装甲神器村正 (サンマ味のヨーグルト)
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第1話
キャラの性格とか口調とか違っていても許してね
神器――――それは「聖書の神」が生み出したシステムであり摩訶不思議な力を所有者に与える。能力は様々で魔剣、聖剣を創るモノ、人を癒すモノ、魔獣やドラゴンなどが封印されたモノ、色々なモノが確認されている。これらは人間の血が入っている者にしか発現が確認できていない。神が人に与えた祝福なのだろうか、もしくは人が化外を滅ぼすのを推奨しているのか、誰にもわからない……そして神器は所有者の善悪を問わない、問えないのだ。
例えば、筋肉隆々の男が回復系の神器を持っているとしよう。
せっせと仲間を回復するのを見て、「お前のイメージに合わない」や「狂戦士の如く戦わないのか」「男に回復されても嬉しくない」等々、思っていても仕方のない事だ
次に、聖女のような心清らかな女性が毒系の神器を持っていたとしよう
彼女自身がどれほど清らかであろうとも、「毒でいつか殺される」、「悪魔の力」等々、揶揄されても仕方のない事だ
そして次に神器の上位――――――神滅具、と格付けされた神器
それは神すらも滅ぼせる可能性の力を持つ特別な神器、これらは13種確認されている
神滅具を持つ所有者は危険と判断されており、監視されているか、殺されている
危険なので、という名目で罪もない人間が勝手な都合で殺されている
総ての神器は転生、いや所有者が消えると他の人間に乗り移るのだ。つまり、繰り返される
善悪は関係無い。止められない輪廻。神よこれは呪いか
しかしこれは人間の自由を謳った可能性であり唯一の人間の武器だ
故に
「―――――――――テメェ…何モンだよ、俺を殺そうとしに来た哀れな哀れな賞金稼ぎさんか?」
真夜中、酷く鬱蒼とした森の中に立っているのは声は普通の女性であるが四本の腕が生え、下半身が牛のソレとなっている異形の存在――――――つまりは化外である。
化外は食事の邪魔をされたのか酷く不機嫌である
対面に存在しているのは、血を被ったかのような深い深い色をした紅い武者、武者は肩に添えられた大きな刀に手を添えて、いつでも戦闘態勢に入れることだろう。静かに佇んでいる
「誰だって訊いてやってんだろうがああああああああ!!!!!!!」
何も答えない赤武者に苛立ったのか化外が吠える、化外が吠えた咆哮は森に生息している生物すべてに恐怖を与えている、狼も、熊も……しかし赤武者は少しも動いていない
「一身上の都合にて………貴方を殺害する」
やっと声が聴こえたが、言葉はそれである
その言葉が逆鱗に触れたのか、獲物を前に待てなくなったのか
異形の化外が武者に飛びかかる
対する武者は全く身じろぎしておらず、ただ刀を両手で握った
影が交差する……残ったのは武者と武者の刀を鞘に戻す音のみ
異形は眼球を白目に露出させ、4本あった腕は半分になり、切り落とされた下半身と共に重力に従いパタリと倒れ伏す
「…………ただの通り魔と覚えておけ」
神器は人間の為の可能性である、人間の為に作られた人間に与えられた武器である
悪魔堕天使天使が持つ異能とは違う正道の異能
故に
―――――――――化外が人間の力をどうこうするなど一切合切不要である
“対異形特務警察官”それは人外の存在、“悪魔”“堕天使”“妖怪”人間以外の存在から人間を守るある意味特殊な役職
八咫烏や陰陽師と違い、その道の者や堕天使、外国人といった様々な人種で構成されている
先ほどの赤武者―――――湊斗景明は若輩者の身であるが就いている
主な仕事ははぐれ悪魔も討伐、人を殺しまわるはぐれ堕天使の排除等々、
神秘の秘匿に奔走する雑用の毎日だったりする
そして先ほど討伐が終了した影明が向かっているのは“対人外特別警察署”と名付けられたボロイ一軒家
見た目は田舎にありそうなボロ屋、電気は通ってなさそうだし。水道すらあるのかも疑わしい。看板だけは大理石に大仰に彫られているので酷く不釣り合いである
そしてここは田舎の村でなく都会の町である。周りにはビル
逆に目立っている
上司は逆に目立ちませんわ、とか言っておられたがどこに逆が存在するのか、普通に目立っている
例えばほら、そこに歩いている男女カップル
「ちょマジで~こんな町にボロイ小屋があるなんてマジで~」
「ちょwおま、見ろよコレ対人外特別警察署だってよ~wwドコの中二病だしwwなんで大理石なのww」
……………神秘の秘匿とは一体なんなのか…少なくとも一般にまき散らすものではない
若者達がここから去るのを待ち続けて三時間が経った、彼らはむしろ増えている
携帯のシャッターがパシャパシャ鳴っていることから仲間内に広めているのだろう
最早10人は過ぎていた
もしかすると彼らは無限に増殖するのではないか。社会的弱者が不撓不屈の信念を持ち、仲間を集め社会的強者を打倒するのではないか。今務めている警察署を台頭に社会に思い知らせるのではないか――――と景明の頭にはいつの間にか彼らが社会に対して陰謀を弄していると勘違いし始めている。ここまで至るのに二時間かかった……無駄な想像力である
「しまった………大鳥所長をほったらかしてしまった……きっと怒っておられるに違いない」
完璧に忘れていた存在を思い出す
大鳥香奈枝―――――わずか18で名家大鳥家を継ぎ、そしてたった2年で家を抜け、従弟の人間に継がせた何がしたいのかよくわからない御仁。いつも優雅に振る舞っているが独特のギャグセンスを持ち、景明自身何がしたいのか理解できない、若輩の想像の範疇を超えた傑物である
しかしかなりのカリスマを持っていて、この組織を建てたのも彼女であり様々な種族の者が在籍する
しかし彼女の本当の武器と言えば交渉術であろう、たとえどれほどの不況でも何かをもぎ取ってくる。この大理石ももぎ取って来たものだ……………もっとマシなモノを持ってこいと思うのは俺だけだろうか
大鳥所長は何故か自分に甘いが、ここまで待たされれば般若の様相となっているだろう
内心焦りながら未だにわらわらと集まる若者を見る
どうする?掻き分けて中に入るか……それともここで待つか
宙を仰ぐ
何か解決案は―――――――自分の携帯が鳴り響く、確認すると
『愛しのハニー♡』と表示されていた
……………いつの間に
「…………………………………もしもし」
『YEAH!!』
………………………………。
「…………………」
スッ
『あっ、今電話切ろうとなさいましたでしょ!?』
「いいえ。頭を抱えてわけのわからぬことを喚きつつ走り出そうとしただけです」
『そう?ならいいのですけど』
先ほどまで想像していた態度とは正反対の何事も無かったかのような声音な所長
弾劾するような雰囲気は感じない
「それで……ご用件は」
『それはですわね~、あ、婆やそれ私のだから……返せよ!!それ私が残しておいた饅頭だから!!』
『おやおや、お嬢様、これ以上食べなさると太りますが、よろしいのでしょうか』
「…………」
永倉さよ
幼い頃より大鳥所長の従者を務める老婦人。徹底したサポートに努めるが、単体の戦闘力としては自分より上だ
慇懃無礼なところもあるが、普段は好々婆で通っている。
年齢は不明
『あら、そうなの……でも勝手に食ったのは許さんからな』
『ほほほ、かかってきなさい』
『クケーーーーーー!!』
携帯越しに賑やかな声が聴こえてくる、一体何がしたいのだろうか
無駄に時間は過ぎてゆく。
ここにやって来た時間帯は太陽が真上に照っていたのを記憶しているが
今は右に沈んでいる
「大鳥所長」
『あら……ハア……ハア……何で……ございましょうか景明様?』
「そろそろ妹が帰ってくる時間なので帰ってもよろしいでしょうか」
『あら、構えませんわよ?』
「では」
ピッ
景明は自分の付近に転がっている、4つのペットボトルを駐車場に備え付けられているごみ箱に中々見事なコントロールでペットボトルを投げ入れた後、帰宅の準備をした
妹は遅くに帰宅すると中々如何してうるさいのだ。
故に妹が帰宅する同じ時間帯、定時に帰宅することを心掛けている
精神が、サラリーマンのそれだ
「今日の晩御飯は何だろうか」
そして景明は徒歩で帰宅した。
「そういえばお嬢様、湊斗様からの報告を聞いていませんでしたね」
「あ」
第1話 完
景秋さんがかっこよかったから書いた。後悔はしていない
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