戦後の鎮守府 (トマト味)
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提督さんと長門さん

夏休みを利用したガキンチョの稚拙な文ですが、興味のある方は自己責任でご覧下さい

※一部文の修正・追加をしました


ここはとある鎮守府

一年ほど前までは多くの人や艦娘で港が溢れ返っていた。

しかし現在はその鳴りを潜め、人の通りも疎らになっている

 

そんな鎮守府の、使われていないとある一室に、少女が一人足を運んだ

 

 

「…この部屋かな?」

 

静かにドアが開かれた。声の主、響(ヴェールヌイ)はどこからともなく向けられている鋭い視線をヒシヒシと感じ、確信する

 

(やっぱり、この部屋に居るようだね)

「…」

 

彼女は大きく息を吐くと、静かに、だが確実に目標《ターゲット》がいる方向へと歩を進める。

薄暗い部屋の中、一歩歩く度に足元で小さく埃が舞い、無造作に置かれたガラクタが幾度となく行く手を塞ぐ。

しかし不自然にガラクタが集まっている大きめの段ボール箱の前に立ち止まると、静かに言い放った

 

 

「司令官、みっけ」

「はは…、やっぱり見つかっちゃたか。響は見つけるのが上手いなぁ」

 

中から現れたのは、堀が深い顔立ちに、しなやかながらもよく鍛えられた身体をした身長170cm程の男、この鎮守府の最高責任者である提督だ

 

彼らは先ほどまで、鎮守府にいる駆逐艦達と間宮券を賭けてのかくれんぼ勝負を行っていた。

仕事を一段落終え、休憩の際にたまたま間宮券が5枚程ポケットの中に入っていたのを思い出した。しかし取り出した所を島風に見つかってしまい、それに続いて六駆、七駆、二一駆、さらにはレーベやマックスにも知られてしまったようで、結果みんなにねだられることとなった。

しかしそれだと間宮券の数は当然合わなくなる。

みんなそれぞれ意見を出し合った結果、響の提案したかくれんぼで提督を見つけたグループが間宮券を獲得する、という話になった。なってしまった。

尚グループは六駆、七駆、二一駆、レーベ、マックス&島風の四グループである

 

それも、発案者である響に見つかった事によって終了したのだが

 

「バレバレだよ、あんなに視線を向けられたら嫌でも気付くさ」

「そんなに視線って分かりやすい物なのか?」

「分かりやすいさ、司令官からの視線なんて特に、ね。どうせなら巻雲のように見つめてもらいたいくらいさ、逆も…ありかな」

「ないかな、うん。今の発言は聞かなかったことにしてっと。ほら、賞品の間宮券だ。六駆の皆で食べるんだぞ」

 

彼女なりのアプローチのつもりだったのだが、聞かなかった事にされてしまった。さらに手渡される4枚の間宮券にはその上を行く誘惑があり、自然と意識がそちらへ向く

 

「…スパシーバ」

 

結局間宮の誘惑に勝てず、姉妹達の分も受け取ると礼を言い走り去って行った

 

「それと他のグループにも『司令官は見付かった』と伝えてくれるかー?俺も見かけたらそう伝えておくからー!」

「ウラズミェートナァァァ!!」

 

走る響の背中に声を掛けたが、どうやら声は届いたようだ。

微笑ましく思いながらその様子を見送ったあと、思い出したかのように部屋を見渡す

 

見ればかくれんぼで妨害に使ったガラクタがあちらこちらに散らばっている。

ふぅ、と一息ついた彼は部屋の片付けを始めたのだった

 

―――――――――――――

――――――――

 

「で、片付けに夢中になり執務再開の時間に遅れた…と」

 

提督は現在執務室で説教を受けようとしていた。なさけない事に、彼は床に正座の状態で頭を垂れている。

目の前にはこちらを見下ろす女性、戦艦長門が目頭を押さえている

 

「まったく、どうして…こう…」

「その、すまなかった…。確かに時間を忘れるなんて軍に所属している身としてあるまじき行為だ。これは俺の落ち度だ、返す言葉も無い」

 

提督は自身の非を自覚していた。故に長門から言われるであろう小言の一つや二つ、三つや四つ、受け入れる覚悟もできている。

しかし彼女から発せられた言葉は以外な…と言う程でもないが、今の状況からすれば十分異常なもので

 

「なぜ私を、この長門を誘わなかった!」

「すまない、時間も守れないなど俺は軍人としての自覚が足りて…ん?えーと、なんだって?」

「なぜ私をかくれんぼに誘ってくれなかったのだと言っている!」

「そっちかい!」

 

思わず立ち上がるも足が痺れて上手く立ち上がれず、結果見事にすっ転ぶ。

龍驤が見れば思わず感嘆したであろうが、そんなことはどうでもいい

 

「はぁ、私も駆逐艦達と戯れ…ゲフンゲフン 間宮券が欲しかったというのになぁ」

「いつつ…、言い淀んだ部分はあえて追求しないが…。んな事言ってもなぁ、参加していたのだって駆逐艦だけだし、戦艦が居るなんて不公平じゃないか?」

 

言い淀んだ部分はあえて追求しないが(大事な事なので二回)。長門はこれでも駆逐艦の子からすれば頼りになるお姉さんだ。誰かのグループに入ろうものなら忽ち(たちまち)長門の取り合いに発展しただろう

 

…奪い合いの最中、緩みきった顔で腕を引っ張られるながもんの顔が瞬時にイメージされたのですぐに脳内から叩き出す

 

 

「そういえば、ビスマルクが先陣切ってレーベ、マックス、島風を引き連れているのを見たぞ」

「あんにゃろめ」

 

―――――――――――――

―――――――

 

「なぁ、提督よ」

「…なんだ?」

 

あの後ぶーたれる長門を宥めてなんとか執務を再開する。とはいっても昔とは違い書類に判子を押していくだけの簡単な仕事だが、書類も残り数枚となり余裕もできた。

故に提督は長門の問いに答える姿勢を見せる。

ちなみに彼は普段からは想像出来ないが、きちんと公私を分けている人間だ。本来ならば執務再開の時間に遅れることなどありあない。遅れたのも今回が初めてである。

…話しが逸れた

 

仕事モードの提督に一瞬、長門は頬を赤らめる。と同時に返事を返したことに驚きも見せる。

しかし言おうとした言葉も忘れない。

スッと瞳を閉じ静かに呟く

 

「…平和だな」

「…そうだな」

「これが、私達の手に入れた平和なのだな…」

 

ちらりと、執務室に置かれている駆逐艦用の艤装を見る。大切に保管されているそれは、見れば至る所に傷があり、まるで砲弾が貫いたかのような大きな穴がある。思えばあれから一年経つのだなと感慨に浸ると共に、ずっと消えない後悔の欠片がほんの僅かに顔を出す

 

「…そう…だな」

 

そう言うと同時に、最後の書類に判子を押す。これで今日の仕事は終了だ。

時間は1330、昼に仕事が終わるなど一年前は考えられなかった

 

「さて、と」

 

提督は立ち上がり、大きく伸びをするとドアの前まで歩いて行く。そしてドアノブに手を掛けて言う

 

「時に長門よ、ここに余った間宮券が一枚ある」

「!」

「君さえ良ければご馳走するが、どうだろうか?」

「い、いいのか?」

「長いこと秘書艦やってもらってたからな、これくらいあってもお釣りが出るくらいだよ」

 

―――あの時から何度も、な

 

そう言って、長門に間宮券を渡す。ふと触れた長門の掌は、意外なほどに柔らかく、1年前までは武器を持って海に出ていた事をまるで感じさせなかった

 

「…?どうかしたか?」

「いや、なんでもないさ」

 

すぐに手を引き、再びドアノブに手を掛ける。先ほどから触れていたドアノブが、また違った暖かさを感じさせているような気がした

 

「…しかし、提督からの誘いとは。これは無碍にできんな」

「からかうなよ」

 

提督がそう言うと同時に彼女はその隣に立つ。心なしか、いや、どう見ても目が輝いている。

そしてドアを開いた瞬間―――

 

 

「アトミラァァァル!見つけたわよ!」

「ぬお!」

「ひゃ!」

 

いきなり目の前に現れたビスマルクが大声で叫ぶ。

突然のことに二人揃って悲鳴を上げ、加えて長門は腰を抜かす。

寿命が10年ほど縮んだ気がした

 

「おい!おま、びっくりするだろうが!心臓に悪いわ!」

「ふふん、そんなことより私達にもマミヤアイスをご馳走しなさい!」

 

そんなことよりって…しかしなるほど、そういうことかと納得する。未だに心臓がバクバクと音を立て続けているが冷静に言葉を返す

 

「おいでっかい暁、鏡見ろ鏡。ルールは駆逐艦限定だろ。それにすでに響に見つかってるから六駆の勝利でかくれんぼは終了デース!」

 

思わず金剛語が出る。別に馬鹿にしてる訳じゃないよ、ホントだよ?

 

「誰がでっかい暁よ!それに長門だってマミヤチケットを持ってるじゃない」

 

そう言って未だに腰の抜けてる長門を指差すビスマルク。確かに、先ほど渡した間宮券をギュッと握り締めている。だが

 

「言っておくが、あれは秘書艦である長門への…言わば報酬みたいな物だ!かくれんぼは関係ない!」

「なんですって!私が秘書艦を任されたときはマミヤチケットなんて出してくれなかったじゃない!」

「その代わりお前の要望通り、お前が秘書艦の時はドイツ式の挨拶をするよう徹底しただろうが!」

 

口は災いの元とはよく言ったものだ。まさに、彼はここでとんでもない破壊力の爆弾を自らの足元に落としてしまった事に気が付いたのだ

 

「へぇ、その話し、詳しく聞きたいな」

 

突然、ビスマルクの後ろから声が聞こえた。スッと顔を出したレーベに平穏を取り戻した心臓が再び鼓動を早める。これが恋のトキメキならばどれほど良かったのだろうか。今の状況ではそんなものさえタチの悪いジョークだ。

名状し難い恐怖のようなものを感じ、一歩後ろに下がる。

だがそこには

 

「どこへ行くの?あなた?」

 

いつの間に回りこんだのか、マックスが居た

 

「その話し、私も詳しく聞きたいなぁ?」

 

まだだ、まだ退路は残っている。彼はいつだって希望を捨てた事などなかった。それは今も同じ事。ビスマルクとレーベの壁を突破できればまだ勝機が…

 

(あー、難しいなこれ)

 

ビスマルクの後ろに特徴的な黒いウサギ耳のようなカチューシャが見える。ああ、最速のスピード狂ゼカマシだと気付いたときには既に四方を囲まれていた。

だが、彼には最後の切り札が残されている。

正直これを切り札と呼ぶ辺り、現状彼の手札は壊滅的に少ないのだが

 

そんなマイナスなことは考えず、彼は窓を指差し大声で叫ぶ

 

「あ!UFO!」

「な、なんですって!」

「へ?」

「え?」

「お゛ぅ゛!?」

「なに!?どこだ!」

 

どうやら海外艦に効果抜群だったようだ。しかし長門に島風、お前らもか!シーザーもびっくり!

だが、この隙を逃すほど愚かではない。

みんなの視線が窓へと向かっているうちにビスマルクの脇を抜け、一気に廊下を走り去る

 

「しまった!追うわよ!」

「てーとくはっやーい!でも私だって負けないよ!」

「僕としたことが…こんな子供だましに引っかかるなんて…」

「あなた…逃がさないわよ!」

 

ドタドタと四人が執務室から出て行き、先ほどまでの喧騒は嘘のように止んだ。

残された長門は視線を窓から走り去る四人に向け、ポカンと口を開けていたが、やがて冷静になると同時に肩を震わせ大きな笑い声を上げた

 

「まったく、平和過ぎるというのも考え物だな…。だが、これもまた一興なのだろう」

 

彼女はそう呟くと部屋に置いてある艤装へと目を向け、今は居ないその持ち主の名を呼ぶ

 

「そうは思わないか、電…」

 

彼女の言葉に、返事を返す者はいない。

それでも、彼女はふぅっと息を吐くと立ち上がり、間宮券を握り締め甘味所 間宮へと向かった

 

 

 

 

この後、提督を捕まえたらなんでもしてくれると言う尾ひれが付き、鎮守府メンバー総出で提督捕獲鬼ごっこが開催されたのは別のお話




きちんと話しを続ける為に一部文の追加・修正をさせていただきました。

ほのぼのと謳っておきながらしんみりとした部分が若干顔を覗かせることがあります。が、基本的に9:1、8:2程度なので大丈夫だと思います。きっと、多分、maybe


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提督さんとヲ級さん

戦争が終った世界の深海棲艦とのお話


爛々と照りつける日差しの下、埠頭に波が打ち寄せる音を聞きながら一人の男が静かに釣り糸を垂らす。

麦わら帽子をかぶり、釣り竿を握り、胡坐をかく様はどこから見ても釣り人のそれと言えるだろう。

だが実際は

 

(…釣れないなぁ)

 

釣りを始めて彼此2時間弱、傍らに置いてある水を張ったバケツを覗くも魚一匹入っていない。この蒸し暑い中、一匹も釣れない事に僅かながらに苛立ちを覚え、意地になって撒き餌を海に投げ込む。しかしながら一匹たりとも魚は寄り付く気配すら見せない

 

「ヲッ、マタ釣レタ」

 

そして彼の思いとは裏腹に、後ろからこれまた何度目か分からない報告が届く

 

「…そっちはよく釣れるみたいだな」

「ヲッ」

 

大きく特徴的な帽子のようなものを被り、白い肌に蒼い瞳をした女性

深海棲艦 空母ヲ級。彼女はピチピチと釣り針から逃れようとする魚を手にニコリと微笑んだ

 

 

深海棲艦とは―――

かつて我々人類と敵対関係にあった者達の総称である

 

60年前、彼女らは突如海から出現し、海上を行く数多の船を沈め人類に牙を剥いた。これが深海棲艦と最初の邂逅と言われている。

彼女らに通常の兵器は意味を成さず、制海権の殆どを支配された。

これにより、各国は強制的に鎖国に追い込まれ、人類は成す術もなく追い込まれることになる。

そんな時、突如として希望の光が人類に射した。

―――艦娘との邂逅である

 

それから、人類の反撃が始まった。

艦娘の艤装から放たれる弾丸は深海棲艦の装甲を貫き、その魚雷は多くの深海棲艦を沈めた。深海棲艦に、初めて攻撃が届いた瞬間だった。

これにより、かつて支配されていた海域の一部奪還に成功する。しかし、その代償は多くの犠牲も生むこととなった。

 

これまでの戦いで多くの人や艦娘、深海棲艦が命を落とした。そしてそれが新たな争いの種となり、もはや何の為に戦っているのかさえ、互いに分からなくなっていた

 

だがそんな関係も、終わりを迎える。

とある艦娘と約束を交わした一人の提督と、彼を信じる仲間達によって

 

 

 

短い返事と共に、ヲ級は再び釣り糸を垂らす。見れば彼女のバケツには小さなものから大きなものまで、沢山の魚で溢れ返っている

 

「この差は一体なんなのだろうか…」

 

先ほどから幾度と無く釣り糸を垂らしては、ヲ級の元に魚は集まり彼の前から姿を消す。ずっとこの繰り返しが続き、彼もすっかり諦めの境地に至っていた

 

それでも止めようとしないのは、意地とプライドから来るものだろうか

 

―――――――――――――

――――――――

 

それから更に30分程粘ったのだが、結局魚一匹釣れることなく彼の限界が訪れた。

汗が服に染み込み、頭がクラクラとし、竿を持つ手が段々と重く感じられる

 

「…ふぅ、流石にこれ以上は辛いな」

 

気温は38度を超え、碌に水分も摂らず日差しの中に居れば当然のことだろう。今日はお開きと言いたげに立ち上がろうと足に力を込める。

しかし――

 

「…」

 

気付けば目が眩み、上手く立ち上がれない状態に陥っていた

 

一瞬にして危機感を覚える。ずっと座っていた為気付かなかったが、どうやら思っていた以上に身体は暑さに参っていたようだ。

汗が全身を通い、体温の上昇を押さえ込もうと奮起するがまるで効果がない。

いよいよマズいと、とっさに傍らのバケツに手を伸ばそうとしたとき――

 

「大丈夫カ?」

 

スッと、後ろから冷たいものが優しく首に巻きつく。見ればヲ級が首に抱きつきながら、心配そうに彼の顔を覗き込んでいた

 

「顔色悪イ、医務室行クカ?」

 

深海棲艦は体温が低く、触れれば底冷えするような、そんな冷たさがある。だが暑さで辟易している今の彼には心地の良いもので、故に振り解くこともせず彼女の抱擁を受け入れる

 

「ああ、すまない。どうやら暑さにやられたようだ。…しばらくこのままでいいか?」

 

彼がそう言うや否や、ヲ級はグイッと彼の頭を膝の上に乗せる。何事かと、ヲ級の顔を見上げると

 

「コッチノ方ガ気持チ良イヨ」

 

そう言って提督の額に手を乗せる

少しばかり驚くも、なるほど合点いったと言わんばかりに目を細める。

冷たい掌が、じんわりと熱を吸い取ってくれているような、そんな錯覚を感じさせる

 

「ああ、気持ち良いな…」

 

すると、突然瞼が重くなった。いよいよ本格的に身体が参ってきたようで、体全体を包み込むようなダルさと、睡魔に似たこの感覚を前に抗うことすら忘れそうになる

 

「寝テモ、イイヨ?」

 

どうやら彼が睡魔(のようなもの)と闘っていることに気付いたらしい。ヲ級は優しく提督の頭を撫でると

それが止めになったのだろう、彼は静かに瞼を閉じた

 

 

 

「…提督、倒レルマデ無理シチャダメダヨ」

 

既に寝息を立て、聞こえていないであろう提督に対し若干呆れ気味に呟く。

しかしヲ級はゆっくり、彼の顔に自身の顔を近づけると

 

 

彼の頬に唇を当てた

 

―――――――――――――

――――――――

 

「…ここは?」

 

目を覚ますと見慣れない天井が視界に写る。それと同時に埠頭で倒れ、ヲ級に介抱して貰っていたことも思い出す。

―――はぁ、最近はこんなことばっかりだな

 

近頃はやたらと気が抜けることが多くなる。その結果、執務の時間に遅れたり、先ほどのように暑さで倒れたり。

―――身体が、やっと平和に慣れ始めたのだろうか?それとも、単に腑抜けているのか

などと物思いに耽っているその時、聞き慣れた声がすぐ横から発せられた

 

「あ!やっと提督さんが目を覚ましたっぽい!」

 

見れば白露型駆逐艦4番艦 夕立が、嬉しそうな声を上げて飛び掛ってくる。

――しかしながらその夕立の姿が、尻尾を振ってご主人に特攻を仕掛けるワンコのように見えるのは、熱が抜け気っていないせいか、はたまた寝起きのせいか

 

そんなことを考えている内に、夕立は提督の上で馬乗りになる

 

「…夕立さんや、ちょっと重いかな」

「え…夕立そんなに重いっぽい…?」

「いや、そこまで重くは無いけどさ。とりあえず降りてくれると助かる」

「ぽいー」

 

夕立が飛び乗った位置は、時と場合によっては彼を社会的に殺すことのできるポジションで、そんな訳で降りるよう促す。ただ、それを知ってか知らずか夕立は中々降りようとはしない

 

「降ーりーなーさーいー」

「ぽーいー」

「はぁ…夕立、提督は一応患者なんだから迷惑を掛けたらダメだよ」

 

するとため息と共に病室用カーテンの奥から声が聞こえてきた。この声は白露型駆逐艦2番艦 時雨の声だ。

そう言うと時雨はカーテンを開け、夕立を引き剥がす

 

「ほら夕立、提督が困っているじゃないか。はい、ベットからも降りて」

「ぽぉ~ぃ…」

 

渋々、といった形で夕立は名残惜しそうにベットから降りる。時雨はやれやれといった表情で一瞥すると今度は提督に向かう

 

「提督も提督だよ。もっと自分の体を大事にしてくれないと、皆が心配するんだから」

 

そう言う時雨は少し悲しそうな顔で言う。

…駆逐艦の子にこんな顔させた不甲斐ない自分に腹を立てる。と同時に情けなく思う

 

「そうだな…、すまない」

「それはヲ級に言ってあげて」

 

夕立が言葉を挟む

 

「ヲ級が提督さんを背負って来たっぽい。だから、お礼とごめんなさいはヲ級にしてあげて」

「…そうだな」

 

彼女の言葉を聞き、提督は静かに頷く。それと同時に、もう一年経ったとはいえヲ級のことを、かつての敵である彼女のことも思いやれる夕立に思わず感極まる

 

「あれ?て、提督さん泣いてるっぽい!?」

「て、提督?そんなに僕の言い方がキツかったかな…?」

 

あたふたと慌てる二人を見て、彼は笑う。

そして徐に(おもむろに)二人に手を伸ばすとワシャワシャと頭を撫でる

 

「て、提督さんいきなり激し過ぎるっぽい~!」

「て、提督!?」

「二人は、とってもいい子なんだな」

 

突然撫でられたことに困惑するも、その言葉を聞き二人は照れ笑いを浮かべる。

それに、なんだかんだで満更でもない表情のようで

 

「提督さん、今度はお腹をワシャワシャしてほしいっぽい!」

「それじゃあ僕は、顎の下を撫でてもらいたいな…?」

「…これ以上はいけない」

 

すぐに手を引っ込めるも、二人は獲物を目の前にした肉食動物のような眼光でジリジリと距離を詰めてくる

 

「提督さんかくごー!」

「時雨…行くよ!」

 

そう言うと、二人は提督目掛けて飛び掛る。

ドッスンバッタンと、大きな音が医務室に響き渡った

 

――――――――――――

――――――――

 

あの後、二人は提督に撫で撫でラッシュを要求し、しまいには撫でられ疲れ提督の両腕を枕にして眠ってしまった

 

(まったく…)

 

散々暴れても最後はころりと眠ってしまう辺り、改二で体ばかり大きくなっても中身はまだまだ子供なのだと痛感する。

しかしながら、両腕を枕として使われている以上動くことは出来ない。かといって起こすのも忍びないだろう。

さあどうしたものかと逡巡していると医務室の扉が開かれた

 

「提督、居ルカ?」

 

ヲ級がドアの隙間からひょっこりと顔を出す。そしてカーテンの開けっ放しになっていた提督のベットを見つけるとそちらに向かって歩き出し、その光景を目撃する

 

「…元気ナヨウデナニヨリダナ」

 

夕立と時雨を両腕に抱えて横になっている提督を見て、明らかに不機嫌な声色になる。オマケに駆逐艦には見せられないような怖い顔をしている

 

「いや、そのこれはだな…」

 

確かに、何も知らない者が見れば兄弟か親子でも無い限りアウトな絵面だろう。

しどろもどろに弁明しようとするも、ヲ級にその声は届かない。そして無言で提督のベットに近寄ると―――

そのまま提督の上に、うつ伏せに寝転んだ

 

「あの…、ヲ級さん?」

 

困惑した提督の声が頭上から聞こえるが彼女は聞こえない振りをする。代わりに彼の胸元に顔を埋め、静かに語る

 

「ナントモ、不思議ナ気持チダ」

「…不思議な気持ち?」

「…提督ト話シテイルト、気持チガ高ブル」

「デモ提督ガ埠頭デフラツイタ時、凄ク不安ニナッタ」

「提督ガ夕立ト時雨ヲ抱イテイテ、ナンダカ胸ガ辛クナッタ」

「ナニノ、提督トコウシテイルト、ドキドキスルノニ、トテモ落チ着ク…」

「コレハ何ナノダ?」

 

彼はその問いの意味を考え、ほんの一瞬だけ体を強張らせる。それと同時にその問いに相応しい答えが浮かび上がるも、それは無いなと自己否定する。

故に彼は、この問いの答えに一番近い間違いを出す

 

「…信頼、かな」

「シンライ?侵食魚雷ノコトカ?」

「違う違う、…なんと言えばいいか。…君が感じたその気持ちの事だよ、きっと」

「キット?提督ニモ分カラナイノカ?ソモソモ信頼ニハソノヨウナ意味モ含マレルノカ?」

「ああ、多分…な。でも、俺にはもう一生分からないと思うさ」

「ソウカ…」

 

納得はしていない様子ではあるが、ヲ級はそれ以上何も言うことは無かった

 

 

「それと、ヲ級」

「…」

「君にも心配を掛けてすまなかった。それとここまで運んでくれて、ありがとな」

「~~~!!!」

 

じっとヲ級の目を見つめながら礼を言う

それに対してヲ級は白い肌を真っ赤に染めると、よく分からない言語を発しながら足をパタパタとバタつかせ先ほどよりさらに深く彼の胸に顔を埋めた

 

 

 

 

 

 

 

 

「…青葉、見ちゃいました」

 

 

―――――――――――――

――――――――

 

後日

この一部始終が写った写真を何者かが艦娘寮の掲示板に貼り出し、やれ抜け駆けだの強引だのと大騒ぎになった

 

―――――――――――――

――――――――

 

さらに後日

 

「長門、その釣り道具一式はどうしたんだ?」

「ああ、とある伝手からの情報なのだが…。釣りをすれば医務室で駆逐艦を抱けると聞いてな!」

「憲兵さーん!こっちでーす!」




以上、深海棲艦とのお話でした。
世間での深海棲艦の扱いや艦娘との絡みはまた追々書いていけたらと思います

長門がギャグキャラになってきていますが、これは世界が平和だからです。きっとこれが彼女の素なのです。きっとこれが彼女の素なのです(大事なことなので二回)


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提督さんと金剛さんと雪風さん

戦後の艦娘達の生活やお仕事など


「テートクゥー!」

 

時刻は1500

今日も今日とて仕事を終えた彼は、執務室に鍵を掛けている途中で声を掛けられた。

振り返らずとも分かる。この特徴的な呼び方は間違いなく彼女だ。

鍵を掛け終えると同時に彼女の方を向く

 

「どうした?金剛」

「ヘーイ、テートク。お仕事お疲れ様デース!…もし時間があれば、これからお茶会なんてどうデスカ?」

 

金剛型戦艦1番艦 金剛

数多の戦場を潜り抜けて来た長門や武蔵、赤城やビスマルクに勝るとも劣らない、我が鎮守府のエースが一人である。

そして彼女は無類の紅茶好きだ。暇さえあればいつも茶会を開いている。彼女曰く英国ではこれくらい普通らしい。

仕事を終え別段することの無い彼に誘いを断る理由は無かった

 

「ああ、構わないぞ。それじゃあ食堂にでも…」

 

そう言いかけたとき、金剛の人差し指が唇を塞いだ。

そしてウインクを一つすると

 

「ドーセならぁ、私達の部屋でやりたいネー」

 

若干頬を染め、体をクネクネと動かしながら言う。

私達、とは姉妹のことだろうか?そう疑問に思い尋ねると

 

「イェース、なので艦娘寮に来てほしいネー!」

 

それだけ言うと彼女はスキップで廊下を去って行った。

彼女が去り、金剛の言った言葉を反芻する

 

『艦娘寮に来てほしいネー!』

 

その言葉の意味を理解した時、彼は人知れず頭を抱えた

 

 

一方金剛は誰よりも先に提督を自身の部屋へ招けることに有頂天になっていた。

―――部屋の場所を伝えることも忘れて

 

(ンフフ、テートクを部屋にお招きすれば皆より一歩リードデース!)

 

―――――――――――――

――――――――

 

艦娘寮とは

 

戦後間も無く鎮守府付近に立てられた、艦娘達の新たな家とも呼ぶべき施設である。

かつて提督や艦娘は非常事態に備え、いつでも指揮や出撃が出来るよう鎮守府に常駐することを義務付けられていた。

しかし、戦争の終わった現在において鎮守府は出撃を控えた艦娘達、または出撃を終えた艦娘達の待機場・休憩場となっている。

そんな彼女達の新たな生活の拠点、それが艦娘寮である。

別に男子禁制といった決まり事は無いのだが、基本的に外部の者や異性が足を踏み入れることは滅多に無く、プライバシーも守られ乙女としての身嗜みに気遣う必要のない為言わば真の憩いの場となっているのだ

 

―――そんな場所に男が入っていいのだろうか、そんな疑問が脳裏を過ぎる。実際、お誘いを受けたと言う大義名分があろうとも、いざとなるとなかなかに憚られる。

だが聞き入れてしまった以上、今更断るようなこともできない。

彼は大きく深呼吸をすると、その扉を開いた

 

意外なことに、廊下には誰も居ない。鎮守府では一歩廊下を歩けば壁を背に話し合う間娘の一人や二人、すぐに遭遇したものだというのに。

…実際は提督と挨拶を交わし、あわよくば会話に興じることが出来ればという彼女達なりの努力なのだが、彼がそんなことを知る筈も無い

 

(まあ今は夏真っ盛りだ。わざわざ部屋から出てまで誰かと話そうとも思わないだろう)

 

そう結論付けて彼は歩を続ける。一瞬どうやって金剛達の部屋を見つけたらよいのかと狼狽したが、それぞれの部屋の前に各艦ごとの表札が掛かっているのを見つけ、彼の中で事なきを得る

 

―――しかしこの広い艦娘寮、そう簡単に目的の場所が見付かる訳もなく

 

「ここ、どこだ…?」

 

すぐに見付かるだろうと考えなしに歩き回ったせいか、あろうことか建物の中で迷子になってしまった。

いっそ恥を捨てて誰かに尋ねるべきかと考えるが、彼の中にある男としてのちっぽけなプライドがその判断を鈍らせる。

そんな時、後ろから声を掛けられた

 

「あれ…、しれぇ?」

「わっふる!?…あぁ、雪風か」

 

突然掛けられた声に妙な奇声を挙げ驚くも、咄嗟に声の主の名を言う

 

彼女は陽炎型駆逐艦8番艦 雪風。彼女の持つその高い幸運から奇跡の駆逐艦と呼ばれている。

今日の彼女は非番だ。故に彼女の服装は普段の制服ではなく年相応の可愛らしい服を纏っていた。無論、普段の制服が可愛くない、と言うわけでは無いので悪しからず

 

「どうしたんですか?こんなところで」

「…実はな」

 

見付かってしまった以上は隠しても仕方ないだろうと、彼は金剛の茶会にお呼ばれしたこと、そして彼女の部屋を見付けられずに寮を彷徨っていることを正直に話す。

雪風は少しばかり驚いた表情を見せると、今度は胸を張って言う

 

「しれぇも迷子になることがあるんですね、ですがそれなら雪風がご案内します!」

「あはは、お手やわらかに頼むよ」

 

棚から牡丹餅とはこのことだろうか。そう思っていると、彼女は彼の手を引きズンズンと歩き出す。ちらりと見え隠れする得意気な顔は、まるで初めておつかいに出た好奇心溢れる子供のような表情をしている。実際まだ子供なわけだが

 

かつて彼女の異動先としてこの鎮守府に着任した当初とは比べ物にならない程、今の彼女の顔は輝いている。

―――愛想笑いや作り笑いではない、彼女の本心からの笑顔だ

 

「ゆ、雪風?もう少しゆっくり歩こう?な?」

 

しかし些か(いささか)気張り過ぎたようで、今にも走り出しそうな彼女はハッとなり歩を緩める

 

「ごめんなさい、しれぇ…」

「…大丈夫だよ、それに案内してくれるのは素直に助かる」

 

ペコンと頭を下げる雪風に微笑み掛けると、彼は優しく彼女の頭を撫で礼を言う

 

「それじゃ、行こうか」

 

彼女の頭から手を離し、代わりにその手を彼女の手に重ねる。

嬉しそうな表情を浮かべた雪風は再び彼を先導した

 

 

(司令とこうして手を繋げるなんて、幸運の女神のキスを感じちゃいます!)

 

―――――――――――――

――――――――

 

雪風に案内されてほんの数十秒、二人は金剛の部屋に辿り着いた

 

「意外と近くまで来てたんだな…」

「しれぇ?どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。ありがとな、雪風」

「どー致しまして!」

 

ニパーっと笑顔で返事を返す雪風の頭を再び撫で、目の前の扉をノックする。

「ハーイ」と金剛の声が聞こえドアが半分ほど開いた

 

「…テートクゥー、遅かったネー」

 

扉の向こうに居るのが提督と分かるや否や、膨れっ面の金剛がドアの隙間からこちらを覗きこむ。中々にご立腹のようだ

 

「ああ…すまない、少しばかり迷ってしまってな。雪風に案内して貰ったんだよ」

 

提督がそう言うと、金剛は雪風を見る。すると勢いよくドアを開き―――

 

「Oh,ゆっきー!提督を案内してくれてThank youネー!」

「いえ!雪風もお役に立てて嬉しいで…ひゃあ!?」

 

凄まじい勢いで雪風に抱きつく金剛。雪風は突然の事に驚き可愛らしい悲鳴を上げる。

因みに金剛は駆逐艦のように小さな子が大好きだ。もっとも長門のそれとは違うベクトルの「好き」であって、憲兵の心配はいらない。

LOVEではなくLIKEと言えば分かりやすいだろう

 

眼福眼福と、そんな光景を眺めていると金剛と目が合う

 

「テートクも見てないでcome onデース!」

「…ん?もう怒ってないのか?」

「始めから怒ってなんかいませんヨ、中々来てくれなくてちょこっとだけ拗ねちゃっただけデース…。それに部屋の場所を伝えなかったワタシにも落ち度がありマス。…それよりhurry hurry!」

「一体何を急げばいいんだよ…」

 

反省の言葉と共に彼を急かす。彼女がどうして欲しいのかを理解しているが、万が一間違っていた場合は憲兵のご厄介になる。それだけは避けたい。

確認の意を込めて問う。勿論、確認したからといって行動に移すかどうかは別の話だが

 

「モゥ、分かってる癖ニー。hugデスよhug!」

 

そう言うと期待の眼差しと共に雪風との間を少し空けスペースを作る。

困惑して雪風の方を見れば

 

「ゆ、雪風は大丈夫です!」

 

…顔を真っ赤に染め、頭から煙のようなものが立ち昇る様は明らかに大丈夫には見えない。

それでも、遠慮がちではあるが金剛同様にどこか期待の眼差しでちらりちらりと見つめる

 

―――さぁ困ったぞ!

 

―――――――――――――

――――――――

 

結局、ストレートな金剛の誘いは遠回しに断った。雪風は残念そうな表情をするが勘弁してほしい。

廊下でそんなことして他の娘に見られたら、一体どんな噂を立てられるか分かったもんじゃない。

―――特に青葉とか、アオバとか、AOBAとか

 

そんなことを考えながらも落ち込んだ二人を見ると少しばかりの罪悪感を覚える

 

「…テートクゥ、据え膳食わぬは男の恥デスヨー?」

 

前言撤回。罪悪感?知らない子ですね。

ぼそりと金剛が呟くも聞こえない振りをする。

そんな恥捨ててしまえ

 

「それより金剛、本来の目的はお茶会だろ?早く金剛の紅茶が飲みたいなー」

 

金剛の文句が説教になる前に話題を逸らす。いや、戻すと言うべきが正しいか。

出来るだけ棒読みにならぬよう本来の目的を再確認する

 

「Oops!そうでシタ!今から準備してきマース!」

 

彼女も思い出したかのように、ポンッと掌に手を乗せ意気揚々とドアノブに手を掛けた。

それと同時に提督はある提案をする

 

「あ、それと雪風も一緒で構わないか?」

「Of corse!Welcomeデース!」

「えぇ!?そんな…いいんですか…?」

「Yes!大歓迎デース!」

「ほら、金剛もこう言ってるし好意には素直に甘えるもんだ」

「で、ですが…」

 

突然のお誘いに雪風は驚く。誘ってくれた事は勿論嬉しい。が、金剛と提督の邪魔になるのではと、なにか迷惑をかけてしまうのではないかと悪い方へと考えが働く。

―――こうやって考えすぎてしまうのは彼女の悪い癖であり、彼女の過去のトラウマによる負の産物だ

 

そんな雪風を見て、金剛は腰を低くし雪風と目線に合わせると優しく語り掛ける

 

「問題Nothingデスヨ、ゆっきー。鎮守府の皆はFamilyデス。家族に気遣いなんて必要ありまセン」

 

そう言うと雪風の頭を優しく撫でる。

始めは心配そうな表情をしていた雪風も撫でられた事で少しくすぐったそうな顔をしている。そして同時にとても嬉しそうに笑っている

 

「…まるで母親みたいだな」

 

心温まる二人を眺めてつい口にする。すると金剛はこちらへと向きを変えた。

どうやら聞こえていたようで、しかしながら頬が赤いのは何故だろうか

 

「ワタシがお母さんなら…、ゆっきーが娘でテートクが旦那様でショウカ?」

 

いつものようなハイテンションとは違い、頬を両手で押さえながらチラリとこちらを見て言う金剛にドキリとする。

我ながら単純だなと自覚し、ふぅっとため息をつく

―――しかし、父親か…

 

なんだかんだで色々と想像してしまう辺り、彼にもそういった願望が無い訳ではないのだ。

しかし

 

「無理だな」

「OH!?どーしてデスカ!?」

 

驚いた声と共に、今にも泣きそうな表情で金剛が詰め寄ってくる。

だが無理なものは無理だ。

 

なぜなら

 

「もし雪風が男を連れてきたらショックで死ぬかもしれん」

「…Huh?」

 

さっきまで今にも泣きそうな声だっだというのに、金剛は途端に呆れた声を出す

 

「だって考えてみろ。今でこそまだ幼いが、雪風は将来有望だ。男が出来る可能性だって十分にある!それに悪い男に引っかかったらと思うと不安にもなるだろう!」

「なーに言ってるデース…」

 

今度こそ、金剛は完全に呆れ返る。いくらなんでも考え過ぎだ。

だがそんな提督も悪くないと思っている辺り、これが惚れた弱みというものなのだろうか。

そしてなにより彼が子供のことを真剣に考える姿を見た結果、金剛はいつものように提督とのスウィートライフを妄想し、体をクネクネと動かす。完全に普段の金剛だ。同時に『テイトクー、子供はbaseball teamが作れるくらい欲しいネー』とだらしのない声が漏れる。

そんな脳内のお花畑でホームランを達成している金剛を置いて、雪風は提督へと近づく

 

「しれぇ」

「碌でもない男なら沖ノ島海域にでも沈めて…ん?どうした、雪風」

 

ヒートアップし物騒なことを呟く提督を制止し、雪風はクイクイッと彼の服の裾を引っ張る。

そして頬を真っ赤に染めながら、今世紀最大とも言える大型爆弾を投下した

 

「しれぇ、大丈夫です!だって、雪風の将来の旦那様はしれぇですから!」

「…決めた。俺、雪風と結婚する」

 

そう言うと同時に金剛の動きがピタリと止まる。脳が二人の発言の意味を理解しようとフル回転しているからだ。しかし、何度考えても出る答えは一つだけ。

やがて、この言葉の解が出ると同時に彼女は叫んだ

 

「ホワァァァッツ!?」

 

 

この日、艦娘寮では大きな悲鳴が木霊した

 

―――――――――――――

――――――――

 

一方、金剛四姉妹の部屋では

 

「は、榛名は、だ、大丈夫です…提督のお傍にいられるなら愛人にだって…」

「ひ、ひぇ~!」

「今日はお茶会、出来そうにありませんね」

 

金剛型戦艦 榛名、比叡、霧島の三人は、ドアの隙間からこれまでの光景を覗いておりました。

今日も艦娘寮は平和です




日常系ほのぼのコメディと謳っておきながら2話目でコメディが絶滅危惧種になってしまったのでコミカル成分を多目に書かせて貰いました。大目に見て下さい なんつって


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提督さんとアパート

提督さんが住むアパートでのお話


時刻は0800

とあるアパートの一室で提督はいつもより遅れて目を覚ます。

今日は彼にとって久々の休日だ

 

「…ん」

 

重い瞼を僅かに開き時間を確認すると、惰眠を貪ろうと体を横向きにする。

だが再び眠りの世界へ旅立とうとしたとき、その行為はある光景によって遮られた

 

「あー…提督。おはようございます」

「…!?」

 

目の前いっぱいに広がる少女の顔に体が仰け反る。あまりの衝撃に足は攣り首は根違いを起こす

 

「んがーっ!!」

「あぁ…もう無理、マジで眠い…おやすみ提督…」

 

首と足のコンボに悲鳴を上げる彼に対し少女、陽炎型駆逐艦19番艦 秋雲はもぞもぞと彼の布団にその身を滑り込ませると、そのまま眠りの世界へ旅立ってしまった

 

(なにがあった…)

 

驚きと痛みですっかり目が覚めた彼は部屋を見渡す。

…そこには散らばったマンガの原稿や資料集のようなもの、インク塗れの妖精数人、飲み散らかした缶コーヒー等が散乱していた

 

「…」

 

まるで部屋の中に嵐が来たかのような惨状だと、呆然とその光景を眺める。

そんな彼の耳に小さな声が聞こえてきた

 

「ていとくさんおはようございます」

「われわれはがんばった、がんばりすぎましたゆえ」

「しばらくねかせてもらいます」

「もえたよ…まっしろに…もえつきた…まっしろなはいに…」

 

言うだけ言うと彼の返事も待たず妖精達も眠りにつく。まったく訳が分からないよ

 

なんの説明も無かった為、再び秋雲へと視線を移す。

…とても気持ち良さそうな顔で眠っている。が、よく見れば目の下に隈がバッチリと残っており、恐らく徹夜でもしたのであろう彼女の姿は容易に想像できた

 

「てか、いつの間に来てたんだ…?」

 

快晴の空模様とは反対に、梅雨時の湿った洗濯物のようなため息が彼の口からこぼれた

 

―――――――――――――

――――――――

 

結局、彼女達が目を覚ましてから話を聞くことにした彼は台所で朝食を作っていた。

無論、嵐が過ぎ去った部屋は綺麗に片付けてある

 

(はぁ…寝てる時に突撃されるのは初めてだぞ)

 

実は彼の家に艦娘が上がり込むことは別段珍しいことではない。姉妹と喧嘩したり、悪戯がバレて逃げ込んで来たり、単に暇だったりと様々な理由でここを訪れる娘も多い。

彼自身特に気にしていなかったので、最初は駆け込み寺として利用されていたこの場所はいつしか艦娘達のセカンドルームになっていた。

現在に至っては、暁型を除く各艦の1番艦が合鍵を各自管理している始末である。(暁型に関しては暁が鍵を無くしたことにより、現在は響が管理している)

しかし先程の秋雲のように彼が就寝してから上がり込む者は今までいなかった

 

(まったく、それにしたってなんつーもん描いてんだ秋雲は…。人の趣味にケチつけるつもりはないが陽炎が不憫でならん)

 

片付けている途中で目にした秋雲の原稿を脳裏に映し出すも、すぐに頭を振りその光景を脳内から追い出した

―――まあ気にしないでおこう。うん

 

陽炎の威厳とプライバシーの為にも彼は思考を中断する。

そして味噌汁を茶碗に移し卓袱台に並べ、朝食の準備が完了した。

ふぅ、と一息つき手を合わせる

 

「いただきます」

『ピンポーン』

 

いざ、光り輝く白米に箸を伸ばしたとき玄関の呼び鈴が鳴った。

時計を見れば時刻は0840

――はて?誰か尋ねてくる用でもあっただろうか。

そんな疑問を持ちながらも玄関のドアを開ける

 

「新聞の勧誘はお断りですよー…って天津風か。どうした?」

 

ドアの向こうには陽炎型駆逐艦9番艦 天津風がソワソワしながら立っていた。

少々息が荒いのは、寮からここまで走って来たからだろうか。

彼女は息を整えながらもここへ来た目的を言う

 

「あ、あなた…、その…秋雲は来てないかしら」

「あぁ、秋雲なら…」

 

そう言うと彼は秋雲の方へと視線を移す。するといつの間に起きていたのか、秋雲は体を震わせ物陰に隠れていた。

よく見れば口パクで必死に何かを訴えている

 

『居 な い っ て 言 っ て !』

 

―――フッ、そういう事か。任せろ秋雲!

 

彼は天津風には見えないよう、キメ顔と共に握りこぶしに親指を立てる。

パァ、と花が咲いたような笑顔を見せる秋雲を横目に、そのまま天津風へと向き直る

 

「安心しろ天津風、秋雲はこの奥だ」

「秋雲ー!」

 

そう言うと天津風は脱兎の如く秋雲のもとへと向かう。

見れば秋雲の表情は、晩飯抜きと宣告された赤城のような顔をしていた

 

―――――――――――――

――――――――

 

「で、なにか言うことはあるかしら?」

「申し訳ありませんでした…」

 

現在、秋雲は天津風からお説教を受けている。

なんでも秋雲が勝手に合鍵を持ち出してしまったらしく、無くしたと思い込んだ陽炎が今も必死で探し回っているそうだ

 

余談ではあるが、鍵を無くすことを裏では『暁の悲劇』と呼ばれている

 

「ほら、さっさと戻るわよ。たっぷり陽炎姉さんにお説教して貰わないと」

「!?後生ですそれだけはご勘弁を!ほら、提督もなにか言って下さいよ!」

 

どうやら陽炎の説教はそれほどまでに恐ろしいようで、秋雲は必死に赦しを請う。

だがこればっかりは自業自得だ、彼が口を挟むべきではないだろう。

その代わり何故こんなことをしたのかを問う

 

「なぁ秋雲、なんで鍵を持ち出したりしたんだ?」

 

ピクリと秋雲の肩が跳ね視線を泳がせながら、彼女はしどろもどろに答える

 

「あぁ~…いやその、皆が手伝ってくれなくて…。そ、それにほら夜だと姉妹に色々迷惑掛かっちゃうし!」

「ほうほうなるほど。で、本音は?」

「昨晩陽炎に同人見られて描くの禁止にされました見逃して下さい」

「情状酌量の余地なし。天津風、この者を引っ捕らえよ」

「ははぁ~!」

「待って!せめて、せめて朝食だけでもー!」

 

意外とノリの良い天津風は叫ぶ秋雲の耳を引っ張ると寮への帰路についた。

そういえば片付けの際に纏めた秋雲の原稿がテーブルに置きっぱなしなのだが、さっきの話を聞いた上でこれを送ってやるほど彼も鬼ではない。

秋雲がまた来た時にでもと、紙を束ね本棚に閉まった

 

 

「さて、それじゃあ妖精さん達からも話を聞こうかな?」

 

そして一連の騒動で目を覚まし、窓から逃走を図ろうとする妖精達に声を掛けた

 

「われわれはむかんけいです」

「しらなかったんです」

「どうかおなさけを」

「しかしげんじつはひじょうなりぃ」

 

 

しばしの尋問の後、最終的に彼らは口を割った。

彼らが言うには、秋雲が近々開催される大規模な同人イベントで本を出す為それの手伝いをしていたとの事。

なんでも儲けの分からアイスをご馳走してくれると約束したらしく彼らもまた必死だったようだ

 

「妖精さん、仕事は選ぼう。な?」

 

彼の前で正座をしていた妖精一同はコクリを頭を下げる。彼らも今回の件で懲りたらしく、口々にマンガを描くことの辛さや〆切りに追われた阿修羅(秋雲)への恐怖を語る

 

「今回のことで懲りたら、もう無茶な仕事は引き受けない。OK?」

「らじゃー」

「おーけい」

「りょうかいです」

「こころえました」

「よろしい。それじゃあ遅くなったが改めて飯にするか」

「「「「おー」」」」

 

話はおしまい、さあ飯だ。彼がそう言うと妖精達は歓声を上げた

 

―――――――――――――

――――――――

 

「おじゃましました」

「おいしいごはんもいただけてまんぞくです」

「こんどはおみやげもってきますゆえ」

「げんかんのかぎはそのままで」

「ああ、またいつでも来てくれ」

 

最後の言葉は気に留めず妖精達を見送る。

通りには僅かながら人が歩いているが、一般の人間には妖精の姿を見ることは出来ないので騒ぎになることはないだろう

 

妖精達の姿が見えなくなると、彼は食べ終えた食器を片付け息を吐く

 

(さてと、何をしようか…)

 

静かになった部屋を見て彼はするべきことを模索する。休日とはいっても、暇を持て余す彼にとっては寝ること以外には時間を潰す手段を持たない。

そして結局、他にやるべきことが見付からず寝ることを選択した彼は布団へと横になる。

そしてゆっくり瞼を閉じようとした時

 

『ピンポーン』

 

再び呼び鈴が鳴った

 

―――今日は来客が多いな

そう思いながら玄関のドアを開ける

 

「新聞の勧誘は以下略…ん、朧か?」

「おはよう提督」

「ああ、おはよう。朧が来るなんて珍しいな、なんかあったか?」

 

綾波型駆逐艦7番艦 朧、彼女がここを訪れるのは珍しい。

普段は七駆のメンバーといることが多い彼女だが、このように一人でいることはあまり無い

 

「漣や潮は出撃してて、曙も出かけてるから退屈で…ダメだった?」

「いや、全然そんなことないぞ。俺も同じく退屈していたところだ」

 

そう言うと朧を部屋に入れる。実際寝る以外にすることの無かった彼にとっては渡りに船だ

 

――彼女達が居ないと碌に時間も潰せないなんてな、自分で思っている以上に俺は彼女らに依存しているらしい

 

彼は心の中で自嘲気味に笑う。勿論顔には出さない。

出していないのだが…

 

「提督、その顔はあんまり好きじゃないかな」

「…顔に出てたか?」

「ううん、そうじゃなくて。自分のことを卑下したような…そんな眼をしてた」

 

彼女は提督が敵わない数少ない艦娘の一人だ。

顔に出してる訳でも、行動に表れている訳でもないのに、思っていることを見透かされてしまう。

…あの個性溢れる七駆に居れば嫌でもその辺りに敏感になるのであろうが

 

「まったく、敵わないな朧には」

「ふふ…」

 

静かに、彼女の頭を撫でる。彼女は嬉しそうな声を零すと徐に彼の手を握り、その手を自らの頬へと持っていく

 

「ありがとう、提督」

「…どういたしまして、朧」

 

どのような意味の込められた礼なのかは分からない。だが彼女なりに、なにかを伝えたかったのだろう。

暫くそうしていると、スッとその手を離す

 

「もういいのか?」

「あんまりやりすぎると、皆が嫉妬しちゃうから。アタシには…これくらいで丁度いい…かな」

「そっか」

「うん」

 

そう返事をすると、二人は居間へと向かう。

朧とは特別何かをすることはない。ただ部屋でのんびり過ごす、それだけだ。

だがそれが二人にとっては大事な時間でもある。居てくれるだけでいい、それがここでお互いがお互いに持ってる感情だ

 

「一人で居るとやること無くてただただ退屈なのに、誰かが居るだけで随分と心持ちも変わるもんだな」

「本当だね」

 

 

こうして今日も、彼の家では平和な時間が流れた

 

―――――――――――――

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで提督、さっきから気になってたんだけど。あの本棚に閉まってある紙の束って?漫画の原稿に見えるけど」

「…朧が知らなくていい世界のもんだ」

「ふーん…そっか」

 

その後、しっかり中身を確認した朧は顔を真っ赤にして部屋から飛び出していったのは別の話

 

―――――――――――――

――――――――

 

「まったくアンタって子はそういつもいつも…」

「か、陽炎姉さん…足が…足が痺れて…」

 

そして寮の方では、陽炎による秋雲の説教が続いていた




朧との話を広げられなかったのが悔しい
だって思いつかなかっただもん!
じゃあ朧を出す必要あったかって?だって朧が可愛いんだもん!

それは置いておくとして
本当はもっとトントンさくさくぽいぽいといった感じでどんどん話を進めて行きたいのですが、内容を詰め込もうと無理に文を増やしてしまい、結果中身がスカスカにも関わらず量だけ達者な読みにくいものになってしまいます。
宜しければアドバイス下さい。お願いします


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提督さんと利根さんと長門さん

利根さんと長門さんのお話


ある晴れた日の昼下がり、鎮守府は夏にしては珍しいぽかぽかとした陽気に包まれていた。

そしてそれは執務室も違わず、思わず転寝してしまいそうな頭を無理矢理働かせ提督は黙々と執務に励んでいた

 

(演習の申し込みか…認可。…あぁ、眠いな)

 

ただ只管に判子を押していく作業同然なのだが、同じことの繰り返しは眠気を誘い幾度となく眠りの世界へ導こうと彼を誘惑する。

本日の臨時秘書艦である装甲空母鬼に至っては既に誘惑に負け、どこからか掛け布団を取り出しソファの上で眠ってしまい、彼もいっそこの睡魔に身を任せてしまおうかと思った時だった

 

「て゛い゛と゛く゛ー!」

 

大きな泣き声と共に執務室の扉がバンッと開かれる

 

「今は執務中だ騒ぐな…って、うお!?どうした利根!?」

「長門に追われておるのじゃ!匿ってくれ!」

 

彼女は利根型航空巡洋艦1番艦 利根だ。

利根は涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら提督に飛びつく

 

「早く吾輩を、早く!」

「分かった!いや分からないけど分かったから落ち着け!」

『利根~何処だ~?』

「くぁwせdrftgyふじこlp」

「!?」

 

扉の向こう側から長門の声が聞こえ、利根は声にならない悲鳴を上げた。

仕方なく混乱状態の利根を抱きかかえる。

一瞬驚いた様子の利根をよそに

 

「赦せよ」

 

彼はそう呟くと、彼女をそのままクローゼットへ放り込んだ

 

「ここかぁ!」

 

刹那、執務室の扉が乱暴に開かれた

 

「…」

「…」

 

提督と長門との間に微妙な沈黙が流れた

 

「…どうかしたか」

「いや…何でも無い」

「今は執務中だ。そしてそもそもお前は休暇の筈だ、なぜ鎮守府に居る?」

 

彼は仕事モードで長門を問い詰める、でなければ利根がすぐ近くに居ることが悟られかねない。

あくまでも自然な動きでクローゼットから離れ長門へ詰め寄る

 

「どうなんだ?答えろ」

 

ずいっと長門に顔を近づける。悲しいことに、ヒール込みの長門の方が僅かに背が高いのでいまいち迫力が出ない。

だがこういうことは勢いだと言わんばかりに凄みを入れた(つもりの)顔で長門に迫る

 

一方の長門は

 

(何故、そのように顔を近づけて…まさか!?いや、仕事モードの提督がそのような行為に及ぶはずが…だが可能性も0ではないのだし…)

 

全く話を聞いていなかった

 

「聞いているのか?長門」

「あ、ああ。聞いているぞ」

「なら俺がさっき言った言葉を復唱してみろ」

「…時間と場所を弁えなきゃノーなんだからネ?」

「どういう経緯で俺がその発言をしたのか詳しく聞きたい」

 

こりゃダメだと、提督は目頭に指を宛がう。

そもそも何故利根を追い掛け回してたのか、そこを改めて問う

 

「ん、私が利根を探していることを知っているのか?」

「さっき扉の前で呼んでいただろ」

「…なるほど、それもそうだな」

「そんなことより早く本題に入れ」

「あ、あぁ。そうだな、何から話すべきか…」

 

そして長門は語り始めた

 

―――――――――――――

――――――――

 

結果から言うならば、彼は引いた。それはもうドン引きだ

 

「長門、今からならまだ更生出来る。おとなしく憲兵の所か病院へ行こう?な?」

「…それはあまりにも酷くないか」

 

だって実際酷いんだもん、と彼は付け加える。

 

 

簡潔に内容を纏めるならばこうだ

 

戦後、長門は戦いから開放され心の底から笑う駆逐艦を見て以来、危ない何かに目覚め、駆逐艦への想いを日に日に募らせていた。

だが実際に手を出すのはご法度だと、彼女の中の理性が訴える。

そして彼女は駆逐艦へのスキンシップこそ増えたものの、間違いやそれに通ずることは一切行わなかった。

だが、筑摩にベッタリな利根を見た時、彼女の中の定義が崩れた。

 

――利根なら合法ではないか?

 

 

(とんだとばっちりなのじゃ!)

 

利根の声が聞こえた気がした。加えて提督も違法だよと付け加える

 

 

それから長門と利根の熱い戦い(元い、ながもんと筑摩の死闘)が始まったのだという。

因みに提督自身、長門のながもん化に気付いたのはつい2,3ヶ月前のことだ

 

 

「武蔵にいっぺん根性叩き直してもらえ」

 

かつての勇ましい姿は何処へやら、普通にしていたら貫禄も保たれていたであろうにと提督は心の中で嘆く

 

「むぅ…確かに最近は弛んでいるという自覚はあるんだ…。だが自力ではどうすることも出来ん」

「長門…」

「だが、私は思った。むしろ弛んでもいいんじゃないかと」

「喜べ、武蔵と演習を組んでおいた。時間いっぱい楽しんでこい」

 

そう言って彼は長門を執務室から追い出した。

はぁと息を吐き、クローゼットの利根に声を掛ける

 

「おーい、利根さんや。もう大丈夫だぞー」

「…」

 

返事がない

 

「利根さんやー?」

「…」

「利根…?」

「…」

「利根!」

 

何度声を掛けても返事の無い利根にいよいよ焦りを感じ急いでクローゼットの戸を開く。

そこには

 

「提督の…匂いが充満して…頭がフワフワと…なんだか妙な気分じゃ…」

 

頬がほんのり赤く染まり、呆けた顔でぽーっと提督を見つめる利根の姿があった。

そして彼女はクローゼットから出るなり、四つん這いでゆっくりと彼に迫る

 

「と、利根さん?」

 

彼は慎重に利根と距離を取る。

大体、こうなった艦娘は碌なことをしないと彼は経験から察していた

 

「落ち着こう、時に利根さん落ち着こう」

「ていとく…」

 

そして腰に力を入れ利根は一気に提督へと飛び掛る。

受け止め切れずドンと床に倒れると、利根は更にその上に倒れ込む

 

「ちょ、本当にどうした利根?」

「…たのじゃ」

「え?」

「怖かったのじゃ~!」

 

そう言うと彼女は再び大きな声で泣く

 

「筑摩が…居ない時を狙って…長門がやってきて…ずっと追い掛け回されて…グスッ」

「そう、だったのか…」

 

相当恐ろしかったのだろう、彼は震える利根を優しく撫でる。

一瞬ピクンと反応したが、今はそのまま撫でられ続けている

 

「まぁ、長門も色々溜め込んでたものがあったんだろう…」

「…」

「あんな奴だが、やる時はやってくれるし頼り甲斐もあるんだ」

「…それは知っておる」

 

利根は小さく返事を返す。だがその顔はどこか膨れていた

 

「だから長門のことは、嫌いにならないでやってはくれないか?」

「…提督よ、お主がそう言うのなら吾輩はそうしよう」

「ありがとうな」

「ただし、条件があるのじゃ!」

 

言うや否や、利根は突然立ち上がる。

そしてビシッと彼の顔を指差した

 

「今日の秘書艦は吾輩がさせてもらうぞ!」

「…ん?それでいいのか?てっきり間宮券5枚とか言われると思ったんだが」

「吾輩はそんなに喰わん!…ことも無いが、腹を壊しとうないし筑摩にも叱られる…。そ、それよりも一度秘書艦をやってみたかったのじゃ!」

「俺は構わないが…利根が思ってるほど楽しいものでもないぞ?」

「承知の上じゃ。それで、どうする?」

「…よろしく頼む」

 

こうしてどういう訳か、秘書艦 利根と共に彼は判子地獄へ逆戻りすることになった

 

 

「ところで利根さんや、どうして俺の膝の上に?」

「文句を言うでないぞ、さっさと片付けるのじゃ」

「へいへい…」

 

(ア~…、空気読ンダ方ガイイカナ…)

 

そして、ずっと事の顛末を見守ってきた装甲空母鬼は、起きるタイミングを失った

 

―――――――――――――

――――――――

 

 

鎮守府裏

 

扉越しに提督と利根の様子を確認した長門は、鎮守府裏である者と電話越しに会話をしていた

 

「ああ、大丈夫。全てお前の計画通りだ」

『それは良かったです』

 

電話の向こうに居る女性は、嬉しそうに言う。だが、同時にその声色には長門への申し訳なさも孕んでいた

 

『しかし、本当に良かったんですか?長門さん。立案者の私が言うのも変な話しですが、提督や‘‘利根姉さん’’に、最悪嫌われたりするような役を…』

「私自らその役を頼み込んだんだ、後悔なんぞするものか。それに提督はいつまでも私に気を遣っている、私はもう大丈夫だと言っているのだがな…。だからこれで私が本当に大丈夫だと、立ち直ったと分かって貰えたのなら、こんな役など安い物だ」

『長門さん…、本当にありがとうございました。この「利根姉さんと提督お近づき作戦」が上手く言ったのも長門さんのお陰です』

「礼などいらんさ、筑摩」

 

電話相手の女性、利根型航空巡洋艦2番艦 筑摩はそれを聞くと静かに微笑む。

その表情にはこれまでの苦労が報われたような、そんな顔をしていた

 

『そういう訳にもいきません。後日、間宮で何かご馳走させて下さいませんか?』

「むぅ、礼は本当に不要なのだが…その厚意を無碍にする訳にはいかないな」

『ふふ、ありがとうございます。それではまた』

「ああ」

 

こうして、通話は終了した。

長門はふぅ、と息を吐く。

そして自分は上手くやれていたであろうかと、この今作戦での自身の行動を振り返る

 

(これは酷いな…)

 

我ながら随分と滑稽な姿を晒していたなと自嘲する

 

(無論、後悔はしていない。していないのだが…)

 

提督の目にはどう写っていたのか、それが彼女にとっての不安だった。

だが、そのような心配も杞憂に終る

 

「ここに居たのか」

 

突如掛けられた彼の声に、長門はビクりと方を震わす

 

「て、提督…!?」

「そんな構えなくてもいい。ほら、利根も居ないだろ?…分かってるから」

 

そう言うと彼は長門の横に立つ。

長門もまた、その言葉を聞き観念したかように息を吐く

 

「そうか…全てお見通しだったと言うことか」

「全てって訳じゃないさ。ただお前が仕事中の執務室にノックも無しに入ってきた辺りから変に感じて、な」

「そ、それだけのことでか?」

「俺にとっては十分な違和感だったよ」

 

そう言って彼はチラリと長門を見る。

心なしか、提督のその表情は悪戯小僧のような顔をしていると長門は思った

 

「で、何を企んでいたんだ?」

「…利根や筑摩のプライバシーにも関わることだ。こればっかりは提督にも言えないな」

「それは残念」

 

そして提督もそれについて深く追求することはない

 

「ま、いいさ。けど‘‘頼まれ事’’だって、きちんと選ぶんだぞ」

「…提督、実は全て知っているなんて事は…」

「さぁ?どうだろうな」

 

戯けた顔で長門から視線を外す。しかしその姿がおかしかったのだろうか、長門はプッと笑いを吹きだすと、それにつられて彼も笑う

 

「ぷっ、ふふ…」

「っはは」

 

その日鎮守府の裏で、提督と長門の小さな笑い声が木霊した

 

―――――――――――――

――――――――

 

「のぅ、筑摩」

「なんですか、利根姉さん?」

 

艦娘寮 利根型の部屋にて利根は筑摩に話し掛ける

 

「その…なんじゃ。あれじゃ…ありがとう、じゃ」

「はて?私は利根姉さんに感謝されることをしたかしら?」

「恍けんでもよい。吾輩の為に色々とやっておったのは知っておる。本気で謎の危機感も感じたりもしたが…そのお陰で、吾輩は少しだけ提督の傍に居れたのじゃ」

「利根姉さん…」

「吾輩はその礼をしただけじゃ」

「…ふふ、利根姉さんには敵いませんね」

「姉に敵おうなど10年早いのだ」

 

こうして筑摩と長門の企みは、それぞれ終りを迎えた

 

―――――――――――――

――――――――

 

 

「にしても、まさか2,3ヶ月も前から仕込みをしていたとはな。長門の役者っぷりには驚きだ」

「ん?いや、私がこの作戦を開始したのは1週間程前からだぞ」

「え?」

「え?」




のじゃロリ可愛いのじゃ

5話にして深刻なネタ不足に悩まされるここ最近。
正確には1000文字以上の話しが書けるネタが不足してます。
メモ帳にある小ネタを10個程取り出してやっと1000文字行くかどうかという…。
メモ帳のネタの数だけ見て慢心してました。
慢心ダメ絶対


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提督さんとドライブ 1

初イベで調子乗ってました

時間がなかったのでpartで分けることにしまかぜ


時刻は1115

晴れ渡る青空に心地よい風が頬を撫でる。天津風がいれば大喜びしたであろうこの日、普段なら鬱陶しく感じる日差しを物ともせず一台の車が海沿いの道を走り抜けた

 

一人の提督と艦娘を乗せて―――

 

「アトミラールさんアトミラールさん!見て下さい、海がキラキラですよ!」

「おいおいプリンツ、今は運転中だから勘弁してくれ。あと危ないから顔は出すなよ」

 

開いた窓から風が入り込み、Admiral Hipper級重巡洋艦3番艦 プリンツ・オイゲンは若干目を細めながらも興奮気味に目の前の光景を眺める

 

―――最初に言っておくが、別にハイエースしてダンケダンケする訳ではない。加えてこの車はハイエースではない

 

昨日、鎮守府で洗車してる所をプリンツが手伝ってくれたお礼として彼がドライブに誘ったのだ。

艦娘自体、大本営から来たり陸で遠出する時以外は滅多に車に乗らない為、彼なりの彼女にしてあげられる息抜きのつもりだった。

 

因みに何故彼女だけなのかというと、他にもドイツ組を誘ってみるかと彼が尋ねたところ彼女が珍しくも

 

『二人きりが良いです!あ、そういう意味じゃなくて!…初めてのドライブ?はその…アトミラールさんと一緒がいいなって…って私は何を言ってるんでしょうか!?』

 

と喰い気味に頼んだこともあり、こうして二人でドライブを楽しんでいる

 

「そういえばアトミラールさん、ドライブって具体的に何をするんですか?」

 

どうやら彼女はドライブをするのが初めてなようで、頭に疑問符を浮かべながら尋ねる。

彼はぽりぽりと頬を掻くと少し考えてから説明を始めた

 

「車走らせながら景色眺めたり風を感じたり、運転に疲れたら途中で寄り道して買い物したり…俺もよく分かってないが、大体こんな感じじゃないか?」

「結構アバウトな感じなんですね」

「そういうもんだよ、多分。それと途中でPAに入ったりもするから、案外退屈しないと思うぞ」

「PAって?」

「あぁ、パーキング(Parking)エリア(Area)の略だ」

「駐車場、ですか?」

「ザックリ言っちゃうとな。実際は場所にもよるが、色々と便利な施設がある休憩場だと思ってくれ」

「ふーん…?」

「まぁ行けば分かるさ。まだ先だけどな」

 

そう言って彼は車を走らせる。

未だに疑問が消えないプリンツは不思議そうな顔をしながらも、すぐに景色へと視線を戻した

 

―――――――――――――

――――――――

 

『現在、2kmの渋滞です』

 

カーナビが感情のない声で無常な宣告をする。

知ってるわ、んなもん

 

「アトミラールさん…」

「言うなプリンツ、言いたいことは分かってる」

 

暫く走った彼らは途中で高速道路に乗ったのだが、これが間違いだったと後悔した。

始めはぐんぐんスピードを上げる車に興奮していたプリンツも、今は渋滞に当てられ疲れた顔をしている

 

「我慢我慢。これもドライブの醍醐味だよ、日本のWABISABIだ」

「適当なことを言ってるようにしか聞こえませんよー」

 

実際に適当なことを言っているので返す言葉が出ない。

ハハッと乾いた声で笑う彼に対してプリンツはプクーっと頬を膨らます

 

―――しかしまぁ、如何せんやることが無い

 

彼は退屈そうに窓の外を眺めるプリンツを見る。

あまりじっくりと彼女の顔を眺めることの無かった彼は、良い機会だと言わんばかりに彼女を眺める。

すれば、彼女と視線が合いつい呟いた

 

「綺麗だなー…」

「へ…?へぇ!?」

 

下心なく、ただ純粋に思った言葉を無意識のうちに言い放つ。

そしてそれはプリンツの耳にも届いたようで、目を回して動揺していた

 

「あ、あの!アトミラールさん…それってプロポー」

「ん、いやいやちゃうちゃう。ただ何と無しに綺麗だなーっと思っただけだ」

 

彼女が言い切る前に出掛かった言葉を遮る。

プリンツが言わんとした行動を取ろうものならビスマルクが黙っちゃいないだろう。主に生活面で

 

 

「むぅー…」

「んな拗ねることでもないだろうに…」

 

先程よりも更に機嫌を悪くしたプリンツはムスッとした表情で窓を眺める

 

「もー、アトミラールさんが紛らわしいこと言ったから…」

「そんな怒るなよ。ほら、渋滞ももうじき終わりだ」

 

見れば徐々に先のほうが見えてきた。

彼はふぅっと息を吐くとご機嫌斜めの彼女に提案する

 

「なぁ、プリンツ。この先にパーキングエリアがあるけど、どうする?」

「…行きます」

「了解ですよっと」

 

こちらに視線を向けず返事だけ返すプリンツ。

だが、その口元が僅かに綻んだ

 

―――――――――――――

――――――――

 

「このウドン美味しいです!」

「それはよかった」

 

時刻は1225

お昼を回り、パーキングエリアに多くの人が訪れ皆が運転の疲れを癒していた。

そしてドライブに来ていた彼らもその一人であり、今はパーキングエリアの食堂で一息ついている

 

「それにしても、日本のParking areaは凄いんですね!」

「まあな、軽いお土産とかも売ってるからドイツ組にも買っていってやったらどうだ?」

「本当に色々あるんですね…!そうします」

 

彼女は嬉々とした表情で満足げに答える。

それを見る提督の顔もまた嬉しそうな顔になる。

そんなとき

 

「おや、提督じゃないか?」

「ん?失礼…、どちらさまですか?」

 

朗らかな雰囲気を出している二人に声が掛けられた。

声を掛けた人物はフルフェイスのヘルメットを被っており、誰なのかは分からない。

プリンツも提督との会話を中断され、訝しげにその人物を見る。

だが、その人物がヘルメットを脱ぐと二人はアッとした表情をした

 

「「日向(さん)!?」」

 

伊勢型戦艦2番艦 日向がヘルメットの下から顔を出した

 

「少し、驚きすぎではないだろうか」

「や、ここはこういう反応が正しいかなって」

(素で驚いちゃった…)

 

しかしまぁと、彼は普段とは違う日向の格好をマジマジと眺める。

しっかりと体幹が引き締まり、制服ではなく黒を基調としたライダースーツを着こなしていて…なんと言うかかっこいい

 

「提督、私は別に気にしないが、少しジロジロ見すぎじゃないか?」

「…アトミラールさん?」

「止めてプリンツ、そんな目で見ないで。かっこいいなと思っただけだよ、本当だよ」

 

それでも消えない疑いの目、本当のことを言っても信じて貰えない辛さに打ち拉がれながらも、彼は日向との会話に戻る

 

「それにしても日向もドライブするのか、意外だ」

「ドライブ、というかツーリングというか。まあどちらでもいいが。そういう提督はプリンツと二人でデートか?」

「デ、デート!?」

 

デートと言う言葉に反応したのだろう。プリンツは顔を真っ赤にしながら手をブンブンと全力で横に振る。

―――こちらもそのつもりではないのだが、アトミラールさん的にその反応はちょっと辛いぞ

 

「違う違う、昨日洗車の手伝いをしてくれてな。そのお礼だよ」

「ふーん、そうか。…そうか」

「あ、あうぅ…」

 

彼の言葉にプリンツはシュンと黙り込む

 

(そんなはっきり否定しなくても…)

 

そんな彼女の心象を知ってか知らずか、日向はこの話しを終らせ彼らの車を見つける

 

「それにしても、提督は車なのか」

「ああ。つっても中古の安いヤツだけどな。そっちは?」

「見ての通り、私はバイクだ。なかなか良いものだぞ」

 

そう言って彼女は駐車場に視線を送る。よく見れば、黒い大型のバイクが存在感を放っていた。

もしかしてアレかと、彼が指を指すと日向は頷く。

そして道行く人もチラチラとバイクに視線を送り、そのバイクがいかに凄いかを知らしめられる

 

「素人目で見てもかっこいいな、なんて名前だ?」

「あぁ、ZUI-UNだ」

「え?」

「だから、ZUI-UNだ」

「えーと…」

「ZUI-UNだ」

「ハイ」

 

車名を聞いているのだが、日向はZUI-UNで通す。どうやら彼女の中ではそうらしいのでこれ以上の詮索を止めることにした

 

「にしても、日向もどこかに向かってたのか?」

「まぁそんな所だ、とは言っても用事ももう済んだし鎮守府に戻るとするよ」

「そっか、またな」

 

そう言うと彼女はヘルメットを被りバイクに向かって歩いて行った。しかしながら、それがまるで映画のワンシーンのようで彼は心の中で師匠と呟く

 

「…」

 

彼女はスッと手を挙げると彼らに向かって手を振る。提督もそれに応え手を振り返す。

日向はそれを確認すると、黒バイクのエンジンを吹き鳴らし鎮守府へと帰っていった。

 

「こんなところでも、誰かと会うこともあるんだなぁ…ってプリンツ?」

 

そういえばプリンツが先ほどから大人しい、どうしたんだろうか。

そう思い彼女の方を見ると

 

「むぅ~」

「ど、どうした?」

「べっつに~、アトミラールさんは私を置いて日向さんと楽しげにお喋りしていたのを眺めていただけですよーだ」

 

再び拗ねるプリンツに彼は再び頭を掻いた




2に続く(といいな)


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