているように見えるが…争いにならないみたいだし安心しておこう。

まだまだ話は長く続きそうだ。

俺は桜散るムーンセルの中心で黒い空を仰ぎ見るのだった。

 

 

 




66話終わりました。
大変すみませんでしたぁぁぁぁぁ!
今回の話はオリ設定や絡み合わせの部分が多く色々と構想を練っていたのですが致命的な欠陥が発生し構成を練り直すことになりました。
が、就活や新生活など私情が重なりちょっと話を書くところではなく…安定し出してからの投稿となりました。三月に投稿するなどと言ってできなくて本当にすみませんでした。

今回はようやく白野君のサーヴァントたちが登場し、このクロスオーバーの絡みについて練りに練ったのですが…なにぶん日があいたり、ゲームから疎遠になったりしたなどでにわかになってしまい本当に申し訳ないです。

今後の投稿予定としては月に2,3度になるかもしれないかと。
あ、お気に入り登録者が1000人超えてたのを見て凄い驚きました。
皆さんありがとうございます。
感想の応援の言葉なども執筆の励みになりました。本当にありがとうございます。
それではまた次回後編になりますがそのときまで







あ、fgoで玉藻当てました。
ちゃんと嫁として育てています!



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。