後輩の俺と先輩の私 (大和 天)
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彼と彼女は出会う。

こんにちは大和 天です!

ヒッキー視点のお話を書きたいとおもい書いてみました!
キャラがちょっと崩れてるかもしれません

楽しんでいただければ幸いです!
ではどうぞ!


 

 

 

 

 

4限目の終わりを告げるチャイムが鳴り、俺は教科書とノート素早くを片付けると教室を出る。

総武高校に入学して早一ヶ月がたった。

入学式の朝に事故にあった俺はその時点でボッチが確定した。

まぁたぶん事故にあってなくても変わらなかっただろうが。

そんな訳で昼休みの教室に俺の居場所は無く、購買でパンと俺が生きてきた人生の中で唯一俺に甘くしてくれるMAXコーヒーを買うと最近見つけたベストプレイスに向かう。

よっこらせとジジくさい掛け声と共に座るとパンをもしゃもしゃと食べ始める。

2個目のパンを食べ終え、愛しのMAXを飲んでいると足音が聞こえてきた。

ちっ、誰か来やがったと思い振り返ると

「うわっ!」とそこにいた女子生徒が飛び上がった。

え?なに?「うわ!比企谷がいる、きもー!」のうわ!なの?

などと心にまたひとつ致命傷を負っているとまた後ろから声がする。

 

「あ、あのぉ〜…」

 

脳内で遠回しにの 「そこをどけ」という命令をされた時にいかに素早く立ち去るか8万パターンくらいかんがえていると(八幡だけに)思いもよらぬことを言われた。

 

 

 

 

「…横、座ってもいいかな?」

 

「………ふぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

なんということでしょう!あのボッチの比企谷君の横に美少女が!

…はっ!いかんいかん!テンパり過ぎてビフォーアフターみたいになってたぜ!

ここはひとまず………なに聞けばいいんだ?

ものすごく悩んでいると横から声がかかる。

 

「名前、なんて言うの?」

 

俺より身長が低いため自然と上目遣いになる。

くっ、かわいいっ…

 

「ねぇ!聞いてるの?」

 

「ふぁい!え、えっと比企谷です、比企谷八幡」

 

噛みまくってしまった。

う、上目遣いなんてひ、卑怯なんだからねっ!などと謎のツンデレを脳内でしているとまた彼女が口を開く。

 

「私は鹿波香奈(かなみかな)。よろしくね!」

 

「えっと……はい?」

 

「はい?ってなによ!よろしくねっていったの!」

 

「えーと、なにをよろしくするんですか?」

 

「………なにをだろ?」

 

え?なにこの人アホの子なの?それとも天然?

彼女は顎に手を当てて考えている。

他の女子がやればあざとく見えるであろうその行為は全然あざとくは見えない。

じーっとそれを見ているとふと顔を上げた彼女と目があった。

彼女は頬を少しだけピンクに染め、モジモジしている。

「えーっと、じゃあ、友達、でどうかな?」

 

答える間も無く5限目の予鈴がなった。

彼女は友達からの命令!明日もここに来ること!などといって去って行った。

え?友達って命令できんの?へ、へぇ〜友達同士って約束とかするんだと思ってた〜。

友達いたことないから知らなかったわ〜。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

翌日ベストプレイスに行ってみるとそこにはもう鹿波香奈のすがたがあった。

 

「お、きたねー!ほらほら横に座りなよ〜!」

 

と言いながら彼女は自分の横をぽんぽんと手で示す。

流石に真横はダメだと思い少し離れたところに腰を下ろす。

すると

「比企谷くん?こ・こ・に座りなさい」

 

と蛇に睨まれた八幡になってしまった。

ふぇぇ、こわいよぉぉ

 

いそいそと横に行くと彼女は寄りかかってくる。

近い近い近い柔らかい近いいい匂い

思わず仰け反る彼女はむすっとしていた。

そしてそこであることに気づく。

 

「もしかして、先輩ですか?」

 

「え?気づいてなかったの?私3年生でーす!」

 

これはあざといな、と思っているとまた先輩が近寄ってくる。

 

「比企谷くんってなんでここでお昼食べてるの?」

 

「…それなら先輩はなんでここで食べてるんですか?」

 

「えー、だってーお友達いないしー」

 

………なんか聞いちゃダメだったかな?

でもなぜだ。

まだあって2日目だがこの人が人当たりのよい良い人だってことくらいは分かる。

「なんで先輩みたいな人が友達いないんですか?」

 

先輩は少し困った顔で頬をポリポリとかく。

 

「えっとね、なんか私モテるらしくて、なんか、だから、そのー、妬まれてっていうかー、あはは…」

 

やだ女の子って怖い!

だが確かに顔はかわいいし小動物的なところがあるのできっと庇護欲をそそられるのだろう。

あとそのメロンも危険ですね。

 

「で、比企谷くんは?」

 

「俺も友達いないからですよ。むしろいた試しがないですね」

 

「えー、私がいるじゃーん」

 

え?先輩さっき友達いないっていってませんでしたっけ?

 

そんな事を話しているともうすぐ昼休みが終わろうとしていた。

 

「ねぇ比企谷くん。メアド交換しよ?」

 

「いいですよ。はいどうぞ。」

 

そう言って俺はケータイを先輩に渡す。

 

「え?私が打つの?」

 

「だって登録とかやり方わかんないですし」

 

「へぇー、って3人しか登録してないじゃん!」

 

そりゃまぁパパンとママンと愛しの小町しか登録してないからな。

そう言っている間にも登録し終えたらしく俺にケータイを返す。

連絡先のところを見て驚愕した。

 

 

マイハニー♡

 

 

あ、あれ?本格的に目が腐ってきたかな?と思い目をこすった後もう1度見るがさっきと同じ文字が書いてある。

 

「あ、あのー、これは?」

 

先輩はその言葉を無視し、立ち上がると後でメールするねーと言いながら去っていった。

ぼけーとしていると5限開始のチャイムがなった。

遅刻しちゃった!てへぺろっ☆

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

家に帰るとベッドに倒れこんだ。

今日はものすごく疲れた。

明日は土曜日だし早めにお風呂に入って寝ようと考えているとマイハニー♡からメールが来た。

 

 

 

明日デートしよー!

明日10時に千葉駅に集合でーす!

 

 

 

 

 

思わず声が出た。

 

 

 

「………は?」

 

 




いかがだったでしょうか?

ご感想やご指摘、アイディアなどくださったら嬉しいです!

読んでいただきありがとうございました(。-_-。)


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彼は彼女に誘われる。

こんにちは大和 天です!

1話を予想以上に皆さんに読んでもらいお気に入りや感想をたくさんくださりありがとうございました!

それでは2話目をどうぞ!




 

 

 

 

 

はぁー、と思わずため息が出る。

時計は約束の時間なら30分も過ぎていた…

 

 

 

 

メールを見ていないふりをしてここに来ないことも考えたがそんなことをしたらどんな仕返しをされるか分からなかったので一応女の子を待たせるのもいけないと思い15分前に来たのだが……

さすがに10時10分になったときには約束だけして家で「あー、あいつ今頃約束の場所に来ない私を待ってるんだろうなー」とか思い爆笑しているのかとも考えた。

おいそれどこの中学時代の俺だよ。

 

俺は仕方なく電話帳の新しく追加されたところから電話をかける。

5コールくらいたったところで相手が電話を出る。

 

「もしもし、今どこですか?」

 

「……ん?比企谷くん…?どしたのいったい?」

 

そう言いながらふわぁ〜とあくびが聞こえる。

寝てたなこいつ。

 

「いやいや、先輩が昨日いきなりデートしようとか訳のわからないこと言ってきたんでしょ?」

 

「………え?………あーー!!!そうだった!ごめんね比企谷くん!急いで行くね!」

 

「いやいや急がなくてもいいですよ?もう帰るので」

 

「え……?ご、ごめんね?わ、私のこと嫌いになった?友達やめるとか言わない?」

 

スピーカーから泣き出しそうな声が聞こえる。

「冗談ですよ、じゃあ待ってますからね」

 

そう言って電話を切る。

どうしてこんなことになった……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結局先輩は11時前についた。

「ごめーん!待ったー?」などと言いながらパタパタと走ってくる。

くっ…私服かわいい…

 

「超待ちましたよ。さすがに今来たところなんて言えません」

 

「ぐっ……ごめんね…お詫びにお姉さんがいいことしてあげようか?」

 

ミニスカートの裾を少し上げながら上目遣いで言う。

 

「やめてくださいよ」

 

もうそれ以上言われたら理性が保ちませんからっ!

 

「ちぇ、つれないなぁー」

 

「はいはい、すみませんでしたね。それで今日なにするんですか?もう帰りますか?」

 

「お?比企谷くんの家でお家デート?いやー、いくら比企谷君相手でもそれはちょっと早いかなー」

 

「だれも先輩を家に呼ぶなんて言ってませんよ。」

 

「じゃあ次のデートは比企谷くんのお家だね!」

 

「話聞いてました?来ても入れませんからね」

 

「けちー!」

 

そう言いうと先輩は俺の腕に抱きつく。

本当にこういうことはやめて欲しい。

勘違いしちゃうからっ!

 

とりあえず先輩を引き剥がそうと先輩の肩に手をかける。

 

「ひゃっ」

 

「………え?」

 

「あ、いや!違うの!いきなり触られたから、あの、その、びっくりしちゃって…」

 

みるみる先輩の顔が赤くなっていく。

「先輩顔赤いですよ」

 

「そこは見て見ぬ振りするところでしょうが!」

 

先輩は頬をぷくっと膨らませていう。

これはフグというよりハムスターだな、などと考えているとプシューと先輩の空気が抜けた。

どうやら風船だったようだ。

 

「じゃあ映画みにいこー!」

 

そう言うと先輩は俺の腕を掴んでズンズン歩いていく。

周りの男性方にとっても睨まれました。まる。

 

 

 

「えっと、どれ見るんですか?」

「うーん、これなんてどうかな?」

 

先輩が指差したのは最近上映しはじめたホラー映画だった。

 

「え、先輩ホラー好きなんですか?」

 

「いや、そんなことはないけどテレビでcmやってて面白そうだなって」

 

「へぇー、じゃあ俺はこっち見るんで後で合流しましょう」

 

「比企谷くんも見るんだよ!」

 

プリティーでキュアキュアはまた今度ですね……

 

 

 

 

席に着くと先輩は上映までポップコーンを実に美味しそうに食べていた。

1番大きいのを買わされたのにもう半分食べちゃってるんですけど……

 

そして映画がはじまった……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「先輩どうぞ」

 

「…ありがと」

そう言って先輩にコーヒーを渡す。

目の前にいる先輩の目は俺レベルにどんよりしている。

 

映画はしょっぱなから怖さ全開ではっきり言って始まって5分で映画館から出たかった。

しかしこの映画を見たがった本人が俺の腕にしがみつき話しかけても何も話せない状態だった。

「先輩怖がりじゃないですか」

 

「だってあんなに怖いなんて思ってなかったんだもん……」

 

涙目になりながら先輩はうつむく。

涙目女子が可愛いと思った今日この頃でした。

「比企谷くんは全然怖がってなかったね」

 

俺は「えぇ、まぁ、」と言葉を濁す。

だってほら、ね?いい匂いはするし柔らかいものは当たるしで映画どころじゃなかったもんでして……

 

「てっきりビビリまくると思ってたのにー!期待外れだなー」

 

「ビビるところが見たかったんですか?俺はあんまりこういうのは怖がったりしませんよ?」

 

だってほら、お化けなんかより断然人間の方が怖いじゃん?女子高生とか特にね!

 

落ち着きを取り戻したのか先輩は椅子から立つと俺の前に仁王立ちすると腰に手をあてビシッと俺に指をさす。

 

「ほら行くよ!予定より時間おしてるんだから!」

 

俺はへいへいと言いながら腰を上げる。

てか、予定なんかあったのかよ。

聞いてないし。

それと一番大事なことを先輩に教えてあげた。

 

 

 

 

「時間おしてるのは先輩が寝坊したからですよ」

 

「………ごめんなさい」




いかがでしたでしょうか?
楽しんでもらえたら幸いです(*^^*)

ご感想やご指摘くださるとうれしいです!

読んでいただきありがとうございました(o^^o)


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彼と彼女は交わらない。

こんにちは大和 天です!

お気に入りが50以上もきて正直とっても驚いてます!
しかもたくさんの人に読んでもらえてとても嬉しいです!
感想頂くたびに元気もらってます!
これからも頑張ります!

それでは3話目どうぞ!


 

 

 

「で、次はどこ行くんですか?」

 

「ご飯!ご飯行こうよ!」

 

それもそうだ。

もうすぐ1時だからお腹もへる。

「そうですね。どこ行きますか?」

 

「ふっふっふ…なりたけなんてどうかな?」

 

なん……だと………?

お、おお、お主!お主今なんと申した!

なりたけの素晴らしさを分かっているなんて!

これはもう勝手に俺と好みが同じだけなのに俺が好きと勘違いして告白して振られるまである。

いや振られるのかよ。

 

 

そんな訳でなりたけに来た。

さーてっ、注文しちゃおうかなっ♪

 

「じゃあ俺はギタギタで」

 

「じゃあ私超ギタ!」

 

 

ふぇ?

女子で超ギタ?

それ知り合いで頼んでるの見た事ないんですけど?

店員さんもビビってますよ?

 

とまぁ唖然としているとラーメンが来た。

しかしまぁあれだね、美味しそうに食べますね!

はっ!まさか!そのラーメンの背脂がその胸の膨らみに!

これはもうアレですね!世の女性になりたけの素晴らしさを伝えねば!

 

 

 

 

 

とまぁそうこうしているうちに食べ終わった。

なりたけに来て良かった。

美味しかったです。

すごいこともわかったしね!

小町にも教えてあげねば!

 

 

店を出ると先輩が嬉しそうに言う。

 

「まさか比企谷くんがなりたけ通だったなんてねぇ〜」

 

「いやいや、先輩の方が通ですよね?」

 

「まあねっ♪」

 

そう言いながら親指を立ててウインクをする。

いやいや、キラーン☆じゃないから。

あざといあざとい。

 

「それでこれからどうします?もう帰宅します?」

 

「なーに言ってんの比企谷くん!まだまだこれからだよー!」

 

「ならどこ行くんですか?」

 

「比企谷くん行きたいところあるー?」

 

「自宅に帰りたいですね」

 

「へぇー、それならー……ゲームセンターなんてどうかな?」

 

ほほぉ、完璧に無視ですか。

八幡ちょっと傷ついちゃった☆

しかしまぁ先輩がゲームセンターとは意外だった。

てっきり洋服見にいこーとか、雑貨屋さんいこーとか言い出すと思っていたのに。

だいたい女子の洋服見にいこうと言ってただ見るだけ率は異常。

俺は「ならそうしましょう」と言い張り切る先輩の後についていく。

この人ゲーセンでなにするんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ、また私の勝ちだね!」

 

「先輩強すぎじゃないですか?」

 

「ま・あ・ね!」

 

 

先輩がゲームセンターに来て何をするのかと思いきやまさかマリオカートだった。

なんかもうやばかった。

だって横にいためちゃくちゃやり込んでそうな人に圧勝してたんだもん。

手も足も出なくてかわいそうでした。

 

「ふぅ〜、たのしかったぁー!」

「先輩強すぎですよ。横の人かわいそうでした」

 

「あれはあの人たちが弱いんだよ〜」

 

と言いつつも褒められて嬉しそうな先輩は鼻歌を歌いながら俺の目の前を歩いていく。

そんな上機嫌な先輩を周りの人がチラチラみていて少し心に違和感を覚える。

なんだこのモヤモヤは…

 

「で、今これどこに向かってるんですかね?」

 

「本屋さんだよー!ほら私今年受験だからさ、参考書とかほしいなーって」

 

「いいですね、俺もよく本屋行きますよ」

 

主にマンガとかラノベとかを買いにね!

いったん先輩と別れ小説のコーナーに行く。

だってほら、あれじゃん?ラノベコーナーとかにいる時に先輩来たら変な偏見持たれそうじゃん?

ラノベ=オタク=キモい みたいな公式が世の中には存在してるからね…

 

 

 

 

俺の好きな作者の新作を買おうか悩んでいると先輩がお店の袋を持って帰ってきた。

 

「ごめんごめん!すっかり遅くなっちゃった」

 

「いえいえ、待ってませんよ」

 

「ほほぉ、ちゃんと待ってませんって言えるじゃん!」

 

「言えますよ。でもさすがに1時間も待たされて待ってないって言えるほど俺優しくないですけどね」

 

「もぉー!それは忘れてよ!」

 

先輩は赤くなりながら頬を膨らませる。

くそっ!かわいい!

俺じゃなかったら今ので即惚れて告白して振られるまである。

俺が振られないのは告白する度胸がないからだけどねっ☆

ふと本屋の袋を見ると結構な重さの本が数冊入っていた。

俺はその袋をヒョイと先輩の手から奪う。

ポカンとしている先輩の顔がみるみる赤くなっていく。

しまった!ついお兄ちゃんスキルが発動してしまった!

でも先輩そんなに顔真っ赤にして怒らなくてもいいじゃないですか。

「えっと、これはその、なんていうか、重そうだったからで…」

 

きょどるのがキモいと定評のある俺がきょどりながら言うと先輩はうつむきながら

 

「あり、がと」

 

と言う。

先輩そんなに真っ赤になるまで怒ってるならお礼言わなくていいですよ?

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

その後散々先輩のファッションショーに付き合わされ、くたくただった。

似合ってるとか言うと真っ赤になってカーテンをピシャッて閉められた。

先輩、怒るなら見せないでっ!

 

夜も遅いので先輩に家まで送ってとお願いされた。

無論断れるはずもなくお荷物持ちの召使いと化した俺は先輩を家まで送る。

「今日は私のワガママに付き合ってくれてありがとうね!まぁまぁ楽しかったよ!」

 

「そりゃどうも。先輩ワガママに付き合わされるのは大変でした。」

 

「こんな美人とデートなんてなかなかできないぞ〜」

 

つい返事がぶっきらぼうになる。

素直じゃないなぁ、などと先輩は言いながら俺の横を歩く。

先輩は鹿波と書いてある表札の前で立ち止まるこちらを見る。

 

「あ、私の家ここだから!送ってくれてありがとう」

 

「いえいえ」

 

そう言って持っていた荷物を先輩に渡す。

ありがと〜と言いながら荷物を受け取る。

家に入っていこうとするのを見送ってさて帰ろうと思っていると、先輩がクルッと回り俺の方に戻ってくる。

モジモジしながらうつむいている。

 

「あ、あのさ比企谷くん」

 

「なんですか?」

 

「私、ひきが 「せんぱい」

 

思わず大きな声が出てしまう。

先輩は驚き顔を上げる。

「俺帰ります。先輩もはやく家に入らないと。まだ夜は少し寒いですからね。今日は楽しかったです。誘ってくれてありがとうございました」

 

そう言って回れ右をすると、もと来た道を帰る。

 

先輩が何を言おうとしたかは分からない。

ただの自意識過剰かもしれない。

むしろほとんど100%自意識過剰と言ってもいいだろう。

でもこうするしかなかった。

 

 

俺にはまだそうするしか方法がなかったから……

 

 

 




いかがだったでしょうか?

最初は5話くらいで終わる予定だったのに!
このままじゃ二桁いっちゃうよー笑

それでも皆さんが満足していただけるようにがんばります!

感想とかご指摘、お気に入りなど貰えると嬉しいです!
あと感想とか感想とか。それと感想とか!

要約すると感想が欲しいです。笑

拙い文章ですが読んでいただきありがとうございました(>_<)


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彼に彼女はあやまる。

こんにちは大和 天です!

お気に入りしてくださったみなさま!
ありがとうございます(*^^*)
ご期待に添えるように頑張ります!

そして前回二桁いきそうなどとほざいてはやくもネタが尽きかけています(笑)
神様文才をください!笑

では4話です!どうぞ!




 

 

 

 

「ふわぁ〜」

 

気の抜けたあくびが出る。

一昨日の夜も昨日の夜も全然眠れなかった。

昨日などこの俺がプリキュアを見る気さえ出なかったくらいだ…

 

 

 

 

 

 

土曜日の夜、帰ってきた俺は飯を食べる気も起こらず、ずっと居間のソファで虚空を見つめていた。

俺は何か間違っていただろうか。

後悔はしていない。

先輩があの時なんて言おうとしたかなんて今となっては何もわからない。

先輩は、鹿波香奈は万人に優しいのだ。

俺みたいなやつにもあのように優しく接してくれる。

その優しさを履き違えてはならない。

勘違いしてはならない。

この3日間ずっと思ってきたことだ。

でもなんなんだ……

 

 

 

この心のモヤモヤは……

 

 

 

 

 

 

俺は手早く学校に行く準備を済ませると小町の作ってくれた朝ごはんを食べて家を出る。

学校に着いた俺は自転車を駐輪場に置き、下駄箱へと向かう。

ステルスヒッキーの異名を欲しいがままにしている俺は誰にも見向きもされないまま教室に辿り着く。

自分でも透明人間なんじゃないかと疑うレベル。

ふっ、今日も光学迷彩(自前)は順調だぜ!

 

教室に入りいつものようにイヤホンを耳に突っ込み寝たふりをしようと思っていると、ふと、聞いたことのある名前が耳に入ってくる。

 

「鹿波先輩ついに彼氏できたらしいよ〜」

「まじで?あの人誰に告白されても付き合わなかったのに?」

「誰だよその彼氏って」

「さぁ……」

 

きっと俺と出かけた時に総武高の誰かが俺と一緒にいるところを見たのだろう。

休みの日の千葉駅ならきっとたくさんの高校生がいるだろう。

先輩には俺なんかと噂になって悪いと思ったがどうせ昼に会うからその時謝ろうと思い俺はイヤホンを耳に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結局その日、先輩はベストプレイスには来なかった。

別に俺が嫌われたのならそれでいい。

人に嫌われるのはいつものことだ。

そんなことにはもう慣れている。

 

でもなんで…なんで……

 

 

 

 

こんなに辛いのだろう……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

先輩がこの場所に来なくなってもう3日がたつ。

と言っても2回一緒にお昼ご飯を食べただけだ。

またもとに戻っただけ。

そんな訳で我が愛しのMAXと一緒にパンを食べる。

MAXコーヒーは何にでも合うから素晴らしい。

MAXコーヒーを飲みながらMAXコーヒーを飲めるまである。

 

パンを食べ終わり一息ついていると後ろから足音がする。

こんな所に来る奴なんてあの人しか思い浮かばないのだが今さらあの人が来るわけがない。

じゃあ誰だと思い振り返るとそこには知らない女子が立っていた。

え?なにこの人。

超美人なんですけど?

「えっと、比企谷くんかな?」

 

「……はい。えっと、誰ですか?」

 

「えっと、三神美香です。香奈の〜友達?いや違うな。幼なじみ?腐れ縁?」

 

「いや、知らないですよ」

 

「まぁ、それは置いといて、土曜日香奈となにかあった?」

 

「いや、なにもないと思いますけど…なんでですか?」

 

「いや、香奈が土曜日の夜に珍しく私に電話してきたからさ。あの子私だけには絶対弱みみせないのに」

 

「はぁ」

 

やっぱりあの時先輩は俺に何かを伝えようとしていたのだろうか。

 

「そしたら熱出して3日も休んでるからさ…」

 

だからここに来なかったのか…

 

「……それは俺のせいだと?」

 

「さぁ?でも思い当たることがあるならお見舞いくらいしてあげたら?」

 

ニヤリと笑いながらそう言うとじゃあね〜、と帰って行った。

 

そんなこと言われたら行かないという選択肢は無くなる。

今日の放課後に寄って帰りますかね。

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後の授業は先輩のことを考えているとあっという間に終わってしまった。

帰りのHRが終わると荷物をまとめて教室を出る。

自転車にまたがるといつもとは逆方向に自転車をこぐ。

先輩の家は学校から遠い訳ではないが俺の家とはほぼ真反対の位置にあるため道があまりわからない。

結局確実に覚えている道を通るため先輩の家の最寄駅まで行きそこから先輩の家まで行った。

 

 

 

 

 

人の家のチャイムなんて友達のいたことのない俺はほとんど押したことなどなく、緊張のあまり手が湿り、膝がにっこにっこニーしている。

 

ふぅ、と息を吐くとポチッな☆とチャイムを押す。

ピンポーンという機械音のあとにしばしの沈黙。

 

…………

 

誰も出ない…だと?

きっと熱があるから寝ているんだろう。

ハチマンシンジル。

帰るか…

 

そう思い停めてある自転車の方を向いた時ドアの開く音がする。

 

そこにはいつもと変わらず元気そうな先輩が立っていてどうして比企谷くんがここに?というかおをしていた。

 

「どうして比企谷くんがここに?」

 

あ、正解したみたい。

そしてふと疑問が湧き上がる。

 

「先輩熱があるんじゃ?」

 

「あ……」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「…どうぞ」

 

「…ありがとうございます」

 

そう言って先輩からコーヒーをもらう。

あれれぇ〜おかしいぞぉ〜?と名探偵の声が頭の中でながれる。

俺はお見舞いに来ただけなのになんで女の子の部屋に上がってるんだろう?

ていうかなんだろう。

こころなしかいい匂いもする。

これが女子という生き物の巣か!

 

そんなアホなことを考えているとこの空気に耐えられなくなったのか先輩が口を開く。

 

「えっと、比企谷くん今日はどうしたの?」

 

「あ、なんか先輩の友達?の三神さんからお見舞いに行ってやれって言われまして」

 

すると先輩は少し頬を膨らませる。

 

「美香は友達じゃないし!美香は小中高ぜんぶ一緒のクラスなだけで腐れ縁っていうかなんていうか…」

 

12年間も一緒のクラスだなんてどんな確率だよ。

 

「美香がなんか変なこと言ってなかった?」

 

「えっと、たしか土曜の夜に泣きながら電話してきたって……」

 

みると先輩は真っ赤になってうつむくとやっぱり美香のせいか、とかブツブツつぶやいていた。

「まぁ何はともあれ熱がなくて良かったです」

 

「え、あ、うん…」

 

「じゃあ帰りますね」

 

そう言って立ち上がると不意に名前を呼ばれる。

 

「比企谷くん」

 

その声はいつもの彼女とは違う声だった。

 

「ありがとう。そしてごめんねあんなのは私が1番嫌っていたもののはずなのに……」

 

俺にはあんなものというもがなんなのかは分からない。

しかし今それが何なのか聞き返すほど空気が読めないわけではない。

俺は逃げているのだ。

自分からも、この人からも。

逃げているということがわかっても俺は他の方法を知らない。

だから今はこんなことしか言えない。

 

 

「先輩、よかったらまたあそこにきてください」

 

 

そして先輩は笑っているのか泣いているのかわからない声で答える。

 

 

「……うん」




ゴホッゴホッ、もうネタが……
今回はあまり面白くなかったかもしれません
ごめんなさい(。-_-。)

次回は面白くなります!なるよね?なったらいいな…

拙い文章よんでいただきありがとうございました(。-_-。)
感想貰えるとうれしいです(*^^*)

追記
すみませんサブタイトル変更させてもらいました(。-_-。)


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彼に彼女は作ってあげる。

こんにちは大和 天です!

ここ数日投稿できなくてすみませんでした!
え?待ってた奴なんて誰もいないって?
ごめんなさい(>_<)

てな訳で第5話です!
どうぞ!




 

 

 

翌日の木曜日、「また来てください」と言った手前、あんな恥ずかしいこと言った後ではあったが学校に行くしかなくしぶしぶ学校に来た。

感覚とは不思議なもので先輩に何て言われるか考えているとあっという間に4限目の終了のチャイムが鳴る。

俺は今朝来るときに買っておいたパンの入った袋を引っ掴むとベストプレイスに向かう。

流石に先に先輩が来ていて「比企谷くんおっそーい」なんて言われた日には堪らんからな。

 

 

そこの角を曲がれば我が安息の地。

マイベストプレイス。

 

 

と、曲がった瞬間違和感を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

な、なにかいる…

 

 

遂に俺のマイナス(思考)イオンで地縛霊でもでたか、などと思っているとその地縛霊に声をかけられた。

 

 

「比企谷くんおっそーい」

 

「なんでいるんですか」

 

「比企谷くんが呼んだんでしょ!香奈ちゃんから出るマイナスイオンが俺には必要だ!だから来てくれマイハニー♡!って!」

 

「いやいや、最初しか合ってないですから」

 

 

しかしあれだ、先輩もマイナス(思考)イオンを出していただなんて。

しかもマイハニー♡はあんたが登録したくせに。

 

 

先輩は本当は好きなくせに〜、などとブーブー言っているが俺がそれを肯定したら絶対に振られる。絶対に。

 

「てゆうかなんでこんなに早いんですか?」

 

「え?だって4時間目サボったもん」

 

先輩。テヘッ☆じゃないですからね?

かわいいですけどね?

 

「なんでサボったんですか」

 

すると先輩はうつむくとボソッと言う。

 

「なんか落ち着かなくて、ね」

 

え、俺と会うのそんなに嫌だったの?

ハチマンナキソウ。

 

 

ここは話を逸らさねば!

 

「まぁ話はほどほどにして飯食べましょう」

 

「そーだね!はいこれ!」

 

そう言って俺の手に四角い箱を渡す。

 

え…?

 

 

 

 

これはきっとあれだ!

玉手箱だ!

開けちゃダメだ!

 

「あのー、この箱は?」

 

「なーに言ってんの!お弁当に決まってるじゃん!」

 

ですよねー。

このタイミングで玉手箱な訳ないですよねー。

でも先輩なら可愛さ的には乙姫レベルなのかもしれない。

 

「いやー、初めて男の子にお弁当作ったから疲れたよ〜」

 

「先輩かわいいんだから彼氏いたことあるでしょう?彼氏に作ってあげたらよかったのに」

 

先輩、「可愛いだなんて……」何て頬を赤らめながら言わないで!

意識して恥ずかしくなっちゃうでしょ!

 

 

すると先輩は急に拗ねたような顔をしてうつむきながらボソリと言う。

 

「でも……彼氏………できたことないもん…………」

 

ん?

なんだって?

先輩女の子に妬まれるほどモテモテって言ってませんでしたっけ?

 

「先輩モテモテって言ってませんでしたっけ?」

 

「うん、週一くらいで告白されるよ?」

 

「ほぇ?」

 

いかんいかん、変な声が出てしまった。

週一ってなんなの?

恒例行事なの?

 

「それならなんで振っちゃうんですか」

 

「それはまだ言えないなぁ」

 

先輩、ニヤリじゃないですから!

顔がいいからニヒルに見えてかっこいいけど俺がやったら10人中10人キモいと言うまである。

 

「ほらほら!お昼休み無くなっちゃうよ!」

 

「そうですね。ならいただきます」

 

そう言って俺は恐る恐る弁当箱の蓋を開ける。

 

 

 

なんていうか、はい、普通ですね…

不味くはないと確信が持て、なおかつめちゃくちゃ美味しいわけでもなさそうな感じ…

なんかもう、普通のお弁当。

いや、いいんですよ?手作りって感じで!

 

 

 

しかしまぁそんなことは口が裂けても言えないので当たり障りのない言葉をチョイスする。

 

「美味しそうですね」

 

ちょっと!先輩!あんまり喜ばないで!

良心が!俺の良心がぁ!

 

「でしょー?ほら、あーん」

 

「え、あ、いや、ちょっとそれは…」

 

「えー!ほらほら!こんな美少女に食べさせてもらえる機会なんて比企谷くんにはもう来ないんだから!ほら、あーん!」

 

ちょっと先輩?地味に悪口言わないで!

俺もこないと思うけど少しくらいは希望をもたせて!

 

「仕方ないですね、一回だけですよ?あーん」

 

「おりゃ!!!」

 

「ごふっ!」

 

ち、ちょっと!そんな奥まで突っ込まないでくださいよ!

だいたいおりゃ!ってなんですか!

味とかなんにもわかんなかったです…

 

 

 

 

結局弁当を全部先輩に食べさせられヘトヘトになった俺は5限目に遅刻しましたとさ。てへぺろ☆

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

5限目に遅刻した俺は先生に怒られ理由を聞かれたが昼寝をしてましたとしか言えなかった…

なんて1日だ…

 

 

家に帰った俺は昼に食いそびれたパンをもしゃもしゃしながら帰りに買ってきた小説を読んでいると俺の電話機能付き目覚まし時計が鳴る。

また先輩か……

 

そう思いメールを見てみるとAmazonからだった。

 

 

 

いつからだろう。

先輩からのメールを楽しみにしている自分がいるのは…

 

きっと気付いていないだけで……

 

いや違う、気づかないようにしているだけなのだ。

 

何度も勘違いをしてきたから。

いつも自分の勝手な気持ちを相手の気持ちも考えず相手に押し付けてきたから。

 

 

 

 

ふぅ、と息を吐いて思考を止める。

 

先輩相手に勘違いはしないだろう。

だからまぁ今日のお弁当のお返しということで明日はマッカンをおごってあげよう。

 

 

 

 

マッカンが嫌いな千葉県民なんていないからな。

 

 




いかがだったでしょうか?

毎話毎話文章を書くのって難しいと思い知らせれます。

様々な方のssを読ませていただいてますがどう書けばあんなに心が引き込まれていくのかさっぱりわかりません笑

感想や評価、お気に入りなどしてくだされば嬉しいです!

あ、あと質問なども受け付けております!
次話の後書きなどで説明できたらいいなと思っています!
くるのだろうか(笑)

読んでくださった皆様ありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女ははめられる。 前編

こんにちは大和 天です!

時間的にはこんばんわなんですけどね(笑)

てな訳で前編とかつけてみちゃいました!
たぶん前後編だと思います…きっと……

では第6話どうぞ!


 

 

 

先輩とこの場所で出会ってから約1ヶ月が過ぎた。

初めの頃は正直鬱陶しかったがなんだかんだ慣れてくると人と食べるのも楽しいものである。

そんな感じでやっと慣れてきた頃、先輩がまた訳のわからないことを言い出す。

 

「ねぇ比企谷くん、今度の土曜日暇だよね?またデートしない?」

 

ちょっと待って?なんでいつでも暇みたいになってるの?

俺だって休みの日はアニメ見たりゲームしたりダラダラしたり忙しいんだから!

 

 

 

とまあ脳内で言ってみたもののその日は本当に忙しい。

 

「すみません。その日は妹と東京わんにゃんショーに行かなきゃならんものでして」

 

「おや?比企谷くんって妹いたんだ?」

 

「えぇ、はっきり言って最高にかわいいですね」

 

「比企谷くんってもしかしてシスコン?」

 

「千葉の兄妹は全員シスコンですよ?」

 

「いやいやいや、そんなことないから」

 

違う奴は千葉県民ではないな。この非県民め!

と心の中で誰に対して言っているのか分からないことを罵っていると先輩はそんなことは気にせずに続ける。

 

「じゃあちょうどよかった!じゃあ土曜日は幕張メッセに集合ね!」

 

えーっとー……なにがちょうどよかったのかな?

ハチマンワカンナイ。

 

「ちなみに何がちょうどよかったのか聞いてもいいですか?」

 

「え?だって私も東京わんにゃんショーに行こうと思ってたから」

 

なん……だと………?

俺と小町の兄妹デートを邪魔しようというのか!

てゆうかダメだ!この人を小町に会わせたらのキケンだ!

主に俺に対する小町からの質問が。

あの子すぐ俺のお嫁さん候補とか探そうとするんだから……

俺は働く女性としか結婚しないんだからね!

それと兄離れはまだやめてね小町ちゃん?

 

話を戻すと千葉でやるのになぜ東京がつくのか。

東京ディスティニィーランドも同じである。

もうちょっと頑張れよ千葉!負けるな千葉!

 

 

あ、話戻るどころか余裕で脱線してました。てへぺろ☆

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結局約束を取り付けられた俺は渋々それを了承した。

あの人なら色々な人に誘われるであろうになんで俺なんかを誘うのだろうか。

以前の俺なら勘違いして振られて2度とベストプレイスに行けなくなるまである。

おかしいなー、なんでこんなに鮮明に未来が見えるのかなー。

 

 

取り敢えずその事を小町に伝えるとニヤニヤしながら俺と先輩の関係を聞いてきたが別にただの先輩後輩なだけだと伝えると「つまんなーい」と言いながら自分の部屋に戻っていった。

ごめんねつまんないお兄ちゃんで……

 

 

 

 

 

土曜日の朝、俺は小町と一緒に15分程バスに乗って幕張メッセに向かった。

朝からドン小町によるファッションチェックが行われとても疲れた。

だってなかなかOK出ないんだもん……

 

 

 

着いてから待ち合わせ場所にて15分、やっと先輩が到着した。

なんであの人毎回遅刻するんだろう…

 

「ごっめーん!待ったー?」

 

「えぇ、まぁ……」

 

「ごみぃちゃんそこは『全然待ってないよ』でしょ?小町的にポイント低いよ?」

 

「それもそうだな。先輩、以前に比べたら全然待ってませんよ」

 

「もぉ〜!それは忘れてよぉ!」

 

そう言って先輩は俺の胸をポカポカと殴りつける。

ちょっと先輩、それかわいいですからやめてね?

そして小町はやれやれごみぃちゃんはなどとブツブツ言っている。

ごめんね小町ちゃん、ちょっと意地悪したくなっちゃったの。

 

 

 

先輩のポカポカがひと段落つくと小町はちょいちょいと先輩を呼び出すと先輩の耳元でゴニョゴニョと何かを言う。

すると先輩は真っ赤になりながらブンブンと顔の前で手を振っていた。

いったいなに言ったの小町ちゃん……

 

 

 

 

3人でどこから回るか話している間、小町が何か落ち着かない。

なにこの子キョロキョロしてるの?

そんなことしてたらキョロちゃんって呼ばれちゃうよ?

 

 

すると小町はいきなりビシッと髪のとんがった弁護士ばりの速さで入り口付近を指さす。

 

「お兄ちゃん今あそこに友達がいたから友達のところに行ってくるね!あと中で会っても話しかけてこないでね!あと香奈先輩と一緒に回るんだよ!」

 

と言い放つと俺が返事をする間も無くズバババっと走って行った。

……えっと?小町ちゃん?なにこれどういうこと?

呆然としているとちょんちょんと後ろから肩を突かれる。

振り向くと先輩がほんの少し頬を赤らめながら少し困り顔で「どうしょっか?」と聞いてくる。

 

「………行きましょうか」

 

そう言って歩き始めた先輩の歩調に合わせて歩き始める。

 

 

 

全く小町ちゃんったらー、

 

 

 

 

 

 

 

帰ったら覚えとけよ!

 




いかがでしたでしょうか?

今回は少しだけ小町が出てきました!
小町ってこれであってるのかな?などと悩み悩み書きました笑

話は変わりまして最近思うのですがランキングってどうやったら載るんですかね?
え、あ、いや、ぜ全然載りたいだなんて言ってないんだからねっ!

選考基準などあればどなたか教えていただけたら嬉しいです(*^^*)

感想や評価などお待ちしております!

読んでくださってありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女ははめられる。 後編

こんにちは大和 天です!

皆様のおかげでランキングに載れました(。-_-。)
ありがとうございます(。-_-。)

これからも頑張ります!

では7話ですどうぞ!


 

 

「きゃあ〜!もふもふしてる〜!」

 

と言いながら目の前にいる先輩はウサギをもふもふしている。

そんな先輩を見ながらもこれは「ウサギをかわいいって言ってる自分かわいい」アピールではないな、と俺のあざといスカウターが勝手に見抜く。

この人の怖いところはこういうところである。

あざといところも多々あるのだがたまに純粋にこういう事を言うのでドキッとしてしまう。

くそっ!これがギャップってやつか!

 

「比企谷くんこっちこっち!ハムスターだってさー!」

 

そう言って先輩は、わー!きゃー!などと言いながらペットを撫でまくる。

 

「先輩動物好きなんですね」

 

「うん!でも大きいのはちょっと苦手かな。でもここの大半は子犬や子猫だから大丈夫なんだ!」

先輩も小動物系女子だから通じるものがあるのだろう。

ていうか小動物系女子ってなんだよ。

それ俺だったらなにになるの?

腐った魚眼系男子かな?

なにそれ普通に嫌だ!

 

と、どうでもいいことを考えていると先輩が「次は鳥さんのところ行くよ!」と俺の袖を引っ張っていく。

先輩やめて!みんなに見られてるからっ!

 

鳥のコーナーに行くほんの数分の間に俺はいつも俺がリア充(笑)にかけている呪いをたくさん受けた……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

先輩は俺を鳥のコーナーに連れて行った割には特に喜んだ様子もなくすぐにその場をたった。

ただ、先輩はペンギンを見て喜んでいた俺に「ペンギンってラテン語で肥満って言う意味なんだよ」と耳打ちしてきた。

先輩のせいでペンギンがただのメタボなサラリーマンにしか見えなくなりました。まる。

そして来年また小町と来たら今日の仕返しに絶対にこのことを教えてやろうと深く心に刻み込んだ。

 

 

 

「比企谷くん、私お腹減ったな〜」

 

それもそうだ。

もう昼過ぎもいいところである。

 

「そうですね。じゃあ帰りますか」

 

「ちょっと!なんでそうなるのよ!」

 

先輩はぷくっと頬を膨らませる。

ちょっと!係員さん!ハムスターが逃げてますよ!

 

「お腹空いたね〜、って言われたらなに食べに行きますか?でしょ?」

 

えー、そんなの八幡知らない。

友達いないからそんなこと言われたことないんだもん……

しかもそんなこと言われたら言うしか無くなる……

 

「はぁ…で、どこ行きます?」

 

「んー、そだなー……あ、そうだ!私この前先生に美味しいお店教えてもらったんだ〜。そこ行かない?」

 

「どこでもどうぞ」

 

「もぉ〜、つれないなぁ〜」

 

「へいへい、すみませんね」

「ほら!いくよ!」

 

そう言う先輩の後をついていくとそこはラーメン屋さんだった。

 

「あの、先生って男ですよね?」

 

「違うよ〜!私が男の先生にラーメンのお店なんて聞くわけないじゃん!」

 

それもそうか、と納得すると同時に女の先生でラーメン好きとかどんだけだよとも思う。

女教師って『じょきょうし』よりも『おんなきょうし』のほうがエロそうだと思う今日この頃でした。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま〜!いや〜美味しかったね!」

 

「そうですね」

 

くそっ、久しぶりに俺の千葉ラーメンランキングが更新されてしまった……

こんなおいしい店があるなんて知らなかった。

なかなかやるなその先生。

 

会計を済ませて店を出ると先輩が口を開く。

「さぁーて、次はどこ行くー?」

 

「家とかいいですね」

 

「え?わ、私の家?」

 

や、やめてくれ!そんな頬を赤らめてこっちを見ないでくださいっ!

 

先輩は頬を赤らめながらどうしよぉ〜、などと頬に手を当てている。

くそっ、かわいいっ……

 

「いやいや、帰宅を提案したんです」

 

「ちょっと!帰宅とかダメだよ!ほらほら、次行くよー!」

 

そう言って先輩は俺の袖を引っ張っていく。

八幡袖はちょっと反則だと思うな!

 

 

 

そういって連れてこられたのは普通のカフェだった。

 

「比企谷くんコーヒー好きだったでしょ?」

 

「えぇ、まぁ…」

 

先輩はなぜか嬉しそうで鼻歌を歌っていた。

中に入ると外見に似合わず内装はオシャレだった。

店員に席に案内され席に着くとメニューも見ずに先輩は俺の分まで注文を済ませる。

「先輩ここよく来るんですか?」

 

「まっあね〜♪どお?馴染みの客みたいでかっこよかったでしょ?」

 

「えぇ、それを言わなければかっこよかったですね」

 

先輩はうるさいなぁ〜、などと言いながらも嬉しそうだ。

間も無くコーヒーとケーキが運ばれてきた。

先輩は嬉しそうにケーキをもぐもぐしていてそれを見ているとなぜだか俺も少し嬉しくなった。

 

 

 

1時間ほどコーヒーを飲みながら先輩と話し店を出る。

珍しく先輩の方からもう帰ろっかと提案され家に送らされるはめになった。

先輩はしゃべる時はしゃべりまくるのだがしゃべらない時はしゃべらない。

しかも嫌な沈黙ではなく心地よいから不思議である。

 

この先も先輩の横にいれたらいいなと思う自分がいる。

なんとなくだがこの気持ちがなんなのかは分かる。

だがこの想いを伝えたらきっと先輩は俺から離れていくだろう。

 

 

「先輩は……」

 

「ん?」

 

「俺といて迷惑じゃないんですか?俺の勘違いかもしれないですけど前に噂だってたってましたし…」

 

「そんなことないよ〜」

 

先輩はのらりくらりと俺の質問をかわしていく。

それに苛立ちを抱えながらも質問を続ける。

「だったらなんで「比企谷くん」

 

先輩が俺の言葉に割って入る。

苛立ちを隠しきれないままなんですか、とぶっきらぼうに言うと少し前にいた先輩がくるっと振り返る。

 

「私の家ここだから」

 

どうやら気づかぬうちに家の前まで来ていたようだ。

送ってくれてありがと〜、と言いながら扉に向かっていく先輩をなにも言えずに見ていると先輩がクルッと振り返りこちらに戻ってくる。

 

 

 

まるでいつかのあの時のように……

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷くんなら分かるでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

そう言って彼女はバタンという音とともに俺の前から消えた。

 

 

 




えーと、最後の香奈の台詞意味がわからない人がたくさんいると思いますがいつかきっとその真意を明らかにします!たぶん!たぶん……

話数が増えるごとに何を書けば面白いかわからなくなってきます
パラメーターとしてはネタが少なかったら追い詰められてるなと思ってください(笑)

感想、評価、お気に入りなどおまちしております!

読んでくださった方ありがとうございました(*^^*)



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彼を彼女は知る。

こんにちは大和 天です!

今回は先輩こと鹿波香奈目線です!
ヒッキーと出会う前?を書きました!

はっはっは!全然うまくかけないぜ!

てなわけで8話ですどうぞ!


「しっつれいしま〜すっ」

 

そう言って私は職員室の扉を開ける。

 

今日は入学式の次の日。

私達2、3年生は入学式が休みだったので今日は休み明けの登校である。

 

昨日私は美香の買い物に付き合わされて宿題をまったくしていなかったため、居残りをして仕上げた宿題を職員室に持ってきたのだ。

ちなみに美香は全部終わらせてた。

なんなのあいつ。

 

 

 

 

私は宿題を提出しおわりさぁ帰ろうと思って扉の方に向かう。

すると何やら話し声が聞こえる。

べ、別に盗み聞きなんてしてないんだからねっ!

 

「………が……事故………」

 

「………初日………骨折……」

 

え?誰か骨折したの?

こういう時知りたくなっちゃうのが女子高生ってやつですよ!

 

そこで私はクルリと向きを変えると私の趣味のよき理解者である、ある先生のもとに向かう。

 

 

 

「平塚せーんせっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

私は家に帰りながらさっき聞いた話を思い出す。

 

 

大まかに言うと入学式初日に犬をかばって車に轢かれ左足を骨折した新入生がいる、とのことだった。

 

なんて不運の持ち主だ、となんだか哀れみを通り越して感動してしまった。

しかし同時に今時自分以外の人や物のためにそこまで出来る人がいることに驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

そして私は少しだけその人のことを気になり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

あれから約1ヶ月がたった。

その人は未だ見つからない。

 

 

私の知り合いや同じ中学だった現高1の後輩たちに聞いて回ったが誰も知らないという。

え?友達には聞かないのかって?

ははは。友達いないです……

 

 

しかしどう考えたっておかしい。

普通なら名前くらいすぐ分かるのに…

 

 

 

仕方ない、美香に相談するか。

でも美香に知られると短くて一ヶ月はそのネタでネチネチいじってくるからなぁー……

だから私は美香にほとんど相談はしないし、美香とは友達だと人に言ったことはない。

 

 

 

でも仕方ない、聞いてみるか…

そう思い同じクラスになって12年目の彼女に声をかける。

「ねぇ、美香ー」

 

「ん?なにー?」

 

美香は気が乗らないと相談しても適当に答えるからそれなりの対策が必要だ。

「私さー、気になる人ができてさぁ〜」

 

「え?まじで?いつまでたっても彼氏できない香奈が?」

 

ふっふっふ、ひっかかったな!

でもちょっと待てぃ!

できないんじゃなくてつくんないんだからね?

一応私これでもモテるんだからね?

 

「そーそー!でもその人の名前がわかんなくてさ〜!どうやったらわかると思う?」

 

「え?普通に会って聞けばいいじゃないの?」

 

 

………

 

 

……………

 

 

その手があったかぁー!!!

私としたことが!なんたる不覚っ!

 

 

一人で落ち込んでいると美香がニヤニヤしながら聞いてくる。

 

「で、その人ってどんな人?どこであったの?」

 

「教えな〜い♪」

 

だって何にも知らないんだも〜ん。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

その日の昼休み急いでお弁当を食べ終えた私は1年生の教室に向かう。

 

とりあえず1番近い教室の扉から顔を覗き、扉の近くにいた女の子に入学式に休んでいた人はいないかと聞く。

いないと言われ次の教室へ。

 

 

 

4つ目の教室でやっとそれらしき人がいるとの情報がゲットできた!

情報ゲットだぜ!ピッピカチュウ!

 

「入学式の日に怪我した子とかいるかな?」

 

「あー、はい、たぶん……」

 

「お、ほんと?で、どの子?」

 

「あー、今はいないです」

 

「え?休んでるの?」

 

「いやいや、多分来てますよ!でもなんかいっつもお昼休みはいないです、たぶん….…」

 

なんだろうこのとっても曖昧な感じ。

なんかドラえもんの秘密道具でも使ってるの?

「じゃあどこいったかわかる?」

 

「購買とかじゃないですかね?興味ないんでわかんないですけど」

 

「へぇ〜、ありがとー。あ、そうだ!どんな人か教えて!見た目とか性格とか!」

 

「え、いや、そんなこと言われてもですね、あの人が喋ってるのとか見たことないからちょっとー。」

 

「じゃあ見た目は?」

 

「なんか髪がモッサリ?ボサッと?してて目が濁ってる感じ?ですかね?」

 

「ほぉ〜、ありがとー」

 

そう言って教室を後にする。

てかどんだけステルスなのよ!

忍者かなんかなの?

しかも印象悪すぎね!

 

 

 

でも、ま、とりあえず購買にでも行きますか!

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

購買に来たはいいもの人多すぎて全然わかんないし!

こりゃ明日昼休みになってすぐ教室に行くしかないなぁ〜と考えていると、ふとある一点が目に止まる。

 

そこは購買の横にある道。

 

行き先はたぶん購買の裏。

 

以外とそこにいたりして!などと考えながら何気なしに曲がり角を曲がるとそこにはなんと人がいた。

 

「うわっ!」

 

思わず飛び上がってしまった。

ビックリさせやがって!

オバケかと思ったじゃん!

 

 

と、よく見てみるとそこにいた男の子は濁った目でこちらを見ていた。

この子が探していた人だ!とすぐにピンときた。

だって目が腐ってるんだもん!

 

しかもなにかをブツブツ言っている。

それやめたほうがいいよ!

ちょっとキモいぜ☆

 

そして腐ったジト目で少しきょどってる目の前の男の子に声をかける。

 

「あ、あのぉ〜…」

 

ううっ…コエカケズライヨォ〜!

でもチャンスは今しかない!

頑張れ私!

 

「…横、座ってもいいかな?」

 

すると彼は目を見開きながらやっとの事で言葉をひねり出す。

 

 

 

「………ふぇ?」

 




いかがだったでしょうか!

ここで1つ謝罪があります
ランキングにのって調子乗ってました
すみませんでした(。-_-。)
以後このようなことがないように気をつけます(>_<)




話は変わりますが活動報告のところにご指摘や質問、言いたいことを言ってもらえるように作ってますので何かあればそちらに書いてもらえたらうれしいです!

それと皆さんの感想が書く源になってます!
感想くれたら嬉しいです(*^^*)

拙い文書読んでいただきありがとうございました(。-_-。)

追記

活動報告でアンケート?っぽいことしてます!
誰か答えてくれたら嬉しいです(。-_-。)


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彼は彼女にしてやられる。

こんにちは大和 天です!

前回のあとがきに追記して今回ヒッキー目線にするか先輩目線にするかアンケートをとってみたところなんと誰からもきませんでした!ハハハ、ちょっと悲しかった(。-_-。)

なので今回はヒッキー目線です!

では9話ですどうぞ!


 

「はぁ〜……」

 

思わずため息が出る。

考えても考えても分からない。

 

 

 

「比企谷くんなら分かるよね?」

 

 

 

そう言われた日からもう1ヶ月以上もたっている。

月曜日におそるおそるベストプレイスに行くと先輩は普段と変わらぬ様子だった。

相変わらず真横に座らせられ雑談や嫌味を聞かされる。

目が死んでるとか、友達作りなよとか、数学の勉強したほうがいいんじゃないの?とか……あ、全部俺への嫌味でしたっ☆

 

 

 

 

 

ただため息をついたのには他にも理由がある。

どうやら総武高校には夏休みの課外とかいうふざけたものがあるらしい。

しかも強制参加ときたものだ。

課せられた外のものなのに強制参加だなんて八幡それはおかしいと思うな!

どうやら総武高校ぐらいの進学校になると強制参加になるらしい。

それが7月いっぱいまで……

俺は終業式の次の日から予定でびっしりだったのに。

本読んだり、マンガ読んだり、昼寝したり、アニメ見たり、勉強したり予定びっしりだったのに……ってまともなの勉強だけだった!てへぺろ☆

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

4限目の終わるチャイムが鳴るとみんな席を立つ。

今日は7月31日、課外最終日である。

 

 

 

「ばいば〜い」

「あとでメールするねー」

 

 

 

そんな声が教室のあちこちで上がる。

もちろん俺にはそんな声はひとつもかからない。

むしろ存在を認識されているか疑うレベルである。

ふっ、俺の光学迷彩(自前)は今日も順調だな、などと自分で自分を褒めながら下駄箱で靴を履き替える。

 

 

 

 

 

さて、帰ったら昼飯食べて昨日買った小説でも読むか、と駐輪場に向かう。

すると今朝自転車を止めたと思われる場所に人がいる。

しかも女子だ。

はぁ、どいてくださいとか言って不審者扱いされるのも嫌だなー、などと思いつつも言わなければ帰れない。

帰宅部の毎日の目的地である自宅に帰るためならばこれくらいのことはたやすい。

 

 

「あのー、すみません。どいてもらってもいいですか?」

 

「やだ」

 

「え?」

 

 

そこで女子生徒が振り返る。

 

「やぁ、比企谷くん」

 

「げっ……」

 

思わず本心が漏れてしまう。

するとその女子生徒はぷくっと頬を膨らせ怒った仕草を見せる。

はい、あざといあざとい。

 

「なんでここにいるんですか、先輩」

 

「いやぁ〜、人を待ってたところでね〜」

 

「あ、そうなんですか?お疲れ様です」

 

 

そう言って俺は自転車の鍵を開けて自転車にまたがりペダルを漕ぎ出す。

ヒーメヒメヒメ♪と漕ごうとするが全く前に進まない。

後ろを見ると先輩が荷台を手でつかんでいた。

 

「先輩、離してください。帰れないじゃないですか」

 

「じゃあ待ってよ比企谷くん!私比企谷くん待ってたのに!」

 

これはあれだ。

きっと罠だ。

なにか重労働をさせられるに違いない。

ソースは俺。

にこにこしてるから何かと思えばノート持って行けとかやめて欲しい。

しかも持って行ったら早くもってこいと先生に怒られる始末。

 

「なんでそんな嫌そうな顔してるのよ!」

 

「……俺に何させるつもりですか?」

 

「ちょっと家まで送ってもらおうかなーって」

 

は?何言ってんのこの人?

2人乗りなんて恥ずかしくてできないからね?

 

「歩いての帰ってください。あんたには立派な足がついてるじゃないか」

 

「ハガレンはいいから行くよー!ほらほらはやく!」

 

そう言って先輩は俺の自転車の荷台にまたがる。

あ、先輩ハガレン知ってたんですね。

キモがられなくてよかったです。

 

 

「大体そこは小町専用なので降りてください」

 

「えー、でも小町ちゃんに許可とったよね?ケータイ見てみて!」

 

「え?」

 

そう言って俺は暇つぶし機能付き目覚まし時計を取り出すと小町からメールが来ていた。

 

 

 

『お兄ちゃん香奈先輩送って行かなかったら家入れてあげないから』

 

 

 

なん……だと………?

ていうかまずなんで小町のアドレスを先輩が知っているんだ。

 

「先輩いつ小町と連絡先交換したんですか?」

 

「え、いやなんかこの前小町ちゃんからメールが来て〜……」

 

小町いつの間に俺のケータイを見たんだ。

しかも俺のケータイはロックかかってるのにどうやって開けたの?

俺のプライバシーはどこにあるんだろう……

パスワード何に変えようかと考えていると先輩が肩を叩く。

 

「ほら行くよ!」

 

「へいへい」

 

「そこは、喜んで!でしょ?」

 

「いや、それはないですね」

 

そう言って俺は自転車にまたがるとペダルに力を入れる。

 

 

あの、先輩ひとつ言いたいんですけど、俺との2人乗りをみんなに見れて顔赤くするほど恥ずかしいなら乗らないで欲しかったです…

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ比企谷くん」

 

「はぁ…はぁ……はい?」

 

「暑いねぇ」

 

「はぁ……はぁ……意地悪いですよ」

 

真夏の昼に先輩を自転車の後ろに乗せて走るなんてどう考えても奴隷である。

先輩に後ろから指示された通りに漕いでいると先輩の家に着く。

「いや〜、ありがとね!」

 

「小町に感謝してください」

 

小町には帰ったらもうこんなことはしないようにしっかり言っておこう。

「それじゃ」

 

そう言って自転車を半回転させると漕ぎ出そうとペダルに足をかける。

レッツゴーマイハウス!

しかしペダルが進まない。

おそるおそるふりかえると先輩が荷台をつかんでいる。

「はぁ……今度はなんですか?」

 

先輩はちょいちょいと手招きをする。

体を先輩の方に傾ける。

要件を早く聞いて帰りたい。

 

 

すると先輩は俺の方を掴むとグイッと顔を俺の耳に近づけた。

 

 

 

 

「比企谷くん、花火大会のお誘い待ってるから」

 

 

 

 

そう言うと俺が返事をする間も無くじゃっあね〜、と家に入っていった。

 

 

 

まったく、勝手な人だ。

どうせ荷物持ちをさせられなにか奢らせられるのだろう。

 

 

奴隷は辛いな、と思いながらペダルに足を乗せ、愛しの我が家にかえ……ろ…う………と…ん?

 

 

 

 

「花火大会のお誘い待ってるからって言った⁉︎」

 




いかがだったでしょうか?

今回ボキャブラリーの無さに改めて気づきました(。-_-。)

あとTwitterで検索したら紹介してくださってる人がいてモチベーションあがりました(*^^*)
ありがとうございます(*^^*)

評価や感想、誤字脱字やご指摘などお待ちしております!
あと感想や感想とか!それと感想とか!


読んでいただきありがとうございました!


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彼は彼女を変える。

こんにちは大和 天です!

八幡誕生日おめでとぉぉぉおおおお!
そしてごめんなさい!あと1時間半で誕生日終わっちゃう笑

それと読んでみたい言ってくださった方々ありがとうございました!

一応1番多かった先輩こと鹿波香奈目線でお送りします!
八幡がキャラ崩壊してたらごめんなさい!


それでは9.5話ですどうぞ!


 

 

 

「ただいまー……」

 

返事はない。

両親は共働きだし、私は一人っ子だ。

 

 

あぁ疲れた…

毎日毎日勉強勉強。

受験生って辛すぎる。

夏休みの課外もあと3日もあるし……

 

 

 

今日も夏休みの課外が午前中で終わりお昼ごはんを食べたら午後も勉強に勤しまなくてはならない。

 

 

 

最近のお昼ごはんはあまり美味しくない。

きっと彼がいないからだろう。

彼と昼休みを一緒に過ごすようになってからなんだか少しだけ毎日が楽しい。

彼は他の男子と違って間を持たそうと頑張って喋ったりしないし、むしろその沈黙が居心地が良かったりする。

 

 

はっ!いけないいけない!

何考えてるんだろ私!

べ、別に比企谷くんがき、気になってるとか全然そんなんじゃないんだからねっ!

だって私は男の子を好きになったことがないのだから。

そんなことよりご飯食べて勉強しないと!

 

 

私は台所に行き、さて、何食べようかな〜、と冷蔵庫をゴソゴソしているとプルルルルと私のケータイから音がする。

見てみると知らない番号だ。

 

「はい?」

 

「あ、香奈先輩ですか〜?兄がいつもお世話になっております!妹の小町です!」

 

「えぇ⁉︎小町ちゃん?なんで私の番号知ってるの?」

 

「お兄ちゃんのケータイ勝手に見ちゃいました!」

 

比企谷くんってケータイにロックかけてなかったっけ?

比企谷くんのプライバシー守られてないじゃん……お疲れ様です…

「それでどうしたの急に?」

 

「えっと、香奈先輩に1つ質問なんですけど、先輩ってお兄ちゃんの誕生日知ってますか?」

 

「いや、知らないけど……」

 

「あー、やっぱりそうですかー。ゴミいちゃんの事だからそんなことだろうと思いました」

 

比企谷くん妹からゴミってよばれるってどんだけなのよ!

なんだか可哀想になってきた……

 

「それでですね〜、兄の誕生日が8月8日なんですよ〜。でもその日私遊ぶ予定があってゴミいちゃんどうせ家で1人でダラダラしてるんでお祝いでもしてくれませんか〜?」

 

……え?

要するに私に比企谷くんの家に比企谷くんを呼びに行って比企谷くんと二人っきりでお祝いしろと?

無理無理無理無理!

 

でも、ちょっといいかも……

 

 

「あ、でも、先輩受験生なので忙しいなら全然断ってもらっていいですよ!」

 

な、なんだって?

勉強のことはたった今どうでもよくなりました。まる。

 

「比企谷くんがかわいそうだから行ってあげるよー!」

 

「香奈先輩も素直じゃないですね〜。では家の地図送っておきますね〜」

 

そう言って小町ちゃんは失礼します、と言って電話を切った。

すると途端にメールが来た。

開いて見ると小町ちゃんからで家の地図と比企谷くんのちっちゃい時の写真が添付してあった。

目が腐ってない……だと……?

 

 

なんで比企谷くんの小さい時の写真が送られてきたかは分からないけど取り敢えず3回ほど保存しておきましたっ☆

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

キンチョウスル……

え?人の家のチャイムってこんなに緊張したっけ?おっかしいなぁー。

 

なんで10分も悩んでるんだろう。

あぁもう!押しちゃえ!

ピンポーンという機械音が鳴りなぜだか膝がガクガクしている。

 

 

………………

 

 

 

………出ないだと?

私の緊張を返せ!めちゃくちゃ損したじゃん!

私は恨みの全てを人差し指に乗せピンポンを押しまくる。

すると扉がガチャッと開き中からゾンビが………じゃなかった比企谷くんが出てきた。

 

あれ?なんだかいつもより目が腐ってる様な……

 

「お、おはよ、比企谷くん…」

 

「なんで先輩がいるんですか?」

 

「え、いや〜、比企谷くんが1人寂しく誕生日を過ごしてそうだから受験勉強の息抜きがてらお祝いをしてあげようかなって」

 

 

はぁ〜、なんで普通にお祝いに来たって言えないんだろう……

比企谷くん相手だと調子狂うなぁ。

 

 

「まぁ、なんでもいいですけどね」

 

「素直じゃないなぁ〜」

「まぁなんでもいいんですけどね。祝ってくださってありがとうございました。それじゃ」

 

そう言って比企谷くんは玄関のドアを閉じようとする。

私はドアの間に足をねじ込むと思いっきりドアを開ける。

 

「まーだ話は終わってないよ?」

 

私ができるとびっきりの笑顔でそう言うと比企谷くんの顔が引きつっていた。

 

「先輩それ怖いですよ?それでまだ何かあるんですか?」

 

「あるに決まってるでしょ〜!ほら!今からプレゼント買いに行くよ!因みに行ってくれなかったら小町ちゃんに言いつけるから!」

 

「はぁー、分かりました。準備するんで上がってください」

そう言って比企谷くんは私を家に招き入れてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「どうも」

そう言って比企谷くんはわたしからコーヒーとケーキを受け取る。

そして比企谷くんの手の中には大量の砂糖。

わたしそんなに入れないよ?

 

今私達は大型のショッピングモールに来ている。

ここなら大抵のものはあるからね!

私が昼前に比企谷くんの家に行ったこともあり、また、比企谷くんのバースデーケーキも兼ねてカフェでケーキを奢ってあげた。

あっれー、おかしいなぁー、財布の中で樋口さんが消えて野口さんが分身の術してる……

 

比企谷くんは持っていた砂糖を全部ドバドバと入れて美味しそうに飲んでいた。

そう言えば昼休みにもMAXコーヒーとかいうのを飲んでたなぁ、と思い出す。

今度飲んでみよう。

 

「で、今から何するんですか?」

 

「んー、映画とかどう?」

 

「先輩観たいのあるんですか?」

 

「あるんだけど結構前のだから時間があるかどうか……」

 

「まぁ、先輩の観たいのがあるなら付き合いますよ」

 

こういうときの比企谷くんはずるい。

普段なんでも嫌がるのにこういう時だけ優しいんだから。

こういう所を他の人に見られたくないと思う自分がいることに気づく。

ただの友達なのに。

 

「なんで赤くなってるんですか?俺なにか怒らせること言いました?」

 

少しキョドりながら比企谷くんは言う。

え?私顔赤くなってた?

やばい!なにがやばいってわかんないけどやばい!

 

「なんでもないよ!」

「ならいいですけど…じゃあ行きましょうか」

 

「うん!」

 

そう言って比企谷くんは歩き始めた私の前を行くわけでも後ろからついてくるわけでもなく私の横を一緒に歩いてくれる。

普段私の事あざといとか言うけど比企谷くんもなかなかだよ?

 

 

映画館の前に着くと時刻表を見る。

どうやら私の観たい映画は7時から2時間……終わるの9時じゃん!

さすがにダメだよね、と思い比企谷くんを見ると比企谷くんが口を開く。

 

「あと4時間くらいありますけどなにして時間潰しますか?」

 

「え、終わるの9時くらいだけど大丈夫なの?」

 

すると比企谷くんは驚いたような顔をしている。

 

「えぇ、まぁどうせ両親が帰ってくるのは夜中ですし、ボッチは時間潰すの得意なんですよ?」

 

「時間潰すのに得意とかあるの?」

 

自然と笑みが溢れてしまう。

最近笑ってなかったな。

追い込まれてたんだ私……

 

「えぇ、ボーっしとけばあっというまに1日が終わってますよ」

 

「授業ちゃんと聞いてるの?」

 

「えぇ、まぁ、国語だけなら学年3位です」

 

なん………だって……………?

ひ、比企谷くんって頭良かったんだ…

知らなかったなぁー…

 

「それじゃあまぁ、行きますか」

 

「そだね」

 

そう言って私は比企谷くんの袖を掴む。

真っ赤になった比企谷くんはやめてください、とか言ってたけど私は離さなかった。

さっきのお返しだよ!

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、なかなか面白かったですね」

 

「うん!」

 

どうやら比企谷くんは私の観たかった映画を楽しんでくれたらしい。

私はというとなぜだか比企谷くんの横にいるとモヤモヤしてしまってそれどころじゃなかった。

ナニコレ……

 

 

映画を観るまでの間の時間つぶしは結構楽しかった。

私はこんなことになると思ってなかったのでお金が……そのー………比企谷くんに奢ってもらうことになりました。

ごめん比企谷くん誕生日だったのに……

 

ちなみにこの時に比企谷くんに誕生日プレゼントとしてブックカバーをあげました!

比企谷くん本好きらしいからね!

 

 

その後は私のワガママに付き合ってもらい比企谷くんは本当に映画をみる前はもう寝てしまいそうなくらいクタクタだった。

 

そんなクタクタだった比企谷くんがなぜだか映画の話がしたいと言ってカフェに行きペラペラと今まで見たことのないくらい楽しそうに映画の話をしていたので私は比企谷くんの話のおかげでなんとなく映画の話がわかった。

 

気づくとあれからさらに2時間がたっていて急いで電車に飛び乗った。

さすがに夜も遅いからか電車の中はガランとしていて私たち2人以外に人はいなかった。

 

 

比企谷くんはというと3分もしないうちにスースーも寝息を立て始めた。

比企谷くんって目を瞑ってたらかっこいいのにな、と気づいてしまう。

 

 

あー!モヤモヤする!

なんなのこれ!

私は別に比企谷くんのことが好きな訳じゃ……ない………はず………

 

 

そこでやっと自分の気持ちに気づく。

 

 

そっか、私………

 

 

 

すると急にドキドキしてしまう。

ぷにっと比企谷くんの頬を指で押してみる。

返事がない、ただのしかばねのようだ。

 

 

私は比企谷くんが寝ていることを確認するとまだ彼に言ってなかった言葉を言う。

 

 

 

 

「比企谷くん、お誕生日おめでとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして私は彼の頬にキスをした

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

八幡の誕生日編でした!
別に読まなくても良かった?
ハハハ、ごめんなさい(。-_-。)

ご感想や評価、誤字脱字、ご指導などいただけたら幸いです(。-_-。)

今回は特に感想欲しいです(。-_-。)
最近上手いのか下手なのか、面白いのか面白くないのかわからないので感想もらえると嬉しいです(>_<)

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女に問いかける。

こんにちは大和 天です!

なんと10話目です!
皆さんが読んでくださるおかげでここまで続けてこれました!
これからも頑張ります!


そして今回は花火大会です!

まぁ、なんていうか、そのー……
まとめられたか不安です(笑)

てな訳で10話ですどうぞ!


 

 

 

もう1時間くらいたっただろうか……

俺はスマホを目の前に置いて腕を組んで悩んでいた。

なぜ俺がこんなに悩まにゃならんのだ。

そうだ落ち着け、なにも悩むことはない。

簡潔に用件だけを伝えればそれでいいのだ。

 

 

『花火大会一緒に行きましょう。駅に6時集合で』

 

 

 

ふっ、完璧だ。

送信っと。

 

はっはっは、これで適当に荷物持ちすれば終わりだ。行きたくないけど。

 

すると俺のケータイが鳴る。

昨日箱買いしたMAXコーヒーを発送しましたってアマゾンからメールが来たのかとメールを開くと先輩からだった。

 

はいはい、おっけー!って来たんだろ、と思いながらメールを開く。

 

 

 

『やり直し。』

 

 

 

 

なん……だと………?

八幡ちゃんと誘ったよね?

やり直しって何ですか?

ていうか誘えって言ったの先輩の方ですよね?

 

すると続けざまにメールが来る。

 

 

 

『だいたいメールで誘うなんてありえないよねー?』

 

 

 

やかましい!

ぼっちなめんな!

電話出てくれなかったらつらいでしょうが!

 

でも仕方ない、電話するか……

だってしなかったら小町にバラされて小町に嫌われちゃうからな。

こ、これは小町に嫌われないために電話するんだからねっ!

 

 

俺は数少ない連絡先から電話をかける。

そろそろマイハニー♡から先輩の名前に変えとかないとな。

でも1回変えたのに戻ってたんだよなー……

小町だなきっと。

 

 

プルルルル、とたっぷり10コールしてやっと先輩が出た。

 

「や!比企谷くんじゃん!どしたのー?」

 

「………はぁー」

 

「どーしたのため息なんかついて」

 

「何にもないです。で、花火大会なんですけど…」

 

「花火大会がどーしたのー?」

 

 

くそっ!分かってるくせに!

この人やだよぉ〜

 

 

「えっと、そのー……その日空いてますかね?」

 

「うーん、私いろんな人に誘われてるんだよね〜」

 

「なら俺は行かなくてもいいですね。よかったです。それじゃ」

 

プッと電話を切る。

よかったー!これで家から出なくてすむ。

さぁ寝よっと!

そう言ってベッドに入るとまたケータイが鳴る。

 

 

 

『駅 5時 きなさい』

 

 

 

怖い怖い!絶対怒られるやつだよこれ。

やはり行くしかないのか……

辛いなぁー、召使い……

 

 

仕方ない、後で小町に有る事無い事吹き込まれる前にメールを返しておくか……

でもただ普通に返すのも癪だ。

たまには言い返してもいいだろう。

 

 

『人に言っておいて先輩はメールでだなんてありえないですよねー』

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんごめん」

 

「………はぁー」

 

「ごめんってば」

 

「今何時か聞いてもいいですか?」

 

「え、えーと……6時、かな?」

 

「だいたい先輩から5時に集合って言っておいて6時に来るってどういうことですか」

 

「いやぁ〜、浴衣に手間取っちゃってね」

 

「へいへい、分かりましたよ。行きましょうか」

 

そう言って先輩を促すが先輩はちっともそこを動かない。

ましてや少し涙目で膨れっ面をしてこっちをみている。

 

そこでやっと気づく。

「え、ええと……浴衣、悪くないですね」

 

すると先輩は少しだけ笑顔になる。

素直に似合ってるって言えばいいのに〜、などと言いながら駅の中に向かって歩きはじめる。

機嫌が直って良かったです。はい。

 

 

 

電車に乗ると周りの人が先輩をジロジロ見ている。

この人無駄に可愛いからな……

知り合いに会ったらかわいそうだし離れて乗るか、と先輩から少し離れたところのつり革を掴む。

すると先輩は俺の横のつり革をつかむ。

ちょっと、離れた意味ないじゃないですか。

 

「なんで離れるの?」

 

「いや、先輩が俺と一緒にいるところ見られたら先輩が困るんじゃないかと思いまして」

 

「えー、困んないよー。友達いないし」

 

「あ、そうですか」

 

そこまで言われてしまうと離れている理由がなくなってしまう。

「そうそう!だから気にするきゃっ!」

 

 

 

すると電車がガクンと揺れ先輩がぶつかってくる。

ごめん、と先輩は赤くなりながら俺の袖を掴む。

ちょっと?なんで袖掴むの?

俺じゃなかったら勘違いして振られるまである。

 

 

 

結局袖を掴まれたまま目的の駅に着き、周りの人にながされながら電車から吐き出され、そのまま改札を出る。

 

 

改札を出た後袖を離されたのが少しだけ寂しかったです。まる。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

俺は周りをキョロキョロしながら屋台を見て回る。

なぜならここにきている人を探すためだ。

 

結論を言おう。

 

 

 

 

先輩が迷子になりました。

 

 

 

 

全く何やってるんだあの人は…

俺より年上だなんてまったく思えない。

小町だって迷子になんかならないのに。

 

しかしあれだ、早くしないと花火が始まってしまう。

俺としてもさすがにここまできて花火を見れないのは少し残念である。

 

しかし人が多いせいか電話も繋がらずまったく手がかりがない。

 

落ち着け落ち着け、先輩が行きそうなところは……

 

ダメだわからん。

 

 

それなら先輩の好きなものは……

 

 

 

そこで気づいてしまう。

先輩と出会って3ヶ月もたつのに俺は先輩のことをほとんど知らないということに……

 

しかもそれをもどかしく感じる自分がいるということに……

 

 

 

しかし今はそんなことを考えている時間はない。

ボッチの俺には後でいくらでも思考できる時間があるからな。

もう悟りを開けるまである。

 

 

 

 

 

 

結局先輩が見つからないまま時間だけが過ぎていく。

まるで砂時計だ。

上の砂である時間が減るにつれ下の砂である焦りが蓄積していく。

 

1回入り口まで戻ろうかと思い振り返ったその時急に手首を掴まれる。

はっ、と振り返るとそこにいたのは先輩だった。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「………ごめん」

 

俯いたままの先輩はぽそりと言う。

 

 

 

「探しましたよ。どこいってたんですか。もう花火始ま………」

 

 

 

今目に入ったもののせいで言葉が途切れる。

 

 

 

 

 

「その足…どうしたんですか?」

 

 

先輩の足はボロボロだった。

きっと下駄を脱いで走り回ったのだろう……

俺を探すために……

 

 

 

すると急に先輩は掴んでいた俺の手をグイッと引っ張り顔を俺の胸へと埋める。

 

 

普段ならこんなことされたらテンパってきょどりまくるところなのだが不思議と落ち着いていた。

 

 

 

 

嗚咽を漏らす先輩に俺はどう接すればいいかわからなかった……

 

 

 

 

 

 

何分たったかわからないがそろそろ周りの目が気になり始めたので先輩に離れてもらおうと声をかけようとしたその時、ヒューという音がして上空で破裂音がする。

それに続き何発もの花火が打ち上がる。

気づくと先輩は顔を上げ、花火を見ていた。

 

 

今なら聞けるかもしれない。

俺の疑問を。

 

 

 

「……先輩」

 

目をうっすらと赤くした先輩が俺を見る。

その顔は空からの光を受けて悲しそうにも嬉しそうにも見えた。

 

聞こう。

今しかない。

 

 

 

 

 

「先輩の欲しいものはなんですか」

 

 

 

 

 

何も答えないぎこちなく微笑んだ先輩の頬を左目から流れた涙がひと粒つたっていく。

 

 

その時の先輩の顔を俺は一生忘れることはないだろう。

 

 

 

 

 

 

やがて直視できなくなり誤魔化すように空を見上げる。

 

 

 

 

 

するとふわっと何かが手に当たる。

見ると先輩の指が俺の小指を握っていた。

 

 

 

 

 

 

俺の手は小町専用だが今日くらいは貸してやってもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結局歩けなかった先輩を俺がおぶることになり駅から先輩の家までおくるはめになった。

 

 

 

途中重たいと言ったら本気で殴られました。てへっ☆

 

 

 

 

 

あともう少しで先輩の家というところで後ろから話しかけられる。

 

 

「比企谷くんの欲しいものはなにかな?」

 

「先輩が教えてくれたら教えてあげてもいいですね」

 

「えー、けちー!」

 

そう言いながらも先輩は笑っていた。

 

 

 

 

 

家に着くと先輩はありがと、と言いながら俺の背中からおりる。

振り返ると笑顔の先輩がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷くん、今日のこと誰かに話したら殴るからね?」

 

ちょっと!これまで見た中で1番の笑顔でそんなこと言わないで!

怖いから!

 

 

「いやいや、怖いですよ。しかもだいたい話す友達なんていませんから大丈夫ですよ」

 

「かわいそうに……」

 

ちょっと!先輩も友達いないって言ってませんでした⁉︎

そんなまじでかわいそうな目で見ないで!

 

 

 

俺が地味にダメージを受けていると扉の前まで行った先輩が振り返り、胸の前で小さく手を振る。

 

 

 

「またね」

 

 

 

バタン、と扉の閉まる音がする。

 

 

 

「またね、か……」

 

 

 

そう呟くと俺は今通ってきた道に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

なんかまとまってない気がするよぉ(。-_-。)

なにかアトバイスございましたらぜひください!
よろしくお願いします!

評価や感想、誤字脱字やご指摘お待ちしております!

読んでくださりありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女はフェスティバる。 前編

こんにちは大和 天です!

文化祭編突入します!
一応3部構成のつもりです!
そう言いつつ次回が後編になったらどうしよう(笑)

では11話ですどうぞ!

追記

最新作は彼は彼女を変える。という八幡の誕生日回です!
読んでくだされば幸いです(>_<)


 

2学期が始まり1週間ほど経つ。

相変わらず俺は誰からも喋りかけられることもなく1学期と同じく平穏な日々を過ごしている。

はっきりいって楽しいことなど特に何もない。

 

 

 

しかし最近ひとつだけ楽しみができた。

先輩との昼食である。

花火大会での一件以来少しだけお互いの距離が縮まったように思える。

そしてあの日以来お互いのことを少しずつ話すようになった。

 

 

 

四限目の終了のチャイムが鳴り、昼休みが始まる。

俺はパンの入ったコンビニの袋を引っ掴むと教室を出ると軍顔負けのステルス機能を発揮しながらベストプレイスまで向かう。

俺の適性ジョブは忍者かスパイだと最近思うな。

まぁ働く気はないがな。

 

 

 

購買の横の角を曲がれば我が安住の地、ベストプレイス。

 

 

 

角を曲がると先輩は先に来ていていてケータイをポチポチやっている。

俺が歩いて行くと先輩が顔を上げおっ、と声を出す。

 

「うす」

 

「や!比企谷くん」

 

簡単な挨拶を終えると俺は先輩の横に座りパンの袋を開く。

いやぁ〜今日もパンがうまいっ、と心の中で言いながらパンを食べていると先輩が話しかけてくる。

 

「比企谷くんのクラスはなにやるのー?」

 

いったいなんの話だ?

ポカンとしている俺の顔を見て気付いたのか先輩が付け加える。

 

「ほら、もうすぐ文化祭でしょ?だから出し物なにするのかなーって」

 

あぁ、そういえば昨日午後のLHRでクラス委員とか決めてたな。

 

「あぁ、うちは確かお化け屋敷って言ってましたね」

 

お化け屋敷だなんてリア充が考えつきそうな文化祭出し物ランキングトップ3には入るな。

「先輩達はなにやるんですか?」

 

「えーと……イ………サ」

 

なんで顔赤くしてるんだこの人。

おこなの?激おこなの?

 

「え?何て言いました?」

 

「だからー!メイド喫茶だよ!」

 

先輩もリア充出し物ランキングトップ3のひとつをやるなんて……

ちなみに最後の一個が何なのかは分からない。

じゃあトップ2じゃねぇか。

 

 

 

でもあれだ。

先輩のメイド姿見たくないわけではないですね、えぇ……

むしろ見たいまである。

べ、別に先輩だからってわけじゃないんだからねっ!

 

 

と、誰が得するのかわからない脳内ツンデレを繰り広げている間に先輩はお弁当を食べ終わると弁当箱を片付け立ち上がる。

 

「じゃあまたね〜」

 

そう言うと先輩は俺が返事をする間も無くスタスタと歩いて行ってしまった。

 

 

そこで気づいてしまう。

そのことを少し悲しく思っている自分がいることに。

 

 

花火大会の時も別に特別な意味はなかったのだろう。

ただ自分のせいで友達とはぐれ自分を責めていただけなのだろう。

そして少し誰かに慰めてもらいたかった所に俺がいたとかそれくらいのことだ。

 

 

先輩とはお互いの事を話すようになったと言ってもやっと普通の友達らしき関係になれただけである。

俺なんてそこらでモブモブしているモブとなんら変わりはない。

 

 

 

先輩は俺に対して特別な感情など持っていない。

持っているわけがない。

 

 

 

世の中の男子の八割は「こいつ、俺のこと好きなんじゃね?」と思って生きている。

だからこそ、自分を戒める必要があるのである。

 

 

 

 

「そんな訳ないだろ」と。

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

俺はMAXコーヒーの缶をコトリと横に置く。

もう先輩と昼休みを過ごさなくなって1週間ほど経つ。

先輩はクラス委員に他の女子の悪意の元やるはめになった挙句、文化祭副実行委員長までやるはめになったらしい。

それで文化祭に向けて学校全体が活気付いてきた今、先輩は昼休みも仕事をしなくてはならないらしくここに来れないらしいのだ。

 

 

別に今までずっと1人だったのだから今更どうこう思う訳ではないのだがやはり少しさみしくも思う。

 

 

 

その点マッカンはいい。

いつでも俺に優しくしてくれるからな。

 

俺はマッカンを飲み干し、教室に戻るためにベストプレイスを後にする。

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

教室に戻りイヤホンを耳に突っ込み寝たふりをしていると間も無く予鈴が鳴りわらわらと生徒が席につき始める。

間も無くLHRが始まり我がクラスの出し物であるお化け屋敷の準備にとりかかる。

俺の仕事は雑務である。

クラス委員という上司に言われたことをひたすらやるという社畜っぷりの半端ない仕事を淡々とこなしていく。

ここ数日仕事をしながら実は俺社畜体質なんじゃないの?と気付いてしまった自分が怖い。

そしてあらためて将来は専業主婦になろうと心に固く決めました。まる。

 

 

あー、将来のお嫁さんが今入ってきてくれないかなぁ〜、などとありえないことを考えながらひたすらダンボールに色を塗っていく。

 

すると教室が急にざわざわしはじめる。

なんだろうとおもい顔を上げるとみんな視線が扉に向かっている。

 

 

 

視線の先を見ると見たことのある顔があった。

 

 

 

 

「えーっと、クラスの進行状況はどうなってますか〜?……って比企谷くんだ!」

 

「……げ」

 

 

 

 

みんなの視線が初めて俺に向けられた瞬間であった。

 




いかがだったてしょうか?

やっぱり文章書くのって難しい(>_<)


それで全然忘れていたわけではないのですが明日は八幡の誕生日ですね!忘れてたわけじゃないですが!

それで9.5話って感じでで八幡の誕生日の話を書こうか悩んでるんですが需要あるか分からないのでアンケート?を取ってみたいと思います!
感想か活動報告のところに読んでみたいなって思ってくださる方は八幡視点か鹿波先輩視点のどっちか書いてくださると嬉しいです。

一応3人くらいきたら書きたいと思います(笑)
前回同様来ない気もしますが(笑)

感想や評価、誤字脱字、ご指摘などお待ちしております!

では読んでくださりありがとうございました(*^^*)

追記

アンケート?は午後10時あたりを目処に集計したいとおもいます(。-_-。)


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彼と彼女はフェスティバる。 中編 1

こんにちは大和 天です!

なんだか八幡の誕生日回はイマイチみたいだったっぽいですね…
すみません(。-_-。)

今回は気を取り直して文化祭編です!

では12話ですどうぞ!


 

 

 

クラスがざわざわと騒がしくなる。

そりゃそうだ。

俺みたいなやつを先輩みたいな人が知っていたらざわざわくらいするだろう。

 

 

 

しかし意識して聞いてみると思ったこととは違うことが聞こえてくる。

 

「ヒキガヤってだれ?」

「ほらあそこのやつじゃね?」

「あのヌボーってしてるやつ?」

 

俺ってマジで認識されてなかったの?

あれ?なんだか目から汗が……

 

 

どうやらみんなは俺の名前に反応して俺を見たわけではなく先輩の目線の先を見ていたらしい。

八幡そんなに見られると恥ずかしいな☆

 

 

 

 

「あっはっはっは!」

 

突然の笑い声にみんなが振り向くと先輩がお腹を抱えて笑っていた。

 

「比企谷くん…クラスの人に覚えられてないなんて……さすが比企谷くん……」

 

ちょっと先輩?さすがの俺でも泣いちゃうよ?

 

すると先輩は少し頬を染めてうつむき、「よかった」と言っていた。

それはあれかな?この学校に自分以上のボッチがいたからですか?ハハハ、マジ笑えない。

しかしまぁ俺はボッチに誇りを持っているのでむしろそれは褒め言葉まである。

 

 

 

先輩は頑張ってくださ〜い、と言いながら教室を出て行った。

 

 

静まりかえった教室のこの空気どうしてくれるんですか先輩!

 

 

 

と、そこでLHR終了のチャイムが鳴る。

するとみんなガヤガヤといつものようにおしゃべりをし始めた。

 

 

 

クラスの人から何か言われるかと思っていたが特別何かあるわけでもなく1日が終わった。

 

 

 

 

 

ただその日の放課後から男子からの当たりが強くなり、仕事を大量に押し付けられました。まる。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

今日もベストプレイスでパンをモシャモシャと食べ終わり、食後の一杯を堪能している。

何を飲んでるかって?それはもちろん千葉のソウルドリンクMAXコーヒーしかない。

マッカンマジ神。ノーベル平和賞もらってもいいレベルである。

 

5限目までまだ時間もあるし昼寝でもしようかと横になると頭上から声が掛かる。

 

「やぁ比企谷くん!」

 

見上げると先輩がいた。

 

「あれ?先輩文実はいいんですか?」

 

「あー、今日はお休みなんだ〜。だから寂しそうにお昼を食べてる比企谷くんのために来てあげたの!」

 

「いや、俺もう食べ終わりましたけど……」

 

「え?」

 

先輩の驚いた顔がみるみる不貞腐れていく。

俺の横に座ると自分の弁当箱を開け、ガツガツと食べ始める。

先輩?なんでやけ食いしてるの?

 

「先に食べちゃうことないじゃん」

 

「いやいや、いきなり来て何言ってるんですか」

 

「ぶぅー!」

 

「それあざといですよ」

 

先輩はプイッと横を向く。

それもあざといんだけどな……

言ったら怒りそうだしな……

 

俺はちょっと飲み物買ってきますとその場を後にして自動販売機のところまで行く。

怒っているときは時間を置くのが一番だ。

そして飲み物を2本買って先輩のところへ帰る。

「どうぞ」

 

「お、気がきくねぇ〜!」

 

いつの間にか不貞腐れがなおった先輩がそう言って俺から缶を受け取りプシュッと開ける。

「あっま!」

 

「いやいや、美味いでしょ?」

 

「あ〜、これ比企谷くんの好きなやつだったんだ。甘すぎでしょ」

 

「俺の人生は苦いですからね。コーヒーくらいは甘くていいと思います。」

 

「なにそれ!」

 

そう言って先輩はケラケラと笑っている。

俺結構本気でそう思ってるんだけどな……

 

 

 

 

 

すると先輩は真面目な顔になり少しお話していい?と言って話し始めた。

 

 

「去年の文実の実行委員長がすごい人でね、去年の文化祭が過去最高に盛り上がったの。だから去年に負けないようにしようってみんな頑張ってるんだけどイマイチ何かに欠けるんだよね。だからどうしたらいいかわかんない……わかんないの………」

 

 

 

そう言って先輩は俯く。

さぞかしたくさんの人に激励の言葉を受け、勝手に期待され、自分達を追い込んでしまったのだろう。

副実行委員長としての責任もある。

それなら俺はなんて言葉をかければいいのだろう。

 

 

「先輩、社会は厳しいですからね。自分には自分で甘くしないと」

 

すると先輩は顔を上げると俺の顔を見て急に笑い出す。

 

「あはは!こういう時は普通優しい言葉をかけるんだよ!そんなんだから比企谷くんは友達出来ないんだよ」

 

 

ちっ、外してしまったようだ。

俺のスーパーハチマン君がBGMと共にボッシュートされた。

ていうか最後のはふつうに悪口だよね?八幡泣いちゃう。

 

 

でも、と先輩が口を開く。

 

「でも、ありがと」

 

そう言って全然は俺に普段あまり見せないあざとくない笑顔でそう言う。

やめてっ!先輩そんな顔で俺を見ないでっ!惚れちゃうからっ!

 

 

 

先輩は立ち上がるととびっきりのあざとさを振りまいて、次に会うのは文化祭当日だぜっ☆という意味のわからない宣戦布告をしながら横ピースをして帰っていった。

なんなのあの人……

 

 

 

俺も先輩のおかげでいい感じに時間が潰れたから教室に帰るか、と2本目のマッカンを飲み干し腰をあげる。

 

 

 

するとパタパタと足音が聞こえ、少し顔を赤くした先輩が飛び出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

「お弁当箱忘れてた!」

 

 

次会うのは文化祭当日じゃなかったですかね?

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「さて、帰るか」

 

俺は席を立つと腰を伸ばす。

時計を見るとすでに19時をまわっていた。

なぜ俺がこんな時間まで学校に残っているかというと明日はいよいよ文化祭当日なのである。

 

 

先輩が教室に来た後から俺は社畜のように働かされた。

毎日俺の愛しい放課後という家でダラダラできる時間を文化祭の準備の時間に当てさせられるなんてもう先輩のせいとしか言いようがない。

 

 

結局今日も最後まで残されたのは俺だけだった。

俺のクラスはお化け屋敷をするらしく俺は1人黙々と窓から光が入らないように塞ぎ、通路を作り、音源のチェックもした。

 

もう俺は十分社畜として働いたので今後の人生では1秒たりとも働きたくない。

専業主夫に俺はなるっ!と心に深く刻み込んだ。

 

 

 

教室の扉を閉め、鍵を職員室に返すと下駄箱に向かう。

やっと帰れる。

愛しの小町が待ってくれている…はず………

 

 

 

下駄箱に着き、俺の靴箱を開けると靴の上に紙が乗っていた。

 

こういう時は絶対にゴミか冷やかしの紙である。

ソースは俺。

中学の時に俺だけ教室で貰えなかったお土産であると思われるゴミが俺の靴箱にたっぷりつめこまれていた。

そして靴箱に入っていた紙をラブレターと思って書いてあった場所に行ってみたときは3時間待ってみたが誰もこなかった。

 

やばいつられていろいろ思い出してきた。早く小町の元へ帰ろう。

 

 

 

 

だが一応見ておいても損はない。

ピラッと紙をめくってみるとそれは何かのチラシのようだった。

 

 

 

 

 

『この紙を持って来てくれた方になんとメイドさんをご指名できる権利をさしあげま〜す!!!

 

 

追伸

 

来なかったら…… 三神美香』

 

 

 

思わず声が出てしまった。

 

 

 

 

 

「はぁ⁉︎」

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

いつか来るであろうと思っていた低評価をつけられて少しヘコんでいました笑

でもまだ自分が未熟なだけなのでこれから挽回できるように頑張りたいと思います!


感想や評価、誤字脱字やご指導ご指摘などなどおまちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女はフェスティバる。 中編 2

こんにちは大和 天です!

あれれぇ〜、おかしいぞぉ〜?ってかんじで中編Part2になってしまいました(笑)

これはあれだ!別に全然騙そうとしたりしてませんからね!

今回は三神さんも登場します!

てな感じで13話ですどうぞ!


 

 

 

 

 

ふぁあ、とあくびが出る。

開会式が終わると俺は教室の前に机を置き、頬杖をつきながらボケーっと目の前を歩いて行く生徒たちを眺める。

 

 

今日は文化祭当日である。

我が校の文化祭は2日間に別れており初日は生徒だけで開催され、2日目は一般の方々にも開放される。

 

別に全然楽しみにしていたわけじゃないが少しだけ早く学校に来てみるとなぜだか受付の係りが俺になっており、別に全然楽しみにしていたわけじゃないが他のクラスが全く見れないままもうお昼になってしまった。

大事なので2回言いました。まる。

 

 

 

中からは時折悲鳴が聞こえ、我がクラスの出し物が中々の出来だったことが伺える。

まぁ俺も半ば強制とはいえクラスで最も頑張ったといえるくらい働いたので出来が良かったのなら嬉しい。

まぁ、今は受付だけどね?

 

 

 

そんななかでも微かな救いはあるものでクラスの女子からダベりたいという理由で受付を交代してもらった。

いやまったく救われてないじゃん。

 

 

 

そういう訳で昼飯を食べようと思うのだが1つ問題がある。

昨日靴箱に入っていたこの紙切れだ。

最初三神って人が誰だかさっぱりわからなかったが家に帰ってから先輩と一緒のクラスの人だと思い出した。

はぁ……誰を指名しろって言うんだ……

でも行かなきゃ何されるかわからんからな……

 

 

あぁー!行きたくない!

ハチマンの黒歴史生産レーダーが反応している!行っちゃダメだ!

 

でも逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ、と繰り返しているとメイド喫茶をやっている教室の前に着いた。

 

 

手作り感溢れるメイド喫茶と描かれた看板が置いてあり、男子生徒によるちょっとした人だかりができていた。

人だかりとか八幡ちょっとやだな!

 

 

 

しかし取り敢えず三神先輩に一声はかけておかないと後で酷い目に会うのは確実なので人混みの間をスルスルとぬけて教室に入る。

因みにステルスはオートで24時間体制で働いています。

 

 

教室に入ると三神先輩はすぐにみつかった。

あの人なんだかんだで美人だからな。

さ、一声かけてさっさと帰るか、と声をかけようとすると横から悲鳴に似た声が上がった。

 

 

 

 

「ひょわっ!」

 

 

 

横を見てみるとメイド服の先輩がいた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「せ、先輩?」

 

「や、やぁ!ひ、比企谷くん!」

 

先輩、目がめっちゃ泳いでますよ……

あと怒りを鎮めてください。

そんな顔が真っ赤になるまで怒らなくてもいいじゃないですか。

ここはひとつ小町に教えてもらった事を思い出そう。

 

 

『お兄ちゃん、女の人は取り敢えず褒めとけばいいんだよ!』

 

 

そうかそうか、褒めとけばいいんだったな。

 

「先輩、」

 

「ひゃい⁉︎」

 

なんでさっきからそんなに噛みまくってるのん?

それはまぁ置いとくとして荒ぶる精霊を沈める儀式をしないとね!

 

「その服、似合ってますね」

 

その瞬間、衝撃が俺の左肩に走った。

ぐふっ、と思わず声が出る。

見てみると右手を握り込んだ先輩が真っ赤な顔でキッとこちらを睨んでいる。

ち、ちょっと小町ちゃん?精霊はさらに荒ぶりましたよ?

そしてそこの三神さん?なにスマホで激写してるんですか?

 

先輩はボソッとなにかを呟くと控え室に足早に去って行った。

 

 

 

ていうか俺一応お客さんですよね?

 

すると三神先輩がこっちに寄ってきて話しかけられる。

 

「えーっと、昨日貰ったやつ持ってきた?」

 

も、貰ってないもん!

入ってただけだもん!

 

だがそんな言い訳が通用するわけもないので素直に折りたたまれた紙を渡す。

 

「よしよし、持ってきたね。じゃあ誰を指名する?」

 

「えっと、周りの人指名なんてしてないですよね?」

 

周りを見ればそれくらい分かる。

ただ適当に相手をされているだけにしか見えない。

中にはもろ嫌そうに相手をされている人もいる。

そんな中で俺なんかが選べるはずがない。

 

「まあね〜!でも君は選ばれたのだよ!さぁ選びたまへ!」

 

えっと、それはなにキャラですか?という問いはぐっと飲み込む。

ここはヘタに指名したりするとブラックなヒストリーを作りかねない。

だからここは…

 

 

「じゃあオススメで」

 

ふっ、完璧だ。

これで誰が来ても俺のせいにはならない。

そういう賢い八幡のこと八幡好きだな!

 

 

 

だが現実はいつだってそう甘くはない。

三神先輩はニヤリと笑うと控え室に入っていき何かを引きずって出てきた。

そうして俺の前まで持ってきてこう告げた。

 

「どうぞ、今日は貸切で〜すっ♪」

 

そう言って俺の前の席に座らせられた今日俺の貸切という最悪の事態になったかわいそうな人はため息んついた。

 

「はぁ……」

 

そう先輩しかいない。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

コトリ、と俺の目の前にカップが置かれる。

「ど、どうぞ、ご主人様…」

 

そう言って先輩はモジモジとしている。

やばい、なにがやばいってマジでやばい。

さっきから周りからの視線がやばい。

先輩はほんのりと頬を赤らめ、うつむきながらモジモジしている。

やばい、かわいい……っと危ない危ない。

俺じゃなかったら告白してふられてここから追い出され、文化祭2日目に来れないまである。

 

 

そんな先輩と妙な沈黙を守っているとあの人が近ずいてくる。

もちろん三神せんぱいである。

 

 

「ここってメイドさんと一緒に写真が撮れるんですよ〜?一枚いかがですか〜?」

 

 

 

ウソだ!なんでそんなにニヤニヤしながら言うんですか!

 

 

はいはい、もっと寄って〜、といいながら三神先輩は自分のスマホを取り出す。

ちょっと?なんであなたのスマホなの?絶対こんなサービス無いよね?

 

 

文句を言おうと口を開きかけると何かが肩に触れる。

見ると先輩だった。

 

 

 

パシャっ

 

 

 

機械音が鳴り、写真が撮り終えられた事を知らせる。

すると三神先輩は突然先輩の肩を抱き俺から数歩離れる。

 

 

「………500円………」

 

 

かすかにそんな声が聞こえた。

え?ちょっと?先輩そんなに俺と写真とるの嫌だったの?

500円でデータを消す取引するなんて……

せめて俺のいないところでして欲しかったな……

 

 

 

 

俺はコーヒー代を払うと教室を出る。

 

「比企谷くん!」

 

後ろから呼び止められ振り返ると先輩がいた。

 

「あの……なんかごめんね」

 

「いや、まぁたぶんほんの少しくらい微かにちょっとだけ楽しかったですよ」

 

「それってだいぶちょっとじゃん!」

 

 

先輩は笑いながら言う。

そんな笑顔にドキッとしてしまう。

 

 

「明日は比企谷くんのクラスのに行くね!見回りがてら!」

 

「まぁ俺受付ですけどね」

 

だと思った!などと先輩は無邪気に笑う。

 

 

 

 

「それじゃ、また」

 

 

 

 

 

「うん、また明日ね」

 

 

 

 

 

 

そう言って先輩は胸の前で小さく手を振った。

 

 

 




いかがだったでしょうか?

次回は文化祭編終わらせますよ!
きっと終わらせてみせる!
Part3なんかにはさせない!

評価してくださった皆様ありがとうございます(>_<)
好評価ばかりでとっても励みになりました!

いつものごとく感想や評価、誤字脱字、ご指摘などいつでもお待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女はフェスティバる。 中編 3

こんにちは大和 天です!

っべー、まじっべー。
なんだかわかんないですけど中編が3つに……
おっかしいなぁ〜、次で完結の予定だったのになぁ……

さすがに次は終わらせますよ!

あ、あとお気に入り500いきました!ありがとうございます!

では14話ですどうぞ!


 

 

 

 

 

本日も相変わらず受付業務である。

 

 

昨日と違う点は今日が文化祭2日目ということで一般客もたくさんいるということだ。

まぁ、皆さんは中学時代の友達や、他の高校の友達に会ってキャッキャしてるわけだが俺にはむしろ会いたくない奴しかいない。

べ、別に全然友達なんていらないんだからっ!

あれ、なんだろ目から汗が……

 

 

 

 

 

すると見慣れたアホ毛がぴょこんと俺の視界に現れる。

 

 

「お兄ちゃん今変なこと考えてるでしょ。目がすごいスピードで腐ってるよ」

 

「小町ちゃん?会って早々ひどくない?」

 

 

小町は休日だと言うのに中学の制服を着ている。

女子ってなんでこういう時制服着たいんだろ。

まぁ制服良いですよね。ファッションとか考えなくていいし。

 

 

 

すると小町がにやけながら聞いてくる。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん!香奈先輩と一緒に回らなくていいのー?」

 

「え?なんで?ていうか大体あの人文実だから見回りあるし」

 

「えぇー、つまんなーい!お兄ちゃんくらいつまんないよそれ」

 

あの、小町ちゃん?

それがどのくらいつまんないのかお兄ちゃんわかんないよ?

たぶんものすっごくつまんないってことだけはわかるけどね?

あれ?それであってるのか……

 

 

 

「よし、それじゃあ俺といっ「じゃあ小町友達のところ行ってくるね〜!」

 

 

そう言って小町はトテトテと同じ制服に身を包んだ女の子のところに駆けていく。

 

 

小町……お化け屋敷入らないのかよ……

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった……

 

俺は今暗闇に身を潜め、定期的に回ってくるお客さんを驚かすために準備をしている。

なんでもお腹減ったから交代してくれ、だそうだ。

別に全然断れなかったとかじゃないんだから!俺が優しいだけだから!

 

 

そんなことを考えていると足音が聞こえてくる。

タイミングを確認して『わっ!』と声を出す。簡単な作業だ。

 

 

目標をセンターに入れてスイッチ。

目標をセンターに入れてスイッチ。

 

 

今だ!

「わっ!」

 

「きゃあー!」

 

 

そう言ってそこに居た女の子達は走っていく。

ゾンビがどうとか言ってたけど気のせいだよね。八幡信じてる。

 

 

まぁあれだ。怖くないとお化け屋敷じゃないからな。

するとまたパタパタと上履きの足音が聞こえる。

それと共になぜか笑い声も聞こえる。

 

ほほぉ〜、怖くないってわけですね?

さすがに俺もクラスで1番社畜の如く働いたのでショボいと言われるのはさすがにカチンとくるわけだ。

 

ならば見せてやるしかない。

 

俺の本気をっっっ!!!!!

 

 

いかんいかん、中二全開だった。

周りに人いなくてよかったー。

 

 

 

俺はいそいそと隠れると次の人が目の前に来るまで息を潜める。

3…2…1…ここだ!

 

 

「わっ!」

 

「きゃあっ!」

 

 

 

あれ?この声聞いたことあるな、と思ったその時だった。

 

 

俺の顎に衝撃が走り、視界が真っ暗になった。

 

 

 

 

ハチマンは目の前が真っ暗になった…

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

知らない天井だ……

 

カーテンの外から声が聞こえる。

 

 

 

「おまちどおさま!お預かりしたハチマンはみんな元気になりましたよ!」

 

 

ってそれポケモンセンターだから!

まさか手持ちの金が半分に⁉︎

よかった、どうやら無事のようだ。

 

 

ここはどうやら保健室のようだ。

 

 

 

何があったかは知らないがどうやら気を失っていたらしい。

あごと頭が痛い。

かすかな記憶を頼りに思い出すと確かあごに衝撃がはしったのまでは覚えている。

そこから推測するにあごをピンポイントで殴られ気を失ったらしい。その後に頭を打ったのだろう。

 

まだ少し痛むが起き上がるのに全然支障はない。

俺はよいしょ、と起き上がるとカーテンを開けて外に出る

 

 

 

 

 

そこに居たのは先輩だった。

 

 

「あ、先輩。なんでここにいるんですか?」

 

よく見てみると少し目が赤い。

 

「あ、や、やぁ比企谷くん」

 

「…うす」

 

 

思い出した。

あの時の悲鳴は先輩の声だったんだ。

「先輩だったんですね」

 

すこし責めるような言い方になってしまう。

先輩のは少し涙目になりながらうつむく。

 

「……ごめん」

 

「いやいや、大丈夫ですよ。俺も本気出しすぎましたし」

 

「本当に怖かったんだからね!本当にソンビかと思ったんだから!」

 

「ナチュラルに罵倒するのやめて貰えませんかね?」

 

そんなことを言っていると笑がこみ上げてくる。

気づけば2人もと笑っていた。

 

 

「あはは、でもごめんね。まさかあごにパンチが当たるなんておもってもみなくて」

 

 

その割にはとっても鋭いパンチでしたよ?

 

 

「比企谷くんが無事でよかったよ……それじゃあ私はまだ見回りがあるから……またね!」

 

 

 

 

そう言って先輩は失礼しました〜とあざとい言い方で保健室を出て行った。

 

 

 

 

 

さて俺も帰るか、と保健室を出ようとすると先生に呼び止められる。

 

 

 

「鹿波がいないから言えるがあいつすごく取り乱してたぞ。あいつのことは結構知っているつもりだがあんな鹿波は見たことなかったよ」

 

 

そりゃあ自分が殴ってしまった相手が倒れたら取り乱すのは当たり前だろう。

 

 

でも本当は違うんじゃないかと思っている自分がいる。

でもその自意識を心の奥へと追いやる。

そんなことあるわけない、と……

 

 

それじゃあ早く戻りな、と半強制的に保健室から追い出されようとした時だった。

 

 

 

保健室の扉が勝手に開く。

あれ?ここだけ自動ドアだったっけ?

 

 

すると目の前にいたのは顔を赤くしている先輩だった。

どうやらさっきの話が聞こえていたらしい。

 

 

すると先輩はにっこりすると先生に向かって口を開く。

 

「先生、あとでお話ししましょうか」

 

 

 

ちょっと、先生顔ひきつってますよ?

この人やっぱい怖いっ!

 

 

するといつもの顔に戻った先輩何俺の方を向く。

 

 

怖いっ!一体どんな罵倒を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言い忘れてたんだけど私ミスコン出るから見に来てね!」

 

 

「ふぇ?」

 




いかがだったでしょうか?

ついこの間日間ランキング2位でした!あざます!


それで話は変わりまくりますがTwitter始めました!
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彼と彼女はフェスティバる。 後編

こんにちは大和 天です!

いやぁ〜、危なかった。
文化祭終わらないかと思ったでござるよ!

一応文化祭編完結しました!
中身がないまま文字数だけ増えました(。-_-。)

では文化祭編ラスト!15話ですどうぞ!


 

 

 

 

 

体育館に入ると熱気が俺を包み込んだ。

体育館では今、有志によるバンド演奏が行われている。

だがそれももう最後の1組にまでさしかかっている。

 

 

 

 

我が総武高校は地域との交流というテーマを毎年掲げている。

だから有志のバンドなどには地域の方や卒業生なども参加を募る。

その甲斐あってか今年も校外からの有志は結構集まったそうなのだが肝心の校内からの有志が集まらなかったそうだ。

 

 

 

3年生は今年受験のためバンドの練習などをする時間がないためあまり参加する者はいない。

また1年生はまだ高校に入って半年、しかも先輩しかいないのにバンドなどをしようと出しゃばる者もそういない。

そしてなぜだか今年の2年生はあまり騒いだり前に出たがらない大人しめの学年なんだそうだ。

 

そんなこともあって有志が足りない!となり我が校初のミスコンが行われることになったそうだ。

 

どうやら先輩はもともと男子から人気がある上に文実の副実行委員長ということもあって出るしかなくなったそうだ。

なにそれどこのアイドルだよ。

 

 

 

最後の1組の演奏も終わり、次はいよいよ今年の文化祭の目玉とも囁かれつつあるミスコンである。

まぁ俺はその囁きを聞いてなかったんだけどね?ミスコンの存在をさっき知ったし。

 

 

 

ミスコンは主に3年生が主体になってやるそうで、参加者も10人程だ。

はっきり言ってこんなのに出たがるのは殆ど目立ちたがり屋だ。

そんなに目立ってなんの得があるんだよ。

目立つやつは噂とかすぐ広まっちゃうだろ?

俺レベルのボッチになれば噂をささやかれる以前に存在すらささやかれないまである。

あれ、なんだか目から汗が……

 

 

 

そんなことを考えていると降りていたステージの幕が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「では、エントリーナンバー1番の方どうぞ〜っ!」

 

と、司会の生徒の声とともに舞台の袖から1人の女子生徒が飛び出してくる。

 

どうやら1人1人アピールをしていくらしく司会の生徒からの質問に可愛く答えて票数GETっ☆という設定らしい。

 

 

こうやって見ているとうちの学校は結構可愛い子や美人な人が多い。

まぁ、俺がそんな人と関係を持てるとしたら主人と奴隷みたいな関係だけどね。

べ、別に変な意味じゃないんだからねっ!

 

 

 

 

 

 

5番目の方どうぞ〜という声とともに出て来た人に目を疑う。

 

 

 

三神先輩じゃん……

なにやってんのあの人……

 

 

 

 

目を疑ったのはただ知り合いが出てきたからだけではない。

今までみんな総武高校の制服を着ていたのに三神先輩はなんとメイド服を着ていたのだ。

きっとクラスの衣装を借りてきたのだろう。

そんなに勝ちたいのか……

 

 

 

 

もともと顔は美人なのも相まって男子から歓声が上がる。

先輩!ちょっと勝ち誇った顔しないで!

司会からの質問をいかにも男子が喜ぶ様な答えを選びながら答える。

そして答えるたびに男子から歓声が上がる。

もうこれでもかってくらい男子を手玉に取っている。

俺の中で三神先輩のあだ名がジャグラー三神になりました。まる。

やばい言ったら絶対怒られる。

 

 

 

 

そして質問の最後にみんなに共通した質問が出される。

 

 

「では最後の質問ですっ!三神さんは好きな人はいますか〜?」

 

 

 

ちょっと男子っ!食いつきすぎっ!

と、合唱コンクールの時の女子委員長みたいなイントネーションで会場の男子にツッコミを入れる。

 

 

 

でも確かにそれは俺も気になる。

先輩はモテるのに彼氏ができたことがないなどと意味の分からん事を言っている人なのでその友達っぽい人である三神先輩はどうなのだろうと思ってしまう。

全然三神先輩が好きとか言うわけではないからね!違うからね!

俺はもうジャグラーにホイホイと手玉に取られたりしないんだからっ!

 

 

 

だがなんとなくだが答えがわかる。

三神先輩のことだ、きっとあの人なら票数を取りに来るだろう。

ならもう答えは決まっている。

 

 

「んー、好きな人はまだいないかなー。だ〜か〜ら〜、彼氏、募集中でーすっ」

 

そしてトドメこウインクを決める。

きゃぴっ☆じゃないからね?

あなたそんなキャラじゃないですよね?

それと『まだ』いないって言ってモテない男の子に可能性をちらつかせるのはやめてっ!

昔の俺を見てるみたいになるからっ!

 

 

 

会場(男子)は大盛り上がりを見せ、会場(男子)は一気に熱を帯びていった。

 

 

 

 

 

 

その後、盛り上がりはしたものの三神先輩を超える盛り上がりを見せた人はおらずとうとう最後の人になった。

 

 

「では、ラストの人どうぞ〜っ!」

 

 

 

その声と共に出てきた人に皆が驚愕した……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

会場が男子の歓喜の声とその合間から聞こえる女子のブーイングで騒がしくなる。

 

えーっと……

 

取り敢えず何ですかその格好?

 

 

 

 

 

先輩はどこから持ってきたかわからないセーラー服を着ていた。

正直に言うとまじかわいい。

かなり鹿波かわいいで略してかな……かなかな………ゴロが合わん!

 

 

 

そんなアホなことを考えている間に着々と質問が続いていく。

この人も三神先輩並みにあざとい答えを連発する。

その度に会場(男子)から歓喜の声が上がり、その合間合間に一部(女子)からのブーイングが混ざる。

ちょっと先輩、マジで嫉妬されてんじゃないですか……

こりゃ友達できないわけだな。

 

 

 

 

しかしブーイングしているのは主に3年女子なので1年女子などは先輩に尊敬と憧れの目を向けている人もたくさんいる。

 

 

そうして司会者の最後の質問でーす、という声とともに会場がざわめき始める。

 

 

しかし三神先輩の時とは少し違う。

みんなもう答えはわかってるといった風だ。

 

俺の108つの特技の1つの聞き耳をすましてみると近くの男子生徒の会話が聞こえた。

 

 

 

「鹿波先輩の好きな人なんて噂ですら聞いたこたないよな?」

 

「それな〜、さすがにみんな知ってるよな」

 

 

 

 

へ、へぇ〜、知ってたよ?友達から聞いたし?

え?友達って誰だって?

えーと、鹿波さんっていう人です…

本人やないかい!

 

と、似非関西弁で1人でツッコミをいれるという友達いない歴史16年の俺。

因みに彼女いない歴も16年。

 

 

まぁ強いて友達を挙げるとすればみんなからのお前誰?的な目線とかね!

あれ、目から塩分が流れてくる……

 

 

 

とまぁ、俺のことは置いといてみんながその質問は別に聞かなくてもいいや、みたいな雰囲気になっていた。

俺もその1人だった。

 

 

 

 

 

「では、最後の質問です!鹿波さんは好きな人いますか〜?」

 

 

司会もやる気ねぇな。

でもまあ仕方ないか、みんな答えを知ってるようなもんだしな。

 

 

 

しかし質問された先輩はうつむいて質問に答えない。

ここからじゃわからないが顔も少し赤いようだ。

 

 

 

会場がざわつく。

そのざわめきの中に先輩の声が流れる。

 

 

「………い」

 

 

ふっ、と音量を0にしたかのような静寂が訪れる。

司会の人もえ?という顔をしている。

 

 

「え、えーと、もう一度答えてもらってもいいですか?好きな人いらっしゃいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………はい」

 

 

 

消え入りそうな声で先輩は答えると会場が突然音量を上げたかのように盛り上がる。

主に男子が。

 

 

 

 

それと同時になぜだか俺の胸が少しズキっとしたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結果は先輩の圧勝だった。

なぜなら投票用紙が男子にしか配られなかったからである。

その好きな人って俺かも!と考える勘違い男子が大量にいたらしくみんなが先輩の名前で投票したそうだ。

 

俺は投票していない。

なぜかしてはいけないような気がしたから。

あの時の胸の痛みがなんだったのかわからなかったから。

 

 

 

 

 

文化祭も終わりを迎え、閉会式が行われるとみんなは後夜祭に行くだのなんだのと言って帰って行った。

別に全然行きたいなんて気持ちはない。

本当にないんだから!

 

 

 

しかし思い返してみると今年の文化祭は結構散々な目にあった。

クラス1番の社畜に成り果て、先輩には殴られる。

やだなにそれその人いじめられてるの?

因みに我が高校にイジメはないらしい。

 

 

 

 

疲れた、本当に疲れた。

来年は何もしたくない。

そんなことを考えながら俺は自動販売機に向かう。

俺に唯一甘くしてくれるMAXコーヒーを買うためだ。

この甘すぎる甘さが俺の疲れた体と脳を生き返らせてくれる。

マッカンで世界は救える。八幡そう思うな。

 

 

 

 

 

ガコン、と缶が出てくる。

それを取り出すと安息の地、ベストプレイスに向かう。

夕日を見ながらマッカンを飲めるなんてなんたる幸せ!

 

 

 

そんなことを考えながら俺は曲がり角を曲がるとそこには先客がいた。

 

 

 

 

体操座りをして膝に顔を埋めているその人の横には俺の手の中にあるものと同じものが置いてあった。

 

 

「先輩、なにやってるんですかこんなところで」

 

 

ビクッと体を震えさせて、そぉーっと先輩は顔を上げた。

 

 

 

「やぁ、比企谷くん」

 

「うす」

 

 

そう言って先輩の横に座る。

 

「みましたよ、1位でしたね」

 

「……うん」

 

 

会話がそこで終わる。

普通のやつなら話題がいくらでもでてきて女子を飽きさせないのだろうが俺には無理だ。

できてたらボッチになんてなってない。

 

 

 

 

 

しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのは先輩だった。

 

 

「……ねぇ、私1位だったんだからなにかご馳走してよ」

 

「そんな約束しましたっけ?」

 

「……してないけどさ」

 

 

そう言って先輩は少しふてくされる。

ふてくされ女子ってかわいい……

 

 

 

はっ!いかんいかん、俺じゃなかったらこのまま告白して振られてるところだったわ。

 

 

 

「先輩、好きな人いたんですね」

 

 

思わず聞いてしまった。

この言葉を聞いてからだろう。

モヤモヤとしたものが俺の中に渦巻いているのは。

 

 

うん、と先輩は答えると急に俺の方を向いてニヤニヤしてくる。

 

 

「え?比企谷くん気になるの?比企谷くんになら教えてあげてもいいけどそれは比企谷くんの好きな人を教えてくれたらね〜」

 

「俺の好きな人ですか?小町ですね」

 

「それは妹でしょ!」

 

ニヤニヤ顔が優しい笑みに変わっていた。

先輩はすっと立ち上がると数歩前に出る。

こちらに顔を向けないままで先輩がポツリと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、好きなんだ。その人のこと。やっと気付いたの」

 

 

ポツリと呟いたその一言に俺に馴染みのある感情が湧いてきたのがわかる。

 

それをぐっと飲み込むとやっとの事で言葉が出る。

少しだけ本音を混ぜながら。

 

 

 

「その人は幸せ者ですね」

 

 

振り向いた先輩の横顔に夕日が当たり顔を真っ赤に染めていた。

 

 

「そう、かな?」

「………たぶん」

 

「そこはそうですよ、って言うところでしょうが!」

 

 

そう言って先輩は頬を膨らませる。

あざといあざとい。

もうぷんぷんって自分で言っちゃうところなんて超あざとい。

 

先輩は俺の横に座り直すと少しだけくっついてくる。

やめてっ!いい匂いするから!

 

 

 

 

「じゃ、帰りますか。比企谷くん家まで送ってね」

 

「嫌ですよ」

 

「ケチー!」

 

 

そう言いながらも先輩はなんとなく嬉しそうだ。

 

「じゃ、私帰るね」

 

 

そう言って立ち上がるとクルッと向きを変え歩き出す。

 

 

 

そして先輩は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横にあったマッカンを蹴り飛ばし中身をぶち撒けた。

 

 

「……ぶふっ」

 

 

「笑うなぁっ!!!」

 

 




いかがだったでしょうか?

読んで下った皆様が納得できる終わり方かは分かりませんが一応文化祭編完結です。

後夜祭は……需要なさそうだしね!


感想や評価、誤字脱字、ご指摘などお待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女に見つけられる。

こんにちは大和 天です!

更新遅くなりました!ごめんなさい!
いや、あれがあれでちょっと忙しくて……
SAOと俺ガイルのクロスのss?が面白すぎるのがいけないんだ!つい読み込んでしまいました(。-_-。)

話はかわりますがUA50000、お気に入り600突破しました!ありがとうございます!

今回は文化祭後の鹿波先輩目線でお送りします!
なんかちょっとつまんないかもです(。-_-。)

てなわけで16話ですどうぞ!


 

 

 

ピピピピピ

 

 

 

 

私は少し苛立たしげにバンッと目覚まし時計を叩く。

あぁ、学校か……準備しない…と…って、あれ?

 

 

そっか、今日は文化祭の代休じゃん。

昨日の文化祭が楽しくて忙しくてとってもいい思い出になった。

ミスコンもなんかわかんないけど優勝しちゃったし。

美香が超悔しがってるところをみれたから出てよかったかも。

 

 

 

私は枕元で充電していたスマホのボタンを押し、画面をつける。

 

 

そこに写っているのは私と1人の男の子だった。

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「私、好きなんだ。その人のこと。やっと気付いたの」

 

 

 

 

 

………あれ?

 

言っちゃった。

言っちゃったよ!おいおい!

もうダメだぁー!死にたいよぉー!

 

しかもアレじゃん!比企谷くんより少し前に出てるから比企谷くんの反応がさっぱりわかんない!

 

 

 

 

振り向けないまま悶えていると後ろから声がする。

 

「その人は幸せ者ですね」

 

 

自分でも顔が真っ赤になるのがわかる。

今振り向いたらダメだって分かってる。分かってるけど……

 

 

 

振り向くと彼は夕日に照らされ、顔一面が真っ赤で顔色なんて分かったもんじゃなかった。

 

 

動揺を隠せないまま返事をしてしまう。

 

 

「そう、かな?」

 

「……たぶん」

 

 

 

たぶんってなんだよ!と思わず心の中でツッコミを入れてしまう。

 

 

「そこはそうですよ、っていうところでしょうが!」

 

 

頬を膨らませて怒ったふりをする。

プンプンと口で言っていると比企谷くんの顔が少し引きつっていた。

多分彼には分かっているのだろう、私がわざとこんなリアクションをやっていることを。

 

 

 

私は彼の横に座りスリスリと近寄っていく。

こうなりゃ家にくらい送ってもらおう。

そう思って送ってとお願いするがあっさりと断られる。

それでもなぜか嬉しい。

 

 

 

 

 

好きな人が出来ると世界がガラリと変わると言う人がいる。

そんなの他人事だと思っていた。

でも実際ガラリとまでは行かないが少しづつ私の見ている景色が変わり始めているのは事実だと思う。

 

そんな私の見ている景色を変えた彼にじゃ、私帰るね、と少しだけ自分の感情を隠すために格好つけて言うとくるりと反転する。

私の方がお姉さんなんだからたまには格好つけないとね!

 

 

 

そして反転した勢いで私の足が勢いよく比企谷くんのことを考えながら飲んでいた彼の大好きなMAXコーヒーの缶を蹴飛ばす。

 

勢いよく中身が飛び散り、私のささやかな格好つけたセリフを台無しにする。

 

 

 

 

 

「……ぶふっ」

 

みるみる顔が赤くなるのがわかる。

そして思わず叫んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑うなぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局私のことを笑った罰として家まで比企谷くんに自転車で送らせた。

そっと腰に手を回してみると比企谷くんが焦ったようにち、ちょっと!などと言っていたがいちいちそんなことを気にしていたら比企谷くんの相手なんてできたもんじゃない。

 

 

顔を彼の背中ににつけて少しだけ匂いを嗅いでみる。

なんだか暖かい匂いがして幸せな気持ちになる。

べ、別に変な性癖があるわけじゃないんだからねっ!

 

 

家の前に着き、バイバイと手を振ると比企谷くんは遠慮がちに手を挙げて答えてくれた。

そうとう嫌そうな顔をしていたけどまぁそれは後でしっかり何か奢らせよう。

ミスコンもなぜか1位だったからそのお祝いってことでまたどこかに引っ張って行こうかな。

 

 

 

 

部屋に入って着替える時に制服を嗅いでみると少しだけ比企谷くんの匂いがした。

えぇ、まぁ…そのー……えーっと………はい、変態って言われても仕方ないです。まる。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを思い出しながらもう一度スマホの画面に目を落とすとメイド服の私と1人の男の子……比企谷くんとのツーショットが写っている。

 

 

これは文化祭1日目の時に私の友……クラスメイトの美香が撮影したものだ。

 

 

私が比企谷くんにちょっと話しかけようとしたところを写真に収められてしまった。

美香ナイス……じゃなかった、美香ったら困ったものですよ……

 

 

 

そんな訳でその一枚の写真をめぐり値の釣り上げと値切りのバトルが熾烈を極め、なんとか800円で交渉が成立した。

くっ……500円くらいで競り落としたかった……

 

 

写真を送ってもらった私のスマホは気づくと壁紙がその写真になっていた。

あれれ〜、おかしいぞぉ〜?

 

 

 

そんなことを思ってスマホを眺めていると画面が切り替わり、美香から電話がかかってきた。

 

 

ちっ、美香め。せっかく文化祭の思い出に浸っていたのに……

 

 

そんなことを思いながらも電話をでる。

 

 

「もしもしー?」

 

「あ、香奈?電話出るの早いね?もしかして例の彼からメールでもこないかなー?って画面ずっとみてたの?」

 

 

「ち、ちょっと!そんなわけないでしょ⁉︎それより用事はなによ」

 

「え?用事?何にもないよ?ただどーせ香奈のことだからあげた写真眺めてるのかなーって思って邪魔してみた!ほんじゃーねー」

 

 

プッ、といい通話が終了する。

 

……

 

 

 

…………

 

 

 

………明日早く学校に行って上靴でも隠しとこう。

 

 

私はそう固く誓った。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

もうお昼過ぎである。

 

さっき比企谷くんを電話で誘ってみた。

 

 

「比企谷く〜ん!今日ヒマ?」

 

「いや、今日は録画したプリ……教育番組を見ないといけないので。それじゃ」

 

 

 

そう言って電話を切られた。

 

絶対プリキュアだよね?なんでちょっと勉強してる感じで言い直したの?明日下駄箱に美香の靴を入れておこう。

 

本日二度めの誓いを心に刻み込んで、いま直面している問題に向き直る。

 

 

 

お昼ご飯どうしよう……

 

 

別に作れないわけじゃないけどそんな気分じゃない。

そうと決まればあれしかない。

 

 

私は着替えると家を出る。

 

 

 

 

Yes!let's go なりたけ!

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

店の前でキョロキョロと2、3度辺りを見回し知り合いがいないことを確認して店に入る。

 

だってほら、あれでしょ?女子の1人ラーメンってちょっと、ね?

 

 

 

てな訳でお店に入るとなぜだか見知ったアホ毛が……

 

 

 

カウンターに座る彼の横の席にわざと座ろうとする。

嫌そうに見上げた彼のその腐った目が見開かれる。

 

 

 

 

なんでこんなにドキドキしているんだろう。

きっと目の前の彼が私からの誘いを断ってこんなところでラーメンなんて食べてるから怒りで動悸が……

 

まぁ今回はそういうことにしといてもいいよね?

 

そして私はとびきりの笑顔で彼に声をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ!比企谷くん」

 

 

 

 

「………ごめんなさい」

 




いかがだったでしょうか?

つまらなかったらすみません!
もしかしたら書き直すかもです(。-_-。)

最近は評価もたくさんしてもらい、低評価や高評価で一喜一憂したりしています!
これからもがんばります!

次の大きいイベントは体育祭ですかね?
頑張りやす!

感想や評価、お気に入り、誤字脱字やご指摘などお待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女に埋め合わせする。

こんにちは大和 天です!


前回の続きみたいになっちゃいました(笑)
そんでもって長くなっちゃったので二つに分けました!
ごめんなさい(。-_-。)

まったく関係ないですが今日親知らず抜きました笑

では17話ですどうぞ!


 

 

 

 

はぁ……

待ち合わせの時間からもう30分も過ぎている。

なんであの人は毎回遅刻するんだろうか。

自分から言いだしたくせに。

しかも今回のデー……荷物持ちは少しばかりいつもより面倒臭いことがある。

 

 

 

俺の108の特技の1つのボーッとして時間を潰すを使っていると最近聞き慣れてきた声がする。

 

「こ、こんにちは比企谷先輩!」

 

「後30分早く来てそれを言って欲しかったですね、鹿波さん」

 

 

言いづれぇぇぇえ!

どうしてこうなった……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

文化祭の翌日、つまり代休の朝遅くにのそのそと起きて二度寝しようか悩んでいるとマイハニーという知らない人から電話がかかってきた。

 

「……はい」

 

「比企谷く〜ん!今日ヒマ?」

 

 

俺の休日を取らないで欲しい。

昨日だって結局家まで送らせたくせに。

だいたい昨日録画したプリキュア見ないといけないし!

八幡休日はダラダラしたりゲームしたりゴロゴロしたり勉強したりで忙しいんだから!

 

 

「いや、今日は録画したプリ……教育番組を見ないといけないので。それじゃ」

 

 

そう言って電話を一方的に切る。

 

 

少しだけ胸が痛む。

最近何かがおかしい。

こんな風に胸が痛んだことなんて今までなかったのに……

 

 

 

「すみません、今度埋め合わせをします」

 

 

そう打ち込み先輩にメールを送る。

まぁ、これで大丈夫だろうと自分を納得させる。

 

 

さて、プリキュア見るか……

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュア最高っ!

そこらの青春ドラマなんかより断然プリキュアの方が感動できる。

プリキュアまじ神。

学校で教材として使うべきだと八幡思うな!

 

 

 

遅く起きたこともあり、プリキュアを見終わるともう12時を過ぎていた。

お昼ご飯を作ってもらおうと小町〜、と声をかけるが返事がない。

ま、まさかただのしかばねになっているのか⁉︎

 

小町の部屋に行こうと思い階段を上っているとふと思い出し、思わずひとりごとの様にこえが出てしまった。

 

 

「あ、今日月曜日じゃん」

 

 

小町学校でしたっ!テヘペロ☆

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で1人ラーメンを堪能しようとなりたけに来ていた訳なのだが……なんでこの人来たの?

 

 

「比企谷くん、どうしてこんなところでラーメン食べてるのかなぁ〜?」

 

「あ、いや〜、たまにはラーメンもいいかなーと思いまして」

 

「比企谷くんは私よりラーメンをとった訳ね……お姉さん悲しいな……」

 

 

そう言って先輩はグスンと言いながら目に手を添える。

 

先輩泣き真似はやめてください!みんなに変な目で見られてますからっ!

あと先輩はお姉さんって言うより妹のほうが近いですよ。

 

 

 

いつの間にか泣き止んだ先輩はスープを飲み干しダンっと器を机の上に置くとこっちに振り返った。

ていうかそれ男らしすぎますよ。

その前によくその背脂の量飲み干せましたね。

 

 

 

「でさ〜、比企谷くん、今度埋め合わせしてくれるんだよね〜?」

 

「えーと、まぁ、はい」

 

「それなら今週の日曜日どこか遊びに行こうよ!」

 

まぁ先輩の荷物持ちをして許されるなら安いものだ。

あれ?いつのまにか社畜のような考え方に……

やっぱり夢は大事だね!働かない。絶対に。

 

 

「まぁいいですよ。埋め合わせするって言ったの俺の方ですしね」

 

「そーだそーだ!比企谷くんが全部悪い!この小悪党め!」

 

「ディスりながらディスるのやめてください。せめて普通の悪党にしてくださいよ」

 

「……ぷっ!あっはっはっは!」

 

 

先輩、机に突っ伏して爆笑しないでっ!

周りの目を少しは気にしてっ!

 

 

ひとしきり笑終わったあとで先輩はひぃひぃ言いながら涙目の顔を上げた。

 

 

「はぁはぁ……ふぅ、もぉ、やめてよ比企谷くん!ていうか比企谷くん敬語じゃなくてもいいよ?友達なんだし」

 

まって!それでも僕はやってない!

あ、これ結局やっちゃった事にやるやつだ。

 

とまぁ、それは置いといて。

 

 

「いや、年上には敬語をつかえって習わなかったんですか?」

 

「いーよー、そんなの!もっと友達らしくフレンドリーにさ!」

 

どれだけ友達するんですか。

 

 

「どんだけ友達になりたいんですか」

 

 

すると先輩は少し顔を赤らめながらもじもじしてポツリとつぶやいた。

そんなにお店暑いのん?

 

「……じゃあ彼女?」

 

「やめてください、勘違いして告白して振られちゃいますから」

 

 

先輩は別にいいじゃん、などとブツブツ言っている。

あ、俺が振られるのは別に気にしないんですね。

 

 

じゃあ〜、と先輩は話を続ける。

 

 

「その日は先輩と後輩を入れ替えようよ!私が後輩で比企谷くんが先輩ね!」

 

「いやですよ、なんでそんな面倒なことしないといけないんですか」

 

 

すると先輩は拗ねたように唇を尖らせる。

べ、別に拗ねた顔がかわいいだなんて思ってないんだからねっ!

 

 

「埋め合わせするって言ったのに……」

 

 

そう言われると弱る。

確かに埋め合わせをすると言ったのは事実であり、何よりこんな俺と仲良くしてくれる数少ない人である先輩を邪険にする程俺は冷たくはない。

「はぁ……仕方ないですね。今回だけですよ?」

 

「ほんとに?やったー!やっぱ言ってみるもんだね!」

「最後のが無ければよかったんですけどね」

 

「うるさいなぁ!じゃ、よろしくね比企谷先輩っ!」

 

 

なんだか全然悪くはないですね。

むしろ推奨したいですね、はい。

 

 

「比企谷くんなんだかキモいよ?変なこと考えてるでしょ?」

 

「ぜ、全然考えてないですよ?」

 

 

ジト目で見てくる先輩の目線を振り切って先輩の分のお金も払い店を出る。

後ろから付いてきた先輩が頬を少し赤らめながら自転車に跨った俺の腕をちょんちょんとつついてくる。

ふっ、先輩、お礼なら別にいいですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お腹一杯だから家まで乗せてって」

 

 

そうなるのね……

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

なんだか最近低評価続きですこしへこんでます(。-_-。)
悪いところや変えたほうがいいところなどありましたらお教えいただければ嬉しいです(>_<)

それでは次回は先輩後輩入れ替わってデート編です!


いつものごとく感想や評価、誤字脱字やご指摘等お待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女は入れ替わる。

こんにちは大和 天です!

先に謝っておく事があります
いろはすみたいになりましたごめんなさい(。-_-。)

誰も知りたいと思わないと思いますが一応鹿波先輩のイメージははるのんとめぐりんを足して二で割った感じです

それと今回は以前挿絵を見てみたいと言ってくださった方がいらっしゃったので先輩を書いてみました!
まぁ、ぶっちゃけ下手くそなので見なくてもいいです笑
後書きに載せています!

では18話ですどうぞ!


午前8時30分。

夏も終わりに近づき過ごしやすい気候になってきたがまだ少し暑い。

今日はいい天気で雲も少なく、スポーツなどをするならもってこいの日である。

 

なぜ俺が朝からこんなことを思っているかというと理由なんてひとつしかない。

 

 

 

 

 

先輩、また遅刻ですか……

 

あの人が待ち合わせ時間に来ないのは今に始まった事ではないが流石に一度くらいはぴったりに来て欲しい。

自分から誘ってくるくせに。

今のところ全部遅刻だからねあの人。

 

 

俺の108つある特技のうちの一つであるボーッとするを使い始めてもうすぐ30分たつ。

さっききたメールからしてもうすぐ来るだろう。

あぁ、はやく帰ってプリキュアみたいなー……

 

そんなことを考えていると後ろから最近聞き慣れた声がする。

 

 

「こ、こんにちは比企谷先輩!」

 

そうだった。

たぶん先輩なりの考えで俺の敬語をやめさせるためになぜだか今日1日は先輩と後輩の立場を入れ替えて少しでも親密になろうということらしい。

そしてどうやらそのことを忘れていつも通りに話してしまうと相手がひとつ命令できるとのことだ。

因みに強制参加なんだそうだ。

なにその理不尽なゲーム。

 

そんなゲームに参加させられたのだから嫌味のひとつくらい許されるだろう。

 

 

「後30分早く来てそれを言って欲しかったですね、鹿波さん」

 

「ごめんなさ〜い」

 

 

先輩は悪びれる様子もなく、テヘッと手をグーにして頭に当てる。

はいあざといあざとい。

 

そんなあざとい先輩が思い出したように俺に話しかける。

 

 

「それで今日はどこに行くんですか〜?」

 

え、俺が考えるの?

八幡そんなの聞いてない。

こういう時にはなんでもあるところに行くのが無難である。

俺が何時ぞやに行った大型ショッピングモールを提案するとあっさりとOKが出た。

 

 

なーんだ!全然大丈夫じゃん!緊張して損しちゃったぜっ☆

などと考えていると先輩が恐ろしい言葉を言い放った。

 

 

 

 

「えーっと、もちろん今日の代金はは当然ぜーんぶっ比企谷先輩の奢りなんですよねー?きゃーっ!かっこいー!おっとこまえー!」

 

 

なん……だと………?

 

そういうことだったのか!

今までは俺が後輩だったためなんとか割り勘で済んでいたが年上の男子ならやはりお代は男が持つしかなくなるだろう。

この人こんなことまで考えてたの?

ハチマンモウダレモシンジラレナイ。

 

 

 

「……くっ、やってくれましたね先輩」

 

 

するとなぜか先輩の顔が満面の笑みに変わる。

 

 

 

「はい、罰ゲーム」

 

「………あ」

 

 

僕もう帰りたいな……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

どんな酷いことを命令されるかと考えていたが以外とあっけないものだった。

 

『今日は私が満足するまで付き合うこと』

 

まぁもっとひどいことも考えていたのでそれに比べればマシだった。

ちなみにそのことを先輩に言うとグーでお腹を殴られた。

 

 

ショッピングモールに入ってみると日曜日なだけはあってやはり人が多く、喧騒に包まれている。

ちょんちょんと腕を突かれたので見てみると絶賛後輩中の先輩が少し困り顔で立っていた。

いや、後輩中ってなんだよ。

 

 

「あ、あの、比企谷先輩」

 

「なんだ?」

 

「あーと、そのー、手、繋いでもいいですか?」

 

「………え?」

 

 

間の抜けた声が思わず出てしまう。

先輩は恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしてあたふたと続ける。

 

 

「ほ、ほら!比企谷先輩が迷子になったら探すのたいへんじゃないですかー?」

 

「いやいや、それは鹿波さんの方だからね?」

 

「ここは私に従っておけばいいんですよ先輩っ!」

 

 

確かに先輩とは一度迷子になってお互い探し回った事があった。

流石にここでは電話も通じるだろうがやはり探すとなると面倒である。

仕方なしに了承すると先輩はやったー!と嬉しそうにしていた。

大体俺と手を繋ぐ事のどこに喜びを感じるところがあるのだろうか。

小学生の時のキャンプファイアの時だって結局1人でエアオクラホマミキサー……

 

 

と、自分の黒歴史の教科書を読み返しているとあれ?目から汗が……

ていうか俺の教科書だけ人の5倍くらい分厚いのは気のせいですかね?

 

 

そんなことを考えていると俺の手がなにか柔らかくて温かいものに包まれた。

 

「それじゃいこっか」

 

 

先輩はそう言うと俺の手を引っ張ってズンズンと歩いていく。

 

「手、柔らかいですね。小町程じゃないですけど」

 

「うるさいよ!」

 

 

だって冗談くらい言ってないと緊張で手汗が出て今後先輩からヒキガエル君って呼ばれそうなんだもん!

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

その後は先輩に連れまわされゲームセンターで俺の奢りで景品を取らされ、補正で目が綺麗になるかも!とプリクラを俺の奢りで撮らされ、ウインドウショッピングに付き合わされ、午後に見ることになった映画のチケットを奢らせられた。

あ、本当に俺が奢らせられるんですね。八幡冗談と思ってた……

 

 

 

お昼までまだ少し時間があるということで何して時間を潰すかということになり、先輩がこんな話を持ちかかてきた。

 

 

「それじゃあ、お昼ご飯をかけて勝負しようよ!」

 

「そーですね、せん……鹿波さんって苦手なゲームとかあるんですか?」

 

あっぶねー、先輩って言いかけた。

先輩にジト目で見られるが気にしないようにしていると先輩がやっと問いかけに答える。

 

「そーですねー、あ!私実はまだボーリングやったことないんですよねー」

 

「よし、ボーリングで決定。異論は認めませんからね」

 

えー!と言う先輩を黙らせるために今日唯一与えられた先輩の特権をフルに使って競技をボーリングに決める。

これ以上お金が減ったら今月何もできなくなるからな。

 

 

靴を履き替え、ボーリング玉を持ってくると椅子に座る。

念には念を入れて先輩からにしておいた。

ちょっとそこ!大人気ないとか言わないの!

 

 

先輩が戻ってきたのでお先にどうぞと促す。

トテトテとレーンの前に歩いて行く。

 

すると助走もつけずにいきなり腕をぐわっと振り上げるとものすごいスピードでボールを放った。

 

 

バコーンという音と共にピンが全滅し、頭上の電光掲示板にストライクの表示が出る。

 

帰ってきた先輩はふぅ〜と息を吐きながら俺の横に座る。

 

 

「えーっと、初めてなんですよね?」

 

それを聞いて驚いた顔をしていた先輩は次第にニヤニヤしだす。

 

 

「そ〜ですねぇ〜」

 

 

この人勝った気でいやがる……

だが俺も負ける気はない。

小町の相手をさせられ大人げもなく完膚なきまでに叩きのめしギャン泣きさせたことだってある。

小町かわいかったな……

 

だからこんなボーリング素人に負けるはずがないのだ。

 

そうして俺の残り少ないお小遣いをかけたボーリングバトルが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結果はまぁ、俺が過去最高得点を叩き出したとだけ言っておこう。

 

 

「いや〜、人のおごりで食べるご飯は美味しいねぇ〜」

 

「ははは、そりゃよかった」

 

乾いた声しか出ない。

なんなの全部ストライクかスペアって。

そんなの聞いてない!

 

 

そんな馬鹿げた点数を叩き出した先輩は目の前で美味しそうにパスタを食べている。

女子って本当にパスタ好きだよね。あとアボカドとエビね。

 

 

ごちそうさま〜、とニヤニヤしながら言われた俺は伝票を掴むとレジで支払いを済ませる。

 

映画館に向かって歩いていると先輩がポツリと呟く。

 

 

「もうすぐ体育祭だね」

 

「そうですね」

 

「八幡先輩体実やればー?」

 

 

えっと、いつから呼び方八幡先輩になったんですかね?それといつからタメ語にもどったんですか?

 

 

「やりませんよそんな面倒くさいこと。俺のモットーは働かない、ですから」

 

ちなみに夢は専業主夫だと伝えると無理だと一蹴されました。まる。

 

 

 

 

 

シアター内に入り席に座ると間も無く場内が暗闇に包まれる。

 

今回見る映画は先輩にしては珍しくアニメーションの映画で俺も見てみたいと思っていた映画だった。

 

 

クライマックスで思わず涙が出そうになり、横を見てみると先輩の頬を一筋の雫が流れていた。

 

その姿はなぜだか俺には手の届かない何かなのではないかと思ってしまう。

 

 

 

 

思わず見惚れていると、はっと先輩が気づき横腹を殴られた。

今日殴られてばっかりなんですけど……

 

 

 

映画館を出た後、適当なコーヒー店に入り映画の話や文化祭の話をした。

実は先輩はアニメ映画が好きならしく、思った以上に話が盛り上がり、オススメの映画いくつか教えてもらった。

 

 

それじゃあ帰ろうかということになりしっかり代金を払わさせられた後、店を出て帰路についた。

 

 

 

「満足しましたか?」

 

そんな質問を投げかけると先輩はうーんとあごに手を当てて考えるふりをする。

 

 

「まぁ、ぼちぼちでおまんでんがな」

 

え?なにそのエセ関西弁?

見た目は子供の探偵さんなの?

しかもぼちぼちなのかよ……

 

 

 

「まぁ、満足してもらえたならよかったです」

 

「じゃあ比企谷先輩はどうだったんですかー?」

 

そんなことを言いながら上目遣いで俺に視線を投げかける。

言葉に詰まりながらもなんとか声を絞り出す。

 

 

「まぁ……ぼちぼちですね」

 

 

先輩はぼちぼちかよー、などといあながらもなぜだか嬉しそうで見ていてこっちまで思わず口がほころぶ。

 

 

そんな俺に先輩がとびっきりの笑顔で言う。

 

 

 

 

 

「なんだか顔気持ち悪いですよ?特に目が」

 

 

 

「……デフォルトでおまんでんがな」

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

だんだんと肌寒くなっていく夜空の下、先輩を無事家の前まで送り届けるという護衛任務を見事遂行し、こんな任務余裕だってばよ!と心の中で叫んでいると目の前を歩いていた先輩がくるりと振り返る。

 

 

「ふぅ〜、とうちゃーく!ありがとね!」

「いえいえ。楽しんでもらえたなら良かったです」

 

 

心が温まると同時に懐が寒くなりましたよまったく。

 

するとにこにこした先輩が口を開く。

 

 

 

「私とデートできて楽しかった?」

 

「まぁそうですね。お財布が軽くなったの以外は」

 

先輩はそういうこと言わないの!と言いながらあははと笑っている。

 

 

 

 

 

いつからだろう。人といることが心地よく感じるようになったのは。

他人なんて今まで俺を蔑み邪険にし、時には危害まで加えてくるようなものだとばかり思っていた。

 

 

ただ勘違いしてはよくない。

彼女は、鹿波香奈はきっと万人にこうなのだ。

だからしっかりと自分に問い直さねばならない。

 

俺などただの都合のいい人だ。

特別な感情などない。

 

 

そう思わないと俺が彼女に中学時代にに捨て去った感情を再び抱きそうになるから……

 

 

 

 

 

 

 

ガコン、と音がする。

 

いつの間にか下を向いていた頭を上にあげてみると先輩が門を開けて中に入って行くところだった。

 

 

「今日はミスコンで優勝した大人気の先輩とデートできてよかったね比企谷くん。ほんじゃ、またね〜」

 

 

そう言って玄関の方に近づいていく先輩を思わず呼び止めてしまう。

 

ていうか先輩ミスコン優勝できたのやっぱり嬉しかったんですね。

 

不思議そうな顔をしている先輩にいいことを教えてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってましたか?あれって1日有効なんですよ?」

 

 

「……なにが?」

 

 

 

 

 

そして俺は簡潔に一言で教えてあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「罰ゲームですよ鹿波さん」

 

 

多分のその時の先輩の顔を俺は忘れないだろう。

 

 




いかがだったでしょうか?

最近自分の文章力がないことを改めて実感します
もっとがんばらねば!


それと先輩のイメージはこれをもっと可愛くした感じです笑

【挿絵表示】


感想書いてくださる方がいらっしゃいましたらあんまり絵には触れないでねっ☆

感想や評価、ご指摘等お待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女に告げる。

こんにちは大和 天です!

一応体育祭編に入りました!一応……
何話になるかは分かりませんが頑張ります!

UA60000突破しました!
読んでくださっているみなさんありがとうございます!

では19話ですどうぞ!


チャイムが鳴り教室がガヤガヤと騒がしくなる。

といってもいつも授業が終わればガヤガヤするわけだが今回はいつも以上にガヤガヤしている。

 

「ねぇねぇ、どっちだったー?」

「私赤だったよー!」

「えー、私白だったー!」

 

 

そんな声があちこちで上がる。

ここだけ聞いているとパンツの話かと思っちゃうよね。いや、思わねぇよ。

ちなみに黒のパンツってなんだかエロいと思います。

 

 

 

赤とか白とかはパンツの事ではなく体育祭の事だ。

我が総武高校はなぜかは知らないがクラスの中で赤組と白組の半分に分ける。どうやら毎年出席番号の偶数と奇数で分けるらしい。

そんな訳で俺は赤組になったのだが俺に何組になったかなんて聞いてくる奴がいるわけもなく、誰にも声をかけられることもなく教室を出る。

むしろ声をかけられるどころか存在を認識されてないまである。

やはり将来は専業主夫の副業として忍者か暗殺者をするべきだなと考えながらステルス全開で駐輪場まで行き自転車に乗る。

 

 

 

 

 

自転車を漕いでいるとなぜだか先輩の顔がちらついた。

 

 

 

先輩はどっちになったのだろう。

明日にでも聞いてみるか……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ比企谷くん。比企谷くんはどっちの組だった〜?」

 

 

少し遅れてベストプレイスに来た先輩は俺の横に座るといきなりベッタリと張り付きながら聞いてきた。

ええい!近い近いいい匂い柔らかい近い柔らかい近い!

俺は少し仰け反りながらも答える。

 

「赤でした。先輩は?」

 

 

そう言うと先輩はつまらなさそうに白、と呟くとお弁当を広げ始め、ガツガツと食べ始める。

 

 

「はぁ〜、いいな〜美香は。比企谷くんと同じで……」

 

「いやいや、俺と同じでも面白くないですよ?」

「そりゃそうだけどさ〜」

 

 

そう答える先輩はまだ少しふてくされているのかオカズを箸の先でいじくりまわしている。

ていうか俺と同じでも面白くないの知ってるならなんで同じが良かったんですか!

そんなことないって言ってくれるのをほんの少し期待してたのに!ほんの少しね!

 

ていうか、三神先輩一緒なのか……

 

 

 

「はぁ……つまんない………」

 

 

いつまで拗ねてるんだこの人……

もう昼ごはんを食べ終えた俺は飲み物を買ってきます、と先輩に断りを入れて自動販売機に行く。

 

自動販売機まであと少しというところで俺に危ないとゴーストが囁く。

早くロジコマを呼ばないと!

 

「お、なんとか君だ!」

 

 

聞いたことあるような無いような声がする。

声のした方を見てみるとあの人がいた。

 

 

「うす、なんとか先輩」

 

「ちょっと?比企谷くん知ってて言ってるでしょ!三神だよ、みーかーみ!」

 

「先輩も俺の名前知ってるじゃないですか」

 

「あ、比企谷くんは何組だった?」

 

 

OH…完全スルーなのね……

八幡泣かないよ!えらい?

と、脳内でメイちゃんっぽく呟いたあとに質問に答える。

 

 

「赤ですよ。三神先輩もですよね?」

 

すると三神先輩ははっ、まさかっ!とその主張の少ない胸を隠すように腕を胸の前で交差させる。

 

「さては、ストーカーだな!」

 

「ちょっと、声でかすぎですよ。俺メチャクチャ見られてるじゃないですか!」

 

 

焦りの混じった声でそう言うと先輩はあはは、と笑いながら俺の背中をバンバンと叩く。

ちょっとまって、力強すぎ……

超痛いんですけど……

 

 

「あはは、ごめんごめん!香奈に聞いたんでしょ?あの子白組だったからなー……あ、あの子落ち込んでた?」

 

「いや、落ち込んでたと言うよりは拗ねてましたね」

 

 

ほほぅ、とニヤニヤしながら三神先輩は自動販売機の方に歩いて行くとお金を入れ、ポチッ、ポチッとボタンを2回押す。

出てきた缶を取り出すと俺の方に向き直る。

 

 

「いやぁ、いい情報を貰ったよ。あ、あとこれ最近香奈こればっかり飲んでるから比企谷くんもこれ好きなんでしょ?」

 

 

そう言って三神先輩は俺にマッカンを2本渡すとあ、やば、と言って走って行った。

なにがやばいのん?

 

 

今まであの人とろくに話したことがなかったため分からなかったが意外といい人なのかもしれない。

顔も美人だしスタイルもいい。

ただ…ただちょっと胸が……

 

 

すると突然ぞわっと寒気が走る。

もう寒くなってきたな、と自分の保身ために強く思い込み、俺は先輩が待っているベストプレイスに向かうべく歩き出した。

 

 

 

 

 

そして俺は聞き覚えのある音を耳にした。

 

 

何を隠そうチャイムである。

 

 

 

 

 

やべ、5限目始まっちゃった。テヘペロっ☆

てか、わかってたなら教えてくれよ三神先輩……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

次の日の昼休みに帰ってこなかったことと三神先輩に余計なことを言ったことをネチネチと怒られた俺は昼休みが全部潰れてしまった。

 

なんとか5、6限目を寝て過ごし空腹を紛わせ、やっとの事で下校の時刻となる。

八幡お腹空いたなう。

そんなリア充(笑)のようなつぶやきを脳内でしながらマッカンでも買って帰るか、と自動販売機の方へと向かう。

 

無事に俺の心をMAXにしてくれるMAXコーヒーを買うと駐輪場へと足を運ぶ。

 

 

 

下校の時刻からは結構時間が経っており、生徒の影すら見かけない。

空もどんよりと雲が厚くなってきて今にも雨が降りそうである。

もうすぐ俺の自転車があるであろう場所につくのだが俺の自転車の近くに誰かが立っている。

一瞬先輩かと思ったがどうやら男子生徒のようだ。

しかもどうやら3年生のようだ。

いかにもリア充(笑)といった感じで背も高い。

 

 

ま、誰かを待っているのだろうと何も考えず自転車のところに行くと目が合う。

なにも気にしないで自転車のカギを開けているとおい、と声をかけられた。

一瞬他の誰かに言ったのかと思ったがここには俺しかいない。

顔を上げると先程目が合った3年生が俺を見下ろしていた。

 

「おい」

 

「なんですか」

 

「お前、香奈につきまとってるらしいじゃないか」

 

 

香奈って誰だ?と一瞬考えて鹿波先輩の下の名前が確かそんな名前だったと思い出す。

 

 

「いや、付きまとってないですけど」

 

 

すると3年生は少しイラっときたのだろうか、少し眉をひそめる。

 

 

「まぁ、別にそれならそれでいいんだけどよ、香奈が優しいからってあんまり調子に乗んなよ?」

「別に乗ってないですけど」

 

 

その言葉を言った後にしまった、と思う。

俺は胸ぐらを掴まれたと思ったその瞬間、目の前には地面が広がっていた。

 

遅れて頬がズキズキと痛み出す。

どうやら口の中を切ったらしく血の味もする。

 

目の前に人の足が近ずいてくる。

見上げると先程の3年生だった。

 

 

 

 

 

 

 

「2度と香奈に近づくな」

 

 

そう吐き捨てると踵を返し歩いて行く。

 

 

 

俺には何もできなかった。

呆然としているとポツリポツリと雨が降り始める。

 

 

 

意識がはっきりしてきた俺はゆっくりと立ち上がると自転車に跨り漕ぎ始める。

 

 

しばらく雨に当たりながら自転車を漕いでいると意識が鮮明になってきた。

そうしてはじめて理解した。

 

 

 

俺は先輩に知らず知らずのうちに甘えていたのだと。

 

俺は先輩に釣り合ってなどいない。

片や可愛くて人気もある女子生徒。

片やボッチで存在すら認識されているかもわからない男子生徒。

 

 

 

身の丈に合わないことをしているからこうなるのだ。

きっとこの先も先輩のそばにいたら迷惑をかけるのだろう、いや、もしかしたら今までたくさんかけてきていたのかもしれない。

 

 

 

だから…

 

 

だから俺は……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

次の日いつものようにベストプレイスに行くと先輩が待っていた。

 

 

「やぁ、比企谷くん!」

 

そう言うとここにおいで〜、と自分の横をポンポンと叩く。

 

そこには座らずにいるとどしたの?と先輩が不思議そうにこっちを見上げる。

 

 

「……先輩」

 

 

ゴクリと唾を飲み込むのがわかる。

昨日の夜散々考えた、考え通したのにこの答えしか出てこなかった。

俺にはカードを選ぶことなんてできない。

 

 

だって俺には

 

 

 

 

1枚しかないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「……先輩とはもう会いたくないです。俺のことなんか放っておいてください」

 

 

俺にはこれしかない

 




いかがだったでしょうか?

だいぶ悩み悩み書きました(。-_-。)
おもしろくなかったらすみません(>_<)
あまり書いていて楽しくはないのですが書かなくてはいけない話だと思っています

続きも頑張ります!
応援してくだされば嬉しいです!

さてさていつものようにご感想や評価、誤字脱字やご指摘等お待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(。-_-。)

追記

次の話を鹿波先輩か三神先輩目線で書こうと思っているのですがもしどちらがいいなどございましたら活動報告あたりにかいてもらえると嬉しいです(。-_-。)


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彼は彼女を傷つける。

こんにちは大和 天です!

やっと20話です!21話あるけど20話です!笑
読んでくださっている方のおかげです!ありがとうございます(>_<)

さてさて今回は三神先輩目線です!
えぇ、まぁなんというかはい、難しかったぁ(。-_-。)

お気に入り700突破しました!
みなさんありがとうございます(>_<)

では20話ですどうぞ!


 

 

 

 

4限目終了のチャイムが鳴ると私の横の席の女の子がガバッと立ち上がる。

 

「おやおや?恋する乙女の香奈ちゃんは今日も愛しの後輩の所に行くのー?」

 

そう尋ねると彼女はほんの少しだけ頬を染めて答える。

 

 

「違うからっ!行ってきま〜す」

 

 

そう言うとパタパタと教室の扉の前まで行くとあっ!と声を上げる。

何事かと思って見ていると机まで戻ってきた香奈はゴソゴソと鞄からお弁当を取り出す。

 

 

「あんたなに動揺してるのよ。お弁当食べに行くのにお弁当忘れてどーするのよ」

 

「………てへっ☆」

 

 

あざといと言うとうるへー!と言いながらお弁当を引っ掴み教室から出て行った。

周りの男子がマイナスイオンが〜、などと言っていたので取り敢えず睨みつけておく。

 

 

ほーんっと香奈って男子に人気があるから困る。

その癖香奈自身は別に男子に興味がある訳じゃないから周りの女の子に妬まれまくりなんだけどね。

 

 

でもそんな香奈が興味を持った男の子がいるなんて私はそのことに興味を持たずには居られなかった。

いったいどんな男の子なんだろうかと。

 

 

かっこいい?

お金持ち?

話しが面白い?

友達がたくさんいる?

 

 

 

 

 

 

私の予想はことごとく外れた。

かっこいい?

顔はなかなかかっこいいけど腐った目が全てを台無しにしている。

 

お金持ち?

別に特別お金持ちって訳ではなさそう。

 

話がおもしろい?

おもしろいどころか口下手なまである。

 

友達がたくさんいる?

香奈曰く自分と同じでボッチらしい。なら私はあんたなんなのさ!

 

 

 

 

そんな彼を香奈は好きになった。

彼なんかよりいい男なんて掃いて捨てるほどいるだろう。

 

不思議におもって1度聞いたことがある。

どうして彼なのか、と。

すると今まで見たことのないような顔をして香奈は教えてくれた。

 

 

 

 

「比企谷くんはちゃんと『私』をみてくれてるの」

 

 

 

思わずはぁ?と答えたら美香には分かんないよー、とニヤニヤしながら言われたのでチョップしておいたんだけどね。

 

 

 

 

そんな幸せそうな香奈を見たのは一緒に居る12年間の中で初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

お昼ご飯を食べ終えた私は紅茶でも飲もうかと思い、友達に飲み物買ってくると告げ、自動販売機に向かう。

 

 

自動販売機にお金を入れる。

午後のがあるなら午前のも出せYO!などと適当なことを思いながら紅茶のボタンを押し、缶を取り出す。

 

さぁて、帰りますかね!と、踵を返して教室に向かおうとすると昨日も見かけたアホ毛の男の子が目の前を歩いている。

よーし、ちょっくら情報をGETしますかね!とちょんちょんと肩をつつく。

 

 

 

振り返った彼を見て自分の顔から笑みが消えるのがわかる。

 

腐っていた目はさらに腐り、その目の下にはクマができ、左の頬が少し腫れているように見える。

そんな憔悴しきった彼にかける言葉が見つからず無言のまま彼の顔を見つめてしまう。

 

 

「えっと、何か用ですか三神先輩」

 

 

はっと我にかえった私は彼に動揺を悟られないように言葉を絞り出す。

 

 

「えっと……それどうしたの?」

 

「あぁ、ちょっと転びましてね。別に見た目ほど酷くはないんで大丈夫ですよ」

 

「あぁ、そうなんだ……」

 

頬を指差して言った私に彼は苦笑いしながら答えるとそれじゃ、と言い、教室のあるであろう方向へ帰って行った。

 

彼の言ったことが嘘だってことくらい私にだってわかる。

それなら香奈にならなおさら……

 

 

 

スルッと私の手の中から缶が抜け落ち、ガコンっという大きな音で思考を止められた私はそれを拾い上げると教室に急いで帰った。

香奈に比企谷くんのこと聞かないと!

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結局香奈はその後教室に帰ってこなかった。

 

5限目が終わりスマホを見ると荷物を家まで持ってきて、という趣旨のメールが来ていて私は教室に来た6限目の先生に頭がいたいので帰ると伝え、私の鞄と香奈の鞄を引っ掴む急いで香奈の家に向かった。

 

 

 

家の前に着き、少し呼吸を整えてからチャイムを押す。

ピンポーンという機械音が私を苛立たせる。

 

少ししてもう1度押すが返事がないどころか家に誰かいる気配すらない。

 

もしかしたらまだ帰ってきていないのかも知れないが一応玄関が開いているかだけでも確認しておこうと扉に手をかける。

 

 

すると扉は何の抵抗もなく開いた。

 

見ると香奈のローファーが脱ぎ捨ててある。

 

 

おじゃまします、と小さく呟くと靴を揃えて脱ぎ、家に上がる。

階段を登り香奈の部屋の前まで行くと少しだけ扉が開いていた。

 

一応ノックをしてみるが返事はない。

そーっと扉を開け、中に入ってみると、

 

 

 

誰もいない……だと………?

 

一瞬そう思ったが部屋の隅っこで体操座りをした地縛霊のようなもが目に入る。

 

 

「ほら、鞄持ってきたよ」

 

 

返事はなくまるで石像のごとく微動だにしない。

私は鞄を置くと無理やり香奈の頭をつかみ持ち上げる。

 

焦点の合っていない目がだんだんと私の方を見る。

すると突然その目からブワッと涙が溢れ出す。

 

 

「えぇっ!ど、どどしたの?」

 

思わず声が裏返る。

 

長い長い沈黙の後やっとのことで香奈が掠れた声を絞り出した。

 

 

 

 

「……比企谷くんが…」

 

「比企谷くんが?」

 

「……私とはもう会いたくないって。放って置いてって……私どうしたらいいの?」

 

 

 

………

 

 

……………

 

 

ええぇぇぇぇええっ⁉︎

 

香奈はもういやだ、と腕に顔をうずめる。

 

 

 

 

 

はぁ……

 

 

 

 

 

私は立ち上がると思いっきり香奈の頭を叩いた。

驚きのあまり泣き止んだのであろうかアホみたいにポカーンとした顔で私を見上げる。

 

 

「いたぁっ!ちょっとなによ!」

 

 

私は驚きまくっている香奈に今できる最大のニヒルな笑みを浮かべる。

 

やべっ、顔ひきつってる。

 

そして私は1番の友達に宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

「おっし!私に任せろぉっ!」

 

 

ぶふっと吹き出した香奈は少しだけ笑った。

 

 

「……ばか」

 

 

「あんたはそうやって笑ってればいいのよ」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

香奈の家を出て気付いたことがある。

 

 

 

やっば、超はずいんですけどっ!

私も泣きたくなってきた……




いかがだったでしょうか?

書き終わって思いましたね、はい。
話進んでねぇー!
書き終わってみると自分でも想像と全然違いました笑

次こそはあの3年生を三神先輩あたりに潰してもらわないと(笑)

てな訳で感想や評価、誤字脱字やご指摘などお待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼を彼女は調べる。

こんにちは大和 天です!

風邪ひいて熱が出たので学校行けなかったぜっ☆
誤字脱字あったらすみません(>_<)

UA70000突破しましたぁ!ドンドンパフパフ!
みなさんのおかげです!取り敢えず風邪なおしますね!笑

体育祭編なのに体育祭要素0の21話ですどうぞ!


 

ピピピッ…ピピピッ…

 

 

 

 

枕元で充電しているスマホから目覚ましの電子音が鳴る。

 

 

いや〜、ひどい夢だった〜……

ていうかなんで夢の中にまで香奈が出てくるのよ!昨日恥ずかしいことを言った事を考えながら寝たからかな……

 

目覚ましを止め、寝転んだまま天井を見上げ、昨日のことを思い出す。

 

 

 

 

たしか香奈の家に行った私は香奈が比企谷くんに言われた事を教えてもらってー……

そのあと確かなんか恥ずかしいことを言った気が……

 

あ、恥ずかしいこと言ったのはさっき見た夢の中だった。きっとそうに違いない。きっとそうだ…そうだよね?

 

 

 

朝ごはんを食べた私は制服に着替え、軽く化粧をして少し早く家を出る。

家を少し早く出たのは今日は香奈と学校まで一緒に行こうと思っているからだ。

 

 

香奈と私は小学校から同じなだけはあって家は近い。

まぁ、一緒に学校に行ったことなんて殆どないけどね。

しかし今日は何としても学校に来てもらわないと香奈ちゃんと比企谷くんの仲直りラブラブ大作戦の作戦を練れないからたとえ引きずっても学校に連れて行くつもりだ。

 

 

 

 

 

だったのだけれど……

 

 

「おっはよー!美香!」

 

あれれ〜?おかしいぞぉ〜?なんでこんなに元気なのかな〜?

と脳内で小学生探偵の声で繰り広げながら呆然としているとおーい、と香奈は私の目の前で手をブンブンしている。

 

 

「えーと、元気だね?」

 

 

すると香奈はそりゃそうだよ〜、と左手を腰にあて、右手をドンっと胸に当てる。

くそっ、なんだそのメロンは!少しよこせっ!

 

 

「いやぁ、美香が昨日『おっし!私に任せろぉっ!』って言ってくれたからねぇ〜」

 

そういいながらニヤニヤと私を見つめる。

 

「そんなこと言いましたでござるか?」

 

「言いましたでござるよ!」

 

 

 

 

 

 

言っちゃってたんだね……

そうしてトトロのあるセリフを心の中で叫ぶ。

 

 

 

 

 

夢だけど夢じゃなかったー!

 

 

 

 

泣きたい……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

昼休みになりいつもお昼ご飯を食べている友達に断りを入れて香奈の机でお弁当を広げる。

取り敢えずいろいろ聞いてみないと対策のたてようがないからね。

 

 

「えーと、じゃあなんで比企谷くんにあんなこと言われたのか思い当たることある?」

 

「うーん、それが全然ないんだよねー……」

 

 

そういって浮かない顔をする香奈は本当に辛そうで見ていられなかった。

 

 

「でも、あんたあざといから比企谷くんに嫌われることなんてないと思うけどなー」

 

 

思わず本音を言うとガバッと顔を上げた香奈が面白そうに言う。

 

 

「でも比企谷くん気付くんだよね〜!今まで男の子で気付いた人なんていないのに!」

 

 

ニコニコしながらそう言う香奈は本当に比企谷くんが好きなんだなぁ、と感じてしまう。

てかそれ気付かれてちゃダメなんじゃないの?

 

 

でもまぁ香奈が原因では無さそうである。

そうなると他の人ということになるのだが……

 

 

「ねー、あんた人に恨みとかかってんじゃないの?」

 

「えぇっ⁉︎そんなことないと思うけどなー…」

 

 

うーん、と頭を抱えて思い出そうとしている香奈を見ていると当事者であるもう一人のことを思い出す。

 

 

「……ねぇ、あの日さ、比企谷くん頬に痣なかった?」

 

そう言うと香奈はあー、と頷く。

 

 

「そうかもね、たぶん」

 

「比企谷くんは階段から落ちたって言ってたんだけど、たぶん違うと思うんだよね、あれ」

 

 

まったくこれといっていいほど確証はないがたぶんあれは殴られたか何かしたのだろう。

 

となると誰に?

 

 

 

 

 

 

あぁー!わかんない!

 

 

私は比企谷くんがあの場所にいるか確かめるのも兼ねて飲み物を買ってくると香奈に言い、席を立つ。

するとそれを見計らったかのように1人の男子が香奈の方に歩いていく。

相手にされないだろうけど精々頑張ってくださいと心の中で唱えながら私は教室を後にした。

 

 

 

今日の気分は午後ティーなのさ〜♪と鼻歌を歌いながら自動販売機の前まで行く。

まぁ、毎日午後ティーなのだが。

 

 

自動販売機の前には列ができていたのでおとなしく並んでいると前のカップルに目がいく。

べ、別に羨ましいわけじゃないんだからねっ!

男の方はまぁ別にフツーの男の子だったので許すけどねっ☆

 

しかし女の子の方を見ると見覚えのある子だった。

仕方ない、弄ってやるかのぉ〜。

私は前にいる女の子の肩をツンツンとつつく。

 

 

「おやおや、ラブラブですなぁ〜」

 

すると前にいた女の子がクルリと振り返ると目を見開く。

 

 

「あ!先輩!お久しぶりですー!」

 

「うん!おひさ!この子彼氏?」

 

すると頬を赤らめてはい、と小さな声で肯定する。

その横で彼氏がスッゲー美人と口にした瞬間足を踏まれているのが見えた。

わかってるじゃないかBOY!

 

すると突然かわいい後輩ちゃんが口を開く。

 

 

「あ、あの、先輩、鹿波先輩のことなんですけど……」

 

 

 

それを聞いて私は怒りを覚えた。

 

そしてそれと同時に比企谷くんのことが少しだけ分かった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

教室に帰ってくると香奈はまださっきの男の子に付きまとわれているらしくうげぇ、とだれが見てもわかる嫌そうな顔をしながら話を聞いていた。

私が近づくとじゃあまたな、と男の子は香奈に告げて席を離れていった。

顔はまぁまぁかっこよかったですね。はい。

 

 

「だれあれ?」

 

すると香奈は少し嫌そうな顔をして私の問いに答える。

 

 

「なんかね、前に1回告白されて断ったんだけどしつこくって……」

 

 

ほほぉ、自慢かよおい?

とりあえず心の中で香奈がモテなくなりますように、と呪っておいた。

 

 

「あの人名前なんてゆーの?」

 

香奈がどこにでもありそうな名前を口にして私は納得する。

 

やっぱり比企谷くんはなにも悪くなかったのだ。

むしろ1番の被害者とも言える。

彼は、比企谷くんはなぜそんなにも強いのだろうか。

少しだけ香奈が比企谷くんの事を好きになったのも分かる気がした。

 

そして私は香奈に1つだけ確認を取る。

 

 

 

「ねぇ、一応確認だけど香奈は比企谷くんが好きなんだよね?」

 

恥ずかしそうな顔をしながら香奈はそうだよ、と言う。

 

 

それが聴けたら十分だ。

 

 

ここで1つかっこいいことでも言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

「おっし!私が完膚なきまでに叩きのめしてやりますかね!」

 

 

 

 

すると香奈が恐る恐る口を開く。

 

 

 

 

 

「比企谷くんを?」

 

「………ちげーよ」

 




いかがだったでしょうか?

なんだか辻褄とか合ってなかったらすみません(。-_-。)
熱があるせいってことで許してください(笑)

次回は誰目線がいいのだろうか……
なにか要望があればメッセージか活動報告のところにでもお書きください(。-_-。)

感想や評価、誤字脱字やご指摘などお待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女に潰される。

こんにちは大和 天です!

今回やっと三神先輩が奴を潰します!
いやー、長かったー(。-_-。)
やっと終わりましたよ!
まぁこれでいいのか?って終わり方ですが……

ところでみんな知ってる?これ体育祭編なんだよ?

そんな22話ですどうぞ!


 

 

 

 

ブクブクブク……

 

 

 

お風呂の湯船に鼻から上だけ出して浸かり今日溜まった怒りを空気と共に吐き出す。

 

 

比企谷くんになにかしたであろうあいつのこと。

香奈にその事を黙っていた比企谷くんのこと。

 

香奈が異常にモテること。

 

香奈の胸が大きいこと。

 

 

 

あらやだー!気づいたら妬みに変わってるじゃないですかー!

 

 

ブクブクをやめた私は湯船から出ると体を拭き、下着を着ける。

髪を乾かす為に洗面台の前に立ち、鏡にうつる自分を見つめる。

いやーん!私、美少女じゃーん!

なんでモテないんだろ……

いや、モテるんだよ?香奈が異常なだけでね?

 

 

 

そうして私はドライヤーからでる熱風を自分の髪にあてがいながら昨日のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの、先輩、鹿波先輩のことなんですけど……」

 

言いにくそうにしている目の前の後輩の女の子はポリポリと頬をかくとおそるおそる口を開く。

 

 

「鹿波先輩ってホントに付きまとわれてるんですか?」

 

「………へ?」

 

 

えーとぉー、なんだって?

月、的、割れてる?

月に矢でも射て割ったの?

 

後輩ちゃんは私が理解できていないまま話を続ける。

 

 

 

「えーと、結構噂になってるんですよ?先輩知らなかったんですか?」

 

「………知らない」

 

 

 

 

声がかすれる。

香奈が…付きまとわれてる?

誰に?

 

 

 

 

「誰につきまとわれてるかわかる?」

 

 

 

 

たぶん凄い顔をしていたのだろう。

後輩ちゃんの顔が少しビビっている。

 

 

 

「えーと、なんかそれがあんまりわかんないらしくて……」

 

 

まさか比企谷くんの存在感のなさがここで出るなんて……

するとすっかり存在を忘れていた後輩ちゃんの彼氏がおずおずと口を開く。

 

 

「あ、あのー、なんかその話うちの部活でも話題になったんすよ。そしたらうちの先輩がそいつに心当たりがあるからやめるように言っておくって言ってて。その先輩結構女癖わるいらしくて前に鹿波先輩に告ったらしいんですけど……だからもう大丈夫なんじゃないですかね?」

 

 

 

なにが大丈夫なのかは分からないが犯人は見当がついた。

それと共に怒りがこみ上げてくる。

私の友達を傷つけたのはそいつか。

 

犯人が分かればあとは簡単である。

要するにそいつをぶっ潰せばいいのだ。

 

 

 

「えーと、その先輩の名前教えてくれる?」

 

 

私がそいつの名前を聞き出すと、目の前の2人に自動販売機の順番が回ってきたのでそこで話は終わった。

 

 

 

 

私は飲み物を買うと以前1度だけ行ったことのある比企谷くんがいつもお昼を食べている場所に向かう。

角を曲がってみるとそこに人影はなかった。もちろんゼニガメもフシギダネも居ない。

 

 

私はそこに座り缶を開けると中の飲み物を怒りとともに飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

ベットに仰向けに寝ころがり天井を見上げる。

 

 

あいつを潰す作戦はあらかたできた。

ただ問題はどうやって比企谷くんと香奈を仲直りさせるかだ。

もう香奈が告っちゃえば?って感じなんだけど香奈はまだそんな事は考えていないらしい。

 

 

せめて文化祭前ならいちゃこらさせれたのになぁー、と思っていると机の上にある紙切れに目がとまる。

来週ある体育祭のプログラムだ。

 

体育祭で仲良くなれる競技とかねーよ、と思いながら上からプログラムを見ていく。

 

なになに〜、100m走、男女混合リレー、パン食い競争……

 

 

 

 

 

するとある項目に私の視線が釘付けになる。

 

 

これだ!これだよこれ!サンキュー神様!愛してる!

 

 

私はスマホをひらき友達にLINEして、ちょっとだけ事情を話し、お願いをした。

断られるだろうと思っていたがどうやら香奈に彼氏ができたら1番の強敵がいなくなるってことで快く引き受けてくれたけどね。

まぁ代わりに私が違う競技に出るはめになったわけなんですけどね?

 

 

 

あらかた下準備を済ませた私は電気を消し夢の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

授業終了のチャイムが鳴り今からお昼休みだ。

相変わらずあいつは私が席を離れると香奈に近づきちょっかいを出していた。

あんた他所のクラスの癖になんでいっつもうちのクラスに居るのよ。

 

 

 

 

 

そしていよいよ今日が殲滅戦の決行日である。

私は早々にお弁当を食べ終わると香奈に飲み物を買ってくると言って席を立つ。

するとやはりいつものようにあの男が私の座っていた席に座り香奈に話しかける。

 

 

 

 

 

 

それを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

私は財布忘れちゃった〜などと言って香奈のところに戻るとそこにのうのうと居座っている奴の肩に手を置き、香奈に聞こえるくらいの声で言葉を投げかける。

 

 

 

 

 

 

「比企谷くん殴ったおかげで香奈とおしゃべりできてよかったね」

 

 

 

 

香奈を見ると引きつったまま香奈の顔が硬直している。

しかし突然満面の笑みになった香奈が私を見上げる。

 

 

「えー?本当にー?この人私の後輩殴ったのー?」

 

 

 

ちょっと、まじ声でかすぎ!

教室超ざわついてるんですけど!

でも実際は作戦通りなので私も負けじと大きな声を出す。

 

 

 

「そーそー!なんか自分が香奈につきまとってるくせに香奈の後輩がつきまとってるって勘違いした挙句、殴り飛ばしたらしいよ〜」

 

 

 

いや、ちょっと待て、そんなことしてない、と慌てて否定しているがもう遅い。

 

高校生なんて噂とか超大好きだから一瞬で広まる。

もとから噂になっていた事が急展開をみせたら尚更だ。

現に教室はザワザワと騒がしくなっており私が肩に手を置いている男をみんなが蔑んだ様な目で見ている。

 

まぁ間も無く学校中に噂な広がるだろう。

噂が広まればもうこいつに居場所などない。

 

 

 

 

 

あとは香奈がトドメを刺すだけ。

 

 

香奈は立ち上がると優しく彼に言う。

 

 

「2度近づいて来ないでね。まじキモいから」

 

 

 

そう言うと香奈は教室を出て行った。

 

 

 

 

 

好きな人に振られた挙句、学校中の嫌われ者。

それくらい背負ってもらわなければ香奈を傷つけた罪は償えないと私は思っている。

 

 

目の前で泣きそうになっているやつを横目に教室を出る。

香奈はたぶんあそこだろう。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

角を曲がると香奈が座っていた。

私は自動販売機で買った黄色と黒の缶を香奈に渡すと横に座る。

 

 

「気済んだ?」

 

「………やりすぎだけどね」

 

 

そう言いながらも笑っている香奈はどこかスッキリしたように見える。

 

 

 

 

 

 

「でも、ありがと」

 

 

そう言った香奈の頬を涙が伝っていた。

あはは、最近泣いてばっかり、と言いながら嗚咽を漏らす香奈の頭を撫でてあげる。

 

 

 

 

 

しかし香奈にはどうしても伝えなければならないことがある。

 

 

落ち着いてきた香奈に私は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怒られたら香奈のせいにするから」

 

 

「………嘘でしょ?」

 

 

 




いかがだったでしょうか?

あんまり面白くなかったかもしれないです(。-_-。)
話噛み合ってなかったりしたらすみません(>_<)

次回はやっと体育祭で仲直り編?です!
やっと八幡が書けるよ!バンザーイ!

感想や評価、誤字脱字、ご指摘などお待ちしています!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女と仲直りする。

こんにちは大和 天です!

UA八幡……じゃなかった80000突破しました!
ありがとうございます!

今回はヒッキーと先輩の仲直り編です!
正直グダグダ感がやばいです(。-_-。)

冒頭はリクエストがあった小町が八幡を慰める話?です!
これは慰めなのだろうか?笑

グダグダ感はいずれ修正します!

では23話ですどうぞ!


 

 

 

 

風呂から上がった俺は名前も知らない3年生に殴られた傷を小町に見られないように頭からタオルをかぶり、自分の部屋へ向かう。

 

階段の前に差し掛かるとヒョッコリとアホ毛が飛び出している。

見てみると小町が体操座りの様に膝を抱えて階段の一番下の段に座っていた。

俺が近づいてくると同時に立ち上がり、俺に部屋に行かせないかのように進行方向に立ちはだかった。

 

 

「お兄ちゃん、コーヒーいれて」

 

 

そう言った小町の目はいつものふざけた様子は微塵もなく、ひしひしと俺の目を見つめていた。

たぶん小町には俺に何かあったのがわかっているのだろう。

まぁ、妹にお願いされると断れないのが千葉の兄妹なのであるが。

 

 

「……しゃーねぇな」

 

 

そう言うとキッチンに行きケルトに適当に水をぶっ込み、スイッチを入れる。

小町といえばソファーに座ってケータイをポチポチしている。

沸いたお湯をカップに注ぎ適当にミルクと砂糖を入れスプーンでかき混ぜる。

 

 

「ほれ」

 

「ありがと」

 

 

そう言って小町にカップを渡すとまるで包み込むように両手でカップを持ち、ふーふーとコーヒーを冷ましている。

俺も一口飲むと目の前にある机の上にカップを置き小町が口を開くのを待つ。

 

しばらくして小町がカップを机に置いたところでやっと小町が口を開いた。

 

 

「お兄ちゃん香奈先輩となにかあった?」

 

 

控えめな質問ではあるがきっとそれは小町なりに気を使ってのことなのだろう。

ここでなんもねぇ、などと言ってしまえば俺的には楽なのだがたぶん暫くの間小町に無視されるだろう。

そのことはいくらぼっちマスターの俺でも今日唯一の友達と言えるような存在を自らの手で無くしてきた俺にはあまりにも耐えられない。

 

「……いや、ちょっとな」

 

 

やっとの事で出た言葉がそれなのか、と少し自分に悲しくなるが仕方がない。

様子を見ながらこれ以上待っても言葉が出てこないと思ったのか小町がまたもや俺に問いかける。

 

 

「それはお兄ちゃんの頬の傷のことと関係あるの?」

 

 

やっぱり気付いていたか。

昨日は出来るだけ小町に見られないようにしてたんだがな。

 

そうして俺は昨日と今日あったことを小町に話した。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「……そういう訳だ」

あらかた説明し終えた俺はおそるおそる小町の方を見る。

 

小町はバカにする訳でもなく、怒っている様子もなく、ただただ悲しそうな顔をしていた。

 

「バカだねぇお兄ちゃんは」

 

 

そう言った小町は俺の手の上に手を重ねてくる。

 

キュッと弱々しく力の入った小町の手はなぜだか俺の心を穏やかにしてくれた。

 

 

 

「お兄ちゃん。お兄ちゃんが傷つけられたのは事実だし小町もお兄ちゃんを傷つけた人は許せないけど理由も説明しないで香奈先輩にそんなこと言ったら香奈先輩も傷つくんだよ?確かにお兄ちゃんは目も腐ってるし友達居ないしで散々なごみいちゃんだけどそんなお兄ちゃんを大切に思ってくれている人もいるんだよ?だから今すぐとは言わないけどちゃんと香奈先輩とは仲直りしてね」

 

 

そう言った小町は俺との間を詰めると俺の左肩に頭を乗せる。

 

 

俺は先輩への周りからの目や噂など、その事ばかり考え、先輩自身の考えや気持ちなど微塵も考えてはいなかった。勝手に俺は邪魔だと考え、俺が先輩から離れれば全てが丸く収まると思っていた。

 

 

しかし小町はそんな事はないと俺に言ってくれた。

こんな俺でも大切に思ってくれる人がいたということを教えてくれたのだ。

さすが俺の妹なだけはある。まじ小町最高!

なんか少しディスられた気もするが。

 

 

 

 

 

「あ、ありがとうな……」

 

 

そう言いながらオートで発動したお兄ちゃんスキルで頭を撫でると小町はううん、と首を振る。

 

 

 

 

「お兄ちゃんは小町のたった1人の大好きなお兄ちゃんだからね。あ、今の小町的にポイント高い!」

 

「あぁ、最後のがなかったらな」

 

 

だいたいいつからポイント制になったの?

 

 

 

 

うるさいよごみいちゃん、と罵られ心に軽く致命傷を負っているとでも、と小町がつづける。

 

 

 

「でも、小町ポイントを貯めたご褒美があってもいいよね〜!」

 

 

 

そう言うと小町は俺の左頬に唇を押し付ける。

俺があまりの衝撃に呆然としていると小町は少しだけ照れ臭そうに言う。

 

 

 

 

「これで傷も治ったでしょ?」

 

 

小悪魔のように笑う小町はあ、いまの小町的にポイント高い!と照れ隠しをしていた。

 

 

 

 

「あぁ、もう元気80000倍ハチパンマンだぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

うげぇとした顔で小町が言った。

 

 

 

「それはないよお兄ちゃん……」

 

 

「………ごめんね小町ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結局先輩に謝ることができないままズルズルと日にちだけが過ぎて行き体育祭になってしまった。

俺は赤組で先輩は白組なので応援席も違うため先輩と出会う確率も少ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた時期が僕にもありました。

 

 

 

 

 

「お!比企谷くんじゃん!久しぶり〜」

 

 

「あ、えっと、お久しぶりです。えーと、にこにー先輩でしたっけ?」

 

 

「いやいや、三神だから」

 

 

 

そう言いながらもポーズはとっているのはなんでなんですかね?

先輩はちょうど空いている俺の横の席に座ると足を組み肘を背もたれに乗せはぁ〜、とため息をつく。

なぜかは分からないが三神先輩の残念さを垣間見た気がした。

 

三神先輩はねぇ比企谷くん、と話を続ける。

 

 

「香奈と仲直りしたい?」

 

 

正直なところ適当な話をされると思っていたので急にこのようなことを言われきょどっていると今やっている競技をボーッと見ながら三神先輩はポツリと呟いた。

 

 

「香奈はしたいらしいよ」

 

 

心のどこかで罪悪感を感じてしまっていた俺にはその言葉は救いとも言える一言だった。

そんな感動にも似た気持ちに打ちひしがれていると先輩がニヤニヤと俺を見てくる。

 

 

「これで比企谷くんに貸しが2つもできたね」

 

「え、なんで2つもあるんですか?大体1つある事にも疑問なんですが」

 

「えー、だって比企谷くん殴った奴を粉にして〜、今日比企谷くんと香奈を仲直りさせてあげるから2つでしょ?」

 

 

あの先輩粉になったの?

何この人超怖いんですけど……

そんな恐怖に震えていると先輩が立ち上がりポン、と俺の方に手を置き、口を耳元まで持ってくる。

ちょっと三神先輩?髪めっちゃいい匂いするじゃないですか!

そんなドギマギしている俺に先輩がさらりと言う。

 

 

 

「頑張ってね」

 

 

そう言い残すとばいばーいと俺の元を離れていった。

 

 

 

 

ところで俺何したらいいの?

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

三神先輩の言った意味が解らないままボケーっと競技を見ていると競技の説明が流れ生徒が入場門から入ってくる。

 

どうやら次の競技は借り物競走らしい。

借り物競走とは走って行き置いてある紙に書いてある物を持ってきてゴールまで走るというまぁ誰もが知っているであろう競技だ。

しかしみんなの注目はその後のコスプレースとかいう訳の分からない競技に向けられている。

どうやら美人な先輩が出るらしく男子がどんなコスプレで走るかと無駄に熱い議論を交わしている。

 

 

そんなアホどもを横目で見ながら借り物競走を見ているがはっきり言ってつまらない。

メガネをかけた人やサッカー部の人など在り来たりのものばかりだ。

まぁ俺が考えてもそんなもんだろうが。

 

パン、と音がなり最後の走者がスタートする。

走ってきて置いてある紙を見た生徒達はみんな顔を赤くする。

え?なんて書いてあったの?黒いパンツの女の子とか書いてあったのん?

 

 

すると1人の女生徒がこちらに走ってくる。

まぁこちらというのは間違いだろう。

あくまで俺の近くの人めがけてといった方が正しいかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた時期が僕にもありました。

 

 

 

走ってきた女子は俺の手を掴むと行くよ!と俺を席から引っ張り上げる。

誰この人?と考えると同時にこんなことするのは1人しかいないと思ってしまう。

 

腕を掴まれたまま一緒にゴールまで走っているのだが周りからの視線がやばい。

ていうかこの人足速すぎ!こけちゃう!こけちゃうから!

 

 

そんなことを考えながら必死に走っているとどうやら1位でゴールしたらしく俺を連れて走ってきた人は観客に手を挙げて歓声に応えている。

 

 

「なにやってるんですか、先輩。大体なんで俺なんですか」

 

そう言うと先輩は俺の方に向き直り頬をぽりぽりとかく。

 

 

 

「いやぁ、紙にゾンビって書いてあったからもうこれは比企谷くんしかないと思ってねぇ〜」

 

「うそつけ!流石にそれはないでしょ!いいからその紙見せてください」

 

 

 

そう言って先輩の手から紙を取り上げようとするが先輩の防御が固すぎて全然取り上げれる気がしない。

 

 

だが先輩は大事なことを忘れている。

俺がなぜメガネをかけている人やサッカー部の人などの紙に書いてある答えが分かったと思っている。

それは競技が終われば放送でみんなに知らされるからである。

 

案の定放送が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまの借り物の答えは『大切な人』でした」

 

 

 

 

目の前に顔を真っ赤にしている先輩がいた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「あんなこと言ってすみませんでした」

 

退場した俺は先輩に謝ると意外な答えが帰ってきた。

 

 

「じゃあまた一緒にお弁当食べようね」

 

 

ダメかな?と上目遣いで聞かれたら断れる訳ないじゃないですかー?

小町にもなにかお礼をしないといけないなと考えていると客席から歓声があがる。

 

 

振り向くとそこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

ナース服で疾走する三神先輩の姿があった。

 

 

 

忘れようと心に誓った。




いかがだったでしょうか?

明日から学校始まるよぉ(。-_-。)
リアルヒッキーになりたいよぉ〜と言いつつも受験生なので学校行きます!
なので更新頻度が遅くなったりすると思います
ごめんなさい(>_<)

でも完結まで書き続けますので応援してくだされば嬉しいです(*^^*)

こんな話が読んでみたいなどございましたら活動報告などに書いていただけたら嬉しいです!
書けるかわかりませんが(技術的に)

ご感想や評価、誤字脱字やご指摘などお待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女の普段の一コマ。

こんにちは大和 天です!

更新遅くなりました!すみません!
違うんだ!社会が悪いんだ!笑

お気に入り800突破しました!
ありがとうございます!

それでは24話ですどうぞ!




 

 

 

ガコンッ

 

 

自動販売機の取り出し口から缶を取り出すとそのままいつものようにベストプレイスに足を向ける。

 

いや、いつものようにというと少し語弊がある。

もうあそこへ行くのは1週間ぶりくらいになるだろうか?

 

 

角を曲がるとそこには1人の生徒が先に座っている。

俺に気付いたその人は顔を綻ばせもう何度聴いたかもわからない挨拶をする。

 

 

 

「やぁ、比企谷くん!」

 

「うす」

 

 

いつからだろう。先輩と過ごす時間が楽しくなったのは。

まさか俺は先輩のことが……

 

「比企谷くん」

 

 

「なんですか?」

 

 

今日はなんだか知らないが気分がいい。

少しだけテンションを上げて答え、先輩を見てみると先輩はなんとも形容し難い顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷くんの顔気持ち悪いよ?どしたの?」

 

 

「………デフォルトですよ」

 

 

 

先輩っ! 俺のシリアスな雰囲気を返してっ!

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

ごめんってばぁ〜!と謝ってくる先輩を軽くあしらいつつ、パンを食べていると先輩は諦めたのか自分のお弁当を広げる。

横目で見るといつか作ってもらったようななんともいい意味で平凡なお弁当である。

いや、いいんだよ?女の子に作ってもらったって時点で八幡プラス8万点あげちゃう!

 

先輩は鼻唄を歌いながらおいし〜!と、自分の作ったお弁当を自画自賛しながら食べている。

 

 

 

仲直りできたのは先輩に聞く限り三神先輩の尽力あってのものらしい。

俺を殴った先輩を俺レベルのボッチにするとかどんだけ怖いんだよあの人。

それを聞いた時思わず二度と逆らわないと心に決めてしまった。

 

 

 

しかし仲直りできたと言っても俺が少なからず先輩を傷つけてしまったのは事実だ。

小町曰く、そういう時は愛してるでいいらしい。

言えないけどね。

 

しかしまぁ、こんな俺でもご飯に誘うくらいは許されるだろう。

まぁ、断られるかもしれないのだが。

 

 

 

 

「先輩、今日の放課後空いてますか?もしよかったらどこか行きませんか?」

 

 

っふぅ〜、噛まずに言えたぜ。

お風呂で練習してよかったー!

 

 

そんなことを考えながら先輩を見てみると真っ赤な顔をして絶句していた。

やだー、そんなに怒らなくてもいいじゃないですかー?

そんな挙動不振な先輩がおそるおそる口を開く。

 

 

 

「それって、デート?」

 

「いや、そういう訳じゃ…」

 

「デートなんだ!やったー!比企谷くんも隅に置けないねぇ!」

 

 

 

話きけよおい。

まぁ、誘えればデートでもなんでもいいのだ。

ていうかやったー!とか言われちゃったら俺と遊ぶのが楽しいと勘違いした挙句ご飯食べ終わった後に家まで送る途中に告白して振られるまである。

いや、振られちゃうのかよ。

 

 

 

お弁当を食べ終わった先輩はじゃ、また後でね〜!と言いながら両手をぶんぶんと振って帰って行った。

 

元気よすぎだろあの人。

あんな人に振り回されたら八幡死んじゃう!

いや、小町を残しては死ねないな。

 

 

 

さて、俺も教室にかえるか、と腰を上げようと手を地面につくと何かに触れる。

 

 

 

 

 

「はぁ……まったく困ったもんだ」

 

少し懐かしく思い笑みがこぼれる。

 

 

俺は先輩のお弁当箱を拾い上げた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

先輩にメールで送った待ち合わせ場所に来てもう30分たつ。

おかしいな、学校終わる時間は一緒の筈なのに…

 

とりあえずコンビニでコーヒーを買い、ぼけーっとしていると先輩がトテトテも小走りで走ってきた。

 

 

 

「比企谷くんごめん!遅くなっちゃった」

 

「いやいや、別に大丈夫ですけどどうかしたんですか?」

 

 

 

すると先輩は少し俯きちょっとね、と言葉を濁す。

そんな反応をされると気になってしまう。

どうしたんですか?と聞いてみると先輩はあのね、と話し出した。

 

 

 

 

「お弁当箱誰かに取られちゃったみたいなの。あれ気に入ってたのになぁ……」

 

 

 

 

なんだそんなことかと思い思わず鼻で笑ってしまうと先輩はむっとした表情で俺を見る。

 

 

 

 

「ちょと比企谷くん?なんで笑ってるのさ!」

 

「いや、すみません。俺、お弁当箱拾ったものでのして」

 

 

 

 

そう言って鞄から先輩が忘れていったお弁当箱を取り出し渡す。

 

 

 

 

「あぁー!なんで持ってるの!」

 

「いや、普通に先輩が忘れていったんじゃないですか」

 

 

 

 

よかったー、と言いながらニコニコしている先輩を横目にコーヒーを飲んでいるとはっ、と先輩がこっちを見る。

 

 

えーと、なんで頬赤らめてるのん?

 

 

 

 

「お箸とか舐めてないよね?」

 

コーヒーが宙を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

他の通行人から白い目で見られながら爆笑する先輩を引きずりショッピングモールの中に入る。

先輩、死んじゃうよー、じゃないですから。はやく笑うのやめてください。

 

 

 

ひぃひぃ言いながらなんとか笑終わった先輩は少しだけげんなりしていたが、どこに行きたいか聞くとどうやら行きたいお店があるらしく先輩は俺の袖を持ってズンズン引っ張っていく。

 

 

「とうちゃ〜く!」

 

 

 

 

着いたのはちょっとした雑貨屋さんだった。

中に入ってみると様々な物が置いてあり見ているだけでも楽しい。

先輩はクネクネと店の中を突き進みある場所で立ち止まる。

 

そこには壁一面に様々なキーホルダーなどがかけてありキラキラと鈍く輝いていた。

先輩はその中のひと組みを手に取ると片方を俺に手渡す。

 

 

「あのね、お揃いのが買いたいんだけど……ダメかな?」

 

 

そんな上目遣いで見つめられたら断れるわけないじゃないですかー?

ていうかそんなにくっつかないでっ!

何とは言いませんがその柔らかいものが、その、ね?

そういうスキンシップが多くの男子を惑わせ死へと追いやっているということをもう少し自覚してほしいですね!

 

 

俺がいいですよ、と言うとよかったと言いながら顔を俯けたのはなんでなんですかね鹿波さん?

ほんとは嫌だったのん?

顔も少し赤いですよ?

 

 

 

会計を済ませると先輩は自分のスマホにさっき買ったキーホルダーを付ける。

俺はどこにつけようか迷った挙句鞄につけることにした。

 

 

キーホルダーについている金属で出来た名前の知らない花を指でなぞってみる。

 

 

「先輩、これなんていう花なんですか?」

 

 

俺がキーホルダーから顔を上げると少しだけ頬を染めた先輩が俺をまっすぐに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アザレア、だよ」




いかがだったでしょうか?

違うんだ!書き終わったこんなことになってたんだ!
最初はこんなはずじゃなかったんだ!笑

ちょっと頭が三神先輩モードになってるせいか八幡っぽさが無くなってました(いつも)

最近いろはすとか書きたいなー、と思うのですが二本同時は無理ですね笑
でも1番かきたいのは戸部というね(笑)
まじっべーわー!

感想や評価、誤字脱字やご指摘などお待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)

追記

クリスマスまでの間にもう1話ほど書きたいのですがなかなかアイディアが出てきません(。-_-。)
どなたかこんなの読みたいなー、などございましたら活動報告等に書いていただけると嬉しいです!
お願いします(>_<)


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彼と彼女は仮装する。 前編

こんにちは大和 天です!

UA90000突破しました!ありがとうございます!

今回は前回のあとがきで募集していたネタを書いてみました!
八幡っぽさ皆無になりましたごめんなさい(。-_-。)

ネタ使われてないなー、と思ったらたぶん後編で使います!たぶんね!

では25話ですどうぞ!


 

 

 

 

 

「おにーちゃんっ!」

 

「ゴフッ!」

 

 

 

ソファにうつぶせに寝転がりながら小説を読んでいた俺の背中に衝撃が走る。

振り返ってみるとマイシスター小町が俺の上にのしかかっていた。

俺の背中に馬乗りになった小町はねぇ〜ねぇ〜、と俺の肩を揺らしながら満面の笑みを俺に向ける。

 

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。明日何の日か知ってる?」

 

 

 

小町ちゃんったらー。何言ってるのかしら?

さすがの俺でもそれくらい余裕で知ってるぞ?

小町の下から逃れた俺は小町の横に座りなおすと自信満々に答える。

 

 

 

「おう、知ってるぞ。明日はプリキュアの日だ」

 

 

 

……え?なに?何か間違ったこと言った?なんでそんなゴミを見るような目で俺を見てるのん?

 

すると小町ははぁ〜、これだからゴミいちゃんは、とため息をつく。

 

 

 

「だ〜か〜ら!明日はハロウィンでしょ?パーティやろうよパーティ!」

 

 

 

そんなキラキラした笑顔で言われたらお兄ちゃん断れないからっ!

ていうか2人でパーティやるの?

 

 

 

「やるのはいいとしても2人でやるのか?」

 

「ううん!小町の友達呼んでくる!」

 

 

 

やだー、それお兄ちゃんいらないじゃないですかー?

ていうかむしろ部屋から出るなと言われるまである。

 

 

 

「小町ちゃん?それお兄ちゃんいらないんじゃないかしら?」

 

 

 

すると小町ははぁ?と、なに言ってんのこいつみたいな顔で俺を見る。

やめてっ!妹にまでそんな顔で見られたらお兄ちゃんもうどこにも居場所ないからっ!

 

 

 

「なーに言ってるのお兄ちゃん。お兄ちゃんが準備するんでしょ!」

 

「あのな、小町。お兄ちゃんは土曜日と日曜日は完全オフなんだよ。わかるか?」

 

 

すると小町はオヨヨ、と手を口に当て誰が見ても一発でわかる泣き真似をする。

大体、オヨヨっていつの時代だよ。小野小町なの?

そろそろ世界三大美女に比企谷小町を入れていいまである。

 

 

 

「お兄ちゃんは小町の事なんてなんとも思ってないんだね……小町はこんなにお兄ちゃんのこと好きなのに。あ、今の小町的にポイント高い!」

 

「あぁ、最後のが無けりゃな」

 

 

うぇーん、と泣き真似をする小町の頭をポンポンと撫でてやる。

 

 

 

「わかったよ、俺のこと大好きな小町のためだもんな。やってやるよ。あ、今の八幡的にポイント高い」

 

 

妹の頼みとあらばなんでもやる。

それが千葉の兄妹というものなのである。

 

 

 

 

 

「うえぇ、それは無いよお兄ちゃん」

「小町ちゃん?さっきと言ってること違うくない?」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

結局ほぼ全ての準備を俺がさせられた。

まぁプリキュア見終わった後でだけどね?

大体なんで俺の小遣いでコスプレグッズを買ってこにゃならんのだ。

その友達とやらに持って来させろ。

 

そんなことを言いながらも部屋を飾り付け、お菓子を準備している楽しそうな小町の姿を見ていると兄としては嬉しいものでやってよかったとも思える。

 

 

あらかた準備が出来たのでソファに横たわりぐで〜っとしていると玄関の方からお兄ちゃ〜ん、と聞こえてくる。

 

 

 

「小町友達呼んでくるから待っててね〜!」

 

 

 

適当に返事を返しひたすらグダグダとしているとピンポーンとチャイムが鳴る。

小町が居ないので必然的に俺が出るしかなく、のそのそとソファから起き上がると玄関に向かう。

きっと小町の友達でも来たのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた時期が僕にもありました。

 

 

 

「やぁ、比企谷くん!」

 

 

ほーん?なんで先輩がいるのん?

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

もう何分たっただろうか。

お互い一言もしゃべらなくなってずいぶんたつ。

最初は、わー!比企谷くんの家だー!などとはしゃいでいた先輩なのだが小町が居ないと分かると急に顔を赤くして黙りこくってしまった。

しかもそれにトドメを刺すがごとく小町から『ごっめーん、ちょっと道に迷って遅くなるからお留守番よろしく!てへぺろっ☆』という趣旨のメールが来ていっそう重い空気になってしまった。

あっれー?いつも昼休みに2人でも先輩平気で俺のこと罵ってくるのになー。あれ、目から汗が……

 

 

さっきから先輩は顔を赤くしながら俺の方をチラチラ見てくる。

小町がいないからってそんなに怒らなくてもいいじゃないですかー?

 

 

 

しかしさすがの俺でもこの空気は耐えられない。

とりあえずお客さんなのだからコーヒーでも出すか、と先輩に声をかける。

 

 

 

「えっと、先輩?」

 

「ひゃわい?」

 

 

女子に話しかけられてテンパった時の俺かよ、と言っても過言ではない様な返事を顔を真っ赤にしてする先輩を見ていると笑いがこみ上げてくる。

思わず堪え切れなくなりぷっ、と吹き出してしまうと先輩が顔を真っ赤にしたまま睨みつけてくる。

 

 

 

 

「ちょっと比企谷くん!なに笑ってるの!」

 

「いや、すみません」

 

「すみませんで済んだら警察はいらないんだよ!ほらチョップさせなさいチョップ!」

 

「なんでチョップなんですか!おかしいですよね?」

 

 

 

そんなことを言いながら先輩からのチョップ攻撃を必死に仰け反りながらかわす。

とりゃあ!などと間の抜けた声を出しながら俺の頭を先輩の手刀が追いかけてくる。

 

 

 

すると急にガシッと右肩を掴まれ、フハハ!もらったぁー!と先輩が全体重を俺にかけて渾身の一撃を放とうと手を振り上げた。

とっさにやばいと思い左手を頭の前に持ち上げて先輩の攻撃を防ごうとする。

 

 

 

それが間違いだった。

 

 

 

 

 

先輩の体重がかかっている俺の体を俺の右腕は支えることができなくなり呆気なく崩れ落ちる。

後頭部を思いっきり床に打ち付けゴフッという呻き声をあげると同時にきゃっ、と先輩の悲鳴が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「いってぇ……」

 

思いっきり後頭部を打ち付けた俺ははっと上を見上げる。

すると目の前には顔を朱に染めた先輩の顔があった。

急激に顔が火照るのが自分でもわかる。

 

 

 

ていうか先輩めちゃくちゃかわいい……

唇とかプルプルじゃないですか!

しかもさっきからなんだか柔らかいものが当たってるんですけど!

じゃなくてぇー!やばいやばいやばい!どうしたらいいんだこの状況!

ていうかちょっとずつ先輩の顔が近づいてきてませんかねこれ?

理性が!俺の理性がもう保ちませんよ!

 

 

 

ぐるぐると意味のわからないことを考えている間にも先輩の顔が近づいてくる。

 

 

 

「ひうっ」

 

 

 

思わず変な声が出てしまう。

あぁ、もう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー!比企谷くん!パーティしようぜ!パー……ティ………」

 

 

バタンと扉の閉じる音と共に先輩は絶叫した。




違うんだ聞いてくれ!
気付いたらこうなってたんだ!

とまぁ言い訳はこれくらいにしておきます笑
どんどん八幡が書けなくなっています
だれか助けてっ!

え?最後のはだれかって?
あの人しかいないですよね(笑)

感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!
読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女は仮装する。 後編

こんにちは大和 天です!

UA100000突破しましたぁぁぁああ!ドンドンパフパフ!
べ、別に投稿が遅れたのは突破するの待ってたとかじゃないんだからねっ!

いやはや、予想以上に話が思いつかなくて死にかけてました(笑)
そしたらいきなりアイディアが降ってきたんでたすかったんですけどね!

日間ランキング載ってました!ありがとうございます!

そんな26話ですどうぞ!


 

 

 

 

「だ〜か〜ら〜!まだしてないってば!」

 

「ほぉ〜、『まだ』ねぇ〜」

 

「っ……うるさいなぁ!」

 

 

 

かれこれこんなやり取りが始まってもう10分程経つ。

三神先輩が部屋のドアを開けた時にたまたま先輩が俺の上にのしかかっていて、たまたま先輩の顔が俺の顔に近かった瞬間をたまたま三神先輩が発見したというなんとも偶然の出来事だったわけだが相手が悪かった。

だってほら、俺のことを殴った人を俺レベルのぼっちに仕立て上げたくらいだからね?

まじ怖いなこの人……

ていうか先輩?真っ赤な顔してコッチをチラチラ見てどうしたのん?

 

 

するとさっきまでニヤニヤしまくりだった三神先輩がふぅ、とため息をはく。

 

 

 

「仕方ないな、今日のところはこれで許してやろう。で、比企谷くん。今日は何するの?」

 

 

 

振り返った三神先輩が俺に尋ねる。

 

 

 

「えーと、なんか小町が言うにはコスプレパーティ?みたいなのをやりたいらしいですよ?因みに衣装は揃ってます」

 

 

 

俺のお金でね!と言いたいところだがそこはグッと我慢する。

しかしコスプレと聞いた瞬間三神先輩の顔が一瞬引きつったのは気のせいだろうか?

もしかしたらなにか嫌な思い出でもあるのかもしれない。

コスプレしたことない俺でさえもなんか嫌な記憶があるくらいだからな。思い出せないが。

 

 

 

それはそうと人の家のリビングの端っこで体育座りをしている先輩は大丈夫なんですかね?

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「でもまさか小町の友達が先輩達だったとはな」

 

 

誰もいないリビングでポツリと呟く。

ていうか小町はいつの間に三神先輩と知り合ったんだよ。

 

 

小町達3人は小町の部屋でお着替えタイムだ。

リビングに残された俺はただひたすら机の上にあるお菓子を貪り尽くすというなんとも小町に怒られそうなことをしている。

 

しかしあれだ。小町の部屋からキャッキャウフフと女の子の声が聞こえてくるのはちょっとヤバい。

べ、別に変な事なんてしないんだからねっ!

 

 

もはや何回したかわからない脳内ツンデレをしているうちにパタン、と音がしたかと思うとトテトテと足音がし、リビングのドアが開く。

 

 

 

「どぉー?お兄ちゃん?」

 

 

 

魔女のコスプレをした小町が、ほら!ほら!ほら!と様々なポーズを見せてくる。

 

 

 

「おう、世界一かわいいぞー」

 

「うわー、テキトーだなーこの人」

 

 

 

そんなジト目で睨みつけられると何かに目覚めそうで怖い。

いや、目覚めないから。

 

「じゃ、香奈先輩と美香先輩呼んでくるねー!」

 

 

 

そう言うと小町はトテトテと階段を上っていく。

 

小町の指示とはいえ自分で買ってきたのでどんな衣装なのかは分かっている。

わかっているのだが値段とクオリティが無駄に高いやつを買わされたのであの2人が着るとどうなるかはイマイチ想像できない。

顔もスタイルも無駄にいいからなあの人達……

 

 

ドタドタと3人分の足音が聞こえてきて、バン!と勢いよくリビングの扉が開いた。

 

 

 

「じゃじゃーん!ほらほら!香奈先輩どうぞ!」

 

 

 

小町のはそう言うと扉の陰に隠れていた先輩を引っ張り出す。

 

はわわわ、と顔を真っ赤にしてうつむいていた先輩がちろっと俺の方をみる。

 

 

 

「ど、どうかな……?」

 

 

 

悪魔の格好をした先輩がおずおずと俺に尋ねる。

お、おかしいな……

悪魔なのに天使に見えるのはきのせいだろうか?

だいたいその胸がけしからんですね!お父さんそんな子に育てた覚えはないぞ!

 

乳トン先生の万乳引力に必死に逆らいながらやっとの思いで言葉が出る。

 

 

 

「わ、悪くはないんじゃないですかね?」

 

「あ、ありがと……」

 

 

 

頬を朱に染めながら先輩はぽそりと言う。

いかん、俺もなんだか恥ずかしくなってきた。

 

すると先輩が照れ隠しなのか口を開く。

 

 

 

「比企谷くんも似合ってるよ!ゾンビのコスプレ!」

 

「……デフォですよ」

 

 

 

全く失礼な人だ。ちょっと照れてると思ったらこの仕打ちである。

にしても先輩の格好は少し胸がきつそうである。

ところでもう1人の胸が涼しげな先輩はどうしたんですかね?

 

 

 

「えーと、ところで三神先輩はどうしてんですか?」

 

「……ぷっ」

 

 

 

えーと、なんで笑ったんですかね先輩?

意味がイマイチ理解できないので小町に説明を求めるように目線を向ける。

小町は何事もなかったかのようにおれを無視して扉の方に歩いていく。

 

小町ちゃん?お兄ちゃん泣いちゃうよ?

そんなおれをよそに小町が笑顔100%で俺たちの方に向き直る。

 

 

「次は美香先輩でーす!どーぞー!」

 

 

 

そういって小町に引っ張り出された三神先輩はなぜだか膝上までしかない白い着物を着て包丁を持っていた。

ハロウィンなのに日本の妖怪のような格好をさせられた三神先輩は少し恥ずかしそうにしている。

にしてもこの人脚長いな。まじ美脚。

ていうかこれのどこに笑う要素があったのだろうか?

 

 

 

「ど、どうかな比企谷くん?」

 

 

 

おどおどと実に三神先輩らしくない様子で尋ねてくるのでなぜだか俺も少し恥ずかしくなる。

 

 

 

「えーと、脚長いですね」

 

「え、あ、ありがと…」

 

 

 

悪いもの食ったんじゃないかって思ってしまうくらい三神先輩が女の子っぽくてドギマギしてしまう。

こ、これがギャップ萌えってやつか!

別に萌えないけど。萌えないのかよ。だれか萌えてあげてっ!

 

 

するとまた先輩がぷっ、と吹き出した。

 

 

 

「なによ香奈さっきから!なにがおかしいのよ」

 

 

 

ふてくされ気味の三神先輩に先輩が実にいい笑顔で言う。

 

 

 

 

 

「美香はまな板標準装備だからいつでもその包丁使えるね」

 

「……ぶふっ」

 

「何笑ってるのよ!」

 

 

 

バチコーンと思いっきり叩かれた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

部屋の隅で体操座りをする三神先輩をなんとかなだめて適当にパーティをした後、着替えて解散となった。

 

 

 

「今日はありがとね!楽しかったよ!」

 

「いえいえー!小町も楽しかったです!」

 

 

 

そんな女子のお世辞大会を玄関で繰り広げだ後先輩が俺の方来るとちょいちょいと手招きをする。

なんですか?、と耳を先輩の方に向けると先輩は俺の肩に手を乗せて耳元に口を近づける。

近づいたせいでシャンプーの匂いが俺の鼻にまで漂ってくる。

 

 

 

「また明日ね」

 

 

 

そう言うとバイバーイと手を振って三神先輩と帰って行った。

三神先輩!そんな怖い顔でおれを睨まないで!

名前も知らない3年生みたいに俺をボッチにするつもりですか!

あ、もうボッチでしたっ☆

 

 

 

さすがに明日から11月なだけはあり夜になれば冷え込んでくる。

小町と一緒に寒い寒いと言いながら家の中に入り、暖房の効いたリビングに行く。

 

 

 

「なぁ小町、今日楽しかったか?」

 

「うん!楽しかったよ!お兄ちゃんは?」

 

「まぁ、ぼちぼちだな」

 

 

 

そう言うとソファにうつぶせにダイブする。

 

疲れたなぁ、マジで。

もう当分どころか一生働かないと心にしっかり消えないように刻み込んでいると不意にドスンと体に衝撃が走る。

 

振り返ってみると昨日のように小町が俺の上に乗っていた。

ふふーん♪と鼻歌交じりで小町はおれの上に仰向けに寝そべり、背中を合わせた状態になる。

 

 

 

「……ありがとね、お兄ちゃん」

 

 

 

不意に聞こえたその言葉に驚きを覚えつつもおう、と返事をする。

 

 

 

まぁ、あれだ。

 

小町のためならたまに働くのも悪くはない。

 




いかがだったでしょうか?

最近少しずつ文章を書いたりすることに慣れてきたんですけどそうすると表現や描写がまだまだ甘いなぁと実感します。上手くなれるように頑張ります!

最近俺ガイルss書いてる作者さん同士で一緒のテーマで書いてみるー、とかオリキャラ祭りしたら楽しそうだなーとか思ってます(笑)

あと、もしよかったら由比ヶ浜の短編を書いてたりするのでもし良ければ読んでみてくだされば嬉しいです(宣伝)

感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!
読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女のサンタクロース。 前編

こんにちは大和 天です!

シルバーウィークの3日目ですが皆さんいかがお過ごしでしょうか?自分は今日がシルバーウィーク1日目でございます。投稿が遅れたのはそのせいなんだ!許してください!日曜日に学校があるのがいけないんだ!笑

お気に入り900ありがとうございます!

今回はクリスマス編前編になります!

では27話ですどうぞ!




 

 

 

「クシュン」

 

 

 

隣に座りながら食後のコーヒーを飲んでいる女子生徒がかわいいくしゃみをする。

女子のくしゃみってなんであんなにかわいいんですかね?

俺とかがやっても「ハックション!」ってしかならないんだけど……

 

 

うぅ…と言いながら鼻をすすり、コーヒーの入った缶をカイロ代わりに両手であったかそうに持っているのを見ているとこちらを向いたその人と目が合う。

 

 

 

「……寒い」

 

「………今更何を言ってるんですか」

 

 

 

もう12月半ばである今、真冬のど真ん中と言ってもいいほど寒い。

さらに我が総武高校は臨海部に位置しているため海からの風が冷たくハッキリ言ってめちゃくちゃ寒い。

 

そんな中、昼食を外で食べているのだから寒いのはもちろんのこと、くしゃみ1つしてもおかしくはないのである。

 

受験生である彼女に寒い中で俺と一緒に外で昼食を食べて風邪を引かれたりしたら嫌なので前に一度、一緒に昼食を食べるのをやめませんか?と提案したところ先輩が涙目になったので急いで取り消した。

……俺なにも悪いこと言ってないよね?

 

 

ちょんちょんと肩をつつかれ横を見てみると少し離れた場所に居た先輩が今にもくっつきそうな場所に接近していた。

そしていきなり俺の手を引っ掴むと自分の頬に当てる。

 

 

 

「ふぅ〜、あったかい」

 

 

 

すりすりと俺の手を頬に擦り付ける。

なぜかはわからないが小町発案のハロウィンパーティをしてからやけに先輩の距離が近いように思う。

物理的にも精神的にも。

訓練されたぼっちマスターの俺だからなんとか勘違いせずにやっていけているが他の人だったら勘違いしちゃうからそういうのやめましょうね鹿波さん?

 

とは言うものの流石の俺でもこれはすこし恥ずかしい。

緊張のあまり冬なのに手汗をかいて先輩の頬をベタベタにしかねない。

なんだか自分で言ってて悲しくなってきた……

 

 

 

「えっと、恥ずかしいんでやめてくれませんかね?」

 

 

 

手汗かいちゃうからっ!というセリフは心の中だけにしておく。

だてにヒキガエルくんとは呼ばれてないからな。

むしろその後あだ名がカエルだけになったのは忘れてないぞクラスの奴らめ。絶対に忘れない。

 

しかしそんな抵抗も先輩の前では無意味なようで、だれも見てないから大丈夫だよ〜、と一蹴される。

 

 

構わずすりすりと頬に俺の手を擦り付ける先輩から無理やりてを引き抜く。

 

 

 

「あーあ、あったかかったのに」

 

 

 

べ、別にそんなこと言われても動揺したりしないんだからねっ!

ハチマンウソツカナイ。

 

 

 

「恥ずかしいんでやめてくださいよ。ていうか先輩勉強大丈夫なんですか?」

 

 

 

うっ、と唸る先輩を横目にMAXコーヒーの缶を傾ける。

 

正直こんなに俺に優しくしてくれる先輩には是非大学に受かって欲しい。

かといって俺ができることなんてたいしてないところが辛いところなのだが。

 

「や、やってるもん」

 

 

 

不意に声がしたかと思うと少し涙目になった先輩が俺の肩を掴んでいた。

 

 

 

「……なんかすみません。俺にも出来ることがあるなら手伝いますから」

 

「うぅ……すまないねぇ、比企谷くん」

 

 

 

先輩はオヨヨ、と泣き真似をしながら口に手を当てている。

ていうかいつの時代の人だよ。

 

しかしささやかながらも先輩の力になれるのならば嬉しいものである。

まぁ1年の俺が3年生の先輩の力になれる事など全くないと思うのだがな。

 

そんな考えを他所に先輩がツンツンとつついてくる。

見ると少し頬を染めた先輩が俺をみていた。

 

 

 

「じゃあちょっとお願いが……」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「はーくしょい!」

 

 

上着の襟元を寄せながら首を縮こませる。

小町チョイスに身を包んだ俺は待ち合わせ場所である時計台に向かっている。

15分前には着きそうだが先輩のことだ。また何分か待たされるのだろう。

 

待ち合わせ場所に着いた俺は近くのベンチに腰を下ろし持ってきた小説を開く。

さーて、何ページ読めるかなー、などと思いながら冷えた手でページをめくっているといきなり目の前が真っ暗になった。

 

なんかモフモフしたものに顔半分を包まれていると、後ろから声がかかる。

 

 

 

「だーれだっ♪」

 

「……はやいですね先輩」

 

「むっ!それはどういう意味かな?」

 

「そのまんまですよ。まともに待ち合わせ時間に来た試しがなかったですからね」

 

「うるさいな!忘れなさいその事は!」

 

 

 

視界を塞がれていた手が退けられ、後ろを見上げるように振り返るとそこには先輩が立っていた。

 

 

 

「やぁ!比企谷くん」

 

「うす」

 

 

 

ピーコートにミニスカート、黒のタイツを履いた先輩をみてドキッとしてしまう。

 

 

「先輩、似合ってますね」

 

 

 

思わず出てしまったその言葉に先輩はキョトンとしていたが次第に顔が赤くなっていく。

ミトンの手袋をした手で顔を抑えること10秒。手をどけた先輩の顔はまだほんのりと赤かったが落ち着きは取り戻したようだ。

 

 

 

「あ、ありがと……」

 

 

 

ぽそりと言ったお礼の言葉になぜか俺まで顔が赤くなるのがわかる。

 

 

「い、いえ、そ、それじゃあどこ行きますかね?家に帰りますか?」

 

「……ブレないね比企谷くん」

 

 

 

先輩に罵られてやっといつもの調子を取り戻す。

べ、別にマゾなわけじゃないんだからねっ!

 

 

 

「それじゃあ行きましょうか。今日は先輩の行きたいところに行きましょう。先輩の勉強の息抜きですからね」

 

 

 

むしろ先輩の行きたいところにしか行ったことないまであるのだがそれでも先輩は喜んでくれた様で嬉しそうな顔をする。

 

 

先輩にお願いされたこととは冬休みに勉強の息抜きに遊んで欲しいとの事だった。

日にちは天皇陛下の誕生日の次の日。

さすがの俺でもその日が何の日かってことぐらいはわかる。

しかしそこで勘違いをするようじゃあプロのボッチとは言えない。

息抜きと言えば息抜きなのである。

それ以上になることはない。

 

ていうかクリスマスイブの表現が独特だなーって思いました。まる。

 

 

 

そんな事を考えている俺を他所に先輩は鼻歌でも歌い出しそうな笑顔で俺の袖を引っ張る。

 

 

 

「ほら、行くよ比企谷くん!」

 

 

 

まぁ今日くらいはなにも考えずにいてもいいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「しょうでしゅね、行きましゅか」

 

「……ぶふっ」

 

 




いかがだったでしょうか?

最近ネタを入れられなくなってきてます笑
頑張らねば!

最近ポツポツと投票数が減ったりして少し凹んだりしてます
外されない様な面白いお話をかける様に頑張ります(*^^*)

次の話は明日中に投稿したいと思います!
べ、別に思っただけなんだからねっ!

感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)



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彼は彼女のサンタクロース。 中編

こんにちは大和 天です!

結局間に合いませんでしたごめんなさい(。-_-。)
言い訳のしようもないくらい普通に遅れました(笑)

UA110000突破しました!ありがとうございます!

では28話ですどうぞ!


 

 

 

先輩に引っ張られる様に異常に多いリア充(笑)を掻き分けて道を歩いていく。

先輩は相変わらず俺の肘辺りを掴んでいて、少しむず痒い気持ちになる。

 

 

だいたいこの人無駄に可愛いから道行く人の目を惹いてやばい。

なにがやばいってすれ違うカップルの彼氏の方が先輩を見て『かわいい』って思わず口を滑らせて彼女につねられるってことがおきちゃうくらいにやばい。

やべぇ、テンパっててなに言ってるかわからんな。

 

 

 

歩くスピードを落とした先輩は俺の横に来ると俺の方を見る。

俺より背の低い先輩は俺を見るとき俺を見上げる様なかたちとなり自然と上目遣いとなる。

目おっきいなとか思いながら見ていると突然ポッと顔を染めた先輩は俯きながら俺の袖を掴んでいる手にギュッと力を入れる。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

なにもしゃべらねぇのかよ。

てっきりなにか用があるのかと思っちゃったじゃないですか。

大体俺じゃなかったらクリスマスイブにそんな頬染めて袖ギュッてされた日には本当は俺のこと好きなんじゃないのって勘違いして告白して振られるまである。いや、振られちゃうのかよ。

 

 

俯いていた先輩はいつの間にか普通に戻っていて俺にウキウキ顔で話しかけてくる。

 

 

 

「比企谷くん、あそこ行こうよ!」

 

 

 

先輩が指差したのは幾つかの飲食店が立ち並ぶところの一角だった。

相変わらず引っ張られる様に店の前まで行くとどうやらカフェの様でイブ限定の文字がおどっている紙がデカデカと貼り付けてあった。

 

 

「私ここでケーキ食べたいな!」

 

 

 

やだー、そんな上目遣いで頼まれたら断れるわけないじゃないですかー?

ずるい!かわいい女子ってずるい!と心の中で叫びながらもいいですよ、と先輩に返事をするとやったー!とぴょんぴょん跳ねていた。

ちょっと喜びすぎじゃないですかね?

ジャンプするとメロンが暴れるからやめてほしいですね。

助けてっ!乳トン先生っ!

 

 

「ぶふっ……しょれじゃあ行きましゅよ…比企谷くん!…ぷっ」

 

 

 

ケラケラ笑いながらお店の中に入っていく先輩をみて1つ思ったことがある。

 

 

 

 

 

 

 

もう忘れて!八幡泣いちゃう!

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

店に入るとまぁまぁ繁盛している様で殆ど席は埋まっていた。

 

すぐに店員が来て席に案内され、メニューを渡される。

メニューを開きケーキを見る。

ショートケーキにするかチョコケーキにするかそれともチーズケーキにするか。しかしタルトも捨てがたい。モンブランもいいな。

モンブランってなんだか響きが卑猥だなって思いました。まる。

擬人化したら小麦色に焼けた巨乳の女の子な気がする。今度ネットで探してみよう。

 

 

メニューを裏返してみると何やらクリスマスイベントをやっているらしく読んでみるとケーキワンホール一人で食べたら無料となるとのことだった。

いや、さすがにワンホールは無理だろ。だいたいクリスマスにこんなイベント誰が参加するんだよ。

 

 

 

「先輩これやってみたらどうですか?」

 

 

 

そう言って指差したのは先程のワンホール食べれたら無料の広告である。

どれどれ?と先輩が覗き込むと微かなシャンプーの匂いとともに仄かな柑橘系の匂いがする。

ふえぇぇ、いい匂いだよぉぉ。

 

しかしそんな俺とは裏腹にパッと上げた先輩の顔は少しふてくされていた。

 

 

「そんな太ってないもん」

 

 

 

子供か!と思わず思ってしまうほどふてくされた顔をした先輩はぷくっと頬を膨らませる。

ふぅ、と息を吐き出した先輩はお腹や二の腕の辺りを触り始める。

多分先輩は脂肪が全部胸にいってるんじゃないですかね?もう1人の先輩と違って。

っおぉ、鳥肌たったー。

 

 

しきりに腕をさすっていると先輩はもう決めたのか店員さんを呼ぶ。

ほーん?俺が決めたかは聞かないのね?

 

伝票とペンを手に持った店員さんにメニューを指差しながら先輩が注文をする。

 

 

 

「えーと、じゃあカップルセット2つで」

 

 

 

ん?先輩セット2つ食べるのん?とメニューを見ていた顔を起こすと何故か顔をほんのり赤くした先輩が俺を見ていた。

次の注文は俺か、と注文しようとする俺の声はの店員さんに掻き消される。

 

 

 

「カップルセットお2つですね!それではカップルの証拠に彼女さんか彼氏さんは頬にキスをお願いします」

 

 

 

ん?

今なんて言いましたかね?

おかしいな、俺難聴系じゃなかったはずなのにな。

 

 

 

「は、八幡っ」

 

「ひゃい?」

 

 

突然名前を呼ばれビクッとしてしまう。

頬を真っ赤に染めた先輩はううっ…などと言いながらも微かな声で言葉を絞り出す。

 

 

 

「……ほっぺ、出して」

 

「え?い、いや、でもー…」

 

 

 

そう言ったところで店員と目が合う。

ニコニコしてはいるが目が笑っていない。

これは素直に従っておいた方が身のためだな、と直感する。

 

あまり意識しない様にして頬を先輩の方に突き出すと肩のあたりに先輩の手が置かれる。

顔を真っ赤にした先輩は恐る恐る俺に顔を近づける。

 

 

そうして先輩の唇が頬にあたった。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごちそうさまでした」

 

 

そう言いながら両手を合わせる先輩を見つめる。

だいたい俺と一緒に出かけるという時点で中々の変人なのにクリスマスイブを過ごそうと考える時点ではもう変態といっていい。

 

そんな変態先輩の唇が当たった頬を思わず触ってしまう。

 

 

俺の頬にキスした先輩は顔を真っ赤にして俯いたまま無言で届いたケーキを食べていた。

かくいう俺もケーキが美味しかったかだなんて全く覚えていない。

 

 

お互い無言でケーキを食べ終えた後お会計を済ませようとレジに向かう途中に何気無しにレジ近くのお客さんの机を見ると例のワンホールケーキが乗っていた。

 

 

 

「先輩、あれ食べてる人がいますよ」

 

「あ!ほんとだ!すごいね!」

 

 

 

しかしお客さんの横顔をみてその姿に思わず俺と先輩は凍りついた。

あれのおかげでお互いの気まずさが無くなり今普通に喋れていると言っても過言ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしてもビックリしたね」

 

「そうですね、まさかあんなところで会うとは……三神先輩」

 

 

 




いかがだったでしょうか?

なんだか最近書くのが下手になってきた気がします
やばいなぁ、もう一回原作読み直そう(。-_-。)

ココをこうした方がいいなどありましたらお教え頂けると嬉しいです

いつものように感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!
読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女のサンタクロース。 後編

忘れた頃にこんにちは大和 天です!

なんだか書いたものに納得がいかず書いては消し書いては消しを繰り返していると1週間もたってしまいました
読んでくださっている方々すみません(>_<)

続きもできるだけはやく投稿します!

では1週間ぶりの29話ですどうぞ!


 

 

 

 

「……雪だ」

 

 

 

空から降ってきたそれに思わずポツリと呟く。

 

 

クリスマスに雪が降ってホワイトクリスマスだ!と喜ぶ人がいるが俺にはイマイチ理解できない。

雪が降れば雨同様体は濡れるし、交通機関に支障が出る場合もある。

学校の登下校で自転車で転けて恥をかいたのも一度や二度ではない。

 

俺が雪に対して思うのはそんなところである。

まぁ、横の人は俺と全く別の思想をお持ちなわけだが。

 

 

 

「比企谷くん!雪だよ雪!ホワイトクリスマスだよ!」

 

 

 

俺より2つも年上だとは思えないようなはしゃぎっぷりを見せている先輩は俺の横を歩きながらぴょんぴょん跳ねている。

やめてっ!たわわに実った果実に俺の目が吸い寄せられちゃうからっ!

 

 

いっそしっかり見た方が清々しいんじゃないかというくらい目を高速で泳がせていると先輩が覗き込むように俺を見上げる。

 

 

 

「どしたの比企谷くん?」

 

「い、いえ、なんにもないですよ。ところで次はどこに行くんですか?」

「秘密だよ!まぁついてきたまえ!」

 

 

先輩はふんふ〜ん♪と鼻歌を歌いながら俺の半歩前くらいをスキップしながら進んでいく。

 

時計を見れば時刻はもうすぐ9時になろうとしているところである。

時間のおそさから考えると行けるところは多くて2つだろう。

そんなことを考えながらも先輩の後をついていくといつの間にか今日の集合場所だった駅前に着いていた。

 

 

 

「えーと、電車に乗るんですか?」

 

「違う違う!目的地はここだよ!」

 

 

 

なにやら勝ち誇った顔をした先輩は嬉しそうに俺の顔を見つめる。

 

 

 

「……はぁ、降参です。教えてもらってもいいですか?」

 

 

 

不敵な笑みを浮かべた先輩はちらりと時計を見る。

 

 

 

「………ご」

 

「ご?」

 

 

 

ごめんなさい付きまとわないでください、のご?

やだそれだったら八幡泣いちゃう。

 

 

そんな考えとは裏腹に先輩は時計を見つめたまま続きを口にする。

 

 

 

「4…3…2…1…」

 

 

 

そして時計から顔を上げた先輩が俺を見つめながら最後の一言を言った。

 

 

 

「……ゼロっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

先輩がゼロと言った瞬間パッ!と周りが明るくなる。

それと同時に周りからキャーッ!と歓声が上がる。

 

 

最初は何が起こったのか分からなかったが目が慣れてくるとともに木々や建物に取り付けられた電飾が色とりどりに光を放っているのがわかった。

 

 

いつの間にか横に来ていた先輩は俺の袖をそっと掴む。

 

 

 

「……綺麗だね」

 

 

 

キュッと俺の袖を掴む手に力を込める先輩の横顔は笑顔なのだがどこか少し悲しそうで目が離せなくなってしまう。

 

 

そんな視線に気付いたのか先輩は、どうしたの?と首をかしげる。

何もないですよ、と言う風に俺は首をふると、そっか、と先輩は呟きまたイルミネーションに目を向ける。

 

 

 

「今日はありがとう、ついてきてくれて」

 

「いえいえ、楽しめましたか?」

 

「うん!比企谷くんのおかげだよ〜!」

 

 

 

お互い顔を見ずに会話をする。

それがなんだかむず痒くて先輩を見るとちょうど俺を見上げた先輩と目が合う。

 

 

「あ、あのさ、比企谷くん」

 

 

 

寒さのせいかほんのりと頬を赤くした先輩が俺の目をしっかりと見つめる。

 

 

 

「わ、私、ひき………くちゅんっ」

 

「……ぷっ」

 

「こ、こらぁ!笑うなぁ!」

 

 

 

ポカポカと俺の肩を叩いてくる先輩はやはりいつもと変わらぬ先輩で少しホッとする……って痛い痛い!

なんでいつの間にかボクシングみたいな殴り方になってるの?

なんか殺気がこもってるような気がするのは気のせいですよね?

 

 

 

「比企谷くんのバカ」

 

 

 

先輩は赤く染めた頬を膨らませてそっぽを向く。

なんだか最近の先輩はあざとくないと思うのは俺の気のせいなのだろうか?

 

いつまでも機嫌を直さない先輩にため息をつきつつも背負っていたカバンから包みを取り出す。

 

 

 

「先輩、コレもしよかったら使ってください」

 

 

 

そう言って先輩の手に包みを乗せる。

さっきまでプリプリ怒っていた先輩は渡された包みを見ながらポカンとしている。

すると急に赤くなり卑怯だ、とかブツブツ言いながらギュッと俺の渡した包みを抱く。

 

 

「あ、ありがと……開けてもいい?」

 

「どうぞ」

 

 

 

先輩はそうっと包みを破らないようにシールを剥がし、包装紙を開いていく。

 

出てきたのは長い真っ白なマフラーだった。

 

女の人どころか人にプレゼントをあげたことも貰ったこともない俺がプレゼントなんて選べるわけもなく、小町に一緒に選んでもらった物だ。

小町には『お兄ちゃんが自分一人でプレゼント選ばないのはポイント低いけど、あのお兄ちゃんが女の人にプレゼントあげようって考えるだなんて小町的に超ポイント高いよ!』って言われました。まる。

 

 

 

「マフラーだ!比企谷くんありがとう!」

 

 

 

そう言うとクルクルと首にマフラーを巻きだす。

あったかいんだからぁ〜♪と歌いながらマフラーを巻く先輩を見ていると自然と笑みがこぼれてしまう。

 

 

 

「喜んでもらえてよかったです」

 

「あったかいよこれ!ありがとう比企谷くん!」

 

「先輩この前もくしゃみしてたから風邪ひかないようにと思いまし……ハックション!」

 

「……ぷっ!あはは!比企谷くんもじゃん!ほらこっち寄って!」

 

 

 

鼻の下を擦りながら先輩の側に行くとクルリと途中まで先輩が巻いたマフラーが巻かれる。

 

 

 

「ちょっと!恥ずかしいですよこれ」

 

「比企谷くんに風邪ひかれたら嫌だもん!」

 

「……すみません」

 

 

 

なんで女子のが語尾にもん、ってつけたらかわいいんだろう?

俺が言ってもキモいだけだならな。

 

そんなどうでもいい事を考えている

と先輩がちょんちょんと肩をつつく。

横を見ると一緒のマフラーを巻いているため先輩の顔が予想以上に近くて固まってしまう。

そんな固まっている俺に先輩は艶かしい笑みを向けて言った。

 

 

「ほら、あったかいでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

先輩を送り届けることになり駅から先輩と一緒に人通りの少ない道を歩いていく。

一緒に一つのマフラーを巻いているので歩くたびにふわふわと揺れる先輩の髪からシャンプーの匂いがする。

べ、別に匂い嗅いで喜んだりしてないんだからねっ!

 

 

電車に乗る時にマフラーを外そうとしたら笑顔で断られた。

まじ怖かった。目がすわってたからな……

 

お互い無言のまま歩くこと十数分、先輩の家の前につく。

 

お互い無言だったためなんて言って切り出せばいいかわからず家の前で2人揃ってソワソワとしていると先輩がなんとか話を切り出す。

 

 

 

「い、いつも送ってくれてありがとう…」

 

「いえ、送らないと小町に叱られますからね」

 

 

 

そう言うと俺は先輩が巻いてくれたマフラーを解く。

何故か残念そうにそれを見ている先輩にほどいたぶんのマフラーを巻いてあげると暗闇でもわかるくらい顔を真っ赤にしてうぅ、と声を漏らしながらスカートの裾をギュッとしていた。

そ、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか!

「比企谷くんの匂いがついたから洗って返して」とか言われたら八幡泣いちゃうよ?

 

 

 

「それじゃあまた。勉強頑張ってください」

 

 

 

俺はそう言って愛しの我が家へ向かうため、元来た道を引き返そうとすると待って、と先輩が小さく声を上げる。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 

 

そう尋ねると先輩がトテトテと近ずいてきたかと思うと急に首に手を回されて抱きしめられる。

 

 

 

「えっ?ちょっ、先輩?」

 

「ひ、比企谷くん。私比企谷くんにプレゼントあげてないでしょ?だ、だから、さ…」

 

 

 

先輩はきょどっている俺の耳元でそう囁く。

 

 

そして俺の頬になにか柔らかいものがあたった。

 

 

 

 

そして先輩は声の出ない俺の耳元で再び囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プレゼントありがとう、私のサンタさんっ!」

 

 




いかがだったでしょうか?

一応自分の書きたかったことを書き上げれたつもりです笑
イマイチだったらすみません(>_<)

最近なんか地の文にネタが入れれてない気がするので次はネタぶっ込みまくりたいと思います(笑)

それとこの1週間の間にメッセージ等くださった方ありがとうございました!励みになりました!

ご感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!
読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼を彼女は欲しくなる。

前回ネタをたくさん入れると言いましたが鹿波先輩目線で書いたら入れれませんでした(。-_-。)
次回頑張ります!

今回短めなんですがお許しください(>_<)

では30話ですどうぞ!


 

 

 

 

 

「言えなかったなぁ……」

 

 

 

ボフッとベッドに倒れこむとカバンからスマホを取り出す。

仰向けに寝転がり、スマホの電源ボタンを押すと暗い部屋の中がぼやぁっと照らし出される。

 

画面に写っているのは文化祭の時に撮った彼と私の写真。

画面の光を受けキラキラと光っているのはスマホにつけた彼とお揃いのキーホルダー。

 

 

それらを眺めていると先程の彼との会話を思い出してしまう。

 

 

 

『プレゼントありがとう、私のサンタさんっ!』

 

 

 

………

 

 

 

はうぅ……

私なんて恥ずかしい事言ってるんだろう……

比企谷くんの頬にキキキ、キスなんてしちゃってさ!

やばい表情がフニャフニャになってる!やばいやばい!

 

 

そんな事を考えながらベットの上でゴロゴロと悶絶しているといきなりスマホのバイブが鳴り、顔の上にスマホが落下してくる。

 

おデコをさすりながら画面を見てみると今1番見たくない文字が写っていた。

画面をタッチして通話を開始するともう何回聞いたか分からないくらい聞き慣れた声が聞こえてくる。

 

 

 

『ふられた?』

 

「……うるさいクリぼっち」

 

『ひどっ!せっかく慰めてあげようと思ったのに!』

 

 

 

のっけからいいパンチ打ってくるよねこの人は。

もうちょっとオブラートに包んで言えないんですかね?

まぁコレが美香なんだけどね。

そんな事を考えているとまたしても美香の声が聞こえてくる。

 

 

 

『ねぇ香奈、もしかしてだけどさ?』

 

「ん?」

 

『もしかして告白してないの?』

 

「………うん」

 

 

 

はぁ、とため息が聞こえてくる。

コッチがため息つきたいよ、まったく。

 

 

 

『じゃあ次に会う約束は?』

 

「なんにもしてないです……」

 

『だと思ったよ。それで一ついいアイディアがあるんですがいかがかね?』

 

「じ、条件は?」

 

『ドーナツ3つで』

 

「くっ、仕方ない。じゃあ明日の2時に駅前ね!」

 

『ほいほーい!じゃあまた明日ねー!』

 

 

 

そう言って通話を終えた私は机の上の充電器にスマホをさし、部屋を出る。

階段を降りそのまま脱衣所に行き服を脱ぐ。

体と頭を洗い湯船に浸かるとふぅ、と思わずため息が出た。

 

 

今日彼と過ごした数時間が今までで1番幸せな時間だったかもしれない。

クリスマスイブに好きな人と一緒にケーキを食べたりイルミネーションを見たり。

そしてプレゼントしてもらったマフラーを一緒に巻いて私の家まで送ってもらった。

 

 

今日以上の幸せを掴むにはきっとこの想いを彼に伝えなければならない。

 

しかしどうしても不安になってしまうのだ。

 

伝えてしまえば今の関係は変わってしまう。いい方向にも悪い方向にも。

 

しかし今のままではダメなのだ。

 

たとえこの心地良い関係が壊れてしまうかもしれなくても欲しいものができてしまった。

 

それは優しくて暖かくて本当の私を見てくれて、そして、私の初恋の相手。

 

思わずポツリと呟いてしまう。

 

 

 

「私は比企谷くんが好き」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

待ち合わせ場所に待ち合わせ10分前についた私はマフラーに顔を埋めて美香が来るのを待つ。

比企谷くんが相手だとついつい服を選んだりするのに時間がかかってしまうから遅れちゃうんだよね。

 

そんなことを考えていると待ち合わせ時間ぴったりに美香が歩いてくるのが見える。

手を振ると気が付いたのか小走りで近づいてくる。

 

 

 

「おまたせ!さぁドーナツドーナツ!」

 

「それしか頭にないでしょ!ちゃんとアイディアあるんでしょうね?」

 

「あったりまえじゃーん!」

 

 

 

そんなことを言いながら向かい側にあるドーナツのお店に向かう。

店に入るなり美香がトレーとトングを持つとバババッとドーナツを3個トレーの上に載せた。

 

 

 

「……どんだけ食べたかったのよ」

 

「べ、別にぃ〜」

 

 

 

私もトレーに2つドーナツを乗せ、レジの人にコーヒーを2つ頼んで席に着く。

他愛もない話をしながらドーナツを食べ、少し落ち着いたところで今日1番大事な話を切り出した。

 

 

 

「で、アイディアは?」

 

 

 

コホン、とわざとらしく咳をすると美香はニヤリと笑い話出した。

 

 

 

「受験生の香奈がこの日は受験勉強なんか放っぽり出して比企谷くんとイチャラブデートしても問題ない日が1日だけあるのですよ。そして比企谷くんを自然に誘い出せる口実もしっかりあるんですよ。いつかわかるかね鹿波香奈さん?」

 

 

 

なんかムカつく言い回しだがそんな日があるのなら是非教えてもらいたいものである。

 

素直に分かりませんと言うとなぜかニヤリと笑い美香が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お正月うちにおいで」

 

 

「………は⁉︎」

 

 

 

 




こんにちは大和 天です!

ペンネームや閲覧数を書かられると一気読みしている時に感情移入しにくいとご指摘を頂いたためできるだけ前書きには書かないようにします
一気読みされる際はこれからは後書きは飛ばしていただけたらいいかと思います(。-_-。)

さてさていかがだったでしょうか?
今回短めですみません(。-_-。)
ネタもなしですみません(。-_-。)

次回文章もネタも多くなるように頑張ります!
感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!
読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女のお正月。 前編

投稿遅れてすみません(。-_-。)

ネタなんてないよ?(白目)

では31話ですどうぞ!


 

珍しく俺のスマホが鳴り、もう日が結構傾いていることに気がつく。

 

今年も数えるところあと少しというところまで来ていて只今絶賛年末大掃除の途中だったのだが気付けばベッドに横になり整理していた本棚の本を読んでいた。

 

読んでいたのがシリーズ物じゃなくてよかったー。シリーズ物だったら全巻読破した挙句、『早く続き書けよ作者!』と言い出すレベル。

多分来年も同じ事を言うんだろうな、と思いつつベッドから起き上がり本を本棚にしまう。

今日のところはこれで終わり!

全く片付いてないけど終わり!

 

大体人生に汚点がついた時点で全てを綺麗にして新年を迎えるなど無理な話なのである。

 

 

そんなことを考えながらリビングのドアを開けるとコタツに入りながらテレビを見ていた小町が振り返った。

 

 

 

「あ、お兄ちゃん!掃除終わったー?」

 

「お、おう。まぁな」

 

「お兄ちゃん急激に目が腐ってるよ」

 

 

 

お兄ちゃんは黒歴史とか色々ありすぎてそんな簡単に綺麗にならないんだよ!むしろ目の濁りを取る方が簡単なまである。

 

妹に冷たい目で見られながらも人をダメにする機械、通称『Kota-tsu』に足を滑り込ませる。

コタツの人をダメにする具合は異常。敵国に送れば一瞬で陥落させられるまである。

 

 

そんなことを考えながらコタツでダメになっているとどうやらテレビはお正月の特集をやっているらしく、タレントの人がおせち料理がどうとかと話している。

 

 

 

「そういや小町、来年の初詣はどうする?」

 

 

 

小町ははぁ?と思いっきりバカにした顔で俺を見てくる。

お兄ちゃん流石のマイエンジェル小町ちゃんでもその顔はちょっとむかついちゃうよ?

 

意味がわかってないと察したのか小町ははぁ〜、とため息をつくと頬杖をつきながら机を爪でトントンと叩く。

 

 

 

「あ・の・ね・お兄ちゃん。来年香奈先輩受験だよね?」

 

「そうだな」

 

「受験生だったら合格祈願に行くよね?どういう意味がわかる?」

 

「……俺も小町と一緒に先輩が合格する様に神様にお願いしろってか?」

 

「そうだけどそうじゃない!香奈先輩と一緒に初詣に行けってことだよ!」

 

 

 

うがぁぁぁああ!と頭をかきながら小町はなんでこの人こんなにダメなんだろう、などとブツブツ呟いている。

ごめんねダメなお兄ちゃんで。

きっとコタツのせいだな……

 

そんな現実逃避をしていると小町がコタツから出て俺の前に仁王立をする。

 

 

 

「とにかく!今から香奈先輩を誘ってくること!誘わなかったらご飯なしだからね!ほらほら!ケータイ取ってきて!」

 

 

 

俺の腕をバシバシ叩きながらコタツから引きずり出すとリビングから追い出すように背中をグイグイと押す。

 

ぼっちは人を誘ったりするのは苦手なのである。相手が女子ならなおさらな。

しかし小町にここまで言われては千葉の兄妹としては断れるはずもなくなんと言って先輩を誘おうかと脳内をフル回転させながら机の上のスマホを見るとなにやらメールがきていた。

そう言えば本読み終わったのは着信音がしたからだと思い出しながらメールを開くとなにやらマイハニー♡さんからメールがきていた。

 

 

 

 

 

 

 

『い、一緒に初詣に行ってあげてもいいんだからねっ!』

 

 

 

「……なにこの似非ツンデレ?」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーンと間の抜けた機械音が鳴り待つこと数十秒、待っててー!と声がしてからもう10分ほど経つ。

 

えっと、こんなに待たされるの?

普通すぐ出てくるものなんじゃないんですかね?

あ、でも人の家のチャイムなんて押したこと無いからわかんねぇわ。などと考えながら俺の108つある特技の一つであるぼーっとして待つを使って待っているとガチャっと音がして待っていた人が出てきた。

 

 

 

「や、やぁ、比企谷くん。あけましておめでとう」

 

「お、おめでとうございます」

 

 

 

思わず振袖姿で出てきた先輩を見つめてしまう。

白を基調とした振袖でよく似合っている。

また、髪を上げているので普段と違う雰囲気があり改めて美人なんだな、と考えてしまう。

 

 

「ど、どうかな?」

 

 

 

少し頬を染めつつ聞いてくる先輩に思わず言葉がもれる。

 

 

 

「似合ってますね」

 

 

 

ぁぅ、とより一層頬を染める先輩をみて自分の顔も赤くなっているのがわかる。

自然と言葉がもれるくらいに似合っていた。

ちょっとその胸がきつそうな気もしますがね。

べ、別にいつも胸をみてるわけじゃないんだからねっ!

 

それを誤魔化すようにコホンと咳をし、それじゃあ行きますか、と歩き始める。

 

 

 

「えーと、それでどこの神社に行くんですかね?亀戸天神ですか?それとも湯島天神?」

 

 

 

一応調べてきた学業の神様を並べてみるが違うよ〜、と先輩に言われてしまい早くもお手上げ状態である。

 

そんな俺を見て満足したのか先輩はニヤリと笑うと高らかと目的地を口にした。

 

 

 

「それじゃあ我が家から10分、浅間神社へレッツゴー!」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「帰りたい」

 

「今来たとこでしょうが……ブレないねまったく」

 

 

 

そんな会話をしながらも人混みをかき分けてお参りをするべく境内へと向かう。

ていうかこの人本当に年上なのだろうか?

幾度となく出店の方に行こうとするのを引き止めるこっちの身にもなって欲しいものである。

さっきなんて引き止めるようとして思わず手を掴んだら顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。

新年早々そんなに怒らなくてもいいじゃないですかー……

 

 

やっとのことで境内に辿り着くとそのまま社の方に向かう。

御賽銭箱の前までくると先輩がちょんちょんと俺の肩をつついてきた。

 

 

 

「こういうときって何円入れたらいいのかな?」

 

「まぁいろいろあるんでしょうけど5円でいいんじゃないですかね?ご縁がありますようにって」

 

「おー!そっかそっか!あるかな5円玉〜」

 

 

 

財布の中の小銭をチャリチャリと探す先輩を他所に俺は自分の財布から5円玉を2枚取り出す。

 

案の定なかったようで無かったぁ〜、と新年早々落ち込んでいる先輩の手に5円玉を1枚のせる。

 

 

 

「あ、ありがとう……」

 

「いえ別に」

 

 

 

少し頬を赤らめながらいう先輩をみていると俺のも赤くなっていないか心配になってしまう。

 

 

 

「でも比企谷くんの5円玉ってご縁あるのかな?」

 

「あ、返してもらってもいいですか?」

 

「嘘に決まってるでしょ?ありがとう比企谷くん」

 

 

 

クスリと悪戯っぽく微笑むと先輩はぽいっと5円玉を投げ入れガラガラと鐘を鳴らす。

 

なにが嬉しくて新年始まってすぐ貶されにゃならんのだ、と毒づきながらも5円玉を投げ入れる。

 

 

ニ礼、二拍手、そして静かに目を閉じる。

 

 

チラと横目で先輩を見ると眠るような顔をして両手を合わせていて思わず目が惹きつけられる。

 

 

本来誓いを立てたりするのが普通なのだろうが特に立てる誓いもないのでお願いをしておくことにする。

 

 

 

 

『この人の願いが叶いますように』

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

おみくじを引こうという事になり境内にある巫女さんがいるところの近くにあるなんか六角形の棒が入った木の筒をガラガラと振る。

そうして出てきた番号を巫女さんに伝えるとおみくじの紙がもらえるという仕組みになっている。

 

巫女さんっていいな。今度小町にやってもらおう。

 

ガラガラとでかい音を立てて出てきた番号を見て覚えると先輩に渡す。

先輩が神妙な顔をしてガラガラと筒を振っていると不意に後ろから声をかけられた。

 

 

 

「彼氏さんの番号は何番でしたかー?」

 

 

 

どこかで聞いたことのある声だと思いつつも彼氏じゃいと否定しようと後ろを振り返ると例のあの人がいた。

……ヴォルデモートなの?

 

 

 

「み、三神先輩?なんでここに?」

 

「おけおめ比企谷くん。ここはリア充は出入り禁止なんだけど知ってた?」

 

 

 

巫女姿をした三神先輩がヤレヤレといった表情で首をかしげていた。

なんか知らんけどムカつくなそのジェスチャー……

 

 

「三神先輩、」

 

「ん?どーした?」

 

 

 

きっと言わなければならない。

三神先輩がこの先間違いを起こさないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

「新年早々コスプレはどうかと……」

 

「………この神社の娘に向かっていい度胸だな!その目の濁りをとってやる!覚悟はいいかぁっ!」

 

 

 

そうしてうぉぉぉおおりゃぁぁあああ!という境内に響き渡る掛け声とともにその慎ましやかな胸元から取り出されたお札が俺の眉間にクリーンヒットした。

 




こんにちは大和 天です!

書かなければと思いつつ空いてる時間でちまちまと書いていたらいつの間にかどえらい日数がたってました笑
受験生やめたい……

この後の続きを書くべきかそれとも次の話にいっちゃうか悩んでいるところでもあります
どっちが読みたいかどこかに書いていただけると幸いです(>_<)

続きはできるだけ早く書きたいな…

ご感想や評価、誤字脱字やご指摘等お待ちしております!
読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女のお正月。 後編

誰だよ前の話で『はやく続き書けよ作者!』とか言ってた奴!

俺でしたー!

そんな32話ですどうぞ!


 

 

三神先輩が大声をあげて俺の眉間にお札を叩きつけてから数分たち、やっとの事で周りからの視線が消えた。

 

 

広い境内を見渡すと、どこもかしこも巫女巫女ナース。嘘、ナースはいない。

ナースはいないはずなのだが何かが記憶に引っかか……おぉっと、背筋に寒気が!

きっと思い出さないほうがいいのだろう。

世の中そんなことでいっぱいである。主に俺の黒歴史とか。あれ、目から汗が……。

 

 

そんなどうでもいいことを考えていると、慎ましやかな胸をした顔見知りの巫女さんがおみくじを持って帰ってきた。

2つのうちひとつを受け取り、そそくさと先輩がおみくじを開く。先輩を見ているとなんだか少し子供っぽく見えて、頬が緩んでしまう。

 

 

「き、吉だ……」

 

 

 

ガクッと項垂れる先輩を見て、受験生なのに不憫だ…と思ってしまうあたり俺もこの人と少なくない時間を過ごしてきたんだな、と思わず考えてしまう。

 

 

 

「大丈夫だって香奈、おみくじ何ひいたかなんてどうせ一週間で忘れるからさ!」

 

「いや、巫女さんがそれ言うのはどうなんですか……」

 

 

 

ケラケラ笑っている三神先輩をよそに、俺は三神先輩が持ってきたもう一方の折りたたまれたおみくじを開く。

 

 

 

「だ、大吉っ……?」

 

 

 

思わず声に出してしまった。

大吉なんて最後に見たのはいつの事だろうか。たしか3年前の小町のおみくじがそうだったような……あ、俺大吉引いたの初めてだわ。

苦心16年、やっとの事で引き当てた大吉をニヤニヤしながら見ているとなにやら横から唸り声が聞こえてくる。

すると唸っている先輩に俺のおみくじを取り上げられた。

 

 

 

「むー、ずるい!」

 

「いやいや、何言ってるんですか。俺の初めてを返してください」

 

 

 

なんだか卑猥に聞こえなくもない言葉を言いつつ、先輩の手からおみくじを取り上げる。

少し涙目になっている先輩を見ると、年上なのになぜだか年下に見えて庇護欲をそそられるのが不思議である。

 

やっぱり課金額が100円じゃあ……などと不穏なことをブツブツ呟いている先輩の肩をトントンと叩き、振り返った先輩の手のひらの上に俺のおみくじを乗せる。

 

 

 

「やっぱりあげます」

 

「えっ、いいの?」

 

「まぁ、俺が持っててもアレですしね」

 

「アレってなによ。でもそっか、ふふっ。ありがと」

 

 

 

うっすらと笑みを浮かべて、先輩はおみくじを大事そうにしまう代わりに、自分で引いたおみくじを取り出した。 

 

 

 

「じゃあこれ結ばないとね」

 

 

 

そう言って先輩はおみくじが沢山結んであるところまで行くと、どこに結ぼっかなぁ〜、と悩み始める。

 

 

 

「あ、なんか上の方に結んだほうがいいらしいよ?神様から見えるってさ」

 

 

 

流石は神社の娘なだけはある。

噂程度のものと思っていたが巫女さんが言うのなら本当なのだろう。

なんか思わず感心してしまった。

 

 

 

「へぇー、それって本当だったんですね。さすがみこみー先輩!」

 

「うん、さっきお客さんが言ってた!ってか、みこみーって誰だよ!やめてよ恥ずかしい!みっこみっこみーとかやんないからね?」

 

「といいつつやってくれるんですね……」

 

 

 

しかもソースはお客さんなのかよ!と心の中でツッコミをいれていると上着の裾をグイッと引っ張られる。

見るとふくれっ面をした先輩が涙目で俺を見上げていた。

 

 

 

「えっと、どうしたんですか?」

 

「……コレ結んで」

 

 

 

そう言って差し出された俺のより一回り小さい手のひらには、先程の先輩が引いたおみくじが乗っていた。

潤んだ瞳をまじまじと向けられ、思わずたじろぐ。……そんな顔されたら断れねぇじゃねぇかよ。

 

 

 

「まぁいいですけど……」

 

 

 

しかたなく先輩の手からおみくじを取り背伸びをして1番上に結び付けた。

ふぃー、仕事完了。もう一生働かない。

 

神様に不殺の誓いならぬ不働の誓いをたてているとちょんちょんと背中をつつかれた。

見れば、先輩がもう一度手をこちらに伸ばしていた。

 

 

 

「……こう?」

 

「ちっがーうっ!」

 

 

 

俺が握手するように握った手を半ば叫びながら振りほどくと、先輩はまるで恋人同士が手を繋ぐように握りなおした。

 

 

 

「えっと……手が繋ぎたかったの………」

 

 

 

頬を染めながら俯向く先輩にグラリと心を揺さぶられながらも、なんとか平静を装って言葉を返す。

 

 

「また夏みたいに迷子になっちゃいますもんね」

 

「うるせいやいっ!」

 

 

先輩はギュっと握っている手に力を入れてくるがたいして痛くはない。

そんな微笑ましくもなるようなささやかな仕返しを繋いだ手に感じながらポツリと呟く。

 

 

 

 

 

 

「そんなことされたら勘違いしちまうじゃねーか」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ほら! 次あれ行くよ!」

 

 

 

振袖とは思えないような早さで俺の手を引きながら、先輩が人混みを縫うように進んでいく。きっと彼女の頭の中は屋台のことでいっぱいで、さっき引いたおみくじで何がでたかなんて覚えていないだろう。

みこみー先輩の言ってた事は正しかったんだな。

 

屋台のおっちゃんと楽しそうにジャンケンをしている先輩の後ろ姿はとても年上の人には見えず、きっとそんなところも彼女の魅力の一つなのだと思う。

 

よっしゃあ!と歓喜の声を上げ、チョコバナナを2つ貰って嬉しそうにしているそんな彼女をみて思わず微笑んでいると、振り返った先輩が怪訝そうな顔をしながらチョコバナナを1つ差し出してきた。

 

 

 

「どうしたの比企谷くんニヤニヤして。あとこれあげるね!」

 

「……どうも」

 

 

 

おっかしいなー。微笑んでたはずなのになー。

イメージでは爽やかイケメンがはにかんでいる感じだったのに。誰だよそれ俺じゃねぇな。

 

先輩の言葉に少し傷付きつつも、貰ったチョコバナナを食べていると、空いている左手が何か柔らかなものに包まれる。

思わずピクッと反応するとクスクスと笑われて顔が火照るのがわかる。

 

 

 

「笑わなくてもいいじゃないですか」

 

「だってピクッてなったからさ」

 

「……反射的になっただけですから」

 

 

 

はむはむとチョコバナナを食べながら笑っている先輩を横目に、人ごみの中を歩いていく。

べ、別にチョコバナナを食べる女の子はちょっとアレだなー、とかおもってないんだからねっ!

 

 

10分程人混みを掻き分けて進み、やっとの事で入り口にたどり着いた。

やはり振袖を着ていると少しばかり歩きにくいらしく、疲れたーと声をもらす先輩の横で、俺も人混みから出られたことに安堵のため息を吐く。

 

 

 

「じゃ、帰ろっか」

 

「そっすね」

 

 

 

未だ離されない手を少しこそばゆく感じながらも、カラカラとなる先輩の履き物の音に合わせ、いつもより少しばかり遅い足取りに合わせて歩き出す。

 

 

「比企谷くん、今日はありがとね」

 

 

 

突然のお礼の言葉に驚いていると、先輩はさらに話を続ける。

 

 

 

「比企谷くんと初詣に来られてよかったよ」

 

「……お、お役に立てたならよかったです」

 

 

 

役に立ったよ〜、えらいえらい、と俺の手の甲を撫でる先輩に少しドキッとして目をそらしていると、満足したのか先輩はふんふ〜ん♪と鼻歌を歌い始めた。

 

 

 

「あの、先輩」

 

 

 

そんな先輩にふと疑問に思った事を聞いてみた。

 

 

「なーに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お守りとかって買わなくても良かったんですか?」

 

「………………しまったぁぁぁあああ!」

 

 

 

 数秒の空白の後、大きな叫び声を上げながら先輩が地面に崩れ落ちた。

 

 

 




こんにちは大和 天です!

投稿おくれてすみませんでした!
最初の頃の毎日更新が懐かしい……

32話いかがだったでしょうか?
本編のネタを多々使わせてもらいましたがヒッキーが2年生になった時の初詣や修学旅行でこの時のことを思い出しながら言ってたなら面白いかな〜と思って書かせてもらいました(*^^*)


UA150000突破しました!ありがとうございます(*^^*)
てな訳でそれにこじつけて次話のアンケートしたいと思います!
八幡、鹿波先輩、三神先輩のうちのだれ目線でどんなお話がいいか募集したいと思います!
一応センター試験とかの話とか書いてみたいのでお正月からセンター試験の間で不自然じゃない話題を募集します!
誰目線かor話題のどちらか片方だけでもいいのでじゃんじゃん活動報告のところに書いてもらえれば嬉しい限りです(*^^*)
期限は一応月曜日までです!


感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼に彼女は宣言する。

お久しぶりです大和 天です!

最近ペース遅くてすみません(。-_-。)
しばらくこんな感じになるとおもいます

今回は前話のアンケートで募集した内容です!
イメージと違ったらごめんなさい!

では33話ですどうぞ!


 

 

 

 

「はぁぁぁぁあああ……」

 

 

 

今年が始まって約10日、新年早々こんなに大きなため息を吐くなんて思ってもみなかった。

 

 

どうしても彼に告げなければならなかったのである。

たとえこの身が引き裂かれんばかりの悲しみと虚脱感に伴われようとも。

私だってあんな事は言いたくなかった。

 

でも仕方がなかったのだ。

 

気分はまさに乙姫と彦星。

今なら2人の気持ちがわかる。

誰だよロマンチックとか言ったやつ!全然そんなことないから!

 

 

 

「はぁぁぁぁぁああああ……」

 

 

 

私はもう一度盛大にため息をつくと、机に突っ伏した。

 

 

すると事の始まりである、12回連続でクラスメイトの今一番恨んでるランキング第1位の女から声をかけられる。

 

 

 

「言ってきたの?」

 

「……美香が言えって言ったんじゃん」

「まーねー。で、なんて言ってきたの?」

 

 

 

声色から楽しんでいるのがわかる。

そんな事に少し苛立ちを感じながらも、私が彼に告げた言葉を少し泣きそうになりながら再び口にした。

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷くんとはセンター試験終わるまで会わないからっ!」

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

カリカリとペンと紙の擦れる音が聞こえる中、私の持つペンは少しも動いていなかった。

 

止まる事なく紙に数字をスラスラと書き続ける美香を見ながら、はぁと小さく溜息をつく。

 

 

いつまでもこのままじゃ埒があかない。

この手の問題はいくら考えても時間の無駄である。

こいつを頼るのは癪にさわるが仕方がないだろう。

 

 

 

そう思いながら参考書の答えを開こうとすると、向かい側に座っていた美香にバタンと私の手ごと机に叩きつけられた。

 

 

 

「答えを見るな!てか、答え見る前に私に聞きなよ!そのために居るのに!」

 

「問題が解けなくて答えを見るだけでも負けた気持ちになるのに、美香に答え聞いた日には私は屈辱で枕を濡らさないといけなくなっちゃうよ……」

 

「そんなにっ⁉︎ほ、ほら、教えてあげるからこっちおいで」

 

 

 

ポンポンと自分の横を叩きながら美香はそう言うと、私が座りやすいように端にずれてくれる。

 

 

美香は昔から勉強を教えるのがとても上手い。

高校受験の時にもこうやって週末に、仕事で両親がいない私の家に来て、私のわからないところを教えてくれた。

 

スラスラと余白に公式を書き、どこにどれを代入するかを口で説明しながら公式に書き込んでいく。

 

 

 

「くっ……分かりやすい」

 

「ふっ、まぁな。それじゃもう一回やってみて」

 

 

 

格好つけた美香に少しイラっとしたが、言われた通りに公式に当てはめて問題を解いていくと、あっという間に解き終わってしまった。

 

 

「できた!さすが私!」

 

「私を褒めなよそこは……」

 

 

 

そんな美香の言葉を無視してパタンと床に倒れて伸びをしていると、美香もキリのいいところまで終わったのかふぅー、と息を吐いた。

 

 

 

「休憩しよっか」

 

「そうだねー、私コーヒーいれてくる!」

 

「ミルク多めでよろしく!」

 

 

 

わかってるー、と美香に返事をして私は起き上がると、部屋を出てキッチンへ向かう。

ケトルに水を入れてセットし、コーヒーの粉をマグカップに入れる。

 

 

 

 

お湯が沸く間、ふと考えてしまう。

 

 

彼は今どこで何をしているのだろうか。

 

 

寒いからといってコタツでダラダラしているかもしれない。

布団に包まって寝ているかもしれない。

もしかしたら本屋さんにでも行っているのかもしれない。

 

彼に会わないと告げてからまだ一週間も経ってないが、彼に会いたい、声を聞きたい、一緒に笑っていたい、と気持ちが溢れてくる。

気が付けば彼の事を考えている。

絶対に居ないとわかっていてもいろんな場所で彼の姿を探してしまう。

 

こんな気持ちは今まで生きてきた中で初めてだった。

 

きっとこの気持ちには名前があって、みんなもっと早くに体験しているのだろう。

しかし私には初めての体験でどうしたらいいのかわからない。

そう、どうしたらいいのかわからないのだ。

 

 

 

 

 

だから世間ではよく言われるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初恋は実らないと。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

マグカップを両手に持って私の部屋に戻ると、美香はスマホで何かをしていた。

机の上に美香のぶんのマグカップを置くと私の方も見ずにサンキュー、と呟く。

 

私も美香の向かい側に座り、まだ熱すぎるコーヒーをちびちび飲んでいるとスマホから顔を上げた美香がねぇねぇ、と話しかけてきた。

 

 

 

「前にも聞いたけど香奈ってさ、なんで比企谷くんの事好きなの?」

 

「ごふっ!ゴホゴホ……な、なによいきなり」

 

 

 

ゴホゴホとむせている私を他所に、美香は追い打ちをかけてくる。

 

 

 

「ほら、前に香奈がさ、ちゃんと『私』を見てくれる、とかなんとか言ってたじゃん!アレってどういう意味だったの?」

 

 

 

余程その事が聞きたいのか、中3の時に私の弱みに付け込んで毎日のように意地の悪い事を言っていた時の顔をしている。

 

要するに生き生きとしているのだ。

なんならあと150年くらいは生きれるんじゃないかってくらい。

 

 

長くなるけどいい?と聞くと美香は無言で頷いた。

 

 

 

 

 

 

「えっと、美香はずっと一緒のクラスだったからわかると思うんだけど、中学2年くらいのころかな、私初めて告白されてさ。初めての事だったし、相手の男の子もかっこよかったし、何より嬉しかったの。

 

それでその男の子に聞いたんだ。『私のどこを好きになったの?』って。

そしたらその子なんて言ったと思う?『鹿波はみんなに優しいし、かわいいから、かな?』だってさ。

 

それでなんかその時思ったの。

 

 

『あ、この人は本当の私の事は見てないんだな』って。

 

 

だからそれを聞いた時、なんか嬉しかった気持ちが一気に冷めちゃった。

 

きっとこの人と付き合ってもこの人の事は好きになれないし、何かあってもこの人は私を守ってくれないなって。

 

そしたら、いつの間にか『男子に自分を可愛く見せる』っていう仮面を付けてたの。

 

いつかこんな偽物でできた仮面を顔に貼り付けた私の下にある、本当の私を見てくれる人が現れてくれないかな、って期待してね」

 

 

 

 

 

私がそこまで一気に話し終えると、あのさ、と美香は話を続ける。

 

 

 

「香奈がなんであざとさ全開男手玉に取りまくり巨乳スーパージャグラーになったかは分かったよ?でもさ、なんで相手が比企谷くんなの?もっと他にかっこいい人居たでしょ?」

 

「私そんなに手玉にとってないから。あと私の胸は関係ないよね?」

 

 

 

なんでいちいち人を罵らないと会話できないのかねこの人は。

でもまぁ、12年も一緒にいたら慣れちゃってむしろこれを聞くと安心するレベル。

 

なぜだかいつもは見せない真剣な顔で私を見つめる美香を見ていると、多分こんなことを聞くのも私のためなんだろうな、って分かってしまう。

 

美香はいつも私が悩んでいる時や悲しい時には、慰めの言葉もかけずに私の力でその問題を解決させようとする。

 

そんな美香がかっこよかった。

 

私にはどうやっても手に入れられない強さを持っているから。

 

 

だから私は美香のことが嫌い……

 

 

 

「そんなの決まってるじゃん……」

 

 

 

でも、そんなの気にならないくらい美香は大切な人で、そして大好きな人なんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が惚れちゃったんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

美香が『私が惚れちゃったんだよ』という私のモノマネをしながらケラケラと笑い転げていると、私のスマホの着信音が鳴った。

 

見てみると小町ちゃんからメールが来ていた。

 

 

 

『香奈先輩こんにちはー!お兄ちゃんが香奈先輩と行く予定だったけど勉強忙しいから行けないって言われた、って言ってたので代わりに小町は今お兄ちゃんとららぽにデートに来ていまーす!また今度お兄ちゃんとデートに行ってあげてくださいね!それじゃ、勉強頑張ってください! 小町』

 

 

 

ご丁寧に比企谷くんと小町ちゃんのツーショットが添付されていたのを見て、ふつふつとさっきまで抱いていた感情とは程遠いものが溢れてくる。

 

 

 

「……美香これ見てー」

 

「んー?なになに?」

 

 

 

読むにつれてみるみる顔が青くなり、目が泳いでいる美香にとびっきりの笑顔を向ける。

 

 

 

 

 

「こういう時はなんていうのかなー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、てへぺろっ☆」

 

 

 

そして私の怒りが爆発した。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

ちょっと暗かったかもしれないですね(。-_-。)
次回は明るくできたらいいなって思ってます!

アンケート答えてくださった方ありがとうございます!
残りの方はもしかしたらセンター試験終わった後の話になるかもしれません!ごめんなさい!

そろそろ終盤に近づいてますね
ここからが自分の書きたかったところでもあるので頑張ります!

感想や評価、誤字脱字やご指摘等お待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼は彼女を応援する。

こんにちは大和 天です!

投稿遅くてすみません(。-_-。)
ゆっくりでも最後までしっかり書きたいと思っているので気長に待っててもらえれば幸いです(>_<)

センター試験まであと1ヶ月程ですね……
作中では前日なのですが笑
頑張れ鹿波先輩!それと三神先輩(笑)

そんな34話ですどうぞ!


 

 

 

 

 

読んでいた本からふと顔を上げ、時計を見ると時計の針はもうすぐ正午を回ろうとしていた。

 

 

今日は土曜日で学校も無く、朝からベッドの上でダラダラと本を読んで過ごしているのだが、内容が全く頭に入ってこない。

 

理由はわかっている。今日は先輩のセンター試験初日なのだ。

自分のことでもないのに妙にソワソワしてしまうあたり、俺もあの人と決して短くはない時間を過ごし、彼女との距離を少しでも縮めることができたということだろうか?

 

 

 

俺は本を閉じ、寝返りを打って天井を見上げると、ふぅ、と小さく息を吐き目を瞑る。

 

 

先輩のことが心配だから、なんて理由だけでソワソワしてるんじゃない。

きっとこの心の中の騒めきは、あの時の先輩の一言のせいだ。

 

1日たった今でも、まるで今その場にいるかのように思い出せる。

呼び止められ振り返った先にいた、口から白い息を微かにこぼし、少し潤んだ目で俺を見つめる先輩。

そして彼女は言ったのだ。

万年ぼっちの俺には全く縁のない、何があっても一生言われることのないような一言を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バレンタイン空けておいてね!」

 

 

べ、別に動揺なんてしてないんだからねっ!

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 

 

玄関の戸を開け、靴を脱ぎながら誰かに言う訳でもなくただ習慣のように口にする。

 

やっとのことで5連勤(学校)を終え、疲れた足取りでリビングに向かう。

就職したら平日夜遅くまで働かされた上に休日まで会社に引っ張り出されるのかと思うと、とても就活なんてできそうにない。

だいたいお金を払っている学校ですら行きたくないのに、お金も払ってない会社になんかいけるはずがないのである。働かない、ゼッタイ。

 

 

しかしそんな憂鬱なことを考えてはいるが、今は学生なのだ。

今日は金曜日。ということは明日はもちろん土曜日な訳で、翌日も休みというウルトラハッピーな1日が待っているのである。

 

明日は何をしようか、などと妄想を膨らませながらリビングの戸を開けると、何やら冷たい目線が俺に突き刺さってきた。

 

 

他でもないマイエンジェル小町である。

愛しの小町がじーっと、まるでゴミでも見るかのような目で俺のことを見ていた。

 

 

 

「えっと、どしたの小町ちゃん?」

 

 

 

目線に耐えきれなくなった俺が思わず声をかけると小町は、はぁ〜、とわざとらしく大きなため息を吐いた。

 

 

 

「あ・の・ね、お兄ちゃん。明日何の日か知ってるよね?」

 

「え?普通に土曜日じゃねぇの?」

 

 

 

それかプリキュア放送日の前日、と言おうとしたが凍えるような小町からの目線に思わず口を噤んでしまった。

 

答えを教えて貰えるのかと思って暫く黙って待っていたのだが、お互い見つめ合ったまま時間だけが過ぎていく。

小町と見つめ合うとか八幡的には超ポイント高いのだが、小町ポイントは猛スピードで減少しているので、それを阻止するべく、ごめんなさい分かりません、と素直に謝る。

すると小町はまたもや大きなため息を吐いた。

そんなにため息吐いてたら幸せ逃げちゃうよ?

 

 

 

「センター試験でしょ!明日は香奈先輩試験なんだから頑張れ!って言いに行かなくていいの?」

 

「あのな小町。考えてみろ、試験日前日は見直しとか最後の詰め込みとかで忙しいんだから、そんなこと言いに行ったらかえって迷惑だろ?」

 

 

 

しかしそれだけでは終わらない。

実体験を交えることで情報は信憑性を増すのだ。

俺はさらに追い打ちをかけるように言葉を続ける。

 

 

 

「大体あれだ、俺が受験の時に友達とか後輩とか来たか?来てないだろ?つまりはそういうことだ」

 

 

 

ふっ、どうだこの完璧な理論は!

 

そんな思いで小町の顔を見ると、なんだかものすごく残念なものを見るかのような目で俺のことを見ていた。

 

 

 

「お兄ちゃん……来年友達できるといいね」

 

「……ほっとけ」

 

 

 

そんなに本気で心配されたら本当に悲しくなっちゃうでしょうが!

 

大体、受験という制度が交友関係に大きな亀裂を生むのだ。

友達と一緒に受験して片方が落ちたりしたら話しかけづらいし、恋人と一緒に受験して別々の進路になったらほとんどの確率で別れてしまう。

 

その点、ぼっちは誰が落ちようが自分が受かれば関係ないし、恋人と別れるどころか恋人を作るために告白して振られるまであるから何も問題はない。いや、振られちゃうのかよ。

 

 

 

そんなことを考えながらも小町に言われたことを思い返す。

 

さっきはあんなことを言ったが別に応援がしたくないわけではないのだ。

 

ただセンター試験終わるまで会わないと言っていた先輩のことを考えると、試験前、よりによって前日に会いに行くというのは少し気がひける。

それとほんの少しの羞恥心が、先輩に『がんばれ』のひと言を言うことを邪魔していた。

 

 

 

「……ねぇ、お兄ちゃん」

 

 

 

突然の小町の声で俺の思考が遮られた。

見ると小町の顔は優しそうな、それでいて悲しそう、そんな形容しがたい顔をしていた。

 

 

「お兄ちゃんが香奈先輩を少しでも応援したいって思うなら応援していいんだよ?お兄ちゃんはなんでも行動にはちゃんとした理由がいるって思ってるかもしれないけど、小町はそんなことないと思う。

自分がしたいから、って思いだけでも十分だと思うよ」

 

 

 

突然の事に呆然としている俺の顔を見て、小町はいつもの様にぱっと優しい微笑みを広げた。

 

 

 

「でもまぁ、どうしても理由がいるっていうなら小町からのお願いってことでもいいよ!」

 

 

 

エヘヘ、と照れ笑いを浮かべながら頬をかく小町を見ているとなぜだか俺の頬まで緩んでくるのだから不思議である。

 

小町の頭に手を置いてワシャワシャすると、きゃあきゃあ言いながら体をよじって俺の手から逃れようとする。

 

 

 

「……ありがとうな」

 

 

 

ポツリと呟いた俺の一言に小町はううん、と首を振る。

 

 

 

「お兄ちゃん、そこは『愛してるぜ小町』で良いんだよ」

 

「愛してるぜ小町」

 

 

 

とびっきりの笑顔で言った渾身の一言に、小町も俺にとびっきりの笑顔を向けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうお兄ちゃん!小町はそうでもないけど!」

 

この後泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

自転車のペダルを漕いでいると、いつの間にか先輩の家の前に着いていた。

 

自転車を側に止め、かじかむ手に息を吐きながら門扉の前まで行きチャイムを鳴らす。

機械音が鳴り、寒さからか緊張からかわからない膝の震えに耐えて待っていると、ガチャリとドアが開いた。

 

 

 

「はーい……うわっ!」

 

 

 

バタンッ!と目の前で扉を思いっきり閉められ呆然としていると、中から小さくうわぁー!という悲鳴と共に、バタバタと走る音が聞こえきた。

 

受験の前に縁起でもないもの(俺)を見て悲鳴をあげたんじゃないか、などと心に大ダメージを負っていると、ポケットに入っているスマホが震えた。

 

見ると先輩からのメールで『5分待って』と書かれていた。

 

返信を返そうか悩んでいるとガチャっと扉が開き、間からソロソロと先輩の顔が出てきた。

 

 

 

「あ、えっーと……こんにちは」

 

「や、やぁ、比企谷くん……どうしたの一体?」

 

 

 

寒さのせいか少し頬を染めた先輩が、上目遣いで俺の方を見上げてくる。

久しぶりに見る先輩に少しドキッとしながらも、できるだけ平静を装って先輩からの問いに答える。

 

 

 

「えっと、先輩明日センター試験って聞いたから、応援できたらな、と思って」

 

 

 

全然平静は装えなかったが、伝えたかったことは何とか言えた。

そう思って横に向けていた目線を先輩の方に戻そうとすると、胸の辺りに軽い衝撃が走った。

 

見ると先輩が俺の胸に顔を埋めて抱きついていた。

お腹のあたりに何やら柔らかいものが当たっていて、普段の俺ならきょどりながら意味のわからないことを言った挙句、罵倒されるくらいがテンプレなのだが、なにやら先輩の様子がおかしかった。

 

 

嗚咽を漏らしながら服に顔を埋める先輩の頭を恐る恐る撫でると、俺の背中に回していた手にキュッと力が入る。

 

きっと不安だったのだ。

親も遅くまで帰ってこず、友達と呼べる人も少ない。

少ない友達だって同じ受験生で、心の中の不安を言うこともできずに前日になってしまったのだろう。

そこにたまたま知り合いが来て、今まで誰からもかけられなかった応援の言葉をかけられたりしたら、張り詰めていたものが溢れてもおかしくはない。

 

 

俺がそんな先輩に出来るのは、精々落ち着くまで一緒にいてやることくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう」

 

 

 

微かに赤くなっている目を擦りながら俯いている先輩は、なんだかとても脆いものに見えてしまう。

 

 

 

「どうぞ。良かったらこれ明日にでも食べてください」

 

 

そう言って差し出したのは、ただの市販のチョコレートである。

かの有名なGoogle大先生に聞いたところ、チョコレートなどが無難だと教えてもらったため、チョコレートにしたのだ。

 

 

渡したチョコレートをしげしげと見つめる先輩がクルリとチョコレートをひっくり返した。

裏面を見た先輩は一瞬ぱっと目を見開いたかと思うと、柔らかい笑みを浮かべた。

 

 

なぜだか恥ずかしくなり、それじゃ、と別れの挨拶を言って帰ろとする俺の手を温かいものが包み込む。

 

 

 

「比企谷くん」

 

 

 

振り返ると再び目を濡らした先輩が俺のことを真っ直ぐ見つめていた。

 

 

 

「いつもありがとう」

 

「……真似しないでくださいよ」

 

 

 

俺がチョコレートの裏に書いた言葉をそのまま俺に言ってきた先輩に、照れ隠しの様なことを言う。

 

そうだね、と言って笑う先輩は何かが吹っ切れたようだった。

 

 

 

 

 

それじゃあ、と言って帰ろうとすると今度は比企谷くん!と元気のいい声で呼び止められた。

 

振り返ると、先輩は久しぶりにみるあざとい笑顔で俺に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バレンタイン空けておいてね!」

 

 

変な声が出た。

 

 

 




いかがだったでしょうか?

さて、私事なのですがセンター試験も近いため年内の更新は出来て1、2回だと思います(。-_-。)
更新は今くらいのペースで遅いとは思いますが気長に待ってもらえれば幸いです

それと以前リクエストしてもらって書いてない話はちゃんと書きたいと思っているのでもうしばらくお待ちください(>_<)

感想や評価、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!

読んでいただきありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女のバレンタイン。 前編

あけましてやっはろー!

2ヶ月も更新せず、読んでくださっている方々申し訳ありません(>_<)

明日は国公立大学の試験ですね
受験生の方、共に頑張りましょう!

飛行機の中で仕上げた35話ですどうぞ!



 

 

 

 

 

キッチンに充満した甘い香りが鼻腔を擽る。

 

先程までカシャカシャと音を立てながら混ぜていたボウルの中身を、スプーンにひと匙すくって口に運ぶ。

 

口に含んだ瞬間に口いっぱいにひろなる甘味、そしてその後にひろがる程よい苦味が絶妙にマッチしていて思わずはぁ、とため息が出た。

 

甘味がくどくなく、それでいてしっかりとした存在感を放つトロリとしたソレはいくらでも食べられそうである。むしろ私が今ここで全部食べてしまうまである。

 

 

「なに人が作ったものを勝手に食べてるんですかね、お嬢さん?」

「いーじゃん味見くらい!このけちんぼ!」

 

「……いや、あんた『はぁ』とか、『ふぅ』とか言いながらぱくぱく食べてたよね?」

 

 

 

そう言って美香は私の手からスプーンをパシッと取り上げると、先程私が味見してあげていた(普通に食べていた)ボウルから味見をするためにチョコレートをすくい口に入れる。

 

 

 

実家の神社で神主をしている美香の父親はなにやら頭の固い人らしく、また家業のことも相まって、ハロウィンやクリスマスなどの行事を家ですることが無い。

 

小学校の頃から美香は、毎年ハロウィンやクリスマスの時期になると口にこそ出さなかったが、浮れるクラスメイトを見て、羨望の眼差しを送っていた。

だから毎年親が帰ってくるのが遅い私の家に呼んで2人で楽しんでいたのも今となっては良い思い出だ。

 

そんな美香が今、私の家で何をしているのかというともちろんアレしかない。

 

 

 

そう、何を隠そうバレンタインの為のチョコレート作りである。

 

美香はお菓子作りがとても上手い。

と言うか料理全般得意なのだがお菓子作りはずば抜けて上手い。

 

なんでも実家が神社の為、菓子折りやらなんやらで家にあるお菓子が全部和菓子らしい。

小学生の頃に家に遊びに来た時に、おやつとして出してあげたドーナツを美味しそうに頬張る美香の笑顔は今でも覚えている。

 

そのせいなのか、それともただの美香の食欲のなせる技なのかは分からないが、メキメキと美香の作る洋菓子の味があがっていった。

今では買ってきたケーキを食べていて『これなら美香の作ったやつの方が美味しいかも』なんて思ってしまうくらいに腕が上がってしまった。

 

もっとも家では作れないで毎回私の家に来て作るのだが。

美香はお菓子が作れて私は味見ができる、まさにwin-winな関係である。

 

 

しかし今日はそんな事で私の家に来てもらったのではない。

 

私はスプーンを咥えたままうーん、と首を捻っている美香に向き直るとガバッと頭を下げた。

 

 

 

「美香、いや、師匠!どうか私にお菓子作りの真髄を!」

 

「誰が師匠だよ」

 

 

 

事の発端は数日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぬぬぬ……」

 

 

 

頭を抱えながらうめき声を上げる私に、向かい側の席に座っていた美香がペンを走らせていたノートから顔を上げた。

 

 

 

「どれ、どこが分かんないの?」

 

「違うの、勉強じゃなくて……」

 

 

 

私の呻き声の原因が今やっている問題集かと思ったのか、美香は自分の勉強を一時中断してわたしに教えようとしてくれる。

 

 

 

「じゃあどうしたのさ?」

 

 

 

美香は机を爪でトントンとしながら少し眉をひそめる。

 

いや、そのー、と言葉を濁す私にイライラしたのか、眉間のシワが深くなると同時に、だんだんとトントンという机を叩く間隔が狭くなっていく。

 

 

 

「いやー、その、なんていうか、チョコレートどうしようかなー、なんて……」

 

 

 

あぁ、なるほど、と美香は言うとニヤリと少しわたしを馬鹿にしたかのような顔をしながらピッと人差し指をわたしに向けた。

 

 

 

「比企谷君に作ってあげればいいじゃん。愛情がたっぷり入った『ふ・つ・う』のチョコレートをさ」

 

「普通ってところを強調しないでくれるかな?」

 

 

 

これだから美香が嫌いなのだ。

ここぞとばかりに嫌なところを攻めてくる。しかも私にだけ。

 

 

 

「ていうか美香は作らないの?毎年大量に作ってサンタの如く女子にばら撒いてるけど」

 

「今年は作らないかなー……てかばら撒いてないからね?」

 

 

 

自宅のキッチンで洋菓子が作れない美香は毎年私の家に来てチョコレートを作る。

しかもそのチョコレートがこれまたヤバいのだ。

 

どれくらいヤバいかというと、裏で美香特製のチョコレートをもらった女子ともらってない女子の間で高値で取引されているという噂が、友達のいない私の耳に入ってくるくらいにはヤバい。

なんなら本人も知ってるんじゃないの?って位には情報が飛び交っている。

 

そのくせ、彼氏欲しいとか2日に1回は言ってるのに、男にはチョコレートを渡さないのがイマイチ私には理解ができないんだけどね。

 

 

しかしまぁ人格はともかく、お菓子作りにかけては天才的な美香にバレンタインのチョコレート作りを指導してもらえば、認めたくはないが私が作る普通のチョコレートよりは幾らかは美味しく出来上がるのではないだろうか。

 

比企谷君なら美味しいと言いながら食べてくれそうではあるが、初めてできた好きな人に少しでも美味しいものを食べてもらいたい、そんな気持ちが私の美香に教わりたくないというほんの少しの意地を瞬く間に消し飛ばした。

 

 

 

「そのー、ね?私の作った料理って普通の味になるからさ、美香につくりかた教えてほしいなー、なんて思ったんだけど……」

 

 

 

私がそう言うと美香は一瞬目を見開いたが、瞬く間に口の片端を上げ、ニヤリと笑う。

 

 

 

「そうだなー、君知ってるかい?親しき中にも礼儀ありと言ってだね、やはり私としては頼みごとをする際はしっかりと頼まなければならんと思うのだよ。そうだろう?ん?」

 

 

 

テレビドラマにでも出てきそうな嫌味な社長の様な喋り方で聞いてくる美香に対してうーん、と頭を抱えながら 30秒程悩んだ末、私は机に手をついて頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……ご教授の程よろしくお願いします三神様」

 

「私に教えられるのそんなに嫌なの?」

 

 

 

美香の悲痛な声が頭上から降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

全ての作業を終え、後はオーブンの中で焼いている焼き菓子が焼き終わるのを待つのみとなった私達はコーヒーを淹れ、リビングで失敗作をポリポリと処理していた。

 

机に肘をつきながら失敗作をパクパク食べていた美香が不意に私の方も見ずに尋ねてきた。

 

 

 

「香奈ってやっぱりバレンタインで告白するの?」

 

 

 

何気なく聞かれたこの一言で私の心がぐらりと揺れた。

 

そうなのだ。私達は後1ヶ月もせずに卒業する。

別に会えなくなるわけではないが彼と会える機会は極端に減る。

 

彼に言えば避けられそうで、でも伝えたいこの気持ちは今もなおどんどん膨らんでいる。

 

そろそろ伝えなければならないのかもしれない。

私が言えずに逃げてきたこの気持ちを。

 

 

机の下でキュっと手を握ると、私はオーブンの方を見ながら頬杖をつき、自分で余った材料で作り上げたクッキーをポリポリ食べている美香の方に向き直る。

 

 

 

「うん、伝えるよ。今思ってること全てを」

 

「ふふっ、そっか」

 

 

 

私の方をチラリと見て、優しげな笑みを浮かべた美香はよしっ!、と言って立ち上がるとキッチンへと向かう。

それと同時に焼きあがったことを知らせる機械音が鳴る。

 

私も椅子から立ち上がると味見をするべくパタパタとキッチンへと向かった。

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

師匠にギリギリ及第点を貰った私は、焼きあがった焼き菓子を綺麗にラッピングし終える。

 

 

 

横で鼻歌を歌いながら自身の作ったチョコレートをラッピングしている美香に、ふと私は疑問に思ったことを尋ねる。

 

 

 

「なんで美香まで作ったの?私に教えてくれるだけでよかったのに」

 

 

 

美香は頬をポリポリかきながらえーと、と言葉を濁す。

 

因みに美香が作ったチョコレートは先程まで我が家の冷蔵庫のど真ん中を占領していた。

 

 

美香はコーヒーを一口飲むと、言いづらそうにぼそぼそと呟いた。

 

 

 

「えーと、チョコあげようかなー、なんて……」

 

「ほぇー、誰に誰に?もしかして男子?」

 

 

 

思わず身を乗り出して詰め寄る私から顔を背けると、美香はボソッとある男の子の名前を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ひ、ひきぎゃや君です」

 

 

 

キッカリ3秒後、私の絶叫が家中に響き渡った。

 

 

 




いかがだったでしょうか?

更新していない間にもお気に入りや感想、評価などしてくださった方がいて心苦しかったのですが取りあえず書き上げることができました(。-_-。)
ありがとうございます!

久しぶりに書いたので感想等いただけると幸いです(。-_-。)

完結までもう少しです
嬉しい様な寂しい様な……
最後まで彼と彼女の物語にお付き合いください!

読んで頂きありがとうございました(*^^*)


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彼と彼女のバレンタイン。 後編

こんにちは大和 天です!

少し遅いですが小町誕生日おめでとう!
そして大和天も誕生日おめでとう!
3月3日は僕の誕生日でした!笑

それとなんとか大学に受かりました(。-_-。)
応援してくださった方ありがとうございます!

今回は話が進んだようで進んでないです笑
しかも少し短めです
すみません(>_<)

後書きでちょっとお知らせ的なのあるので読んでいただければ嬉しいです(>_<)

では36話ですどうぞ!


 

なぜ世界はこんなにも輝いているのだろうか。

 

 

俺はそんなことを思いながら、学校へと向かうべく自転車を漕いでいた。

 

え?なんで輝いて見えるかって?

バッカお前、小町にチョコもらったからに決まってるだろうが。

 

 

 

「はいコレ。じゃ、小町学校行くね」

 

 

 

そんな感じで今朝、小町は俺に小さな包みを渡し、家を出て行った。

お兄ちゃん分かってるよ、ただの照れ隠しだよね?嫌ってるとかじゃないよね?

 

こ、今年はきっと忙しかっただけさ。来年はきっと……あ、小町受験じゃん。

 

 

 

あれ……いつの間にかいつもの景色に……。

 

 

 

そう、今日はバレンタインデーなのである。

リア充共がうじゃうじゃと女子に群がり、無駄なアピールを必死にする様はまさに滑稽の一言に尽きる。

だいたい今更アピールしたところでチョコ用意できるわけねーだろ、と、女子もニコニコしながら思っているはずだ。……やだ、女子って怖い!

 

 

自転車置き場に自転車を停め、まだ肌寒い空気に首をすくめながら、足早に下駄箱へと向かう。

 

自分の下駄箱に履いてきた靴を仕舞い、取り出した上履きに履き替えるとそそくさと自分の教室へと向かう。

べ、別に下駄箱の中にチョコが入ってそうだなんて思ってないんだからねっ!

こっちは毎日上靴に画鋲とか入ってないかドキドキしてるんだからっ!

 

……なにそれ自分で言ってて辛い。

 

 

音も無く教室に入り、俺の固有領土である俺の机と椅子へと向かう。

 

廊下側のやや後方に位置する俺の席につくと、どことなく周りを見渡す。

あっちもこっちもチョコレートチョコレート。青春と共にバレンタインを謳歌するリア充共が甘い匂いを発していた。

 

 

そう、今日はバレンタインなのだ。

 

考えないようにしていた事が嫌でもの頭に浮かんでしまう。

もしかしたら今日、この関係は終わってしまうのかもしれない。柄にもなく『願わくばずっとこんな関係が続いて欲しい』などと思っていることも否定できない。

 

やっと持つことのできた人との関係。

 

これからも続くのか、それとも終わってしまうのか……。

 

俺はどうしたらいいのだろうか。

 

 

 

 

”後輩の俺と先輩の彼女”という関係はいつまで続くのか……。

 

 

 

続くも続かないも、もしかしたら俺次第なのかもしれない。

 

 

いらないと思っていた人との関係。それを得てしまった今、もう昔には戻れないんじゃないかと思ってしまう。

 

 

 

俺はそんなことを考えている自分が嫌いだ。

 

 

 

 

俺はちっ、と舌打ちをすると、頭を抱えるように寝たふりを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「さぶっ」

 

 

 

つけていたマフラーに首を埋めると、もう一度スマホを開く。

 

昼休みに先輩から来たメールを開き、もう何回したかもわからない確認をする。

 

 

『放課後いつもの場所に来てね』

 

 

そう書かれたメールの指示に従いベストプレイスに来たわけなのだが、いっこうに先輩が来る気配が無い。

 

大方、女子同士のチョコレート合戦に巻き込まれているのだろう。

廊下で3年生女子達が「MCレートサンゴーマルマル」とか訳のわからないことを言ってたからな。MCってなんだよ……ミラクルチョコか?

あ、でも先輩友達いないとか言ってたような……俺、忘れられてないよね?

 

 

俺はスマホをしまうと、寒さをしのぐべく再びうずくまった。

 

ここに1人でいると入学したての頃を思い出す。

 

誰にも見つからない場所を探して、ここを見つけた。毎日晴れの日はここで1人で時間をつぶしていた。

 

そして先輩と会った。

 

最近は先輩が受験でなかなか来ることはないが、いつもここで2人で昼休みを過ごしていた。

 

半ば連れまわされていろいろなところに行ったが、先輩と過ごした時間の大半はここだった。

 

 

柄にもなくこれから来るのであろう先輩との時間を思い出す。

 

 

 

「……どうしたんだよ、俺」

 

 

 

誰にも聞かれることがない呟きが消えていく。

 

 

すると、トタトタと足跡が聞こえ、後者の角からにゅっとこちらを伺う様に人影が出てきた。

 

もう1ヶ月以上会ってない先輩はいつもと変わらない様子で、でもいつもとは違う顔でにっこりと笑った。

 

 

 

「やぁ、比企谷くん」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

先輩が俺の隣に座ってから何分たったのだろうか。

その先輩はなんか知らんがモジモジとしながら小刻みに震えている。えっと、寒いんですかね?

先輩は膝の上に置いていた手をグッと握りしめると、座ってから一度も見なかった俺の方へと向き直った。

 

 

 

「あ、あのね、比企谷くん。バレンタインにお菓子作ってきたんだけど、貰ってくれる、かな?」

 

 

 

震えながら少し涙目になっている先輩は、白い息を吐きながらそう言った。

 

思ってもみなかった光景に、思わず挙動不審になりそうになりながらも、なんとか「はい」と返事をした。

 

先輩はゴソゴソとカバンの中を漁り、綺麗に包装された包みを俺に差し出す。

 

 

 

「はい、どうぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 

そう言って包みを受け取ろうとするが、なぜか先輩は手を離してくれない。

 

そのまま時間だけが過ぎていく。

 

 

 

「せ、先輩?」

 

 

 

顔を隠そうとしているのか、俯いていてその表情はうかがえないが、微かに震えている手は隠せていなかった。

 

 

 

「……好き」

 

「……え?」

 

「好きです。比企谷くんの事が。ずっと、ずっとずっと前から」

 

 

 

頭が真っ白になった。

 

震える唇から発せられたその言葉が、何度も何度も頭の中でリピートした。

 

何か言わなければ、とその焦りが時間とともに積もっていく。のどが渇き、汗が溢れる。

 

その時だった。

 

 

包みから手を離した先輩が、俺の胸に顔を埋め、背中に回した手にギュっと力を入れた。

 

 

今やその大きな瞳から涙は溢れ、その頬を濡らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「でも、でもね、それだけじゃないの」

 

 

 

そう言った彼女の瞳から俺は目を離すことができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、聞いて欲しい。私の思ってること全てを」

 

 

 




いかがだったでしょうか?

続きもできるだけ早く書きます(>_<)

それでお知らせという名の宣伝なのですが、今カクヨムさんの方でオリジナルを書かせてもらってます。

『だん』という名前で『Dreamer』というSF小説を書いています。
夢の世界で戸塚(容姿)八幡(中身)が戦うお話にする予定です笑笑
よければ読んでみてください!
て、点数とかつけてくれてもいいんだからねっ!(懇願

読んで頂きありがとうございました(*^^*)


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彼に彼女は告白する。

お久しぶりです大和 天です!

色々言わないといけないことがあるのであとがきに書きます(。-_-。)

それでは37話ですどうぞ!


 

 

 

 

「だから、聞いて欲しい。私の思ってること全てを」

 

 

 

彼女は泣いているところを見られまいとしてか、俺の胸に顔を埋めてはいるが、隙間から見える頬は涙に濡れ、微かな嗚咽と震えまでは隠せていない。

 

目の前に居る彼女は、いつも見てきた彼女とはまるで違う、ただの1人の女の子だった。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか辺りは、傾いた陽によるオレンジの光に包まれ、グラウンドの方からは、部活動生の掛け声がかすかに聞こえる。

 

先輩は少しは落ち着いたらしく、未だ湿る目元を指で押さえていた。

先輩は、ふぅ、と息を吐くと、寒さと緊張で震える俺の右手に指を絡めてくる。

柔らかくて温かい手が俺の手を包み込んだ。

 

先輩の方を見ることができなくなり、俺は思わず顔を逸らしてしまう。

 

チラリと横目で先輩を見ると、先輩は何かを懐かしむかのように、どこか遠くを見つめていた。

 

 

 

「もし私が思っていることを言ったら比企谷くんとの関係は壊れちゃうかもしれない」

 

 

 

ぽつり、と呟いたその一言はスッと俺の中に入ってきた。

 

繋いでいる手からは微かな震えが伝わってくる。

 

 

 

「本当は要点をまとめて話せればいいんだろうけど、なにから話せばいいか分かんないの。だから最初から全部話すね。聞いてくれる?」

 

 

 

少しだけ先輩が手を握る力が強くなった気がした。

 

思わず先輩の顔を見ると、先程までとは違い、その濡れた瞳には先程までの揺らめきはなく、どこか一種の覚悟すら感じる。

 

あぁ、そうか、と俺はふと思う。

 

きっとこれからこの人が言う事は、ほんの一日、二日考えた位の事ではないのだ。

受験というプレッシャーに追い詰められながらも、悩み、苦しみ、否定と肯定を重ねながら、何日も、何日もかけて出した結論なのだ。

 

 

それと同時に俺はなんて馬鹿なんだ、と自分を罵りたくなる。

 

いつまでもこの関係が続いて欲しい、だなんて心のどこかで思っていた。

 

そんなことあるわけがない。

先輩は分かっていたのだ。

 

 

先輩が卒業したら、俺と先輩が何度メールをしようとも、何度一緒に出かけようとも、それは今までとは違うなにか別の関係なのだ。

 

だから言うのだろう。

この居心地のよいぬるま湯のような関係に終止符を打つために。

 

 

それなら俺も覚悟を決めなければならない。

 

人との関係なんていらないと思っていた。

でも先輩は優しく、でも時には強引に俺との関係を創りあげた。

 

言っても伝わらないかもしれない。言ったら壊れてしまうかもしれない。

 

それでも聞いて欲しい、と。

 

全部聞こう。全部受け止めよう。

言い訳や考え込むのは後でいくらでもできる。

 

 

俺は首を僅かに縦にふった。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「中学2年生頃かな、私初めて男の子に告白されたの。

告白されたのは初めてだったし、相手の男の子もかっこよかったし、何より私に告白してくれたのが凄く嬉しかった。

 

だから彼に聞いてみたの。

 

『私のどこが好きになったの?』ってね。

そしたらその男の子は『鹿波はみんなに優しいし、かわいいから、かな?』って言ったの。

 

なんだかそれを聞いた瞬間、嬉しかった気持ちが一気に冷めちゃった。

 

あぁ、この人は私じゃなくても優しくてかわいい子だったら誰でもいいんだなって。

私のことなんて見てないんだな、って思っちゃったの。

 

きっとこの人と付き合ってもこの人の事は好きになれないし、何かあってもこの人は私を守ってくれないなって。

 

そしたら、いつの間にか『男子に自分を可愛く見せる』っていう仮面を作り上げてた。

 

いつかこんな偽物で固めた仮面を顔に貼り付けた私の下にある、本当の私を見てくれる人が現れてくれないかな、って期待してね。

 

 

でもそんな人は現れなかった。

 

やっぱりそんな人なんて居ないんだ。もう諦めようかな。って思った時だったの。

 

 

たまたまその日は宿題をやってこなくて、居残りさせられて、終わった宿題を職員室に提出しに行ったの。

 

 

 

そこで比企谷君の話を聞いたんだ。

 

なんでも入学式の朝に車に轢かれそうになった犬を助けて逆に轢かれた人がいるって。

 

なんか運の無さに哀れみを通り越して感動しちゃったよ。

 

でもね、この人なんじゃないかな、とも思った。

 

 

 

それで比企谷君を探してたんだけど全然見つからなくてさ、大変だったんだよ?

だって、一年生に聞いてもみんな知らないっていうんだもん。

 

 

いろんな場所を探して、いろんな人に聞いて、それでようやくここで君を見つけたの」

 

 

 

そう言うと先輩は、キュッと繋いでいた手を握って、視線を俺へと向けた。

 

 

「初めて会った時さ、比企谷君すっごい嫌そうな顔をして私のこと見てたよね。

 

なんだかもうそれだけでわかっちゃったの。

 

あぁ、この人は私の上っ面なんか関係ないんだなって。

 

なんだか私それだけで舞い上がっちゃってさ。

自分から男の子とメアドなんて交換したことないのに交換しちゃったりして。

 

しかもその日にデートにまで誘ったりして。

 

 

そして君と話すたびに君のことが好きになっちゃった。

 

私ね、比企谷君と初めてデートした日、君に告白しようと思ったの。

 

そしたら言う前に遮られちゃった。

 

 

 

 

その時初めて気がついたの。私自惚れてたんだって。

ほんとバカだって。

 

相手の事を知った気になって、上辺だけを見て、自分の中で作り上げた相手が好きになってた。

 

そんなもの私が1番嫌いだったはずなのに。

 

 

家で思いっきり泣いちゃったの。

今までで1番自分のことを嫌いになった。

もう比企谷君に会えないとすら思ってた。

 

 

でもそうしたら君の方から会いに来てくれた。

君が私に『よかったらまたあそこに来てください』って言ってくれたの覚えてる?

 

それからかな、私から君のことをもっと知ろうって思ったのは。

 

いつも誰かに本当の自分を見つけて欲しいって願ってた。

でも今度は私から誰かのことを知りたくなった。

そして、比企谷君の新しい一面を知るたびに比企谷君のことを好きになっていったの。

 

 

わんにゃんショーや花火に行ってる時は幸せで胸がいっぱいだったんだよ?

 

 

 

でもね、本当はここで君と2人でたわいもない話をしながらご飯を食べてるのが1番幸せだったの」

 

 

 

いつしか辺りは暗くなり始め、冬の寒さが一層際立ってくる。

吐く息も白く、寒いはずなのだが、少しもそうは感じていない。

 

 

 

「比企谷君、私はね、比企谷君と一緒にいたいとか、話していたいとか、手を繋いでいたいとか、比企谷君としたい事やして欲しい事、してあげたい事は山のようにあるよ。

 

でもね、私が本当に欲しいのはそんなものじゃないの。

 

きっともっと不確かな何かなんだと思う。

 

 

 

誰かと一緒にいる時間かもしれない。

その時の空間かもしれない。

誰かとの関係性かもしれないし、その相手そのものなのかもしれない。

 

 

私が欲しがってるそんな不確かな何かを比企谷君ならなんて呼ぶ?

 

 

私はね、そんな不確かな何かの先にいる相手が比企谷君だったらいいなって思ってる。

 

 

 

 

私はやっと気付いたの。

 

 

 

理解されたいんじゃない。

相手の事を理解したいんだって。

 

比企谷君の事を知っていたい。もっと知りたい。わかっていたいの。

 

 

醜い願望だってことはわかってる。

 

でも、でもね……もし、比企谷君もそう思ってくれるなら。

 

お互いにそう思えるのなら、私は……わたしは………」

 

 

そう言いながらとめどなく流れる涙を必死に拭う彼女が、俺には何故か遠い存在に見えた。

 

 

言っている事は支離滅裂で、ただの感情論なのかもしれない。

それでも先輩の言ったことは、彼女自身の心の叫びなのだ。

何日も考え、苦しみ、自問自答を繰り返して辿り着いた答えなのだ。

 

 

それならば俺も応えなければならない。

 

 

 

彼女の告白に……

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

先輩と別れて、誰もいない冷たい廊下を1人で歩く。

足音がこだましてやけにうるさく感じる。

 

先程までとは違い、室内にもかかわらず、やけに寒く感じる。

 

 

 

誰にも会わないまま下駄箱に着くが、やはり下駄箱にも誰もおらず、ひっそりとした空気が流れていた。

 

 

 

今日はもう帰って寝よう。

 

ガラス扉から僅かに見える外の景色を見ながら、靴を取り出そうとした時だった。

 

コツン、と指先に何かが当たった。

見れば、小さな包みが俺の靴の上に鎮座していた。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

思わず出た声が誰もいない校舎に微かに響く。

 

そっと包みを持ち上げると、几帳面に折りたたまれたルーズリーフの切れ端が出てきた。

 

包みを小脇に抱え、恐る恐るその簡易的な手紙を俺は開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チョコレート、よかったら貰ってください。

 

別に比企谷君に直接渡すのが恥ずかしかったから下駄箱に入れたわけじゃないです。

 

勘違いしないように。

 

三神美香

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ウブかっっ!」

 

 

 

校舎に俺の声が響き渡った。




いかがだったでしょうか?

ちまちまと書いてはいたのですが書きかた忘れてますね……

相も変わらず下手くそですみません(>_<)
精進します(。-_-。)

投稿が遅れた理由としては新生活が以外と大変でして、また、一応美大生なので、課題等が大変でした(。-_-。)
だいぶ落ち着いてきましたので、週一ペースくらいで更新を再開できたらな、と思っています

また、投稿していない間にも、感想や応援等くださった方々ありがとうございました(。-_-。)
感想など頂くたびに頑張らなきゃと奮起することができました!感謝しています!

残すところあと5話も無さそうです
そう思うと少し寂しいです笑

しっかり丁寧に書き上げたいと思っています
読んでくだされば幸いです

次回は三神先輩回です!たぶん!
頑張りますよ!!!笑

感想や評価等お待ちしております
久しぶりの投稿にもかかわらず読んで頂きありがとうございました(。-_-。)


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彼に彼女は過去を告げる。前編

こんにちは大和天です!

ほんとにお久しぶりです!
三ヶ月ぶりくらいでほんとにすみません(。-_-。)
なんとか書き上げましたのでよければよんでください

それでは久しぶりの38話ですどうぞ!


 

 

 

 

ガタンガタンと車体は揺れ、窓の外の景色は足早に移り変わっていく。

車体が揺れるたびに、つり革につかまった俺の体もグラグラと揺れる。

 

 

あの日、最後に先輩に会ったあの日から、俺の中の何かがグラグラと揺れている。

涙で頬を濡らしながら告げた先輩の気持ちに俺は答えを出すことができるのだろうか。

今まで感じることのなかった感情が俺の中にグルグルと渦巻いている。

 

 

 

電車はいつしか速度を落とし、車掌が停車駅を告げるアナウンスが流れ始める。

 

プシュッ、という音とともに扉が開き、乗車していた人が吐き出されると入れ替えに、冷気が車内へと入っていく。

 

 

人混みに紛れるように改札へと向かう階段を降り、切符を通して改札を出る。

 

目的地へと進む足取りは重く、だんだんと進んでいるのかもわからないようなスピードになっていく。

それでもやっとの事で待ち合わせ場所である海浜幕張駅前の丸い木のもとへと着いた。

 

しかし、困ったことに待ち合わせより大分早く着いてしまった。

どこから伝わったのか、昼前から小町が溢れんばかりの早く行けオーラを出していたので、予定より早く家を出てしまった次第である。

 

だいたいなんで冬なのに待ち合わせ場所が外なんですかね?

 

そんなことをグチグチと考えながら、首に巻いたマフラーに口元を埋めると、再びあの日のことを思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

コミュニケーションの内、言語によって行われているのは3割程度だという。

 

では残りの7割はなんなのか。

 

 

コミュニケーションの大部分を占めるのは目の動きやちょっとした仕草だと言われている。

 

つまり、人とコミュニケーションをとるならば直接顔と顔を合わせなければ本来の3割程しか伝わらないということである。

 

この事からメールなどは、とても不完全なコミュニケーションの仕方であり、メール機能など無くなればいいと俺は考えている。

 

 

俺はこう結論付けると、頭を抱え込むようにして見たくない現実へと意識を戻した。

 

 

 

「ぐぬぬ……」

 

 

 

帰ってきて早々、俺は机に肘をつきながらスマホの画面に映る1通のメールを睨みながら悩んでいた。

 

 

『こんにちは三神です。チョコレート受け取りましたか?別にホワイトデーのお返しとか要らないので日曜日の2時に海浜幕張に来なさい。来なかったら……分かってるよね?』

 

 

 

こ、こえぇよまじで!

だいたいどこで俺のメアドをゲットしたんだよ!

知ってる人なんて数えるほどしか居ないのに……

俺のプライバシーはどこへ行ったのだろうか……

 

 

 

先輩のからの全てを曝け出すかのような告白を受け、妹以外からバレンタインにチョコレートを貰うという、人生で初めての事が2回もあっただけでもういっぱいいっぱいなのに、今度はこのメールである。

 

なんだか運や悪運を全部使い果たす勢いである。

 

 

取り敢えず今日は金曜日だ。

まだ明日がある。

 

できないこと、やりたくないことは先延ばしに。人類が生まれてからこの方ずっとやってきたことだ。

なんなら国のトップだってやっている。これは逆説的に全国民にそうやれと言っていると捉えて間違いない。

 

なんなら社会に出るのも先送りにしたい。

というか、専業主夫になって一生社会に出ないまである。

 

 

 

俺はそう結論付けると、小町の作った晩飯を食べるべく、部屋を出てリビングへと向かうため、冷気の漂う廊下を歩く。

 

 

リビングの扉を開けると、美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。

 

キッチンでは、マイエンジェル小町な鍋の前で鼻歌を歌いながら楽しそうに調理をしていた。

 

 

 

「小町、晩飯できたか?」

 

 

 

俺の問いかけに小町は顔を上げることすらなく、もうちょっと〜、と答える。

 

小町ちゃん?こっちをチラリとも見ないのは料理に集中してるからだよね?お兄ちゃんを蔑ろにしてるわけじゃないよね?お兄ちゃん分かってる。

 

 

心に少しだけ大ダメージを受けながらもモソモソと炬燵にあしを入れた。

あれ、炬燵に入ったからかな、目から汗が……

 

だいたい少しだけ大ダメージってどっちだよ。

 

そんな1人寂しく脳内小芝居をしていると、あしの上にポフッと重みを感じた。見れば我が家の飼い猫のカマクラが体を丸めて、フンスと鼻を鳴らしていた。

 

どうやら撫でろといることらしい。

普段は近寄ってすらこないのにこういう時に限って甘えてくる。

 

 

 

「おにーちゃんっ!」

 

 

 

カマクラをもふっていると料理ができたのか小町が呼ぶ声がした。

見上げると小町が腰に手を当てて、俺を見下ろしていた。やだかわいい。

 

 

 

「んだよ」

 

「お兄ちゃんはやく美香先輩に返事返してきなさい。じゃないとご飯無しだからね」

 

 

 

フンス、とカマクラの様に鼻を鳴らしながらなぜか自慢気に言う小町が、ピッと俺の部屋へと続くリビングの扉を指差していた。

 

 

 

「お兄ちゃんのことなんて全てお見通しなのです!」

 

 

 

俺はカマクラをそっと傍に下ろし、炬燵を出ると「お兄ちゃんのこと分かってる小町って小町的にポイント高いっ!」などと言っている小町の頭に、微笑みながらそっと手を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「犯人はお前だったのか、小町」

 

 

 

そして俺は思いっきり小町の頭をつかんだ。

 

 

 

「い、痛いよお兄ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

あれからメールの返事をさせられ今に至るという訳だ。

丁重にお断りさせてもらおうかとも考えたのだが、後が怖いのでその考えは一瞬で霧散した。

 

 

ふと時計を見ればもうあと数分で待ち合わせの時刻である。

時計から顔を上げて駅の出入り口をみると、見知った顔が手を振りながら歩いてくる。

 

 

 

「おっまたせ〜!なに食べに行く?ケーキ?ドーナツ?パフェ?」

 

「食べることしか頭に無いのかよ……」

 

 

 

黒の細身のパンツとベージュの薄手のコートに身を包んだ三神先輩がキラキラと目を輝かせながら俺に問いかけてくる。

 

しっかしこの人も美人だよな。

そこはかとなく香る残念さが玉に瑕だが……

 

 

「ほら、いくよ比企谷くん!」

 

 

 

俺が失礼なことを考えていた事には気付かずに、三神先輩は俺の肘あたりをガシッと掴むと半ば引きずるように、目をつけていたのであろう店へと向かい始めた。

 

 

 

「はぁ……ちゃんとついていきますから離してください」

 

 

 

そう言って手を離してもらうと、俺はウキウキと店へと向かう三神先輩の後ろをトボトボと歩き始めた。

 

 

 

「肘のつかみ方が男らしすぎるんだよなぁ……」

 

 

 

そう呟いた俺の声は誰にも聞かれることもなく寒空の下へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

目の前にあったケーキは無くなり、未だ他愛もない話しかしておらず、俺はなんのために呼ばれたのかと疑問を抱く。

まさかほんとにケーキが食べたかっただけなのだろうか?

 

まぁ、俺が支払いをすると言った途端にケーキを3つたのんだのを見るあたり、この人は本当にケーキが食べたかっただけなのかもしれないが……

 

 

 

満足そうな顔でコーヒーを啜る三神先輩をチラチラと見ながら俺もコーヒーを口に含んだ。

 

三神先輩はコトリ、とカップを置くと、何故だか少しだけ微笑んだ。

 

 

 

俺が口を開くより少しだけ早く三神先輩が言葉を発した。

 

 

 

「香奈に告られたんでしょ?」

 

「……はい」

 

 

 

なんとも言えない雰囲気に、なにも疚しい事などないのに、何故だか少しだけ言いよどんでしまう。

 

 

 

「そっか」

 

 

 

三神先輩は消え入りそうな声でそう呟くと、目尻を少し抑えた。

 

 

呆気にとられてなにも言えないでいる俺に、三神先輩は視線を合わせた。

 

強い意志を感じる、言うなれば覚悟を決めたかのような視線から俺は目を離すことができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷くん、聞いて欲しいの。私の過去と勝手な願望を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った彼女の目からは一粒の涙が伝っていた。

 

 




いかがでしたでしょうか?

ちょっと書き方忘れてたりしたところもあって大変でした笑
自業自得なんですがね(笑)

続きもはやく書きたいと思ってます(。-_-。)

更新してない間にも感想や評価をくださった方、ほんとうにありがとうございます!!
励まされてました!


感想や評価、お気に入り等お待ちしております

読んで頂きありがとうございました!


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彼に彼女は過去を告げる。後編

こんにちは大和 天です!
久方ぶりの投稿となりましたすみません!

ゆっくりとではあると思いますがしっかり最後まで書き続けますので見守ってもらえればありがたいです

それではお久しぶりの39話ですどうぞ!


 

 

 

 

 

頬を何かが伝ったような気がした。

 

 

 

触れてみると僅かに指先が湿っていた。そこで私が涙を流していたことに気づく。

 

 

見ると、目の前にいる少年は何に驚いたのか、いつも気怠げな目を大きく見開いていた。

 

 

妙に恥ずかしさを感じた私は目元を粗くこすり、いつもより少しだけ深く息を吐く。

目の前の少年は、なぜか普段あまり見せない年相応の表情をしていて、すこし面白く感じてしまう。

 

 

今なら少しだけなぜ香奈が比企谷くんの事を好きになったのかも分かる気がする。

 

 

なぜかそんな事を考えながら、私は過去へと記憶を遡らせていく。

 

 

 

 

 

 

あの日、私が救われた日。

 

 

香奈と初めて会った日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私さ、いじめられてたんだ」

 

 

 

ぽつりと呟いた私の言葉に、比企谷くんは先ほどよりも更に目を見開き、今まで見たこともない顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

ジリジリと肌を焼くような日差しが容赦なく降り注ぐコンクリートの上を、公園へ向かって小走りで走って行く。

 

 

朝は眠たい目を擦ってラジオ体操にも行ったし、朝ごはんを食べた後は今日の分の夏休みの宿題もちゃんとした。

いつもと変わらない一日。これまでもこれからもずっと続いて行くであろう毎日。

 

 

 

そんな風に思っていられるのも今日までだなんて事は微塵も考えていなかった。

 

 

 

公園に着き、五段程しかない階段を駆け上がると、いつもの様に友達が集まっている。

 

おーい、と手を振りながら走って行くと、少しだけいつもと様子が違った。

ひそひそと額を寄せ合って話し合っていたみんなは、私の声に反応して顔を上げると、少しだけ気まずそうな顔をしていた。

 

 

 

「え、どしたのみんな?」

 

 

 

みんなの顔が、何かあったのだろうかと不安を掻き立てる。

なぜだかやけにセミの鳴き声が大きく聞こえた。

 

みんながもじもじとして何も言わない中、クラスの中でも少しやんちゃな体の大きな男の子、所謂、ガキ大将と呼ばれるような男の子が顔をニヤニヤとさせていた。

 

 

 

「ねぇ、なんでニヤニヤしてるの?」

 

 

 

苛立ちと不安で、少し突っかかる様にその男の子に言うと、その男の子は意地悪くにやりと笑うと、大きな声を出した。

 

 

 

「お前ん家ってお寺なんだろ?昨日テレビでやってたぜ!お寺にはオバケが出るって!お前オバケと一緒に暮らしてんだろ!オバケと一緒なんて気持ちわりー!」

 

「っ!ちっ、違う!うちは神社だし!」

 

「そんなの一緒だろ!みんな、こいつと一緒にいるとオバケが出るぞー!」

 

「違うっ!」

 

 

 

 

 

何を言っているのか分からなかった。

 

 

違うと否定しても、聞く耳も持たない。

 

 

違う。違う。違う。

 

 

 

必死になって否定すればするほど周りからみんなが遠ざかっていった。

 

 

 

 

遠巻きにみんなが私の事を、今まで見たことのないすごく嫌な顔で見ていて、一つだけ分かった事は、もう何を言ってもダメなんだと言う事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

あの日から友達だった子には嫌な目で見られ、3日後には外に遊びに行く事をやめた。

 

 

それでもお使いを頼まれた時や、習い事だった習字に行く時は嫌でも外に出る。

 

あの時公園にいた子には遠巻きにひそひそとされ、時には悪口を言われる時もあった。

 

 

 

 

聞いた話によると、どうやらあの日の前の夜に、夏休み恒例の怪談話のテレビがあったらしい。

 

お寺でオバケが出るといった、どこにでもあるありふれた話。

 

 

 

 

 

 

何日も何日も部屋で泣いていた。

 

神社の家に生まれたくなんて無かった、と父親に喚き散らすと、凄い剣幕で激怒された。

 

 

恨めしかった。

 

世界中の不幸を1人で背負っている気分だった。

 

 

お母さんは優しい人で、泣いている私に大丈夫よ、と言って私が泣き止むまでいつまでも頭を撫でてくれていた。

 

 

夏休みが1日減るごとに憂鬱になり、それが学校が始まる日に近づいているということが、私を更に憂鬱にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日から二学期が始まる。

相変わらず容赦のない日差しが、両手に自由研究やらを抱え、通学路を1人で歩く私に照りつける。

 

 

下駄箱で家から持ってきた上靴に靴を履き替えると、私の教室へと向かうべく階段を上がる。

その一歩一歩が私を憂鬱にさせていく。

 

 

自分の教室の扉の前に着くが、この数歩先の空間がとてつもなく怖く感じてしまう。

もしかしたらもうみんな忘れているかもしれない。

 

でも、でももし、みんなに言われたら?遠目に避けられ、陰口を言われたら?

 

 

 

そう思うと足がすくみ、全身からどっと汗が噴き出す。

 

 

自分じゃどうしようもできなくて心の中がぐちゃぐちゃになる。

 

自然と涙が溢れてきたその時だった。

 

 

 

「どうしたの?」

 

 

 

突然声をかけられたため、ビクリと体が跳ね上がった。

 

見ればそこには見たことのない可愛らしい女の子が不思議そうにこちらを見ていた。

 

 

 

「だ、だれ?」

 

 

 

その女の子が口を開こうとした時、先生が廊下を小走りで走ってきた。

 

 

 

「鹿波さんダメでしょ廊下を走ったら?転校して来て嬉しいのはわかるけどね?」

 

「はーい!ごめんなさい先生!」

 

 

 

先生から鹿波さんと呼ばれた女の子は、悪びれる様子もなく謝るとニコニコとこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

「はい、それじゃあまた明日も元気に学校に来てくださいね。さようなら」

 

「せんせーさようなら!」

 

 

 

元気のいい声とともに教室がいっぺんにガヤガヤと騒がしくなる。

 

 

 

原因はもちろん転校生である。

 

親の都合で転校して来たという『かなみかな』のおかげで、私はほとんど誰の目にも付かずに教室に入ることができた。

だれの目から見ても可愛い転校生の登場で、クラスのみんなどころか、他のクラスから覗きに来る人までいる始末だ。

 

 

学校は半日で終わったためまだ太陽は照りつけていて、何もしていなくても汗が出そうである。

誰かに何か言われる前に早く帰ろう、そう思った時だった。

 

 

 

「ねぇ、お名前なんていうの?」

 

 

 

見ればそこには転校生である『かなみかな』の姿があった。

 

 

 

「えっと、わたしは──」

「おいかなみ、そいつといたらオバケが出るぞー!」

 

 

 

名前を言おうとした私の声は、大声によって遮られた。

 

転校生は意味がわからなかったのか、小首を傾げている。

 

 

 

「オバケ?」

 

「そうだぜ!そいつの家お寺だからオバケ出るだぜ!」

 

 

 

そう得意げに話すのは、あの時公園にいたガキ大将だった。

 

 

 

「ち、ちがう!だから私の家は神社で──」

 

「そんなもんいっしょだろ!」

 

 

 

そうだよなぁ、と周りにいる男子とニヤニヤする様を見て、夏休みが嫌でも思い出される。

 

 

 

また夏休みの様になる。

 

 

 

そう考えただけで全身から汗が噴き出してきた。

またあの時と同じ様になる。そう思うと手が震え、涙が出そうになった。

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、不意に私の手が温かいものに包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでそんなこと言うの!」

 

 

 

突然の大声に教室が静寂に包まれた。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

思わず口から言葉が漏れる。

 

なぜなら、目の前の転校生が私の手を握り、大声を出していたのだから。

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

私はそこまで話すと、すっかり冷めてしまったコーヒーを口に含んだ。

 

 

 

「……それで、どうなったんですか?」

 

 

 

比企谷くんはなぜだか神妙な顔つきで聞いてくる。

 

そんな彼に少しおかしくなり、口角が少し上がった。

 

 

 

「そりゃあもう大変だったよ。その男子には大声で論破しまくった挙句に『あなたみたいなやつとは絶対友達にならないからっ!』って半泣きの相手をぶった切って、さらに私には『神社行きたいっ!』とか駄々こねる始末でさ」

 

 

 

 

今でもあの光景は鮮明に思い出せる。

 

この事を香奈に言う度に顔を真っ赤にして『それは忘れて!』って言うから面白くて仕方がない。

 

 

 

店員さんにケーキのお代わりとコーヒーを頼み、お冷やを少しだけ飲む。

 

目の前で比企谷くんが「まだ食べるのかよ……」とか小声呟いていたが、それちゃんと聞こえてるからな?

 

微笑みかけてあげると、口の端をヒクヒクとさせて、決して目を合わせてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互い何も話さず、時間だけが過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はテーブルの下で指を遊ばせながら静かに考える。

 

 

彼に伝えたいのだ。

 

自分でも馬鹿馬鹿しいことだと分かっている。

こんなのは私の醜い願望であって、本来なら彼に言うべきではないのだ。

 

 

それでも、それでも彼に伝えたい。

 

 

 

「……今思えばさ」

 

 

 

顔をうつむかせ、何かを考えていたであろう比企谷くんは私の声に反応して顔を上げた。

 

 

 

「今思えばあんなのはイジメなんかにはならないと自分でも思うよ。でもね、あの頃の私は自分じゃ何にもできなかった。あのままだったらきっと私はどこか壊れちゃってたと思う。」

 

 

 

 

別に香奈の為を思ってとか、比企谷くんを試しているとか、そんなそこらへんにうようよいる変なリア充擬きの様な恩義せがましい事をしようと思っているのではない。

 

 

 

 

「別に香奈に助けられたからとかそんなんじゃないの。結果的に見れば私は助けられたかもしれないけど、そういう事じゃないの。私は、あの時、あの場所で香奈に『救われた』の」

 

 

 

 

 

ただ伝えたいのだ。

 

 

香奈が思い慕っている彼に、私が香奈に想っていることを。

 

 

 

 

「香奈が比企谷くんになんて言ったかは知らないよ?でも、でもね、それが香奈が比企谷くんと今まで過ごしてきてやっと見つけたものだと思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

自然と手に力が入った。

わずかに震えているのが自分でもわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「別に私は香奈が比企谷くんに振られようが知ったこっちゃない。むしろざまあねぇなって笑ってあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、これはただの私の醜い願望でしかないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから比企谷くんも自分のことを騙さないで、君の言葉を香奈に伝えてあげて?」

 

 

 

私はできる限りの笑顔でそう言った。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

別にこんなシーンいらなかったんじゃないか、と思われる方もいらっしゃるとは思いますが、この作品を考え始めた当初からこの話の構想はあり、どうしても書いてしまいました。
気に入らなければ申し訳ありません。

話は変わり、お気に入り2000件、UA30万ありがとうございます!
なかなか更新されない今作ですが気長にお待ちいただければ幸いです(>_<)

感想や評価等お待ちしております!
読んで頂きありがとうございました!


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彼と彼女は交差する。

やあ、ようこそ、最新話へ。
このお話はサービスだから、まず読んで落ち着いて欲しい。

うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
なにせこの小説が始まってから今日最新話が投稿されるまでに鬼滅の刃が始まって終わったんだ。きっともうこの小説のことは忘却の彼方だとは分かっているんだ。

でも、この小説をお気に入り小説リストの1番上で見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
コロナで殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この最新話を書き上げたんだ。

じゃあ、最新話をどうぞ。

(意訳)遅れて超ごめんなさい!!!!!


 

 

 

 もう真っ暗になった部屋の中で、布団を被り一人で天井を見上げる。

 

 ここ何日か眠れない日が続いている。

目を瞑っても、どんどん頭のが冴えてくるのだ。

 

 浮かんでくるのはあの日からずっと同じ。

 

 それほど印象的だったのだ。

 あの人があれほど感情を露わにしてこぼした言葉は、ふと気付けばいつの間にか脳内で何度も何度もリピートされる。

 

 それを掻き消そうと本を読み、勉強をして、テレビを観るが、一向に頭に入ってはこない。

 何をしてどこにいようとも、三神先輩に呼び出されたあの日のことが、頭の中でぐるぐると渦巻いていた。

 

 

 

「だから比企谷くんも自分のことを騙さないで、君の言葉を香奈に伝えてあげて?」

 

 

 

 頬を濡らしながら薄ら微笑んでそう言った彼女の顔が、頭の中にずっと残っている。

 

 自分を騙してなんかいない。いつも自分に正直に、やりたいことをやっている。

 そんなことをしてなんかいやしないのだと声を大にして叫びたい。

 

 

 

 だが、なにかが胸の奥に引っかかり気持ちが悪い。

 ドロドロとした嫌な感情などでは無く、もっと単純で簡単なナニカ。

 

 

 この胸のつっかえの正体は分かっている。

 

 

 それはかつての俺が確かに捨て去ったものであり、しかし今なお胸の奥深くで、僅かに残された欠片となりながらも燻り続けているものだ。

 

 

 

 

 

 そんなものは絶対にないと分かっている。

 

 

 

 

 でも、でももしそれが本当にあるならば、と考えると、俺はその欠片を踏み躙り、火を消すことができないでいる。

 

 

 幼く、未熟だった頃。捨てようと、消し去ろうとしたものは、微かにだがまだ確かに残っている。

 

 

 

 先輩は、鹿波香奈は、そんな俺が無意識に心の片隅で探し求めているものの切っ掛けを見つけたのだ。

 それが柄にも無く羨ましく思ってしまう。

 

 仮に、懇切丁寧に手取り足取り教えてもらい彼女が見つけたものを手に入れることができたとしても、それは決して俺の求めているものとは何かが違う。同じものであるはずは無いのだ。

 

 

 鹿波香奈は悩み、苦しみ、否定と肯定を繰り返し、そして最後に残ったのは他人には見せられない醜いもの。

 それを求めた。渇望した。

 

 

 俺は知ってしまった。知ってしまったのだ。

 

 

 

 

 ── 俺がかつて欲したものは確かにあるのだ、と。

 

 

 

 

 

「……はっ、ある訳ねーじゃねーか」

 

 

 自分に期待をさせたくなくて、否定的な言葉を口にした。

 

 しかし言葉とは裏腹に、口許には自分でも見たことがないような笑みが浮かんでいるのが感覚でわかった。

 いつぶりだろうか、こんなにも嬉しくて笑ったのは。

 

 

 

 気がつけばカーテンの隙間から薄い光がか細い線となって部屋を分断している。

 

 布団から片足を出すと予想よりもずっと部屋は冷え切っていた。

 思わずブルリと身を震わせながら、冷たい床をあまり踏まぬようにそっと体を動かす。

 

 

 ガラス越しに窓から忍び込む冷気に一瞬、手が止まった。

 それでもそっとカーテンの端を摘み、窓から入る光を大きくする。

 

 

 

 空には今にも溶けて消えてしまいそうな月が、淡く輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

 見れば、空から何かが降っている。

 

 別に「親方っ!空から女の子がっ!」なんてファンタジーなものではなく、雨にしては僅かに動きが緩慢で、雪にしては重たく湿っぽい。

 

 そんなどっちつかずの何かが、音も無く教室の窓ガラスに当たっていた。

 そして、まるで何事も無かったかのように、一切の痕跡をも残さずに消えていく。

 

 

 授業中だというのに、ここ数日、教室内はどことなく落ち着きがない。

 きっとそれは、時折体育館から微かに聞こえてくるマイクの声であったり、ピアノの音色のせいなのだろう。

 

 

 2月ももう明日で終わる。

 

 この一年、思い返せばあっという間だったように思う。

 しかし、こんな高校生活があと2年もあると思うと果てしなく長く感じてしまう。

 

 彼女との間にある2年という歳月は、どうしても俺の中で確かな隔たりとして存在してしまう。

 

 30や40になれば2歳差などたいした事では無くなるのだろう。

 

 

 しかし今、この時に限れば、その差はどんなに足掻いても越えられない高く聳え立つ不可視の壁となる。

 

 足りない。全てが大なり小なり足りないのだ。

 経験が、知識が、余裕が。俺の場合、常人なら本来持っているものも色々欠けている自覚がある。

 

 

 だが、そんな俺をあの先輩は好きだと言ってくれた。

 

 

 一目見て、将来性が、なんとなく。そんな言葉を使ってくれたならば、逃げ道はいくらでもあった。勘違いだと言い切ることができた。

 それでもあの人は、一緒に過ごしたから、俺のことを知ることができたからこそだと伝えてきた。

 

 

 

 

 いつもなら、とらしくない事を考えてしまう。

 

 

 

 俺ではない誰かのため。そう言って自分の願った未来へと舵を取る。

 そこに感情は介入しない。

 

 

 きっとこれまでもこれからも、俺はこのやり方を変えることはほぼ間違いなく不可能だろう。

 

 

 

 しかしそれでも、今回だけはこのやり方は許されない。

 

 支えてくれた、助けてくれた、教えてくれた人がいる。

 見えないところでもたくさんのことがあったのだろう。

 

 でも俺はそんな人に報いる為に、などと欠けらも思わない。俺の為なんかではなく、各々が自分の為に勝手にやったことだ。

 

 

 

 いつだって俺は俺のために。

 

 

 

 結局のところ、俺は嫌なのだ。

 

 

 初めてちゃんと正面からあの人に向き合うのに、他人から言われた物事程度で思考を、過程を、なによりこの気持ちを綺麗にされたくはないのだ。

 

 この気持ちは女の子が憧れる御伽話に出てくるような綺麗なものなんかじゃない。

 

 浅ましくて独善的で、いっそ傲慢だとさえ思う。

 

 こんなぼっちで最下層の人間が抱くには烏滸がましいとすら思う。

 

 

 

 それでも、あの人が、鹿波香奈が欲したものに応えるとするならば────

 

 

 

「比企谷、問の答えは?」

 

 

 

 一瞬で意識が覚醒した。授業中だというのに考え事に集中する余り、周りのことを意識していなかった。

 

 見れば何人かがチラチラとこちらに目を向けてきていた。どうやら早く答えろということらしい。

 

 

 

「どうした比企谷、この問題の答え、わからないか?」

 

 

 

 国語の教師だというのに白衣を着ている先生と目が合う。その目にはなぜか、ただ生徒に教科書の問題を問う以外の何かがあるように思ってしまった。

 

 余り時間もないのでさっと問題に目を通す。

 あぁ、成る程ね。オーケーオーケー。これでも国語は学年三位を取るくらいには優秀なつもりなので、この程度の問題なら何とかなる。

 

 ガラガラと音を立てながら椅子を下げて立ち上がる。

 

 

 

 Q.傍線部における主人公の心情を的確に表している言葉を文章中から抜き出し、六文字で答えよ。

 

 

 

 

 人は度々、他人の気持ちを己の願望を以ってして己の都合にいいように解釈したがる。

 

 そうして他人に押し付けるのだ。

 

 

 あなたはこう思っている。

 こう思っていてくれ。

 

 あなたはこんなふうには考えないでしょう。

 こんなふうに考えないでくれ。

 

 あなたらしい。

 あなたはこうあるべき。

 

 

 他人から押し付けられた、他人から見た自分が無垢だった自分と混ざり合っていく。

 

 

 それは良いことなのか悪いことなのか、分岐点に立たされるまで解らない。

 しかしもし悪い方へ進んでしまった時、取り返しもつかず、責任は全て己に押し寄せてくる。

 勝手に失望され、好き勝手に去っていく。

 他人を変えてしまうという自覚無くして、他人を少しずつ変質させていく。

 

 そのままを肯定してやれず、少しの粗が致命的な欠陥だと罵る。

 

 

 それでもそれが他人と関わるという事ならば。

 

 けれども、もし、互いの関係のその先が

存在しているのならば、いや、存在してくれるのならば──。

 

 

 比企谷八幡は僅かばかりの「熱」を持ってこう答えよう。

 

 

 

 

 「わかりません」

 

 

 

 

白衣を着た教師はその美しい顔に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

 ベストプレイスに腰を落とし、手の中でまだ温かい缶を転がす。

 見上げれば先程より少し晴れ間が広がってきたように思う。

 

 季節柄寒いことは仕方なのないことだが、今日という日は少しでも暖かい方がいいと思ってしまう。

 

 

 昨日はあれから放課後に職員室に呼び出され、卒業式が迫る中忙しいであろう先生に一言二言「次は無いぞ」と釘を刺された後、少しいつもより騒がしい校内を後にした。

 

 普段の俺なら学校が休みだなんてウキウキワクワクするところなのだが、生憎今日ばかりはそうもいかず、いつもより遅めに、しかし時間には間に合う様に家を出た。

 

 

 昼も近づいてきた校内で、といっても屋外だが、一人缶コーヒーを飲みながら人を待っているのだ。

 

 どこかの教室からは時折拍手や歓声が上がっているのが聞こえてくる。

 あの中の何人が別れを惜しみ、何人が別れを惜しむことなく新天地へと思いを馳せているのだろうか。

 

 

 

 昇降口や校庭から生徒の声が聞こえるようになってきた。

 

 泣いたり笑ったり。

 抱き着いたり手を振ったり。

 囲まれたり眺めていたり。

 

 一人、また一人と旅立っていく。

 

 穴が空いていく様に人が疎らになっていく。

 

 

 

 

 三本目のコーヒーが空になった頃だった。

 

 後ろから微かに足音が聞こえる。

 

 

 振り返らなくてもわかる。

 もう何度も何度も聞いてきたのだから。

 

 

 

 あぁ、手が震えている。

 歯が噛み合わず小さくない音を立てる。

 

 

 できることならばここからすぐにでも逃げだしてしまいたい。後ろなんて振り向かず、走って家まで帰るのだ。

 多分そうすればかつてない程の安堵を得られる。

 

 そうして一生を後悔して生きていかなければならなくなる。

 

 

 

 足音が止んだ。

 

 

 

「こんにちは、比企谷くん」

 

 

 

 振り向けば、彼女は目尻を少し赤くして、でもそんなことが気にならないくらいに美しく微笑んでいた。

 

 

 

 「……うっす」

 

 

 

 なんだか気恥ずかしくて目を逸らしてしまう。

 目を逸らした先で空を見上げれば、雲の隙間から幾筋かの光が柱の様に降り注いでいた。

 

 視線を戻すと彼女もまた空を見上げていた。

 

 ぼんやりと景色全体を、まるで焼き付けるかのように眺めていた。

 

 強張っていた体から力が抜けていくのが自分でも分かった。

 

 

 

 

 その横顔に声をかける。

 

 

 

「先輩」

 

 

 

 顔をこちらに戻した彼女と視線が交わった。

 

 

 

 

 

 

 

「答え合わせをしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しだけ笑えた気がした。

 

 

 

 




次話はいつ書き上がるか未定。

すまない……本当にすまない…………

あいるびーばっく(小声


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