魔法少女リリカルなのは Vivid Wing stars (ライジングスカイ)
しおりを挟む

misson:1 憧れを胸に、翼開くとき

というわけで1年の時を経て帰ってまいりました
前作から6年
今作から自分の考えたオリキャラたちが登場していきます
いろいろ設定に無理があるかもしれませんがどうかついてきてくれるとうれしいです


小さいころから………これといった取柄もなくて

弱い自分が嫌だった………でも………

少女が一人、映像記録を見て眼を見開いていた

その中で戦っている少女の姿に見入って、瞳を輝かせていた

あの人のようになりたくて、その憧れを胸に頑張ってきたんだ

やがて成長した彼女は格闘技を始めた、憧れをこの手につかむために

 

黒い制服に身を包んだ女性がブロンドのサイドテールを揺らしながら一人歩いていた

「うん、今日はこの後オフなんだけど、やっぱり気になっちゃって、うん、今日は久々にそっち帰れるよ、うん、それじゃ」

通信を終えると彼女の肩に乗っていたウサギのぬいぐるみが首を傾げた

「ん?なんだか楽しそう?そうだね、向こうにはアインハルトさんもいるって話だし」

ウサギの身振りをみて女性は笑顔を見せる

「これから会う子がどんな子なのか、楽しみだから」

 

ミッドチルダ

臨海第8空港近隣 廃棄都市街

一人の女性がそこに立っていた

長い栗毛を後ろで束ねた女性はあたりをしばらく見回して通信画面を開く

「OKです八神司令、生命反応、危険物反応なし、サーチャーとオートスフィアも無事設置完了、いつでも開始できます」

「了解、ほな私らはこっちのモニターで見てるから、そっちよろしくな、ディエチ試験官」

通信相手からの声にディエチは笑みを零し端末を操作する

 

一方廃ビルの屋上では槍をもった一人の少女が試験会場である都市街を見下ろしていた

黒く長い髪を靡かせ決意を胸に拳を握ると通信画面が開く

「こんにちは、魔導師昇格試験受験者のアンジュ・マーキュリー二等陸士で間違いないかしら」

ディエチが画面越しに微笑みながら尋ねると少女………アンジュは戸惑いながら

「はい、陸士257隊所属、アンジュ・マーキュリー二等陸士です」

「よろしい、所有ランクは陸戦Cランク、今日はBランクの試験で間違いありませんね」

「はい、間違いありません」

「確認終了、本日の試験官を務めさせていただきます、ディエチ・ナカジマ二等陸尉です」

「よろしくお願いします」

そこまで言ってアンジュは何かに気付いたように考え込む

「って、気のせいかな、この人どこかで………」

「なにか?」

「あっ、いえ、何でもないです」

ディエチが首をかしげるのを見て慌てるアンジュ

「(頑張らなきゃ………あの人に追い付くためにも)」

拳を握りしめるアンジュ

小さいころ見たインターミドル

そこで戦っていた2人の少女

特にブロンドに緑と赤の虹彩異色が特徴的な少女

闘いの中でとても楽しそうで、まっすぐできれいな瞳をしていた

その姿が彼女には輝いて見えた、あの人のようになりたい

そう思い魔法や格闘技の腕を磨いてきた

努力の結果その腕を買われ管理局へと入局することとなり彼女は今ここにいる

 

上空を飛ぶヘリコプターの内部でアンジュの様子を見ている者たちがいた

「いやぁこうして見とるとスバル達の試験を思い出すなぁ」

そう零しながら画面を見て笑顔になる茶髪に黄色と赤の髪飾りが特徴の女性と

「それで、彼女が例の………」

その隣で真剣な表情でモニターを見る碧銀の長い髪を大きなリボンでまとめてポニーテールにしている女性

 

時空管理局特別捜査官

八神はやて中将

 

時空管理局陸上警備隊所属

アインハルト・ストラトス一等陸尉

 

「せや、結構面白い子でな、アインハルトもきっと気に入ると思うよ」

「どうやら始まったようですね」

アインハルトの言葉にはやてもモニターに注目する

 

「リヒトフリューゲル」

アンジュの背に白い翼のようなものが広がり勢いよく地面を滑空していく

「移動魔法の一種でしょうか?」

「うん、あの翼から魔力が出てる、あれで加速させてるんやろ」

 

オートスフィアから攻撃が放たれアンジュに向かっていく

だがその攻撃は命中するかと思われた瞬間に空を切った

そのまま銀色の魔力を纏ったアンジュが槍で一突きしてでオートスフィアが破壊される

 

「今の動き………」

「お、アインハルトも気づいたようやね」

アンジュのその戦い方を見てアインハルトがつぶやくとはやてが笑みを零す

「よぉ似てるやろ」

はやてのその言葉と共にアンジュがターゲットを拳で撃破する

 

「八神司令から聞いてはいたけど、本当そっくりね」

ゴール地点でモニターを見ていたディエチも思わずつぶやく

「相手の攻撃を見切る観察眼とスピード、そして懐に飛び込む勇気」

 

「攻撃直後のわずかな隙を捕らえる反撃型の格闘スタイル………」

アインハルトが見ているモニターではアンジュがオートスフィアの攻撃をかわし槍に魔力を纏わせ攻撃を仕掛けていた

「カウンターヒッター」

アインハルトがそう言うのと同時にオートスフィアがアンジュの攻撃で破壊された

「私にはもう一人別の子がかぶって見えるけどな、術式も近代ベルカやし」

そう呟くはやての脳裏には過去の出来事が浮かんでいた

「さーて、この子は最後の難関をどう突破するかな」

そう言って画面を操作するはやて

「えっと今回設置されたのはっと、ありゃ、移動式の大型スフィアやな」

「高出力攻撃で目標を殲滅する自走式の移動スフィア、もし一撃で倒せなければ………」

「反撃でそのままリタイア、さて、どう対処するんか見物やね」

そう言って笑うはやての顔を眺めて首をかしげるアインハルト

「ん?どないしたんやアインハルト」

「いえ、なんだか八神司令、とても楽しそうに見えたので」

アインハルトのその言葉にはやてはにやにやと笑いながら画面に向き直った

「楽しいよ、前の六課立ち上げた時のこと思い出すし、何より今度こそ悔いのないようにしたいって、せっかくみんなが背中押してくれたんやから」

はやては思い出していた、彼女のために大切な家族が用意した書類を差し出す姿を

「アインハルト、うち頑張るよ、みんなの思いに応えるためにも」

 

「はぁっ!」

勢いよくターゲットを貫くアンジュ

ターゲットを破壊し次のフロアに移るといきなり高出力攻撃が彼女に向かって飛んできた

それに気付いたアンジュは何とか回避して前方を見据える

そこには先ほどはやて達の危惧していた大型スフィアが彼女を見据えるかのように待ちかまえていた

 

「さあ、いよいよボスの登場やで、アインハルトならどないする?」

「一度でも当たればそれだけで危険ですから、まずは中距離攻撃で隙を作って………」

「お?」

ふとはやては画面の中のアンジュの瞳を見て目を見開いた

「どうやらこの子は違う選択肢みたいや」

はやてのその言葉と共にスフィアから高出力攻撃がアンジュに向かって放たれる

「リヒトフリューゲル」

翼を展開したアンジュが横に向かって疾走するとスフィアが標準を彼女に向けながら移動を始める

アンジュはと言えば槍をしまうと移動しながら拳に魔力をため始めていた

「負けられない………あの人みたいに………」

そう言って拳を振り上げるアンジュ

スフィアの攻撃をかいくぐり懐に飛び込んだ

「強くなるんだ!」

そのまま魔力をため込んだ拳を下からスフィアに向けて叩きこむ

「アクセルスマッシュ!」

彼女の一撃で大型スフィアはたやすく飛ばされ天井に激突して爆散した

 

「決まりやな」

その光景を画面で見ていたはやてはそう言って立ち上がった

「アンジュ・マーキュリー………この子なら」

 

ディエチの待機しているゴール地点にはやてとアインハルトの乗ったヘリが降り立った

「八神司令?アインハルトも………」

ヘリから下りてきた彼女達を見て驚いた様子のディエチ

「あとは戻ってくるのを待つだけやろ、この調子なら合格間違いないし、ここで待たせてもろてもええやろ」

「わかりました、では彼女は………」

「まあ引き受けてくれるかは本人次第やけどな」

そう言って彼女が来るであろう道筋を見るはやて達

だが待っていたのはしばしの沈黙

三人ともしばらくして変に思ったのか首をかしげる

「変やな、あの子のスピードやともうつくころなんやけど」

「何かトラブルでしょうか?」

「あ、来たようです」

アインハルトの言葉と共にアンジュがふらつきながらゆっくりとこちらに向かってきた

その様子に三人の頭に再び疑問符が浮かんだ

「歩き?なんで?」

「しかもなんかすごく疲れてるような………」

「というか彼女………バリアジャケット解けてませんか?」

確かにこちらに向かう彼女の姿は局の制服姿

一体何があったのだろうか、そう思って全員が彼女に駆け寄った

「アンジュ・マーキュリー二等陸士!?大丈夫ですか?」

「す、すいません」

ディエチが声をかけるとアンジュが手に握っていた何かを差し出す

「大型スフィア………倒したのは………いいんですけど………で、デバイスが………」

息を切らしながら彼女が差し出したのは壊れたデバイス

彼女が使用していたものだろうが煙を上げて沈黙していた

「オーバーヒートでしょうか?」

「(あれ?この人は確か………)」

彼女のデバイスに覗き込んだ女性の顔を見てアンジュは目を見開いた

彼女が魔法や格闘技に進むきっかけとなったインターミドルの試合

あこがれの人と戦っていた対戦相手、何度も記録映像を見ている彼女は見間違えるはずがなかった

「みたいだね、えっと………」

ディエチが受け取ったデバイスに触れてみると見事に火花が散っていた

「どうやら魔力に耐え切れなくなって壊れたみたい、はりきりすぎちゃったね」

「あぁ、またやっちゃった」

ディエチに言われ落ち込むアンジュ、口ぶりから察するにデバイス破壊の常習犯のようだ

「ははっ、こりゃ予想以上やな」

肩を落としながら笑っていたはやてがふとゴール地点から歩いてくる影に気付いた

「なんや、来とったんか」

「ええ、正式採用が決まったら、私の部下になるわけですから」

その声に顔を上げたアンジュが見たのは黒い制服を着こなした女性の姿

その姿を見たアンジュは目を見開き驚いた

白いリボンで結ばれたサイドテールを揺らしながらアンジュに歩み寄ったのは………

「はじめまして、アンジュ・マーキュリー陸士、本局執務官、高町ヴィヴィオです」

局員証を見せるその人は、かつてアンジュが惹かれた憧れの人だった




おまけ
こちらでは毎回キャラクターたちが前作の後どのような道を進んできたかに触れていきたいと思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:2 集う者たち

「名前くらいは聞いたことあるやろ、機動六課」

ソファに座って待機していたアンジュにはやてはそう持ちかけた

「え、ええ、広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティの起こした大規模テロ、JS事件を解決した奇跡の部隊、八神司令が以前率いていた部隊ですよね?」

戸惑いながらもはやての言葉に応じるアンジュ

「せや、正確には古代遺物管理部機動六課、過去に一度試験運用された幻の部隊」

「しかしなぜ………私なんかにその話を………」

戸惑うアンジュの様子にはやてとアインハルトは顔を合わせ笑った

「本格運用が決まったんよ、危険度の高い古代遺失物、もしくはそれに準ずる可能性のある事件の初動捜査、及び可能なら解決を任務とする、陸戦魔導師中心の特殊部隊」

「以前から何度もそういった話はあったんですが八神司令が………」

そう言って隣に座るはやてをみるアインハルトの視線はなぜか冷たい

「あ、あははは、まあその話はひとまず置いといてやな」

苦笑いしながらアンジュに向き直るはやて

「アンジュ・マーキュリー陸士、私達はあなたに六課に来てもらいたいって思ってる」

「え、でも私は………私なんかでいいんでしょうか………」

はやての言葉に戸惑うアンジュ

そんな彼女の様子を見てアインハルトが少し考えるようなしぐさを見せたかと思うと

「私とヴィヴィオさんも六課への配属が決まっています」

アインハルトのその言葉にアンジュが驚き目を見開いて彼女を見た

「アンジュさんは格闘型のようですし、私達でよければスキルアップのお手伝いもできると思います」

その言葉を聞いたアンジュは真剣な表情で考え始めた

「お邪魔だったかな?」

するとヴィヴィオがディエチを伴ってやってきた

「試験のほうだけど、デバイスの故障が事故じゃない以上、残念だけど今回は失格」

「ですよね………」

うつむくアンジュにディエチは封筒を差し出した

「なんだけど、実力的には申し分ないし今見た感じだと何度受けても同じ結果になっちゃう可能性が高いから、コレ追試の申込書と、紹介状、それからこれは私とヴィヴィオから」

ポケットから別に白い封筒を取り出すディエチ

それを見て首をかしげるアンジュ

「あの………これって」

「さっきも言った通り、今のままだと何度やっても最終的にデバイスが壊れて終了、このままだと同じことの繰り返しだから」

「本局技術部のマリエル・アテンザ技官に頼んで試験用にデバイスをチューンして貰ってきて、それからもう一度試験を受けてもらうことになるから、それ、マリエル技官に渡す紹介状ね、私のほうでもメールしておいたから」

「そんなっ!わざわざ………」

「平気だよ、マリエル技官は優しい人だから」

そう答えるヴィヴィオの後ろから小さなウサギのぬいぐるみがひょっこり顔を出した

「この子もマリエル技官が作ってくれたの」

「あっ!」

そのウサギに見覚えがあったアンジュは思わず声に出てしまう

「この子はヴィヴィオの愛機でセイクリッドハート、皆クリスって呼ぶね」

ディエチのその言葉にアンジュは彼女を見る

傍に寄ってきたクリスを優しくなでる姿を見ていてハッとなり

「あー!思い出した!」

大声を上げ立ち上がった、そのため周囲にいた人々が一斉に彼女達のほうを見る

アンジュは顔を真っ赤にして座るとディエチに声をかけた

「あの、勘違いでなければ、ディエチ陸尉もインターミドルで………」

「ん?ああインターミドル?うん、セコンドやってたよ、妹がコーチやっててその手伝い」

「ご覧になったことが?」

2人の会話を聞いていたアインハルトがアンジュに尋ねる

「あ、はい、テレビでですけど………それをみて私ヴィヴィオさんに憧れて………」

「あぁ、アクセルスマッシュ使ってたもんね」

「わっ!?見てたんですか!?すいませんパクッちゃって」

「別に構わないから顔上げなよ」

言われたとおりにしていたアンジュだったが視線はずっとヴィヴィオを向いていた

 

礼を告げてヴィヴィオ達と別れるとアンジュは一人廊下を進む

「(あこがれの人と一緒に働ける………)」

彼女の心は既に決まっていた

そんな背中を見て安心した様子のヴィヴィオ達

「アインハルト、ナイスフォローや」

「いえ、最終的に決めるのは彼女ですから」

「あの調子なら大丈夫だと思うよ」

はやて、アインハルト、ディエチが話しているとヴィヴィオがはやてに声をかけた

「それで八神司令、ほかのフォワード候補ってどうなってるんですか?」

「アインハルトの部下になる二人はリインが迎えに行ってるよ」

そう言ってはやてはヴィヴィオにある画面を見せた

「ヴィヴィオもよぉ知ってる子達や」

その画面を見たヴィヴィオの瞳が輝いた

「せやヴィヴィオ、ファビア貸してくれてありがとな、副官おらんと大変やったろ」

「平気です、元々私今日はオフだったんで」

「ああ、そう言えばクロは今ヴィヴィオさんの補佐官をしているんでしたね」

 

ある陸士部隊の訓練施設

「彼が………」

次元航行部隊の青い制服に身を包んだブロンドの女性

ヴィヴィオの副官であるファビア・クロゼルグ執務官補がフォワード候補の視察に来ていた

青い髪の少年が試供の杖型デバイスを構えたくさんのターゲットを見据えていた

「………ハァっ!」

掛け声とともに大量の水が現れ渦を巻きながらターゲットを次々と撃破していく

「水の魔法………珍しい魔法を使うんですね」

「彼が独学で組み上げたそうですよ、自分の資質に合わせて」

ファビアのつぶやきを聞いて彼の隣にいた案内役の局員が答えた

「しかし流石は八神中将だ、ロイスに目をつけるとはお目が高い」

自慢げに笑う局員とは裏腹にファビアは訝しげな表情を浮かべていた

「(確かに優れた才能………けれどあの眼は)」

「おーいロイス!」

ファビアが考え込んでいると訓練が終わったらしいロイスに案内の局員が声をかけた

「こちらにいるファビア捜査官がお前にいい話を持ってきたぞ」

「いい話………?」

 

機動六課フォワード候補

ロイス・ローレンス二等陸士

 

次元港のベンチで待つ女性………リインフォースⅡとその隣で丸くなる子猫………もとい、豹型デバイスのアスティオン

本来はアインハルトの愛機なのだが今回リインが会うのはアインハルトの隊に所属する予定のフォワード候補ということで同伴していた

少女のような姿だったリインも今では多少あどけなさが残るも立派な女性に成長していた

「失礼します、リインフォースⅡ二等空尉でしょうか?」

ふと、リインに話しかける茶色い髪の青年

「あ、はい、お待ちしておりました、えっと、本日お会いするのは二人とお伺いしておりますが」

リインが立ち上がり青年の周囲を見回していると

「もう、置いてかないでよカレル!」

人込みをかき分けやってきたのはカレルと呼ばれた青年によく似た雰囲気の少女だった

「あ、申し遅れました」

その一言でふたりは姿勢を正しリインに敬礼した

「次元航行部隊所属、カレル・ハラオウン陸士」

「同じく次元航行部隊所属、リエラ・ハラオウン陸士です」

「ご苦労様です、お二人の事は、クロノ提督やフェイトさんからよく聞いてるです」

敬礼を返したリインは二人に明るく声をかけた

「いえ、こちらこそ、八神司令や皆さんには父さんもフェイト姉もお世話になりっぱなしで」

「ふふっ、そんなことないですよ、どちらかというとこっちがお世話になってる身ですし」

「とんでもない!お父さん達のほうだって」

カレルとリエラ、この二人は以前六課立ち上げに協力してくれたクロノ・ハラオウン提督の子、そのクロノ提督は今回の新六課設立にもいろいろ協力してくれている

 

機動六課フォワード候補

カレル・ハラオウン三等陸士

リエラ・ハラオウン三等陸士

 

「ただいま」

夜遅くにナカジマ家に帰宅したディエチは玄関をくぐりリビングへ向かう

「お帰りッスディエチ」

そんな彼女を赤い髪の女性、ナカジマ家の末娘、ウェンディ・ナカジマが出迎えた

「みんな御飯食べた?」

「まだッスけど今ギンガが作ってくれてるッス、ディエチは?」

「あたしもまだ、ウェンディもおなかすいてるでしょ、手伝ってくるね」

そう言ってディエチが上着を脱ぎながらリビングに行くとソファに座って新聞を読むゲンヤ・ナカジマの姿があった

「ただいまお父さん」

「おう、お帰りディエチ、大変だったろ?お前もこっち来て座んな」

「でも、晩御飯の支度手伝わなくちゃ」

「気にするな、今日も忙しかったんだろう、お前は座って待っていればいい」

そう言って彼女の後ろに現れたのは右目を閉じた小柄な女性、チンク・ナカジマだった

火照った顔で首にタオルをかけパジャマを着ているところを見るとお風呂上がりのようだ

「じゃあ………お言葉に甘えちゃおうかな、ごめんね、最近家の事全然手伝えなくて」

「気にすんなよ、八神の新部隊設立を手伝ってるんだろ、配属も決まったってんだってな」

「うん、リインさんと一緒に部隊長補佐、交替部隊の指揮とか輸送隊の護衛が主な任務なんだって」

「そいつはすげえな、俺も鼻が高ぇや」

「でも、本格的に部隊が動き出したらこっちにはめったに帰れなくなるし」

そう呟くディエチの肩にゲンヤが手を置いた

「自分で選んだ道だろう、だったら俺達のことなんか気にしないで、やりたいようにやんな」

「ありがとう………お父さん」

ディエチは顔を赤くしながらゲンヤの言葉に笑顔を見せる

 

一方ヴィヴィオは一人帰り途を歩いていた

「うん、わかった、じゃあ」

通信を切ってクリスに声をかけるヴィヴィオ

「ママが御馳走作ってくれてるって、急いで帰ろっか」

ヴィヴィオの言葉にクリスも手を挙げて答える

 

アインハルトはティオを返してもらうため八神家を訪れていた

「お疲れさまでした、ティオもお疲れ」

リインからティオを受け取るとその頭を撫でるアインハルト

撫でられたティオは嬉しそうに声を上げる

「それでは私はこれで」

「あ、待ってくださいアインハルト、よかったらこのまま晩御飯食べていかないですか?」

リインの誘いにアインハルトは戸惑う

「しかし………」

「部隊のこととかいろいろ相談したいですし、それに今日は家族が誰もいないからはやてちゃんも寂しがってるです」

「こらリイン聞こえとるでー!誰が寂しがっとるってー?えー?」

リインの言葉を聞いてか奥の方からはやての抗議の声が上がる

その様子を見てアインハルトも思わず小さく笑った

「そういうことでしたらお言葉に甘えさせてもらいましょうか」

 

「あの人と一緒に働ける………」

今日のことを自室で思い出していたアンジュ

拳を握りしめると天窓から見える月を眺めた

「機動六課………行ってみようかな」




おまけ(アインハルト・ストラトス)
アインハルトの主な経歴
Stヒルデ魔法学院中等科卒業後、院生として2年間勉強を続ける
その後管理局に入局、古代ベルカ継承者ということもあり昇進は早かった
警邏などの仕事の際は眼鏡を着用、目が悪いわけではなくむしろ保護のためにかけている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:3 始動

魔導師昇格試験から数日たったある日

「はい、近代ベルカ式のデバイス、あなたの魔力値を参考に組んであるけど一応注意して」

眼鏡をかけた緑色のショートカットの女性………マリエル・アテンザ技官からチューンナップしたデバイスを受け取るアンジュ

「ありがとうございます、えっと………」

部屋の様子を見渡して首をかしげるアンジュ

何やら段ボールがたくさんあるようだが

「ああ、ごめんね、今ちょっと荷物まとめてたから」

「どこか行かれるんですか?」

「出向だよ………っていけない!ごめん、これからちょっと行くところあるから」

「はい、ありがとうございました」

アンジュが出ていくとマリエルもカバンをとり辺りを見回す

「えっと………ああ、あったあった」

 

地上本部の一室でははやてとリインがフォワード候補について話し合っていた

「そうか、カレルとリエラは元気にやっとるか」

「はいです、二人ともすっかり立派になっちゃって」

楽しそうに話すリインにはやても笑顔になるが

「ファビアの話だとロイス・ローレンス陸士は実力に関しては申し分ないんですが………」

「ん?何か問題あるんか?」

リインの表情を見て首を傾げるはやて

「それが、コミュニケーション面に多少の問題が、才能や実力ゆえ周囲からも浮いた存在のようで………」

「あー、時々おるタイプやね、まあ何とかなるやろ」

少々考えるしぐさを見せるはやてだったがすぐに明るい表情で返した

「問題を起こさないといいんですが………」

 

一方その頃マリエル技官はディエチのもとを訪れていた

「はい、じゃあこれ」

「ありがとうございます」

マリエルから小さな箱を受け取るディエチ

彼女が箱を開けるとやや大きめの橙色のクリスタルがついたネックレスが入っていた

「今時間大丈夫?」

「はい、出向の手続きを終わらせてきたところなので」

「じゃあ、認証と調整も済ませちゃおうか」

マリエル技官の言葉にディエチも笑顔で答え二人で訓練室へと向かった

 

「ん~!終わったぁ~!」

事件関連の事務処理を終わらせ大きく伸びをするヴィヴィオ

「お疲れ」

「後は法務部に引き継ぎに行って、人事部に出向関係の書類を出しに行けば終わりかな」

これからやることを確認するとクリスがぐっと親指を突き出した

「ファビア」

「わかってる、これ」

そう言ってファビアが差し出したのは出向手続き用の書類が入った茶色い封筒

「ありがとう、クリス~!行くよ~!」

ヴィヴィオの言葉に賛同するかのようにクリスが移動した

「ファビアのは………」

「今やってる仕事終わったら自分で出しに行く」

「ん、分かった」

 

そして時は流れいよいよ六課始動の日

隊舎の廊下をマリーとディエチが歩いている

茶髪の女性、アルト・クラエッタが配備されたばかりの新型ヘリをピカピカに磨いていた

そしてヴィヴィオも………

「ヴィヴィオさん、準備出来ました?」

アインハルトが問いかけると陸士隊のブラウンの上着に袖を通しボタンを止めるヴィヴィオの姿

「バッチリです!」

 

機動六課部隊長室

テーブルに写真立てを置くはやての姿

「みんな、頑張るから見たってな」

写真を見つめながら笑うはやてをリインが見つめていた

すると部隊長オフィスに来客を告げるブザーが鳴り響く

「どうぞ」

はやてが返事をすると

「失礼します」

制服を着たヴィヴィオとアインハルトが入ってきた

「高町ヴィヴィオ執務官」

「ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルト一等陸尉」

「本日ただいまより、機動六課へ出向となります」

「どうぞ、よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」

挨拶をすませた三人の姿にリインが笑みを零す

「ええ!?今なんかおかしいところありました!?」

「やはり、フルネームは長すぎましたかね………局員証もアインハルト・ストラトスになってますしやはりそっちが」

「いや、そうじゃなくて、なんだか懐かしいと思いまして、前の六課の初日もこんな風でしたから」

リインのその言葉に3人も笑顔になる

ふと、また誰かが訪ねてきたらしくブザーが鳴り響いた

「どうぞ」

「「失礼します」」

はやての返事と共に扉が開かれると赤いカチューシャをしたショートカットの女性とロングヘアーを後ろで束ねた女性が入ってきた

二人とも陸士隊の制服を着ている

「リオ!コロナ!」

「はい、リオ・ウェズリー修道騎士」

「コロナ・ティミル三等空尉」

「本日ただいまより機動六課に出向となります」

「どうぞよろしくおねがいします」

「はい、よろしくおねがいします」

そう、かつてのチームナカジマのチームメイトである二人だった

挨拶をすませた二人にヴィヴィオとアインハルトが駆け寄る

「お二人も六課のメンバーなんですね」

「八神部隊長から聞いてない?」

「ううん全然」

「4人で直接会うのは本当久しぶりだね、ヴィヴィオが執務官試験受かった時以来だから」

「じゃあ1年ぶり?」

「1年半位………かな」

「みんな忙しかったし最近はメールのやりとりぐらいだったもんね」

久しぶりの再会を喜ぶ四人

「ところで、お二人の所属は………」

アインハルトがきくとリオがヴィヴィオの肩に腕をまわした

「あたしはヴィヴィオの隊、セイクリッド隊の副隊長」

「わたしはアインハルトさんのカイザー隊の副隊長、で新人たちの教導も担当してるの」

「そっか、コロナ教導隊だっけ」

「わたしも戦技教官資格は持っているのでお手伝いできると思います」

「お手伝いって………アインハルトさんのほうが上司でしょ」

アインハルトの言葉に苦笑いするコロナ

ふとヴィヴィオは気になったことがありリオのほうを見る

「リオ、教会のほうはいいの?」

そう、リオは普段は聖王教会で働いている修道騎士だが………

「大丈夫、元々嘱託で局員証も公式の魔導師ランクも持ってるし、騎士カリムからもぜひって言ってもらってるから、ま、外部出向扱いなんだけど」

局員証を見せながらリオがそう話しているとクリスとティオが彼女達に歩み寄る

「あ!クリスとティオも制服着てる!」

「二人ともすごく似合ってるよ」

久々の再会に楽しく話す四人を見て遠い目になるはやて

「なぁリイン、もしかして私ら忘れられてへんか」

「まあまあ、せっかくの再会ですから」

「こうして4人で同じ格好をするのって、ジムにいた時以来だよね」

「中等部上がったばっかりの頃は学校の制服も4人一緒だったけど、一年の時だけだったからね」

そう言ってヴィヴィオが自身の制服のリボンを摘む

「陸士隊の制服って初めて」

「そっか、ヴィヴィオは普段執務官の黒の制服だもんね、あたしも普段は修道服だけど」

「うん、局に入ったばっかりの頃、フェイトママやティアナさんの補佐で本局の制服着たことはあるんだけど」

楽しく話すヴィヴィオ達を笑顔で見ていたはやてだったが再び扉がノックされるとあわてて姿勢を正す

「あ、どうぞ~」

それに気付いたヴィヴィオたち4人も話をやめ扉のほうへ目を向ける

「失礼します、あ、隊長たちもお揃いでしたか」

入ってきたアルトはヴィヴィオ達を見て敬礼するが

「そんなかしこまらなくていいですよ、アルトさんの方が年上ですし」

ヴィヴィオのその言葉にアルトが目を細めて笑った

「アルトさん?」

「いやぁ、あの小さくて泣き虫だったヴィヴィオが今こうして六課で隊長をやっていると思うと、時間が経つのは早いなぁって」

「もう!アルトさん!泣き虫は余計です!」

「そっか、アルトさんは前の六課の時にもいたからヴィヴィオの小さいころのこと知ってるんだ」

「そうなの、でね、フェイト執務官が転ばないようにと言ったそばから転んで泣きそうになっていたりとか」

「アルトさん!」

幼いころの恥ずかしい思い出をバラされ顔を真っ赤にするヴィヴィオ

それを見た全員が笑い出す

「あ、そうだ、忘れるところだった、ディエチが手放せないから代わりに、報告してもよろしいでしょうか?」

頬を膨らませむくれるヴィヴィオを無視して話を進めるアルト

「どうぞ」

「フォワード陣をはじめとした新生機動六課部隊員とスタッフ、全員揃いました、現在ロビーに集合、待機させています」

「了解、ほんなら恒例のあいさつといこうか」

「「「はいっ」」」

「今はもう泣き虫じゃないもん」

未だにむくれるヴィヴィオをクリスが宥めていた

そんな様子に全員が苦笑いする

 

ディエチやマリエル、アンジュやロイス、カレルとリエラをはじめとした隊員たちのもとへやってくるはやてたち

台座に上がったはやてが集まった隊員たちを見回す

「機動六課課長兼本部隊舎部隊長、八神はやてです」

はやてのあいさつともに隊員たちは一斉に拍手する

「平和と法の守護者、時空管理局の部隊として、事件に立ち向かい人々を守っていくことが、私たちの使命であり、なすべきことです、そのためには私だけでなく、隊長たちやフォワードたち、メカニックやバックヤードスタッフ、全員が一丸となって事件に立ち向かっていくことが必要だと思ってます、どうか皆さんの力を貸してください」

はやてのその言葉に全員から拍手が沸き起こる

「ま、長い挨拶は嫌われるんで、以上、機動六課部隊長、八神はやてでした」

はやてが締めると再び拍手が沸き起こる

「(頑張っていかなあかんな、今度こそ後悔なんかせんように)」

台座から降りるはやては感極まって泣きそうになっていた

 

はやてのあいさつが終わるとフォワード四名に前線隊長四人が歩み寄る

緊張した様子のアンジュにヴィヴィオが声をかける

「来てくれたんだね、嬉しいよ」

「あ、ありがとうございます」

照れながらも礼を返すアンジュ

「私はこれから部隊長と出かけるから、この後の事はコロナに」

ヴィヴィオの言葉と共にコロナが前に出る

「カイザー分隊副隊長、コロナ・ティミルです、六課には航空戦技教導隊からの出向で来ています、みんな、ついてきて」

そう言って移動を始めるコロナにフォワード陣が続いた




おまけ(高町ヴィヴィオ)
ヴィヴィオの主な経歴
Stヒルデ魔法学院中等科卒業
士官学校に2年間在籍、在学中に執務官補考査試験を満点合格
フェイトの補佐を2年、ティアナの補佐を1年務めたのち執務官試験に合格
士官学校、執務官試験共に一発合格だったことに関してフェイトは複雑な心境らしい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:4 それぞれの力

今回から登場するディエチの新しいバリアジャケットはinnocentのものをイメージしていただければと思います


コロナはフォワード陣と合流して隊舎の廊下を歩いていた

「じゃあ、自己紹介とスキル、コールサインの確認はもう済んだんだね」

「「「「はい!」」」」

コロナの問いかけに元気よく答えるフォワードたち

「それじゃ、さっそくこれから訓練に入りたいと思います」

「「「「了解!」」」」

フォワードたちがコロナの言葉に力強く答えると

「うん、いい返事、頼もしいね」

コロナも笑顔でそう答えた

 

そしてこちらはヘリポート、はやてとヴィヴィオ、そしてディエチが入ってくると既に出発の準備ができておりアルトが待機していた

「アルト、ご苦労様」

「もう出発できるの?」

「ばっちりです!」

ディエチの問いかけに元気よく答えるアルト

「このヘリ、確か今年導入したばかりの最新型ですよね」

「そうなの~!うちの部隊前評判高くってさ、おかげでこーんないい機体!JF707なんてヴァイス曹長が聞いたらなんて思うか」

ヴィヴィオの言葉に嬉しそうに声を上げるアルト

「ほんなら地上本部までお願いな」

「お任せください!ディエチも護衛よろしくね」

「はい、スマッシュカノン、これが私たちの初任務よ」

「yes Master」

ディエチの言葉と共にスマッシュカノンから放たれた光が彼女を包み込み紺色の上着とオレンジのインナーが特徴的なバリアジャケットが装着される

「あれ?ディエチそれ、新しいバリアジャケット?」

「うん、心機一転ってことで、自分でデザインしてみたんだけど………」

アルトの言葉に頬を赤らめながら答えるディエチ

「だいじょうぶ、可愛いし似合ってるよ」

アルトに言われて照れながらもうれしそうなディエチ

「スマッシュカノンっていうのはその子の名前?」

「はい、普段はカノンって呼んでます」

ディエチはヘリ後方の貨物室に乗り込みながらアルトの問いかけに応えていた

長椅子を出してそこに座るとそばに持っていた銃をたてかける

「それで、行き先は?」

「首都クラナガンの地上本部まで」

「了解」

はやてから行き先を聞いたアルトは計器を操作してすぐさまヘリを離陸させた

 

「部隊長はもう出かけられたんですよね」

一人事務作業を行っていたファビアのもとに眼鏡をかけた女性

元DSAA選手のエルス・タスミンがやってきた

「ん、地上本部で打ち合わせ」

「エルス陸士、ファビア士長」

ファビアとエルスのもとにブラウンの長い髪を持つ女性がやってきた

「えっと、ラグナさんでしたよね」

「はい、ラグナ・グランセニック一等陸士です、お二人と一緒に通信スタッフとして仕事させていただくことになります」

それを聞いたエルスの表情が固まる

「えっと、ファビアさんの階級が確か」

「ここだと准陸尉」

ファビアのそっけない返事に落ち込むエルス・タスミン(二等陸士)であった

 

訓練スペースに集合したフォワードメンバーたち

全員が預けたデバイスを受け取っていると………

「全員が汎用デバイスか………」

ロイスの呟いた通り、ミッドチルダ式の彼とリエラは杖、近代ベルカ式のアンジュとカレルはポールスピア

どちらも管理局で支給される汎用デバイスだ

「そのデバイスにはデータ記録用のチップを入れさせていただきました、皆さんの実力や、訓練の進行度合いなどを測る大切なものなので、念のため大切に扱ってください」

「それからこちらはメカニックのマリーさんです」

コロナに紹介されマリーが一歩前に出る

「紹介にあずかりました、メカニックのマリエル・アテンザです、デバイスの調整や改良のために、訓練を見せてもらうこともあるから、よろしくね」

「「「「はい!」」」」

マリエルの紹介の答えるフォワードたち

「それじゃあさっそくで悪いんだけど、みんなの実力を見せてもらうね」

そう言ってコロナが一歩前に出るとマリーが腕をふって術式を起動する

「機動六課名物、陸戦用空間シミュレーター、ステージセット」

マリーが操作を終えると背後に訓練用の街が出現する

「それじゃあ最初は………」

コロナが振り返ると彼女の周りに石が集まっていく

「この子たちが相手をするね」

人間サイズのゴーレムが3体現れそれを見たフォワードメンバーは皆戦闘態勢に入る

 

「よいっしょ」

リオが抱えていた機械を慎重に置く

「ありがとうございます、ごめんなさい、副隊長に手伝ってもらっちゃって」

「いえいえ、それにしてもユミナさんが主任医務官の資格を持っていたなんて驚きです」

そう言って機械のコードをつないでいたリオが顔を上げるとロングヘアーの女性、ユミナの姿が視界に映った

 

機動六課主任医務官

ユミナ・アンクレイヴ

 

「確かユミナさんってスポーツドクターになるって」

「うん、最初はそうだったんだけど、あの事件でちょっと思うところがあって、ノーヴェさんの紹介でシャマル先生に教わっていたんです、アスリートでも魔導師でもその人や周りの人が時間と思いをかけて作り上げてきたものを守っていきたいから」

機材のコードをつなぎながらリオの質問に答えるユミナ

「なるほどねぇ、そういうことならみんなの治療、お願いしますね、ユミナ先生」

「リオさん!私まだ先生なんて立派なものじゃ………」

「資格は持ってるんだしここの医療責任者なんだから立派な先生ですよ」

リオの言葉に照れるユミナにリオは笑いながら返す

「ま、けがしないで済むのが一番なんだけど、あ、今の話ヴィヴィオには言わないでくださいね、気にすると思うんで」

 

街中を移動するゴーレムをアンジュが必死に追いかけていた

「あのゴーレム、すごく速い」

リヒトフリューゲルで機動力を上昇させているアンジュだがそれでもゴーレムに追い付けない

「フォトンスティンガー!」

蒼く光る魔力弾を放ちゴーレムを狙い撃つカレルだが容易くかわされる

「カレルさん、今のミッド式の射撃魔法ですよね」

「あ、僕ハイブリットなんだ、メインは近代ベルカだけど、ミッド式もいくつか」

「無駄話をしている場合か」

ビルの上で待ち構えていたロイスも杖を構える

「ポセイドンブラスト!」

渦を巻いた水がゴーレムに向かっていくがこれも容易くかわされる

「くそっ、すばしっこいゴーレムだな」

「重量を抑えて機動性重視の創成をしたから、そう簡単にはとらえられないよ」

「一口にゴーレムって言ってもいろいろあるんだ」

コロナから届いた念話に感心しながらため息を零すアンジュ

一方カレルとリエラは冷静に戦況を見極めていた

「リエラ、威力強化頼むよ」

「了解、スピード強化もつける?」

「いらないよ、そっちはアンジュさんにつけてあげて」

そう言って槍を構えるカレル

「僕のスピードはだれにも負けないから」

カレルのその言葉と共に彼の足もとにミッドチルダ式のテンプレートが現れる

「駆けろ!ソニックムーブ!」

「ブーストアップ!」

リエラが杖をかざすとカレルの槍に水色の魔力が纏われた

更にカレルの体に蒼い電流のようなものが走ったかと思うと次の瞬間にはゴーレムの一体を貫いていた

「一瞬であれほどの移動を!?それに蒼い雷」

それを見たアインハルトも思わず声を上げた

 

「アンジュさん!今スピード強化かけます」

「え?あ、ありがとうございます」

リエラの呼びかけに驚きながらも答えるアンジュ

すかさずリエラは杖を構えた

「我が乞うは、疾風の翼。白き槍騎士に、駆け抜ける力を」

リエラの詠唱と共に足もとに魔方陣が現れる

「ブーストアップ・アクセラレイション!」

「リヒトフリューゲル!フルパワー!」

カレルほどではないものの補助魔法の力でスピードアップしたアンジュが一気にゴーレムとの距離を詰めた

「シャイニングセイバー!」

アンジュの拳の白い魔力が光を吸収し剣の形となるとそのままゴーレムを切り裂いた

「今の技はもしかして………」

残ったゴーレムが移動していると突然泡のようなものに包まれて動けなくなった

「素早い相手に対処する方法くらい、僕だって心得ている」

いつの間にきたのやらロイスが泡につつまれたゴーレムを見据えていた

「ポセイドンスピア!」

先ほどよりも細く鋭い水が放たれ泡につつまれて動けなくなったゴーレムを貫いた

 

本局の会議から戻ったはやてたちがロビーを通りかかるとちょうどコロナ、アインハルト、リオの3人が集まって食事をしていたところだった

「お、なんや勢ぞろいやないか」

「八神部隊長、お疲れ様です」

ティオが膝の上で寝ているためアインハルトは座りながら何とか礼をしていた

「フォワードの訓練やったんでしょ、どうだった?」

「まだちょっときごちないけど、実力のほうは申し分ないよ」

開いてる椅子に腰かけるヴィヴィオの問いにはコロナが答えた

「あたしは今日はバックヤード陣の手伝い、設備関係とかも問題ありません」

リオの言葉を聞いて安心したように笑いながらはやても椅子に座った

「せっかくつかんだ第一歩や、今度こそ後悔なんかせんようがんばらな」

するとはやてのテーブルに料理が盛られたトレーが置かれる

「だったらしっかり食べて、今日はゆっくり休んでくださいです」

そう言ってリインが自分の分をテーブルに置きながらはやての隣に座った

「リインいつからおったんや?」

「私も今来たところです、さっきまでマリーさんとちょっと相談をしていたです」

「ああ、あのことな、マリーさんなんていうてた?」

「今から完成が楽しみだと言ってたです」

 

そのマリーは自室で一人作業をしていた

「失礼します」

「あ、ディエチ、いらっしゃい」

そんなマリーのもとにディエチが訪ねてくる

「あ、早速やってますね」

そんなマリーのほうを見たディエチは彼女が行っている作業の内容に気付いた

「これ、差し入れです」

「あ、ありがとう、もらうね」

サンドイッチの入ったバスケットを置いてマリーの操作する画面を覗き込むディエチ

「それで、調子はどうですか?」

「ん?んっ、みんないい子たちだから作りがいあるよ」

フルーツサンドを一つ手に取って食べていたマリーだったがディエチの質問に一度フルーツサンドを飲み込んで答えた

「ロイスなんかは変わった魔法だから大変じゃないですか?」

「ん~、ロイスもだけどアンジュのリヒトフリューゲルも珍しい魔法だから、セイクリッドの二人は大変、それに見て、このデータ」

マリーに促されディエチが見た画面は今日の模擬戦のもの

「………マジ?」

「んっ、本人に自覚はないみたいなんだけどね」

あるデータを見たディエチは目を丸くして呟く

「いや、でもこれが本当ならすごいですよ」

「だね………にしてもこのフルーツサンド甘くておいしい」

「あ、それ私の手作りです」




おまけ(八神はやて)
特務六課解散後これまで通り捜査司令として古代遺失物犯罪と戦う日々を送る
エクリプス事件後に一佐に昇進
4年ほどかけて少将に昇進、このころから機動六課再結成の話はあったらしい
だがかつてJS事件での苦い経験から躊躇し続けた
夢がかなうというのに自身のやるせない態度のせいで間延びし続けたことに関しては反省しているらしい(守護騎士たちもそのことに関してだけはいまだに怒っている)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:5 ファーストミッション

まだ日も昇り切っていない早朝

自室に備え付けられたキッチンでディエチは調理に勤しんでいた

タッパーの中身を一つ取り出し味見をしてみる

「ん、上出来」

 

同じころアンジュも目を覚まし伸びをしていた

本出動はまだなく訓練漬けの毎日が続いている

それでも強くなるためにアンジュはいやな顔一つせず努力を続けていた

「今日も頑張ろう」

 

朝から部隊長室でリインと仕事をしていたはやて

すると来客を告げるブザーが鳴り響く

「どうぞ」

「失礼します」

扉が開くとトレーを持ったディエチが入ってきた

「これ、よければ食べてください」

「あー、おおきにな、忙しくて食堂行く暇ないから助かるわ」

「ありがとうですディエチ」

はやてとリインにお礼を言われ照れるディエチ

「そう言えば、ここに来る前にフォワードのみんなに差し入れ持っていったんですけど」

「ああ、みんなどうやった」

「みんな頑張ってましたよ」

 

「じゃ、今日の早朝訓練のラスト一本、行ってみようか」

そう言ってコロナがブランゼルを掲げると彼女の背後に巨大なゴーレムが姿を現した

「ゴライアスを倒すか、5分間攻撃を捌き切れればクリア、だれか一人でも被弾したらやり直しね」

彼女の言葉と共にゴライアスが拳を鳴らしフォワードたちが身構える

「それじゃ、スタート!」

コロナの合図と共にゴライアスがフォワードたちに襲いかかる

全員が散開してゴライアスを見据えた

「お前達5分間逃げきる自信は」

「正直あまり」

「僕もだ、訓練終わりで疲れきっているからな」

ロイスの問いかけにアンジュとカレルが答えた

「なら何とか倒すぞ、速攻で決める」

そう言ってロイスが水を出現させる

「ポセイドンゲイザー!」

大量の水が波となってゴライアスに襲いかかる

いったんはバランスを崩すゴライアスだが両手を突き出し水をせき止めた

「駆け抜けろ!ソニックムーブ!」

続けてカレルが勢いよくゴライアスに突っ込んでいく

だがゴライアスは体を慣らすと回転してカレルを阻む

直前で離脱したため被弾は免れたがこれでは近づけない

「何とか動きを止めないと」

「それなら私がやる、カレル!」

リエラの意図に気付いたカレルは声をかけられ頷いた

「フォトンスティンガー!ファイア!」

魔力弾で一瞬だがゴライアスの動きを止めることに成功したカレル

「チェーンバインド!」

続けてリエラが杖を掲げると鎖でつながれたリングがゴライアスを拘束する

「今ならいける!」

それを見たアンジュがゴライアスに向かっていく

「アクセルスマーッシュ!」

アンジュの拳がゴライアスを直撃しその巨体を打ち砕いた

 

「つ、つかれた~」

「もうだめ~」

何とかゴライアスを倒したもののフォワードたちは全員疲れ切っていた

「みなさん大丈夫ですか?」

アインハルトが見かねて声をかける、ヴィヴィオも一緒だ

「これ、さっきディエチさんが持ってきてくれたから」

そう言ってヴィヴィオはフォワードたちにタッパーを差し出した

受け取ったフォワード陣は首をかしげている

「何ですかこれ?」

「シロップ漬けの果物だよ、それ食べて栄養補給してね」

「私たちも選手時代によく頂きました」

ロイスの疑問にヴィヴィオが答えると試しにアンジュが一つ食べてみる

「後でユミナさんにマッサージしてもらってね」

ヴィヴィオがそう言うとアインハルトがフォワードたちを見ながらしばし考える様子を見せていた

「誰かデバイスを見せてもらっていいですか?」

アインハルトの問いかけに首を傾げつつも一番近くにいたリエラがデバイスを差し出した

「やはり………かなり傷んできてますね」

「そろそろ本出動があってもいい頃だし、みんなも訓練になれてきた」

ヴィヴィオ達の会話にフォワードたちは困惑した様子で見合った

ヴィヴィオが手を合わせると全員が彼女に注目する

「全員、マッサージが終わったらマリーさんの所へ行き、任務用の新デバイスを受け取ること、いい?」

それを聞いてカレルとコロナ、アンジュは声を上げて喜んだ、ロイスも口には出さないが嬉しそうな表情をしている

 

「じゃあ、私とリオはここで」

隊舎に戻る途中ヴィヴィオはフォワードたちと別れた

「ヴィヴィオさん達はどちらに?」

「古代遺失物狩りって知ってる?」

コロナの言葉にフォワードたちは首をかしげるが

「聞いています、最近噂になっている古代遺失物所有者を狙った強盗犯ですね」

ロイスだけは知っていたようで淡々と答えてみせた

「ヴィヴィオさんはそのことを調べているんです、私達機動六課の担当になる可能性の高い案件ですので」

 

リオの運転するバイクは道路を疾走していく

「気持ちいい~」

後ろに乗ったヴィヴィオは心地いい風を感じていた

「で、どのくらいわかってるの?古代遺失物狩りについて」

「うん、狙われてるのは主に高エネルギーを秘めた古代遺失物、つまり古代遺失物狩りはそのエネルギーを使って“何か”をしようとしてる」

「その“何か”を突き止めるのが私たちの仕事」

「そういうこと、一応ファビアやユーノ司書長もその辺については調べてくれてるけど」

ヴィヴィオ達がそんな話をしている傍ら

近くのビルの屋上に黒いローブで全身を隠すかのような姿をした人影があった

ローブをかぶった影は管理局のマークがついたトラックを見つけるとそちらへ飛び上がる

 

一方フォワードメンバーはマッサージを終えマリーのもとを訪れていた

「これが私たちの………」

「そう、新デバイス、六課の任務、そして、みんなの特性に合わせた最新型」

マリーの言葉と共にそれぞれのデバイスが持ち主の手元に浮遊しながら収まっていく

「設計は私が、コロナやアインハルト、ティオも協力してくれたの」

「もちろん私もです」

明るく告げながらリインが部屋へ入ってくる

「その子たちは生まれたばかりですが、六課の隊長たちやメカニックのみんなが協力して、いろんな思いを込めてやっと完成したんです、大切に、だけど性能の限界まで思いっきり使ってあげてください」

「で、機能説明だけど、その子たちには何段階かに分けて出力リミッターがかかっているの」

「最初の段階だと、今までと比べてもそんな驚くほど差が出るわけではないと思いますので、それで扱いを覚えていただきます」

「扱いに慣れ始めたら隊長たちやリイン曹長、マリエル技官の判断でリミッターを解除していくね」

「「「はい!」」」

アンジュ、カレル、リエラが元気よく返事をする一方でロイスは渡された自分のデバイスを見つめていた

「じゃあ午後の訓練の時にでも微調整を………」

次の瞬間あたりに警報が鳴り響いた

「え!?なに!?」

「非常警報!?一体何が………」

すると通信が開きあわてた様子のディエチが映った

「マリーさん!フォワードの子たちそこにいます!?」

「いったい何があったんですか?」

焦るディエチにロイスが問いかける

「管理局から地方施設に貸し出されていた古代遺失物を運んでいたトラックが古代遺失物狩りの襲撃を受けた!本局からの緊急要請だけど出撃できる!?」

ディエチのその言葉に全員が顔を合わせる

「やらせてください」

「ああ、緊張します………」

「アンジュさんしっかり」

ロイスが力強く答える横でガチガチに緊張するアンジュ

「オーケー、先にヘリポートで待ってるからすぐに乗り込んで、機動六課、初任務だよ」

そう言ってディエチは通信を切った

「行きましょう、機動六課、初任務へ」

「「「「了解!」」」」

アインハルトの言葉と共に4人は一斉に駆け出す

 

管制室にはやてが飛び込んでくる

既にエルス、ラグナ、ファビアはスタンバイしていた

「状況は?」

「襲撃を受け輸送トラックが転倒、積荷の古代遺失物が奪われました」

「古代遺失物は何や」

「ジュエルシードです、返却後は盗難防止のため厳重に保管される予定でした」

「なんでそないなもんこのタイミングで貸し出しに出しとるんや」

ラグナの報告を受け頭を抱えるはやて

「事件より以前から貸し出されていたものですね、今回の事件を受けて返却自体は早めたようですが手続きに時間がかかったようです」

はやての言葉を聞き資料を読み取るリイン

「前線メンバーと救護班は?」

「救護班は現在陸路で移動中、10分後に現場到着予定、前線メンバーは………」

「八神部隊長、こちらディエチ」

ファビアの言葉を遮るようにディエチから通信が届く

 

「現在前線メンバーと共に輸送ヘリにて現場に移動中、5分後に現場到着予定」

銃を抱えながらバリアジャケット姿のディエチが通信で報告していた

「了解や、くれぐれも気ぃつけてな、相手は手当たり次第に古代遺失物狙ってる様なやつや」

「了解」

通信を終えたディエチは前線メンバーを見回す

「そう言うわけだから、私も協力するけど、くれぐれも気をつけて」

「「「「はい」」」」

「うん、いい返事だ、それじゃ、任務内容の確認をしようか」

ディエチが視線を向けた先にはアインハルトがいた

彼女はディエチの視線に対し頷いて答えると今回の任務の説明を始める

 

転倒したトラックから火の手が上がっていた

ローブをかぶった人影がトラックの荷台から這い上がってくる

「目標確保」

トラックの荷台から取り出したジュエルシードを見つめる古代遺失物狩り

ローブの隙間から殺気のこもった冷たい視線がジュエルシードを見つめていた

次の瞬間、古代遺失物狩りの上空に一台のヘリがやってくる

アンジュ達が現場に到着したのだ

いよいよ初任務が幕を開けた




おまけ(リオ・ウェズリー)
Stヒルデ魔法学院卒業後教会騎士団に入団
騎士団の仕事をしながら通える範囲の学校に通い学士資格を習得
卒業直前に管理局の嘱託魔導師試験に合格
このころからバリアジャケットの色が紺を基調としたものに変わっている
時折ヴィヴィオやアインハルトの仕事を手伝っている
お祝いとしてディードからヘアバンドをもらい今でも愛用している
また、移動手段としてバイクを重宝しており自身の愛車を持ち込んでいる
教会にいた頃は休みの日にディードと二人でよくドライブに出かけたらしい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:6 古代遺失物狩り

「いい、貴方達の任務は古代遺失物狩りの捕縛、およびジュエルシードの奪還」

「万が一の時のためにあたしたちも控えてる、思いっきりやっといで」

ディエチの言葉と共にハッチが開く

「私たちは民間人の保護と避難誘導があるから助けにはいけないけど」

「大丈夫です、あなたたちならきっとできます」

ハッチの両側に立ったコロナとアインハルトが新人たちに渇を入れた

「アインハルトさん、聞こえる?」

「ヴィヴィオさん!?聞こえますよ」

アインハルトのもとにヴィヴィオから通信が届く

「今リオと現場に到着、正確には西に50メートル行ったところ、これから避難誘導に移るよ」

「わかりました、では私とコロナさんは東側へ、アルトさん、聴いての通りです」

「新人達が降下したら東側に移動だね、了解」

「カイザー3、カレル・ハラオウン、出ます」

「カイザー4、リエラ・ハラオウン、出ます」

カレルとリエラがハッチから勢いよく飛び出した

「グラディウス!」

「アイギス!」

カレルは剣を模したネックレスを

リエラは盾を模したリングをそれぞれ掲げる

「「セーットアーップ!」」

「「Stand by ready」」

降下していくカレルとリエラの体が光に包まれる

光が消えると二人はバリアジャケットを身にまとっていた

カレルのバリアジャケットは黒い長袖のジャケットに長ズボン、そしてその手には蒼い魔力で構成された大きな剣が握られていた

一方リエラのバリアジャケットの色も兄と同じ黒、こちらは白いケープを羽織っており丈の短いタイトスカート、手には中心に水色の水晶が配置された菱形の盾を握っている

身構えた二人はそのまま古代遺失物狩りの前に立ちはだかった

「僕らも行くぞ、リヴァイアス」

「Yes master」

右腕につけたチェーン状のブレスレット………リヴァイアスを構えるロイス

「セットアップ」

「Stand by ready」

静かにそう告げる彼の体が光に包まれる

光が消えロイスの身にもバリアジャケットが装着される

こちらは白いコートに青のインナー、そして白い長ズボン

三又の鉾の形状をとったリヴァイアスを手に古代遺失物狩りに向かっていく

「さ、後はアンジュだけだよ」

「あ、はい」

ディエチに促されるまま降下の準備をするアンジュ

そして掌の中で光る羽を模したキーホルダーを見つめる

「お願いね、ブリュンヒルデ」

「Please leave(お任せください)」

「セットアップ」

「Stand by ready」

祈るかのようにブリュンヒルデを握るアンジュ、

アンジュのバリアジャケットは白いワンピースをベースに胸当てなど鎧の様な装備が装着されている

ブリュンヒルデはチョーカーとして首元に装着されている、両手にも装備が施され背中には推進機のようなものもある

バリアジャケットの装着が終わるとそのままアンジュも降下していく

 

管制室のはやてたちのもとには救護班から通信が届いていた

「こちらユミナ、トラックの乗組員を保護、現在応急処置を施しています」

「救急車両の到着は?」

「5分後には到着できるかと」

「よし、そっちに引き渡したら念のため医療班はその場で待機、フォワードたちに何かあると困るからな」

「了解、近隣の陸士部隊は?」

「担当は陸士202部隊、現在民間人の避難誘導、ならびに非常線を張っています、15分後にはすべて完了とのこと」

「それやったらあとは前線メンバーやな」

「現在カレル、リエラ、ロイスの三名が交戦中、間もなくアンジュも合流します」

 

「はぁ!」

カレルが剣を振り下ろすと古代遺失物狩りは黄色い宝玉のついた短めの杖のようなものでそれを受けとめる

「くっ」

カレルが距離を置くと古代遺失物狩りが魔力弾を放って彼を攻撃する

「Protection」

すかさず前に出たリエラがアイギスを掲げるとそのまま防御魔法で古代遺失物狩りの攻撃を防いでみせる

「ポセイドンブラスト」

更にロイスが水で攻撃するが古代遺失物狩りは杖をふるうと目の前で魔力を爆発させ水の攻撃を防いだ

「おまたせ」

そんなロイスの隣にアンジュがやってきた

「遅いぞ、何をモタモタしていた」

「あの………初出動だと思うと緊張しちゃって」

「まったく、たのむから足手まといにだけはなるな」

「あうう」

ロイスの言葉に落ち込むアンジュだったがすぐに気持ちを切り替える

「リヒトフリューゲル」

白い翼を展開したアンジュが古代遺失物狩りに向かっていく

「駆けろ!ソニックムーブ!」

更にカレルも光速移動で古代遺失物狩りに向かっていく

「アクセルスマッシュ!」

「切り裂け!」

「Jet Zamber」

アンジュとカレルの同時攻撃を受け大きく吹っ飛ばされる古代遺失物狩り

「ポセイドンスパイラル」

更に複数の水が複雑にからみながら古代遺失物狩りを飲み込んだ

だが古代遺失物狩りは杖から放った魔力でロイスの水をすべて吹っ飛ばす

続けざまに金色の魔力弾が複数生成されアンジュ達に向かっていく

「フォトンスティンガー!」

すかさずカレルが射撃魔法で相殺する

更にそれをかいくぐったアンジュが拳を光らせ向かっていく

いつのまにか回り込んだロイスも背後から狙っていた

「ブリュンヒルデ!」

「Holy blade」

アンジュの声とともに彼女の手の装備から銀色の魔力の刃が構成される

「シャイニングセイバー」

「ポセイドンスラッシュ」

アンジュの斬撃とロイスが放った水の刃の直撃を受ける古代遺失物狩り

その手から零れ落ちたジュエルシードをアンジュがキャッチする

「やった!」

それを見た古代遺失物狩りは彼女に杖を向けると魔力を集めた

「何………この魔力」

アンジュはあまりに強大な魔力に驚いていた

全員が直感した、この攻撃は危険だと

「こちらディエチ、みんな聞こえる!?」

すると全員にディエチからの念話が届いた

 

ヘリの開いたハッチから狙い定めるディエチ

通信をしながらカノンにエネルギーを溜めていく

「あたしが相殺する、みんなは安全な場所に」

「その必要はありません!」

 

アイギスを構えたリエラがフォワードたちの前に立った

「こっちは私とアイギスが守ります」

「Please leave(お任せください)」

アイギスがリエラの言葉に点滅して答えたかと思うと防御魔法が展開される

 

「オーケー、そっちは任せたよ」

それを見たディエチは安心したように照準を古代遺失物狩りへと向けた

「カノン、あたし達は攻撃の直後を狙う、バレットイメージ、スタンバレット」

「Energy filling rate of 100%, you can fire at any time(エネルギー充填率100%、いつでも発射できます)」

 

古代遺失物狩りの魔法が今まさに放たれようとしたその時

「はいそこまで」

背中に黒い翼を生やした女性が古代遺失物狩りの手をつかんで魔法を止めた

「いつまでもこんな連中と遊んでないでさっさと引き揚げるよ」

そう言って古代遺失物狩りを引き連れ飛んでいく女性

 

「逃がさない!」

すかさずディエチが砲撃を放つが容易くかわされてしまう

「こんなものかしら………っと!」

突如飛んできた虹色の魔力弾が女性の黒い翼を掠めた

女性が飛んできた方角を見るとそこには追撃を試みるヴィヴィオの姿が

「少しはやるようね、でも私もマスターの下に帰らなきゃいけないの」

そう呟いたのを最後に女性と古代遺失物狩りの姿は見えなくなった

 

機動六課は突然の乱入者に騒然としていた

「首都航空隊に出動要請!すぐに非常線を張るようお願いしてください!」

「間に合わんと思うけどなぁ、ま、逃走ルートくらいは絞れるやろ、ジュエルシードは取り返したし任務は成功やね」

困ったように頭をかきながらはやてが呟く

「けど何者なんでしょう?あの黒い翼の女性」

「あれは多分使い魔だと思います、あの黒い翼だと多分………」

ラグナの疑問に答えるエルス、それを聞いてはやてはしばし考えると

「カラス素体やな、つーことは古代遺失物狩りはそのマスターか」

「それはない」

はやての言葉をファビアが遮った

「あの使い魔の態度、主従とは違う、あれは共犯者」

「確かにな、使い魔にもいろいろおるけどさっきのはちょお不自然か」

ファビアの言葉にしばし考え込むはやてだったが

「それではやてちゃん、この後はどうするです?」

「っと、そうやったな、とりあえずあたしらは現状の警戒態勢を維持、セイクリッドはディエチと合流してヘリで本局へ、ジュエルシードの護送してもらおか、カイザーは現場待機、陸士隊に引き継いだら上がってええよ」

一通り指示を回したはやては伸びをしているとふと思い出した

「そう言えば、古代遺失物狩りの使うてた魔法………どっかで………」

先の戦闘を思い出しふと考え込むはやてだったが

「………まさかな」

何かの思い違いだろうと思いこの時は気にしなかった

 

本局へ向かうヘリの中でアンジュはブリュンヒルデを見つめていた

「どうだった?ブリュンヒルデの使い心地は?」

そんなアンジュにヴィヴィオが声をかけた

「はい、私に合わせてくれますし、とても戦いやすくて、何より私、自分専用のデバイスって初めてだったから、なんだか嬉しくて」

「その気持ちわかるなぁ、ね、クリス」

アンジュの言葉を聞いたヴィヴィオは昔を懐かしむようにクリスに声をかけた

クリスもそれに気付き手を上げてこたえる

「これからもよろしくね、ブリュンヒルデ」

「Consent」

初めて手にした自分だけのデバイス

それを実感したアンジュは到着するまでずっとブリュンヒルデを握りしめていた




おまけ(コロナ・ティミル)
Stヒルデ魔法学院中等科卒業後航空武装隊に入隊
二年半かけてかねてからの希望だった航空戦技教導隊に入隊
そこから一年間なのはの元で教導のノウハウを学んだ
教導の現場では選手時代の経験が活きている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:7 焦り

初出動から数日がたちました

あの初出動の翌日から隊長たちも訓練に参加するようになり

どんどん激しくなっていく訓練に私は付いて行くのがやっとで

でも、努力は決して私を裏切らなかった

 

フォワードたちは現在ヴィヴィオを相手に模擬戦形式の訓練を行っていた

「ソニックシューター」

ヴィヴィオの放った多数の魔力弾がフォワードメンバーたちに降り注ぐ

「任せてください」

前に出たリエラが展開した防御魔法が魔力弾を防いだ

「リヒトフリューゲル!」

「駆けろ!ソニックムーブ!」

アンジュとカレルが勢いよく突っ込んでいくが

「甘いよ!」

ヴィヴィオは飛び上がると空中で瞬時に魔力弾を生成した

「セイクリッドクラスター!」

魔力弾がはじけたかと思うと広範囲にわたって降り注ぎフォワードたちに襲いかかる

 

訓練が終わると全員地面に倒れ伏していた

「みんな大丈夫?」

そんなフォワード陣の顔をヴィヴィオが覗き込む

「さすが、高町隊長は強い、インターミドル都市本戦優勝はだてじゃないか」

「そう言えば、私そのことで気になってたことがあるんですけど」

ロイスの言葉を聞いたアンジュが立ち上がってヴィヴィオに声をかける

「ん?何?」

「ヴィヴィオ隊長が訓練に加わって結構経ちますけど、私隊長が格闘技を使うところまだ見てないんです」

「え?………ああ、アンジュは知らなかったね」

アンジュの質問に笑い始めるヴィヴィオ

「ヴィヴィオさんは局入りする時に格闘技を引退して、今は射撃型のスタイルに変えたんだよ」

困惑するアンジュにカレルがそう答えた

「そう………なんですか」

「でも格闘技を辞めたわけじゃないから安心して、必要なら使うし、今でも鍛錬は続けてる、前はフロントアタッカーだったんだけど今はガードウイングでやってるの」

「(ガードウイングか、なるほど、状況次第で切り替えているわけだ)」

ヴィヴィオの言葉を聞いていたロイスはふと考えていた

「元々潮時ではあったんだ、選手時代に肘を壊してフォーム変えてからは伸び悩んでて………そのせいでフィニッシュブロー使えなくなっちゃったしなぁ、あ、ねぇ、逆に今度は私から質問していい?」

「え!?な、なんでしょう」

ヴィヴィオの言葉に戸惑いあわてるアンジュ

「(すぐこれだ、戦闘の時はいいが普段はどうも頼りない、こんな奴が僕の相棒だなんて)」

「アンジュの魔法で少し気になることがあるんだ、シャイニングセイバーだっけ?ちょっと使ってみてくれない?」

「え?けど………訓練の後で魔力があまりないのでできるかどうか」

戸惑いながらも魔法を行使してみるアンジュ

白い魔力が光を吸収して剣の形を成していく

「やっぱりそうだ、これ集束魔法だよ」

ヴィヴィオの口から出た集束魔法という言葉に全員が目を見開いた

「え?集束………えー!?集束魔法ってあれですよね!?周りの魔力を集めて吸収するっていう………え!?」

「うん、間違いないよ、この感じはミウラさんの抜剣と同じ、近接型の集束魔法だよ」

「そんな、私なんて………大体私ベルカ式なのに」

「うん、私の知ってる限りじゃ初めて見るね、でも、アンジュならきっと使いこなせるよ」

そのやり取りを見ていたロイスが鋭い視線を向けていた

近くで訓練メニューを見直していたコロナはその視線に気づき真剣な目で彼を見つめた

「そろそろ個人スキルの練習も始めた方がいいかな?」

そんなコロナにリオが声をかける

「え!?あ、うん、リオにはロイスのことをお願いしたいんだけど………でもロイスは………」

あわてて表情を作るコロナだったがリオには見抜かれていたようで

「大丈夫だよ、きっとなじめるようになるって、チームナカジマ、そういうのは慣れっこでしょ」

「クスッ、そうだったね」

 

リオとコロナがそんな話をしている同時刻

「クシュ、風邪をひいてしまったんでしょうか?」

部隊長に提出する書類を持って廊下を歩いていたアインハルトがくしゃみをしてその場で立ち止まった

 

「クチュン」

「風邪ですか?」

通信士仲間のラグナやエルスと書類仕事をしていたファビアもくしゃみをする

「意外と可愛いくしゃみするんですね」

エルスの言葉に頬を赤らめむくれるファビアだった

 

前線メンバーとユミナはその日ディエチの運転するバンで移動していた

今日の任務は郊外で押収された古代遺失物(ロストロギア)の護送、先日のように襲われる危険性が高いため六課が護衛につくことになった

近隣の陸士部隊と空戦魔導師にも警戒してもらい管理局まで運ぶことになっていた

現在その古代遺失物(ロストロギア)が入った箱はリエラが持っている

不安そうに何度も周囲を見回すアンジュ

「大丈夫、今回は私たちも一緒だし、後方で副隊長たちも警戒してるから」

そんなアンジュにヴィヴィオが声をかける

「(ヴィヴィオ)」

そんなヴィヴィオにディエチが念話で語りかける

「(その護送対象の古代遺失物(ロストロギア)って、確か………)」

「(大丈夫ですよ、みんな曲がりなりにも局員なんですし、古代遺失物狩りもエネルギー目的なら暴発させるようなことはしないと思います)」

「(だといいんだけど………)」

 

「しかし、本当に現れるんでしょうか?」

「可能性は高いと思うよ、局に着けば厳重に保管されることになる、狙うなら今しかない」

「ならなんでヘリを使わないんですか、そっちのほうが………」

「そうもいかないよ、空中で襲われたらアンジュやカレルは戦えない、リエラも有効な攻撃手段はないし、敵に空を飛べる魔導師がいるんならこっちでないと………ほら、早速」

助手席のロイスの疑問に答えていたディエチだったが前方に古代遺失物狩りがいることに気付きブレーキをかける

リエラ以外のメンバーはすぐさまバリアジャケットを装着し車の外へ飛び出した

「リエラはここで待機、万が一の時はそれを守っていてね」

ヴィヴィオはリエラにそう伝えると自身もバリアジャケットを装着し構えた

 

古代遺失物狩りが複数の魔力弾を飛ばすがグラディウスをふるったカレルがそれをすべて切り捨てる

「ヴィヴィオさんのソニックシューターに比べればこれくらい………」

その隙にリヒトフリューゲルを発動したアンジュが近づいていく

「アクセルスマッシュ!」

勢いよくこぶしを振り上げるアンジュ、だがこの攻撃は容易く受け止められてしまう

「邪魔だ!」

古代遺失物狩りに向けてロイスが水を使って攻撃する

だが今のタイミングは危険だった、避けたからよかったがアンジュにも命中する可能性が高かった

 

「ロイス!」

彼の行動を見たヴィヴィオが止めようとするが

「あなたたちの相手は私よ」

先日の使い魔が彼女に向かって蹴りを入れる

ヴィヴィオが何とかガードするとアインハルトが殴りかかる

「あなたはいったい何者ですか、だれの命でこんなことを」

「答えるわけないでしょう」

そう言って使い魔は黒い魔力弾を複数出現させる

「ダークバレット」

「覇王流!旋衝破!」

魔力弾をアインハルトが投げ返すが空中を自在に飛ぶ相手に当てることができない

「ソニックシューター・アサルトシフト!」

ヴィヴィオが追撃を仕掛ける、旋回中でよけられずこの攻撃は命中した

「やるわね」

何とか体勢を立て直した使い魔はヴィヴィオとアインハルトを見てつぶやいた

 

「フォトンスティンガー!」

カレルの放った攻撃をことごとくかわす古代遺失物狩り

「ポセイドンスパイラル」

水が渦を巻きながら向かっていく

だが古代遺失物狩りは舞うようにいてその攻撃を容易くかわしていく

「ポセイドンスピア!」

ロイスはそれを読んでいた

鋭い一撃が古代遺失物狩りに向かっていく

しかし古代遺失物狩りが杖をふるうと光の輪がロイスの攻撃を引き裂いた

「何!?うわぁっ」

攻撃を受け倒れてしまうロイス

「ロイス!」

「うるさい、僕の邪魔をするな!」

駆け寄ろうとしたアンジュとカレルを制したロイスは詠唱を始める

その詠唱を聞いた一同は目を見開いた、ロイスが使おうとしているのは広域殲滅用の儀式魔法だ

「まつんだロイス!ここでそんな魔法使ったら」

「あら、なんかやばそうね」

それを見た使い魔が古代遺失物狩りのほうへ飛んでいく

「やめなさいロイス!みんなを巻きこんでしまう!」

ヴィヴィオもあわてて止めるがロイスの耳には届いておらず詠唱を続ける

「It is a dangerous master」

リヴァイアスも説得を試みたが

「構うかあああ!ポセイドンロアー………」

「やめて!ロイス!」

説得を効かないロイスにアンジュがあわてて駆け寄る

その光景を見てヴィヴィオの脳裏にある光景がフラッシュバックする

拳を握りながらヴィヴィオもロイスを止めるため向かっていく

「デストラクション!」

そのままロイスの魔法が発動、大量の水が大きな波となって周囲を飲み込んでいった

 

「あれは………」

後方で警戒していたリオとコロナはロイスの魔法で出現した水柱を見て目を見開いた

「まさかロイス………急がなくちゃ」

リオはバイクのスロットルを全開にして水柱の発生した地点へ向かった

 

水が引くと古代遺失物狩りと使い魔の姿はなかった

「見ろ………追い払った、僕の勝ちだ、やったんだ、ハハ、ハハハッ」

勝利に沸いていたロイスだったが次の瞬間現れたヴィヴィオに頬を強く叩かれた

「ロイス!自分が何をやったかわかってるの!」

彼女の後ろにはアインハルトに介抱される傷ついたアンジュの姿もあった

ロイスの魔法から必死に逃れたカレルは地面に手をついて肩で息をしている

ディエチとリエラが乗ったトレーラーはリエラが防御魔法で水から守ったもののそのリエラが疲労困憊でトレーラーにもたれかかっていた

「しかし、あそこで負けるわけには………自分は任務を遂行するために………隊長たちだったらわかるはず………」

ロイスの言葉を聞いてヴィヴィオは険しい表情で拳を握ったかと思うと次の瞬間にはロイスの顔面めがけて拳を叩きこんでいた

「ロイス………あなたは何もわかってないよ」

そう呟いて倒れたロイスに背を向けて立ち去ろうとするヴィヴィオ

「しばらく頭を冷やしてなさい」

冷たく言い放ってヴィヴィオはその場から立ち去った




おまけ(ディエチ・ナカジマ)
救助隊でシューターとして働いていた
機動六課の再結成に合わせ手伝いができる人材をはやてが探していることを父親経由で知り自ら志願
部隊の本格始動に向けて協力していくことに
指導後も主にはやての補佐を務める他輸送隊の護衛なども務め、交代部隊の責任者も兼任
現在は寮暮らしであり自室には最新式の調理器具がそろえてある
部隊員たちに差し入れを作って持っていくのは彼女の役目


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:8 コンビネーションアタック

古代遺失物を護送していた機動六課だったが先の戦闘で広範囲殲滅魔法が行使されたこともあり陸士隊と共に安全確認を行っていた

「えらい派手にやったな………」

ロイスの攻撃でできたクレーターを見てはやてがため息を零す

本部で待機していたのだが隊員が負傷したこともあり駆けつけたのだ

「これは私が塞いでおきます、ゴーレム創成を応用すれば何とか」

「お願いなコロナ、フォワードのみんなは?」

「うちの車両で休んでもらってるよ」

そういって警邏隊隊長のハリー・トライベッカ二等陸尉がやってきた

「すまんね番長、急に来てもらうことになって」

「気にしないで下さいよ、警邏はこんなんばっかですから」

「カイザーは前線復帰できるんやね?それでヴィヴィオはどこいったん?」

「さっきから何度も呼び出してるんですが、返事がなくて」

二人が話していると一人の少女が近づいてきた

「はやて!」

紅いゴスロリ風のバリアジャケットに身を包むハンマーを持った少女がはやてに声をかける

「ヴィータ!?どないしたんやこんなところで」

 

意識の戻らないアンジュにディエチが人工呼吸を施し、それを終えると心臓マッサージを行った

すると突然アンジュが咳き込み口から水があふれ出す

「よし、ユミナ、あとお願い」

それを確認したディエチは額の汗を腕で拭うと医務官のユミナに後を託した

 

「ふぅ」

座り込んでため息を零すヴィヴィオ

右手で頭を抱えそのままうなだれた

「ムキになっちゃったなぁ、私も反省しなきゃ」

そんなヴィヴィオを白い制服に身を包んだ女性が見つめていた

 

「後は安静にしていれば大丈夫よ」

未だアンジュの意識は戻らないがユミナの言葉に仲間たちはホッとしていた

「カレル達は手当てしなくて大丈夫?」

「僕は何とか範囲外に出られたので、この後どうするか聞きに行かなくちゃ」

「私も行く、だいぶ魔力も戻ったしもう大丈夫です」

そう言ってカレルたちは外に出る

ふとディエチはそばで俯くロイスに歩み寄った

「ほら、叩かれたところ冷やさないと、赤くなってるよ」

そう言って氷嚢を差し出すディエチ

「ありがとうございます………」

ディエチからそれを受け取り頬に当てながらロイスがため息を零す

「あんなに怒った隊長は………はじめてみました」

「私もヴィヴィオと付き合い結構長いけど初めてだなぁ、ねえ、ロイスはなんで怒られたかわかる?」

ディエチの問いかけにロイスは俯きながら考えるとゆっくり口を開いた

「仲間を巻きこむと知りながら危険な魔法を使ったこと、それから………隊長や仲間の制止を聞かなかったこと」

「正解、じゃあヴィヴィオはどっちに怒ったと思う?」

「………制止を聞かなかったこと」

「はずれ、正解は危険な魔法を使ったこと、今回の任務、ヴィヴィオにはいろいろ思うところがあったんだ」

そう言ってディエチはロイスの隣に座り上を見上げた

「隊長は選手時代、結構無茶をした方と聞いていますが」

「うん、ヴィヴィオをコーチしてたの私の妹なんだけど、よく怒られてたの覚えてるよ、実際引退する前の年にもヴィヴィオは肘を壊してインターミドルを途中棄権してるし、でも、あの事件以来ヴィヴィオは無茶を嫌うようになった………」

 

「ヴィ~ヴィオ」

突然かけられた声に驚くヴィヴィオ

「え?なのはママ!?どうしてここに?」

白い制服に身を包んだサイドポニーの女性、彼女の母、高町なのはの姿に驚くヴィヴィオ

「今来てる部隊でちょうど教導中だったの、ヴィータちゃんも来てるよ」

「そうなんだ」

 

「ヴィヴィオのお母さん、高町なのはさんは知ってるよね」

「はい、航空戦技教導隊のエースオブエース、同時にいくつもの古代遺失物事件を解決した英雄」

「そう、強くて優しくて………彼女にあこがれる人はたくさんいたわ、私もその一人だし、もちろんヴィヴィオも、でもね………」

ディエチは俯き過去の出来事を思い返していた

「7年前、教導中に起きた古代遺失物(ロストロギア)の暴発事故で大怪我を負ったなのはさんはヴィヴィオと離れ離れになってしまった、完治できずに二度と会えない可能性すらあったわ」

当時のことを思い出してかディエチの表情も暗かった

「その頃のヴィヴィオは伸び悩んでいたの、でも、その事件がきっかけでヴィヴィオは悲しい気持ちを押し殺して強くなった、今回運んでいた古代遺失物(ロストロギア)はね、その時暴発したのとほぼ同じもの、辛いことを思い出させちゃうし、他の部隊にやってもらう話もあったんだよ、でもヴィヴィオはみんながいるからって」

「自分は………隊長の信頼を裏切ってしまったんですね」

「うん、それにヴィヴィオが執務官になったのって、犯罪でそういう悲しい思いを生まないためでもあると思うの、その時の古代遺失物(ロストロギア)、護送中の犯人が隠し持っていたものだから」

そう言ってディエチはロイスの肩に手を置いた

「確かに無茶が必要な時もある、けど、わかってあげて、ヴィヴィオの気持ち」

 

「そっか、ヴィヴィオも大変だったね」

ヴィヴィオから事情を聞いたなのはも彼女の話に考え込んだ

「ロイスにひどいことしちゃって、私、隊長失格かな」

「あーもう、ヴィヴィオったら」

座り込んで俯くヴィヴィオの頭を突然なのはが小突く

「誰だって失敗の一つや二つあるんだし、その位で落ち込まないの、私だって今のヴィヴィオと似たような失敗して、悩んだことあるんだし」

むくれながらなのはが語っていた

余談だがこの時本局で書類作業をしていた某執務官が寒気を感じ震えあがったという

「っていうか、そんなところまで私に似ることないでしょ、もぉ、昔の自分思い出して恥ずかしくなってきた」

「ははっ、何それ………でもありがとうなのはママ、おかげでちょっと元気出た」

そう言って立ち上がるヴィヴィオの表情はとても晴れやかなものだった

すると次の瞬間、トレーラーの待機してる付近から爆音が鳴り響く

「今の音は………」

「まさか」

 

古代遺失物狩りと使い魔が再び現れ襲撃を仕掛けてきた

リオとカレルが古代遺失物狩りと対峙していた

「叩いて砕け!ゴライアス!」

巨大なゴーレム、ゴライアスに乗ったコロナがアインハルト共に使い魔と対峙する

 

「クリス!」

ヴィヴィオは現場に到着するとバリアジャケットを装着し向かっていく

「私も」

なのはも首にかけていた自らの愛機、レイジングハートを手に取るもそんな彼女の行く手をヴィータのハンマーが遮った

「まあ待てよ、娘が心配なのはわかるけど、これはあいつらの戦いだ、あたしらはあたしらで出来ることやろうぜ」

「ヴィータちゃん………そうだね、じゃあ私たちは陸士隊と協力して非常線を張りに行こう」

そう言ってなのははヴィータと共にその場から離れていく

見るとハリーがすでに陸士の隊員たちに指示を出していた

「(頑張って、ヴィヴィオ、みんな………)」

 

「コメットブラスト!」

コロナが魔法弾と礫を放ち使い魔を攻撃するが悠々と飛んでかわされる

「覇王空破断!」

アインハルトが追撃するもこれもかわされてしまった

「動きを止めることができれば………」

二人の後方で控えていたリエラが悔しげに零した

 

「紅蓮拳!」

リオが放った炎を古代遺失物狩りが回避する

「切り裂け!」

「Jet Zamber」

飛び上がったカレルがグラディウスに電気を纏わせ斬りかかるがこの攻撃もかわされる

「ソニックシューター!」

ヴィヴィオがすかさず追撃するも古代遺失物狩りは魔法弾でヴィヴィオの攻撃を相殺する

 

「僕は………」

仲間たちが苦戦する様子を見ていたロイスは悔しさから拳を握っていたが

「行きましょうロイス、みなさんを助けに」

目を覚ましたアンジュがその手を握っていた

 

「この程度かしら?」

余裕の笑みで使い魔が上空からアインハルトたちを見る

すると次の瞬間彼女の周囲を水が取り囲む

「なにっ!?」

「コロナ副隊長!今です!」

リヴァイアスを構えたロイスが叫ぶと

「よくやったわロイス!ゴライアス!パージブラスト!」

ゴライアスの腕が勢いよく回転する

「ロケットパーンチ!」

回転したままゴライアスから分離した腕が水に囲まれ動きを取れない使い魔を直撃する

更に攻撃を受け落下していく使い魔にアインハルトが向かっていく

「覇王………断空拳!」

アインハルトの攻撃が決まり勢い良く吹っ飛ばされる使い魔

空中で何とか体勢を立て直すと

「くっ、しょうがないわね、ここは引いてあげる」

捨て台詞を残し飛び去って行った

 

それを見ていた古代遺失物狩りが一瞬動きを止めていると

「シャイニングセイバー!」

リヒトフリューゲルを使ったまま飛び上がったアンジュが斬りかかる

何とかかわす古代遺失物狩りだが着地したアンジュがそのままジャンプして追撃してくる

「アクセルスマッシュ!」

そのまま拳を叩きこむアンジュ

直撃をかろうじて避けた古代遺失物狩りも使い魔同様逃げ去っていく

 

こうしてロイスとアンジュの活躍もあり任務は無事完了したわけだが

「待機してるように言ったよね………アンジュもまだ動いちゃいけないはずでしょ」

現在二人は冷たい表情のヴィヴィオからお説教をされ正座のまま俯いていた

「あんなヴィヴィオさん始めてみました」

怯えるクリスとティオを抱きながらアインハルトがリオとコロナと共に苦笑する

「ま、非常事態やったから処罰の対象にはならんやろうし、お説教はヴィヴィオに任せよ」

「いや部隊長がお説教変わってあげてください!二人とも泣いてますよ!」

「というか私も泣きそうです、ヴィヴィオさん怖いです」

カイザーの二人とはやてがそんな話をしている間もお説教は続いていたのだった

「二人とも、少し頭冷やそうか」

 

「ロイス、アンジュ、ちょっといいかな」

任務を終え自由待機(オフシフト)に入ろうかというタイミングでヴィヴィオが二人に声をかけた

「何でしょう?」

「ごめんね、昼間は怖い思いさせちゃって」

「そんな、私たちが悪いんですし、気にしてませんよ」

頭を下げるヴィヴィオに気が引ける二人だったが

「それでね、今日は私もこれから自由待機(オフシフト)だから、一緒に御飯でもどうかと思って」

笑顔でそう告げるヴィヴィオにロイスとアンジュは顔を見合わせ

「「お供させていただきます」」

笑顔でそう答えた

「やっぱりヴィヴィオさんって、優しい人だったんですね」

「ああ、あのお説教も僕達のことを心配しての事だっただろうしね」

車をとりに行くヴィヴィオを見送りながらそう話す二人であった




おまけ(ファビア・クロゼルグ)
競技選手を引退後本格的に捜査官の道へ
2年ほどはやての下で学んだ後捜査官として独立
ヴィヴィオとは彼女が執務官として最初に担当した事件で組んで以降の仲
副官という立場ではあるがそれぞれが別の事件を担当することの方が多い
それでも大きな事件では手を取り合い解決に導いている
プライベートでは上官のヴィヴィオよりもアインハルトと一緒に居る方が多い


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:9 海鳴市

護送任務から数日

アンジュが寮から出ると既にロイスが待っていた

「おはよう、アンジュ」

あの護送任務以降、ロイスはずいぶん態度が柔らかくなっていた

「おはようございます、ロイス」

ちょうどそこへカレルとリエラもやってきた

4人は談笑しながら朝の訓練へと向かっていく

 

「はぁ!」

アインハルトの攻撃に対しリエラがアイギスを掲げる

防御魔法を展開しアインハルトの攻撃を受け止めるリエラだったが魔法ごと吹っ飛ばされてしまう

「痛たた」

腰を打ったのかさすりながら何とか立ち上がるリエラ

「強力な攻撃手段を持たないリエラさんは、とにかく相手の攻撃を耐えて好機を待つ」

再度構えながら説明するアインハルト

「そのためにもアイギスを信じ、自分の力を信じてください、迷いは禁物です」

「は、はい」

立ち上がったリエラが再びアイギスを構える

「お願いします」

 

ヴィヴィオの射撃魔法をよけながらアンジュが向かっていく

だが弾幕に阻まれ思うように前に進めない

「カウンターヒッターは観察力が命、全体をよく見て隙を探すの」

「はいっ!」

ヴィヴィオに言われ目の前の弾丸だけでなくそれを放つヴィヴィオも観察しながら動くアンジュ

弾幕を潜り抜けヴィヴィオに飛び横蹴りを放つが腕でガードされてしまう

「そう、そんな感じ、もっと打ちこんできて」

そう言いながらヴィヴィオは反撃の魔法弾の準備に入る

 

腰に二本の刀を差した訓練服姿のリオの拳に炎と雷が纏われる

「ロイスの当面の目標は攻撃と防御の両立、懐にはいられないように、相手の進路を塞ぎながら攻撃する」

「お願いします」

ロイスが構えるとリオも拳を振り上げ向かっていく

リオが向かってくる正面、左から右に向けて水を放つとリオが飛び上がって上から狙ってくる

「リヴァイアス」

「yes」

ロイスの指示を受けリヴァイアスが地面からリオに向けて水を放つ

だが寸でのところでリオに避けられてしまう

「もっと早く!相手に悟られないように!」

「はいっ!」

 

「カレルの課題は移動と攻撃の両立、スピードだけで言ったら、カレルは多分六課で一番速い」

コロナが操作するのは訓練用の自動操機

カレルに向かって次から次へと攻撃を繰り出す

「一度止まってから攻撃するんじゃなくて、スピードを生かして、移動を繰り返しながら、相手に居場所を悟られないように、同じ場所になるべくとどまらないように」

 

厳しい訓練が行われている一方、部隊長室でははやてとリインが書類仕事をしていた

「あれ?メール?」

書類に部隊長印を押していたはやてだったが突然のメールに首をかしげる

「アリサちゃんから?」

「わぁ、久しぶりです、でも私用のメールなら後にしてくださいね」

リインの苦言に対してはやては真剣な表情になる

「いや、どうやらそうやないみたいやね」

 

「出張?」

ヴィヴィオの言葉にファビアは首をかしげる

「うん、管理外の異世界、昔輸送中の事故で紛失した古代遺失物(ロストロギア)が発見されたんだって、古代遺失物狩りに狙われる可能性もあるからって」

資料をまとめ終えたヴィヴィオがファビアのほうに向きなおる

「それでこないだの事件、なのはママや番長たちが非常線を張ったんだけど結局逃げられちゃって、でも逃走ルートの候補はいくつか割り出せたんだ、だから」

「逃走ルートの絞り込み」

「うん、古代遺失物狩りは他の世界で現れたこともあるから次元航行部隊の執務官に頼むのがいいかと思うんだ」

そう言って画面を操作するヴィヴィオ

「だからヴィクトーリア・ダールグリュン執務官に頼んでみようと思うんだけど」

「出張から帰った後、一度会えないか問い合わせてみる」

ヴィヴィオの言葉を遮り彼女の頼みを先読みしたファビアに苦笑するヴィヴィオ

「話が早い副官がいてくれて助かるよ」

 

「おまたせ」

通信を終えヴィヴィオが食堂にやってくると既にフォワードたちや隊長陣、はやてとリイン、ディエチ、ユミナ、アルトが揃っていた

「それやったら新人たちも揃ったことやし食事しながら出張任務のこと確認しよか」

そう言ってはやてが画面を開く

 

「え?第97管理外世界?それって」

行き先を聞いたカレルが驚き声を上げる

「せや、私やヴィヴィオのお母さん、高町なのは教導官の故郷、カレルやリエラの生まれた場所」

「情報提供者ははやてちゃんの子供のころからの友達です」

嬉しそうな顔でリインがはやての言葉を繋ぐ

「懐かしいなぁ、うちのママ達忙しいからさ、小さい頃一人でそっちに遊びに行ったりとかもしたんだよ」

「“達”っていうのは?」

「お父さんの妹のフェイト・T・ハラオウン執務官、ヴィヴィオさんのお母さんとは子供のころからの友達なんだって」

「その辺の細かいところは特秘事項になってるからあんまり詮索しないであげて」

クリームスパゲッティをフォークで巻き取っていたディエチの言葉にアンジュは彼女を見た

「ん?どうかした?」

「あ、いえ………ただディエチさんも名前の感じが似ている気がして」

「察しがええなアンジュ、と言っても、ディエチのお父さんの御先祖様が、元々そっちの出身なだけで、ディエチ自身はミッド育ちやけどな」

「両親がミッド生まれで、地球暮らしだったカレルたちとちょうど逆ですね」

はやての説明で納得するアンジュとロイス

「そういえば、ロイスたちの出身世界って?」

アルトの質問に最初に応えたのはロイスだった

「僕の育ちはミッドですが、生まれは第32管理世界のムーランです、その世界の水は特別な魔力を持っていて、僕みたいな水の魔法資質を持った人間が稀に生まれるそうです」

「へえ、いろんな世界があるんだね」

「なんだか、出張先がどんな世界か楽しみになってきました」

ロイスの言葉にユミナとアンジュが瞳を輝かせた

「で、アンジュはどこ出身なの?」

「私は物心つく前に火事で両親を亡くして、ミッドにある民間の保護施設で育ちました」

「あっ!ごめん!悪いこと聞いちゃった?」

「大丈夫です、施設のみなさんにはよくしてもらって、魔法もそこで教わったんですよ」

アンジュの言葉に申し訳なさそうにするアルトだったがアンジュは気にしてない様子

「それに今は六課のみなさんがいますから」

アンジュのその言葉にフォワードの仲間達も満足げに笑った

 

そして出張先、海鳴市へとやってきた新生六課の仲間達

「ここが………」

「部隊長の故郷………」

はじめてやってきたロイスとアンジュが目の前の湖の光景に息をのむ

「あ、きたわね」

ビジネススーツに身を包んだブロンドの女性が彼女たちに気付き声をかけた

「アリサちゃん!」

「アリサさん!お久しぶりです」

それに気付いたはやてとヴィヴィオはアリサに駆け寄った

「はやて久しぶり!ヴィヴィオ達も元気そうね」

「はい、元気です」

再会を喜ぶはやてたち

「っと、アンジュ、ロイス、紹介するね、この人が今回の古代遺失物(ロストロギア)発見者で、民間協力者の」

「アリサ・バニングスです、こっちでちょっと大きな会社の社長をやってます」

「あ、アンジュ・マーキュリーです」

「ロイス・ローレンスです」

自己紹介して敬礼するアンジュとロイス

「アンジュに、ロイスね、よろしく、カレルとリエラも元気そうね」

「はい」

「本当にお久しぶりです」

「そう言えば二人はこの世界の出身だったな」

その様子を見ていたロイスが納得したように呟く

「ちいさいころ何度かお会いしたことがあって」

そんなロイスにリエラがこっそり説明する

 

アリサが別荘の扉をあけると中には既に先客がいた

「お、みんな来たか」

オレンジ色の子犬が彼らに駆け寄ってくる

「アルフ!」

ヴィヴィオが声をかけると子犬は彼女たちの目の前で少女の姿に変わった

「お、初めての顔もあるな」

一同を見回して軽く口笛を吹かすアルフ

「アリサさん、使い魔をお持ちなんですか?」

「違う違う、あたしのじゃなくて友達のよ、あたし魔法なんて使えないし」

「まあ、あんたらもそのうちあたしのマスターに会うことあるだろうし、今は古代遺失物(ロストロギア)だ、案内するからついてきな」

そう言ってアルフがロッジの奥へと向かう

 

アルフの案内で古代遺失物(ロストロギア)を保管してる部屋にやってきた

「で、これが問題の古代遺失物(ロストロギア)?」

「何か………箱みたいですけど」

ロイスとアンジュが覗き込むガラスケースの中には箱のようなものが

「これはケースみたいなもんさ、何かを運んでた時のものってとこまでわかったんだけどさ、そっちは?」

アルフの問いかけにはやてとヴィヴィオが事前に調べてきたデータを取り出す

「うーん、流出してから結構たっとるからなぁ、一応データベースと照会してみたけど記録がないなぁ」

「ユーノ司書長に頼んで調べてもらってますから、そのうちわかるとは思うんですけど」

そんな会話をしているとふとロイスが何かに気付く

「ケース………運ん“でた”って………まさか」

「あたしたちが見つけた時はもう………」

つまりこの箱の中あったものはもうどこかに流出しているということだ

「それやったらまず流出した本体を探さんとな、コロナは上空からサーチャーとセンサーの設置、移動してる可能性もあるからな」

「了解」

「私たちは地上から作業に入りましょう」

一足先に飛びだすコロナに続いてアインハルト、カレル、リエラも出発する

「私たちとリイン二尉は中距離探査、クリスもお願いね、リヴァイアスにも簡易版の探査魔法をセットしておくから」

ヴィヴィオの言葉にクリスも敬礼で返す

「ほな、機動六課出張任務、古代遺失物(ロストロギア)の探索と護送、開始や」

はやての言葉と共に全員が腕を高く掲げる




おまけ(高町なのは)
ヴィヴィオが管理局に入局した後三等空佐に昇進
これまで以上に教導の現場で活躍
自身の経験から教え子たちにはまず第一に命を背負い戦う覚悟について真っ先に教えている
無茶をすることこそ減ったものの主治医のシャマルにはやはりお世話になってばかり
「局員としては文句のつけようがないが患者としては最低最悪」というのはシャマルの談
ヴィヴィオが執務官試験に合格し独立してからは自宅で一人で過ごすことが増え寂しい思いをしているらしい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:10 覚醒する力

流出した古代遺失物(ロストロギア)を探すため海鳴へとやってきたアンジュ達新生六課のメンバー

「疲れた~」

「一通り町を見て回ったけどそれらしい反応はなしか」

「移動性があるわけでもないのにどうして………」

「まあ、何かあったらセンサーが働いてくれますよ」

サーチャーの設置と中距離探査を終えロッジへと戻ってきた

「おぉ、みんな戻ったか」

「おかえり~」

アルフとアリサがそんな彼女を出迎えると続いて白いヘアバンドをした女性が彼女たちに駆け寄る

「ヴィヴィオちゃん、みんなも久しぶり!」

「すずかさん!お久しぶりです!」

手を取り合い再会を喜ぶヴィヴィオとすずか

すると車が一台ロッジにやってきた

「ん?あの自動車は………」

それに気づいたロイスが首をかしげていると車から2人の女性が降りてきた

「みんな、お仕事頑張ってる?」

「カレル!リエラ!」

「美由希さん!」

「お母さん!」

「「えっ!?お母さん!?」」

驚いた様子のアンジュとロイスに気付いた女性達はそちらに振り替える

「初めまして、カレルとリエラのお母さんで元時空管理局管制司令、エイミィ・ハラオウンです」

「その親友でヴィヴィオの伯母、今はこの街で実家の喫茶店を手伝ってます、高町美由希です」

「あっ!アンジュ・マーキュリーです」

「ロイス・ローレンスです」

突然のあいさつに驚きながらも敬礼で返すアンジュとロイス

「アンジュに、ロイスだね」

「二人とも、ヴィヴィオやカレル達をよろしくね」

「とんでもない!」

「お世話になっているのはこちらの方ですから」

戸惑うアンジュとロイス

すると美由希が何かに気付く

「あ、いい匂い~」

「え?あ、本当だ」

「ああ、きっとはやてちゃん達ですね」

 

「お、みんなおかえり~」

鉄板焼きを準備しながら出迎えるはやて、となりでは下拵えをするアインハルトの姿も

「ぶ、部隊長、それにアインハルト隊長まで」

「わざわざそんな」

「気にせんでええよ、元々お料理は趣味でな、久々に包丁握れて嬉しいんよ」

「私も好きで手伝っているだけですから」

「うわぁ、おいしそう」

「私たちもごちそうになろうかな」

「そう言う思てたくさん用意したよ、遠慮せず食べてな~」

こうして夕食は現地の人々を交えて交流会も兼ねた形となった

「へぇ~、ヴィヴィオも頑張ってるんだ」

「はい、強くて優しくて、私たちのこと、大事に思ってくれて」

「うん、そういうところ、なのはちゃんそっくり」

「その分、怒るとちょっと怖いんですけど」

先日のことを思い出し青い顔で落ち込むロイスとアンジュを見てアリサとすずかは首をかしげる

 

「アインハルト、コロナ、カレルとリエラはちゃんとやってる?」

「はい、任務でも頑張ってますし」

「訓練も順調、心配はいらないです」

「もう、母さん、少しは僕達を信じてよ」

「私たちはお母さんの子なんだよ」

「だから心配なの、旦那と違ってあたしは魔法戦はからっきしだし」

「まあまあエイミィ、アインハルトとコロナもこう言ってくれてるし」

エイミィを宥めながら苦笑いする美由希

 

その後海鳴スパラクーアⅢで入浴を済ませた一同は現在施設内の卓球場にいた

「なかなかやるね、アンジュ」

ヴィヴィオ、リオのペアとアンジュ、ロイスのペアの対戦

特にアンジュの実力には目を見張るものがありほぼ一人でヴィヴィオ、リオを相手に善戦していた

「施設にいたころよくやっていたので」

「すごいな、僕はついていくのでやっとだ」

肩を落としながらリオの球を打ち返すロイスだったがリヴァイアスに反応が

「隊長!」

「えっ!?」

ロイスの呼びかけに驚いたヴィヴィオが思わず打球を強く叩いてしまいそのままロイスの顔面に直撃

大の字に倒れ込むロイスだった

 

アンジュ達が現場に急行すると手のひらサイズの水晶のようなものを持った古代遺失物狩りが

「古代遺失物狩り!?こんなところにも現れるなんて」

「あれが今回の古代遺失物(ロストロギア)!?」

「気を付けてください、先ほど届いた情報によればその水晶は高エネルギーの集まりです、ここで暴発したら町ごと吹っ飛んでしまいます」

「そうはさせない、カレル達の故郷は私たちが守ります」

アインハルトから届いた念話に気合を入れるアンジュ

光のリングを飛ばしてきた古代遺失物狩りの攻撃をかわし切りこんでいく

「ポセイドンスパイラル!」

ロイスの攻撃は古代遺失物狩りに容易く避けられてしまう

だが避けた先にアンジュとカレルが待ち構えていた

「Holy blade」

「切り裂け!」

「Jet Zamber」

斬撃で古代遺失物狩りを狙うがこれはロイスの水を利用して避けられてしまう

「(攻撃は素早く動きながら)」

カレルは攻撃しながらコロナに教わったことを反復していた

「(相手の攻撃だけじゃなくて………)」

そしてそれはアンジュも同様だった、ヴィヴィオの教えを思い出しながら戦っていた

「(全体をよく見る)」

古代遺失物狩りの射撃魔法をかわしながら再度切り込むアンジュ

「(攻撃と防御の両立………今僕に出来ることは)

リオとの訓練を思い出しながらロイスがリヴァイアスを構えた

水が古代遺失物狩りの進路を阻んでいく

「アクセル………」

避けた先にいたアンジュが古代遺失物狩りの背後に回った

「スマーッシュ!」

古代遺失物狩りの背中に強烈な一撃が決まる

吹っ飛ばされるとそのまま倒れ数回地面を転がっていく

その際古代遺失物狩りの手を離れた水晶をリエラがキャッチする

 

「すごいね、あいつらヴィヴィオが稽古つけてるんだろ?」

それを見たアルフが思わず口笛を鳴らしながら感心する

と、次の瞬間アルフの目の色が変わった

「嘘だろ………あれって」

 

立ち上がった古代遺失物狩りの周囲に複数の魔方陣が展開されては消え、スフィアが次々出現する

「まずいな、でかいのが来る」

「だったらその前に………」

突っ込もうとするアンジュだったが足元に展開した魔方陣から走った電気が彼女達の動きを封じ込める

「くそっ、どうすれば………」

「私がやる!アイギス!力を貸して」

古代遺失物狩りの魔法に対抗すべくリエラが防御魔法を展開する

スフィアから次々と攻撃が放たれリエラの展開した防御魔法に衝突する

「(信じるんだ、私の力を、アイギスの力を!)」

 

フォワードたちの姿が煙に隠れ見えないなか、隊長陣とアルフが現場に駆け付けた

古代遺失物狩りの攻撃がやみ煙が晴れていく

「はぁ、はぁ………」

するとそこには傷だらけのリエラの姿が

「な、何とか、防げました………後は………お願い………」

そう言い残しリエラはその場に倒れてしまう

だが彼女の活躍で後ろの3人は無傷で今の攻撃を凌いだ

「ありがとう、リエラさん」

アンジュはそう呟くと古代遺失物狩りに向けて突っ込んでいく

勢いよく拳を振り下ろし地面を砕いた

さらに空中へ逃れた古代遺失物狩り目掛けて鋭い蹴りを繰り出す

古代遺失物狩りはこの攻撃を避けることができず両腕を前に出して受け止める

だが防ぎ切れずに土手にたたきつけられた

アンジュが追撃しようとするが

「もうその必要はない」

ロイスに止められる

アンジュはほとんど無意識のうちにやっていたようで戸惑っていた

「ん?どうしたんだ?その眼?」

「え?眼?」

ロイスの言葉に首を傾げるアンジュの瞳は元の色から鮮やかな銀色に変化していた

 

倒れ込んだ古代遺失物狩りにアルフが詰め寄った

アルフは袖口を乱暴につかむと血走った眼で古代遺失物狩りをにらみつけた

「あんたには聞きたいことがある、なんであんたがあの魔法を………ファランクスを使える!」

先ほどの魔法はアルフにとってなじみのある魔法だった

それを古代遺失物狩りが使えることが気に食わないようだ

だが古代遺失物狩りは答える様子がない

「なんとか言えこの野郎!」

その態度に腹を立てアルフが爪を立てながら古代遺失物狩りに襲い掛かる

アルフの攻撃を片手で受け止めた古代遺失物狩りだが衝撃で身にまとっていたフードが引き裂かれた

「なっ!」

その姿を見たアルフは目を見開いて驚いた

「どうしてなんだ………」

薄めのブラウンの髪、山猫のような耳で白い服を着た女性

目の前にいる存在をアルフは信じられなかった

なぜなら………

「なんで生きて………それよりも………どうしてあんたが古代遺失物を狩り集めるような真似………」

戸惑いながらのアルフの問いかけに目の前の人物は答えようとしない

「なんとか言ってくれよ!どうなんだ!リニス!」

古代遺失物狩りの正体。それはアルフや彼女の主人に魔法を教えてくれた恩人………ある人物の使い魔だったリニスだったのだ

アルフの悲痛な叫びにもなにも答えずリニスはバインドを引き千切るとアルフを蹴り飛ばしその場から立ち去った

「アルフ!」

「アルフさん!」

隊長陣やフォワードメンバーも急いでアルフに駆け寄る

すると突然アルフは拳を勢い良く地面にたたきつけた

彼女は涙を流しうわ言の様に呟いていた

「なんでなんだよ………なんでリニスが………」




おまけ(エルス・タスミン)
前作の時点で地上部隊の警邏隊に勤務
周囲の後押しもあってか法務の道へ進むため勉強中
本格的な勉強を前にはやてからの誘いを受け機動六課へ
自由待機などの時間を使って執務官試験に向けて勉強をしている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:11 決意を新たに

「リエラ、もう怪我はいいの?」

海鳴にあるハラオウン家が住む一室でエイミィがリエラに問いかける

「大丈夫、部隊長が治癒魔法かけてくれたから」

「それより母さん、あのリニスって人について、アルフは何か知ってるようだったけど」

カレルの問いかけにエイミィはため息を漏らしながら画面を開く

「あたしも直接見たのは初めて、これ、昔フェイトちゃん達から聞いた話をもとに作ったモンタージュ写真なんだけど」

エイミィが見せた写真の女性は確かに昨日見た古代遺失物狩りとよく似ている

「山猫の使い魔でフェイトちゃんやアルフに魔法を教えてくれた先生、最初にバルディッシュを作ったのも彼女なんだって」

そう言ってモンタージュ写真を閉じる

「けど、その人はもう」

「うん、契約が切れた使い魔は本来消滅してしまう、元々目的のために使い捨てにされることも多いからね、彼女もその一人だったの」

エイミィの話を聞いて俯くカレルとリエラ

 

アンジュの瞼を抑えながら色が変わってしまったその眼をじっと見るヴィヴィオとアインハルト

「どうしてこうなっちゃったんだろうね」

「アンジュさん、何か心当たりは………」

「ありません、私物心ついた時にはもう施設にいたので、両親のこととかもあんまり」

アンジュの言葉にため息を零すヴィヴィオ

「こっちでも調べてみるけど一応、帰ったらその眼診てもらって」

「当時の記録を調べてみれば何か出てくるんじゃない?」

「似た能力を持った魔導師がいたかどうかっていうのも調べた方がいいかも」

「あのリニスと言う方についても調べませんと」

「じゃあ向こう戻ったらまず無限書庫行かないとかな」

仲間達の提案に頭を抱えるヴィヴィオ

「外部捜査協力の手続きもあるし、ちょっと予定確認してみなきゃ、通信で話してくるね」

億劫そうに頭を掻きながら部屋を出るヴィヴィオ

入れ替わりにはやてとアリサが部屋に入ってきた

「反応がなかった理由わかったよ~」

「で、どうだったんですか?」

「この古代遺失物(ロストロギア)なぁ、もう死んどったわ、長い流出期間の間にすっかり枯れてしまったようや、リニスの魔力に反応して残存してた僅かな魔力を放出してたみたいやけど」

「あー、たしかにそんなのが時々出てくるですね」

過去の事例を思い返したリインがふと呟いた

以前にも何度かそういった事例があったようだ

 

「そういうわけで、今後の予定を確認したいんだけど」

ヴィヴィオは自身の副官でもあるファビアと通信で話していた

「次元航行部隊に確認したらヴィクトーリア執務官は現在出向中、2日後に帰還予定、あえるのは3日後」

「じゃあその前に無限書庫に行って情報を集めることができるんだね、ファビア」

「ん、ヴィクトーリア執務官には連絡済み、無限書庫はそっちの方が早い」

「司書長に連絡して………今回のことも古代ベルカ関連だよね?」

「可能性は高い」

ファビアの言葉にしばし考えるとヴィヴィオは立ち上がった

「オッケー!ありがとうね、ファビア」

「ん」

ヴィヴィオの言葉に軽く頷くファビア

「そうだ、お土産買ってあげるね、こっちのお店の、すごくおいしいシュークリーム」

ヴィヴィオの言葉にファビアは驚き瞳を輝かせた

「絶対忘れないで」

「大丈夫大丈夫、期待して待っててね」

ヴィヴィオは通信を切るとすぐに部屋を出る

「さて、問題は調べ物の方だけど、リオー!ちょっと頼みたいことがあるんだけど!」

 

一方アルフは一人湖畔を歩いていた

「アルフさーん!」

「ん~?」

誰かの呼ぶ声に振り返るとそこにはアンジュの姿が

 

「再生兵器?」

「まだ推測の域ですが恐らく」

アインハルトの言葉にリインが考えるしぐさを見せる

「以前にも死者を用いた人造魔導師が現れたことがあるです、もしかしたら」

 

「なるほどねぇ」

同じ頃アルフもアンジュから同様の話を聞いていた

「リニスはそいつらに利用されたってのか」

怒りに満ちた表情で歯を噛み締めるアルフ

「アルフさんは大好きなんですね、その、リニスって人のこと」

アンジュの問いかけにアルフは肩を落とすと

「ああ、あたしとフェイト、あ、あたしのマスターな、にとっちゃ本当の母親みたいなもんだった」

 

「えっと………ああ、これだ」

分厚い資料な様なものを本棚から取り出して机に置くエイミィ

「二人にはフェイトちゃんのこと、どこまで話したっけ?」

「えっと、フェイト姉がある事件の関係者で」

「身寄りを亡くしてこの家に引き取られた、までは前に一度聞いたことが」

「うん、その事件っていうのがね、PT事件、プレシア・テスタロッサ事件」

「テスタロッサって………」

「フェイトちゃんのお母さん、この事件で次元震に巻き込まれて消息不明に、リニスの主人でもあったみたい」

 

「プレシア・テスタロッサはある研究のために当時まだ幼いフェイトママの事を使い魔であるリニスさんに任せていた………」

ヴィヴィオもまた今回の事件を調べるため手持ちの資料を読んでいた

「リニスさんとの契約内容はフェイトママが一人前になるまで、そしてバルディッシュが出来上がると同時に契約が切れ、リニスさんは消えてしまった」

一通り読み終えたヴィヴィオは伸びをすると天井を見つめた

「プレシアさんがそうなった理由は魔導実験による事故、この事故は最終的に会社側が賠償金を払う形で決着してる………」

そこまで呟くとヴィヴィオは肩を落とした

「あのリニスさんは多分人造魔導師技術をもとにした再生兵器、となるとリニスさんの遺伝子情報が必要なはず、まずはこの実験の関係者当たってみるかなぁ、どこかで捜査の手も借りなきゃ」

そう言ってヴィヴィオは再び伸びをすると立ち上がって部屋を出た

 

「アルフ!」

一連の事情を聞き終えたカレルとリエラがアンジュと共にいたアルフに駆け寄る

「お~、カレルもリエラもどうした?」

「アルフ、僕たち頑張るよ、優しかったころのリニスさんを、きっと取り戻して見せる」

「今はまだあの人に敵わないかもしれないけど………フェイトお姉ちゃんもアルフも、ずっと私たちに優しくしてくれた、二人のためにも、六課の隊員としても、絶対に今回の事件を止めて見せる」

涙ながら叫ぶカレルとリエラの頭に手を置くアルフ

「ありがとな、カレル、リエラ」

「あ、あの、私も協力します」

「及ばずながら僕もね」

どこから聞いていたのかロイスが彼らに歩み寄る

「絶対に負けられない理由が出来たな」

ロイスのその言葉にアンジュも、カレルとリエラも頷く

「頼もしいな、今回の隊員たちは」

そんな彼女たちに歩み寄るグレーのポロシャツ姿の男性

「いつ来てもいい景色だな、このコテージは」

「クロノ?」

「「お父さん!?」」

突然現れたクロノを見て目を見開くアルフとカレル、リエラ

「クロノ………ってクロノ・ハラオウン提督!?」

「六課後見人の!?な、なぜこちらに!?」

突然のことに驚きながら敬礼するアンジュとロイス

「ああ、かしこまらなくていい、船の整備でしばらく休みになってね、久しぶりに帰省してみたら偶々君たちが」

「って、母さんからメールとか来てないの?送ったって言ってたけど」

「ん?」

カレルの問いかけにクロノがメールボックスを開いてみると

「ああ、来てるな、チェックするのを忘れていた、またどやされるかなこれは」

「仕事のメールは忘れないくせに」

アルフのつぶやいた言葉にクロノは困ったように頭をかく

 

「で、今どないしてるん?」

ヴィヴィオの母、高町なのはの実家でもある喫茶翠屋のテラスで軽くお茶をしていたはやての問いかけにアルフは

「ん~、久々に家族でランチしようってなってね」

「多分エイミィさんと一緒だと思います」

アルフの言葉をアンジュがつなぐ

「家族って………アルフ行かなくてよかったの?」

「リエラちゃんが誘ったでしょう?」

アリサとすずかの問いかけにアルフはジュースを勢いよく飲むと

「いいんだよ、せっかくの親子水入らずなんだから、あたしはのんびりさせてもらうさ」

と、笑いながら答えた

 

「そうか、そんなことがあったのか」

カレルとリエラから話を聞いたクロノはコーヒーを飲んでカップを見つめた

「僕も直接リニスとあったわけじゃないが………少なくとも出会ったころからフェイトの実力は確かだった」

「当時ですらAAAクラスはあったから、リニスの実力もその位、それ以上ってこともあるかも」

クロノとエイミィの話を聞いて俯くカレルとリエラ

「AAA………」

現在カレル達は陸戦Cランク、もしそうならリニスには遠く及ばない

「それでも………負けるわけにはいかないんだ」

カレルの言葉を聞いたクロノは満足そうに笑う

「二人とも自分のデバイスは持っているな」

クロノの問いかけに二人は首を傾げながらグラディウスとアイギスを掲げる

「実はね、そのデバイス………」

エイミィの話を聞いたカレルとリエラは驚き目を見開いた

 

こうして出張任務は終わりを告げ、フォワードたちには厳しい訓練の日々が戻ってきた

一日たって現在前線隊長4人対フォワードメンバー4人の模擬戦の真っ最中

その光景を眺めていたマリーの下にバスケットを持ったディエチがやってきた

「マリーさん」

「あ、ディエチ、また差し入れ?」

「はい、新人達、気合入ってるみたいですね」

「コロナの話だと、明日からデバイスリミッターを一つ解除していくそうよ」

「と、いうことは………」

ディエチの問いかけにマリーも頷く

「セカンドモード、この先もっと激しい戦いになると思う」

「私たちも頑張らなきゃ、ね、カノン」

「yes」

ディエチの呼びかけにスマッシュカノンが点滅して答える

 

ちなみに同時刻

「本当においしいですね、このシュークリーム」

「みてください、あのファビアさんの嬉しそうな顔」

通信士チームがヴィヴィオのお土産の翠屋特性シュークリームに舌鼓を打っていた

ファビアは余程気に入ったのかうっとりとした表情になっている




おまけ(アルフ)
なのはがミッドチルダに戻ってからは地球のハラオウン家に帰還
カレルとリエラが大きくなり魔法に興味を持つようになって以降はかつてリニスがそうだったように二人の魔法の先生を務めていた
現場を離れて長い彼女だったが実力は一切衰えておらず「あたしの力も案外捨てたもんじゃない」とは本人の談
二人が局入りして以降は主に家事などを担当
エイミィ曰く「助かってはいるがずいぶん長い事お世話になりっぱなしでなんだか申し訳ない気もする」らしい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:12 ひと時の休息

朝の訓練を終え疲れ切った隊員達

「はい、じゃあ今日の訓練はここまで」

「「「「ありがとうございました~」」」」

疲弊したフォワード陣が何とか返事を返す

「でね、隊長たちとも相談したんだけど、そろそろみんなのデバイスリミッター、一段解除して新しい訓練に入ろうと思うの」

コロナの言葉にフォワード達から歓喜の声が上がる

「で、隊長たちは今日、いろいろ忙しくて手が離せないし、せっかくだから今日は一日休んで、明日からの訓練に備えようってことで」

リオの提案にフォワードたちの表情が輝いた

 

「とはいえ」

「実際何しようか悩むよね」

隊舎のロビーで集まっていたフォワードたちだったがふと、私服姿のディエチの姿を見つける

「ディエチさん?ディエチさんも今日はお休みですか?」

「うん、それでちょっと実家に顔出してこようと思って、みんなは」

ディエチの問いかけに全員困ったように肩を落とすと

「僕達やロイスさんは別世界の出身ですし」

「私が育った施設も、ここからだとちょっと遠いですし」

「そうなんだ、だったら町に行って遊んできたらいいんじゃないかな?前の六課でもそうしたらしいし………っと、いけない、じゃあ私はこれで」

時計を見て慌ただしく出て行ったディエチを見送りアンジュ達は互いに見合った

「そう………だね、じゃあみんなで遊びに行く?」

「だな、隊舎でただ無駄に時間を過ごすのももったいないし」

 

一方同じ頃

「ヴィヴィオ~!」

本局の一角で一人立っていたヴィヴィオの下にリオと女の子がやってくる

女の子のほうが勢いよくヴィヴィオに飛び着いた

「お久しぶりです!ヴィヴィオ!」

「久しぶり!イクスも元気にしてた?」

「ええ、それで私に頼みたいことと言うのは………」

イクスの問いかけにヴィヴィオは真剣な表情になった

「イクスなら何か知ってるんじゃないかと思って」

 

久しぶりに実家へと戻ったディエチはギンガ、チンクと共に休日を過ごしていた

「元気そうだな、ディエチ、で、メールにあった頼みというのは」

 

「再生兵器ですか」

イクスと共に無限書庫にやってきたヴィヴィオ

「私たちの仕事はまず、その正体を突き止めること、運がよければ犯人の目的なんかも見えてくる、で、イクスなら何か心当たりあるんじゃないかっていうのと、あとはちょっと個人的な用事で」

検索魔法で呼び出したいくつかの本をチェックしながらイクスに笑いかけるヴィヴィオ

 

「それで、リニスのマスターだった、プレシア・テスタロッサの周辺関係を調べてみてほしいの、プロジェクトF関連を特に」

「なるほど、話はわかったが、八神中将がいらっしゃるんだ、本局の捜査部に頼むこともできただろう?」

お茶を飲んだチンクがディエチに問いかける

しかしディエチは全く意に介していない様子で

「今回はまだまだ調べないといけないことだらけで、そっちには別の捜査を頼んでるの、それに、私たちにとってチンク姉は頼りになるお姉ちゃんだし」

「やれやれ、知らない間に物の頼み方がうまくなったな」

そんなディエチの言葉に苦笑いしながらもチンクは

「いいだろう、可愛い妹の頼みを無下にはできないからな、姉が捜査指揮を執る、近いうちにそちらの隊舎に出向くことになるな」

「チンク姉には捜査協力にあたって、六課からデバイスを一機プレゼントすることになるよ」

「デバイスを?それはありがたいが………」

「受け取っておきなさいよ」

戸惑うチンクにギンガが声をかける

「あって困るものでもないし、実力や階級を考えると持ってない方が不思議なんだから」

「そうそうチンク姉!地上本部に異動になったお父さんの代わりに108の部隊長やる話もあったんでしょう?」

「断ったけどね、代わりに部隊長になったおかげで私は毎日忙しいものよ」

肩を鳴らしながらため息を零すギンガ

「108は父上がずっと守り続けた部隊だ、父上が築き上げてきたものを守るのは私の役目ではない、そう思っただけのこと」

チンクのその言葉にギンガとディエチが笑顔を見せる

「じゃあ、詳しいデータはひとまずギンガのブリッツキャリバーに送っとくね」

そう言ってディエチが待機状態のカノンを取り出す

 

「とりあえずこのくらいでしょうか?」

いくつかの書籍を抱えながらイクスがヴィヴィオの下にやってくる

「先史ベルカの再生兵器はこれで全部?結構少ないね」

「元々再生兵器はそのすべてが禁忌兵器、現代でも使用できるものとなると限られますから………あれ?」

ふと、抱えていた本がなくなっていることに気付いたイクスが首をかしげていると

「これは動物だけかぁ、こっちのは逆に動物が無理なんだよね………じゃあこっちの」

「全部同時!?」

少ないといえイクスが持っていた10冊近い本をすべて同時に調べるヴィヴィオを見て驚いた

「人造魔導師技術が使われている可能性が高い………となるとこれかな」

やがてヴィヴィオは一冊の本を手にとった

その表紙には古代ベルカ語で霊魂兵器と書かれていた

「なるほど、霊魂兵器………ですか」

 

「リニスはその霊魂兵器にされとる可能性が高いんやな」

「この資料によると霊魂兵器は遺伝子情報をもとに肉体を生成、そのために必要な器が」

「人造魔導師………先史ベルカでもそんな感じやったんか?」

はやての問いかけに答えたのは

「いえ、当時は甲冑とかを素体にしていたみたいです、実際に使われたことはほとんどないんですけど」

画面に割り込むようにして映ったイクスだった

「プレシアはそれを使おうとは思わなかったんやろか?」

「再生兵器のほとんどは戦闘を目的に作られたもので、完全によみがえるわけではないみたいです、霊魂兵器も肉体を生成する時に精神操作によって自我が封じ込められるみたいで、ほとんど人形です」

「もっとも、死者へ対する冒涜だとする声も多く、古代ベルカの時点で既に忌み嫌われた技術ではあるんですが」

 

「ただいまぁッス」

「おかえりウェンディ」

エプロン姿のディエチが疲れた様子で帰ったウェンディを出迎えた

「ディエチお久しぶりッス、もう来てたんッスね」

「まあね、お昼ごはん出来てるよ、久しぶりにお姉ちゃんが腕によりをかけたから」

鼻歌交じりにリビングに向かうディエチ

「姉達も手伝おうとしたんだが」

「台所追い出されちゃった」

「あ、ギンガ、チンク姉もただいまッス」

「おかえりウェンディ」

「まずは着替えて来たらどうだ?」

チンクに言われ自分の服装を見直すウェンディ

出勤した時のスーツのままだった

 

アンジュが勢いよく拳を振り下ろす

円形の的にぶつかったそれは勢いよく倒れ込む

ここはミッド市内のゲームセンター

アンジュがやっていたのはいわゆるパンチングマシーンと言うゲームだった

画面にハイスコアの文字が表示され周囲から拍手が沸き起こる

アンジュは照れながらも礼で返した

 

「流石だな」

少し離れたところで見ていたロイスがこちらにやってきたアンジュにそういいながらジュースを投げて渡した

件のパンチングゲームには今カレルが挑戦している

「恥ずかしかった………」

真っ赤になりながらジュースを受け取りロイスの隣に座るアンジュ

「あれでも本気じゃないんだろ?恥じる必要はないさ、いっそ本気でやればよかったのに」

「そうなんですけど~、って言うか本気でやったら壊しちゃいますよ」

そんなアンジュを見て笑うロイス、そんなロイスを見てアンジュが目を見開いた

「どうした?僕の顔に何かついてるか?」

「いえ………ただ、ロイス、なんだか変わりましたね」

「そうか?」

「ええ、よく笑うようになりました」

アンジュのその言葉にロイスは再び笑みを零した

「そうかもしれないな………ま、一番変わったのは君だと思うけどね」

ロイスの言葉にアンジュは困ったように肩を落とした

「これは特別ですよ~、ていうか本当なんなんでしょうこれ」

色の変わった自分の瞳の事が気になり頭を抱えるアンジュ

「だめだぁ、アンジュさんの記録に届かない」

「そろそろ調査結果出てるんじゃないか?メールで聞いてみればいいじゃないか」

ロイスが問いかけるのと同時に項垂れた状態でカレルが帰ってきた、リエラも一緒だ

「わたしヴィヴィオさんのアドレス知らないです」

アンジュのその言葉に全員の視線が集中する

「オイオイ、同じ隊の隊長だぞ」

「憧れの人だったんだよね」

「あの………いざ聞こうってなると緊張しちゃって」

「あの、ちなみにアンジュさん誰のアドレスだったらわかるの?」

リエラの問いかけにアンジュは顔を真っ赤にして蹲りながら

「リオ副隊長と、アルトさん………後部隊長とリインさん」

「「少なっ!」っていうか向こうから教えてくれそうな人ばっかり」

「僕はそれに加えてヴィヴィオ隊長とアインハルト隊長、コロナ副隊長、ユミナ先生、ディエチさん………で全部だな」

額に手を当てつつ指折り数えるロイス

 

昼食後のナカジマ家のソファではディエチが眠っていた

「よっぽど疲れていたのね」

「前例があるとはいえ新設の部隊、しかも責任者の補佐となれば苦労も多いだろうからな」

安心しきった様子で眠るディエチをみて静かに笑いあう3人

「さて、あたしも部屋で少し休むッス」

「じゃあ私たちはディエチの持ってきたデータの検証をしましょう」

「起こさないようにしなくてはな」

 

ヴィヴィオからの報告が終わり自室で仕事をしていたはやて、すると

「遅くなりました、私もクリスも問題なしです、ティオはアインハルトが迎えに来ました」

クリスを抱えたリインが部屋へと入ってきた

「お帰り、メンテナンスチェックご苦労様や………あ、もうこんな時間か」

リインに声をかけつつはやてがふと時計を見るといつのまにか時間がたっていたことに気付いた

「はい、はやてちゃん、シュベルトクロイツと夜天の書、どっちも問題なしです」

そう言ってリインは自身と共にメンテナンスに出していたはやてのデバイスを差し出す

「おおきにな、古代遺失物狩りに目立った動きはないし、静かなもんや」

「ですね、このまま何もないといいんですが」

リインのその言葉にはやては立ち上がり窓の外を見上げた

「嵐の前の静けさでないことを祈ろうか」

 

烏の使い魔である女性が一人歩いていると背後に気配を感じ振り返った

が、そこにいた人物を見て安堵の息を漏らした

「心配無用、次は前のようにはいきませんよ………マスター」

マスターと呼ばれた小さな少女は光のない瞳で彼女を見つめていた




おまけ(ラグナ・グランセニック)
兄との和解を果たしたのち自身も局入りを目指す
入局後はバックスとして活動、警邏業務などに専念する傍ら、兄の背中を追って狙撃手としての訓練を受ける
失明した左目には現在コンタクト型のデバイスを入れ視力を補っている
仕事のサポートが主だが武器としての使用もできるらしい
兄同様魔力値に関しては平均以下だが狙撃に関しては兄譲りの高い腕前を持つ
目標としては兄の背中を守れるようになりたい
また、兄の運転でよく乗せてもらった縁でバイクの操縦ができ自身の愛車を持ち込んでいる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:13 聖騎士と霊王

機動六課、本日の訓練も無事終わり隊員達は隊舎への道を仲良く歩いていた

「新しい訓練にもだいぶ慣れてきましたね」

「君はいいよ変化が少ないから、僕なんかはピーキーだから大変だよ」

アンジュがカイザーの2人のほうを見ると

「そう言えば、見た目に変化がないのって………あれ?リエラさんどうしたんですか?」

「ふぇ?ああ、ごめんなさい、ちょっと疲れちゃって」

額に手を当て歩いていたリエラにアンジュが声をかける

リエラは慌ててアンジュに向きなおった

「アイギスのセカンドモードは集中力を使うからな、しょうがないさ」

「カレルはいいよね、見た目はかなり変わるけど今までのスタイルの延長線だもの」

肩を落としながら恨めしそうにカレルを見るリエラ

ふと、隊舎に近くにきたときクラクションが鳴り響く

「カレルー!早く行くよー!」

ヴィヴィオが車の運転席からこちらを見ていた、助手席にはファビアの姿もある

「あっ!そうか!今行きます!」

ヴィヴィオに呼ばれ慌てて向かうカレル

アンジュとロイスは首をかしげていたが

「ヴィヴィオさん、これから他の執務官の人に会うらしくて、前から同行をお願いしていたんです」

「そう言えば、カレルさんも執務官志望でしたね」

リエラの言葉で思い出したかのようにアンジュが呟く

「現役の執務官から話を聞くまたとない機会だからな」

「カレル、ずっと今日の事楽しみにしてたんですよ」

 

約束の場所へと向かう道中、後部座席に座るカレルは緊張した様子だった

「ヴィクトーリア執務官って、ヴィヴィオさんと同じ競技選手だったんですよね」

「そだよ、元インターミドルの上位選手、大丈夫、ヴィクターさん優しい人だから」

 

アンジュとロイスはリオと共にロビーにいた

「アンジュの眼の事、ヴィヴィオと無限書庫でいろいろ調べてみたの、そしたら………」

リオは一冊の本をアンジュに差出した

「これは………」

「聖王オリヴィエや覇王イングヴァルトと同じ古代ベルカの戦乱を戦った人物、聖騎士アレキサンドラ・マーキュリー」

リオの差し出した古い本には聖騎士と呼ばれた人物の事が書かれた

「でも、そんな名前の人私聞いたことないです」

戸惑うアンジュ、だが同じ姓をもつことから考えてもこの人物がアンジュの先祖であることはほぼ間違いない

リオが表紙をめくるとそこに描かれていた女性はアンジュと同じ面影

そして今のアンジュと同じ鮮やかな銀色の瞳をしていた

 

「アインハルトさんはその聖騎士って人の事何か知らないの?」

コロナと共に警ら作業をしていたアインハルトは彼女の問いかけに首を横に振った

「聖騎士はシュトゥラや聖王家とは縁遠い人物で表の歴史に出ることもほとんどないので、彼女の故郷はもともと貧しい国で、彼女はそれを支えるために望まぬ戦いに身を投じていた、それだけは存じています、オリヴィエもクラウスも直接彼女にあったことはありませんでしたがその武勇だけは耳にしたことがありました」

 

「この本によると、戦いが終わり平穏な日々が訪れることを望んでいた聖騎士はある国が始動させた禁忌兵器を止めようとして命を落としたって」

リオの話を聞き俯くアンジュの肩にロイスが手を置いた

「君と同じだ、優しい人物だったんだな、聖騎士は」

「………はい」

照れながらもロイスの言葉に頷くアンジュ

 

椅子に座り優雅に紅茶を飲んでいるのは黒い制服に身を包んだ女性だった

扉がノックされるとカップを置きそちらを見た

「どうぞ」

「ヴィクター、ヴィヴィちゃん達来たよ~」

「お久しぶりです、ヴィクターさん」

「ありがとう、ジーク」

本局の制服に身を包んだ黒髪の女性、ジークリンデ・エレミアに連れられ部屋にやってくるヴィヴィオとファビア

「久しぶりね、ヴィヴィ、ファビアも」

「お久しぶりです、これ、よかったら」

そう言ってヴィヴィオが持っていた菓子箱を差し出す

「まあ素敵、でしたらお茶でも飲みながらお話しましょう、ここだと狭いからもう少し広い場所で」

 

全員が座れる広い場所に移動するとヴィヴィオが持ってきたシュークリームとジークが淹れた紅茶が全員に渡った

「そちらは?」

「き、機動六課フォワード、カイザー03、カレル・ハラオウンです、お会いできて光栄です」

緊張しつつ自己紹介するカレルにヴィクトーリアは微笑んだ

「初めまして、ヴィクトーリア・ダールグリュンよ、ヴィヴィと同じ元競技選手で今は執務官をしているわ、こっちが私の副官で」

「ジークリンデ・エレミア執務官補、まあ長いからジークでええよ、みんなそう呼ぶし」

そう言って局員証を見せるジーク

 

「逃走ルートの調査と言っても、もうだいぶ経ってるでしょう、今から調査して間に合うのかしら?」

「おっしゃる通りで」

ヴィクターの言葉に肩を落とすヴィヴィオ

「まあ、やらないよりはましと言ったところね、他の事件での逃走経路は分かっているのかしら?」

紅茶を飲みつつ尋ねるヴィクター

「一通りの事件資料をもとにおおよそですけど割り出してあります、詳しいデータはファビアに持ってきてもらっていますけど」

そう言ってデータの一部を映し出すヴィヴィオ

「ならここからさらに絞り込んで調査するのが仕事と言ったところかしら」

「はい、現状だとどうしても後手に回ってしまって、潜伏先を突き止めることが出来れば………」

ヴィヴィオの言葉を聞きながらカップを置くヴィクター

「いいわ、引き受けましょう、捜査主任はエドガーでその補佐にジークをつけます、陸士隊の担当者はどなた?」

「108隊のチンク・ナカジマ二等陸尉です、連絡先は………クリス、お願い」

クリスから連絡先のデータを受け取るとヴィクターは立ち上がった

「少し外させてもらってもかまわないかしら、捜査方針を確認したいから」

「それなら私も一緒に、元々こちらで頼んだ調査ですから」

ヴィヴィオの言葉にヴィクターは静かに頷いた

 

シュークリームを一口食べるとジークとファビアがうっとりとした表情になった

「これおいしいわぁ、魔女っ子もそう思うやろ」

ジークの言葉に頷くファビア

「はぁ~ほっぺた落ちてまいそう、このシュークリームのためやったらいくらでも頑張れる気がするわぁ」

シュークリームに夢中になるジークを見て彼女と同様ヴィクターの補佐官をしている男性、エドガーが咳払いをした

「それよりジーク様、捜査内容の確認を」

「っと、せやったな、あんまりおいしいから夢中になってもうた」

一度フォークを置いて資料に目を通すジーク

「うちらの仕事は追跡調査ってことでええんやな、えっと………」

資料を読み終えたジークはカレルのほうを見る

「カレル君やったな、追跡対象の資料とかある?顔のわかるやつ」

「グラディウスが撮った記録映像なら」

カレルからリニスの映像を受け取るとエドガーと共にまじまじと見つめた

「これが………他の捜査官にも覚えてもらっといた方がええよな」

「では持ち歩きやすいサイズで現像してきます」

「おおきに」

エドガーと入れ替わりにヴィヴィオとヴィクターがやってきた

「打ち合わせは終わったんか?」

「ええ、大体の方針は決まったわ、先方もだいぶ話のわかる方でした、後はどこかに合同捜査本部を敷くことが出来れば」

「その辺はもうリオに頼んであります、決まったらこちらから連絡いたしますね」

 

そのリオはアンジュを引き連れ聖王教会で責任者の騎士カリム、シスターシャッハとの打ち合わせを終えたところだった

「「ありがとうございました」」

騎士カリムとの話し合いを終え礼をするリオとアンジュ

「どういたしまして、少し中庭でお茶して言ったらどうかしら?ディードが会いたがっていたわよ、もうすぐ帰ってくると思うから」

「えへへ、じゃあお言葉に甘えさせてもらいますね」

騎士カリムとリオのやり取りを見ていたアンジュは首をかしげる

「リオ副隊長ってここにはよく来るんですか?」

「「「え?」」」

アンジュのその言葉にリオだけでなくカリムやシャッハも目を見開いた

「あ、ああ~!そう言えば言ってなかったね、あたしはもともとここの所属だから、騎士カリムとは上司と部下の関係」

「………え?ってことはリオ副隊長って」

「現役のシスター」

「騎士団の分隊長をしています、今は出向中で代理に任せてありますが」

驚くアンジュの言葉をカリムとシャッハが繋ぐ

 

「外部出向とは聞いていたけどまさか聖王教会の人だったなんて」

「ま、リオが教会入ったのは魔法戦競技を引退してからだから知らないのも無理ないか」

水色のショートヘアのシスター、セインの案内で中庭に向かうアンジュ

すると正面から黄色いリボンにブラウンのロングヘアーが印象的なシスターがこちらに向かって走ってくるのが見えた

「おー、ディードお帰り、首都への出張どうだった?」

「そ、それより、シスターリオが帰ってきてると」

「六課の用事で来ただけだけどね、今騎士カリムと話してる」

疲れた様子のディードを見て苦笑するセイン

「中庭で待ってなよ、リオもあとから来るから」

「ではそうします、そちらは………」

アンジュに気付き声をかけようとするディード

だが首元に下げられたペンダントが点滅したのでそちらを優先する

「失礼します………あ、オットー、何かあったの?………うん、わかった」

「あの、シスターセイン」

「あ、セインでいいよ」

緊張しながらも声をかけたアンジュにいつも通りの砕けた態度で返すセイン

「ではセインさん、こちらの方は?」

「ん?ディードって言ってね、ここのシスターでリオの選手時代のコーチ、今はリオの剣術の師匠兼教育係」

 

一方リオは騎士カリムから預言者の著書に関する話を聞いていた

「これが最新の預言を書きだしたもの」

カリムから受け取った紙にリオが簡単にではあるが目を通して見る

「気になる文面がいくつかあって………」

「亡者の王、光の騎士、禁忌の力………気になるのはこの三つですね」

「そう、そのうち2つは大体の解釈が出来てる」

真剣な表情で指折り数える騎士カリム

「光の騎士に関しては、聖騎士の末裔のアンジュが関係している可能性が」

「そう、だからあの子も連れてきてもらったの」

そのアンジュは現在中庭でセインやディードと楽しく話している最中だった

「そして2つ目は亡者の王、これはイクスに聞いてわかったの、古代ベルカ、聖王戦争時代に、力による支配を目論んだ、歴史上最悪の王」

「破壊と殺戮を好み、武力をもって近隣諸国を一方的にねじふせた独裁者」

カリムの言葉に続くようにシャッハが重苦しい表情で口を開いた

「【霊王】グレゴール・ヴォクスター」




おまけ(ギンガ・ナカジマ)
ヴィヴィオたちの中等部卒業の直後
所属していた陸士108隊の隊長であり父であるゲンヤ・ナカジマが地上本部の捜査官長となった
その時点ですでに一等陸尉となっていた彼女はチンクの推薦で父の後任として部隊長に着任
同時に三等陸佐に昇進、父親譲りの手腕で隊を引っ張っていく
部隊長となって以降色々あるのか以前にもましてたくさん食べるようになった
体重が増えないのが幸いだがさすがに恥ずかしくなってきたらしい
それでも食べることをやめないのは部隊長という職に立つうえで苦労が絶えないからだろうとは周囲の談


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:14 合同作戦

機動六課、本日の任務は発掘隊の護衛

出土した古代遺失物を敵が狙う可能性があるため機動六課が護衛に着くこととなった

今回発掘隊のリーダーを務めているのは考古学者であり無限書庫の司書長でもあるユーノ・スクライア

はやてやヴィヴィオ達とも縁深い人物である

「けど、このタイミングで発掘作業なんて盗りに来いといってるようなもんなんじゃ」

古代遺失物狩りの出現が懸念される現状、思わずロイスはそう呟くが

「それは違うよ、盗られない為の発掘さ、古代遺失物狩りが盗掘なんかの方法を使う可能性はゼロじゃないからね、そういうのを未然に防ぐためにも発掘を続けていかなくちゃいけないんだ」

そんなロイスに対して近くで壁画を調べていたユーノが声をかけた

「なるほど、考え方もいろいろですね」

「ユーノ司書長!こっちでなんか出てきました」

「あ、ああ、今行くよ」

ヴィヴィオに呼ばれユーノがそちらに向かう

 

一方チンクは付き添いの局員と共にある場所を訪ねていた

霊王と今回の事件の関連性、それらを知る可能性の高い人物の下へ

鉄格子の向こうにいる人物を確認すると向き合うように座るチンク

「お久しぶりです………ドクター」

ジェイル・スカリエッティ

元広域次元犯罪者で大規模テロ事件、JS事件の首謀者

かつて機動六課の活躍で逮捕され、現在はここ、第9無人世界グリューエンの軌道拘置所に収監されている

「久しいねチンク、息災かい」

「ええ、妹達もみんな元気にしています………ですが、今日は仕事で来ています」

チンクの真剣なまなざしにスカリエッティはため息を零した

「また何か尋ねごとかい?まぁ、ちょうど退屈していたところだ、話くらいは聞こうか」

「あなたなら存じていると思いまして、霊王と聖騎士、そしてそれらに関係していると思われる禁忌の力について」

チンクの言葉にスカリエッティはしばし考える様子を見せる

「フム、聖騎士の末裔は確か随分前に火事で死んだと記憶しているが」

「娘が一人、生き残って現在管理局で働いています」

「ああ、生き残りがいたのか、で、それがわかっているなら本命は残りの2つか」

スカリエッティの言葉にチンクは無言のまま頷く

「霊王か………随分昔に調べてみたことがある、が、ただで話すわけにも」

「わかっています、今回は急を要していますので先にお持ちしました」

そう言ってチンクは持参した紙袋からワインのボトルを一つ取り出した

「すでに許可は得ています、どうぞ」

「なるほど、流石だチンク、よくわかっているじゃないか」

「長い付き合いですから、それで」

「霊王の名の由来と言うのは死者の魂を利用した兵器を好んで用いたからと言われている、まあ、そのせいか随分嫌われていたみたいだがね」

「その兵器についてはすでに出現が確認されています、記録上消滅した筈の使い魔が現れました」

「ほう………誰の使い魔かわかるかい?」

スカリエッティの問いかけにチンクは若干言い淀むが

「………プレシア・テスタロッサ氏です」

それを聞いてスカリエッティは額に手を当て突然大声で笑い始めた

「あー、彼の仕業だね、間違いない」

「何か御存じなのですね!?」

チンクの問いかけにスカリエッティは彼女を見ると

「霊王の末裔は確かに実在する、もっとも、私が直接会ったわけではないので名前も居場所もわからない、まあ、知っていたとしても役には立たなかっただろうがね」

「いえ、確証が得られて安心しました」

「そうかい、じゃあ代わりにひとつ面白い話をしてあげよう」

立ち去ろうとしていたチンクはスカリエッティの言葉に振り返った

「霊王はね、死者兵器のほかに禁忌兵器を所持していたんだ、どんなものかまでは知らないがね、ベルカ戦争時代、聖騎士の国を滅ぼし彼女の命を奪ったのは霊王の国の兵器だ」

それを聞いたチンクは驚き目を見開く、だが表面上平静を装い礼をして立ち去った

スカリエッティは受け取ったワインを見つめふと考え込んだ

「そう言えば君は彼と面識があったね………」

 

一方こちらは第3管理世界ヴァイゼン

ジークはここで違法盗掘を行っていた人物の引き渡しを行う予定だった

だがいざやってくると捜査員達の様子がおかしい、何やら慌てた様子で話し合っている

捜査員の一人がジークに気付き彼女に敬礼をする

「次元航行部隊、執務官補のジークリンデ・エレミアです、予定していた容疑者の引き渡しに来たんですが………」

「はい、お伺いしております、容疑者はこちらに………ですが」

「三人と窺っていたんですが………一人足らんようですね」

「それと、押収した所持品の中から古代遺失物(ロストロギア)と思われるものが持ち去られていて」

「………まさか」

それを聞いたジークはしばし考え込むと

「容疑者の人たちと少々話をしてもよろしいですか」

 

「次元干渉型の古代遺失物(ロストロギア)!?」

ジークからの通信を受けヴィヴィオは驚きの声を上げた

「せや、犯人グループが以前手に入れたものをミッド廃棄区画にひそかに隠していたらしいねん、狙いは多分………」

「でも、ついさっきこっちでも古代遺失物(ロストロギア)が見つかって」

「部隊を二つに分けるしかありませんね」

アインハルトの言う通り

どちらに敵が来てもおかしくない状況では部隊を分けて対応するしかない

だが戦力が分散してしまうのは危険だ、ヴィヴィオ達が悩んでいると

「私も力を貸そう」

「うちもや、元々うちの言いだしたことやし」

チンクとジークが協力を申し出た

「ヴィヴィオさん、やらせてください」

アンジュも志願したことでヴィヴィオの覚悟も決まった

「よし、じゃあちょっと危ないけど隊も分けるね、カレルとアンジュは私とリオと一緒にミッドへ向かう、ロイスとリエラはここに残って警護を続けて」

隊を分ける、ヴィヴィオのその指示に一瞬困惑する、だがすぐにその意図は理解出来た

ミッドへ向かうカレルとアンジュは機動力の高い二人、対して残って警護するのは防御に向いたリエラとロイスだ

「では私とコロナさんはここに残って指揮を」

「うちの今おるとこやとハルにゃんたちのほうが近いんやけど………」

「私も異存はない、こちらは廃棄都市区画に向かおう」

増援の二人も目的地は決まった

「お願いします、それじゃあ行くよ、リオ、カレル、アンジュ!」

「みんな、気をつけてくれ」

ヴィヴィオ達の去り際ユーノが声をかける、その言葉にヴィヴィオも手を挙げて答えた

 

スカリエッティとの面会を終えていたチンクはすでにミッドチルダに来ていた

廃棄都市区画に向けて全速力で走る

「意外と早い初陣になってしまったな」

懐から取り出した淡い黄色のクリスタルがついたネックレスを見つめ呟くチンク

見た目はディエチのスマッシュカノンに酷似している

廃棄都市区画に入るとチンクはジャンプして高く飛び上がった

「ネオスティンガー!セットアップ!」

声と共にチンクの体が光に包まれた

 

廃棄都市区画を見渡す高いビルの上でヴィヴィオは待機していた

「リオ、そっちはどう?」

 

ヴィヴィオからの念話を受け取りながらリオはアンジュとカレルを引き連れ走っていた

「ジークさんの情報をもとに向かってる所、まずはチンクさんと合流して…………」

リオが言いかけると黒い魔力弾が降り注ぐ

「そうはさせなくてよ」

黒い羽根で使い魔が空から彼女達を見下ろしていた

「あんたはリニスの仲間の!」

「カラス女!」

カレルの発言にガクッとなる

「失礼ね、あたしにはサマーラっていう名前があるんだから!あたしが守護獣だからって差別すんじゃないわよ」

「初めて聞いたよ!」

サマーラの言葉に突っ込みながらリオはあることに気付く

「っていうか今守護獣って言った!?ってことは………」

「え?何?どう違うんですか?」

アンジュはリオの言ってることが理解できず首をかしげていたが

「守護獣は真正古代ベルカで使われる呼称だ、つまりこいつの主人は真正古代ベルカ」

いつのまにかグラディウスを構えたカレルがアンジュの疑問に答える

「だから何?あんた達には関係ない事、古代遺失物はあたしがいただくわ」

魔力弾でリオたちの動きを止めるとサマーラは一直線にある場所に向かう

「情報では確かここに………」

「お前達の好きにさせるわけにはいかない」

ある廃ビルの中に入り込んだサマーラに向けてナイフのようなものが投げつけられる

「誰!?」

サマーラの視線の先には濃いグレーのコートを羽織り紫を基調としたバリアジャケットを身にまとうチンクの姿、両手にはクリスタルのついたグローブをしている

「陸士108隊、部隊長補佐、チンク・ナカジマ二等陸尉」

 

遺跡のアインハルトたちに向けて魔力弾が降り注ぐ

リエラがアイギスを使いその攻撃を無傷で凌いでみせる

「もうやめて!リニス!」

必死に呼びかけるリエラだったがリニスは意に介さず攻撃を続けてくる

「(リニスには届かないの………私たちの声………)」

「諦めたらあかんよ」

涙を流すリエラの言葉を遮るようにリニスの砲撃を何者かが引き裂いた

「あっ………」

黒いバリアジャケットを纏い長い黒髪を靡かせリニスを見据えるのは

「届かないやない、届かせるんや、あの人に君らの声を」

「「ジークさん!」」

元インターミドルチャンピオン、現在は執務官補を務めるジークリンデ・エレミアだった

「ハルにゃん!コロにゃん!久しぶりやわぁ!二人とも元気しとった?」

両腕を振りながらアインハルトとコロナに声をかけるジーク

「あ、はい、ご無沙汰しております」

「ですが今はそんな場合では………」

そんな彼女にリニスが砲撃を放つが

「ふっ」

ジークは掌底を放ちその砲撃を打ち消した

「あかんよ、あんたの事きれいな思い出のまま覚えておきたい人がおるんや」

リエラの方をチラ見しつつ言い放つジーク

 

「ネオ!」

「Stinger」

どこから現れたのか鋭いナイフのようなものがチンクの手の中に納まる

すぐさまチンクはそれをサマーラに向け投げつけた

当然サマーラはそれを回避するが

「爆ぜろ!」

「Rumble Detonator」

チンクの詠唱と共に投げられたナイフが爆発し爆風でサマーラはバランスを体勢を崩し倒れた

「悪いが高ぶる気持ちを抑えられん、手加減できないから覚悟しておけ」

新たなナイフを出現させながらサマーラにそう宣言するチンク

 

「一緒に思い出を過ごした人の心を踏みにじるような真似、うちは絶対ゆるさへんで」

リニスを見据えるジークの瞳には確かな闘志が宿っていた




おまけ(ヴィクトーリア・ダールグリュン)
競技選手を引退した後時空管理局へ入局
雷帝の血と高い実力、持ち前の人当たりの良さから流れるように昇進
入局後2年で執務官試験に合格
すぐに局内でその名が知れ渡ることになる
自身の副官として彼女と共に入局したエドガー
そして選手時代からの友人であるジークを置いている
現在の魔導師ランクはSSランク


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:15 新たなる影

爆発と共に廃ビルからサマーラが飛び出した

「とにかくあいつを引き離さないと」

そう言ってサマーラは廃棄都市区画を飛び回るが

「逃がさんぞ、ネオ!」

「Consent」

チンクはスティンガーを投げつけるとサマーラの進路上の建物に突き刺した

更に魔力で構成されたワイヤーによりチンクの体が引っ張られサマーラの目の前に到達した

「なにっ!」

「Stinger」

すぐさまチンクはサマーラに向けてスティンガーを投げつける

「爆ぜろ!」

爆風で吹き飛ばされたサマーラ、次の瞬間アンジュとロイスが拳と剣を構えサマーラを見据えた

 

「ほないくでハルにゃん!」

「はいっ!」

若干戸惑いながらもジークに続くアインハルト

リニスの電撃をかいくぐり掌打を叩きこむジーク

「行きますよ」

背後に回ったアインハルトが腕を勢いよく引いた

次の瞬間リニスの首筋めがけて回転の勢いを加えた強烈な肘打ちが決まる

「うわっ」

「えぐい攻撃するなぁアインハルト隊長」

「聞こえていますよ!」

その攻撃を見たユーノとカレルが軽く引いたが

「ハルにゃん後ろ!」

先ほどのダメージなど全く感じていないかのように立ち上がったリニスがアインハルトに襲い掛かるが

「アイギス!ギアセカンド!」

小さな盾のようなものが現れたかと思うと防護魔法がアインハルトを守った

「ナイスフォローです、リエラさん」

アイギスを構えるリエラの周りには同じような盾がもう一つ浮いていた

「あの小さな盾は?」

「防御魔法を同時発動するためのビットです、アイギスのモード2は複数個所での防御が可能になるんです、その分魔法の維持や発動にこれまで以上の集中力を使うんですが」

ユーノの問いかけに答えると自身もリヴァイアスを構えた

「それじゃ、僕らも行くぞ、リヴァイアス」

「OK, second form activated」

リヴァイアスが輝くと同時にロイスの周りを水が渦巻く

また、彼のバリアジャケットにも変化が見られた

「へえ、君はバリアジャケットも変わるんだ」

「この形態になると装甲少し減らさないと制御しきれないんですよ、その分火力は上がるんですけど扱いづらいんですよね」

ユーノの言葉にため息をつきながら答えるロイス

 

「「ギアセカンド!」」

「「Anfang」」

アンジュの体が銀色の光に包まれグラディウスが銃のような形に変化する

「ディバインバスター!」

拳に溜めこんだ魔力を打ち出すアンジュ

「トライデントスティンガー!」

3つに枝分かれした直射砲撃がグラディウスから放たれる

サマーラが何とかその攻撃から逃れると

「リヒトフリューゲル!」

「駆けろ!ソニックムーブ!」

アンジュとカレルが追撃する、カレルほどではないにせよアンジュもまたかなりの速さでサマーラに迫る

「しつこいわね」

サマーラは追撃してくる二人に向けて攻撃を放とうと振り返るが

「ケイジングサークル!」

その隙にヴィヴィオが魔力の輪を生成しサマーラの動きを止めた

「しまった!」

「シャイニングセイバー!」

「ジェットザンバー!」

アンジュとカレルの同時攻撃を受け吹っ飛ばされるサマーラ

更に両サイドのビルに待機していたヴィヴィオとリオが構えた

「ディバインバスター!」

「紅蓮吼牙!」

ヴィヴィオとリオの砲撃を受け落下するサマーラ

すぐさまヴィヴィオがビルから飛び降りてバインドをかける

駆け付けたリオが気絶したサマーラを掴んで抱える

「これであとは古代遺失物(ロストロギア)だけど………」

「それなら問題ない」

ヴィヴィオの言葉を遮ったのはチンクだった

「私がこいつらを引き付けてる間に姉上達が秘密裏に運び出す算段だった、先ほど移送が完了したと連絡があったよ」

「えっと………」

アンジュが戸惑っているとチンクがこちらに気付きウインドウを表示する

「陸士108隊部隊長補佐のチンクだ、アンジュ………だったな、よろしく頼む」

「えっ!?私の事………」

「妹からのメールで知っている」

「チンクさんは、ディエチさんのお姉さんなの」

「おね…えっ!?」

アンジュの驚きぶりに何かを察した一同の表情には苦笑いが浮かぶ

眉を顰めるチンクから死角になる位置にいたヴィヴィオが目配せしながらこっそり指先で黙っているように伝える

ちなみにカレルはチンクとは何度か面識があるのでアンジュの反応にウケて笑っているだけだった

 

「渦巻け!リヴァイアス!」

ロイスがリヴァイアスを振るうと同時にリニスの足もとから水柱がいくつも現れる

飛び上がったリニスに向けてゴライアスが拳を振り下ろす

だがリニスはそれをかわすとゴライアスを駆け上がっていく

コロナの横を通り抜けると砲撃でゴライアス諸共コロナを狙い撃つ

だがリエラの盾がコロナを守った

「ゴライアス!」

崩壊したゴライアスをコロナが瞬時に組み直す

「ギガントナックル」

再びゴライアスがリニスに向けて拳を振り下ろす、さらに

「覇王空破断」

アインハルトの攻撃が同時にリニスに炸裂する

何とか持ちこたえたリニスの背後にジークが突然現れる

「こいつで………」

右腕に魔力を纏うジーク

「しまいやぁ!」

そのままリニスの背中に攻撃を叩きこむ

落下したリニスに向けてリエラがアイギスを掲げる

「(ここでストラグルバインドを使えば、リニスを正気に戻せるかもしれない)」

ストラグルバインドは捕縛魔法だが対象者の強化魔法を解除する効果がある

もしこれでリニスにかけられた精神操作を解くことができれば………

「フェイト姉達が大好きだった優しいリニスに戻すんだ!力を貸して!アイギス!」

リエラの声とともにアイギスが強く輝く

「Struggle Bind」

 

「さ、そろそろ行くぞ」

「あ、サマーラはあたしが連れてくよ」

気絶したサマーラをチンクが持ち上げようとした

だがリオがそれを制してサマーラを担ぐ、次の瞬間

「っ!?」

ローブを被った何者かが高速でリオに向かってきた、間一髪スティンガーを構えたチンクがその攻撃を受け止める

 

「あっ………」

捕縛魔法を発動しようとしていたリエラは背後からの攻撃で背中を切り裂かれた

「リエラ!」

「リエラさん!」

突然の乱入者に驚く一同

「ケヴァイア・クーゲル!」

すぐさまジークが乱入者に向けてを放つ

だが鋭い爪がローブの下から現れたかと思うとジークの弾幕を容易く切り裂いた

「なっ!?高密度弾を引き裂いた!?」

「(あかん、“今”のうちやと勝たれへん)」

その光景を見て唇を噛むジーク

だが次の瞬間背後から感じる魔力に寒気を感じた

「しもた!リニス!」

乱入者に気を取られた隙に復活したリニスがファランクスの発射態勢に入っていた

「ゴライアス!皆を守って!」

コロナが2体のゴライアスを追加で創成して守りに入ろうとする

だが一足遅くリニスの攻撃が放たれた、ゴライアスのスピードでは追いつけない

 

「くっ、なんて重い一撃だ」

かろうじて攻撃を受け止めたチンクだが攻撃の勢いが強すぎて競り負けそうだ

「ネオ!」

素早く腕を振るうと移動にも使われた魔力のワイヤーが乱入者を捕える形になる

だが素早い動きで乱入者はそれを回避、チンクに向けて鋭い蹴りを放つ

そしてチンクは一連の動作を見て気付いた

「(移動時に聞こえるこの音、それにこの動き………シューティングアーツ!?)まさか!」

チンクの中である一つの結論にたどりつくとすぐさまそれを確認するためスティンガーを大量に出現させる

「できれば外れていてほしい、が、その正体見えた!」

チンクのランブルデトネイターによって起こった爆発が乱入者のローブを吹き飛ばす

 

リニスの放ったファランクスが炸裂し辺りが煙に包まれる

「まったく、世話の焼ける補佐官ですわね」

煙を切り裂いて現れたのは重厚な鎧を思わせるバリアジャケットに身を包んだヴィクターだった

どうやら彼女がリニスの攻撃を相殺したようだ

だがすでにリニスと乱入者の姿はなく逃亡した様子

「ナイスやヴィクター、助かったわ」

「私だけではないわ」

そう言ってヴィクターの向く先にはバリアジャケット姿のディエチが、彼女も救援に来ていたようだ、

リニスと乱入者の気配がないことを確認した彼女はカノンを待機状態に戻す、その表情はどこか浮かない様子だ

「どうかしたのかしら?」

「乱入してきたほうの霊魂兵器、敵に気付かせない隠密術と鋭い爪、ジークが追ってた犯行グループに紛れ込んだのもあの人………」

 

爆風がやむと乱入者の姿はなくリオが担いでいたはずのサマーラの姿も消えていた

「逃げたか、済まない、派手な爆発が裏目に出てしまった」

「それよりチンクさん、正体見えた、って言ってましたよね、あの乱入者に心当たりが?」

アンジュの問いかけにチンクは暗い表情で俯いた

「あの霊魂兵器が使っていたのは魔法と格闘術の複合戦闘術、シューティングアーツ!あれほどの使い手となると一人しかいない」

「戦闘機人、ナンバーズの一人、ナンバー2、ドゥーエ」

「元時空管理局地上部隊捜査官、クイント・ナカジマ」

ディエチとチンクが告げるとほぼ同時刻、どこかの森の中

ヴィヴィオ達との戦いで倒れたサマーラが小さな少女に介抱されている

そこへやってくるサマーラを見下ろす二人の女性、ドゥーエとクイントの姿があった




おまけ(ユミナ・アングレイヴ)
中等科卒業後も院生としてしばらくは在学
学士資格を習得し卒業後はノーヴェの紹介でシャマルに師事
医療の道へ進み時空管理局の医局員として勤務
昨年主任医務官の資格を習得しはやての誘いとシャマルの推薦もあって六課の主任医務官へ
疲れた隊員たちに得意のマッサージを施すのが日課となっている
フォワード陣のほか隊長陣などもよく彼女のマッサージを受けている
また、六課にくる以前からアインハルトの主治医も務めており
プライベートでも彼女と過ごすことが多い
かつての夢であったスポーツドクターもナカジマジム専属として勤めている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:16 カルナージ

機動六課では現在ディエチとチンクが六課隊員やヴィクター達と話しあっているところだった

ディエチの瞳がカメラのレンズのように動いている

「これが戦闘機人、違法技術によって生み出された機械の体を持つ人造魔導師」

「件の乱入者、クイント・ナカジマ氏はこの戦闘機人に関する事件を追ってる最中殉職した管理局の元捜査官、地上本部のゲンヤ・ナカジマ捜査官長の妻にあたる人物だった」

ディエチとチンクの説明を聞いて遠慮がちにアンジュが手を上げる

「あの、ディエチさん達もその………戦闘機人?なんですよね?それがなんで今は………」

「我々の製作者、ジェイル・スカリエッティ氏が逮捕された際管理局に拾われてな、その時に手を汚したこともあったが、今は縁あってゲンヤ・ナカジマ捜査官長の養子として引き取っていただいている」

「もう一人の乱入者、ドゥーエは私たちと製作者を同じとする戦闘機人、ある事件で命を落としたの」

「信じられません、ディエチさんみたいな優しい人が………」

ロイスの言葉にディエチは笑いかけると

「でも、事実だよ、特秘事項だから知らない人も多いけど、あたしは去年保護観察期間を終えたばかり、だからって罪が消えた、なんて思っちゃいないけど、でも、今のロイスみたいなこと言ってもらえるとちょっと嬉しいな」

「私も最初聞いた時は信じられませんでした」

ディエチの言葉を繋ぐアインハルトも重苦しい表情だった

「そしてこの二人が現れた以上、高い確率で出現が予想される人物が一人」

チンクの言葉と共にドゥーエ、クイントを表示していた画面が切り替わり一人の男性が映る

「ゼスト・グランガイツ、元首都防衛隊のオーバーSランクの騎士だ」

 

会議が終わりセイクリッドの面々が隊舎を移動していた

「オーバーS、そんな相手まで出てくる可能性があるんですよね」

「私たち………勝てるのかな………」

不安げに呟くロイスとアンジュの肩をリオが力強く叩いた

「大丈夫、こっちだって何の準備もしないわけじゃないよ」

リオの言葉と同時に前を歩いていたヴィヴィオが振り返る

「どんな相手が来てもいいよう、集中強化訓練、結果次第じゃデバイスのロックも外していくから」

 

数日後、ヴィヴィオの運転する車でフォワード達ははやて、リインと共に次元港を目指していた

また、今回の訓練の結果次第でデバイスロックが解除されるということでマリーも同行している

「八神部隊長もいらっしゃるんですね」

「ああ、部隊の方は交替部隊に任せてあるから心配いらんよ、ディエチやチンクとは現地で合流や、出先から直接向かうそうやから」

「スペシャルメニューも用意したから、楽しみにしててよ」

そう言ってピースサインを作るコロナ

 

次元港内を移動する六課一同、すると突然何者かがヴィヴィオに飛び着いてきた

「ヴィヴィオ~!会いたかったよ~!」

なのはが涙ながらヴィヴィオにすり寄る

「た!高町なのは教導官!?なんで!?」

「なんでってなのはちゃんも一緒に行くからや」

「久々にヴィヴィオと一緒の旅行だからってテンションあがりっぱなしで大変だったぜ」

ため息交じりにはやての傍らにやってくるヴィータ

ヴィヴィオは半分呆れながらもされるがまま

後に本人の語ったところによるとこうなる気はしてましたとのこと

「だってだって、ヴィヴィオ執務官として独立してから家にもなかなか帰ってこないし」

とても航空戦技教導隊のエースオブエースと呼ばれてる人物に見えない様にアンジュとロイスが幻滅していると

「相変わらずにぎやかだな」

「ヴィヴィオ、カレル、リエラ、久しぶり」

筋骨隆々の肉体を持つ男性とブロンドの長髪の女性がやってきた

「ザフィーラ!」

「「フェイト姉!」」

「なんや珍しい組み合わせやな、シグナム達は一緒じゃないん?」

「シグナムは仕事先から直接向かうと」

「シャマル先生は一足先に向かったよ」

ふとここでアンジュとロイスが何かに気付いた

「フェイトって名前、確か前に………」

「あ、アンジュとロイスだよね、アルフから話は聞いてるよ」

「フェイト姉はアルフのマスターなんです」

「あー!そうだ!海鳴に行った時の!」

アルフの名前を聞いて思い出すアンジュとロイス

そんな二人の様子を見てはやてが助け舟を出す

「二人には名字の方が通りがええかも、な、テスタロッサ・ハラオウン提督」

「その名前は知っている!局内でも有名人だ」

「名前だけだとピンと来なかったけど、私も聞いたことある」

「っていうかなのはちゃんいい加減ヴィヴィオ離したりや、ぐったりしとるやん」

出発前から疲れてしまったヴィヴィオの額をぽんぽん叩くクリス

「だってだって、お仕事の話とか聞きたいし、しかも強くなったヴィヴィオと」

「だめー!それまだ内緒!」

何かを言いかけたなのはの口をヴィヴィオが慌てて塞ぎクリスが両手でバツを作った

 

やがて臨行次元船に乗り訓練の場所、カロナージへとやってきた一向

「さ、ここが目的地」

ヴィヴィオが示す先には立派なロッジが

「ようやく来たか」

「待ちくたびれちゃったよ」

「はやてちゃん、皆、久しぶり」

そんな一行を出迎えた3人の女性

「シグナム、アギト!元気そうやな」

「シャマル先生もお久しぶりです、いつも母がお世話になってます」

「ちょっとヴィヴィオ~、真っ先にそれ~?ヴィヴィオだって肘を壊した時お世話になったでしょ」

未だテンションの高いなのははヴィヴィオの言葉にむくれる

「まあまあなのは」

「そう言えば、ディエチさん達先に来てるはずだけど………」

「先に中に入って待ってるよ」

そう言って薪を抱えながら現れたのは背の高い二人の男性

「エリオ!トーマ!」

「初めまして、エリオ・モンディアルです」

「トーマ・アヴェニール、よろしく、さ、いつまでもここにいないで中に入ろう、スゥちゃん達ももう来てるから」

トーマに促されるままに中に入る一向

「あ、なのはさーん!皆―!」

「こっちですー!」

ロビーらしきところでディエチとチンク、それに彼女と話す女性達の姿も

 

「アンジュとロイスは初めてだよね………えっと、じゃあ、スバルから」

「はい、港湾特別救助隊所属、スバル・ナカジマです」

「こう見えて防災司令の候補として名前が上がるほどの人物だ、通称シルバーのエース」

チンクの説明にアンジュとロイスは驚き声を上げる

「えへへ、まあでも、私は指示とかより、現場で走り回ってる方が向いてるから、その話は辞退したんだけど、じゃあ次、ノーヴェ」

スバルは照れながらも隣にいたノーヴェに順番を回す

「うっし、ノーヴェ・ナカジマ、昔はスバルやディエチ達と一緒に救助隊でも働いてたんだけど、局で働くより子供達に魔法や格闘技教えて行きたいって思って、掛け持ちだった局の仕事を引退、指導者一本に絞って、いまはクラナガンでジムを経営してる、んじゃ、次ウェンディ」

ノーヴェの言葉と共に元気よく立ち上がる女性

「えー、ご紹介にあずかりました、ウェンディ・ナカジマ、救助隊にいたこともあるんッスけど、今は次元航行部隊の執務官補、船じゃ捜査主任やってるッス、んでこっちがあたしの上司の………」

「ティアナ・ランスターです、ヴィヴィオやフェイトさんと同じ執務官、あたしやスバルも昔は六課にいて、なのはさん達の教えを受けてたの、ちなみにスバルとは訓練校時代からの腐れ縁」

「ティア酷~い、そんないいかたないじゃん」

「うっさい!エリオ、次あんたよ」

「あ、僕はさっき表で済ませたから」

「じゃあ私だね」

そう言って立ち上がった女性を見てアンジュとロイスは首をかしげる

「あれ?どこかで見たような………」

「僕も何となく見覚えが」

「初めまして、キャロ・ル・ルシエです」

「「あっ!」」

名前を聞いた途端アンジュとロイスがいきなり大声を上げた

「思い出しました、私この人の本読んだことありますよ!」

「僕もある!生物学者のキャロ・ル・ルシエ博士!論文も出していましたよね!」

「そんな博士なんて、本業は局の魔導師で辺境自然保護隊に所属しているの、密漁者の取り締まりなんかが主なお仕事」

「有名人だねキャロ姉」

照れるキャロをリエラがニヤニヤしながらつつく

「そんなんじゃないって、ほら次、ルーちゃんだよ」

「はーい、このロッジ、ホテルアルピーノのオーナー、ルーテシア・アルピーノです」

「あっ、確か前に雑誌で見たことが」

「ありがと、元々は遊びに来てくれるヴィヴィオや友達をもてなすために始めたんだけど、だんだん本気になってきちゃってね」

と、ここで黒い無骨な恰好の生物が紅茶を持って現れた

慣れた手つきで全員にお茶を配るとそのまま立ち去る

「えっと………今のは?」

呆気にとられつつロイスが手を挙げ尋ねる

「私の召喚虫で大事な家族、ガリューって言うの、私こう見えて召喚魔導師なの、さ、リリィで最後だよ」

ルーテシアの言葉で最後の一人である柔らかい物腰の女性が立ち上がる

「リリィ・シュトロゼックです、トーマと一緒に災害派遣部隊で働いています」

リリィの言葉にアンジュとロイスは首をかしげる

「えっと、その災害派遣部隊って言うのは」

「文明の整ってない辺境や異世界で起こった災害なんかに対応するために派遣される、まあ、特救の異世界版って考えればいいよ」

アンジュの疑問にトーマが代わりに答えた

「ある事件でトーマと知り合って、いろいろ助けてもらって、トーマが災害派遣の仕事をしたいって言った時無理言ってついてきたの」

「俺、故郷で大きな事故にあって、家族もみんな死んじゃって、スゥちゃん」

「あ、あたしのことね、その事故の後で身寄りを亡くしたトーマを保護したの」

トーマの話に割って入って手を上げるスバル

「に、助けてもらうまでずっと一人ぼっちで、いろいろあって、俺もスゥちゃんと同じ災害救助の仕事に着くことにしたんだ」

「じゃ、こっちも自己紹介しちゃおうか、じゃあアンジュ」

「あ、はい!セイクリッド所属、アンジュ・マーキュリーです、小さい頃見たインターミドルの試合で………」

 

こうして自己紹介を終えしばらく談笑すると

「それじゃそろそろ訓練を始めるね」

コロナの言葉にフォワード達は首をかしげる

「じゃあ、アンジュとカレルは私と一緒に来て」

そう言ってウインクしながらヴィヴィオがロッジの裏手の方を指さす

 

アンジュとカレルはヴィヴィオと共に水着姿で川辺にやってきていた

「あの、ここで何を………」

「はい、カレルはこれ」

そう言って布に包まれた細い棒状のものを投げて渡すヴィヴィオ

「リオに借りた練習用の木刀、それ持ってついてきて」

そう言って一人ヴィヴィオは川の中に入ると中心付近で深呼吸する

「いいもの見えてあげる」

そう言ってヴィヴィオが拳を振るうと水柱が立ち川の水が綺麗に割れた

「これが………ヴィヴィオさんの格闘技」

初めて間近で見たその姿にアンジュの瞳は輝いていた

 

リオが腰に下げた二本の刀を手にとると刀身に炎と雷が纏われた

「じゃ、本気で行くからね」

「お願いします」

アイギスを構えたリエラがリオの言葉に全力で答える

ロイスもまた2体のゴライアスを相手に奮闘していた

 

ロビーで休んでいたスバルだったがアンジュ達のいる川辺の方角から大きな音が鳴ったのを見て笑みを零した

その川辺ではヴィヴィオに教わりながらアンジュが水きりに挑戦していた




おまけ(チンク・ナカジマ)
ギンガの隊長就任と同時に彼女の副官として努めていくことに
局員として以前から注目されていた彼女だが部隊長就任の話を蹴って副官の座に落ち着いた
それでもギンガ曰く自分が部隊長としてやっていけてるのは自分を支え隊員たちをまとめ上げる彼女の存在があってこそらしい
魔導師としても高い実力を持つ彼女だがデバイスを持つことは懐疑的であった
現在ではパートナーとなったネオと良き関係となっている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:17 最終試練

「とりあえず今日はここまで」

「あ、ありがとうございました………」

フォワード達が4人まとめて地面に倒れ伏していた

「みんな大丈夫?」

そんな彼女たちをリオが覗き込む

「し、しばらく休めば大丈夫だと………」

 

テラスの水飲み場で頭から水を被るアンジュ

「しかし、やっぱり隊長たちはすごいな、コロナ副隊長、あんな大型のゴーレムを2体も同時に操作するなんて」

「あ、本気になればもう一体出せるって聞いた」

「えっ!?」

リエラの言葉に青い顔になるロイス

「よぉ、大丈夫かお前ら」

「あ、ヴィータ教導官」

丁度そこへヴィータがやってきて全員を見回すと

「なんだ、おまえらみんな練習着ボロボロじゃねえか」

「え、ええまぁ」

「今日は特に」

「後で持ってこいよ、繕っといてやるから、で、どうだ、あいつらと訓練してて」

ヴィータの問いかけに全員が肩を落とす

「今日の訓練でつくづく思い知りました、ヴィヴィ隊長やアインハルト隊長はもちろん、リオ副隊長の剣技、コロナ副隊長の大型のゴーレムを複数操作できる魔力と集中力」

「ま、ヴィヴィオとアインハルトは特にだな、リオも元々道場の出身だし、コロナも総合で教導隊入りしてるのなんてあいつぐらいだし、教導隊は空戦ランクがほとんどだからな」

「あれ?コロナ副隊長総合で取ってるんですっけ?」

「あ、お前らコロナが空戦も出来ること知らないんだっけか?まあでも明日になったら見られるかもな」

「アンジュさんは嬉しいんじゃない?ヴィヴィオさんの格闘技見たがってたし、スパーまで出来て」

「あっさり負けちゃいましたけど、とても引退したなんて思えないくらいで」

アンジュの言葉に水を飲んでいたヴィータは口元を拭うと

「そりゃあ当然だって、なんせ」

 

森の中で乾いた音が数回響く

ノーヴェが見守る中ヴィヴィオとアインハルトがスパーリングをしていた

だが次の瞬間アインハルトがヴィヴィオの拳をはじいてその喉元に拳を突き付けた

「よし、そこまで」

立会いをしていたノーヴェの声と共にティオとクリスも二人の中から出てくる

「あ~、やっぱもう格闘技だけだとアインハルトさんには敵わないや」

「そんなことはありません、こちらも必死でしたし」

「引退前の頃より背も伸びたし、細かい技術なんかを会得すれば戦えないわけじゃないからな、元々カウンターヒッターっていうのは技巧派のスタイルだし、見たところキレも悪くはない」

ノーヴェの投げたタオルを受け取り汗を拭うヴィヴィオ

「えへへ、忙しいけど合間を見て基礎トレーニングは続けてたんだ」

「立派なこった、そういえばヴィヴィオ、お前またフォーム変えたか?」

「うん、前のフォームに近くなったんだ」

「16歳の時にひじを痛めてフォームを矯正したんでしたね、あの後大変そうでしたけど」

「今度のフォームは今まで一番しっくりくるかな」

「けど、六課に入って以降はトレーニングの時間見つけるのも大変だろ、ディエチからもすっげぇ忙しいって聞いてるし」

「六課にいる間も自由待機の時など私たちとスパーをしていたので」

「成程な、うちの馬鹿にも見習ってほしいぜ」

 

なのはたちと共にトレーニングしていたウェンディが大の字で息を切らしながら空を見上げる

「き、きついっす」

「Check the extreme fatigue throughout the body(全身に極度の疲労を確認)」

ウェンディの言葉に彼女の首に掛けられた姉妹たちと同型のデバイスが点滅する

「私も疲れました」

「疲労状態を確認、ウェンディ・ナカジマ氏と比べ体力低下率-20%、残存体力値に問題なし、ウェンディ・ナカジマ氏の体力値に問題あり」

「勝手に比べんなッス」

リリィの傍らを浮遊していた本、銀十字の書の行動に青筋を立てるウェンディ

「時間もいい感じだし今日はもう上がりにしちゃおうか」

「みんなに明日の事を伝えなきゃ」

 

「模擬戦!?しかも高町教導官達と!?」

「あ、なのはで構わないよ」

汗を流し温泉に浸かっていたアンジュ達だったが翌日の事を聞き驚きの声を上げた

「そ、訓練の最終段階、元祖機動六課メンバーとの陸戦試合、この内容次第で次のステップに進むか決まるから」

「(この人たちに勝たなきゃ………次に進めない)」

コロナの言葉を受け拳を握るアンジュ

「頑張ろうね、ギン姉」

「え?」

スバルに声を掛けられ驚くギンガ

「ギンガも出たら元祖六課の方が一人多くなっちゃうわよ」

「だってギン姉だって前の六課で一緒だったんだし仲間外れに出来ないよ」

マリーの指摘に腕を振るスバル

「せやけどただでさえ実力や経験の違う相手に人数で下回るのはなぁ、そりゃリミッターで最大出力は制限するけど」

「う~………あ!だったら、新生六課にももう一人いればいいんですよね」

「もう一人………ってもしかして」

ティアナの言葉と共に全員の視線が一か所に集まる

「~………ん?どうしたのみんな」

鼻歌交じりに腕を伸ばしていたディエチだったが自分に視線が集中していたことに気付き首をかしげる

 

「というわけでディエチにも出てほしいんだけど………駄目かな?」

ディエチはあまり好戦的ではなくどちらかと言えば穏やかな性格だ

進んで模擬戦に参加するとはとても思えないのでスバル以外の一同は無理だと考えていたが

「いいよ、ちょうど試したいことあるし」

「ええっ!?」

ディエチがあっさりOKしたことで驚愕の声が上がる

 

一同が温泉から上がって夜食に向かうと

「お待ちしておりました」

ディードの姿があった、隣にもう一人紳士服に身を包んだ青年の姿

「ディード!それにオットーも」

「模擬戦の時に結界を張ってもらおうおもてな、教会に連絡しておいたんよ」

「まだまだ未熟な身ですがお役に立てれば幸いです」

「さ、もう準備は出来ていますから皆さんどうぞ」

ディードの言葉に全員が食堂へ向かう中、オオカミ姿のザフィーラが周囲を見回していた

「ザフィーラどうしたの?」

「いや、シグナムとアギトの姿が見えないと思ってな」

シャマルの問いかけにザフィーラがそう答えると全員が一斉に辺りを見回した

「本当だ、いない」

「あ、多分まだ温泉やね、シグナムお風呂好きさんやから、すぐ連れてくから皆は先行っといてな」

そう言ってまだ温泉にいるであろうシグナムに念話で呼び掛けるはやて

 

翌朝、まだ日が昇ったばかりの早い時間からアンジュは一人自主トレをしていた

素振りを終え一息ついていると

「気合入ってるね、今日の模擬戦?」

「あっ!あの………」

スバルとトーマに見られていたことに気付いたアンジュはもともとの性格もあってか縮こまってしまう

「そんなに緊張しなくていいよ、ところで、何か悩んでるのかな?」

スバルのその言葉にアンジュは目を見開いて俯いた

「わかりますか?」

「うん、私も格闘型だし動き見たら何となく、よかったら聞かせてくれないかな」

スバルの言葉にアンジュは座り込んで自らの手を見つめた

「怖いんです、自分の力が、使いこなせる自信がなくて………」

アンジュの眼が変わったあの時、彼女は力に振り回された、その話を聞いてスバルとトーマは苦笑していた

「何となくだけど、君の気持ちわかるよ、俺達も似たようなもんだからさ」

「えっ?」

「トーマもちょっと面倒な力持っててね、最初は大変だったんだよ、暴走したら見境ないし」

「スゥちゃんの方は………もうディー姉から聞いてるよね?」

「あっ………じゃあ」

ディエチから聞いた話を思い出しスバルを見るアンジュ

「うん、あたしも戦闘機人、ディエチ達とはちょっと違うんだけど」

そう言ってアンジュの隣に腰掛けるスバル

「でもね、兵器と作られたこの力も、今じゃ救助の役に立ってるし、トーマだって」

「あ、まぁね、スゥちゃんと比べたらまだまだだけど」

スバルとトーマの話を聞いて考える様子を見せるアンジュ

「何か私たち似てるよね、あたしもね、小さいころ空港で事故にあって、その時助けてくれたなのはさんに憧れて局の魔導師になったの」

スバルのその言葉にアンジュは伏せていた顔を上げた

スバルの話は幼いころインターミドルの映像で見たヴィヴィオに憧れ格闘技をはじめ局に入ったアンジュと確かに似ている

「だからかな?アンジュの気持ちはよくわかるし、根拠はないんだけど、きっと大丈夫な気がする」

 

やがて朝食を終え模擬戦が始まる

「オットー、結界お願いや」

「はい、レイストーム、出番だ」

「Yes sir」

グローブ型のデバイス、レイストームにオットーが指示を出すと一瞬で結界が張られる

 

「というわけで、安全のため周囲には結界が張ってあるけど、うっかり破壊したりしないよう注意してください、ルールはDSAAのものに準拠、ハンデとして元祖六課チームにはリミッターによる出力制限を施します」

立会人のノーヴェの説明が終わり両チームが愛機を構える

「それじゃあ元祖六課、先輩の意地を見せちゃおうか」

「なんの、なのはママ達にだって負けないよ」

親子そろって仲間達に鼓舞をする

そして全員が同時に愛機を掲げた

「「「「「「「「「「「「セーット!アーップ!」」」」」」」」」」」」

全員がバリアジャケットを身にまとい作戦会議が始まった

「前半はとにかく自分の相手に集中、チャンスを待って一気に叩くよ」

なのはたち元祖六課が作戦を立てる一方

 

「あの………お願いがあるんですけど」

新生六課の一同は普段内気なアンジュが自分から意見を言いだしたことに驚いていた

 

「そんじゃ」

「試合開始ですー!」

リインの言葉と共にアギトが信号弾を打ち上げた

「「ウイングロード!」」

スバルとギンガが拳を地面にたたきつけると魔力の道がフィールド内に張り巡らされた

そのまま二人は自ら作った道に乗って進んでいく

すると正面から向かってくる影が

ヴィヴィオとアンジュがウイングロードを伝ってギンガとスバルにそれぞれ向かっていく

 

「お願いがあるんですけど」

 

アンジュが光の刃をスバルに向かって振り下ろす

反撃してきたスバルの蹴りを回避して拳に込めた魔力を打ち出す

スバルも同様に砲撃を放ちアンジュの攻撃を相殺した

「私に………スバルさんと戦わせてください」

スバルとアンジュ、両者の拳が激突する




おまけ(フェイト・T・ハラオウン)
執務官としていくつもの事件を解決
局内でも名前の知れた有名人
現在は提督に昇進、L級艦の艦長を務めている
乗組員は若い職員が多く彼らの夢がかなうために自ら協力することも多い


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:18 陸戦試合

ウイングロード上でギンガとヴィヴィオが競り合っていた

「Storm Tooth」

ギンガがヴィヴィオに接近して左の打撃を叩きこむ

ヴィヴィオはその攻撃を魔力障壁………セイクリッドディフェンダーで防ぐと距離をとるため下がるがギンガはすかさず追撃して二発目の打撃を叩きこむ

だがヴィヴィオはそれを回避すると上段の回し蹴りでギンガの首元を狙う

腕でガードするギンガだったが衝撃でいくらか下がってしまう

「ソニックシューター・アサルトシフト」

すかさずヴィヴィオは魔法弾で追撃を図る

「Defenser」

ギンガはそれをバリアで防ぐと再び接近を試みようとするが

「しまっ」

いつのまにかヴィヴィオは背後に回っており飛び回し蹴りをギンガの顔面に命中させる

吹っ飛んだギンガは右手で口元を拭うとヴィヴィオを見据えた

「(さすがヴィヴィオ………射撃と格闘の切り替えがすごく巧い、打たれないだけじゃなくて、打たせない戦い方も出来るようになってる、考えなしに近づいたら一方的にやられちゃいそう………けど!)負けないわよ!」

ヴィヴィオが放った射撃をかいくぐりギンガの鋭い蹴りがヴィヴィオに放たれる

この攻撃をヴィヴィオは腕を構えガードした

「さすが、やっぱり強いや、ギンガさん」

「私も妹達みんなの前でカッコ悪いとこ見せられないからね」

 

「フォトンランサー」

フェイトの放った魔力弾をアインハルトは掌で受け流すとそのまま自らの手元に収めた

「旋衝破!」

アインハルトが投げ返した魔力弾を回避するとフェイトは再び射撃の構えに入る

「プラズマスマッシャー!」

フェイトの放った射撃魔法をアインハルトは拳で打ち砕いた

 

「ここ2つはミスマッチを狙ってきたな」

その戦況を見てはやてが呟く

「そうですね、フェイトさんみたいな高速軌道型はアインハルトみたいなハードヒッターから一撃もらうとアウトですから」

「ギンガも純格闘型で中距離は苦手だからなぁ、ヴィヴィオの切り替えも巧いし」

ルーテシアとノーヴェはそう言って他の場所にも目を向けてみる

 

「でりゃあ!」

ヴィータが愛用のハンマー、グラーフアイゼンでゴライアスを叩いて転倒させる

だがすかさず背後からもう一体が迫ってきた

「ちぃ」

それを見てヴィータは手元に鉄球を出現させゴライアス向けて撃ち出した

だが背後から突然巨大な腕に襲われ落下してしまう

「ってぇ~、やりやがったなコロナ」

ヴィータが上空を見るとそこにはしたり顔でゴーレムの腕2つを従えるコロナの姿が

「(くっそ、狭いところでこんなデカブツ2体も相手とかやりにくいっての。かといってギガントじゃ隙がでかすぎる、狙い撃ちにされんのがオチだ)」

路地をゴライアスに塞がれ不利な状況に持ち込まれたヴィータは心の中で悪態をつく

 

シグナムの斬撃をかわしたリオが右腕から炎による砲撃を放つ

剣でそれを受け止めたシグナムはリオを見据えた

「腕を上げたな、どうだ、そろそろその剣、抜いたらどうだ」

「これは奥の手、そう簡単には使いませんよ、あたしのメインはあくまで格闘ですから」

「出し惜しみして勝てるほど………」

「Explosion」

シグナムの剣、レヴァンティンからカードリッジが排出されたかと思うと次の瞬間には一瞬でリオとの距離を詰め斬りかかった

すかさずリオは2本の剣のうち1本を抜いて刀身に炎を纏わせる

「私は甘くないぞ」

「よく知ってますよ、剣友会で何回打ち合ったと思ってるんですか」

 

「あーあーシグナムってば熱くなっちゃって」

「ヴィータもコロナの罠にあっさり嵌ってしまっているな」

アギトとザフィーラが呆れたように頭を抱える

「二人とも正直だから、それにしても」

シャマルがリオと全力で打ち合うシグナムを見る

「あの楽しそうな顔、本来の目的忘れてなきゃいいけど」

「あー、忘れてそうです」

「っていうかあの顔ちょっと怖えぇんだけど」

シャマルの呟きに周囲からは納得の声が上がる

 

路地を移動しながらティアナが周辺を警戒する

次の瞬間ビルの上からの狙撃を受ける

すぐさま対応して相殺するも今度は別の方向から砲撃が飛んでくる

何とか回避して姿を隠すティアナ

 

「あの狙撃の色はディエチさんだよね、姿が見えないけど」

「設置型のシューターと合わせて攪乱してるみたいだな」

「ティア姉は得意の幻術使えなくて辛そうだね」

「ディエチは対幻術とかのスキル豊富ッスからね」

「スマッシュカノンにもセンサーとかの機能はたくさんついてるわよ、ディエチの能力は狙いが命だから」

「得物の大きさ的には逆であるべきなんやろうなぁ」

ディエチのやっていることは本来幻術などを得意とし小回りのきくティアナが得意とするところだ

重圧な砲を扱うディエチにはあまり向かない技能ではあるが

「ティアナも他の場所の射砲支援に入れなくて辛そうだね」

「ディエチ姉様に狙われてるとなると目立つ場所での射砲支援は良い的になってしまいますからね」

 

「お互いフルバックとして頑張ろうね、リエラ」

「キャロ姉相手でも………ううん、私に補助魔法を教えてくれたキャロ姉が相手だからこそ、負けないよ」

後方に控えるキャロとリエラは支援魔法の設置に集中している様子

その一方で激しい金属音が鳴り響く場所があった

「フォトンスティンガー!」

カレルの射撃魔法を凌ぎ切るとエリオが槍を構え向かっていく

カレルはグラディウスの刀身でその攻撃を受け止めるが威力に押され後退してしまう

「くぅ、やっぱ強いやエリオ兄」

「さ、ガンガン行くよ」

 

砲撃を放つため弾殻を形成するなのは

だがロイスの水の攻撃が立て続けに襲い掛かり発射態勢に移れない

「だったら」

水を操作するロイスを直接狙うべく手のひらを向けるが

「リヴァイアス!」

「yes」

すかさずロイスは水を出現させなのはの攻撃を阻む

「(よし、いい具合に攻めあぐねてる)」

 

「僕が高町教導官の足止め!?」

試合直前ディエチのたてた作戦を聞き驚きの声を上げるロイス

「そう、序盤は多分同ポジション同士がぶつかり合うことになる、ロイスの陸戦ポジションは私と同じSG、向こうのSGはなのはさんとティアナ、正直、この二人に大技を使わせたらそれだけで負けてしまう可能性がある、そこで射撃型の弱点を突く」

 

ディエチの設置したシューターの攻撃から逃げ続けるティアナ

離れた位置からディエチがそのティアナに向けて砲撃を放つ

大技で何とかそれを相殺するティアナだがすでにディエチは移動

別のシューターで再び狙い撃ちにされる

「精密射撃型のティアナには有利なポジションを取らせないように、そしてロイスは………」

 

ロイスがリヴァイアスを振るうと大量の水がなのはを飲み込んだ

「砲撃を打つ暇なんて与えない、ひたすら攻め続ける!」

水から飛び出したなのはにさらに追撃が来る

なのははこれを捌くのに精いっぱいで得意の砲撃に移れない

 

「ほー、なのはさんが苦戦するなんて珍しい事もあるんッスね」

「ありゃディエチの入れ知恵だな、砲手の弱点を突いてきた」

「ロイス君の水の魔法は一般的な射撃と比べて攻撃力はそれほどない、けど、液体と言う他の魔法と違う利点を生かした操作性と範囲の広さ、彼はこれを生かした技巧派タイプね」

メガーヌの分析にウェンディが首をかしげているとチンクが助け船を出した

「砲撃と言うのは他の魔法と比べてどうしても発射までに時間がかかる、操作性の高い能力を持つ彼はそのわずかな時間を与えないよう最初から全力で攻めているんだ」

「けどチンク姉」

そんな中トーマがあることに気付く

「それって最後まで持つのか?」

「難しいだろうな、見たところ彼の魔力量はそう多くない、このハイペースでは先に魔力が尽きてしまうが………」

 

「チャンスは一回………この均衡が崩れた時が狙いどころ」

身を隠しながらディエチは全体の戦況を見回した

 

「ディバインバスター!」

「Protection」

アンジュの拳から打ちだされた魔力を受け止めたスバル

アンジュはすかさず追撃にかかる

アンジュの蹴りや拳を捌きながら適宜反撃を加えるスバル

「シャイニングセイバー!」

アンジュの斬撃を交わすとそのまま拳を突き出す

「リボルバーキャノン!」

スバルの打撃を受けアンジュは大きく吹っ飛ばされてしまい地面に落下する

「からの~」

「ケイジングサークル!」

「えっ!?」

追撃を試みたスバルだったが魔力の輪に囲まれ動きを止められてしまう

見るとそう離れていない距離でギンガも同じように止められていた

 

「えー、スバルたちだってバインド破り出来るッスよ、ヴィヴィオ何考えてるッスか」

「体に触れるような通常のバインドだったらそうだけど、ヴィヴィオが仕掛けたのは対象に直接触れるタイプではないから、普通のより時間かかるんじゃないかしら?」

 

「今よ!アンジュ!」

ヴィヴィオの叫びと共に落下していたアンジュが腕に込められた魔力を打ち出した

「いぃ!?」

バインドで動きを封じられていたスバルは抵抗できず直撃を受ける

「もう一度!」

「そうは………」

追撃しようとしたアンジュだったがバインドを破ったギンガが襲い掛かる

何とか攻撃をかわすアンジュ

だが回避した先にスバルが待ち構えていた

「頂き!」

腕を振るうスバルだったが

「あ痛ぁ!」

いきなり背後から橙色の魔力弾が襲い掛かり後頭部を直撃

ライフはわずかに残ったものの行動不能になってしまう

「今のはまさかディエチ!?」

 

「さあ、反撃開始よ」

フィールドを見下ろすディエチの周囲には大量のシューターが形成されていた




おまけ(トーマ・アヴェニール)
エクリプス事件後再度自分を見つめなおすため2年ほど旅に出る
なお、以前の事があったためか今度の旅はかなり反対されたらしく
ナカジマ家の面々を説得するのに数か月かかったらしい
リリィと共に様々な世界を見て回った後スバルと同様に災害救助
特に文明の整っていない異世界での救助活動に身を置くことを決意
仕事の性質上なかなかナカジマ家には帰れないでいる
ディエチを姉と呼ぶ唯一の人物
プライベートではスティードを、戦闘ではアームドデバイスとして改修を受けたディバイダーを愛用している
銀十字の書は現在はリリィのデバイスとして登録されている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:19 リエラの秘密

「スバルさん、大丈夫ですか」

「えへへ、油断しちゃった、お願いね、キャロ」

召喚魔法でキャロに救出されたスバル、すぐにキャロが回復魔法をかける

 

「アンジュは一度下がって回復してて、残りの皆は隙を見て一気に攻めて」

ディエチの指示と共にシューターが一斉に散っていく

「セイクリッドクラスター・フルバースト!」

フィールド全体に散ったシューターが炸裂し元祖六課メンバーに襲い掛かる

カレルと打ち合っていたエリオも突然の奇襲にペースを崩された

その隙にカレルが斬りかかるがエリオも何とか防御する

スバルの回復に専念していたキャロの方にも何発か飛んできたがスバルのおかげで奇襲に気付き危なっかしいながらも回避する

もちろんスバルの方にも飛んだがキャロがあらかじめ結界を張っていたため難を逃れた

コロナのゴライアスと交戦していたヴィータは回避が難しい状況だったためシールドで魔力弾を防ぐ

だがこの隙に背後からゴライアスが襲い掛かりその巨大な拳がヴィータに振り下ろされる

シグナムは突然飛来してきた魔力弾に対しシュランゲフォルムのレヴァンティンで対抗

だがその隙にリオに懐に入られてしまう

炎と雷を纏った巨大な剣に飲み込まれるシグナム

一方なのはは円形のバリアで魔力弾とロイスの攻撃を防御、その隙に砲撃の準備に入った

「よーし、ここからが本番だよ」

周囲を覆っていた水が消えレイジングハートを構え射撃の準備に入るなのは

すると次の瞬間何者かが彼女めがけて突っ込んできた

「ヴィヴィオ!?」

彼女に攻撃を加えてきたのはヴィヴィオ、ギンガとマッチアップしていたはずだが………

「っ!?」

驚く暇もなく背後からゴーレムの腕を纏ったコロナが襲い掛かる

「コロナちゃんがここにいるってことは………」

 

「くっそ~」

先ほどのディエチの奇襲とゴライアスの攻撃でライフを大きく削られ行動不能に追い込まれたヴィータ

一方

「あー!悔しい!もうちょっとだったのに!」

奇襲でシグナムに勝利したかに思われたリオだったが見事なカウンターを貰い道連れにされてしまう、こちらは相打ちの様だ

「惜しかったな、しかし、私もまだまだ修行が足りないか」

リオの攻撃で戦闘不能となったシグナムはため息を零しながら、だが満足げな表情でレヴァンティンを待機状態に戻した

 

「うん、リオの脱落は痛いけど人数は減らせた」

戦況を見回していたディエチだったが魔力弾の強襲を受ける

なんとかかわすと攻撃してきた相手を見据えた

「ようやく見つけたわよ、ディエチ」

「そうだね、隠れるのも飽きてきたし」

そう言ってディエチはカノンを構えるが………

「なんてね」

舌をぺろりと出しながらビルから飛び降りた

「あっ!こら待ちなさい!」

 

アインハルトの攻撃をかわし後退するフェイト

すると突然背中に何か突き付けられた

「捕まえましたよフェイトさん」

ディエチがカノンの銃口をフェイトの背中に押し付けていた

「最初からこういう作戦だったんですよ」

アインハルトがそういいながら拳を構える

どうやらディエチは一斉射撃の後最初からアインハルトと合流する手筈だったようだ

だが突然上空からディエチに向けて攻撃が飛んでくる

ディエチがそれを回避した隙にフェイトがその場を離れると傍らにティアナがやってきた

 

「へぇ、ここ面白い組み合わせになったッスね」

「執務官コンビ対チームナカジマの選手&セコンドコンビか」

アインハルトがまだインターミドルの選手だったころ、彼女のセコンドを主に担当したのはディエチだった

もっともそれを見越しての作戦だったのだろうが

「とするとティアナが合流するのも計算のうちだったんだろうな」

「そう言えばギンガ様は?」

「そうね、ヴィヴィオがなのはさんの方にいるみたいだけど」

ディードのふとした疑問にメガーヌが画面を切り替えてみる

するとロイスの水の攻撃を回避して隙を窺うギンガの姿が映った

「ディエチ姉様の射撃に紛れてマッチアップ相手を交替したようですね」

「後方はっと………」

 

アンジュの回復に集中するリエラに対しキャロはスバルとヴィータ、二人の回復を同時に行っていた

「そう言えばヴィータ、行動不能にはなったけど戦闘不能になってはおらんかったな」

「本来はあたしが追撃する作戦だったんですよ」

そう言ってリオとシグナムが観戦組の元へやってきた

さすがに脱落組がそのまま陸戦場に残っているのは危険なのでルーテシアとガリューが連れてきたのだ

「そううまくはいかんさ、ここからどう対応するかも見者だな」

「とかいいつつシグナムさ、早々退場になったの悔しいんじゃない?」

アギトの言葉にシグナムはしばし固まったかと思うと

「あーごめんシグナム!あたしが悪かった!」

図星だったらしく本気でへこんでいた

 

一方こちらはヴィヴィオとコロナを同時に相手取るなのは

「さて、まずは」

襲い掛かるゴライアスの拳にバインドを仕掛けるなのは、そのまま飛び上がると

「ディバインバスター!」

砲撃でゴライアスを一蹴、続けて追撃してきたコロナの攻撃を回避

プロテクションでヴィヴィオの援護射撃を防いでから

「エクセリオンバスター!」

砲撃でコロナを攻撃、そのまま戦闘不能に追い込む

「さ、数の優位はなくなったよ、どうする?ヴィヴィオ」

続けてヴィヴィオに向けてレイジングハートを構えるなのは

 

「お疲れコロナ」

「あー、なのはさん強すぎ」

召喚魔法でルーテシアがコロナを退避させる

「これで元祖六課が数の上では優位に立ったわけか」

 

「これでよし、回復完了です」

「ありがとうございます、リエラさん」

回復を終えて立ち上がったアンジュ、すると

「さ、第2ラウンドに行こうか」

ヴィータとスバルが二人の下にやってきた、こちらも回復を終えているようだ

 

「あー、これはやばいかも」

それを見て思わずリオが声を上げる

 

「さ、どうするカレル!」

エリオもまたカレルに声をかけた

「リエラじゃあの二人には荷が重いよ、それは僕達が一番よくわかってる、そうだろ」

エリオの言葉にカレルは攻撃を捌きながら俯く

「君達が物心ついた時には、クロノ執務官はすでに前線を退いていて、必然的に魔導師としての憧れはフェイトさんに集中した、当然君もリエラもフェイトさんと同じように高速機動型の魔導師を目指した、けど」

「小柄なリエラに、そのスタイルは………いや、そもそも彼女に戦闘魔導師は向いていなかった」

リエラの身長は他の同年代と比べても低く、加えて彼女の魔力の絶対値も少ない、戦闘魔導師には向いてるとはいえなかった

「最初にそのことを知ったときはひどくショックを受けていたようだったけど」

「そのことはキャロ姉には感謝してるよ」

「まあ、彼女もリエラと同じ悩みを抱えていたからね、今でこそそれなりだけど」

キャロもまたかつてリエラと同じ悩みを抱えた時期もあった、エリオの言うように今ではそれなりに背も伸びてはいる、本当にそれなりだが

それでだろうか、魔導師になる夢をあきらめずにいたリエラを彼女は放っておけず自ら師事した

直接の戦闘に向かないリエラにブーストや防御の魔法を教えサポートに重点を置いた今のスタイルを勧めたのもキャロだ

 

「(また………何も出来ないの)」

迫りくるスバルとヴィータを見て俯き拳を握りしめるリエラ

先日のリニスとの戦い、後わずかのところで逃してしまったことを彼女は後悔していた

無意識のうちにアイギスを強く握りしめていたが

「大丈夫、私がついています」

そう言ってリエラの肩に手を置くアンジュ

「私も、自分の中にある力を扱いきれるか、使いこなせるかどうかわからない、でも………」

そう言ってアンジュは目の前のスバルとヴィータを見据える

「二人で力を合わせれば、きっと………」

「Wir sind auch(私たちもです)」

「Let both joined forces(共に力を合わせましょう)」

アンジュの言葉にブリュンヒルデとアイギスも答える

「行こう、アンジュ!」

「わかりました、リエラ」

 

「女性陣は結束が深まったみたいだよ」

「じゃあ僕らも深めるか?この状況を打破するために」

エリオとギンガに追い詰められ背中合わせに会話するカレルとロイス

「本当にそんなこと出来たら、確かに結束は深まりそうだ」

 

「今は私に出来る精いっぱいのことをするんだ!この戦いを乗り越えるために」

「Boost Up Acceleration and Strike Power」

「リヒトフリューゲル!」

リエラのブーストを受け勢いよくヴィータに向かっていくアンジュ

「きやがれ!返り討ちにしてやるよ」

それを見たヴィータは鉄球を打ち出す

だがブーストを受けたアンジュのスピードは凄まじく鉄球はかすりもしない

「くそ速ぇ」

「これは………」

その様子を見ていたスバルは気付いた、アンジュの体を包み込むように溢れ出す魔力

アンジュは無意識のうちに聖騎士の力を制御していた

「ギアセカンド!」

更に加速してヴィータの周りを高速で周回するアンジュ

ヴィータは素早い動きを捉え切れず混乱する、だが踏み込んだ時の音を聴き逃さずそちらに向き構えた

「アイゼン!」

「Raketenform」

ヴィータの呼びかけと共にグラーフアイゼンが形を変える

「ブリュンヒルデ!」

「Holy blade」

アンジュもまた光の刃で対抗する

「ラケーテンハンマー!」

「シャイニングセイバー!」

ヴィータのハンマーとアンジュの剣が激突する

次の瞬間グラーフアイゼンが先端から崩壊していく

「なんだとっ!?」

驚く間もなくアンジュの一撃がヴィータを斬り裂いた




おまけ(キャロ・ル・ルシエ&エリオ・モンディアル)
現在でもスプールスの自然保護隊に身を置いている
密漁者の取り締まりや野生動物の保護の他、様々な孤児院などを訪問して自然と触れ合うことの大切さや魔法を教えたりしている
キャロは生物学者として野生動物の研究にも精を出しており
論文や本などをいくつか出しているその筋での有名人
監修した子供向けの図鑑なども合わせると10冊前後の本がすでに出ている
フェイトを通じてカレルやリエラともつながりがあり
キャロはリエラに、エリオはカレルによく魔法を教えていた
背の低さがコンプレックスだったキャロだが現在では平均的にいえばまだ低いものの大人の女性としてみるには十分なほどに成長した
だがエリオに関してはそれ以上であり(他の仲間で一番背の高いシグナムですらエリオと比べると頭半分ほど低い)今やキャロの前で身長の話は完全に禁句となっている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:20 二人のストライカー

ヴィヴィオの攻撃をバリアで防ぐなのは

「ヴィヴィオ、本当に強くなったね、でも………」

「Accel Shooter」

何とかヴィヴィオの体勢を崩すとそのまま魔力弾で反撃する

「私も母親として、負けるわけにはいかないの」

なのはの攻撃を防ぎ切れず空中に投げ出されるヴィヴィオ

すかさずなのはが砲撃の体勢に入る

「ストライクスターズ!」

なのはの砲撃がヴィヴィオを飲み込む、砲撃を終えたなのはがヴィヴィオの方を見る

「悔しい~!また差が開いてる~!」

瓦礫の中でごねるヴィヴィオ

だが、だからこそまた追いつく楽しみが出来たというもの

「なのはさん!ヴィータ教官やられちゃいました」

「え~?さっき回復したばっかりだよね」

「アンジュさんの勢いが凄いみたいです、それで他の皆の士気まで上がってギンガさんとエリオ君も苦戦してるみたいで」

「じゃ、流れをこっちに持ってこようか」

そう言ってなのはがレイジングハートを構えると魔力が集まり始める

「ブラスター1」

 

「こっちも行くわよ!」

ティアナがクロスミラージュを構え同様に魔力を集める

「カノン!奥の手で対抗するよ!」

「yes」

それを見たディエチがカノンを構える

「「スターライト………」」

「スマッシュカノン、モード………」

「「ブレイカー!」」

ディエチの声はなのはとティアナの集束砲撃の爆音に遮られた

爆発に包まれる陸戦場

「相変わらずおっかねぇ、皆どうなったかな」

それを見て思わずぼやくノーヴェだったが思考を切り替えモニターを見てみる

抵抗を試みていたディエチだったが勢いに負け壁に激突したらしく気を失っていた、戦闘不能になっている

「もぉ、ディエチったらいったい何したのよ」

だがそのディエチの反撃でティアナも戦闘不能になっていた

「誰かディエチの反撃見えたやついるか?」

ノーヴェの問いかけに全員が首を横に振る

一方ギンガとエリオはカレル、ロイスによって戦闘不能にされていた

だがこの2人と戦うのに精いっぱいだったカレルとロイスは哀れな事になのはのブレイカーの直撃を受け戦闘不能になっていた

アインハルトもフェイトを倒すことに成功するもブレイカーを回避しきれず戦闘不能

「さっきヴィヴィオとヴィータ教官がダウンしてたから後は………」

なのはは生き残ってはいるものの直前までのヴィヴィオとの戦闘でかなり消耗している

「There is a coming reaction approaching at high speed(高速で近づいてくる反応があります)」

そんな彼女にレイジングハートが呼びかける

見ると壁を疾走するアンジュの姿

「アクセルシューター」

必死に抵抗するなのはだがアンジュのスピードが速すぎてあたらない

「アクセルスマーッシュ!」

壁から飛び上がったアンジュがそのままなのはに攻撃を当てる

それによってなのはのライフがゼロとなる

「リボルバー………」

だが空中に取り残されたアンジュに近づく影が

「シュート!」

スバルの放った衝撃波で吹っ飛ばされるアンジュ、何とか着地してスバルを見据えた

スバルはブレイカーの直前に退避していたため到着が遅れた様子

アンジュの方はリエラの防御魔法に守られていたため何とか生き残った

そのリエラも防ぎ切れず戦闘不能になっているが

「これで元祖六課が一歩優勢」

「いえ、キャロちゃんは一対一には向いてない」

「スバルが倒れればアンジュを止める手立てはない、新生六課チームの勝ちだ」

 

「全力で行くよ」

「望むところです」

リボルバーナックルの装着された腕を構えアンジュを見据えるスバル

「ギア………エクセリオン!」

スバルの声と共にマッハキャリバーに魔力翼が展開される

 

「マジで全力じゃないッスか、容赦ないッスねぇスバルは」

「違うな」

ウェンディの言葉をチンクが制する

「その位しないと今のアンジュは倒せない」

 

二人の格闘魔導師が激突する

「(すごいや、アンジュ、いっぱい頑張ったんだね、この戦いだけでもわかるよ………けど)」

アンジュの勝負をかけた一撃をスバルの拳が跳ね返す

「ごめんね、あたしも先輩として、負けられないんだ」

バランスを崩し転倒するアンジュの眼に砲撃を構えるスバルの姿が

「ディバイン………」

今アンジュの体は完全に無防備になってしまっている、抵抗するすべはもはや残っていなかった

「バスタァー!」

スバルの砲撃を受け吹っ飛ばされるアンジュの体

倒れたアンジュは必死に立ち上がろうとするも、やがて力尽きその場に倒れてしまった

「試合終了~!今回は元祖六課チームの勝ちやね」

 

「あーあ、負けちゃった」

試合を終え集まる一同

「ヴィヴィオも強くなってるよ、大丈夫」

「私もまだまだでしたね、もっと鍛えていかなければ」

「ディエチ大丈夫ッスか?」

「ちょっとふらふらするけど平気」

「今回はしてやられたわ」

それぞれ感想を語り合ってる中、フォワード陣は負けた悔しさから重苦しい雰囲気だった

特にアンジュは責任を感じている様子

ついには泣き出してしまった

「私がもっとしっかりしていれば………ごめん、本当にごめん」

「ううん、私のサポートが」

「ずっと足踏みしてた僕にだって責任が」

「あの~、ちょっと言い辛いんだけど」

そんなフォワード達にリオが声をかける

「もしかして皆、負けたらそこで終わり、とか思ってないよね?」

「結果を見る試験じゃなくて、内容を見る試験だったんだけど」

コロナの言葉にフォワード陣が目を見開く

言われてみれば勝ったら合格、など一度も言われていない

「むしろエース揃いの元祖六課を相手にあそこまでやったんだし、評価は低くないと思うけど………」

そういいながらコロナは横目ではやてを見る

「ほな、ここは相手側の判断に任せよか」

そう言ってはやてはなのはに話を振るが

「だって、スバル」

「えええっ!?私ですか!?だって、こういうのはなのはさんが」

「だって私やられちゃったし、スバルに任せるよ」

なのはの言葉にフォワード達はスバルに注目する

「うーん、じゃあ、いいかな、みんな頑張ってたし、合格ってことで」

「いいんじゃない?実際いいところまでいったんだし」

「じゃあ」

スバルの言葉と共に一斉に沸くフォワード陣

特にアンジュは喜びのあまりまた泣き出してしまった

 

その後、残ったメンバーも加えて模擬戦などを行い

午後にはモード3を使いこなすための個別トレーニング

そのすべてを終えるころには

「う~」

「もうだめ~」

全員ロビーで倒れ伏していた

「あはは、みんな大丈夫?」

「明日動けるかちょっと心配です」

リオに声をかけられソファで眠りながらロイスが力なく答える

「今なのはさんとディエチさんが疲労抜き用の特製ドリンク作ってくれてるから」

「5人分、きっちり用意してくれるそうなので」

「え?5人って………」

「今頃体力使い果たしてるであろうあいつの分だ」

ノーヴェの言葉に首をかしげるフォワード達だったがよく見ると一人足りない………

 

「う~」

自身に充てられた部屋のベッドで体力を使い果たし青い顔で突っ伏すヴィヴィオ

クリスが小さな体で必死にその背中をさすっていた

すると突然部屋の戸がノックされる

「あ、はい、どうぞ」

ヴィヴィオの返事を聞いてはやてとチンクが部屋へ入ってきた

「少しいいか?」

「この姿勢のままでいいんなら」

「まあヴィヴィオもお疲れやしええやろ、さっき連絡があってな、捜査に進展があった」

そう言ってはやてが指を鳴らすと一人の老人の写真が表示される

「モーガン・ヴォクスター、おそらくはこの男が今回の事件の主犯、抹消されていた魔導実験事故の記録の中にこの男の名前があった、八年前から行方不明だそうだがな」

「名前的にもグレゴール・ヴォクスターの末裔っぽいですね、スカリエッティが言ってたのこの人かぁ、んしょっと」

チンクの言葉に何とか起き上がりながらヴィヴィオがモーガンの写真を見る

「この人の目的については何かわかってるんですか?」

「古代遺失物を集める理由に関してはまだ………だが、それとは別にもう一つ分かったことがある」

 

「これが………」

「はい、霊王が用いていた禁忌兵器、魔導兵器プルート」

同じ頃聖王教会ではカリムがユーノから問題の兵器について連絡を受けていた

「大地から生命力を吸い取ってしまう禁断の兵器、古代ベルカ戦争時代にグレゴール・ヴォクスター自ら使役したとされていて、無差別に破壊を繰り返す」

「当然といえば当然ですが、聞いててあまりいい印象はしないですね、他に何か?」

シャッハの問いかけにユーノは困ったような表情を見せる

「それが資料があまりにも少なくて、ただ」

「ただ?」

「気になることが一つ、プルートが起動してしばらくして、グレゴール・ヴォクスターが戦争中に命を落としているんだけど、その辺りの記録がどうも曖昧で」

グレゴール・ヴォクスターの不審死と共に彼の収めた国も滅んでいる

だがその理由がいくら調べてもわからないのだ

「時期的にはどのあたりなのかしら?」

「聖王戦争の末期、具体的にはゆりかごが起動するちょっと前」

「気になりますね………」

 

薄暗い部屋の中で咳き込むモーガン・ヴォクスター

やがてそれが収まるとそばにあった写真のようなものを見つめた

「もうすぐですよ………貴方からすべてを奪ったこの世界、私が壊して見せます、そうしたら私もあなたのいる場所へ………」

写真を手に取ったモーガンはそう呟くと

「管理局………貴様らにとっては陳腐なことだったろう………だが」

モーガンはかつて勤務したある企業での事を思い出していた

「お疲れさまです」

仕事を終え帰っていく女性を見送る若き日のモーガン

「私にとっては………ずっと」

手を振って笑い返す女性を見て若き日のモーガンは顔を赤くしていた




おまけ(スバル・ナカジマ)
エクリプス事件後正式にトーマを家族として迎え入れる
2年ほど前に防災指令昇進の話が出たが
指示よりも現場に居たいということで断っている
休日はイクスや姉妹を自宅に招いたり一緒に出掛けたりしている
トーマが仕事柄なかなか帰ってこないので寂しがっている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:21 動き出した野望

サマーラが一人廊下を歩いていた

やがて広い場所にやってくるとそこに収容されている巨大な物体を見上げた

「来たか」

「モーガン」

そんな彼女に歩み寄るモーガン・ヴォクスター

「あんたから渡されたこれ、一体何なの?」

そう言って右腕につけた腕輪がモーガンに見えるよう腕を突き出すサマーラ

「すぐにわかるさ、すでに計画は最終段階へと移っている」

その言葉を聞いてサマーラは俯く

「そうか、これでようやく………マスターはどこに」

サマーラの問いかけにモーガンは巨大な物体の足もとを指差した

そこには彼女のマスターである少女の姿が

「なんであんなところに?」

「これからプルートとの同期を始める、プルートのコントロールシステムと一体化させねば起動は出来ないのでな」

モーガンのその言葉にサマーラは目を見開いた

「ちょっと待てよ!コントロールシステムと一体化って………そのあとマスターはどうなる!あたしとの約束は!」

「そうか、お前は知らなかったな、あいつは………」

モーガンの言葉を聞いたサマーラは腕を震わせる

「そう言わけだ、お前にもまだ利用価値はある、もうしばらく働いてもらう」

「モーガン!」

サマーラが勢いよくモーガンに飛びかかるが

「守護獣風情が」

モーガンが指を鳴らすと同時にサマーラの腕輪から電流が走る

「なっ!これっ!くそっ!外れないっ!」

必死に抵抗を試みるサマーラだがやがて意識が薄れていきその場に倒れた

「マスター………」

 

ミッドチルダ北部の森の中で一人立っていたチンクの下にセイン達が走ってくる

「ごめんチンク姉、遅くなった」

「構わんよ、よく来てくれたな」

「この下ですか?」

そう言ってオットーがが自身が立ってる地面を足先で軽く叩く

「ああ、ようやくつかんだ足取りだ、だが内部の詳細は不明で確信もない」

「で、あたしに調べてこいと、チンク姉も人使いが荒いねぇ」

チンクの言葉を続けながら十字架のペンダントを首にかけるセイン

「すまんな、だがこういうのはお前の得意分野だろう?」

「まあね、それじゃ、ちょっくら見て来ますか」

「このあたりは先史時代グレゴール・ヴォクスターの収めていた区域だ、十分に気をつけろ」

「了解」

そう言ってセインは自身の能力、ディープダイバーで地面にもぐりこんだ

「頼んだぞ、セイン」

地面にもぐりこんだセインはすぐさま通路のようなスペースに出た

「どうやら間違いないみたいだね、チンク姉、聞こえる?」

 

「ああ、こっちでも動きがあったよ、どうやらここで間違いなかったようだな」

セインからの通信を受けたチンク達の周囲を多数の傀儡兵が取り囲んでいた

すると突然辺りに振動が響き渡る

「まさか!」

周囲を警戒していると少し離れた地点から巨大な生物兵器が姿を現した

「魔導兵器プルート………すでに動き出していたか」

 

プルートが動き出したことで六課の面々も大急ぎで準備していた

「よし、すぐに出れるよ」

バイクを整備していたリオは確認を終え一緒にいたコロナに声をかける

「こっちも準備OKです!」

もう一台の赤いバイクを引っ張ってきたのはラグナだった、そばにはエルスの姿もある

「飛行許可も下りた、すぐ行ける」

ファビアも自身のデバイス、魔女箒のヘルゲイナーを持ち準備万端だ

 

「ラグナさんも戦闘魔導師だったんですね」

前線メンバーのほとんどが参加するブリーフィングだが

リオとコロナ、ラグナとエルスはバイク、ファビアは飛んで一足早く現場に向かう

「副隊長と通信士組はこのままチンク達と合流や」

「僕達は、直接プルートと対峙することになるんですね」

ロイスの言葉にはやては重々しく頷いた

「プルートもそうやけど、もう一つ問題が………」

そういってはやてが映し出した画面に映っていたのは

「霊魂兵器たち………ですね」

「せや、この子たちもある意味ではモーガンの被害者、出来ることなら救ってあげたい」

プルートの周囲を移動する霊魂兵器たち、リニスやドゥーエ、クイントの姿だった

「みんなの任務は霊魂兵器とプルートの進軍を阻止すること、それだけや」

 

出撃のためヘリポートへ向かう道中

「私とヴィヴィオさんは直接プルートを叩きます、皆さんは霊魂兵器と傀儡兵器を」

「そっちの指揮はディエチさんが執ってくれるから」

「「「「はいっ」」」」

ヴィヴィオの言葉に力強く答えるフォワード達

「ヴィヴィオ達や私のリミッターもすぐ外せるって、万全の状態で行けるよ」

「広範囲攻撃は僕の独壇場、周りの傀儡は任せてもらうよ」

 

傀儡兵器と交戦していたチンク、オットー、ディード

するとバイクに乗ったリオたちがやってきた

一行はバイクを降りるとすぐに臨戦態勢に入る

「クーゲルライフト!」

ラグナが拳銃型デバイスを構えるとすぐさま傀儡兵器に向かって発砲する

カードリッジを使いきり交換している間に傀儡兵器が迫るが

「パニッシャー!」

ラグナの前に出たエルスがすかさず拘束して彼女への攻撃を阻止した

這え 穢れの地に(グラビティブレス)

ファビアの重力発生魔法で多数の傀儡兵器が動きを止める

数体の傀儡兵器がそれをかいくぐり襲い掛かる

次の瞬間バリアジャケットを纏ったオットーとディードが傀儡兵器を薙ぎ払った

「チンク姉様、ここは我々が」

「わかった、今のうちに突入するぞ」

チンクの合図と共に彼女達の足もとで小さな爆発が発生し地下の空洞へと落下する

 

一方一足早く突入したセインは基地内部を探索していた

「どっかにプルートをコントロールしてるやつがいるはずだけど………」

次の瞬間彼女に向かって魔力弾が降り注ぐ

煙が晴れた後には肩と腰に防具がついただけのシンプルなバリアジャケットを纏ったセインの姿が

「いきなりご挨拶じゃん………ん?」

魔法弾を放った相手………サマーラを見て異変に気付くセイン

「こいつまさか操られて………でもなんで」

 

リニス達と傀儡兵器を伴い移動していたプルート

次の瞬間砲撃がそのプルートに直撃する

だがプルートは全く意に介さず移動を続けていた

「やっぱり駄目か」

砲撃を放ったディエチが呟いた

次の瞬間彼女に向かって飛びかかってくる影が

「やっぱそう来るよね」

それを確認したディエチがすぐさまその場を離脱する

 

プルートの少し後方を移動していたリニスとクイントに向かって走る光

カレルがリニスを掴んでそのまま離れていく

更にリエラがその後を追う

リエラを止めようとクイントが襲い掛かるが

「させない!」

アンジュがその拳を受け止める

 

「傀儡兵器たちは任せろ!リヴァイアス!フルドライブ!」

大漁の傀儡兵器たちを前にロイスがサードモードを開放、更に装甲は薄くなり彼の周りに水が渦巻いている

「ポセイドンウェーブ!」

動けない傀儡兵器に大量の水が襲い掛かる

「どんどん来い!いくら来ようと僕がすべて洗い流してやる!」

 

「ユーノ司書長、プルートのデータの方はどうですか」

プルート本体の下へ向かったヴィヴィオはアインハルトと共にユーノと通信していた

「まだまだ少ないね、ただ仕組みとしては聖王のゆりかごに似てる、鍵となる人間がコアと一体化することで動くらしい」

「聖王のゆりかご………あまり思い出したくない名前ですね」

その名前を聞いたヴィヴィオとアインハルトは拳を握る

「だから、鍵になってる人間をコアから分離できればプルートを止められるかもしれない」

「わかりました、ひと先ずその方針で動いてみます、ヴィヴィオさん」

「了解!探査魔法でコアの位置を探ればいいんですよね、クリス」

アインハルトが呼びかけるとヴィヴィオは探査魔法でプルートをスキャンする

「見つけた!クリス!内部スキャンお願い!」

ヴィヴィオの指示を受けクリスがプルート内部のスキャンを開始

すぐにコアの映像が出てきた

「えっ!?」

「子供!?」

サマーラのマスターである小さな少女がコアと同化しているのを見て驚く一同

「ひどいことを………」

ヴィヴィオはそう呟いて拳を握った

 

リニスの魔法弾がカレルに降り注ぐ

「アイギス!」

割って入ったリエラが防御魔法でそれを防ぐ

「取り戻すんだ………フェイト姉が大好きだった優しいリニスを」

グラディウスを構えたカレルは魔法弾を凌ぐと斬撃のエネルギーをリニスに向かって放つ

「フォトン“ランサー”!」

尊敬するフェイトから教わった魔法、その魔法を元々フェイトに教えたのはリニスだ

カレルはその魔法でリニスの心に語りかけようとしていた

 

ドゥーエの攻撃を受け倒れ込むディエチだったが

「IS ヘヴィバレル」

その言葉と同時にディエチの瞳が黄色に変わる

再度彼女にドゥーエが爪を振るう、ディエチはそれをかわすとすかさずカノンを構える

「シュート!」

砲撃がドゥーエに向かって放たれるが容易くかわされる

素早く跳躍したドゥーエはディエチに迫る

「つらいよね、ドゥーエ姉」

ドゥーエの攻撃をカノンで受け止めながらディエチが呟く

「こんな形でなんて会いたくなかった、ドゥーエ姉だってきっと悲しいんだ」

シューターでドゥーエをひきはがしながら涙を流すディエチ

「だから」

ディエチがカノンに手を添えると弾帯のように連なったカードリッジが現れる

「vulcan Smasher」

カードリッジの炸裂と共に続けざまに魔法弾がカノンから放たれる

 

「その悲しみを我々が断ち切る」

スティンガーを手にチンクが目の前の相手………ゼスト・グランガイツを見据えた

リオとコロナもそれに合わせて身構えた

 

クイントの蹴りを受け大きく吹っ飛ぶアンジュ

追撃しようとしたクイントの攻撃を拳で受け止める

「行くよ、ブリュンヒルデ、フルドライブ」

「Sacred form」

アンジュの体が光に包まれる




おまけ(オットー&ディード)
保護観察期間を終えた際お祝いとして専用のデバイスをプレゼントしてもらった
ディードはアームドデバイスのツインブレイズ
オットーはブーストデバイスのレイストーム
ディードは髪型を変えリオからもらったリボンを使い髪を後ろで束ねている
オットーも少し髪を伸ばし軽くゴムでとめている
髪型を変えても中性的なまま
リオが教会入りして以降彼女にルーフェンの格闘術を教えてもらった
そのため二人のバリアジャケットはルーフェンの武術衣装(地球でいうカンフースーツ)に近い


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:22 通じ合う思い

サードモードを発動したアンジュの体が強い光に包まれていた

聖騎士の力も発動している

クイントが勢いよくアンジュに向かってくる

アンジュもまた翼を広げそれを迎え撃つ

アンジュの拳の威力は凄まじくそのままクイントの体を弾き飛ばした

「あなたはクイントさんじゃない………本当のクイントさんはもっと優しい人なんだ!」

模擬戦で行ったスバルとの戦いを思い浮かべながら言い放つアンジュ

アンジュの拳に光が集まっていた

 

「爆ぜろ!」

チンクがスティンガーを爆発させゼストの視界を奪う

次の瞬間現れたゴライアスを槍で迎え撃つゼスト、だがその衝撃で晴れた煙の陰には既にリオが構えていた

 

ディエチの弾幕を浴び動きが鈍るドゥーエ

「霊魂兵器は心のない人形、戦おうという意思がない、無理やり戦わされた状態じゃ、万全の力は出せない」

そう言ってディエチはカノンを構えた

「Focusing mode」

カノンの銃口に先ほどディエチがばらまいた弾幕の魔力が集まっていく

ディエチの魔力光だけでない、様々な色が

 

「Accel form」

電気変換された魔力を纏ったカレルが素早い動きでリニスに一太刀浴びせかけた

「今、元に戻してあげるよ」

カレルがグラディウスを構えると無数のスフィアが次々形成される

対抗しようとしたリニスだったがリエラの捕縛魔法で動きを封じられる

 

「ディバインバスター!」

アンジュの拳から放たれた攻撃がクイントを吹っ飛ばした

「火竜一閃!」

炎を纏った剣がゼストを切り裂く

「スターライトブレイカー!」

ディエチの砲撃がドゥーエを飲み込む

「フォトンランサー!ファランクスシフト!」

無数の魔力弾がリニスに襲い掛かる

 

「馬鹿な………霊魂兵器が全滅」

その光景を画面越しに見ていたモーガン・ヴォクスター

次の瞬間彼の周囲が暗闇に包まれた

「なんだこれは!?」

うろたえているモーガン・ヴォクスターに紅い魔力に包まれた手錠が次々襲い掛かり彼の体を拘束する

「そこまでよ!」

更に背中に何かを突きつけられる、暗闇が晴れるとラグナが銃を構えていた

「モーガン・ヴォクスター、大規模騒乱、及び禁忌魔法不正使用の容疑で逮捕します」

「あなたの野望もここまでです!」

ファビアとエルスもまた彼を取り囲むように身構えた

 

サマーラと戦っていたセインは空中から放たれる魔力弾に防戦一方だった

「ディープダイバー!」

自身の能力で壁に飛びこむセイン

サマーラはセインがどこから出てくるかと下を警戒していた

次の瞬間にセインは現れた、ただし彼女の上、天井から

「あたしの能力を甘く見すぎたな!」

魔力を纏った拳をサマーラに叩きこむセイン

落下したサマーラにのしかかるようにして再び拳を構えた

「ドゥーエ姉達の思いを利用しやがって!このバチ当たり共が!」

セインがサマーラの鳩尾に拳を叩きこむ

 

リオの攻撃で壁に叩きつけられたゼストが目を覚ました

「ここは………俺はあの時に………」

精神操作が解けているらしく戸惑った様子で口を開いた

すると目の前にチンクの姿を見つめて驚き目を見開く

「お前は………」

次の瞬間ゼストの脳裏に霊魂兵器として戦わされた時の記憶が駆け巡った

「そうか、俺は操られて………これは………死者を呼び起こす魔法か」

「騎士ゼスト、かつての事、許してくださいとは言いませんが」

「なにも言うな、お前はこうして俺を救ってくれた」

チンクの言葉を制するゼスト

「一つだけ、聞きたいことがある、アギトは………ルーテシアは元気か?」

「元気ですよ」

ゼストの問いかけに答えたのはコロナだった

「二人とも私たちの大事な友達です」

リオの言葉を聞いたゼストは満足げに笑みを零した

「そうか………」

 

「アンジュ!」

クイントとの戦いを終えたアンジュの下にスバルとギンガが駆け付けた

「スバルさん」

「スバル………ギンガ、二人とも大きくなったわね」

「母さん………」

クイントはボロボロの体で何とか立ち上がると二人を抱きしめた

「本当に立派になったわ、二人とも、私の自慢の娘よ」

涙を流すクイントにギンガとスバルはノーヴェやトーマ達、なのはやヴィヴィオ達の事を話した

「(出来ることなら、このままずっと話していたい………でも)」

 

「フェイトもアルフも、元気そうでよかった………出来ることなら直に会いたかった」

「会えますよ、きっと」

リエラの言葉と同時に彼女の後ろにやってくる影

「リニス………」

「フェイト………アルフも………あぁ、立派になって」

アルフを伴って現れたフェイトはリニスを抱きしめた

「ずっと………ずっと会いたかった」

「あなた達にはずっと辛い思いをさせてしまいました、私、ダメな先生ですね」

「そんなことないっ!リニスがいなかったら私は今頃………」

涙ながらリニスの言葉を否定するフェイト

「リニスが私に魔法を教えてくれたから、私はなのはやみんなにあえて………今こうして」

「ありがとう、フェイト」

「リニスさん、フェイト姉、アルフ」

リエラがアイギスを掲げ笑いかける、彼女が何をしようとしているか、その場にいた全員が何をしようとしているかわかっていた

「ほらフェイト、いつまでも泣いていないで」

「うん」

リニスの隣に笑顔で並ぶフェイトとアルフ

リエラはアイギスのカメラを使いその姿を収めた

 

ディエチの攻撃で正気に戻ったドゥーエは彼女を抱きしめた

「あなたの思い、受け取ったわ、素敵な光………直接会うことは出来なかったけど、妹達の思いも確かに感じたわ」

ディエチが連射砲に用いたカートリッジ、あれには元ナンバーズの面々の魔力が込められていたのだ

「本当ならもっとお話ししたいのだけれど、そうも言ってられないみたいね」

ドゥーエの体は既に消えかけていた

「精神操作が解けたのは、私を蘇らせていた魔法が解けたから、でも、おかげで貴方に会えたわ、会いたかった妹達の思いも感じた、ありがとうディエチ、貴方は私の自慢の妹よ………」

そう言い残してドゥーエの体は完全に消えてしまった

それを見届けるとその場に崩れ落ち涙を流すディエチ

同時にクイントやゼスト、そしてリニスも同様に消滅してしまった

 

「教えなさい、あの子供は一体」

ファビアがモーガンの襟元を掴み問い詰める

「あの娘こそ真の霊王、プルートが動き続ける限り、私の計画は終わらない」

モーガンは彼女の問いにただそう答えた

 

抵抗がないことを確認するとセインはサマーラがしていた腕輪を叩き割った

「これでよし、見ててくれたかよ、ドゥーエ姉」

「うっ………」

「気がついたか」

目を覚ましたサマーラはセインの姿を見つけると彼女に飛び着いた

「お願い!プルートを止めて………マスターを助けて!」

「ちょ、なにを………マスターってあんたの主人はモーガン・ヴォクスターじゃねえの?」

戸惑うセインにサマーラは俯いた

「こんなこと頼める立場じゃないのはわかってる、でも私は………」

 

「あの子がサマーラのマスター!?」

セインからの通信にロイスは驚きの声を上げる

「私の使命はマスターを守ることだった、この戦いが終わればマスターと静かに暮らせるって、そう信じてきた、でも………そうじゃなかった」

「どういうこと?」

サマーラの言葉に訳が分からないといった様子のヴィヴィオ

「マスターはモーガンが霊王の遺伝子を元に作った人造魔導師素体、霊王のクローンだったんだ、そしてあいつは最初からプルートを動かすためだけにマスターを利用していた」

 

「なんてひどい事を!」

「私の作ったものだ、どうしようと私の勝手だろう」

憤慨するエルスを冷たくあしらうモーガン

「あなたは人の命をなんだと思っているの!」

ラグナもまたモーガンの態度に怒りを隠せないでいた

「すべてはプルートの力を手に入れるためにしたこと!あの力さえあればちっぽけな命など何の価値もない!」

「腐ってる」

モーガンの主張を聞いてファビアは小さく吐き捨てた

「なんとでも言え、この世界は“あの人”からすべてを奪った、こんな世界、もはや存在する価値などない」

「だから壊そうというの」

ファビアの言葉と共に彼女が使役する小悪魔たちがモーガンに詰め寄る

 

「サマーラ、もしあの子を助けることが出来たとして、そのあとあなたはどうするつもりなの?」

ヴィヴィオの問いかけにサマーラは再度俯いた

「マスターのためとはいえ私が罪を犯したのは事実、けど………もし、償えるなら」

そこまで聞いてヴィヴィオはプルートを見据えた

「私も協力する、サマーラ、貴方のマスターは私が助ける!」

ヴィヴィオのその言葉を聞いてサマーラは目を見開いた

「同じなんですよ、ヴィヴィオさんも彼女と」

そう言ってアインハルトもヴィヴィオの隣で構えた

「うちも手を貸すで」

そう言ってヴィヴィオの肩に手を置いたのはジークだった

「こらこら、部隊長である私には何の相談もなしか」

そう言って空を飛んで向かうはやて、傍らにはリインのほかにも誰かの姿

ディエチもまた涙をぬぐいヴィヴィオ達の救援に向かうため立ち上がる

スバルとギンガ、アンジュもまた立ち上がる

カレルとリエラ、フェイトも大急ぎで向かっていた

離れた場所にいるリオとコロナにはファビアが転送魔法の準備をしていた

「みんなで助けてあげよう」

そう言って降りてきたのはバリアジャケットを装着したなのはだった

「ありがとう………」

そんな彼女たちに涙を流し礼を述べるサマーラ




おまけ(セイン)
双子から2年ほど遅れて専用デバイスを入手
ディープダイバーでの移動をサポート、センサーなどの機能が充実したもの
双子同様リオから武術を仕込まれてはいるものの
元々の性格もあってか基礎だけやって辞めてしまった


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:23 破壊の真実

「ユーノ!」

子供姿に戻ったアルフが無限書庫のユーノの下にやってきた

「プルートの資料探し手伝うよ………ん?どうした?」

「みんなに知らせなきゃ………」

ある資料を見たユーノは青い顔でそう呟いた

 

プルートが咆哮をあげる

「プルートが本格的に動き出せば制御を失い暴走を始める、グレゴール・ヴォクスターは、彼の国は、プルートの暴走で滅んだんだ」

ユーノの言葉に集まった一同はプルートを見据える

「大丈夫だよ、ユーノくん」

なのはの言葉と共にモーガンの拠点に行っていたメンバーがファビアの転送魔法で到着する

「みんながいれば、乗り越えられないことなんてない、今までも、これからも」

そう言ってなのははヴィヴィオとアンジュを引っ張り出した

「特に、立派になった自慢の娘とそれを慕ってくれた優しい騎士さん」

「ちょ、なのはママ!?」

「わ、私もですか?」

「助けたいんでしょ、あの子の事」

なのはの問いかけにヴィヴィオはため息を零してから拳を握った

「コアに直接攻撃を仕掛けてあの子をコアから引きはがす、方法はもう考えてあります」

そう言ってステップを踏みながらヴィヴィオが拳を突き出す

「ユーノ司書長、プルートの防御機能と本体構造についてはわかっているんですか」

そう言ってヴィヴィオの隣に立つアインハルト

「魔力と物理の複合防壁、破壊しても短時間で再生するけど、コアからのエネルギーで成り立ってるから………」

「分離さえできればもう再生はしないんですね」

「じゃ、あたしたちの仕事はバリアと装甲の破壊、コアを狙うヴィヴィオを援護する事」

「決まりやな、分離した後の対処にはクロノくんとヴィクターが動いてくれてる」

そう言って上を指差すはやて、そのまま動き始めようとするプルートを指差した

「機動六課及び増援の皆様、魔導兵器プルートを全力全開で対処すること、及びコアに取りこまれた少女の救出、これが私らの仕事や」

はやての言葉と共に全員が構えるとプルートが動き始めた

「本格的に動き始めたみたいですね」

「このメンバーなら負けへんよ、ほな………」

プルートが咆哮をあげると同時に全員が構えた

「行こうか、みんな」

はやての合図と共に全員が飛び出した

「ブリュンヒルデ」

アンジュがブリュンヒルデのフルドライブを発動、リヒトフリューゲルを使い飛び上がった、全員がそれに続く

真っ先にプルートの下にやってきたのはオットーとエルスとファビア、そしてチンクだ

「レイストーム!」

「アレスティングネット!」

プルートの周囲に緑色の稲妻が走り紅い魔力を纏った手錠が拘束する

「忌まわしき力に魔女の制裁を!這え 穢れの地に(グラビティブレス)

ファビアの魔法で発生した重力がプルートを押しつぶそうとするが力ずくで重力をなぎ払ったプルートは砲門から射撃を放つ、全員がその場を離れその攻撃をかいくぐった

「姉が先陣を切る!行くぞネオ!」

「Consent」

チンクが腕を振るい大量のスティンガーが出現する

そのすべてが一斉にプルートに襲い掛かる

「爆ぜろ!ランブルデトネイター!」

スティンガーが爆発するが防壁に阻まれプルート本体にダメージを与えられない

すると上空からディードとシグナムがプルートの背後に回り、リオとアギトが正面から見据えた

「修道騎士ディードとその剣、光の双剣ツインブレイズ、いざ!」

ディードが二本の剣を振るいプルートの防壁に斬撃を叩きこむ

プルートが反撃しようと彼女の方へ振り返った途端

「リオ・ウェズリーとソルフェージュ!いっくよー!」

リオの剣に巨大な炎と雷が纏われ右、左と立て続けに切りつける

「絶招!」

「ツインブレイズ………」

リオが手を合わせると雷を纏った巨大な炎の剣が出現する

ディードも逆側から剣を構えた

「炎雷龍皇剣!」

「春光!」

リオとディードの攻撃がほぼ同時に決まる

防壁を超え本体ごと飲み込んだその攻撃でプルートの体勢が崩れた瞬間

「紫電一閃!」

シグナムの剣、レヴァンティンからカードリッジが2つ排出され炎を纏った剣が防壁を打ち砕きプルート本体ごと吹っ飛ばした

「行くぜ、旦那、あたしに力を貸してくれ」

そのままアギトが構えると炎で出来た槍が出現する

「貫け!烈火の槍!バーニングスピーア!」

シグナムが吹っ飛ばしたことで無防備になったプルートの背中に槍を突き立てる

槍からあふれた炎をプルートがその拳でなぎ払う

「次!」

「創主コロナと魔導器ブランゼルの名のもとに!叩いて砕け!ゴライアス!」

創成されたゴライアスがプルートに向けて突っ込んでいく

殴りかかったゴライアスの拳をプルートが受け止め組み合った形になるとプルートが口を開き魔力を集める

「させない!」

コロナが腕を振るうとゴライアスは組み合っていた腕を離しプルートの口に向けて拳を振るった

放たれた砲撃はそれによって分散し周囲に散った

「お前を見てると思い出したくねーモン思い出すぜ、不快だ!潰れろ!」

そう叫んでからヴィータはプルートの真上に回った

「豪天爆砕!ギガントシュラーク!」

巨大化したグラーフアイゼンをたたき落とすと再生したバリアがそれを阻む、だがすぐに破れプルート本体にダメージを与えた

更にゴライアスが再び振るった拳もプルートを直撃する

「湖の騎士の風は、治療だけじゃないのよ」

シャマルが掌を掲げると魔力を纏った風がプルートに四方から襲い掛かった

「縛れ、鋼の軛!」

更にザフィーラが出現させた軛が突き刺さりシャマルの風と合わせて完全にプルートを閉じ込めた

その隙にアインハルトがプルートに突っ込んでいく

「覇王断空拳!」

勢い良く飛び上がったアインハルトが強力な拳をプルートに叩きこむ

それを耐えたプルートが周囲に砲門を向けるが

「リニス、見てる?リニスがくれた力は………今でも私を守ってくれる」

大量の魔法弾がフェイトの周囲に形成されていた

「来よ、白銀の風」

リインフォースⅡとユニゾンしたはやても同時に攻撃の準備に入っていた

「天より降り注ぐ矢羽となれ」

「プラズマランサー・ファランクスシフト!」

「「フレースヴェルグ!」」

白と金色、複数の魔力弾が次々プルートに降り注ぐ

それによってプルートの全身の砲門が破壊された

 

軌道上に待機する複数の艦船

その中の一つでブリッジから心配そうに戦況を見守るヴィクターの姿

 

咆哮を上げたプルートの周囲に再びバリアが展開される

「こなくそぉ!」

咆哮の勢いを持ちこたえていたハリーだったが両手に炎を纏ってまず右の拳をたたき込んだ

「おりゃあ」

左の拳から放たれた一撃と共にバリアが砕け散った

「行くよ、マッハキャリバー」

ウイングロードに乗ったスバルがそのままプルートに拳を叩きこむ

「キャリバーショット!」

スバルの蹴りでプルートの体が倒れる

持ち直したプルートが彼女に向けて砲撃を放とうとする

「うわヤバッ」

「スバルどいて!」

「えっ!?」

彼女の背後にいたギンガがウイングロードをプルートに向けて伸ばしながら身構える

「ブリッツキャリバー」

「Full drive」

勢いよくプルートに突っ込んだギンガはその拳で砲撃を貫きそのままプルート本体にダメージを与えた

「ぅわぁ、さすがギン姉」

その光景に半分呆気に取られながら感心するスバル

砲門をすべて破壊されたプルートはでたらめに拳を振るっていた

「カノン!」

「Excellion Buster」

「うぇ!?ディエチそれまだ教えてないよ!?」

プルートにディエチが砲撃を放つと一瞬だが動きが止まった

「今よ!」

目を閉じ心を落ち着かせていたジークは今までの事を思い出していた

「(悩むことなんてない、恐れることなんてない、ウチにはたくさんの友達が、素敵な仲間がおるんや、そうやろ、ヴィクター)」

ジークの体が黒い闘気に包まれていく

エレミアの真髄、命の危険を感じた際反射的に発動するそれは長い間ジークを苦しめていたが

「(ハルにゃんや魔女っ子も過去と向き合ってきた、ウチもこの力と向き合っていく)」

そう言って目を開くとジークは身構える

本能的に感じたのか彼女に向けてプルートが拳を振るおうとするが

殲撃(ガイストナーゲル)

ジークが右の爪から放った一撃で再生したバリアだけでなく攻撃してきた右腕さえも容易く吹っ飛んだ

攻撃を終えたジークの横を通り過ぎるようにヴィヴィオが走り抜ける

ジークがそんなヴィヴィオにピースサインを作りながら笑いかけた

自らに近づいてくるヴィヴィオにプルートが残った左の拳を振るうが

「エクセリオンバスター!」

なのはが砲撃でその拳をはじいた、時間がたって再生した砲門がなのはに向くが

「ソニックシューター・アサルトシフト!」

今度はヴィヴィオの攻撃がなのはに向けて放たれた攻撃を相殺する

それを見たなのはがヴィヴィオに笑いかける

「(私、少しはママに近付けたかな)」

強くなって、いつか母を守れるようになりたい、幼いころから抱いた思いに近付けた実感にヴィヴィオも笑う

「全力全開!」

「一閃必中!」

「「ディバインバスター!」」

ヴィヴィオとなのはの同時攻撃がプルートに炸裂、装甲が砕かれコアが姿を現した

「いっくよー」

コアに向かって突っ込んでいくヴィヴィオ、砲門のいくつかが彼女に向かうが

「セイクリッドクラスター!」

全てなのはが撃ち落とす

「バリアブレイク!」

そのままヴィヴィオがコアに拳を叩きこむ

ただ叩きこんだだけではない、ヴィヴィオが用いたのは防御破りなどに使われる干渉型の魔法

これによりコアに直接働きかけようとしていた

ヴィヴィオの拳を通してクリスがコアのプログラムを解析、干渉して分離を試みる

長い衝突の末少女の体がコアから出てきた

意識はなく倒れ込んだその子をヴィヴィオが受け止める

「っと、あ!わあああああ!」

そのまま姿勢を崩してしまったヴィヴィオは少女ごと落下する

なのはが助けに行こうとするより早く彼女の横を通過するようにして飛び出したのは

「か、間一髪です」

フルドライブ状態でパワーアップしたリヒトフリューゲルの力で飛行するアンジュだった

「アンジュナイス!じゃ、後はお願いね」

ヴィヴィオが振り返った先にいたのは

「アイギス、フルドライブ」

「absolute mode」

リエラが唱えると同時にアイギスの盾が広がりそこから冷気が溢れ出す

 

「そのデバイス、カレルのファルシオンはバルディッシュとストラーダをベースに作られてるの、リエラのアイギスのベースになったデバイスも二つ、一つはケリュケイオンで」

海鳴の地で母エイミィから聞かされた話を思い浮かべるリエラ

「お父さん、お母さん、私、やるよ!」

息が白くなりながらもアイギスを掲げるリエラ

「もう一つはお父さん、クロノくんのデバイス、デュランダル」

「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ 凍てつけ!」

「Eternal Coffin」

アイギスの水晶からプルートに向けて冷気が放たれた




おまけ(ジークリンデ・エレミア)
競技選手を引退後ヴィクターの誘いを受け局入り
自ら彼女と同じ部隊に入ることでリミッターをかけエレミアの神髄を封じていた
捜査で出向いた先でおいしいスイーツを食べるのが日課
今でも鍛錬自体は続けておりやがては独立することも考えている
相変わらず私生活がだらしないのでよくヴィクターに怒られている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:24 ネクストジェネレーション

アイギスから放たれた冷気がプルートを凍てつかせその動きを止める

息を切らせながらも無事魔法が成功したことに笑顔を見えるリエラ

「これがアイギスのフルドライブの力………」

アイギスのモード3、それは氷結魔法に特化した強化形態

リエラの実力では本来使えないはずの高ランク魔法を可能にする発動補助や凍結強化機能

魔力資質の高くないリエラが一人前の魔導師として戦うための力だった

「まだだ!」

チンクの声と共にプルートが凍結から力づくで抜けだす

「いえ、これだけ稼げれば十分です」

リエラの言葉と共にプルートの近くで輝く光

 

「貫け、流星!」

集束魔法によって集められた巨大な魔力の塊を前に拳を構えるアンジュ

「海神招来!」

ロイスが構えるリヴァイアスの先に大量の水が渦を巻いていた

「雷光一閃」

カレルがグラディウスを掲げるとそこに向けて雷が落下する

「シューティングスター………」

「ポセイドンストローム………」

「プラズマザンバー………」

「「「ブレイカー!」」」

3つの魔法がプルートに直撃、その装甲を次々破壊していく

「捕まえた!」

すかさずシャマルが旅の鏡でプルート本体からむき出しになったコアを取り出す

「長距離転送」

「目標!軌道上!」

「転送」

オットー、エルス、ファビアの三人がそのコアを強制転移させる

軌道上、艦船が待機してる場所のちょうど中心にコアが現れる

「今ですわ!攻撃開始!」

「撃てー!」

ヴィクターとクロノの合図でコアに向けて一斉に攻撃が放たれる

 

地上で攻撃の光を見届けた一同

光が消えたのを確認するとはやてがユニゾンを解いた

「私らは準警戒態勢を維持、本体の再生がないようならここを引き継いでしまいや、お疲れさん」

はやての言葉と共に全員が歓喜に沸いた

手近なものとハイタッチするもの、拳を合わせるもの

リエラは大魔法を使った反動かその場に座り込んでしまう

アンジュも地上に降りたと思ったら大きくため息を零し大の字で倒れる

ロイスとカレルも疲れた様子で笑いあった

ジークの下にはヴィクターから通信が届いている様子

ヴィヴィオはそんな一同の様子を一通り見回した後自身が抱える少女を抱きしめた

 

「了解、プルートは完全破壊されたそうだ」

ラグナと共にモーガンを護送していたセインは俯くモーガンにそう伝える

セインの言葉にも特に反応は示していなかったが

「ぐっ」

突如として咳き込み始め、血もこぼれていた

「なっ!どうしたんだ!?医療班!誰でもいい!早く!」

「こうなる運命だったのさ、これで………あの人の所に行ける」

そう呟いてモーガンはその場に倒れた

 

こうして古代遺失物の盗難事件から始まった今回の事件は、主犯であるモーガン・ヴォクスターの突然死と言う意外な形で幕を閉じた

 

その後、陸士隊と合同で彼らの拠点を調べ、盗まれた古代遺失物と繋がれた装置が発見された

モーガンの部屋には大量の薬も、サマーラの話では彼は以前から病を患っていたという

さらに調査を進めた結果モーガン本人のものと思われる日記も出てきた

 

事件の事後処理を進めていたはやてだったがふとため息を零す

「部隊長元気ないですけど、何かあったんですか」

そんな彼女を心配してディエチが声をかける

「あー、すまんな、大したことやあらへんねん、もう後悔しないって決めたのに、煮え切らん結末で結局また同じことの繰り返しや思うとなんや自分が情けなくてな」

頭を抱え項垂れるはやてに肩を落とすディエチ

「気持ちは分からなくもないですけどね、あ、これ見てもいいですか?」

そばに置いてあった捜査資料に手を伸ばすディエチ

「ええよ、というかまだ見てなかったんやね」

「あたしもいろいろ忙しくて………えっと、装置の分析結果と………」

一通り目を通したディエチはある資料を見て手を止めた

「これ、あの日記の解析結果ですよね」

「せや、心理部もえらいてこずってたようやったけど」

はやての言葉を聞いたディエチが資料を指でなぞる

「えっと、これによると………」

 

「はぁ!?プレシアに惚れてたぁ!?」

「う、うん、心理部の話だと」

フェイトと並んで歩きながら事情を聞いていたアルフはその内容に驚きの声をあげた

「セインの話だと、モーガンは亡くなる直前に言ってたんだって、あの人の所にって」

「そのあの人がプレシアだってのか、信じらんねぇ」

青い顔で肩を落とすアルフ

「ずっとリニスとの接点も見つからなかったんだけど、日記に書いてあったよ、プレシア母さんの手がかりを探してアルトセイムに行ったら、偶然リニスとあったんだって」

だがその時すでにプレシアは病に冒されていた

愛する人が長くないことを知ったモーガンは治療法を全力で探した

「あと一歩のところまでいった矢先のPT事件、それ以来モーガンが世界を憎むようになったんじゃないかって」

「だとすると、PT事件でプレシアが死んだと公表されてることからリニスを蘇らせる考えに至ったわけだ………ん?」

最初は適当に流していたアルフだったが思い立ったことがあり立ち止まった

「もしかして………モーガンが古代遺失物を集めていた目的って」

「うん、アルハザード」

フェイトもアルフの言いたいことがわかっていたようでそう答えた

「信じたくなかったんじゃないかって、プレシア母さんがアルハザードでアリシアと幸せに暮らしてるって思いたかったんだと思う、モーガンの研究室に貯蔵された遺伝子情報の中にプレシア母さんのものもあったんだけど、使用された痕跡がないって」

「心の中ではわかっていたんだろうけどね、だから死ぬ前にあんなこと………」

ぼやくアルフだったが思い出したかのように口を開いた

「そういやさ、あの子どうしてんの?」

「え?ああ、あの子ね」

 

「はい、じゃあ今日の訓練と模擬戦はここまで」

「「「「あ、ありがとうございました~」」」」

模擬戦で手ひどくやられたらしいフォワード達が力なく返事をする

「事件が終わったって言ってもまだまだ覚えることはいっぱいだよ」

そう言ってコロナがウインドウを閉じる

「みんなお疲れ」

「懐かしいなあ、あたしも六課時代思い出すよ」

フォワード達に声をかけたのは六課に来ていたなのはとスバル

「スバルさん?ディエチさんなら部隊長の所ですけど………」

「あ、いや、ディエチに会いに来たのもそうだけど、他にも用事が」

「ちょっと早く来すぎちゃったかな?ヴィヴィオ達まだお仕事あるんじゃない?」

「うん、だからなのはママ先に食堂で待ってて、スバルさんは………」

「あ、あたしは少しアンジュと話があるから」

「私にですか?」

「私たちは仕事があるので失礼します」

アインハルトの言葉と共に全員が移動を始める

 

「それで、私にお話と言うのは………」

「アンジュはさ、ここに来る前の所属って何だった?」

「陸士隊の警邏です」

「六課での配属機関が終わったら、そこに戻る予定?」

「………正直、あまりよくわからないです、自分が何をしたいのか、何が出来るのか」

そう、部隊の創設者であり部隊長であるはやてを除けば六課の配属機関は基本的に1年

それが過ぎればアンジュ達は別の部隊に異動になってしまう

「まえにいったことおぼえてる?あたし達似てるなって」

「はい、覚えてます」

「アンジュ、特別救助隊、来る気ない?」

「えっ!?」

スバルの言葉に戸惑うアンジュ

「うーん、言い方悪かったかな?六課でのお仕事終わったら、あたしと一緒に来ない?」

 

リオと共に移動していたロイスはリオからスバルが来た目的について聞いていた

「アンジュを特救にスカウトですか………」

「不満?それとも不安?」

「そういうわけではないんですけど、そういえばリオ副隊長は六課の配属期間後は………」

「あたしは教会騎士団に復帰、元々正規の局員じゃないし」

指先でソルフェージュをくるくる回しながら天を仰ぐリオ

「ロイスはどうするの?」

「僕は上級士官希望なので、八神部隊長に研修先を探してもらって、キャリア試験を目指すつもりです」

「そっか、頑張ってね………あっ」

ふと、リオが前方から歩いてくる影に気付く

「あ、リオさん、ロイスも」

こちらに気付いて挨拶するユミナと手を繋ぎ歩いていたのはプルートとの戦いで保護された少女

その周りにはおどけた小さな生き物………ファビアが使役する小悪魔たち(プチデビルス)の姿もある

「こんにちは、シルヴィア、これからお母さんのお迎え?」

「はい、さっき仕事が終わったとメールが来まして」

笑顔で答える少女………シルヴィア

「あたし達もこれ部隊長に渡したらお昼だから、お母さんと先行っててね」

そう言ってリオはシルヴィアの頭を撫でると書類を提出するためロイスとその場を後にした

 

「失礼します」

「失礼しまーす」

ユミナと共に隊舎の部屋へと入るシルヴィア

「あ、シルヴィア!迎えに来てくれたの?」

ファビアと昼食の支度をしていたヴィヴィオがそれに気付き歩み寄った

「プチデビルス、ボディガードお疲れさま」

そう言って小悪魔の一体を撫でるファビア

「ユミナさんもすいません」

「いえいえ、シルヴィアとてもいい子にしてたから問題ありませんでしたよ」

そう言ってシルヴィアの頭を撫でるユミナ

「さすがヴィヴィオさんの娘です」

あの戦いでモーガン・ヴォクスターが死んだことによりシルヴィアとサマーラは行き場をなくした

元々自身と境遇の似ていた少女をほっておけなかったヴィヴィオは彼女の保護責任者として名乗りを上げた

「それじゃあ行こうか、なのはママも待ちくたびれてるだろうし」

「はーい」

サマーラがモーガンに協力するきっかけの一つでもあったらしい感情面の欠如に関しては洗脳を受けた痕跡があり解除後にヴィヴィオが献身的に世話した結果解消されつつある

現在ではこのように笑顔を見せることも

 

「そう言えばヴィヴィオはお休みの予定どうするの?」

みんな揃っての昼食でなのはがシルヴィアを抱きながらヴィヴィオに問いかける

ヴィヴィオを含むセイクリッド隊は明後日から3日間の休暇となっている

「ん~、まずはシルヴィアの学校探し、一応Stヒルデ魔法学院で考えてるけど、あと」

「サマーラに会いに行くの!」

ヴィヴィオの言葉に続くように答えるシルヴィア

そのサマーラは現在海上隔離施設にいた、理由はどうあれ罪を犯したのは事実だから




おまけ(リインフォース・ツヴァイとヴォルケンリッター)
リインはあどけなさが抜けて大人びたものの性格や言葉遣いなどは相変わらず
シグナムは現在三佐に昇進、航空武装隊で一個中隊を率いている
ヴィータは現在一等空尉、なのはとのコンビは健在でいつの間にか彼女の副官的立場になっている
シャマルは変わらず本局の医療局、ユミナをはじめとした若い局員に手解きをしている
ザフィーラは地上部隊で捜査を手伝う傍ら子供向けだった八神家道場をミウラのために本格的な練武場に仕上げた
下地がしっかりしていたためか道場の規模が変わる際特に問題は起きなかった
大抵は子供から入って年齢ごとに練習メニューが変わっていくらしい
いずれはミウラに道場を継がせ捜査の仕事に専念したいと考えている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:25 未来に向かって

「それじゃアインハルト隊長、高町ヴィヴィオ隊長、本日より3日間の休暇に入ります」

「アインハルト隊長、行ってきます」

「はい、こちらは任せてください」

休暇初日の朝、礼をしてヴィヴィオと共に歩いていくシルヴィアを見送るアインハルト

「いい子だよね、シルヴィア」

そんなアインハルトの下にコロナがやってきた

「ええ、ヴィヴィオさん、昔の自分よりいい子だなんて言ってましたが」

「実際どうなんだろうね、そう言えば、リオはもう向こうについたのかな?」

 

リオは少々長めの休暇を利用してルーフェンの実家を訪れていた

「ただいまー!」

「リオ!お帰り」

修道服姿のリオをいとこのリンナ・タンドラが出迎える

「しばらく見ない間に立派になっちゃってまあ、その服も似合ってるわよ」

「えへへ、ありがとう、写真は送ったけど実際に着て見せるの初めてだもんね」

「さ、おじいちゃん待ちくたびれてるよ、あ、リオ朝ごはんは?一応用意してるけど」

「朝一で出てきたからお腹ぺこぺこ」

リンナに連れられ奥へと歩くリオ

「どのくらいこっちに居るの?」

「教会にも顔出さなきゃだけど、それは明後日にしたから明日いっぱい居れるよ」

 

「すいませんディエチさん、折角のお休みなのに」

「いいのいいの、車貸してもらってるんだからこのくらいはしないと」

運転するディエチに後部座席のロイスが申し訳なさげに声をかける、助手席にはバスケットを抱えたアンジュの姿も

ちなみにディエチに車を貸したのはヴィヴィオである

「でも、ディエチさんだって予定とか」

「あたしなんて休みの日はお料理ぐらいしかすることないんだし、にしても二人とも仕事熱心だよね、お休みの日まで予定が仕事関係なんて」

アンジュとロイスはそれぞれスバルとチンクに会うためディエチの運転する車で移動していた

本当は個別の予定だったのだが二人とも今日はクイントの墓参りに行くとのことで一緒に会うことにしたのだ

ちなみにロイスがチンクに会う理由ははやてが提案した彼の研修先がチンクの所属する陸士108隊に決まったためだ

 

シルヴィアと共にかつての母校を訪れていたヴィヴィオ

「それじゃあ、ありがとうございました」

「シスターシャッハ、ありがとうございました」

「はい、お疲れさまでした」

挨拶を済ませその場を後にするヴィヴィオとシルヴィア

「シルヴィア、ママの通ってた学校はどうだった?」

「うん、ママ、あそこでお勉強して、強くなったんだよね」

「あー、どうだろう、それもあるんだけど、師匠や友達のおかげ………何より、なのはママのおかげかな?」

シルヴィアの言葉にしばし考え込むヴィヴィオ

そんなヴィヴィオの呟きが聞こえたか聞こえていないのか首を傾げるシルヴィア

「何?シルヴィアは強くなりたいの?」

「うん、いっぱい勉強して、魔法も覚えて、ママよりもーっと、強くなる」

「うわっ、大きく出たね、でもなんだか楽しみ」

シルヴィアを見て幼いころの自分を思い出し苦笑するヴィヴィオ

「さ、次は海上隔離施設、サマーラもきっと待ってるよ」

「うん」

 

アンジュとロイスはチンク、スバルと共にエルセアにあるクイントの墓を後にした

「じゃあこの後は、二人の今後の話し合い、っても場所どうしよう」

伸びをしながら呟くスバル

「母上を救ってくれた礼もしたい、どうだろう、今夜はうちに泊まって、そこで話し合うというのは」

チンクの提案にスバルが手を叩いた

「それいい、そうしなよ、着替えは持ってきてるんでしょ」

「え、ええ一応」

「でも、いいんでしょうか」

「構わないさ、今夜は父上も帰ってくるそうだし、久々ににぎやかな食卓になりそうだ」

「あたしも気合入れよ、でも珍しいよね」

ディエチの言葉に全員が首をかしげる

「いや、チンク姉がそういうこといい出すの、いつもなら真っ先にスバルがいいそうなのに」

「あ、確かに」

笑いながらディエチの言葉に賛同するスバル

チンクはわずかに笑みを零すと

「それだけ姉もテンションが上がっているのかもしれないな」

とだけ言って一人先を歩いていく

残された一同は首を傾げながらも苦笑して彼女に続いた

 

「こちらからは以上です」

「了解や、ありがとうな、フェイト執務官」

自室でフェイトと通信していたはやて、今回の事件の事後処理について話し合っているところだった

「そう言えばはやて、ヴィクトーリア執務官はなんて?」

「ん?似たようなもんや、ただ今回の事件、あの子らには随分助けてもろたのは事実や、いくら感謝しても足らへん」

「ヴィヴィオ達、元チームナカジマのみんなにもね」

「もちろん忘れてへんよ、あの子たちの赴任期間終わったら食事にでも誘ってお礼するわ」

そう言って眠気覚ましのコーヒーを飲むはやて

「フェイトちゃん達にも結局助けてもろて………」

「私もなのはも気にしてないよ、大丈夫」

すると突然来客を告げるブザーが鳴った

「あ、はい、ほなフェイトちゃん、また今度な」

通信を切って扉をあけると狼姿のザフィーラが入ってきた

「ザフィーラ!わざわざ来てくれたんか?」

「チンクが不在でしたので、代わりに事後処理の書類を届けに」

「ありがとうな、そのかばんの中やろ」

そう言ってはやては席を立ってザフィーラの胴に巻いてあったカバンから封筒を取り出す

「何か、悩みごとですか?」

「ん、そう見えるか?」

「いえ、気のせいならいいのですが」

ザフィーラがそういうとはやては彼に抱きついた

「あぁ、この感じ久々や、なぁ、しばらくこうしててええか?」

「急ぎの案件もありません、どうぞ、気のすむまで」

 

「そうか、じゃあお前達は来週から休みなんだな」

その日の仕事を終えたカレルとリエラはクロノと通信で話していた

「予定の方はどうなっているんだ?」

「まだ先なんだけど、一応海鳴の実家に行こうかと」

「お母さんにも今回のことを報告したいし」

「そのことをキャロ姉に話したら、予定を合わせてくれるって」

「僕もそうするか」

「「え!?」」

突然のクロノの言葉に驚く二人

「なんだその反応は、僕だって家族サービスに努めることぐらいある、それに………」

そう言ってクロノはリエラに視線を向ける

「補助機能があるからと言ってエターナル・コフィンはそう簡単に使える魔法じゃない、リエラ、お前ももう一人前の魔導師だ、娘が夢を叶えたお祝いくらいしたって、バチは当たらないだろう」

魔法の才能に恵まれず悩んでいたリエラが初めて認められた

その事実に本人は涙を流した

「何かリクエストがあれば聞くぞ」

「うん………お父さん、ありがとう」

 

「「「「ごちそうさまでしたー」」」」

高町家では四人そろっての夕食を終え全員が手を合わせた

「ふぅ、もうお腹いっぱい」

「私も~」

「ママ、私眠くなっちゃった」

そう言ってシルヴィアがヴィヴィオの袖を引っ張る

「じゃ、ママと一緒に寝ようか」

そう言って寝ぼけ眼のシルヴィアを抱えて席を立つヴィヴィオ

「ほら、なのはママとフェイトママにお休みなさいして」

「うん、なのはママ、フェイトママ、お休みなさい」

「はい、お休みなさい」

「明日は一緒に遊ぼうね」

フェイトの言葉にうなづくとヴィヴィオに連れられリビングを後にするシルヴィア

「ふぅ、それにしてもヴィヴィオが養子を引き取ってくるなんてね」

「ヴィヴィオもそれだけ大人になったってことだよ、なのはももうおばあちゃんだね」

「ちょ、私まだそんな年じゃないって」

フェイトの言葉にむくれるなのは、フェイトはそんななのはの反応を見てくすくす笑う

「でも、まんざらじゃないでしょ、今日だっていきなりシルヴィアに飛びついて」

「驚かせちゃったことは反省してまーす」

そう言って机に突っ伏すなのは、そのあとシルヴィアを宥めるのは大変だったそう

 

「(なのはママ)」

夕食の片づけを終え自室へ向かう途中、ヴィヴィオがなのはに念話で語りかけた

「(あ、ヴィヴィオ、なーに?いきなり念話なんて、シルヴィアは?)」

「(もう寝ちゃった、今お話して平気?)」

ヴィヴィオの問いかけになのはは苦笑すると

「(いいよ、何か用事?)」

「(ちょっとね、今日、学校見学に行って、昔ママと一緒に行った時の事思い出したの)」

「(ヴィヴィオ、あの時私を守れるくらい強くなるって話してくれたっけ)」

「(覚えてる、その思いは今でも変わらないよ、私が執務官になったのはそのためだもん)」

ヴィヴィオのその言葉に首をかしげるなのは

「(ヴィヴィオが執務官になった理由?適性を生かしたいからとか、事件や事故で哀しい思いを生まない為とかじゃなくて?)」

「(もちろんそれもあるけど………今まで内緒にしてたんだけどね、一番はなのはママに大好きな教導の現場にいてほしいから、なのはママが危険な現場に出なくて済むようにって)」

ヴィヴィオのその言葉を聞いたなのはは目を見開き再び笑った

「(そっか、ヴィヴィオいろいろ考えてくれてたんだ)」

「(ねぇ、なのはママ、今幸せ?)」

「(すっごく、よしヴィヴィオ、今日は久しぶりに一緒に寝ようか)」

「(だめ、今入ってきたらシルヴィアが起きちゃう)」

テンションのあがったなのはをため息零しながら宥めるヴィヴィオであった

 

それから日が経ち

「八神部隊長、セイクリッド隊、3日間の休暇を終え、ただ今戻りました」

「うん、お疲れさま」

「あ、ヴィヴィオ、これ、お休みの間のお仕事ファイルね」

「あ、ディエチさん、ありがとうございます」

データを受け取ったヴィヴィオは目を通す

「うん、訓練前にちゃっちゃと片付けちゃおうか、クリス、手伝って」

そう言ってクリスと共に部隊長室を後にしようとするヴィヴィオだったが

「そう言えばアンジュ、進路のことずいぶん悩んでいたみたいだけど」

振り返って問いかけるヴィヴィオの言葉にアンジュは笑顔で構えた

「大丈夫です、私もう決めました」

「そっか、じゃ、後でたっぷりお話聞かせてね」

そう言って今度こそ部隊長室を後にするヴィヴィオ

「カレルとリエラの進路も決まっとるし、なんかもういよいよ終わりが近い感じやな」

そう言って窓に寄りかかるはやて

「部隊長たちはここに残られるんですよね?」

ロイスの言葉にはやては笑顔を見せる

「せやね、私自身は煮え切らん結果に終わってまったけど、皆は立派に育ってくれた」




おまけ(フォワード一同)
機動六課での日々を思い返して
「あれ?ロイス?」
「どこか怪我でもしたんですか、医務室から出てきて」
「いや、さっきの訓練で差し歯が………」
「差し歯?それってもしかして」
「前に隊長に殴られたところ、今となっては立派な勲章さ」
「私も、お父さんに認めてもらえて、自分の道を見つけることが出来て」
「離れ離れにはなっちゃうけどね」
「え?二人は配属バラバラなの?」
「カレルは次元航行部隊、わたしはお父さんの紹介で本局に」
「アンジュはどうするんですか」
「私も………今回のことで変わることが出来たと思うの、だから………」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

misson:FINAL 未来への翼

「というわけで、長いようで短い、いろいろあった一年でしたが、皆さん、ありがとうございました、次の所属先でもどうか頑張ってください」

はやての言葉に一斉に拍手が沸き起こる

 

「なんかさみしいですね」

アンジュの言葉に仲間たちも頷く

「僕はここにきてよかったと思っている、おかげで未熟だった自分を変えることが出来た」

「そうですね、その点は私も一緒かな、これからはもう少し自信を持っていけそうです」

セイクリッドの2人は配属された時のことを思い出し笑いあう

「私も、初めてってわけじゃないけど、お父さんに認めてもらうことが出来たし」

「家族の背中を追いかけるだけだった僕らだけど、これからは隣に立って歩いていけるんだ」

カレルとリエラも笑顔でそう答えた

「そう言えば、お休みはクロノ提督と一緒だったんだろう?」

「親子でなにして過ごしたんですか?」

「模擬戦をやりました、3対3で」

「エリオ兄とキャロ姉、それにフェイト姉も一緒だったから、すごく楽しかったよ」

二人の問いかけにアンジュとロイスは目を見開いてから笑った

「真面目だなぁ二人とも」

「本当に、もう少しお父さんに甘えてもよかったんじゃなかったんですか?今までそういう機会なかったんですよね」

「流石にもう甘える歳じゃないですし」

「っていうか、ロイスには言われたくないよ」

カレルの言葉に言い返せず固まるロイス、それを見て再び笑いが沸き起こる

笑い終えたアンジュはさびしげな瞳で手の中のブリュンヒルデを見つめていたが

「あーいたいた、皆ちょっといい?」

背後から声を掛けられ振り返った

「ヴィヴィオさん………ディエチさんも」

そこには笑顔で並び立つヴィヴィオとディエチ

 

ヴィヴィオ達に連れられ訓練場にやってきたフォワードたち4人、そこにはピンク色の花が咲き誇っていた

「これって………」

「私の故郷の花、出会いと別れの季節にはもってこいの花や」

「やっぱり、あれでお別れなんてさみしいですからね」

「みんな立派に育ってくれた、私たちも胸張って一人前だといえる」

「この一年、皆と一緒に局の仕事やって、すごく楽しかったよ」

その言葉を受け涙を流しそうになるフォワードたちだったが

「ってわけで、最後はお約束の壮行会」

ヴィヴィオの言葉と共にクリスがセットアップされバリアジャケットが構築される

リオとコロナも同様にバリアジャケットを構築する

「全力全開、最後の模擬戦」

「えぇっ!?」

ヴィヴィオの言葉になぜかアインハルトが驚く

「前の六課の時もやりましたし、保有制限の関係でヴィヴィオ達にかけていた出力リミッターも無事解除」

「あたしも最後だから本当は参加したいんだけど」

「そう言えば、ディエチさんは今回の一件で昇進なさったとか」

「え!?そうなん?」

ヴィクターとジークの問いかけに懐から辞令を取り出すディエチ

「一尉に昇進してね、今度は陸士隊の防災司令、山沿いの部隊だから火災とかも多いんだって」

「ちょっと待ってください!私聞いてませんよ!?」

「え?アインハルトにはこの事話したでしょ」

「そうじゃなくて、全力全開って………」

「ごめーんアインハルトさん、誰か一人内緒の方が面白いと思って」

「前の六課の時そうやったもんな」

ヴィヴィオとはやての言葉に凹むアインハルト

「ほらほら、アインハルトさんも準備して」

「みんなもうすっかりやる気ですから」

リオとコロナにいわれしぶしぶバリアジャケットを構築するアインハルト

「もぅ、やるからには本気で行きますよ」

「負けませんよ!」

アインハルトの言葉にカレルがグラディウスを構えながら力強く答える

なのはとフェイトに連れられたシルヴィアも見守る中全員が構える

「それでは………」

「レディ………」

ディエチとはやての言葉に全員が神経を研ぎ澄ませる

「「ゴー!」」

 

六課の部隊長室でリインと共に仕事をしていたはやての下に騎士カリムから通信がかかる

真剣な表情でカリムの話を聞き書きとめていくはやて

 

八神はやて中将

リインを副官に部隊長職を継続、古代遺失物の脅威から地上を守るため業務を続ける

なお、現在は実家から隊舎に通ってる模様

 

通信中のカリムを真剣な面持ちで見守るシスターシャッハと修道服姿のリオ

 

リオ・ウェズリー修道騎士

聖王教会教会騎士団に復帰、仲間たちと共に精進を続けていく模様

 

アルトがジャケットを羽織りながらヘリに飛び乗り発射の準備をする

 

アルト・クラエッタ陸曹長

機動六課にヘリパイロットとして残留、捜査官を現場に素早く送り届けるための任務に従事していく

 

局員と交戦中の犯人達を物陰から狙撃するラグナ

犯人達の武器を撃ち落とすとハリーを先頭とした局員達が一斉に取り押さえる

 

ラグナ・グランセニック一等陸士

陸士部隊に転属、地上の平和を守るため狙撃手としての任務に従事する

 

アインハルトとリエラが資料を見て真剣な様子で話し合っていた

 

アインハルト・ストラトス一等陸尉

陸士部隊に復帰、事件や災害から人々を守るため職務を続ける

 

リエラ・ハラオウン査察官

本局査察部に希望転属、事故を未然に防ぐための査察業務に力を入れている

 

次元の海を航行中の次元船の船内

カレルとエルスが話しながら移動していた

 

エルス・タスミン捜査官

次元航行部隊に転属、正義と平和のため執務官を目指し勉強中

 

カレル・ハラオウン捜査官補

エルスの副官として自身も執務官になるため実地研修

 

ヴィヴィオや友人も通っていたStヒルデ魔法学院

その教室の一つで行われていた授業で教科書を読み上げるシルヴィアの姿が

 

高町シルヴィア

母親がかつて通っていた魔法学院に入学

 

そんなシルヴィアを教室の扉の陰から撮影するなのは

だが次の瞬間背後に気配を感じ振り返るとオットーとディードに捕獲され引き摺られていく

必死に抗議するなのはの声が教室まで届き苦笑するシルヴィア

 

周囲からの期待にこたえるため勉強中

 

ジークが複数の捜査員と共に状況確認を行っていた

やがて方針が決まり彼女の指示で捜査員達が散っていく

 

ジークリンデ・エレミア捜査官

補佐官を外れ独立を決意、当面は執務官試験を目標にしつつ捜査の現場で活躍

 

ユミナと話をしながら本局の廊下を移動するコロナ

コロナの話を聞いたユミナが瞳を輝かせ彼女に詰め寄った

 

コロナ・ティミル二等空尉

前任の航空戦技教導隊に復帰、自身も精進を続けながら教導の現場で活躍

教え子たちの才能と可能性を見つけ、伸ばすため戦い続ける

 

ユミナ・アングレイヴ主任医務官

本局医務室にて人々のために勤務を続ける

また、後進の育成にも力を入れてる模様

 

陸士108隊の隊舎内を話し合いながら移動するギンガとロイス

ザフィーラに呼ばれ急いでそちらに向かう

 

ギンガ・ナカジマ三等陸佐

陸士108隊部隊長職を継続

 

ロイス・ローレンス一等陸士

陸士108隊に転属、上級士官を目指し実地研修

 

海上隔離施設の一室でチンクの言葉を真剣に聞くサマーラの姿

 

チンク・ナカジマ一等陸尉

関係者指導の下サマーラの更生のためのプログラムに参加

 

森林火災の現場でディエチが消火剤タンクとカノンを繋ぎ砲撃を始める

放たれた消火剤砲撃で次々に火が消えていく

 

ディエチ・ナカジマ一等陸尉

山岳部管轄の陸士隊で防災司令に着任

火災に対する切り札として活躍

 

海岸線に位置する建物でもまた別の災害が発生していた

崩落するビルの内部に取り残された一組の姉弟

怯えながら互いに抱き合い壁に寄りかかると天井が崩れ巨大な瓦礫が落下してくる

「リヒトフリューゲル!」

白い光が駆け抜けたかと思うと次の瞬間には瓦礫が床を砕いて落下した

目をつぶっていた姉弟だが痛みがないことを不思議に感じ目を開くと

「怖かったよね、でももう大丈夫」

 

アンジュ・マーキュリー一等陸士

特別救助隊に希望転属、フォワードトップとして災害の現場で活躍

 

「安全な場所まで、私があなた達を守るから」

羽を広げたアンジュが二人を抱えていた

 

人々の命を守るため努力を続ける

 

本局の会議室で捜査官たちが集まっていた

全員が真剣な表情で座る中入ってきた人物

黒い制服に身を包むその人物が中心に立つと全員が立ち上がりそれを見つめた

「今回の事件の捜査指揮を執ることになりました」

そう言って白いリボンで結ばれたブロンドのサイドポニーを揺らしながら捜査官を見渡す

「高町ヴィヴィオ執務官です」

 

高町ヴィヴィオ執務官

副官のファビア・クロゼルグと共に次元航行部隊に復帰

 

「少しハードな捜査になるかもしれないけど、皆、私についてきてくれる?」

ヴィヴィオの問いかけに捜査官たちは力強く答える

「じゃ、頑張っていくよ」

 

次元世界の平和を守り、維持していくため職務を続ける



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。