次元龍の息子はやはり世界最強なのか (オリシュラビッ党)
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プロローグ
次元龍の息子


どうもはじめまして!
取り敢えず文字数はまちまち(笑)
ハイスクールD×Dのヒロインは可愛くて美人でいいですね。一誠にはもったいないかと(笑)
てな思いで書きました!
温かい目で見てくださいね。


気が付けば暗闇の中にいた。

 

光など一切なく目を瞑ってるのかと自分の顏を触ろうにも動くはずの手はそこには無かった。

 

(ああ……なんだこの感じ……俺、どうしたんだっけ?)

 

浮遊感に苛まれるが飛んでいるのかはたまた落ちているのかも分からず、ただ流されるままその暗闇の中で意識がある状態……。

 

(………ああ、思い出した。確か俺はあいつを庇ってトラックに引かれたんだっけ。)

 

いつの事だったかな……全然覚えてない。もう何百年も前だったかもしれないしついさっきなのか……俺と言う存在がただこの暗闇にあるだけ…。

 

「ほう……まさかこんなところに人間の魂が入り込んでいるとは……少年、運がいいな。」

 

突如聞こえた男の声、体が無いはずなのに震える感じがするほどの威厳を感じた。

 

誰だ……俺が見えるのだろうか?

 

「見えるとは違うな。感じるんだ……。ここに人間の魂が入り込んできたのは初めてだが俺には分かるぞ。」

 

魂…やっぱ死んでるんだな俺……

 

「うむ。いつからこの空間にいる……と言っても分からんか。」

 

ああ、気付いたらここにいたからなぁ……いつからだったんだろう。

 

「そうだろうな……ふむ、お前の名前はなんだ?」

 

(名前……なんだろうか、この声の主と話していると生きていた時の事を思い出す。つまらない人生だった。友達と呼べるような存在もおらず家族の顏さえ覚えていない。孤児院で世話になった爺ちゃんと小さい奴らに振り回されて……千鶴兄と遊ぶって言って連れ出されてあの子がトラックに轢かれそうになって……あの子元気かな。)

 

「……お前が助けた子は既に天寿を全うしているな。お前の名は帝千鶴(ミカドチズル)か。ふむ……14歳でトラックに轢かれ死亡……なるほどな、親の顔は知らず孤児院で当たり障り無い生活……親友と呼べるものはいないな。確かになんの面白みも無い。ただ頼りにはされていたようだが特別な力も何も無いな。」

 

……はは、なんか凄いんだな。神様かなんかか?

 

「神か……どうなのだろうな?だがこんな事はできるぞ。」

 

「えっ!?」

 

暗闇から一筋の光がこちらに向かってきたと思ったら自分の体が構築された!?なんだ…なにが……喋れる……息もできる…はは、顏に触れた!

 

「人1人作っただけだ。」

 

ぬっと暗闇に波が広がったような感じがし……いや、明らかに今までと違う黒い空間。そこから見えたのはなんなのか……こちらを見下ろすような青い瞳……それとも天体のどれかか?デカすぎる……孤児院から見えた30階建てのビルよりデカイ物が見えた。

 

「無から精製する事ができるわけではないぞ。俺の力でその体を作ってやった。」

 

……ああ、瞳だな。なんかあれが出てきてからこの声の大きさがちょっと大きくなった。

 

「……どうだ、もしお前が望むのならまた日常に戻してやる事もできるぞ。まあ元の世界じゃ居場所は無いだろうから別の世界になるが。」

 

…………はあっ!?

 

「俺も久しぶりに人間と話をしたからな。礼だ礼。」

 

「いやいやいやいや、てか礼で世界がなんたらとか言われても!」

 

「そうだな……うむ、あの世界ならお前も楽しめるだろう。」

 

えっ!?確定!?てか展開が早すぎる!

 

「あの世界の知識は与えておこう。後はそうだな……ん、ほう。人間は本当に面白い。ドラゴンクエストか……よし、お前に俺の力を一割やろう。存分に楽しめ。」

 

「だから!何勝手に話を決めてっ!?うわっ!?なんだ!?」

 

体の奥底から何か溢れてくる感じ……それにこの【知識】…うわぁ……すげえ世界……まあ全部覚えられ無いけど。てかドラゴンクエストって……ああ、なんか言ってた事が理解できた。

 

「メ、メラ!」

 

とりあえず試してみようと軽く指の先に【メラ】というまあ小さい火を放つ魔法を出現させ目の前に打ち出せば、爆音と爆風が聞こえ閃光……いや、メラだけど?なんか【メラガイアー】とかより威力高そうだし【ビックバン】みたいな感じに……

 

「うむうむ、なかなか面白いなこのドラゴンクエストというのは……ああ、魔力の使い方とかは自分で調整するんだな、その方が面白いだろう。困った事があれば呼びかけてくれ。俺とお前は血を分けた親子のようなものだからな。ただこれからは自分のやりたかった事をちゃんと楽しむんだ……」

 

「………はあ、まあまだ理解が及ばないけどそこまで言うなら楽しく生きてみるよ。」

 

「……ふふ。ああ、満足する生き方をしてみろ。さて……お前が望むならお前に特別な力をやるがどうする?」

 

特別な力か……所謂転生するに当たっての特典みたいなものか?

 

「そうだ。取り敢えず今のお前はその世界では最強の存在だ。魔力の量然り肉体強度等もな。お前が望むなら成長過程をつけてやれる。鍛えれば強くなれるという事だ。後はさっき言ったドラゴンクエストの魔法知識を与えておいた…まあそれは自分で調整して使いやすいようにしろ。」

 

聞くだけでとんでも無いな。まあ調整できるならいいか……成長過程か……あまり弱すぎても嫌かな。最初から少し強めにしてもらいたいな。

 

「分かった。なら取り敢えず魔王級でいいか。後は鍛えればいい。他には無いか?」

 

魔王級って…………まあいいか。魔王とかと戦う事も無いだろうし。普通の生活がしたいからな……身の周りの生活面を最初だけ保証してほしいかな。

 

「それはそうだな。なら家と生活費を用意しておこう。そこらへんは気にしなくていいようにしておいてやる。」

 

「ありがとう……後は少しだけ顔とか良くしてほしいな……」

 

情けない事に自分の顏に自信はない。平凡だろう……情けないお願いだが。

 

「……くく、安心しろ。そんな事言わずともその世界では十分イケメン……いや美人の部類に」

 

「っ!?美人はやめてくれよ!男なんだぞ!」

 

そうなんだよな……なんか女みたいな顔してるし声も高いから女に間違えられるの嫌なんだよな。

 

「すまんすまん、まあそこは変えなくても大丈夫だと思うぞ。」

 

……はあ、まあいいや。それじゃあ頼むよ……親父。

 

「………ふふ、ああ分かった我が息子よ。それじゃあ、何かあったら呼んでくれ。」

 

そしてその声が聞こえなくなると自分の体の浮遊感が増し、目の前が真っ白になった。

 

-転生……か。まあ楽しく過ごさせてもらうよ。親父…はは、本当の父親じゃ無いのになんか馴れ馴れしかったかな。-

 




出だしこんな感じですね。取り敢えずドラクエ好きなんで魔法使います(笑)
マダンテとメガンテは世界崩壊するので使いませんよ。
容姿説明(高校2年)
藍色のストレートは腰まで伸ばし、まつげは長く目は丸く唇もふっくらと。
見た目は美人ですが男です。女装すると男の娘です。
身長は170体重は57キロです。
また詳しい設定はつどつど更新します。


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拝啓親父、修行は順調です。あ、家族できました。

というわけで原作入りはもうちょい先です。アニメ見てないから声があんまり思いつかないんですが、今度見ようかな。
今回で黒歌と白音登場です。因みに二人は両親が死んですぐの頃です。アニメで描写あったのかな?取り敢えずまだ黒歌はぼんきゅっぼんじゃありません。小学生高学年程度です。
それではどうぞ〜。

あ、疑問とかあったら教えてくださいね。


空が紫色の世界は嫌だな……。

てか森の中で生き返るの俺?

 

『そこは冥界だ。お前の住む場所は人間界になるし、空も青い。』

 

頭の中で響くような声が聞こえ辺りを見回すが誰もいない。

 

『これは直接頭の中で会話しているから探してもいないぞ。』

 

じゃあ俺も頭の中で考えていればいいんだな……そういえば名前、聞いてなかったな。

 

『俺の名前か?……考えたことがなかったな。姿を見た者は俺のことを次元龍と呼ぶが。』

 

次元龍…凄そうだな、親父。じゃあ名前つけてやるよ。【クレアーレ】なんてどうだ?

 

『クレアーレ……ラテン語で創造するか……確かに、俺は創造する事ができるしな。くく、息子から貰った大事な名だ…これからは次元龍クレアーレと名乗ろう。』

 

ラテン語とか結構好きだったんだよね……。喜んでくれて嬉しいよ。

 

『……さて、千鶴。お前は冥界から人間界へ行け。』

 

人間界に行くとはどういう事だ?初めから人間界には行かせられない理由があるのだろうか?

修行?けど行き方なんかわかんないしな……。

 

『修行もそうだが、まずは体を慣らし、知識を溜め込むんだ。普通の生活というのもやろうとしたら下準備が必要だろう。冥界の空気は人間には毒だが千鶴には何の影響も無い。魔力調整できるいい世界なんだそこは。行き方は自分で探すんだ。』

 

なるほどね。確かに魔力調整は体で覚えなきゃいけないし、いざという時の為に体は動かせるようにしとかないとダメか。後は知識か……頭は悪く無いだろうから覚えようとすればいけるかな?まあ冥界って事は魔王様がいるんだろうしお願いしたら大丈夫だろうか?りゅうおうとかゾーマみたいな奴かな?

 

『それでいい。それじゃあまた何か困った事があったら名を呼んでくれ、我が息子【帝千鶴】』

 

え、魔王の事まだ聞いてないっ!?ああ……まあいいや。その時は頼むよ親父。

 

「さてと、取り敢えず衣食住の確保かな?体は死んだ時と一緒だけど明らかに何か力が湧き上がってる気がするし。」

 

独り言は好きなんだ。寂しくなくなる……はは、今はそんな事より食料調達かな。森の中だからか獣臭いし、冥界の野生の動物って食えるのかな?

 

「よし、張り切って生きていこう。」

 

そう言ったものの野宿とかした事無いしな……。あ、そうだ…まずは家を建ててみよう。呪文を使えばある程度の事は出来そうだし、魔力の使い方の修行になるんじゃないだろうか?取り敢えずここは森みたいだし木材調達にはもってこいだ。

 

「魔力は抑えめに………バギ!」

 

ドガッ!バキャキッ!ババババッ!!ドッ!ドッ!バリッバリバリッ!

 

「………ああ、ダメだ難しい。」

 

掌に魔力を溜めて放つと威力が半端ない。バギなんて小さい竜巻発生させるような呪文だったけど、明らかにバギムーチョ以上だよ……うわあ、雲が割れた………。まあ調整を繰り返して、自分が扱いやすいようにしよう。誰も見てないよね……。

 

 

 

それから3ヶ月……掌に魔力を溜めるのでは無く、手に魔力を帯びて性質を付け加えれば手刀で大木が切れるような事が出来た。バギのような風。メラのような火。ヒャドのような水、氷。デインのような雷。ジバリアのような土。ドルマのような闇。イオのような光。7属性の魔法は体のどこにでも帯びさせ使用する事はできるようになり、ついにはかなり……かなり魔力を抑えたメラやヒャド等は掌から放つ事が出来た。それでもメラで火柱が立つのはどうなんだろう……。もうメラゾーマだよ。やっぱり頭で考えているだけじゃ呪文は扱えきれないか……うん、修行あるのみ。ちなみに修行一ヶ月目で小さな木の家は作れた。木を削り噛み合わせて土台を作り強度を高める為本気の【スカラ】をかけてみたら鉄とかより硬い材質になってしまったが。後は昔テレビで見たような作り方で外観はできて、取り敢えず住の確保はできた。ちなみに近くに川があったので家を建てるまではそこの近くで穴を掘って過ごしていた。一度死んだからか感性がおかしくなってるみたいだね。

 

「家具とか欲しいけど、さすがにそんな呪文はないしな……。あ、そうだ。」

 

せっかく家が出来たのだからあれを試したい。ちょっと全力疾走して家が見えなくなったら……よし。木の家を頭に浮かべあの呪文だ。

 

「ルーラ!」

 

おお、体を覆うように光が出てこれば上空に飛んでそのまま自分で作った木の家の前に着陸した。やってみたかったんだよねこの呪文。便利だね。この調子で呪文の使い方をある程度覚えればいざという時困らないだろうし……いざという時くるかな?因みに今あるのは布団だけだ。

 

「兄さん何してるにゃ?」

 

「兄様が飛んできた。」

 

因みに家族ができました。黒歌と白音といい……ね、ねこしょー?とかいう妖怪らしい。猫又より強い力があると言われた時は首を傾げたものだ…だって妖怪なんて見たこと無いし。一ヶ月前森の中で怪我していた二匹の猫を助けたら女の子になったのは今でも驚愕だ。両親が死んでしまい森を何ヶ月も歩いていたらしく、空腹に耐え切れず倒れてしまったらしい。確かにこの森木の実とかも無いんだよね。それで川で取れた魚を与えて事情を聞いた俺は自分も一人だし暫くしたら人間界に行くからそれまで一緒にいる?と聞いたところ承諾……14にして同棲初体験です。二人ともまだ小さいのによく食べるので魚釣り……まあ調整できるようになった呪文で取ってるんだけど、食料調達と料理は俺が担当してるので少し大変だ。そろそろ町でも探さないとな……。

 

「ただいま黒歌、白音。」

 

「うにゃあ♪」

 

「にゃあ♪」

 

可愛いなぁぁ……頭を撫でられるのが好きなのか頭を撫でると二人とも猫撫で声をあげるのだ。あっちの世界で生きていた頃に孤児院で猫を飼っていたからかめちゃくちゃ可愛い。ペット扱いはしてないよ?二人が言った通り二人は俺を兄のように慕い、俺は二人を妹のように可愛がってる。

 

「黒歌、白音、ご飯食べたら町を探しに行こうと思うんだけど一緒に行く?」

 

「行きたいにゃ!白音も一緒にゃ!」

 

「姉様と兄様が行くなら行く……。」

 

黒歌はかなりアグレッシブで行動派なのに対し、白音は少し人見知りで慎重派だ。最初は白音にめちゃくちゃ警戒されてたけど今じゃ仲良しだ。一緒に水浴びもするし、三人でくっついて寝るのももう嫌じゃ無いらしい。因みにお金は親父に頼んで少し貰いました。無銭で町は回れないからね。仕事できたりするのかな?というわけで……いざ冥界探索。町を探せ!

 




取り敢えず文字数少ないかなって思ったり。
まあ次第に増えていけばいいなぁ……黒歌達との出会いはまた機会があったらで。
感想等くれたら嬉しいです。
千鶴ちゃんのお父さんは次元龍クレアーレです。詳しい設定は後々……。


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初めての仕事、レッツハンティング!

戦闘描写頑張って勉強しよう……

しかしあれですね、呪文って書くと呪いですよね…これからは魔法と言いますです。


ルシフォード…魔王領の都市で、旧魔王ルシファーがいたと言われている冥界の旧首都……らしい。親父からもらった知識を頼っただけなんだけど…因みに町は直ぐに見つかった。黒歌が妖術を使い人の気配を探りそれも頼りにさせてもらった……お礼に頭を撫で抱き締めたら顔を真っ赤にしながらも猫撫で声を出してくれたので良かった。白音もして欲しいと甘えてきたのでしましたよ。

 

「さて、取り敢えず二人の服でも見ようか。」

 

「え、けど……」

 

今着ている服は三人ともボロボロだ。流石に呪文で服は直せなかったので新しく買い直さねければいけないし、妹にボロボロな服装を着させているのは兄としても面目無い。何か言いたげな二人の手を握り目に付いた服屋に入り店員を呼ぶと、俺たちの服装がボロボロなのを見て直ぐに服を見繕ってくれた……優しいお姉さんだったが俺に女物を持って来たのはちょっといただけなかった。その時に選んだ服は黒歌はなんと和服…しかもダボダボだ。なんでそれを選んだんだと聞いたら大きくなっても着れるし俺に似合ってると言われたからだそうだ。確かに似合ってるからね。まあそれだけじゃあれだから黒のTシャツと黒のホットパンツを買ってあげた。白音は白のワンピースと黄色いTシャツに赤のホットパンツだ。まあオシャレするにはまだ二人とも幼いし、もうちょっと大人になったらいいものを買ってあげれる……それまで一緒にいるかはわからないけど。

 

「で……俺はなんでこんな服を?」

 

「兄様似合ってる。」

 

「姉さんができたにゃ。」

 

く、二人の目が生暖かい……赤のプリッツスカートに青のTシャツ……タイツまで穿かされたよ。あの店員さんの迫力に成すすべなく剥かれて髪もポニーテールだ。……うん、なんか歩いてる人が凄い見てる。女の子に生まれてれば良かったんだけどね、男なんだ俺。まあ普通のジーパン買ったからこれで過ごす事は無い。

 

「……くそ、家に帰ったら即脱ぐ。」

 

なんか路地裏とか入りたくないし、しかたない…家に帰るまでは我慢だ……我慢。そんなことを言いながら目的の一つである仕事探しに行こう……うん、どこにでもあるんだね酒場って。この町に来てから5軒は見たよ。

 

「ハンター募集ってあるにゃ。」

 

そうだね。看板にデカデカと……あんまり気乗りしないけどしかたないか。見た目女の子の俺と本当に女の子の二人を連れて酒場に入って追い出されないかな?入ってすぐ『ハンターやりたいです!』て言えばいけるかな?

 

「ハンターやるにゃ!」

 

「ちょっ!?黒歌!?」

 

考え事してたら既に黒歌が突入していた。うーんアグレッシブだね。兄さん黒歌がいつか面倒ごと持ってきそうで怖いや。

 

「おお、嬢ちゃん三人でかい?勇気あるねぇ!」

 

店員さん…てかマスターって言うんだっけ?その人がなんかいきなり入ってきたのにも関わらず嬉しそうな顔をしてこちらを見ていた。男です。一人男がいるんです。……というか人が居ない。酒場っていうのはわかるけど、マスター一人しか居ない酒場なんて珍しいんじゃないかな、知らないけど。そんな事を考えている間にマスターと黒歌が話を進めておりマスターは一枚の紙を差し出してきた。

 

「はぐれ悪魔?Fランクって?」

 

「ん?ああ、危険度だよ。Fが一番下のランクで、一番凶悪なのはSSSランクだ。取り敢えず嬢ちゃんたちでそのはぐれ悪魔を狩ってくる、もしくは捕獲するんだ。捕獲する場合はこの手配書の裏にある魔法陣を使えばいい。相手が身動きできると転送された先がめんどくさい事になるから、気絶とかさせるんだぞ。」

 

そう言って手渡された手配書の裏を見れば確かに魔法陣が書いてあり、これを地面に置き魔力を流せば魔法陣が展開され転送できるようになるらしく俺と黒歌、そして白音にそれぞれ一枚手渡された。はぐれ悪魔のブリュー。はぐれ悪魔というのがどのようなものか分からない黒歌と白音に親父から授かった知識を披露すれば二人とも少し暗い表情をしてしまった。

だけど、はぐれ悪魔を放置しておけばいつか自分達もそいつの餌食になってしまう可能性があると言えば二人は納得したようで、そうと決まればブリューを探すべく情報通りなら潜伏しているであろう名もない山へと三人で向かった。

 

 

 

「取り敢えず二人がどのくらい戦えるのか見させてくれないか?危なくなったら助けるから。」

 

木々が生い茂る山の中、二人を後方に下がらせたまま山を登っていれば体にピシッと何かが走る感覚がし、後ろの二人は警戒心を最大まで引き出しているのか普段隠している耳と尻尾がピンと立っていた。つまりこれが殺気という奴なのだろうかと思いながらそんな事を提案すれば、二人は絶望の表情を浮かべ自分を見ていた。ああ、そうか……この子達はまだ命のやり取りをそこまで経験してないかと認識し直し、そして二人を見ていた自分の後ろから来るピリピリとした感触が近くなって来たと分かれば掌を後ろに向けた。この子達の為に少し手を貸してくれ。

 

「ラリホー。」

 

ずさぁぁぁぁと自分たちの隣を滑っていく下半身が蛇の男を見て、ラリホーという相手を眠らせる呪文が成功したと分かり、静かに寝息を立てている手配書と同じ姿のブリューを見て黒歌と白音は体を少し震わせながらも近づいていった。

 

「寝てる……。」

 

「見たことも聞いたことない魔法……やっぱ兄さんは凄いにゃ!」

 

二人は目を覚まさないブリューを不思議そうに見ながらもこれで仕事は終わりだねと喜んでいた。だけど俺は違った……このままでは俺がいなくなった時二人は生きていくのが大変だろうと。だからこれは兄からの初めての教育だ。まずは恐怖に耐える。

 

「ザメハ。」

 

ゲームでは味方しか使わない呪文だが、対象を狙えば回復の呪文でさえ敵に効くのが分かっていた俺はブリューに眠りを覚ます呪文をかけた。そして目を見開き近くにいた二人を睨むブリューに、黒歌と白音は腰を抜かし涙を流してこちらを見ていた。だが俺だって二人を目の前で殺させる訳が無く、二人に防御力を上げるスカラをかけブリューには攻撃力を下げるヘナトスをかけた。殺気は先程とあまり変わってないが明らかに何かされたのが分かったのか悔しそうな顔をしていた。

 

「黒歌、白音。二人で協力してそいつを気絶させるんだ。安心してサポートは任せろ。」

 

殺せなんて事はまだ言わない。この程度の敵を殺しても大して経験値にもならないだろうし、どうせなら修行相手として使ったほうがまだいい。、黒歌達が危なくなったら回復をするだけの役割に取り敢えず落ち着いた俺は安心するようにと二人に笑みを向ければ、二人はやっと今の状況が理解できたのかお互い顔を見合わせ頷いた。レベル1から10まではここで成長できる筈だ……まあゲームに例えるのは失礼だが。

 

「ん!」

 

「にゃっ!」

 

二人は妖力という力を持っているが使い方を知る前に両親と今生の別れ…俺が見るに二人が戦い方を熟知していけばAランクまでのはぐれ悪魔ぐらいに遅れをとらないと思う……まあ自分がどこまでやれているのかわからない為なんの説得力も無いのだが。だからこそ二人に必要な修行でもあり、俺の呪文……魔法がどの程度戦いに影響力をもたらすかの実験でもある。先程からブリューが攻撃、二人がガードという見た目は一方的にやられているように見えるが実は二人の反応速度が上がっておりガードする隙間からブリューに蹴りや殴打が当たっている。後10分もすれば立場が変わるだろうと思い俺はブリューに素早さが上がるピオラという魔法を唱えた。するとまた黒歌と白音は攻撃ができる隙が速さの問題でできなくなる…これの繰り返しで黒歌と白音を成長させている。地が固まれば後は各々長所と短所が現れる…今の所黒歌は妖術を使い援護射撃を与えており、白音は拳と足に強化を施し勇敢に近接戦闘をしている。ここら辺を伸ばせばタッグである程度の敵は倒せるだろうレベルに到達すると分かる。

 

「さ、そろそろ慣れてきただろう。そいつを気絶させて引き渡して帰ろう。」

 

「はい!」

 

「任せて!」

 

俺の言葉が届いたのか二人はお互いを見て頷いた。姉妹だからこそ繋がってる…二人は連携を取り先程スピードに翻弄されていたのが嘘のようにブリューの攻撃を躱して反撃をしていった。戦いの中で成長できるのならこれからも同じような特訓をさせていけばいいだろうと思っている間に、ブリューの後頭部に白音の全力の蹴りが炸裂しその場に崩れ落ちたブリューを見て、俺は食らいたく無いなと思った。

 

「よし、後は魔法陣を出して……つっこむっと。」

 

「うーん、もうちょっと戦いたかったにゃ。」

 

「けど兄様の補助があったから……」

 

ブリューを出現させた魔法陣の中へ連れてこれば、それぞれ帝千鶴、黒歌、白音という名を込め魔法陣に魔力と妖力を流せばブリューを転送する。こうすれば転送先にいるお偉いさんが名前を登録し、魔法陣に組み込まれた式を解析するとどこでこの手配書を手に入れたか、管理しているものは誰かを探し出すらしい。するとなんと、マスターにお偉いさんが相応の額を渡し、俺たちに流れてくるらしい。マスター曰く、Sランクを討伐すれば魔王様から勲章を授与されるとか。黒歌が話をちゃんと聞いていたので少しビックリしていたら怒られたが。

 

「じゃあ次の手配書貰いに行くか。1ヶ月でSランクを倒せるまで特訓だ。」

 

「「おー!」」

 

仕組みは分かったため後は実践経験だ。これから1ヶ月ひたすら訓練をしてお金を貯め魔王様に会う…目的ができた為に気合を入れ直しマスターのいる酒場へと戻った……ルーラでね。

 




次はまた数ヶ月飛ばします。シスコンのあの人登場です。


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魔王と遭遇したが問題無し…いざ人間界へ

この作品初めての10000文字越え。
サーゼクスの力あんまり分かってませんがそれとなく……
今回で冥界からおさらばです。


黒歌side

初めてはぐれ悪魔を倒してから1ヶ月ちょっと…私と白音の前には巨大な鰐の姿をした1匹のはぐれ悪魔、Sランクのイリガルだが満身創痍の姿で横たわっている。

私達が使ったのは仙術と妖力そして気で、白音は肉体強化を施しつつ相手の内側を破壊できる気と仙術を組み合わせた近接戦闘、私は中遠距離から妖力と仙術を巧みに使い援護だにゃ。

本当は一緒に来たかったけど、今日は兄さんとは別にSランクのはぐれ悪魔を討伐する為二人で家から遠く離れた森の奥深くに来ていた。

1週間前に遂にSランクのはぐれ悪魔を三人で見つけ修行した成果もあり、今まで普通の猫又だと思っていたが猫魈という仙人の力を持つ妖怪だったと分かった。

それから兄さんにある程度鍛えてもらい仙術の使用が可能になったのにゃ……思い出すだけで背筋が凍るにゃ。あんな修行方法で強くならにゃいならそいつは才能なんてない。

 

「姉様、捕獲。」

 

「そうね。あ、兄さんの名前はいらないらしいから私達二人だけでいいみたいにゃ。」

 

私達二人でSランクを倒せるようにはなったがまだSSランクには兄さんの補助がなければ手も足も出ない……その兄さんは今頃SSランクを倒して家でご飯を作って待ってくれている筈。兄さんの料理は凶悪とも言える絶品……あれを食べたらもう虜になってしまうにゃ。

 

「姉様、語尾。」

 

「うっ……癖なんだからしょうがにゃ……しょうがないの。」

 

ちょっと前に兄さんに語尾のにゃは極力付けないようにと言われた…他の人の目を気にしろとも。大きなお世話と怒りそうになったけど別に自分の前ではいいからと言われたから承諾した。だから取り敢えず白音を練習台にしてるけど慣れはそんな簡単に直らないにゃ。そういえばそろそろ魔王様との謁見が認められるって兄さんが嬉しそうにしてたけど、私達も会えるのかにゃ?

 

「……姉様帰ろ。お腹空いた。」

 

「白音は食いしん坊にゃ……んっ!?白音っ!」

 

「姉様!この殺気は!?」

 

突如森全体を覆うような巨大な殺気…それも2つ。体は動く…兄さんの修行の成果だ。だからわかる…これは兄さんの殺気。もう一つは分からないけど兄さんと同格ということはSSSランクのはぐれ悪魔……?ううん、そんなこと関係ない。兄さんが危険な身に陥ってるなら私達も応援に行かなくちゃ!

 

「白音!全速力で行くにゃ!!」

 

「うん!!」

 

足にありったけの力を入れ仙術と気を纏う。そして兄さんのいる方角…我が家へと風のような早さで向かっていった。

 

千鶴side

 

「SSランクって言ってもやっぱり魔王よりも弱いんだな……まあいい修行になったけど。」

 

目の前に倒れているSSランクのはぐれ悪魔カイドウ…人間と同じ姿だった為転生悪魔というやつだったんだろう。神器(セイクリッド・ギア)というものを持っていたが特に脅威にはならなかった。聖書の神が作ったシステムで不思議な能力を所持者へ与え、与えられる能力はさまざまだが発現するのに使い手の善悪は関係ないらしい。

先天的に神器を宿すのは人間、もしくは人間の血を引く者のみだが持ち主から奪い自身に移植するなどして後天的に神器を手に入れることも可能な為もしかしたらこのカイドウもその口かもしれないが。

本物には劣るものの様々な属性の武器などを生み出す創造系、個別の意思を持ち所有者から離れて行動できる独立具現型、ドラゴンを始めとする強大な神獣、魔獣を封じた封印系など数多くの系統が存在する。カイドウは創造系で空中に剣を出現させ襲い掛かってきた。初手はカイドウだったが特にスピードも早くなかった為特に気をつける所はなかった。神器使いというのと主を殺した事…後は追っ手を返り討ちにした事でSSランクになったようだが、俺からしたらこの程度のはぐれ悪魔を倒せない追っ手の方がなんなんだと言いたくなった。まあ俺も魔王と同等っていう力があるし試したくなったのもあるか。

 

「さて捕獲と……ふう、黒歌達はもう少しかかるだろうから昼食でも作るか。」

 

最近は二手に分かれ仕事をしている為朝昼晩と黒歌達と一緒にいる時間が減ってきたが、ご飯の時間になると帰ってくるのを見ると本当に猫だなぁと思う。

それにしてもあの二人の潜在能力はなかなかのものだ。妖力と気は使えるのが分かっていたが仙術を取り入れたあの二人は冥界でいう上級悪魔を越えるのも近いかもしれない。まあまだ黒歌は6歳だし白音は4歳だ…子供も子供だ。言動は大人びているもののそれはただの背伸びで、体の成長がまだ始まってない二人は俺を頼ってくる…期待に応えなきゃ兄として面目ないだろう。

俺は魔力の制御や調整方法の鍛錬と筋トレを主に行っている。それにSSランクのおかげで威力調整はマスターし、跳躍で約10メートル、魔力で足場を使い上空で戦う事は可能になった。

後は魔力探査…黒歌達のおかげで魔力、気、妖力、仙術に関する術式等は展開した瞬間から持続しているものまでが判別できるようになり、魔力を拳に乗せ思い切り殴ればそれらを壊せる事が分かった。

 

「今日も魚でいいか……あいつら肉より魚派だからな。」

 

やはり猫由来…というか猫魈という妖怪だからか魚が好きなんだろうな。食材はルシフォードで買えるようになった為もっと豪華にできるが、豪華さより量の妹達だ…そこで食費が半端ないから豪華さは二の次だ。

だがやはり気になる事がある…家に帰るには無視できないほどの物が。先程から我が家からとてつもない魔力を感じる…カイドウなんて足の小指で捻れるぐらいいやそれ以上かもしれない…そんな巨大な魔力が我が家から放たれている。

 

「……て言っても初めてこの大きさの魔力を感じただけで俺が本気出す時よりは小さいな。」

 

俺の魔力量はこの冥界の魔王より少し上…もしかしたら魔王何てことは……無いだろうな。こんな森の中の小さな家に来るわけが無い。取り敢えず話ができる奴なら話で解決したい…だけど隙は見せられない。できないなら…仕方ないが武力行使だ。扉の前までこれば巨大な魔力の持ち主は部屋を歩き回っているのが分かる。何かを探しているのだろうか?物盗りなら容赦はしない…こんなでかい魔力を持ちながらコソ泥に成り下がる奴に容赦していては魔王に合わせる顔など無い。だから家を壊さないよう範囲攻撃をやめて一点集中…拳にバギクロスを纏い直撃した瞬間に解放。直撃した場所に暴風が発生し風を生成…体を斬り刻み捻る幾つかある簡易必殺技の一つだ。最初は風属性最強のバギムーチョを纏おうとしたが元からかかる魔力量が大きく拳に乗せる事が出来なかった。やはり決まった魔力量があるドラゴンクエストの魔法では意のままに操るのは無理だった。だから簡易必殺技。いずれはこの魔法を解読し手中に収め扱うことを決意した。はじめの頃はただ平和に生きていこうと思っていたが、こうやって鍛錬などをしていると楽しいのだ…仕方が無い。

 

「魔拳バギクロスって感じかな。……また今度考え直そう。」

 

必殺技ならやっぱ叫びながらだよね。凝縮されたバギクロスが今にも自分の身を切り刻もうとしているのが分かり覚悟を決め、そして空いている手で扉を開いた……角度調整も完璧。そこに立って部屋を物色している赤い長髪になんかカッコいい服を着ている男の腹に一発!

 

「あ、おじゃま」

 

「魔拳バギクロスっ!!!」

 

「ぐっ!?おおおおおおぉぉぉぉ!?な、何がぁぁぁ!?」

 

何か話しかけてきた男の腹をぶち抜かんばかりに拳を振り抜き、拳が埋まった所で魔力を離す……風属性特有なのか緑の魔力が男の腹に埋もれそして風が巻き起こった。何が起きたかわからない男は手で腹を抑えようにも風の魔力が押し返す…何か小さな魔力を自分の腹に向けるが俺の風の魔力の方が質がいいのかそれも弾き飛ばした。ついに風の魔力から発生した風が男の服を斬り刻み肉体に傷をつけた瞬間…その男から真っ紅な炎?のような魔力を手の平に込め自分の腹部に当てた……どうやら俺の魔力を消し飛ばしたのか風は止み自分の魔力が無くなったのが分かった。

 

「驚いた……まさか人間の子供が僕に滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクスティンクト)を使わせるなんてね。あれを消さなかったら僕はどうなってたのかな?」

 

青い顔をして自分の腹部を見るイケメン…どうやら一か八かの勝負だったのか肩で息をしながら聞いてきた。どうなってたなんてその傷跡を見れば分かる。

 

「ああ、そうだね…その顔は想像通りと書いてある。まさかとは思ったけど……君の力は僕と同等かそれ以上か……参ったね。僕に敵意は無い…だからその構えた拳は下げてくれ。僕もまだ妻に別れの挨拶はしてないんだ。」

 

自分の腹部を中心に切り刻まれ出血している様子に冷や汗のような物を出す男はそんな事を言って腰を下ろした。……悪い奴でも物盗りでも無さそうだ。その男の目は何かを見据えていて、そして背負っているような瞳だ。

 

「……魔王か?それともそれぐらいの力を持つナニカって解釈でいいか?」

 

「いや、魔王で合ってる。君の噂を聞いてね……どんな人物か見たかっただけなんだが……やっぱりグレイフィアを連れてきた方が良かったかな。……すまない今日は帰らせてもらうよ……フェニックスの涙は持ってきていなくてね。」

 

どうやら魔王のようだ……言いたい事だけ言って帰らせるのも癪だな。魔力も枯渇し体調が悪そうだ。

 

「……まあこのぐらいなら。ホイミ。」

 

見た感じはただの切り傷だ……ホイミで十分だろう。手を翳し魔王の腹部に触れれば淡い光を放ち傷がみるみる塞がっていく…この程度でベホイミを使わなくて良かった。

 

「ははは……何て事だ。君は一体何者なんだい?いや……そんな事は二の次だ。ありがとう。改めて自己紹介させてくれないか?僕は魔王サーゼクス・ルシファーだ。」

 

「……帝千鶴だ。まあその口ぶりはこっちの事はある程度知ってるんだろ?」

 

こちらの使う技が不思議なのか身構えているが、もともと魔王との謁見が叶いそうだと言う話をマスターに聞いていたので俺がどんな奴かなどの情報は耳に入っているだろう。

 

「14歳には見えないね……男と聞いていたけど実物は女の子…ごめんなさい、だからその得体のしれない魔力を込めた拳を下げてほしい。」

 

やはりそのいらない情報まで耳に入っていたかと、呆れながら拳にメラゾーマを込めていたのを冷や汗をかいた魔王サーゼクスに咎められた。どうやらかなり魔力を消耗したようだ。もう一度あれをやると言ったら土下座でもしてきそうだ。

 

「それで、急に魔王様はこのような所に来て如何されたんですか?」

 

「敬語はやめてくれ…プライベートで来ているし、君に敬語を使わせるなんて僕には耐えられない。先ずは対等に接しさせて欲しい。」

 

どうやら先ほどの魔力を見ては魔王とはいえ態度を改めたようで、正座をしてこちらと見合った姿から威厳は感じず、親しみの湧くような気配を醸し出した。

 

「分かった。それでサーゼクスは一体何の用でここに?」

 

「……君の事は調べれるだけ調べた。だが全くもって不可思議なんだ……君の経歴は人間界に確かにある。そこには何も特別な事が書いていないんだ…だからこそ、君が冥界にいて僕と同等の力があるのは全くもって理解が及ばない。君は一体何者だい?」

 

どうやらサーゼクスは俺が送った魔法陣から調査を始めていったらしい。興味がある事には納得できるまで調べる男なんだろう……やはりいきなりこの世界に現れ経歴を親父に作ってもらったから何処かしら不自然な場所があったんだろう。何者……答えは普通の人間だ。ただ魔王並みの力を持っているというのを除けば。

 

「兄様!」

 

「兄さん!」

 

そんな話をしていると扉が思い切り開き黒歌と白音が青い顔をして俺の胸に飛び込んできた。二人ともまだ体重が軽いからいいけど、もうちょっと成長したら二人一緒に抱きとめるのも無理になりそうだ。

 

「……千鳥君。その子達は?」

 

「……妹の黒歌と白音だ。」

 

サーゼクスは飛び込んできた二人を見て目を細めていた。魔王からしたら妖怪が人間を兄と呼ぶ姿に疑問があるんだろう…だがサーゼクスの目がまた親しみの湧くような瞳に変わった。どうやらこういう事に口出しはするつもりは無いんだろう。

 

「……実は僕にも妹が一人いてね。リアスというんだがとても可愛いんだ……ああリーアたん…。」

 

何かいきなり笑みを浮かべてきた……キモいな。いやでも妹というのは可愛いものだ、それは分かる。黒歌と白音の頭を撫でた時の表情を見たら他の事はどうでもよくなる。

 

「まあ黒歌と白音には勝てないだろうがな。サーゼクスの妹って事は我が強そうだし…どうせ大きくなったら嫌いとか言われるんじゃないか?」

 

「……へえ、けど君の妹達も大きくなったらそんな抱きついてくる事なんて無くなるんじゃないかな?」

 

妹討論が始まった……。どのぐらい妹が可愛いか、笑顔の破壊力差、照れた時の表情を見せた時なんて世界創造も片手でできるだろうと妹の可愛さ対決の勃発。本当の妹ではないが聞いている黒歌と白音の顔が真っ赤になり恥ずかしそうにしていたのを見て更に熱くなる。何処からか取り出した妹のアルバムを見せられた時は自分の不甲斐なさに負けを認めそうになったが今ここにいる実物を最大限愛でてその様子を見させた結果は引き分けに終わった。

 

「確かに写真も良い……だが今この瞬間この可愛さに勝るかと言われたら僕は迷ってしまう。そうか……僕は魔王という事でリーアたんに直接会う時間があまりにもない。それに比べ君はずっと一緒に居られるからそこまでの自信があるんだね……。決めたよ…僕はリーアたんの為に魔王を辞めよう!」

 

「何言ってんだこの魔王?」

 

「兄様……」

 

「兄さん………」

 

ああそうだね。二人の幸せそうな顔を見れれば魔王が何しようが知った事じゃ無いよね。照れ過ぎて顔が真っ赤のままだ…確かにカメラがあればこの姿をずっと保存できる……。あながちサーゼクスの言っている事も間違いではないかもしれない。

 

「……いやぁ君とは良い友達になれそうだね。セラフォルーも君の事を気に入りそうだ。」

 

「そうだな……良い友人関係を築きたいな。そのセラフォルーていうのは確かレヴィアタンだったかな?名前だけは知ってるけど。」

 

確か魔王は四人いるらしい。サーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン、アジュカ・ベルゼブブ、ファルビウム・アスモデウス…超越者と呼ばれる程の実力者。一度全員と手合わせしてみたいな。

 

「そうかい、じゃあ今度会わせてあげよう。彼女の妹愛は僕と同等なぐらいだからね。」

 

「……そろそろ本題に入ってくれないか?」

 

「ああ、そうだったね。千鶴君と話していると楽しくてね……じゃあ単刀直入に。残念だが君ほどの実力を持つ人間を冥界で囲うなど不可能だ。君にその気は無いのかも知れないが、君の微弱で不可解な魔力に怯えこの森から逃げ小さな町に被害も出ている。だから君に選択肢を与えに来た……。一つ目は冥界から去り人間界で過ごしてもらいたい。その際は黒歌ちゃんと白音ちゃんはついていけない…安心してくれちゃんと彼女たちが成人するまでは面倒を見てあげるつもりだ…勿論千鶴君と黒歌ちゃんと白音ちゃんに監視は付くがね。千鶴君を狙う勢力だって現れるかもしれないし……。二つ目はこのまま冥界で過ごしてもらう…ただしこれで僕の眷属になってくれたらだ。勿論眷属になってくれたら領地も与える。そこで妹達と幸せに暮らしていけるしね。ただ僕が出すお願いは聞いてもらうけどね。」

 

そう言ってサーゼクスが取り出したのはチェスの駒だった。見た所ポーンだが明らかに魔術で作られている…悪魔の駒と呼ばれるものらしい。つまりサーゼクスの下僕になれという事だろう。だがそれは嫌だな…悪魔になっても寿命が伸びる以外は今の俺に必要無いから。けど魅力は確かにある。

 

「そして三つ目は君達を人間界に送らせてもらう…勿論生活などもできる限り支援しよう。監視はつかないがその代わりたまに僕のお願いを聞いて欲しい…勿論断っても咎めるつもりも無い。君が身の危険を感じるような事があれば助けを向かわせる。そして……僕の友人として協力して欲しい事がある。勿論そちらの要求にもできるだけ応じるつもりだ。四つ目は今ここで勢力を揃え君をSSSランクのはぐれとみなし討伐させてもらう悪魔では無いけどね、それは僕の力でどうにかできる。その腕の中にいる二人も同様に。どうだろうか?この四つの中から選んでくれ。」

 

選べるとしたら三つ。四つ目は論外だ……たとえこの子達を助ける為とはいえ手を出せば確実に平和には過ごせなくなる。一つ目は確かに俺の魔力を狙い襲ってくるような奴もいるかも知れない。黒歌達も魔王の庇護下に置かれればかなり優遇されるだろう。だが二人は四つ目の選択肢を聞いた瞬間から顔を青くし必死に縋り付いてきている…それに、この男を確実に信頼するには材料が足りていない。だから一つ目の選択肢は選べない。

二つ目はこの『兵士』の駒を使い転生悪魔になれという事…だがそれをしてしまえば黒歌達と一緒に住めるにしても悪魔の仕事というやりたくも無い事を強要させられる。魅力もある…魔王の下僕とはいえそれなりの地位だろう。ただ人間界ではなくこちらで過ごす事になるのはいただけない。これは第二候補だな……。

三つ目が明らかに本命だろう。殆ど誘導されたもんだがサーゼクスは俺と事を構える気も無く、ただ友人として人間界で暮らして欲しいと言った。力を貸して欲しい時に力を貸してくれれば俺の日常はある程度守られるという事だ。協力という事はこちらが不利になる内容では無いだろう、サーゼクスも既に何を選ぶか分かっているようでニコニコと笑みを浮かべていた。

 

「三つ目だ。ただし俺の願いを許容して欲しい。」

 

「ふむ、叶えてくれではなく許容できるか…か、いいだろう。言ってみてくれ。」

 

悪魔は対価を求める。だからこそだ…もし許可を貰えるならそれなりに力は貸す。

 

「黒歌達が人間界で平和に暮らせるような措置。学校にも行かせたい。いずれ仕事もできるような措置を求める。」

 

「兄さん!私たちの事はいいから兄さんの」

 

「そうはいかないよ黒歌。君たちはまだ人間界も知らなければこの世界の事を殆ど知らないだろう?俺は妖怪がどうやって暮らしているかは知らないけど、今黒歌達は俺の妹なんだ…だからそれなりの生活をさせるためにもまずは学校とかに通ったりするのはどうだろう?学校は知識の宝庫だ…俺も初めて学校に行った時世界の広さに驚いた…その感動を知って欲しい。」

 

「……兄様がそういうなら…私はその学校というものに通ってみたいです。」

 

白音はいつもより真剣な表情だ…黒歌もそんな白音の姿を見て触発されたのか私も通うと白音に抱きついた…ああ、可愛いな。

 

「それぐらいなら全然問題無い。実はこれは僕のお願いでもあるんだけど、君達には僕らの家族…ルシファーではなくグレモリーの領地である駒王町へ行って欲しい。そこは僕のような悪魔も通っている学校があってね…後7年したらリーアたんに行かせる高校だ。千鶴君…君はある程度知識はあるようだし私立駒王学園に入学してもらい卒業…そこの教師になって欲しい。そして君がリーアたんを見守り無事卒業させてくれ…勿論給料もそれなりに出そう。僕はそこの理事長だからね。今は僕の妻や母がリーアたんに勉強を教えているし中学卒業の年齢までは冥界の学校に通わせるつもりだ。黒歌ちゃん達の事も安心してくれ駒王町の小学校から黒歌ちゃんと白音ちゃんは入学できるようにさせてもらう。」

 

リーアたんとか言ってくるので真剣な話なのにイライラしてきてしまった…だがそれが対価だろう。自分の妹が自分の手の届か無いところに行ってしまうから悪い虫がつかないように陰ながら見守れと……まあ自分の将来が教師に確定してしまうが悪くは無い。いずれ黒歌と白音も通わせれる…勉強も見てやれる。なかなか悪くない条件だ。

 

「ああ、分かった。全力でリーアた……リアスちゃんの面倒を見よう。」

 

危うく吊られてリーアたんと言いそうになってしまった…。だがこれで人間界での生活も満足にできるだろう…この子達だけは身を挺してでも十分な私生活を送れるようにする。

 

「ありがとう…これで契約は終了だね。人間界に行く準備ができたらルシフォードに来てくれ。場所は君たちが使っている酒場…そこでまた会おう。君の気配はもう分かったからね…来てくれれば迎えに行く。そうそう、実は人間界に君の名義で家が存在していてね、勝手ながら駒王町へ移動させてもらったよ。それじゃあまた。」

 

言いたい事だけ行って現れた魔法陣の中へ消えていったサーゼクス…最後にとんでも無い事を言っていたが魔王なら可能だろう。人間界に行く準備か…まあ冥界にはまた来れそうな気がするし、マスターには人間界に行く前に会えるだろう。

 

「早速だけど明日なんてどうだ?」

 

「兄様がいいならいいよ。」

 

「別に冥界に思い入れがあるわけじゃないにゃ。それに兄さんとはこれからもずっと一緒にゃ!」

 

二人とも俺についてきてくれるようだ…最初はぎこちなかった二人だがこんなに信頼できる関係になれた。神は居ないようだが感謝だな……。

二人の頭を撫でそれじゃあ今日は豪勢にいこうと昼ご飯と夜ご飯はかなりのものになった。そして冥界最後の夜…この家にもかなり助かったし、別荘という事で冥界に置いておけるか明日聞いてみようと思い三人でくっついて寝た。

 

 

 

人間界での生活……とても楽しみであり不安もいっぱいあるが、黒歌達と平和に過ごせる事を祈って一歩一歩歩いて行こうと思う……。

翌朝早速必要な物だけ…まあ食器や家具はまた人間界で集めればいいから置いていくが着替えなどは持っていき、三人分合わせてルシフォードで購入した大き目の鞄へ詰め込んだ。知らない間に黒歌達の服が増えていたのは驚いたが女の子なのだから仕方ない。

朝食は人間界で取ろうと思っているので顔を洗いルシフォードへ向かった……ルーラでね。

 

「いつ体験しても不思議にゃ…私にも使える、このルーラってやつ?」

 

「うーん、黒歌達の仙術とか妖力とは違う種類になるからな……どうせなら空間を操れるような魔術みたいな物の方が向いてると思う。」

 

このルーラもそうだが俺の魔法は別の次元の物だろう。親父に支援してもらい使えるようになった物だし教えようにも仕組みがややこしすぎて説明もできない…黒歌達には悪いが自分たちでできる限界を目指した方がいいだろう。

 

「兄様、マスターがいる。」

 

「お、本当だ。」

 

白音の視力ならあの程度は見えるかな。どうやらサーゼクスが俺の気配に気付き来たんだろう…めちゃくちゃ挙動不審だ。マスターの胃がどうにかなる前に早く行ってあげよう。

 

「マス」

 

「ち、千鶴君!?ま、魔王様、魔王様なんだよ!?一体全体どうやったらあのような方に友人だと言われる関係に!?」

 

どうやらサーゼクスが俺との関係を話したんだろう…俺がマスターに話しかけようとしたら捲し立てるように言葉を放ってきた。いやただの妹自慢から友人になれたなんて情けなくて言えない。

まあマスターの気持ちも分かるので話が合ったという事だけ伝えマスターと一緒に酒場に入った。

 

「やあ千鶴君。昨日ぶりだね。」

 

カウンターに座りながらの俺の気配に気付いたのか前を向いたまま声をかけてきた……隣にいる美人は誰だろうか?銀髪にメイド服を着ているが何処となく雰囲気がピリッとしており顔を少し怒っているようだ。

 

「ああ、紹介しようか…グレイフィア。

 

「……ご紹介に預かりましたグレイフィア・ルキフグスと申します。こちらにおられるサーゼクス・ルシファーの『女王』をさせていただいています。」

 

「あ、ちなみに僕の妻でもあるんだ。どうだい、美人だろ?」

 

奥さんにメイド服を着させる趣味をとやかく言うつもりはない。まあ確かに美人だとは思うけど。

けどさっきから凄いこちらを睨んでる……なんだろうか?

 

「……サーゼクス様、昨日の話ではこちらの少年があなたと同等かそれ以上の実力を持っているというのは本当なのでしょうか?」

 

「ああ、本当だよ。君のそれが確認したくて来たんだろう?」

 

成る程ね、自分の夫…それも魔王がそういう程の実力者がどのようなものか見に来た…だったら早々に話を切り上げてもらえるように久しぶりに本気…は見せる必要が無いからサーゼクスと同じぐらいの魔力を見せてあげればいいだろう。今まで内に隠していても溢れてしまっていた魔力を整え、昨日サーゼクスが魔拳バギクロスを打ち消した時と同じぐらいの魔力でいいだろう…それを纏う。

 

「っ!?」

 

「はは、凄いな……僕の魔力量を完全にコピーしているね。どうだいグレイフィア、彼を僕の友人として迎えたいと思うんだけど?」

 

グレイフィアさんのお眼鏡に叶ったのだろう頭を下げ申し訳なさそうな顔をこちらに向けてきた。サーゼクス、お前わざわざそれを言いたいが為に連れてきたのか?

というかさっきからマスターは白目を向いており、黒歌と白音は俺の腕を掴みグレイフィアを睨んでいる……特に胸の辺りを。心配しなくても二人も成長したらあれぐらいになるさ。

 

「ご無礼をお許し下さい。帝千鶴様…改めて自己紹介をさせていただきます。魔王サーゼクス・ルシファーの『女王』であり妻のグレイフィア・ルキフグスと申します。サーゼクス様のご友人に失礼な態度を取ってしまい申し訳ございません。」

 

「いや、そんなかしこまらなくてもいいですよ…俺まだ14なんですから。こちらこそよろしくお願いしますグレイフィアさん。」

 

力を持っているもの、魔王の友人と呼ばれるからには敬う気持ちがあるんだろうが、さすがに年上の人に敬語を使われるのは歯痒い。

とりあえず千鶴さんと呼ぶ事とお願いをしたら承諾された。

 

「覚悟は出来てる……て顔だね。人間界にはグレイフィアが用意してくれた魔法陣を使用してくれ。えーと…これを渡そう。これがあれば何時でも冥界にこれるからね。魔法陣の設定場所はこちらで使う場合もあちらで使う場合も君の家になっている。君が人間界に行った後もあの家が壊されたり悪魔が侵入したりしないように措置もしておくよ。」

 

何もかもお見通しという顔は少しムカついたが悪気はなさそうだ。有り難くサーゼクスの取り出したカードのような物を貰いマスターの方を見た。

少し落ち着いたのか苦笑いを浮かべているがうんうん頷いているのでこれからどうなるかは理解できているようだ。黒歌と白音がお別れを言いに言ったのを見てサーゼクスに向き直る。

 

「君の家にこれから先必要な物を一式揃えて転移してある。それで、君たちが無事に高校を卒業するまでに必要な物もあるから活用してくれ……僕が言えるのはそれだけだ。リアスが高校に入学する時は連絡を入れるよ。だからせめて…高校を卒業し教師になるまでは自分のやりたいことをしてくれ。」

 

「ああ、分かった。それまでに俺ができることは全部やるよ。あ、それと入学する前にリアスちゃんの写真か何かをくれ。流石にあのアルバムを見ただけじゃあ成長した姿は思い浮かべないから。」

 

高校を卒業するまでなんて直ぐだ。けど黒歌達の生活の為ならなんでもするつもりだ……血は繋がってないが肉親のように思っている。出会って1年経っていないけど心を通わせることはできた。

マスターとの話も終わったのかこちらに駆け寄ってきた二人の頭を撫でる。

 

「マスター、また冥界に来るようなことがあればその時は酒でも一緒に飲みましょう。」

 

「ああ、待ってるよ。気をつけて行ってくるんだよ……まさか人間とこんなに楽しい一時を過ごせるとは思わなかった。いい思い出だ……行ってらっしゃい、千鶴君、黒歌ちゃん、白音ちゃん。」

 

マスターは笑顔で送ってくれるようだ。だったら俺も笑顔で返そう…まだ14の俺が偉い顔できるわけじゃない…次会う時はうまい酒が飲めるんだろうな。

 

「まあ永遠の別れにはならないさ。いざとなったら無理矢理連れてこよう…っ、痛いよグレイフィア。」

 

「サーゼクス様?何をおっしゃっているのですか?……はあ。千鶴さん、サーゼクスのご友人であるあなたにならリアスも任せられます。どうかまた会う日まで……。」

 

別れる直前まで少し軽い魔王様だったが、心置きなく人間界に行ける。

準備もできたんだろう…足元に大きな魔法陣が現れ吸い込まれていくように足が落ちていく。黒歌達はビクビクしながら足に捕まっている……今日から人間界での生活だ。頑張ろう。

 

 

 

徐々に景色が下がっていき、最後に見えたのは笑みを浮かべ手を振るマスター、頭を下げ見送っているグレイフィアさん、そして何やら企んでいるのを隠すつもりもないサーゼクスの顔だった。

 




というわけで次回から人間界。
後1話やったら原作入りします。
書いてある通り、千鶴君は私立駒王学園の教師になります。
オカケン顧問になりますよ〜アザゼル?副顧問ですね。

では感想やら何かあれば下さいね。


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高校生活を満喫しなさい

これで過去編終わりです。
またどこかでこの間を書こうかなと思います。
今回は殆ど回想…流してみてね。



千鶴side

 

人間界にやってきて早7年とちょっと。

初めて来た時は人間界は俺が元いた世界とそこまで大佐は無かった…流石に7年経てば街並み等風景も変わるが……。

あの時人間界に来てからはそこまで大変っていうわけでは無く、ただこの世界の不思議さを改めて実感したぐらいだ。

高校に入る前にある程度勉強はしようと図書館に入り浸り、家に帰れば黒歌達の世話…勉強も見てやらなければいけないから。

朝は街を探索し、昼は勉強、夜は一緒にご飯を食べ風呂に入り、たまにサーゼクスや大公が持ってくるはぐれ悪魔の情報を使い人間界にいるはぐれ悪魔を討伐している。

高校に入るまではそんな生活だった…バイトでもしようと思ったが黒歌達との時間も減るし金は用意してくれて俺が教師になる頃にはまだ三分の一残っていた為後回しにしていた。

教育実習も終え…サーゼクスから話もありリアスちゃんが入学する時に合わせ教師になれた。あ、後黒歌も同じく入学ができて喜んでいた…まああれだけ勉強したからな。その日は帰ったらめちゃくちゃ褒めてやりお願いを聞いてあげた。高校生にもなって一緒に風呂に入るのはどうなんだと聞いたが、あまり気にしていなかった。ぶっちゃけ俺は心臓ばくばくだった。もういろんなとこが成長してたから理性を保つのに大変だった。ちなみに後2年したら白音も入学できる年齢になる為、今は家の手伝いをして過ごしてもらっている。買い物から何やら2人でやれと言ったのに黒歌は遊びに行くことが多く白音が殆どやっていた為、今じゃいいお嫁さんだ。黒歌には叱ったが白音は別にいいと言ってしまい黒歌を調子付かせた。流石に俺の顔を見て謝ってきたので許してあげたが。

とりあえずここからが始まりだ…高校の頃入っていたオカルト研究部が殆ど廃部になっていたがOBの俺が口添えをして悪魔の居場所は作れた…ちなみにもう一人黒髪の女の子が一緒にオカルト研究部に入ってきたのでリアスちゃん……ああ、リアスちゃんって言ったら真っ赤な顔をして怒られたのでリアスと呼ばなくては……。サーゼクスに問い合わせた所、どうやらリアスの眷属らしく『女王』の姫島朱乃という堕天使と人間のハーフらしい。詳しい話は聞いたが、本人の前ではおいそれと言えない内容だったので頭の隅に置いておく。後2人眷属ができたようで、『騎士』の木場祐斗…サーゼクスに聞いたが『聖剣計画』という非人道的な実験の生き残りらしい。本名は違うようだが人間界で住むにはいい名前だ。『魔剣創造』という神器を持っているらしく、師匠はなんとあの沖田総司……まあ一度顔を合わせたが凄い頭を下げてきて調子が狂った。実力の違いがあり過ぎると偉人に頭を下げられるんだなと実感した。もう一人はなんと吸血鬼と人間のハーフ。吸血鬼の世界の話をされても自分の身内ではないので早々に話を切り上げたが、『僧侶』の『変異の駒』で眷属になったようで神器持ち……まあ俺が卒業間近の頃にサーゼクスが旧校舎で彼を封印する時に会っている。俺を見てお姉様と言ってきたからな……。男の娘だった。

なかなか個性派揃いだが俺の目的はリアスの身辺を調査し変な奴が寄らないようにすることだ…………まあこんなことを話しながら意外にもサーゼクスが俺の正体をバラしてたのは驚いた…本当に。入学式にサーゼクスが来たものだから驚いた。理事長そこで何してると叫びそうになった。あんな写真撮ってたら直ぐに分かる。その時グレモリーの親父さんにもあったが同じ人種だった。

というわけで教師生活1年目からリアスと黒歌に引っ張り回される事になった……。ちなみに黒歌もオカルト研究部…通称オカ研に入る事になったがリアスの眷属にはならないそうだ。リアスはその日凄い不機嫌で俺に滅びの力を打ってきた……まだまだだなと言ったら泣かれたのでめちゃくちゃ慰めたが、サーゼクスがその日俺に無茶な仕事をさせてきたが完遂してやった。

ちなみにもう一人魔王の妹がいるようで、セラフォルー・レヴィアタンの妹であるソーナ・シトリーと少し話した。眷属に誘われたが断った為、これから先あまり関わる事は無いだろう。レヴィアたんからは凄い笑顔でよろしくとしか言われてないし。これから学園の行事にも積極的に取り組んでもらい楽しく過ごしていけたらいいなと改めて思った日だった。

 

まあこれから3年間よろしくとリアスに伝え、サーゼクスと親父さんからはリーアたんをよろしく頼むと言われた。リアスと仲良くやっていこうと、2人の瞳の奥の狂気に決意させられた。まあそんな事言われずとも、黒歌と友人になってくれたリアスを大事にしてやるつもりだ。

俺はちゃんとやってるから親父、安心してくれ。

 

 

 

リアスside

今日から夢にまで見た人間界でに高校生活…人間界の事を冥界で知るたびに早く来たくてしょうがなかった。朱乃はずっとニヤニヤと私の顔を見ていたようだが気付かなかった。

お兄様から高校生活をするに当たって会っておきなさいと言われた人が居た……帝千鶴。私と朱乃のクラスの担任でなおかつ同じクラスの帝黒歌のお兄様らしく、魔王様と友人関係にある人間らしい。

黒歌は気配をかなり隠しているが妖怪らしく、千鶴先生とは義理の兄妹の関係になるようで黒歌が入学早々教室に入ってきた千鶴先生を兄さんと呼び抱きついていたので兄妹という噂は直ぐに広まった。

入学式にお兄様とお父様が来られたのは凄く驚いた。祐斗も一緒に来れば良かったのに……まあ仕方ないか。

写真を撮る音がたくさん聞こえ入学式の際は凄く恥ずかしかった。友人のソーナはお姉様であるセラフォルー・レヴィアタン様が来ていなかったので安心していた…ずるいと少し思ってしまったけど、千鶴先生の顔を見て驚愕の表情を浮かべていたのでソーナも話は聞いているんだろう。

入学式が終わり部活をやってみたかった私は色々と回ってみたが、どれも私達からしたら力をセーブしてまで楽しめそうな物は無かった。

千鶴先生がオカルト研究部なら部活として名前は使えると言ったので旧校舎まるまる使わせてもらう事になった。ここならギャスパーもいる事だしとてもいい場所だと思い部活を立ち上げ、千鶴先生が顧問になってくれるという事で書類も難なく通ったらしい。私と朱乃、兄さんが顧問やるなら入ると言ってきた黒歌の三人だけの部員だがいずれ祐斗も入ってもらい黒歌の妹の白音にも入って貰えば卒業してからも来れるいい場所……ちなみにリアスちゃんと言ってくる千鶴先生には呼び方を変えてもらった。リアスちゃんって恥ずかしいし。

ソーナも誘ったが、ソーナはいずれ生徒会長になりたいようなのでもし生徒会長になったらお祝いしなくちゃ。

千鶴先生もいい人で、困った事があれば言わなくても察してくれて、お兄様に言われたから面倒を見ているわけじゃないと言われた時は嬉しかった。

けど黒歌が眷属になってくれなかったのはショックだった。リアスの下僕?お断りにゃ!と言われた時は泣きそうになり、千鶴先生に八つ当たりをしてしまった…まずいと思った時には母方のバール家の滅びの力をぶつけてしまい肝を冷やしたが、難なく消された後まだまだとか言われ泣いてしまったのは本当に情けなかった。とりあえずお兄様にその事を話したら分かったとしか言ってくれなかった。これからは僕より身近にいる千鶴先生をもっと頼ってあげてくれとも。

 

あれから2年…1年目は殆ど千鶴先生の下で仕事をし、勉強も見てもらい人間界にある程度馴染めた。朱乃も千鶴先生には心を開いているようで、2人でいる時は殆ど千鶴先生の話ばかりしていた。黒歌がそれを聞くと怒るので黒歌の前では千鶴先生の話は極力しないようにしている。

黒歌は部活に来なかったりする日が多いが、家に妹がいるので放っておけないんだろう。白音の話をする黒歌は本当に幸せそうだ。

体育祭や文化祭等にあまり貢献できなかったが、千鶴先生達と一緒に特訓したりしてとても楽しかった。2年に進学する少し前に私、朱乃、黒歌の3人が駒王学園の三大美女と称されるようになっていたのは驚いた。悪い気はしなかったが千鶴先生が美女もそうだがみんな可愛いのになと言って朱乃が顔を真っ赤にしており、黒歌は口説いてるとか言って抱きついていた。私は……うん、嬉しかった。

2年になってからはいよいよ修学旅行で京都に行けるという事で舞い上がっていた。1年の学年主席は黒歌に奪われたが今年は頑張ろうと決めていた……それと祐斗が入学をしてきて早速オカ研に入ってもらった。

千鶴先生と面識があったのか剣道場を借りて手合わせをお願いしていたが結果は聞くまでも無く惨敗だったらしい…まあ千鶴先生に勝てるのはお兄様ぐらいだから、みんなして千鶴先生に鍛錬をつけてもらったりした。

部活対抗の球技大会は優勝…千鶴先生をメンバーに加えたら所謂無双状態だったので私達は活躍はしていない。来年は参加しないで下さいと頼んだらそうだよなと苦笑いをしていた。

文化祭では売り上げ1位という快挙を成し遂げ、千鶴先生からはよくやったと頭を撫でられた……。朱乃と黒歌…後祐斗が睨んでいたが嬉しくてつい抱きついてしまった。

体育祭でも私達オカ研メンバーはそれぞれの種目で一位を取った。朱乃の借り物競争でなぜ千鶴先生を連れて行ったのかは分からないが、千鶴先生が照れていたので何か如何わしい内容だったに違いないわ。

けどやっぱり一番楽しかったのは修学旅行だった。

京都の街並みはとても素晴らしくて、ついはしゃぎ過ぎて時間通りに見たい場所へ行けなかったのは残念だった。黒歌は修学旅行中にお酒を飲み千鶴先生に怒られていた。ちなみに白音はグレイフィアが様子を見てくれているようだ…魔王様の女王なのに白音を優先するなんてとんでもない事だと思ったが、魔王様のお仕事が一区切りついたので人間界に来ていたらしい。ミリキャスも来ていたようで後から楽しかったと聞かされた。

私、朱乃、黒歌と男子3人で京都を回っていたが、男子3人が私たちに触れようとした瞬間に千鶴先生が現れるので男子は後半どんよりとしていた。

修学旅行も終わり学校に帰ってこれば溜まっていた仕事をみんなで消化し、千鶴先生に新たに提案された使い魔を街に放ちビラを配る方法で契約件数も多くなってきていた。本当に入学してから千鶴先生を頼りにしている…もうあまり迷惑もかけられないと思いつつも甘えてしまう。眷属に誘ってみようと思ったが図々しいだろうし、それに今ある駒で千鶴先生を眷属にできるとは思わない。だからせめて…卒業まで、私達の先生でいる間に恩返しができたらと思う。

進学までは特に何事もなかったがまた黒歌に学年主席を奪われた…今度千鶴先生に勉強を教えてもらおうかしら。

こうして私達は無事に進学…高校生活最後の年を迎える事になった。

 

 

 

黒歌side

今日からやっと高校生っていうやつにゃ!兄さんが通ってた学校…最初はつまらないかもと思ってたけど教室に入ってきた兄さんを見てつい抱きついてしまった……白音にばれたら怒られそうだにゃ。

兄さんの仕事は教師の傍、同じクラスにいるリアス・グレモリーの護衛みたいなもの…。にゃあ、兄さんの邪魔はしないから…だからせめて家にいる時は甘えさせてほしいにゃ。

高校生になるまでに一杯勉強して、夜はお仕事で、遊ぶ時間が全然無いって白音も寂しがってた……。

入学式で魔王様が兄さんと喋ってたけど私はそれよりリアスの顔を見ていた……なに、その顔は!?兄さんは私の…いや白音と私のにゃ!絶対あげないんだからね!

入学式が終わって部活紹介…興味なくて兄さんを探してた。どこにいるのかにゃあ

オカルト研究部に悪魔が入ったにゃ…妖怪も。オカルト部にゃ……。

まあ家に白音がいるからそんなに部活をやりたいってわけじゃないけど、白音も入学したらここに入れてあげる!

まあ兄さんと一緒の空間に居られるだけで幸せだから、学園生活とかそんなのにはあんまり興味ないにゃ。試験?兄さんに勉強を教えてもらった私に死角はない!

リアスに眷属にならないかとか言われたけど、私は兄さんの妹だからならないって言ってやった…その後兄さんに慰められていたので謝ったにゃ…けど下僕は嫌!なるなら兄さんの眷属にゃ。私は僧侶で白音は戦車……これだけで最強にゃ。

リアスも朱乃も兄さんの魅力に気付いたようだにゃ…けど兄さんは渡さないにゃ!

そういえば最近黒歌様とか言われるようになった…リアス達も困った顔してたにゃ……けど、けど!いきなり可愛いとか女の子に向かって言っちゃう兄さんはダメにゃ!ああ!思い出すだけで胸が苦しい……なんだろうこの気持ち?リアスが兄さんに抱きついた時ズキっとした……。

帰ったら一緒に寝てくれるらしいので許したにゃ。

そんな事もあって2年になったらずっとリアスが浮き足立っていた。

まだまだ修学旅行は先にゃ…。あ、それとリアスの騎士が入学したみたいでさっそく兄さんと手合わせしてた。騎士…木場祐斗の竹刀を軽々避け、反撃して終了。見に来ていた女どもは黄色い歓声をあげてた…うるさいにゃ。

2年になってからはクラスではなく委員会と部活対抗になった球技大会があったが兄さんの独断場で圧勝。来年からは顧問の参加権利は撤廃らしい…まあ兄さんは規格外だから仕方ないにゃ。

修学旅行はリアスが喧しかった……銀閣寺とかどうでもいいから金閣寺!……お酒を飲んでいたのを兄さんに見られお説教されたにゃ。

兄さんが言うから男子3人と組んだが、ジロジロ胸とかお尻を見てきて気持ち悪かった……まあ嫌われ者が残ったから組むしかなかったんだけどあれは酷かった。別に高嶺の花じゃないからみんな誘ってくれればいいのに…けど兄さんが影で見守ってると分かったので適当にあしらっておいた。

白音のお土産に木刀を買ってあげたけど、渡したら嫌な顔された…なんでにゃ?

修学旅行が終わり今年最後の試験…最近は兄さんに教わらなくなり、白音に教える形で復習をしていた。リアスがまた負けたと悔しがってたにゃ。

来年からは白音も入学…きっと楽しい年になるにゃ…後は兄さんの事も色々考えないといけないかも…

 

「兄さん、なんで2年間の事を思い出す必要があるの?」

 

「え……いや、それは……あ、そろそろ晩飯作るわ。」

 

「なんで逃げるにゃ!」

 

「姉様煩い。近所迷惑。まだ春休みボケ?」

 

にゃあ……白音にボケって…ボケって言われたにゃ!高校生になってから口が悪くなった!お姉ちゃん悲しい!でもこの家には防音の結界が張ってあるから大丈夫!

 

「兄様、姉様がまだ春休みボケを患ってます。」

 

「もう1ヶ月経つのにな。」

 

うにゃあぁぁ!兄さんにボケって思われたぁ……ぐすっ、兄さんが2年間どうだったとか聞いてくるからにゃ……。

けど確かにもう春休みが明けて1ヶ月…春休みの間は兄さんが天界と冥界を行き来していたらしくあまり一緒にはいられなかった。けど春休み初めに宿題は終わらせたので後は修行の毎日だったにゃ…私は仙術をほとんどマスターして兄さんに見てもらい空間術も殆どマスターした。、白音も修練を重ねてついに私は近接戦闘では歯が立たなくなった…お姉ちゃんは嬉しいにゃ。

兄さんもかなり修行したのか春休み終盤に会った時は完全に魔力を制御していたのか魔力をいくらやっても探せなかった…それに私と白音二人がかりで襲いかかっても触れることもできなかった…すごいにゃあ。

そんな春休みも1ヶ月前に終わり白音もオカ研のみんなと仲良くなったから万々歳。

兄さんを追いかけるのを止めて一緒に晩御飯を作る…裸エプロンでもしてみるかにゃ……白音が凄い睨んでる!え!?心が読めるようになったの!?

 

 

 

うん、今日も平和な1日にゃ。




いよいよ次から原作入り…一誠魔改造なるか!?
まあその時はその時。
口調がなかなか難しい…一誠いけるかな?

意見、誤字脱字、感想へ書いていただければ見ますのであった場合はお願いします。


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放課後の藍色
堕天使?ああ烏か。


さて原作入りします。
とりあえず一誠に恋人ができるのはまだまだ先ですかね。
スケべさは原作より低めかな?

原作キャラ生存タグ入れておきます。


千鶴side

 

黒歌が3年になり白音が入学してもう1ヶ月以上が経った。

1年2年と学年主席の座をもぎ取った長女はご褒美を寄越せと毎晩布団に入ってくるし、次女は次女でオカルト研究部の部室ではお菓子を食い荒らし俺の膝の上を陣取っている。

春休みにリアスの実家に呼ばれ去年までのリアスの様子を報告させられた…姿はリアスより少し上の様に見えたが溢れる魔力は『亜麻髪の絶滅淑女(あまがみのマダム・ザ・エクスティンクト)』の名が廃らないほどの物だったリアスの母親を思い出す。

娘を任せられるか試させてくれと言われた時は、やはり『超越者』と呼ばれるサーゼクスよりは劣っていた為か力の調整が必要になった。

認められた後リアスの婚約者であるライザーとかいう不死鳥の悪魔に会ってくれとリアスの父…グレモリー卿と共にフェニックス家へ向かった。

不死身の再生能力を持つ名門。元72柱37位。再生能力に加えてあらゆるものを焼き尽くす強力な炎の力で、レーティングゲームでは冥界中に恐怖を与えたらしい。

レーティングゲームの事は触り程度に聞いておいた…いや参加することないしな。

フェニックスの一族を倒すには、神や魔王に匹敵する一撃を放ち存在を消滅させるか、圧倒的な力の差で心を折るなどして精神を断ち切るしかないとされているが俺から見たら慢心を具現化したような奴だった。

グレモリー卿の手前面倒事を起こしたくなかった為、軽く殺気をライザー一人に絞り放ったところガクガクと震えていた。これがリアスの婚約者かと思うと溜息しか出なかったが、ライザーの妹のレイヴェルという子はなかなか有望そうだった。いつかリアスの眷属になってくれないかと声をかけると申し訳なさそうな顔をしてライザーを見ていたのが印象的だ。

兄思いあるがその兄があれじゃあな……。

後は世界各地を転移してルーラの使い勝手を良くしようとした時に堕天使の総督に会ったぐらいか。サーゼクスが何か吹き込んだのかいきなり襲いかかってきた為返り討ちにしてしまった。まさかいきなり下半身を消し飛ばして来るとは思わなかったので、ベホマを自分にかけた後今出せる全力でヒャドを放ったら氷漬けになってしまった……頭だけ動かせるようにして後は自然解凍できるまでそこにいろと言ったら泣きながら謝ってきた。おっさんの涙ほど鬱陶しい物は無かったので解凍してあげたが。

その後は数日一緒に世界を回り自分の住処へ帰って行った。連絡先を交換したからかたまに電話がかかってくる。そんな感じの春休みだったな。

 

「ほらぁ、出席取るから座れ!黒歌は今日も遅刻ギリギリか…」

 

「白音が起こしてくれなかったの!」

 

黒歌は遅刻ギリギリの出席が多い。寝坊もそうだがふらっと何処かへ行っては時間ギリギリになって仙術と空間術でやってくるのだ。

 

「はあ、まあいい。じゃあ名前言うから返事しろよ。」

 

社会人になったら許されないからな…そろそろちゃんとしてもらわなければ困る。

姫島朱乃にリアス・グレモリー、帝黒歌……駒王学園の三大美女と呼ばれる3人が同じ教室なのはやはり裏の事情もあるんだろうか。リアスと朱乃(朱乃と呼んでと頼まれた)だけならお姉さまとか言われそうだが、そこに黒歌が入るとお姉さまの繰上げなのか三大美女と呼ばれているのだ。まあ確かに黒歌はお姉さまというよりは美女…俺からしたら可愛い…だが。

出席も取り終わり各担当の教師がクラスを移動する中、俺は担当教科が体育な為3限目までは暇を持て余し廊下を歩いていた。

 

「2年か…今年は祐斗が修学旅行に行くのか。」

 

2年の教室を端から順に歩く。祐斗の教室を小窓から見ればどうやら今は数学の時間らしくみんな真面目に黒板を見ていた。祐斗が俺に気付いたのか軽く会釈をして黒板を見直した。よくできた奴だ…イケメン王子と呼ばれているらしい。

 

「イケメン王子と正反対なのが確かこのクラスにいたな。」

 

ある一つのクラスの前へ足を運んだ。今は地理の授業らしいが後ろから見ているとその問題児達が教科書ではなく別の物を読んでいるのが目に映った。

 

「高校2年ってあそこまで性欲が強かったか?」

 

と言いたくなるほどの惨状だった。

何故授業中にエロ本を読んでいるのだろうか。確か元浜、松田、兵藤だったか……担当している教師は気付いてないのか黒板と教科書を見ているだけだ。

まああいつらの事はどうでもいいが、黒歌や白音に変な目を向けたら遠慮はしない。

 

「さて次は……ん?」

 

次は1年の教室がある下の階へ行こうと思った時、駒王町に張っている結界に堕天使が引っかかった。リアスとソーナに力を貸してもらい町内への異物混入が直ぐに分かるように調整した結果、悪魔は勿論の事それ以外の種族もそうだが入ってこれば幾ら魔力などを隠しても分かるようになった。

 

「数は4……いや5か。1人人間がいるが、これは神父か?」

 

堕天使は4人…後1人は小さいが聖の気配がしたので神父と断定した。ほぼ同時なのを感じると堕天使とつるんでいるはぐれ神父ってとこか?

まあみんなに危害が及ぶ前に追い払うかね。

 

「……誰も見てないが敵ならこれが使えるな……トヘロス。」

 

まずは完全に自分の気配を消す。自分から話しかけなければ俺より弱い奴はまず見つけられないだろう…そんな魔法だ。後は身体能力を駆使してその人物達の下へ向かった。

 

 

 

「いたいた……女3人と男2人…男の1人、あれはイかれてるな。神父だが顔付きからゲテモノっぽいな。ゴスロリ少女に清楚系、後はキツめの目をしている女とこの時期にしちゃあ不恰好なオッさんが堕天使か。」

 

特に何かするわけでもなく街を迷わず歩いている事から目的地は決まってるんだな。ん?神父が集団から離れたな……まあいいか。あの気持ち悪い顔付きなら気配で何処に行ったか後でも分かる。近くまで行って会話を盗み聞きできるか試してみるかね。

 

「レイナーレ様、フリードの奴は放って置いて良いのですか?」

 

「ドーナシーク、あれはアーシアの監視の為だけに連れてきたのよ。アーシアはこの街にまだ来てないし、1日ぐらいは自由を許しても良いと思わない?」

 

「流石レイナーレ様っす。あんなクソ神父の事を少しでも考えているなんて…優しいんすね。」

 

「ミッテルト、あなたは……まあいいわ、カラワーナ、教会はもう直ぐよね?」

 

「はい。この先の公園を右に曲がり少しすれば見えてきます。」

 

うーん、見事に全員の名前が分かったな。まあ全員俺よりかなり格下だし黒歌と白音にさえ劣る程だからこんなものか。堕天使ってことは…あのおっさんの管轄か。アザゼルも下っ端の面倒ぐらい見て欲しいものだ……駒王に堕天使を送るとか聞いてないから単独で来ているんだろう。まあ俺には関係ないって言い張るんだろうがな。

仕方ない……

 

「おい、堕天使諸君。」

 

こちらから声をかけよう。いざという時も何も脅威に感じない実力者達にはこれが一番効くだろう。ほら見てみろ……何事だと言わんばかりに目を見開いている。

 

「なっ!?に、人間が何でこんな近くに!?」

 

「ミッテルト、慌てることは無いわ。私たちの正体を知ってる人間も珍しいけど、所詮人間よ?ドーナシーク。」

 

「はっ!」

 

どうやら声をかけてきた奴が人間だとわかると安堵したかのように息をついて男を前に出させた。いや、リーダーだろうレイナーレという女にしか興味は無いんだけどな?

と思ってたらいきなり光の槍を出現させ投げつけてきた。人にそんな物を投げるなと言いたくなり、お返しとばかりに投げてきた光の槍を掴み投げ返した……ああ、しまった……あれ死んだんじゃないか?

 

「ぐっ!?な、何故人間…が……レイナーレさ…ま……お逃げくださ………」

 

つい力加減を誤ってしまった…いや、やっぱ俺は不意打ちとか奇襲に弱いらしい。つい本気で力を入れてしまう……まあ春休みに修行してからサーゼクスを超えてしまったからな……。

ドーナシークは体に風穴を開け倒れた……。まあ肉体があるなら生き返らせる事はできるので今は放っておこう。

 

「ドーナシーク!?ミッテルト!レイナーレ様を連れて逃げろ!」

 

「カラワーナ!時間だけ稼いで直ぐに逃げなさい!相手をただの人間と思ってはダメよ!」

 

どうやら今ので考えを改めたのかレイナーレは蒼白の顔をしてミッテルトと言う子と共に飛んで行った。死体の回収をするかと思いきや置き去りか。

 

「んで、カラワーナだったか?お前はどうするんだ?」

 

「どんな神器を持ってるか知らないが、ドーナシークの仇は必ず取る!」

 

どうやら神器持ちと誤解をされたようで、光の槍を片手にこちらを睨みつけてきた。仇か……まあ早いがザオリクをかけるか。

俺はカラワーナの横を素通りしドーナシークと言う男の体に触れた。

 

「ザオリク。」

 

唱えた瞬間に輝くドーナシークの体、カラワーナが何か叫んでいるが気にしない。

 

「………はっ!?こ、ここは!?」

 

ドーナシークは目を開けて上体を起こした。成功したようで服に穴は開いているが体に開いていた所…そこに穴は無かった

 

「おう、不意打ちとかもうするなよ?次やったら確実に再起不能にするからな。」

 

生き返ったばかりで頭の回転が働いてないのか自分の体を呆然と見ていたドーナシークに殺意を放ちそう言った。どうやら事態が飲み込めたようで、シルクハットで目を隠すように下を向き震えていた。

 

「貴様は一体何者だ?」

 

カラワーナも今のドーナシークの姿を見て顔を困惑で埋め尽くしながら聞いてきた。

確かにこれだけの物を見せれば下手に出るしかないか。

 

「そんな事は後でもいいだろう。それより、お前らの事はアザゼルに報告するからな。説教か処刑かはお前ら次第だ。」

 

アザゼルの名前を出すと狼狽え出す2人。やはり部下なんだろう…後の2人はもうかなり遠いな。とりあえずアザゼルに報告して放課後に引き渡す段取りでもしておくか。

 

「……お名前を聞かせていただけませんか?」

 

「ドーナシーク!人間に頭を下げるなんて何を!?」

 

だがやはり人間という事は分かるんだろう。堕天使を知っていればアザゼルの事を知っているだろうからそれを盾にしたんだろうと思ってるんだろうな、カラワーナは。

だがドーナシークは違うようだ。一度殺されその本人に生き返らせて貰ったからか敵意も全く感じない。

 

「……帝千鶴だ。お前らは取り敢えず拘束させてもらうぞ。後でアザゼルに引き渡すからな。目的は聞かないが俺の周囲に関わることを起こしたら……どうなるか分かってるな?」

 

俺の殺気……殺気って簡単に出せるものだが、それを間に受けたカラワーナは下唇を噛み槍を消し両手を自由にさせた。ドーナシークは既に従順になっており跪いていた。まあ死者を生き返らせれるぐらいだからそれぐらいの態度は取るか。

 

「……アザゼルか?俺だ。何の用かって?取り敢えず今すぐ駒王町に来い。引き取って欲しいのがいる……あん?直ぐには無理だ…?ああ、分かった。できるだけ早く頼んだぞ。」

 

堕天使の総督に電話をした。まあ悪魔も携帯を持ってるぐらいだからな。取り敢えず来るのは1週間以上かかるらしい…それまでの間こいつらをどうするかか……。まあ家に置いておくしかないんだろうな。監視もできるし今のドーナシークなら言うことを聞いてくれそうだ。

 

「アザゼルが来るのは最短で1週間後。それまで俺の家で監禁だ……いいな?ドーナシーク、お前はカラワーナの動きを見張れ。仲間だっただろうが俺はお前のその姿勢を買ってやる。」

 

「はっ!」

 

「ぐっ!?ドーナシーク!きさまぁ!?」

 

ドーナシークを完全には信用していない。だから家に入れたら抜け出せないようにしないとな。取り敢えずカラワーナの首を掴んだドーナシークの肩を掴みルーラで家の前に飛ぶ。

ドーナシークとカラワーナを家に入れ余っている2階の部屋を使わせる。まあ布団はあるし家具も揃ってる部屋だ…壊されてもいいさ。帰ってくるまでは部屋を出れないように窓や壁、扉に床にグレイフィアさんに教わった結界術を施した。こいつらじゃあこの部屋を破壊して出る事は不可能になった。

 

「千鶴様、そこまでしなくとも」

 

「俺はお前を信用していない。だからこの措置だと気付かないのか?」

 

ドーナシークは俺の結界術を見て不満そうな顔をしていた。まだそんな顔が出来るなら信用なんて以ての外だ。ありがとうございますと言えてやっと信用が持てるぐらいだろう。俺はそう言い残し授業の時間が迫っている為、出てきた扉に再度結界術を施し家を出た。

 

 

 

アザゼルside

 

俺は選択肢を間違えた……。

人間達の間で春休みとか言われる物…その間に冥界に来ていたのがいけなかった。

サーゼクスに面白い人間がおり、友人関係を築いておいて損は無いというお墨付きを貰う程の奴があんな化け物と知っていれば、俺は早々に冥界を去っていたはずだ。

帝千鶴

魔王とタメを張るほどの実力者で今ではサーゼクスを超えるらしい……。最初はどんなものかと様子見のつもりだったがあまりにも背中がガラ空きだったので最大の力を込めた一本の光の槍を放った……普通なら地面は抉れ冥界にダメージが行くだろう一撃。

それを奴は自分の体で殆ど吸収したのか下半身を消し飛ばす事しか出来なかった。

それだけでは無く、瞬く間に消えた下半身が元通りになると自分の体が急激に冷えて動かなくなった……。気付いた時には氷漬け…頭だけ溶かされ自分の体が身動きできない状況にあると分かったら冷えてた肝が更に冷えた。

後で聞いた話によると初歩の魔法らしい。上級になればルシフォードぐらいなら凍らせれると聞かされた時は思い切りむせた。まあ本当なんだろうな。

氷漬けにされた時の事は思い出したく無い。情けない姿だったからな。

まああいつの事は殆どサーゼクスに聞いていた為驚きはあまり無かったが、改めて奴の顔を思い出せば今でも氷漬けにされた時の記憶を思い出す。

 

「……げ。」

 

ほらみろ。厄介ごとだ。携帯のディスプレイに書かれた名前を見て携帯を落としてしまった。千鶴と書かれた名前……名前だけで体が震えてきやがる。

 

「おう…久しぶりだな。どうしたんだ?……は?いやいや、いきなり駒王町に来いって言われてもな……渡したいもの?悪いが今直ぐには無理だ。1週間はかかっちまう。ああ、悪いな。こっちもある意味忙しくてな。ああ、できるだけ早くそっちに向かう。」

 

駒王町って事はサーゼクスの妹のリアス・グレモリーが今領主なんだっけ?何を渡したいのか気になるが早々簡単に入り込んでいい場所じゃ無いんだがな……まあ千鶴に言われたからには向かわないといけないか。

 

「ヴァーリの奴は……まあまだいいか。はぁ仕方無えな………。」

 

白龍皇の力ならあいつに勝てるだろうか……神滅具ならいけるだろう。あれは確実に敵対すればどの勢力にも壮大な被害を出す事ができる。今のうちに対処法を考えておかないとな。

今の所天界の奴らとは絡んでいないらしい…ミカエルがあいつの事を知ったらどうするんだろうかね。まあ今はあいつの機嫌を悪くしない様に対処するしか無いか…てかなんだろうかね、俺に渡したいものって。

 

一誠side

 

おっす俺の名前は兵藤一誠!

私立駒王学園に通う普通の高校生だ。

今日はいい事がめちゃくちゃあったんだ。学校が終わって直ぐエロ坊主、セクハラパパラッチこと松田の家に行き元浜と一緒に秘蔵DVDを見て、帰る途中に金髪でゴスロリ服を着た子とスタイルが良くて可愛い女の子に声をかけられた。

何やら話し込んでたが2人してこちらに歩いてきて道を尋ねられたんだ。

え?何がいいことなんだって?馬鹿野郎!スケべで有名な俺が女の子に声をかけられたんだぞ!1人は駒王学園に通うマスコットである帝白音ちゃんのような体型だし、隣の黒髪の美少女はその姉、駒王学園の三大美女の1人の帝黒歌お姉様と雰囲気が似ている!まあ胸は黒歌お姉様の方が大きいが…。

でも可愛い子2人が教会になんの用なんったのだろうか?けどそんな事は後、俺は意識を失った。その子達を町の外れにある教会へ連れて行って直ぐ……意識を失う前に見たのは笑う少女2人に黒い翼……あれはなんだったんだろうか……。

 

「……ぐっ!?」

 

あれからどれくらい時間が経ったんだろうか?ここは…あの教会だ。

 

「……っ、なんで縛られてるんだ?」

 

両手両足が縛られている…やばい……やばいやばいやばいやばいやばい!

なんの事件に巻き込まれたんだよ!?もしかして人身売買!?あ、あの子達は無事なのか!?ま、まさか売る前に楽しもうとか言われて何処かであんなことやそんな事を!?

 

「いっ、いやだぁぁぁ!まだ恋人もできたこと無いし!おっぱいだって揉でないんだぞ!?キ、キスだってまだなんだぁぁぁ!」

 

こんな事で人生終了……?ははは、嫌だ!ぜってえ逃げる!今なら周りに人はいないし……

 

「ああっ!?」

 

「うわぁ!?」

 

突然扉が壊れる音と聞こえる女の子の悲鳴!何事だよ!?やっぱ乱暴されて!?

 

「レイナーレ様!?このっ!」

 

「いや、だから攻撃が単調だって。ん?おい……そいつはなんだ?」

 

聞こえてきた男の声は聞いたことある声だった。そんなに聞き慣れた声では無いが、駒王学園に通っていれば必ずその声の主が分かる……歴代最強教師、頼りになるお兄様、そして何より帝白音と帝黒歌の兄で、その姉妹に色目でも使ったらあの先生の鉄拳が飛んでくるという噂があり、去年の学園祭でかのリアス・グレモリー先輩を抑え、ミスグランプリを奪い取ったプロ女装の実力者…帝千鶴先生の声だった。

 




とりあえず堕天使はみんな生きています。ちなみにドーナシークとカラワーナは今の所帝邸にて監禁中です。
千鶴スペックとして、ザオリクは集中力が入り魂と肉体が存在してないと発動しません。
成仏する前で肉体が損傷しているぐらいなら……けど一誠は悪魔になりますよ。

アーシア?今頃フリードと会ってますよ、多分。

千鶴スペック
容姿は藍色の長髪で髪を束ねており、男らしいよりは美形。
ミスグランプリに黒歌に化粧と女装をされて出され優勝するほど。
外出時はスーツだが休みと家にいる時はジーパンに無地のシャツを着る。
実力はサーゼクスやアジュカを抑えている。攻撃と回復補助が自分でできる千鶴にはサーゼクスとグレイフィアが共に戦っても傷をつけられなかった。
最大で溜められる魔力を放っても枯渇する前に回復するというチート持ち。親父が少しでも魔力が減ったら回復させてくれている。
最大魔力の攻撃はルシフォードを破壊する事など簡単にできるほど。


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さて、生徒を助けに行こう1

前回の終わりは次回に持ち越しです。
イッセーとアーシアが悪魔になるのは同じ時とだけ。
原作と大いに違いますが許してください。


千鶴side

 

学校が終わりさて朝の堕天使どもを探すかと用意していた時、職員室に見慣れた紅い髪と黒髪の持ち主が入ってきた。

 

「千鶴先生、少しお耳に入れたいことがあるので、後で部室に寄っていただけないでしょうか?忙しいと思いますが……。」

 

職員室で他の人の目があるからかいつもとは違う口調でそう言ってくるリアスに、多分今日の朝の事だろうとい思いつつ、俺はある程度分かっているもののそう言えばリアスに報告をしていなかったのを思い出した。

 

「分かった。準備ができたら向かうから先に行っていてくれ。」

 

話が済んだら直ぐに向かおう。今は2人で行動しているし、あのフリードとか言う奴は町を徘徊している。感じれるのは聖や魔の気なので人間で神父のフリードの気配はかなり薄いが……。これは感覚の鍛錬をしないとダメだな……。

リアスと朱乃はそのまま会釈をして去っていった。とりあえず烏どもがいきなり襲いかかってきてスーツを破かれたら洒落にならないので結界を張るためにも部室には行く予定だったが。

俺は今日の仕事は終了すると教頭へ告げるとオカルト研究部のある旧校舎へと向かった。ギャスパーは元気だろうか?まあ夜の仕事では一番の稼ぎ頭だし心配は無いが、今度飯でも作ってやるかね。

 

「お、祐斗。遅かったな、日直か?」

 

旧校舎へ歩み始めて暫くすると祐斗と出くわした。そう言えば黒歌と白音はもう部室にいるらしい。

 

「帝先生。朝は何処へ行ってたんですか?」

 

そいいやあ祐斗は俺の修行をしてるからある程度の気配は読めるか。

 

「いや何、烏がな。」

 

祐斗は烏と聞いて首を傾げていた。堕天使の存在は知っているだろうが、烏呼ばわりするのは周りにいる人の中でも俺ぐらいか。

とりあえず部室で話すと言えば納得したので2人で部室へ向かっていった。

 

「全員揃ったわね。」

 

「どうぞ千鶴さん。今日は昆布茶にしてみました。」

 

「兄様…姉様がウザいです。」

 

「にゃあぁぁぁ、酷いよ白音……私はただ胸が大きくなるように揉んであげた……まあ揉むほどないけどっ!?」

 

「なら姉様のその無駄なのを切り取れば同じことです。」

 

「あ、姫島先輩。この昆布茶凄く美味しいですね。」

 

「……リアス、泣くな。」

 

相変わらず騒がしい部室だ。

リアスが俺と祐斗が入ってきたのを見計らい少し大きめに話し始めようとしたものの、朱乃はまだしも白音と黒歌は姉妹喧嘩を始めた。白音、まだ1年なんだからまだ気にすることは無い…だからその…手刀に気を溜めるな。マジでやりそうだ。

ほら、リアスがプルプル震えて……はあ、威厳は確かにあるがこういうところはまだ子供だな。

 

「ほら静まれ!……よし、リアス。」

 

「……ありがとうございます。みんなに重要な話があるの…ちゃんと聞いてね。……今日の朝、この町に堕天使が入り込んだの。数はわからないけど確かに堕天使がこの町の結界の中へ入ったのをソーナと確認したわ。」

 

「リアス、数は4。まあ下級堕天使って感じ。」

 

俺が少し怒気を孕んだ声で言うと白音は固まり手に纏っていた気を霧散させソファーに座る黒歌の隣に座り、朱乃は祐斗に微笑みを向けたまま固まっていた……祐斗、口からお茶が溢れてるぞ。

黒歌も感じたのかリアスの言葉に同意し数を告げた。

 

「とりあえずここにいるメンバーなら誰1人負ける人はいないだろうし、わざわざ敵対勢力にある堕天使に喧嘩を売る人もいないでしょう。」

 

どうやら下級堕天使ということで荒波を立てぬようサーゼクスに伝え処理してもらうつもりかね?まあこんな子供たちに無理はさせられないか……。

 

「堕天使の数は4。更に1人神父がいた……はぐれエクソシストだろうな。堕天使も構成メンバーはトップがレイナーレ。後はドーナシーク、カラワーナ、ミッテルト。神父の名はフリード……調べたところフリード・セルゼン本人だろう。ドーナシークとカラワーナは俺の家で監禁中。フリードの動向は分からないが、残った2人は居場所を察知できている。」

 

「………全てあなたにお任せするわ。そこまでいってるなら、私たちが手を出す必要も無いみたいだし。」

 

どうやら俺の勝手な行動が気に入らないようだ。ため息をついて空を仰ぎ見ていた。リアスは俺との修行も嫌いだからな……俺の事が嫌いなんだろう。

 

「烏って堕天使の事だったんですか。」

 

「まあな。てか堕天使って学校で呟いたら怪しいやつだろ。だから烏って言っただけだよ。悪魔の事はまず話さないようにしてるからな。」

 

朱乃が複雑な表情をしていたが俺の説明を聞いて少し安堵したのか息を吐いていた。お前を烏呼ばわりしているつもりは無いからな。

 

「というわけで黒歌、白音、今日は帰りが遅くなるから家で大人しくしてるんだぞ。二階の一番奥にある部屋に監禁しているから扉は開けるなよ。」

 

俺の言葉の意味が理解できたのか2人は顔を見合わせた後頷いた。いつもなら黒歌が駄々を捏ねるだろうが家に堕天使が居るということで白音を一人きりにしたくないのだろう。

 

「祐斗、一緒に来い。フリード・セルゼンはお前に任せる。リアス、祐斗を貸してくれ。」

 

「…順番が逆のように感じるけどいいわ。祐斗、千鶴に迷惑をかけないようにね。」

 

「はい!」

 

リアスの許可を貰えた事だし、俺は早速祐斗を連れて町を探索する事にした。話し込み過ぎたのか夕方になっていたが堕天使は常に2人で行動していた。先程何か強い力を感じたが直ぐに消えたので何かあるとは思うが、今はフリードの捜索をして祐斗の修行の成果がどの程度か見させてもらう事にする。

 

「……祐斗。」

 

「はい。」

 

そして俺たちは1つの一軒家へ辿り着いた。先程までフリードがいた家だ。扉は半開き…中からは少し鉄の臭い……嗅いだ事がある、血の匂いだった。

 

「とりあえずリアスに連絡をしろ。俺たちではこれをどうにかする権力はない。」

 

中に入りその惨状を目にして、俺は殺意が湧いた。

祐斗の顔見知り…契約者らしい。悔しそうに肩を震わせた後黙祷を捧げ謝っていた。

フリード・セルゼン

白髪をした人間の少年であり、「はぐれエクソシスト」と称されている神父。光剣と銃を武器として使用するという情報が悪魔の情報の中にあった。

言動は下品極まりないうえに、性格も徹底的に歪みきっている。また、嬲り殺しを好み、悪魔だけでなく悪魔に関わった人間さえも躊躇なく殺害する残虐性をもち、情勢が不利と判断すると仲間をも見捨てられる外道でもあるため今回も祐斗と関わっているのを知り殺したんだろう。

エクソシストは悪魔にとって天敵の武器を持っている。天使や堕天使の持つ力には抗えないのが悪魔だ。

死体を見るに銃弾は見当たらないが体にある穴は銃弾ではなく光を媒介にしたものか?いや、空薬莢があるという事は実弾……後は逆さ吊りにするための杭のようなものが両手両足に刺さり壁に貼り付けられ顔が半分削ぎ落とされている。

 

「……帝先生、彼女は確かに僕の契約者でした。それでここまでの事をするのがフリード・セルゼンなんですか?」

 

「ああ、勿論悪魔も例外じゃないらしいがな。だがお前にフリードは殺らせる。今の怒りを静めろ。彼女はお前と会えて、話して幸せだっただろう。最後はどうだったか分からないが、それでも今夜呼ぼうと思ってたかも知らない。お前は敵討ちの為にその手を汚すな。敵討ちなんて無駄だ……既に彼女の魂はここに無いんだからな。大切だった物なんていつの間にか無くなってる。そう思え。」

 

白状だろうな。一般人からしたらフリードは敵討ちの相手にふさわしいだろう。ザオリクをかけようにも無理やりにでも魂を成仏させたのかここには居ない。天界に魂があれば別だがその場にある魂にしか干渉できない俺は無力だ。体の損傷もただの肉には回復魔法の意味が無い。

俺は死なんてありふれた物だと知った。前の世界でも授業が始まる前に誰かが死んだと言われても、ああ死んだのかと思ったぐらいだ。

自分の知り合いが死んだら悲しいのは分かるが、根本的に俺は身内以外がどうなろうと興味は無いんだ。

 

「……分かってます。彼女からしたらただの一悪魔。僕から見ても1人の契約者です。弔ってやる事はできませんが、どうか安らかに……。」

 

それで終わりだ。祐斗の過去は知っている。敵討ちをしたい気持ちが消えてないのも……。けどそれは家族のようなものが殺されたからだ。俺はそれを否定するつもりは無い。

 

「……手分けするぞ。こんな事をしたフリードに俺は殺意が沸く。いつか白音や黒歌がフリードに傷でもつけられたらフリードもろとも日本を壊してしまうぐらいにな。」

 

俺の発言に祐斗は顔を真っ青にした。俺ならやれると気付いているからだろうな。

ひとまず祐斗にこの場は任せリアスが来るまではそこを離れるなと伝えた。

そしてその家を出て直ぐ……俺は金髪のシスターに出会った。何を言ってるかって?いや、シスターだぜ?日本じゃ殆ど見かけねえ存在だよ。

 

「……おい、大丈夫か?」

 

顔面から突っ伏してる……息はありそうだな。

 

「あうぅ……何も無いところで転んでしまいまし…た……?あ、あの……」

 

親父!親父!

 

『何だいきなり……?今エスタークを20ターン以内に倒すのに手間取ってるんだが?』

 

何してんだよ!?い、いやそれより頼みがある!俺に言葉の壁を無くしてくれ!

 

『言葉の壁…??ああ、そういう事か。ほらこれでいいだろう?』

 

終わったのか?なんか変わったような気配はしないけど……

 

「大丈夫か?」

 

「あれ?あ、はい大丈夫です!あっ!?」

 

おお、どうやら言葉の壁は無くなったみたいだ。どこの言葉か分からなかったが先程は何を言っているか理解できなかったからな。親父、ありがとう。

 

『ああ、それぐらいならお安い御用だ。お、千鶴!17ターンで倒したぞ!』

 

……ああ、おめでとう。次は10ターン目指したらいい。

親父の気配が頭から無くなり、俺はシスターの手を掴み起き上がらせた。

驚いていたようだがシスターはえへへと笑いながらこちらを見てきた。……金髪で緑の瞳か。美少女とはこういう子の事か?

 

「お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありませんでした。」

 

俺に握られた手を胸に抱きながら頭を下げてきた…いい子だな。白音といい勝負だ。

 

「シスターがこの町に何のようだい?ここには寂れた教会しか無いぞ?」

 

「え!?そ、そうなんですか?おかしいなぁ…確かレイナーレ様がこの町の教会に来るようにと仰られていたんですが。」

 

レイナーレ……なるほどな。シスターという事はあのレイナーレは『教会』のトップか……アザゼルも管理しきれないって事か。

 

「……良かったら道案内をしてあげよう。俺もレイナーレという人に興味があるな。」

 

「ほんとうですかっ!わぁ、地図を見ても全くわからなくて、いろんな人に聞いてもまだ日本語に不慣れだからか話を聞いてもらえなかったんです…ああ、これも主のお導きによるものなのですね。」

 

何やら手を重ね祈っているが興味は湧かないな…この少女が祈る神がこの世界に居ないのを知ってるからだろう。

 

「こっちだ。」

 

祈りが終わった少女…アーシアだったか?その子を教会へと連れて行くため先導して歩いていたが、どうやらシスターの性分なのか足腰が悪そうなおばあさんに協力して荷物を持とうと手伝ったり(結局アーシアも持てなくて俺が持った)、見るからに不良の奴がカツアゲしている様子を見かければ間に入り仲裁しようとしたり(からかわれ泣きそうだったので俺がナントカした)、怪我をしている子を見かければ駆け寄り怪我を治療したり(指輪が光ったので神器だろう)、その間に自己紹介をしたのだが、やはりアーシアという名だった。そんな事をしていたからか、目当ての教会に着いた時には既に夜だった。

 

「その…今日は本当にありがとうございました。」

 

「いや、構わないよ。今時珍しい子だとは思ったけど、君の行動は見ていて気持ちのいいものだった。」

 

嫌いでは無いよ、その精神はと笑みを浮かべて言ってあげると、照れたように顔を赤くした。……どうやら協会内からはレイナーレ達の気配は感じなかった。よく感覚を研ぎ澄ませばこことは違うところにいた……まあまだ夜は長いし、最悪明日でもいいか。

 

「あの、よかったらお茶でもいかがですか?レイナーレ様がおられれば挨拶もしていっては……」

 

「いや、今日はやめておこう。こんな時間だしね。また機会があればその時に……同じ町内なら直ぐにでも会いそうだからね。」

 

そう言って俺はアーシアに手を振りその場を去った。

—千鶴さんに神のご加護がありますように-

そう言われ振り向けば、そこには聖女がいた。

 

 

 

アーシアと会い既に3日。

アーシアと別れた後町を探索したが、どうやら完全に堕天使の気配を消す事が出来るようになったのか、はたまた俺の探知能力が弱くなってきているのかフリードどころかレイナーレ達でさえ探す事が難しくなってきていた。

いつまでも部屋に監禁していても仕方ないと黒歌に言われ(どうやら放課後遊べないのが不満らしい)、一度3人でドーナシークとカラワーナのいる部屋に入ったのだが、ドーナシークは入ってきた俺の前で跪き、カラワーナは憔悴しきった顔で置いてあるベッドで横になっていた。

どうやらこの3日の間、何から何まで我慢していたからか体内に色々な不純物が溜まり、ドーナシークに監視されていて動く事さえままならなかったようだ。

一先ず黒歌と白音にカラワーナを任せ、俺はドーナシークにレイナーレ達が何処に潜伏しているのか分からないか?と聞いてみた。

 

「レイナーレ様……いえレイナーレがこの町に来た理由は、アーシア・アルジェントの『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を奪い至高の堕天使になること。この町を選んだ理由は偶然です。居場所は私にも分かりませんが、元々はこの町にある教会を拠点にしようとは言っていました。」

 

もう既に自分の上司を呼び捨てにする事が出来るドーナシークに、俺は考えを改める。

どうやらそこまで仲間意識の高いグループでは無かったんだろう。せめて自分の死体を持って逃げていたら話は別だが……まあこいつらの事はぶっちゃけどうでもいい。さっさとアザゼルに引き渡したら頭からすっぽり抜けるだけの存在に過ぎないのだから。

俺はドーナシークに風呂ぐらい入れと伝え、先にシャワーから出て居間で休息していたカラワーナの所へ向かった。

黒歌と白音は近くでお茶を飲んでいるがどうやらカラワーナの事は虫程度に考えているようだ。

 

「……アザゼル様はいつ来られるのですか?」

 

カラワーナも既に黒歌と白音に敵わないと分かっているのかソファーに座りながら聞いてきた。

アザゼルの事だから後4日はかかるだろう。

俺がそう伝えると、もうレイナーレの手伝いはしないと言い、大人しくしているから部屋に監禁するのは勘弁してくれと言ってきた。

俺としてはまだ不安があるが、まあこの様子を見る限りもう首を突っ込むような事は無いだろう。もし突っ込んでくるならその時はお別れだ。

まあどの道アザゼルが何か処罰を与えてくれるだろう。

 

「兄様、何か感じませんか?」

 

「にゃ、堕天使が何かしてるね……。」

 

2人が急に猫耳を出したと思ったらそんな事を言ってきた。……確かに。これはただ事じゃ無いな。リアスの力も感じる。

 

「黒歌と白音はドーナシークとカラワーナを見ていてくれ。俺は馬鹿どもを鎮めてくる。」

 

俺に任せるんじゃ無かったのか?まあ仕事は遅いかもしれないが……。

黒歌と白音にそう告げ俺は馬鹿達の気配を探す。場所は…あの古びた教会だった。

 

 

 

リアスside

 

千鶴を信じていた私が馬鹿だったかもしれない。あんな事を言っておきながらあれから進展が無く、祐斗によれば学校の生徒が1名捕まっており、今祐斗が相手をしているフリードというはぐれ神父はシスターを盾にしている。

いくら何でもシスターを殺すような真似はできないからか、祐斗は決め手に欠け体に傷を負ってきていた。

更には堕天使が言うには手を出せば一般人を殺すと言っている。こんな奴らを私の管理している領地にのさばらせて置くわけにはいかない。

話を聞けば堕天使レイナーレの独断行動…千鶴には悪いがここで滅させて貰わないと気が済まない。

 

「朱乃、そっちはどうだったの?」

 

「まだ見つけられません。やっぱり教会を吹き飛ばした方が早いのでは?」

 

そう、堕天使共はフリードにこの場を任せ教会の中へ入って行ったのだが、中には不思議な結界が張ってあり堕天使の気配を完全に消している。隠し階段など無いかと探してもらっていたのだが、やっぱり相手の気配を見つけなければ隠し階段が実在するのかさえ分からない状況だ。

朱乃の手に雷が走り笑みを浮かべていた。

いくら廃墟のような教会だからと言って壊すのは駄目だ。

 

「うひゃひゃひゃ!どしたんですかぁぁ?反撃してくれないと俺っち暇で暇で仕方ないっすけどぉ?」

 

「っ、フリード神父、もうやめてください!」

 

「くっ!?」

 

フリードがアーシアを片手に祐斗を光の剣で追い詰めていた。いっそシスターを巻き添えに…なんて事は考えられない。ただでさえ一般人が相手の手中にあるのに!私の領地でこれ以上被害を出させる訳には行かないの!

祐斗にシスター殺しの汚名を着させる訳にはいかない…下僕が少ないとここまで劣勢に立たされてしまう。いずれレーティングゲームで活躍する夢も儚いものだ……

 

「祐斗!貴方は朱乃と一緒に教会の中へ!そいつの相手は私がっ!?」

 

「のんのん!俺っちの相手はこの腐れイケメンだい!お前はお呼びじゃ無いですのよ!」

 

「そうか、だったら俺が相手をしよう。」

 

突如聞こえてきた第三者の声。そしてフリードの剣が折れるのと同時に引き剥がされるシスター。

 

「あ?がぁぁぁ!?」

 

祐斗がいち早くシスターを引き寄せている間に、フリードはその人に殴られ森の奥へ吹き飛ばされていった。

 

帝千鶴の下で修行をし始めてもう2年。私は出されている課題をまだ一つも達成できていなかった。

朱乃は雷の魔力の底上げと操作、堕天使バラキエルの子だという事は千鶴も知っているからか今は光を操る前段階まで来ている。祐斗は魔剣創造の力を十二分に発揮できるように強度を重心的に見て、後は騎士の駒で上がっている速さに磨きをかけている所だ。

 

「……リアス、祐斗はもうすぐ禁手に至るぞ?朱乃も後は心の問題だ。お前は何だ?まだ俺の修行の第一段階である魔力操作を覚えれないのか?俺が嫌いなのはいいが、実力不足は身を滅ぼすぞ?」

 

っ……確かに既に私は眷属達より弱い。それは間違えようの無い事実…それに千鶴の事が嫌いですって?大好きよ!だから頑張って期待に応えれるように1人でも修行してるのに……全く成果が無いなんて言えない。

 

「とりあえず堕天使だな。……アーシア、無事か?」

 

「はい、ありがとうございます千鶴さん。」

 

どうやらシスターはアーシアと言うらしい。可愛い子だ…ああいうのが千鶴の好みなんだろうか?

 

「フリードは殺せたか分からない。祐斗、探しに行け。」

 

「了解です!」

 

千鶴は私たちのリーダー格だ。多分みんな信頼してるだろう……ソーナもその眷属達も信頼している。カリスマ性というんだろう…お兄様でさえ彼には絶対の信頼を抱いてる程だ。

祐斗がアーシアを千鶴に任せ森に入って行き、千鶴はアーシアを連れてこちらに向かってきた。

 

「リアス、お前はアーシアを頼む。俺は教会の中へ行く。朱乃は上空を見張ってろ。奴らが逃げてきたら対処だ。」

 

「「は、はい!」」

 

どうやら生徒が1人捕まってるのは知っているようで、その顔は私たちの気を引き締めるのには効果は抜群だった。私はアーシアの手を取り安心させるように頭を撫でてあげた。朱乃も直ぐ上空に飛び教会の周りを飛び始めていた。

 

「……さて、説教開始だ。」

 

そう言って指を鳴らす千鶴の姿に、私は堕天使の最後は悲惨なものになるのではと想像してしまった。

 




うーん、キャラが掴みにくい……。
もう一回原作読み直すか……。
こんな自分ですがまた次回も見てください!

誤字等ありましたらお教えください!
感想もよければ!


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さて、生徒を助けに行こう2

これで原作の1巻の終了になりますが、まだここでは一章が続きます。
まだまだ駄文ですが、末長く見守ってください。


千鶴side

 

教会の中へ入った俺はその中の埃っぽさに眉を顰めた。

アーシアを送った時に中の様子を確認しておけばよかったな……。

血の匂いもするがここじゃ無い……気配を探れば何かに妨害されるもそれを魔力を増幅させ消し飛ばす。

 

「地下か。」

 

教会内の気配が正しいものに変わったからか隙間風も感じられる。場所は祭壇……?の机の下。そこに階段があった。

教会を壊しては後でリアスに迷惑がかかると思い俺は律儀に床についている扉を開けて中に入っていった。

 

「はぐれエクソシストか。無様だな……悪魔を狩るだけに固執していればいいのに。」

 

侵入者に対してフリードのような光る剣と銃を構えていたが、首に手刀を落とし気絶させる。殺すのは最悪堕天使だけ。はぐれエクソシスト等根絶やしにしなければならない存在ではない。

 

「お前は!?」

 

目の前に現れたのは金髪のゴスロリ、ミッテルトだったか?

槍を出現させこちらへ投げてくるが掴んで投げ返す……ああ、またやってしまった。

 

「こっのぉぉ!!」

 

俺の返した槍を危機一髪避けるがそれだけだ。実力差を理解できない頭の悪さなら殺されてしまっても文句は言えないが、ミッテルトは既に後退りを始めていた。

そして次の瞬間。ニヤリと笑ったかと思うと俺の背中から槍が突き出してきた。ああ、レイナーレが後ろにいたのか。

 

「回復をしてみなさい……次の瞬間その部屋にいる男を殺すわ。」

 

レイナーレが槍を少し震わせながら言ってくる…人質としての役割はこういう事か。

 

「っ!?千鶴さん!?」

 

「千鶴!?」

 

困ったものだ。更には人が来てしまった。アーシアにリアスか……この場に置いてこれ程面倒な事は無い。

 

「ア、アーシア!なんでここに!?」

レイナーレも流石にこの場にアーシアが来るとは思わなかったのだろう。動揺を見せた。

俺はすかさず槍を掴み砕いて傷を治す。内臓が切られる感覚にも慣れたもので、最初は治癒するのに結構時間がかかったものだ。

 

「ああっ!?」

 

回復した瞬間にレイナーレの腹を蹴り生徒がいるであろう扉に向かって吹き飛ばす。扉が破壊され奥から聞こえる男の声…調査報告ではあのエロ小僧兵藤一誠だったか。

 

「レイナーレ様!?このっ!」

 

「いや、だから攻撃が単調だって。ん?おい……そいつはなんだ?」

 

俺の後ろからミッテルトが蹴りを食らわせようと飛んでくるが俺は避けず足を掴み同じようにレイナーレの方へ投げる。

 

「な、帝先生!?」

 

「おう、兵藤。ちょっと待ってろ。今から助けてやる。」

 

足と手に縄が縛ってあり身動きが十分に取れない姿…生徒に手を出した報いは受けてもらわないとな。

 

「う、動くな!」

 

レイナーレが槍を空中に出し兵藤へ向けていた。だが脅すならもう少し力の違いを理解してからにした方がいい。実力が離れすぎてると意味の無い行動だからな。

俺は手に氷の魔力を精製しレイナーレへ向けて投げる。

 

「少しは頭を冷やしな、ヒャド。」

 

レイナーレに氷の魔力がぶつかると周囲に冷気を放つレイナーレの氷の像ができた。

身動きが出来なくなったレイナーレを見て腰を抜かすミッテルト。これで終わりだろう……そう思った瞬間。レイナーレの手から離れていた槍が消えずに兵藤の胸に突き刺さった。

 

「え……と、あ、れ?」

 

口から血を溢れ出させ目の焦点が合わなくなってきている。しまったな最後の最後で気を緩めてしまった……ん?

 

「リアス……あいつはお前が治せ。俺はこいつらを連れて行く。」

 

兵藤の意識が薄れていくのと同時に感じる人間でも悪魔でも堕天使でも無い気配が兵藤からするが、俺の知っている気配に近いそれに興味が湧いた。兵藤には悪いがリアスの眷属不足もあるし、もしその気配が本物ならかなりの力を宿していることになる。

俺はそうリアスに告げ、腰を抜かしているミッテルトとレイナーレの氷の彫像を掴み教会を出た。

感じる気配はアザゼルのもの。予定より早く来てくれたようだ。

 

「ルーラ。」

 

祐斗の事も気になるが今は厄介払いが先だ。俺は家に来ているアザゼルの気配を察知すればルーラで向かった。何やらミッテルトが叫んでいたが興味は無い。

家の前に着けばアザゼルが青い顔をして家の門の前で立っていた。

 

「中に入ればいいじゃ無いか。」

 

「アザゼル様!?」

 

「いや……お前家に何がいるんだ?さっきから入ろうとするととてつも無い殺気が……」

 

ああ、親父の加護か……家自体を動かす分には問題無いみたいだが。

ミッテルトはアザゼルの姿を見て目を見開いて俺の顔とアザゼルの顔を交互に見ていた。

 

「ほら、さっさと連れてけ。」

 

「……1人氷漬けじゃねえか。」

 

俺がミッテルトとレイナーレの氷の彫像をアザゼルへ押し付けるとつめてぇ!と言ってレイナーレを見ていた。

お前のとこなら解凍できるだろう。

俺はさっさと連れてけと家の中に入りドーナシークとカラワーナを呼びつけアザゼルへ引き渡した。

 

「ほんとにすまなかった。また詫びに来る。」

 

「千鶴様、この命…いつか必ずあなたへお返しします。」

 

「……………」

 

アザゼルが頭を下げそう言うとドーナシークはそう告げ跪いた。こいつの命を貰っても仕方ないと思い好きにしろと伝え、カラワーナはアザゼルと本当に知り合いだった俺をただただ見ていた。口がパクパク動いている。ミッテルトは先程から絶句している。

アザゼルは俺の早く行けと言う目に耐えれなくなったのか早々に去っていった。

レイナーレはドーナシークが担いでいた。

 

 

 

次の日、驚愕するような事態になっていた。

 

「こんにちは、千鶴さん…あ、いえ、帝先生。」

 

「どもっす、帝先生。」

 

兵藤が悪魔になり、更にはアーシアまで悪魔になっていた。それにうちの制服を着て。

うん、似合ってるな。

 

「詳しい説明を聞く?」

 

「兵藤についてはまあ分かるがアーシアは?」

 

兵藤を治せと言ったからには眷属にした…それは理解できるがアーシアは眷属になる利点が無い。

ただでさえ肉体の損傷を治せる神器を持っているアーシアを、簡単に自分の眷属にするのは危なっかしい。

 

「……実は千鶴が去った後にフリードが来て、アーシアをね……。祐斗が見つけられないわけだわ。あいつ森から直ぐに抜けて教会に入ってきてたの。隠し通路があったのは誤算だったわ。」

 

そう言うことか。まあ今こうして生きてるならいいさ。

まあアーシアのようなシスターが悪魔に身を受け渡したと考えると少し複雑だが。

 

「フリードに意表を突かれ逃げられました…すいません!」

 

祐斗が申し訳なさそうに頭を下げてきた。フリードに復讐をするかと思ったがそこまででは無いようだ。

 

「いいさ…生きてるならまた機会がある。それより兵藤とアーシアに詳しい話は?」

 

「ほとんどの事は話したわ。後は貴方の紹介だけね。」

 

どうやら自分が悪魔になった経緯を聞いてどう反応したらいいか迷っている感じだな…まあリアスに抱きしめられると鼻の下を伸ばすから深刻じゃないな。黒歌に手を出したら容赦しないが。

反対にアーシアは落ち着いている。悪魔になっても根本的なところが変わらないのはいいことだ。

俺と目を合わせるとにこりと笑い頬を赤く染めている。天使とはこういった子を指すんだろう。

 

「にゃ、何の話をしてるにゃ?」

 

「知らない人が2人いますね。」

 

黒歌と白音が部室にやってきた。白音が日直で黒歌が終わるのを待っていたんだろう。

そんなことより気になる事がある。

 

「黒歌!お前はまたそんな格好をして!」

 

「うにゃっ!?こ、これはち、違うにゃ!」

 

俺が怒鳴ると部室にいる全員がビクッと体を震わせ、自分が怒鳴られている相手じゃないとわかった者は息を吐いていた……アーシア、リアスの後ろに隠れても意味が無いぞ。

 

「何が違うんだ?いつも言ってるよな?そんなだらしない格好で校内を歩くなって。」

 

胸元は大きくはだけスカートは膝上…こんな子になってしまって兄さんは悲しいな。

それにブラジャーもしていない。谷間など丸見えだ……ほらみろ、兵藤が黒歌の姿を見て鼻血を出している。

朝は普通の格好でいるのにここに来るとあんなだらしない格好になる……気が抜けてるな。

 

「にゃあ………」

 

「兄様、姉様を怒らないであげて……やっと放課後遊べるようになってはしゃいでるだけだから。」

 

白音…優しく言ってるつもりだろうがかなり黒歌が傷ついてるぞ?

まあ仕方ないか…俺の不手際が招いたことなら。

 

「明日からは気をつけるんだぞ。」

 

「っ…うん!」

 

仕方ないとばかりに頭を撫でてやる…白音も物欲しそうな目で見ていたので一緒に。

撫でていると猫耳が出てきたのを見た兵藤が目を丸くしていた。

 

「改めて自己紹介だ…帝千鶴。この学園で体育教師をしている。このオカルト研究部の顧問でもある。帝黒歌と帝白音の兄だ。よろしくな、兵藤。」

 

「よ、よろしくお願いします!あ、俺の事はイッセーでいいっすよ。友達からもそう言われてるし。ちなみに2年っす。」

 

「アーシア・アルジェントです。今日からこの学園に通わせていただきます。イッセーさんと同じクラスなんです。」

 

「帝黒歌。3年よ……へえ、あの変態3人組のひとりがねぇ……。」

 

「帝白音、一年です…よろしくお願いします、イッセー先輩、アーシア先輩。」

 

ちなみに猫又だと付け加えるとイッセーはおおっと口を開けて珍しそうに2人を見ていた。

まあ悪魔がいるってことは妖怪もいる…それぐらいはわかってるんだろう。

 

「よろしくお願いします。黒歌先輩、白音さん。」

 

「変態3人組……。し、白音ちゃん、そんな目で見ないでっ!?」

 

どうやらみんな仲良くなれそうだ。

アーシアは早速白音と雑談を始め、黒歌はイッセーをいじり始めた。

 

「ちなみに2人に使った駒は何なんだ?」

 

確か残ってるのは戦車が2つ、騎士が1つ、僧侶が1つ、兵士が8つだったか?

アーシアは神器を見る限り僧侶だろう。イッセーはポーンか戦車だな。

俺はリアスにどうなんだと言う視線を向けた。

 

「千鶴の想像通りだと思うわ。アーシアは僧侶、イッセーは兵士よ。」

 

まあ当然か。元人間にいきなり戦車の駒を渡しても存分に力は発揮できないだろうしない。

だが気になることはまだある。あの時イッセーから感じた気配…あれが俺の想像通りなら兵士の駒はもう1つも残ってないだろう。

 

「……それでいくつ使った?」

 

「……8つよ。イッセーが出した神器は見た目は『龍の手(トウワイス・クリティカル)』何だけど、それだけで兵士の駒を全部使うなんて信じられないの。」

 

確かに…普通の龍の手なら兵士1つで足りる話だ。でもまあ悪い話じゃ無いな…兵士8つ分の実力を隠しているイッセー。回復担当のアーシアが眷属になった。少しはグレモリーの眷属として機能してきただろう。

 

「まあそういう事で、新しい部員も増えたことだし……こ、こんなものを用意してみたんだけど。」

 

リアスが指を鳴らすと机の上にケーキが現れた。

手作りか…こういう女の子ぽいところは見ていて和むな。

 

「これ部長の手作り!?まじっすか!?」

 

イッセーは感激で小躍りしている……若いなぁ。白音、涎を拭きなさい。

しかし結構忙しい1週間だったな……そろそろ修行も再開させてみるか。イッセーとアーシアもリアスの眷属になったのだからそれなりに力はつけておいていいだろう。

俺はそんな事を考えながら部室の端で賑やかな彼女らを見ていた。

俺はただの顧問…こいつらが卒業するまでは一緒にいてやろうとケーキを頬張り感激の表情になっているイッセー、朱乃にお茶を貰いながらケーキを一心不乱に口に詰め込んでいる白音、端から見れば仲のいい姉妹のようなリアスとアーシア、そんな様子を見ながら笑っている祐斗、……俺の隣でケーキを口に入れ迫ってくる黒歌。

 

「何黄昏てるの?兄さんも一緒に食べるといいのに。」

 

「そんなのじゃないさ……黒歌、お前は今幸せか?」

 

「……幸せにゃ。兄さんもいて白音もいて…こんなにいっぱい友達ができた。兄さんが…ううん、千鶴がいなかったらこんな生活夢のまた夢だったと思う。兄さんは優しいし…たまに怒るけど…けど大好きな人と一緒にいられて私は幸せ。」

 

黒歌は俺の目をじっと見てそう言い切った。それならいいさ…家族が幸せな事が俺にとっての幸せだ。こいつの笑顔を見れば俺も笑顔になれる…。

俺は黒歌の頭を撫でながらみんなを見る…俺の家族は黒歌と白音だけだ。けど友人っていうのはこんなに…いやもっといる。期待に応えようなどとは思わない。俺はただみんなが笑顔ならそれでいいのさ。

 




いやぁ、個性派ばかりの作品だからかキャラがぶれる(笑)
っ徐々に直します!

それでは誤字等ありましたらお教え下さい。
感想などもお待ちしてます。


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さあ特訓しよう!

契約書

1・いついかなる時も自分の限界を決めつけるな。
2・相手が仲間であろうと組み手の最中は全力で。
3・諦める、やりたくない、攻撃できません、これはできない等の発言をしたものは顧問である帝千鶴と本気の殺し合い。
4・不可抗力等で殺してしまった、死んでしまっても生き返らせるので成仏しないこと。
5・それぞれの特性を理解して王であるリアス・グレモリーに誠意を示すこと。
6・(何かで濡れて滲んでいるのか読めない……)
7・上記(6)の事柄を守らなかったものは塵へ還れ。


イッセーside

 

おっす!俺は兵藤一誠!仲のいい人はイッセーと言う。

実は悪魔になったらしく、朝はとてもエライ…日光にここまでイライラさせられるなんて思ってもいなかった。

あの日…俺が堕天使に捕まりリアス・グレモリー…俺のご主人様に助けられ悪魔になった。

ただの高校生だった俺がこうして悪魔でいるのはその堕天使の槍に突かれたかららしい…まあ死んじまったのは仕方ない。原因を作った堕天使は帝先生が何処かへ連れてったらしい。俺がちゃんとしていればと帝先生は言っていたが今生きてるのはみんなのおかげですと伝えたら微笑を浮かべてくれた……あの人が本当に女だったら惚れそうな顔だった……いやいや!俺そっちじゃないし!

けど黒歌お姉様のあの体は凄い……部長や朱乃さんも凄いが、黒歌お姉様のように魅せている姿を見てしまっては脳に焼き付いて仕方ない。

まあそんな事を口にしてしまえば帝先生に消されるんだろうけど……あの人は人間らしい。猫又の妹達を持ち部長でさえ信頼するほどの人だ……羨ましいな!

 

「ほんとっに!!」

 

「イッセー、あなたもう3周遅れよ?」

 

「イッセー君、頑張って下さい。」

 

そんな事を考えていると横から声をかけられた……お、おっぱいが揺れてる!!

そう、今は朝の五時……俺たちオカルト研究部は帝先生の指導の下ただいまランニング中だ。

全力で走って校庭を10周……既に木場と黒歌お姉様、白音ちゃんは終わっており休憩をしている。

この全力って所がミソで、まず全力で走ったら2周目から脇腹が痛くなってきた……因みにアーシアは1周目で倒れた。顔面から倒れたが帝先生が助けていたので怪我は殆ど無いだろう……本当は心配だけどな。

けどアーシアに気をとられていると命がない……マジで。

と言うか、見せられた契約書が頭から離れない……塵へ還れってなにさ!別の紙も用意しておいてくれてもいいんじゃないかな!?

 

「イッセー君!」

 

木場が叫んでいた……ああ、死ぬ!?

 

俺の後ろを追いかけてくる黒い影……帝先生が魔力を練って作った人形だ。

この人形…両手に氷と炎の刃を持ち追いかけてくるのだ!

 

「うわぁぁぁ!」

 

「イッセーさん!?」

 

アーシアが叫び声を上げていた!

ああ!制服が凍った!?

帝先生の訓練はまず準備体操から…体を柔らかくするのに30分。おかげで1日目にして体を折り曲げ手が地面に着くようになった。

そしてランニング…まだ始まったばかりなのに死にそうになる俺って!?

 

「イッセー!お前の実力はそんなものか!走り切ったらリアスがお願いを1つ聞いてくれるって言ってるぞ!」

 

「んな!?」

 

おおおおおおおおおおおおお!おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい!!

 

「……欲望に忠実だな。」

 

帝先生が何か言ってるが今はいい!俺は部長のおっぱいに触らせて貰うため限界を超えて足を動かした。

 

「はぁーーーはあ、はあ、はぁ!」

 

何とか走り終わり息を整えている俺に部長が近づいてきた。

 

「お疲れ様イッセー……貴方は凄いわ。私たちでさえ1日目でこれは走りきれなかったのに。千鶴はあんな事言ってたけど…何のご褒美がいいかしら?」

 

「えっと……あの……」

 

いざとなったら言葉が出てこなかった……くっそ、面と向かっておっぱい揉ませてくださいって言うのにこんなに度胸がいるなんて!

 

「そうよね、まだ疲れてるわよね……ん。」

 

うはぁぁぁ!や、柔らかいものが額に!?しっとりしてて……ああ……今死んでもいいかも。

俺は部長に額にキスをされそんな事を考えた。

 

「ほら、後は二人一組で特訓だ。祐斗は白音と。アーシアは黒歌と。リアスは朱乃と。イッセーは俺とだ。」

 

………はぁぁぁぁ!?いやいやいや!?帝先生とワンツーマンって!?

ああ…父さん、母さん。俺…逝きます。

 

イッセーside out

 

祐斗side

 

僕の目の前にいるのは帝先生の妹である白音ちゃん。力とスピード…どちらも上級悪魔に匹敵する程の実力を持っていて、僕と訓練するのは日常茶飯事だ。

僕の課題は白音ちゃんに砕かれない魔剣の創造とせめて白音ちゃんを目で捉えられるようになる事。

今の所スピードでは勝ち目は無いが、強度に関してはもう少しと言う所だ。

初めて組み手した時は作ったそばから砕かれていたが今は3撃なら耐えられるぐらいまでになった。

 

「余所見ですか?兄さんが相手なら30回は死んでますね。」

 

「ぐっ!?し、白音ちゃんの本気を出させるなら余所見した甲斐もあるよ!」

 

作り出した魔剣数十本をひと殴りで砕く白音ちゃん…ははは、僕の魔剣をこんなに簡単に砕くのは白音ちゃんたち帝兄妹だけだよ。

 

「勘違いしないでください……本気なんて一回も出して無いですよ。」

 

っ!?そうだね……この組み手の条件は白音ちゃんが本気を出させたりするな。後は白音ちゃんに触れるなだった。

もし白音ちゃんが本気になったら僕は肉団子になるらしい……それに白音ちゃんに触れたら帝先生に塵にされる。これを突破するとは違う訓練で、ただ自分の実力の底上げなのだ。

 

「これならっ!」

 

魔剣創造で作る細身の剣…魔剣としての位は一番低いものだが今では強度は僕が今まで作れた魔剣の中でも一番の物になっている。今作れる最高の強度を持つ魔剣を作るのにはまだ時間がいる。

今はこれで時間を稼ぎ隙を突くしかない!

 

「甘いですね……これは耐えれますか?」

 

白音ちゃんの拳に感じる力……気と妖力、そして仙術を組み合わせた白音ちゃんの技『千樹』。体に喰らえば内臓の機能は一時停止するであろう気の使い方、生命力を吸い取る妖怪の技を仙術を使い昇華させた対人型のスタイルだ。

あれを一度喰らうとリアス部長でさえ足腰が立たなくなり吐血するほど…今の僕が耐えられるとは思えないが『千樹』を出させた事は大きな進歩だ。

この1年下級生に苛め抜かれる苦行を耐えた僕へのご褒美なのかな……嬉しくないよ。

 

「いきます……『塔壊』。」

 

「ちょっ!?」

 

千樹は戦術形態…その1つ塔壊は相手を壊す事に長けた技だ…そう僕の右肩が外れたのがいい証拠だ。次に来るのは左肩かな?ああ……条件を変えて欲しい。

僕は薄れゆく意識の中そんな事を考えていた。

 

祐斗side out

 

アーシアside

 

こんにちはいい天気ですね……今は朝の6時。日も上がり今日も元気に行きたいと思います。ああ、主よっ!?痛いです……。

悪魔の身になったのは昨日…今まで朝は清々しいものでしたが今日はとても疲れてます。それに祈りを捧げようとすると頭に痛みが…悪魔が神に祈るとこんな罰があるのですね。

それに朝から特訓だと言われランニングをしたのですが…直ぐにばててしまいました。けど帝先生に抱き起こしてもらったので嬉しかったです。

 

今目の前にいるのは黒歌先輩。帝先生の妹でこの学園の三大美女の1人です…凄い体です。

 

「アーシアの特訓内容は私に一任されてるから、私の事は師匠って呼ぶ事。」

 

「はい、師匠!」

 

私の特訓内容…一体どんなものなんでしょう?

 

「にゃはは、そんな難しい事じゃないよ。アーシアの神器は回復でしょ?それを成長させた方が戦力増強になると思うの。」

 

確かに私の神器『女神の微笑』はどんな存在でも回復をさせる事ができるもの…。この力で聖女から魔女へと言われるようになりましたけど、今ここにいる人たちはそんな事を気にしている様子もなく私を友達として見てくれる。これだけで私は幸せです。

 

「けどどうしたら……?」

 

「簡単にゃ。」

 

そう言って自分の手首を爪で引っ掻く黒歌先輩……

 

「きゃあぁぁ!?」

 

私は黒歌先輩の手首に手をかざし『女神の微笑』を発動させ傷を回復させる。なんでこんなことを………まさか!?

 

「にゃはは、そゆこと。これからは私の怪我を治す事がアーシアの修行。」

 

やっぱり……血を見るのは怖いです。今も手が震えてます……。

 

「アーシアは優しいね。けど……リアスの眷属になったからにはこれぐらいの怪我をする子は多くなるよ。それを治すのはアーシア。」

 

そう言われて私は息を飲んだ。私はリアス部長達の助けになりたい。けど私は戦闘なんて無理だ…レーティングゲームと呼ばれる物がありそれに参加するのは何となく分かっている。リアス部長がレーティングゲームの話をしていた時楽しそうな顔をしていたからだ。

 

「これで私は強くなるんでしょうか?」

 

「お姉さんに任せなさい。グレモリー眷属1の僧侶にしてあげる。」

 

そう言って笑う師匠はまた手首に傷をつける…それを私が治す。

師匠についていけばみんなの役に立てる。私はそう考えて傷を治す修行を始めた。

 

アーシアside out

 

リアスside

 

私の目の前にいる朱乃…手に纏っているのは雷。

これから行うのは組み手。私の滅びの魔力と朱乃の雷…どちらが先に相手に傷をつけられるか。

千鶴の修行で力を確実につけている朱乃に比べ、私は何の進歩もない……。

 

「浮かない顔ね、リアス。」

 

「……何でもないわ。行くわよ朱乃!」

 

私は憂いを捨て掌に魔力を溜める……少しでも千鶴に近付けるように…みんなの王として、私は情けない姿を見せられない!

 

「来なさいリアス!」

 

朱乃がそう言うのと同時に雷が私の周りに落ちてくる…もう遠隔操作できるまでになっている!

私が後退をすると追尾するように落ちてくる雷…くっ!?

 

「喰らいなさい!」

 

私は魔力を朱乃に向かって放つ…けどそれは朱乃の前に現れた雷の膜が防ぎ、膜が壊れる前に朱乃が移動する。

紅髪の滅殺姫の名前も廃れてしまうわね!

 

「どうしたのリアス?あなたの力はそんなものだったのかしら?」

 

「ふふふ、朱乃……本気で行くわよ!!」

 

軽い挑発だけど乗ってあげる……今は私と朱乃の戦いだ。

ありったけの魔力を込めた掌を見て朱乃が頬を引きつらせる。

負けるわけにはいかない……千鶴の期待に応えるために!!

 

「きゃっ!?」

 

「ふふ、リアス…後ろがガラ空きよ。」

 

私の背中に雷が落ちる……まさかやる気になった所を狙われるなんて……。

もしかしたら私は自分の眷属達に負けている……?

私は地面に尻餅をついてイッセーと対峙している千鶴を見る。少しでも近付きたい存在はまだまだ遠い。

 

リアスside out

 

イッセーside

 

俺の目の前にいる帝先生……これあれだよな?殺気?冷や汗が止まらなくて悪寒も凄い。ただ睨みつけてくるだけだが、もし目を逸らしたら俺の体が引き裂かれると思う程の殺気。

 

「……っ!?」

 

急に殺気が消えたと思ったら目の前にいた筈の帝先生がいなかった。

瞬間移動!?

 

「観察力を養えなんて言わない。イッセー、お前はグレモリー眷属の中で今は最弱。力?守り?頭の回転?そんなものはまだいらない。まずは直感等の感覚を掴め。それがお前を強くしてくれる。」

 

帝先生はそう言いながら俺の体に掌底…掌を俺の体にぶつけてくる。威力はかなり抑えてくれているようで痛みは感じない……けど!

 

「くっそぉぉぉ!」

 

俺が拳を振り回すが当たらない…当たり前だ。喧嘩も高校に入ってからしてないし、この先生は体育教師…それに堕天使を圧倒する実力を持っているのだ。

 

「お前の修行内容は俺の出す手を掴むこと。どこから攻撃してくるのか先読みして俺の手を掴め。」

 

んなことっ…言ってもっ!?

俺は避けることも防ぐこともできず帝先生の攻撃を受け続けている。

もしこれが本気の攻撃だったら…一般人でもナイフを持ってる相手だったら?そんな例え話も俺の体に掌底を喰らわしてくる帝先生の姿を見れば例え話じゃなくなる。

 

「もう少し早くするか?」

 

「意味ないっす!?」

 

更にスピードを早くしようとか言ってくる先生…既に姿が見えないのに無茶だ!?

 

「なら頑張れ。」

 

後ろから聞こえてくる声。それに合わせ後ろに向かって拳を振るが頭の上に喰らう掌底……もう訳がわからない!!

そうして俺は1時間……先生に翻弄され続け意気消沈していた。

この人…スペックが高すぎるんじゃ?そんな事を思い授業が始まる前まで休憩をしていた。

木場は両腕と両脚の骨を外され帝先生に治されていた。

朱乃さんは部長と雑談しており、アーシアと黒歌お姉様は雑談しているがお互い服を赤く染めていた………ナニアレ?

ああ、悪魔になってみんなの裏の顔が現れたみたいだ……。

 

イッセーside out

 




さて今回は特訓会です。
え?ライザー?だからサンドバッグですって。

次回はお仕事編。
その後2巻へ行きます。

誤字等ありましたらお教えください。
感想などもお待ちしてます!


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悪魔のお仕事編…魔神ミルたん…

ミルたん登場。
アレはなんなんだろう…本当に……という事で出しました。
祐斗とイッセーとアーシアが犠牲になります。


千鶴side

 

イッセー達の特訓を始め1週間が経とうとしていた時、リアスはイッセーとアーシアに悪魔の仕事をさせるため祐斗と3人で手を繋いでいた。

イッセーは魔力が悪魔の赤ん坊より少ない。アーシアはまだ転移の魔方陣を発動できる魔力を持っているが流石に新米2人で仕事をさせるのは難しいだろうと、今回は祐斗と一緒の仕事で感覚を掴むようだ。

どうやら先方は祐斗を呼んでいるらしく、魔方陣が既に展開されていた。

 

「まあ悪魔の仕事は願いを叶え対価を貰うっていう簡単な仕事だ。今回はイッセーとアーシアは参加するわけじゃないからちゃんと祐斗の姿を見ておくんだぞ。」

 

「「はいっ!」」

 

「……言いたいことは言われてしまったけど、あなた達ならこれを機に1人でも仕事はできると思うわ。あ、後は祐斗の邪魔にはならないようにね。あなた達は祐斗がどんな仕事をしているのかを学んでちょうだい。」

 

俺とリアスがそう激励を送るとアーシアは少し不安気ながらも、イッセーは祐斗と手を繋いでいるのが嫌なのか顔を顰めていたが、魔方陣が光り輝くと3人の姿はそこにはなかった。

 

「どうぞ。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

俺は朱乃にコーヒーを入れてもらい喉を潤す。

因みに白音と黒歌は家で寝ている……まあ夜中だしな。これはグレモリー眷属の事であってあの子達は関わる必要はない。

それに最近黒歌のスキンシップが激しさを増し、昨日なんて白音と一緒に風呂にまで入ってきた。成長した妹達の姿に理性が飛び掛けるも無様な姿を見せられないと堂々としてたら2人とも悲しそうにしていた。

ちょっと心が痛かったが、兄妹で貫いてる以上間違いを起こさないようにしなければならない。

俺はイッセー達が帰ってくるまでのんびりと会話をしていて、たまに呼ばれるリアスと朱乃を見ながらある事を考える。

 

あれは俺がこの町に来た時の事…。

はぐれ悪魔が町の外れにある倉庫街へ行った時…俺はそこで魔神を見た。

何を言ってるか分からないだろうが、俺ははぐれ悪魔を立っているだけで圧倒している漢にあった。

名前はミルたん……ふざけた格好と笑えるような状況では無く、はぐれ悪魔は睨まれただけで霧散していた。

ミルたんは俺に気付いていたんだろう…こちらに首だけを向けると「まだまだ魔法少女には遠いにょ」と言って姿を消した。

既にある意味魔法少女だと叫びたかったが、気付くと俺は体を震え上がらせ畏怖なる存在を目の当たりにしたことでもっと強くなろうと決めた。

あれからミルたんにはあっていない。もし会えたなら一度手合わせをしてみたいと思うのは、今の俺がどのくらい強くなったのかを試したい相手だということだろう。

 

千鶴side out

 

イッセーside

 

俺の目の前にいる巨漢……今夜木場を呼んだのはこの漢……の娘らしい。

名前はミルたん…木場も固まっており、アーシアは既気を失っている。

ミルたんのお願いは魔法少女にして欲しいとの事…木場がこちらを向いてどうしたらいいと口パクで言っていた……悪いな木場。俺はただお前の仕事っぷりを見に来ただけだから口を出さねえよ。

俺がそんな目線を送れば木場は帝先生、僕に力を…と祈ってた。神に祈らなければ頭痛は来ないんだな。アーシアは毎日頭を抱えている……あ、そう言えばアーシアは部長の計らいでホテルに住まわせて貰ってるようだ。

あの教会に住むかと思ったが違うらしい。

 

「い、異世界とか行ってみてはどうでしょうか?」

 

「試したにょ……でも魔法的力はもらえなかったにょ。」

 

……部長助けてください。異世界って、異世界って!!!

しかも行ってんのかよ!?

 

「と、取り敢えずできるか見てみますね……。」

 

木場が何やら携帯のような物を取り出して何かを入力していた。

ん?木場がこっちに向かってくる。

 

「どうしたんだ木場?早く仕事を見せてくれよ。」

 

俺は苦笑いを浮かべ木場を見る……何で泣いてんの?

 

「……これはね、依頼主のお願いを入力して起こる現象、実際叶うかどうか検証したりできる画期的な機械なんだ。」

 

へぇ……じゃあミルたんを魔法少女にするにはどうしたらいいかとか書かれてるんだな。

俺は木場に見せられた画面を見る……え?

 

「な、なんか赤黒い画面だな……。」

 

木場がプルプル震えてる。こんな木場に姿を見れるなんてな……。

けどさっき入力してるように見えたけどまだなのか?あ、あてかNOW-loadingみたいな……

 

「よく見てよイッセー君。」

 

木場がずいっと俺の目の前に画面を見せる。なんだよ…別に…なんにも………えっと?無理……無理……無理しか書かれてねえ!?

 

「木場どうするんだ?」

 

「無理と書いてあるからには無理なんだろうね……他のお願いがあるか聞いてみるよ。」

 

顔面蒼白だがやることはやるようだ……頑張れ木場。応援してる!けど俺だったら契約しないけどな!

その後ミルたんがにょぉぉぉぉぉぉと叫んだ後、俺と木場はミルたんと一緒にアニメ『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』を見た。因みにアーシアは起きる度にミルたんを見て気絶し、起きてミルたんを見て気絶というスパイラルを繰り返していた。

 

イッセーside out

 

千鶴side

 

「で、リアス……お前は何をそんなしかめっ面で俺を見てるんだ?」

 

今いるのは職員室…俺の目の前にはリアス。持っている紙は契約書。

昨日リアス達が仕事をして、依頼主に書いてもらうアンケート用紙みたいな物を一枚持ち俺に差し出してきた……何々?とても楽しかったにょ。悪魔さんの中にもいい人はいるとわかってミルたんは感激にょ。今度は契約を前提に呼ばせてもらうにょ……ミルたん!!!

 

「リアス………こいつの家は?」

 

「千鶴?えっと……実は感知できないのよ。いつもはこの紙が来るとどこにいるのかはわかるのに、これに関してはこちらから接触できないようになってるみたいなの。」

 

……魔神…いや魔法少女ミルたん。もしかしてこの町にいるのだろうか……俺は期待を胸に空を見た。

 

その日の放課後、昨日は散々だったのかイッセーとアーシアは顔を青くしており、祐斗は体調不良で夜に来るらしい。

 

「大丈夫アーシア?」

 

「はい……師匠、私は一体何を見たのでしょうか?」

 

アーシアは黒歌を師匠と呼び手を握っていた……最近黒歌に感化されてきたのかスカートの丈が少し短くなってきているアーシアを見て、やはり

ミルたんの事は覚えてないようだった。

今日も特訓で少し強めに手首を切った黒歌をボーと見ていて、俺が声をかけなかったら黒歌の血でアーシアが真っ赤になるところだった。

 

「……イッセー、今夜はあなた1人で行ってもらうわ。もちろんアーシアも。」

 

リアスは心配そうに2人を見るも、仕事をさせなければならないためそれぞれの頭を撫でてやる気を出させていた。

まあミルたん以外なら2人にはなんの問題もないだろう。

 

「今日は私と朱乃の仕事を1つ代わりにやってみてちょうだい。もちろん新規の依頼主だから、あなた達が契約を取ってきてくれると嬉しいわ。」

 

リアスは笑みを浮かべそう言っているが、内心昨日のような事がないか心配なのだろう……まあ杞憂に終わったが。

イッセーとアーシアは見事に契約を取った。

イッセーの依頼主は美人のお姉さんだったようだ。魔力が無いため自転車で依頼主の下へ行ったが契約を取れて喜んでいるのか、はたまた対価にイイモノを貰ったのか……そんなイッセーを見てアーシアは顔を引きつらせている。

アーシアの依頼主は貧乏学生だったらしい。

優しい言葉をかけ悩み相談を受け見事に契約を取れたと俺に抱きついて報告をしてきた……今のイッセーなら俺に一発拳を当てれるかもしれないな。2つの意味で。

そんなこんなで2人の初仕事は成功に終わった。

祐斗もミルたんに合わずに済んだようで今日は清々しい顔で契約を取っていた。

 

俺がアーシアの頭を撫でていると後ろから2人分の視線を感じた…黒歌と白音だった。

明日は…もう今日か。もう今日は休日なので2人もオカルト研究部に顔を出していた。

 

「どうしたんだ?」

 

俺が2人に視線を向けるとプイッと顔を逸らされる……何かしただろうか?

俺は訝しげに2人を見ていた。

 

千鶴side out

 

黒歌side

 

明日は休日…私と白音はオカルト研究部に来ていた。

時刻は深夜1時……平日ならもう寝ている頃だ。

何で今日はオカルト研究部に来ているかと言うと……私が我慢できなかったから。

 

「姉様、いいんですか?」

 

「……よくない。」

 

兄さんは私たちというものがありながら今アーシアを抱きしめ頭を撫でている。

そりゃあ日本で初めてできた友人で、優しくて、カッコいい大人の男なんて惚れるのもわかる……。

けど……千鶴を誰かに取られるかと思うと胸が苦しくなる。

小さい頃から一緒の人だから恋愛感情なんて湧かないだろって?そんなわけない。千鶴程私たちの事を考えてくれている人なんていない。

いつも助けてくれるヒーロー。自分ではそんな事ないと言っておきながら私たちの事になると魔王を打ちのめしてしまう程。

そんな姿を見てきたからだろう……私はいつの間にか千鶴を兄ではなく1人の男としてみていた。

けど私の想いは届かない……千鶴が私や白音を見る目は女を見る目じゃない。

それが嫌でこの前は千鶴が入浴中の所に白音と一緒に乱入した。

 

結果は惨敗。逆に私が恥ずかしくなり白音は早々に出て行った。

 

私の体に魅力が無いのかにゃ?これでも朱乃とリアスとはいい勝負だと思う。

 

「くすぐったいです、先生。」

 

頭を撫でられて嬉しそうにしている私の弟子……最近は私が血を流しアーシアが治すという行為の最中にもお互いの事を話すほど血に耐性が無くなってきた。

それは喜ばしいところだが、アーシアに千鶴のいいところを話し続けたからだろう…アーシアが千鶴を見るその目は乙女の物だった。

 

「そう言えばアーシアは今ホテルで過ごしてるんだよな?」

 

イッセーが思い出したかのようにそう言った。

確かリアスが家を用意できなかった代わりにホテルに住む事が出来るようになったらしい。

 

「はい!凄く快適です!……けど1人はちょっと寂しいです。」

 

ああ……この流れはダメにゃ。

と言っても私が教えた事だ……千鶴は困ってる人をなんだかんだ言って助けてくれるの。自分の家族じゃ無いからって突っぱねても……。

そんな言葉を覚えていたんだろう…アーシアがチラッと千鶴を見ていた……

千鶴もちょっと困った顔をしてるけど多分良いって言うはず。

 

「……リアス、どうだろうか?俺の家ならまだ空き部屋があるし、黒歌達もいる。まあリアスが自分の家に連れて行けるなら一番いいんだが。」

 

人間界にあるリアスの根城は豪邸らしく、女王の朱乃でさえ行った事は無いらしい。

リアスも少し考えているが結局千鶴の案で、明日からアーシアが家に来る事になった。

 

「……………」

 

「姉様?」

 

白音はまだ恋愛感情なんて知らないからまだ余裕がありそう……けど私は内心イライラしていた。

アーシアが家に来るという事は家族のようなものになる事……今まで学校でしか会えなかった千鶴に家でも一緒に居られると分かればアーシアも積極的になるかもしれない。

 

「負けないにゃ!」

 

私が立ち上がりそう宣言すれば、アーシアははいっと大きな返事をした。

リアスは訝しげに見ていたがリアスにはまず負けないから大丈夫。

千鶴がどうしたんだ?という目線を向けてきたので私は恥ずかしくなり白音の薄い胸に顔を埋めた……

 

「何か失礼な事考えてませんか?」

 

「……白音は怖いにゃ。」

 

考えている事が分かるなんて凄いね白音。

後千鶴……ううん、兄さん。アーシアは小悪魔だから気をつけて……。

私は頭をぐりぐりと白音に小突かれながら、明日から騒がしくなるであろう我が家の事を考えていた。

 




祐斗結構好きです……ホモォじゃないよ。
オリ主がガクブルしたのはミルたんで3回目です。

けどいつかミルたんと手合わせしたいと思っています(笑)

これでとりあえず原作1巻終了で、次回からは2巻……早くサンドバッグ君にあいたいな。

駄文失礼しますが、気持ちにゆとりを持ってお読みください。
もう少しでお気に入り200……評価なんていらないんでこうしたらいいんじゃ無いとかあったらお教えください。
こんな話どうよ?とかも是非!

では誤字等ありましたらご報告ください!


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戦闘校舎のサンドバック(不死)
新しい家族


今回から第2巻…通称サンドバック殴り編の開始です。
もう特訓無しでいきなりライザー君と戦える技量をみんな持ってますが、噛ませのライザー君は一体どういう反応をするんでしょうか?(笑)
ではどうぞ〜


千鶴side

 

朝4時30分……俺の平日の朝は4時から始まり朝食を作り、シャワーを浴びて黒歌を起こし(白音は俺が朝食を作ってる間に起きる)、先に食べる事なく待っている白音と、パジャマをはだけさせ色んなところが見えている黒歌に顔を洗わせ着替えを手伝う(と言っても着替えは自分でしてもらい俺は準備をするだけだ)。

3人で朝食を取りランニングを兼ねて学校へ行く…大体は校庭で特訓をするが、今日は野球部が朝練をやる為時間が取れなくなるのでグレモリー所有の別荘へ来ていた。

山の中にある別荘は木造で、いつもは普通の人間に見つけられないようになっている場所だ。

学校に着いたのは5時30分…既にリアス達も来ており、アーシアは少し眠たそうにしていた。今日の夜から我が家に来るので準備をしていたんだろう。

イッセーはぜーはーと息を切らしていたので、来る前に日課である筋トレとランニングをしてきたのだろう。

イッセーは転生悪魔だ。

悪魔になり体力など全てのステータスが上がったが、今のイッセーはアーシアより少し強い程度だ。

アーシアは元々戦う要員では無いが、黒歌の特訓の中では体力作りもしているらしく今は校庭でやる地獄ランニングを走りきれるようになってきた。

 

「全員揃ったわね。じゃあ行きましょう。」

 

そう言って俺の肩を掴む黒歌と白音。

リアスが魔方陣を展開させている間に俺は先に行き準備をしておく。ルーラで。

俺たちが飛んでいく様子を見てイッセーは口を大きく開けていたが、魔方陣の方が便利でもある…まあ起動時間を考えるとこっちの方が早いんだけどな。

そして俺は別荘に着き早速準備にかかる……今日は白音とアーシア、黒歌と朱乃、イッセーと祐斗、そして俺とリアスだ。

今はこのメンバーだが、いつかギャスパーが参加出来るようになったらまた新しい特訓を考えないとな。

最近はリアスの機嫌が悪い。

自分の実力の低さにイライラしてるのかと思ったが違うらしい……サーゼクスに相談でもするかな。

ひとまず今日は基礎をもう一度教える事にする……あいつは基礎を蔑ろにする節があるからな。俺も似たようなものだが。

そんな事を考えていると下から駆け上がってくる声が聞こえた。この坂も訓練してないとキツイだろうが、今のリアス達には何の苦にもならないようで、皆が涼しそうな顔で集まってきた…最後に来たのがイッセーだったので驚いたが、どうやら山菜を見つけた祐斗と競争をしていたらしい。

 

「まあその山菜は特訓終わりに軽く調理してやる。今日は白音とアーシア。黒歌と朱乃。イッセーと祐斗、リアスは俺とだ。各自散開して特訓開始!」

 

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

みんなが一斉に声を出すと山の木々が震えた……うん、いい感じだな。

俺はリアスを連れて別荘の裏へと回った。

 

「リアス、今日は基礎の復習だ。弱音を吐いたら?」

 

「っ!?安心して、弱音なんか吐かないわ!」

 

そういうリアスは少し青い顔をしながらも、基礎の土台である魔力を練り始めた。

俺の出した課題は魔力の出力威力アップと魔力を練る時間の短縮。今は少し魔力の量が増えているが、練る時間はかなりかかっている。

滅びの魔力は俺の知っている魔力に比べ質はかなり上質な物だ。

軽いな気持ち、精神で練ってどれだけデカイ魔力の塊をぶつけても効果は薄い。

だから高密度で上質な魔力を瞬時に作り出す訓練という事でやっている。

 

「遅い!野球ボールぐらいの魔力は1秒かかるな!」

 

「は、はい!!」

 

高密度の魔力は練るだけで集中力がいる。低密度の魔力なら瞬時に駒王学園の3分の1を作り出す事が出来るリアスにとって、決して難しい事では無い。

俺はリアスの魔力精製の姿を見て、まずはリアスの今抱えている問題をどうにかしないと先に進めないなとため息を吐いた。

 

千鶴side out

 

白音side

 

私の目の前にいるアーシア先輩は、神器を発動したまま立っている。

アーシア先輩の課題…回復力アップと範囲拡大の特訓の最中だ。

姉様は自分を傷付けアーシア先輩に治させる特訓をしていた。効果はあったようで、今のアーシア先輩の回復力は千切れた腕もくっつける事が出来るまでになっている。

回復力アップは順調だ。けど範囲はまだ手を翳した場所だけ…これでは折角の回復の力も宝の持ち腐れ…私が目指して欲しいのは、遠距離からの回復。

兄様は使う回復の魔力は数十メートル離れた人にも効果が出る。

兄様はこれが限界だと言うが、それでも四肢を千切った熊を瞬時に回復させた時はその魔法に目を見開いたものだ。

アーシア先輩の神器は怪我を治す物。疲労などは回復できないが、いずれは疲労も回復できるようになるだろうと姉様は言っていた。

だからアーシア先輩には、まず自分の周囲に入った人の怪我を治せるようになる…所謂ヒーリング・スペースなるものを作ってもらう。

周囲に拡大出来るようになれば後は飛ばすだけ。どちらも困難な道のりだろうけど、姉様も兄様もできない事は無いと言っていたのでそれを試す。

 

「アーシア先輩、回復の力が乱れてます。」

 

私はじっと目を瞑り神器を発動しているアーシア先輩を見る。

この神器は自分の怪我を治せない欠点があるらしい……けど、回復の魔力を上空に飛ばし落下させ自分に当てる事が出来たら効果は出るのか?それが兄様は気になると言っていた。

アーシア先輩の周りを覆う緑色の薄い空間。まだ自分の体の周囲に纏わせる事しかできないようだけど、もしかしたら後数日やればこの課題も第一段階が終わるはず。

私はアーシア先輩にたまにアドバイスをしながら、仙術で高めた耳でアーシア先輩の呼吸音を聞き限界が来るまで様子を見るつもりだ。

 

白音side out

 

朱乃side

 

黒歌は先程から3人に増えていた……いえ、私も何を言っているのか分かりませんが、実際私の周りを囲うように立っている黒歌を見ると…全員が違う動きをしていた。

 

「黒歌…あなたは忍者か何かなのかしら?」

 

「にゃはは、忍者じゃないけど……甘く見ないほうがいいよん?」

 

そう言ってバラバラに動き出す黒歌3姉妹……私の修行の始まりだった。

私の課題は雷の遠隔操作と出力アップ、体術に反応速度アップ、そして思い出したくもないし使いたくも無い……光の力の発動。

初めて会った時から千鶴先生に言われ続けているが未だに使えない堕天使の技である光。

今は雷の巫女などと呼ばれているが、千鶴先生は雷光を見せてくれと言った。

けど勿論強制じゃなく、朱乃なら雷だけでも十分強いと言ってくれたから今までの特訓も難なくやれている。

 

「くっ!?」

 

「遅いにゃ!」

 

「右脇腹がガラ空き!」

 

「魔力を溜める動作が丸わかりにゃ!」

 

それぞれが私にそう指摘し、私の出した雷を躱し近づいて来る。

今日は体術と反応速度の上昇を視野に入れて特訓メニューを作ってるようで、私はこちらに手を伸ばしてくる1人の黒歌に触れられないよう身を屈めて足払いをする。

すると次は私に向かって振り落とされる拳…それを掴み、更にもう1人爪を伸ばして襲いかかってくる黒歌に向かって投げる。

 

「うん、体術の受け流しと避け方は合格かな。次は私たちに一撃入れて!」

 

一通り千鶴先生と白音ちゃんに教えられた体術の基礎はマスターしたが、まだ攻撃力は無く一撃が軽いからか身軽な黒歌に躱される。

 

「腰が入ってないよ!」

 

「肉体強度を雷で補うのもありだと思うにゃ。」

 

「反応速度が遅くなってるよ。」

 

3人に指摘され腰を少し低くし、遠隔で雷を操りながら拳に雷を纏う。体全体に雷を覆う事はまだできないためこれが限界だった。

私の懐に入ってくる1人にアッパー。ガツンと歯が当たる音と共に消える1人の黒歌だが、後ろに来ていたもうもう1人の黒歌に羽交い締めにされ胸を揉まっ!?

 

「ちょっ!?黒歌!あなた今私のブラを!?」

 

「ふふふ、さあどうするにゃ?ブラのホックを外されただけで戦意喪失かにゃ?」

 

なんてエッチな猫なんでしょう……お仕置きです!

 

「にゃ!?あ、朱乃!そのデカさはマズイにゃ!」

 

私の上空に溜まっている雷の球体…直径は3メートルってところかしら?

けど黒歌なら大丈夫よね?

 

「調子に……のるにゃ!!」

 

バゴンと言う音と共に霧散する私の溜めた魔力……ふふふ

 

「ふふふふふふふふふ!」

 

「にゃあぁぁぁぁぁ!」

 

黒歌が目を見開き体に闘気を纏い、私は両手に雷を纏う……勝負!!

 

朱乃side out

 

祐斗side

 

僕たちの後ろで聞こえる爆音と雷が落ちる音……イッセー君は冷や汗を流しながら徐々に後退を始めていた。

1人で逃げないでよ……黒歌先輩のアレを食らうわけにはいかないんだから。

黒歌先輩は白音ちゃんと違い本気が許されている…というより本気の黒歌先輩は危険と言うより災厄だ。

あれは帝先生にしか止められないらしい。…危険だよ、これでもかってくらい。嘘をついてしまったね、ああ…アレを食らったら僕もイッセー君も機能しなくなる。何がって?ナニがだよ。

 

「イッセー君、もう殺す気で来てね。」

 

「……おうよ!」

 

イッセー君ももう目線を黒歌先輩達の方に向けていなかった。スケべで変態のイッセー君でさえあれは直視できないんだね、わかるよ。

 

イッセー君が神器を出し僕は素手……。

僕たちの今日の特訓は体術取得。僕は剣を使うことで戦うが、素手も結構な頻度で使う。

魔剣創造ならそんな事をしなくてもと思うだろうが、全てを剣で切れるかと言われたら別だ。いくら魔剣でも切れないものは存在するし、切ることで相手を有利にしてしまうことだってあると帝先生に教わった。

 

「僕のスピードについてこれるかな?」

 

「俺を甘く見るなよ木場!帝先生の修行をしてきた俺に、もう見えないものは無い!!」

 

そういうイッセー君は確実に僕を目で追っていた……流石にこの程度なら見れるよね。

まるで瞬間移動のようで、騎士の僕でさえ影さえ捉える事ができない帝先生。けど白音ちゃんと組み手をしている姿を見ると瞬間移動では無く本当に自分の足を使ってるのが分かる。

あれは次元が違う。流石魔王を倒せる実力がある…あれで人間だなんて信じられないよ。

 

「帝先生に言われてなかったかい?目で見えるものが全てじゃ無いって!」

 

僕は幻影を見せる…スピードの限界を超えていく内にこんな事も出来るようになった。

ちなみに白音ちゃんと黒歌先輩、帝先生は完全に分身の域だ。更に早くなればできるぞと言われたが一体どの次元の話をしているんだろうか?

けど僕の幻影を見ながらも確実にこちらに殺気を送っていた……凄いよイッセー君!

 

「いくぜ!『Boost!』」

 

イッセー君の籠手から聞こえる声…それが聞こえた瞬間イッセー君の身体能力が上がったかの様にイッセー君の体を覆う魔力が倍になった。僕のスピードにはまだ届かないものの力なら負けてしまうかもしれない。なんだいその声?

 

「魔剣創造使ってもいいんだぜ?」

 

籠手から聞こえてきた声に眉を潜めるが余裕そうな顔へ変えたイッセー君がそう言ってきた。

…まさか。君相手なら素手でまだ十分さ!白音ちゃんと特訓して編み出した僕の体術を見せてあげよう!

 

「ここだよ!」

 

「え!?うわぁぁ!?」

 

イッセー君の籠手から声が聞こえる直前、籠手に嵌めてある宝玉が光り出す瞬間が少し隙があるのが分かったので、次に声が出るであろうタイミングに合わせ僕は後ろからイッセー君の膝裏を蹴る。瞬間的にスピードを上げれば今のイッセー君なら僕の姿を見る事ができないのは分かっていたからできた事。

イッセー君はそのまま前のめりに倒れ、僕は更に止めを刺す様に馬乗りになり両手を動かせなくする。そして尾骨に膝を打ち付ける。

 

「ぐっああぁぁぁ!!」

 

イッセー君が叫び籠手が消えた。

それから直ぐにイッセー君が降参をし、僕たちの訓練はひと段落した。

次はイッセー君に剣術を教えようかな。

 

祐斗side out

 

千鶴side

 

訓練が一通り終わったのは午前7時。学校が始まるまではまだ時間があるので、俺は祐斗とイッセーが採ってきた山菜を使い軽食を作った。

調理器具は一式揃えてここに置いていたので余計な手間も取ることが無かった。

そして今は皆で雑談中だ。訓練していて気付いた事等主に訓練の事ばかりだったが。

 

「アーシア先輩は体術とか覚えて見たいとか思いませんか?」

 

「私は……けど、護身術?でしたっけ?ああいうのは覚えてみたいです。」

 

アーシアも訓練を経て随分と積極的になってきた。最初は無理、私にはできません、はうぅと弱い姿を見せていたが、今は立派になりグレモリー眷属の僧侶としての素養は優に超えただろう。

次からは俺が直接教えても問題無いだろう。

 

「朱乃はもうちょっと感情をコントロールした方がいいにゃ。」

 

「貴女には言われたくないですわね。」

 

黒歌と朱乃はお互い笑いながらも火花を散らしていた。

現在のオカルト研究部-強者ランキング-(作成者白音)を見てみる。

白音は人の能力を察知できる戦術を持っており、それを使い今現状の戦闘力を測ってある。特訓が終わり直ぐに持ってきたので出来たてホヤホヤだ。

1位とても強くてカッコいい兄様

越えられない壁

2位最近私の胸を見て笑う意地悪な姉様

3位新しい千樹を編み出した私

越えられる可能性のある壁

4位究極のS朱乃先輩

5位最近は体術にハマってきている祐斗先輩

6位変態でスケべ(この前姉様の着替えを覗いてました)イッセー先輩

7位紅髪の滅殺姫の名前が霞んで見えるリアス部長

8位もうちょっとで次の段階に行けるアーシア先輩(戦闘力は皆無)

ニンニクが食べられる様になれば少しは見直す9位ギャー君

と書かれていた。

またギャスパーを虐めてきたな?白音は自分と同い年の眷属がいるとリアスに聞いて、たまにギャスパーが封印されている部屋に押し入るらしく、この前ギャスパーに封印を強化してくださいお姉様と泣きつかれた。

偏見のあるランキングだがあながち間違いじゃないな。

と言うか

 

「イッセー、お前黒歌の着替えを覗いたんだってな。」

 

ゆらりとイッセーの後ろに立ち頭を掴み立ち上がらせる。

 

「ななななな、何を言っているのでありますか帝先生!?ぼ、僕はそんな事してませんよぉ!?き、木場も見てました!!!」

 

「イッセー君!?あの!いえ違うんです!たまたま部室に来たら黒歌先輩が着替えをしていて!……すいませんでした。」

 

「木場ぁぁぁ!誤魔化せよぉぉぉ!……すいませんでした。」

 

もはや言い逃れはできないな。

俺が2人の頭を掴み持ち上げると白音が示し合わせたかの様にドアを開けた…俺は外に向かって2人を投げヒャドを放つ。

引き攣った笑みを浮かべる祐斗と、涙を流し許しを請う姿のイッセーの氷像ができた。

 

「……さて、そろそろ学校へ行こう。」

 

俺は2人をそのままに白音と黒歌を連れルーラで学校へ向かった。

放課後部室に行くと、まだ氷像のままの2人がいたのでリアスがここに置いておいたんだろう。解凍できる奴がいなかったな。

俺は2人を解凍し説教をした後、約束をしていたアーシアのホテルへ行き荷物を運ぶ手伝いをした。

元々そんなに荷物は無かった様で、ボストンバック2つで済んだらしい。

 

そして我が家では

 

「いらっしゃいアーシア。今日からよろしくね。」

 

「アーシア先輩は今日から家族の一員です。よろしくお願いします。」

 

黒歌と白音がアーシアの為に料理を作り、豪華な歓迎パーティーが行われた。

アーシアは最初驚きのあまり目を見開いてたが、目に涙を浮かべた後はい!と大きく返事をして4人で夕飯を食べ、俺は3人が一緒にお風呂に入ってる間に皿洗いを終わらせた。

今日からアーシアは家族の一員…白音が言っていた事を思い出し、家事の役割分担表にアーシア→洗濯と書いた。

 




さて…お気付きの通りイッセーが倍加しましたが、ぶっちゃけ初めてBoost!なる声を聞きました。
まだドライグと会ってませんのでそれは次回に。

因みに既に赤龍帝の籠手の姿になってますがイッセーは神器の事は詳しくないので前の姿を覚えてません。
なんかドラゴンの模様?無かったっけ?ぐらいな気持ちです。

では誤字などありましたら報告お願いします。
感想などもお待ちしておりますが、作者メンタル豆腐なんで(笑)


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それぞれの気持ち

今回は特訓も無ければあまり進んでません。
とりあえず今後は原作に沿って、原作2巻が終了してオリジナルとサブシナリオ入れようかなと。
2巻もかなりオリジナル要素入れますので、何かご意見があったらお教え下さい。

今回は主にサーゼクスと黒歌の頭の中を覗いて下さい。

下手ですが今後ともよろしくお願いします。


イッセーside

 

ここはどこだろうか?今日は朝から特訓をして、帝先生が作ってくれた山菜盛り沢山の二度目の朝食を食べて……思い出した。俺は今……

 

『氷の中だ』

 

うわぁ!?

突然頭の中に響き渡る声……あれ?なんか聞いた事がある声だな……

 

『それはそうだろう。俺はお前のそばにいるからな。』

 

え?ストーカー?まじかよ!?俺男にストーカーされてんのかよ!?

 

『違うわ!!!』

 

うおおぉぉぉぉぉ!?

盛大なツッコミと共に現れたその姿に俺は驚いた……けど、まあドラゴンだよね。知ってる。帝先生がキレるとドラゴン出したりするし。

 

『……調子の狂う相棒だな。だがまあそうだ。俺はドラゴン!赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)、ドライグだ。』

 

名前ダサいなぁ……。ウェルシュ・ドラゴンだけでいいのに……。赤い龍の帝王って見た目からか。

 

『………いくら今代の相棒でもそれは酷くないか?俺はあれだぞ?お前の左手に宿ってる存在なんだぞ!』

 

だぞ!って言われてもな……ぶっちゃけて言うと神器なんか最近使ってないし。

 

『ば、馬鹿な……神滅具だぞ!?禁手に至れば今よりもっと強くなれるんだぞ!?その先だって!』

 

え、なに神滅具って?おおなんか宙に文字が…神を滅する道具って書くんだ。いやけど、帝先生が先に神を滅しそうだし。

 

『……お前が俺を使わないからあまり外の様子を見られないが、その帝先生と言う奴はお前を凍らせてる奴だろ?お前の左手ならその男だって倒せるかもしれないんだぞ!?』

 

マジで!?そ、そしたら……黒歌お姉様を下さいって言える…のか?

 

『あ、ああ、言えるさ!さあどうだ!?使いたくなっただろう?』

 

うーん……分かったよ。取り敢えず今度から使うからさ、俺を凍らせてる氷を溶かしてくれよ!

 

『ふっ…またそのうち会うだろう。その時まで強くなっているのを願うぞ相棒。』

 

なっ!?こいつ溶かせないんだな!何逃げようとしてんだよ!?

 

『いや違うぞ、相棒。俺はお前の左手に宿っていると言っただろう?お前が使えなきゃ無理なのさ。』

 

……まあそれもそうか。仕方ないな。

まあ今度から使うからさ、その時は俺に力を貸してくれよな。

 

『いいだろう。………………ふぅ。』

 

……なんかホッとしたような息をついてドライグの姿が見えなくなった。

なんか想像と違ったが、俺はまだまだ強くなれるんだろうか?

いつか帝先生と肩を並べられるようになったら嬉しいけど。

そんな事を考えこの何もない真っ暗な空間で、帝先生に言われたイメージトレーニングをする。イメージトレーニングは意外に大事で、帝先生も未だにしているらしい…まあ帝先生の場合イメージでしか対等かそれ以上の敵はいないって白音ちゃんが言ってたな。

そして帝先生と組み手をしているイメージの最中、突然視界が真っ白になり…俺と木場は氷を溶かしてくれた恩人でもあり氷に閉じ込めた張本人に黒歌お姉様の着替えを覗いたとして反省文30枚提出の課題と説教を頂いた……いろんな意味でこの人には勝てない気がする。

 

イッセーside out

 

千鶴side

 

俺は今冥界にいる。

アーシアが我が家の一員になってもう1週間経つ…アーシアも変わった環境に直ぐに順応し、今では進んで家事をやってくれるようになった。

今までの家事分担は

俺→料理(朝昼夜)、掃除(リビング、トイレ、和室)、洗濯、家計簿への書き込み、皿洗い

黒歌→食材と日用品の買い出し、ゴミ出し、掃除(廊下、庭)、花壇の水やり

白音→食材と日用品の買い出し(黒歌に用事がある日)、料理(夜-俺が帰るのが遅い時)、掃除(2階、風呂)

だったが、アーシアがよくやってくれており

俺→料理(朝昼夜)、掃除(リビング、トイレ)

アーシア→料理(夜俺と一緒に)、掃除(和室)、洗濯、家計簿への書き込み、皿洗い

と大分俺の代わりにやってくれるようになった。

因みに黒歌と白音は言われる前にやっているので特に変更はなかった。

そんな感じで順風満帆な生活を送っていたが、問題が1つ浮上した。

リアスが最近更に修行に身が入らなくなってきた。

詳しく聞こうにも最近は忙しくて部活にも参加できていないのだ。

そんなわけで俺は冥界に来ている。仕事がひと段落ついたのでいっそリアスの事を相談しようと思ったのだ。

 

「急に来るからびっくりしたよ。」

 

アポなしで突然サーゼクスの所へやってきた俺を、最初グレイフィアさんが後日にしてくれと頼んできた。けどそんな時間をまた作れるかと言ったら微妙で、じゃああなたを倒したらサーゼクスに会えるかな?と言って殺気を放ったところ直ぐさま了承してくれた。

少し心が痛かったが、生憎最近は自分の特訓がイメージトレーニングでしかなされておらず、少しイラついていたと伝えると謝られた。今度親父に頼んでみようかな……。

そして魔王がいると言われた部屋に着けば……書類に埋もれ必死に仕事をしているサーゼクスの姿が目に入った。

俺は部屋にあるソファーに腰をかけリアスの最近の状態を報告すると、仕事の手を止めて俺の話に耳を傾けてきた。

グレイフィアさんが持ってきた紅茶を飲み、最近のグレモリー眷属達の情報を伝えればどうやら俺は鍛え過ぎだそうだ……そうなのだろうか?どうせ俺は普通の人間の寿命しか無いので今できることを精一杯やろうと考えているだけなんだけどな。

 

「ははは、もしよかったらまた君と試合をしたいな…今度は眷属を全員連れて。」

 

「それは面白そうだな。沖田さんにも挨拶をしたかったんだけど、今日は俺もそんなに時間が無いんだ。よろしく言っておいてくれ。」

 

沖田総司を眷属に持っているサーゼクスを呼び捨てで、グレイフィアさんや沖田さんと呼んでいる差は友人関係から来るものだ。グレイフィアさんからは呼び捨てで構いませんと言われたが。

おっと話題が変わってたな。俺が知りたいのは今のリアスの事だ。今までは見逃していたが、昨日はついにアーシアに背負い投げをされる始末だ。黒歌と白音が一緒になり護身術を教えており、家でも3人は一緒にいる為か最近のアーシアは過激だ。この前なんて廊下で後ろから声をかけたら足払いをされそうになった。

会った頃のアーシアに戻ってくれとは言わないが、もう少し女の子っぽくてもいい。

 

「それでリアスの事なんだけどね、実は最近冥界で純潔悪魔が殺されている事に関係があるんだ。」

 

「純潔悪魔が殺されている?天使とかでも攻めてきたのか?」

 

俺は未だに天界の者達とは会っていない。

堕天使もアザゼルとレイナーレ達以外は知らないが。

 

「違うよ。残念ながら何処の勢力かは分かっていない……ただ消滅していないからね、堕天使や天使等では無さそうなんだ。」

 

悪魔は光に弱い。

俺が使えるキガスラッシュを始め超級魔法から上のには光の属性が少なからず付着する。

はぐれ悪魔を倒していた時もデインを拳に纏わせ殴れば一撃で昇天したのか粒子になり消えた。

光を使わず殺せる事もあるだろうが、わざわざ有効打を使わない奴もいないだろう。

 

「……眷属、もしくは同じ悪魔か?」

 

「僕もそう思っている部分もある。まあその辺はまだ調査中でね、僕の眷属達も調査に向かってる。」

 

まあ悪魔の内輪揉めなら俺が出しゃばる必要は無いだろう。リアス達が危険に晒されるならそれなりの対処はするが。

 

「まあそれが父上の耳に入ってね。……ライザー君との婚約を早めようという話になってる。」

 

……なるほどな。原因はそれか。リアスはライザーの事を好きでも何でも無いと言っていたからな。

それに大学を卒業するまでは結婚しないと1年の頃に宣言していたし、こんな事が起こるんじゃないかと不安になっていたのか。

純潔悪魔って言うのは面倒なんだな。イッセーなんかおっぱいおっぱい言って欲望に忠実なだけだから政治とか興味無さそうだし。

 

「まあ僕個人としてはリーアたんの幸せを願ってるし、ライザー君より千鶴にならリーアたんも任せられるんだけどね。」

 

それは俺にリアスと結婚しろって言ってるのか?悪いがそれはないだろ。彼女にはもっとふさわしい男がいるさ。

それにリアスは俺の事が嫌いなんじゃないか?修行の時も強く当たってしまうし。俺はリアスの事を思ってやってるんだが、やっぱりやりすぎなんだろうか?

 

「まあ僕も暫くはリアスに会えないし、それまでの間はリアスの事を宜しく頼むよ。」

 

「ああ、わかってる。そういう約束だしな。」

 

それがサーゼクスと交わした契約だ。破棄してもいいがまだ黒歌と白音ではサーゼクスに勝てないだろうしな。もし2人が俺の知らないところで襲われた日にはまず冥界から滅ぼそう。

 

「……失敗したかな。」

 

「ん?何か言ったか?」

 

考え事をしていたらサーゼクスが何かを呟いたので聞き返してみたが何でもないらしい。

これで取り敢えず疑問が解けたので、俺はグレイフィアさんの紅茶を飲み干し立ち上がった。

今帰れば明日の修行には影響は出ないだろう。俺は明日の特訓内容を整理しながらサーゼクスに別れをいいリレミトとルーラを使い家に帰った。魔王の城と考えればリレミトが使えると初めて知った時は何のダンジョンだと苦笑いしたものだ。

 

千鶴side out

 

サーゼクスside

 

「宜しいのですか、サーゼクス様?」

 

グレイフィアが書類を捌いている僕に紅茶を新しく入れてくれた。

何がだい?もしかしてライザー君の事かな?

 

「近々ライザー様が人間界に出向かれるという話をお聞きになっていらっしゃる筈ですが、それをお教えしなくても宜しかったのですか?」

 

「グレイフィア、君も冗談を言うようになったんだね……気にすることじゃ無いよ。千鶴に報告したところで何か変化があるわけじゃ無い。」

 

やっぱり思った通りライザー君の事だったか。残念だけど今の彼じゃあリアスの心を射止めるなんて1パーセントの可能性も無い。

ライザー君が千鶴に会ったらどう反応するんだろうかが少し気になるぐらいだ。

彼は一度、千鶴の殺気で恐怖を植え付けられたからね。

僕でさえさっき千鶴が部屋に入ってくる前、グレイフィアと千鶴が話をしていた時に感じた殺気で体が震えたしね。

 

「……千鶴様は本当に何者なんですか?」

 

グレイフィアの疑問はもっともだ。けど残念ながら僕にも分からない……分かってるのは家族を大事にする世界最強の人間。もしかしたらオーフィスやグレートレッドと並ぶほどかもしれない……それは考えすぎだろうか?

そういえば彼と初めて会ってから何年経つだろうか?未だに彼の事が分からない。いや、どんな人物かは分かっているがそれだけ。

けど僕の友人だ。酒を一緒に飲み愚痴を言い合ったりする…そんな関係だ。

 

「不滅の魔拳士(インモルタル・カンペオン)。戦場の藍髪乙女(せんじょうのあいがみおとめ)はもう言われてませんでしたね。後は…」

 

「藍髪の次元龍(あいがみのディメンション・ドラゴン)……彼の戦っている姿を見たものはそう言ってるんだってね。あながち間違いじゃ無いけど。」

 

彼の戦い方は常軌を逸している。『俺とある程度対等に戦えるのはサーゼクス、セラフォルーお前ら魔王ぐらいだな。』そう言った彼の目は今でも覚えている。

彼に唯一勝てるとしたら、油断しているところ、もしくは気配を完全に消しての奇襲で跡形もなく消し去るぐらいでしか勝利を見出せない。勿論生半可な威力では彼の体の一部を欠損するだけに抑えられ、その後の反撃で死ぬだろう。もし…もし彼と戦うことになったら冥界は無くなると理解したほうがいい。

僕はそう思う…まあ僕たち悪魔より堕天使や天使の方がそこら辺は考えたほうがいいだろうね。もし黒歌ちゃんや白音ちゃんに傷でも付けたら全力で謝ろう。最悪腕を失って地位を失ってもだ。

二天龍…赤龍帝ドライグ、白龍皇アルビオンとの戦いを思い出す。あの時はまだ今の千鶴ぐらいの年齢だったかな?

今の千鶴なら1人で二天龍を相手にできそうだ。

 

「まあ気にする事無いさ。僕の友人はリアス達を高みに連れてってくれる。……リアスの気持ちに気付いたらなおいいんだけどね。」

 

僕がそう言うとグレイフィアはクスリと笑い、あのお方は死ぬまで気付かないかもしれませんと言った。

聞かれてたらどうするんだいと笑いながら返すと蒼白な顔をして部屋を出て行った。まあグレイフィアも千鶴の事を気に入っているからね。いつか教えを請いたいと言っていたし。

魔力は悪魔しか持っていないものの筈なのにそれを余す事無く僕達より上手く扱い、体術は我流だがどれも決定打を持っており全ての技が遥か高みにある。

肉体の強度はアザゼルの本気の光の槍を食らって下半身が消し飛ぶ程度。

様々な魔法を使い相手を蹂躙し敵を倒す姿は一度見てみたい。アザゼルとミカエル、それに僕の3人なら本気の姿は見られるのだろうか?

 

サーゼクスside out

 

千鶴side

 

冥界から帰ってきたら既に深夜12時は回っており、俺のベッドに黒歌が潜り込んで寝ているのを横目に俺はベッドに座った。

白音は少なくなったが黒歌はほぼ毎日俺のベッドに入ってくる。

自分の部屋にもベッドはあるのにな。

最初の頃は黒歌と白音が2人で寝ていた筈なんだが、黒歌が高校に入ってからたまに一緒に寝ている。

 

「一度寝るとなかなか起きないんだよな。」

 

俺は黒歌の頭を撫でてベッドに横になる。

明日は少し早めに起きてシャワーを浴びようと思い黒歌の寝顔を見て眠りについた。

 

翌朝目を覚ますと黒歌が腕に抱きついていた。

……柔らかいな。

っと、朝から変な気持ちになってくるな。黒歌にもいつか彼氏ができるんだろう…そいつは幸せだろうな。まあ俺を倒せるのが前提条件だが。

……そういえば俺…誰かと付き合った事無いな。告白もされないし、好きな人…って言われると最初に思いつくのが黒歌と白音だからな。

 

「千鶴……」

 

「起きたか?」

 

そんな事を考えていると横で黒歌が動くのが分かり、それと同時に名前を呼ばれた。

隣を見るとうっすらと目を開けて、ぼぅっと俺の顔を見ていた。本当に黒歌は朝が弱いな…。

と、思っていると黒歌が顔を近づけてきていた……ん?

 

「なんかついてるか………っ!?」

 

遂に黒歌が俺の頬を掴んだと思ったら……唇を合わせてきた。柔らかく、黒歌の匂いが鼻腔を擽る。黒歌は目を瞑っているが俺は目を見開き黒歌を見ていた……いや、突き放せと頭で喚いているが、俺は目頭に涙を溜め必死な様子でキスをしてくる黒歌の姿に見惚れていた。

まつ毛が長く、鼻も高い……駒王学園の三大美女と呼ばれるだけはある整っている顔。

とても長く感じたキスだが、実際は5秒程度だった。

 

「……あ。」

 

唇を離して黒歌がそう声を漏らし……そしてみるみる顔が真っ赤になっていく。

 

「にゃあ……にゃあ…にゃああああああぁぁぁぁ!!」

 

そう叫び部屋を飛び出して行き、そのままバタンと音がして静寂が訪れた。

 

「……千鶴兄様、黒歌姉様が五月蝿いです。」

 

どうやら自分の部屋に戻ったようだ。寝ていた所を起こされ少し機嫌の悪い白音の頭を撫でてやりながらも、俺は先程の唇の感触が忘れられずにいた。

 

「取り敢えずシャワー浴びてくるから、黒歌をそっとして置いてあげるんだぞ。」

 

俺はそう言い先程から五月蝿い心臓の音を鎮めるように冷水を頭から流し、顔が火照っていくなんて事を感じないように座り込み今日の特訓の事を考えていた。

 

千鶴side out

 

黒歌side

 

ああ、ああ、ああああああああ!

に、兄さんとき、き、き、キスを……キスをしてしまったにゃぁぁぁぁ……

思い出すだけでも顔が火照って涙が出てくる……。目を開けたら目の前に兄さんの顔があり、夢かなと思いしてしまった。本当は卒業式で兄さんにキスをして告白っていう計画も立てていたのに!

学園では色気があり恋愛上手等と言われているが、今まで誰ともそんな関係になった事も無いし、学園に気になる男子なんて居ない……私はずっと…もう会った時からずっと兄さんに恋をしているから。

頭を撫でて貰えばそれだけで幸せだし、抱きしめられた時なんかもう腰が抜けて立っているだけで精一杯だ。

叱ってくれるのでさえ嬉しくて、つい悪ふざけもしてしまう。

学園に遅れるのだって兄さんの視線を奪いたいからだし、服をはだけさせるのも兄さんに私の体を見て欲しいから。

最近はリアスやアーシアも兄さんが気になってるって言うサインを出しているから気持ちが焦ってしまった……特にリアス。兄さんは人の好意に鈍感だからそんな熱い視線を送っても無理。だから行動で表す私が一番可能性があるって思ってた……けど早すぎる。まだ卒業まで時間はあるからのんびり自分を磨いていこうと思ってた矢先……キスをして……

 

「にゃあ……千鶴ぅ……嫌いにならないでぇ……。」

 

もう後戻りはできないかもしれない……もしこれを気に兄さんとの距離が離れたりしたら、私は多分一生男の人を好きになる事は無いだろうから。

……もう朝ご飯の時間。何時もなら起きてこない私を起こしに来てくれる兄さんが来ない……来てくれる。来てくれる……筈だ。

 

「黒歌姉様…朝ご飯です。」

 

来てくれなかった……うぅ……

 

「うわぁぁぁ、しろねぇぇぇ!」

 

いつもは部屋の前にいる人物ぐらい特定できるのに無理だった。

入ってきたのは兄さんじゃなく白音……

 

「……何があったか分かりませんけど、千鶴兄様がまだシャワーから出てこないんです。だからアーシア姉様と一緒に作ったんです。冷めない内に食べてください。」

 

アーシアが来て次の日にはアーシアを姉様と呼ぶようになり、そのまま兄さんと呼んでいたのをわざわざ千鶴兄様と呼ぶようになった白音……そっか、兄さんはシャワーを浴びてるんだ……

 

「……白音、兄さん怒ってた?」

 

「…?怒ってるようには見えませんでしたよ?どちらかと言うと嬉しそうでした。」

 

……嬉しそう?………にゃ?

も、もしかして……意識してくれてる?

 

「黒歌姉様?なんですかその気持ち悪い笑み。」

 

にゃはははは!今は白音の毒舌もなんのその!

チャンスにゃ……もう覚悟を決める。思いの丈をぶつけるにゃ!!

 

「白音ちゃん?黒歌姉様は起きましたか?」

 

「はい。今連れて行きます。」

 

廊下の先、リビングから聞こえるアーシアの声に白音が返事をし、私の襟を掴み引きずって行く白音。

兄さん……ううん、千鶴に告白する。もう決めた。

私は千鶴と恋人に「なるにゃ!!」

 

「黒歌姉様五月蝿いです。」

 

ああ、告白ってどうすればいいんだにゃ?誰かに聞こうにも頼れる人もいないし……

私はそんな事を考えながら朝食を食べて、歯を磨き支度をする。

千鶴はまだシャワーを浴びているようで、白音が先に行っていて良いと聞いたらしく3人で先に学園に行くことにした。

今日の夜…勝負だにゃ!

 

黒歌side out

 




いや、しかし巷ではビッ○や痴○等と言われている黒歌ですが、今作は気になってる人に振り向いて欲しい、その人に全てを捧げたいと思う1人の女の子ですよ。
似てないでしょうけど。

ではまた次回。
次回は小さい修羅場があります。

では感想等ありましたらよろしくお願いします。
作者はメンタル豆腐ですよ?


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正直に生きると誓った日

今回で黒歌が完全に千鶴の物になります。

予告しますと不死鳥のサンドバック戦終了後リアスもです。まあ見れば一目瞭然ですかね(笑)

ちょっと最後グダグダかも。


祐斗side

 

今日の黒歌先輩はいつにも増して強く感じた。

朝学校に来てみれば、僕たちの大師匠の姿が無かった。

何時もは誰よりも早く来て結界を張っている姿が見えず、黒歌先輩が結界を張っていたからどうしたんだいとアーシアさんに聞いてみたが、分かりませんと少し困った様子で言った。

白音ちゃんも少し心ここに在らずといったような表情だったが、いざ修行が始まればそんな顔は何処へやらって感じだった。

今日の訓練は帝先生がいなかったので、自主練ということでそれぞれ教えてもらいたい師匠の所へ集まる事になった。

僕はスピードを鍛え抜いて来たため今では残像を見せれるほどになった。自分の体に計50キロの重りを付け走らされた時は恨んだけど、おかげで体力もついた。そして今回は前言われたことのあるパワーを成長させようと白音ちゃんの所へ。アーシアさんも白音ちゃんの所へ来て護身術を学ぶようだ。

黒歌先輩の所へはイッセー君と朱乃先輩。そしてリアス部長が向かった。イッセー君は神器を使うようで既に左手には赤い籠手が装着されていた。龍の手という世界各地で比較的見つかりやすい神器…所有者の力を倍にする神器のためイッセー君は毎日ランニングを40キロ、腕立て伏せとスクワット、腹筋を各1000回も学園に来る前にやっているらしい。正直地力ならイッセー君の方が少し僕を超えているかもしれない。スピードはまだ勝ててはいるが、もし彼が帝先生の下で修行を続ければと考えると恐ろしい。

朱乃先輩は精神力を鍛えるようで既に瞑想をしている。強靭な精神力を持ち、体術を教わって体内に宿る気を身に纏う事を今は目標にしているらしい。

その中で1人、リアス部長は虚空を見つめていた。最近のリアス部長はよく上の空だ。この前も帝先生が頬に触れるまで気付かなかった程…まあその後真っ赤になって平手打ちをして、平手打ちをした本人が痛がっていたけど。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

「黒歌!あなたやりすぎよ!?」

 

見て、聞いて分かる通りイッセー君が黒歌先輩に散々な目にあわされている。まあアーシアさんがいるし、指とか耳ぐらい無くなっても大丈夫だろうけど。

凄いな、イッセー君生きてる………。

 

「祐斗先輩、まずは自分が持てる一番重い魔剣を造って下さい。作った後はそれで素振りを。手始めに目標は100回の制限時間は初めてなので1時間です。アーシア姉様は脚さばきを復習して、それから投げ技の復習。その後に新しい対武器の護身術をお教えします。」

 

白音ちゃんに言われた通り僕は自分が持てる一番重い魔剣を創る。まず考えたのは、重さを変えられる重力剣(グラビティ・ソード)。けど無意識に軽くしてしまうとダメ出しをされ、新たに創り出したのは剛鎧剣(プレートソード)。特殊な力は持たないが剣の重さのみで鎧を断ち切る剣だ。及第点だと言われそれで素振りを始めるも、5回目にして腕が震えてきた。

制限時間は1時間と言っていたので、取り敢えず筋肉が断裂しようが剛鎧剣を振り続けた。勿論足腰も言う事を聞いてくれなくなり、がむしゃらに頭上に掲げすぎて3度肩が脱臼し、14回も腕の筋が切れたがその度に白音ちゃんとアーシアさんに回復してもらった。

筋肉痛もアーシアさんの神器で回復したのでこの後も支障はない。

そんなアーシアさんも凄いもので、護身術を学んでいると自分では言っていたがあれは完全に戦闘の準備だ。どこに大剣を持って襲いかかってくる暴漢がいるんだろう……まあ悪魔だからああいうのもいるんだろうな、会ったことないけど。

 

「……結局顔を見せなかったね、帝先生。」

 

「だな。けど本当どうしたんだろうな?俺帝先生に見てもらいたい物があったのに。」

 

特訓が終わり少し荒れているグラウンドを皆で直している時も帝先生は来る様子も無く、イッセー君と壊れてしまったサッカーゴールを直しているとイッセー君が突然神器を現せた。

 

「力を試したいなら僕が手伝ったのに。」

 

「いや、そん時は頼むけどさ、実はこれさ……ドラゴンみたいなんだ。」

 

イッセー君の口から語られたのはこの前氷漬けにされていた時、左手にある神器に宿るという赤龍帝ドライグの話だった。

 

「……イッセー君は悪魔の歴史に詳しかったかい?」

 

「いんや、そこまで知らないな。魔王様が今4人いて、昔戦争を堕天使と天使の三大勢力でやったんだよな?そんぐらいは聞いたし、後は上級とか位があるんだだよな?俺は上級になってハーレム作りたいんだよなぁ。

 

そうか…まあ詳しいことはリアス部長に聞いた方がいいだろうけど、取り敢えず僕はその赤龍帝ドライグがどのような存在か教えてあげた。ハーレム?そう言えばイッセー君は学園では変態三人組の一人とか言われてたっけ?一緒に特訓してると努力家という事も分かるし、自分の欠点を理解して改善しようとする姿ばっかり見てたから忘れてたよ。

三大勢力が戦争している場所に現れて喧嘩を始め悪魔、天使、堕天使如きが邪魔をするなとかなんとか言って結局封印されてる自分の左手にある赤龍帝の籠手を苦笑いで見るイッセー君。

まあ最強の存在って言われているからね。

けどイッセー君の左手にあるのが神滅具の『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』なら兵士の駒を8つ使ったのは理解できる。この事は後でリアス部長に報告した方が良いと言っておいた。

 

「けどさ、最近リアス部長の様子が益々おかしくなってないか?悪魔の仕事が終わって報告した時も上の空だったし。」

 

「僕たちに相談できないような事情か、体調が悪いのか……帝先生なら何とかしてくれると思ったんだけど。」

 

その頼りになる人はまだ来ない。本当にどうしたんだろうか?後で黒歌先輩か白音ちゃんに聞いてみようかな。

 

祐斗side out

 

リアスside

 

最近の私はどうかしてしまっている。

それもこれもお兄様とお父様の所為だ。最近寝る前に連絡をしてくるお父様……その内容が毎回ライザー…私の婚約者の話ばかりだからだ。

婚約者と言っても、私が大学を卒業するまでは結婚はしないと宣言しているから、それまでに自分で決めた好きな人と一緒になりたい。

正直ライザーは嫌い…眷属は皆女で固められていて、『リアス』として愛してはくれないのが見てわかる。

先の戦争で純血悪魔が数を減らしたからって、それで結婚しようだなんて嫌だ。『グレモリー』としか見ない相手となんて誰が結婚なんてするもんですか!

 

「……部長、大丈夫ですか?」

 

「部長さん?」

 

目の前にいる私の可愛い下僕、まだ数週間しか経っていない新米の子が2人……イッセーとアーシアが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

今日は本当に駄目だ。今日の朝、グレイフィアがいきなり来てライザーとの結婚が早まったことを伝えられた。

千鶴に相談したいと思って誰よりも早く学校に来たのに、結局顔を合わせたのは朝礼の時と帰りの時…部活に顔を出せないと言っていた。

 

「お疲れ様、イッセー、アーシア。ごめんなさい、今日は体調が少し悪くて……あなた達ももう帰りなさい。今日はもう終わって良いわ。」

 

私はこのままライザーと結婚をしてしまう?それだけは嫌…私を見てくれて、グレモリーじゃなくリアスという1人の女として私を見てくれる人…そんな人と結婚するのが夢なんだから。

 

「朱乃、祐斗、あなた達ももう帰りなさい。私はやることがあるから……。」

 

「……はい、部長。それではまた。」

 

「……リアス、あなたが何を悩んでいるのかは察していますわ。けどそれは私たち眷属ではどうにもできない……だから、行きなさい。後で後悔しても知りませんよ?友人としての助言です…下僕としては今のあなたを見ていられないの。」

 

朱乃が私の顔をまっすぐ見て言ってくる。

私だって分かってる…この婚約はお父様とお兄様のご意志だろうから。けど諦めたくない!後悔もしたくないから……。

駄目な王ね…下僕に心配されるようじゃ千鶴に笑われてしまう……。

部室にはもう私だけ……私は転移の魔方陣を展開させ、思い人である帝千鶴の部屋へ繋げそこに入った。

覚悟はできてる…断られた時は無理矢理でも。私はそんな事を考えながら転移の魔方陣から溢れ出る光に包まれた。

 

リアスside out

 

千鶴side

 

今日の朝から俺はおかしかった。

まあそれも全て黒歌とのキスが原因なんだが……。

そして今、仕事を終えて部活にも顔を出さずに家に帰って来たのに俺は苦悩していた…主に目の前にいる裸の妹に。

 

「何のつもりだ、黒歌。」

 

若干声も裏返り、今俺はどんな表情をしているんだろうか……

 

「…千鶴に伝えたいことがあるの。」

 

「だったら服を着てからにしろ。」

 

ああ、もう何を伝えたいのかは分かってる…今日の朝の態度で気付かなかったらそれはそれで駄目だろう。自分で言っていて何だが俺は鈍感な方だ。相手が行動を起こしてそれなりの態度で接してこれば気付くが、想いを寄せられているだけじゃあ間違いなく気付かない。それは高校と大学時代に経験済みだ。

旧友にあいつお前が好きだったのに気付いてくれないから他の男に鞍替えしたんだってと聞かされた時は俺の所為なのかと自問自答をした。

気付いてもらえなかった、反応してくれないなど言われたってその程度の事で俺が他人を好きになるかと言われたらならない。

だからこそ厄介だ…黒歌の顔を見れば一目瞭然。昔一度発情期に入った時に見た蕩けた顔に熱い吐息。いつか好きな人ができたら発情期を抑える事はしなくて良いと言った事がある。

それから発情する事なくこれまで過ごしてきた。黒歌は約束を破らない子だというのは分かっている…だからこれが答え。

けどそれを認めてしまえば、今までの生活とは一変するのは間違いない。

俺は誰か特定の女性とは付き合った事はない…まあ経験が無いと言えば嘘になるか。詳しくは大人の事情で言えないが。

ああ、駄目だな…余計な事を考えないと理性を失うのは確実だ。

 

「千鶴ぅ……」

 

そんな声で名前を呼ばないでくれ!

こちらに迫ってくる黒歌、俺はベッドの上で後退を始める…そりゃあ混乱させたり、眠らせたりすればこの状況は抜け出せる。

だが俺はそれだけはしない。

いや、したくない。

黒歌の想いを無下にできるか?

このまま兄妹として生きていけると思ったか?

気付いてただろ?そんな事を思う。

けど俺にそんな資格はあるのか?俺は親父にこの世界へ転生させてもらった身だ。この体はいずれ親父に返す事になるだろう…。

俺が幸せになっていいのか?

それに俺はなんだかんだ言っても人間。老いは必ず先に来るだろう。

 

『覚悟を決めろ、我が息子。お前が思っている事は正しい。このまま何も無いと思ってたか?気付いてただろ?その子の純粋な気持ち…お前は応えねばならん。試練にしては生温いだろうが、お前の出した選択で幸せという結果を得られるものがいる。考えろ。言っただろう?お前が困っていたら助けてやる…お前をこの世界へ生み出した時に、俺はそう決意したぞ?人間の身でありながら俺の力を1割持つお前は俺の息子だ。親が息子に抱く感情を俺が持てたのはお前の、千鶴のお陰だ。今まで散々色々な物を生み出しておきながら干渉しなかったんだからな。それに俺でさえダークドレアムを倒すのに思考するぐらいだ…実際戦って分かった。どうすれば最善の手が通用するのか、どう攻撃を捌くか。久々の高揚感だった。お前が思っている事などこの無限に、そして夢幻にある次元の中では誰しも思う事だ。』

 

突如頭に響く親父の声……実際戦った?いやまあそれは後でいいか。

なぜ戦いで仮定したのか分からないが、言いたい事は分かる。

誰しも最善の方法をとるのは仕方が無い。

けどそれが幸せに繋がるかと言えば人それぞれだ。

俺からしたら黒歌は大事な妹…黒歌からしたら想いをぶつけるに値する、つまりは俺の事を好いている。自惚れなんかじゃ無い…こいつの行動は昔っから変わってないから。

 

「わ、私……千鶴の事が好きなの!愛してるの!千鶴になら何されてもいいし、千鶴の命令だったら何でも聞く!私の体も心も、全部全部千鶴にならあげれる!約束したでしょう…いつか好きな人ができたら発情を抑えなくていいって。私はずっと…ずっと千鶴にこうしたかった!千鶴の子供が欲しいってずっと心の中で……あっ!」

 

「ありがとう黒歌…お前の気持ちはもう十分伝わってる。だから今まで我慢してた分、俺が発散させてやる。ああ、俺は黒歌が好きだよ。妹だからじゃ無い、女として。」

 

黒歌の言葉を聞くたびに俺の顔が熱くなっていくのが分かる。ああ、俺はこんなにも好意を向けられると弱い。

裸の黒歌に気にせず抱きつき、俺は黒歌の頭を胸に抱く。

これ以上言わせては立つ瀬が無い。ここからは俺の想いをぶつけよう…何、時間はたっぷりある。いざとなったらサーゼクスに悪魔にして貰おう。そうすれば黒歌とも一緒にいられる。

 

「そ、それって……」

 

「ああ…愛してる黒歌。」

 

もう理性なんて二の次だ。好きな女が裸でいるんだぞ?我慢できるわけが無い。

 

「にゃ……にゃうぅぅぅ……」

 

愛していると耳元で呟くと俺に猫撫で声をあげ、そのまま体をこすり付けてきた。

今日の夜は長い………

 

 

 

 

 

と普通の人間は思うだろうが、生憎それは無理だった。

部屋にグレモリーの魔方陣が現れた瞬間俺と黒歌は理性を取り戻し、黒歌は直様部屋を飛び出して行き俺は脱ぎかけの服を正した。

そしてグレモリーの魔方陣がより一層輝いたかと思えば、現れたのはリアスだった。

 

「千鶴……」

 

魔方陣から現れた瞬間に聞こえる声…それは震えており、初めて聞いた声色だった。

 

「…どうしたリアス?」

 

聞かずにはいられない。名前を呼んだかと思ったらいきなり服を脱ぎだしたのだから。

あれ?デジャビュ?

 

「千鶴。千鶴は私の事…どう思ってる?正直に答えて。」

 

「………それはどう言う意味でだ?好きか嫌いかの単純な質問か?」

 

まだ黒歌と抱き合っていた熱も冷めきってないのに、そんな悲しそうな、そして覚悟を決めたような顔で見てくるリアスに俺は身構えた。同じパータンじゃないかと。

 

「…それもあるわ。けど本当に聞きたいのは…私の事、どう言う風に見てるか。」

 

「どう言う風に……か。」

 

正直に答えなければ今後溝は深まったままになりそうだ。なら…俺は答えよう。それがどんな結果になってもだ。

 

「俺はリアス・グレモリーという個人としてみているとだけ最初に言っておく。最初リアスと関わったのはサーゼクスとの契約が始まりだが、俺はお前の生き方はとても美しく思う。夢はレーティングゲームで頂点に立つ事だったな。王としての器はまだ不十分だが、いずれ冥界を背負う1人になると思っているし、才能が無いって相談してきたことがあったな…そんな事は無い。今のお前は荒削りの原石だが、磨けばこれまで見てきたものより一層輝いた存在になると思ってる。『リアス・グレモリー』という原石から『リアス』という宝石へ進化させたい。リアスがどう思うか分からないが…グレモリーなんて崖を登る途中にある足場程度だと俺は思ってるよ。自分の家系だから俺みたいには思えないだろうけど、いつかサーゼクスの持つルシファーの称号でさえリアスの輝きの前に跪くしか無い輝きを持つと俺は思ってる。リアス・グレモリーという原石もただでさえ素晴らしいと思うが、俺はリアスと言うただ1人の少女がいつか全ての頂点に立つと思ってる…いや立たせてやりたい。それほどまでに期待してるし、好きだよ。」

 

俺が今まで溜めていたリアスへの評価…それを全て吐き出した。

リアスが俺の事をどう思ってるかは顔を見れば分かった。だったら俺はそれに応える。

俺がいい終わり一気に話したので息を整えリアスの顔を見れば……真っ赤に紅潮し口をパクパクとしていた。

 

「……あの、えっと。」

 

リアスは開いた口が閉じないようで、ついには手をバタバタ動かしてくるくる回り始めた。

どうしたんだ……一体。

リアスがそれから一言も喋らずにうーと唸って顔を真っ赤にしていると、またグレモリーの紋章がある魔方陣が部屋に現れた。

そして出てきたのがグレイフィアさん……今のリアスの姿を見て、最初に言おうとした言葉が不発に終わったようで、目を丸くして自分の義理の妹を訝しげに見ていた。

 

「お、お嬢様?……リアス!」

 

「っ!?あぁ、グレイフィア!いいところに!私の根城に行って今後の事を言うわ!ああ、朱乃!今すぐ私の根城に来てちょうだい!千鶴!愛してるわ!」

 

……グレイフィアに気付くと気を取り戻したのか、いきなり転移の魔方陣を展開させて、更に耳の近くに魔方陣が現れれば相手は朱乃だろうか?まくしたてるようにそう言い、最後にこちらに向かってウインクと愛してるの言葉を告げれば魔方陣の中へ消えた。

 

「あ……その、何があったのでしょう?」

 

「まあ色々……とりあえず明日説明するんで、今は追いかけた方がいいんじゃ?」

 

グレイフィアさんは事情が完全に読めないのか首を傾げ聞いてくるが、欲を言えば帰ってくれ。

気付いたらもう夜中の3時だ…。まだ黒歌の事もあるから寝るつもりも無いので、とりあえずは帰ってくれと言う意味を込めグレイフィアを睨めば、それではと2度もお辞儀をしてリアスの残した魔方陣の中へ去っていった。

それから直ぐに黒歌が戻ってきて、ある程度何があったか説明すると、リアスには負けないと言って覆いかぶさってきた。

 

その後1時間黒歌と想いを分かち合い、お互い愛し合った。

この時の黒歌の愛しさ、可愛さ、綺麗さを、俺は一生忘れないだろう。

まあそのまま特訓へ行こうとしたが、黒歌は今日は激しく動けないという事で今日行う予定だった黒歌の特訓は中止した。

リアスと朱乃は特訓へ行けないとリアスの使い魔が教えてくれた。

 

千鶴side out

 




うん、やっぱ黒歌は可愛い。

そして今回急に現れた親父のクレアーレ。
ダークドレアムと死闘の末、お互い持ちつ持たれつの関係になったようです。
デスタムーア?あいつは親父にヘコヘコしてます。
エスタークとは仲が悪いようで、あいつは寝てばっかだと愚痴を言ってたそうです。

初めてドラクエ6やった時、地獄の帝王とか魔神ぱねぇと思いました。

タグにドラクエモンスター登場タグつけようかな(笑)

次回いよいよあのサンドバック惨状!違った参上します!


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実力派のグレモリー眷属

さあやってまいりました!

お待ちかね不死鳥のサンドバック!

とりあえずみんな魔改造済みなんでイッセーはミラなんかに負けません。

タグを幾つか変更しました。


イッセーside

 

快晴!悪魔で高校生の俺には少し辛い程度の朝…今日の特訓、黒歌お姉様は体調が悪くて参加ができなく、俺は当初予定していた気の練り方と魔力の強化を後日に回し、今日は帝先生に…あ、千鶴って呼んでいいって言ってたな。千鶴先生に復習を兼ねて組み手をさせてもらった。

初めてやった時は、全身をくまなく触られ命がいくつあっても足らなかったのが、今では千鶴先生がとてつも無い手加減をしてくれている掌打を、感覚を研ぎ澄まし自分に触れられる前に手をはたき落すという事が出来るようになった。今では自分に向けられる視線同様、強者の気配にも敏感になった。

 

自分より強い存在は物凄くいる。今グレモリー眷属で感じる自分より弱い気がいないからだ。アーシアでさえ今は『聖女の微笑』を完全にコントロールし、この前なんて時速140キロ(目測)で俺の体に回復のオーラをぶつけた後、懐に入ってきて背負い投げをされ、関節を決められた。千鶴お兄さん……アーシア強いっす。

まあでもそれは俺の倍は努力しているからだってのは白音ちゃんに聞いた。学校が終わって部活で特に用事が無い時は家で2人に教えを受けているらしいから。

今は俺が最弱と少し落ち込んだが、千鶴先生がイッセーは努力家だ。自信が無いなら自信をつけてやる。と言われ『赤龍帝の籠手』で倍加をしろと言われ5分経った頃…ドライグが籠手にある宝玉の中で吠えていた。俺にしか聞こえない音量で。

 

『あ、相棒!?か、体は大丈夫なのか!?』

 

「え?いや特に…めっちゃ力湧いてくるけど。」

 

『こ、これは……相棒!もしかしたら禁手に今までの所有者達より早く至れるぞ!後はきっかけがあればだが……』

 

「凄まじいな。今まで会ってきた魔王や堕天使総督以外での誰よりも強そうだぞ、イッセー!」

 

おおおおおおお!ち、千鶴先生にそこまで言ってもらえるなんて!

ドライグ!禁手ってなんだ!?まだ強くなれるのか!?

 

『元々人間の相棒じゃあ、倍加を10回もできないとは思ってたが……まさかここまでとは!ああ!禁手に至れば確実にあの男を殴れるぞ!』

 

そんなにか!?よっし!!

 

「千鶴先生!!黒歌お姉様を俺に下さい!!」

 

『そうだ、言ってやれ!今の相棒ならあんな男……あ。』

 

「そうか……じゃあこれを耐えて反撃してみろ。そうしたら考えてやる。」

 

そう言って千鶴先生の頭の上に現れた透明に近い巨大な剣……あれ?気のせいかな?今の俺でさえ体の震えが……止まらない!?

 

「ド、ドライグ!?あ、あれ!?おい!どうすれば禁手になれるんだよ!?あんなん食らったら……くそ!死ぬ前に!」

 

もう振り下ろされる剣…あれは死ぬ。ドライグからは返答がなかった。

俺は最後の力を振り絞りこちらを見てベンチに座って震えている黒歌お姉様のところへ走る!

 

「にゃ、イッセー?」

 

とてつも無いスピードを出した気がするが、そんな事より俺は覚悟を決める!

朱乃先輩とリアス部長に負けず劣らないそのお胸様!一度触りたい!いや触らせて下さい!最悪見るだけでも!

けどやっぱり!

 

「死ぬ前におっぱい揉ませてください!」

 

「「「……………」」」

 

木場に白音ちゃん、アーシアが俺を蔑むような目で見てくる……あ!

黒歌お姉様が俺の手を掴み……思い切り投げ飛ばした!?

 

「目が下品にゃ。それに私はもう千鶴の……」

 

何か言っていたが覚えてない…。俺はそのまま千鶴先生に真っ二つにされたんだろう……起きたら保健室だったし。体の真ん中にまだ痛みがあったかから。

 

どうやら今は放課後のようで、グラウンドでは野球部がキャッチボール、陸上部が走り込んでいた。

 

「あれ?なんだこの魔力?」

 

旧校舎から感じる複数の魔力…中にある気の8人は俺のよく知るグレモリー眷属と帝兄妹。後は帝先生より格段に劣るがとてつも無い力を持っている人に、なんか今まで感じたことないぶっちゃけ俺たちより弱いぐらいの気が15人、後は俺と同じぐらいなのが1人だ。

とりあえず向かおうと…俺は『赤龍帝の籠手』を現せ倍加を初めて旧校舎にある部室へ向かった。

 

イッセーside out

 

アーシアside

 

うう、今日は朝から大変でした。

千鶴お兄様が放った透明に近い剣がイッセーさんを両断しグラウンドを爆散させた時は少し漏らしてしまいました。何がとは言いません。

その後千鶴お兄様がやり過ぎたと言ってイッセーさんを蘇生させていたのを見て、私もいつかあんな回復術を身につけることができるのかもと期待してしまいました。

そして放課後…また大変な事が起こりました。

放課後にイッセーさんの様子を見に行って、まだ目が覚めないようだったので途中会った木場さんと部室へ向かう最中…突如感じた巨大な魔力に私は木場さんと見つめ合ってしまいました。

 

「多分だけどグレイフィアさんかな?」

 

「お知り合いですか?それなら安心ですね。」

 

私は構えていた短剣を仕舞い込んだ。これは私が元々持っていた十字架や聖水を混ぜ刀身とした帝印の聖短剣。千鶴お兄様と黒歌お姉様も協力してくれて、この文字の描かれた鞘に入れておけば聖のオーラが私に害をもたらす事は無いそうです。

悪魔に一刺しすれば激痛が襲うという事で、私はこれを扱えるように木場さんに鍛えて貰ってました。

 

「聖剣のようで聖剣じゃない……まるで踊らされてるようだけど、千鶴先生だからね。」

 

木場さんは聖剣にとてつも無い怒りがあるそうです。復讐を望んでいる……昔はそう思っていたけど、次のステージに登るのには必須だし、忘れろとは言わないと千鶴お兄様が仰ったおかげである程度の心構えはできたようで、時々聖短剣を憎らしく見てましたが今はそうでもありません。

 

「まあそれを使うのははぐれ悪魔とかにしたほうがいいよ。グレイフィアさんに使ったら魔王様が襲ってくるからね。」

 

魔王様?サーゼクス様でしょうか?千鶴お兄様とはご友人らしく、この前家に電話がかかってきました。挨拶だけして千鶴お兄様に渡しましたが、とても気さくな方で、リアス部長を宜しくと言われました。

 

「とりあえず行きましょうか。リアス部長もいるみたいですから。」

 

「黒歌先輩と白音ちゃんも近いね。襲わないで欲しいけど。」

 

私たちより前にいる黒歌お姉様と白音ちゃん。あの2人なら大丈夫だと思いますよ?

そして旧校舎の中…途中で千鶴お兄様に会い、一緒に部室へ行きました。

 

「……綺麗な方ですね。」

 

「魔王サーゼクス・ルシファーの『女王』にして奥さん。一子を持つお母様でリアスの義理の姉だな。」

 

千鶴お兄様がソファーに座り、膝の上に黒歌お姉様を乗せ抱きしめながらそう言ってきました。

部屋にいたのは今までお会いしたことのなかった白銀の髪にメイド服を着たグレイフィア様。

そう言えば黒歌お姉様と千鶴お兄様のお二人は兄妹と言う境界を超えて恋人になったそうです。朝そう聞かされました。嬉しそうな黒歌お姉様とそれを見て少し複雑そうな白音ちゃん。そして眉間に皺を寄せてそれを眺めているリアス部長…かくいう私も、少し羨ましく思ってしまってます。ああ、主よ…幸せなお二人に嫉妬してしまう私に罰をっ!?!?

頭が割れそうでした…こういう罰なら受入れようかと思います。

 

「イッセーがまだ来てないけどあなた達に報告しなければいけない事があるの。そこ!いつまでイチャイチャとしてるの!」

 

リアス部長が黒歌お姉様と千鶴お兄様を見て怒っていますが、黒歌お姉様は気にしてないのか千鶴お兄様の膝に座りながら体を捻らせ千鶴お兄様の背中に手を回して胸板に顔を押し付けています。

遠目で見たらお姉様2人が抱きついているように見えますね。言ったら千鶴お兄様に頭をグリグリされますけど。

 

「お嬢様、私が……」

 

「ちょっと!千鶴!あなた昨日言ったことは嘘だったの!?」

 

昨日?千鶴お兄様からは昨日の夜に黒歌お姉様と恋人になったって聞きましたけど……グレイフィア様がため息をついてます。

 

「嘘じゃないさ。俺の気持ちを正直に述べただけさ。好きだって言ったのは嘘じゃないよ。」

 

「っ〜〜〜!?」

 

千鶴お兄様は真剣な表情をして、黒歌お姉様の頭を撫でながら凛々しい声でリアス部長にそう言って笑みを浮かべました。

聞いてたこっちもまるで好きだと告白されたような気になってしまいます……木場さん?顔が真っ赤ですよ?

 

「あ、いや……大きな声じゃ言えないけど千鶴先生って横顔とか凄い綺麗だし。」

 

「それ以上は結構ですよ?あの…人の好みに口を出すわけじゃないですけど、普通に女の人を好きになった方が」

 

「ちょっ!違うよ、僕は男が好きってわけじゃないからね!」

 

木場さんが凄い焦って私に弁解をしてきました。

まあ千鶴お兄様は美しいですからね。気品も感じますし、リアス部長にも負けてないです。

そんな風に喋ってると、突然部室の中に魔方陣が現れました……確かフェニックスの紋章ですね。この前皆さんで勉強したんですよね……イッセーさんは堕天使の幹部さんの名前が覚えるのに苦労してました。

魔方陣から溢れ出てくる炎…あ、火の粉が部室に飛び散ってますね。燃えないんでしょうか?

 

「ふん!」

 

魔方陣から出てきたのは男の人…確かああいうのをチャラ男っていうんですよね?黒歌お姉様と買い物に行ってた時に会った人たちと同じ雰囲気です。

けど私より強いです。殴られたら痛いでしょうね…白音ちゃんの攻撃を受けると骨が折れてしまいますけど、このチャラ男さんの攻撃なら腫れる程度で済みそうです。

自分で出した炎を自分の腕で払って消してました。そんなことするなら出さなければいいんじゃないでしょうか?

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ。」

 

声は男らしい…この前深夜に見たアニメの声優さんでいう魔人警察ムウロさんみたいな声ですね。白音ちゃんがアニメ好きなので、たまに一緒に見てしまいます。録画でいいんじゃないかと言ったら怒られました。

ムウロ様声のチャラ男さんは部室を見渡すとリアス部長に気付いたのか口元をニヤけさせました。

 

「愛しのリアス、会いに来たぜ。」

 

そう言って声を掛けました。チャラ男さんの言葉から出た愛に私は嫌悪を顔に表してしまいました。愛?あなたの目を見れば分かりますよ?そのセリフに特に愛なんて篭ってないのが。

 

「アーシアさん、聖短剣は納めて。アレを刺したらリアス部長の立場が無い。」

 

気付いたら聖短剣を掴んでいました。もし刀身が出てたらあのチャラ男さんにバレるところでした。

 

「黒歌!あなたは千鶴の妹でしょ!?」

 

「それはそうだけど、そんな壁私たちには関係無いもん。」

 

「そうだな…元々血は繋がってないから子供も心配しなくていいだろう。」

 

黒歌お姉様と千鶴お兄様、リアス部長はチャラ男さんに気付いてないようで、後ろから声を掛けた体制で固まってます。

はぁ、聞いてるだけで頬が熱くなってます…あれが惚気っていうやつなんですね。けど羨ましいです…私も千鶴お兄様に正直な気持ちを伝えたらあんな風に……

 

「おいリアス!お前の婚約者がっ!?」

 

「さっきから五月蝿いわ!千鶴!今日ライザーが来るの、だから宣言するわ!あなたを私の婿養子として迎えるって!」

 

ああ、あの方ライザーというんですね。フェニックスだからでしょう…頭が吹き飛ばされましたけど再生してました。

 

「お、おいリアスの女王……」

 

「はい?あら、部長駄目ですわよ?そっちにはティーセットがあるんですから。」

 

「ふん!分かってるわよそんな事!」

 

リアス部長の手には魔力が練られており、それをまさに黒歌お姉様にぶつけようとしたところ朱乃先輩に言われ黒歌お姉様に向けていた手を床に向けて魔力を放ちました……ライザーさんを巻き沿いに。凄いですね、下半身が再生していきます。

 

「……リ、リアスの騎士!」

 

「なんでしょうか?あ、リアス部長、そっちにはシャワー室がありますよ。」

 

「祐斗まで!もう!」

 

まだ鬱憤が溜まってるのでしょう。また魔力を溜めて、逃げる黒歌お姉様に向けて放とうとした魔力を木場さんに言われ標的を変え下に向けて床に放ちました……体に木片が刺さっても平気なんですね、ライザーさん。

お二人ともお客さんの前でみっともないですよ。

 

「お、おい…リ、リアスの僧侶?」

 

「え?あ、ごめんなさい!」

 

みんなを鎮めようと前に出れば先程まで持っていた聖短剣が床に落ちてライザーさんの足元に落ちてしまいました。ああ、聖なるオーラが溢れてしまってます。

ライザーさんをはじめ、悪魔の皆さんは顔を引きつらせてました。もちろん私もですが…失敗失敗。

けどおかげで落ち着いたようです。

 

「……あら、ライザー。来ていたなら声を掛けてくれればいいのに。」

 

リアス部長は悪びれもなくそう言ってため息をついています。ああ、気付いて無かったんですね。

 

「式場を見に行こう。リアス。今すぐ。」

 

怯えてますね…そんなにリアス部長が怖いんでしょうか?

 

「アーシア様…それをしまっていただけると嬉しいんですが……」

 

「え?ああ、すいません!」

 

私が聖短剣を出したままなのをお教え下さいました。ああ主よ…このお優しく美しいグレイフィア様に加護を……

 

「っ!?」

 

ああ、申し訳ありません!祈ってしまいました!グレイフィア様が頭をおさえてこちらを睨んできてます……ワタシジャアリマセンヨー。

 

「……リアスの眷属は規格外の者が多いな。全員中級以上か。」

 

どうやら私たちは下に見られているんですね。確かに実力はライザーさんの方が高いですが、眷属っていうからには千鶴お兄様や黒歌お姉様、白音ちゃんが自分より上なのは分かってるんでしょうか?

 

「そこにいる妖怪もなかなかの力を持ってるな。俺に駒が残ってたらお前たちに使ってるところだ。」

 

ああ、下に見てますね。そう言えば魔力や妖力はある程度抑えているんでしたっけ?

 

「そこの黒髪の女は美しいな…どうだ?眷属にはできないが俺の愛人になら」

 

「おとといくるにゃ。小さい男に興味ないし、むさ苦しいにゃ。」

 

ですよね。小さい?男としての器ってやつでしょうか?

 

「貴様ぁ、俺を誰…と……」

 

「久しぶりだな、ライザー。」

 

黒歌お姉様の言葉に炎を拭き出させ怒りを向けるライザーさん……はそのまま黒歌お姉様が抱きついた千鶴お兄様を見て目を見開きガクガク震え始めました。

 

あれ?

 

ライザーさんが炎を消したかと思えば魔方陣が現れ、そこから何人もの女性が出てきました。

なんだか修羅場になりそうな気がします。

 

アーシアside out

 

祐斗side

 

ライザー・フェニックス…フェニックス家の三男で僕たちの王、リアス・グレモリーの婚約者……なんだけど、こんな人だったのか。

実力を隠していないんだったら今のイッセー君と同じくらいの実力かな?今はみんな力を抑えてるからライザーが気付かないのは仕方ないかな。

けど彼の眷属がこんなに弱く感じるのは、やっぱり千鶴先生の指導のおかげかな。

 

「どうだリアス?これが俺の眷属達だ!お前ら、あの男を殺せ!」

 

そう言って千鶴先生を指差す彼…いや、眷属を向かわせるより自分で行った方が……あ。

 

「千鶴を殺す?」

 

「………にゃあ。」

 

お二人が抑えてた力を解き放った……ははは、アレはダメだね。見てみてよ、ライザーが女王かな?紫の髪をした女の人の後ろに隠れてしまった。

他の眷属も獲物を落としガクガク震えている。

僕たちには向けられてないから分からないけど、その殺気を超える人が後ろにいるんだよね。あ、横からも……

 

「いけませんよ、殺せなんて言葉は。」

 

それは収めて欲しいかな…聖剣じゃないのは分かってるんだけど、ただでさえ僕の神経を逆撫でするんだ。

 

「あらあら、うふふ……皆さん千鶴先生の事が大好きなんですわね。勿論…私も黙って見過ごすつもりはありませんが。」

 

「ライザー、千鶴に手を出したらあなたを再生不能まで至らせるわよ?」

 

僕は違う理由だけど、グレモリー眷属が一丸となりライザーとその眷属達へ殺気を向ける。

グレイフィアさんも僕たちの殺気を感じ取り、いざとなったら止める姿勢でいる。

そんな時…部室に遅れてきた人がいた。

 

「遅くなりました!……あれ何事?」

 

イッセー君だった。赤龍帝の籠手を既に出してることから、ある程度のことは覚悟してるみたいだ。

 

「あ、あいつを始めに倒せ!はは、ミラ行け!」

 

「はい、ライザー様!」

 

ミラという棍を持った女の子がイッセー君に向かっていった。

いやぁ、イッセー君はやっぱり初見では弱く見られてしまうんだろうか?

 

「え?」

 

「敵って事?確認するの忘れてたけど。」

 

イッセー君に攻撃するなら近接戦闘は避けた方がいいよ。僕でさえ彼の近くには寄りたくないぐらいだから。

ミラという子は棍を掴まれ引き寄せられればそのまま鳩尾にパンチを喰らい血を吐いた後その場に倒れた。

弱いな…そう呟いたイッセー君を僕は見逃さなかった。勿論それは相手にも分かったようで、次に来たのは双子っぽい子達。電動チェーンソーを2人が構えイッセー君に向かってくが、イッセー君は臆することなく彼女達の前に立てば赤龍帝の籠手で電動チェーンソーを壊し回し蹴りで2人を蹴り飛ばした。

 

「俺、あんまり女の子に傷をつけたくないんだけど……」

 

イッセー君が頭をポリポリとかきながら倒れた3人を見ていた。

油断はダメだよイッセー君。

 

「カ、カーラマイン!シーリス!」

 

次に来たのは剣を持った2人……あれはダメだね。

イッセー君は剣術がてんでダメだったが、今は僕と共に素振りをして剣術指南もしている。この前剣術の師匠に、友達に教えたいと言ったらコツを教えてくれて、それからはイッセー君も上達している。

だから、僕が手加減した時と同等の彼女達は……大変な目にあう。

 

「ぐっ!?」

 

「ああっ!?」

 

素手対剣の対処法として千鶴先生の言った事…それは一撃目を避けて腕を折れだったらしい。僕も最初両手を折られてびっくりした。

千鶴先生と修行をするとある一線を超えてしまい、あれぐらいは簡単にできるようになってしまったらしい。恐ろしいよね。僕とやる時は折らないでくれと頼んでおいた。

 

「貴様ぁ!」

 

「よくも!」

 

チャイナ服を着た子と顔を半分隠すような仮面を被っている子がイッセー君に飛びかかった。

2人は戦車だろうか?それぞれ拳に力を込めていた。

けどこっちにも戦車候補の人が師匠にいる。

白音ちゃんの実力は手加減していて彼女達以上だろう。白音ちゃんの拳が鳩尾に入った時なんか30分は悶絶して吐くしね。

 

「えっと…、いつまでやるの?」

 

イッセー君が2人の拳を受け止めながら聞いてきた。足蹴りも体幹がしっかりしてるからか全く効いてない。走り込みのおかげだね。

地獄のグラウンド周回は既にみんなクリアしてるし、白音ちゃんが手加減している蹴りならみんな吹き飛ばされないかな。

 

「こ、こいつ!」

 

「なんて強固な!」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

褒める人が敵なのはどうなんだろう。

けど多分それはイッセーくんの『赤龍帝の籠手』が倍加を何回かしてるからだろうね。

けど倍加が解けてないって事は全然力を出してないんだろうか?確か強い一撃を放つとリセットされるんだっけ?

 

「双方、攻撃を止めてください。止めなければ私が仲介に入ります。」

 

「え?あ、はい!」

 

グレイフィアさんの強さに気付いたのかイッセー君は2人の手を離した…。これが魔王様の女王か。

 

「お嬢様、ライザー様、お二人の関係は分かっております。ライザー様はリアスお嬢様と結婚をしたい。リアスお嬢様はしたくない。相違はありませんか?」

 

このままでは話が進まないと思ったのか、グレイフィアさんは2人を見た。

ライザーはそうだと言って千鶴先生を視界に入れないようにしてグレイフィアさんにそう宣言し、リアス部長もええと言ってライザーを睨んでいた。

 

「でしたらレーティングゲームで決着…というのはどうでしょうか?」

 

「ふん!どうせお父様とお兄様が最終手段として用意したものでしょ?私の生き方をいじられるのは腹立たしいけど、またとない機会だわ!ライザー、レーティングゲームで勝負よ!私が勝ったら婚約破棄!あなたが万が一でも勝ったら結婚でもなんでもしてあげるわ!」

 

「言ってくれるな、リアス。いいだろう!俺が勝ったら即結婚だ!負ける事なんて万が一にも億が一にもないがな!」

 

千鶴先生が見えないように横に紫の髪をした女性を盾にしているのにそんな事を言うライザーに、僕とアーシアさんは小さく笑ってしまった。

 

「それでは準備をいたします。今日から5日後…ライザー様の眷属が回復した後始めれるようにいたします。」

 

グレイフィアさんが言うには、ライザーの眷属の治療もそうだが今回の事で話を知っている貴族にも声をかけるらしい。まあ当然かな…。今すぐやってもいいとはリアス部長が言っていたけど、ライザーが眷属を回復させるから待てと言って帰って行った。

イッセー君1人で勝てるんじゃないかな?

そんな事を思いながら、僕たちはこの5日間…圧倒的な力でライザー達をねじ伏せれるようにしてもらうため千鶴先生に助力を頼んだのは言うまでもない。

 

祐斗side out

 




いよいよ次回はレーティングゲーム回!
修行は冒頭で少しやって、すぐにレーティングゲーム……即終了の流れかなと。

ああ、早くコカビーとか尻龍皇とかそうそーとか出したい!

あ、レーティングゲーム終わったら使い魔の森行きます。

では誤字等、感想等ありましたらよろしくお願いします。


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レーティングゲーム前編

うーん、無双しすぎもあれなんでちょっと改変作業中。

二回に分けてレーティングゲーム終了をします。

駄文注意でお願いします!


千鶴side

 

急遽決まったレーティングゲーム…リアスとライザーの婚約解消の為のレーティングゲームだ。

御家同士の啀み合いで良くある事だ…そう言えば何ヶ月か前にセラフォルーに助っ人として呼ばれて戦ったな。仕事で忙しいから代わりに戦ってと。承諾してしまい快勝という結果になったが、まあ今のメンバーなら大丈夫だろう。

けどグレモリー眷属を甘く見ていたのは頂けない。みんなに修行をしてくれと頼まれたからには全員でライザーをリンチできるような力はつけさせないとな。

 

 

 

というわけで修行は滞りなく終了した。

イッセーとアーシア、祐斗が禁手になれなかったのは仕方ないがそれぞれパワー、スピード、テクニックは完璧だ。

イッセーは素の力が勝負の決め手になるので、1日200キロの走り込みと腕立て、腹筋、スクワットをそれぞれ3000回、その後は組み手をして弱点や決め手の考察、レーティングゲームの知識を植え付けた。

祐斗は今のスピードがどのくらいか見極める為、北海道まで自分の足だけで行ってもらい、旭川市であれの恋人というお菓子をレシート付きで3日以内に帰って来いと伝え、合格してからはイッセーと一緒にレーティングゲームの知識を植え付けた。

アーシアは護身術の復習オンパレードに、過剰回復まで使えるように神器の扱い方を覚えさせた。俺の使える魔法、ホイミ、ベホイミ、ベホイマ、ベホマ、ベホマラー、ベホマズン、そして2種類のマホイミ。これを扱える魔力をアーシアは持っていた為、それだけを鍛えた。

おかげでベホマズン以外の魔法は神器を通して使用できるようになった。俺の血を飲ませて親父の魔力を少しずつ分け与え俺の知識をアーシアへ教えたらできたので、いずれ他の眷属達にも試そうと思う。

魔力の枯渇が懸念だったが、俺と同じように呼吸するだけで魔力が回復するようになったアーシアを見て、親父がお前の子供みたいなものだと言っていた。

朱乃には完全に雷の魔力が操作できるようになるまで俺を追尾させ、精神面の強化の為に俺が殺気を常に朱乃に放っていた事もあり、今では何をしてもうふふとしか言わなくなった。これなら不意打ちをされても乱れる事ない雷撃を放てるだろう。

後はリアスと組み手させ体術を白音に教えてもらっていた。

そしてリアスは進化した…俺と黒歌が正式に付き合う事を伝えると最初は狼狽えたが、正妻は渡さないと言って黒歌と大乱闘を始めた時は正直止めさせようと思ったが、黒歌の右手を吹き飛ばすほどの実力を発揮した時は正直驚いた。とりあえず黒歌にベホイミをかけてそのままリアスの潜在能力と生存本能を高める為2人でリアスを襲っていた。

3日後には凝縮した滅びの魔力をマシンガンのように吐き出し、ビットのように空中に浮遊させた後そいつから滅びの魔力を連射させたり爆発させたりとかなりの技術を得た。

結局本気になった黒歌にやられた為愛人でもいいから、このレーティングゲームで勝ったら私と付き合ってと涙を流し言ってきたので、俺は黒歌に了承を得て勝った後も気持ちが変わらないなら俺がリアスを幸せにしようと約束した。

二股?そう取られるのは分かっているが、俺は平等に愛す。正直に生きて不幸せになんかさせない。

 

「さて、今日で修行は終了だ。夜まで根を詰める必要はない。帰って寝て、最高の体調でライザー共を蹴散らせてこい!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

今夜は本気を出して短期決戦。終わったらみんなで打ち上げをしようと約束し別れ、また夜に集まる事になった。

 

自宅に帰ってきて早速黒歌が甘えてきて、夜までは俺の部屋で一緒にいた。

黒歌は体を撫でられている時が一番好きらしく、頭、背中、お腹等余す事なく撫でてあげれば彼女は瞬く間に出来上がってしまう。

こんなに可愛い存在が自分の腕の中にあると思うと、俺はそれだけで幸せになる。

 

まあそのまま黒歌を愛してやり夜…アーシアは先に出ており準備しているらしく、俺と黒歌、白音は3人で駒王学園へと向かった。

部室内では既に全員集まっており、リアスは空中に魔弾(ルイン)という紅い球体を幾つも出してはそれぞれ意思があるかのように高速でぶつからないように動いていた。

朱乃は巫女装束を着て周りに雷の球体を浮かばせ精神統一を行っていた。

祐斗は魔剣創造の力を極限まで高める為か目を閉じ、壁に背を預け目の前…空中に魔剣を造っては消すという事を行っていた。

イッセーは既に赤龍帝の籠手を出してやる気十分で、シャドーを行っていた。

アーシアは祈りの姿勢を見せ魔力を高めている…聖短剣がシスター服のポケットから見えた。

 

「…………」

 

そんな中いつから居たのかグレイフィアさんが俺をじっと見つめ、何やら口を動かしていた。

 

(ライザー様が死んでしまいます……か。)

 

読唇術は心得ているが、いきなりやられると戸惑うな。俺も不意打ちなどにしっかり対処できるようにしたいが、いかんせん手加減が難しいからな……。

 

「…はぁ。皆さん準備はできているようですね。」

 

グレイフィアさんはため息をついて部室を見渡した。全員集中できたのかやる気に満ち溢れた表情をしてグレイフィアさんの話に耳を傾けていた。

その後はルールの確認やこの戦いをサーゼクス達が見ているという事を告げ、観戦者は後ほど別の場所に送りますと言ってリアス達を異空間へと転送させた。

さあどんな戦いを見せてくれるんだろうか?ライザーが修行をしていたとは思えないし、俺と黒歌、白音はグレイフィアさんの作り出した魔方陣に入り転移した。

そこにいたのはソーナ・シトリーとその眷属達…まあ友人の戦いを見たいというのと、魔王関係者だから許されているんだろう。いや…姿は見えないがサーゼクスの気配がするから中継か?

 

「帝先生、こんばんは。」

 

「おう。ん?見た事ない奴がいるな。」

 

俺が知っているソーナの眷属は真羅椿姫だけだ。他の奴らは学園の生徒だろうが、見た事のない奴らばかりだった。

全員俺の事は聞いていたのか頭を下げて画面に目を向けていた。相変わらず女ばかりの眷属だな…ある意味ライザーといい勝負だ。

 

「あの、帝先生は人間…なんですよね?」

 

「ああ、そうだが?」

 

1人の女子生徒がそう聞いてきた。何が言いたいんだろうか?まあ確かに生物学上は人間だが、生命力や魔力なら魔王以上だな。

 

「いえ…私たちは悪魔じゃないですか…怖くないのかなって。」

 

「にゃはは、千鶴の怖いものって言ったらグレイフィアの真っ赤になった顔ぐらいにゃ。」

 

……まあ確かに、グレイフィアさんの顔を真っ赤に染めた顔は怖かったな。なんだっけ、確か俺と組み手をしていて俺がグレイフィアさんの欠点を幾つか言った時だったか?的確に言いすぎたのかそのまま怒った様子で帰ってしまって以来、あまりグレイフィアさんと組み手をしたりはしなくなったな。

 

「君らが彼に危害を加えるような素振りを見せたら気付かないうちに消滅させてるぐらいには実力差はあるよ。」

 

そして女子生徒の問いに答えるように姿を現したのはサーゼクスだった。

隣にいるグレイフィアさんは口元に魔方陣を展開しているから審判なんだろう。

 

「サーゼクス様!?」

 

どうやらサーゼクスがいた事はソーナも分からなかったようで、驚いて目を見開いていた。

全員が総立ちしサーゼクスに頭を下げている間、俺は画面を見て笑みを浮かべた。

あいつらの事だ…新しい技を試したくてうずうずしてるな。

 

「千鶴、今回の戦いはどちらが勝つと思うんだい……いや、聞かなくても顔で分かるね。また彼らに修行を?」

 

「強くなりたいってのはどんな生物でも思う事だろ?応えてやるのが大人だ。」

 

俺とサーゼクスが友人のように喋っているのをソーナと真羅以外は驚いた表情で見ていた。

まあ悪魔の親玉と対等に喋る人間は俺以外だと大統領ぐらいだろ。

 

「聞いたよ。君の修行方法…生存本能を極限まで高めて、全ての能力をフルで使用できるようにしてるんだって?君の言う基礎訓練は上級悪魔の基礎訓練以上。それに腕や足が無くなっても再生させ、超回復を利用した肉体改造……最初聞いた時は信じられなかったけど、画面越しにでも伝わるみんなの気迫は若手の中ではずば抜けてる。死人が出ても蘇らせるんだろ?」

 

「まあ俺だけしか蘇生できないからな。手加減はしてるから生き返らない事はないさ。」

 

俺とサーゼクスの会話についていけてないソーナ達は、レーティングゲームの開始の合図と共に視線をモニターへ移した。

魅せてやれ…リアス。お前の初陣だ。

 

千鶴side out

 

リアスside

 

『皆様、この度グレモリー家、フェニックス家のレーティングゲームの審判役を担う事になりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます。』

 

グレイフィアの声が校内のスピーカーから聞こえてきた。お兄様が見ている…それに千鶴も。黒歌には負けてしまったけど、まだ諦めたわけじゃない。いつか必ず黒歌を打ち負かし、千鶴の正妻を勝ち取るつもりだ。

今回のフィールドは私の案を聞き入れてくれたようで、駒王学園のレプリカである異空間……ここなら全力を出しても大丈夫でしょう。特別なルールがない事から、建物を壊す事や人数制限などの話は出てこず開始の合図が鳴った。

 

「さて…早く終わらせて打ち上げに行くわよ。祐斗は林。イッセーは体育館へ行って頂戴。ライザー達も動き出してるみたいだし、今なら良い練習台がいるわ。朱乃はユーベルーナをお願い。アーシアは私とライザーの所へ直接行きましょう。これを持って行って、ライザーの眷属を倒したら報告して頂戴。」

 

あらかじめ策を幾つか練ってそれぞれの力を試せる展開を作った。私たちの眷属が負ける姿なんて想像できないぐらい。

 

「それでは行ってきます。」

 

まず窓から飛び出たのは祐斗。空中に魔剣を作り足場にして林の中に向かっていった。次に朱乃が足元に雷球を発生させ、それに乗って外へ向かった。イッセーはアーシアを心配そうに見るが、アーシアはニコリと笑い千鶴と黒歌が作った聖短剣を見せるとイッセーは青い顔をして窓から飛び降り体育館へ向かった……アーシア、しまって!

 

「部長、私たちも行きましょう。」

 

「ええ、あなたは邪魔をしてきそうな眷属がいたらお願いね。」

 

アーシアは戦いが嫌い……だからこその一撃必殺。苦痛も味あわせる事なくはぐれ悪魔を狩れる程に成長したアーシアを見て、最初は驚いたが今では気にならない。

さて…ライザー。あなたを塵にしてあげるわ!

 

リアスside out

 

祐斗side

 

林の中で敵の魔力を探知し、今しがた目の前を3人が走り抜けていくのが見えた。

気配の消し方は三流以下…あれでは山にあった大木の方が良い修行相手になるほどだ。

 

「魔剣よ。」

 

魔剣創造を使い空中で静止する魔剣を50本…まだ魔力が足りてないからか、目標の500本までは到底届かない。

けど今ある50本は全て違う能力を持っており、中には何かに触れた瞬間に爆発するような魔剣、風を纏う魔剣、氷の魔剣、よく使っているものから、初めて作ったものまでいろいろとあるが、僕のレパートリーはまだまだ白紙が多い。この中の20本でさえ千鶴先生に協力してもらって作れたんだから。

 

「僕は近接戦闘が主なんだけどね…たまには遠距離攻撃をしてみたいんだ。魔剣創造の秘技…魔創界!」

 

リアス部長や朱乃先輩の姿を見て考察し、千鶴先生からはいい攻撃手段を得たなと褒められた僕の新たな可能性。

魔剣創造だけでは魔剣を作り僕がそれを持って戦うのが関の山だったが、魔剣が自分から離れたところでも作れるのかを始めに検証し、僕の魔力を混ぜ合わせる事によって空中で作れるのも分かった。それからは……魔剣を発射させる事だけを考えてきた。

それが魔創界。僕の上空に浮かぶ様々な魔剣が、ライザーの眷属の後を追うように高速で発射され、木々を切り裂きながら林の中へ消えていった。

僕は速度の壁を1段階超えたようで、北海道まで死ぬ気で走らされた時は正直千鶴先生に一度殺されるのは覚悟したけど、結果は北海道で蟹を食べる余裕があるぐらい自分の足が早くなっていた。

元々分かっていたんだろうな、千鶴先生は厳しいが結果が必ず出る。と言うか、結果が出ないようなら千鶴先生は直ぐに見限るんだろうな。

 

『ライザー・フェニックス様の兵士、3名リタイアです。』

 

命中はしたようだ。目の前に広がる荒れた林を見て、僕はリアス部長に撃破完了と報告をしてグラウンドの方を見た…一瞬だけど、明らかに魔力が桁違いに上がった子がいる。

その子が誰かわからないけど…僕は危険因子を見過ごしわけにはいかない。

魔剣を創る隙を狙われる可能性があるから、僕は何本もの魔剣を空中で創造しながらグラウンドへ向かった。

 

祐斗side out

 

イッセーside

 

『ライザー・フェニックス様の兵士、3名リタイアです。』

 

お、木場が早速敵を倒したのか?朱乃先輩は相手の女王と一騎打ちだっけ。

まあ朱乃先輩の心配はいらないかな。それより自分の事だ。

俺は今体育館の前にいる……うーん、中には4人いるようだけど、3つある新しい技の実験台にしては脆すぎるかな?

 

『相棒、もう10回も倍加してるんだ。このまま体育館ごと吹っ飛ばせるアレでいいんじゃないか?』

 

俺は修行の成果もあり限界倍加は25回。これ以上やると体が言う事をきいてくれないんだよな。

とりあえず宝玉が光りドライグの声が聞こえたので、それが無難かと頭をかいた。

まあライザーの眷属は女ばっかで弱いからな…うちの女子達は凶悪だけど……。

 

「よっし、いっちょ派手にやろうぜ、ドライグ!」

 

『おうよ!explosion!』

 

10回の倍加…これだけあれば十分だろ。

俺は両手を重ね、そこに魔力を溜め始めた…そう言えば初めてドライグを出現させた時もこうやったな……。

今までの修行のおかげで魔力量の底上げができたため、最初オカルト研究部で見せた米粒のような魔力が今ではソフトボールぐらいまでになった。これも千鶴先生の修行のおかげだ……。諦めない姿勢は素晴らしい。努力が実らないようなら俺は自害してもいいとまで言わせたんだからこれぐらいはできないとな!

 

「いくぜ!10倍ドラゴンショット!!」

 

『相棒…計算が違うぞ。』

 

う、うるせえよっ!?分かってるって、結局2、4、8って倍加してくんだもんな!

まあ俺の期待を裏切らないドラゴンショットはそのまま体育館を上回る大きさになり、体育館を消滅させ空に飛んで行った……。

 

「うーん、やっぱもうちょっと修行しないとな。目標は千鶴先生なんだし!」

 

『まあ帝ならあれぐらい倍加なしでやれそうだからな……二天龍が聞いて呆れる程の力を持ってるだけある。』

 

ドライグは千鶴先生の実力がこの世界に君臨する最強のドラゴン並だと言った…。千鶴先生も、悪魔が何年生きるか知らないが、俺が生きてる間は限界なんて壁をぶち破れるように鍛えてやると言っていた。

俺が上級悪魔になったら女王の駒を渡しますと言ったらハーレム人員が集まらなかったらなと言われてしまった。

……まあ最悪、アーシアと木場、朱乃先輩もいるし俺が悪魔にしなくても誰かがしそうだ。

 

『ライザー・フェニックス様の兵士3名、戦車1名、リタイアです。』

 

リアス部長の義理のお姉さんにして魔王様の奥さん兼女王のグレイフィアさん、そしてグレモリー家のメイド長をしている…ハイスペックなお方が審判を務めているから間違いなく4人倒せたんだろう。

木場、俺の方が人数多いぜ!

さて、次は……グラウンドだな。1人強い力を感じるな……ライザーか?まあ行ってみれば分かるか。

俺はクラウチングスタートの姿勢になり、倍加が2回済んだところでグラウンドに向かって走り抜けた。

 

イッセーside out

 

朱乃side

 

『ライザー・フェニックス様の兵士、3名リタイアです。』

 

『ライザー・フェニックス様の兵士3名、戦車1名、リタイアです。』

 

僅かな誤差で一気に7名もライザーの眷属が倒され、目の前で呆然としている爆弾女王(笑)を見て私は空中に6個の雷の球体を生み出した…まあちょっと過剰でしょうが、新しい技はこれが6個ないと始まらないんです。勿論増やせば更に威力は上がりますけど。

 

「うふふ…どうしたんですか、爆弾女王?」

 

「くっ!?な、何なのよあなた!!私の知ってる雷の巫女とは桁違いじゃない!」

 

うふふふふ、狼狽えてますわね……。けど、こんなもので私の実力を知られるのは癪ですわ。私の本当の力を見せるのは、今のところ千鶴さんだけ……。リアスにもまだ見せていない私の全て。いつか見せれればいいんですけど……

 

「雷神招来、雷獄殿。」

 

私の魔力だけで狼狽える存在には勿体無いですが、これから先のレーティングゲームで手加減ができるように今調整しないといけませんわね……。

私は雷の球体を爆弾女王(笑)の上下左右に分かれ囲む……さあ、どの程度まで耐えられますかね?

 

「レベル1ですわ!」

 

バリッ!!

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

それぞれの雷の球体から発生した雷撃が向かい合う球体に向かって流れる…うふふ、雷が体を突き抜ける感覚はどうでしょう?

……あらあら、これぐらいで終わりですか?

 

「……っ……っ……」

 

ピクピクと体を震わせ空中で佇んでいる爆弾女王(笑)は、ゆっくりとした動きで胸の谷間に手を持って行き……待てませんわ♪

 

バギャァァァ!

 

『ラ、ライザー・フェニックス様の女王……リタイアです。』

 

私はレベル2に上げた雷獄殿で爆弾女王(笑)を消しとばした…何をしようとしたのか分かりませんが、千鶴さんからは相手には無慈悲な一撃を与える隙をわざと作らせろと言っていましたから、まさに絶好のチャンスでしたわ。

グレイフィア様が何やら狼狽えていましたが、あの程度あの方ならできるはずですよね。

 

さて…1人気になる方がいますわね……グラウンドでしょうか?

白音ちゃんより弱い力…けど、たぶん何かある。

まるで檻に入った肉食獣…それも内側から破れるのにわざと破らないような躾の良さ…それにこの重圧感。ライザーの眷属にこんな力を持っている人が居たの?

 

私は何か嫌な予感がしてグラウンドへ急いだ

 

朱乃side out

 




さて、もうお気付きでしょうが、ある意味ラスボスはあの子です。
ドリルヘアーです。
実はあの子、千鶴が大好きなんです(笑)
え?ええ、ご都合主義ですね。

とりあえずライザーさんはラスボス倒してエンディング後、始まりの町から少しして出てくるいたずらモグラレベルです(笑)

次回で2巻終了です。
ちなみに祐斗の技はAUOみたいに発射します。けど保管してあるのじゃなくて自分で作ってます。
朱乃さんは某妖精の尻尾の顔面傷の何とか殿みたいな感じ。あれは攻撃すると反動が来ますが、朱乃のはそういうのありません。強い魔力とかで簡単に消されます。今のところ最高数は20です…コカビー大ダメージ(笑)羽とか以前に全身黒焦げ。


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レーティングゲーム後編

さて最後グダグダですがこれで2巻終了です。
辛口コメは僕のメンタルを崩すので、当たり障り無い感想や誤字等の発見報告をお待ちしてます(笑)


祐斗side

 

『ライザー・フェニックス様の兵士2名、騎士2名、戦車1名、僧侶1名、リタイアです。』

 

驚いた……まさかこんな子が敵の中にいるなんて。千鶴先生は絶対気付いていた…けど、僕たちにその存在を教えなかったのはなぜだろう?

僕の目の前にいるドレスを着た、金髪の縦ロールの少女…レイヴェル・フェニックス。ライザーの妹…その彼女がまさかここまでとは思わなかった。

 

「リアス・グレモリー様の騎士、木場祐斗さんでしたわね。」

 

彼女の口から発せられる言葉には既に重みがある。それだけの重圧感を持っているのに驚いたし、彼女はフェニックス…神や魔王の一撃、もしくは何度も再生を繰り返えさせ精神をすり潰す…それだけの事が彼女には通用しない。

 

「君は確か、ライザーの妹さんだったよね?」

 

「……確かにライザー・フェニックスの妹ではありますが、今の私はライザー・フェニックスの僧侶、レイヴェル・フェニックスですのよ?」

 

にこりと笑うその表情を見ただけで、僕は胸の奥が冷えていくのが分かった。

彼女の実力は多分白音ちゃんの下で朱乃先輩より上…けど、それは僕たちにとって最大の壁だ。

レイヴェル・フェニックスの周りに浮かぶのは炎の球体…先ほどあれに僕の魔剣を全て焼き尽くされた。氷の魔剣や水の魔剣でさえ蒸発する炎…そして、ドラゴンの鱗に傷をつけられる炎だ。

 

「この気配は兵士ですわね…先ほどユーベルーナもやられたようですし。全く…。」

 

「3対1で戦うきかい?それは無謀じゃないかな?」

 

そうは言ってみるも、多分僕とイッセー君、朱乃先輩が加わっても五分五分……もし彼女がまだ力を隠していれば、間違いなく僕らは倒される。

 

「足が震えてますわよ?」

 

「っ!?」

 

彼女に言われ足元を見る……やられた!!

 

「千鶴様にお教えを受けていながらその程度の罠に引っかかるなんて…何て愚かな。」

 

彼女がいつの間にか僕の後ろにいて…次の瞬間彼女の足が僕の体にめり込んだ……ダメだ!防げる威力じゃ無い!

咄嗟に僕の吹き飛ばされる方に魔剣を創造し吹き飛ばされるのを抑えようとするが、瞬く間に魔剣が折れ僕はグラウンドに投げ出された。

 

彼女以外の眷属を倒したところまでは良かったが、彼女の一撃は眷属全員でかかってくるより何十倍も重い。彼女自身も兄の眷属の強さを見ておきたかったんだろう。

 

「お兄様にはがっかりしました。5日もユーベルーナ達とイチャイチャ…私が1人で修行をしていなければ今頃全滅でしたわね。」

 

本当に呆れたように言うレイヴェル・フェニックスは、先程とは違い炎の球体ではなく長い棒状の物を空中に作り上げた。

ポテンシャルが測れない…修行が足りないのが分かる。僕は今の自分に満足しているわけじゃ無い…まだ限界の壁は千鶴先生と一緒に破れるからだ。

けど千鶴先生がいなくなったら僕は多分そこで止まる…それがどこかは分からないが、多分イッセー君や朱乃先輩だって気付いてるだろう。

 

「君は…千鶴先生の弟子かい?」

 

「ええ、そうですわ。とは言ってもあなた達より後に弟子にしてもらってますわよ?」

 

それを聞いて愕然とした……僕が千鶴先生に教えを受けるようになったのは高校に入ってから。つまり2年ちょっとだ……彼女はそれより遅いと言った。

それであの力?

 

「ちなみに直接の指導を受けたのは15回程でしてよ?」

 

「なっ!?」

 

15回…僕が直接千鶴先生に教えてもらったことはまだ10回にも達していない。千鶴先生に直接教えてもらうだけで僕たちを超えた……?もう十分千鶴先生と同じ化物の類じゃないか!

そんな話をしているとこちらに向かって走ってくるイッセー君が見えた……上空には雷が鳴り始めている。みんな彼女の力に気付いたようだ。けど勝てるかは分からない。

 

「そうですわ。3対1…それでいきませんこと?千鶴様の弟子…私達は兄妹弟子なのですから、私たちの姿を師匠にお見せしませんと。」

 

兄妹弟子…確かにそうだ。それにこの戦いはサーゼクス様も見ているだろうし、師匠も見ている。無様な姿は見せられない!

イッセー君、朱乃先輩…3対1で彼女を倒しましょう。それが僕たちの仕事です!

 

祐斗side out

 

イッセーside

 

『ライザー・フェニックス様の兵士2名、騎士2名、戦車1名、僧侶1名、リタイアです。』

 

おお、木場だな!計算だと後は僧侶が1人とライザーか。

けど…やっぱり強いのが1人いる。

さっき木場の魔力が上がったけど、それを一瞬だけど凌駕した。

木場、無事でいてくれ!着いたら俺の新技を見せてやるからな…ぐふっ。

 

『相棒…本当にあれをやるのか?』

 

「おうよ!俺の新技その1はドラゴンショットだろ?次が力の譲渡だろ?そして…俺の最終奥義、洋服崩壊!これだけ強い奴になら使っても平気だろ!」

 

そう、俺は遂に必殺技を覚えた…ドラゴンショットはドラゴン波を真似た結果。譲渡は赤龍帝の籠手の力…だがしかし!この洋服崩壊は違う!俺の性欲、そして煩悩の結晶!……まあうちのメンバーに使うにはかなり倍加をしないと無理みたいだけど。ていうか、なんで服にでさえ強化をかけてるんだよ!くっそ〜、千鶴先生も酷いぜ!

 

「まあとりあえず倍加は溜めて、後で木場か朱乃先輩に譲渡しよう。俺の攻撃は溜めが一番長いからな。」

 

『まあな。けど威力は高い…最悪相棒が決め手になるかもな。』

 

ドライグはそういうが、俺は朱乃先輩が一番期待できる。

あの人の技で千鶴先生を1秒身動きできなくすることができるんだから。

 

『だが手加減していての1秒だろ?』

 

「そうなんだよな…多分本気だったらはじき返されて終わる感じがする。」

 

千鶴先生は俺らと組み手をするだけで強くなっていってるような気がする。そもそも一回使った技が効かないあたりドラグ・ソボールの空孫悟みたいだ。

それに本気だとか言ってるけど、千鶴先生の本気がどのぐらいか検討がつかない。

リアス部長のお兄さん、魔王と互角の戦いはするらしいけどあまりそこらへんの話は聞いてないな。今度聞いてみよう。

そんな話をしているとグラウンドに着いたのか、奥の方で木場が吹き飛ばされているのが見えた!

まじか!木場が作った魔剣を炎が焼き尽くしてる!?

 

「木場ぁぁぁ!」

 

まさにトドメと言わんばかりに動き出す赤い炎で作られた棒状の物が剣の形になった瞬間、俺は木場に向かって手を伸ばし譲渡をした!

よし!木場が持ち直した!

木場が一瞬ぶれたかと思えば隣に立っていた。

 

「助かったよイッセー君。」

 

既に至る所から血が出ているものの、爽やかな笑みを浮かべ俺に感謝の言葉を言ってきた。

それほどの相手……か!

な、なんだあの可愛い子は!?金髪ドリルヘアーにピンクのドレス…白音ちゃんみたいな身長の低さだが明らかに胸がある!?

 

その頃観戦室では

 

「千鶴兄様、後でイッセー先輩をぶち殺していいですか?」

 

「?……まあ生きる未練だけは残すようにな。」

 

そんな会話があり、ソーナ達は顔を蒼白にしたらしい。

 

「今悪寒が走ったけど、イッセー君何か考えた?」

 

「……俺は死ぬ。生き返ったら謝ろう。」

 

俺はあまりの殺気に後ろを振り向いた……ああ、白音ちゃんの殺気だ、これ。俺の考えてる事が分かったのかな?まあ千鶴先生に生き返らせて貰おう。それしかない。

木場が言うにはレイヴェル・フェニックス…ライザーの妹らしい!あいつ妹まで眷属にしてんのかよっ!?

だけど明らかにライザーより強い……。チームワークのみせどころか!

 

「木場、俺が倍加を進めている間、足止めできるか?」

 

「30秒なら多分。それ以上は難しいよ?」

 

木場でも30秒か……朱乃先輩の気配が近づいて来てる。30秒あれば朱乃先輩は着くだろうし、そこで勝負だな。

 

「頼むぜ、木場!」

 

ここに来るまでに3回しか倍加ができていなかった……。あの子を倒すなら、最悪8回は倍加しないとダメか。

今は木場に耐えてもらうしかっ!?

 

「あぶねぇぇぇ!?」

 

あの子は木場と確かに一騎打ちの最中だが、空中に浮いてる炎の剣は俺を捉えてる…消してもまた作られるだけ、朱乃先輩早く!

 

『Boost!』

 

「くっ!まだだ!」

 

炎の剣が地面を抉ると、そこは炎で焼き尽くされたかのように焦げた。

それだけじゃない…この炎の剣が近くにあると酸素が急激に減る。さっきからそんなに動いてないのに息が切れてきたのはこれが原因か!

 

「イッセー君!」

 

「朱乃先輩!俺はまだ倍加をします!木場と一緒に足止めお願いできますか!?」

 

「わかりましたわ!」

 

朱乃先輩が遂に来てくれた!これなら倒せる!

朱乃先輩が木場の所へ行く際に炎の剣を全て雷でかき消した!これなら!

 

『Boost!』

 

2回目!計5回…後3回…2人で30秒耐えてくれれば!

ドライグ!あの子のドレスに強化魔法か何かかかってるか!?

 

『いや、魔力は感じないぞ!だが相棒!……いや、相棒はやる気なんだな。』

 

おうよ!ライザーの妹ってことは、フェニックスだろ?あいつに精神的ダメージも期待できるかもしれない!

朱乃先輩の雷獄殿と木場の魔創界がグラウンドの上空にある…俺が洋服崩壊後に叩き込めば勝てる!

 

「流石ですわね…。雷の巫女がここまで成長しているのも千鶴様のおかげなんでしょうね。それにあなた…木場祐斗さんとおっしゃいましたか?貴方の動きは残念ながら私では捉えることはできないようですの。そして……赤龍帝。こちらの隙を伺いつつ力を溜めていらっしゃいますわね。チームワークも良くできていますわ。」

 

「けど君はまだ本気じゃない…だろ?」

 

「まだ魔力を隠してるのは分かっていますよ?」

 

『Boost!』

 

木場と朱乃先輩が言ったように、確かにあの子の中から感じるもっと燃えるような熱…間違いなくそれが本当の力。

けどそれを出させるのが目的じゃない!俺たちはリアス部長がライザーを倒す時間稼ぎ!

レーティングゲームは結局王の力を見極めるもの。だったら俺たちはリアス部長の評価を上げるような戦いをしないといけない!

 

「木場!朱乃先輩!一気に行きます!」

 

まだ倍加の途中だが相手に触れるだけなら倍加のリセットはされない!それに洋服崩壊に譲渡しなくても、何の護りもない服なら巣の魔力でやれる!

まだ倒すのには倍加が足りない!木場と朱乃先輩の援護に期待する!

 

『Boost!』

 

「分かったよ!魔剣創造・魔創界……限界まで広げてみせる!」

 

「うふふ、これはレーティングゲーム…死なない程度に痛めつけてあげますわ!雷獄殿よ!!」

 

「行くぜ、レイヴェル・フェニックス!」

 

木場の作った魔剣が空中に増えていく…!あれは俺がこの前どうだ?って言った龍を模った魔剣!?それにあれは拳の形!?白音ちゃんだな!凄いぜ木場!

朱乃先輩も限界まで広げているのかグラウンドの上空は剣と雷珠で埋め尽くされてる!

 

『Boost!』

 

戦ってると時間が経つのが早いな!これで倍加はストップ…俺が洋服崩壊をして直ぐ2人に半分づつ譲渡!俺は全速力でレイヴェルに駆け寄りすれ違いざまに肩に触れる!殺気なんて込めてないから反応できない筈!?

 

「貴方…つまらない技を持っていらっしゃるんですわね。」

 

なっ!?肩に触れた瞬間に手を掴んだ!?

 

『相棒!帝との修行を思い出せ!』

 

ああ!?つまりレイヴェルも俺と同じ!?クソォ!!

なんて力だ!倍加を8回した俺の手を掴んで離さない!?

 

「くっ!木場!朱乃先輩!俺ごとやってください!!!」

 

『Transfer!』

 

「イッセー君!なるべく気は使わないで、一瞬でリタイアできるように弛緩を!雷獄殿!!!」

 

「イッセー君!君の覚悟、確かに受け取った!魔創界・全弾掃射!!!」

 

俺は逆にレイヴェル・フェニックスの体を掴み逃げられないようにする!弛緩か…結構隙がでかいけど一瞬なら!!!

目の前に迫る魔剣……木場、これ白音ちゃんの────

 

『リアス・グレモリー様の兵士、1名リタイアです。』

 

イッセーside out

 

リアスside

 

『リアス・グレモリー様の兵士、1名リタイアです。』

 

イッセーが……それほどの敵がいたのね。途中感じた魔力…明らかに朱乃を上回ってた。

数で言えば後は僧侶……レイヴェル・フェニックス、ライザーの妹が残ってる!

 

「は、はは、やっとか……やっとリアスの眷属を1人…兵士を………」

 

ライザー……はアーシアの聖短剣に怯えて攻めてこないし。アーシア、ちょっとそれを隠しなさい。

 

「リアス部長、早く終わらせて千鶴兄様と一緒にふぁみゅれすっていうところに行きたいです!」

 

「アーシア、ファミレス…ファミリーレストランよ。そうね、私も黒歌に負けたままじゃ嫌だし……ライザー、リザインするなら今よ?」

 

アーシアにはもう少し教育がいりそうね。私もこれが終わったら千鶴の家に行こうかしら……迷惑じゃないわよね?

ああ、そういえば1年の頃のバレンタインを思い出すわね。私があの時気持ちを正直に出してれば今千鶴の隣にいるのが私だった……何てことあるかしら?

それにしてもさっきからグラウンドに集まってる魔力……合わさったら黒歌を倒せるんじゃないかしら?

あの子もあの子よ…兄妹っていう設定なんだから卒業するまで我慢しなさいよ!

 

「リザイン……?するのはリアス、お前だ!」

 

「リアス部長!グラウンドが凄いです!」

 

ライザーが何か言ってたけど今はいいわ!アーシアの指差す方……oh

 

「アーシア…私にはあれがドラゴンに見えるのだけど……貴女は」

 

「炎でできたドラゴンさんですね!凄いですよ、此処まで熱が伝わってます!」

 

グラウンドを動き回るドラゴン……赤い炎の体から発せられる熱はライザーが放ってくる炎より熱そう。

ライザーが目を見開いて汗を流してる…ということは内の誰か?

 

『リアス!ライザーは!?』

 

『リアス部長!サクリファイスを行い申し訳ありません!結果は見ての通り失敗しました!』

 

朱乃に祐斗!?え?サクリファイス?ということはイッセーは命をかけてあれを倒そうと?じゃああれは……

 

「レイヴェル・フェニックス……ドラゴンになれたの?」

 

「はっ!?レイヴェルがドラゴン!?リアス、何を言ってるんだ?」

 

どうやらライザーも意味が分かってないようね…。ライザーとレイヴェルが合流したら面倒だわ。

アーシアを向かわせようかしら。元々僧侶って戦闘より補助に長けてるし、こっちには居る必要がないわね。ライザーが此処まで弱く見えるなんて……やっぱり千鶴の修行はしっかり身につくわ。

 

「アーシア、あっちの援護に向かってくれる?」

 

「はい!私もドラゴンさんと戦えるのは楽しみです!」

 

アーシア…貴女変わったわ。最初は戦いなんて無理な子だと思ってたけど今じゃあ進んで敵地に入る程ですものね。……いや、もうライザーを2人で倒した方が早いわね。

 

「アーシア、ライザーを倒しましょう。祐斗!朱乃!そのドラゴンの足止めをお願い!」

 

『はい!』

 

『あまり持ちませんわよ!』

 

さて、ライザー……貴方の家の事情とかもあるのでしょうけど、私は貴方を愛することは永久に無いわ。せめて苦しまないように

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「ふふふ、どうしたんですかぁ?いきなりそんな叫び声あげてしまうと驚いてしまうじゃ無いですか。」

 

アーシアがライザーに聖短剣を突き刺して蹴り飛ばしていた……あの子もSなのかしら?再生した時を見計らってまた同じところに聖短剣を突き刺してるわ。

 

「ま、まて!わ、わかってるのか!これはっ!?ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 

「ライザー…貴方、リザインしないと大変な事になるわよ?」

 

アーシアの容赦の無い攻撃がライザーの精神を蝕んでいっているのが見てわかる…明らかに回復の早さが遅い。

私が手を下すまでも無くアーシアが勝利しそうね。

 

「おおおお!俺が、転生悪魔の下級に負けるわけがっ!?ぐああああああ!!」

 

「リアス部長さんを困らせた罰です…主よ、このどうしようも無い殿方に祝福を。」

 

祈る姿は美しいけど、祈る内容はとんでも無いわね。……あ、ライザーが消えていくわ。

アーシア、私も活躍したかったのだけれど?

 

「これは非公式なレーティングゲームなんで、気にしなくていいと千鶴お兄様が言っていました。これは私たちが今の実力を知れる練習試合だと。」

 

まあそうよね…これでライザーとの婚約も破棄、心置き無く千鶴にアタックできるわ!

 

『ラ、ライザー・フェニックス様のリタイアを確認しました。…リアス・グレモリー様の勝利になります。』

 

グレイフィアもまさか止めがアーシアの祈りだなんて思っていなかったのか、若干上ずった声が聞こえ少し笑ってしまった。

さあ、早く千鶴の顔が見たいわ……。

 

リアスside out

 

千鶴side

 

いやあ……酷い試合だった。

まさかレイヴェル以外があそこまで弱かったなんてな。消化不良はリアスだな…あいつの力をサーゼクス達に見せつけるつもりがアーシア1人で終わらせるなんて事が起きたんだから。

 

「千鶴兄様、レイヴェルを鍛えてたの?」

 

「ああ、去年だったかな?冥界に行った時にちょっとな。」

 

グレモリー卿に最初フェニックス邸に連れて行かれレイヴェル・フェニックスと会った時、彼女は自分がフェニックスという座に居るには弱く、兄達に少しでも近づけるようになりたいと俺に相談をしてきた。

実際レイヴェルの実力は下級悪魔程度だった。操れる炎の量もライザーより限りなく低く、身体能力は男子高校生程度。少し強くなったアーシアぐらいのレベルだった。

精一杯俺に想いをぶつけ修行を開始して3日…俺はフェニックスの特性を理解し、レイヴェルの体が限界を迎える直前まで鍛える事にした。

まあ結果は見ての通り…ライザーを超えてしまった。

 

「流石だね千鶴……どんな鍛え方をしたらああなるのか凄く気になるけど、聞かないでおいたほうがレイヴェルの為…かな?」

 

分かってるなら聞くなよ……まああの15日は俺も記憶に蓋をしておくほど過酷なものだったからな。

今の実力は白音の下…彼女がこのまま成人を迎える頃には上級悪魔に昇格しているだろうな。

 

さて、俺はイッセーの様子でも見に行くかな。レイヴェルを捕まえていたのはいいが祐斗の魔剣に吹き飛ばされたからな。

 

「じゃあなサーゼクス。次に会うのは夏休みかな?」

 

「そうだね。また会おう。ああ、心配しなくてもリアスの婚約も破棄しておくよ。」

 

俺は黒歌と白音を連れて保健室へ向かった。ライザーの眷属はそれぞれフェニックス邸に送られているらしいが、レイヴェルはどうやらまだこっちに居るらしい。自己紹介を兼ねて、今日は俺の奢りでファミレスに行こう。

 

「にゃ、リアス……。」

 

「黒歌…貴女には負けないんだから!」

 

俺と腕を組み保険室に向かっている黒歌がリアスを見つけると、2人して睨み合い俺の両腕に抱き着き始めた。

この2人の仲は良くなる方に向かってほしいな……。

こうしてリアス達の初となるレーティングゲームは終わった。いずれは冥界1の『王』…この程度は眷属だけで勝利を収めないとな。

俺は2人に腕を掴まれながらも保険室にたどり着き、イッセーがレイヴェルと握手をしている姿、祐斗と朱乃がお互いまだまだと言って苦笑いをしてる姿を見て、今日のMVPであるアーシアに近づき頭を撫でてやった。

 

さて打ち上げに行こうじゃないか。

 

千鶴side out

 




いかがでしたか?とまあレイヴェルもすでに魔改造済みでした。
今度特訓と称して魔改造全員で戦わせてみようかな。
とりあえず次回からは短編を幾つか。
予定は過去編を3つか2つに使い魔編。どちらもオリジナル風味になっています。

評価、感想、誤字等の報告をお待ちしてます。


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使い魔集結

いや、遅れて申し訳ないです。
今回は使い魔を手に入れる場面です。アニメと順番は変わりますがそこはお許しください。
次回から原作3巻に入ります。
次回からは特訓にティアマットとウンディーネが参加します。ティアマットのプロフィールはまだ書くつもりは無いですが、ご所望なら詳しくお書きします。
カリンはあのウンディーネとは別種です。最初はあんなのでしたが妄想ウンディーネに近い感じに変わりました。それでも力は今の白音並み。

次回の更新を早めに書きたいと思います。
ではお楽しみください。


千鶴side

 

ライザーとのレーティングゲームが終わって1週間。あの戦いの後の事後処理なんかは全てグレモリー卿とサーゼクスが纏めてくれたようで、リアス達…人間界側には婚約が破棄されたという情報がグレイフィアさんから聞かされただけだ。

レイヴェルは打ち上げの時に自己紹介をしてそのまま帰ってしまった。帰り際にまた会いしましょうと言っていたので今年の夏休みにでもフェニックス邸に顔を見せに行こうか。。

 

「あの、なんで俺が……」

 

そうそう、今は夜の8時。一度家に帰り夕飯を食べてからまた駒王学園に戻ってきて、来る途中会ったのが俺の隣にいるイッセー。今日はどうやら冥界が満月のようで、ようやく仕事もこなせてきたこともあり、アーシアとイッセーに使い魔を持たせようと探しに行くことになった。

アーシアは朝からやる気十分で、最近ハマっているアニメの影響からか警察っぽい使い魔がいいと言っていた。いなければ可愛い子がいいとも。

だがイッセーは乗り気では無いようで、どうせなら訓練がいいですという始末だ。

 

「イッセー、そうは言うが…使い魔にも色々あるんだぞ?もしかしたらリアスみたいな可愛い子が使い魔に」

 

「ちょっ!何ダラダラ歩いてるんすか!早く行きまっしょう!!」

 

うむ…あれがイッセーだな。しかし、想像通りの奴らと契約できるかは別だよな。俺なんか高校時代にドラゴンと契約したし。あいつらは元気だろうか?俺が鍛えてあげたらめちゃくちゃ喜んでたな。

 

「しかしいつの間に予約を取ってたんだか。」

 

使い魔マスターのザトゥージだったか?あいつは月一しか仕事をしないからな。よく他の悪魔と被ったりするんだが、今回は大丈夫だったのだろうか?

 

「あ、そう言えばこの前リアス部長と生徒会長が部室で何か話してましたよ。使い魔がなんとかって。」

 

なるほどな。つまりシトリー眷属の誰かのためにザトゥージに仕事を頼もうとしたが、被ったため話し合いか何かで解決したんだろう。

 

「あ、千鶴お兄様。」

 

部室に入ると既に準備ができていたのか、アーシアが笑みを浮かべて抱きついてきた。全員集合してるんだが、最近こういうスキンシップが増えてきたな……イッセーとリアスの目線が痛い。イッセー、血涙を出しても代わってやらないからな。しかし黒歌が俺の服に違う女の匂いをつけてると怒るんだよな。アーシアには悪いが離れてもらわないと。

 

「アーシア、準備はできてるのか?」

 

「はい!ムウロ様みたいなカッコいい方…あ、千鶴お兄様には負けますけど。そんな使い魔と契約できたら嬉しいです。」

 

……うん、アーシアは頬を赤らめて俺を見つめてきた。黒歌にも劣らない可愛さだな。白音は最近羞恥心が勝るのか、頭を撫でようとするだけで逃げられる。兄さんは悲しいよ。

 

「さ、もう直ぐ彼も来るだろうし行きましょうか。」

 

そう言ってリアスが魔方陣を展開させる。使い魔の森……使い魔が生成されるという不思議な森だ。勿論森以外から派生した悪魔や魔獣、ドラゴンなど様々な生物が跋扈するとんでもない森だ。ちなみに最奥には俺の使い魔の一匹である『天魔の業龍』ティアマット…通称ティアがおり、道中にある泉にはウンディーネのカリンがいる。最初はザ・格闘家という見た目だったが、今では無駄な筋肉をそぎ落とし青に近い緑の髪をなびかせたスラリとした体型になっており、美人と言っても過言では無い。まあ幼さの残る笑みは俺もたまにドキッとする。繰り出す一撃は白音を超えるほどだが、少し頭があれで、悪く言えば馬鹿な子だ。それでも自分の住処には誰しも近付けないほどの実力が今のカリンにはある。

そんなことを考えていると使い魔の森にいた。相変わらず空気が淀んでいるな。

 

「ゲットだっっっっっっ!?ぶふぅぅぅ!?」

 

「ご主人様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ザトゥージが木の上でカッコつけていたが、後ろから飛んできた見たことある女の子がザトゥージを弾き飛ばし俺の胸へ飛び込んできた。

 

「っ!?カ、カリン?」

 

噂をすればなんとやら…まあカリンが俺の匂いに気付いたからか飛んできたんだろう。相変わらず行動派だな。

 

「あらあら、リアス……リアス?」

 

「また千鶴に女が……まあ千鶴がかっこいいのは認めるけど……けどあれはナニ?御主人様?そういう趣味が?けど千鶴を御主人様って呼ぶのもいいかも……ああ、千鶴……私は……」

 

リアスの目が虚ろだが、俺は今背中の気配にどう反応していいかわからない。

 

「千鶴お兄様は黒歌お姉様とリアス部長がいるのに他の女の子に御主人様と呼ばせて喜んでいます…拡散希望っと。」

 

アーシアに携帯を買い与えたのはダメだったかもしれない。悪意しか感じないぞアーシア。

 

「う、羨ましいっす…」

 

「けどイッセー君…あの抱擁を受けれるのは千鶴先生だけだと思うよ?さっきからメキメキ聞こえる……」

 

お前らも見てないで助けろ。カリンの腕力を解こうとすると被害がでるんだぞ?

 

 

 

「改めて自己紹介しまっす!ウンディーネのカリンっス!大好きなものは御主人様と仲間。嫌いなものは御主人様以外の男とティアっちっス!!バスト93ウエっ……御主人様?」

 

イッセー、期待しててもこいつの口からは出てこないぞ。

 

「っと、俺っちはザトゥー」

 

「使い魔マスターのザトゥージよ。まあ今の彼を見れば分かるとおり……今日は無理そうだから、次回に持ち越しにさせてもらったわ。」

 

ザトゥージは先ほどのカリンの一撃で何箇所か骨折の内臓に損傷が出たらしい。アーシアに治させようとしたが、アーシアを見る目がアレだったので放置させた。

 

「悪いな、イッセーとアーシア。俺からも謝るよ。ほらカリン、お前もちゃんと謝れ。」

 

「………アデュー。」

 

俺の怒りの形相を見て逃げるカリン。だが逃すわけはない。

 

「ヒャダルコ。」

 

突如荒れ狂う使い魔の森…冷風と共に雹が生成されカリンを襲い、足元を凍らせ瞬く間にカリンが氷の塔の中に閉じ込められた。

ガクガクと震えるグレモリー眷属を尻目に俺は氷塔を拳で崩し中からカリンを抜き取る。

 

「ご、ご、ご、ご、御主人様……か、体がひ、冷えて……ぶぇくしょん!!」

 

女にしてはあるまじきくしゃみの仕方…鼻水まで出してる。こいつは本当に……

 

「……ほら、早く謝れ。その後温めてやるから。」

 

「ザトゥージさん、申し訳ありませんでした!グレモリー眷属の皆様もご迷惑をお掛けしました!!さ、いいですか御主人様!?布団の中へレッツゴーでひゅっ………」

 

ウンディーネの中でも異端と言われ嫌われていただけあり、他者の好意には敏感なカリン……俺が声をかけた瞬間殴りかかってきたのは記憶に新しい。

今も俺の拳骨が効いたのか気絶したカリンを抱きしめてやる。

こいつは嫌われたくない一心で生きている。俺の使い魔になり自信はついてきたが、つき方に少し問題がある。

 

「ベホマ。ザトゥージ、悪いがイッセーとアーシアの使い魔を一緒に探してやってくれ。また改めて謝らせる。」

 

「……ま、旦那がそう言うなら。それじゃあついてきてくれ…時間が押してるんだぜ!」

 

俺がベホマで回復させてやると驚いた顔をするザトゥージだったが、俺の言葉を聞くと笑みを浮かべそう言って歩き出すザトゥージ。俺はリアスたちに断りを入れ、久しぶりに使い魔たちと交流でもしようかと森の奥へ向かった。

 

 

 

森の奥深く…岩場が増えてきて悪魔や魔獣のレベルが中級程になってくる場所。道という道は無いが、俺とティアのリンクがしっかりしているため迷うことなくここまでこれた。ここから少し離れるとかなり高位の魔獣やドラゴンがおり、ティアが五月蝿いとキレて辺り一面を焼け野原にした場所がある。

 

「ティア!」

 

俺がそう声を上げると荒れ狂う風が吹き、目の前に青い髪をした美しい女が立っていた。

 

「……ダーリン?」

 

……そういえばティアは俺をダーリンと呼ぶんだった。久しぶり過ぎて忘れてたな。

 

「久しぶりだな。」

 

「……ああ、まあリンクは繋がってるから離れていたって気はしないけど。」

 

ティアは五大龍王の一角としてこの冥界に君臨するドラゴンだ。俺が直接赴く時は何かしら力を貸して欲しい時ぐらいな為……おや?何やら機嫌が悪そうだ。

 

「…いや、今回俺の弟子がザトゥージに仕事を頼んでいてな。それで俺もついてきたんだがカリンが暴走したもんでここに来たんだ。邪魔しちゃ悪いからな。」

 

「……………………三年だ。」

 

なぜ涙を流すんだろうか?俺とティアは世間で言う所謂ビジネスパートナーみたいなものだったような気がするんだが?

 

「ああ、そうだな。三年だ。まあ事件といった事件は俺1人で終わらせれるからな……。こうして顔をあわせるのもっ!?」

 

いきなり抱きついてくるティア…カリンを一瞬で叩き落とした手腕は相変わらずだな。身長は俺の胸の中にすっぽり入るぐらいで胸もある…黒歌とは違う女の柔らかさがあるが、実際は強力なドラゴンだ。そのティアがこんな姿を見せる時は………ああ。

 

「毎日呼ぶからって言った!」

 

「悪い。」

 

「1日1回は頭を撫でるって約束した!」

 

「悪い。」

 

「子供は3人欲しいって言った!」

 

「…………いや、そんな約束はしてない。」

 

「ちっ……。」

 

このティアマット、今舌打ちしたぞ。

まあ確かに使い魔の契約をした時は最後以外そんな約束はした。まあ約束を忘れていたのは俺が悪い。というか、いつもは凛々しく美しいティアマットがこんな姿を見せてくれるのは嬉しいな。

 

「それで何がお望みだい、天魔の業龍ティアマット様?」

 

「………抱きしめて頭を撫でなさい。」

 

そう言って俺の顔を見るティアの顔は、濡れた瞳と少し紅潮した頬を相まって可愛らしかった。この姿を他の五大龍王達には見せたく無いなと思いながら俺はお願いを聞いてやるべくティアの住処である洞穴へ向かった。

 

千鶴side out

 

 

 

黒歌side

 

今日は千鶴が家に居ない。どうやらイッセーとアーシアの使い魔を探すべく冥界に行くらしい。

そう言うことで珍しく白音と2人きりで家にいるんだけど……

 

「聞いてますか、黒歌姉様!」

 

「…はい。」

 

何で私が怒られてるにゃ?普通にお風呂に入って今日千鶴が着ていったワイシャツを着てお酒を飲んでただけなのに。

あ、あれかにゃ?白音に内緒で千鶴と一緒に寝たこと?確かに今までは千鶴と寝る時は白音に一言言ってたけど……あ、もしかして別のこと?白音が子供っぽい下着ばかりだから密かに大人っぽい下着と入れ替えた事に気付いた?それともあれかにゃ?

 

「……まあ今はいいです。それよりもです…使い魔の森にはティアマット様とカリンがいます。」

 

「い、今は…?あ、そう言えばそうね。けどそれがどうしたの?」

 

「ダメダメですね。本当にダメダメです。その胸の無駄な脂肪は即刻削ぎ落とした方がいいのでは?」

 

ひっ!?白音の目からハイライトが……うん、まあ…言いたいことはわかるにゃ。

 

「でも使い魔が主人にそう言う気持ちを持つのは仕方ないんじゃにゃい?」

 

カリンは初めから千鶴に身も心もあげるような言動で使い魔になったし、ティアは強者には絶対服従…。ドラゴンは強者に惹かれるって言うし、そうじゃなかったら千鶴の事をダーリンなんて呼ばないだろうし。

 

「本当にダメダメです。あれですか、栄養全部そこに行ってるんじゃないですか?」

 

にゃあ!いきなり胸を揉む白音にビックリにゃ!?最近敏感になってるからか白音の力でも……

 

「いいですか黒歌姉様。ティアマット様とカリン2人…2匹が千鶴兄様と一線を超えた場合、私たちに勝ち目はありません。」

 

「………………え?」

 

それはどういうことにゃ!?あんなトカゲと力しか取り柄の無い精霊なんて…………………まあ五大龍王とウンディーネという枠で考えると……マズイ?

 

「黒歌姉様の思ってる通りです。使い魔はそもそも主人には絶対服従。関係は個々によるでしょうが、あの2匹は間違いなく千鶴兄様に恋心を抱いてます。ティアマット様と戦って勝つ自信は?」

 

「……五分にゃ。」

 

実際問題魔力などは使い魔の契約上戦闘力ならティアマットが上。カリンは攻撃を受けなければ圧倒できる筈……。

 

「リアス部長とティアマット様とカリン、アーシア姉様もですね……後私。それだけの敵がいるんです。黒歌姉様、ここは早めに千鶴兄様と子供を作り正妻としての実力を」

 

「白音!?ちょ、ちょっと変にゃ!!」

 

あの白音が恥ずかしがることなくそんな事を言うなんてありえない!まさか偽物!?……あ。

 

「……白音、ちょっと待ってるにゃ。」

 

思い当たるものが1つある。あれは千鶴にも教えてない秘伝の酒…その名もマタタビ酒!これを飲めばあなたも発情期!がコンセプトな猫又族に伝わる酒……が半分減ってる!?

 

「し、白音?」

 

「なんですか黒歌姉様、早く子供を」

 

にゃあ、これはあれにゃ……私の体に千鶴の匂いがついてるから私が千鶴だと思ってごちゃごちゃになってるにゃ。

まあ最初から可笑しかったにゃ…。白音はあんなこと素で言わない筈……言わない筈。既に記憶がぶっ飛んでるにゃ。

 

「………えい。」

 

「にゃ!?……………きゅう。」

 

いくら白音でも後頭部が鍛えきれてなかったみたいね。一件落着にゃ。マタタビ酒は見つからない場所に隠しておくにゃ……一口だけ飲もうかな。

 

後悔した時には遅く、その日は朝まで千鶴の布団の中で悶えていたのはここだけの秘密にゃ。

 

黒歌side out

 

 

 

千鶴side

 

ティアのお願いを聞いているとカリンが目を覚まし、お腹すいたと言って洞穴を出て行ったカリンを見送って直ぐリアスから連絡があり、アーシアには使い魔が見つかったがイッセーは見つからなかったらしく、服もボロボロになったため今回はこれで引き上げるらしい。

俺がそろそろ帰るというとティアは悲しそうな顔をした為、ティアが良ければ俺の家に住むかと言ってみた所喜んでついてきた。

どうやら洞穴生活はこりごりのようだった。

 

「初めからこうしてればよかったな。」

 

「そうだぞ。だがこれで毎日一緒に居られるな。」

 

俺はティアの背に乗り冥界の空を駆けていた。

リアスの下へ向かおうとした所、使い魔らしく使ってくれと言ったので俺は背に乗せてもらったのだ。肌触りはゴツゴツしているように見えて結構サラサラで、背中を撫でてやればぶるりとティアが体を震わした。

 

「もっと…撫でてくれ。」

 

熱い吐息を出しながら俺にそう懇願するティアを見て……使い魔の森がその熱い吐息で焼け野原にならないよう注意する。というか、本気の火球はとんでも無いからな。俺のメラミに匹敵するデカさだ。

ティアを使い魔にしてからは大きな仕事は無かったため、ティアにも迷惑をかけただろう。使い魔なのだから何かしら呼ばれると思ってたら一度も呼ばれないんだからな。

 

「そうだな……ティア、よかったら俺の弟子たちを鍛えるのに力を貸してくれないか?カリンも一緒だが、使い魔っぽい仕事って言ったらこれぐらいしか無いんだが。」

 

「弟子……?黒歌や白音とは違うやつらか?」

 

そう言えばティアは黒歌と白音を知ってたな。初めて会った時は黒歌と大バトルを繰り広げたが、ティアも黒歌の実力を認めたのか軽い喧嘩程度はするがそれ以上はしなかったな。

 

「ああ。駒王学園って言う所にいる悪魔でな。グレモリーの長女とその眷属達だ。」

 

「ほお。それは鍛えがいのあるやつらだ。」

 

にっと笑みを浮かべるティアを見て、ティアならイッセーを鍛えるのにいいかもなと思った。あいつは身にドラゴンを宿しているからティアとも相性が良さそうだ。途中カリンがティアの背中に飛び降りてきてティアの背中でバトルが繰り広げられそうになったが止めたり、アーシアから連絡があり使い魔の名前を一緒に考えてくれと言われ蒼雷龍の雷撃とイッセーさんみたいな少しぽけっとした顔からラッセーと名付けることになった。イッセーみたいなぽけっとした顔ってどんな顔だ?

 

その後リアスの下に戻ったが、既にアーシアとリアス以外は帰ったようで、2人に俺の使い魔だと改めて紹介をさせると最初は驚いていた2人だが、お兄様流石です、流石は未来の旦那様ね、と言われた。明日の特訓からティアとカリンには手伝ってもらうと伝え俺はアーシアとティアと共に帰った。

ティアとカリンには明日魔方陣から召喚すると伝えておいたので、カリンは湖に戻りティアは人間の姿になり俺の家に来た。

黒歌と白音は既に寝ていたので、明日紹介をすることになった。黒歌が布団の中にいたが、だいたいいつも通りなのでそのまま隣に潜り寝た。

その時はまだ気付いていなかった……この駒王町で巻き起こる事件が更に加速していくのを。

 




今回7000文字もいきませんでしたが、次回からは10000文字いきたいです。
次回一生懸命頑張りますので、皆さん応援してください。

あまり面白く感じられなくても許してください。

感想や評価などありましたらよろしくお願いします。


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激昂と想いと真聖魔剣
鬼修行とお宅訪問は騎士の思いを解す


さて遅くなりましたが次話です。
今回からエクスカリバー編となっており、更にかなりの原作変更があります!

今回から祐斗がヒロインに(笑)

てことは無いですが、祐斗がリアスよりオリ主の方が頼りになると思っています…まあ先生で尚且つ師匠、そして兄のような人ですからね。




千鶴side

 

ティアが我が家に来て5日目。

今までよりも過酷になった特訓にリアス達は息も絶え絶えのようだった。

ティアとカリンを新たに特訓のパートナーに加えたことで新たな特訓方法になったからだろう。

今まではそれぞれ個々で伸ばしてきた実力だが、コンビネーションを培う意味を込めて2人1組に対してコーチが1人というグループに分かれるようになった。

これを1週間のローテーションで人員を組み替え、また1週間経ったら組み替えるという方法でやろうと思っている。

ティアが来た初日に比べたら5日目にしては動きは良くなってきた。

イッセーだが、今まで特訓してきたのは主に赤龍帝の籠手を軸にした近接格闘術と身体能力増加。それに伴ってやってきたトレーニング内容は俺のスピードを直感で探り、俺の出した掌を弾く事。弾きかたも工夫をしないと手痛い反撃を喰らうと覚えさせ、白音や祐斗との組手で経験を積ませた。これについては合格したので何か言う事は無いが、イッセーはまだ続けたいと言ったのでこれからは廊下ですれ違った時などに突然攻撃すると伝えた。

後は筋力トレーニングだけは怠らないように、更に量を増やすように言った。

近接格闘術は祐斗と組手することで知らないうちにかなりの腕になっており、祐斗からは剣術も学んでいるようで祐斗に作ってもらった魔剣で素振りをしたりと積極的になっている。

イッセーにどうしてそんなに頑張るんだと聞いてみたところ、千鶴先生と肩を並べてみたいと言ってくれた……嬉しいじゃないか。

これにより、今のイッセーは近接戦闘なら白音に次ぐ実力を持つ事になった。そこに倍加が加われば、一撃必殺のカウンターで敵を倒せる。

それを補うべくコンビにしたのは朱乃だ。

朱乃はリアスを抑えグレモリー眷属1のオールラウンダー。

近接格闘術は白音にも並び、雷撃を纏った打撃で相手の意表を突き、更には雷を自由に変化させナイフや弓矢などで近中遠をカバーする。

最初の頃はバカスカと雷を落とすだけだった朱乃も、黒歌と白音の協力によってとても強くなった。

そんな2人と対峙するのはカリンだ。

カリンの一撃は白音よりも上で、俺でさえ意識して防御をしないと駄目だ。これは元々の潜在能力がそうなっているからで、カリンは魔力を籠める戦いをする。

それにより一撃で地面が抉れ縦穴で5メートルはあるものを作る。

ウンディーネは元々水の精霊として生きていたが、縄張り争いが多くなり昔は魔力を放出しながら戦うスタイルだったらしいが、カリンは異種と疎まれその時から体術で戦ってきていたらしい。

今もイッセーが倍加をし、その邪魔をさせないよう朱乃がカリンに食らいついているが、カリンの一撃を恐れ攻めに徹しれていない。

だがイッセーの倍加を譲渡されると攻勢が逆転する…そして倍加が切れるとまた攻めに徹しれ無いというループを繰り返している。

悪いとは言わないが、それでは実戦の時に戦えるものでは無いだろう。改善の余地ありと俺は頭を掻き次のグループに目を向ける。

次のグループでは祐斗とリアスがティアを相手にしている。

そういえば、初日にティアがイッセーを見て殺気を出していた…詳しい理由は教えてもらえなかったが、イッセー曰く赤龍帝の籠手に宿っているドラゴンとティアに何かしら因縁があるようだ。

まあそんな理由で弟子を殺させるわけにもいかないので、いずれ決着をつけさせてやると約束しティアとイッセーは了承した。

話が逸れたが、今の戦況は一目瞭然でリアスと祐斗が満身創痍で、ティアは人間の姿でありながら無傷だ。

俺が様子を見てる限り、ティアは人間の姿のまま手から火球等を出し、背中にドラゴンの翼を生やし空を飛び、近接格闘で祐斗を圧倒していた。

リアスの滅びの魔力もティアの力に僅かに届かないのか、火球で消し飛ばされている…が、それでも火球の威力はかなり殺しているので上々だろう。

祐斗は近接格闘で押されながらも、遥か離れた上空に魔剣を創造しティアに向けて放っているが、それを悟らせないようにしないと永久にティアにはダメージが入らないだろう。

魔剣がティアの20メートル付近に近付くと、指先だけをそちらに向け火球で消しとばしているからだ。それにより隙ができると思われるが、ティアは元々片手で祐斗を抑えているので無意味だ。

片手で祐斗を圧倒し、もう片方の手でリアスと魔剣を対象している姿は見ていて爽快だった。五大龍王の一角で俺の弟子の1人だ…あれぐらいはできるだろう。

ちなみにここにいないレイヴェル・フェニックスだが、実力は黒歌と白音の下に当たり、朱乃の上という位置だ…まあ特訓には参加できないから序列は変わっていくだろうが。

 

ん?俺は監督か?だって?

 

「なんでっ!余所見しながらっ!私たちの攻撃をかわせるにゃ!!」

 

「千鶴兄様っ!真面目にやってっ!」

 

「うっ!?回復が追いつかないです!!黒歌お姉様は一度体勢を立て直してください!白音ちゃん!横から来ます!」

 

黒歌と白音、そしてアーシアを鍛えているところだ。3人なのはいつもの癖だ。本当なら黒歌に2人を任せてもいいんだが、アーシアと白音がコンビネーションをとるような事が無いと踏んでいるからだ。

黒歌は仙術と気、妖力を駆使して3人に分身し、1人は近接格闘術、1人は中距離からの法撃、1人は遠距離から補助をしている。この補助がなかなかのもので、俺の周りに毒の霧を発生させたり、空気を薄くしたりと戦い辛くさせてきている。中距離にいる黒歌の法撃は、雷や炎、氷等の様々な属性が付加してあり、氷等当たれば凍傷は免れないだろう。

気と仙術は同じようなものだが根本的に使用方法が違う。仙術は相手と自分に対して影響力が高く、マスターしていれば戦局は完全に変わるもの。だが気に関しては完全に自身の力の増大に当てている。仙術だけでどちらも補えるしいいと思うだろうが、まずは気の流れを読むことからしなければ仙術の力に溺れていただろう。

さて、近接格闘術で翻弄してくるもう1人の黒歌と白音だが、この2人には俺は遠慮せず反撃をしており、突きつけられる拳を掴み引き寄せ問答無用で蹴りを入れる。

力加減は難しいが、2割も力を出させてくれるのはやはり黒歌と白音だけだ。そして極めつけが遠距離から2人を回復してくるアーシアだ。

アーシアには2人の回復と戦場把握の基礎を叩き込もうと思っており、前衛の2人に指示を出して俺を翻弄する役割も持つ。

元々は怪我だけを治す神器だったが、今では肉体疲労など体内にある生命エネルギーに関する物に対して回復能力を使えるまでになっている。

これによりアーシアに回復させれば無くなった体力なども回復する。もちろんそれだけアーシアに負荷はかかるがそれも修行だ。

もう1つ。戦場では嘘の情報も飛び交う事がある。それをどう利用するか…まあ簡単にいえば頭脳戦の中級だ。現に、回復が追いつかないと叫ばれこれ以上はマズイかと一瞬手を止めた俺に問答無用で蹴りを放ってきた黒歌がいた。そしてすかさず傷付いた白音に飛んでくる回復の魔力…戦況を操作できる実力になるのにそう時間はかからないだろう。

これを1週間のローテーション…我ながらとんでもない訓練なのでは?と思ってしまう。

 

千鶴side out

 

 

 

イッセーside

 

目の前から直進してくるカリンさんに朱乃さんが雷の矢を放つが、カリンさんは腕を振るうだけで雷をいなしている。

僅か50メートルの距離は俺たちには意味の無いもので、カリンさんが拳を振るうと風圧で吹き飛ばされそうになる……いやいやいや!!やべえ、冷静になって戦えと言われてるけどこれは無理だ!

 

「朱乃先輩っ!?」

 

だけど朱乃先輩はカリンさんを見ている。相手から目を逸らしたら死…どんな弱い敵でも一瞬の隙を突かれたら死に直結する…千鶴先生の教えだ。

女の子が頑張ってるのに男の俺が諦めたら駄目だ!

 

「朱乃先輩!俺がカリンさんの動きを止めます!雷獄殿でけりつけちゃってください!!」

 

「っ!?わかりましたわ……カリンさんは攻撃が大振りになります…見極めれば攻撃を受けなくても済むと思いますわ!」

 

やっぱりそうか……どんな攻撃でも腕を大きく振るってたからな……けどそれがデメリットになるわけじゃ無い。あの大振りの攻撃の近くにいれば間違いなく命を持ってかれる。それに注意して動き回るっ!!

 

「いくぜぇぇぇ!!」

 

 

 

うん、ダメでした。あれだね…フックみたいな拳の振り方で脇腹抉れるとかありえないっす。

めちゃくちゃ痛い。アーシア早く!あ、けど結構怖くない……ああ、千鶴先生みたいに殺す気じゃないからか。……まだまだ時間はある。これからはもっと筋トレして走りこもう!

 

あ、カリンさん結構可愛いパンツ履いて

 

イッセーside out

 

祐斗side

 

リアス部長が魔弾を放ち、僕が魔剣を放つ…それをティアマット様が手をかざすだけで掻き消す。さっきからこれの繰り返しだ。

近接格闘では勝ち目が無く、既に腕はボロボロで左手なんか確実に折れている。脂汗が出てくるがそれを気にしていてはティアマット様に完全に押し負ける。

別に勝てる相手じゃ無いんだからと思うが、そんな思いを断ち切るように僕はさらに魔剣を創り出す……魔剣にも色々あるが、僕の創るそれは模造品。実際の魔剣には遠く及ばない物を創ることができる神器だ。

だからと言って諦めたわけじゃ無い。魔剣創造…自分の思い描いた最強の武器を創る事ができると考えれば、こんなにいい神器はない。

千鶴先生に言われ気付いた事がある……全ての魔剣を超える魔剣を創る。

魔剣といえば…そんな言葉に続くのが自分の創り出した魔剣だったら、これ以上のない喜びになる。

だから今は、自分が最強だと思う魔剣を創る!!

 

「ドラゴンスレイヤー……ドラゴンにはドラゴン殺しの魔剣を!!魔剣バルムンク!!」

 

実際に存在するであろう魔剣…もしくは忌々しい聖剣。それを見たことは無いが、伝説上で語り継がれる剣でさえ模造品が創れる。

その第一歩が魔剣バルムンク。刀身は赤く、柄には龍の喉を貫くような装飾。波紋が龍のように唸っている『創造上で想像上』の魔剣!

ありったけの魔力を込め、枯渇寸前までバルムンクを増やし強度を上げる。

ジークフリート、ノートゥング、グラム、ファブニール……様々な話が思い浮かび、伝説上にある剣とは似ていないであろう外見。だがこれが僕の創造した魔剣バルムンク…改良の余地はあるかもしれないが、今の僕にはこれが精一杯だ。

 

「龍殺しを名乗るには些か足りないが……いい腕だ。後は実際にドラゴンを切っていればまた違ったかもしれないな。」

 

そう言いながら笑みを浮かべるティアマット様…。そうか、五大龍王の1匹に笑みを浮かべさせられる事ができたなら…まだ僕は高みを目指していける!

 

「リアス部長!援護をお願いします!!」

 

「ええ!見せてあげなさい祐斗!」

 

リアス部長が今までに無いぐらいの巨大な魔弾をティアマット様に向けて放つ。

ティアマット様がニヤリと笑い両手をかざすと………リアス部長の魔弾を超える巨大な火球が生み出された。

 

「魔創界・魔剣バルムンク!!!」

 

約50本ものバルムンクをその間にティアマット様に向かって放つ!

一本一本にこれが龍殺しと思い描く魔力を乗せて放ったバルムンクは、赤い線を描きティアマット様に襲いかかった………それはティアマット様本来の姿に戻った時だった。

 

「なっ!?」

 

「甘いな、小僧。この程度なら私の鱗に傷は付けられない。」

 

ティアマット様の皮膚に触れた瞬間に霧散するバルムンク……僕はそこで魔力が底をつき気を失った。

 

祐斗side out

 

 

 

千鶴side

 

「千樹…太華!」

 

「聖短剣よ!」

 

「空間掌握…刃羅尾!」

 

さてここで俺の溺愛する義妹たちの力がどんなものか教えておこう。

まずは白音…千樹という戦闘パターンを脳に組み込み戦う。千樹とは、白音の考えた戦いにおける戦法考察秘儀。1つの技から3つ程の派生を作り、その中の1つを選び使用…そしてまたそこから派生をさせ技をまるで樹の枝のように増やしていき、昇華し続けれる業だ。

それが白音をどこまでも高みへ連れて行ってくれるし、たまに俺でも驚愕するような技を作り上げる。

そしてアーシアはというと、俺が悪魔でも持てる聖剣の紛い物という事で作った聖短剣を使用するのが主だ。

本物の聖剣とは違い、聖なる力をかなり弱く特別凄まじい力があるわけではない。アーシアにあるのは俺への思いだけだ。自惚れではなく、アーシアが使う聖短剣の最初の所有者は俺だ。作ったんだからな。そして俺がアーシアの為に作ったこともあり、更にはアーシアが俺に持つ気持ちが応えてくれるかのように輝きだけで下級悪魔なら消滅できるのでは?というぐらいまでにはなっているが。

そして聖短剣を使用して俺の懐に入ってくるアーシア。ぶっちゃけ瞬発力は祐斗には負けていない。間合いを詰めるだけなら僧侶の駒かつ騎士の速さを一瞬出す程度だ。あとはアーシアの実力がモノを言う。

極め付けは黒歌だ。

ぶっちゃけた話、黒歌が本気で俺を殺そうとすれば俺は2割強の力を出さないと負けるだろうと思っている。

黒歌が一番得意な空間術は未だに極めきれていない。だがそれでも空間術というのは案外チートだ。突如現れる。強固な結界を張れる。攻撃を転移させるなど挙げればきりがないぐらい戦略の幅が広く、極めれば地球の裏側から相手を殺すことも1秒足らずでできるだろう。

そこに妖力と仙術だ。妖力は妖怪しか持たない力の為に俺は修行がつけられないため、対処方法はまずは一度その技を見ないと立てれない。

刃羅尾…適当につけたにしては殺傷能力はピカイチだ。相手を立方体の空間で隔離しその立方体の壁から炎の刃が突き出てくる。今の黒歌のレベルでは1秒で30本ほどの刃を生成できるようで、俺ではなく例えばアザゼル程度なら致命傷は与えられるだろう。刃は壁から飛び出しそのまま尾のように立方体の中で振り回され反対側の壁にぶつかり炎を散らす。

黒歌も白音と同じく戦法考察に長けており、これが通じないなら次はこれと切り替えが早い。

今度はまた成長をさせて使ってくるだろう。

 

「黒歌!もう少し丁寧に練ろ!刃の大きさが乱れて来ているぞ!白音はまた新しい技か?踏み込みから見て太堅の派生だな!まだまだ!そこに連続で攻撃を与える手段を考えろ!アーシア!腕力が弱いぞ!腕立て伏せと走り込み、スクワットを明日から500ずつ追加だ!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

さて、あれから2日。組を総替えしての新しい訓練をしよう………と思ったのだが、朝から黒歌の機嫌が悪く、白音にでさえそっけない程なのだ。理由を聞いても、兄さんに迷惑はかけたくないと言われ、白音なんか姉様、姉様と心配そうに見ている。昨日の夜出かけてくると行ってからだな……アーシアはそんな黒歌に大嫌いなニンジン大量のシチューを作ったりしている。……実はアーシアが原因じゃないのか?

 

「違いますよ。」

 

「………アーシア、いつから心が読めるように?」

 

「いえ、お顔に書いてありました。」

 

ふむ…表情を読まれないように鍛えるか。

そういえば今日は旧校舎の大掃除をする予定らしく、イッセーの家で部活をやるらしい。家なら俺の方がでかいんだが、リアス曰く…そろそろ夜遅くに帰ってくるイッセーを怪しく思うかもという事で催眠をかけに行くついでらしい。

イッセーは最初渋っていたが、危害は加える気も無いし俺も行くということで本格的な部活という名目を掲げているためか了承をした。

 

「ほら黒歌、そんな顔するな。」

 

「………にゃあ。」

 

まあ今日は黒歌の事が心配だし特訓は自己判断と任せてあるので、今日はちゃんと黒歌をケアしてやろうと思う。

頭を撫でて抱き寄せれば頬を赤く染め俺に身を預けるようにしてくる黒歌を見て、アーシアと白音が今日は仕方ないとばかりに見てた。

 

そんなこんなでイッセー宅。

授業中は黒歌もしっかり授業を受けていたようで、放課後全員でイッセー宅に向かっている最中は手を繋いでいたからか機嫌はいい。

 

「母さん、ただいま。」

 

「あらイッセー?今日は早い………ていうか多いわね。」

 

イッセーの母親だろうか。高校生の子供を持っているようには見えない姿だが、ここはまず俺が挨拶をするべきだろう。

 

「すみません大所帯で押しかけてしまって。私は兵藤君の入っている部活…オカルト研究部の顧問をさせてもらっています帝千鶴と申します。実は今日、部活を行っている建物が大掃除の為に部室が無くてですね。たまにこういうことがある時は部員の家で親睦会をやっております。それで今回は兵藤君の家に行こうということになりまして……。もしご迷惑でなければお邪魔させてもらってもよろしいでしょうか?」

 

俺がそんな話をしている間に、リアスが催眠である程度操作をしたのか特に何かを疑うわけでも無く、イッセーの母親はどうぞと中へ入れてくれてそのままイッセーの部屋に上がり込んだ。

 

「やっぱりこれだけいると狭いわね……」

 

「あ、イッセーさんのベッドの下にこんなものが……」

 

「アーシアァァァァァァ!それだけはやめてぇぇぇぇぇ!」

 

「あらあら、白音ちゃん?私にもそのお菓子を分けていただきたいですわ。」

 

「千鶴兄様特性のビスケットです。これを食べたら他のお菓子は食べられなくなりますよ。」

 

「祐斗、あんたさっきから何で立ってるの?」

 

「そう言うなら黒歌先輩は何で千鶴先生の膝の上に?」

 

といった具合になるのは見えていた。

俺の膝の上に座り笑みを浮かべ俺の胸板に頬ずりする黒歌を見て、祐斗はあははと苦笑いしながら壁にもたれかかっていた。

 

「皆さん、これを。」

 

そう言いながらアーシアが見せてきたのは……アルバムだった。中を見てみるとそこには幼い姿のイッセーが。

 

「あらあら、裸で……」

 

「小さいわね……色々と。」

 

「イッセー先輩にもこんな時があったんですね。」

 

「可愛いですね……この時からイッセーさんは変態さんだったんですか?」

 

「にゃはは、これなんか鼻水垂らしてるにゃ。」

 

女の子達には散々言われながら、恥ずかしそうな顔をして返してくださいとお願いしているイッセーを横目に、俺はある写真から感じる気配に気付いた。

 

「………祐斗。」

 

「………聖剣ですね。写真を見なくても感じますよ。」

 

どの写真かはわからないが、確かにアルバムから感じる聖なるオーラ。もちろん全員気付いているようで、なんだかんだ言いながらその写真には触れようとしなかった。

 

「昔聞いたが、祐斗…今もまだ憎いか?」

 

「……憎く無いとは言えないですが、それでも今…千鶴先生の下で教えを乞い、自分の実力が少なからず上がっているのが分かるとこんなものに囚われていた自分が情けないです。」

 

そう言う祐斗の目は若干の濁りを潜めながらも、自分の持つ力が聖剣にどれだけ対応できるのか理解できているのかつまらなさそうにしていた。

 

「……今日は親睦会でしたよね?」

 

「ああ。」

 

そう言う祐斗の目にはある決意が見えた。おそらくは過去のことを言おうとしている……だが止めることはしない。リアスもチラリとこちらを見て頷いていた。

 

 

 

それから数分後、祐斗が自分の過去について語り出した。

自分は聖剣計画という実験で殺されかけリアスに転生させてもらったこと。聖剣を憎んで仕方なかったが、俺と昔話したことを覚えていたのか復讐に囚われず、過去に決着をつけたいという強い意志を持った目で前を見ていた。

イッセーはそんな祐斗の姿を見て仲間なんだからもっと頼れと言ったり、リアスは俺にありがとうと伝え祐斗の気持ちを理解した上で、1人で抱え込まず自分たちに相談してと言い、アーシアが聖短剣を取り出し使ってくださいと言って祐斗達悪魔を震え上がらせたり、俺が聖剣の知識と戦い方を教えてやると言って祐斗の頭を撫でてやれば顔を赤くしたり、朱乃は何やら困った顔で祐斗を見ており、白音と黒歌は聖剣の叩き折り方と言ってイッセーの秘蔵DVDとやらにチョップしていた。

 

「僕は幸せだよ……こんなに良い仲間と師に出会えて。」

 

そんなことを言った祐斗は目に涙を浮かべており、俺は仕方無いなと膝から黒歌を下ろさせ祐斗の頭を抱きしめてやった。男の泣き顔ってのは女の泣き顔よりはるかに良いものだ。……ホモじゃ無いぞ。まあ俺からしたらこいつは弟みたいなものだ…と言ってもあれだ………俺がこの世界に来るようになった理由であるあの子にそっくりなのだ。

 

「あら、もうこんな時間ね。来週には球技大会もあるし、明日の放課後からはその練習をしましょうか。」

 

そう言ってリアスは部活を締めくくった。

イッセー宅でイッセーと分かれ、それぞれ帰る方角は違うためかリアスと朱乃は転移魔法で帰った。

 

「それじゃあ僕はあっちなんで。」

 

そう言って途中祐斗が帰ろうとした時だった。

 

「祐斗先輩、今日うちで夕飯を食べて行ってはどうですか?」

 

「そうにゃ。色々と聞きたいこともあるし。」

 

「木場さんが迷惑でなかったらですけど……」

 

義妹達が祐斗を家に誘ったのだ。まあ何が目的かはわかるがな。

 

「ま、今日は俺が当番だしな……食ってけ食ってけ。」

 

俺は祐斗の頭をガシガシと撫でてやり、そのまま夕飯の買い出しを済ませ家へと祐斗を招いた。

 

「……イッセー君の家より3倍は大きいね。」

 

祐斗が俺の家を見て言った一言は俺たち帝家の秘密にしておこうと思った。

 




どもども、さて1話目にして祐斗君が聖剣をそこまで嫌いではありません…というより、千鶴の修行で聖剣より強い光を見たせいで聖剣が霞んで見えており、こんなものに復讐するより強くなって地位を持って情報を集めた方が手っ取り早いねと思うようになってます。
間近で聖剣見ても、「千鶴先生のギガスラッシュに比べたら月とスッポンだね。」となってます。

こんな駄文ですが見てくれてありがとうございます。
来年の初めに次回かな?

楽しみにしていてください。


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祐斗君の鬼畜師匠と禍の団の影

あけましておめでとうございます!
休みが続くと執筆が進みますね。

さて今回はオリキャラ登場!
六道輪廻の修羅…アスラの血族アシュリー!

スペックは
リアスの髪色にいたるところに黒のメッシュ。
長さは腰まであるくせっ毛だらけの20歳。
瞳は赤いが、修羅道に身を任せると目が濁ります。それはもう病んでてデレる子みたいに。
黒歌に匹敵…といいますか朱乃ぐらいにぐらまーですが、千鶴以外に体を見せることはありません。見られたら見たやつ串刺しです。
幼少の頃千鶴に歯向い返り討ち。強さに惚れ従順になりました。
今後祐斗君の師匠として出てきます。オボエテイテネ。
使用武器は槍『阿修羅丸』←今の所これだけ。
赤黒い謎の金属でできた一本の槍。投げれば帰ってきます。

続きはあとがきで書きます。
気になる方はどうぞ(笑)


千鶴side

 

さて祐斗が家に来て夕飯を食べ終わった頃、俺は祐斗を連れてある場所へ向かっていた。

黒歌達にはどこに行くのか伝えてあるので、後で夜食でも作って来てくれるだろう。

 

「………っ!?」

 

今いるのは冥界の遥か北。SS級のはぐれ悪魔でさえ近付かないと言われる魔神を祀る祠がある山だ。

ここに来るには俺の『ルーラ』か、サーゼクス達4人の魔王とうざったい老害の許可もいる。まあ俺は許可をもらってるからここに移動できるわけなんだがな。

祐斗も何かに気付いたようで、顔を強張らせ魔剣を手に冷や汗を流し始めた。

 

「やめとくんだな、祐斗。いくら俺の修行をやっててもまだ禁手にも至ってないお前じゃ『アレ』には勝てんさ。」

 

アレ…俺がそう比喩する者はいたってシンプルなほど邪悪だ。まあ魔神の魔力が封印されてて、尚且つこんな不気味で吐き気のする場所に好き好んで住んでる奴だからな……俺もあいつの技には苦しめられたことがある。

 

「これは…悪魔なんですか?」

 

「………悪魔は悪魔だが、どちらかというと魔物だな。」

 

祐斗は俺の言葉に反論することなく魔剣を消せば、気分が悪くなるここの空気に耐えられなくなってきたのか口を押さえ出した。

魔物というのは悪魔とは似ても似つかない存在だ。

使い魔の森などに生息するのでさえ魔獣で一括りにされるが、ここにいる魔物は獣でも人でも無い。

故に、感じる魔力の質や気配は普段感じることのできないものであり、今まで気づかなかった些細な能力も引き出されるのだ。

 

「魔神っていうのはそもそも居ない。が、力は歴代魔王を凌駕するそうだ。」

 

ここ冥界に居るのは魔王が最高権力を持っている。天界では聖書の神だとかいうのが居たらしいが、そもそも冥界に神は居ない。

なので魔神なんて居ない。簡単な事だ。

 

「聞いたことはあります。まだ二天龍と戦う以前…冥界の戦力を集結させ封印した存在が居るとか…。」

 

祐斗の言うとおり、ここにはそれほど強大な力を持った魔物がいる。先代魔王全員が屈指の戦力を投下させなんとか封印した存在…アスラ。まだ聖書の神が生きていた頃はインド神話の神であったが、何時しか冥界にてとてつもない力を宿し魔族として扱われるようになった奴だ。

まあ封印を解くことは今の魔王でも不可能なようで、アジュカも少し前まではここの封印を強化しようと模索していたらしいが、強化でさえ上塗りしかできず直接な強化は不可能だったそうだ。

 

「誰だ?」

 

「うわぁぁぁぁっ!?」

 

祐斗が後ろから声をかけられ飛び退くと共に魔剣を出現させ声の主に投げた…が、その魔剣を羽虫でも叩き落とすように手を払えば魔剣は霧散した。

祐斗はその様子を見て目を見開き、声をかけてきた奴の顔…と言うか体を見て顔を真っ赤にした。祐斗が俺の方を見て説明を求めてきている。

 

「……なんだ?ち、千鶴様!?な、なんでこんなところに!?」

 

リアスのような紅い髪に黒のメッシュがいたるところに入っており、服装は下着のみ……もう何年になるか、俺が冥界ではぐれ悪魔を狩っている時にあった頃より成長はしているようで、黒歌にも負けず劣らない肉体を隠す下着でさえボロボロだった。そいつは祐斗の視線の先に何があるのかと言う訝しげな顔でこちらを見た瞬間…シュボッという音と共に顔が赤くなり始めた。

 

「久しいな、アシュリー。また服をダメにしたのか?」

 

「ああ、……あ、あまり見ないでくれ。その…千鶴様に見られるのはい…嫌なんだ……」

 

まだ俺が10代半ばの頃に出会った頃は完全に野生児染みており、俺を見つけた瞬間首を掻き切ってきた時は驚いてアシュリーの下半身を吹き飛ばしてしまった。それからすぐに再生させ1週間ぐらい面倒を見てやったんだが…それからというもの俺を崇めるようになってしまった。

やはり最初のアレが忘れられないのか俺を見ると顔を真っ赤にしてしゃがんでしまい、体と顔を隠すように腕で体を抱いている。

俺以外だと黒歌ぐらいにしか心を開いていないためか、先ほどから俺の横にいる祐斗にはとてつもない殺気を送っているようで祐斗の顔が真っ青になっていた。

 

「実はお前に頼みがあったんだが…忙しいか?」

 

「いえ!とんでもないです!私、アシュリーは千鶴様に身も心も捧げる所存であります故、千鶴様の頼みであるのなら全身全霊を持って受けさせてもらいます!な…何をすればいいのでしょうか?掃除洗濯料理等は黒歌にも負ける私です……せ、せ、性処理などでしょうか?私…その…初めてなので…優しくしていただけるとうれしぃ……です……。」

 

顔を真っ赤にしてもじもじしながら上目遣い…普通の男ならすぐに襲いたくなる姿でだ。だがアシュリーは自分の認めない奴にはかなり当たる。それはもうグレイフィアさんにサーゼクスの悪口を言った時よりだ。

さていつまでもこんなことをしている暇はない。今日ここに来たのは祐斗を鍛える為なのだから。

 

「アシュリー。」

 

「っ!?はいっ!!」

 

俺がふざける事も無くただアシュリーの名前を呼ぶ。それだけでアシュリーはビクッと体を震わせ体を隠すこと無く立ち上がり俺の顔を見てきた。

真剣な表情でこれから何を言われるのか緊張しているようだ。

まあ俺が放つ威圧に祐斗が膝をついているのを見て冷めた目線を一瞬向け、弱者に興味はないという表情を見せるぐらいには余裕がある。

 

「難しいことじゃない。1週間でこの祐斗を最上級悪魔並みにしたい。協力をしてくれ。」

 

俺がそう言った瞬間、俺と祐斗のいる方向に向かって黒い魔力が飛ばされた。放ったのはアシュリーだ…目が黒く淀み、表情は無表情だが背には鬼の顔が見えた。

俺は黒い魔力のそれを指先で逸らし祐斗に向けると、祐斗はハッとして風を纏う魔剣を創ればその魔力を吹き飛ばそうとするが…黒い魔力は祐斗の魔剣を吸い込み剣の形を創り祐斗の頬を切り裂いた。

 

「神器か。私に武器は通用しないぞ?」

 

アシュリーは武器と名のつくもので傷をつけられる事はない。

それは神器も一緒だ。

祐斗の神器ではもちろん、イッセーの赤龍帝の籠手も籠手という武器に属される為殴ることも不可能だろう。唯一イッセーのは籠手が吸い込まれる事はないだろうってとこか。

 

「千鶴先生……彼女は?」

 

「ふん…千鶴様に紹介させるほどでもない。私はアシュリー。アスラの血族にして、六道の一角…六道の修羅…阿修羅のアシュリーだ。」

 

そう言ったアシュリーは腕を振るう。次の瞬間には俺たちの後ろにあった地面が抉れ腐り、燃え盛ったかと思えば足から伝わる冷気…そして聞こえる怨声。最後に風が吹けばそこには半径500メートルはあるであろう戦場のリングができた。

いろいろ考えているのだろうけど、アシュリーは俺の頼みは必ず聞いてくれる。そこを利用してしまった……今度また相手をしてあげないとな。

 

「1週間で最上級悪魔レベルにしてやる……覚悟しておけ。」

 

そう言ってアシュリーはふんと鼻を鳴らした。

祐斗は結界などで作られたわけではないリングを見て冷や汗を流していた。

俺がやれるのはここまでだ。あとはアシュリーに頼み、成果に期待するしかできない。実際俺が鍛えられる日は決まっているし、毎日鍛え抜けれるわけじゃない。だったら俺の代わりで更に実力もある奴に任せようと思ったのだ。

 

そしてしばらくすると黒歌達がやってきて、弁当を片手に祐斗の過去と聖剣を壊す為に力を貸して欲しいこと、そして久しぶりにアシュリーと組手をしてアーシアと祐斗が顔を真っ青にしたり、アシュリーが容赦無く黒歌を倒した所為で白音が激昂して返り討ちにあっていた。それを見て祐斗が無理と言う顔をしていたがそんなのは気にしない。

とりあえずは祐斗は風邪で休むことにさせ、俺は祐斗の救いを求める目を無視してアシュリーと祐斗に一先ずの別れを言って冥界へ置いて人間界へ戻った。

ちなみに黒歌に服をもってきてもらい、アシュリーには着替えてもらった。

 

 

 

千鶴side out

 

イッセーside

 

木場が学校を休み始めてもう4日…千鶴先生は大丈夫だっていうけど、こんなに休むとなると心配になる。

だから今日は部長に言って木場の様子を見に行ってもいいかと許可と場所を教えてもらおうかと思ったんだけど……

 

「急にどうしたんだろうな、部長。昼休みになったら部室に来いだなんて。これからは昼にも練習するのかね?」

 

俺は教室から一緒に出てきたアーシアと一緒に部室に向かっていた。

うーん、やっぱ美少女と並んで歩いてると視線がグサグサ刺さるぜ……知ってるかお前ら?こう見えてアーシアは素だと天然なんだぜ?

 

「あ……」

 

「ぐふっ!?」

 

……な?何もないところで躓いて俺の背中に肘鉄だ。最近筋トレも一緒にするし足運びなんかは俺より上なのにだぜ?まあすぐに治してくれるんだけどさ。

こんな美少女にぶつかるなんてって思ってるのかそこの男子諸君?

この美少女は千鶴先生にお熱なんだよ……だからそんな目を向けても俺は悪くない。

 

「イッセーさん、大丈夫ですか?ごめんなさい…最近千鶴お兄様成分が足りないのか体に力が入らなくて…。」

 

ううぅ、そんな悲しそうな顔をされても……俺は千鶴先生じゃないしな。

 

「ま、まあ早く部室に行こうぜアーシア。部長が待ってるしさ。」

 

「は、はい!」

 

さあ部室の前に来たのはいいけど……

 

「アーシア、中に部員じゃない人いるよな?」

 

「ですね。けどこの感じ…学校内では感じていましたよ?」

 

そうなのだ。部室には部長、朱乃さん、後は感覚的に帝家。あの家の人たちは気配も消せれるから集中しないと見つけられないんだけどな。後は2人…いつも学校内で感じる魔力で、よく生徒会室の方から感じるものだった。最近感じ始めた魔力と今のアーシアより少し上ぐらいの魔力の持ち主…まあ予想だと生徒会長の支取蒼那先輩。

 

「ああ、やっぱり生徒会長だった。」

 

中に入れば予想通りの生徒会長…この学園では4番目…5番目か?それぐらいの美人さんだ。

同じ学園に通う悪魔同士だから仲はいいんだろうか?

 

「あら、やはり気付いていたのですね…兵藤一誠君にアーシア・アルジェントさん。」

 

そう言って支取蒼那先輩は俺とアーシアに会釈をした。隣にいる男子生徒は俺の顔を見てふんと鼻を鳴らし俺の前にやってきた。

実力的にはこの中で最弱…多分アーシアの蹴りで沈むだろうな。

 

「まさか変態三人衆の1人であるお前がグレモリー様の『兵士』とはな…まったく、プライドが傷つくぜ。」

 

……なんだこいつ?もしかして実力がわかってないのか?……ああ、そうか。俺は千鶴先生に鍛えられてるからこんな考えなのか。けど悪魔としてはどうなんだろ?俺はグレモリー眷属だったりライザーみたいな悪魔しか見てないからな。

 

「サジ、おやめなさい。あなたでは兵藤君はおろかアーシアさんにでさえ勝てませんよ。」

 

そういう支取先輩の顔は部長と同じく凛々しくて、それを聞いたサジは目を見開き首を傾げるアーシアを見ていた。

 

「………ははは、会長。それは流石に冗談ですよね?もしかしてあれですか?女だから手を上げられないから負けとか?」

 

サジは何か勘違いをしているようで、苦笑いを浮かべながらアーシアを見ていた。……あ。

 

「そもそも女に手を上げないとか力量の読めない雑魚がすることにゃ。」

 

黒歌お姉様がため息をついてサジを睨んでいた。なんだろ?ちょっと機嫌が悪い?

黒歌お姉様はソファーで千鶴先生の隣に座っていたが、何やら怒っているのかサジの前に立つと目線を合わせ目を鋭くして気を滾らせていた。

 

「な…帝黒歌先輩?な、なんでここに?」

 

え?気付いてなかった?どんだけ気配察知ができないんだよ……。

 

「ごめんなさい、黒歌さん。この子はまだ眷属になったばかりでまだまだ実績もありません。今回の事は改めて謝罪を」

 

「いらないにゃ。」

 

そういうと黒歌お姉様は部室を出て行った。千鶴先生と白音ちゃんは気付いたらおらず、サジと支取先輩は改めて自己紹介をして部室から出て行った。

支取先輩の本名はソーナ・シトリー様らしく、部長と同じ上級悪魔の家系で元72柱の悪魔の一角らしい。あ、あとサジ…匙元士郎はどうやら兵士の駒を4つ消費したらしい。

俺は8つ消費した事を教えられて舌打ちをしていた。嫌われてるなぁ…まあ男に好かれても仕方ないか。

…それに匙からは悪魔ともう1つドライグに近い気配が感じた。あれはなんだったんだろうか?

 

あ、木場の事を聞かなきゃいけなかったのに忘れてたぜ。まあ部長顔を見る限りは心配はしてなさそうだし……風邪っていうのは嘘かもしれないな。

 

それから3日……木場が学校を休んで1週間。なんか町の雰囲気が変わった気がした。アーシアもクラスではそわそわし始め、朱乃先輩は鋭い目つきで外を見ていた。白音ちゃんは何やら部室に来るたびに耳と尻尾を出し、千鶴先生は窓際に立って笑みを浮かべてた。そこに黒歌お姉様がおらず木場もいない……この町で何かが起こっているのは確かなんだろうな。

 

イッセーside out

 

祐斗side

 

あの時、千鶴先生に連れてこられたここ…冥界の奥深く、魔神の眠る山に来て僕は師匠のアシュリー様に1週間鍛えに鍛えられた。

この山の空気は人間界より深く濃く、ただ立っているだけでも体力が奪われる程に瘴気…所謂人の身には害になる空気が漂っていた。

冥界の町では全く感じない瘴気も、この山に一歩入った瞬間に世界が変わったかのように感じた。

これは結界で外に出ないようにしているようで、結界が破られたら冥界中に瘴気が流れるようだ。

そして僕はそんな場所で千鶴先生の修行よりキツイ物を行っていた。そして気付いたのは、やっぱり千鶴先生は僕に見合った修行内容を与えているのだと分かった。

 

「0.3秒動きが遅い。やる気がないなら殺すぞ?」

 

うん、千鶴先生にはあんな表情をしていたのに、僕の目の前じゃ鬼なんだよね。

もちろん修行内容も鬼畜仕様だ。イッセー君ならアシュリー様の姿を見るために頑張りそうだけど、そんな目で見た瞬間『串刺し』なんだろうね。

 

「はい!!すみませんでした!」

 

「謝る前に足を動かせ!貴様は本当にノロマだな!」

 

そう言っていつの間にか僕の後ろにいて足払いをかけてくるアシュリー様。かわそうと飛び上がれば追撃のようにムーンサルト。なんとか魔剣を創りガードしようとするも、アシュリー様の足に触れた魔剣がぶぅんという音と共に掻き消え頬に激痛が走った。

歯が折れた感触がして口から血を吐けば血と一緒に歯が2本飛び出た。

容赦のない蹴り技はそれだけで僕の心を折ろうとしてくるが、流石に1週間これを受ければもうどうでもよくなる。なにせ蹴り技なんてただの初動の一部なんだから。

 

「ほら、避けろ避けろ!一撃当たったらこの山を30周だぞ!」

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

千鶴先生とは違う生命の危機。

アシュリー様が持っている槍…阿修羅丸は一撃当たれば僕の体力を根こそぎ奪う。どうやら黒歌先輩や白音ちゃんみたいな仙術を武器に宿しているようで、始め喰らったら足に力が入らずタコ殴りにされた。そのあと山を走ることになり何度も転げ落ちた事がある。

山を登るって直線じゃないよ?螺旋状に頂上まで上がるんだ。しかも上に上がるごとに距離は短くなるけど重圧と瘴気がとてつもなくなり、頂上近くになれば進みたくなくなり逃げ出したくなる。まあそれを見たアシュリー様が僕の背中に山の麓から殺気を放ってくるんだよね…登っても地獄登らなくても地獄ってやつだね。

 

1週間経って自分はどこまで強くなったのか…相手がアシュリー様だけなので測りようがないが、逆にアシュリー様の力が僕やイッセー君を遥かに凌駕していて、僕の剣は通用せず、身体能力は赤子扱い…これで強くなっていなかったらイッセー君を叩き潰そう。最近赤龍帝の籠手で倍加して攻めてくるからね…倍加する前にああしてこうして…ふふ、 泣き叫ぶ姿が目に浮かぶよ……はははは

 

「気色悪い笑みだ。」

 

「ぐふぅぅぅぅっ!?」

 

頭の中で想像していたら顔に出てしまったらしい。鳩尾に槍の石突きで突きを喰らい僕は100メートルぐらい吹き飛んだ。アシュリー様と修行し始めてキャラが壊れてしまったらしい。キャラ?何を言ってるんだろうか僕は。

 

「当たったから30周な。今日で最後なんだから奮発して50周に増やしてやる。」

 

奮発の意味がわかってないですよね。

ああ、早く千鶴先生来てくれないかな?

そういえばもうそろそろ球技大会だっけ?練習してないけど大丈夫だよね?まあ山を削る程の速度と強度を持った小石を躱したりしてるしギリギリ目で追えるようになったから大丈夫なはず。

 

「ん?あっ……千鶴様!!」

 

見てごらんよ、僕と修行していたらあんな顔見れないよ?頬を赤く染めて、今まで修行でボロボロだった服を隠すように腕で体を隠し、ペコペコと頭を下げていた。

 

「やあアシュリー。祐斗の調子はどうだ?」

 

「は、はい!頼まれていた通り最上級悪魔には匹敵するかと!」

 

アシュリー様は僕の方を見てふんと鼻を鳴らし笑みを浮かべた。

……認められたのかな?

 

「まあ、まだ荒削りではありますけど、後は実戦の中で学べばいいでしょう。なにせ殺す気で攻めたわけではないですし、命をかけた戦いを経験しないと壁は乗り越えられませんし破ることなど夢のまた夢です。」

 

……あ、あれ殺す気じゃなかったんだ。……え?

 

「祐斗、大丈夫か?目が死んでるが……明後日から球技大会だけど、もし調子が悪いなら休んでもいいぞ?」

 

そんなに調子が悪そうなのだろうか?千鶴先生が心配そうに僕の顔を見て頭を撫でてくれた。なんだろう…とても懐かしく、そして暖かい。

千鶴先生が黒歌先輩や白音ちゃん、アーシアさんに慕われるのはこういう暖かさがあるからなんだろうな。

けど、僕はグレモリー眷属だ。部長たちが頑張るのに僕が出ないのはダメだろうな。

 

「やりますよ。それに…先生は顧問です。先生の顔に泥は塗れません。」

 

そう言って僕の冥界での修行は幕を下ろした。ここでの1週間…僕は聖剣を折る心構えと技量を得られたのかな?

 

「木場、50周。」

 

ああ、忘れたものかと思ってたけど覚えてたか……うん、あと少し頑張ろう。

 

祐斗side out

 

黒歌side

 

私はここのところストーカーというものの被害にあっている。

なぜそんな事がわかるかと言われれば、普通のストーカーは影でコソコソして付け狙ってきたりするのに、今回のストーカーは私の目の前に現れ一緒に来いなどと言うのだ。素直に言うなら…うざったいにゃ。

 

「また来たのアンタ?懲りないわねぇ……私は弱い奴に着くつもりもないし、好きな男以外に触れられたくないんだけど?」

 

「へっ!おいらは強い奴と戦ってこっちに引き込むだけだぜぃ!」

 

そういう猿…美猴と名乗る男は棒を取り出して構えを取った。確かに腕は立つようだけど、ぶっちゃけ修行から帰ってきた祐斗より弱く、千鶴なら指先で倒せるやつ。

そんな男に興味は微塵も湧かなくて、さらに言うなら1週間前から私に立ち向かっては負けて去っていくような奴だ。好感なんて持てない。まだイッセーの方がかわいいにゃ。

 

「はいはい、いい加減にしないと…殺すわよ?」

 

この1週間、私は千鶴といる時間がかなり減っていた。

学校が終われば家に帰るか部活に行くか。けどやっぱり千鶴は教師だから仕事で遅くなるし、家に帰って夕飯を作って待っている方がいい。

けどそれを邪魔してくるのがこの美猴とかいう猿。

白音とアーシアが必ず買い物に行く瞬間に私の目の前にやってきて戦おうとしてくるの。

 

『おいらが勝ったら、お前さんには『禍の団』に入ってもらう。お前さんほどの戦力があれば俺っちたちは次の段階に行けるからな。』

 

カオス・ブリゲード…ぶっちゃければテロ集団。

私はそれに入るつもりもない。だってそこには千鶴がいないから。この猿は何を勘違いしているのか、私が負ければついていくと勝手に解釈しているようで、毎日一回は戦いを挑んでくるのだ。

 

「殺せるもんかよ!いくら強いとはいえ女に負けるなんてありえねぇ!」

 

そしてこれだ。

女だからとか、そういう言葉を聞くと無性に腹がたつ。この前もアーシアにバカな事を言った金髪の男がいた。

あいつは力量も読めない雑魚だけど、こいつは力量を知りながら、それに何度も負けているのに女になんかとか言ってくる。

 

「ほんと…救いようのないバカにゃ。」

 

そして私は上空から降り注ぐ炎の柱に捉えられ叫び声をあげる猿を見て思う。

 

(カオス・ブリゲードだかなんだか知らないけど、千鶴が腕を振るうだけでこうなる相手なんかどうでもいいにゃ)

 

昨日の夜、千鶴に変なやつにしつこく付きまとわれていると言ったところ、俺に任せろと言っていた。多分最初から私の周りにこういうのが居たのは知っていた。けど私の実力ならどうってことないのがわかっていたからか無視していたようで、相談したら少し怒った顔で排除するかって呟いていた。

家族に降りかかる火の粉を払い退けるのではなく、更に圧倒的な火力で火の粉を飲み込む。これが千鶴にゃ。圧倒的な強さと抱擁力…私の大好きな千鶴。

多分これからもこういうことがあるかもしれない…今度は千鶴の力を借りずに対応できるよう、更に精進を続けるにゃ。

 

「あ、また逃げた。」

 

気付いたら炎に包まれながら逃げていく猿。少しは懲りただろうか?

まあ今はそれより……

 

「千鶴にお礼と…後、今日はいっぱい愛してもらうにゃ!」

 

やっとすっきりした気持ちになれた。いつも一緒に寝てたのに、頭を撫でて抱きしめてくれるだけだった千鶴。ほんと…あの猿や金髪に比べたら月とスッポン…スッポンがかわいそうなぐらいにゃ。

 

黒歌side out

 




というわけでどうでしたか?かなりオリジナルになりましたが、この作品は禍の団アンチのシトリー眷属ほぼ無視です。なぜか?今のイッセー達には及ばないからです(笑)
セラフォルーに正式依頼されてないので鍛えません。

さてアシュリーちゃんなのですが、特殊な力があります。
中でもあったように武器は通用しません。
『戦神の武鱗(バルトロス・ディフルディア)』という特別な神器持ちです。彼女は神人という神と人の間に生まれた子です。そういう仕様ですご了承ください。
突っ込まれても躱します(笑)

今まで登場したキャラの戦力的には
クレアーレ>>ダークドレアム>エスターク>超えられない次元\\(イッセー40回倍加…現段階では15回が限度の為到達できず)>未だ修行中の身である千鶴>>>>>>>>>>サーゼクス・アシュリー>>>黒歌>グレイフィア>祐斗≧白音>沖田総司>>朱乃>リアス>イッセー≧美猴>アーシア≧ソーナ>>>>>ギャスパー>匙

こんな感じです。
イッセーが最強になるのはまだまだ先です。そしてイッセーの素が強くなれば倍加の量も減りますが、その間に千鶴も鍛えます。てかそのうち千鶴が進化します(笑)主にあいつらのせいで……

ではこれからもよろしくお願いします。
あ、誹謗中傷は削除しますので評価に1でも入れてください。あれですよ?自己満足品なんですから、これ。


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