INFINITE EVOLVE (00G)
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第1章 狩猟解禁
世界に立つ巨人兵士
本当の2作品目はまどマギの小説にしようと思っていましたが、先日PS4の『EVOLVE』というゲームをやっていると「このモンスターたち小説に書きたい!」という願望が目覚めて書くことになりました。
1作品目の息抜き程度に書き始めましたが、両作品とも完成させるつもりなのでよろしくお願いします。
EVOLVEに先に手を出すのは俺だぁ!
ある森の中に一匹の生き物が歩いていた。
いや、生き物という可愛らしい言葉が似合うとは思えない化け物がいた。
ソイツはいつも通り餌を探すため森の中を歩いていたが、目の前が真っ白に光ったと思ったらいつの間にか先程自分がいた森とは別の森にいた。
別にソイツは縄張りを持っていないが、自分の知らない土地にいきなり居ては些か気分は良くない。
しかしソイツはそんな感情をすぐに捨て、己の発達した嗅覚で周囲の餌の位置を探る。
少し離れた先に、自分が知っているものとは形状は違うが明らかに人工物があるのを知ったそいつは今までの経験からそこに餌があることを直感で理解した。
そうと決まればソイツはドスドスと重い足音を鳴らしてその人工物のあるところに向かって歩き始めた。
まずは餌を獲り外皮を獲得せねば。
そう考えた、ある世界では旧約聖書に登場する巨人兵士の名を持つ化け物『
☆☆☆
「あぐっ……!?」
「ほら、さっさと金出しな!」
「早く出さないと警察呼ぶわよ」
「わ、わかったから待ってくれ! 今出すから……!」
とある国の公園のすぐ裏にある薄暗い森の奥に3人の女に囲まれて1人の男性が財布の中から何枚かのお札を取り出す。
20代後半の男性が女子高生3人に暴行を受けているという可笑しな光景だが、今の世の中では当たり前になってしまった光景である。
男性は傷だらけの手でお札を握り3人(その中のリーダー格らしい女)にお札を渡すが、女はそれを奪い取ると男性の腹に向かって蹴りを入れた。
「うぐっ……!?」
鳩尾に入ったのか、男性は苦しげに身を丸め、その光景が面白かったのか女たちはゲラゲラと笑う。
「それにしてもあんたこんなけしか持ってないのかよ。 ちゃんと働いてんの?」
「それに私たち最近ストレス溜まってんのよ。 だからサンドバッグになってよね」
男性の答えも聞かずに女たちは一斉に男性に暴行を始めた。
男性は身を守るため、頭を隠すようにして体を丸めた。
だが痛いものは痛いため、時節男性が小さく呻き声を上げ、それを聞いた女たちは醜く笑いながら暴行を続けた。
「(俺が……俺が何をしたっていうんだよ……!)」
産まれてこのかた犯罪など一切せず真面目に働きながら生活していた男性は今の世の中を呪った。
10年前に現れたISのせいで今は何の権力もない女が、女だけという理由で道行く男性を奴隷のように扱うようになり、女は敬われ男は蔑まれる女尊男卑の思想が全世界に流行った。
この男性も、そんな思想の女たちに
運が悪かったのだ。
「(誰か……誰か助けてくれよ……!)」
しかし、そんな男性の切な願いが届いたのか、遠くから何かの足音が聞こえてきた。
しかもその足音が少しずつ大きくなってくる度に地面が揺れ始めた。
さすがに女たちもこの変化に気づき、足音のする方に目を向け、自分たちの暇潰しを邪魔した奴を懲らしめてやろうかと考えた。
だが途中でピタリと足音が止み、地響きも止まってしまったため、その場にいた全員はその足音のした方角を凝視した。
だが、見えるのはただ暗く続く森。
女たちは何もなかったとわかるや否や、男性を再度暴行すべく足を振り上げた。
だが女たちは気づいていない。
女たちの視線は足下にうずくまる男性にしか向けられていないため、すぐ近くまで近づいているヤツの獲物を狙うギラついた目を。
そして、女たちが男性を蹴ろうと足を振り下ろしたと同時に、ソイツは女たちの後ろから太く生える木々を吹き飛ばしながら吹き飛ばされた木と同じくらい太い剛腕を振り下ろした。
グシャァ!
たった一振りで、3人の内2人の女はただの肉塊に成り果て、飛び散った肉片が残った女と男性に大量にかかる。
突如現れたソイツ『
不揃いな歯が並んだ顎で肉や内臓を喰い千切り、喰い千切った時に飛び散った血や肉片で顔や腕を血で真っ赤に染める。
ある程度肉塊を喰った
さっきまで人を喰らい、さらに体を血で汚し、太い腕と指先から伸びる鋭利な爪を持った
「グオォォォ……」
唸り声を上げた
「い、いやあああああああああ!!」
そこでやっと我に返ったらしい女が喧しいほどの大声で叫びながら逃げ出した。
勿論のこと
逃げたのに目の前に跳んでこられたため女は慌てて動きを止めて反対の方向へ逃げようとするが、足が縺れて無様に転んでしまった。
それでも女は地面を這いずってまで逃げようと体を動かすも、逃がすかよと言わんばかりに足を
ベキィッ!
「ぎゃああああああああ!!」
一気に体重をかけられ女の足は意図も簡単に潰れた。
痛みで大きな叫び声を上げるが生憎ここは公園といえど森の奥。
叫び声など公園にいる人になど聞こえず、ましてや助けに来てくれる人間などいるはずもなかった。
女は涙と鼻水で顔を汚なくしながら必死に男性に向けて手を伸ばす。
「お願い……助け」
ズチャッ!
女は最期に頭を踏み潰され呆気なくこの世を去った。
恐怖で足がすくみ、腰が抜けた男性は
「ぁ……ぁぁ……」
逃げたくても体がまるで地面に固定されているかのように全く動かず、うまく言葉も発することができなくなった男性は自分を見下ろす形となった
そして
「は、はは……」
これから自分がどうなるのかわかってしまった男性は絶望しきった顔で力なく笑う。
なんで俺が、真面目に生きてきた俺がどうして……そんな感情が男性の頭を埋め尽くしていき、男性が最期に見たのは血とは違う
ボキボキッ、グチャ、ズチャ、ブチィッ!
男性の頭や胸部を噛み砕いて思いっきり噛み千切った
すると、
「グルルル……グオオオオオオオオ!!」
嬉しそうに高らかと空に向かって吼えた
全ては己が次なる
例え立ち塞がる者がいるなら力で叩き潰す。
どんな世界でも強き者が生き残り、弱き者が死ぬ。
腐り堕ちた世界で、交わることなどない異世界の
次回はいきなりの戦闘描写なので頑張って書きます。
感想やアドバイス、ドシドシ送ってください。
さあ、今日もどこかでEVOLVEしようかな。
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地獄の始まり
それとこの前EVOLVEをやっていたら外国の方のボイスチャットが聞こえてきてビックリしました。
Wraithで勝ちましたけど。
戦闘と前に言いましたけど皆さんが想像する戦闘とは控え目です。激しい戦闘は次回です。
それでは2話目、どうぞ!
「く、来るな! ひっ、やめ」
「いやあああ! 助けてえええ!」
「うわああああん! おかーさーん!」
賑やかになるはずの公園で、地獄のような光景が広がっていた。
滑り台やブランコといった遊具は全て薙ぎ倒され、あちこちに血や内臓が飛び散っている。
その中には人がそのまま壊れた遊具の鉄柱に突き刺さっていたり、体のありとあらゆる場所があらぬ方向へ折れている人が倒れていたり、もはや人と判断できないほどグチャグチャになっている人がいた。
そして、どれも共通してすでに息をしておらず、
老若男女、大人から子供関係なしに殺していく。
しかし、かれこれ20人以上喰っているが一向に外皮が回復している実感がない。
ならどうするか。
餌を探してさらに喰えばいい。
勿論途中で見つけた人間もちゃんと腹の中に収めた。
公園を出て跳躍した
――ファンファンファン
ふと、跳躍する
動きを止める
そして、パトカーの中からゾロゾロと警官が降りて腰のホルダーから拳銃を取り出して
眼下にいる人間たちが次にやろうとすることは知っている。
なら己がやることはただ一つ。
「グルオオオオオオオオオオ!!」
警官たちは落ちてくる
銃弾の嵐の中、
そして、振り下ろした右腕を中心にいきなり爆発が起こった。
その爆発で警官もパトカーも吹き飛ばされ、爆心地にもっとも近い場所ではコンクリートの道路に巨大な穴が開きパトカー3台が使い物にならないくらいに大破した。
警官たちも爆発に巻き込まれ、ただの肉塊になった者から手足の一部だけが残った者たちが道路に倒れていた。
ギリギリで爆発から逃れた警官たちも再度
腹を横に向かって切り裂かれた警官は、切られた腹から内臓がボトボトと流れ出て倒れた。
「う、うわああああああ!」
あまりにもショッキングな光景に警官の一人が叫びながら
体の向きをその警官の方に向けて、
「ああああああ!」
「くっそおおおおお! そいつを離せえええ!」
そのお陰か、
ゴキャッ!という音が投げ捨てられた際に響き、さらに
大質量の金属の物体はやや緩やかな放物線を描きながらその同僚に直撃した。
パトカーは何度も道路にバウンドして家の外壁に激突してやっと止まった。
同僚の警官がいた場所には赤い線が道路に引かれ、引き千切れた片足が道路の隅に落ちていた。
しかし、残った警官たちは
ただし
「「「「ぎゃあああああ!」」」」
火炎放射機のように
「グルオオオオオオオオオオオ!!」
炎が燃え広がる中、
☆☆☆
「ちょっと、返事しなさいよ! これだから男共は……!」
パトカーが道を塞ぐように並び、その回りにいた婦警たちも通信機を持っている婦警が怒鳴ったことに同意しているように怒りの表情を浮かべた。
この婦警たちだけでしか構成されていない警官隊は
もっとも、男と一緒にいたくないという理由だけで構成されているのだが。
だがそこにいる婦警たちはどれも皆やる気がなさそうに欠伸をしていた。
普段から男性警官に仕事を押し付け、自分の職務すら全うしなかったことが今になっても出ていた。
まあそんなことは
「な、なんなのよあの化け物!?」
「怯むな! 私たちは役立たずの男共とは違う! 撃てぇ!」
その発砲音をスタートに他の婦警たちも一斉に拳銃の引き金を引くが、
さらに先程も同じ攻撃を受け、痛くはないが小虫がペチペチと当たるような感触に
「うあああああ!熱い熱い熱いいいいい!」
「ぎゃあああああああ!」
火だるまになった婦警たちは火を必死に消そうと暴れ、道路の上でのたうち回る。
一瞬にして死屍累々の光景が展開され、生き残った婦警たちは拳銃を捨て一目散に逃げていった。
男性警官たちが
ダメージは無くとも外皮が少しばかり減らされたことは事実だし、何より進化するためのエネルギーが足りない。
☆☆☆
理由は勿論
「これより我々は突如現れた謎の生物に対して殲滅作戦を行う。 まずはこれを見てほしい」
集団の中で指揮官らしき人物が前に出て空中ディスプレイに映像を流す。
かなり画質が悪いが、パトカーと同じくらいの大きさがある二足歩行をしている生物らしき物が映っていた。
「一般の市民がネット上に投稿した動画だ。 この通り、この謎の生物は巨大だ。 さらに出動した警官たちの防衛ラインを突破してきているため戦闘力も高いと思われる。 今は市民たちを誘導して避難させているが目撃情報や衛星写真からは真っ直ぐ避難している市民たちに向かって進んでいる」
指揮官は新たに大量の青い点と赤い点が表示された街の地図を出した。
「青い点が今避難している市民たち。 そして赤い点が謎の生物を表している。 この通り謎の生物は蛇行したりしてはいるが確実に市民たちに向かって進んでいる。 我々の目的はただ一つ。 この謎の生物の進行を食い止めることだ! 全員直ちに準備を行い現場に向かえ!」
「「「「はっ!」」」」
指揮官の号令に敬礼して答えた自衛隊たちは、全員がすぐに移動をして各々の装備の準備を始めた。
しかし、その中で全く動こうとしない集団があった。
しかもスクール水着のようなものを着ている奇妙な女たちだけの集団だった。
彼女たちは今回の作戦に加わっているIS部隊のメンバーである。
今ではISの影響で自衛隊の数が極端に減らされているためどうしても集められる人数に限りがある。
そのため足りない戦力を補うために呼んだのだが、彼女たちはよく自衛隊と騒ぎを起こす人物でもあった。
『ISがある今では自衛隊のような無駄なものは要らない』やら『男が偉そうに歩くな』など無茶苦茶なことを言って自衛隊の男性隊員と騒ぎを起こすのだ。
指揮官は無駄だと解りながらもその女たちのもとに行く。
「お前たち、もう少し気を引き締めたらどうなんだ?」
「ふんっ、男風情があたしたちに指図すんじゃないよ。 変な生き物だか何だか知らないけど、あたしたちが負けるなんてあり得ないから」
「生物の情報が全くないのに慢心は敗北を招く。 確かにISの強さは認めるが、作戦中は勝手な行動は慎め」
「指図するなって言っただろ? あたしたちはあんたたちみたいにビクビクしながら戦うような臆病者じゃないんだよ。 臆病者のあんたたちはどっかいっちまいな」
そう言ってから女たちは笑いながら外に出ていった。
指揮官は手で頭を押さえため息をはいた。
この作戦が上手く行くかどうかは大部分がIS部隊に左右される。
あの女たちが勝手な行動を取るのではと指揮官は不安になったが、今は謎の生物
自分も現場に出て指示を出しながら戦闘を行う以上準備に不備があってはならない。
指揮官はこの後行う戦闘が激戦になることを予想しながら準備するスピードを速めた。
次回こそは
まだ怪物と亡霊と悪魔が残っているし、さらには新しいモンスターが追加されるというので執筆が楽しいです。
感想、アドバイスをお待ちしております。
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終わり・序章
残念ながら1万文字までいきませんでしたが頑張って書きました。
次のガチな戦闘は1万文字までいけるように書きます。
それでは第3話目、どうぞ!
自衛隊が
「撃て! 奴をこれ以上近づけさせるな!」
アサルトライフル『M16』を持った自衛隊の一人が指示を出して
その行動に続くかのように回りにいた自衛隊たちも
彼らは侵攻する
主戦力を確保している本隊が来るまで出来るだけ
現に
3メートル近い巨体を凄まじい跳躍力で跳ぶと、発砲を続ける自衛隊の前に着地すると同時に両腕を振り下ろす。
まだ進化していないため、実力の半分も出しきれていないとはいえ人間を肉塊に変えるだけの力はある。
自衛隊の一人を殺した
自衛隊たちは移動した
理由は
そのような事態が起こればそこからこの部隊が崩れていってしまう。
だがその際にできた一瞬の隙を
それにより、
その時に二人の体からゴキッ!という音が鳴り、道路にひれ伏してからピクリとも動かなくなった。
それだけで他の自衛隊たちはその二人がすでに息をしていないことを理解し、たった一つの動作で人間二人の命を簡単に葬った
しかし、自衛隊たちはそれでもM16の銃口を
警官が使う拳銃よりも威力が高いアサルトライフルの銃弾が堅い
「グオッ!?」
警官たちの時とは違い、確実にダメージを負っていることを知った
だが、痛みにより本能を刺激されたことにより
ボンベを固定している金具がメキィッ!という音を立てて壊れ、ボンベに繋がっていたチューブが引き千切れてプシューッという何かの気体が抜け出る音が出て辺りに妙な臭いが漂う。
頭蓋骨が陥没して死んだ者、首が180度回転して死んだ者、頭の上半分が吹き飛んで死んだ者、死にはしなかったが下顎を吹き飛ばされてもはや喋ることすら出来なくなった口で絶叫を上げる者などが出た。
「ぜ、全員退避ー!」
自衛隊の一人が指示を出すと生き残った自衛隊全員が
理由は
そして、そのガスコンロを使うには発火性のあるガスが必要になり、それをボンベの中に圧縮させて外に固定させていなければならない。
それを知ってか知らずか、
この中で発砲して運悪く放たれた銃弾が火花を散らそうものなら散布されたガスに引火して爆発を起こす。
他にもガスボンベがコンクリート製の道路に接触してそこから火花が出ても同じようなことが起こるため自衛隊たちは急いで
だが
ブォンブォンと風を切りながら回転して飛んでくるガスボンベの軌道上にいた自衛隊は身を投げ出してそれを避け、ガスボンベが自衛隊の服をかすっていく。
自衛隊たちは飛んでいくガスボンベを見て顔を真っ青にするが、運が良かったのかガスボンベは火花を散らすことなく他の家の庭壁に深々と突き刺さった。
一先ずホッとした自衛隊たちだったが後ろでまた新たにメキィッ!という音が聞こえた瞬間、急いで走り出した。
正確にはガスボンベから漏れる気体にだが、その気体は
その湖のそばで
それからその臭いがある場所は極力近寄らないようにして、どうしてもその場所を通るときは火炎放射、というより捕食を含めて戦闘を行わないように気を配っていたが戦闘で頭に血が上ってガスボンベから出る気体の臭いに気がつかなかった。
そして、今は気づいている。
これがとても燃えやすく、爆発しやすいと。
そうと理解すると
真っ直ぐ自衛隊に飛んでいくガスボンベを追うように、火炎放射の炎がガスボンベの揮発性ガスに引火したことで出来た火が空中を滑るようにガスボンベに向かって走っていく。
そして、ガスボンベが自衛隊たちの丁度後ろに近づいた時に、火がガスボンベに追い付いた。
ドゴォォォォン!!
自衛隊たちの後ろにまで迫ったガスボンベと庭壁に突き刺さっていたガスボンベの両方に火は引火して大きなガス爆発を起こした。
庭壁に突き刺さっていたガスボンベからは距離が離れていたがすぐ後ろのガスボンベの爆発をモロに受けて自衛隊たちは爆風に吹き飛ばされる。
爆風で吹き飛ばされた挙げ句に道路に強く叩きつけられ、さらに爆発の衝撃で耳が痛く目眩がする。
自衛隊たちは死にはしなかったが全員まともに動ける状態ではなかった。
そして、自衛隊と
バキバキッ!と家の壁を壊しながら
自衛隊の視線の先には2つのキャタピラで道路を進む、砲口から白い狼煙を上げる戦車『10式戦車』が見えた。
戦車の回りには同じアサルトライフルのM16を持った自衛隊がおり、走ってやって来た彼らは倒れている自衛隊たちを急いで運んだ。
「グルオオオオオオオオオオオ!!!」
離れると同時に
ギロリと、爛々と輝く
10式戦車の砲弾を受けた右胸からは赤い血が流れ、砲弾が
「攻撃開始!」
自衛隊の主力部隊の中から無反動砲『カールグスタフ』を構えた指揮官が指示を出してカールグスタフからロケット弾が発射された。
指揮官に続くように他の自衛隊たちもM16やカールグスタフを構えて攻撃を開始した。
「お前たちは負傷した者を連れて下がれ! ここは俺たちが引き受ける!」
カールグスタフに新しい弾頭を装填しながら指揮官は負傷した自衛隊隊員を運ぶ者に指示を出した。
倒せる敵は倒したが、ここまで戦力を整えられた敵に第1形態のまま戦闘を続ければ最悪自分が死ぬ。
そんなことは愚の骨頂であり、餌ならまた別の場所で探せば良いと考え
しかし銃弾や砲弾が飛んでくることは無くならないので、
家の壁を7~8軒分ぶち破ってから
失った分の外皮がゆっくりと雀の涙ほど再生していた頃に再生した分を損失させられた
睨み付けたその先には、第2世代量産型IS『打鉄』を纏った女4人が手にアサルトライフル『焔備』を持ち、その銃口を
軽く見積もっても
囲まれた。逃げようとする先には複数の人間。
しかも自身に一番のダメージを与えた10式戦車もあるかもしれない。
しかも空にはアサルトライフルを持った女。
少なくとも待ち伏せている人間に会うことは無くなるし、空からは家の屋根で
肩を前に突き出すようにして家の壁をタックルの要領で破壊し、時折跳躍も交えながら家という家を破壊しながら逃げていく。
上からの銃弾も
そのお陰で外皮がゆっくりと再生していくがまだ安心は出来ない。
手負いのまま敵地のど真ん中に留まれるわけないため
「この化け物が! でかい図体しているくせにちょこまかと逃げやがって!」
「なんで当たらないのよ!」
打鉄を纏った女たちは攻撃が当たらないことに苛立って次々と銃弾を
反動制御やハイパーセンサーによる照準アシストはISが行ってくれるが、狙うのは搭乗者自身なので当たらないのは搭乗者の実力が無いということになる。
そんなことは女たちはわかってはいないので、焔備で
それから暫く
逃げている間に他の人間の姿が全くなかったため、自衛隊や警察の避難誘導が迅速で的確だったということが伺える。
だが人一人もいない場所は
マンションのベランダを掴んで壁をよじ登って屋上に上がった
「か、回避!」
女の中でリーダーらしい女が慌てて指示を出したが、チームの中の一人が
「ひっ! や、やめろ! やめろおおおおお!」
ISのエネルギーシールドによって
打鉄の両肩の浮遊物理シールドは
それによりシールドエネルギーがどんどん減っていき、その光景が自分の死へのカウントダウンを宣告されているようで女は悲痛な叫び声を上げる。
そして、数字が0になった瞬間、女を守るISは光の粒子に変化して消えた。
「やめ――」
絶対の盾を失い女は
己の手が頭蓋骨を砕いた感触を感じると
何故攻撃を続けていても中々死なず、いきなり死んだのか。
喰い終わってから
ここで
この
この
殺せない相手ではないと解ると
その時足下にあった指輪を踏みつけて、さらにそれがパキリという音を立てて砕けたがそんな小さなことに
精々そこら辺の小枝が折れたか小石を踏みつけた程度にしか思っていないし、今は戦闘にしか集中していない。
残った女たちはISからの情報で
約3メートルの
今回持ち上げているのは1メートルちょっとのコンクリートブロック。
大岩よりも軽いうえにに小さいから投げやすい。
「おごっ!」
そして案の定コンクリートブロックはリーダーの隣にいた女の胴体に直撃した。
エネルギーシールドによって傷がつくことはないが衝撃を吸収することはできずに、コンクリートブロックが持っていた全ての力が搭乗者に伝わり吹き飛んだ。
跳躍撃を叩き込まれた女はほぼ垂直に頭から落下していき、道路に叩き付けられた。
そのせいで頭は首から後ろに折れ曲がり、女は白目を向けて死んだ。
ISの絶対防御と、落下した時の頭の角度の問題で叩き付けられた時の衝撃が首を曲がらない方向に曲げた結果、このような死に方になってしまった。
初めて搭乗者を守るための絶対防御が原因で搭乗者が死亡した事例になったが、絶対防御が発動しなくても頭から硬い道路に落下すればどう足掻いても死ぬことには変わらないのだが。
「うわああああああ!」
死というものを間近で見てしまった残ったリーダーと女の内リーダーではない方の女が、まるで発狂したかのように
偶々マンションから出たところが駐車場だったため、
そして、焔備から銃弾が出なくなって弾数が0になったと知った女は近接ブレード『葵』を展開すると叫び声を上げながら
もはやパニック状態で冷静な判断ができなくなったその女は真っ直ぐ軽自動車を盾にする
葵で斬りかかるタイミングより早く軽自動車が接近してきたため突貫した女は避けることが出来ずに強く軽自動車と衝突した。
「グルル……グルオオオオオオオオオオオ!!!」
女が衝突した勢いが
そして大きな雄叫びを上げながらコンクリートに沈み込んだ両脚を道路から引き抜き、自由になった脚に力を込めて軽自動車に女を張り付けたまま前に走って
「う、あ……」
まだその女は気絶しているだけで死んでおらず、打鉄が消えていなかったため
「……………………」
移動する前に空に残ったリーダーを黙って睨むと、それから何もせずに立ち去っていく。
リーダーは助かったという安堵の感情と負けたという屈辱。そして恐怖と緊張のせいでプツリと意識が闇の中へ墜ちていった。
こうして
☆☆☆
「グルルル……」
IS操縦者との戦闘を終えて安全な場所を探していた
別に臭いなら慣れてしまえば何ともないのだが時折吹いてくる潮風のせいで体の傷が染みて堪らなく痒いような痛いような感覚に困っていた。
取り敢えずどこかゆっくり休息がとれる場所を探していると目の前に巨大な船が見えた。
あれだけ大きければ隠れる場所もあると判断した
どんどん離れていく陸を後ろに
後に『巨大生物襲撃事件』として世界に広まるのだが、これはまだ序章に過ぎない。
「ヴオオオオオオオオオ!!」
物語は終わらない。
パワーファイター型の
こんな感じにこれからも書いていくのでよろしくお願いします。
ちなみに
<モンスター>
<スキン>
デフォルト
<技ポイント振り>
岩投げ 1
跳躍撃 1
火炎放射 1
<パーク>
嗅覚有効範囲up☆☆☆
嗅覚有効範囲が75%拡大する。
<モンスターバフ>
なし
感想、アドバイスドシドシ送ってください。
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水辺の絶対暴君
そして作者は気づきました。
原作沿いの物語を書くより断然オリジナルで書いた物語の方が早く書けると!
でも次回から少し更新スピードを落とします。さすがに疲れました。
それでは4話目、どうぞ!
人が多かった時間帯、特に最初に現れたの森の近くの公園が一番酷かった。
戦闘域は建物の損害などで済んだが公園には子供連れの家族が沢山いた。
男性か女性かわからないほど喰い散らかされた遺体から公園の遊具に突き刺さる男性や体を踏み潰された子供が公園に転がり、自衛隊たちはそれらの遺体を丁寧に運んだ。
「ひでぇな……」
「大人から子供まで容赦なしか……」
あまりの惨劇に思わず顔をしかめ、鉄臭い血の臭いに吐き気を抑えながら自衛隊は作業を続ける。
それと同時に別の場所では自衛隊と政府の役人立ち会いのもと戦闘を行った者たちから事情聴取を行っていた。
IS操縦者2名は
生き残ったIS操縦者2名の内一人は目が覚めてからは虚ろな表情のまま政府の役人の問いかけにも全く反応せず、廃人となってしまった。
残りのリーダーからは話が聞け、さらに
体長は約3メートル。
上半身がまるでゴリラのようにがっしりとした体型をして、そのパワーは建物の壁を簡単にぶち破るほど。
1メートル近いコンクリートブロックや車を軽々と持ち上げ、拳を叩きつけると爆発を起こし、口から炎を吐く。
また大きく跳躍することで10メートルの距離を一気に移動できること。
跳躍できるが空は飛べないなど、少ないが確かな情報が提供された。
政府の役人はこれ以上聞くと負傷者の傷にさわると言い、手に入れた情報を持って負傷した者たちがいる病院を出てある場所に向かう。
その場所は国会議事堂。
日本総理大臣と急遽設置した特大モニターに映る各国の大統領が集まって今回起こったことを話し、情報を共有するため政府の役人は重要になる
一刻も早くこの異変を各国に知らせるために。
だがそれはすでに遅い。
異変はとっくの前から起きていたのだのだから。
☆☆☆
時を同じくして、場所はスコットランドのネス湖。
そこには多くの報道陣が集まりカメラに向かってあることを伝えていた。
『ネス湖のネッシーは実在した!』
全ての報道陣がこの同じテーマを共通に、かつて未確認生物ネッシーで有名になった湖に来ていた。
事の発端は1週間前にこのネス湖に遊びに来た家族が録画したホームビデオだった。
そのホームビデオは父親がカメラを手に子供たちが水辺の近くで川遊びをしているところを撮っているところから始まっている。
少しすると子供の一人が湖の沖を指差して『何か跳ねたよ!』とはしゃぎ父親がカメラを子供が指差す先に向けると、その先にナニカがいた。
カメラが必死でピントを合わせようとぼやけたり鮮明になったりして、やっとピントが合ったときにはナニカが湖の中に潜っているところだった。
それっきり、そのナニカは水面に浮上してこなかったがカメラはそのナニカの姿を撮していた。
灰色の体に太い尻尾。
たったこれだけしか撮れていなかったが、家族は興奮しながらこう言っていた。
『ネッシーだ!』
この映像はすぐにネットに流れ最初はどうせ合成映像だと言われていたが、様々な専門家がこの映像を検査したところ合成された物ではないということがわかった。
さらにその家族以外の人も映像や写真でネス湖にいるナニカを残していた。
そして、スコットランドのネス湖はまたもネッシー騒ぎを起こしその存在を確かめようと多くの報道陣が詰めかけることになった。
陸からネス湖を撮る報道陣や、船に乗って直接ネス湖から撮る報道陣と様々だった。
船に乗って報道しているチームはスコットランドでは有名な局の報道陣で、使っている船も大きい。
報道陣は自分たちの仕事をする一方で、カメラにネッシーを収めようと船をより沖に進ませた。
上が五月蝿い。
水の底でナニカが思ったことがこれだった。
今から1週間前。ナニカは目が覚めると自分の縄張りとは違う湖にいて最初は戸惑ったが、生憎ここには自分以外誰もおらず餌も豊富だったことから新しい縄張りとしてこの湖で誰にも邪魔されることなくのんびりと生活していた。
しかし、今では自分の縄張りに沢山の侵入者が騒音を水の中に撒き散らしながらナニカの睡眠を妨害している。
水の底で目を覚ましたナニカは3対の目を開いて、丸太よりも太い灰色の体を動かして浮上する。
睡眠を邪魔した侵入者は排除する。
水辺の暴君は泥を巻き上げながら水面を目指した。
ネス湖の水上をゆっくりと進む複数のクルーザーは互いに距離を離しながらネス湖のあちこちに散らばった。
いざ撮影を始めてカメラに他の報道局の乗るクルーザーが映ってしまったら台無しだ。
そのため、互いにカメラに映らないよう十分に距離を離してから撮影を始めようとクルーザーに乗っている全員が考えていた。
その中の1隻のクルーザーに乗っている報道陣が撮影の準備が出来たため、女性リポーターがマイクを手にクルーザーの甲板に上がってリポートを始めれるよう準備する。
カメラを回してリポートを始めるためにカウントダウンが始まり、そして0になった。
「私たちは今、ネット上で話題となっているネス湖に来ています。 ここ、ネス湖では未確認の生物の姿が確認され、未だその正体は明らかになっていません。 専門家からは話題となった映像は合成された物ではないと発言しており――」
女性リポーターがカメラ向かってリポートしている最中、クルーザーが大きく揺れた。
当然そのクルーザーに乗っている人はよろめいて手すりに掴まって体勢を保ったが何人か転んでしまった。
「だ、大丈夫か!?」
「座礁か!?」
いきなりのことで辺りは騒然となり、撮影クルーの一人が船を操縦していた船長に船が座礁したかどうかを確認する。
「ありえない! ここは水深が70メートル以上あるんだぞ!?」
窓から身を乗り出してそう叫ぶ船長。
だがまたクルーザーを先程よりも強い衝撃が襲い、クルーザーが右に傾く。
「いる……なにかいるぞ!」
そしてまたクルーザーを衝撃が襲い、今度は左に傾いた。
衝撃が襲う度にクルーザーが軋んで嫌な音が鳴るが、その中でベキッ!という一際大きな音が鳴り響いた。
音が鳴ってからクルーザーは徐々に沈んでいき、水上でバランスを崩し始める。
船長はクルーザーを動かしてできるだけ岸に近づけようとするが、エンジンに水が入ったらしく動かない。
回りにいた他の報道局の人間たちも騒然としながらカメラを沈むクルーザーに向け、全員が見守る中ついにクルーザーは沈んだ。
沈む時にクルーザーが大きく横に倒れたせいで乗っていた撮影クルー全員は湖に投げ出されたが、幸いなことに全員怪我はしていなかった。
「一体なんなんだよ!?」
「みんな無事か!?」
クルーザーが突如沈んだことに困惑しながらも全員で無事を確かめ合った。
「お、おい。 ジョンがいないぞ!」
撮影クルーの一人がカメラマンのジョンが見当たらないと言う。
全員はジョンがまだクルーザーの中に取り残されている、もしくは服などが引っ掛かって上がってこれていないと思い、湖の中に潜ろうとした。
「みんな急いで岸に戻れ! 早く!」
潜ろうとした撮影クルーの一人の耳に船長の切羽詰まった声が聞こえ、『どうして!?』と叫ぼうとして船長の声が聞こえた方に顔を向ける。
だが船長の方を向いたことでなぜ船長が岸に戻れと言ったのかがわかった。
泳いで岸に向かおうとする船長の後ろ10メートルくらいの場所に、こっちに真っ直ぐ向かってくる灰色のナニカの姿が見えたからだ。
あの灰色のナニカが自分たちの乗っていたクルーザーを沈めたのだとわかると、全員は一斉に岸に向かって泳ぎ始めた。
灰色のナニカ、『
人間たちは全速力で泳いでも
そして、
大きな水飛沫を上げて、
灰色の体に太く脚と水掻きを持った指。
背中を棘のような鱗で覆い、ワニのような尻尾、そしてワニガメのような顔に輝く3対の目。
姿を現した異形のモンスターを見て、一瞬だが全員
巨体に見合わず
再び水の中に戻った
元々
餌ならネス湖に豊富にあるのでわざわざ人間を喰う必要もない。
噛み付いたまま死んだ撮影クルーをまるで遊ぶかのように首をブンブンと横に振って放り捨てると、
死にたくないと叫んでいる人間がいたが
ネス湖の一部が血で真っ赤になっている中心で、
他のクルーザーはすでに遠くにいたため、
『シュウゥゥゥ』
邪魔者を排除した
☆☆☆
「かはっ……ごほっ! はぁ……はぁ……」
ネス湖の岸辺で一人の男性が水を大量に飲んだのかえずいて息を切らしていた。
彼の名前はジョン・リーサン。
クルーザーが沈んでいる時足に機材のケーブルが絡まって溺れかけ、やっとのことでケーブルから抜け出して息を吸うために水面に浮上すると、少し離れたところで見慣れた同僚たちが
後ろを振り向かずに死に物狂いで泳いできたため、同僚が全員どうなったのかはわからない。
だが、十中八九撮影クルーは自分を残して死んでしまったことはわかっていた。
彼は体力を使い切って動くのも辛い体に鞭を打って立ち上がり、後ろのネス湖に振り向いた。
ネス湖はきらきらと水面が太陽の光を反射して静かに小波を立てていた。
いつもと変わらないネス湖がそこにあったが、いつもの光景が逆に不気味に見えたジョンは早くネス湖から離れようとネス湖に背を向けて歩き出す。
だが足を1歩踏み出したらいきなりバランスを崩してジョンの体が前に倒れる。
「(あ、あれ?)」
倒れる中ジョンは不思議に思った。
「(なんで俺の足が見えるんだ?)」
ジョンの体が地面に落ちると同時に、ジョンの意識は消え永遠に戻ってくることはなかった。
そして、足を1歩踏み出した状態で立っていたジョンの下半身は支えるべきものを失い、フラフラと揺れてからパタリと倒れた。
半分に分かれたジョンの体から血が流れてネス湖に流れている最中、ジョンの死体の上をナニカが通った。
そのナニカは透明で、輪郭がはっきりせずどんな姿をしているのか全くわからない。
だが透明なナニカが纏う雰囲気は恐ろしく冷たく、鋭いものだった。
そして透明なナニカが動作を起こすと、空間に一つの大きな黒い穴が開いた。
透明なナニカは開いた穴の中に迷わず入り、透明なナニカが穴の中に完全に入ると空間にできた黒い穴は一瞬にして消えた。
後に残ったのは、真っ二つに切られたジョンの体と静かに波を立てるネス湖だけだった。
EVOLVE内最強中立モンスターと言っても良いであろう
ネス湖のネッシーなんて懐かしいものが出てきましたが、水辺に生息している
最後は亡霊さんスライディング出演です。
感想、アドバイス待ってまーす。
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夜空に走る怪物の放電
ガチ戦闘じゃないから文字数が少ないです。
でも書いてみて肉弾戦の方が以外と書きやすかった。
遠距離射撃、雷撃、地雷……変則的すぎるよ……
『そんな生物が存在する訳ないだろう!』
日本の国会議事堂で、巨大なディスプレイが並ぶ部屋の中に怒号が飛び交う。
ここでは
だが
唯一信じたのはイギリスとスコットランドの大統領だけだった。
日本に
だがそれでも各国の大統領たちは
そして、
☆☆☆
そんな中、アメリカのとある田舎町では一人の子供が多くの大人たちに囲まれていた。
「本当に見たんだよ! ねえ信じてよ!」
昨日の夜に起こった暴風雨で森の中に仕掛けた罠を確認するために集まった猟師たちの前に、子供が声を荒げる。
「でもさすがに信じれねえよ。 あの暴風の中空を飛ぶ怪物がいたなんて」
子供が言うには、昨日の暴風雨が吹き荒れる中、空を平気で飛ぶ怪物が罠が仕掛けられている山に向かったと言う。
しかしさすがに大人たちは子供の言ったことを真に受けず顔を見合わせて笑ったり肩を竦めるなどをした。
猟師たちは子供の戯れ言だと思い、顔を赤くしながら大声を出す子供を無視して山に向かった。
「ううぅ……本当に見たんだもん……」
自分の言ったことが信じてもらえずしょんぼりとする子供の前に、若い青年が膝を曲げて子供の目線と同じ高さにした。
「その事、詳しく聞かせてくれないか?」
『彼』はフリーの小説家で、この田舎町を舞台にした物語を書こうとやって来てちょうどそこに先程のちょっとした騒ぎを聞きつけ、好奇心から子供の話を聞こうと思ったのだ。
「うん!」
子供は真面目に聞いてくれる人がいて嬉しかったのか、喜んで自分が見たことを話した。
「あのね、昨日の夜に雨とか風が凄く吹いていたりしてたからどれくらい雨が降っているのかなぁって思って外を見たの。 そしたら外に青い光をバーって出しながら空を飛ぶ怪物がいたんだ!」
「その怪物はどんな姿をしていたか覚えてる?」
興奮気味に話す子供に『彼』はその怪物の姿を聞く。
「えっとね…………こんな感じだったよ!」
子供はぐしゃぐしゃに濡れた地面に落ちていた木の棒で怪物の絵を描いた。
まだ子供らしい絵で細かいところなどはわからないが、ある程度の姿は見てとれた。
腕と脚が2本ずつあり、尻尾が生えている。
そして、両肩から1本ずつ、計2本の鞭のような腕らしきものがあり、顔には髭のようなものが垂れている。
先程の大人たちが見たら訳のわからない落書きに見えてしまうかもしれないが、少なくとも『彼』にとっては非常に興味が出てくるものだった。
『彼』は子供にお礼を言ってチラリと山を一瞥すると、メモ帳を取り出して子供が話したことと地面に描かれた怪物の姿を描き写す。
『彼』はこれから書こうとした小説をサスペンス物からファンタジー物に変えようかと考えていた。
『彼』自身も子供が言った怪物の存在を信じている訳はなく、何か小説のネタにならないかと思い話を聞いていたのだ。
『彼』はメモ帳をしまうと自分が泊まる宿に戻って小説を早く書こうと考えた。
早足で戻る『彼』は、まるで面白いことをこれからやろうとする子供のように顔を綻ばせていた。
☆☆☆
「ああやっぱり壊れてるよ」
所変わって、山の中に入って仕掛けた罠が壊れているのか確認しに来た猟師は壊れてる罠を見つけると落胆した。
他の猟師たちも表情には出さなかったがため息をはいたりしていた。
時間をかけて仕掛けた罠に獲物がかかることなく使い物にならなくなってしまっていたなら無理もない反応だった。
「他のも同じかもしれないが、回収しに行くぞ」
壊れた罠を片付けて猟師たちは別の罠を探すが、見つけるとやはりどれもこれも壊れていてゴミが増えるばかりだった。
「あーあ……また作り直しか……」
壊れた罠を手に取って一人の猟師が言う。
どうやら手にした罠はその猟師が作ったものらしく、酷く落胆していた。
「(でもなんでこんなにボロボロに壊れてんだ? それに――)」
だがその猟師は壊れた罠を見ながら不思議に思った。
「(なんで焦げているんだ……?)」
猟師たちが壊れた罠を回収している中、そこから離れた場所から罠を回収する猟師たちをジッと見つめる存在がいた。
ソレは猟師たちに気づかれぬよう息を殺して葉っぱで生い茂った木の枝の上に乗りながら猟師たちを観察する。
ソレは今すぐ猟師たちを奇襲して補食しようと考えたが、ああいった人間は他の人間のために餌となる動物を捕らえるために罠を仕掛けてることを思い出し、夜人間たちが一塊になっている所を襲えば大量の餌が手に入ると考え、ソレは帰っていく猟師たちを黙って見送った。
――早く……早く夜になれ
夜が待ち遠しいソレは今すぐ襲いかかりたい衝動を抑えるかのように木の幹を掴み、鋭い爪で木の幹に傷をつけた。
☆☆☆
そして時間が経ち、外は月明かりが田舎町を照らす時間帯となった頃、『彼』は数十枚にわたる原稿用紙を束ねてそれを鞄の中にしまっていた。
『彼』は書こうとしていた小説の設定を一変させ、主人公が冒険して怪物を倒すというファンタジー小説を書いた。
ちなみにその小説に登場する怪物は子供が見たという怪物をモデルにしている。
本当はもう後4日ほどこの田舎町に滞在して小説を書くつもりだったが想像以上に早く書けてしまったため、『彼』は残った時間を観光に当てようと考えていた。
『彼』は座っていた椅子から立ち上がり、夜の田舎町を散歩しようと自分が泊まっている部屋から出る。
だが次の瞬間、『彼』が座っていた場所が大きな音を出して『彼』が泊まっている部屋の壁ごと吹き飛ばされた。
『彼』はいきなりのことに思わず呆然と立ち尽くすが、『彼』の硬直を解くかのようにソレが姿を現す。
見積もって3メートル弱の体に長い手脚と鋭い爪。
二股に分かれた尻尾と肩から生えた2本の触手。
さらに口らしき部分にはイカのような触手が垂れ下がっており、白く輝く目が4つあったソレは簡単に言うとイカの化け物。
まるでクトゥルフ神話に登場する化け物のような姿をしたソレ『
飛び立った
道路にはすでに体が曲がらない方向にねじ曲がっている死体が転がっており、それらは全て
両肩の2本の触手を飛びながら頭上にあげると、
複数のオーブを出現させ、それが収束した瞬間爆発させる『雷撃』を使った
伝説の怪物の名を持った
☆☆☆
「はあっ!はあっ!はあっ! 何なんだよあれは!?」
泊まっていた宿から逃げた『彼』は必死に
逃げている途中で爆発音や悲鳴が聞こえ、『彼』は恐怖で泣きながらすぐにでも田舎町から離れようと足を動かした。
そのため『彼』は大きく息を切らし、身体中から大量の汗が滝のように流れ出していた。
『彼』は額につく大量の汗を服の袖で拭うと後ろを振り替えって酷く静まり返った田舎町を見る。
今では大きな爆発音が聞こえないが、あそこにはまだ
『彼』は森の中をどんどん突き進んで人が住んでいる町か車が通る道路に出ようとして、それが天に叶ったのか道路に出ることができた。
『彼』は心の底から安堵し、道路を真っ直ぐ歩く。
間違っても
歩きながら『彼』は暗い道路の先に2つの光が見えた。
一瞬
残念ながら自信作であった『彼』の小説は破壊された宿の部屋に置きっぱなしにしてしまったため手元にはない。
その事だけが心残りだったが『彼』は安全なところに避難してからまた書き直せば良いと思い、『彼』は止められていた車のドアノブに手をかけた。
だが丁度その時、後ろからギョオオオオオ!という不気味で甲高い鳥の鳴き声のような音が『彼』の耳に飛び込んできた。
『彼』は一瞬にしてパニックに陥り、早く車の中に乗り込もうとドアノブをガチャガチャと何度も引くが、ドアは開かない。
『彼』はついに車に乗り込むことを諦めて走って逃げようと思い車に背を向けると、目の前に無数の棘が生えたグネグネと蠢く球体が迫っていた。
球体は『彼』の鼻先に触れるか触れないかの微妙な距離にまで近づくと弾けた。
爆煙が上がるわけでもなかった球体だが、『彼』の頭部が綺麗に無くなっていることから想像以上の威力があることを物語っている。
弾けた球体。それは
頭部を吹き飛ばされた『彼』は一瞬にして絶命し、体を車に叩きつけ車を血で赤く汚した。
すると、ドンッ!という音を立てて
「ヴオオオオオオオオオ!!」
あっという間に『彼』の体を喰い尽くした
やっぱりモンスターは順番に出していくに限ります。(
そして!ついに!次回は念願の亡霊を前面に出します!ヤッフウウウウウウ!!
さあ暴れさせてやるぜ!
今回の
<モンスター>
<スキン>
デフォルト
<技ポイント振り>
雷撃 1
雷撃地雷 1
旋風 1
<パーク>
吸収速度up ☆☆☆
吸収速度が75%上昇する。
<モンスターバフ>
なし
感想、アドバイス待ってまーす。
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死を運ぶ亡霊の鎌
そのせいで文字数が1万7000文字を越えたけど!
それでは、INFINITE EVOLVE第6話どうぞ!
『やあラジオの前の諸君、こんばんは!みんなのお耳の恋人、ニコライ・エリックだよ!
早速なんだけど、今夜は季節外れだけどちょっぴり怖~い話をさせてもらうよ。
実は今夜話す話は僕の回りで噂されている話なんだ。
話のタイトルはこう。『亡霊』。
これはある二組のカップルが森で肝試しをしに行った時の出来事なんだ。
4人は有名な心霊スポットの森に懐中電灯を片手に入っていった。
肌寒く、辺りは真っ暗で懐中電灯で照らす先しか見えない道なき道を彼らは進んでいった。
一人の女性が言った。 『何も起こらないじゃない』
『これからだって』 その女性の彼氏が言う。
『ねえもう帰ろう?』 もう一組のカップルの女性が怯えた様子で言い、『大丈夫だよ』とその彼氏が優しく励ますように言う。
そのまま彼らは森の奥に進んでいったけど、何かが起こるわけでもなく、何かが出てくることもなくただ薄ら寒い夜風がザワザワと木の葉を揺らす音だけが聞こえた。
『なーんにも起こんねえじゃねえか』 男性がつまらなさそうに懐中電灯でぐるりと辺りを照らしながら言う。
『早く帰ろうよ。 私怖いわ』 自分の彼氏の腕を掴んで怯える女性に、その女性の彼氏は『じゃあ帰ろうか』と怯える彼女を優しく抱き締める。
『仕方ねえな。 おーい、帰るぞ』 男性は自分の彼女にそう言ったが、彼女からの返事はない。
男性が何度も呼び掛けるが勿論返事は返ってこない。
残った女性がさらに怯え始め、彼氏がなんとか落ち着かせようとその女性に近づく。
女性の彼氏が1歩踏み出した瞬間、暗闇からナニカが飛び出してきて女性の彼氏を掴むと暗い森の奥に連れ去った。
女性は叫び声を上げて一目散に逃げようとしたけど、女性の胸を突き破るようにして腕が女性の心臓を貫いて、男性と同じように森の奥に引きずり込んだ。。
残った男性は必死に来た道を辿って森の外に出ようと走ったけど、後ろから姿のわからないナニカが追いかけてきた。
時々視界の隅をナニカが白い軌跡を残しながら移動するのが見えたけど、男性には恐怖以外の何物でもなかった。
必死で、呼吸の仕方がわからなくなるくらい全力で走ったお陰かなんとか森の外に出ることができた。
ナニカはもう追いかけてくる様子はなかったけど、一緒に肝試しをしたメンバーは帰ってこなかった。
男性はすぐに警察にことの真相を説明して、3人を襲ったナニカへの対策を要求した。
だけど調度、警察に保護されていた老婆が震える口でぽつりと一言だけ喋った。
『亡霊が現れた……』、と。
ここでこの話はお仕舞い。
ちょっぴりだけど、季節外れの納涼感を味わえれたかな?
それじゃあここで今夜のラジオは終了するね。
そして僕から最後に一言。
亡霊は案外君の近くにいるかも。
それじゃあまた明日。バイバーイ!』
☆☆☆
「ねえねえ、最近流行ってる怖い噂知ってる?」
「噂?」
平日のIS学園の1年生寮の食堂の一席ではある話題で盛り上がっていた。
「なんでも、夜中に森にいると幽霊が出るんだって!」
「幽霊? なんでまたそんなものが……」
「本当らしいんだって! 今じゃ世界中で有名な噂だよ! 知らないの!?」
華の十代。噂話は女の子の大好物なのか、女子生徒の声に熱がこもる。
「夜中に森の中を歩いて『亡霊さん亡霊さん。今貴方は何処にいるの?』って言うと、幽霊にあの世に連れていかれるっていう噂なんだよ!」
「へー」
対して話を聞いていた方の女子生徒は興味がなさそうにジュースを飲む。
「ちょっと杏奈。 もう少し興味を持ってくれてもいいんじゃない?」
ジュースを飲む女子生徒『清水杏奈』に噂話を持ちかけた女子生徒『美鈴由美』は腰に両手を当てて憤慨した。
「だって私幽霊とか信じてないし。 それに今は夏じゃないじゃん」
「はぁぁぁ……噂に季節は関係ないよ。 まあそれは置いといて、今日私は行動するよ!」
「……はぁ」
バッと立ち上がって高らかに宣言する美鈴由美にため息をはく清水杏奈。
美鈴由美が今さら諦めるとは思えないし、例え一人でも夜(正確には門限ギリギリの夕方頃)にIS学園の森(森というより林)の中に入って噂を確かめようとするだろう。
「では美鈴由美。 いっきまーす!」
清水杏奈はどうせ噂がガセであったことにしょんぼりとしながら帰ってくる親友のためにポテチでも買ってあげようと考えて席を立つ。
そして、美鈴由美は噂の検証をしに行ったきり二度と帰ってくることはなかった。
☆☆☆
「三島由香さん」
「はい」
「美鈴由美さん……美鈴由美さん?」
次の日の1年1組の教室で教卓に立つ『山田真耶』は出席を取るが、美鈴由美の返事がなかったためもう一度美鈴由美の名前を呼ぶが、やはり返事はない。
教室にいる女子生徒たちは各々に『風邪?』や『やっぱりあの噂は本当だったんだ……』とざわめき始めた。
「誰か美鈴さんから連絡を受けている人はいませんか?」
真耶が美鈴由美がいない理由を確認するが、全員互いに顔を見合わせるも誰も知らなかった。
「織斑先生……」
真耶は美鈴由美のことを心配する一方で、真剣さを帯びた眼差しで『織斑千冬』を見る。
千冬も小さく頷くと座っていた席を立ち『山田先生、あとは頼みます』と言って教室を出ていった。
明らかに真耶と千冬の反応や対応がおかしいことに1年1組の生徒たちは気付くが、真耶はそんな生徒たちにいつものように笑顔を向けて途中で止まっていた出席を再び取り始め、そのまま休憩時間となった。
「……美鈴さん、どうしたんだろうな」
心配そうな声を上げるのは1年1組のクラス代表であり、世界初の男性IS操縦者の『織斑一夏』だ。
「そうだね。 教室がいつもより静かで寂しいね」
そんな一夏に同意したのは金色の髪とアメジスト色の瞳を持つフランスの代表候補生の『シャルロット・デュノア』。
彼女自身お人好しな性格なため、いつも1年1組が騒がしい原因の美鈴由美が欠席したことを疑問に思いながら心配していた。
「この前も日本に謎の生物が現れたと言いますし、心配ですわ……」
そう言ったのはシャルロットと同じ金色の髪とに綺麗な青い瞳をした名門貴族オルコット家のお嬢様でイギリスの代表候補生の『セシリア・オルコット』。
セシリアが言う謎の生物とは
3回とは微妙に少ない回数な感じがするが、全て1週間も経っていない期間に未確認の生物による襲撃という共通点があったとなれば異常である。
因みにアメリカの田舎町を
「(由美……)」
一夏とシャルロットとセシリアが会話をしている中、清水杏奈は消えた親友のことを心配していた。
美鈴由美が消える前、最期に会話をしていた相手は清水杏奈自身だ。
故に彼女が最期に何をしようとしていたのかを知っている。
『森の幽霊を見に行く』
それが美鈴由美が最期にしていたことだった。
「(まさか……本当に……)」
幽霊を見に行くと言ったその日に姿を消す。
まるで神隠しにでもあったかのような出来事に、清水杏奈はゾッとした。
その後、チャイムが鳴り教室に千冬と真耶の二人がやって来たため席を立っていた生徒たちは一斉に自分の席に戻っていく。
それでも清水杏奈の心を支配する疑惑と恐怖の感情が消え去ることはなかった。
☆☆☆
「今日からしばらくの間、寮の外に出ることを禁止する」
時間は過ぎて今日一日の授業が全て終了した時、千冬は1年1組の全生徒たちに向かってそう言った。
勿論いきなりのことに生徒たちは全員不満の声を上げるが、千冬の有無を言わせない鋭い眼光を前にして全員が畏縮したように黙った。
「外出許可が出たときには改めて報告する。 だが無断で外に出たなら反省文50枚書かせるからそのつもりでな」
そう言って締め括った千冬は出席簿を片手に真耶と一緒に教室を出ていく。
自由に行動できるようになった生徒たちはブーブーと文句を言い合いながら自分たちの寮に戻っていく。
清水杏奈も黙って自分の寮の部屋に戻っていくが、やはり心の中に残る不安感が気がかりだった。
まさか本当に幽霊がいるのか。由美は無事なのか。
まだ他にも思うことがいくつもあるが、いつの間にか自分の寮の部屋の前にまで到着していた。
扉に鍵がかかっていたためルームメイトが居ないとわかると扉の鍵を開けて部屋の中に入る。
清水杏奈は部屋の中に入るとすぐさまベッドに倒れ込む。
美鈴由美が幽霊を見に行くと言った日にいなくなり、千冬からは寮から外に出ることを禁止される。
昨日と今日で不可解なことが起こり清水杏奈は不安になるが、親友の美鈴由美が何事もなかったかのように戻ってきてくれることを願う。
清水杏奈は部屋に備え付けられているキッチンで今夜の夕食を作ろうとベッドから起き上がりキッチンに向かって歩いていく。
ベッドから起き上がって窓に背を向けたと同時に、窓の向こうに現れた異質な存在に気づかずに。
☆☆☆
美鈴由美が行方不明になってから5日が経つが、未だに美鈴由美は見つかっていない。
それよりもどうやって消えたのか、どこで消えたのかさえまだわかっていない。
清水杏奈の証言から美鈴由美がIS学園敷地内の森の中に入っていったことは確かなのだが服も、靴も、髪の毛さえも見つかっていない。
その事実が余計に清水杏奈を不安にさせてしまい、清水杏奈はストレスでまるで栄養失調にでもなったかのようにゲッソリと痩せ細ってしまった。
「清水さん、大丈夫?」
そう言って清水杏奈を心配するのはルームメイトの『アシュリー・ブラウン』。
彼女は日に日に痩せていくルームメイトの身を心配するが、清水杏奈は『大丈夫……』と弱々しい声で答えた。
明らかに全然大丈夫じゃない様子にアシュリー・ブラウンは悲しそうな顔をする。
5日間も親友が行方不明になっているなら尚更だ。
アシュリー・ブラウンは自分なりに元気付かせようと立ち上がり、閉めきったカーテンを開けて窓から写る星空を見せた。
「清水さん、大丈夫だよ。 美鈴さんは必ず見つかるから。 ほら、星が綺麗よ」
若干ベタで下手な励まし方で自分を励まそうとしてくれているルームメイトの優しさから清水杏奈は少し微笑むと、アシュリー・ブラウンの所に行って一緒に星空を見ようと立ち上がる。
立ち上がってアシュリー・ブラウンの側に行くために1歩進んだ瞬間、窓ガラスを突き破って鋭い爪が生えた手がアシュリー・ブラウンの顔を掴んだ。
ガラスが割れる音が部屋に響き、鋭い爪がアシュリー・ブラウンの首の動脈に突き刺さり、血が噴水のように吹き出して部屋と窓ガラスを真っ赤に染め上げる。
アシュリー・ブラウンは訳がわからないといった表情を浮かべたまま首から大量の血を噴き出させる。
窓ガラスから伸びた手は、アシュリー・ブラウンの顔を掴んだまま力一杯後ろに引き、そのせいでアシュリー・ブラウンの首がゴキッ!という音を立てながらへし折れた。
そしてアシュリー・ブラウンを殺した手は窓ガラスを割ってアシュリー・ブラウンの死体を夜の暗闇に引きずり込んだ。
一瞬で地獄のような惨劇が目の前で起こり、今は不気味なほど静まり返った部屋の中に清水杏奈の悲鳴が響き渡った。
☆☆☆
1年生寮の廊下を、一夏は歩いていた。
その横には美しい銀色の髪と燃えるような赤い瞳を持った小柄な少女が並んで歩いていた。
少女の名前は『ラウラ・ボーデヴィッヒ』。
ドイツ軍
そして、
「嫁よ、そんな暗い顔をしてどうしたのだ」
ちょっと間違った日本文化を吹き込まれた痛い子でもあるが、ラウラは暗い顔をしていた一夏を心配する。
「ああ。 最近行方不明になる人たちが多くてな、ちょっと心配で」
実を言うと行方不明になった人間は美鈴由美だけではない。
IS学園の1~3年生の何人かが同じように忽然と姿を消している。
消えた生徒たちが最期に目撃された場所はIS学園のグラウンドの外やモノレールの駅、寮の外などとバラバラ。
だが、5日経ったことでやっと共通点が見つかった。
どの生徒も夕方頃に行方不明になっているのだ。
「IS学園に堂々と侵入して生徒を誘拐する……まさか
ラウラはぽつりと呟いた。
戦力、行動目的、存在理由などがはっきりしない組織で、50年以上前から世界の裏世界に存在する秘密結社とされている。
現にこのIS学園にも学園祭の時と高速バトルレース『キャノンボール・ファスト』の最中に
「これ以上
一夏は勝手な思い込みで行方不明生徒たちの誘拐が
最も、今回の誘拐事件は1体の
一夏が
「っ、悲鳴!?」
「この先の部屋からだ!」
突如聞こえた悲鳴に一夏は動揺したが、ラウラが瞬時に悲鳴が聞こえた部屋を割り出し、駆け出していく。
一夏もラウラに続くように走り、ラウラは一つの部屋の前に立ち止まるとその部屋の扉を蹴破った。
「こ、これは!?」
入った瞬間に、ラウラは目の前の光景に思わず目を見開いた。
充満する鉄臭い血の臭い。
窓ガラスが割れ、その一角を大量の赤い血が壁や床を真っ赤に染め上げている。
「うっ!?」
遅れて入ってきた一夏は血の臭いと血で汚れる壁や床を見て、手で口元を押さえて顔をしかめた。
「おい! ここで何があった!?」
ラウラはベッドの隅で体を縮め、顔を真っ青にしながらガタガタと震える少女、清水杏奈を見つけるとその側に駆け寄り事情を訊いた。
だが清水杏奈はブツブツと呟くだけでラウラの言葉に全く反応しなかった。
ただ小さく『死にたくない……』という言葉を連呼するだけだった。
「一夏、教官に連絡してくれ」
「あ、ああわかった」
ラウラは一夏に教官、もとい織斑千冬にこの部屋の惨劇について連絡するよう指示し、壁や床にベッタリと付着した大量の血の所に近づいた。
そしてその場にしゃがみ込み、指でその血を拭った。
「(まだ温かい……それに固まっているような所はない。 この血が付着してからまだ1分も経っていないようだな……)」
ラウラは次に割れた窓ガラスに視線を向ける。
よく見れば窓ガラスの破片が部屋の中には少ししかないのに、ベランダには大量の破片が落ちている。
つまり、外から何かが突き破ってきて、中にあった何かを外に連れ出したということになる。
ラウラは血の上を歩きながらベランダに出て外を見渡す。
勿論警戒は怠っていない。
見渡す先には月明かりでキラキラと輝く海と暗い林しか写らず、特に怪しい人影は見つからない――
「っ!」
ラウラは瞬時に自身の
「一夏! 早くそいつを連れてここから出ろ!」
砲弾を次々と発射しながらラウラは一夏に清水杏奈を連れて部屋から出るように言った。
いつも冷静な彼女がこうも慌てている様子を見て一夏はただ事ではないとさすがに理解し、清水杏奈を抱き抱えると部屋を出た。
一夏の姿が見えなくなったことをハイパーセンサーによる後方視覚補助で確認したラウラはベランダから飛び立ち暗い林の上に陣取った。
ISのハイパーセンサー、熱源感知等を使って林の中に潜むナニカを探すラウラ。
程なくしてシュヴァルツェア・レーゲンが林の中に潜むナニカの位置をラウラに教え、その場所に向けてラウラは砲弾を放つ。
砲弾は高速で真っ直ぐ飛んでいき、林の中に着弾すると木々を吹き飛ばしながら爆煙を上げた。
「くっ、外したか!」
だが残念なことに放たれた砲弾は林の中にいるナニカには命中することはなかった。
ラウラはすぐさまハイパーセンサーを使ってナニカの位置を探ろうとするが、ナニカはまるで忽然と消えたかのように全く反応がなかった。
「どこにいった!?」
ラウラは辺りを見渡してナニカの姿を探す。
そして調度その時、後ろから強い衝撃を受け空中で体勢を崩した。
それでもラウラは反撃するように左腕のプラズマ手刀を展開して後ろを斬った。
だがその攻撃も自身を襲ったナニカに当たることはなかったが、ナニカの体の一部は見ることができた。
巨大な鎌。
一言で言うならこの言葉しかあり得ないというほどの鎌がラウラの右目の視界に写り込んだが、その鎌は一瞬で視界から消えた。
代わりに白い粒子のような白線が空中に残り、それが林の中に続いていた。
ラウラは体勢を立て直して襲撃してきたナニカの位置を探るが、シュヴァルツェア・レーゲンが送ってくるナニカの位置情報は断片的で、まるでハイパーセンサーから反応が消えているかのようだった。
不確定なナニカの位置情報に困惑するラウラだったが、断片的に送られてくるナニカの位置情報を元にナニカの移動先を先読みしてリボルバー・カノンの銃口を先読みした場所に向けて砲弾を放つ。
だがそれもナニカにはわかっていたらしく、砲弾が当たるその前にナニカは身を捻らせて必要最低限の動きで回避していく。
そして、ナニカはリボルバー・カノンに砲弾が装填される時間を狙ってラウラに向かって林から飛び出した。
この時にやっとラウラはナニカの姿をはっきりと見ることができた。
まず目につくものは両肩から伸びた巨大な鎌が生えた腕。
両腕は細くて長く、両手の8本の爪からは鋭い爪が伸びている。
体はまるで女性のように細くスラッとした体をしており、両脚は退化したのか指や爪が一切ない触手のような脚をしている。
そして頭部には目や鼻といった器官は見当たらず、まるでドーム状のフードを被ったような造形をしている。
下顎は二又に分かれ、上顎と下顎からは鋭い牙が並んで生えている。
世間からは『幽霊』や『亡霊』などと呼ばれている『
その姿はさながら人の魂を刈る亡霊のようだったが、ラウラのプラズマ手刀を展開して振り下ろされる鎌を受け止めた。
かなりの熱量を持つプラズマ手刀でも
シールドバリアのお陰で直接首を締め付けられ傷を負うことはなくとも首を締め付けられていることに代わりはなく、ラウラは苦しそうに顔を歪める。
ラウラは苦しむ中ワイヤーブレードを射出して
だがその攻撃を邪魔するかのように
突然襲った痛みに
「ッ!? ジュアアアアアアア!!」
折角のチャンスを邪魔されて、
その先には白い鎧『白式・雪羅』を纏った一夏が左手をじゃんけんのパーのように5本の指を広げて、手の平にある荷電粒子砲の砲口を
「ラウラ! 大丈夫か!?」
「すまない、助かった」
切られそうになったラウラを心配して一夏はラウラに声をかけ、ラウラは助けに来てくれた一夏にお礼を言う。
2対1ではさすがに分が悪いと判断した
だが
AIC。正式名を『
ISに搭載されている『PIC』(正式名は『
2メートル以上の体を持つ
「一夏、今だ!」
「うおおおおおお!!」
動きを止めたことで今が最大のチャンスだと判断したラウラは一夏に攻撃の指示を出した。
一夏は右手に持った白い近接ブレード『雪片弐型』を構えると雪片弐型の刀身が割れて、そこから青白いエネルギー刃が現れる。
白式の
一夏は雪片弐型を振り上げ、上段から勢いよく
「なっ!?」
だが
その眩しさに一夏とラウラは腕を顔の前に出して腕で光を遮る。
林から飛び出した
自分の体からもう一体の自分を作り出して、その囮に攻撃を行わせる。
これが
作り出した分身は質量があり、攻撃パターンなどは本体に比べて単調ではあるのだが実を言うと本体よりも攻撃力が高い。
しかも囮使用時の本体は体を透明化させることができ、目視がまず難しい・レーダーに写らない・他の生物に姿を悟られることがない・足跡が残らないと透明化した本体を見つけることが難しい。
透明化した本体に攻撃を加えれば0.5秒間の間だけ可視化することができるがそれはあくまで透明化した本体の場所がある程度わかり、そこにいる本体に攻撃を加えればの話だし、分身に攻撃を加えれば分身の体が一瞬だけ光るというのを一夏とラウラは知らない。
今回の一夏やラウラのように分身が本体の
そして本体側の
爆風をモロに食らった一夏とラウラは吹き飛ばされ、さらに追い討ちをかけるように
朱いオーラを纏いながら前方に飛び出し、周囲を爆発させるこの能力も
だがこれも、囮よりも厄介と言う訳ではないが
飛び出す軌道を調節することができる上に周囲を爆発させるため攻撃範囲が意外と広く、威力も高い。
しかも攻撃の他に逃走する時にも使え、移動距離が30メートルと長く、ワープを行っている途中で衝撃波を挟めばワープに使用するスタミナを1回分だけ温存できる。
逃げにも攻撃にも使える衝撃波だが、さらに衝撃波を使ってから次の衝撃波が使えるまでのエネルギーが溜まる時間が本来約20秒ほどあるのだが、戦闘時には感情が高ぶり興奮していることもあってか約8秒と大幅に短縮される。
そんな衝撃波を食らい、さらには
あの細い体から繰り出された重い一撃に一夏とラウラは小さく呻きながら身を起こし空を見上げると、
すぐさま二人は飛び上がって
後ろを振り向いた二人はISのハイパーセンサーによる遠方視覚補正で音の出所を見る。
そこにはガラスを突き破って寮の中に侵入する
☆☆☆
血。血。血。血。血。
寮の廊下を彩る温かな赤い血が、壁や床に垂れて血の水溜まりを作る。
その傍らには白いIS学園の制服を着た女子生徒が体に大きな裂傷をつけた状態で倒れていた。
その上に
どうやって口を直接つけずに血や肉を体内に摂取しているのか定かではないが、これが
血や肉を吸い取られた女子生徒の体は血溜まりを残して骨だけになった。
その衝撃で頭から足まで綺麗に揃っていた女子生徒の骨がバラバラに吹き飛んで廊下に散乱する。
「ずいぶんと好き勝手やってくれたわね」
「ジュアアアアアアア! ジャアアアアアアア!」
楯無は自身のIS『ミステリアス・レイディ』を展開。
楯無は蒼流旋を前方に構えて蒼流旋に内蔵されている4門ガトリング砲を
先に動いたのは
楯無はPICで浮遊しながら4門ガトリング砲から無数の弾丸を吐き出させながら後ろに下がる。
分身は全ての弾丸を受けながらもワープを使って楯無に接近して両肩の鎌で切り裂こうとする。
分身であるが故に痛みを一切感じないため怯むことなく分身は楯無に接近する。
しかし弾丸を受け続けているため分身の動きは普段の時より鈍く、さらにミステリアス・レイディは通常のISよりも比較的小型でやや狭い寮の廊下を滑らかな動きで後退していく。
そして
「っ!どこに行ったの!?」
はずなのだが本体側の
楯無はすぐに
楯無と
「今よ箒ちゃん、鈴ちゃん!」
楯無がそう叫ぶと、階段の上の方から複数の爆音が轟き、階段が吹き飛んだ。
そして、爆煙の中から
「ジュアアアアアアアアアアアア!!!」
赤い機体『紅椿』を纏った少女は『篠ノ之箒』。
そして、赤紫色の機体『
「シャアアアアア……!」
「一体なんなのよコイツは!?」
鈴音は見たこともない生物である
楯無と箒と鈴音の3人と3機のISに囲まれた
1人でいる楯無と戦闘して逃げるか?
いや、戦闘前に見せたあの殺気から実力者であることは必然であり、今の状態ではまず勝てない。
なら箒と鈴音と戦闘するか?
しかし、戦闘といっても一回だけしか攻撃されていないためそれが二人の実力とは言えない。
だが楯無よりかは勝てる可能性が少しでもあるならそっちを取った方がいい。
そう判断するなら否や
箒と鈴音は
楯無は囮の厄介さを全てとまではいかないが知っているため、アクア・ナノマシンを操作して水で分身と本体を捕まえようとするが、残念なことに分身にはワープで避けられ本体がいるはずの場所には本体がいなかった。
分身はワープをもう一回、さらにもう一回使って鈴音の前にまで一気に近づくと両肩の鎌を下から上に振り上げた。
鈴音は
分身は振り上げたことで刃の部分が上を向いた鎌を反転させ、刃の部分を下に変えて鈴音へと振り下ろした。
楯無は蒼流旋の4門ガトリング砲を分身に向けて引き金を引こうとするが、分身の鎌が鈴音に届く前に分身は光の粒子に変化した。
代わりに透明化が解除された本体の
「っ! このぉ!」
箒は
そして
ゴシャンッ!という大きな音を立てながら箒と鈴音は後ろに吹き飛び、楯無はそんな二人をアクア・ナノマシンを使って操作した水で受け止めた。
しかし威力が足らなかったのか、完全に1階の天井と2階の床が繋がる穴が空かなかったため
鎌を突き立てる度に天井が崩れていき、空中に浮かぶ
「待ちなさい!」
楯無は穴の中に消えていく
銃弾が
天井が崩れて天井の粉塵が
体勢を立て直した箒と鈴音も攻撃に参加して雨月に刺突攻撃によるレーザー掃射と
数秒間
粉塵が舞う廊下を楯無と箒と鈴音はゆっくりと
粉塵が舞っているせいで少し見えにくいが、灰色の粉塵の中に薄い光が見えた。
その光を見た楯無たちは急いでその穴の中に入っていった。
まんまと
そして誰もいなくなった寮の1階の廊下に、粉塵からひょこりと現れた
なぜ天井の穴から2階に上がったはずの
楯無たちを振り切った
外に出た時、夜空に白い機体が見えたが
☆☆☆
「皆さーん! 落ち着いて行動してくださーい!」
寮の外で『山田真耶』は多くの女子生徒たちを誘導しながら行動していた。
女子生徒たちは皆ざわざわとしながらIS学園敷地内にある一般生徒たちを収容するための保護区画に移動していた。
移動する理由は勿論
だが女子生徒たちの大半はなぜIS学園の保護区画に移動しているのか理解していない。
それでも何人かの女子生徒はその理由を知っており、複数の教師に支えられて保護区画に移動していた。
その集団から少し離れたところに、千冬が打鉄を纏った状態で警戒していた。
事情は愛しい弟の一夏から聞いており、ラウラや楯無からも襲撃者の姿を伝えられている。
だが姿形はこの際どうでもいい。問題なのは能力だ。
ハイパーセンサーにも写らない。周囲を爆破させる衝撃波に、分身を出して本体が透明化する囮。
攻撃手段がしっかりしている上に攻撃と逃走が同時にできる技。
さらにIS操縦者のほとんどがISのハイパーセンサーによる視覚補正に頼っているというのにハイパーセンサーに写らないため、完全な目視による相手の補足が必要になる。
今この場には千冬以外にも何人かの女教師たちが打鉄やフランス製第2世代機の『ラファール・リヴァイブ』を纏っている。
戦力は充分にあるのだろうが、油断など一切できない。
『千冬姉!』
その時、千冬の打鉄に一夏の切羽詰まった声が届く。
「どうした」
普段ならここで『織斑先生だ』と訂正を入れるのだが、さすがにこの状況でそんなことを言っていられないと千冬は判断して一夏の言葉を待った。
『今そっちにアイツが!』
「ジュアアアアアアア!!」
「っ!」
一夏が叫ぶように連絡を伝えたと同時に、林の中から
千冬は弾かれるように飛び出し、葵を
突如姿を現した
途中で転倒した女子生徒を助け起こすなど全くせず全員が転倒した女子生徒を踏みつけていく。
だが千冬は頭上を過ぎていく
外皮を斬りつけられ、体中の筋肉組織にまで傷を負わされた
「すごい……」
「さすが千冬様!」
逃げていた女子生徒たちも千冬がたった1回の攻撃で
中には恍惚の眼差しで千冬を見つめていた女子生徒もいたが、千冬は激痛で苦しむ
遅れて一夏とラウラ、楯無、箒、鈴音が
さらに女子生徒たちの保護区画への移動の護衛をしていたセシリア、シャルロット、簪、他の女性教師たちもやって来て
「シャアアアアア……ジュアアアアアアアアアアアア!!」
だが
黒い穴を空中に開いた
だがその中で千冬だけは険しい顔をしていた。
「(あの化け物がそう簡単にここを見逃すとは思えん……。 それに、アレが最後に見せたあの顔……)」
だが千冬の思いとは裏腹に、勝利の余韻を味わっていた者たちの歓声が夜闇を支配していた。
☆☆☆
「シャアアアア……!」
どこの国の森かもわからない場所に開いた黒い穴から現れた
痛むのは千冬に負わされた大きな裂傷跡。
「ウオオオオオ!」
そんな
だが
熊は痛そうに悲鳴を上げ軽い脳震盪を起こし、フラフラしながら背を向けて逃げ出そうとする。
縄張りを守るために侵入者を排除しようとした熊だったが、完全に相手の力量を誤った。
怪我をしているため弱っていると思っていたことも手痛い反撃を受けた理由でもあるが、熊はこのままでは殺されると判断して逃げる。
しかし、
脚を怪我しながらも熊は必死に体を動かして
1度ではなく何度も、熊の体を切り裂き、傷口に爪を突き刺し、肉を掴んで引き千切り、肋骨を折り、内臓を引きずり出し、背骨を砕き、頭蓋を叩き割った。
すでに絶命している熊に、まるで八つ当たりをするかのように執拗に攻撃を加え続け、辺りに『ズチャッズチュッグチュッ!』と生々しい音が響く。
「……ジュアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
そして攻撃を加え続けることをやめ、
暗い森の中に、敗北者の咆哮が虚しく響き渡った。
書いてて結構大変でしたが、中々に自分でも満足しています。
でも
さて、
でも今度の
それでは今回の
<モンスター>
<スキン>
デフォルト
<技ポイント振り>
衝撃波 ☆
囮 ☆☆
<パーク>
移動速度up ☆☆☆
最高速度が25%上昇する。
<モンスターバフ>
なし
<マップエフェクト>
時空の亀裂
今回から新しくマップエフェクトも掲載することにしました。
あと
感想やアドバイス、誤字報告など待ってまーす。
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大地揺るがす悪魔
ここまで来てやっと4種類のモンスターを出すことができました。
今回は短いですが、ガチ戦闘では文字数を増やせれるよう頑張ります。
「ったく、なんで俺たちがこんな妙な仕事をしなくちゃいけねぇんだよ」
「仕方ないだろ。 今は女が天下の世界だ。 下手に拒否でもしたら俺たちが消されかねないよ」
愚痴を言い合いながら武装した二人の男性たちが植物が少しだけ生えている岩場をを歩き、ジャリッと靴が砂を踏みしめる音が鳴る。
彼らは
彼らがいる所は、ロシアの森の中にある秘密基地のすぐそばにある岩場だ。
『ここ数日、この森の奥から悪魔のような声が聞こえるからそこを調べてこい』と上の人間(女尊男卑の女)に命令されて嫌々ながら調査に来たという訳だ。
「悪魔の声ってもどうせ風かなんかだろ? だったらさっさと終わらせて帰ろうぜ」
もう飽きたと言わんばかりに男性の一人が言う。
「調査して10分も経っていないだろう。 そんな時間で戻ったら殺されるぞ」
その相方が正論を言い、男性は『はぁぁぁぁ……』と深いため息をはいた。
二人は時間をかけるようにゆっくりと幅が5メートルほどある岩場を歩いていく。
―――――――――
「? おい、何か聞こえないか?」
男性が何かの音を聞き、相方に自分が聞こえた音が相方にも聞こえたかどうか確認する。
相方は耳を澄ませて音を聞き取ろうとした。
――――――――ロ……
「なんだ?」
―――――――ゴロ……
「転がる音じゃねぇか?」
―――――ゴロゴロ……!
「それよりも音がでかくなってないか……?」
―――ゴロゴロゴロ……!!
「「…………」」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!!!
「「うわああああああああああ!?」」
二人の視線の先から、直径が3メートルくらいありそうな巨大な岩石が岩壁にぶつかってその岩壁を砕き轟音を立てながら猛スピードで転がってきた。
二人は絶叫を上げ、横に身を投げ出すように飛び込んで押し潰そうと転がってくる岩石を避けた。
岩石は二人の横を通り過ぎるとスピードを保ったまま若干下り坂になっている岩場を転がり落ちていった。
二人は起き上がり、離れていく岩石を茫然と見送った。
「な、何だったんだ今の……」
「それより早く報告するぞ!」
男性の相方が焦りながら手にした通信機の電源を入れた。
岩石が転がる先には自分たちが元々いた場所……
たとえ上の人間が低俗な人間だったとしても組織の一人である以上報告しなければならないことは報告する。
男性の相方は通信が繋がると嘘偽りなく今見たことを話した。
☆☆☆
『本当なんだよ! 今そっちに巨大な岩が――!』
「そんな嘘を信じると思っているの? 戻ったら覚悟してなさい」
所変わって岩石が転がる先にある
元々確認しにいくことが面倒だったから彼らを使い、連絡を受けても適当に返すか信じようともしなかったのだが。
なら何のために行かせたのやら。
女性は男性の相方の声を聞きたくないと言わんばかりにまだ真実を伝えようとする男性の相方の声を無視して通信機の電源を切った。
女性はドカッと椅子に座り、首にかけているISを指で弄った。
それだけで女性は優越感に浸ることができ、帰ってきた男性たちをどういたぶろうか思案する。
だがいきなりドゴォォォン!!という大きな音が秘密基地を襲い、建物全体が地震が起こったかのように揺れた。
女性は椅子から転げ落ちて強かに体を打ち付け、痛みにもがく。
「ぐうう……な、何が……」
外からは銃声が聞こえてきたため、敵が襲撃してきたと判断した女性はISを展開して壁を突き破って外に出る。
そして何かに捕まれた。
「っ!?」
その女性の体を吸盤のように吸い付いた何かは勢いよく女性を引っ張った。
引っ張ったと同時に吸い付いていた何かはすぐに離れたが、引っ張られた勢いで体勢を立て直すことができない。
女性はなんとか体勢を立て直そうと空中でもがくが、吸い付いてきた何かと入れ替わるように今度は太い何かに鷲掴みにされた。
「ぐっ! このっ!」
身動きがとれない状態で必死に体を動かすが、ゴウッ!という音と共に女性の体に巨大な拳が叩き込まれた。
ゴシャッ!と音を立てて女性はISごと潰され、拳は元女性の肉塊がべっとりとこびりついたまま地面に強く叩きつけた。
拳の持ち主は、巨大な岩とも見て取れるような姿をしていた。
岩のような質感を持った
上半身が異様に大きく下半身が小さいアンバランスな体躯。
剥き出しの内臓。
不規則に並んだ複数の小さな目に横に大きく裂けた口とそこに並ぶ乱杭歯。
「ゴオオオォォアアアァァァァ!!」
伝説の獣、もしくは悪魔の名を冠する『
「撃てぇ!」
銃を手にした
煩わしいと感じた
すると、腹部の剥き出しの内臓から赤く発光する液体がボトボトと垂れ始め、それが口に移動するように上へ上へとせり上がっていく。
そしてその液体が口元までせり上がって、口の中に収まりきらなかった分の液体が口から溢れる。
赤く発光する液体は緩やかな放物線を描いて飛翔する液体は、
飛び散った液体は銃撃していた人間たちの上を覆うように広がり、液体がかかった人間たちは高温に包まれ体が燃え出した。
体内に保有した溶岩を吐き出し、その溶岩が着弾したと同時に小型の溶岩の塊が周りに飛び散り辺りを燃やす
体内に再度溶岩を精製させて次に使えるようになるまで時間がかかるが、予想以上に攻撃範囲が広い溶岩爆弾を使用した
だが出てきたと同時に彼らは転がる
まだ開きかかっているシャッターを破壊して建物の中に侵入した
戦車の主力武装を潰した
しかし、それよりも早く
すると床に白い線のような衝撃波が走るりドゴンッ!という音を立てながら巨大な岩の壁が出現した。
攻撃が通らない岩壁をどうやって破壊しようか考えていると、10秒も経っていない時間で通路を塞いでいた岩壁がボロボロと崩れ始めた。
中の様子がうっすらと見えるようになった彼らは中にいるであろう
「えっ?」
運良く一人生き残った人間は訳がわからないといった表情を浮かべるが、すでに死んでいる仲間と通路からゆっくりと現れた
だが、
「うわああああああ!!」
プチッと潰された彼は
完全に力の加減を間違えた
すると、丁度
☆☆☆
「……さすがにこれは酷いわね」
ボロボロに崩れ、ブスブスと煙を上げながらまだ燃える建物の前に立った赤い胸元が大きく開いたドレスを着た女性は、予想以上の惨劇に少なからず動揺していた。
周りには女性の他に、潰れて誰かもわからない
「スコール、これも今騒がれている例の化け物の仕業か?」
「恐らくそうね。 それで、トラックの方はどうだったかしら?」
スコールと呼ばれた女性は、後ろに立っていた橙色の髪を持つ目付きが鋭い女性『オータム』に振り返って、建物から離れた場所にあった大破したトラックの様子を訊いた。
「全員死んでいたよ」
オータムは簡潔に事実だけをスコールに伝えた。
だが生き残っている人間は二人だけいるため、全滅した訳ではない。
もちろん生き残っているのは森の中に入っていった二人で、その二人はすでに回収されている。
スコールはそのことを聞いてしばらくの間考えるような仕草をとり、オータムに何かを伝えた。
オータムは目を見開きながら驚き、思わず『本気で言っているのか?』とスコールに聞き返した。
だがスコールの目が冗談を言っているような目付きではなく、スコールの言ったことは本気だと悟ったオータムは何か言いたげな表情でスコールを見たが渋々とどこかへ連絡をいれた。
そして丁度死体の処理が片付いたらしく、次々と処理を行っていた人間たちが撤収していく。
スコールとオータムもそれに続き、最早使い物にならなくなった建物を後にしてそこから立ち去っていき、最後に残ったのは人の気配が一切しない建物だけだった。
さあ、
ここから始まるのは強者と弱者を決める、生死を賭けた闘い。
卑怯も、如何様も、ルールも一切ない、真剣勝負。
5……4……3……2……1……
――
文字数がやっぱり5000文字は欲しいと思ってしまう今日この頃。
今日久しぶりにEVOLVEで
ごり押し強いよ
そしてステータスはこうです。
<モンスター>
<スキン>
デフォルト
<技ポイント振り>
溶岩爆弾 ☆
舌攻撃 ☆
岩壁 ☆
<パーク>
攻撃力ボーナス ☆☆☆
与えるダメージが10%増加する。
<モンスターバフ>
なし
<マップエフェクト>
なし
感想、アドバイスドシドシ送ってください。待ってまーす。
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それぞれのその後
今回の話は短いです。
そして授業やら何やらで更新がこれよりも遅れると思います。
それでも皆さんが喜んでもらえるような作品にしていこうと思いますので、これからもよろしくお願いします。
あと後書きで発表することがあります。
IS学園では全生徒、全教員で
寮内で殺された少女たちは肉というすべてを
だが、最悪なのは骨さえも見つかっていない少女たちがいることだ。
その少女たちは写真だけの状態で中に何も入っていない棺桶の上に置かれていた。
通夜では死んだ少女たちの友達、クラスメイトが悲しみで涙を流し、一夏は少女たちを守れなかった悔しさで手の平に爪が食い込むくらい手を強く握りしめていた。
さらにIS学園は死んだ少女たちの両親や各国の政府からひっきりなしにかけられてくる電話の対応にも追われていた。
☆☆☆
「……山田くん、何かわかったか?」
「いえ……精々あの怪物が現存するどの生物のものでもない遺伝子を持っていることくらいしか……」
「そうか……」
IS学園の地下特別区画で、千冬はキーボードを叩きながら赤い液体を調べていた真耶に声をかけた。
真耶はキーボードを打つ手を一旦止めて千冬に今まで調べてきてわかったことを伝えた。
しかし大した成果が得られず、真耶は落胆したように目を伏せた。
今真耶が調べている赤い液体、それは
千冬の攻撃により傷を負わされた際に飛び散った
もっと詳しく知るためには生きている状態の
現にIS学園は実害があるため、下手に行動して生徒たちを更なる危険にあわせる訳にはいかない。
だからといってなにもしない訳にもいかない。
☆☆☆
『バカな……こんな生物が存在するというのか……』
暗い一室に、男性の驚愕する声が響く。
男性以外にも複数の人間たちが映し出されたディスプレイがあり、それぞれ息を飲んだり鼻で笑ったりしている。
全員が向ける視線の先にはスクリーンに映し出された
『ジュアアアアアアアア!!』
映像の
そこで映像はプツリと消え、暗かった部屋に明かりがつく。
明かりがついてから先に声を発したのは楯無だった。
「先程の映像に映っていた生物が、今回IS学園を襲撃してきた生物です」
『馬鹿馬鹿しい。 君は現実とフィクションの区別がつかんのか?』
「貴方がフィクションだと言っても、これはすでに実際に起こったことです。 現実を見てください」
だが楯無は逆に言い返し、それを聞いた男は気に入らないといったように鼻をならした。
「今回の襲撃は下手をすれば
『そのために各国の首脳を呼び出して同盟を組もう、という訳か?』
黒人の男性が楯無に続くように自分で予測した答えを言う。
楯無はそれを肯定した。
「はい。 巨大生物の容姿、能力、生体データその他すべての情報を各国で共有し、総力をあげてこの巨大生物を排除したいと思っています。 ロシア政府はすでに同盟を結ぶことを了承しています。 この事は後日に聞きますが、今は巨大生物についてです」
同盟の話を一旦区切り、楯無はスクリーンに
他にも
だが
楯無は3体のそれぞれの体長やどんな攻撃行動をとったのか、最後に確認された場所はどこなのかなどを話した。
しかし情報が圧倒的に少なすぎるため、各国の首脳たちからは軍による警戒をより強化するという案と、IS部隊を派遣して掃討作戦を行うという案くらいしか出てこなかった。
中でもIS部隊の派遣では、どこの国のIS部隊を送るのかで揉めた。
仮にも貴重なIS。
パイロットはいくらでも替えはきくが、絶対数があるISを失うわけにもいかない。
すでに2機のISが使用不可能になっているため尚更である。
それ以降、特に進展することもなく話は締め括られた。
楯無は話し合いが終わるとすぐに踵を返し、各地に派遣している更識の幹部たちからの情報を集める。
楯無はこれから先どうなっていくのか想像がつかず、心の中が不安で満たされていくのであった。
☆☆☆
「た、たすけ――」
ゴチュッ、と男性の頭が巨大な手によって握り潰される。
ピクリとも動かなくなった男性の体は巨大な手の持ち主の口元に運ばれ、バキボキと音をたてながら噛み砕かれた。
男性を噛み砕いたモノ……
長い間船の上で休息をとることができたため、先日負った
ここ数日は怪我を負うようなことは起こらず、さらに人間が豊富にあったことから
人間に見つからないようにコソコソと一人ずつ確実に仕留めていったことが面倒ではあったが、見つかることなどなく安全に餌を確保できたのなら全く苦ではない。
嗅覚を使って残りの人間たちを探す
少しばかりまだ食べたかったという感情があった
そして、
そこで、
船は相変わらずスピードを落とさず大陸に向けて真っ直ぐと進んでいるため、日が暮れた頃に上陸しそうだった。
「グルルル……グルオオオオオオオオオオオ!!」
新しい新天地に次なる住み処と餌に期待し、
絶望はすぐそこまで迫っていた。
そして後書きにて発表します。
それはこの作品ではモンスターたちが主人公となっており、ISとのパワーインフレに差が出てきてしまいます。
そこで、皆さんが考えた兵器や改造ISを募集したいと思っています。
高威力武器や新型ISからもちろん、既存ISの改造版など色んなジャンルの兵器をドシドシと送ってもらって構いません。
もしかすると、あなたの考えたものがこの作品出るかも。
さらに、兵器募集の他にも皆さんが考えた新モンスターの募集をします。
詳細は活動報告にて報告します。
皆さんの案をお待ちしております。
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EVOLVE
小説を書いて初めて色つきまでいったので結構新鮮な気分です。
差し支えながら、評価をつけてくれる場合にはどこが良かったか、どこが悪かったかなどを一緒に書いて送ってくれると次への改善点がわかるので、もしよかったら評価と一緒に書いてください。
それ兵器募集案、モンスター募集案を送ってくれた方。ありがとうございます。
募集期間の制限はないので思い付いた方からドシドシご応募ください。
それでは第9話『EVOLVE』、どうぞ!
イギリスにあるイギリス内最大の貿易港。
そこでは慌ただしく作業員たちが動いていた。
「接近中の貨物輸送船に告ぐ! ただちに巡航スピードを落とせ! 繰り返す、巡航スピードを落とせ!」
作業員の一人が通信機を手に取り、マイクに向かって怒鳴るように警告する。
彼の前には緑色の円盤状の物体があり、その中で一本の光の針がゆっくりとくるくる回っている。
円盤状の物体……ようはレーダーの中心から離れた場所にかなり早いスピードでレーダーの中心に近づいてくる光の玉があった。
光の玉こそ、今彼が必死に呼び掛けている船なのだが、通信機から返ってくるのはノイズ音だけ。
いっこうに船の乗組員と連絡がつかない。
「もうやばい! 早く逃げるぞ!」
顔を青くしながら彼の同僚が腕を引っ張って外に連れ出す。
彼は『くそっ!』と怒鳴り通信機を投げ捨てて同僚と一緒に外に出る。
辺りはすでに薄暗くなり、港をオレンジ色に照らすライトがつけられており、港とは正反対の暗い闇を映しているような海からうっすらと黒い影が見えた。
黒い影こそ、今しがた必死で通信を行っていた相手である貨物輸送船だ。
貨物輸送船は通常の運航スピードを遥かに越えた速度で港に近づいてくる。
貿易港の作業員たちが全員敷地内から避難した。
それと同時に貨物輸送船が重たい船体で港のコンクリートを砕き、積み上がったコンテナを吹き飛ばしながら乗り上げた。
ゴガガガガガッ!!とコンクリートが粉々に砕け散り、硬い金属のコンテナがベコベコになりながら宙を舞う。
貨物輸送船は船体の約6割ほどが港の上に乗り上げた頃、徐々にスピードを落としていき船体の8割ほどが海上から離れて陸に乗り上げた状態でやっと停止した。
乗り上げてから少しだけ倒れそうになった貨物輸送船だが、コンクリートで船底を大きく抉られたお陰で傾く程度ですんだ。
甲板の上のコンテナはいくつか落ちたが。
作業員たちがざわざわと騒ぎ始める中、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
どうやら誰かが警察にこの異常事態のことを早めに伝えたらしく、次々とパトカーが止まり警官たちが出てきた。
警官たちはホルスターに収納されている拳銃取り出し、数名が作業員たちをさらに後ろに下がらせて他の警官たちが貨物輸送船に近づく。
この時軍に通達を入れているあたり今の現状(モンスターがそこらを闊歩していること)を理解していると言えよう。
警官たちはゆっくりと、一歩ずつ、貨物輸送船に近づいていく。
そして、貨物輸送船まであと3~4メートルというくらいまでの距離に近づいたところで、斜めに傾いた貨物輸送船の甲板の上で微妙なバランスを取っていたコンテナが一斉に崩れ落ちてきた。
警官たちは急いで貨物輸送船から離れ、近づくのは危険だと判断して軍の部隊がくるまで離れたところで警戒することにした。
だからだろう。
貨物輸送船の後部から飛んでいく黒い影に気づくことができなかったのは。
☆☆☆
「キャン! キャンキャンキャ」
パァンッと、喧しく吠えていたチワワの頭が木っ端微塵に吹き飛んだ。
貨物輸送船からまんまと逃げおおせた
ポキリポキリと音を立てながら噛み砕かれるチワワ。
味わうほどの量もなかったチワワは、
だが、
ここまで長い道のりだった。
いきなり見覚えのない場所に来て、餌を食べていたところに自分がよく知る小さな生き物が邪魔をし、手酷くやられて傷を癒すのに時間がかかった。
しかし、これまでの苦労が今やっと実を成す。
「グオォォ……ガアァァ……!」
すると、ボコボコと
凄まじい速度で
細胞分裂のスピードが普通の生物のものとは比べ物にならず、古くなった外皮が薄い皮となって
さらに、過剰に分裂した細胞が
そして、赤黒い繭の中からゆっくりと2倍ほどの大きさになった
「グオオオオオオオオオオオ!!」
カッと爛々と輝く眼を見開き、
咆哮を終えた
ドゴンッ!とまるで爆弾が爆発したかのような音が響き、その衝撃で周りの草木が揺れる。
「いったい何が……ひぃっ!?」
そこにはこの家の住民らしき男性が腰を抜かしていた。
強者が再び地上に立ち上がった。
☆☆☆
夕日が水平線に消え、きらびやかな明かりが夜の街を彩る。
街には我が家へと帰宅する男性や、恋人と二人で夜の街を歩く者など様々な人たちがいた。
もうすぐ冬に入る季節なため、早いところではイルミネーションで色とりどりに店を飾っているところもある。
楽しそうな雰囲気が、街からも、人々からも伝わってくる。
しかしそんな中、数人の人々が血相を変えて慌てながら走ってきた。
彼らを見つけた人々は何が起こったんだ?と不思議そうな顔をしていた。
そして、一人が大声で問いかけようとしたときに、走ってきた人たちの内の一人が叫んだ。
「逃げろおおおお!」
「グルオオオオオオアアアアアアア!!」
突如聞こえた咆哮に、その場がまるで時が止まったかのように静まり返った。
姿が見えず、咆哮だけだというのに金縛りにあったように体が全く動かない。
ここにいたらまずい。早く逃げないと。
頭が防衛本能として警告を発するが、体が言うことを全く聞かない。
「グオオオオ!」
ズガンッ!!と、建物を飛び越えるように飛び出してきた巨影がコンクリートの道路を砕きながら着地した。
衝撃で一瞬だけ足の裏が地面から浮かび、何人かがよろけた。
しかし、それで硬直が解けたようで人々は悲鳴をあげながら蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
立ち上がった
みすみすご馳走を逃すほど
逃げる人間たちは
だが必死の逃走も虚しく、一番後ろで走っていた男性が
「嫌だぁ! 誰か助けてくれぇぇぇ!」
しかし今この場に男性を助けられるほどの力を持った者は誰一人おらず、男性の悲鳴を聞いた人間たちは男性と同じ目に合いたくないため必死に走った。
骨付き肉を食べるように男性の体を噛み千切り、手の中に残った男性の下半身も口の中に放り込む。
人間たちは道路に沿って真っ直ぐ逃げていくが、近くの建物の中に逃げ込んでいく者たちがちらほらと現れ始めた。
その中に土産物屋に逃げ込もうとする女性がおり、扉に手をかけると急いで扉を引いて中に入ろうとする。
しかし扉はガチャガチャと音を立てて中々開かない。
女性はすぐにこの扉は押して開く扉なのだと理解し、扉を押した。
すると扉はすんなりと開き、女性はこれで助かると心の底から安堵して中に入ろうとする。
しかし、扉の前でもたついた時点ですでに遅く、体の半分が店の中に入ったところで
天国から一気に地獄に叩き落とされたかのごとく女性の顔が恐怖と絶望の色に染まる。
「いやあああ! やめて! お願いぐぇぇ……」
先程の男性と同じように頭からかじられ、潰れたカエルのような悲鳴をあげながら女性は
立ち止まって女性を
両足に力を込め、コンクリートを砕きながら走る。
両腕を大きく振り回して鋭利な爪を道路に突き立てて道路を掴むようにしながら前へ前へと猛スピードで走る。
ゴウッ!と、巨体が風を切り、駐車されていた車を意図も簡単に弾き飛ばしていく。
金属の塊でもある車にぶつかりながらも勢いは衰えるような様子はなく、『突進』がどれだけのパワーを持っているかが見てとれる。
あっという間に人間たちと距離は縮められ、
横からブレーキ音を喧しく鳴らしながらくる車を片腕で軽々と吹き飛ばし、
強化された火炎放射は前の頃に比べてより遠くにまで届くようになり、灼熱の炎が逃げる人間たちはもちろん車や周りの建物まで燃やす。
「ぎゃあああああ!」
「熱い! 熱いいいいいい!」
体にまとわりついた炎が皮膚を焼き、その熱さから逃れようと必死に地面を転がる。
メラメラと燃えるそこは、まるで地獄のような錯覚を覚えさせる。
そう見えるなら、
地面を転げ回ったことで体にまとわりついた炎はなんとか沈静化したが、それでも体中に酷い火傷を負い、燃やされた人間たちのほとんどは瀕死の重症を負っていた。
炎で気管と肺を焼いたことで掠れた息をはく、もはや男女の判別もできない人間たちを掴むと
ウジ虫のように這いつくばりながら必死に体を動かして
だが
今の
今でも
空を飛ぶものなど己が知る中では2種のモンスターだけだが、今回やって来たものはどうやらモンスターではなく人間らしい。
しかし動物特有の、絶対と言っていいほど必ず出す汗の臭いと無機物らしい何も感じさせない金属臭が同時に
横に回転しながら飛んでいく軽自動車だったが、残念ながら空にいた人間たちには避けられてしまった。
セシリアが持つブルー・ティアーズに似た鮮やかな青い装甲を持った機体を纏った人間が5人。
量産ティアーズ型第3世代機『
それがその機体の名前だ。
ティアーズ型ということもあって、
しかし操縦者のBT適正が低いため、数は2機と少ない。
「グルオオオオオオオオオオ!!」
対する人間たちも
「あれが本当に情報にあった化け物だって言うの!?」
「姿も情報と一致している! それ以外に何があるって言うんだ!」
「同じって言っても大きすぎでしょ!」
どうやら以前日本で暴れていたときの
だが
さすがに言い争っている場合ではないと判断した5人はすぐさま互いを邪魔しないようバラバラに広がりなが飛んでくる車を回避。
レーザーライフルの銃口から青いレーザーが放たれ、それが
戦車の装甲すら熔解させて貫通するレーザーが
パァンッ!と音を立ててレーザーは虚空に青い光を撒きながら霧散する。
まさかレーザーを防御、もしくは回避するのではなく殴って無効化するとは思っておらず、レーザーを放った女性は驚愕の声をあげた。
しかし、さすがに軍人ではあるらしく、すぐに気を持ち直すと他の女性たちに
女性たちが
☆☆☆
そこにソイツはいた。
ソイツの眼が空から地上に向けて放たれる青い光条を捉えると、ソイツは視線を後ろの建物へと変えた。
街にあるどの建物よりも大きく、巨大な鉄塔が何本も建ち並び、細い配線があちこちに伸びている。
ソイツは静かに唸り声をあげると、地面に爪を突き立てて巨大な岩石を引きずり出す。
自身の半分以上の大きさがありそうな岩石を肩に担ぐようにして持ち上げると、ソイツは建物めがけて投げ飛ばした。
緩い放物線を描きながら巨大な岩石は建物の横にあった巨大な球体状のタンクのようなものに激突した。
タンクのようなものは巨大な岩石が激突したことで中の燃料が外に漏れ、岩石と金属の壁の摩擦によって起こった火花に燃料が引火して大爆発を起こした。
しかも最悪なことに他のタンクのようなものまで誘爆し、連鎖的に爆発が次々と起こっていく。
そして、一際大きな爆発が起こると建物のあちこちから火花が散り、人工的な建物の光が消えた。
建物の光が消えると同時に、ソイツが初めに見ていた街の光もすべて消えてしまった。
炎が建物を包んで森を照らす中、爆発を引き起こしたソイツはすでに森の奥へと消えていってしまった。
不自然な色を放つ、青い炎を残して。
ということで
BBBBBBBをしてもキャンセルできないので悪しからず。
そして最後の彼は皆さんが想像する彼です。
すでに彼もこの世界にいるのですよ。
第2形態
岩投げ ★☆
跳躍撃 ★
火炎放射 ★☆
突進 ☆
黒星はすでに選択済みのポイントです。
それではまた次回。
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牙伏
あとバタフライフィッシュの稚魚を育てるのも楽しいです。
突然のことにフォーチュン・ユリシスを駆る5人の操縦者たちは攻撃を一旦中断して
「何が起こったの!?」
『火力発電所で爆発が起こった! 原因は不明だが充分に警戒しろ!』
ユリシスの操縦者の一人が本部に連絡を入れ、この停電の理由を聞き出す。
本部はすぐに答え、ユリシスの操縦者はハイパーセンサーによる後方視覚補助で森が赤く燃えていることを確認し、苦虫を噛み潰したかのような顔をした。
この暗闇の中、視界がまともに効かずその上レーダーにも引っ掛からない。
意識して行った行動ではないが、高い位置まで上がったことは接近戦において無類の強さを誇る
現に月明かりに照らされうっすらと見える
しばらく5人を見ていた
無理な戦いを挑むほど
ドスドスと足音を立てながら
しかしユリシスの操縦者たちも
青い光が暗闇を照らしながらまっすぐ突き進むレーザーだが、残念ながらレーザーを察知した
だがそこは軍人。
すぐに全員が攻撃を再開してレーザーを放っていく。
1発1発がまっすぐにしか飛ばないレーザーなため狙っている方向に素直に飛んでいくが、
すると、銃口から発射されたレーザーは吸い込まれるように
だがバチィッ!と弾けて
これでも戦車を貫通する威力を持っているが、
「本部! レーザーが効かない。 戦闘ヘリ、ありったけの弾薬を積んで!」
ユリシスの操縦者は攻撃が効かないことを本部に連絡して新たな戦力を要求する。
他の操縦者たちが『何をいっているの!?』と驚いていた。
この操縦者たちはやはり女尊男卑思想の女たちだったらしく、男たちの力を借りず自分たちだけで
『今すぐそちらに向かわせる。 座標を送り、敵を足止めしていてくれ!』
本部からの返信も早く、それを聞いて一先ず安心した女性は通信を切って
「ちょっと貴女! 何勝手なことを伝えるのよ!」
「男の力を借りるなんてゴメンだわ!」
「(この緊急事態に何を言っているんだコイツらは!)」
好き勝手に言う他の操縦者たちに怒鳴り散らしたい気分になったが、ぐっとその感情を堪えた。
それによってちょっとした言い合いは収まったが、明らかに女尊男卑思想の女4人から敵意に似た感情を向けられることになってしまった。
足止めをするということは全員に通信で伝わっているが、女尊男卑思想の女たちはやはり自分たちだけで
4人はフォーチュン・ユリシスの第3世代兵器であるビットを
ビットはしばらく
「グオッ!?」
まさかレーザーが発射されるとは思わず、しかもレーザーが頭部に命中したため
後ろに少しよろけた
全てを焼き尽くす赤い炎の渦がビットに向かって襲いかかる。
ビットは
完全に破壊……とまではいかなかったが、ビットの半分ほどを熔解させられ、中の回路まで熱によって焼かれて機能停止してしまった。
大小様々な破片が
「グルルル……グオオオオオ!」
そして
その動作が女尊男卑思想のユリシスの操縦者たちの心を苛立たせた。
戦闘しか能のない野蛮な獣にいいようにされ、しかも挑発されたとなれば自尊心とISの操縦者としてのプライドが無駄に高い女たちにとっては屈辱だった。
「この野蛮なけだものが! 調子に乗るな!」
一人が叫ぶとビットを操作して
他の3人も同じようにビットを操作して左右や前、後ろ、上など様々な方向から
「チィッ!」
残った一人も舌打ちをしながらビットを射出せず、レーザーライフルで攻撃に参加した。
そして、レーザーを発射するために銃口を
投げられた破片は見事ビットに命中してビットの装甲をひしゃげさせながら破壊した。
まさかビットを破壊されると思いもしなかった女尊男卑思想の女たちは動きを止め、それに対して
明らかな挑発行為。
小さな丸い眼が、三日月のようにグニャリと歪む。
「っ、このけだもの風情がああああ!!」
「ま、待て!」
激昂しながら女尊男卑思想の女の一人が近接ブレード『インターセプター』を展開して突っ込む。
その無謀な突貫を止めようと手を伸ばしたがもう間に合わなかった。
しかし、女は
女はがら空きになった
「(とった!)」
心の中で喜ぶ女。
しかし、インターセプターの刃が
一瞬で引き戻された腕はインターセプターを脇腹と腕の間にガッチリと挟み込んだ。
力一杯インターセプターを振るためにインターセプターの柄を手放さないようにしっかりと握っていた女はインターセプターを挟み込まれたことで動きを止められてしまった。
女は必死にインターセプターを引き抜こうとするが、完全に固定されたインターセプターはピクリとも動かない。
「グルルル……」
そこで女ははっと気付く。
油の切れたブリキの人形のように頭をゆっくりと上にあげる。
「あ」
ゴッ!と、鈍い音が鳴って殴られた女が大きく吹き飛ばされ建物に突っ込む。
盛大に建物を破壊しながら突っ込んだ女は
死ななかったのはISのお陰だろう。
残った女たちは
しかし
右手を握りしめ、限界まで右腕を後ろに引き、溜め、振り落とす。
爆音が轟いた。
地面に倒れる女に向けて振り落とされた拳は女の上半身を確実に捉えた。
しかし
小さなクレーターの中心では道路に突き刺さった拳を引き抜く
シールドバリア、さらには絶対防御すら無視してISを操縦する者を殺せる力。
ただ殴っただけで道路にクレーターを作るそのパワーに、残ったユリシスの操縦者たちは茫然とした。
ビットを破壊できる威力が籠められた破片が女たちに向かって一直線に飛翔する。
破片を見て女たちは急いで体を動かすが、破片は一人の女の腕に直撃した。
破片が腕に当たった瞬間、まるで引っ張られるように体が吹き飛ばされる。
しかも腕があらぬ方向に折れ曲がり、破片が当たった衝撃できりもみ回転しながら落下していく。
破片が当たったのは、戦力を要求した女だった。
視界がぐるんぐるんと回りながら必死に体勢を立て直そうとユリシスを動かす。
腕が折れているというのに痛がる素振りを見せないのはアドレナリンによって痛みが抑えられているのか、はたまた痛みを知覚できるほどの余裕がないのかはわからない。
しかし、急いで体勢を立て直さないと死ぬということだけは頭の中でははっきりとしていた。
視界が回り続ける中、急に体が固定されて回転する勢いが固定された体を襲う。
目まぐるしく状況が変わっていくことに戸惑いながら目を開くと、目の前に
思わず息を飲んだ。
血生臭い
掴まえたまま、火炎放射で焼き尽くそうというのだ。
他の操縦者たちは恐怖で全く動こうとせず、
短く悲鳴をあげた
乱雑に叩きつけられたことで強い衝撃と痛みが女の体を襲う。
痛みで顔が歪む中、女は自分を見下ろす
堂々と2本足で立ち、圧倒的な巨体、単純な力業を持ち、立ち塞がる外敵を粉砕する姿。
その姿と存在は、今の世の中で最強と言われているISとそれを扱う女たちよりも、純粋に格好いいと思ってしまった。
「……はは、良く見ればお前、中々良い顔をしているじゃないか」
見下ろしてくる
もちろん
それでも、女は極限状態から死の恐怖などを忘れて軽口を言いたくなった。
「お前は本当に強い」
握りしめた右手を後ろに引く。
「だが」
振り落とす。
「まだ敗けではない」
拳が道路に倒れている女に当たる瞬間、
いきなりのことに
さらに立て続けに同じ衝撃と痛みが再び
ローター音を響かせながら上空を飛行する戦闘ヘリ『ウェストランド・スカウト』4機が、ライトで
だが今度はミサイルに代わって機関銃が火を噴いた。
数発のミサイルによって外皮を大きく削り取られ、抉り取られたかのような傷痕に機関銃によって放たれた弾丸が突き刺さる。
「グルオオオオ! ゴアアアアア!」
ミサイルと機関銃による攻撃で
皮膚を抉られ、弾丸が肉を引き裂きながら内部へと入り込む。
第2形態となったとはいえ、ミサイルによる攻撃は相当堪えたらしく体のあちこちがボロボロに焼け爛れていた。
満身創痍。
その言葉が当てはまるほど、
ウェストランド・スカウト4機がフラフラとした足取りで逃げる
パイロットがミサイル発射のためのボタンを押そうとした瞬間、ウェストランド・スカウト2機が突如機体を大きく揺らしながら墜落していった。
墜落していったウェストランド・スカウトは尾部を綺麗に切断されており、バランスが取れる状態ではなかった。
2機はついには道路へと墜落し、機体を大きく歪ませた。
すると目の前に、ユラユラと揺らめく黒い歪みのような物が存在していた。
見たこともないはずの物。
それなのに、
残ったウェストランド・スカウト2機は逃げ出そうとする
重傷を負わせた
☆☆☆
「グォォ……」
歪みのような物に飛び込んだ
慢心なんてしていなかった、と言えば嘘になる。
これでもう負けることはない。あとはゆっくりとエサを喰べていける。
そう思っていたが故に、瀕死の重傷を負わされたのだ。
もうすでに虫の息で、視界が徐々に暗くなっていく。
モンスターが勝つと思っていた皆さん。期待を裏切ってすみません。
一応勝てる展開もあるにはありましたが、モンスター無双感がメチャクチャだったので勝ち展開はボツとしました。
それでは次回で会いましょう。
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StageⅡの脅威
4ヶ月ばかり更新が止まっていましたが、研修や何やら、後モチベーションの低下で中々執筆できませんでした。
久しぶりにやったEVOLVEでモチベーションは上がったことと時間が取れたので更新することができました。
エタることは絶対にしないつもりなので、今後とも宜しくお願いします。
アメリカのとある森の中。
そこには緑や黒などの色のまだら模様をした服を着こんで武器を手にした人間が極力音を立てないようにゆっくりと前進する。
彼らが纏う雰囲気には緊張と恐怖の色が表れていた。
彼らが今行っている任務は衛星から記録された森の中で発光する現象の調査、及びモンスターの駆逐である。
先日森の中で光が放たれるのをアメリカ大陸の上空を飛んでいた人工衛星が捉えたのだ。
アメリカ政府はこれをモンスターが起こした現象と判断し、アメリカ軍の特殊部隊を派遣して対処しようというのだ。
イギリス軍がモンスターの一体に重傷を負わせてこれを撃退した、という情報が全世界に渡ったため『モンスターは倒せる』という認識が広まった。
倒せるというのになぜ我々は怪物の存在にビクビクしていなければならない、そういった考えが芽生えたのは良いことだったのか悪いことだったのか。
少なくとも、人間たちが絶望しきることはなかったため良いことなのだろう。
彼らは薄暗い森の中をゆっくりと進み、ヘルメットに取り付けられた暗視装置越しに周囲を警戒する。
もっとも、今この森にいるのは地上にいる彼らだけではないが。
ガササッ、と草むらから音がしたため、全員がアサルトライフルの銃口を音がした草むらに向けていつでも発砲できる体勢に移る。
草むらはより一層音を大きくし、葉っぱの揺れが大きくなる。
何かいる。
嫌でもわかるその状況に、特殊部隊のメンバーはいつでも引き金を引けるように指の力を強める。
そして、ついに草むらの中から音を出していた犯人が現れた。
黄色い恐竜のような体。口元に垂れ下がる触手。
大人しそうな小さくて丸い目をした生物『
しかも4体。
4体の
「シッシッ、あっちに行くんだ!」
何とかして
そして、1発の銃声と共に
残った
『ちんたらしてるんじゃないよ』
耳に装着した通信装置から馬鹿にするような女の声が聞こえた。
何も巨大生物討伐任務には銃を持った歩兵だけというわけではなく、空にはIS部隊だって控えている。
歩兵がモンスターをあぶり出し、IS部隊で総攻撃する。
これが本来の任務の目標なのだが、こちら側の存在が相手側に知られていない、つまり奇襲が成功してこそ真価を発揮する内容であるため先程の銃声で台無しになった。
もっとも、勝手に銃を撃った女はIS部隊を指揮するリーダーにお叱りを受けたのだが、銃声が息を潜めていたものたちを誘い出した。
――コアアアア!
――ギョアアア!
森のあちこちから鳥とは似ても似つかぬ声が鳴き渡り、謎の生物の大合唱が行われる。
ほどなくして木々の間から声の主であろう黒い影が現れた。
それはトカゲのような顔をしたエイのような奇怪な生物だった。
前肢はあるが後肢にあたる部分には何もなく、後肢が無い代わりに尻尾から繋がった翼状の腕が1対前肢の肩にあたる部分に存在していた。
エイのような生物の名前は
空からはすでに発砲音と
もはや隠れることもできなくなり、特殊部隊のメンバー全員は自分たちの周りに飛んでいる
数体の
☆☆☆
人間たちと
人間よりも逞しく生きていた
しかし、森の奥から聞こえてくる銃声が
本来なら逃げ隠れするのだろうが、生憎この
銃声以外に、
少なからず
それは避けたいことである。
☆☆☆
「このまま後退する! 負傷者は早く下がれ!」
激しく銃声が鳴り響く中で、歩兵部隊の隊長らしき男性が銃声に負けない声量で部下へと指示を出す。
歩兵部隊のメンバーは明らかに人数が減っており、少し離れたところには何かに群がる
群がる
人間たちの数は減っているというのに対して
正確に言うと数は少しだけ減っているのだが、森の奥からどんどん飛来してくるため減っている実感がわかないのだ。
「コアアアア!」
「うわああ!」
そしてまた一人、
もちろん
仲間たちはその男を助けようとするが、飛び回る
銃で助けようとも激しく暴れているせいで
男は必死に抵抗するが、
あと少しで首に牙が突き刺さる、というところで男に襲いかかっていた
折角食事にありつけると思っていた
金属の拳が
「早く下がれ! ここはオレたちが引き受ける!」
タイガーストライプの機体に乗った女性、アメリカ代表IS選手『イーリス・コーリング』は愛機である『ファング・クエイク』を動かして次々と来る
右腕を突き出し、ファング・クエイク腕部内の対巨大生物用に追加された火炎放射機で飛び交う
そこに上空にいた残りのIS部隊も参戦して、
悲鳴をあげながら次々と撃ち落とされ、数を減らしていく
そのお陰もあってか歩兵部隊は負傷者を連れて撤退していき、まだ動けるメンバーは残ってIS部隊から少し離れたところで攻撃に参加した。
「さっさと死になさい!」
IS部隊の一人が羽を撃ち抜かれて飛べずにバタバタと地面の上で暴れる
近接ブレードで刺し貫かれた
男たちが苦戦した
女は近接ブレードに突き刺した
飛び回っていた
女は近接ブレードを
放たれた弾丸は
他の場所でも
先程まで沢山いた
IS操縦者は今だ余裕を持った状態で健在。
歩兵部隊も今では一度崩れかけたが、持ち直して
どんどん数を減らしていく
しかし、
イーリスもその事を理解しており、数が少なくなった
イーリスの指示に従い、IS部隊も歩兵部隊も引き金に指をかけるのを止めて撤退行動を取り始めた、という時に空から黒い影が落ちてきた。
「ヴオオオオオオ!!」
黒い影、第2形態
IS部隊も、歩兵部隊もいきなり空から現れた
すると、
その青白く発光する粒子はパリパリと電気を発しながらしばらくの間、空中を漂い続けた。
明らかに何かただならないことをしようとしているのがヒシヒシと伝わってくる。
全員は急いで
しかし、何人かが粒子の漂う範囲内にいる状態で、
ISを纏っていた女たちはISのシールドバリアのお陰で何とか助かることが出来たが。ISを纏っていない歩兵たちは雷によって感電死させられた。
放った雷の威力が高いことが、黒焦げに焼けた歩兵たちの姿でわかる。
ISも無事だったというわけでもなく、シールドバリア越しに
ISによるパワーアシストが働かなくなり動きが鈍くなったIS操縦者に
シールドバリアがまともに作動していない状態のIS操縦者を触手で掴み上げた
精密機械でもあるISが
一瞬にしてISを破壊され、防御手段もなくなってしまったIS操縦者は歩兵と同じように感電死によって黒く焼け焦がされた。
口腔内にエネルギーを溜め、首を少し後ろに引いていつでも旋風を発射できる体勢に移る。
「させるかよ!」
そして逃げる歩兵部隊に向けて
しかしそれもファング・クエイクの火炎放射機によって破壊された。
☆☆☆
「こちらファルコン。 もうすぐ戦闘エリアにつく」
指定された場所に近づいていることを無線機で
一瞬、脳裏を過った全滅しているという嫌な予感を振り払いながら、AH-64アパッチを進ませる。
しばらく飛行すると、前方の森の中に1本の雷が雨雲もない晴天の空から落ちた。
その場所が今戦闘をしている場所だと判断し、いつでも攻撃できるよう操縦桿のミサイルを発射するためのボタンに指を添える。
だが、ふと、ボタンに指を添えた彼は、妙に静かだと思った。
相変わらずAH-64アパッチのローター音が響いているが、それでも静かなのだ。
3機分のローター音がしないのだ。
慌てて操縦席から周囲を見渡しても一緒にいたはずの3機のAH-64アパッチの存在が確認することができなかった。
レーダーを確認するも、周囲にはAH-64アパッチの反応はおろか自分が乗っているAH-64アパッチ以外のものの反応さえなかった。
操縦者は他のAH-64アパッチが何の前触れもなく忽然と消えてしまったことに、言い知れない恐怖を感じ取った。
ここで、彼はふとある単語が頭の中を過った。
『神隠し』。日本に伝わる人などが忽然と消息を絶つ現象のことを指す、世界有数にあるオカルト事件を代表するものの1つである。
失踪した人たちは今だ見つかっておらず、生きているのか死んでしまっているのか、それすらわからない。
その時、ゾクリと、背筋に悪寒が走った。
レーダーには何も映らず、周囲を見渡しても何も見えない。
それでも、心臓を鷲掴みしされ、首筋にナイフを突きつけられたかのような、鋭く冷たい重圧が彼を襲う。
まるで目に見えない存在が、『いつでも殺せるぞ』と言っているかのように。
恐怖のあまり奥歯がガチガチと音を鳴らしながら震え、体の震えが止まらなくなる。
今すぐこの恐怖から逃れようと、命令を無視して機体を反転させて作戦基地へと戻ろうとする。
そして、機体を反転させて戻ろうとした時、目の前には全てを呑み込む闇が広がっていた。
☆☆☆
一方、
今では歩兵部隊は元いた人数の2割ほどしかおらず、弾薬も底を尽きかけていた。
IS部隊はさしたる損害はないが、シールドエネルギーと弾薬が減っておりこのまま戦闘を続けるのが厳しい状態になっていた。
だが
このままでは死んでしまうことを理解している
特殊部隊側もここでこの
「ロケットランチャー! いくつだ!?」
地上で
空にいたIS操縦者たちは各自
イーリスは味方がロケットランチャーを構えたのを確認すると、
満身創痍の状態で頭部を殴られた
ロケットランチャーを持ったIS操縦者たちはよろける
そして引き金を引いて砲弾を発射しようとしたとき、ロケットランチャーを構えたIS操縦者たちを覆うように黒い影が現れた。
ふと空を見上げると、歪に凹んだ巨大な金属の塊が2つ、真っ逆さまに落下してきていた。
IS操縦者たちは砲弾を発射するのを中断し、急いで金属の塊を避けるように離れる。
金属の塊はそのまま森の中に落下し、うるさい金属音を響かせながら爆発した。
落下してきていた金属の塊、それは横にアメリカ合衆国の国旗が描かれており、形から軍用ヘリであることがわかった。
「あれって、作戦基地のヘリ?」
IS操縦者たちの一人が落下してきていた金属の塊を見てポツリと呟く。
よく見れば、金属の塊にはチェーンガンやミサイルが取り付けられており、飛び散った破片の中にはテールローターが存在していた。
だが今は大破した軍用ヘリに見とれている場合ではなく、
ヒュンッ、と横から風を切る音がした。
ふと気になり視線を横にすると、隣にいたIS操縦者が首のない状態でロケットランチャーを構えていた。
「えっ?」
突然のことに思わず茫然となりロケットランチャーの照準を
――シャアァァァ……
「っ!?」
突如後ろで蛇のような声がして弾かれるように後ろへ振り向くが何もいない。
――シャアァァ……
今度は左で声が聞こえ、急いで振り向いても何もいない。
――シャアアァァァ……
――シャアァ……
――シャアアァァァァ……
次から次へと何かの生物の声があちこちから聞こえてくるが、その声の持ち主はどこにもいない。
得たいも知れない何かを警戒して、IS操縦者は近接ブレードを展開する。
――シャアアァァ……
――シャアァァ……
――シャアアァァァ……
何かの声は段々大きくなり、それに比例するようにIS操縦者の恐怖心が大きくなっていく。
「シャアアァァァァ」
そして、真後ろで、はっきりとした声がして弾かれるように後ろを向く。
振り向くと同時に近接ブレードを振り下ろしたが、呆気なく弾かれた。
IS操縦者は至近距離でもいいからロケットランチャーを撃とうとしたが、それよりも速く目の前の何かが口の中に鋭い爪を無理矢理ねじ込んだ。
無理矢理ねじ込まれたせいで前歯が折れ、爪が上顎を突き抜け耐え難い激痛が襲う。
何かはまた新しく口の中に爪をねじ込み、そのまま勢いよく顎を引き裂いた。
他のIS操縦者たちは下で暴れる
上顎を取られたIS操縦者の死体を無造作に何かは放り投げると、胸についた大きな傷跡を見せびらかすように腕を広げ、吼えた。
「ジュアアアアアアアア!!」
亡霊
第2形態
雷撃 ★
雷撃地雷 ★
電磁波 ☆☆
旋風 ★☆
今回の
次話では
後知らぬ間に赤評価になっていたことにビックリしました。評価ありがとうございます。
兵器募集、モンスター募集もまだ行っているのでどんどん送ってくれたら嬉しいです。
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されど狩る者は狩られる側となる
章は大体10話少し越えたくらいの量で更新していこうかなと思っています。
「ちっくしょうが……!」
森の中を
その後ろにはイーリスに続くようISを身に纏った女性たちがイーリスと同じように男性を抱えながら森の中を移動していた。
そんな彼女たちの回りでは、逃走する彼女たちを嘲笑うかのように数本の樹を隔てて
手傷を負いあともう少しで
地球規模の緊急事態でIS学園に現れたWraithの情報はすぐに全世界に渡った。
もちろんその情報はアメリカにも渡り、アメリカ軍に所属する者たち全員が知っている。
イーリスもその一人であり、再び現れた
そして、その予想通り化け物たちは最初に確認された時よりも体を2倍近い大きさになって戻ってきた。
情報数が圧倒的に少ないKrakenに関しては不明だが。
しかし、体が大きくなった程度で化け物相手に遅れをとるほどイーリスたちは弱くはない。
ならなぜWraithから全力で逃げているのか。
それはWraithが第2形態へと移行した時に手にいれた新たな能力が大きく関係している。
突然現れ、二人のIS操縦者を亡き者にしたWraithは咆哮をあげた後すぐに腕を後ろに引いて何かの構えのような姿勢をとると、赤黒いオーラのようなものを纏いながら両腕と鎌状の腕を目一杯広げ弾けるように襲い掛かった。
遠方から襲いかかり、捕まえた対象を連れ去る『神隠し』というWraithの技である。
30メートル以上あった距離はあっという間に縮められ、進行先にいたIS操縦者を爪の生えた手で掴み、鎌状の腕で抱き締めるように捕らえるとWraithが元いた場所に連れ去った。
もちろん捕らえられなかった他のIS操縦者たち数人は、Wraithにアサルトライフルの数少ない弾丸を発射する。
全員が標的をKrakenからWraithに変更すればKrakenに後ろから攻撃されかねない。
IS操縦者一人を連れ去り、今まさに銃弾の雨にさらされようとしているWraithは、腕の中で必死に抵抗するIS操縦者に顔を向けると、嗤った。
大きく裂けた口の口角を吊り上げ、無数に並んだ針のような牙を剥き出し、嗤ったのだ。
Wraithは腕の中で暴れるIS操縦者をあっさりと離した。
拘束が解かれたことにIS操縦者は当然のこと困惑する。
しかし、このまま同じ場所に留まればWraithに何をされるかわからない。
IS操縦者は急いで機体を動かし、Wraithから離れようとした。
その瞬間、Wraithが眩い閃光と光の粒子を放ち、IS操縦者の体を切り裂いた。
一瞬のことに何が起こったのか理解できず呆然とするIS操縦者だったが、続けざまに振るわれたWraithの鎌がIS操縦者の体をバラバラに切り裂いた。
目にも止まらぬ速さで振り抜かれた鎌は容易く一人の人間の命を奪った。
しかし、遅れてWraithに向けて放たれた銃弾がWraithを襲う――
はずだった。
Wraithへと飛来する銃弾は、光の粒子に触れるとWraithに当たらずとんちんかんな方向へと飛んでいった。
挙げ句の果てにはWraithに向かって飛んだ銃弾数発がIS操縦者たちに向かって返ってくる。
ISのハイパーセンサーも、Wraithのいる場所を映すとメチャクチャな座標を出している。
まるで、Wraithがいる場所だけが別の空間になっているかのように。
これこそ、Wraithの真骨頂である『亜空間』といわれる能力である。
本来、Wraithは時空を操作することができる能力がある。
Wraithのワープ然り、時空の亀裂然り、それらもWraithの時空を操る力の応用である。
そして、その時空を操る力を使い、Wraith自身が自由に動けるWraith専用の空間を強制的に作り出してその中で高速の斬撃を繰り出すことができる、それがWraithの亜空間なのだ。
だが永遠的に亜空間を作り出すことはできず、一定時間経つとWraithの作り出した亜空間は自然消滅する。
IS操縦者一人を斬殺し、Wraithの亜空間が消滅するとWraithはワープを使いKrakenの前に現れる。
まるで、傷だらけのKrakenを庇うかのような行動に一同は驚愕する。
その間にWraithはKrakenに向けて小さく唸り声をあげると、KrakenはWraithに背を向けて森の中へと消えていった。
もちろんIS操縦者たちの何人かは逃げるKrakenを追いかけようと動くが、それよりも先にWraithがIS操縦者たちの前に移動してそれ以上先に行かせないようにする。
必然的にWraithと戦闘を開始しなければならないという状況になるが、イーリスは撤退行動を取る命令を出した。
消耗した部隊と無傷のWraith。
戦闘を行えばどちらが負けるのか明白である。
しかし、Wraithはイーリスの命令を嘲笑うかのように、IS操縦者ではなく歩兵部隊へと襲い掛かった。
ワープを使って瞬時に歩兵部隊の真上に移動すると、慌てる歩兵たちを無視してWraithは衝撃波を放った。
自分たちの上で放たれた人を殺せる波動が歩兵たちを吹き飛ばす。
衝撃波の威力で体があらぬ方向へ捻れ、体の一部が消し飛んでWraithの真下にいた歩兵たちが死んでいく。
さらにWraithは衝撃波から生き残った歩兵たちを自身の自慢の鎌状の腕を振って切り裂いた。
Wraithは狡猾な
いくらIS操縦者たちが弾丸を消費し、ダメージを負っているとしても下手をすればこちらが手痛い反撃を喰らうであろうことは理解している。
しかし敵の戦力を削れるのなら積極的に狙いたいのも事実。
そこで見つけたのが地を歩く歩兵たち。
ISよりも小さく、少しでも力をいれて腕を振れば砕ける体を持っている人間なら簡単に殺せる。
そう判断して、歩兵たちを積極的に狙うことを最優先として行動したのだ。
鎌と爪を血で真っ赤に濡らしながら一人一人確実に殺していたWraithだが、ふと感じ取った殺気にWraithは体を翻して歩兵たちから離れる。
すると、先ほどまでWraithがいた場所をイーリスが拳を振り下ろしながら通過した。
「今のうちだ! 生き残ったやつを回収して撤退するぞ!」
叫ぶように指示を出し、イーリスは歩兵二人を抱えて撤退を開始した。
他のIS操縦者たちも歩兵たちを抱えてイーリスの後に続いた。
こうして逃げるイーリスたちと、その後を追うWraithという構図が出来上がったのだ。
しばらくWraithはイーリスたちを追いかけ続けていたが、ふと何かに反応したように急に動きを止めた。
Wraithの妙な反応にイーリスたちは一瞬動きを止めてWraithを見たが、今はそんなことをしている場合ではないと判断して再びWraithに背を向けて撤退する。
不思議なことに逃げるイーリスたちをそれ以上追おうとせず、Wraithはただただ森の先を見つめ続ける。
その光景をハイパーセンサーの後方視覚補助によって見たイーリスは言い知れぬ恐怖を感じたが、今は撤退することを優先しその場から去っていった。
ふと気づいたときには、Wraithの姿はすでになかった。
☆☆☆
――呼んでいる
空間の狭間を移動しながら、Wraithは誘われるようにある一点の場所に向かっていた。
――行かなくては
ある意味使命感のような、そんな感情がWraithの心の中を支配する。
最初は訳のわからない場所に来てしまったことに軽いパニックを起こしていたWraith。
今はGoliathやKraken、Behemothといった同族たちがいることは確認できているため、比較的落ち着いて狩りを行っていた。
一度手痛い反撃を喰らったが。
しかし、確認できたとはいっても残念ながらGoliathはすでに人間に狩られており、同族の数は己を含めて4体から3体へと数を減らした。
同族の数が少ない今の状況なら、まず同族の数を増やすことが先決である。
脳裏に残るあの人間の雌をこの手で殺すことも大事だが、生物として種の存続を考えるのが優先だ。
頭の中で本能に従いながら空間の狭間を移動し、Wraithは自身を呼ぶ存在の近くまで来たと理解すると空間の狭間に亀裂を作って空間の狭間から出る。
出た場所は、先ほどまでいた場所とよく似た森の中。
風景は全くもってつまらないほど変わりがない。
だが、たった一つだけ、一際存在感を放つものが存在した。
青い炎を纏った黒い巨体。
それが空間の狭間から出てきたWraithの前に二本足でしっかりと大地を踏み締めながら立ち上がっていた。
Wraithは目の前で自身を見下ろす存在に警戒心を覚えるわけではなく、恭しく頭を下げる。
まるで、従うべき王を見つけた騎士のように。
目の前で頭を下げるWraithを見下ろす黒い巨体は、Wraithにまるで語りかけるように唸り声をあげる。
その唸り声を聞いたWraithは頭をあげると雄々しく咆哮をあげ、時空の亀裂を作り出して黒い巨体の前から姿を消す。
Wraithが消えた後、黒い巨体はいまだにゆらゆらと揺らめく時空の亀裂を背にして振り返る。
黒い巨体が振り返った先、そこには木々や草で覆うように隠されたある物体が存在していた。
黒い巨体はその物体に近づき、少しずれていた草をかけ直して物体を完全に草で隠す。
物体が草で隠されたことに安心感を覚えた黒い巨体は草で隠された物体の横を通って森の奥へと入っていく。
黒い巨体が消えたことにより、その場所には草で隠された物体だけが残った。
残された物体。
それは、脈動するように赤い光を放っていた。
☆☆☆
一方、Wraithから逃れ森の外に急遽建てられた作戦基地に戻ったイーリスたちは森から離れる準備をしていた。
ほぼ作戦放棄な状態で戻ってきたため、今回の作戦指揮を行っていた指揮官に怒鳴られそうになったが、逆にイーリスが怒鳴り返して撤退することを半ば無理矢理承諾させたのだ。
指揮官はイーリスの剣幕に思わず了承してしまったが、怪我人の多さや作戦開始時と今の軍人たちの人数が明らかに減っていることに気づき、今では撤退の指示を出している。
「怪我人を優先に運べ! 車、ヘリ、使えるものは何でも使え!」
指揮官の指示のもと、怪我人が次々と運び出されて車やヘリに乗せられる。
イーリスたちIS操縦者はWraithが再び現れたときのことを考え、ISを展開したまま辺りを警戒していた。
減った弾丸や武器はある程度補給しているが、流石に減ったシールドエネルギーはあまり補給できずあまり長期の戦闘は難しい状態だ。
着々と撤退する準備ができている中、一人の軍人が怪我人を車に運んでいるときにある変化に気づいた。
急に地面にいくつもの影が現れたのだ。
その影が気になり、ふと手で太陽の光を遮りながら空を見上げる。
今の状況とうってかわって穏やかな青空が広がる空に、黒い何かが見える。
「……ヤバイ!逃げろおおお!」
黒い何かは次第に形を大きくしていき、その黒い何かの正体に気づいた軍人は叫んだ。
叫び声に反応して他の軍人たちも空を見上げる。
そして、金属の破片に体を串刺しにされた。
――ジュアアアァァァアアアア!!
金属の破片が降ってきた空には、咆哮をあげながら時空の亀裂を次々と作り出しながら空を飛ぶWraithの姿があった。
空中に出来た時空の亀裂からは大小様々な大きさの金属片が落下していく。
落下していく金属片、それはWraithによって異次元空間に取り込まれた軍用ヘリAH-64アパッチの残骸である。
通常空間とはまるっきり違う異次元空間に放り込まれた存在は、物が裏返ったり、別々の物体がくっつくなどの現象が起こるとされている。
元々Wraithは空間を操る力がある。
そのため下手なことをしない限り、異次元空間はWraithにとって害となるものではない。
しかし、空間を操る力なんぞ持ち合わせていないアパッチはどうなるのか。
説明しなくても、無事であることはないだろう。
Wraithは異次元空間で残骸と化したアパッチを次々と落下させて軍人たちを苦しめていく。
特にISへ落下させる残骸は大きなものを選んで落下させている。
ISがそれに対処している間に、Wraithは既に飛び上がっていたヘリに狙いをつけるとワープを使って一気に近づく。
近づいたと同時にWraithはヘリの尾部を掴み、無理矢理引っ張ってヘリ、バランスを崩す。
グルグルと回転しながら徐々にヘリは落下していき、Wraithはまだ飛び立っていないヘリ目掛けて落下するヘリを投げた。
まともにバランスも取れず、ヘリはそのままヘリの中に落下し、地面に激突して爆発を起こす。
しかも、激突した衝撃でヘリは大きく跳ね上がると別のヘリ次々と衝突してヘリを大破させる。
Wraithはどんどん壊れていくヘリを見て嬉しいのか笑い声にも聞き取れるような咆哮をあげる。
イーリスはそんなWraith目掛けてファング・クエイクを飛び上がらせてWraithの胴体に一発殴ろうとする。
しかし、Wraithは自分の分身を作り出すと近づくイーリスに向けて襲わせた。
当然イーリスと分身は真正面から衝突する。
Wraithはその瞬間に出来た隙を見て上空に作り出した無数の時空の亀裂の中の一つに飛び込んで姿を消した。
イーリスと衝突した分身はすぐに光の粒子へと変化して消滅する。
「ちっくしょうがあああああああ!!」
しかし、イーリスにとって最後の最後でWraithにまんまと反撃されたことは紛れもない事実であり、イーリスは屈辱と敗北感を味わいながら叫んだ。
今回の闘いは、人間側の敗北という形で幕を下ろした。
次話あたり更新したら第2章へと移ろうかなと考えています。
ゲームではGorgon使ってスパイダーマンごっこしながら戦うのがマイブーム。あと開始早々足下に蜘蛛罠仕掛けて落ちてきたハンターに嫌がらせすることも。
第2形態Wraithステータスはこうなっています。
Wraith
衝撃波 ★
神隠し ☆
囮 ★★
亜空間 ☆☆
それと、今回暇潰しに描いた落書きEVOLVEモンスターたちを挿し絵として貼ってみます。
リクエストがあればその絵を描いて貼っていこうかなと思っています。
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これからもINFINITE EVOLVEをよろしくお願いします。
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産声
文字数少ないけど我慢してちょ。
「だから何度も言っているだろう!
『しかしですね、
無数の機械があちこちに並べられ、道具やコードで床が埋め尽くされているお粗末にも作業できるような環境じゃない一室で、激しく口論する声が聞こえる。
口論する声の中心には何日も風呂に入っていないのかボサボサの頭と薄汚れた白衣を着た男性と、その男性とは対照的に清潔に保たれた白衣を着た若い青年がモニターに映し出されていた。
彼らは科学者。
この際名前は伏せておくが、彼らは自分たちが所属する国の政府から各地で猛威を振るっているモンスターに対抗できる兵器を製造しようとしていた。
因みに彼らはそれぞれ所属する国は違うが、一度軍用IS製作を共同で行った経歴があるので製作した兵器のデータの共有と合同製作を行っている。
「何が金の卵を産むガチョウだ! むしろパンドラの箱の間違いじゃないか!」
『これだから戦うことしか能のない人は頭が固いんですよ。 いいですか?
「何が人類の進化だ! そんなことを言って生物兵器を造ろうなんて考えているんだろ!」
口論は次第にヒートアップしていき、離れた所で作業している作業員たちは手を止めて冷や冷やしながらその口論を見守る。
彼らが所属する国ではモンスターたちの処遇に付いて非常に問題となっていた。
これはどの国でも言えることだが、政府の右翼側と左翼側でモンスターを駆除しようと主張する側と生きたまま捕獲しようと主張する側で激しく討論が行われている。
人への被害が出ているため武力を持って殺処分を。
貴重な生物であるため生きたまま捕獲を。
簡単に言えば、これが両者の考えである。
「ええいお前と話しても埒があかん! こっちで勝手に造らせてもらうぞ!」
『構いませんよ。駆除用と捕獲用の2種類があれば機転は効きますしね。 でも
青年はそう言って通信を切った。
男性は青年との通信が切れると、苛立った感情を隠さず舌打ちをする。
確かに捕獲をすることへの理解はできるが多くの人間を殺し、尚且つ餌として食すモンスターの行動は嫌悪を通り越して憎悪にまで至る。
それが旅行中だった男性の弟を喰い殺したとなれば尚更だ。
不運だった。
一言で片付けてしまえば簡単なことだが、家族が殺されて黙っていられるほど人の感情は単純ではない。
さらに、男性は科学者。
主に兵器系の知識を持つが故に、モンスターへの憎悪を今開発している兵器にぶつけているのだ。
男性はまだ苛つきながらも目の前のキーボードを叩き始め、作業を始める。
キーボードを叩く度に数値が打ち込まれていくモニターに、蛇腹のような剣と武骨な人型の機械を映し出しながら。
☆☆☆
「行きなさい!ブルー・ティアーズ!」
「そのまま追い込んでセシリア!」
所変わって場所はIS学園第1アリーナ。
そこでは青い機体とオレンジの機体が宙を舞っていた。
青い機体はイギリスの代表候補生セシリア・オルコットが操る第3世代IS『ブルー・ティアーズ』。
オレンジの機体はフランスの代表候補生のシャルロット・デュノアが使う第2世代ISラファール・リヴァイブをカスタムした『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』。
両者とも自身の専用機を高速で移動しながら戦闘を行っているが、二人が銃を向ける先には何もいない。
別に普通の人には見えない何かを相手しているわけではなく、二人が行っているのは『バーチャルシュミレート』と呼ばれる訓練方法である。
ISにはIS同士で訓練する方法以外にVRを利用したバーチャルシュミレート訓練というものがある。
VRバイザーを装着してISに接続することで、ISに入力された仮想標的をバイザー越しに撃破するという内容だが『ゲームのような感覚でISを動かすとは何事か』という意見が出たせいであまり実用されてはいない。
対戦相手となるモンスターは用意できないので、データがあれば再現できるので日の目に出ることになったのだ。
訓練方法はまだ他にもあるが、ここでは省く。
セシリアとシャルロットは頭に装着したバイザーに映し出された仮想標的を追いかけるように移動し、銃を突き付け引き金を引く。
バーチャルシュミレート用に二人が使う武器の安全装置はしっかりと掛けられているので発砲する危険はない。
そして引き金から指を離すと、二人は動きを止めてバイザーを上げる。
「撃破成功。 やったねセシリア」
「これくらいなんてことはありませんわ」
仮想標的の撃破を互いに称えながらセシリアとシャルロットの二人はゆっくりとピット内に戻っていく。
第1アリーナではセシリアたち以外にもバーチャルシュミレート訓練を行っている生徒がまだいる。
先日のIS学園へのモンスターの襲撃を切っ掛けに学園に何時でも守ってもらえないと理解させられた生徒たちが『自分の命くらい自分で守れるようにならねば』と思うようになりIS学園全アリーナでバーチャルシュミレート訓練を行っている。
アリーナは広いので生徒同士がぶつかるなどというアクシデントはあまり発生しないが、訓練を終えた者が何時までも居座るわけにもいかない。
バーチャルシュミレート訓練を開始した当初は、撃破に成功した生徒が喜んでいたら別内容で訓練していた別の生徒と衝突するという事件が発生したので訓練を終えた者はすぐさまピットに戻ると決められたのだ。
「二人ともお疲れ」
ピット内に戻ったセシリアとシャルロットを出迎えたのは、スポーツドリンクを差し出す織斑一夏だった。
セシリアとシャルロットは意中の男性の気遣いに少しのうれしさを覚えながら、差し出されたスポーツドリンクを受け取った。
「二人ともすごいな……えーっと」
「『リーパー』ですわ。一夏さん」
「そうそう、そのリーパー相手の撃破率が80%越えなんてすごいじゃないか」
「えへへ、リーパーはあの瞬間移動と分身能力に気を付けていれば一夏でも勝てるよ」
リーパー。
IS学園を襲撃したモンスター
巨大な鎌状の腕とそれを振り回す様子から『刈る者』という意味を込められリーパーと名付けられた。
セシリアとシャルロットはこのデータ上のリーパー相手の勝率が8割を越えている。
燃費が非常に悪い機体を使っている一夏を除いた専用機持ちたちも7割~8割を越えているが。
セシリアとシャルロットは一夏と少しだけ会話をすると、ISを解除して着替えるために更衣室に移動した。
後に制服に着替えた二人が一夏と合流し、今回のバーチャルシュミレート訓練の様子を一夏の部屋で見ているときに、何時もの取り巻きたちが乱入して一騒ぎが起こるのだがそれはご愛嬌。
☆☆☆
暗い、暗い森の中で、黒い巨体はただただじっと見つめていた。
見つめる先には黒い巨体よりも少し小さいくらいの赤い卵。
その卵がゆっくりと脈動するかのように光る。
次第にその光はゆっくりと強くなり、バキッという音をたてて卵にヒビが入った。
そのヒビは次第に面積を増やし、ボロボロと固い卵殻を落としていく。
そして、卵の中から豪腕が飛び出し、卵を完全に破壊した。
黒い巨体はその様子を黙って見届け、卵の中からソレが完全に出てくるのを待つ。
近くには次々とヒビが入っていく赤い卵が無数にあった。
最初に卵から現れたソレは、世界に己の存在を刻み付けるかのように咆哮という名の産声を上げた。
久々にやったポケモンにドハマりして執筆を蔑ろにしてました。
ゲームってヤバイね。
次に第2章に突入します。
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束の間の夢
全世界における未知の巨大生物出現からはや一ヶ月と数日、アメリカ軍によるモンスター討伐以降モンスターの活動はすっかりなりを潜めていた。
あれだけ世界を騒がせていたモンスターたちの行動が沈静化したことに若干の不安を覚えながらも、人々はさほど変わらず生活していた。
未だにGoliathによる襲撃の爪痕が残るイギリスも最初の頃は市民たちは恐怖で家から一歩も出ることができず毎日のように装甲車両が見回りを行っていたが、今では買い物に出かける人が増え装甲車両による見回りもめっきり減った。
壊された家屋や道路の補修も幾分か終了し、問題なく生活が送れるようにはなっている。
しかしイギリス本土の各所、特に森に近い場所を重点的に複数の兵士と装甲車両が警備にあたっている。
いつ現れるかわからないモンスターを相手にするなら当然の行動である。
だがそれでもやはり人間。
警備当初よりも緊張している様子が薄れ、時々欠伸が出てしまうくらいには気が緩んでしまっている。
モンスターへの警戒、警戒中も行われる軍事訓練、隊内での女尊男卑思想の女兵士たちが起こす不祥事によるストレス……兵士たちは忙しいのだ。
「本日も異常無し……か」
そんな忙しい兵士の一人『バリー・アンダーソン』は腕時計が1日が終了し、また新しい1日が始まった時刻になったことを確認するとため息を吐くように呟く。
交代制とはいえ、真っ暗な森へと続く橋を暗視装置付きの双眼鏡で数時間見続けるのは疲れる。
バリーは双眼鏡を下ろし、見張り台の梯子を降りて下で待機していた同僚と見張りを交代して休憩スペースへと足を運ぶ。
そこでは訓練終わりの兵士たちや待機中の兵士たちが和やかに談笑していた。
バリーはコーヒーカップを持ち、休憩スペースに設置されたコーヒーサーバーからコーヒーを注ぐ。
コーヒーの香りがふんわりと漂い、その香りを堪能しながらバリーは砂糖とミルクをたっぷり入れる。
コーヒーの香りは好きだが苦いのは苦手だ。
もはやコーヒーではなくカフェ・オレと化したそれに舌鼓を打ちながら近くにあった椅子に腰かける。
やはり甘いものこそ至高。
「先輩またそんな甘いもの飲んでるんですか?」
コーヒー(甘口)に舌鼓を打っていると、椅子に腰かけるバリーの背後から女性の声がかけられる。
バリーは声をかけた女性『エミリア・
「お前も飲んでみればいいのによ」
「嫌ですよ。太りますし」
『うへぇ』と嫌そうに顔を歪め軽口をたたくエミリア。
バリーは『旨いのに……』と残念そうに呟き、エミリアが両手に抱える資料へと目を向ける。
「あの化け物についての資料か?」
「はい。 細胞サンプルの研究結果の報告も予て目を通すように、と本部から送られました」
「読んでもいいか?」
「どうぞ」
エミリアから手渡された資料を受け取ったバリーは、ペラペラと資料を1枚1枚捲りながらそこに書かれた内容を確認する。
内容はイギリスを襲撃したGoliathの体組織の分析結果、他生物がこの体組織を何らかの形で体内に取り込んだ場合への影響、効果的な薬物兵器の模索などが書かれている。
ミサイルの爆風で抉れた肉片と道路に巻き散った血液だけでよく調べれたと思えるほど事細かに書かれていた。
アサルトライフルの銃弾を弾く強固な外皮。
ミサイルを食らってもなお動ける体力。
1cmの細胞片が4日間で5cmまで成長するほどの再生能力。
細胞片を食べたネズミの凶暴化等々……。
まとめるとこのような内容が書かれている。
あとはGoliathの呼称を【ゴリアテ】と呼ぶことが決められたということも。
「……やっぱり地球生まれの生物じゃないっていう訳だな」
「にわかには信じられませんが、遺伝子の塩基配列が地球上に存在するどの生物のものとも一致しない以上そうとしか……」
「ふぅん……『なお、遺伝子を意図的に操作された可能性有り』? おいおい、まさか生物兵器だっていうのかよ……」
資料に書かれた内容にバリーはため息を吐きながらげんなりと呟く。
歩兵が持つ銃器、更にIS用に改良・調整された物でも種類によっては全く効かない化け物が何処かの惑星からやって来た生物兵器などまるでSF映画のようではないか。
娯楽で楽しむ分には結構だが、現実に起こるのは勘弁願いたい。
実際に起こってしまったためもう遅いが。
「あら、下賎な男がこんな所で何をしているのかしら?」
コーヒー片手に資料を読んでいるバリーとバリーの隣に立つエミリアの後ろから、明らかに好意的とは程遠い態度で二人を見る女性が声をかける。
その女性の目からは侮蔑と嘲笑の色が見てとれた。
「何って休憩ですよ少尉。 見てわかりませんか?」
そんな女性に対して同じく馬鹿にするように返すバリー。
煽り返された女性は馬鹿にされたことが悔しかったらしく、歯を食い縛りワナワナと握りしめた拳を震わせる。
ヘレン・ローウェンス。
IS部隊所属。
年齢29歳。
階級は少尉。
BT適正はA-。
BT適正の高さから一気に出世したエリート。
しかし性格は高慢で今の世の女尊男卑思想に染まっており、事あるごとに男性兵士と騒ぎを起こす。
そして、イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットよりBT適正がちょっと低いというだけで代表候補生から外された経歴を持つ。
そんな彼女がバリーに絡んでいく理由は、単に自分より階級が低いくせに周りから信頼されているからという子どものような理由だけである。
「はぁ……少尉、本部から送られたあの巨大生物の資料です。 目を通してください」
絡んでくる理由をなんとなく察したバリーはため息を吐き、先程まで自身が読んでいた資料を差し出す。
いくら態度が悪くても一応は同じ軍に所属する兵士。
しかも階級は向こうが上なため、こういった対応はする。
それでも座ったまま資料を渡すくらい嫌っているが。
向こうも同じ兵士……とまでは思っていないが、軍に所属するくらいなら本部から送られた資料は読んでおかなければならないのでバリーの手からひったくるようにして資料を奪う。
「ふぅん、まぁISに負けないものなんて無いのにここまで臆病になるなんて、やっぱり男ってダメね」
パラパラと資料を捲り書かれている内容を確認するヘレンだが、IS絶対主義なためモンスターのことを下等で野蛮な生物としか見ていない。
現に日本でISが2機コアごと破壊され、イギリスではIS操縦者が一人殺されている。
よほどの自身があるのか、はたまた報告の確認をしていないのか良い意味でも悪い意味でも最悪だった。
ヘレンは受け取った資料を捨てるようにバリーへと投げ返す。
そして、バリーへの軽蔑する態度とは打って変わって熱を帯びた視線と表情でエミリアを見つめる。
はっきり言おう。彼女はレズビアンだ。
「うふふ、さあエミリア。 こんな男なんて放って私とイイことしましょう?」
「お断りします」
精一杯色っぽくお誘いをしたヘレンだったが、エミリアに即答で断られる。
即断られるとは考えていなかったヘレンが驚いた表情で固まっているのを他所に、エミリアは断った理由を話していく。
「第一私は職務中なので仕事をほったらかしにしてサボろうとは思いません。 それに私は少尉と違って恋をするなら男性が良いです。レズではないので。 あとーー」
ーー私、付き合っている男性がいるんで
堂々と言い放ったエミリアの周りにいた他の兵士たちが拍手を送る。
中には口笛を吹いて囃し立てる者もいるが、エミリアは恥ずかしがる素振りを見せない。
兵士たちの反応から見れば、周りから見られているヘレンの印象が悪いということがよくわかる。
ヘレンは羞恥と悔しさでこの場にいられなくなり、顔を真っ赤にしながら逃げるようにその場から離れていった。
「お前中々言うな」
「先輩が早く私にウェディングドレスを着せてくれたら解決するんですけどね」
「今の化け物騒ぎが終わったらな」
バリーに柔らかい笑みで微笑むエミリアの姿にバリーも思わず笑みが零れる。
エミリアが付き合っている男性ーーそれが今カフェ・オレのように甘いコーヒーを飲んでいるバリー・アンダーソンである。
バリーとエミリアの周りでは二人が結婚を控えていることは既に周知されており、予定ではもう結婚式をあげているはずだった。
しかし、Goliath【ゴリアテ】がイギリスで大暴れしたことでそんな余裕がなくなってしまい、結婚式がさらに先に伸びてしまったのだ。
休憩所ではエミリアとヘレンの攻防で囃し立てていた意味とは違う意味で周りの兵士たちが囃し立て始め、最初よりも盛り上がる形で休憩所が騒がしくなる。
「ふふ、それでは私は資料を提出しに行っていきますので先輩はゆっくり休んでくださいね」
そう言ってエミリアは大量にある資料を抱えて休憩所から出ていく。
エミリアがいなくなった代わりに、今度は休憩所にいる気の良い野郎共がバリーの周りに集まっていく。
「おうおうバリーよぉおめぇらアツアツだなぁ!」
「全くだぜ!俺にも良い娘がいたら紹介してくれよ!」
「お前が死んじまったらあいつ悲しむんだからよ、お前は安全なところで大人しくしてろよ!」
「うるせぇ!」
肩を組まれガハハと大笑いする仲間たちと笑いながら口論という名の談笑を繰り広げられる休憩所は、モンスター騒ぎでピリピリしている世からかけ離れた実に能天気な場だったがそれでもバリーにとっても彼らにとってもとても心地よい空間だった。
誰もがこのモンスター騒ぎが夢であればよかったのにと思ったが、現実は突如として鳴り響いた警報によってそんな小さな幸せを壊した。
警報がなった瞬間、笑い合っていた彼らから笑みが消えて緊張した空間が広がる。
そして、彼らの前を慌てた様子で走る兵士が叫ぶ。
「化け物の
地獄が始まる。
大変長らくお待たせしてすみません。
言い訳として、過去にスマホで書いていた小説のデータがスマホの画面が全くつかなくなり機種変更と共に全て消えたことでモチベーションがどん底にまで落ち、働くようになってうまいこと時間がとれず中々小説を書く時間がとれず、Distny2をメッチャやってせいで全然投稿することが出来ませんでした。
活動報告で生きていることを言えば良いかなって思いましたが、書いていないのにそんなこと言えないなと思いまして今回リハビリがてら復活して再び小説を書きます。
今後から不定期更新になると思いますが、小説はまだまだ書いていきますのでこれからもこの作品にお付き合いください。
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