理不尽な強さと (連邦士官)
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仁編
1


夏のうだるような暑さの日…あれな男が寝ていた。

 

彼の名は田中洋介と言う。

 

彼は、有り体に言えばニート、けれども就職できない訳でもなく、その気になれば住んでいる実家の家業を継げるだからこそ、安心してニートモドキをやっているのだ。

 

A~Gまでランクがあれば、彼のニートランクはGクラスであり、ときどきふとした時に実家の手伝いや家事をする。

 

近所からは外面の良い言葉を並べて、実家の事業拡大の為に修行している青年と思われている。

 

また、そんなのなので友達と呼べる存在はさほど多くない。

 

彼が突き抜けてもしオタクならば、彼はオフ会などに行けただろう。

しかし、微妙なオタクなので、ほかのオタクをキモい、気色悪い、嫌悪感がするとして触れてよいのか悪いのかわからなかったのが彼の運の尽きである。

 

だが、表向きの性格は善くも悪くないため、広く浅い人付き合いがあった。

 

それこそが運の尽きだった。

だらだらと表面上友人のような関係の人間が電話帳に並んでいた。

 

 

SNSでも数百人の知り合いがおり、彼は居たら居たで楽しいかなと思われる立場だ。

 

学生時代からそうであり、学生時代には積極的には誘われないが数合わせとなると人気になる人物だ。

 

彼は、名探偵の作品で例えるなら名探偵の知り合いの警察官の部下か名探偵の店や家の大家である。

 

そんな彼にも縁談が来た事も合コンにも誘われた事がある。

外面だけは良い彼は、相手と二人で話してもいい人止まりの中身がない人扱いで必ず終わるのだ。

 

知り合いに何故いい人なのに…と言われるのも心地よいらしいネジ曲がってるが、真っ直ぐだ。

 

洋介はインターネットを往き来するネットサーフィンを楽しんでいた。

 

ネットでたどり着いたのは異世界旅行の広告だった。

洋介は迷わずクリックした。

 

ワンクリックでもウィルスでも、対して問題は無いと思ったからである。

 

しかし、それは大きく裏切られることとなる。

彼は、そのワンクリックで異世界に旅立ってしまうことになるのだから。

 

彼は波に揉まれていた。

 

彼自体が感じた感覚なので事実かは確認する術はないが。

 

強制的に頭が重くなり、安いかぜ薬を飲んだような眠たさに教われた洋介は瞼を下げるのだった。

 

これが彼の困難の幕開けになるとは露も知らずに。

 

 

 

彼が居なくなった世界の片隅で黒い影がうごめき人の形になった。

それは片手にグラスを携えていた。

 

影は何かを呟くとグラスを地面に叩きつけてガラスの破片を睨んでいたまるでガラスの破片で占うように。




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2

田中洋介は寒さに目を覚ますと雪積もる河川敷で寝ていたのだった。

 

寒いのもそのはずコートにスーツ姿だったからだ。

 

痛む頭に手を当てながら周りを見渡すと木造家屋とレンガ作りだらけの町並みが広がっていて見ている限り幕末ドラマの様な風景だった。

 

何処の田舎だと思いながらも洋介は軽く歩いていたがいつもの走っている時ぐらいの速度が出て驚いた。

 

(俺の体に何が起こったんだ?)

首を傾げながらも交番が無いか探しているのだった。

 

そうすると目の前に検索サイトのページが表示され洋介は怪しみ2~3分じっと見て恐る恐る触れてみた。

 

するとどうだろうタブレットの如くテンキーが表れ検索画面に移るのだった。

 

洋介まず現在地と検索してみると神奈川小田原郊外と表示された。

 

(何故、俺は小田原に……まさか人体実験で頭にICチップか何を埋め込まれた?)

オカルト雑誌がよだれを出して喜びそうな場面に巻き込まれたかとウンウン唸っていると人が集まってきた。

 

「あんた、怪しい格好しとるけどなにもんだ?」

着物をきた男に聞かれたのだった。

 

「なにもかにも気付いたらここにいたんだ。悪いけど今の日付を教えてくれないか?」

洋介の質問に着物を着た男は

 

「あんた追い剥ぎにでも会ったかね?頭を押さえとるけど。とりあえず今は文久2年1月6日やど。」

男の答えに洋介は愕然とした。

 

(嘘を言っているようには見えないし着物を着てるからそうなのか。)

洋介は急ぎ現在の日付を検索サイトで調べると同じ結果がでて顎が外れかけてしまった。

 

(どうすりゃいいんだ。)

落ち込む洋介を慰めるように男は

 

「大丈夫か?とりあえず家によってくかい?」

言葉をもらえたので着いていくことにした。

 

(危なくなっても今の足の早さだと逃げ切れるだろうし大丈夫だろうな。)

ご好意に甘えさせてもらうことにした

 

男の家は宿屋らしかった。

 

「若旦那お帰りですか?後ろのお方は?」

男に挨拶をした年配の男は洋介を怪しげなものを見る目を向けながら聞いた。

 

「あぁ、あっちの方の川辺で追い剥ぎにあった御仁だよ。」

あっけらかんと河川敷の方を指差しながら答えるのだった。

 

「追い剥ぎですか!?番所に伝えなければなりませんな。」

追い剥ぎと言う単語に年配の男性は強く反応してこちらを見た

 

「お若いのにかわいそうですな。昨今は年号が変わったばかりなのに異人排斥やなんやと物騒な話しか聞きませんからな。もしかしたら異人さんとそんな格好しているから間違われたのではないですかな。」

同情の眼差しを受けながら洋介は店の中に入っていくのだった。




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3

洋介は宿屋の囲炉裏の近くにいた。

 

年配の男性が囲炉裏で餅やスルメを炙るのを若旦那と一緒に見ていると若旦那に聞かれた

 

「ところで貴方は何処の出なんだ?」

 

(未来から来ましたとか言っても頭が痛い奴だよな。)

適当な言い訳を考えて唸っていると

 

「若旦那、まさかあのあっちの弥三郎さんがなった記憶が無くなる奴ではないのではないですかね?」

年配の男性はスルメを引っくり返しながらそう言った。

 

(あぁ、それがいい。それで行こう。)

洋介はすぐさま話に乗った。

 

「そうなんです。追い剥ぎに頭を強く叩かれたようで思い出せないんです。」

 

洋介の言葉に二人は同情の目を向けた。

 

「昨今、物騒でいけない。異人さんがたのせいでもあるが、浪人や農家の三男や四男に仕事がなくて行けねぇや。」

若旦那はキセルを取りだしふかしはじめた。

 

「そうですね若旦那。こちとらあんな奴等がのさばり倒してお武家様は借金踏み倒しとくれば怒りしか感じやしませんな。若旦那とお客さん出来やしたよ。」

年配の男性は焼けたスルメを皿に移し引き裂きながら若旦那に同意を示すのだった。

 

「ほんに世界がおかしくなっとる。商人の我々や農民、職人や下々が苦しむなかお武家様は贅沢三昧とくれば怒りしか湧かん。」

キセルを置いてスルメをつまんで食べ始めた。

 

「そんな酷いのですか?」

スルメをご馳走になりながら洋介は聞いてみた。

 

「あぁ、酷いとも出稼ぎに田舎から来てた奴等が蝦夷に金山があると連れてかれて、結局あるとか無いとか騒いだ山師の為に金山掘らされて死んじまったよ。しかも、なにも出やしねぇておまけ付きだ。」

囲炉裏にかけられてた鉄瓶から熱燗をつぎ洋介に渡してきた。

 

「お前もどうだ?与作。」

年配の男性の名前は与作と言うらしい熱燗を進められた与作は

 

「若旦那、まだ仕事中なので。」

与作は断ったが若旦那の「気にやしないよそれに家に三代働いてくれてる与作だからすすめてんだ。」と言われてしまえば断る理由もなく三人で飲み会が始まった。

 

「昨今は、景気が悪い。時勢が悪いと抜かして働きやしねえ浪人がいるが働かないから景気が悪いんだよな与作。」

餅とスルメをがっつきながら話してた。

 

「そうですね。若旦那金がなけりゃあ女もろくに着いてこない様な浪人どもの言い訳なんだ。こちとらかかぁに金を寄越せとせびられて搾られてるって言うのに浪人どもと来たら……。」

与作もスルメをがっついていた。

 

結果的に洋介がスルメを焼いていた。

 

(矢鱈、矢継ぎ早に飲むなよく倒れないな。)

 

等と考えていると玄関が開く音がした。

 

「与作行ってくれ。」

 

「若旦那、わかりました。」

与作が玄関に行くと怒鳴り声が聞こえた。

 

「金100両の借金帳消しにしては頂けまいか!」

 

これが聞こえるや否や若旦那が立ち上がって玄関に行った。

洋介も着いていくことにした。

 

若旦那は出ていくや侍姿の男に

「お武家そんなの無理に決まってるでございましょう。」

と言い切ったのだった。

 

帳消し、嫌だ、帳消し、嫌だの堂々巡りを20分ぐらい繰り返すと

 

「こちらの店に娘を嫁がせるから借金は無かったことに出来ぬだろうか?」

侍が頭を垂れてきた。

 

「いや、しかし我々の店はお武家の二代より前から金を貸しているのですよ。お分かりください。」

若旦那も頭を下げて返してくれと返すと

 

「ここまで、頼んでるのに許さん。切り捨ててくれるわ!」

いきなり侍が刀を抜くと若旦那に切りかかってきた。

 

洋介は咄嗟に刀を掴もうと刀に触れてしまった。

 

刀は折れて侍は弾けとび店の前まで転がった。

 

そのあと、同心が飛んできて侍を連れていった。

後日聞いた話だが、侍は切腹を命じられ侍の家はお取り潰しになったらしい。

 

「あんた、用心棒として家で働いてくれお願いだ。」

若旦那の言葉に洋介は頷いた。

 

洋介は宿無しから宿屋の用心棒になり、未だ苦難の中にいる。




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4

文久2年1月某日

 

暗闇で笑う“ナニか”を見た気がする。

 

暗い中をひたすら追いかけていくと件の“ナニか”が立っていた。

 

暗いのにはっきりと見える上にナニかがいるのは分かるが正体は掴めない。

 

「君はまだまだ才能があるのに気が付いていない。勿体ないな。全く。」

その言葉を吐くと“ナニか”は狂ったように笑いながら闇に体を溶かしていった。

 

頭がボーッとする昨日は色々有りすぎたようだ。

 

まず朝起きて先程のはなんだったのか自分に問うと一瞬で恐らく正解の答えがでた。

 

あれは自分をここに飛ばしたものだと。

 

答えが出ることに疑問を持つとこの能力の名前が分かったアンサー・トーカーと呼ぶらしい。

 

現状の能力で使えそうな能力はと問うと以下の能力が答えに出た。

・スキルを作るスキル

・錬金術

・命を操る能力

・無効化の能力

・精神コマンド

・ステータス表示

・情報表示

・看破

・言語共通

・慧眼

・能吏

・世界を行き来する力

・真空破

・衝撃

・超能力

・アンサー・トーカー

・インターネット利用できる能力

・情報を修正する能力

・ジョブアビリティ(4)

・SPアップ(10)

・白魔法

・時空魔法

・青魔法

・宝具使用

・再現能力

 

今はこれぐらいらしい。

 

(スキルを作るスキルとか意味が分からんな。)

アンサー・トーカーが発動した。

 

スキルを作るスキルは、文字どおりスキルと言う異能を作る能力のこと。

 

(なんだこの能力……強すぎるだろ。)

その後もアンサー・トーカーで能力を調べて驚愕していった。

 

(何なんだ今、俺は世界最強じゃないか?)

と考えていた所で与作から声がかかった。

 

「起きてますか?」

その声に洋介は

 

「はい、準備は出来てます。」と答え出ていった。

 

朝の風は澄みきっていてとてもじゃないが現代の日本とは考えられないものである。

 

昨日は急いでいて楽しめなかった小田原の景色も今見ると風情があり、味わい深いものである。

 

「与作さんおはようございます。」

洋介は小田原の景色を胸に挨拶をした。

 

「はい、おはようございます。それよりもご飯の準備ですよ。支度ができるまで薪を割っていてください。」

与作の指した方向には木が積まれて近くに割る台の様なものと斧があった。

 

洋介が珍しそうに見ていると

「教えないとできませんか?」

と与作に聞かれたので

 

「大丈夫ですよ。与作さん。アレを割ればいいんですね。」

洋介は笑って見せた。

 

「それじゃあやっといてください。あなたの今日の仕事ですから。私は仕事がありますんで。」

与作そそくさと宿の方に帰っていた。

 

洋介は自分にヘイストをかけて木を次々に指を鳴らして真っ二つにしていったり、衝撃波で真っ二つにしたりと手にいれた力を薪相手に試して行くのだった。

 

(使ってみると分かるけど凄まじいな。)

 

 

戻ってきた与作が積み上げられていた木が全て薪になっているのを見て驚いていた。

 

(あれ?やり過ぎたのか?)

その後に分かったがあれは洋介に一日分の仕事で割り当てられた薪らしかった。

 

若旦那から少し町を歩いてきていいと許可が出たので、仕事も終わっているので町を歩き散策していた。

 

ぶらぶらと町を歩いて辺りの景色を楽しんでいると何処からから殿様が来るぞと聞こえ皆、道の端に行ったので洋介も道の端に言って頭を下げた。

 

幾ばくか時間が過ぎて大名行列が到着し道を通っていく、少しばかり顔をあげて大名行列を見ると非常に迫力のあるものだった。

 

大名行列が過ぎる頃には、洋介は宿へ帰らねばならなかった。

ちょっと遅くなり与作に怒られたが、大名行列にあったことを伝えると許してもらえた。

 

 

未だに洋介の苦難は終わらない。




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5

与作に怒られた後に洋介は新しい仕事を渡された。

 

単純に店の前に座っているだけの仕事らしく洋介は座っていた。

 

よくも悪くも洋介は現代風の背格好で173cm位の身長があったため巨漢であった。

今で言うと190cm位の感覚だろうか。

 

洋介が立っているだけで多くの人は威圧感を感じていた。

なので、洋介は座らされているのだがそれでも威圧感を与えていたのである。

 

町を歩いていた時より止まっている方が好奇の目を当てられているように感じていた。

 

空が晴れ晴れとして昼下がりごろまで時間が過ぎた。

洋介は綺麗な空を見ていたのだが急に人が倒れたのだった。

 

倒れた人の周りに人だまりが出来ていて、洋介も見に入った。

 

倒れた人は苦しそうにしているのでつい何の病気ですかと聞いた。

瞬間にアンサー・トーカーが作動して病気が分かった。

 

風邪を拗らせたらしい。

 

洋介はどうしたらいいかとアンサー・トーカーに聞くと能力を使えと出た。

 

まず、洋介は病人にストップをかけエスナをかけて、減った体力をケアルガで回復させて命を操る能力で回復させたのだった。

 

特別、魔法を使った所で目立たなかった。

 

ストップをディスペルで解くと病人は先程の苦しみは嘘のように無くなり、誰が手当てをしたのかを周りに聞くと洋介を指差したので洋介にお礼を言い幾らかのお礼を渡すと帰っていった。

 

「たまげたな、アンタ医術も使えたんだなぁ。」

と騒ぎが無くなり人だまりが無くなった後に見ていた与作が言うと若旦那が来て洋介に

 

「貴方、本当は何者だったんでしょうね。まさか、医術の技量を嫉妬されてあんなことに?とにかく、素性がわからない以上あんまり目立って周りを刺激すると良くないから隠すように。」

と言って感動したからとの事で少しばかり小遣いをくれた。

 

若旦那が寺の籍に命を救ってくれた礼に洋介を入れてくれたのだった。

 

文久二年3月某日、朝

 

2ヶ月経ったがその間に坂下門外の変があったり、和宮さまが将軍徳川家茂へ御降家したりとあったが暇な時はインターネットに意識を繋いでいる洋介にとっては知っていたため特に驚きはしなかったのだった。

 

そんな平和な中大変な事が起こった。

それは、麻疹の大流行である。

 

麻疹が長崎から流れ流れて小田原までやってきてしまったのである。

麻疹の患者が出るなか洋介のいる宿屋はと言うと若旦那が麻疹に掛かってしまって洋介が治療したのだが、噂が広まり麻疹患者がひっきりなしに連れてこられて医療所になっていた。

 

「若旦那、いいんですか?」

与作は扉に隠れながら若旦那に聞いた。

 

「仕方がないだろ困ったときはお互い様だ。それに我々の所に寄進が集まっているから医療所を続けなければ信頼に関わる。」

若旦那は若旦那で考えがあるようだった。

 

「としますと?」

与作は若旦那の顔を覗き込んだ。

 

「集まった寄進で医療所を別の敷地にたてよう。江戸や三河や甲斐からも患者が来ているし奉行所からも要請があったしな。だが、全ては田中殿の意識しだいだよ。」

治療に大忙しの洋介を見ながら言った。

 

場所は宿屋の庭に溢れる麻疹の患者。

洋介は次々に命を操る能力とリジェネ、レイズとケアルガ、ホワイトウインド、絆、エスナを連発して病人を治していった。

 

どんな病気もたちどころに治してしまう洋介は有名に成っていた。

小田原随一の医者として。

 

麻疹に有効な手立てがない中、洋介だけが完全に治すことが出来るとの触れ込みで江戸に呼ばれてしまった。

天下の名医として。

 

洋介は更に難儀な道を進む。




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6

江戸に呼ばれた後に寺の境内に特設された医療施設で一日千五百人と洋介が治すと数日後に、現在の横浜の外国人居留地に派遣された。

 

洋介は、幕府から日本の虎の子の医者として紹介された。

 

イギリス、フランス、ロシア、オランダ、アメリカ等の人達に紹介された。

 

麻疹を完全に治したとの触れ込みなので、幕府の通訳は別室に移されて各国の通訳と医者がこぞって医療知識について聞いてきた。

 

ここでアンサー・トーカーと言語共通、情報を修正する能力、インターネット利用できる能力が威力を発揮した。

 

医者の質問に対して毅然と立て板に水を流すかの様に各国の言葉で通訳を通さずに答えていき、各国の医者や通訳は驚きで言葉も出ないようだった。

 

その後に医者としてヨーロッパに来ないかと?と聞かれたが断った。

 

(俺、医者じゃないし。魔法で治しているだけだからな。小田原に帰りたいな。)

洋介としては名声を得たいと言う気持ちよりもただ状況に流されて病人を治していただけであり、居場所と暮らしていける金と若旦那に恩返しが出来れば問題ないと考えていた。

 

幕府の通訳が帰って来て挨拶が終わったと言うことで週に半分横浜でもう半分が江戸の医者暮しを続けていたが最近有名になってきた医者が居るらしい。

名前を南方仁と言うらしいく、麻疹をちゃんとした医術で治しているらしい。

 

しかし、アンサー・トーカーでもインターネットでも南方仁なる人物は幕末に出てこない人物であった。

 

その為、医者の南方仁が気になり会ってみたいのだが時間が作れずにただただ病人を治していく毎日を過ごしていった。

 

そんな毎日を過ごしている内に幕府から医療塾の講師になってくれないかとも言われたが断り体が疲れたので幕府の職を辞した。

 

その時に言い訳としてより多くの病人を救いたいからと言って出ていってしまった。

 

小田原に帰ってくると宿の隣の商家の大きな屋敷から若旦那が出てきた。

 

「田中殿、仕事はどうしたんですか?」

若旦那が聞いてきたので

 

「横浜と江戸が嫌になって帰ってきた。病人を治すだけなら良いけれども質問してくる事に答えないといけないからです」と洋介は素直に言ったが若旦那はフッと笑って

 

「知ってるよ。より多くの病人を救いたいから幕府の職を辞めたのだろ?」

若旦那は分かってると言う顔をして隣の屋敷を指差した。

 

「これは何か分かるかな?」

若旦那は聞かれた洋介は

 

「確か反物屋の旦那の屋敷ですか?」

と答えた。

 

が、若旦那の口からは驚きの言葉が出てきた。

「これは田中殿。君が助けた病人からもらった寄進で買い取って改装した君の医療所だよ。」

 

洋介は渇いた笑いを浮かべながら若旦那に招かれるままに屋敷の中に入っていった。

 

屋敷の中は綺麗に掃除されていた。

そして、いやに目立つ所に長方形の板があった。

 

「その看板に何てかこうか?」

若旦那が聞いてきた。

 

「えっ……大体何て書けばいいんですか?」

洋介は驚いたが若旦那は一拍置いて

 

「万病医術所と書いておけばいいのではないのですかね?」

洋介は若旦那が言った通りの名前にすることにした。

 

用心棒から幕府の医者になり、幕府の医者から町医者になったのだった。

 

洋介の元には麻疹の患者が運ばれて大量に魔法と能力を使って治す、治した病人を家に帰すを繰り返すばかりだが、たまに違う病気の患者を治していく毎日だった。

 

診療費はかなり安く設定していた。

魔法で回復させるだけなので道具代も要らないのでかなりの利益を揚げて居た。

 

しかし、その値段設定に怒りを覚えた人間も居た。

 

利権を持つものたちであった。

 

まだまだ洋介の苦難は終わらない。




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7

文久二年4月某日

 

洋介は基本、寝る、ご飯、診療、ご飯、寝るの繰り返しの毎日を贈っていた。

 

魔法を使っているので治し辛い病気はあっても治せない病気はほぼなかった。

 

癌や免疫異常は幾ら魔法とは言え治し辛い病気だった。

 

薬を使わずに手をかざすだけで治していくのだ。

仙術に長けた道士や病に憂いて仙人が舞い降りてきたとまで噂されてしまった。

 

そんな噂も耳に入れずに魔法で病人を治していくのだった。

 

治した患者に「手洗いうがいはしろよ」いつも通りの言葉をかけた。

 

そしてその日、インターネットで知った寺田騒動を見に京都にテレポを使い行ったのだった。

 

人に聞きながら寺田屋に着いた洋介は中に入った辺りで奥の方からけたたましい音が聞こえていた。

 

寺田屋の奥の方から従業員が出て来て侍が刀を振るってると騒いでいた。

 

そこで奥に入ってみると頭がかち割られた男や背後から切りつけられた男などが居てついいつも通り魔法で治療してしまった。

 

治された方は驚きながらも逃げていき、他の怪我人も治してしまった。

さらに死体同然の人間が治ったのを見て薩摩側の侍達も立ち尽くしたが、次の瞬間妖魔めと斬りかかってきたのである。

 

だがしかし、洋介は全員にサークルをかけると衝撃波で気絶させ逃げた。

 

それにより、島津藩士の一連の事件はうやむやになってしまったのである。

 

(やってしまった?)

ともかくテレポで小田原に逃げ帰った。

 

洋介はその後も忙しい毎日を送っていた。

だが、おかしな事が起こった。

 

流行はしているがインターネットで調べたコレラ大流行が起こらないのである。

原因は簡単で洋介が麻疹患者を大量に治したのと洋介が服装的に西洋医学者だと思われて仁と洋介の手洗いうがい等の予防法を聞いて実践する人々が増えたからであった。

 

洋介はまた江戸に呼び出されコレラの治療をしていた。

前回の麻疹にかかった患者も多くいて、洋介が入ってくると必ず治ると安堵した表情をしていた。

 

毎日、次々にコレラを治していくと髭を生やした大柄(この時代にしては)の男が運び込まれてきた。

 

女性が付き添いで侍姿の男が大八車を引きこの大柄の男を運んできたのだ。

 

直ぐに治すと治された男は不思議そうな顔をして、どうやって治したのか聞いてきたので「私は治せる者しか治せない」と適当に言って追い返すと再び運ばれてくる病人の治療に専念した。

 

これが後に、会うことになる南方仁との初めての出会いだった。

 

文久二年7月から8月まで病人で大忙しだった診療所も一段落つき、江戸から小田原に帰省する途中だった文久二年8月21日である。

 

洋介は神奈川の鶴見で大名行列に会い脇によけて居ると馬の音が聞こえて大名行列の前にやって来た。

四人の外国人が突っ込んだのだ。

 

辺りに居た人々は驚きのあまりに声も出ずに事の次第を見守った。

血だらけの外国人が行列から出てくると馬で逃げて行った。

 

それを追う侍達で騒然とした雰囲気になってしまったのである。

 

洋介はインターネットで調べるとこれは生麦事件らしかった。

 

だが、日付は合わない。

がしかし、直ぐにアンサー・トーカーが発動して、和暦と西洋暦の違いと出た。

 

成る程と思い洋介は帰ろうとしたが、「貴方、有名な医者の田中殿ではないか」と言われて薩摩藩士に捕まり、色々と言われたがこのままだと外交問題になるかもしれないとの事で外国人を生かして捕虜にしたいから協力しろと引っ張られた。

 

そうこうしている間に外国人を担いだ薩摩藩士がやってきた。

 

誰の目にも分かるほど死にかけている外国人であったが、いつも通りまずストップをかけてから命を操る能力とケアルガ、レイズをかけると目を見張るほど傷が塞がった。

 

これを見た薩摩藩士に洋介は連れていかれてしまった。

 

洋介は一体何処に行くのだろうか。




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8

文久三年春のある日

 

洋介は薩摩の大名行列に連れてかれて今は薩摩にいた。

 

連れてかれてまず捕虜になったイギリス人、チャールズ・リチャードソンの診察を任された。

 

その後に、風邪などが流行ると洋介が担ぎ出されて治療をしていた。

 

年が開けても洋介のやっていることは変わらずに何だかんだで領民に対する薩摩藩の診療所長なっていた。

しかし結局、洋介一人で何でも直ぐに解決するため診療所長と言っても実質一人だった。

 

結局、給金をもらった以上渋々働いていた洋介なのだが幕府の使者が来て、イギリス人を治療した医者とイギリス人を引き渡せと命令がきたので小田原に帰れる事になった。

 

洋介が小田原に戻ると直ぐに幕府の使者が来てイギリスと戦争になるかもしれないから幕府軍の専属医にならないかと聞かれた。

 

それを洋介はやんわりと断るとまた診療に戻った。

もはや日課であり能力を使うだけで簡単に儲かる仕事だったからだ。

 

しかし、普通の医者よりは値段設定が低くく同じ人数を違う医者(南方仁以外)が診療したならば大金持ちになっているはずである。

 

小田原の診療所で一仕事終わらせた後に若旦那に誘われて月夜の縁側で若旦那と供にスルメを炙りながら食べていると若旦那がお猪口を置いて

「最近きな臭い事が多いな。浪人が最近具足とかを買い荒らしているらしいよ。」と伝えられた。

 

「そんなにきな臭く、危ない状況なのですか?」

と洋介が聞き返すと

 

「横浜から人々が逃げ出しているそうだ。」と若旦那は言い

続けて「礼儀知らずの驕り高ぶった外国人が斬りかかられた位で戦争とは……イギリスとは野蛮な国らしいな。」とキセルを吹かしながら空を見上げていた。

 

雲から月が覗いていた。

 

その後、良くも悪くも忙しく医者を続けて居ながら文久三年5月に入った。

南方仁の名声もすごいが洋介の名声はもっと高かった。

 

外国では二人を東洋医学の至宝や東洋の奇跡とをよび始めていた時である。

 

横浜にイギリスの大艦隊がやって来たとの話が広まった。

インターネットの情報で知っていたので早速洋介はイギリスの艦隊を見に行った。

 

噂のイギリスの艦隊は壮大だがその艦隊は洋介の目には武力を笠に来て脅すやり方に見えて強い強い怒りを覚えた。

 

何故ならばインターネットの情報でイギリス人のチャールズ・リチャードソンが死んだから強気でイギリスが動いたと言う話だったのに、実際に自分がイギリス人を救ってもこれが起こったからである。

 

すぐさま長州である戦闘の用意と戦えるか能力を確認すると洋介は長州に向かったのである。

西洋と戦うために。




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9

文久三年5月某日

 

鎧を着こんだ洋介は浪士として長州の砲台に居た。

 

洋介の当時にしては大きい背格好と持っていた金で買った具足と刀が余りにも立派だった為に名のある武士として砲台に派遣されたのである。

 

まず洋介は、江戸に置けるイギリスの態度を長州に集まった浪士組や武士に話すと全員憤慨していた。

 

しかし、洋介はイギリスだけに敵を絞るべきだと語り、全外国を敵に回したら武器は何処から調達するのか説いた。

 

多少の強硬派は居たが洋介のどう考えても浪士と言うより旗本の嫡子の様な立派な格好とテレポで盗んできた拳銃、そして長州の誰よりも情報を知っていて、江戸の様子を今さっき見てきたかの様に語る姿に長州藩士は洋介を幕府からの密使と思ってしまったのである。

 

長州は幕命としてこれを行ったのである。

イギリスの船のみを封鎖したことによりイギリスが持っていた利権を他の列強が切り崩しにかかり、驚いたイギリスは江戸に派遣していた艦隊を長州に差し向けた。

 

三日後、江戸にいた艦隊と途中で合流した艦を合わせてイギリス艦隊は総勢10隻に成っていた。

 

イギリス艦隊が海上に見えたと同時に通信役にイギリスの書記官が来て長州に対して今から攻撃すると宣言して帰っていったのである。

 

これから始まる惨劇を知らずに。

 

洋介はカツラを被り仮面を着けて先程とは違う具足を着け、羽織を着て背中に錬金で作った仏像の放射光の飾りを着け武器を針ネズミのように背負った。

その後にヘイスガをかけて迅速を唱えて錬金術で作った武器の中から剣を携えて水面を走った。

 

長州藩、イギリス海軍両方、それを見張っていた小倉藩も驚愕して動きを止めた。

 

人がしかも仏像のような背中の飾りを背中に着け武器を針ネズミのように背負った人が水面を走っているのだ。

誰も見たことがない早さで。

 

早くに建て直したのは長州だった。

長州は洋介の存在を大和に古くからいる神として大いに士気を挙げて射程外にも関わらず砲台から砲撃を始めた。

 

長州の砲撃によりイギリス艦隊は立ち直り洋介に狙いを定めた。

 

しかし、明らかに狙いは遅く洋介に当てることは出来なかった。

 

「レビテト。」

洋介は空を滑空して手から衝撃波を放ち加速すると更にイギリスを驚かせ長州を大いに沸かせ、小倉を狼狽させた。

 

更に洋介はジョブアビリティのちけいを使いイギリス艦隊につなみを当て、剣を構えるとアビリティのなげるを使用して、次から次に背負った武器をイギリス艦隊になげつづけた。

 

イギリスの船がまた一隻また一隻と洋介相手に逃げようとするが洋介は指を鳴らして逃げようとした船を真っ二つにして沈め、また攻撃してきたイギリス艦隊に高速でひらめきを使った後に近づき錬金術で船事態を石に変えて沈めた。

 

ものの一刻(30分)もせずにイギリス艦隊は全て撃沈され、洋介が超能力で船員を海の上に引き上げるとケアルガで回復させてイギリスの艦隊にいた船員全てをテレポで横浜に戻した。

 

しかし、最後の船が放った砲撃は長州の砲台に当たり長州は試合には勝ったが勝負に負けて戦争には引き分けたのである。

 

これと同時に洋介は小田原にテレポを使い帰ったのだった。

 

数日後、イギリス艦隊を長州が破った事が広まった。

 

だが、長州がイギリス艦隊を殲滅したことで幕府と薩摩の態度は硬化しイギリスに対して大名行列に入った事を詫びろと逆要求したのだった。

 

これにより日本中で攘夷派が一気に勢い付いたのだった。

 

イギリス公使館は関門海峡で撃沈した筈の艦隊の乗組員が全て生存して横浜に現れたことで混乱していた。

その後にことが広く知られると同時にイギリス本国ではアイルランド独立義勇軍が設立され独立運動が起こり戦争が開始された。

 

長州に権威が傷つけられたイギリスは30隻余り船を集めた艦隊とフランス艦隊と上海で合流し日本を先ずは薩摩を叩く事に決めて準備をしていた。

 

洋介は薩英戦争への準備を始めていた。

洋介とイギリスの戦争はまだ第1段階に入っただけだったのである。




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10

文久三年6月のとある日

 

イギリスが薩摩との準備を始めている中で洋介は相変わらず診療をしていた。

 

どんな病も治してしまう人物としてアメリカでは持て囃されていた。

特にオカルトが好きな人間は洋介の正体はサン・ジェルマン伯爵だと噂していた。

 

洋介はアメリカの公使館から賓客として呼ばれると野蛮な南軍から自由の北軍を助けるために雇われて貰えないかと言われたが洋介は断った。

 

北軍を助けても日本が植民地化される可能性が高まるだけである。

とは言えイギリス艦隊が破れたのでアメリカの外交政策はヨーロッパと協調路線からヨーロッパとは独立した外交政策にアメリカは路線の変更を選択したのである。

 

日本の実力を上方修正して、入ってきた情報によるとイギリスは本気で日本と戦争する準備をしているらしく、イギリスが勝った時はアメリカの利権は総合的には減るが日本に強硬案をとり、イギリスが戦って敗れたならイギリスが脱落する分でかなりの利益が見込めるとアメリカ本国は考えたのだった。

 

それに、南北戦争の最中のために戦力を割けないので消極案にまとまったのだった。

南軍の海軍も破壊された艦隊を再建し、次々に新造艦をつくるのでアメリカ(北軍)の海軍力をそちらに傾けていたからである。

 

そんなこんなで、現状ではアメリカは日本よりの中立……悪く言えば日より見主義になっていったのである。

 

アメリカからの要請を断った洋介はテレポでアメリカの南軍の土地にいた。

 

南軍の兵士がアジア人だから怪しいと思ったが、すぐに清人だと思い洋介の事を忘れた。

 

洋介はその辺で小判でカーテンを買いそれを羽織ると南軍の病院を聞いて回り、南軍側の病院で一瞬で病人を治して回った。

 

南軍の政府は洋介を聖人が舞い降りて南軍の病人を治して回る。

コレが南軍が世界の意思を受けた証拠だと宣伝していた。

 

洋介はサンフランシスコに行くとアメリカ皇帝ノートン1世に謁見。

洋介は変装したままノートン1世に「今、病人を治し回っているのは私です。」と宣言した上で南軍と北軍討伐の命を受けた。

 

洋介は直ぐに何処が激戦地か聞いて両軍を衝撃波と青魔法のミサイルと火炎放射で撃退すると皇帝ノートン1世の命によりやったと宣言して回り続けた。

 

ノートン1世軍と言う第三局が出来てアメリカは大混乱をきたした。

 

やることをやった洋介は即日、日本に帰還した。

 

洋介が行動している合間に、敵のイギリスはと言うとパリ条約の破棄を餌にロシアを動かす事に成功した。

ロシア艦隊、新造艦15隻と旧式の艦16隻を極東派遣させると確約させたのである。

 

またポルトガルにも派遣要請をして艦隊を日本に動かさせた。

 

同じ要請をしたオランダとスペインには断られた。

 

更に動員と新型作業機を増やしスエズ運河の工期短縮と大量の財源を用意して早期開通に動き出したのである。

 

様々な角度からイギリスは多角的に動き出したのである。

 

幕府はと言うと長州のやったことに関してどうするか決めあぐねていた。

一応、攘夷派が多少優勢になったが幕府は十隻の軍艦を破壊されてもイギリスが余裕を持った対応をしているためにもう一撃を加えてから開国すると言う論が噴出してきた。

 

しかし、現状では朝廷に従いつつ、横浜は閉鎖せずにどちらも選択できるようにしてまだまだ会議を続けているだけだった。

 

まだ、洋介とイギリスは互いに準備をしている。




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11

文久三年6月末

緒方洪庵が死去し、仁が涙を流していた頃。

 

洋介はと言うと洋介が関わったあの生麦一年余りが過ぎた。

 

ついにイギリスは重たい腰を動かし薩摩討伐に出たのである。

 

洋介は薩摩に浪人として入っていた。

薩摩は突如としてイギリス艦隊が現れた事に驚き市内中の浪人を集め用意をしたのである。

 

イギリス艦7隻、フランス艦5隻、ロシアの旧式艦10隻を錦江湾に突入させてきたのである。

イギリスの要求は犯人の引き渡しと賠償金200万ポンド及び坊津、枕崎、大隅半島の99年間の租借とイギリス、フランス、ロシア人の薩摩における永久居住権と領事裁判権確立だった。

 

これには島津久光も怒りを禁じえなく、更にイギリスは矢継ぎ早に2週間の猶予として鹿児島の町の沖合いに2週間の停泊を宣言したのだった。

それは事実上の2週間の海上封鎖を通告されたのと同じことであった。

 

洋介は戦争が起こるまでイギリスの艦内に超能力を使ったラップ音や様々な奇っ怪な現象をおこし、イギリス艦隊の士気を下げた。

 

元々、大義もなにもなくお付きあいで参戦しているフランス艦隊と一応、約束の一部を果たしたロシア艦隊の士気は低い。

 

もしも、戦闘になったら頃合いを見て海域から離脱すると言う考えしかなかった。

 

フランスもロシアも大してイギリスが好きではない上にイギリスが最近起こした下関事件では、双方利益を上げておりイギリスの辛勝でイギリスの艦隊が減れば相対的に自分の国がアジアへの影響力を高め、イギリスの権威が失われると予想していた。

 

洋介は薩摩とイギリスの戦争が始まる前に、スエズ運河予定地に居た。

 

つば広のシルクハットとヴェネツィアンマスクにタイムスリップ時に着ていたスーツを身につけてサン・ジェルマンと名乗りフランス側に博物学、哲学、経済学者兼資本家として参加したのだった。

 

運河建設担当者レセップスに錬金で作った金を200kgと交易商から黒鉛大量に買ってきてグラビガによりダイヤモンドを100kgつくりそれを渡し建設担当をさせてもらいたいと交渉したのだ。

 

「サン・ジェルマンさん、わかりました。補助の人員を着けます。」

レセップスはフランス人としてイギリスよりも速く長く運河を掘削しなければならなかった為にこの風変わりな投資家の要請を拒否出来なかったのである。

 

もはや、運河は当初の目的を忘れイギリスとフランスの列強としての意地の張り合いになっていったのであった。

 

そんな事とは露知らず洋介は呑気に「案外と怪しまれないものだな。」と呟いていた。

 

建設現場に着くと洋介は労働者にスリプガをかけて、掘削すべき場所にフレア、ファイガ、レイ・ボムを使用し楽々と掘削していった。

 

洋介はフランスが担当する紅海側の運河の入り口予定地から運河の横幅を700m、深さ70mに変えていった。

出た土砂の大半はイギリスのテムズ川に捨てられて水運を麻痺させる結果となった。

 

残りの土砂は全て金と銀と銅に変えられフランスとエジプトは財政が少し良くなったがヨーロッパの貴金属価格を下落ささふる結果をもたらした。

 

イギリス側(地中海側掘削地)でも洋介はスリプガを使い、川底に錬金で10万tの金を貯蔵させた。

情報修正の力を使いながら調節した量である。

 

翌日からイギリスはスエズ運河掘削により金の算出により金が暴落し、更に銀もフランスやエジプトの売却で下落した事で通貨は価値が下がり物価高が加速したのである。

 

ダイヤモンドも下落し、テムズ川も土砂が片付くまで封鎖され株価は混乱し大暴落イギリスの資本家や投資家の多くが失業したのだった。

 

問題はイギリスだけではすまなかった。

イギリスの金がヨーロッパに流出するとヨーロッパは軒並み物価高になってしまい未曾有の不景気に陥り、余った金の出口として北軍の戦時国債が買われたのである。

 

アメリカでは再び北軍が勢いを増していくがこれはまだまだ先の話である。

 

文久三年7月1日

「疲れた。」

そう呟くと薩摩にとった宿で寝てしまった。

 

洋介が寝ている間に決死隊による黒船突入が行われたが、占拠とはいかなくとも傷を負わせた。

 

だが、それが3か国艦隊の逆鱗に触れた。

 

すぐさま報復に停泊していた薩摩の船舶全てを破壊し砲台に砲撃を開始した。

 

砲台の火薬に引火して鹿児島の町で火災が起きていた。

 

ここで洋介は目覚めた。

洋介の反撃は今始まる。



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12

文久三年7月2日朝

 

燃え盛る薩摩の町並みにただ呆然と洋介は立ち尽くしていた。

町は巨大な火の手が上がっていた。

 

ウォータを連発して鎮火させると洋介は疑問を覚えた。

 

(すべてはアンサー・トーカーの教え通りやっていた筈だ……しかし、実際はこんな事になっている。)

逃げ惑う人の中で洋介は力を使うことにわずかばかりの意味の無さ、無情さを感じた。

 

責任感を感じて怪我人を積極的に治すとすぐさま着替えにいった。

着替えてからも洋介は怪我人を見つけては治していった。

 

 

洋介はアンサー・トーカーに従い黒い前回の長州での姿で港に行くと浪人や薩摩藩士達が口々に

 

「鬼神様がやって来た!」

「勝てるぞ!勝てるぞ!」

 

と喝采が起こったがそれに対して洋介は悩んでいた。

 

(俺がやったことでこんなことになる引き金になったのに俺が誉められるのはマッチポンプて奴じゃないのか?)

洋介は唸ると

 

(だからといって俺には何ができた?別の事は出来たか?俺はアンサー・トーカーを使っているのか?アンサー・トーカーに使われているのか?それとも……。)

 

ぐるぐると同じ考えをループさせているのだった。

 

元来、アンサー・トーカーとはそんなに性能が低いものではない。

しかし、田中洋介と言う人物はこの能力を使う事ができる高嶺清麿やデュフォーなどよりも知識や経験全てが乏しく、乏しさ故に他の能力で無理矢理補っているに過ぎないのだ。

 

彼がもし、高嶺清麿やデュフォー並みの頭脳等を持っていたらスキルを作るスキルでアンサー・トーカーを使いこなすスキルを作っていただろう。

 

だが、それがアンサー・トーカーから出ないや思い付かないのが残念ながら洋介の限界である。

 

彼は更に能力を得た時点で努力を能力を得る前より怠っていた。

彼が真面目に勉強すれば、アンサー・トーカーはこう答えただろう……スキルを作るスキルでアンサー・トーカーとインターネットを繋げるスキルを作れと。

 

残念ながらそれは出ない洋介は元々の性格上から最低の努力で最高の見返りを求める人間だからだ。

 

己の性格による補正で誰がチート能力が劣化すると思うだろうか?

思わないからこその傲慢さである。

 

洋介は鎮火させた町並みを背中にある決意を決めた。

 

洋上の艦隊達は笑っていた。

(チュウシュウでの一件は津波でパニックになった船員が見た何かだろう。)

 

横浜に突如として現れた船員に着いては本国の情報封鎖により彼らは知らなかったのだ。

 

洋介は目の前の艦隊の責任を負うつもりで動いた。

「マイティガード!順応、気迫、奇跡、闘志!」

自身を強化する

 

海上を高速で滑空する人型の“ナニか”元々の士気が低いフランスとロシアは狼狽した。

 

一気に上陸使用としていた船団との距離を詰め

「悪いな……。」

衝撃波で船を壊した。

 

まだ味方撃ちする可能性がある三国艦隊は悩んでいた。

(自国民だけなら撃つのだがな……。)

 

そんな指揮官キューパー提督の思いも知らず現場の砲兵達は洋介に向かって砲撃を始めた。

 

(なっ!味方もいるのに撃ち始めただと!)

洋介は驚愕するがそれも束の間、テレポで船団の人員を横浜に転送する。

 

「これが、お前らのやり方か!!」

気力が昂って上限まで上がっている洋介は怒りに奮えた。

 

フランスの側面に取り付き同士討ちを恐れて攻撃出来ない間に洋介は船体をライブラで人がいない場所を確認し指を鳴らし真っ二つにした。

 

イギリス艦隊の先頭に陣取っていたイギリスの旗艦が沈むとイギリス艦隊はフランスの船ごと洋介を攻撃してきた。

 

(まさか……ここまでやるのか?ならば……。)

 

洋介は瞬く間に次々とイギリス艦に触るとテレポで鹿児島の町の郊外に転送させた。

 

残ったフランス艦隊とロシア艦隊は離脱を始め一部の艦が白旗を揚げて時間稼ぎに出た。

 

後に文久三大大火の一つ鹿児島事件は事を終えた。

 

(俺は責任を果たせただろうか?)

空を見上げると雲が空を包み込んでいた。

 

洋介は陸に転送させたイギリス艦を降伏させて戦後処理に入った。

 

降伏させたイギリス艦を島津に寄付し海に送る代わりにイギリス捕虜をすぐに死刑にさせないことを確約させた。

 

だが、薩摩を納得させるのに3日も掛かってしまったのである。

 

島津海軍は8隻西洋船を得て発言力を高めたのだった。

 

戦後処理も終わり、洋介が小田原に帰ると北の空が赤く染まっていた。




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13

文久三年7月5日昼

 

空が赤くなり小田原の住人がざわついていた。

 

「すみません、何があったんですか?」

道の傍らで空を見ている群衆の中から一人を捕まえて洋介は尋ねてみた。

 

「あんたは洋介さんじゃないか。大変なんだ江戸城に向かって砲撃をされたんだってよ。」

男はそう言うと

 

「確かあんたをさっき江戸のから来た人が探してたよ。あんたの隣の宿に入っていたような?」

洋介は江戸から来た人を無視して、近くの林に行くとすぐさま江戸にテレポを使い移動した。

 

江戸は燃えていた赤く紅く火の手は長屋等を焼き払い、武家屋敷や雷門なども飲み込む……欲望渦巻く豪華絢爛彩飾華美な吉原ですら燃えさかる炎には勝てずに遊郭を壊したりしながら消火をしていた。

 

後に文久三大大火に数えられる江戸城大火である。

 

洋介は直ぐ様に街を走りウォータで消火と透視で人がいない事を確認してから衝撃波で家を壊して、怪我人にはケアルガ、レイズ、ホワイトウインド、エスナで治した。

 

元々大火に慣れており熟練の火消しが多い江戸において洋介の手助けもあり火は消された。

 

川岸にいた鼻が欠けた夜鷹達も洋介の治療を受けていた。

彼女達の鼻が欠けた顔も直ぐに治り梅毒も一瞬で消え去った。

 

全ての持病が回復させれる洋介が居るために小田原市街では梅毒などのキャリアが減っていたりもする。

 

市街をかけずり回り治療を施すと遂に変装をして江戸城に向かって足を進めた。

 

江戸城は炎上していた。

正確には外側の櫓部分がだが。

 

炎上をしてない部分も損傷激しく外壁と石垣にかなりの被害が出ていた。

 

御典医の三隈などが戦死したのだ。

 

長門に現れた救世主として江戸城に迎えられた洋介は状況を聞いていた。

 

何故こうなったのか理由は簡単だった。

 

イギリス艦隊の6隻が江戸付近まで突入してきて生麦事件の幕府責任と関門海峡イギリス船封鎖解除を求めてきたのである。

 

しかし、幕府はこれに難色を示した。

だが同時にイギリスを恐れた。

 

艦隊を一つ潰されたのにこれほどの艦隊を直ぐ様投入できて、オランダ商人曰くにまだまだやろうと思えば50隻の艦隊を投入しても余力があるらしいと知ったからである。

 

幕府内の西洋が気に入らない高官もそれは知っていたので幕府の高官が集まった評定では何処を落としどころにするか悩んでいた。

 

そんなおりに薩摩がイギリス、フランス、ロシアの連合艦隊を破ったとの話が入った。

たったの2日ほどで入った速報に江戸は色めきたったのである。

 

町民達は踊りながら「唐芋(薩摩)、鯖(長州)を食べてみたら胡瓜(幕府)より旨すぎる。」と歌いながら考えのまとまらない幕府を揶揄したのである。

 

横浜の外国人居住地を包囲していた幕府の軍の一部が、これに激怒し町民を取り締まりその余波で横浜に派遣されていたイギリス陸軍とフランス陸軍と衝突してしまった。

 

これが皮切りとなりお台場から少し離れていたところで待機していたイギリス艦隊に砲撃をしてしまったのである。

 

「それでこうなったのですか?」

洋介はイギリス艦隊を睨んでいた。

同時に自分の勝手でこれほどの被害を出すとは思ってもいなかった。

 

(自分はなんてことをしたのだろう。アンサー・トーカーに身を任せるのは楽だったが……。)

能力は悪くはなく使う人間の資質によると洋介は気づいていたがこの被害の前に逃げた。

 

自分の持っている力の責任を恐れ、イギリスを恨むことにしたのだ。

 

「……ここにいるのか?長州や薩摩の英雄は。」

この時代にしては身長が高い男がいた。

 

「私がそうですが貴方は?」

一応、ごまかすために高めの声で答えた。

 

「私の名前は勝海舟と申します。」

丁寧な口調でそう話された。

 

「貴方が勝海舟ですか……。」

まじまじと後の英雄と呼ばれる男を見ていた。

 

「では、本題に入らせて頂きますね。まず薩摩からどうやって来たかは問いません。しかし、江戸城の沖合いに居る海外の船団を何とかして頂きたい。もちろんただとは言いません。成功した暁には貴方は陸奥守に推挙される予定です。」

勝は陣内から見えるイギリス艦隊を指差した。

 

洋介が最初に長州に現れたために毛利の縁者と考えられていて陸奥守を幕府は持ち出したのである。

 

「いえ、官位は要りません。それよりも江戸の……日の本の民について考えて頂きたいです。」

それだけを言うと洋介は海に向かって走り出したのである。

 

(ここまでの被害を出してしまったんだ。少なくとも戊辰戦争は回避させないと。)

 

海岸線にレビテトとヘイスガ、衝撃波、手に握った砂を錬金術で鉄粉に変えて燃やし推進力として空を高速で飛んでいた。

 

洋介は近づいたが一瞬で後退した。

 

何故ならこのイギリス艦隊は薩摩に現れた囮艦隊とは違い完全に洋介対策をしていた。

 

甲板に所狭しとガトリング砲と散弾を装備した小型砲、主砲も散弾を装備していて手旗信号で射撃統制をしていて、点の射撃ではなく面制圧を行ったのである。

 

(なんだと!当たった。)

洋介はケアルガを掛け怪我が治った足を見ながら考えた。

 

はっきり言って空を飛ぶ洋介対策は良かった。

 

(どうする?鹿児島と違って避難は済んでは居ない。)

頼みの綱のメテオ、ファイガ、サンダガなどは人口密集地の江戸を背に使うと津波で被害が出るかも知れないので使えなかった。

 

(しかし……。)

だが、洋介は一隻づつストップをかけて海中に潜った。

 

(散弾では届かんだろうな。)

イギリス艦隊は足を止められたが沢山ある砲は未だ健在だったが、散弾では海中には届かずにガトリング砲では角度が足らず海中には攻撃出来ないと思われた。

 

今回の司令官は前回の下関騒動時の司令官だったのだ。

 

海中に潜ることも予想しており大量の機雷を散布していたのである。

 

イギリス側としては台場や今で言う港区や荒川付近を機雷で封鎖してしまえば大量消費をする江戸は陥落すると明との戦争で知っていたのだ。

 

(爆発だと!)

洋介は海上に上がり必殺技のちけいを使った。

 

とたんに渦潮が起き機雷とイギリス艦隊を飲み込み始めた。

 

(行けるよな……行ける。)

渦潮により傾いた船体に触れ鹿児島の付近の草原に次々にテレポをさせていった。

 

しかし、5隻を転移させたところでイギリス艦隊の動きが変わった。

 

6隻目に近付くと洋介が触れようとした瞬間に自ら火薬庫に火を放った。

自爆に巻き込まれる形で洋介は吹き飛んだ。

 

(まさか自爆するとは……。)

ミサイルを遠距離から多用して艦を沈めていった。

 

イギリス艦隊は沈黙した。

洋介が海上に居た船員を回収すると江戸争乱は幕を閉じた。

 

この争乱の間に幕府は江戸に居た政治犯や凶悪犯を処刑して、反幕府派は幕臣や同心、岡っ引きなどを暗殺していった。

 

世は正に世紀末であった。




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14

遅くなりましてすみませんでした。


文久三年7月5日夕暮れ

 

洋介は変装をといて江戸の救済に走り回っていた。

 

文久三年7月6日朝

 

幕府が開いた病院(焼け跡に柱を建てて布を張っただけの簡素なもの)には近隣各地から集められた医者が居た。

 

洋介はここで2度目となるある男と出会う。

 

(しかし、酷いものだな。)

焼けただれた傷口を見ながら洋介はそう考えていた。

 

洋介はケアルガを唱えると次々に怪我を治していく。

だが、火傷の後は元通りにはならなかった。

 

(火傷が酷すぎるんだな……鹿児島ではろくに怪我の治り具合をみてなかったから気付かなかったな。)

別に火傷が酷いからではなく今日は洋介が魔法を使いすぎて魔法の力が少し下がっただけと言ったような理由だった。

 

ふと正面の診察所を見ると髭を生やした男と坊主の様な男、小柄の男、若い女が診察をしていた。

 

テレビで見たことがあるような手術用のコートみたいなのを着ていた。

 

(あの髭を生やした男と若い女には見覚えがあるような?)

等と考えながら治療を続けていた。

 

昼時となり交代で医者が休み常時診療を続けていた。

 

(なんだかな、あの医者はやっぱり昔医療ドラマや医療特別番組に出てきた医者みたいな動きや器具を使っている。)

洋介は怪しがりながら見ていた。

 

見られた方も怪しがりながら見ていたのであるが、それがわかる人間はここにはいなかった。

 

数刻後の夕飯の時間に髭面の男が洋介に寄ってきた。

「お久し振りです。私は仁友堂の南方仁と言います。」

お辞儀をされたのでお辞儀を返しながら洋介も名乗った。

 

「こちらこそ挨拶に行けずにすみません。小田原病院の田中洋介と言います。」

と話したところで南方の目付きが変わった。

 

「病院?それはどういう意味なのですか?」

薄い期待を目から感じとり洋介は言葉を選びながら答えた。

 

「病院とは病気を治す医療所と言う意味ですよ。」

この答えに南方はより目を輝かせた。

 

戊辰戦争後に病院という言葉が一般化するのである。

つまり、洋介は未来人といっているようなものである。

 

「ではそれはいつ思い付いたのですか?今ここには私と貴方しか居ませんからお答えして頂けますか。」

南方の言葉に怪しさを感じながらも答えた。

 

「それは……貴方はところでこの世界の人間ですか?」

言葉に詰まる南方を尻目に洋介は言葉を続ける

 

「貴方は未来から来たのでは無いのでしょうか?」

洋介はインターネットで今さっき調べた事実から南方の正体を見抜いた。

 

彼が勤めていた先を知っているので洋介は彼、南方仁が未来から来たことをわかっていた。

 

「……私は記憶を……。」

仁の言葉を遮るように洋介は一言発した。

 

「記憶をなんて話は良いので、ここには貴方と私しかいませんと南方仁先生が仰ったではないですか。それに、お互いこうなったのですから腹を割って話しましょうよ。私は話す用意ができています。」

洋介は仁に話すように仕向けたのだった。

 

仁は意を決した様子で語り始めた。

 

自分がこの時代の人間ではないこと、自分が未来で医者をしてたこと、ペニシリンの開発をしていること、坂本龍馬と知り合いだということ、今は自分が知る歴史から大きく逸脱していると言うこと。

 

 

洋介は黙って聞いていた。

しかし、仁が気になることを話した。

 

「あなたは私が未来にいた時に急患で運ばれてきた患者に良く似ていて更に名前まで一緒だ。あなたは未来から私と共にタイムスリップしてきたのではありませんか?」

 

(俺は……現代でこの人に会っている?)

「因みに南方仁先生それはいつの話ですか?」

洋介は仁に強く聞いた。

 

「……南方で結構ですよ。あれはあの患者が運び込まれる二時間前だから2000年6月×日 18時ごろだったかと。貴方は品川で倒れていたらしくスーツ姿でしたよ。」

南方の言葉に洋介は動揺した。

 

(俺が記憶があるのは1999年7月×日 13時位だ……。つまり約一年位空白の時間がある……俺は何をしていたんだ。)

急に洋介は頭が痛くなりうめいた。

 

「大丈夫ですか!」

仁が立ち上がったが洋介は手を出して仁を止めた。

 

「大丈夫です……記憶が無いので思い出そうとしたら頭痛がしただけですから。」

洋介の言葉に仁は診断させてくれと言い洋介は外部的要因で記憶喪失になったのではないだろうかと言われた。

 

洋介は新たな事実に困惑していくのだった。




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15

文久三年7月6日夜

 

洋介は仁に心配されながらもよたよたと治療に戻った。

 

(ペニシリンてなんだ?)

ふとした間にペニシリンをインターネットで調べた洋介はその効能に驚愕し仁を支援することに決めた。

 

治療所で雇っているお手伝いの康に聞くことにした。

「康、今治療所の蓄えはいくらぐらいある?」

 

「洋介さん、1万3000両位ありますよ。米の寄付も多いですし奉行所(コロリや事あるごとに呼びつけた時に貰った報酬)や薩摩から(生麦事件の後に貰った)の褒賞金や商家からの献金もありますからね。」

さらりと答えた康の金額に洋介は驚いていた。

 

(一万両は今の1億円ぐらいか……しかも、これから生まれる明治政府の軍資金と同じ位とは。)

「治療所を開いておくために幾らぐらいいるんだ?」

洋介は聞いた。

 

「だいたい100両あれば年は越せますね。」

康は不思議に思ったが答えた。

 

決心した洋介は康に命令をした。

「そうか……1万両を小田原から持ってこい。」

 

「はっ?一万両を?吉原の遊女買い占めでもする気ですか?」

ひきつった顔をしながら康は洋介を見ていた。

 

「素晴らしい新薬をあそこにいる南方先生が作っているから投資したいんだ。」

洋介の言葉に康は渋い顔をした。

 

「先生ならあんな病人の体をいじくり回したり薬をあんなに使わないじゃないですか……一流の先生がなんであんな木っ端医者に投資するんですか!」

康は声を荒げた。

 

(いや、俺の方が医者としては南方先生の足下どころか谷底にも及ばないんだが……。)

「あの人は素晴らしい医者なんだ。いいな。わかったら一万両持ってこい。」

洋介はひやひやしながら康に言った。

 

「先生がそこまで言うならわかりました。」

康としては洋介に家族を救って貰った過去を持つため洋介が一番と思っていた。

だからこそ、仁に恨みは無いが敵意を現したのだった。

 

洋介は康の家族を救ったことを覚えてはいないが。

 

翌日の早朝になり治療を終わらせた洋介の元に康は来た。

 

「持ってきましたよ。」

ムスッとしながら金を持ってきたと言う康に苦笑しながらも馬に繋いだ大八車(万病医術所の旗を着けた)を牽きながら小田原の町人に頼んで護衛付けて貰って持ってきた一万両を確認してから南方のところに向かった。

 

「こんな大金持ってきて襲われなかったのか?」

洋介はムスッとした康の機嫌を治すために聞いてみた。

 

「万病医術所の車を襲ったらどうなるか関東人なら知っていますから襲いませんよ。大商家から幕府、町人、異人まで深く信頼されていて幕府に今呼ばれているのに襲ったら死罪決定じゃ無いですか。それに護衛が30人ばかり付いてるんですよ賊だって逃げますよ。」

康の機嫌がちょっと良くなった所で仁のところに着いた。

 

文久三年7月7日朝方

 

「もしもし、南方先生はいらっしゃいますか!」

洋介は声高く部屋の中にいるであろう仁を呼んだ。

 

誰かが歩く音が聞こえ戸が開いた。

「はい、誰でしょう……か。」

武装した30人ばかりの男たちに驚いた仁に洋介は

 

「私ですよ南方先生。」

頭に被った傘を上げてニッコリと笑って見せた。

 

「どうしたんですか?こんな物騒な。」

ちょっと渋い顔をする仁に洋介はニコニコとしながら

 

「こちらに来てください。」

仁の片手を捕まえて大八車の前まで連れてきた。

 

「これは?」

少々困惑した表情の仁は大八車に載せられた箱を指差した。

 

「開いてみてください。」

洋介はささっどうぞといいながら仁に開くように催促した。

 

不思議そうな表情をしながらも仁は箱を開いた。

「こっ、これは!」

あまりに驚いて声がでなさそうな仁をよそに洋介は

 

「全部で一万両あります。医術の進化のために使ってください。」

と告げ護衛の人たちに箱を運ばせようとした。

 

「貴方はなぜこんなにしてくださるんですか?」

仁の問いに

 

洋介はただただ

「同郷のよしみでは駄目ですか?二人ともこんな遠いところに来てしまいましたし。」

と格好をつけて仁の有難うと言う言葉と共に洋介は帰っていくのだった。




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16

文久三年7月13日朝

 

仁の所から帰り、幕府が江戸で開いた大火の被害者診療所が病人が減り解散となった後に洋介は小田原の自分の診療所ど考え事をしていた。

 

(南方先生は守らねばならないな。記憶がない約一年間の記憶の鍵を握っているのは南方先生だけだしな。なぜ千葉市に居た俺が約一年後に品川で倒れていたのか?)

 

インターネットで関東の地図を見ていた。

 

(品川から千葉市は約44km……電車なら一時間位。車ならもっとかかるだろうが。)

洋介はふぅと息を吐き、鉄瓶に入っている水で出した緑茶を飲んだ。

 

(品川にはなにがある?品川、品川と。)

品川をインターネット検索をした。

 

(神社や寺が結構あるんだな。あの企業の本社が品川だったとは……それに品川カテドラル?)

神社や寺、カテドラルと言う響きに頭が少し痛くなってきた洋介は寝ることにした。

 

(千葉市から品川へ、品川から千代田の東都大学附属病院へ……そして東都大学附属病院から小田原へ、小田原から江戸へ思えば遠くに来たもんだ。)

 

洋介はフフッと一人笑うと

(さらには100年以上前にまで来た。)

 

空を見上げた。

(あの日から外へ、一定の距離から出るのが辛かった俺が今やアメリカなどにも行く。誰が想像するだろうか、更に超能力を持っているなんて。)

 

洋介はまだ空を見上げていた。

(案外と外に出てみると簡単じゃないか。なぜ俺は躊躇していた?あれが怖かったからか?)

 

(だが今はただ……。)

 

「先生、起きてください。」

康が起こしに来たのでのそっと起き上がった。

 

「なにか大きな事件はあったか?」

洋介はなにげなしに康に聞いたのだが驚きの話をされた。

 

「エゲレスの艦隊が江戸を攻撃している最中に、別のエゲレス大艦隊が長州を砲撃してエゲレスが長州と小倉を征伐したらしいですよ。」

さらっと凄いことを言った康に洋介は驚いた。

 

「そんな凄いことが起こっていたのか!康それで……。」

 

時は巻き戻る文久三年7月8日深夜

 

長州の砲台を素早くイギリス艦隊(20隻位)が砲撃しつくした後に長州と小倉に上陸したらしく凄い速度で撃ってくる銃等で攻撃され長州藩士は壊滅した。

と言うことらしかった。

 

そして、文久三年7月13日夕暮れ

 

(俺のせいか?)

洋介は朝飯中も治療中も考え事を続けていた。

 

そして診療と夕飯が終わり外を見ていた。

(何故、俺はこんな力を貰って過去に戻って来たんだろうか?)

洋介は仁との話を思い出してある可能性を見いだした。

 

(時間が関係あるのかも知れないな……1999年はまさか2000年問題か?パソコンを使っていたからな……だが何か大きな問題を忘れている気がする。)

とおもむろに1999年を調べてみた。

 

(結構な事件が起こってるな……外注がユーロとかわからないものになったなぁ。)

しみじみと見ながらある項目を見つけた。

 

1999年7月……ノストラダムスの大予言の一つ、1999年7の月、悪魔の大王が空からくるだろう アンゴルモアの大王を甦らせるために。その前後、軍神は善意により支配するだろう

 

(なぜ、これを思い出さなかったんだ!そうだノストラダムスだ!)

ノストラダムスの予言を見て洋介は立ち上がったが瞬間に強い頭痛に襲われて倒れこんだ。

 

「うっうううぅぅぅ。」

のたうち回り自分にケアルガをかけてもまだ痛みは続く、ディスペルをかけてようやく痛みは和らいでいった。

 

(ノストラダムスの予言と記憶にない一年間、南方先生が俺が何故タイムスリップしたかを分からせてくれる存在か。)

 

洋介は戸棚にしまってあったウィスキー(横浜で土産に貰った)をあおると布団に潜り込み寝た。

 




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17

洋介は社会、国際情勢を調べあげた。

 

イギリスとフランスは国内の不満処理に追われていてロシアは日本に負けたことで反乱が起こりポーランド、ウクライナ、ベラルーシ、フィンランド、中央アジアで大規模な反乱が起きていた。

 

イギリスは今回の失敗はフランスのせいにして大々的に長州を襲撃した人々を讃えた。

 

フランスは今回の失敗はイギリスのせいにして大々的にイギリスの失敗を報じた。

 

フランスとイギリスは互いに落とし所を探し、現場の軍人と政治家のせいとした。

 

ロシアはもはや反乱が止められずウラル以東以外は反乱が続いていた。

 

アメリカでは、三つ巴の争いになっていた。

洋介がもたらした北軍の被害は甚大で武器を持ち去られていたために約65万挺の銃が紛失し、また新たに約65万挺の新調をヨーロッパからの戦争国債で賄っていた。

しかし、武器が出来るまでの間は南軍の猛攻を受けミーズリー州、ウィスコンシン州、イリノイ州、アイオワ州、オハイオ州まで制圧された。

 

南軍の猛攻を受け、南軍の戦時国債をヨーロッパが買い取り始めていた。

南軍により北軍の補給路を遮断をされ東西孤立させられた北軍はカナダに補給路を求めカナダの一部を入れた輸送網の再構築をしていた。

 

第三勢力のアメリカ帝国は皇帝ノートン一世の名を持って洋介が南軍、北軍を瞬く間に制圧した事実により、名声が上がっていた。

何より、南軍にも北軍にも全く被害をもたらさなかった点が人々から尊ばれたのである。

 

ノートン一世の質素な生活、そして人種差別や全ての差別を廃止する動きと北軍、南軍を死者なしに制圧する正に聖書に出てくる天使の様な存在……。

元々、血統コンプレックスのあったアメリカ国民はノートン一世に強いカリスマを受けたのである。

 

ノートン一世にサンフランシスコ市民は味方し自らをアメリカ帝国民と名乗り始めた。

南軍が北軍の補給路遮断に忙しかったのとそれによる北軍の影響低下がノートン一世の台頭を可能にしたのであった。

 

ノートン一世の人気によりサンフランシスコ市長ヘンリー・F・テシェマッハーは自警団の観念からノートン一世に帝都申し込みをして事実上の降伏をしたのだった。

 

サンフランシスコではノートン一世が市役所に入るのに帝都パレードが行われ長く続く南北戦争の閉塞感に包まれたサンフランシスコ市民はノートン一世を歓迎しここに正式にアメリカ帝国が発足した。

 

サンフランシスコの独立を聞いた北軍だが南軍の対応が忙しくアメリカ帝国を無視していた。

しかし、ノートン一世のアメリカ帝国は差別されているアフリカ系の黒人や中国系等の黄色人種、アイルランド系等の半白人、インド人等の中東人を数多く才能で大臣などに選出され、軍においても有色人種や半白人とされた人たちを幹部に設けたことで有色人種などはアメリカ帝国に集まっていった。

 

アメリカ帝国には洋介が北軍から持ってきた銃65万挺と銃弾、南軍からも取ってきた銃弾が豊富にありすぐに武装化出来た。

 

サンフランシスコのみが帝国領土だったのは一週間位の話で豊富な軍備とノートン一世の経済政策により、帝国は今やカルフォルニア州とネバダ州とオレゴン州の一部に及び南軍と北軍とも戦闘はしていなかった。

 

北軍と南軍とアメリカ帝国により冷戦状態に発展したのだった。

 

アメリカ帝国にもヨーロッパ資金が回り全部の勢力にヨーロッパ資本が幅をきかせる結果となった。

 

アメリカ、ヨーロッパ共に新たな局面に向かう中、清が日本やヨーロッパ、諸外国を追い出すために拳法家や革命家がたちあがりアジアに激震が走るのだった。




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18

遅れましたすみません


文久三年7月14日早朝

 

洋介はウィスキーのせいで痛む二日酔いの頭を抱えながら着替えていた。

 

痛む頭を押さえながら井戸から水を汲み康に鏡とカミソリを用意させた。

 

この時代のカミソリは、正に日本刀の様と称されるような鋭く鈍く輝く刃を持っていたが臆せずに洋介は髭を剃っていた。

 

実際、多少切れてもケアルで無理やり治してしまうので、鋭い刃にも恐怖はしなかった。

 

それでも、他人の血はまるで映画を見てるように感じるが自分の血は妙にこの世界が本当だ現実だと分からさせられている様でより体を切り裂かれた気がして嫌いだった。

 

髭を剃り終わると伸びた髪の毛を結び直し、井戸水を沸かしてからその水で手洗いうがいをした。

 

一応、大きな水瓶を改造した浄水器もあるが面倒くさくて使っていなかった。

が、患者が何か聞いてくるので浄水器の説明をすると同じものを作ってくれと言われて売れ筋の商品の一つになっていた。

 

アメリカ土産に買ってきたネジやレンガなどさまざまな工具や材料を元に今日は何かを作ろうと洋介は決めた。

 

耐熱レンガをwebで調べるとロケットストーブと呼ばれるものが出てきた。

すぐさまレンガとモルタルを使い組み上げて遊んでいると康が来て何かと聞いてきた。

 

小枝を持ってこいと洋介その間にヘイストをロケットストーブにかけて安定化させるとロケットストーブを使い釜戸がわりに鍋で味噌汁を作った。

 

「康どうだ。すぐに煮立っただろ?これはすごく熱くなるんだよ。」

洋介の作ったロケットストーブを康は見ると

 

「これはすぐに作れるんですか?」

と目をキラキラさせながら洋介に聞いてきた。

 

「あぁ、組み上げるだけだからすぐに作れるぞ。」

(こういう時には子供らしくなるんだからな)

と思いながら洋介は笑いながら答えた。

 

「じゃあ材料を集めれば直ぐにでも売れますね。お隣の若旦那に相談してきます。」

康はそういうと隣に言ってしまった。

 

ポカンとした顔をして康の後ろ姿を見ている洋介が残された。

 

康が居なくなると直ぐに中国へ洋介は変装し飛んだ。

 

文久三年7月14日朝

 

中国~今この時は清と呼ばれている地域である。

清は今ヨーロッパ憎しで燃え上がっていた。

 

日本がイギリスの艦隊をあれだけの数を討伐しているのだから、清が勝てないわけがないとたかを括っていたのである。

 

清では槍や型落ち銃、連弩、大刀や柳葉刀を持ち歩いている人々が行き交い上海租界地を取り囲んでいた。

 

イギリスやフランスの兵隊が租界の周りを警護しにらみ合いを続けていた。

 

清側の一部が国から出てけと言いながら石を投げた。

一部が投げ始めると清側全員が石を投げ始め、怯えたフランスの兵士一人が発砲してしまった。

 

洋介は遠くから聞こえた銃声に振り返っている合間に何処かで一人が撃ち始めると次々に発砲し清側も数にまかせた暴徒化しフランス兵士とイギリス兵士は敗れさりアメリカ兵はアメリカ側のみとイギリスとフランス以外は自国の領域防衛に勤めた。

 

イギリスとフランス側が再編成している間にイギリスやフランスの租界は略奪され女子供は犯され、抵抗する者は殺された。

 

清の暴徒の一部では死体を食べる動きが見られたらしい。

 

洋介は押さえられる地域は押さえたが上海租界全体で起きた事件であり、アメリカで一回で止めた兵士の数を越えていたからである。

 

上海での参加した暴徒の数は後に分かるのだが50万人を遥かに越えていたらしい。

 

暴徒になったが怪我をした清人や租界の人々を治療していった。

 

後に上海事変と呼ばれる事件は幕を閉じた。

 

上海事変を契機にイギリスなどのヨーロッパ勢力は清に賠償を要求し、清はこれを拒否……世界はキナ臭い雰囲気に包まれた。




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19

今回も遅れてすみませんでした。


文久三年7月17日

 

清とヨーロッパの緊張感が増していた頃、幕府の幹部達は頭を抱えていた。

 

対清帝国としてイギリスからの同盟要請があったのだ。

イギリスからの要求は4つ、海上の相互護衛(つまり長州の封鎖は終了させる。)、イギリスの物資を作れる工場を日本に建設と長崎の拡張工事、黒い魔神(洋介)のイギリス軍側に派兵、仁と洋介を軍医として派遣すること。

 

そして、それが飲めたらば日本の関税自主権の回復と領事裁判権の縮小、日本に新造の船を5隻用意すると言われたのだった。

 

はっきりというと幕府は江戸炎上を受け求心力や影響力が下がり始めた。

イギリスとしては極東の敵を納めた功績と清への懲罰と利益拡大、日本との交易強化、仁や洋介の医術を盗むことが目的とし、あわよくば日本の内乱を煽り傀儡政権の樹立を狙っていた。

 

幕府としてもイギリスとの同盟はイギリスとの先の戦闘から譲歩を引き出したと求心力を復活する上に増えたと言う薩摩藩の海軍力を押さえつけれると考えていた。

 

しかし、影響力が増した薩摩、佐賀、破れたとは言え強い長州、不穏な土佐……これら全てを押さえ付けれるかと聞かれるとそれは難しいの一言だった。

 

幕府は取り敢えず仁と洋介の確保に動いたのだった。

 

 

 

「幕府からの使者ですか?」

康は驚いていた。

 

幕府からの手紙は届いても幕府から直接幕臣が来たことは無かったからである。

 

「そうだ。田中先生に会わせてもらおうか。」

幕臣は偉そうに康を押し退けるとズカズカと家に入り込んでいった。

 

幕臣が扉を開くと洋介は治療をしていた。

 

病人を一列に並ばせて彼が手を掲げると直ぐに病気が治癒するのだった。

 

(これが大国主命、少彦名命、足手荒神、神農、黄帝の化身と噂されている者の治療……。)

思わず唾を飲み込み喉を鳴らしてしまった。

 

「そちらの方は誰ですか?」

洋介が立ち上がると使者は驚いた。

 

(六尺……[今で言うとだいたい180cm]ぐらいあるのでは無いのか……この御仁は。)

実際には洋介の身長は170cm後半なので当たらずとも遠からずである。

 

「私はさるお方から命を受けた佐藤安右衛門と申します。江戸からのお達しを持ってきました。」

安右衛門は江戸からの命令書を取り出して読み上げた内容は下の通りである。

 

1、洋介はイギリスへ留学すること。

2、洋介はイギリスの陸軍で働くならば年7000両の報酬が約束する。

3、洋介はイギリスに医術など優れた知識を見せこの国の威信を高めること。

4、洋介はイギリス以外とも連絡を取り世界の情報をいち速く幕府側に届けること。

 

といったような条件だった。

 

「すぐには決めかねます。それに私よりも南方先生の方が教えるのは数倍上手いですよ。」

洋介は渋るが安右衛門は

 

「わかりました。しかし、これは幕命……お分かりですね。」

と洋介を脅すのだった。

 

が、ここまでで修羅場を生き抜いてきた洋介は別に怖くもなかった。

 

(幕府が腐敗しているなら薩摩か長州、京に逃げればいいだけだしな。)

と簡単に考えていた。

 

使者の安右衛門が帰った後に洋介はどうするかを考えるのだった。




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20

スマホがついに壊れて投稿が遅くなってしまいました。
申し訳ありませんでした。


文久三年7月18日

 

洋介は今後どうするかを考えていた。

 

幕府に着くか、朝廷に着くか……それとも日本を作るか。

自分が幕臣になるか、朝廷に従う臣下になるか、はたまた自分で国を作るか。

 

どれにせよなんとなく日本に帰属意識がある洋介は今の日ノ本が続くべきなのか?どうなのか……。

 

だが、人権意識が強い現代人の彼は西洋諸国の奴隷や幕府が決めた奴隷……しかし、何処かで犯罪者が奴隷されるのを許容している自分に戸惑っていた。

 

はっきり言って、洋介は歪だったのだ。

同時に柔軟でもあった。

 

戸惑うなかで洋介は考えから逃避するように変装をしてテレポでヨーロッパを回ることにした。

 

ヨーロッパの北イタリアに洋介はいた。

北イタリアは今、イギリスの連敗とフランスの敗北により北イタリアは祖国統一への思いを高ぶらせていた。

その高まりを受けてジョゼッペ・ガルバルディはイタリア統一の為に義勇軍を集めていた。

 

ガルバルディは今、サヴォイアとニッツァ、スイスの一部、マルタ、コルシカ島、シチリア、チュニス、ローマ、南ティロルや トリエステ、イストリアを奪還するために兵士を集めていた。

 

フランスの弱体化により、フランス討つべしの論調が広がっていた。

更に言うならばロシアが混乱しているのでオーストリアが増長していたのだった。

 

「皆よ!もはや、フランスは恐るべき相手ではない!メキシコに負けアジアに負けたのだ!何故、我々が勝てない理由がある?理由はない!我々が一丸となり進めば勝てないことは無いのである!敵はフランスではなくフランスを強大で勝てないとする心である!……」

演説は続いているが洋介は聞き流していた。

 

(あの後ろにいる男がガルバルディか……写真より若く見えるな。)

とインターネットでガルバルディの記事と写真を見ながら洋介はどうするかを頭を回転させていた。

 

(ここでフランスが負けたらイタリアは強くなるわけだから、フランスはアジアどころじゃなくなるよな。ということは……。)

頭を少し回した洋介はガルバルディの部隊に参加した文久三年10月のことだった。

 

ガルバルディを英雄視していたイギリスは資金(値下がりした金やダイヤ)を渡してフランスをガルバルディに叩かせている間にスエズ運河を接収しようとしていた。

 

アジアで失った艦隊と値下がりした貴金属相場の損益を正すためにスエズ運河の権益が必要だったからだ。

 

そんな思惑は露知らずガルバルディは兵士を集め、フランスと戦う準備を続けていた。

 

 

この演説の数日後、イタリア義勇軍はフランスと交戦した。

 

文久三年7月下旬

 

イタリア側に付いた洋介は錬金で地下トンネルをすぐに作り、錬金によりフランス軍の要塞等を砂にしていた。

 

フランス軍が気づいた頃にはガルバルディ率いる部隊が国境間近まで来ており、フランス軍は国境を破棄した。

 

いや、するはずだった。

洋介が一定の範囲を沼地に変えていたのだ。

 

フランス軍の多くは撤退出来ずに捕虜になるか武器等を放棄して退却するのだった。

 

ヨーロッパは激動を迎えていた。




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21

完全にPCが壊れました。修理待ちです。
遅れて申し訳有りませんでした。


文久三年7月下旬

 

イタリアとの緒戦にフランスが負けるとドイツ連邦の主要な国がフランスの国境近くのアルデンヌの森に駐留した。

 

当初から練られたてかの様にアルデンヌにドイツ連邦(主にプロイセン)はフランスに足場を作るかのように森に迷い混んだとし陣営を建設、フランスの再度の撤退要求に対して全ての連邦内の演習に参加した国が承認しないと撤退できないとこれを拒否。

 

フランス側はイタリアへの対応のために後手に回っていたあるとき。

 

駐留していたプロイセン軍の一部が謎の砲撃を受け貴族の一人と平民の十三人が死亡した。

 

この出来事は瞬く間にドイツ連邦内に流れ新聞の多くが演習中に遭難していた軍隊がフランス側から砲撃を受けると見出しを付けた。

 

連邦の内部はフランスに対し、賠償と犯人の身柄の受け渡しを求めたがフランスは関係ないと拒否した。

 

この対応にプロイセンはフランスに宣戦布告を布告した。

 

これを見たオーストリア帝国もフランスに対しプロイセンの救援を理由に宣戦布告した。

 

プロイセンはポーランド人に対して独立を支援すると言う名目でポーランド人部隊を前線に送り込み数多くのポーランド人が犠牲になった。

 

プロイセンにオーストリア帝国の二つがフランスに宣戦布告するとドイツ連邦のほぼ全ての国がフランスに派兵を始めたのである。

 

フランスはこの事態にあわてていた。

フランス東部の一部がイタリアとドイツ連邦諸国により占領されていたからである。

 

しかし、この事態に思わぬ国が救援に名乗り出た。

 

そう、大英帝国とポルトガル、スペイン、ロシア帝国、スウェーデン=ノルウェー王国、デンマークである。

 

ポルトガル、スペインはイベリア半島へのドイツ連邦の侵入を嫌がって動いたのである。

 

大英帝国はフランスに善戦は出来るがフランスが降伏するまで勝てないからイタリアを支援したのでありプロイセンやオーストリア帝国が参戦をしたらば話は別である。

 

予想よりも早くフランスが東部で負けノルマンディーまでドイツがやって来る可能性が出てきてしまい東洋に派遣する予定だった艦隊やインド艦隊までも本国に召集し対ドイツ連邦政策に乗り出した。

 

ロシア帝国はドイツ内に潜り込ませたポーランド人のスパイを通じてドイツのポーランド独立を聞きロシア帝国内で大きくなりつつある民族主義を押さえるためにオーストリアとプロイセンに宣戦布告をした。

 

デンマークとノルウェー=スウェーデンは、プロイセンの圧力から逃れるためとシュレースヴィヒ公国とホルシュタイン公国の問題、プロイセンによる卑劣なるフランス侵攻から世論は加熱し参戦しスカンディナヴィア同盟を結成したのだった。

スカンディナヴィア同盟によりノルウェー=スウェーデンはデンマークに軍を駐留させた。

 

フランスにおける戦争の状態はドイツとイタリア(ある程度ガルバルディが勝つとフランスに宣戦布告した)の猛攻激しく、各国の支援を受けるまでの間にフランスの東半分はもはや陥落していた。

 

だが、列強フランスはただ負け続けている訳ではなかった。

ナポレオン三世は負けているふりをして兵力の集中と防衛網と塹壕などの配備、西部やフランス領全域に愛国を盛り上げるようなビラと募兵と徴兵、スペインやポルトガル、イギリスからの義勇軍を集め、ヨーロッパ各国から傭兵を集めた。

 

更には、フランス植民地から植民地人部隊の編成とその部隊をドイツ攻略に当てた。

南米にアフリカから史上初となる8割が黒人とアジア人で構成された部隊を積極的に戦線に送り、一メートル進むのに10リットルの血を流すと言われる戦争となった。

 

アメリカ大陸の国々は好景気に沸いていた次々に武器を生産し、ヨーロッパに送り続けていた。

それはアメリカ連合国、アメリカ合衆国、アメリカ帝国三者とも同じだった。

 

ヨーロッパに衝撃が走る事態が起こる。

ロシアのドイツへの宣戦布告を鑑みて、オスマン帝国はロシア、タイがフランスへの戦争準備を始めていた。

 

誰も戦争の連鎖を止められる者は居なかった。




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22

文久三年11月某日

 

(おかしい……こんなはずでは……。おかしい……。)

洋介は呆然としていた。

 

自分が好き勝手した結果、どうするべきか悩んでいたのとちょっとした気まぐれで手を出したイタリアの紛争……これが巨大に膨れ上がっていたのだった。

 

(なぜ、ここまで大事になったんだ。)

大きな理由は洋介がイギリスとフランス、ロシアを日本で打ち破ったこととそれが原因で植民地に独立騒動が起こり影響力が低下したのが大部分である。

 

「早く、止めないといけない。」

イタリアやフランス、ドイツの戦闘地帯に行き怪我人の治療をより、精力的に始めていた。

 

洋介は赤十字の旗を作るとそれを掲げて仮面を着けて怪我人を治療していった。

敵味方も問わずに治していった。

 

しかし、治しても治しても治って直ぐに戦場に出て戦う……洋介が治したのは独立がかかったポーランド人と活躍すれば本国人扱いされると言われた植民地の人々が主だった。

 

(何故、こんなに戦うんだ?何故なんだ死にかけても戦いに出れるんだ?)

チート能力で守られて命のやり取りをしらない洋介はそれがわからない。

冷戦を知らない洋介はそれがわからない。

 

戦争を知った気になっている洋介にはそれがわからない。

 

チートによってイデオロギーも大義も貫く覚悟もなく最適とされる道を進んでいた洋介はわからない。

 

生まれや身分差別にさらされていなかった洋介はわからない。

 

わからない方が幸せな事ばかりかもしれない。

だが、現状において動乱の中の洋介は知っていた方が良い事ばかりだった。

 

「早く治してくれ!俺たちは戦わなければならないんだ!!」

アジア人のような男が叫んだ。

 

口々に治療待ちの列を並ばさせられた患者が叫ぶ。

 

「すみません。」

次々に命を操る能力とケアルガやホワイトウインドを使って治していった。

 

さらにスキルを作るスキルで連続魔を連続連続して一瞬で使えるスキルと洋介がいるだけで洋介が治したいと思う対象者達を洋介を中心とした円の半径5km以内の自動で治すスキル、魔法で使う魔力の消費を1/10にするスキル、自分の正体が絶対にわからなくなるスキル、テレパシーを強化するスキル、分身を作り出すスキル、分身を自由に増減出来るスキルを作り出した。

 

洋介が次々にテレポと分身を使いながら各地の怪我人を治すことにより戦線は硬直、どんなに戦闘が激化しても死人が出ることは少なかった。

 

オーストリアもロシアもオスマンも戦線が硬直して、完全にヨーロッパの戦争している国々は戦線が停止し焦っていた。

 

次々にヨーロッパの国々が戦力を投下する。

激戦と言われていたが死人がほぼなく次々に怪我人が治り、援軍が増していきかかる軍費は膨大に膨れ上がっていた。

 

フランスとドイツ連邦間以外は決め手がないままローマ法王や南米の国々を介してドイツやフランス、イタリアに対して講和した。

 

図らずしもフランスとの戦争でドイツ連邦の内部の経済が不調となりドイツ連邦内の小国をプロイセンとオーストリアが借金ごと吸収しなければならない状況になり、ドイツ連邦内の再編が進みプロイセンとオーストリアで大ドイツ主義の悲願であったドイツ統一を成し遂げた。

 

オランダはドイツに南側半分を分割され、デンマークも南側半分を併合された。

スウェーデン=ノルウェーは崩壊しスウェーデンとノルウェーに分離、スペイン、ポルトガルもイギリスに植民地を売る羽目になった。

 

イギリスもドイツ連邦とイタリアと講和し、スコットランドとアイルランドともある程度の自治を認め講和した。

だが、未だに独立派はイギリスの重要な地点に攻撃を続けているが。

 

洋介の行いにより、金や銀が余っていたフランスとイギリス以外は多くのヨーロッパ諸国は金銀の無さに嘆いていた。




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新たな問題

やっと、壊れた携帯の交換が済みました。これからもよろしくお願いいたします。
まだまだ続く予定です。


文久三年12月某日

 

洋介が帰ると日本全土に電撃が走る大事件……大政奉還が日本で起こっていた。

 

理由は簡単で江戸が大被害を被り、江戸城が炎上し、欧米の大艦隊を長州の助けを借りて成敗した等の事で権威は失墜した。

 

そして、薩摩と長州、佐賀、土佐が朝廷の意向を受けたのが大きい。

 

幕府も余力がある内に自らの権限をある程度残した政府作りあげるのが目的だった。

 

徳川の世は終わりを迎えようとしていた。

 

一方で、追放された七卿は直ぐさま肥前に連れてかれた。

 

早くに明治の世になり、西洋化が進んでいた。

徳川も薩長土肥も日本中も全てが西洋の国力を見聞きし、西洋化が必要と考えていた。

 

清、ヨーロッパから沢山の書物や技術を輸入し、とにかく国力をあげていた。

 

ヨーロッパは資金がなく、ヨーロッパ諸国は技術を快く売ってくれた。

アメリカに貸していた筈の金額を上回る額をアメリカ三国に貸しを作ってしまった。

 

世は変革の時代であった。

 

元治元年9月

 

朝廷への政治の移行に連れて徐々に旧幕臣が排除され緩やかに変更されるかと思ったが、旧徳川幕府と藩を真っ二つに割った会津藩などが反発し、決起を起こした。

 

これにより、王政復古の大号令が発令され日本を割る事になった。

 

東と西に別れたが意外な事に紀州徳川や尾張徳川は中立を貫いた。

 

佐久間象山など新政府の重鎮は西洋化(先のヨーロッパ大戦後、軍縮時に出た余剰武器を輸入したもの)した軍隊を率いて二条城を包囲殲滅し、辛くも逃げ出した徳川家茂(不穏な気配を感じ京に在住していた。)が鳥羽・伏見で旧幕府軍をまとめ、決戦の構えを互いに取っていた。

 

しかし、イギリスなどの精鋭艦をオランダ人や清国人、インド人などの手を借りて鹿児島艦隊が、無理やり、鳥羽や伏見でにらみ合いのその間に大阪城を強襲、突如の強襲と火薬庫への引火により、大阪城は炎上陥落。

 

その一方を聞いた徳川家茂の病状は悪化し、重大な病状で幕府軍は撤退を余儀なくされた。

 

身分が違うと言うが徳川家茂を直接見たものは居ない、軍議にも出てこない、そればかりか頻繁に御殿医が居なくなるなど徳川家茂が重い病気なのは、疑いようのない事実として知れわたった。

 

藤堂高猷などの裏切りにより叶わず、藤堂たちにより砲撃と執拗な突撃により旧幕府軍の七割が喪失され、追撃や落武者狩りには、錦の旗が掲げられ錦の旗を見た者は幕府の終わりを悟り、朝廷側についた。

 

近畿は紀伊徳川以外はほぼ全て朝廷側になり、中国地方や四国地方果ては九州まで幕府の情けなさが吹聴され次々に朝廷側についていった。

 

洋介の居る江戸でもそれは顕著であり、朝廷の名を借りた打ち壊しが各地で起こり、その裏で幕臣や徳川側の旗本が攻撃され死んでいき、江戸は混乱の最中にあった。

 

そして、幕府が降伏する出来事が起こる。

 

奥羽越列藩同盟が久保田藩等を攻め、勢い余って末端の兵士が町に火を付け、女子供を虐殺したとの噂が流れ、更に一部残っていた藩の中から幕府に逆らった藩主の妻子を幕府が処刑したと日本中に蔓延した。

 

実際はその様な事実は無かったのだが、幕府が暴徒鎮圧に銃を使い、前回の江戸大火のおりに罪人を処刑してまわったのが根拠となり、幕府の求心力が地に落ち、それを取り消すための文章を考えている中で、徳川家茂は急死。

 

幕府は扇の要を失い、失速し崩壊を始めた。

 

 

 

黒い影から人の声が聞こえる。

「おめでとう。完全に歴史を壊したね。」

 

「誰だ!」

洋介は影に向かい鋭い声をぶつけた。

 

「知らないのかい?君は知っている筈だよ。」

影は答える。

 

「知らないから聞いている!」

洋介は更に激しく声を荒げた。洋介がここまで感情を表に出すのは幼稚園の頃以来かも知れない。

 

「まあ、いいよ。そんな事はさ、君は良くやったね。完全に歴史を世界を改変した。そのお陰で私も力をある程度回復出来たんだよ。次の世界に連れてってあげよう。」

影が揺らめき、輝いた。

 

洋介は気を失った。




世界の修正力を上回り完全に世界が壊れるまでの点数

洋介が居る+1 アメリカ崩壊+4 ヨーロッパ崩壊+10 幕府崩壊+3 佐久間象山生存+1

三隈死亡+1 土佐勤王党生存+3 鹿児島近代海軍設立+5 肥前の本格的倒幕参加 +5

坂本龍馬生存のまま明治の世+20

40点以上で崩壊

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怪物王女・南Q阿伝編
新しい歩み


やっと新しい話ができました。


気がつくと洋介は見慣れたコンクリートと鉄の街、東京にいた。

 

「あれは……夢だったのか?」

ベットから起きると部屋のパソコンを動かし、歴史を調べていた。

 

明治維新の重要人物に南方仁と坂本龍馬がいた。

「夢では無いみたいだな。」

 

はっきり言って洋介がコレラを治した話は南方仁の手柄となり、長州や鹿児島での洋介も全て戦場でのお伽噺と片付けられていた。

 

唯一、小田原と囲碁などの分野では洋介の名前は知られていた。

理由は、本因坊秀策を救ったことである。

 

更に、囲碁のファンサイトでは掘り下げられていたり、小田原の歴史サイトでは小田原の偉人名士として記載されていた。

 

そこには、生涯どのような病気にも同じ少ない額しか受け取らず水などから病が発生するとして浄水装置を発明したり、幕末の医学の歴史では南方仁がペニシリンを開発するときに1万両を寄付した清廉潔白な人物とかかれていた。

「ハハッ。」

渇いた笑いを浮かべる洋介だった。

 

実際は飯は若旦那がただで食わせてくれる、コレラの時に救った患者が何だかんだ食べ物をくれる、商家が服をくれるので対して金が要らなかったのと膨大な患者を一日で治療できるのでそれぐらいはすぐに稼げるからである。

 

真実とは往々にしてねじ曲げられるもんなんだなと洋介は考えていた。

 

その後の小田原病院はというと洋介が居なくなったのは、江戸の争乱で死んだ為として封鎖されそうになったが洋介が日々書き留めていた江戸時代の治療法とインターネット上の様々な病気を幕末で治せるかとのスレッドの治療法が発見され紆余曲折あったが二代目病院長として康が就任していた。

 

ヨーロッパはと言うとあのあとに日英同盟を結び、アメリカはアメリカ連合国が二つの勢力に個々に降伏し、帝政アメリカとアメリカ合衆国で東西を分断したままであった。

 

そんな風な歴史であり、その後に仁の活躍があり戦争を避けていき日本は大きな戦争が無くして現代に至ったのであった。

 

洋介はそれを見たときまるで夢を見ていたかの様な気分にさせられた。

 

洋介がパソコンの前から立ち背伸びをすると何故だか頭が濡れ始めてきた。

「ふぁ~!」

 

あまりの冷たさに体を震わせると体がびしょ濡れになった。

ハッと目覚めて今までの事が夢であると気付かされた。

 

目覚めたのはビルもコンクリートも人気すらない荒野の中に洋介がいたからである。

 

「何なんだよ。全く。」

慣れた手つきで能力を使おうとすると……「全くだな小童。」「確かにな」と言う声が聞こえた。

 

洋介は風邪からくる幻聴かとエスナをかけても全く声は消えずだんだんと声は口喧嘩をし始めた。

 

「お前らは何なんだ!!」

洋介の怒りの叫びに

 

「ワシらこそ何かわからな。気づけばお前のような小童と共におるしな。」

化け物のような声が答えた。

 

洋介はアンサートーカーを使うことにしたのである。

 

洋介の能力が増えているとのことで確かめてみた。

・スキルを作るスキル

・錬金術

・無効化の能力

・精神コマンド

・ステータス表示

・情報表示

・言語共通

・歴史ゲーム特性、技能解放

・十傑集の力

・超能力

・アンサー・トーカー

・インターネット利用できる能力

・情報を修正する能力

・ジョブアビリティ(4)

・全特殊スキル+10

・魔法全般使用

・宝具全解放

・再現能力

・見稽古

・尾獣

・忍術全使用

・瞳術解禁

・血継限界解放

・浄火

・能力成長限界突破

・陰陽術

・星のバックアップ

・魔眼全使用

・超能力(科学)

・カード能力全解禁

・大嘘憑き

・黄金律

・豪運

・剛運

 

「増えてるな……。」

洋介は逆に冷静になっていた。

 

自分じゃない知らない喧嘩を聞かされると冷静になるものである。

 

アンサートーカーから声の主は尾獣達と聞かされるとスキルを作るスキルで任意の時以外尾獣の声をカットする能力を作り静寂を取り戻したのだった。

 

「はぁ~それにしてもここはどこなんだ?」

アンサートーカーは極力使わないことにした洋介は、とりあえずレビテトと衝撃波で宙に浮いて辺りをみまわした。

 

そして、見つけた町に向かい上半身を動かさずに足だけを動かし腕を組ながら向かうのだった。




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1

時間がかかりました。
ゴールデンウィークは辛いですね。


 

町が見えてきた。ごく普通の田舎の町である。

 

洋介は腕を組ながら車並みのスピードで走る足を町の近くで慣性の法則や重力等を無視したターンをし制止した。

 

「そういえば格好がな……。」

洋介は和服に羽織と言う完全なる不審者の格好である。

 

ここが京都や奈良ならば観光客向けの商売をしているんだなで済まされるかもしれないがどう見ても痛い奴かあぶない不審者である。

 

すぐさま、服を作るスキルを作ると洋服に着替えた。

 

町は洋介が住んでいた懐かしき現代日本の田舎の町並みである。

 

歩いていると大切なことに気付いた。

現代の金を小田原病院に置いてきたのである。

 

(円がないけど金を作ればいいか?でもいきなり金を持ってるやつを信じるか?交番に行くべきか?)

とぐだぐだ歩いていると大きい家が見えた。

 

(大きい家に部屋でも借りるかな。)

わりかし、江戸時代では部屋を貸してくれと言えば割りとなんとかなるとの話を聞いていた為に部屋を借りることにしたのである。

 

もはや、洋介は現代人の感覚よりも江戸時代人の感覚の方が強かった。

 

(では、部屋を借りるかな。どんな許可をとるべきなんだろうか?)

ふと怖いことを考えてしまった。

 

この世界では洋介は戸籍がないつまり、警察に捕まったら最後入国管理局に連れてかれてしまうと。

 

海外の言葉はわかると言えばわかるのだが日本から離れたくなかった。

 

(海外とか怖いな。何されるか分からないし。)

はっきり言えば洋介は軍隊には勝てない。何故ならば、洋介は瞬間移動は出来るが攻撃するにはその土地に行かねばならないから。不眠不休の攻撃を受ければ死にはしないが捕まってしまう。

 

それに、洋介の力を知られてしまえば各国が洋介を研究したがるだろう。

 

本人はどう考えているか置いておいて洋介が捕まってしまったら国に軟禁されるのは確実である。

脱走できはするだろうが毎日追跡されるだろう。

 

そんなことはさて置いて、とりあえず部屋を借りる為に引き戸の玄関を叩いた。

 

「すみません。」

ガシャガシャと懐かしいガラスが擦れ会う音に洋介は感動していた。

江戸時代には全く聞かなかったこの音に堪らなく震えていると中から人がでて来た。

 

「どうかしたのか?」

若い女の子が出てきた。

 

「すみません。道に迷ってしまいまして、一晩だけ部屋を貸していただけませんか?」

洋介は頼んでみたが

 

「え?部屋?」

女の子は困惑していた。

 

「ええ、部屋です。」

洋介は押し通そうとした。

 

「いきなり来て部屋を貸してくれと言われてもな。ちょっと聞いてくる。」

若い女の子は家の奥に入っていった。

 

数十分ぐらいたったであろうか。

やっと中から女の子が出てきた。

 

「入って来いよ。上がって着いて来い。」

女の子がそう言うので家の中に着いていった。

 

相手に背中を見せないように半身を開きながら引き戸を閉めた。

 

「お邪魔いたします。」

洋介はそこから流れるような動作でまた背中を見せないように靴を脱いだ。

 

そこからまたも背中を見せないようにしゃがみこみ玄関の靴を引き戸に先端をあわせて靴箱のそばの端に寄せた。

 

江戸時代で散々行った礼儀が染み付いていただけなのだが、前にいる女の子は感心している様だった。

 

「なかなか、綺麗な動作だな。」

女の子にそう言われたので洋介は悪い気はしなかった。

 

「そういう場所に居ただけさ。」

洋介は気取った様に言ったが、平凡な日本人の顔しかしていない上に特別格好いい訳でも背が高いわけでもない洋介の行動に

 

「そうだな。」

軽く女の子は笑った。

 

洋介は途端に恥ずかしくなって黙った。

 

小田原だったら天下の名医と言う肩書きがあったために、多少気取っても格好がついたのだが現状何も肩書がない洋介の行動は滑稽だったのだ。

 

重い雰囲気は消えて家の中に入っていくのだった。




ご感想よろしくお願いいたします。


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2

洋介は前を歩いているの女の子を観察していた。

 

予想は15歳位か……何分身長が高いので図りかねていた。

 

アンサー・トーカーに聞けば何らかの情報はわかるかも知れないがそれは憚られた。

 

かといって白魔法のライブラやアビリティの調べるを使ったら詳細すぎる情報が手に入るので変態みたいで嫌だったのだ。

 

そうこうしていると目の前で銀髪の長い髪が止まった。

 

ある部屋の前で止まったのを見て洋介はなぜ彼女をここまで気になったか恥ずかしくなった。

 

「どうしたんだ?いきなり?」

目の前の女の子は洋介の謎の恥ずかしがりに疑問を覚えていたが

 

「あーもしかして、今更部屋を貸してくれと言ったのが恥ずかしくなったのか?」

少し笑うと恥ずかしがる洋介を見ていた。

 

「まあ、仕方がないか。」

フッと一息ついた洋介が発した仕方ないかにより、謎を深めた女の子は首を傾げながら

 

「自分で泊まれるか聞いてくれよ。」

じゃあなと言いかけたところで

 

「銀子も入ってきなさい。」

低い男の声が部屋から聞こえた。

 

「はい。」

目の前の女の子は姿勢を改めて襖を開けて部屋に入っていった。

 

それに続くように洋介も部屋に入った。

 

そこは正に和室と言ったような畳の香りがする部屋だった。

 

ついさっきまで居た江戸時代のような内装である。

 

部屋の奥の上座に座っている大きな男がいた。

恐らく家長なのだろう。

 

洋介は慎重に畳の縁を踏まないように姿勢良く歩き促されるままに大きな男の正面に座った。

 

「部屋を貸してくれとのことだが……。」

大きな男は洋介に問いかけた。

 

「はい。道に迷ってしまいまして部屋を貸して頂きたく。」

和室では洋介が今までで、一番様になっていたと言える。

 

「道に迷ったと言う割りには強い力を感じる。強い力故に道に迷ったのか?」

大きな男は洋介にそう問いかけた。

 

「強い力は関係ありません。道に迷ったから道に迷ったのです。」

洋介は強くそう言った。

 

「父上、もしや本当に道に迷っただけなのでは?」

銀子が大きな男にそう言った。

 

「これほどの力があるものがか?」

大きな男は銀子に問い返したが

 

「さっきほどから言っている道に迷ったと言うのは、山道で迷っただけなのでは?里の結界にも気付かずに突破してきそうな力があるから……。」

銀子がそう言うので大きな男は考え込んで洋介に聞いた。

 

「単純に道に迷ったのか?」

洋介が頷くと辺りは微妙な雰囲気に包まれた。

 

いくら時間が過ぎたろうか?一分ぐらいにも感じるし一時間位にも感じる。

 

「名前は?」

沈黙を破ったのは大きな男だった。

 

「私は田中洋介と言います。」

洋介は答えた。

 

「田中洋介か……。」

普通の名前だなと大きな男と女の子に言われた。

 

二人によると洋介は妖気や神気を纏っているらしく、そんな人物が訪ねてきたからこの里は警戒していたらしい。

 

「私は旅行者みたいな者です。」

洋介は身の上を明かせないのでそう言ったのだが

 

「なるほど。マレビトか……だから妖気と神気が混ざっているのか。」

大きな男はそう言い頷いた。

 

「この人みたいなのがマレビト?」

女の子は洋介を見つめた。

 

(今更、マレビトが何か聞けないな。後で神気と妖気と共に検索しよう。)

そう心に決めた。

 

洋介はマレビトとして厚遇を受けることになった。

 

洋介は部屋を貸してもらい、マレビトを検索していたのだった。

 

(何か良くわからないが旅人を神格化したものか?)

洋介は事の重大さに気付いたが

 

(建築とか学問を教える神らしいから適当にインターネットから拾えばいいか。)

それに錬金術で道を舗装すれば良いと考えていた。

 

(部屋を貸して貰ったしな……。なんかしよう。)

洋介はそう考えている内に寝てしまった。

 

洋介は知らなかったが小田原で拾われたのもマレビト信仰が関わっていたりする。

 

マレビトはある意味洋介に深く関わっている言葉かもしれない。

 

(とりあえず、明日にするか。)

洋介は寝た。




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3

かなり遅くなってしまいました。


洋介は翌日から良く働いていた。

 

錬金術で土の道ばかりだった里の道の表面にアスファルトを敷き詰めていった。

 

里の人に何処に敷いていいか聞きながらだが。

 

また、田んぼの水路も錬金術と土遁を使っていた。

 

邪魔な石があれば錬金術で土にし、木があれば超能力で植え替えて、インターネットを調べながら肥料を錬成し、村で配った。

 

ユビキタスと影分身と分身のスキルで増殖した洋介は里の方々で働いていた。

 

(働きやすいな。神様だと思われてるから何しても大丈夫だし。)

などと考えていた。

 

それから時間は過ぎた。

(なんか、若い女の子もいるから、泊めて貰うのも悪いな。)

数日もすると流石に泊めて貰うのに居心地が悪くなった洋介が、家を建てたいと言うと大きな男は家を建てていい土地を教えてくれた。

 

洋介の建築はすごく簡単である。

超能力で精度を上げて、木遁で一瞬にして建築した。

 

そこに木遁で作った家の柱や壁を固定化の魔法を施して腐らないようにする。

後は木を切り表札を作ってもらい、周りに魔法と忍術で水路と木と塀で囲み、内部は池や庭園を作っていた。

 

(インターネットの画像の庭園をすぐに作れるなんて、忍術と錬金術は便利だな。)

洋介の家は凝った作りをしていた。

 

所要時間が1時間の即席和風豪邸なのだが、かなりの外観であり固定化により燃えもしないし、腐らない、地震にも強く、風化にも強いと言ったような作りになっていた。

 

更に、家の端に茶室があったり、陶芸のスキルで土を捏ねて魔術で焼き上げた雑器等があった。

 

洋介の家は洋介が力を隠す必要が無いために、大抵のモノは洋介の能力で作っていた。

懐かしの薪割りも影分身たちに任せて山の上に居た。

 

軽く近くの薮蚊などを始末するスキルを作ると寝ていた。

 

家はあるのだが、家でゴロゴロしているところを見られたとしたら、外面を気にする洋介は嫌だったのである。

 

洋介のスキルか魔法で透明化すれば良いだけなのだが、それだけの為にスキルや魔法を使うのは躊躇われた。

 

現在でも本人はなにもしてないため、江戸時代に居た時と比べてかなり体力が余っていたが、一度覚えた楽な影分身は止めれない。

 

人間便利に成れば堕落するものである。

それは、一番現代人の洋介に色濃く出ていた。

 

山で何を洋介がしてたかと言うと何もしていなかった。

 

当初はインターネットを探って仙人の修行や荒行やっていたのだが里の回りの山々は一時間余りで一周出来るし、滝行や火渡りの行等をやっていたが何も苦もなく終わらせていた。

 

修行するのも影分身を使い、方々で作業させるだけで身体能力が跳ね上がる。

 

はっきり言って洋介の能力は便利過ぎた。

 

本人が堕落しきる位に強かったのだ。

 

家すら一瞬で建てれる上に一対一に持ち込めれば負けることはない。

数万の軍勢に同時に長い防衛線を攻撃されたり、広域におよぶ核攻撃などを受けたら負けるがそれぐらいである。

 

(なんか、毎日ここにいたいな。)

蝶が舞うのを見てぼーっとしてると遠くから声がかけられた。

 

「ここにいたのか。」

部屋を貸してくれた大柄の家主がいた。

 

突然現れたため驚いて声も出なかったのが災いして、大家と見つめ合う羽目になった。

 

男二人が山の木陰で見つめ合うという何とも言えない雰囲気を出していた。

 

家主が

「風は……」

と話始めたところで金縛りが溶けたように目をそらせた。

 

しかし、家主は洋介の隣に座った。

 

(何故だ。なぜこの人は見つめあった後に俺のとなりに……。江戸の時に見たバイセクシャルか何かか?)

洋介が考えていると家主は言葉を続けた。

 

「一点には止まらないものだ。旅人は旅をするから旅人だ。またマレビトも一点には止まらないものだ。」

あれを見ろと家主は指を指した。

 

大きな雲だった。

「あの雲の様に君は止まらずに。しかし、とどまれば恵みの雨を相手が傲れば雷を与えるそうなんだろ?」

家主は不器用な笑いを見せたが洋介は

 

(なんで、部屋を貸してくれたとは言え、おじさんに横に座られてポエムを聞かせられてるんだろうか?)

悲しくなってきてつい「はい。」と返事をしてしまった。

 

「そうか、我々が鎖になっていたんだな。気にするな旅に出て来なさい。また部屋を貸すからな。」

家主は立ち上がると一言

 

「銀子や里の皆には黙っておく。」と告げて山を降りていった。

 

洋介は知らない内に旅立つ事に決定してしまった。

 




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