μ'sと静の奇妙な物語 (ままままま)
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静・ジョースターは女子高生

記念すべき初投稿です。まだ、μ'sは出ません。すみません…


親の分からない私がアメリカ人の今のパパの養子になってから16年。

 

「静も16歳じゃ。一度、お前の生まれ故郷の日本に行ってきてみたらどうじゃ?」

 

パパと呼ぶには歳をとり過ぎているパパの一声で、私は久しぶりに生まれ故郷に帰って来た。

 

久しぶりと言うより初めての日本は、私が考えていた日本とは程遠かった。

毎日お寿司は食べないし、空気はアメリカと変わらないし、考えるときりがない。

アメリカのハイスクールの友達から羨ましがられながら旅立った日本だったが、飛んだ期待はずれ。

私は1人溜息を吐いた。

 

「ねぇ、今の日本で人気のものってなにかある?」

 

日本に来てから数日が過ぎ暇に暇な私は、日本滞在中の面倒を見てくれる広瀬さんに質問する。

 

広瀬さん、広瀬康一は私の義理の兄の友達で、東京で漫画雑誌の編集をしてる。

若いころは兄さんと一緒に悪いスタンド使いから街を守っていたらしいけど、今はその面影もない。

 

スタンドと言うものは世間で言う超能力のようなもので、人型だったりと様々な姿をしている。

STAND BY ME と書き、略してスタンドと言うとか。

 

「ごめんよ。かまってあげたいとこだけど仕事が忙しくてそうはいかないんだ…」

 

広瀬さんは申し訳なさそうに言った。

しかし、退屈な私がそんなことで納得するわけもなく…

 

「なによケチね!そんなに仕事が大切なの?だったら何か面白そうなことは無いわけ?」

 

ーと、広瀬さんに問いかけた。

すると広瀬さんは少し考えてからこういった。

 

「だったら、僕はこれから打ち合わせで秋葉原にいくんだけど、一緒に来るかい?そこで、『スクールアイドル』のライブがあるよ。」

 

「すくーるあいどる?なによそれ?」

 

初めて聞く言葉に耳を傾けると、広瀬さんはこう言った。

 

「ちょうど君ぐらいの年齢の女の子たちが、可愛い服を着て踊って歌うのさ。女の子らしく無い君が女の子らしさを学ぶいい機会だと思うよ。」

 

なーるほどね。確かに私みたいな子が女の子らしさを学ぶ…ってどういうこと⁉︎

頭に来たわ。そんな言うのなら見てやろうじゃないの!その「すくーるあいどる」とやらをね!

 

「わかったわ!私も一緒に行く!その『すくーるあいどる』とやらにアメリカンガールの凄さを見せてやるわ!」

 

そう言って私は支度を始めた。後ろでは、

 

「何でそうなるんだい…」

 

と、広瀬さんが呟いたけど気にしない。どれだけ可愛いか見せつけてやるんだから!

 

 

 

でも、まだ私は知らなかった。この日私は誰も予想できない運命に巻き込まれて行く事に…

 

 

 

 

 




コメントお願いします。
あと、「こんなスタンドいいかも。」みたいなのがあったら教えてください。参考にします。


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甘美な香 ①

μ'sの穂乃果ちゃん視点です。
スタンドはまだ出ません。


私は高坂穂乃果。高校2年。国立音ノ木坂学院に通っており、スクールアイドルグループ「μ's」の一員として活動している。

 

μ'sとしての活動が盛んになり、少しづつ知名度も出てきたある頃。私には一つの問題が起きた。

 

「えぇぇー‼︎穂乃果ちゃん、ストーカーに会っちゃったの⁉︎」

 

ショートヘアが特徴的な元気な女の子、星空凛ちゃんが叫んだ。

そう、私は昨日、初めてストーカーなるものの被害に遭ってしまったのだ。

 

「こらこら凛ちゃん。穂乃果ちゃんあんまり思い出したくないんやから、そんなに大きな声で言ったらあかんやろ?」

 

「え…あ、ごめんね…穂乃果ちゃん…」

 

お母さんのような優しさが光る希ちゃんが、凛ちゃんを優しく叱ると、凛ちゃんはハッとして、それから私の方を見て、謝ってくれた。

「気にしなくていいよ。」そう心で呟いて、私は凛ちゃんの頭を撫でてやった。

 

μ'sが結成してからしばらくが過ぎ、メンバーとの絆が深まってきた気がする。

真姫ちゃんも、絵里ちゃんも、花陽ちゃんも、にこちゃんも、海未ちゃんも、ことりちゃんも、みんな穂乃果のことを心配してくれていた。

こんなメンバーにも恵まれて私は幸せ物なのかもしれない。

 

今日はμ'sの野外ライブ。

秋葉原のメイドカフェの前を借り、μ'sの活動をアピールするのだ。

以前、メイド服を着て行ったライブは大成功。

今回は、学園祭でする予定の曲を披露しようと考えていた。

 

ライブ前の控え室。みんなで昨日のことについて話していると、海未ちゃんが心配そうな顔で

 

「穂乃果、本当に大丈夫ですか?顔色も悪いですし、何かされたのではないですか?」

 

と、たずねてきた。

海未ちゃんはしっかり者の幼馴染で、とても頼りになる。

「思い出したくないけど、海未ちゃんやみんなに話せばもっと楽になるかも…」

そう思った私は、一言一言、みんなに話すことにした。

 

昨日の夜、学校の帰り道、いつもは海未ちゃん・ことりちゃんと一緒に帰る道を、今日は1人で帰っていた。

3人で帰れば怖くない夜道なのだが、その日は1人。

私は怯えながら帰っていた。

 

学校を出てからしばらくが過ぎた頃、私は急いで帰りたい一心で、いつもとは違う近道を通って帰ろうと思った。

そこは、街灯も少なく薄暗い道で、不審者が出やすい事で有名なのだが、それを知らなかった穂乃果は、小走りでその道に入っていったのだった。

 

道に入ってすぐだっただろうか、ふと後ろから知らない男の人が付いてくるのに気付いた。

最初は同じ道を通っているだけかと思っていたのだが、どうにも様子がおかしい。

何かブツブツ言いながら、近づいてくるようだった。

「こんな時に、海未ちゃんがいてくれればなぁ…」そんな事を考えていると、その男のは急に穂乃果に近づいてきた。

あっという間に距離を詰められ、私は捕まると思ったが、なんとその男は穂乃果の『匂い』を嗅ぎだした!

そして耳元でこんな事を呟いた。

 

「お前の『匂い』は完璧に覚えた。」

 

と…

 

穂乃果は怖くなり叫んで家に逃げ込んだ。

その事をお母さんに話すと、お母さんは警察に連絡してくれたが、同時に穂乃果を思い切り叱った。

「女の子がそんなくらい夜道を1人で帰ってはいけない。」って。

少し子供っぽく扱かわれた事にムッときたが、無事で済んだからよかったと思う事にした。

しかし、犯人の男についての情報はまだ来ていないらしい。

顔を見ていたわけではないし、警察もそこまで重要視もしていないのかもしれない。

とにかく、まだ安心はできないとの事だ。

 

一通り話し終えると、穂乃果の周りにはメンバーが集まり、心配そうな顔で私を見ていた。

 

「やっぱり、ストーカーこわいにゃー!」

 

「全然大丈夫じゃないじゃないですか!まったく穂乃果は心配かけ過ぎです‼︎」

 

「穂乃果ちゃん。今日はことりと一緒に帰ろ?」

 

「穂乃果ちゃん、心配せんでええよ。カードが『今日は安全』って告げとるんよ。」

 

話を聞いて、メンバーのみんなは穂乃果にいろんな言葉をかけてくれた。

このメンバーは私の事をこんなにも気にかけてくれる。

とても、嬉しい事だ。

 

「ねぇねぇ、穂乃果ちゃん。」

 

みんなとの絆をひしひしと感じ取っていた時、花陽ちゃんが話しかけてきた。

手にはライブ前の腹ごしらえだろうか、おにぎりを握っている。

 

「そのストーカーは『匂い』を覚えたって言ったの?」

 

「え?そ、そうだけど…」

 

何を言いたいのかわからない。

そんな私をよそに、花陽ちゃんは続けて言った。

 

「もし匂いをずーっと覚えていれたら便利だよねぇ〜」

 

「どうして?」

 

「だって、匂いを覚えるんだよ?そうすれば、いつか食べたあのホカホカの新米の匂いを『思い出す』事が出来るのに〜♡」

 

「なんだ、そんな事か…」花陽ちゃんらしいと言えば花陽ちゃんらしい話だ。何を言うのか少し気になっていたがあまり気にしなくてよかったようだ。

 

「そんなすごい事できるわけないでしょ?できるならそれはいわゆる『超能力』かもしれないわね。」

 

花陽ちゃんの友達、真姫ちゃんがそう言ったので、花陽ちゃんは「だよね〜」って顔をしてみせる。

 

「超能力」

 

炎を出したり、空を飛んだり、正直穂乃果も小さい頃に憧れてたりしていたものだ。

今となってはそんなもの、信じるわけ無いのだが、仮に昨日のストーカーがそんな能力を持っていたら少し怖いかもしれない。

 

なんだか今日はこんな事ばかり考えてしまう。

大事なライブが近いのに、どうしてしまったのか。

 

様々な感覚が、目まぐるしく頭の中を駆け巡り、私の心までも覆い尽くそうとしてくる。

そんな感覚に頭を悩ませていると、ふと誰かが声を掛けてきた。

 

「穂乃果、心配しなくていいわ。何かあった時は、私たちが穂乃果を支えてあげるから。そんなくらい顔だと、お客さん、喜ばないわよ?」

 

絵里ちゃんだった。

 

絵里ちゃんは穂乃果の、憧れの人物だ。

生徒会長を務め、成績優秀、しかも可愛い!

おまけに面倒見もいい、穂乃果の知る中では一番すごい人だ。

「絵里ちゃんが穂乃果のお姉ちゃんだったら…」なんて、考えた事もある。

 

「どうしたの?黙ってるけど大丈夫?」

 

絵里ちゃんの事で頭がいっぱいになっていたからだろうか、ずっと黙り込んでいたらしい。

 

「だ、大丈夫。今日のライブ、絶対成功させようね!」

 

少し無理をして、絵里ちゃんに返事をする。

絵里ちゃんは、

 

「そうね…わかったわ。」

 

と言った。

 

 

「よーし!今日のライブ、絶対成功させよう‼︎」

 

「「μ's!ミュージックスタート‼︎」」

 

出番が来て、私たちはステージに飛び出す。

「今は、ライブに全力を出していこう!」嫌な気持ちを振り払うように心に言い聞かせ、私はステージに飛び出して行った…

 

 




作者です。最後まで読んでくれて有難うございます。
今回は急いで投稿しようとする一心で、読むに耐えない
内容になってしまったかもしれません。
何か不備があったらコメントで知らせてくれたら幸いです
あと、いいアイデアがあったら教えてください。
参考にさせていただきます。


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甘美な香 ②

投稿が遅れましたすみません
μ‘sと静がついに出会います。
そのとき互いはどんな反応をするのでしょうか…


《静視点》

 

広瀬さんについて行き、秋葉原へ来た。

ここで、そのスクールアイドルとやらのライブがあるらしい。

 

日本に来る前からここの話は聞いていたが、ここもそんな感じなのだろうか。

前に行ったことのある原宿や渋谷みたいに、至るところに可愛い服を来た女の子が闊歩している。

 

ここだけの話、日本の「kawaii」の文化は理解できない。

フリフリやハートがたくさんついたりする服は今ひとつ癪にさわるのだ。

 

それに、そんなものに頼らなくても私は、今の私の魅力に十分な自信を持っている。

 

他の人には無い力…「スタンド」もあるしね…

 

「ほら、静。はぐれないでよ。もうすぐ着くから。」

 

周りを見るのに夢中だった私を広瀬さんが呼ぶ。

 

「わかったわよ。まったくこれだから広瀬さんは…」

 

そう言って私は広瀬さんの後をついて行った。

 

 

しばらく歩いただろうか。

人だかりが見えてきて、そこから歌が聞こえてきた。

明るくポップな歌だった。

 

『壁はHIHIHI壊せるものさ。HIHIHI倒せるものさ。』♫

『自分からもっとチカラを出してよ』♫

 

近づいて見てみると、町を歩いている女の子とはまた一味違った可愛いさを醸し出している女の子達が歌を歌って踊っていた。

 

「どうだい?あれがスクールアイドル『μ's』だよ?」

 

隣で広瀬さんが教えてくれた。

廃校の危機を救うために立ち上がったアイドルで、そのためにあのようにライブをして学校をアピールしているらしい。

 

「ほら、可愛いだろ♡」

 

「そうかしら?まだ私の方が可愛いわね。て言うか、こういう事詳しいし、もしかして広瀬さんって『オタク』ってやつ?」

 

「え?そ、そんなわけな、無いよ…ひ、ひどいなぁ…」

 

広瀬さんは明らかに動揺している。

相変わらずわかりやすい男だ。

まったく…そんなのだから彼女の1人もでき無いのよねぇ。

そんな広瀬さんは無視し、ライブの方に注目する。

すると、一人の女の子に目が行った。

 

「あれ…?あの子…」

 

 

《穂乃果視点》

 

『勇気で未来を見せて。そうだよ覚悟は出来た。』♫

 

「お客さんの前で歌うのって楽しい!」

そんな事を考えながらライブに打ち込んでいた時、お客さんの中に驚きの人物がいた。

 

「あの人って…絵里ちゃん…?」

 

髪色こそ黒で日本人みたいだけど、髪を束ねてポニーテールにしているところや、メリハリのあるスタイルはまさしく絵里ちゃんそっくりだった。

 

どうしてもその人の事が気になって仕方ない私は、

 

「あの人って、絵里ちゃんの親戚かな?お話してみたいなぁ?」

 

なんて考える。

 

そんな事を考えていたせいで、あのあと披露した数曲は、まったく集中できなかった。

 

「ねぇみんな!あの人に気付いた?」

 

ライブ終了後、みんなに尋ねてみる。

 

「えぇ、見ましたよ。絵里にそっくりでした。」

 

「エリーがライブをサボってたのかと思ったわ。」

 

「絵里ち〜?誰だか知ってるんやろ〜?」

 

どうやらみんなも気付いていたらしく、私たちはたちまちその話題で盛り上がった。

 

「でも、びっくりしたわね。私そっくりなんて。」

 

「そうだよ。黒髪が綺麗で可愛かったよ♩」

 

自分そっくりの人間が現れた事に驚いている絵里ちゃんに、ことりちゃんが話しかける。

 

「あれって?絵里ちゃんの親戚さん?」

 

「いや、知らないわ。でも、不思議なこともあるのね。」

 

「また会えるかなぁ〜?」

 

「会えるわよ。ライブを続けていればね。」

 

絵里ちゃんも興味を持ったらしい。

正直なところ、私ももう一度会ってみたいと思っていた。

絵里ちゃんは知らないって言っていたが、どうしても私はあの人を、もう1人の絵里ちゃんに会って話をしてみたいと思っていたら、

 

「ねえ、絵里は知ってる?『ドッペルゲンガー』って。」

 

みんなの話題を塗り替えるかのように、にこちゃんが話し出す。

 

「ドッペルゲンガーに会った人間は、死ぬのよ…」

 

「…えっ」

 

途端に絵里ちゃんの顔が青ざめる。

周りの空気も凍りついてしまった。

そして絵里ちゃんが開口一言、

 

「な、なんてこと言うのよ!にこぉっ‼︎」

 

と言って怖がりだしてしまった。

よく見え無いが、目には涙も浮かべている様に見える。

 

「にこちゃんが絵里ちゃん泣かしたにゃー‼︎」

 

「にこっち!そんなひどいこと言ったらあかんやろ‼︎」

 

みんな口を揃えてにこちゃんを攻めだした。

これにはさすがの穂乃果も、

 

「そうだよ!せっかく盛り上がってたのにぃー」

 

と口を出す。

 

 

すると、その時だった…

 

 

『まったく。ほんとその子の言う通りよ。せっかく気になったからこっそり見に来てやったのに、見たら死ぬなんて言うからたまったもんじゃないわ!どうしてくれるのよ?そこのツルペタ‼︎』

 

 

「「えっ……⁉︎」」

 

一瞬でその場が静まり返る。

すると、いきなり人が現れた。

その人物は…

 

 

《静視点》

 

まったくひどいこと言う奴もいるものだ。

いくらそっくりだったからって会ったら死ぬなんて、言われた方はたまったもんじゃないわ。こっそり見て帰るだけにしようと思ったが、頭にきた私は『透明を解除』して

μ'sのメンバーに姿を現した。

 

私にも、以前話した通り「スタンド」と呼ばれる能力がある。

私の場合は「アクトン・ベイビー」というスタンド。

能力は「自分かつ、手に触れたものを透明にする」能力。

これをつかって人目を盗むことなく、難なくμ'sのいる控え室に侵入したのだ。ちなみにスタンドには実態があるものが多いが、私のスタンドにはそれはない。

 

「だ、だれよあんた!それになによツルペタって‼︎」

 

「そのままの意味よ!なによあんた調子乗ってんの⁉︎」

 

「ぬぁんでよぉ‼︎調子乗ってんのはあんたでしょ⁉︎」

 

それにしてもこのツルペタはしつこいやつだ。

こんな風に「私可愛いー♡」みたいに思ってるやつをみると腹がたつ。

せめてそういうなら私ぐらい可愛いくなれって話しだ。

 

私がいきなり姿を見せたからだろうか、他のメンバーはただただ、驚きの目を私に向けている。

 

「いきなり人が出てきたニャー‼︎」

 

「怖いよぉ…凛ちゃん…」

 

「い、いきなり出てくるなんてイミワカンナイ!!」

 

メンバーのみんなは私を怖がるかのようにしてただただ怯えている。

やはりどこに行っても私のような人間は嫌われ続ける運命なのだろうか。

そんなことを考えていたその時だった…

 

「すごいよ!透明になれるの?」

 

メンバーのリーダーであろう女の子がそう言った。

 

いきなりのことに驚いていると、

 

「ちょっと一緒に来て!」

 

その子が私の手を引いて、部屋を飛び出した。

 

「穂乃果!!」

 

突然のことに驚くメンバーをよそにその子は一心不乱に走る。

私の中で新しい何かが生まれようとしていた…




今回から視点を変える演出を入れてみました。
見づらかったりしたらすみません。
その時は新しい案を出してくれたらありがたいです。


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甘美な香 ③

遅くなりました、3話目です。
ついにスタンドが出てきます。


《静視点》

 

私を引っ張り出した女の子は穂乃果というらしい。

私たちはそのまま外に飛び出した。

そしてその子は言った。

 

「ごめんね。酷いことしちゃって。でも怒らないで、みんなあなたのこと嫌ったわけじゃないから。」

 

なんて人間ができてるのだろうか。日本人にはこんな人もいるのかと思った。

 

「それより、あなた透明人間になれるの⁉︎」

 

息つく間もなく穂乃果が問いかける。

 

「え、ま、まぁそうだけど…」

 

「すごいよ!ねえねえ、どんな風にするの?」

 

どうやら穂乃果はどんなことにも首を突っ込むような知りたがりの子らしい。

そんなことを考えている今も、彼女は興味津々で私を見つめている。

 

どうしよう、こういうのは苦手だ。

今までは周りから変な目で見られていたのでこういうことを言われるのには慣れていない。

このまま逃げ出してしまおうかと思っていたその時…

 

『prprprprprprprprpr』

 

私の電話の呼び出し音がなる。

手にとって出てみると。

 

「静!一体どこに行ってたんだ?電話にも出ないし、心配したんだぞ?」

 

広瀬さんだった。どうやら私を探していたらしい。

 

「ごめん、広瀬さん。ちょっと道に迷っちゃって…」

 

「なんだって?やれやれ…じゃあ、今から僕はUTX学園の前に行くから、そこまで来てくれ。でかい建物だからすぐにたどり着くだろう。」

 

「え、ちょっ、ちょっと待って…」

 

「じゃあね。」

 

ブツッといる音とともに電話が切れる。

UTXって、どこよ!聞いたことないわよ!

私が迷子になりやすいの知ってるでしょ⁈

とにかくこれからどうしよう…

そんなことを考えていると…

 

「ねぇ、もしかして道に迷ったの?」

 

「そ、そうだけど…」

 

「だったら、私が案内してあげる!」

 

「え?」

 

「ほらほらこっちだよ!」

 

「ちょ、まだ行くって決めたわけじゃ…って」

 

言葉を返す間も無く、私は穂乃果に再び引っ張られてしまった。

街の中をどんどん進んで行く。

こうしていると、幼い頃パパの手を引いて、あちこち走って回ったことを思い出す。

まあ、今は自分が引っ張られているのだが。

 

そうこうしているうちに、私達はとある商店街に入り込んだ。

 

「あれぇ?おかしいなぁ…近道のはずなのに…」

 

どうやら穂乃果は道を間違えたらしい。

あれだけ夢中で走ったのだ。間違えても仕方ないだろう。

 

しかしその時だった。

 

「ねぇ、なんか変な匂いしない…?」

 

と、穂乃果が問いかける。

確かに変な匂いがする。

まるで『ガス』の様な…

 

そこまで考えて私は驚いた。

まさか、どこかでガスが漏れているのではないかと。

確かにここは商店街の一角、店に並んで幾つかの食堂も見当たる。

しかし、外まで匂いがするとなるとよっぽどのガス漏れになる。一体どこからなのか…

 

注意深く周りをみると、近くの食堂から人が飛び出して来ていた。どうやらあの店から出てきていたらしい。

 

すると、何かあると気になる性格の穂乃果は、私の手を引いて、そこまで引っ張った。

 

「ちょっと、私早く帰りたいんだけど。」

 

「いいからいいから」

 

どうやら聞く耳は持たない様だ。

 

「何があったんだろ?」

 

「たぶん、ガス漏れね。」

 

冷静に対処して、早くその場を立ち去ろうとする。

すると、

 

「だ、だれかたすけて…」

 

店の中から助けを呼ぶ声がきこえた。

どうやらガスの匂いが苦手で体調を崩した人がいた様だ。

私は仕方なく助けようと中に入る。

 

「あ、危ないよ!」

 

穂乃果はびっくりしていたが、私は無視をした。

今ここで私に何かあっても、私を心配する人はいないだろう。

広瀬さんは自分勝手だし、パパは私の言い分も聞かずに日本に行かせようとしたし。

そもそも、日本にだって行きたくて来たわけじゃない。

どうせパパも広瀬さんも私の事を邪魔者ぐらいにしか考えてないのだ。

今の私に居場所なんてないのだ…

 

中にいた人の肩をとり、外に出ようとする。

その時だった。

 

ふと私が見た所に、人型の何かがいる。

人型と言っても、体には無数の穴が開いており、そこからなにか、煙の様なものが出ているのが見える。

 

「まさか、『スタンド』?」

 

日本でも出くわすとは思っていなかった。

しかし、目的は何なのか。本体はどこなのか。

この場にいる人は、肩をかけているこの人と、外にいる穂乃果と先に逃げたした数名ぐらいしかいないが、近くにはいないのだろうか。

だとしたら遠隔操作型のスタンドなのか。

「とにかくこの場を離れないと!」

そう思った私は肩をかけている人を連れて外に飛び出した。

その人が何かお礼を言っている様だが相手にしない。

何か面倒ごとに巻き込まれる前に、ここを立ち去らなければ。

ちょっとした人ごみの中、穂乃果を探す。

 

「穂乃果ー?穂乃果ー?」

 

名前を呼ぶが返事がない。

すると遠くで、穂乃果が誰かと路地裏に入り込むのが見えた。

 

「まさか、穂乃果を狙ったスタンド使い⁉︎」

 

そう思った私は穂乃果の後を追いかけていった。

 

 

《穂乃果視点》

 

あの子は困った人を放って置けない人らしい。

今も、ガスが充満してるであろう店内に入っていった。

「あの子は偉いなぁ…」と思う。

 

それにしてもあの子、絵里ちゃんにそっくりだった。

まぁ、性格は絵里ちゃんとはまた一つ違うし、髪色は日本人の様な綺麗な黒髪だけど。

 

そういえば、迷子になったと言っていたがここの近くに住んでいる人ではないのだろうか。

だとしたら、せっかくだし、ここのことについて、色々教えてあげるのもいいかもしれない。

「友達になりたいなぁ…」と思っていた。

 

しかしその時だった。

突然背後から声が聞こえた。

 

 

 

「見つけたぞ高坂。昨日の事を覚えているか?」

 

 

 

それは、昨日確かに聞こえた、『あの声』だった。

 

「だ、誰⁉︎」

 

恐怖で声がすくむ。

周りの人に聞こえない様な小さな声で、でも私には聞こえる様にはっきりと、そいつは話し出した。

 

「覚えてないのか?昨日あっただろう。いや、『それより前』だったかな?」

 

「俺の名前は、徳本。徳元源太。同じ中学だったじゃないか?」

 

徳元源太。

その名前は確かに覚えていた。

私が中学生だった頃、一度同じクラスになったのだ。

しかし、久しぶりにあった徳元君は以前とかなり雰囲気が変わっていた。

背が高いが痩せていて、おとなしい性格だったので、

「ヒョロ本」などと囃し立てられていじめられていたが、以前の徳元君とは別人の様ながっしりとした体つきだ。

鍛えたりでもしたのだろうか。

そんな事を考えていると、彼は私に話しかけ出した。

 

「ここじゃ話すのもなんだからあっちに行こうか。」

 

そういうと、彼は私の腕を引き、近くの路地裏に入った。

心なしか引っ張る腕の力が強い気がする。

 

「こんなとこで何を話すの?」

 

私がそう聞くと、彼はこう話した。

 

「俺はまだ、あの日のことを忘れていない。」

 

「あの日、お前は、いじめられていた俺を助けてくれたじゃないか。あれで俺は、始めて恋というものを知った。」

 

「それからしばらく、お前はこんな俺にとても優しくしてくれた。嬉しかった。そして、俺の思いは抑えきれなくなった…」

 

坦々と、思い出話を語る徳元君。

そんな話に記憶を呼び戻していると、いきなり彼の話し方が変わった。

 

「しかし!抑えきれない思いを胸に語った愛のメッセージは見事に砕け散った‼︎」

 

「俺は思ったよ、『こいつも俺の事を嫌うんだな…』ってなあっ‼︎心の中では、『キモチワルイ』とか、思ってたんだろ⁉︎」

 

「その時俺は心に決めたよ、いつか絶対にお前に復讐してやるってなあ‼︎」

 

「何かやばい」そんな事を思った時には遅かった。

怒りに満ちた表情を見せる彼から逃げようとしたが、どうしたことか、体を押さえつけられて動けない。

叫ぼうとしたが、口を手の様な何かが塞ぐ。

「何かがここにいる」そんなことを思っていると、急に気持ちが楽になってきた。

 

「ふふふ…どうだい高坂、いい気持ちだろ?」

 

「いい気持ち?」確かにどこからか、いい匂いがする。

 

「今、『イランイラン』の香を出している。この匂いは嗅ぐとちょっとした幸福感に満たされ、リラックスすることができるんだ。まぁ、俺のはそんな生易しいものではないがな。」

 

「そうなんだ。確かにきもちいいかも…」

彼が何か言っているが頭に入ってこない。

幸せな気持ちが胸いっぱいに広がってくる。

あれ?さっきまで何しようとしてたんだっけ?

もう、どうでもいいや…

今はただ、この幸せに身を任せたい…………

その時だった。

 

 

 

 

「穂乃果ぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

 

大きな声とともに女の子が現れて、彼を殴り飛ばした。

だれだっけ、あの子…確か、控え室で…

そこまで考えたとき、ハッとした。

そして、今自分の置かれていた状況を思い出す。

 

「ぐ…誰だお前はぁぁっ‼︎」

 

彼が頭を押さえて苦しんでいる。

どうやらかなり効いたのだろう。

 

「早くこっちに!」

 

そういうと、その子は私の手を引いて路地裏から逃げるように走り、あっという間に商店街まで戻ってきてしまった。

 

「ま、まって!」

 

突然のことで頭の整理が追いつかない私は、女の子に尋ねる。

 

「い、今のは一体…?」

 

「わからないかもしれないけど大丈夫。きっとあなたを守ってみせるから。」

 

女の子はそういうと、私の向いている向きとは反対を見た。

そこにはさっき頭を殴られた徳元君がいた。

そして何か叫ぶ。

 

「お前も高坂の友達かぁ‼︎だったら同じ目に遭ってもらうぜ‼︎」

 

 

 

「『スウィート・アンド・ダーティ・スメル』‼︎」

 

すると、女の子は

 

「残念だったわね。何もスタンドはあなただけが持ってるものじゃないのよ!『アクトン・ベイビー』‼︎」

 

と言って透明になり始める。

控え室にで見せた能力の事だろうか。

 

 

それよりも私が気になって仕方ないのは徳元君の横にでてきた「奇妙な人の形をしたの何か」の事だった。

さっきまではいなかったのに今ははっきり見えるが、原因はよくわからない。

どうやら女の子には見えているらしい。

「スタンド」って言うのかな?

気になった私は女の子に尋ねた。

すると…

 

 

「あなた、あのスタンドが見えるの⁉︎」

 

どうやら私は大変な事に首を突っ込んでしまったようだ…

 

 




スタンドについて説明します。

スタンド紹介①
「スウィート・アンド・ダーティ・スメル」
破壊力 B 持続力 A
射程 B 精密動作性 D
スピードD 成長性 C

能力は、様々な匂いを発生させること。
匂いの効果は強く、相手にその匂いの元があるかのように思い込ませる事ができる。イランイランはアロマでよく使われていて、幸せな気持ちにする効果がある。

あと、徳元君の鼻の良さは生まれつきという事で…
次回は本格的なスタンドバトルにするつもりです。


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甘美な香 ④

遅くなりました、第四回です。
ついにスタンドが目覚めます。一体どんな能力なのか…


《静視点》

 

「この子、スタンドが見えている…⁉︎」

そう思った私は、穂乃果に問いかけた。

 

「あなた、スタンドが見えてるの?」

 

「スタンド?あれ、スタンドっていうの?」

 

どうやらスタンドは見えるがスタンドを使うこことはできていない、

スタンド使いなりかけの状態のようだ。

これは思わぬ展開だ。

もしかしたら、スタンド使いが生まれる場所に立ち会えるかもしれない。

そうすればこいつにも勝つことが…そんなことを思っていると

 

「さぁっきから何をごちゃごちゃ喋っているんだぁっ⁉︎隠し事は嫌いだぞぉ‼︎」

 

といって、ヤツが向かってくる。

 

「こうなったら二人まとめてブッ殺すっ‼︎『スウィート・アンド・ダーティ・スメル』‼︎」

 

まずい、再びあの能力を使うつもりだ。

穂乃果の後ろから、ヤツが能力を使うところを透明化を使って見ていたが、

あれは「自分の思い通りの匂いを発生させる能力」と見える。

いい匂いで穂乃果を誘惑していたが、見ているこっちもその香に魅せられていた。

あの匂いに勝つには相当な精神力がいるだろう。

 

「穂乃果‼︎私の手を握って!」

 

「え?また、なんで?」

 

「いいから‼︎」

 

そういって、私は穂乃果の手を取り、透明化を行う。

すると、手を握っている穂乃果も透明になった。

 

「き、貴様の能力は!」

 

「そう、これが私のスタンド『アクトン・ベイビー』!物体を透明にする‼︎」

 

透明になり、ヤツとの距離を図ろうとする。

穂乃果の手を引き、路地に逃げ込んだ。

 

「ねぇ、スタンドって一体なんなの…!」

 

路地に逃げ込んだところで穂乃果が質問する。

私は、スタンドの事を包み隠さず全て話した。

世の中にはそんな力を持つ人がいる事や、

その力をヤツみたいに悪用する人がいること。

そして、スタンドはスタンドでしか攻撃できないという、戦い方まで…

「自分にそんな力がある」そんな事を知った穂乃果は最初こそ動揺を隠せずにいた。

今まで普通の生活をしていた女子校生がこんなことに巻き込まれたのだ。

驚かない方がおかしい。

しかし、穂乃果は私に向かって、

 

「わかった。穂乃果も一緒に戦うよ!徳元君がこうなったのも私のあんな行動が原因だから…」

 

と言ってくれた。

正直驚いてしまった。

状況整理できずに狼狽えるだけだと思ったのだが…

しかし、穂乃果はスタンドこそ見えるがスタンドは出せない。

なにか、きっかけでもあれば…

 

しかし、そう考えた瞬間、私の体に衝撃が走り、

私の体は建物の壁に向かって殴り飛ばされた。

ダメージはさほどなかったが、

穂乃果や私の透明化は解除されてしまった。

 

「見つけたぜ…」

 

部屋の隅に逃げたゴキブリを見つけた時のように

ヤツはそう言った…

 

 

《穂乃果視点》

 

「静ちゃん‼︎」

 

私の目の前で、静ちゃんが壁に吹っ飛んだ。

そこには徳元君と、スタンドがいた。

徳元君は私を見つけてご満悦のようだった。

 

「手間かけさせやがって…お前、忘れたのか?俺はお前の匂いを覚えてるんだ。『能力』のおかげでな。だから、お前が透明だろうが無かろうが、見つけ出す事は結構簡単なんだぜ?」

 

何てことだ…まさか、こんな事になるなんて。

あの時、私があの道を通らなければ…

そんな後悔の念が、頭の中を駆け巡る。

その時だった、

 

「ま、これでお前を好きなようにできるわけだが、このままだと俺の邪魔をしたこいつへの怒りが治らない。まずは、俺の手を煩わさせたこいつに罪を償わせなきゃなぁ‼︎」

 

と言って、徳元君は静ちゃんを足で踏み出した。

静ちゃんはダメージが大きかったのか、動く事ができず、

一方的に踏まれてばかりだ。

このままでは、静ちゃんが殺されてしまうかもしれない。

 

「やめて!徳本君!なんで静ちゃんを狙うの?私に復讐したいのなら私を狙って!」

 

必死になって徳本君を説得しようと試みる、しかし徳本君は聞く耳を持たなかった。

 

「うるせぇ!まずはこいつからだ!その後で、お前に償わせてやるよ…!」

 

静ちゃんを踏む力は収まることなく、徳本君はガシガシと音を立てながら静ちゃんを踏みつける。

顔やお腹、腕などを一心不乱に。

めちゃくちゃにされる静ちゃんを見て

 

「なんで私には何もできないんだろう…」

 

そんな無力感が心の中に浮かぶ、

μ’sの活動をしている時もそう。私は手先が器用でもないし、詩も作れない…

いつも誰かの力を借りてきてばかりだった。

今も、私が原因で招いたトラブルなのに、静ちゃんがこうやって徳本君に一方的にやられている。

力が欲しい。

私を助けてくれるみんなを助けることができる力を…!

 

「くそっ、早くくたばれこのクソアマっ‼︎」

 

そういって静ちゃんを踏みつける徳元君を見た私は反射的に

 

「やめてええええっ‼︎」

 

と、叫んでいた。その時だった。

背後から出てきた何かが、徳元君を全力で殴った。

徳元君はすごいスピードで、路地の奥まで飛ばされる。

何が起きたのかわからず、後ろを振り向くと、

そこには人型の少し機械室な体を持った何かがいた。

 

「ほ、穂乃果…」

 

静ちゃんが私を呼ぶ。どうやら無事だったようだ。

 

「そ、それがあなたの『スタンド』よ。」

 

「これが?」

 

「そう、あなたの生命のビジョン。ヤツを吹っ飛ばしたあたり、近距離パワー型ね。」

 

どうやら、私のスタンドは強い力を持っているらしい。

これなら、静ちゃんも、μ'sのみんなも守れるかも!

そう思った私は動けない静ちゃんをスタンドに背負わせ、路地を抜け出した。

 

「ちょっと、なんで逃げるの⁉︎ヤツを倒さないの⁇」

 

「だめだよ!静ちゃんボロボロだよ!早く怪我を直さないと!」

 

「今戦わないでどうするの!ヤツはあなたの知ってる徳元源太じゃないのよ!逃げても追いつかれるのも知ってるでしょ⁉︎」

 

「で、でも穂乃果、スタンドがどんな力持ってるのかもわからないし…」

 

確かに今、徳元君を倒さないといけないのはわかる。

でも、私にはあの頃の気弱な徳元君の姿が頭に浮かんできていた。

みんなにいじめられていた徳元君の唯一の心の支えを私が奪ったのなら、

それをなんとかして、返すことはできないかと思っていた。

しかし、そんな考えは全くの無駄だった。

 

「よくもやってくれたなぁ高坂ぁ‼︎あいつを殺して、無抵抗なお前を、好きなだけ弄ってから殺そうと思ってたがもういい…こうなりゃ今すぐにでも殺してやる‼︎」

 

徳元君が向かって来た。

私はまた静ちゃんを連れて逃げ出すが、徳元君は足が早く、

少しづつ距離が縮まってくる。

私は必死になって走りながら、途中で道路脇のゴミ箱や店の看板を投げつける。

しかし、そんな物が効くわけなく、徳元君は迫ってくる。

 

その時だった。鼻に刺激臭が走る。

たまらず私は速度を緩めてしまい、あえなくすぐそばまで近づかれてしまった。

 

「『スウィート・アンド・ダーティ・スメル』は刺激臭を放出した。ちょっとばかしきついが、この日の為に練習を重ねた俺にとってはこの程度の匂いは大したことない。」

 

どうやらここまでかと思っていたが徳元君は続けて問いかけてきた。

 

「それよりもお前、なぜ攻撃しない?この距離まできたら、お前のスタンドで殴ればいい話だろ?」

 

「…穂乃果は徳元君を殴らないよ。」

 

「なぜ?」

 

「だって、今ここで殴ってしまったら、穂乃果はあの時徳元君をいじめていた人たちと同じになってしまうから。穂乃果は、あの時徳元君が虐められているのには気付いていたんだ。でも助けてあげる勇気が出なかった…だから、『これ以上、徳元君が悲しい思いや苦しい思いをしないようにしよう』って、そう思ったの。」

 

「そ、そうなのか…」

 

徳元君は一瞬落ち着いたかのように見えた。

しかし、

 

「ありがとう、高坂。でもなぁ、俺、あの日お前に振られた時からずっとお前の事が大嫌いなんだよ。μ'sは好きだけど、やっぱりお前だけは許せないんだ。おれの大好きなμ'sにお前は必要ないんだ。だから、ここでお前を殺す事は俺にとって新たな人生の第一歩なのさ。」

 

徳元君に私の声は届かなかった。

徳元君はそこまで私の事を恨んでいたのだ。

懐から刃物を取り出して、徳元君は私にこう言った。

 

「俺のスタンドは力が弱いから殺すのにはどうしても時間がかかる。せめてお前を殺す時だけは、すぐに楽に殺してやらないとな。」

 

そういって、徳元君は私に刃物を突きつける。

このままでは、殺されてしまう。

 

「穂乃果!逃げなさい‼︎本当に死ぬわよ‼︎」

 

静ちゃんが異臭に顔を少し歪めながら呼びかける。

しかし、徳元君の本当の思いのショックとスタンドの異臭によって私の体は動かなかった。

 

「もうダメかもしれない……助けて…」そう思った時だった。

 

 

「ガン」という何かがぶつかる音と共に徳元君が再び倒れた。

倒れた徳元君は頭を殴られたかのような怪我をしていたのだが、

それよりも不思議な点があった。

 

それは、徳元君の横にさっき投げていたはずの看板が落ちていること。

とにかく、ピンチは免れたようだ。

 

「これ、いつの間に…」

 

「穂乃果、もしかしてそれが穂乃果のスタンドの能力じゃ…」

 

これが私のスタンドの能力?

静ちゃんの事が正しければそうだけど、正直どんな力かわからない。

 

「とにかく色々やってみたら?」

 

静ちゃんにそう言われたのて、試しにこの看板に色々言ってみる。

 

「飛んで!」

 

私がそう言うと看板は宙に浮いた。これが私のスタンド能力?

「手に触れたものが宙に浮く」…なんかこれじゃないような気がする。

それにさっきみたいにビュンビュン飛んでいるわけじゃなく、ふわふわと漂っている感じだ。

スタンドには精神力が関係するって静ちゃんが言ってたけど、その問題なのだろうか?

 

「まだスタンドは生まれたばかりだわ。ゆっくり成長させましょう。」

 

静ちゃんはそう言った。

どんなものであれ、私は新しい力を得ることができた。

これが私の能力。これでみんなの力になれれば…

 

「それよりこいつどうするの?警察に突き出す?」

 

頭に看板をくらってのびてしまっている徳本君を指さして、静ちゃんは言う。

スタンドに夢中になって忘れてしまっていたが、徳本君は私を殺そうとした。

あの、徳元君が本当にこんな事をするだなんて…

いじめられた過去を持ち歪んだ心になってしまった徳本君。

「あの時勇気があればこうはならなかったのかな…」そう思った。

 

「じゃあ、決まりね。警察に突き出すわよ。あ、日本の警察はどの番号にコールすればつながるのかしら…」

 

静ちゃんが警察に連絡しようとする。

その時だった。

 

「ま、まだだ…」

 

「えっ…?」

 

静ちゃんが下を見る。徳本君が目を覚まし静ちゃんの足を掴んでいた。そして、

 

「『スウィート・アンド・ダーティ・スメル』…!」

 

徳本君がそういうと、たちまち目に染みる刺激臭が立ち込めてきた。

すかさず徳本君が立ち上がると、静ちゃんを取り押さえる。

 

「穂乃果!」

 

「動くんじゃない。これは取引だ…」

 

そういって徳本君は私にナイフを渡す。

 

「…これで私はどうすればいいの?」

 

ナイフを手に取り、私は訪ねた。すると、徳元君は

 

「簡単なことさ、こいつを抑えといてやるから、自殺しろ。俺をこんなめにしたんだ。本当に俺のことを思っているなら俺の言うことぐらい聞けるだろ?」

 

「もし、聞かなかったら?」

 

「簡単なこと、こいつが死ぬだけさ。」

 

こういうのを人生最大の選択とでも言うのだろうか。

私の命か静ちゃんの命か、どっちを選べばいいのだろうか。

よくカレーにするかラーメンにするかみたいな事をするけれど、

今回ばかりはそんな簡単なものではない。

その時だった。

 

「穂乃果!私の事は気にしないで!」

 

静ちゃんからの意外な言葉に「え⁉︎」と驚く。

 

「私、ここにはアメリカのみんなから追いやられるかのように来たの。私には居場所がない。だから、ここで私が死んじゃっても、誰も悲しまないわ。早く逃げて穂乃果!最後に、貴女みたいな素晴らしい人に出会えて本当によかった…」

 

静ちゃんの口からでた言葉に私は何も言えないでいた。

そんな事があったなんて…

するとこれを聞いた徳元君は

 

「へぇ、そうだったのか。悲しい運命ってやつか?でも残念だな。俺の鼻はかなりいいんだ。一度嗅いだ匂いは絶対に忘れないんだぜ。」

 

と言って、自慢げな顔をした。

静ちゃんは「あ…」と言って絶望的な表情を見せる。

やはり、私が死ぬしかないのだろうか。

 

そのとき、私はある事を思い出した。

それは、まだ解明していないスタンド能力のこと。

最初、私が「助けて」と思ったら看板が飛んできて徳元君の頭にぶつかった。

次に、私が飛ぶように命令したら看板は宙に浮いた。

私は手に持っているナイフを握りしめる。

もし、私の思っている通りの能力だったら誰も死なずにすむかもしれない。

私に一つの考えが浮かんだ。これならいけるかも…

 

「わかった。穂乃果が自殺すればいいんだね?」

 

徳元君を油断させるために私はわざとそう言う。

これも全て作戦の内だ。

 

「おっ!ついにその気になったか。よし、早く見せてくれよ!」

 

徳元君は喜んだ顔を見せる。

 

「だめ!穂乃果‼︎貴女が死ぬ必要はない‼︎」

 

「おい、さっきからうるさいぞ?」

 

徳元君は私の自殺を止めようと必死の静ちゃんを必死に抑える。

 

もう、あの頃の徳元君じゃないんだね。

今の私の目の前にいるのは、あの時徳元君をいじめていた人たちと同じ、いやそれ以上の悪。

私のせいでこうなったのならば、私が止めてあげないと‼︎

 

ナイフを自分のお腹に向ける振りをする。

そして同時に私は心の中で叫んだ。『静ちゃんを助けて‼︎』

 

その瞬間だった。

私の手の中のナイフが、さっきの看板が、ゴミ箱が、一斉に飛び出して、二人の方へと進む。

しかし、二人と言っても静ちゃんは狙わない。

 

「グエッ‼︎」

 

徳元君の顔を狙った様々な物が、次々と顔にぶつかった。

ナイフが刺さらずにいたのは『誰も殺さない』という思いの表れだろう。

顔面に物をぶつけられた徳元君はたちまち静ちゃんを離し、顔を抑えて座り込んだ。

すかさず徳元君に近づく。

 

「ま、まってくれ悪かった。謝るよ。だから何もしないで…」

 

「徳元君。君は許されないことをしてしまった。それは、私の友達をこんな目に合わせた事…!今の徳元君は確かに強くなった。だけど、その強さは間違ってる!それを今、私が正す‼︎」

 

「や、止めー」

 

「ボララララララララララララララララララララララララララララララララララボラァッ‼︎‼︎」

 

私のスタンドが徳元君に高速パンチを叩き込む。

徳元君は再び吹っ飛び地面に倒れた。

どうやら気を失ってしまったようだ。

 

「静ちゃん‼︎」

 

私はすぐに静ちゃんの元に駆け寄る。その顔は涙でグシャグシャだった。

 

「よかった。本当によかったよぉ〜」

 

「もう、そんな顔しないでよ穂乃果。」

 

「するなって言ってもする!だって静ちゃん無事だったんだからぁ〜」

 

「はいはい。ありがと、穂乃果。」

 

兎にも角にも、穂乃果の前に現れたスタンド使いを倒すことに成功した。

徳元君はその後、静ちゃんが警察を呼びなんとかしてくれることになった。

警察に連れて行かれる徳元君を見た私は、「徳元君には正しい心持ってもらいたい。」そう思ったのだった。

 

 

 

「それより、穂乃果のスタンドの能力って何?」

 

帰り道を歩いていると、思い出したかのように静ちゃんが質問してきた。並んで歩いていた私はパッと静ちゃんの前に出た。

 

「あーそれね。私のスタンドの能力は『魂を与える』だよっ!」

 

「なにそれ?なんでそう分かるのよ?」

 

「だって、私が触れたものは私の言ったことをなんでも聞いたんだよ?「飛んで」とか、「助けて」とか。絶対そうだって!」

 

静ちゃんに向かって、私は自身のスタンド能力を自信満々におしえた。

すると、静ちゃんはやれやれって顔をする。

 

「はぁ…まあ、それでいいわ。それより名前どうするの?」

 

「名前?」

 

「そうよ。ずっとスタンドスタンドって言えないでしょ?私のみたいに格好いい名前をつけなさい。」

 

「名前かぁ…うーん…あ、ひらめいた!」

 

「え、なになに?」

 

「『ノーブランド・ガールズ』‼︎」

 

「ノーブランド・ガールズねぇ…それ、今日のライブでやった曲の名前じゃ…」

 

「いやー、いいのが思いつかなくって…」

 

そう言って私はえへへと笑った。

 

「まあ、いいんじゃない?かっこいいし」

 

「本当?あ、そうだ今日は家に来なよ!和菓子もあるよ!」

 

静ちゃんの手を引いて家へと向かう。

静ちゃんが「ちょっと待ってよ!」と言っている。

新しい友達ができた嬉しさで私の日常はより一層面白くなりそうだ。

「明日もまた、楽しい1日になるといいなぁ」私はそう思ったのだった。

 

しかし、まだ私たちは知らなかった。この町にはまだまだたくさんのスタンド使いがいて、私たちがそしてμ'sのみんなが、とんでもない運命に巻き込まれていくということを…

 

 

 

 

 

 

《⁇?視点》

 

まいったな。どうしよう。この町にうち以外のスタンド使いがおったなんて…

それに『1人』は穂乃果ちゃんだったとは…

 

「どうやら、μ'sも音乃木坂も面白いことになりそうやん…」

 

〜to be continued…〜

 

 

 




スタンド紹介⑵
「ノーブランド・ガールズ」
破壊力 A 持続力 C
射程 D 精密動作性 C
スピード B 成長性 A

能力は、触れた物体に魂を与え、自在に操ること。
普通ならできない動きも思いのまま。
触れたものに射程の概念はない。
しかし、形を変えてしまう動きはできない。
(分裂できないものをバラバラにするみたいな)
遠距離・近距離どちらにも対応でき、本人次第で様々な応用のできるスタンドです。
まだ隠された能力もあるけれど、それはまた今度…


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二つの星 ①

雪のおかげで書く時間がもらえました。雪に感謝です。
今回から、新たなスタンドが出てきます。


《穂乃果視点》

 

スタンドが発現して数日が過ぎた。

その中で私の生活に少しだけ変化が現れたようだ。

 

「穂乃果、おはよう御座います。」

 

「穂乃果ちゃんおはよー」

 

「ことりちゃん、海未ちゃんおっはよー!いやー今日もいい天気だねー」

 

「全く…穂乃果は朝から元気ですね。」

 

いつもの3人で学校へ向かう。

するとその時、後ろから声が聞こえた。

 

「ハロー!穂乃果‼︎元気してる?」

 

「し、静ちゃん⁉︎」

 

静ちゃんだった。あの日以来久しぶりに会って驚いたが、さらに驚く点が一つ。

それは静ちゃんの着ている服で…

 

 

「静ちゃん、その制服音ノ木坂の制服だよね…?」

 

「あぁ、これ?今日から私、音ノ木坂に留学生として通うことになったの。」

 

「えぇぇ⁉︎」

 

どうやら静ちゃん、どうしてもアメリカに帰りたくないらしく、

アメリカの家族に無理を言い、強引に音ノ木坂学院に通うことにしたらしい。

 

「あの、穂乃果、そちらの方は一体…?」

 

「穂乃果ちゃん…その子、この前のライブの時の控え室に…」

 

再び現れた静ちゃんに驚きを隠せない二人に、私は丁寧に説明した。すると、

 

「なるほど、穂乃果の友達だったのですね。私は園田海未と言います。」

 

「私は南ことり。よろしくね、静ちゃん!」

 

どうやら二人とも納得してくれたようだ。

 

「でも、本当に楽しみだわ、今日から穂乃果と同じクラスで勉強できるのね?」

 

「穂乃果と同じクラスなら私達とも同じクラスですね。日本の事、色々と教えますよ。」

 

「わぁ、本当⁉︎それは楽しみだわ!」

 

意気揚々とする静ちゃん。しかしことりちゃんがある事に気づく…

 

 

「ねぇ、静ちゃん。そのリボンの色だけど…」

 

「え?リボンの色?」

 

そう言って、静ちゃんはリボンを見る。リボンは「青色」だった。

 

「青色って、『一年生』のリボンだよね…」

 

「……」

 

みんなが静かになる。

 

「ねぇ、穂乃果、あなた何年生?」

 

小さいながらもはっきりとした声で静ちゃんが質問する。

私は目をそらしながら

 

「に、二年生だけど…」

 

と、答えた。すると、

 

「なぁんでよぉぉー‼︎せっかく一緒だと思ったのに、あなた年上?年上だったの?」

 

相当ショックだったのか、静ちゃんは大きな声で叫び、空気の抜けた風船のように、

地面にヘナヘナと座り込んだ。私はそんな静ちゃんを見て混乱する。

 

「ちょ、ちょっとちょっと、そんなに泣かないで。私だって同い年か年上だって思ってたしさ?」

 

「グスッ…あぁんまりよぉぉぉ…」

 

「穂乃果、とりあえず学校に行きましょう、遅刻してしまいます。」

 

わたわたしている私を見て、海未ちゃんがそう言ったので、私は静ちゃんを立ち上がらせようとする。

 

「うぅ…年上だなんて聞いてないわよぉ…」

 

静ちゃんはそういいながらゆっくり立ち上がる。

 

そんな事から数分後、授業開始のチャイムのなる1分前、

私たちはなんとか遅刻せずに学校へとたどり着いたのだった。

 

 

 

 

 

「なるほど。そんな事があったのね…」

 

「そうだよぉ。もう朝から疲れちゃったよー…」

 

昼休み。今日は天気が良かったので中庭でお昼にしようとしていると、

偶然にも絵里ちゃんと希ちゃんに会った。

今日の朝会ったことを2人に話すと、2人は私に同情してくれた。

 

「それにしても、廃校間際の音ノ木坂に留学生が来るなんて…」

 

「穂乃果ちゃん、どこの国から来た人なん?」

 

「アメリカとか言ってたけど…」

 

ここだけの話、私は静ちゃんに不思議な魅力を感じていた。

顔立ちは絵里ちゃんにそっくりで綺麗な黒髪の持ち主。

性格もそっくりかと思ったらそうでもなく、以外と強気。

スタンド能力についてもとても詳しそうだった。

 

「ねぇ穂乃果ちゃん、誰かこっちに向かってくるんだけど…」

 

そんなこんなで静ちゃんの謎の魅力を思い出していると、

突然ことりちゃんが何かに気付いたかのように私に声をかける。

 

「え、誰だろう?」

 

手を当てて遠くを見る。すると、遠くから誰かが走ってきた。

 

「穂乃果ぁぁぁあ‼︎」

 

「し、静ちゃん⁉︎」

 

静ちゃんだった。私を見つけた瞬間、全力で走ってきたらしい。

本人曰く、学校案内を花陽ちゃん達にしてもらっていたが、私を見つけるやいなや、

そんな事御構い無しだったようだ。

 

「やっと見つけた!さぁ、ランチにするわよ‼︎」

 

「わ、わかったわかった…一緒に食べよう。」

 

静ちゃんはすぐに私の近くに座ると、

持ってきていた紙袋からサンドイッチを取り出した。

早速食べようとすると、ヘトヘトになった花陽ちゃん達がやって来る。

 

「静ちゃん、早すぎるよぉ…」

 

「全く、どれだけ穂乃果と一緒にお昼食べたいわけ?」

 

「もうお腹ペコペコにゃー」

 

「あ、あはは…ゴメンゴメン。」

 

ヘトヘトの一年生3人に対して静ちゃんは軽ーく謝る。

気づけばμ'sのメンバーが集まりかけていた。

 

「ねぇ、せっかくだし、みんなでお昼食べようよ‼︎」

 

静ちゃんをみんなに紹介するていい機会だと思った私はそう提案する。

みんなはすぐに納得してくれた。

 

「それじゃあ、うちはにこっち呼んで来るね、みんな待ってて。」

 

そう言って希ちゃんが立ち上がる。

 

「そういえば私達もお弁当教室に置いてあるままだわ」

 

「真姫ちゃんはうっかりさんだにゃー」

 

「それは、凛も同じでしょー!」

 

「にゃぁぁ〜‼︎」

 

「それじゃあ、みんな準備してまたすぐに集合だね。」

 

みんな、準備をするために一時解散。

私はことりちゃんや海未ちゃん、そして静ちゃんと一緒にみんなを待とうとした。

すると希ちゃんが、

 

「穂乃果ちゃん。一緒に行かない?」

 

と、言ってきた。「なんで?」と聞き返すと、

 

「ちょっと、秘密の話があるんよ…」

 

と言う。秘密の話?

 

「えー?穂乃果言っちゃうの?」

 

悲しそうな顔をして静ちゃんがそう言う。

 

「ごめんね静ちゃん。すぐに戻るから。」

 

私はそう言って席を立ち、希ちゃんの後をついて行くのだった…

 

 

 

 

 

《希視点》

 

穂乃果ちゃんを連れて、一緒ににこっちのところまで歩く。

よかった…やっと穂乃果ちゃんに伝えることができる…

普通ならすぐに教室まで行く道を変更し、部室のほうへ向かう。

 

「希ちゃん、秘密の話って何?」

 

「まぁまぁ、それは誰もこないとこで話そうか。」

 

 

部室に入る。穂乃果ちゃんは腹ペコのようだったらしく、

 

「もう希ちゃん早く行こうよー。穂乃果お腹すいちゃったよ?」

 

などと言っている。仕方ない子やなぁ…

 

「それじゃ、話すね。」

 

そう言って私は口を開いた。

 

 

 

「穂乃果ちゃんの『能力』? それってうちの『これ』と同じなのかな?」

 

 

そういってうちは自分の背後から、「これ」を出現させる。

大きなゴーグルを付けた人型の何かと、その周りに飛んでいる人の拳程の大きさの星形の浮遊物。

 

「な、の、希ちゃんも…!」

 

あまりにも意外だったのか、穂乃果ちゃんは口を開けてしまっていた。

しかし、急にハッとすると、背後から、うちのやつと似た何かを出す。

 

「希ちゃんも、スタンド使いなの?」

 

そういって穂乃果ちゃんは構える。うちはまさかの反応のびっくりしてしまったので

 

「ちょ、ちょっと待って、穂乃果ちゃん!うちは例のストーカーじゃないから!攻撃せんといて!」

 

と言いながら後ずさりをした。

 

「へ、そうなの…?」

 

どうやら、分かってもらったようだ…

 

 

「いつから、希ちゃんはスタンド使いになったの?」

 

うちのことを味方だと理解してくれた穂乃果ちゃんがうちに質問をしてくる。

 

「それが、よくわからんのよ。小さいころ、気づいたら出せるようになってたって感じで…」

 

「ふーん、そうなんだね。じゃあなんで穂乃果がスタンド使いだってわかったの?」

 

「あぁ、それは…」

 

それでは、ここでうちのスタンドについて紹介しましょう。

うちのスタンドは『ダンシング・スターズ・オン・ミー』

おっきなゴーグルが特徴の「親機」と星形の「子機」の二体構成になっている。

「子機」は特定の人物をロックオンし、その情報を親機のゴーグルやそれ以外の様々な情報端末に転送する。

「親機」はその情報をもとに持ち前の精密な動作とスピードで相手を追い詰めていく。

と言っても、うちはスタンドで戦ったことはないし、親機はほとんど使わないんやけど…

穂乃果ちゃんがスタンド使いなのを知っているのは、あのライブの後、急に飛び出した穂乃果ちゃんがどこに行ったのか

気になったので、子機に追跡してもらっていたから。

まさか、穂乃果ちゃんがうちと似たような能力を身に付けたり、留学生の子も同じだとは思わなかったけど…

 

そのことを説明すると、

 

「なるほど、それで穂乃果のスタンドのことまで知っているのか…」

 

と言ってくれた。どうやら納得してくれたらしい。

 

「でも、希ちゃんもスタンド使いなんて嬉しいよ!同じ秘密をもつ人がμ‘sにもできるなんて!」

 

「ほんまに、うちも嬉しいよ。」

 

穂乃果ちゃんと喜びを分かち合う。すると、

 

 

ーキ~ンコ~ンカ~ンコ~ン ー

 

 

「……」

 

部室内に響くチャイムの音、隣の少女はへなへなと座り込み、

 

「お昼、食べ逃しちゃった…」

 

とだけ呟いたのだった…

 

 

 

 

 

 

その日の夜、うちは日課のタロット占いをやっていた。

占ったのは今後の穂乃果ちゃんの運勢。

心を落ち着かせ一枚のカードを手に取る。表に返し見てみると…

 

 

「…これは、大変なことになりそうやね…」

 

時は学園祭間近。何かが起こる予感がする…

 

 




スタンド紹介⑶
「ダンシング・スターズ・オン・ミー」(DSOM)
破壊力 C(なし) 持続力 C(A)
射程 D(∞) 精密動作性 A(A)
スピード A(A) 成長性 C(なし)

()内は子機のステータスです。能力は前述したとおりです。

相変わらずの投稿ペースですが、お気に入り登録してくれているみなさん、
どうか今後ともよろしくお願いします。


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二つの星 ②

忙しさの合間合間を縫って書きました。
バレンタインなんてなかったんや!
今回はラブライブ色を強くしてみました。
ライブに向けて練習するμ'sと静のお話です。


《穂乃果視点》

 

「ワン、ツー、スリー、フォー!」

 

学園祭に向けて、μ'sのメンバーは最後の追い込みに入っていた。

廃校の阻止のきっかけになればと、みんな一生懸命だ。

 

「穂乃果!そこのステップ遅れてますよ!」

 

「はいっ!」

 

「花陽は少し遅れてます!」

 

「は、はい!」

 

いつも厳しい海未ちゃんの指導も、いつもより熱が入っている。

 

 

「なるほど、こうやって練習してるのねー」

 

静ちゃんは、初めて学校に来た日から、ずっとこうやって、毎日練習に顔を出しては、私たちの練習を観察している。

 

「それでは、今から10分間の休憩です!」

 

一通りステップの練習も出来たので休憩する。

みんなお喋りをしたり、水を飲んだりと、リラックスしていた。

突然、

 

「静ちゃんはこうして練習見てばかりだけど、μ'sには入らないの?」

 

と、花陽ちゃんが静ちゃんに問いかける。すると静ちゃんは、

 

「え?いいよいいよ。私こういうの向いてないしさ。」

 

と答えた。

 

「えー、静ちゃんスタイルもいいし、絶対似合ってると思うのに…」

 

「ありがと。気持ちだけ貰っとくわ。」

 

同い年だけあって、花陽ちゃん達とはすぐに打ち解けたらしい。

しかし、その一方で…

 

 

「なによ、謙遜しちゃって。あ、もしかしてにこの可愛さにかなわないから嫉妬してる〜?」

 

「はぁ⁈あんたみたいな奴に誰が嫉妬すんのよ。このペチャパイ野郎!」

 

「ペ…な、なんですってぇ⁉︎」

 

「まぁまぁ、にこっち落ち着いて…」

 

「希、止めないで!こいつには先輩の格とやらを教えてあげるわ。」

 

にこちゃんとだけは、あまり仲良く出来ていない。

本人曰く、自分より可愛くないと思う人がかわい子ぶるのがとても嫌いらしい。

そういう静ちゃん自身も、なかなかの性格だと思うんだけど…

 

「にこ、1年生相手に大人気ないわよ。」

 

「絵里までそんなこと言うの?誰も私の味方はしない訳?」

 

絵里ちゃんにまで諭されて、にこちゃんはご立腹のようだ。

よっぽど腹が立っているのだろう。

そんな事を思っていると、

 

「はい、休憩時間終了です!今からグループ別の練習に入ります!」

 

と海未ちゃんが言った。

にこちゃんはグヌヌ…と言うような顔をして、

 

「覚えときなさい。いつか私の凄みを見せつけてやるわ!」

 

と言った。すると静ちゃんは、

 

「ふん!負け犬の遠吠えね。」

 

と言った。にこちゃんは顔を真っ赤にしながら、

他のメンバーとグループ練を一緒に始めるのだった。

 

 

 

「はい、これで今日の練習は終わりです。」

 

日も傾き始めた頃、今日の練習がやっと終わった。

 

「はーやっと終わった〜」

 

「穂乃果。明日までに注意したステップ、ちゃんと覚えてきてくださいよ?」

 

「はーい。わかってるよぉ〜」

 

みんな部室に帰ろうと、屋上を出て行く。

私も早く部室に帰ろうとすると希ちゃんが声をかけてきた。

 

「穂乃果ちゃん、今日これから暇?」

 

「え、まぁ暇だけど。」

 

「それじゃ、今日は穂乃果ちゃんの家に行っていいかな?話したい事があるんよ。」

 

「話したいこと?」

 

「うん、『スタンド』の事についてね。例の留学生さんも一緒に。」

 

突然の提案にびっくりする。

しかし、これも何かいい機会かもと思った私はこれを快く受け入れた。

 

すると希ちゃんは

 

「よし、決まりやね。早く行こう。」

 

と言って、屋上を後にする。

それに私は遅れて付いて行った。

 

 

 

「なるほどー。スタンドは遠くに行くほど力が弱くなるんやねー」

 

「そういうことよ。覚えとくといいわ。」

 

今、私は希ちゃんと静ちゃんと一緒に家に向かって歩いている。

あの後、希ちゃんの提案通り3人でスタンドのことについて意見交換をしているのだ。

 

「スタンドには、いろいろなタイプがあるんやね。見えないやつとか。」

 

「そういうあなたのこそ、メインとサブの二つがあるやつなんて初めて見たわ。」

 

秘密の共通点を持っているもの同士の話はとても楽しかった。

希ちゃんはいつも以上に興味津々で話を聞いていたし、

静ちゃんも、また1人、スタンド使いの仲間が増えて嬉しそうだった。

もちろん私も2人と一緒に様々な話をしたのだった。

そんな時だった。静ちゃんがふと思い出したかのように言った。

 

「あ、そういえば、スタンド使いには特別な『引力』が働くって話はしたかしら?」

 

「え、どういう事?」

 

「スタンド使いはスタンド使いにひかれあうのよ。どういうわけか知らないけど、スタンドを持つ人は、別のスタンドを持つ人に出会ってしまうってわけ。」

 

「へぇ〜」

 

「だから、こうして今私達が会えるのもスタンドのおかげってわけ。」

 

「うーん、スピリチュアルやね。」

 

スタンドに秘められた謎を知り、なんだかドキドキしてしまう。

しかし、それは良いことばかりではないらしい…

静ちゃんは続けて言う。

 

「でもね、それっていいこと尽くしではないの。私達みたいにこうして一緒にスタンドの能力について話したりできる人もいれば、自分の能力を使って悪事を働いたりする人もいる。スタンド同士が引き合うのは、なにもいい人ばかりじゃなくて、悪いやつもいるのよ。穂乃果のストーカーみたいにね。」

 

「そ、そうなんだ…」

 

「だったら、日頃から用心しないといけないやんな。」

 

「えー!穂乃果、そんなに毎日神経尖らせてたら疲れちゃうよ〜」

 

衝撃の事実に頭を抱え込む。

外出中とかならともかく、一日中とは…

耐え切れるのだろうか…

 

 

「おっと、そんなこと言ってたらもう穂乃果ちゃん家ついたみたいやな。」

 

歩き始めてしばらく立っていたのだろうか、話に夢中になっている内にあっという間に家にたどり着いてしまった。

 

「わかった?迂闊に変なのに近づいたらダメよ?」

 

「わかったよー ね?希ちゃん?」

 

「うんうん、わかったわかった♪」

 

「大丈夫かしら…」

 

「大丈夫だよ!また明日ねー!」

 

静ちゃんに念を押された後、私は家に入っていった。

引き戸を閉める時、静ちゃんと希ちゃんが仲良く話しながら帰っていくのが見えた…

 

 

 

《静視点》

 

「ねぇ?あなたいつからスタンド使いに?」

 

穂乃果と別れて二人きりになった私たちは、家路を歩いていた。新しいスタンド使い「東條希」に、彼女のスタンドについて尋ねる。

 

「うーん、昔からやなぁ…気づいたらおったんよ。うちひとりぼっちだったから、この子だけがあの時のうちにとって、唯一の親友だったなぁ。」

 

「昔からか。自分と同じだな」私はそう思った。

 

「うちな、ここに来るまでずっと1人だったんよ。別に虐められてたわけじゃないよ。心から友達と言える人がいなかっただけ。あなたもそうじゃない?留学生さん?」

 

いきなり自分の事を言い当てられてドキッとなる。

慌てた私は、

 

「別に…そんなんじゃないわよ!ていうか、名前で呼びなさいよ名前で!」

 

自分ではわからないけど、多分顔を真っ赤にしながら希にそう言う。

希はニヤニヤしながら

 

「はいはい、ごめんねー静ちゃん♩」

 

と言った。この人、人を手玉にとるのが得意なタイプ…?

そこらへんが気になるが、私は「まぁ、いいわ。」と言って空を見た。自然と

 

「いい天気ね…」

 

と口から出てくる。すると希は、

 

「学園祭もこれぐらい晴れるとえぇなぁ…」

 

と言った。

 




今回はスタンドは出てないので紹介無しです。
活動報告でも言った通り、テスト期間中なのであまり書き進める事ができません…
相変わらずの投稿ペースですがよろしくお願いします。
こういう期間にコメントでご指摘してくだされば、
それが励みや参考になりますので、
コメントの方も引き続きお待ちしてます。


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