仮面ライダーゴースト〜命を燃やす少年少女〜 (Purazuma)
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第一部〜まだ、俺達は気付かない〜
プロローグ


なんか色々似てるなー………って思って考えた作品ですw
もしかしたら別に連載しているドライブ小説ともクロスする時もあるかも。


その日は朝から希望に満ちていた。

 

今日から俺は引っ越すのだ、見滝原市という街に。

 

新しいスクールライフが待っているのだ!

 

荷物も新しい家になるマンションに入れ終わり、後は明日の登校日を待つだけ!

 

「そうだ…………いいこと考えた!」

 

この街を色々見ておこう!

 

明日まで待ちきれない俺は早足で玄関に向かい、驚異のスピードで靴を履き、外に出た。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱり…………かなり都会だな……………」

 

来る前に街の写真を見たけど、広いし、建物も多い。

 

「これは、明日行く学校も楽しみだ。」

 

顔がニヤついているのが自分でもわかってしまう。

 

 

 

 

ふと腕時計を見ると、時刻は4時15分。

 

「もう学生は帰ってるとこかな…………あ。」

 

思わず声を上げる。

 

視線の先には明日から通う中学校、見滝原中学校の制服を着た少女が歩いていたからだ。

 

綺麗な人だな…………

 

黄色い紙をロール状にし、下げている。

 

 

 

 

「………新しい学校に行ったら…………彼女とかできるかな………?」

 

 

そう、俺は彼女いない歴=年齢。

 

一度は彼女というものを作ってみたい。

 

 

 

 

「ま、それより今は街を散策するか。暗くなったらやだし。」

 

 

俺は人混みの中を小走りで進んで行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっべえ…………随分暗くなっちゃった……………」

 

 

今は夜の7時。

 

こんな時間まで街を歩いていたのか……………楽しくて気づかなかった。

 

 

「帰るか。」

 

 

俺はマンションの方向へ向き、足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………………?」

 

 

おかしいな…………なんか道が……………遠ざかって………?

 

 

「!?!?」

 

 

突然空間がねじ曲がり、目の前がぐるぐると回るような感覚に襲われる。

 

 

「なんだ……………これ!?」

 

 

気づくと俺はさっきまでいた歩道ではなく、不思議な空間に立っていた。

 

周りは絵画のようなタッチで、ガラクタが散乱している。

 

この世の物とは思えない光景だ。

 

 

 

「一体なんなんだ……………?」

 

 

周りを見渡す。

 

俺の他には誰もいない。

 

 

どこだ………ここ?

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

怖くなって、俺は走り始めた。

 

謎の空間をどんどん進んでいく、奥へと向かっているとも知らずに。

 

 

 

 

「はあっ………!はあっ………!っ!?」

 

 

なんだ……………あれ…………!?

 

 

 

顔を上げると、そこには異形の怪物が立っていた。

 

怪物は体を動かし、俺をじっと見つめる…………

 

 

 

 

「ひっ………!?」

 

 

ドス。

 

 

 

 

 

 

嫌な音と体をを貫かれる感覚、そして腹部の激痛。

 

 

膝から崩れ落ち、地面に横たわった。

 

 

 

俺は、死ぬのか?

 

 

 

 

 

 

このまま……………終わりだなんて…………

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ………………

 

 

 

 

 

 

 

そう思った時、俺の目の前にある小さな動物が現れた。

 

猫でも犬でもない、白くて少し不気味な動物。

 

 

 

 

「な…………ん………………だ……………?」

 

 

 

 

「へえ………これは驚いた。君は僕が見えているのかい?」

 

 

「あ……………?」

 

 

 

白い動物は表情を変えることなく、眈々と言葉を述べていく。

 

 

「まさか男性である者が素質を持つなんてね…………君達人間は本当に予想外な事ばかりだ。」

 

 

素質?

 

 

「いや、そういえば前にもいたっけ。」

 

 

何を言ってるんだ?

 

 

 

 

「どうだい?君は今叶えたい願いはあるかい?」

 

 

白い動物は首を傾げてそう聞いてきた。

 

 

 

 

願い…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生き………………たい。」

 

 

 

 

 

生きたい。

 

 

このまま終わるなんて、嫌だ。

 

 

 

 

 

「わかった…………契約は成立。君に力をあげるよ。」

 

 

白い動物がそう言った途端、腹部の痛みが引いてゆき、頭の方もはっきりしてきた。

 

 

 

 

「………………お前は?」

 

白い動物を見て、問う。

 

 

「僕はキュゥべえ。さあ自己紹介はほどほどにして、さっそく魔女を倒してみようか。」

 

「魔女?」

 

「今君の目の前にいる奴さ。」

 

 

 

この怪物か……………

 

 

今自分に何が起こっているかさっぱりだけど…………やるしかないか!

 

 

 

「どうすればいい?」

 

 

「右手と腰を見てくれ。」

 

「え?……………………うお!?」

 

 

キュゥべえに言われたとおり右手と腰を見ると、右手には手のひらサイズの丸っこくて黒い、目玉のような見た目のした何か。

 

そして腰には中心に目玉の模様があるお化けのようなバックルが付いたベルトが巻かれていた。

 

 

 

「なんだよこれ!?」

 

 

「確か……………カバーを開いてそのアイコンを装填、そしてレバーを操作、だった気がするよ。よく覚えてないや、何せ前例が少なすぎる。」

 

 

……………?

 

 

「まあいいや、詳しいことは後で聞かせてもらうからなキュゥべえ!」

 

アイコンのボタンを押す。

 

 

そして言われたとおりベルトのカバーを開き、アイコンを装填した。

 

 

《アーイ!》

 

 

「あい!?」

 

 

ベルトから急に音声が出て驚く。

 

 

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

さらに驚いたのは次にベルトから出てきた謎のパーカー。

 

ふわふわと俺の周りを浮遊している。

 

 

「えっと…………こうか…………?」

 

 

レバーを引き、もう一度押し込むと……………

 

 

 

 

《カイガン!オレ!》

 

《レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!!!》

 

 

 

パーカーが俺に覆い被さり、俺は仮面ライダーゴーストへと変身した。

 

 

 

「ゴースト?」

 

 

「その姿の名前さ。」

 

 

キュゥべえが駆け足で後ろに下がった。

 

 

 

「おい!?逃げるのかよ!?」

 

 

「早く魔女を倒すんだ!」

 

 

んなこと言ったって…………!!

 

 

何か戦える物…………!!!

 

 

《ガンガンセイバー!!!》

 

 

俺が咄嗟に剣を想像すると、ベルトから変わった形の大きな剣が飛び出してきた。

 

 

「が、ガンガンセイバー?」

 

 

それを慌ててキャッチし、魔女の方へ向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「引っ越しした最初の日にわけわからん事に巻き込まれたけど……………」

 

 

俺は絶対に、次のスクールライフを楽しみ抜いてやるんだ!!!

 

 

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

 

自分の体長の5倍はありそうな魔女にガンガンセイバーを振りかざす。

 

 

魔女の体が切り裂かれ、苦しそうに暴れている。

 

 

 

 

「き、効いてる!?」

 

 

そう思ったのもつかの間。

 

 

今度は魔女が叫び声を上げると、大勢の手下のような小さな怪物が現れた。

 

 

 

「ちょ!?卑怯だぞ!?」

 

 

まずい、この数を一人で倒すのは…………!!

 

 

 

「くそっ…………!!」

 

 

ガンガンセイバーを変形させ、銃の形にする。

 

 

そして手下の大群に向かってめちゃくちゃに撃ちまくった。

 

 

「ううっ………!だめだ!足りない!」

 

 

どんどん押されているのがわかる。

 

 

 

ここまでか…………………!!

 

 

 

しかし次の瞬間………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 

「!?」

 

 

数え切れない程の弾丸が大勢の手下を貫き、蹴散らした。

 

 

 

 

「あなた、大丈夫?」

 

 

 

女の人の声だ。

 

 

上を向くと、そこには黄色い髪をロール状にして下げている女の子がいた。

 

 

 

 




次回から本格的に物語が動きます!!


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魔法少女と仮面ライダー

まずはマミさんから登場です。


「あなた………仮面で見えないけど、魔法少女よね?」

 

「へ?」

 

いや、俺は正真正銘の男なんですけど。

 

 

突然目の前に現れた少女は、大量のマスケット銃を乱射し、魔女の使い魔達を一気に蹴散らしたのだ。

 

明らかに戦い慣れている様子、女の子なのに。

 

 

「いえ………俺は男ですが……?」

 

「え!?キュゥべえ、どういうこと!?」

 

 

どうやらキュゥべえの事も知っているみたいだ。

 

「うわあ!?」

 

俺達がそんなやりとりをしていると、魔女は何か破壊光線のようなものを俺達に発射してきた。

 

「話は後にしましょう!君も手伝ってくれる!?」

 

「え!?は、はい!」

 

 

少女の言葉につい口が勝手に動く。

 

 

この人も、キュゥべえと契約を………?

 

 

 

 

少女はマスケット銃を1発ごとに使い捨て、その度に新しいマスケット銃に変えて攻撃をする、という戦闘スタイルだ。

 

 

対して俺は

 

 

「ふんっ!!おらぁっ!!!」

 

ガンガンセイバーで片っ端から切りまくる。たまに銃モードにして遠距離攻撃もするが。

 

 

「トドメ、行くわよ!」

 

 

トドメ?

 

 

少女はリボンでぶら下がり、空中にとどまった。

 

そしてリボンを前方に展開し、巨大な大砲の形へと変える。

 

 

「ティロ・フィナーレ!!!」

 

砲弾が魔女に襲いかかる。

 

この威力の物が当たれば恐らくあの魔女はひとたまりもないはず。

 

 

 

もしかしたら俺にも必殺技とかあるのかな?

 

 

 

「!!しまっ………!?」

 

 

少女が声を上げる。

 

魔女の方を見ると、魔女は砲弾をものすごいスピードで避け、少女に攻撃を仕掛けていたのだ。

 

 

「あ、あいつ!こんなに早く動けたのか!?」

 

 

まずい、このままじゃあの人が…………!!

 

 

「ええいままよ!!!」

 

俺はなんとなくベルトのレバーをもう一度引き、押し込む。

 

すると…………

 

 

 

 

《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》

 

「ん?」

 

 

次の瞬間、右足の方に凄まじいエネルギーが集まるのを感じた。

 

 

「よし!このまま…………!」

 

俺はヤケクソで空中へと飛び上がり、少女を攻撃しようとする魔女に飛び蹴りを放つ。

 

 

「くらえええええ!!!」

 

 

「きゃっ!?」

 

 

魔女に蹴りが直撃した数秒後、魔女は急に爆発を起こした。

 

 

俺達を囲んでいた謎の空間はたちまちボロボロと崩れていき、気づいた時には元いた歩道に立っていた。

 

 

「ふぅ………!」

 

自然に変身が解ける。

 

「ありがとう、助かったわ。それにしてもすごい力ね。」

 

 

疲れて膝をついている俺に少女が手を差し伸べてきた。

 

その手を軽く握り、立ち上がる。

 

「こちらこそ助かりました…………えーと………」

 

「巴マミ、魔法少女をやってるわ。」

 

「魔法少女…………俺は天空寺幽斗っていいます。」

 

 

仮面ライダーとは違う存在なのか?

 

 

「キュゥべえ、どうして男の子の天空寺さんがあなたと契約できたの?」

 

マミさんはキュゥべえに視線を向け、少しだけ眉をつりあげる。

 

 

「ごく稀だけど、男性の人間でも特別な素質、君で言う魔法少女の素質があることがあるらしいんだよ。」

 

「もう…………どうして言わなかったのよ。」

 

「聞かれなかったからさ。」

 

 

どうやらこの二人は結構長い付き合いらしい、歴戦のコンビ、みたいな、そんなオーラを感じる。

 

 

「じゃあ、女は魔法少女で、男は仮面ライダーになるって事か?」

 

「それは当人の性質しだいだね。男性が魔法少女になる可能性は0だけど、女性が仮面ライダーになる時もあるらしいよ。」

 

 

うーん…………さっきかららしいらしいって…………随分曖昧だな。

 

 

あ、でもそういえば前例が少なすぎる、とも言ってたし仕方ないか。

 

 

「マミさんは………いつから魔法少女に?」

 

「かなり前だから……………私が先輩ね!」

 

 

そう言うとマミさんは心の底から嬉しそうに笑った。

 

「ここで会ったのも何かの縁だわ、どう?うちに寄っていかないかしら?」

 

「え?」

 

 

おいおい…………彼女いない歴=年齢の俺が引っ越し初日に女の子の家に上がれるって!!

 

なんて日なんだ今日は。

 

 

「じゃあお言葉に甘えて。」

 

これは断る理由が無い。

 

必死で平静を装うも、恐らく向こうには俺がテンパっていることに気づいているだろう。

 

だって今マミさん少し笑ったもん………………

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

マミさんの家へ向かうのに、なぜか段々と俺の住んでいるマンションに近づいてきた。

 

まさか……………ね。

 

 

次にマミさんはなんとそのマンションに入った。

 

 

ああ…………予想当たっちゃった。やっぱり同じマンションなんだ。

 

 

階段を上がっていく。

 

ここも偶然にも俺の部屋がある階で止まった。

 

嘘だろ……………嘘だろ……………

 

 

 

 

「ここよ。」

 

マミさんが一つの扉の前に止まり、指を差す。

 

 

………………やっぱり………………

 

 

「マミさん。」

 

「何かしら?」

 

 

ここ…………………

 

 

「俺の部屋の隣です……………」

 

 

少しの間沈黙。

 

 

 

 

 

「そうなの!?すごい偶然じゃない!!!」

 

 

マミさんはまたもや小さな子供のように無邪気に喜ぶ。

 

 

「あら?ということは見滝原中に通ってるのよね?見たことないけど………」

 

「ああ、俺、今日からこの街に引っ越してきたんです。それで登校は明日からなんです。」

 

「ああ、なるほど…………あ、立ち話もなんだし早く上がって、紅茶を淹れるわ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

 

リビングに案内され、俺は適当にテーブルの前に座る。

 

部屋の作りは俺の住んでいる部屋と同じ作りだ。

 

マミさんの方はインテリアとかが置かれていていかにも女の子らしい部屋だけど。

 

 

「はい、どうぞ。」

 

「いただきます。」

 

マミさんは二つのティーカップをテーブルに置くと、俺の向かいに上品に正座した。

 

 

「でも驚いたわ、私以外で魔女と戦ってる子に会うのなんて滅多にないし、しかも男の子なんて初めてよ。」

 

「ははは…………いや、俺も正直実感無くて…………さっきの事も、まだ信じられません。」

 

「無理もないわ……………魔女は人を絶望させたり、悪さをするのよ。私達がそれを止めないとね。」

 

「俺も今日からえーと…………仮面ライダー?か……………」

 

 

オレゴーストアイコンを取り出して眺める。

 

それにしてもどうなってるんだろうこれ。あの変なベルトに入れただけですごい力が出せた。

 

 

「あら?あなたが持っているのはソウルジェムじゃないの?」

 

マミさんが俺の持っているアイコンを見て、不思議そうに言ってきた。

 

「マミさんのはアイコンじゃないんですか?」

 

俺がそう言うと、マミさんはポケットから黄色に光り輝く宝石を取り出して俺に見せた。

 

「わあ…………綺麗ですね。」

 

「ソウルジェムって言うの。」

 

マミさんはそう言うと再びポケットにソウルジェムを戻した。

 

俺も続くようにアイコンをしまう。

 

 

「そうだ、これからも魔女は俺達で協力して倒すことにしませんか?」

 

「え?」

 

俺の言葉にマミさんは唖然する。

 

 

「ほら、その方が安全ですし。」

 

「…………そうね。ありがとう天空寺君、嬉しいわ。」

 

マミさんは下を向いていて表情がよく読み取れなかったが、どうやら泣いているようだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「じゃあ、また明日。」

 

「ええ、初日から遅刻しないようにね。」

 

「はーい。」

 

 

俺はマミさんに挨拶を済ませ、自分の部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かに見られているのも気づかずに。

 

 

 

「…………幽斗。」

 

 

青い影が、ビルの上から天空寺幽斗を見下ろしていた。

 

 

「そんなところにいたの?」

 

「…………ほむらか。」

 

暁美ほむらが青い影の隣に立つ。

 

 

「まだ行動を起こすのは早いわ、今は待ちましょう。」

 

「…………わかってる。」

 

 

 




ゴーストも早くも3人目のライダーの存在がほのめかされて盛り上がってますよね。


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夢の中で会った…………よな?

設定に思考錯誤してます………


マミさんの部屋から帰ってくると、急に眠気に襲われた。

 

今日は疲れた………色んなことあったし………明日の準備して寝よ。

 

 

寝室に入り、ベッドの隣のテーブルに制服とアイコンを置く。

 

 

「…………仮面ライダー…………か。」

 

 

魔法少女。

 

 

魔女。

 

 

今日聞かされた言葉が脳裏に蘇ってきた。

 

 

「俺に出来るのかな…………あの化け物と戦うって…………」

 

 

まあ………もう後には引けないんだ。俺は俺を信じて、出来ることをやろう。

 

 

寝間着に着替えると、自然と倒れるようにベッドへダイブした。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

その夜、夢を見た。

 

不思議な夢だった。

 

 

周りには破壊され尽くした街の残骸。

 

その場にいたのは俺と………………

 

 

(誰だ……………?)

 

 

遠くの方に一人立っている女の子。

 

桃色の髪を二つに束ねている。

 

 

 

(あれ……………?)

 

不意に俺の体が動いた。

 

なんと勝手に、だ。

 

 

(体が勝手に…………!?)

 

 

体が勝手に動いた、それだけはまだいい。

 

 

(俺の体……………なんかでかくないか?)

 

 

そう、周りの景色がどう見てもおかしい。

 

人間の視界から見ればこんなに高い所から見下ろすような構図になるだろうか、否だ。

 

 

 

そんな事を考えていた時。

 

数発のロケットランチャーが俺を襲った。

 

全て背中に直撃。

 

 

(なっ………なんだ!?)

 

 

視線を後ろに向けると、そこにももう一人少女が立っている。

 

黒髪をなびかせ、こちらをジッと睨んでいる。

 

その瞳はどこかひどく悲しそうだ。

 

 

 

《カイガン!!!………ぁ……!………ゴ…………スト!!!》

 

 

 

(今の音声は…………?)

 

俺は音の聞こえた方に体を向ける。

 

そこにいたのは……………

 

 

 

(な…………!?仮面ライダー……………!?)

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はっ………!」

 

 

気が付くと俺の目がカイガン!してた。

 

 

「えぇ………もう朝…………」

 

 

は。

 

そうだ、今日は俺の記念すべき見滝原中学初登校日ではないか!

 

あ!そうだ今何時だ!?

 

 

時計を見ると、時刻は既に7時45分。

 

 

「うわわわわああああ!!!初日から遅刻とか洒落にならんよマジで!!!」

 

 

どうしよう、ねえどうしよう!?

 

 

「かくなる上は…………!!」

 

速攻で着替えを済ませる。

 

そして手を腰にかざし、ゴーストドライバーを出現させた。

 

オレゴーストアイコンを手に取り、スイッチを押し、装填させる。

 

 

《アーイ!》

 

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

 

今更だけどなんかめちゃくちゃうるさいなこのベルト。

 

もう少しスマートに変身したいよ。

 

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

オレゴーストが覆いかぶさり、仮面ライダーゴーストへと変身する。

 

 

「よし!」

 

急いで鞄を取り、玄関を飛び出した。

 

そして地を蹴ると、体がふわっと浮き上がる。

 

よし、このまま学校までひとっ飛びだ!

 

「あ、朝ごはん食べるの忘れた……………」

 

 

 

お腹は空いてるが、時間が無いので直行。

 

それは、すげー悲しーなーって……………

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

やっぱり飛ぶと早い、まだ7時50分だ。

 

5分で着くとは意外。

 

「さて、人目の無い場所…………あそこでいいか。」

 

 

校舎の目立たない所を見つけたので、そこへ向かう。

 

 

《オヤスミー》

 

「ふぅ………」

 

地面に足をつけ、変身を解いた後に一息つく。

 

空を飛ぶのはすごく楽しい、そして気持ちいい、これはクセになる。

 

「帰りも飛んじゃおっかなー。」

 

「だ・め・よ!」

 

 

 

 

ギョッとして後ろを振り向く。

 

そこには………すごくお怒りのご様子のマミさん。

 

 

「ま、マミさん…………!?」

 

「天空寺君………?どうしてこんな早朝に堂々と変身して、しかも空まで飛んでいるの?」

 

「いや、あの、これにはわけが………!ていうか見てたんですか!?」

 

 

なんてことだ!迂闊だった!

 

 

「………………ご、ごめんなさい。」

 

 

「わかればよろしい。」

 

 

そう言うとマミさんは表情を緩ませる。

 

「ほら、遅刻しちゃうわ。早く行きましょう。えーと………何年生なの?」

 

「あ、2年生です。」

 

そういや言ってなかった。

 

 

「私は3年だから、離れちゃうわね。」

 

「おお、リアルに先輩だったんですね!」

 

俺がそう言うとマミさんは少し照れ臭そうに笑った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて、無事に職員室に着き、今は挨拶をするために教室の前にいるのだが…………

 

「…………………(チラッ」

 

「何かしら?」

 

「え!?いや何でもない………です。」

 

 

俺の他にも転校生がいた、うん、それはいい、いいのよ。

 

 

でもさ…………

 

 

 

 

 

 

なんっで同じクラスになるのぉ…………!?

 

 

そんなにこのクラスは人数不足なのか!?

 

俺は隣にいる少女に視線を向ける。

 

 

うーん…………どっかで見た顔…………………あ!

 

 

そうだ。今日見た夢の中に出てきた、あのロケランぶっぱしてきた子にそっくりだ!

 

こんな偶然もあるもんだなあ………

 

 

「目玉焼きとは………………ですか!?それと………!…………すか………!?はい!なか…………君!」

 

「え、ええ!?……………っちで…………では…………!?」

 

 

教室からは何やらよくわからん話が聞こえてくるし……………

 

とりあえず中沢って人がいい奴そうってことはわかった。

 

 

 

「…………ねえ、天空寺幽斗君。」

 

「は、はいぃ!?」

 

 

隣の子にいきなり呼ばれて変な声が出た。

 

文字で表すとは↑い↓ぃ↑↑的な。

 

ていうかなんで俺の名前知って……………

 

 

「あなた、自分の事は大切にしてる?自分の命を、心を、大事にしてる?」

 

 

……………は?

 

なんやて?

 

自分の命大事にしてるって?昨日一回死にかけたんすけど。

 

 

「うん………まあ…………人並みには。」

 

 

「そう、なら、自分を犠牲にして他人を救う何てことは考えない事ね。」

 

 

「え?」

 

 

 

…………なんてこった。まさか登校初日に電波さんと会うなんて。

 

 

 

「じゃあ天空寺君、暁美さん、いらっしゃ〜い。」

 

 

お、やっと出番か。

 

 

俺が教室に入ろうとすると、電波さんも後ろをついてきた。

 

 

 

「うわぁ………長い髪。」「ねえねえ、ちょっとかっこよくない?」「綺麗な子ー!」「ねえちょっと…………」

 

 

俺達が教室に入ると、一気に生徒達がざわつく。

 

 

まあ転校生が来れば大体こうなるか。

 

 

なんとなくクラスを見渡していると、少し気になる人が。

 

 

あれ…………?

 

 

 

俺は一人の女の子に目を向ける。

 

桃色の髪を二つに束ねている、大人しそうな子だ。

 

 

あ、目が合った。

 

 

俺と目が合った瞬間、その子は少し顔を赤くして下を向いてしまった。

 

 

しまった、怖い顔になってたかな。

 

 

「さあ二人とも、自己紹介。」

 

担任の教師から自己紹介をするように言われる。

 

 

「て、天空寺幽斗です。この街に憧れて引っ越してきました。趣味は……………」

 

 

やばい、緊張して自分でも今何言ってるかわかんない。

 

 

適当に終わらせよう。

 

「よろしくお願いします。」

 

 

 

さあ次は電波さんの自己紹介、一体どんなぶっ飛んだ自己紹介をするのか……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暁美ほむらです。よろしくお願いします。」

 

 

 

少しの間沈黙する。

 

 

 

 

 

 

 

へ?終わり?

 

 

「?続けて?」

 

先生はまだ電波さんの名前をホワイトボードに書いている途中だ。

 

 

すると電波さんは先生からペンを取り上げ、自分でさっさと名前を書いてしまった。

 

そしてゆっくりとお辞儀をする。

 

 

 

うーん…………これは……………

 

 

 

なかなか思い出に残りそうなスクールライフになりそうな予感。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なあなあ、天空寺は前の学校で部活とかやってた?」「どこ中?」

 

 

案の定俺の周りには男子がわらわら集まってきた。

 

 

「ええと………ちょっと…………」

 

 

一斉に話しかけるのやめろやあああああああああ!!!!

 

 

「おいみんな、天空寺が困ってるだろ?」

 

「あ、そうだな……すまん天空寺。」

 

「え?い、いや大丈夫。」

 

 

一人の男子生徒が一声かけると、その場にいた男子はすぐに俺から離れて行った。

 

 

代わりにその男子が近づいて来る。

 

 

「始めまして、俺は深海雄也って言うんだ、よろしく。幽斗って呼んでもいいか?」

 

「ああ、こちらこそよろしく、俺も雄也って呼ばせてもらう。」

 

 

深海雄也、彼はクールな性格のようで、他の生徒達とはあまり話していないようだった。

 

 

…………なんで俺とは進んで会話したんだ?転校生だからか?

 

 

 

 

ふと教室の出入り口を見ると、桃色の髪をした子がでんp…………暁美に連れて行かれていた。

 

 

 

 

「そうだ、放課後校内を案内してやるよ。」

 

雄也は無表情でそう言う。

 

 

 

ああでも…………

 

 

「ありがとう、でも俺先約があるからさ。」

 

 

実は学校が終わったら、マミさんに学校内を案内してもらう予定だったのだ。

 

 

「そうか。」

 

「すまんな。」

 

 

雄也は相槌を打つと、すぐに自分の席に戻って行った。

 

 

 

 

……………変な奴。

 

 

 

 

 




ほむほむ登場!


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謎の仮面ライダー

結構オリジナル設定ありです。


「大体全部回ったかしら…………どう?天空寺君、この学校は。」

 

「うーん…………なんか…………変わった学校だなぁ…………って。」

 

放課後、俺はマミさんに校内を案内してもらったのだが………そりゃもうびっくりしたよ。

 

何しろほとんどの教室がガラス張りなのだ、初めて見た人はびっくりする。

 

 

「すぐに慣れるわ………あ、そうだわ。これから魔女探しに行くのだけれど……一緒に来る?」

 

「魔女探し?」

 

マミさんがソウルジェムを取り出し、手に乗せた。

 

 

………マミさんは毎日魔女を探して戦ってるのか?

 

よくやるなぁ………見習わないと。

 

 

「ん、あれ?マミさんのソウルジェムの色………なんか………」

 

前より濁ってる気がする。

 

 

「え?ああ、魔法を使うと徐々にこうなっちゃうのよ。キュゥべえから聞いてない?」

 

「ないです。」

 

 

キュゥべえの奴………どうしてそんな大事な事を言ってくれないんだ!

 

咄嗟に自分のアイコンを取り出す。

 

「ああ、やっぱり。」

 

オレゴーストアイコンの白かった部分が若干黒くなっている。

 

「これは取り除けるんですか?」

 

「ええ、運が良ければ魔女が落とすグリーフシードで浄化できるわ。」

 

 

グリーフシードか、覚えておいたほうがいいな。

 

 

…………待てよ、つまり戦い続けないとヤバイってわけか。

 

ああ…………よくできたシステムだよ、まったく。

 

 

「俺も行きます、魔女探し。」

 

「わかったわ、じゃあ早速出発しましょうか。」

 

 

俺は校門に向かうマミさんの後に続き、少し駆け足で足を進めた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『助けて…………まどか……………!』

 

 

「だ、誰なの…………?」

 

 

私とさやかちゃんの二人でCDショップに来てたんだけど………

 

『助けて………!』

 

 

誰かが私の事を呼んでる。とっても苦しそうな声で…………

 

CDショップを抜けてデパートの立ち入り禁止のテープが貼ってある階段まで来ちゃった…………

 

どうしよう………でも、行かなきゃダメな気がする…………

 

「待ってて………」

 

テープをくぐり抜け、上の階へと登る。

 

 

 

 

 

 

 

しばらく暗い道を進むと、声がさっきよりも大きく聞こえてきた。

 

 

ガタガタ!!

 

 

「きゃっ………!?」

 

上から何か降ってきた。

 

 

 

それは体中が傷付いたボロボロで猫位の大きさの白い生き物だった。

 

咄嗟にその子を抱きかかえる。

 

 

「あなたなの………?」

 

私を呼んだのは。

 

 

 

 

その子は息を荒くしていて、とても苦しそうだった。

 

 

 

 

ガタン!

 

 

また何かが上から落ちてきた。

 

今度は私と同じくらいの歳の女の子。

 

長くて綺麗な黒髪をなびかせて、その子は私と、私が抱きかかえている白い生き物を見た。

 

 

「ほ、ほむらちゃん………?」

 

 

間違いない。

 

目の前に現れたのは他でもない、今日転校して私のクラスにやって来た暁美ほむらちゃんだった。

 

 

 

「そいつから離れて。」

 

「だって………この子怪我してる………」

 

 

もしかして………この子の怪我……ほむらちゃんが…………?

 

 

「だ、ダメだよ!ひどいことしないで!」

 

「あなたには関係無いわ。」

 

「だって……!この子私を呼んでた!聞こえたんだもん!助けてって………!」

 

「そう。」

 

 

ほむらちゃんは表情を変えることなく私をじっと見ている。

 

 

 

 

 

 

 

と、その時。

 

「まどか!こっち!」

 

 

消化器の煙が勢いよくほむらちゃんに当たる。

 

視線を横に向けると、さやかちゃんが消化器を持ってほむらちゃんにそれを発射していた。

 

「まどか!こっち!」

 

「さやかちゃん!」

 

 

 

さやかちゃんは消化器をほむらちゃんの方に投げ捨てて、私の手を引っ張った。

 

 

私達はほむらちゃんから逃げるように走る。

 

 

「何よあいつ!今度はコスプレで通り魔かよ!……つーか何それ、ぬいぐるみじゃないよね!?生き物!?」

 

「わかんない………!わかんないけど………この子を助けなきゃ!」

 

 

 

 

ふと周りを見ると、さっきまで走っていた場所と風景が違う。

 

この世とは違う物みたいな…………不気味な空間だ。

 

 

「あれ!?非常口は!?どこよここ!?」

 

 

「変だよ…………ここ。どんどん道が変わっていく………!」

 

 

「ああもう!どうなってんのさ!」

 

「や、やだ!何かいる!」

 

 

既に私達を囲むように何かが待機していた。

 

白い大きな頭に、細い体。

 

 

その手には全員ハサミを持っている。

 

 

『!○¥%○◇◆!!』

 

 

何かを言いながら私達に近づいてくる。

 

 

「冗談だよね………私、悪い夢でも見てるんだよね!ねえ!まどか!?」

 

 

怖い…………怖いよ……………

 

 

私は何も言えずにたださやかちゃんの隣で震えていた。

 

 

誰か…………!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺とマミさんはデパートまで来ていた。

 

 

どうやらこの近くに反応があるらしいが………………

 

 

「使い魔、ですかね?」

 

「うーん………そうかもね。」

 

 

俺のアイコンとマミさんのソウルジェムの反応を見るに、恐らくこれは魔女ではなく使い魔のもの。

 

 

 

「使い魔もほっとくわけには行かないし…………先を急ぎましょうか。」

 

 

「そうですね。」

 

 

そして俺達がデパートの中を進んで行くと……………

 

 

 

 

 

「……………!この先だわ!」

 

 

マミさんが急に走り出す。

 

 

「あ!ちょっと待ってください!……………うわ!?」

 

 

追いつこうと走り出した俺とマミさんを先日の結界のようなものが包んだ。

 

 

………足止めか。

 

 

「マミさん!ここは俺が引き受けます!あなたは先に進んでください!」

 

 

「わかったわ!…………気をつけてね!!」

 

 

 

そう言ってマミさんはソウルジェムの魔力を引き出し、結界を抜ける。

 

 

 

「さて…………」

 

 

アイコンのスイッチを押し、出現させたベルトに装填する。

 

 

《アーイ!》

 

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

 

「変身!」

 

 

レバーを押し込み、オレゴーストを身に纏う。

 

 

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!!!》

 

 

《ガンガンセイバー!!!》

 

 

「はああああっ!!」

 

 

ベルトからガンガンセイバーを取り出し、使い魔共を切り倒していく。

 

奴らは抵抗する暇も無く消滅していった。

 

 

弱い。

 

 

やっぱり使い魔は魔女と比べれば力は弱いな。

 

 

 

徐々にその数が減っていき、残りわずかとなった。

 

 

「よし!」

 

 

ガンガンセイバーをベルトにかざす。

 

 

《ダイカイガン!》

 

 

《ガンガンミナー!ガンガンミナー!ガンガンミナー!》

 

 

 

喰らえ……………!!!

 

 

 

《オメガブレイク!!!》

 

 

巨大な斬撃を飛ばし、使い魔を一気に薙ぎはらう。

 

 

その瞬間、覆っていた結界が崩れ、元のデパートに戻っていった。

 

 

 

「よし…………」

 

 

俺がマミさんを追いかけようと思い、変身を解除しようとした時……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《バッチリミロ!バッチリミロ!バッチリミロ!》

 

 

《カイガン!スペクター………!レディゴー!覚悟!ドキドキゴースト!》

 

 

 

「なっ……………んだぁ!?」

 

 

 

俺のとよく似たゴーストドライバーの音声と共に巨大なエネルギー弾が飛んできた。

 

 

何とかガンガンセイバーでその弾道を逸らす。

 

 

 

バッとエネルギー弾が飛んできた方へ顔を向けると、そこには……………

 

 

 

青い影…………いや、幽霊が立っていた。

 

 

 

俺と同じゴーストドライバーを装着していて、手には青色のマジックハンドのような武器を持っている。

 

 

 

「仮面…………ライダー……………!?」

 

 

まさか、俺とは別の仮面ライダー………!?

 

 

「!?」

 

 

奴はいきなり俺に接近し、武器で俺の胴体に突きを入れた。

 

 

反応が遅れ、直撃する。

 

 

 

「かっ…………!?」

 

 

急いで距離をとり、ガンガンセイバーを銃モードにし、牽制する。

 

 

「お前………何者だ!!!」

 

 

青い仮面ライダーは俺の言葉を無視し、武器のポンプを操作し、両手持ちの銃のような形状に変形させた。

 

 

そして俺の放った光弾を避け、冷静に反撃してくる。

 

 

 

「ぐうぅ!?」

 

 

奴は正確に俺の腹部に光弾を当てた。

 

 

こいつ……………強い…………!!!

 

 

 

「!?お前…………それは…………!?」

 

 

奴はベルトのアイコンを取り出し、''別のアイコンを装填した''。

 

 

《アーイ!》

 

 

《バッチリミロ!バッチリミロ!バッチリミロ!》

 

 

身につけていたゴーストが分散し、ベルトから紫色のパーカーゴーストが現れる。

 

 

 

「まさか…………こんな事ができるのか…………!?」

 

 

奴はレバーを押し込み、そのパーカーを纏った。

 

 

《カイガン!ノブナガ!我の生き様!桶狭間!》

 

 

そして武器をベルトにかざした。

 

 

 

《ガンガンミロー!ガンガンミロー!ガンガンミロー!》

 

 

 

「な!?」

 

 

奴の銃が分身し、全ての銃口が俺に向けられる。

 

 

 

 

「………………ここは通さない。」

 

 

奴は低い声でそう言うと、トリガーを押した。

 

《オメガスパーク!!!》

 

 

無数の銃弾が俺を襲う。

 

 

 

 

「まずい…………!?」

 

 

周りをみる。

 

 

俺の後ろに下の階へと続く階段があった。

 

 

「っ………!!」

 

 

そこに勢いよく飛び込み、踊り場に着地する。

 

 

高低差で何とか避ける事ができた。

 

 

 

 

こいつとこのままやり合うのはまずい。

 

 

今はマミさんの所に行くのを優先しよう。

 

 

 

急いで上に上がり、ガンガンセイバーの光弾を放ち奴の動きを止め、奥へと進んだ。

 

 

 

「追いかけてくんなよ……………!」

 

 

後ろを振り返るが、追ってくる様子がない。

 

 

なら、と。俺は全力疾走でマミさんの所へ向かった。

 

 

 

 

 




スペクター登場!


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誕生?新たな魔法少女達


サプライズラビットが完結したので連載再開!


 

 

《オヤスミー》

 

「……………突破されてしまったか。やっぱり幽斗の戦闘センスは中々だな。」

 

スペクターは変身を解除し、人の姿に戻った。

 

 

「ほむらの方は上手くやっているだろうか……?」

 

スペクターゴーストアイコンをポケットにしまい、少年はその場から立ち去った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

天空寺幽斗だ!今デパートの立ち入り禁止区域を全力疾走してる所!

 

理由はもちろんマミさんに追いつくため…………

 

 

「ってうおお!?」

 

「きゃ!?」

 

角を曲がろうとした所で誰かと衝突し、尻餅をついてしまった。

 

 

いって……!!一体誰だよ確認もせずに角を曲がる奴は!!!←

 

 

「あら?天空寺君?」

 

「転校生じゃんか。」

 

「あ、天空寺君………」

 

そこにいたのは三人の少女。

 

 

…………なんと、マミさんじゃないですか。ん?でも後ろの二人って…………確かクラスメイトの……

 

 

えーと、ショートカットの娘が美樹さやか。で、ツインテールの方が鹿目まどか。

 

 

 

「マミさん、これはどういう…………」

 

「そうね、色々説明しなきゃいけないし………とりあえずみんな、うちにこない?」

 

 

説明?

 

まさか………二人も魔法少女に?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

というわけでマミさん宅。

 

 

「素敵なお部屋……!」

 

「一人暮らしだから、遠慮しないで。ろくにおもてなしの準備もないんだけど。」

 

 

俺はマミさんの家に入るのは初めてではないが、それでも少し見入ってしまうくらいこの部屋は引き寄せるものがある。

 

 

 

俺達はテーブルを囲むように座った。

 

マミさんは全員にケーキと紅茶を出し、床に座った。

 

………今思ったんだけどマミさんってお金持ちなんだろうか?お客さんに毎回こんな高そうなケーキを出してるとか?なんて景気のいい話……あ、今の無しにしとこう。

 

 

最初に切り出したのはマミさんだ。

 

 

「キュゥべえに選ばれた以上、あなた達にとっても他人事じゃないものね。ある程度の説明は必要かと思って。」

 

「うんうん、なんでも聞いてくれたまえ。」

 

なぜか自信気にそう言う美樹さん。

 

「美樹さんそれ逆じゃ………」

 

「''さん''なんてつけなくていいって!さやかって呼んでよ。私も幽斗って呼ぶし!」

 

「そっか。じゃあ鹿目さんも''まどか''って呼んでいいかな?」

 

「もちろんだよ。」

 

 

さて、ここから本題かな。

 

 

少し間を置いてからマミさんが手の指輪型のソウルジェムに手をかざし、宝石の形に変化させる。

 

「うわあ綺麗……!!」

 

うん、綺麗な黄色だ。

 

「これがソウルジェム。キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ。」

 

「男の場合は俺みたいに…………よっと、このアイコンってのが出来る。ほんで仮面ライダーに変身ってわけ。」

 

俺はポケットからオレゴーストアイコンを取り出し、二人に見せた。

 

「女の子は魔法少女になって、男の子は仮面ライダーになるってこと?」

 

まどかが以前の俺と同じ疑問を聞いてきた。

 

「どうやら、そういうわけでもないらしいんだ。男はもちろん魔法少女にはなれない、けど女が仮面ライダーになることもあるらしい。」

 

「前例はとっても少ないから実際に仮面ライダーになった女の子は見たことないかな。多分なれると思うけどね。」

 

キュゥべえが横から補足を入れてきた。

 

 

マミさんが続ける。

 

「そう、このソウルジェムとアイコンは、魔力の源でもあり、魔法少女や仮面ライダーである証でもあるの。」

 

 

「契約っていうのは?」

 

さやかが首を傾げる。

 

その疑問にはキュゥべえが答えた。

 

「僕は君たちの願いごとを、何でも一つ叶えてあげる!」

 

「え!?本当!?」

 

「願いごとって……?」

 

「何だって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ。」

 

「金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか〜!」

 

「いや……最後のはちょっと………」

 

「でも、それと引き換えに出来るのがソウルジェムとアイコン。これらを手にした者は、魔女と戦う使命を課されるんだ。」

 

キュゥべえのその言葉にまどかとさやかの表情が一瞬だけ凍りついた。

 

 

 

「………魔女?」

 

「魔女ってなんなの?魔法少女とは違うの?」

 

「願いから生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから生まれた存在なんだ。魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を撒き散らす。しかもその姿は普通の人間には見えないからタチが悪い。」

 

確かに。俺が最初襲われた時も………………何というか、言い表せない絶望感を感じた。

 

「不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ。そういう災いの種を世界にもたらしているんだ。」

 

「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。」

 

え。そうだったの?

 

今の俺も初耳なんですが……………

 

「形の無い悪意となって、内側から蝕んでいくの。」

 

「そんなヤバい奴らがいるのに、どうして誰も気づかないの………?」

 

「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んでいて、決して人前には姿を現さないからね。さっき君達が迷い込んだ迷路のような場所がそうだよ。」

 

ああ……この二人はそれでマミさんに助けられたのか。

 

「結構危ないところだったのよ。あれに飲み込まれた人間は、普通は生きて帰れないから。」

 

「マミさんと幽斗君は………そんな怖いものと戦ってるんですか?」

 

「ああ、命懸けだ。だからこそお前達には慎重に選んでほしい。」

 

「ええ、キュゥべえに選ばれたあなた達には、どんな願いも叶えられるチャンスがある。でもそれは死と隣り合わせなの。」

 

俺とマミさんがそう言うと、さやかが天井を見上げて唸った。

 

 

「うーん………悩むなあ……」

 

 

まあ………普通はそうなるよな。自分の命をかけるくらいの覚悟と願いがあればすぐにでも契約するんだろうが……

 

俺にはその余裕さえ無かったしな。こいつらにはちゃんと考えてほしい。

 

 

「そこで提案なんだけど、二人ともしばらく私達の魔女退治に付き合ってみない?」

 

「うんそれがいい…………ってウェ!?」

 

すごい速さで首をマミさんの方へ向け唖然とする。

 

「そ、それはさすがに危険なんじゃ………!?」

 

「大丈夫よ。私と天空寺君で守ればいいじゃない。」

 

「え、えぇ………」

 

「あら、もしかして自信がないのかしら?」

 

ぬ……………ぐ……………!!

 

 

「やりましょう…………!!」

 

「はい決まり。じゃあ二人もいいかしら?あなた達の目で魔女との戦いがどういうものか実際に見てみたほうがいいしね。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あの転校生……魔法少女……なんだよね、マミさんと同じ。」

 

不意にさやかがそう口にした。

 

転校生……?俺のことじゃないよな?

 

そう考えているとマミさんが説明してくれた。

 

「実は私と鹿目さんと美樹さん、デパートで暁美さんと会ったのよ。同じクラスだったわよね?」

 

「あけみ?」

 

あけみ………暁美ほむら、か、あの電波さん。

 

って

 

「あ、あいつも魔法少女だったんですか!?」

 

「ええ、かなり強い力を持っているみたいね。」

 

転校生の強キャラか………ありがちだけど………

 

あいつも魔法少女……

 

 

「それなら、魔女をやっつける正義の味方なんでしょ?それがなんで、まどかを襲ったりしたの?」

 

まどかを襲う?

 

俺があの仮面ライダーに足止めされてる間に何があったんだ……………

 

 

「彼女が狙ってたのは僕だよ。新しい魔法少女が生まれるのを阻止しようとしてたんだ。」

 

横になっていたキュゥべえが急に起き上がりそう言う。

 

 

「どうして?同じ敵と戦っているのに。仲間は多いほうがいいんじゃないの?」

 

もっともな意見だけど…………それは違うんださやか。

 

「そうとも限らないんだ。」

 

「え?」

 

「ええ………むしろ競争になる確率の方が高いわね。魔女を倒せば、それなりの見返りがあるの。」

 

「その手柄の取り合いになるってことだ。」

 

グリーフシード………ソウルジェムやアイコンの穢れを取り除くアイテム。

 

あれがないと…………俺達は…………俺達は………………あれ?

 

 

 

 

 

 

どうなるんだっけ………………………そういえばソウルジェムやアイコンが穢れきったらどうなるか聞いてないな。

 

 

 

「つまりあいつは……キュゥべえが最初からまどかに声をかけるって目星つけてて、だからあんなに絡んできたってこと?」

 

「多分そういうことでしょうね………」

 

 

 

魔法が使えなくなるとか?変身できなくなるとか?

 

 

「さあ、今日はもう遅いし解散しましょうか。」

 

「え?あ………そうですね。」

 

また今度でいいか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「じゃあなまどか、さやか。」

 

「幽斗君また明日ーー!」

 

「じゃあね幽斗ーー!」

 

 

二人を見送った後、俺はマミさんの家を出て、隣の自分の家へ入った。

 

 

「ふう……」

 

ベッドに尻から落ちるように座る。

 

 

「キュゥべえーーーー!キュゥべえーーーーーー!」

 

「なんだい?」

 

うおぉ………呼んだら出てきた。便利だなキュゥべえ。

 

 

「この街にいる仮面ライダーって何人いるんだ?」

 

あの青い仮面ライダー…………誰かはわからないけど急に襲いかかってきやがった。

 

あいつは一体何者なんだ……?

 

 

「君一人だよ。」

 

「へー………………………え?」

 

「だから、この街にいる仮面ライダーは君一人のはずだよ。僕はこの街で君以外と契約した覚えがない。」

 

「そ、そんなバカな!!!じゃああの仮面ライダーは!?」

 

「仮面ライダーを見たのかい?他の街からでも来たんだと思うよ。」

 

そうなのかな……………そういうことか。

 

 

「ああ、あとさ………そいつが使ってたアイコンでさ…………''ノブナガゴーストアイコン''っていうのなんだけど。」

 

ノブナガって言ったら織田信長だよな。

 

奴は偉人の魂の入ったアイコンを持っていた……………あれはどこで手に入るのか。

 

 

 

「そうだ、君には言っていなかったね。仮面ライダーの特権を。」

 

キュゥべえはベッドの上に上がり、俺の隣に座った。

 

 

 

「この世界には魔女の他に…………眼魔という奴らが存在するんだ。」

 

「がん………ま?」

 

眼魔………………なんだそれ。

 

 

 

「奴らを倒すと、高い確率である物を落とすんだ。それが''英雄のアイコン''。」

 

「英雄のアイコン…………」

 

「それはもう普通のアイコンとは比べ物にならない力を秘めているよ。」

 

 

ならその眼魔っていうのを探して…………倒せば、俺はもっと強く…………

 

 

「でも眼魔はその数自体が少ないから、一体見つけるだけでも苦労するだろうね。」

 

「そうか…………」

 

めんどくさそうだな……………

 

 

「そして最後にとっておきだ。英雄のアイコンを15個集めれば、願いが叶うらしいよ。」

 

「えええええ!?」

 

それって……………キュゥべえの契約とは別に、もう一つ願いが叶うってことか!?

 

 

「よしわかった…………これからは魔女退治の他に、眼魔も探す!!!」

 

 

 

俺はベッドから立ち上がり、そう決意したのだ。

 

 

 

 




原作のゴーストは今週闘魂ブースト魂が登場ですね。


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魔法少女体験コース

明けましておめでとうございます!
今年も仮面ライダーゴースト〜命を燃やす少年少女〜をよろしくお願いします!


望みを述べよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の望みは決まっている……………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の望みは……………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「驚いたよ、本当に倒してしまうなんてね。でもその願いは止まらない。この先一生、君は殺戮を繰り返すことになる……………って、今の君に言っても届かないか。暁美ほむら、■■■■、君達はどうするんだい?」

 

 

 

 

 

 

「今こいつを倒しても手遅れだ……………ここは俺達の戦場じゃない。行こうほむら。」

 

 

「ええ。」

 

 

 

 

「……………本気かい?今の彼は時間すらも飛び越える。いずれ君達にも襲いかかるよ?」

 

 

 

「その時は……………倒すだけだ。」

 

 

 

「無理だね。今の彼の力は凄まじい、何せ、この力は願いその物だ。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふぁあ…………」

 

いやあ…………変な夢だったな……………しかもまた暁美が出てきたし。

 

あの声…………暁美と………キュゥべえだよな?あともう一人男の声………ああもう、聞いたことあるのに思い出せん。

 

 

「あ、おはよう幽斗君!」

 

「おはよ幽斗!」

 

教室に入り、鞄を下ろすと後ろからまどかとさやかが挨拶をしてくる。

 

「おはよう幽斗!」

 

……………なぜかキュゥべえも来てるし。本当に他の人には見えないんだろうな………?

 

 

「おはよう。」

 

 

《今日はよろしくね〜》

 

《魔法少女体験かー………楽しみだなあ!》

 

「!?」

 

まどかとさやかの声が脳内に直接届いてきた。テレパシーを使えるってことはまさか!!!

 

《まさか二人とも、もう契約したの!?》

 

こっちもテレパシーで二人に返す。

 

「いやいや、今はまだ僕が間で中継してるだけだよ。」

 

キュゥべえがまどかの机に乗り移りながらテレパシーが送られる。

 

こいつが普段口動かさないのって………テレパシーで会話してたからなのか。

 

 

 

《つーかさ、のこのこ学校まで付いて来ちゃってよかったの?》

 

さやかがキュゥべえに視線を向け言う。

 

《どうして?》

 

《言ったでしょ、昨日のあいつ……このクラスの転校生だって。あんた命狙われてるんじゃないの?》

 

《あいつ…………ってのは暁美の事か》

 

「うーん………むしろ学校の方が安全だと思うな。マミもいるし。」

 

《マミさんは三年生だから、クラスちょっと遠いよ?》

 

《ご心配なく、話はちゃんと聞こえているわ》

 

 

!?

 

今のはマミさんの声!?すげえ……テレパシーって多少離れてても使えるのか。

 

 

「この程度の距離なら、テレパシーも圏内だよ。」

 

 

《お、おはようございますマミさん》

 

とりあえず挨拶しとく。

 

 

《天空寺君も同じクラスなら心配ないわね。私もちゃんと見守っているから安心して。それにあの娘だって……人前で襲ってくるような真似はしないはずよ》

 

 

暁美ほむら…………………あいつがキュゥべえを狙ってるのは…………本当に魔法少女の誕生を阻止することだけなのか?

 

あいつには何か…………別の目的があるような…………そんな気がしてならない。

 

 

 

《ん…………?》

 

《?幽斗君……どうかしたの?》

 

 

今…………雄也がこっちを見てたような……………

 

 

 

 

深海雄也………俺と暁美が転校してきた初日に俺に話しかけてきた一人。どうもこいつは他のクラスの人達を避けてるようだ。

 

だけど…………あの日雄也は、自分から俺に話しかけてきた。

 

 

 

《幽斗君?》

 

《え?ああごめんまどか。なんでもない》

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ねえまどか…………願い事、なんか考えた?」

 

昼休み。

 

俺とまどかとさやか、それとキュゥべえは屋上に上がって時間をつぶしていた。

 

 

「ううん………さやかちゃんは?」

 

「まだ、私も全然…………なんだかなー!いっくらでも思いつくと思ったんだけどなー!欲しい物もやりたい事もいっぱいあるけどさ。''命がけ''ってとこで、やっぱ引っかかっちゃうよね…………そーまでするもんじゃねーよなーって。」

 

 

うんうん、ちゃんと考えてくれてるな。

 

あー…………今思うと俺も少し後悔。あんな死にそうなとこじゃなかったら、別の願い事してたかもな………

 

 

「意外だな。ほとんどの娘は二つ返事なんだけど。」

 

ええ…………みんなそんなに簡単に魔法少女になっちゃうの?

 

 

「幽斗君は、どんな願いで仮面ライダーになったの?」

 

「え?」

 

不意にまどかがそう聞いてくる。

 

 

「俺は…………魔女にちょっとやられてな。死にそうになってるところを……………」

 

「あ……………ご、ごめんね。変な事聞いちゃって……………」

 

「いや、いいよ。」

 

 

 

「やっぱ…………私達が馬鹿なんだよ。」

 

 

さやかはフェンスを掴み、何か思いつめたような声で話した。

 

「ええ…………そうかな?」

 

「そ、''幸せ馬鹿''。」

 

 

さやかは表情を見せないまま続ける。

 

 

「別に珍しくなんかないはずだよ。命と引き換えにしてでも………叶えたい望みって。そういうの抱えてる人は………世の中に大勢いるんじゃないのかな。だから、それが見つからない私達って、その程度の不幸しか知らないって事じゃん。」

 

 

 

「さやか…………………」

 

 

 

 

「恵まれすぎて、馬鹿になっちゃってるんだよ………………なんで、私達なのかな。不公平だと思わない?こういうチャンス、本当に欲しいと思ってる人は他にいるはずなのにね。」

 

 

 

…………確かにその通りだ。俺はともかく、キュゥべえはどうしてまどか達にも声をかけたのだろうか。

 

 

魔法少女を増やしたいから?……………いや、そうじゃない気がする。

 

もっと別の目的が…………………?

 

 

 

 

 

 

「「「!!!」」」

 

 

下の階へ続く階段から誰かが上がってきた。

 

 

黒く、長い髪をなびかせた少女……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暁美……………?」

 

暁美がこっちに近づいてくる。

 

 

まどかは咄嗟にキュゥべえを庇うように抱き上げ、さやかはまどかを守るようにして前に出る。

 

 

 

《大丈夫》

 

マミさんの声がテレパシーで聞こえる。どうやらどこかで俺達を見ているようだ。

 

 

 

「昨日の続きかよ。」

 

さやかが少し強く言う。

 

暁美は表情を変えずに淡々と述べた。

 

「いいえ。そのつもりはないわ……………そいつが鹿目まどかと接触する前にケリをつけたかったけれど。今更それも手遅れですし。」

 

 

暁美は俺に一瞬視線を向け、下を向いた後再びまどか達の方を向いた。

 

 

「で、どうするの?あなたも魔法少女になるつもり?」

 

「私は……………」

 

「あんたにとやかく言われる筋合いはないわよ!」

 

 

あれ……………?''あなたも''?

 

どうして暁美は…………まどかだけを止めて、さやかが魔法少女になるのは防ごうとしないんだ?

 

 

 

 

「昨日の話、覚えてる?」

 

「うん……………」

 

「ならいいわ。忠告が無駄にならないよう、祈ってる……………それと天空寺幽斗君。」

 

 

………お、俺!?

 

「……………なんだ?」

 

必死に冷静を装う。

 

 

「……………気をつけなさい。」

 

 

はい?

 

「それはどういう……………」

 

暁美は俺の問いに答えず、踵を返して階段へ戻って行った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

放課後。

 

俺達はファストフード店に入った。

 

 

 

 

「さて、それじゃあ魔法少女体験コース第一弾。張り切って行ってみましょうか。」

 

 

ついに来ましたこの時間。緊張するわあ………………まどかとさやかは俺とマミさんが守らないといけないしな。

 

 

「準備はいいのか?」

 

「準備になってるかどうかはわからないけど……………持ってきました!」

 

そう言ってさやかが取り出したのは…………………ただのバット。

 

 

「何もないよりマシかと思って。」

 

「うん……………まあそういう覚悟なら助かるよ、うん。」

 

「まどかは何か持ってきた?」

 

「え?えっと…………私は………」

 

まどかは鞄から一冊のノートを取り出し、見開きのページを開き机に置いた。

 

「うわあ…………」

 

「とりあえず衣装だけでも考えておこうかと思って……」

 

 

そこに描かれていた絵を見て、まどか以外の全員が吹き出す。

 

「「「アハハハハ!!!」」」

 

「えっえっええ……!」

 

一気にまどかの顔が紅潮する。

 

「うん、意気込みとしては十分ね。」

 

「こりゃまいった!あんたには負けるわあ。」

 

 

いいね〜おもしろいよこの娘!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

マミさんがソウルジェムを取り出し、魔女の探索を始める。

 

俺も続いてオレゴーストアイコンを取り出す。

 

 

「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡。」

 

どうやら昨日出会った魔女は仕留めきれなかったらしい。俺はあの仮面ライダーに邪魔されて使い魔しか見てないけど…………

 

 

 

「そういえばマミさん。俺も自分で魔女探すの初めてなんですが…………」

 

「え?幽斗もなの?」

 

「うん、ついこの前キュゥべえと契約したばっかだし。」

 

昨日はマミさんについて行っただけだしね。

 

 

「じゃあ天空寺君にも色々教えながらじゃないとね。」

 

助かります先輩。

 

 

「基本的に、魔女探しは足頼みよ。こうしてソウルジェムが捉えた魔力を辿っていくわけ。」

 

「意外と地味ですね………」

 

 

オレゴーストアイコンに視線を向けると、僅かだが白く点滅している。なるほど、こうやって探すのか。

 

…………じゃあ''眼魔''って奴も、これと同じ要領で探せるのかな?

 

 

 

 

俺達は外に出て魔力を辿ることにした。

 

外は太陽が沈みかけていて、空はオレンジ色になっている。

 

 

「光、全然変わらないっすね。」

 

「取り逃がしてから一晩経っちゃったからね。足跡も薄くなってるわ。」

 

 

俺のアイコンも大して反応は変わっていない。……………こりゃ数が少ないっていう眼魔を探すのにも骨が折れそうだ。

 

 

「あの時………すぐ追いかけていたら。」

 

「仕留められたかもしれないけど、あなた達を放っておいてまで優先する事じゃなかったわ。」

 

「……ごめんなさい。」

 

「ううん、いいのよ。」

 

「うん!やっぱりマミさんは正義の味方だ!それに引き換え、あの転校生!ほんっとにむかつくなー!」

 

さやか…………''転校生''って言われると少し反応してしまうんだが………

 

 

 

「ん?」

 

まどかが眉を下げて俯いた。

 

 

暁美について何か考えているのだろうか。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なあマミさん、魔女のいそうな場所って、目星とかはつけられないんですか?」

 

さすがにこのペースじゃあ時間がかかりすぎる。

 

 

「そうね…………魔女の呪いの影響で割と多いのは……交通事故や傷害事件ね。だから大きな道路や喧嘩が起きそうな歓楽街は優先的にチェックしないと。…………あと、自殺に向いてそうな人気のない場所。」

 

 

なるほど……………覚えておこう。

 

「それから、病院とかに取り憑かれると最悪ね。ただでさえ弱っている人達から……生命力が吸い上げられるから、目も当てられないことになる………」

 

 

と、その時。

 

俺のアイコンとマミさんのソウルジェムが同時に強い光を放った。

 

 

「マミさんこれは………」

 

「………かなり強い魔力の波動だわ。」

 

全員の表情が引き締まる。

 

 

 

「…………近いかも。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

魔力の波動を辿り、俺達は廃墟となった建物に向かった。

 

 

「ここ…………ですかね。」

 

マミさんが頷く。

 

 

よし……………戦闘準備、戦闘準備っと……………

 

 

「あっ!マミさんあれ!!」

 

 

さやかが建物の屋上を指差し、大声を上げる。

 

 

 

「まずい!」

 

そこには飛び降りようとしている一人の女性。

 

 

 

 

「くそっ!!」

 

急いでゴーストドライバーを出現させるが、間に合わない、既に女性は飛び降りていた。

 

 

すぐさまマミさんが変身し、女性の元へ向かう。

 

大量のリボンをネットのようにして、落ちてくる女性を受け止めた。

 

 

 

床に寝かせ、首元を見ると変わった形の紋章のようなものが。

 

 

「これは…………」

 

「魔女の口づけ………やっぱりね。」

 

「この人は……」

 

「大丈夫、気を失ってるだけ………行くわよ。」

 

 

 

 

建物の中に入り、奥へと進んでいく。

 

 

一つの階段の前で止まると、マミさんのソウルジェムが反応し、魔女の結界へ続く門が開かれた。

 

 

「今日こそ逃がさないわよ。」

 

 

俺はアイコンのスイッチを押し、ゴーストドライバーに装填した。

 

《アーイ!》

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

「変身!」

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

 

オレゴーストを纏い、仮面ライダーゴーストへと変身する。

 

 

 

マミさんがさやかの持っているバットを掴むと、たちまち形が変化し、武器へと変わる。

 

「すごい………!」

 

「気休めだけど…………これで身を守る程度の役には立つわ、絶対に私と天空寺君の側を離れないで!」

 

 

「「はい!!」」

 

 

マミさん、さやか、俺、と門の中へと入っていく。

 

 

「ほい、まどか。」

 

少し怖がっているようなので、俺はまどかに手を差し出し、手助けする。

 

 

「あ、ありがと。」

 

 

 

よし……………これで全員入ったな。

 

 

「よーし!レッツ魔女退治!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「行ったな……………」

 

「行きましょうか。」

 

「ああ。」

 

 

《アーイ!バッチリミロ!バッチリミロ!バッチリミロ!》

 

「変身。」

 

《カイガン!スペクター……!レディゴー!覚悟!ドキドキゴースト!》

 

 

 

 

 

 




次回か次々回あたりに新しいゴーストアイコンを出そうと思います。


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交差する「魂」

今回はオリジナル展開入れますよー!


 

「……!また来たわ!」

 

「任せてください!」

 

目の前に魔女の使い魔が集まり、壁を作って道を遮ってきた。

 

ガンガンセイバーをガンモードにし、眼の模様の部分をゴーストドライバーにかざした。

 

 

《ダイカイガン!》

 

《ガンガンミナー!ガンガンミナー!》

 

《オメガシュート!!!》

 

 

使い魔達のど真ん中に必殺技を撃ち込み、一気に吹き飛ばす。

 

放たれた熱線で道を遮っていた使い魔達は消滅した。

 

 

「ふう…………」

 

「戦うの、慣れてきたみたいね。」

 

「はい!大分!」

 

まだ仮面ライダーになってから数日しか経ってないけど、戦いを重ねていくうちに力の使い方が体に染み込んでいくのがわかった。

 

でも''英雄の眼魂''とやらを手に入れれば……あの青い仮面ライダーみたいに、もっと強くなれるはずだ。みんなを守れるだけの力が。

 

ん……仮面、ライダー…………?

 

 

「そういえばキュゥべえ。」

 

「どうしたんだい?」

 

「なんで俺は''魔法少年''じゃなくて''仮面ライダー''って言うんだ?」

 

''仮面''はまあ……そのまんまだけど''ライダー''って……

 

 

「ああ、そんなことか。 簡単なことさ、''ゴーストライカー''って叫んでみなよ。」

 

「んあ?なんで?」

 

「いいから。」

 

「……?ゴーストライカー!!!」

 

俺が叫んだ瞬間、すぐそばの空間が捻れ、目玉を模した印が浮かび上がった。

 

そこから一台の無人のオートバイが走ってきて、俺の目の前で止まった。

 

「これが''仮面ライダー''と呼ばれる由縁。''マシンゴーストライカー''だよ。名前は違うけど、仮面ライダーはそれぞれ特殊な乗り物を持っているんだ。」

 

「ば、バイク!?」

 

「そんな能力があったのね…………」

 

「ま、マミさんがちょっと悔しそうな顔を……」

 

「鹿目さん!?違うわよ!魔法少女と仮面ライダーの違いでまだ知らないことがあったから驚いただけで……!」

 

慌ててるマミさんがおかしくて全員が吹き出す。

 

 

バイクかぁ…………乗ったことないしな……ちょい怖い。

 

「他には、何かないのか?」

 

「ちょっと待ってて…………うん、どうやら君にはまだ特別な乗り物があるみたいだ。」

 

「ほんと!?」

 

気になる気になる!新しい戦力なら大歓迎だぜ!!

 

 

「じゃあ''キャプテンゴースト''って言ってみて。」

 

「おっけい!!キャプテンゴーストーーー!!!」

 

 

名前を呼ぶとさっきゴーストライカーが現れたのと同じように空間が捻れ、今度はバイクよりも遥かに巨大な船が出てきた。

 

 

「うわあ……でっけえ………」

 

さやかが一歩引いた。

 

 

「なぜに…………船………?」

 

乗り物だったら何でもいいのか……ていうかなんで生き物の手みたいなの付いてるんだ?

 

仮面ライダーゴーストの船……幽霊船ってわけか。

 

 

「ん…………?うわ!なんだなんだ!?」

 

ゴーストライカーとキャプテンゴーストが勝手に動き出し、変形しだした。

 

「え!?」

 

「ちょ!なにこれなにこれ!!!」

 

二つのマシンが完全に一体化し、キャプテンゴーストが展開した。

 

イグアナの頭のような物が突出し、尻尾まである。

 

 

「そしてこれが二つのマシンを合体させた''イグアナゴーストライカー''だよ!」

 

「…………」

 

「あれ?驚くと思ったのに…………」

 

なんでイグアナなんだよ…………なんでもありかよ。

 

「ちょっとかわいいかも。」

 

まどかがイグアナゴーストライカーに近づき、手を伸ばした。

 

「やめなってまどか!食べられちゃうかもよ!?」

 

「あはは……大丈夫だよさやかちゃん。 」

 

まどかはイグアナゴーストライカーの顔に触れ、ゆっくり、優しく撫でた。

 

それに反応するようにイグアナゴーストライカーは鳴き声のようなものを小さく上げる。……なんか、喜んでるみたいだ。

 

 

 

「乗り物ってことは……この子で魔女の所まで一気に進めるんじゃないかしら。」

 

「あ、そうか。」

 

俺は露出しているバイクの運転席部分に跨った。

 

「これなら勝手に進んでくれそうだし……乗れるかな。」

 

「決まりね。私達も乗りましょう!」

 

「なんかマミさんすごい目輝かせてますね。」

 

「気のせいよ!気のせい!」

 

いや、さやかの言う通りこの人は……ワクワクしてるな。いつもは大人っぽいのに時々子供っぽいよなマミさん。

 

 

 

俺の後ろにまどか、さやか、マミさんの順でイグアナゴーストライカーに乗った。

 

マミさんには後ろから追ってくる使い魔の迎撃を頼み、まどかとさやかは運転席部分にしがみついている。

 

 

「よーし、行くよみんな!しっかり掴まっててくれ!」

 

「いつでもOKよ!」

 

 

よし……じゃあ出発っと…………

 

 

「よし!イグアナゴーストライカー!進mうおおおおあああああああああ!?!?」

 

「「「きゃああああああああああ!?!?!?」」」

 

イグアナゴーストライカーが地面を蹴った瞬間。悲鳴が上がる。

 

 

 

 

ちょ……!こいつ…………動きが激しすぎるって………!!!!

 

 

「み、み、み、みんな落ち着け!!振り落とされないように気をつけてく………ぎゃああああああ!!!」

 

「お前が落ち着け!!」

 

ツッコミお疲れ様ですさやか!

 

 

なんだろうこれ…………!!この…………!!全く安全じゃないジェットコースターを乗ってるような感覚!!!

 

 

 

「このまま一気に行くぞおらああああああああああ!!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ぶはっ!」

 

「ふふ……………」

 

「見たか今の?いやー傑作だねえ。」

 

「笑ってる暇はないわ、急がないと彼が''一つ目''を手に入れてしまう。」

 

「なんだよ、お前も笑ってたくせに。」

 

「黙りなさい。…………早く行きましょ。」

 

「わかったって。」

 

 

青い仮面ライダーと黒い少女は、一台のバイクに跨り、イグアナゴーストライカーの後を付けて行った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「「「うわあああああああああああ!?!?!?」」」」

 

 

「ま、まだ着かないの!?」

 

「もう少しのはず…………」

 

「あ!幽斗君あれ!」

 

「ん…………?」

 

 

まどかが指した方向には一つの扉。アイコンの反応も強い、恐らくあそこが…………

 

 

「魔女の部屋だ!」

 

よし!イグアナを止めて…………どうやって止めるんだこれ。

 

 

 

「……………ごめん(ボソッ」

 

「ゆ、幽斗君!?なんで今謝ったの!?」

 

「ごめえええええええええええええん!!!!!」

 

 

 

「「こらーーーーーーーーーー!!!!!」」

 

マミさんとさやかが激昂する。

 

いや、ほんと、ごめんなさい。反省してます。

 

 

 

 

止まることはできず、そのまま魔女の部屋に突っ込む形で中に入った。

 

 

そこまでは良かった。うん。

 

 

 

今俺達とイグアナゴーストライカーは空中に放り投げ出された状態。

 

 

 

 

 

 

「あ、言い忘れてたんだけど。」

 

「ん?どしたキュゥべえ?」

 

「イグアナゴーストライカーには活動制限時間があるらしいから、気をつけてね。」

 

「は?」

 

今、それを言うか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

 

一瞬だった。

 

 

イグアナゴーストライカーの前に眼の印が現れ、瞬く間に消滅したのだ。イグアナゴーストライカーが。俺達を空中に留まらせてくれる乗り物が。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!(声にならない叫び)」」」」

 

 

地面へ真っ逆さま。

 

 

 

「ゆ、幽斗君!」

 

「いや待て!今回はキュゥべえが悪いぞ!!」

 

「とにかくなんとかしないと!」

 

変身してる俺やマミさんはともかく、まどかやさやかがこのまま落ちたら…………!!!

 

 

 

 

 

「リボンを展開してる暇はないわ!天空寺君!鹿目さんをお願い!」

 

「わかりました!まどか!こっち!!」

 

「ふええ!?」

 

「ごめん!!」

 

なんとかまどかを引き寄せ、抱える。お姫様だっこ状態。

 

マミさんもさやかを同じように抱えている。

 

 

「なんか恥ずかしいっすね…………」

 

「そうだね……」

 

すんません、ほんと。

 

 

 

 

「着地するから、衝撃に備えてくれ!!」

 

 

「う、うん!」

 

 

 

 

 

よし!地面に着……………地!!!

 

 

「いっ…………!!!」

 

たあ…………!!!足が……!足が痺れて…………!いや全身だ!全身が痺れる!

 

 

まどかを降ろす。どうやらマミさんとさやかも無事みたいだ。

 

 

「だ、大丈夫?幽斗君……」

 

「問題…………ない……」

 

 

くっ…………キュゥべえめ……!!覚えとけよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…………今の件は後で天空寺君をお仕置きするとして……」

 

「ええ!?俺!?マミさん俺ですか!?」

 

今のはキュゥべえが悪いでしょう!!

 

 

マミさんはピッと指を立てて俺を制した。

 

 

「今は魔女…………よね?」

 

「あ……はい…………」

 

 

ぐぬぬ……腑に落ちないが今は魔女退治に専念するか……

 

 

 

 

 

 

「よっし!どんな魔女でもかかってこい!!!」

 

「鹿目さん達は隠れてて!!」

 

マミさんの言葉を受け、二人は物陰に身を潜めた。

 

 

 

 

 

俺とマミさんは部屋の中心に視線を向ける。

 

 

そこにいたのは魔女一体。

 

俯いたような体制で長くて汚い緑色の髪を下に垂らしている。

 

ずんぐりとした赤い体の背中には蝶の羽のような物が生えていた。

 

 

 

 

「よし!さっさと片付けて________________」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「え…………?」」

 

その魔女は力尽きたように横に倒れた。

 

すぐにボロボロと崩壊するように体が消滅する。

 

 

 

 

「一体何が……?」

 

「わからない……けど、この魔女はすでに倒されて…………?」

 

 

 

マミさんが言葉を切る。

 

 

俺もマミさんも、魔女の''後ろに立っていた者''に身を強張らせた。

 

 

魔女の体が完全に消滅し、その姿が露わになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ黒な服を纏っていて、両手には刀を持っている。侍のような風貌。

 

表情は読み取れない。

 

 

 

「幽斗、まずいよ…………」

 

キュゥべえが肩に乗り、言う。

 

 

「まずいって何が…………?」

 

「あいつだよ。 あれは魔女なんかじゃない。」

 

「?キュゥべえ、アレはなんなの?」

 

マミさんは首を傾げる。

 

 

 

が、俺には心当たりがあった。

 

 

 

「まさか………キュゥべえ、あれが?」

 

 

「うん、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼魔だ。」

 

 

 

 

 

 




次回には新しいアイコンゲッツかな?


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そして彼は手に入れた

初の眼魔との戦闘。


魔女が消滅したからか、結界はさっきとは別物に変わっていた。

 

遮蔽物がほとんど無い大きくて真っ黒な部屋に変わっていたのだ。

 

 

 

「眼…………魔?それってなんなのキュゥべえ?」

 

「魔女と同じ、絶望を振りまく者達さ。 そういえばマミには言ってなかったね。」

 

「眼魔は……魔女より数が少ないみたいで、遭遇することもあまり無いみたいなんですが……」

 

あの眼魔……魔女を倒したって事は……別に魔女と眼魔は仲間じゃないってことか?もしかしたらいい奴なのかもしれない。

 

 

俺は眼魔の方へ歩いた。

 

 

「ちょっと!天空寺君!?」

 

「すみませんマミさん。」

 

 

もしこいつがいい奴なら……俺に英雄のアイコンとかくれるかもしれないし。

 

 

眼魔は両手に持った刀を構えたまま動かない。警戒しているのだろうか。

 

俺は眼魔の2mほど離れた場所で足を止め、言った。

 

 

「お、おーい!聞こえるー!?」

 

 

……………………………………………

 

 

 

 

 

「聞こえてるなら返事し……っ!?」

 

視界から眼魔が消えた。

 

 

「どこに行った!?」

 

眼魔を探す。

 

これは姿を消しているのか、気配を消しているのか、それとも猛スピードで動いているのか。

 

 

 

「天空寺君後ろ!!」

 

背中の方からマミさんの声が聞こえ、それに反応して振り向く。

 

 

既に奴は俺の後ろに回り込み、刀を振りかぶっていた。

 

 

「っ…………!?!?」

 

ガンガンセイバーを構える暇もない。

 

俺はその攻撃を防御することも避けることもできないまま直撃してしまった。

 

後方に吹き飛ぶが、マミさんが作ったリボンのネットに受け止められた。

 

 

「もう! 勝手に動いちゃダメでしょ!」

 

「すみませんマミさん……でも、これで確定です。」

 

 

 

こいつは、敵だ。

 

 

 

 

 

「どうしましょうか?」

 

「うん……アレ……眼魔は今の動きを見るに魔女よりも強いみたいね。 それもかなり。」

 

「はい、速さも力も……桁違いです。」

 

 

こいつが英雄のアイコンを持ってるって言っても……これじゃあ一つ手に入れるだけでもかなり難しいじゃないか!

 

あの青い仮面ライダーはこんな奴を倒したのか…………

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

俺達が相談している途中、眼魔の周りに影のようなものが広がった。

 

そこから無数の人形の怪物が現れる。

 

 

「こいつらは……!?」

 

「''眼魔コマンド''だね、魔女で言う使い魔みたいなものさ。」

 

キュゥべえが近くにやってきてそう言う。

 

「見たことあるのか?」

 

「数えるほどだけどね、何せ数が少ないから。」

 

 

単体でもあの強さ……しかも使い魔まで持ってるのか。…………まさか使い魔までめちゃくちゃ強いってことは無いよな?

 

 

 

「ここは役割分担しましょうか。 マミさんは使い魔をお願いできますか?」

 

「いいけど……あなた一人であの眼魔を相手にすることになるわよ?」

 

それはまあ……仕方ない。 奴のスピードを見るに、マミさんの銃の攻撃は効果は薄いだろう。 避けられる。 なら数が多い眼魔コマンドの方を連射で一気に片付けてもらうのが有効だ。

 

俺の武器は剣にもできるし……奴と接近戦で勝負ができる。

 

 

 

 

 

「大丈夫です、問題ありません。」

 

「ものすっごく心配だけど……それしかないみたいね。 行くわよ!」

 

「はい!!」

 

 

マミさんが空中に飛び上がり、リボンを展開する。

 

俺は刀を持った眼魔に向かって突っ込んだ。

 

 

「援護は任せて!」

 

マミさんがリボンにぶら下がり、眼魔コマンドの集団に銃弾を撃ち込み道を作ってくれる。

 

素早く眼魔に接近し、ガンガンセイバーを振りかぶった。

 

 

「おおおっ!!」

 

眼魔は二つの刀身をクロスさせ、ガンガンセイバーを受け止めた。

 

「ぐっ……!ぐぐぐ…………!!」

 

「…………!!」

 

そのまま奴を地面に押し付けるように力を入れる。

 

「あっ!」

 

眼魔は受け止めていたガンガンセイバーを弾き、俺に二本の刀を叩き込んでくる。

 

やはり防御する暇はなく、そのまま攻撃を受けてしまった。

 

「がっ…………!!」

 

一旦距離を取り、様子を伺う。

 

 

 

 

 

 

 

「速い。」

 

思わず口に出てしまうほど。

 

これが眼魔か。

 

 

 

 

「でも…………不思議と負ける気がしない。 なんだ……?この感覚…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

''まあそう焦るなよ。 戦っているうちに動きも見えてくるさ。 ほら、行くぞ!!!''

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!?今のは…………!?」

 

誰の声だ?聞いたことがある。

 

いやその前に……おかしいぞ…………!

 

 

 

 

 

眼魔が猛スピードでこっちに走ってくる。

 

かなり距離があるが、それでも風を感じるくらいの速さ。

 

 

 

「あれ…………''確か''…………」

 

 

 

頭ではなく、体が先に動いた。

 

一歩右に引く。

 

すると眼魔は今俺がいた場所に刀を振り下ろしていた。

 

 

 

「!……避けれた!」

 

 

見える…………''声''を聞いてから…………

 

 

 

これは記憶…………?俺の…………?

 

 

「俺は、前に一度お前と戦って…………」

 

 

「天空寺君!」

 

「はっ……」

 

マミさんの声で我に返った。

 

目の前に刀身が振り下ろされた。それを紙一重で躱し、ガンガンセイバーで反撃する。

 

 

 

眼魔の胴体に一撃。

 

 

 

入った…………!!!

 

 

すぐさまゴーストドライバーのレバーを引き、押す。

 

 

《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》

 

 

ガンガンセイバーの刃がオレンジ色に発光する。

 

俺は腕に力を込め、そのまま眼魔の胴体を斬り裂いた。

 

 

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

 

倒したか?

 

眼魔は止まったまま動かない。

 

 

……念の為だ。 もう一撃ほどぶち込んで……

 

 

 

 

「!?」

 

突然眼魔が動き出し、今度は空中にいるマミさんに向かっていった。

 

 

「マミさん!」

 

まずい……!

 

「大丈夫!」

 

 

突然眼魔は何かに引っかかったように空中で止まった。

 

 

そうか……!リボンを空中に隠していたのか!

 

 

 

 

「ふっ!」

 

マミさんはリボンで眼魔を拘束し、地面に叩きつけた。

 

 

「今よ!」

 

「はい!」

 

 

ガンガンセイバーをゴーストドライバーにかざす。

 

 

《ダイカイガン!》

 

《ガンガンミナー!ガンガンミナー!ガンガンミナー!》

 

 

「喰らえええええええええええええ!!!」

 

《オメガブレイク!!!》

 

 

思い切りガンガンセイバーを振ると斬撃が発生し、眼魔へ一直線に向かう。

 

 

リボンで拘束されていため、眼魔は何もできない。

 

 

 

「…………………!!!!」

 

そのまま眼魔の体を斬撃が貫く。

 

 

胴体が真っ二つになり、体が灰のように変化し、ボロボロと崩れていった。

 

 

 

 

 

 

「あれは…………」

 

そして、眼魔の体が完全に消滅した時、何かがその場にポトリ、と落ちた。

 

 

 

その場に駆け寄ると、それは見覚えのある形をした物だった。

 

 

 

「これが……」

 

「アイコンだね。」

 

いつの間にかキュゥべえが隣に座っていた。

 

俺は眼魔が落としたアイコンを手に取る。

 

オレゴーストアイコンとは違い、色は赤く、アルファベットで''宮本武蔵''の名が刻まれている。

 

 

「やったね幽斗、初の英雄アイコンだ!」

 

「ああ……」

 

これを15個集めれば……もう一度願いを叶えられるのか…………

 

 

 

「あら?それもアイコンなの?」

 

変身を解いたマミさんと、隠れていたまどかとさやかも近づいてくる。

 

 

「ええ、戦利品みたいな感じです。これを15個集めれば、願いが叶うとか何とか……」

 

「ええ!?それって本当なのキュゥべえ!?」

 

「本当だよ。」

 

「まあ、さっきも言った通り眼魔の数は少ないみたいですが……」

 

「もう、そんな大事なこと言わないなんて……」

 

「マミが聞かなかったからだよ。」

 

 

 

 

俺とマミさんが話していると、さやかは興奮気味に言った。

 

「そんなことより凄かったですよ!マミさんと幽斗の戦い!」

 

 

どうも。眼魔に勝てたのは奇跡に近いけどね。

 

 

 

それにしても……あの妙な感覚……それにあの声どっかで…………

 

 

「幽斗君は怪我とかないの?」

 

まどかが不安そうにそう聞いてくる。

 

いやーほんと優しいねこの人。

 

 

 

「大丈夫だ。 ちょっと苦戦しただけ。」

 

「さて、天空寺君もいつまでもその格好でいないで、変身を解いたら?」

 

「ああ、そうですね……」

 

眼魔の結界も崩壊し、俺達が立っていた場所は元の廃墟に戻っていた。

 

 

俺がゴーストドライバーに手を伸ばしたその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ダイカイガン!スペクター……!オメガドライブ!》

 

 

「「「「!?!?」」」」

 

 

「危ない!!!」

 

 

横から飛び蹴りが放たれた。

 

誰が、とかそんな事を考えている暇はない。

 

咄嗟に三人を突き飛ばした。

 

 

 

 

しかし俺は避けることができず、その蹴りをもろに受けてしまう。

 

 

 

 

「ぐああああああっ!!」

 

そのまま建物の窓を突き破り、数十メートル先まで落下していった。

 

 

 

「がはっ………!!」

 

情けなく横に倒れた俺の目の前に、青い影が降り立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お……まえ…………は…………!!!」

 

 

そいつは確かに奴だった。

 

 

あの時、デパートで俺の邪魔をしてきた青い仮面ライダー。

 

 

 

 

 

奴は俺に視線を向けた後、冷たい声で言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はもういいんだ…………アイコンを渡せ。」

 

 

 

「…………!!」

 

狙いはアイコンか。

 

「ははっ………!やだね。 せっかく手に入れたんだ…………足掻くくらいはさせてもらう…………!!」

 

 

よろよろと立ち上がり、ガンガンセイバーを構え直す。

 

 

「…………そうか。」

 

奴のゴーストドライバーが青白く光り、そこから武器が飛び出してきた。

 

 

《ガンガンハンド!》

 

 

マジックハンドのようなその武器を構え、青い仮面ライダーは俺に接近してきた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「い、今のは何!?天空寺君は…………!?」

 

「マミさん、幽斗落ちちゃいましたけど!?」

 

「早く助けないと!!」

 

 

幽斗君が誰かに攻撃されて、窓から落ちた。

 

窓から身を乗り出して下を見ると、青い仮面ライダーと幽斗君が戦っている最中だ。

 

 

 

「二人とも!行くわよ!」

 

「「はい!!」」

 

マミさんの後ろに付いて、私とさやかちゃんは下に下がるために階段へ駆け足で進んだ。

 

 

 

ふと後ろを振り向くと、そこに一人の女の子がこっちを見つめているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん…………?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

いつからこんな事をしているのか。

 

 

なんでこんな事をしているのか。

 

 

自分が何者であるか。

 

 

何一つわからなかった。

 

 

 

 

ただ一つ覚えていることは、

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、来ないで…………!何なのよあんた一体!!」

 

少女が、必死に逃げながら言った。

 

 

「………………」

 

 

「このっ!!!」

 

 

目の前の少女が魔力弾を放ってくるが、避けない。 こんなもの、当たったところで俺には通用するわけがない。

 

 

 

 

「そんな……!!魔法が効かないなんて…………!!!」

 

 

絶望に染まる表情。

 

 

この顔を、もう何回見たかわからない。…………''俺がやった''のに。

 

 

 

 

 

 

ただ一つ覚えていることは、「■■を、いや、全ての''可能性''を消し去る」ということだけ。

 

 

そう、全ての…………

 

 

 

 

 

 

「かはっ…………!」

 

 

目の前の少女の首を掴み、締め上げる。

 

 

「ど……して…………こんな……こと…………あ''あ''…………!!」

 

 

…………覚えてないな。

 

 

いや、そうか、もしかしたら………………

 

 

 

 

「世界を……救うためかな…………」

 

 

少女は気を失ったのか、ぐったりと力なく倒れた。

 

 

 

「ああ……そっか、コレ壊さないと死なないんだっけ。」

 

 

少女の身につけている宝石に触れ、軽く力を入れると簡単に割れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は…………」

 

 

 

 




スペクター再登場。いやまあ、前にもちらちら出てたけどね……

そして最後に登場した奴は何者なのか……それがわかるのはも少し先。


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襲いかかる狩人

スペクターvsゴースト!


 

「はっ!せや!」

 

「…………」

 

 

さっきからずっと奴のペースだ。

 

いくらガンガンセイバーで攻撃しても軽くいなされる。そして……

 

 

「ぐあああっ!!」

 

あのマジックハンドみたいな武器で反撃される。

 

 

 

「この前は屋内で戦いにくかったが……今度は逃がさないぞ。」

 

「うるさい! それはこっちも同じだ!」

 

くっそ……なんだあいつの動き……まるでどこに攻撃がくるかわかってるみたいに……

 

 

 

 

「!」

 

スペクターの蹴りを喰らい、よろめいてしまう。

 

すかさず武器で追撃を繰り出すスペクター。なんとかガンガンセイバーでそれを防ぎ、距離をとる。

 

 

 

なにか打開策は……!!

 

 

 

 

隙をうかがっていると、スペクターは別のアイコンを取り出した。

 

 

 

「それは……!」

 

奴はゴーストドライバーのカバーを開き、紫色のアイコンを装填した。

 

 

 

《バッチリミロ! バッチリミロ! バッチリミロ!》

 

《カイガン! ノブナガ! 我の生き様!桶狭間!》

 

スペクターは紫色のパーカーゴーストを身に纏い、構えている武器を火縄銃のような形状に変形させた。

 

 

 

 

「うわ!」

 

放たれた光弾を躱しながらガンガンセイバーをガンモードにする。

 

「このやろっ!!」

 

俺も反撃に奴の方へ無茶苦茶に光弾を撃ちまくった。

 

 

 

 

 

 

 

「こうなったら……俺もこのアイコンを使って……!」

 

先程手に入れたムサシゴーストアイコンを握りしめ、走り出す。

 

 

 

 

 

「そのノブナガアイコン! 悪いが奪わせてもらう!」

 

「やれるもんならな。」

 

 

うっわむかつくこいつ。 そんな余裕これから無くしてやるぜ!

 

 

 

ゴーストドライバーのカバーを開き、ムサシゴーストアイコンを装填する。

 

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

《カイガン!ムサシ!決闘!ズバッと!超剣豪!》

 

赤いパーカーゴーストが現れ、俺と重なるように一つになる。

 

 

ガンガンセイバーを二つに分け、二刀流モードへと変形させた。

 

 

 

「うお……!」

 

この力が湧き上がる感覚……

 

「これが英雄のアイコンの力か…………!!」

 

 

あいつの武器は銃。なら接近さえしちまえばあとはこの二刀流でギッタギッタに…………!!!

 

 

「……ここでも。それはお前が使うのか。」

 

…………なんだって?

 

「なにを言って……やがる!!!」

 

一気にスペクターに近づき、ガンガンセイバーを振り下ろす。

 

奴はそれを武器で防ぎ、さらに銃弾を放ってきた。

 

 

「うお!?」

 

躱せた……!!これも英雄のアイコンのおかげか?

 

 

「!?」

 

「喰らえ!」

 

奴の体に二つの刀身を叩き込んでやった。

 

火花が舞い、スペクターは俺から少し離れる。

 

 

 

 

「……やるな。」

 

「なに、まだまだこんなもんじゃない!」

 

 

いける!これなら……!!勝てるかもしれない!!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ほむらちゃん……」

 

「転校生……!」

 

「…………」

 

 

その子は、階段を下がり下に行こうとした私達を遮るように前に現れた。

 

そんな……確かさっきは後ろにいたはずなのに……!

 

 

 

 

「…………暁美さん? そこをどいてくれないかしら?」

 

マミさんがほんの少し威圧感を出して言う。

 

 

 

「…………それはできないわ。」

 

「あら、どうして? 理由を言ってもらえるかしら?」

 

 

しばらく緊張した雰囲気のまま、マミさんとほむらちゃんは互いに睨み合った。

 

 

「……天空寺君のアイコン、 あれさえ手に入れば私達はこの場から消えるわ。」

 

「なるほどね……確かあれって15個集まれば願いが叶う……だったかしら? 」

 

「うん、そうだよ。」

 

キュゥべえが答える。

 

「あなたには叶えたい願いがあるってことなの?」

 

ほむらちゃんはキュゥべえを睨んだ後、マミさんに視線を戻し、少し強めに言った。

 

「それをあなたに言う必要は無いわ!」

 

大人しそうなほむらちゃんが大きな声を出したのに、私達は驚いた。

 

 

 

 

「あなたも魔法少女のはずよ。叶えたい願いはもう一つ既にキュゥべえに叶えてもらっているはず。なのにまだ願いを叶えるつもりなの?……それは、ただ欲張りなだけよ。」

 

「………………それでも。」

 

「…………ほむらちゃん?」

 

 

 

 

「それでも私は、やらなければならないの!」

 

 

ほむらちゃんは紫色のソウルジェムを取り出し、魔法少女の姿に変身した。

 

 

マミさんも続いて変身し、さやかちゃんはバットを構え直した。

 

 

 

「美樹さん!鹿目さん!下がってて!」

 

 

「は、はい!まどか!」

 

「う、うん!」

 

 

私はさやかちゃんに手を引かれ、物陰に移動した。

 

 

 

 

 

「あなたとは戦いたくはなかったけど……………!」

 

「…………」

 

ほむらちゃんは拳銃を、マミさんはマスケット銃を取り出し、お互いに構える。

 

 

 

「あの転校生!やっぱり悪い奴じゃんか!」

 

「そう……なのかな……」

 

私はそうは思えなかった。

 

何か、ほむらちゃんは悪いことはしようとしてない気が……むしろ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マミさんがマスケット銃のトリガーに指をかけたその時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた………………ぞ………………!!!!」

 

 

 

「え?」

 

「ちっ……!」

 

 

天井が崩れる音と、くぐもった低い声と共に、真っ黒な''影''を身に纏った人が二人の間に割って入った。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……まさかこっちにあるのはノブナガだけ、と考えているわけじゃないよな?

 

「なに……!?」

 

 

スペクターは青緑色のアイコンを取り出し、ゴーストドライバーに装填した。

 

 

《バッチリミロ!バッチリミロ!バッチリミロ!》

 

《カイガン!ツタンカーメン!ピラミッドは三角!王家の資格!》

 

ノースリーブのパーカーゴーストが現れ、スペクターを覆う。

 

同時にゴーストドライバーから蛇のような形状の何かが現れ、武器と合体し、鎌のような形状になる。

 

 

 

「なっ!?二つ目のアイコン!?」

 

「ふっ!」

 

 

スペクターは鎌で薙ぎ払い攻撃を仕掛けてくる。

 

それをしゃがんで避け、ガンガンセイバーを振りかざす。

 

 

「ぐっ……!?」

 

鎌の刃とガンガンセイバーの刃がぶつかり合う。

 

 

 

こっちは二刀だ……手数でゴリ押せば…………!!!!

 

 

 

 

「はあっ!」

 

「ぐお!?」

 

でもあっちの方がリーチが長い……近付けないか……!?

 

何か……牽制できるもの……

 

!そうだ!

 

 

オレゴーストアイコンを取り出し、ゴーストドライバーに装填する。

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

ゴーストドライバーから飛び出したオレゴーストがスペクターに襲いかかる。

 

その隙に素体のままでスペクターに接近する。

 

目の前まで接近した後、ゴーストドライバーのレバーを押し込んだ。

 

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

 

「はあああああっ!!」

 

ガンガンセイバーを振り上げながらスペクターに突っ込む。

 

 

 

 

 

「…………!?」

 

 

 

 

 

 

 

すると奴は再びゴーストドライバーにアイコンを装填し、レバーを押し込んだ。

 

 

 

「そんな…………!?まさか……三つ目!?」

 

 

《カイガン!エジソン!エレキ!ヒラメキ!発明王!》

 

銀色に黄色のラインが入ったパーカーゴーストを身に纏い、武器をさっきのような銃の形状にした。

 

 

 

 

「うっ……!?」

 

電撃が放出され、不規則にうねるソレを避けることができずに直撃してしまった。

 

 

 

「くっそ…………!!」

 

 

奴は再びスペクター魂に戻った後、こっちに近づいてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このまま…………負けるかあ!!!」

 

 

《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》

 

 

印を結び、片足にエネルギーを集中させる。

 

 

 

「力比べか……望むところ…………!!!」

 

《ダイカイガン!スペクター……!オメガドライブ!》

 

右手を握りしめ、奴も片足にエネルギーを込める。

 

 

 

 

 

 

 

「「はああああっ!!!」」

 

 

同時に空中へ飛び上がり、俺はスペクターに、スペクターは俺に跳び蹴りを放つ。

 

 

 

二つの必殺技がぶつかり合い、周囲の物が吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

「ぐっ…………!うあああ…………!!!」

 

「ふっ…………!!!」

 

 

ミシミシと足が悲鳴を上げている。このままでは確実に負けるだろう。

 

 

 

 

…………でも、ただでは負けない。

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあああああああっ!!」

 

 

やはり押し負けてしまい、地面に倒れる。

 

変身が解け、オレゴーストアイコンとムサシゴーストアイコンが目の前に落ちてきた。

 

 

「負け……か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………お前……!」

 

 

…………気づいたのか。

 

そう、ただでは負けない。

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ!悪いな……このアイコン、貰っていくぜ!!」

 

俺は地面のオレゴーストアイコンとムサシゴーストアイコンを拾った後、手に握りしめていた黄色のアイコンを奴に見せた。

 

スペクターがさっき使っていた、エジソンゴーストアイコンを。

 

 

 

 

 

 

「こ、今回はこれくらいにしといてやるぜ!次俺のアイコンを狙ってみろ!また奪ってやるからな!」

 

と、強気な捨て台詞を吐いて急いで奴から逃げようとする。

 

ぶっちゃけこのまま戦いが続くとまずい。今度こそ叩きのめされてエジソンも奪い返され、ムサシも奪われる。

 

 

 

「逃すと思って___________」

 

スペクターが言葉を切る。

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

なんだこの感じ…………

 

 

オレゴーストアイコンが怪しく光り始める。魔女を見つけた時とは比べものにならないくらい強い光。

 

 

 

「何か…………近づいて…………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………見つかったか………!」

 

スペクターが不意にそんなことを言う。

 

 

 

 

見つかったって何が…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時。

 

さっきまで俺とまどか達がいた建物から何かが崩れる音が響いてきた。

 

 

 

 

「な……!?なんだよ今の!?」

 

 

「くそっ……!マシンフーディー!」

 

スペクターがそう言うと大きな青い眼の印が現れ、そこから青いバイクが飛び出してきた。

 

奴はそれに跨り、建物へと向かう。

 

 

 

 

 

「一体何が起きてるっていうんだ!!ゴーストライカー!」

 

俺もマシンゴーストライカーを呼び、建物へと向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

建物のすぐそばまで来ると、より一層大きな音が聞こえてくる。

 

戦闘音か……?

 

 

 

スペクターは高く飛び上がり、一気に三階辺りの窓から中へと入って行った。

 

 

 

 

「俺も行かないと……!」

 

あそこにはマミさんや、さやかとまどかもいるはずなんだ!!

 

 

 

 

 

思い切り地面を蹴り、スペクターが入って行った所と同じ場所から中に入る。

 

 

 

 

 

 

「な……!なんだこれ…………!!」

 

 

周りには誰かが戦った後が見られた。

 

壁や地面には小さなクレーターが出来、天井には大きな穴が空いている。

 

 

 

 

「……!まどか!さやか!」

 

物陰にじっと隠れている二人を見つけ、駆け寄る。

 

 

 

「二人とも!マミさんはどこに!?」

 

「ゆ、幽斗君!よかった無事で……」

 

「マミさんは屋上に……!なんかよくわかんないけど黒いのがブアーッ!て……」

 

黒いの?なんだそれ…………

 

 

 

 

 

 

 

「と、とにかく屋上だな!?」

 

 

俺は天井の穴の真下まで行き、地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上に着地し、周囲を見渡す。

 

 

やはりどこかで誰かが戦っているようだ。マミさんか?

 

 

 

 

 

「きゃああああああ!!」

 

 

「!?」

 

俺の真横を物凄いスピードで何かが飛んできた。

 

地面にゴロゴロと転がったソレは……

 

 

「マミさん!?」

 

 

「て、天空寺君!?無事で良かった……!今すぐ美樹さん達を連れて逃げて!」

 

「え?どうして……」

 

「いいから!」

 

 

マミさんはそれだけ言うとまたどこかに飛び上がってしまう。

 

その方向に視線を向けると、そこには…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ……あれ……」

 

 

そこにいたのはマミさん、スペクター……暁美。

 

 

そしてその三人を相手に圧倒する…………''影''。

 

 

 

「化け物…………」

 

俺は自然にそう声が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむら……!ここは一旦…………!」

 

「そうね……!引きましょう!」

 

 

ほむらはそう言って、腕に取り付けられた盾を操作した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「はっ……!」

 

 

気付いたら俺は変身が解かれていて、河川敷に立っていた。

 

 

「あれ?ここは……?私達さっきまで廃墟にいたよね?」

 

「何が何だか……」

 

隣にはさやかとまどかとマミさんが立っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

前方に視線を向けると、見滝原中学の制服を着た暁美と、スペクターが立っていた。

 

 

 

 

 

「とりあえず……全員助かったようね。」

 

安心しているのだろうか。暁美が小さくため息を吐いた。

 

 

スペクターはゴーストドライバーに手を伸ばし、スペクターゴーストアイコンを取り出す。

 

 

 

《オヤスミー》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!?お前……!!」

 

スペクターが変身を解き、その姿を露わにした。

 

 

そいつは思ってもみない人物だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「深海……雄也…………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さあ今回出てきた黒い影は前の話で魔法少女をムッコロしちゃった人なのですが……誰なんだろうねこの人。

それにしても意外と話が進まない。これじゃあサプライズラビットとのコラボもも少し先か……(泣)


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仮面少女【挿絵あり】


今回は新キャラが登場!


 

「お前も……仮面ライダーだったのか……!?」

 

 

俺は目の前にいるクラスメイトを見据える。

 

仮面ライダースペクター……二度も俺に襲いかかってきた仮面ライダー。その正体はクラスメイトの深海雄也だった。

 

 

それに暁美ほむら。

 

こいつもなぜかスペクターと行動を共にしているみたいだ。

 

 

 

「君は……」

 

キュゥべえは雄也を見た途端に驚愕の声を上げた。

 

 

「ほむらちゃんに……えっと、深海君?」

 

「どうしてあんた達が!?」

 

まどかとさやかも驚いているようだ。暁美はともかく、雄也まで仮面ライダーだとは知らなかったのだから。

 

 

 

でも……よりにもよってスペクターかよ……!

 

 

 

 

 

 

「あなた達、一体何をしたの?」

 

変身を解いたマミさんが暁美と雄也を交互に見てから尋ねた。

 

 

「あなた達を助けた。それだけよ。」

 

「何の為にだ?」

 

暁美はよくわからんが、雄也がスペクターって事は……こいつは俺のアイコンを奪おうとした。ならなんでわざわざ俺達を助けた?

 

そもそもさっきの黒いのは…………?

 

 

 

 

「それをお前達に言う必要はない。無駄なだけだ。」

 

雄也の言葉は、教室で話しかけられた時よりも冷たく感じた。

 

だけどその中にもはっきりとした決意のような物を感じる。

 

こいつは何か目的があるのか……でないと俺のアイコンも奪おうとしないだろうし。

 

 

 

 

 

「そう……とりあえずお礼は言っておくわね、でも暁美さん……さっきのは何?」

 

マミさんの言葉に息を飲む。

 

そうだ、あの黒い化け物は何か。人型をしてたけど……とても人間とは思えない殺気を発していた。

 

 

それと、強い魔力。明らかにさっきの眼魔よりも遥かに……

 

 

 

 

 

「……それは…………」

 

「俺達もよくわからない。ただ言える事は、魔法少女と仮面ライダーを殺して回っている、という事だけだ。」

 

 

暁美が言葉に詰まっていると、雄也が庇うように説明してきた。

 

 

 

 

「魔法少女と仮面ライダーを……殺す…………!?」

 

さやかが少したじろぎ、まどかはブルリと震えた。

 

 

 

「どういうことだよ!」

 

魔法少女と仮面ライダーを殺すって……イカれている。ただの殺人鬼じゃないか!!

 

 

「アレもキュゥべえと契約した人間ってことなの?」

 

マミさんはキュゥべえに視線を向ける。

 

キュゥべえは雄也の方を向きながら言った。

 

 

 

「わからない……少なくとも僕が契約した子達の中にはあんな奴はいなかった。……深海雄也、暁美ほむら、君達もね。」

 

「「!?」」

 

「…………」

 

 

どういう事だ……?暁美と雄也がキュゥべえと契約してない…………?

 

ならどうしてこいつらは魔法を使える?

 

 

 

 

「…………行きましょう雄也、これ以上は話しても不毛よ。」

 

「わかった。」

 

 

「っ……!!おい待て!!うっ…………!?」

 

引き止めようと、雄也の肩に手を置いた瞬間、腹部に鈍い痛みが走った。

 

顔を上げると、雄也は拳を作り、見下すように言い放ってきた。

 

 

「いずれお前から全てのアイコンを奪う。その時は覚悟をしておけ…………甘ちゃん。」

 

「お前…………!!」

 

 

ふざけるな。奪われてたまるか。

 

そう言おうとした時には、既に二人は見えないところまで去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

殺せ殺せ殺せ………………

 

 

 

 

魔女を殺せ…………眼魔を殺せ………………………

 

 

 

 

 

 

 

みんなを守らないと………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでみんなが幸せになれるだろう……………………………?

 

 

 

 

 

 

 

 

『なあ?そうだろう…………幽斗?』

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

朝が来た。

 

 

久しぶりに寝覚めが悪い。

 

 

 

 

「学校行かなきゃ…………」

 

 

こんなに学校行きたくないって思ったのは初めてだ。

 

クラスには暁美と雄也がいるし…………ああもう。気にしない事にしよう。それが一番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通る道を行き、校門の前まで来ると、見覚えのある後ろ姿が見えてきた。

 

女子生徒が三人、そのうちの一人の肩には一匹の白い動物が乗っている。

 

 

少し驚かせてやろう…………

 

 

 

 

《おはよう二人共おおおおおおおおおおおおっ!!!!!》

 

テレパシーを大音量で送る。

 

 

「「ひゃあ!?」」

 

 

遠くで二人の女子生徒が飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

「?お二人共、どうかしましたの?」

 

「ううん!何でもないよ!」

 

 

《幽斗……あんたねえ!》

 

後ろを振り向いたさやかが睨んできた。おお怖い。

 

 

 

 

《やあ、眠気が覚めましたか?居眠り魔のさやかさん!!》

 

《余計なお世話よ!》

 

《ちょっと二人共……喧嘩はダメだよ……》

 

 

 

 

まどか達の方へ駆け寄る。

 

 

あれ、この子は確か…………志筑さんだっけ?

 

まどかとさやかと一緒にいた女の子と目が合う。

 

 

「あら、おはようございます天空寺君。」

 

「おはよう志筑さん。」

 

志筑仁美。

 

こうやって会話するのは初めてだ。

 

彼女は容姿端麗で男子からの人気が高い美少女。

 

いつもお嬢様口調で話している……まあ、実際お嬢様なんだろうけど。

 

 

 

 

「あれ?どうしたの幽斗?仁美のことじっと見つめちゃって!」

 

「別に見つめてたわけじゃないんすけど…………」

 

「競争率高いよー!狙うんだったら別の女子にしときな!あ!でもまどかは私の嫁だからダメね!」

 

「お、おう。」

 

朝から元気だなさやかは……少し羨ましくなるくらい。

 

 

 

《何だか元気ないみたいだけど……大丈夫?》

 

テレパシーでまどかの声が送られてくる。

 

 

《大丈夫、ちょっと疲れてるだけ……》

 

やっぱり少し疲れてるように見えるかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

''疲れてるみたいだな。今日は休んどけよ。''

 

''そうよ。もうすぐ奴が来るんだから、それに備えといて。''

 

''今日のグリーフシード集めはボク達でやっておくからさ!''

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!!」

 

「……?幽斗君?」

 

「誰だ…………」

 

「ちょっと幽斗?」

 

「えっ……?ああ、ごめん、ぼーっとしてた…………」

 

 

 

今の……声だけじゃない。何か……誰かが見えた。はっきり……!

 

 

 

「皆さん?早く行かないと遅刻してしまいますわ……」

 

「ああ!ごめん仁美!ほら!あんた達も早く!」

 

「え?う、うん!」

 

 

さやかに手を引っ張られ、俺とまどかと志筑さんは走って校舎を目指した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ああもう……しつっこいなぁ!!」

 

せっかく学校が終わって、今日は家でのんびりしようと思ったのに!

 

なんだろう、この黒い人。さっきからずっとボクを追いかけてくる。ストーカーかな?ボクのファンなのかな!?

 

 

 

 

 

 

「怖いけど……追い払うかな……おっと!勇気、勇気…………」

 

 

勇気を出さなきゃね!

 

 

 

 

「殺す…………全て…………」

 

 

黒い人が低い声で物騒なことを言ってきた。

 

 

「えぇ……殺されるのはやだなぁ…………」

 

 

そんな事を言ってると、黒い人の攻撃がボクのほっぺたを掠った。

 

…………ちょ、女の子の顔にパンチしようとするなんて。

 

 

 

「怒ったよ!」

 

ああでも……なんかやりにくそうだな…………やっぱり今回は逃げよう。

 

 

 

「力を貸してね……卑弥呼様…………」

 

そっとポケットの中のアイコンに触れる。こうすると安心するのだ。

 

 

 

 

 

 

「!?……お…………まえ……は…………」

 

 

ん?なんか黒い人の様子が…………

 

 

「お前……だれだっ………け…………?う''あ''…………!!」

 

 

……?急に苦しみだしたよこの人。

 

襲ってこないならほっといてもいいかな。

 

 

 

 

「よくわかんないけどじゃあね!もう二度と女の子の顔を殴ろうとしないこと!いい!?」

 

本当に聞こえてるかわからないけど、とりあえず警告!

 

私は優しいから見逃すけど、次に女の子を追い回したりしたら警察のお世話になっちゃうからね!私は優しいから見逃すけど!!!ここ大事!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ごめん、私病院寄ってくわ。先帰ってて!」

 

「え?それなら待ってるけど……」

 

「いいっていいって!二人っきりでラブラブしながら帰って!ほらほら!」

 

「「そんなんじゃない/もん!!」」

 

 

ということでさやかは病院に友人のお見舞いをしに行った。

 

俺とまどかは二人で帰宅することに…………

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

気まずい。

 

 

思えばまどかと二人で話すのは初めてだ…………いつもはさやかが話の中心になってくれてたからな…………

 

 

 

「え、えーと……まどかはさ、魔法少女になる気はあるの?」

 

もしくは仮面ライダー、だが。

 

 

「うーん……どうだろう。まだわからないの。」

 

「まあ、焦らないように良く考えることだな。」

 

「うん……でも私、魔法少女になれたら……それだけで願い事が叶っちゃうかな〜って……」

 

 

まどかは少し落ち込み気味で話し出した。

 

 

 

「?どういうことだ?」

 

「私って……何の取り柄も無くて……みんなの役に……魔法少女になってみんなを守れたら、それだけで十分幸せなんだ。」

 

 

おおう……天使かこの子は。ピュアすぎるだろう。今時こんな中学生は絶滅危惧種みたいなもんだよ。

 

 

 

 

「でも、どんな願いも叶えられるんだぜ?俺だって死にかけだったのがこの通り!」

 

胸をドンッと叩き、張る。…………少しむせた。

 

 

 

「ついでみたいなものだよ。魔法少女になるのが願いなら、それにもう一つ願いが叶えられるってことになるんだからさ!何でもいいから願ったほうがいい!」

 

 

「あはは、やっぱりそうだよね。」

 

 

 

………………ん。

 

ポケットに手を当てる。…………近くに何かいる。

 

 

 

アイコンを取り出す。昨日のうちにグリーフシードで浄化しといたからピッカピカだ。

 

 

「やっぱり……魔女の反応!」

 

「え!?」

 

「行かなきゃ!」

 

「わ、私も!」

 

 

駆け出すのと同時にまどかが後ろについてくる。

 

 

 

 

この反応はかなり近い。

 

 

「んん…………?複数の魔力反応…………?」

 

魔法少女だろうか。とにかく急ごう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

魔女の反応はとある裏路地から出ていた。すでに魔女の結界への扉が開いている。

 

 

 

「あれは…………?」

 

結界の入り口の前に、見滝原中学の制服を着た女の子がいる。

 

 

「あ〜……仕方ない……やるかぁ……」

 

「君!危ないから下がって!」

 

「え?」

 

「こっちに!」

 

まどかが女の子の手を掴み、引き寄せた。

 

 

 

「ちょ、ちょ、ちょっと、お姉さん誰?あ!そこのお兄さん!それ危ないよ!」

 

 

それはこっちのセリフだ!と言いたいところだが、コントをしてる暇はない。

 

 

 

ゴーストドライバーを出現させ、アイコンを装填する。

 

《アーイ!》

 

 

「え……?え……?」

 

まどかの隣で女の子が声を上げて驚く。

 

ああ……しまった。一般人の前で変身を…………まあいっか!

 

 

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

「変身!」

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

 

ゴーストに変身っと。

 

 

 

 

「えええーーーーーーー!?」

 

女の子が大きな口を開けて叫んだ。

 

驚くのも無理もない。いきなりこんな奴が出てきたらそりゃ…………

 

 

 

 

 

「仮面ライダーだ!!」

 

 

………………ぬ?

 

 

 

「な、なんでその名前を知って…………!?」

 

女の子はまどかから離れて、俺の隣に移動した。

 

 

 

「なあんだ、お兄さん仮面ライダーだったんだ……なら好都合!一緒にこいつを倒そう!」

 

 

女の子は腰に手をかざすと…………

 

 

「ええええええええええええ!?!?」

 

 

なんとゴーストドライバーを出現させた。

 

 

ほ、本当に女の子も仮面ライダーになれるのか…………!!

 

 

 

「さあ!行くよ!」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

女の子はピンクに近い赤色をしたアイコンを取り出し、スイッチを押した。

 

 

そのアイコンには「B」の文字が。

 

 

 

 

 

ゴーストドライバーに装填し、手慣れた手つきでレバーを引いている。

 

 

《アーイ!》

 

 

《バッチリミヨウ!バッチリミヨウ!バッチリミヨウ!》

 

 

「変身!」

 

 

自身に満ちた表情でレバーを押し込む女の子。

 

 

《カイガン!ブースト!ゴーゴー!覚悟!奮い起つゴースト!》

 

 

可愛らしさを感じる小さな角が三本。

 

薄く赤みがかった銀色のパーカー。

 

そしてメタリックブラックのボディ。

 

 

 

 

「仮面ライダーブースト参上!……て、どうしたの?お兄さん?」

 

「え、いや……なんかすんません。」

 

 

恥ずかしい。

 

魔法少女……じゃなかった。仮面ライダーとも知らずに…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおお行くぞおおおおおおお!!!」

 

「張り切ってるね〜!ボクも負けてられないな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、''今回''の俺と、遠野優香との最初の出会いだった。

 

 

 

 

 





オリキャラの優香ちゃん登場!
仮面ライダーブースト…………どっかで聞いたことのある名前だな(すっとぼけ)
この子が今後どう幽斗達に関わるか、乞うご期待。


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想いは募る


原作のまどマギの話の展開を少し弄ります。


 

 

上条恭介。

 

あたしの幼馴染。

 

小さい頃からヴァイオリンが得意で、私もよく発表会を観に行ってた。

 

でも…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、やあさやか。」

 

「また来ちゃった!」

 

 

 

恭介の左手は事故に遭って以来、動かなくなってしまった。もちろんヴァイオリンも弾けるわけがない。

 

でもあたしはいつか恭介の腕が治ると信じてる。

 

 

 

 

「はい、これ。」

 

前にデパートで見つけたCDをベッドで横になっている恭介に渡した。

 

「いつもありがとうさやか。さやかはレアなCDを見つける天才だね!」

 

喜んでもらえたみたいだ。

 

恭介もまた、いつか自分の腕が治ると信じているのだ。

 

 

「この人の演奏は本当に凄いんだ。さやかも聞くかい?」

 

 

と言って恭介は片方のイヤホンを差し出してくる。

 

「えっと……」

 

イヤホン片方ずつかあ……なんか恋人同士みたいだな……なんて……

 

イヤホンを付けると、恭介との距離がさらに近付いて、あたしの顔が紅潮していくのが自分でもわかった。

 

 

 

 

 

「…………」

 

恭介は泣いていた。

 

自分の腕が動かない事を確認するように、左手に力を入れてるようにも見えた。

 

あたしは流れてくる音楽なんかを聞かないで、恭介の横顔を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして恭介なんだろう。

 

 

例えばあたしの腕。

 

あたしの腕がいくら動いたって、何の役にもたたないのに。でも恭介は違う。

 

「あたしの願いで恭介の腕が治るのなら……」

 

 

あたしの願いで恭介の腕が治ったとして、それを恭介はどう思うのだろう。

 

 

あたしは''ありがとう''って言われたいの?

 

それとも、それ以上の事を言って欲しいの?

 

 

「あたしって……嫌な子だ。」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

《ダイカイガン!ブースト!オメガドライブ!》

 

「そりゃあああああっ!!!」

 

仮面の下で叫びながら魔女に拳をぶち込む少女。

 

 

かなり戦闘慣れしている。

 

もしかしたら俺より……いや、雄也と同じくらい…………

 

 

 

 

 

 

「ほらお兄さん!ぼーっとしない!」

 

「え!?お、おう!」

 

 

俺はゴーストドライバーのレバーを操作し、必殺技を発動させた。

 

《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》

 

 

「くらえええええええっ!!!」

 

巨大な斧を持つ魔女に、俺の跳び蹴りが炸裂した。

 

 

 

 

 

「やるね〜えーと……仮面ライダーオレさん?」

 

「ゴーストだよ!」

 

そういえばなんで俺のアイコンの名前は''オレ''なんだろう…………

 

 

今はそんなこと気にしている場合じゃないが。

 

 

 

 

 

「…………!またか!」

 

今戦っている魔女。

 

こいつはいくら倒しても再生してしまう。キリがない。

 

 

 

「っくそ!!」

 

巨大な斧を振り上げ、突進してくる魔女を避ける。

 

 

と思ったらなんと魔女が二つに分身した。

 

 

「んなあっ!?」

 

「危ない!」

 

《サングラスラッシャー!》

 

 

ブーストがベルトから赤い剣を取り出し、二体の魔女を切り裂いた。

 

が、やはりまた新しい肉体が現れる。

 

 

 

 

 

 

「あーもう、めんどくさいなあ。」

 

頭を掻きながらブーストが愚痴を吐いた。

 

 

 

この魔女……いくら倒しても再生する……一体どうすれば………

 

いや、もしかしてこいつは''魔女じゃない''?

 

 

 

 

「!」

 

そうだ、あの斧!アレはさっきから再生する事なく、同じ物が使われている!

 

 

 

 

「君!斧を狙え!」

 

「え?斧?」

 

「そうだ!この魔女の本体は斧だ!アレを壊さない限り体は再生し続けるんだ!」

 

 

魔女の攻撃を回避しながらブーストに説明する。おかげですぐに息が上がってしまった。

 

 

 

「こんのやろっ!!!」

 

エジソンゴーストアイコンを取り出し、ゴーストドライバーに装填した。

 

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

《カイガン!エジソン!エレキ!ヒラメキ!発明王!》

 

 

ガンガンセイバーをガンモードにし、ゴーストドライバーにかざす。

 

 

 

「気を付けろ、当たると痛いぞ!」

 

痺れさせて……動きを止める!!

 

 

《ダイカイガン!》

 

《ガンガンミナー!ガンガンミナー!ガンガンミナー!》

 

《オメガシュート!》

 

 

トリガーを押し、ガンガンセイバーから電撃を纏った太い光柱が放たれる。

 

 

魔女はそれを回避しようとするが、直撃は避けれたもの、周りに拡散された電撃に当たり動きが止まった。

 

 

 

「今だ!」

 

「了解!」

 

ブーストはサングラスラッシャーのカバーを上げ、二つのアイコンをセットした。

 

 

《マブシー!マブシー!マブシー!》

 

《ダイカイガン!》

 

 

 

ブーストは腰を低く構え、力を溜める。

 

 

「あっつ…………!」

 

彼女の周りに高熱が発生し、俺はどっと汗が出てくるのを感じた。

 

 

 

 

「はあっ!!」

 

《オメガシャイン!》

 

 

 

サングラスラッシャーの刀身が赤いオーラを纏い、伸びる。

 

そのまま巨大な刃で斧を両断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界が崩れ、周りの光景が現実の世界へと戻る。

 

 

 

俺とブーストは変身を解き。同時にため息をついた。

 

 

「お疲れ様。」

 

結界の外で待機していたまどかが駆け寄ってくる。

 

 

 

「手伝ってくれてありがとう!これ、あと一回くらい使えるからどうぞ!」

 

そう言ってブーストに変身していた女の子が一つのグリーフシードを差し出してくる。

 

 

「いいの?」

 

「うん!ボクはもう使ったしね!」

 

早いな。

 

まあくれるっていうんなら……素直に貰っておこう。

 

グリーフシードを受け取り、オレゴーストアイコンの穢れを取り除く。

 

 

「そういえば自己紹介がまだだったね!ボクは遠野優香!見滝原中学の一年生だよ!その制服、お兄さん達も見滝原だよね?」

 

一年生ってことは、俺とまどかより一つ下か。

 

「ああ、俺は天空寺幽斗。見滝原中学の二年生だ。よろしく。」

 

「私は鹿目まどか。幽斗君と同じで二年生だよ。」

 

「先輩だったんだ!」

 

優香は大袈裟に驚く仕草を見せた。

 

先輩とわかっていてもフレンドリーに接してくるその態度、俺は好きだ。

 

 

 

「幽斗と、まどかね、うん!覚えた!じゃあ明日も会えたら学校でね!」

 

 

優香はそう言うと高くジャンプして建物の上に飛び乗った。魔法で身体強化でも付けているのだろうか。

 

 

「なんか、元気な子だったね。」

 

「ああ……」

 

 

この街には一体……何人の魔法少女と仮面ライダーがいるんだ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

遅くなってしまったので、俺はまどかを家に送った後に帰宅する事にした。

 

 

「じゃあ、また明日な。」

 

「うん。バイバイ幽斗君。」

 

 

挨拶を交わした後、まどかは自宅に入っていく。初めて来たけど、ずいぶん立派な家だ。

 

 

 

 

 

「はあ…………」

 

ため息を吐きながら暗い道を一人で歩いた。

 

 

「仮面ライダーって……結構いたんだな。」

 

キュゥべえは少数って言ってたけど……あれは魔法少女に比べて、という事なのだろうか。

 

仮面ライダーが他にもいるっていう事は……その分アイコンの争奪戦も激しいわけで…………

 

 

「うーん…………別にこれ以上叶えたい願いとか無いしな……別に集めなくてもいいかもな。」

 

戦力の増強って事に関しては役に立つけど。

 

 

 

「やあ、幽斗。」

 

急に声をかけられて少し体が震えた。

 

この声はキュゥべえか。

 

 

「どうしかしたのか?」

 

キュゥべえは俺の肩に乗ってきて淡々と話し出した。

 

 

「君に伝えておこうと思ってね。新しいアイコンの予感だ。」

 

「え?」

 

新しいアイコンの予感?キュゥべえはアイコンの場所……つまり眼魔の居場所がわかるのか?

 

 

「予感ってどういう事だ?」

 

「最近、変わった奴を見つけてね。なんでも別の世界に引きずり込む魔女がいるらしい。眼魔の可能性もある。」

 

「そんな情報をどこで……」

 

「既に魔法少女達の間で噂になっているからね。」

 

 

別の世界って…………結界とは違うのだろうか?

 

少し興味が湧いてきたな。

 

 

 

「わかった、頭に入れておく。」

 

「わかったよ。」

 

「ああ、あとキュゥべえ。」

 

「なんだい?」

 

前から気になってきた事があったのだ。

 

 

 

「スペクター……雄也と、あと暁美。こいつらについて知っている事を話してくれないか?」

 

 

あの二人には何か気になる事があった。

 

なぜアイコンを狙うのか。なぜ邪魔をしてきたのか。

 

 

 

 

「それは正直僕にもわからない。彼らはとびっきりのイレギュラーだ。」

 

イレギュラー……

 

そうだ、キュゥべえはあいつらと契約した覚えが無いと言っていた。それも気になる。

 

 

 

「一度、あいつらともちゃんと話してみたいな。」

 

 

 

 

 

 

この時、俺はまだ思いもしなかった。

 

あいつらが戦う理由に気づいた時、俺は……いや、俺達は、

 

 

 

 

 

 

 

絶望のどん底に立たされたのだ。

 

 

 

 

 




今回からさやかの話をちょくちょく入れていこうと思います。
キュゥべえが言っていた別の世界に引きずり込む、というのは……とりあえず眼魔の世界ではないです。



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忘れられた縁


ネクロムかっこよすぎ。ゴーストのライダーデザインは本当にどストライク。


 

 

「ふう……」

 

たった今倒した魔女が落としたグリーフシードを拾い、ポケットに突っ込んだ。

 

もう大分ストックがあるし、しばらくは魔女を倒さなくても大丈夫だろう。

 

「明日は休日だし……これでゆっくり休めるよ〜!」

 

なんだか疲れが溜まっている気がする。最近は眠っても起きた時にはだるい。

 

「ボクも歳かな〜……なんて。」

 

まだまだ、ピチピチの中学一年生です!

 

 

 

「帰ろ。」

 

 

ボクは家に続く暗い道を一人で歩いた。もう深夜なので他に人はいない。

 

 

 

 

「いない……のかな?」

 

気のせいだろうか。さっきから誰かに後を付けられてる感じがする。

 

この前の黒い人といい……なんだろう、さすがに怖いなぁ。

 

 

 

「誰かいるんでしょー!?恥ずかしがらないで出てきてよー!」

 

 

意外にも、ボクの言葉に応じるように、その人物は姿を現した。

 

 

 

 

「…………」

 

「えーと……誰?」

 

 

ものっすごく暗い感じの男の人が出てきたよ……あれ、でもこの制服…………

 

 

「えーと、見滝原中ですか?」

 

「…………遠野優香だな?」

 

「はい?」

 

うーん……ダメだこの人、質問を質問で返しちゃうタイプか。

 

ここは上手くスルーを…………

 

 

 

「ごめんなさい。ボク、知らない人に名前教えちゃダメって言われてて…………」

 

「アイコンを持っているな?」

 

ボクの言葉を無視し、その人はさらに続ける。

 

 

「全て渡してもらう。」

 

「あいこん?」

 

あちゃー…………しまった、この人もしかして……もしかしなくても仮面ライダーか。

 

アイコンを狙う仮面ライダー……たまに見るけどここまでストレートな人は初めてだなあ。

 

 

 

「い、や、で、す。」

 

ボクはブーストゴーストアイコンを取り出し、前に突き出した。

 

ブーストゴーストアイコンから熱を感じるほどの光を目の前の男の人に向けて放つ。そして…………

 

 

 

 

「ばいばい、です!」

 

その隙に全力ダッシュ。

 

 

 

「…………あれ?追いかけてこない…………」

 

追いつけないと思ったのだろうか。その人はその場に立ち止まったままこっちを見つめていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

今日は休日。学校も無い。

 

 

「やる事も、無い。」

 

 

俺は朝から何もすることの無い虚無感に陥っていた。

 

いや……眼魔とか魔女探せよって思うかもだけど、なんかそれすらやる気が起きない。

 

今は朝の五時半。こういう日に限って早起きしてしまうとは。

 

 

「それにまさか……夢の中でも戦う事になるなんて…………」

 

そう、今日見た夢は魔女と戦う、というものだったのだが……

 

なんか……気付いたら木で出来た街に飛ばされてて、うさぎがいて………結界に入りそうになった女の子がいて…………魔女倒して…………

 

 

 

夢の中で体を動かすのは良くないと聞いたことがある。疲れが取れないのもこのせいかも。

 

 

 

「決めた。今日は何もしないで一日中無駄にして過ごそう。」

 

それが一番疲れを取る方法だと俺は思っている。うん、きっとそれが一番だ。

 

独り言をぶつぶつ言ってると段々虚しくなってきたので、とりあえず二度寝する事にした。

 

ベッドに飛び込み、掛け布団にミノムシのように包まる。…………少し暑いな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ポーン

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

「んあ!?」

 

部屋に響く呼び鈴の音で目が覚めた。

 

時計を確認すると、もう一時二十分近く。昼過ぎだ。

 

 

「は、はーい。」

 

寝起きなので声がガラついている。それに頭には物凄い寝癖。

 

急いで玄関まで走り、ドアスコープを覗くと、同級生と先輩の姿がそこにあった。

 

 

 

「まどかとさやかに……マミさん?一体何の用だ?」

 

とりあえず鍵とドアを開ける。寝間着で寝癖がひどいままだが、問題ないだろう。

 

 

「こんにちわ天空寺君……って、まだ寝てたのね……ごめんなさい。」

 

と苦笑いしながら言われた。いいじゃないか昼起きだって。因みに最高記録は夜の七時まで寝てた事がある。

 

 

「起きんのおっそいわねあんた!」

 

「あはは……幽斗君にとってはおはようだね。」

 

 

三人は、休日なので当然だがいつもの制服ではなく私服だった。それぞれの個性が出ている。

 

 

 

 

 

「で、今日はなんで俺の家に?」

 

「これからあたし達買い物行く所なんだけど……まどかがついでに幽斗も誘ったら〜って。」

 

「お、大勢で行った方が楽しいと思って。」

 

 

買い物……買い物ねえ…………どうしよう、俺的には家でダラダラしたい気分だけど…………

 

いや待て、よく考えろ。この街に来る前を思い出せ。彼女いない歴=年齢の俺が女子と買い物できるんだぞ?

 

これはもしかしてチャンス!?

 

 

「わかった、すぐ準備してくるから待っててくれ。」

 

 

すぐに簡単な私服をクローゼットから引っ張り出し、アイコンを鞄に詰め込む。

 

大して持って行く物とか無いな。

 

 

 

 

 

「他に持って行く物……よし!おまたせ!」

 

 

すぐさま玄関に戻り、靴を履く。

 

 

 

「で、どこに行くの?」

 

「いつものデパートよ。」

 

 

デパート…………まどか達が初めて魔女に襲われた場所だな。俺もあまりいい思い出が無い。

 

まあ今回はマミさんと俺が付いてるし安全か。

 

「よし行こう!」

 

「幽斗君寝癖…………」

 

「あっ」

 

「抜けてるわね…………」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

休日だからなのか。デパートは人で溢れかえっていた。

 

賑やかなのは好きだけど人混みは苦手なんだよな…………

 

 

「あ、あたしちょっとCD見てくる。」

 

「うん、また上条君の?」

 

「えへへ……まあね。」

 

まどかとさやかがそんなやり取りをしていた。

 

上条って…………誰だ?

 

「そういえば幽斗君って、上条君とは会ったことないよね?」

 

俺が首を傾げているとまどかが説明してくれた。

 

「今は入院してるんだけど……私達と同じクラスなんだよ。」

 

「入院…………」

 

怪我か病気か。

 

同じクラスなら一度は会ってみたいな。転校生としてクラスの人達全員に挨拶したいし。

 

 

「美樹さん、何だか嬉しそうね。」

 

「え、ええ!?そんなことないっすよ!」

 

マミさんの言葉にさやかが頬を赤く染める。

 

ははーんなるほど…………さやかの思い人ってわけか?わかりやすい。

 

 

 

「そうね……それじゃあ一度別行動しましょうか?1時間後、ここに集合しましょう。」

 

「「「はーい!」」」

 

 

と、さやかはCDショップ。マミさんは化粧品売り場に。まどかもどこか行きたい場所があるのか、エスカレーターに向かって行った。

 

 

 

俺はというと…………

 

 

「そういえばやる事ないな…………」

 

せっかくデパートまで来たってのに、やる事がないなら家でダラダラしてた方がマシなんじゃ。

 

その場に突っ立ってるのも他の客の迷惑になるので、とりあえず適当に回ろうと歩き始めた。

 

 

 

…………やっぱり人が多い。

 

俺が前まで住んでた街はここほど都会じゃなかった。田舎と都会の中間くらい、つまり普通。

 

「ん?」

 

ふと視線を向けた先に、男が二人と、女の子が一人。

 

女の子の方はナンパされてるみたいだ。

 

「都会だなあ…………」

 

そんな事を呟くと同時に、俺はある事に気がついた。女の子の顔。

 

「あの子は確か…………」

 

確かに見覚えのある顔だった。

 

…………そうだ!あの子だ!この前の……えーと…………仮面ライダーブースト!確か……遠野優香、だっけ?

 

 

 

 

「いいじゃんいいじゃん、一緒に遊ぼうぜ?」

 

「あはは……あの、そろそろボク行かないと…………」

 

「''ボク''だってよ!カワイー!!!」

 

 

…………ここまでベタなナンパは初めて見た。

 

見ていて気持ちのいいものではなかったし、彼女に聞きたい事もあったからとりあえず助けてみる事にした。

 

 

 

三人の近くまで行き、わざと転んで小銭をばら撒く。

 

 

「うわっと!すみません!」

 

「うわ!…………気を付けろ馬鹿野郎!」

 

「!」

 

俺の意図に気付いたのか、優香はすぐさま踵を返して走り出した。

 

 

「あ!おい待て!…………てめえのせいで!ってあれ!?」

 

「どこ行きやがった!?」

 

絡まれるのは勘弁だ。

 

俺は人混みに紛れてナンパ野郎共から離れた。回収しきれなかった小銭があるが…………まあいっか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あ、いたいた。」

 

数分後、向こうも俺を探していたのか、そんな事をいいながら優香は俺に歩み寄ってきた。

 

「さっきはありがとうね、ああいう人達はしつこくてさ…………」

 

「大丈夫。たかが小銭だし。」

 

「え?」

 

「いやなんでもない。」

 

近くにあったベンチに座る。優香はそのすぐ隣に腰掛けてきた。

 

 

 

「幽斗……だよね、仮面ライダーオレの。」

 

「ゴーストね。」

 

「ああ、そうそうそれ。」

 

わかってて言ってるんじゃないかと疑いたくなる。

 

「ボク、他の仮面ライダーや魔法少女に会ったら、聞きたい事があったんだ。」

 

俺が質問しようとすると、優香は先に話を切り出してきた。

 

レディーファーストってことで。

 

 

 

「幽斗はどんな願いで仮面ライダーになったの?」

 

この質問、まどかにも聞かれたよな確か…………

 

 

 

「死にかけだったのを救われたんだ。今ではこの通り。」

 

手を大きく広げて見せる。

 

今思うと、あそこにキュゥべえが来なかったら…………俺は今ここに存在しないことになる。

 

やっぱりキュゥべえには感謝だな。

 

 

 

「優香はどんな願いなんだ?」

 

「ボクは……えーと……うんと…………」

 

 

前に会った時はもっと活発なイメージがあった優香だが、今はやけに大人しい感じがする。

 

まずいこと聞いちゃったかな?

 

 

「ごめんね、幽斗に聞いておいてなんだけど…………恥ずかしいから勘弁!」

 

両手を合わせて頭を下げてきた。

 

 

「いや、別にいいけど…………」

 

「じゃあね!話してて楽しかったよ!」

 

「あ、ちょ…………」

 

優香はそう言うとすぐに立ち上がり、駆け出した。

 

あっという間に人混みに隠れて見えなくなった。

 

 

 

「アイコンの事とか…………色々聞きたかったんだけどな。」

 

まあいいか。確か優香も見滝原の生徒だ。学年は一つ下だが、もう会えないというわけではないし。

 

 

 

 

「あ!もう1時間経ってる!」

 

 

腕時計を見ると既に集合時間の五分前。少し急ぐ必要がある。

 

 

「ん…………?」

 

 

ベンチから立ち上がると同時に、全身に寒気が走った。

 

 

誰かに見られている。

 

 

それもすごい殺気を放って。

 

 

 

周りを見るが怪しい人物はいない。

 

 

「気のせい、か…………?」

 

そう思いたかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「え?恭介に会いたい?」

 

「うん。」

 

デパートからの帰り道。

 

さやかは病院に行って恭介のお見舞いに行くという事なので、俺もついでに挨拶しに行こうと思った。

 

「別にいいけど……」

 

少しだけさやかが残念そうな顔を浮かべる。

 

「あはは……(多分さやかちゃん、上条君と二人きりになりたかったんだろうな……)」

 

 

 

 

「まどか、どうする?あんたも来る?」

 

「うーん……予定もないし、お邪魔じゃなければ行こうかな。マミさんはどうします?」

 

「遠慮しておくわ、私がいたらみんな気を使っちゃうでしょうし。」

 

 

という事で、病院には俺とまどかも付いて行く事になった。

 

上条……どんな人なんだろうか。

 

さやかが買ってきたCDはクラシックばかり…………そういうのが好きな人なのかな?

 

 

 

 

マミさんと別れ、俺達は病院に向かった。

 

予想はしていたが、その病院はかなりの大きさがあった。前に住んでた所では、こんな大きな建物はあまりなかった。

 

 

エレベーターに乗り、上条がいる病室に向かう。

 

 

 

 

「上条ってどんな人なんだ?」

 

「うーん……ヴァイオリンは得意だったなあ…………」

 

なんだその今は得意じゃないみたいな言い方。

 

 

「ああそうだ。幽斗、気をつけて欲しいんだけど……」

 

「ん?」

 

「恭介の前であんまり……ヴァイオリンの話はしないであげて。」

 

「それってどういう…………」

 

 

あ。

 

入院してるって事は…………そうか、そういうことか。

 

「わかった、気をつける。」

 

さやかは一度頷いてからエレベーターの天井に視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下は窓から射す夕日で照らされているだけで、少し暗い。

 

病室に着くまで、俺達は無言だった。

 

 

 

さやかが先導し、一つのドアの前で立ち止まり、ノックをする。

 

 

「どうぞ。」

 

病室から澄んだ声が聞こえてきた。男にしては少し声が高い。

 

さやかが中に入るのに続いて俺とまどかも病室に入る。

 

窓は開いていて、風でカーテンがなびいている。そのすぐ側のベッドで一人の少年が横たわっていた。

 

 

 

「今日は友達も連れてきたけど……いいかな?」

 

「もちろんだよ、えーと……鹿目さんと……そっちの人は?」

 

「君が上条……初めまして、この間同じクラスに転校してきた天空寺幽斗だ。」

 

「ああ、君が!さやかから転校生が来たって話は聞いてたよ。」

 

なんだ知ってたのか。

 

 

「転校生としてクラス全員に挨拶したいと思ってね。」

 

「わざわざありがとう。」

 

「ああ、あと……はいこれ。」

 

さやかは持っていたCDを袋から取り出し、上条に渡した。

 

 

「さやかもいつもありがとう。」

 

「えへへ…………」

 

さやかは照れ隠しに頭を軽く掻き、咳払いをする。

 

その表情は今まで見た事ないような幸せそうなものだった。

 

……やっぱりさやかに悪い気がしてきた。すぐに退散しようかな。

 

 

 

 

 

「幽斗!」

 

「「「!?」」」

 

 

上条以外の全員が驚く。俺とまどかとさやかだけに聞こえた声だったからだ。

 

「今の……キュゥべえか?」

 

予想は当たり、病室の窓の外側にキュゥべえが座っていた。

 

 

《どうしのよ!?》

 

テレパシーでさやかが尋ねる。キュゥべえはかなり急いでいる様子だ。

 

 

 

「魔女だ!この近くに魔女が生まれかけのグリーフシードがある!」

 

《なっ……!?》

 

《近くって……どのくらい!?》

 

「この病院の駐輪場だよ!」

 

 

それは……かなりまずい。

 

このままだと病院の中にいる全員が結界の影響を受けてしまうかもしれない。

 

 

「三人とも……どうしたんだい?」

 

「恭介、ごめん!今日はもう帰る!」

 

「え?う、うん……」

 

病院の中にいる事を忘れて、俺達は全力疾走で駐輪場へ向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ここだ!」

 

グリーフシードは意外とすぐに見つかった。

 

しかしあまり時間が無い。今にも魔女が生まれようとしている。

 

 

「マミさんは帰っちゃったし…………くそ!」

 

相手は魔女一体…………俺一人でもやれるはずだ!

 

ゴーストドライバーを出現させ、アイコンを取り出す。

 

 

 

 

 

「!来るよ!」

 

キュゥべえがそう叫んだ時には、もう魔女の結界が展開され、俺とまどかとさやかは閉じ込められてしまった。

 

 

 

周りを見渡すと、巨大なお菓子があちこちにある。今立っている地面も恐らくは何かの食べ物だろう。

 

 

 

「二人とも……俺から離れないで。」

 

返事の代わりに二人が唾を飲み込む音が聞こえた。

 

 

アイコンをゴーストドライバーに装填し、レバーを引く。

 

 

《アーイ!》

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

「変身!」

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

 

 

「よし……行くぞ…………!!」

 

 

俺達は結界の最深部へと向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……!雄也!」

 

「あいつらは!?」

 

「もう結界の中よ……」

 

「急ぐぞ!」

 

 

早く行かないと、また…………二度もあんな悲劇を起こさせるわけにはいかない。

 

 

「ほむら、結界の中には誰が入った?」

 

「幽斗と美樹さやか……それとまどかも。」

 

「マミはいないか……とにかく急ぐぞ!!」

 

「ええ!」

 

 

 

ダメなんだ幽斗。今回はお前達だけじゃ勝てない。

 

 

 

「そこにいるのは……魔女だけじゃない…………!!!」

 

 

 

 

 

 





少し予告しておくと、次回でさやかを魔法少女にさせて、その次の回についに…………やっちゃいます。


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少女の決意

ついにさやかが契約!?


 

後ろにはまどかとさやか、そしてキュゥべえ。

 

みんなを使い魔達から守りながら魔女がいる結界の奥まで進まなくてはならない。

 

やっぱりマミさん呼んでくればよかったかも……

 

 

「やっぱりちょっと怖いなあ……」

 

「幽斗、あとどれくらいで魔女の所に着くの?」

 

結界の中に入ってから三十分。道は続くばかりでいつ終わりなのかわからない。

 

マミさんもいないからか、さすがに怖くなってきたのだろう。まどかとさやかがそう小さく言った。

 

 

「まだかかるかもな……」

 

バイク……はダメだ。二人までしか乗れない。

 

手っ取り早く魔女の所に行くには…………

 

 

 

 

「やっぱり……これしかないよな…………ゴーストライカー!キャプテンゴースト!」

 

 

俺がそう叫ぶと、以前のように眼の印が現れ、そこからマシンゴーストライカーとキャプテンゴーストが現れた。

 

二つのマシンは互いに引き寄せ合い、変形し、合体を始める。

 

 

「ゆ、幽斗まさか…………またアレに乗るの?」

 

「あ、これって……」

 

さやかが引きつった表情になる。反対にまどかは少し嬉しそうだ。

 

 

「早く着くにはイグアナゴーストライカーしかない。じゃないと病院の人達まで危ない事になる。」

 

「そ、そうだよね……」

 

俺は運転席部分に、まどかとさやかはその近くにしがみつく。

 

うん、俺だって怖いよこれ……怖いけどさ…………仕方ないよね。

 

 

 

「よ、よし、イグアナゴーストライカー……進め!!!」

 

命じた瞬間イグアナゴーストライカーと俺達の体が宙に浮く。

 

壁と地面をめちゃくちゃに動き回りながら奥に進んだ。

 

 

 

「ぐっ……おおおぅ…………!!!」

 

「「………………」」

 

やっぱりこれには慣れない。二人は悲鳴すら出ないみたいだけど。

 

 

「そういえばキュゥべえ、これには時間制限があるって言ってたけど…………それってどのくらいなんだ?」

 

あちこちからかかる力に耐えながらキュゥべえに聞く。

 

「うーん……大体十分くらいかな。消費する魔力が大きい分、時間も短くなるんだ。」

 

 

十分……十分ね、覚えた。この前みたいな事にはならないようにしないと。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「マシンフーディー。」

 

自らのマシンを呼び出す。

 

俺がマシンフーディーに乗り込むと、ほむらは何も言わずに後ろに跨った。

 

そして奥を目指し走り出す。

 

「前はこの辺りで邪魔が入ったが……今回はマミはいない。このまま行けるな。」

 

「気を抜かないで、巴マミがいないという事は……別の誰かが犠牲になる可能性が高いわ。」

 

「…………わかってる。」

 

 

急にズキン、と体の内側から貫かれるような痛みに襲われた。

 

「っ…………!」

 

「あなた…………まさかまた……''あいつ''と戦ったの?」

 

「……仕方ないだろ。あっちが追いかけてきたんだ。お前も気を付けろ。」

 

 

魔力で治癒してもこの傷はすぐには治らない。それくらい''あいつ''の攻撃は強力だ。

 

 

「まったく……なんて皮肉な話だ…………」

 

不幸中の幸いといったところか…………''あいつ''には以前の記憶が無いらしい。

 

そのままでいい。もしも思い出してしまったら、その時''あいつ''は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!!」」

 

 

目の前に使い魔達が現れ、道を遮ってきた。

 

マシンフーディーから飛び降り、奴らを睨む。

 

 

「やるぞほむら。」

 

「ええ。」

 

ゴーストドライバーを出現させ、スペクターゴーストアイコンを投げ入れる。

 

 

《アーイ!》

 

《バッチリミロ!バッチリミロ!バッチリミロ!》

 

 

「……変身!」

 

《カイガン!スペクター……!レディゴー!覚悟!ドキドキゴースト!》

 

 

青いパーカーゴーストを身に纏い、パーカーを片手で軽く払う。

 

ゴーストドライバーから出現したガンガンハンドを手に取り、使い魔達へ突っ込んだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ここ、か…………」

 

明らかに怪しい巨大な扉。

 

 

イグアナゴーストライカーをしまい、扉の前に立った。

 

 

「この中に……魔女が…………」

 

さやかは両手で拳を作り、強く握りしめる。上条がいる病院が心配なのだろう、少しでも早くこの魔女を倒したいはずだ。

 

 

 

「……行くぞ!」

 

扉に触れ、力を込めると簡単に開き、その先が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

周りにはやはり巨大なお菓子。ケーキが山積みになっていて、それが壁のように周りを囲んでいる。

 

中心にはありえない高さの脚の椅子が何脚か立ち、その中の真ん中の椅子には……

 

 

 

 

 

「あいつだ!」

 

キャンディの様な頭にサイズの合っていない服。

 

ぐったりとした可愛らしい見た目の、ぬいぐるみほどの大きさの魔女だった。

 

 

「キュゥべえ、二人を頼む!」

 

「わかった!」

 

キュゥべえにまどかとさやかを避難させ、俺はゴーストドライバーからガンガンセイバーを取り出す。

 

 

 

「早速……一気に決めさせてもらう!!」

 

前に向かって駆け出し、椅子の脚目掛けてガンガンセイバーを振るう。

 

「……?」

 

魔女は動かないまま、脚を失いバランスを崩した椅子から落下してきた。

 

俺はまるでバッターの様にガンガンセイバーを構え、落ちてきた魔女をそのまま吹き飛ばす。

 

 

 

「動かないか……やりやすくていい!」

 

このまま倒す。

 

ムサシゴーストアイコンを取り出し、ゴーストドライバーに装填。

 

 

《アーイ!》

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

《カイガン!ムサシ!決闘!ズバッと!超剣豪!》

 

 

ガンガンセイバーを二刀流モードに変形させ、魔女に接近する。

 

魔女を空中に蹴り上げると同時に、地面を蹴り、魔女に二本のガンガンセイバーを振りかざす。

 

 

目にも留まらぬ速度で滅多斬り。こんな事もできるムサシの力に改めて驚く。

 

 

 

「終わりだあっ!」

 

ゴーストドライバーのレバーを引き、押し戻した。

 

 

《ダイカイガン!ムサシ!オメガドライブ!》

 

 

「ふんっ!!!」

 

赤いエネルギーを纏った二つの刃を魔女に叩き込む。

 

魔女の体はズタズタに裂け、地面に勢いよく落ちて行った。

 

 

 

 

「勝ったのか…………!?」

 

あまりにも呆気ない。

 

奴は一度も動くことなく、俺の攻撃を受け続けるばかりだった。

 

 

 

 

「まあ、いいか。」

 

グリーフシードを回収しようと、魔女が落下し、煙が舞っている地点に近づく。

 

まだ本当に倒しているか確証が持てない…………この煙が晴れたら行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………!?」

 

 

 

百か千か、かなりの数の''矢''が俺に降り注いだ。

 

反応が遅れ、ガンガンセイバーでは防ぎきれず、何本かは当たってしまう。

 

 

「ぐっ…………!?」

 

別の魔女……!?いや違う、こいつは…………!!!

 

 

矢が飛んできた方向に視線を移す。

 

 

 

 

 

「!?」

 

そいつは深い緑色のマントで全身を覆い、弓をこちらに構えていた。

 

 

まさか…………また…………

 

 

 

「眼魔…………!?」

 

そんな馬鹿な。眼魔の数は少なくて、一体いても珍しいはずだ。

 

それがなんで…………この街に……ムサシも入れて二体も…………!?

 

 

 

「幽斗君!!」

 

「は…………っ!?」

 

 

まどかの声が聞こえ、咄嗟に魔女の方に顔を向ける。

 

そうした瞬間、''巨大な何か''が俺に突っ込み、空中に吹き飛ばした。

 

 

 

「がはっ…………!?」

 

 

地面に叩きつけられ、頭を打ったのか意識が朦朧とする。

 

その中で辛うじて見えたのが、眼魔の横に並ぶ蛇の様に長く、巨大な体を持つ青い舌の怪物。恐らくはさっきの魔女の第二形態か何か。

 

 

 

 

 

魔女と眼魔。俺はてっきり、奴らが敵対関係であると勘違いしていたが…………

 

 

「こいつらは…………手を組んでるってことか!?」

 

二対一。それだけでもまずい状況なのだが、その内相手の一人は魔女と比べ物にならないほどの力を持つ眼魔だ。

 

 

 

「ん…………!?」

 

眼魔は弓を上に構え、空中に矢を放った。

 

一気に周りの空気が酷く濁った様な気持ちの悪い感覚になる。

 

 

「こいつ結界の力を…………!!」

 

強めたんだ。このままでは外の世界にも影響が出てしまうかもしれない。

 

俺一人じゃ奴らは倒せない。病院の人達は…………!

 

 

 

 

「万事休すか…………!?」

 

力が抜け、立ち膝になる。

 

俺がマミさんも呼ばず、勝手に行動したせいで…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キュゥべえ!あたしと契約して!!」

 

予想外の言葉が響いた。さやかの声だった。

 

 

 

「さやかちゃん……!?」

 

「このままじゃ病院の人達が……恭介が危ないんでしょう!?」

 

「……わかった。美樹さやか、君は何を望む?」

 

 

おい、ちょっと待て。

 

そう叫ぼうとしたが声が出ない。手を伸ばすが、それにさやかは気付かない。

 

 

チャンスと思ったのか、眼魔と魔女が同時に俺に接近してくる。

 

 

 

 

「私の願いは……恭介を救いたい…………!腕も治して、あいつが幸せになれるようにしてあげたい!!」

 

 

こんな怪物達に恭介を傷付けさせない、という強い意志を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さや…………か!?」

 

俺に接近してきた眼魔と魔女が、横から割って入った剣撃を躱せずに直撃する。

 

 

俺を守る様にして、目の前に立っていたのはさやかだった。

 

白いマントを身に付け、片刃のサーベルを持った剣士のような姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前……本当に契約を…………!?」

 

「あっははは…………ここでやらないとダメな気がしてね。」

 

誤魔化すように笑うさやかに、後悔は無いように見えた。

 

今この瞬間から、さやかは魔女や眼魔と戦い続けなければならない。

 

 

 

「ほら幽斗、いつまで寝てんのよ!行くよ!」

 

剣を構えたさやかはいつもとは違い、凛々しく見えた。

 

 

「わかったよ…………お前がそれでいいなら、俺は何も言わない。」

 

立ち上がり、ガンガンセイバーを握り直す。

 

 

 

 

 

 

「「っ…………!!!」」

 

同時に地面を蹴り、俺は眼魔、さやかは魔女の方へ接近する。

 

 

 

眼魔はさっきのように複数の矢を発射してきた。

 

 

さっきのようにはいかない。当たりそうな矢を見切り、ガンガンセイバーで叩き落としていく。

 

見たところ奴の武器は弓だけ、接近してしまえば………………!!!

 

 

 

「でああああっ!!!」

 

腕が千切れると思うくらいの力でガンガンセイバーを振るう。

 

刀身は弓に当たり、眼魔の体を後方に吹き飛ばした。

 

 

 

さやかは………………!?

 

 

やはり初めての戦闘だからか、自分を食べようと襲ってくる巨大な口から逃げるのに精一杯のようだ。

 

 

「…………!」

 

しかしその中でもさやかは確実に攻撃を当てていた。

 

複数の剣を生み出し、それを片っ端から投擲している。

 

乱暴に見える戦い方だが、初の戦闘としてはかなりいいほうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああああっ!!!」

 

俺は眼魔の持つ弓目掛けてガンガンセイバーを叩き込む。

 

それほど丈夫ではなかったのか、簡単に弓は砕け散った。これで奴は攻撃できないはず。

 

 

 

オレゴーストアイコンを取り出し、ドライバーに装填する。

 

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

 

これで終わりだ…………!!!

 

「命…………燃やすぜ!!!」

 

《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》

 

両足にエネルギーを集中させ、構える。

 

 

「はっ!!!」

 

そして眼魔目掛けてドロップキックを放った。

 

空中で一回転しながら着地する。

 

 

 

 

 

「がっあ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''!!!!」

 

 

低い悲鳴を上げながら、眼魔は爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあっ!!」

 

「さやか!」

 

吹き飛んできたさやかを受け止め、ガンガンセイバーを前に突き出す。

 

魔女が大きな口を上げながらこっちに突撃してきた。

 

 

「来るならこい!!!」

 

接近してくる魔女にガンガンセイバーを振りかぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ダイカイガン!スペクター……!オメガドライブ!》

 

 

「「!?!?」」

 

 

魔女が俺の所まで届く事はなく、青い一撃が魔女に直撃し、吹き飛んでいった。

 

 

 

 

 

「これは……!」

 

その攻撃を受けた魔女の体がボロボロと崩れる。

 

今の攻撃は……間違いない。

 

 

 

「雄也。」

 

はっと思い出し、奪われる前にさっき倒した眼魔が落としたアイコンを回収する。

 

緑色のアイコン。アルファベットで「ロビンフッド」の文字。

 

 

 

 

《 《オヤスミー》 》

 

俺と雄也とさやかがほぼ同時に変身を解く。

 

それと同じタイミングで結界が崩壊し、俺達は元の駐輪場に立っていた。

 

隠れていたまどかとキュゥべえが俺とさやかの後ろに駆け寄ってくる。

 

 

 

 

「お前がいるって事は、暁美もいるな?何しに来たんだ?」

 

俺の言葉に反応するように暁美が雄也の隣に立った。

 

 

 

「美樹さやか、あなた…………」

 

「魔法少女を増やしたくないんなら、残念だったね転校生!あたしはもう契約した!」

 

と、さやかは勝ち誇ったように言う。

 

 

 

 

「別に、俺達は魔女の反応を追ってきただけだ。」

 

あくまで無表情で答える雄也に、俺は少し恐怖を感じた。

 

 

 

「で、どうするんだ?俺のアイコンを奪うか?」

 

「いいえ。あなた達と争う気は無いわ。…………行きましょう雄也。もう大丈夫のはずよ。」

 

「ああ。」

 

 

 

二人は俺達の横を通り過ぎる。

 

 

「あ、そうだ。」

 

落ちていたグリーフシードに気付き、拾い上げる。さっきの魔女が落とした物だ。

 

 

 

「暁美!雄也!」

 

二人を呼び止め、グリーフシードを投げ渡した。

 

それを雄也が片手でキャッチする。

 

「さっきは助けてくれてありがとう。それ、よかったら使ってくれ。」

 

 

「…………」

 

 

雄也はグリーフシードを一瞥した後、礼のつもりだろうか、少し片手を上げて暁美と共に去って行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さやかちゃん……本当によかったの?」

 

帰り道、まどかが心配そうにさやかに聞いた。

 

「いいのいいの。むしろなっちゃってスッキリしたよ。吹っ切れたっていうか。」

 

「そういえば……さやかの願い事で、上条の腕は治ったのか?」

 

 

キュゥべえが俺の肩に乗ってきた。

 

 

「それに関しては僕が確認済みさ、大丈夫、バッチリ治ってたよ。」

 

「ありがとうキュゥべえ。」

 

 

 

この事、マミさんに報告しといた方がいいよな。

 

 

 

新しい魔法少女が一人増えた。戦力が増えるってのもあるけど…………同時にグリーフシードの取り分争いが起きる確率が上がった。

 

…………まどかも魔法少女になるつもりなのだろうか?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「…………邪魔だな、''こいつら''。」

 

 

 

「二つの世界を手に入れるには…………この邪魔者を消す必要がある。」

 

 

 

「そしてこいつらの持つアイコンも全て…………」

 

 

 

 




次回はついに!ついに!サプライズラビットとのコラボ編開始!!!
リョウタと幽斗が出会い、物語がどう動くのか、乞うご期待!!!


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ゴースト×ドライブ 超大戦!マギカ☆ラビット
木組みの街に迷い込んだアリス達



サプライズラビットとのコラボ編第一回目!
作者もリョウタやココア達の話がまた書けて嬉しいですよ!


 

 

「っ……!マミさん頼みます!」

 

「わかったわ!美樹さんそっち!」

 

「了解!」

 

 

マミさんにさやかがキュゥべえと契約した事を話し、これからは三人で魔女や眼魔を倒そうという事になった。

 

 

「くっ……!ほむら!」

 

「ええ!」

 

そして、今回は偶然居合わせた雄也と暁美も一緒だ。

 

俺達は今、戦っている真っ最中。五人がかりでも苦戦するような相手だ。

 

そして、そいつは眼魔でも、魔女でもない者だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「喰らえ…………!!」

 

真っ黒な影を纏った男から凄まじい威力の衝撃波が発生した。

 

全員、それを回避できずに吹き飛ぶ。…………俺とさやかとマミさんはともかく、以前は非協力的であった雄也と暁美も一緒に戦っているのは、こいつを倒すためだ。

 

前に俺達を襲ってきた黒い影を纏った男。確かに奴だった。

 

 

 

「くっ…………!そ…………!!」

 

「まるで歯が立たない…………!!」

 

「ここまでとはな……!」

 

ボロボロになりながらも俺達は立ち上がった。じゃないと……抵抗しないとすぐに殺される。

 

「みんな!」

 

遠くでキュゥべえを抱いたまどかが叫んだ。

 

 

「お前……一体なんなんだ!!」

 

「…………」

 

あくまで沈黙し続ける男に俺の怒りは頂天に達していた。

 

 

「答えろおおおおおおおっ!!!」

 

「天空寺君!ダメ!!!」

 

マミさんの制止を無視し、奴に突っ込む。

 

ここで倒さなきゃダメだ。危険すぎる。こいつには世界を滅ぼすだけの力はあるはずだ。

 

ゴーストドライバーのレバーを引き、押し込む。

 

 

《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》

 

 

右足にパワーを集中させ、男に飛び蹴りを放つ。

 

 

「なっ……!?」

 

しかし男はそれを避けもせず、防御もせずに、ただ立っているだけだ。

 

そのまま直撃する………………

 

 

 

「ぐあああああっ!!!」

 

吹き飛ばされたのは俺の方だった。

 

指一本動かさずに、奴は俺の必殺技を弾いたのだ。

 

 

「効かないのか…………!!」

 

 

 

男はゆっくりと歩き出し、俺達の近くまで寄ってくると、小さな声で言った。

 

 

 

 

「この世界を救ってやる、その為に…………お前達には消えてもらう。」

 

「何だと…………!?」

 

「この世界と……あと一つ。平和な世界を融合させればきっと…………」

 

「何を言ってるのよ!!!」

 

 

さやかがよろよろと立ち上がり、剣を男に向けた時。

 

 

 

 

「「「「「!?!?!?」」」」」

 

地面が輝き出し、浮遊感を感じた。

 

 

 

「な、何……!?これ…………!」

 

「気をつけてみんな!!」

 

 

 

黒い男はブツブツと何かを言っている。

 

 

 

「きっと……きっと大丈夫だ…………きっときっときっときっときっときっと………………」

 

 

次の瞬間、目が焼けたかと思うほどの閃光に包まれ、俺達の意識が飛んだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「行ってきまーす!」」

 

「行ってきます。」

 

挨拶を済ませて、俺達は今日も学校に向かっていた。

 

 

「ふわぁ〜…………」

 

「リョウタ君寝不足?」

 

「ちょっとね…………」

 

「そういえば昨日夜遅くまでピットにいましたけど…………何してたんですか?」

 

 

チノの質問に答えようとした時、肩に一台のシフトカーが止まった。

 

シフトスピード、ベルトさんの分身とも言えるシフトカーだ。

 

 

 

『少し話し合いをしていたのだよ。ロイミュード達も強力になっていってるからね。』

 

「でもさ……話し合いなんかしなくても、とにかく倒せばいいんだろ?」

 

『こらリョウタ!また何も考えないでロイミュードと戦う気だな!?』

 

と、シフトスピードが肩の上で暴れる。

 

「リョウタさんらしいです。」

 

「あはは!だね!」

 

 

うん…………いつもと変わらない日常。変わらない…………変わらないんだけど…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かおかしい…………」

 

 

「え?」

 

そうだ、おかしいぞ…………何がおかしいかわからないけど…………なんかこう……とにかく違和感を感じる。

 

 

「リョウタ君?」

 

ココアが顔を覗き込んできた所で我に帰る。

 

まあいいか。思い出せそうにないし。

 

 

 

「チノちゃんの学校では、最近何か変わったこととかないの?」

 

「最近ですか…………」

 

ココアの質問に顔を下げ、少し考えてからチノは答えた。

 

 

「今度うちの学校に転校生が来るらしいです。」

 

「そうなの!?」

 

「転校生か…………仲良くなれたらいいな。」

 

「そうですね……あっ。」

 

 

チノの視線の先には、チノと同じ中学校の制服を着た二人の女の子がブンブンと手を振りながらチノを呼んでいた。

 

チノの同級生である、マヤちゃんとメグちゃんだ。

 

 

「では私はここで。」

 

「気をつけてねー!」

 

「いってらっしゃい。」

 

俺とココアの高校とチノの中学は方向が違うのでここで別れなければならない。

 

 

「さて、俺達も行くか。」

 

「うん!」

 

俺とココアは横に並び、学校を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

十分ほど歩くと、橋が見えてくる。そこでいつも合流し、一緒に学校へ向かう友人が二人。

 

 

 

「おはよう、流星、千夜。」

 

「二人共おはよう!」

 

「おはようココアちゃん、リョウタ君。」

 

「おっす。」

 

 

いつもこの四人で学校へ向かうのだ。あ、ベルトさんも入れて五人かな?

 

ちなみに俺達が学校へ行っている間のラビットハウスは、タカヒロさんとチェイスが店番してくれている。

 

 

「よしっ……今日も張り切っていくぞー!」

 

何を張り切るかは自分でもわからないが、眠気を覚ますためにとりあえず大声を上げた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

て…………

 

おきて…………

 

 

「幽斗君!」

 

「はっ…………!」

 

 

まどかの声で目が覚めた。

 

上体を起こし、周りを見渡すと、部屋の中だった。恐らくはマンションの一室か。随分広い。

 

そして部屋の中を調べているマミさん、さやか、キュゥべえ、雄也、暁美がいた。

 

 

「あ、幽斗起きた?」

 

さやかが壁に取り付けられたカレンダーから目を離し、俺に顔を向ける。

 

「ここは…………?」

 

「私達にもわからないわ。」

 

 

さっきまでいた場所とは違う。

 

とりあえず、部屋の中心にあるテーブルの前に全員で囲むようにして座り、今後のことを話し合った。

 

 

 

まずは暁美が口を開いた。

 

 

「まず確認したいことがあるんだけど…………ここは私達のいた世界じゃない。いいわね?」

 

「なんで…………」

 

全員が頷いてる中、俺だけがその理由がわからなかった。俺が気絶している間に何かわかったことがあったのか?

 

 

「その部屋の窓から見た景色……明らかに見滝原ではなかったわ。」

 

「僕もそう思う。恐らくは''あいつ''が連れてきたんだと思うよ。」

 

''あいつ''とはさっきの黒い男で間違いないだろう。

 

 

 

 

「元の世界に帰る方法は……」

 

「まだわからないわ。」

 

「そ、そんな!」

 

さやかが世界の終わりでも見たような顔で言った。

 

でも確かに絶望的な状況だ。別の世界に迷い込み、帰る方法もわからない…………

 

 

「キュゥべえ、もしかして前に言ってた……別の世界に引きずり込む奴って……」

 

「間違いないね、さっき僕らが遭遇した奴だ。」

 

 

やっぱり。

 

あの全身黒い気味の悪い男。影で表情が読み取れないのがさらに不気味だった。

 

 

 

「どうすればいいんだ…………」

 

「とりあえず、この世界の事を調べてみよう。」

 

冷静に雄也が言う。それと同時に、何やら制服らしき物を俺達に差し出してきた。

 

 

 

「これは……?」

 

「制服……みたいね。」

 

それはわかる。どうしてこんなものが…………

 

 

 

「この世界で与えられた、私達の役割……なのかしら。」

 

 

役割…………それが元の世界に帰るヒントなのだろうか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「じゃあ決まった事を纏めるぞ。」

 

 

まず明日からさっき見つけた制服を着て、その学校へ通う。できればそこでこの世界について調べられるといい。

 

その後に街全体を調べる。

 

 

「これ着るのかあ……帽子もあるね。」

 

「私、結構このデザイン好きかも。」

 

 

制服はどうやら、全員同じ中学の物らしい。好都合だ。みんなバラバラにならないで済む。

 

 

「よし……何としてでもこの世界から抜け出して、元の世界に帰る!」

 

 

協力していかなければならない。

 

俺とまどかとさやかとマミさんは問題ないと思うが、雄也と暁美が心配だ。特にさやか辺りと喧嘩にならなければいいが…………

 

 

「ほむら!足引っ張らないでよね!」

 

「それはこっちのセリフよ。」

 

 

思ってる側からこれだ。

 

 

 

 

 

 

「よし、じゃあ今日は少しだけこの街を調べよう。」

 

「わかった。」

 

そういうことになり、俺達はマンションを出て木組みで出来た街へ繰り出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

最後のチャイムが鳴り響いた。

 

周りの生徒達は帰り支度をしている。俺も鞄を開き、中にあるベルトさんを避けながら教科書類を入れた。

 

 

『む……?』

 

「どうしたベルトさん?」

 

ディスプレイに困り顔が表示されたベルトさんを一瞥する。

 

 

『いや、何か…………違和感を感じてね。』

 

「違和感?」

 

今朝の俺と同じ事を…………

 

 

 

「リョウタ君、帰ろ!」

 

ココアが肩を叩いてくる。

 

教室の出口には流星と千夜も待っているみたいだ。

 

俺も鞄を肩にかけ、みんなと教室を出て行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ラビットハウスに着くと、既にチノが制服を着てカウンターにいた。

 

チェイスは……ピットだろうか、一階にはいないらしい。

 

リゼもどうやらまだ来てないみたいだ。

 

 

俺とココアはすぐに二階に上がり、制服に着替えてから下に降りた。

 

 

 

「ふう……」

 

この街に来てから今日まで、戦いの日々だったけど…………

 

これからは明るい未来が待っている。

 

少なくとも俺はそう思っている。

 

 

「あれ?」

 

 

この街に来てから…………今日まで?

 

何を言ってるんだ俺は。まだロイミュード達は残っている。戦いが終わったわけじゃ…………

 

 

 

カランカラン。

 

 

 

 

玄関が開き、数人のお客さんが入ってきた。

 

「あ、いらっしゃいませー!」

 

四人…………か。高校生かな?随分大人びた子が混ざってるけど…………

 

男子一人に女子三人。爆発してもええんやで。

 

 

「あれ?うさぎがいないよ?」

 

「さやか……あんまりキョロキョロするなよ…………」

 

 

聞こえてますよ。

 

うさぎね……確かに''ラビットハウス''なんて名前だとうさぎがいるって勘違いしちゃうかもな。

 

 

「ご注文は?」

 

オーダーを取りに四人が座ってるテーブルに向かう。

 

 

「あの……あの娘の頭に乗ってるうさぎって触ってもいいでしょうか!?」

 

男子がいきなりそう聞いてきた。

 

 

 

「チノーーーー!ティッピーお願いーー!!」

 

「非売品です!……けど、コーヒー一杯で一回、モフモフできますよ。」

 

「懐かしいやりとりだね〜…………」

 

なんかココアがしみじみと天井を見上げている。

 

 

「じゃあオリジナルブレンドを四つ、お願いします!」

 

「かしこまりましたっと…………」

 

喜べ少年、これで君は四回モフモフする権利が与えられた。

 

 

 





さて、違和感を感じているリョウタとベルトさん。
ていうかなんでベルトさんやチェイスが存在しているのか…………その辺はまた今度。


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この男、バリスタで、仮面ライダー!

ついにリョウタがドライブに変身!


 

ラビットハウスという名の喫茶店を去り、一旦元いたマンションへ帰ることになった。

 

「そういえば、暁美と雄也はどこだ?」

 

「あれ?そういえばいないね。」

 

あの二人……ラビットハウスに入る前に勝手にいなくなったみたいだ。

 

もうすぐ暗くなるけど……あの二人なら大丈夫かな。

 

「先に戻る?」

 

「戻るって……どこに?」

 

さやかが腰に手を当ててため息をつく。

 

不安なのだろう。確かにいきなり別の世界に来たなんて言われて、しかもあの怪しいマンションに戻るのだ。

 

 

「あのマンション以外帰る所も無いし……仕方ないわよね。」

 

「やっぱりそうなるかあ…………」

 

「え、えと……あの……」

 

まどかが立ち止まり、口ごもる。

 

「使える部屋ってあそこだけなのかな?それだと私達、全員で一緒に寝るってことになるんじゃ…………」

 

「「「あ」」」

 

確かにそうだ。あそこは五つも部屋分けなんてされてなかった。

 

さすがに男女同室はまずいだろうし…………

 

「うーん……雄也と相談して、どこで寝るか決めるか…………」

 

といってもこの世界で他に住める場所なんて持ってないし…………ていうかわざわざマンション用意してくれるあの黒い奴はなに考えてんだ。

 

 

「まずは帰って、あの二人を待ちましょう?それから色々話し合えばいいんだしね。」

 

とりあえずはマミさんの言う通りだ。まずは戻って情報を纏めよう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なあほむら…………あいつ、どういうつもりなんだ?」

 

「わからないわ。こんな回りくどい事をして……」

 

''あいつ''は俺達をすぐには殺さず、こんな世界にまで引きずり込んだ。

 

…………できれば殺したくなかった…………?奴の場合その可能性も十分あり得る。

 

 

 

「……そろそろ戻りましょうか。みんなが心配するわ。」

 

「…………」

 

驚いた。暁美がそんなこと言うなんて。

 

すっかり変わってしまったと思ってたけど…………''あの頃''みたいな一面も残ってるみたいだな。

 

 

「……何かしら、じろじろ見て?」

 

「ふふっ……何でもない。」

 

「何か気に食わないわね…………」

 

 

俺達は今歩いている石畳の道を引き返し、さっきのマンションへ向かおうとした。

 

 

が、その時。

 

 

 

 

「「っ!!」」

 

放たれた光弾を二人で同時に回避する。

 

体制を立て直しながら、俺はスペクターゴーストアイコンを、暁美は自らの紫色に輝くソウルジェムを取り出した。

 

 

 

「…………?なんだ、こいつら…………」

 

人型のロボットらしき奴らが三体。それぞれ頭部がコブラ、蜘蛛、コウモリを模したような見た目だ。

 

魔女じゃない…………眼魔でもないな…………

 

「この世界にも怪物はいるって事ね…………!!」

 

 

暁美が腕を前に突き出し、ソウルジェムを構える。

 

それに続き、俺もゴーストドライバーを出現させ、アイコンを装填した。

 

 

《アーイ!》

 

《バッチリミロ!バッチリミロ!バッチリミロ!》

 

「変身!」

 

《カイガン!スペクター…!レディゴー!覚悟!ドキドキゴースト!》

 

 

ゴーストドライバーからガンガンハンドを取り出し、構える。

 

 

 

 

「……!?何者だ貴様ら…………!!」

 

「それはこっちのセリフだ。」

 

 

俺は走り出し、奴らの間を駆け抜けた。

 

その間にガンガンハンドで攻撃を叩き込んでいく。

 

 

「ぐっ…………!!ロイミュードが人間に…………!負けるかああああっ!!!」

 

……ロイミュード…………?

 

 

自らをロイミュード、と呼んだ三体のアンドロイドがよろめく。その隙に暁美がロケットランチャーを奴らの中心目掛けて放った。

 

三体がバラバラの方向に吹き飛ぶ。

 

 

 

「ぐおおっ…………!?」

 

まずは一体。

 

ガンガンハンドをゴーストドライバーにかざし、必殺技を発動させた。

 

《ダイカイガン!》

 

《ガンガンミロー!ガンガンミロー!ガンガンミロー!》

 

《オメガスマッシュ!》

 

 

ガンガンハンドの先端にある手の部分に青いオーラが宿り、巨大化する。

 

それをロイミュード一体に目掛けて振り下ろした。

 

 

 

「ぐっあああああああああ!!!」

 

体が爆発し、周囲の物が吹き飛ぶ。

 

 

「?あれは…………」

 

破壊したロイミュードの中から、何かが浮遊してくる。

 

番号…………?

 

 

遠くにあり、よく見えなかったが、それは三桁の数字のプレートのような物だった。

 

続いてそのナンバーも爆発し、跡形もなく消滅する。

 

 

 

「はっ……!」

 

暁美もアクロバティックに動き回り、至近距離でライフルを連射し、ロイミュードを撃破する。

 

 

 

残りは一体。

 

 

 

「ぐっ……!この…………!」

 

最後に残ったロイミュードは、かなり焦った様子で俺達に背中を向け、走り去って行った。

 

 

 

 

《オヤスミー》

 

変身を解き、一息つく。

 

 

随分あっさり撤退して行ったな。

 

それにしても…………ロイミュードか…………厄介なことにならないといいが。

 

 

 

 

「戻ろうほむら。今の事、幽斗達にも報告しておさないとな。」

 

「ええ。」

 

俺はマシンフーディーを呼び出し、急いでマンションへと向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目が覚めたら、夢が覚めていて、元の世界に戻っているんじゃないか。

 

なんて期待してみたけど…………やはりダメだった。周りを見てもやはり昨日のマンションと同じ風景。

 

隣には綺麗に畳まれた布団がある。雄也か。起きるの早いんだな。

 

昨日は結局、全員で同じ部屋で眠る事になった。

 

同じ部屋といっても、一つだけ和室があったので、俺と雄也だけその部屋に寝る事になった。それでもすぐ近くに女子達がいるので少し緊張して眠れなかったが。

 

 

 

今日からこの世界の学校に行き、情報を集める。

 

俺達はそれぞれ制服を着て、昨日と同じようにテーブルを囲んで座った。

 

 

 

「なんか、いざ着てみると……ちょっと恥ずかしいなこれ。」

 

さやかが赤くなり、帽子をいじりながら言った。

 

俺と雄也の制服はそこまで変わったところもない、普通だ。

 

 

…………一番似合ってないのはマミさんだ。どうもこの制服は少し子供っぽい感じがして、大人びたマミさんには合わない。

 

 

 

「よし、行こう。学校に潜入して、この世界の情報を集めるんだ。」

 

俺の言葉に全員が頷いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

香風チノです。

 

今日はこの学校に六人も転校生が来るらしいのですが……そのうち二人がこのクラスに入るみたいですね。

 

 

「ねえねえメグ、チノ、転校生ってどんな人かな〜!」

 

「楽しみだね〜」

 

「あ、来たみたいですよ。」

 

 

 

 

 

担任の先生が教卓につき、話し始める。

 

 

「皆さん、知ってる人も多いと思いますが…………今日からこのクラスに新しいお友達がやってきます!」

 

私も少し気になります。一体どんな人が来るんでしょう…………

 

先生に誘導されて教室に入って来たのは、二人。男子生徒と女子生徒でした。

 

やっぱり周りの人達が少しざわつきますね。

 

 

 

「え、えと、今日からこの学校に来ました……鹿目まどかです。よろしくお願いします。」

 

「同じく天空寺幽斗です。」

 

二人とも私達より少しだけ大人っぽいです。

 

…………あれ?

 

「何か…………」

 

違和感を感じます。あの二人は何か…………おかしい…………

 

 

 

「あれ?チノどうかしたの?」

 

マヤさんは何も感じてないようです。

 

私の勘違いだったでしょうか…………

 

 

 

 

 

朝の会が終わると、すぐに二人の所に人だかりが出来ました。

 

私はそこには行かずに遠くから見ているだけですが…………

 

 

「やっぱり、何か気になります…………」

 

「チノちゃんは行かないの?」

 

メグさんとマヤさんがこっちに戻って来ました。

 

 

「さっきから遠くで見てるだけだけど…………」

 

「私は別に……質問したい事とか無いので…………」

 

「!ははーん…………」

 

マヤさんが何か感づいたような顔を…………いや、すごく悪そうな顔をしてます。

 

「ちょっとメグ……(ごにょごにょ」

 

「えっ?うんうん…………」

 

 

何を話しているのでしょうか。物凄く嫌な予感がします。

 

 

「ええーーーっ!」

 

「こらこらメグ、声が大きいよー!」

 

「?何の話をしていたんですか?」

 

 

そう聞くといきなりマヤさんが肩を掴んでこう言い放ちました。

 

 

「私達応援するから!!」

 

…………?

 

「何を……」

 

「チノちゃんの恋は私達も協力しなきゃね!」

 

こ、恋?

 

話が全く見えないのですが…………

 

「恋って何の話をして…………」

 

「これはココア達にも相談に乗らないと!」

 

「な、何の話をしてるんですかーーー!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ただいまー…………って。」

 

早く着きすぎたか。いたのはカウンターにいるチェイスだけだった。

 

 

「早いな。」

 

「ああ、今日は少し早く学校が終わったんだ。店番サンキュ、休んでてくれ。」

 

「まだ洗い物が残っているんだが…………」

 

「俺がやっとくよ。」

 

チェイスの真面目っぷりは見習うべきだな。

 

俺は更衣室に行き、着替えをし、洗い物をしながらココア達を待つことにした。

 

 

 

 

「ふんふーん♪」

 

『まるで主夫だなリョウタ。』

 

「そうかい?」

 

肩に乗っていたシフトスピードがカウンターに飛び乗る。

 

 

 

「よし、洗い物終わりっと…………」

 

ココア達はまだ戻らないのだろうか?やることもないし…………

 

コーヒーを淹れる練習でもするか。

 

 

 

棚からカップを出し、準備をしていた所にちょうど玄関からリゼがやってきた。

 

 

「あれ、一番乗りだと思ったのに。」

 

「残念だったな。」

 

「ココアはどうしたんだ?」

 

「ああ、なんかマヤちゃん達と話してたよ。」

 

俺より早く学校を出たのに帰りが遅いのはまだ話しているからか。

 

 

 

せっかくだからリゼにも飲んでもらおうと思い、カップをもう一つ棚から出す。

 

「そういえばリゼ、この前チェイスと出かけた時、どうだった?」

 

「どうだった、と言うと?」

 

ああ……この反応は…………チェイスの奴、言えなかったな。

 

「着替えてくる。」

 

「ああ。」

 

リゼが二階の更衣室に向かった。

 

コーヒーはもう出来ている。後はカップに注いで…………

 

 

『ふむ、以前よりも腕を上げているようだな。』

 

「ほんとか?ていうかその体でわかるのか…………」

 

ベルトやシフトカーの状態で味とか匂いとかわかるのだろうか。分析してるだけかな?

 

 

 

 

 

リゼが下に降りてきたので、コーヒーを渡して一緒に飲む。

 

 

「お、また腕を上げたな?」

 

「ベルトさんと同じ事を…………」

 

どうやらベルトさんはちゃんと認識できていたらしい。もしくは分析。

 

 

俺もカップに口をつけようとした時…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だよーーーーーーーっ!!!」

 

すごい勢いで玄関を開けてドカドカと入ってくる少女。ココアだ。

 

 

「大変!大変!大変なんだよ!」

 

「わかったから落ち着け。」

 

コーヒーを一口飲む。

 

よく見るとココアの後ろにマヤちゃんとメグちゃんがいた。

 

「あれ、チノはいないのか?」

 

「そのチノちゃんの事なんだけどね!」

 

 

話を聞きながら再びカップに口をつける。

 

 

「ただいまです。」

 

お、ちょうどチノも帰ってきたみたいだ。

 

 

「ち、ち、チノちゃんに…………!」

 

「チノに?」

 

ココアはかなり焦っている様子で、顔から湯気まで出ているように見える。

 

 

「チノちゃんに好きな人が出来たって!!!」

 

 

「「ぶうううううううううううっ!!!」」

 

「!?!?!?」

 

コーヒーを飲んでいた俺とリゼは同時に吹き出してしまった。

 

 

「ちょ、ちょっとココアさん!?一体なんの話を…………!!」

 

「ち、チノ!!」

 

顔を青くしながら呆然とするチノに駆け寄り、肩を掴む。

 

「そいつは誰だ!?クラスの奴なのか!?今すぐここに連れてきてお兄ちゃんに会わせろ!!!」

 

「皆さん色々勘違いしてます!!!あとお兄ちゃんじゃありません!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なんだ勘違いかあ…………」

 

「もう、マヤさんもメグさんもそそっかしいです!」

 

「ごめんねチノちゃん〜」

 

「ええー!あの顔は恋だ!って思ったんだけどなー!」

 

やっぱり勘違いか。

 

ふう…………まったくビビらせる。

 

 

 

 

 

 

「そうか、転校生が来たのか。」

 

「話は聞いてたけど……二人も来るなんて珍しいな。」

 

話によると、男子と女子一人ずつチノ達のクラスに入ってきたらしい。

 

 

「でもチノさ、幽斗が来た時じっと見つめてたよね?」

 

幽斗?

 

「マヤちゃん、幽斗ってのは……?」

 

「うん?男子の方の転校生の名前だよ。」

 

「ふーん……」

 

 

肩にシフトスピードが乗ってきた。

 

『リョウタ、重加速反応だ!』

 

「ええ!?わかった!」

 

二階に急ぎ、俺の部屋にあるベルトさんを取りに行く。

 

ちょうどドライブピットに続く扉からチェイスが出てきた。

 

「お前達も気づいたか……行くぞリョウタ!」

 

「ああ!」

 

二人でドタドタと階段を降り、一階へ向かう。

 

急に外に出て行こうとする俺とチェイスを不思議に思ったのか、全員の視線が俺達に注がれた。

 

 

 

「二人共どこに行くの?」

 

「ロイミュードが出た!みんなはここから動かないでくれ!」

 

「ええ!?変身するところ見たい!」

 

「ま、マヤちゃん……」

 

 

外に出ると、既にトライドロンが待機していた。

 

俺はトライドロンに乗り込み、チェイスはちょうど走って来たライドチェイサーに乗り込んだ。

 

「流星は?」

 

「わかんないけど……多分来るだろ。」

 

俺達は同時にアクセルを踏み、走り出した。

 

 

「よし……行くぞ!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「幽斗!」

 

「キュゥべえ!どこに行ってたんだよ!」

 

「僕もこの世界について調べてたんだ。」

 

学校が終わり、マンションに戻ろうとしていた俺とまどか達の所にキュゥべえがやって来る。

 

肩に乗ってきたキュゥべえは息遣いが荒い。急いで走って来たのか。

 

 

 

「この先に怪物が出た!」

 

「怪物って……まさか魔女!?」

 

自然とマミさんはソウルジェムを取り出した。

 

「いや違う!全くの別物だ!」

 

「ええ!?どういう事!?」

 

「……ロイミュードか…………?」

 

雄也がポツリと呟く。

 

ロイミュード、と言ったのだろうか?

 

 

 

「とにかく行ってみよう!!」

 

「そうね!」

 

 

全員で駆け出し、キュゥべえが言っていた方へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドオオォォォォオオオオン……!!

 

 

近くまで来たのか。爆発音が聞こえてきた。

 

「!みんなあれ!」

 

まどかが指した方向には、一体の怪物。

 

頭部は蜘蛛を模したような形で腕からは光弾を発射して暴れている。

 

 

「何だよこいつ……!」

 

「早く何とかしないと街の人達が!」

 

 

さやか、マミさん、ほむらの三人はソウルジェムを、俺と雄也はゴーストドライバーを出現させた。

 

 

 

「きゃあああああっ!!」

 

「危ない!!」

 

一人の民間人が怪物に襲われていた。

 

「間に合えっ……!!」

 

 

怪物は腕を振り上げ、その人を攻撃しようとし…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!!」

 

攻撃が当たる直前、赤いスポーツカーが怪物を轢き、吹き飛ばした。

 

運転席の扉が開かれ、一人のバーテンダーの服を着た男の人が出てくる。

 

 

「ふう〜…………危機一髪。」

 

『敵は下級ロイミュード一体か……さっさと片付けてしまおう!』

 

「オッケー!」

 

 

何だあの人…………?一人なのに誰かと会話して…………

 

 

 

その人は変わった形のベルトを腰に巻きつけ、取り付けられているキーを回した。

 

 

「あれは…………」

 

 

「行くぜベルトさん!」

 

『OK!スタート・ユア・エンジン!』

 

 

その人は腕に取り付けられているブレスレットにミニカーらしき物を装填し、倒す。

 

 

 

『ドライブ!!!タイプ!!!スピード!!!』

 

赤い装甲が現れ、全身に装着される。

 

赤いスポーツカーから現れたタイヤが胸部に挿さった。

 

 

 

「さあ……ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

「か、仮面ライダー!!」

 

怪物がたじろぎ、男の人に向かってそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「仮面……ライダー……?」

 

 

 

 




はい、リョウタドライブ登場。
いやーコラボ回は本当に書くの楽しいw


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未来を取り戻す


世界の真実とは。


 

「はっ!」

 

タイヤを身に付けた赤い仮面ライダーがロイミュードを殴る。

 

俺達はその光景をただ呆然と眺めていた。

 

 

「仮面ライダーって……え!?」

 

「どういうことよキュゥべえ!?」

 

「僕に聞かれても困るよ。」

 

キュゥべえに尋ねるが、やはりこの赤い仮面ライダーについては何も知らないみたいだ。

 

俺達の世界とはまた違った存在の、仮面ライダー…………

 

 

『スピ!!スピ!!スピード!!!』

 

赤い仮面ライダーが腕に装着されているブレスを操作すると、胸に取り付けられたタイヤが高速回転し、その瞬間赤い仮面ライダー自体の動きも加速された。

 

ロイミュードの放つ光弾を避けながら、接近して攻撃を当てていく。

 

 

「おのれ……!人間ごときが…………!!」

 

「あーはいはい、お前はその人間に倒されるんだよ。」

 

赤い仮面ライダーはベルトのキーを回し、ブレスのボタンを押す。

 

『ヒッサーツ!!フルスロットル!!!スピード!!!』

 

止まっていた赤いスポーツカーが動き出し、ロイミュードと赤い仮面ライダーを囲むようにして回る。

 

「はあっ!!」

 

赤い仮面ライダーはロイミュードに飛び蹴りを放った。

 

着地地点には赤いスポーツカーがあり、上手くタイミングを合わせてその装甲を蹴り、再びロイミュードに蹴りを放つ。

 

これを何度も何度も繰り返していた。

 

 

「す、すげえ…………」

 

思わず感嘆の声を上げてしまう。

 

 

「これで終わりだああああっ!!!」

 

最後に放った蹴りを受けると、ロイミュードは断末魔を上げながら爆発した。

 

爆発した体の中から数字が出てきて、それも続くように爆発する。

 

 

 

 

『ナイスドライブ、リョウタ!』

 

「…………やっぱり何か変だ……」

 

『リョウタ?』

 

「ん?ああ……なんでもない。」

 

 

変身を解除し、その人は元着ていたバーテンダー服に戻った。

 

その後ろからは白と黒の二台のバイクが走ってきて、そばに止まる。

 

「遅いぞお前ら、もう倒した。」

 

「え?なーんだ、つまんない。」

 

「やはり流星も呼んだ方がいいと思った。少し遅かったな。」

 

茶髪の高校生くらいの男性と、紫色のジャケットを着た男性。

 

「ところでさ……リョウタ、あの子達は知り合いか……?」

 

「ん?」

 

茶髪の方の男性が俺達の方を指差して言った。

 

 

「『あ』」

 

「おいリョウタお前……まさか。」

 

「変身してる所見られちゃった…………」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

泊リョウタだ。

 

俺は今非常にまずい状況に置かれている。

 

 

「あれ?この店って前にも来たよな?」

 

「あそっか!よく見たらあの時の店員さんか!」

 

 

中学生に変身を見られた。ドライブの事は絶対にバレちゃいけないのに…………

 

とりあえず口封z……お話をしようとラビットハウスに招いた。

 

「チノに殺されるのかな……俺。」

 

「ココア達にバレた時点で今更だが。」

 

『すまない……これは私の責任でもある。』

 

腰に巻きつけられたベルトさんのディスプレイが悲しそうな表情になる。

 

 

「あ、リョウタ達じゃない。おかえり。」

 

「無事で何よりだわ。」

 

ココアやリゼ、チノの他に、俺達が留守中に来たのかシャロと千夜もいた。

 

「どうしたのよその子達?」

 

「いや……その、ちょっとやっちゃったんで……」

 

「なんか、目が死んでるぞリョウタ……」

 

俺がこういうポカをやらかすのは初めてじゃないので、いつものメンバーは慣れた様子で俺に声をかけてくる。

「一応お客さんだからな、失礼のないように…………特にココア。」

 

「ええ!?私!?ひどいよリョウタ君!」

 

初対面の人に平気で抱きつこうとする奴だからな。

 

 

 

 

 

 

俺は重い足取りでチノの方へ寄り、小声で報告した。

 

 

「ごめんチノ……かくかくしかじか…………」

 

「え、ええ……!?ちょっと何やって…………!」

 

顔を青くしたチノが急いで洗っていたカップを置き、カウンターを飛び出す。

 

と同時に立ち止まり、呟く。

 

「よりによってこの人達なんて…………」

 

「え?知り合い?」

 

「…………前に話した転校生の人達です。」

 

 

…………うそ。なんという偶然。

 

にしても六人かあ…………本当に多いな。こんなに一気に転校してきたのか。

 

「あれ?あなたは確か同じクラスの…………」

 

桃色の髪の女の子がチノに気付いたのか、声をかけてくる。

 

チノは小さくお辞儀をした後、すぐにカウンターに戻ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず君達、好きな席に座ってくれ…………」

 

俺がそう指示すると、その子達は各自で適当な席に着いた。

 

流星よりも少し薄い茶髪の男の子。

 

桃色の髪を二つに束ねている女の子。

 

青い髪のショートカットの女の子。

 

金髪の巻き髪の女の子。

 

短い黒髪の男の子。

 

反対に長く、綺麗な黒髪の女の子。

 

 

 

全員の視界に入るように移動してから、俺は話し出した。

 

「さっき見た事は忘れてくれ!以上!」

 

「「「「雑だな!!!」」」」

 

わかってるよ……説明すればいいんだろ?

 

くっ……自分の不始末とはいえこんな事になるとは…………

 

…………あれ、ん?

 

 

 

「「「「「「「「その生き物は何?」」」」」」」」

 

 

被った。

 

俺とココア、チノに千夜、それとシャロとリゼと流星とチェイス…………

 

全員に''それ''は見えた。

 

「キュゥべえが見えるんですか!?」

 

「キュゥべえっていうの?そいつ。」

 

猫?いやうさぎ?よくわからん生物だな…………

 

 

「どうやら君達にも魔法少女や仮面ライダーの素質があるようだね。」

 

キュゥべえが口も動かさないまま喋りだした。

 

「え?仮面ライダーなら既に…………」

 

三人いますけど、ここに。

 

 

「ま、魔法少女……っ!」

 

なんかココアの目がキラキラしてるぞ。

 

「どうだい?そこの君、魔法少女に……」

 

「はいはーい!私やってみたーい!!」

 

「やめろココア!!そいつは胡散くさすぎる!!!」

 

キュゥべえに歩み寄ろうとするココアを羽交い締めで止める。

 

何か嫌な予感がする…………なんだよ魔法少女って。

 

 

 

「ねえ……そんなことより、この世界について詳しく聞かせてもらいたいんだけど…………」

 

「そうだな、学校では大した情報を得られなかったし。」

 

 

黒髪の少女と少年が話題逸れ気味の俺達に向かって言った。

 

ん、''この世界について''…………?

 

 

「どういうこと?」

 

シャロが首を傾げる。

 

それに続いて全員が黒髪の少女の方へ顔を向けた。

 

 

「私達は、別の世界から来たの。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…………というわけで、私達はこの世界に飛ばされたの。」

 

暁美が全て説明してくれた。

 

こんな話信じてもらえないかもしれないが…………

 

 

「別の世界…………結界…………」

 

「信じて貰えるでしょうか?」

 

マミさんがそう確認しようと尋ねた時…………

 

 

 

「『あああああああああああ!!!』」

 

「!?」

 

「りょ、リョウタ君!?どうしたの!?」

 

 

リョウタ、と呼ばれたその男の人とベルト(?)が大声で叫んだ。

 

二人は顔を見合わせて再び絶叫し…………

 

 

 

「なんでベルトさんがここにいるんだ!?」

 

『どうして私がここに!?』

 

 

…………?何を言って…………

 

わけがわからない、と俺を含めみんなの頭に「?」マークが浮かぶ。

 

 

 

「思い出した!そうだ!あの時急に頭が痛くなってそれで…………!」

 

『みんな!思い出すんだ!私は既に地下深くに凍結されて…………!!!』

 

「「「「「「「あ」」」」」」」

 

 

あああああああああああ!!!といった叫びが店中に響いた。

 

 

 

 

「一体どういうことです…………!?」

 

マミさんも困惑し、ただ首を傾げるばかり。

 

その時、キュゥべえがテーブルの上に飛び乗り、俺達に言った。

 

 

「思い出したみたいだね。そう、ここは結界の中だよ。」

 

結界の中…………!?まさか、俺達を連れてきたあの黒い奴の…………

 

でもどういうことだ?今目の前にいる人は全部嘘ってことか…………!?

 

 

「でもただの結界じゃないね…………これは、''世界ごと''結界に包んでいる。」

 

「なっ……」

 

「そんなことができるなんて…………あいつ、一体どんな力を…………」

 

「どちらにせよ、あいつを倒さないと帰れないのは事実みたいね。」

 

 

 

でもあの黒い奴は…………なんのために俺達をこんな結界に…………?

 

「なんだかよくわからないけど……困ってるみたいだな。」

 

リョウタさんが頭を掻きながら俺の肩に手を置いた。

 

「俺達も手を貸すよ。俺は泊リョウタだ。」

 

「……!はい!ありがとうございます!天空寺幽斗です!!」

 

その後は全員で自己紹介を済ませ、この結界から抜け出す方法を考えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

泊リョウタだ。

 

幽斗達の話を聞いてやっと思い出した。本当の現実を。

 

そして俺達の世界の事を幽斗達に話すことにした。

 

悪の科学者、蛮野天十郎との戦いを。そして、俺達の失った物を。

 

 

 

「…………というわけで、正しい歴史では、ベルトさんも凍結されて…………」

 

「チェイスもいない……」

 

流星は拳に力を入れ、リゼは下を向いて言う。

 

それに反してチェイスはただただ冷静に、キュゥべえに質問を続けた。

 

 

「今の状況、解決したとして……その後はどうなるんだ?」

 

「正しい歴史に戻るだろうね。」

 

正しい歴史…………それはつまり…………

 

 

「……ベルトさんも、チェイス君もいない世界ってことだよね…………」

 

口を開いたのはココアだった。

 

その場の雰囲気がしん、と冷える。

 

 

 

「ねえキュゥべえ……他に方法はないのかしら?」

 

千夜が不安そうに幽斗に尋ねた。それは俺達全員の気持ちを代弁した言葉だった。

 

「それは……」

 

しかし、その希望は無慈悲に消えた。

 

「残念だけどないね、結界が消えれば、元の正しい歴史に戻る。」

 

……やっぱりそうなのか。

 

 

「クリムさん……チェイスさん……」

 

『大丈夫だよチノ。……しかし…………』

 

「やるしかないだろう。」

 

チェイスは声色も、表情も変えずに言い放つ。

 

「でも!」

 

リゼから堪えきれなかった涙が流れ落ちる。

 

「……俺も記憶は戻った。そして理解した。俺はここにはいてはいけない。」

 

チェイスも……辛いはずだ。ベルトさんも……

 

 

「チェイス……」

 

流星もチェイスに視線を向けた後、すぐに顔を背けてしまう。

 

 

「私だって……思い出したんだ。あの日何があったのか…………」

 

「リゼ先輩……」

 

シャロがリゼに寄り添い、慰めようと手を伸ばした。

 

 

 

『正しい未来を取り戻すべきだ、リョウタ、みんな。君達もそれはわかっているだろう?』

 

「ベルトさん…………」

 

 

 

ココア達の顔を見る。

 

悲しい。まだ一緒にいたいという気持ちが伝わってきた。

 

だけど同時に…………

 

 

「…………幽斗。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…………幽斗。」

 

「はい。」

 

リョウタさんは俺達の方に目を合わせ、真剣な表情で言った。

 

 

 

「決めた。正しい未来を取り戻す。」

 

短い言葉の中に、確かに大きな決意が込められていた。

 

俺がまどか達に視線をやると、みんな引き締まった表情で首を縦に振った。

 

 

「やりましょう!」

 

その言った時、キュゥべえ……そしてマミさん、暁美、雄也が何かに気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

「まさか…………!」

 

「気をつけて!来るよ!!!」

 

 

 

なっ…………!?こんなに早く…………!!!

 

刹那、店の中の景色が一変した。

 

赤い空に乾ききった大地。

 

その中心に立つ、黒い影。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ……気付いちゃった。」

 

 

奴がいた。

 

魔法少女と仮面ライダーを狩り、俺達をここに連れて来た人物。

 

 

「このまま幸せな生活に身を委ねれば良かったものを…………」

 

 

 

 

俺と雄也は自然とみんなの前に出ていた。

 

それに続くようにチェイスさん、流星さん、リョウタさんも前に出る。

 

 

 

「やるぞ幽斗、みんな!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 




次回でコラボ編は終わりです。リョウタとココアの関係は進展するのか…………!?
…………しないとダメだよね。


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受け継がれる魂


コラボ編最終回!


 

 

「ココア達は隠れててくれ。」

 

「うんっ……!」

 

ココアがまどかちゃんの手を引っ張り、チノ達と共に物陰に隠れた。

 

 

 

また、仮面ライダードライブとして戦う日が来るとは思わなかった。

 

あの日で俺達の戦いが終わり、この街にも平和が訪れた。でも…………失った物も少なくない。

 

この戦いで勝てば、世界は元通りになる。けど、それはチェイスやベルトさんとの別れ…………

 

 

 

 

それでも俺達は…………未来を取り戻す!!!

 

 

 

「リョウタさん!」

 

「ああ…………みんな!行くぞ!!!」

 

幽斗と俺に続き、全員が戦闘体制に入る。

 

 

『OK!スタート・アワー・エンジン!!!』

 

『ファイヤー!オールエンジン!』

 

 

ベルトさんのキーを回し、シフトブレスにシフトトライドロンを装填する。

 

 

 

幽斗の仲間達もそれぞれ変身するための宝石を取り出し、前に突き出した。

 

 

「LET'S…………」

 

聞き慣れた流星の掛け声。

 

そうだ、はっきり頭の中に映像が浮かんでくる…………俺達は。

 

こうやって、みんなで戦ってきた…………!!!

 

 

 

『「「「「「変身!!!」」」」」』

 

 

《カイガン!スペクター……!レディゴー!覚悟!ドキドキゴースト!》

 

《ライダー!!!チェイサー!!!》

 

《ライダー!!!マッハ!!!》

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

『ドライブ!!!タイプ!!!トライドロン!!!』

 

 

三人の魔法少女と、五人の仮面ライダーが並んだ。

 

中心に佇む黒い影を睨む。

 

 

 

「仮面ライダー…………か。」

 

奴の周りにドロドロとした黒い''何か''が生成され、そこから不気味な黒い怪物が姿を現した。

 

「眼魔コマンドだね。」

 

キュゥべえが隠れているココア達の方からテレパシーでそう教えてくれる。……魔法ってすごいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ……俺達にとってはこれが……本当のラストラン!!!

 

 

「みんな!!ひとっ走り…………付き合えよ!!!」

 

俺と幽斗が同時に駆け出す。

 

それに続いて後ろからは雄也、流星、チェイス、さやかちゃんにマミちゃん…………

 

あれ?ほむらちゃんがいない…………

 

 

 

 

 

 

ドムッと目の前で巨大な爆発が起こった。爆発に巻き込まれた眼魔コマンド達が吹き飛ぶ。

 

「うおあ!?」

 

ろ、ロケットランチャー…………か?

 

 

「後ろは任せて。」

 

いつの間にか空中を漂っていたほむらちゃんが巨大なロケランを担いでそう言った。

 

「あら、私もいるわ…………よっ!!」

 

マミちゃんが飛び上がり、複数のマスケット銃を作り出す。

 

そしてそれを一斉に、掃射。眼魔コマンドが一気に減り、道が出来る。

 

 

 

 

 

 

「頼もしいね…………!」

 

『!来るぞリョウタ!』

 

「わかってる…………!流星!チェイス!!!」

 

 

背中はほむらちゃんとマミちゃんに任せ、俺達は進む。

 

 

「チェイス!同時に叩くぞ!行けるか!?」

 

「ふん……当たり前だ。俺達は…………」

 

 

「「ダチだからな!!!」」

 

 

そう言って流星とチェイスが左右から飛び出し、チェイスはシンゴウアックス、流星はゼンリンシューターで眼魔コマンドの群れへと突っ込んだ。

 

 

「すごい連携ですね……!」

 

「……勉強になります。」

 

一緒に走っている幽斗と雄也がそう呟く。

 

そうかな…………慣れてくるとこのくらいどうってこと…………

 

 

 

「っ!!」

 

紙一重で地面から溢れ出た黒い泥を回避する。

 

その泥が人型になった瞬間、思った。

 

 

 

 

 

 

 

こいつは……俺が倒す!!!

 

 

 

 

 

 

 

「幽斗!雄也!先に行け!」

 

「リョウタさん!?」

 

「こいつは手強い……俺が倒す!お前達は奴を!」

 

あの黒い男さえ倒せば俺達の勝利なのだ。年下を先導させるのは気が引けるが、仕方がない。

 

 

 

「わかりました!!!」

 

オレンジと青の幽霊が黒い男の方へ向かったのを確認し、俺は目の前の宿敵に目を向けた。

 

 

『まさか……君まで蘇るとはね…………』

 

「ははっ!つくづく魔法っていうのは…………すごいな…………!!」

 

 

 

死んだはずのチェイスがこの結界内で生前の記憶を残しているのなら…………''こいつ''も…………!

 

 

 

「久しぶりだな、リョウタ。」

 

「ああ…………ハート。」

 

 

ハートは嬉しそうに笑った後、ロイミュードとしての姿に変身した。

 

黄金の輝き…………ハートロイミュード超進化態に。

 

 

「俺達の負け……とは言ったがな、リョウタ。やっぱり俺は心残りだったみたいだ。」

 

「そうだろうとは思っていたさ。」

 

この男なら、そうだろうという確信があった。

 

 

 

「悪いが俺はあの黒い男の方につき、お前と戦うことにするよ。」

 

 

その言葉を聞いた途端、言葉にできない高揚感のような物が俺の中に湧き出ていた。

 

その言葉を待っていた、と。

 

 

「ロイミュードとか……人間とか…………そういうのは関係なく…………」

 

ハートが一歩前に出る。

 

 

 

「俺はなリョウタ……!お前ともう一度戦いたいと思っていたんだああああっ!!!」

 

繰り出された剛腕を両手で受け止め、ハートを見据える。

 

 

 

「ああ……!奇遇だなハート…………俺も、お前との決着を!つけたかったところだ!!!」

 

 

果たされるはずの無かった決闘が、始まった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はああああああっ!!!」

 

「うおおおおおおおっ!!!」

 

 

俺と雄也はガンガンセイバーとガンガンハンドを同時に黒い男に叩き込んだ。

 

相変わらず、奴はノーガード。全く効いていない様子だ。

 

 

「お前達のアイコンも……全ていただく。」

 

「なんだお前……雄也みたいな事言いやがって……!!」

 

「どういう意味だ。」

 

 

一瞬雄也から殺気のような物が感じ取れた。が、もう慣れている俺はひるまない。

 

 

「ぐっ!?」

 

「っ……ちっ…………!!」

 

黒い男が片手を一振りしただけで地面が抉れ、俺達は吹き飛ばされそうになる。

 

地面にガンガンセイバーを突き立ててなんとか耐える。

 

 

 

「大人しく殺されろ。それで……みんな幸せになれるんだよ。」

 

「お前何言って…………!」

 

「耳を貸すな!!」

 

珍しく雄也が激昂する。

 

ガンガンハンドを握り締め、奴に突っ込んでいった。

 

 

 

突如奴の腕から日本刀が出現し、振り下ろされたガンガンハンドを受け止める。

 

「ぐっ……!」

 

「……邪魔。」

 

体を大きく回し、今度は電撃を雄也に放った。

 

 

「雄也がここまで押されるなんて…………!」

 

 

やっぱり、目の前にいる敵は尋常じゃない力を持っている。

 

今の俺達では到底敵いっこない。

 

 

 

「くそっ!!」

 

雄也はノブナガゴーストアイコンを取り出し、ゴーストドライバーに装填した。

 

 

《アーイ!》

 

《バッチリミロ!バッチリミロ!バッチリミロ!》

 

 

空中に浮遊するノブナガゴーストが黒い男に牽制する。

 

 

《カイガン!ノブナガ!我の生き様!桶狭間!》

 

 

ガンガンハンドから銃口が突き出す。

 

 

「はっ!」

 

雄也は黒い男に向けて銃弾をめちゃくちゃに撃つ。

 

 

 

「…………」

 

やはりガードすらしていないのに無傷だ。

 

 

 

 

奴は片手を高く上げ、地面へと振り下ろした。

 

その直後、発生した爆風と衝撃に俺と雄也が吹き飛ぶ。

 

「「ぐああああっ!!」」

 

 

 

くっそ…………!こんな奴……一体どうすれば…………!!!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一撃、一撃、一撃が全身に響く。

 

この感覚も、最後に感じたのは数ヶ月前なのに、まるで昨日の事のように思い出せる。

 

 

熱い拳。

 

「…………!!!」

 

「っ…………!!!」

 

言葉はもう必要無かった。

 

お互いに、ひたすら己の''全力''を叩き込む。

 

 

『カモン!フレアスパイクシャドー!』

 

『タイヤ!カキマゼール!アタック1・2・3!!!』

 

 

「でああああああああ!!!」

 

ハートに真正面からパンチパンチパンチ…………

 

俺もハートも、ろくに回避すらしていなかった。お互いに拳を使いたくて仕方がないのだ。

 

一発当てるごとに、喰らうごとに、懐かしい痛みと喜びが込み上げてくる。

 

 

「はははっ…………!はははははっ!!!」

 

隠す気もない喜びの声を上げるハート。

 

 

「ははは…………なあハート……俺達友達だよな?」

 

「ああ、そうとも!」

 

「これじゃあ、はたから見たら…………!!」

 

 

体を捻る。

 

人を殴る事に上手くなってしまった自分が嫌というほど実感できた。

 

 

「ただの喧嘩だぜ!!!」

 

ハートの胸にもう一発。

 

 

「ぐうっ…………!?……!はっははっ…………はぁっ!!!」

 

ハートお得意のアッパーだ。

 

腹に喰らい、空中に高く吹き飛ぶ。

 

まだ倒れるわけにはいかない。一回転し、足から着地する。

 

 

「はあ…………はあ…………」

 

オーバーシステムが消滅して、正真正銘人間となったこの体。

 

こういう時は不便に感じる…………!!

 

 

「べ、べる……ろ……さん。」

 

『おいおい、呂律が回ってないぞリョウタ……大丈夫か?』

 

「へへっ…………!俺は今……!!」

 

 

地面を一蹴りする。

 

 

 

「さいっこうに楽しい!!!」

 

「来い!泊リョウタ!!決着をつけるぞ!!!」

 

 

ベルトさんのキーを回し、シフトブレスのボタンを押す。

 

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!トライドロン!』

 

赤い閃光が右足から発生した直後、俺は片足で高く飛び上がり、蹴りの体勢になった。

 

 

 

「デッド……ゾオオオオォォオオオォオオォン!!!!」

 

ハートも地面が崩壊する程の脚力で飛び上がり、空中で拳を引き、俺と並んだ。

 

 

 

「ハァァァァァァトォオオオォォォ!!!!」

 

 

「リョウタァァァァァアァアアア!!!!」

 

 

お互いの全力がぶつかる。

 

赤い閃光と赤い雷撃が交わった瞬間。周囲の岩は爆風と熱で吹き飛んだ。

 

 

 

「ぐっ……!おおおおおおおおおおおお!!!」

 

負けたくない。負けたくない。負けたくない。

 

 

俺はハートに…………!!!

 

「勝ちたい!!!」

 

ビキ、と音を立ててハートの腕が崩壊し始めた。

 

 

 

「はははははっ!!!これで、本当にお別れだ、泊リョウタ!!」

 

「ああ……天国にいる…………ブレンとメディックに……!よろしくな!!!」

 

 

そのままハートの腕と体を貫き、地面に大きなクレーターを作って着地した。

 

 

 

『ナイスドライブだ、リョウタ。』

 

「ああ……でも、まだだ。」

 

幽斗達の所に行って…………元凶を倒す!!!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「リョウタさん達、苦戦しているみたいです……」

 

「だ、大丈夫だよチノちゃん!リョウタ君達ならきっと!」

 

 

ココアさんとチノちゃんもみんなを心配してるみたい……

 

 

「これは…………!」

 

「キュゥべえ?」

 

私に抱かれているキュゥべえが突然驚いた様子で声を上げた。

 

 

「大変だまどか!この反応は……アイコンだ!」

 

「ええ!?」

 

アイコンって事は……近くにあの怪物が!?どうしよう……幽斗君達が!

 

 

「でもこの反応は眼魔じゃない…………」

 

「え?それって一体どういう…………」

 

 

「あっ……!!」

 

リゼさんが口元を覆い、たじろぐ。

 

 

その視線の先には、黒い影になす術もなく倒れている幽斗君の姿があった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「まずはお前だ。」

 

「くっ…………!!」

 

 

黒いエネルギーの塊が俺に発射される。

 

 

避けきれない…………!!

 

 

 

 

「お願いします!」

 

「おう!!」

 

「任せろ。」

 

 

黄色のリボンをジャンプ台にし、高く飛び上がった白と銀の仮面ライダーが同時に片足を突き出す。

 

 

《ヒッサツ!!フルスロットル!!!マッハ!!!》

 

《ヒッサツ!!フルスロットル!!!チェイサー!!!》

 

 

エネルギー弾に向かって放たれたソレで弾道は逸らされ、俺には当たらずに済んだ。

 

 

 

「流星さん!チェイスさん!避けて!」

 

「ん?ってうおおおお!?」

 

その二人の後ろから剣を構えたさやかが突進してくる。

 

剣は真っ直ぐに黒い男へ向かっていった。

 

 

「ぐっうううううう!!」

 

さやかは通らない刃を無理矢理押し込もうとしている。

 

「うわっ!!」

 

やはりその剣も弾かれ、さやかが後方に吹き飛んだ。

 

 

 

「無駄だ、お前達では俺を倒すことは…………」

 

「まだ、だ。」

 

 

こんな所で死んでたまるか…………!!

 

俺達にはまだやる事がある。こんな所では絶対に死ねない。

 

 

「まだ諦めないぞ……!俺達は走り続ける…………!!」

 

 

例え勝てないとしても、結果は決まっているとしても…………!!!

 

 

 

 

「トップギアで!!!」

 

 

俺がガンガンセイバーを振り上げ、黒い男へ接近したその時。

 

 

 

 

 

 

「よく言った!幽斗!」

 

仮面ライダードライブ……リョウタさんが飛び込んできた。

 

手にはハンドルのついた剣を持っていて、黒い男に向かってそれを振りかざす。

 

 

「ぐうっ…………!?」

 

 

!!!

 

効いてるのか…………!?

 

 

 

「みんな、よく考えろ。こいつは小細工じゃ倒せない。」

 

「え?」

 

リョウタさんがハンドル剣で斬撃を放ちながら話はじめる。

 

 

「だったら…………ゴリ押ししかないだろ!!」

 

「またそれか…………」

 

流星さんが呆れたように溜息を吐き出した。

 

 

ゴリ押し…………そんないい加減でいいのかな…………

 

 

「でも、他に方法も無いみたいですしね。」

 

やってみる価値はあるはずだ。

 

 

 

 

 

「よし…………行くぞ!!!」

 

リョウタさんが一歩前に出た瞬間。

 

一台のシフトカーが発光しながら俺の前に飛び出してきた。

 

 

 

『シフトスピード!?なぜ勝手に!?』

 

 

そうか…………キュゥべえが言っていた新しいアイコン…………それは…………!

 

 

 

「この世界にいる英雄、仮面ライダードライブってわけか!!」

 

俺はシフトスピードに手をかざし、眼の形描いた。

 

するとそこから赤く、ドライブに酷似したパーカーゴーストが出現する。

 

 

 

「お、俺!?」

 

横でリョウタさんが驚いているが、気にしない。

 

 

ゴーストドライバーにパーカーゴーストを取り込み、アイコンを作り出した。

 

 

 

ムサシとはまた違った、赤いアイコン。アルファベットで「ドライブ」の文字。

 

 

 

「これで決める!!!」

 

ドライブアイコンのスイッチを押し、ゴーストドライバーに装填した。

 

 

《アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

 

《カイガン!ドライブ!》

 

 

オレゴーストが消滅し、上からドライブゴーストが重なる。

 

 

《バリスタ!正義感!タイヤコウカン!》

 

 

ドライブをモチーフとした頭部、パーカー。

 

手にはハンドルのついた剣とドアのような銃。

 

 

「仮面ライダーゴースト……ドライブ魂…………!」

 

 

 

黒い影が質量を持って俺達を襲ってくる。

 

全員バラバラになり、それを回避する。

 

 

 

「イグアナゴーストライカー!」

 

俺がそう叫ぶと、空中に大きな眼のマークが浮かび、イグアナゴーストライカーが直接出てきた。

 

 

「ライドブースター!!!」

 

続いてリョウタさんも叫ぶ。

 

すると今度は赤と青の空を飛ぶ乗り物がこっちに飛んできた。

 

 

 

それは俺達の所に来ると、イグアナゴーストライカーの両端に合体した。

 

 

 

 

「ええっ!?なにこれ!?」

 

「いいねぇ!!こういうの!!ほら、行くぞ幽斗!!」

 

「は、はい!」

 

 

二人でイグアナゴーストライカーに飛び乗り、空中から黒い男に攻撃を仕掛けた。

 

 

 

「「はあっ!!」」

 

二つのハンドル剣で同時に攻撃する。

 

 

「ぐっ…………!」

 

効いている。

 

このような事態になるのは想定していなかったのか、奴は少し焦っている様子だ。

 

 

 

「このまま決めるぞ幽斗、ベルトさん!!」

 

「はいっ!」

 

『任せたまえ!!』

 

 

ゴーストドライバーのレバーを引き、押し込む。

 

 

《ダイカイガン!ドライブ!オメガドライブ!》

 

『ヒッサーツ!!フルスロットル!!!トライドロン!!!』

 

 

空を飛ぶイグアナゴーストライカーが黒い男を囲むように回り始める。

 

俺とリョウタさんはそこへ同時に蹴りを放った。

 

 

 

 

「「はあああああああっ!!」」

 

蹴りを当てて、イグアナゴーストライカーを蹴り、再び黒い男を蹴る。

 

これを二人同時に繰り返した。

 

 

 

「がはっ………!!」

 

俺と雄也の攻撃でビクともしなかった奴が、ひるむ。

 

 

「これで終わりだああああ!!!」

 

最後の一撃。

 

俺の蹴りは奴の顔面に当たり、吹き飛ばした。

 

 

 

着地するのと同時に、ビシ、という音が聞こえる。

 

 

 

「…………っ………ちっ…………!!」

 

頭から血を流した黒い男は、地面に発生させた黒い霧にまぎれ、消えて行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

結界が崩れ始めた。

 

奴はまだ生きている……恐らく俺達が元の世界に戻ったら、奴はそこにいるはずだ。

 

「でも、向かってくる敵は倒す。」

 

 

自然と口に出た。

 

 

 

「お疲れ、幽斗。」

 

「リョウタさん。」

 

変身を解いたリョウタさんが手を差し出してくる。

 

その手は力強く。何かをやり遂げた人の手だった。

 

俺はその手を握り、リョウタさんと目を合わす。

 

「あともう少しで、この結界は消えます。それで俺達は…………」

 

「ああ、わかってる。ほんのちょっとの間だけど、会えてよかったよ。」

 

「俺達より……あっちの方に行ってくださいよ。あの人達ともお別れなんでしょう?」

 

 

と、視線だけを遠くにいるチェイスさんに向ける。

 

 

「ああ、そうだな…………ベルトさんとも、な。」

 

リョウタさんは目をつむり、ベルトさんに触れた。

 

その時、俺やまどか達の体が光りだし、徐々に体が消えかけていった。

 

 

 

 

 

『さあ、私達も行こう。みんなが待っている。』

 

「ああ、そうだな。じゃあな幽斗、雄也、ほむらちゃん、マミちゃん、さやかちゃん、まどかちゃん!」

 

「はい!リョウタさんもお元気で!!」

 

 

俺達はリョウタさんに手を振り、元の世界へと戻って行った…………。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「見送り、終わったぞ。」

 

「あれ!?いつの間に!私も幽斗君達に挨拶したかったなあ…………」

 

まあ、それもいいが…………こっちも見送らなきゃな。

 

 

 

「チェイス。ベルトさん。」

 

「…………ああ。」

 

『このように別れるのは二度目だが……やはり、慣れないな。』

 

 

俺もだよ。と言おうとしたが、やめた。

 

それを言ってしまうと、余計心残りになってしまう。

 

 

 

「チェイス、私は…………」

 

リゼぎスカートの裾を握り、小さく言った。

 

 

 

「わかっている。リゼ、…………しかし俺は行かなくてはならない。」

 

チェイスももう消えかかっていて、ほとんど姿が見えない。

 

 

 

「俺はお前達を、人間を愛して良かったと思っている…………」

 

「ちょっ……正面からそういうこと言うのやめろよ、気持ち悪い!」

 

そう言う流星だが、隠している目から涙が溢れているのは全員にわかった。

 

 

 

『そろそろ時間のようだね。』

 

「ああ、クリム。…………さらばだ。俺の……ダチ達。」

 

 

 

結界が完全に消えると同時に、ベルトさんとチェイスは消滅していった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

騒動から一週間…………

 

 

今、この俺泊リョウタは。これまでの戦闘と同じくらいの正念場に突入していた。

 

 

 

「リョウタ君、話って何?」

 

場所はドライブピット。

 

…………俺は今、ココアにこ、こ、…………告白しようとしているのだ。

 

 

ココア以外に場所と時間を言った覚えがないが、なぜかピットの出入り口の隙間から覗いている視線が複数あるのがわかる。

 

 

ちいいいっ…………!あいつらぁ!

 

落ち着け…………落ち着け俺……そうだ、素数、素数を数えろ。1……いきなりまちがっt………!!

 

 

「リョウタ君?」

 

「はい!!!」

 

「風邪でもひいたの?顔が真っ赤……というか、本当に赤い!」

 

 

やばい。頭に血が上りすぎて鼻血でも出そうだ。

 

 

「わ、私ちょっと冷たい水でも取ってくるよ!」

 

「ま、待ってくれ!!」

 

咄嗟にココアの手を掴み、俺は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだ!!!」

 

 

一瞬、時が止まった。

 

出入り口からヒソヒソと「ついに言ったぞ」だの「ココアさんはどう出るんでしょう?」だの色々聞こえる。

 

 

 

「あ、え、え、えと…………」

 

ココアもボフッと一気に耳まで赤くなった。…………俺も変な汗出てきたよ。体中がチクチクする。

 

 

「あの、リョウタ君……?」

 

ここまできたらヤケクソだ。

 

目をぐるぐるさせながら混乱するココアに、俺はさらに畳み掛ける。

 

 

「俺と、付き合ってくれ。」

 

「うぇえ!?」

 

 

ココアは少し間を置いて、ココアの腕を掴んでいる俺の手を、空いている手で触れ、言った。

 

 

 

 

 

「は………………ぃ。」

 

 

「「「「「おめでとーーーーーーーっ!!!」」」」」

 

 

「「うわああああっ!?」」

 

 

出入り口から現れた奴らが一気になだれ込んでくる。

 

 

 

 

「ココアちゃん!結婚式には私も呼んでね!!!」

 

「ちょっ!千夜!気が早すぎるわよ!」

 

「リョウタあああああっ!!リョウタあああっ!!」

 

「ああもう黙れ流星!!!」

 

 

 

 

これで、未来は作れただろうか?

 

 

 

「待ってろ、ショコラ!」

 

 

俺は自分でも誰に言ったかわからない言葉を発した。

 

 

 

 





これでサプライズラビット、リョウタ達の物語は終止符を打ちました(カッコよく言ってみる)。
次回からは仮面ライダーゴースト〜命を燃やす少年少女〜二部に突入します!


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第二部〜命を燃やす少年少女〜
偽りの勇気



第二部スタート!


 

 

勇気が欲しかった。

 

ボクは、小さい頃から臆病で、何もできない娘だった。

 

だからあの人にも……きちんと想いを告げる事ができなかった。勇気が無いから。

 

 

 

「ねえねえ、優香ってさ、人志の事好きでしょ?」

 

「えっ……そんな……こと……な……いや……」

 

「うっそだー!だっていっつも人志の事見てるでしょ!あたしは知ってるんだから!」

 

ボクの双子の姉、遠野優姫は、ボクと違って活発で、クラスのみんなからも好かれてて…………

 

「告白はしないの?」

 

「だ、だから好きとかじゃ…………」

 

嘘だ。ボクは、彼方人志君が好きだった。大好きだったのだ。

 

同じクラスの男の子。

 

ボクと同じで、地味で孤立気味だけど……それでもいつも優しい彼にボクは惹かれていた。

 

「ほら、勇気出して!きっと大丈夫だから!」

 

お姉ちゃんがそう言った時、ボクは思ったのだ。

 

 

やっぱりボクって、勇気が無いのかな…………

 

 

''優姫''お姉ちゃんには''勇気''があるから、クラスのみんなとも分け隔て無く話せるし、人気者だ。

 

それに対してボクは''勇気''が無いから…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからボクは、人志君を見捨てたんだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あの木組みの街の世界から帰って来て数日。

 

俺とマミさん、さやか、まどかで、相変わらず一緒に魔女狩りをしていた。

 

 

 

さやかが魔法少女になって、ますます揺さぶりがかかったまどかは、魔法少女への憧れが凄まじい物になっていた。

 

キュゥべえ曰く、まどかが契約すれば、史上最強の魔法少女になれる程の素質を持っているらしい。

 

しかし、まどかはまだ契約していない。

 

どうやら、願い事がまだ決まっていないらしい。

 

 

「…………ん?あれっ……」

 

朝、目覚めた俺はテーブルに置いてあったアイコン達に目を向けた。

 

無い、無いのだ。アイコンが一つ足りない。しかもそれは…………

 

 

「ドライブアイコンが無い!!!」

 

部屋中探し回ったが、ドライブアイコンはいつまで経っても見つからなかった。

 

 

せっかくリョウタさんから貰った力なのに…………!

 

 

「幽斗、どうかしたのかい?」

 

キュゥべえがひょっこりと、どこからともなく現れる。

 

そうだ、キュゥべえなら何か知っているかもしれない。

 

 

「なあキュゥべえ、ドライブアイコンって…………」

 

「なんだ、そのことか。」

 

期待通り、ドライブアイコンのことはキュゥべえが知っていた。

 

「どこにあった!?」

 

「ごめん幽斗、その事なんだけど……しばらく僕が持っててもいいかな?」

 

「え?」

 

ドライブアイコンを?一体何のために…………

 

 

「通常のアイコンや、英雄アイコンとも違ったアイコン。不確定な要素も多いから、少し調べたいんだ。」

 

「調べる?」

 

まあ……それならいいかな。ドライブアイコンが無くて戦闘で困るってわけでもないし。

 

「わかった。いいよ。」

 

「ありがとう幽斗!」

 

それだけ言うとキュゥべえはそそくさと、部屋の窓から外に飛び出した。

 

 

「さて……学校行くか。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

校門をくぐると、意外な組み合わせを見つけた。

 

雄也と、優香。

 

優香が一方的に雄也に話しかけているようにも見えるが…………

 

 

あ、優香が俺に気付いたみたいだ。

 

 

「おはようございます幽斗せんぱーい!」

 

「おはよう……て、先輩?」

 

「ああ、ほら、ボク一年生だからさ!」

 

それは知ってる。

 

「やっぱり敬語とか使わないとダメかな〜と思いまして!」

 

意外だ。優香もそういう事を気にするのか。

 

 

「……で、あの人ですよ!あの人!」

 

優香は人差し指をピッと立てて雄也を指差した。

 

「今あの人に話しかけてみたんですけど、ガン無視されちゃいまして……少しショックなのです。」

 

「ていうか……お前と雄也って接点あったのか?」

 

「え?はい、あの人がいきなり『アイコンを全て渡してもらうー!』とか言ってきて。」

 

 

…………雄也の奴、優香にまで…………

 

あいつはまさか……この街の仮面ライダー全員に同じような事をしているんじゃないか?

 

そうまでして叶えたい願いって何なんだ…………?

 

 

「それでですね、何でそんなにアイコン欲しいのー?って聞いたんですよ。」

 

「マジかお前!!で、雄也は何て!?」

 

 

勇気ありすぎだろこの子。俺だったら多分睨まれて、ビビってそれで終わり…………

 

 

「んー……教えてくれなかった。」

 

「ですよねー。」

 

 

忘れちゃいけないのは、あいつと暁美はキュゥべえと契約した事がないという事だ。

 

それなのに魔法を使える。そして、アイコンも狙っている。

 

いずれにせよ、あいつらを味方と判断するにはまだ早い。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おや?暁美ほむらじゃないか。どうしたんだい?」

 

今すぐにでもこいつを撃ち殺したい。

 

でも、そんな事をしても無駄な事はわかっている。こいつは消えない。

 

 

 

「そのアイコン……どうするつもりなの?」

 

「これかい?」

 

奴が幽斗のドライブアイコンをコロコロと転がしながら首を傾げる。

 

 

「ちょっと研究させてもらおうと思ってね。」

 

「それは……幽斗にちゃんと返すんでしょうね?」

 

 

奴はすぐには答えなかった。

 

少し間を置いて、言い放った。

 

 

「僕は幽斗に、返すなんて言った覚えはないけどね。」

 

「あなた……!!」

 

盾から銃を取り出して構える。奴は逃げない。当たっても無駄な事は私も、奴もわかっている。

 

 

「何の研究をしているのか、言いなさい!」

 

「いいよ。」

 

ドライブアイコンを体内にしまうと、後ろ足で頭を掻きながら奴は話し出した。

 

 

 

「もっと、手っ取り早くエネルギーを回収する方法がないか探しててね。それで考えたんだ。」

 

 

私は奴からそれを聞いた時、どうしようもないという悲壮感と、絶望が全身を走った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

放課後になった。

 

さて、雄也と暁美に色々聞こう…………と思ったんだけど。

 

「すでにいないし…………」

 

帰るの早すぎだろあいつら…………

 

 

「まどかー!幽斗ー!帰ろー!」

 

さやかがソウルジェムの指輪をキラキラさせながら寄ってきた。

 

「さやかちゃん、今日上条君と話したの?」

 

まどかが何故そんな質問をしたのかというと、上条が退院したからである。

 

無事さやかの願いが叶い上条の腕が治り、日々のリハビリを頑張っていたおかげなのか、上条は松葉杖を使えば自力で歩けるまでに回復した。

 

そして、今日からついに登校できるようになったのだが…………

 

 

「あはは、まだだわ。」

 

上条は他のクラスメイトから色々質問攻めにされていて、さやかの入る隙がなかったのだ。

 

「いいの?」

 

「いいよいいよ、明日も、明後日も恭介は来るんだし!」

 

幸せそうな笑顔で言うさやかに、俺とまどかも釣られて微笑む。

 

 

 

「さやかさん、少しお時間いいですか?」

 

「仁美?どうしたの?」

 

 

志筑さんが帰ろうとしてるさやかを呼び止めた。

 

 

「二人きりで話したい事が。少し長くなる話かもしれませんが……」

 

「二人きり、か。幽斗とまどかは先に帰ってて。」

 

「いいのか?」

 

「うん、待たせると悪いしね!」

 

 

そう言って志筑さんに連れられてさやかは教室の外に出て行った。

 

「俺達も行くか。」

 

「そうだね。」

 

俺とまどかも教室の出入り口から廊下に出た。

 

階段に向かおうとしたところで、俺達に呼び止める声がかかった。

 

 

「あ、先輩方!一緒に帰りましょう!」

 

優香だ。わざわざ二年生の教室まで来たのか。

 

 

「あ、あなたは確かこの前の…………」

 

「遠野優香です!」

 

初対面の人にも分け隔てなく喋る子だ。クラスではさぞ人気者なんだろう。羨ましい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

雑談をしながら帰路につく。

 

その中で、まどかが魔法少女の話題を出してきた。

 

「その、言いたくなかったら言わなくてもいいんだけど……優香ちゃんは、どんな願いで魔法少女になったの?」

 

「へ?」

 

「ご、ごめん!変なこと聞いて……でも、私どうしても願い事が思いつかなくて…………」

 

 

これは俺も気になっていた事だった。なので気にしてない風を装い、聞き耳をたてる。

 

 

「んー……大した事じゃないですよ。ちょっとだけ、''背中を押してください''って頼んだだけです。」

 

背中を押す……?どういう事だろうか。

 

濁すようにも聞こえるが……まあ、自分の願い事なんてそうそう言えないか。

 

 

 

「あ、ボクはこの辺で!」

 

優香が立ち止まる。

 

この辺に家があるのだろうか?周りには高層マンションが複数立っているので、どれかわからないが。

 

 

「また明日です!」

 

「ああ、またな。」

 

「ばいばい、優香ちゃん。」

 

 

そう言って俺達に背中を向け元気に走っていく優香の後ろ姿は、どこか悲しそうに見えた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「もうほとんど完成だね。」

 

「後は魔法少女達を、''強制的に魔女にする''方法さえ見つかれば、後は僕達だけで何とかできる。」

 

「全く、もっと早くこうすれば良かったよ。無駄な時間を取った。」

 

「でも、これって……燃費が悪くないかい?」

 

「問題ないよ、スペアはいくらでもあるしね。」

 

 

 

 





今回からキュゥべえが一気に怪しくなりましたね。


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俺にとっての幸せ


今回も戦闘はありません。が、幽斗の心の内が少し明らかになります。


 

 

「幽斗達に言わないのかい?君は真実を知っているんだろう?」

 

「……うるさいよ、キュゥべえ。」

 

「遠野優香……君もやっぱり、その体は嫌と思うかい?」

 

「うるさいったら!」

 

ボクは自分の部屋のベッドに倒れ込み、僕の机の隣にある、もう一つの机を見つめた。

 

お姉ちゃんの机だ。

 

 

 

 

 

ボクは魔女と、眼魔の正体を知っている…………だって、目の前で見てしまったから。

 

でも言えないよ。ボクにそんな勇気は…………

 

 

「怖いのかい?おかしいな……僕は君の願いを叶え、''勇気''を与えたはずだけど。」

 

 

ボクは震える足を両手で抱え、顔を埋めた。

 

 

「ダメ、なの…………やっぱりダメなの…………ボクに勇気は持てない…………」

 

今は大丈夫でも、いずれ限界が来て、ボクも…………

 

 

 

「ところで優香、君が探している魔女の事だけど……うん、やっぱり、この街にいるね。それもかなり近い。」

 

 

ピクッと、その言葉に体が反応する。

 

ボクが探している魔女…………あの魔女だけは、ボクが倒さないといけない。

 

 

「優香、まさか君は、一人であの魔女を倒すつもりかい?」

 

「大丈夫、今のボクにはこれがある。」

 

ポケットからピンク色のアイコンを取り出して、見る。

 

英雄のアイコンの一つ。ボクの心の支えでもある物だ。

 

 

「力を貸してね、卑弥呼様…………」

 

「英雄アイコン、か。それでも辛いかもね。''優姫''は強かった。魔法少女としての実力ならマミにも匹敵するだろうね。」

 

巴マミさん。同じ中学だし、話くらいは聞いたことがある。他の魔法少女達からも、少し噂で聞いた。

 

 

「何しろ優香、君に''倒すことができるのかい?''」

 

キュゥべえを睨む。

 

この質問は、単にボクの実力で''あの魔女''を倒せるのか?という意味で聞かれているんじゃないだろう。

 

それを理解し、ボクは言った。

 

 

「……倒してみせるよ、人志君の仇でもあるんだしね……」

 

 

「そうかい。じゃあ僕も、その瞬間を見届けさせてもらおうかな。''肉親を殺した人間''が、どんな反応をするか興味があるしね。」

 

かっとなり、側にあったクッションを掴み、キュゥべえに向かってそれを投げた。

 

それを軽々とキュゥべえが躱す。

 

 

「やめて!もうやめてよ!出てってよ…………っ!!!」

 

ボクは掛け布団を引っ張り、視界を覆った。

 

 

「待っててね…………お姉ちゃん…………!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ほむら、もうすぐ奴が…………ワルプルギスの夜が来る。それまでに……」

 

「ええ、その前には必ず、戦力を揃えてみせる。まずは''あの子''を……」

 

 

ワルプルギスの夜。

 

他の魔女や眼魔とは比べ物にならないほどの力を持つ最悪の魔女…………奴を今まで通りの戦い方で倒すことは到底不可能だ。

 

それに加えて、''今回''はもう一人厄介な奴が、俺達を狙っているときた。

 

 

「そろそろ、話してもいいんじゃないか?」

 

「……」

 

「せめて幽斗には話しておくべきだ。」

 

「そうかもね。でも、まだ言うべきではないわ。」

 

 

 

もう何回繰り返したかわからない。

 

繰り返す毎に失敗し、大切な仲間を失い。挙げ句の果てに幽斗は…………

 

 

「そうだ……ねえ、雄也。言っておきたい事があるの。」

 

「ん?」

 

 

ほむらが伝えたのは、キュゥべえの行動に関しての事だった。

 

幽斗のドライブアイコンを奪っていったらしい。そして…………

 

 

「あいつの次の計画は……ーーーーーーーーー」

 

 

 

 

言葉が出なかった。

 

代わりに腹の底から抑えきれない怒りがこみ上げてくる。

 

最低最悪の、反吐が出そうなくらいの事を聞かされた。

 

 

 

「ふざ……けるなよ…………キュゥべえ…………!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「なあまどか……なんか、今日のさやか元気無いよな?」

 

「うん、どうしたんだろ……」

 

いつもは元気なさやかが、今日丸一日元気が無く、思いつめたような顔をしていたのだ。

 

志筑さんの様子も変だった。この前二人きりで話してた時に、何かあったのか?

 

 

さやかは帰り支度を終えると、俺達に声をかけることなく教室を出て行った。

 

……いつもはあいつから「一緒に帰ろー」とか言ってくるのに…………

 

 

「まどかさん、天空寺君、また明日。」

 

志筑さんが俺達に挨拶をしたところで、まどかが志筑さんを引き止めた。

 

 

「ねえ仁美ちゃん、さやかちゃんと……何かあったの?」

 

「ああ、いえ……なんでもないですわ。では、私は急ぐのでこれで…………」

 

「あっ……」

 

仁美はそう言うと早歩きで教室から出て行った。

 

やっぱり、何か変だ。二人とも……何かに焦ってるような気がする。

 

 

「私、ちょっとさやかちゃんの所に言ってくる!」

 

「まどか!?」

 

まどかはさやかを追いかけようと、走った。

 

俺は…………いや、付き合いの長いまどかに任せた方がいいかもな。

 

 

「帰るか。」

 

一人で帰るのは久しぶりだ。

 

最近はずっとまどかとさやかと一緒に帰ってたからな。たまには一人で帰るのも悪くは…………ん?

 

 

不意に視界に入ったのは、雄也と暁美の二人だった。

 

二人ともちょうど帰るところらしい。ていうか、あの二人はいつも一緒に帰ってるのか?

 

…………そうだ。色々聞きたいこともあるし…………

 

 

「ここは少し強引に……!」

 

思い切って声をかけることにした。上手くいけば一緒に帰って…………

 

 

「雄也、暁美、一緒に帰ろうぜ!」

 

と、近寄って二人に声をかける。…………さあ、どうくる?

 

「「…………」」

 

二人は一度顔を見合わせてから一度頷き、俺に顔を向けた。

 

 

「好きにしろ。」

 

「あーやっぱりダメ…………て、今なんて?」

 

「好きにしろ、と言ったんだ。」

 

………………!!!

 

これは最高の展開だ。もしかしたら色々、アイコンの情報とか聞き出せるかもしれない!!

 

 

「あ、ありがとう雄也!暁美!」

 

「…………ほむらでいいわ。」

 

「え?あっ……そう?」

 

 

三人で校舎を出て行き、帰る。

 

早速俺は自分から色々と質問を二人に投げかけて行った。……怪しまれなければいいが。

 

 

「二人ともすごいベテランな感じするけどさ、キュゥべえと契約してからどれくらい経つの?」

 

あれ、でもそういえばキュゥべえはこの二人とは契約した覚えが無いって言ってたな。

 

 

「…………それをお前に言う必要があるか?」

 

「え?いや、その、ありませんね…………」

 

 

思わず敬語になっちゃったじゃないか。何だよ今の顔、カタギの顔じゃないぞ。

 

えーと、次の質問…………

 

「え、えっと、雄也はいくつアイコン持ってるの?」

 

「……それも言う必要はない。」

 

「え、あ、そっすか。」

 

どうしよう。このままじゃ情報どころか会話にすらならないぞ。

 

せめて親密度を上げるために何気ない会話で……!

 

 

「おい、幽斗。」

 

「え?な、何だ!?」

 

いきなりの雄也からの質問で語尾が強くなってしまう。

 

雄也は前を向いたまま、口元だけを動かして俺に言った。

 

 

「もしもアイコンが十五個揃ったら……お前は、何を願う?」

 

「え?」

 

アイコンが十五個揃ったら…………

 

正直、俺はまだ、全てのアイコンが揃った時、何を願うかは考えていなかった。だけど不思議と、言葉が出た。

 

俺は一度、死にかけた。命が助かったのだから、もう自分自身の為に願うことなんか、無い。生きていればそれでいいと。だから…………

 

 

 

「みんなの為に…………色々な人の幸せに繋がる事を願いたい!」

 

 

雄也は俺を一瞥し、「そうか」とだけ言うと、また視線を前に戻した。

 

俺の言葉を聞いたほむらが言う。

 

 

「その、''みんな''の中には、貴方も入っているの?」

 

思ってもみない質問だった。

 

そして、俺も考える。俺が思っていた''みんな''とは誰か。

 

 

「そうだな……みんなが幸せになれば、俺も嬉しい。だから、それは俺にとっての幸せと、同じなんだと思う。」

 

「…………」

 

 

しばらく静寂が続いた。

 

 

「……お前は甘い。」

 

そう言った雄也の表情は、わかりにくいが、怒っているようにも、悲しそうにも見えた。

 

 

「甘い、ね。そうかもな。だけどそれは悪いことじゃないだろ?」

 

 

人の幸せを願う事は……間違いじゃない。良いことのはずだ。誰かの幸せを願うこと、それはきっと……ーーーー

 

 

 

「誰かを呪う事にも繋がる。」

 

「……!?」

 

 

まるで俺の思っていた事に被せるように雄也は言った。

 

 

「お前は……魔法が、幸せの為にあるとでも、本気で思っているのか?」

 

「な、何だよ……どういう意味だ!」

 

 

三人、同時に足を止めた。

 

 

「お前のその甘さが……今回の、''最悪の敵''を生み出した。」

 

 

最悪の…………敵……!?

 

どういう意味だ、と問おうとした瞬間。ほむらがソウルジェムを取り出し、変身した。

 

そしてすぐさま腕に付いている盾を構える。

 

 

 

「とりあえず、謝っておく。すまなかった、幽斗。」

 

「おい、それどういう意味だよ……おい!待て!!」

 

 

雄也の腕を掴もうと、手を伸ばした時には、二人の姿は跡形もなく消えていた。

 

 

 

「……くそっ……!何なんだよ…………!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あれ?どうして君がこの街にいるんだい?」

 

 

キュゥべえはビルの屋上に座り、りんごにかぶりつく少女を見つけ、聞いた。

 

 

「何かさ、知らない奴から連絡が飛んできたんだよ、''暁美ほむら''とかいう奴から。」

 

キュゥべえは暁美ほむらという名前に反応する。

 

 

「ふーん、で、彼女は何て?」

 

「それがさ……『もうすぐ''ワルプルギスの夜''が来るから手を貸せ』なんて言いやがる。んな確証どこに有るってんだよ……」

 

「それで、君は素直にそれに応じたのかい?わざわざ隣町から?」

 

「まあ、もし本当なら、断る理由はないからね。奴のグリーフシード……どれほどの大きさなのか……あははっ!」

 

「でも、もし嘘だったら?」

 

 

少女は持っているりんごの芯を空中に放り投げ、どこからともなく現れた槍でそれを切り刻んだ。

 

 

 

「そん時はその……ほむらって奴をぶちのめすだけよ。わざわざあたしを呼んどいて、嘘をつくなんて、許すわけないじゃん。」

 

「相変わらずだね君は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐倉杏子。」

 

 

 

 

 




杏子登場。

次回からは徐々に魔法少女と仮面ライダーの真実へと近づいていきます。オリキャラである優香の話が多くなるかもしれません。


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動き出す歯車


バトライドウォー創生買いました!ドライブ好きの僕は真っ先にドライブとマッハを育ててます!
vita版は敵が少ない…………


 

 

授業中、俺は誰も座っていない二つの席を交互に眺めていた。

 

今日は、雄也とほむらの二人が学校に来なかったのだ。

 

昨日雄也が言っていた言葉を思い出す。

 

 

『とりあえず、謝っておく。すまなかった、幽斗。』

 

 

謝っておくって…………どういう意味なんだよ…………

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「まどか、さやかの事だけど……どうだった?」

 

昨日、さやかは様子がおかしかった。

 

まどかがその理由を知るためにさやかに話を聞きに言ったはずだ。

 

 

まどかは少しためらった後、俺を連れて教室から出ていき、人気の無い所に移動してから言った。

 

「その、上条君の事でちょっと…………」

 

 

上条恭介……さやかの思い人であり、俺たちの同級生。

 

腕の怪我はさやかの願いで治り、ヴァイオリンも弾けるようになったはずだが、まだ何か…………

 

 

「仁美ちゃんも、上条君の事が好きだったんだって。」

 

「!?……それはつまり…………」

 

「うん……それで、前に仁美ちゃんに言われたんだって。今度、上条君に告白するって。それまでに上条君に思いを伝えるか決めてって……」

 

 

それはまた、随分急な話だ。

 

さやかはそれで……まだ覚悟は決めれていないってわけか?

 

「で、さやかは何て?」

 

「まだ迷ってるみたい。私もどうしたらいいかわからなくて……」

 

まどかは困ったような顔で俯いた。

 

当然だ。まどかとさやかと志筑さんの三人は、小さい頃からの親友。どちらかの恋を応援すれば、必ずどちらかの不幸を招く事になる。まどかも迷うわけだ。

 

確かにさやかも辛いと思う……でも、これは志筑さんとさやか、二人の恋だ。俺達がどうこう言う義理は無い。

 

でも……

 

 

「俺も少し、さやかと話をしてみるよ。」

 

 

 

 

 

 

教室に戻り、さやかの机に視線を向けると……そこにさやかはいなかった。

 

教室をよく見渡すと、志筑さんもいない。

 

 

あの二人、一体どこに…………

 

 

俺が教室の出入り口を見ると、ちょうどさやかと志筑さんの二人が入ってくる所が見えた。

 

二人の表情は、まるでこれから戦いにでも行くような引き締まったものになっていた。

 

俺はさやかの方へ寄り、声をかけた。

 

 

「さやか……その、まどかから聞いたんだけど…………」

 

「ごめんね、さやかちゃん……」

 

「え?」

 

一瞬、何のことかわからない。という顔になった後、さやかは明るい表情を取り戻して言った。

 

「あ、ああ!恭介のこと?さっき仁美にも話したんだけどね…………」

 

 

さやかの口から、俺とまどかが予想していなかった言葉が飛び出した。

 

「あたし、一週間後に、恭介に告白する。」

 

いつものさやかとは違う、真剣な表情。

 

もう覚悟は決めた、という表情だった。

 

 

「さやかちゃん!」

 

「えへへ……」

 

まどかも安心したのか、笑みがこぼれる。

 

どうやら…………俺達に心配する必要はなかったみたいだな。

 

 

「でも、何で一週間後なんだ?」

 

「え?そ、それはさ……まだ、心の準備というか、なんというか…………」

 

 

前言撤回。心配したほうが良さそうだ。

 

 

つまり、一週間志筑さんは、さやかが上条に告白するまで待ってくれるということか。

 

一週間もあればさやかも大丈夫だろうが…………

 

 

「まあ、頑張れよさやか!」

 

「あんたに言われなくても!」

 

 

さやかはその時、笑っていた。満面の笑みだ。

 

 

一週間後…………それまでに俺達は、知る事になる。''本当の事''を…………

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そっちから…………来るとはな…………」

 

「…………」

 

ほむらが横でソウルジェムを取り出すのと同時に、俺もゴーストドライバーを出現させた。

 

 

死ぬかもしれない。

 

目の前の敵を見据え、しっかりとスペクターゴーストアイコンを握りしめる。

 

死ぬかもしれない。

 

「……お前は、俺達が倒す。倒さなきゃならないんだ…………!」

 

黒い影は、不敵に笑うと、腰に黄金に輝く巨大なアイコンの形をしたベルトを出現させた。

 

「倒すって…………俺をか?」

 

死ぬかもしれない。

 

魔法少女や、仮面ライダーを次々と襲い、殺した。''邪悪な願い''。

 

正直、勝算は全く無かった。だけど……俺達はやらなくてはいけなかった。

 

 

「ちっ……くそっ……!」

 

恐怖で全身が動かない。まるで金縛りだ。

 

 

確実に、戦ったら死ぬ。

 

 

 

相手は''十五個のアイコンを持った願い''だ。勝てるわけがない。

 

 

勝てるわけが…………

 

 

その時、左手に温もりを感じた。

 

ほむらが、優しく俺の手を握ってくれていた。

 

 

「大丈夫。あなたは私が守る。」

 

「ほむら…………」

 

 

黒い影は頭を掻き、溜息を吐き捨てた。

 

「はあ…………やっぱりお前らは''変身''するまでもない。」

 

「なんだと……!?」

 

 

今までの奴の行動を振り返る。

 

 

確かに奴は……今まで俺達を、変身する事なく圧倒してきた。

 

あの廃墟で戦った時も……木組みの街で戦った時も…………

 

こいつは、変身する事なく…………

 

 

 

 

 

「ああ……なんか、もういいや。」

 

 

黒い影は腰のベルトに手をかざし、消滅させた。

 

俺達に背を向け、歩き出す。

 

 

 

「何のつもりだ!」

 

「…………お前達を殺すのは、また今度だ。」

 

その言葉が苦し紛れの言い訳だという事を、俺とほむらは瞬時に理解した。

 

なぜ、俺達を殺そうとしないのか。

 

ほむらは離れていく黒い影に対して聞いた。

 

 

「あなた……記憶が…………?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

放課後。

 

今日はまどかやさやかの他に、偶然会ったマミさんも一緒に帰宅する事になった。

 

 

「告白かあ……美樹さん、頑張ってね!」

 

「はい!」

 

すっかり元気になったさやか。

 

俺達は不安を完全に解消し、笑いながら談笑して帰った。

 

 

「マミさんは恋、した事あるんですか?」

 

恋バナという男子の俺には気まずい状況で、少し興味のある話題が出てきた。

 

マミさんの恋か……なんか、すごく大人っぽい話が出てきそうだな。

 

 

「私は……うーん……無いかな。鹿目さんは?」

 

「えっ!?私ですか!?」

 

 

答えたくなかったのか、マミさんは矛先をまどかに変えた。

 

 

まどかの好きな人ね……これは……どうだろうか。想像つかない。

 

 

「うーん……好きっていうか…………気になるなーっていう人はいるんだけど……」

 

「ええっ!?あたし初耳だよそれ!」

 

幼馴染であるさやかですら知らなかったらしい。

 

 

「だ、誰!?誰なのまどか!?」

 

「こ、ここじゃ言えないよ!!」

 

頬を紅潮させたまどかに迫るさやか。当然、まどかはそれが誰なのか言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら……?」

 

マミさんが咄嗟にソウルジェムを取り出す。

 

釣られて俺もオレゴーストアイコンを取り出した。

 

 

「マミさん!これ…………!!」

 

「ええ……」

 

 

魔女の反応だった。それも、かなり強力な。

 

マミさんもこれほど強い魔力の反応は見た事が無いらしく、神妙な表情で唾を飲み込んだ。

 

 

この強い反応…………まさか、あの黒い奴じゃないよな……?

 

 

 

「行きましょう!」

 

「ええ!」

 

マミさんが先導して走り、少し遅れて俺とさやか、まどかが走った。

 

近い。

 

五分ほど走った所で、既に半径五十メートルの範囲にその反応がある事がわかった。

 

「こっち!」

 

狭い路地裏を、魔力を辿って駆け抜ける。

 

遅れをとらないように、俺は走りながらゴーストドライバーを出現させ、アイコンを構えた。

 

 

「あれだ!」

 

魔力の発生源である結界の扉が見えた。

 

そしてその隣に立つ、一人の少女。

 

 

あれは…………優香か……!

 

 

見滝原の制服を身に付け、腰にゴーストドライバーを装着した少女。

 

女性の仮面ライダーは少ない事から、すぐに優香だとわかった。

 

 

「優香ちゃんもこの魔女を!?」

 

優香はまどかの声に驚き、こちらを振り向いた。

 

「先輩?」

 

 

「天空寺君、この子は……?」

 

「この子は遠野優香。見滝原中の一年生で、俺と同じ仮面ライダーなんです。」

 

「へえ、キュゥべえが言ってた通り、女の子でも仮面ライダーになる事があるんだね。」

 

 

キュゥべえ…………そういえばドライブアイコン預けたままだな。今日は会ってもいないし。

 

 

「先輩達もこの魔女を追ってきたんですか?」

 

「ああ!ちょうどよかった……反応からして、この魔女は強い。一緒に戦おう!」

 

俺がそういうと、優香は顔を青くして首を横に振った。

 

「ごめんなさい、この魔女はボクだけで倒します。」

 

予想もしなかった言葉に、俺達は戸惑った。

 

前に見た戦いぶりからして、優香は俺よりも前に仮面ライダーになったはずだ。魔力の濃さで敵の強弱くらいはつくだろう。

 

この魔女は、明らかに一人では勝てない。そんな事は明らかだった。

 

しかし、優香はこの魔女を一人で倒すと言った。

 

 

「で、でも遠野さん?いくらなんでも、この魔女を一人で倒すのは…………」

 

「ごめんなさい、確かにマミさん達の力を借りられれば、この魔女は倒せるでしょうが……」

 

優香が既にマミさんの事を知っていたことに驚く。やっぱり魔法少女や仮面ライダーの間では、実力のあるマミさんは有名なのだろうか。

 

 

「ボクは一人で、この魔女を倒します。」

 

優香はブーストゴーストアイコンではなく、ピンク色のアイコンを取り出し、ゴーストドライバーに装填した。

 

 

《アーイ!》

 

《バッチリミヨウ!バッチリミヨウ!バッチリミヨウ!》

 

「変身!」

 

《カイガン!ヒミコ!未来を予告!邪馬台国!》

 

いつものブーストとは違い、よりピンク色が目立つ姿。

 

「優香も、英雄のアイコンを……」

 

ヒミコゴーストアイコン。名前を聞くに卑弥呼の魂が込められた英雄アイコンだろう。

 

 

「それでは……」

 

それだけ言うと、優香は一人で結界の中へと飛び込んでいった。

 

 

俺達もそれで大人しく引き下がるわけがない。

 

「幽斗!マミさん!」

 

「ええ!」

 

「わかってる!」

 

優香一人じゃこの魔女を倒す事は出来ない。俺達も加勢する必要がある。

 

マミさんとさやかはソウルジェムを取り出し、俺はオレゴーストアイコンを装填した。

 

《アーイ!》

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

「変身!」

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

 

まどかは拳を握りしめ、恐怖をかき消そうと頭を振った。

 

さやかが剣を、マミさんがマスケット銃を取り出す。

 

 

「さあ……命、燃やすぜぇ!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

マンションに向かう。

 

この後は、ほむらの部屋でワルプルギスの夜を打倒するための話し合いが開かれる予定だった。

 

「……?」

 

「どうしたほむら?」

 

自室の扉に手をかけたほむらが眉をひそめた。

 

「鍵が開いてる……」

 

「……もう来てるみたいだな。」

 

扉を開くと、玄関に一組のブーツが汚く脱ぎ散らかされていた。

 

 

リビングに移動すると、案の定赤い髪を一つに束ねている少女があぐらをかいて何やら菓子を食べていた。

 

 

「勝手に部屋に入らないでくれるかしら、佐倉杏子。」

 

俺達に気づいたのか、杏子は座ったまま顔だけこちらに向けた。

 

 

「勝手にって、人を呼んでおいて留守にしてた方が悪いじゃんか。」

 

確かにそうだが、魔法まで使って鍵を開けるのはどうかと思う。

 

 

俺達は杏子と向かい合うようにして座った。

 

 

「暁美ほむらと……あんたが深海雄也か?」

 

「ああ。」

 

「へえー……仮面ライダーか。初めて見るよ。」

 

確かに魔法少女に比べて仮面ライダーは数が少ない。この街には仮面ライダーが集中してるが。

 

 

「そういや、ここに来る途中妙なもんが出てきてさ、倒したらこんなのが出てきやがった。面白いな、この街。」

 

そう言って杏子が取り出したのは濃い青色のアイコンだった。

 

アルファベットで「フーディーニ」の文字がある。

 

「……それをこっちに渡せ。」

 

「はあ?なに?あんたこれが欲しいの?魔力は帯びてるけど何の役にも立たなかったぞ?」

 

「それは魔法少女の場合だろう。」

 

「ふーん……まあいっか、あたしはいらないし。」

 

そう言って杏子は俺にフーディーニゴーストアイコンを投げ渡した。

 

 

 

 

「で、ワルプルギスの夜を倒す会議だっけ?」

 

「その前に…………」

 

 

そう。俺達は杏子に協力を仰ぐにあたり、先に伝えることにしたのだ。

 

 

 

 

 

 

「あなたに、魔法少女の真実を話しておくわ。」

 

 

 




次回、幽斗達も魔法少女と仮面ライダーの真実を知ることに…………!?



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引き金


今回は少しだけあのライダーが登場。


 

 

「…………何か変だ。」

 

ボクが結界の中に入ってから、攻撃どころか、使い魔一体の気配すら無い。

 

使い魔がいない…………いや、必要無い…………?

 

 

 

 

 

 

 

''私は優香がいればそれでいいんだ''

 

 

 

 

 

 

「……っ……!」

 

こんな事になっても…………お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだね。

 

 

 

一体の魔女の気配を頼りに、ボクは結界を駆け抜ける。

 

すぐに戦闘に移れるよう、あらかじめゴーストドライバーからサングラスラッシャーを取り出し、構えた。

 

使い魔がいないのなら、相手は魔女だけ。一体の敵に集中して戦える。これならボク一人でも勝てるはず。

 

 

この魔女を倒す事が……ボクの、お姉ちゃんと人志君への罪滅ぼしだ。

 

 

 

「卑弥呼様……ボクに勇気を……!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

結界の中は、怖くなるくらい幻想的で、綺麗な風景が広がっていた。

 

ここが本当に魔女の結界の中なのか、疑うほどに。言葉で言い表せない美しさだった。

 

 

 

「なっ……!なにこれ!?」

 

先に突っ込んでいったさやかが立ち止まり、叫んだ。

 

後ろを走ってきた俺とマミさんとまどかも立ち止まり、ソレを見上げた。

 

 

「壁……?」

 

俺達の侵入を阻止するように、その壁は佇んでいた。

 

周りの風景に同化している、白い壁。

 

 

「行き止まり……じゃないよね?」

 

違う。今まで進んできたのは一本道だった。これは……

 

 

「俺達を通さないつもりか……」

 

ゴーストドライバーからガンガンセイバーを取り出す。

 

新しいアイコンの力……試してみるか。

 

以前倒した眼魔が落としたロビンフッドゴーストアイコンを取り出し、ゴーストドライバーに装填した。

 

 

《アーイ!》

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

《カイガン!ロビンフッド!ハロー!アロー!森で会おう!》

 

 

緑色のパーカーゴーストと同時に、電話機とコンドルを合わせたようなガジェットが現れ、ガンガンセイバーと合体し、アローモードに変形した。

 

 

「なるほど、武器は弓か……」

 

こいつで、この壁を破壊する!

 

 

ゴーストドライバーにガンガンセイバーをかざし、アイコンタクトを発動させる。

 

《ダイカイガン!》

 

《ガンガンミナー!ガンガンミナー!ガンガンミナー!》

 

弓を引くように、片腕を固定し、もう片方の手を引く。

 

《オメガストライク!》

 

引いた方の手を開くと、矢の形をしたエネルギーが真っ直ぐに発射され、目の前の白い壁を貫き、崩壊させた。

 

 

「相変わらずすごいわね……アイコンって。」

 

「魔法少女にもこういう力があればいいのになあ。」

 

と、感心したような声を上げるマミさんとさやか。

 

 

 

こんな所で時間を潰すわけにはいかない。優香はもうかなり奥の方へ進んでしまったみたいだ。俺達も急がないと。

 

「あ〜……みんな、少し我慢してね。」

 

「「「へ?」」」

 

「イグアナゴーストライカー!」

 

 

やはり結界の中を素早く移動すると言ったら、これを使う以外考えられない。

 

空中に現れた眼の模様から出てきたイグアナゴーストライカーは、「待ってました」と言わんばかりの勢いで俺達の目の前に降り立った。

 

 

 

「やっぱりコレなのね……」

 

「な、なんか、あたしもう慣れたわ。」

 

「やっぱりかわいいなあ……この子。」

 

 

三人がイグアナゴーストライカーに乗ったのを確認し、俺は運転席に跨った。

 

そろそろこいつのコントロールにも慣れた。最初みたいに振り回されることはないはず。

 

 

「しっかり掴まってて!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最後に見た時と変わらず、お姉ちゃんは綺麗だった。

 

 

 

 

「……ごめんね、待たせちゃって。」

 

ついにこの瞬間が来た。

 

ボクの、未練。それを断ち切り、ケジメをつけるこの時が。

 

 

「結局、一人で挑むつもりなのかい?」

 

不気味なほど澄んだ声が後ろから聞こえた。キュゥべえだ。

 

「これはボクがやらないとダメな事だよ。」

 

「ふーん……どうでもいいけど、幽斗達は君を追いかけてるみたいだよ。もうすぐここに到着するだろうね。」

 

 

なら、その前にこの魔女を倒す。ボクだけの力で、この魔女を…………

 

「お姉ちゃんを、倒す。」

 

 

サングラスラッシャーを握りしめ、ボクは目の前の女神のような魔女に飛び込んだ。

 

五メートル程の体に、その二倍はありそうな大きな翼。

 

 

魔女の周りから放射される光線を躱しながら、懐を目指す。

 

一撃でも当たるわけにはいかない。この光線は、一撃だけでも十分勝負がつくだけの威力がある。そう確信していた。

 

 

勇気。

 

勇気。

 

 

「勇気!!!」

 

光線の乱舞を躱しきり、サングラスラッシャーでの攻撃が届く位の距離まで近付けた。

 

迷わないように、ボクは何も考えずにサングラスラッシャーを思い切り振り下ろした。

 

魔女の体に斬撃が当たる。

 

これで終わらない。さらに追撃する。

 

「はあっ!…………せやぁっ!!!」

 

がむしゃらにサングラスラッシャーを振り回すボクは、なぜか、''あの日''の事を思い出していた。

 

お姉ちゃんが魔女になった日。

 

そして、その大好きだったお姉ちゃんが、愛しい人を奪っていった日。

 

ボクにあの時勇気があれば……もう少し早くキュゥべえと契約していたら……ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃああああっ!!!」

 

 

ボクの体に、無数の魔力弾が直撃した。

 

空中に放り投げられ、変身が解ける。

 

 

 

確かにサングラスラッシャーの攻撃は届いたはずだ。それなのに、ダメージを負っているのはボクだ。

 

 

 

 

 

「ああ……そうか…………」

 

意地悪だなあ……お姉ちゃん…………

 

「今まで切ってたのは使い魔…………だったんだ。」

 

この魔女の部屋に来るまでに使い魔が一体もいなかったのは、油断させるため……

 

やっぱり、お姉ちゃんの方が一枚上手だったみたいだね。

 

このまま、お姉ちゃんの姿もわからないまま…………ボクは死ぬのかな…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》

 

ボクに襲いかかる光線は、飛んできた斬撃によって弾かれた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「間に合った!」

 

間一髪。ギリギリだった。あと一歩遅ければ優香は光線に貫かれて…………

 

 

「マミさん!さやか!」

 

「了解よ!」

 

「任せて!」

 

 

マミさんが複数のマスケット銃を自分の周りに展開し、優香に当たらないように結界の中を乱射し、牽制する。

 

さやかは素早く倒れている優香に駆け寄り、抱きかかえて俺とまどかの所に連れてきた。

 

 

 

俺は周囲を確認し、魔女がいないかどうか確認する。

 

この魔女はかなり危険だ。戦略に長けている。それに……

 

「純粋に、魔力が強い。」

 

 

結界の中に魔女はいるはずなのだが、どこにいるのか全く感知できない。

 

強い魔力があちこちに分散されていて、魔女の場所が正確にわからないのだ。

 

必ずここにいる。どこかで、俺達を見ているはずだ。

 

 

「くっ……!」

 

俺達にも光線が降り注ぐ。それをなんとか避け、避けられなかった光線はガンガンセイバーで弾いていく。

 

早く魔女の場所を突き止めないと…………このままじゃ防戦一方だ。

 

どこかに……どこかにいるはずだ…………!!!

 

 

「う……」

 

「幽斗君!優香ちゃんが!」

 

まどかに抱きかかえられていた優香が目を覚まし、何やら口を動かしている。何かを伝えようとしているのか。

 

まどかは耳を近付けて、それを聞き取ろうとする。

 

 

「ボ……クが、倒す……倒さないと…………」

 

「……!」

 

どうして……何がそこまで、お前を動かすんだよ……優香……!

 

「優香ちゃん!」

 

「!!」

 

優香はまどかの手を振りほどき、再びゴーストドライバーを出現させ、ブーストゴーストアイコンを装填した。

 

 

《アーイ!》

 

《バッチリミヨウ!バッチリミヨウ!バッチリミヨウ!》

 

「変身!!!」

 

《カイガン!ブースト!ゴーゴー!覚悟!奮い起つゴースト!》

 

 

サングラスラッシャーをブラスターモードに変形させた優香は、使い魔に向かってそれを無我夢中で乱射した。

 

使い魔は熱線に貫かれても、一体、また一体と次々に数を増していく。

 

 

「落ち着け優香!」

 

「邪魔しないでください!!!」

 

駄目だ。優香は完全に冷静さを失っている。

 

くそっ……魔女はどこにいるんだよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ダイテンガン》《ネクロム》

 

《オメガウルオウド》

 

 

「「「………っ!?」」」

 

「うわあっ!?」

 

「え!?」

 

 

 

緑色の閃光が空を切り、結界のど真ん中を貫いた。

 

衝撃で使い魔達は一撃で吹き飛び、俺達も風圧で体が飛ばされそうになる。

 

 

 

''それ''は突然現れた。

 

 

「あれは……?」

 

白いボディに漆黒のパーカー。

 

潜水服の様な外見がメカメカしい印象を与えていた。

 

 

「仮面ライダー……なのか?…………!!」

 

 

魔力が…………弱まった?

 

結界のあちこちに分散されていた魔力が、明らかにさっきよりも弱まった。

 

しかし、まだ魔女の場所がわからない。これは…………魔女が、いない…………?いや違う。これは……

 

 

 

 

 

「そうか……!この結界自体が魔女…………!!」

 

魔力が弱まったのはあの白い仮面ライダーの攻撃が地面に当たった瞬間。間違いない。この結界が、魔女そのもの…………

 

 

 

「なら、どうする?」

 

このバカでかい魔女をどうやって倒す。俺にも、さやかにも、マミさんにも、こんな巨大な魔女を倒す火力は無い。

 

視線を地面にできたクレーターに移した。すると……

 

 

「あれ?さっきの仮面ライダーが…………」

 

消えた。白い仮面ライダーの姿が跡形もなく消えていたのだ。

 

何なんだ一体…………

 

 

 

 

 

「あはは……やっぱりお姉ちゃんは意地悪だね……」

 

「……っ!?優香?」

 

優香はサングラスラッシャーを握りしめ、ゆらゆらと力の無い動きで前に出る。

 

ブーストゴーストアイコンと、ヒミコゴーストアイコンをサングラスラッシャーに装填し、構えた。

 

 

《マブシー!マブシー!マブシー!》

 

 

「……!マミさん!さやか!戻って!!!」

 

「え?」

 

「……っ!美樹さん!!」

 

マミさんがさやかを抱えて、急いで俺達の方へ戻る。

 

 

「優香お前……!」

 

こいつ……!魔力を使い果たしてでも、この魔女を倒す気だ…………!!!

 

 

優香がトリガーに指をかけ、笑みを浮かべながら言った。

 

 

「バイバイ、お姉ちゃん。」

 

 

「優香……!?お姉ちゃんって……!!どういう……ーーー!!!」

 

 

《オメガフラッシュ!》

 

一瞬で結界が灼熱の炎で赤く染め上げられ、俺達の視界を覆った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

意識はすぐに戻った。

 

俺とマミさんとさやかの変身は解けていて、まどかも含めた四人がその場に倒れていた。

 

そして目の前に……優香の後ろ姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

「くっ……優香……!?」

 

「ねえ先輩……ボクは勇気を出せましたかね?」

 

 

こっちを見ずに、下を向きながら優香は言った。

 

勇気を出せたか。その問いの意味が、俺にはわからなかった。

 

 

 

 

「これでボクも…………魔女の仲間入り……です……」

 

 

「…………は?」

 

ようやく俺の方に視線を向けた優香の目は、酷く汚れていた。

 

手には黒く濁った、ブーストゴーストアイコンを握りしめている。

 

 

 

「え?今なんて…………」

 

さやかも呆気にとられていた。

 

 

''魔女の仲間入り''

 

 

 

 

「おい……待て…………どういうことだよ…………!!!」

 

 

「最後に一つだけお願いです。」

 

 

ブーストゴーストアイコンにはミシミシと音を立てて、ヒビが入る。

 

そして……ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクは、貴方が倒してください。天空寺幽斗先輩…………」

 

黒い光が溢れ、瞬く間に世界を侵食していった。

 

 

 

 





さて、ここからが「まどマギ」という作品の真骨頂。暗い展開が多めになるかも。


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魔法の果て

久しぶりの投稿です。


 

 

「何だ……!?何が起こってるんだ!?」

 

前方から吹く強風で飛ばされないように体に力を入れながら、前を向いた。

 

世界を侵食している結界。それは……優香から発生していた。

 

 

「な、何これ……優香ちゃん!」

 

まどかとさやかとマミさんの三人も同じく、体を小さくして風に耐えている。

 

 

 

やがて風は収まり、何度も見た光景が目に飛び込んできた。

 

よく見覚えのある。対峙してきた風景。

 

 

 

「魔女の……結界……!?」

 

「眼魔だよ。」

 

横から聞こえたキュゥべえの声。その意味を理解するのに数秒必要だった。

 

眼魔、と言ったのだ。眼魔の、結界。

 

 

「どういうことだよ……優香はどこにいったんだ!?」

 

「優香なら、目の前にいるじゃないか。」

 

「「「「へ……?」」」」

 

 

キュゥべえの言葉に唖然としながら俺達は錆び付いたロボットのような動きで前方に顔を向けた。

 

そこにいたのは、真っ黒な少女だった。

 

頭から、つま先まで、全身が黒い。表情も読み取れない。

 

こんな奴を見たことがある。

 

今まで戦ってきた……………………

 

 

「眼魔……」

 

目の前にいるのは、間違いなく眼魔だ。

 

なら、何だ?あれが優香だって?

 

 

「何を言って…………」

 

「気をつけてね幽斗、来るよ。」

 

「……!天空寺君!!」

 

 

少女の姿をした眼魔が魔力弾を放ってきたのを、マミさんが叫んだところで気が付いた。

 

体を捻り、倒れこむようにしてそれを躱す。

 

 

 

「脱出を!」

 

マミさんが変身し、結界の出口を開こうとしている間、俺はずっと放心状態だった。

 

キュゥべえの言ったことが、理解できない。

 

 

優香が眼魔に……優香が…………

 

 

 

「幽斗!」

 

さやかに手を引っ張られ、我に返った。

 

後ろの眼魔を見つめた後に、俺達は結界の外へ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キュゥべえ…………説明して。」

 

脱出後。変身を解いたマミさんが混乱する思考を振り払い、頭を抑えながら言った。

 

俺はよろよろと立ち上がり、真っ白になった頭のまま視線をキュゥべえに向ける。

 

 

「そういえば言ってなかったね。今から説明するよ。」

 

キュゥべえは俺達に背を向け、ゆっくりと回り、円を描きながら話し始めた。

 

 

「簡単に言うと、君達が持つソウルジェム、及びアイコンは、君達の魂を抜き取った物なんだ。」

 

「……何だって?」

 

「そして、魔女と眼魔。あいつらは魔法少女と仮面ライダーの成れの果て。」

 

 

 

思考が追いつかない。頭の中が整理できない。

 

魔法少女が魔女で、仮面ライダーが眼魔になる?

 

 

「だから幽斗、君が今まで戦ってきた眼魔は、過去の英雄本人という事になるね。ほら、数が少ないって言っただろう?」

 

 

待て。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て

 

 

 

 

 

「魂が別にあるということは、体がいくら傷付いても問題無し。だから君達は、安心して魔女退治ができるんだ。」

 

 

 

 

 

 

つまりそれは…………

 

魔法少女が魔女と戦い、魔力を使い果たし魔女に……そしてキュゥべえがさらに魔法少女を増やす。

 

仮面ライダーに関しても同様…………

 

 

 

俺達のしてきたことは……全部…………全部…………

 

 

 

「ふざけないでよ!」

 

マミさんがヒステリックな声を上げ、キュゥべえを睨みつけた。

 

「私達は今まで……何のために戦ってきたのよ!こんなの…………」

 

「やっぱり、君達は決まっていつも同じ反応をするね。」

 

 

動き回ってたキュゥべえが立ち止まり、不気味な瞳をこちらに向けた。

 

 

「何が不満なんだい?僕は君達の願いを叶えた、その代償として君達は戦う宿命が与えられるとは言ったよね?」

 

「キュゥべえ……お前は……お前はぁ!!!」

 

 

湧き上がる怒りに耐えきれず、キュゥべえを両手で掴み、乱暴に持ち上げる。

 

 

「……騙してたのか?」

 

俺達を。

 

魔法少女と、仮面ライダーの真実を隠して…………こいつは……!!

 

 

「聞かれなかったから、言わなかっただけさ。」

 

体の力が抜ける。

 

俺の手をすり抜け、キュゥべえが地面に着地した。

 

「それじゃあ、あたし達の体はどうなってるのさ!」

 

さやかも、かなり取り乱している。

 

魂を抜き取り、ソウルジェムとアイコンにする…………ってことは…………

 

 

「あたし達……ゾンビにされたようなものじゃんか!」

 

そうだ。

 

俺達は''願いと引き換えに魂を売った''ってことだ。

 

もちろんそんなものは、俺達が望んでやったわけじゃない。

 

全部キュゥべえの思惑通り…………

 

 

「はあ……やっぱり君達もそうなのか…………わけがわからないよ。」

 

今まで、心強い味方だと思っていた。そう考えるのは早すぎたんだ。

 

 

 

「どうして人間は、魂の固執にこだわるんだい?」

 

 

 

キュゥべえは、敵だ。

 

 

 

 

 

 

「優香ちゃんは……どうなったの?」

 

不意にまどかがそう言った。

 

まどかもまた、受け入れられないんだ。俺だって…………

 

 

 

「さっき言った通りだよまどか。優香は仮面ライダーとしての役目を終えたんだ。今は眼魔になってるよ。」

 

 

 

許せない。

 

こいつは……絶対に…………!!!

 

 

《アーイ!》

 

「おっと……やる気かい?」

 

 

ゴーストドライバーにオレゴーストアイコンを装填し、レバーを操作する。

 

「変身!」

 

《カイガン!オレ!レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

 

「キュゥべええええええええええっ!!!」

 

ゴーストドライバーからガンガンセイバーを取り出し、斬りかかる。

 

刃が迫って来ているというのに、キュゥべえは動じない。その姿が一層不気味に見えた。

 

 

「なっ……!?」

 

ガンガンセイバーの刀身が、キュゥべえに到達しようとした瞬間。それは''白い手''によって阻まれた。

 

白いボディに漆黒のパーカー。左手に取り付けられたメカメカしいブレス。

 

 

「お前は……さっきの……!?」

 

「うん、ネクロムの動作は問題無しだね。」

 

 

ネクロム、と呼ばれた白い仮面ライダーは、ガンガンセイバーを弾き、俺に蹴りを入れてキュゥべえから離れさせた。

 

まるで、キュゥべえを守るように。

 

 

 

 

「君達には、ネクロムの戦闘テストに付き合ってもらうよ。」

 

キュゥべえがそう言うと、ネクロムはゆっくりと俺に近づいてきた。

 

誰が変身しているかもわからない奴に俺は、生気を感じることはできなかった。人形のような…………

 

 

 

「くぅ……!?」

 

凄まじい速さで拳を突き出すネクロム。

 

神経を集中させて、なんとかそれをいなし続ける。

 

 

「マミさん!まどかとさやかを頼みます!!」

 

「っ!?天空寺君!?」

 

「幽斗!?」

 

 

俺はネクロムにしがみつき、下半身に力を入れた。

 

なんとかして、こいつをまどか達から離さないと…………!!

 

 

「う……おりゃああああああ!!!」

 

 

そのまま周りの建物の屋根を飛び越え、できるだけ遠くに行くようにネクロムと俺自身の体を移動させる。

 

さっきいた所とはまた別の、人気のない路地裏。

 

 

着地と同時にネクロムを放り投げて、距離をとる。

 

こいつは恐らく強い……もしかしたら雄也よりも……

 

 

「くそっ!」

 

ネクロムは俺に考える時間を与えてくれなかった。

 

すぐに体制を立て直し、俺に襲いかかってくる。

 

 

「お前は……何でキュゥべえに従っている!?お前は誰なんだ!?」

 

「…………」

 

「答えろ!!!」

 

 

いくらガンガンセイバーを振り回しても、当たるのはおろか、かすりもしない。

 

そうしてるうちに、奴は一つ、緑色のアイコンを取り出し、左手のブレスに装填した。

 

 

 

《イエッサー》

 

《テンガン》《グリム》

 

《メガウルオウド》

 

 

 

英雄……アイコン…………!?

 

 

《ファイティングペン》

 

 

本のような形をしたゴーグルと胸部に、付けペンを模した肩と袖。

 

グリム……ドイツの文献学者……

 

 

「うおっ……!?」

 

ネクロムの肩にあるペン先が伸び、不規則に動く。

 

連続して襲いかかってくるそれらに、俺は成す術もなく攻撃を受けてしまった。

 

咄嗟に英雄アイコンを取り出そうとするが、やはりそんな暇は与えてくれない。

 

 

「強い…………!」

 

 

何なんだ……こいつ…………!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「魔法少女が……魔女に…………」

 

このまま戦い続けたら……さやかちゃんも、マミさんも…………

 

 

 

魔女に?

 

 

 

 

 

「こんなの……こんなのってないよ…………あんまりだよ…………」

 

 

私達が倒してきた魔女は全部…………元は私達と同じ…………

 

さやかちゃんはどうなるの?

 

マミさんはどうなるの?

 

幽斗君は…………どうなっちゃうの?

 

 

 

「そんな……嘘よ…………」

 

私達はただただ、下を向いて現実から目を背ける事しかできなかった。

 

私、また何もできずに…………

 

 

 

「辛そうだね、まどか。」

 

重い空気の中、キュゥべえだけがいつもの調子でテレパシーを送ってきた。

 

「でも、君なら運命を変えられるよ。君が望むのなら、どんな願いでも叶えられる。」

 

「本当……?」

 

 

私が願えば、優香ちゃんも、さやかちゃんもマミさんも…………幽斗君も…………

 

みんなの体を元に戻せるの…………?

 

私が魔法少女になれば…………

 

 

「いいよ、私、魔法少女に……ーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その必要はないわ。」

 

金属が弾ける音と、キュゥべえが引き裂かれる音が、目の前から聞こえた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

《ダイテンガン》

 

《グリム》

 

 

 

 

「くっ……そ…………!!!」

 

ネクロムが腰を低くして構え、エネルギーを溜める。

 

奴はオレゴーストアイコンを破壊して、俺を文字通り''殺す''つもりだ。

 

死ねない。

 

まだ死ねない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーどんな願いも叶えられる。

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

 

アイコンだ。

 

英雄のアイコンを十五個集めれば。そうすればもう一度願いを叶えられると、キュゥべえはそう言っていた。

 

ならばやる事は一つだ。生き延びて、必ず。

 

 

 

「俺が、みんなの命を守る!!!」

 

 

《オメガウルオウド》

 

 

禍々しいオーラを纏ったペン先が、ネクロムの肩から俺に向かって一直線に伸びた。

 

生きる。

 

生きる……!

 

生きる!!!

 

 

 

生きて願いを…………!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ダイカイガン!フーディーニ!オメガドライブ!》

 

 

俺の目の前に、無数の鎖が束となって壁が出来る。

 

その鎖の壁が、俺を襲う二つのペン先を防いでくれた。

 

 

 

「杏子!!!」

 

「ちっ……!はいはいわかったよ!!」

 

 

 

と、ほぼ同時に俺の体にも何かが巻きつけられ、一気に上へと引っ張られる。

 

今の声は…………!?

 

 

 

 

「ったく!めんどくさいなあ!」

 

空中に放り投げられた俺を抱えるようにして受け止めたのは、赤い髪の少女だった。

 

そして、もう一人、助けてくれたのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄也……?」

 

空中に浮かぶ、翼のように展開された四つのタイヤ。

 

マスクには鎖の模様が浮かんでいる。青い仮面ライダー。

 

 

間違いなくスペクター、深海雄也だった。

 

「すぐ離脱する!!」

 

雄也がそう言うと、俺を抱えている少女も地面を蹴り、ネクロムから離れるように建物の上を移動した。

 

 

「何で雄也が!?」

 

「ああもう!暴れるな!!」

 

 

と、少女に一喝され、ビビってしまう自分が情けないと思う。

 

「くそっ……追いかけてきやがった……!」

 

 

雄也は俺の近くまで寄り、ドライバーからガンガンハンドを取り出し、構えた。

 

 

「杏子、幽斗を降ろせ。」

 

「りょーかい。」

 

「うわっ!?」

 

急に離されたので少しバランスを崩す。

 

俺の体を縛っていた物は、魔法で変形させていた槍だったらしい。

 

槍を持った少女は赤い髪を翻し、雄也と同じ方を睨む。

 

 

 

 

その視線の先には、俺達を追いかけて来るネクロムが見えた。

 

 

「話は後だ、幽斗。今はあいつを倒すぞ。」

 

 

 





次回、ゴースト&スペクター&杏子vsネクロム!!!


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間違った望み


本編にグレイトフル魂が登場ということで、ついにこの小説にも…………


 

 

自分が何者なのか。''あいつ''を見た時にそれは薄々気づいてた。

 

欠けていた記憶も戻りつつある。

 

だが…………

 

「この願いは、俺自身でも止められない。」

 

 

こんな事をいくら続けても、''奴''が存在する限り負の連鎖は止まらない。そんな事はわかっている。

 

それでも俺は殺し続ける。

 

魔法少女を

 

魔女を

 

眼魔を

 

仮面ライダーを……!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「な、何で雄也が……!?その子は誰なんだ!?一体、何が何だか……!」

 

「目の前の戦いに集中しろ!こいつは一筋縄ではいかない!」

 

 

俺は状況が整理できないままガンガンセイバーを構えた。

 

前方からは軽い身のこなしで俺達三人に接近してくるネクロム。

 

 

……奴からはやっぱり、生気というものが感じられない。感情というもの自体が、無いような…………

 

もしかしたら、キュゥべえに操られている可能性もある。

 

 

「雄也、あいつ一体何なんだ?」

 

「……さあな、何しろ俺も初めて見るライダーだ。」

 

「アタシはそもそも、あんたとも初対面だし。」

 

隣にいる少女はいつのまにか棒付きのキャンディーを取り出して口に含んでいた。

 

「君は?」

 

「あん?佐倉杏子、詳しい自己紹介はあいつ倒してからにしな。」

 

それもそうだ、ネクロムは問答無用で俺達を殺しにかかる。説得する暇も与えてくれない。

 

既に奴はロビンフッドかエジソンの射撃を使えば攻撃が届きそうな所まで接近していた。

 

 

「いくぞっ!!」

 

雄也が複数の鎖を出現させ、回転しながらネクロムに近づく。

 

鎖を、ネクロムを囲むように展開した。拘束するつもりだろう。

 

だが、奴も簡単にはそうさせてくれなかった。

 

白いアイコンを取り出し、左手に取り付けてあるブレスに装填した。

 

 

《イエッサー》

 

「もう一つの英雄アイコン……!?」

 

《テンガン》

 

《サンゾウ》

 

《メガウルオウド》

 

《西遊ロード》

 

 

白いボディに白いパーカーが重なり、背中には黄金の光輪が現れ、神々しくも見える姿。

 

サンゾウ魂…………

 

 

 

「…………っ!?」

 

《ダイテンガン》

 

《サンゾウ》

 

《オメガウルオウド》

 

 

ネクロムの全身から猿、豚、河童の形をしたオーラが現れ、奴の足元に煙を生成した。

 

まるで、孫悟空のキン斗雲のような…………

 

それに乗ったネクロムは鎖に捕まる前に宙を浮き、飛び出した。

 

が、ネクロムの動きが止まった。

 

槍を持った少女……佐倉杏子が槍を変形させ、雄也と同じようにネクロムが逃げた先に展開させていたのだ。

 

変形した槍に拘束され、ネクロムが地面に叩きつけられる。

 

 

「今だ幽斗!!」

 

雄也の言葉に反応し、俺はすぐに腰のレバーに手を当てた。

 

「喰らえ……!」

 

《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》

 

片足に力を集中させ、拘束されているネクロム目掛けて渾身のオメガドライブを放った。

 

 

「…………!!!」

 

「はあああああっ!!」

 

蹴りはネクロムの胸部に直撃し、奴は緑色の粒子を分散させながら爆発した。

 

爆煙が晴れ、仕留めたかどうかを確認する。

 

 

「…………?」

 

いない。

 

確かに手応えはあった。恐らく倒したはずなのだが…………奴の体が無い。

 

オメガドライブで体が消し飛んだ…………?いや、変身者の安全を考えてそこまでの威力は出していない。

 

俺が考え込んでいると、隣に雄也と杏子が降り立ち、同時に変身を解いた。

 

俺もゴーストドライバーからオレゴーストアイコンを抜き取り、変身を解く。

 

 

「……何なんだ……?一体。」

 

「幽斗、今から俺達と一緒に来てもらう。」

 

「どこにだよ?」

 

今までの雄也とは様子が違った。

 

他人を威圧するような雰囲気を感じない。

 

 

「ほむらの家だ。」

 

「……何のために。」

 

「お前に、いや……お前達に全てを話す。」

 

 

 

 

 

全て…………?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ほ、ほむらちゃん……!?」

 

「暁美さん……?」

 

ほむらちゃんが放った銃弾に貫かれ、キュゥべえは無残に横たわっていた。

 

拳銃を手に取り付けてある盾にしまい、ほむらちゃんは私達に近づいてきた。

 

「ほ、ほむらちゃん……!ひどいよ!何も殺さなくたって……」

 

その時、信じられないような光景が目に飛び込んできた。

 

 

 

「やめてほしいな。いくらスペアがあるからって、無駄に減らされるのは嫌なんだけどな。」

 

 

死んだはずのキュゥべえが、平気な顔をしてひょこひょこと歩いてきたのだ。

 

そして、先ほどの自分の死体を凄い勢いで食べ始めた。

 

気味が悪い光景だった。

 

 

「……私と一緒に来て。」

 

「暁美さん……?あなたは知ってたの?魔法少女と、仮面ライダーの正体を……」

 

「詳しいことは、私の家で話すわ、だから一緒に来て。」

 

ほむらちゃんは私の肩に手を回して立たせてくれた後、マミさんに視線を向けた。

 

「あなたも一緒に……」

 

「……わかったわ、美樹さんもそれで……あら?」

 

私もまさか、と思い周囲を見渡す。

 

さやかちゃんが……いない。

 

 

「さやかなら、さっき走ってどこかに行ったよ?」

 

「え……?」

 

キュゥべえの言葉に絶句する。

 

さやかちゃん……一体どうして……!

 

 

「行かなきゃ……!」

 

さやかちゃんを追いかけようとする私を、ほむらちゃんが手で制した。

 

「お願いまどか、今は私について来て。」

 

「でも!」

 

「あなた達に話さなくてはならない事があるのよ!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「食うかい?」

 

「え?あ、どうも……」

 

 

俺達は今ほむらの家を目指していた。

 

杏子から貰ったスナック菓子を、気を紛らわすために口に放り込む。

 

急に態度を変えた雄也に、俺は困惑していた。

 

一体何を話すって言うんだ…………?

 

 

優香の事も気がかりだ。

 

魔法少女は魔女になり、仮面ライダーが眼魔になるというのなら、優香は…………

 

くそ、まだ信じられねえ…………

 

 

 

 

「見たのか?」

 

「……え?」

 

「見たんだろう?優香が眼魔になるところを。」

 

 

…………やっぱり。

 

こいつは……雄也は最初から知っていたんだ。キュゥべえと契約したら、最後にどうなるのか…………!

 

知ってて、隠していたのか…………!?

 

 

「……そんな顔するなよ。ちゃんと説明するって言っただろう。」

 

「ふざけるな……!今更''説明する''だって……!?」

 

「お、おい落ち着けよ……」

 

杏子が止めるのを無視し、俺は雄也の胸ぐらを掴んだ。

 

 

「お前は!!!…………お前は…………っ!!」

 

 

言いたい事が山ほどあった。

 

何で説明しなかった。

 

何で俺達の邪魔をしていた。

 

何で…………なんで…………

 

 

 

「……もう、嫌だったんだよ…………」

 

「え……?」

 

 

雄也は俺の手を振り払い、服を正した後再び歩き始めた。

 

もう嫌だった。

 

雄也はそう言った。

 

その言葉の意味を聞き出せないまま、俺はしばらく二人について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………?」

 

俺を含め、その場にいた全員が気づいた。

 

巨大な、魔力が近づいてくる。

 

この感じは、前に何度も感じたことがある。

 

 

奴だ。

 

黒ずくめの、影の男。

 

あの男が俺達に近づいてくる…………!!

 

 

 

「走れ!!!」

 

雄也がそう叫ぶと同時に、俺と杏子は走り出した。

 

変身してる時間すら惜しい。

 

俺達は魔力で身体能力だけを上げて全力で、迫ってくる巨大な魔力から離れようとした。

 

 

速い。

 

このままじゃすぐに追いつかれてしまう。

 

 

 

「おいどうすんだよ!何だよこれ!?」

 

杏子は黒い男の事を知らないのか、かなり動揺しているようだ。

 

突然感じたこともない魔力が近づいてきたら、どんな魔法少女も取り乱すだろう。

 

 

俺達はただ逃げることしかできなかった。

 

今回は何かが違う。

 

以前とは、奴の雰囲気が一変している。

 

 

 

「雄也!!」

 

「わかってる!!息が切れるから喋るな馬鹿野郎!!」

 

 

どんどん距離が詰められている。

 

後ろは、恐ろしくてとても振り返れない。

 

 

 

「っ!!止まれ!!!」

 

雄也が急に立ち止まり、俺たちの方を向いた。

 

 

「固まれ!!周囲を警戒しろ!!」

 

逃げ切れないと判断したのか、俺達に一つの場所に固まるよう指示した。

 

三人で背中を合わせ、息が詰まりそうな空間を凝視する。

 

近くに、いる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……!下だ!!!」

 

杏子が叫ぶのとほぼ同時に、俺達が立っていた真下の地面が崩壊し、衝撃波が放たれる。

 

避けられずに、俺達は四方に吹き飛ばされた。

 

 

 

 

「ぐっ……ああっ……!」

 

「くっ……!」

 

 

 

立ち上がり、俺と雄也はアイコンを、杏子は赤いソウルジェムを取り出した。

 

 

 

「追いついた…………!」

 

黒い男は俺、雄也、杏子の順に睨み、腰に手をかざした。

 

《グレイトフル!》

 

 

 

「……!ドライバー……!?」

 

「ちっ……!気をつけろ幽斗、杏子。」

 

 

奴が出現させたのは、ゴーストドライバーとは違う、巨大なアイコンの形をした黄金のドライバーだった。

 

 

「お前達を、殺す。」

 

「はっ!ははっ!お前には無理だよ、甘ちゃんが……!!」

 

どうにかして隙を伺おうとする雄也だが、その足は震えていて、今にも尻餅をつきそうな様子だった。

 

 

 

「お前は……何が目的なんだよ!!」

 

「目的、ね。お前ならわかると思うけどな、天空寺幽斗。」

 

「何だと…………!?」

 

「英雄のアイコンを集めて、願いを叶えたいんだろう?」

 

「何でお前がそれを…………!?」

 

 

黒い男は薄く笑い、足を開き構えた。

 

 

 

《ガッチリミーナ!コッチニキナー!ガッチリミーナ!コッチニキナー!》

 

 

黄金の光と共に''十五体のパーカーゴースト''が現れた。

 

 

「な、あれは…………!」

 

ムサシにエジソン、ロビンフッド…………

 

俺や雄也が持っている英雄アイコンのパーカーゴースト、それと同じ物が何体か確認できた。

 

何で…………奴が英雄のゴーストを…………!?

 

 

 

「命、燃やすぜ…………!」

 

 

「え…………?」

 

奴はそう言った後、ドライバーのスイッチを押し込み、''変身''した。

 

 

《ゼンカイガン!》

 

《剣豪発見巨匠に王様侍坊主にスナイパー!大変化!!》

 

 

黒と金のボディ。頭部には複数の角。体のあちこちに英雄のシンボルのような模様が浮かんでいる。

 

 

 

 

 

「俺は仮面ライダーゴースト……グレイトフル魂…………!」

 

 

 

 

 

 

 




はい、まさかのグレイトフル魂は敵としての登場です。


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説明から和解を目指す

めちゃくちゃ久しぶりの投稿です。
いやー、別の執筆活動とリアルの事で随分と間が空いてしまいました。すみません。



 

 

「仮面、ライダー……ゴー……ストだって……?」

 

黒い男は、仮面ライダーだった。

 

ただ、おかしい点がいくつかある。一つは、キュゥべえが言っていた事。

 

キュゥべえはこの男とは契約した覚えが無いと言っていた。……信用していいかはわからないが。

 

それともう一つ。こいつが使っているドライバーだ。

 

俺や雄也、優香が使っているゴーストドライバーとは別物…………それも、十五人の英雄の力が宿っている物だ。

 

いや、待て、そういえばあのネクロムとかいう奴もゴーストドライバーは使ってなかった…………

 

それに最も気になった点は、''俺と同じ名前の仮面ライダー''だということだ。

 

 

 

 

「っ……!変身!」

 

《カイガン!スペクター……!レディゴー!覚悟!ドキドキゴースト!》

 

最初に動いたのは雄也だ。

 

呆気にとられている俺と杏子よりも早く、速く、ゴーストドライバーを出現させてスペクターへと変身し、グレイトフルへと特攻して行った。

 

「逃げろ!」

 

グレイトフルは雄也が突き出す拳を全て繰り出される前に反応し、受け止める。

 

「……お前も変わったと思ってたけど……俺の勘違いだったみたいだよ、雄也。」

 

「黙れ……!」

 

「俺は変わったぞ。世界を救うために、変わった。それに比べてお前は……甘いままだ!!」

 

「がっ……!?」

 

雄也の体に蹴りが一発入る。

 

一瞬で雄也の体が吹き飛ばされ、側にある建物の壁を突き抜けた。

 

 

「おいおい……冗談じゃねえぞ……!」

 

杏子は咄嗟に赤く光るソウルジェムを構え、魔法少女へと変身した。

 

俺も続いてゴーストドライバーを出現させるが…………

 

 

 

「なっ……!」

 

「遅いよ。」

 

一瞬で眼前にまでグレイトフルが迫る。

 

杏子が槍を突き出すが、それも避けられる。が、グレイトフルとの距離は空いた。

 

 

「変身!」

 

杏子が奴を足止めしている間に、ムサシゴーストアイコンを取り出し、ドライバーに装填する。

 

《カイガン!ムサシ!決闘!ズバッと!超剣豪!》

 

オレ魂じゃ到底敵わない。でも、英雄のアイコンならもしかしたら…………!

 

 

「うおおおおおおお!!!」

 

ガンガンセイバーを二つに分離させ、二刀流モードに変形させた後、グレイトフルへと特攻する。

 

 

「バカ!奴相手に考えなしの攻撃は……!」

 

雄也の掠れた声は、耳に届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その選択は間違いだ。天空寺幽斗。」

 

 

一瞬だった。

 

 

さっきまでの動きは、ただ俺達を試す……いや、遊んでいるだけだった。

 

まるで見えなかった。

 

 

 

 

「ゲボッ……!」

 

 

気づいた時には、俺の両手に握られていたはずのガンガンセイバーが消えた。

 

数秒、どこに落としたのかを探したが、すぐにその無駄な行為をやめた。

 

 

 

なぜなら、すぐに見つかったから。

 

“俺の腹”に。

 

 

それは深々と突き刺さっていた。

 

 

 

どしゃっ、と大量の血と体が崩れ落ちる音が、不快感を煽りながら鳴った。

 

 

「ゆうとおおおおおおおお!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

もう俺の声は、幽斗に届いていなかった。

 

魔力で腹に空いた穴の修復が始まっている……死にはしないだろうが、あの刀がつっかえて……抜かない限り完全には塞がらないだろう。

 

 

 

杏子は……無事か……?

 

 

薄れかける意識を手繰り寄せながら、状況を確認する。

 

グレイトフルは健在。幽斗は戦闘不能。唯一動けるのは杏子だけ。

 

絶望的な状況だ。

 

 

 

「佐倉杏子……お前も“対象”だ。」

 

「くっ……!」

 

 

 

にげろ、と言おうとしたが、全身に痛みが走り、とてももう一度叫べる状態じゃない。

 

 

それに、奴から逃げれる術はない。

 

可能性があるとすれば…………

 

 

 

「おっと…………運がいいな雄也。お迎えが来たみたいだ。」

 

「……優秀だろ?俺の相棒は。」

 

 

 

飛ぶようなスピードで複数の魔力が近づいて来るのがわかった。

 

もう、安心してもいいだろう。あいつが来たから…………

 

 

 

 

「ちょっと、恥ずかしいこと言わないでよね。」

 

冷たさと照れ臭さの混ざった声音が、耳の中へ滑り込んできた。

 

 

腕に黄色いリボンを巻いた黒い少女が、そのリボンを介して繋がっている金髪の少女と共に上空を舞う。

 

 

「ほむらに……マミ……連れてきたのか…………」

 

ほむらの背にはまどかが背負われていて、この悲惨な状況に目を見開いて驚いている。

 

 

「幽斗君!」

 

「天空寺君……!ひどい怪我を……!」

 

 

「ほむら!!!」

 

血を吐きながらもほむらに合図を送ると、既に盾を構えていた彼女が薄く笑った。

 

 

「やっと、悪役から脱却ね。」

 

 

 

瞬間、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「うーんと……これでいいよね……?」

 

「んー……たぶん?」

 

「「いたいいたいいたいいたいいたいいたい!!!!」」

 

「か、鹿目さん、佐倉さん。締めすぎよ……」

 

「あ、目ぇ覚めたね。」

 

 

俺と雄也は、腹部の激痛と窮屈感に叩き起こされた。

 

まどかと杏子が包帯を巻いてくれていたらしいのだが…………

 

 

周囲を見渡すと、俺の部屋よりも少し広い、不思議な雰囲気の部屋が広がっていた。

 

 

「ここ、は…………?」

 

「私の部屋よ。」

 

 

以前は冷淡に感じた声が、今は少し暖かく感じる。

 

…………奴に、グレイトフルに刺された場所は、ほぼ魔力で完治していた。が、少し痛む。

 

俺よりも、全身にガタがきてる雄也の方が深刻だろうか。

 

 

 

 

「ゆ……奴は…………グレイトフルは…………?」

 

「心配いらないわ雄也。私が時間を止めて、その隙に逃げたわ。」

 

 

まどかは申し訳なさそうにほむらを見つめていた。

 

「ありがとうほむらちゃん…………本当に。」

 

「お礼を言う必要はないわ。」

 

 

ほむらは側にあるソファーに腰掛けると、俺達にも「座って」、と言った。

 

各々が適当に楽な姿勢をとる中、雄也はほむらの隣にドカ、と座った。

 

 

 

「お前達をここに連れてきたのは他でもない。真実を話すためだ。」

 

真実…………って、さっきも言ってたが、キュゥべえや魔女のこととは別なのだろうか。

 

 

「この話はまだ杏子にも言ってなかったな。」

 

「……ん?魔女の正体とかの話じゃないのか?」

 

「いや……それはもう幽斗達も知っている、そうだな?」

 

 

俺とまどかとマミさんがゆっくりと頷いた。

 

 

…………優香が眼魔になった瞬間を見た俺達が、嫌になるくらい承知している事実だ。

 

 

 

 

 

「単刀直入に言う。俺達は、未来から来た。」

 

「…………はあ…………!?」

 

あまりにも予想外なことを口走る雄也に、思わず間の抜けた声が漏れる。

 

「正確には、一ヶ月先から、だけどね。」

 

「微妙なスパンだな。」

 

俺の軽い突っ込みを無視し、ほむらはさらに続ける。

 

 

「私の魔法は時間の操作。…………私達はほんの少しの未来で起こる、最悪の事態を防ぐために、この時間に来たの。」

 

 

マミさんもまどかも、口を開けて唖然としている。

 

かくいう俺も同じ心境なのだが。

 

 

「あの、いまいち実感が…………」

 

「実感ね……そりゃあある方がおかしいだろ?あたし達はただ普通に生きてきただけなんだし。」

 

杏子がいつの間に取り出したのか、リンゴにかぶりつきながら言った。

 

 

 

…………あれ…………?そういえば…………

 

「なあまどか。さやかは?」

 

「え?あっ…………」

 

まどかはマミさんと顔を見合わせた後、困ったように俯いてしまった。

 

代わりにマミさんが答えた。

 

「……大丈夫。たぶん、家に帰ったのよ…………」

 

俺は今まで、こんな見え透いた嘘を見たことがない。

 

…………間違いなくさやかには、何かあった。

 

 

「美樹さやかにも、今度私が説明するわ。」

 

ほむらがいつも通りに、いや……悲しげに言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この話は……やっぱり最初から話す必要があるな。」

 

雄也が決心したような表情で俺達を見据え、話し出した。

 

 

「最初からって…………?」

 

「俺達が体験した。今までの“時間軸”の話だ。」

 

 

雄也は前かがみになって床をじっと見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時…………ほむらが転校してきた時に、全てが始まったのかもしれないな。」

 

 

 

 




次回はいつになるのやら……
とりあえず次回は過去編です。雄也とほむらの。


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