レティシア・ドラクレアとホグワーツ~LETICIA DRACULEA & THE HOGWARTS SCHOOL OF WITCHCRAFT & WIZARDRY (招き蕩う黄金劇場)
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プロローグ

初めての投稿なので至らない部分があるかもしれませんが御了承くださいませ。
グロ注意ですのよ?


夢を視た。

 

阿鼻叫喚が木霊する燃え盛る炎の中で、倒れている夢を……

 

その夢には希望はなく血や叫び、絶望しかない――あまりにも救いのないセカイ。

 

そんな中で、一人孤独に倒れている。

 

ほぼ全身が炭化し腕はもげ、生きていること自体が奇跡の状態の体。

 

これが夢でなかったのなら発狂していただろう。尤も発狂していても声すら出ないだろうが。

 

やがてその地獄の業火を鎮めようとしているかの如く、空に暗雲が立ち込める。そしてその場に雨が降るのにそう時間は掛からなかった。

ザーザーと降り注ぐ雨粒の音は、さながら死者の魂を鎮める鎮魂歌のようであった。

 

 

 

 

 

―――――

 

僕の名前は■■■■ ■■■だ。地元の高校に通う、しがない学生だ。

今日は、最近できた同級生の彼女と僕の母と旅行をする予定がある。

僕の容姿は中の上くらいの目立たない顔に中肉中背と、ザ・普通てな感じで、派手で美人な彼女とは正直釣り合いがとれていないレベルだ。

本当にどうして彼女と付き合えれたのか謎である……自分で言ってて悲しくなってきたからもう容姿のことは終わり。おっと目から汗が……

話を戻すけど、今日行く旅行は母の誕生日会も兼ねているため、旅行先のホテルは少し値段が高いところにした。贅沢は味方だ!

交通手段は飛行機で2時間のフライトだ。そして飛行場からタクシーで目的地に行く。

そういや彼女は飛行機に乗るのが初めてらしい。朝、興奮した様子で騒いでいたのが印象的だった。

僕の場合飛行機は不快感の塊でしかないため気分が落ちるが……

 

「おーい! ■■■! 早くしないと遅れちゃうよー!」

 

彼女が此方に向かって手を振りながら叫んでいる。

お呼びのようだ。

母は既に車に乗車している。

さぁ、出発するか!

 

そういや朝、妙にリアルな夢を視たな……

どんな内容だったけ。すごく怖かったことは覚えてるけれど。

 

 

 

 

 

―――――

 

「ねぇ、■■■ 楽しみだね!」

 

空港に着いた途端、彼女が僕に向かって問い掛けてくる。

確かに彼女にとって飛行機とは未知の乗り物だ。わくわくするのは当たり前だ。

だが、僕にとって飛行機とは不快(ry

まぁ、このように飛行機は全くもって楽しみではないが、空気を読んで口を合わせておく。

 

「そうだなー、すげータノシミダナ」

 

少し片言になってしまったが問題はあるまい。

案の定、彼女はニコニコしながら空港を進んでいく。

まぁ、彼女も乗れば考えを改めるだろう。

そういや、なぜ僕がここまで飛行機を嫌うのか説明していなかったな。

まず第一に人が多すぎ。人混みには本当に慣れない。

次に耳鳴りがする。まぁ、これは対処の仕様があるからましだけど。

他にもあるのだが、説明が面倒くさいので割愛させていただく。

そんなこんなで出発時刻まで彼女と母と話していた。

 

 

 

 

 

―――――

 

「シートベルトは着けたか?」

「着けたよー。それより早く飛ばないかな……!」

 

彼女は楽しそうだ。今も目をキラキラさせながら飛行機が飛び立つのをいまかいまかと待っている。

母はそんな彼女と僕を見ながらニヤけている。 殴りたいこの笑顔……!イライラ

そして恒例の危険時の対処の仕方のテレビが終わってから、僕らが乗っている飛行機は動きだし空へと上っていった。

 

「おい、耳抜きしないと後が辛いぞー」

「耳抜きってなに?」

 

そこからかよ!

飛行機に乗って約10分が経過した頃、僕らは雑談に花を咲かせていた。

母は寝ていたため2人だけの雑談だったが。

それでも楽しく時間が過ぎていった。

 

けれど、そんな何気ない日常は一つの叫び声によって唐突にその時間は終わりを告げた。

 

 

「――エンジンから火が出てる!」

 

 

そんな一つの叫び声によって機内はパニックとなった。

そこからは展開が速かった。

僕は彼女を周りの怒声や叫び声から守るように立っていた。

彼女が最期に呟いた言葉は、無意識に呟いたものだったのだろう。とても小さな声だったが、僕の耳にはよく届き、ひどく悲しかった。

 

『■■■は死なないでほしいな』

 

 

エンジン全てから原因不明の炎があがった飛行機は制御できず――山地に墜ちた。

 

 

 

 

 

 

―――――

 

そこは地獄という言葉以外に当てはまらないセカイ。

 

彼女は衝撃で脳奬をぶちまけて死に……母は顔面と胴体に飛行機の破片が突き刺さって死んだ。

 

周りには『死』以外見当たらない。

 

上半身が弾けた子供。

 

胴体から夥しい血や内臓が溢れている青年。

 

顔面の右側がふっ飛んだ少女。

 

首に人間の腕が突き刺さっている老爺。

 

皮一枚で辛うじて繋がっている老婆の首。

 

もう原型がわからない肉塊。

 

そして飛行機の機体から炎があがり生存者達を焼いていく。

少しずつ少しずつ此方に向かって炎が進んでくる。

逃げようにも両腕が千切れていて立ち上がれない。

頭の中を占めるのは絶望と恐怖と生への渇望。

必死に匍匐前進で逃げる。

ふと何かが脳裏を横切った。

それは――朝視た夢だった……

 

今起こっている地獄の景色が、夢で視た景色と重なる。炎が僕を飲み込んでいく。

 

脳内を支配したのは、何か感慨にも似たものだった。

 

肌が焼ける。

 

肉が焦げ、血も蒸発する。

 

もはや痛覚などない。

 

そんなとき僕は()()願いを呟いた。

 

それは大事なひとを生き返らせたいだとか、時間を巻き戻したいだとか、ましてや自分が生きたいというものでもなかった。

 

この場において酷く場違いな願い……

 

 

――問題児シリーズのレティシアちゃんのフィギア欲しかったな――

 

 

薄れゆく意識の中、僕はそう呟いた。

 

声にでていなかったかもしれない。けれど僕は確かにそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

ポツリポツリと雨が降り始める。だんだんと雨の勢いは増していきザーザーと降りだした。

血や肉を洗い流していく雨は、どこか、死んでしまった者たちの嘆きのように聞こえていた。

 

 

この事故での死者は173名

生存者7名

 

 

行方不明者1名――ついに■■■■ ■■■は発見されなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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プロローグ2

全然関係ないけれどダークソウル2してたら闇術使ってくる闇霊さんに殺されて悲しかった(´;ω;`)


『くっ、衰弱しているな……』

 

声が聞こえる……。男性の声だ。しかし、どうして声が聞こえるのだろうか……? おかしいな。

 

『応急処置だけでも施すか……。エピスキー(癒えよ)!』

 

何故だろうか……体が軽くなったような感じがする。というより体の感覚が戻ったという方がしっくりくる。

しかし、僕は既に死んでいる筈なのだ。体なんて僕には存在しない。多分これは夢の一種なのだろう。現代理論をもって尚わからない死んだ後のこと。どんなことが起きたとしてもおかしくはないのだろう。

 

『もしリリーならこの娘をどうするだろうか……我輩は……どうすれば……』

 

それにしてもこの夢は匂いも感じられるし、随分とリアルなのだな。

眼は開けれるのだろうか?まぁ、夢だし大丈夫か。

そっと目蓋を上げる。見えたのは――

 

――住宅街

 

僕が死んだ墜落現場でもなく天国や地獄でもない、寂れた暗い住宅街があった。

そして、周りをさらに見渡すと僕の側にさきほど聞こえてきた声の主であろう、ねっとりとした黒髪で鉤鼻が印象的な男性が居た。

 

「気付いたのか……」

 

誰なのだろうか?夢とは記憶の整理ときいたことがある。そのため実際に見たり経験したことのない事柄は夢に出ないらしい。

そして僕は今目の前にいる男性に会ったことなど一度もない。となると夢ではないのか?

僕が考えていると、無視されたと感じたのか少し強めに言ってきた。

 

「気付いたのなら返事ぐらいしたまえ」

 

一応返事しておくか。

 

「あぁ……少し考え事を……っ!?」

 

何故か僕の声が凄く高くなっていた。

そういや、考え事であまり気にしていなかったけれど目線が低い。挙げ句の果てに視界にチラチラと金色の綺麗な糸……否、自分の髪と思われるものが映る。

僕の身長は平均的な日本人男性の身長だった。髪も染めたことはない。

 

これは一体……!?

 

僕は急いで自分の外見を確かめるため走り出す。よくts転生系小説の主人公なんかはこういう展開の時、人目を全く気にせず下腹部周辺を触ることで男性のままなのか女性になってしまったのか判断する。

しかし、そんなものはナンセンスだ。現実でそれをすると変態か痴女の烙印を押されてしまうことだろう。

故に僕は急いで鏡かそれに類するものを探す。服屋に行けば姿見があるだろう。

 

「何処へ行くのだ……! 聞いていないな……。仕方ない我輩も同行しよう」

 

後ろから男性の声が聞こえてくる。しかし今はそんなことに気を遣っている場合ではない。

気にせず僕は走る。

しばらくすると大きな通りに出た。

そのまま走り続ける。

するとついに服屋を見つけた。走りながら入店すると何人か驚いたようにこちらを見てくるが気にしない。

店内をまわっていると運良く試着室があったため、急ぎそこに駆け込む。そして鏡に写る自らの姿を見る――

 

 

――鏡に写っていたのは一人の美幼女だった。年齢は5歳くらいだろうか。

金髪のロングヘアーに病的にまで白い肌に恐ろしく整った顔立ち、そして――紅い瞳

赤いレザージャケットを着た姿はどこか儚さを感じさせると同時に力強さもある。さらに力のセーフティとも言える黒いリボンが金髪によく映える。ある一点を除けばこの少女 レティシア=ドラクレアは完璧であった。それに原作よりも小さいため鉤鼻男が心配するのも頷ける。その除くべき欠点さえなければ、告白して振られていただろう。振られちゃうんだ……それと僕はロリコンだということを言っておこう。

 

ただ一つの欠点、それは――僕であること。

 

確かにレティシアちゃんは最高に大好きだ。パソコンにはレティシアちゃんの画像が他人がひくレベルで保存されているし、何度レティシアちゃんが現実に居たらと妄想したことか。しかし、それは僕が男であったから成り立っていたのだ。僕が男だったからレティシア=ドラクレアというキャラクターを好きになることが出来たのだ。

 

レティシアになりたいなどと思ったことは一度もない。願ったのは――フィギアだ。

 

雪のように白いキメの細かい柔肌が傷つかないように頬を引っ張ってみると痛みを感じる。僕の経験上、夢で痛覚があったことはただの一度もない。このことからも今、僕のいるこの世界が現実である可能性がさらに高まった。

夢ではないと決まったわけではない。けれど現実である可能性の方が比べるまでもなく非常に高いのだ。

となると、僕はこの世界を夢ではなく現実として行動していかなければいけない。それは同時にレティシアとして生きていくことでもある。

 

もしも、この状況が人為的、作為的に起こした奴がいるのならば僕は決して許すことはできない。

もし本当にそのようなことをした奴がいるとして出会ってしまったら、僕は確実にそいつを殺そうとするだろう。そこには彼女や母が死んだ理不尽に対する怒りも混じっているだろうな。

 

憎悪を生きる糧にする。それは誰も推奨しない悲しい生き方だ。されど、僕にはそれも交えないときっとどこかで自殺してしまうかもしれない。

なぜなら今の僕には憎悪しか自己を守るものがないのだから。

 

さてこの世界で有利に生きる方法を考えることにする。

何も考え無しに生きるのと計画をたて生きるのとでは利益が違う。

 

まず意識をすれば体の中に何やら力のようなものがあることがわかる。それは感覚的に使い方が解るため、使おうと思えばいつでも使えるだろう。

十中八九レティシアのギフトだろうな。尤もこの世界にギフトなんて概念があるかどうかはわからないが。

無論ギフトとは単なる贈り物ではなく、神々にも対抗できる力というのがここでいうギフトのことだ。

これがあれば戦闘面では、問題ないだろう。

 

それとこれらのことから容姿だけレティシアになったのではなくレティシア本人になってしまったことがわかる。

なのでレティシア本人として振る舞った方が良いだろう。

運の良いことにレティシアと僕の口調は通じるものがある。一人称と細部に気を配れば口調に関しては問題ないはずだ。

 

ただ不可解なことが一つある。それは日光を浴びても何ら体に異常がないことだ。

気づいたのは此処に来る途中だ。まぁ、有り難いからいいか。

 

戸籍とかはあのねっとり髪に頼んでみようかな。うまくいけば養子くらいにはなれるかもしれない。悪くても孤児院を紹介してくれる筈だ。

あのねっとり髪は僕を助けようとしていたとき打算的な感じがしなかった。見た目は不潔だが悪い人間ではない。利用するには便利だろうな。

一度、僕は試着室を出ることにした。あまり長居をすると怪しく思われるからな。

 

服屋を出るとねっとり髪が腕を組み壁に寄り掛かっていた。いつ見てもねっとり髪の着ているローブを洗濯したくなってくる。

早速レティシアとして話しかけてみることにする。

 

「まだ待っていたのか黒髪の男よ。てっきり帰ったのかと思っていた。

まぁ、まずは助けてくれたことに感謝する。礼はいるか?」

 

一応もう一度ねっとり髪がまともか調べる。

打算や下心で行動していたのなら、それ相応のリアクションをするだろう。

 

「我輩はこの程度で礼などはいらない」

 

合格だ。では心的距離を縮めていこうではないか。

 

「男、名を何というのだ?」

 

「フン、まずは貴様から名乗るべきではないですかな……?」

 

そういや僕ってどんな名前だったろうか?霞がかかったように名前が思い出せない。

まぁ、問題はない。レティシアとして生きていくと決めたからな。

堂々とキメ顔で名乗ってやろう。

 

「私は箱庭の騎士にして吸血種の純血であり魔王レティシア=ドラクレアだ」

 

「我輩は半純血のプリンス セブルス・スネイプだ……」

 

セブルス・スネイプ……?僕はこの名前を知っている。なぜなら一昔前まではこのキャラクターに憧れていたのだから。

1997年にイギリスで出版され、瞬く間にベストセラーとなりスマーティーズ賞などをとった名作【ハリー・ポッター】

この作品に出てくる、愛に生き最期はお辞儀さんの蛇に殺された男性キャラクターであるスネイプ。

最後の最期で凄い人気を誇ったキャラクターなのだ。

だとすれば最高じゃないか……!

とりあえず用件を簡潔に言うことにしようか。

 

「ではスネイプさん。いきなりだが父親になってもらえないだろうか。」

 

「なに……?」

 

焦って直球過ぎてしまった。

しかし、凄いな。あのスネイプさんが動揺している。それもそうか。誰だって脈絡もなく急に、パパになって はぁと 何て言われたら動揺する。しかし、こういう時は判断が少なからず鈍るものだ。

ここは一気に畳み掛けることにしよう。

 

「私は遺憾ながら親族と呼べるものがいない。そのため私は保護者を必要としているのだ。

引き受けてくれないだろうか」

 

少し考える素振りを見せてからスネイプは答える。

 

「良かろう。引き受けてやる」

 

え?すごくあっさりうまくいったんだが。

なんか裏がありそうだな。

案の定スネイプは続けた。

 

「だが、ドラクレア。貴様の正体を明かして貰う。先の箱庭の騎士や魔王……あれは一体どういう意味だ。

貴様が見た目通りならば聞かなかったが……貴様の精神は既に成人近くの水準だ。それにどうしてあんな場所で倒れていたのだ」

 

正体か……。確かに5歳くらいの幼女が魔王とか言ってたり交渉してたらビビるわな。倒れてた理由は……わからないな。

さて、とりあえずレティシアちゃんの設定を語ってやろう。

もしかしたら、警戒させてしまうかもしれないが。

 

「教えてやるとも。聞きたいのだろう?

箱庭の騎士……これは我が一族が箱庭世界に貢献したとき贈られた称号だ。つまり私個人に対して使うものではない。

……魔王、これはクーデターを起こした同士の部下を殺したらついた。」

 

「な……!」

 

レティシアの設定って合ってるよな。

それにしてもスネイプさん驚いてるな。

多分、部下を殺したという部分に驚いているのだろう。

すると急に体の中に何かが体の中に入り込んでくるような不快感を感じた。

すぐさま龍の遺影を展開し、スネイプを捕縛する。

 

「開心術を使うとは、油断も隙もないな」

 

「この影は一体……!?」

 

驚いているみたいだな。それもそうか。

何せこの世界には本来ないものだからな。しかも急に出てきた影に縛られたんだ。軽くトラウマものだろう。

 

「それは私の能力だ。自分の影を操れる。無論、魔法ではないぞ」

 

スネイプが僕に対して睨み付ける。

警戒が高まってしまったみたいだ

 

「何が目的だ。ドラクレア……!」

 

「言っただろう。私の父親になってもらいたいと。もし出来ないのであれば孤児院を紹介してくれ。

あと、言い忘れていたが私が道で倒れていたのは自分でもよく分からない」

 

スネイプは思案を始める。

やはり養子は無理か……。警戒させてしまったしな。そもそもスネイプが子供とは言え不穏分子を抱えるとは思えないしな。

僕はスネイプを解放すると龍の遺影をしまう。

しかし、良い意味で僕の予感は覆された。

 

「良かろう。ドラクレア。お前の父親になってやろう。このさいお前の正体について言及はしない。

しかし、条件がある。」

 

「条件とは……?」

 

「ハリー・ポッター、現在5歳でマグルに育てられている。条件はポッターの監視と報告だ。

その程度、貴様には造作もあるまい」

 

ハリー・ポッターの報告か……。龍の遺影を使えば、簡単に出来るな。

それにしてもよく僕を養子にしようと思ったな。

何にしても計画通りだ。あともう一つの目的……魔法を使うこと。

 

「了解した。では、交渉成立だ。

それとスネイプさん……一つ尋ねたいのだが、私にも魔法を使えるだろうか?」

 

そう尋ねるとスネイプは一瞬キョトンとした表情を浮かべ僕に向かって言い放った。

 

「何を言っているのだ? 貴様は魔法を使えるのだろう?さっきから魔力を流しているではないか……」

 

「は? 魔力?何の事だ?」

 

「貴様が起きた直後から流しっぱなしの魔力だ!」

 

流しっぱなし?魔力が?

スネイプは青ざめると慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

「貴様……!まさかと思うが我輩への牽制として魔力を故意に流しているのではないのか……!?」

 

勿論のことそのような事をした覚えはない。

 

「まさか無意識にそこまでの魔力を流しているなんて……!

ドラクレア、すぐに聖マンゴに向かう!我輩の腕に掴まれ……今すぐに!」

 

 

―――――

 

そして僕とスネイプは聖マンゴ魔法疾患傷害病院に姿現しをした。

 

聖マンゴで癒者の診察をうけた僕は魔力がとんでもなく多いということだけがわかった。どうやらスネイプは僕の魔力がだだ漏れているのを見て、何かの病気だと勘違いしたようだ。僕が10分間に周囲に出していた魔力は、一般の魔法使いや魔女の平均的な内蔵魔力の約7倍だったそうなのだ。勘違いするのも無理はない。

 

11歳以下の魔力がある者が10分間に出す魔力は全体の0.15%らしい。つまり僕の魔力は化け物なのだ。まぁ、レティシアちゃんボディなら不思議ではないな。

 

そして色々とあったが僕はスネイプの養子として暮らし始めた。

 

 



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賢者の石を壊したい今日この頃
買い物にいこう


ダークソウル2でまた闇術師に殺された。
絶頂とかあんなんチートだわ !とまぁ闇術師に対して非常に憎しみを抱く作者です。


セブルス・スネイプの養子になってから6年が過ぎた。

 

 

 

僕はスネイプに引き取られた後、ホグワーツでより良い生活を送るため色々なことに挑戦した。

魔法や槍術に剣術、格闘術。わざわざその道の達人たちの処に出向き、教えを請うた。

 

スネイプからの養子になるための条件であるハリー・ポッターの監視と報告を行いながら、学業にも専念した。特に科学分野に力を入れた。科学をマスターしておいてデメリットはない。なぜなら色々な魔法の応用に使えるからだ。しかも魔法を創るときにも非常に役に立つ。

僕はスネイプに魔法を一から創る技術を学び、実際にスネイプが学生時代に創ったという『セクタムセンプラ(切り裂け)』なども教えて貰った。

それと、僕の持つギフトも時間の許す限り練習し、今ではポッター監視に使用していたこともあってか『龍の遺影』は呼吸するように使えるようになった。

 

 

 

そんな僕は届いてから、随分と遅れてホグワーツからの手紙を開封している。

最近は忙しく読む暇が無かったのだ。

ホグワーツからの入学許可証は原作通り黄色みがかった羊皮紙の封筒に入っていた。ドキドキと高鳴る胸を抑え、目を通す。

 

――――――――――――――――――――――――

| ホグワーツ魔法魔術学校

| 校長 アルバス・ダンブルドア

|マーリン勲章 勲一等 大魔法使い 魔法戦士隊長

|最上級独立魔法使い 国際魔法使い連盟会員

|

|親愛なるドラクレア嬢

|このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を

|許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。

|教科書並びに必要な教材のリストを同封致します。

|

|新学期は9月1日に始まります。7月31日必着で

|ふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

| 敬具

|副校長 ミネルバ・マクゴナガル

―――――――――――――――――――――――

 

本物は何故だか感動するな。

僕は少しの間感傷に浸っていた。

そして僕は同封されていた入学用品リストを一瞥し、出掛ける準備をする。

そしてスネイプの部屋に行き、三回ノックする。

 

「スネイプ、ロンドンまで行ってくる。何か必要なものがあればメモに書いて渡してくれ。」

 

すると部屋の戸が開き、スネイプが洗濯したい衝動に駈られてしまうローブを着て出てくる。彼の手には一枚のメモ。

 

「入学用品を買いに行くのか……?」

 

「うむ、ダイアゴンとノクターンまでな」

 

ノクターンと聞くとスネイプは眉をしかめる。

それもそのはずノクターン横丁は、闇の魔術を専門に取り扱う店が立ち並び、それに比例したように素性の怪しい者や犯罪者などがいるからだ。決して少女が気軽に行っても良い場所ではない。

しかし、僕は闇の魔術も早く修得したいため敢えてこのノクターン横丁に行くのだ。

 

「何か起きたらすぐに立ち去るのだ。それと怪しい物品には極力手を出すな……」

 

「承知している。スネイプ、お前は私の母親か?」

 

「母親ではないが父親だ……」

 

「違いない」

 

軽口を言い合い重くなった空気を誤魔化す。

スネイプからメモを受け取ると僕は外に出た。

 

「さて、今日はどうやって行こうか……」

 

僕は姿現しを練習する時間がとれず修得できていない。とある事情で暖炉も現在使用不可だ。

そのため必然的に徒歩かギフトかマグルの乗り物で行くことになる。

いつもは『龍の遺影』で移動するが、今日は趣向を変え翔んでいくことにする。

 

庭に出て、背中に意識を集中させる。すると背中に黒い翼が顕れる。

これはあまり使わないので、まだ意識を集中させないと使えない。それに使い所が限られているため経験がなかなか積めないのだ。

そして僕は何度か翼をはためいて、その場から飛び立つ。

 

頬に当たる風が気持ちいい。

しかし、翔んでいると六年前の飛行機事故を思い出す。

今でもあの理不尽に対して憎悪を抱いているが、それをぶつける相手がいない。

思考が暗くなりそうだったので、頭を振る。

いけない。今日は楽しむ予定だというのに。

 

僕は肩に掛けたバッグからとある物を取り出す。

取り出したのは音楽プレイヤーだ。製造元もマグルの会社の音楽プレイヤーだが、色々と改造を施してある。勿論魔法でだ。

まず、魔法界の変な電波により壊れないよう、不干渉の刻印を施した。これにより狂うことはない。

さらに自動修復呪文により一気に潰したりしない限り壊れることはないお気に入りだ。

イヤフォンにも外界からの音を完全に遮る呪文が掛けてある。

 

そうして僕は曲を聴き、翔びながらダイアゴン横丁へ向かった。

 

―――――

 

到着したのは昼前だった。

黒翼を戻し、マダムマルキンの洋装店へ向かう。

音楽プレイヤーを片付けていると、私のようなプラチナブロンドの髪の少年が話し掛けてきた。

 

「やぁ、君みたところ純血だろう?どうしてマグルの製品なんて持っているんだい?」

 

「そうだな。少年の言うとおり、私は純血の吸血鬼(きゅうけつき)だ。

それと確かにマグル自体は鬱陶しいが、物は別だ。とても便利なものが多いし、娯楽も富んでいるぞ」

 

少年は吸血鬼と聞いた瞬間青ざめたが、すぐに元通りになるとさらに僕に問い掛けてきた。

 

「そ、そうか。でも君日光に当たってるけど大丈夫なのかい?」

 

「問題ない。――真祖だからな」

 

真祖と聞いた瞬間、少年は目を見開いた。

僕は日光に当たっても大丈夫なこの体をずっと調べてきた。

そして僕はとある仮説をたてた。それは僕はレティシアとしてこの世界に転生したとき、同時に新たな真祖として誕生したのだと。

原作のレティシアは真祖ではなく、ただの純血の吸血鬼として技術と能力だけで十三番目の太陽主権が贈られることになった。尤もそれは、力を求める同族の部下によってなくなってしまったが。

つまりこのレティシアボディに真祖補正が掛かると、あのカーズさんのような究極生命体になるわけだ。

まだ僕は原作のレティシアレベル(弱体前)の力を充分に引き出せていないが、もし解放すれば原作のレティシア(弱体前)よりも強くなるだろう。

 

「し、真祖だって……?」

 

少年が何か恐ろしいものを見るような目で此方を見てくる。

少し罪悪感が沸き上がったのでフォローをしてあげることにする。

 

「すまないな、驚かせて。

私はレティシア=ドラクレアだ。もし良ければ少年の名を教えてくれないか?」

 

僕はしゃがみこんで少年に手を差しのべた。

すると少年が何故か頬を紅潮させながら、差しのべた手を掴み起き上がる。

 

「ごめん、吸血鬼の真祖とかって物語の中でしか知らなくて。恐ろしいものっていうイメージがあったんだ。

それと、改めてドラコ・マルフォイだ。よろしく!」

 

「あぁ、よろしく」

 

僕はマルフォイに入学用品を買いにいく旨を伝えると、マルフォイも同じく入学用品を買いに来たようで僕に同行するようだ。

彼は自分の父親の所に行くと僕の事を紹介した。

そうしてルシウス・マルフォイと知り合った僕はドラコの事を任せられ、どんどん入学用品を買うのだった。

 

そうして僕たちはオリバンダーの店の前で会話をしていた。

 

「あとは杖だけだな」

 

「レティシア、僕はもう杖を買ってるから外で待ってるね」

 

「わかった」

 

さぁ、中に入ろうか。

 

店内は以外と広く一つの古い椅子が置かれており、あまり人が使っている様子はない。

しかし、天井近くまで積み上げられた箱がどこか狭く堅苦しい雰囲気を出していた。

 

店内を眺めていると、二人の客が入ってきた。

一人は黒髪に緑色の目をしていて眼鏡を掛けた少年。そしてもう一人は毛むくじゃらの大男。

 

大男は店内の古い椅子に座り込んだ。

 

「あの……君も今年からホグワーツ?」

 

少年の方が話しかけてくる。この少年こそ、この『ハリー・ポッター』の主人公ハリー・ポッターである。

僕は一拍おいてから返事を返す。

 

「うむ、私は新入生だ。となれば君も新入生だな。

私の名はレティシア=ドラクレアだ。君の名は?」

 

本当はスネイプからの指示である監視をしていたのでハリー・ポッターのことは知っているが、やはり主人公の自己紹介を聞いてみたいという欲がある。

ハリーは少し躊躇ってから口を開けた。

 

「僕はハリー。ハリー・ポッター。」

 

普通すぎてつまらんな。

そう思うが顔には出さない。

 

「そうかハリーよろしく」

 

「うん! こちらこそよろしく!

そうだ、レティシア、君はその……僕の名前に何とも思わないの……?」

 

「思わないな。それとそろそろ杖を選ばないとな」

 

僕の目の前には困った顔をした老人がいた。この人がオリバンダーだ。

 

「人を待たせている。早くお願いしたい」

 

「あぁ、すまんかったのう。それでは杖腕を教えて下さりますかな。」

 

「右だ」

 

そしてオリバンダー老人は巻き尺で私の全身を測っていく。

測っている間、オリバンダーは私とハリーにこの店の話をしてくれたが割愛する。

 

「では、お嬢さん。これをお試しください。樫の木にユニコーンの鬣。30㎝ 酷く頑固」

 

僕はオリバンダーから杖を受け取るとおもむろに振る。

すると店内に暴風が吹き荒れる。

 

「だめだ」

 

「老人、この店で一番魔力に耐えれる杖を持ってきてくれ」

 

すると老人は一本の刺突剣を持ってきた。

刀身は綺麗に研かれており、白銀に耀いていた。柄は黒く中央に紅玉が填まっている。その周りを囲うように狼を象った金細工が施されている。

 

「この杖が一番魔力に耐えれる杖じゃ。

500年間十字架として使われた銀に、古龍の牙110㎝ 傲慢で強力

この杖を扱うには一般の闇祓いの総魔力の10倍以上は必要じゃ」

 

「問題ない、その杖を貸してくれ」

 

「し、しかし

もし魔力が少ないと魔力を逆に吸い付くされて死にますぞ ! !」

 

「だから問題ないと言っている」

 

少し苛立った僕は渋る老人の手から刺突剣を引ったくるようにとり、振った。

すると刺突剣の刀身が黄金に輝いた。黄金に輝いた刀身は柄の黒と合わさって、とても美麗だった。

 

「な、なんと……! ありえない !お嬢さんは人間か!?」

 

「無論違うが」

 

「「え!?」」

 

ハリーと老人の声がハモった。

そして僕は自分が吸血鬼の真祖だということを話した。

大男(ハグリッドと言うらしい)を含めた三人は最初驚いたり怖がっていたりしていたが、時間がたつにつれ普通になっていった。

そして店から出るとずっと立って待っていたドラコに怒られるのは、また別の話。

 

そしてドラコと別れた後、スネイプからの頼まれ物を購入し、

ノクターン横丁で魔導書を購入して帰った。

 

 

 

 

 



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ホグワーツへ行こう

ダークソウル2で霊体になってたら思った。人間のパトローナスじゃん!


今日の日付は9月1日。言うまでもなくホグワーツへ出発する日だ。

既に準備は終わっているため、僕はぎりぎりの時間まで作業をしていた。作業といっても色々なマグルの製品に呪文を掛けるだけの簡単なものだ。

 

そういや、僕には未成年の魔法使いについている筈の「臭い」がない。原因はよく分からないが、僕は種族的なものではないかと疑っている。

要するに僕は未成年にも関わらず校外で呪文を使いまくることが出来るのだ。

 

さて説明はここまでにして出発することにしよう。

僕の荷物は全て『龍の遺影』の中に収納されているので、僕自身は完全な手ぶらだ。

移動にも『龍の遺影』を使う。やはり影を操るというのは使い道が多岐にわたるため便利だ。故に依存してしまうのだが……。

 

 

 

―――――

 

僕はマグルに見られないようにキングズ・クロス駅から少しだけ離れた路地裏にでた。

そこから少し急いでキングズ・クロス駅に向かう。

スネイプは既にホグワーツに向かっているため、会うことはない。

 

それにしても目につくのはマグル達。そこら中マグルで混み合っている。まぁ、本来マグルの駅のため当然と言えば当然なのだが。

 

列車到着案内板の上の時計を見るとまだ余裕がある。常に余裕をもって優雅たれ。思わずうっかりパパの口癖がでてしまったのはご愛嬌。

さて9と4分の3番線に向かうとするか。

 

そうしてプラットホームの9と10の間を目指していると、見知った顔が居た。

 

――ハリーだ。

 

困った顔をしてキョロキョロしている。仕様がない、声を掛けてやろう。

 

「ハリー、君は一体何時までそこに留まるつもりだ?」

 

「あっ! レティシアか……。実は9と4分の3番線が何処か分からないんだ」

 

「そうか、ならついてきたらいい」

 

そして僕は歩き出す。

ハリーも後ろからついてきている。

そして僕たちはプラットホームの9と10の間に着いた。

 

前方には赤毛の家族がいる。

 

「ハリー、後はあの前にいる赤毛の家族に聞くといい。恐らくあの家族はウィーズリー家だ。

丁寧に教えてくれる筈だ」

 

「あ、レティシア待って……!」

 

僕はさっさと9と10の間を通る。

通った先には赤い蒸気機関車が停車していた。

 

とりあえず、蒸気機関車乗り込むと空いているコンパートメントを探す。

どのコンパートメントも一杯でなかなか見つからない

 

しばらく歩いていると空いているコンパートメントを見つけたので、すぐに乗り込む。

そして『龍の遺影』から手作りのクッキーを取り出し食べながら出発時間がくるのを待つ。

 

さらに僕は携帯ゲーム機も取り出した。

FPSゲーのディスクを入れ、開始する。

R18のFPSだが、レーティングなんてものは気にしない。そもそも僕は前世の年齢を合わせると、成人になっている。だから問題はない。

 

そして、FPSに夢中になっていると、ハリーがやって来た。その後ろには赤毛の少年も居る。

 

「レティシア、ここ空いてる?」

 

ハリーがそう僕に尋ねると、今度は赤毛君が言葉を紡ぐ。

 

「他はどこもいっぱいなんだ、だから……その、ここに乗せてくれない……?」

 

「うむ、良いぞ。はやく乗るといい」

 

僕は向かい側の席を指差し、座るように促した。

 

「僕、ロン、君は……?」

ロンが名を尋ねる。しかし、彼の頬が赤い。風邪でもひいているのだろうか。

 

「私はレティシア=ドラクレア、最初に言っておくが「レティシアは吸血鬼の真祖なんだ !」……ハリー」

 

ハリーに先に言われてしまった。ロンは驚きと恐怖が入り交じった視線を此方に向ける。

僕は溜め息を吐くと、襲うことはないという旨を話す。

 

「私は血がなくても、人間の食事だけで生きていくことが出来る。

そもそも私は血が飲めない。ちょっとしたトラウマがあってな。だから、そこまで警戒するな……」

 

ロンは慌てて窓の方を向き、僕に対して謝罪をする。

 

「その……ごめん。気を悪くしたかい……?」

 

「問題ない、気にするな」

 

僕は会話を断つと携帯ゲームの画面に目を落とし、ゲームを再開する。

するとロンはハリーに話し出した。

 

「君、ほんとうにあるの……ほら」

 

ロンはハリーの額を指差す。

ハリーはお辞儀の人に付けられた傷跡をロンに見せた。

 

「それじゃ、これが例のあの人の……?」

 

「うん。でもなんにも覚えていないんだ」

 

「なんにも?」

 

ロンが少し興奮しながらハリーに聞く。

 

「そうだな……緑色の光が一杯だったのは覚えてるけど、それだけ」

 

「うわー」

 

それから彼らはそれぞれの家庭環境などを話していた。

すると突然ハリーが僕に質問してきた。

 

「ねぇ、レティシア。その君が持ってるのって……もしかしてマグルのゲームなの?」

 

「見れば分かるだろう」

 

するとロンが座席から身を乗り出すようにして携帯ゲーム機を見る。

 

「へぇー、これがマグルのゲームか」

 

「マグルの製品は娯楽に富んでいるからな。魔法界の娯楽よりも俄然楽しいぞ」

 

「ふーん……そうなんだ」

 

そこからは各々が窓を眺めたりしていた。尤も私はゲームに没頭していたが。

 

12時半頃、車内販売の女性がコンパートメントの戸を開けた。

 

「車内販売よ。何かいりませんか?」

 

するとハリーが勢いよく立ち上がって、通路に出ていった。

ロンはサンドウィッチがあるから買いに行かないと、言っていたがじぃーっと通路の方を物欲しそうに眺めていた。

 

そしてコンパートメントに戻ってきたハリーの腕にはたくさんのお菓子。食べきれるのだろうか。

 

「お腹空いてるの?」

 

ロンがハリーに尋ねた。そう聞きたくなるのは当たり前である。

 

「ペコペコだよ」

 

ハリーはロンの問いに対してそう返した。

そしてハリーとロンはお菓子を一緒に食べていた。ロンのサンドウィッチは座席の隅にポツンと放置プレイを強要されている。

僕にもお菓子をくれたが酔うからと言い、お菓子を返した。

 

ゲームをして時間を潰していると、コンパートメントの戸がノックされた。

そして丸顔の少年が泣きながら入ってきた。

 

「ごめんね。僕のヒキガエルを見かけなかった?」

 

ハリーとロンは首を横に振り、僕は見ていないとその少年に言った。

すると少年はさらに泣き出した。そしてハリーと少し言葉を交わすと出ていった。

 

その後、ロンがネズミを魔法で黄色くしようとすると、またコンパートメントの戸が開いた。

カエルに逃げられた、丸顔少年が少女を連れてまた現れた。

 

「誰かヒキガエルを見なかった? ネビルのがいなくなったの」

 

少女が僕たちに向けて言った。

威張った話し方をしていて、見ていて何となく微笑ましい気持ちにさせてくれる。

栗色の髪と少し大きな前歯と合わさってリスみたいだ。

 

「見なかったって、さっきそう言ったよ」

 

ロンが答えるが、リス少女は杖の方が気になるようだ。

 

「あら、魔法を掛けるの? それじゃ見せてもらうわ」

 

そしてロンは兄から習ったというおかしな呪文をネズミに試したが、何も起こらなかった。

そして、リス少女がやはり威張った様子で僕たちを見下しながら教科書を暗記したとか言うので、流石にイラッ☆とした僕はとある呪文を唱えることにした。

見つからないようにバッグの中に手を突っ込み、その中で『龍の遺影』を展開し僕の杖である刺突剣を取り出した。

いきなり剣を取り出したためか、僕の杖の事を知っているハリー以外が驚いた。

 

「何に使うの、そのレイピア!?」

 

リス少女(ハーマイオニー・グレンジャーと言うらしい)がヒステリックに叫ぶ。

煩いので杖の事を話す。

 

「うむ、これが私の杖なんだ。今からヒキガエルを見つけてやろうと思ってな」

 

「そ、そう。なら見せてもらうわ」

 

僕は口元を三日月の形に歪める。

この呪文を見たとき、こいつらはどういった反応をするだろうか。

そんな僕を四人が危ない人を見るような目で見てくる。

 

今から唱えるのは、守護霊の呪文だ。しかし僕の守護霊は特殊で、ドラゴンと騎士の二つの姿に任意に切り替えれるのだ。

守護霊と言うのは通常幸せな記憶をもとに構築する。これが僕のドラゴンの守護霊だ。この守護霊構築方法は吸魂鬼などを追い払うことに特化しているのが特徴だ。幸せな記憶を使うため、難易度は高いが使える人は使える。

 

しかし、実はもう一つの構築の仕方がある。憎しみ、恨みなどの負の記憶を使うのだ。しかし、この仕方は非常に難しい。というより理論上は可能だが使える術者がいないという方法なのだ。

 

なぜなら大抵の憎悪の記憶では、守護霊を構築するまでに至らないのだ。それこそ、気が狂いそうになるほどの記憶でなければ……。それに加え守護霊の呪文自体が難しいため出来ないのだ。

しかし、僕はこの守護霊構築方法が使える。六年前のあの忌々しい記憶を使って……。それが僕の騎士の守護霊だ。

 

そしてこの守護霊構築方法で出来た守護霊は、吸魂鬼を追い払うことは出来ない。しかし、殺す(ころす)ことが出来るのだ。これは凄いことだと思う。

殺すことの出来ないと言われた吸魂鬼を殺すことが出来るのだから。

 

僕は通路に出て、刺突剣を構え呪文を詠唱する。

 

『エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)』

 

「何これ……? 教科書にはこんなの載ってなかったわ……。それにこの騎士……」

 

ハーマイオニーが目を見開きぶつぶつと呟いている。

出てきたのは、全身が赤黒く輝く禍々しいフルプレートアーマーの騎士だった。

全身から黒い蒸気のようなものが出ており、それがさらに禍々しさに磨きをかける。

僕は騎士に命令を伝える。

 

「ヒキガエルを探してきてくれ」

 

騎士は頷くとすぐに探しに行った。

後日、ホグワーツ特急に騎士の怨霊が取り憑いていると噂されるのは別の話。

 

―――――

 

「す、すごかったわね……レティシア。びっくりしたわ」

ホグワーツ特急から降りるとき、近くにいたハーマイオニーがぎこちなく話しかけてきた。

既にハーマイオニーには自己紹介を済ませてある。無論、彼女と一緒にいた丸顔少年ネビルにもだ。

 

あの後、僕の守護霊がネビルにカエルを届けたり、僕たちのコンパートメントにドラコと取り巻き(クラッブとゴイルというらしい)が来て一悶着あったが、僕は自分に不可視の呪文を掛け難を逃れた。

 

それと僕はホグワーツのローブを着ていない。一応買ってはいるが、このレティシアボディに着せると原作のレティシアを知っている僕には違和感があり、着たくなかったため、校長にわざわざ今の服装には吸血衝動を抑える呪文が掛けられていると、嘘八百を述べ許可を貰ったのだ。

そのため今も赤のレザージャケットを主としたいつものレティシアファッションでいる。

 

「ハーマイオニーも教科書を暗記しているのだろう? 充分だ」

 

「そ、そう? ありがとうレティシア!」

 

「ほら、ハーマイオニー行くぞ?」

 

ハーマイオニーが立ち止まっているので急かす。

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!」

 

ハグリッドとかいう毛むくじゃらが新入生を案内しているようだ。

ハリーとロンとは、はぐれてしまったためハーマイオニーと共に僕はホグワーツ魔法魔術学校の校舎という名の城へ向かうのだった。

 

 

 




ドラゴンの守護霊→ダークソウル2の古の竜さん

騎士の守護霊→fate/zeroのバーサーカーさん or ダークソウルの深淵歩き装備の闇霊さん。

こんな感じ。


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組分けをしよう

レティシアの強さをどの程度にすればいいのでしょうか……?


「イッチ年生、ついてこい!」

 

案内係の森番を先頭に、僕を含むホグワーツ新入生がつづいていく。

僕たちは、暗いなか滑りやすく足元の悪い、狭い小道を進んでいった。これでは怪我をしてしまう人が少なからずいるだろう。実際にハーマイオニーが躓き、転びそうになった。

 

「ハーマイオニー、私の腕に掴まるといい」

 

僕は右斜め後ろを危なげに歩く、ハーマイオニーに手を差しのべた。

そして懐から杖であり近接武器でもある刺突剣を取り出す。当たり前の事だが鞘はつけてある。そして光源を作り出す呪文を詠唱する。

 

「ルーモス・マキシマ ! (強い光よ)」

 

すると辺り一帯を光源が眩しく照らす。

何人かの生徒が驚いたように首を光源の方に向けた。ハーマイオニーも同じように光源の方に首を向けると、今度は僕の方に首を向けた。

 

「レティシア、あなた本当に凄いわね。それと腕、ありがとう」

 

「うむ、気にすることはない。それに、この程度ならハーマイオニーもすぐに出来るようになる」

 

「そう」

 

しばらく歩いていると、先頭を歩いている森番が歩みを止める。そして此方の方に振り向いて言葉をなげる。

 

「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ。

この角を曲がったらだ」

 

曲がり角を指差しながら森番は言った。

 

「うぉぉぉォォォ ! 」

 

周りから一斉に声が沸き上がる。

ハーマイオニーは叫び声に眉をひそめながらも安堵した表情になっていた。ここまで歩くのに疲れたのだろう。僕はこの体になってからは、あまり疲れることがない。僕は吸血鬼の体って凄いなぁとしみじみ感じたのだった。

 

曲がり角を曲がると、狭い道が急に開け、大きな湖の畔に出る。

向こう岸には、巨大な城があり夜空と合わさってどこか威厳を醸し出していた。

 

「四人ずつボートに乗って」

 

森番がボートを指差す。

ハーマイオニーはいつの間にか現れていたハリーとロンとネビルと一緒に乗るみたいだ。

僕はハリー達のボートとは別のボートに乗り、腰掛ける。

するとドラコとクラッブ、ゴイルが乗ってきた。

 

「やぁ、レティシア ! 一ヶ月ぶりだね。手紙の返事ありがとう」

 

「あぁ、久し振りだな。ドラコ」

 

ドラコが話しかけてきた。実は僕は、ドラコとダイアゴン横丁で出会ってから、手紙のやり取りをしていたのだ。

彼の手紙の内容はジョークも交えてあり、なかなかに面白く、飽きることはなかった。

 

「そうだレティシア。ハリー・ポッターと会ったかい?」

 

ふとドラコがそんなことを聞いてきた。しかし馬鹿正直に答える必要性は皆無だ。

スリザリンとグリフィンドールに交友関係を持っていて損はない。ここで正直に答えて、自ら繋がりを崩そうとする奴はただの愚者だ。

 

「ハリー・ポッター? 会っていないがその人間がどうかしたのか?」

 

「ポッターに友人の誘いをしたんだ。けど断った。ポッターには本当にガッカリだよ」

 

マルフォイが肩を竦めながら言う。ここでフォローでもすれば好印象だろう。

 

「そうか、残念だったなドラコ。まぁ、案ずるな。お前はマルフォイ家の長男なのだろう?」

 

「そうだね、レティシア。ありがとう」

 

会話をしている間にボートは城の真下と思われる暗いトンネルをくぐっていた。

 

「そうだ、レティシアはどの寮が良いんだい?」

 

「スリザリンかレイブンクローだな」

 

ホグワーツには四つ寮がある。寮によって選ばれる人物の性格が違う。

僕は多分スリザリンかレイブンクローとなるだろう。

 

「どちらに選ばれてもレティシアならよく映えると思うよ」

 

「そうか。ドラコはスリザリンに入るのだろうな」

 

「当たり前さ。スリザリンは才能で選ばれるからね。

それにしても、どうやって組分けるんだろう?」

 

「行けばわかる。心配することはない。

それにもうすぐ船着き場につくぞ」

 

ボートがトンネルを潜り抜けると、地下の船着き場に到着した。

そして、船着き場から続く岩の通路を登っていくと、開けた草むらにでた。そこからさらに石段を登り、ようやく城の扉の前に辿り着いた。

 

「レティシア、いよいだね」

 

「そうだな、ドラコ。いよいよだ」

 

僕はドラコの問いに肯定の意を示すと開こうとする扉を眺めていた。

 

―――――

 

扉が開くと、緑色のローブを羽織った厳格な雰囲気の魔女が現れた。

森番と魔女は言葉を交わすと、扉を大きく開け放った。

玄関ホールは広く、一戸建ての家が入りそうだった。石壁に備え付けられた松明が僕たちを明るく照らす。

 

僕は今まで光源に使っていた刺突剣を『龍の遺影』に収納した。

魔女――マクゴナガルについて僕たちはホールを横切っていった。そしてマクゴナガルは僕たちをホールの脇にある空き部屋に案内した。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。

新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。」

 

マクゴナガルは新入生に挨拶をした後、寮についての説明を始めた。

寮はグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンだ。

新入生はこの四つの寮から組分けられるのだ。

 

「まもなく全校列席の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、出来るだけ身なりを整えておきなさい」

 

マクゴナガルはそう言い新入生を見渡す。

 

「学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」

 

そう言い残すとマクゴナガルは部屋を出ていった。

 

僕は見知った顔を探すために辺りを見渡したが、知らない人ばかりなので携帯ゲームで暇を潰すことにした。

すると突然後ろから悲鳴があがる。その方向を向くと、ゴーストが二十体程現れたのが見えた。

 

ゴーストたちはなにやら議論をしているみたいだ。ゴースト達の会話のなかでピーブズという単語がよくでてくるのがわかる。多分ゴーストたちはその、ピーブズについて議論しているのだろう。ゴーストたちの表情が険しいため、ピーブズとやらは害のあるものかもしれない。

 

僕はこの6年で転生前の記憶が大分曖昧になっている。そのため、このハリー・ポッターの世界のことも、大まかなストーリーの内容と主要キャラくらいしか覚えていない。故にゴースト達が話題にしていたピーブズなるものも、新しく知り得ないといけないのだ。

 

僕たちのいる部屋の戸が開く。マクゴナガルが戻ってきたようだ。

 

「組分け儀式がまもなく始まります。

さぁ、一列になって。ついてきてください」

 

皆が重苦しい雰囲気のなか、一列に並び始める。僕は茶髪の少女の後ろに並んだ。

僕たちは部屋を出て再び玄関ホールに戻ると、そこから二重扉を通り、大広間に入った。

 

空中には何千本もの蝋燭が浮かんでおり、四つの長テーブルを照らしている。それぞれのテーブルには寮ごとの上級生たちが着席しており、蝋燭の光が反射し輝く金の皿とゴブレットが並んでいた。

さらに広間の上座にはもう一つ長テーブルがあり、そこには教師陣が座っていた。新入生一同は上級生の方に顔を向ける格好で並んだ。

ふと天井を見上げてみると、魔法で出来ているのだろう満天の星空があった。完成度は非常に高く、本当に夜空を見上げているかのように感じた。

 

マクゴナガルが椅子を用意したのを見て、誰もがそこに注目する。

椅子の上には萎びた古いとんがり帽子が置かれた。見ているとスネイプのローブのように洗濯したくなってくる。

広間がシーンと静かになると、帽子が痙攣(・・)した。そしてつばの縁の破れ目が、口であるかの如く開き、歌いだした。

 

 

 

私はきれいじゃないけれど

人は見かけによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ

シルクハットはすらりと高い

私はホグワーツ組分け帽子

私は彼らの上をいく

君の頭に隠れたものを

組分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住う寮

勇猛果敢な騎士道で他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレインブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

必ずここで得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目的遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん ! 恐れずに !

君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)

だって私は考える帽子 !

 

 

 

帽子の歌が終わると広間が拍手喝采に包まれる。帽子はそれぞれの寮にお辞儀をし、再び沈黙した。

 

組分けは、帽子を被るだけと分かった新入生たちはどこか安心したような表情をしていた。

マクゴナガルが長い羊皮紙の巻紙を手にして前に立った。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組分けを受けてください」

 

「アボット・ハンナ ! 」

 

「ハッフルパフ ! 」

 

「ボーンズ・スーザン ! 」

 

「ハッフルパフ ! 」

 

……

 

 

組分けは順調に進んでいき、ついに僕の番となった。

 

「ドラクレア=スネイプ・レティシア ! 」

 

一人だけ学校指定のローブでないせいか、ざわめきが大きくなり、囁き声が聞こえてくる。

 

『おい、見ろよ……すげー美少女だ……』

 

『本当に人間なのか……? 天使の間違いではないのか……?』

 

『どうしてローブを着ていないの……?』

 

やはり、普通にローブを着ていた方が良かったのだろうか……?しかし、仕様がない。

僕は少し急いで椅子に座り、組分け帽子を被る。そして――

 

――閉心術を使った。

 

すると突然耳の中で低い声が聞こえた。

 

「フーム、私に対して閉心術を使ったのは君が最初だよ、ミス・ドラクレア。よし、君にはこの寮が丁度良い。

 

スリザリン ! 」

 

スリザリンのテーブルから大きな歓声がおこった。

僕はスリザリンのテーブルへ向かう。するとテーブルに座っていたマルフォイが此方に向かって手招きした。側には空いた椅子がある。

 

「レティシア、スリザリンになれたんだね。

やっぱり、君はウィーズリーたちと違って才能がある」

 

「そうだな。とりあえずドラコ、これからよろしく」

 

「あぁ、こちらこそよろしく」

 

そして、ホグワーツの校長であるアルバス・ダンブルドアが立ち上がり、一年生に挨拶した後、テーブルの大皿がいつのまにか料理で満たされていた。

料理はやはり、不味いと評判のイギリス料理。皆は美味しそうに食べているが、僕の味覚にはあわなかったため、後日厨房にいるしもべ妖精に頼んでイギリス料理以外をつくって貰おうと考えた。

 

食事が終わった後、ダンブルドアが注意事項と僕のことを脚色をつけて話した。それによると四階の右側の廊下に入ると痛い死に方をするそうだ。まぁ、何があるのか既に知っているのだが。

それと僕のことは血が吸えない珍しい種類の吸血鬼だと話していた。それもう吸血鬼じゃないとツッこんだら負けである。

 

そして寝る前に校歌を歌い、僕たちはスリザリン寮へ向かう。

校歌は皆がバラバラで歌とは正直言えなかった。

 

監督生についていき、地下牢の扉の前で合言葉を唱えると、扉が独りでに開く。

どういう原理になっているのか興味が湧いたがスルーする。

 

そして壁が大理石で囲まれ壮厳な雰囲気を醸し出すスリザリンの談話室に行くと、男子寮と女子寮にそれぞれ続くドアがあった。

僕は、女子寮に続くドアから自分の部屋へ向かった。

一番奥の部屋を目指して歩く。そこが僕の部屋だから。

 

部屋の前につくと、蛇の意匠が施されたドアがあった。

部屋に入ると十畳くらいの部屋だった。

僕の部屋には緑色に染められた絹のカーテンがかかった天涯つきベッドが五人分あることから、本来五人部屋であることがわかる。

しかし、僕の種族上此処の部屋は特例として僕、一人の部屋となった。

 

『スコージファイ(清めよ)』

 

僕はベッドに飛び込むと、自分の体と着ていた服装に清めの呪文を唱えた。

そして熊柄のパジャマを着ると眠りに落ちた。

 

 

 



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魔術工房(笑)を部屋に再現しよう

今回会話文がほとんどないです。
レティシア本人以外にも彼女の拠点をチートにしました。
魔術工房(笑)を知らない人は調べてみると元ネタがわかっておもしろいかも。


翌朝、僕は目覚まし時計の音で目が覚めた。眼を擦りながら、チリリリーンと鳴る目覚まし時計を止める。

 

この目覚まし時計も家から持ってきたものだ。スネイプによるとホグワーツでは、マグルの製品は狂ってしまうため、必ず不干渉呪文を掛けていないといけないらしい。そのため、目覚まし時計を含む、家からホグワーツへ持ち込むものは全て不干渉呪文を施してある。

 

時計の針を見ると、6時35分をさしていた。

 

今から僕は部屋の改造に取り掛かる。このままの部屋でも支障は無いのだが、確か七年目にこのホグワーツでお辞儀の人軍団と戦争がおこる。その前に部屋を改造し、いつ何時攻めてきても迎え撃てるようにするのだ。

 

幸い、此処は僕だけの部屋のため何をしても気付かれることはない。

僕はいつもの服に着替えると、一人呟いた。

 

「さて、始めようか……」

 

僕は最初に、魔法で空間を大きくすることから始めた。躊躇うことなく、どんどん広げていく。

そして、最初は十畳ほどの広さだった部屋が今では、ホグワーツの大広間ほどの大きさとなり、高さも中規模なビルと同じくらいになった。魔力が化け物な僕であるから為せる技である。

 

そこから、魔法を使って巨大な石の塊を生み出し、さらにそれを形状変化の魔法を使い平たく伸ばしてから、凄く広くなった部屋に高さ5メートル間隔で六段重ねる。そして余った石をこれまた形状変化の魔法を使い、垂直に伸びる階段を作り出し設置する。これで7フロアに分けれた。本当にビルみたいだ。

作業している時、マインクラフトをしているみたいで楽しかった。

 

次に、僕の生活空間を四階から上と定めて、四階よりも下の階である一階から三階までを侵入者撃退用の空間にすることにした。

イメージはケイ○ス先生の魔術工房(笑)だ。魔術師として非常に優秀だったケ○ネス先生の魔術工房(笑)を真似れば、侵入はほぼ不可能だろう。

 

【結界24層、魔力炉3基、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、廊下の一部は異界化させている空間もある。 】

 

これらのケイネス先生の魔術工房(笑)のトラップを再現すべく僕は作業に戻った。

まずは一階から三階までを魔法で作った大理石で壁を作り、それらを組み合わせ迷路のようにしていく。外観も損なわないようにホテルの廊下を意識して装飾まで施した。

次に結界を張っていく作業に移る。杖を構え一フロアずつ呪文を掛けていく。

 

『プロテゴ マキシマ(最大の防御)』

 

『プロテゴ ホリビリス(恐ろしきものから守れ)』

 

『プロテゴ トタラム(万全の守り)』

 

『レぺロ イニミカム(敵を避けよ)』

 

『カーべ イニミカム(敵を警戒せよ)』

 

『サルビア へクシア(呪いを避けよ)』

 

結界は三時間程で全てのフロアに張ることが出来た。姿現しなども出来ないようになっている。

もう、これらだけでも充分外敵を阻めるが、ケイネ○先生はさらに悪霊やらトラップやらを仕掛けていた。ならば僕もそれらを再現しよう。

 

ノクターン横丁で購入していた魔力を生み出し与えることの出来る大きな水晶を、魔力炉として五つ設置する。

つまり、これによって結界はほぼ永久に機能するのだ。水晶は、破壊の出来ぬよう自動修復の刻印とスペル反射の刻印を施した。

 

猟犬代わりに使うのは、三年前にスウェーデンの山奥で捕らえた、幾つもの首を持つ竜のヒュドラだ。

ヒュドラは魔法省から特級超危険生物指定されており、殺すことはおろか、追い払うことさえ難しいので出会ったらすぐに全力で逃げることを推奨されている。

しかし、僕はこいつが寝ているところを発見し、起きる様子がなかったので、こいつに何度も爆裂魔法や『龍の遺影』を使い甲殻を破壊した後、服従の呪文を何十回も重ね掛けして捕獲することに成功したのだ。

捕獲した後ヒュドラには縮小呪文をかけ小さくし、変身術で猫の姿に変えて家で飼っていた。そのため養父であるスネイプさえもヒュドラのことは知らない。

 

僕は一階でヒュドラを元の大きさより少し小さい状態にまで体長を戻した。

ヒュドラには一階に番として住んでもらうことにする。

 

残る作業はトラップだ。既に二階は異界化させてある。フロアの異界化は空間操作魔法を使えば楽勝だった。ただ、外の空間とフロアの空間とを切り離してしまえば良いのである。さらにフロア内の通路の空間を色々切り離してぐちゃぐちゃに繋げることで、前を歩いても何故か後ろに行ってしまうといった現象を造り出した。

 

トラップはゲームでよくある、巨大な刃が振り子のように揺れるものや、足場から槍が飛び出してくるもの、侵入者が入ると矢が飛び出るものなど、合わせて26個仕掛けた。中でも、通るとサリンが噴射されるガストラップがお気に入りだ。これはどうしておもしろい。

まぁ、とりあえず魔術工房の完成だ。僕は少し興奮しフロア内に声を響かせた。

 

「フフフ……、御客人にはレティシア=ドラクレアの魔術工房をとっくり堪能してもらおうではないか。フロア三つ使った完璧な工房だ。 結界二十一層、魔力炉五基、猟犬代わりのヒュドラ一体、無数のトラップに、廊下の一部は異界化させている空間もある……。このセリフ、なかなかレティシアボイスに似合うな……」

 

コンコン

すると、突然一階の方で誰かがノックするのが聞こえた。

そういや、鍵掛けるの忘れてたなぁ……。僕は急いで一階へ向かう。

 

「レティシア、入るよ。昨日から何も食べていないだろう?朝食を持ってき……た……っ!?

何だこれぇぇぇェェェ! ! !」

 

ドラコが何やら食事を持って僕の秘密基地の中に入って来て、ヒュドラを見て絶句した後叫んだ。顔が物凄く青ざめて、今にも倒れそうだ。

 

「レ、レティシア……この首が何本もある、この生き物は一体何なんだい……? ま、まさかヒュドラだとか言わないよね……?」

 

僕はにっこりと微笑むとドラコに言った。

 

「そのまさかだ」

 

ドラコは自身のキャパシティーの限界を迎え、持っていた食事ごと倒れたのだった。僕はすぐにドラコを『龍の遺影』を展開して支える。

 

その後、僕は起きたドラコに良識のある魔法使いは部屋を勝手に要塞にしたり、特級危険生物指定されている生物を部屋に連れ込んだりしないとさんざん説教された。

しかし、それでもドラコは僕の部屋のことやヒュドラを誰にも話さないと誓ってくれた。やはりドラコとは付き合いやすいなぁと僕は思った。

 

ドラコが出ていった後、僕は彼が持ってきた朝食を食べ、四階以上の生活スペースの作業に戻った。朝食はおいしかった。イギリスの朝食だけは美味しいという噂は本当らしい。

 

ホグワーツの水道管と下水管、そしてガス管を空間操作でこの部屋と繋げトイレと縦4メートル横3メートルのお風呂完備でキッチンもある理想的な生活空間が完成した。

一応作ったが余った部屋については倉庫などにして使うことにした。

 

そして、外部から七階に移動できるon 、off式のネックレス型移動キーをつくった。さらに七階から一方通行で各教室に移動できるように空間を弄ったりもした。

 

こうして、ぼくのかんがえたさいきょうのへやは完成したのだった。

 

 

 

 

 

 



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厨房とウィーズリーの双子

AUOさんの王の財宝の中身って何円くらいするんだろう……?


魔術工房を造った翌日、僕は地下廊下に行き、そこにある絵画の梨をくすぐってホグワーツの厨房へ入った。

 

実は今、この時間「魔法史」の授業があるのだが、とある崇高な目的のために誠に遺憾ながら、本当に遺憾ながら……サボっている。

 

まぁ、既にホグワーツで習う授業内容は、スネイプのスパルタ教育によって全て覚えているため、気にすることはない。進級に必要な分の出席日数を稼いでおけば、あとは授業を受けなくてもいいのだ。

 

話を戻すが、僕の厨房で為す目的は二つある。一つは、食料の確保。そしてもう一つは厨房で働くしもべ妖精に杖無しで使える妖精魔法を学ぶことだ。

 

食料が必要な理由は、僕が大広間で出される食事を食べないからだ。大広間で食事すればいいと言う人がいるかもしれないため、先に食べない理由を話すことにする。その理由は至極単純にして明快、そうただ単に提供されるイギリス料理が不味いからだ。

不味いものを食べるくらいなら、自分で作るというのは人として当然であり、自然な流れなのだ。

 

そして妖精魔法。

これは杖が無くても魔法を使用でき、威力も通常の魔法より勝ることはあれ、劣ることはない。尚且つ、このホグワーツ城内など一般の姿あらわしが出来ないようにされている場所でも自由に姿あらわし及びに姿くらましが使える、メリットの塊しかないようなものなのである。

ぜひとも、学んでおいて損はない。

 

厨房の中は以外にも綺麗に整理されており、掃除も行き届いていた。

そしてしもべ妖精たちが何十人もせっせと働いている。

 

「レティシアお嬢様、こちらへどうぞ」

 

一人のしもべ妖精が僕が居るのに気付いてか、集団を離れて此方に駆け寄ってきた。しかも、どうやら僕の名前を知っているみたいだ。

 

「なぁ、一つ訊いても良いだろうか?」

 

「はい。何なりとお申し付けくださいませ、レティシアお嬢様」

 

キーキー声でしもべ妖精が応答する。

 

「何故、私の名を知っているのだ?」

 

「それは貴女様がこのホグワーツへのご入学が決まられた時から存じております。ホグワーツの校長が話されておいででした。

曰く、吸血鬼の真祖様が入学なさると……。

古来より吸血鬼様方は我々屋敷しもべ妖精に対してとても、とても寛大な方達だったのです。吸血鬼様方に受けたご恩は数多の星と同じくらいあるのです。

そのため私たちは、吸血鬼の真祖であらせられるレティシア様に対して、我々が受けたご恩を返していこうと思っていたのです」

 

「む、そうか……」

 

僕はしもべ妖精に厨房の奥のテーブルに連れ込まれた。

すると何人ものしもべ妖精が此方を見ると、お菓子をどんどんと持ってきた。次々とテーブルの上に溜まっていくお菓子を尻目に、早速用件を伝えることにした。

 

「屋敷しもべ妖精よ、二つほど頼めるか?」

 

「「「えぇ、何なりと」」」

 

「では先ず一つ、食料を一週間分くれないだろうか?」

 

「御安いご用でございます、用意した食材は厨房の出入り口に置かせていただきます」

 

「あぁ。それと二つ目、お前たちの使う妖精魔法を教わりたい」

 

僕が言った文の"教わりたい"の部分から、しもべ妖精たちが狼狽え始めた。

そして一人のしもべ妖精が言う。

 

「そ、そんな貴女様のような高貴なお方にものを教えるなどと、烏滸がましいにも程があるのでございます……」

 

「無論、私はお前たちから教えを請おうとも主従関係だけは変えないつもりだ。頼めないか?」

 

「う、承りました。では、レティシアお嬢様、どうぞこちらへ」

 

散々思案したあと、しもべ妖精は肯定してくれた。しもべ妖精は利用しやすくて非常に助かる。

 

そうして、先程のテーブルから何もない場所へと案内された。

しもべ妖精たちはおそるおそるといった風に僕の腕を掴んで、水平になるように持ち上げた。

 

「本来、私たちめが、使う魔法はヒューマンの魔法使いや魔女の方たちには使えた前例がございません」

 

「吸血鬼の方々は元から強大な力をお持ちになっておられたので、妖精魔法を習得することはありませんでした。

なので私たちめは、吸血鬼がこの魔法を使えるかは存じておりません」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「それでは、レティシア様、腕に力を流すようなイメージをしてくださいませ」

 

言われた通りに腕に魔力を流すようなイメージをする。

すると自らの未だ使われたことのない神経的なモノが起動するような……そんな不思議な感覚におそわれた。

片腕を掴み、呆然と立つ僕に一人のしもべ妖精が近づいてきた。

 

「その様子を見ると、成功なされたようで。私めは大変うれしくございます」

 

「今のは……?」

 

「貴女様が今感じた感覚は、魔力の路が開いたものにございます。

昔、私めを雇っていた魔法使いが私めに語り聞かせました。曰く、魔力を持つ生物全てには、魔力を通す路が全身に張り巡られているそうでございます。

しかし、その路はほとんど閉じられており、普段は微弱な魔力しか流れていないそうでございます。

特にヒューマンのその路は、ほぼ退化しており開けることは出来ないのでございます。

故に、ヒューマンの魔法使いの方たちは杖を使い、それを擬似的な路とすることで、腕から直接魔力を流し込んで魔法を発現させておられるのです」

 

「なるほど……」

 

「ゴホン……、妖精魔法は魔力の路を開いて、全身の魔力を通らせることによって、杖という補助具なしでも魔法を発現させることが出来る技でございます。

それに妖精魔法は、杖で魔法を発現させるやり方では腕の分だけしか(・・・・・・・)魔力を使えないのに対して、路によって全身の(・・・)魔力を使えるため、とても強力なのです。私たちめ、魔法生物のなかで、一番内蔵魔力量の少ない屋敷しもべ妖精がヒューマンの魔法使いと同等の魔法が使えるのには、こういった理由があったのでございます」

 

畢竟、その魔力の路が開けさえすれば誰でも使えるということか。

 

ん? 杖で魔法を発現させるやり方では腕の分だけしか魔力を使えないだって? じゃあ、まさか内蔵魔力量が滅茶苦茶多い僕が、妖精魔法を習得したら……

 

「ならばこの私が妖精魔法を使って魔法を放てば……」

 

「えぇ、元々の魔力量が少ない私たちめでもヒューマンの魔法使いと同等の魔法が放つことが出来るのです。内蔵魔力量の多いレティシア様なら失神呪文だけで、建物を丸々倒壊させることも可能でしょう。いや、それ以上の威力を出すことも出来るやも知れません」

 

「それは……すごいな」

 

僕は暫く開いた口が閉じなかった。

 

いや、しかしそれも仕方あるまい。なぜなら、妖精魔法は杖が無くても魔法を使用することが出来るくらいにしか、思っていなかったのだ。それが蓋を開けてみれば、失神呪文だけで建物を丸々倒壊出来うる以上の威力が出るだと? 最っ高に嬉しい誤算じゃないか……!

 

しかも僕は既に、その魔力の路とやらを開けるコツはわかっている。妖精魔法を既に使えると言っても過言ではないのだ。

 

「では、早速妖精魔法の使い方を教えてくれ」

 

「もう既に、レティシア様は使えると思われます」

 

「ゑ……?」

 

「ですから、既に使えると……」

 

「いや、聞こえてはいる。そんなことより、もう使えるだと?」

 

ついさっき頑張ろうと決意したばっかりなのに……。

随分と呆気なさ過ぎではないか? 妖精魔法って、もっと練習しないと使えるようにはならないんじゃないの……?

拍子抜けにもほどがある。

 

そんなことを考えていると――

 

「YES ! 妖精魔法と杖を使った魔法の違いは魔力の路が開いているかいないか、だけなのですヨ。

基本的な魔法の使い方は変わりませんので、レティシア様は安心して使って下さいませ♪」

 

――なんか説明してくれた。

 

「お、おい……今の誰が喋ったんだ……?」

 

僕はしもべ妖精たちに訊くが、皆が首を横に振る。

本当に誰だったのだろうか……? まぁ、聞かなかったことにしておこう。気にしたら負けだ。

 

この世には不思議なことがあるものだなぁ、と改めて思いました、まる。

 

――ドタン、ガシャ

 

厨房に誰か入ってきたみたいだ。

僕は厨房の入り口の方に行ってみる。しもべ妖精たちも同じように入り口の方へ向かっていったりお菓子を準備しに行った。

 

「おっと、これはこれは。誰が居るのかと思えば」

 

「入学初日から寮の部屋に」

 

「サボって引きこもっていると噂の」

 

「「スリザリンの美少女もやし真祖様じゃないか !」」

 

入り口に向かうと赤毛でノッポな双子がいた。彼らは僕を見つけると息の合ったコンビネーションで声を掛けてきた。

声を掛けられたら、返してやるのが世の情け。

 

「フッ、よく見ると天才的な悪戯で定評のあるウィーズリーの双子先輩ではないか。今日は厨房に何の用だ。

フィルチの料理にカエルの卵でも入れに来たのか?」

 

「へぇ……、言うじゃないか。でも正直意外だよ」

 

「もっと冷酷で冗談の通じない堅い奴だと思ってた……だけど」

 

「「最高だぜ ! フィルチの料理にカエルの卵を入れるなんて悪戯思い付きやしなかった ! ! 採用だ ! 」」

 

僕がほんの少し皮肉混じりの挨拶を返すと、ウィーズリーの双子はニヤリと笑みをうかべてはたまたテンポの良いコンビネーションで言葉を返してきた。

 

それからウィーズリーの双子はしもべ妖精からお菓子を、持っていた大きな袋にたんまりと詰め込んでそのまま出入り口の方へ向かっていく。

去り際、彼らは僕に言葉を掛けていった。

 

「真祖様、もし良ければ」

 

「また今度、良い悪戯を紹介してくれよ」

 

「俺たちは大体、三階の黒うさぎのタペストリーが扉に掛かった空き教室か」

 

「此処にいるからさ、暇になったら来いよ」

 

そして最後に双子の片割れが耳元で囁いた。

 

「真祖様が来たら、ロンやハリーが喜ぶからさ」

 

「「じゃあな」」

 

「あぁ。またな、双子先輩」

 

ウィーズリーの双子が帰った後、しもべ妖精に頼んでいた一週間分の食料を持って早速僕の部屋に姿あらわしをした。

妖精魔法で行う姿あらわしは杖を使う魔法よりも簡単に使うことが出来た。

 

そして妖精魔法でいつでもどこでもホグワーツ内でも、姿あらわしや姿くらましが出来るようになった僕はネックレス型の移動キーがもう必要なくなった。

なので移動キーはウィーズリーの双子にあげようと思う。

あの移動キーは改良してあり、場所と転移する時刻を設定することが出来る。あの双子には喉から手が出るほど欲しくなるに違いない。喜んでくれるだろう。

 

このあと滅茶苦茶FPSした。

 

 

 



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魔法薬学の授業へ行こう

金曜日の朝、僕はスネイプが教えるという魔法薬学の授業へ向かっていた。

それにしても、動く階段がウザい。上がろうとしたら動くの本当にやめて欲しい。イラッとしすぎて八つ当たりにアーガス・フィルチを魔法で吹っ飛ばしてしまったまである。

一度立ち止まって深呼吸し、苛立ちで荒んだ心を落ち着けるているとドラコが小走りで此方に向かってきた。

 

「レティシア!こんな時間に君が出歩いているなんて珍しいね。まさかと思うけど、授業に出るのかい?」

 

「私だって授業には出席する。私を何だと思っているんだ、ドラコ」

 

ドラコは「え、マジで授業出るの……?」みたいな表情をする。てか、こいつ顔に感情出過ぎだろ……。リアクション芸人かよ……。

 

「だってレティシア引きこもりじゃないか。授業に出るとは思わないだろう……?」

 

「…………」

 

僕が、ジト目で見ていると、ドラコは降参したのか両手を挙げた。というか僕引きこもりって印象だったのか。いくら将来に備えて出来る限りの準備をしているとは言っても、やはりそういう印象を同級生に持たれてしまうのは些かキツいものがある。

昔のトラウマを思い出してしまう。「■■■君、引きこもりなんだって~キモくなーい?」とか教室で大きな声で言いやがってくれたあの女は絶対に許さない。

 

「ごめん、ごめん。そういえば魔法薬学といえば下等なグリフィンドールの連中と合同だったね。レティシアはどう思う?」

 

「どう思うとは?具体的な質問をしろ」

 

「うーん、具体的と言われると……そうだな、グリフィンドールのことやマグル生まれはどう思っているんだい?」

 

純血主義のことか……。やはりドラコはスリザリンとして、純血の魔法使いの家系としてグリフィンドールやマグル生まれの魔法使いのことの他者からの評価を聴いておきたいのだろう。

聴いて何になるんだと思うが、ドラコにとってはグリフィンドールはマグル生まれは、長年下等なものだと家族から教え込まれてきたものだ。

その純血主義の考えは自分の全てなのだろう。しかし、ドラコは心の奥底でその考えに疑問を持ってしまっている。故にそのことを改めて家族など以外の他者から確認することで、自分が正しいということを、間違っていないということを思い込む。

そうしないと自己を保てないから。

 

「私はグリフィンドールのことに何も思うところはない。まぁ、敢えて言うならば傲慢がいき過ぎているというところくらいか。

マグル生まれのことはよくわからない」

 

「そうなんだ……」

 

「ほら、ドラコ。授業が始まってしまうぞ」

 

「あ、あぁ。そうだね」

 

◆◇◆◇◆◇

魔法薬学の教室である地下牢には、すでに生徒が揃っていた。

とりあえず遅れました、と声を掛け空いている席に座った。ふと、机を挟んだグリフィンドールの生徒の方を見ると、ハリーたちが此方を見ていることに気が付く。隣に座るドラコにバレないように手を振ると、ハリーとロンは顔を赤くして前を向いてしまった。何だったのだろうか……?

それにしても、この地下牢はスネイプのイメージに合っているな。こっそり家のスネイプの部屋も地下牢みたいな飾り付けにしてみようか。

 

スネイプは全員が居ることがわかると、出席を取っていく。そして、ある生徒の名前で止まった。

 

「あぁ、さよう……ハリー・ポッター。我らが新しい――スターだね」

 

スネイプがキモい猫なで声で喋りだす。隣のマルフォイを筆頭にスリザリン生がハリーに対して冷やかし笑いをする。スネイプの猫なで声に僕もクスッと吹き出してしまったのは仕方がないことだ。

それにしたってスネイプの猫なで声、似合わなすぎにも程があるだろ……!

 

スネイプは出席を取り終わると生徒を見渡した。そして、僕の居る方で視線を固定する。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。

このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。沸々と沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管を這い巡る液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である――ただし、我輩がこれ迄に教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」

 

長げーよ!!どんだけ長い演説するんだよ、スネイプ!そのご立派な演説は授業以外の時にしろや!

僕は授業でする話としては余りにも長いスネイプのお喋りに心の中で罵倒した。いや、まだしたりないな……。

 

「して、ドラクレア……。授業にほとんど出ていないというのは本当か?」

 

「事実だよ、スネイプ教授」

 

唐突にスネイプが此方を見据えながら問いを投げてきたので、簡単に返答した。

 

「では、レティシア。竜の眼球の粉末にマンドラゴラの球根の粉末、そしてクラーケンの体液を加えると何になるかね?」

 

教室中の視線が僕を憐れむようなものになる。それもそうだろう。何せ僕は引きこもりの烙印を押されているのだから。尚且つスネイプのした質問は本来七年生で習うもの。憐れむのも無理はない……。

だが……この程度の質問答えれずして、何が魔王か!

 

「フッ、この程度どんな間抜けでも答えられる。答えは――万能回復薬(エリクサー)だ」

 

するとスネイプが少しだけ嬉しそうにニヤリとする。

 

「そう正解だ、ドラクレア。この問題は七年生の問題であった故、答えられないと思っていたが……スリザリンに10点」

 

七年生の問題だと聞いた瞬間、生徒たちが僕を驚いたような目で見る。大方、引きこもりの奴が一年生で習わないような問題をさらっと解いたことに驚いているのだろう。ハハハ、もっと我を讃えよ。敬え、もっと奉れ!

 

「ポッター!こんなただの(・・・)少女が難問に答えられたのだ。生き残った男の子もこの程度答えられるに違うまい。

アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

「わかりません」

 

スネイプはハリーに答えられないような問題を出しているみたいだ。まぁ、答えられない問題と言っても五年生レベルなのだが。

 

「チッ、チッ、チ――有名なだけではどうにもならんらしい。

ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいといわれたら、どこを探すかね?」

 

「わかりません」

 

「クラスに来る前に教科書を開いて見ようとは思わなかったわけだな、ポッター、え?

ポッター、モンクスフードとウルフスベーンの違いはなんだね?」

 

「わかりません――ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」

 

ハリーはついにスネイプに言い返してしまった。我慢すれば良かったものを……。

案の定スネイプは不快そうな顔をして、挙手しながら席を立っていたハーマイオニーを座らせると、ハリーの方へ向き直った。

 

「フン、その程度の事もわかっていないとは……我輩はガッカリだ。

ドラクレア、この残念な英雄君の代わりに答えてあげなさい」

 

僕にとばっちりがきた。どうしてこうも面倒事が廻ってくるのか。

はぁと溜め息を吐くと僕は立ち上がった。

 

「アスフォデルとニガヨモギを調合すると、効能の強い睡眠薬となる。非常に強力なため、『生ける屍の水薬』と言われている。

ベゾアール石は山羊の胃から取り出せる。この石の効果は大抵の薬に対する解毒剤になることだ。

モンクスフードとウルフスベーンは同じ植物であり、別名アコンナイト。所謂トリカブトのことだ。以上」

 

「偽りの英雄様と違ってドラクレアは完璧な返答だ。スリザリンに5点。そして、ポッターの失礼な態度で、グリフィンドールは1点減点。

諸君、さっさと今のを全部ノートに書き取りたまえ」

 

そして、また色々あってからおできの治療薬を生徒二人一組で調合した。

僕はドラコとペアになり、材料の干イラクサを計ったり、蛇の牙を砕いた。ドラコは意外と上手で角ナメクジを完璧に茹でたりしていた。

そして、僕とドラコのペアは生徒たちの中で一番早く、しかも完璧に完成した。

 

スネイプはそのことにまた、スリザリンを加点した。

その直後、地下牢に強烈な緑色の煙がシューシューと広がった。

元凶と思われる場所を見ると、ネビルが一人の男子生徒の大鍋を溶かして、よくわからない塊にしていた。こぼれた薬はネビルにかかり、体中におできが吹き出し、呻いていた。

 

「バカ者!」

 

スネイプが杖を振り、こぼれた薬を処理した。

 

「大方、大鍋を火から降ろさないうちに、山嵐の針を入れたんだな?」

 

ネビルは一人のグリフィンドール生に連れられ医務室へと泣きながら行った。

 

「君、ポッター、針を入れてはいけないとなぜ言わなかった?彼が間違えば、自分の方がよく見えると考えたな?グリフィンドールはもう1点減点」

 

また、余りにも理不尽にグリフィンドールが減点された。スネイプは少しやりすぎだと思う。尤も止める気はないが……。

ハリーは今にもスネイプを殴りそうなほど睨み付けている。スネイプはそれを一瞥すると、今日の授業はここまでと地下牢から出ていった。

僕もさっさと、地下牢から部屋に姿くらましをした。

 

 

 

 



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賢者の石を盗みゲフンゴフン死ぬまで借りよう

カツカツとブーツのたてる足音が、自分以外誰の気配もない廊下に鳴り響く。それは舞踏会でのステップのようで、今から行う悪戯(・・)のことも合わさり心が舞い上がるようだった。尤も舞踏会なんて大層なもの行ったことはないが。

 

「フフフ……フフ」

 

ニヤニヤと笑みを隠そうともせず、消灯時間の過ぎた深夜の廊下を堂々と歩いていく。

辿り着いたのは四階、校長が入学式の時に入ることを禁止した場所……。

そういえば、どうして立ち入り禁止とかされていたら、とりあえず入ってみたくなるのだろうか?僕に限ったことではなく前世の頃の彼女もそういう場所に嬉々として入っていったし……、背徳的な感じが人間は好きなんだろうか。どうでもいいけれど。

 

閑話休題

もう察しているかもしれないが僕は今宵、賢者の石を貸してもらいに行く。盗みではない、あくまで貸してもらうのだ。……僕が死ぬまで。

貸してもらった賢者の石で金属を金に変えて、それらを店で売り捌く。これで資金に困ることは無くなり、やりたい放題だ。

 

「アロホモラ(扉よ開け)」

 

鍵の掛かった廊下の突き当たりの扉を呪文で開き、扉を潜って中へと入る。

薄暗く何処か獣臭い部屋の中には、原作通りの一頭の巨大な三頭犬が眠っている。そして、その真下には仕掛け扉。それにしても一頭なのに頭が三つあるとは……ここはやはり三頭と言うべきか?……もうどうでもいいや。

さて、攻略を始めるか。まず、僕は影から三頭犬を眠らせるための鍵盤ハーモニカを取り出す。既に眠っているからと言って油断は出来ない。犬の嗅覚を侮ってはいけない。僕が前世で飼っていた犬はどんなに熟睡をしていたとしても、餌を与えようと袋から出した途端に目を開けていたものだ。

 

さて、どうして持ってきた楽器がハープや笛などではなく鍵盤ハーモニカなのか諸君は気になることだろう。その疑問の答えは簡単だ。ただ単に鍵盤ハーモニカ以外の楽器が使えないというだけ。ん?僕は誰と脳内会話をしているのだろう?まぁいいや。

 

三頭犬に3m程近づくと、気付いたのか三頭犬がむくりと体を起こし僕の方に六つの瞳を向ける。三頭犬の吐く臭くて生暖かい息が此方にかかる。

 

「グオアアアァァァア!!」

 

「何だかモン○ンをしてる気分になるな。まぁ、もし私の力をモ○ハンのステータスで数値化してしまうと些かチート性能になってしまうのだが……」

 

三頭犬が前足を振り上げ、僕をそのまま潰さんと迫る。そして、三頭犬の前足が僕に当たろうという瞬間、僕は影の中に潜り込んで回避。

少しだけ三頭犬に離れた場所に転移し、手に持った鍵盤ハーモニカでカエルのマーチを弾く。そんなカエルのマーチを聴いた三頭犬は暫くすると規則正しくスピースピーと寝息をたて始める。

三頭犬が完全に寝たことを確認すると、すぐに三頭犬の下にある仕掛け扉を開き中へと入る。そして数秒の浮遊感を感じた。ジェットコースターもそうだけどこういう落下の時って凄く背筋が寒くなるよな。この感覚は本当に嫌だ。ジェットコースターにだけはどれだけ歳を重ねようとも遊園地で絶対に乗らない。

 

ドスンと派手な音を立てながら落ちた先には植物が敷かれていた。勿論のこと、この植物はただの植物ではない。『悪魔の罠 』という危険な植物だ。

足元を無数の蔓が巻き付き締め付けてくる。蔓はさらに獲物を逃がさないとばかりに体の方も締め付けてきた。予想以上に締め付ける力が強いため少し驚いたが、一旦深呼吸をして落ち着いた後、呪文で炎を出して蔓を焼き払う。

 

「フッ、他愛ない」

 

僕は奥へと続く石畳の路を見つけると、下へ下へと降りていく。やがて路の先に光が洩れだす一つの部屋が見えてくると同時に蚊が飛ぶようなブーンという音が聞こえてくる。

そして通路の出口に出ると、高いアーチ形の天井をした部屋に出た。部屋の中には数多の鍵が羽虫のように飛んでいる。実に目障りだ。

『龍の遺影』を展開し、大きく広げて飛んでいるゴキブ……鍵を包み込む。そして圧縮した。

これで鍵の羽は多分全て折れただろう。圧縮の時は加減をしたため、本体は折れていない。後は飛べなくなった鍵たちの中からこの部屋の先へと進む扉の鍵を探しだすだけ。実に効率的だ。

僕は落ちた鍵たちの中から古い大きな鍵を掴むと、部屋にある分厚い木の扉の鍵穴にその鍵を差し込んで捻る。カチャッという軽快な音と共に扉の鍵が開いた。そして勢いのまま扉を開けて次の部屋へと入った。

部屋へ踏み込むと、突然真っ暗な部屋中に光が溢れた。そして目の前に大きなチェス盤が現れた。僕の立つ場所は黒い駒の側。向こう側には白の駒。この部屋ではチェスで相手に勝たないといけないようだ。

僕は黒のキングの方に向かい、その上に飛び乗る。すると盤の上の駒が命を吹き込まれたかのように動き出した。

 

「生憎と私はチェスは苦手でね。このチェスは私のやり方で攻略させてもらうよ

エクスペクトパトローナム!」

 

僕は負の思い出で禍々しく赤い騎士の守護霊を召喚する。

 

「さぁ、私の騎士よ。この場の白の軍勢を滅ぼせ(・・・)

 

赤い騎士が疾風のごとく駆け出し得物の大剣で白の駒を破壊していく。正しくそれは蹂躙であった。

誰が正々堂々と勝負をすると言ったぁ?てめーの敗因はただ一つ。てめーは正々堂々し過ぎた。なんてことを白の駒の方を見ながら脳内で罵倒する。

先へ進むためへの扉には見たところ鍵穴はない。チェスを正々堂々と勝利すれば鍵が開くといった仕掛けはない。なぜなら、それは僕が既に何の苦もなく扉を開けれてしまっているからだ。

 

「ククク、馬鹿め。こんな茶番に付き合ってやれるほど私は忙しくないのだ。いや、今のなし。よく考えたらあんまり忙しくないわ」

 

独り言を呟きながら、扉を開くと一匹のトロール。キモいし臭いしウザいのでさっさと退場してもらうことにする。

 

「ウガアア――」

 

「アバダケダブラ(この死の呪文に殺せぬものなどあんまりない!)」

 

咆哮をあげようとしたトロールは緑の閃光に当たって呆気なく死ぬ。そういえばあの三頭犬にこれをしとけば良かったかなぁ。

トロールの亡骸の傍に近寄ると、掌を向ける。

 

こいつ(トロール)は臭ぇー。ゲロ以下の臭いがぷんぷんするぜー。汚物(トロール)は消毒だー」

 

某石油王さんと某世紀末さんのセリフを棒読みしながら、トロールの亡骸を悪霊の火で消し炭にする。たまんねーな。

そして次の部屋へと向かった。

 

「あぁー、謎解き系か。面倒くさい」

 

その部屋には形の違う七つの瓶の一列に並べられて置いてあるテーブルがあった。

既に通ってきた扉は紫色の炎に包まれて、退路は断たれている。それと同時に部屋の前方のドアの入り口さえも黒い炎に包まれている。

テーブルの瓶の横に置かれていた巻き紙を読んでみる。そこには論理の問いが記されていた。それによると瓶の中身には毒薬か炎を潜るための薬のようなものが入っているらしい。だが僕にはそれを解かなくても進む方法がある。それはとてもとても原始的な方法。

――ゴリ押し。

 

「ロードローラーだっ!」

 

ロードローラーのミニカーに肥大呪文を掛けて巨大化し、それを思いきり壁に向かってぶん投げた。ズゴォンという音と共に壁は儚く崩れ去った。べ、別にD○O様ごっこがしたかったわけじゃないんだからねっ!

でかくしたロードローラーに縮小呪文を掛けて回収してから賢者の石のある部屋へと歩みを進めた。

 

部屋は綺麗な黄金で装飾されていた。部屋の中央には場違いな小さな机。

どうやら、まだみぞの鏡は導入していなかったようで、小さな机の上に賢者の石はポツンと放置されていた。警備無さすぎだろ。

僕は賢者の石に双子の呪文を掛けて、精巧な偽物を作り出し、賢者の石と交換した。別に賢者の石を勝手に借りたことがバレても問題はない。なぜなら僕が賢者の石を借りたことが誰にも、それこそダンブルドアにだって分かるわけがないからだ。疑うとしたらお辞儀の人を疑うだろうしね。

 

「計画通り……」

 

僕はニヤニヤと口を緩めながら自分の部屋へと姿くらましをした。上手く事が運びすぎて一人笑いが止まらない。

部屋の中ではしゃぎまくっていたことは言うまでもないことだろう。

 

 

 

 



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初めての飛行訓練に行こう

バレンタイン……。どうして聖バレンタインさんの命日にこんなチョコレートの渡し合いするかなぁ。製菓会社の売り上げのための策略に嵌まっていることをそろそろ自覚したほうが良いんじゃぁないですか?


スリザリンの談話室の暖炉の前の一番上等なソファー。

スリザリンの六年生以上しか使ってはならないというスリザリン内で暗黙の了解のあるその特等席に堂々と一年生のであるはずのプラチナブロンドの美少女が足を組ながら淹れたばかりなのであろうユラユラと湯気の立つ紅茶の入ったティーカップを片手に、『日刊予言者新聞』を読み、その可憐な顔に似合わぬニヤニヤとした笑み、もといゲス顔を浮かべていた。時刻は七時。ほとんどの寮生は朝食を食べに大広間に行っている頃だった。

 

「ククク、ヴォルさんも不憫な奴だ。折角、グリンゴッツに忍び込んだというのに金庫がもぬけの殻だとはな。運が無さすぎるにも程があるというもの。

それに比べ私はあのイカれた校長(ダンブルドア)を出し抜いて賢者の石を借りることが出来た。まさに私は人生勝ち組、最強、天才、今の私を止められる者が居るのなら是非出てくるがいい……!」

 

僕はダンブルドアやお辞儀さんのことを軽侮しながらカップに口付ける。

今なら究極生命体となったときのカ○ズ様や時を止める能力を持ってまさに無敵になったD○O様の気持ちがどんなだったかとても理解することが出来るぜ。そう、まさにあたいってばさいきょーね!

そうして最高にハイって奴になり、脳内が大分カオスになっていた僕の耳に突然ドラコの呆れたような声が聞こえた。

 

「レティシア、声が男子寮の廊下まで響いているよ」

 

「……どこから聞いていた?」

 

僕は作り笑いをしながらドラコの方をまるで機械のようにぎこちなく顔を向ける。

仄かな紅茶の香りが漂う談話室に、ピシッとした空気が流れる。それはまるで、RPGで滅茶苦茶強いボスのライフをあと一撃で倒せるけど自分も回復アイテムが底を尽き、ライフも一発攻撃を受けたらアウトみたいな緊張した空気。

そしてそんな張り詰めた空気のなかドラコがゆっくりと口を開く。

 

「まさに私は人生勝ち組って所から……」

 

「……」

 

「レティシアってもしかして……ナルシ――ゴホッ!?」

 

その先は言わせねーよとドラコの口に、傍に置いていたスコーンを突っ込む。僕はドラコと視線を合わして無言の圧力をかける。ドラコは僕が何を言いたいかわかったようだ。何度も首を縦に振る。ただどうしても解せないことに、ドラコの頬が赤い。毎回思うけれど、いくらなんでも風邪引きすぎだろ。

ドラコは僕の側から少し離れると、口に含んだスコーンを飲み込む。

 

「ゴホッゴホッ、ごめんレティシア。さ、さっきのことは誰にも言わない。約束するよ」

 

「……あぁ。それとすまない。スコーンを無理矢理口に突っ込んで……」

 

「気にしていないよ。そういえばレティシア、今週の木曜日に飛行訓練があることを知っているかい?」

 

そういえばグリフィンドールと合同で飛行訓練があるってスリザリンの掲示にあったなぁと僕は思い出した。ドラコは随分と飛行訓練が楽しみなようで少しだけ口元に笑みを浮かべている。僕はあまり興味はないといった感じを装った。

 

「知っているぞ。飛行訓練……クィディッチの選手として参加したい人には好評だろうな。尤も空を飛ぶだけだったら、飛行魔法を使えばいいし完全に趣味の域だな」

 

「まぁ、そうだね。でも箒で飛ぶのも面白いと僕は思うよ。レティシアがどう思うかは別としてね」

 

「……しかし残念だったな、ドラコ。一年生はクィディッチの寮代表選手にはなれないみたいだぞ。箒でマグルのヘリを回避したその手腕、スリザリンのチームは惜しいことをしたな」

 

ドラコの顔が微かにひきつる。

実はドラコは自慢話をするとき、たまに自分の体験したことを大きくして話すときがある。そして箒でマグルのヘリコプターをかわしたという話も事実よりも大きくしてある。というか元になった話が、箒を練習しているときに遠目からヘリコプターを見たというものなので、話を大きくしたというより最早改変だ。

ヘリをかわしたという話をしているときに、ヘリコプターの乗員によくばれなかったなと僕に言われたときのドラコの焦ったような顔……鮮明に思い出せるとはこのことを言うのだろうな。

ということで嘘だとばれてしまったドラコの自慢話は、ドラコの所謂黒歴史になっているわけでして。

 

「ハハハ、レティシア……その事については掘り起こさないでくれるかい?もしポッターやウィーズリーなんかにばれたら洒落にならない」

 

「すまないな。ただの冗談だ」

 

「ハァ~本当に精神に悪いよ。だけど、どうして一年生はクィディッチの寮代表選手になれないんだろう?」

 

僕はどこか遠い目をして呟くドラコの方を向く。まぁ、でも一年生が選手になれない理由なんて決まっている。僕はキメ顔をしながらふんぞり返った。

 

「その問いに答えてやる。――大人の事情だ」

 

ドラコは一瞬、瞬きをすると苦笑いを浮かべた。

 

「まったくだ……」

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

木曜日のよく晴れた3時半、僕は、初めての飛行訓練を受けるのに、ちょっとした自己暗示的なものをかけていた。

 

「体は完璧で完全なボディで出来ている。血潮は最高級ワイン以上で、心は聖人。 幾多の慢心をして尚不敗。 ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない。 彼の者は常にぼっち、自室のベッドで愉悦に酔う。故に、高所恐怖症に意味はなく。

その体は、きっと俺TUEEEなレティシアボディで出来ていた」

 

高いところが苦手な僕にとって、飛行するときは必ず自己暗示で怖さを軽減しておかないといけない。ジェットコースターに乗れないまである。自己暗示といっても某偽物さんの詠唱っぽい言葉に暗示の効果があるのかは知らない。というか飛行魔法なんかは知ってても使わないため、自分の能力以外で空を飛ぶのは今回が初めてなのだ。つまり、今の僕は屠殺場に連れられる豚さんの気分なのである。ちなみに自分の能力で空を飛ぶときは、何故か怖くなくなる。どういう原理なんだろう。

 

「ねぇ、レティ、顔色悪いわよ。マダム・ポンフリーのところに行く?」

 

「大丈夫だよ、ハーミィ。私これから頑張ってくるから」

 

隣を歩くハーマイオニーにキメ顔でピースする。ハーマイオニー、もといハーミィは呆れたように此方を一瞥すると校庭へ歩いていってしまう。僕はそれをすぐに追いかける。追い付くとハーミィに並んで歩く。

傾斜のある芝生を下り、校庭を横切って平坦な芝生に着いた。校庭の反対側には『禁じられた森』が見える。僕以外のスリザリン寮生はすでに到着しており、ドラコが此方に向かって手を振っている。

 

「ハーミィ、一旦ここでお別れだ。グリフィンドールとスリザリンの確執は根強い」

 

「ええ、レティ。また図書室で会いましょう」

 

僕はハーミィに軽く頷いて、スリザリン生が集まる場所へ歩き出す。

 

ハーミィとは最近図書室でよく待ち合わせをする。図書館での談笑はなかなかに有意義で楽しい。僕はハーミィからいろんな発想や考えを聞けるし、ハーミィには僕の魔法についての知識を少しだけど教えたりと、両者ともハッピーになれるからね。そのため、ハーミィとの関係は壊したくないのだが、ここでネックとなるのが僕が純血主義の多いスリザリンに所属しているということ。グリフィンドールとスリザリンとの確執はとても根強いため、もし敵対する寮に所属している生徒と関係があると知られたのならば、自分の寮の中でも居場所が無くなってしまうだろう。なのでハーミィと関係を続けていきたいのであれば慎重にいくしかないのだ。結論を言うと、寮のいざこざって面倒くさい。

 

そうして、スリザリンの生徒の集まっている場所でしゃがみこんでいると、飛行訓練の担当職員であるマダム・フーチが来た。短く切られた白髪に、黄色い目が印象的な人だ。

 

「なにをボヤボヤしているんですか。

みんな箒のそばに立って。さぁ、早く」

 

僕は足元に置かれた自分の箒を見下ろした。古ぼけて、穂の小枝が何本かおかしな方向に飛び出している。壊れないのかと内心不安になりつつ、マダム・フーチの指示を待つ。

 

「右手を箒の上に突き出して。

そして、『上がれ!』と言う」

 

すると集まった生徒たちが一斉に「上がれ!」と叫んだ。僕も一拍遅れて「上がれ」と言う。

箒はそのまま飛び上がると、スポッと手に収まった。周りを見渡すと、案外飛び上がった箒は少ない。ドラコは流石と言うべきかしっかり成功させている。それと同時に出来ていない生徒を見下しているため、周りからの評価は±0だが。

 

次にマダム・フーチは箒への跨がり方を指南する。そして、生徒たちの列を列の間を回って、箒の握り方のチェックを行った。僕とドラコは二人揃って箒の握り方を正された。

 

「さぁ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、2mぐらい浮上して、それから少し前屈みになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ――1、2の――」

 

そうして箒に跨がり、いざ飛ぼうと心の準備をしていると、ネビルがマダム・フーチが笛を吹く前に飛び上がってしまう。笛の音を待てないほどに箒で飛びたかったのだろうか。

 

「こら、戻ってきなさい!」

 

マダム・フーチの大声を余所に、ネビルはロケットの如く飛んでいってしまう。そして、地上から7mくらいの高さにまで上がったとき、ネビルが箒の上でバランスを崩し、そのまま地面に向かって落ちた。ポキッと言う何かが折れる音を立ててネビルは地面に墜落した。

マダム・フーチはネビルの元へ駆け寄る。

 

「手首が折れてるわ」

 

マダム・フーチはそう呟くとネビルを抱え起こした。重そう……。

 

「私がこの子を医務室に連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出ていってもらいますよ」

 

手首を押さえながら号泣しているネビルを抱き抱えるようにしてマダム・フーチは医務室へと向かった。そんな二人が声の届かないところまで行った途端、ドラコが笑いだした。

 

「あいつの顔見たか?あの大間抜けの」

 

そんなドラコを見て、他のスリザリン生も囃し立てる。何がどうおもしろいのか……ドラコたちの感性はよくわからない。

 

「ご覧よ!ロングボトムの婆さんが送ってきたバカ玉だ」

 

ドラコが草むらの中からネビルの『思い出し玉』を拾い出して高々とさし上げる。

 

「ドラコ、それをネビルに返しておいてやれ。ネビルは純血だろう?」

 

「レティシア、勿論これはロングボトムに返すよ。いや、やっぱり後で取りに来られる所に置いておくよ」

 

「そうか……」

 

一応ドラコに持ち主に返してやればと進言したが、ドラコは気にせずに思い出し玉を弄る。

可哀想なドラコ……。これからハリー・ポッターがお前を踏み台にするというのに……。

 

「マルフォイ、こっちに渡してもらおう」

 

ハリーの静かな、それでも尚怒りの滲む声に、皆が注目する。

そんなハリーにドラコはニヤニヤ笑って箒に跨がる。

 

「こっちに渡せったら!」

 

ハリーが強い口調で言うが、ドラコは気にせず箒を飛ばした。そして樫の木の梢と同じ高さまで舞い上がったドラコはそこに浮いたままハリーに呼び掛けた。

 

「ここまで取りに来いよ、ポッター」

 

ハリーはドラコを睨みながら、箒を掴む。

 

「ダメ!フーチ先生が仰ったでしょう、動いちゃいけないって。私たち皆が迷惑するのよ」

 

ハーミィがハリーに向かって叫ぶが、ハリーは無視している。そしてハリーはそのまま飛び上がった。そのままハリーはドラコに空中で向き合った。どうやら二人は会話しているようだ。

ただ、上空にいるドラコたちが何を話しているのかよく聞き取れない。すると突如ハリーが前屈みになり、ドラコに向かって突進した。ドラコはそれを回避すると、ネビルの思い出し玉を空中高く放り投げる。そして重力によって落下しはじめた思い出し玉に向かって、ハリーが急降下した。地上で見ている生徒の何人かが悲鳴を上げる。

ハリーは地面すれすれの所で思い出し玉を掴み、箒を水平に安定させた。超すげーな。

 

そんな中、マクゴナガルが「ハリー・ポッター!」と叫びながら走ってきた。

そして、そのままハリーを連れて城に向かって行った。

 

「やったな!ポッターは退学だ!」

 

マルフォイが歓喜の表情で喜んでいる。僕はドラコに、ハリーの踏み台にされたことを伝えようと思ったが、なんだか面倒くさいし、どうでもいいので放っておいた。

 

その後、ハリーがグリフィンドールのクィディッチの寮の代表選手のシーカーになったと聞いて、ドラコがショボーンとするのは、また別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ハリー達にはスリザリン寮優勝の贄になってもらおうか

遅くなってすいません。インフルエンザにかかって治ったかと思いきや風邪をひいたりと……。

今回は短いです。それと原作よりもハリー達が嫌われる展開を早くしています。


太陽が沈み、ホグワーツの生徒達が夕食を求め大広間に行く頃のこと。

既にホグワーツのしもべ妖精に作らせた夕食を食べ終えていた僕は、久し振りに惰眠を貪ろうとベッドへと潜り込み瞼を閉じようとした時、部屋に備えつけた訪問者を知らせるブザーがけたたましく鳴り響いた。

 

寝ようとしていたため僕の格好はネグリジェを羽織っているのみであり、流石にこのような格好で表へ出るにはいかないため、急いでいつも通りのレティシアファッションを着替える。

 

まだ少し眠いため、水の呪文を顔にかけて眠気をとばし、清めの呪文で水分を拭うと、部屋の玄関前まで転移し扉を開け放つ。

 

ったく折角寝ようとしていたのに台無しだ。どうしてくれるんだよ……。

 

「何の用だ……?ドラコ。寝ようとしていたところを邪魔されて今の私は頗る気分が悪い。来た理由がくだらないことだったときは覚悟するんだぞ……?」

 

不機嫌さを隠そうともせず、僕は部屋の前に突っ立っていたドラコに人指し指を突き付けて早口で捲し立てた。ドラコは少しだけショボーンとした表情をつくると、またいつもの不遜な笑みを浮かべる。

 

「落ち着いてくれ、レティシア。実はあのポッターを陥れるために良い作戦を思い付いたんだ!」

 

「そうか、どんな作戦だ?」

 

「ポッターに決闘の約束を取り付けるんだ。もちろん時間は夜中に指定してね。けれど僕は決闘に行かずポッターだけが行って、下等なグリフィンドールだけが減点されるって寸法さ」

 

僕は腕を組みながら息をつく。

 

確か原作だとこの時にハリー達は四階の隠し扉に気が付いたんだったか。どちらにせよドラコの作戦は失敗するわけだ。どうせ、賢者の石は僕が持っていることだし、たまには寮に貢献することにするか。

 

僕は悪どい笑みをドラコに向けた。

そしてハリー直筆の手紙を取り出す。この手紙はハリー達と友好関係を結んでおくために始めた文通のなかで一番最初に送られてきたものである。

 

「もっと良いのがあるぞ、ドラコ。これはポッターが書いた手紙だ。そして魔法には他人の字の形を完璧に再現できるものがあってな。私はそれを使うことができる。そしてポッターの字でスネイプに手紙を書いて指定の場所に呼び出す。ポッターもその場所にさっきのドラコの考えた方法で呼び出す。あとはその場所に糞爆弾でもなんでもいいから予め悪戯グッズを仕掛けといてスネイプを嵌めればいい」

 

「そうか!!そしたらポッターが疑われてグリフィンドールが減点されるんだね!」

 

僕は軽く頷くと続きを言う。

 

「それにスネイプを使うというのもポイントだ。奴はグリフィンドールに容赦ないからな。ごっそり減点してくれる筈だ」

 

「そういえば、どうしてレティシアがポッターの書いた手紙なんて持っているんだ?」

 

「そんな小さなことは気にするな。ほら、さっさと準備しろ。それで私の睡眠を邪魔した分はチャラにしておいてやる」

 

 

◆◇◆◇◆

次の日、グリフィンドールは90点も減点されていた。

ハリーからの手紙曰く、ハリーとロンとハーミィの三人でドラコに指定された決闘場所に行ったが、何故かスネイプが来て逃げ出そうとしたところ、スネイプを巻き込んで大量の糞爆弾が破裂して、冤罪だと説明してもスネイプは信じずハリーは50点、ロンとハーミィは20点ずつ減点されたらしい。その後、怒り狂うスネイプから逃げるため四階に行くと三頭犬と隠し扉があったとも書かれていた。

 

どうやら、彼らは四階のことを知ってしまったようだ。知ったところで賢者の石は僕が持っているためどうにもならないのだが。

 

ドラコは作戦が成功したとあって凄く機嫌が良かった。鼻歌までしていたレベル。そんなドラコにも負けじと他のスリザリン生も鼻歌をしていたのは少し、いや凄くひいた。

スリザリンと対称的にグリフィンドールの落ち込みようったら凄かった。泣き叫んでいる奴もいたからな。そのためハリー一行は同じグリフィンドール生からとても嫌われている。当の本人達は四階のことで気にしている様子はないが。

 

僕はハリーへの手紙に一応励ます言葉と四階のことを自分でも調べてみるという旨を書き、梟の足に手紙をくくりつけた。

 

 



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